大樹のほとり

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二度と出られぬ部屋 第四章 オーガズム・クライマックス(前編)

※長くなりそうなため、前後編に分けます。
 前半部分のメインは飲ザー・ごっくん・破瓜シーンです。




■第四章 オーガズム・クライマックス(前編)


 剣術少女の瓦解を見届けた後の食事は、ひどく味気ないものだった。

「ほう……15階の娘には、もう少し早く目をつけておくべきでしたな。同性から人気を集める『王子様』の陥落は、見ごたえがあったろうに」
「もはや見る影もありませんからなぁ。ハグされて髪を撫でられれば、猫が鳴くような声を出して……完全にメスですよ」
「メスといえば、例の剣術娘ももうダメらしいですな。連れ合いが言うには、トラウマを植えつけられたそうで。胡坐を掻くように足を交差させながら犯すと、わんわん泣くそうです。おかしくなる、堪忍してくれと哀願し、潮を噴き散らしながらね」
「へえ……あの子がねえ。聞いた話じゃ、折檻用の竹刀を奪って暴れたそうじゃない。あの噂が怖くて、ここ何日か17階行けてないのよねぇ」
「あったなぁ! 火事でも起きたのかと思ったぜ、あの時は。セキュリティの連中が、エレベーター前にゾロゾロ集まっててさ」
「そのセキュリティも結局、歯が立たなかったそうですよ。なにしろ“撃剣”ですから、喧嘩となれば滅法強いようで。最後はテーザー銃というんでしたっけ、射出するタイプのスタンガンでようやく動きを止められたようです。とはいえ、そこからさらに2人が負傷したようですが……」
「ここのセキュリティって、本職のヤクザとか裏カジノの用心棒(バウンサー)とかでしょう? そんな連中が手も足も出ないって……凄いのね」
「ま、過去の話だ。反骨心を剥き出しにしてたのも、ケツをグッと引き締めてられたのも」
「なまじ反骨心があるせいで、徹底して心をヘシ折られるんですよね。その点、16階の娘などは存外に強かですよ。反抗せず、素直に服従しながら、裏ではこっそり他の娘と励ましあっているんです。ディープスロートにもだいぶ慣れてきたようですし、あれはまだ結構もちますよ」
「反抗せず素直といえば、18階の三つ編みの子もですな。もっともあっちは、励まし合える仲間もおらず、四六時中イカされっぱなしという状況で、とても凌げる状況にはないようですが」
「あれは……ねぇ。精神的にはともかく、肉体的なキツさでいえば、剣術娘以上でしょう」
「しかも、あの中学生と見紛う体躯でね。今回“選ばれた”生徒の中でも、一番小柄じゃないですか、あの子?」
「でしょうね。ま、だからこそ見応えがあるとも言えますが」
「確かに、インパクトが凄い。……っといけない、勃ってしまいました」
「はは、お盛んですなぁ! ズボンがはち切れそうですよ、あそこのウェイトレスで『処理』なさったらどうです?」
「そうしますか。このままでは寝られそうにもない」

 隣の円卓では、男女8名のグループがワイン片手に談笑している。話を聞く限り、俺と同じような加虐シーンを見て回っているようだが、その顔は晴れやかだ。
 その中の一人は席を離れ、別のテーブルを片しているウェイトレスに覆い被さった。一切の遠慮なくスカートとエプロンを捲り上げ、ショーツを横にずらして挿入を果たす。
「うんっ!!」
 挿入の瞬間だけ、ウェイトレスから生々しい声が漏れた。だがそれ以降は、ただ性器を『使われる』だけの道具と成り果てる。
「どうだ、ワシのマラは気持ちいいか!?」
「はい……心地よう、ございます」
 がなり立てる男に対し、淡々と返事をしながら、突き込みに合わせて身体を前後させるウェイトレス。その姿は、一見すると精巧な人形のようだ。だが、人形はテーブルクロスを握りしめない。太腿を強張らせもしない。
「ははは。いや、成田さんもご立派なモノをお持ちですなぁ!」
「ええ。奴隷なんかには勿体ないわ」
 犯す男と同席していた連中は、赤ら顔で大笑いだ。
 胃がムカムカする。俺は皿の上の料理を搔き込むと、足早にレストランを後にした。

 狂っている。ここにいる連中も、施設そのものも。
 そもそも、ここは何なんだ。名門校に通う現役の女子高生を、犯し、辱め、狂わせる……まさに悪夢のような場所。客の何人かが『クラブ』と呼んでいたが、凌辱倶楽部だとでもいうのか。
 ベッドに腰掛け、そんな事を考えていた時。リリリン、と部屋の電話が鳴った。腕時計が示す時刻は夜の10時。ルームサービスには遅すぎる。俺は訝しみながらも、受話器を耳に当てる。

『よう、大将。』
 第一声は、馴れ馴れしい呼びかけだった。声質は男のものだ。だが、聞き覚えがない。
「誰だ、お前は?」
 当然、俺はそう尋ねる。すると相手は、一拍置いた。
『そいつは、まだ答えかねるな。俺がアンタの敵になるか、味方になるか……そりゃ、そこでのアンタの選択次第だ』
「……選択?」
『ああ』
 どうやら相手は、俺を知っているらしい。俺が今いる場所も。記憶喪失前の知り合いらしいが、そうなると実に厄介だ。
「お前の思惑は知らんが、それは無理だ。今、俺には記憶がなくてな。今いる場所がどこかも判らんし、そもそも客の一人でしかない。誰かに期待されるような決断をできる状態じゃ──
『いいや』
「──っ!?」
 俺の言葉を、電話口の相手が遮る。俺は思わず息を呑んだ。
『アンタはこの先絶対に、決断を迫られる。何百……あるいは何千って人間の運命を左右するような決断だ』
「な、何で記憶もない俺が、そんな……そもそも、俺は何者なんだ!?」
 不可解な言葉に、思わず声を荒げてしまう。すると、まるでその荒ぶりが電波に干渉したように、通信に雑音が入りはじめた。
『……おっと、そろそろ限界だな。これ以上は“そっち”の連中に勘付かれるからやめとこう。だが、最後に一つだけ。アンタは獣じゃねぇ、ヒトだ。そう思ったからこそ、俺はアンタと手を組んだ』
 男はそう言って、言葉を溜める。思いの丈を篭めるように。
『ヒトとしての心は、無くすなよ。絶対にな』
 その言葉を最後に、電話が切れる。後に残るのは、ツー、ツー、という不通の音だけだ。
「……何なんだ、一体……」
 俺は電話を戻し、乱れた髪を掻き上げた。傍の鏡に映るのは、どこか気取った姿の男。顔立ちは整っているし、眼力も強い。女受けが良さそうで、カリスマ性もありそうだが、同時に独善的な印象も受ける。己の流儀を絶対と信じ、他者を従わせるワンマン経営者という感じだ。
 口の筋肉を動かせば、鏡の中の男が笑う。眼を吊り上げれば、奴は怒る。それほど自在に操れる相手だが、なぜか自分とは思えない。じっと眼を覗き込んでいると、存在を食われてしまいそうな感じがする。
「……お前は、誰だ」
 俺は、鏡に正対してそう呟いた。当然、答えはない。鏡の向こうの人間が、同じ口の形をしているだけだ。
 俺はそのまま後ろに倒れ、ベッドの上で大の字になる。そのまま眠りに落ちるのに、長い時間は掛からなかった。


「んん……ん……」
 目が覚める。布団を被らずに眠ったせいで、若干肌寒い。
 アラームがなくとも8時頃に起きてしまうのは、習慣というやつだろうか。
 ひとっ風呂浴びてからレストランで食事を済ませ、思案する。
  ──今日も、あの地獄のような光景を拝みにいくのか?
  ──本当にその必要があるのか?
  ──あれを観ることで齎される変化とは、歓迎すべき事なのか?
 心に浮かぶ三つの問い。俺の希望としては、答えは全て「NO」だ。

 それでも俺は、気がつけばエレベーターに乗っていた。
 地獄を観たいわけじゃない。ただ、部屋へ戻って横になり、今もどこかで起きている悲劇を悶々と思い描くよりは、いっそ“真実”を目にした方がマシに思えたからだ。

「どのFloorをご希望ですか?」
 ネイティブな発音の英語を交えて、エレベーターガールが尋ねてくる。ギリシャあたりの血が混じっていそうな、彫りの深い美人だ。外の世界でなら、そのルックスでさぞや良い扱いを受けるだろう。だがここでは、客が求めるタイミングで身体を差し出す奴隷。一体なぜ、彼女ほどの美人がそんな目に。あるいはこれが、今調教されている女生徒達の末路なのか。
「……お客様?」
 その問いかけで、俺は現実に引き戻される。どうやら、エレベーターガールの顔を凝視していたらしい。
「わたくしをご所望であれば、お相手いたしますが……」
 涼やかな表情で、そんな言葉まで吐いてくる。
「いや、結構だ。18階を押してくれ」
 俺はそう言って腕を組み、彼女と距離を取った。
「…………失礼を致しました」
 エレベーターガールが恭しく頭を下げる。おかしな話だ。女の尊厳を無視し、無礼を働いているのはこのクラブだろうに。
 
 現実味がないほど広いエレベーターが、ゆっくりと動き出す。

 地下18階。初日にそこで降りたのは三つ編みの子だ。グループ内で一番小柄であるにもかかわらず、保護者のような雰囲気を持つ娘。

『反抗せず素直といえば、18階の三つ編みの子もですな。もっともあっちは、励まし合える仲間もおらず、四六時中イカされっぱなしという状況で、とても凌げる状況にはないようですが』
『しかも、あの中学生と見紛う体躯でね。今回“選ばれた”生徒の中でも、一番小柄じゃないですか、あの子?』

 昨夜、レストランで耳にしだ情報とも一致する。18階で嬲られているのは、あの子で間違いない。
 ここまで来るともはや呪いだ。あの日エレベーターで乗り合わせた少女達が、次々に壊されていく。あるいは、すでに壊された後かもしれない。俺がこの施設に来てから、すでに10日目の朝なんだから。


              ※


 『336時間耐久 連続絶頂』
 18階の扉には、そう記されたプレートが掛かっていた。336時間は、24時間で割ると14日……つまり丸二週間だ。それだけの時間、絶頂し続けろというのか。無茶だ、出来るわけがない。だがこのクラブなら、無茶でもやらせかねない。たとえ、途中で脳が壊れようとも。

 扉を開いた先は、これまでに訪れた3部屋のどれとも違っていた。
 物置のような狭い空間で、いきなり祐希が犯されていた地下15階。
 キャバクラのような内装だった地下16階。
 まず資料館のような部屋があり、その奥に調教部屋への通路が伸びていた地下17階。
 それに対してこの地下18階は、健康ランドやスーパー銭湯の休憩エリアを思わせる場所だった。広い部屋に30台ほどのリクライニングチェアが並び、そのチェアの一つ一つに、小さなデスクと薄型のディスプレイが備え付けてある。
 ドリンクや性奉仕のサービスもあるようで、すでに埋まっている20あまりの席では、それぞれの客がイヤホンをつけて画面に見入りつつ、酒を飲んだり奴隷に奉仕させていた。
「あっ、あっ、はぁ……ん」
「れろっ、えろ……あむっ、ちゅっ……」
 艶かしい声や音が、部屋内の至る所から発されている。部屋着を肌蹴た毛深い男に女が跨り、あるいは足元に跪いて逸物を舐めしゃぶる様は、乱交現場さながらだ。
 そしてもう一つ、この部屋には大きな特徴があった。部屋の奥の壁に、一箇所だけ張られた擦りガラス……その向こうで、二つの人影が揺れている。どうやら這う格好の女が、後背位で犯されているようだ。
 男の方は、横に分厚い肉体を無心に前後させている。対して女は、華奢な上体を反らせて天を仰いでいるらしい。そして。

「おっほぉぉぉっ、んんおお゛おお゛っ!!! んほぉぉおおっ、おおおお゛お゛お゛っっ!!!!」

 そんな、獣の咆哮にも似た叫びが響き渡っていた。これに近い声を、昨日も耳にした覚えがある。藤花が結腸で達した時の声だ。あの時も藤花は、「おお゛」と呻いていた。ただし今俺の耳に入ってくる声は、それの何倍も切実で、しかも絶え間なく続いている。
 一体どんな感覚に苛まれれば、女からあんな声が出るんだ。早くも腕に鳥肌が立つ。このフロアはやばい。

 俺はとりあえず空いているチェアに腰掛け、目の前のディスプレイに触れる。するとスリープ状態が解除され、メニュー画面が表示された。
 画面には、『プロフィール』と書かれたボタンと、いくつかの動画、手枷をつけた女のアイコン、コップとハンバーガーのアイコン等が配置してある。
 周りの状況から考えて、女のアイコンからは奴隷の奉仕を、コップとハンバーガーのアイコンからは飲食物を発注できるんだろう。随分といい待遇だが、今の俺には必要のないものだ。
 最初のトップ画面に戻って『プロフィール』ボタンに触れると、ポップアップウィンドウが表示される。ウィンドウには、ある女の写真と詳細な情報が記載されていた。
 前髪を眉辺りで切り揃え、横髪を顎の辺りまで伸ばした上で、長い後ろ髪を一本に編み込んだ髪型。見覚えのあるブレザーにリボン。
 間違いない。初日にエレベーターで見かけた、あの三つ編みの子だ。

『氏名:瀬戸口 桜織(せとぐち さおり) 年齢:満17歳
 身長:155.2cm 体重:47kg(計測時点)
 スリーサイズ:B77(Bカップ)・W57・H81
 ・所属:蒼蘭女学院2年A組
 ・全国模試1位の実績あり
 ・全国高等学校英語スピーチコンテスト優勝経験あり
 ・日・英・中・韓・独・仏など、11ヶ国語での日常会話が可能
 備考:中流家庭。A組学級委員長。球技はやや不得手の模様。品行方正かつ他人思いで、人望が厚い』

 情報欄には、華の女子高生のデータが仔細に暴露されていた。他フロアで客が見ていたパンフレットと同じ記述形式だ。
 彼女は桜織というのか。なるほど、清楚な見た目によく合っている。
『もうっ、馬鹿言わないの。授業の一環って聞いたでしょ』
 エレベーター内で、はしゃぐ千代里と藤花をそう諭していたのも、委員長としての責任感からか。

 ポップアップを消し、トップ画面の動画欄に目をやる。
 動画には3つのカテゴリがあった。【ノーカット版】【ダイジェスト版】【ライブ映像】だ。
 【ノーカット版】は、先頭にまず『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失』というタイトルの動画がある。そしてその次から、『0:00~8:00』『8:01~16:00』という具合に、8時間区切りのタイトルが並んでいた。動画の再生時間も、ずばり『8:00:00』。どうやら336時間分の映像記録が、丸ごとアップロードされる場所のようだ。
 これだけ長時間の記録となれば、全て追うのは並大抵の事じゃない。警察官かよほどの暇人ならともかく、大半の客は変化のある部分だけを観たいはずだ。【ダイジェスト版】は、その要望に応えたものらしい。こっちは『0:00~8:00(編集済)』といったタイトルが並んでいて、再生時間は10分から20分弱。ただし、編集に時間がかかるからか、ノーカット版の最後の一つに対応する動画はまだ存在しない。
 そして、【ライブ映像】。ここでは粗いモザイク越しに、肌色が激しく動いていた。まるで粗悪なアダルト広告のようだが、肌色の揺れるペースは擦りガラス向こうのそれと一致していて、紛れもなく“あっち側”の生映像なんだと判る。
 俺は正直、ライブ映像が気になって仕方がなかった。今も部屋内には、獣の咆哮が響き渡っている。擦りガラス越しでは角度的に見えないが、ライブ映像のモザイクの中では、三つ編みと思しき黒い線が肌色の中で揺れている。エレベーターで会ったあの娘が犯され、あられもない声を上げているんだ。その事実を前にして、興味を持つなというのも無理な話だろう。
 だが俺は、あえて過程を追う。俺は地獄を見たいんじゃない。彼女達の身に起こった“真実”を知ること……それこそ、俺がここに来た目的なんだから。


              ※


 両耳にイヤホンを嵌め込むと、獣の咆哮もさほど気にならなくなった。俺はその上で、【ダイジェスト版】最初の動画をタッチする。
 動画タイトルは、『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失(編集済)』。媚薬ガスに、地獄と形容されるレベルでの飲精。字面だけで、嫌な予感が背筋を這い登ってくる。

 動画は、桜織の全身を映すシーンから始まった。
 艶やかな黒髪に、校則遵守という感じの制服姿、背筋を伸ばしたままスカートに手を添える『気をつけ』の姿勢。まさに優等生の鑑だ。
 そして同時に、その雰囲気はひどく大人びていた。既婚女性を思わせる落ち着きがあり、くっきりと見開かれた瞳は強い意思を感じさせる。控えめでありながらも、確たる意思を秘めた女性。藤花が『大和男子』の魂を持つとすれば、この桜織は『大和撫子』の典型というところか。

『相変わらず堅ぇな。もうちっと楽にしててもいいんだぜ?』
 映像内に、低い声が入り込む。カメラで撮影している男の声か。桜織のピリリとした雰囲気を見る限り、友好的な相手ではなさそうだ。
『あの煙は、なんですか?』
 桜織が、コンクリート壁上部の通風孔を見ながら尋ねる。その孔からは、気化したドライアイスのようなものが細々と流れ出していた。
『煙っつうか、ガスだな。ま、媚薬の類と思えばいい。シャブみてぇに即効性はねぇが、このガスを吸い続けりゃ、どんな人間でも確実に色狂いになる。神経をやられて、男なら女を抱くこと、女なら男のイチモツにしゃぶりつくことしか考えられなくなる』
『……っ!?』
 撮影者の答えに、桜織の表情が引き攣った。生真面目な学生からすれば、腐敗と堕落を象徴するような薬物など、もっとも忌み嫌うところだろう。ましてや、それが自分に用いられ、性的な作用を齎すとなれば尚更だ。
 撮影者は、そんな桜織の反応を可笑しがっているようだった。
『くくっ、いーいカオだ。オメェにゃ、あのガスをたらふく吸ってもらうぜ。とはいえ、こんな殺風景な部屋でじっとしてんのも退屈だろうからな、特別な遊び相手を用意してやった。……オイ、入っていいぞ!』
 奴がそう叫んだ、直後。画面左奥のドアが開き、全裸の男達がぞろぞろと姿を現した。
 凄い人数だ。おまけに5人に1人ほどの割合で、東南アジア系の顔をした男もいる。それ以外は一見日本人に似た顔だが、叫んでいる言葉を聞く限り、中国や韓国系の人間も混じっているようだった。筋肉質、力士のような肥満体、骨と皮だけの痩せぎすと、体型も個人差が大きい。
 見た目も人種も色々だが、共通点はいくつかあった。
 どいつもおおよそ30代か40代の、働き盛りの年齢であること。
 全員が負のオーラを纏っていること。
 髪も髭も伸び放題で汚らしく、肌は日焼けとはまた違う感じで浅黒いこと。
『う……っ!?』
 当然匂いもきついらしく、桜織は鼻を押さえながら眉を顰めた。
『はっ。揃いも揃って、ゲロ拭いた雑巾みてぇな匂いさせてやがんな』
 声の感じからして、撮影者も鼻を摘んでいるようだ。
『こ、この人達は……?』
『こいつらは、タコ部屋で肉体労働させてる連中でよ。少なくとも一ヶ月はオンナを抱いてねぇ。おかげでギトギトに濃い精液を、金玉が腫れあがるぐらい溜め込んでやがる。そんじょそこらの野郎の比じゃねぇオス度ってぇわけだ』
 桜織の問いに答える撮影者の口調は、どこか誇らしげに聞こえた。
 タコ部屋労働者というが、本当だろうか。確かに肉体労働者風の男も多いが、中には運動しているのか怪しい肥満体や、そもそも日本語が通じなさそうな連中もいる。浮浪者や不法滞在者を手当たり次第にかき集めた、という方がまだ信じられそうだ。
 ただ、極度の女日照りというのは事実だろう。
『おおおお、オンナ……女だっ!!』
『オンナ、オンナ、オンナぁああッ!!!』
『いひひ、じょ、女子高生だぜ、現役の。しかもあの制服、蒼蘭だ……』
『蒼蘭って、あのお嬢様学校かよ!? くく、はははっ!人生って面白ぇな。あんな所のお嬢様とは、一生接点なんぞないと思ってたぜ!』
『ああああ可愛いなぁ、いい匂いしそうだなぁ。堪んねぇ!!!』
 死んだ目の奥に欲望の光をギラつかせ、赤黒い逸物を斜め上に反り立てて、メスである桜織に向かって叫ぶ。その有様は普通じゃない。
 今にも飛び掛かりそうな雰囲気だが、奴らは何かを警戒して踏みとどまっている。濁った眼が桜織と交互に見やるのは、カメラの後ろ。
『どうした。ハメてぇってんなら、ヤってもいいぞ?』
 カメラ後方からドスを利かせた声がする。が、その提案に乗る人間はいない。ガラの悪い口調といい、これだけの頭数を抑止する影響力といい、撮影者が“裏の人間”であるのは確実だ。タコ部屋と繋がりがある以上、まずヤクザ関係だろう。
『待てが出来るたぁ、よく躾けられたオス犬共だ。だが、見てみな嬢ちゃん。一ヶ月お預け喰らってバキバキで、可哀想だよなぁ。あの50人を、クチと手だけで満足させてやれ。暇潰しにゃちょうどいいだろ?』
 ヤクザ男はそう言って、桜織の顔を凍りつかせる。そして今度は、男共にカメラを振った。
『よう、お前らも気張れよ。これはただの余興じゃねぇ、借金棒引きを賭けたギャンブルだぜ。この女の胃に収まったザーメン量に応じて減額してやる。全員一律でだ』
『……へ? ま、マジっすか!?』
『そ、相場は!?』
『んー……そうだな、リットルあたり100万にすっか。テメーらの数百数千って借金にゃ届かねぇが、大盤振る舞いだろ?』
 この言葉で、欲望一色だった男共の顔つきが変わる。髭面の顔が、次々と緩んでいく。
『う、うおおお……!!』
『マジかよ……こんな可愛い子にゴックンさせて、借金まで減ってよ。最高じゃねーか!!』
『おお。今の俺らなら、ナンボでも出せそうだしな!』
『だが、問題はあの子の胃の容量だ。あのちまさでリットル入んのかよ!?』
 顔を見合わせ、興奮気味に叫びあう男達。その前方では、桜織が厳しい表情を浮かべていた。そしてヤクザ男の笑い声が、カメラの傍で繰り返される。
『ちなみに胃の大きさは、大人の女で1300mlぐらいらしいぜ。ただ、本当の限界はその倍とも言われてる。このガキはガタイが貧相だから、限界2.4リットルってとこかもな』
 ゲラゲラと笑いながら、男は新たな燃料を投下した。
『2.4リットルなら、240万棒引きか!? へへ、こいつァ腕が鳴るぜ!』
『おうっ。俺らの未来がかかってんだ。嬢ちゃんにゃ悪ぃが、無理でも何でもしてもらわねぇとよ!!』
 男共は発奮し、桜織を包囲する輪を狭めていく。
 無茶だ。胃の限界というのは、大食いに慣れたプロ選手が決壊ギリギリまで食い物を詰め込んだような状態を言うんだろう。素人にそんな拡張ができるはずがない。だがあの男共は、やらせるつもりなんだ。自分達の借金のために。

『じゃ、始めろ。制限時間は今から2時間だ』
 撮影者の男の声が響く。
『オレからいくぜ。おい、膝ついてしゃぶれ!』
 一人が逸物を握りながら、桜織にいち早く歩み寄った。赤銅色の肌をした、押しが強そうな男だ。
 この男と並ぶと、桜織の華奢さが際立つ。桜織の頭頂部など、男の顎までしか届かず、肉体の厚みにもかなりの差がある。中学生どころか、もはや子役。プロフィールに載っていたB77・W57・H81というのは、こんなに細いのか。
『……!!』
 桜織は、躊躇っていた。というより、男の逸物に視線を釘付けにされていた。現役の女学生でありながら、昭和の女の匂いを漂わせる彼女のことだ。男の逸物をまじまじと目にするのは、これが初めてなんだろう。
 その淑女ぶりに、画面内の男すべてが生唾を呑む。それは俺も同じだ。清純な娘に惹かれるのは、オスの本能なのか。
『早くしろ。コッチは一ヶ月オンナ抱いてねぇからよ、溜まってんだ』
 再度そう命じられると、桜織はようやく呪縛から説かれたように目を瞬かせ、男の足元に跪いた。
 カメラが下を向く。桜織と男のいる辺りには、切り開いたダンボールが敷かれていた。粗末な敷物だが、コンクリートへ直に膝をつくよりはマシというところか。
 カメラ右上に映る亀頭部分には、白い恥垢がびっしりとこびり付いていた。
『はは。しばらくフロ入ってねぇもんだからよ。せっかくだ、舐めてキレイにしてくれや』
 男はそう言って、汚らしいそれを桜織の唇に押し付ける。
『う!!』
 濃厚な男の匂いを間近で嗅がされ、桜織の顔がいよいよ強張る。女子高生といえば、父親の着衣の匂いすら嫌う年頃だ。垢まみれの逸物など、視界に入れることすら耐えがたいに違いない。
 だが桜織は、きゅっと唇を引き結ぶと、凛とした瞳で男を見上げる。
『……わかりました』
 静かな口調でそう言うと、品の良い唇を開いて男の物を咥える。
『おほっ』
 逸物の先が唇に挟み込まれると、男が喜びの声を上げた。気色悪いが、同じ男として理解はできる。一ヶ月女を抱いていない極限状態では、柔な唇が亀頭に触れるだけでも想像を絶する快感だろう。
『いひひっ、くすぐってぇ。おいテメェら、こんだけ溜まってる状態でチンコ舐められっとヤベエぞ。ベロが先っぽなぞるたびに、痺れる感覚が背中の方まで回ってきやがる。こりゃ数分ももたねーぞ』
 男は赤銅色の筋肉を蠢かしながら、上ずった声を出す。本当に気持ちが良さそうだ。その様子に、周りの男が生唾を呑む。
『おら、もっとベロンベロン舐め回せよ。んな遠慮してねーでよ』
『遠慮っつか、単にオメーが嫌われてるだけじゃねぇのか。んなバッチくて臭ぇチンポなんざ、恥知らずなギャルでも嫌がんぜ』
『ギャルっておめぇ、いつの言葉だよ。今はJK(ジェーケー)ってんだぜ、JK』
『ほーぉ、さすが援交マニアは詳しいな!』
『ああ!? 偉そうに言うんじゃねぇよ、このレイプ魔が!!』
『おいおい、喧嘩すんな。ここにいるのはみーんな、セックス絡みで借金こさえたバカばっかだろ。同じ穴のムジナってやつだ。ちなみにこれから、穴兄弟にもなる仲だぜ?』
『はっ、つまんねーよ。しかし、ひでえよなぁ、人一倍オンナ好きな俺らに、一ヶ月も抱かせねぇなんてよぉ!! ああ、早くやりてぇよお!! オウ杉さん、チャチャッと出して次に回してくれや!』
 浮浪者のような連中は、ひたすらに醜い罵りあいを繰り返していた。中年と呼んでいい歳にもかかわらず、その言動は未熟だ。欲望を抑えず無計画に生き、タコ部屋という地獄の底に堕ちてなお反省しない……そんな人となりが透けて見える。17年しか生きていないにもかかわらず、成熟した雰囲気を纏う桜織とは対照的だ。
『そろそろ出そうだ。そのまま先っちょを舌で舐めてろ』
 “劣”のオスが“優”のメスの頭を掴み、奉仕に注文をつける。かすかに水音のような音が漏れ聞こえはじめた。
『……うひひっ、いいぞ。よし、そろそろ口窄めて前後にしごけ…………ううう、あああ……っしゃ、いくぞ、いくぞオラッ!!』
 吼えるようなその叫びの後、男の尻肉が引き締まる。
『うぶっ!』
 桜織が眉を顰めた。どうやら精子を口の中に出されているらしい。
『おーーすげぇ、出てる、すげえ出てるっ!!』
 男は上ずった声を漏らしながら、どくんどくんと腿の筋肉を蠢かす。
 この射精が、また長い。数秒経っても、腿の蠢きが続いている。
『オイオイ、どんだけ出してんだよ!?』
『そら出るぜ、こんだけ久しぶりだとよぉ! チンポがびくんびくん跳ねて、ションベンの管が焼けるみてぇに熱くて、こんなん初めてだ!!』
 その言葉で、また男達の喉が鳴った。否定的に見ている俺ですら、奴の快感の度合いを想像してしまう。
 たっぷり10秒ほどしてから、ようやく1人目の男が腰を離した。鈴口と桜織の唇との間に、真っ白な筋を伸ばしながら。
『うぶ、ぐっ……!!』
 桜織が噎せる。当然だ。初めての口での奉仕で、あれだけたっぷり出されて平然としていられるわけがない。だが男は、俯きかけた桜織の顎を無情にも掴み上げる。
『おい。どんだけ出たか、他の連中にも見せてやれ』
 男は静かな声で命じた。射精直後だけあって声色こそ落ち着いているが、有無を言わせずという響きだ。
『……えあっ』
 桜織は一瞬躊躇ったものの、命じられた通りに口を開く。ピンク色の口内に、白濁混じりの舌が覗いた。
『もっとだ。舌ァ出せ』
 重ねてそう命令を受け、舌は外へ押し出される。
『はははっ、すげぇな! ベロが見えねぇじゃねえか!』
『ああ。ばっちりザーメンでコーティングされてやがる!』
 労働者連中が盛り上がる通り、桜織の赤い舌は白濁で覆われていた。
 俺もつい数日前までは、欲情に駆られて自慰に耽り、手の平一杯に射精していた。我ながらよく出した、という充足感があったものだ。だが今映像に映っている射精量は、その倍はあるだろう。まさに驚異的という他ない。
『くくっ……』
 存分に歓声を浴びた1人目の男は、笑顔のまま桜織の頭に手を置いた。
『よーし、そろそろ飲んでいいぞ』
 飲んでいい──そう言われたところで、年頃の少女には微塵の有難味もないだろう。あれほど濃くて精液など、即座に吐き出したいはずだ。
 それでも桜織は、迷いなく“飲み下す”準備を整えた。口を閉じ、喉を動かして。うっすらと開かれた瞳は、何かを悟った僧侶のようだ。昨日までの3人は、調教師の圧に屈したり、心を折られて渋々従わされている形だった。だが、桜織は違う。覚悟や責任感を胸に抱いて、自分の意思で従う事を決めている……そんな風に見える。
『ん、ぐっ……!!』
 桜織の喉が鳴る。相当に苦しいらしく、薄く開いた瞼が震えている。それでも彼女は、気合いであの量を飲み下した。
『へへ、マジで“ゴックン”しやがった!』
『ヤベェ、そそるぜ。こんな真面目そうな娘がよぉ!!』
 清楚な女子生徒の精飲を前に、男達が目を細める。そしてその中の一人が、堪らないという様子で歩み出た。
『今度は俺だ。休んでる暇ァねぇぞ!』
 そう叫びながら、桜織の口をこじ開けて怒張を咥えさせる。
『んぐっ、ん……』
 桜織は目頭を歪めながらも、大きな抵抗はせずに逸物を迎え入れていた。

 二人目は、さっきの男とは対照的だ。日焼けとは縁遠い男。肌が白いだけに、足に生えた毛や体の汚れ具合がよく目立つ。そんな男が、髪の毛一本の乱れすらないキッチリとした女学生に奉仕させる様は、いかにも犯罪的だった。
 しかも奴は、滾る欲望を抑えきれないという風で、根元まで逸物を咥えこませる。
『おお゛え゛っ! ゥん……ぶふっ、ごぶっ!!』
 喉へ強引に突っ込まれれば、さすがの桜織もえずき、噎せる。膝をパタパタと上下させているところを見ると、かなり苦しそうだ。
『おい、あんまムチャして吐かすんじゃねぇぞ!』
『おお。飲ませたザーメンの量で棒引き額が変わるんだ。そいつが吐いたらオジャンだぜ?』
『解ってる、でもコイツ下手でよぉ。ちっとはノドでも扱かねえと』
『んだよ。射精力が弱ぇんじゃねぇか、オッサン』
『バカヤロー、長く溜めすぎただけだ!』
 他の連中と言い争った末に、色白男は責め方を変えた。喉奥まで入れない代わりに、手で桜織の頬を掴み、凹ませた口で扱くようなやり方だ。
『んぐっ、んんんっ!!』
 桜織が苦しそうに呻いても、色白男は腰の動きを止めない。
『はあっ、はあっ、はあっ…………』
 長いストロークで快感を貪りながら、激しく喘ぐ。射精間近な時の呼吸だ。さっきの男もそうだが、女日照りというだけあって、射精までの時間は短い。
『ううう……よし、よぉし来た!!いくぞおぉっ!!』
 男はそう言って、逸物を深々と咥えさせたまま腰を止めた。
『んんっ!!』
 桜織からまた呻きが上がる。色白男に掴まれた頬が蠢くのは、苦痛のせいか。
 この2人目の男も、射精は長い。尻と太腿が引き締まっては緩み、また引き締まる。口内にどくどくと精を流し込んでいるのが見えるようだ。
『あああすげぇ。マジでどんどん出るな、一ヶ月ぶりのザーメン!! マジで、ションベンの管に焼けた針金入れられてるみてぇだ。気持ちいいの通り越して、しんどいレベルだぜ』
『だろ。やべぇほど出んだって!』
 男はやはり上ずった声で、1人目の男と感想を共有する。
『よし、そのまま鈴口を吸え。管に残ったザーメンを残らず吸い上げろ』
 ひと息ついた男から発せられるのは、新しい命令だ。頬から手を離したのは、口を自由に使えるようにするためらしい。そして桜織は、その命令に大人しく従っていた。
『ううっ、いいぞ。思いっきり射精した後の“掃除”は堪んねえな』
 色白男は満足げな笑みを浮かべ、桜織の口から逸物を抜く。奴の雰囲気は弛緩しきっているが、その周りを囲む男共は鼻息が荒い。
『っしゃあ、今度は俺だ!!』
 すぐに3人目が、桜織の口に逸物を押し付ける。
『こっちもだ、手でいいからよ!!』
 別の男も、桜織の手を取って自分の物を握らせる。小柄な桜織は手も小さく、平凡なサイズの逸物でも握るのがやっとだ。そんな彼女の手が必死に逸物を扱く様は、妙に背徳的だった。
『んぐうっ!!』
『おっほ、たまんねぇ!!』
『ほら。しゃぶるばっかじゃなくて、こっちも扱けや!』
『手も口も休ませんな。さっさと抜いて、俺らの相手もしてくれよ!』
 桜織の左右で男2人が喚く。その背後でも、別の何人かが逸物を自分で扱いている。まさに多対一の状況。そしてここからは、常にその状況が続くことになる。

 映像を見ているだけの俺でも、しんどくなってくる。それほどの画が続いた。
 桜織には、本当に休む間がない。
 ある時は、右を向いたまま男の逸物を握りしめ、窄めた口で亀頭を刺激しつづける。もちろん、左手で別の男の逸物を扱きながら。
『くあああ、出るぞっ!!』
 不慣れな奉仕でも、元々限界近い相手はすぐに果てる。そこまではいい。だが一度射精が始まれば、そこから10秒近くは口の中に出されつづける。どくどくと、信じられないような量を。飲みきれずに口の端から零れる分だけでも、普通の男の射精量と変わらない。
 奉仕からそのまま続く長い射精と、相当な気合いが必要な精飲。
『ぷはっ、はっ、はあっ、はぁっ……』
 逸物から口を離した時点で、桜織の息は上がっている。だが、休めない。
『今度はこっち頼むぜぇ、お嬢ちゃん!』
 そう言って今度は左を向かされ、同じ行為を強いられる。今度はさっきより太さのある逸物だ。男共は気が逸るあまり、最初は深く咥えこませる事が多い。
『んぐぅおえ゛っ!!』
 桜織はえずき上げながら、端整な顔を歪ませる。口を縦に開かされるせいで、頬のラインがひどい。そのまま何度も口内を凌辱され、ようやく男が我に返って桜織の頭から手を離す。奉仕の始めは、常にそんな具合だ。そこからはまたさっきのように、指と口で絶頂に導きながら、もう片手で逆サイドの男に奉仕する……という流れになる。
 右の男が射精すれば、次は左。それが終われば右に戻り、また左。それが繰り返される。これはきつい。ろくに息継ぎをせず運動を続けているわけだから、桜織の顔はどんどん赤くなっていく。深く咥えさせられる時、射精されている時の眉根の寄り具合も相当だ。
 でも、これはまだ“マシ”な部類だったんだ。

『あー、もう辛抱堪んねぇよ!俺にも早くやらせてくれ!!』
『そんなペースじゃこの人数回んねぇって。一気に3本やれ、3本!!』
 奉仕開始から小一時間が経った頃。後ろで順番待ちをしている連中が、とうとう不満を噴出させる。そしてその直後から、桜織は両手を掴み上げられ、左右の手で一本ずつ逸物を扱くよう強いられる。当然、正面の一人に口で奉仕しつつだ。
 この変化は大きい。両サイドを手で扱きながらとなれば、当然口での奉仕は疎かになる。そうなれば、男は焦れて自分本位に桜織の口を使う。
『もっと気ィいれてしゃぶれよ!!』
 そんな事を喚きながら、強引に。これだけでも充分に苦しいのは、桜織の“顔”を見れば解る。極太を咥えこまされる時には、頬の横に線が浮く。長さがある物の場合は、喉奥へ入れられない関係から頬を突かれる形になるが、そういう時の顔の崩れ具合は悲惨だった。
 だがそれ以上に問題なのが、射精のタイミングだ。さっきまでは左右どちらかの一本を射精させ、それが終われば逆サイド……と、射精するのはあくまで一本ずつだった。だが、男共が遠慮しなくなった今は違う。正面と左右の男、3人全員が射精を待ち焦がれている。となれば当然、口内発射の機会は奪い合いだ。
『うおおおっ、すげぇ、出るわ出るわ……!!』
『くっ、こっちもだ。出すぞっ!!』
 一人が口内に射精している最中、手で扱かせていた奴が叫び、桜織の三つ編みを掴む。
『あ、おい待て馬鹿っ!まだ俺が射精してる最中だろうが!!』
 射精中の男が怒鳴り、桜織の口からこぼれた精液が、制服のスカートに白抜きを作る。そんな場面が何度もあった。桜織からすれば、立て続けに精液を飲まされまくるわけだから、いよいよ堪らない。
 だが、この時点でもようやく50人のうち約半分の処理が終わっただけだ。残りの20人あまりは相変わらず眼を血走らせ、勃起した逸物を握りしめている。そしてそんな連中が、順番を譲り合うはずもない。
『どけよ。俺が先だ!』
『ふざけんな、次ぁ俺だ!!』
 次に奉仕させる順番を巡って、桜織の前で諍いを始める奴も出てくる。
『おいおい、モメてる場合かよ。制限時間があるって言ったろ? 借金がいくら減るかは、オメェらクズのチームワーク次第だぜ』
 ここで撮影者が、煽り交じりに声を掛けた。
『あ!?』
 睨み合う2人の視線が、鋭いままカメラの方を向き、一秒後、慌てて逸らされる。どうやらカメラを構える男は、相当な強面らしい。
『そうだ、そうやって大人しくしてりゃあいい。どっちが先か決まらねぇなら、ジャンケンでもしろや。まあオメェら程度の粗チンなら、二本纏めて咥えさせてちょうどいいかもしれねぇがな!』
 奴が続けて吐いた言葉は、とんでもないものだった。さっきと同じく挑発を交えつつ、ハードな責めを提示する。頭と下半身に血が集まっている男なら、乗らないわけがない……そう考えてのことだろう。
 そして男2人は、まんまとその策に嵌まる。
『2本挿し……か。なるほどねぇ』
『悪くねぇなあ、それも』
 連中は2人して顔を見合わせ、表情を変えた。口角が上がるだけで怒りの表情が笑顔になるんだから、不思議なものだ。
『ってなわけでよ、クチ開けや嬢ちゃん』
 その言葉を聞き、桜織は大人しく従う。しかし昭和の女というイメージ通り、大口を開くことに慣れていない様子だ。
『ヘッ、お上品なこったぜ』
『ああ、だがそこが堪んねぇ。貞淑ってやつかね。華奢なガキだが、未亡人犯してる気がすんぜ』
 男2人は口元を吊り上げながら、開いた桜織の口に逸物を捻じ込んでいく。
『んん゛、えあ゛……!!』
 桜織の口が一瞬にして大きく開き、頬の肉が歪む。ヤクザ男は“粗チン”と蔑んでいたが、連中の逸物は充分に人並みのサイズだ。それを二本咥え込めば、顔の形だって変わる。たとえアイドルか人形かという美貌の持ち主でも。
『おーっ、圧迫感がすげえな』
『野郎のチンコと触れ合ってんのは気色悪いが、征服感がハンパねぇ。嬢ちゃんの顔も見物だしな、こりゃなかなか興奮すんぜ!』
 男2人はそんな事を言いながら、尻を前後させる。
『え゛あっ、あ゛…はごっお゛っ!!』
 眉をハの字に下げながら、濁った声を漏らす桜織。彼女の声は本来綺麗なんだが、さすがに異物で口を満たされ、蹂躙される状態では美声にはならない。そんな桜織を前に、男共は嗜虐心を煽られたらしい。
『よう、手がお留守だぜ。口だけじゃ追っつかねぇだろ』
 そう言って、苦戦する桜織の両手を奉仕に回させる。
『んん゛……!!』
 桜織の眉がますます下がり、内心の困惑ぶりを露わにする。口も歪にへし曲がっていて、清楚とは縁遠い顔のはずだ。
 それでも、彼女の瞳は静かだった。憂いを帯びた様子で下を向いてはいるものの、狂乱している風じゃない。その目の綺麗さだけで、彼女の清楚さは十分に保たれている。穢されてもなお鋭さを保っていた、藤花の眼のように。

 ただ、この時点で桜織の胃は、かなりの精液で満たされてたんだろう。
『おらっ、出すぞ!』
『こっちもだ、零すんじゃねぇぞ!!』
 口に捻じ込んでいる2人が叫び、開いた口内に精液を浴びせかける。
『ぶあっ、あはっ!!』
 喉の奥に精液を浴び、咳き込む桜織。彼女は苦しさで逸物を握りしめたらしく、手で奉仕させていた二人も限界を迎える。
『うあっ、堪んねえ……もう出るぞ!!』
『こっちもだ、ぎゅーっとやられるとガマンできねぇ!!』
 震える声でそう言いながら、二本の逸物を引き抜かれたばかりの口内に逸物を捻じ込む。射精は、亀頭が唇の内へ入り込むのとほぼ同時だ。桜織からすれば、ほぼ同時に4回口内射精されたに等しい。真面目で誠実な彼女は、それでも飲み下そうとしていた。かなりの量を下唇から零しつつも、ゴクゴクと喉を鳴らして嚥下していく。だが、その最中に限界が訪れた。
『う、うぶっ……ん゛!!』
 桜織の瞳が見開かれ、顎が浮く。誰が見ても明らかな、嘔吐の前兆だ。
『おい、吐くなっ!!』
『吐くんじゃねぇぞ、オイッ!!』
 事情を察した何人かが怒声を上げるが、すでに遅い。震える桜織の手が、口から二本の逸物を引き抜く。整った顔が下を向く。
『うえ゛っ……おえ゛ええ゛え゛ぇ゛っ!!!』
 凄まじい声が響き渡った。口からあふれる精液の量も凄い。そして極めつけに、それがダンボールへ落ちていく音もひどい。バダバダという、トタン板に水を掛けた時のような音。
『て、テメェッ! せっかく俺らが飲ませたザーメンを!!』
 当然、男共は眉を吊り上げる。
『す、すみません……』
『すみませんで済むかよ、勿体ねぇ!』
『そうだ、床に吐いたモン啜れ!』
 桜織が謝っても、男共は許さない。三つ編みを引っ張って桜織の頭を下げ、ダンボールに口を付けさせる。桜織は、それでも言うままに従っていた。ずっ、ずずっ、と音をさせ、ダンボールの上の精液を啜っていく。最終的には従うしかない状況でも、普通はもっと躊躇するはずだ。だが、桜織の決断は早い。何が彼女をそこまでさせるんだろう。
『くくっ、お前らも鬼畜だな。秀才女子高生にここまでさせるなんてよ』
 ヤクザ男の笑い声が聴こえる。奴の構えるカメラは、ダンボールを舐める桜織の姿を無慈悲に映し出していた。痛ましい姿だ。だが外道にとっては、さぞ扇情的な光景だろう。カメラの端に映る男達の足が、落ち着きなく動く。
『なあ、そろそろいいんじゃねぇか?』
『そうだぜ。もう半分は啜らせたんだしよ。後はこっから、吐いた分以上に呑ませりゃいい』
『だな。どうせまだまだ出るんだ、早く続きやろうぜ!!』
 そんな声が沸き起こり、また桜織の三つ編みが引っ張られる。
『うう゛!!』
 桜織から呻き声が漏れた。
 この動画で、桜織の艶やかな黒髪が掴まれたのは何度目だろう。最初は毛の一本の乱れすらなかったというのに、今は至る所の毛が跳ね、寝癖のようになっている。改めて見れば、顔の汚れもひどい。目元といい鼻といい口周りといい、かなりの部分が精液塗れだ。元が清楚なだけに、そういう乱れや汚れが余計に惨たらしく見えた。
『へへ、イイ顔んなってやがる。じゃ、ラウンド2と行くか』
『ああ。上手い具合に、さっきのでちょうど1巡したとこだしよ』
 醜い桜織の姿を見て、男共が笑う。どうやら全員が一度は射精したようだが、奴らの下半身にぶら下がる逸物は、まだまだ張りを残していた。一ヶ月の禁欲のせいか、それとも部屋に充満するガスのせいか。

 2巡目に入っても、男共の獣ぶりは相変わらずだった。最初のように順番を巡って衝突することはない。とはいえ、快楽を貪ろうという姿勢は相変わらずだ。桜織は、その50人分の性欲を、口と手で処理しつづけるしかない。
『んぶっ、ん゛っ!!ふううんぐっ……!!』
 苦しげな呻きを漏らしつづけた果てに、大量の精をどくどくと口内に流し込まれる。それが何人分続いただろう。
『ん……おぐっ!! んぶっ、ぶふっ!!』
 桜織が激しく咳き込んだ。背中ごと前後に揺らすような咳だ。
『ははっ! 見ろよコイツ、鼻からザーメン出してるぜ!!』
 一人が嘲笑う通り、桜織の小さな鼻からは、白い液が垂れている。それは、彼女の余裕のなさをよく表していた。
『はぁっ、はぁっ……!!』
 なんとか咳が収まってからも、桜織の呼吸は荒い。思わず吐き戻すほどの状態から、さらに大量の精液を呑まされつづけてるんだ。普通なら「もう精液は飲めない」と音を上げてもおかしくない。そう口にしないだけでも、芯の強さが判るというものだ。
 ただ……それでも人間である以上、抑え切れない反応はある。頭を殴られた時に手で押さえたり、膝を蹴られて蹲ったり。そういう、身体が反射的に起こす行動を、意思の力で抑えきるのは難しい。
 映像開始から1時間が経とうという頃、桜織が示すようになった拒絶反応は、多分そういう類のものだろう。
『ぶぐっ、ぶはっ!! はぁっ、はぁっ……ごはっ!!』
 口の中に射精されるたび、桜織は激しく咳き込む。もはや上半身を前傾させるだけでなく、身体全体を仰け反らせている。おそらくは彼女の本能が、無意識に逃げるよう指示してるんだろう。だが、それを男共が良しとするはずもない。
『おら、フラフラすんなよ!!』
『誰か首押さえとけッ!!』
 怒号が飛び交い、その末に桜織は拘束される。この拘束の仕方というのが、また酷い。曲げた腕で桜織の首を挟みこみ、チョークスリーパーのように固定する。その状態で咥え込ませるんだ。
 反射行動を強引に抑え込まれれば、桜織もじっとはしていられない。
『かはっ、あはっ!!げはっ、がああっ!!』
 掠れたような呻きを漏らしながら、首にかかった手を掴む。膝立ちから崩れた体育座りになり、足をばたつかせる。
『へへ、暴れてる暴れてる。まるで拷問だな』
『おーっ、白パンとは流石だねぇ! シャバにいた頃は毎日JKのパンツ覗いてたもんだが、都会で白を穿く子はほとんどいないんだよな』
 桜織の前に並ぶ男共は、下卑た笑いを浮かべながら、容赦なくしゃぶらせつづける。極太で縦に大口を開かせたり、長い物で頬肉を犯したり、二本同時に咥えさせたり。そして全員が全員、きっちりと口内に精を放った。
『う゛っ、ううう゛え゛っ!!げほっ、おお゛え゛っ!!!』
 桜織は激しく咳き込み、何度も吐きかける。だが今度は、男共がそれを許さない。
『おい、吐くんじゃねぇ! お前の胃に溜まったザーメンで、俺らの借金が減るんだ。何遍もゲロったら承知しねぇぞ!!』
 そう恫喝しながら、日焼けした手で桜織の口を覆う。そのまま天井を仰ぐように顔を上げさせられれば、桜織は震えながら嘔吐の波を乗り切り、喉を鳴らして精液を飲み下すしかない。
『おーっし、飲んだな。んじゃ今度はアッチやってやれ』
 桜織が精液を飲んだことを確認すると、すぐに責めが再開される。こんな状態がずっと続いていた。

 俺は、ここでディスプレイに触れ、早送りを選択した。丸ごと責めを見るのが、精神的に辛くなってきたからだ。だが、ある映像が気になって停止ボタンを押す。
 3段腹の巨漢相手に、肉へ顔を埋めるようにして奉仕する桜織。その後ろに一人の男が屈み込み、腹の辺りを撫でている。あれは、何をしているんだ。俺はそう気になり、再生ボタンをタッチする。
『ん、んぐゥ……んぐっ、ぐっ…………!!』
 巨漢の毛むくじゃらの太腿に手を宛がったまま、桜織が呻いている。どうやら精液を飲まされている最中らしい。巨漢はそんな桜織の頭に掌を乗せ、ぼーっと突っ立ったまま、小便でもするように喉奥射精を続けているようだった。
 ただそれだけなら、見飽きるほど見てきた光景だ。問題は、桜織の背後から抱きつくようにして、胃の辺りを押さえている男だった。
『おーっ、張ってる張ってる。だいぶ溜まってきたな』
 奴は、そう口にした。内容自体は解りきったことだ。これだけ長い時間、50人が精液を飲ませ続けているんだから。だが、改めて胃に触れた上でそう言葉に出されると、胸にくるものがある。当事者の桜織となれば尚更だろう。
『へへ、もうどんぐらい溜まってんだろうな。リットルは超えてんべ?』
『さすがに余裕だろ。こんだけ飲ませまくってんだから』
『どうかね。1リットルって結構多いぜ?』
『まぁどっちにしろ、1滴でも多く飲ませようぜ!!』
 小汚い男共は、自分達の成果に満足しつつ気合を入れなおす。

 そこから、さらに数十分。
『お、ごおっ……ほおぉっ、お゛ーっ…………!!』
 桜織の呻きには、常に嘔吐を思わせる重苦しさが混じるようになっていた。その声は長く続く。そろそろ3巡目、どいつもこいつもそうそう射精しなくなってきているからだ。ただしガスの影響か、勃起力だけは衰えている様子がない。つまり桜織は、硬いままの逸物をずっと咥えさせられていることになる。その結果、どうなるか。決まっている。
『おいおい、やる気出してしゃぶれや嬢ちゃん。顎に力入ってねーぞ』
 口を使っている一人が不満を漏らす。奴は舌打ちしながら、桜織の口から逸物を引き抜いた。そして、桜織の後頭部へと手を伸ばす。狙いは、三つ編みだ。
『あっ!』
 小さな悲鳴が上がる。それもそのはずだ。男は三つ編みを引っ張りながら、逸物に巻きつけるようにして扱いていた。
『お、髪コキか?』
『ああ、さすが名門校に通うお嬢様の髪だ。ちっと汗で湿ってるが、サラサラしてやがる。極上のタオルでシコってる感じでよ、悪くねぇぜこりゃ……!!』
 奴はそう言って、“女の命”に精液と唾液を塗りこめてから、逸物を解放する。今度は桜織の髪ではなく、口の中を穢すために。
『げふっ、ぇは……ヵはっ……はっ、はっ、はっ……!』
 桜織は喉奥で精液を受け止めた。精液の絡む舌を口外に晒し、犬のような呼吸を繰り返しながら。
 顔は赤く、汗もひどい。風邪でも引いているようだ。だがその顔は、妙に色っぽくもあった。目元がしっかりと意思を残しているせいだろうか。
『ソソる面だな。ガキのくせして、いっちょ前に発情してやがんのか?』
『こんだけのオス臭に当てられて、特濃のザーメンも味わってんだ。そりゃヘンな気分にもなるよなぁ』
『ありえるな。今ドキの女子高生は、どいつもこいつも援交しまくるぐらいスケベだからよう』
 男共は不愉快な声色で、不愉快な内容を口走る。仮に桜織が発情しているにしても、それは部屋に充満しつつあるガスのせいだろう。あるいは連中もそれを承知の上で、桜織を煽っているのかもしれないが。
『さて。次の奴と行きてぇところだが、そろそろこいつもバテてきてっからな。しゃぶらせてっと回転率が悪すぎんぜ?』
『確かに。今のなんて3分ぐらい掛かってたしな。こうなりゃ、テメェで扱いてクチん中に射精してく方がよさそうだ』
『おう、異議なし!』
 日本語を話せる連中がジェスチャーを交えて話し合い、中国人らしい連中や東南アジア顔も頷く。
『うっし、決まり! んじゃ飲ませてくか!!』
 その掛け声を合図に、男共が一斉に逸物を扱きはじめる。
『おおっ、まだまだ出るもんだな……。いくぞ、いくぞおっ!!』
『たっぷり出してやっからな。舌ァ出して全部飲めよ!!』
 そんな言葉と共に、精液が桜織の舌へと浴びせかけられる。最初に比べれば薄く、水分も多いが、しっかりと白い精液だ。勢いもかなりのもので、口だけでなく鼻や頬、額にまで粘液が飛び散っている。
『ぇあ゛、あ゛……ん゛っぶ! れぉお……ほあっ、お……』
 桜織は舌を出したまま小刻みに震えていた。その舌はたちまち白濁に覆われて見えなくなる。
『よし、第一弾はこんなもんだな。飲んでいいぞ』
 射精し終えた男の一人が、ひと息つきながら許可を出す。有難味の欠片もない許可……というより、もはや命令だ。それを受けて桜織は、覚悟を決めたように口を閉じる。
 そして、白い喉が蠢いた。ぐごり、という音がする。状況からして飲み下す音なんだろうが、とてもそうとは信じられない。
『はっ、すげぇ音だな。一発目より粘りが少ねぇから、喉越しがいいだろ? まだまだ弾はあるんだ、ガンガン飲ませてやっからな』
 どこからか聴こえたその言葉通り、男共が入れ替わる。第一陣の5人が離れ、今度は6人が桜織を囲む。

 荒い呼吸と、呻き声。「吐くな」という怒声と、手足のばたつく音。それが延々と続く。
 桜織が限界を迎えて身を捩るたびに、拘束が増えていった。両腕を万歳の格好で掴み上げ、顎を手で包み込むように固定し、舌先を指で引っ張り出す。そうしてスペースの空いた口内に、連続で精液が浴びせかけられる。
 右から左から、顎の方から、鼻の上から。顔と制服を白く汚しながら、精液が流し込まれる。刻一刻と薄まる精液が、小さな口を満たしていく。
『おーすげぇ、口ン中が完全に精液のプールだよ』
 誰かが漏らしたこの言葉通り。まるでドロドロとした白い沼の中に、舌の先だけが浮いている感じだ。
 それらの苦痛で、桜織の顔には溝や皺が生まれていた。そうなると、和人形を思わせる桜織でも、彫りの深い西洋人顔に見えてくる。顔中に白いパックをしているような状態でもあるため、桜織に近しい友人にこの場面を見せても、彼女だと気付けるかは怪しいところだ。
『残り10分だ。早く自由の身になりたきゃ、タマぁ空っぽにするつもりで出し尽くせよ!!』
 ヤクザ男が声を響かせる。
『くそ、もう時間がねぇっ!』
『こうなりゃラストスパートだ! まだ出せる奴は最前列来い、3人でやんぞ!!』
 男共は、とうとう3本の逸物を桜織の口へと突っ込みはじめる。
『んごっ、がっ!? あごっ、ごも゛お゛っ!!もぉい゛えあ゛っ!!』
 当然、桜織の反応は激しい。だが男共は動きを止めない。
『3人同時だと、さすがに腰動かしづれーな!』
『ま、こんだけ勃起してりゃ唇に擦れるだけでイケんだろ』
『だな。俺らと他の奴らじゃ精力が違ぇ。やっぱ男らしさ保つにゃ、嫁やフーゾクよりレイプだぜ!』
 物騒な台詞を吐きながら、3人は桜織を蹂躙し続ける。
『ごぶっ、ごぼっ……ごお゛う゛ええ゛っ!!もごおおお゛お゛っっ!!!』
 凄まじい声が漏れているが、まさか3人同時に射精されているんだろうか。男共の尻に隠れて、口元は全く見えない。だがスカートがめくれることも気にせずに暴れ回る足は、普通ではない苦しみを訴えている。
 白い内腿は濡れていた。あれは精液か、唾液か、それとも……。

『そこまでだ!』
 カメラ近くから大声が響く。虎が吼えるようなその雄叫びに、桜織を取り囲んでいた連中が肩を竦める。
『そのままじっとしてろ』
 その言葉の後、カメラの映す先が変わった。少し離れた場所の白バケツを捉え、次の瞬間、画面左側から刺青の入った腕が映り込む。おそらく撮影者のものだろう。多少タトゥーの入ったチンピラなら今までにもいたが、こっちはカメラに映る部分……肘の上から手首までが、びっしりと和彫りで覆われている。どう見ても堅気の腕じゃない。
『さて。お楽しみの計測タイムだぜ』
 撮影者はそう言って、桜織のすぐ前にバケツを置く。白くコーティングされたバケツの内側には、赤線で目盛りが刻んであるようだ。最大2リットルまで測れ、真ん中の1リットルラインにはやや長めの赤線が、それ以外は100ミリリットル刻みで短い赤線が引かれている。
『ノドに指突っ込んで、胃の中のモンここに吐け』
 太い指がバケツの縁をゴンゴンと叩き、次にカメラは桜織の方を向く。桜織の周りから、潮が引くようにさっと男達が離れる。
『……わかり、ました』
 桜織はここでも逆らわず、熱っぽい顔でバケツを覗き込む。そして命じられたまま、開いた口の中に指を突っ込んだ。
『う、うお゛……ふんん゛うむ゛ぉおお゛ええ゛え゛え゛っっ!!!!』
 女の出すものとは思えないような、えずき声。俺は今さら驚かない。天使のような千代里も、凛とした雰囲気の藤花も、吐くときにはこんな声になっていたから。どれほど気高い存在でも、追い込まれる時にはこういう声も出ると知っているから。
 だが、画面内の男共は爆笑する。口々に何かを呟きながら、腹を抱えて。とはいえ、連中の視線はしっかりとバケツの中に注がれていた。桜織の喉から次々とあふれ出す白濁が、バケツへと溜まっていく。
『うへ、すげぇ量だな。改めて見ると』
『あれ全部、俺らのザーメンなんだよな……』
『くっせぇ! チーズみてぇだ』
 色々な反応がある中で、桜織の口からの逆流がとうとう止まる。波打つ液面が静まったラインは……600ミリリットル。
『は、はぁっ!? たったの600ミリ!?』
『おいおいおいウソだろ、1リットルもいかねえのかよ!?』
『ざけんな!! もっと出せや、胃の中のモン全部よぉ!!』
 まさに、阿鼻叫喚。何人もの男が眼を剥き、桜織の腹や胃を圧迫しはじめる。
『んぐっ、お゛……お゛え、え゛ぁお゛っ!!』
 桜織の喉元が蠢き、逆流が再開する。だが、それはほんの数秒のこと。いくらか追加で白濁が注がれたとはいえ、せいぜい650ミリリットルというところだ。
『ほう、なかなかのモンじゃねぇか。男の射精量ってなぁ、平均3.5ミリリットルっつうからな。その180倍以上……一人頭で軽く3倍は行ってるわけだ』
 撮影者の男が白々しく賞賛する。奴は知ってたんだろう。いかに1ヶ月溜め込んだ男が50人いるとはいえ、大した量にならないことを。だからこそリットル100万なんて気前のいい約束をしたんだ。
『マジかよ……あんだけ必死こいて、60万ぽっちか?』
『クソッ、雀の涙もいいとこだぜ!』
 タコ部屋の連中は当てが外れたらしく、床を叩きながら嘆く。60万で雀の涙ということは、奴の借金は一千万ぐらいはあるということか。
 カメラは、その絶望ぶりをゆっくりと回し映していた。そうしてしばらく絶望を愉しんでから、撮影者が立ち上がる。

『なんだオメェら、借金背負った時みてぇにしょぼくれやがって。思ったより少ねぇとはいえ、減額されるんだぜ?』
 そう声を掛けても、顔を上げる男共の目は死んだままだ。それを前に、撮影者は芝居がかった溜め息を吐く。
『……ったく、しょうがねぇな。なら、次のチャンスをやるよ』
 その一言で、男達の目が大きさを増した。逆に桜織の顔は強張る。彼女だけは、この後に起きることを知っているようだ。
『ちゃ、チャンスって……?』
『一体、何すりゃいいんです!?』
 前のめりになって尋ねる男達に、撮影者が苦笑する。
『なに、簡単だ。媚薬ガスをたらふく吸って発情してるそこのガキを、ただイカせまくりゃあいい。一回イカせるごとに5,000円やる。そんなら覇気も出んだろうが』
 その言葉に、男達が一瞬凍りついた。そして、その次の瞬間、歓喜に沸く。
『い、一回5千円!?』
『ま、待てよ。んじゃ10回で5万、20回で……えーっと、10万!?』
『す、すげぇ……!! あ、あの、電マとかも使ってもいいんスか!?』
『オウ。電マだろうがコスプレ衣装だろうが、希望がありゃ用意してやる』
『おおおっしゃ、だったらガンガン減らせっぞ、借金!!』
 男共は興奮を隠せない様子だった。確かに1回イカせれば5千円というのは破格だ。そんな割のいいバイトはどこを探したって有り得ない。借金漬けで悩んでいる人間が、そのチャンスに飛びつかないわけもない。
『そ、それ、いつからっスか!? 今!?』
 一人が逸物を揉みながら尋ねる。セックスでイカせるつもりなんだろう。
『いいや、明日スタートだ。だが、軽く予行演習といくか。試してぇモンもあるしな』
 撮影者がそう言って、一旦カメラを床に置く。一分ほどゴソゴソと物音がし、再びカメラが抱え上げられた時、映像には何かの道具が映り込んでいた。幅広のカチューシャという感じの代物。
『何スか、それ?』
 訝しむ声の中、撮影者は桜織に歩み寄り、その頭にカチューシャ状の道具を嵌めはじめた。慎重に位置を調整し、両端のクリップ部分で耳輪を挟んで固定する。
『こいつは脳波を計る機械でよ。女の絶頂時に記録されやすい脳波と、着けた人間の脳波が一致した時……平たく言やぁ、“この女がイクたびに”音が鳴るようになってんだ』
 そう説明されても、労働者連中の大半は呆けた顔だ。その様子に、撮影者が苦笑する。
『ま、口で説明するより実演した方がいいだろ。お前ら、いっぺんこの女イカせてみろ』
 その言葉で、男共に笑みが戻った。待っていたと言わんばかりだ。
『へへへ……んじゃ、遠慮なく』
 桜織の傍にいた数人が、さっそく桜織に触れる。ブレザーのボタンを外して前をはだけさせ、白ブラウス越しに胸を掴み。スカートをたくし上げ。
『おおお……』
『へへへ、すげぇ……』
 内腿が露出した瞬間、何人かが溜め息を漏らした。幼児体系でありながら、思ったよりも肉感的な内腿……そこが、うっすらと濡れていたからだ。男の一人がその水分を指で掬い、嗅いでみせる。
『ふむ……匂わねぇってことは、ションベンじゃねぇな。マン汁だぜこりゃ!』
『くくっ。ガキみてぇな身体して、しっかり濡れてやがるってか!?』
『俺らのオス臭をたっぷり嗅がされて興奮したのかよ、やらしいなぁ嬢ちゃん!』
 男共は下卑た笑いと共に、桜織を淫乱と謗る。単純な言葉責めだが、清廉潔白な少女には充分に効果的だ。
『…………っ!』
 桜織は、唇を噛みしめていた。視線を斜め下の床に落とし、頬を赤らめ。その表情は妙に色っぽい。映像開始から2時間あまり。部屋に充満するガスは彼女の肺を満たし、存分に効果を発揮しているようだ。
 そんな桜織を取り囲む男共は、息を荒げながらブラウスのボタンを外していく。細い胴を包む布がはらりと左右に別れ、桜色の肌が露わになる。その肌を覆うのは、上下とも白で揃えられたシルクの下着。お嬢様学校に通う生徒の規範、という感じだ。その規範を、すぐさま浅黒い手が覆い尽くす。
 女に飢えた男共に、遠慮などなかった。
『ち、乳だ、女の乳だっ!!』
『うへへへ、尻も柔らけえ!!!』
『おいおいおい、もうグチョグチョじゃねぇかよ、ええ!?』
 小ぶりなブラジャーを押し上げ、なまの乳房を掌に収める。ショーツにも二本の手が入り込んで、後ろからは尻肉を鷲掴みにし、前からは割れ目へと指を差し入れる。
『あっ……!!』
 桜織は眼を見開くが、抵抗はできない。彼女の小さな手は、頭の上で掴み上げられたからだ。
 浅黒い手が蠢き、白い下着に皺が寄る。
『はっ、はっ、はっ、はっ……』
 桜織の口から喘ぎが漏れる。ぐちゅぐちゅという水音が響き渡る。
『は、んん……ん、んっ!!』
 切ない呻きと共に、桜織が眉根を寄せた、その直後。

  ────リン

 鈴の音が響く。正確には、鈴の音を模した電子音だろう。
『よし、鳴ったな。頭がボヤけてても聴こえそうだろ? お前が一度イクたびに、この音が鳴るんだ』
 撮影している男が、達したばかりの桜織に告げる。
『……!』
 桜織の顔に、かすかな険しさが混じった。
『ちなみにイッた回数は、モニターに表示される仕掛けだ。フロア中にあっから、当然この部屋にも……っと、こっち向きじゃ映らねえな』
 その言葉の後、カメラが移動する。責められる桜織を捉えたまま、90度回転する動きだ。おかげで、今までとは違う壁面が映像内に映り込む。
 壁面には、確かにモニターが嵌め込まれていた。液晶画面には『1』の数字が2つ表示されている。1つは画面中央、1つは画面右側……Totalという表示の下だ。どうやらモニター内で、現在のカウントと総カウント数が管理されているらしい。
『なるほど。今このガキが一遍イったから、カウント1って訳ですかい』
『そういうこった。カウントが1000や2000の大台に乗ったのを見た女が、トロけ顔から現実に引き戻される瞬間は笑えるぜ?』
『はははっ、そりゃぜひ見てみてぇな!』
『ああ。このお嬢ちゃんは潔癖っぽいから、特にいい反応してくれそうだ!』
 撮影者の面白そうな声色に、労働者連中もつられて笑う。だが同時に奴らは、野望に満ちた視線をモニターに向けてもいた。奴らにとってあのカウントは、桜織を絶頂させた実績であると同時に、借金がいくら棒引きされるかの指標でもある。しかもその額、1カウントあたり5000円。多額の借金で地に繋がれている人間なら、眼を血走らせて当然だ。

 実際、あくまで予行演習と言われている今ですら、連中には熱が入りはじめていた。
『ほら、マンコ拝もうぜ!』
『いひひ、だな!!』
 下卑た笑みと共に、純白のショーツが太腿の半ばまでずり下げられる。
『くっ……!!』
 唇を噛む桜織。その顔と同じく、下から舐めるように撮影された性器も清楚そのものだ。ピンク色の一本筋。毛はほとんど生えていない。
『いいねえいいねえ、初物って感じだぜ!!』
『あああ堪んねぇなあ! こんな上品なオマンコが、明日っから俺ら共有の肉便器になんのかよ!?』
『くっそぉ……また勃ってきやがった。すぐにでもハメてぇぜ』
『ああ、だがそうもいかねぇ。せめて手マンでイカせまくってやろうぜ』
 気品に溢れる桜織とは対照的に、男共には品性の欠片もない。連中はショーツが横に伸びるまで桜織の足を開かせると、改めて割れ目の中に指を入れ、蠢かす。
『あ、ん……ん、んん……っ!!』
 桜織は口を噤み、喘ぎ声を漏らすまいとしていた。だが、リン、リン、と音が鳴り響き、モニターの数字が増えると、次第に息が荒くなっていく。
『へへへっ。思ったよりいいなぁこの音。イッたのが解って、責めるモチベーションが上がるぜ!』
『だよな。女ってなぁすぐイク演技するもんだが、機械が測ってくれるってんなら間違いねぇしよ!』
『もっともっとイカせてやろうぜ。せっかく丸解りなんだからよ!』
 男共は大喜びで乳房を揉み、割れ目の中で指を蠢かす。がっついている感はあるものの、どいつもそれなりに齢を重ねているだけあって、責め方は手馴れていた。迷いのない、ねっとりとした指遣いで、あらゆる性感帯を責めつづける。それを受けては、いかに初心な少女でも感じずにいられないんだろう。リン、リンと、また涼やかな音が響く。
『ん、くっ……!! はっ、はぁっ……はぁっ……!!』
 桜織が止めていた息を吐き出す。荒い息だ。額の汗もひどい。
『どうだ、立て続けにイクのはしんどいだろ。その責めが丸二週間、休みなく続くんだぜ?』
 撮影者の男が、桜織にそう呼びかけた。すると桜織は、表情を引き締めた。
『心配ありません』
 はっきりと言い切る言葉に、見開いた瞳。淑やかそうでいて、芯が強い。まさに大和撫子だ。
『なるほど、いい眼してやがる。ま、愚問だったか』
 撮影者はそう言って、嬉しそうにひと息挟んだ
『お前、呼び出されてどの責めを受けるか訊かれた時に、一番つらい責めを自分に割り当てろって言ったんだってな。クラスメイトを守るために、進んでぶっ壊されにいくってか。泣ける話じゃねぇか、ええ? 名門・蒼蘭女学院の委員長サマよ』
 この言葉を聴いて、ようやく桜織の我慢強さの理由が解った。責任感だ。委員長として級友を守る──その一念で、彼女は踏ん張っているんだ。まだ成人すらしていない少女だというのに、なんという気高さだろう。
 その気高さを前に、撮影者は言葉を重ねる。
『だがよ、本当に大丈夫か? 二週間休まずってなぁ、言葉で聞く以上にキツイみてぇでよ。もう10人近くがこの責めを受けてるが、ほぼ全員、途中で半狂乱になって逃げ出そうとしやがった。ちなみに逃げ出さなかった唯一の例外は、早々にイカレて逃げ出す判断すらできなかったってオチだ。毎度毎度ひっ捕まえて引きずり戻すのも面倒だからよ。テメェは手間かけさせんじゃねぇぞ?』
 そう語る声は淡々としていた。変に脅すでもなく、ただ事実を語っている感じだ。脅しにも色々あるが、こういう類の言葉が一番怖い。だが、桜織の顔色は変わらなかった。
『私は……壊れたりしません』
『はっ、最初は大体の奴がそう言うんだよ。お綺麗な澄まし顔でな。さっき言った、逃げ出す間もなく壊れた奴だってそうだった。あいつの場合、澄ましてるどころか、「自分がこの責めを耐えたら、その時は覚えてろ」なんて啖呵まで切りやがってな。あの態度にゃ、ちぃとムカついたんでよ。ガスを吸わせつつ、若くてガツガツした連中を10人ばかし宛がったら、二日後の朝にゃ狂ってた。ちなみにそん時の絶頂カウントは、たったの670回程度だったぜ。カウントなんざアテにならねぇもんだろ?』
 男はそう言って桜織の目元を引き攣らせた後、何かのジェスチャーで他のオス共を煽った。それを合図に、男共は呪縛が解けたように動き出す。
『……おおっし、続けっか!』
『おう。ついでに提案なんだが、もっと見えやすいように“ションベンスタイル”でやんのはどうよ?』
『はははっ、いいねぇ。こいつなら、持ち上げんのも簡単だしな!』
 男共は叫びあった末に、桜織の足を抱え上げる。膝裏を掴んで宙に浮かせ、アソコを正面に晒す格好……ちょうど、小さい子供にトイレをさせるポーズだ。
『きゃっ!!』
 流石の桜織も、これには悲鳴を上げる。だが、それこそ男共の狙い。連中は桜織の恥じらいぶりが見たくて、あえて屈辱的なポーズをさせているに違いない。
『ひひひ……』
 黄色い歯を見せて笑いながら、男共はさらに割れ目を刺激する。今度は指入れじゃなく、表面のビラビラを4本指で擦る動きだ。
『あっ、い、いやっ! やめてくださいっ!!』
 桜織の声は悲鳴に近い。この状況でも保たれる丁寧な言葉遣いは、彼女が真っ当な教育を受け、それを吸収した事の表れだ。どれほど下劣な相手であろうと、年上には敬語を使うべし──それを律儀に守るいじましさは、この悲惨な状況にあってむしろ痛々しい。
『へへへ、もうグチョグチョだな。汁が飛び散りまくってやがる』
『すげぇよな。たかが5分やそこら弄っただけでこれかよ?』 
 男共の指摘通り、桜織の女の部分からは透明な液体が溢れ続けていた。もう何時間も指責めを受けている、という感じの反応。ピンクの割れ目がまだ清楚さを保っているだけに、違和感は強い。
 矛盾の原因は、部屋に充満したガスだ。通風孔からは、今もドライアイスの煙のようなものが部屋内に流れ込みつづけている。煙は、床へ届くあたりで見えなくなるが、空気中を漂っているのは間違いない。それをたっぷりと吸い込んだ結果が、あの桜織の反応なんだ。
 いや、桜織だけじゃない。それを囲む50本の逸物も、すっかり回復して横や斜め上を向いている。いくら女に飢えているとはいえ、少なくとも3回以上射精した後でその勃起力は普通じゃない。

 そして、そのガスを吸い続けている人間はもう一人いる。そいつは今の今まで、一度も射精していない。
 モニターの絶頂カウントが20を超えた頃、奴はのっそりと動き出した。夢中になって桜織を嬲っていた連中も、その動きを瞬時に察知して手を止める。
『持ってろ』
 その言葉の後、画面が揺れた。カメラが別の人間に手渡されたらしい。
 別の撮影者がカメラを構えることで、これまでの撮影者の姿も映像に映り込む。どいつだ……と、探すまでもない。奴は見るからに別格だった。眼光の鋭さもそうだが、何より特徴的なのが、上半身を覆いつくす和彫りだ。なるほど、ひと睨みされただけで50人の男が萎縮するのも無理はない。
『ど、どうぞ……手越さん』
 一人また一人と桜織から男が離れ、手越と呼ばれた男が桜織の前に立つ頃には、全員が距離を置いて見守る体勢を作っていた。まるで虎の人食いショーにでも立ち会っているように。
『んなに離れなくても、取って食やしねぇよ』
 手越はゲラゲラと笑いながら、ズボンとボクサーパンツを脱ぎ捨てる。案の定、太腿と脚、尻も刺青で覆われている。もはや肌に墨が入っているというより、柄物を全身に着込んでいるという風だ。だが映像の中の視線は、どれ一つとしてその威圧的な肌を見ていない。51の瞳が釘付けになっているのは、奴の股間にそそり立つ剛直だ。
 とにかく、でかい。居並ぶ男共の誰よりも。おまけにその表面には、出来物のような不自然な突起がいくつもあった。
『一日で50人のチンポの形を覚えこまされたお前でも、こんなのを見るのは初めてだろ? 真珠を10コ埋め込んだ、自慢の逸物だ。中古で外車が買えるぐらいのカネ注ぎ込んだが、その甲斐あって中々の女殺しでよ。竿師として脂の乗ってた20、30の頃なんざ、何十って数の女をコレで虜にしたもんよ』
 奴は自慢げに語りながら、桜織の足に手をかけ、ゆっくりと足を開かせる。桜織は、菱形の瞳で手越を見据えていた。大股を開かされても。愛液まみれの割れ目に、凶器のような剛直を擦りつけられても。本当に芯の強い子だ。
『ほー。破瓜の間際でもその顔ってのはポイント高ぇな。だが、そのぶん楽しみだぜ。その綺麗な顔が、どう歪むのかがな!』
 手越は醜い笑みを浮かべ、腰を進めはじめた。太くて長い逸物が、割れ目を押し開いてメリメリと入り込んでいく。
『う……あ! はぅっ……!!』
 桜織の眉が下がり、口が開く。それはそうだ。どう考えても初めてにはきついサイズの逸物を、強引に押し込まれているんだから。
『苦しいか? 苦しいよなぁ、デカマラはよ』
 手越はにやけながら、半ばほど挿入した辺りで腰を止める。そして、ゆっくりと前後に腰を揺らしはじめた。
『う……あ、うぐうっ……!!』
『しかし、よく濡れてんな。シャブ打った女の股にソックリだぜ』
 顔を歪ませる桜織とは対照的に、手越は上機嫌だ。左手で桜織の右足首を掴んだまま、繰り返し腰を打ちつける。そのたびに、太い逸物が少しずつ深い所まで入り込んでいるようだった。20回もピストンする頃には、パンパンという肉のぶつかる音までしはじめる。
『う、ううう゛……っ!!』
 桜織は歯を食いしばっていた。痛いのか、それとも別の理由か。
『すげぇな、濡れたヒダが絡み付いてきやがる。普通処女をヤる時にゃ、縮こまった膣を無理矢理こじ開けて開発してくもんだがよ、その必要がねぇときた! オウ、お前ら喜べ。このガキ、お前らのチンポしゃぶりながら、一丁前に発情してやがったぜ!?』
 手越の悪意を込めた嘲りに、桜織が眉根を寄せた。
『そ、そんなこと……!!』
『そんなことねぇってのか? じゃあこの音はなんだよ。グチョグチョいってる、この音はよぉ!』
 手越が桜織の視線を受け止めながら、腰を激しく前後させる。すると、確かに湿った音が聴こえてきた。
『へへへ、すげぇ音してやがる!』
『ここまで聴こえるなんて相当だぜ。いやらしいなあ、委員長さんよ!!』
 遠巻きに見ている男共も、ここぞとばかりに嘲りに加わる。実に51対1。処女を失う痛みの中、そんな数の人間に罵られれば、精神的なストレスは計り知れない。

 だが、桜織の表情は覇気を失ってはいなかった。
『はぁ、はあっ、はぁっ……!!』
 荒い息を吐きながら、凌辱者である手越を見上げている。その澄んだ瞳は雄弁だった。自分に負い目などない。いくら謗られようと、自分の心は折れない。そう訴えている。そしてその訴えは、犯す手越にも伝わったようだ。
『ったく、大人しい顔して腹の据わったガキだ』
 手越はそう言って笑った。なぜか嬉しそうに。その反応は予想外だったんだろう、桜織が怪訝な表情になる。
『俺ぁ、芯の強ぇ女は好きだぜ。快楽漬けにしてぶっ壊すのが、格別に楽しいからよぉ!』
 そう叫び、手越が本格的に腰を使いはじめる。何十という女を虜にしたと豪語するだけあって、その腰使いはスムーズかつメリハリの利いたものだ。ディスプレイ越しに傍観している俺でも、受け側が気持ちいいだろうと想像がつくようなテクニック。それを続けられるうち、桜織の息遣いが変わりはじめた。
『あ、あっ……は、はっ……あ、はっ…………!!』
 どこか苦しそうだった息が、艶を帯びてくる。最初こそ勘違いかと思えるレベルだったが、そこから3分もすれば、はっきり甘い吐息と判るものになる。Mの字に開かされた足は、強張って細かに痙攣している。
『はっ、はっ……ん、んんっ!!』
 桜織の喉から、切ない呻きが漏れた。その、直後。

 ────リン────

 残酷なほどの明瞭さで、鈴の音が響いた。
『!!』
 まず息を呑んだのは、桜織。そこから一瞬遅れて、粘膜で繋がり合っている手越が笑みを浮かべ、最後に取り巻きのギャラリーが爆笑する。
『ははははっ、イキやがった!! あんな極太咥えこんでイクとか、とんでもねーヴァージンもいたもんだ!』
『残酷だねぇ。あんなに酷いことされてもイク“変態”だってことが、ハッキリ暴露されちゃうんだから』
『……うっ……!!』
 浴びせられた罵りに、とうとう桜織の顔が崩れる。愛液が溢れた事は、ガスのせいだと割り切れた。だが手越の腰遣いで達したのは、紛れもなく桜織自身の行為だ。責任の所在を他に求められない以上、謗りは直に胸を抉る。そうして顔を歪めた桜織を見下ろしながら、手越は犬歯を覗かせた。
『まずは一回目だな。まだまだ終わらせねぇぞ?』
 そう言って桜織の腰を抱え直し、リズミカルな腰使いを再開する。パンパンという小気味いい音と、水音がしはじめる。
『あっ、うあっ! あはっ、はあっ……!!』
 桜織の眉が顰められた。そしてその意味は、これまでとは違う。
『どうした委員長サマ、苦しそうじゃねぇか!』
『バーカ、ありゃ善がってんだよ。見てろ、すぐまたあの音が鳴るぜ?』
『ヤクザに犯されて逝っちまうなんてよ。優等生ほどアウトローに惹かれやすいってのはマジらしいな』
『へへ。って事ぁ、俺らにもチャンスあるってワケか。冴えない親父として一生終えるかと思ってたが、こりゃ運が向いてきたかな!』
 絶頂した以上、彼女の中にある最大の要素は、痛みでも屈辱でもない。快楽だ。少なくとも場の男共はそう見る。そう謗る。後ろ暗い部分を持たず、光の差す場所だけで生きてきた桜織にしてみれば、その恥辱もひとしおだろう。
 そんな状況の中、手越は巧みな技術で桜織を追い詰めていた。
『んっ、んんっ……んあ、あ、あっ…………!!』
 桜織は唇を引き結んで耐えようとするが、すぐに“喘がされて”しまう。完全に踊らされている形だ。そして。

 リン──

 鈴の音がまた、冷たく響く。それから一拍置いて、どっと笑いが起きる。桜織にとっての地獄だ。
『お前ら、感謝しろよ。お前らの粗末なモンでもこいつが逝きまくれるように、逝きグセをつけといてやる』
 手越が周囲を見回し、恩着せがましく語る。それを囲む雄共は、初めの頃の緊張ぶりが嘘のようににやけ、口々に手越への感謝の言葉を返していた。

 このダンボール上での絡みシーンを最後に、『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失』の映像は終わる。終わる間際でも、桜織は犯され続けていた。リン、リン、と、冷たい鈴の音を響かせながら……。

 

二度と出られぬ部屋 第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)

※長くなったため分割しています。
 前回同様、アナル・浣腸・スカトロ回につき、ご注意ください。




■第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)


 自販機で渇いた喉を潤し、部屋中央のソファで休憩を挟んでから、俺は部屋の右側へと踏み込んだ。
 後半にあたる5~8日目のエリア。ここも4日目までと展示方法は変わらない。いくつもの写真と、通し番号が振られたモニター、そして横長のショーケース。ただし前半部分と比べ、こっちには人が多い。それぞれのモニター前に何人もが群がり、映像に齧りついている。
「見ろよアレ、愛液垂れまくり。キモチいいんだろなー」
「ああぁエロいよ、トウカちゃぁん!!」
 そんな気色悪い声を出す奴もいれば、ズボン越しに股間を弄る輩までいる始末だ。

 『5日目』エリアには、ショーケースに妙なものが飾られていた。
 洗面器に山盛りになった、灰褐色の物体。白い粉状のものが表面に付着しているが、どうやら玉蒟蒻らしい。
 ──何故、こんなものがここに。
 ──決まっている。これが使用された『道具』だからだ。
 自問自答の中、視線が横のモニターに引っ張られていく。俺は惹かれているのか。食材を使った、背徳的な責めに。


*********************************


 映像の中では、宙吊りにされた藤花がドレッドヘアの男に犯されていた。
 藤花を吊る紅い縄は三本。高手後手に縛り上げる一本と、左右の膝に回された二本だ。膝裏には摩擦防止の当て布がしてあるが、不自由な格好をさせた上でのそんな配慮は、かえって白々しく思えてしまう。
 ドレッド男は、身動きの取れない藤花の尻を抱え上げ、自由勝手に腰を打ち込んでいた。たんっ、たんっ、たんっ、と肉のぶつかる音がし、膝で吊られた藤花の足が揺れる。横からの撮影だから判りにくいが、挿入部分は尾骨に近い。使われているのはアナルだ。
『……あ、はっ……あ、ぁ……あ……っく、は、ぁ……っ』
 結合はかなりの時間続いているんだろう。藤花の顔は下を向き、荒い呼吸を繰り返していた。
『いい声が出るようになってきたじゃねぇか』
 犯しているドレッド男が、嬉しそうに藤花の腿を撫で回す。
『はぁ、はぁっ……冗談は、その頭だけにしろ……』
 藤花は顔を横に持ち上げ、男を睨み上げた。疲れが見えるが、その眼光はまだまだ鋭い。
『ふん、口の減らねぇガキだな。“8個もぶち込みゃあ”、ちっとはしおらしくなるかと思ったのによ』
 男は意味深な言葉を吐きながら腰を引く。ずるりと逸物が引き抜かれ、肛門との間に銀色の糸を伸ばす。
『はぁ、はぁ……っ』
 激しく喘ぐ藤花を前に、ドレッド男が片膝をつく。藤花の肛門を間近に望む位置だ。奴には今、凛とした女剣士の恥じらいの場所が、余すところなく見えていることだろう。
『へへへ、おいおい。俺ので奥まで押し込んでやったってのに、もう入口近くまでひり出されて来てんじゃねぇか。ええ? 我慢のできねぇケツだな』
 肛門を覗きこんだドレッド男が、膝を叩いて笑う。そうして相手が愉快そうにするほど、藤花の表情は硬くなっていく。
『当たり前だろう……そこは、出すための穴だ』
『違うな、そりゃフツーの人間の話だ。ケツ穴奴隷のテメェの場合、ここは第二の性器。つまり、突っ込まれるための穴なんだよ』
 男は嘲るように言いながら、左方向に手を伸ばす。その方向にあるのは、ローションボトルと玉蒟蒻入りの洗面器だ。
『なっ……やめろ、もう入れるな!』
『だからよぉ、違ェだろ? 「もう入れないでください、お願いします」だ』
 血相を変えて叫ぶ藤花に対し、男が要求するのは恥辱の哀願だ。しかし、武人気質の藤花がそれを受け入れる筈もない。
『く……!!』
 ドレッド男を睨み据えたまま、ただ口惜しげに歯噛みするばかり。“苦みばしった”と形容したくなる表情は、時おり美青年の顔にも見える。肉体の方は、主張しすぎるほど女の特徴を備えているというのに。
『ったく、強情な女だぜ。ま、その方がイジメ甲斐があるがよ』
 男は呆れた様子で笑いつつ、ローションボトルを拾い上げた。そして哺乳瓶のような先端部を藤花の肛門へと押し込みつつ、ボトルを握り潰す。
『うっ!』
 藤花が小さく呻いた。
 男は、二度、三度とボトルを握りこんでから引き抜くと、ローションの残りを玉蒟蒻の山にふりかける。もはや疑う余地もない。奴はあの玉蒟蒻を、藤花の尻へ入れるつもりだ。
 ──“8個もぶち込みゃあ”、ちっとはしおらしくなるかと思ったのによ
 ──俺ので奥まで押し込んでやったってのに、もう入口近くまでひり出されて来てんじゃねぇか
 こうした言葉の意味も、はっきりと理解できてしまう。
 藤花は、さっきアナルを犯されていた時点で、あの大粒の玉蒟蒻を8つも入れられていたんだ。

『さっきみたく、ケツ締めとけよ』
 ドレッド男はそう言って、玉蒟蒻の一つを摘み上げる。カメラが斜めに移動し、藤花の肛門周りを捉えた。男の指で肛門へと押し付けられた玉蒟蒻は、わずかな抵抗のあと、ずぶずぶと紅い輪の内側へ沈みこんでいく。
『…………っ!!』
 藤花の身体が強張った。太股も、腹筋も。男はその反応を目で追いつつ、一つまた一つと玉蒟蒻を摘み上げては、尻肉の合間へと押し込んでいく。
 それが何度繰り返されただろう。洗面器の中身が、半分ほどに減った頃。
『本当に、やめろ……もう無理だ!』
 藤花が、呻くようにそう告げた。男はまた鼻で笑う。
『けっ、なにが無理だ。テメェのケツはどんどん飲み込んでくじゃねぇか。大体テメェ、ロドニーさんのデカマラを咥え込んだんだろ? アレの方がこんな蒟蒻なんぞより、よっぽど嵩あんだろうが』
 そう言って、部屋のゴミを捨てるぐらいの気安さで、次々と異物を挿入していく。
『く、ぅっ……は、くっ…………!!』
 藤花は耐えるしかない。白い歯を食いしばり、悔しそうに目を細めて。
 洗面器の中身は着実に減っていく。それはつまり、スレンダーな藤花の腸内に、減った分の体積が移ったということだ。となれば当然、肛門の抵抗も強まり、玉蒟蒻を挿入する男の動きも変わっていく。初めこそ軽快に押し込んでは次の一個を摘み上げ、というペースだったのが、ぐっぐっと何度も押し込むようになる。
『おら、ケツ開けって。クソ我慢するみてぇに腸は閉じながら、穴ンとこだけ緩めんだよ!』
 ドレッド男は、苛立ち気味に無茶な注文をつけていた。玉蒟蒻が肛門から弾き出された時などは、舌打ちもする。品もなく、慈悲もない男。そんな輩が指の力任せに無理を押し通していく様は、見ていて背筋が寒くなる。

『……おら、全部入ったじゃねぇか。無理だのなんだのほざきやがってよ』
 何分が経ったのか。あれだけあった洗面器の中身が、すっかり藤花の中へと収められてしまう。
『くっ……この野郎!』
『そう睨むな。ケツってなぁ、苦しいのがキモチイイんだ。お前だって、とっくに承知してるようによ』
 ドレッド男は藤花の怒気を受けてもなお、余裕の笑みを崩さない。それどころか、悠々と逸物を扱きたて、藤花の尻に押し当てる。あれだけ無茶な異物挿入をした上で、また犯そうというのか。
『や、やめっ……!』
 当然、藤花も信じがたいという様子で目を剥いていた。
『女のイヤよは、待ちきれないの合図──ってな!』
 男はあくまで相手の主張を聞き入れず、尻肉を鷲掴みにして腰を突き入れる。男の腰も、藤花の腰も細かに震えていた。ミリミリ、メリメリと音がしそうなほどに。
『ぐううっ!!』
『うへぇ、キッチィなこりゃ!粘土板にでも突っ込んでる気分だぜ。勃起力の弱ぇオッサンやモヤシ野郎じゃ出来ねぇな、このプレイは』
『はっ、ぐ……もうやめろ!尻の穴が、裂ける……!!』
『だから裂けねぇっつーの。テメェの括約筋がよく伸びる逸品だってのは、とうに判ってんだ。それによ、テメェだって実はイイんだろ? 直腸に圧かけられて、子宮圧迫されて、結腸にまで玉蒟蒻が詰まってる。アクメの条件は十二分に揃ってんだよ!』
 男はそう言って、藤花の尻に腰が密着するまで挿入しきった。そして、ゆっくりと抜き差しを開始する。
『う、ぐあ……あ!!』
 藤花の苦しそうな声と共に、パン、パン、とスローペースで肉のぶつかる音がしはじめた。そしてその音は、少しずつ、少しずつ、速さを増していく。
『くっは、まじでキッツイぜ。だが悪くねぇ。四方八方から生ぬるい弾力が包み込んできやがらぁ!!』
『んあ、あ……あっ、あ…っく、うくああ゛っ!!』
 何十個もの玉蒟蒻を腸に詰め込んでのアナルセックス。それが刺激的でない筈もなく、犯す側も犯される側も顔を歪めている。ただし、対照的な理由で。あの藤花が絶え間なく声を上げるんだから、相当だ。
 たっぷりとローションを注ぎ込まれているせいか、抜き差しの度に漏れる音もひどい。
 にちゅ、にちゅ、と人が口で言っているような音。
 ぶちゅっ、ぶぼっ、という水気のある屁のような音。
 S気の強い調教師が、それを聞き逃すはずもない。
『すげぇ音させてんじゃねぇか、ケツからよ。恥ずかしくねぇのかよお前?』
 異音と同じぐらい粘ついた悪意を込めて、囁きかける。藤花の眉が吊り上がった。
『恥だと? 何の恥だ……その音をさせているのは、貴様だろう!』
 気丈に反論するものの、その顔は堂々とはしていない。肛門を犯されて放屁のような音をさせ続けるなど、耐えがたい恥だろう。たとえそれが、強いられたものであっても。
 異物を大量に押し込まれた状況といい、漏れる音といい、苛烈な責めであることに疑う余地はない。さらには男もいやらしいもので、刺激が一層強まるような行為を繰り返す。例えば、揃えた4本指で臍の下……ちょうど異物がひしめいているだろう場所を圧迫したり。尻肉が変形するぐらい深く突きこんでから、腰を据えてグリグリと円を描くように動かしたり。
 そんな苦難を受けながら、藤花はじっと耐えていた。男の突き込みで前後に揺れはするが、それ以上の反応は見せない。悪童にじゃれつかれる育児疲れの母親よろしく、じっと時が過ぎるのを待っているように見えた。
 だが、それは外観だけの話。今までもずっとそうだったように、見た感じで変化がなくても、内では着実に何かが蓄積しているんだ。ボーイッシュな祐希は、その果てに自我が崩壊した。天使のようだった千代里は、我慢の末に嘔吐した。そして、藤花にも変化が起きる。
 ぶちゅ、ぶりいいっ、ぶちゅっ……そんな音と共に、代わり映えのしない抜き差しが続いていた、ある瞬間。男の腰が引かれると同時に、結合部で小さな破裂音がした。
『うあ……っ!!』
 同時に藤花の口が開き、声が漏れる。ハスキーではあるが、今までよりずっと女の子らしさのある声。それがはっきりとマイクに拾われてしまう。
 何が起きたのか。その疑問の答えを示すように、一つの玉蒟蒻が床を転がっていく。排泄されたんだ。男の逸物を挿入されたままで、無理矢理に。それは、どれだけ刺激が強いことだろう。女の子の声が出てもおかしくない。
『ぎゃはははっ! お前出すんじゃねぇよ、ハメてる最中によぉ!!』
 ドレッド男は鬼の首を取ったように笑いつつ、藤花の尻を打ち据える。
『っ! く、ぅっ……!!』
 藤花の表情がまた歪んだ。あまりに唇を曲げているせいで、笑っているようにすら見える顔だ。
『んなに良かったのかよ、ええ? 嵌められながらデカイのひり出して感じちまったのか、この変態が!!』
 男の言葉責めは止まらない。腰の動きも再開する。そしてここから、不動だった藤花の様子が変わりはじめた。太股が強張り、足指が折り曲げられる。まるで空気を噛むように。
『うおっ、すげぇ締まってきた。脚に力入れて、ケツ穴引き締めてんのか? 相変わらずクソみてーな根性だな。ならせいぜい、頑張ってみろや!!』
 男はそう言って、激しく抜き差しを繰り返した。パンパンと肉のぶつかる音がし、結合部の異音もいよいよ粘ついたものに変わっていく。
『うぁ、ううあ…っ!!』
 藤花の口からも、堪らずという感じで声が漏れている。
 そして。
『あ!! ぁぁ゛あ゛っ!!!!』
 藤花からまた悲鳴が上がり、その直後、床に数個の玉蒟蒻が垂れ落ちた。ぬらりとした粘液に塗れたまま。
『おーおー、また出やがった。見てみろよ、腸液まみれだぜ? こんだけイジめられて腸液出すとか、誤魔化しきかねぇマゾッぷりだなぁ、剣術小町ちゃんよお!!』
『ふざけるな、ただの防衛本能だ! 無茶をさせられているせいでな!!』
 下卑た口調で茶化されれば、藤花も黙っていない。即座に反論を浴びせる。本当にプライドの高い娘だ。
 だがそんな彼女にも、忍耐の限界はある。この映像では、その『底』が垣間見えるようだった。
『おらっ、ケツに出すぞ変態女!!!』
 数十回のピストンの末、男が射精に至る。腰を密着させたままたっぷり数秒かけて精を送り込み、身体を離す。その解放をもって、ようやく藤花の肛門は排泄を許された。びゅぶっ、ぶちいっ、と凄まじい音を立てながら、次々と灰褐色の珠が飛び出ていく。その最中、藤花は下唇を噛みしめていた。普通なら、声など漏れないはずだ。それでも、映像にはしっかりと記録されている。
『んんーー~~~っ!!!!!』
 鼻を甘い声が通り抜ける。快便の心地良さに呑まれているのは明らかだ。
『ぎゃっはっはっはっは!!』
 男は腹を抱えて大笑いしていた。映像が暗転する瞬間まで。

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 俺は暗転したモニターから視線を外し、改めてショーケースを見やった。
 表面に粉状のものが付着した、玉蒟蒻。映像を観た今ならわかる。あの粉は、腸液が乾燥したものだ。つまりあれは、間違いなく映像にあった実物。そう思うと、静かにケースに収められている無機物から、宿主の嘆きが聴こえてくるようだ。
 俺はその嘆きから逃れるように、次のエリアへと歩を進める。
 
 『浣腸した上でアナルを責める』。
 6日目は、それだけがひたすら繰り返されたらしい。モニター7には、その様子がダイジェストで纏められているようだ。


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 一つ目の映像では、藤花はバスルームで拘束されたままで嬲られていた。両肘の少し上と、折り曲げた脚の半ばを縄で巻かれた達磨状態。その藤花に対し、調教師数人が好き勝手をやっている。
 藤花の顔側に座り込む男は、整った顔を弄くりまわしていた。鼻の穴に指を引っ掛けて、縦に引き伸ばしたり。同じく口に指を引っ掛けて、横にへし曲げたり。そうして、相手の不快そうな表情を楽しんでいる。
 肛門側にも一人が片膝をつき、延々と浣腸を施していた。浴槽に溜めた液体を浣腸器で吸い上げては、藤花の腸へと注ぎ込んでいく。一体どれだけ入れたのか、すでに藤花の腹部は膨れ上がっている。
『やえろっ、おうむいだ……!!』
 口と鼻をへし曲げられながら、無理を訴える藤花。だが男共は聞き入れない。
『まだまだ。お前より細ぇ女でも、3リットルは入るもんだ』
 そう言いながら注入を続け、臨月かというレベルにまで腹を膨れさせる。終わるタイミングにしても、容赦した訳じゃない。浣腸液を注ぎ込もうとしてもすぐに噴き出す、限界の限界を迎えたからだ。
 それだけの浣腸を施すだけでも、充分に外道の仕打ちといえる。だが男2人の悪意が発露するのは、むしろここからだった。
 何しろ連中は、妊婦のように腹が膨れた藤花をひっくり返し、這う格好にして肛門を犯しはじめたんだ。
 けして細くない、むしろ平均以上の逸物が、限界まで詰まった腸内を蹂躙する。抜き差しのたびに、肛門からブビブビとみっともない音が発され、後方に水が噴き出していく。場所が浴室だけに、音がいちいち反響するのがまた悪趣味だ。
『いいねぇ、生あったけぇのがどんどん溢れてくんぜ。女と温泉でハメた時みてぇだ。ケツの締まりも悪くねぇしよ。つっても、こんだけビシャビシャ出しまくっといて、締めるイミあんのかって話だがな』
 後ろの男は上機嫌で、ますます膝に力を込める。
 さらに彼女の前方では、床タイルに寝そべった男が逸物を咥えさせてもいた。
『おい、歯ァ当たってんだよヘタクソが! ったく、上達しねぇ奴だな。オマエ次歯当ててみろ、また漏斗でションベン飲ませんぞ。髪とアゴ掴まれて、泣きながら白目剥きたかねぇだろ?』
 男は奉仕を強いながら、不機嫌そうに愚痴りつづけている。
 藤花は、その地獄のような状況にじっと耐えていた。手足を曲げて拘束された彼女に、抵抗の術はない。肘と膝のみを支えとして這い、悪意を受け止めるしかない。
 この状況でも取り乱さないのは流石だ。しかし、苦しいのは間違いない。腹を下したような音が酷いし、尻穴からは下痢便を噴き出す音が続いている。逸物を深々と咥えこまされる喉元からも、ゴエエッとえずきが上がっている。
 そして何より、彼女の引き締まった尻が、激しく暴れていた。黒人にターキーのような逸物を挿入されていた時ぐらいに。
『はっ。さすがのお前でも、ハメられながらひり出し続けんのはキツイらしいな。だが、だいぶ楽になってきたろ? カエル腹がようやっと凹んできたぜ』
 後ろの男は激しく腰を打ちつけつつ、藤花の下腹を鷲掴みにする。
『むぐう゛っ!!』
 藤花から呻きが上がり、下半身の暴れ方が酷くなる。その反応が後ろの男を焚きつけ、さらに激しく下腹を揉みしだく。その果てに、藤花の口の方から妙な音がした。呻きとも攪拌音とも判別のつかない音。
『うぅわ! お前きったねぇな、ゲロを吐くなよゲロを。オレはテメェと違って、汚物にまみれる趣味はねンだよ』
 どうやら異音の瞬間、藤花は嘔吐したらしい。散々喉奥まで咥えさせておきながら、前の男が顔を顰める。
『何だよ、前からも噴いてんのか? ほどほどにしとけよ。今日は一日中浣腸責めだ、いちいちゲロってっと体力もたねーぞ』
 そう嘲りながらも、後ろの男は下腹から手を離さない。前の男も、舌打ちしながらまた逸物を咥えさせる。その悪意に挟まれて、藤花の手足はひどく強張っていた。

 一日中浣腸ファックされる。この男の言葉は、脅しでも何でもない。これ以降の映像でも、藤花はバスルームで浣腸を施されたまま、直腸を蹂躙され続ける。

 浴槽内の湯をポンプで直に汲み上げて注入し、藤花を悶絶させている映像もあった。この注入の後には、一人が肛門が上を向くように抱えたまま、もう一人が極太のバイブでアナル責めを施す。藤花は、自分の肛門から噴き出す液をすべて身に浴び、顔を左右に振って苦しむしかない。
 さらに別の映像でも、床にへたり込むように緊縛され、イチジク浣腸の散乱する中で延々とバイブ責めを受け。
 また別の映像では、血のように赤い液体を吹き散らしながら騎乗位を強いられ。
 緑色をした液を右脚に伝わせながら、Y字バランスで犯し抜かれ。
 そしてこれら全ての映像には、ギャラリーの姿があった。いつか見たように、ガラス張りのバスルームをぐるりと囲み、好色そうな眼で中を覗いている。何らかの罵声を浴びせていることもしょっちゅうだ。

 そんな苦境でもなお、藤花は調教師と客を睨みつけていた。汚液やシャワーが顔に掛かる時はさすがに目を閉じるが、すぐに顔を振って鋭い眼を取り戻す。
 そういう態度がますます相手を増長させると、気付いてはいる筈だ。それでも武芸家としてのプライドが、舐められ放しでいることを許さないんだろう。常に和を尊ぶ千代里とは、見事に真逆の性質。藤花と千代里がエレベーターで談笑していたのが、もう遥か昔のことのようだ。


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 映像が終わる。
 6日目エリアのショーケースには、動画内で浣腸に用いたものが展示されていた。
 『グリセリン』とカナ表記のされたボトル。『酢酸』と書かれたビン。イチジクの形をした容器。ペットボトル入りのトマトジュース。青汁の粉……。
 俺はSMに詳しいわけではないから、そういう物を腸に入れた際のメリット・デメリットは判らない。ただ1つ確実に言えるのは、それらが悪意をもって選ばれているということだけだ。
 そして、その悪意はエスカレートし続けている。『7日目』エリアへ進めば、それが肌で感じ取れた。何しろ、7日目と8日目はとにかくギャラリーが多い。そして黒山の人だかりが出来ているモニターからは、時々悲鳴のような叫びが漏れ聴こえている。

 7日目エリアのモニターには、画面上側の縁にテプラが貼ってあった。
『絶叫が続く動画につき、他のモニターよりも音量を下げております』
 テプラにはそう印字されている。音量を下げてなお、離れた場所で悲鳴が聴こえるのか。その事実を前に、嫌な予感が膨らんでいく。


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 モニターでは、藤花が4人の男から嬲られていた。かなり徹底的な責めだ。
 大股を開いたまま、左右の手首と足首を一纏めにベルトで拘束された藤花。そのアナルにはかなり太さのあるディルドウが押し込まれ、肛門から飛び出た部分には大型のマッサージ器が宛がわれている。
 秘裂の上側……尿道からはチューブのようなものが延びていて、空のパックに繋がっている。導尿用の処置かと思いきや、どうやら逆だ。チューブは尿道に近い部分がクリップで挟み潰されていて、尿道側からあふれ出す黄色い液を押し止めている。
 そして、そのすぐ上に位置するクリトリスには、やはりマッサージ器が宛がわれて唸りを上げていた。
 挙句、両の乳房には搾乳機のようなものが取り付けられ、先端が円錐形に変形するほど吸引しているし、恥骨の辺りや内腿には電極パッドが取り付けられ、ボックスからの電気供給を受けている。

 それだけの事をやられて、肉体が反応しないはずがない。
 搾乳機の中の乳首はしこり勃ち、マッサージ器が離された時に覗くクリトリスは小豆のように膨らんでいる。三角形に溝の刻まれた内腿や、一纏めにされた手足の指の強張り具合は、相当な快感を受けていることを物語っている。
 そもそも藤花が拘束されている辺りには水色の吸水マットが敷かれているが、そのマットはかなり広い範囲が変色していた。1メートル以上も離れた場所が飛沫状に青くなっているのを見るに、何度も潮を噴き散らしているようだ。
 それでも、藤花の顔は崩れていない。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、口の端からは涎を垂らしてもいるが、瞳はくっきりとした輪郭を保っている。
『すげぇなお前、まだ睨めんのか。結腸までディルドー突っ込まれて、膀胱パンパンにされて、さんざっぱらクリ逝きまでさせられてんのによ』
 藤花を囲む調教師の一人が、呆れた様子で呟いた。
『はあっ、はぁ……こんなもので、どうにか出来る気でいたのか? こっちは三つの頃から、激しい稽古に耐え抜いてきたんだ。お前らがクズ同士馴れ合って、人生を浪費している間にな!』
 藤花は息を荒げつつも、背筋を伸ばして反論する。自分は今なお清廉潔白だ、お前達とは違う──そう全身で訴えるように。
 そういう態度は、さぞ調教師の逆鱗に触れることだろう。次の場面では、藤花の横っ面が叩かれるかもしれない。俺はそう覚悟したが、モニター内の男達は、怒るどころかむしろ嬉しげだ。
『よく言った。わざわざBコースでもてなしてんだ。こんなヌルい責めで泣き入れられたら、肩透かしってもんだぜ』
 一人がそう言って肛門のディルドを握りしめ、ズルズルと引き抜いた。抜け出ても抜け出ても、なかなか先端が覗かない。恐ろしく長いバイブだ。3号と呼ばれていたバイブが20センチ弱だとすれば、こっちは悠に30センチはありそうだ。これだけの長さがあれば、直腸の突き当たりのさらに奥、S字結腸まで入り込むのも容易だろう。
 デュポッという音を立てながら、ディルドーが完全に抜ける。男はそのディルドーを見つめ、ほくそ笑んだ。
『見ろよ。“お釣り”つきだ』
 そう言って隣の調教師にディルドーを見せる。大蛇のようなディルドーは、先端部分がかすかに汚れているようだ。
『ははっ。昨日の晩からさせてねぇからな。食物繊維たっぷりの餌が消化されて、ようやっと結腸まで下りてきたってことか。いい頃合いだ』
 男はそう言い、一旦画面の外に消えた。他の連中もそれぞれに動き出す。藤花の乳房から吸引機を外し、尿道からチューブを抜き、下腹や内腿のパッドを外し。
『んっ! ふうっ!!」
 藤花はその一つ一つに性的な反応を示しつつ、訝しそうに眉を顰める。
『なんだ、今日はもう終わりか? それとも、飽きたから他の遊びにするのか?』
 不安だからこそ、あえて憎まれ口を叩く。それが藤花のスタンスらしい。今までは調教師がそれに呼応し、ある意味で上手く噛み合っていた。だが、今は何かが妙だ。調教師が余所余所しい。死刑執行前の刑務官のように、黙々と作業をこなしている。

 藤花は一旦縄を解かれ、手首足首を軽くマッサージでほぐされた。そこへ、さっき画面外に出た男が戻ってくる。手にしているのは洗面器。中には透明な液体が張られ、針のない巨大な注射器が立てかけてある。
『またそれか。つくづく芸がないな』
 見飽きたとばかりに目を細め、嫌味を刺す藤花。だが、男は余裕の態度だ。
『いいや。コイツばっかりは、これまでのとは別モンだぜ』
『……なんだと?』
 自信に満ちた男の言葉に、藤花が眉を顰めた。
『“ドナン浣腸”っつってな。昔は病院で便秘患者に使われてたんだが、あんまりにも効果が強すぎるってんで使用禁止になったシロモノだ。浣腸慣れしてねぇ奴に使った日にゃ、アワ噴いてもおかしくねぇキツさなんだが……お前なら、この程度の“お遊び”は余裕だよな?』
 男の一人が浣腸器を拾い上げ、藤花の顎を叩きながら挑発する。
『く……ッ!』
 藤花の目元が引き攣った。明らかな危機を感じ取りながらも、直前に啖呵を切っている以上は拒めない。さぞ歯痒いことだろう。
 調教師達はそんな藤花の表情を楽しみながら、浣腸器を薬液に浸した。一度シリンダー内の空気が追い出され、慣れた手つきで薬液が吸い上げられる。
『ケツ向けろ。それともブルッちまったか、オトコ女?』
『……ふん。相手を見て物を言え』
 浣腸器片手に挑発されると、藤花は不本意ながらも従うしかない。鍛えこまれた背筋がカメラに晒され、引き締まった尻肉が突き出される。
『よーし、いくぜ』
 浣腸器の先端が、つるりと藤花の肛門を通り抜けた。初めの頃は指一本の挿入も厳しい蕾だったのに、拡がりやすくなったものだ。
 男の手がシリンダーを押し込む。キュウウッと音がして、薬液が肛門内へと入り込んでいく。きつい浣腸だそうだが、我慢強い藤花のことだ、しばらくはじっと耐えるだろう。俺は無意識にそう思っていた。ところが、その予想は外れる。
『ぐあっ!?』
 浣腸液を送り込まれた、まさにその瞬間。藤花は悲鳴を上げ、目を見開いて振り返った。
『おいっ、ちょっと待て! これは、アルコールじゃないのか!?』
 新鮮なその反応に、男共が笑う。
『いいや、間違いなくドナン液だ。粘膜に触れた瞬間、ウォッカをストレートで煽ったようになんのが、こいつの特徴よ。しかも、即効性があるだけじゃねぇ。意思とは無関係にケツがめくれて、ダラダラ糞が漏れちまうんだ。しかもお前は今、結腸までクソが降りてきてっからよ、格別にキツイはずだぜ』
 男はそう言いながら、また浣腸器に薬液を吸い上げた。同時に他の調教師は、暴れる藤花の腰を押さえにかかる。
『なっ!? 貴様、そんなものをまだ……ッ!!』
『ああ入れるぜ。普通なら一本で勘弁してやるが、俺はお前が嫌いなんでよ』
 2本目の薬液が注入される。その後の反応は、グリセリンとは全く違った。
『ぐああぁっ、はぐっ!!うあ、か、勝手に、ぃ……っ!!?』
『へっ、効いてきたな。もうぐっぱり開いてやがる』
 悶え苦しむ藤花の肛門に、男の指が挿入される。拳ダコのある男の4本指が、抵抗なくぬるりと入り込んでいく。ウソのような光景だ。
『おーおー、ユルッユルだぜ。何もひっかかんねぇ。おいオトコ女、当ててみな。指は何本入ってる?』
『し、知るか……それどころじゃない事ぐらい、見て判れ……!!』
 藤花は歯を食いしばりながら言葉を搾り出す。そのすらりとした脚は、早くもガクガクと膝が笑っている。だが、当然だ。彼女の菊の輪は、ゴムを抜いたズボンのように、歪な形に開いているんだから。その惨めな様は、陰湿なサディストにとってさぞ面白いものだろう。

『あんま早く出させても、面白くねぇからな』
 そう言って、調教師の一人が肛門近くの人間にある物を渡す。ラグビーボールに近い形をしたアナルプラグ。ただし、サイズが普通じゃない。男の掌でようやく底を掴めるかという大きさだ。
『……ッ!!?』
 それを視界に収め、藤花が眼を見開いた。
『うお、7号プラグはやっぱ重てーな。ダンベルみてぇ』
 肛門傍の男は、両手でプラグを抱え直すと、藤花の肛門へと捻じ込んでいく。
『かはっ!!』
『おーすげ、やっぱ直径10センチとなると絵面がやべーな。大砲の弾でも詰め込んでんかよ!』
『ああ。こんなのが余裕で入る……っつか、こんなんでなきゃ栓にならねーとか、ヤベーよなドナンって』
『サツの女ん時ゃ、テニスボール嵌めこんでもダダ漏れだったもんな。ヤメテーヤメテーとか喚きながら、ボールごとブリブリひり出しやがってよ』
『いたなー、あの説教大好き女! ドナン漬けにしたら、説教どころか「んおお」とかしか言わなくなったけどよ』
『終いにゃ馬とやってアヘッてたらしいぜ、あの女。そういや、あれも剣道やってたよな。4段だっけか。おう嬢ちゃん、お前は何段だ? ……って、答える余裕ねぇか』
 武勇伝で賑わう調教師達の足元では、藤花が苦しそうに呻いていた。
『ふ……ふぐっ、う……あ、あく……!!』
 眼を見開き、顔中に汗を噴き出させ、歯を食いしばり。浣腸を我慢する顔は嫌というほど記録されていたが、ここまで苦しそうな顔はなかった。
 だが、無理もない。彼女の腹部からはすでに、グリセリン浣腸を10分耐えた時よりも酷い音がしはじめているんだから。
『苦しそうだなぁ、オトコ女。楽になりてぇだろ?』
 調教師の一人がしゃがみ込み、藤花の顎を持ち上げる。その背後では、別の一人がアナルプラグを膝で押さえ込んでいる。
『……はぁ、はあ、はあ…………』
 藤花は、酷い風邪でも引いたような顔のまま、荒い呼吸を繰り返す。この状況で悪態を吐かないのは意外だが、その余裕すらないんだろう。
『なら、こう言え。「ウンチを出すところを見てください」ってな。それが言えりゃあ、オマルでさせてやるよ』
『な…ッ!!』
 男の要求に、藤花が表情を強張らせた。人一倍プライドの高い彼女が、そんな要求を呑む筈がない。普通なら。
 だが今は、痛烈な排泄欲に身を焦がされている最中だ。人間は生理的欲求には抗えない。大半の人間は、プライドと生理的欲求を秤にかけた時、欲求の方に流れるだろう。
 だが、藤花は違った。
『……はぁ、はあ…っく! あは……ぅ、くうううっ!!』
 腹部から凄まじい音がするたび、藤花の目が見開かれる。だが彼女はすぐにその眼を細め、調教師を睨み据えた。驚異的な精神力だ。
『まだまだ折れねぇってか。こりゃ時間かかんな』
『ああ。待ってんのも面倒だ、素直になるまで放っとこうぜ』
 調教師達は薄ら笑みを浮かべ、床の縄を拾い上げる。動画の最初で、藤花の手足を縛っていたものだ。
 普段の言動こそ軽薄だが、腐っても調教師だ。連中は鮮やかな手つきで、藤花を高手後手に縛り上げてしまう。さらには足首と膝にも縄を通し、縄頭を天井のフックに引っ掛ける。
 結果として藤花は、尻を床に密着させたまま、伸ばした両脚を吊られた格好となる。
『う……!!!』
 股の方に視線を落とし、顔を青ざめさせる藤花。そんな藤花を見下ろしながら、調教師達が口元を吊り上げる。
『いいカッコになったなあ、俺女。俺らはレストランで、うんめぇメシ食ってくっからよ。しばらくそのまま過ごしとけや。ま、つってもドナンはキツイだろうからな。どうしても俺らに何か伝えたいって気になったら、コレ押せや』
 一人が嫌味たらしく言いながら、細長いスイッチを取り出した。
『ナースコールみてぇなもんでよ。この端っこにあるボタンを押し込みゃ、俺らんとこに合図が来んだ。命綱だと思って、しっかり握っとけよ?』
 男はそう言って、縛られた藤花の右手にスイッチを握らせる。
『おーい、行くぞー』
『待てって! じゃあな、せいぜい頑張れや』
 調教師達が扉を開けて去り、薄暗い部屋には藤花だけが取り残された。

 カメラは床に置かれているらしく、孤独な藤花の様子を定点で撮影しつづけている。

『……く、ううっ!! はぁっ、ああ、あ゛……ぐっ!!』

 藤花から呻きが漏れた。
 実際、地獄だろう。
 足を吊られていると、下半身に力を込めるのが難しい。つまり、中途半端にしか排泄を我慢できない。では出して楽になれるかといえば、それも無理だ。何しろ彼女は、尻餅をついた状態。常に全体重でアナルプラグに圧し掛かっている形だから、排泄どころか、もがくほどにグリグリと深く栓をされてしまう。
『……ぐ、む……んん、んぐううっ!! お、おい、誰か、見ているんだろう!? こ、こんな事をして、タダで済むと、思う、なよ…………!!』
 薄暗い部屋の中、藤花の声が空しく響く。
 返事はない。ただ藤花自身の荒い呼吸と、遠雷のような腹の音だけが繰り返される。
『い、いい加減にしろ……このままでは、腸が、爛れるぞ……!』
 数十秒後、藤花はまた訴えかける。だが結果は同じだ。
 無駄と悟ったのか、それとも言葉を話す余裕すらなくなったのか。これを最後に、藤花が何かを話すことはなくなった。

 そして、強い便意に襲われた人間の、生々しい反応が始まる。

 荒い呼吸と腹の音にまず割って入ったのは、縄の軋む音だった。ぎしぎしという、根源的な恐怖を煽るような響きが、暗闇の中で繰り返される。
 その次は、アナルプラグが床に擦れる音。かなり硬い材質なんだろう。藤花の尻肉が左右に揺れるたびに、ゴリッゴリッと硬い音がしている。
『……う、う…ふんぐゥう゛う゛っ!!』
 藤花が、ここで悲痛な呻きを上げる。今までも相当な便意に苛まれていたはずだが、ここで特大の波が襲ってきたんだろう。
『ああ……あぐ、ぐうう゛っ、ふむうううう゛っ!!!』
 藤花は、脚の親指だけを立て、他の4本指を曲げて、なんとか大波を凌ぐ。だが、かろうじてだ。第一波を過ぎた後、彼女の引き締まった肉体は震えはじめた。縄の軋む音、アナルプラグの擦れる音が激しくなる。呼吸や腹の音の酷いものになっていく。
『あああっア゛っ……ぐ!!!』
 また悲鳴が上がり、下腹からグロロロゥという不気味な音が響く。これが、第二波だろう。

 生々しい映像ほど、心に訴えてくるものはない。ほんの数分が数時間にも思えるような彼女の気持ちが、俺にまで伝わってくるようだ。
『滝行を思い出せ……腑抜けるな、廣上 藤花ッ!!』
 孤独な部屋の中、藤花は便意に抗いつづける。全身に汗を垂らし、歯を食いしばりながら。
 だがそんな努力を嘲笑うように、便意の波は何度となく彼女の足を攫う。死に物狂いでいくら凌いでも、回を追うごとに波は大きくなり、間隔も短くなっていく。
『……ぁああ゛あ゛ッ!!!』
 俯き気味に耐えていた藤花が、ついに顎を跳ね上げた。その直後、肛門付近から破裂音が響く。ぶぢいっという音。下痢に耐え切れなかった時のみ耳にするその音は、彼女の我慢の限界を示していた。
 そして、彼女は右手に握ったボタンを押し込む。彼女の鋼のプライドが、終わりのない地獄についに屈した瞬間だ。
 
 だが、映像内に変化はなかった。
 調教師達がレストランで食事をしているとすれば、フロア移動に多少の時間が掛かってもおかしくないが、それもせいぜい数分のことだろう。
 ところが、藤花が両脚をもじつかせていくら待っても、扉が開くことはない。足音さえしない。
『まだ、か……?』
 藤花は歯を食いしばりながら、またボタンを押し込んだ。だが、やはり何の変化もない。助けを求めると決めて何かの糸が切れたのか、藤花の腹の音はいよいよ悲惨なことになっていた。ぐぉるるる、きゅるるる、ごおうう……そんな、何匹もの動物が唸っているような音色だ。
『一体何をしてる!? 早く……早く、はやくっ!!』
 カチカチカチカチと耳障りな音が繰り返される。剣道で握力を鍛えた藤花の指が、何度もスイッチを押し込んでいる音だ。それでも、変化はない。
『どういうことだ……これは命綱だと、そう言っただろう!! 命綱なんだろう、これは、俺のッ!!!』
 藤花はスイッチを連打する。入口の方を見ながら、何度も、何度も。

 人間の心が一番脆くなるのは、闇の中にいる時じゃない。闇の中で、なお拠り所としていた光が、幻だったと気付いた瞬間だ。

『なんで ……なんで、だれ、も゛…………』
 藤花はそう呟き、目尻から涙を流す。
 ここから彼女は、緩やかに壊れはじめた。
『……ぅあっ、あがああ゛っ!!ひいぎぃああ゛うう゛ああっ!!!』
 見えない壁を蹴るように、膝を曲げて両足を暴れさせ。見えない敵に齧りつくように、頭を前後に振りながら歯を噛み合わせ。その果てに、とうとう全身が病的な痙攣をはじめる。脚の縄が断続的に軋み、煩いほどだ。
『も゛う無理だ!!出したい出したい出したいっ、出したくてたまらない! 誰でもいいから来てくれえ゛っ!!!』
 かろうじて言葉の体は為しているものの、短い単語を何度も繰り返すばかり。もはや言葉を選ぶ余裕すらないらしい。
 ぶびっ、ぶぶぶっ、という破裂音がまた響く。
『あああ゛、ああ゛……く、っうはあア゛ああ゛!!!』
 藤花は絶叫し、天を仰ぎ──そのまま、しばらく動きを止めた。カメラの角度的に見えづらいが、よくよく見れば、白目を剥いていることがわかる。防衛本能が働き、苦痛で脳が壊れないように失神させたんだろう。だがその休息すら、極限の便意によって妨げられる。
『ごぼっ!はっはあっ……うう゛っ、んぐうう゛う゛あっ!!!』
 噎せながら意識を取り戻し、悶え苦しむ藤花。その顔は、苦痛でか恐怖でか、壮絶に引き攣っている。
 ここで彼女は、武芸家としての最後の意地を見せた。
『ぃあアッ、せぇああっ!!イぃヤァアア゛ア゛ッ!!!!』
 剣道の試合さながらの掛け声を発しながら、両足を振り下ろす。日々の鍛錬で育まれた脚力は、足首の縄を激しく軋ませ、細く引き伸ばす。だが、膝の縄がどうにもならない。
 藤花は目的を達せないままに力を使い果たし、原始的な欲求に呑まれていく。
『はっ、はっ、は……っ!! だ、誰か助けてくれっ!! 出したいんだ、頼むから!!頼むからッ!!!』
 心も身体も消耗しきった藤花に出来るのは、恥も外聞も捨てて助けを求めることだけだ。その姿は、もはや一般の少女と変わりない。
 誇り高い少女が、その誇りをかなぐり捨てて希う。そこまでしてもなお、救いは与えられない。

『はあっ、はあーっ…ぐっ、んむうッ、ひぐっ!! んああ゛あ゛っ!!』
 藤花は、喘いだ。呻いたし、叫んだ。激しい痙攣の果てに白目を剥いて失神しては、苦痛で意識を取り戻す。
『ひいっ、ひっ……も、もう゛、ほんろ゛に゛、らめら゛……い、いしきが……たもて……ない…………』
 最後の方では口の端から泡まで噴き、ほぼ常に白目を剥いている状態になっていた。そんな中で藤花は、ついに限界を迎える。

『 うわぁぁあ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ーーーーっ!!!! 』

 モニターの音量が下げられているとは、到底信じがたいボリュームの絶叫。それが天を仰いだ藤花の喉から迸ると同時に、細い身体が跳ねるように浮いた。肛門が床から離れ、アナル栓が吹き飛んで、横に回転しながら壁にぶつかる。
 栓さえ抜ければ、もはや排泄を阻むものはない。
 ぶばっ、ぶばばっ。びちゃびちゃ、ぶばばっ、ぶびいいいっ。
 思わず耳を塞ぎたくなる音が、長々と響き渡る。その品のなさと長さこそ、藤花がよく耐えていた証だと思うと、やるせない気分になる。人間の死に物狂いの努力は、こんな形で虚仮にされるべきじゃない。
 だが、俺がいくらそう思おうと、映像内の価値観は変わらない。

『おーっす、どうだ調子は……って、くっせぇ!』
『うーわ、こいつ漏らしやがったな!!』
 決壊からさらに十数分遅れて、調教師達が戻ってくる。悪意に満ちた表情で。
 連中はわざとらしく鼻をつまみながら藤花に近づき、右手に握りしめられたスイッチを取り上げる。
『ったく。こうなる前に押せっつったろ、バカが』
 そう言って、半笑いのままスイッチの裏をスライドさせる。電池を入れる場所……そこには、あるべきはずのものがない。
『あ、悪い。コレ、電池入ってねぇわ!』
 男はそう言いながら笑みを浮かべた。項垂れたままの藤花が、ぴくりと動く。
『ははははっ、ひっでぇなお前!!』
 他の調教師達が笑い、スイッチを手にした男が頭を掻く。白々しい。わざと電池を入れなかったに決まっている。藤花を極限まで苦しめ、絶望させるために。
『まあ許せって、な?』
 男がそう言って、藤花の髪を掴み上げた。
『ぎゃはははっ、ひっでぇ顔!!』
 藤花の正面にいる男達が笑い転げる。
 確かに、彼女の顔は崩れていた。鼻水と涎が垂れ、口の端からは泡を噴いている。そして虚ろな二つの瞳からは、涙が零れつづけていた。
『あーあー、泣いちまいやがったか。ま、こんな状況なら泣けるわな』
 調教師達は嘲笑しながら、藤花の縄を解きにかかる。
『うおっ。おい見ろよ、この足首の縄。ほとんど千切れかかってんぜ?』
『マジだ……どんな力だよ』
『良かったなー、念のために膝も吊っといて』
 そんな会話の中、藤花の身体が床に下ろされる。
『さて、ケツはどんな具合かね』
 男達は藤花の片足を掴むと、大股を開かせて肛門を覗きこんだ。
 ここでカメラが拾い上げられ、藤花へと近づいていく。
 映像の中央に収められた藤花の肛門は、ダリアの花のように開ききっていた。
『うへへ、すげぇ……』
『ドナン浣腸の後のアナルってなぁ、何度見ても面白ぇよな』
『おう。このガバガバの穴が、つい一週間前までは桜色の蕾だったんだぜ? 信じらんねーよな』
『まったくだ。まぁそりゃともかく、色々と綺麗にしねえとな。おら、立てよ“クソッたれ”』
 同情の欠片もない言葉と共に、藤花は腕を掴まれ、強引に立ち上がらされる。
 縄痕の残る手首に、改めて手枷が嵌められた。手枷はさらに、天井の滑車の一つと鎖で結ばれる。つまり藤花は、両の手を頭上に掲げた格好を強制されたわけだ。

『さてと。こっちはこっちで、バキバキに硬くしとかねーとな』
 一人がそう言って、小さな箱を開いた。箱の中身は注射器だ。男はそれを手に取ると、ズボンを下ろし、躊躇なく逸物に針を突き刺した。奴の顔面には、瞼にも鼻にも唇にも、やたらとピアスが取り付けられている。あるいは刺す感覚の中毒なのかもしれない。
『うあー……キクわぁ』
 薬液を打ち込むほどに、ピアス男の表情は緩んでいく。そしてそれとは逆に、逸物は硬く屹立していた。奴の逸物は元々でかいが、それが一回り以上も膨れたようだ。
『コイツの出番も久々だな。ここんとこ、ドナンまで使う事なかったしよ』
 別の調教師が、役目を終えた注射器と交換で筒状のものを手渡す。筒の材質はシリコンらしく、表面には複雑な凹凸が見て取れる。
 ピアス男は、受け取ったそれを勃起した逸物へと嵌め込んだ。幹の部分がすっぽりと筒で覆われるように。なるほど、あれは逸物のサイズを補強するぺニスサックらしい。
『あいよ、もう一丁』
 また別の男が、もう一つのサックを手渡す。さっきよりも一回り大きいサイズだ。それもまた、そそり立つ逸物の外側へと嵌め込まれる。
 結果として造り上げられたのは、空き缶サイズの直径を誇る極太だ。最大径こそロドニーという黒人に劣るものの、こっちは根元から先端までが満遍なく太い。長さも以前の動画に出てきた3号バイブを上回っていて、直腸奥まで届くのは確実だ。しかもその表面は、二つのカバーの突起が合わさって、ゴーヤのような複雑な凹凸を形成している。
『う……っ!!!』
 禍々しい巨根を目の当たりにし、藤花の顔が凍りつく。
『スゲェだろ。ドナンで緩みきったケツに、普通のもん突っ込んでも話になんねーがよ、この特製チンポブラシなら大丈夫だ。穴の奥の奥まで、キッチリ掃除してやるぜ』
 ピアス男は、規格外の逸物を揺らしながら、ゆっくりと藤花の後ろに回る。
『や、やめろ……』
 藤花は背後を取られまいと身を捩るが、周りの調教師がそれを良しとするはずもない。
『おら、じっとしてろ』
 そう言って腕を掴まれるだけで、藤花の自由は奪われる。
『そう怖がんなって。天国へ逝かせてやっからよ』
 ピアス男がついに藤花の背後につき、腰を掴む。空き缶サイズの極太が尻肉に宛がわれ、押し込まれていく。普通なら絶対に入らないだろう。だがドナンで開ききった藤花の肛門は、その無茶なサイズをも受け入れてしまう。
『んん……くっ!!』
 藤花は眉根を寄せるが、痛みというより屈辱の表情という感じだ。
『いつ見てもすげぇな。あんなサイズが入っちまうなんてよ』
『全くだ。AVでもそうは拝めねぇぜ』
 他の調教師達は、腕を組んでハードな挿入を見届けている。
 そして、二重のサックに覆われた極太はすっかり腸内に入り込んだ。
『よーし、入ったな。じゃ、動くぜ?』
 ピアス男が笑みを浮かべ、ゆっくりと動きはじめる。ドナン浣腸でドロドロに蕩けた、直腸の中を。

 たしか、立ちバックと言ったか。互いに直立したままの後背位で、肉がぶつかりあっている。カメラは、それを真横からのアングルで撮影していた。正直、この撮影者はよくわかっていると思う。藤花のように無駄なく引き締まった身体は、横からの見栄えが抜群にいいんだ。
 ほぼ垂直に床を踏みしめる美脚。結合部である腰と手首の鎖を支えに、弓なりになった上半身。その柔軟に反った鋭利な姿は、日本刀そのものを思わせる。
 ただし、いやらしさがないわけじゃない。刀身のような上半身の中ほどでは、豊かな乳房が派手に揺れている。その揺れ具合こそ、突き込みの激しさの指標だ。
 ピアス男に遠慮というものはなかった。後ろから両手を回して、藤花の恥骨辺りをがっしりと掴んだまま、ゴーヤのような怒張を抜いては突き込む。どぱんっ、どぱんっ、という肉のぶつかる音といい、無駄肉のない藤花の尻が波打っている事といい、相当な強さで腰をぶつけているのは明らかだ。
 藤花は、両足を肩幅に開いて踏みとどまり、じっとそれに耐えているようだった。ただ、最初の頃の、触れれば切れるような覇気は感じられない。
『はぁっ、はぁっ……。はぁっ……はぁーっ…………』
 息は荒く、顔は項垂れたまま。だいぶ参っている様子だ。
 ピアス男は、そんな藤花の肛門を激しく犯しながら、恥骨に宛がった手を上に滑らせる。つまり、下腹を押さえる形だ。
『なんだよ、全部出てねぇのか? 腹ァ膨れてんじゃねぇか』
 奴はそう言った。映像で見る限り、藤花の腰回りはダンサーと見紛うほどにくびれていて、腹が膨れている様子など微塵もない。だが、真相がわかるのは藤花本人と、肌で触れ合っているピアス男のみ。そして藤花は、今もグルグルと不穏な音をさせている下腹を見ながら、思うところがあるようだった。
『しっかりケツ締めとけよ。アナルファック中にダラダラ漏らしやがったら、タダじゃおかねぇぞ』
 ピアス男はそう言って藤花の尻を叩き、腰を振りたくる。その勢いで前後に揺られながら、藤花も体勢を変えた。肩幅に開いていた脚をさらに広げ、膝を曲げて腰を落とす。さらには両の足親指で床を噛む。いかにも古武術的な、『耐える』構え。
 綺麗だ。筋肉のカットに思わず見惚れてしまう。日々鍛錬を積み重ねてきたゆえの筋肉美と、彫刻のような機能美、そして女体としての純粋な魅力。それらが渾然一体となって、究極とも思える美を形作っている。そう感じるのは俺だけじゃないらしく、隣でモニターに見入っている連中も、腰を落とした藤花の脚を凝視している。
 だが、価値観は千差万別。少なくとも映像の中のピアス男は、藤花の美に目もくれない。奴の狙いはただ、アナルレイプの中で藤花に恥を掻かせることだけだ。
『おい。クソ漏らすなっつってんだろうが』
 ピアス男は、ドスを利かせた声で藤花に囁きかける。藤花の頭がピクリと反応した。
『も、漏らしてなど、いない……』
『嘘つけよ。さっきから俺の太股に、ヌルヌル流れてきてんじゃねぇか。これがクソじゃなきゃなんだ? 腸液か? もし腸液ならお前、それこそケツで感じてるって証拠じゃねぇか』
『ち、違う! 不浄の穴でなど感じるかっ!!』
『ほう、そうかい。じゃ、もう一度チャンスをやるよ。ケツの穴グウッと引き締めて、この生ぬりぃクソ汁を止めてみろや』
 パンパンという小気味いい音を背景に、そんな会話が交わされる。

『……はっ。ピアス君もいい性格してんぜ。一度ドナン浣腸でぐっぱり開いちまったケツを、そうすぐに締められっかよ』
『どんだけ筋肉ある女でも、垂れ流しになっちまうからな。だが、ケツを締めようとさせんのはいい作戦だぜ。実際にゃ締まらねぇにしても、ケツに意識向けて、まだ痺れてねぇ子宮周りの筋肉緊張させりゃあ、アナル性感がグングン高まっちまう』
『そういや、アナル狂いになった女共も言ってたな。ドナンで直腸やら結腸溶かされる感覚はヤベエって。そのアクメの味知ったら最後、普通のセックスなんぞじゃ刺激が足んねぇんだと』
『ああ、そりゃ俺も聞いたな。特にああいう、クソ真面目で融通の利かねぇ女ほど、アブノーマルから抜け出せなくなるんだ』

 かろうじてマイクに拾われる声量で、調教師達が囁き合っている。アナルセックスの音に邪魔され、藤花には届かない会話。生真面目な藤花は、乗せられたレールの行方も知らぬままに走り続ける。
 腰を落としても肛門を閉じられないからか、藤花の脚はまた閉じあわされた。ただし、今度は両脚を伸ばしているわけじゃない。左足が爪先立ちになり、かすかに膝を曲げている。クリトリスで絶頂する時も、藤花はああして爪先立ちになっていた。絶頂を堪えようとして、床を噛んでいるのか。それとも絶頂に耐え切れないから足裏が浮くのか。その因果関係は定かでないが、行きつく先は同じだ。
『はぁっはぁーっ、はぁっ……あ、あ…ああ! はあ、あっ…あっ……!!』
 最初は、途切れがちな呼吸なのかと思った。だが時が経つごとにはっきりしていく。
 藤花は、喘いでいた。あっ、あっ、と。激しく肛門を犯されながら、艶かしく爪先立ちの脚を蠢かしながら。
『だいぶ、良くなってきたらしいな』
『ッ!?』
 ピアス男の囁きに、藤花がはっとした様子で顔を上げる。遅まきながら、自分が浸っていた事実に気がついたんだろう。
『ふざ、けるな……!』
『何もふざけちゃいねぇよ。俺がどんだけ女のケツ犯してきたと思う。わかんだよ。こうやって腸の奥まで、グリグリやってりゃ。それによぉ』
 ピアス男はそう言って、藤花の足の合間に指を差し入れる。
『んっ!?』
 ぐちゅりと音がした瞬間、藤花が発したのは、女の声だった。いつものハスキーボイスと同じ喉から出た声とは思えない。
『ほら見ろ、マンコがグチョグチョじゃねぇか』
 ピアス男の指が割れ目から抜かれ、藤花の目の前で開く。指の合間には、ねっとりとした糸が引いた。
『この状況で、どう屁理屈を捏ねるんだ? こんなネバネバの本気汁出しといて、まさか防衛本能とか抜かすつもりじゃねぇよな。なにせ、テメェのマンコにゃ何も入ったことがねぇ。昨日も今日も、後ろしか使われてねぇんだからよ!!』
 耳元で叫ばれる理論に、藤花の目が泳ぐ。初めて見る反応だ。相手を睨めない時はあっても、藤花の視線は常にどこか一点を見つめていた。まっすぐ前だけを見ている感じだった。それが今は、揺れている。自分を見失っているかのように。
 そして、そんな弱った気配を、サディストが見逃す筈もない。
『乳首も、コリコリに固くしやがって。よくこれで誤魔化せると思ったもんだぜ』
 愛液を塗りつけるように、ピアス男の手が乳房を包む。
『ふんん……っ!!』
 二つの指の腹で先端部分を扱かれれば、藤花からは本当に気持ちの良さそうな声が漏れた。ピアス男の口元が吊り上がる。
『チンポに響くいい声だ。好きだぜそういうの』
『くっ!黙れ……黙れえっ!!!』
『いいや、まだまだ言い足りねぇな。ここまで来て感じてねぇとか、白々しいウソ抜かすバカにゃよ。だいたいテメェ、もうドナン浣腸の効果なんざとうに切れてんのに、ケツがぐっぱり開きっぱなしじゃねえか』
『そ、それは……お前が後ろでしてるからだろうっ!』
『にしてもだ。普通はいい加減狭まってくるもんだぜ。お前みたいに武道やってる奴は、8の字筋が鍛えられてっから、余計に戻りは早ぇもんだ。実はケツでされんのがきんもちよくてよぉ、テメェの意思で括約筋トロかしてんだろ?』
 ここが決め時だとばかりに、畳み掛ける。言葉の真偽は判らない。ドナンの効果がどれだけ持続するかなど、普通に生活を送っていれば知る機会はない。だからこそ、その言葉を否定しきるのは難しかった。特に心が揺らいでいる人間は、自分を疑いがちだ。ありえない理論でも、自信満々に言い切られれば、それが真実だと思えてしまう。

『違うっ!! 俺は、俺はおかしくなんか、ないっ!!!』

 藤花は目を泳がせながら、不安定な声色で叫ぶ。そして曲げた左足で右足の甲を踏みつけはじめた。まるで幻惑の中、ナイフで身を傷つけて正気を保とうとするように。
『くひひっ。どうした、刺激が足んねぇか変態女? なら協力すんぜ!!』
 ピアス男はそう言って、弄くりまわしていた乳首を捻り上げる。乳房全体が変形するほどの強さで。
『んぐうううっ!!!』
 藤花は天を仰いで呻いた。彼女の過去映像を見た人間なら誰でも、それが彼女の限界を示す仕草なんだとわかる。クリトリスとアナルの同時責めで深く絶頂した時も、ドナン浣腸で決壊した時も、そうだった。
 右足への踏み付けが止まる。左足の裏が床につき、身体全体が芯を失ったように傾ぐ。その結果、彼女の震える脚が選択したのは、内股だった。いつもどっしりと地を踏みしめる彼女らしくもない、女の子の立ち方。
 『大和男児』の首が、切り落とされた瞬間だ。
「ひひひっ、可愛くなっちまって。ケツん中も締まってきたなあ。俺のチンポブラシに、粘膜が甘えてきてんぜ?』
 ピアス男は上機嫌で藤花の恥骨を抱え直し、腰の振りを再開する。しかも今度は、自分が腰を打ちつけるだけじゃない。地に根ざすことのなくなった下半身を、自分の方へ引き寄せもしつつの双方向ピストンだ。となれば当然、腸奥を貫く衝撃も倍になる。今の藤花に、それを撥ね退ける気力はない。
『ああっ、あはぁああ……あっ、あっ、あっ……!!』
 はっきりとした喘ぎを漏らしながら、されるがままに腰を揺らす藤花。
 もはや日本刀どころか、風にそよぐ柳も同然だ。その変わり果てた姿をしばらく捉えてから、モニター画面は黒に染まった。


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 暗転したモニター画面を前に、立ち尽くす。
『絶叫が続く動画につき、他のモニターよりも音量を下げております』
 そのテプラが目に入った。
 なるほど、調整は必要だ。クリトリスで絶頂していた動画でも叫びは凄かったが、この動画には及ばない。声の大きさも、その悲惨さも。出来ることなら、いっそ音声などなくして欲しかった。憧れすら抱いた『男児』の崩壊を、生々しく知ってしまうぐらいなら。

 だが果たして、本当に彼女はもう駄目なんだろうか。
 3つの頃から稽古に明け暮れてきたという彼女は、芯が強いに違いない。雨が降ろうが風が吹こうが、そう易々と心が折れたりはしないはずだ。
 俺はそう願いながら、最後のエリア……『8日目』へと足を踏み入れる。黒山の人だかりと、その連中の顔に浮かぶ薄笑いに、嫌な感じを受けながら。


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 映像は、女の肛門のアップから始まった。
 慎ましかった桜色の蕾は、もうその面影もない。プレイ前らしき今も、指の2本ぐらいなら難なく入りそうな隙間が空いている。菊の輪のひとつひとつも紅色に膨らみ、若干とはいえ外にめくれている。
『すげぇな。もうアナルマニアの貫禄だぜ』
 前の動画で散々耳にした声が茶化す。
 カメラが少し引かれ、撮影場所の背景が映り込んだ。もはや半ば藤花の専用室と化している、ガラス張りのバスルームだ。周囲にはいつも通り、客の姿もある。
 ただ、いつもと違う事がひとつ。藤花が、拘束されていない。
 これまでは藤花がどれだけフラフラになっていても、しつこいぐらいに縄や手枷足枷が取り付けられていた。前の動画では2回も縛り直された。
 とはいえ、それ自体は仕方のないことだ。怒りに任せて暴れ、フロア中を混乱の渦に巻き込んだ前科がある以上、行動を制限するのは当然。だからこそ、そんな猛獣にも等しい藤花が拘束されていないのは異常だ。映像を見る限り、バスルームの中には彼女とピアス男の2人しかいないのに。
 ではなぜ、拘束されないのか。決まっている。その必要がないと判断されたからだ。もはや藤花は脅威ではない。大立ち回りを演じる気概はない。その烙印を押されたということだ。
 俺には、それがまたショックだった。

『んじゃ、始めっか。テメェの大好きなドナンをよ』
 ピアス男がそう宣言し、洗面器を引き寄せる。ガラスの外で客が沸き立った。
『大好きな訳……ないだろう』
 ぼそりと、そう呟く声がする。俺は最初、それが藤花のものだと思えなかった。ギャラリーの誰かの声が入っているんだと思った。いつも堂々と己の信念を訴えていた彼女のイメージとは、あまりに違いすぎたから。
『ほう。テメェ昨夜の問答を、また蒸し返す気かよ? かーっ、恩を仇で返された気分だぜ。二回目のドナンファックでガチ泣きしてっから、特別にアナル舐めで勘弁してやったってのによぉ!』
『…………ッ!!!』
 冷ややかな声で発された一言に、藤花の体が強張る。
 どうやら昨日の映像には、非公開の続きがあったようだ。これまでの映像でカットされていた場面を考えると、ピアス男の言うように“アナル舐め”だけで済んだのかは疑わしい。男の肛門に舌を這わせ、その先があったんじゃないか。そしてその結果、藤花に『もはや脅威足りえない』という烙印が押されたんじゃないか。つい、そんな風に考えてしまう。
『まあいい。なら、今日で中毒にしてやるよ。改めてな』
 ピアス男は、ガラスの浣腸器でドナン液を吸い上げ、無遠慮に藤花の腸内へと注ぎ込む。今回もそれが2回繰り返された。さすがに3回目はない。昨日の映像を見る限り、そんな事をしたら多分、藤花の肛門は使い物にならなくなるだろう。今彼女に注がれたのは、それほどの劇薬だ。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……』
 藤花は這う格好のまま、深めの呼吸を繰り返していた。緊張した感じではあるが、まだまだ規則正しい息遣い。だが、それも今だけだ。
『さ、栓するぞ』
 ピアス男は浣腸器を戻し、また別の道具を手に取った。小さな風船にチューブと握りのついたもの。
『こいつはアナルバルーンっつってな、腸の中で膨らむんだ。シンプルだが使い勝手のいいストッパーだぜ。これから何度も使われるだろうから、よく慣れとけ』
 ピアス男の手が、風船部分を肛門の中へ押し込んだ。そしてポンプ部分を何度も握り込む。
『うあ……っ!?』
『すげぇだろ。身体の内側から粘膜を圧迫されると、脳が全力で危険信号を鳴らすんだよな。ま、気にすんな。ひり出せないレベルまでは膨らませるがよ』
 ピアス男は笑いながら、何度も何度もポンプを握り込む。シュッ、シュッ、と音がし、藤花の尻が震える。あるいはその震えは、すでにドナンの効果が出ているせいかもしれない。なにしろ彼女の肛門からは、バルーンによる栓が間に合わなかった汚液が、早くもあふれ出しているんだから。
 
 この日も藤花は、たっぷりとドナンを我慢させられた。
 昨日とは趣向が違うが、陰湿さでは大差がない。
『はーっ、はーっ、はーーっ、はぁーーっ……!!』
 重苦しい呼吸を繰り返す藤花に対し、ピアス男は嫌がらせを繰り返す。例えば、バルーンをさらに膨らませたり。あるいは逆に少しだけ空気を抜き、中途半端に汚液を噴き出させたり。
 さらには極細かつ凹凸のあるステンレス棒を、尿道に出し入れさえする。客が興奮気味に尿道ブジーと呼んでいたこの責め具は、かなり刺激が強いらしい。
『や、やめろ……垂れ流しに、なる…………』
 尿道にブジーが挿入されはじめたとき、藤花はぜぇぜぇと肩で息をしながら、初めて後ろを振り返った。だがピアス男の指は止まらない。
『ああそうかよ。これも昨日の問答の繰り返しになるが、ションベンの穴拡げられんのとクリにピアス嵌められんの、どっちがいいんだ? 俺は横に貫通させるピアスがオススメなんだがよ』
 そう問われれば、藤花は悔しそうに尿道と答えるしかない。どっちも不可逆な責めには違いないが、ピアスという証を刻まれるのは流石に避けたいんだろう。

 ピアス男は、ゆっくりと尿道ブジーを前後させながら、そのうちクリトリスにも手を出しはじめた。奴によると、尿道の奥は薄皮一枚を隔ててクリトリスの根元と接している。だから尿道を開発する事で、自然とクリトリスの感度も上がっていく……らしい。
 事実、尿道にブジーを抜き差しされながら、オイルを塗されたクリを扱かれる中で、藤花は何度も絶頂していたようだ。
 最初こそ必死に耐えていたが、そのうち自分の左腕を噛んで声を殺しながら、いぐいぐいぐ、と呻くようになった。元々隠しごとが得意なタイプには見えない。それで意地さえ張り通せなくなれば、自然と解りやすい反応になるんだろう。

 問題は、これらの嫌がらせが、ドナン浣腸と平行で行われていることだ。
 あまりに強すぎる便意で、痙攣し、失神し、白目を剥き、泡を噴く、最強最悪の浣腸。それに悶絶しているところに、尿道やクリトリスからも無視できない苦しさや快楽が発せられる。苦痛と快感の板挟みになり、狂いそうになることだろう。
 実際、藤花も苦しみ抜いていた。
 犬の交尾と揶揄されるほど、下痢の音を響かせる腹部を上下させたり。
 歯を食いしばって天を仰いだかと思えば、俯いて何かの液体をタイルに垂らしたり。
 藤花の後方に位置するカメラには、その表情は映らない。だがガラス越しに見物している客の表情から、悲惨な状況らしいという推測はできる。
『昨日の映像よりひどい』
『若い女のする顔じゃない』
『目隠ししてやった福笑いのようだ』
 そんな言葉も聞き取れる。あの凛とした美貌が、どれだけ崩れれば福笑いなどと形容されるんだろう。初日の時点では、調教対象の6人の中で、最もそれから遠い存在だったはずなのに。

『もう……許してくれ。ほんとうに、意識が、保てない……』
 腹から異音を轟かせつつ、藤花がとうとう音を上げた。するとピアス男は、その言葉を待っていたとばかりにクリトリスから手を離す。腕にかかった黄色い液を振り落としながら。
『そうか。ま、俺ァいいけどよ。問題は、お客が許してくれるかだな』
 ピアス男は藤花の腕を取って立ち上がらせ、痙攣で足元のおぼつかない彼女を、バスルームの壁……つまりガラスの前に立たせる。
『お、何だ何だ?』
『おほほっ、そんな近くで見せてくれんのかよ!?』
 客達はそれを見て、一斉に藤花の対面へと集まりはじめた。
『……いや……普通にさせてくれれば、いいんだが……』
 藤花は凍えるように震えながら、手で胸とあそこを覆う。これも意外な反応だった。ほんの2日前までの彼女なら、手で隠すのではなく、「見ると殺す」という眼光で客の目を逸らさせていたはずだ。
 その彼女らしくない仕草を、ピアス男が荒々しく払いのける。
『したけりゃ、お客さんにお願いするんだ。「私の汚いウンチを見てください」ってよ』
 ピアス男がそう言うと、藤花の眉が動いた。怒りとも困惑ともつかない角度だ。逆に客の方からは拍手と歓声が起きる。
『そ、そんなこと……』
『言わねぇってんなら、栓は外さねぇ。昨日みてぇに栓をぶっ飛ばすまで我慢しろ。ただ、気ぃつけろよ? 昨日は滑りのいいアナルプラグだったから上手く抜けたが、今日は摩擦の強ぇゴム風船、しかも限界まで膨らませたやつだ。んなもん無理矢理ひり出したら、ケツが裂けてもおかしかねぇぜ』
 渋る藤花に対し、ピアス男は淡々と答える。威圧的でないだけに、その言葉には妙な真実味があった。だからこそ、藤花は迷う。何分も葛藤する。
 だが結局、生理的な欲求に抗いつづけるのは無理だ。下腹から凄まじい音がなり、肛門から破裂音がし、バルーン栓を越えた汚液が太股を伝いだした頃。
『…………しの……ない……を、……てくだ……ぃ…………』
 藤花は俯いたまま、何かを呟いた。宣誓の言葉らしいが、いかんせん声が小さすぎる。
『ああ? 聴こえねーよ。もっとデケェ声出せや、俺らに啖呵切ってた時みてぇによ!』
 ピアス男が苛立ちを見せ、客も口々に再宣誓を求める。
 藤花は、唇を噛み、手を握りしめた。そして腹の音に急かされたように、再び口を空ける。

『 わたしの汚いウンチを、見てくださいっ!!!! 』

 涙を零しながら、藤花は叫ぶ。剣道の気合の声より、もっと大きいかもしれない。それは映像内で音割れを起こすほどで、ピアス男も客達も、全員が耳を押さえている。
『うおっ……お前、バカか!? デケェ声っつったけど、限度ってモンがあんだろうが! どんだけ融通利かねぇんだよ』
 ピアス男は呆れた様子で、アナルバルーンの解放ボタンを押す。ブシュウッと空気の抜ける音がし、直後。
『あ……くあああああ゛ぁ゛ぁ゛!!!』
 藤花の悲痛な叫びと共に、決壊が始まった。ガラス盤に薬液を叩きつける形だから、外にいる客には開ききった肛門から太股の痙攣具合まで、すべてが見えていることだろう。


 そして、責めはこれで終わりじゃない。
 この日の藤花は、排泄の直後、客に肛門を晒すことを強いられた。
 まだ太股が痙攣したままの状態で、客の方へ尻を突き出し、自らの両手で尻肉を割りひらく。その屈辱は相当なものだろう。
 散々見世物になり、口汚い言葉を浴びせられても、まだ終わりじゃない。
『よし。今日ここに来てるダンナ方には、特別サービスだ。上のディープスロートフロア解禁って誘惑にも負けねぇ、生粋のアナルマニアだしな』
 ピアス男はそう言って、巨大なディルドーを取り出した。ただし、一般的のディルドーとは2つ違うことがある。
 一つは、そのディルドーがスケルトン……つまり透明な素材でできていること。
 そしてもう一つは、底に巨大な吸盤がついていることだ。
 奴はその吸盤を、バスルームのガラスに吸着させた。吸盤はかなり強いのか、ディルドーの自重にも負ける気配がない。吸盤も含めてすべての素材が透明だから、バイブ越しにも向こうの景色が見える。そしてその高さは、藤花の腰丈よりやや下だ。
『さて、準備完了だ。この後どうするか判るよな?』
 ピアス男に問われ、藤花は奥歯を軋ませた。

 こうして藤花は、より一層の恥辱を味わうことになった。
 中腰の姿勢のまま、ガラスに尻を押し付ける形でディルドーを迎え入れる。ガラス向こうの客に、腸の奥までを晒しながら。
 客はもう大騒ぎだった。ガラスに張り付けるポジションを醜く奪い合いながら、興奮気味に何かを叫んでいる。俺はそこに混じりたいとは思わないが、興奮の理由はよくわかった。
 まず何といっても藤花はスタイルがいい。ダンサーやスポーツインストラクター系の健康美人だが、同時に胸も大きいとなれば、男の視線を集めるのも当然だ。あるいは俺のように、凛とした雰囲気に魅力を感じる人間もいるだろう。猛獣が牙を抜かれていくのを面白がる人間もいるだろうし、その猛獣に逆鱗に触れて怪我を負い、逆恨みしている人間もいるようだ。
 ともかく、少なくない人間が、藤花に興味を抱いているのは事実だ。
『んっ、く……ふん、んん……ん゛っ!!』
 藤花はディルドーに腰を打ちつけながら、つらそうに呻いていた。

『気持ち良さそうな呻きだ。やはりドナン浣腸の後だと、腸が敏感になっているらしい』
『羞恥もあるでしょうね。何しろ、腸の奥まで覗かれてるんですから』
『しかも自分で腰を振る、公然アナニーだぜ。俺なら途中で、何やってるんだろうって情けなくなるわ』
『まだドナンの残り汁が噴き出してますしね。この大人数の前で下痢便を噴き出しながらディルドー遊びだなんて、私にはちょっと……』

 客は口々に感想を漏らし、悪意ある笑みを浮かべる。そしてその悪意が、藤花への恥辱責めをさらにエスカレートさせていった。
『ほら、新品だぜ』
 ピアス男が、藤花に竹刀を手渡す。藤花は、この時ばかりはさすがに眼光の鋭さを取り戻した。だがピアス男がじっと眼を覗き込むと、眼を見開いて視線をそらす。どうやら、調教師との上下関係は完全に刷り込まれてしまっているようだ。
 今までどおり中腰でディルドーを咥え込んだまま、竹刀でビーチボールを割ること。それが藤花の新しい課題だ。
 中腰でアナルを抉られる状態では、充分な力は発揮できない。結果、いかに藤花といえど、なかなかビーチボールを割ることはできなかった。
 ぱすっ、と情けない音で竹刀が振り下ろされるたび、客からは野次が飛ぶ。
 肛門でよがってるからそのザマなんだ。
 剣術道場の娘として恥ずかしくないのか。
 剣道の全国大会優勝など疑わしい、その歳で色仕掛けでもやったのか。
 そんな、プライドを踏みにじるような野次だ。
『く、く……っふ、くうう゛っ……うああァッ!きぃええエッ!!』
 藤花は、顔を真っ赤にし、悔し涙を流しながら竹刀を振るいつづける。だがそうして感情を乱せば、ドナンに荒らされた肛門にも余計な力が入ってしまう。結果、彼女は必死になればなるほどに恥を晒すことになった。
 ディルドーの出入りする肛門から、みっともない音で放屁を繰り返したり。凄まじいがに股を晒したり。
 そして、最悪なのは終盤だ。何度叩いてもビーチボールを割れない藤花は、腰を据えての一打を放とうと思ったんだろう。あえてディルドーを根元まで咥えこみ、尻肉をガラスに宛がった状態のまま、ぐっと重心を定めた。するとまさにその瞬間、ディルドーが結腸の入口を抉ったらしい。
 ──ドナンで直腸やら結腸溶かされる感覚はヤベエ
 前の動画で、調教師が言っていた言葉を思い出す。
 ほんの一瞬の偶然で、藤花は深い絶頂に呑まれてしまった。

『んあ゛お゛っ!?』

 虚を突かれたような声がし、藤花の背中が仰け反った。そして割れ目の辺りから飛沫が吹き、手から竹刀が滑り落ちていく。
『おお、なんだなんだ!?』
『潮噴いたのか!?』
『アナル……つか、結腸アクメ!?』
『うわ、すげぇ足ケイレンしてるよ。がに股で……』
 客がそう騒ぎ立てる中、藤花はなおも結腸の入口を串刺しにされたまま、絶頂の余韻に浸るしかなかった。背後のガラスに後頭部を預け、頬に沿って涙を零しながら。
 

 そうして散々に恥を晒した後は、公衆の面前でのアナルファックが始まる。昨日と同じくピアス男が2重にペニスサックを着け、ゴーヤのような怒張を作っての肛門凌辱だ。
 直前に結腸で達しているからか、それとも心が弱っているからか。雑にタオルを敷かれたタイル床に這う格好を取らされた時点で、すでに藤花は弱々しく見えた。体を支える手足に力は感じられず、切れ長な瞳は水平にまで下がっている。
 それでも、完全に矜持を無くした訳でもないらしい。カメラが顔をアップで撮れば、口元を引き締めてレンズを見据える。背後でピアス男が巨根で尻肉に『挨拶』すれば、肘を狭めて顎を引く。まるで竹刀を構えるように。
『……っ!!!』
 極太が狙いを定め、尻肉に割り入った時でさえ、一瞬口を開いただけで声は上がらなかった。

 ただ、気持ちがいいのは確からしい。カメラが藤花の頭側から結合部を映す中、ゴーヤのような逸物が出入りするたびに、映像下部で背中と尻肉が引き締まる。
『……んひぃっ……ぐ、ぐひぃっ……!! ……う、んっあ、あ……っ!!!』
 そんな小さな呻きも録音されている。
『バカみてーに我慢強いお前でも、さすがに声が抑えらんねぇか。ドナンは肛門から結腸まで、満遍なくトロかすからな。しかも刺激が強ぇだけに、やればやるほどハマっちまう。言ってみりゃケツでのキメセクよ』
 ピアス男はそう囁きつつ、藤花の脚の付け根をがっしり掴んで腰を打ち込んでいく。藤花の肛門は、ドナンのせいで開ききっているんだろう、極太が滑らかに出入りする。カメラはその結合部を中央に捉えたまま、男の胸板と藤花の肩甲骨までが入る程度の俯瞰で撮影を続けていた。
 派手さはない。でも、それだけに生々しい。
 パンパンという肉のぶつかる音よりも、呼吸音の方が大きく聴こえた。男はさすがプロという感じで、全く同じリズムでの呼気と吸気を繰り返す。逆に藤花の息は明らかに乱れていた。マラソンで息が上がった時のような息だ。
『体力自慢の剣道娘も、さすがに息が上がってきたな』
『ええ。泣いているようにも聴こえますな』
『無理もないでしょう。何しろ、あんなデカいものを出し入れされてるんですからね。苦しくてキモチよくて、堪らないはずですよ』
『単純に肺が潰されているというのもあるかもしれませんね。体格がいいとは言っても、まだ身体の出来上がっていない娘っ子ですから』
 バスルームを囲む観客のものだろう、色々な声色が映像に入り込んでいる。その中でピアス男は、淡々とした力強いアナルセックスを繰り返す。アナル性感を徹底的に目覚めさせようとでも言うように。
 ぐちゅぐちゅと音が鳴るたびに腰が浮き、荒い息が漏れる。それが何十度も続く。
『そら、また深ぁくいくぜ?』
 脚の付け根に掌をめり込ませながら、ピアス男がぐうっと腰を突き入れた。
『んぐうう゛っ……!!』
 藤花から呻きが上がり、画面端で太股が引き締まる。
『へっ、直腸の奥がにゅるにゅる動きやがる。それともこりゃ、ドナンで蕩けた子宮の動きか? サックを二枚も被せてっと幹の感覚はねーが、そのぶん先っちょは敏感になるんだよな。せっかくのドナンファックだ、お前もたっぷり粘膜の快感に浸れよ? つっても、言うまでもなく感じてるみてぇだがな』
 ピアス男はそう囁きながら、円を描くように腰を回す。たぶん直腸奥の粘膜ごしに子宮を押し上げているんだろう。
『んん、あ、あ゛!! や、やめッ……!!』
 藤花の肩甲骨が狭まり、背中の中心に深い溝が浮く。アナル舐めの時、無意識に示していた反応とそっくりだ。ただし、今の藤花には意識がある。にもかかわらず、反応を止められない。
 ピアス男の顔はカメラに収まっていないが、それでも笑っているのがわかった。奴は一番の奥まで挿入したまま、グリグリと腰を押しつけはじめた。妙な動きだ。それが何をしているのかは、すぐにわかる。
『くあ゛!? そこは……っ!!!』
 藤花が悲鳴を上げ、腰を左右に捩りはじめる。だが、男の腕力から逃げるのは不可能だ。
『ああ、結腸だよ。チンポじゃ入口くすぐる位が限界だが、ドナンで敏感になってる今は効くだろ? さっきもディルドーがここ入って、すげぇ声でイってやがったからな』
 ピアス男は駄目押しとばかりに腰を押し付けてから、またピストンを再開する。パンパンと肉のぶつかる音と、ぐちゅぐちゅという水気の多い攪拌音がバスルームに響き渡る。
『…………ふッ!!! …………んんん゛ッッ!!!!!』
 藤花は、声を押し殺してそれに耐えているようだった。
『頑張んなって。こっちは昨日、散々ケツでやってんだぜ。お前の弱ぇトコぐらい、全部わかってんだよ』
 その言葉通り、ピアス男の腰遣いに澱みはない。確実に何らかの狙いを持って、力強く腰を打ちつけていく。そして、その狙いは確実に成果を出していった。
『ああ……あっ、あ!! んん゛……うんん゛……っ!!!』
 艶かしい声が漏れては途切れ、また漏れる。カメラが少し引くと、這う格好で歯を食いしばる藤花の姿が映り込んだ。まさに必死だ。
 男が腰を打ち込むたび、よく鍛えられた肉体が縮こまる。首から肩にかけての筋肉の凹凸は凄まじいが、床のタオルを握りしめる腕は女の子そのものだ。皺の寄る眉根は、限界まで緊張する中で、ある瞬間ふっとリラックスする。だがすぐにそれを拒絶するように、また眉を顰める。その繰り返しだ。
 外から見える部分だけでも、藤花の限界が近いのは明らかだった。
 そして何度も映像で見た通り、セックスでの内的な変化は、外から見える部分よりもずっと激しい。ピアス男が一旦逸物を引き抜くと、それをまた実感させられた。
『つか、マン汁多すぎだろ。俺のシモの毛が全部濡れちまった』
 その言葉で、カメラが斜めに位置を変える。雫の滴る男の股間と、藤花の脚の間が映り込むように。
『マンコがどうなってるか、撮っといてやるよ。後で自分でも見られるようにな』
 ピアス男が背後のスマホを拾い上げ、動画モードの起動音が響く。

 一瞬の暗転を挟んで、映像が切り替わった。

 アングルは、結合部を真下から捉えたものになっている。スマホを藤花の腰の下に置いてるんだろう。
 アップで映し出されるのは、尻肉に出入りする空き缶並みの逸物。凄まじい大きさだ。それが難なく抜き差しされるなど、異常としか言いようがない。そしてその“異常”が何十分も繰り返されれば、何かが軋んで当たり前だ。
『……っと、位置が悪ぃな』
 ピアス男の声がし、カメラの位置が移動する。抜き差しされている部分の少し下、割れ目が大写しになるように。
 まさに、藤花が壊れつつあることを象徴するような光景だった。肛門に逸物が出入りするたび、割れ目から雫が滴り落ちてくるんだから。
『あ、あ……あぁぁ゛、ぁあぁ……ああ゛っ!!!』
 藤花は、もう喘ぎ声を抑えきれていない。歯を食いしばる余裕すら失くしたらしく、腰の揺れに合わせて艶かしい喘ぎを漏らしつづけている。
『イイ声が出てんなオイ、可愛いぜ“オトコ女”。……っと、この呼び方ももう違ぇか。お前はもう、オトコ女ですらねぇ。ケツだけで濡れちまう、ただのメスだ』
 ピアス男が、洗脳するように囁く。
 メス。極限下で耳にしたその言葉が、誇り高い藤花の支えをへし折ったのか。
『くかっ、あ、ああああぁ……!! ゆ、ゆるして、くれ……陸兄ぃ……篤志、勇、聡太、俊春…………父さん…………!!!』
 藤花は切ない呻きの後、家族らしき相手への謝罪を始めた。そうして懺悔を済ませた後、彼女はいよいよ深みに嵌まりはじめる。

『あっ、あっ、ひっ、あああぁっ……!! はぁっ、はぁっ……んああああっ、ひっあああっ、はああ、はあっ、ひっ、ああっ!!!』

 はっきりとした喘ぎ声が、絶え間なく発される。場所がバスルームだけに、その声はよく反響した。カメラに接写される割れ目からは、何かの栓が抜けたように愛液があふれ続けてもいた。
『はっはっは、スゲェ声だ! でもしゃーねぇよな、ケツでイッちまってんだもんな?マンコにゃまだ指すら突っ込まれた事がねぇってのに、何遍も子宮イキしやがって。剣道屋だけに一直線だなぁ、このド変態女が!!』
 ピアス男はそう言いながら、極太を力強く叩き込む。割れ目を接写するアングルで、伝わってくる情報は多くない。それでも、充分だ。
 逸物が深く叩き込まれる瞬間には、ひいっという声がし、肛門周りと割れ目が収縮する。ビラビラも閉じるから、雫の滴りは一旦途切れる。凍りついたように。
 だが逸物が引き抜かれれば、凍った時間が動き出す。ああああ、と本当に堪らなさそうな声が響き渡り、肛門と膣の筋肉が弛緩していく。ピンク色の縦筋が口を開き、ぽたぽたとカメラへ雫を垂らす。
『いい具合だ。こなれて、締まって。普通なら2ヶ月はかかるってのに、8日でここまで仕上がるとは恐れ入ったぜ。これならお客にも出せるな。ま、その前に……俺もそろそろ限界だ!!』
 ピアス男は荒々しい口調で叫ぶと、突き込みのペースを上げる。
『うあっ!! はっ、はぁっ、あっ!!!』
 藤花の喘ぎも早まり、そして数秒後。
『出るぞ! 結腸の中に流し込んでやっからよ、よく味わって消化しろや!!』
 ピアス男はそう叫ぶと、一番の奥まで挿入しきってからグリグリと腰を押し付け、そのまま射精体勢に入る。
『あ、やめろ、やめっ…………あ、あ……ああああっ!!』
 藤花は絶叫した。おそらく、腸奥に熱い精液を浴びると同時に。
『くくっ、見たまえよ。あれほどに仰け反って……』
『表情も凄まじいですな。下の奥歯まで丸見えだ』
『うんうん。気の強い女が“壊れる”瞬間は、何度見ても感動しますね』
 ギャラリーの言葉から、藤花の様子が嫌でも想像できてしまう。
 映像の中で、ピアス男の睾丸は激しく収縮していた。かなり大量に射精しているらしい。
『はああ、最ッ高だぜ。ケツ粘膜と子宮側からの圧迫で、たっぷりイジめられちまったからな。出る量がハンパねぇ』
『あああ……く、うっ……』
 愉悦に浸るピアス男と、悔しげな藤花。声色は対照的だ。

 やがて逸物が抜き出されると、ぽっかりと拡がった肛門から白濁があふれ出す。それは、藤花の決壊とあふれる涙を象徴しているかのようだった。
『ふーっ、出た出た。はっ、何だよお前、ライオンが吼える真似か?』
 ピアス男は満足げな息を吐きながら、藤花を嘲笑う。そして、さらに言葉を続けた。
『だが、これで終わりじゃねぇぞ。水分補給しつつシャワ浣して、再開だ。今はまだドナンのおかげでケツが緩んでっから、出し入れもスムーズだったが、こっからは時間が経つごとにドナンの効果が薄まっていく。このイミが解るか? つまり……このデカマラを、シラフに近ぇ状態で受け入れるってこった』
『な……っ!!!』
 ピアス男の言葉に、藤花の身が強張った。
『そうそう、イイ顔だ。睨みきれねぇって感じのその顔が、一番見てて楽しいぜ。腰が立たなくなるまでヤッてやるから、まぁ堪能しろや』
 悪意に満ちたその一言を最後に、カメラが拾い上げられ、悪魔じみたピアス男の顔を大写しにして暗転する。


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 ついに、見てしまった。あの藤花の心が、ポキリと折れる瞬間を。
 左を見ても、もう次のエリアはない。何もないスペースと、入口横に設置された自販機が見えるばかり。
 いや……違う。次はある。部屋の中央奥、厚い扉に隔てられた先に、現在の藤花の姿があるはずだ。
 正直、もう充分だ。あまりにハードなものを見させられつづけて、胸焼けを起こしている。
 だが同時に、俺の内にはこの先を見たいという気持ちもあった。水っ腹でなお、激しい喉の渇きを覚えるように。
 死にゆく愛犬の最期を、せめて看取りたいといった感情なのか。
 それともこの情動こそ、本来の俺の性質なのか。
 今朝の夢を思い出す。
 あの育ちの良さそうな女は、俺の手の届く場所で壊れていった。あれこそ、俺の願望なんじゃないのか。もしそうなら、俺は立派にこの施設にいる資格がある。紛うことなき外道なんだから。

 一度その疑念を抱いた以上、俺にはもう帰るという選択肢はなかった。
 確かめなければならない。俺がどういう人間なのか。この先に待つ光景を見て、どう感じるのかを。


              ※


 扉を開けて中に入ると、ホテルのフロントを思わせる場所に出た。フロントの左右にはやはり分厚いドアがあり、『A』と『B』の文字が刻まれている。さらに、順番待ちが発生した場合に備えてなのか、左右の壁際には長ソファと雑誌棚が備え付けられてもいた。
「いらっしゃいませ。プレイルームへようこそ」
 カウンターに立つ2人の女が、恭しく俺に頭を下げる。どちらもアナウンサーを思わせる極上の美人だが、ほぼ丸裸だ。乳房とあそこを囲むように細いボンデージベルトを装着しているが、藤花の着けていたものと同じく、かえって性的な印象を強めている。しかし、彼女達に恥じている様子はない。まるで精巧なロボットのように、ぴんと背筋を伸ばしている。
「AコースとBコース、どちらをご覧になりますか? 現在、Aコースの調教対象はこちらの4人、Bコースの調教対象はこちらの1人のみとなっております』
 右の受付嬢が、そう言って5人分の顔写真を並べる。さらりと流されたが、おかしい。初日の情報と食い違っている。
「4人? 初日の映像だと、Aコースには5人いたように思うが」
「確かに、当初は5人おりましたが……6日目に1人が調子を崩し、以降はお客様への公開を控えさせていただいております」
 左の受付嬢が、能面のような表情でそう告げた。日本語とは便利なものだ。婉曲的な表現をすれば、いくらでもショッキングな事実を伏せることができる。たとえその意図するところが、『精神崩壊』あるいは『肉体の欠損』などであっても。

 6人の顔写真の上には、AとBという記号が印字され、右側には今までに施された調教内容が列記されていた。
・アナル舐め
・アナル異物挿入(指、ガラス玉、スーパーボール、ミニトマト等)
・浣腸(湯/グリセリン/酢酸)
・アナル拡張:直径4cm迄(アナルプラグ2号を10分キープ)
・アナル挿入:深さ16cm迄(ディルドー2号クリア、3号挑戦中)
・バラ鞭、パドル
・ニップルピアス
・水責め
・公然排泄(大、小)
・ディープスロート
 Aコースの4人はそんな具合だ。何の変哲もない女学生が一週間で受けた調教としては、この内容でも充分に地獄だったことだろう。だがBコースとなれば、文面のハードさが違う。
・アナル舐め
・アナル異物挿入(フィスト、玉蒟蒻、ボーリングピン、ゼリー 他多数)
・浣腸(湯/グリセリン/酢酸/トマトジュース/青汁/塩化マグネシウム溶液 等)
・アナル拡張:直径12cm迄(アナルプラグ6号を8時間キープ)
・アナル挿入:深さ25cm迄(ディルドー8号クリア)
・バラ鞭、一本鞭、乗馬鞭
・水責め/汚水責め/汚物漬け
・飲尿
・食糞
・公然排泄(大、小)
・ディープスロート(嘔吐経験有)
 そんな内容が無機質に列挙されている。字面を追うだけでも眩暈がしそうだが、これも一種の婉曲表現だ。たとえば『水責め』というたった3文字の責めにしても、実際のプレイ映像は鳥肌が立つほどに壮絶だった。
「……Bコースは、凄いんだな」
 ぼそりと俺が呟くと、それを賛辞と受け取ったのか、左右の受付嬢が頭を下げる。
「はい。皆様からご好評を頂いております」
「連日、入場規制が掛かるほどの盛況ぶりでございます」
 機械音声のように抑揚のない口調、互いに言葉を被せ合う配慮の無さ、光を宿さない虹彩。態度こそ恭しいが、この受付嬢2人もマトモではなさそうだ。俺がそう思った時。

「くーっ、もう辛抱たまらんぜ!!」

 ガラの悪い声と共に、Bコースの扉が開いた。カジュアルな格好の中年男が姿を現し、受付に近づいてくる。ただし、カウンターの内側へ入り込む形で。
「お客様。現在は、別のお客様の対応中でございますので……」
「んないいんだよいいんだよ、2人居んだから。悪いな兄さん、コッチ借りるぜ」
 男はそう言って、右側のフロント嬢の腕を引き、カウンターの外へと連れ出した。そして長ソファに荒々しく押し倒すと、大股を開かせて肛門に逸物を押し付ける。
「お……おいおい。いきなり何やってんだ、あんた!?」
 俺は面食らいながらも叫ぶ。さすがに目の前でレイプ現場を目にしていて、スルーという訳にはいかない。すると男は俺の方を向き、怪訝な顔をする。
「何、って……ははあ、なるほど。アンタ新顔かい」
 そう言って1人頷くと、どこか見下したような眼で続けた。
「いいかい新顔さん、よく覚えときな。このクラブにいる女は全員、いつでも気が向いた時に『使って』いい奴隷なんだよ。エレベーターガールだろうが清掃係だろうが、受付嬢だろうがな。っつーか、こういう説明は会員登録ん時に聞かされるハズだがな。それとも何かい、アンタも裏ルートから抜け道通って来たクチかい。えらく若いモンなあ」
 男は1人で、気持ちよく論を展開していく。
「く……!」
 反論しようにも、言葉に詰まる。こういう状況は毎度きつい。ここがどこか、自分は何者か、どうやってここに来たか。それらが何一つ判らない状態では、答えようもなかった。
「フン、図星かよ。社会的なステイタスがなくても、カネとコネさえありゃ潜り込めるなんてな。アングラ中のアングラと呼ばれたココも、緩くなったもんだ」
 男は鼻で笑う。奴自身も下町の工場で働いていそうな風体であり、社会的なステイタスがあるようには見えない。だが案外、こうして一方的に主張を通す強引さで、辣腕経営者と呼ばれているのかもしれない。
 奴は俺に見せつけるように、フロント嬢の胸を揉みしだいていた。それを受けるフロント嬢は、一切抵抗する素振りを見せない。それどころか、
「お客様。私共を『お使いになる』場合には、避妊具の着用を推奨いたします」
 そう言って、雑誌棚の上からコンドームを取り出しさえする。
「おっと、いけねぇ。そうだよなぁ。公衆便所なんざ、どんなビョーキ貰ってっか分かったもんじゃねぇからな」
 奴は侮蔑的な言葉を吐きながら、コンドームの包みを摘む。その指は震えていた。
「ああクソ、焦っちまうな、あんなエロいもん見せられちゃあよぉ。珍しくギャラリー参加型だっつうから昨夜シコらずに来たが、辛抱堪んねぇや」
 コンドームの包みが荒々しく破られ、上向きに勃起した逸物へと被せられる。そして奴はフロント嬢に脚を広げさせると、まず割れ目に亀頭を宛がってから、思い直したようにその下へと挿入する。つまり、アナルセックスだ。
「あーあー、緩いなぁオメェ。ゴムの抜けたジャージ穿いてる気分だぜ。あの剣道女の代わりにと思ったが、これじゃ妄想のオカズにもなんねえよ」
「……申し訳ございません」
「ったくよぉ。謝るぐらいなら、部屋に人数制限でも掛けてくれや、5人までとかよぉ。どいつもこいつも、若ぇJKに蟻みてぇに群がりやがって。おかげでこの俺が、こんな賞味期限の切れたアバズレ相手に性欲処理かよ、クソッ!!」
 男は悪態を吐きながら、フロント嬢相手に腰を振りたくる。
 蟻とは、なかなか的確な自己紹介だ。砂糖という価値の高いものが、何の理由か数粒ばかり地面に零れ、そこに黒蟻が群がっている。ここで起きている悲劇は、まさにそういう印象だ。
 果たして俺の望みとは、その蟻に混じって甘美に酔うことなのか。あるいは、その宴を遠くから眺める人間でいることなのか。その答えは、扉の先でしか解らない。

「Bコースを見せてくれ」
 俺はソファの痴態から目を離し、左のフロント嬢に話しかける。
「承知いたしました。せ……」
 彼女はそう言いかけ、そこで口を噤む。感情の乏しい子だが、今はかすかな焦りの雰囲気があった。
 せ──それに続く言葉は何だ。
「おい、どうした」
「……いえ」
 俺が問いかけると、フロント嬢は顔を左右に振る。ロボットのようだった彼女の動きと、明らかに違う。急にどうした。何を隠している。俺の記憶に関する事なのか。
「どうしたと、聞いているだろう!!」
 焦りからか、不安からか。気付くと俺は、つい嬢の肩を掴んでいた。その瞬間、フロント嬢の全身がびくりと震える。
「ひいいっ!!!」
 光を宿さない瞳に、明らかな怯えの色が浮かぶ。
「な……!?」
 俺はその反応に驚き、手を離した。すると、フロント嬢も肩を竦める。
「はっ、はっ、はっ、はっ……!!」
 全力で走った後のような荒い息。なんだ、この異様な反応は。
「おいおい兄さん、乱暴はいかんぜ」
 ソファの男が茶化してくる。奴に押し倒された時、右のフロント嬢は怯えてなどいなかった。乱暴の程度なら、肩を掴んだ俺よりも、レイプ同然に『暴行』している奴の方が上のはずなのに。
 この左のフロント嬢が、特別に臆病なのか。それとも、俺があの下卑た蟻より恐ろしいとでも言うのか。
「……と、取り乱して、しまい、たんヘンな失礼をいたっし、ました。Bコースは、ああ、あちら、右手奥に、なります……」
 左のフロント嬢は、そう言ってBコースの扉を示す。ただし、身体は依然として震えていて、俺と目を合わせてくれることもない。まるで、羆にでも案内をするように。
「ありがとう。…………怖がらせてしまって、すまん」
 俺は感謝の言葉と共に頭を下げ、フロントを後にする。何か言いたげな視線を、扉が閉まるまで感じながら。


              ※


 Bと刻まれた扉を開けると、また通路が延びている。通路は薄暗く、まるでホラー映画に出てくる閉鎖病棟だ。
 通路の右側にはいくつもの扉があり、格子状の窓が取り付けられている。しかし部屋の中は薄暗く、中を覗いても闇が広がっているだけだ。Bコースは藤花1人しか調教対象がいないから、空き部屋ばかりなんだろう。
 ただ一つ、突き当たりの扉からは光が漏れていた。まるで、俺を呼んでいるように。

 扉を開けて中に入る。
 部屋に一歩を踏み入れた瞬間、俺は理解した。ここか、と。
 肛門に竹刀を挿された藤花が激昂し、暴れ狂った部屋も。
 前後から穴を使い回されていた時の部屋も。
 リンチのような水責めを受けていた部屋も。
 ドナン浣腸を施され、放置された時の部屋も。
 すべて、この部屋だったらしい。壁や床の汚れ、シミ。天井に取り付けられた滑車やフック。ガラス張りのバスルーム。どれもこれも、モニターの中で目にしたものばかりだ。
 そして、見慣れたものは他にもあった。
 刺青や迷彩ズボン、ドレッド頭に、ピアス男。動画内で目にした調教師達が首を揃え、縛られた少女を見下ろしている。

 ポニーテールが印象的な少女──藤花。ついに見えることができた。俺にしてみれば、テレビで見続けてきたアイドルを生で拝んでいる気分だ。
 彼女は部屋の壁際で、胡坐縛りを施されていた。上半身は後手縛り、下半身は胡坐を強制する形で足首を縛り上げ、胸元の縄と足首の縄を連結させる縛り方だ。
 彼女の緊縛姿はモニター越しに何度も目にしたが、今は大きく違う点が3つあった。
 1つ目は、彼女が上半身に制服を身につけ、ハイソックスを履かされたままであること。鍛え上げられた裸体も見応えがあったが、“お堅い”女学校の制服を着込んでいると、また印象が変わる。女子グループの中に1人はいる、頼りになる姉御肌……そういう感じだ。またブレザーやハイソックスを着用していることで、調教対象が現役の女子高生である事実を改めて実感させられる。ここの客は女子高生というブランドが好きだから、さぞや気分が盛り上がることだろう。
 2つ目は、目隠しがされていること。視界を奪われれば、人間の感覚は嫌でも研ぎ澄まされる。胡坐縛りの窮屈さも、周囲からの視線も、その他の刺激も、すべてを普通以上に感じてしまうことになる。
 そして3つ目は、彼女が尻を押し付けている場所に、極太の黒いバイブが設置されていることだ。尻餅をつく格好で極太の栓とくれば、例のドナン浣腸を思い出す。さすがにあの砲弾のようなアナルプラグには程遠いが、藤花の肛門から覗く部分は、ビール瓶ほどの太さは悠にあった。ドナンで緩んだわけでもない素面状態で咥え込むのは、相当にきついはずだ。
 しかも、太いだけじゃない。腸奥に届くぐらいの長さもある。なぜ藤花の腸に埋まっているバイブの長さが判るかといえば、そのバイブと同じ物が、藤花の左右で唸りを上げているからだ。たぶん3人を横並びで調教するためのスペースなんだろう。藤花の左右を見る限り、3つのバイブの動きは完全に連動しているようだ。
 そして左側のバイブには、ご丁寧に女の腰から太腿半ばまでを模した置物が嵌めこんであった。
 『特殊シリコン製 重さ20kg』
 バイブの根元には、そう記された紙が留めてある。
 置物には、女らしい肉付きのみならず、膣や子宮、膀胱、直腸に至るまでが空洞で再現されていた。つまり、その中に透けて見える黒バイブの動きを観察すれば、藤花の腸内の様子も判る。どういう角度で、どういう深さで、どこを責められているのか……そういう情報が筒抜けになるということだ。
 この悪趣味ぶりは尋常じゃない。

「んぐぅうっ!!!」
 目隠しされた藤花が白い歯を食いしばり、顎を浮かせる。その左側では、バイブが尾骨の辺りを舐めるように撫ぜていた。最初に見た時より丈が縮んでいる。どうやら、太い根元に収納する形で自在に長さを変え、ピストン運動まで再現しているらしい。
 そしてバイブは、のたうつ蛇のようにゆっくりと長さを伸ばしながら、シリコン内の直腸を臍方向に抉った。それはつまり、子宮頸部を直腸側から圧迫するということだ。
「ッかは…!?」
 閉じあわされた藤花の歯が開き、息が漏れる。太腿が強張って身体が少し浮き、縛られた足首が痙攣する。
「おや、これはイキましたかな?」
「どうでしょうな。しかし、ドナン責めで蕩けることを知った子宮を潰されるんだ。相当な快感には違いないでしょう」
 客達の囁きが聴こえた。奴らは調教師よりもさらに内側、特等席で藤花の痴態を見下ろしている。そしてその言葉は、確実に藤花に届いているようだ。
「…………っ!!」
 口惜しそうに藤花の唇が噛みしめられる。だが、重苦しい羽音を立ててバイブが腸を抉り回せば、どうしても反応せざるを得ない。
「う、くっ……くうぅっ、はぐっ…う、あ゛…………!!」
 藤花は、時に歯を食いしばり、時に喘ぎながら責めに耐えていた。
 彼女からすれば地獄だろう。ビール瓶に近い直径のバイブがみっしりと直腸に詰まり、のたうち回るんだ。その威力の程は、藤花の左側を見ればわかる。
 左のバイブに被さったスイカ大の物体は、メモによれば20kg。それだけの重量がありながら、置物はバイブの威力に振り回されていた。バイブが力強くうねるたび、置物も空中で渦を巻く。時々腰の部分が壁にぶつかっては、ドッ、ドッ、と鈍い音を立ててもいる。
 さすがに藤花の身体は、バイブに振り回されたりはしない。しかし動かないということは、バイブの運動エネルギーを固定された腸内で余さず受け止めるという意味でもある。その凄まじい感覚は、目隠しのせいで上増しして感じられることだろう。耐え切れずに足をバタつかせようにも、胡坐縛りをされた状態ではエネルギーの発散させようがない。結果、
「くぁぁああ゛っ!! いひっ、は……ぐッ、んいいいぃ゛っ!!!」
 こうした生々しい声を漏らして、嘲笑の的になるしかない。
「っはは、また凄い声だ」
「また『はぐっ』が出たな、これで何度目だ?」
「『はぐっ』は直腸を横向きに刺激されると出やすい呻きのようですな。一方で腸奥を背骨側に押し込まれると、『い』の音が出るようです。ほら、今も『んいい』と鳴いてるでしょう?」
「ははは、本当ですな。ではいっそ、バイブの刺激で喘ぎ声を調節して、歌でも歌わせてみては如何です?」
「ほう、面白いですなぁ! 調教師の皆さん、やって貰えますか?」
「……ったく、ダンナ方の発想にゃ参りますよ。さすが、変態としての年季が違う。オッケーっす、やれるだけやってみます!」
 客の要望に応え、ドレッドヘアがリモコンを握り直す。あれでバイブの動きを制御しているようだ。
「まずは、カエルの歌あたりでいきますか」
 その言葉と共に指が素早く動き、直後、藤花の背中が仰け反った。
「んがっ!!」
 連中の狙い通り、『か』と聴こえる悲鳴が響く。そして、それだけでは終わらない。
「かはっ、えあっ、う゛っ! ん…おっ、おお゛っ……ふグ……ぐうう゛っ!!!」
「おう、惜しい。“カエルの”までは聴こえてきましたな」
「流石に、上手く歌わせるにはノウハウの蓄積が足りませんか」
「ふむ。私には、歌を成立させまいとして強引に歯を食いしばったように見えたが」
「なるほど、この女ならやりかねませんな。では、どうするか」
「なーに。何度も歌わせれば、茶々を入れる余裕もなくなっていくでしょう」
「それもそうですな」
「おっし、また最初からいくぞ。お客の前で、何度もハジ掻かすんじゃねーぞ」
「があっ、あ! ぅあっ、んぐっ……ぇあ゛っ!!」
「おいおい、一回目より原曲から遠いじゃないかね」
「しかし、これはこれで面白いですよ。さっきより惨めな声だ」
「確かに。さながら、カエルというよりガマの歌ですな!!」
「ははははっ、上手いことを言う!」
 藤花は、10を超える人間から玩具にされ、嘲笑されていた。嘲笑されれば自尊心が傷つき、余裕がなくなっていく。余裕がなくなれば、ますますバイブの齎す快感に抗えなくなる。その悪循環だ。
 
「でもホント、凄い声出てるよね。アレ、そんなに凄いのかなぁ」
 祭りのような騒ぎの中、ぽつりとそう漏らしたのは若い女だ。茶色い髪を肩の辺りでふんわりとカールさせた、割と可愛い感じの女。
「ほう。興味があるのですか、奈緒子」
 女の横にいる着流しの老人が、興味深そうに目を開く。確かこの二人は、資料館で見かけた歳の差夫婦だ。あの時も女の方は、ターキーのような黒人ペニスに興味を示していた。どうやら、かなりのマゾらしい。
「なら、ちょっと遊んでみなさい。ちょうど右側が空いているんだ、構いませんね?」
 老人の方がそう言うと、迷彩ズボンの男が頷く。
「いっスよ別に。ただこのバイブ、8センチありますからね。いきなしはキツいんじゃないっスか?」
「いえ、ご心配なく。この奈緒子は、こう見えてアナル上級者でしてね。ダブルフィストまで出来るんです」
 控えめな口調ながら、自信に満ちた老人の言葉。それに周囲から感嘆のため息が漏れる。
「そ。あれ位のサイズなら、ちょっとほぐせば普通に入るよ」
 奈緒子と呼ばれた女も、余裕の表情で指にローションを塗し、露出させた肛門を指で開いていく。よく開くその穴は、確かによく使い込まれている様子だ。
「じゃ、ちょっと味見……」
 奈緒子は右側のバイブの上で腰を下ろす。一時的に動きの止まったバイブが、紅色の肛門へと呑み込まれていく。
「ん……。思ったより硬いんだ、このゴム……」
 そんな呟きを漏らしながら、奈緒子は順調に腰を沈めていく。
「おーっ、凄いな。簡単に」
「流石はマニアですな」
 客や調教師達も、その熟練振りに感心している様子だ。だが、それも最初の内だけ。
「じゃ、再開しますよ」
 ドレッドヘアがそう言って、バイブのスイッチを入れる。
「くっ……!!」
「うひゃっ!!」
 藤花と奈緒子は、同時に反応を示した。そして一旦口を噤み、耐える姿勢に入る。ウィンウィンという駆動音が響く中、彼女達はじっと耐えていた。その左側では、これまでと同じようにバイブが蛇のようにのたうっている。
 そのまま、3分ほど過ぎた頃。
「く、ぁっ……き、きひぃっ……うあああっ、むりっ、もう無理ぃっ!!!」
 それまでじっと耐えていた奈緒子が、絶叫しながら足を震わせはじめた。
「いや、いやっ!!これやだあ゛っ!!!」
 足をハの字に開いたまま立ち上がろうとし、バランスを崩して後頭部を壁に打ち付ける。
「奈緒子!!」
 着流しの老人と他数人が助けに入り、奈緒子はなんとかバイブから解放される。足取りのおぼつかない奈緒子が必死に押さえているのは、後頭部ではなく肛門だ。前屈みで内股の姿勢を作るその様は、いかにも辛さに耐えているという風だった。
「なんだよ、バージン失った直後みたいな格好して。そんなにキツいのか?」
 客の一人が不思議そうに問うと、奈緒子は涙目でそいつの方を向く。
「ッたり前だし。ヤバいって、これ! お腹の中ムリヤリこじ開けられるし、すっごいウンチしたい気分になるし、どうにかなっちゃいそう! 今もお尻の奥に、杭みたいなの刺さってる感じだよ。あーーもう、やめときゃ良かったよぉ!!」
 そう恨み事を吐き、最後に藤花を睨みつけた。負けた悔しさか、あるいは自分の失態を藤花のせいとでも思っているのか。
 いずれにしても、アナルマニアを自負する女がものの数分で音を上げる責めなのは確実だ。となれば当然、場の視線は今もそれを耐える藤花へと集中する。
「しかしそうなると、すげぇなコイツって。まだ歯ァ食いしばって頑張ってやがる」
「まったく。何度言ったかわからんが、見上げた根性だよ」
「しかも、さっきの子はM字開脚だったが、こっちは胡坐縛りだろう? 腹圧は掛かるわ、エネルギーは逃がせないわで、余計にキツかろうに」
「そういえばそうですなぁ。やあ、大したものだ」
 どこからともなく、藤花を誉めそやす声が上がりはじめた。だが、加虐趣味の連中に興味を持たれるのは、決して幸せなことじゃない。

「なあ、調教師君。もう少し激しくは出来んか? そろそろ、この女の泣くところも見たいのでな」
 藤花があくまで耐えるとなれば、当然そういう意見も出てくる。そして調教師連中は、その言葉を待っていたかのように笑みを浮かべた。
「モチロン、まだ先がありますよ。実はこのバイブ、こっからがスゲェんす」
 ドレッドヘアは陰湿な笑みを浮かべたまま、リモコンを両手の指で操作する。何かのボタンを長押ししつつ、ツマミを押し上げるような動きだ。その操作がなされた数秒後、藤花が呻きを漏らした。
「うあっ、な、なんだ!? ふ、深いっ……やめっ、どこに、入って、え……!!!」
 太腿を強張らせながら、明らかに動揺している。
 彼女の左へ目を向ければ、『深い』という言葉の意味がわかった。黒いバイブの先端が、シリコンで出来た直腸の最奥よりも、さらに奥……S字結腸の方に入り込んでいる。
「ほほお、結腸に……!」
「あれは流石にキツいでしょうなあ。あの太さでゴリゴリやられるんですから」
 藤花の傍に立つ客達が、口々に歓喜の声を上げた。確かに、ビール瓶大のディルドーが意思を持つように蠢き、シリコンを変形させていく様は壮絶の一言に尽きる。嗜虐的な人間にとっては最高の興奮材料だろう。だが、やられる方となれば堪ったものじゃない。
「やめろっ、やめろおぉっ!! 無理だっ、これは無理だっ!! 腸の形が、無理矢理変えられて……ッ!」
 藤花は悲鳴を上げながら、縛られた足首を上下させる。本当に余裕がなさそうだ。だが、その藤花を囲む連中に同情の気配はない。特にドレッドヘアの男は、スイッチのボタンを力強く押している。
 シリコンでできた結腸の入口で、バイブが激しく唸りを上げ、そしてある瞬間。バイブの亀頭部分そのものが、ぬるりと結腸の門をくぐり抜けた。劇的な一瞬。アクセルを踏み続けた車が、ついにスタックから抜け出したかのような。
 状況は一変する。
 細かに震えていた藤花の腰の動きが、ぴたりと止まった。
 藤花の口が開ききり、口の端に皺が寄った。

「 んわあああああ゛あ゛あ゛ぁ゛ーーーっっ!!!! 」

 まさに、絶叫。鼓膜を震わせるほどの叫びを上げながら、藤花の身体は弓なりに仰け反った。ハイソックスに包まれた足指がぎゅうっと握りこまれ、公然に晒された割れ目がヒクヒクと痙攣する。誰の目にも明らかな絶頂。
「お……」
「へへ…………」
 2人ほど、声を上げようとした人間がいた。絶頂を嘲ろうとしたんだろう。だがその2人共が、言葉を呑み込む。
 藤花の目隠しの下から、雫が零れていたからだ。気丈な人間の涙は、ありふれた嘲り以上の意味を持つ。
 はっ、はっ、はっ、と荒い呼吸音が繰り返される。後頭部を壁につけ、天を仰いだ藤花の呼吸だ。その頬にまた、はらはらと涙が零れた。
「…………俺は…………強くないと、いけないのに。男より強くないと、いけないのに……。なんで、尻の穴で、こんな……ッ……!!!」
 食いしばった歯の間から、悔恨の言葉が吐き出されていく。
 剣術道場に生まれ、周りは皆が男という状況で、彼女は女である事を呪ったに違いない。男と女の筋力差は絶対的だ。父や兄には追いつけず、年下の弟にすら基礎体力では敵わなくなっていく。そんな彼女が縋れるものといえば、精神力しかない。どんな苦難にも屈しない、鋼の精神。それを得るために、血の滲むような努力を重ねてきたことだろう。抜き身の刃のような彼女の雰囲気は、それを如実に物語っていた。そんな彼女にとって、結腸で果てるなど、あってはならない事に違いない。
「どうして? んなもん決まってんだろ。お前が、ド変態だからだよ」
 刺青男が、冷ややかに告げた。荒々しさのない静かな口調は、弱った心によく染みる。
「変態……この俺がか……!?」
「ああ。お前は、ケツマンコで逝きまくる正真正銘の変態だ」
 念を押すようなその言葉に、藤花の表情が引き攣った。
「ち、違う!!お、おれは、俺は……っぁ゛、あ゛……おぉお゛っ!!」
 相手の言葉を否定しきるより前に、また結腸逝きを余儀なくされる。
「はっ。んな野郎みてぇな声でケツイキしといて、違うわきゃねーだろ。サムライ気取ってんなら、潔く認めろや!」
 容赦のない罵声と共に、またリモコンが操作される。今度押し込まれたのは、今まで触れられていなかった小さなボタンだ。調教師達がにやける中、俺と客の視線が左のバイブに集まる。
 
 ピストン、うねり、結腸責めと来て、今度の仕掛けは擬似射精だ。半透明の
シリコンの中に何度か液体が噴射され、直腸を模した凹凸の底へと溜まっていく。
「あああっ!!」
 藤花からも悲鳴が漏れた。泣きそうな声だ。
「おや、凄い反応だ。一体、何を噴射してるんです?」
 客の一人が尋ねると、ピアス男が得意げに笑った。
「“ドナン”です」
 その一言で、客達が色めき立つ。俺の胸もざわつく。あのモニター映像を観た人間なら、誰だってそうなるだろう。
「ほんの2パーセントほどに薄めてますが、ああして時々噴き出させて、量を入れますからね。段々と腸の奥から入口までが、煮え滾ったようになってきますよ」
 ピアス男の言葉に、客の姿勢が前のめりになっていく。そして中には、別の事実に気付く奴もいた。
「おや……なにやら、いい匂いもしますな」
「おおー、さすが良い鼻っスねえ。実はあの噴出液には、石鹸水も混ぜてあるんです。何しろこの後、皆さんに使っていただく訳ですから、匂いも汚れもスッキリ洗い流そうってわけで」
「ははは、石鹸水か。そんなものを噴出されては、ますますあの極太が動きやすくなってしまいそうだ」
「ええ。ヌルヌルとした滑らかな動きで、子宮裏や結腸を抉り回されるとなると……さぞかし気持ちいいでしょうなぁ」
 外道が和やかに語らう足元で、藤花の顔が歪んでいく。

「お、おォっ、ほ…………んおぉおお゛お゛お゛っ!!!!!」

 まるで下卑た会話を掻き消すように、藤花の嬌声が響き渡る。剣道における気合の雄叫びさながらの、凄まじい声量。マイク越しに聞けば音割れを起こしているだろう。
「ほぅ、凄い声だ」
「アナルで逝く時は、やはりああいう声になるんですな。女子高生らしさはないが、妙に下半身に響きますよ」
 客達は満足げだ。その反応を見ながら、迷彩ズボンの男が歩み出る。
「今の声もまあアリっすけど……こうすると、もっと楽しいッスよ!」
 奴はそう言って藤花の横に屈み込むと、掌で左腿を押さえ込む。
「うあっ!? や、やめっ……はうっ、ぐ、ぐあ……」
 押さえ込まれた藤花の脚が暴れ、尻肉が収縮する。肛門から、びすっと何かの破裂音が響く。
「おおお゛お゛うん゛っ!!!」
 その果てに、藤花の喉からはますます惨めな声が漏れた。
「ははははっ、なんだ今の!」
「長いこと気張って、ようやく排便できた時の声だぞ。気持ち良さそうだ」
「なるほど。やりようによっては、あんな声も絞り出せるのか。面白い!!」
 調教師によって伝えられた新しい遊び方は、瞬く間に客を虜にする。奴らは欲望のままに、あるいは藤花の太腿を押し込み、あるいはブラウス越しに乳首を捻りつぶす。玩具の耐久性など省みもせずに。
「はぁっ、はぁっ……やめろっ、きさまら! ふざ、け……くう゛、ん……ん゛う゛っ!ふう゛、う゛……ん゛あああ゛あ゛っ!!!」
 藤花は眉根に皺を寄せ、身を捩って悪意ある掌から逃れようとする。だがそれも、四方を敵に囲まれた状態では虚しい足掻きだ。むしろ、もがけばもがくほど息は上がり、全身の脂汗もひどくなっていく。
 バイブの動きも、いよいよ激しさを増しているようだ。左側のバイブに被せられたシリコンが、幾度となく壁に叩きつけられて鈍い音をさせている。その威力で結腸に出入りしつつ抉り回されるんだから、藤花の脚が痙攣するのも無理はない。
「そらっ、イけよ!!」
 藤花の両脇に立つ客が、左右の太腿を強く押し下げる。同時にバイブの先もぐるりと結腸入口に円を描く。この3重の追い込みは、藤花の快感のキャパシティを軽々と上回った。
「あああ゛、ああ……うあ゛、あ……はぁあぁおお゛……っ!!!」
 藤花は眉を下げ、情けない声を漏らす。その直後、彼女の割れ目から透明な液体が噴き出した。
「おおっ、潮吹きか!?」
「小便を漏らしただけかもしれませんよ。あまりに快感が強いと、恐怖で失禁するといいますから」
 両腿を押さえる2人は焦る様子もなく、アーチを描く水流を眺めていた。

「たのむ、もうやめてくれ。ドナンが効いてきて、腹の奥が煮えたぎったようになってるんだ。このまま責めつづけられたら……ほ、本当に、気が狂ってしまう…………!!!」
 藤花は汗みずくになり、全身を痙攣させながら、何度もそう頼み込んでいた。同じ言葉を繰り返すのは、余裕のない証拠だろう。
 だが誰一人として、その懇願に耳を貸す人間はいなかった。むしろ嬉々として、あらゆる方法で藤花を追い詰める。ブラウスの上から乳房を揉みしだいたり。脇腹をくすぐったり。鼻の穴に指をかけて引っ張り上げたり。あるいは縛られた足首を持ち上げ、腹圧を極限まで高めたり。
 その悪意あるイジメの中で、藤花は何度も崩壊を迎えた。モニターで散々目にした通り、ドナン浣腸の圧倒的な便意の前には、抗う術などない。蕩けた結腸をかき回されれば、感じずにいられるはずがない。

「んああああ゛っ、はあァああ゛あ゛ーーーっ!! アクメが、まら゛っ……かはァっ、はっ……みひぎひい゛っ!! いぐいぐっ……あつい、ああああついっ、イイ゛っぐウウ゛うっ!!!!」

 汗、涙、鼻水、涎を顔中から垂れ流し、口の端から泡まで噴いて、藤花は絶頂し続ける。口から漏れる言葉は、極限の状況下で耳にした客からの罵倒が色濃く反映されていた。
「ほら、またイクんだろう変態女!? ケツだけで浅ましくなぁ!!」
「おーお、またブリブリひどい音を漏らして。もう腸液しか出るものがないっていうのに、何でこんなに酷い音がするんだ?」
「ひっでぇ顔だな、このケツアクメ女が! それでも女子高生かよ!?」
 客達は思いつく端から嫌がらせをし、思いつく端から罵倒を浴びせる。
 最初の頃の藤花になら、そんな嫌がらせや罵倒など何の効果もなかっただろう。蹲踞の姿勢で排便を晒しつつも、射殺すような眼光を浴びせていた彼女になら。
 だが、もうあの頃とは違う。
 何度も全身を暴れさせた末に、とうとう外れた目隠しの下からは、鋭い眼光など放たれてはいなかった。瞼に黒目が半ば隠れた、力のない眼が二つあるだけだ。

「はっ、気絶したか」
 ピアス男が藤花を見下ろして鼻で笑う。そして、他の調教師と協力しつつ緊縛を解きはじめた。
「おや。この責めはもう終わりかね?」
「ええ、そろそろ良い頃合いでしょ。こっからは、お客さん自身がコイツを可愛がってやってください」
 刺青男と迷彩ズボンの男が、藤花の両腋を抱えて立ち上がらせる。ジュポンッという音で粘液まみれのバイブが肛門から抜けると、藤花の身体はそのまま、部屋の隅に敷かれた煎餅布団へと投げ捨てられる。
 高く掲げられた尻肉。その肛門部分は、毒々しいほどの朱色に染まり、外側へ捲れ返っていた。
「ほぉう、見事なアナルローズだね」
「しかし、これから犯そうという肛門がここまで緩んでいてはな。私のモノでは、碌な刺激にならんのではないか?」
 腫れあがった藤花の肛門を見て、客の一人が感動を口にし、別の一人は疑問を呈する。ちょうどそこへ、ピアス男が銀色のワゴンを運んできた。ワゴンの中には、カラフルなペニスサックが山のように用意されている。
「ご心配なく。この状態の肛門でも楽しめるよう、サイズアップ用の道具を用意しました。太さ補強、長さ増強、真珠入りの名器変身セット。選り取り見取りです」
 いくつかのサックを手に取りながら、ピアス男は陰湿な笑みを浮かべる。その笑みは、瞬く間に客の間にも広がっていく。
「なるほど。ドナンで蕩けた腸内を、擬似巨根で蹂躙する……か。面白そうだ」
 客達がワゴンに群がり、自分好みのサックを選びはじめる。
「よし、私はこれだ」
 早くも一人がサックを装着し、早いもの勝ちとばかりに藤花の背後につく。
「たのむ、休ませてくれ……腸の中が、ヘンなんだ……」
 藤花は眉根を下げて男を振り返った。だが、男は聞き入れない。
「尻を上げろ」
 そう命じると、這う格好の藤花に背後から覆い被さる。サックで凶悪なほど太さを増強させたペニスが、メリメリと肛門に入り込んでいく。
「ふ、太い……っ!!」
 藤花は両手で布団を握りしめながら、苦しそうに顔を顰めた。
 パンパンと肉のぶつかる音が始まる。
 目の前で行われる、“なま”のアナルセックス。それはモニター越し見るものとは、まるで違うものだった。
 汗の匂いがする。内臓の匂いがする。腸液の匂いがする。
 ブレザーと布団の擦れる衣擦れの音も、尻肉の弾ける音も、結合部の水音も、すべてが細部まで聴こえる。
 そして何より、視界が自由だ。カメラの映像とは違い、自分で位置を移動して、見たい場所を見ることができる。
 とはいえ、俺は最初の場所をしばらく動けなかった。藤花と1人目の結合を、ほぼ真横から眺める位置。そこからは、サックのついた逸物が肛門に出入りするところがよく見えた。そして、その周辺も。
「どんどん溢れてきますな」
「ええ。本気で感じていると見える」
 俺のすぐ傍に立つ2人組が、興奮気味に囁き合っている。その感想は俺と同じ。この位置からは、藤花の内腿を流れていく愛液がよく見える。
「いいぞ……お前をひと目見た時から、この時を待ってたんだ」
 藤花を犯す男は、リズミカルに腰を打ち付ける。
「あっ……ああぁぁ……っあ、はぁぁ……あ、あっ!!」
 藤花は、その突き込みのたびに荒い息を吐いていた。本当に気持ちがよさそうに。

 藤花はアナルセックスで感じていた。
 1人目の男が精を放ち、2人目、3人目の相手に擬似巨根を打ち込まれる段階になれば、それはいよいよハッキリする。
「はっ、あ……あッ。ああ、あつい……溶け………」
 藤花の口からは、うわ言のようにそうした言葉が漏れていた。腕はやがてシーツを使う事すらやめ、力なく投げ出される。その一方で尻肉は高く持ち上げられ、相手の挿入をスムーズにする。その様は、まさしく布団に溶けるかのようだ。
 この3人目の相手は、奈緒子だった。彼女は嗜虐心に煽られるまま、極太のペニスバンドに凹凸の激しいサックを嵌めこんで藤花を犯している。
「ほら、どうしたの? 脳ミソまでトロかしてないでさぁ、しゃんと……しなよッ!!」
 奈緒子はそう言って、右手で藤花のポニーテールを鷲掴みにする。そしてそれを引き絞り、強引に藤花の背中を弓反りにさせながら、激しく腰を打ち込んでいく。
「う゛あっ!! い、いたい……」
「そう、痛いね。でも痛いのがキモチいいんだよね、お前マゾだもんね。あんだけアナルバイブで滅茶苦茶されて、平気な顔してんだからさぁ」
 妬み嫉みの感情を剥き出しにしながら、奈緒子は藤花の髪を引き絞り続けた。藤花の身体の反りが深まり、斜め下から突き上げられる格好となる。

 見た目には、多少風変わりな体位というだけだ。だが奈緒子は、同性でありアナルマニアでもあるという深い知見に基づいて、この体位を選んだらしい。
「あ、あ! ああ、ぁぁあ……はぐっ、んん゛っ!!く、いっぐ…………!!」
 膝立ちになった藤花の脚が震える。顎は浮き、口の端から涎を垂らす。そして、うわ言のような絶頂宣言。何かに陶酔しているという感じだ。
「なに、またイってんの? どうしてそんなに簡単にイッちゃうの?あたし同じ女だけど、ちょっとそれはわかんないかなー」
 奈緒子は軽蔑の色を込めてそう囁き、左手を藤花の割れ目へと潜らせた。
「は……っぁ!!」
「ほーら、ドロドロ。恥ずかしくないのかなぁ。同じ女におシリ犯されて、こーんなに濡らしちゃうなんて……まるでブタだよ?」
 これ以上ないほど意地の悪い囁きに、藤花が眼を見開いた。だがその目は、すぐにとろりと蕩けてしまう。
「んあ……あはっ、あ、ああぁっ…………」
 藤花は、しばし呆然とした様子でさらに突き込みを受け続け、ある瞬間に首を振って顔を歪める。

「もぉやめろおおおお゛お゛お゛っ!!!」

 藤花は大口を開けて叫ぶと、強引に上体を前に倒した。
「おっ…と」
 小さく呟く奈緒子。その瞬間。彼女の右手の中で、藤花のトレードマークが弾けた。常に後ろで纏められていた髪が解け、ウェーブした長い黒髪となって背中に垂れ落ちる。それはまるで、藤花の一本芯の通った部分が抜き取られたかのようだ。

 半狂乱になった藤花は、奈緒子の手中から逃れるように前へ走る。だが、足元が覚束ない。わずか数歩すら直進できず、そのまま右手の壁に手をついてしまう。
「へへ、なんだよ。今度は俺にハメてほしいってか?」
 ちょうど藤花の近くにいた男が、役得とばかりに藤花の腰を掴んだ。
「ち、ちが……っ!!」
「あー違くてもいいんだ。もう辛抱たまんねぇからよ!!」
 男はそう言って、サックで長さを増強したペニスを突き入れる。
「くああっ!! ふ、ふかいっ………!!」
 藤花は壁に寄りかかったまま、悲鳴のような声を漏らした。そして男に抜き差しを始められると、あっという間に腰砕けになってしまう。
「おーいいぜ。あの強気娘を犯してるってのがたまんねぇ。なあ覚えてっか? 俺よ、ちっと前に竹刀持ったお前にボコられたんだぜ。その復讐が出来てると思うと、胸がスカッとすんぜ! おら、どうだ。テメェの大好きな結腸ファックだぜ。ゴリゴリ届いてんのがわかんだろうが!!」
 男はそう言いながら、大きなストロークで藤花の肛門を犯す。ペニスサックで長さを増強していたのは、結腸を犯すためか。
 藤花の結腸は、すでに極太のバイブで開発されきっている。だが、だからといって一般的なペニスサイズでの刺激を感じなくなるわけでもないらしい。むしろ、効果は絶大だ。
「ぜっ、はっ、はっ、はっ、はあっ……や、やめろ……やめてくれ……。竹刀で叩いたことは、あ、あやまる、から………今そこは、か、堪忍してくれ……ッ!!!」
 弱々しい声色で音を上げながら、藤花は脱力していく。もはや壁に寄りかかる力さえなくし、壁に涎を擦りつけながらズルズルと崩れ落ちていく。
 そんな藤花の顎を、また別の男が掴み上げた。
「おい、シャンとしろよ。許してほしいんなら、まず奉仕。それが奴隷の鉄則だ」
 そう言って、鼻先に逸物を突きつける。
「ハア……ハア、ハア…………。」
 藤花は、男を見上げていた。以前なら鋭く睨みあげているところだろう。だが今は、困ったように眉を下げ、上目遣いになっている。
「早くしゃぶれ」
 再び命じられれば、彼女は疲れ切った顔のまま、男の物を口に含む。その背後で、不浄の穴を『使われ』ながら。


 俺は、ここで集団に背を向けた。
 これ以上を観る必要はない。いや、もう観たくない。


 閉鎖病棟を思わせる薄暗い通路を抜け、フロントに戻る。
「お帰りなさいませ」
 部屋に入るなり、2人のフロント嬢が頭を下げた。ただし左のフロント嬢は、相変わらず俺の方を見ようとしない。
 だがそんなこと、今はどうでもよかった。
 『大和男児』の死を目の当たりにした疲れがひどい。
 ただ1つの収穫といえば、この陰鬱な気分を通して、改めての確認ができたことだ。


 俺は、『蟻』じゃない。少なくとも、今はまだ。



 
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