大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

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幕を引くのは(後編-後)

※最終話&エピローグです。ややスカトロ成分がきつめなのでご注意下さい。


同じ屋敷と呼ばれる建物でも、俺の住み慣れた『苔屋敷』と劉の屋敷とでは規模が違った。
遥かに見上げる高い天井に、磨きぬかれた大理石の床。朱色の太い柱に、金や朱の入り乱れた装飾。国賓クラスを招いて然るべき御殿だ。
だが見張りの男達の足は、そうした華美な装いとは正反対の場所……薄暗い石階段をいくつも下っていく。地下だ。
尋問や躾に地下牢は定番とはいえ、つくづく入宮もこういう場所に縁がある。
ただ、それもこれで最後だ。俺が彼女を日の当たる場所に連れ戻してやる。
俺がそう決意を新たにした瞬間。俺達の進行方向から、歓声と拍手が沸き起こった。
嫌な予感がした。
「おい!!」
俺の腕を掴む男が力を強めた。無意識に体が前に出ていたらしい。でも仕方がない。この嫌な予感は、きっと当たっているんだから。
地下に並んだ扉のうち、一際大きな扉の前にまた二人の見張りがいた。
歓声はその後ろの扉から漏れているようだ。
見張り役が俺達に気付き、訝しげな顔で何かを訊ねてくる。俺の腕を掴む奴が二言三言言葉を返すと、その顔は愉快そうに歪んだ。
「入レ、日本人。佳境だぜ」
その言葉と共に、分厚い鉄の扉が開かれる。

視界に飛び込んできたのは、パーティー会場のような煌びやかな空間だ。
とても一個人の有する地下室とは思えない。
天井の巨大なシャンデリアが辺り一面を柔らかな金色に照らしている様は、入宮が競り落とされた日の映像を思い出す。
いや、それだけじゃない。実際に部屋の中には、あのオークション会場で見かけた客が何人もいた。
あえて、その人間を集めたのか。入宮の調教具合を見せる為に。
そうだ、入宮。入宮はどこだ。
そう思って室内を見渡すと、瞬く間に見つかった。彼女は“会場”の中央、ガラスに四方を囲まれた高台という、最も目立つ場所に拘束されていたからだ。
木で出来た椅子の上での『まんぐり返し』。
後ろ手に縛られたまま、両脚で胴と頭を挟み込むような状態だ。細い身体はゆったりとした座部にすっかり収まってしまっている。
当然というべきか、膝裏は手すりに、重ねた両足首は背もたれの頂点に固く結び付けられ、一切の身動きを封じられてもいた。
当然、恥じらいの部分を隠す術はない。女にとってこれ以上ない屈辱的な格好だ。
そしてどうやら、彼女に恥を与えているのは姿勢だけじゃない。入宮の背後に位置する観客達が、入宮の肛門部分を凝視して嗤っている。
彼女の肛門は、銀色の器具で大きく開かれているらしい。

「さっきチラッと聴こえたんだがなぁ。あのお嬢ちゃん、今日の為に一週間クソをさせて貰えてねぇらしい」
扉を薄く開けたまま、さっきの見張り役が流暢な日本語で語りかけてくる。
主人である劉が日本人を買い漁っているだけあって、部下にも日系が多いらしい。
いや、そんな事はどうでもいい。気にかかるのは、奴の言葉そのものだ。
「あの開いたケツん中にゃ、みっちりと糞が詰まってる筈だ。そのクソを、お客様方に観察されてんのよ。
 面ァ見てみな、今にも泣きそうだぜ。ちっと前までならすげぇツラで睨み返してたとこだろうが、流石にそろそろ限界らしい。
 ま、無理もねぇ。俺ら下っ端の間でもさんざっぱら輪姦したし、ついこの間は黒人連中に何日もブッ通しでオモチャにされてやがった。
 何より、劉のダンナから直々にこってり躾けられたんだ。参らねぇ訳がねぇ」
男の言う通り、入宮の表情は悲痛に歪んでいた。羞恥と疲弊のあまり、睨む余裕もないという風だ。
劉はそんな入宮の傍に歩み寄り、肛門を指して告げた。
「ご覧の通り、この娘の腸は汚れで詰まています。よって今から浣腸をします。それも、只の浣腸じゃありません。『ドナン』使いマス」
その言葉で、場が一層の沸きを見せる。
ドナン浣腸。親父のSM本で見た覚えがある。
元々は医薬品で、便秘の重症患者にのみ用いられた、最もきつい浣腸液らしい。
浣腸液として最もポピュラーなグリセリンが時間を置いてじわりと効いてくるのに対し、ドナンは即効性がある。
浣腸を施したその瞬間から、洋酒を煽った時のように直腸内がカアッと熱くなる。
肛門の筋は痺れて緩みきり、しばらくは意思とは無関係に便が垂れ流しになってしまう。
そうした効果があまりにも劇的なため、今では一切の生産が中止され、幻の浣腸液とさえ呼ばれている。
確かそういう記述だったはずだ。
そんなものを、入宮に使うのか。それも、一週間も便を溜めさせた状態で。
「ドナンって、あの…………!? い、いや! あれはもうイヤぁっ!!」
劉の言葉を聞いた瞬間、入宮は明らかに狼狽する。どうやら経験があるらしい。
入宮のその反応を、場の人間が揃って笑いものにする。劉も、客達も。
「フフフ、どうやらトラウマになているようです。何日か前、試しに使たんですよ。
 400ccばかり入れて、出せないように、太い肛門栓とゴムのパンツで封をしたんです。
 そうしたらこの頑固娘が狂たように呻き始めて、最後には白目剥いて気絶してましたよ」
劉はそう言って場の笑いを誘う。だが俺と入宮自身にとっては、まるで笑える話じゃない。白目を剥いて失神するなど、明らかに異常だ。
しかも今の入宮は、一週間も排泄をしていないという。そんな状態で強烈な浣腸を使われては、どうなるのか想像もつかない。
「やめて、お願いやめてっ!!」
入宮の哀願も虚しく、劉の取り巻き達が無表情に準備を進めていく。
獲物の肛門から器具を引き抜き、洗面器一杯に作られた透明な液体をガラスの浣腸器で吸い上げて。

「競り負けた時は悔しかったものだが、こうして他人の調教を観るのも中々そそるな」
「ええ。あの娘がどれだけ顔を歪めてみっともなく苦しむのか、本当に愉しみ!」
「これはいよいよ、今夜で狂うかもしれないな」

客席からはそういった言葉が囁かれていた。
その悪意ある視線に見られながら、ガラス浣腸器が入宮の肛門に突き立てられる。
「あぁぁ、いやあっ!!」
注入直後、入宮は早くも悲鳴を上げ始める。頬肉の引き攣りようは、瀬川達がやった酢浣腸の時以上だ。
しかし、注入は一度では終わらない。二度、三度……ガラス浣腸器が突き立てられ、シリンダー内でピストンが動く。
計5回。浣腸器が100ml入りだとすれば、500mlが注ぎ込まれた計算になる。
本の記述にあった通り、効果はすぐに表れた。
「ああ……くぅっ、ぁああはぁぁっ…………あ、熱いいっっ…………!!」
注入が終わってからわずか5秒ほどで、入宮の口から苦しそうな声が漏れる。
「何だ、だらしない。そんなに肛門をヒクつかせるな」
その劉の詰りを切っ掛けとしたかのように、天井近くの巨大モニターに入宮の姿が映し出された。
会場のどこに座った客にも、入宮の苦しむ様が伝わるようにだろう。
巨大映像の精度は憎いほどに高い。目を凝らせば、入宮の恥毛の1本1本まで判別できそうだ。
当然、肛門周りの状況もはっきりと見て取れる。
執拗な調教を受け続けた肛門からは、すでに初々しさが失われていた。
菊輪は紅色に色づき、常に指が数本楽に入るほどに開いている。さらに今は、ドナン浣腸の影響で喘ぐように大きく開閉してもいた。
その上の秘裂も、もう綺麗な1本筋じゃない。ピンク色はやや灰色がかり、膨らんだ陰唇が蛇行するようにして飛び出している。

「ほほ、競りで見たものとはまるで別物だ。あの初々しかった穴が、たった数ヶ月でこれとは!」
「まったく。前戯なしでそのままぶち込めそうだ。さすが劉さんの躾けは容赦がない。一体、一日何人とさせたのやら」
「乳房のサイズもかなり増しているな。先端の蕾にしても、もう常に勃ち続けだ」

モニターに大写しになった入宮の変化には、客席からもざわつきが起きていた。
その中心で劉は、黒い何かを取り巻きの女から受け取っていた。
場の注目が劉に集まる。
「このドナン浣腸は、放ておくとすぐに垂れ流しになてしまう。そこで、特殊な栓を使います」
劉は入宮の肛門近くに移動し、手にした物をモニターに映し出した。
見たこともない道具だ。話の経緯からしてアナルプラグの類だろうが、本来流線型であるべき先端は大きく4方向に反りかえっている。
もしそんなものを無理矢理肛門に押し込まれたら、中を押し広げられる感覚は相当なものだろう。
「ご覧の通り、このプラグは肛門めいっぱい拡げます。開いた時の最大直径は10cm以上。そうそう抜けません」
劉はそう言ってプラグを掲げ、改めて場に異形振りを見せ付けてから、たっぷりとローションを塗りこめた。
そして拡がった先の部分を強く鷲掴みにしたまま、すでに少し液を漏らしている入宮の肛門に宛がう。
「ふぐっ…………!!」
次の瞬間、モニター左の入宮の目が見開かれた。その右側では、暴力的なサイズのアナルプラグが朱色の肛門にめり込んでいく。
そしてプラグが根元まで入り込み、劉の手が離れた瞬間には、ぐうっと入宮の臍の下が盛り上がる。
直径10cmというあの毒々しい花が、荒れ狂う腸内で咲いたのだろう。
「うううっ!!!」
当然、入宮は苦しそうに呻いた。だが彼女の地獄は、そこからがスタートだ。

「ふんんん゛…………ううんん……ん、っぐぅぅぅうっ…………!!!」

入宮の苦悶の声が響き渡る。
声だけじゃない。顔は真っ赤になり、目は見開かれ、腹は腹筋が浮き出るほど必死の力で締められている。
腸内の異物を外へ搾り出すことに総力を挙げている……そういう風だ。
それでも排泄は許されない。十文字の極太プラグは、憎らしいほどにがっちりと肛門に嵌まり込んでいる。
出したい、けれども出せない。その歪な抑制は、入宮の下半身に痛々しい影響を及ぼしていた。
肛門が狂ったように戦慄き、太腿に深い筋が入ったと思えば緩み、すぐにまた筋張る。
肛門栓の脇に出来たほんの僅かな隙間からは、薄黄色い液体が滴り落ちていく。
当然入宮の身体そのものも激しく反応していて、木製の椅子が激しく音を立てる。
俺にとっては見ているだけで胸が痛む光景だが、場に集まった連中は総じて目を輝かせていた。
「どうか笑ってやって下さい。この豚は浣腸で感じるのです。そのように調教しました」
劉はそう言って肛門栓を指で弾く。
「うぐ、ふぐぐぐぐぐっ…………し、したいっ…………したい、したいっ!!!」
汗まみれで歯を食い縛りながら呻く入宮。その声の響きで、腹筋の力の入り具合が推して知れる。
シャンデリアに照らされた白い裸体には、全身にじっとりと脂汗が浮いていた。
便意の辛さは俺も解る。必死な息みも、脂汗が滲むのも経験がある。
でも入宮が今味わっている便意は、およそ日常で経験するものとは比較にもならないんだろう。異常とも思える汗の量が、それを物語っている。

「もう我慢できない! だめ、もうだめもうだめぇぇっっ!! 栓ぬいて、うんち、うんちさせてっっ!!!!」
10分が経った頃、入宮の言葉にもう理性はなかった。
呼吸は浅く速く、下腹からは聞いた事もないほど濁りきった腹下しの音が絶え間なく続いている。
太腿から足指の先まで、全身が恐ろしいほどに痙攣して椅子をガタつかせている。
「自力でひり出してみせろ。本当に出したいならできるはずだ」
劉は面白そうに見下ろすばかり。観客連中からも同情の声は微塵も上がらない。
純然たる悪意の見世物になりながら、入宮はさらに壊れていく。
「ああ゛っ…………ぁぁああああお゛っ…………!!!」
白目を剥きかけ、口の端から涎さえ垂らし、天を仰いだ首をガクガクと揺らして。
「さぁ、ひり出せ! お前の中で渦巻いている穢れを、この人達に見てもらえ!!」
劉は満面の笑みでそう命じる。
「いっ、いやぁっ……」
入宮がどれほど嫌がろうと、彼女に選択権などない。
劉のその命令から約2分後、それまで以上に入宮の身体中に力が入ったかと思うと、呻き声を上げていた口が大きく開く。

「あああああああもうだめぇえええーーーーっ!!! でるぅーーーっ、でちゃうううーーーーっ!!!!」

かつては体育館に響き渡っていた声量が、会場中を震わせる。
直後、入宮の肛門から黒い栓が弾け飛んだ。4つに開くあの肛門栓だ。
そして、排泄が始まった。開ききった肛門から、凄まじい勢いで茶色い汚液が噴き出す。
汚液は数本の筋に分かれて放物線を描き、数メートル前にあるガラスへ悠々と届いて垂れ落ちていく。
女の恥などという言葉ではあまりにも生ぬるい、地獄のような大量排泄。
「おおお……あれぐらい可愛い子でも、出るものは出るんだな!」
「すごい勢い。何メートル飛んでるのあれ?」
「恥知らずな女。自分が今どれだけ惨めか、鏡で見せ付けてやりたいね!」
客席から歓声と野次が飛びはじめた。聞き取れるのは日本語だけだが、英語や中国語で発される野次もけして良い意味ではないだろう。
悪意ある数十の視線の元で排泄を晒す気分は、どのようなものなのか。入宮の顔からは、心情は読み取れない。
彼女は肩で息をしながら、俯きがちに鼻を啜り、眼孔に溜め切れない涙を静かに溢していた。

奔流が止まったかと思えば、また噴き出し。また止まり、尻肉の間に雫が滴るだけになった頃に、また小さく噴き出し。
一週間分の排泄は、何分に渡って続いたのだろう。

「おお、臭い臭い。こんな物を腹に溜めて、よく人間の顔ができていたものだ」
諸悪の根源である劉は、わざとらしく鼻をつまみながら入宮に近づく。
奴の視線が捉える入宮の肛門は、不自然なほどに開ききっている。力加減をせずに上下に割り開いた結果、完全に筋の切れた肛門。そんな風だ。
中の粘膜が奥の奥まで見えてしまっている様は、ひたすらに不気味でしかない。
劉もまたその肛門を凝視しながら、例の病的にギラついた瞳を見せる。
「さすがドナンだ、一回でよく解れている。これなら問題ないな」
劉はそう言って、取り巻きの女達に向かって頷いて見せた。
すると女達は、布の掛かった台を入宮の前にまで運んでくる。
何だ、あれは。場の誰もがそう疑問符を浮かべる中、劉は笑みを浮かべながら布を取り去る。
「うお……っ!!」
驚きの声が上がった。舞台の上が見えやすい、前列の客席からだ。俺はその声にひどく嫌な感じを受けながら、台に乗った何かを観察する。
構造はシンプルだ。ミシンを思わせる機械の前方に、ディルドウが取り付けられている。実物を見るのは初めてだが、ファッキングマシンと呼ばれるものに違いない。
だが、取り付けられたディルドウが異常だった。
劉の逸物はおろか、入宮を輪姦した黒人の怒張よりも凶悪だ。何しろ、セッティングをしている取り巻きの女の腕よりも大きいのだから。
その形状は、もはや男性器というより甲虫の胴に近い。
以前な男根ではまずないような、緩やかな上向きのカーブを描いてもいる。明らかに、どこか特定の場所を穿つように設計されている。
「よく見りゃ、えげつないな。なんだあれ?」
「でかいな。あれほどのディルドウは、米国向けのショップでも見たことがないぞ」
「拷問器具だな、あそこまでいくと……」
まさに異形と呼ぶべき責め具に、さすがの観客達も表情を固めた。
中でも一番に血の気を無くしているのは、今から責め具を挿入される入宮だ。
「どこを探しても見つかりません。この『恶魔』は特注品です。この雌豚に、最大限の苦痛と快楽を与えるための。
 私の愛人達に、腕を何度も結腸まで押し込ませて情報集めました。
 子宮を一番効率よく押し上げながら、腸の奥を抉れるように、太さや角度を計算しました。
 一度、入るかどうかのテストもしてます。床に置いたこれの上に座らせたら、自分の体重でどんどん入ていった。
 あの時の顔と叫び声、今も忘れない。とても良かた。
 その日は結局半分しか入らなかたが、今日は大丈夫。その為にドナンで緩めた。これだけ拡がれば、腕でも頭でも入ります」
劉はそう言いながら、取り巻きの女達に合図を出す。
女達は眉一つ動かさずに台を押し出し、入宮の肛門へとディルドウを捻じ込み始めた。
ディルドウが入宮の股座へ入り込むと、改めてそのサイズの異常さを感じてしまう。何しろ、入宮自身の脹脛より少し細いだけなんだから。
「あ、あ……やめて、だめっ!!!」
必死の拒絶も、当然聞き届けられる事はない。
淡々と押し込まれたディルドウがついに最奥まで達したところで、マシンのスイッチが入れられる。
その瞬間、聞き慣れない金属音が響き始めた。掘削機の駆動音に似た音と、ディルドウを前後させるアームのカチャンカチャンという音。それが速いペースで繰り返される。
「あぐうっ!!」
入宮は歯を食い縛りながら声を漏らした。そしてその一声を皮切りに、嬌声が上がりはじめる。

マシンのパワーは相当なものだった。明らかに無理のあるサイズのディルドウが、力強く叩き込まれては腸壁を捲り上げつつ引き抜かれる。
挿入パターンにしても、ただ抜き差しを一定のペースで繰り返すわけじゃない。ベテラン男優の腰遣いを思わせる緩急がついている。
「んぁあああ゛あ゛っ!! あぁっ、あ゛おッ!!……はぁっ、はぁっはぁっ…………んん゛ん゛ん゛っ…………っあああ゛お゛っっ!!!」
ディルドウが腸を奥まで貫く瞬間、入宮の喉からは濁った叫びが上がった。
さらに機械が小さなストロークでゴッゴッと最奥を突き上げれば、その動きと連動するように喘ぎが搾り出される。
引き抜かれる時には荒い呼吸と共に、もどかしそうな呻きが出る。
認めたくはない。認めたくはないが、入宮は後孔を穿たれながら、間違いなく感じているらしかった。
「本当によく調教されているな。あんな物を叩き込まれて感じるとは」
「気持ちよさそー! 絶対逝ってるよね、あれ」
会場がざわつき始めると、劉は舞台上から客席に視線を向けた。
「そういえば、言い忘れてました。この一週間、雌豚に我慢させていた事、もう一つあります。
 絶頂です。私の女達に交代で、5分以上休ませず、けして絶頂させないように責め続けさせました。
 その時の映像あります。観ますか、面白いですよ」
劉がそう言って指示を出すと、数秒後にスクリーンの映像が切り替わる。

薄暗い部屋の中、ベッド上で拘束されている入宮が映し出された。
左右の足の裏をぴったりとくっつけるようにして縛りあわされ、両手も頭の後ろで縛られているようだ。
その入宮に二人の女が張り付き、責めている。
一人は屹立しきった乳首を捻り上げ、もう一人は秘裂にマッサージ器を宛がっている。
特にマッサージ器を使う女は冷徹で、入宮の顔を注視しながらマッサージ器を宛がい続け、表情に変化が出た所ですっと離す。
『うう゛むぅううーーっ!! うむぅっ、うむぉあおおおーーっ!!!!』
入宮はボールギャグを噛まされているため、意思を表示する事ができない。
ただ股座の女へ向けて訴えるような視線を向けつつ、ギャグの穴からダラダラと唾液を溢すだけだ。
この焦らし責めは相当な時間続けられているらしく、入宮の内腿はすっかり愛液で濡れ光り、シーツも一面が塗れ、秘裂からマッサージ器が離された時には太い愛液の糸が引いているほどだった。

「どうです、必死さが笑えるでしょう。これが4日前、つまり折り返しにも来ていない時の映像です。
 女の密告によれば、この後もイカせて、イカせて、と何度も涙ながらに訴えたようです。
 それだけ焦らしたのですから、この雌豚は絶頂に飢えきっている。そこで、たっぷりと絶頂の素を与えてやれば…………」
劉はそう語りながら、マシン基部のツマミを大きく回した。
機械の駆動音が急に大きさを増す。ピストン運動は大きく苛烈になり、入宮の腸奥へと猛烈にディルドウを送り込んでいく。
そうなれば、受ける側の入宮にも当然変化が表れた。
「ぐうっ!? あっ、はっ、はっ、はっ…………おっ、おおお゛お゛っ!! んおおぉお゛お゛お゛っ!!!!」
肛門性感。まさにそれが凝縮された声が延々と上がり始める。
「ははは、すげぇ声だ! 若い娘の出す声じゃないな!」
「でも、気持ちよさだけはすごく伝わってくるね。品性捨てましたって感じで、むしろ潔いかも」
「潔いとかじゃなくて、あの声出さずには居られない状態なんじゃないの。ずーっとあの映像みたいに焦らされてたんでしょ? 
 子宮口なんてもう蕩けきってるだろうし、それを肛門側からあんなにガシガシ突かれたら、もう逝きっぱなしよ」
「なるほど、確かに絶頂から逃れられんという感じだな、あの顔は」
観客席から上がるそういった声は、きっと入宮本人には届いていないんだろう。彼女が断続的な絶頂状態にあるのは疑う余地もない。
何度も何度も獣のような声をあげ、身を震わせる。
そして最もひどい状況は、ピストンが激化してから5分ほど経った頃に起きた。
「おおお゛っ、お゛っほぉっぉ゛……くぅうおおおほおおおっっ!! あぐ、ぅっ……はぁーっ、はぁっ……ああ、あぉお゛…………。
 …………う、あっ……!? だ、だめっ……と、とめて、ちょっと機械止めてっ!! で、でるっ、またでちゃううっっ!!!」
絶頂を繰り返していた入宮が、ある瞬間、目を見開いて狼狽しはじめる。
「何だ、どうした?」
「さぁ。何か、“出る”って言ってたような…………」
誰もが状況の飲み込めない中、そう言葉が発された直後。舞台上で、強烈な破裂音が響き渡った。
「いっ、いやあああぁぁぁあーーーーっ!!!」
大口を開いて入宮が叫ぶ。その口を入口だとするなら、出口に当たる部分こそが音の出所だ。
猛烈な機械のピストン運動に掻き出されるようにして、再び排泄が始まっていた。
いかにドナン浣腸が強烈だろうと、一週間溜め込んだ排泄物をすべて出し切るには至らなかったのだろう。
客席がざわつき始めた。
引いているドレス姿の女もいれば、嗜虐心に満ちた笑みを浮かべるタキシード姿の男もいる。
しかし、間違いなくこの悲劇を最も望むのは、入宮を間近で見下ろす劉だろう。
「おうおう、ここまできてまだ出すのか。日本人の慎みはどこへ失くした?
 ブリブリと下痢便ひり出しながら肛門犯されて、それでまだ絶頂するか。お前にはもう、雌豚という名すら贅沢だ。
 皆さん、知っている人がいたら教えてくれ。ここまで下等な動物を、一体どう呼べばいい!?」
脂肪を振るわせながら、全ての人間に聞かせるように声を張り上げる劉。
どっ、と笑いが起きる。
入宮は泣いていた。絶望に満ちた、今にも消え入りそうな表情で、恥じるように泣いていた。

その姿を見たとき、俺の中でとうとう何かが切れた。
場の異常さに呑まれたこともあり、悪目立ちしてもいけないという思いもあり、ずっと抑えつけていたものを、もう我慢できない。

「入宮ぁあああーーーーーっっ!!!!」

なおも痛む顎を無理矢理に開いて、腹の底からの声を張り上げる。
劉や観客共、全員の嘲笑を掻き消す気持ちで。
「お、おいっ、騒ぐな!!」
守衛がすぐに俺を組み伏せてきた。奴の立場的にも、この宴を邪魔されるのはまずいんだろう。
だが、もう遅い。全員の目がこっちへ向いている。
観客も、劉も、そして…………入宮の目も。

「なんだ、そいつは……」
劉が眉を顰めながら発した言葉を、入宮の一言が遮った。
「………………岡、野………………!?」
その言葉で、劉は目を剥く。
しばし入宮を見つめ、そのギラついた視線を俺の方に戻してから、奴は笑った。
「なるほど、そういう事か」
組み伏せられた俺と、左手に握り締めている花束、横倒しになったトランクケース。
それらを一つ一つ見やりながら、奴は顎を撫でる。
「この娘追いかけて、遥々海を渡てきたか。その箱の中身は2千万というところか?」
予想外の察しのよさに、俺は息を呑む。奴の口端の角度が上がった。だがそれは、果たして笑いが深まったと表現していいんだろうか。
「この娘買てから…………否、その前、競り落とした初対面の時からだ。いつもこの娘の後ろに、男の影がちらついていた。それが、お前という訳だ」
劉はそう言ってから、大きく腕を広げて会場にアピールする。まるで、自分という存在をアピールするかのように。
「皆さん、ご覧下さい。あのボロ切れの様な少年はどうやら、私からこの奴隷を買い戻すつもりのようです。
 私か彼、両方が所有権を主張する以上、彼女自身に決めてもらうしかありません。このまま私の奴隷として、他の人間相手では味わう事すらできない究極の快感を得続けるか。それとも同じ日本人同士、浅い夢のような有り触れた恋でいいのか。
 彼女が崩壊を望むなら、私の勝ちです。皆さん、どうかその瞬間の立会人になって下さい!」
はっきりとした日本語で、奴はそう宣言する。誇らしげな横顔が苛立たしい。自分が勝つと信じきっているのか。

だが実際、入宮は明らかに限界という風だ。
今も肛門から液を噴出しながら強烈に腸奥を穿たれ続け、苦しそうに唇を噛みしめている。
俺という存在がなければ、またあの快感の声を迸らせていることだろう。
「頑張れ! 頑張れよ、入宮っ!!!」
何に対してのエールなのか、自分でもよく解らない。それでも、何か声を掛けたかった。
「お、おか、のぉ…………」
入宮は涙に潤みきった目で、必死に俺を見つめてくる。
それを余裕の表情で観察していた劉は、取り巻きの女に短く何かを命じた。
すると取り巻きの女は、それまでの無表情を一瞬崩し、恐ろしい笑みを浮かべる。
その笑みの理由はすぐに明らかとなった。
取り巻き達の間で即座に命令の伝播がなされ、それぞれが道具を手に取る。そして今まさに苦しみの最中にいる入宮に駄目押しをはじめた。
病的にひくつく秘裂の上……陰核にマッサージ器を宛がい。
屹立しきった乳首にクリップを取り付けて、力任せに引き伸ばし。
「や、やめっ……!! ん、はぐっ…………んおおおお゛お゛っっ!!!」
乳房、陰核、そして肛門、……その全てに並ではない刺激を浴びせられ、入宮の全身が痙攣する。
入宮は左右に首を振りながら、壮絶な絶頂顔を晒し始める。
「入宮あっ! 畜生、やめろ!!やめろよっ!!」
俺は守衛に腕を捻りあげられたまま、必死に叫んだ。唾液と一緒に血が飛び散るのが見えた。
その視界の先で、入宮は悲壮な顔をさらに歪ませる。
「お、岡野。見ないで、お願い。こんな所、岡野にだけは見られたくない…………」
「いいや。しっかりと見届けてもらわねば困る。今日はお前が真に私の物となる、記念すべき日なんだからな!」
今度は劉が、入宮の言葉を遮る番だった。
奴は機械を止め、粘液に塗れた極太のディルドウを肛門から引き抜く。
同時に女達にも縄を解かせて、入宮の身体を抱え上げた。
散々に蹂躙された入宮の肛門は開ききり、異様なほどの厚みをもった紅い菊輪が脱腸気味に痙攣している状態だ。
自分が造った道具で、ここまで変化させたぞ。そう言いたいのか。

「董。その子供を近くに連れて来い」
劉が指を曲げてそう言うと、守衛の男は俺の右腕を捻り上げたまま、トランクケースを拾い上げて舞台に近づいていく。
「入宮」
「…………岡野…………」
ガラスの内外という位置にまで近づき、俺と入宮は改めて互いの名を呼ぶ。
劉は尊大な瞳で俺を見下ろしたまま、ガラスに身を寄せる入宮の腰を掴んだ。
「あっ!? ま、まさか……!」
振り返りながら表情を強張らせる入宮。劉は表情を変えない。
「何か問題でもあるのか? お前の立場は何だ。そう、私に買われた奴隷だ。
 奴隷をいつどこで抱こうが、お前に拒む権利はない!!!」
劉は俺と入宮双方に言い聞かせるように叫びながら、入宮の腰へと挿入していく。
今まで、入宮の性的な行為は何度も見てきた。だが、挿入の瞬間をこれほど間近で見るのは初めてだ。
瘤のついた規格外の怒張が、メリメリと音も立てそうな窮屈さで割れ目を押し開いていく。
「うう…………!!」
入宮が呻きを上げるのも、ひどく自然なことに思える。
傍目には無理に見える剛直は、それでも着実に入宮の中に呑みこまれて行く。その淡々とした進行は、今まで何度も同じ行為が繰り返されてきた事実を物語るようだ。
心が苦しい。一人だけ、遥か後方においていかれているような気がする。
「ふふふ、さぁ、子宮口に当たったぞ。奥はいつも以上に解れているが、締め付けも格別だな。
 性感が昂ぶっているせいか? それとも、好いた男に見られて興奮したのか?」
「やめてよ。本当に、やめて…………!!」
劉の囁きかけに、入宮は苦しそうな顔をする。きっと俺も同じ顔だ。
「そうか、まあいい。いつも通り、この膣で愉しませてもらうとしよう。お前も愉しめ。いつも通りにな!」
劉はそう言って腰を遣いはじめた。

パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、という音が繰り返される。音が以前より鈍く感じないのは、生で聴いているせいだろうか。
あるいは接触音が変わるほどに、劉が脚に力を込めているという事かもしれない。
「………………っ!! ………………っっ!!!」
劉にガラスへ押し付けられる形の入宮は、乳房と頬をガラスに潰させるようにして声を殺していた。
しかしそれに気付いた劉は肩まで伸びた入宮の黒髪を掴んで引きつける。
「ああ゛っ!!……ハァッハァ、ハァッ…………くぁあああいぐぅっ!! いぐう、いぐ、いぐ、いくっぅ…………!!」
髪の痛みで口を開いた入宮は、それを切っ掛けとして絶頂を宣言しはじめた。
そう、『いく』と。
彼女の調教を最初から見てきた俺は知っている。入宮は元々、絶頂した感覚を『くる』と表現する子だった。それも、限界の限界、どうしようもなくなった時にだけだ。
しかし今は、『いく』という言葉を息を吐くように宣言し続けている。
何度も何度も絶頂を覚えこまされ、その度に『絶頂する時はイクと言え』と命じられたのだろう。
それが条件付けとなって、入宮の本能にまで根付いているんだ。
その条件付けを完成させた劉は、いよいよガラスを軋ませるほどに激しく腰を打ち込みながら口を開いた。
「おお、締まる締まる。この膣は本当に絶品だ。お前もそう思うだろ?」
わざとらしく俺を見下ろしながらそう告げ、醜悪な笑みを浮かべる。
「ああ、これは失礼。お前は、この娘とした事がなかったんだったな。何しろこの娘の操は、私が奪ったのだから」
こんな言葉を聞けば、さすがに腸が煮えくり返る。だが拘束された俺は、拳を握りしめ、奴をにらみ上げるしかない。

劉と入宮の結合部から、透明な液がいくつも滴り落ちていく。
入宮の愛液か、それとも劉の先走りか。
俺がその液を凝視している事に勘付かれたのだろうか。劉は今一度笑みを深め、入宮の膝裏を抱え上げた。
駅弁ファック。AVなどではそう呼ばれる、結合部を余さず見せ付ける体位だ。
「あ、い、いやっ!!」
入宮はその体位を嫌がったが、主導権を握る劉が譲らなければ意味はない。
劉は入宮のむちりとした腿を大きく抱え上げると、そのまま一気に落としに掛かる。
入宮の体重と、劉自身の突き上げ。その双方向の力で子宮口を叩き潰すやり方だ。
「あぐうっ!!」
当然、入宮も澄ましてはいられない。
目を見開き、全身に力を込めて衝撃を味わう。そしてその後には、全身をふっと脱力させる。
もう嫌というほど目にした、女性が絶頂する瞬間の動きだ。
その後も劉が子宮口を突き上げるたび、入宮は悶え狂う。
「いぐっ、いぐっ、いぐいぐっ、いんぐぅうううっ!!!」
俺とはまるでテクニックが違う。怒張のサイズも違う。女を落とすために作り上げられた凶器を、あれほど腹圧のかかる体位で受ければ、絶頂も無理はないと思う。
だからこそ、叫ばずにはおれなかった。
「入宮ぁっ!!!」
俺が叫ぶと、絶頂を宣言していた入宮がはっとした表情になり、視線を俺に落としてくる。
「…………おか、の…………!」
入宮が、荒い息の合間に俺の名を呼んだ。
彼女の名前を呼び返そうとして、固まる。手で半ば覆われたその表情が、あまりにも悲しそうだったから。

「岡野……お願い。もう、みないで…………」

聞き間違い――じゃない。入宮は、確かにそう言った。
「ふふふ、私との愛の行為に、お前は邪魔だそうだ」
「ち、違う……でも、こんなの…………もう、我慢、できない…………。
 あたしのことは、もう、忘れて……岡野と一緒だった時間、ちょっとだけ……だったけど、た、楽しかったよ…………!」
入宮の吐き出す一言一句が、俺の心に突き刺さる。
実際俺の存在は、今の彼女にとっての枷なのかもしれない。なまじ俺が声を掛けるせいで、無闇に彼女が苦しめているのかもしれない。
それでも…………諦めることなんて、できない。
小学校の頃からずっと好きで、憧れて。振られたり引き離されたり色々あったけど、ガラス一枚越えれば抱きしめられる場所まで来たんだ。

「嫌だっ!!!」

俺は、ガキの頃以来の大声で叫んでいた。いや、今の俺の心は、まさにガキそのものだ。
飾らず、偽らず、心の底から思っている事だけを訴えようとしている。

「俺は、お前を助ける為にここまできたんだ。入宮が他の男の物になってるのが、どうしても我慢できなくて!
 必死に、金作ったんだ。あの日渡せなかった花束も、身振り手振りで買ってきたんだ。
 入宮、頼む、頼むよ。帰ってきてくれ。俺と一緒に、ずっと、ずっと一緒にいてくれよ、入宮っっ!!!」

静まり返った会場内に、俺の言葉だけが反響する。
反響が消えれば、音はなくなる。全ての時間が止まったようだった。
入宮もしばし表情を固めていた。やがて顔を半分覆っていた手が、顔全体を覆い尽くす。
そして、嗚咽が漏れ始めた。
「岡野……あ、あたしも、あたしも岡野といたい!!
 岡野と一緒に暮らして……一緒におばあちゃんになって…………死ぬまで一緒にいたいよ!!!」
その叫びで、劉の表情が一気に険しくなる。
「ふざけるなっ、お前は、私の購入物ダぞ! この場は、お前達小日本人の馴れ合いを見せる為に作たではない!!
 おまえは錯乱している。そうか、脳が快感で焼ききれる寸前なんだろう。なら、今日この場で焼ききってやる!!
 何も余計なコト喋らず、私の気が向いた時に愉しませる玩具であればいい!!」
劉はそう言って、入宮を乱暴に床に投げ捨てる。
そして悲鳴を上げる入宮の右脚を持ち上げ、側位で犯しはじめた。

「あああっ!! あ、あぐうっ、んぐううう゛う゛っ!! くはっ、ハッハッ、ハッ…………!!」
犯され始めてから数分と経たず、入宮の様子は変わった。涼しげな美貌を歪め、呻き、犬のように速い呼吸を繰り返し。
本で見たことがある。側位というのは、女性にとって最も気持ちのいい体位の一つだと。
普段女性があまり刺激されることのない場所にペニスが当たる。
正常位やバックスタイルに慣れた人間ほど、今まで突かれたことのない部分への刺激に快感を覚え、非常にイキやすいのだと。
「ふん。ここまで子宮が降りてきておいて、何が恋だ。お前の身体はもう、浅ましく快感を求めるだけの娼婦以下の肉だ。
 私から離れられないのは、もう解ているな! 今までどれだけお前に恩赦を与えてきたか、知ってるだろう!!
 狂いそうだからやめてくれとお前が泣くたび、丁寧にアナルを舐めさせたりして休ませてやた。
 今日はもうそれはなしだ。お前が泣こうが喚こうが、壊れるまではやめない!!!」
劉はそう言いながら、入宮の数倍の図体で強烈に腰を打ちつける。
見ているだけでも、劉がこの側位という交わり方に精通している事がよく解った。
浅く、深く。様々に角度をつけながら、Gスポットとポルチオに最大限の刺激を与えている。
それは劉の技巧と怒張あっての事で、俺ではとても同じように再現はできない。
さらには空いた手で陰核や乳房まで刺激されるのだから、気を張った程度で耐え凌げるはずもなかった。
「はっ、はっ、はっ…………いやっ、いぐっ!! いぐ、いぐぅっ……はおおおっイグーーーっ!!!」
陰核を弄る劉の腕を握りしめながら、入宮は悶え狂っていた。
見開いた目は白目を剥きかけ、鼻腔は膨らみ、いの字に食い縛った口の端からは泡塗れの唾液が零れていく。
SMで電流責めを受けた奴隷が、よくこういう表情を見せていた。そしてポルチオの快感は、全身に強い電流が迸るようだという。
これが、ポルチオ絶頂を極めさせられている女性の反応なのか。
 ――あの人は凄いんだ。一度あの凄さを味わったら最後、もう忘れられない。
この屋敷へ来る途中に会った女の言葉を思い出す。全員こうやって脳のシナプスを焼ききられ、離れられなくなっていくんだろう。

「入宮っ、しっかりしろよ!!呑まれちゃ駄目だ!!」
俺は必死で前進し、ガラスに肩をぶつけながら叫んだ。
「おい、やめろ!」
董と呼ばれていた男が俺をガラスから引き離そうとするが、俺は離れない。入宮から、もう1ミリだって離れたくない。
必死の叫びの甲斐あってか、入宮の瞳がこっちを向いた。そして俺と目が合うと、一度固く目を瞑り、
「………………!」
小さく息を吐きながら、目を開く。
その瞳を見て、俺は思わず息を呑んだ。
必死な俺の顔が、そのまま映りこむほどに澄み切った虹彩。そこにいたのは紛れもなく、俺が告白したあの頃の入宮だ。
俺の反応で、入宮が持ち直した事を察したのか、劉が顔を顰める。
「くっ……いい加減に諦めろ! お前は所詮、私の奴隷だ!!」
劉は恫喝しながら入宮に這う格好を取らせ、荒々しく腰を打ち込んだ。

そこから劉は、様々な体位で入宮を犯し続けた。
両腕を取っての後背位で身動きも許さず貫き続け。
背面騎乗位で荒々しく突き上げ。
床へ寝かせての正常位で、あえて脚を暴れさせながら執拗に膣奥を突きまわしたり。
徹底したポルチオ責めを受け、入宮は数え切れないほどの絶頂に追い込まれているようだった。
内腿は強張り、足指は握りこまれ、乳房や腹筋は痙攣するように細かに上下し、口の端からは涎が垂れ。
そのどれもがポルチオでの絶頂のサインだ。
それでも彼女の目は、凛としたまま劉の姿を映しこみ続けていた。
快感のあまり白目を剥きかける事もあるが、それを意思の力で押さえ込んで、また劉に視線を集中させる。
誰もが恐れた入宮の瞳。それは、劉にも有効なのか。
「いい度胸だ…………!!」
劉は汗を散らしながら入宮を抱え上げた。二度目の体位と同じく駅弁と呼ばれるスタイル。ただし今度は対面式。
至近で顔を突き合わせるその体位は、劉の終わりにするという執念が見えるようだった。
「んぐっ……!!」
入宮が呻く。いよいよ大きさを増した怒張が、膣の奥深くを抉ったせいだ。
最奥まで繋がったその状態で、劉は取り巻きの女に向かって叫んだ。
「破坏!!」
女は頷いて、胸元から小瓶を取り出す。そして油のような小瓶の中身をたっぷりと腕に垂らすと、今まさに劉に挿入されている入宮の背後に立った。
まさか。そう思う俺の視界の中で、女は何の躊躇もなく、入宮の肛門に腕を捻じ込み始める。
「があっ!? あ゛……ぁぁ、くおおあ゛……ああ、あ゛…………っ!!」
入宮は目を見開き、震えるような悲鳴を上げる。
ドナンと極太ディルドーの挿入で開ききっていたとはいえ、それももう随分と前の話だ。ちょうど塞がりかけている肛門に、アナルフィストは余りにきつい。
しかも、今はそれだけじゃない。劉の規格外の怒張が、膣を埋め尽くしている最中だ。
「どうだ? 私の物と腕一本に、二穴の形を作り変えられた感想は。もうピンポン玉一個の隙間もない、ギリギリ一杯だ。
 苦しいだろう。そして、たまらなく感じるだろう!」
劉はそう言いながら、入宮の膣を激しく突き上げる。それに呼応して女も、肘から先を強く捻る動きを見せた。
「う、うう゛っ!? くはっ、いっぎ、いぐっ…………!! いっぢゃうう゛ふう゛………………!!!」
「そうだ、それがお前の本質だ。子宮の入口に亀頭を嵌めこまれ、その子宮を肛門側から握りつぶされながら狂っていけ!
 もうお前に後戻りの道などない。輝かしい未来もない。お前という人間の幕を、ここで引いてやる!!」
劉は叫びながら、激しく入宮の膣奥を突き上げる。肛門に女の腕が入っている関係で、入宮の腰はほぼ固定されている。
その状態で蕩けきった子宮口を徹底的に突き上げられれば、絶頂は避けられない。
「お゛お゛ぉごお゛ぉっ!! うお゛ぉっ、こほっ!! おぉっおあお゛お゛お゛ぉお゛お゛っ!!!!」
入宮は天を仰ぎ、伸びた黒髪を背中に揺らした。叫び声はもう断末魔のようで、喉が張り裂けそうなほど激しい。
噎せ返りながら涎を垂らしつつ上がるその声は、崩壊、という二文字を想起させる。
劉もやはりそうだったんだろう。勝ち誇った顔で俺を見下ろしている。

でも俺だけは、そんな事はないと知っていた。
入宮のあの眼を見たからだ。相手の姿をそのままに映す、澄んだ瞳。あの瞳をした彼女は、絶対に約束を違えない。
俺をたっぷりと見下した後、劉は最後の仕上げに口づけでもしようと思ったんだろう。
入宮の方を向き直った劉は、そこで固まった。
入宮が、歯を食い縛り、はっきりとした瞳で見つめていたからだ。
「無駄だよ。こんな事、いくらやったって、もうあたしは堕ちない。あたしの幕を引くのは、あんたじゃないっ!!!」
会場中を震わせるような、断固とした宣言。それが俺の胸を通り抜けた。
やっぱり、あの入宮だ。ボロボロの見た目になろうが、体液や汚物に塗れようが、彼女が彼女であることは変わらない。
「ぐぬっ…………!!」
劉は、人とは思えない壮絶な表情を形作っていた。
奴は絶対的な権力者だ。今までどんな人間が相手でも、常に自分の道理を押し付けてきたんだろう。
御せない相手は、きっと初めてなんだ。
「ふ、ふざけるなっ!!」
劉がそう吼えながら、入宮の首に手を掛けようとした時。
会場から、拍手の音が響いた。その音は連鎖するようにパラパラと広がり、やがて会場のあちこちで打ち鳴らされるようになる。

「カッコいいぜお嬢ちゃん!!」
「諦めなー、劉さん。残念だけどその子、劉さんに御せるような代物じゃないよ!」
「そうそう、競り落とした時に頬張られたのがケチのつき始めさ。せっかく坊主が金拵えてきたんだ。縁が無かったと思ってさ」
「いやーしかし、まさかこの場所で青春劇を見るとはねえ。なんだかムズムズしちまうよ!」

そういった声が会場中で沸き起こり、劉は信じられないという表情で視線を左右に惑わせる。
しかし、状況は変わらない。入宮を解放してやれという声は、刻一刻と大きくなっていく。
そうなっては劉も静かに逸物を抜き去り、苛立たしげに歯噛みする他ない。
「…………解た、もういい。董、連れてこい」
肩を落としながら劉がそう言うと、董が俺を引き起こす。
「まぁ、何だ。良かったじゃねえか」
舞台への階段に向かう途中、董はぼそりとそう耳打ちしてきた。
「…………入宮」
花束を手に、俺は入宮の前に立つ。
俺は血だらけ、入宮も汚れだらけ。おまけに花束も折れて踏んづけられた雑草のようだ。
「遅くなった。悪い」
俺がそう言って花束を差し出すと、入宮は一瞬瞳に水を滲ませ、それをゴシゴシと手で拭う。
「あはは、ボロボロ。これがプレゼント?」
にへら、という感じで笑いながら、入宮はそう言った。
「それも、悪いとは思ってるよ。女の子としての初めてのプレゼント、って約束してたのに、こんななっちまっ…………」
俺のその言葉は、最後まで言い切ることができなかった。
いつかの屋上みたいに、入宮が俺の唇を奪ったせいだ。
たっぷり数秒のキスの後、入宮は俺の頬に手を当てながら顔を離す。その眼には、大粒の涙がいくつも流れていた。
「最高だよ。あたしに……ううん、あたし達に、一番似合ってる」





結局劉は、俺の用意した2000万という“はした金”を受け取る事はしなかった。
屋敷から続く道を、女達からの驚きの視線を受けながら歩き、帰国する。
トランクケースの中身をそのままに返却した時、板間さんは真新しい煙草に火を点けながら、俺にひとつの利子を求めた。
それは、取り返した女を生涯大切にすること。
この上なく重く、返し甲斐のある利子だ。


「ほらっ、何ボーッとしてんの!? 味噌汁冷めちゃうでしょ!」
刺すようなその声に、俺は現実に引き戻される。
いけない、確かにボーッとしていた。
「いや、ちょっと……昔を思い出して」
俺が頭を掻きながらそう答えると、嫁は眉を吊り上げる。
「はぁっ? 朝っぱらから何言ってんの? 熱でもあんの? もーっちょっと、しっかりしてよ」
手際よく朝食の片づけをしながら、彼女は捲し立てた。
誰と結婚しても尻に敷きそうな女。かつてクラスメイトが言っていた通りだ。
よく見れば時間もやばい。
俺はダシのきっちりと引かれた味噌汁と卵のかかった飯を掻き込み、上着を羽織る。
するとその俺の前に、また怒り顔の天使が現れた。
「ネクタイ曲がってる!」
きっちりとしたスーツに身を包んだ彼女は、母親のように小言を呟きながら俺の首元を正す。
組のフロント企業にコネ入社した俺とは違い、彼女は日の当たる大企業の社員だ。
元は事務員として働いていたが、あまりにも有能な為に社員登用され、今ではマネージャー職を任されている。
もっとも、知佳の比類ないカリスマと卒のなさ、そして根性を考えれば当然ともいえる。
そんな相手から見て俺は、どれほどうだつの上がらない夫だろう。
「悪い悪い。こんなんで外出たら、お前にまで恥掻かせちまう」
俺がそう言うと、知佳は目を丸くし、それから大きく息を吐いた。
「バーカ。そんなんじゃないよ」
そう言いながらもう一度俺を見つめる顔は、ひどく若々しい。
まるで、中学3年のあの日へ戻ったみたいに。

「他の誰にも、バカにされたくないってだけ。あんたはあたしが初めて惚れた、王子様なんだから」

そう言って『入宮』は、一番の笑顔を俺にくれた。



                              終わり

幕を引くのは(後編-中)

※最終話の真ん中です。文字数上限の関係上、また2つに分かれてしまいました。
 アナル・スカトロ・NTR要素あり。
 物語上、主人公がオカマに掘られるシーンがあるのでご注意下さい。




入宮が屋敷から姿を消した翌日。
抜け殻となっていた俺に、板間さんから一本の電話が掛かってきた。
「あのガキ、えれぇ事をやらかしやがった」
開口一番、板間さんは溜め息混じりにそう告げる。あのガキ、とは当然入宮の事だろう。
「何があったんですか?」
俺が問うと、電話口から髪を掻き毟る音が聴こえはじめた。いつも飄々とした態度を取る板間さんらしくない。
かなり追い詰められているようだ。
「昨日のオークションでな。目玉商品として落札されたはいいが……そのあと競り落とした『主人』に、思いっきり張り手をかましやがった」
板間さんのその言葉を耳にした時、俺はデジャブを覚えた。同じ内容を、前にも聴いた事がある。

『あたしさ。このまま12月まで持ちこたえて、あたしを『買った』やつに会ったら、一発ビンタでもかましてやるつもりなんだ。
 まぁ、そんな事したらまたお仕置きされるんだろうけど…………その後は、どうにか生き延びてくよ』

そうだ。
調教初日の翌朝――この屋敷で、初めて入宮と朝飯を摂った朝。入宮は笑みを湛えながら、確かにそう言った。
俺はそれを冗談と思い、笑う訳にもいかずに押し黙ったものだ。
あれを実行したのか、入宮は。ヤクザと資産家の裏取引という、闇の深い場面で。
「向こうも一度出した金は引っ込められねぇから、取引自体は成立したが……相当お冠だったぜ。
 逆に俺ら組のモンからすりゃ、揃って顔にドロ引っ掛けられた形でよ。
 とくに調教を任されてた伊田と瀬川なんぞは、叔父貴の怒りをモロに買ってなぁ。相応のケジメを付けさせられるらしい。
 もっとも調教の腕を笠に、さんざっぱら偉そうなツラしてやがった変態共だ。
 若ぇ衆の巻藁トレーニングの的になろうが、水底でシャコの餌になろうが、知ったこっちゃねぇがな」
淡々と発せられる一言一言が、俺の体温を奪っていく。
ヤクザと呼ばれる連中の真の恐ろしさは、いかにもな恫喝よりも、むしろこういう世間話の中で覗く。
果たして俺は、この含みのある話を対岸の火事として聞き流していいのか。
「ところでよ。お前……あの入宮ってガキとは、どういう関係だ」
板間さんの言葉が、ガラス片のように喉元に突き刺さる。
「えっ?」
息が詰まる。間の抜けた返答をするのが精一杯だ。
「瀬川の奴がな。叔父貴に首根っこ掴まれて引き摺られながら、喚いてやがったのよ。
 お前と入宮はデキている。二人で結託して、自分の計画を狂わせたんだ、とな。
 勿論、奴の話なんぞ眉唾もいいとこだ、半分も真に受けちゃいねぇ。だが……聞き流すのもマズイ気がしてな」
電話口での通話にも関わらず、板間さんの抉るような視線が見えるようだった。
ヤクザもある程度上の人間になれば、その本質は刑事と変わらない。常に他人を疑い、カマをかけ、自分達にとって害になる人間を炙りだして葬り去る。
ここで嘘をつくのは駄目だ。組を敵に回すにしろ、そうでないにしろ、ここでは本当の事を伝えておいた方がいい。
ヤクザ社会の端で生きてきた俺の本能が、そう警鐘を鳴らしていた。

そして、俺はすべてを打ち明ける。
小学校の頃から、入宮のことが漠然と好きだったこと。
中学校を卒業する日、本気の告白をして振られたこと。
バスケットの試合のたびに、入宮に惚れ直し、心からの声援を送ったこと。
調教対象が入宮だと知った時に、心臓が止まりそうなほどショックを受けたこと。
調教が始まってから、入宮と色々な話をし、沈む彼女を見ていられなくて何度となく励ましたこと。
ビンタをするという話も、冗談交じりに耳にしていたこと。
昨日、調教を耐えぬいた彼女に花を渡すはずであったこと。

板間さんは、静かに俺の話を聴いていた。そして俺が口を噤んでからも、しばらく沈黙を保っていた。
心臓が暴れる。
やはり、事実を伏せておくべきだったのか。『買い手』に平手打ちをする――そう語ったという事実を報告しなかったのは、今となっては確かにまずそうだ。
俺もケジメを取らされるのか。今の時代は指詰めこそしないらしいが、変わりに睾丸や眼球を奪われるとも聞く。
「短い…………いや、長い恋だったな」
沈黙を破って発せられたその一言を、俺はすぐには認識できなかった。
「え?」
「クラスメイトに惚れるってなぁ、ガキの時分にゃよくある話だ。特にあんな器量良しと何年も一緒じゃ、惚れるなって方に無理がある。
 だがよ。本当にあの入宮ってのが大事なら、跳ねっ返らずに大人しくしとけと宥めるべきだったな。
 あのガキは、これから地獄を見るぜ。
 金持ちって輩は、プライドの塊でよ。オークション中に『商品』からビンタ喰らったとあっちゃ、その矜持もズタズタだからな。間違いなく、キツイ嫌がらせが待ってるはずだ」
動悸の激しい心臓が、さらに高く脈打つ。
「お前はオヤジの盃を受けてねぇ堅気、要するに部外者だ。本来なら罰さねぇ代わりに、金輪際この件には関わるなと言うべきだろうな。
 だがお前も、惚れた女の『今』は知りてぇだろう。だから、特別に覗かせてやる。
 昨日のオークションの映像……それから今後、奴さんが関係者宛てに送ると公言してる『調教記録』も逐一アップされていくサイトをな。
 強いて言やぁ、あのガキがぶっ壊れるまでを見届けるのがお前のケジメだ。
 なに、気ぃ落とすなよ。よく言うだろ。世の中オンナなんぞ星の数ほどいる。壊れると判りきってるクラスメイトの事なんぞさっぱり忘れて、先を見ろ。
 何なら俺が新しいのを見繕ってやる。生憎中古しか回せねぇが、真っ当に生きてりゃそうそう付き合えねぇレベルのもいるぜ。
 ま、テメェは一仕事終えた自由の身だ。じっくり考えろや」
板間さんはそう言い残して電話を切った。
それから数分後、親父のパソコンに2通のメールが届く。1通目のメールにはURL、2通目には妙に長いパスワードが記載されていた。
クリックする前から内容が判る。板間さんの話にあった、オークションの映像に違いない。

案の定だ。
URLを踏んだ先でパスワードを入力すれば、見るからに怪しい雰囲気の動画が並んでいた。
一番上の『Auction in Roppongi ,Dec-7』というのが昨日の映像に違いない。
生唾を呑みこみながら、再生ボタンを押す。
煌びやかな空間が映し出された。まるで貴族のパーティーだ。巨大なシャンデリアが照らす空間で、タキシードやドレスに身を包んだ人間が食事と会話を楽しんでいる。
そこを天国とするなら、会場奥の舞台が地獄か。
板間さんが日本語で行うアナウンスが、中国語と英語に通訳されてそれぞれ繰り返される。
その最中、首輪を付けた丸裸の女性が数人ごとに登壇しては競り落とされていく。
競りの前には品定めの時間も設けられていた。
手で思い切り膣を拡げられ、尻を開かれて奥までを覗き込まれる。何人もの奴隷が羞恥に耐えかねて泣き出したが、会場側の笑みは絶えない。
奴隷の人種は様々だった。最初に黒人の競りがされ、次にタイのような東南アジア系、中華系アジア人、白人。
板間さんに昔聞いた値段の順だ。世界中どこのマーケットでも、とにかく白人の人気は高い。しかし、需要でそれを上回る人種がたった一つだけ存在する。
そう、日本人だ。
開始から1時間半ほど経ったころ、最後まで競りが白熱した白人の女の子が880万円で競り落とされた。
そしてついに、日本人の番が来る。
首輪を付けた4人が項垂れながら登壇し、拍手喝采の中で顔を上げた。
入宮は…………いない。
どの子も割と平均的な顔立ちだ。
何となく、主催側の意図が読めた。特別に期待のかかる日本人の競りで、あえて出し惜しんでいるんだろう。『目玉商品』として。
俺のその予想は当たった。
日本人4人が競り落とされた後、さらに新たな4人が姿を表す。どれもクラスで数番目に可愛いというレベルの子だが、やはり入宮には及ばない。
それでも日本人人気が高いというのは本当らしく、次々と値が吊り上がっていく。

2組目の最後の一人が940万円で競り落とされ、ようやく宴もお開きという空気が流れた頃。
「それでは、本日最後の一人です!」
板間さんが張り上げた声に、場が騒然となる。全員の目が舞台を注視する。
そして、舞台袖の暗がりから細い人影が現れた瞬間。観客席からどよめきが起こった。一様に目を剥き、大口を開け、それぞれの国の言葉で驚愕を口にする。
それもそのはず。こうして画面越しに見るだけでも物が違う。
スポーティに引き締まったウェストラインに、垂れる事のない理想的なお椀型の乳房。
肩を覆うほどに伸びた黒髪には、頭頂部付近に光の輪が見える。腋毛や陰毛が残らず剃り落とされた肌は、極上のルージュを思わせ、見ているだけでも弾力が感じ取れるようだ。
そして何より、キッと前を見据える眼力が他の奴隷とは一線を画していた。
「この奴隷には、すでにアナルだけで感じるようになるまで調教が施されております。しかし、膣には手をつけておりません。
 彼女の純潔を奪う権利は、お買い上げのお客様にあるのです!!」
熱の入ったアナウンスを受け、入宮が一歩前に進み出る。
そして前を睨み据えたまま、指でゆっくりと膣を開いた。ピンクの粘膜が客側に晒される。感嘆の溜め息が漏れる。
さらに入宮は後ろを向き、前屈みになりながら尻を突き出した。膣の時とはまた違う驚きの声が上がる。
入宮の肛門には、かなりの直径の肛門栓が嵌まり込んでいた。調教による拡張がなければ、到底飲み込めないサイズだ。
「んん、んっ…………!!」
入宮の力む声で、少しずつ栓が頭を覗かせていく。そうして半ば以上まで抜けると、後は自重でごとりと舞台上に落ちた。
ぽっかりと口を開く肛門。そこもまた、膣に劣らない綺麗なピンクだ。
「す、すごいっ!!」
「抜かった……まさかこのレベルが、年末前に出てくるとは!!」
「た、たまらんっ!! 今年一番の上玉だぞ、これは!!」
客席からどよめきと拍手が沸き起こる。その渦中で、尻肉に手を添える入宮の手は小さく震えていた。

誰もが認める目玉商品。当然、競りは最初から激化する。
「800万!!」
最初の一声からしてすでに、白人の競りの終盤でようやく出るような大台だ。
「820万!」
「は、880万!!」
「くそっ、920万だ!!!」
次々と値が吊り上がっていく。それだけ皆が必死なんだろう。ただそうは言っても散財後だ。金が有り余っている訳ではない。
よほどの資産家で、かつ、予め目玉商品の存在を知らされていた人間以外は。

「 2000万。 」

競りが900万円台後半で頭打ちになりつつあった頃、その一声は発された。
俺は直感的に理解した。その声の主こそ、板間さんの言っていた『最有力の買い手』だと。
俺の花束に込めた想いが入宮に届かなかったのは、こいつの気まぐれのせいなのだと。
カメラの視点が回り、男の顔を映し出す。
やはりアジア系だ。50前後だろうか。かすかに白髪の混じった髪が後ろへ流す形で固められ、鼻は丸く、唇は厚ぼったい。
芸能人気取りなのか、似合わない茶色のサングラスを掛けている。
何よりも特徴的なのがその肥満体で、椅子3つを占拠する膨れ上がった体は、不摂生をよく物語っていた。
骨付きのチキンを貪りながらバドワイザーを煽る姿にしても、到底有能そうには見えない。
奴は紅いドレスを着た美女を4人侍らせていた。母国から連れてきた愛人達だろう。入宮もそのハーレム要員に入れられるのかと思うと、腸が煮えくり返る。
同じ買われるならせめて、入宮だけに愛を注ぎ、妻として大事にしてくれる相手がいい。誰かそういう“マシ”な人間が手を挙げて、奴の提示額を超えてくれ。俺はそう願った。
しかし、誰も動かない。2000万円の壁が厚すぎる。
会場にいる人間は億越えの資産を持つ人間揃いだろうが、最後の最後に入宮クラスの人間が出てくるとは思わず、直前までで持参金をほぼ吐き出したのだろう。
特にさっきの日本人2連続が絶妙だ。入宮という存在を知らなければ、あそこが競りのクライマックスだと思う。そのぐらいのレベルではあった。
予め全容を知る人間だけが出金をセーブし、最後の舞台に相応の金を持ち越せる。そういう一種の出来レースだ。
「おや、静かになったな? 皆が様子見をしているようだったから、少し燃料を投下しただけなのだが」
肥満体の男はわざとらしい大声で言い、チキンの欠片を飛ばしながら体を揺らして笑った。
その汚らしい影響を直に浴びてもなお、傍に侍る4人は表情を変えない。感情が欠落しているかのように。
「2000万!他にはございませんか!?」
板間さんが呼びかけても、例の男以外は苦い顔を見せるばかり。欲しいのは山々だが手持ちがない、そう表情が訴えている。
「それでは2000万で落札です。おめでとうございます、劉(ラウ)様!!」
男はその声を待っていたとばかりに手にした物を置き、椅子を軋ませながら立ち上がった。
耳障りな足音を立てて舞台下に移り、紙にペンを走らせてから、黒スーツの男達に背中を支えさせつつ壇上に上がる。
ふてぶてしい表情が、こういう機会に慣れている事を物語っていた。これまでにも数知れない人間を買い、好き放題に弄んできたに違いない。
そのゲスが、丸裸の入宮に近づいていく。
改めて見れば、直立している事が不自然に思えるほどの肉塊ぶりだ。薄着の手足はハムのように膨れ、腹部などは数リットルの水袋を垂らしているよう。
引き締まった入宮の体と並ぶと、殊更に醜悪さが際立って見える。

「どうもありがとう、皆サン。今日は三億を用意したのですが……想定外に安くこの牝が手に入り、満足デス」
やや不自然さはあるものの、紛れもない日本語で煽る劉。客席の顔が引き攣っていくのが見える。
「さて。では……勝利の接吻を」
劉は入宮の顎に指先を触れさせ、笑みを深めながら唇を奪う。
チキンにかぶりつくような、汁気の多い下劣なディープキス。会場内に囁きと溜め息が入り混じる。
「………………っ」
一方で入宮は静かなものだった。されるがままになりながら、横に視線を向けている。乳房を揉みしだかれても、秘裂に指を入れられても。
最初はただ劉から視線を逸らしているのかと思ったが、どうも違うらしい。
入宮の目線は、舞台下……劉の秘書が、オークションの主催側にジュラルミンケースを手渡している所に注がれている。
やがてケースの中身確認がされ、主催者側が取引成立のサインを出した、その瞬間。
それまで大人しくしていた入宮が、いきなり劉の胸を突き飛ばした。とはいえ劉が動くことはなく、入宮自身が離れる形となる。

直後。

パンッ、という乾いた音が響き渡った。

腕を振りぬく格好の入宮と、目を見開いたまま顔を横向ける劉。その二人を中心に場が凍りつく。
事態を呑み込むには数度の瞬きが必要だった。俺も、現場の人間達も。
床を三度叩くサングラスの音で、ようやく世界に時間が戻る。
「お、おいッ! 何しやがるッッ!!」
スーツ姿の男達が入宮に飛びかかり、瞬く間に押さえ込んだ。しかし、もう遅い。劉が頬を張られる瞬間を、誰もが目にしてしまっている。
入宮を競り落とせなかった連中は、その鬱憤を晴らすかのごとく笑いを噛み殺していた。
ウチの組が贔屓にしている以上、あの劉という中国人は絶大な財力を持っているに違いない。そいつが見事に恥を掻かされたのだ。この公衆の面前で。
「気分はどう? こんなの初めてでしょ、買った犬に噛みつかれるなんて。あんたには、喰われる側が似合ってるよ!!」
男数人に押さえつけられながら、それでも入宮は劉を煽ってみせる。
俺にはそれが、強いメッセージのように思えた。

 ――あたしの心は折れてない。まだ、頑張れる。

別れの挨拶を交わせなかった代わりに、この騒ぎを通して俺にそう伝えようとしてるんじゃないか。そんな風に思えてしまう。
「……これはこれは。とんだじゃじゃ馬だ」
劉は頬を擦りながら、静かに瞳を開く。瞼が離れていくにつれ、次第に会場の含み笑いが消えていく。
異常な目。
針葉樹の葉のように切れ上がった瞼の合間から、ギラギラとした光が放たれている。
瀬川や伊田も生理的嫌悪感を与える人間だったが、それ以上に、もっと根本的な部分での欠陥が感じられた。
良い印象しかない入宮の澄んだ虹彩とは、見事に真逆といえる。
「お恥ずかしい所お見せした。品のなさに少々面食らいましたが……奴隷に噛み付かれて、このまま済ませる訳にいきません。
 私、もう一度このイヌの躾します。同志達頼んで、徹底的に、します。
 ここにいる皆さんにも映像を送りましょう。“これ”が涙ながらに無理と叫び、赦してと乞い、崩壊していく様を、どうか見て下さい」
劉は長い靴底で入宮の顔を潰しながら、唸るように告げた。
片言で紡がれる言葉には、これ以上ないほどの悪意が満ちている。そしてその悪意は、以後数日ごとに送られてくる動画にもはっきりと表れていた。



2日後に送られてきた動画では、入宮がSM倶楽部のような場所で延々と水責めを受けていた。
桶に張られた水へ、男二人から頭を押さえ込まれて顔を漬けさせられる。
責め役は明らかに堅気ではない。腕や肩に刺青を入れている所は日本のヤクザと同じだが、どこか優美な和彫りと比べてやけに毒々しい。
さらには筋肉のつき方も異常だ。明らかに魅せではなく、実戦を意識した鍛え込まれ方。チャイニーズマフィアと呼ばれる連中だろう。
「がはっ! ぶはっ、はあっ……はあっ!!」
髪を引っ張られてようやく顔を上げた入宮からは、普段の美貌が失われていた。歪んだ顔で、まさしく必死に酸素を求める。
だが、それも充分には許されない。入宮がまだ呼吸を整えている最中にも関わらず、再び髪を掴む腕に力が入り、強引に桶へ顔を沈めていく。
ガボボボゴッ、と泡の立つ音がし、入宮の手が必死に桶の端を掴んで抵抗を示す。
だがマフィアの男二人に力で敵う筈もない。細腕はぶるぶると痙攣するだけで、結局は何の抗力にもなっていない。
それが何度も繰り返されるのだ。
痛々しい責め。それでも、入宮の心を折るには至らない。
「気分はどうだ?」
映像開始から数十分が経った頃。劉が姿を表した。
ちょうど水面から顔を上げさせられた入宮は、にやけ顔の劉に気付くと、目の形を変える。そして頬を膨らませて、ぶっと水を吐きかけた。
勢いよく放たれた水は、覗き込む劉の頬で弾ける。
「はぁ、はぁっ……この通り、すっごく不味い水。お金持ちなんだから、ご馳走するなら美味しいのにしてよ」
肩で息をしながら、それでも毒づいてみせる入宮。
「ぬうっ……!!」
劉は苛立たしげに頬を拭い、入宮を押さえ込む男に中国語で何かを叫んだ。
もっときつくしろ。多分、そういう内容だ。

事実そこから、水責めはさらに容赦がなくなった。
浴槽になみなみと張った水の中へ、上半身を折るようにして頭のほぼ全体を沈み込ませる。
黒髪が海草のように水に揺らめき、ピンク色の脚がバタバタと暴れる様は、さっき以上に見た目のインパクトが強い。
そして、この時は水責めだけでは終わらない。
7回目に入宮の顔が水に漬けられた直後、男の一人が突き出される形の尻に腰を近づけた。
まさか。
俺の嫌な予感は当たり、男は入宮の腰を皺が寄るほどに強く掴むと、一気に腰を突き出す。
がぼぼっ、と泡の立つ音がし、ピンク色の脚に筋が浮く。
マフィアらしき男の肛門姦は凄まじかった。まさしく『アナルファック』というべき激しさだ。
まず瀬川達のそれとは音が違う。パァンッ、パァンッ、パァンッ、という、パドルで尻を叩くような音が太腿から鳴っている。
入宮の弾力のある腿肉と、男の張り詰めた大腿筋がぶつかり合う音だ。
音だけでなく、見た目も凄い。なにしろ、無駄な脂肪など一切ないはずの入宮の太腿が波打つんだから。
よほどの強さで固い物がぶつからなければ、そんな風にはならない。そしてその馬力で直腸へ逸物を叩き込まれれば、一体どうなってしまうのか。
「ぶはっ! く、くぅ゛しぃっ……やめっ、とめてへぇっっ!!」
あれだけアナルセックスに慣らされていたはずの入宮が、水責めの苦しさの中で掠れ声を漏らす。
それでも、男達は責めを緩めない。一人が散々に突きまくって射精すれば、僅かの間もなく次の一人が挿入する。そして容赦なく深く抉り抜く。
この責めはどれほど続いただろう。
男3人がようやく射精を終えた頃には、入宮は浴槽に寄りかかったままぐったりと項垂れていた。
ぱっくりと口を開いた肛門からは、凄まじい量の白濁と、一筋の茶色い液があふれて腿を伝っていた。

そこで場面が変わり、喉奥に指を捻じ込まれてむりやりに水を吐かされる場面を挟んで、次の被虐シーンが始まる。
後ろ手に拘束され、チューブで無理矢理鼻に水を入れられる責めだ。
「がっ、ふげああ゛っ!!あ゛っ、あぶっげああ゛っ!! あぶぶあ、あがぁ゛っ、うぉえ゛っっ!!!!」
涙と唾液を散らしながら、何度も噎せ返り、ついにはえづき上げる入宮。
その苦しみようからして、ただの水という訳ではなさそうだ。
塩水かとも思ったが、ある時映像の端に見えた赤いビンで、察しがついてしまう。
タバスコだ。タバスコを水に溶かし、それをチューブで送り込んでいる。
信じたくはなかったが、入宮の鼻腔から垂れる液体の量が俺の推理を裏付けているように思えてならない。
『おおおぉえぶっ、けはっ、かふゅっ!!げはっ、がばぶっ……ふあぅうああ゛っっ!!!』
ひどい咳き込みを繰り返しながら涙する入宮。それを大写しにしながら、映像は途切れる。俺の心にさえ、ひりつく痛みを残しながら。


また別の動画で彼女は、広場らしき場所で晒し者にされていた。
石畳の中にギロチン台のようなものが立てられ、そこに顔を両手首を横一列になるよう固定されている。
足も大股を開いた状態で地面の杭に鎖で繋がれている。
映像内の入宮はその状態のまま、ボロ切れを纏っただけの浮浪者らしい人間に延々と犯されていた。
口には開口具を嵌め込まれているため、フェラチオを拒む術はない。
風が強いせいか映像には殆ど音が拾われていないが、おえっ、ごえっ、というえづき声だけがかろうじて聞き取れる。
逆にいえばそのえづきは、男達の騒ぎ立てる声以上に大きいということだ。
浮浪者連中は入れ替わり立ち替わり入宮に群がるため、えづき声も殆ど途切れることがない。
膣を使われてこそいないようだが、肛門への挿入も止む事がない。
よく見れば、拘束された入宮の傍には立て札が設置され、中国語で殴り書きがされていた。
『干你娘(この女を犯せ)』
『贱婢(クソアマ)』
『肛交(アナルセックス)』
『鳴鸡(売春婦)』
・・・
見慣れない文字のせいで大半は読み取れないが、かろうじて見える部分を検索すると、下劣な言葉ばかりがヒットする。
そのような低い扱いに安心したのか、男達は嬉々として前後から腰を振りたくった。
挙句には映像開始から1時間半の辺りで、浮浪者の一人が不自然に草むらから覗くナイロンの袋を目に留めた。
茂みから引きずり出して逆向ければ、中からは様々な淫具が転がり出す。
明らかに“わざと”置かれたものだろう。
浮浪者共は一人また一人とその道具を拾い上げ、満面の笑みで入宮に見せ付ける。
そして入宮が目を見開きながら頭を振る様を愉しんだ後に、その道具を使い始める。
動物の胃袋のようなものに入った液体を肛門へ流し込み、びちびちと石畳に弾けるような排泄をさせ。
拡張し。挿入し。
最初こそプレイと呼べる範疇だったが、日が暮れる頃には完全に悪趣味な遊びと化し、数本の責め具を無理矢理に肛門へねじ込む事さえ行われた。
映像が乱れていてはっきりとは見えないが、直径2,3cmのアナル用ディルドーが6本は挿入されているように見える。
「むごおおぉおーーーーーっ!!!」
そんな無茶をやられれば、当然入宮の頭の方からは呻きが漏れる。
だが、小汚い男連中はその声すら愉しみながら、一人ずつディルドーの尻を握って互い違いに挿入と引き抜きを繰り返しはじめた。
その輪にすら入れない人間は、当然入宮の『口を使う』。
入宮にしてみれば堪ったものではなかっただろう。夜が深まって刻一刻と不鮮明になっていく映像内では、彼女の心情を知る手がかりは少ない。
それでも、彼女の手足が見せるほんの小さな動きが、もれなく彼女の慟哭を代弁しているような気がしてならなかった。


そうした地獄が、20日あまり続いた頃。
ついに大晦日――約束の破瓜の日がやってくる。

俺が“その瞬間”を目にしたのは、悲劇から二日後。世間の空気がすっかり緩みきった、三が日中日の事だった。



映像にまず映し出されたのは、ホテルのロビーを思わせるほど広々とした一室だ。
天井からは凝った装飾の六角形の照明が下がり、朱色の柱にも金の装飾が見える。壁を覆うような屏風の一面には、雄雄しい龍が描かれてもいる。
そして、それらを紅白の新年飾りが華やかに彩っていた。『新年快樂(あけましておめでとう)』……その文字からして、年明け前後を映した映像である事は間違いない。
カメラはそうした内装を舐める様に撮ったところで、ゆっくりと180度振り返る。
その先には間仕切りされた寝室。キングサイズのベッドの上に、何人かの女の姿があった。
真ん中にいるのは、肌色の鮮やかさですぐに入宮だと判る。そしてその入宮を囲むようにして、4人の女が膝立ちになっていた。オークション会場でも目にした、劉の愛人達だ。
愛人達は、入宮に濃厚なキスを強いながら、マッサージの要領で性感を刺激し続ける。
妙に艶かしいその様を、『貴州茅台酒』と銘打たれた瓶を手にした劉がにやけ面で眺めていた。
奴の横にあるテーブルには、本来なら宴会場で並んでいるべき料理の山が続いており、相も変わらず暴食に耽っているのだと見て取れる。

ベッド上の責めに激しさはない。
雪のように白くほっそりとした指が、入宮の桜色の肌を這い回り、膣と肛門に差し込まれる。
ただそれだけ。にもかかわらず、入宮の呼吸は乱れきっていた。顔も歪み、「やめて」、「いや」、そういう言葉が何度も漏れる。
女達はその意味が理解できないのか、あるいは端から聞く気もないのか、冷たい表情を微塵も崩さずに責め続けていた。
どうやら膣の性感を徹底的に目覚めさせるつもりらしい。
入念なマッサージの果てに入宮が脱力したような状態になると、責めも変わった。
入宮の両脚をピンと伸ばさせた状態で、一人が膣の中に指を挿し入れる。中指と人差し指の第二関節辺りまでを沈め、奥から手前にかけて掻くような動きを見せる。
その状態で別の一人がトントンと子宮の付近を叩けば、入宮の腰が跳ねた。
「や、やめてっ!!」
切羽詰ったような声が上がった数秒後、すらっとした入宮の脚の間から、ぷしゃっと飛沫が上がる。潮吹きだ。
「ははははっ! 良い、良いぞ!!」
見守る劉が椅子を揺らしながら、機嫌良さそうに笑った。
入宮はその声を聞くと、すぐに唇を閉じて劉に鋭い視線を送る。ただ、それもほんの2秒ほどのこと。すぐに愛人の一人が、入宮の顔を劉とは逆方向に向けさせ、濃厚な口づけを強いる。
それと同時に、下半身を責める3人も責めを再開した。

膣の恥骨側、肛門側をそれぞれ強く掻くような指責め。それと平行して外から行われる、子宮付近への刺激。
指先で叩き、押しこみ、撫で。さらには蝋を垂らしたり、鍼を打つことすら行われ始める。
それら全てが入宮を狂わせた。房中術というものだろうか。AVでも、地下での調教ですら見たこともない責めが、明らかに入宮を追い込んでいく。
内腿に刻まれる筋の深さが相当だ。以前、バスケットのユニフォームを着たままスライヴ責めを受けていた時に近いものがある。
キスを強要する一人が口を離すたび、入宮は激しく喘ぎながら、いく、いく、と口の中で呟いていた。
「ふぅああ……あああぁっ!!」
急に叫びが上がったために下半身を見れば、案の定、膣の内外からの指責めが再開されている。
たまらない、という感じの叫びは、また濃厚な口づけで殺され、ふむぅーっ、むぉうううーっ、という呻きに変わる。口づけ女は、そんな入宮を冷静に眺めながら、乳房責めすら加え始めた。
入宮の腕が縋るように頭上の枕を抱え込み、潰れんばかりに抱きしめる。上腕と腋に、内腿とそっくりと溝が刻まれる。
30回ばかり悲痛な呻きが上がったところで、唾液の糸を引きながら唇が離された。
胸がずきりと痛む。カメラ中央上部に小さく映る入宮の目は、否定のしようもないほど、明らかに白目を剥いていた。
その様を前に、また劉が椅子を揺らして嗤う。
そこからはやはり同じ展開だ。
入宮は気力を振り絞って劉を睨むも、すぐにその顔を横向けさせられ、濃厚な口づけの中で白目を剥く。
女達は明らかに責め慣れていた。一秒も手を休めず、入宮に何かを囁きかけながら無表情で追い込み続ける。
獲物が何度達そうが、何度潮を噴こうが、Gスポットと子宮への刺激を緩めない。入宮は狂ったように身を捩るが、悪意ある同性の手中から逃れられない。
『狂っちゃう!』
『おかしくなる!』
甘たるい中国語が囁かれる中で、唯一聴こえる日本語がそれだ。
しかしその言葉すら次第に発音が怪しくなり、中国語の中に溶けるように聴き取りづらくなってしまう。

そうして入宮の脳も下腹部もどろどろになった所で、ついに劉が暴食を止めた。
取り巻き達に中国語で何か言葉をかけながら、ゆっくりと立ち上がる。
下着が脱ぎ捨てられてついに露わになった剛直は、異形と呼ぶべき代物だ。
分厚い腹肉に埋もれない太さや長さも相当だが、何よりも真珠状のイボが5つばかり幹から飛び出しているのがおぞましい。
亀頭のサイズや幹の血管の浮き具合も不自然だ。明らかに薬物注射か何かで、人為的に増強している。
「ベンツ買えるだけの金注いだ自慢の逸品よ。この味覚えたら最後、誰も離れられない」
入宮の反応を愉しみながら、劉がベッドに膝を乗せる。ベッド全体が傾き、奴の膝を中心にシーツが放射状の皺を作る。
「へぇ、そんなにお金掛けたんだ……普通に抱いて悦ばせる自信がないわけ?」
怒張から劉の顔に視線を移し、毅然とした態度で睨み上げる入宮。反抗心は健在だ。
「どうかな。試すといい、オマエ自身の体で」
劉は残忍な笑みを浮かべると、入宮の唇を奪う。
瀬川達がやる時も苛立たしかったが、劉の場合はそれ以上に胸が腐りそうだ。
奴は入宮の所有者だから。入宮はもう、奴のものだから。
「………………。」
口づけを受けながら、入宮は憮然とした表情で劉の横顔を睨みつけていた。そういう表情をしてくれているのが、まだしもの救いだ。
今にも噛み付きそうな雰囲気だが、さすがにそれはしない。オークションで頬を張ったのは、あくまで劉に恥を掻かせる事が目的だったんだろう。いざ海を越えれば、されるがままになるしかない。
もう、逃げ場はないんだから。
「くふふっ。甜美、甜美…………」
劉はそう呟きながら一旦口を離し、舌を出して入宮の身体に這わせていく。顎から首筋、乳房、腹部、太腿……。
入宮が顔を引き攣らせる中で、ついに劉は秘部に舌を触れさせた。
そこから始まるのは、執念すら感じる入念な舐りだ。秘裂を、そして陰核を隅々まで舌で舐めまわしていく。
女達から長時間に渡って快感を刻み込まれていた入宮は、それだけで簡単に達してしまうらしい。
「んっ、くぅっ!!」
悔しそうな顔で太腿を震わせる入宮。その様子をしばらく愉しんでから、劉はベッドに腰を下ろして入宮の体を持ち上げる。背面座位だ。
「今年も、あと少しだ」
劉はそう言い、近くの女に何かを囁いた。女は部屋のテレビを点ける。
振り向いたカメラが映すテレビ画面では、春節の時ほどの賑わいはないものの、若い世代を中心に新年のカウントダウンが行われているようだった。
画面左下に表示された12:14という数字が、刻一刻と減っていく。
それは今年の残り時間であると同時に、入宮が純潔を保っていられる時間でもある。
再びカメラがベッドを映すと、テレビの青白い光を受けながら、入宮の表情が沈痛なものに変わっていた。
逆に劉はいよいよ頬の肉を上げ、怒張を入宮の秘裂に擦り付ける。
本当に恐ろしいサイズの巨根だ。入宮の秘裂を縦断してなお、丸ごと亀頭部分が余るほどに。
亀頭に至っては、テニスボールよりはやや小さいかという程度だ。
「っ、あ、うぁ」
怒張の先で陰唇をなぞられ、陰核を潰される。それが気持ちいいのか、入宮からは小さく声が漏れた。
劉はそうしてしばらく入宮を昂ぶらせ、秘裂の中心に亀頭を宛がったまま動きを止める。そして、ゆっくりと入宮の体を下げ始めた。
とうとう挿入かとも思ったが、違うらしい。
巨大な亀頭の半ばまでを小陰唇に潜り込ませ、引き抜く。そうしてさらに焦らす事が目的だ。
「どうだ。大きいだろう」
劉が囁きかけると、入宮は顔を強張らせる。
劉の亀頭のサイズは相当だ。膣に本格的な異物挿入を受けたことのない入宮にとっては、恐怖の対象でしかないだろう。
だからこそか。劉は浅く亀頭を潜り込ませ、引き抜く行為を繰り返す。
「あと2分、いよいよ大人になる時来たな?」
劉はそう言いながら、また浅く挿入する。
「ひぃ…………っ!!」
入宮は呻きながら、テレビの方へ緊張した面持ちを向けていた。破瓜へのカウントダウン。それは、どれほどの恐怖だろう。
もはや彼女は強がれない。絶対的な現実を前に、1人の女の子として引き攣った表情を浮かべるしかない。

そして、運命の瞬間がやってくる。
取り巻きの女達が、クラッカーを手にベッド上を振り仰ぐ。劉の手が入宮の細い腰を掴む。
亀頭が陰唇に宛がわれ、ゆっくりと挿入されていく。亀頭の半ばから、カリ首…………そのまま、一気に深く。
「いっ……たぁあああい゛ぃ゛ぃ゛っ!!!!」
入宮のその絶叫と共に、Happy New Yearの大歓声が映像内に流れ始める。
取り巻きの女達も、歪んだ笑みと共に祝いの言葉らしきものを叫びながらクラッカーを鳴らす。桜を模した紙片を撒いている女もいた。
周りが満面の笑みで新年を祝う中、入宮だけが歯を食い縛った苦悶の表情で泣き叫んでいる様は異様でしかない。
「痛いいたいっ!!」
劉が奥深く剛直を抉り込むと、入宮から余裕のない早口が発される。本気で鋭い痛みが来た時の特徴だ。
俺だったら、いや……普通の神経をしていれば、そこで腰を止めて初体験の相手を案じるだろう。
だが、劉はその逆だ。入宮が悲鳴を上げるたび、より力強く奥までを突き上げる。
「好……很好!! なんだこの膣は!? 千切れそなほど締まる。最高だ、最高だっ!!」
熱を帯びた様子でそういった事を叫びながら。
一方の入宮はつらそうな表情を浮かべながら、されるがままになっていた。心身へのショックが大きく、悪態をつく余裕すらないようだ。
ただ、その苦しげな顔の中に、時々違う色が混じる。

快楽。

信じられない。身も心も醜悪な中年男に犯されて、あの入宮が感じるはずがない。
そうは思うが、俯きがちに『あ』の字に口を開く様は、やはり感じているようにしか見えない。
さらに、よく目を凝らせば、劉もただ腰を打ちつけているだけではないと判る。
カリ首が覗くほどの大きなストロークで突き上げもするが、むしろそれよりも、ある程度深く挿入した状態で小刻みに最奥を叩いている事のほうが多い。
劉自身の肉のたるみがひどく、僅かな動きでも太腿が波打つせいで気付きづらいが。

「真珠が、Gスポットにゴリゴリ当たて堪らんだろ?」
汗まみれの入宮に囁きかけながら、上下に腰を揺らす劉。
同時に胸を揉みしだいたり、秘裂全体を手の平で覆うような仕草で刺激してもいた。
「はぁあー……ぁぁ、あっ、あ…………!!!」
入宮は俯き、熱い吐息を吐き出す。極太の怒張を呑み込む陰唇も、蜜でてかりながらひくつき続けている。
密着。その言葉が脳裏を過ぎった。まるでその俺の考えを読んだかのように、劉が口を開く。
「大分拡がてきたな。自分の膣内が、俺専用に作り変えられてるの解ルか?
 そこにいる女も、最初は皆泣き叫んだ。でもこうやて俺の形覚えこませれば、何日かで自分から欲しがりだした。
 オマエ、あいつらより感度がいい。ダカラ…………溺れ易イ!」
劉はそう言いながら、入宮の脚を大きく開かせる。そしてそのまま見せ付けるようにして、一際深く突き込んだ。
「んんんっ…………んはぁっっ!!!」
入宮は口を大きく開き、頭痛に悩むような顔で首を振る。
「イイ声だ、また達したな。日本人すぐ逝く。我慢できない」
そう劉に煽られると、入宮は必死に歯を噛み合わせて耐えようとする。だがそんな入宮の顎を、劉の大きな手が押し上げた。
背中をぐうっと反らせつつ、恥骨側を擦るように怒張を突き入れる。
「っつふぅっ!?」
顎を手の平に包まれた入宮は、声にならない声と共に目を見開いた。
そのまま何秒か恥骨側をついた所で、劉は入宮の顎を解放した。反動で入宮の身体は前傾となる。
すると劉は、その姿勢を利用し、今度は背骨側を抉るような動きを見せた。
「あっ、うあ!!」
入宮からはっきりとした声が漏れ、瞳が閉じられる。
何度も突き上げられるうち、瞼はうっすらと開いていくが、その泣き出す寸前のような瞳に強さはない。
「また逝たな。臍側と尻側、2つのGスポットを刺激したら、女は逝く。そして今からは、ポルチオを責める。徹底的に、俺の味憶え込ませる!!」
劉は残酷な宣言と共に、入宮の太腿を鷲掴みにした。
そうして逃げ場を潰した上で、震える入宮の膣を真上に深く突き上げる。
「んくぅうう゛っっ!!!」
一瞬だがはっきりと、入宮の細い身体が宙に浮いた。その衝撃の強さは明らかで、喉元から金属を掻くような音が漏れるのも納得できてしまう。
そこから劉は、ベッドのスプリングを凄まじく軋ませながら、入宮のポルチオを突きはじめた。
「やっ……やめてっ!!やめてえぇっ!!!」
入宮は叫びながら首を振る。そうやって彼女が乱れているうちは、まだマシだった。
本当に俺の心が締め付けられるのは、動きが止まっている時。目が虚ろになり、半開きの口の端から唾液が零れ、濁ったような嬌声が上がっている間だ。
脳髄にまで快楽の電流が走り、馬鹿になっている――そういう風に、見える。
入宮が僅かでも自失すれば、状況は転がり落ちるように悪化した。
劉はしっかりと入宮の脚を掴み、ずちゅっずちゅっという音がはっきり聴こえるほどの力強い抽迭を繰り返す。
自失している入宮は、脚を踏ん張って衝撃を軽減することができない。ぐったりとした様子で怒張の上に崩れ落ち、膣奥で余すところなく突き上げを受けてしまう。
もはや深い絶頂だけが、入宮の意識を引き戻すキーだ。
「いっぐぅうううっっ…………!!」
前傾気味になり、腹筋を痛めそうな低い声で絶頂を宣言する入宮。
そこで一旦意識を取り戻すが、本格的な絶頂を貪る体勢に入っている肉体はどうしようもない。
結局彼女ははっきりとした意識のまま、下半身が病的に痙攣し、全身に雷が突き抜けるような状態を味わう事になる。
「んひぃいっイグっ!! ふぅっ、ふーっ、駄目っ、こんな…………んはっ、はっ、はっはっ……いく、いくっ……いっでるんぅうう゛…………!!!」
肺すら痙攣しているらしく、小刻みに荒い息を吐きながら絶頂を口にする。
逃れようとしているのか、入宮の手足は絶頂の来ない僅かな時間に、劉の太腿を支えにして力む兆候を見せる。
しかしすぐに絶頂に襲われ、電流を受けたようにピンと伸びきってから脱力する。
細い身体がわずかに浮いては沈み込む様は、自分からストロークをねだるかのようだ。

奥を突かれる時のみならず、怒張が抜き出されていく瞬間にすら、入宮の美脚が痙攣を示す。
怒張がほぼ丸見えになるような状態から一気に奥を貫かれれば、その衝撃が身体を突き抜けたかのように肩が跳ねる。
さらにぐりぐりと奥を捏ね回されれば、たまらず顔が天を仰ぎ、肩が震え、ぴんと伸びた両手の先が空を掻く。
「んんんんん゛ぅーーーーーっっ!!!!」
こういう時に入宮が発する嬌声は、もはや声にすらなっていない。絞った喉からそれでもあふれ出た、快楽の叫び……そういう風だ。
そこを、さらに劉が追いこんでいく。
抽迭の音が早いペースで繰り返される。太腿同士がぶつかる音もしているが、劉の肉が多すぎるせいか響きは鈍い。むしろ汗が肉同士の間で練られる、つぱっ、つぱっ、という音の方が印象的だ。
汗も、愛液も。かなりの量の体液が、入宮から搾り出されていた。
「くるっ、くるっ…………ま、またっ、すごっ…………んふっ、ふうっ…………く、くっ…………!!!」
「おお、すごい締め付けだっ…………こっちも、そろそろ逝くぞ!!」
入宮が呻くようにそう呟く最中、劉が腰の動きを早めた。
「だ、だめっ、それは駄目……っ!! なかになんて、出さ……な、で…………っ!!」
激しい抽迭に呼吸を乱されながら、入宮は哀願する。だが、劉がそれを聞き届ける筈もない。むしろその哀願を待ち構えていたように、最奥まで貫いたままで腰を震わせはじめた。
「い、いやああぁあっ!!」
入宮は嫌悪感に顔を歪ませる。その入宮の表情を愉しみつつ、劉はたっぷりと精を注ぎ込んだ。
そうして射精を終えた怒張が抜け出る、まさにその瞬間。今度は入宮の秘裂から、少量の潮が飛び散る。
その潮が切れたと思ったところで、引き続き本格的な潮吹きが始まった。
瀬川とのアナルセックスでも目にしたような、放物線を描く盛大な潮吹き。いや、失禁かもしれない。
「おーおー。そろそろ出すとは思たが、予想以上ね。結局また舌使って掃除するのに、バカな娘よ」
劉は入宮の太腿を引きつけながら、可笑しそうに嘲笑った。
「ふっ……ふざけないで! こんなに、しといて…………が、我慢なんて、できるわけ…………!!」
入宮は肩で息をしながら、劉に怨嗟の言葉を投げかける。

二度目の潮吹きがようやく収まったところで、入宮の脚の間を覗き込んでいた劉が薄ら笑みを浮かべた。そしてカメラに向けて手招きする。
カメラが近づく中で、劉は入宮の秘裂に手を掻けて押し開いた。
秘裂の中から大量の精液があふれ出し、潮で濡れきっているシーツへと零れていく。
しかし、シーツのある部分……ちょうど入宮が座る場所の真下に、白濁でも愛液のシミでもない色が見えた。
赤。
紛れもなく処女であったという証が、そこに数滴染み込んでいる。
入宮自身が暗い瞳でそれを見下ろしているのと同様、俺の心も沈みきっていた。
入宮の純潔が奪われた。それが白いシーツに咲く紅い華は、その象徴として鮮やかすぎた。
「よかたな、これでオマエも大人の仲間入りだ。ここからもっともっと、大人の愉しみを教えてやる」
劉はそう言って口の端を吊り上げた。

初夜の映像はここで終わる。
画面がようやく暗転したことに、俺は心底安堵した。これ以上は見ていられない。
そう思いながら動画ページを閉じようとした瞬間、俺は見てしまう。今再生していた動画の上に、もう一つ動画があるのを。
更新時間がさらに新しいもの……アップされたばかりの映像だ。
嫌な予感がする。だが、見るしかない。じっとりと手に汗を掻きながら、恐る恐る再生ボタンをクリックする。


また、地獄が始まった。





映像の中では、劉が入宮にフェラチオをさせていた。
這う格好の入宮に対し、劉が中腰の姿勢で腰を突き出すやり方だ。
遠くで祭のような音がしているのは、テレビの中の音声か。
「中々いいぞ」
怒張を掴みつつ、腰を前後させながら劉が笑う。
奴の怒張のサイズが異常なせいで、入宮は顎が外れそうなほど口を開かなければならない。
当然、目は固く閉じられ、口の端からは泡立つ唾液が零れている。
やがて劉は腰を引き、口内から怒張を引きずり出した。本当に凄まじいサイズだ。
蛇のようにずるずると引き出された逸物は、妙な粘液に塗れつつ、天を突く勢いで勃起していた。
それをさらに扱きながら、劉は入宮の背後に回る。
「はぁっ、はぁっ…………もうちょっとぐらい、待ってよ。まだ、ヒリヒリしてる…………」
入宮は手の甲で口を拭いながら、後ろの劉に声をかけた。
しかし、劉は応じない。ベッドのスプリングを軋ませながら腰を落とすと、逸物に手を添えたまま腰の位置を調整する。
交渉の余地なし。入宮はそう悟ったのか、這う格好のまま左右の膝を横にずらして開脚する。
その尻肉に手を添えながら、劉が腰を押し進めた。
「ぅうう……ぐっ、ぅううあああ…………!!」
俯く入宮の口が開き、悲鳴が漏れた。声を殺す余裕もないほど、劉の剛直はサイズが違いすぎるのだろう。
劉と入宮、両方の身体が痙攣しながら少しずつ挿入されていく様を見ていると、ミチミチという軋轢の音が聴こえてきそうだ。
入宮の指がシーツを弱弱しく握り込むのは、骨盤が割れそうな恐怖のせいか。
だが入りさえすれば、圧迫は快楽に直結する。剛直が膣内を目一杯に拡げたまま、奥までを隙間なく貫き、抜かれる際には雁首で膣壁を掻きむしる。それが狂おしいほどに良いようだ。
入宮もそうだ。
「あぁあ、あああぁっ!! ふぁあっ、あふ……っ!! あふぁ……ああ゛――ぅ、うあ……あ゛っ!!!」
体全体が揺れるほど激しく突かれると、甘い声を殺せない。
ベッドについていた手からは力が抜け、肘を支えにかろうじて上半身を浮かせているだけの格好になる。
そうして俯く入宮の髪を、取り巻きの女の一人が掴み上げた。
カメラ中央に映し出された顔は……蕩けている。潤んだ瞳から幾筋も涙が零れ、半開きになった唇からは涎が零れ。
中華女達が詰るような口調で何かを告げると、劉が反応を示した。
結合したままで入宮の足首を掴み、強引に対面へ移行する。
「っ!!」
息を呑むような声と共に、入宮の表情が強張った。
顔を真正面から見られる状態では、もう蕩けた表情は晒せない。
それを知りつつ、劉は腰を打ちつける。ぶよぶよとした毛むくじゃらの太腿と、桜色のすらっとした太腿が触れ合う。犯罪的な絵面だ。
「ふーっ…………ふーっ……ふぃ、いーっ…………!!」
正常位で挿入を受けながらも、入宮はしばらく歯を閉じ合わせて耐えていた。
だが劉が巨体を反らして奥深くを突くと、その余裕もなくなってしまう。Mの字に開いた膝下が跳ね上がり、目と口が開ききる。
「あ゛、あ゛…………っ!!!」
「また逝たか。オマエ、本当にすぐ逝く。いいぞ、このまま何度でも逝かせてやる」
劉の言葉に、一瞬だけ鋭い目を取り戻す入宮。しかしそれでも、太腿を抱え上げられるようにして何度も強く突きこまれると、
「んああああぁ、あ……っあ!!!」
背中を完全にシーツから浮かすような勢いで、反りかえって絶頂してしまう。
ぼすっと背中が落ちた後でも、全身を駆け巡る電流はそのままらしい。細かに痙攣しながら握り込まれる足指が、生々しくそれを物語る。
本当に、雷に打たれたような……これがポルチオでの絶頂なのか。
「どうだ。絶頂の最中に、また絶頂する気分は」
入宮がまだ絶頂の余韻に浸っている中、劉はさらに腰を打ち込み続ける。タパンッ、タパンッ、という水袋を打ち付けるような音が響く。
「うあッ…………ぅうう、ふうっあぁあ゛っっ!!」
入宮は、頭上に投げ出した両手で必死にベッドシーツを掴み、大口を開けて喘ぐしかない。
ほんの少しでも余裕ができるたびに劉を睨みはするものの、その間隔は刻一刻と短くなっていく。
「さぁ、そろそろ出すぞっ!!!」
延々と突き続ける中、劉が頬を緩ませながら宣言する。蕩けていた入宮の目が瞬き、見開かれた。
「本当にやめて! あんたの精子なんか、欲しくないっ!!」
そう叫びながら劉の胸板を押し返そうとうするが、それで巨体が動くことはない。
むしろ劉はさらに前傾を深め、圧し掛かるようにして長大な怒張のほぼ全てを膣に沈み込ませる。多分、子宮を無理矢理潰すようにして。
「いや、深いっ!!やめてっ、いやぁいやーーっ!!!」
入宮は頭を激しく振りながら叫ぶ。その一方で彼女のぴんと伸びきった両脚は、これ以上ないほどに快感を訴えていた。
そして、射精が始まる。
むせび泣く入宮と、満足げな溜め息を吐く劉。悲喜の対照的な二人の結合部に、精が吐き出されていく。

怒張が引き抜かれると、開ききった陰唇からはすぐに白濁があふれ出した。
それを受けた入宮は…………ショックのあまりか茫然自失の状態だ。大股を開いて恥部をさらしたまま、全身を細かに痙攣させている。
目線はどこへ焦点を結ぶでもなく宙を彷徨い、口の端からは涎のようなものが垂れている。
「だらしのない格好だ。日本人は慎ましいというが、所詮は噂だたか」
劉が嘲り笑うと、かろうじて睨み上げこそするものの、その眼力は教室にいた頃の彼女とはまるで違っていた。





入宮と劉のセックス動画は、それからも細切れにアップされ続けた。
入宮は、日本でいう三が日をセックス漬けで過ごしたらしい。
映像の背景は常に入宮が破瓜を迎えた部屋で、ガラステーブルに並ぶ食べ残しの食事や酒瓶も同じ。
いや。正確には、料理や酒は動画を跨ぐたびに少しずつ増えていく。動画が連続して撮られているという証拠だ。

見れば見るほど、劉という男は醜悪だった。
肉体のだらしなさは伊田の数倍ひどく、下卑たケダモノぶりはあの瀬川以上かもしれない。
セックスの合間合間に、劉は入宮の身体中を嘗め回す。唇を、首筋を、鎖骨を、乳房を、腋を、臍を、内腿を……そして、前後の孔を。
入宮は可哀想なほど顔を歪めながら、されるがままになっていた。
豚が美女を嘗め回す。その地獄絵図が数十分続いた果てに、場面が切り替わって結合シーンが映し出される。

今回の映像は屈曲位。それも、両の足首を劉の肩に埋もれさせる、深々としたものだ。
肥え太った巨体が真上から圧し掛かる様からは、嫌でも深い結合がイメージできてしまう。
その体勢で劉は、遠慮なく腰を打ち込んでいた。小刻みに、しかし間違いなく深く。
入宮の首辺りに枕が敷かれ、その枕が加重で跳ね上がっているせいで、入宮自身の表情は窺い知れない。
それでも上がる声と脚の動きだけで、相当感じている事がわかってしまう。
そして、手だ。
結合シーンの開始から僅か10分足らずの間に、入宮の手は様々な表情を見せた。
シーンの最初の頃、入宮の手は必死に劉の太腿を押し返そうとしている。手の甲に刻まれた隆起から、相当な力が入っている事が見て取れる。
だがそれが、3分ほどでずり落ちていく。手の甲の隆起は消え、シーツに沈む劉の膝付近に添えられているだけという状態になる。
さらにそこから3分ほど経てば、今度は逆に劉の膝を思い切り掴むようになる。まるで、川の流れの中で縋りつくように。
ちょうどこの辺りで、劉の動きも変わった。
荒い息を吐きながら腰の振りを緩め、ぐっ、ぐっ、と膣奥を臍の方へ押し上げるような動きをはじめる。
それを受ける入宮もまた、荒い息を吐いていた。はぁーっ、はぁーっ、という吐息の中、劉がぐうっと腰を押し込むタイミングで、んぁあっ、という偽りのない喘ぎが漏れる。
頭上の足指は透明な棚に引っ掛かるような動きを見せ続ける。
そうしてしばし汗まみれで蠢きあった後、劉は緩やかに責めを再開した。
両膝を片方ずつ前に進めてより密着し、入宮と胸板を触れさせるほどの前傾で挿入を続けていく。
醜悪だ。それでも、効いている。
結合が深まってから1分と経たないうちに、劉の両肩から入宮の足首がずり落ちた。ピンク色の脚は大股開きのまま、劉の脇腹の横で蠢き始める。
その両脚の中心では、いよいよ劉が激しく腰を振り始めていた。膨れ上がった太腿にさざ波が立つような、小さく鋭い打ち込みだ。
「んああ、ぁぁ、あっ…………!?」
ここで入宮から漏れた声は、信じられない、という色を含んでいた。俺の勘違いであって欲しいが、未曾有の快楽に戸惑う喘ぎにしか聴こえなかった。
そしてどうやら、それは杞憂では済まない。
「あぁ……っ!!」
甘い喘ぎ声と共に、入宮の両足のつま先がぴぃんと一直線に天を向いた。スラッとした膝下の足がさらに細く見える。“引き締まっている”んだ。まず間違いなく、極度の快感で。
そしてその緊張は、ある瞬間にふうっとほぐれる。足裏は扁平に90度を保つようになる。しかしそこから何度も膣奥への突き込みを受けると、またつま先が伸びきった。
何度も、何度も。間隔を次第に狭めながら。
「逝き続けになてきたな。ポルチオでそうなれば、もう抜け出せない。特に、私のモノで覚えこまされたらな」
劉はベッドに沈み込むような入宮を見下ろしながら、満面の笑みでそう囁いていた。そして、容赦なく腰を打ちつける。
激しく、深く、緩く、浅く。前後左右に様々な角度をつけて。
やがて入宮の脚の動きが乏しくなり、彷徨っていた手がシーツに落ちた頃。
劉はさらに前傾を深め、ぶちゅっ、ぶちゅっ、と音をさせ始めた。無理矢理に入宮の口内を貪っているんだろう。
「んむっ、おもぉおっ!!」
直後、入宮の驚いたような声が響いた。唇を奪われた瞬間より、ややタイミングが遅い。おそらく入宮は、気絶していたんだろう。劉に深々と貫かれながら。
「オマエは、休ませない。気ぃ失ても、起こして快感で狂わせる。徹底的にここでの逝く癖、つけてやる」
口元に笑みを浮かべ、目は笑っていない状態で宣告する劉。
その悪魔じみた言葉を受ける入宮の顔は、どんなものだっただろう。それは知る由もない。
「あぁ、はあっ…………か、ってに、すれ…………ぁっ、ああ…………ふんっ、んあっ、ぁあっ、あっ…………!!!」
映像の中にはただ、強がりすら無慈悲に掻き消す甘い喘ぎが繰り返されるばかりだ。
「おおお凄い、痙攣続きだ。もうオマエ、逝てない時がないな」
劉の言葉も胸を抉る。
再生時間119:58のこの動画の中で、入宮はどれだけの恐怖を覚え、何度失神したことだろう。

“快楽の沼へ引きずり込まれる”……そういう表現のしっくりくるこの手の映像が、数時間に一度という頻度でアップされていく。
映像はここぞという山場を編集している訳ではなく、ドキュメンタリーのように淡々と情景の一部を切り取っている。それが逆に、彼女の生き地獄を生々しく伝えた。
おそらく入宮は、カメラの回っていない場面でも何度となく辱められ、悶え狂わされている事だろう。
今、この瞬間にも。
何本かの動画を見た時点で、俺はもうまともに画面を見ていられなくなった。
入宮の表情が歪むたび、細い手足が気持ち良さそうに痙攣するたび、胸が締め付けられる感じがする。
腹が減りすぎた時のように、肋骨の間がしくしくと痛む。吐きそうにすらなる。

 ――強いて言やぁ、あのガキがぶっ壊れるまでを見届けるのがお前のケジメだ。

板間さんはそう言った。俺自身、そうかもしれないとは思う。
自業自得だ。
今まで何人もの女が自我を崩壊させ、狂っていく様を傍観してきた人間には似合いの末路だろう。
調教対象が好きな女だからといって、今更心を痛ませるなんて虫のいい話というものだ。
そう心に整理をつけ、再び適当な動画を再生する。
劉に背後から覆い被さられ、入宮が犯されていた。異常なほどの水音を結合部から響かせながら。
「あぁ、くぁああ……っ!! ぁああ、ふああ、あぅふ…………!!」
抑えきれない、という風な甘い声。上下に小刻みな痙攣を見せる黒髪。
それを見るうち、胸の奥から黒い物が逆流する。
「くっ…………そおおぉぉあ゛っ!!!!」
堪らず声を上げ、握った拳を近くの壁に叩きつける。直後、鈍い痛みが走った。
手に視線を落とすと、小指の付け根辺りが破れて血にまみれている。

こんな馬鹿をやったのは生まれて初めてだ。
俺はあまり感情を爆発させる性質じゃない。仮に怒ったとしても胸中で燻らせるタイプで、物に当たる事などなかった。
そういう俺らしさが、崩れ始めている。
でも、虫のいい話でも、筋が通らなくとも、今度ばかりは黙って耐えられそうもない。
入宮が壊されていくのをこれ以上見るぐらいなら、命を捨てたほうがマシだ。本気でそう思う。





「テメェ……その要求を、俺が呑むとでも思ってんのか」

床に頭を擦りつける俺に、板間さんの声が突き刺さる。
今まで聞いた事もないほどドスの利いた声だ。普段は飄々としている人だけに、心臓が凍りつく。だが、引けない。

「お願いします!!!」

馬鹿の一つ覚えのように額を床につけ、同じ懇願を繰り返す。
組の仕事を回してほしい。俺の要求はそれだ。
入宮を地獄から救い出すには、兎にも角にも金が要る。少なくとも、劉が入宮を買い取るために使っただけの額は必要だ。
つまり、2000万。
高校生のガキに過ぎない俺が、真っ当なやり方で稼げる金額じゃない。実入りのいい裏の仕事で作るしかない。
だから、頼み込む。無理を承知でも。
「こっちは、あのガキに組の面子潰されてんだぞ? そんな女ァ助けるための金策になんぞ、手ェ貸す訳ねぇだろうがッ!!」
板間さんの怒号で、部屋の全てが揺れる。窓も、床も……そして、俺自身の体も。
それでも、引けない。今度ばかりは引かない。それこそ、死んでも。
「何だってやります。やらせてくださいッッ!!!」
声の大きさが主張の強さ。そう思っている訳じゃないが、俺は板間さんの怒声を食う勢いで叫ぶ。
「チッ」
頭上で一度、舌打ちが聴こえた。板間さんの舌打ちは、困った事態に手を焼いている時の癖だ。
普段は『はい』という返事しか返さない俺の粘りが想定外なのだろう。
「何でもやる、だァ……!? 俺ぁなあ、オイ。そういう、半端な覚悟で吐く言葉が一番嫌えなんだよッ!!」
板間さんの叫びと共に床が揺れる。巨大な観葉植物が倒れ、土が散乱する。
小便でも漏らしそうな怖さだ。それでも。
「半端な覚悟じゃありません。金になるんなら、臓器だって売ります!!」
拳を握り込みながら声を絞り出す。実際、やるつもりはある。少しでも早く纏まった金が欲しい状況だ。
リスクは重々承知だが、2つある腎臓のどちらかを売る覚悟は決めてきた。
板間さんはまた一つ舌打ちし、それから大きく息を吐き出した。
「顔を上げろ」
その言葉で、俺は頭を持ち上げた。そして、思わず息を呑む。
板間さんの、本気の凄みを受けてしまったから。
「お前は今、何でもやるといった。二言はないな?」
獰猛な獣のような瞳で、板間さんは問う。俺とは違う世界に棲む人の眼だ。
俺は、あえてその視線を真正面から受け止めた。
「ありません」
「…………上等だ。なら、その“覚悟”を試してやる」
俺の返事に、板間さんは唇だけで笑い、静かに電話を取り出した。

板間さんのベンツに揺られて、数十分。着いた先は、ネオン街の片隅にある怪しい雑居ビルだ。
制服姿でうろついていれば、まず補導を受けるだろう場所。その4階にある扉を開けた先に、その人はいた。
180ほどの筋肉質な体つきに、スキンヘッド、肩にはペガサスのタトゥー。一見すると厳つい男という風だが、顔には厚い化粧が施されている。
そしてなぜか右耳にだけ、銀色のピアスが光ってもいた。
「いらっしゃーい。って、あら…………あらあら! 話に聞いてた通り、可愛い感じのコじゃないの。本当にこんなコに、ウチの『通過儀礼』しちゃってもいいのね?」
その人は、俺を見るなり驚きの声を上げる。褒められているにも関わらず、背筋が寒くなる。
「ああ、頼むぜノリちゃん。遠慮なくやってくれ」
板間さんはそう言って、俺を扉の中に突き飛ばした。ノリちゃんと呼ばれた『男』の硬い胸板で頬が潰れる。
「お前も、せいぜい踏ん張れよ。そこらでコーヒーでも飲みながら、何時間もつか楽しみに待っててやる」
最後に俺の方へそう言葉が掛けられ、ドアは強く閉められた。

急に、怖くなる。自分よりガタイが良く、恵体の知れない人間と密室で二人きりなんて。
そう考え、ふと気付いた。入宮だって、この状況に耐えたんじゃないか。伊田・瀬川の二人と地下室に閉じ込められた時。そして、劉の慰み者になっている今。
入宮はこの恐怖を味わって、その上で気を強く持っていた。だったら、俺がめげていられるか。
そう思って顔を上げると、ノリちゃんという男が口元を緩ませた。
「覚悟を決めた、って顔に見えるわねぇ。まだボウヤなのに」
そう言って俺の顎を掴み、持ち上げる。間近で見る『男』の顔は、正直怖い。
「ふふ、怯えた顔も可愛い。でもごめんねぇ。多分これから、もっと怯えさせちゃう。
 板間ちゃんからお願いされてるの。一晩かけてアナタに、この世界の怖さを教えてやれって」
『男』はそう言いつつ、俺の羽織るパーカーに手を掛けた。
パーカーに次いでシャツやズボンまですっかり脱がされ、丸裸を見知らぬ人間相手に晒す……これは酷く屈辱的だ。
「うん、いい感じいい感じ。平均的な男子高校生のカラダって感じ」
化粧台から小さな容器を拾い上げ、蓋を開ける『男』。そして中の白い何かを指で掬い取り、その指を俺の肛門に近づけていく。
ひやり、とした感触が俺の肛門を襲った。
「うわっ、な、何!?」
反射的に怯えた声が漏れる。上ずった声なのは情けないが、いざこういう状況になると怖くて、どうしてもそういう声になる。
「ワセリンよ。ローションより長持ちするの。今日の夜は長いからね」
面白がるようなその声と共に、肛門の中に深く指が入ってくる。中指か、人差し指か。
「やめてください!!」
その叫びが、意識するより前に口をついていた。耳元で笑う声がする。
「あら、初々しい反応。そういう反応って大好きだけど、次からはよく考えた方がいいわよ。
 あなたが一度でも音を上げた時点で、このテストは終わりなの。そうなったら最後、あなたに組の仕事は回せない。日の当たる堅気に逆戻りよ。
 それを覚悟の上で、それでもどうしても堪らなくなったら言って頂戴。『ノリコさん、もうやめて下さい』って」
囁きかけられたその言葉に、俺は固まった。
許しを乞うなというのか。ただ指入れをされただけで、意識よりも先に悲鳴が上がったというのに。
出来るわけがない。思わずそう返しかけたが、かろうじて思いとどまる。
できる、できないじゃない。『やる』しかないんだ。入宮を助けるにはそのぐらいの意気でないと、それこそ無理だ。
「…………わかりました」
俺はそう答えて体の力を抜く。ノリコと名乗った相手の笑みが、視界の端に映った。

脚を開いて壁に手をついたまま、肛門を指で弄くられ続ける。
その不快感は想像を遥かに超えるものだった。
「いい? ここが、前立腺…………男の一番の泣き所よ」
そう解説されながら腸奥のある一点を指先で掻かれ続けると、思わず裏返ったような声が漏れてしまう。
嫌で堪らないのに、体が心を裏切って生理的な反応を示していく。逸物が意思とはまったく無関係に勃ち上がってしまう。
「ふふ、肛門が指をきゅうきゅう締め付けて…………気持ちいいのねぇ。アソコも勃ってきてるし」
脳内で嫌というほど自覚していることを、改めて言葉で指摘されるのが堪らなくつらい。恥辱と悔しさで泣きたくなってくる。

入宮はこんな想いを、何ヶ月も続けてきたっていうのか。
純粋に凄いと思う。そして同時に、彼女にこれ以上そんな想いをさせたくないとも。

たっぷりと肛門への指責めを受けた後には、当然ながら挿入が待っていた。
壁に手を突いたまま腰を落とし、これ以上ない恐怖と恥辱に備える。
「さぁ、いくわよ」
その言葉と共に、硬い感触が肛門に宛がわれる。
「ふ…………ぅうううう゛う゛っっ!!!!」
肛門が割り開かれて熱い物が入ってくる時には、濁った呻きが喉から迸った。
 ――やめてくれ、勘弁してくれ!!
その叫びを、上下の歯を食い縛ることでかろうじて抑え込む。
それでも、ギリギリだった。少しでも歯と歯の間に隙間を作れば、弱音が零れだしてしまいそうだ。
ショックな事はもう一つ。
苦痛は凄まじいのに、体がなぜか性的に反応している。
逸物が勃起しきり、鈴口からは先走りどころか、はっきりと色のついた白濁が溢れて幹を伝っていく。
犯されて気持ちいいんじゃない。前立腺を何度も扱かれて、あくまで生理的にそうなっているだけだ。
頭ではそう思っても、肉体に裏切られたように思えてしまう。
「気持ち良さそう。白いのが床にどんどん垂れてるねぇ? ま、こっちとしても凄く具合がいいけど」
ノリコからの指摘も、一々胸を抉る。情けなくて悔しくて、泣きそうになる。
入宮も、きっとそうだったに違いない。
丁寧に拡張を受けたとはいえ、肛門を犯される嫌悪感そのものは同じ……いや、彼女のプライドの高さを考えれば、俺以上だろう。
モニターの中で見た、彼女の表情が脳裏に浮かぶ。
苦しそうな表情。
悔しそうな表情。
今にも泣き出しそうな表情……。
これ以上そんな顔を、入宮にさせるもんか。
俺はそう心に誓い、壁についた手に一層の力をこめる。

「へぇ……ボウヤ本当に頑張るのねぇ。相当気合の入ったヤクザでも、こうしてお尻犯されると泣き喚いて折れるのに」
どのくらい時間が経った頃だろうか。ノリコが感心したような口ぶりで語りかけてきた。
俺はただ歯を噛み合わせて耐える。俺自身ギリギリもいいところだ。とても返答の余裕なんてない。
入宮は、会話どころか伊田や瀬川を相手取って挑発すらしていたんだから、改めてその精神力に惚れ直してしまう。
ただ、そうして呑気に凄いなどと感心する余裕もない。腸奥を突かれるたび、ありとあらゆるネガティブな感情があふれ出す。
それを内に留めなければならない。まずは俺自身が、この一夜限りの地獄を耐え抜かなければ。
「そんなに頑張れるのは、あの……入宮ってコのため?」
不意にノリコの口から出たその言葉に、俺は思わず目を見開いた。
返事こそ返せなかったが、向こうはそれだけで察しがついたらしい。
「そっか。どうやら、本気みたいねぇ」
ノリコはそう呟くと、俺の腰に手を当ててぴたりと腰を止めた。そして、ゆっくりと肛門から怒張を抜き出していく。
まだ射精はしていないはずだ。体勢でも変えるのか。今の、壁に手を突く受け方でも、かろうじて耐えられているだけなのに。
そう怯える俺を他所に、ノリコは静かな足音で俺から離れていく。そしてなぜか、冷蔵庫を開いて水のペットボトルを取り出した。
そのペットボトルは、なおも警戒したままの俺に差し出される。
「ほーら、いつまでそうしてるの。飲みなさい、ノド乾いたでしょ?」
体格からは考えられないほど優しい声で、俺の手にペットボトルを握らせるノリコ。
「え?」
俺は状況が呑み込めず、呆然と立ち尽くす。すると額を指で弾かれた。
「だから、合格よ!」
「え……で、でもまだ、朝までには…………」
俺は窓の外を見ながら問いを投げた。部屋の窓から覗く空は、まだ明け方とすらいえない黒一色なんだから。
「そんなのはいいの。このテストはねぇ、アタシが相手の根性を見極めて合否を出すの。
 いくら朝まで言葉を発さなくたって、実質的に心の折れてるような人間はダメ。
 逆にタイムリミット前でも、鋼の信念さえ感じ取れればOK。
 要はこのアタシが、ビジネスパートナーとして惚れ込む器かって話よ」
ノリコさんはそう言って笑った。最初とは明らかに違う、情の深い笑みで。
「じゃ、じゃあ!!」
「ええ、板間ちゃんには話をつけとくわ。それからアタシ自身も、美味しい話はあんたに回したげる」
ノリコ……いや、“ノリコさん”のその言葉を聞いて、俺は思わずその場にへたり込む。
安心して腰が抜けた、という奴だろう。
「ちょ、ょっと大丈夫!? もう、人が褒めた直後に!
 ま、でも初めてのアナルセックスじゃしょうがないか。そこにソファあるから休んでなさい。朝になったら板間ちゃんが迎えにくるから」
ノリコさんの声が、枯れ果てたような心に優しく響いた。



それから俺は、ノリコさんの肝煎りで様々な仕事を回して貰えるようになった。
ウチは歴史ある組織だけに、フロント企業も多岐に渡る。
建築、不動産、金融、貿易、映画、スポーツ、芸能……こういった業界では、ウチの息のかかった会社が昔から幅を利かせている。だから仕事には困らない。
組の舎弟企業が行う交渉事に同席し、胸に録音機を忍ばせたまま新入社員のふりを続けたり。
海外から運ばれてきた謎の荷物を港で直に受け取り、原付でどこかの会社まで送り届けたり。
学校に通う間さえ惜しんで、そういう仕事をひたすらにこなした。
どの仕事も、結局はヤクザのシノギだ。いつか回りまわって他人を不幸にするような仕事だらけだろう。
それでも救いなのは、目の前で女の子が泣くような仕事がないことだ。
ノリコさんが、その類の仕事を間引いてくれている。
『念願叶ってお姫様を抱き上げようって時に、女の子の涙を搾り取った手じゃあマズイでしょ?』
ノリコさんは理由をそう語った。本当にこの人には、足を向けて寝られない。

少しずつ、少しずつ、金は積み重なっていく。それでも、2000万という目標額の麓すら見えない。
当然だ。何千万なんて金は、サラリーマンが数十年を掛けてようやく積み立てるような額。それをわずか数ヶ月そこらで稼ぐというのが無謀な話なんだ。
臓器を売る話は、今日びリスクが高すぎると板間さんに却下された。だから、がむしゃらに稼ぐしかない。
あまり時間に猶予があるとも思えなかった。
仕事の合間を縫って例のサイトをチェックすると、そのたびに入宮が追い込まれていく様が映っていた。
現時点でも心が折れてはいないらしい。
どういう内容かは解らないが、劉の意に反する事をし、折檻を受けている動画がたまにアップされるからだ。
それでもその折檻自体が、直視し難いほどにきつい。入宮の中の何かが日々削ぎ落とされているのは間違いない。
俺自身が恥辱と苦痛を味わって以来、余計にそう思えてしまう。

たとえば、ある日の動画の内容はこうだ。



映像は、逆さ吊りを施された入宮と、それを囲む4人の女を映し出していた。
いかにもきつそうな緊縛だ。折り曲げた膝の裏に細い竹を通され、なおかつ右膝を吊るされる。
開脚を強いられた股座には、2本の責め具が突き立っていた。
膣に極太の1本。そしてそれより茂みに近い方――尿道と思わしき場所にも1本。
肛門に異物は見当たらないが、代わりに床の一面に、茶色い液に塗れたディルドウや球状の小物が散乱している。
さらには陰核の根元と両の乳首にも紐が結わえ付けられ、女達に引かれて歪な形に変形していた。

「……どうだ。いい加減に反省したか?」
劉の冷ややかな声が響いた。入宮の顔が僅かに持ち上がる。
「反省って…………なんの反省? ずっと言ってるでしょ。あんたの子供なんて、欲しくないって」
入宮のその答えに、小さな唸りのようなものが続く。おそらくは劉が不快感を露わにした声だ。
「これだけやられて、まだ言うか。なぜ強情だ、誰の精なら欲しい。まさかお前……あの島に、惚れた相手でもいるのか?」
劉の言葉に、胸がざわつく。
入宮は何も答えないまま、ふっと劉から視線を外した。
否定は、ない。
「…………なるほど。何となくそういう感じはしたが、案の定か。だが残念だたな、お前はもう俺の所有物だ。
 それをどうしても認めないなら、素直になるまで可愛がてやる」
劉のその宣言に続き、中国語で何かを呟いた。すると入宮を囲む女達が頷き、緊縛を解きにかかる。
しゅる、しゅると縄の擦れる音と共に、入宮の身体が床に崩れ落ちる。責め続けられたせいだろう、かなり疲弊している様子だ。
そしてその最中、どこかで扉の開くような音も聴こえた。
続いて何人もの荒々しい足音が映像に近づき、画面内に男の姿が入り込んでくる。
ここでようやく事態を察した入宮が顔を上げ、そのまま固まった。

ぞろぞろと現れた人間は、全員が黒人だった。
間違いなく10人以上いるだろう。比較的大柄な劉と比べても、さらに頭一つ以上でかい。
2mを超えそうな長身に加え、さすがに筋肉のつき方がアジア系とまるで違う。
「い、いや……こないでっ!!」
黒人に取り囲まれた瞬間には、あの入宮でさえ明らかな怯えを見せた。
当然だ。あんなガタイの人間に群がられて、恐怖を感じない人間などいない。
おまけに黒人達は、1人残らず目の前にいる入宮の獣そのものの視線を向けながらズボンを膨らませている。
劉はそうした入宮の窮状を愉しむように頬を歪める。
「その連中は、人一倍性欲強い。おまけに一週間以上セックスを禁じているせいで、はち切れる寸前だ。
 今のこいつらの相手をすれば、いくらお前でも耐え切れんだろう」
劉の言葉に、入宮の顔が引き攣る。劉を睨みたいが、威圧する周囲の男から視線が外せない。そういう風だ。
劉は怯える入宮をやはりにやけ顔で観察しつつ、指を1本立てた。
「だから、ひとつ。お前にチャンスを与える」
「……チャンス?」
「そうだ。聞くところによると、お前はバスケットが得意らしいな。日本の全国大会にまで出たと聞いたぞ」
バスケット。そのワードが劉の口から発された瞬間、入宮の表情が険しくなる。
それは、彼女にとって最もセンシティブな話題だ。劉は、表情からしてまず間違いなく、知っていてその禁忌に踏み込んでいる。
「…………だから、なに?」
「はは、まぁそう睨むな。なに、お前にとて分のいい賭けだ。
 これからそいつらの1人と、バスケットで1on1の練習試合する。その得点差で、犯される時間決まる。
 点差が10なら10時間、20なら20時間。逆にお前勝たら、その時間分だけ自由に遊んでいい。
 もし100点差つけられたら100時間。この辺り一帯観光できる。素敵、素敵」
劉はそう言って可笑しそうに笑う。
言葉が通じているのか、それとも劉に合わせているのか、黒人連中も歯を剥きだして肩を揺らし始める。
その中で入宮だけが、真逆の意図で顔を歪ませていた。
スポーツに疎い俺でも解る。
バスケットに限らず、あらゆる運動はプレイヤーの身体能力がモノを言う。陸上でもサッカーでも、オリンピックで活躍するのは天性の筋肉のバネを持つ黒人ばかりだ。
いくら入宮が県内トップクラスの実力者とはいえ、2m超えの黒人とやって勝負になるとは思えない。
おまけに今の入宮は、ベストコンディションですらない。激しい責めを受けたばかりなのだから。
そういう悪条件は、入宮自身が一番良く理解しているだろう。
だが、それでも彼女は顔を上げ、真っ直ぐに劉を睨み据えながら宣言する。
「…………上等。やってやる!!」


広い庭に拵えられた専用のストリートコートで、悲劇の幕は開いた。

序盤は、意外にも入宮の1人勝ち状態だった。
全国大会準優勝校のエースをして『バケモノ』と言わしめた彼女だ。本気になるとやはり凄い。
「はぁっ!!」
鋭いドライブで相手の虚を突き、短期決戦とばかりに猛然と得点を重ねていく。
「Terribly cool girl……!」
相手の黒人は目を剥きながら口笛を鳴らしていた。想像以上、という風だ。
しかし妙に余裕のあるその態度からは、嫌な予感しかしない。
観戦している他の黒人が、先制されているにもかかわらず笑いながら野次を飛ばしているのも不気味だ。
まさか、あれでも手を抜いているのか。これまで見た入宮のどの試合より、ハイレベルな駆け引きがされているのに。
そしてその予感は、インターバルを挟んだ第2クォーターで的中する。
明らかに、黒人の動きが変わった。
巨体からは想像もできない俊敏さで簡単にボールを奪い、そのまま得点に直結させる。
一度黒人の手にボールが渡れば、あの入宮ですら奪い返す事はできなかった。足の速さがまるで違う。駆け引きの巧さも違う。
いや、それ以前の問題かもしれない。
コートの半ばでボールを保持する黒人に対し、入宮が奪取の為に必死に足掻いている最中。
いきなり黒人がその場でジャンプし、笑いながらシュートを放つ事がある。
放たれたボールは綺麗な弧を描いてゴールへ吸い込まれていく。リングへ当たる気配すらない、芸術的なシュートだ。
俺にはそれが、どれほど難易度の高いプレイかは解らない。
ただ入宮は、ボールの吸い込まれたコートを振り返りながら、愕然とした表情をしていた。
「うそ、でしょ…………!? あ、ありえ、ない…………!!」
彼女がそう言う以上、生半なプレイではないらしい。そしてそれを涼しい顔でやってのける黒人のレベルは、間違いなく飛びぬけている。

必死の入宮とは対照的に、黒人にとってこの試合はあくまで遊びなんだろう。
奴は余裕綽々でワンサイドゲームを維持しながら、入宮のプライドを虚仮にし続けた。
わざとボールを奪わせておき、ゴール前で追い詰めて不安定な体勢でシュートを打たせる。当然、ゴールは決まらない。
そのリバウンドを圧倒的な身長差で悠々と奪い、そのままドリブルからの鮮やかなシュートを決める。
入宮はその光景を汗まみれで見つめながら、目を細めた。
「くそぉーーっ!!!」
悲痛な声で叫びながら、両の手の平を膝に叩き付ける。
プライドの高さから来るその慟哭は、黒人達と劉に散々笑い者にされていた。対戦相手の黒人もまた、指を自分の方に曲げて挑発している。
入宮はそうした状況に怒りを露わにし、叫びながら黒人に向かっていく。
それでも、実力差は覆らない。
入宮はいつになく必死にやっているんだろう。第三クォーター終了後のインターバルでは激しく息を切らし、水を飲むことすらままならないような有様だった。
それでも、敵わない。あえて現実を言えば、プロ選手と小学生ほどの差がある。
黒人がゴールを決め、コート中央で仕切りなおされ、あっという間にボールが黒人の手に渡ってまたゴールが決まる。
まるでループしているように、この展開が延々と続いた。
そして、試合終了の笛が鳴る。

結果は、184-12。

終了の笛を聴き、絶望的なスコアの示されたボードを目にした瞬間、入宮はその場に崩れ落ちた。
そして、ぽろぽろと涙を溢す。太腿に水滴が弾けては伝い落ちていく。悔しさの言葉さえ出ないのが、ひどく危険に思える。
「おーおー、ひどい点差だ。分換算ですら地獄だな。お前達、遠慮はいらんぞ。どうやらあの娘、よほど黒人のコックを味わい尽くしたいらしい」
劉はあえて日本語で煽り、入宮に顔を上げさせる。
その顔を待ち受けるのは、下穿きすら脱ぎ捨てて凶器を露出させた黒人達だ。
連中の股間にぶら下がる逸物を見たとき、俺は思わず目を疑った。
劉は金に飽かせて、黒人の中でも特に凶悪な物を持った人間を集めたらしい。揃いも揃って規格外だ 
太さは入宮が両手で掴んでちょうどいいぐらい。長さとなれば、ぶらりと垂れ下がった状態で入り宮の頭から顎までの長さと大差ない。
それが、あくまで『平均』だ。中には当然それ以上も存在する。特に第二陣で待機している連中の中には、ペットボトル大の物をぶら下げている奴までいた。
「ひ、ひっ…………!!」
入宮は恐怖一色だ。その哀れな獲物に、黒人達が一斉に飛び掛る。
「やめてぇえっ、はなしてーっ!!! せめて、ひとりずつにして! 全員でなんて、怖いっ!!!」
絶叫しながら暴れる入宮。だがそれが、抵抗にすらならない。
あっという間に手首や腿が掴まれ、ユニフォームの下がずり下げられ、真正面から圧し掛かるように挿入を受ける。
一番手は入宮をワンサイドゲームで下した男だ。
「いやぁああっ!!!」
入宮が拒んでも、男は挿入を止めない。ひたすら興奮気味に何かを叫んでいる。表情からして、具合の良さを訴えているのか。
そうなれば、他の黒人も黙っていない。自分も自分もとアピールを始める。
最初に挿入した男はそれを受け、入宮の身体ごと体勢を入れ替える。ピンク色をした入宮の尻肉を、黒い指で割開きながら。
「ま、まさか……!?」
苦しむ入宮が状況を察した時には、すでに2本目が彼女の肛門に宛がわれていた。そして直後、強引に挿入されていく。
「っあぁああ゛あ゛っ!! むりっ、無理ぃぃいっっ!」
入宮は目と口をこれ以上はないというほどに開いて叫ぶ。
2本挿しは初めての経験なんだろう。それが黒人のおかしいサイズの怒張となれば、悲鳴が上がっても仕方ない。
さらには、その悲鳴すらいつまでも上げていられる訳ではなかった。待ちきれない人間が、横から怒張を咥え込ませにかかるからだ。
よほど気持ちいいのだろう。黒人達は嬉々として叫びながら腰を振りたくる。
溜まっているというのも本当らしく、1サイクルは短かった。
それでも、終わりはない。一人が射精すれば、入れ替わりでまた別の一人が挿入する。三穴が1分以上空いている事がない。
「ぶぁっ……! や、やすませ、てっ…………!!」
1人に口内で射精された直後、かろうじて口が自由になった入宮が哀願した。それでも、すぐに口は怒張で塞がれてしまう。
ちょうどバスケットボールを掴むように、両手でがっしりと後頭部を押さえ込むイラマチオだ。
入宮は相当嫌がっているようだが、逃れられるはずもない。

やがて、膣を使っていた1人も腰を震わせながら射精に至る。それを受け、次の一人が入れ替わりで挿入準備に入った。
今度の1人は…………あの、ペットボトル大の剛直を誇る男だ。
入宮の視線が見下ろす中、その規格外の剛直が強引に挿入される。
「むごぅおおおぅうおーーーっ!!!」
悲痛な声が上がった。桜色の綺麗な脚も狂ったように暴れていた。
人間の生殖器とはとても思えないサイズ。それが力任せで強引に捻じ込まれていくさまは、性質の悪い悪夢のようだ。
最奥まで怒張を入れ込むと、黒人は一切の遠慮なく腰を打ちつける。細い両足首を鷲掴みにしながら。
体格差がひどい。入宮と男で、筋量がどれだけ違うんだろう。
仮にあの黒人の体格を俺と同サイズに置き換えたなら、細身の入宮など小学生も同然になってしまう。
小学生が大人の逸物を迎え入れるのは無理がある。
「っぎゃああああっ!!」
口から逸物を引き抜かれた瞬間、入宮の苦しみの声が聴こえてきた。その決死の悲鳴が、また怒張で殺される。
この時の怒張は大きかったのか、形がまずかったのか、それとも膣の剛直で入宮自身に余裕のない状態だったからか。
入宮は、ぶほっという音であっという間に嘔吐してしまう。
しかし、誰も責めの手を止めない。相手の身体を押しやろうとする入宮の手を掴み、強引に輪姦を繰り返す。
その暴虐性は瀬川ですらかわいく思えるレベルだ。

その地獄を、劉だけがリラックスしきって観察していた。取り巻きの女にレモネードを掲げさせながら。

172時間にもおよぶ輪姦は、場所をストリートコートから各所に移しつつ、延々と繰り返されたらしい。
その部分部分が切り取られ、映像としてサイトにアップされ続けていた。
その全てを見る勇気はない。たまに途中を見るだけでも、入宮はボロボロに成り果てているのが良く解った。

映像の背景として一番多いのは、最初に入宮が逆さ吊りされていた拷問部屋のような一室だ。
天井に二箇所あるライトを光源に、黒山のような男達と色白な入宮が蠢きあう。
股座に当たる部分が変色した三角木馬。
汚れた開口具。
乱雑にうち捨てられたアームバインダー。
搾乳機。
薄黄色い液体入りのボウルに立てかけられた浣腸器。
黒人達がカメラの前からどくたびにそうした道具が映りこみ、過ぎ去った受難を静かに訴えてくる。
その前面で、入宮はいつも犯しぬかれていた。
髪から爪先までが白濁に塗れ、穴という穴からも精液を垂れ流し。
特に胃には相当な量が注がれているようで、イラマチオを受けて物凄い声で嘔吐した時には、一回の食事量に近いほどのザーメンが吐き出される。
ごえっ、お゛えぇっ、というえづきと共に白濁の奔流を吐きこぼし、一旦収まったかと思えばまた喉が蠢いて大量に逆流し。それが10秒以上も続く。
足の踏み場もないほど大量に吐ききった後には、下腹の影の差し具合が明らかに変わっているほどだった。
当然入宮は、苦痛のあまりボロボロと大粒の涙を溢している。
しかしそんな状態ですら、黒人達は入宮を休ませようとしない。劉とそのような契約を交わしているのか、それとも単に外道の集まりなのか。
手首を掴み、足首を掴み、喉元を掴み、腰を掴み。
筋力にモノを言わせて強引に望む体位を作り上げ、入宮の『穴を使う』。
これは俺の見間違いであってほしいが、左膝を肩の高さにまで抱え上げられつつ前後から挿入された時には、二本ともが膣に入っているように見えた。
それぞれ日本人の平均より2回りは大きい怒張だ。入る訳がないし、いくらなんでも滅茶苦茶だ。
ただ実際、それを受けた入宮の反応も滅茶苦茶だった。
大口を開けたまま、これ以上はないというほど顎に力を込め。かろうじて床につく右脚が、病気かと思えるほど激しく痙攣し。
男達がそれぞれ射精して白濁まみれの怒張を抜き出すまでに、2回小水を漏らした。

あまりにも酷い光景。映像として公開されていない部分でも、これと同等以上の責めが続いている事は想像に難くない。
俺よりずっと心が強い入宮といえど、こんな仕打ちを受けて耐え続ける事は不可能だ。
たぶん、もってあと数週間。
時間がない。俺は改めてそう感じ、ひたすら仕事をこなし続けた。
時には稼ぎを優先して、やばい橋を渡る事もあった。殴られもしたし、額に銃を突きつけて脅されもした。ゴミ以下の扱いを受けて屈辱に泣くこともあった。
そうまで金をかき集めても、2000万という額はあまりに遠すぎる。


「で、いくら溜まった」
組の応接室で、板間さんが煙草をふかしながら問う。
「…………300万です」
俺はそう答えて肩を落とす。
気分が沈んでいることもあるが、とにかく眠かった。しばらく、まともに寝ていない。昼も夜も何かしらの仕事をやって、時間が空いたときに仮眠を取るだけだ。
そこまでやっても、300万がやっと。
残り1700万を稼ぐのに、どれだけかかるのだろう。早くて5年か、下手を打てば10年か。そんな時間が経ってから入宮を迎えに行っても、もう遅い。
精神崩壊した挙句に劉には飽きて捨てられ、場末の売春宿を転々として……その暗い未来が見えるようだ。
どうすればいい。どうすれば。
俺は頭を押さえて思案を巡らせる。その間、なぜか板間さんの視線を強く感じた。
やがて、一服が終わった頃。
板間さんは立ち上がり、おもむろに窓際の金庫を空けて帯封のついた札束をつかみ出す。
その紙の塊……100万円の20束が、俺の前に積み上げられた意味は何だろう。
「っ……なんですか、これ?」
俺は困惑しながら問いかけた。
普通に考えれば貸付けだ。ヤクザの基本的なシノギの一つ。
でも妙だ。額がおかしい。いくら顔見知りとはいえ、高飛びされるリスクを考えれば、いきなりポンと貸せる額じゃない。
第一、仮にやるにしてもフロント企業を間に挟むはずだ。何かと煩いこの時代に、舎弟頭の板間さんが事務所で直接金を貸し出すなんてありえない。
何かある。普通じゃない何かが。
首筋に冷たい汗を感じながら、板間さんの返答を待つ。
板間さんは窓際に戻り、夕暮れを眺めながら2本目の煙草に火を点けた。
「やるよ」
短く呟かれたその一言を、俺はすぐには理解できなかった。
「……えっ!?」
「やる、っつったんだ。欲しいのか、欲しくねぇのか!!」
煙草を咥えたままの怒鳴り声。俺は反射的に、欲しいです、と答える。
なぜ。なぜ。頭一杯にその疑問を浮かべながら。
「古い知り合いに、お前そっくりの間抜け面がいてな。そいつへの手向け代わりだ」
板間さんはそこで大きく煙を吸った。そして、肺を空にするかのように長々と吐く。
「奴も、昔馴染みの女に惚れてやがった。さんざウジウジした挙句、高校にもなってようやく告ってな。両想いと解った途端、この世の春とばかりに浮かれてたぜ。
 だが、奴ぁ馬鹿だったからな。当時俺らみてぇなのをバックに粋がってたんだが、そこの組長に女ァ取られやがった。
 女さえ差し出せば、良いクルマに高ぇマンション、何でも好きな事ができるって持ちかけられてな。最初こそ断ったが、薬指ヘシ折られてからは言うなりよ。
 ヘラヘラ薄笑い浮かべて、組長の犬に成り下がりやがった。テメェの女が、泣き喚いて助け求めてるってのにだ」
板間さんの傷に塗れた手が、荒々しく煙草の火を揉み消す。
細く真っ直ぐだった筒は、瞬く間に幾重にも屈折した。
「その人は、今…………?」
俺が恐る恐る聞くと、板間さんの涙袋が厚みを増す。
「気楽にやってるよ。良いクルマに乗って、高ぇマンションに住んで、そこそこの地位も得た。よっぽどの高望みを別にすりゃあ、望みは何でも叶う。
 ………だがその実、奴はもう死んでんだ。何をしても、心から楽しいと思えねぇ。女一人しか持っちゃいなかった頃の方が、よっぽど気持ちよく笑えてた」
間違いない。
今の話に出てきた男とは、板間さん自身のことだ。
聞いた事がある。ウチの組長が昔、当時まだ高校生だった女の子を無理矢理手篭めにした話を。
何度も犯され、シャブ漬けにされた女の子は、やがて寝室で首を吊った。
それとほぼ同時期に盃を受けた末端構成員は今、本家の次期若頭……つまり実質的な組の運営役を狙える地位にまで上り詰めていると。
板間さんは、俺に昔の自分を重ねているんだ。
俺の覚悟を問う一方で、この目の前に詰まれた2000万という大金を、必死にかき集めてくれたんだ。
「あ……ありがとうございます!!!」
その言葉しかない。俺は、ガラスのテーブルに額を付ける勢いで頭を下げる。
「意味が解らねぇ。俺ァお前みてぇに、現実の見えてねぇガキは大嫌ェだ。船用意してやっから、とっとと海の向こうに消えやがれ。
 バカへの手向けに、せいぜいド派手な花でも買ってよ」
板間さんは、そう言って片目を顰めてみせる。何度も目にした事のある癖だ。
だがこの人の挙動を、今ほど格好良く感じた事はない。





初めて海を渡った。
偽の船に、偽のパスポート。まともなやり方じゃないが、とうに汚れている俺には今更だ。
まったく知らない街でまず俺がしたのは、花束を買うことだった。
入宮を迎えに行くんだ。ずいぶん遅くはなったけど、プレゼントの約束は守る。
ジェスチャーを交えての買い物をなんとか終えれば、後は板間さんから渡された地図を頼りにバスを乗り継いでいく。
目指す先は、当然劉の屋敷だ。
着実に近づいている――俺はその事実を肌で感じることができた。奴が屋敷を構える場所に近づけば近づくほど、雰囲気が怪しくなっていく。
3台目のバスを降りた時点で、怪しさは決定的になった。
道端にずらりと小屋が並んでいる。ベッドと風呂しかない事から、明らかに“そういう場所”だ。
カーテンすらない明け透けな構造からして、客が直に嬢を選んで抱くタイプだろう。
小屋には、目の死んだ女性が一室につき一人ずつ待機していた。目の形からして9割方が日本人だ。
まさか、この中に入宮が。俺はそう思って一人一人の顔を観察して回ったが、それらしき子はいない。
俺はひとまず安心した。この一帯にいる女性は、全員が異様な雰囲気を漂わせている。入宮がそうなっていないのは救いではある。
「……ねぇ、あんた」
急にそう声を掛けられ、俺は思わず背筋を伸ばした。心の声を見透かされたようで、冷や汗が出る。
声の出所に視線を向ければ、客の付いていない女の一人が、退屈そうに煙草をふかしながら俺を見ていた。
正確には、俺が握りしめた花束を。
「そんなモン持って、どこ行くのさ」
馬鹿にしたようなただの興味本位のような、感情の読めない喋りだ。
「劉って奴の所だ。買い戻したい子がいる」
俺はそう断言した。相手に聞かせる意味もあり、改めて決意を固める意味もあってだ。
すると女は、乾いた嘲笑を俺に浴びせた。
「アハハ、劉様に? そりゃお気の毒。悪い事言わないから、諦めた方がいいよ。
 あの人は凄いんだ。一度あの凄さを味わったら最後、もう忘れられない。
 ここにいるのはみーんなそう。劉様に捨てられた後も未練を断てない人間揃いだよ。
 こうやって劉様の屋敷から見える場所で交わって、もしかするともう一度、可愛がって貰えるかもって夢を見てる。
 まぁ結局屋敷に戻れたコなんていないし、もう何人も病気で死んだけどね」
淡々と告げられるその言葉に、俺は声を出す事も出来なかった。業が深い、とでも言うんだろうか。
「ここにあたしらが張り付いてるくらい、劉様に愛を注がれるってのは良いんだ。
 買い戻したい相手ってのが彼女か血縁かは知らないけど、そのコだってきっと、劉様の元から離れたいなんて思ってない。
 それが解ったら、さっさと帰りなよ。大体、劉様の屋敷には怖い見張りがいるんだ。あんたみたいなガキなんて、叩き返されて終わりだよ」
女は目をギラつかせてそう訴えていた。その瞳の異様さは、競りの映像で見た劉によく似ている。
入宮のそれとはまったく違う目だ。こいつらと入宮とではタイプが違う。入宮なら大丈夫だ。
俺はそう自分に言い聞かせながら、女の横を通り過ぎた。

劉様の屋敷から見える場所。
その言葉通り、売春小屋の通りを抜けるとすぐに館が見えてくる。いかにも中華の権力者が住んでいそうな屋敷。
花束とトランクケースを手に正門へ近づくと、すぐに物騒な見た目の男が二人近づいてくる。
最初は何か中国語で話しかけられた。俺が聴き取りに難儀していると、別の一人が口を開く。顔の造りがやや日本人寄りの男だ。
「お前、もしかして日本人か?」
聞き慣れた言葉に、俺は強く頷いた。男達は一瞬眉を顰め、俺の様子を改めて観察した後に、嘲りの表情を浮かべた。
「なるほど、女でも迎えに来たか。だが生憎、大哥から誰かを通せとは言われてねぇ。帰んな」
「通して下さい! 金なら持ってきました。あいつが……入宮が買われた時と、そっくり同じ額です!!」
「そりゃいい。なら、そのバッグだけ置いて帰んな。話は上げてやる」
男達はそう言ってトランクケースに手を掛けたが、信用できるはずもない。劉に話などせず、金だけを懐にしまうに決まっている。
「直接会って、話をさせて下さい!」
俺はトランクケースと花束を抱えながら、それだけを訴え続けた。
「駄目だ。ケースを置いて帰れ!!」
一人が俺の胸倉を掴み上げて凄む。正直、恐ろしくてたまらない。だが、ここまで来て退けない。
「嫌です!」
「ほう。……なら、帰りたくしてやる!!」
その言葉の直後、右頬に痛みが走った。そして呻く間もなく、今度は脇腹に鋭い痛み。さらに、肩にも。
そこから俺は、膝から崩れ落ちた状態で暴力に晒され続けた。体中が軋み、恐怖で震む。ノリコさんに犯された時の苦痛すら生易しく思えるほどだ。
それでも、意思は曲げない。入宮がこれまでに受けた恐怖や苦痛は、こんなものじゃないはずだ。俺もまさに今、入宮の受けた苦しみを味わっている。
これは必要不可欠な受難だ。この苦痛が積み重なって、入宮の分と並んだ時にようやく、彼女と顔を合わせる権利を得られるんだ。
そう信じて必死に耐える。口の中に血の味が広がっても。瞼が腫れて塞がっても。折れた歯が石畳を転がっても。
どれだけの時間、そうしていたんだろう。
いよいよ意識が朦朧とし、死を色濃く感じ始めた頃になって、攻撃の手が止まった。腫れた瞼や血で覆われてよく見えないが、二人共が息を切らしているようだった。
「て、テメェ、いい加減にしろ! そのまま死にてぇのかッ!!」
汗を垂らしながらそう恫喝してくる。
「い、入……宮に、会わふぇて……くりゃ、さい…………」
俺は、ほとんど力の入らない顎を無理矢理に上下させて訴えた。
門番二人の顔がますます引き攣っていく。視線が俺の口の辺りに集中している所を見ると、かなり酷い有様なんだろう。
連中は互いに顔を見合わせ、中国語で何かを囁き合った。そして渋々といった様子で頷くと、俺の方に顔を戻す。
「わかった。会って話くらいはさせてやる。ま、無駄だとは思うがな」
2人はそう言って俺に肩を貸した。
髪も服もボロボロになり、花束も血に塗れてしまったが、これでようやく次に進める。
肥え太った憎い面を、ビデオ越しじゃなく、生で拝めるんだ。
 
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