※前・中・後編の中編です。これにてラストエピソードとなります。
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アブノーマル愛好会によるクリトリス開発は、毎週末の恒例となった。
2週目は、アサミ・ミカ・愛梨の同期3人が横並びで這う格好を取らされ、手袋をつけた手で延々と愛撫を受けた。アナルをNGとしているミカは陰核と膣、膣をNGとしているアサミは陰核とアナル、NG指定をしていない愛梨は三穴全てを、念入りにほぐされる。
「う、くっ……! くう、うっ! んはっ、くうっ……!!」
愛梨達3人は、誰一人として声を殺せなかった。
ローションに塗れたディスポーザブル手袋の感触は独特だ。ぬめりと吸い付きを兼ね備えたそれで、じっくりと性感帯を愛撫されれば、嫌でも気分が昂ってしまう。這い蹲ったまま尻だけを掲げるポーズも屈辱的だ。同じポーズの同期が隣にいるせいで、自分の惨めな姿を客観視させられるのも意地が悪い。
クチュクチュという音と嘲笑に晒されたまま、3人は歯を食いしばって耐えた。アサミが音を上げ、ミカがついに折れた後も、愛梨だけは耐え続けた。実に4時間。その間に愛梨が達した回数は何百に上ることだろう。ギャラリーの多くが飽きて去ったステージで、愛好会のメンバーは雫の垂れる手袋を外しながら、愛梨の我慢強さにほくそ笑む。
3週目からは、愛梨の尿道が愛好会の標的となった。砕石位で身体を固定した上で、ゼリーを塗った尿道へカテーテルを送り込む。
「流石にまだ硬いですねぇ」
「未開発の証ですよ。時間はいくらでもあることですし、じっくりと拡げていきましょう」
そんな会話を交わしながら、少しずつチューブを送り込んでいく。
「っ!!」
普通なら悲鳴が上がる未知の痛みを、愛梨は眉ひとつ動かさずに堪えてみせる。男達はその強情ぶりを愉しみつつ、カテーテルの先に注射器を取り付けた。
「シリンダーの中身は真水です。今は当然透き通っています」
ギャラリーに向けて解説がなされ、浣腸器のピストンが押し込まれていく。
「くっ……!」
尿道に液体が逆流する違和感は強い。流石の愛梨もやや頬が強張ってしまう。しかし本当に厄介なのは、シリンダーの中身が注がれきった後だ。
「では、吸い上げていきます」
その言葉の後、ピストンが引き戻される。シリンダーの中に液体が戻っていく。愛梨の膀胱の中に入っていた液体が。
「おっ、半透明になってんぜ!?」
「確かにちょっと濁ってんな!」
食い入るように覗き込むギャラリーは、液体の僅かな変化を見逃さない。意地悪く声を張り上げ、愛梨の表情を歪ませる。
2回、3回──ピストンが往復するたびに、シリンダーの中身はより顕著に変わっていった。
「最初は気のせいかな?ってぐらいだったけど、だんだん露骨に黄色くなってきたな」
「量も増えてるしな。最初50ccの線ピッタリだったのが、今は60のライン超えてるぜ?」
至近距離から口々に指摘され、愛梨の顔はますます歪む。しかしその一方、彼女はいつものように興奮してもいた。
そんな彼女をこの週もっとも追い詰めたのは、終盤のレズプレイだろう。『尿道の拡張状態を維持する』という名目でカテーテルを挿入したまま、ペニスバンドを着けた同性から犯される……そういう趣味の悪い見世物だ。
「ほらぁ、どんな気分? オシッコ垂らしながらケツ犯されるのはさァ!」
セーラー服を着た犯し役は、激しく腰を打ち付けながら愛梨に問いかける。
「う、くっ……! くう、う、うっ……!!」
愛梨は壁に手をついたまま、終始歯を食いしばっていた。
この夜一度も使われていないアナルを、硬いペニスバンドでこじ開けられれる痛さ。カテーテルを挿れられた尿道の痛さ。その二つの痛みが身を苛む。
痛むのは心もだ。
突かれる度に揺れるカテーテルの先からは、ほんのりと色づいた液が飛び散っていく。繰り返し真水を入れられた影響か、尿道から滴る雫はいつまでも尽きる様子がない。
「どんだけ出んだよションベン!」
「細いチンポでトコロテンしてるみたいねぇ!」
「ねぇ豚、後であの床舐めなさいよ。って、なに嬉しそうな顔してんの? やっぱりヤメ。あんなのの体液を舐めたら、どんな病気になるかわかんないわ」
ギャラリーからの言葉責めも容赦がない。
そうした惨めすぎる状況で、それでも愛梨は、やはり昂ってしまう。
「く、ああっ、あっ、ああ……あぅうあっ、あああっ……!!」
喘ぎは泣くような声に変わり、肛門の痛みは蕩けるような熱さにすり替わり、尿道のジンジンという疼きさえ快く思えてしまう。
深く落とした腰の間から、ポタポタと愛液が滴りはじめた。すぐにギャラリーに知れ、悪意ある謗りを受けると分かっていながらも、その分泌を止めることなどできなかった。
尿道をカテーテルで寛げた後は、尿道ブジーでさらに拡張される。最初は綿棒サイズのブジ―を馴染ませ、徐々にサイズをアップしていく。
「今度は、尿道と膣内を同時に刺激していきます」
小指サイズの柔らかなブジ―を深く挿入され、その根元を指で弾きながら、同時に膣内を指で弄られる……その快感は尋常ではない。
(な、なにこれ……気持ちよすぎるっ……!!)
尿道のむず痒い快感、膣の明白な快感。それが混ざり合って愛梨を昂らせる。
「……っ!!」
膣に指を挿入されてから僅かに一分後、愛梨は仰け反ったまま痙攣しはじめた。浅くではあるが絶頂に至ったのだ。
「膣の中が、ヒクヒクと動いています」
マイクを通して淡々と実況され、四方八方から蔑みを含む笑いが起きる。その屈辱的な状況もまた、愛梨の興奮を後押しする。本格的な絶頂までに時間は掛からない。
「はっ、はっ、はっ! ぃ、いく、いく……っ!!」
愛梨は再び仰け反り、痙攣する。息はまったく整わない。想像より遥かに深く絶頂しているのが自覚できた。
そんな愛梨を前に、膣からゆっくりと引き抜かれた指が、ブジ―の端を掴む。瞬間、蕩けていた愛梨の顔が強張った。挿入よりもむしろ抜かれる時の方が恐怖だ。
「は、はーっ、はーっ、はーっ……!!」
掴まれたブジ―の端を凝視する愛梨。その呼吸は急激に速まっていく。
「あっはははっ! アイツ、ビビってるよ!」
「ま、分かんなくはないけどねー。アナルでも尿道でも、太いの入れたら出す時が怖いんだよ。コレ抜かれたらどうにかなっちゃうーって感じしてさ」
「にしても、あのツラは傑作だな! 抜かれた瞬間イッたらもっと面白いのによ!」
野次と嘲笑の中、ブジーが引き抜かれはじめた。
「ぃひっ! ふ、ふっ、ふっ、ふっ……!!」
歯を食いしばり、相手を睨みつける愛梨だが、呼吸はいよいよ乱れていく。僅か数センチ引き出される行為が長く思え、いざ解放の瞬間を迎えれば、大量浣腸の時以来の甘美が身を包む。
「ぁあああああっ!!!!!」
仰け反ったままブルブルと痙攣し、喜悦の叫びを響かせる。開かされた両脚は筋張り、その間からはびちゃっと水音がする。失禁だ。尿を漏らしたというより、愛液が塊となって噴きだしたような。
嘲笑が起きる。尿道の粘膜さながらに脆くなった愛梨の心を、その悪意がザクザクと切り刻む。しかしそれ以上に愛梨には、白衣の男達の挙動が気になって仕方ない。濡れ光るブジーがトレイに置かれ、それよりワンサイズ大きなブジーが取り上げられる、その挙動が。
俄かマニアによる不慣れな手つきでの尿道開発も、十二分に愛梨を追い詰める。しかし、その道の『通』は更に大胆な責めを行った。
「尿道に負荷かけとる時は、ココを叩いてやるとよろしいんですわ。腎臓と、あと子宮ですわな」
「あっ、あ! あうぁ……あ、あはああっ!!」
尿道と膣をバルーンで拡張されたまま、下腹部を指先でトントンと叩かれる。それだけで愛梨の全身に痺れが走った。
左右の腎臓を押さえられれば腰が浮く。子宮の真上を三本指で叩かれれば、もどかしくも強烈な刺激から身体が逃げようとする。
「この快感でグングン膣と尿道が開くようになるんです。尿道が開かん理由は恐怖心やら抵抗感やけど、コレやるともう色んな場所が気持ちようて無茶苦茶やから、そういうのがバカになるんやね」
男の言葉通り、愛梨はこのプレイで劇的に開発されてしまう。
「お゛っ、おお゛っ、お゛っ、お゛っ……!!」
「ははははっ! なかなか興味深い声が出ているな!」
「ああ。しかも顔見ろよ、ひょっとこみてぇなツラしてんぜ」
「子宮でイってるんだろうねー、あんなトントンされるだけでさ!」
愛梨の惨めな姿に場は盛り上がり、口笛や謗りの言葉が絶え間なく飛び交う。そしてその盛り上がりは、ギャラリーをただの傍観者に留まらせない。彼らは拘束台の背を倒し、愛梨に仰臥の取らせて口を使いはじめた。愛梨にとっては最悪の展開だ。
「おぶっ!? うぶふっ、ごふっ!! お、ぉおオッ……おおオオッ!!」
下半身の責めで息が上がっていくところに、膨らみきった逸物を咥えさせられては堪らない。
口内へ突っ込まれてすぐに噎せ、鼻水が噴きだした。
奥まで挿入されれば、子宮絶頂の声を増幅させたようなえずきが漏れた。
喉奥の輪にエラの張った亀頭を出し入れされれば、えずき汁が空気と混じり合い、カコカコと音が立つ。唾液やえずき汁は次々にあふれ出し、唇を越えて耳の穴や髪の生え際へと流れ落ちていく。
愛梨の身体は、跳ねた。拘束具を軋ませながら激しく捩られた。その反応がますますサディストの心を煽り、責めは陰湿さを増していく。根元まで咥え込ませたまま、喉の膨らみを指でなぞったり。ピアスのついている乳首を弄んだり。子宮を丹念に圧迫しつつ、膣と膀胱のバルーンをさらに膨らませたり……。
(こ、こいつら、寄って集って…………!!)
愛梨は憤慨しつつも、絶頂を繰り返すしかない。膀胱・膣・子宮・喉奥・乳頭……その刺激一つ一つが無視できないほど強く、互いに強固なシナプスを形成しながら全身を甘く痺れさせる。
「ほぉおっ、んおおオオオッ!!!」
両乳首のピアスを引き絞られ、尿道のバルーンを揺さぶられながら子宮を押し込まれれば、握りこぶしが入りそうなほど腰が浮いた。太腿が大地震の最中のように震えて、恐ろしいほどだった。
「おごぉっ、おも゛おおおおっ!! おッ、もァおおォーーッッ!!!」
くぐもった悲鳴を上げながら、愛梨は痙攣しつづける。痙攣は翌朝にプレイが終了するまで止まらなかった。身体の主が何度か気を失った、その間にさえ。
※
私生活で尿道拡張を強いられはじめたのも、この頃からだ。
親指サイズの責め具を尿道へ埋め込まれたまま、貞操帯で固定される。愛梨はその状態で女子大生としての生活を送らなければならなかった。
責め具は筒状であり、用を足すには支障がない。とはいえ、尿道を拡張されたままでの生活は不自然そのものだ。人に振り返られながら颯爽とキャンパスを歩いている間も、真面目に講義を受けている間も、尿道には常に違和感があった。そして本来なら不快でしかないはずのその状況が、愛梨には刺激的で堪らない。
「あ、いくっ……!」
ふとした瞬間に絶頂を覚え、ふらふらと壁に寄りかかることが何度もあった。トイレへ駆け込んで自慰に耽ることもあれば、人がいないパソコンルームで自慰に耽ってしまうこともあった。
欲求不満が収まらず、数ヶ月顔を見せていなかったアニメ研究会の部室を訪ねたこともある。
「う、うおおおおっ!! 愛梨ちゃん!!!」
「あ、会いたかったよ、愛梨たん!!!」
部員達は一斉に立ち上がって目を丸くした。
愛梨が机に腰掛けると、組んだ脚の中……ショーツに視線が集中する。その視線を受けて脚を開けば、男達は膨らんだ股間を抑えながら前屈みに足を閉じる。
「アンタ達……あれだけさせてあげたのに、相変わらず童貞臭いわねー。考えてることが顔に出てるわよ。会いたかったじゃなくて、ヤリたかったの間違いでしょ?」
愛梨はクスクスと笑いながら、獣じみた欲望に懐かしい昂ぶりを覚えていた。
「いいわよ、久しぶりに愉しみましょ」
愛梨が上着をたくし上げると、研究会の面々は息を呑んだ。
「え……っ?」
露わになった乳房に圧倒された、というだけではない。乳房の先……左右の乳首が、金のニップルピアスで横向きに貫かれていたからだ。
ショーツが足首から抜き取られれば、性器の状態も露わになった。
慎ましい蕾のようだった菊輪が、ふっくらと厚みを増している。
温泉旅館での乱交でも一本線を維持していた陰唇が、見事に捩れ、乱れている。
その上で尿道にさえ、親指大の器具がはめ込まれているのだ。
しばらく姿を見せなかった同好会のアイドルが、どれほど苛烈なプレイを経験してきたのかを物語る変化だ。
それでも部員達は愛梨との行為を喜び、その身を抱いた。濃密にキスを交わし、乳房を揉みしだき、美脚を掴み上げて欲望を叩きつけた。
「ああああ愛梨たんすごい! ヌルヌルのおまんこが、すっごい締まって……! 良いよお、前より良いよぉおおおっ!!」
「はあっ、はあっ!! ああああ気持ちいいっ!! 気持ちいいぃっ!!」
絶叫する部員と同じく、愛梨もまた欲望を剥き出しにする。脳が白むほどの快感と共に、膣と尿道が自発的にほぐれていくのを感じながら。
※
週末が来るたびに、マニア達は愛梨の尿道を弄ぶ。
6週目、倶楽部で貞操帯を外された愛梨は、口を開いた尿道口と肥大化したクリトリスを散々に嘲笑われた。
「おいおい、可愛がってやる前からいきなりデカクリじゃねーか!」
「尿道拡げられて興奮したのか? この変態が!」
尿道とクリトリスの関係は深い。陰核脚が尿道のすぐ傍を通っているため、尿道の圧迫によりクリトリスが勃起するのはおかしなことではない。倶楽部の人間はそうと知りながら愛梨を詰る。愛梨の悔しげな顔を見たいがためにだ。
会員達は、さらに愛梨を吊り下げ、メタルブジーで尿道を責めつつ陰核を愛撫する。
「ひひひっ、ますますクリが硬くなってきやがった」
「太腿がピクピクしてるぜ。小便の穴ァほじられんのが、そんなに気持ちいいのかよ?」
揶揄を織り交ぜながら、丹念に尿道をクリトリスを責め立てる。勿論、それ以外の場所も遊ばせてはおかない。乳房を揉みしだき、腋を舐め、太腿を撫でさする。肛門へ指をねじ込む者もいた。
その羞恥と快感に愛梨は身悶え、数えきれないほど絶頂する。
「ああぁ、うあぁ……あうっ! …………はぁ、はぁ……んお……ぉっ! お、おぉぉお……っ!!」
数分間のつま先立ちを経て、足の裏を床につけたまま痙攣しはじめた頃、愛梨の喘ぎ声が変わりはじめた。
「うはっ! 出た出た、この声!」
「いつ聞いても女捨てた声だよねー。ドーブツみたい」
すかさず陰口を叩かれるが、呻く声は止められない。拭えない口からダラダラと涎が垂れ、下腹までを塗れ光らせていく。
そうした責めを2時間あまりも続けられた末、拘束を解かれた愛梨は崩れ落ちた。腰が抜けたのだ。だがDUNGHILLは、そこでプレイを終わらせるような甘い場所ではない。
会員達はふらつく愛梨を椅子に乗せ、屈辱的な姿勢で拘束する。後頭部で手を組み、頭の横に足首が来る形だ。
「くっ……!!」
恥部を突き出す格好に顔を歪める愛梨だが、その表情はすぐに変わった。白衣を着た男達が手にした道具を認識し、顔から血の気が引いていく。
電動式ドリルの先端に、細いアタッチメントを取り付けた責め具だ。アタッチメントの表面はびっしりとイボ状の突起で覆われている。それが回転しながら尿道へ入り込むのを想像しただけで、愛梨の背には冷たい汗が伝った。
しかし、弱音は吐けない。決して赦しを乞わず、哀願をせず、プロレスラーのように全ての責めを受け切ってみせる──そうルールを定めた以上は。
騒々しく回転するドリルの先が、尿道へと入り込む。複雑なイボ状の突起が柔な粘膜を掻き回す。
「あはううっ!!」
長くは耐えられない……愛梨はそう確信した。覚悟していたほど痛みはない。しかし、想像以上に快感が強い。
一週間の尿道拡張と直前の責めで、愛梨の陰核脚はたっぷりと快感を吸って太さを増している。そこをドリルで刺激されるのだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!!」
愛梨の余裕は数秒で消し飛んだ。目を見開いてドリルの掘削部を凝視したまま、激しく喘ぐ。コンマ秒以下で絶頂し続けているため、『イク』という言葉を発する余裕さえない。
顔の横で脚が暴れているのがわかった。絶頂が凄まじいだけに足指の動きも激しく、親指と中指が別々の方向へ逃げようとするせいで、脹脛が肉離れを起こしかけている。しかしそれすらも意識の外になるほど、尿道が『熱い』。その熱さは薄皮を通り抜けて陰核脚にも染み渡っていく。太く根を張った陰核脚に電極が貼りつき、内から感電させられているようだ。これ以上はないと思えるほど勃起していた陰核亀頭が、さらに痛いほど隆起していく。先走りの汁をどぷどぷと吐き出す男の鈴口……そのイメージが脳から離れない。
あふれていく。あふれ出していく。経験した事のない『熱さ』が。
「お、おほおおお゛っ!! ん、んお゛ッ、んおおおお゛っ!!!」
愛梨は天を仰ぎ、獣の声を上げた。その無様さに、すかさずギャラリーから嘲笑が浴びせられる。しかしその顔色は、嘲りよりも驚きの色が濃い。
椅子を見下ろす角度からは、愛梨の反応の全てが見えた。
筋肉を雄々しく隆起させ、拘束帯を引きちぎらんばかりに暴れる脚。
同じく肉の盛り上げった上腕と、深く溝の刻まれた腋。
ドリルが回転する勢いで四方に飛び散る透明な雫。
その尋常ならざる力みぶりを見れば、獣の声を上げるのも当然と思えてしまう。
「すげぇな……」
ドリルが一旦止められ、ぐっぱりと開いた尿道口から引き抜かれた瞬間、誰ともなくその言葉を吐いた。
汗だくの愛梨の身体からは視認できるレベルで湯気が立ち上り、秘裂と肛門は意思を持つかのように開閉を繰り返している。
猛烈な汗と愛液の匂いに、鼻をつくアンモニア臭が混じっていた。割れ目から陰唇横を通り、椅子の下に滴り落ちていく薄黄色の液体のせいだ。
何より衝撃的なのが愛梨の顔だった。並外れて気が強い愛梨は、責めでどれほど悶え狂っても、小休止となれば小生意気なほどに強い眼を取り戻したものだ。しかし今はそれがない。湯上りのようなぼんやりとした表情のまま、涎と鼻水を垂らし、どこでもない空間を見上げている。
「あれ、意識あんのかな……?」
「どーだろ。おまんこはパクパクしっぱなしだけどね。本気汁まみれでクサそー!」
乱れた愛梨の肉体が、その表情が、マニア達の加虐心をくすぐった。尿道をドリルで責める合間合間に、別の悪戯が挟まれる。
一度目の休止では、女性陣主導で膣にバイブが使われた。
「ほーら。濡れ濡れのクサマンにせっかく蓋したげてんだから、これ以上マン汁出すのやめなよー?」
「おっ、ほおっ……ぃ、いく、いくふうっ……!!」
真上から突き下ろすバイブ責めが、愛梨にうわ言のような嬌声を上げさせた。
二度目の休止では、妖しく喘ぐ菊輪に魅入られた1人が、辛抱堪らずという様子でアナルセックスを敢行した。
「……っ、……っ!!」
すでに息も絶え絶えの愛梨からは、聞き取れる喘ぎは上がらない。しかしVの字を描く脚の痙攣が、彼女の得ている快感を如実に物語る。
「くあっ! 3週間ぶりのこいつのクソ穴、ヤバすぎる! ものすげぇ締まりだ……!!」
犯す男はものの数分で射精に至った。心地よさそうに息を吐き、どくどくとかなりの量を愛梨の直腸へと流し込む。彼は急くあまりノースキンで行為に及んだため、逸物が引き抜かれた肛門からは白濁がとろりと伝い落ちた。そして、それが悲劇を生む。3度目のドリル責めで、愛梨は尿道の刺激に悶えながら、ブリブリと音を立てて白濁を排泄する羽目になったのだ。自然に起きた嘲笑はホールを揺らすほどであり、愛梨に悔し涙を流させる。
そしてもはや周知の事実だが、その恥辱こそが愛梨の感度を研ぎ澄ますのだ。
「おーーーーっ!! お゛ーーーーっ!!!」
何度も天を仰ぎ、痙攣する愛梨。その眼はほとんど白目を剥いており、絶え間ない絶頂で意識を失っては覚醒していることが伺えた。
そこへ来て、3度目の休止で電気マッサージ器が用いられた時、愛梨は哀れなほど悶え狂う。
「イクっ、イクイクイクイク……あああはああああああっ!!」
涙を流し、鼻水を垂らして激しく絶頂しつづける。暴れる力はいつになく強く、ついには拘束帯の金具を破壊し、仰け反りながら潮噴きに至る。
「コイツ、自分からマンコ押し付けてね?」
「どーだろ。逃げ回ってるようにも見えるけど、コイツ頭おかしいからねー。欲しがってんのかも」
同性は残酷だ。愛梨の狂乱ぶりに男達がたじろぐ中、女性陣は愉快そうに口を歪めながらマッサージ器を押し当て続ける。愛梨が本格的に気を失い、全身を痙攣したまま動かなくなるまで。
こうした徹底的な尿道開発は、愛梨の肉体を不可逆なほどに変化させた。
「あ、ああああ駄目っ!!! 出る、出ぢゃうう゛っ!!」
「ははっ、尿道口なぞられただけで嬉ションかよ。終わってんなこいつ」
床に激しく失禁し、本気汁を垂らす愛梨。マニア達はその無様な姿を見下ろし、旨そうに酒を酌み交わす。
※
NGプレイがなく、けして音を上げないフリーの奴隷。そんな愛梨は、倶楽部のマニア達にとって最高の玩具だった。
責めはエスカレートする一方だ。アナル、クリトリス、尿道の開発と並行し、次はポルチオを開発することが決まったが、生易しい開発方法で済むはずもない。
都心に初めて雪が降った日の夜。久しぶりに倶楽部を訪れた客は、扉を開けるなり熱気を感じた。人が多い。かつて久世省吾がキー局のアナウンサーを調教していた頃に匹敵する盛況ぶりだ。
黒山の人だかりは倶楽部の奥へ進むほどに密度を増す。彼らはあるステージを注視しているようだ。そしてちょうどその辺りから、ウーッ、ウーッ、という獣じみた声が響いてもいた。
「……っ!!」
人込みを縫って前列に辿り着いた男は、目の前の光景に息を呑む。そこには、理想的と言ってもいい女体があった。出るべきところは出、くびれるべき所はくびれた、メリハリのあるボディライン。すらりと脚が長い、確実に7頭身以上はあるだろうスタイル。週末の繁華街ではルックスのいい女性を何人も見かけたが、それらと比べてもまた別格だ。
その滅多に見られないスタイルの持ち主は、拷問さながらに拘束されていた。手足がX字を描くように拘束具を嵌められ、どう足掻いても逃げ出せそうにない。
格好は全裸に近いが、股間には床から伸びた器具が取り付けられ、紐ショーツを思わせる拘束帯で固定されていた。乳首に空いたピアスには紐がつけられ、乳房そのものが変形する強度で引き絞られている。天を仰いだ口にもチューブが嵌め込まれ、その先は白い何かが入ったタンクに繋がっているようだ。
タンクがごぼりと音を立てた瞬間、ギャラリーの喧騒が静まった。
ごぼり、ごぼり、と音が続き、スタイルのいい少女から呻きが漏れる。真正面に晒された白い喉が蠢き、そこからしばらくすると、少女の下腹からぐるぐると音が鳴りはじめた。
「ッう、うむううっ……!!」
チューブを咥えさせられた口からくぐもった声が漏れ──その次の瞬間、少女の股間に取り付けられた器具が激しく鳴動しはじめた。
「う、うおっ!! おぉっ、お、もおおお゛っ!!」
少女の声から余裕が消え去った。くくっ、と笑い声がする。声の元を見れば、ギャラリーの一人がスイッチを握りしめていた。そのスイッチで股間の機械を操作しているのだろう。
重低音を響かせる機械に絶えず責められ、少女の下腹は激しく脈打つ。腹筋が浮くほど力を籠めたまま、へこんでは戻る動きを繰り返す。その内部からはぐるぐると獣の唸るような音が響きつづけている。どう見ても異常な状況だ。
その状況が数十秒続いたところで、限界が訪れる。
「もがあああああ゛ーーっ!!!」
壮絶な呻きが上がり、少女の口のチューブから泡が膨らむ。それが弾けると同時に、別の場所から破裂音が響き渡った。ぶちっ、ぶりぃっ、という日常的に聞き覚えのある音と共に、少女の美脚の間を何かが落ちていく。液体より少し粘度のありそうなそれは、足元に置かれた巨大なバケツの中に音を立てる。
排便だ。あのモデル顔負けのスタイルを誇る少女が、この大人数の前で排便を晒しているのだ。そう気づいた時、男は頭をハンマーで殴られたようなショックを受けた。
非現実ぶりに思考が麻痺する。その意識を現実に引き戻したのは、ギャラリーからの鬼の首でも取ったような罵声だった。
「ぎゃはははははっ、まーたひり出しやがった!」
「おー臭ぇ臭ぇ、鼻が曲がりそうだぜ!」
「まだ固形物が出るなんて、どんだけ溜め込んでたワケ? 相変わらずのクソ袋っぷりねぇ!」
数十人が口々に叫んでいるため、全てを聞き取ることはできない。しかし聞き取れた言葉はすべて悪意に満ちていた。
「……あの。これ、どういうプレイなんですか……?」
男が尋ねると、最前列のギャラリーが3人振り返る。その顔は『よくぞ聞いてくれた』と言わんばかりだ。
「お、兄ちゃん今来たのか? 今夜は凄いぜ。芸能人ばりに可愛いティーンのガキの、それこそ穴っつぅ穴を責めてんだ」
1人がそう言って愛梨の写真を見せる。その顔の良さに、男はまたも息を呑んだ。
「信じられるか? こんな、ミスなんちゃらを狙えそうなレベルの上玉がよ、下剤飲まされて延々クソ垂れてんだぜ? しかもただの下剤じゃねぇ。俺らのザーメントッピング付きだ。あのガキに飲ませるのを想像して一週間シコりまくってよ、その瓶の中身をタンクに詰めたんだ。アイツが喉鳴らしてゴクゴク飲んでるのも、今ひり出してんのも多分、そのザーメンだぜ?」
その言葉に、ギャラリーの何人もが笑う。いずれも体型や毛髪に加齢を感じさせる中年男だ。
「……あの、股の機械は?」
「ああ、ありゃ膣開発用のプラグだ。ぶっとい筒型でよ、胴体部分で膣のスポットに磁気刺激を与えるらしいぜ。おまけに先っぽはイソギンチャクみてぇになってて、子宮口に吸い付いたまんま電マ顔負けの強度で揺さぶるんだと」
「へえ。それはまた、キツそうですね……」
「そりゃ地獄だろうぜ。あのガキにゃ同期の奴隷が2人いるんだがよ、そいつらも何日か前にあの責めを受けてんだ。ただしNG指定がない方限定でな。アサミっつーすっとろい人妻は、下剤責め。ミカっつー口の悪ィヤンキー娘は、膣と子宮責め。その片方だけだっつーのに、どっちも泣き喚いて暴れたらしい」
「ああ、ありゃあ見物だったぜ。人妻の方は見ないで許してってわんわん泣いてよ、ヤンキーの方は俺らに見せつけてんのかってぐらい腰浮かせたまんま、アワ噴いて痙攣してやがった。しかもよ、その2人はプレイん時に拘束されてねーんだ。だから自分の耐えやすい姿勢で踏ん張るのも自由だったんだよな。その点、あのガキはキツいぜー。モモンガみてーに手足を広げたあの格好じゃ、踏ん張りが効かねぇ。マンコ逝きする時ゃガニ股が一番耐えやすいし、下痢便ひり出す時にゃ自然と内股になるもんだが、あのガキはどっちもできねぇだろ? 顔上向けて背ェ反らして、なんとか身体に支えを作ろうとしてるらしいが、焼け石に水ってもんだ。見ろよ。もうじきプレイ開始から40分ってとこだが、もう膝が笑ってやがる」
そう言って男は少女の脚を指さした。指摘通り、すらりと長い脚は強張ったまま痙攣を続けている。内腿には次々と愛液が伝い、膝頭から床に滴っていく。少女の直下ともなれば、肩幅以上の液溜まりが出来ていた。
「……凄い、な」
新たにギャラリーに加わった男は、ごくりと唾を呑み込む。あまりの光景に圧倒されはしたが、こういう趣向は嫌いではない。彼もまた、生半可なSMに飽いてこの倶楽部を訪れた物好きなのだから。
またギャラリーが増えた──愛梨はそれを知覚する。肌に刺さる視線を感じ取れる能力が、今は疎ましい。
無様を晒している自覚はあった。しかし、どうすることもできない。手足の拘束具に遊びはなく、真っ直ぐに伸びた手足を少し曲げることすら許されない。
せめて、腰を落とせれば。
せめて、内股で耐えられれば。
もう何度そう思ったことだろう。しかし、そのささやかな夢が叶うことはない。
頭上でごぽりと音が鳴る。タンクの弁が解放され、中身が流れ落ちてくる合図だ。
「……ッ!!」
緊張が走る。口を閉じる術はない。開口具でこじ開かれた口では、精液交じりの下剤を拒めない。鼻の曲がりそうな臭気が吐き気を催す。下剤を飲むというのも億劫だ。しかし窒息を免れるためには、無理矢理にでも飲み下すしかない。
大量の精液はゴム鞠を思わせた。飲み下せば咽頭が痛み、喉が灼け、胃が暴れる。
しかし苦痛の本番は、腸へ達したそれが薬効を発揮してからだ。猛烈な便意に嫌な汗が噴きだす。下腹部がゴロゴロと鳴る。その音は明白な合図だ。今まさに愛梨が便意を催している、という。
「そらよ!」
人垣から声がし、浅黒い手の中でスイッチが押し込まれれば、膣内のプラグが重苦しい羽音を発しはじめる。
『こいつはよぅ、超上級者用だぜ?』
プラグを取り付けられる時、そう前置きをされた。確かにその言葉通りだ。そもそもアルミ缶ほどの太さがあり、数十人との経験を持つ愛梨の膣をさえ限界まで押し拡げる。ペニスにおける肉茎部分は、膣襞に密着した状態でパルス刺激を繰り返し、先端部分は子宮口に密着して子宮そのものを揺さぶる勢いで振動する。
それだけではない。器具を拘束するカバーにも別にアタッチメントが取り付けられており、本体とはまた異なるペースでクリトリスと尿道に振動を与えるのだ。
それほどの刺激に晒されては、長くはもたない。まずGスポットと裏Gスポットが、その後に左右のGスポットが戦慄き、四方からプラグに纏わりつく。そうなれば自然と子宮にも力が入り、複雑な先端部の齎す刺激に耐えきれなくなる。
「ウーーーーッ!!!!」
喉を震わせ、途中に絡みついた精液を押し戻しながら、不自由な嬌声を響かせる。
脚の痙攣が酷い。膝を曲げられればどんなにか楽だろうが、それも叶わないので足の親指に力を籠めて耐え凌ぐ。しかし、それもそろそろ限界だ。絶頂の度にそれをするせいで、指の骨が軋みを上げている。しかしなんとか踏ん張らなければ、絶頂の高波に呑まれて気が触れてしまいそうだ。
苦し紛れに背を反らす。手首の拘束具を掴み、まさに藁にも縋る想いで濁流を耐え凌ぐ。手首が痛み、肩が軋もうともしがみつく。流されれば終わりだ。
今度こそは無理かもしれない……毎度そう思うが、なんとか耐えられた。しかしそれは絶頂で狂わないだけの話。便意に耐えられるかは別の話だ。ぐるぐると腹が鳴り、腸から軟便がしたたり落ちていく。口からの下剤摂取と同じく、門を閉じることはできない。ステンレス製の六爪肛門拡張器で、限界まで肛門を押し開かれているため、S状結腸を超えて直腸へ出た内容物はそのままバケツへと滴り落ちていく。生ぬるさと臭気だけを愛梨に知覚させながら。
絶頂しながらの排泄は、ヒトとしての尊厳を著しく毀損する。惨めだという自覚があるだけに、周囲の視線や嘲笑が心の深い部分にまで突き刺さる。心身共に余裕がなくなり、思考は単純化する。
恥ずかしい。気持ちいい。恥ずかしい。気持ちいい……その二つの言葉だけが銀世界のような脳内を巡り、その中で肉体はまた限界を迎える。膣とその周りが戦慄き、子宮の疼きがそのまま排泄されるかの如く、開き切った肛門からブリブリと濁流がひり出されていく。
「ウオーーーーーーーッッッッッ!!!!!」
まさに、獣。獣そのものの声だ。揶揄されるまでもない、愛梨自身が理解している。女を捨てた声だと。
「女の地獄だな、ありゃ」
「ああ。メンタルの弱ぇ女なら、この後死んでもおかしくねぇや」
「アレは大丈夫でしょう。この状況にすら興奮しているんでしょうから」
ギャラリーの会話が耳に入る。入るが、今の愛梨の脳では処理できない。
(い、イってる、またイってる……!!
でも、どこでイってるの? あそこ?子宮?クリ?おしっこの穴?
それとも、まさか…………うんちして、それで…………?
あ、あ、子宮でイってる!普通に子宮でイけてる!!
あ、でも今度はクリ、おしっこの…………ああ、だめ……誤魔化せない。うんちするの、気持ちよすぎる……っ!今は、うんちでイっちゃってる……!!)
答えが出ない。津波のような絶頂の震源地が特定できない。あるいは、その全てが絶頂のトリガーなのか。
「おぐう゛っ!!おぐう゛う゛っ!!いぐう゛っ!!おぐう゛っ!!」
時に明瞭な発音を交えながら、愛梨は絶頂を叫びつづける。湯気の立つような表皮に汗が流れ、愛液が滴り……それよりも熱い身の内が、マグマのように煮立っているのを感じながら。
※
拘束しての恥辱責めは3時間続いた。愛梨にとっては永遠に思えた時間も、傍観者にとっては終了時点で夜の10時。
「まだまだ夜はこれからだぞ」
客達は笑いながら、崩れ落ちた愛梨の脚を開かせる。愛梨の恥じらいの部分は変わり果てていた。膣も肛門も開ききり、男根で満たせるような状態ではない。その現実を前に、会員達の反応は二つに分かれた。困惑する者と、ほくそ笑む者。アブノーマルプレイの経験の差が浮き彫りになった瞬間だ。
「あーあー、ガバガバだなこりゃ。泣くまでハメ潰してやろうと思ったのによ!」
「なーに、だからこそできるプレイってのもあらぁ」
笑みの消えない数名は、愛梨の髪を掴んで引きずり起こし、ガラステーブルに肘をつかせる。そして電気マッサージ器を手に取ると、口を開いた肛門へと先端部を押し当てた。
「え……?」
愛梨が不思議そうに振り返ろうとした、その瞬間。球状の先端部は肛門へとめり込んでいく。
「あがあああああっ!? な、な、あ……っ!?」
愛梨は大口を開けて叫ぶ。無理のあるサイズだ。しかし男の腕力で力任せに押し込まれれば、拡張された穴の奥へ奥へと入り込んでしまう。
「うおおお、すげえ! 電マが丸ごとケツに入ってんぜ!?」
年若い男達が目を丸くする中、直腸奥にまでねじ込まれたマッサージ器のスイッチが入れられる。
「あああっ!!」
愛梨は再び悲鳴を上げた。体表へ押し当てられただけでもズンと来る振動が、腸の内側から響くのだ。狼狽はごく自然な反応だ。
「どうだ、ケツの中からマッサージされる感覚は。気持ちいいだろ?」
「ば、馬鹿、じゃないの……!? こんなの、感じるわけ……!!」
実際、感じるどころではなかった。強引に割り拡げられた肛門の裂けるような痛み、強すぎる振動による吐き気があまりにも強いせいだ。
だが、十秒もすれば状況は変わった。痛みも吐き気も和らぎ、代わりに快感が濃さを増す。それを見透かしたのだろうか、男がマッサージ器の端を持ち上げれば、先端部が薄皮越しに子宮を捉える。
「あっ! あ、あっ……はあっ、あひっ……ひっ!!」
「ははっ、情けねぇ声だな! この変態女も、ケツ穴電マでこねくり回されりゃたまんねぇか!」
情けない声──愛梨にもその自覚はあった。しかし声を張ることなどできない。直腸側からの子宮刺激で、今まさに達しようとしているのだから。
「ぁだめ、いっくッ…………!!」
考える前に声が出た。喘ぎ声を我慢せず、絶頂を正直に申告してしまう生来の悪癖だ。嘲り笑いが起きる中、愛梨は絶頂する。まずは中程度に一度、当然それだけでは済まない。拷問具さながらのプラグで3時間刺激され、数えきれないほど絶頂させられた子宮は、今もなお煮溶けたような状態だ。そこに刺激が加われば、何度も立て続けに達してしまう。
「ひっ、お……おっ! ふっ……ぅ、ぎひっ、お、おおお゛……っ!!」
困惑・羞恥の悲鳴と、純粋な快楽の声が混ざり合う。両脚は自然とつま先立ちになり、ハの字を描いたまま痙攣する。
「はっはっは、小鹿みてぇにブルブル震えやがって。しっかり感じてんじゃねぇか、ええ!?」
男が嘲りながら尻を打ち据えると、その痛みさえも快感に直結し、悲鳴と共に絶頂してしまう。
嘲笑にしっかりと羞恥を示し、それでも絶頂から逃れられない愛梨。男達はその姿をしばし堪能した後に、次の責めに入る。
「ガバガバマンコをいやらしくヒクつかせやがって、誘ってんのか? いいぜ、ならコッチにもくれてやるよオラッ!!」
男は愛梨の尻を叩きながら、雫を滴らせる割れ目に4本指を沈み込ませる。
「ん!」
愛梨が呻いても、指が根元まで入っても挿入をやめず、ついには手首までを膣の中に押し込んでしまう。
「うぐっ……! て、手ぇっ……!?」
「ああ、フィストファックだ。へへへ、しかしすげぇな。手へ直に電マ当てられてるみてぇだ。そら、マンコの壁越しに掴めるぜ?」
男はそう言って手を上向け、マッサージ器の先を握りしめる。
「うぐううっ!!」
歯を食いしばりながら絶頂する愛梨にほくそ笑み、男はさらに膣の中で手を動かし続ける。弱点だと知れている左のGスポットを苛め抜き、亀頭のように膨れた子宮口を撫でまわし、拳を握り込み……。
「ぐうっ、うぐうっ!! あはっ、や……おほっ、ほっ、ほおおおっ……!!」
愛梨の嬌声には様々な色が混じっていた。羞恥、苦悶、そして快感。目を瞑り、歯を食いしばる顔はいかにも苦しげだが、つま先立ちのまま震える下半身はこの上なく心地よさそうだ。
「エッロいガキだぜ、本当によ……!」
尻込みしていたギャラリー達も、熱気に当てられて眼をぎらつかせはじめる。その内の1人は、どこから持ち出したのかバットを掴み、愛梨が突っ伏すガラステーブルを叩いてみせた。
「え……っ!!」
数瞬遅れてその意味を理解した愛梨が、目を見開く。
「今日は、オメーをぶっ壊しちまうかもな?」
男は口元にこそ笑みを湛えているが、目は笑っていない。そしてそれは、愛梨がぐるりと視線を巡らせた先の、どの会員達も同じだった。
そこから愛梨は、数時間に渡って絶叫を繰り返すこととなった。
哀願だけはするものか──その決意を貫くためには、叫んで気を紛らわせるしかない。
熱に煽られたサディスト達は暴力的だ。愛梨を床に押さえつけ、股を開かせた上で性器を虐め抜く。木のバットを捻り込み、中身を愛梨にラッパ飲みさせた後の酒瓶を蹴り入れ、前後の穴に2つの手をねじ込んでシェイクハンドを繰り返し……。
「んぎひぃいっ!! あがっ、あぎゃあああ゛あ゛っ!! はぎゅっ、んぐううう……あがああああああーーーっ!!!」
マイクを使わずとも、悲鳴がわんわんとホールに反響する。よく通る声だ。声帯をうまく生かせば歌姫にもなれるかもしれない。恵まれた肉体だ。しかし、その肉体を今まさに破壊されている。エスカレートしたまま止まらない、イジメさながらの暴虐で。
「…………あーあー、散らかし放題汚し放題。金持ちってのはなんでこう自分勝手なのかね」
舌打ちと共に発されたその言葉で、愛梨は意識を取り戻す。目の前にはタキシードを着た男達がおり、モップを手に床を掃除していた。倶楽部の男性スタッフらしい。
「よう、目ェ覚めたかい。今晩はまた随分と可愛がられてたな」
スタッフは愛梨の身体と床を意味深に見回す。愛梨もその視線を追い、言葉の意味を理解した。床の散らかり方が尋常ではない。使用済みのコンドームや手袋、ティッシュが散乱し、随所に液溜まりができている。見覚えのあるバットやガラス瓶も転がっているが、その半分以上は濡れて色がついていた。
「痛っ……!」
立ち上がろうとした瞬間、愛梨は痛みを覚える。視線を下に向ければ、膣と肛門には嫌がらせのような数のバイブが隙間なく詰め込まれていた。
「あいつら、入れっぱなしで……!!」
愛梨は苛立ちながらバイブを掴み、一つずつ引きずり出す。
「んっ、ふっ……ふんんんっ、んっ…………!!」
一つ抜くたびに、ジンジンと疼くような快感が襲う。掃除しているスタッフ達が密かに笑う。愛梨が睨みつけると目を逸らすが、笑われても仕方がない状況だとは愛梨自身も理解していた。
ふらつく脚で倶楽部を後にし、夜が明け始めている街に辿り着く。道端で吐いているサラリーマンの間を縫うようにして歩を進め、公園近くまでたどり着いたところで、また腹が渋りはじめた。大量に飲まされた下剤の効果か、あるいは精液で腹が緩くなったのか。
「くう、うっ……! うんち止まんないいっ……!!」
渋り腹を抱えて息めば、半固形の物が次々と肛門を通り抜けていく。そしてそのたび、愛梨はゾクリと震えた。快便の感覚だけで昂っているのだ。
「こんなの、おかしいわ……!!」
理解はしているが、高揚が止まらない。胸が高鳴り、秘裂が疼く。その禁忌に逆らえず、愛梨は秘裂を指でなぞる。
「ん、ふっ……!」
刺激はある。だが、あまりにも弱い。こんな刺激では満たされない。
「あ、あああ!!」
指を奥へ奥へと進め、ついには拳そのものを秘裂に収めてしまう。そしてその圧迫感で、愛梨は達した。
「くはぁあっ!! あ、あんあああっ……!!」
大事な部分を拳で虐めながら排泄すれば、恥辱の一夜が蘇り、全身を甘い電流が貫いた。
「はーー……っ、はーー……っ、はーー……っ」
愛液の滴る拳を引き抜き、二穴を拭って個室を出る。その後に洗面所の鏡を覗き込んだ時、愛梨は初めて、自分が笑っていることに気が付いた。
「…………馬鹿じゃないの!」
愛梨は自分を睨みつけ、表情を引き締める。鏡に映る顔は普段通りに整った。それでも激しい鼓動や脚の震えは、少しも収まってはくれなかった。
※
プレイの過激さで知られるDUNGHILLでも、愛梨ほど熱心に責められたM奴隷はいない。そもそも奴隷の質が総じて高いこの倶楽部において、特定の奴隷に客の興味が集中し続ける事態そのものが稀だ。アイドルグループのセンターを張った娘であろうと、キー局の女性アナウンサーであろうと、人垣ができるのは初めの数週に限られる。プレイ内容が奇抜であれば一時的に盛り返すとはいえ、基本的には日を追うごとにギャラリーの数が減り、2、3ヶ月もすれば惚れ込んだ数人を除いて忘れ去られるのが常だ。
しかし、愛梨は違う。類を見ないルックスのせいか、それとも初日に会員達の恨みを買ったせいか。4ヶ月が経ってもなお、ギャラリーは減るどころか増え続け、倶楽部に過去最高益を更新させ続けている。
プレイにはハードさよりも、愛梨をどれだけ辱めるかが重視された。
輪姦前のウォーミングアップと称し、公衆の面前で脂ぎった中年男と濃密なキスをさせ、生臭い唾液を飲ませるプレイもその一環だ。
「う、うぐっ……おえっ!!」
屈辱と臭気に耐えきれなくなった愛梨が眉を顰めるたび、拳を握りしめるたび、会員達はここぞとばかりに嘲笑を浴びせた。露骨に軽んじるその態度が、ますます愛梨を狂わせる。秘部は蕩けてわななき、愛梨自身が呆れるほどの蜜を吐く。
その後に本番である輪姦ショーが始まれば、愛梨は無数の男達から雑に犯されながら、何度となく甘い声を漏らした。
「あはっ、やべ。あははは、違うの出ちゃった!」
「はあっ、はぁっ…………なあ、あっ!? ふ、ふざけないでっ!!」
調子に乗った会員の一人が正常位で犯しながら放尿を始めれば、愛梨は目尻を吊り上げて怒る。しかし、あまりにも屈辱的なその状況の中で、彼女の息は乱れていく。
「あ、あ……い、いや!! いやあ、こんなの…………ッくんんんんっ!!!」
やがて愛梨は、震えるほどの絶頂へと追い込まれた。膣内の尿を撒き散らし、それを嘲笑われながら。
シャワーエリアのガラス戸に取り付けられた極太のディルドーへ、自ら腰を打ち付ける形での『オナニーショー』も、羞恥の度合いは強い。
「んっ、ああ……ああ、はっん……んっ!!」
壁に手をついたまま腰を振る愛梨の声は甘い。ディルドーは女殺しの名で知られた女衒の逸物を象ったものであり、絶妙な位置に埋め込まれた真珠が女の急所を責め苛むのだ。
その姿をドアの外から眺めるギャラリーは、一様に笑みを浮かべていた。ガラス戸もディルドーも透明であるため、真円に開かれたピンクの襞から子宮口までがあまさず見えている。
「スレンダーに見えたが、意外にデカ尻だな。抱き心地の良さそうなカラダしてやがる」
「ひひひっ、マンコの中見てみろよ。もう濡れてきてるぜ?」
「あ、ホントだ。あのイボイボのシリコンチンポ、Lサイズでしょ。普通なら挿れてしばらくは痛くて感じるどころじゃないんだけどねー。マンコだいぶ開発されてんじゃん、あの女」
「おら、もっとペース上げろ! 根性見せやがれ!」
野次と共に命令が飛び、愛梨は腰を揺らすペースを上げた。冷たく硬い異物が膣を抉る。ロボットにでも犯されているようだ。
昂るのは早かった。太さがある上に反りや真珠の位置が絶妙で、腰を動かすたびに膣内の様々なスポットが抉られていく。根元まで呑み込めば、硬い亀頭が容赦なく子宮口を押しつぶしてくるが、それがまた耐え難い。静電気さながらの痺れが脊髄を貫く。機械責めで致命的なまでに開発されてしまったらしい。
「んっ、んはっ!! あ、あがっ、んあ、あ、ああっ……!!」
十回、二十回。膣のスポットを名器に抉られながら絶頂を重ね、愛液が脚を伝っていく。そのうち膝が笑いはじめ、それを嘲笑される悔しさから、膝頭を強く掴んで腰を打ち付ける。ピストンの速度も力強さも増し、ガラス戸の蝶番が軋む。
「あ、あはあ、ああっ…………んああああーっ!!!」
やがて愛梨は、悩ましく呻きながら床に手をつく。
「へへへ、とうとう腰砕けになりやがったか。エロいポーズだなオイ!」
「挿入待ちのポーズだな。つってもマンコはぶっ太いのでミッチリ埋まってるがよ」
「ケツの穴がパクパクしてるぜ、透明なクソでもしてるみてぇだ!」
「よし淫売、そのままキープだ。腰を逃がすんじゃあないぞ!」
命令に従い、深々とディルドーを咥え込んだまま動きを止めれば、全身が震えはじめる。
「あ、あああぁイクっ……!! おっ、おお゛、ほっおおおお゛お゛っ!!」
「ははははっ、出たね本気のヨガリ声!」
「脚もガクガクだ。膣で相当深くイッてんだろうな」
「興味深いですねぇ。この娘、自分で自分を壊しているわけですか!」
「ええ、その全てを我々に観られながらね」
「そら、あと100回だ! ぬるい動きすんじゃねーぞ、ガラス戸でケツが潰れたら1カウントだからな!」
ギャラリーから好奇の声と無慈悲な命令が飛ぶ。奴隷である愛梨はその命令に逆らえない。
「おっ、おっ……はっ、はぁぁ……っ、おおお゛お゛っ……!!」
一度本気の声が出る段階になれば、もはや後戻りはできない。肺が鉛になったように重く、膣内は痙攣しながら甘い電流を撒き散らす。
「ハメ潮スゲェな、腰振るたびにブシャブシャ出てんぜ?」
「ああ。コイツ最近じゃ、輪姦すたびに潮噴いたりションベン漏らすんだよ。つってもこりゃ噴きすぎだな。壊れた蛇口みてーだ」
ギャラリーの言葉が胸に刺さる。彼らの前で浅ましく腰を振り、絶頂するのは屈辱的だ。しかし、だからこそ愛梨は興奮してしまう。
「おおおおっ、おっ……イグ、イグううううおお゛お゛っ!!」
痙攣し、失禁しながら自らを壊す愛梨の姿は、この夜最高の見世物となった。
この時期に行われたイラマチオも、愛梨にとって忘れられない記憶となった。
「すっご。あんなの根元までクチに入るんだー!」
「クチで収まるわけないじゃん。喉の奥まで入ってるんだよ」
「マジ?うえー……」
新顔らしい女性会員が、愛梨を見て目を丸くする。
確かに愛梨の口へ出入りしている怒張は、顎を盛大に開かなければ咥えこめないほどに太く、また愛梨の顔以上に長い。とはいえそのサイズ自体は、愛梨にとってさしたる問題ではないはずだった。その巨根の持ち主……水口は、愛梨が倶楽部を訪れた初日に翻弄した相手なのだ。
ところが、愛梨はひどく苦しげだった。
「おぼっ、ォッ……るおエ゛っ、んむぉえ゛! ごっ、ぶふうっ!!」
涎を垂らしながら激しくえずき、鼻水を噴きだしながら噎せ返る。
「変な感じだな。今日初めて喉奥に突っ込まれたイラマ処女みてぇだ」
「前はノド奥どころか食道まで突っ込んでもヘラヘラ笑ってやがったのにな。すっかり可愛くなっちまって。やっぱ、あの状況のせいかね?」
男達は嘲りながら、愛梨の足元に視線を落とす。
膝立ちになった愛梨の股座には、一人の男が横たわっていた。仁王立ちする水口の脚をくぐるように仰臥したまま、愛梨の脚を掴んで股間を舐め回している。
彼は、名のある令嬢でもある女性会員が自慰用に飼っている『舐めイヌ』だ。女を満たすよう十年以上も躾けられたその舌遣いは、円熟の域に達している。そのテクニックを惜しみなく披露され、愛梨はすでに数十回の絶頂を経験していた。
「おもぉおお゛おう゛っ!!」
唾液塗れの怒張を吐き出すや否や、呼吸を整える間すら惜しんで切に呻く。男の舌から逃れたい一心で、腰が浮き、悩ましくうねる。その動きをギャラリーから散々嘲笑われた挙句、結局逃れきれなかった舌で絶頂させられ、男の顔の上で腰を抜かす。男がにやりと笑う気配がした後、今度は割れ目の中にまで舌が入り込み、再び腰が暴れはじめる。その繰り返しだ。
水口の方も、愛梨に充分な休息など与えない。
「逃げるな。お前の口は今夜、私の『道具』だ」
そう言い放ち、鋭い視線を愉快そうに受け止めながら、開口具の輪へと怒張を送り込んでいく。以前に赤恥を掻かされた恨みがあるため、容赦はない。両手で愛梨の頭を掴んだまま、エラの張った亀頭で喉奥を苛め抜き、根元まで咥え込ませる。
(く、苦しい……! 前みたいに、喉が開かない……!!)
激しく噎せかえり、えずきながら、愛梨は困惑する。倶楽部でのハードプレイで肉体が開発されているにもかかわらず、初日よりも責めに弱くなっている。
その理由はひとつ。この屈辱的な状況だ。『舐めイヌ』に秘裂を蕩かされながら、喉奥まで咥え込まされる……その状況への恥じらいが、喉の開きを悪くしているのだ。
しかし、そう理解したところでどうにもならない。度重なる絶頂で腰が抜け、下半身はかろうじて膝立ちを保てているような状態だ。上半身は水口に頭を掴まれているせいで動かせない。アームバインダーで両手を拘束されているため、手で相手を押しのけることさえ叶わない。
されるがまま、追い込まれていく。
「おうう゛っ、おエエ゛エ゛エ゛ッ!! アグウ゛ッ、ぅえお゛エエあ゛っ!!」
これまで何度も咥え込まされてきたが、その中でも最も酷い声が出ているのが、愛梨自身にも自覚できた。沸き起こる嘲笑が耳障りだが、声を止めることはできない。閉じた喉をこじ開けられるイメージが脳裏に浮かぶ。眠ろうとすればするほど目が冴えてしまうように、耐えようとすればするほど喉が狭まり、怒張の存在を強く感じてしまう。
「ッる゛うふっ、ごはあ゛あ゛っ!!」
とうとう嘔吐が始まった。勢いよく吐瀉物が噴きだし、ペニスを抜き出された後も開口具の穴から糸を引く粘液が垂れていく。
「もう我慢できなくなったのか。薄ら笑いを浮かべていた“あの時”とは大違いだな」
水口は冷ややかにそう告げた。愛梨は咄嗟にその顔を睨み上げるが、目に力を入れたせいで涙が零れた。
「今日は何遍吐いても気を失っても、私がイクまでやめん。覚悟することだ」
水口はそう宣告し、そしてその言葉通りに愛梨を責め抜いた。愛梨が吐き戻せば怒張を抜き出し、気道の確保だけはさせるが、呼吸が整うまでは待たない。吐瀉物とえずき汁を潤滑液として、より苛烈に喉奥を『使う』。愛梨が白目を剥き、鼻からも吐瀉物を噴きだしながら失神しても、なお責めの手を緩めない。
熱意に関しては下の男も負けてはいなかった。『舐めイヌ』として鍛え上げたオレの技を見ろ──そうギャラリーへ訴えるかの如く、ぴちゃぴちゃと音を立てて愛梨の秘部を舐め回す。愛梨が腰を暴れさせても、尻を掴んで離さない。潮を噴いている最中にも、陰唇とその内の粘膜を舐り抜く。
その異様な状況と絶え間ない責めは、愛梨の脳を掻き乱し続けた。明晰な頭脳がぼやけ、回転が鈍っていく。あれほど耳障りだったギャラリーからの嘲笑が遠く思え、喉奥と割れ目の温かさばかりが感じられる。その感覚はさらに狭まり、ついには口内のペニスしか知覚できなくなる。
熱く、腐っているのかと思えるほど臭く、硬い。もうかなりの時間喉を犯しているにもかかわらず、射精をしないので張りが衰えない。逞しい、という言葉が相応しい剛直だ。
(まさかこの後、このペニスで犯されるの……?
今、こんなの突っ込まれたら……突っ込んで、動かされたら……!!)
想像するだけで、愛梨の中にゾクゾクとした感覚が走る。それは背筋を痺れさせ、脳さえもスパークさせる。
「おぶっ、ぉおお……おぶぉおおおう゛っ!!」
余裕を失くした愛梨は、たちまちに決壊した。喉奥に突っ込まれたまま噎せ返り、鼻から泡立つ粘液を垂れ流しながら白目を剥く。割れ目からも潮の飛沫を噴き散らす。
「ぶっはぁああっ!! あっ、あはっ! あはーっ、はーっ…………!!」
頭を解放され、激しく喘ぐ。しかしその間も、愛梨の視線は目の前の怒張に釘付けになっていた。
「はははっ、ガン見じゃねーか!」
「窒息で死にそうなのに、チンポの事しか考えられねぇってか!? ったく、呆れた変態だな!!」
大笑いと共に発せられた罵声が、靄のかかった愛梨の耳に届く。数瞬遅れてその意味を理解すると、秘裂が戦慄いた。
「安心しろ、後でたっぷりと可愛がってやる。そのドロドロに蜜を吐いている花園をな」
その言葉と共に、水口は喉奥陵辱を再開する。酸素を断たれる苦しみの中、それ以上に強く愛梨を包んだのは、喜悦だった。この男に抱かれたがっているのだと、はっきりと理解できた。
「おう゛っ、ぉ゛う゛う゛え゛っ!! えお゛、ェえ゛えお゛う゛お゛え゛っっ!!!」
喜悦を自覚すると喉が開き、食道のさらに奥まで熱い棒が入り込みはじめた。それはより酷いえずきを生み、人垣の輪から割れんばかりの笑いを引き出す。その恥辱で、ますます喉が開き……延々とループする。
愛梨の目尻から涙が伝った。辛さからの涙でないことは愛梨にもわかった。むしろその逆……叱られていた子供が親から赦された時に安堵して流すような、暖かな涙だ。
「見ろよ、泣いてやがるぜ?」
その言葉に愛梨が横を向く。その濡れた瞳に、悪意をぶつけようとしていた観衆を一瞬言葉を呑んだ。
助けを乞うているようでもあり、もっと虐めてと切に願っているようでもある。その眼を見つめたまま、ギャラリーは一人また一人と笑みを深めていく。
「へへ……マジで、なんなんだよお前。倶楽部一の問題児のくせに、エッロい目で媚びやがってよぉ! いいぜ、ここにいる全員で朝まで輪姦してやるよ! 気絶しても引きずり起こして、ガンガン突きまくってやらぁ!!」
「おお、ヤろうぜ! おうバニーの姉ちゃんら、ありったけのゴムとエナドリ持ってこいや!!」
様々な叫び声と共に、熱意が渦巻く。その熱を汗の浮く肌で感じながら、愛梨の中のゾクゾクとした感覚はさらに強まっていく。愛梨はそこで初めて開口具に感謝した。汗と唾液で不快な器具だが、これがあるおかげで口元を見られない。おそらくは笑う形をしているだろう口元を。
※
アサミ、ミカ、そして愛梨……同期の3人組はいずれもハードに責められたが、愛梨に対するプレイの苛烈さは群を抜いていた。膣をNGにしているアサミは肛門のみ、アナルをNGにしているミカは膣のみの開発に留まるが、愛梨はどちらの穴も同時並行で開発されるためだ。
I字バランスの格好で拘束したまま、直腸に浣腸器で薬液を注ぎ込み、そのまま膣を犯す。軸足を抱え込むようにして激しく犯していれば、いずれ限界がきて排便を晒すが、そうなれば愛液まみれの逸物を抜き、そのままアナルを犯し抜く。一般にはハードコアに類するこのプレイも、今や長い一夜の『前菜』に過ぎない。
そして、それを受ける愛梨もまた強情だ。
「ふ、ふん……。このぐらい、何でもないわ……!」
あらゆる体液に塗れ、痙攣しながらもなお強がる奴隷を前に、会員達は息を荒げて更なる責めの構想を語り合う。
「そろそろ、黒人とヤラせますか」
「いいですな。しかし、ただのセックスで涼しい顔をされても癪だ。どうせならアヌスにも……」
「はははっ! 流石はサイトウさん、容赦がないですな。よし、次はそれで行きましょう!」
こうした会話が交わされ、実際に次週にはそのプレイが行われる。何十人というギャラリーが好奇の視線を送る中で。
「あ、あ゛あっ!! あっ、あっ!!!」
愛梨の叫び声が響く。とはいえその声質は重苦しく、ホールに響き渡るほどではない。愛梨の声をくぐもらせる要因は、秘部にねじ込まれている巨根と、肛門にはめ込まれた太い栓だ。
「しっかし、なんつうサイズだよ……。俺もダチん中じゃ一番デケェけど、やっぱ黒人にゃ勝てんわ」
男の会員が、ステージ上のペニスを見て呆れた声を出す。自信を喪失するのも無理はない。ステージで愛梨を犯しているのは、VIP会員の部下だというアフリカ系の黒人だ。そのペニスの全長は27センチに達する。愛梨は今、椅子に腰掛けた彼へ跨るようにして抱かれているが、規格外のペニスはその半分しか性器に収まっていない。
(ほんと、何よこれ……! 大きすぎて、あそこが裂けそう!!)
愛梨もまた、歯を食いしばりながら困惑していた。イラマチオで吐かされた水口の物より、数多の女を骨抜きにしてきた省吾の物より、遥かに凶悪。上司だというVIP会員が『マグナムディック』と自慢するだけのことはある。
そして、愛梨を追い詰める要因はもう一つあった。400ml注入された、塩化マグネシウム溶液だ。
『これはドナン浣腸といってねェ、最強の浣腸なんだよ。昔は重度の便秘患者の治療用に使われたが、あまりにも効果が強烈すぎて患者が嫌がるものだから、使用禁止になったらしい。グリセリン溶液なら小一時間耐えられるようなエネマプレイ中級者でも、これには3分と耐えられないんだ』
白衣の男がそう語った通り、イチジク浣腸などとは訳が違う。注入された瞬間、きつい酒を呷った時のように腸の粘膜がカッと熱くなるのを感じた。そこから僅か数秒で強烈な便意が沸き起こり、二本目の浣腸を受けているその最中にも、意思に反して肛門が盛り上がるほどだった。
『まだ出すんじゃないぞ』
そう挑発を受け、かろうじて耐えはしたが、菊輪は愛梨自身の意思とは無関係に花開き、外へ外へと捲れようとする。
『出したくて堪らないんだろう。安心しなさい、専用の栓がある』
そう言って突き出されたアナルプラグは、大の男が二人掛かりで保持するような代物だった。最も太い部分の直径は10センチを悠に超えているだろう。通常であれば入念に拡張し、フィストファックでも経なければ入り得ないそのサイズを、ドナン浣腸で緩んだ愛梨の肛門は驚くほどあっさりと受け入れた。とはいえ当然、楽にではない。スムーズに入り込んだとはいえ、アナルプラグの巨大さに尻周りの骨が悲鳴を上げる。漬物石でも腹に詰め込まれたような違和感が襲う。そして何より、閉じ込められた便意が脳を直撃する。
「な、なに、これ……うううっ!!」
排泄欲は根源的欲求だ。本来は逆らえないものであり、それを無理に抑え込めば嫌な汗が噴きだす。肛門は狂ったように排泄したがるが、根元の窪んだアナルプラグが引っ掛かって全く出せない。
そうして未知の感覚に狼狽える愛梨の前に、例の黒人が表れたのだ。
『部下のビルだ。お前の今夜のパートナーだぞ、愛情を込めてしゃぶってやりなさい』
そう告げるVIPの男を、愛梨は全力で睨みつけた。しかし結局はその言葉通りに動くしかない。
その後のフェラチオは地獄だった。ビルのペニスはただでさえ大きく、半勃起状態ですら口に収めることはできない。ましてや舌と指の刺激で勃起してくれば、舐め上げるだけでも一苦労する。それを便意に耐えながら行うのだ。
ぐるるるる、と腹が鳴る。直腸の中は煮え立つようだ。
「はあっ、はあっ、はあっ……!!」
愛梨の息はたちまち乱れた。興奮しているのかと揶揄される中、汗が噴きだし、全身が震える。
(うんちしたい、うんちしたい、うんちしたい……っ!!)
思考がそれ一つに染め上げられる。
『そろそろ良いだろう。ゴムを着けてやりなさい』
VIPの声で、愛梨はビルの逸物を改めて見上げ、息を呑む。節くれだった木の根のような、黒人ならではの巨根。当然、コンドームを着けるにも日本人相手とは勝手が違う。向こうが透けて見えるほどゴムを引き延ばさなければ、とても包み込めない。もはや脚にタイツを履かせている気分だ。
(これを、挿れるの……? こんなのが、本当にあたしの中に入るの……!?)
愛梨は何度も自問する。水口の時のような興奮はない。『どうにかなりそうだ』という感覚は同じでも、その意味合いはまるで違った。
その予感は、挿入と同時に確信に変わる。
見世物にされている状況だ。いかに黒人のペニスといえど、愛梨は声を出さずに堪えるつもりでいた。しかし、いざ巨根の先が秘裂を押し開けば、その覚悟は脆くも崩れ去る。
「はぁあああっ!?」
情けない声が出た。情けない顔になった。深く落とした腰が痙攣し、口がパクパクと開閉する。
(黒人相手のセックスが、こんなに凄いなんて……!)
愛梨は驚嘆する。そんな愛梨の胸中を知ってか知らずか、ビルに容赦はなかった。愛梨の太腿と変わらない太さの腕で、尻肉を鷲掴みにし、力任せに上下させる。
「あーーーっ!!」
愛梨はビルの太い首を抱え込み、ソファの座部を足指で噛んだ。もし支えなしに、全体重でビルの巨根を受け入れれば、確実に意識が飛ぶ──本能がそう訴えていた。
「はははっ、しがみついてやがる!」
「ったく、強ぇオスはいいよな。ぶち込むだけであのクソガキを骨抜きにしちまうんだからよ?」
野次が飛ぶが、それでも姿勢を変えられない。未だかつて経験がないほど苛烈なセックス。強烈な便意。その板挟みになるだけでも、脳がパニックを起こすには充分だ。
しかし、それだけではなかった。
(な、なんなの、これ……!! 熱い、熱いっ!!!)
腸の煮え立つような熱さが薄皮を越えて染み入り、子宮までもを熱くする。普通では有り得ないほどの蜜があふれていく。
「んっ、ぐうっ……ぁはあっ、はっ!!」
「うわー、マンコからめっちゃ汁出てる。気持ちいいんだねー!」
「そりゃそうだろ。なんせ筋金入りのビッチだ、黒人のデカチンが美味くてしょうがねぇんだろうぜ!」
狂乱する愛梨を前に、ギャラリーは大いに盛り上がった。黒人を連れてきたVIPの男も上機嫌だ。
「どうだ、ビルのテクは? 中々のテクニシャンだろう?」
勝ち誇ったようなその問いかけは、愛梨の神経に障った。彼女は強い瞬きで目の周りの汗を切り、強く男を睨みつける。
「はあ? デカさ自慢でガンガン突くだけのコイツがテクニシャン? 笑わせないで!」
「ふふふ、そうかね? その割には随分と善がっているようだが」
「く、苦しいから喘いでるだけよ。そんな事もわからないの!?」
極限の状況下で、なお強がってみせる愛梨。それこそが、常に集団のボスとして生きてきた彼女の在りようであり、サディストの心を捉えて離さない要因でもある。
「なるほど、それは失礼した。ビル、このお嬢さんは、もっとハードなファックがしたいそうだ」
VIPの男がそう告げると、ビルはその言葉を待っていたとばかりに笑い、愛梨の尻肉を掴み直した。
「え、何を……っ!?」
暴れる色白の尻を、丸ごと包み込む大きな掌でコントロールし、強引に挿入角を変える。子宮口を突き込むのではなく、その脇の窪みへはめ込むような責めに切り替える。
「あ゛ッ! んおっ、お゛っ!!」
不意を打たれた愛梨は、飾ることができなかった。目を見開いて、快感のままに声を上げてしまった。
「あ゛、あ゛、あ゛お゛っ、ああ゛お゛お゛っ!!!」
さらに突き込まれれば、愛梨は激しく震え、背を仰け反らせる。同時に腹部からは、ぐるぐると凄まじい音がしはじめた。
ビルはその反応を笑い、愛梨の耳元に口を寄せた。
「Open Your Eyes.」
その一言で、愛梨ははっと目を見開く。そして震えながらビルの首を離し、顔を睨みつけた。ビルはその強気ぶりに口元を緩めつつ、掴んだ尻を激しく上下させる。
そうしてしばし責め立てた後、ビルは愛梨を抱いたまま椅子から立ち上がり、ゆっくりとステージの端に向かった。ギャラリーへ見せつけるためにだ。
「あがあっ!! はっ、はっ……あ、あああ゛……っ!!」
愛梨の顔が歪む。椅子で踏ん張る事が出来ず、全体重が挿入部にかかる体勢は圧が強すぎる。その状態で腰を上下されれば、激しい反応をせざるを得ない。そしてそれをギャラリーに至近距離で視られるのだ。
「シーッ、ハッ……! シーッ、ハッ……!」
あまりの苦しさに、愛梨の呼吸が変わる。洋物のビデオでよく耳にする喘ぎ声だ。
(もしかして、外人の女優だからあの喘ぎ方なんじゃなくて……このペニスを入れられたら、自然とこの喘ぎになっちゃうの……!?)
大きくて、苦しい。内臓を丸ごと突き上げられるような感覚は、日本人相手のセックスでは味わえないものだ。
ギャラリーの野次はよく聴こえた。愛梨はその言葉で自分の状態を知った。震え、仰け反り、両脚で空を蹴り。ヒクつく肛門を盛り上げては栓に阻まれ、前後の穴から汁を止め処なく滴らせているようだ。
傷を視認することで痛みが増すように、現状を客観的に伝えられると、愛梨の中の何かがひび割れていく。
「あ、あ゛あああ゛っ!! んおっ、おっ、おっ!!」
愛梨はとうとう目を見開き、舌を突き出す。観衆のざわめきが増した。それほどにインパクトのある表情だった。
「潰せ、ビル。」
「オーケイ、ボス。」
VIPの男が冷徹に命じれば、その部下もまた粛々と応じる。
彼はステージの端で愛梨の尻を掴み、8割ほどまで剛直をねじ込んで愛梨に潮を噴かせ、場を大いに沸かせる。そして、天を仰いだまま痙攣する愛梨を元いたソファに押し込むと、その上へ覆いかぶさった。
「おおっ、『種付けプレス』か!」
「うへぇ。体重乗せてあのデカチン突っ込まれるとか、たまんねーな!」
客が期待を寄せる中、ビルはゆっくりと腰を沈めていく。
「あいッ! く、あっ、いひぃいっ!!」
愛梨は途切れ途切れに呻きを漏らした。アナルプラグのせいで変形した膣が、ビルの巨根の形に作り変えられていく。その遊びのなさは先ほどまでの比ではない。怒張の熱さも、脈動も、しなやかな硬さも、嫌というほど感じてしまう。
丸い亀頭が膣奥まで達しても、なおビルの腰は密着しない。体重を乗せてもなお全ては挿入しきれないらしい。それが苛立たしいのか、ビルは肉臭い息を吐きながらグリグリと膣奥を刺激する。
「ああっ、や、んはぁあ!! お、ぉっき……んああぁぁんん……っ!!」
愛梨が切ない声を漏らし、足指を握り込む。するとビルは、それを待っていたとばかりに腰を遣いはじめた。ソファを軋ませながら、ドロドロに蕩けた膣の内部を攪拌する。その速度は次第次第に増していき、掘削ともいうべきものになっていく。
「んがあァっ!? あ、ちょ、待っ……あ゛ァア゛ああ゛っ!!! しっ、子宮、痙攣して……はう゛っ!! あがァ……おォッ、がッ……ああおお゛ア゛ッッ!!!」
愛梨は苦楽に身悶えた。あまりに強い膣の快感、あまりに強い肛門の便意……その板挟みで全身が暴れる。脚は力み、上半身は腹筋でもするかのように起き上がる。
その反応を目の当たりにしても、ビルは容赦をしない。愛梨の足首を掴んだままひたすらに剛直をねじ込んでいく。実にショー向きの責めだ。見た目の豪快さのみならず、視認性にも配慮している。膣へのピストンも、浣腸を耐える肛門の戦慄きも、すべてがギャラリーに見えるように。
「はははははっ、いやあ凄い! まさに杭打ちだ!」
「あの黒人の、さっきより大きくなってない? もう子供の脚ぐらいあるじゃない。あんなのガンガン突っ込まれたらオマンコが壊れちゃうわ!」
「ドナン堪えんのもそろそろ限界らしいな。あんな太ぇ栓してんのに、クソ汁が垂れっぱなしだぜ?」
会員達は派手なパフォーマンスに湧き上がる。
一方、愛梨は刻一刻と追い詰められていた。ビルの『杭打ち』は容赦がない。膝を使ってしっかりと奥まで剛直をねじ込んでくる。
しかも、猛烈なピストンは同じ動きを反復している訳ではない。ひたすらに子宮口を責めていたかと思えば、不意に角度を変えて子宮口下部の窪み……Aスポットにも嵌め込んでくる。愛梨にはそれがまた堪らなかった。日本人のペニスでは到達しえない深みまで、エラの張った雁首が潜り込んでくる快感──それはポルチオで得る快感とはまた違う種類の悦楽だ。ポルチオ責めに備えている中で不意にその快感が来ると、あっという間に無防備にされてしまう。
「あああ気持ち゛いイ゛っ!! なっ、なにこれ、こんなの知らないっ!! 気持ちいいの、ずっと続いてる……あ、そごっ、ああお゛ッ!! き、気持ちいいのっ、ずっと!! こんなのおかしいっ、おかしいって、あ待……あああああ゛っ!! ダメ、もううんちが……ああ奥ゴリゴリやめてええ゛っ!!! や、それもうっ……あイグイグイグッッッ!!!」
膣で際限なく絶頂へ追い込まれる中、排泄欲も限界を迎えつつあった。マグマのように熱く煮え滾る肛門が、何度も噴火さながらに盛り上がり、太すぎる肛門栓に阻まれて戻っていく。それを幾度も繰り返し、ある瞬間とうとう限界が訪れる。
「あ出るッ、出ちゃう……!! くあ、あ……あがあああ゛あ゛ぁ゛っ!!!」
愛梨らしい、ホールを震わせるような絶叫と共に、太いアナルプラグが勢いよく弾け飛ぶ。そしてそれを待ち望んでいたように、汚液の噴出が始まった。ぶりゅっ、ぶびぃっ、ぶじぃっ……という、美少女から発されているとはとても思えない音が響き渡る。
「oh……!!」
強烈な排泄は、膣にも変化を齎したのか。ビルが顔を綻ばせ、腰をぶるぶると震わせる。射精しているのは誰の目にも明らかだ。
ぶるりと身震いして射精を終えても、ビルは腰を止めない。粘ついた水音を立てながら膣内を突き込み、その度に愛梨の肛門から液が噴きだしていく。
「ひひひひっ、すげぇな。あの重てぇ栓があんなトコまで飛んでったぜ? やっぱドナン限界まで我慢させた後のクソは、勢いがハンパねぇな!!」
「ああ。あとドナンっつったら、出すモン出した後のケツ穴だよな。腸の粘膜が捲れかえって、ぐっぱり開いてよ。ダリアの花とはよく言ったもんだぜ!」
「わー。人の見たの初めてだけど、こんなになってるんだー。すっごいね。あ、あと、皆知ってる? この状態のお尻ってメチャクチャ敏感になってるんだよ。ドナンの熱さが染みてとろとろになったオマンコより、もっと感じるの!」
「へえ、そりゃ面白そうだ。よーし、たっぷりイジメてやるか、このイカレ女のぶっ壊れアナルをよ!」
会員達は花開いた愛梨のアナルを興味津々に覗き込み、嗜虐心の赴くままに責めはじめた。
筆で菊輪を撫で。イボどころか針に近い突起のついた手袋を嵌め、数人掛かりで腸粘膜を弄り回し。蛇腹の太いバイブを抜き差しし……。
「あああっ! や、やめっ、痒……熱いいっ!! っうああああ゛あ゛!!」
ビルに膣を責められながら、過敏なアナルを責められる地獄。愛梨は叫び、身悶える。そしてその過程で、彼女の二穴の性感はまた飛躍的に開発されていく。
「ウウ゛ああ゛ア゛ーーーッ!!! ハァーッ、ハァーッ……あ、ア゛ーッ!!アア゛ーーッ!!」
獣の声が響き渡る。後ろ手に拘束され、ボールギャグを噛まされたまま肛門を犯される愛梨のものだ。
尋常な声ではないが、反応もまた普通ではない。涎と涙を垂らして悶え狂っている。肛門の刺激を嫌がるように腹部が蠢き、脚が暴れる。その果てに逸物が抜けても、腹部はなお痙攣を続け、ついには潮を噴き散らす。
「うへぇ、すげえな……!」
「ああ。ケツでイッてるってレベルじゃねぇぞ。どうなってんだありゃ……?」
異様な声に引き寄せられた野次馬達が、呆れ交じりに笑みを浮かべる。
「これがアナルアクメを極めさせられた奴隷の成れの果てだよ。正確にはアナル経由での子宮イキだがね。アナルからの子宮イキは、ポルチオを直に突かれて絶頂する極感が天国に思えるぐらい、もどかしく粘り気の強い快感らしい」
アナルマニアが愉快そうに語る中、愛梨は再び後孔に挿入され、肥えた白蛇のようにのたうち回る。
酒の回った会員達も、それをただ見ているだけではなかった。
「逃げんじゃねーよ、変態女が! ケツアクメに溺れちまえ!!」
逃げる愛梨を押さえ込み、乳房を揉みしだく男もいる。
「ここがイイんだろ? 外からも刺激したげるよ、ほーら!!」
痙攣する愛梨の腹に乗り、そのまま踊ってみせる女もいる。
そしてそうした横槍が、ますます愛梨を悶え狂わせた。
「へーっ……、へーっ……、へーっ……、へーっ…………!!」
愛梨に、もはや美少女の面影はない。
虚空を見つめ、舌を突き出して喘ぐ顔。乱れたまま肩に絡みつく黒髪。這う格好のままなお痙攣する肉体。そのいずれもが危険な匂いを発している。
「これはこれは。筋金入りのマニアに可愛がられて、だいぶ本性が解放されてきたようですね」
穏やかな表情でそう告げるのは、愛梨に倶楽部を紹介したVIPの男だ。
「ほ、本性……? こ、これが、あたしの……?」
愛梨が汗みずくの顔で問い返すと、男は静かに頷いた。
「そう、それが君の本性……本能がそう在りたいと願った姿です。この倶楽部で調教を受けた奴隷は、例外なくそれに目覚めます。『あの2人』のようにね」
そう言ってVIPの男は、少し離れたステージを指し示す。愛梨が視線を向けると、そこには見覚えのある2人がいた。愛梨と同じ日に奴隷となった、アサミとミカだ。
彼女達も愛梨と同じく、複数人の会員に囲まれて調教を受けていた。それ自体は見慣れた光景だ。しかし……愛梨は目を見張る。
「え……っ?」
目を疑った。見慣れていればこそ、その行為の異常性にはすぐに気がついた。
「あああアナタ、ごめんなさいっ…………!!」
若く逞しい男に膣を犯されながら、歓喜の涙を流すアサミ。
「んっ、あはあっ!! んあああ、はああああッ!!」
醜悪な見た目の中年男達に二穴を輪姦されながら、陶然とした表情を浮かべるミカ。
どちらもNGとしていた筈のプレイだ。主婦であるアサミは夫への罪悪感から膣使用を拒み、不良娘であるミカは『ハゲ・デブ・ブサイク』の相手とアナルプレイを禁止としていた。しかしその2人は今、禁じていたプレイで涙するほど感じているようだ。
「驚きましたか? しかし、あの変化はごく自然なことです。何かを嫌うというのは、それを強く意識している証。奴隷がNGとするプレイは、往々にしてそれこそが真の性癖であることが多いのです。あの2人もそうでした。アサミさんは後ろの穴を責められながらいつも膣を濡らしていましたし、ミカさんは醜悪な男に犯される他の奴隷をいつも目で追っていました。それは彼女達自身もよく自覚していたことでしょう。となれば後は、その本能を受け入れるように、少しその背を押してあげればいい」
VIPの男はそう言って片手を上げる。すると、倶楽部のスタッフがホールのモニターにある映像を流しはじめた。
大画面にまず映し出されたのは、アサミだ。彼女は前後の穴を器具で拡げられたまま、壁に手をつく格好を取らされていた。
『くう、ううううっ……!!』
アサミは顔を歪めて呻く。貞淑な彼女のことだ、恥辱も耐え難いのだろうが、どうやらそれだけではない。
『どうだ、痒くて堪らんだろう。いい加減言ってみろ、掻いてくださいってよ』
アサミを囲むギャラリーが意地の悪い笑みで告げる。どうやら彼女の前後の穴には、痒みを齎す何かが塗りこめられているらしい。その影響か、穴の中からは大量の粘液があふれ出し、肉感的な脚を伝い落ちていた。
『い、嫌です……! 前は、前だけは、あの人の……!!』
アサミは首を振って誘いを拒む。気弱な彼女だが、夫を想う気持ちは本物らしい。
しかし、人の忍耐力には限界がある。
『…………お、お願いします、イカせてください…………!!』
場面が切り替わり、丸裸のまま涙ながらに土下座するアサミの姿が映る。床に点々と広がる雫と、赤く腫れたまま痙攣する秘部を見れば、彼女がどれだけ耐えたのかは一目でわかった。その果てに、彼女は折れたのだ。
『ひひひっ。マンコ濡らしながら全裸土下座でチン媚びか。大した人妻だぜ』
『誰とも知らない相手との浮気セックスか。旦那はどう思うだろうな?』
会員達からの言葉に、アサミは表情を強張らせる。しかし床に押し倒され、満を持して膣に挿入された後は、顔の強張りは消え去ってしまう。
『あはああああっ!!!』
開いた口はうっすらと笑みを形作り、嬌声は悦びに満ちている。男達の言う『浮気セックス』で、心の底から満たされたと言わんばかりに。
そこで画面が切り替わり、次にミカの姿が映し出される。彼女は椅子に拘束され、まさに彼女好みの見目麗しい男達から愛撫を受けていた。
『あ、ああ……あっ、あっ……』
乳房とクリトリス、膣を入念に愛撫する手つきは見るからに巧みであり、実際ミカも甘い声を漏らしていた。しかし、その甘い時間は長く続かない。
『止めろ』
ミカの正面に鎮座する男がそう一声発すると、ミカへの愛撫が止まる。
『あっ!? く、クソォッ……! また、かよっ…………!!』
ミカは口惜しそうに正面の男を睨み据える。その口ぶりからは、同じような焦らしが何度も行われていることが伺えた。絶頂しそうになるたび愛撫を止められる。正面の男──ミカの嫌う条件を兼ね備えた、醜悪なVIP会員の前で音を上げるまで。
ミカは気の強い娘だ。相当な時間その責め苦に耐えたことだろう。場面が切り替わった後の、失禁でもしたかのような液溜まりが、それを裏付けていた。しかし、その意地もとうとう限界を迎える。
『わ、わかった……アンタと、するよ…………』
ミカは俯いたまま、掠れ声でそう告げる。
『もっと大きい声で、ハッキリ言え!』
愛撫していた男が前髪を掴み上げると、ミカの顔がカメラに写り込む。涙と鼻水で見るも無惨に変わり果てた顔が。
『お、お願いします! あ、アタシを、抱いてくださいっ!!』
新たに涙を零しながら、ミカは哀願する。彼女が嫌う条件を兼ね備えた男を相手に。
NGとしていたはずのプレイに、嬉々として興じるアサミとミカ。愛梨はその姿から目を離せなかった。奴隷がNGとするプレイは、往々にしてそれこそが真の性癖であることが多い──VIPの男の言葉が真実味を増す。
「これで分かったでしょう。あれこそが、彼女達の真の望みなのです」
VIPの男はそこで言葉を切り、愛梨に視線を戻した。
「あのようにNGプレイがハッキリしていれば、潜在的な望みも探りやすい。問題はNG無しと宣言した君です。NGプレイが無いという人間は、自分の性癖が分かっていない。あるいは、そこから目を逸らそうとしている。……コハル。君になら、彼女の本質がわかりますね?」
男はそう言って傍らの少女に目を向けた。和服を纏い、無表情に立ち尽くしている不気味な少女だ。彼女は真っ直ぐに愛梨を見つめたまま、人形のような口を開く。
「わかる。あの子は私と同じ。ハードなプレイそのものにではなく、自分の価値が損なわれている事に快感を覚える、破滅願望型のマゾヒスト」
無機質な喋り方だ。わざとらしくそうしていた白衣の男達と違い、本当に感情を喪失しているように思える響き。その声で紡がれる言葉に、誰もが聞き入っていた。普段であればいの一番に反論するだろう愛梨でさえも。
「その通りです。高い自己評価やナルシシズムの裏返しですね。では、彼女の『解放』は君に任せてもいいでしょうか」
「先生がそう望むなら、私は構わない」
場がざわつき始める。この不気味さの漂う少女が、愛梨にどのような責めを課すのか。それを期待するざわめきだ。
「……『解放』? ふん、上等じゃない。あんたが前どんな目に遭ったか知らないけど、このアタシをあんたと同じように考えないでちょうだい!」
精一杯に強がってみせる愛梨もまた、コハルの底知れない不気味さに呑まれていた。
そして、その直感は正しかった。この後に始まるコハルの責めで、愛梨は決定的に変容することになる。
二度と元の道には戻れないほどに。
※
自分の価値が損なわれている事に快感を覚える、破滅願望型のマゾヒスト……コハルは愛梨をそう定義した。ゆえにコハルが課す責めは、愛梨の価値を毀損することに特化していた。
「……なんですかアイツ? なんか、垢だらけだし臭いし……正直、浮浪者にしか見えませんよ」
「ああ、あいつらはあんまり個室の外にゃ出てこないからな。あいつは通称、『糞男(クソダン)』だ。ここの会費を払うどころか、借金こさえてフロに入る余裕さえないって輩よ」
「会費も払えない人間が、何でここへ? どこかから潜り込んだってことですか?」
「いいや。アイツらは客じゃなくて、ここのスタッフだよ。貸し出しプレイ専用のな。さっきも言ったが、ああいうのは自分の返済能力も考えずに衝動的に金を使い散らすゴミクズだ。だがそういうゴミも、このアブノーマルなクラブじゃ需要がある。テメェの女をゴミに抱かせて興奮する男とか、ゴミに抱かれて興奮する変態女とかな。不思議なもんでよ、普段ステイタスの高い女議員やらセレブ妻に限って、最低な男に犯されたがるんだよな」
「その理屈は分かるんですけど、それにしてもアレは……」
「まあな。ありゃあ糞男の中の糞男。糞みてぇな男どころか、マジでババアの糞食ってるようなド底辺だ。最初はそのプレイを普通にフロアの中でやってたんだが、あんまりにも醜悪な図でよ。好きモン揃いの客が何人も吐いちまったんで、今じゃ特殊な個室から出てくんなって厳命されてんだよ。俺もあのキメェ面拝むのは2年ぶりだぜ。見てるだけでゲボ吐きそうだ」
会員達がヒソヒソと囁き合う。彼らの言葉通り、ステージに上がった男は浮浪者そのものだ。
「……くっ!」
床に寝そべる愛梨も、その醜悪な容姿に嫌悪感を露わにする。
「こりゃまた、えらい別嬪やな」
一方の男は笑いながら愛梨の顔を跨ぎ、汚れた肛門を顔に近づける。そのおぞましさたるや、興味本位で見ていた女性会員達が一斉に顔を顰めるほどだった。
「うっ!!」
愛梨も当然、臭気と嫌悪で美貌を歪める。
「そのまんま朝まで舐っとけ。コッチも朝まで可愛がったるさかいにな」
男はそう言って腰を落とし、愛梨の顔に肛門を密着させながら、薄汚れた指で秘裂に触れる。
「う、うう゛……っ!! く、臭いっ……!!」
愛梨は臭気に包まれながら、男の尻を掴んで抵抗していた。しかし男はその抵抗を面白がるように腰を押し付ける。そして、面白がるのはギャラリーも同じくだ。
「舐めろ!舐めろ!舐めろ!舐めろ!」
1人また1人とコールを上げはじめ、ついには大合唱となる。
「……舐めて」
コハルもまた、愛梨の傍に屈みこんでそう命じる。そんな状況が続けば、いずれ愛梨も観念するしかない。
「れろっ……う、うぶっ!! おえ、えあ……ほごぉえ゛っ!!」
垢に塗れた尻の下から、舐める声と噎せる声が交互に響く。人一倍自尊心の高い愛梨にとって、耐え難い状況であることは皆が理解していた。だからこそ愉快であり、だからこそ効果的な責めだ。
「おおーっ、こら堪らんわ。可愛いコに舐めさせとる思うと、余計になぁ」
浮浪者風の男は嬉々として笑う。その股間の棒は次第にサイズを増し、先走りの汁を滴らせはじめる。
「そうや、そこをもそっと舐めて……おおエエでぇ。ほな、次は穴ン中に舌入れてみよか」
男の注文に、愛梨は顔を歪めながらも渋々と応じる。
「お、おおおおっ……ええぞ、ええぞ!!」
男は満面の笑みを浮かべながら、ついに射精を始めた。愛梨の乳房に挟まれた男根が、上下にピクピクと動きながら精液を吐き散らす。射精の勢いは強い。ほのかに色づいた白濁が、モデル級のスレンダーボディを次々に穢していく。
「うわ、汚……!!」
「なんかザーメン黄ばんでんじゃん。ションベン?」
「ならまだマシだがよ、ずっと出してなくて腐ってるとかじゃねぇのか?」
ギャラリー達が薄気味悪そうに囁く声は、愛梨の耳にも届いていた。腹部の生温かさがおぞましい。口と鼻に密着する悪臭も、汗で蒸れた空気も、頬を流れる唾液も、全てが不愉快だ。死んだ方がマシと思えるほどに。
しかしそんな状況にありながらも、愛梨の女の部分は濡れていた。大股を開いたまま、男の節ばった指で掻き回されれば、クチュクチュと粘りのある水音が立つ。指先で中を掻き回されれば浅く絶頂して腰が浮く。浮浪者同然の男が前屈みになり、ピチャピチャと音を立てて舐めはじめれば、潰れたカエルのようなポーズで快感にうち震える。
「し、信じらんない。感じてるよ、アイツ……!!」
「ウソでしょ……!?」
同性を中心とするギャラリーから悲鳴に近い声が上がる中、愛梨は数えきれないほどの絶頂を経験した。
「おぶっ、オグゥ……ぐっ、おぼエッ……!!」
興奮と汚辱に吐き気を覚えながら、愛梨は視線を逃がす。ギャラリーの笑い顔と軽蔑の表情がいくつも視界に入り……
愛梨は、心にヒビが入る音を聴いた。
※
「……お、おいおい、マジかよ……!!」
「へ、へへへ。糞男の次にコレとか、えげつねぇ趣味してやがるぜ……!!」
コハルが連れてきた次の『相手』に、並み居るマニア達がざわめく。
「な……っ!」
愛梨もまた目を疑った。
コハルの手に握られたリードの先にいるのは、巨大な犬だ。形容としての『イヌ』ではない、正真正銘の異種。
「なるほど、君にはそれが“効いた”んですね?」
VIPの男が興味深そうに尋ねると、コハルは静かな瞳で頷いた。
「そう。私はこの『彼』とのセックスで、自分の心がひび割れる音を聴いた。きっと貴方も同じ」
コハルはそう言って愛梨の後ろに立つ。
「ははははっ、いいねいいねぇ! 犬姦かよ!」
「異種姦という発想が出ないあたり、私達もまだまだ甘いな。無意識にあの娘を神格化してしまっていたのかもしれん」
「かもねー。さすが、完璧に壊れたコは違うわ」
「オラどうした、四つん這いになれよ! 毛深い彼氏にケツ向けてよ!」
愛梨を大きな円で囲んだまま、ギャラリーは下卑た笑みを浮かべた。愛梨はその顔を次々に睨みつけ、奥歯を鳴らす。しかしここまで意地を張ってきて、今さら逃げ出せるわけもない。
「……ッ!!」
意を決して這い蹲る愛梨。その背後でコハルがリードを手放せば、犬はゆっくりと愛梨に近づき、跳び上がるようにして腰に前足を乗せる。
「ひっ!!」
愛梨は怯えた表情を見せる。当然の反応だ。背後の気配は人間とはまったく違う。ハッハッという荒い呼吸。鼻をつくような獣臭。殺意にも似たオーラ。その全てが根源的な恐怖を呼び覚ます。
「やだ、ビビってるわコイツ」
「尻尾巻いて逃げてもいいんだぜ? 犬相手だけにな!」
奴隷の怯えは、当然ながら会員達の笑いの種になる。愛梨はその恥辱に唇を噛み締め、グッと股を開いてみせた。その決意にどこかで口笛が吹かれる。
「いいよ」
コハルがそう告げると、それを合図に犬が動き出す。半勃ちのペニスで器用に愛梨の割れ目を探り当て、挿入を開始する。
「あぐっ!!」
愛梨は顔を顰めた。
(熱い!!)
最初に感じたのは灼けるような熱さだ。人と犬と体温の違いか。
形状も違う。人間のペニスのように丸い亀頭ではない。細長く、先が尖っており、突き込みのたびに子宮口に突き刺さる。熱さも相まって、焼き鏝でも押し込まれているようだ。
「犬の癖に女犯すのが上手ぇな。そこらの童貞よりよっぽどサマになってんぜ」
「そりゃそうだろ。この倶楽部が用意する犬だ、たっぷり芸を仕込まれてるんだろうぜ」
会員達の言葉通り、愛梨を犯しているのはセックスショー向けに躾けられた軍用犬だ。女を悦ばせる方法も、泣かせる方法も、“人並み”以上に心得ている。
「ぐっ、う゛……うぐっ、んう゛っ……!!」
愛梨は歯を食いしばって耐えていた。恐怖も痛みも人間相手の比ではない。思わず声が漏れそうになるが、犬に犯されながら嘲笑われるような状況で、さらに舐められる材料を渡したくはなかった。
しかし、その意地も長くは続かない。突き刺すようなペニスの痛みにかろうじて慣れてきたと思った矢先、第二の特徴が表れはじめる。
(えっ!? な、なに!? 急に、大きく……!!)
愛梨が狼狽えるのも無理はない。挿入されているペニスの根元が瘤状に盛り上がりはじめたのだ。亀頭球と呼ばれるそれは、陰茎が抜けないようロックする役目を担う。この変化により犬のペニスは、長さと太さ、鋭利さを兼ね備えた凶器と化す。
「あ、あ゛っ、ああ゛っ!!」
愛梨は目を見開き、声を上げる。もはや嘲笑を気にしている場合ではない。瘤つきのペニスを押し込まれる際には息が詰まり、引かれる際には膣粘膜が丸ごとめくり返るような錯覚に陥る。黒人相手のセックスをさらに上書きするような苛烈さだ。
そして、愛梨の余裕を奪う要因はそれだけではない。背中に感じる爪の感触と荒々しい息が、獣に犯されているという事実を絶えず突きつけてくる。
人ではない、ケダモノとの交尾。それを公然で行っているのだ。そう自覚した時、愛梨は恥辱に震えた。しかし、恥辱はそのまま昂ぶりにもなる。
『自分の価値が損なわれている事に快感を覚える、破滅願望型のマゾヒスト』
コハルの言葉が脳裏に蘇る。
「はぁっ、はぁっ……!!」
愛梨はコハルを見上げた。睨もうとしたのか、それとも縋ろうとしたのか、愛梨自身にも分からない。いずれにせよ、コハルがその想いに応じることはなかった。彼女はただ、黒水晶のような瞳で愛梨を見つめていた。その瞳に映るのは、哀れなメスの姿だ。
「あ゛っ、あ゛、あはああ゛あ゛っ!!」
「へっ、きったねぇ喘ぎだな!」
「まさか感じてやがんのか? 流石にこのイカレ女でも、犬にレイプされてイッたりしねぇよなあ?」
「ははは、まさか!」
喘ぎが謗られる。かといって澄んだ声を作る余裕などない。
太い瘤で膣襞を擦られ、長く尖ったペニスで子宮口を突かれ……普通ならば苦痛でしかないはずのその責めも、膣を念入りに開発された今はむしろ心地いい。痛みも苦しさも快感にすり替わる。膣の奥が疼く。
「はぁっ、はぁっ……い、いや……犬なんかに、犯されて……あ゛っ、あ! くあああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
愛梨はついに絶叫し、身を震わせた。乳房が左右に揺れるほどの身震いだ。
「うわ、こいつマジでイッてるぜ!?」
「えー、信じらんない! 何でも興奮するんじゃんコイツ。なんか必死にイジメてたのが馬鹿らしくなってくんだけど」
心無い言葉が浴びせられる中、愛梨は絶頂の余韻に震える。犬はそんな愛梨に構わず激しいピストンを繰り返し、その果てにとうとう果てる瞬間を迎えたらしい。
「ウ゛ウ゛ウ゛……ッ!!」
犬は唸りながら、尖ったペニスの先端を子宮口に押し付ける。押し付け、捏ねまわし、子宮口がほんの少し口を開いたその隙に、すかさず内部へと先端をねじ込んでしまう。捕らえたメスを確実に孕ませなければならない、野生の本能が可能にした早業だ。
「うあっ!?」
愛梨は悲鳴を上げ、思わず後ろを振り返りかける。しかしそれより早く射精が始まった。子宮頚管へ潜り込んだペニスの先から、熱いものが子宮内に流れ込む。
「ぐっ……!! う、ううッ、ぐ、ぐくくっ……!!」
「んだよ、地味な泣き声だな。畜生に中出しされてんだろ? もっと派手に泣き喚けや!」
不満げな声が浴びせられるが、あまりの違和感に声が出ない。凍えるようにガチガチと歯が鳴る。脳が警鐘を打ち鳴らし、全身に嫌な汗が滲む。
犬の射精は長かった。メスを確実に孕ませるために、たっぷりの時間をかけ、生暖かな精液で胎内を満たしていく。加えてその間も、犬はじっとしているわけではなかった。ペニスの先を子宮に嵌めこんだまま、前後に動く。
「あ、あ゛があっ!!」
愛梨が顔を跳ね上げた時、ギャラリーは一様に驚きを見せた。人間相手のセックスならば、一度射精が始まってしまえば女の顔は変わらない。屈辱か、絶望か……いずれにせよ一つの表情で固定される。
不可解ではあるが、しかし何が起こっているのかはハッキリと分かった。愛梨は再び絶頂に押し上げられているのだ。犬の精子を注がれながら。
「あ、嫌、嫌ぁ……っ!!」
愛梨は弱々しく頭を振りながら、膣からの痺れに包まれていく。脳の密度がいつになく薄く思えた。恥辱はこれまでの比ではなく、それゆえ快感もいつになく大きい。破滅願望型のマゾヒスト──コハルのその評を裏付けるかのように。
数分かけて大量に射精した後も、犬の交尾は終わらない。後背位から姿勢を反転させ、尻同士をつける体位でさらにピストンを繰り返す。訓練された軍用犬の持久力は人間の比ではない。休むことなく『交尾』を繰り返しても、腰の勢いが衰えない。その上、ペニスは少しずつサイズを増してもいた。
「うぐぅっ、ぁあ゛……あがあああ゛……っ!! も、無理……く、苦しいっ……!!」
愛梨は顔を歪めて呻く。思わず這って逃げようとするが、陰茎の根元の瘤が抜けない。結局は犬の力強い前後運動に引きずられ、身体を前後に揺らすことしかできない。逃げられないままに、強靱な獣の脚力でペニスを打ち込まれつづける。一度達して敏感になった膣で、その刺激に耐え続けられるはずもない。
「う、ぐっ……ああ゛ぁあ゛あ゛っ!!」
食いしばった歯を開き、泣き声にも等しい悲鳴を上げる。肩幅以上に開いた膝が浮き、ビクビクと痙攣する。それを何度も繰り返した。そしてその数と同じだけ嘲笑を受け、罵声を浴びた。
(こんな……犬に犯されて……このあたしが……!!)
生まれてから17年あまり、他人より優れていると信じて生きてきた。他人が自分に注目するのも、陰口を叩くのも、自分という存在が眩しいからだと、そう思っていた。
しかし……ライトに照らされた倶楽部の中、床に這い蹲って見上げる野次馬達の顔は、ひどく遠い。手を伸ばしても届かないほどに。
「あははははっ! こいつ、犬に犯されながらまたイッたわ!」
「ほんと、惨めねぇ!」
「おーおー、ひでぇツラだ。獣そのものだな、こりゃ!」
罵声が飛ぶ。この数ヶ月で、もう何度聞いたか知れない言葉。しかし今はその一言一言が心を切り裂く。他ならぬ愛梨自身が、己の惨めさを自覚しているからだ。
身体に力が入らない。藻掻けば藻掻くほど深い闇に沈んでいく。
「お、おねがい…………お願い、助けてっ! こんなので、こんなのでイくのは嫌ああああっ!!」
愛梨は、ついに哀願する。けして媚びず、折れず、一年間あらゆる責めに耐え抜こう……そう考えていたが、これ以上は正気を保てないと確信してのことだ。しかし、その決死の哀願が聞き届けられることはない。
「やめない。それが貴方のためだから。貴方は自分を知りたいと願っている。それを知るためには、その扉を潜る必要がある」
コハルはそう告げ、ただ静かに愛梨を見下ろす。蔑視でもなく、敵視でもなく、あるがままに愛梨を見ている。その漆黒の瞳が、愛梨に理解させた。引きずり込まれた闇の底にあるのは、禁断の快楽。闇とは真逆の安らかな世界なのだと。
「だめ……ほ、ほんとに、おかしく……! あ、くはっ! ああアア゛ア゛ッ!!」
再び大量の射精が始まった。すでに満たされている子宮へさらに精液が入り込んでいく。少しずつ、少しずつ、子宮の壁を拡張しながら。
「ふぁあっ、あっ、あ! はぁああんっ、んあああッ……ああぁあああーーっ!!!」
愛梨は、自分が悲鳴を上げ、涙を流しているのかと思った。
しかし、どうやら違うらしい。
響き渡っているのは、恋人に抱きしめられた女の出す甘え声だ。顔の形は、嬉し涙を流す至福の笑みだ。
ただ一つ気がかりなのは、野次が飛ばない事だった。嘲笑はそこここで起きているが、野次は飛ばない。
しかし愛梨には、その理由が理解できた。野次るまでもないのだ。犬に犯されながら喜悦に震える愛梨の姿は、それだけで充分すぎるほどに惨めだからだ。
「ひっ、あひいぃいいっ!! すごい、すごいっ!!! もっと突いて、もっと出して!! あたしの子宮、あなたの精子で一杯にしてえっ!!!」
愛梨は正常位で犬と抱き合い、その背に脚を絡ませながら絶叫する。
「へ、へへへへ。あのクソ生意気な女が、変わっちまったもんだな……」
「ああ。数時間前までとは別人だぜ……」
すっかり様子の変わった愛梨を前に、筋金入りのサディスト達が生唾を飲む。顔色を変えていないのは、コハルとその主である男、そして陶然とした表情を浮かべる愛梨だけだ。
※
※
※
獣姦の夜を最後に、愛梨がヒトとして扱われることはなくなった。
「おら、大好きなザーメン汁だぞ。舌出してろよブス!!」
会員の一人が愛梨の顔を上向かせる。
ブス────かつての愛梨であれば冗談にもならなかった言葉だ。かつて倶楽部を訪れたことのある女性の中でも、一番を狙える器量なのだから。しかし、今の愛梨の顔はその言葉に相応しいほど歪められていた。口の周りだけを残し、厚手のタイツで顔を絞り上げられているせいだ。
「はい……」
愛梨は命じられた通りに舌を突き出し、数人の男の精液を舌に受けると、音を立てて飲み下す。精液のついた唇をぺろりと舐め、心底美味そうに。
「へッ、俺らの特濃ザーメンを一息かよ。噂通りのビッチだな。いいぜ、なら下の口にもくれてやるよ!」
また別の男が愛梨の肩を突き飛ばし、床に這わせる。かつての愛梨ならば目尻を吊り上げて非難していたところだが、今の彼女は、突き出した尻を自ら手で割り開く。
「なんだよ、緩いな。しっかり締めろよブス!」
膣に挿入した男は不満げに鼻を鳴らし、愛梨の尻を叩きながら腰を打ち付ける。
「あ、ああっ! はああぁんっ!」
愛梨は突き込みと叩かれる痛みで震え上がる。
「チッ。おいテメェ、主人さしおいて自分だけイッてんじゃねぇぞ!!」
「はい、すみませ……ん、んくううううっ!!」
謝罪こそするものの、膣を念入りに開発された身体は容易に絶頂に至ってしまう。ゴミ同然の扱いによる興奮が、そのハードルをさらに下げる。
「よう、聞いたか? なんか男子便所がすごいらしいぜ」
会員の1人が仲間にそう語り、男女数人で連れ立ってトイレへ向かう。
「うおっ……!!」
「うっへぇ……確かに、こりゃすげぇや」
そこには、乱交後に放置された愛梨の姿があった。小便器に鎖で繋がれているため、当初は便器としての扱いを受けていたのだろう。実際に愛梨の身体は黄色い汚液に塗れ、痛烈なアンモニア臭を放っている。しかし、加虐趣味のある会員達がいつまでも便器としてのみ使用するはずもない。
愛梨は、穴という穴に物を詰め込まれていた。口には使用済みらしきティッシュ、鼻腔には煙草の吸殻、膣には空き缶、肛門には一升瓶が押し込まれている。それ以外にも、アナルパールやイチジク浣腸の空容器、使用済みのコンドームなど、様々なものが身体の各所に点在してもいる。
まさにゴミ箱のような扱いだ。しかしそのような目に遭ってなお、愛梨の口元にはうっすらと笑みが浮かんでいた。
愛梨は壊れたわけではない。解放されたのだ。その証拠に、大学での彼女はそれまでと変わらず、あるいはそれまで以上に完璧な姿を見せた。背を伸ばして隙なく歩き、真面目に講義を受け、ゼミでの討論で舌戦を繰り広げ……そうして健全に大学生活をこなした上で、夜になれば倶楽部を訪れた。
会員達の視線に晒されながら、服を脱ぎ捨て、美貌を歪められる。蔑まれ、罵られ、弄ばれる。
昼は天下の東州大生、夜は最底辺の奴隷。そのギャップが興奮を煽った。夜は惨めであるほどよかった。
「なんて下品な……肌的にはまだ若いでしょうに、恥知らずな娘だ」
「聞いた話じゃ、マスクの下は二目と見られねぇブスでよ、男に人間扱いされねぇもんだから自暴自棄になってるらしいぜ」
聴きなれない声が愛梨の耳に入ってくる。口ぶりからしてもおそらくは新規の会員だろうが、愛梨に視認はできない。彼女の頭は全頭マスクで覆われ、器具で歪められた鼻と口しか空気に触れていないからだ。
それでも、自らの惨めさは自覚できた。倶楽部に来て早々ドナン浣腸を注がれ、壁に拘束されたまま嬲られた。ドナンの熱さが染み、放っておいても熟した果実のように蕩ける膣を、指やバイブ、マッサージ器で徹底的に責められた。そうして数十回絶頂させられた後の姿なのだ。
わずかに膨らんだ腹部からは壮絶に腹を下した音が鳴り、がに股の脚は痙攣し、全身は脂汗に塗れている。その姿はさぞや『下品』だろう。そう実感するだけで、愛梨は脳が痺れるような至福に襲われた。
「お、俺はヤるぜ。どんだけブスだろうが、スタイルは悪くねぇしよ」
一人が金属音を慣らしはじめる。ベルトを外す音だ。その音の後は、いつも衣擦れの音とゴムを装着する音が続き、荒々しい呼吸が愛梨に近づいてくる。
「入れるぞ」
左脚が抱え上げられ、挿入が始まった。
「おおおおっ……!!」
開口具を嵌められた口から歓喜の声が漏れる。ゴム付きとはいえ、熱く硬い肉棒が嬉しくてたまらない。
「おお、えらく熱い襞がキュウキュウ吸い付いてきやがる。良いモン持ってるじゃねぇか。カラダは抜群なのに顔が残念とはよ、『天は二物を与えず』ってやつか?」
男はどこか愉快そうに囁きながら、夢中で腰を打ち付ける。それは愛梨に多大な快楽と苦悶を齎した。何度受けてもドナン浣腸に慣れることはない。気が狂いそうなほどの便意で直腸が煮立つ。その影響で煮崩れしそうなほど蕩けた子宮を硬い陰茎で突き上げられれば、それだけで中程度以上に絶頂してしまう。
「へへっ、相当キツい浣腸されてるらしいな。全身にイヤーな汗掻きやがって、クソがしたくてたまんねぇってか?」
「お、ほもおオオオっ!!」
男は腰を打ち付けながら、音の鳴る下腹部を撫でまわし、愛梨に苦悶の呻きを上げさせる。そしてそれを堪能すれば、今度は右脚も抱え上げてスパートをかける。パンッ、パンッ、パンッ、と肉のぶつかる音が鳴り響き、痛烈に便意が煽られる。
「おおっ、おほおおっ! おんォぉおおおお……っ!!」
全身の毛穴から新たな汗を噴きだしながら、愛梨は深い絶頂に至る。
「くあっ!? マンコがうねって……おああああっ!!」
挿入している男もまた、愛梨に引きずられるように射精に至る。それを粘膜で感じ取りながら、愛梨は抱えあげられた脚を痙攣させて余韻を堪能する。そしてその熱気あるセックスは、傍観していたギャラリーをも焚きつけた。
「へへへ、この野郎見せつけてくれるじゃねぇか。次は俺だ!」
1人目と入れ替わるようにして次の男が愛梨の前に立ち、最高硬度の逸物をねじ込む。今度の物は先ほどよりも太い。少なくとも亀頭はワンサイズ勝っている。
「ごおおおおおおっ!!」
口枷から呻きを漏らしながら、愛梨は新たなペニスの感触を堪能する。一度目以上の苦悶と悦楽を期待し、女の園から涎を零す。
そこから、何人の相手をしただろう。何度絶頂し、何度便意の限界を迎え、何度意識を失っただろう。
以前であれば気が触れていたかもしれない、度を越したハードプレイ。しかし欲望の解放された愛梨は、その苦悶や失神さえも甘美なものとして受け入れてしまえる。
拘束が解かれ、震えながら跪く愛梨の後ろにガラスの音がする。マスクで視界を遮られたままでも、異様なほど肌感覚が鋭敏になっているため、周囲の位置関係はすべて分かった。
「おいブス、『チンチン』だ!」
そう号令が掛かると、愛梨はそれに従った。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ…………!!」
膝立ちのまま、指で秘裂を割り開き、ドロドロに蕩けた膣を衆目に晒す。
「見なよ、あの脚の痙攣。クソ我慢しながら犯りまくられて、どんだけイッたんだろ?」
「しかし、あのフラフラの状態で即座にメス媚びのポーズとは……大した調教ぶりですな」
「いや、あれがあの娘の本性なんですよ 我々は自我を開放する手助けをしたまでです。……おい、もういいぞ。ひり出せよ!」
赦しが出た途端、愛梨は嬉しそうに笑う。そして特注の『おまる』に跨り、我慢に我慢を重ねた肛門を開放する。
「おっ。出るぞ、出るぞ!」
ギャラリーが嘲る中、決壊が始まる。栓が弾け飛び、怒涛の勢いで汚液が噴きだす。
「うへぇ、出た出た! ったく毎度毎度すげぇ勢いだな!」
「スッパダカのままクソするところ皆に見られて、ホント終わってるぜこのブス!」
容赦なくヤジが飛ぶ。まさに恥辱。以前であれば拳を握りしめ、歯を食いしばって耐えようしただろう。しかし今の愛梨には、その状況がひどく心地いい。
「んん、んはあああっ! あっ、あっ、あっ!!」
誰に強制されるでもなく、自発的に脚を開き、濡れそぼった股間を弄る。排便を晒しながら、興奮を持て余しての自慰。その浅ましい姿にギャラリーの喧騒が増す。
「おい、マジか……こんなので興奮してんのかよ?」
「泣くぜ、マトモな女なら……!」
「はははははっ、マジでイカレた女だぜ!!」
呆れたような声、蔑むような声。そのどちらもが興奮を煽る。浣腸のせいで水の溜まった膀胱から潮が噴きだす。泣き喚くような勢いで、遥か遠くまで。
※
また別の夜は、愛梨は全頭マスクの代わりに包帯で頭を巻かれ、床に寝そべる形でクリトリスを吸引される。それだけではない。包帯の頬にあたる部分には『取るな!ブス注意』、下腹部には『性病アリ、挿入厳禁!』と赤いマジックで殴り書きされている。
「な、なんだこりゃ……?」
「いくらタダ同然の奴隷っつっても、これは……」
新顔の会員達は、そんな愛梨を見て顔を見合わせた。
彼らは近くの大学に通う大学生だ。人伝にDUNGHILLの噂を聞きつけ、割引につられて入会したはいいが、パートナーもいなければ奴隷とのプレイ権を勝ち取れるほどの金もなく、まともには遊べない。
「こ、こいつよ。顔はヒデェらしいけど、スタイルは良いよな」
「ああ。病気っつっても、直で触んなきゃ大丈夫だろ」
大学生達は目を血走らせながら手袋を装着し、恐る恐る愛梨に触れはじめる。乳房を揉みしだき、太腿を擦り、秘裂に触れる。
「う、あううっ……!! はう、ああううっ……!!」
控えめなボディータッチに愛梨が呻くと、大学生達はびくりと肩を震わせ、それから笑みを浮かべた。
「な、なんだよビビらせやがって。感じてんのか、この変態オンナが!」
「結構声可愛いじゃんか。つーか、今の感じだとだいぶ若いよな。若いのに病気とか、ヤリマン確定じゃん!」
一度火が点けば、若さゆえの勢いで責め方に容赦がなくなる。
「お前、クリ吸引されんのが好きなのか。ならもっと吸ってやるよ!」
「はははっ、やべえ! 吸われまくってチンポみてぇになってんぞ?」
「おい、すげぇぞコイツ。マンコの上にも小っせぇ穴あんなと思ったら、これ尿道だぜ?」
「マジかよ、指入りそうじゃねぇか!」
「指どころか膣用のバイブ入んじゃねーか? ちょっとそこの突っ込んでみろよ!」
ある者は陰核の吸引具を弄り、ある者は拡張済みの尿道に興味を示す。その初々しく加減を知らない責めに、愛梨は激しく見悶える。
「あ、ああ……はああっ、んあああああんっ!!」
泣き声にも聞こえる艶めかしい喘ぎ。それを延々と響かせながら、愛梨は潮を噴く。大学生達はそれを面白がり、さらに激しく責め立てた。
「ああもういいや、突っ込んじまおうぜ!」
怖いもの知らずな暴走で、クリトリスと尿道を責めながら膣にも挿入するまでには、さほど時間は掛からなかった。
「あーあー、今日もメチャクチャやられてらぁ」
大学生達が倶楽部を去った朝方、清掃のスタッフ達は愛梨を見て溜め息をつく。他所の倶楽部であれば出禁を食らっても仕方がないほどの悪乗りの跡が見て取れた。体液に塗れ、5ダースを超える使用済みのコンドームに囲まれた愛梨の姿は無惨そのものだ。
「しっかし勿体ねぇよな。こんなツラのいいガキが、マスクで顔隠しちまってよ」
愛梨の頭の包帯を取り去るスタッフがしみじみと呟く。涙に塗れたまま眠る愛梨の素顔は、文句なく美少女そのものだ。
「そうかね? ま、価値観なんざ人それぞれだ。俺にゃあそのガキは、顔隠してゴミ扱いされてる時の方が活き活きして見えるぜ」
先輩スタッフはそう言いながら、粛々とホールの掃除を進めていく。
そして事実、その言葉の通りだった。
元の美少女ぶりとかけ離れた姿になればなるほど、愛梨の興奮度合いは上がっていく。
「じっとしなよ。座り心地の悪い椅子ねぇ」
垂れ目の女が、愛梨の太腿の上で脚を組み替える。
「ムウ゛ウッ!! ウ゛ッ、ウ゛ーーーーッ!!!」
愛梨は天を仰ぎ、バイトギャグ越しに呻きを漏らす。過激な反応だが、それも当然のことだ。彼女は両腕をアームバインダーで拘束され、膝下から足首までを覆う枷で脚を閉じる状態を強いられたまま、太い杭の上に座らされていた。
穿かされたゴムパンツのおかげで、杭が肛門に入り込むことはかろうじて防げているが、完全にではない。愛梨自身の体重と、太腿に乗った女の体重で、杭は少しずつ肛門内にめり込んでいく。しかも愛梨には前もって濃いグリセリン浣腸が施されているため、その催便作用とも戦わなければならない。
「すっごい汗。いっちょ前に苦しいんだー、変態の癖に。」
そう囁きかける女は責め役として堂に入っているが、彼女は本来サディストではない。むしろ数時間前までは、恋人のことを『ご主人様』と呼んでマゾの快楽に浸っていた女だ。そこへ愛梨が乱入したことが、このプレイのきっかけとなった。
「うわっ、何だ!?」
「きゃっ!」
男女のカップルは、おぼつかない足取りで近づく愛梨を見て驚愕した。
ラバーマスクで顔を覆い、手足をボンデージで拘束され、膣と肛門から極太のビーズを揺らす奴隷。彼女は過敏な反応を示す男女を前にして歩みを止める。
「んふっ。どう、あたしと遊ばない……?」
艶めかしい声を出し、誘うように身体をうねらせる愛梨。その妙な迫力を前に、男の方が喉を鳴らす。しかし、女の方は違った。パートナーを誘惑された彼女は、頬を染めたマゾヒストの顔を一変させる。
「待ちなよ。そんなに遊びたいんなら、私が遊んであげるよ」
甘美なプレイを邪魔された苛立ちからか、恋人を誘惑された怒りからか。いつになく冷ややかな声で『主人』を狼狽えさせた女は、自分ならば絶対に音を上げるだろうプレイを愛梨に施した。
実際、愛梨はその責めに苦しんだ。脂汗を垂らし、バイトギャグからダラダラと涎を垂らした。しかし、段々とその雰囲気が変わってくる。
「ウウッ、ウッ、ウッ!! ンウ、ンウウウゥッ…………!!」
漏れる呻きが甘さを孕みはじめる。全身の痙攣も、初めこそ便意や苦痛によるものかと思えたが、段々と歓喜の震えに見えてくる。
「…………っ!?」
女は訝しむ。この倶楽部に辿り着くほどだ、自分もかなりコアなマゾヒストであると自覚しているが、そんな自分でもこれほどの責めには感じるどころではない。許して、やめて、と涙するに違いない。だからこそ愛梨への報復としてこれを選んだのだ。よもやそれで相手が悦ぶとは。
「あんた、とんだ変態ね。どんだけ太いニップルピアスで拡張したの? あはっ、すごーい。乳首に指入るじゃない」
ピアス穴に指を通し、乳頭ごと引きちぎらんばかりに引き上げる。普通ならば痛みと恐怖で絶叫し、身も世もなく泣き叫ぶところだ。しかし。
「もごっ、ほごぉおおおおおっ♡♡」
愛梨は壮絶な呻きを響かせるが、その声色は紛れもなく喜悦のそれだった。胸の先という敏感な部位を苛め抜かれ、最底辺の奴隷は震えながら絶頂していた。
そして、それがトリガーとなったのだろう。愛梨の肛門から破裂音が響き渡り、愛梨の肉体が下に沈んでいく。脱糞と共に杭がめり込んでいるのだ。
「ウオオ゛オ゛ォ゛ーーーーッッッ!!!!」
愛梨はケダモノの声を上げながら痙攣する。膝の上に乗った女を振り落とす勢いで暴れながら、秘裂からは潮を噴き、杭には肛門からの汁を伝わせる。
「く、狂ってる…………!!」
女は表情を凍りつかせた。『奴隷』のズレたマスクの下からは、アイドルと見紛うほど整った顔立ちが覗いている。スタイルも女が思わず嫉妬するほどに良い。その最上級の美を誇る少女が、まるで人間性を喪失している────その業の深さは、彼女の常識から逸脱しすぎていた。
※
よりアブノーマルなプレイをしたがるマニア達と、より背徳的なプレイを望む奴隷。その利害が一致すれば、もはや歯止めは利かない。
過去に愛梨を追い詰めたプレイは、会員と愛梨本人の希望で改めて繰り返された。
鏡で痴態を視認させながらの、同性によるレズビアンプレイ。
椅子に拘束しての窒息バルーンイラマチオ。
鼻へのアンモニア浣腸と指イラマチオ。
アナルフックで吊り下げての壁尻レイプ。
腹が膨れるまで浣腸した上での下痢便アナルセックス。
X字に拘束してのポルチオ開発および下剤責め。
ドナン浣腸を耐えさせながらのビルとの異人種姦。
軍用犬との異種姦。
これらのプレイは、やはり愛梨を狂乱させた。しかし、その理由はまるで違っていた。恥辱と快楽の板挟みで苦しんでいた以前とは違い、今の愛梨はすべてを快楽として受け入れる。
その心境の変化と、純粋に性感帯が開発されている事実とが合わさり、愛梨は狂乱した。数十人が見守る前で、排便し、嘔吐し、失禁し、痙攣し、絶頂した。快感が大きいせいか、気を失う頻度は前より増したが、覚醒させられるたびに笑みを見せた。生粋のマニアでさえ寒気を覚えるような笑顔だ。
ヒト以下に堕ちてもなお、愛梨は会員達の心を惹きつづけた。
『中出し限定・避妊禁止の無責任孕ませパーティー』
倶楽部のサイト上で事前告知して人を集め、より大勢で愛梨を満たす──いつしかそれが倶楽部の目玉イベントとなった。
「ぐふふふ。今日のために、たっぷり精子溜めてきたよ!」
「たっぷり可愛がってやるからよ、覚悟しろよブス!」
ゴムパンツを盛大に膨らませた男達に囲まれ、愛梨はゾクゾクと身震いする。
準備は万端だ。イベントが始まる3時間前から、アブノーマル愛好会による渾身の機械責めを施されている。
低周波パッドで下腹と陰唇・太腿周りに電気を流され。
ポルチオ開発用のアタッチメントで子宮口を刺激され。
振動式の吸引具でクリトリスを吸われ。
尿道を親指大のバイブで掘削され。
肛門が緩みすぎないよう少量のドナン浣腸を入れたまま、S状結腸まで達するサイズの蛇腹バイブで嬲られ。
それだけの責めを受けながらも、愛梨は今日まだ一度も達していない。常に脳波を測定され、まさに絶頂に至ろうという瞬間に刺激を止められるのだ。人力では成し得ないほど正確で、無慈悲な寸止め。3時間に渡り高原状態をキープさせられた愛梨は、イベント開始時点で『出来上がって』いた。拘束を解かれ、震える爪先で床を踏みしめただけで痺れが走るほどに。
膣と肛門、そしてその奥がいやらしく開閉を繰り返し、歩くたびに液溜まりができるほど蜜を吐いている。男50人対女1人の孕ませパーティーは、その状態で始まった。
「ッぐ、あああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
1人目に挿入された瞬間、愛梨は悲鳴に近い声を響かせた。覚悟していた以上に深く絶頂したのだ。前戯のせいもあるが、やはりコンドームを着けていない生挿入というのが大きかった。
「へへへ、イイ声で鳴くじゃねぇかヤリマンが!」
男は気を良くして愛梨の膝を掴み、正常位で突き入れる。体重を乗せて、深く、力強く。
「あっ、んああっ! か、硬い、太いっ!! ッぐイグッ、イグイグイグイグッ!!」
愛梨は髪を振り乱しながら、早くも断続的な絶頂に入った。ただでさえ圧が強く、並み居るマニアを名器と唸らせた膣だ。絶頂で収縮した時の具合は凄まじい。
「うわっ、ヤベえ! こ、これ、締まりが……ああ、もたねぇ!!」
人一倍意気込んでいた男は、わずか1分足らずであえなく搾り取られてドクドクと射精する。溜め込んできたと豪語するだけあり、射精は長い。
「おおおっ、出る、出るっっ!!」
本人が叫ぶたびに睾丸が収縮し、膣の端から白濁が伝い落ちる。
「あああ、ああああっ……!! 熱いのが、いっぱい来てる……! あ、あたし今、卵子でまくってるから……ほ、本当に孕んじゃいそうっ……!」
どこの誰とも知らない男の精液を、たっぷりと膣に注がれている。その事実を噛み締め、愛梨は震えた。
「うわぁ。中出しされて喜んでるよ、コイツ」
どこかから同性の声がする。見ず知らずの男の子を孕むかもしれないのだ、普通ならば危機感を抱くだろう。しかし、愛梨はそうではない。まともな感性の女性が涙を流して嫌がるような、『NG』の状況……それこそ、彼女の望むものだ。
「いいか、まずは一発ずつだぞ! いっぺん出したら次の奴に代われよ!?」
乱校の最中、何度も怒号に近い声が上がった。そうしない人間が多いからだ。
「あっ、あっ……! イク、イクわっ! あは、あああああっ!!」
宝石のような目を爛々と輝かせ、笑みを浮かべる愛梨……誰もがその顔に見入った。何かに吸い寄せられるように唇を奪い、濃密なキスを交わしながら激しく腰を振る。その果てに射精してもなお、逸物を抜かない。愛梨の膣に自分だけを覚えさせようとするかのごとく、突き続ける。すでに出したザーメンと膣の分泌液で、グチャグチャと壮絶な音をさせながら。
「チッ、ルール守れよバカが!」
「しかし、よくこの状況でキスするね。実質前の野郎との関節キスだぜ?」
順番待ちの時にそう冷笑していた男も、いざ自分の番となればその行為を行ってしまう。まるで何かの力に強いられるように。
「ふーっ。まさかこんな若いガキに中出しできる日が来るとはな!」
「ああ、背徳感やべえよ。癖になったらどうしよう」
「バーカ。そんときゃコイツを使ってやりゃいいだろうが。性処理用の便器として、何十回でも何百回でも!」
「だな。コイツもそれを望んでるみたいだしよ!」
「しかしすげぇな、突っ込まれるたびに潮噴いて……イキっぱなしだぜ?」
男達のボルテージは刻一刻と上がっていく。入れ代わり立ち代わり愛梨を犯し、なお興奮冷めやらぬ様子で語り合う。
そして女性会員も、それをただ傍観しているわけではなかった。
「ほら、次々! せっかく温まってるのに休ませると可哀想ですよー?」
さも愛梨を案じている素振りを見せ、足首を掴んで自然に『マングリ返し』の姿勢をキープさせる。
ペニスの小さい人間でも、上からのしかかるようにして奥を突けるように。
注がれた精液が極力零れないように。
そして、愛梨の色狂いの顔がよく見えるように。
愛梨にビールやカクテルを飲ませているのも、水分補給というよりは愛梨を酔わせて正気を失くさせるのが目的だろう。
2巡、3巡してもなお、男達の愛梨への執着は衰えない。愛梨にあられもないポーズを取らせたまま、その顔に汗を垂らし、しっとりと汗ばむ太腿を抑えながら剛直を送り込む。
「ああ、激しっ……ああ、そこぉっ! ぎもぢいい、イグ、イグッ! あああイッぢゃううううう゛っ!!」
愛梨が顔を歪めながら笑う中、男達もまたマグマのような猛りをぬめる膣の中に吐き出していく。
「ああっ、出てる! おまんこの中いっぱいで、子宮の中にまで入ってきてる……!!」
「ふふふ、そうか。ならば漏れないように栓をしてやらんとな。おい、誰かフタをくれ!」
倶楽部でも古株の男は、射精したばかりの逸物を抜き出し、代わりに手渡された巨大なプラグを膣へ押し込んでいく。
「お、お゛っ!?」
愛梨が目を見開いて呻いても、プラグの挿入は止まらない。
「お、おいおい、俺はまだイケるぜ!? 打ち止めにゃ早ぇよ!」
「まぁそう慌てなさんな。あくまで一時的な栓だ。私達が愛情を込めて注ぎ込んだ大事な精子が、しっかりと着床するまでのな」
男はそう言って愛梨の脚を広げさせ、スタッフに手で合図を送る。するとスタッフも心得たもので、大きな鏡で愛梨の姿を映し出した。
「あ、あ……!!」
下手をすれば手首ほどもありそうなプラグで栓をされ、隙間から大量の白濁を零す自分の姿……それを目の当たりにし、愛梨は興奮で震えた。そしてその姿を見た男達もまた、怒張に血を漲らせる。
「じゃあ、ここらで一休みかい……? 今晩を楽しみに溜めてきたんだ、まだまだヤリてぇんだがな」
「俺もだ。チンポがはち切れそうだぜ!」
体力に陰りのある中年男はともかく、若い男はまだまだ勢力が有り余っているようだ。そして勿論、それは倶楽部の古参達もよく理解している。
「なぁに、前を封印してるだけだ。使いたきゃ、穴はまだあるじゃねぇか」
男は愛梨の尻を掴み、後ろの穴を指で拡げてみせる。
「……ッ!!」
その行為に息を呑んだのは、男達も愛梨も同じだ。
「はーっ、はーっ、はーっ」
呼吸を整えるので精一杯なのか、愛梨は言葉を発さない。しかしその瞳は好奇心に輝いていた。今この状態でアナルを犯されたら──その想いで胸が膨らんでいるのは明らかだ。そしてその表情は、充ち足りていない男達を獣に変えるのに、充分すぎる効果があった。
「あああ……たまんねぇ、たまんねぇ、たまんねぇよおこの穴……!!!」
愛梨の腰を掴んで肛門を犯す男は、感情を隠せていない。飢えた獣が肉を貪るように、無我夢中で腰を打ち付けている。そして飾る余裕がないのは愛梨も同じだ。
「お゛っ、おお゛っ! お゛っ、お゛っ!!」
濁っていながらも純粋な快楽の声を、ピストンのたびに響かせている。
声だけではない。膝立ちのまま強張る、形のいい太腿も。拠り所なく空を彷徨い、何かにすがるように動く手指も。唇を尖らせたままの顔も。すべてが愛梨の快感を如実に表していた。
順番を待つ男達は、愛梨から目を離せない。特にその顔……頬を染め、瞳を濡らす顔を凝視する正面の男は、辛抱堪らずとばかりに愛梨の口を奪う。
「んむっ、んっ、んんんっ!!」
愛梨は目を見開いて呻く。動揺しているようだが、相手を押しのけはしない。拒絶することなく、されるがままに状況を受け入れている。極太の栓で膣一杯の精液を封じられたまま、太く逞しい肉棒で排泄の穴を犯され、恋人がするようなキスを髭面の男と交わしている──その背徳的な状況を。
「ん、んう……んむっ、んむうううううっ……!!♡」
愛梨が震えながら漏らしたその声は、誰もを満たす響きだった。彼女に惚れ込んだ男も、彼女に嫉妬した女達も。
膣と、肛門……その二穴への輪姦は、夜を徹して続けられた。
「そら、ハメ待機列の連中が我慢できずにシコった特濃ザーメンだ。これもくれてやるよ」
そう言ってジョッキになみなみと溜め込まれた精液を、クスコで開いた膣に流し込むこともある。悪乗りが過ぎる行為ではあるが、愛梨はそんな目に遭わされてもなお、ゾクゾクと震えながら笑みを零した。
そして狂乱は、一夜だけでは終わらない。
『< 絶対に断らない >芸能人級の黒髪神美少女に、顔射、ごっくん、中出しのフルコース可能!!!』
次の夜も、また次の夜も、タイトルを変えながらサイト上で募集が掛けられた。次第に明け透けになっていくその文面に惹かれ、しかも参加者は減るどころか、日に日に増えていった。
そんな日々が繰り返されれば、いずれは来るべき日が来る。
「よしよし、ちゃんと妊娠できたみたいだな」
妊娠検査薬を翳す愛梨に、男達は満足げな笑みを浮かべる。
「……はい」
愛梨もまた、酔いしれたような表情でそう答えた。
愛梨が妊娠を完遂してもなお、輪姦は続く。
もはや離れられない。会員達は愛梨から、愛梨は会員達から。
「へへへ、だいぶ腹が出てきたな。今日で10週目か」
「ああ、順調順調」
倶楽部を訪れる数十人の男達は、皆が父親の気分で愛梨の経過を観察する。その視線に晒されながら、愛梨は自慰に耽る。我慢ができない、と全身で訴えるかのように。
※
「麻友、こっちこっち!」
そう声をかけられた麻友は、びくりと肩を震わせる。
相手は、昔麻友をよくからかってきた級友だ。苦手な相手であり、麻友としてはあまり関わりたい相手ではなかった。しかしその誘いに乗って上京したのは、愛梨に纏わる話を出されたからだ。
「あんたに見せたいモンがあってさ」
その言葉と共に手招きされ、麻友は繁華街の奥へと進む。
眠らない街。煌びやかなネオンで目が眩みそうだ。愛梨ならばそのような光景を好んだだろうが、麻友には刺激が強すぎた。気を抜くと、ギラギラとした光に呑まれてしまいそうになる。
路地裏の雑居ビルから入り、3つのエレベーターと2つの連絡通路を経由して、地下3階のの入口へ。どう見ても堅気ではない人間に睨まれながら、分厚い扉を開けば、そこにはネオン街以上に煌びやかな世界が広がっていた。
しかし、麻友の視線を釘付けにしたのはその煌びやかさではない。白いライトが照らす、小高いステージ……そこにいる人影だ。
「愛梨、さま…………?」
麻友は自問するように問いかけた。
彼女は、愛梨の姿を片時も忘れたことがない。辛いことがあれば、太陽のように笑う彼女の写真を見て気持ちを奮い立たせてきた。彼女の溌剌とした声が、いつも麻友の迷いを晴らしてくれた。
ゆえに、そこにいるのが愛梨であることを、彼女の意識は一目で見抜いていた。
しかし──────心がそれを拒絶する。
「あぁアっ、あはぁあああっ!! もっとして、もっと突いて!! まだ足りないの! もっと、もっとグチャグチャにしてっ!! あたしの、頭の中、まっしろにさせてぇえっ!!!」
歪に膨らんだ腹のまま、前後から男に犯され、媚びるような視線を向ける。その姿は、麻友の思う愛梨のイメージとは遠すぎた。
「いいぜ、グチャグチャになんなよ。ほら、“大好きなヤツ”だ」
顔中にピアスを空けたガラの悪そうな男が、喘ぐ愛梨の舌を掴み出す。そしてその舌に何かの錠剤を乗せられると、愛梨は目で微笑みながらそれを飲み下す。
「あっ、あっ……あはっ、あ……♡」
愛梨の表情が輝きはじめた。しかしそれは、かつての彼女のそれとは違う。太陽ではなく、闇にギラギラと輝くネオンサインだ。
「さあ、パキパキにキメてよ、今日も楽しもうぜ!!」
愛梨と同じく目をぎらつかせた男達が、各々道具を拾い上げる。巨大なガラスの浣腸器。腕ほどもあるバイブ。麻友が目にした事もない、用途すら想像のつかない拷問具さながらの責め具……。
「あはっ……」
それを目の前に晒されながら、愛梨は笑う。期待からか、興奮からか、ゾクゾクと身を震わせながら。
「……っ!」
麻友は唇を噛み締める。
寂しかった。愛梨がすっかり遠い所に行ってしまった事。その道はもう自分とは交わらないであろう事。それが分かったからだ。
しかし、同時に彼女は理解していた。
これこそが、眞喜志 愛梨の道。他の誰とも違う彼女が、自らが何者かを模索した末にようやく辿り着いた、探求の果てなのだと。
「…………お幸せに、愛梨さま…………。」
麻友は静かにそう呟く。
煌びやかなライトの中、他者と混ざり合い、至福の笑みを浮かべる愛梨を見つめながら。
終
前編はこちら
中編はこちら
アブノーマル愛好会によるクリトリス開発は、毎週末の恒例となった。
2週目は、アサミ・ミカ・愛梨の同期3人が横並びで這う格好を取らされ、手袋をつけた手で延々と愛撫を受けた。アナルをNGとしているミカは陰核と膣、膣をNGとしているアサミは陰核とアナル、NG指定をしていない愛梨は三穴全てを、念入りにほぐされる。
「う、くっ……! くう、うっ! んはっ、くうっ……!!」
愛梨達3人は、誰一人として声を殺せなかった。
ローションに塗れたディスポーザブル手袋の感触は独特だ。ぬめりと吸い付きを兼ね備えたそれで、じっくりと性感帯を愛撫されれば、嫌でも気分が昂ってしまう。這い蹲ったまま尻だけを掲げるポーズも屈辱的だ。同じポーズの同期が隣にいるせいで、自分の惨めな姿を客観視させられるのも意地が悪い。
クチュクチュという音と嘲笑に晒されたまま、3人は歯を食いしばって耐えた。アサミが音を上げ、ミカがついに折れた後も、愛梨だけは耐え続けた。実に4時間。その間に愛梨が達した回数は何百に上ることだろう。ギャラリーの多くが飽きて去ったステージで、愛好会のメンバーは雫の垂れる手袋を外しながら、愛梨の我慢強さにほくそ笑む。
3週目からは、愛梨の尿道が愛好会の標的となった。砕石位で身体を固定した上で、ゼリーを塗った尿道へカテーテルを送り込む。
「流石にまだ硬いですねぇ」
「未開発の証ですよ。時間はいくらでもあることですし、じっくりと拡げていきましょう」
そんな会話を交わしながら、少しずつチューブを送り込んでいく。
「っ!!」
普通なら悲鳴が上がる未知の痛みを、愛梨は眉ひとつ動かさずに堪えてみせる。男達はその強情ぶりを愉しみつつ、カテーテルの先に注射器を取り付けた。
「シリンダーの中身は真水です。今は当然透き通っています」
ギャラリーに向けて解説がなされ、浣腸器のピストンが押し込まれていく。
「くっ……!」
尿道に液体が逆流する違和感は強い。流石の愛梨もやや頬が強張ってしまう。しかし本当に厄介なのは、シリンダーの中身が注がれきった後だ。
「では、吸い上げていきます」
その言葉の後、ピストンが引き戻される。シリンダーの中に液体が戻っていく。愛梨の膀胱の中に入っていた液体が。
「おっ、半透明になってんぜ!?」
「確かにちょっと濁ってんな!」
食い入るように覗き込むギャラリーは、液体の僅かな変化を見逃さない。意地悪く声を張り上げ、愛梨の表情を歪ませる。
2回、3回──ピストンが往復するたびに、シリンダーの中身はより顕著に変わっていった。
「最初は気のせいかな?ってぐらいだったけど、だんだん露骨に黄色くなってきたな」
「量も増えてるしな。最初50ccの線ピッタリだったのが、今は60のライン超えてるぜ?」
至近距離から口々に指摘され、愛梨の顔はますます歪む。しかしその一方、彼女はいつものように興奮してもいた。
そんな彼女をこの週もっとも追い詰めたのは、終盤のレズプレイだろう。『尿道の拡張状態を維持する』という名目でカテーテルを挿入したまま、ペニスバンドを着けた同性から犯される……そういう趣味の悪い見世物だ。
「ほらぁ、どんな気分? オシッコ垂らしながらケツ犯されるのはさァ!」
セーラー服を着た犯し役は、激しく腰を打ち付けながら愛梨に問いかける。
「う、くっ……! くう、う、うっ……!!」
愛梨は壁に手をついたまま、終始歯を食いしばっていた。
この夜一度も使われていないアナルを、硬いペニスバンドでこじ開けられれる痛さ。カテーテルを挿れられた尿道の痛さ。その二つの痛みが身を苛む。
痛むのは心もだ。
突かれる度に揺れるカテーテルの先からは、ほんのりと色づいた液が飛び散っていく。繰り返し真水を入れられた影響か、尿道から滴る雫はいつまでも尽きる様子がない。
「どんだけ出んだよションベン!」
「細いチンポでトコロテンしてるみたいねぇ!」
「ねぇ豚、後であの床舐めなさいよ。って、なに嬉しそうな顔してんの? やっぱりヤメ。あんなのの体液を舐めたら、どんな病気になるかわかんないわ」
ギャラリーからの言葉責めも容赦がない。
そうした惨めすぎる状況で、それでも愛梨は、やはり昂ってしまう。
「く、ああっ、あっ、ああ……あぅうあっ、あああっ……!!」
喘ぎは泣くような声に変わり、肛門の痛みは蕩けるような熱さにすり替わり、尿道のジンジンという疼きさえ快く思えてしまう。
深く落とした腰の間から、ポタポタと愛液が滴りはじめた。すぐにギャラリーに知れ、悪意ある謗りを受けると分かっていながらも、その分泌を止めることなどできなかった。
尿道をカテーテルで寛げた後は、尿道ブジーでさらに拡張される。最初は綿棒サイズのブジ―を馴染ませ、徐々にサイズをアップしていく。
「今度は、尿道と膣内を同時に刺激していきます」
小指サイズの柔らかなブジ―を深く挿入され、その根元を指で弾きながら、同時に膣内を指で弄られる……その快感は尋常ではない。
(な、なにこれ……気持ちよすぎるっ……!!)
尿道のむず痒い快感、膣の明白な快感。それが混ざり合って愛梨を昂らせる。
「……っ!!」
膣に指を挿入されてから僅かに一分後、愛梨は仰け反ったまま痙攣しはじめた。浅くではあるが絶頂に至ったのだ。
「膣の中が、ヒクヒクと動いています」
マイクを通して淡々と実況され、四方八方から蔑みを含む笑いが起きる。その屈辱的な状況もまた、愛梨の興奮を後押しする。本格的な絶頂までに時間は掛からない。
「はっ、はっ、はっ! ぃ、いく、いく……っ!!」
愛梨は再び仰け反り、痙攣する。息はまったく整わない。想像より遥かに深く絶頂しているのが自覚できた。
そんな愛梨を前に、膣からゆっくりと引き抜かれた指が、ブジ―の端を掴む。瞬間、蕩けていた愛梨の顔が強張った。挿入よりもむしろ抜かれる時の方が恐怖だ。
「は、はーっ、はーっ、はーっ……!!」
掴まれたブジ―の端を凝視する愛梨。その呼吸は急激に速まっていく。
「あっはははっ! アイツ、ビビってるよ!」
「ま、分かんなくはないけどねー。アナルでも尿道でも、太いの入れたら出す時が怖いんだよ。コレ抜かれたらどうにかなっちゃうーって感じしてさ」
「にしても、あのツラは傑作だな! 抜かれた瞬間イッたらもっと面白いのによ!」
野次と嘲笑の中、ブジーが引き抜かれはじめた。
「ぃひっ! ふ、ふっ、ふっ、ふっ……!!」
歯を食いしばり、相手を睨みつける愛梨だが、呼吸はいよいよ乱れていく。僅か数センチ引き出される行為が長く思え、いざ解放の瞬間を迎えれば、大量浣腸の時以来の甘美が身を包む。
「ぁあああああっ!!!!!」
仰け反ったままブルブルと痙攣し、喜悦の叫びを響かせる。開かされた両脚は筋張り、その間からはびちゃっと水音がする。失禁だ。尿を漏らしたというより、愛液が塊となって噴きだしたような。
嘲笑が起きる。尿道の粘膜さながらに脆くなった愛梨の心を、その悪意がザクザクと切り刻む。しかしそれ以上に愛梨には、白衣の男達の挙動が気になって仕方ない。濡れ光るブジーがトレイに置かれ、それよりワンサイズ大きなブジーが取り上げられる、その挙動が。
俄かマニアによる不慣れな手つきでの尿道開発も、十二分に愛梨を追い詰める。しかし、その道の『通』は更に大胆な責めを行った。
「尿道に負荷かけとる時は、ココを叩いてやるとよろしいんですわ。腎臓と、あと子宮ですわな」
「あっ、あ! あうぁ……あ、あはああっ!!」
尿道と膣をバルーンで拡張されたまま、下腹部を指先でトントンと叩かれる。それだけで愛梨の全身に痺れが走った。
左右の腎臓を押さえられれば腰が浮く。子宮の真上を三本指で叩かれれば、もどかしくも強烈な刺激から身体が逃げようとする。
「この快感でグングン膣と尿道が開くようになるんです。尿道が開かん理由は恐怖心やら抵抗感やけど、コレやるともう色んな場所が気持ちようて無茶苦茶やから、そういうのがバカになるんやね」
男の言葉通り、愛梨はこのプレイで劇的に開発されてしまう。
「お゛っ、おお゛っ、お゛っ、お゛っ……!!」
「ははははっ! なかなか興味深い声が出ているな!」
「ああ。しかも顔見ろよ、ひょっとこみてぇなツラしてんぜ」
「子宮でイってるんだろうねー、あんなトントンされるだけでさ!」
愛梨の惨めな姿に場は盛り上がり、口笛や謗りの言葉が絶え間なく飛び交う。そしてその盛り上がりは、ギャラリーをただの傍観者に留まらせない。彼らは拘束台の背を倒し、愛梨に仰臥の取らせて口を使いはじめた。愛梨にとっては最悪の展開だ。
「おぶっ!? うぶふっ、ごふっ!! お、ぉおオッ……おおオオッ!!」
下半身の責めで息が上がっていくところに、膨らみきった逸物を咥えさせられては堪らない。
口内へ突っ込まれてすぐに噎せ、鼻水が噴きだした。
奥まで挿入されれば、子宮絶頂の声を増幅させたようなえずきが漏れた。
喉奥の輪にエラの張った亀頭を出し入れされれば、えずき汁が空気と混じり合い、カコカコと音が立つ。唾液やえずき汁は次々にあふれ出し、唇を越えて耳の穴や髪の生え際へと流れ落ちていく。
愛梨の身体は、跳ねた。拘束具を軋ませながら激しく捩られた。その反応がますますサディストの心を煽り、責めは陰湿さを増していく。根元まで咥え込ませたまま、喉の膨らみを指でなぞったり。ピアスのついている乳首を弄んだり。子宮を丹念に圧迫しつつ、膣と膀胱のバルーンをさらに膨らませたり……。
(こ、こいつら、寄って集って…………!!)
愛梨は憤慨しつつも、絶頂を繰り返すしかない。膀胱・膣・子宮・喉奥・乳頭……その刺激一つ一つが無視できないほど強く、互いに強固なシナプスを形成しながら全身を甘く痺れさせる。
「ほぉおっ、んおおオオオッ!!!」
両乳首のピアスを引き絞られ、尿道のバルーンを揺さぶられながら子宮を押し込まれれば、握りこぶしが入りそうなほど腰が浮いた。太腿が大地震の最中のように震えて、恐ろしいほどだった。
「おごぉっ、おも゛おおおおっ!! おッ、もァおおォーーッッ!!!」
くぐもった悲鳴を上げながら、愛梨は痙攣しつづける。痙攣は翌朝にプレイが終了するまで止まらなかった。身体の主が何度か気を失った、その間にさえ。
※
私生活で尿道拡張を強いられはじめたのも、この頃からだ。
親指サイズの責め具を尿道へ埋め込まれたまま、貞操帯で固定される。愛梨はその状態で女子大生としての生活を送らなければならなかった。
責め具は筒状であり、用を足すには支障がない。とはいえ、尿道を拡張されたままでの生活は不自然そのものだ。人に振り返られながら颯爽とキャンパスを歩いている間も、真面目に講義を受けている間も、尿道には常に違和感があった。そして本来なら不快でしかないはずのその状況が、愛梨には刺激的で堪らない。
「あ、いくっ……!」
ふとした瞬間に絶頂を覚え、ふらふらと壁に寄りかかることが何度もあった。トイレへ駆け込んで自慰に耽ることもあれば、人がいないパソコンルームで自慰に耽ってしまうこともあった。
欲求不満が収まらず、数ヶ月顔を見せていなかったアニメ研究会の部室を訪ねたこともある。
「う、うおおおおっ!! 愛梨ちゃん!!!」
「あ、会いたかったよ、愛梨たん!!!」
部員達は一斉に立ち上がって目を丸くした。
愛梨が机に腰掛けると、組んだ脚の中……ショーツに視線が集中する。その視線を受けて脚を開けば、男達は膨らんだ股間を抑えながら前屈みに足を閉じる。
「アンタ達……あれだけさせてあげたのに、相変わらず童貞臭いわねー。考えてることが顔に出てるわよ。会いたかったじゃなくて、ヤリたかったの間違いでしょ?」
愛梨はクスクスと笑いながら、獣じみた欲望に懐かしい昂ぶりを覚えていた。
「いいわよ、久しぶりに愉しみましょ」
愛梨が上着をたくし上げると、研究会の面々は息を呑んだ。
「え……っ?」
露わになった乳房に圧倒された、というだけではない。乳房の先……左右の乳首が、金のニップルピアスで横向きに貫かれていたからだ。
ショーツが足首から抜き取られれば、性器の状態も露わになった。
慎ましい蕾のようだった菊輪が、ふっくらと厚みを増している。
温泉旅館での乱交でも一本線を維持していた陰唇が、見事に捩れ、乱れている。
その上で尿道にさえ、親指大の器具がはめ込まれているのだ。
しばらく姿を見せなかった同好会のアイドルが、どれほど苛烈なプレイを経験してきたのかを物語る変化だ。
それでも部員達は愛梨との行為を喜び、その身を抱いた。濃密にキスを交わし、乳房を揉みしだき、美脚を掴み上げて欲望を叩きつけた。
「ああああ愛梨たんすごい! ヌルヌルのおまんこが、すっごい締まって……! 良いよお、前より良いよぉおおおっ!!」
「はあっ、はあっ!! ああああ気持ちいいっ!! 気持ちいいぃっ!!」
絶叫する部員と同じく、愛梨もまた欲望を剥き出しにする。脳が白むほどの快感と共に、膣と尿道が自発的にほぐれていくのを感じながら。
※
週末が来るたびに、マニア達は愛梨の尿道を弄ぶ。
6週目、倶楽部で貞操帯を外された愛梨は、口を開いた尿道口と肥大化したクリトリスを散々に嘲笑われた。
「おいおい、可愛がってやる前からいきなりデカクリじゃねーか!」
「尿道拡げられて興奮したのか? この変態が!」
尿道とクリトリスの関係は深い。陰核脚が尿道のすぐ傍を通っているため、尿道の圧迫によりクリトリスが勃起するのはおかしなことではない。倶楽部の人間はそうと知りながら愛梨を詰る。愛梨の悔しげな顔を見たいがためにだ。
会員達は、さらに愛梨を吊り下げ、メタルブジーで尿道を責めつつ陰核を愛撫する。
「ひひひっ、ますますクリが硬くなってきやがった」
「太腿がピクピクしてるぜ。小便の穴ァほじられんのが、そんなに気持ちいいのかよ?」
揶揄を織り交ぜながら、丹念に尿道をクリトリスを責め立てる。勿論、それ以外の場所も遊ばせてはおかない。乳房を揉みしだき、腋を舐め、太腿を撫でさする。肛門へ指をねじ込む者もいた。
その羞恥と快感に愛梨は身悶え、数えきれないほど絶頂する。
「ああぁ、うあぁ……あうっ! …………はぁ、はぁ……んお……ぉっ! お、おぉぉお……っ!!」
数分間のつま先立ちを経て、足の裏を床につけたまま痙攣しはじめた頃、愛梨の喘ぎ声が変わりはじめた。
「うはっ! 出た出た、この声!」
「いつ聞いても女捨てた声だよねー。ドーブツみたい」
すかさず陰口を叩かれるが、呻く声は止められない。拭えない口からダラダラと涎が垂れ、下腹までを塗れ光らせていく。
そうした責めを2時間あまりも続けられた末、拘束を解かれた愛梨は崩れ落ちた。腰が抜けたのだ。だがDUNGHILLは、そこでプレイを終わらせるような甘い場所ではない。
会員達はふらつく愛梨を椅子に乗せ、屈辱的な姿勢で拘束する。後頭部で手を組み、頭の横に足首が来る形だ。
「くっ……!!」
恥部を突き出す格好に顔を歪める愛梨だが、その表情はすぐに変わった。白衣を着た男達が手にした道具を認識し、顔から血の気が引いていく。
電動式ドリルの先端に、細いアタッチメントを取り付けた責め具だ。アタッチメントの表面はびっしりとイボ状の突起で覆われている。それが回転しながら尿道へ入り込むのを想像しただけで、愛梨の背には冷たい汗が伝った。
しかし、弱音は吐けない。決して赦しを乞わず、哀願をせず、プロレスラーのように全ての責めを受け切ってみせる──そうルールを定めた以上は。
騒々しく回転するドリルの先が、尿道へと入り込む。複雑なイボ状の突起が柔な粘膜を掻き回す。
「あはううっ!!」
長くは耐えられない……愛梨はそう確信した。覚悟していたほど痛みはない。しかし、想像以上に快感が強い。
一週間の尿道拡張と直前の責めで、愛梨の陰核脚はたっぷりと快感を吸って太さを増している。そこをドリルで刺激されるのだ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!!」
愛梨の余裕は数秒で消し飛んだ。目を見開いてドリルの掘削部を凝視したまま、激しく喘ぐ。コンマ秒以下で絶頂し続けているため、『イク』という言葉を発する余裕さえない。
顔の横で脚が暴れているのがわかった。絶頂が凄まじいだけに足指の動きも激しく、親指と中指が別々の方向へ逃げようとするせいで、脹脛が肉離れを起こしかけている。しかしそれすらも意識の外になるほど、尿道が『熱い』。その熱さは薄皮を通り抜けて陰核脚にも染み渡っていく。太く根を張った陰核脚に電極が貼りつき、内から感電させられているようだ。これ以上はないと思えるほど勃起していた陰核亀頭が、さらに痛いほど隆起していく。先走りの汁をどぷどぷと吐き出す男の鈴口……そのイメージが脳から離れない。
あふれていく。あふれ出していく。経験した事のない『熱さ』が。
「お、おほおおお゛っ!! ん、んお゛ッ、んおおおお゛っ!!!」
愛梨は天を仰ぎ、獣の声を上げた。その無様さに、すかさずギャラリーから嘲笑が浴びせられる。しかしその顔色は、嘲りよりも驚きの色が濃い。
椅子を見下ろす角度からは、愛梨の反応の全てが見えた。
筋肉を雄々しく隆起させ、拘束帯を引きちぎらんばかりに暴れる脚。
同じく肉の盛り上げった上腕と、深く溝の刻まれた腋。
ドリルが回転する勢いで四方に飛び散る透明な雫。
その尋常ならざる力みぶりを見れば、獣の声を上げるのも当然と思えてしまう。
「すげぇな……」
ドリルが一旦止められ、ぐっぱりと開いた尿道口から引き抜かれた瞬間、誰ともなくその言葉を吐いた。
汗だくの愛梨の身体からは視認できるレベルで湯気が立ち上り、秘裂と肛門は意思を持つかのように開閉を繰り返している。
猛烈な汗と愛液の匂いに、鼻をつくアンモニア臭が混じっていた。割れ目から陰唇横を通り、椅子の下に滴り落ちていく薄黄色の液体のせいだ。
何より衝撃的なのが愛梨の顔だった。並外れて気が強い愛梨は、責めでどれほど悶え狂っても、小休止となれば小生意気なほどに強い眼を取り戻したものだ。しかし今はそれがない。湯上りのようなぼんやりとした表情のまま、涎と鼻水を垂らし、どこでもない空間を見上げている。
「あれ、意識あんのかな……?」
「どーだろ。おまんこはパクパクしっぱなしだけどね。本気汁まみれでクサそー!」
乱れた愛梨の肉体が、その表情が、マニア達の加虐心をくすぐった。尿道をドリルで責める合間合間に、別の悪戯が挟まれる。
一度目の休止では、女性陣主導で膣にバイブが使われた。
「ほーら。濡れ濡れのクサマンにせっかく蓋したげてんだから、これ以上マン汁出すのやめなよー?」
「おっ、ほおっ……ぃ、いく、いくふうっ……!!」
真上から突き下ろすバイブ責めが、愛梨にうわ言のような嬌声を上げさせた。
二度目の休止では、妖しく喘ぐ菊輪に魅入られた1人が、辛抱堪らずという様子でアナルセックスを敢行した。
「……っ、……っ!!」
すでに息も絶え絶えの愛梨からは、聞き取れる喘ぎは上がらない。しかしVの字を描く脚の痙攣が、彼女の得ている快感を如実に物語る。
「くあっ! 3週間ぶりのこいつのクソ穴、ヤバすぎる! ものすげぇ締まりだ……!!」
犯す男はものの数分で射精に至った。心地よさそうに息を吐き、どくどくとかなりの量を愛梨の直腸へと流し込む。彼は急くあまりノースキンで行為に及んだため、逸物が引き抜かれた肛門からは白濁がとろりと伝い落ちた。そして、それが悲劇を生む。3度目のドリル責めで、愛梨は尿道の刺激に悶えながら、ブリブリと音を立てて白濁を排泄する羽目になったのだ。自然に起きた嘲笑はホールを揺らすほどであり、愛梨に悔し涙を流させる。
そしてもはや周知の事実だが、その恥辱こそが愛梨の感度を研ぎ澄ますのだ。
「おーーーーっ!! お゛ーーーーっ!!!」
何度も天を仰ぎ、痙攣する愛梨。その眼はほとんど白目を剥いており、絶え間ない絶頂で意識を失っては覚醒していることが伺えた。
そこへ来て、3度目の休止で電気マッサージ器が用いられた時、愛梨は哀れなほど悶え狂う。
「イクっ、イクイクイクイク……あああはああああああっ!!」
涙を流し、鼻水を垂らして激しく絶頂しつづける。暴れる力はいつになく強く、ついには拘束帯の金具を破壊し、仰け反りながら潮噴きに至る。
「コイツ、自分からマンコ押し付けてね?」
「どーだろ。逃げ回ってるようにも見えるけど、コイツ頭おかしいからねー。欲しがってんのかも」
同性は残酷だ。愛梨の狂乱ぶりに男達がたじろぐ中、女性陣は愉快そうに口を歪めながらマッサージ器を押し当て続ける。愛梨が本格的に気を失い、全身を痙攣したまま動かなくなるまで。
こうした徹底的な尿道開発は、愛梨の肉体を不可逆なほどに変化させた。
「あ、ああああ駄目っ!!! 出る、出ぢゃうう゛っ!!」
「ははっ、尿道口なぞられただけで嬉ションかよ。終わってんなこいつ」
床に激しく失禁し、本気汁を垂らす愛梨。マニア達はその無様な姿を見下ろし、旨そうに酒を酌み交わす。
※
NGプレイがなく、けして音を上げないフリーの奴隷。そんな愛梨は、倶楽部のマニア達にとって最高の玩具だった。
責めはエスカレートする一方だ。アナル、クリトリス、尿道の開発と並行し、次はポルチオを開発することが決まったが、生易しい開発方法で済むはずもない。
都心に初めて雪が降った日の夜。久しぶりに倶楽部を訪れた客は、扉を開けるなり熱気を感じた。人が多い。かつて久世省吾がキー局のアナウンサーを調教していた頃に匹敵する盛況ぶりだ。
黒山の人だかりは倶楽部の奥へ進むほどに密度を増す。彼らはあるステージを注視しているようだ。そしてちょうどその辺りから、ウーッ、ウーッ、という獣じみた声が響いてもいた。
「……っ!!」
人込みを縫って前列に辿り着いた男は、目の前の光景に息を呑む。そこには、理想的と言ってもいい女体があった。出るべきところは出、くびれるべき所はくびれた、メリハリのあるボディライン。すらりと脚が長い、確実に7頭身以上はあるだろうスタイル。週末の繁華街ではルックスのいい女性を何人も見かけたが、それらと比べてもまた別格だ。
その滅多に見られないスタイルの持ち主は、拷問さながらに拘束されていた。手足がX字を描くように拘束具を嵌められ、どう足掻いても逃げ出せそうにない。
格好は全裸に近いが、股間には床から伸びた器具が取り付けられ、紐ショーツを思わせる拘束帯で固定されていた。乳首に空いたピアスには紐がつけられ、乳房そのものが変形する強度で引き絞られている。天を仰いだ口にもチューブが嵌め込まれ、その先は白い何かが入ったタンクに繋がっているようだ。
タンクがごぼりと音を立てた瞬間、ギャラリーの喧騒が静まった。
ごぼり、ごぼり、と音が続き、スタイルのいい少女から呻きが漏れる。真正面に晒された白い喉が蠢き、そこからしばらくすると、少女の下腹からぐるぐると音が鳴りはじめた。
「ッう、うむううっ……!!」
チューブを咥えさせられた口からくぐもった声が漏れ──その次の瞬間、少女の股間に取り付けられた器具が激しく鳴動しはじめた。
「う、うおっ!! おぉっ、お、もおおお゛っ!!」
少女の声から余裕が消え去った。くくっ、と笑い声がする。声の元を見れば、ギャラリーの一人がスイッチを握りしめていた。そのスイッチで股間の機械を操作しているのだろう。
重低音を響かせる機械に絶えず責められ、少女の下腹は激しく脈打つ。腹筋が浮くほど力を籠めたまま、へこんでは戻る動きを繰り返す。その内部からはぐるぐると獣の唸るような音が響きつづけている。どう見ても異常な状況だ。
その状況が数十秒続いたところで、限界が訪れる。
「もがあああああ゛ーーっ!!!」
壮絶な呻きが上がり、少女の口のチューブから泡が膨らむ。それが弾けると同時に、別の場所から破裂音が響き渡った。ぶちっ、ぶりぃっ、という日常的に聞き覚えのある音と共に、少女の美脚の間を何かが落ちていく。液体より少し粘度のありそうなそれは、足元に置かれた巨大なバケツの中に音を立てる。
排便だ。あのモデル顔負けのスタイルを誇る少女が、この大人数の前で排便を晒しているのだ。そう気づいた時、男は頭をハンマーで殴られたようなショックを受けた。
非現実ぶりに思考が麻痺する。その意識を現実に引き戻したのは、ギャラリーからの鬼の首でも取ったような罵声だった。
「ぎゃはははははっ、まーたひり出しやがった!」
「おー臭ぇ臭ぇ、鼻が曲がりそうだぜ!」
「まだ固形物が出るなんて、どんだけ溜め込んでたワケ? 相変わらずのクソ袋っぷりねぇ!」
数十人が口々に叫んでいるため、全てを聞き取ることはできない。しかし聞き取れた言葉はすべて悪意に満ちていた。
「……あの。これ、どういうプレイなんですか……?」
男が尋ねると、最前列のギャラリーが3人振り返る。その顔は『よくぞ聞いてくれた』と言わんばかりだ。
「お、兄ちゃん今来たのか? 今夜は凄いぜ。芸能人ばりに可愛いティーンのガキの、それこそ穴っつぅ穴を責めてんだ」
1人がそう言って愛梨の写真を見せる。その顔の良さに、男はまたも息を呑んだ。
「信じられるか? こんな、ミスなんちゃらを狙えそうなレベルの上玉がよ、下剤飲まされて延々クソ垂れてんだぜ? しかもただの下剤じゃねぇ。俺らのザーメントッピング付きだ。あのガキに飲ませるのを想像して一週間シコりまくってよ、その瓶の中身をタンクに詰めたんだ。アイツが喉鳴らしてゴクゴク飲んでるのも、今ひり出してんのも多分、そのザーメンだぜ?」
その言葉に、ギャラリーの何人もが笑う。いずれも体型や毛髪に加齢を感じさせる中年男だ。
「……あの、股の機械は?」
「ああ、ありゃ膣開発用のプラグだ。ぶっとい筒型でよ、胴体部分で膣のスポットに磁気刺激を与えるらしいぜ。おまけに先っぽはイソギンチャクみてぇになってて、子宮口に吸い付いたまんま電マ顔負けの強度で揺さぶるんだと」
「へえ。それはまた、キツそうですね……」
「そりゃ地獄だろうぜ。あのガキにゃ同期の奴隷が2人いるんだがよ、そいつらも何日か前にあの責めを受けてんだ。ただしNG指定がない方限定でな。アサミっつーすっとろい人妻は、下剤責め。ミカっつー口の悪ィヤンキー娘は、膣と子宮責め。その片方だけだっつーのに、どっちも泣き喚いて暴れたらしい」
「ああ、ありゃあ見物だったぜ。人妻の方は見ないで許してってわんわん泣いてよ、ヤンキーの方は俺らに見せつけてんのかってぐらい腰浮かせたまんま、アワ噴いて痙攣してやがった。しかもよ、その2人はプレイん時に拘束されてねーんだ。だから自分の耐えやすい姿勢で踏ん張るのも自由だったんだよな。その点、あのガキはキツいぜー。モモンガみてーに手足を広げたあの格好じゃ、踏ん張りが効かねぇ。マンコ逝きする時ゃガニ股が一番耐えやすいし、下痢便ひり出す時にゃ自然と内股になるもんだが、あのガキはどっちもできねぇだろ? 顔上向けて背ェ反らして、なんとか身体に支えを作ろうとしてるらしいが、焼け石に水ってもんだ。見ろよ。もうじきプレイ開始から40分ってとこだが、もう膝が笑ってやがる」
そう言って男は少女の脚を指さした。指摘通り、すらりと長い脚は強張ったまま痙攣を続けている。内腿には次々と愛液が伝い、膝頭から床に滴っていく。少女の直下ともなれば、肩幅以上の液溜まりが出来ていた。
「……凄い、な」
新たにギャラリーに加わった男は、ごくりと唾を呑み込む。あまりの光景に圧倒されはしたが、こういう趣向は嫌いではない。彼もまた、生半可なSMに飽いてこの倶楽部を訪れた物好きなのだから。
またギャラリーが増えた──愛梨はそれを知覚する。肌に刺さる視線を感じ取れる能力が、今は疎ましい。
無様を晒している自覚はあった。しかし、どうすることもできない。手足の拘束具に遊びはなく、真っ直ぐに伸びた手足を少し曲げることすら許されない。
せめて、腰を落とせれば。
せめて、内股で耐えられれば。
もう何度そう思ったことだろう。しかし、そのささやかな夢が叶うことはない。
頭上でごぽりと音が鳴る。タンクの弁が解放され、中身が流れ落ちてくる合図だ。
「……ッ!!」
緊張が走る。口を閉じる術はない。開口具でこじ開かれた口では、精液交じりの下剤を拒めない。鼻の曲がりそうな臭気が吐き気を催す。下剤を飲むというのも億劫だ。しかし窒息を免れるためには、無理矢理にでも飲み下すしかない。
大量の精液はゴム鞠を思わせた。飲み下せば咽頭が痛み、喉が灼け、胃が暴れる。
しかし苦痛の本番は、腸へ達したそれが薬効を発揮してからだ。猛烈な便意に嫌な汗が噴きだす。下腹部がゴロゴロと鳴る。その音は明白な合図だ。今まさに愛梨が便意を催している、という。
「そらよ!」
人垣から声がし、浅黒い手の中でスイッチが押し込まれれば、膣内のプラグが重苦しい羽音を発しはじめる。
『こいつはよぅ、超上級者用だぜ?』
プラグを取り付けられる時、そう前置きをされた。確かにその言葉通りだ。そもそもアルミ缶ほどの太さがあり、数十人との経験を持つ愛梨の膣をさえ限界まで押し拡げる。ペニスにおける肉茎部分は、膣襞に密着した状態でパルス刺激を繰り返し、先端部分は子宮口に密着して子宮そのものを揺さぶる勢いで振動する。
それだけではない。器具を拘束するカバーにも別にアタッチメントが取り付けられており、本体とはまた異なるペースでクリトリスと尿道に振動を与えるのだ。
それほどの刺激に晒されては、長くはもたない。まずGスポットと裏Gスポットが、その後に左右のGスポットが戦慄き、四方からプラグに纏わりつく。そうなれば自然と子宮にも力が入り、複雑な先端部の齎す刺激に耐えきれなくなる。
「ウーーーーッ!!!!」
喉を震わせ、途中に絡みついた精液を押し戻しながら、不自由な嬌声を響かせる。
脚の痙攣が酷い。膝を曲げられればどんなにか楽だろうが、それも叶わないので足の親指に力を籠めて耐え凌ぐ。しかし、それもそろそろ限界だ。絶頂の度にそれをするせいで、指の骨が軋みを上げている。しかしなんとか踏ん張らなければ、絶頂の高波に呑まれて気が触れてしまいそうだ。
苦し紛れに背を反らす。手首の拘束具を掴み、まさに藁にも縋る想いで濁流を耐え凌ぐ。手首が痛み、肩が軋もうともしがみつく。流されれば終わりだ。
今度こそは無理かもしれない……毎度そう思うが、なんとか耐えられた。しかしそれは絶頂で狂わないだけの話。便意に耐えられるかは別の話だ。ぐるぐると腹が鳴り、腸から軟便がしたたり落ちていく。口からの下剤摂取と同じく、門を閉じることはできない。ステンレス製の六爪肛門拡張器で、限界まで肛門を押し開かれているため、S状結腸を超えて直腸へ出た内容物はそのままバケツへと滴り落ちていく。生ぬるさと臭気だけを愛梨に知覚させながら。
絶頂しながらの排泄は、ヒトとしての尊厳を著しく毀損する。惨めだという自覚があるだけに、周囲の視線や嘲笑が心の深い部分にまで突き刺さる。心身共に余裕がなくなり、思考は単純化する。
恥ずかしい。気持ちいい。恥ずかしい。気持ちいい……その二つの言葉だけが銀世界のような脳内を巡り、その中で肉体はまた限界を迎える。膣とその周りが戦慄き、子宮の疼きがそのまま排泄されるかの如く、開き切った肛門からブリブリと濁流がひり出されていく。
「ウオーーーーーーーッッッッッ!!!!!」
まさに、獣。獣そのものの声だ。揶揄されるまでもない、愛梨自身が理解している。女を捨てた声だと。
「女の地獄だな、ありゃ」
「ああ。メンタルの弱ぇ女なら、この後死んでもおかしくねぇや」
「アレは大丈夫でしょう。この状況にすら興奮しているんでしょうから」
ギャラリーの会話が耳に入る。入るが、今の愛梨の脳では処理できない。
(い、イってる、またイってる……!!
でも、どこでイってるの? あそこ?子宮?クリ?おしっこの穴?
それとも、まさか…………うんちして、それで…………?
あ、あ、子宮でイってる!普通に子宮でイけてる!!
あ、でも今度はクリ、おしっこの…………ああ、だめ……誤魔化せない。うんちするの、気持ちよすぎる……っ!今は、うんちでイっちゃってる……!!)
答えが出ない。津波のような絶頂の震源地が特定できない。あるいは、その全てが絶頂のトリガーなのか。
「おぐう゛っ!!おぐう゛う゛っ!!いぐう゛っ!!おぐう゛っ!!」
時に明瞭な発音を交えながら、愛梨は絶頂を叫びつづける。湯気の立つような表皮に汗が流れ、愛液が滴り……それよりも熱い身の内が、マグマのように煮立っているのを感じながら。
※
拘束しての恥辱責めは3時間続いた。愛梨にとっては永遠に思えた時間も、傍観者にとっては終了時点で夜の10時。
「まだまだ夜はこれからだぞ」
客達は笑いながら、崩れ落ちた愛梨の脚を開かせる。愛梨の恥じらいの部分は変わり果てていた。膣も肛門も開ききり、男根で満たせるような状態ではない。その現実を前に、会員達の反応は二つに分かれた。困惑する者と、ほくそ笑む者。アブノーマルプレイの経験の差が浮き彫りになった瞬間だ。
「あーあー、ガバガバだなこりゃ。泣くまでハメ潰してやろうと思ったのによ!」
「なーに、だからこそできるプレイってのもあらぁ」
笑みの消えない数名は、愛梨の髪を掴んで引きずり起こし、ガラステーブルに肘をつかせる。そして電気マッサージ器を手に取ると、口を開いた肛門へと先端部を押し当てた。
「え……?」
愛梨が不思議そうに振り返ろうとした、その瞬間。球状の先端部は肛門へとめり込んでいく。
「あがあああああっ!? な、な、あ……っ!?」
愛梨は大口を開けて叫ぶ。無理のあるサイズだ。しかし男の腕力で力任せに押し込まれれば、拡張された穴の奥へ奥へと入り込んでしまう。
「うおおお、すげえ! 電マが丸ごとケツに入ってんぜ!?」
年若い男達が目を丸くする中、直腸奥にまでねじ込まれたマッサージ器のスイッチが入れられる。
「あああっ!!」
愛梨は再び悲鳴を上げた。体表へ押し当てられただけでもズンと来る振動が、腸の内側から響くのだ。狼狽はごく自然な反応だ。
「どうだ、ケツの中からマッサージされる感覚は。気持ちいいだろ?」
「ば、馬鹿、じゃないの……!? こんなの、感じるわけ……!!」
実際、感じるどころではなかった。強引に割り拡げられた肛門の裂けるような痛み、強すぎる振動による吐き気があまりにも強いせいだ。
だが、十秒もすれば状況は変わった。痛みも吐き気も和らぎ、代わりに快感が濃さを増す。それを見透かしたのだろうか、男がマッサージ器の端を持ち上げれば、先端部が薄皮越しに子宮を捉える。
「あっ! あ、あっ……はあっ、あひっ……ひっ!!」
「ははっ、情けねぇ声だな! この変態女も、ケツ穴電マでこねくり回されりゃたまんねぇか!」
情けない声──愛梨にもその自覚はあった。しかし声を張ることなどできない。直腸側からの子宮刺激で、今まさに達しようとしているのだから。
「ぁだめ、いっくッ…………!!」
考える前に声が出た。喘ぎ声を我慢せず、絶頂を正直に申告してしまう生来の悪癖だ。嘲り笑いが起きる中、愛梨は絶頂する。まずは中程度に一度、当然それだけでは済まない。拷問具さながらのプラグで3時間刺激され、数えきれないほど絶頂させられた子宮は、今もなお煮溶けたような状態だ。そこに刺激が加われば、何度も立て続けに達してしまう。
「ひっ、お……おっ! ふっ……ぅ、ぎひっ、お、おおお゛……っ!!」
困惑・羞恥の悲鳴と、純粋な快楽の声が混ざり合う。両脚は自然とつま先立ちになり、ハの字を描いたまま痙攣する。
「はっはっは、小鹿みてぇにブルブル震えやがって。しっかり感じてんじゃねぇか、ええ!?」
男が嘲りながら尻を打ち据えると、その痛みさえも快感に直結し、悲鳴と共に絶頂してしまう。
嘲笑にしっかりと羞恥を示し、それでも絶頂から逃れられない愛梨。男達はその姿をしばし堪能した後に、次の責めに入る。
「ガバガバマンコをいやらしくヒクつかせやがって、誘ってんのか? いいぜ、ならコッチにもくれてやるよオラッ!!」
男は愛梨の尻を叩きながら、雫を滴らせる割れ目に4本指を沈み込ませる。
「ん!」
愛梨が呻いても、指が根元まで入っても挿入をやめず、ついには手首までを膣の中に押し込んでしまう。
「うぐっ……! て、手ぇっ……!?」
「ああ、フィストファックだ。へへへ、しかしすげぇな。手へ直に電マ当てられてるみてぇだ。そら、マンコの壁越しに掴めるぜ?」
男はそう言って手を上向け、マッサージ器の先を握りしめる。
「うぐううっ!!」
歯を食いしばりながら絶頂する愛梨にほくそ笑み、男はさらに膣の中で手を動かし続ける。弱点だと知れている左のGスポットを苛め抜き、亀頭のように膨れた子宮口を撫でまわし、拳を握り込み……。
「ぐうっ、うぐうっ!! あはっ、や……おほっ、ほっ、ほおおおっ……!!」
愛梨の嬌声には様々な色が混じっていた。羞恥、苦悶、そして快感。目を瞑り、歯を食いしばる顔はいかにも苦しげだが、つま先立ちのまま震える下半身はこの上なく心地よさそうだ。
「エッロいガキだぜ、本当によ……!」
尻込みしていたギャラリー達も、熱気に当てられて眼をぎらつかせはじめる。その内の1人は、どこから持ち出したのかバットを掴み、愛梨が突っ伏すガラステーブルを叩いてみせた。
「え……っ!!」
数瞬遅れてその意味を理解した愛梨が、目を見開く。
「今日は、オメーをぶっ壊しちまうかもな?」
男は口元にこそ笑みを湛えているが、目は笑っていない。そしてそれは、愛梨がぐるりと視線を巡らせた先の、どの会員達も同じだった。
そこから愛梨は、数時間に渡って絶叫を繰り返すこととなった。
哀願だけはするものか──その決意を貫くためには、叫んで気を紛らわせるしかない。
熱に煽られたサディスト達は暴力的だ。愛梨を床に押さえつけ、股を開かせた上で性器を虐め抜く。木のバットを捻り込み、中身を愛梨にラッパ飲みさせた後の酒瓶を蹴り入れ、前後の穴に2つの手をねじ込んでシェイクハンドを繰り返し……。
「んぎひぃいっ!! あがっ、あぎゃあああ゛あ゛っ!! はぎゅっ、んぐううう……あがああああああーーーっ!!!」
マイクを使わずとも、悲鳴がわんわんとホールに反響する。よく通る声だ。声帯をうまく生かせば歌姫にもなれるかもしれない。恵まれた肉体だ。しかし、その肉体を今まさに破壊されている。エスカレートしたまま止まらない、イジメさながらの暴虐で。
「…………あーあー、散らかし放題汚し放題。金持ちってのはなんでこう自分勝手なのかね」
舌打ちと共に発されたその言葉で、愛梨は意識を取り戻す。目の前にはタキシードを着た男達がおり、モップを手に床を掃除していた。倶楽部の男性スタッフらしい。
「よう、目ェ覚めたかい。今晩はまた随分と可愛がられてたな」
スタッフは愛梨の身体と床を意味深に見回す。愛梨もその視線を追い、言葉の意味を理解した。床の散らかり方が尋常ではない。使用済みのコンドームや手袋、ティッシュが散乱し、随所に液溜まりができている。見覚えのあるバットやガラス瓶も転がっているが、その半分以上は濡れて色がついていた。
「痛っ……!」
立ち上がろうとした瞬間、愛梨は痛みを覚える。視線を下に向ければ、膣と肛門には嫌がらせのような数のバイブが隙間なく詰め込まれていた。
「あいつら、入れっぱなしで……!!」
愛梨は苛立ちながらバイブを掴み、一つずつ引きずり出す。
「んっ、ふっ……ふんんんっ、んっ…………!!」
一つ抜くたびに、ジンジンと疼くような快感が襲う。掃除しているスタッフ達が密かに笑う。愛梨が睨みつけると目を逸らすが、笑われても仕方がない状況だとは愛梨自身も理解していた。
ふらつく脚で倶楽部を後にし、夜が明け始めている街に辿り着く。道端で吐いているサラリーマンの間を縫うようにして歩を進め、公園近くまでたどり着いたところで、また腹が渋りはじめた。大量に飲まされた下剤の効果か、あるいは精液で腹が緩くなったのか。
「くう、うっ……! うんち止まんないいっ……!!」
渋り腹を抱えて息めば、半固形の物が次々と肛門を通り抜けていく。そしてそのたび、愛梨はゾクリと震えた。快便の感覚だけで昂っているのだ。
「こんなの、おかしいわ……!!」
理解はしているが、高揚が止まらない。胸が高鳴り、秘裂が疼く。その禁忌に逆らえず、愛梨は秘裂を指でなぞる。
「ん、ふっ……!」
刺激はある。だが、あまりにも弱い。こんな刺激では満たされない。
「あ、あああ!!」
指を奥へ奥へと進め、ついには拳そのものを秘裂に収めてしまう。そしてその圧迫感で、愛梨は達した。
「くはぁあっ!! あ、あんあああっ……!!」
大事な部分を拳で虐めながら排泄すれば、恥辱の一夜が蘇り、全身を甘い電流が貫いた。
「はーー……っ、はーー……っ、はーー……っ」
愛液の滴る拳を引き抜き、二穴を拭って個室を出る。その後に洗面所の鏡を覗き込んだ時、愛梨は初めて、自分が笑っていることに気が付いた。
「…………馬鹿じゃないの!」
愛梨は自分を睨みつけ、表情を引き締める。鏡に映る顔は普段通りに整った。それでも激しい鼓動や脚の震えは、少しも収まってはくれなかった。
※
プレイの過激さで知られるDUNGHILLでも、愛梨ほど熱心に責められたM奴隷はいない。そもそも奴隷の質が総じて高いこの倶楽部において、特定の奴隷に客の興味が集中し続ける事態そのものが稀だ。アイドルグループのセンターを張った娘であろうと、キー局の女性アナウンサーであろうと、人垣ができるのは初めの数週に限られる。プレイ内容が奇抜であれば一時的に盛り返すとはいえ、基本的には日を追うごとにギャラリーの数が減り、2、3ヶ月もすれば惚れ込んだ数人を除いて忘れ去られるのが常だ。
しかし、愛梨は違う。類を見ないルックスのせいか、それとも初日に会員達の恨みを買ったせいか。4ヶ月が経ってもなお、ギャラリーは減るどころか増え続け、倶楽部に過去最高益を更新させ続けている。
プレイにはハードさよりも、愛梨をどれだけ辱めるかが重視された。
輪姦前のウォーミングアップと称し、公衆の面前で脂ぎった中年男と濃密なキスをさせ、生臭い唾液を飲ませるプレイもその一環だ。
「う、うぐっ……おえっ!!」
屈辱と臭気に耐えきれなくなった愛梨が眉を顰めるたび、拳を握りしめるたび、会員達はここぞとばかりに嘲笑を浴びせた。露骨に軽んじるその態度が、ますます愛梨を狂わせる。秘部は蕩けてわななき、愛梨自身が呆れるほどの蜜を吐く。
その後に本番である輪姦ショーが始まれば、愛梨は無数の男達から雑に犯されながら、何度となく甘い声を漏らした。
「あはっ、やべ。あははは、違うの出ちゃった!」
「はあっ、はぁっ…………なあ、あっ!? ふ、ふざけないでっ!!」
調子に乗った会員の一人が正常位で犯しながら放尿を始めれば、愛梨は目尻を吊り上げて怒る。しかし、あまりにも屈辱的なその状況の中で、彼女の息は乱れていく。
「あ、あ……い、いや!! いやあ、こんなの…………ッくんんんんっ!!!」
やがて愛梨は、震えるほどの絶頂へと追い込まれた。膣内の尿を撒き散らし、それを嘲笑われながら。
シャワーエリアのガラス戸に取り付けられた極太のディルドーへ、自ら腰を打ち付ける形での『オナニーショー』も、羞恥の度合いは強い。
「んっ、ああ……ああ、はっん……んっ!!」
壁に手をついたまま腰を振る愛梨の声は甘い。ディルドーは女殺しの名で知られた女衒の逸物を象ったものであり、絶妙な位置に埋め込まれた真珠が女の急所を責め苛むのだ。
その姿をドアの外から眺めるギャラリーは、一様に笑みを浮かべていた。ガラス戸もディルドーも透明であるため、真円に開かれたピンクの襞から子宮口までがあまさず見えている。
「スレンダーに見えたが、意外にデカ尻だな。抱き心地の良さそうなカラダしてやがる」
「ひひひっ、マンコの中見てみろよ。もう濡れてきてるぜ?」
「あ、ホントだ。あのイボイボのシリコンチンポ、Lサイズでしょ。普通なら挿れてしばらくは痛くて感じるどころじゃないんだけどねー。マンコだいぶ開発されてんじゃん、あの女」
「おら、もっとペース上げろ! 根性見せやがれ!」
野次と共に命令が飛び、愛梨は腰を揺らすペースを上げた。冷たく硬い異物が膣を抉る。ロボットにでも犯されているようだ。
昂るのは早かった。太さがある上に反りや真珠の位置が絶妙で、腰を動かすたびに膣内の様々なスポットが抉られていく。根元まで呑み込めば、硬い亀頭が容赦なく子宮口を押しつぶしてくるが、それがまた耐え難い。静電気さながらの痺れが脊髄を貫く。機械責めで致命的なまでに開発されてしまったらしい。
「んっ、んはっ!! あ、あがっ、んあ、あ、ああっ……!!」
十回、二十回。膣のスポットを名器に抉られながら絶頂を重ね、愛液が脚を伝っていく。そのうち膝が笑いはじめ、それを嘲笑される悔しさから、膝頭を強く掴んで腰を打ち付ける。ピストンの速度も力強さも増し、ガラス戸の蝶番が軋む。
「あ、あはあ、ああっ…………んああああーっ!!!」
やがて愛梨は、悩ましく呻きながら床に手をつく。
「へへへ、とうとう腰砕けになりやがったか。エロいポーズだなオイ!」
「挿入待ちのポーズだな。つってもマンコはぶっ太いのでミッチリ埋まってるがよ」
「ケツの穴がパクパクしてるぜ、透明なクソでもしてるみてぇだ!」
「よし淫売、そのままキープだ。腰を逃がすんじゃあないぞ!」
命令に従い、深々とディルドーを咥え込んだまま動きを止めれば、全身が震えはじめる。
「あ、あああぁイクっ……!! おっ、おお゛、ほっおおおお゛お゛っ!!」
「ははははっ、出たね本気のヨガリ声!」
「脚もガクガクだ。膣で相当深くイッてんだろうな」
「興味深いですねぇ。この娘、自分で自分を壊しているわけですか!」
「ええ、その全てを我々に観られながらね」
「そら、あと100回だ! ぬるい動きすんじゃねーぞ、ガラス戸でケツが潰れたら1カウントだからな!」
ギャラリーから好奇の声と無慈悲な命令が飛ぶ。奴隷である愛梨はその命令に逆らえない。
「おっ、おっ……はっ、はぁぁ……っ、おおお゛お゛っ……!!」
一度本気の声が出る段階になれば、もはや後戻りはできない。肺が鉛になったように重く、膣内は痙攣しながら甘い電流を撒き散らす。
「ハメ潮スゲェな、腰振るたびにブシャブシャ出てんぜ?」
「ああ。コイツ最近じゃ、輪姦すたびに潮噴いたりションベン漏らすんだよ。つってもこりゃ噴きすぎだな。壊れた蛇口みてーだ」
ギャラリーの言葉が胸に刺さる。彼らの前で浅ましく腰を振り、絶頂するのは屈辱的だ。しかし、だからこそ愛梨は興奮してしまう。
「おおおおっ、おっ……イグ、イグううううおお゛お゛っ!!」
痙攣し、失禁しながら自らを壊す愛梨の姿は、この夜最高の見世物となった。
この時期に行われたイラマチオも、愛梨にとって忘れられない記憶となった。
「すっご。あんなの根元までクチに入るんだー!」
「クチで収まるわけないじゃん。喉の奥まで入ってるんだよ」
「マジ?うえー……」
新顔らしい女性会員が、愛梨を見て目を丸くする。
確かに愛梨の口へ出入りしている怒張は、顎を盛大に開かなければ咥えこめないほどに太く、また愛梨の顔以上に長い。とはいえそのサイズ自体は、愛梨にとってさしたる問題ではないはずだった。その巨根の持ち主……水口は、愛梨が倶楽部を訪れた初日に翻弄した相手なのだ。
ところが、愛梨はひどく苦しげだった。
「おぼっ、ォッ……るおエ゛っ、んむぉえ゛! ごっ、ぶふうっ!!」
涎を垂らしながら激しくえずき、鼻水を噴きだしながら噎せ返る。
「変な感じだな。今日初めて喉奥に突っ込まれたイラマ処女みてぇだ」
「前はノド奥どころか食道まで突っ込んでもヘラヘラ笑ってやがったのにな。すっかり可愛くなっちまって。やっぱ、あの状況のせいかね?」
男達は嘲りながら、愛梨の足元に視線を落とす。
膝立ちになった愛梨の股座には、一人の男が横たわっていた。仁王立ちする水口の脚をくぐるように仰臥したまま、愛梨の脚を掴んで股間を舐め回している。
彼は、名のある令嬢でもある女性会員が自慰用に飼っている『舐めイヌ』だ。女を満たすよう十年以上も躾けられたその舌遣いは、円熟の域に達している。そのテクニックを惜しみなく披露され、愛梨はすでに数十回の絶頂を経験していた。
「おもぉおお゛おう゛っ!!」
唾液塗れの怒張を吐き出すや否や、呼吸を整える間すら惜しんで切に呻く。男の舌から逃れたい一心で、腰が浮き、悩ましくうねる。その動きをギャラリーから散々嘲笑われた挙句、結局逃れきれなかった舌で絶頂させられ、男の顔の上で腰を抜かす。男がにやりと笑う気配がした後、今度は割れ目の中にまで舌が入り込み、再び腰が暴れはじめる。その繰り返しだ。
水口の方も、愛梨に充分な休息など与えない。
「逃げるな。お前の口は今夜、私の『道具』だ」
そう言い放ち、鋭い視線を愉快そうに受け止めながら、開口具の輪へと怒張を送り込んでいく。以前に赤恥を掻かされた恨みがあるため、容赦はない。両手で愛梨の頭を掴んだまま、エラの張った亀頭で喉奥を苛め抜き、根元まで咥え込ませる。
(く、苦しい……! 前みたいに、喉が開かない……!!)
激しく噎せかえり、えずきながら、愛梨は困惑する。倶楽部でのハードプレイで肉体が開発されているにもかかわらず、初日よりも責めに弱くなっている。
その理由はひとつ。この屈辱的な状況だ。『舐めイヌ』に秘裂を蕩かされながら、喉奥まで咥え込まされる……その状況への恥じらいが、喉の開きを悪くしているのだ。
しかし、そう理解したところでどうにもならない。度重なる絶頂で腰が抜け、下半身はかろうじて膝立ちを保てているような状態だ。上半身は水口に頭を掴まれているせいで動かせない。アームバインダーで両手を拘束されているため、手で相手を押しのけることさえ叶わない。
されるがまま、追い込まれていく。
「おうう゛っ、おエエ゛エ゛エ゛ッ!! アグウ゛ッ、ぅえお゛エエあ゛っ!!」
これまで何度も咥え込まされてきたが、その中でも最も酷い声が出ているのが、愛梨自身にも自覚できた。沸き起こる嘲笑が耳障りだが、声を止めることはできない。閉じた喉をこじ開けられるイメージが脳裏に浮かぶ。眠ろうとすればするほど目が冴えてしまうように、耐えようとすればするほど喉が狭まり、怒張の存在を強く感じてしまう。
「ッる゛うふっ、ごはあ゛あ゛っ!!」
とうとう嘔吐が始まった。勢いよく吐瀉物が噴きだし、ペニスを抜き出された後も開口具の穴から糸を引く粘液が垂れていく。
「もう我慢できなくなったのか。薄ら笑いを浮かべていた“あの時”とは大違いだな」
水口は冷ややかにそう告げた。愛梨は咄嗟にその顔を睨み上げるが、目に力を入れたせいで涙が零れた。
「今日は何遍吐いても気を失っても、私がイクまでやめん。覚悟することだ」
水口はそう宣告し、そしてその言葉通りに愛梨を責め抜いた。愛梨が吐き戻せば怒張を抜き出し、気道の確保だけはさせるが、呼吸が整うまでは待たない。吐瀉物とえずき汁を潤滑液として、より苛烈に喉奥を『使う』。愛梨が白目を剥き、鼻からも吐瀉物を噴きだしながら失神しても、なお責めの手を緩めない。
熱意に関しては下の男も負けてはいなかった。『舐めイヌ』として鍛え上げたオレの技を見ろ──そうギャラリーへ訴えるかの如く、ぴちゃぴちゃと音を立てて愛梨の秘部を舐め回す。愛梨が腰を暴れさせても、尻を掴んで離さない。潮を噴いている最中にも、陰唇とその内の粘膜を舐り抜く。
その異様な状況と絶え間ない責めは、愛梨の脳を掻き乱し続けた。明晰な頭脳がぼやけ、回転が鈍っていく。あれほど耳障りだったギャラリーからの嘲笑が遠く思え、喉奥と割れ目の温かさばかりが感じられる。その感覚はさらに狭まり、ついには口内のペニスしか知覚できなくなる。
熱く、腐っているのかと思えるほど臭く、硬い。もうかなりの時間喉を犯しているにもかかわらず、射精をしないので張りが衰えない。逞しい、という言葉が相応しい剛直だ。
(まさかこの後、このペニスで犯されるの……?
今、こんなの突っ込まれたら……突っ込んで、動かされたら……!!)
想像するだけで、愛梨の中にゾクゾクとした感覚が走る。それは背筋を痺れさせ、脳さえもスパークさせる。
「おぶっ、ぉおお……おぶぉおおおう゛っ!!」
余裕を失くした愛梨は、たちまちに決壊した。喉奥に突っ込まれたまま噎せ返り、鼻から泡立つ粘液を垂れ流しながら白目を剥く。割れ目からも潮の飛沫を噴き散らす。
「ぶっはぁああっ!! あっ、あはっ! あはーっ、はーっ…………!!」
頭を解放され、激しく喘ぐ。しかしその間も、愛梨の視線は目の前の怒張に釘付けになっていた。
「はははっ、ガン見じゃねーか!」
「窒息で死にそうなのに、チンポの事しか考えられねぇってか!? ったく、呆れた変態だな!!」
大笑いと共に発せられた罵声が、靄のかかった愛梨の耳に届く。数瞬遅れてその意味を理解すると、秘裂が戦慄いた。
「安心しろ、後でたっぷりと可愛がってやる。そのドロドロに蜜を吐いている花園をな」
その言葉と共に、水口は喉奥陵辱を再開する。酸素を断たれる苦しみの中、それ以上に強く愛梨を包んだのは、喜悦だった。この男に抱かれたがっているのだと、はっきりと理解できた。
「おう゛っ、ぉ゛う゛う゛え゛っ!! えお゛、ェえ゛えお゛う゛お゛え゛っっ!!!」
喜悦を自覚すると喉が開き、食道のさらに奥まで熱い棒が入り込みはじめた。それはより酷いえずきを生み、人垣の輪から割れんばかりの笑いを引き出す。その恥辱で、ますます喉が開き……延々とループする。
愛梨の目尻から涙が伝った。辛さからの涙でないことは愛梨にもわかった。むしろその逆……叱られていた子供が親から赦された時に安堵して流すような、暖かな涙だ。
「見ろよ、泣いてやがるぜ?」
その言葉に愛梨が横を向く。その濡れた瞳に、悪意をぶつけようとしていた観衆を一瞬言葉を呑んだ。
助けを乞うているようでもあり、もっと虐めてと切に願っているようでもある。その眼を見つめたまま、ギャラリーは一人また一人と笑みを深めていく。
「へへ……マジで、なんなんだよお前。倶楽部一の問題児のくせに、エッロい目で媚びやがってよぉ! いいぜ、ここにいる全員で朝まで輪姦してやるよ! 気絶しても引きずり起こして、ガンガン突きまくってやらぁ!!」
「おお、ヤろうぜ! おうバニーの姉ちゃんら、ありったけのゴムとエナドリ持ってこいや!!」
様々な叫び声と共に、熱意が渦巻く。その熱を汗の浮く肌で感じながら、愛梨の中のゾクゾクとした感覚はさらに強まっていく。愛梨はそこで初めて開口具に感謝した。汗と唾液で不快な器具だが、これがあるおかげで口元を見られない。おそらくは笑う形をしているだろう口元を。
※
アサミ、ミカ、そして愛梨……同期の3人組はいずれもハードに責められたが、愛梨に対するプレイの苛烈さは群を抜いていた。膣をNGにしているアサミは肛門のみ、アナルをNGにしているミカは膣のみの開発に留まるが、愛梨はどちらの穴も同時並行で開発されるためだ。
I字バランスの格好で拘束したまま、直腸に浣腸器で薬液を注ぎ込み、そのまま膣を犯す。軸足を抱え込むようにして激しく犯していれば、いずれ限界がきて排便を晒すが、そうなれば愛液まみれの逸物を抜き、そのままアナルを犯し抜く。一般にはハードコアに類するこのプレイも、今や長い一夜の『前菜』に過ぎない。
そして、それを受ける愛梨もまた強情だ。
「ふ、ふん……。このぐらい、何でもないわ……!」
あらゆる体液に塗れ、痙攣しながらもなお強がる奴隷を前に、会員達は息を荒げて更なる責めの構想を語り合う。
「そろそろ、黒人とヤラせますか」
「いいですな。しかし、ただのセックスで涼しい顔をされても癪だ。どうせならアヌスにも……」
「はははっ! 流石はサイトウさん、容赦がないですな。よし、次はそれで行きましょう!」
こうした会話が交わされ、実際に次週にはそのプレイが行われる。何十人というギャラリーが好奇の視線を送る中で。
「あ、あ゛あっ!! あっ、あっ!!!」
愛梨の叫び声が響く。とはいえその声質は重苦しく、ホールに響き渡るほどではない。愛梨の声をくぐもらせる要因は、秘部にねじ込まれている巨根と、肛門にはめ込まれた太い栓だ。
「しっかし、なんつうサイズだよ……。俺もダチん中じゃ一番デケェけど、やっぱ黒人にゃ勝てんわ」
男の会員が、ステージ上のペニスを見て呆れた声を出す。自信を喪失するのも無理はない。ステージで愛梨を犯しているのは、VIP会員の部下だというアフリカ系の黒人だ。そのペニスの全長は27センチに達する。愛梨は今、椅子に腰掛けた彼へ跨るようにして抱かれているが、規格外のペニスはその半分しか性器に収まっていない。
(ほんと、何よこれ……! 大きすぎて、あそこが裂けそう!!)
愛梨もまた、歯を食いしばりながら困惑していた。イラマチオで吐かされた水口の物より、数多の女を骨抜きにしてきた省吾の物より、遥かに凶悪。上司だというVIP会員が『マグナムディック』と自慢するだけのことはある。
そして、愛梨を追い詰める要因はもう一つあった。400ml注入された、塩化マグネシウム溶液だ。
『これはドナン浣腸といってねェ、最強の浣腸なんだよ。昔は重度の便秘患者の治療用に使われたが、あまりにも効果が強烈すぎて患者が嫌がるものだから、使用禁止になったらしい。グリセリン溶液なら小一時間耐えられるようなエネマプレイ中級者でも、これには3分と耐えられないんだ』
白衣の男がそう語った通り、イチジク浣腸などとは訳が違う。注入された瞬間、きつい酒を呷った時のように腸の粘膜がカッと熱くなるのを感じた。そこから僅か数秒で強烈な便意が沸き起こり、二本目の浣腸を受けているその最中にも、意思に反して肛門が盛り上がるほどだった。
『まだ出すんじゃないぞ』
そう挑発を受け、かろうじて耐えはしたが、菊輪は愛梨自身の意思とは無関係に花開き、外へ外へと捲れようとする。
『出したくて堪らないんだろう。安心しなさい、専用の栓がある』
そう言って突き出されたアナルプラグは、大の男が二人掛かりで保持するような代物だった。最も太い部分の直径は10センチを悠に超えているだろう。通常であれば入念に拡張し、フィストファックでも経なければ入り得ないそのサイズを、ドナン浣腸で緩んだ愛梨の肛門は驚くほどあっさりと受け入れた。とはいえ当然、楽にではない。スムーズに入り込んだとはいえ、アナルプラグの巨大さに尻周りの骨が悲鳴を上げる。漬物石でも腹に詰め込まれたような違和感が襲う。そして何より、閉じ込められた便意が脳を直撃する。
「な、なに、これ……うううっ!!」
排泄欲は根源的欲求だ。本来は逆らえないものであり、それを無理に抑え込めば嫌な汗が噴きだす。肛門は狂ったように排泄したがるが、根元の窪んだアナルプラグが引っ掛かって全く出せない。
そうして未知の感覚に狼狽える愛梨の前に、例の黒人が表れたのだ。
『部下のビルだ。お前の今夜のパートナーだぞ、愛情を込めてしゃぶってやりなさい』
そう告げるVIPの男を、愛梨は全力で睨みつけた。しかし結局はその言葉通りに動くしかない。
その後のフェラチオは地獄だった。ビルのペニスはただでさえ大きく、半勃起状態ですら口に収めることはできない。ましてや舌と指の刺激で勃起してくれば、舐め上げるだけでも一苦労する。それを便意に耐えながら行うのだ。
ぐるるるる、と腹が鳴る。直腸の中は煮え立つようだ。
「はあっ、はあっ、はあっ……!!」
愛梨の息はたちまち乱れた。興奮しているのかと揶揄される中、汗が噴きだし、全身が震える。
(うんちしたい、うんちしたい、うんちしたい……っ!!)
思考がそれ一つに染め上げられる。
『そろそろ良いだろう。ゴムを着けてやりなさい』
VIPの声で、愛梨はビルの逸物を改めて見上げ、息を呑む。節くれだった木の根のような、黒人ならではの巨根。当然、コンドームを着けるにも日本人相手とは勝手が違う。向こうが透けて見えるほどゴムを引き延ばさなければ、とても包み込めない。もはや脚にタイツを履かせている気分だ。
(これを、挿れるの……? こんなのが、本当にあたしの中に入るの……!?)
愛梨は何度も自問する。水口の時のような興奮はない。『どうにかなりそうだ』という感覚は同じでも、その意味合いはまるで違った。
その予感は、挿入と同時に確信に変わる。
見世物にされている状況だ。いかに黒人のペニスといえど、愛梨は声を出さずに堪えるつもりでいた。しかし、いざ巨根の先が秘裂を押し開けば、その覚悟は脆くも崩れ去る。
「はぁあああっ!?」
情けない声が出た。情けない顔になった。深く落とした腰が痙攣し、口がパクパクと開閉する。
(黒人相手のセックスが、こんなに凄いなんて……!)
愛梨は驚嘆する。そんな愛梨の胸中を知ってか知らずか、ビルに容赦はなかった。愛梨の太腿と変わらない太さの腕で、尻肉を鷲掴みにし、力任せに上下させる。
「あーーーっ!!」
愛梨はビルの太い首を抱え込み、ソファの座部を足指で噛んだ。もし支えなしに、全体重でビルの巨根を受け入れれば、確実に意識が飛ぶ──本能がそう訴えていた。
「はははっ、しがみついてやがる!」
「ったく、強ぇオスはいいよな。ぶち込むだけであのクソガキを骨抜きにしちまうんだからよ?」
野次が飛ぶが、それでも姿勢を変えられない。未だかつて経験がないほど苛烈なセックス。強烈な便意。その板挟みになるだけでも、脳がパニックを起こすには充分だ。
しかし、それだけではなかった。
(な、なんなの、これ……!! 熱い、熱いっ!!!)
腸の煮え立つような熱さが薄皮を越えて染み入り、子宮までもを熱くする。普通では有り得ないほどの蜜があふれていく。
「んっ、ぐうっ……ぁはあっ、はっ!!」
「うわー、マンコからめっちゃ汁出てる。気持ちいいんだねー!」
「そりゃそうだろ。なんせ筋金入りのビッチだ、黒人のデカチンが美味くてしょうがねぇんだろうぜ!」
狂乱する愛梨を前に、ギャラリーは大いに盛り上がった。黒人を連れてきたVIPの男も上機嫌だ。
「どうだ、ビルのテクは? 中々のテクニシャンだろう?」
勝ち誇ったようなその問いかけは、愛梨の神経に障った。彼女は強い瞬きで目の周りの汗を切り、強く男を睨みつける。
「はあ? デカさ自慢でガンガン突くだけのコイツがテクニシャン? 笑わせないで!」
「ふふふ、そうかね? その割には随分と善がっているようだが」
「く、苦しいから喘いでるだけよ。そんな事もわからないの!?」
極限の状況下で、なお強がってみせる愛梨。それこそが、常に集団のボスとして生きてきた彼女の在りようであり、サディストの心を捉えて離さない要因でもある。
「なるほど、それは失礼した。ビル、このお嬢さんは、もっとハードなファックがしたいそうだ」
VIPの男がそう告げると、ビルはその言葉を待っていたとばかりに笑い、愛梨の尻肉を掴み直した。
「え、何を……っ!?」
暴れる色白の尻を、丸ごと包み込む大きな掌でコントロールし、強引に挿入角を変える。子宮口を突き込むのではなく、その脇の窪みへはめ込むような責めに切り替える。
「あ゛ッ! んおっ、お゛っ!!」
不意を打たれた愛梨は、飾ることができなかった。目を見開いて、快感のままに声を上げてしまった。
「あ゛、あ゛、あ゛お゛っ、ああ゛お゛お゛っ!!!」
さらに突き込まれれば、愛梨は激しく震え、背を仰け反らせる。同時に腹部からは、ぐるぐると凄まじい音がしはじめた。
ビルはその反応を笑い、愛梨の耳元に口を寄せた。
「Open Your Eyes.」
その一言で、愛梨ははっと目を見開く。そして震えながらビルの首を離し、顔を睨みつけた。ビルはその強気ぶりに口元を緩めつつ、掴んだ尻を激しく上下させる。
そうしてしばし責め立てた後、ビルは愛梨を抱いたまま椅子から立ち上がり、ゆっくりとステージの端に向かった。ギャラリーへ見せつけるためにだ。
「あがあっ!! はっ、はっ……あ、あああ゛……っ!!」
愛梨の顔が歪む。椅子で踏ん張る事が出来ず、全体重が挿入部にかかる体勢は圧が強すぎる。その状態で腰を上下されれば、激しい反応をせざるを得ない。そしてそれをギャラリーに至近距離で視られるのだ。
「シーッ、ハッ……! シーッ、ハッ……!」
あまりの苦しさに、愛梨の呼吸が変わる。洋物のビデオでよく耳にする喘ぎ声だ。
(もしかして、外人の女優だからあの喘ぎ方なんじゃなくて……このペニスを入れられたら、自然とこの喘ぎになっちゃうの……!?)
大きくて、苦しい。内臓を丸ごと突き上げられるような感覚は、日本人相手のセックスでは味わえないものだ。
ギャラリーの野次はよく聴こえた。愛梨はその言葉で自分の状態を知った。震え、仰け反り、両脚で空を蹴り。ヒクつく肛門を盛り上げては栓に阻まれ、前後の穴から汁を止め処なく滴らせているようだ。
傷を視認することで痛みが増すように、現状を客観的に伝えられると、愛梨の中の何かがひび割れていく。
「あ、あ゛あああ゛っ!! んおっ、おっ、おっ!!」
愛梨はとうとう目を見開き、舌を突き出す。観衆のざわめきが増した。それほどにインパクトのある表情だった。
「潰せ、ビル。」
「オーケイ、ボス。」
VIPの男が冷徹に命じれば、その部下もまた粛々と応じる。
彼はステージの端で愛梨の尻を掴み、8割ほどまで剛直をねじ込んで愛梨に潮を噴かせ、場を大いに沸かせる。そして、天を仰いだまま痙攣する愛梨を元いたソファに押し込むと、その上へ覆いかぶさった。
「おおっ、『種付けプレス』か!」
「うへぇ。体重乗せてあのデカチン突っ込まれるとか、たまんねーな!」
客が期待を寄せる中、ビルはゆっくりと腰を沈めていく。
「あいッ! く、あっ、いひぃいっ!!」
愛梨は途切れ途切れに呻きを漏らした。アナルプラグのせいで変形した膣が、ビルの巨根の形に作り変えられていく。その遊びのなさは先ほどまでの比ではない。怒張の熱さも、脈動も、しなやかな硬さも、嫌というほど感じてしまう。
丸い亀頭が膣奥まで達しても、なおビルの腰は密着しない。体重を乗せてもなお全ては挿入しきれないらしい。それが苛立たしいのか、ビルは肉臭い息を吐きながらグリグリと膣奥を刺激する。
「ああっ、や、んはぁあ!! お、ぉっき……んああぁぁんん……っ!!」
愛梨が切ない声を漏らし、足指を握り込む。するとビルは、それを待っていたとばかりに腰を遣いはじめた。ソファを軋ませながら、ドロドロに蕩けた膣の内部を攪拌する。その速度は次第次第に増していき、掘削ともいうべきものになっていく。
「んがあァっ!? あ、ちょ、待っ……あ゛ァア゛ああ゛っ!!! しっ、子宮、痙攣して……はう゛っ!! あがァ……おォッ、がッ……ああおお゛ア゛ッッ!!!」
愛梨は苦楽に身悶えた。あまりに強い膣の快感、あまりに強い肛門の便意……その板挟みで全身が暴れる。脚は力み、上半身は腹筋でもするかのように起き上がる。
その反応を目の当たりにしても、ビルは容赦をしない。愛梨の足首を掴んだままひたすらに剛直をねじ込んでいく。実にショー向きの責めだ。見た目の豪快さのみならず、視認性にも配慮している。膣へのピストンも、浣腸を耐える肛門の戦慄きも、すべてがギャラリーに見えるように。
「はははははっ、いやあ凄い! まさに杭打ちだ!」
「あの黒人の、さっきより大きくなってない? もう子供の脚ぐらいあるじゃない。あんなのガンガン突っ込まれたらオマンコが壊れちゃうわ!」
「ドナン堪えんのもそろそろ限界らしいな。あんな太ぇ栓してんのに、クソ汁が垂れっぱなしだぜ?」
会員達は派手なパフォーマンスに湧き上がる。
一方、愛梨は刻一刻と追い詰められていた。ビルの『杭打ち』は容赦がない。膝を使ってしっかりと奥まで剛直をねじ込んでくる。
しかも、猛烈なピストンは同じ動きを反復している訳ではない。ひたすらに子宮口を責めていたかと思えば、不意に角度を変えて子宮口下部の窪み……Aスポットにも嵌め込んでくる。愛梨にはそれがまた堪らなかった。日本人のペニスでは到達しえない深みまで、エラの張った雁首が潜り込んでくる快感──それはポルチオで得る快感とはまた違う種類の悦楽だ。ポルチオ責めに備えている中で不意にその快感が来ると、あっという間に無防備にされてしまう。
「あああ気持ち゛いイ゛っ!! なっ、なにこれ、こんなの知らないっ!! 気持ちいいの、ずっと続いてる……あ、そごっ、ああお゛ッ!! き、気持ちいいのっ、ずっと!! こんなのおかしいっ、おかしいって、あ待……あああああ゛っ!! ダメ、もううんちが……ああ奥ゴリゴリやめてええ゛っ!!! や、それもうっ……あイグイグイグッッッ!!!」
膣で際限なく絶頂へ追い込まれる中、排泄欲も限界を迎えつつあった。マグマのように熱く煮え滾る肛門が、何度も噴火さながらに盛り上がり、太すぎる肛門栓に阻まれて戻っていく。それを幾度も繰り返し、ある瞬間とうとう限界が訪れる。
「あ出るッ、出ちゃう……!! くあ、あ……あがあああ゛あ゛ぁ゛っ!!!」
愛梨らしい、ホールを震わせるような絶叫と共に、太いアナルプラグが勢いよく弾け飛ぶ。そしてそれを待ち望んでいたように、汚液の噴出が始まった。ぶりゅっ、ぶびぃっ、ぶじぃっ……という、美少女から発されているとはとても思えない音が響き渡る。
「oh……!!」
強烈な排泄は、膣にも変化を齎したのか。ビルが顔を綻ばせ、腰をぶるぶると震わせる。射精しているのは誰の目にも明らかだ。
ぶるりと身震いして射精を終えても、ビルは腰を止めない。粘ついた水音を立てながら膣内を突き込み、その度に愛梨の肛門から液が噴きだしていく。
「ひひひひっ、すげぇな。あの重てぇ栓があんなトコまで飛んでったぜ? やっぱドナン限界まで我慢させた後のクソは、勢いがハンパねぇな!!」
「ああ。あとドナンっつったら、出すモン出した後のケツ穴だよな。腸の粘膜が捲れかえって、ぐっぱり開いてよ。ダリアの花とはよく言ったもんだぜ!」
「わー。人の見たの初めてだけど、こんなになってるんだー。すっごいね。あ、あと、皆知ってる? この状態のお尻ってメチャクチャ敏感になってるんだよ。ドナンの熱さが染みてとろとろになったオマンコより、もっと感じるの!」
「へえ、そりゃ面白そうだ。よーし、たっぷりイジメてやるか、このイカレ女のぶっ壊れアナルをよ!」
会員達は花開いた愛梨のアナルを興味津々に覗き込み、嗜虐心の赴くままに責めはじめた。
筆で菊輪を撫で。イボどころか針に近い突起のついた手袋を嵌め、数人掛かりで腸粘膜を弄り回し。蛇腹の太いバイブを抜き差しし……。
「あああっ! や、やめっ、痒……熱いいっ!! っうああああ゛あ゛!!」
ビルに膣を責められながら、過敏なアナルを責められる地獄。愛梨は叫び、身悶える。そしてその過程で、彼女の二穴の性感はまた飛躍的に開発されていく。
「ウウ゛ああ゛ア゛ーーーッ!!! ハァーッ、ハァーッ……あ、ア゛ーッ!!アア゛ーーッ!!」
獣の声が響き渡る。後ろ手に拘束され、ボールギャグを噛まされたまま肛門を犯される愛梨のものだ。
尋常な声ではないが、反応もまた普通ではない。涎と涙を垂らして悶え狂っている。肛門の刺激を嫌がるように腹部が蠢き、脚が暴れる。その果てに逸物が抜けても、腹部はなお痙攣を続け、ついには潮を噴き散らす。
「うへぇ、すげえな……!」
「ああ。ケツでイッてるってレベルじゃねぇぞ。どうなってんだありゃ……?」
異様な声に引き寄せられた野次馬達が、呆れ交じりに笑みを浮かべる。
「これがアナルアクメを極めさせられた奴隷の成れの果てだよ。正確にはアナル経由での子宮イキだがね。アナルからの子宮イキは、ポルチオを直に突かれて絶頂する極感が天国に思えるぐらい、もどかしく粘り気の強い快感らしい」
アナルマニアが愉快そうに語る中、愛梨は再び後孔に挿入され、肥えた白蛇のようにのたうち回る。
酒の回った会員達も、それをただ見ているだけではなかった。
「逃げんじゃねーよ、変態女が! ケツアクメに溺れちまえ!!」
逃げる愛梨を押さえ込み、乳房を揉みしだく男もいる。
「ここがイイんだろ? 外からも刺激したげるよ、ほーら!!」
痙攣する愛梨の腹に乗り、そのまま踊ってみせる女もいる。
そしてそうした横槍が、ますます愛梨を悶え狂わせた。
「へーっ……、へーっ……、へーっ……、へーっ…………!!」
愛梨に、もはや美少女の面影はない。
虚空を見つめ、舌を突き出して喘ぐ顔。乱れたまま肩に絡みつく黒髪。這う格好のままなお痙攣する肉体。そのいずれもが危険な匂いを発している。
「これはこれは。筋金入りのマニアに可愛がられて、だいぶ本性が解放されてきたようですね」
穏やかな表情でそう告げるのは、愛梨に倶楽部を紹介したVIPの男だ。
「ほ、本性……? こ、これが、あたしの……?」
愛梨が汗みずくの顔で問い返すと、男は静かに頷いた。
「そう、それが君の本性……本能がそう在りたいと願った姿です。この倶楽部で調教を受けた奴隷は、例外なくそれに目覚めます。『あの2人』のようにね」
そう言ってVIPの男は、少し離れたステージを指し示す。愛梨が視線を向けると、そこには見覚えのある2人がいた。愛梨と同じ日に奴隷となった、アサミとミカだ。
彼女達も愛梨と同じく、複数人の会員に囲まれて調教を受けていた。それ自体は見慣れた光景だ。しかし……愛梨は目を見張る。
「え……っ?」
目を疑った。見慣れていればこそ、その行為の異常性にはすぐに気がついた。
「あああアナタ、ごめんなさいっ…………!!」
若く逞しい男に膣を犯されながら、歓喜の涙を流すアサミ。
「んっ、あはあっ!! んあああ、はああああッ!!」
醜悪な見た目の中年男達に二穴を輪姦されながら、陶然とした表情を浮かべるミカ。
どちらもNGとしていた筈のプレイだ。主婦であるアサミは夫への罪悪感から膣使用を拒み、不良娘であるミカは『ハゲ・デブ・ブサイク』の相手とアナルプレイを禁止としていた。しかしその2人は今、禁じていたプレイで涙するほど感じているようだ。
「驚きましたか? しかし、あの変化はごく自然なことです。何かを嫌うというのは、それを強く意識している証。奴隷がNGとするプレイは、往々にしてそれこそが真の性癖であることが多いのです。あの2人もそうでした。アサミさんは後ろの穴を責められながらいつも膣を濡らしていましたし、ミカさんは醜悪な男に犯される他の奴隷をいつも目で追っていました。それは彼女達自身もよく自覚していたことでしょう。となれば後は、その本能を受け入れるように、少しその背を押してあげればいい」
VIPの男はそう言って片手を上げる。すると、倶楽部のスタッフがホールのモニターにある映像を流しはじめた。
大画面にまず映し出されたのは、アサミだ。彼女は前後の穴を器具で拡げられたまま、壁に手をつく格好を取らされていた。
『くう、ううううっ……!!』
アサミは顔を歪めて呻く。貞淑な彼女のことだ、恥辱も耐え難いのだろうが、どうやらそれだけではない。
『どうだ、痒くて堪らんだろう。いい加減言ってみろ、掻いてくださいってよ』
アサミを囲むギャラリーが意地の悪い笑みで告げる。どうやら彼女の前後の穴には、痒みを齎す何かが塗りこめられているらしい。その影響か、穴の中からは大量の粘液があふれ出し、肉感的な脚を伝い落ちていた。
『い、嫌です……! 前は、前だけは、あの人の……!!』
アサミは首を振って誘いを拒む。気弱な彼女だが、夫を想う気持ちは本物らしい。
しかし、人の忍耐力には限界がある。
『…………お、お願いします、イカせてください…………!!』
場面が切り替わり、丸裸のまま涙ながらに土下座するアサミの姿が映る。床に点々と広がる雫と、赤く腫れたまま痙攣する秘部を見れば、彼女がどれだけ耐えたのかは一目でわかった。その果てに、彼女は折れたのだ。
『ひひひっ。マンコ濡らしながら全裸土下座でチン媚びか。大した人妻だぜ』
『誰とも知らない相手との浮気セックスか。旦那はどう思うだろうな?』
会員達からの言葉に、アサミは表情を強張らせる。しかし床に押し倒され、満を持して膣に挿入された後は、顔の強張りは消え去ってしまう。
『あはああああっ!!!』
開いた口はうっすらと笑みを形作り、嬌声は悦びに満ちている。男達の言う『浮気セックス』で、心の底から満たされたと言わんばかりに。
そこで画面が切り替わり、次にミカの姿が映し出される。彼女は椅子に拘束され、まさに彼女好みの見目麗しい男達から愛撫を受けていた。
『あ、ああ……あっ、あっ……』
乳房とクリトリス、膣を入念に愛撫する手つきは見るからに巧みであり、実際ミカも甘い声を漏らしていた。しかし、その甘い時間は長く続かない。
『止めろ』
ミカの正面に鎮座する男がそう一声発すると、ミカへの愛撫が止まる。
『あっ!? く、クソォッ……! また、かよっ…………!!』
ミカは口惜しそうに正面の男を睨み据える。その口ぶりからは、同じような焦らしが何度も行われていることが伺えた。絶頂しそうになるたび愛撫を止められる。正面の男──ミカの嫌う条件を兼ね備えた、醜悪なVIP会員の前で音を上げるまで。
ミカは気の強い娘だ。相当な時間その責め苦に耐えたことだろう。場面が切り替わった後の、失禁でもしたかのような液溜まりが、それを裏付けていた。しかし、その意地もとうとう限界を迎える。
『わ、わかった……アンタと、するよ…………』
ミカは俯いたまま、掠れ声でそう告げる。
『もっと大きい声で、ハッキリ言え!』
愛撫していた男が前髪を掴み上げると、ミカの顔がカメラに写り込む。涙と鼻水で見るも無惨に変わり果てた顔が。
『お、お願いします! あ、アタシを、抱いてくださいっ!!』
新たに涙を零しながら、ミカは哀願する。彼女が嫌う条件を兼ね備えた男を相手に。
NGとしていたはずのプレイに、嬉々として興じるアサミとミカ。愛梨はその姿から目を離せなかった。奴隷がNGとするプレイは、往々にしてそれこそが真の性癖であることが多い──VIPの男の言葉が真実味を増す。
「これで分かったでしょう。あれこそが、彼女達の真の望みなのです」
VIPの男はそこで言葉を切り、愛梨に視線を戻した。
「あのようにNGプレイがハッキリしていれば、潜在的な望みも探りやすい。問題はNG無しと宣言した君です。NGプレイが無いという人間は、自分の性癖が分かっていない。あるいは、そこから目を逸らそうとしている。……コハル。君になら、彼女の本質がわかりますね?」
男はそう言って傍らの少女に目を向けた。和服を纏い、無表情に立ち尽くしている不気味な少女だ。彼女は真っ直ぐに愛梨を見つめたまま、人形のような口を開く。
「わかる。あの子は私と同じ。ハードなプレイそのものにではなく、自分の価値が損なわれている事に快感を覚える、破滅願望型のマゾヒスト」
無機質な喋り方だ。わざとらしくそうしていた白衣の男達と違い、本当に感情を喪失しているように思える響き。その声で紡がれる言葉に、誰もが聞き入っていた。普段であればいの一番に反論するだろう愛梨でさえも。
「その通りです。高い自己評価やナルシシズムの裏返しですね。では、彼女の『解放』は君に任せてもいいでしょうか」
「先生がそう望むなら、私は構わない」
場がざわつき始める。この不気味さの漂う少女が、愛梨にどのような責めを課すのか。それを期待するざわめきだ。
「……『解放』? ふん、上等じゃない。あんたが前どんな目に遭ったか知らないけど、このアタシをあんたと同じように考えないでちょうだい!」
精一杯に強がってみせる愛梨もまた、コハルの底知れない不気味さに呑まれていた。
そして、その直感は正しかった。この後に始まるコハルの責めで、愛梨は決定的に変容することになる。
二度と元の道には戻れないほどに。
※
自分の価値が損なわれている事に快感を覚える、破滅願望型のマゾヒスト……コハルは愛梨をそう定義した。ゆえにコハルが課す責めは、愛梨の価値を毀損することに特化していた。
「……なんですかアイツ? なんか、垢だらけだし臭いし……正直、浮浪者にしか見えませんよ」
「ああ、あいつらはあんまり個室の外にゃ出てこないからな。あいつは通称、『糞男(クソダン)』だ。ここの会費を払うどころか、借金こさえてフロに入る余裕さえないって輩よ」
「会費も払えない人間が、何でここへ? どこかから潜り込んだってことですか?」
「いいや。アイツらは客じゃなくて、ここのスタッフだよ。貸し出しプレイ専用のな。さっきも言ったが、ああいうのは自分の返済能力も考えずに衝動的に金を使い散らすゴミクズだ。だがそういうゴミも、このアブノーマルなクラブじゃ需要がある。テメェの女をゴミに抱かせて興奮する男とか、ゴミに抱かれて興奮する変態女とかな。不思議なもんでよ、普段ステイタスの高い女議員やらセレブ妻に限って、最低な男に犯されたがるんだよな」
「その理屈は分かるんですけど、それにしてもアレは……」
「まあな。ありゃあ糞男の中の糞男。糞みてぇな男どころか、マジでババアの糞食ってるようなド底辺だ。最初はそのプレイを普通にフロアの中でやってたんだが、あんまりにも醜悪な図でよ。好きモン揃いの客が何人も吐いちまったんで、今じゃ特殊な個室から出てくんなって厳命されてんだよ。俺もあのキメェ面拝むのは2年ぶりだぜ。見てるだけでゲボ吐きそうだ」
会員達がヒソヒソと囁き合う。彼らの言葉通り、ステージに上がった男は浮浪者そのものだ。
「……くっ!」
床に寝そべる愛梨も、その醜悪な容姿に嫌悪感を露わにする。
「こりゃまた、えらい別嬪やな」
一方の男は笑いながら愛梨の顔を跨ぎ、汚れた肛門を顔に近づける。そのおぞましさたるや、興味本位で見ていた女性会員達が一斉に顔を顰めるほどだった。
「うっ!!」
愛梨も当然、臭気と嫌悪で美貌を歪める。
「そのまんま朝まで舐っとけ。コッチも朝まで可愛がったるさかいにな」
男はそう言って腰を落とし、愛梨の顔に肛門を密着させながら、薄汚れた指で秘裂に触れる。
「う、うう゛……っ!! く、臭いっ……!!」
愛梨は臭気に包まれながら、男の尻を掴んで抵抗していた。しかし男はその抵抗を面白がるように腰を押し付ける。そして、面白がるのはギャラリーも同じくだ。
「舐めろ!舐めろ!舐めろ!舐めろ!」
1人また1人とコールを上げはじめ、ついには大合唱となる。
「……舐めて」
コハルもまた、愛梨の傍に屈みこんでそう命じる。そんな状況が続けば、いずれ愛梨も観念するしかない。
「れろっ……う、うぶっ!! おえ、えあ……ほごぉえ゛っ!!」
垢に塗れた尻の下から、舐める声と噎せる声が交互に響く。人一倍自尊心の高い愛梨にとって、耐え難い状況であることは皆が理解していた。だからこそ愉快であり、だからこそ効果的な責めだ。
「おおーっ、こら堪らんわ。可愛いコに舐めさせとる思うと、余計になぁ」
浮浪者風の男は嬉々として笑う。その股間の棒は次第にサイズを増し、先走りの汁を滴らせはじめる。
「そうや、そこをもそっと舐めて……おおエエでぇ。ほな、次は穴ン中に舌入れてみよか」
男の注文に、愛梨は顔を歪めながらも渋々と応じる。
「お、おおおおっ……ええぞ、ええぞ!!」
男は満面の笑みを浮かべながら、ついに射精を始めた。愛梨の乳房に挟まれた男根が、上下にピクピクと動きながら精液を吐き散らす。射精の勢いは強い。ほのかに色づいた白濁が、モデル級のスレンダーボディを次々に穢していく。
「うわ、汚……!!」
「なんかザーメン黄ばんでんじゃん。ションベン?」
「ならまだマシだがよ、ずっと出してなくて腐ってるとかじゃねぇのか?」
ギャラリー達が薄気味悪そうに囁く声は、愛梨の耳にも届いていた。腹部の生温かさがおぞましい。口と鼻に密着する悪臭も、汗で蒸れた空気も、頬を流れる唾液も、全てが不愉快だ。死んだ方がマシと思えるほどに。
しかしそんな状況にありながらも、愛梨の女の部分は濡れていた。大股を開いたまま、男の節ばった指で掻き回されれば、クチュクチュと粘りのある水音が立つ。指先で中を掻き回されれば浅く絶頂して腰が浮く。浮浪者同然の男が前屈みになり、ピチャピチャと音を立てて舐めはじめれば、潰れたカエルのようなポーズで快感にうち震える。
「し、信じらんない。感じてるよ、アイツ……!!」
「ウソでしょ……!?」
同性を中心とするギャラリーから悲鳴に近い声が上がる中、愛梨は数えきれないほどの絶頂を経験した。
「おぶっ、オグゥ……ぐっ、おぼエッ……!!」
興奮と汚辱に吐き気を覚えながら、愛梨は視線を逃がす。ギャラリーの笑い顔と軽蔑の表情がいくつも視界に入り……
愛梨は、心にヒビが入る音を聴いた。
※
「……お、おいおい、マジかよ……!!」
「へ、へへへ。糞男の次にコレとか、えげつねぇ趣味してやがるぜ……!!」
コハルが連れてきた次の『相手』に、並み居るマニア達がざわめく。
「な……っ!」
愛梨もまた目を疑った。
コハルの手に握られたリードの先にいるのは、巨大な犬だ。形容としての『イヌ』ではない、正真正銘の異種。
「なるほど、君にはそれが“効いた”んですね?」
VIPの男が興味深そうに尋ねると、コハルは静かな瞳で頷いた。
「そう。私はこの『彼』とのセックスで、自分の心がひび割れる音を聴いた。きっと貴方も同じ」
コハルはそう言って愛梨の後ろに立つ。
「ははははっ、いいねいいねぇ! 犬姦かよ!」
「異種姦という発想が出ないあたり、私達もまだまだ甘いな。無意識にあの娘を神格化してしまっていたのかもしれん」
「かもねー。さすが、完璧に壊れたコは違うわ」
「オラどうした、四つん這いになれよ! 毛深い彼氏にケツ向けてよ!」
愛梨を大きな円で囲んだまま、ギャラリーは下卑た笑みを浮かべた。愛梨はその顔を次々に睨みつけ、奥歯を鳴らす。しかしここまで意地を張ってきて、今さら逃げ出せるわけもない。
「……ッ!!」
意を決して這い蹲る愛梨。その背後でコハルがリードを手放せば、犬はゆっくりと愛梨に近づき、跳び上がるようにして腰に前足を乗せる。
「ひっ!!」
愛梨は怯えた表情を見せる。当然の反応だ。背後の気配は人間とはまったく違う。ハッハッという荒い呼吸。鼻をつくような獣臭。殺意にも似たオーラ。その全てが根源的な恐怖を呼び覚ます。
「やだ、ビビってるわコイツ」
「尻尾巻いて逃げてもいいんだぜ? 犬相手だけにな!」
奴隷の怯えは、当然ながら会員達の笑いの種になる。愛梨はその恥辱に唇を噛み締め、グッと股を開いてみせた。その決意にどこかで口笛が吹かれる。
「いいよ」
コハルがそう告げると、それを合図に犬が動き出す。半勃ちのペニスで器用に愛梨の割れ目を探り当て、挿入を開始する。
「あぐっ!!」
愛梨は顔を顰めた。
(熱い!!)
最初に感じたのは灼けるような熱さだ。人と犬と体温の違いか。
形状も違う。人間のペニスのように丸い亀頭ではない。細長く、先が尖っており、突き込みのたびに子宮口に突き刺さる。熱さも相まって、焼き鏝でも押し込まれているようだ。
「犬の癖に女犯すのが上手ぇな。そこらの童貞よりよっぽどサマになってんぜ」
「そりゃそうだろ。この倶楽部が用意する犬だ、たっぷり芸を仕込まれてるんだろうぜ」
会員達の言葉通り、愛梨を犯しているのはセックスショー向けに躾けられた軍用犬だ。女を悦ばせる方法も、泣かせる方法も、“人並み”以上に心得ている。
「ぐっ、う゛……うぐっ、んう゛っ……!!」
愛梨は歯を食いしばって耐えていた。恐怖も痛みも人間相手の比ではない。思わず声が漏れそうになるが、犬に犯されながら嘲笑われるような状況で、さらに舐められる材料を渡したくはなかった。
しかし、その意地も長くは続かない。突き刺すようなペニスの痛みにかろうじて慣れてきたと思った矢先、第二の特徴が表れはじめる。
(えっ!? な、なに!? 急に、大きく……!!)
愛梨が狼狽えるのも無理はない。挿入されているペニスの根元が瘤状に盛り上がりはじめたのだ。亀頭球と呼ばれるそれは、陰茎が抜けないようロックする役目を担う。この変化により犬のペニスは、長さと太さ、鋭利さを兼ね備えた凶器と化す。
「あ、あ゛っ、ああ゛っ!!」
愛梨は目を見開き、声を上げる。もはや嘲笑を気にしている場合ではない。瘤つきのペニスを押し込まれる際には息が詰まり、引かれる際には膣粘膜が丸ごとめくり返るような錯覚に陥る。黒人相手のセックスをさらに上書きするような苛烈さだ。
そして、愛梨の余裕を奪う要因はそれだけではない。背中に感じる爪の感触と荒々しい息が、獣に犯されているという事実を絶えず突きつけてくる。
人ではない、ケダモノとの交尾。それを公然で行っているのだ。そう自覚した時、愛梨は恥辱に震えた。しかし、恥辱はそのまま昂ぶりにもなる。
『自分の価値が損なわれている事に快感を覚える、破滅願望型のマゾヒスト』
コハルの言葉が脳裏に蘇る。
「はぁっ、はぁっ……!!」
愛梨はコハルを見上げた。睨もうとしたのか、それとも縋ろうとしたのか、愛梨自身にも分からない。いずれにせよ、コハルがその想いに応じることはなかった。彼女はただ、黒水晶のような瞳で愛梨を見つめていた。その瞳に映るのは、哀れなメスの姿だ。
「あ゛っ、あ゛、あはああ゛あ゛っ!!」
「へっ、きったねぇ喘ぎだな!」
「まさか感じてやがんのか? 流石にこのイカレ女でも、犬にレイプされてイッたりしねぇよなあ?」
「ははは、まさか!」
喘ぎが謗られる。かといって澄んだ声を作る余裕などない。
太い瘤で膣襞を擦られ、長く尖ったペニスで子宮口を突かれ……普通ならば苦痛でしかないはずのその責めも、膣を念入りに開発された今はむしろ心地いい。痛みも苦しさも快感にすり替わる。膣の奥が疼く。
「はぁっ、はぁっ……い、いや……犬なんかに、犯されて……あ゛っ、あ! くあああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
愛梨はついに絶叫し、身を震わせた。乳房が左右に揺れるほどの身震いだ。
「うわ、こいつマジでイッてるぜ!?」
「えー、信じらんない! 何でも興奮するんじゃんコイツ。なんか必死にイジメてたのが馬鹿らしくなってくんだけど」
心無い言葉が浴びせられる中、愛梨は絶頂の余韻に震える。犬はそんな愛梨に構わず激しいピストンを繰り返し、その果てにとうとう果てる瞬間を迎えたらしい。
「ウ゛ウ゛ウ゛……ッ!!」
犬は唸りながら、尖ったペニスの先端を子宮口に押し付ける。押し付け、捏ねまわし、子宮口がほんの少し口を開いたその隙に、すかさず内部へと先端をねじ込んでしまう。捕らえたメスを確実に孕ませなければならない、野生の本能が可能にした早業だ。
「うあっ!?」
愛梨は悲鳴を上げ、思わず後ろを振り返りかける。しかしそれより早く射精が始まった。子宮頚管へ潜り込んだペニスの先から、熱いものが子宮内に流れ込む。
「ぐっ……!! う、ううッ、ぐ、ぐくくっ……!!」
「んだよ、地味な泣き声だな。畜生に中出しされてんだろ? もっと派手に泣き喚けや!」
不満げな声が浴びせられるが、あまりの違和感に声が出ない。凍えるようにガチガチと歯が鳴る。脳が警鐘を打ち鳴らし、全身に嫌な汗が滲む。
犬の射精は長かった。メスを確実に孕ませるために、たっぷりの時間をかけ、生暖かな精液で胎内を満たしていく。加えてその間も、犬はじっとしているわけではなかった。ペニスの先を子宮に嵌めこんだまま、前後に動く。
「あ、あ゛があっ!!」
愛梨が顔を跳ね上げた時、ギャラリーは一様に驚きを見せた。人間相手のセックスならば、一度射精が始まってしまえば女の顔は変わらない。屈辱か、絶望か……いずれにせよ一つの表情で固定される。
不可解ではあるが、しかし何が起こっているのかはハッキリと分かった。愛梨は再び絶頂に押し上げられているのだ。犬の精子を注がれながら。
「あ、嫌、嫌ぁ……っ!!」
愛梨は弱々しく頭を振りながら、膣からの痺れに包まれていく。脳の密度がいつになく薄く思えた。恥辱はこれまでの比ではなく、それゆえ快感もいつになく大きい。破滅願望型のマゾヒスト──コハルのその評を裏付けるかのように。
数分かけて大量に射精した後も、犬の交尾は終わらない。後背位から姿勢を反転させ、尻同士をつける体位でさらにピストンを繰り返す。訓練された軍用犬の持久力は人間の比ではない。休むことなく『交尾』を繰り返しても、腰の勢いが衰えない。その上、ペニスは少しずつサイズを増してもいた。
「うぐぅっ、ぁあ゛……あがあああ゛……っ!! も、無理……く、苦しいっ……!!」
愛梨は顔を歪めて呻く。思わず這って逃げようとするが、陰茎の根元の瘤が抜けない。結局は犬の力強い前後運動に引きずられ、身体を前後に揺らすことしかできない。逃げられないままに、強靱な獣の脚力でペニスを打ち込まれつづける。一度達して敏感になった膣で、その刺激に耐え続けられるはずもない。
「う、ぐっ……ああ゛ぁあ゛あ゛っ!!」
食いしばった歯を開き、泣き声にも等しい悲鳴を上げる。肩幅以上に開いた膝が浮き、ビクビクと痙攣する。それを何度も繰り返した。そしてその数と同じだけ嘲笑を受け、罵声を浴びた。
(こんな……犬に犯されて……このあたしが……!!)
生まれてから17年あまり、他人より優れていると信じて生きてきた。他人が自分に注目するのも、陰口を叩くのも、自分という存在が眩しいからだと、そう思っていた。
しかし……ライトに照らされた倶楽部の中、床に這い蹲って見上げる野次馬達の顔は、ひどく遠い。手を伸ばしても届かないほどに。
「あははははっ! こいつ、犬に犯されながらまたイッたわ!」
「ほんと、惨めねぇ!」
「おーおー、ひでぇツラだ。獣そのものだな、こりゃ!」
罵声が飛ぶ。この数ヶ月で、もう何度聞いたか知れない言葉。しかし今はその一言一言が心を切り裂く。他ならぬ愛梨自身が、己の惨めさを自覚しているからだ。
身体に力が入らない。藻掻けば藻掻くほど深い闇に沈んでいく。
「お、おねがい…………お願い、助けてっ! こんなので、こんなのでイくのは嫌ああああっ!!」
愛梨は、ついに哀願する。けして媚びず、折れず、一年間あらゆる責めに耐え抜こう……そう考えていたが、これ以上は正気を保てないと確信してのことだ。しかし、その決死の哀願が聞き届けられることはない。
「やめない。それが貴方のためだから。貴方は自分を知りたいと願っている。それを知るためには、その扉を潜る必要がある」
コハルはそう告げ、ただ静かに愛梨を見下ろす。蔑視でもなく、敵視でもなく、あるがままに愛梨を見ている。その漆黒の瞳が、愛梨に理解させた。引きずり込まれた闇の底にあるのは、禁断の快楽。闇とは真逆の安らかな世界なのだと。
「だめ……ほ、ほんとに、おかしく……! あ、くはっ! ああアア゛ア゛ッ!!」
再び大量の射精が始まった。すでに満たされている子宮へさらに精液が入り込んでいく。少しずつ、少しずつ、子宮の壁を拡張しながら。
「ふぁあっ、あっ、あ! はぁああんっ、んあああッ……ああぁあああーーっ!!!」
愛梨は、自分が悲鳴を上げ、涙を流しているのかと思った。
しかし、どうやら違うらしい。
響き渡っているのは、恋人に抱きしめられた女の出す甘え声だ。顔の形は、嬉し涙を流す至福の笑みだ。
ただ一つ気がかりなのは、野次が飛ばない事だった。嘲笑はそこここで起きているが、野次は飛ばない。
しかし愛梨には、その理由が理解できた。野次るまでもないのだ。犬に犯されながら喜悦に震える愛梨の姿は、それだけで充分すぎるほどに惨めだからだ。
「ひっ、あひいぃいいっ!! すごい、すごいっ!!! もっと突いて、もっと出して!! あたしの子宮、あなたの精子で一杯にしてえっ!!!」
愛梨は正常位で犬と抱き合い、その背に脚を絡ませながら絶叫する。
「へ、へへへへ。あのクソ生意気な女が、変わっちまったもんだな……」
「ああ。数時間前までとは別人だぜ……」
すっかり様子の変わった愛梨を前に、筋金入りのサディスト達が生唾を飲む。顔色を変えていないのは、コハルとその主である男、そして陶然とした表情を浮かべる愛梨だけだ。
※
※
※
獣姦の夜を最後に、愛梨がヒトとして扱われることはなくなった。
「おら、大好きなザーメン汁だぞ。舌出してろよブス!!」
会員の一人が愛梨の顔を上向かせる。
ブス────かつての愛梨であれば冗談にもならなかった言葉だ。かつて倶楽部を訪れたことのある女性の中でも、一番を狙える器量なのだから。しかし、今の愛梨の顔はその言葉に相応しいほど歪められていた。口の周りだけを残し、厚手のタイツで顔を絞り上げられているせいだ。
「はい……」
愛梨は命じられた通りに舌を突き出し、数人の男の精液を舌に受けると、音を立てて飲み下す。精液のついた唇をぺろりと舐め、心底美味そうに。
「へッ、俺らの特濃ザーメンを一息かよ。噂通りのビッチだな。いいぜ、なら下の口にもくれてやるよ!」
また別の男が愛梨の肩を突き飛ばし、床に這わせる。かつての愛梨ならば目尻を吊り上げて非難していたところだが、今の彼女は、突き出した尻を自ら手で割り開く。
「なんだよ、緩いな。しっかり締めろよブス!」
膣に挿入した男は不満げに鼻を鳴らし、愛梨の尻を叩きながら腰を打ち付ける。
「あ、ああっ! はああぁんっ!」
愛梨は突き込みと叩かれる痛みで震え上がる。
「チッ。おいテメェ、主人さしおいて自分だけイッてんじゃねぇぞ!!」
「はい、すみませ……ん、んくううううっ!!」
謝罪こそするものの、膣を念入りに開発された身体は容易に絶頂に至ってしまう。ゴミ同然の扱いによる興奮が、そのハードルをさらに下げる。
「よう、聞いたか? なんか男子便所がすごいらしいぜ」
会員の1人が仲間にそう語り、男女数人で連れ立ってトイレへ向かう。
「うおっ……!!」
「うっへぇ……確かに、こりゃすげぇや」
そこには、乱交後に放置された愛梨の姿があった。小便器に鎖で繋がれているため、当初は便器としての扱いを受けていたのだろう。実際に愛梨の身体は黄色い汚液に塗れ、痛烈なアンモニア臭を放っている。しかし、加虐趣味のある会員達がいつまでも便器としてのみ使用するはずもない。
愛梨は、穴という穴に物を詰め込まれていた。口には使用済みらしきティッシュ、鼻腔には煙草の吸殻、膣には空き缶、肛門には一升瓶が押し込まれている。それ以外にも、アナルパールやイチジク浣腸の空容器、使用済みのコンドームなど、様々なものが身体の各所に点在してもいる。
まさにゴミ箱のような扱いだ。しかしそのような目に遭ってなお、愛梨の口元にはうっすらと笑みが浮かんでいた。
愛梨は壊れたわけではない。解放されたのだ。その証拠に、大学での彼女はそれまでと変わらず、あるいはそれまで以上に完璧な姿を見せた。背を伸ばして隙なく歩き、真面目に講義を受け、ゼミでの討論で舌戦を繰り広げ……そうして健全に大学生活をこなした上で、夜になれば倶楽部を訪れた。
会員達の視線に晒されながら、服を脱ぎ捨て、美貌を歪められる。蔑まれ、罵られ、弄ばれる。
昼は天下の東州大生、夜は最底辺の奴隷。そのギャップが興奮を煽った。夜は惨めであるほどよかった。
「なんて下品な……肌的にはまだ若いでしょうに、恥知らずな娘だ」
「聞いた話じゃ、マスクの下は二目と見られねぇブスでよ、男に人間扱いされねぇもんだから自暴自棄になってるらしいぜ」
聴きなれない声が愛梨の耳に入ってくる。口ぶりからしてもおそらくは新規の会員だろうが、愛梨に視認はできない。彼女の頭は全頭マスクで覆われ、器具で歪められた鼻と口しか空気に触れていないからだ。
それでも、自らの惨めさは自覚できた。倶楽部に来て早々ドナン浣腸を注がれ、壁に拘束されたまま嬲られた。ドナンの熱さが染み、放っておいても熟した果実のように蕩ける膣を、指やバイブ、マッサージ器で徹底的に責められた。そうして数十回絶頂させられた後の姿なのだ。
わずかに膨らんだ腹部からは壮絶に腹を下した音が鳴り、がに股の脚は痙攣し、全身は脂汗に塗れている。その姿はさぞや『下品』だろう。そう実感するだけで、愛梨は脳が痺れるような至福に襲われた。
「お、俺はヤるぜ。どんだけブスだろうが、スタイルは悪くねぇしよ」
一人が金属音を慣らしはじめる。ベルトを外す音だ。その音の後は、いつも衣擦れの音とゴムを装着する音が続き、荒々しい呼吸が愛梨に近づいてくる。
「入れるぞ」
左脚が抱え上げられ、挿入が始まった。
「おおおおっ……!!」
開口具を嵌められた口から歓喜の声が漏れる。ゴム付きとはいえ、熱く硬い肉棒が嬉しくてたまらない。
「おお、えらく熱い襞がキュウキュウ吸い付いてきやがる。良いモン持ってるじゃねぇか。カラダは抜群なのに顔が残念とはよ、『天は二物を与えず』ってやつか?」
男はどこか愉快そうに囁きながら、夢中で腰を打ち付ける。それは愛梨に多大な快楽と苦悶を齎した。何度受けてもドナン浣腸に慣れることはない。気が狂いそうなほどの便意で直腸が煮立つ。その影響で煮崩れしそうなほど蕩けた子宮を硬い陰茎で突き上げられれば、それだけで中程度以上に絶頂してしまう。
「へへっ、相当キツい浣腸されてるらしいな。全身にイヤーな汗掻きやがって、クソがしたくてたまんねぇってか?」
「お、ほもおオオオっ!!」
男は腰を打ち付けながら、音の鳴る下腹部を撫でまわし、愛梨に苦悶の呻きを上げさせる。そしてそれを堪能すれば、今度は右脚も抱え上げてスパートをかける。パンッ、パンッ、パンッ、と肉のぶつかる音が鳴り響き、痛烈に便意が煽られる。
「おおっ、おほおおっ! おんォぉおおおお……っ!!」
全身の毛穴から新たな汗を噴きだしながら、愛梨は深い絶頂に至る。
「くあっ!? マンコがうねって……おああああっ!!」
挿入している男もまた、愛梨に引きずられるように射精に至る。それを粘膜で感じ取りながら、愛梨は抱えあげられた脚を痙攣させて余韻を堪能する。そしてその熱気あるセックスは、傍観していたギャラリーをも焚きつけた。
「へへへ、この野郎見せつけてくれるじゃねぇか。次は俺だ!」
1人目と入れ替わるようにして次の男が愛梨の前に立ち、最高硬度の逸物をねじ込む。今度の物は先ほどよりも太い。少なくとも亀頭はワンサイズ勝っている。
「ごおおおおおおっ!!」
口枷から呻きを漏らしながら、愛梨は新たなペニスの感触を堪能する。一度目以上の苦悶と悦楽を期待し、女の園から涎を零す。
そこから、何人の相手をしただろう。何度絶頂し、何度便意の限界を迎え、何度意識を失っただろう。
以前であれば気が触れていたかもしれない、度を越したハードプレイ。しかし欲望の解放された愛梨は、その苦悶や失神さえも甘美なものとして受け入れてしまえる。
拘束が解かれ、震えながら跪く愛梨の後ろにガラスの音がする。マスクで視界を遮られたままでも、異様なほど肌感覚が鋭敏になっているため、周囲の位置関係はすべて分かった。
「おいブス、『チンチン』だ!」
そう号令が掛かると、愛梨はそれに従った。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ…………!!」
膝立ちのまま、指で秘裂を割り開き、ドロドロに蕩けた膣を衆目に晒す。
「見なよ、あの脚の痙攣。クソ我慢しながら犯りまくられて、どんだけイッたんだろ?」
「しかし、あのフラフラの状態で即座にメス媚びのポーズとは……大した調教ぶりですな」
「いや、あれがあの娘の本性なんですよ 我々は自我を開放する手助けをしたまでです。……おい、もういいぞ。ひり出せよ!」
赦しが出た途端、愛梨は嬉しそうに笑う。そして特注の『おまる』に跨り、我慢に我慢を重ねた肛門を開放する。
「おっ。出るぞ、出るぞ!」
ギャラリーが嘲る中、決壊が始まる。栓が弾け飛び、怒涛の勢いで汚液が噴きだす。
「うへぇ、出た出た! ったく毎度毎度すげぇ勢いだな!」
「スッパダカのままクソするところ皆に見られて、ホント終わってるぜこのブス!」
容赦なくヤジが飛ぶ。まさに恥辱。以前であれば拳を握りしめ、歯を食いしばって耐えようしただろう。しかし今の愛梨には、その状況がひどく心地いい。
「んん、んはあああっ! あっ、あっ、あっ!!」
誰に強制されるでもなく、自発的に脚を開き、濡れそぼった股間を弄る。排便を晒しながら、興奮を持て余しての自慰。その浅ましい姿にギャラリーの喧騒が増す。
「おい、マジか……こんなので興奮してんのかよ?」
「泣くぜ、マトモな女なら……!」
「はははははっ、マジでイカレた女だぜ!!」
呆れたような声、蔑むような声。そのどちらもが興奮を煽る。浣腸のせいで水の溜まった膀胱から潮が噴きだす。泣き喚くような勢いで、遥か遠くまで。
※
また別の夜は、愛梨は全頭マスクの代わりに包帯で頭を巻かれ、床に寝そべる形でクリトリスを吸引される。それだけではない。包帯の頬にあたる部分には『取るな!ブス注意』、下腹部には『性病アリ、挿入厳禁!』と赤いマジックで殴り書きされている。
「な、なんだこりゃ……?」
「いくらタダ同然の奴隷っつっても、これは……」
新顔の会員達は、そんな愛梨を見て顔を見合わせた。
彼らは近くの大学に通う大学生だ。人伝にDUNGHILLの噂を聞きつけ、割引につられて入会したはいいが、パートナーもいなければ奴隷とのプレイ権を勝ち取れるほどの金もなく、まともには遊べない。
「こ、こいつよ。顔はヒデェらしいけど、スタイルは良いよな」
「ああ。病気っつっても、直で触んなきゃ大丈夫だろ」
大学生達は目を血走らせながら手袋を装着し、恐る恐る愛梨に触れはじめる。乳房を揉みしだき、太腿を擦り、秘裂に触れる。
「う、あううっ……!! はう、ああううっ……!!」
控えめなボディータッチに愛梨が呻くと、大学生達はびくりと肩を震わせ、それから笑みを浮かべた。
「な、なんだよビビらせやがって。感じてんのか、この変態オンナが!」
「結構声可愛いじゃんか。つーか、今の感じだとだいぶ若いよな。若いのに病気とか、ヤリマン確定じゃん!」
一度火が点けば、若さゆえの勢いで責め方に容赦がなくなる。
「お前、クリ吸引されんのが好きなのか。ならもっと吸ってやるよ!」
「はははっ、やべえ! 吸われまくってチンポみてぇになってんぞ?」
「おい、すげぇぞコイツ。マンコの上にも小っせぇ穴あんなと思ったら、これ尿道だぜ?」
「マジかよ、指入りそうじゃねぇか!」
「指どころか膣用のバイブ入んじゃねーか? ちょっとそこの突っ込んでみろよ!」
ある者は陰核の吸引具を弄り、ある者は拡張済みの尿道に興味を示す。その初々しく加減を知らない責めに、愛梨は激しく見悶える。
「あ、ああ……はああっ、んあああああんっ!!」
泣き声にも聞こえる艶めかしい喘ぎ。それを延々と響かせながら、愛梨は潮を噴く。大学生達はそれを面白がり、さらに激しく責め立てた。
「ああもういいや、突っ込んじまおうぜ!」
怖いもの知らずな暴走で、クリトリスと尿道を責めながら膣にも挿入するまでには、さほど時間は掛からなかった。
「あーあー、今日もメチャクチャやられてらぁ」
大学生達が倶楽部を去った朝方、清掃のスタッフ達は愛梨を見て溜め息をつく。他所の倶楽部であれば出禁を食らっても仕方がないほどの悪乗りの跡が見て取れた。体液に塗れ、5ダースを超える使用済みのコンドームに囲まれた愛梨の姿は無惨そのものだ。
「しっかし勿体ねぇよな。こんなツラのいいガキが、マスクで顔隠しちまってよ」
愛梨の頭の包帯を取り去るスタッフがしみじみと呟く。涙に塗れたまま眠る愛梨の素顔は、文句なく美少女そのものだ。
「そうかね? ま、価値観なんざ人それぞれだ。俺にゃあそのガキは、顔隠してゴミ扱いされてる時の方が活き活きして見えるぜ」
先輩スタッフはそう言いながら、粛々とホールの掃除を進めていく。
そして事実、その言葉の通りだった。
元の美少女ぶりとかけ離れた姿になればなるほど、愛梨の興奮度合いは上がっていく。
「じっとしなよ。座り心地の悪い椅子ねぇ」
垂れ目の女が、愛梨の太腿の上で脚を組み替える。
「ムウ゛ウッ!! ウ゛ッ、ウ゛ーーーーッ!!!」
愛梨は天を仰ぎ、バイトギャグ越しに呻きを漏らす。過激な反応だが、それも当然のことだ。彼女は両腕をアームバインダーで拘束され、膝下から足首までを覆う枷で脚を閉じる状態を強いられたまま、太い杭の上に座らされていた。
穿かされたゴムパンツのおかげで、杭が肛門に入り込むことはかろうじて防げているが、完全にではない。愛梨自身の体重と、太腿に乗った女の体重で、杭は少しずつ肛門内にめり込んでいく。しかも愛梨には前もって濃いグリセリン浣腸が施されているため、その催便作用とも戦わなければならない。
「すっごい汗。いっちょ前に苦しいんだー、変態の癖に。」
そう囁きかける女は責め役として堂に入っているが、彼女は本来サディストではない。むしろ数時間前までは、恋人のことを『ご主人様』と呼んでマゾの快楽に浸っていた女だ。そこへ愛梨が乱入したことが、このプレイのきっかけとなった。
「うわっ、何だ!?」
「きゃっ!」
男女のカップルは、おぼつかない足取りで近づく愛梨を見て驚愕した。
ラバーマスクで顔を覆い、手足をボンデージで拘束され、膣と肛門から極太のビーズを揺らす奴隷。彼女は過敏な反応を示す男女を前にして歩みを止める。
「んふっ。どう、あたしと遊ばない……?」
艶めかしい声を出し、誘うように身体をうねらせる愛梨。その妙な迫力を前に、男の方が喉を鳴らす。しかし、女の方は違った。パートナーを誘惑された彼女は、頬を染めたマゾヒストの顔を一変させる。
「待ちなよ。そんなに遊びたいんなら、私が遊んであげるよ」
甘美なプレイを邪魔された苛立ちからか、恋人を誘惑された怒りからか。いつになく冷ややかな声で『主人』を狼狽えさせた女は、自分ならば絶対に音を上げるだろうプレイを愛梨に施した。
実際、愛梨はその責めに苦しんだ。脂汗を垂らし、バイトギャグからダラダラと涎を垂らした。しかし、段々とその雰囲気が変わってくる。
「ウウッ、ウッ、ウッ!! ンウ、ンウウウゥッ…………!!」
漏れる呻きが甘さを孕みはじめる。全身の痙攣も、初めこそ便意や苦痛によるものかと思えたが、段々と歓喜の震えに見えてくる。
「…………っ!?」
女は訝しむ。この倶楽部に辿り着くほどだ、自分もかなりコアなマゾヒストであると自覚しているが、そんな自分でもこれほどの責めには感じるどころではない。許して、やめて、と涙するに違いない。だからこそ愛梨への報復としてこれを選んだのだ。よもやそれで相手が悦ぶとは。
「あんた、とんだ変態ね。どんだけ太いニップルピアスで拡張したの? あはっ、すごーい。乳首に指入るじゃない」
ピアス穴に指を通し、乳頭ごと引きちぎらんばかりに引き上げる。普通ならば痛みと恐怖で絶叫し、身も世もなく泣き叫ぶところだ。しかし。
「もごっ、ほごぉおおおおおっ♡♡」
愛梨は壮絶な呻きを響かせるが、その声色は紛れもなく喜悦のそれだった。胸の先という敏感な部位を苛め抜かれ、最底辺の奴隷は震えながら絶頂していた。
そして、それがトリガーとなったのだろう。愛梨の肛門から破裂音が響き渡り、愛梨の肉体が下に沈んでいく。脱糞と共に杭がめり込んでいるのだ。
「ウオオ゛オ゛ォ゛ーーーーッッッ!!!!」
愛梨はケダモノの声を上げながら痙攣する。膝の上に乗った女を振り落とす勢いで暴れながら、秘裂からは潮を噴き、杭には肛門からの汁を伝わせる。
「く、狂ってる…………!!」
女は表情を凍りつかせた。『奴隷』のズレたマスクの下からは、アイドルと見紛うほど整った顔立ちが覗いている。スタイルも女が思わず嫉妬するほどに良い。その最上級の美を誇る少女が、まるで人間性を喪失している────その業の深さは、彼女の常識から逸脱しすぎていた。
※
よりアブノーマルなプレイをしたがるマニア達と、より背徳的なプレイを望む奴隷。その利害が一致すれば、もはや歯止めは利かない。
過去に愛梨を追い詰めたプレイは、会員と愛梨本人の希望で改めて繰り返された。
鏡で痴態を視認させながらの、同性によるレズビアンプレイ。
椅子に拘束しての窒息バルーンイラマチオ。
鼻へのアンモニア浣腸と指イラマチオ。
アナルフックで吊り下げての壁尻レイプ。
腹が膨れるまで浣腸した上での下痢便アナルセックス。
X字に拘束してのポルチオ開発および下剤責め。
ドナン浣腸を耐えさせながらのビルとの異人種姦。
軍用犬との異種姦。
これらのプレイは、やはり愛梨を狂乱させた。しかし、その理由はまるで違っていた。恥辱と快楽の板挟みで苦しんでいた以前とは違い、今の愛梨はすべてを快楽として受け入れる。
その心境の変化と、純粋に性感帯が開発されている事実とが合わさり、愛梨は狂乱した。数十人が見守る前で、排便し、嘔吐し、失禁し、痙攣し、絶頂した。快感が大きいせいか、気を失う頻度は前より増したが、覚醒させられるたびに笑みを見せた。生粋のマニアでさえ寒気を覚えるような笑顔だ。
ヒト以下に堕ちてもなお、愛梨は会員達の心を惹きつづけた。
『中出し限定・避妊禁止の無責任孕ませパーティー』
倶楽部のサイト上で事前告知して人を集め、より大勢で愛梨を満たす──いつしかそれが倶楽部の目玉イベントとなった。
「ぐふふふ。今日のために、たっぷり精子溜めてきたよ!」
「たっぷり可愛がってやるからよ、覚悟しろよブス!」
ゴムパンツを盛大に膨らませた男達に囲まれ、愛梨はゾクゾクと身震いする。
準備は万端だ。イベントが始まる3時間前から、アブノーマル愛好会による渾身の機械責めを施されている。
低周波パッドで下腹と陰唇・太腿周りに電気を流され。
ポルチオ開発用のアタッチメントで子宮口を刺激され。
振動式の吸引具でクリトリスを吸われ。
尿道を親指大のバイブで掘削され。
肛門が緩みすぎないよう少量のドナン浣腸を入れたまま、S状結腸まで達するサイズの蛇腹バイブで嬲られ。
それだけの責めを受けながらも、愛梨は今日まだ一度も達していない。常に脳波を測定され、まさに絶頂に至ろうという瞬間に刺激を止められるのだ。人力では成し得ないほど正確で、無慈悲な寸止め。3時間に渡り高原状態をキープさせられた愛梨は、イベント開始時点で『出来上がって』いた。拘束を解かれ、震える爪先で床を踏みしめただけで痺れが走るほどに。
膣と肛門、そしてその奥がいやらしく開閉を繰り返し、歩くたびに液溜まりができるほど蜜を吐いている。男50人対女1人の孕ませパーティーは、その状態で始まった。
「ッぐ、あああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
1人目に挿入された瞬間、愛梨は悲鳴に近い声を響かせた。覚悟していた以上に深く絶頂したのだ。前戯のせいもあるが、やはりコンドームを着けていない生挿入というのが大きかった。
「へへへ、イイ声で鳴くじゃねぇかヤリマンが!」
男は気を良くして愛梨の膝を掴み、正常位で突き入れる。体重を乗せて、深く、力強く。
「あっ、んああっ! か、硬い、太いっ!! ッぐイグッ、イグイグイグイグッ!!」
愛梨は髪を振り乱しながら、早くも断続的な絶頂に入った。ただでさえ圧が強く、並み居るマニアを名器と唸らせた膣だ。絶頂で収縮した時の具合は凄まじい。
「うわっ、ヤベえ! こ、これ、締まりが……ああ、もたねぇ!!」
人一倍意気込んでいた男は、わずか1分足らずであえなく搾り取られてドクドクと射精する。溜め込んできたと豪語するだけあり、射精は長い。
「おおおっ、出る、出るっっ!!」
本人が叫ぶたびに睾丸が収縮し、膣の端から白濁が伝い落ちる。
「あああ、ああああっ……!! 熱いのが、いっぱい来てる……! あ、あたし今、卵子でまくってるから……ほ、本当に孕んじゃいそうっ……!」
どこの誰とも知らない男の精液を、たっぷりと膣に注がれている。その事実を噛み締め、愛梨は震えた。
「うわぁ。中出しされて喜んでるよ、コイツ」
どこかから同性の声がする。見ず知らずの男の子を孕むかもしれないのだ、普通ならば危機感を抱くだろう。しかし、愛梨はそうではない。まともな感性の女性が涙を流して嫌がるような、『NG』の状況……それこそ、彼女の望むものだ。
「いいか、まずは一発ずつだぞ! いっぺん出したら次の奴に代われよ!?」
乱校の最中、何度も怒号に近い声が上がった。そうしない人間が多いからだ。
「あっ、あっ……! イク、イクわっ! あは、あああああっ!!」
宝石のような目を爛々と輝かせ、笑みを浮かべる愛梨……誰もがその顔に見入った。何かに吸い寄せられるように唇を奪い、濃密なキスを交わしながら激しく腰を振る。その果てに射精してもなお、逸物を抜かない。愛梨の膣に自分だけを覚えさせようとするかのごとく、突き続ける。すでに出したザーメンと膣の分泌液で、グチャグチャと壮絶な音をさせながら。
「チッ、ルール守れよバカが!」
「しかし、よくこの状況でキスするね。実質前の野郎との関節キスだぜ?」
順番待ちの時にそう冷笑していた男も、いざ自分の番となればその行為を行ってしまう。まるで何かの力に強いられるように。
「ふーっ。まさかこんな若いガキに中出しできる日が来るとはな!」
「ああ、背徳感やべえよ。癖になったらどうしよう」
「バーカ。そんときゃコイツを使ってやりゃいいだろうが。性処理用の便器として、何十回でも何百回でも!」
「だな。コイツもそれを望んでるみたいだしよ!」
「しかしすげぇな、突っ込まれるたびに潮噴いて……イキっぱなしだぜ?」
男達のボルテージは刻一刻と上がっていく。入れ代わり立ち代わり愛梨を犯し、なお興奮冷めやらぬ様子で語り合う。
そして女性会員も、それをただ傍観しているわけではなかった。
「ほら、次々! せっかく温まってるのに休ませると可哀想ですよー?」
さも愛梨を案じている素振りを見せ、足首を掴んで自然に『マングリ返し』の姿勢をキープさせる。
ペニスの小さい人間でも、上からのしかかるようにして奥を突けるように。
注がれた精液が極力零れないように。
そして、愛梨の色狂いの顔がよく見えるように。
愛梨にビールやカクテルを飲ませているのも、水分補給というよりは愛梨を酔わせて正気を失くさせるのが目的だろう。
2巡、3巡してもなお、男達の愛梨への執着は衰えない。愛梨にあられもないポーズを取らせたまま、その顔に汗を垂らし、しっとりと汗ばむ太腿を抑えながら剛直を送り込む。
「ああ、激しっ……ああ、そこぉっ! ぎもぢいい、イグ、イグッ! あああイッぢゃううううう゛っ!!」
愛梨が顔を歪めながら笑う中、男達もまたマグマのような猛りをぬめる膣の中に吐き出していく。
「ああっ、出てる! おまんこの中いっぱいで、子宮の中にまで入ってきてる……!!」
「ふふふ、そうか。ならば漏れないように栓をしてやらんとな。おい、誰かフタをくれ!」
倶楽部でも古株の男は、射精したばかりの逸物を抜き出し、代わりに手渡された巨大なプラグを膣へ押し込んでいく。
「お、お゛っ!?」
愛梨が目を見開いて呻いても、プラグの挿入は止まらない。
「お、おいおい、俺はまだイケるぜ!? 打ち止めにゃ早ぇよ!」
「まぁそう慌てなさんな。あくまで一時的な栓だ。私達が愛情を込めて注ぎ込んだ大事な精子が、しっかりと着床するまでのな」
男はそう言って愛梨の脚を広げさせ、スタッフに手で合図を送る。するとスタッフも心得たもので、大きな鏡で愛梨の姿を映し出した。
「あ、あ……!!」
下手をすれば手首ほどもありそうなプラグで栓をされ、隙間から大量の白濁を零す自分の姿……それを目の当たりにし、愛梨は興奮で震えた。そしてその姿を見た男達もまた、怒張に血を漲らせる。
「じゃあ、ここらで一休みかい……? 今晩を楽しみに溜めてきたんだ、まだまだヤリてぇんだがな」
「俺もだ。チンポがはち切れそうだぜ!」
体力に陰りのある中年男はともかく、若い男はまだまだ勢力が有り余っているようだ。そして勿論、それは倶楽部の古参達もよく理解している。
「なぁに、前を封印してるだけだ。使いたきゃ、穴はまだあるじゃねぇか」
男は愛梨の尻を掴み、後ろの穴を指で拡げてみせる。
「……ッ!!」
その行為に息を呑んだのは、男達も愛梨も同じだ。
「はーっ、はーっ、はーっ」
呼吸を整えるので精一杯なのか、愛梨は言葉を発さない。しかしその瞳は好奇心に輝いていた。今この状態でアナルを犯されたら──その想いで胸が膨らんでいるのは明らかだ。そしてその表情は、充ち足りていない男達を獣に変えるのに、充分すぎる効果があった。
「あああ……たまんねぇ、たまんねぇ、たまんねぇよおこの穴……!!!」
愛梨の腰を掴んで肛門を犯す男は、感情を隠せていない。飢えた獣が肉を貪るように、無我夢中で腰を打ち付けている。そして飾る余裕がないのは愛梨も同じだ。
「お゛っ、おお゛っ! お゛っ、お゛っ!!」
濁っていながらも純粋な快楽の声を、ピストンのたびに響かせている。
声だけではない。膝立ちのまま強張る、形のいい太腿も。拠り所なく空を彷徨い、何かにすがるように動く手指も。唇を尖らせたままの顔も。すべてが愛梨の快感を如実に表していた。
順番を待つ男達は、愛梨から目を離せない。特にその顔……頬を染め、瞳を濡らす顔を凝視する正面の男は、辛抱堪らずとばかりに愛梨の口を奪う。
「んむっ、んっ、んんんっ!!」
愛梨は目を見開いて呻く。動揺しているようだが、相手を押しのけはしない。拒絶することなく、されるがままに状況を受け入れている。極太の栓で膣一杯の精液を封じられたまま、太く逞しい肉棒で排泄の穴を犯され、恋人がするようなキスを髭面の男と交わしている──その背徳的な状況を。
「ん、んう……んむっ、んむうううううっ……!!♡」
愛梨が震えながら漏らしたその声は、誰もを満たす響きだった。彼女に惚れ込んだ男も、彼女に嫉妬した女達も。
膣と、肛門……その二穴への輪姦は、夜を徹して続けられた。
「そら、ハメ待機列の連中が我慢できずにシコった特濃ザーメンだ。これもくれてやるよ」
そう言ってジョッキになみなみと溜め込まれた精液を、クスコで開いた膣に流し込むこともある。悪乗りが過ぎる行為ではあるが、愛梨はそんな目に遭わされてもなお、ゾクゾクと震えながら笑みを零した。
そして狂乱は、一夜だけでは終わらない。
『< 絶対に断らない >芸能人級の黒髪神美少女に、顔射、ごっくん、中出しのフルコース可能!!!』
次の夜も、また次の夜も、タイトルを変えながらサイト上で募集が掛けられた。次第に明け透けになっていくその文面に惹かれ、しかも参加者は減るどころか、日に日に増えていった。
そんな日々が繰り返されれば、いずれは来るべき日が来る。
「よしよし、ちゃんと妊娠できたみたいだな」
妊娠検査薬を翳す愛梨に、男達は満足げな笑みを浮かべる。
「……はい」
愛梨もまた、酔いしれたような表情でそう答えた。
愛梨が妊娠を完遂してもなお、輪姦は続く。
もはや離れられない。会員達は愛梨から、愛梨は会員達から。
「へへへ、だいぶ腹が出てきたな。今日で10週目か」
「ああ、順調順調」
倶楽部を訪れる数十人の男達は、皆が父親の気分で愛梨の経過を観察する。その視線に晒されながら、愛梨は自慰に耽る。我慢ができない、と全身で訴えるかのように。
※
「麻友、こっちこっち!」
そう声をかけられた麻友は、びくりと肩を震わせる。
相手は、昔麻友をよくからかってきた級友だ。苦手な相手であり、麻友としてはあまり関わりたい相手ではなかった。しかしその誘いに乗って上京したのは、愛梨に纏わる話を出されたからだ。
「あんたに見せたいモンがあってさ」
その言葉と共に手招きされ、麻友は繁華街の奥へと進む。
眠らない街。煌びやかなネオンで目が眩みそうだ。愛梨ならばそのような光景を好んだだろうが、麻友には刺激が強すぎた。気を抜くと、ギラギラとした光に呑まれてしまいそうになる。
路地裏の雑居ビルから入り、3つのエレベーターと2つの連絡通路を経由して、地下3階のの入口へ。どう見ても堅気ではない人間に睨まれながら、分厚い扉を開けば、そこにはネオン街以上に煌びやかな世界が広がっていた。
しかし、麻友の視線を釘付けにしたのはその煌びやかさではない。白いライトが照らす、小高いステージ……そこにいる人影だ。
「愛梨、さま…………?」
麻友は自問するように問いかけた。
彼女は、愛梨の姿を片時も忘れたことがない。辛いことがあれば、太陽のように笑う彼女の写真を見て気持ちを奮い立たせてきた。彼女の溌剌とした声が、いつも麻友の迷いを晴らしてくれた。
ゆえに、そこにいるのが愛梨であることを、彼女の意識は一目で見抜いていた。
しかし──────心がそれを拒絶する。
「あぁアっ、あはぁあああっ!! もっとして、もっと突いて!! まだ足りないの! もっと、もっとグチャグチャにしてっ!! あたしの、頭の中、まっしろにさせてぇえっ!!!」
歪に膨らんだ腹のまま、前後から男に犯され、媚びるような視線を向ける。その姿は、麻友の思う愛梨のイメージとは遠すぎた。
「いいぜ、グチャグチャになんなよ。ほら、“大好きなヤツ”だ」
顔中にピアスを空けたガラの悪そうな男が、喘ぐ愛梨の舌を掴み出す。そしてその舌に何かの錠剤を乗せられると、愛梨は目で微笑みながらそれを飲み下す。
「あっ、あっ……あはっ、あ……♡」
愛梨の表情が輝きはじめた。しかしそれは、かつての彼女のそれとは違う。太陽ではなく、闇にギラギラと輝くネオンサインだ。
「さあ、パキパキにキメてよ、今日も楽しもうぜ!!」
愛梨と同じく目をぎらつかせた男達が、各々道具を拾い上げる。巨大なガラスの浣腸器。腕ほどもあるバイブ。麻友が目にした事もない、用途すら想像のつかない拷問具さながらの責め具……。
「あはっ……」
それを目の前に晒されながら、愛梨は笑う。期待からか、興奮からか、ゾクゾクと身を震わせながら。
「……っ!」
麻友は唇を噛み締める。
寂しかった。愛梨がすっかり遠い所に行ってしまった事。その道はもう自分とは交わらないであろう事。それが分かったからだ。
しかし、同時に彼女は理解していた。
これこそが、眞喜志 愛梨の道。他の誰とも違う彼女が、自らが何者かを模索した末にようやく辿り着いた、探求の果てなのだと。
「…………お幸せに、愛梨さま…………。」
麻友は静かにそう呟く。
煌びやかなライトの中、他者と混ざり合い、至福の笑みを浮かべる愛梨を見つめながら。
終