大樹のほとり

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二度と出られぬ部屋 第三章 肛虐に堕ちる剣姫(前編)

※長くなったため分割します。
 アナル・浣腸・スカトロ回につき、ご注意ください。



■第三章 肛虐に堕ちる剣姫(前編)


 気がつくと、目の前には一人の女がいた。
 髪を丁寧に結い上げ、着物に身を包み、いかにも育ちが良さそうだ。見目もよく、ぜひお近づきになりたいものだが、残念ながら知らない顔だ。
 一体誰だろう。あんな所で蹲って、どうしたんだろう。俺はそう思いつつ、一歩近づいてみる。すると。
「近寄らないで!」
 目の前の女の顔が歪み、大声が発された。
「な……!?」
 俺が面食らい、目を瞬かせた次の瞬間。
 女の姿は変わっていた。髪はそのままだが、着物がはだけ、大事な部分が丸見えになっている。そしてさっきは俺と少し距離があったのに、今はすぐ目の前だ。
「あ、貴方なんかに……!」
 彼女は、恨めしげな眼をこちらに向けている。親の仇を見る目、とはこれのことだろう。
「おい、なんだよ一体!!」
 いきなりの敵意に動揺し、俺はまた目を瞬かせる。
 目を開けると、また目の前の光景は変わっていた。俺の手が届く場所に、女のあられもない姿があるのは同じ。だが今度は、女の表情がすっかり変わっていた。目は涙を浮かべながら陶然とし、半開きの口からは涎があふれている。きっちりと結われていた髪は、乱れて女の白い肌に張り付いている。明らかに、何か起きた後の姿だ。
「あは、あははっ……し、してぇっ……もっとしてぇ……!!」
 女は正気を失った表情のまま、うわ言のようにそう繰り返す。
「おい、しっかりしろ! おい!!」
「無駄だ。すでに堕ちてる」
 思わず駆け寄ろうとした俺を、背後からの声が呼び止めた。
「そいつはもう、ヒトじゃない。豚だよ」
 異様な姿を前にしておきながら、ひどく淡々とした声。その落ち着き具合が、妙に腹立たしい。
「誰だ!」
 俺は苛立ちながら振り向く。

 そこには、光があった。目の眩むような眩い光。そしてその中に、一つのシルエットが浮かび上がっている。

 あれは────



「…………はっ!?」
 
 そこで、目が覚めた。
 紫陽花柄のシーツが視界に入る。すっかり見慣れた、自室のベッドだ。
 少しずつ記憶が甦ってくる。祐希と千代里の被虐を立て続けに目にした俺は、ひどい倦怠感に襲われ、倒れこむようにベッドに入ったんだ。風呂へも入らず、飯も食わずに。

 それにしても、嫌な夢を見たものだ。
 女が壊れていく夢。
 女が壊される場面に耐え切れず、逃げ込んだ先の夢でもあれとは。本当にいい迷惑だ。

 目覚めが悪いと、全てのリズムが狂う。レストランの食事すら味気ない。昨晩は何も食べていないんだから、腹は減っているはずなのに、胃が詰まっている感じがする。
 前々から噛み合わせのおかしい奥歯も鬱陶しい。軽快に食事が進んでいる内ならいざしらず、こういう調子の悪い時だと、煩わしさも弥増すというものだ。
「クソッ」
 毒づく俺の元に、固い足音が近づいてくる。
「あまり、お食事が進んでおられないようですね」
 汚れひとつないタキシードに身を包み、両手に白手袋を嵌めた眼帯男。俺のコンシェルジュである端塚だ。
「ああ。食欲がないんだ」
「それはいけません」
 すでに察しはついていたんだろう。端塚は俺の言葉を聞くなり、パキッと指を鳴らし、近づいてきたウェイターに何か耳打ちする。
 そのウェイターがレストランの奥に引っ込んでから、僅か数分後、クロッシュ付きの皿が運ばれてきた。
 端塚が恭しくクロッシュを持ち上げ、中身を晒す。
「お疲れのようでしたら、こちらなど如何です?」
 現れたのは、ぬらりと艶光る赤黒いもの。縦に細く切ってあり、横に青ジソとすりおろした生姜が添えられている辺りは、魚の刺身を思わせる。
「これは?」
「豚の生レバーでございます。当レストランでは通常提供いたしませんが、特別に御用意させていただきました」
 豚の生レバーときたか。またクセの強いものを出してきたものだ。だが、レバーはとにかく精がつくと聞く。沈んだ気を持ち直すには、これぐらい食っておくべきなのかもしれない。俺だって、好きで沈んでいるわけじゃないんだ。
「じゃあ……」
 箸で1枚摘み上げ、口へ放り込んで咀嚼する。

 美味い。

 ワインよりも、チーズよりも。舌というより、俺の肉体そのものが喜んでいるのがわかる。
 単に鉄分が足りてなかったんだろうか。そういえばこの一週間、昨夜を除いて自慰に耽りまくっていた。それこそ一日5、6回というペースでだ。それだけ射精していれば、鉄分が不足していても不思議はない。 
「なかなか味わい深いでしょう? 豚の臓物は」
 思わず笑みをこぼす俺に、端塚が問いかけた。随分と嫌な言い方をするものだ。

『そいつはもう、ヒトじゃない。豚だよ』

 最悪なタイミングで、今朝の夢の言葉が甦る。こういう記憶こそ、さっさと消え去ってほしいものだ。

「ところで、ご記憶の方は如何です? 御自身の事に関して、何か思い出されましたか?」
 端塚は、レバーを食べ進める俺に対して質問を重ねた。
「いや」
「……左様ですか」
 俺が否定すると、端塚は残念そうに視線を落とす。
 気になる反応だ。俺の記憶とは、こいつらにとっても特別な物なのか? だからこそ、こうも手厚いサービスをしてくるのか?
「承知いたしました」
 端塚はすぐに顔を上げ、俺の方に笑顔を向ける。
「お食事が済み次第、昨日同様、各フロアの展示を心ゆくまでご堪能ください。地下15、16階はすでにご覧になられたようですから……本日は、地下17階など如何です?」
 映画鑑賞でも勧める気軽さで、端塚は言った。実際こいつらにとっては、あれも興味深い映画同然なのかもしれない。だが俺には、目の前で壊されていく子を役者として見るのは難しそうだ。
「それなんだが……俺は、見たくない」
 はっきりと否定の意思を示す。俺を厚遇するこいつらのこと、当然この意思も尊重されるだろう。そう俺は思っていた。
「いえ。こればかりは、是が非にもご覧になっていただきたい。」
 まさに予想外。端塚の口から発せられたのは、有無を言わせぬ強制の言葉だった。
「なに……?」
「お気を悪くされぬよう。必ずや、あなた御自身の為になることです。他に時間を潰せるものも、ここには御座いませんので」
 端塚は、落ち着き払った口調でそう言い含める。
 確かにこの一週間は、生ぬるい地獄のようだった。リラックスできる時間とは、日々忙しくしていればこそ尊いもの。記憶がなく、ただ時間を浪費するばかりの身にとって、休息はむしろ苦痛だ。何かしら動いた方が楽なのは間違いない。

 しかし、『あなた御自身の為になること』とは、どういう意味だろう。



                     ※



 地下17階。凛としたポニーテール少女が、エレベーターから下りていった場所だ。
 地下15階、16階と、エレベーターで見かけた少女の被虐が続いている。『最悪な偶然』が三日続くなんてありえない。俺はそう希望を抱きつつ、部屋の扉に近づいた。
 部屋の入口には、地下16階の時と同じく銀プレートが掛かっている。
『SM』
 たった二文字の言葉。意味は知っているが、現時点での理解などに意味はない。扉の先にある光景はきっと、俺の価値観を塗り替えるだろうから。


 扉を開けた時、最初に受けた印象は『資料館』だった。
 白い壁に四方を囲まれた、だだっ広い空間。壁には無数の写真が飾られ、その壁に沿うように、ガラス製のショーケースも設置されている。さらにいくつかの場所では、展示映像も流れているようだ。
 それら展示物の前には、黒山の人だかりが出来ていた。どいつもこいつも目をギラつかせ、口元を緩めて、食い入るように展示物に見入っている。その中に混じるのは抵抗があるが、端塚の言葉を信じるなら、俺自身の為にもそうするしかないようだ。
 順路と書かれたパネルに沿って、入口左手に進んだ俺は、三日続けての『最悪な偶然』に出くわすことになる。
<現在の調教対象>
 その表記と共に、何人かの少女の写真が壁に貼られていた。全部で6人。全員が一糸纏わぬ丸裸に剥かれ、怯えや戸惑いの表情をカメラに収められている。そしてその中に、例のポニーテールの少女もいた。彼女だけは他の5人と違い、床に正座したまま堂々とカメラを見据えている。目尻のくっきりとした吊り目からは、相当な意思の固さが窺えた。
 彼女の強さは、展示にもはっきりと残されている。

『1日目』
 さらに左に進むと、そんなプレートが目に入った。視線を巡らせれば、少し離れた場所に2日目、3日目のプレートも見える。どうやらこの部屋では、調教初日からの少女の様子を記録し、それを順に展示しているらしい。
 展示を見る限り、調教対象の子が初っ端にやられたのは、浣腸のようだ。6つの瑞々しい裸体が横並びになり、尻を突き出している様。その初々しい肛門が指で拡げられ、つぶさに観察される様。そして、針のない巨大な注射器のようなものが、その肛門へと突き立てられている様。それがすべて写真に収められ、展示されている。
 前から写した写真も1枚あり、そこでは5つの口が大きく開かれ、何かを叫んでいる様子が見て取れた。ただ、左から二番目……ポニーテールのあの子だけは、心頭滅却とばかりに平然としている。ショーケース横で垂れ流されているモニターの映像では、その違いが更に顕著だ。


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『い、いやあ……っ!!』
『お願いっ、見ないでくださいっ!』
 映像内に哀願が響き渡る。
 哀れな6人の娘は、蹲踞の格好のまま、首と両の手首が一直線に並ぶように木枷で拘束されていた。膝下が縄で結ばれているせいで、立ち上がることすらままならない。当然、胸やアソコを隠すような配慮があるわけもなく、丸裸を晒すがままになっている。
 年頃の娘にとっては、これだけでも耐えがたい苦痛だろう。だが、彼女達の表情を歪ませる直接の原因はそれじゃない。
 最大のストレス要因は2つ。1つは、浣腸のせいで極限まで高まった便意。そしてもう1つは、それを必死で耐える顔を、真上から客に覗き込まれている状況だ。
『ひひひ、堪りませんな。化粧を覚えたてのうら若い娘が、必死に生理的欲求に抗う顔は』
『ええ。この紅潮した頬と、荒い息がまた。最愛の恋人とのセックスに耽っているかのようだ』
 初日にこの部屋を訪れた客だろうか。冴えない中年男十数人が、6つの顔を覗きこんでいる。両手で顔を挟み、逆向きのキスを迫るように顔を寄せる男。ぐるぐると鳴る腹に耳をつけながら、逸物を扱きたてる男。変態共の行動は色々だ。そしてそのすべてが、少女達の顔を引き攣らせていた。
 ただ1人、ポニーテールの娘を除いて。
 彼女だけは、客達が何をしようと動じず、鋭い眼光で前を見据えている。凄まじい目力だ。祐希が体育会系だとするなら、こっちはまさに武人。画面越しでも、触れれば切れるような雰囲気を纏っているのが伝わってくる。エレベーターで見た時は気さくな印象だったが、あれは気の置けない友人に向けた態度なんだろう。

『この状況でまだ睨めるとは、大した反骨心だな』
『廣上 藤花(ひろがみ とうか)、満17歳。兄一人、弟四人の父子家庭で育ち、実家は剣術道場……か。なるほど、勇ましくもなろうというものだ』
『ほう。剣術をやるとは聞いていましたが……廣上流でしたか』
『ご存知なんですか?』
『ええ。廣上流といえば、スポーツ剣道とは一線を画す“撃剣”の流派として、一部で有名なんですよ。組んで良し、蹴って良しの超実戦派としてね。しかもそこの一人娘といえば、去年、女子剣道の全国大会で優勝しているはずですよ』
『なるほど、それで。こうして視線を浴びていると、首後ろがヒリつくわけです。パンフレットによれば、末の弟曰く「お弁当がおいしい、優しいおねえちゃん」だそうですが……』
『身内には甘いんでしょうなあ。その甘さを異性にも向けられれば、さぞ生きやすかろうに』
『まったくです。凛とした美人で、スタイルも極上なのにねぇ』
 客達はパンフレットを手に、ポニーテールの少女を品評する。確かに、藤花と呼ばれたその少女は見目がいい。キリリと整った顔、弛みなく引き締まった身体。まさに女剣士という佇まいだ。
 6人の中で彼女だけは、蹲踞の姿勢のまま腰がぶれていない。彼女とて、他の5人同様に浣腸を施されているんだ。その影響は、当然ながら表れている。額や胸にはじっとりとした汗が浮き、悪意をもって揉みしだかれる下腹部からは、ゴロゴロ、ギュルルル、という、人間として当たり前の『便意の音』が響いている。他の娘はその苦痛と恥辱に耐えきれず、顔を左右に振ったり、不自由な身を前後に揺らしたりと大変な暴れようだ。その中で、膝を床と平行に保ちつづける藤花の姿は異彩を放っていた。根性もすごいが、足腰の強さも尋常じゃない。

『ああああっ!もうだめ、もうだめえぇぇっ!!』
『と、トイレに、トイレに行かせてください!もう、本当に漏れちゃう!!』

 さらに数分が経った頃、映像内は阿鼻叫喚の地獄と化していた。年端もいかぬ少女達が涙を流して哀願し、それを中年男が笑い、そして決壊が始まる。ブリブリと音を立てて、足元に置かれた盥の中に軟便が排出されていく。
『ははははっ、出たぞ出たぞ!』
『おお臭ぇ臭ぇ! 華の女子高生っつっても、クソの匂いはそこいらのババアと変わんねぇな!?』
 客達は大仰に鼻をつまんで謗り、加虐対象から涙を搾り取る。
 その中でもなお、藤花だけが胸を張り、眼に光を宿し続けていた。その光は、客の節ばった指がぐりぐりと尻肉の合間に捻じ込まれてからも、その果てにとうとう限界を迎えて排便が始まってからも、揺らぐことはない。
『はっ。コイツ、ぶっ太ぇ一本糞ひり出しながら、まだ格好つけてんぞ』
『恥じらいってもんはねぇのか? 仮にも年頃の女だろおめぇ!』
 そう嘲る客達は、からかい半分、悔しさ半分という様子だ。なおも目尻の下がらない藤花の瞳が、その連中を睨み据える。
『こんな事で傷つくほど、俺の矜持は柔じゃない』
 藤花は堂々とそう言い放った。一人称は“俺”だが、耳慣れたそれとは印象が違う。“お”と“れ”の両方にアクセントがつくそれは、『己(おのれ)』を縮めた感じだ。少女には本来似つかわしくない自称。だが、風変わりな口調共々、不思議と違和感はない。そもそもが抜き身の刃という雰囲気で、女の子らしいイメージとはかけ離れているせいだろうか。
『ふ……。いかにも古流の剣術道場で育ちました、という感じだな』
『ええ。この気概、今時の若い男にも見習ってほしいものです』
 客もそんな藤花の態度を面白がっている様子だ。
 ただ、皆が皆そうってわけじゃない。

『さっきから、客になんて眼ェ向けてやがんだ。このオトコ女!!』
 一人が怒声を上げ、藤花の髪を掴み上げる。藤花達の後ろで腕組みして様子を見ていた金髪男だ。
『ぐっ!?』
 藤花の口から、初めて苦悶の呻きが漏れる。髪の生え際が変形する程なんだから、無理もないが。
『いいかオトコ女。お前ェはよ、お客様にイジメて楽しんでいただくための奴隷なんだよ……ガン飛ばしてんじゃねぇッ!』
 男は掴み上げた手を左右に振り、藤花の苦痛を煽ると、荒々しく手を離す。これにはさすがの藤花もぐらつき、ついに右膝を床についた。
『貴様……ッ!』
 いよいよ眉を吊り上げ、紙を翳せば火が点きそうな勢いで男を睨む藤花。
『だぁら、睨むなっつってんだろうがよ!』
 男は忌々しげに舌打ちしつつ、煙草の煙を吐きだした。
『あくまで上等コクってんなら、こっちにも考えがあんぜ』
 そう言って、別の男に目配せする。その男は頷き、床にバッグを置くと、中から道具を取り出しはじめた。
 千代里が喉奥調教される際に見た、凹凸のある細い棒。真ん中が膨らんだ、様々なサイズの栓のようなもの。やたらに長さのある、男性器を模したディルドー。蛇腹のバイブ。無数のビー玉に、スーパーボール。
『……っ!』
 床に置かれていく多種多様な責め具を見て、藤花の表情が強張る。その目の前で、チンピラ男が道具の一つを拾い上げた。
『今晩からは、テメェだけ特別調教──通称<Bコース>だ。フロアの調教師総がかりで、そのプライドへし折ってやんよ』


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 ここで一旦映像が途切れ、暗転の後、最初の浣腸我慢のシーンが再生されはじめる。このモニターで見られる映像はこれだけらしい。

 左へ目を映すと、映像の続きと思しき写真が展示されていた。
 少女が、客から色々な変態プレイを受けている。
 ある写真では、客を前にして、がに股での指入れオナニーをさせられ。
 ある写真では、生クリームとチョコで彩られた女体にむしゃぶりつかれ。
 ある写真では、両手を吊り下げられた状態で鞭を打たれ。
 ある写真では、乳房と割れ目を中心に蝋を垂らされて絶叫していた。
 しかし、そこには5人の少女しか映っていない。俺が一番関心を持っている、藤花の姿がない。
 と、ここで俺は、今見た写真の上に<Aコース>と書かれた紙が貼られている事に気がついた。そしてそこから少し左下に、<Bコース>という紙があり、その下に1枚だけメモがピン留めしてある。
『1日目 後半のダイジェスト映像を作成しました。モニター2をご覧ください』
 その文章と合わせて、左下を示す矢印が書かれている。果たしてその矢印の先では、また一台のモニターがある映像をリピートしているようだ。


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 他の5人が客相手にSMプレイを繰り返している間、藤花だけは、何人もの調教師から入念なアナル開発をされていたようだ。

 俺がモニター2で観た最初の映像は、バスルームに這う格好で拘束された藤花が、シャワー浣腸を受けているシーンだった。
 シャワーの勢いは強いらしく、シャアアアという水の流れる音がし、肛門からは次々に水があふれ出てもいた。
『どうだ、感じるか?』
 ぼそりと、映像に声が入る。
『こうやってぬるま湯を流し込めば、腸内の洗浄と拡張が同時にできる。そして、排泄の感覚をずっと味わわせる事もできる。腸壁に水が当たる感覚を、しっかりと意識しろ。排便の快楽に酔え』
 口を開けずに喋っているのか、言葉が聞き取りづらい。だがどうやら、腸内感覚に意識を向けるよう促しているようだ。
 俺が観た限り、藤花に大きな動きはなかった。引き締まった張りのある尻肉をカメラ側に向けたまま、ただじっと四つん這いの姿勢を保っている。
 だが、数分してようやくシャワーホースが抜かれ、男が指で尻穴をほじくり回す段階になれば、少しずつ変化が表れはじめる。腸内にかなり水が残っているんだろう。男の指が穴に出入りするたび、ぶびっ、ぶびびっ、と何かを漏らすような音がバスルームに響く。するとその音に反応するように、理想的な流線型の太股がぴくぴくと蠢くんだ。ほんの僅かな筋肉の隆起だが、そこには藤花という誇り高い女の恥じらいが見て取れる。
 俺でさえ視認できるんだから、間近で尻を眺めている男が気付かないわけもない。それでも男は、あくまで淡々と作業をこなしていた。歯科医が嵌めるような手袋を嵌め、最初は中指で、さらにはそこに薬指も添えた二本指で、じっくりと肛門をくつろげていく。時々わざと二本指に隙間を作って腸内に空気を入れ、ぶりっ、ぶりっ、と放屁のような音をさせるのが嫌らしい。
 多分それは、客を喜ばすためのパフォーマンスだ。バスルームの壁は四方がガラス張りになっていて、中の様子が外から覗ける。そして映像内では、バスルームを囲む形で十数人のギャラリーが張りついていた。外の声は映像にほとんど入ってはいないが、それでも藤花の名前を叫んだり、侮蔑的な言葉を投げかけていることがわかる。だからこそ藤花は、両肘の合間に顔を埋めるようにして、バスルームのタイルだけを見据えていなければならなかった。たとえ、自らの肛門からブリブリとあられもない音が響こうと。四方からどんな謗りを受けようと。


 ここで一度画面が暗転し、すぐに別の場面が映し出される。
 藤花は、頭を床につけ、尻を高く上げる格好で手足を拘束されていた。両膝の裏にバーを通され、そのバーに手枷へ繋がる鎖を固定した、厳重な拘束。さっきのバスルームにしてもそうだが、よほど藤花に暴れられるのが怖いとみえる。
 その藤花を、2人の男が見下ろしていた。
 最初の映像に映っていたチンピラ同様、ガラの悪い2人だ。
 1人は肩にドクロのタトゥーを入れていて、タンクトップで上半身の筋肉とタトゥーをアピールしている。もう1人は唇にピアスを開け、アゴ髭を蓄え、ダボダボの迷彩ズボンで下半身を大きく見せている。その見た目は、威圧的の一言に尽きた。
 まずは刺青男が屈み込み、藤花の尻肉を親指で割る。
『お、シャワ浣でちっと拡がってんな。ヒロキもやるじゃん』
 刺青男が笑みを浮かべる中、迷彩ズボンの男がガラストレーから氷をつまみ上げた。かなり大粒の氷だ。
『なっ! ま、まさか……それを入れる気か……!?』
 藤花が目を見開く。どう見ても無理のある氷のサイズに、動揺を隠せない様子だ。
『オウ。なに、やっちまえば簡単よ』
 迷彩ズボンの男はそう言いつつ、指の中で氷を転がす。
『こうして指の熱で表面を溶かしゃあ、粘膜に張りつく心配もねぇ。解けかけた氷面の水は、この世で最高の潤滑剤だ』
 節ばった指が氷を弾き、刺青男の手中にパスを通した。刺青男は手首を振って水気を切り、氷を指に挟みなおす。
『おら、ケツ穴にグッと力入れろ。の方が入りやすいからよ』
 刺青男の親指が、氷を菊の輪に押し込んでいく。
『ぐっ! や、やめろ、無茶だ! 入…らない……っ!!』
 藤花から苦しそうな声が漏れた。口調こそ男のそれだが、声はやはり女の子だ。恐怖で震えているぶん、余計に。
『バーカ、もう8割方が入ってんだよ。後はお前ェがケツ穴締めて、腸ン中に収めりゃ終いだ』
 刺青男はそう言って、親指の腹を肛門内に押し込む。
『ぐううっ!!』
 ここでカメラが側方に回り、藤花の横顔を捉えた。目を瞑り、歯を食いしばり、かなり苦しそうだ。だが、それはほんの数秒のこと。
『……あ……?』
 次第にその表情筋は弛み、戸惑いがちに背後を窺う。
『どうだ、大したことなかったろ? 氷ってなぁ、ケツ穴拡げんのにえれぇ便利でよ。滑りがいいぶん、未拡張でもスルッと入っちまうが、硬ぇから圧迫感が半端ねぇ。でもって最高なのが、腸のあったかさで溶けて液体になる事よ。なんせ、ケツに一番負担のかかる“固形物をひり出す”って動作がいらねぇんだからな』
 男はそう解説しつつ、2つ目の氷を肛門に押し当てる。
『ぐっ……う゛!!』
『いい声出んなオイ。後は楽っつっても、入れる時ゃあ苦しいもんなぁ? ケツ穴が裂けるだとか、括約筋が切れるだとか、大袈裟な奴だと骨盤が軋むなんて戯言抜かすガキもいるぐれぇだ。お前はなんて音を上げるんだ、ええ剣道女。 竹刀でアナニーした時よりイタイですぅ~ってか!?』
『ギャハハハッ、いいねぇ竹刀アナニー! そりゃ、オトコ女の思春期にあんな棒がありゃ、ケツにも入れてみようってもんだわなぁ。それか、親父に折檻でぶっ込まれたとかよ!!』
 刺青男が茶化し、迷彩ズボンが手を叩いて笑う。
『……言葉を慎め、下衆が!』
 竹刀と父を引き合いに出されたのが、逆鱗に触れたのか。藤花は右頬を地面につけたまま、凄まじい眼光で迷彩ズボンを睨み上げる。
『お前超睨まれてんじゃん。つか、こっちにも殺気向けてる?こいつ』
 刺青男が鼻で笑い、迷彩ズボンの男に手招きのような動作をする。
『ああ、生意気な眼ェしてやがんぜ。よっぽどイジメてほしいみてぇだ』
 迷彩ズボンの男は、そう言って氷入りのガラストレーを蹴飛ばした。刺青男がそのトレーを受け取り、氷を掴み上げる。一気に、3個ほどを。
『うーし、んじゃ望み通りヤキ入れてやんよ。つっても、冷てぇヤキだけどなあ!』
 刺青男の声は、恫喝する声色そのものだ。そして奴の殴りダコのある手は、氷を次々に藤花の肛門へと押し込みはじめた。桜色の蕾が小さく盛り上がり、開いては閉じる。
『う゛、あ゛! ……く、うう゛!!』
『もっと声出せよ。出せねぇってんなら、出るようにしてやろうか? おらズッポンズッポン……どんどん入ってくぜえ!!』
 刺青男に遠慮はない。指の力に任せて、立て続けに氷を押し込んでいく。
『う、うう゛っく、ぁ、あ゛あ゛……!!』
 藤花は、必死に耐えていた。手枷で拘束された手を床につき、肘をぶるぶると震わせて。


 調教師達によるアナル開発は、悪意に満ちていた。少しでも藤花の羞恥心を煽り、無様な反応を引き出そうと計算し尽くしているように。
 例えば次の映像では、藤花は『マングリ返し』の格好で拘束されたまま、延々と尻穴を弄られていた。それも、ローションボトルの中身を直腸内に流し込んだ上で、時に激しく、時にゆったりと、円を描くように二本指でかき混ぜるやり口だ。こんな事をやられれば、当然腸内を経たローションが顔や乳房に浴びせかかる。普通の人間なら、激しく顔を振って半狂乱になるような状況。
 その次の映像では、藤花は肘掛けと背もたれのある椅子に大股開きで拘束されたまま、やはり尻穴を弄りまわされていた。用いられているのは、指とアナル用のディルドー。そして途中からは、何らかの薬液を肛門内に注ぎ込み、その上で指や道具の出し入れを続けて、藤花に恥を掻かせようともしていた。
 ところが。
 藤花は、このどちらの責めに対しても、大きく取り乱すことなく耐えていた。もちろん生理的な反応はある。指責めが続いたり、薬液の効果で腸の蠕動が始まると、手足の指が握り込まれる。息は次第に荒くなり、汗も全身に浮き出てくる。それでも彼女は声を漏らさず、じっと調教師の顔を睨みつけていた。大股開きのまま排便という生き恥を晒し、調教師と客から心無い罵声を浴びた時でさえ。
 まさに鋼の心。俺は映像を見ながら感服した。映像内で繰り返される『オトコ女』とはまったく違う意味で、彼女は大和男児の魂を持っていると感じた。

 だが、そんな鋼の心が発揮できるのも、あくまで意識があるうちだけだ。彼女は夜通し嬲られているようだった。いかに剣術で鍛えていようと、いずれは体力の限界がやってくる。恥辱責めで疲弊していれば尚更だ。
 モニター2の最後の映像は、藤花が緩く湾曲した台の上にうつ伏せで寝かされ、四肢を台の根元に括りつけられるシーンから始まった。
 そうして身動きを封じられた彼女のアナルを、一人の調教師が割りひらく。
『へへへ……たまんねぇな。クールJKのケツマンコか』
 そいつは身の毛がよだつような笑みを浮かべながら、指で露出させた蕾に吸い付いた。
『!!』
 藤花はその一瞬だけ身を強張らせたが、その後は持ち前の精神力でもって耐える。ただし、最初の内だけだった。
 ここで、左上に<早送り>というメッセージが表示され、右上で経過時間がカウントされはじめた。3分、4分、5分……と時間が進み、12分を超えた頃。映像内の藤花の後頭部が、がくっと下がった。かろうじて背中に乗っていたポニーテールも、その衝撃で肩を滑り、耳を覆うように垂れ落ちる。眠ったんだとはっきり判る脱力ぶりだ。
 藤花が“落ちて”からも、肛門を舐る男は動きを止めない。様子を伺うために顔を上げることさえせず、肛門を舐ることだけに専心している。
 よくよく注視してみると、そいつの舌使いは恐ろしく巧みだった。窄まりに存在する皺の一本一本、およびその合間に至るまでを掃除するがごとく、尖った舌先を丹念に往復させる。あるいは舌を平らにし、輪全体をべろりと舐め回す。時には尖らせた舌で浅く肛門入口をくすぐったり、時には驚くほど深くまで捻じ込むこともする。肛門に唾液が溜まってくれば、蕎麦でも啜るように、ずずーっと吸い尽くす。これを、一秒も休まずにずっと続けているんだ。
 俺にアナルを舐められた経験はない。それでも、あの舌使いがとんでもなく気持ちがいいのは容易に想像できてしまう。あれを受けて射精せずにいられる自信は、正直ない。
 そして気持ちがいいのは、藤花であっても同じようだ。

『……うあ…!』
 『…う゛あっ……』

 本当に、本当に小さな呻きが、藤花の口の辺りから漏れ聞こえる。彼女のうなじは依然として斜め下を向いているから、意識が戻ってはいないようだ。つまり、あれは無意識の喘ぎ。
『くふふっ……!』
 ここでついに、アナルを舐めしゃぶっていた男が笑みを浮かべる。しかし、それだけだ。ほんの一瞬嬉しそうにしただけで、また尻穴責めに没頭しはじめる。まさに狂気。そして、その生暖かく弾力のある狂気に晒されつづける藤花には、着実に快感が堪っていく。
 ぐちゅぐちゅ、ぴちゃぴちゃという水音と、藤花の喘ぎだけが繰り返される空間。それを見守るギャラリーは、少ないとはいえ何人かはいるようだ。しかし意地の悪い事に、誰も野次を飛ばさない。面白そうに状況を見守るばかり。騒がしくなって藤花が目を覚ませば、また肛門の快楽に抗えるだろうに。そうはならなかった。

『……あ、うあ…… ぅうう…あぁぁ……!
  はぁ、っう、は…く、ぅあ……あふゅっ……ううあ……っ!!』

 藤花の上げる声は、ますます艶めいてきている。女が──いや人間が、本当に気持ちいい時に出す声という感じだ。それこそ男が心ならずも射精してしまう時のような、か細く、情けなく、心地良い響きがそこにはあった。
 そしてこの段階になって、とうとう藤花の肉体までもが主を裏切りはじめた。まずは、びくっびくっと腰が跳ね、腰と肩に震えとなって伝播する。背筋には深々と溝が刻まれ、肩甲骨まわりに複雑な隆起ができ、剣道で鍛え上げられた背中の表情をいよいよ彫りの深いものにしていく。
『ほぉう……!』
『……すごいカラダですな、改めて』
『いやぁ、エロい……!』
 静まり返っていたギャラリーさえ、その肉体美を目の当たりにして溜め息を漏らすほどだった。
 一体どんな種類の、どんな深さの快感を得れば、ああも身体が反応するのか。それを知る術はない。モニター2はこの直後、継続する世界を淡々と映しながら、いきなり暗転してしまう。


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 そう。メモにあった通り、この映像はあくまでダイジェストなんだ。起きた事のすべてが、余すところなく記録されているわけじゃない。
 俺は、食い入るように見つめていたモニターから顔を離しつつ、そんな当たり前の事実を思い出していた。
 そして、映像と写真はまだまだ存在する。俺がいま目を通したのは、あくまで『1日目』の記録なんだから。



                     ※



 会員に限り無料の自販機で喉を潤し、部屋中央のソファで気持ちを鎮めてから、『2日目』エリアへと足を運ぶ。
 若干の人だかりに紛れて身を乗り出すと、ちょうどモニター3で映像が再生されている最中だった。


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 モニター3の映像は、重苦しい羽音と共に始まった。
 電気マッサージ器の駆動音だ。
 映像では、まず秘部にマッサージ器を押し当てられる藤花の様子が大写しになっていた。ボンデージスーツというんだろうか、前面が編み上げになった黒いレオタードのようなものを着せられている。両足も膝上までストッキング状のもので覆われているから、露出度はこれまでの動画より格段に低い。だが、肝心の乳房と股の部分に大きな穴が開いているせいで、むしろ全裸よりも性的な印象が強まっていた。
『……くっ、はっ、はっ……。ああ、はっ、は、ぁ……お゛』
 もうかなりの時間、責めを受け続けているんだろう。がに股の格好をとる藤花の内腿には、とろとろと愛液があふれていた。太股から下もプルプルと震えているし、引き締まった腹筋もうっすらと浮き出ている。
 そんな状態でも、やはり藤花に逃げる術はない。意外に細い彼女の両腕は、頭後ろに回されたまま、おそらく縛り上げられている。不完全な菱形を作る脚は、その両足首を鎖でどこかに繋がれている。ゆえに彼女は、どれほど脚が震えようとも、衆目の中で直立を続けるしかない。
 女の部分に押し当てられるマッサージ器も、いやらしいテクニックで藤花を追い込んでいた。やや浮いた形でソフトにクリトリスへ触れていたかと思えば、大雑把な感じで割れ目全体に押し付けられる事もある。あるいは、すっかり紅く充血した肉ビラを左右に押しのけるようにして、割れ目へ沈み込むことも。特に致命的な快感をもたらすのは、割れ目をなぞりつつ下からクリトリスを押し上げる形のようで、これをやられた時には藤花の反応がすごい。
『んぐうぅっ!!!』
 それまで必死に声を殺していた藤花も、この時ばかりははっきりとした呻きを上げた。太股の筋肉が絞り込まれるように変形し、上下に震える。足首の鎖が音を立てる。割れ目から愛液が垂れ落ち、足元に広がる液溜まりに弾けていく。イッたんだ──子供でもそう解るぐらい、明白な反応。

 しかもこの責めには、もう一つ意地の悪い点がある。
『はっ、またかよ。これで何度目だ? オトコ女の分際で、メス気取ってマンコ逝きしてんじゃねーよ!』
 調教師がそう野次を飛ばし、項垂れ気味だった藤花の顔を上げさせる。キリリとした口の端からは、透明な涎が垂れていた。
『おーお、また睨みやがる。結構なこったが、その力はケツに向けた方がいいんじゃねーか? ちっと抜けてきてんぞ、マンコで逝くたびによ。散々言ってるが、落としたらお仕置きだぜ』
 その言葉で目を凝らせば、秘部を覆うマッサージ器の奥には、確かにバイブのグリップ部分が見える。マッサージ器の重低音が大きすぎて、駆動音は聴こえない。しかしグリップ部分が円を描くように蠢いている以上、先端部は藤花の腸内をかき回しているんだろう。
 舌での舐りであられもない声を発する藤花のこと、肛門の感度は人並み以上にある。腸のバイブだけでも息を荒げさせるに充分なはずだ。その上で秘部にもマッサージ器責めとは、どれだけの速度で余裕が剥がれてしまうことか。
『貴様ら……俺の尻穴を拡げたいのか、締めさせたいのか、どっちなんだ』
 藤花が調教師を睨みながら問う。喋ると、息が上がっているのがよくわかる。
『どっちもだ。拡げて、締めさせて、その繰り返しでケツ穴をほぐすんだよ。ついでにアナル性感も目覚めさせてやる。ケツだけでイけるようにな。嬉しいだろ、俺女?』
 調教師はそう煽りながら、マッサージ器の角度を変え、睨む藤花の顔を歪ませる。
 そして、責めはこれだけじゃない。

『うし、10分だ。スクワット始め!』
 ストップウォッチを手にした一人が、タイマーを止めつつ叫ぶ。藤花の瞳が大きさを増した。
『おー、もうそんな時間か。かぁっ、腕が乳酸でパンパンだぜ』
 マッサージ器を押し当てていた男も、一旦機械のスイッチを切り、下げた腕を揉みはじめる。リラックスする男の前で、いよいよ強張った雰囲気になるのが藤花だ。ぽたっ、ぽたっ、と割れ目から雫を垂らしつつ、唇を噛みしめている。
『さっさとやれや!!』
 巻き舌の怒声が飛ぶと、藤花はさらに唇に深く歯を立ててから、ゆっくりと腰を下ろす。
『ハイいーち、にーい! おっせぇなオイ、剣術道場で鍛えてんじゃねぇのかよ。それでそのザマか?』
『はっ。女とハメてるばっかの俺のが、まだ足腰強ぇんじゃね?』
 チンピラ連中は野次を飛ばし、客の笑い声が続く。好き勝手言うもんだ。何度も絶頂させ、下半身の力を奪ったのは連中だというのに。
『……はっ、はっ!……ぐ、くっ…は、はあっ……!!』
 藤花は必死にスクワットを繰り返す。時おり身体が前後に揺れるが、その時は歯をがっちりと噛み合わせ、強引に上下運動を続行する。眉を顰め、肌の露出した部分から大粒の汗を垂らし、荒い息を吐きながら。

『大した体幹だよ。あれだけイカされた直後に、ここまで綺麗なスクワットをやるかね』
『しかも、膝が直角になるまで腰を深く落としてね。生真面目なんでしょうなあ。スクワットといえばこう、という信念が見て取れますよ』
『所詮、見世物のショーなのにねぇ。ご覧なさいよ、見事な乳房が上下に揺れて……』
『ボンデージはやはりいいな。隠れている部分があればこそ、乳房の印象が際立つ。もっとも、あの娘なら全裸でも見応えがあるがね』
『すごいボリューム感ですねぇ、Fカップもありえそうな。まったく、神様もいい趣味をお持ちですよ。男を気取る身に、街ゆく女の大多数より優れたスタイルを与えるんですから』
『や、まったく。身体も垂涎モノですが、顔つきもまた良いですなあ。体力のない子にこの責めをやらせれば、ゼエゼエとみっともなく喘ぎ、涙や鼻水まみれのブザイク面を晒すものです。ところがあの娘は、汗こそ凄いが、まだまだキリリとした表情を保っている。まさに珠玉の逸品だ』
『たしかに。“蒼蘭の剣姫”と持て囃されるだけのことはありますな』

 客は、藤花の肉体に無遠慮な視線を注ぎつつ、欲望まみれの言葉を口にする。藤花は前を向いて黙々とスクワットをこなしていたが、その皺の寄った眉根からは、下卑た人間に対する嫌悪感がありありと見てとれた。

 がに股でのマッサージ器責めと強制スクワットの映像は、編集で早送りされつつ、さらに2回繰り返された。映像右上に表示されている経過時間は、実に42分強。それだけの時間、絶頂と屈伸運動を交えて責め抜かれれば、どんなフィジカルエリートにも限界が来る。
 俺が観た限りでも、4巡目の『がに股電マ責め』。それを受ける藤花の姿は、見るも無惨だった。
『はっ、はひっ、んはあ、は……お、おぉ゛っ、はっ、お゛……!!』
 武道家らしからぬ、完全に乱れた息。そこに時おり、「お」行の喘ぎが混じる。本当に余裕がないときにヒトが発する息と声だ。
 映像の最初では、足で菱形を作りながら、重心をかろうじて身の中心に置いていた藤花の肉体。それももうガタガタだった。
 脚の菱形は崩れ、左右バラバラに曲げられたまま、病的に痙攣しつづける。
 『電マ』を押し当てられる割れ目からは、水道の蛇口を押さえた時のように水飛沫が飛び散り、ぴしゃぴしゃと液溜まりに音を立てる。
 そして腰は、間断なく与えられる快感から逃れようとするかのように、前後に揺れつづけていた。
『はっ、腰がカクカク動きまくってんぜぇ剣姫サマよ。あんまり俺らの責めがタルいんで、素振りでも始めちまったか?』
 マッサージ器を握る男がそう茶化して、場の笑いを誘う。剣術に絡めた揶揄は、藤花がもっとも嫌うところだ。
『…………!!』
 藤花の口がパクパクと開閉する。あるいはこの極限下でもなお、彼女は何かしらの反論を試みていたのかもしれない。しかし、その動きを悟ったのか、ただの偶然か。マッサージ器の軌跡はこの時、藤花の弱点ルートをなぞっていた。割れ目をなぞりつつ、下からクリトリスを押し上げる、あれだ。


『 んンおお゛ぉ゛ぉ゛っ!!! 』


 すごい声が、映像内に響き渡った。俺の視界の端で、隣のエリアの連中がこっちを向いたぐらいに。
 藤花は誇り高き『大和男児』だ。他人から嘲笑われることを良しとせず、声だって限界まで我慢する。その藤花の喉からそんな声が漏れたというのは、大変なことだ。
 奇声からわずか一瞬の後、藤花は、内で何かが爆発したような有様を晒していた。
 伸びやかな脚は、奇跡的にまた菱形を作り……ただし、異常なほどの爪先立ちになっている。指の先だけがかろうじて床に接している状態でも直立を保てるあたりは、さすが足で地を噛む古流武術の手練れというところか。
 しかしその手練れの顔は、救いを求めるように天を仰ぎ、白い喉を蠢かしながら涎を伝わせるばかり。
 そして、彼女の女の象徴からは、ついに透明な奔流があふれ出す。愛液が飛沫きとはまるで量が違う、明らかな失禁だ。
『はははっ、とうとう漏らしおったわ!!』
『あーあ、あんなヒドイ声だして、オシッコまで漏らして。あれのどこが“天才女子高生剣客”よ』
 悪意ある謗りの中、事態はさらに悪くなる。
 絶望的なまでに深い絶頂は、うら若い天才剣士に極度の緊張を与え、その後に究極の弛緩をもたらした。
 藤花の足の合間で、バイブの取っ手が長さを増す。それは重力に引かれ、ずるりと抜け……液溜まりの中に存在感を示した。ばしゃあっ、という音。蟲のようにのたくるピンク色の本体。外へ出たことで、ようやくマイクに拾われるようになった、ウィンウィンという駆動音。これだけの条件が揃っていて、気付かれないということはありえない。
『おいおいおい、バイブが抜けちゃったじゃねぇかよ!』
『ケツの穴締めてろっつったよなぁ。ったく……んなにお仕置きしてほしいのかよ、このドマゾ野郎が!』
 調教師が大声を張り上げ、客が多いに笑う。
『………殺して、やる……。貴様ら、全、員……』
 首を戻した藤花は、目頭から涙を伝わせつつ、呪詛のように呟いた。だがそれすら、絶対的優位にいる男共は笑いのネタにしてしまう。
『へぇ。そんだけ足ガクガクで、俺らが殺れるわけ? 面白ぇじゃん。んじゃ、ちっと拘束解いてやっからよ、殺れそうなら殺れや。あ、お客さんらはケガしちゃコトなんで、悪いっスけど端に避難しといてもらえます?』
 チンピラ風の男がそう言って、藤花の足枷を外しにかかる。同時に別の調教師も、藤花の頭後ろで手枷を外しはじめた。どっちも喧嘩上等な雰囲気で、岩のような上腕筋はベンチプレスの80キロを軽々と上げそうだ。荒事に自信があるからこそ、いざ藤花が暴れても対処できると考えているんだろう。

 藤花は、腰丈の台に肘をつき、尻を突き出す格好を取らされる。手足の枷こそなくなったが、脚は痙攣が続いていて、台に体重を預けているのが精一杯という様子だ。
『おー、結構拡がってんな』
『わりかしデケェからな、あの3号バイブ』
 藤花の肛門を覗きこみながら、男2人が笑う。床でのたくっているピンクのバイブは、確かに前の動画で使われていたアナル用ディルドーよりサイズが上だ。男の逸物よりは細そうだが、少なくとも直径3センチ。長さとくれば、20センチ弱はありそうだ。直腸の長さは15~20cm程度だというから、ほぼ奥まで届いていたに違いない。それで腸内をかき回されるのは、けして無視できないものだったはずだ。
『さて。んじゃ、ダメ押しで拡げてやんよ』
 調教師はそう言って、藤花の寄りかかっている台の下を観音開きにする。中から取り出されたのは、フルーツ盛りを思わせる皿。たしかにバナナやミニトマトなども見えるが、盛られているのはフルーツばかりじゃない。カラフルなスーパーボールや、棒状のゼリーなども見て取れる。共通点は、『丸い』か『棒状であること』。この時点で、俺は男連中のやることに察しがついてしまう。そしてそれは、おそらく藤花も同じだろう。
『キレイだろ。たっぷりと食わせてやんぜ。てめぇのケツになあ!』
 案の定、調教師2人はそう宣言し、並びの悪い歯を覗かせた。

 そして、異物挿入が始まった。
 男共の性格は本当に悪く、いちいち挿入するものを藤花の顔の横まで持っていき、視認させてから肛門へ押し当てる。
『次はこいつだ。美味そうだろ?』
『……ふざけるな。食い物を粗末にするなと、親から学ばなかったのか?』
『ん?ああ、習ってねぇよ。俺がオフクロから教わったのはよぉ、この世は弱肉強食だって現実だけだ。ちょうど今、テメェに教え込んでるみてぇによ!』
 調教師はそう言って、ミニトマトを肛門へと押し込んでいく。アップで映される肛門の少し下には、なおもガクガクと揺れる膝が映りこんでいた。
『ぐっ……!』
 挿入を受け、藤花から呻きが漏れる。
『ほら、もう一丁。まだ食えんだろ』
 男に容赦はなく、次々と紅い実を詰め込んでいく。そして限界と見れば、肛門下に差し出した洗面器へと『排泄』させる。その繰り返しだ。入れるものがスーパーボールになっても、この流れは一切変わらない。
 丸いものはひたすらに押し込む一方で、棒状のものとなれば少し違う。
『おら、ケツで千切ってみろよ』
 調教師が尻肉を叩きながら命じる。その目が捉える藤花の肛門には、深々とバナナが突き刺さっていた。
『……ぐ、ううっ……!!』
 藤花は口惜しそうな声を出すが、結局は調教師の言葉に従うしかない。引き締まった尻の輪郭がさらにはっきりし、肛門が内に閉じる。白いバナナの果肉がひしゃげ、細まり、ついに千切れて洗面器へと落下していく。
『すげぇすげぇ、切りやがった! さすが剣道やってる女はよく締まるな』
『おお。これ案外、上手くできる女って少ねぇんだよな。千切れそうってトコまではいっても、〆きれねぇ。いっつも最後にゃ、俺らで千切ってやってるもんな』
『そうそう。セルフで切れる女って、オレ初めて見たかも』
『しかし、こいつの括約筋ハンパねぇな。締まんのもそうだが、伸びもいいだろ。普通なら、3号バイブ突っ込むのに二週間はかかんのに、昨日の今日でいきなりいけたしよ』
 珍しく誉めそやす2人だが、その表情に爽やかさはない。
『ああ。こりゃ、ご褒美やんねーとな!』
 明らかな悪意を孕んだ言葉が、一人から発される。
『……だな』
 相方も、何かを察した様子で同調する。
『今度は、なにを……』
 嫌な予感がしたのか、藤花が後ろを見ようとするが、調教師の片方がその顔を掴んだ。
『まあ待てよ。お楽しみだ』
 言い聞かせるようにそう言い、視界を前に戻させる。一方、俯瞰で見る俺には、全てが見えた。もう一人が、一旦映像の外に姿を消し、数秒後、何かを手にして戻ってくる。
 根元だけが白く、それ以外が畳の色をした棒状のもの──竹刀だ。剣術道場で生まれ育った藤花にとって、格別の思い入れがあるに違いないそれを、調教師は満面の笑みで肛門へと近づける。
『さーて、いくぜ。安心しな、太さはねぇ。たしか規格じゃ、直径3センチぐらいだったか。だが、この先っちょの革がよ……ちっと、引っ掛かるかもなあ』
『お、おい、本当に何を入れるつもりだ!! 規格だとか、革だとか……!』
 調教師の言葉に、藤花の戸惑いが増す。その様子を存分に楽しんでから、調教師は竹刀を推し進めた。もう一人が手で拡げた肛門へと。ピンク色をした肛門が内に凹み、革に包まれた竹刀の先が入り込んでいく。相当な抵抗と共に。
『あぐああっ、い、痛いいたいっ!! なんだ、一体これは何だっ!?』
 上半身を反らせて叫ぶ藤花。その耳元に、調教師がにやけ顔を近づける。
『判らねぇのか? こいつに関しちゃお前の方が、俺らよりよっぽど詳しいはずだぜ。なんせ、ランドセル背負うより前から、毎日毎日握ってた相棒なんだからよ』
 その一言で、藤花の身体がぴたりと止まった。
『…………な、に…………?』
 まさに、呆然とした感じの声。調教師2人の笑みが深まる。竹刀は、藤花にとって大切なもの。それを用いた責めは、彼女の心に決定的な打撃を与えることだろう。そう確信しているかのようだった。
 だが結論を言えば、奴らの狙いは的外れだった。
 ごく一般的な女子高生なら、大事なイヤリングを穢されて泣き崩れることもあるだろう。恐らくこの調教師共も、それを期待していたに違いない。だが、藤花はそんなタマじゃない。誇り高い彼女にとって、大切なものを侮辱される事は、絶望ではなく怒りのスイッチなんだ。竹刀を責め具として使ったのは、最大の悪手。藤花を押さえもせず余裕をかます男2人は、この直後、甘い読みのツケを払うことになる。

『ぐおっ!?』
 いきなり、呻き声が上がった。映像の中では、竹刀を握っていた調教師の身体がくの字に曲がっている。その屈強な身体が左によろけると、黒ストッキングを履いた藤花の足裏が現れる。どうやら後ろ蹴りを放ったらしい。
 責め手が吹き飛び、竹刀は藤花の肛門に突き刺さったまま上下に揺れる。その揺れを、藤花の手が止めた。そして一気に引き抜くと、宙に放って、今度は柄を手中に収める。
『うっ、こいつ!』
 煙草を咥えるところだった左側の男が、慌てて藤花を押さえ込もうとする。その動きは、剣術の達人にとって、どれほど遅く感じられただろう。
『っしぇえいッ!!』
 鋭い掛け声と共に、竹刀が突き出される。先革が男の腹筋にめり込み、鍛え上げられた身体がよろめく。
『がッ!……げぼっ、ごぼっ』
 悲鳴は短かった。だがダメージは相当なものらしく、男は数歩後退した後、膝から崩れ落ちて嘔吐する。
 それを見届けるや、藤花は竹刀を正眼に構え直した。切っ先で征伐を宣言するのは、最初に蹴り飛ばした男だ。奴は虚をつかれたのか、相方がやられるのを静観してしまっていた。
『……なめてんじゃねぇぞ、このアマッ!!』
 一対一の状況となり、男は吼えた。そして苦し紛れに、手近なバイブを拾って投げる。藤花はそれを冷静にかわすと、踏み込んだ。
 調教部屋の床は、木じゃない。コンクリートか、タイルか、リノリウムか、いずれにせよ硬質のものだ。おまけに藤花は靴を履いておらず、黒ストッキングのようなもので素足を覆っているのみ。それなのに、音がした。ドンッという、大地震でも起きたような音。
『この…………クズがああぁっ!!!』
 その雄叫びと共に、竹刀が振るわれる。俺はその姿に見入っていた。瞬きもせずに、竹刀を振る藤花を見ていた。でも結局、『打つ』瞬間は見えなかった。竹刀が上段に振り上げられ、ほんの少し前に倒れ、次の瞬間にはまた上段に戻っていた。まるでビデオの巻き戻しだ。それでも、打ったのは間違いない。
『ぐあっ!!』
 ビシイッという音と共に悲鳴が上がり、喧嘩自慢の男が後ろに倒れこむ。完全に白目を剥いたまま。
 そして藤花は、次にカメラに向き直った。ここで急に手ブレがひどくなり、ぐるりと壁を映しながら、180度後ろを向く。どうやら撮影役が逃げはじめたらしい。それでも逃げきれなかったのか、バシッと音がし、映像が横向き……つまり床を左側に映したまま動かなくなる。
『おい、何があった!?』
 映像の最奥で扉が開き、数人が飛び込んできた。ほとんど半裸に近い調教師や客とは違い、スーツに身を包んだ大柄な男達だ。奴らは多少腕が立ち、だからこそ状況を正確に把握できたんだろう。カメラの後方……おそらく竹刀を手にした藤花の姿を見て、呆然と立ち尽くす。客達がそんな彼らに縋りつき、それまでの横柄な態度が嘘のように頭を下げている。
『今さら命乞いか、恥を知れ下衆共っ!!』
 部屋にその怒声が響きわたり、物音が一気に騒がしくなり……ここで映像が暗転する。

『以後、30分以上に及ぶ乱闘。
 負傷者:客4名、調教係2名、セキュリティ17名。
 プレイと無関係なため、記録省略』

 白文字のテロップでそう表示され、数秒後、映像が再開する。
 そこに映っていたのは、ボロボロになった藤花の姿だった。
 ボンデージ衣装とストッキングは破れ、見るも無惨に成り果てている。さらに彼女は、右手と右足首を一纏めにして吊られてもいた。Y字バランスを強要される格好、といえば伝わりやすいか。
 その不自然な体勢で、また秘部へのマッサージ器責めが施されているようだった。しかも今度は、肛門に入っているのが、バイブじゃない。竹刀が、中ほどまで深々と突っ込まれ、客の手でグリグリと捻られている。
『はぐうっ、う゛っ…んんん゛お゛、ふうっ、はぁあおおおお゛っ!!』
 藤花から漏れる呻きは、ますます余裕のないものになっていた。
『これで何十回連続のマンコイキだ、クソ女?』
『ほら、ケツもキモチイイだろ。大好きな竹刀だぜ!!』
 責めているのは、調教師と客の両方だ。どちらも体のどこかに手当ての跡がある。怒り狂った藤花から逆襲を受けた証だ。
『おいおい、また漏らしてんのかよお前。ユッルい尿道だなオイ!!』
 ガクガクと震える藤花の割れ目から、失禁が起きたようだ。また、という言葉を聞く限り、何度も繰り返しているらしい。
 失禁を避けて男が身を引くと、藤花の割れ目が丸写しになる。うっすらと生えた陰毛はマッサージ器に押し潰され、割れ目の形は崩れ、厚ぼったい唇のように充血しきっている。そこに、いきなり一人の客が吸い付いた。
『へへっ、すげぇマン汁の量だ。しかもうめぇ。電マのせいで焦げたような味がちと邪魔だが、まろみがあって最高だぜ。ハネッ返りのクソガキのくせに、なんでこんなにマン汁が美味ぇんだよ、ええ!?』
 おぞましい言葉を発しながら、ずずーっと音を立てて藤花の愛液を啜る変態親父。藤花は全身を細かに震わせながら、それを睨み下ろしていた。もし口が利けたなら、どれほどの罵声が飛び出したことだろう。もし彼女の口が、ビットギャグによって封じられていなければ。
『客にまで手ェ出したんだ。たっぷりと反省させてやるぜ』
 調教師はそう言って、がま口のような鞄を開く。その中には、様々な道具がぎっしりと詰め込まれていた。
『う゛うぅぅ……ッ!!!』
 藤花はそれを見て呻いた。その胸を支配するのは、怒りか、恐怖か。気にはなるが、答えは得られない。モニター3の映像はここで暗転し、最初に戻ってしまったから。


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 モニター3の映像が終わり、目線を左に移す。そこにはショーケースがあった。ショーケースには、その日の調教に関係する道具や資料などが展示されているようだ。この展示物もAコース、Bコースで分かれているが、2日目の時点でその差は歴然だった。
 Aコースの方に並ぶ道具は、数本の綿棒や、真ん中あたりに赤いマーカーが塗られ、『←2日目 ここまで』と添え書きされた極細のアナルディルドー。
 Bコースの方に並ぶ道具は、直径約4センチ、長さ20センチ強の蛇のようなバイブと、剣道で使われる本格的な竹刀だ。そして竹刀の方は、先端から三分の一ほどの場所が汚れている。伝い落ちる形で固まった黄褐色と、先端にこびりつくほんの少しの赤。俺としては、これが映像内の『実物』ではない事を祈るばかりだ。
 竹刀が発する声なきメッセージから逃れるように、俺はショーケースの左に逃れた。
『3日目』のプレートが目に入る。ここでもやはりAコースとBコースの区別があり、俺の視線はBコース側の写真に吸い寄せられた。

 周りに人さえいなければ、きっと俺は、頭を抱えて蹲っていただろう。

 そこに貼られた写真は、あくまで静的なものだ。音楽で脅かすわけでもなく、おどろおどろしい電子ドラッグの類という訳でもない。それでも、事実をただ淡々と記録した物は、時として何より残酷だ。
 この日の写真は、6枚あった。6つの事実が、葉書サイズの写真に写しこまれていた。
 1枚目、左列最上段。藤花が仰向けに拘束され、両脚を真上に持ち上げる体勢を取らされたまま、男と腰を密着させている写真。
 2枚目、右列最上段。アップで撮られた尻肉の合間に、男の怒張が深々と入り込んでいる写真。
 3枚目、左列中央。鷲掴みにされた尻肉と、白濁を滴らせる半勃起状態の逸物の写真。
 4枚目、右列中央。肛門に毛深い中指が挿入され、背中が弓なりに反っている写真。
 5枚目、左列最下段。男に跨った藤花が、乳房を揺らしながら歯を食いしばっている写真。
 6枚目、右列最下段。鼻フックで吊られ、口に漏斗を嵌め込まれた巨乳女が、口内に男の尿を注がれている写真。

 楽観的に考えれば、なんということはない。1枚目~4枚目は被写体の顔が映っておらず、つまり藤花の写真である確証はない。5枚目は顔こそ映っているが、肝心の結合部は入っておらず、ただのスキンシップかもしれない。6枚目に至っては、鼻の穴が三方向から引き絞られているせいで、もはや誰なのかの判別すら不可能だ。よって、ショックを受ける必要などない。
 ……そんな考えができるなら、生きるのがどれほど楽だろう。
 本当は、気付いている。写っているのは藤花だ。色白な肌、無駄なく引き締まった筋肉、安産型の腰、豊かな胸。3つの映像で散々目にしたそれを、今さら見紛うはずもない。

 どうやら彼女は、3日目にして早くも肛門を犯されたらしい。2枚目の写真はまさに後孔への挿入シーンを捉えたものだが、写真には複数人の足が映りこんでいる。まず輪姦されたと見て間違いない。
 Aコースの5人は、まだソフトSM程度のプレイしかしていないようだ。藤花だけが、ひたすらにハードな調教を繰り返されている。優秀な括約筋を持っているそうだが、こんなペースじゃ外人でも音を上げるだろう。
 あるいは、それが狙いなのか。反骨心の強すぎる彼女に負担をかけて、参らせるための。

 この『3日目』のエリアにも、4と番号の振られたモニターが置かれている。ビデオを自分で再生するのと違い、垂れ流しのモニターは心の準備ができないから辛い。俺は深呼吸でもしようとしたが、結局は怖いもの見たさの心が勝り、モニターを覗き込んでしまう。


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 藤花は、四つ足で這う格好を取らされたまま、前後から犯されていた。
 AVでよく見かける前後からの3Pだが、よく見れば普通でないことがわかる。
 まず、床についた藤花の手。その両手首は、きつめに縄で縛られている。絶対にほどけないように。そして、手をついて這う以外の姿勢ができないように。
 床にも異常が見つかった。
 後ろから犯される藤花の足元には、中身を搾り出されたイチジクの実のような容器が3つ転がっている。これまでの責めと転がっている場所を鑑みるに、浣腸液の容れ物だろう。どうやらそれを注入したまま、アナルを犯されているらしい。
 さらに注意を向ければ、その推理の正しさが証明された。
 這う格好の藤花の腹の辺りから、ぐるる、ぐぉるるる、と下痢の時にしか聞かない音がしている。
 ペニスが抜き差しされる結合部分から、ぶちゅっ、ぶりいっ、と水気たっぷりの音がしている。
 そして極めつけは、それこそAVのように極端ながに股で後孔を犯す男の睾丸下あたりから、茶色い液体がポタポタと垂れつづけてもいる。
『クソを我慢する女のケツってなぁ最高だな。出したくねぇもんだから、死に物狂いで締め付けやがる。特に剣道だか剣術だかで鍛えられたこのケツ筋は極上だぜ、チンポが噛み千切られそうだ。だがよ、お前も堪んねぇだろオトコ女? ケツがヒクヒクしっぱなしだもんなぁ。クソしたくてもできねぇ苦しさやら、屈辱感やら、変な快感やら……そういうのの板挟みで、狂っちまいそうなんだろ?』
 後ろの男は激しく腰を使いながら、挑発的な言葉を吐きつづけていた。
 極限まで便意が高まった腸を、お構いなしに犯され、謗りの言葉まで浴びせられる。まさに地獄。だが、きついのは後ろばかりでもなさそうだ。
 前は前で仁王立ちした男の逸物を咥えさせられているが、その口元は、黒いラバー製のマスクで覆われている。大暴れした前科がある藤花だけに、噛まれることを危惧して口枷を嵌めているんだろう。
 その担保を得て、前の男は容赦なく根元まで逸物を咥え込ませる。武道一本という感じの藤花が口淫に慣れているとは思えないし、千代里の時のように最低限の慣らしがあったわけでもない。つまり、ほぼ免疫がゼロの喉奥奉仕を、一番きついパターンで強いられているということだ。
 まさか、そんな酷いことをするわけがない。普通ならそう思うだろう。だが前の男は、両手で藤花の後頭部を鷲掴みにし、完全に自分の腰に顔面を密着させている。あそこまで引きつければ、たとえ成人男性の平均サイズのペニスでも、口の中だけでは収まらない。そのさらに奥、食道にまで入り込んでしまうだろう。
 そして、この想像にもまた、疑う余地のない裏づけが存在する。
 声、だ。

『ゴエ゛エ゛エえッ、んおおぉォエ゛エえ゛え゛ッ!!』

 ヒトの声かどうか疑わしいレベルの汚いえずきが、ほとんど止むことなく繰り返されている。恥を捨てたような『ギャル』ならいざ知らず、発しているのがあの藤花なんだから、余程に余程の事情がなければ有り得ない。
『ケツの穴がヒクヒクしてきたぜ。そろそろ限界みてぇだな。いいぜ、そろそろ約束の10分だ。ひり出せよ、おらっ!!』
 後ろの男がそう言って腰を引き、平手で藤花の尻を打ち据える。
『うう゛お゛っ!!』
 苦しそうな悲鳴が響きわたり、直後。性感スプレーと同じぐらいの直径にまで開いた菊の花から、勢いよく汚液があふれ出した。容赦なく、茶色い。直視がつらいほどに。
『へっ。昨日の晩食わせた餌がようやっと消化されたらしいな。キッチィ色と匂いだぜ。それでも女の端くれかよ!』
 後ろの男は、噴き出す汚液を間近に見ながら、悪意に満ちた言葉を発する。まともな神経をしていれば、まず選択しないような声量で。
 現場にすら立ち会っていない傍観者の立場ながら、その大声には思わず周りを意識してしまう。
 だが、動揺しているのは俺一人。他の連中は、薄笑いを浮かべながら前傾姿勢でモニターに見入っている。鬼畜だ。そして鬼畜は、画面の中にも2人いる。
『こっちも限界っぽいな。ノドの奥が痙攣して、吐く間際って感じだ。おら、介錯してやんよ剣道娘ッ!!』
 前の男はそう怒声を散らし、密着させた腰をさらにグリグリと押し付ける。ネジでも締めるように、鷲掴みにした藤花の顔を左右に揺らしながら。
 その鬼畜ぶりをスッパ抜こうというのか、カメラが藤花の前方に回りこむ。
 タイミングは完璧だった。カメラのブレが止まった瞬間、前の男が腰を引く。俺の想像していたサイズよりかなりでかい……長さのあるペニスが、ずるりと糸を纏ながら抜け出てくる。
 藤花の口には、予想通り浴槽の栓のような口枷が嵌まっていた。その口枷ごと、キリリとした顔つきが下を向き……

『ふお゛…っも゛ろ゛ろ゛ぉええ゛お゛っ!!!』

 悲惨な声と共に、吐瀉物が穴から噴き出していく。色は茶褐色。量はかなり多い。相当の我慢を重ねたのが見てとれる嘔吐だ。
『はっ。前からも後ろからも、品のねぇ女だな』
 男2人は、当然藤花の努力を評価などしない。自分達が追い込んだ結果だけを、声高に批難する。どういう神経をしていれば、露悪的にすらならずにあんな言動ができるんだろう。生まれついての悪。奴らは、多分それだ。
『女っつってもなあ。一人称“俺”だぜ?』
『あー、オトコ女だったな、そういや。……どうだ? 男勝り気取って、実質心は男のくせして、野郎のチンポを咥えさせられる気分は? 俺ならもう自殺モンっつか、少なくとも世間様に顔向けできねぇがよ』
 前の男にそう嘲られ、藤花が顔を上げる。相手の顔面に穴でも空けられそうな眼光で。俺なら身が竦みそうなその視線を真正面から受け止めても、鬼畜の顔から笑みは消えない。
『おっ、イイ眼だ。イジメ甲斐があるぜ』
『ああ。最近はしょっぱいガキの相手ばっかだったしな。久々に、プライド折るのが楽しみだ』
 2人は、そう言って責めの準備を再開する。後ろの奴は、ようやく排泄の終わった肛門にイチジク容器──それもさっきを超える4個分の中身を注ぎ込む。前の奴は、藤花のポニーテールを掴んで顎を上げさせ、薄ら笑みを浮かべながら口内に挿入していく。

 再開された責めは、明らかに一度目より容赦がなかった。
 前の奴はポニーテールを鷲掴みにしながら、セックスの時ですらそこまではやらないだろうというストロークで喉奥を突きまくる。空気が含まれるせいか、カコッカコッカコッ、と、やたらに響きのいい音がする。
 だが音が軽くなっても、苦痛が減るとは限らない。ましてや藤花の喉は、ついさっき限界を超えて瓦解したばかりなんだ。そのデリケートすぎる場所を、膣よりも雑に『使われ』れば、どうなるかは明らかだ。
『お゛ごっ、ほごお゛っ!! ごおっ、おお゛お゛ぇろ゛っっ!!!』
 藤花は、吐きつづけていた。吐瀉物がペニスとリングギャグの隙間から次々にあふれ、白い首を伝い、前後に揺れる乳房に添って四散していく。
 後ろの奴もブレーキを踏む気はない。
『どうした、もう限界かよ。ゲロ吐かされまくって、ケツに意識いかねぇか? いいぜ。耐えられねえなら、このままぶちまけろ。カマ野郎にゃお似合いだ!』
 さっきより浣腸液の量を増やしておきながら、我慢のなさを詰る。挙句に、限界を迎えても肛門から逸物を抜こうとしない。直腸を犯されながら漏らすしかない状態。これはいかに気丈な藤花といえども受け入れがたいらしく、細い腰はかなり左右に暴れた。何度も踏みかえられる膝は、イヤだ、イヤだと叫んでいるようだった。しかし。その悲痛な叫びが、人の心を持たない畜生に届くはずもない。

 ぶりっ、びちびちっ。びちゃ、ぶびゅるるっ。

 音にすればそんな風な、実際にはもっと複雑で情けない音が響きわたり、激しく抜き差しされる穴から汚液があふれ出す。まるで茶色い血糊袋を、棒で突いて破っているようだ。
 こんな嫌がらせ、肉体的にも精神的にもきついに決まってる。それでも藤花についてさすがだと思うのは、あまり大きな反応を示さないことだ。普通ここまでやられれば、いくら自由が利かないとはいえ、横に倒れるのを覚悟で身を左右に揺らしたり、膝で地団太を踏んだりするはずだ。
 だが藤花は、堪らず震えることはあっても、しっかりと重心を固定させている。ぶらさない。ハイエナに臓物を食われてなお、凛と直立する草食動物のように。
 ただ、きついのはきついに違いないんだ。カメラが彼女の顔を接写すれば、汗がすごいのがわかる。どこが汗腺なのかが見て取れるぐらい、大粒の汗が浮いている。
 そして、これは俺の気のせいだろうか。流れる汗に混じって、鋭く敵を睨み上げる瞳の端からも、綺麗な雫が伝っていったのは。

 ここで映像が暗転する。ただし、ほんの数瞬だけ。

 再開した映像でも、映っている面子は同じだった。ただ、逸物をしゃぶらせる役と肛門を嬲る役は入れ替わったようだ。
『テメェのケツで汚れたんだ、隅から隅まで舐ってキレイにしろ』
 大股を広げて仁王立ちする男が、品のない口調で命じる。前の動画でアナルに挿入していた奴だ。
 藤花はその足元に這い蹲る格好で、逸物を咥えさせられていた。両手は脚の間についているようだが、背中からのアングルだから、手首を拘束されているのかはわからない。
『お゛、うぇ゛ッ!オえ゛っ、ほおお゛ぉええ゛!』
 藤花のえずきは酷かった。延々と嘔吐を続けているような響きだ。前の映像と同じく、喉奥まで咥えこまされているのかもしれない。そうでなかったとしても、男の言葉が事実なら、彼女は肛門で“汚れた”怒張を口に含んでいることになる。
『うう゛ぉエ゛っ!!』
 藤花の背中が狭まり、ひときわ余裕のないえずきが漏れた。
『ハッ、またかよ』
 男は鼻で笑い、数歩後ろに退がる。同時に藤花の頭が真下を向いた。
『ぅ゛お、お゛えぼ……っ』
 女の喉が出しうる限界──そう思えるぐらいに低いえずき声。びちゃびちゃという音がそれに続く。前に立つ男は、腕を組んでそれを見下ろしていた。ご満悦な笑みが何とも憎らしい。
『涙と鼻水でドロドロの、イイ面だ。だいぶ参ってきたらしいな』
 男はそう言いながら元の位置に戻る。そして肩幅の倍ほどに股を開き、藤花の髪を掴んで、喉奥責めの体勢を整えた。
『もぉやえお゛! ほんろおに……こおふろ、ひひゃまッ!!』
 藤花は頭を左右に振り、不自由な口で何かを叫ぶ。だが男は冷静だった。両の掌で藤花の頭を固定し、その掌ごと自分の腰へと引き寄せる。
『ゃえおお゛お゛っ!!』
 藤花は本気で嫌がっているようだが、首の力だけで男の両腕の筋力に対抗するのは無理がある。結果、彼女の顔は男の黒々とした茂みに密着していく。
『ほおお゛、おお゛っ……むっごオ゛ぉ゛っっ!!!』
 拒絶の叫びは呻きに変わり、その呻きすら、喉奥を攪拌するカコカコという音に掻き消されていく。主導権が男に移った事を象徴するように。
『休む間があると思うなよ、クソ女。俺ら二人で、朝までケツと口を使い回してやる』
 そう声を発したのは、後ろから藤花のアナルを犯す男だ。こっちにも容赦はなく、ツッパンツッパンという感じの小気味いい音をさせながら腰を振りたくっている。無駄な肉なんて一切ない藤花の太股が波打つんだから、どれほどの圧なのかは推して知れようというものだ。

 前後からの責めが続く。藤花はもう大きな反応は見せず、ただ口と肛門を使われるがままになっていた。けれども彼女は、その静かな絵面の中で、少しずつ削れているに違いない。角張った石が、川の中で丸くなっていくように。


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 モニター4の映像が終わり、左に歩けば、『4日目』のプレートが目に入る。プレートの下には、やはり写真が並んでいた。

 この日、藤花は、かなり入念なアナル開発を受けたようだ。
 ある一枚の写真では、這う格好を取らされた藤花が正面から映され、その尻肉の合間からバイブのグリップ部分が覗いている。
 また別の一枚では、さらに低く這い蹲る藤花が男の物をしゃぶらされつつ、やはり肛門を道具で弄ばれていた。六角形の独特なグリップ部分を見る限り、前の写真と同じ道具だ。ただし今度は、道具がちょうど抜き出される瞬間で、道具の全容がはっきり見てとれる。
 真珠のような珠が連なった責め具。珠の直径は根元に行くほど大きくなり、先端こそビー玉大だが、一番根元ともなればラムネの瓶ぐらいの太さがある。アナル開発が始まってからわずか数日の人間にとって、その根元部分はかなりの負担になることだろう。
 だが、写真の中の現実に容赦はない。次の一枚は、二つに増えたその責め具が、肛門を変形させているシーンのアップだ。さらに次の写真でも、左右の手が操る二つの道具は、圧倒的な存在感で肛門を拡げていた。今度は、振り返ったまま何かを叫ぶ藤花の口元も写っている。相当な痛みか刺激があるのは間違いない。
 だがおそらく、刺激ならその次のシーンの方が上だろう。
 薄いゴムのような手袋を嵌めた男の指が、藤花の肛門に捻じ込まれている。手の甲の半ばまでが肛門に埋もれているというアングルだから、何本の指が入っているのか、正確には判らない。3本か、4本か……何しろ男の節ばった指だ、楽に受け入れられるものではないはずだ。
 そして次の写真では、その手が2つに増える。つまりは左右の両サイドから、男の4本指が入り込み、肛門を拡げているということだ。斜め上からのアングルだから、肛門の中が直接見えるわけじゃない。それでも、暗い穴がぐっぱりと口を開けているらしいことははっきりと見て取れた。
 五枚目の写真では、男の人差し指が肛門を縦に割り開き、その合間にディルドーが送り込まれている。ディルドーの大きさは中々だ。男の握り方から見て、バイクのグリップよりも太いだろう。男の手とディルドーが激しくブレて映っていることから、かなりの速度で抜き差しが繰り返されていることもわかる。それがかなりの威力を持つのは、藤花の上半身を見れば明らかだ。藤花の顎の下には枕のようなものが敷かれているが、彼女はそれに全力で抱きつくような格好を取っていた。特にカメラ側の右腕は、その肩の盛り上がりや枕を握りしめる有様がはっきりと映されている。
 痛ましいものだが、その次の六枚目も相当だ。両の太股と腕の付け根に帯状のベルトを巻かれ、天井から吊り下げられた藤花。桜色の肌は蝋に覆われ、乳首とクリトリスには電極が取りつけられていて、周囲に立つ調教師の手には鞭が握られている。どうやら、かなりハードなSMが繰り返されたらしい。だが一番目を引くのは、やはり肛門だ。ベルトに吊るされた白い脚の合間には、なんとボウリングのピンが押し込まれている。さすがに上の細まった方だが、それでも男の逸物よりかなり太い。そんなものを肛門に入れられる藤花の顔は、歪んでいた。眉を吊り上げ、眉間に皺を寄せ、閉じた口をへし曲げ。素直に見れば怒りの形相だが、恥じ入っているようにも見えるのは、状況の苛烈さのせいだろうか。
 最後になる七枚目の写真も、衝撃的だ。大股を開いた脚の間、肛門からストッキングのようなものが引きずりだされる瞬間を捉えている。掴む指が透けて見えるような薄い生地の中には、凄まじい数のビー玉が詰め込まれている。外へ転げ出た分だけでも十個ほど、肛門にみっしりと収まった部分となれば数え切れない。それだけの数のビー玉となれば、どんな質量だろう。それを腸に押し込まれるのは、どれほど苦しいだろう。嫌でも、そう考えてしまう。

 写真の貼られたボードの下……ショーケースには、いま目にした道具の実物が、歴史を物語るような存在感で鎮座している。
 六角形の柄を持つ、根元がガラス瓶ほどに太い凹凸棒。バイクのグリップよりも太さがあるディルドー。低温蝋燭に、鰐口クリップやパッドの繋がった電源ボックス。真ん中から上がうっすらと黄色に変色したボウリングのピン。伸びきった上に皺の寄ったストッキングと、40個はありそうなビー玉。薄ガラス越しに見るそれらは、写真よりも遥かに凶悪だ。特に身近なボーリングのピンが、責め具として見た途端、こうも恐ろしい代物に変貌するとは思わなかった。

「ふふふ、これはまた凄まじいですな。まるでギャングのリンチだ」
「何よあのサイズ……いくら黒人のディックっていっても、限度があるでしょ」

 ふと、隣からそんな声が聴こえてくる。着流しの老人と、その嫁らしき若い女の会話だ。彼らは言葉を交わしながらも、食い入るようにモニター画面を凝視している。
 ここの連中が興味を示す以上、壮絶な映像に違いない。たぶん、写真の内容すら霞むぐらいに。俺は背中に冷たい汗を感じながら、モニター5を覗き込む。


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 映像には、床に突っ伏すような藤花の姿が映し出されていた。
 両手首は腰のあたりで交差する形のまま、ガムテープでぐるぐる巻きにされている。そして顔は、水の張られた大きめのフードボウルに漬けられていた。
 水責めだ。それも正式な拷問じゃなく、憂さ晴らしのリンチという感じの。そういえば着流しの老人も、これを“ギャングのリンチ”と形容していた。
 ギャングというイメージが浮かんだのは、藤花の頭を囲む男達のせいだろう。
 肩にドクロのタトゥーを入れ、タンクトップで上半身の筋肉とタトゥーをアピールする一人。唇にピアスを開け、アゴ髭を蓄え、ダボダボの迷彩ズボンで下半身を大きく見せる一人。威圧的なその外見には見覚えがある。1日目の映像で、藤花の肛門に氷を突っ込んでいた2人だ。
 この施設の調教師は全員ホストかチンピラ崩れという感じだが、この2人はその中でも格別にガラが悪い。なにしろ水責めのやり方も、『ハンドポケットのまま、ブーツの底で頭を踏みつける』なんだ。それも女の子に対して。非道にも程がある。

 ただ、そんな威圧的なチンピラ達でさえ、藤花の背後にいる人間と比べれば悪童程度の印象になってしまう。
 背後にいるのは、黒人だ。膝立ちだから身長はわからないが、2メートルを超えていそうな威圧感がある。そしてその上半身は、マッチョなんて次元じゃない。上腕と大胸筋は岩肌の風船を思わせる盛り上がり方で、腹が出ているのに腹筋は割れている。艶光る漆黒の肌も相まって、毛のないゴリラそのものだ。
 そこまでの風貌となると、もはや女の子の背後にいるだけで暴力的に見える。しかも奴は、思いっきり藤花のアナルを犯していた。前からのカメラアングルのアナルファックは、普通判りづらいものだ。一見、膣を使う普通のセックスと判別がつかないから。
 だが、この映像の場合はダイレクトに理解できた。巨漢の黒人は、スイカを鷲掴みできそうな巨大な手でもって、藤花の尻肉を握り潰している。親指と人差し指の間にぷっくりと肉が盛り上がっているんだから、握りの強さの程も想像できるというもの。そうして粘土でも捏ねるように自分好みの形に変えた尻肉の中心に、腰を送り込んでいるんだ。それで、膣を使っているなんてことは有り得ない。紛うことなき肛門姦だと、ひと目で確信させられる。
 巨漢の黒人は、突っ伏した藤花の背後につき、腰を押し出すようにして抜き差しを繰り返していた。しかし、妙だ。普通アナルファックなら、尻肉のせいで一部が隠れていても、棒状の物が出入りしているのはわかる。だがこの映像では、ペニスの端が見えない。つまり、尻肉の合間よりもペニスの幅の方がでかいということだ。
 信じられない。直径何センチなら、そんなことになるんだろう。しかも、前後するペニスの幹には血管が浮き立っていた。あれだけ張っていれば、堅さも相当にありそうだ。

 と、ここで前にいる刺青男が、藤花の頭を踏む足を持ち上げた。藤花はそれを待ち望んでいたんだろう、弾けるように頭を上げる。
『ぶあっ!! がっ、げほっ、げほっ!!!』
 前髪から水滴を滴らせつつ、何度も激しく咳き込む藤花。そのすぐ横に、刺青男が膝をつく。
『気分はどうだ、オトコ女? ビッグコックでケツ掘られながら、腹ァ一杯に水飲まされてよ。たまんねぇだろ』
 藤花の髪を掴み上げ、冷たい声で問いかける刺青男。藤花は激しく肩を上下させていたが、剣道の呼吸だろうか、ふうっと鋭く深い息を吐いて平静を取り戻す。
『なんだ、声をかけるのか。あまり静かだったから、このまま眠らせてくれるのかと思ったぞ』
 薄笑いを浮かべつつ煽る藤花に、男3人の目元が険しくなる。
『ったく、口の減らねぇアマだ!』
『そんじょそこらの野郎より気合入ってんな、お前。今やってるこれは、シマん内で女にオイタしたチンピラによくやる折檻でよ。イカツイ黒人にアナルレイプされながら窒息させられりゃ、どんな生意気なガキも素直になるもんだぜ?』
『っつっても、連中の心が折れる一番の理由はよ、意思とは無関係にビュービュー射精しちまって、体がてめぇのザーメンまみれになるせいで、オスとしての矜持が保てなくなるから──らしいじゃねぇか。そういう意味じゃ、男を気取りながらチンポのねぇハンパ野郎は、この責めと相性いいのかもな。生存本能で勃っちまうことも、極太で前立腺ゴリゴリ抉られて射精感煽られることもねぇんだからよ』
『確かにな。ま、何にせよこんなもんはまだ第一段階だ。こっからもっとキツくなるぜ』
 好き勝手に藤花を謗りつつ、2人はズボンのチャックを下ろす。そして今まさに水責めをしていたフードボウルへ、息を合わせたように小便を始めた。無色透明だった水は、あっという間に黄色く色づく。藤花の表情が強張った。
『オマケだ』
 迷彩ズボンの男は、逸物を振って小便を切ると、咥えていた紙巻煙草をフードボウルに吐き捨てる。灰とタールが、小便水をさらに濁らせる。
『フッ。えげつないねぇ、日本の悪ガキも』
 後ろから犯す黒人は、流暢な日本語でそう呟くと、肛門から逸物を引き抜いた。
 いざ外に晒された黒人のブツは、真ん中部分が太い根元よりもさらに膨らんでいて、さながら拷問具のようだった。形状としてはローストターキーに近く、間違っても人間の性器に入れてはいけない類に思える。あれで肛門を犯されれば、まず大方の人間が喉も裂けんばかりに絶叫し、恥も外聞もなく泣き叫ぶだろう。
 藤花だって人の子である以上、何でもない風を演じてみせながら、その実は相当にきつかったようだ。犯されていたさっきまでと今とでは、太股の形が別人のものかと思うぐらい違うんだから。
『Next stageだ。サムライガール』
 黒人がそう呟きつつ、両手で藤花の尻肉を鷲掴みにする。そして、腕力で強引に細い腰を浮かせた。位置が高くなったことで、肛門の様子が映像内に映り込む。
 あんなに慎ましかった藤花の肛門は充血しきり、ぐっぱりと開いていた。あの狂ったサイズのペニスが、ジョークでも合成映像でもなく、実際に人の肛門を拡げていたという事実が、そこにはっきりと示されている。
 黒人は、相変わらず生殖器に思えない形状のデカブツを、拡がった穴に擦り付けるようにしていた。

  ──入れるぞ、また入れるぞ? この規格外のペニスで、お前の内臓の形を変えてやるぞ?

 外人のジェスチャーに疎い俺でも、はっきりとその意図が読み取れる。ましてや同じ空間にいて、粘膜で触れ合っている藤花が気付かないはずもない。
『クソが……!』
 藤花の口から、怨嗟の言葉が漏れた。
『クソ? ああ、ウンコ汁ならこの二段階先だ。俺らも一人にしかやったことねぇが、地獄だったぜ。臭ぇわ汚ぇわ、やられたスケバン気取りはゲロ吐きながら発狂するわでよ。あんなのは二度とやりたくねぇから、お前も“ヤニションベン”で済んでるうちに、詫びの入れ方考えとけや』
 そう言って、刺青男が藤花の頭を掴む。同じく迷彩ズボンの男も、ヤンキー座りで藤花の首を押さえ、肩を掴む。さっきまでの雑に踏みつけるやり方と違い、念入りに沈めるつもりだ。よりにもよって、出したての小便溜まりに。
 男達の太い腕に力が入り、藤花の頭が下がる。
『くっ、うう……!!』
 当然ながら、藤花は抵抗を見せた。フードボウルに満ちる黄色い水を凝視しながら、歯を食いしばって顔を上げようとする。だが。
『おら、大人しく沈めや! 散々イキがっといて、今さらジタバタすんじゃねぇ!!』
『力で俺らに勝てると思ってんの? 剣術道場の娘だかなんだか知らねぇが、思い上がってんじゃねぇぞゴラッ!!』
 2人がかりで強引に頭を押さえ込み、黄色い水の中へと顔を沈めていく。フードボウルは二秒ほど激しく震えていたが、やがて床へ固着したように動かなくなる。
 水責めは淡々と進められた。アナルセックスのせいで波打つ水面に、大小の気泡が浮かび上がっては弾ける。やがてその気泡が一切出なくなり、さらに2秒ほど経過し、藤花の白い肩がぶるぶると痙攣しはじめたところで、ようやく男2人が力を緩めた。
『んぶはっ!! げほげほ、えほっ!!!』
 当然、藤花に余裕などない。咳き込みつつ、必死に空気を求めていた。だがそうすると、アンモニアの匂いをも吸ってしまうことになる。
『う゛っ!! うえ、おえ゛っ!!』
 顔を顰めながらえずく藤花。実に痛々しいが、刺青男達に同情する様子はない。
『ははは、ひっでぇ顔。そーら、もう一丁!』
『はい、イッキ、イッキ!!』
 ふざけながら、また藤花の頭を押し下げる。がぼっがぼっと音が立つ。
 今回もやる事は同じだ。浮かんでは弾ける気泡が出なくなり、上半身が痙攣を始めてからの解放。
『ばはっ!! うう゛えっ、ぺっ、ぺっ!!』
 今度は、汚水を飲んでしまったんだろうか。顔を引き上げられた藤花は、空気を求めるより前に口の中のものを何度も吐き出す。
『どうだ、ションベンの味は。せっかく濃いーの出してやったんだ、堪能しろよ』
『この責めで音ェ上げた連中に、毎回何かどうキツかったか聞くんだけどよ。クソやらションベンってなぁ、えれぇ苦いんだってな。おまけに生温けぇから、アンモニアのエグみやら臭さやらが、舌と鼻にMAXで来るんだと。そうなのか?』
  刺青男は、藤花の様子を見て笑っていた。迷彩ズボンの男も、問いを投げながらやはり笑う。嘘のように朗らかに、歯まで見せて。その笑顔には、良心の呵責なんて微塵も見当たらない。奴らは、本当の畜生だ。
 映像の中で、藤花の顔が持ち上がった。
『味……か。そうだな、舌が痺れそうだ。前に風呂場で飲まされた時もそうだったが、性根の腐ったクズの小便ほどエグみが強いらしい』
 壮絶に睨み上げつつ、呪詛のように言葉を紡ぐ藤花。相当な怒りが見てとれる。だが良心の存在しない人間は、その気迫を前にしても涼しい顔だ。
『性根の腐ったクズか。ま、良い子ちゃんから見りゃあそうなんだろうな。別にそれでもいいぜ?』
『ああ。俺らはよ、オメーみてぇなクソ女の鼻っ柱ヘシ折んのが、好きで好きで堪んねぇんだ。こーやって、なあっ!!』
 2人のチンピラは、そう言ってまた藤花の頭を汚水へと沈めていく。
 息が限界になれば引き上げ、少し空気を吸わせては沈め。相手が嫌がるとなれば、本当に容赦がない。まさしく鬼畜共だ。そしてそれは、藤花の後ろにいる奴も同じ。

 藤花に腰を上げさせた黒人は、自分も膝立ちから中腰に変わり、一層の気合を入れて尻穴を犯していた。タアンッ、タアンッ、と肉のぶつかる音がするほど。だが、そうして強く突っ込まれているうちは、受ける方としてはまだマシな方だろう。
『さーて……』
 ひとしきりハードファックを繰り返した後、黒人は汗まみれの藤花の腰を掴み直す。そして、一旦極太の逸物を完全に引き抜き、すかさず捻じ込んだ。あの滅茶苦茶に太い真ん中部分すらノンストップで。そんな事をされれば、受ける側は堪ったもんじゃない。藤花の腰が浮き、汚水に漬けられている顔からボコボコと大きな泡が立つ。
 そんな藤花の反応を見て、黒人はほくそ笑んだ。そしてそこからは、ストロークを極端に長くし、亀頭が覗くまで引き抜いて叩き込む、という動きを繰り返すようになる。真ん中が極端に太い形状は、抜かれる瞬間と捻じ込まれる瞬間が一番きついと容易に想像がつく。入れたまま前後されるほうがよっぽど楽なはずだ。
 しかも、この黒人はとことんサディストだ。抜き差しするにしても、いつも真っ直ぐに挿れるわけじゃない。わざわざ身体を左右にずらし、斜め方向から捻じ込みもする。さらには、腰を揺らして挿入途中にグリグリと抉ることすらあった。
 ただでさえ直腸の限界サイズを超えていそうな凶器で、そんな不自然な挿入をされたら冗談では済まない。さすがの藤花も、これは我慢ができなかったらしい。動画の前半で黒人に犯されていた時、藤花は太股に力こそ込めていたが、膝を動かさずにじっと耐えていた。それが今は、腰を左右に振ったり膝を踏み変えたりして、明らかに黒人のアナルファックから逃れようとしている。
 そうして藤花が反応を見せれば見せるほど、黒人の笑みは深まった。そして太い腕で藤花の腰を掴み、逃げ道を殺した上で、角度をつけて後孔を抉る。ガムテープで手首を縛られた藤花の手が、ぎゅううっと握りしめられた。汚水責めを受けている中で、一番はっきりとした意思表示。どれだけつらいんだろう。どれだけ堪らないんだろう。
『ぶはっ、はああっ、はあ、はあっ!!』
 ここでまた、藤花の顔が汚水から引き上げられる。すると彼女は、汚水を吐き出すよりも、息を整えるよりも前に、刺青男達に向かって叫んだ。
『はっ、はっ……う、後ろの奴を止めろッ! 尻の穴が、裂ける……!!』
 多分、これが初日から通して、彼女が初めて漏らした弱音だ。男達のしてやったりという表情から、それがわかる。
『んなにキツいかよ。だが無理だな。俺らはリンチの腕を買われて雇われたバイトみてぇなモンだが、あのロドニーさんはココの正調教師だ。この責めにゃデカチンが欠かせねぇんで、特別に来てもらってんだよ』
『そうそう。本来、こんなフロアにゃ来ないヒトなんだぜ。せいぜい堪能しろや』
『はっ、そう畏まんなって。俺の仕事はまだ先だしよ、ヒマ潰しとしちゃ上等だ。日本人のガキは最高、気の強ぇ女も最高。最高と最高の掛け合わせだ』
 態度のでかいチンピラ2人も、黒人には頭が上がらないようだ。その力関係は、街のチンピラとマフィアの構成員を思わせる。
 こうして、藤花の必死の訴えは一蹴された。サディスト3人に慈悲はなく、ゴリゴリと腸内をえぐり回しながら、執拗に汚水へと顔を沈め続ける。どれだけ藤花が暴れても、苦しんでも。

『 やめろおおおおっっ!!!!!! 』

 汚水に沈められる最中、藤花は顔を横向けて絶叫する。それは、心臓が締めつけられるぐらい切実な響きだった。

 ここで、突然テロップが表示される。

 『※ この後、ショッキングすぎる映像が続くため自主規制 ※』

 藤花が竹刀を手に暴れた時と同じく、しばらくその表示が出続け、別の映像に切り替わる。

 まず映し出されたのは、刺青男の上半身だ。
『うーいオトコ女、無視かよ?』
 刺青男はそう言って、小さく身体を揺らす。たぶん足元の何かに蹴りを入れたんだろう。
『……チッ。今度こそ完全にヘバりやがったか』
『脇腹(サイド)につま先入れても、ピクリともしねーしな。ま、頑張った方じゃね?』
『だな。オチてもオチても、気つけするたびに悪態吐きやがって。たぶん死ぬまで突っ張るタイプだろ。正味、初めて見たわこういうの』
『オレも。まさか“4段階目”で音ェ上げねえガキがいるとはな』
 刺青男の言葉に、迷彩ズボンの声が応じる。喫煙所で駄弁っているように、まるで緊張感というものが感じられない空間だ。だが、緩い空気だからといって安心してはいけない。そもそも常識が通じない人間は、異常な行動にも眉一つ動かさないものだ。
『つーか、どうすっべコレ? やるだけやっといてなんだが、今から片付けんのダリィな。くっせぇし、汚ぇしよ』
 その台詞を受けてか、カメラが180度後ろを向く。刺青男の真逆……床が映し出される。
 途端に、モザイクが映像のほとんどを覆った。ひどく荒いモザイクだ。かろうじて人型の何かが横たわっている事実と、色だけが判別できる。
 そして、その『色』は妙だった。髪の黒や肌色も見えるが、それ以上にやたらと土のような色が多い。おまけにモザイク処理は雑で、たびたび床の一部がノーモザイクで映るんだが、その床が……一面、溶かしたチョコレートを塗り伸ばしたようになっているんだ。
 嫌な想像が頭を過ぎる。
 あれが本当にチョコレートなら、刺青男が汚いと言うだろうか。臭いと言うだろうか。
『ったく……全部こいつが意地張るせいなのによ。なんで俺らが後始末だよ?』
 低いトーンで呟かれるぼやきを背景に、カメラは淡々と人型の何かを映しつづける。
 両足首をロープで縛られたまま、ピクリとも動かないそれは、ただただ不気味に思えた。


*********************************


 映像の最後、あれは何だったんだろう。俺はぼんやりとそう考える。頭を回転させれば、答えに辿り着けそうだ。だが同時に、心のどこかが知ることを拒否してもいる。
 いつの間にか、モニター前の歳の差夫婦は姿を消していた。俺一人がいつまでもモニターに齧りついて一喜一憂していたと思うと、妙に恥ずかしくなってくる。

 モニター5からさらに左に進むと、大きな扉が視界を覆い尽くした。いつの間にか、入口の正面……つまり部屋の中央奥に来ていたらしい。
 『 使用中【現在 9 日目】 』
 扉にはそう記された札が掛かっている。その向こうに広がる空間では、リアルタイムで藤花の調教が行われているに違いない。
 喉が鳴った。
 もはや俺は、藤花を他人だとは思えなくなっている。彼女の安否は気がかりだ。
 それでも俺は、あえて扉の前を通り過ぎた。アナルセックスが十分な下準備を必要とするように、いきなりハードな現実を目の当たりにしても、脳が理解を拒絶するだろう。彼女の現在をしっかりと受け止めるには、まず過去を知るべきだ。そう自分を納得させる。

 本当は、心の準備が出来ていないだけなのに。

 

二度と出られぬ部屋 第二章 喉奥凌辱

※イラマチオ回です。嘔吐要素があるため、ご注意ください。



■第二章 喉奥凌辱


【ディープスロート】
 地下16階の部屋には、入口にそう彫られた銀プレートが掛かっていた。そして扉の奥からは、生々しいえずき声が漏れ聴こえている。
 「おえ゛っ、おぉお゛え゛! おええ゛っ!!」
 濁りきった声。音だけ聴いていれば、泥酔した中年男が集団で嘔吐している光景が脳裏に浮かぶ。だが、いざ扉を開けて目の当たりにしたえずき声の主は、中年男などとんでもない、揃いも揃って格別の美少女だった。
 狭苦しい和室だった地下15階とは打って変わり、この部屋は煌びやかだ。眩く輝くシャンデリアに、いくつもの長ソファ。ガラステーブルの上にはフルーツ盛り。朧げな記憶ではあるが、似た光景に覚えがある。確か、キャバクラとかいったか。
 えずき声は、部屋内の3箇所から漏れていた。左奥、右奥、そして中央。ガラステーブルを臨むソファに一人ずつ制服姿の少女が腰掛け、左右をホスト風の男に挟まれている。
 少女3人は、ちょうど同じ責めを受けているようだ。口を開きっぱなしにする透明な器具を嵌め込まれ、歯茎まで露出させられた上で、喉の奥へ細長い道具を差し込まれる責め。敏感な喉へ異物を突っ込まれるんだから、無反応でいられる道理はない。3人は眉を顰め、身体を前後に揺らしながらオエオエとえずきまくる。そしてその苦しみぶりを、対面のソファに腰掛けた親父共が愉快そうに観察していた。
 顔面を変形させられ、元の顔の造りがわからないからだろうか。3人の腰掛けるガラステーブルには、それぞれ名札と写真が置かれていた。写真には個性が出ている。右奥の少女は、彼氏らしき年上男と腕を組んでいる。左奥の少女は、ぎこちない感じではにかんでいる。
 そして真ん中の少女は……ツインテールを揺らしながら、両手のピースサインを突き出すような一枚だった。後ろに映る友達達を隠さんばかりの、圧倒的な自己主張。しかし、そこに鬱陶しさはない。子供の無邪気さをつい許してしまうように、彼女のはしゃぎぶりも微笑ましいものだ。
 …………いや、少し嘘をついた。俺がその写真に好感を抱いたのは、無邪気さもそうだが、それ以上に彼女──『千代里』の容姿に因る部分が大きい。
 
 千代里は、俺がエレベーターで出会った女子高生集団の一人だ。皆が美形揃いだったせいで、あの場では特に意識はしなかった。だが改めて千代里個人に目を向ければ、その愛らしさは信じがたいレベルにある。
 写真の中で、千代里は白い歯を覗かせ、満面の笑みを浮かべている。その好感度は只事ではなく、生で目にしたら最後、確実につられて笑ってしまうだろう。
 好感度の理由は二つ。
 一つに、とにかく眼が輝いている。ふつう「綺麗な目をしている」と評される人間でも、瞳に輝きが一つあるぐらいが関の山だろう。しかし千代里の瞳の虹彩には、3つも光が踊っている。正面の光景を映し出す澄み具合はもちろんのこと、瞳それ自体が光り輝いているようだ。
 そしてもう一つは、歯並びのよさ。天然のものではなく、地道な嬌声の結果なんだろうが、そのあまりに整った歯並びは、笑顔の質を数段上げる。女優かアイドルのような、ひどく神聖な存在に思わせてくる。
 そしてこれら二つの武器を、幼い顔立ちが包んでいるのが絶妙だ。目にしろ口にしろ、整いすぎた部位は、ともすると気取った印象を与えかねない。しかし輪郭が幼いせいで、嫌味な印象は払拭され、『許せてしまう』。
 髪の色がやや軽めのブラウンであることも、ツインテールに結んだ髪形も、そうした美と愛嬌のバランスの邪魔をしない。まさに、奇跡的な愛らしさ。エレベーター内で友人と触れ合う彼女には、どこか天然気味な印象を受けたものだが、それはそうだ。彼女であれば、たとえどれだけズレた事をしようが、惚けたことを言おうが『許される』。同性異性関係なく、周囲のあらゆる人間から可愛がられるはず。つまり、天然のまま育つことを許された存在なんだ。この千代里は。
 ただ、彼女は周りの皆に愛されてきたようだが、天にまで愛されたわけではないらしい。もし天にすら愛されていたなら、彼女は今、この地の底で喉奥を掻き回され、醜く顔を歪めたりはしていないはずだから。

「どうだ、気持ちよくなってきただろ。ノドの奥にも、性感帯ってのはあるんだぜ?」
 千代里の喉に細い道具を捻じ込みながら、ホスト風の男が囁いた。
「げぇっ、は……っ!!」
 千代里は小さく噎せかえる。しかし、男の手は止まらない。
「エグついてる場合じゃねぇぞ。まだ半分しか入ってねぇんだ」
 ピンク色をした凹凸だらけの責め具を、さらに奥まで差し込んでいく。少しずつ、少しずつ。
「ほら、どんどん奥に入ってる。ノド開いてくのがわかんだろ?」
 男が問いかけても、千代里は前を凝視したまま、はっ、はっ、と怯えるような息を漏らすだけだ。男はそれを見て口元を緩めながら、さらに指先を押し込んでいく。責め具を掴んでいる親指と人差し指が、完全に口の中に隠れるぐらいまで。
「そーら、全部入った」
「かはっ……がはっ!!」
 男が全挿入を宣言するのと、千代里が咳き込むのはほぼ同時だった。
 一旦男の手が引かれる。ズルズルと引き出された細い責め具には、粘ついた唾液がべっとりと纏わりついていた。奥まで入れられていただけに、持ち手付近までが泡に包まれている。
「おーっ、すげぇすげぇ」
 重力に従って垂れ落ちるその糸を、もう一人の男がカクテルグラスで受け止める。カクテルグラスの中には、泡立つ液体がもう数センチも堪っていた。ただ、千代里の汁はまだ少ないほうだ。他の2人の少女は、その倍はえずき汁を出しているようだった。
「くくっ。やはりディルドーイラマはいい。アイドル級の子が、あんな濃いえずき汁を。これがテレビなら放送事故モノだ」
「まったくです。少し見目がいい程度の女だと、ああしてマウスオープナーをつけられたら最後、頬肉が吊り上がって不細工面になるものですがね。この子は目元だけでも逸材だとわかる」
 千代里の対面に座る人間が、それぞれ感想を口にする。他の少女2人には3人ずつしか観客がいないのに、この千代里にだけは4人がソファを占拠した上、さらにその後ろに立ち見で10人ほどが張りついている。一番可愛い子に群がるとは、現金なものだ。もっとも、立ち見に交じっている俺が言えたことでもないが。

「どうだ、これが全部入ったんだぞ」
 ホスト風の男は、唾液に塗れたディルドーを千代里に見せつける。
「はぁ、はぁ……」
 千代里は荒い息を吐きながら、信じられないという視線を責め具に向けていた。
「よし、もう一度いくか」
 一旦引き抜かれたディルドーが、また千代里の喉へと押し込まれていく。8割程度までは実にスムーズだったが、最後の一押しというところで、千代里の肩が跳ねはじめる。喉の奥からうがいをするような音がし、口の中で舌が暴れている。
「全部入ったぞ」
 千代里の変化など意に介さず、ディルドーはまた根元まで捻じ込まれた。千代里の瞳が細まり、涙が滲む。その涙はすぐに雫となって、整った目元をつうっと伝い落ちる。
「とうとう涙が出てきましたな」
「ああ。見た目が幼いだけに、背徳感が堪らんよ」
 見守る親父共が前のめりになりはじめた。その中で、またディルドーが引き抜かれる。纏わりつく粘液の量はさっきより多い。そうしてまた引き抜かれ、ほんのわずかなインターバルを挟んでまた挿入される。
 ただし、この回はさらに悪質だった。それまで通り指が口に入り込むぐらいまで押し込んでから、男の手がまったく動かなくなる。
「あ゛……ぉ……っ!?」
 責め具に喉の中心を杭打ちされ、千代里が呻く。唇の周辺は時が止まったように静止しているが、エネルギーがなくなったわけじゃない。そのエネルギーは、まるで暴発する銃のように、愛らしい少女の喉を不自然に蠢かせる。
 それまで小動物じみた上目遣いをしていた瞳が、急激に細まっていく。
「…………っ!…………ぐっ………………!!!」
 声にもなりきれない音がかすかに漏れ、瞼が揺れる。瞼の合間に覗く瞳はほとんど動かないが、それだけに、受けている衝撃の大きさが伝わってくるようだ。
「ぐっ……ぶほっ、ごぼっ!!」
 とうとう、千代里は咳き込みはじめた。その動きを受けて男が指を引くが、その最中にも何度も噎せてしまう。
「くはっ……は、はっ、はっ…………!!」
 何秒にも渡って呼吸管に蓋をされていたため、千代里の呼吸は荒い。舌も完全に開口具の外に飛び出してしまっている。そしてその舌に送り出されるように引き抜かれたピンクディルドーからは、もはやゼリー状と化した粘液が滴っていた。
「いいぞ。喉奥の汁がでてきた」
 ホスト男はほくそ笑み、さらにディルドーを押し込んでいく。奥へ、奥へ。
 千代里の反応は大きい。目をぎゅっとつむり、オエッ、オエッ、と連続でえずきはじめる。
「おーおー、苦しそうだ。すごい顔になってますよ」
「ふむ。しかし未経験でこれだけやられれば、普通はとうに吐いてしまっているものだが」
「確か彼女は、合唱部所属だそうですよ。それもソプラノパートの中心的な存在だとか」
「ほう。蒼蘭の合唱部といえば、コンクールで上位入賞していたな」
「蒼蘭は全国から才ある女子生徒を集めますんで、全国レベルの部活も多いですがね。逆にいえば、その環境下でなお抜きん出る人間は、紛れもなく天才と呼べるでしょう」
「なるほど、天才か。しかし可哀想なものだな。出る杭であったばかりに、こうして打たれることになる」
 ギャラリーは口々に千代里を謗り、嘲る。そしてその言葉は、間違いなく千代里自身にも聞こえているはずだ。だが、千代里にはそれに反応する余裕すらないようだった。閉じた目から涙を流し、噎せかえり。透明なえずき汁が、着々とカクテルグラスに溜まっていく。
「うおーっし、満タン!」
 そんな中、左奥に座る男がカクテルグラスを振り上げた。掲げられたグラスの中は、確かに液体で満ちている。ただし、千代里のそれと比べれば透明度は低い。白濁していたり、黄色かったり。
「はえーなオイ!」
「つーかそれ、半分ぐらいゲロじゃねぇ?」
「いいじゃん別に。早くグラス一杯にした組の勝ちだろ」
 ホスト風の連中同士でひとしきり盛り上がった後、勝った男共は嬉しそうに酒を呷り、負けた2組は眉を顰めて担当の少女に向き直る。
「ったく。お前ェが無駄に頑張っから、一番取られてんじゃねーかよ。もうディルドはやめだ、指で拡げてやる!」
 そう言ってディルドーを引き抜くと、二本指を開口具の内側へ突っ込みはじめる。指二本をあわせた直径は、さっきの極細ディルドーより明らかに上だ。当然、千代里達も激しく反応しはじめる。
「う、う゛!げっほ、あはっ!!」
 苦しそうな呻きと、咳き込み。細いディルドーでなら数秒は耐えられたそういう反応が、即時に出てくる。
「だから頑張ろうとすんなって。ゲー吐いてでもグラス一杯にしねーと、次行けねーぞ!?」
 男は苛立たしげに言いながら、指をさらに喉奥深く突っ込んでいく。喉の上側を刺激するのも強烈そうだが、指を横向け、喉奥の横腹を刺激されるのはもっときついらしい。
「お、オエ゛っ!!かはぇえエエッ!!!」
 乾いた咳のような声と共に、突き出た舌に沿ってどろどろと唾液がでてくる。
「出てきた出てきた。ネッバネバ」
「ああ。唾とか涎とかは少なめだけど、えずき汁がすげーなこいつ」
 男2人は、出てきた液を指に絡みつかせながら、さらにしつこく刺激する。
「ははは、すごい顔だ!」
「しかし、あの子なかなか吐きませんね。そこまで喉に耐性があるようにも見えませんし……こう言ってはなんですが、さして根性があるようにも」
「分かりませんよ。なにしろあのルックスだ。美形には美形特有のプライドがありますからね。無様を晒すまいという意地は、案外強いもんです」
 ギャラリーが茶化す中、千代里ともう一人は何度もえずき上げた。唾液やえずき汁の量は刻一刻と増え、喉奥を掻き回す男の手の甲を流れてグラスへ滴っていく。
 そして十数分後、3つのグラスはとうとう全て満たされた。
「お待たせしましたお客様。さあ、この美少女3人の唾液、おいくらでしょう!?」
 ホスト風の男達が立ち上がり、グラスを掲げて問う。俺にはいまいち趣旨の掴めない問いだったが、常連客らしい他の男共は色めき立つ。
「10万だ!」
「20万!」
「40万出そうッ!!」
 札束が投げ出され、オークションさながらに値段が叫ばれる。
「……?」
 千代里は、未だ開口具を外されないまま、雄の熱狂を小ウサギのような瞳で見上げていた。合コンでやるなら満点に近い反応だが、アンダーグラウンドな世界では格好の餌食にされる弱々しさだ。

 結局、60万の大台を叫んだ男が勝者となり、ホスト男からカクテルグラスを渡される。そして奴は、訝しげに見つめる俺や千代里の前で……ひと息に、その中身を飲み干してみせた。つまり、千代里の喉から掻き出された、濃厚なえずき汁を。
「っ!!」
 千代里が目を見開く。シャンデリアの明かりを余さず映す瞳が、明らかな動揺を示す。その表情が示すのは、困惑、そして軽蔑。そんな千代里の頬に、右側のホスト男が平手を見舞う。
「オイ! お客様になんて目ェ向けやがる!!」
 そう怒鳴りつけながら、荒々しく開口具を取り外す。千代里は突然の暴力に怯えながら、ようやく自由になった口をぱくつかせる。
「す、すみませんでした……。」
 小動物の瞳で、正面の客に謝罪する千代里。これで許さない男は、たぶん居ない。
「フフ……いいよいいよ、ああいう眼も興奮するものだ。えずき汁も雑味がなくて濃厚で、実に味わい深かったしねぇ」
 グラスを買い取った男は、口髭に泡を纏いつかせて笑う。時々口を蠢かし、内に含ませた粘液を味わいながら。
 美少女との『関節キス』でご満悦というところか。気色が悪い。
 だが……本来の俺も、こいつと同類かもしれないんだ。

「よし。んじゃ、本格的に喉のストレッチ開始だ」
 ホスト風の男達がそう言って、ガラステーブルに何かを置く。男のアレそっくりに作られた、本格的なディルドーだ。太さは俺のものより少し細めだが、楽に飲み込めるサイズじゃ決してない。
「これを、喉に……!?」
 千代里が顔を強張らせる。それはそうだろう。だが、ホスト男の表情に変化はない。
「なに、無理とか言うつもり? マンコ使うのはどーーしてもイヤだっつぅから、口で奉仕するだけで許してやったっつぅのによ。上の口でできねぇってんなら、下にぶち込むしかねぇぞ?」
 ドスの利いた声でそう釘を刺されると、千代里はさらに固くなる。でも結局は、
「…………わかりました」
 そう答えるしかない。
「うし。なら自分で咥えてみろ。目標は全呑みだ」
 右の男が、さらっと衝撃的な事を言う。今テーブルに置かれているディルドーは、どう見てもさっきまでの責め具より丈がある。その上で太さときたら、悠に3倍はあろうというのに。
 それでも、千代里は拒めない。目の前の凶器を前に息を呑み、恐る恐るという感じで根元を掴んでから、前屈みになって咥え込む。当然、スムーズに喉奥までとはいかない。太さがネックなのか、半分も飲み込まないうちに動きが止まる。
「ウ゛…ぐっ…………!!」
 呻き声を漏らしながら、涙を零し、なんとか喉奥へと苦戦した末に、とうとう耐え切れなくなって異物を吐き出す。明らかに奮闘してはいたが、その結果は調教役の不興を買ったようだ。
「お前、ふざけんなよ? 半分も入ってねぇじゃねえかッ!」
「根性出せや根性ォ!!!」
 男共は口々に怒鳴りつけ、膝立ちになって千代里の頭を鷲掴みにした。そして腕力にものを言わせ、強引に頭を押し下げていく。
「えあ゛……ぇかはっ!! あが……がああ゛っ…………!!」
 異物に太さがあるぶん、千代里のえずき声の深刻度合いも増していた。両の掌をガラステーブルにつき、必死の抵抗を見せている。だが、若い男2人の圧力に抗いきれるはずもない。ぐいぐい、ぐいぐいと、顔が押し下げられていく。異物が喉奥へと入り込んでいく。
「まだだ、もっと奥までいけ!」
 男共に容赦はない。髪のボリュームを完全に殺すぐらいまで力を込め、奥深くで咥え込ませ続ける。そうしてたっぷり10秒以上は押し留めてから、ようやく解放するんだ。
「んぐはっ、あはああっ!! ふ、……ふーーっ、ふーーーっ……!!」
 千代里は酸素を求め、溺死寸前の顔で呼吸する。その瞳からは、何筋もの涙が滴り落ちていた。
 束の間の解放。だが数秒の間すら置かず、次の地獄がくる。まさに極限状態。こういう状況だと、人間の取る行動は限られてくる。
「おら、掴むんじゃねぇよ!!」
「手ェどけろッ!!」
 左右の男が怒声を張り上げた。その視線の先を見れば、千代里の右手がディルドーを鷲掴みにしている。引き抜こうとしてか、それとも手をクッションにして、少しでも喉奥へ入り込むのを阻止しようとしてか。
「離さねぇと、後ろ手に縛りあげんぞオラッ!!」
 恫喝と共に、白い細腕が掴み上げられる。そうして手がテーブル下に戻された後は、追い込みにますます手心がなくなった。力むあまり血管さえ浮き立たせた4本の腕は、改めて千代里の小顔を掴み直す。それも今度は、後頭部を押すだけじゃない。首後ろを掴み、額に指を食い込ませて、完全に逃げ道を封じた上で頭を押し下げていく。
 その無茶は、当然ながら受ける側の反応となって顕在化する。
「ふも゛ぉおお゛えっ!! えがっ、がはっ……があああっ!!!」
 低いえずき声と共に、喉奥で何かが弾けるような音がする。バイブと口の隙間から、唾液がどろどろとあふれ出し、たっぷりと泡立ちながらガラステーブルに広がっていく。
 十二分に激しい反応だが、千代里の表情もまた壮絶だ。眉間に皺を寄せ、頬の線を完全に浮き立たせ、何度も噎せるうちに鼻水まで噴き出してしまう。
「おーおー、苦しそうになってきた!」
「これはこれは、間違っても美少女とは呼べませんなぁ!!」
 前列のギャラリーが、一人また一人とソファを降り、ガラステーブルを下から覗きこんで歓喜する。千代里の美貌が崩れれば崩れるほど面白いらしい。
 こうしたギャラリーの反応のよさが、ますますホスト風の男達を調子づかせる。他の2人の少女がテーブルから移動した後も、千代里だけが居残らされ、この覆い被さるようなディープスロートを続けられた。

「おら、もっといけんだろ。喉開け!」
「オメー合唱部だろうが、軟口蓋開ける訓練とかやんねーのかよ!?」
 ガラの悪い怒声を浴びせつつ、体重をかけて千代里の頭を押さえ込む男2人。
「うぶっ、ごふっ!!」
 千代里の口の端から唾液が零れていく。その中には時々、異様に真っ白い粘液が交じることもあった。
 明らかに辛そうなその状況でも、千代里は耐えていた。何度もオエッとえずき、肩を震わせながら。頭が動かないかわりに、腕が彼女のつらさを代弁する。ガラステーブルを掴んだり、肘をついたり。時には、背後のソファを握りしめることも。
 そんな中、彼女はソファの飾りボタンを思いきり掴み、千切りとってしまう。
「あっ、お前! どうすんだよ、ボタン取っちまいやがって。備品だぞこれ!?」
 男は2人して振り向き、焦りを見せた。ようやく呼吸ができた千代里も、事態を把握して青ざめる。
「あっ。ご、ごめんなさい……!!」
 彼女は頭を下げ、千切ったボタンを元の場所に埋め込もうとする。何度も、何度も、必死に。それを見て……青筋を立てていた男も、思わず吹き出す。
「ぶははっ!オイお前、笑わせんなよ!?」
「ば、馬鹿かお前! ンなんで戻るわけねぇだろうが!」
 調教役2人、そしてギャラリーの男達も大受けだ。その渦中で、千代里だけが戸惑っていた。
「え…? え……?」
 俺にはわかる。あれは、笑いを取ろうとしたわけじゃない。彼女なりに真剣に行動した結果、常識とズレてしまっただけだ。まさに天然。本来であれば場を和ませ、プラスに働くはずの性質。だが今この場では、『抜けている』ことは折檻の口実にしかならない。
「ここまでやられてボケるなんざ、いい度胸してんなぁオメー! ちっと躾が足んなかったか?」
 険しい顔つきを取り戻したホスト男達が、千代里の腕を掴んで無理矢理に立たせる。
「『平行棒』は……と、ちょうど空いてんじゃねぇか」
 ホスト男の片方が、ある方角を見て笑った。視線の先には、壁に備え付けられたディルドーがある。これまでの縦方向のディープスロートから一転、横向きに咥えさせるための責め具らしい。
 そしてその責め具には、明らかな『使用感』があった。具体的に言えば……ディルドーの周囲とその真下に、半固形の吐瀉物がこびりついているんだ。
「ヒュウ、いい彩りじゃねぇか!」
 根っからのサドらしいホスト男は、千代里の腕を掴んだまま口笛を吹いた。逆に千代里は凍りついている。そしてその顔を、跪く別の少女が見上げていた。
「あのっ。ご、ごめんね千代里ちゃん。私っ……は、吐いちゃって…………!!」
 どうやら彼女が、ディルドーを咥えさせられて嘔吐した当人らしい。
「ぎゃはははっ! オイ犯人見つかったな。奴隷同士だがキレていいぞ、ふざけんなっつってよ!」
「う……っ!!」
 ホスト男の罵声を浴び、跪いている子が泣きそうな表情をする。それを前にして、千代里は……
 にこやかに笑った。
「んーん、全然平気っ! 気にしないで、皐月ちゃん!」
 恨む気持ちなど微塵も感じさせず、にっと白い歯を覗かせて笑う。相手の失態のせいで、これから自分が、吐瀉物まみれの道具を咥えさせられるというのに。
 その朗らかな笑みは、どれだけ相手を勇気づけることだろう。彼女は確かに、少し天然気味なのかもしれない。世間一般の普通からは、いくぶん外れているのかもしれない。でも、いい子だ。奇跡的なぐらいに。
「ほー、『全然平気』ときたか。すごいねぇ、じゃチャッチャと咥えろや!」
 ホスト男2人は、プライドを傷つけられたのか、腹立たしげに千代里を壁のディルドー前まで引きずっていく。そして後頭部と顎に手を宛がい、強引に咥えさせる体勢に入った。
「う……!!」
 吐瀉物に塗れた異物を前にして、さすがに千代里も小さく呻く。
「ほらどうした、止まってんなよ。『全然平気』なんだよなぁ!?」
 千代里は、男2人の手で壁際に押し付けられ、渾身の悪意をぶつけられた。手で後頭部を押さえ込み、鼻が潰れるぐらい顔を壁に密着させて、千代里の喉奥までディルドーを嵌めこんでしまう。おまけに、そのまま男2人は動きを止めた。喉奥留めだ。
「おら、どうだお友達のゲロの味は」
「朝何食ったか当ててみろよ。ま、正解しても何もやんねーけどな?」
 男2人は、軽口を叩きながらも押さえる力を緩めない。
「ぶっ、ごぶう゛!!」
 千代里の身体が反射で暴れ、噎せる。それでも、彼女は耐えていた。震えながら、懸命に。
「これじゃラチあかねーな。甘ったれたガキみてぇな顔して、根性あんじゃん」
 ホスト男の一人がそう言い、一旦後頭部から手を離す。そして片足を上げると、今度は足の裏でもって千代里の頭を圧迫しはじめる。
「んお゛っ!!」
 壁際から小さな呻きが漏れた。
「脚の力は手の三倍、ってな。やろうと思えば、いくらでもキツくできんだぜ。おい、手!」
 ホスト男は笑みを浮かべ、もう一人に顎で合図する。
「OK!」
 そいつも薄笑みを浮かべながら、壁に宛がわれた千代里の両手のうち、右手首を掴み上げる。
「うう゛……!!」
 千代里の顔は見えない。が、怯えて右手を見上げているのが気配でわかった。
「うっしゃあ!!」
 千代里の頭を足蹴にしている男も、膝を曲げて上体を前に倒し、千代里の左手を掴んだ。そのまま2人が身を引けば、千代里は両腕を後方に引き絞られたまま、弓なりのような姿勢を取らされる。しかも、顔だけは男の足裏でディルドーに押し付けられたまま。明らかに不自然な格好。体にかかる負担は尋常じゃない。
「むう゛っ、ん゛ぉ……ぼぉお゛エ゛ッ!!」
 千代里の喉から、えずき声が漏れる。想像よりずっと低い声だ。ふわふわした女の子らしい彼女のイメージとは真逆の、男の声。
「ぎゃっはっはっは、すげぇ声。これってソプラノ?」
「違うな。だいぶ低めのテノールってとこだ。バスの一歩手前」
 千代里の声を聴いて、男2人の笑みが深まる。左右の細腕がますます直線に引き絞られ、明るい茶髪を押さえつける足裏は、駄目押しとばかりにグリグリと左右に捻られる。あんなひどい声まで漏れるコンディションの人間が、それに耐え切れる道理はない。
「おお゛っぉっろ……えろ゛お゛えええ゛っ!!!」
 耳を覆いたくなる声と共に、黄褐色の吐瀉物が千代里の太股の合間から覗く。筆荒いの水を捨てた時ぐらいの勢いで、ビチャビチャと床に音が立つ。
「おーおーおー、すげぇ出んじゃん。なーにが『全然平気!』だよ!」
「イキっといてこれはダセぇわ。友達の倍は吐いてんぞお前?」
 散々に笑い者にしながら、ホスト風の男2人が手足を離す。千代里の顔がようやくディルドーから外れ、ゲホゲホとひどく咳き込みはじめる。
「ひどいよ」
 横からそう声がした。さっき、千代里に吐いたのは自分だと自白した子だ。
「は?」
 責め役の数人が、一斉に鋭い眼を向ける。
「っ……だ、だって!」
 怯える彼女に、ゆらりとホストが近づこうとした、その時だ。
「ぐほっ、げほっ!! あ、あはは。ホント、吐いちゃうね、これ……。」
 千代里が、笑い声を上げた。寸前まで彼女は、喉を押さえて咳き込んでいる最中だったんだ。とても笑えるような状態じゃなかった。それでも無理をする理由は決まっている。ひとつは、場の空気を変えるため。そしてもうひとつは、「これは吐いても仕方ない」と同調することで、級友の罪悪感を軽くするためだ。
 なんていい子なんだろう。在り来たりな表現ではあるが、まさに天使だ。だがその天使を取り囲むのは、逸物を反り勃てた悪魔ばかり。

「さて。お集まりの皆様に、お願いがございます」
 ホスト風の男が、客側へと向き直った。これまでの野蛮な口調から一転、恭しい言葉遣いに変わっている。ただ、慇懃無礼という感じで、その眼差しは悪意を隠そうともしない。もっともそれは、聞き入れる客側にしても同じだが。
「ここは、美しい少女の喉奥をご堪能いただくお部屋。そのため本来は、充分にディープスロートに慣れた奴隷のみを、皆様に提供する決まりとなっております。しかしご覧の通り、この娘は若輩の我々では手に余る。そこで百戦錬磨のマニアたる皆様に、お力添えいただきたいのです」
 自分を下げ、相手を持ち上げての呼びかけ。回りくどいが要するに、剛情な千代里の喉奥を全員で輪姦せ、ということだろう。
「ほう?」
 この悪魔じみた提案に、居並ぶ雄が眼をギラつかせる。
 連中にとっては願ってもない話だろう。千代里は、ディープスロートに慣れていないどころか、キスの経験すらあるか怪しい娘だ。風俗で例えるなら、マットの研修すら受けていないまっさらな新人を、好き放題に抱けるようなもの。そんな好機を、マニア連中が逃すはずもない。
「いいだろう。熟成した大人の味を、たっぷりと教えてやる」
 歪んだ笑みは次々と伝染し、数秒かからずに千代里を包囲する。
「…………え…………?」
 千代里は、脂ぎった中年男に四方を囲まれ、困ったような笑みを浮かべた。彼女はこれまで、その人懐こさと笑顔でもって世の中を渡ってきたんだろう。そしてそれは、悪いことじゃない。彼女のように徳の高い人間が、笑って生きていける世界。それこそ、人類が目指すべき理想郷なんだから。
 しかし、理想はしょせん理想。そしてここは、血生臭い現実がすべてを支配する地の獄だ。
「さて。まず誰から始めるかだが……口の処女は、最古参である私に譲ってもらおうか。この場の誰よりも、『クラブ』のために金を落としてきたんだからね」
 腹の出た中年男が、千代里に歩み寄る。
「ははは。フロアのファーストナンバーをお持ちのHさんにそう仰られると、返す言葉がありませんな」
 一人がそう肩を竦める。異議を唱える声が出ないところを見ると、他の客も“H”と呼ばれるその男に一目置いているようだ。
「始めようか」
 Hはズボンを脱ぎ捨て、逸物を衆目に晒す。年季の入った赤黒いそれは、無慈悲にも千代里の鼻先につきつけられる。


 天使の顔から、ついに笑顔が消えた。



               ※



「ふふふ、初々しいものだ」
 仁王立ちになったHが、嬉しそうにほくそ笑む。千代里はその足元に跪き、逸物をしゃぶっている。俺はどうやら、そこまでセックスに詳しい人間じゃない。そんな俺でも見ていて判るぐらい、たどたどしいフェラチオだ。
 Hは、玩具遊びをする幼児を見守るように、しばらくそれを楽しんでいた。しかし数分が経つと、その目は足元の人間を童としてではなく、“女”として捉えるようになる。
「よし。ではそろそろ、しっかりと咥えてくれ」
 Hにそう告げられ、千代里の肩がびくりと震える。とはいえ、彼女も覚悟はしていたんだろう。一旦逸物を口から離し、ごくっと喉を鳴らすと、口を開いて逸物を口内に迎え入れていく。一気に半分ほど。けれども、たった半分。当然、ディープスロートマニアであるHは満足しない。
「駄目だな。もっと深く……こうだ!」
 そう言って千代里の頭を掴み、自分の腰へと引きつける。
「う゛、う゛えっ!うえ゛ぇっ!!」
「どうした、まだ7割ほどしか入っていないぞ。さっきのディルドーのように、根元まで咥えなさい!」
 千代里の頭を掴んだまま、前後に動かすH。
「う、う゛えっ!んえ、おえ゛ぇっ!!」
 一方の千代里は、その動きと同じペースでえずき上げていた。ディルドーの時は我慢強かったものだが、一度吐いたことで何かが変わったんだろうか。あるいは、脂ぎった中年男の匂いを受けつけないのかもしれない。無機物であるディルドーと、本物の生殖器との『滑り』の差という可能性もある。いずれにせよ、千代里はHの物を咥えるのに苦戦していた。
「駄目だ駄目だ、ノドを開け。えぐついた所で、グッと堪えてみろ! ディープスロートは慣れがすべてだ。ある程度素質に左右される膣やアナルと違って、喉奥は特訓すれば誰でも『使える』ようになる。何しろ食い物という固形物を通すための穴だからな。それが開かんなどというのは、ただの甘えだぞ!」
 中年男は持論を説きつつ、深々と咥えさせつづける。
「うえっ、うぇうぇ゛……んむえ゛ぇっ!!」
 千代里は低く呻き、手で相手の太股を押した。とはいえ、力任せに突き飛ばしたわけじゃない。小さな手で控えめに遠ざける、女の子らしい抵抗だ。Hが身を引いたのは、相手の窒息を危惧してのことか。
「くはっ、はあっ、はあっ……!!」
 実際、ようやく解放された千代里は、完全に肩で息をしていた。
「まったく、根性のない。相手が勢いづいている時は、苦しくても水を差すな。外気に一度触れるだけで、せっかく熱くなったものがリセットされる」
 Hはそう言って、今度は横から千代里の頭を鷲掴みにした。そして、また深く咥えさせる。
「う゛っ、むうう゛っ! げほっ、えほ……う゛っふぇぇ! おえ゛っ…おえ゛おえ゛っ!!」
 千代里の噎せ方も、一気にひどくなる。何度も噎せ、えづき。十回ほど喉奥を突いてから一旦逸物が抜かれた時には、必死な様子で舌を回して涎を切っていた。顎の下に垂れ落ちていく涎の量を見れば、必死さの理由も解ろうというものだ。
「ふむ、良くなってきたぞ。さすがに合唱部というだけあって、喉そのものは鍛えられているな。あとは我慢さえ覚えれば、性欲処理の道具としては及第点だ」
 Hは上機嫌で3度目の口内侵入を果たし、千代里のツインテールを前後に揺らす。そして今度こそ、逸物は抜かれない。右手で千代里の後頭部を押さえ込み、左手を顎の下に添えて、ラストスパートをかける。
「おえ゛、えごぇこえ゛っ!えごあ゛っ、う゛、う゛…ぃぉア゛っ!!」
 千代里のえずきはいよいよ声から遠ざかり、口内の深い部分を凌辱されている事実をわかりやすく伝えてくる。
「おおお、いいぞ、いい……出るぞっ!!」
 Hは口元を緩め、手の動きを早めつつ足を踏み変えた。そしてその一秒後、動きを止める。
「んん゛っ!?」
 千代里から驚きの声が漏れた以上、『何か』が起こったことは明らかだ。それは何か。決まっている。男が極限まで快楽を貪った果てに至る行為。射精だ。
「よーし。途中まではどうなることかと思ったが、どうにか形になったな」
 Hが腰を引き、逸物を抜き出した。千代里の唇と逸物の先を、太い糸が結ぶ。それは自重で下へ拡がり、泡立つ三角形の膜を形作る。
「ほう、お歳の割に見事ですな。不慣れな娘相手にこの一発とは……ハードルを上げてくださる」
「ふふふ。よちよち歩きの子馬の手綱を握り、思惑通りに走らせ、フィニッシュに至る──マニアの腕の見せ所だ。諸君も愉しみたまえ」
 『諸君』。Hのその言葉で、口内の精子を手に吐き出していた千代里が顔を上げる。そう、Hはあくまで1人目。そのHの後ろには、いつの間にかずらりと列ができている。
 列の二人目がズボンを脱いだ。色白で細身な、典型的デスクワーカーという風情の男。
「あ……あの、すみません。ティッシュありませんか? これ、拭かなきゃ……」
 千代里は迫り来る男に怯えつつも、右手の精液を見せて問いかける。だが、目の前にいる男の目は冷たかった。
「そんなもの、どうだっていいでしょ。君はどうせこれから、全身ザーメンまみれになるんだから」
 そう言いながら、痩躯に反して重量感のある逸物を突きつける。千代里は、何かを訴える目で相手を見上げていたが、意思の疎通が図れない事を悟ると、諦めたように口を開いた。

 この二人目の責め方は、Hとはまた違う。
 彼は最初こそ、やや深めに逸物を咥えさせ、軽快に腰を前後させていた。じゅぼじゅぼと唾液交じりの音が繰り返される、オーソドックスな『イラマチオ』だ。だが、ある時から様子が変わる。千代里の鼻先が変形するほど深く咥え込ませたかと思えば、今度はカリ首が覗くまで一気に抜く。それを繰り返しはじめた。
「しゅっ!」
 掛け声と共にまた逸物が引き抜かれ、千代里の口から唾液の糸が垂れる。
「げほ、げはっ!」
 千代里は咳き込み、さらに唾液を垂らす。そして……
「…………ゲェェェオ…………ッ!!」
 縦に開かれた口から、とうとう空気が漏れた。ひどい音を立てて。その女の恥を、この場の連中が見逃すはずもない。
「はっはっはっは、なんて音だ! 合唱部の生徒が、間違っても出していいシロモノじゃないぞ!」
「まったくだ。この娘を評価したコンクールの審査員にも、これを送りつけてやりたいよ!」
「アイドル級の娘から、このゲップを引き出すとは。Sさんは楽しませてくれる!」
 手を叩いて大笑いし、賞賛が沸き起こる。浮かない顔をしているのは、恥を掻かされた千代里本人と、その被虐を見守る級友2人だけだ。
「ふふふ、拍手有難うございます。私のモノは横幅がありますから、穴に空気を送り込みやすいんです。妻と普通にしていた頃も、よく『マン屁』が起きて怒られたものですよ」
 Sと呼ばれた男は、そう言ってまた笑いを取り、気をよくして千代里に向き直る。
「さて、パフォーマンスはここまで。ここからは、純粋に喉奥を堪能させてもらうとしましょう」
 そう言って千代里の下顎に指を当て、口を空けさせてから、ゆっくりと逸物を挿入していく。
 そして、ディープスロートが再開された。今度は引き抜かず、喉の深い部分を蹂躙する。
「う゛、ウう゛……!!」
 クチュクチュという音と同じ調子で、千代里の呻きが聞こえる。
 千代里の表情は険しかった。Sの陰毛の生え際を睨みつけるような目をしつつ、頬を膨らませている。怒り心頭の表情にも見えるが、短い間隔で噎せているところを見ると、苦しさゆえの顔なんだろう。Sの言葉が真実なら、奴の逸物は横幅がある。それに喉奥を掻き回されれば、ああいう表情になるのも不思議はない。
 可哀想なのは、彼女の手だ。千代里は未だに、右手の精液を床へ零さないように掲げている。そのせいで、苦しさのあまり相手の足を跳ね返すのも、左手でしかできない。当然そんなものは、大の男に対する抑止力にはなりえない。
「あああいい、いいよ……!」
 Sはうっとりとした顔をしながら、激しく腰を使う。千代里の呻きのペースも早まる。そして、その数分後。
「あああ、出る、出るからねぇ!全部飲んで、全部ゥッ!!!」
 Sは甲高い声で叫びながら、千代里の頭を引きつけて喉奥で射精しはじめる。しかも、射精してすぐに逸物を抜いたHと違い、このSは千代里の頭を押さえ込んだまま、じっと腰を押し付けている。
「ん、んんー!んンン゛っ!!」
 千代里が顔を顰め、左手で何度もSの腰を叩く。それでもSは動かない。千代里はとうとう、それまで宙に浮かせつづけてきた右手まで使ってSの足を叩くが、それが最後の抵抗となった。
「んんんん゛ーーーー!!!」
 Sの太股で精液が弾けた瞬間、千代里の忍耐も限界を迎える。そして彼女は、ごぐっと喉を鳴らした。精液を飲み下した……いや、『飲まされた』んだ。
「ふふ、そうそう。喉奥射精してもらったら、ちゃんと飲まないと。口淫奴隷として失礼だよ?」
 Sはそう言って、ようやく千代里の頭から手を離す。ツインテールを靡かせながら、千代里の頭が後ろに弾ける。
「ぶはっ……あ゛っ、げほっ!!げっほえほっ!!」
 唾液の糸を垂らしつつ、千代里は激しく噎せかえった。普通の日常なら、誰かが大丈夫かと背中でも擦るような状態だ。誰もに愛される千代里であれば尚のこと。だが、この場に配慮などはない。苦しむ少女を労わるどころか、さらに苦痛を与えるべく、3人目が千代里の前に立つ。そしてかなりの長さのある逸物を、喘ぐ唇へと捻じ込んでいく。

 喉奥へ迎え入れるなら、多少の幅があるより、長い方が苦しいんだろうか。3度目の喉奥奉仕で千代里が見せた表情は、壮絶だった。縦に開いた口が強張り、顎には複雑な皺が寄り、喉にも中央に筋が浮き立つほどの力が込められている。
「きぃゅうううおおお゛っっ!!」
 そんな風に聴こえる喘ぎ声も、今日初めて耳にするものだ。相手がそれほどの表情を晒していても、3人目の男に責めの手を緩める気配はない。それどころか、喉奥に咥えさせたまま千代里の身体を引きずり、ソファの傍まで移動すると、ソファの座部に片足を乗せて責めはじめる。
 自分の足で千代里の身体を隠すことなく、背後の人間にも痴態を見せることができる。そういうパフォーマンスかと思いきや、そればかりでもないらしい。
「ははは、先にやられちゃいました。あれ、見栄えもしますが、やってて気持ちいいんですよね」
「ええ。片足に負荷がかかる分、射精感が強まりますよね。仁王立ちでのイラマチオは征服感こそありますが、力の込めどころが難しい。若い時分ならともかく、歳を食って射精力が弱まってくると、ああいう一工夫が大事になってきます」
「おまけにあの長さだ。あれでもって、力の込めやすい体位で喉奥まで押し込まれれば……かなりきついはずですよ」
 客達は、3人目の男の行為を興味深そうに評している。この連中が賞賛するということは、それだけ千代里が追い詰められる責めということでもある。
「とュア゛……っ!」
 また、聴いた事もない音がした。おかしなものでも口に含み、大量のツバと共に吐き出すような音。
 どうやら、3人目の男の逸物が引き抜かれたらしい。太い唾液の線が、平行に二本伸びていく。その先では、濡れ光る逸物がぶらんぶらんと揺れ、透明な液を飛び散らせていた。改めて目を凝らしても、やはり長い。平均の倍近くはあるかもしれない。
「ふーっ、ふーーーっ……!!」
 逸物を引き抜かれた千代里の顔が、またひどい。口を閉じ合わせているが、その合間から精液と涎があふれ、完全に下唇を覆い隠している。ほんの少し皺の寄った顎にも、ダラダラと泡立つ筋が流れている。どうやらあの3人目は、何も言わず静かに……千代里にすら予告せずに精を放ったらしい。その不意打ちの結果が、あのおかしな音だったんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ……」
 千代里は俯きながら、荒い息を吐いていた。その彼女の影に、いくつもの影が重なる。
「ほら、休んでる場合じゃないぞ。まだまだ次がいるんだ」
 もはや順番すら待ちきれなくなったのか、3人の男が千代里を囲む。千代里は顔を上げ、眉根を下げる。前と違って、笑顔は浮かべないが。

 制服姿の少女が、3人の中年男に奉仕している。
「ほら、手もちゃんと使って。すぐ硬いのが咥えられるように整えておくのも、イラマチオ奴隷の仕事の内だぞ」
 右の男にそう促され、小さな右手が動きを早めた。その逆の手でも別の一本を握り、桜色の唇で正面からの突き込みを受け止めながら。
「う、ぐっ!ぶはぁっ……!!」
 小さな呻き声の後、千代里が大きく口を開いた。白い前歯さえ覗かせるような大口。その口内には、唾液と交じっていない、粘ついた白濁が見える。あきらかに今射精されたものだ。正面の男に射精の宣言はなかった。黙々と腰を振り、快感に浸り、当たり前のように予告なしで射精したんだ。相手を女性としてではなく、性欲処理の道具として見ているのが、その気遣いのなさに表れている。そしてそれは、左右の男にしても同じ。
「今度はこっちだ」
 左側の男が千代里のツインテールを掴み、強引に横を向かせる。
「痛っ……!」
 この時ばかりは天使のような彼女も、割と本気で腹を立てたようだ。だが睨むよりも早く勃起したもので口を塞がれ、怒りの行き場を失くしてしまう。
「おぼっ、ごえっ!ごえっ、もえ゛っ!!」
 低い声でえずき、だらだらと涎を零す本格的なイラマチオ。この時点で制服のブラウスはかなり濡れていて、向日葵色のブラジャーが透けて見えていた。お嬢様学校らしいシックな濃紺のブレザーも、白濁液や透明な汁でかなり汚れてきている。それだけ執拗に喉奥を凌辱されてきたということだ。決して体力のある方には見えない、文科系という感じの千代里にとって、それはどれだけつらいことだろう。
 左右の男をかろうじて『処理』した頃、彼女はぐったりとしていた。半開きの口で細い呼吸を繰り返す様は、今にも気絶しそうに見える。そんな彼女の周りで、また男共が入れ替わった。
「へへへ、とうとう俺の番か」
「間近で見ても、やはり上玉だな」
「確かに。可愛い女と思いきや、化粧で『作っている』だけというパターンも多いですが、この子は正真正銘のすっぴん美少女ですよ。汗とザーメンで流されれば、どんな化けの皮も剥がれますからね」
 まだ射精していない7番目から9番目の男は、勃起した物を握りしめ、ニヤケ面で獲物を見下ろす。
「おら、ボサッとすんな。次のお客様がお待ちだ!」
「はぁ、はぁ……少し、休憩させてください……」
 壁際で見守るホスト男が怒声を上げると、千代里が薄目を開いた。本当に疲労困憊という様子だ。その姿に、客達が溜め息をつく。
「なるほど、駄目か」
「では仕方ない。キャスト君。あちらの奴隷、どちらか使わせてもらえるかな」
 客の指が、テーブルで喉奥開発を受けている二人の少女を指し示す。
「!?」
 少女2人も、そして千代里も、目を見開いた。
「仕方ありませんな。おい」
 壁際のホスト男が了承し、少女2人の脇を固める調教師に呼びかけた。
「ふふ、結構。だが私達はあくまで、このアイドル級の子が相手をしてくれると思って、楽しみにしていたんだよ。言っては悪いが、あそこの2人はこの子よりも幾分容姿で劣る。となれば、埋め合わせのために少々過激な『使い方』をすることになるが……構わんかね?」
「ええ、ご自由に」
 満足げに頷きつつ、耳を疑う要求を口にする客。そしてそれを、二つ返事で受ける従業員。その双方に、少女3人を気遣う気はないらしい。

「……少し休憩させてやるぐらい、べつに良いだろう」

 俺は見かねて、そう提案した。その瞬間、客と従業員の顔が一斉に俺を向く。
「なに?」
 眉を顰めた一人が、こっちへ歩み寄ってくる。そして俺の頭から爪先までを、不審そうに見回した。
「見ない顔だが、新規の入会者か?」
「あ、いや……」
 身元を尋ねられるとつらい。俺自身にも、俺がここにいる理由も、資格もわからないんだから。
「怪しいな。本当にメンバーか?」
「レストランで見かけた気はするが──そういえば、あの時も挙動不審だったな」
 次々と、疑いの目が俺を向く。レストランなら、確かに怪しかったかもしれない。食べ物の好みも、アレルギーすら判らない俺は、その場にあるすべての食べ物を少しずつ皿に取り、実験でもするように口に運んでいた。およそ普通の人間が取る行動じゃない。
「お客様」
 たじろぐ俺に、ホスト風の男が声をかける。
「生憎ですが、我々は無理を申し上げて皆様に助力を乞うている身。その上で、皆様にご満足いただけるサービスを提供できないとなれば、その補償をする義務がございます。それが、あちらの2人なのです」
「お客様。どうか我々に、挽回のチャンスを」
 ホスト男2人は、そう言って深々と頭を下げる。だが、そこに誠意は感じられない。低い声色は威圧的な証拠だし、眼には鋭さがある。
『記憶喪失の部外者は黙っていろ』
 今にもその本心が聴こえてきそうだ。
「あ……そ、その……」
 何十という冷ややかな眼に囲まれ、俺は返答に窮した。記憶がないというのは、こういう時あまりにも不利だ。理の拠り所がない。
 俺の常識は、はたして世間的に正しいのか。こいつらを外道と思う気持ちがそもそも誤りで、俺の方が変なんじゃないか。
 視線が痛い。
 余計な口を挟まなければよかった。己の数日前の行動さえわからない奴が、確たる日々を積み重ねてきた人間相手に何を語るというんだ。
 無言の圧力に耐えかねて、土下座すら考えた、その瞬間。

「────あ、あのっ!」

 鈴を揺らすような声が、部屋に響く。客も従業員も、一斉に声の源を振り向く。
「あ、あたし、もう大丈夫です。息がちゃんと出来るようになったので、またお相手させてください」
 千代里だ。床にへたり込んだ、幼い雰囲気の彼女は、しかしはっきりと宣言する。客が望む通りの答えを。
「なるほど。それなら問題ない」
「ああ。こちらとしても、君が相手をしてくれるのが一番いいんだ」
「うむ。それさえ満たされるなら、文句はない」
 客は、一人また一人と千代里の下へ戻っていく。まるで俺の存在など忘れたように。
「さて。せっかく千代里チャンもやる気出してくれたんだ。ここらで少し、キツめのいこうか」
 千代里の背後に立つ客がそう宣言し、勃起した逸物を千代里の顔に置いた。
「……!?」
 千代里の見開かれた目が横を向く。俺も奴の意図を察して凍りついた。
 背後から……というより、ほとんど真上から咥えさせる気だ。その苦しさは容易に想像できる。普通に飲めば何でもないペットボトルの水ですら、角度をつけて飲むと途端に噎せてしまう。俺も大浴場から上がって喉が渇ききっている時、売店の牛乳でやらかしたものだ。噎せて、鼻にも入って、地獄だった。それを男の逸物で、意図的にやらせようというのか。
「ほら、どうした。俺達の相手をするんじゃなかったのか。無理なら、やっぱりお友達にやってもらうか?」
 ピチピチと逸物で顔を叩かれ、千代里の表情が強張った。でも、それは一瞬のこと。
「いえ、やります。その前に、ちょっと……」
 その言葉の後、千代里の視線が俺を向く。人の輪から外れて、ひとり立ち尽くす俺の方を。
「あのっ。ありがとうございました!」
 千代里はそう言って、控えめな笑顔を作った。性格の良さが滲み出た笑顔。だからこそ、見ていてつらい。
 俺がどう答えようかか迷っているうちに、その権利は横から掠め取られた。
「はい、どういたしまして!!」
 千代里の背後にいる男が、そう言って逸物に角度をつけた。赤らんだ先端が千代里の唇を押しのけ、無遠慮に中へと入り込んでいく。
「あ……かっ!おぐっ……ぅも゛えっ、んも゛お゛お゛えええ゛っ!!!」
 不自然な角度での喉奥挿入が、普通でない声を発させる。普通に体調不良で嘔吐した時の方が、まだ人の声に近いのでは。そう思えるほど、濁った声。それが、あの朗らかな笑みをくれた千代里の喉から漏れているんだ。
「やあ、君。さっきは脅かしてしまってすまなかったね」
 凌辱を凝視する俺に、横から声が掛けられる。Hだ。最初に千代里から奉仕を受けたこの男は、ソファに腰掛けたまま、手の平で横を示す。座れ、ということか。
「我々も、君に敵意があるわけじゃない。だが君の発言は、あまりにも的外れだったからね。皆、つい訂正しようとしてしまったんだな」
 ソファへ腰掛けた俺に対し、Hは諭すようにそう言った。
「的外れ……とは、どんな風に?」
「簡単だ。君はあそこにいる3人の女を、まるで人間のように捉えている」
 人間のように? どういうことだ。
「いや、人間だろう。あの制服を見ろ、ごく当たり前の高校生だ」
「違う。あれは、我々の欲望を満たすための『奴隷』だよ。本質的には、排泄欲を解消するために設置された小便器と変わらん」
「なっ……!?」
「先ほどの君は、その小便器の連続使用に疑問を呈したんだ。おかしな話だと思わんかね。小便器があり、尿意を催した人間がいれば連続で使えばいい。一つの便器が『詰まった』ならば、その隣の便器を使えばいい。それだけのことだ」
 思わず、絶句する。その淡々とした物言いに。発言の内容も内容だが、もっと信じがたいのは、Hがそれを普通のトーンで話していることだ。冗談を言っている風じゃない。本気でそう考えている、という感じだ。
 おかしい。俺ははっきりとそう感じている。だがこの部屋にいる人間は、客も施設の従業員も、皆がその常識に基づいて行動しているようだ。女は性欲処理の道具。そういえばあのエレベーターガールも、職務中に凌辱されておきながら、それを当たり前のように受け入れていた。それが、この世界では普通なのか? 俺の意識だけが、この世界に適合していないのか?
 ──いや、違う。もしそれがこの世界の常識なら、千代里があれほど嫌がっているはずがない。あくまで、この連中の間だけで共有されるルール。この閉鎖空間に限っての法なんだ。

「はは、すっげぇヨダレ……いいのかよお前。お嬢様学校の制服が、ドロドロんなっちゃうぜ?!」
 後ろから咥えこませる男が笑う。だが今の千代里に、服の心配などしている余裕はないだろう。
「うぉ゛うむ゛、うお゛っ!!うお゛、ッコほっ……!!」
 千代里は、何度も肩を跳ね上げ、低い声でえずき上げていた。
「すごい声ですな。ああいう子供っぽい子がバスの音色を出すのは、いつ見ても堪りませんよ」
「ええ。人間誰しも平等だと感じますな」
 客達は、その様子を腕組みして見守りながら、したり顔で評価する。
「どうかね。ああいうものを見ていると、逸物がいきり勃つだろう。破滅の美学というやつだよ」
 俺の横でも、Hがウォッカグラスを傾けながら、先走りの滲む逸物を弄くりまわしている。
 俺は……勃起していない、わけじゃなかった。何か、非常に根源的なものにあてられて、ズボンの中が膨らんでいる。だが、俺はそれを望まない。H達に交じって、年端もいかぬ少女への凌辱を楽しむ気分にはなれない。
「人生など短いんだ。雄としての欲求を、早く認めてしまった方が楽だぞ」
 Hは諭すように言うと、冷笑しつつ俺から目を外した。
 そうした一連の間にも、千代里の喉は真上から犯されつづける。ストロークは充分に大きいが、音は地味だ。じゅぶじゅぶという音と、小さな呻き。少し距離のあるここでは、意識を集中しないと拾えない。だが、それが嵐の前の静けさなのは明らかだ。なにしろ、真上から充分なストロークで出し入れされているんだから。
 “嵐”の前兆は、3回の小さな音。
 ちゅっ、ちゅぶっ、ちゅうっ。いきなりそういう、逸物を強く吸う音がした。後追いでの分析だが、多分これは千代里が口を窄めた結果、偶然そうなったんだろう。じゃあ、なぜ口を窄めたか。相手により強く奉仕するため? 違う。肉体の反射行動を繰り返すばかりの彼女に、そんな余裕があろうはずもない。となれば、結論はひとつ。『吐きそうだったから』。それしかない。
 そして事実、3回の音が響き渡った数秒後、千代里の喉は決壊する。
「んも゛ぉっ!おろ゛……も゛ぉお゛う゛ええ゛え゛っっ!!!」
 限界を迎えた人間に、女も男もない。千代里は真上を向いたまま、地獄のように低く汚い声を響かせ、吐瀉物をあふれさせる。決壊の時、逸物はまだ口に入ったままだったから、黄色い汚物は口周りに沿って三方へ流れおちた。そして逸物が引き抜かれれば、自由に噎せられるようになったとばかりに、吐瀉物が噴き上がる。
「おう゛うぇれあ゛っ!!」
 そんな、あられもない声と共に。
「おおおおっ、吐いた!すっげぇ絵面!」
「ははは、これは盛大な!!」
 どっと場が沸く。その音圧と熱気は、ソファに座りながらもクラリとくるほどだ。
「はーっ、はーっ……はーっ……」
 千代里は上を向いたまま口を、胸を上下させて激しい息を繰り返す。
「ほら、休んでる暇ァないぞ」
 そう、千代里は休めない。嘔吐を晒してなお、次の責めを強いられる。他の2人の少女は、自分もディルドーで喉奥を開かれながら、千代里の方を凝視していた。その眼はひどく同情的だが、「自分が代わる」という言葉は出ない。でも、それを冷たいというのは酷だろう。安易に代われるわけがないんだ。噎せかえり、えずき上げ、吐瀉物を撒き散らし、それでも休む間すらなく逸物を咥えさせられる。そんな現場を目の当たりにしたら。


             ※


「歳のせいで勃ちが悪くてな、竿をしゃぶられるだけでは、中々勃起できないんだ。だから、タマも併せて刺激してくれ」
 千代里の前に立った男は、そう注文をつけた。千代里に逆らう術はない。命じられた通り、口で逸物を転がしつつ、男の毛だらけの睾丸を弄ぶ。舌も手も、かなり熱心に動かしているようだ。
「おっ、いいぞ。なかなか上手いものだ。口の中でイチモツが硬くなってきたのがわかるだろう」
 男は上機嫌だ。指揮者にでもなったつもりなのか、仁王立ちで股間を刺激させながら、指を空中で躍らせる。
「素晴らしい。ここまでギチギチに勃起するのは久しぶりだ。かわいい君がその小さな手で、丁寧にタマを刺激してくれたお陰だよ。お礼に、たっぷりと喉奥で堪能させてあげよう」
 男の左手が千代里の頭を掴み、強引に前後させる。
「う゛、おぼっ……おお゛っ、うお゛っぉ……」
 千代里から漏れる声は苦しそうだ。自分の奉仕で屹立させたもので苦しめられるのは、さぞかし屈辱的だろう。おまけに男の指揮は、素人目に見ても滅茶苦茶なものだ。合唱部として活動してきた人間にとって、そんなふざけた指揮は許せないに違いない。
 ただ、千代里の心中はどうあれ、男はますます調子づいていく。
「さぁっ、もっと強く!フォルティッシモだ!!」
 そう言って千代里の頭を強く引き寄せつつ、自分の腰も前に打ち出していく。まるでセックスと同じ腰遣いに、千代里は何度も噎せかえる。
「ごっ、おごっ!ほおお、お゛っ……え゛うぉえあ゛っ!!」
 20回を超す抽迭の果てに、千代里の口の端から吐瀉物があふれだす。
「ああああ熱い、ああ熱い……。いいぞ、いい喉奥合唱だったぞぉ!!」
 奴は下半身で嘔吐を浴びつつ、その最中に射精しているようだった。また眩暈がする。あれはさすがに理解できない。だが奴自信は満足らしく、たっぷりと時間をかけて精を放ち終えてから、逸物を抜き去った。濃茶色の指揮棒は、半勃起状態で斜め下に垂れ下がり、ぽたぽたと悲劇の残滓を滴らせている。
「いやー、お見事お見事。Tさんのプレイは、いつも楽しそうでいいですなあ。バレー部の子へのスパイク喉奥射精も見応えありましたが、今回は指揮ですか」
「ええ、なかなか楽しめましたよ」
「ははは、結構なことで。では私も、やりたいようにやるとしましょうか」
 次の男はそう言って、床に寝そべる。千代里は怯えた様子でそれを眺めていた。
「ほら、何してるんです。客が横たわったなら、覆いかぶさってしゃぶらないと!」
「……ごめんなさい」
 千代里は命じられるまま、男に覆い被さっていく。
「おほほ……制服姿の女子高生に圧し掛かられるなんて、夢のようです。しかも思ったより胸あるんですねぇ。とはいえ、せいぜいCカップでしょうが。そうそう、知ってます? これね、シックスナインって体位なんですよ」
 男の舌はよく回った。発言内容は最低だ。だがどんな相手でも、千代里は奉仕するしかない。勃起したものを口に咥え、深々と飲み込むことで。
「うん、いいですね。では、ここから……」
 男は両足を持ち上げ、千代里の頭後ろで交差させる。菱形の足で顔を圧迫する形だ。
「う゛っ!?」
 視界外からの圧迫を受け、千代里から驚きの声が漏れる。
「ははは、AVでよく見るやつですな!」
「ええ、一度やってみたくってねぇ。中々征服感があっていいですよ、喉の締まりも増してますしね」
 男はそう言いながら、足で作った菱形を狭めていく。
「ん゛んん゛っ、んん゛っ……りゅ、っく…………!!」
 呻き。そして、喉奥で気泡が潰されるような音。それが漏れ聴こえた。
「いいですよいいですよ、ほら。逃げられないままフェイスファックされる気分はどうです!」
 たるんだ脹脛が、繰り返し千代里の後頭部を叩き、深いイラマチオを強要する。
「うえ、うえ゛、う゛え゛、うえ゛っ!!」
 後頭部を叩かれるのと同じペースで呻きが漏れ、クチュクチュという水音もそれと交互に聴こえている。
 毛深い足に囲われた千代里の顔は、眠っているように静かだ。印象がだいぶ違うのは、大きな特徴であるツインテールが足で隠れ、ショートカットに見えるせいか。濡れた茶色の前髪が揺れ、柳の葉のように顔をくすぐっている。静かだ。だが顔を圧迫されたまま喉を抉られて、何ともないはずがない。ああして静かにしていることで、かろうじて耐えられているんだろう。
 実際、ようやく男が足を組むのをやめ、千代里を開放した瞬間、彼女の顔面は壮絶なことになっていた。
「あはははっ、見ろよ。ひょっとこだぜ!?」
 誰かが叫んだとおり。口を窄め、鼻の下を伸ばしきった、あの有名なふざけ顔だ。勿論、彼女はふざけてなどいないだろう。普通でない責めをされ、それに耐えるための努力に違いない。だがその顔は、物笑いのタネになる。
 しかも、それだけでは終わらない。ようやく自由を得られ、勢いよく顔を上げれば、また彼女は恥を晒すことになる。
「べはあ゛っ!!」
 ずるうっと逸物が引き抜かれたばかりの口は、喉奥が完全に開いていて、奥の穴がはっきり見えた。そしてその開いた喉奥から、黄色い吐瀉物を噴出したんだ。
「ふひゃひゃっ、すっげぇ。こんな細ぇゲロ見たことねぇや!」
「まるで喉から放尿しているようですな!」
 心無い罵声に、千代里は目を伏せてしまう。だが、これはあくまで小休止だ。
「ほら、ちょっと休んだら再開ですよ!」
 千代里に奉仕させている男は、そう言ってまた足を組み、菱形の中に千代里の頭を閉じ込める。そして前とまったく同じ容赦のなさで、強制的に深く咥えこませる。

 二度目も千代里は静かに耐えた。最初の3分ほどは。だが、今度は耐えきることができなかった。3分経過後、顔全体がビクビクと震え、頬が持ち上がって『ひょっとこ顔』が覗きはじめる。ぶほっ、ごぼっ、と2回噎せ、細く開いた目の中でぐるりと白目が覗く。
「おっと……おいUさんよ、ちょいストップ。なんかやばそう」
 その声で、男が足を離す。その瞬間、また千代里の顔が跳ね上がる。

「ふぅーーーお゛っっ!!!」

 目を瞑り、縦に開いた口の中に逸物を挟んだまま、彼女は嘔吐する。真っ白な涎が上唇の辺りから噴き出す、ここ数度では一番澄んだ嘔吐。
 吐いた物は澄んでいても、漏れたえずきは最悪だ。
「はははっ、今のがバスか。なあ、そうだろう?」
「ええ、間違いありません。男でもあそこまでの低音を出すのは難儀しますよ」
「さすがは蒼蘭合唱部の星。音域が広い上に、こちらの心を揺さぶってきますなあ!」
 悪意に満ち満ちた暴言の数々。それを耳にして、千代里がどんな表情をしているのか見ようとして……俺は、ひどいものを目にした。
 最低な嘔吐で茫然自失となっている彼女の顔に、精が浴びせられる瞬間だ。下になった男は、元々射精寸前だったのか、何の刺激もなしに暴発した。
「ら゛っ!? ぷあっ!!」
 鼻の辺りに射精を浴び、唐突に漏れた声は、ちゃんと女の子のそれだ。酷いことさえされなければ、彼女はそういう声でいられるんだ。彼女は、同年代女子の中でも、確実に上位に入るぐらい女の子らしいんだから。
 だが、この場の連中の望みは、そんな彼女にあえて惨めな思いをさせることなんだろう。

「あーあ、射精ちゃいましたねUさん。申し訳ないけど、替わってもらいますよ」
 次の男が、拍手しつつUに歩み寄った。この部屋の中でも、俺と並んで若く、30前半に見える。事実、タンクトップとジーンズを脱ぎ捨てた下からは、割れた腹筋と小麦色の肌という若々しい肉体が現れた。
 奴は千代里をUの腹上から引きずり下ろし、仰向けに寝かせてから、その顔の上に跨る。勿論、勃起しきった逸物を口の中に捻じ込みつつ、だ。
「お゛え゛っ!!」
 ストレートなえずきが響きわたる。
「俺もUさんに倣って、AVで見かけたプレイでいきます」
 男は、腰にかかる上着の裾を払った。そしてゆっくりと腰を上下しはじめる。ずっ、ずっ、という動き。抜き差しに速さはないが、千代里の反応は激しい。
「んお゛っ、おお゛あ゛っ!! うも゛ッ、ほごおお゛っ!!!」
 喉を圧迫されているのがはっきり伝わる、典型的なえずき声が繰り返される。そして同時にその喉からは、キュォオオッという妙な音もしていた。
 さらには、足。チェックのミニスカートとハイソックスに包まれた足が、激しく暴れている。膝を曲げて、地団太を踏むように床を蹴ったり。あるいはそれに失敗し、踵から滑ってまっすぐに伸びたり。足に相当な力が込められていないと、そうはならない。手は手で、男の太股へしがみつくように握っていて、必死さが窺える。
「相当な苦しみぶりですな。やっぱり若いと、逸物の張りが違うんでしょうね」
 一人がそう感想を漏らすと、男は笑った。
「はは、デカさも張りもそこそこっス。強いて言えば、反りですかね。喉のヤなとこに当たって、結構苦しいらしいです。前に一度、風俗嬢相手にもコレやったんですけど、嬢に秒でマジギレされちゃって。だから、ここでまたやるの楽しみにしてたんですよ。ここって、わりと何でもアリじゃないですか。おまけにこの子、その風俗嬢のパネマジ前より可愛いし」
 男はそう言い、千代里の頭の下に手をくぐらせた。そして頭を持ち上げての挿入を開始する。苦しむ千代里の表情を、真上から見下ろしつつ。
「う゛おお゛え゛っ、え゛っ!!ええ゛ぇあ゛っ!!」
 栞のえずき声は大変なものだった。両目を硬く瞑り、眉根を寄せた顔にも余裕はない。そして極めつけはその脚だ。この段階になり、脚がとうとう地団太をやめた。両の足裏をしっかりと床につけ、耐える体勢に入る。子供体型というか、やや肉付きのいい印象だった太股がきゅっと直線に引き締まっていて、かなり力が入っているんだと判る。
「あ、すげぇ締まる。聡美のマンコよりすげぇかも」
 彼女だろうか、男は誰かの性器と比較しながら、千代里の喉奥を犯し続ける。いつの間にか、腰を上下するペースもかなり早まっていた。くちゃかっ、くちゃかっ、くちゃかっ、という、時代劇で馬が走るような調子の音が響く。
「ん゛おえ゛っ!! ん゛う゛おお゛あえ゛っ!!!」
 文化系の千代里の太股へ、体育会系生徒に特有のラインが隆起していく。そしてとうとう、華奢な身体そのものがブリッジを始めた。まさに喉奥レイプを見ている気分だ。
「うわ、ちょっ! 暴れんなって!!」
 圧し掛かっていた男は姿勢を保てなくなり、横に尻餅をつく。だが、奴は近くにあった千代里の頭をすばやく太股で挟み込む。
「ほら、逃げちゃだめだって!」
 そう言って後頭部を押さえつけ、イラマチオを続行する。
「んんん゛っ、んああ゛っ!! あああ゛え゛あっ!!!」
 上からではなく横からの捻じ込みになったことで、えずきの種類が「お」から「あ」に変わった。とはいえ、苦しそうな声であることに何ら違いはない。実際千代里の脚は、まだ暴れている。横様に倒れたまま、床の上で滅茶苦茶に振り回す。
「おー、すごい暴れようだな!」
「あはは、パンツ見えてんぞー女子高生!!」
「おやおや。名門女子校の生徒ともあろう者がはしたない!」
「つか、今どき白パンなんて穿いてる子いるんだ」
 周囲にいた客が、茶化しながら避難を始めるぐらいの勢いだ。
 そうして暴れても、男からのイラマチオは止まない。そして、頭を押さえているだけでいい男と全力で暴れる千代里とでは、消耗するエネルギーが違いすぎる。結果、数分もその状況が続けば、千代里だけが一方的に疲れ果てることになる。

「ふーっ、やっと大人しくなったか。合唱部っていうから、もうちょっと大人しいのかと思った」
 男はそう言って、また千代里を仰向けにし、上からの捻じ込みを再開する。しかも、さっきは顎側からの挿入だったが、今度は頭の上に陣取っての喉奥蹂躙だ。
「お゛もおお゛っ!? こうぇっ、もぉ゛……もう゛あげげっ!」
 もうやめて。その声が、逸物を捻じ込まれながらもはっきり聴こえた。
「やめない。だって超いい感じになってきてんもん、喉マンコ」
 男にも言葉は通じたらしいが、肝心の心が通じない。太股を手で押しやられるのが鬱陶しくなったのか、千代里の両手首を握りしめながら、激しく腰を上下させる。
「んも゛え゛っ、も゛エ゛っ、も゛えっ、も゛ごえっ!!」
 千代里のえずき声も重苦しく、早くなっていく。
「すげー、チンコびっくんびっくんしてる。これ、どんだけ射精できんだろ」
 犯す男の方は呑気なものだ。彼は目の前の少女の激しい反応を見つつも、その苦しみを本当には理解していない。理解していないから容赦もしないし、そのせいで千代里は、ますますひどい領域まで引きずりおろされてしまう。
「こァッ……」
 その一言を発してから、千代里の動きが急に緩慢になる。それまで激しく脚をばたつかせていたのに。
「あれ、オチた?」
「や、違うぞたぶん。脚にすげー力入ってる」
 そんな会話が聴こえた。確かに失神とも思える感じだが、筋肉が弛んでいない。がに股に開かれた足……その太股は存外に平坦だが、膝から下、脹脛の周辺が相当に強張っている。
「オチてねぇってんなら、一体……」
 その疑問が発せられた、直後。千代里の股の間で変化が起きる。文字通り“一瞬”の間の変化。ミニスカートの奥にある純白のショーツが、黄色く染まっていく。その液体は、当然ショーツに染みただけでは止まらず、床へ不定形に広がっていく。
「あーっ、漏らした漏らした!!」
「ははは、とうとうやったか!」
「あーあ、白パンなんて穿いてっから真っ黄っ黄だよ。ま、嫌いじゃねーけど」
 場の人間が騒ぎ、イラマチオを強いていた男が顔を上げる。
「えっ? こいつ、漏らしたんスか!?」
 奴のいる位置だと、スカートに邪魔されて股の様子が見えないようだ。驚いた様子で手を伸ばし、ショーツに触れた。千代里の両膝がびくんと内に閉じる。
「うわ、すげぇグチャグチャ。はは、なんだよ。漏らすぐらい良かったってか!?」
 奴は、歯を見せるぐらいの満面の笑みを浮かべ、さらに力強く腰を使う。片膝を立てて、奥深く、しっかりと捻じ込んでいく。当然、千代里は反応を見せた。
「も゛っごっ、ごも゛ぉおおっ!! んも゛おおお゛っ!!!」
 呻きながら、また脚で地団太を踏みはじめる。さっきとの違いは、激しく身を捩りながらローファーで床を踏みつけるたび、びしゃ、ばしゃっと自らの尿を撒き散らしてしまうことだ。
「あああいいっ、いいっ……あ出る、出るぞっ!!!」
 男は、若くして遅漏なんだろうか。何十回と腰を使った末に、ようやく射精の時を迎える。千代里の口と自分の陰毛を密着させ、激しい息を繰り返しながら動きを止める。
「あ、うあ、出てる……マジで、どくんどくんって……すげぇ」
 男はうわ言のように感想を呟いていた。
 見た目に大きな変化はないが、男の腹筋がピクピクと動き、掴み上げられた千代里の指が何度も握られていることから、ずっと射精が続いているのがわかった。
「ふーーっ。ウンコまで出るかと思った」
 十何秒後なのか。ようやく男が、息を吐きながら腰を上げる。途端に、大きく開いた千代里の口から、じゅばーっという音が立った。
「ぷはあっ!!はあっ、ああああぁっ……!!」
 今日一番といえるぐらいの激しさで息を求める千代里。逸物と前歯を繋ぐ糸は恐ろしく太く、耳と同じサイズにまで気泡が膨らんでいる。千代里の喘ぎでその気泡が弾ければ、幼さを残す顔を涎の糸が縦断する。
「すごいヨダレの量だ。もう顔中ドロドロだな」
「ええ。ほぼ全員が喉奥射精しかしていないのに、連続でぶっかけられたみたいになってますね」
 男共が疲労困憊の千代里を見下ろし、脂ぎった顔に笑みを浮かべる。
 おそらく今で、ようやく半分の人間が射精したぐらいだろう。俺は、そろそろ見ているのがきつくなってきた。

「ほら、早く立て。できないなら……」
「い、いえ……やり、ます……」

 卑劣な脅しと、健気な宣言。それを聴きながら傾けるグラスからは、血に近い味がする。


             ※


 それからも、千代里の地獄は続いた。

 14人目は、自称『マウントイラママニア』。相手の顔にマウントし、それなり以上のサイズのある逸物で喉奥をグリグリと抉りまわすのが生き甲斐らしい。
「おふぉえあ゛っ!!」
 千代里の苦しみようは相当だった。何度も噎せ、薄い吐瀉物が口の端から流れ出す。顔を左右に振って嫌がっているが、喉奥に杭を通された状態では逃れようがない。
「んがぁぁあらっ……!」
 やがて、うがいをする時のような声がし、千代里が両手を握りしめた。
「おっと、窒息はいかんな」
 男がそう言って逸物を抜く。
「ぶはっ、はっ、はっ!!」
粘ついた糸と共に逸物が抜かれ、千代里は眉を顰めながら大きく空気を求める。その、直後。横向いた口から、細い吐瀉物が流れ出す。えろっ、えろっ、という声と共に。
 普通なら焦るような状況だが、自称マニアの男は顔色ひとつ変えない。
「よし、気道確保できたな。続けるぞ!」
 そう言って、また喉奥深くへ挿入していく。猛スピードでの喉奥攪拌。当然、千代里にはすぐにまた限界が来る。
「んーむ゛おえっ、ごふっ、ぶふっ!!」
 激しく噎せながら、口内の異物を吐き出そうとする。だが、それは叶わない。
「何をしている、そこで鈴口を吸いなさい!」
 そう厳しい声で命じられ、両手で顔を固定される。ぷちゅぅううっ、という音で、千代里が命令に従ったのがわかった。そして、ここでようやく逸物が抜かれる。
「んーむおえ゛っ! ぐ、ごふっ、ぶふ、ごはっ!!」
 悲惨な状況だ。白い顎が何度も跳ね上がる。真っ白な精液が、鼻の横から髪の生え際までを横断する。噎せるたびに大量の汁が噴出し、細い紐のようになって顔を覆う。
 その状況を前に、マニアの男は腰に手を当て、満足そうに頷く。そして最後の締めとばかりに、自らの手で逸物を扱き、ようやく呼吸ができるようになった千代里の鼻の穴に射精する。
「は、ぎゃあっ!!」
 千代里の悲鳴に、男の頷きはますます深まった。

 17人目の爺さんも、なかなかに陰湿だった。
 異様な目つきに怯える千代里を床に寝かせ、潰れた蛙のような格好でイラマチオを強いたんだ。
 乳房の上に跨って、口に逸物を捻じ込み、両の太股を足の甲で押さえつけるようなやり方。かなりの歳を食っている割に、ペニスのサイズは周囲と変わらず、硬さも備わっていたようだ。なにしろ、この変わった体位で数分ばかり喉を突かれるうちに、千代里が吐いてしまったようだから。
 俺が見ているテーブルは、爺さんの尻側だから、逸物の抜き差しの場面は爺さんの体に隠れて見えない。だから吐いたというのも、いくつかの状況証拠からの推測でしかない。
「んおおおええ゛っ!!」
 もはや聴き慣れた、人が吐く時の声。
「おっ、吐いたぜ!」
「へへ。ジジイの萎びたペニスで限界とは、弱くなったなあ合唱部のノドも」
 千代里の頭側から見ていた連中の、そんな嘲り。
 押さえつけていた爺さんの足の甲を撥ねのけ、苦しそうに崩れる脚。
 これだけ証拠が揃えば、状況を知るには充分だ。
「我慢してなさい」
 爺さんは厳しい声でそう命じ、足の甲で千代里の太股を叩く。千代里はぴくっと太股を強張らせたあと、がに股を作り直す。その太股を爺さんの足の甲が押さえつけ、さらに枯れ木のような手が万歳をする千代里の手首を掴めば、潰れたカエルの出来上がりだ。
 そしてまた、爺さんが腰を振りはじめる。
 俺の側から見えるのは、爺さんの湿布の張られた背中と、汚い尻、そしてピクピクと脈打つ千代里の足だけだ。
 その上下を見比べると、老化の残酷さが実感できた。上で揺れている枯れ木は灰色、下で耐えている柔肉はピンク寄りの肌色。瑞々しさがまるで違う。ぼうっと眺めていればそれは、セピア写真がカラー写真を侵食している図に見えてくる。
 侵食は淡々としたものだった。痩せた灰色の尻が上下するたび、カコカコカコカコと棒で喉奥を掻き回す音がする。ある程度の距離があるせいか、甲高い攪拌音は聴こえやすいが、くぐもった呻きはあまり聞き取れない。それでも意識を集中させれば、たまに聴こえてくる。
「う゛」
「お゛え」
「ごえ゛っ」
 そういう、苦悶の声が。千代里は、あんな枯れ木のような爺さんに、間違いなく喉を犯されているようだった。
 やがて、爺さんの腰の位置がやや高くなる。射精に向かっているんだろう。尻を振るスピードも、徐々に早まってきた。
「出るぞっ!」
 爺さんが喝を入れるかのように叫び、腰を沈める。シミだらけの太股と尻肉が引き締まり、セピアの写真は、そのまま静止する。動きはない。ないが、その不動ぶりと千代里の開かれた脚のこわばりが、大量に喉奥へ注がれている事実を物語っていた。
「ふうー……」
 ジジイが大きく息を吐き、膝を立てて逸物を引きずり出す。てゅぽっと妙な音がし、逸物が抜ける。
「う゛、えほっ、ごほっ!!」
 千代里の咳き込む音が聴こえた。爺さんが尻を浮かせているから、ここでようやく千代里の顔が見えるようになる。爺さんの陰に入っている部分も多く、明瞭じゃない。それでも、千代里の顎が粘液に塗れているのがわかった。いい齢をしているくせに、なんて量だ。
「こんなに出したのは20年ぶりだ。良いノドを持っとるのお」
 そう褒められても、千代里は嬉しくなどなかっただろう。よくよく見れば黄色く濁っている精液は、いかにもエグ味が強そうだった。

 そして、20人目……順番最後の男は、ずっとソファに座って酒を煽りながら、凌辱を見て逸物を弄りつづけていた禿げ親父だ。

 奴は、最初こそ普通にしゃぶらせていたが、やがて千代里のツインテールを鷲掴みにして顔を前後させはじめた。色白で毛深い足に、ツインテールの童顔が叩き込まれていくのは、犯罪的な絵面だ。
「いあ゛っ、あ゛っ!はごっ、おも゛っ……お゛っ!!」
 突然の暴力に驚いたのか、髪を掴まれる痛みか、それとも奥まで咥え込むのが苦しいのか。千代里は目を見開く。
 しかもこの親父が、またしつこい。何度も喉奥を抉り回しては、一旦口を離させる。そして自分の娘ぐらいの歳の子供が上目遣いで喘いでいるのを観察してから、またツインテールを掴んでしゃぶらせるんだ。
「うろ゛っ、お゛ろ゛っ、おも゛っ、う゛ろ゛っ…………」
 千代里の喉からは、早いペースで苦悶の声が漏れていた。一つ一つは壮絶なえずき声というわけじゃない。だがとにかくペースが速く、また小休止を挟みつつもしつこく繰り返されるとなれば、蓄積していく苦しさは並大抵じゃない。
 開始から15分あまりが経った頃、強制的に前後させられる千代里の顔は、完全に白目を剥いていた。小さな嘔吐が気つけになったんだから、酷い話だ。
 軽く10回以上は小休止とツインテールを掴んでの凌辱を繰り返し、そこでようやく禿げ親父はスパートに向かう。このスパートは単純に苦しいらしく、千代里はゴエゴエと喉を鳴らしつつ、激しく咳き込むような表情で受けていた。最後に喉奥射精された時の眉根の皺は相当深く、限界を感じさせた。
 そして、その予想通り。射精の最中、急に千代里の頬が膨らんだかと思うと、嘔吐が始まった。口内で水袋が破裂したような嘔吐で、かなり異質だった。場が沸いたのを見るに、マニアでもあまり見ない嘔吐だったらしい。

 そして、20人の相手を終えてなお、千代里が開放されることはなかった。さっきのは、あくまで『一巡目』。この後もまた2回3回と奉仕し、脂ぎった親父達を満足させきらなければならない。
 そう宣言された時の、千代里の表情が忘れられない。絶望、というのは、まさしくあの顔のことだろう。

 20人の雄に囲まれる、終わりのない喉奥凌辱。もはや立っている気力すらなく、床にへたり込んだまま、四方から突き出される男の象徴を喉で迎える。
 何度えずいても、何度吐いても、ついに吐けるものすらなくなって空嘔吐だけを繰り返す状態になっても、凌辱は終わらない。まさに、地獄。
「おら、こっちも!!」
 一人に奉仕したばかりの千代里のツインテールが掴まれ、逆側を向かされる。そしてまた、勃起しきったものを口に捻じ込まれる。その瞬間、千代里の身体がぶるりと震えた。そして千代里は、口の中の逸物を吐き出す。
「おい、ちゃんとやれ!!」
 怒声が飛ぶ。千代里は、その声の主を見上げた。涙ながらに。
「お、お願いします。口は、もうやめてください……!」
「なに!?」
「喉奥奴隷が口使わず、どうするつもりだ!」
 不機嫌そうな眼に囲まれ、千代里は肩を竦める。そして、かなりの躊躇の後、言葉を続ける。
「…………し、下も…………使って、いいですから!」
 その言葉に、数人の目元が変わる。
「下?」
「あ、あそこ……です。あそこも、使っていいですから、だから、口は……もう、やめてください!」
 まさに、必死の訴え。千代里にとって、処女は軽いものではないだろう。ましてや、散々に自分を痛めつけた相手に純潔を奉げるなど、望もうはずもない。それでも、千代里はあえてその交換条件を提示したんだ。
「なるほど、処女か」
 欲望に濁った視線が、制服に包まれた千代里の肢体を舐め回す。千代里の喉が鳴る。
 屈辱的でも、交渉の甲斐はあった。条件は呑まれ、彼女の酷使された喉は、しばらくの休息を得られるだろう。俺はそう思った。
 だが。
「────駄目だな。」
 千代里の哀願は、あっさりと切って捨てられる。
「……え?」
 千代里が眼を見開いた。
「他のフロアなら、その提案は喜んで受け入れられただろう。君はアイドル級にルックスがいい。スタイルも悪くない。……しかしだ」
 屈み込んだ中年男が、震える千代里の顎を掴み上げる。
「私達は違う。私達は、喉奥を好む故にここにいる。喉奥を開かれ、抉られ、注がれる女の姿。それに伴って搾り出される“なま”の声。耐え切れずあふれ出す涎や胃液。肉体の反射行動。そして、涙を流しながらメスマゾに変わっていく人格。私達が愛でるのは、それらだ。女性器を用いたノーマルセックスなど、フェチズムを知らん子供のお遊びだよ」
 千代里の歯が、凍えるようにガチガチと鳴り始める。男は、顎を押し下げてその危険信号を断ち切ると、開かれた歯の合間に逸物を送り込んでいく。
「い゛おえ゛……っ!!」
「そう、いい声だ。もっとその歌声を聴かせてくれ。部活で教わる声楽ではない。お前というメスが、極限の状況下で発してしまう、真実の声だ。なに、安心したまえ。苦しさはじきに消える。一線を超えたその先にあるのは、脳を蕩けさせる快楽だ」
 男はゆっくりと腰を前後させながら、穏やかな口調で語る。
「あ゛え、あ……く…………?」
 千代里は、その言葉を口内で繰り返す。

 そして千代里は、蕩けていった。
 回数を数えることすら億劫になるほど、延々と喉奥を『使われ』、次第に反応が薄くなっていく。うめきも、えずきも、嘔吐も。気絶しかけているのか、それとも何かに目覚めさせられたのか。

「あ……あえ、あえあ…………あ」

 眠たそうな瞳で半ば白目を剥き、涎を垂らしながら、太股をひくつかせる千代里。その姿は、男に抱きつきながら陶然とする祐希に重なった。
「……おや、お帰りかね」
 グラス片手に汗を拭き、Hが近づいてくる。奴も千代里で楽しんだばかりらしく、逸物とその根元の茂みが濡れ光っている。
「ああ」
 俺は一言そう答え、シャンデリアの照らす部屋を後にした。

 ( 俺は……何なんだ。催しを楽しむこともできず、止める事もせず。
   俺が存在する意味って、何なんだ )

 自問自答しても、答えは出ない。


 ひどく、疲れていた。

 

二度と出られぬ部屋 第一章 人格破壊3P

■第一章 人格破壊3P


 何日が経ったのかはわからない。
 極上のベッドで7回目の惰眠を貪った翌朝、レストランで昼食を済ませたお俺の元に、一人のスタッフが近づいてきた。
 この施設を初めて訪れた時、エントランスで俺を出迎えた男。
 俺を担当するコンシェルジュで、名前は端塚というらしい。汚れひとつないタキシードに身を包み、両手には白い手袋を嵌めている。少し白髪の交じった髪をオールバックに固め、左目を眼帯で覆っているのも印象的だ。
 年齢は、よくわからない。白髪の量から見て50以上は確実だと思うが、還暦を超えているかもしれない。
 そしてその人となりは、年齢以上に計りづらかった。コンシェルジュを自称するだけあり、こちらが何かを要望したり、尋ねたりすれば、落ち着いた様子で不足なく対応してくる。過不足がないわけじゃない。少々過剰に思えるサービスもあったが、それが『こういう世界』での常識なのかもしれない。
 高級ホテルさながらの設備からも判るとおり、ここは明らかに資産家向けの施設だ。ケーキをひとつ所望しただけで、小洒落た布製のナプキンがついてくる。あまりに上質すぎて、俺なら使うのを躊躇うような代物だ。だが、この施設を利用している他の客達は、それをごく自然に使い捨てているようだった。
 そう。俺なら気後れするような上物であろうと、惜しみなく使い捨てる。それが許される。ここは、そういう場所なんだ。

「貴方にぜひ、ご覧になっていただきたい催しがございます」
 端塚はそう言って、俺をレストランから連れ出した。向かう先はエレベーターホール。自室や大浴場に向かうにはホールを通る必要がないため、あまり訪れることのない場所だ。
 そこには、すでに大勢の人間が集まっていた。当然だが、浴場やレストランで見かけたことのある顔ばかり。裸や部屋着姿ではわからなかったが、いざ着飾ってみれば、どいつもカネの匂いを振りまいている。どこぞの社長といった雰囲気の中年。会長らしい貫禄を持つ老人。若い娘もいるにはいるが、例外なくドレスやジュエリーで着飾った御令嬢や奥様方だ。おそらくは俺自身、そうした人間に交じって高級時計を見せびらかす類の人間だったんだろう。
「今日は何階へ?」
「16階がようやく解禁になったようですからね、まずはそちらに顔を出そうかと。その後は、日課となっている17階のチェックです。そろそろ、いい具合に熟成されてきているようで」
「ああ、あれは良いですね。職人の熱意を感じるというか」
「まったくです。やはり素材にクセのある方が、仕込み甲斐があるんでしょうね。熟成といえば、18階の展示はご覧になってますか?あちらも見応えがありますよ」
「ええ、勿論。あれを見逃すのは一生の損ですからね。とろ火でじっくり煮込まれ、少しずつ柔らかくなっていく……あれこそ、旨味を最大限に引き出すやり方ですよ」
 ホール内の会話は、ずいぶんと盛り上がっていた。『熟成』や『クセのある素材』、『とろ火』といったワードからして、試食会でもやっているんだろうか。
 確かに金持ちの余興といえば、チーズだの鴨だのを小皿に取り分け、ワインと共に味わう催し、というイメージがある。もしそうなら楽しみだ。記憶を探る一環で、レストランでも色々なものを賞味したが、どうやら俺の舌はワインとチーズを好むらしい。熟成された肉、とろ火で柔らかくなるまで煮込まれた何か、というのも食欲をそそる。

 会話が盛り上がる中、チンと音が鳴ってエレベーターが下りてくる。
「上へ参ります」
 アナウンサーのような雰囲気のエレベーターガールが、15階のボタンを押す。15階といえば、ショートヘアの子が下りた階だ。
 あの子も可愛かった。日に焼けていて、脚はやや短め。女性的な魅力という点では他に劣るが、白い歯を覗かせる向日葵のような笑顔が印象的だった。さばさばとした性格をしていそうだし、男子人気もあるがそれ以上に女子にモテるタイプだろう。
「……祐希か。名前からして中性的だ」
 エレベーターの中で、一人が隣の奴に話しかけた。手にはパンフレットのようなものを握っている。
『へっへっへ。“ユウ様”、いってらし~』
 ショートカットの娘が下りるとき、ツインテールの娘が茶化していた言葉を思い出す。ユウ様、というのが彼女の渾名なら、祐希という名前と矛盾はない。
 まあ、ただの偶然だろう。ユウがつく名前なんていくらでもある。俺はそう思い、さして気にも留めずにいるつもりだった。だがその次に聴こえてきた言葉に、思わず耳を疑う。
「美少女というより、クールな美男子という感じの顔ですな。何しろ女学校だ。こういうタイプは、さぞかし同性からモテるでしょうな」
 別の場所でも、何人かが笑い合っている。そして奴らは、ひとしきりパンフレットに目を通し終えると、まったく同じ笑みを浮かべた。
「楽しみですなぁ。そんな娘が、『オンナ』にされるなんて」
 オンナにされるって、どういう意味だ?
 俺がそう疑問を抱いた瞬間、ちょうどエレベーターがフロアに到着する。
 ドアが開く瞬間……いや、正確にはその少し前から、何かが漏れ聞こえていた。

 喘ぎ声だ。

「彼女は、名門・蒼蘭女学院が誇るソフトボール部のエース。同性からの人気が高く、去年のバレンタインには、チョコを押し込まれすぎて下駄箱が壊れたほどです。そんな彼女ですが、腕のいい調教師2人に丸三日可愛がられ……ずいぶんと変わってしまいました」
 見覚えのある制服を着た少女が、部屋の奥を示して説明する。声が震えているのは、同学生徒の被虐を見かねてのことか、それともスカートの下に潜り込む2本のコードのせいか。

 部屋の奥からは、音と匂いが漏れていた。
 源は、畳敷きの空間に敷かれた布団だ。そこに、男2人に挟まれる形で一人の少女が横たわっている。
 ……間違いなく、ショートカットのあの子だった。小麦色に焼けた肌も、腰から上と下が同じぐらいのスタイルも、すっきりとした顎のラインも、すべてが記憶と合致する。
 ただし、彼女の浮かべている表情だけは、記憶とまったく重ならない。ケラケラと変わっていた口は、左の男に濃密なキスを迫られ、困ったように舌を絡めるばかり。猫のようにキリリとしていた瞳は、薄く開いたまま涙を滲ませている。
 布団の周りには、生々しい情事の跡が残されていた。丸まったティッシュのうち、何枚かはピンク色に滲んでいる。蓋の開いたローションボトルもあれば、中身のたっぷりと入ったコンドームが、雑に口を結ばれたまま転がってもいる。あのボーイッシュな少女が、ここで純潔を散らされ、スレンダーな身体を弄ばれているんだ。
「ほら、また『お客さん』だよ。祐希ちゃん」
 右側から乳首を吸っていた男が、俺達の気配に気付いてそう囁く。
「!!」
 ショートカット娘は、弾かれたように入口を見た。怯えた眼だ。
「ほら。この人達にも、カワイクなったとこ見てもらおう」
 左右の男が、乳房を柔らかく揉みしだき、割れ目に指を沈める。
「い、いや…ぁっ!!」
「嘘つき。マン汁どんどん出てくるじゃん」
「乳首もピンピンに固くなっちゃって。見られて興奮するんでしょ?」
 祐希が嫌がっても、男2人は愛撫をやめない。俺達に聴かせるように、ぐちゅうっぐちゅうっと物凄い音を立てている。まるで水飴の攪拌。どれだけ濡れていれば、どんな力加減でかき回せば、女の穴からあんな音が出るんだろう。
「はぁっ……はぁ、あぁ……。はぁ……んっ」
 異常な音はダテじゃない。その愛撫を受ける祐希は、普通じゃないぐらい気持ちがよさそうだった。たぶん彼女は、あれでも我慢してるんだ。運動部で培った身体の使い方をフルに活かして、反応を抑え込もうとしているに違いない。それでも、あまりの快感に腰が動く。太ももが強張る。白い歯を食いしばり、軽く力瘤さえ浮かせながら、腕の全力で敷布団を掴んでしまう。
「また溢れてきた。すごい、お尻の方までドロッドロ」
 祐希が力んだ後には、必ず男がそんな風に囁いていた。全力で力み、弛緩しながら、深く深く絶頂する。その一連の流れに、もはや疑いの余地はない。
 よく力んでいるだけに、汗もすごかった。顔も、首筋も、腹筋も。胸の膨らみこそ若干あるとはいえ、全体的に流れるようなスレンダーな身体だから、汗を掻くとオイルを流したようで妙に芸術的だ。ただし匂いは、いかにスポーツ少女の健康な汗とはいえ、鼻を近づければ噎せるほどに濃いんだが。
「しゃぶって」
 それまで乳房を責めていた左の男が、膝立ちになって逸物をつきつける。男の俺が言うのも変な話だが、綺麗な体をした男だ。膝立ちになった腰からのラインも、逸物の形さえ、彫刻のように無駄なく整っている。甘いマスクも相まって、相当に女にモテそうだ。
「いいなぁ……颯汰(そうた)さまの舐められるなんて」
「ねぇ。羨ましいわ」
 実際、俺のすぐ後ろからは、女2人のそんな声がしていた。
 だが、祐希は相手を受け入れてはいないようだ。困ったように眉を下げ、颯汰とこっちを交互に見ている。
「……できないの?」
 颯汰が、ぼそりとそう口にした。口調こそ柔らかいが、氷のような冷ややかさ。祐希の肩がびくりと震え、さらに少し躊躇った後、身を起こして逸物の先を口に咥える。

「教えた通り、吸って、舐めて、しゃぶるんだよ」
 颯汰が祐希の髪を撫でながらそう言うと、少しずつ口から漏れる音が大きくなっていく。ずっ、じゅっ、じゅぶっ、じゅぷっ……と、AVさながらの水音に。
「あー、気持ちいい……。そこらのヘルス嬢は完璧に超えてるよ」
 祐希の後ろ髪を押さえつけたまま、目を細める颯汰。もう一人の男の方も、祐希が身を起こすことで脚が開いたのをいい事に、右の膝裏を持ち上げて見せ付けるように『手マン』を繰り返す。いざはっきりと見えるようになれば、この指のテクニックも相当なものだとわかった。ぎちゅぐちゅとすごい音をさせるだけでなく、指を往復させるたびに小さな飛沫が飛び散っている。連続で小さく潮噴きをさせつづけているようなものだ。祐希の腹や太ももが堪らない反応を示す理由も、それを見ればすとんと胸に落ちた。
「ああ……出るよ」
 やがて、颯汰が囁きかけ、祐希の髪を掴んで腰へと引き寄せる。
「れろ、あえ……う゛!」
 祐希の口元から苦しそうな声が上がり、直後、颯汰の股に筋が浮き立った。
「うあ、すげー出てる。マジ最高のフェラだったよ」
 生々しい感想を口にしながら、颯汰は口を閉じ、息を吐き出した。彫刻のような腰がゆっくりと離れると、祐希の口元と逸物の先は細い糸で結ばれていた。
「口開けて。中、みんなに見せてごらん」
 颯汰が祐希の顎を摘んで上を向かせる。口での奉仕を終えたばかりの祐希は、抵抗する元気もないようだった。言われるがままに、ゆっくりと艶のいい唇を上下に開いていく。
「…………っ!」
 俺の周りで、何人もが息を呑んだ。それぐらい、その光景は衝撃だった。
 今、祐希の顔を遮るものは何もない。整った顔は縦に歪み、舌を突き出している。その舌の上には、白く濁ったゼリーのような物体が、広がった舌からこぼれ落ちそうほど盛り上がっている。
 王子様然としたクール少女が、男の精に口内を征服されている。それが、余すところなく切り取られた一幕だ。
「なんて濃さ……」
「すごい。あんなの、絶対孕んじゃう……」
「やっぱり優秀な雄って、精子からして違うのねぇ!」
 何人もの女が、うっとりとした声を上げる。その中で、祐希は散々に口の中を見世物にされ続けた。やがて、その肩が小さく震えはじめたころ、颯汰の手の平が祐希の口を覆う。
「さあ。飲んで」
 口を塞がれた祐希に、もう吐き出す術はない。口内に異物を止めておくのも限界らしく、彼女は命令があってすぐに嚥下した。
 おぐ、んっ。
 その重い音が、俺の鼓膜にまではっきりと届く。祐希のさほど日焼けしていない喉を、膨らみが下りていく。そしてそれを追いかけるように、彼女の目からも、つうっと一筋の雫が伝った。
「どう? 美味しかった?」
 しっかりと祐希の涙を見ていた颯汰が、畳み掛けるように問う。
 祐希は…………答えない。
「ちょっと! 颯汰さまの精液飲ませてもらって、なんで何も言わないわけ!?」
「いやいやいや有り得ないでしょ! 自分のラッキーさ解ってないの!?」
 女達が身を乗り出し、悲鳴に近い声を上げる。女の嫉妬というやつか。
「………………」
 それでも、祐希は声を出さない。最後の一線を守るかのように口を噤み、誰とも視線を合わさないよう目を逸らす。エレベーターの中で会った彼女なら、こんな状況下、どれほど強い瞳で俺達を睨め付けたことだろう。
「あーれ、三日目でまだ頑張っちゃう? さすが体育会系、根性パネェな。しゃーない、んじゃ否定できないとこから責めるか」
 颯汰の向かいに座る男が、祐希の脚をさらに大きく広げさせた。
「あっ!」
 何かを察した祐希が顔色を変える。
「ハメるよ。ゴムなくなっちゃったし、ナマでいいよね」
 奴は有無を言わさず、祐希の脚の間に腰を割り込ませる。
「はぁ、あっ……!!」
「ううあ、やっぱナマはいいわー。ダイレクトに絡み付いてくる」
 呻く女と、喘ぐ男。わかりやすいほど一方的な征服だ。
「やめ、てっ……ゴムないと、赤ちゃん、できちゃ……!」
 祐希はまだ正気な部分が残っていたらしく、足の裏で相手を押しのけようとする。でも、結局は無駄な抵抗でしかない。
「ほら、暴れんなって。抱っこしてやっから」
 男はそう言うと、祐希の腰を軽々と抱え上げ、自分の腿の上に乗せた。繋がったままハグをする格好だ。そうなると、もう女側にろくな抵抗はできない。もがけばもがくほど、自重でずぶずぶと挿入が深まるばかり。
「あああ、ふ、深いっ……!!」
 祐希は目を閉じ、両手で相手の首にしがみつく。ソフトボールで鍛えた肩はそれなりに出来てはいるが、男のそれと並べば華奢なものだ。
 ぐちゅう、ぐちゅうっ、と水音が響く。
「すげ、奥までみっしり絡んでくる。最初めっちゃ固かったのに、こなれたねぇ祐希ちゃんのマンコ」
 犯す男は上機嫌で、苦しそうな祐希の顔を間近で眺めては、その呼吸を遮るようにキスを迫る。それも、唇を合わせるような浅いものじゃない。舌を奪うように吸い、絡ませ、唇の端から唾液まで零すようなディープなものだ。
 祐希はどうやら、こういう本格的なキスに弱いらしい。単に犯されているだけなら、祐希の眉の角度は水平以上に持ち直すこともある。しかし、唾液を交え、呼吸を乱しながら何度も何度もキスを強要されると、眉の角度は目に見えて下がっていく。
「祐希ちゃんって、いっつもキスでスイッチ入るよね」
 後ろから胸を責めながら、颯汰が囁きかける。重低音で耳元に吹き込むあのやり方は、洗脳の常套手段だ。暇に飽かして読んだ実用書に、そう書いてあった。 
 あの気丈なスポーツ少女は、何度そうやって洗脳されてきたんだろう。何度、判断力の鈍った頭に歪んだ情報を注ぎ込まれてきただろう。
 たとえ元が事実無根であろうとも、丁寧に刷り込めばそれは真実。祐希は『キスでスイッチが入り』、自分でも無意識のうちに、抵抗する気概を失ってしまったらしい。なぜなら、まさにこれ以降、祐希の喘ぎの質が完全に変わったんだから。
「うあああぁ……あっあ、うわぁぁぁあ~あーーーーっ!!」
 喘ぎというより、もはや嘆き。駄々をこねる子供の声をずっと聞いていると、時々はっとするほど真に迫った声色が混じっているものだが、それをほんの少しマイルドにした程度の声が、ずっと響きわたっている。こんな声がマンションの隣室からしていれば、間違いなく通報されるだろうという嬌声。
 俺はいま、ヒトが壊れる瞬間を目の当たりにしているんだ。はっきりとそう感じた。
「どう祐希ちゃん。気持ちいいでしょ、セックス。」
 わかりきったタイミングでそう尋ねる颯汰の心は、その甘いマスクとは裏腹に、腐った臓物のごとくドス黒いに違いない。
 祐希は、その言葉に顎を上げた。
「っ……きもち、よぐ…ない! おとこなんかに、男、なんか、にぃぃィッ……!!」
 言葉ははっきり聴こえるのに、発声の間、祐希の歯は噛み合わされたまま動かなかった。まさに意地。力を出す時には歯を食いしばると心得た部活女子が、すべてを搾り出した末の矜持だ。
 それは、本来尊いはずだった。でも、それを尊ぶかどうかは受取る人間次第。
「はっ、嘘つきなよ。さっきから腰動きまくってんじゃん!!」
 第一声を放った女は、少女の決意をゴミのように破り捨てる。
「そ、それは……突き上げられてるからっ……!」
「あーれぇ祐希ちゃぁん。もしかして、気付いてナイ?」
 祐希の必死の反論は、のらりくらりとした男の口調で遮られる。
「俺さ。もうずーっと、腰動かしてないんだよ?」
 軽い口調で放たれた一言は、しんと静まった部屋の中でよく響いた。いや、静まったというのは、あくまで人間の声の話。
 ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゃっ、ぐちょっ……。
 部屋の中には、そういう重い水をかき混ぜるような音がずっと繰り返されている。その音の源を見れば、男の言葉の正しさが証明された。布団の上に腰を下ろしたまま、むしろ諫めるように祐希の腰を掴む男。そしてその股ぐらに乗ったまま、胎内を自ら串刺しにする勢いで腰を上下させる少女。
「…………な?」
 勝ち誇ったその男の笑みが、『まともな』クール少女の見た最後の光景だったろう。

 直後、祐希は何かを叫んだ。でもそれは、ヒトの言葉じゃなかった。強い感情が込められた叫びには違いないが、俺はその感情が何かを考えるのがしんどかった。根幹にあるものが、悲しみでも、絶望でも、動揺でも、喜びでも、同じこと。
「じゃあそろそろ、俺がガチで腰使ったらどうなるか教えてやんよ」
 男がそうニヤケ顔を晒した時点で、俺は踵を返した。
 俺とあの子に接点なんてない。たまたま同じエレベーターに乗り合わせただけで、言葉を交わしたわけでもなければ、視線があった記憶すらない。ほぼ他人だ。
 でも、まともだった頃の彼女を少しでも知っているから、その子が完全に変質してしまう光景は心に来る。
 人間の耳ってのはよく出来たもので、音を聴くだけでも、背後で何が起こっているかおおよそ理解できてしまう。
 だんっ、だんっ、だんっ、という音がするのは、快感を受け切れなくなったあの子が、鍛えられた足の裏で地団太を踏んでいるからだろう。
「ははは、必死にしがみついて。もう自分からキスしているも同然だな」
「妊娠の可能性があるセックスは、格別に気持ちいいですからな……新婚の頃を思い出しますよ」
「にしても、あのカオ! 女学院の王子様が、変われば変わるもんね」
 すれ違う人間の一言一言が、見ていないはずの情景を浮かばせる。

 一体、ここはなんなんだ。
 何も知らなかった純粋無垢な女子高生を、丸三日セックス漬けにして壊したのか。
 なぜ。なんのために。なんの権利があって。
「おや。この部屋は、もうよろしいのですか?」
 壁に手をついてエントランスに出ると、端塚が声を掛けてくる。
「ああ」
「承知いたしました。では、下のフロアに……」
「待て。ここは一体、何なんだ」
 涼しい顔で次へ進もうとする端塚に、俺は問いかける。目は必死でも、語気は弱かったろう。俺は、この施設が……そして、この施設に関係するすべての人間が、恐ろしくなりはじめている。
「ここは、『本当のあなた』を解放する場所です」
 端塚は、そう言ってにこやかに笑った。

「……下へ、参ります」
 地下16階のボタンを押しながら、エレベーターガールが無機質な声で宣言する。
 このエレベーターガールも、最初に見た時には、アナウンサーを思わせるほどきっちりした女性だった。それが今はどうだ。
 制服は上も下も無惨に破かれ、赤い手形の残る乳房と、白濁液の滴る股ぐらを衆目に晒している。リップが豪快に乱れた口元には、縮れた毛が絡み付いてもいる。トラブルなのか、そういうプレイだったのかは知らないが、複数人から荒々しく犯されたとしか思えない。

 狂ってる。
 以前の俺は、ここがこんな場所と知って足を踏み入れたのか?
 それともやっぱりこれは、悪い夢なんじゃないのか?
 混乱する思考を纏めるには、ワンフロアの移動では短すぎる。俺はろくな覚悟も決められないうちに、薄暗いエントランスへと放り出された。


 地下16階。
 ここは、ツインテールの子が下りたフロアだ。

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