※スポーツ少女アナル調教モノ。NTR・スカトロ(排便・嘔吐)ありのため注意。
長いので前後編に分割します。
『苔屋敷』。
俺の家が友達からそう呼ばれたのは、小学生の頃だったか。
言われるのも無理はない。実際ウチは、外から見るといかにも古い日本家屋の屋敷だし、あちこち苔で覆われてもいる。
先祖は旗本だか御家人だかで、その苔蒸した歴史がそのまま今に伝わっているわけだ。
ただウチには、一つだけ他所と違うところがある。それは、やたらに広い地下室がある、という事実。
元は座敷牢だったらしく、格子状の牢屋が幾つも並ぶ空間だったらしい。
それが今では半ば吹き抜けのようになり、壁には手枷足枷などのいかがわしい拘束具が並び、
簡易のシャワースペースや風呂桶、化粧箪笥を備えた畳敷きの空間まで用意されている。
俺がまだ文字も読めないガキの頃から、屋敷にはよく知らない女が出入りしていた。
頭の悪そうなギャルや、逆に遊びなんて知らなさそうな地味な子……皆地下室に降りていき、数ヶ月もすれば姿を見せなくなる。
俺はその理由を親父に問い質したが、いつも不機嫌そうに、ガキが知る事じゃねぇと一蹴された。
最近になってようやく明かされた事だが、地下の空間は、親父や爺ちゃんが代々世話になっている組の調教部屋らしい。
一昔前にはスケコマシとも呼ばれた調教師が、組にとって都合がいいように素人女を躾ける場所。
親父はその調教部屋の管理を組から任されている身だという。
まあ曾爺さんの世代からずっとここに住んでるんだから、今さら任されるも何もない気もするが。
ところがその親父は、去年の秋頃から酒で肝臓をやって入院している。だから今は一時的に、俺が屋敷と調教部屋の管理をやらされていた。
今でもまだ高3、大手を振ってエロ本も買えない身だというのに。
仕事は3つ。調教部屋の清掃および、汚れ物の洗浄・洗濯。調教師に供する食事の支度。そして調教部屋の監視だ。
室内清掃の時には、濛々と立ち込める汗の匂いやらで噎せそうになる。
飯にしても、調教師という人種はなぜか揃って偏食で、これは嫌だ、あれは無いのかととにかく注文が多い。
だが、調教部屋の監視……これだけは楽しみだった。
親父からは、女の裸がいくらでも見られるが、興奮するのは最初の内だけだと聞かされていた。
だが、思春期真っ盛りの俺には堪らない。地下の調教映像など、リアルタイムで進行する無修正AVも同然だ。
監視カメラを通して、俺はありとあらゆるアブノーマルな行為を見続けた。
最初はえぐい責めを直視できず、思わずトイレに駆け込む事もあったが、段々とそのハードさにも慣れていく。
今では、クラスの奴が回してくる『ネットのヤバい動画』では、何の刺激も得られない。
ともあれ、そうして女の痴態を見続ける俺だが、中でもスポーティな女の子の調教は興奮の度合いが違った。
理由はハッキリしている。
俺の初恋の相手にして、今でも密かに憧れているクラスメイト……入宮 知佳(いりみや ちか)を思わせるからだ。
入宮のことは小学校の頃から知っている。
入学当時から男勝りなスポーツ少女で、休み時間になるなりボール片手にグランドへ駆け出し、率先してドッジボールを始めていた。
中学に上がる頃には、それまでのロングヘアをばっさり切ってショートにし、陸上に打ち込み始めた。
そして高校に上がると、やはり陸上をやるつもりだったが強く勧誘されてバスケ部になり、今は部長をやっている。
フォワードとしてはドライブの鋭さもハンドリングテクニックも頭一つ抜けていて、県内随一とまで言われるプレーヤーらしい。
入宮が2年だった去年は惜しくも県大会準優勝で終わったが、今年こそ全国か、と校内の女子も沸いている。
要するに、見事なまでのスポーツ少女なわけだ。そして俺は、そんな入宮に惚れていた。
まず、ルックスがいい。
後ろ暗いところの無さそうな澄み切った虹彩が印象的で、入宮の前に立つと、いつも自分の姿がその瞳に映った。
猫っぽい釣り目は喜怒哀楽のはっきりした彼女らしく、刻一刻と形を変える。
逆に口元は妙に大人っぽいというか上品そうで、彼女がスポーツドリンクを飲む度につい目を奪われてしまう。
スタイルもいい。
運動でよく引き締まった身体は、クラスの他の女子なんて比較にならないほど均整が取れている。
スレンダーな印象の割に胸はCカップはあるらしく、ゼッケンの胸の辺りにはいつも少し角度がついていた。
その胸から、一切無駄な肉はないという感じに腰に向けてきゅっと締まっていき、
逆にハーフパンツから下の太腿にはいい感じに膨らみがあって、膝裏の深い窪みを経て、また絶妙な形と長さをした膝下が続く。
まだ未成年だけに成熟した体型とは言えないものの、同年代の女子として見る分にはあまりにも刺激的に過ぎるボディだ。
水泳の授業で水着姿の入宮が現れた瞬間、クラスの男子全体の雰囲気が変わるぐらいに。
そして、何といっても肌がいい。
中学までは外遊びや陸上で日に焼け、高校からは屋内競技であるバスケ、という経歴のせいなのか。
入宮の肌は、白すぎず黒すぎず、常に湯上りのような最高に血色のいい桜色をしている。
その鮮やかさは華の女子高生と呼ばれる中でも群を抜いていて、体育館に女子が集まっている中でも一発で見分けがつくぐらいだった。
俺はそんな彼女の身体がとにかく好きで、まだ自慰の経験すらない小学生の頃から、校庭で遊ぶ入宮をぼーっと眺め続けていた。
当時から漫然と好みのタイプだとは思っていたものの、中学生、高校生ともなればいよいよ本格的に性に目覚め、シャレにならなくなってくる。
一時期は本当に、寝ても覚めても入宮の事ばかり考えていた。
遠くから眺めるだけでは飽き足らず、彼女への下心ありきで外遊びに混ざった事も何度かある。
しかし所詮はインドア派。普段体を使い慣れている連中にはついていけず、足手まといの烙印を押されるのが常だった。
ただ、それでいい。足手まといの俺は、それを理由に傍らに座り込み、入宮を堂々と間近で見られるからだ。
ボールを手に、左右に鋭い視線を散らしながら素早く身体を切る入宮。
俺はその入宮の横顔と、かすかな胸元の揺れ、太腿から脹脛の筋肉の凹凸や、空中に飛び散る汗を網膜に焼き付ける。
そして家に帰るなり、その記憶をオカズに延々と至福の自慰に耽った。
そういう生活をしばらく続けた後、ちょうど中学の卒業式の時、俺は入宮に告白している。
人生で一番勇気を振り絞った告白だったが、拒絶はあっけなかった。
「ごめん。あたし、運動ダメな奴とは付き合う気ないんだ」
今思えば、このバッサリと斬って捨てる言い方は、彼女なりの優しさだったんだろう。
変に濁して期待を持たせるよりは、100%望みがないと理解させた方が良い。いかにも彼女らしい理屈だ。
後から聞いた話では、俺の他に何人もが同じく即断で斬り捨てられていて、結局入宮はまだ誰とも付き合った事がないらしい。
だから、俺に入宮を恨む気持ちはない。
実際この件があってから、昼も夜も入宮の事を考え続ける事はなくなった。
ただ、それでも彼女を魅力的と思う気持ちは変わらない。地下で運動部系の子が調教されている時、特に鼻息が荒くなるのはそのせいだ。
そのぐらい俺は、入宮の事が好きだった。
だからこそ、俺は耳を疑う。ウチでの調教を仕切る組の舎弟頭から、次の調教対象の名前を聞いて。
入宮 知佳――――。
舎弟頭の板間さんは、間違いなくそう言った。さらに、お前ェと同じ高校だよ、とも続けた。
俺は電話口でかなり取り乱していたと思う。
なんであの子が。ヤクザに関わるような子じゃないし、第一彼女は全国を狙おうというバスケ部の部長だ、調教どころじゃない……と。
そんな俺に対し、板間さんはいつも通り飄々とした態度で答えた。
理由はよくあるつまらない事。バスケ部部長の座ならすでに降りている、と。その言葉を聞いて、俺は理由が借金だと気付いた。
癖なのかわざとなのか、板間さんはいつも金絡みの案件はよくある事だとはぐらかし、他に裏がある場合は知るなと釘を刺してくる。
後で調べたところ、確かに理由は借金のようだった。
さらにこの電話の少し後、彼女は家庭の事情から、夏の大会を最後にバスケ部を引退した。
本当なら、クリスマスボウルという冬の全国大会も控えていたはずなのに。
調教開始は9月の第2週から。
場所は俺の家だ。入宮がまだ高校生である以上、平日は学校に通わなければならず、俺の家を拠点とするのが都合がいいらしい。
俺と共に下校し、地下で夜中まで調教を受け、朝はやはり俺と共に登校する。
平日はその繰り返しで、土日は原則として48時間ぶっ通しで調教するつもりらしい。
やけにハイペースなのは、入宮の写真を組の得意客にバラまいたところ、中国の金持ちが猛烈に食いついてきたせいだ。
その男は大晦日までたっぷりと入宮を愛で、年が明けると同時に処女を奪うことを熱望しているという。
ただし、最近は後孔にも興味があり、使いたい。拡張や性感開発は面倒なので任せる。
挿入するなり痛い痛いと喚かれても興醒めなので、どうせなら後孔だけで絶頂するように調教しておけ。
売買契約さえ成立すれば、金と権力で強引に高校卒業の扱いにしてやるから、遅くとも12月中には『納品』しろ。
それが男の要求で、急遽調教計画が立ち上がったというわけだ。
調教師が決まるのも早かった。この屋敷の勝手を知っている、常連の二人組だ。
一人は伊田といい、禿げ頭がいつでも脂ぎっている、醜く腹の出た男。
もう一人は瀬川という、いつでも無精髭まみれ、垢まみれで体臭のひどい痩せた男。
数いる調教師の中でも、男に対するコミュニケーション能力が皆無な二人だ。
「この度もよろしくお願いします、先生方」
俺はいつも通り、家に上がった伊田と瀬川に握り飯を振舞った。
するとやはりと言うべきか、二人揃って俺とは目も合わさずに椅子に座り、不味そうに米を食い散らかす。
女相手には呆れるほど喋るくせに、男相手となるとこれだ。何か信念でもあるのか。
あったとしても、せめて匂いぐらいは何とかして欲しい。伊田は明らかに内臓が悪い人間特有の口臭が、瀬川は体臭が酷い。
ここだけの話、こいつらに出した食器類は滞在期間が終わり次第全部捨てている。そのぐらい嫌いだ。
こんな下劣な連中が、入宮を調教するっていうのか。そう思うと、手にした玉露入りの湯飲みで殴り殺したくなってくる。
いやそもそも、入宮が調教対象っていうのが間違いなんじゃないのか。
同じ学校にたまたまいた同姓同名とか。そうだ、きっとそうだ。あの入宮が、こんな汚い場所に来る訳が…………
俺のその縋るような願いは、直後のチャイムで掻き消される。
引き戸を開けた先にいたのは、紛れもなく俺の知る初恋相手だった。
やや瞳に翳りがあるとはいえ、その澄んだ虹彩は立ち尽くす俺の姿を映し出す。
「………お世話になります」
悲壮な覚悟を秘めた一言が、桜色の唇から放たれた。
地獄に乗り込む時にもこの気丈さ。これは間違いなく、入宮だ。
そう、間違いなく……。
※
「へへへ、おいでなすったか。マジで眼力の強ぇ嬢ちゃんだなぁオイ!」
いつの間にか俺の背後に忍び寄っていた瀬川が叫ぶ。
「まぁまぁ、とにかく上がんなさい。腹が減っているなら握り飯があるぞ。私達の食べさしだがねェ」
伊田も教授のような妙に鼻につく物言いを始めた。
本当に、女の前でだけ態度の変わる連中だ。
「っ…………!!」
入宮がかすかに鼻をひくつかせ、眉を顰めた。それもそのはず。中年男二人が醸し出す悪臭が、辺り一面に漂っている。
「さぁ、遠慮はいらんよ」
調教師共はそう言いながら、我物顔でソファを指し示した。その唇は悪臭に怯む入宮を見て吊り上がっている。
そう、こいつらの匂いはわざだ。匂いで自分を覚えさせ、一種の催眠状態に陥らせる事で“条件付け”を容易にする、そのために。
入宮は渋々といった様子で玄関を閉め、ソファに腰掛ける。
夏休み明けとはいえまだまだ残暑がきついため、入宮の制服は夏仕様だ。
女子高生の制服っていうものは、それだけで魅力的に見える。特に入宮の場合、スタイルがいいだけに尚更だった。
改めて見ると、入宮の肌は夏を越したばかりなのに焼けていない。相変わらず血色のいいピンク色だ。
去年までは夏になるたび海でこんがりと焼いていたのに、今年はその余裕も無いほど家計が切迫していたということか。
髪も少し印象が違う。つい数ヶ月前までは、いかにも部活一筋という感じの耳が隠れる程度のショートだったが、
今は横髪の毛先が肩をくすぐる程度にまで伸びている。色染めなんてした事もなさそうなほど、黒く艶光ったまま。
それが妙に女を感じさせて、ゾクリとする。
身売りが決まった時点で、女らしく見せようと伸ばしはじめたのだろうか。そう考えると、胸が苦しくなる。
「いやーしかし、ホント凛っとした感じだよなぁ、たまんねぇぜ。テメェ、バスケ部の部長なんだろ?
さぞかし後輩のガキ共に、偉っそうにしてきたんだろうなぁ、部長サマともなりゃあよォ」
瀬川が浅黒い指で入宮の顎を掴み上げる。
「ッ!」
入宮は鋭い視線を瀬川に向けた。
「おう、それそれ。そういう目すんだよなー、体育会系のガキは。ま、ハネ返ってられんのも今のうちだけだ。
今日から俺ら二人が、テメェをきっちり奴隷に躾けてやる」
そう囁きかけながら、入宮の肩に手を回す瀬川。
その右手が入宮の身体をぐるりと回り、肩にかかった時。急に入宮の左手が動き、瀬川の手を払いのけた。
パシンッといい音がする。音からして、手首がジンジンと痺れる類の衝撃だろう。
「ぐおっ! チッ……この馬鹿力が。よぉ伊の字、こいつ流石はバスケ部だ、やべぇ指の力だぜオイ」
瀬川は手首を振りながら、伊田に向けて肩を竦めてみせた。
そんな瀬川を、至近から入宮の目が射抜く。
「契約した以上、身体は売るし、調教も受ける。でも、必要以上に馴れ馴れしくしないで。
悪いけどあたし、あんた達みたいな男ってすごく嫌いなの。見るからに不健康で、だらしなくって、臭い。
いい歳してマナーも弁えないなんて、最低!!」
間髪入れず突き刺さる、正論。語気強く諭すようなその言い方が、またいかにも部を纏めるキャプテンらしい。
部活の後輩やクラスの男子なら、こんな空気になればすぐに平身低頭で謝るだろう。
だが、今は違う。奴隷と調教師、身分の差ははっきりしている。
「そうか、私達は嫌われてしまっているのか。だが、それでも構わんよ」
黙って状況を見守っていた伊田が、入宮の隣……瀬川とは逆側に腰掛ける。そして、入宮の艶々の黒髪を撫で始めた。
「どうせ私達は、これからたっぷりとおまえの反感を買うんだ。
おまえは男を狂わす魔性の身体の持ち主だ。おまえ自身が知ってか知らずか、ね。
おまえの周りにいる男……同級生や教師どもはみな、引き締まったおまえのこのフトモモを見て、濁った精を放ったに違いない。
この身体に当てられたんだ、さぞや下劣な妄想をしたことだろうね。
逸物をしゃぶらせたり、髪の生え際から足の指に至るまでをねぶり回したり、慎ましいアヌスを犯し抜いたり。
わかるかね……今からその妄想がすべて、現実のものになるんだよ」
伊田はそう言いながら、撫でていた髪の一房を摘み上げて舐めしゃぶる。
「ひっ! や、やめてよっ、汚い!!!」
入宮が目を剥いて叫ぶ傍らで、瀬川の手も動きを見せた。
左手を制服のシャツに滑り込ませ、そのままブラジャーを押しのけるようにして右乳房を掴む。
「きゃっ!!」
今度の悲鳴はいかにも女子らしい。いくら男勝りでも、こういう時は女の子なんだ。
「おおーっ。やっぱ女子高生のチチは最高だなぁ、張りが違うぜ張りが!
肌もモチモチで吸い付くみてぇだし、中学生以下のガキみてえに変なしこりも残ってねぇしよ。ひひひ、やぁらけぇー。
おまけにオイ、てめぇ細い身体のくせに、中々でかいチチしてんじゃねぇか。こりゃDはあんだろ、ええ?
俺の手の平にすっぽり収まってよぉ、まるで俺にこうして揉まれるためにこ成長したみてぇだぜ」
瀬川は今にも涎を垂らしそうな笑みで入宮の乳房を揉みしだく。
「んっ……やめっ……て、ってば…………っ!!」
入宮は露骨に嫌がって瀬川の腕を掴みに掛かるが、その隙に逆側の伊田がスカートを捲り上げる。
ショーツが覗いた。赤いレース柄の入った、桜色のショーツだ。
「あっ!?」
「ほう、これは可愛らしい。今日一日、これで過ごしたという事か。
こうも露骨に男を誘う下着を着けて過ごしているのは、学校内でもおまえか、ウリをやっている不良少女ぐらいだろう。
……と、いやいや、おかしな事を言った。おまえもまた売女だったな。
何しろおまえは、万札で股を開く花畑な女より、さらに貞操観念の緩い豚になるんだ」
伊田はそう囁きながら、文字通り瞬く間にショーツへ指を滑り込ませた。
入宮がぎょっとした顔をしたのは、盛り上がったショーツの内部で指が蠢き始めてからだ。
悔しいがこの調教師達は、責めの展開が鮮やかすぎる。ボクサーが顎を打ち抜くのと同じぐらい、絶妙な呼吸で急所を突く。
県内随一と謳われたバスケ部員が、反応さえできないほどに。
「ふざけないで、やめてっ!! こういう事は、地下に行ってからするって約束でしょ!?
それを、こんな所で……み、見られてるからっ!!!」
シャツとショーツの中をそれぞれ弄られながら、入宮は顔を赤くして叫んでいた。怒りか羞恥か解りづらいところだ。
どうやら、俺に見られているのが溜まらないらしい。まぁ、それはそうだ。クラスメイトなんだから。
でも残念ながら、その願いは聞き届けられない。入宮に纏わりつく二人は、多分わざとここでやってるんだから。
「固ぇこと言うな、本格的な調教に入る前のスキンシップってやつよ。それにそこの坊主は、仮にもこの屋敷の家主様だぜ。
これからしばらく此処に住まわして貰ってよ、汗やら愛液やら撒き散らして汚そうってんだ。
だったら、ちぃと良い目を見せてやってもいいだろうが。なに、あくまで着衣よ。同級生にチチやマンコを見られるわけじゃねぇ」
瀬川はそう言いながら、相変わらず俺には一瞥もくれずに乳房を揉みしだく。
伊田は入宮にだけ聴こえる声で何かをずっと囁きかけながら、ショーツの中で指を曲げていた。位置的にクリトリスを弄くってるんだろう。
「うう、ううく…………!!」
入宮は左右を交互に睨み、歯をかみ合わせながら脚を閉じ合わせていた。瀬川の指の侵入だけでも阻もうというのだろう。
ただ、どれだけ固く脚を閉じようが、女の股下には隙間が残る。人差し指や中指でなら、クリトリスへの刺激に支障はない。
瀬川の表情的にも、陰核責めは滞りなく進んでいるらしかった。
じっと見てちゃいけない。
それは理解しているはずなのに、俺は目の前で繰り広げられる光景を前に、ただ立ち尽くしてしまっていた。
目の前で交通事故が起きたら、しばらく固まって動けないというが、今ならその感覚がよく分かる。
そして俺は、見知った同級生の悲劇を前に、ズボンの中で痛いほど勃起していた。
「…………んっ…………んん、んっ………………!!」
入宮は抵抗こそ諦めたものの、目を閉じ、唇を閉じ合わせたまま、断固として感じないというスタンスを取っている。
別に珍しい話でもない。調教初めは皆そうだ。
そして調教師は、そういう女でも昂ぶらせる引き出しを山のように持っている。何しろ一年の大半を、女の身体を弄くって過ごす連中なんだから。
まずは伊田が乳房責めのやり方を変えた。
ずっと弄っていた乳首から手を離し、代わりに乳房そのものを外周から丹念に揉み上げていく。
「っ!!」
入宮が目を開き、自分の胸の辺りに視線を落とした。伊田はそれを確かめた上で、不気味な囁きを再開する。
「どうだ、胸を揉まれるのは。中々に気持ちの良いものだろう。だがこれから、もっと良くなるぞ。
乳房というものは所詮脂肪の塊だが、こうやって丹念に揉み込めば中の乳腺が次々と目覚めていく。
そしてその快感は、血の巡りに乗って先端へ集まっていくんだ。
ほら……早速だ。乳首が尖ってきたぞ。乳輪も粟立っているなぁ、快感のあまり鳥肌が立ったか?」
伊田は乳房を揉みしだきつつ、器用に乳首の周辺を弄繰り回しているようだ。
動きからして、乳輪を指先で刺激し続けているのか。
「いいぞ、乳輪がぷっくりと膨らんできた。さすが健康体だな、血の巡りがいいらしい。どうだね、堪らんだろう。
乳首がピクピクしているのがハッキリ伝わってくるぞ…………そらっ!!」
今度の動きはハッキリ解る。定番のトドメ――伊田の両の親指が、思いっきり乳首を捻り潰したんだ。
「ふぁああうっ!?」
それまで汗を滲ませながら必死に耐えていた入宮も、これには耐え切れない。間の抜けた声と共に、盛大に肩を跳ねさせる。
伊田と瀬川が唇を緩ませた。
「どうした、妙な声を出して。気持ちが良かったのか? まぁそうだろうな。こんなにいやらしく、しこり勃たせているんだからな!」
伊田がそう言って乳首を扱けば、入宮の目元が引き攣った。
そうして乳首責めが佳境を迎える中で、瀬川の方にも動きがある。
「はぐっ!!」
瀬川の手の甲に筋が浮いた直後、入宮からまた声が上がった。
「ひひ、こっちでもメスの声が出たなぁ。ま、こっちゃあこっちでギンギンに勃起してんだ、我慢できる訳ゃあねえよな。
さっきから指に、マン汁がぬるぬると絡みつきまくってるしよぉ」
瀬川はそう言いながら、また手の甲を蠢かす。いや、と入宮が小さく呻いた。
「何がイヤだ、本心じゃ待ち望んでるくせによ。ここまではずっとクリトリスの皮越しにやってきたが、そろそろ解禁だ。
こうやって指の腹でフードを捲り上げてやりゃあ…………性感帯の塊がむき出しってワケよ」
「や、やめてっ!」
瀬川の煽りを受けて、入宮の手がたまらず瀬川の腕を掴む。瀬川は笑みを深めた。
「何だ、皮を剥かれるのは初めてか。ったくウブな嬢ちゃんだ!」
その言葉と共に、一気に包皮が剥き上げられたんだろう。
「!!」
入宮は唇の真ん中を閉じ合わせた。こんな状況でも、つい可愛いと感じてしまう。
改めて見ても上品な唇だ。伊田、瀬川の視線もまた、その唇に注がれている。
このピンクの唇を、もっと歪めさせてやる。どちらも心の中では、そう思っているに違いなかった。
一年の大半も女を責めていると、陰核がどんな固さの時に、どの角度からどういう力を加えればクリティカルな刺激になるか、感覚でわかってくる。
今では延々と続く調教の中、ベッドの中で半分まどろみながらでさえ何度もイカせる事ができる。
その研ぎ澄まされた技術の粋を、たっぷりと披露してやる。
瀬川は延々とそんな事を呟きながら、ショーツの中で手の甲を蠢かし続けていた。
俺が瀬川の調教を見るのはこれで7回目、日数で言えば延べ150日以上にもなる。
それだけ見続けていれば、たとえショーツ越しだろうと、浅黒い手の動きだけで責めの内容がおおよそ把握できた。
クリトリスの裏筋を爪で擦り上げ、頭部分を指先でくりっと引っ掛け、側面を指の腹で柔らかく押し潰し。
手馴れた瀬川がそういう刺激を繰り返すと、どんな女でも濡れてしまう。
「ひっひ、何だよてめぇ。涼しい顔してるくせに、愛液がどんどん溢れてくるじゃねぇか。
おらっ、もう少し脚開け。こんだけ濡れてるくせに、今更変な意地張んな」
瀬川は手を蠢かしながら入宮に命じる。膣からも責めたいが、ぴっちりと閉じ合わされた太腿をこじ開けられないらしい。
見ているだけでも解る。陸上とバスケで鍛えられた入宮の太腿は、力を込めている今、圧縮されたゴムのようだ。とても手の甲ひとつでこじ開けられそうにはない。
「別に……普通にしてるだけだけど」
入宮は、頬を紅潮させたまま素知らぬ顔をする。その言葉の後、瀬川の手と入宮の両脚とでぶるぶると鬩ぎ合いが起きた。
「……ったく、強情だな」
瀬川は呆れた様子で嘆息し、肩の力を抜いた。だが、断じて諦めた訳じゃない。
調教師と呼ばれる連中が、奴隷に駄々をこねられて責めを諦める事はない。むしろ抵抗を受ければ、より徹底的にやるものだ。
瀬川も責めの手法を変えたに過ぎない。
『北風と太陽』という奴だ。股をこじ開けるのが無理なら、イカせまくって脱力させるまで――多分そう考えている。
事実そこから瀬川は、クリトリス責めのペースを上げた。
それまでの人差し指と中指の二本に加え、親指も使い始める。これまでの調教を見る限り、親指での陰核責めは一番効果的だ。
力の加減が五指の中で一番やりやすく、指の腹の面積が広いだけに押し潰す責めにも向いている。
手馴れた調教師が親指まで使えば、おぼこ娘を果てさせる事なんて何でもない。
「ひっ、ひぃっ……ひぐっ、んひっ…………っきひっ、ぃ…………!!」
耐えなければ。その想いがあるらしく、奥歯を開かない口の形で入宮は何度も声を上げた。
でも、俺には解った。その声を上げている間、いや上げていない間にも、入宮が何度も絶頂している事が。
判り易いんだ。閉じ合わせた脚の膝頭同士が、ぐ、ぐぅっと強く密着して、ふーっと圧が弱まる事がある。それが絶頂に至ったサインだ。
絶頂のたびに愛液が吐かれているのか、ショーツがどんどんと透けていく。
大抵はショーツを盛り上げる瀬川の手が透けるだけだが、たまに薄らと茂みが覗く事もあり、刺激的だ。
「ん、んぐぅっ……ふぐぐぐっ…………んくっ、ぅうっ…………!!」
7、8回目の絶頂までは、入宮もかろうじて普通に座っている姿を保っていた。
ただそれが9回目を超えたころから、あからさまに乱れていく。
両手はソファの縁を掴むようになり、顔は歯を食い縛ったままソファの背もたれに埋まりこみ。
脇腹から汗が伝いはじめたのもこの頃からだ。
そして、多分15回目の絶頂時。入宮の膝がそれまで以上に強く擦り合わされて、脚は閉じたまま爪先立ちするようになった。
相当深い絶頂だったんだろう。数秒間ぶるぶると痙攣が続いた後、今度は一気に弛緩が来た。
入宮の首筋からも肩からも手首からも力が抜けて、それまで閉じ続けていた脚も、菱形にだらしなく開く。
「はい残念、ご開帳ー。」
瀬川は入宮が脱力した瞬間、遠慮なく茂みの下……膣に指を捻じ込んだ。
「あかっ!!?」
挿入感で覚醒したのか、入宮が叫びながら下腹辺りを見下ろした。しまった、という想いがありありと見て取れる顔だ。
ただ、もう遅い。完全にペースは瀬川のものだ。
「おっぉぉ、さすがはバリバリの運動部、すげぇキツさだ。ヘタ打ちゃ指が折れちまいそうだぜ。
だが散々クリ逝きさせただけあって、グチョグチョなのがまた…………っと、見つけたぜ。ここが、てめぇのGスポットだな?」
膣に挿れた指を少しずつ奥に進めながら、瀬川が囁きかけた。
「…………っ!!」
入宮の目元がピクピクと痙攣する。どうやら、憤っていても返す言葉がない時の癖らしい。
俺が見てきた彼女は、不満があればいつでも誰にでも直球でぶつけるタイプだったから、そんな癖を見るのは初めてだ。
「いくらおぼこいっつっても、今日びの女子高生なんだ、Gスポットぐらいは聞いた事あんだろ?
膣の浅い所にある、ここだ……自分でもしこりが感じられるだろうが。ここまで膨れてんのは、相当感度が上がってる証拠よ。
ここをイジメ抜いてやりゃあ、女って動物はイキまくるんだ。てめぇはガキの上に血の巡りがいいからよ、軽くぶっ壊れるかもしんねーぜ」
瀬川はその言葉を残して口を噤む。責めに没頭する気だ。それを受けて、伊田もまた乳房への責めを激しくする。
入宮の喉から、あ、と高い声が漏れ、ソファに沈む腰が浮いた。
「うああああーっ、ああ、あああああっ!! ああっ、はあぁあああーーっ!! くっはぁあぁっ、んあああーーーーッッ!!!」
クリトリスとGスポット、そして乳房。3つの性感帯を同時に責められて、入宮は中年男達の望み通りに壊れていた。
もう脚を閉じる余裕なんてない。脹脛をソファに密着させたまま、カエルの様な脚の形で何度も絶頂することもあった。
かと思えば片足を床に下ろし、片足の裏をソファに載せて、力いっぱい力みながら潮を噴き散らすこともあった。
高校指定のスカートは皺だらけになりながら捲れ上がり、ショーツは愛液と潮で肌色に透けていく。
さすがに疲れたのか、瀬川がショーツから指を抜いた頃には、中々にひどい入宮の姿があった。
片足はソファの上でくの字に折れ、片足はソファ前方に投げ出されの大股開き。
ショーツは伸びに伸びてぐちゃぐちゃのあそこをかろうじて覆っている有様。
シャツはまくれ上がって汗で濡れ光った腹を丸見えにし。
両腕はソファの背もたれを逆手で掴み。
挙句顔は汗まみれのまま、閉じた口からシーッ、シーッと痛々しい呼吸を漏らしつつ虚ろな目をしている。
伊田と瀬川はそんな入宮の顔を覗き込んで笑った。
「いいイキっぷりだったな、期待通りだ。さあ、挨拶はこれぐらいにして、シャワーでも浴びようか」
まだまだ先を感じさせるその言葉で、どの女も愕然とした様子を見せる。入宮も当然そうだと思った。だが。
「…………ぅ、うぐ……っく…………!」
入宮はなんと、歯を食いしばって意識を取り戻し、伊田と瀬川を睨んでみせたのだ。
流石は入宮だ。俺は軽く感動すら覚えた。ただ、調教師2人もまた別の意味で燃え上がっている。
サディストの嗜虐心を刺激しても良い事はない。ここでは俯くなりして、大人しく振舞うのが利口なんだ。
入宮への調教は、事実ここからがスタートなんだから。
※
俺は親父の部屋……今や実質的に俺の部屋となっている場所に戻った。
外見こそ純和風のこの屋敷だが、何年か前の改修時にいくつかの場所を洋風に変えている。
トイレと浴室、さっきのリビングと、後は親父の部屋だ。
親父の部屋にはあまり生活感が無い。事情を知らない人間が見たら、詰め所か何かだと思うだろう。
6畳間に本棚が2つと、ベッドが一つ。そして細長い机の上に、地下を監視するモニターが上下4つずつ並んでいる。
俺はモニター前の椅子に掛けつつ、傍らのダンボールから箱買いしたペットボトルを2本引き出して長期戦に備えた。
計8つのモニター内を探すまでもなく、入宮達の居場所には見当がついている。
調教師には偏食の奴が多いが、それは調教にも当てはまり、大抵の奴が独自の調教ルーチンを持つ。
伊田・瀬川の場合は、まず最初に浣腸責めをやるはずだ。
そう思ってモニター5、ガラス戸で仕切られた簡易的なシャワールームの映像を確認すると、やはりそこに3つの人影が見えた。
バスルームの造りはビジネスホテルのそれに似ていて、シャワーが設置され、バスタブもある。ただし、便器は設置していない。
奴隷調教を行う場所である以上、排泄はおまるや洗面器でさせて恥辱を与えるのが基本だ。
もしどうしてもトイレでしたい場合、便意に耐えながら階段を上がり、俺も普段使う屋敷のものを借りる以外にない。
俺はガキの頃から何度も、下腹を押さえながら屋敷をうろつく女を見かけていた。
屋敷内は無駄に広い上、トイレのある場所は奥まった突き当たりだから、初見じゃまず解らない。
『あ、ね、ねぇボク、トイレの場所教えて!!』
彷徨っていた女は、俺を見つけるなり真っ青な顔を輝かせてそうせがんでくる。
勿論俺は教えるんだが、その場所の遠さに女の顔がまた真っ青になり、大抵は耐え切れず途中で漏らしてむせび泣く結果になった。
こんな風だったから、俺は良い大人でも漏らすんだ、女は特に漏らしやすいらしいと、妙な勘違いをしたものだ。
ともあれ、簡素なシャワールームに3人はいた。
まずはいくつかあるタオル掛けのうち、照明とほぼ同じ高さにある一つにタオルで手首を拘束する。
さらにイルリガートルを使って、たっぷりとグリセリン浣腸を施す。
このお決まりのパターンを、やはり入宮も受けていた。
浣腸液の注入には特殊なプラグが使われるため、プラグから伸びたバルーンさえ膨らませれば、自力での排泄は不可能になる。
そうして準備を整えた上で、必死に排泄感に耐える奴隷の身体を弄くり回す。それが伊田・瀬川の常套手段だ。
「うぐ……ぐぐぐ…………はあ……っく………………!!」
入宮の苦しげな声が浴室に反響する。
彼女は内股になりながら、必死に便意に耐えていた。勿論その腹の中には、たっぷりとグリセリン溶液が詰まっている。
濃度は薄いはずだが、何と言っても初の浣腸だ。浸透圧というものに慣れていない腸内は、ものの2,3分で音を上げているだろう。
ただ、何しろあの入宮だ。そうそう音を上げるはずもない。
ただ身体中にじっとりと汗を浮かべ、太腿を細かに震わせながらじっと便意に耐え忍ぶ。
伊田と瀬川は、そんな入宮の苦悶を楽しみながら、文字通り『身体中に』舌を這わせていた。
直立した伊田が上半身を、入宮の足元に蹲った瀬川が下半身を、執念深く。
伊田と瀬川の身体にはそれぞれ刺青が入っている。
伊田は、右肩から背中にかけて蓮の花が。瀬川は、背中一杯に般若の面が。
三段腹の色白デブと浮浪者同然のヒョロ長。服を着ていれば喧嘩しても負ける気のしない二人だが、裸になると流石に怖い。
その二人が、健全そのものの入宮の肌に舌を這わせていく。
髪の生え際から、額、瞼、眼球、頬、鼻腔、鼻筋、顎、首筋から鎖骨、乳房に脇腹、腹筋に臍、腹回り。
デルタゾーンに太腿内腿、臀部、脛に膝、足首から足指の一本一本に至るまで。
勿論、腋や膝裏といった窪みの部分も見逃さないどころか、汗腺から滲む全ての汗を舐め尽くそうとするかのように、何分も吸い続ける。
「ああー美味ぇ美味ぇ。しょっぺぇのに甘ぇ。現役女子高生の新鮮な汁啜るが一番のアンチエイジングだぜ!」
「その通りだ。特に今回の奴隷は一級品だな。染みもくすみもない珠の肌に、絹のような舌触り、舌を押しのけるような弾力……最高だ!!」
興奮気味に下卑た言葉を吐きながら。
その光景はおぞましいの一言に尽きた。ただ、同じ男として気持ちは解らなくもない。
初めて見る入宮の裸は、本気でモデルと見紛うレベルだった。
スクール水着を着けた姿も相当だったが、脱ぐとまた凄い。
釣鐘型の乳房も、背中の筋も、細いウエストラインも、きゅっと上がった尻肉も、健康的に締まった太腿からの脚線も。
どれもこれもが『これこそ完璧なもの』だと思える。
ただ、男はその身体に気持ちよく見惚れていればよくても、入宮自身は堪ったものではない。
「うわっ、うわ、うわぁああっ!! やめ、ちょっ、ちょっと、やめてよっ!! 舐めないで、そんな所ッ!!
いやああっ、やあーっ!! やめてってば、やだっ!!!」
まるで身体中を蟲が這い回っているかのように、伊田・瀬川の舐りから逃れようともがく。
引き攣った顔中が脂汗に塗れている。
もっともその脂汗は、主に浣腸のせいかもしれない。実際入宮の下腹からは、ぐるぐると重苦しい音が響き続けていた。
男二人による舐りが2周目に入った頃、入宮の内股の震えは病的なものになっていた。手首の拘束がなければ膝から崩れていることだろう。
真っ青な顔もガタガタと震え、薄く開いた歯の間からは、出産でもしそうなほど鋭い呼吸が繰り返されていた。
我慢強い彼女とはいえ、もう本当の限界だ。
「………………さ、させて………………」
それまで正面だけを見つめていた入宮が、腋を舐めしゃぶる伊田を見下ろしながら呟いた。
「何だと?」
「させて、おねがい。う、うんち、うんちさせて、おねがいさせてえぇっっ!!」
こういう単語だけで構成された叫びは、本当に便意の限界を迎えた人間の特徴だ。
入宮の限界は明白だが、調教師からすぐにご褒美が与えられる事はない。奴らは懇願を受けたとき、必ず一度は焦らす。
お前のペースでは行動させない、あくまで決定権を持つのは自分だ――そう刷り込む為に。
「“させて”じゃないだろう、“させてください”だ。イヤそもそも、させて下さいって言葉自体が豚にしちゃあ真っ当すぎるな。
お前はこれから、浅ましい尻穴奴隷になるんだ。くさい下痢便をひり出す所を見て下さい、とでも乞うべきじゃねぇのか?」
膝裏をしゃぶりながら瀬川が告げると、入宮の顔が凍りつく。
「…………ぇ…………?」
極限の便意のせいか、呆けたような声を漏らす入宮。こうして奴隷が弱っている時に畳み掛けるのが、調教の基本らしい。
「え、じゃない。“くさい下痢便をひり出す所を見て下さい”だ、言ってみろ!!」
伊田が入宮の髪を鷲掴みにし、大声で怒鳴りつける。普段は教授気取りの喋りをするくせに、こういう時の恫喝はヤクザそのものだ。
普段インテリと思わせているだけに、その豹変振りにはどんな女でも度肝を抜かれる。極限状態ならば、尚のこと。
「ひっ!」
入宮もそうだった。瞳孔が収縮し、左右に惑う。ピンク色の唇が細かに震える。
葛藤しているのか。いや、そんな余裕はない筈だ。根源的な欲求を完全に封じられた動物に、選択肢などないんだ。
「…………………く、くさ…………い…………」
入宮の唇から、命じられた通りの言葉が紡がれ始める。頬を伝う大粒の涙と共に。
「…………くさい、げりべんを…………ひっ……ひり、出す、ところを…………み、み……て…………ください……………!!」
「フフフ、惨めな哀願だ。華の女子高生に、そうまで女の尊厳を捨てられては許すしかないな。
これからも排便する時には、そうやって許可を得るんだぞ」
宣誓が済んだところで、伊田がバルーンを拾い上げた。同時に瀬川も、入宮の肛門の後ろに桶を構えた。
伊田の指が空気を抜くボタンを押し込んだ直後、シューッという漏れ始める。そして音が終わるより早く、バルーンが弾け飛んだ。
そこから起こるのは、屈辱の排便だ。
だばばばばば、という音と共に、桶の底へと凄まじい奔流が叩き込まれていく。
あの入宮が、おそらくは生まれて初めて晒す排泄姿。
女が排便する姿などとうに見飽きている筈なのに、今はそれが未曾有の異常事態に思えてしまう。俺も現金なものだ。
「…………う、うっ…………くっ、うくっ、くうっ…………!!」
ひとしきり排便を終えた後、入宮は嗚咽を始めた。その心中は察するに余りある。
だが調教師の2人だけは笑みを消さない。それどころか、むき出しになった粘膜のような奴隷の心に、あえてヤスリを掛けていく。
盥を持ち上げながら、入宮の耳元に何かを囁く瀬川。その直後、入宮の瞳が怒りを露わにした。
「よ、良くいうよ。あんたがさせたんでしょ、こんな…………最低なこと!!!」
入宮は渾身の力を込めて瀬川を睨みつける。だが瀬川の凶悪な笑みを目にした瞬間、その表情は凍りついた。
「何言ってんだ。まだまだ先があるんだ、今から最低なんて大それた言葉を使うなよ。
500ミリ程度じゃあ物足らんだろう。いくらでもお代わりはあるんだぜ」
瀬川は再びバルーン付きの栓を持ち上げる。引き攣った入宮の顔を楽しみながら。
そこからはまた、浣腸責めが繰り返される。
二度目の注入時には、身体を洗うという名目で入宮の身体中が撫で回された。
晒された両腋で石鹸がこれでもかと泡立てられ、乳房が揉みしだかれ、尻肉から太腿にかけて何度も手の平が這わされた。
「んんん゛んん゛っっ…………!!」
便意からかくすぐったさからか、入宮の全身の筋肉が収縮し、痙攣する。
「どうだ、もう出してぇんだろう。また惨めったらしくおねだりしてみろ、ぶち撒けさせて下さいってよ」
体中を撫で回す瀬川がそう囁きかけても、入宮は俯いていた顔を上げ、汗びっしょりで睨むだけだ。
まだ完全に参っているわけではないらしい。
「生意気な顔だ」
伊田はそう囁きつつ、入宮の股に手を潜り込ませる。
「あっ!?」
入宮が叫んだ時には、もう伊田の指先は膣に入り込んでいた。そこから円を描くように刺激を始める。
それに合わせ、瀬川もまた釣鐘型の乳房を鷲掴みにした。リビングでの責めとは逆の配役だ。
二人ともが激しく刺激はせず、石鹸に塗れながらゆるゆると刺激を続けている。
これまでの調教記録を見る限り、意外にそうした責めの方が、女を絶頂させる際に有効らしい。
おまけに今は、たっぷりと浣腸を施した状態だ。そこに来てのゆるい責めは、腸側の蠕動と同調して女を狂わせる。
「やめてっ、やめてぇーっ!! ひぃっ、いまはだめぇっ!!!」
震えるような声で入宮が叫び、手首と繋いだタオル掛けが音を鳴らす。それでも……いや、だからこそ、男達は指を止めない。
親指での陰核責めと併せてゆるくゆるくGスポットを舐め回し、入宮に2回潮を噴かせる。
汗に涙、鼻水、そして愛液。それらに塗れ、刻一刻と酷い状況になっていく入宮に対し、伊田も瀬川も何かを耳元に吹き込み続けていた。
風呂場のマイクの場所が悪いのか、内容は聴き取れない。
だがある時は激昂し、ある時は視線を彷徨わせる入宮の様子から、おおよその内容は把握できる。
そうした苦痛と恥辱の果てに、入宮は二度目もまた、泣きじゃくりながら排便を乞うのだった。
三度目の時には、伊田が執拗にキスを強要した。
何しろ伊田は口臭のきつい男だ。入宮は何度も身を捩り、頭を振ってキスを拒む。
しかし、しなければ排泄させないと脅され、仕方なく受け入れた。
そして、伊田が入宮の唇を奪う。モニター越しにそれを見た瞬間、俺は思わず机を叩いていた。小指の骨が軋む。
俺が長い間憧れ続けていた事を、あんな気持ちの悪い奴がやっている。そう思うと胸がざわついた。
キスは絵面は完全に、一度もモテた事のないブ男が女子高生を襲っているというものだ。
頬に凹凸を作りながら舌を絡め、零れるほどに唾液を交換し、歯茎や上顎までを丹念に舐め回し。
その全てが気色悪い。当然、やられている入宮だってそうだろう。
入宮は強引に口の形を変えられながら、強い瞳で伊田を睨み続けていた。
一方の伊田は、俺と視線を合わせない人間とは思えない目力で、入宮の視線を真正面から受け止めて笑っている。
そしてキスを強いる一方で、執拗に下腹を揉み下してもいた。浣腸された状態でそれをやられては堪らない。
「えう“っ、えれ“う“っ!! えう“-っ、ほおえ“あ゛ぉおーーーっ!!!」
入宮は伊田と舌を絡ませながら、何度も排泄を訴えた。だが伊田は、その全てを強引なキスで封じ続ける。
そのまま、数分。流石にやりすぎだ……俺がそう思い始めた頃。
「いいがげっにてよおおおおッ!!おぉ゛だめっで、らっどもらっども、ずっどいっでるのいぃ゛っっ!!!
らべっ、あびゃぅ、あびゃぐうあくだざっでほおおおお゛っ!!!!」
頭を振ってキスから逃れた入宮が、涙ながらに涎を撒き散らし、言葉にならない叫びを発しはじめた。
だが伊田にしてみれば、それがまた刺激的だったらしい。
バルーンを萎ませて排便を許しながらも、ひり出させている最中にまた入宮の唇を奪う。
あまりの状況に混乱した入宮が、伊田の喉の中で恥辱の呻きを上げつづける様は異様だった。
そして四度目の時には、瀬川によってフェラチオが強いられた。あえて栓を使わず、手の拘束も解いて。
「咥えろ。イカせたら出させてやる」
そう言って瀬川が突き出した逸物は、改めて見ると恐ろしくデカい。ごく平均的な俺の物より3回りは上か。
おまけにそのデカブツには、いつ洗ったのかというほどびっしりと恥垢がこびりついている。
普段の入宮であれば、その不潔さに烈火のごとく怒り出したことだろう。
だが今の彼女は、3度に渡る浣腸と強制排便で、心身共に疲弊しきっていた。
「うぅ…………あ、あぅあ…………」
膝から崩れ落ちた格好のまま、呻きながら顔を上げる。
そしてさすがに数秒ほど躊躇いながらも、渋々といった様子で奉仕を始める。
俺はまた机を叩きそうになるが、さっきの小指の痛みを思い出して何とか思い留まった。
入宮は左手で逸物を掴みながら口内に迎え入れ、必死に舌を使っていた。だがその責めは、かなり拙いものらしい。
「うはっ、こーりゃヒデェ。小学生ってんならともかく、高校でここまで知識のねぇ女は初めてだ。
テメェよお、部活一筋だか何だか知んねぇが、今時フェラチオすら満足に出来ねえ女子高生なんざいねぇぜ?
さんざっぱら他人の事を非常識呼ばわりしてたがよ、テメェ自身が時代錯誤の塊じゃねえか。
……ったく。いくら素人嗜好っつても、こんなの納品した日にゃあいい笑いモンだ。
こうなりゃ俺がイチから教え込んでやっから、その通りにやれや。逆らったり間違えた日にゃ小便飲ますぞオラッ!」
入宮の汗でしなびた黒髪を鷲掴みにして怒鳴る瀬川。
俯きがちな入宮の表情は窺えないが、どんな表情をしていたにしろ、従う以外の道はない。
そこから、フェラチオ調教が始まる。
瀬川は入宮の側頭部を鷲掴みにして抽迭をコントロールしながら、唸るような声で繰り返し指示を出していた。
――カリ首の膨らみに沿って三周舌を這わせろ。そう、そのキノコの傘みてぇな部分だ。
――鈴口から滲み出た先走り汁を啜れ。俺の体から出た汁は、一滴残らず腹に溜めろ。
――唾液をまぶせ。もっとだ。えづき汁でもいい。出ないなら出させてやる。奥を突くから、喉を開いてじっとしていろ。
――吐くな。吐くんじゃねぇ。そのえづき汁をまぶせ。全体にだ。そうだ……それを潤滑油にして、前後に頭を振れ。
――根元まで咥えこめ。なんだ、もう入らねぇのか。減らず口が多い割にゃ、チンケな口マンコだなぁオイ。ま、しゃあねぇ。俺のブツはデケェからな。
――オイ、何休んでる。根元まで咥えこめって指示は消えてねぇぞ。クチに入りきらねぇなら、喉にも入れてやる。行くぜ。
――さっきみてぇに喉を開け、息は鼻でしろ……っと、おら嵌まったぜ。ははっ、喉がビクンビクンしてやがら……っ、待て、こいつ!!
――あーあーあー、吐きやがってバカが。にしても、また汚ねぇえづき声だったなぁ今のァ? 流石にあんな声出す女と知れたら、誰もテメェにゃ告らねぇよ
俺は柄の悪さの滲み出たそういう恫喝を聞きながら、思わず目を覆っていた。
今まで何人もの女の調教映像を見て、散々オカズにしてきていながら虫のいい話だと思う。
過去の罪だけじゃない。今も俺は勃起している。制服のズボンは三角に尖り、トランクスの先は先走りで濡れている。
それでも俺は、初恋の相手が悶え苦しんでいる場面を、それ以上見ていられなかった。
目を覆っても、耳から情報が入ってくる。
じゅぶっじゅぶっという、下手なAVよりも下品なフェラチオの音。水気たっぷりに喉奥を掻き回す時の粘ついた音。
ケおっ、こおっ、という、喉奥の刺激に慣れていない子に特有のえづき。腹を下した時の雷のような音。
ぷはっと空気を求める声がした後には、酸素を求める荒い呼吸が続くものの、3秒と間を空けずにくぐもった呻きに変わる。
最後の方は悲痛なえづき声ばかりが連続し、そのえづきが特に低くなった直後に、決壊の声が響きわたる。
上品さの対極にあるような声。男が出したものと言われた方がしっくりくる、胃から搾り出したような濁りきった呻きだ。
俺はその声に、とうとうモニタ5に目をやってしまう。そこには決壊直後の同級生の姿があった。
縋りつくように右手で瀬川の太腿を掴んだまま、左手で下向いた口を押さえる入宮。
その左手の指の間から次々と黄色い吐瀉物が零れ落ち、彼女自身のむちりとした太腿にも滴りながら床に広がっていく。
よく見れば、膝立ちになった彼女の肛門の間からも液体が滴っており、出口側も限界を迎えていた事が見て取れる。
俺はその映像を見ながら、暗く沈んだ気分でいた。
脱力したように椅子に深く背を預け、妙な倦怠感からそのまま眠ってしまおうかとも思った。
だが、瀬川が漏らした罰として入宮に命じた内容を耳にし、考えが変わる。
『そいつを上のトイレに捨てて来い』
そう言って瀬川が指差したのは、入宮自身の汚物を受け止めた桶だ。
自分の排泄したものを持ち歩かせ、家人のいる屋敷内を延々と彷徨わせる。伊田・瀬川組の定番の仕置きの一つだ。
汚物を手に彷徨う時間が長くなるほど、奴隷はその尊厳を腐らせていく。
伊田と瀬川が調教初日に強制排便を繰り替えさせるのは、プライドの高い女を大人しくするのに、汚物責めが最も効果的であるがゆえだ。
逆に言えば、あの二人の悪意を直撃させればさせるほど、入宮の心は壊れやすくなってしまう。
そう思うと、俺は居ても立ってもいられなかった。考えるより先に部屋の扉を開け、地下から出る道へ向かって歩みを進めた。
今やっていることは、ひょっとしたら悪手なのかもしれない。
同級生に汚物を手にした姿を見られるのは地獄だろうし、何と声をかければいいのかも定まっていない。でも、何かしないとと思った。
※
秋口とはいえ、8時をとうに過ぎた時間の廊下は薄暗い。その廊下をしばらく行くと、向こうからも人影が向かってくる。
モデルのようにほっそりとしたシルエット。間違いなく入宮だ。
ただ、桶の中を見つめたまま、半ば死んだような表情で俯くその歩き姿は、まるで彼女らしくはなかった。
「トイレは、こっちじゃないよ」
俺がそう声を掛けると、入宮の足が止まった。そしてゆっくりと顔を上げる。
表情は暗かった。
唇から顎にかけての乾いた吐瀉物の痕が、さっきの映像は紛れもない現実なのだと物語る。
「……………………。」
入宮は虚ろな瞳を俺に向けたまま、じっと佇んでいた。
その状況に至っても、かける言葉が見つからない。言葉が出ないって事は、何も言うべきじゃないって頭が理解してるんじゃないか。
じゃあ、何でここに出てきた。わざわざ彼女の無様を見て、追い討ちを掛けるためか?
違う。トイレの場所を教えるためだ。なら、それだけ伝えればいい。それだけを伝えて、この場を去ろう。
俺はしょせん部外者。関わらない方がいい。
俺はそう結論を出して、何度も他の『奴隷』にしたように、トイレまでの道順を説明する。物悲しげな虫の声を聞きながら。
「わかった」
入宮は暗く沈んだ瞳でそう呟く。疲弊しきった表情は、薄暗さのせいもあって怖いぐらいだ。
その表情が、俺の心を抉った。
だから、だろうか。彼女が背を向ける気配を感じ取った瞬間――俺は無意識に、何かを口走っていた。
「お、俺っ! 今でも、入宮が好きだ。…………き、綺麗だと思うし、本当に、凄いと思う。
だから、その…………上手く言えないけど、頑張って」
何とも漠然とした、何とも歯切れの悪い台詞だ。こんな事を言ってどうする。傷口に塩を塗り込む言葉だったらどうする。
でも、言ってしまった。恐る恐る窺う入宮の目は、ほんの少し大きさを増したようだ。
しばらく、廊下が静まり返った。虫の声だけが変わらずに聴こえていた。
静寂を破ったのは、俺自身の喉を鳴らす音だ。
固まったまま冷や汗を垂らす俺を前に、入宮は二つ瞬きをしてから、辛そうに顔を歪めた。
背中を冷たい汗が伝う。
「ごめん。あたし今、頭ぐちゃぐちゃでさ。何て答えればいいか、わかんない」
その言葉を残し、入宮は今度こそ踵を返した。
「あ、いや。俺の方こそ、ごめん!」
俺はもうほとんど泣きそうになりながら、反射的に謝罪を口にした。その言葉は、果たして入宮に届いたのかどうか。
彼女は俺に背を向けて歩き出し――数歩ほど先で足を止める。
「…………でも」
心なしか、さっきとは違う声色。
「嬉しかった。ありがと」
時間にしてほんの2秒の一言。それを発した後、入宮の後姿は俯くのをやめた。背筋を伸ばし、視線を前に向けて歩み始めた。
その凛とした歩き姿は、紛れもなく俺の憧れた入宮知佳だ。
※
「ンだ? こいつ、眼の光が戻ってやがんぞ」
「ふむ、意外だねぇ。完全に心折れるかとも思ったが……マゾヒズムに目覚めたか?」
入宮が地下に戻った時、伊田も瀬川も驚きを露わにした。
それもその筈だ。地下から出て行くときには半ば死んだような眼をしていた『奴隷』が、帰ってきた時には前を見据えていたんだから。
「あんた達の知った事じゃない。それより、もう夜も更けたみたいだけど、この遊びっていつまで続くわけ?
夜更かしって肌に悪いから、早く寝たいの。あんた達だって、あたしの商品価値が下がったら困るんでしょ」
男二人を睨み据えながら、憎まれ口を叩いてみせる入宮。やられたらやり返す、いつもの彼女だ。
その豹変振りに、流石の伊田達も面食らう。ただ、あくまで一瞬だけだ。
連中にもプライドがある。調教師を名乗る身として、奴隷に言わせたままでは終わらない。
「言うねぇ。吐く物吐いて、舌の滑りがよくなったじゃねぇか。だがよ、いくらレディーから豚に成り下がるっつっても、慎みは失くすもんじゃねぇぜ。
『1の反抗には3の折檻』。それが俺らのポリシーよ。身の丈一杯に噛み付いたが最後、テメェの容量限界の3倍痛めつけられるワケだ」
瀬川はドスの利いた声を出しながら、入宮の顎を摘み上げた。
射殺すような視線がぶつかり合う。
「おい。そういう眼がヤベェって話を、今俺はしてんだぜ……? 下らねぇ反抗心を出すたびに3倍返しだ。
勿論、身の丈3つの折檻を一気にやるとブッ壊れちまうからよ、負債は分割払いで返させてやる。
言う事さえ聞いてりゃあ平和なフェラチオ練習で済んだモンが、開口具越しに俺の極太咥え込まされて、ゲロ吐き散らしながら泣き喚く地獄に早変わり。
大人しくしてりゃあベッドでぐっすりだった休養日を、一晩中アナル犯し抜かれて脂汗まみれで過ごす破目になったりもする。
そこまでまるっと覚悟の上での、苦い苦ーいトリプレッソをご所望ってんなら、喜んで提供するぜ」
負債……その言葉選びは故意なのか。親の借金が原因でここにいる入宮に対して、あまりにも無神経だ。
当然、入宮の表情はさらに険しくなる。
「ふーん……確かにそれは、ちょっときついかな。あんた達って、女の子にダメージ与える天才だもん」
その入宮の言葉に、伊田が眉を顰める。
「ほう、これは意外な高評価を貰ったものだね。して、その心は?」
「心もなにも、本心だよ。だってあたし、あんた達の顔見ただけで卒倒しそうなんだもん。おまけに二人揃って臭いしさぁ。
さっきはお風呂場で吐いちゃってごめんね。あれ、喉が苦しかったんじゃなくて、あんまりにもアレが匂うから、つい戻しちゃったんだよね。
女子高生のフェラチオ経験がどうとか聞こえたけど、あんなのしゃぶれる子なんていないと思うな。
援交で100万円積んでお願いしても断られるレベルだよ。あ、もしかして、だからこんな仕事してるの?」
嘲りを含んだ入宮の言葉は、調教師二人を凍りつかせる。
モニター越しにでも判る、火花の散るような睨み合い。入宮が大事な『商品』である以上、流血沙汰はないだろうが、危険には変わりない。
さすがに止めに入るべきか。俺がそう思い始めたところで、瀬川が立ち上がった。
俺も、入宮も身を強張らせる。
しかし瀬川は、意外なほど冷静な眼をしていた。
「チッ、下らねぇ。テメェみてぇな小便臭ぇガキの挑発に乗るほど、こっちもイノシシじゃねぇんだ。
……だがよ、これだけは忘れんな。テメェ今、『負債』を一つ抱えたぜ」
インテリヤクザの本性を表した伊田にもゾッとしたが、怒りを超えて冷静になった瀬川も想像以上に恐ろしい。
闇を抱えている事は前から解っていたが、これはヘドロのように底が見えない闇だ。
モニター前の俺はただ、そのヘドロに首まで浸かった入宮の身を案じるしかなかった。
※
「へへへ、いい格好じゃねぇか。ケツもマンコも丸見えだぜ」
入宮を見下ろし、瀬川が嘲笑う。入宮は畳に頬を付けながら奥歯を噛みしめていた。
入宮に施されているのは、胡坐縛りという緊縛だ。
両の乳房を搾り出されながら後ろ手に縛り上げられた挙句、下品に胡坐を掻く姿勢で固定される。
座っているだけでも惨めだが、一度尻を突き上げて這う格好にされたが最後、あそこや肛門が丸出しになり、おまけにそれを隠せない。
それどころか横に転がる事さえ叶わず、完全に無力な状態で恥を晒し続ける事となる。
この胡坐縛りは女にとって最も屈辱的な格好らしく、江戸時代の女囚などはこの縛りをされただけで羞恥のあまり罪を認めたらしい。
そうした説明を、瀬川が入宮に対して行っている。
責めの持つ意味を奴隷自身に認識させつつ、『買い手』達へ向けて解説するために。
一通り言葉責めを終えると、瀬川は入宮の足元に膝をついた。
そして形のいい双丘に手をかけ、ゆっくりと揉みしだきはじめる。
「くっ……て、手つきがやらしいよ、変態!!」
入宮の罵倒にも、瀬川が動じる様子はない。
「上の口は下品だが、ケツの穴はまたえらく可愛いもんだな。ここまで鮮やかなピンクってなぁ珍しいぜ。
おまけにこの、ケツ自体の弾力もたまらねぇ。運動部の女を嬲る時の最高の楽しみだな。
こういう引き締まったケツは、丁寧に揉み込んでやると大層な性感帯になんだよ。チチの時と一緒だ。
だからよ。今日はこっからたっぷりと時間をかけて、ケツの穴と尻肉をほぐしてやる。
肛門の皺を一本ずつ舐め上げて、真ん中の穴に舌を突っ込んで、ツバ塗りこめて、そのツバ啜って……徹底的に舐めしゃぶってやる」
瀬川のこの宣言は、明らかに脅しじゃない。心の底からやりたがっている声色だ。
入宮もその気配は感じている筈だが、彼女とて退けない。
「ああそう、せいぜい頑張ってね。ぬるい責めだったら、あたし、きっとこのまま寝ちゃうから」
頬をつけていない方の眼で瀬川を睨みながら、言い放つ。
その言葉にくっくっと笑いを漏らしたのは、それまで傍観に徹していた伊田だ。
入宮の鋭い視線が伊田に移る。
「いかんいかん、私が笑うべきではなかった。だが、おかしくてな。そこにいる瀬川は、こと菊門舐めにおいては無二の傑物だ。
技術もそうだが、何といっても執念が凄い。同じアヌスを一日中でも犬のように舐めていられる調教師は、そうはおらん。
淡いピンク色をしたおまえのアヌスを一目見た時から、いかにも奴好みだと思っていたよ。
色素沈着の少ない、美しい排泄器官を持って生まれた事を悔やみたまえ」
伊田はそう宣言しながら、腰を落として入宮の顔を覗きこむ。
「断言してもいい。おまえは、瀬川の菊門舐めで女を濡らす。
たとえ今日を耐えても、奴はけだものだ。暇さえあれば一日中でも、好き好んでお前のアヌスを舐めしゃぶるだろう。
こんな話もある。奴は私と組む前、タイに輸出するシーメールの調教を受けた事もあってな。
そのシーメールは、縛られたまま瀬川にアヌスを舐められ続けて、たった一夜で22度の射精に至った。
当然と言うべきか、“彼女”の脳は快感で焼き切れて、未だに自分の名さえ思い出せないらしい」
「へっ、古い話を持ち出しやがる。だが勘違いするな。俺があの調教を受けたのは、ヤツが並の女が霞むぐれぇの美形だったからよ。
だがまぁ、所詮は昔話だ。今はこのクソガキにしか興味が持てねぇ。
ケツもいい、脚もいい、おまけに現役女子高生ってぇステータス付きだ。生意気(ナマ)言うところも嗜虐心を煽られるしな。
こんだけ肛門舐めやってっとよ、自分がこれからどんだけ没頭できんのか、何となーく判んのよ。
その勘から言やぁ……あのニューハーフを狂わせた夜より、もっと滾るぜ俺ァ」
瀬川のこの発言もまた、誇張ではなさそうだ。
入宮の痴態を映すモニターとは別の一台に、瀬川の醜悪な笑みがありありと映し出されている。
無精髭の生えた涎塗れの口周りに、何度も何度も舌を這わせながらの笑み。
そんな奴に肛門を舐められるなんて、考えただけで頭がおかしくなりそうだ。
「ひどい顔。見るからにヤク中だよ。あとさ、せめてヒゲぐらい剃ってくれない?」
入宮は気丈に瀬川を睨み上げて意地を示すが、その引き攣った頬には流石に不安の色が見えた。
「ご名答、脳内麻薬でギンギンにキマってんぜ。お前にもじきに分けてやる。
それにヒゲもな、このジョリジョリ感が癖になるってぇもっぱらの噂だぜ? ま、味わってみろよ」
瀬川はその言葉を最後に、目の前の肛門へ顔を近づけた。カメラの位置が悪くてよく見えないが、音からして舌を這わせているのか。
「気持ち……わるいっ!」
入宮の心底からという感じの声が響きわたる。
こうして、地獄の肛門舐めは始まった。
伊田と瀬川は、数いる調教師の中でも毛色が違う。
この屋敷で調教を行った他の調教師や、板間さんからボーナスとして貰った調教記録を見るとハッキリする。
調教師は年中女の調教ばかりしているだけに、女に対するギラつきは枯れている事が殆どだ。
だから効率最優先で女を昂ぶらせ、絶頂させ続けて快楽に慣れさせ、調教終了、出荷と機械的に進んでいく。
だが、伊田と瀬川はそうじゃない。
奴らだけは年中女に触れていても、童貞を思わせる脂ぎった欲望を微塵も失わない。
思春期真っ盛りの健全な高校生である俺さえ、奴らの調教映像を見ているだけで、いい加減食傷気味だというのにだ。
特に調教対象が若くて美しいとなれば、奴らは一日中でもその身体中を舐りまわす。心から愉しそうに。
男二人からそれだけの執念を受け続けると、どんな人間でも変わってしまう。
『もう触らないで、おかしくなる!!』
奴等の調教を受けた女は、調教終盤に取り乱した様子でそう叫ぶ事が多かった。そしてその言葉がでた数日後、本当に狂ってしまう。
他の調教師を宛がわれた娘が、気持ちいいと言いながら幸せに出荷されていく一方で、
伊田と瀬川に欲望を塗り込められた娘は、快楽を貪ることしか考えられないけだものとして出荷される。
それが『買い手』に喜ばれるのかは知る由も無いが、奴らがこの屋敷で常連となるほど仕事を任されている以上、評価はされているんだろう。
中でも、瀬川のアナル舐めの執念には怖気が走る。
奴は入宮の尻肉の合間に顔を埋めたまま、もう20分以上も顔を離していない。
畳エリアのカメラは瀬川の背中を斜め後ろから撮る形のため、責めそのものは見えない。ただ、音だけでその入念さが窺い知れた。
ぴちゃぴちゃというわざとらしい水音と、それをずぞぞぞーっと啜り上げる音が繰り返される。
たまに音が止んだ時には、必ず瀬川が入宮の尻を鷲掴みにしたまま、頭を小さく左右に揺らしている。多分、肛門の中に舌を入れているんだろう。
入宮は、角度的に胡坐縛りされた脚と左肩の辺りしか見えないが、啜る音と舌入れの時には、必ずといっていいほど内腿に筋が走った。
無駄な脂肪のほとんどない脚だけに、力が込められた時の筋もくっきりとして深い。
――俺が見てたあの試合でも、ドリブルで切り返すたびに、ああして筋が浮いてたのかな
思わずそんな妄想をしてしまうくらい、妙な色気がある。そしてそれは、誰より瀬川が特等席で感じているはずだ。
そう。背中の般若を歪ませて舐めに没頭する奴には、全て伝わっている。入宮の体温も、匂いも、味も。
多分少し苦しょっぱいだろう肛門に舌を捻じ込めば、尻を鷲掴みにした手の平と頬に、ゴムのような筋肉の張りが感じられることだろう。
延々と顔を尻肉に埋める様は不気味この上ないが、奴の心中だけは生々しく伝わってくる。
アナル舐めを続ける中で、奴の浅黒いペニスが徐々に固さを増し、今や天を突くほどに勃起しているからだ。
興奮しているんだ、奴は。入宮の排泄の穴を舐めしゃぶって……。
駄目だ、変な事ばかり考えてしまっている。ほんの少し羨ましさまである。ふざけるな。入宮を辱める行為なんだぞ、あれは。
「顔を上げなさい」
まるで俯く俺に投げかけられたような音声で、俺はモニターに視線を戻した。
映像の中には、這う姿勢のまま首を起こした入宮の眼前で、ハンディカメラを構える伊田の姿があった。
そして直後、瀬川も動きを変える。尻肉に皺が寄るほど鷲掴みにし、首を大きく左右に振る。舌入れだ。それも多分、かなり深い。
「うあっ!?」
受ける入宮も堪らなかったんだろう。アナル舐めが始まって以来、初めての声を上げてしまう。
「いい顔だ。しっかり撮れているぞ」
伊田は笑みを浮かべながら、入宮の顔にカメラを向けていた。
「成人もしてない子供の苦しむ姿が、そんなに面白いの? さっさと頭の病院に行きなよ」
そう恨み言を返す入宮の耳は赤らんでいる。多分、頬や鼻頭はもっとだろう。
「勘違いはやめたまえ。これはホームビデオのようなものと言っただろう。あくまで、在りし日の記録だよ。
おまえはあと何週間もしないうちに、その気丈な顔ができなくなるんだ。
私達がアナルを舐め、ほじくり、犯すたびに、浅ましい絶頂顔を浮かべるようになる。
そう成り果ててしまってからも過去の自分を振り返れるように、こうして記録に残しているんだ。
見目のいい豚ほど、昔の自分を懐かしむ。まあ、過去との落差にショックを受けて壊れるケースもあるがね」
伊田の発言の最中にも、瀬川は執拗に舌を送り込み続けているようだった。入宮の脚に何度も筋が浮く。
「どうした、瞳孔が収縮しているぞ。息もイヌのように荒いな。まるで、感じているようだ」
伊田が囁くと、入宮は顎を引いた。
「はっ、はっ…………バカじゃない? お尻の穴なんか、いくら舐められても、感じるわけないでしょ」
一言ずつ吐き出すような入宮の言葉を、伊田は薄笑いで受け止める。
「そうでもない、肛門は立派な性器だ。例えば赤子には肛門期といって、排便に快感を感じる時期がある。
この感覚は成長と共にあまり意識されなくなっていくが、無くなるわけではない。つまり肛門は、歴とした性感帯だ。
そこを舐められて快感を得ること自体は、ありえない話ではない。
もっとも、『ケツ穴を舐られて浅ましく濡らす女』という事実は変わらんがな」
論理的に逃げ道を封じられ、入宮の髪が細かに揺らぐ。
と、ここでようやく、瀬川が肛門から顔を離した。ぷはっと酸素を求めながら、達成感のある表情で天を仰ぐ。
思わず視線のいく肛門は――かなり、変わっていた。
少し前の映像ではまさに菊の華という感じの慎ましさだった肛門が、ぱっくりと開いている。
中指がそのまま入りそうなぐらいの穴。おまけにその穴の周囲の輪も、充血して赤く膨らんでいるようだ。
「くくくっ。まったくよ、自分の勘の良さが恐ろしくなるぜ。よお伊田。こいつはすげぇ、凄すぎるぜ。やっぱ最高のアナルだ!
尻回りの筋肉も、股関節の筋肉も、パンパンに鍛え上げられてやがる。
ここいらが鍛えられてっと、括約筋の締めも良くなるんだ。おまけのその肝心要の括約筋が、またよく伸びる。
俺はよぉ、感動しちまったよ。こんなアナルなら、一年中でも舐め続けられるぜ」
瀬川は入宮の肛門の縁に親指を宛がい、左右にひらいてみせた。すると、確かに良く伸びる。
「やっ、やめてよ、変態っ!!」
「つれねぇ事言うなよ。俺だって、テメェのファンの一人なんだぜ。なぁ、桂眞高女バス部のエースさんよ。
8月にあった夏の大会……テメェ目的でわざわざ観戦に行ったんだ。
惜しかったよなァ。残り4秒って時に、テメェのパスを6番が取りこぼさなきゃ、まず逆転出来てたろうによ」
瀬川が放った言葉に、入宮の目が見開かれた。俺も度肝を抜かれる。
「驚く事ァねえ。俺ら調教師にゃあ、2ヶ月以上前に獲物の情報が知らされんだ。下調べ用の期間としてな。
調教相手の普段の生活やら、癖やら弱みやら……それを知ってんのと知らねぇのとじゃ、調教のしやすさが違うのよ。
そこの似非インテリ野郎は、どこぞで仕入れた情報を組の女相手に試すばっかだったが、俺はマジメにテメェを張ったぜ。
俺が見ただけでも、3人に告られてたな。茶髪ロンゲと癖毛メガネ、あとマルコメ君だよ。しかも全員、速攻で振られちまった」
堰を切ったように語り始める瀬川。
「だから何? ストーカー野郎」
それを見上げる入宮の目頭には、汗が伝っていた。
「ひひっ、これだ。あの坊主共も、こんなキツイ女選んだのが運の尽きってもんだが、ま、ガキも盛るわな。
何せテメェは、あの学校ン中でも抜群に美味そうなカラダしてっからよ。
俺も毎日、車ン中からテメェの脚を見てたぜ。ケツと太腿の形から、いいアナル持ってんのが判んだよな。
こいつを調教できるって思うと勃起してよ、つい昨日まで、猿みてぇにセンズリ扱きまくってたのよ……テメェの隠し撮り見ながらな!!」
感情が乗るあまり声を上ずらせながら、瀬川は入宮の両足首を掴んだ。
そしてそのまま、入宮の身体を180度回転させる。突き出した肛門を天に向けつつ、瀬川と顔を見合わせる方向に。
「くっ…………!!」
潰れた蛙のような格好で瀬川と正対することになり、入宮は奥歯を噛みしめる。
「顎もようやく温まってきた。こっからが本番だぜ……お嬢ちゃぁん」
逆に瀬川は、チロチロと細長い舌を覗かせて嗤った。
そうか。こいつのヒョロ長い身体に、ギラギラした瞳……何かに似ているとずっと思っていたが、蛇だ。
人間にとって、生理的に受け付けないものの代表格である嫌われ者。そして、執念深い危険生物。
「ひっ!!」
蛇に肛門へ吸い付かれ、入宮は小さく悲鳴を上げた。
そこからの光景は、前以上に惨めなものだった。
膝立ちになった瀬川が背中を押さえるせいで、入宮の肛門は完全に真上を向く形になっている。
その状態で太腿を鷲掴みにされ、肛門を舐めしゃぶられるんだ。
映像にしっかりと撮られはじめた瀬川の肛門舐めは、ゾッとするほどに入念だった。
菊輪のふくらみに舌を這わせ、唇で挟み、ずろりと舌で外周を嘗め回してみせ、上下に弾くように舌で舐め上げ、ちろちろとくすぐり、
時には舌を穴の中に浅く突き入れたりしながら、唾液が溜まってきたら肛門に吸い付いてわざと音を立てながら啜る。
そして頃合いを見計らい、尻の窪みに頬骨を密着させながら、かなり深く舌を送り込んでいく。
それを休みなく続けているんだ。
入宮の内腿には相変わらず何度も深い溝が刻まれていたが、そんな事は当然のように思えてしまう。
あれだけ執拗な責めを受けたら、変化があって当然だ。声が出たって、何も恥じるべきことじゃない。
最初の10分くらいだろうか、入宮はピンク色の唇を引き結んで、必死に声を抑えていた。
ただアナル舐めが長引くにつれて、段々と荒い呼吸を抑えきれなくなっていく。
「はーっ……はーっ、はーっ……はーっ…………」
逆さになってもまだ釣鐘型に近い形を保っている乳房の辺りから、首に向けて汗をだらだらと垂らし、喘ぐ。
乱れることなく規則正しい呼吸はさすが陸上とバスケットの経験者という感じだ。
でも、スポーツには酸欠の苦しみはあっても、快感はない。
責めが15分を過ぎる頃には、肛門舐めの最中に、入宮の尻付近がぶるぶると震える事が多くなった。
その変化があると、瀬川は待っていたとばかりに入宮の太腿を抱え込み、尻の窪みに頬骨を密着させる。
「あーー…………っっ!!!」
舌が深く送り込まれる瞬間、入宮は長い声を出す。
内腿には異常なほど深い筋が刻まれ、胡坐縛りを受けた足の指は、親指と人差し指の間が裂けるのではと思えるほどに反り返る。
送り込まれる瞬間だけではない。
瀬川が送り込んだ舌を蠢かすような頬の動きを見せれば、入宮の腰は、嫌がるようにぐらぐらと揺れ始める。
「あっ、ああっ!! あああ、ああっ!! あああっあっあっ……あああ、あ、あ……っ!!!」
この時にはもう、リズミカルな呼吸は出来ていない。運動下手な俺が持久走でやるような、場当たり的な呼吸だ。
「随分と声が出るようになったな。感じているのか」
伊田が、入宮の顔を覗きこみながら問う。俺でも着目するような変化を、調教師が指摘しない筈もない。
「はーっ…………はーーーっ………………そんなわけ、ない………………」
「その割には、随分と息が荒いぞ」
「き、気持ち悪いだけ……さっさと、舌、抜かせてよ…………」
汗まみれで必死に反論する入宮に対し、伊田は、ふん、と納得するような疑問を呈するような、奇妙な声を漏らした。
そして、おもむろに入宮の秘裂へと指を潜り込ませる。
「あっ!?
驚きの声を上げる入宮をよそに、伊田は水音を立てながら秘裂をかき回す。
その後に引き抜かれた指は、全体的に濡れ光っていた。
「濡れているじゃないか」
ヌラヌラと光る指を見せ付けられながら指摘され、入宮は息を詰まらせる。
「…………知らない」
そう答えるしかない。下劣な男に感じさせられた、と認めない為には。
「無理をするな、感じているはずだ。さっきは言い忘れたがな、アヌスには肛門以外にもう一つ性感帯が存在するんだ。
肛門から2センチ奥まった場所に息づく、『歯状線』という部分。此処こそ、アナル性感を最も色濃く感じられる場所だ。
おまえは瀬川の舌で、肛門とこの歯状線を何度も何度も刺激されている。だから、腰が揺れる」
「しらない、知らないったら!! うんちの穴なんかで、あたしが感じる訳ないっっ!!!」
伊田の得意げな解説を、入宮はあくまで否定する。
小学校は男勝りなクラスのリーダー、中学では陸上部の女ボス、そして高校では県内屈指のバスケ部部長。
ずっとそうして、プライド高く生きてきたのが彼女だ。だからこそ、排泄の穴で感じているなどとは認められない。
しかし、その頑なな態度は調教師にとって格好の餌だ。
突っ張り棒をへし折る事こそ、積み重なった自我を崩落させる、最も簡単な方法なのだから。
「ふむ。天地逆さの格好をしているせいか、どうも私とおまえとでは見えている世界が違うようだ。では…………もっと解りやすくしてやろう」
伊田はそう言って立ち上がり、化粧箪笥を漁る。そして、ある道具を取り出した。
黒いゴムベルトの両端に、ステンレス製のフックが2つずつついた器具。何度か見た事がある。
あれは……膣を開いたままにする拘束具だ。
伊田はまずフックのうち2つを入宮の膣に差し入れてから、ゴムベルトを太腿を経由してぐるりと腰に巻きつけていく。
「い、いや、何!?」
「お、お得意のご開帳かよ。好きだねーお前も」
入宮と瀬川がそれぞれ反応するのを無視し、伊田はベルトの長さを調節する。
「おまえは腰が細いからな……この辺りか。ふふ、この位置は久しぶりだ」
独り言を呟きながらゴムベルトを逆側まで到達させ、引き絞りつつ残る二つのフックを膣に引っ掛ければ……ぐぱっと膣が開ききる。
「いやああぁぁぁっ!!」
この時の叫びは、どんな女性であろうと共通だ。戸惑いと拒絶感を反射的に喉から迸らせる。
それはそうだ。斜め四隅に引っ掛けられたステンレスフックがゴムベルトに引き絞られ、秘匿すべき膣を奥の奥まで開くのだから。
子宮口まで遮るものなく丸見えなのだから、見ているほうのインパクトも凄い。
「ほぉ、膣粘膜までこのピンクぶりか。本当におまえは……外見のみならず、内粘膜まで見せる為に生まれてきたような奴隷だな」
賞賛とも侮蔑とも取れる伊田の言葉に、入宮の瞳が吊り上がる。よく見れば、少し泣いてしまっているようだ。
『ああ、あれ?泣かされたんじゃないよ。知佳って、結構カッとなるタイプだから、マジ切れすると泣くんだよね』
以前にクラスメイトの一人から、そう聞いた事がある。果たして今の涙は、それなのか。
「へへっ、ますます惨めだな」
「意地を張るからそうなる。どうだ?気分は」
伊田と瀬川が嘲笑を浴びせながら、入宮の脚を掴んで揺らした。
すると開ききった膣から、一筋の雫が伝い落ちる。その一滴は、真下に位置する乳房へ筋をつけた。
調教師二人の嘲笑が大きさを増す。
「どうだ、今の一滴はおまえの愛液と思うが?」
伊田から勝ち誇ったような顔で囁きを受け、入宮は歯を食い縛った。
「ふざけないで。あんた達みたいな気持ち悪い変態に何されたって、ゼッタイ濡れない。
生理現象で何か出たって、そんなの濡れたうちに入らない!!
せいぜい12月が来るまで、あたし相手にそうやって馬鹿みたいに遊んで、後で悔し泣きしたらいい。
あんたらみたいな陰険な奴には、それが似合ってるよ?」
言われたら言い返す。それがサディストの性質だとすれば、入宮も相当なものだ。
ただ、今の彼女は絶対的に弱い立場にいる。それが解っていてもなお、退けないんだろう。
「…………やれやれ。俺もフラれちまったよ、伊田」
瀬川がわざとらしく肩を竦めながら、入宮の太腿に手を掛ける。
「ああ、そうらしい。ではお言葉に甘えて、たっぷりと遊ばせて貰うとしよう。
私達はいい大人だからなぁ、何回か玩具を壊してしまうかもしれんが……玩具自身がいいと言ってくれたんだ。遊ぼうか」
歪んだ執念を全身に塗り込める。それが伊田と瀬川の調教だ。
だが未だかつて、入宮ほど濃厚な執念を塗り込められる『奴隷』はいなかったことだろう。
「感じていない…………か。これで、よく言えたものだ」
伊田は笑みを湛えながら、入宮の乳房付近を撫で回す。入宮がはっとした表情を作る。
今まで下半身ばかり見ていて気付かなかったが、その乳房の先端は痛々しいほどに屹立していた。
伊田は乳房に触れるか触れないかのソフトタッチを仕掛けつつ、少しずつ先端に迫った。
そしてかすかに膨らんでいる乳輪部分を指先で掻き毟り、
乳首をひねり上げる。
「ああぁあっっっ!!!」
入宮の唇から絶叫が迸った。今の今まで、声を漏らすまいと固く結んでいた唇から。
「何だこの玩具は、ボリューム設定が壊れているのか?」
伊田はそう揶揄しながら、さらに乳首責めを続けた。あ、あああ、と入宮から声が漏れる。
カメラ越しには、ただつねったり転がしたり押し潰したり、それを繰り返しているだけにしか見えない。
ただ今までの記憶を遡る限り、伊田の技術は相当巧みなんだろう。特に乳首や陰核といった小さな部分を責めるのが上手いようだ。
執念よりも、知識や技術が物をいう分野だからかもしれない。
性欲の瀬川、知識欲の伊田。昔親父が酒に寄った時、そう称していた事もある。
伊田の乳房責めで、入宮が何度も声を上げさせられている最中。
それまで肛門を舐めしゃぶっていた瀬川がまた尻の窪みに頬をはめ込み、舌を深く送り込み始める。
「あああーーーっ!!」
入宮は、やはり声を抑える事ができなかった。瀬川の長い舌を挿れられるのが、本当に気持ちよくてたまらないんだろう。
そして伊田の言葉が事実なら、舌が『歯状線』という場所を舐め取りはじめてからは、快感はさらに強まる。
「ああぁ、あああーーぁ、ぁ、ああっ、ぁぁあ…………あ、あ゛っ」
押し潰したような、じっとりとした脂汗を思わせる呻き声。派手さもなければ可愛いとも言いづらい。
でも、それ以上の快感はないのではと思えるぐらいに重苦しい喘ぎだ。
かつて瀬川からアナル舐めを受け、気が狂うまでドライオーガズムに至ったというシーメールもまた、今の入宮と同種の呻きを上げていたに違いない。
性差させ超越させうる、排泄孔という禁忌の場所。
そこを開発されるのは、一体どんな気持ちになるんだろう。解らないが、平然と流せるものでない事は確かだ。
だから、仕方がないんだ。
入宮の脚が、攣りそうに思えるほど何度も何度も強張るのも。
刺激を嫌がって逃れるように、括れた腰が左右に揺れるのも。
舌を深く挿れられるたび、中世的にも思えるほど深く色濃い灰色の呻きを漏らすことも。
その上で、女性特有の性感帯である乳房まで弄繰り回されれば、絶頂するのも無理はない。入宮は、少しも変なんかじゃない。
だが、悪魔のような伊田と瀬川は、それら全ての変化を容赦なく詰った。
限界を迎えたがゆえの発汗や筋肉の蠢き、そして喘ぎ。それを異性二人から逐一嘲笑われる環境は、地獄以外の何物でもない。
プライドの高い人間であればあるほど耐え難いだろう。それが余計に、入宮を不安定にするのか。
器具によって開かれた膣から、何度も何度も光る筋が滴るのが、カメラ越しにでも解った。
その落下地点を伊田の指が掬い取り、乳房に塗りこめて、ローションマッサージの要領で刺激し続ける。
それでまた入宮の身体が硬直し、暴れ、光の筋がこぼれるという状況が繰り返された。
モニター越しに監視する限り、膣から滴った愛液はせいぜい7,8筋というところだ。
ところが伊田の手元付近を注視すると、それがまったくの間違いであると解る。
入宮の乳房から鎖骨、首筋、顎にかけては、明らかに汗とは違うオイルめいた輝きを纏っていた。
伊田の言葉責めを真に受けるなら、『娼婦100人の乱交現場にいるような』ものすごいメスの匂いもしているらしい。
そう野次を飛ばされた時には、入宮はすでに反論すらできない状態になっていた。
胸から上は、目を閉じたまま気を失っているようにしか見えない。ただ下半身だけは、責めが終わった後も細かに痙攣を続けている。
胡坐縛りが解かれ、一糸纏わぬ姿のまま右足首を掴み上げられた時もまだ、ガクガクと身体が揺れていた。
その姿はいかにも生物らしくなく、異様としか表しようのないものだった。
※
翌朝、入宮の目に下にはくっきりと隈ができていた。
俺に促されるままにキッチンの椅子に腰掛け、ぼうっと空中を眺めている。
『奴隷』向けに用意されているサイズ違いのネグリジェが、余計に怠惰な――場末の娼婦のような印象を与えた。
彼女らしくない。いつもの入宮がここに居たなら、朝食の準備を進める俺の手際の悪さに業を煮やし、
『取り皿はどこにあんの』『ご飯はあたしがよそうから、あんたはこれ運んでよ』と来るはずだ。
喧嘩っ早くて仕切り屋でお節介。誰と結婚しても姐さん女房になるに違いない。入宮はクラスの皆からそう言われている。
そんな彼女がここまで呆けている以上、疑いの余地はない。彼女は昨日、ほとんど眠れていないんだ。
執拗なアナル舐めで立つことすら出来なくなった後、入宮はベッドに運ばれた。
ただし、伊田も瀬川も、そのまま休ませるような連中じゃない。
まずは仰向けに転がる入宮の顔を跨ぐようにして、瀬川が膝立ちになる。
そして入宮の頬を叩き、薄らと目を開かせる。
彼女の視界に映るのは、アナル舐めによって天を突かんばかりに勃起しきった醜悪な怒張。
太さや長さも相当だが、雁首の張り具合や幹に浮き立った血管は、男の俺でさえ目を疑うほどだった。
『咥えろ。舌とノドでうまくイカせられたら、寝かせてやる。
風呂場じゃ結局吐いて有耶無耶になっちまったからな、補習ってやつだ。高校でもやるだろ?悪ィ点取った時によ』
瀬川はそう言いながら入宮の鼻を摘み、開いた口へと怒張を送り込んでいく。
ほとんど意識を失っているような状態の入宮は、されるがままだ。
だが、怒張が半ば以上唇の中へ入り込むと、さすがに苦しかったんだろう。
『もごォうあ゛っ!?』
目を剥いて顎を跳ね上げながら、瀬川の太腿を手で押しやろうとしはじめる。火事場の馬鹿力か、一瞬瀬川の腰が浮く。
とはいえ、瀬川も細身ながらに男だ。ベッドのヘッドボードを掴み、腰の力だけで強引に怒張を押し進めていく。
『ん゛も゛ぉお゛お゛オ゛ぇ゛っ!!!!』
美人顔の入宮に男のような低いえづきを上げさせつつ、あっという間に剛直の8割ほどが口内へ入り込んだ。
『やっぱ上から押し込むとラクだな、簡単に食道まで届くぜ。ケヘヘッ、そうビビんなって、鼻から息すりゃ死にゃしねぇよ。
なんだ、何か言ってやがんのか? 喉奥がモコモコ動いてすげぇ気持ちいいぜ、まるでアソコの奥だ。
……そうだ、膣代わりといくか。テメェのバージンを奪えねぇのは癪だが、代わりにこの喉マンコを、ガバガバになるまで犯してやるよ!』
瀬川はそうがなり立てながら、太腿を膨れ上がらせて腰を押し込む。
普段は鶏ガラのような脚のくせに、こういう時の筋肉の張りは目を見張ってしまう。
あの腿から生み出される腰の押し出しは、多分男子の俺でさえ、腕だけで押し返す事は不可能だ。
いかにスポーツ少女とはいえ、女子である入宮に当然抵抗の余地はなく、瀬川が望むままのペースで喉を穿たれることとなる。
『ごぉお゛おう゛ぉえっ、んもも゛お゛ぉ……お゛お゛えぇァ゛がっ!!!』
皺の跡がつきそうなほど固く目を瞑り、限界まで口を開くがゆえに頬に深く線の入った顔は、とても美人とはいえない壮絶なものだ。
だが、地獄の底から響くような凄まじいえづき声を聞けば、その顔を茶化す奴はいなくなるだろう。
そのぐらい異様で、そのぐらい説得力のある苦しみの悲鳴だ。
そもそも瀬川の剛直は、入宮の上品な口と明らかにサイズが合っていない。
目一杯に開いた唇と剛直の直径にほとんど差が見られないのだから、咥え込めている事自体を奇跡というべきだ。
それをコンディション度外視の身勝手なペースで叩き込まれるのだから、女らしさの欠片もない表情になるのも無理はない。
『あああすげぇ。えづき汁でヌルッヌルの食道が、俺のデカブツにびっちり張り付いてやがる。こりゃあ堪らんぜ。
なァ、テメェにも解んだろ、俺の極太で喉のカタチ作り変えられてんのが?
……っと、ハハハッ、なんつーツラしてやがんだテメェ。カツアゲされたガキかよ。おらどうした。俺が憎いんだろ、睨んでみろよ!!』
瀬川にそう煽られた以上、入宮も黙ってはいられない。
苦しい中で必死に瞳を開き、目頭から涙の粒を開放しつつ、かろうじて瀬川を睨んでみせる。
だがそれも、ほんのコンマ数秒という間の話。
瀬川が満面の笑みで根元近くまで剛直を送り込めば、
『んろ゛おおおぉ゛ぉおえ゛え゛っ!!!』
喉が潰れそうなほど低くえづき、目元に深く皺を作るしかない。
彼女の手は、苦しさからか怨みからか、必死に瀬川の太腿に食い込んでいる。
だが同じ掴みにしても、バスケットボールを軽々と扱っていたあの頼もしい手に比べて、なんと弱弱しく見えることだろう。
二度、三度。瀬川が休みなく腰を突き出し、剛直を深く入り込ませる。
『ほごぉおおお゛おう゛っっ!!』
それがよほど苦しかったのか、入宮の脚がバタバタと暴れ始めた。
すると、彼女の足元に座っていた伊田がその脚を捕らえ、慣れた様子で肩に担ぎ上げる。
『愉しそうだな。どれ、私はこちらの具合でも見るとするか』
そう言いながら、入宮のすらりとした脚の間……低さから見ておそらく肛門に指を差し入れる。
『ほも゛ぅあ゛っ!?』
入宮が剛直を咥えたまま“あ”の叫びを上げた事からして、やはり肛門で間違いないだろう。膣なら、その叫びにはならない。
『ひひっ。ケツに指挿れられたぐれぇで、何テンパってんだよ。俺の舌で散々ふやかしたんだ、今さら指の一本なんぞ綿棒みてぇなモンだろ。
それとも何だ、さっきから女捨てたツラでゲェゲェ鳴いてるもんだから、おぼこい所見せてバランス取ろうって腹か?』
もはや悪意の塊しか感じられない言葉責めを浴びせながら、瀬川は悠々と腰を振りたくる。
唇から零れるほどえづき汁が溢れているせいか、ストロークの速度は上がっていた。
入宮の喉からも、クチュクチュという水気をもった攪拌の音がしはじめていた。
しかし、おえっ、ごえっというえづき自体は変わらない。そして何より、脂汗まみれの泣き出しそうな彼女の顔には、ひとかけらも『楽』が見当たらない。
対照的なのが瀬川で、こちらは腹立たしいまでに快楽と征服欲を貪っていた。
『んも“おお“おお“エ“っっ!!』
突き込み十回につき一回ほどの割合で、入宮は本気の嘔吐の兆候を見せる。
頬が膨らみ、皺だらけの顎が震え、唇の端でこぴゅっと泡が弾けて、顔全体が上向く。
その前兆を認めるや、瀬川は必ず駄目押しを仕掛けた。
入宮の額を押し込んで、顔の角度をさらに強め、明らかにやばい角度で怒張を送り込んだり、だ。
『ほお、よく締まる。これはすごい』
伊田が喜びの声を上げる中、瀬川も吠える。
『どうした、吐くのか? お? 吐いても構わねぇぜ、テメェの寝るベッドなんだからな!!』
瀬川はそう言ってスパートをかけるが、入宮は泡まみれのえづき汁を吐きこぼすだけで、吐瀉物らしき物を見せない。何度やられても。
一度バスルームで胃の中身を空にしているとはいえ、よく吐かなかったものだと思う。
俺はそんな彼女の意地に感動したが、瀬川にしてみれば敗北したような気分だったろう。
その証拠に奴は、途中から姿勢を大きく変えた。
涎で濡れ光る剛直を口から抜き出し、一旦ベッドを降りる。そして入宮の肩を掴んで向きを変えさせ、後頭部だけがベッド側面から落ちるようにする。
その上で、剛直を咥え込ませたんだ。
洋物のビデオでたまに見かけるこのプレイは、見た目の絶望感が凄い。いや、見た目だけじゃない。
『かァ……お“あ“っ、こごおぉおお“…………おも“おろお“ぇエがああ“……っ!!!』
痰を吐くときのような音を絡ませてのえづきには、さっきまでとはまた違う悲愴さがあった。
細い手指はベッドシーツを強く握りしめていたし、伊田の肩に抱え上げられた右脚も、足首を起点に腰を持ち上げるほどの力みを見せる。
極めつけは、真っ直ぐに伸びた彼女の白い喉に、ほんの僅かながら確かに、剛直の膨らみが見えたという事実だ。
瀬川が腰を押し進めるたび、喉の膨らみも鎖骨の方へと伸びていく。俺の目の錯覚であってほしいが、その長さはとんでもなかった。
屋台で売っているフランクフルト。あくまで長さだけだが、それが脳裏に浮かんだ。
それだけの凶悪な長さのものが、さらに悪意を込めて送り込まれる。
瀬川の目的は、射精よりも入宮を苦しめること……いや、多分『吐かせること』だ。そう断言できるぐらい、奴の行為は露骨だった。
白い喉に両の親指を宛がい、怒張の膨らみを縁取るように押さえつけたり。
喉を激しく責め立てながら、ピンクの乳首を弄繰り回したり。
シーツを掴むことで必死に苦痛を紛らわせている入宮の手を離させ、あろうことか、垂らした頭の後ろで組ませて支えとしたり。
あるいは抽迭の果てに根元まで……陰毛が鼻腔を覆い隠すほどの根元まで咥え込ませた所で、ぐっと腰を留めて6秒ほど駄目押しをしたり。
それでもなお、入宮は吐かなかった。
もっとも、正確なところは解らない。入宮の顔に陰が入らずハッキリ見えるのは、瀬川がストロークを大きく取ろうと腰を引いたときだけだ。
後は、濃い黒と薄い黒という世界。
妙にきらめく液体が桜色の唇からこぼれ、小鼻を通り、逆さになったショートヘアに絡みながら落ちていく様……見えるのはそれぐらいだ。
頑張れ、吐くな、耐えろ入宮。耐え切って瀬川に悔しがらせてやれ。俺は心の中でそう声援を送り続けた。
ぐもっ、ごおおっ、かぽっ、ぐぼっ、ぐごっ、かこっ…………
そういう水音を多分に含んだえづきが、絶え間なく響きわたっている。
正直ずっとそれを聴いていると、そんな音を漏らす喉に挿入したら、ものすごく気持ちいいのではと思えてしまう。
そしてそれが事実である事が、瀬川自身の唸りで証明された。
『ハァッ、ハァッ、ハッ…………俺としたことが、アナル舐めで興奮しすぎたか。そろそろマジでイキそうだぜ。
オウ伊田、このままイッパツいいか。朝まで嬲るつもりだったが、この喉マンコが凄くてよォ、もう辛抱できねぇ!!』
瀬川が上ずった声で言うと、伊田は少し考える素振りを見せてから頷いた。
『いいだろう。ただし、出すからにはきっちりと“飲ませて”やれ』
『おお、わぁってらぁ!』
そうした会話が交わされた後、瀬川はスパートに入った。それまでの様々な技巧を捨て去った、ただひたすらの抽迭。
皮肉にも、これが一番入宮を追い詰めていた。
『んむ“ぅう、う゛っ、もお“おお゛っお、う゛ぅうおお゛っ……げ、ごっ、ほごごぼぇおお“っっ!!
ごはっ……ん゛ごおおっ!!ん、ん“おあ“ごろおッ、おがっ、こッ……お“ぉおえ゛ごげおお゛おおお“っ!!!』
それまで以上に切実な呻きが響きわたり、細い顎が何度も何度も跳ね上がる。
唇からは異様に粘ついた糸が次々と顔面に垂れ落ち、凄まじい速さで抜き差しされる剛直の幹からも飛び散っていく。
膨らんだりへこんだりを繰り返す入宮の腹筋が、彼女自身の苦しみを代弁していた。
スパートはどれほど続いただろう。数十回の抽迭の末、ついに瀬川が射精に至る。
『くうっ、出すぞ! 全部飲み下せよ!!!』
瀬川はそう叫びながら、逸物を半ばほど咥え込ませたまま腰を止める。そして、全身をぶるぶると痙攣させ始めた。
この瀬川はもういい歳をしていながら、射精の量は相当に多い。
過去の映像でも、『奴隷』の尻から抜いた怒張から放たれた精子が、背中のみならず髪の毛にまで飛び散る事がよくあった。
若い俺でも相当昂ぶっている時で手の平一杯がせいぜいだというのに、その何倍もの精力を有する獣だ。
そんな勢いと量を誇る精液を口で受けるなど、無理な話だ。
俺がこれまで見てきた奴隷が皆そうであったように、入宮もまた、その圧倒的な射精を受けて噎せかえった。
あっという間に頬が膨らみ、ぶぷっ、ぶほっと咳き込み始める。そしてその後、鼻からも白い物が噴出す。
ただ、瀬川も慣れたものだ。
「吐き出すな。飲め」
あくまで腰を動かさず、入宮の容のいい鼻を摘み上げて、呑むしかない状況を作り出す。
そして、数秒後。白い喉がごくん、ごくんと嚥下の動きを見せると、ようやく怒張が抜き出された。
アーチ上に垂れ下がった、相当な長さの怒張。それは唾液と精液に塗れながら、ひどく泡立っていた。
「どうだ、俺のザーメンは美味かったか?」
意地の悪い笑みを浮かべながら瀬川が問うと、入宮が薄く目を開いた。
そして荒い呼吸を整えながら、天を仰ぐような姿勢のまま告げる。
「……全然、苦くてえぐいだけ。あんたって本当に不健康なんだね。そろそろ死ぬんじゃない?」
その言葉に瀬川が固まり、逆に伊田は笑い出す。その笑いで、瀬川はいよいよ機嫌を損ねたらしい。
「……約束は約束だ、今日はこのまま寝かせてやる。だがな、今のふざけた発言は負債2つ目だ。
テメェも利子ぐれぇは早ぇとこ返してぇだろ? だからよ、特別調教といこうじゃねぇか。
テメェが寝てる間も、俺らで朝まで肛門を開発しといてやる。たっっぷり指入れして、舐め回してやっからな。
良い夢見ろや?」
入宮の細い身体をベッド中央に戻しながら、唇を舐める瀬川。
疲労困憊のこの状況下で、なお満足な休息すら取れない事実に、入宮の表情が強張る。
「クソがしたくなったら言え。もっとも、アナル責めはやめねーけどな」
瀬川はそう追い討ちを掛けてから、ベッドの上に這い上がった。
俺は変に目が冴えていたせいで、その後も2時近くまでモニターを監視していた。
映像内では、疲れからか死んだように眠る入宮の肛門を、伊田と瀬川が嬲り回している。
指入れが続くだけでも入宮の息は荒くなっていたが、瀬川が両の脹脛を抱え上げながら尻穴舐めを始めると、
完全に寝入っているはずの入宮の口から、あっ、あっ、と声が漏れ始めていた。
気付けば俺もそのまま眠ってしまっていたが、朝食を作るために掛けた目覚ましで起きると、モニターにはやはり乱れた光景があった。
伊田と瀬川がベッドの上、入宮を嬲る格好のままで項垂れている。
特に伊田は、入宮のすらっとした右脚を肩に担ぎ上げたまま、肛門に手を触れる形で鼾をかいていた。
寝ぼけ眼を擦ってよく見ると、その手の中にはピンク色の柄が見える。
道具まで使っているようだ、入宮が無抵抗なのをいいことに。
それに気付き、俺は無性に苛立った。朝食用に卵を溶いている時でも怒りは収まらず、初めてボウルから中身を溢してしまったぐらいだ。
エプロンをどろりと汚す黄ばんだ白濁にさえ腹が立つ。相当に情緒不安定になっている。
実のところ、怒りの矛先は俺自身にも向いていた。
入宮が昨晩まともに休めなかったのは、俺のせいなんじゃないか。
昨日の俺の言葉が変に発破をかける結果となり、彼女に意地を張らせてしまったんじゃないか。
だから、余計な仕置きを受けたのでは。そう悩んでしまう。
そしてそう思ったが最後、目の前で隈を作りながらぼうっとしている入宮が哀れでならない。
「ほら、コーヒー。目ぇ覚めるぞ」
せめて眠気覚ましになればと、コーヒーを淹れたマグカップを差し出した。
「…………ん……あ、ありがと」
入宮はそう言いながらカップを受け取ろうとし、しかし、上手く掴めずに取り落としてしまう。
「あっ!!」
マグカップは無慈悲にも床に転がり、白濁の混じった茶褐色が広がっていく。
「ご、ごめんっ!!」
「ああ、いいっていいって。それより、火傷とか大丈夫か?」
心配になって入宮の体に目をやり、はっとする。
うっかりしていた。彼女が今着ているのは、ダボッとしていながらも裾の短いピンクのネグリジェ。
上から覗き込めば胸元が、下に視線をやれば生足が視界に飛びこんでくる。
本当に形がいい……というより、十中八九男を狂わせる類のエロい脚だ。
思わず赤面してしまう。
入宮は、そんな俺の視線にも気付かずに俯いていた。
「大丈夫。…………何やってんだろ、あたし。すばしっこいのだけが取り得なのに」
すっかり意気消沈している様子だ。そんな彼女を見ているのはつらい。無理とは解っていても、元気でいてほしかった。
「そんな事ないだろ。入宮の良いところは一杯ある。いつも明るいし、優しいし、ノリが良くて面倒見もいいし。
皆そういう入宮から、元気貰ってんだぜ。俺だってそうだ。ガキの頃からずっと」
俺がそう言うと、入宮はゆっくりと顔を上げた。
その瞳は涙で潤むようで、俺の姿は映っていない。でも、綺麗だと思った。
「ありがとう。こういう、追い込まれた時にちょっとでも励まされると……沁みるね」
そう呟き、二度瞬きをする入宮。
「昨日の晩もそう。あの時あたし、結構ガンガンやられちゃっててさ。いきなりで面食らっちゃって、折れかけてた。
でもあの言葉のおかげで、あたしは今も、あたしのままでいられてる。
あんな気持ち悪い奴らに好き放題やられて、根っこまで変えられちゃ堪んないよ」
「入宮……」
俺が思わず名を呼ぶと、初恋の相手は俺の視界でふっと笑ってみせた。
「あたしさ。このまま12月まで持ちこたえて、あたしを『買った』やつに会ったら、一発ビンタでもかましてやるつもりなんだ。
まぁ、そんな事したらまたお仕置きされるんだろうけど…………その後は、どうにか生き延びてくよ」
笑顔でそう言われると、返す言葉が見つからない。
笑い返すわけにもいかないので、俺は少し黙って、朝飯に手をつけ始めた。
入宮も箸を取って食べ始める。俺が彼女のため、今までにないぐらい丹精込めて作った料理を。
「おいしい……ちゃんとダシ引いてるんだ」
味噌汁を一口啜った瞬間、入宮は感動したような口調で言った。そう言って貰えると、作った側としても報われる。
この味覚の鋭さは、小さい頃から母親の手料理を食べて、正統派の味を舌で覚えているが故だろう。
彼女は大切に育てられてきたに違いない。当然だ。惚れ惚れするぐらい、良い娘なんだから。
「まるで新婚ごっこだなぁ、ガキ共」
俺達の束の間の憩いは、品のない声と共に終わりを告げた。
「……寝てるんじゃなかったの?」
入宮は雰囲気を一変させ、刺すような視線を声の主……瀬川に向けた。
逆に瀬川は醜悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいてくる。動物のような体臭で、一気に飯が不味くなる。
こんな奴と一晩中一緒にいたなんて、改めて入宮には同情しかない。
「大事なモンを忘れててよ。危うくテメェに、いつも通りの学生生活を送らせちまう所だった。
今日からは、こいつをパンティ代わりに穿いて登校してもらうぜ」
瀬川はそう言って、手に下げたものを掲げる。
奴隷調教を見慣れた俺には、それが何なのかすぐに解った。被装着者の性交や自慰を防ぐ、施錠装置つきの下着……貞操帯だ。
貞操帯にも何種類かあるが、瀬川の手にしたものは、肛門へ挿入されるようにバイブレーターが固定されている物だった。
バイブレーターのサイズは、俺の親指より少し太いぐらい。一番細いサイズだと思うが、それでも慣れない内はきつい。
「こいつはこう見えてGPS内蔵でよ、テメェの居所が手に取るようにわかるんだ。
下手に逃げようとしてみろ。その時点でテメェの商品価値は消滅。犯されながら頭カチ割られて、次の朝にゃあ簀巻きだぜ」
耳元へ吹き込むような恫喝は、いよいよ筋者のそれらしい。
「これから、シャワー浴びようと思ってたんだけど?」
「こいつを着けてから、好きなだけ浴びりゃいいさ。股は、俺が濡れタオルで拭いてやる。大事な部分が蒸れちゃいかんからなぁ。おら、下脱いで股開け」
その会話の後、入宮は心底嫌そうに溜め息をつきながら箸を置いた。
俺は、さっと目線を逸らす。視界に入るのは、入宮の食べかけの食事。米粒のついた茶碗に、半分ほど減った味噌汁、身の割れた焼き魚。
その日常的な光景の脇から、『音』が入り込んでくる。
服を脱ぐ衣擦れの音、タオルの擦れる音。意識しないようにしても、耳が勝手にそれらの音を拾ってしまう。
「んっ、ちょっ、と!!」
「へへへ、感じたのか?」
「ふざけないで。いちいちそんな所触らないと体も拭けないの!? 変態!」
「テメェはすぐそれだ、二言目にゃ変態変態ってよ。だがな、朝っぱらからこんな所しこり勃たせてるテメェこそ変態だぜ。夢ン中でケツ犯されて興奮したのか?」
「あんた、いい加減に…………!!」
「おー怖ぇ怖ぇ。さて、綺麗になったな。んじゃ嵌めんぜ」
「…………ん、ぐっ……!? ちょ、ちょっと! 何これ、太すぎるって!!」
「何が太いだ、一番細ぇ奴だぜ。正真正銘一番上のサイズとなりゃ、山芋みてぇな太さだ。病み付き具合もな。
テメェもいつか穿くかもしれんぜ。少なくともこんな楽が出来んのは、今だけだ」
げへげへという下卑た笑い声がする。
入宮と瀬川の会話は、必ず瀬川の笑いで幕が下りた。歯軋りの音を掻き消す、太く黒い笑いで。
※
いつも通りに教室へ入った入宮は、クラス中の注目を浴びる事となった。
入宮が長袖の冬服に変えていたからだ。
動きやすい軽装を好む入宮は、衣替えの時期でも一番最後まで半袖を着続ける。
知佳が長袖を着るようになったらいよいよ秋だな、とも言われたものだった。
それをまだ残暑の残る今変えているんだから、驚かれるのも不思議はない。
「いやー、何となく。気分だよ気分!」
入宮は朗らかに笑ってみせたが、俺は知っている。長袖を着ているのは、緊縛の跡を見られないためだ。
昨夜胡坐縛りで責められ続けた彼女の身体には、今もくっきりと縄の跡が残っている。
胸や足首の縄跡は夏服とソックスで隠せても、後ろ手縛りをされた際の上腕や手首の跡は、夏服で隠すにはやや厳しい。
シャツの襟を閉めてリボンまで結んでいるのも彼女らしくないが、首にまで跡がある以上は仕方ない。
彼女はそれらを隠さなければならなかった。そして、隠すべきことはもう一つある。
「どうした入宮。トイレか?」
数学教師の前川が、落ち着きのない入宮にそう声を掛けた。
入宮は赤い顔で俯いていたが、やがて机に手をつきながら立ち上がる。
「……すみません、行ってきます」
椅子を離れてから扉を開けるまでの足取りも覚束ない。
「お、おい、大丈夫なのか入宮!? 保健委員、誰だ? ついて行ってやれ」
前川の言葉に保健委員が立ち上がるが、入宮は首を振る。
「いいっていいって、ちょっとお腹痛いだけだから」
そう言って扉を閉め、廊下へと姿を消す。
クラスはにわかにざわついた。
――聞いたかよ。あの学年一の健康優良児が腹痛だとよ
――そっか、だから冬服着てんのかな
――中学ン時から一緒だけどよ、アイツが授業中にトイレ行くとこなんて初めて見たぜ?
――珍しいよな。ハラ痛くても我慢するタイプかと思ってた。意地っ張りだし
――我慢できないレベルだったんでしょ。ひょっとしたら生理かもしんないじゃん
――バーカ。生理痛とか、それこそあのメスゴリラにゃ無縁だろ
――男子に何が解るわけ? たまに酷いときはマジ死ぬんだってば
「おまえら、その辺にしとけ。追い込みの時期だぞ!」
前川が一喝し、クラスはとりあえず受験モードに戻る。だが皆どこか落ち着きがなく、入宮を意識しているのは一目瞭然だ。
無理もない。入宮はクラス一の人気者だ。いつも人の輪の中心にいる姉御的存在。
昔から入宮が仕切るクラスだけはいじめが無かったし、学校で困り事があったら真っ先に彼女に相談する風潮もあった。
クラスの女子からは憧れの的とされ、同じくクラスの……いや、ひょっとしたら学年の大半の男子から性的な視線を浴びる生徒。それが入宮知佳だ。
俺は今日からそんな入宮と、昼休みを共に過ごす事になる。勿論恋人としてじゃなく、あくまで監視役として。
だが、それでも得難い体験だ。中学以降の入宮は、常に女子グループの中心として昼休憩を過ごしていた。
そんな入宮が男子と一緒にお昼を食べるなど、小学校卒業以来、俺が初めてじゃないだろうか。
今やほとんど使われていない旧校舎の屋上……人目につかない場所として入宮が教えてくれたそこで、二人して弁当を広げる。
「うわ、すごっ……!!」
弁当箱を開けるなりのその一言が、ひどく嬉しい。何しろ頑張ったんだ、特別に。
振られて以来、俺が入宮を真正面から見る機会はぐっと減った。
有耶無耶になった今朝を除けば、物を食べる彼女を間近で見るのは、いつも頬に絆創膏を貼っていた小学校の頃以来だ。
入宮はとても美味しそうに物を食べる子だった。
グルメレポートのような大きなリアクションもなければ、満面の笑みでもない。でも、箸を黙々と進めるその姿は雄弁だった。
「口に、合うか?」
少しの不安と共にそう訊ねると、入宮ははっとした様子で顔を上げた。
「あっ、ご、ごめん、ずっと黙ってて。なんか、お腹減ってたせいで夢中になっちゃってさ。美味しいよ、すごい美味しいっ!!」
その言葉だけで俺は、今朝の苦労分以上に満たされる。
食事を終えた後は、二人してしばらく校庭を眺めていた。
状況が状況だけに会話の切り出し方が難しく、ただグラウンドで青春を燃やす下級生達を見守る。
しかしその空気にも耐えられなくなった時、俺は意を決して訊ねた。
「2限の時のあれ、大丈夫だったのか?」
入宮が退出した時の事だ。本人は腹痛だと言っていたが、真相は多分違う。
貞操帯に嵌め込まれたアナルバイブが、ボタン電池が切れるまでの間、不定期に直腸を責めるせいだ。
「ああ、うん。あのまま授業受けるのは厳しそうだったから、ちょっと休んでただけ」
「そっか。今は平気なのか?」
「……ん」
俺の問いに、彼女はやや視線を外し気味で答える。いつも他人の目を見て話す彼女としては不自然だ。
何となく、彼女が無理をしているのが解った。
「別に無理しなくていいぞ。俺だけは事情知ってるんだから」
俺がまさにそう言った最中、入宮が肩を跳ねさせた。そして目を見開き、前方を見つめはじめる。
アナルバイブが動き始めたんだろう。
「むこう、向いててくれる?」
しばらく無言が続いた後、入宮はそう呟いた。
「え?」
「…………ちょっと、恥ずかしいことする」
間の抜けたような声を出してしまう俺に対し、入宮が篭もった声で続ける。俺は言葉の意味を認識し、急いで後ろを向いた。
後ろでごそごそと音がする。ん、んんっ、という押し殺したような声も続く。数分に渡って。
「もう大丈夫。ごめん」
その声で振り向くと、入宮の頬は赤く染まっていた。
「収まった?」
何が、とはあえて訊かない。
「ちょっとはマシになった。……んっ。でも、まだちょっとムズムズするかな。
はぁっ、やだやだ。嫌いなんだよね、こういう中途半端な状態って。いっそ取り出して丸洗いしたいよ」
さらりと発されたその言葉で、俺はフリーズする。それは、“腸を”ってことか。
「ん?」
入宮は不思議そうに俺を見つめ、直後、自分の発言の意味に気付いたのか口を押さえる。
「あっ! う、うそうそっ、何言ってんだろ!! そのっ、変な意味じゃなくって……って、思いっきり変な意味だけど!
あぁ、もうやだ……頭おかしくなってんのかな、あたし」
今にも泣きそうな顔で目元を抑える入宮。そんな彼女はひどく華奢に見え、居たたまれない気持ちになる。
確かに彼女の思考は歪められているのかもしれない。でもそれは、断じて彼女に責任があるわけじゃない。
「俺、そんな変な言葉聞いたかな。ただ単に、入宮がそういう気分になったってだけだろ。
それを言葉にするなんて…………ふっ、普通だと思うけどな」
何とか励ましたい。その一心で発した言葉は、何でもない風を装いすぎて噛んでしまっていた。
かなり恥ずかしく、俺は頬が赤くなっていくのを自覚しながら空を見上げる。
だから俺には、この時の入宮がどんな顔をしていたのかはわからない。
笑いか、泣きか、それとも虚を突かれたような表情か。
「今日二回目かぁ。岡野も、ズルいね」
俺を名指しした上で、入宮はズルい、と評した。
「何が?」
青空から視線を下げると、肩を竦めながら溜め息をつく入宮が見えた。
「だってあたし、前に岡野のこと振ったじゃん。運動できない奴は嫌だ、とかいって」
驚いた。俺の告白を覚えていたのか。おまけに、断った理由まで。
「でもそうやって振った相手が、実はすごい優しくて、こんな美味しいお弁当まで作れるとかさ。あたしの見る目って何?って感じだよ」
弁当箱を少し傾けながら、どこか拗ねたような口調で言う。
一見すると普段の彼女らしいが、必死に明るいところを演じているだけだろう。
「そりゃ買いかぶりだ。俺がそんな手の込んだ力作弁当作んのも、イイ奴ぶんのも、相手が入宮だからだって。
誰にでも優しくするわけじゃない。他の奴には普通に冷たい事もある」
俺は、思わず顔を顰めながら言葉を搾り出した。
実際そうだ。今の俺の行動は、すべて下心から出ている。
初恋の相手に好かれたい。嫌われたくない。その損得だけでしか動いていない。
大体俺は今まで、屋敷で女が調教されて変わっていく姿を、AVでも見るような気持ちで眺めていたクズだ。
何人もの人生を狂わす鬼畜の所業に、間接的に加担してきたんだ。
そんな俺が、今更惚れた相手だからと優しさを見せたところで、所詮は反吐が出るほどの偽善に過ぎない。
俺は自分が心底嫌になり、深く溜め息をついた。
でも、何故だろう。目の前の入宮の面影が、変に俺自身と重なって思えるのは。
「…………そっか」
入宮はそう呟いて俺の瞳を見つめ、にへら、という感じで笑った。11年ほど見てきた中で、初めて見る笑い方だ。
「じゃ、お互い色々ダメってことで」
どこか投げ出すような言い方で、二言目が吐かれる。その軽さはどこか可笑しいほどで、つい釣られてしまう。
「だな」
俺も同じく、肩の力を抜いて笑った。するとなんだか、楽になった。
しばらく砕けた空気が漂う。でも昼休みが終わりに近づくにつれ、互いに口数は減っていった。
当然だ。
この休みが終わって、午後の授業を終えて……その後はまた、地獄が始まるんだから。
続く
長いので前後編に分割します。
『苔屋敷』。
俺の家が友達からそう呼ばれたのは、小学生の頃だったか。
言われるのも無理はない。実際ウチは、外から見るといかにも古い日本家屋の屋敷だし、あちこち苔で覆われてもいる。
先祖は旗本だか御家人だかで、その苔蒸した歴史がそのまま今に伝わっているわけだ。
ただウチには、一つだけ他所と違うところがある。それは、やたらに広い地下室がある、という事実。
元は座敷牢だったらしく、格子状の牢屋が幾つも並ぶ空間だったらしい。
それが今では半ば吹き抜けのようになり、壁には手枷足枷などのいかがわしい拘束具が並び、
簡易のシャワースペースや風呂桶、化粧箪笥を備えた畳敷きの空間まで用意されている。
俺がまだ文字も読めないガキの頃から、屋敷にはよく知らない女が出入りしていた。
頭の悪そうなギャルや、逆に遊びなんて知らなさそうな地味な子……皆地下室に降りていき、数ヶ月もすれば姿を見せなくなる。
俺はその理由を親父に問い質したが、いつも不機嫌そうに、ガキが知る事じゃねぇと一蹴された。
最近になってようやく明かされた事だが、地下の空間は、親父や爺ちゃんが代々世話になっている組の調教部屋らしい。
一昔前にはスケコマシとも呼ばれた調教師が、組にとって都合がいいように素人女を躾ける場所。
親父はその調教部屋の管理を組から任されている身だという。
まあ曾爺さんの世代からずっとここに住んでるんだから、今さら任されるも何もない気もするが。
ところがその親父は、去年の秋頃から酒で肝臓をやって入院している。だから今は一時的に、俺が屋敷と調教部屋の管理をやらされていた。
今でもまだ高3、大手を振ってエロ本も買えない身だというのに。
仕事は3つ。調教部屋の清掃および、汚れ物の洗浄・洗濯。調教師に供する食事の支度。そして調教部屋の監視だ。
室内清掃の時には、濛々と立ち込める汗の匂いやらで噎せそうになる。
飯にしても、調教師という人種はなぜか揃って偏食で、これは嫌だ、あれは無いのかととにかく注文が多い。
だが、調教部屋の監視……これだけは楽しみだった。
親父からは、女の裸がいくらでも見られるが、興奮するのは最初の内だけだと聞かされていた。
だが、思春期真っ盛りの俺には堪らない。地下の調教映像など、リアルタイムで進行する無修正AVも同然だ。
監視カメラを通して、俺はありとあらゆるアブノーマルな行為を見続けた。
最初はえぐい責めを直視できず、思わずトイレに駆け込む事もあったが、段々とそのハードさにも慣れていく。
今では、クラスの奴が回してくる『ネットのヤバい動画』では、何の刺激も得られない。
ともあれ、そうして女の痴態を見続ける俺だが、中でもスポーティな女の子の調教は興奮の度合いが違った。
理由はハッキリしている。
俺の初恋の相手にして、今でも密かに憧れているクラスメイト……入宮 知佳(いりみや ちか)を思わせるからだ。
入宮のことは小学校の頃から知っている。
入学当時から男勝りなスポーツ少女で、休み時間になるなりボール片手にグランドへ駆け出し、率先してドッジボールを始めていた。
中学に上がる頃には、それまでのロングヘアをばっさり切ってショートにし、陸上に打ち込み始めた。
そして高校に上がると、やはり陸上をやるつもりだったが強く勧誘されてバスケ部になり、今は部長をやっている。
フォワードとしてはドライブの鋭さもハンドリングテクニックも頭一つ抜けていて、県内随一とまで言われるプレーヤーらしい。
入宮が2年だった去年は惜しくも県大会準優勝で終わったが、今年こそ全国か、と校内の女子も沸いている。
要するに、見事なまでのスポーツ少女なわけだ。そして俺は、そんな入宮に惚れていた。
まず、ルックスがいい。
後ろ暗いところの無さそうな澄み切った虹彩が印象的で、入宮の前に立つと、いつも自分の姿がその瞳に映った。
猫っぽい釣り目は喜怒哀楽のはっきりした彼女らしく、刻一刻と形を変える。
逆に口元は妙に大人っぽいというか上品そうで、彼女がスポーツドリンクを飲む度につい目を奪われてしまう。
スタイルもいい。
運動でよく引き締まった身体は、クラスの他の女子なんて比較にならないほど均整が取れている。
スレンダーな印象の割に胸はCカップはあるらしく、ゼッケンの胸の辺りにはいつも少し角度がついていた。
その胸から、一切無駄な肉はないという感じに腰に向けてきゅっと締まっていき、
逆にハーフパンツから下の太腿にはいい感じに膨らみがあって、膝裏の深い窪みを経て、また絶妙な形と長さをした膝下が続く。
まだ未成年だけに成熟した体型とは言えないものの、同年代の女子として見る分にはあまりにも刺激的に過ぎるボディだ。
水泳の授業で水着姿の入宮が現れた瞬間、クラスの男子全体の雰囲気が変わるぐらいに。
そして、何といっても肌がいい。
中学までは外遊びや陸上で日に焼け、高校からは屋内競技であるバスケ、という経歴のせいなのか。
入宮の肌は、白すぎず黒すぎず、常に湯上りのような最高に血色のいい桜色をしている。
その鮮やかさは華の女子高生と呼ばれる中でも群を抜いていて、体育館に女子が集まっている中でも一発で見分けがつくぐらいだった。
俺はそんな彼女の身体がとにかく好きで、まだ自慰の経験すらない小学生の頃から、校庭で遊ぶ入宮をぼーっと眺め続けていた。
当時から漫然と好みのタイプだとは思っていたものの、中学生、高校生ともなればいよいよ本格的に性に目覚め、シャレにならなくなってくる。
一時期は本当に、寝ても覚めても入宮の事ばかり考えていた。
遠くから眺めるだけでは飽き足らず、彼女への下心ありきで外遊びに混ざった事も何度かある。
しかし所詮はインドア派。普段体を使い慣れている連中にはついていけず、足手まといの烙印を押されるのが常だった。
ただ、それでいい。足手まといの俺は、それを理由に傍らに座り込み、入宮を堂々と間近で見られるからだ。
ボールを手に、左右に鋭い視線を散らしながら素早く身体を切る入宮。
俺はその入宮の横顔と、かすかな胸元の揺れ、太腿から脹脛の筋肉の凹凸や、空中に飛び散る汗を網膜に焼き付ける。
そして家に帰るなり、その記憶をオカズに延々と至福の自慰に耽った。
そういう生活をしばらく続けた後、ちょうど中学の卒業式の時、俺は入宮に告白している。
人生で一番勇気を振り絞った告白だったが、拒絶はあっけなかった。
「ごめん。あたし、運動ダメな奴とは付き合う気ないんだ」
今思えば、このバッサリと斬って捨てる言い方は、彼女なりの優しさだったんだろう。
変に濁して期待を持たせるよりは、100%望みがないと理解させた方が良い。いかにも彼女らしい理屈だ。
後から聞いた話では、俺の他に何人もが同じく即断で斬り捨てられていて、結局入宮はまだ誰とも付き合った事がないらしい。
だから、俺に入宮を恨む気持ちはない。
実際この件があってから、昼も夜も入宮の事を考え続ける事はなくなった。
ただ、それでも彼女を魅力的と思う気持ちは変わらない。地下で運動部系の子が調教されている時、特に鼻息が荒くなるのはそのせいだ。
そのぐらい俺は、入宮の事が好きだった。
だからこそ、俺は耳を疑う。ウチでの調教を仕切る組の舎弟頭から、次の調教対象の名前を聞いて。
入宮 知佳――――。
舎弟頭の板間さんは、間違いなくそう言った。さらに、お前ェと同じ高校だよ、とも続けた。
俺は電話口でかなり取り乱していたと思う。
なんであの子が。ヤクザに関わるような子じゃないし、第一彼女は全国を狙おうというバスケ部の部長だ、調教どころじゃない……と。
そんな俺に対し、板間さんはいつも通り飄々とした態度で答えた。
理由はよくあるつまらない事。バスケ部部長の座ならすでに降りている、と。その言葉を聞いて、俺は理由が借金だと気付いた。
癖なのかわざとなのか、板間さんはいつも金絡みの案件はよくある事だとはぐらかし、他に裏がある場合は知るなと釘を刺してくる。
後で調べたところ、確かに理由は借金のようだった。
さらにこの電話の少し後、彼女は家庭の事情から、夏の大会を最後にバスケ部を引退した。
本当なら、クリスマスボウルという冬の全国大会も控えていたはずなのに。
調教開始は9月の第2週から。
場所は俺の家だ。入宮がまだ高校生である以上、平日は学校に通わなければならず、俺の家を拠点とするのが都合がいいらしい。
俺と共に下校し、地下で夜中まで調教を受け、朝はやはり俺と共に登校する。
平日はその繰り返しで、土日は原則として48時間ぶっ通しで調教するつもりらしい。
やけにハイペースなのは、入宮の写真を組の得意客にバラまいたところ、中国の金持ちが猛烈に食いついてきたせいだ。
その男は大晦日までたっぷりと入宮を愛で、年が明けると同時に処女を奪うことを熱望しているという。
ただし、最近は後孔にも興味があり、使いたい。拡張や性感開発は面倒なので任せる。
挿入するなり痛い痛いと喚かれても興醒めなので、どうせなら後孔だけで絶頂するように調教しておけ。
売買契約さえ成立すれば、金と権力で強引に高校卒業の扱いにしてやるから、遅くとも12月中には『納品』しろ。
それが男の要求で、急遽調教計画が立ち上がったというわけだ。
調教師が決まるのも早かった。この屋敷の勝手を知っている、常連の二人組だ。
一人は伊田といい、禿げ頭がいつでも脂ぎっている、醜く腹の出た男。
もう一人は瀬川という、いつでも無精髭まみれ、垢まみれで体臭のひどい痩せた男。
数いる調教師の中でも、男に対するコミュニケーション能力が皆無な二人だ。
「この度もよろしくお願いします、先生方」
俺はいつも通り、家に上がった伊田と瀬川に握り飯を振舞った。
するとやはりと言うべきか、二人揃って俺とは目も合わさずに椅子に座り、不味そうに米を食い散らかす。
女相手には呆れるほど喋るくせに、男相手となるとこれだ。何か信念でもあるのか。
あったとしても、せめて匂いぐらいは何とかして欲しい。伊田は明らかに内臓が悪い人間特有の口臭が、瀬川は体臭が酷い。
ここだけの話、こいつらに出した食器類は滞在期間が終わり次第全部捨てている。そのぐらい嫌いだ。
こんな下劣な連中が、入宮を調教するっていうのか。そう思うと、手にした玉露入りの湯飲みで殴り殺したくなってくる。
いやそもそも、入宮が調教対象っていうのが間違いなんじゃないのか。
同じ学校にたまたまいた同姓同名とか。そうだ、きっとそうだ。あの入宮が、こんな汚い場所に来る訳が…………
俺のその縋るような願いは、直後のチャイムで掻き消される。
引き戸を開けた先にいたのは、紛れもなく俺の知る初恋相手だった。
やや瞳に翳りがあるとはいえ、その澄んだ虹彩は立ち尽くす俺の姿を映し出す。
「………お世話になります」
悲壮な覚悟を秘めた一言が、桜色の唇から放たれた。
地獄に乗り込む時にもこの気丈さ。これは間違いなく、入宮だ。
そう、間違いなく……。
※
「へへへ、おいでなすったか。マジで眼力の強ぇ嬢ちゃんだなぁオイ!」
いつの間にか俺の背後に忍び寄っていた瀬川が叫ぶ。
「まぁまぁ、とにかく上がんなさい。腹が減っているなら握り飯があるぞ。私達の食べさしだがねェ」
伊田も教授のような妙に鼻につく物言いを始めた。
本当に、女の前でだけ態度の変わる連中だ。
「っ…………!!」
入宮がかすかに鼻をひくつかせ、眉を顰めた。それもそのはず。中年男二人が醸し出す悪臭が、辺り一面に漂っている。
「さぁ、遠慮はいらんよ」
調教師共はそう言いながら、我物顔でソファを指し示した。その唇は悪臭に怯む入宮を見て吊り上がっている。
そう、こいつらの匂いはわざだ。匂いで自分を覚えさせ、一種の催眠状態に陥らせる事で“条件付け”を容易にする、そのために。
入宮は渋々といった様子で玄関を閉め、ソファに腰掛ける。
夏休み明けとはいえまだまだ残暑がきついため、入宮の制服は夏仕様だ。
女子高生の制服っていうものは、それだけで魅力的に見える。特に入宮の場合、スタイルがいいだけに尚更だった。
改めて見ると、入宮の肌は夏を越したばかりなのに焼けていない。相変わらず血色のいいピンク色だ。
去年までは夏になるたび海でこんがりと焼いていたのに、今年はその余裕も無いほど家計が切迫していたということか。
髪も少し印象が違う。つい数ヶ月前までは、いかにも部活一筋という感じの耳が隠れる程度のショートだったが、
今は横髪の毛先が肩をくすぐる程度にまで伸びている。色染めなんてした事もなさそうなほど、黒く艶光ったまま。
それが妙に女を感じさせて、ゾクリとする。
身売りが決まった時点で、女らしく見せようと伸ばしはじめたのだろうか。そう考えると、胸が苦しくなる。
「いやーしかし、ホント凛っとした感じだよなぁ、たまんねぇぜ。テメェ、バスケ部の部長なんだろ?
さぞかし後輩のガキ共に、偉っそうにしてきたんだろうなぁ、部長サマともなりゃあよォ」
瀬川が浅黒い指で入宮の顎を掴み上げる。
「ッ!」
入宮は鋭い視線を瀬川に向けた。
「おう、それそれ。そういう目すんだよなー、体育会系のガキは。ま、ハネ返ってられんのも今のうちだけだ。
今日から俺ら二人が、テメェをきっちり奴隷に躾けてやる」
そう囁きかけながら、入宮の肩に手を回す瀬川。
その右手が入宮の身体をぐるりと回り、肩にかかった時。急に入宮の左手が動き、瀬川の手を払いのけた。
パシンッといい音がする。音からして、手首がジンジンと痺れる類の衝撃だろう。
「ぐおっ! チッ……この馬鹿力が。よぉ伊の字、こいつ流石はバスケ部だ、やべぇ指の力だぜオイ」
瀬川は手首を振りながら、伊田に向けて肩を竦めてみせた。
そんな瀬川を、至近から入宮の目が射抜く。
「契約した以上、身体は売るし、調教も受ける。でも、必要以上に馴れ馴れしくしないで。
悪いけどあたし、あんた達みたいな男ってすごく嫌いなの。見るからに不健康で、だらしなくって、臭い。
いい歳してマナーも弁えないなんて、最低!!」
間髪入れず突き刺さる、正論。語気強く諭すようなその言い方が、またいかにも部を纏めるキャプテンらしい。
部活の後輩やクラスの男子なら、こんな空気になればすぐに平身低頭で謝るだろう。
だが、今は違う。奴隷と調教師、身分の差ははっきりしている。
「そうか、私達は嫌われてしまっているのか。だが、それでも構わんよ」
黙って状況を見守っていた伊田が、入宮の隣……瀬川とは逆側に腰掛ける。そして、入宮の艶々の黒髪を撫で始めた。
「どうせ私達は、これからたっぷりとおまえの反感を買うんだ。
おまえは男を狂わす魔性の身体の持ち主だ。おまえ自身が知ってか知らずか、ね。
おまえの周りにいる男……同級生や教師どもはみな、引き締まったおまえのこのフトモモを見て、濁った精を放ったに違いない。
この身体に当てられたんだ、さぞや下劣な妄想をしたことだろうね。
逸物をしゃぶらせたり、髪の生え際から足の指に至るまでをねぶり回したり、慎ましいアヌスを犯し抜いたり。
わかるかね……今からその妄想がすべて、現実のものになるんだよ」
伊田はそう言いながら、撫でていた髪の一房を摘み上げて舐めしゃぶる。
「ひっ! や、やめてよっ、汚い!!!」
入宮が目を剥いて叫ぶ傍らで、瀬川の手も動きを見せた。
左手を制服のシャツに滑り込ませ、そのままブラジャーを押しのけるようにして右乳房を掴む。
「きゃっ!!」
今度の悲鳴はいかにも女子らしい。いくら男勝りでも、こういう時は女の子なんだ。
「おおーっ。やっぱ女子高生のチチは最高だなぁ、張りが違うぜ張りが!
肌もモチモチで吸い付くみてぇだし、中学生以下のガキみてえに変なしこりも残ってねぇしよ。ひひひ、やぁらけぇー。
おまけにオイ、てめぇ細い身体のくせに、中々でかいチチしてんじゃねぇか。こりゃDはあんだろ、ええ?
俺の手の平にすっぽり収まってよぉ、まるで俺にこうして揉まれるためにこ成長したみてぇだぜ」
瀬川は今にも涎を垂らしそうな笑みで入宮の乳房を揉みしだく。
「んっ……やめっ……て、ってば…………っ!!」
入宮は露骨に嫌がって瀬川の腕を掴みに掛かるが、その隙に逆側の伊田がスカートを捲り上げる。
ショーツが覗いた。赤いレース柄の入った、桜色のショーツだ。
「あっ!?」
「ほう、これは可愛らしい。今日一日、これで過ごしたという事か。
こうも露骨に男を誘う下着を着けて過ごしているのは、学校内でもおまえか、ウリをやっている不良少女ぐらいだろう。
……と、いやいや、おかしな事を言った。おまえもまた売女だったな。
何しろおまえは、万札で股を開く花畑な女より、さらに貞操観念の緩い豚になるんだ」
伊田はそう囁きながら、文字通り瞬く間にショーツへ指を滑り込ませた。
入宮がぎょっとした顔をしたのは、盛り上がったショーツの内部で指が蠢き始めてからだ。
悔しいがこの調教師達は、責めの展開が鮮やかすぎる。ボクサーが顎を打ち抜くのと同じぐらい、絶妙な呼吸で急所を突く。
県内随一と謳われたバスケ部員が、反応さえできないほどに。
「ふざけないで、やめてっ!! こういう事は、地下に行ってからするって約束でしょ!?
それを、こんな所で……み、見られてるからっ!!!」
シャツとショーツの中をそれぞれ弄られながら、入宮は顔を赤くして叫んでいた。怒りか羞恥か解りづらいところだ。
どうやら、俺に見られているのが溜まらないらしい。まぁ、それはそうだ。クラスメイトなんだから。
でも残念ながら、その願いは聞き届けられない。入宮に纏わりつく二人は、多分わざとここでやってるんだから。
「固ぇこと言うな、本格的な調教に入る前のスキンシップってやつよ。それにそこの坊主は、仮にもこの屋敷の家主様だぜ。
これからしばらく此処に住まわして貰ってよ、汗やら愛液やら撒き散らして汚そうってんだ。
だったら、ちぃと良い目を見せてやってもいいだろうが。なに、あくまで着衣よ。同級生にチチやマンコを見られるわけじゃねぇ」
瀬川はそう言いながら、相変わらず俺には一瞥もくれずに乳房を揉みしだく。
伊田は入宮にだけ聴こえる声で何かをずっと囁きかけながら、ショーツの中で指を曲げていた。位置的にクリトリスを弄くってるんだろう。
「うう、ううく…………!!」
入宮は左右を交互に睨み、歯をかみ合わせながら脚を閉じ合わせていた。瀬川の指の侵入だけでも阻もうというのだろう。
ただ、どれだけ固く脚を閉じようが、女の股下には隙間が残る。人差し指や中指でなら、クリトリスへの刺激に支障はない。
瀬川の表情的にも、陰核責めは滞りなく進んでいるらしかった。
じっと見てちゃいけない。
それは理解しているはずなのに、俺は目の前で繰り広げられる光景を前に、ただ立ち尽くしてしまっていた。
目の前で交通事故が起きたら、しばらく固まって動けないというが、今ならその感覚がよく分かる。
そして俺は、見知った同級生の悲劇を前に、ズボンの中で痛いほど勃起していた。
「…………んっ…………んん、んっ………………!!」
入宮は抵抗こそ諦めたものの、目を閉じ、唇を閉じ合わせたまま、断固として感じないというスタンスを取っている。
別に珍しい話でもない。調教初めは皆そうだ。
そして調教師は、そういう女でも昂ぶらせる引き出しを山のように持っている。何しろ一年の大半を、女の身体を弄くって過ごす連中なんだから。
まずは伊田が乳房責めのやり方を変えた。
ずっと弄っていた乳首から手を離し、代わりに乳房そのものを外周から丹念に揉み上げていく。
「っ!!」
入宮が目を開き、自分の胸の辺りに視線を落とした。伊田はそれを確かめた上で、不気味な囁きを再開する。
「どうだ、胸を揉まれるのは。中々に気持ちの良いものだろう。だがこれから、もっと良くなるぞ。
乳房というものは所詮脂肪の塊だが、こうやって丹念に揉み込めば中の乳腺が次々と目覚めていく。
そしてその快感は、血の巡りに乗って先端へ集まっていくんだ。
ほら……早速だ。乳首が尖ってきたぞ。乳輪も粟立っているなぁ、快感のあまり鳥肌が立ったか?」
伊田は乳房を揉みしだきつつ、器用に乳首の周辺を弄繰り回しているようだ。
動きからして、乳輪を指先で刺激し続けているのか。
「いいぞ、乳輪がぷっくりと膨らんできた。さすが健康体だな、血の巡りがいいらしい。どうだね、堪らんだろう。
乳首がピクピクしているのがハッキリ伝わってくるぞ…………そらっ!!」
今度の動きはハッキリ解る。定番のトドメ――伊田の両の親指が、思いっきり乳首を捻り潰したんだ。
「ふぁああうっ!?」
それまで汗を滲ませながら必死に耐えていた入宮も、これには耐え切れない。間の抜けた声と共に、盛大に肩を跳ねさせる。
伊田と瀬川が唇を緩ませた。
「どうした、妙な声を出して。気持ちが良かったのか? まぁそうだろうな。こんなにいやらしく、しこり勃たせているんだからな!」
伊田がそう言って乳首を扱けば、入宮の目元が引き攣った。
そうして乳首責めが佳境を迎える中で、瀬川の方にも動きがある。
「はぐっ!!」
瀬川の手の甲に筋が浮いた直後、入宮からまた声が上がった。
「ひひ、こっちでもメスの声が出たなぁ。ま、こっちゃあこっちでギンギンに勃起してんだ、我慢できる訳ゃあねえよな。
さっきから指に、マン汁がぬるぬると絡みつきまくってるしよぉ」
瀬川はそう言いながら、また手の甲を蠢かす。いや、と入宮が小さく呻いた。
「何がイヤだ、本心じゃ待ち望んでるくせによ。ここまではずっとクリトリスの皮越しにやってきたが、そろそろ解禁だ。
こうやって指の腹でフードを捲り上げてやりゃあ…………性感帯の塊がむき出しってワケよ」
「や、やめてっ!」
瀬川の煽りを受けて、入宮の手がたまらず瀬川の腕を掴む。瀬川は笑みを深めた。
「何だ、皮を剥かれるのは初めてか。ったくウブな嬢ちゃんだ!」
その言葉と共に、一気に包皮が剥き上げられたんだろう。
「!!」
入宮は唇の真ん中を閉じ合わせた。こんな状況でも、つい可愛いと感じてしまう。
改めて見ても上品な唇だ。伊田、瀬川の視線もまた、その唇に注がれている。
このピンクの唇を、もっと歪めさせてやる。どちらも心の中では、そう思っているに違いなかった。
一年の大半も女を責めていると、陰核がどんな固さの時に、どの角度からどういう力を加えればクリティカルな刺激になるか、感覚でわかってくる。
今では延々と続く調教の中、ベッドの中で半分まどろみながらでさえ何度もイカせる事ができる。
その研ぎ澄まされた技術の粋を、たっぷりと披露してやる。
瀬川は延々とそんな事を呟きながら、ショーツの中で手の甲を蠢かし続けていた。
俺が瀬川の調教を見るのはこれで7回目、日数で言えば延べ150日以上にもなる。
それだけ見続けていれば、たとえショーツ越しだろうと、浅黒い手の動きだけで責めの内容がおおよそ把握できた。
クリトリスの裏筋を爪で擦り上げ、頭部分を指先でくりっと引っ掛け、側面を指の腹で柔らかく押し潰し。
手馴れた瀬川がそういう刺激を繰り返すと、どんな女でも濡れてしまう。
「ひっひ、何だよてめぇ。涼しい顔してるくせに、愛液がどんどん溢れてくるじゃねぇか。
おらっ、もう少し脚開け。こんだけ濡れてるくせに、今更変な意地張んな」
瀬川は手を蠢かしながら入宮に命じる。膣からも責めたいが、ぴっちりと閉じ合わされた太腿をこじ開けられないらしい。
見ているだけでも解る。陸上とバスケで鍛えられた入宮の太腿は、力を込めている今、圧縮されたゴムのようだ。とても手の甲ひとつでこじ開けられそうにはない。
「別に……普通にしてるだけだけど」
入宮は、頬を紅潮させたまま素知らぬ顔をする。その言葉の後、瀬川の手と入宮の両脚とでぶるぶると鬩ぎ合いが起きた。
「……ったく、強情だな」
瀬川は呆れた様子で嘆息し、肩の力を抜いた。だが、断じて諦めた訳じゃない。
調教師と呼ばれる連中が、奴隷に駄々をこねられて責めを諦める事はない。むしろ抵抗を受ければ、より徹底的にやるものだ。
瀬川も責めの手法を変えたに過ぎない。
『北風と太陽』という奴だ。股をこじ開けるのが無理なら、イカせまくって脱力させるまで――多分そう考えている。
事実そこから瀬川は、クリトリス責めのペースを上げた。
それまでの人差し指と中指の二本に加え、親指も使い始める。これまでの調教を見る限り、親指での陰核責めは一番効果的だ。
力の加減が五指の中で一番やりやすく、指の腹の面積が広いだけに押し潰す責めにも向いている。
手馴れた調教師が親指まで使えば、おぼこ娘を果てさせる事なんて何でもない。
「ひっ、ひぃっ……ひぐっ、んひっ…………っきひっ、ぃ…………!!」
耐えなければ。その想いがあるらしく、奥歯を開かない口の形で入宮は何度も声を上げた。
でも、俺には解った。その声を上げている間、いや上げていない間にも、入宮が何度も絶頂している事が。
判り易いんだ。閉じ合わせた脚の膝頭同士が、ぐ、ぐぅっと強く密着して、ふーっと圧が弱まる事がある。それが絶頂に至ったサインだ。
絶頂のたびに愛液が吐かれているのか、ショーツがどんどんと透けていく。
大抵はショーツを盛り上げる瀬川の手が透けるだけだが、たまに薄らと茂みが覗く事もあり、刺激的だ。
「ん、んぐぅっ……ふぐぐぐっ…………んくっ、ぅうっ…………!!」
7、8回目の絶頂までは、入宮もかろうじて普通に座っている姿を保っていた。
ただそれが9回目を超えたころから、あからさまに乱れていく。
両手はソファの縁を掴むようになり、顔は歯を食い縛ったままソファの背もたれに埋まりこみ。
脇腹から汗が伝いはじめたのもこの頃からだ。
そして、多分15回目の絶頂時。入宮の膝がそれまで以上に強く擦り合わされて、脚は閉じたまま爪先立ちするようになった。
相当深い絶頂だったんだろう。数秒間ぶるぶると痙攣が続いた後、今度は一気に弛緩が来た。
入宮の首筋からも肩からも手首からも力が抜けて、それまで閉じ続けていた脚も、菱形にだらしなく開く。
「はい残念、ご開帳ー。」
瀬川は入宮が脱力した瞬間、遠慮なく茂みの下……膣に指を捻じ込んだ。
「あかっ!!?」
挿入感で覚醒したのか、入宮が叫びながら下腹辺りを見下ろした。しまった、という想いがありありと見て取れる顔だ。
ただ、もう遅い。完全にペースは瀬川のものだ。
「おっぉぉ、さすがはバリバリの運動部、すげぇキツさだ。ヘタ打ちゃ指が折れちまいそうだぜ。
だが散々クリ逝きさせただけあって、グチョグチョなのがまた…………っと、見つけたぜ。ここが、てめぇのGスポットだな?」
膣に挿れた指を少しずつ奥に進めながら、瀬川が囁きかけた。
「…………っ!!」
入宮の目元がピクピクと痙攣する。どうやら、憤っていても返す言葉がない時の癖らしい。
俺が見てきた彼女は、不満があればいつでも誰にでも直球でぶつけるタイプだったから、そんな癖を見るのは初めてだ。
「いくらおぼこいっつっても、今日びの女子高生なんだ、Gスポットぐらいは聞いた事あんだろ?
膣の浅い所にある、ここだ……自分でもしこりが感じられるだろうが。ここまで膨れてんのは、相当感度が上がってる証拠よ。
ここをイジメ抜いてやりゃあ、女って動物はイキまくるんだ。てめぇはガキの上に血の巡りがいいからよ、軽くぶっ壊れるかもしんねーぜ」
瀬川はその言葉を残して口を噤む。責めに没頭する気だ。それを受けて、伊田もまた乳房への責めを激しくする。
入宮の喉から、あ、と高い声が漏れ、ソファに沈む腰が浮いた。
「うああああーっ、ああ、あああああっ!! ああっ、はあぁあああーーっ!! くっはぁあぁっ、んあああーーーーッッ!!!」
クリトリスとGスポット、そして乳房。3つの性感帯を同時に責められて、入宮は中年男達の望み通りに壊れていた。
もう脚を閉じる余裕なんてない。脹脛をソファに密着させたまま、カエルの様な脚の形で何度も絶頂することもあった。
かと思えば片足を床に下ろし、片足の裏をソファに載せて、力いっぱい力みながら潮を噴き散らすこともあった。
高校指定のスカートは皺だらけになりながら捲れ上がり、ショーツは愛液と潮で肌色に透けていく。
さすがに疲れたのか、瀬川がショーツから指を抜いた頃には、中々にひどい入宮の姿があった。
片足はソファの上でくの字に折れ、片足はソファ前方に投げ出されの大股開き。
ショーツは伸びに伸びてぐちゃぐちゃのあそこをかろうじて覆っている有様。
シャツはまくれ上がって汗で濡れ光った腹を丸見えにし。
両腕はソファの背もたれを逆手で掴み。
挙句顔は汗まみれのまま、閉じた口からシーッ、シーッと痛々しい呼吸を漏らしつつ虚ろな目をしている。
伊田と瀬川はそんな入宮の顔を覗き込んで笑った。
「いいイキっぷりだったな、期待通りだ。さあ、挨拶はこれぐらいにして、シャワーでも浴びようか」
まだまだ先を感じさせるその言葉で、どの女も愕然とした様子を見せる。入宮も当然そうだと思った。だが。
「…………ぅ、うぐ……っく…………!」
入宮はなんと、歯を食いしばって意識を取り戻し、伊田と瀬川を睨んでみせたのだ。
流石は入宮だ。俺は軽く感動すら覚えた。ただ、調教師2人もまた別の意味で燃え上がっている。
サディストの嗜虐心を刺激しても良い事はない。ここでは俯くなりして、大人しく振舞うのが利口なんだ。
入宮への調教は、事実ここからがスタートなんだから。
※
俺は親父の部屋……今や実質的に俺の部屋となっている場所に戻った。
外見こそ純和風のこの屋敷だが、何年か前の改修時にいくつかの場所を洋風に変えている。
トイレと浴室、さっきのリビングと、後は親父の部屋だ。
親父の部屋にはあまり生活感が無い。事情を知らない人間が見たら、詰め所か何かだと思うだろう。
6畳間に本棚が2つと、ベッドが一つ。そして細長い机の上に、地下を監視するモニターが上下4つずつ並んでいる。
俺はモニター前の椅子に掛けつつ、傍らのダンボールから箱買いしたペットボトルを2本引き出して長期戦に備えた。
計8つのモニター内を探すまでもなく、入宮達の居場所には見当がついている。
調教師には偏食の奴が多いが、それは調教にも当てはまり、大抵の奴が独自の調教ルーチンを持つ。
伊田・瀬川の場合は、まず最初に浣腸責めをやるはずだ。
そう思ってモニター5、ガラス戸で仕切られた簡易的なシャワールームの映像を確認すると、やはりそこに3つの人影が見えた。
バスルームの造りはビジネスホテルのそれに似ていて、シャワーが設置され、バスタブもある。ただし、便器は設置していない。
奴隷調教を行う場所である以上、排泄はおまるや洗面器でさせて恥辱を与えるのが基本だ。
もしどうしてもトイレでしたい場合、便意に耐えながら階段を上がり、俺も普段使う屋敷のものを借りる以外にない。
俺はガキの頃から何度も、下腹を押さえながら屋敷をうろつく女を見かけていた。
屋敷内は無駄に広い上、トイレのある場所は奥まった突き当たりだから、初見じゃまず解らない。
『あ、ね、ねぇボク、トイレの場所教えて!!』
彷徨っていた女は、俺を見つけるなり真っ青な顔を輝かせてそうせがんでくる。
勿論俺は教えるんだが、その場所の遠さに女の顔がまた真っ青になり、大抵は耐え切れず途中で漏らしてむせび泣く結果になった。
こんな風だったから、俺は良い大人でも漏らすんだ、女は特に漏らしやすいらしいと、妙な勘違いをしたものだ。
ともあれ、簡素なシャワールームに3人はいた。
まずはいくつかあるタオル掛けのうち、照明とほぼ同じ高さにある一つにタオルで手首を拘束する。
さらにイルリガートルを使って、たっぷりとグリセリン浣腸を施す。
このお決まりのパターンを、やはり入宮も受けていた。
浣腸液の注入には特殊なプラグが使われるため、プラグから伸びたバルーンさえ膨らませれば、自力での排泄は不可能になる。
そうして準備を整えた上で、必死に排泄感に耐える奴隷の身体を弄くり回す。それが伊田・瀬川の常套手段だ。
「うぐ……ぐぐぐ…………はあ……っく………………!!」
入宮の苦しげな声が浴室に反響する。
彼女は内股になりながら、必死に便意に耐えていた。勿論その腹の中には、たっぷりとグリセリン溶液が詰まっている。
濃度は薄いはずだが、何と言っても初の浣腸だ。浸透圧というものに慣れていない腸内は、ものの2,3分で音を上げているだろう。
ただ、何しろあの入宮だ。そうそう音を上げるはずもない。
ただ身体中にじっとりと汗を浮かべ、太腿を細かに震わせながらじっと便意に耐え忍ぶ。
伊田と瀬川は、そんな入宮の苦悶を楽しみながら、文字通り『身体中に』舌を這わせていた。
直立した伊田が上半身を、入宮の足元に蹲った瀬川が下半身を、執念深く。
伊田と瀬川の身体にはそれぞれ刺青が入っている。
伊田は、右肩から背中にかけて蓮の花が。瀬川は、背中一杯に般若の面が。
三段腹の色白デブと浮浪者同然のヒョロ長。服を着ていれば喧嘩しても負ける気のしない二人だが、裸になると流石に怖い。
その二人が、健全そのものの入宮の肌に舌を這わせていく。
髪の生え際から、額、瞼、眼球、頬、鼻腔、鼻筋、顎、首筋から鎖骨、乳房に脇腹、腹筋に臍、腹回り。
デルタゾーンに太腿内腿、臀部、脛に膝、足首から足指の一本一本に至るまで。
勿論、腋や膝裏といった窪みの部分も見逃さないどころか、汗腺から滲む全ての汗を舐め尽くそうとするかのように、何分も吸い続ける。
「ああー美味ぇ美味ぇ。しょっぺぇのに甘ぇ。現役女子高生の新鮮な汁啜るが一番のアンチエイジングだぜ!」
「その通りだ。特に今回の奴隷は一級品だな。染みもくすみもない珠の肌に、絹のような舌触り、舌を押しのけるような弾力……最高だ!!」
興奮気味に下卑た言葉を吐きながら。
その光景はおぞましいの一言に尽きた。ただ、同じ男として気持ちは解らなくもない。
初めて見る入宮の裸は、本気でモデルと見紛うレベルだった。
スクール水着を着けた姿も相当だったが、脱ぐとまた凄い。
釣鐘型の乳房も、背中の筋も、細いウエストラインも、きゅっと上がった尻肉も、健康的に締まった太腿からの脚線も。
どれもこれもが『これこそ完璧なもの』だと思える。
ただ、男はその身体に気持ちよく見惚れていればよくても、入宮自身は堪ったものではない。
「うわっ、うわ、うわぁああっ!! やめ、ちょっ、ちょっと、やめてよっ!! 舐めないで、そんな所ッ!!
いやああっ、やあーっ!! やめてってば、やだっ!!!」
まるで身体中を蟲が這い回っているかのように、伊田・瀬川の舐りから逃れようともがく。
引き攣った顔中が脂汗に塗れている。
もっともその脂汗は、主に浣腸のせいかもしれない。実際入宮の下腹からは、ぐるぐると重苦しい音が響き続けていた。
男二人による舐りが2周目に入った頃、入宮の内股の震えは病的なものになっていた。手首の拘束がなければ膝から崩れていることだろう。
真っ青な顔もガタガタと震え、薄く開いた歯の間からは、出産でもしそうなほど鋭い呼吸が繰り返されていた。
我慢強い彼女とはいえ、もう本当の限界だ。
「………………さ、させて………………」
それまで正面だけを見つめていた入宮が、腋を舐めしゃぶる伊田を見下ろしながら呟いた。
「何だと?」
「させて、おねがい。う、うんち、うんちさせて、おねがいさせてえぇっっ!!」
こういう単語だけで構成された叫びは、本当に便意の限界を迎えた人間の特徴だ。
入宮の限界は明白だが、調教師からすぐにご褒美が与えられる事はない。奴らは懇願を受けたとき、必ず一度は焦らす。
お前のペースでは行動させない、あくまで決定権を持つのは自分だ――そう刷り込む為に。
「“させて”じゃないだろう、“させてください”だ。イヤそもそも、させて下さいって言葉自体が豚にしちゃあ真っ当すぎるな。
お前はこれから、浅ましい尻穴奴隷になるんだ。くさい下痢便をひり出す所を見て下さい、とでも乞うべきじゃねぇのか?」
膝裏をしゃぶりながら瀬川が告げると、入宮の顔が凍りつく。
「…………ぇ…………?」
極限の便意のせいか、呆けたような声を漏らす入宮。こうして奴隷が弱っている時に畳み掛けるのが、調教の基本らしい。
「え、じゃない。“くさい下痢便をひり出す所を見て下さい”だ、言ってみろ!!」
伊田が入宮の髪を鷲掴みにし、大声で怒鳴りつける。普段は教授気取りの喋りをするくせに、こういう時の恫喝はヤクザそのものだ。
普段インテリと思わせているだけに、その豹変振りにはどんな女でも度肝を抜かれる。極限状態ならば、尚のこと。
「ひっ!」
入宮もそうだった。瞳孔が収縮し、左右に惑う。ピンク色の唇が細かに震える。
葛藤しているのか。いや、そんな余裕はない筈だ。根源的な欲求を完全に封じられた動物に、選択肢などないんだ。
「…………………く、くさ…………い…………」
入宮の唇から、命じられた通りの言葉が紡がれ始める。頬を伝う大粒の涙と共に。
「…………くさい、げりべんを…………ひっ……ひり、出す、ところを…………み、み……て…………ください……………!!」
「フフフ、惨めな哀願だ。華の女子高生に、そうまで女の尊厳を捨てられては許すしかないな。
これからも排便する時には、そうやって許可を得るんだぞ」
宣誓が済んだところで、伊田がバルーンを拾い上げた。同時に瀬川も、入宮の肛門の後ろに桶を構えた。
伊田の指が空気を抜くボタンを押し込んだ直後、シューッという漏れ始める。そして音が終わるより早く、バルーンが弾け飛んだ。
そこから起こるのは、屈辱の排便だ。
だばばばばば、という音と共に、桶の底へと凄まじい奔流が叩き込まれていく。
あの入宮が、おそらくは生まれて初めて晒す排泄姿。
女が排便する姿などとうに見飽きている筈なのに、今はそれが未曾有の異常事態に思えてしまう。俺も現金なものだ。
「…………う、うっ…………くっ、うくっ、くうっ…………!!」
ひとしきり排便を終えた後、入宮は嗚咽を始めた。その心中は察するに余りある。
だが調教師の2人だけは笑みを消さない。それどころか、むき出しになった粘膜のような奴隷の心に、あえてヤスリを掛けていく。
盥を持ち上げながら、入宮の耳元に何かを囁く瀬川。その直後、入宮の瞳が怒りを露わにした。
「よ、良くいうよ。あんたがさせたんでしょ、こんな…………最低なこと!!!」
入宮は渾身の力を込めて瀬川を睨みつける。だが瀬川の凶悪な笑みを目にした瞬間、その表情は凍りついた。
「何言ってんだ。まだまだ先があるんだ、今から最低なんて大それた言葉を使うなよ。
500ミリ程度じゃあ物足らんだろう。いくらでもお代わりはあるんだぜ」
瀬川は再びバルーン付きの栓を持ち上げる。引き攣った入宮の顔を楽しみながら。
そこからはまた、浣腸責めが繰り返される。
二度目の注入時には、身体を洗うという名目で入宮の身体中が撫で回された。
晒された両腋で石鹸がこれでもかと泡立てられ、乳房が揉みしだかれ、尻肉から太腿にかけて何度も手の平が這わされた。
「んんん゛んん゛っっ…………!!」
便意からかくすぐったさからか、入宮の全身の筋肉が収縮し、痙攣する。
「どうだ、もう出してぇんだろう。また惨めったらしくおねだりしてみろ、ぶち撒けさせて下さいってよ」
体中を撫で回す瀬川がそう囁きかけても、入宮は俯いていた顔を上げ、汗びっしょりで睨むだけだ。
まだ完全に参っているわけではないらしい。
「生意気な顔だ」
伊田はそう囁きつつ、入宮の股に手を潜り込ませる。
「あっ!?」
入宮が叫んだ時には、もう伊田の指先は膣に入り込んでいた。そこから円を描くように刺激を始める。
それに合わせ、瀬川もまた釣鐘型の乳房を鷲掴みにした。リビングでの責めとは逆の配役だ。
二人ともが激しく刺激はせず、石鹸に塗れながらゆるゆると刺激を続けている。
これまでの調教記録を見る限り、意外にそうした責めの方が、女を絶頂させる際に有効らしい。
おまけに今は、たっぷりと浣腸を施した状態だ。そこに来てのゆるい責めは、腸側の蠕動と同調して女を狂わせる。
「やめてっ、やめてぇーっ!! ひぃっ、いまはだめぇっ!!!」
震えるような声で入宮が叫び、手首と繋いだタオル掛けが音を鳴らす。それでも……いや、だからこそ、男達は指を止めない。
親指での陰核責めと併せてゆるくゆるくGスポットを舐め回し、入宮に2回潮を噴かせる。
汗に涙、鼻水、そして愛液。それらに塗れ、刻一刻と酷い状況になっていく入宮に対し、伊田も瀬川も何かを耳元に吹き込み続けていた。
風呂場のマイクの場所が悪いのか、内容は聴き取れない。
だがある時は激昂し、ある時は視線を彷徨わせる入宮の様子から、おおよその内容は把握できる。
そうした苦痛と恥辱の果てに、入宮は二度目もまた、泣きじゃくりながら排便を乞うのだった。
三度目の時には、伊田が執拗にキスを強要した。
何しろ伊田は口臭のきつい男だ。入宮は何度も身を捩り、頭を振ってキスを拒む。
しかし、しなければ排泄させないと脅され、仕方なく受け入れた。
そして、伊田が入宮の唇を奪う。モニター越しにそれを見た瞬間、俺は思わず机を叩いていた。小指の骨が軋む。
俺が長い間憧れ続けていた事を、あんな気持ちの悪い奴がやっている。そう思うと胸がざわついた。
キスは絵面は完全に、一度もモテた事のないブ男が女子高生を襲っているというものだ。
頬に凹凸を作りながら舌を絡め、零れるほどに唾液を交換し、歯茎や上顎までを丹念に舐め回し。
その全てが気色悪い。当然、やられている入宮だってそうだろう。
入宮は強引に口の形を変えられながら、強い瞳で伊田を睨み続けていた。
一方の伊田は、俺と視線を合わせない人間とは思えない目力で、入宮の視線を真正面から受け止めて笑っている。
そしてキスを強いる一方で、執拗に下腹を揉み下してもいた。浣腸された状態でそれをやられては堪らない。
「えう“っ、えれ“う“っ!! えう“-っ、ほおえ“あ゛ぉおーーーっ!!!」
入宮は伊田と舌を絡ませながら、何度も排泄を訴えた。だが伊田は、その全てを強引なキスで封じ続ける。
そのまま、数分。流石にやりすぎだ……俺がそう思い始めた頃。
「いいがげっにてよおおおおッ!!おぉ゛だめっで、らっどもらっども、ずっどいっでるのいぃ゛っっ!!!
らべっ、あびゃぅ、あびゃぐうあくだざっでほおおおお゛っ!!!!」
頭を振ってキスから逃れた入宮が、涙ながらに涎を撒き散らし、言葉にならない叫びを発しはじめた。
だが伊田にしてみれば、それがまた刺激的だったらしい。
バルーンを萎ませて排便を許しながらも、ひり出させている最中にまた入宮の唇を奪う。
あまりの状況に混乱した入宮が、伊田の喉の中で恥辱の呻きを上げつづける様は異様だった。
そして四度目の時には、瀬川によってフェラチオが強いられた。あえて栓を使わず、手の拘束も解いて。
「咥えろ。イカせたら出させてやる」
そう言って瀬川が突き出した逸物は、改めて見ると恐ろしくデカい。ごく平均的な俺の物より3回りは上か。
おまけにそのデカブツには、いつ洗ったのかというほどびっしりと恥垢がこびりついている。
普段の入宮であれば、その不潔さに烈火のごとく怒り出したことだろう。
だが今の彼女は、3度に渡る浣腸と強制排便で、心身共に疲弊しきっていた。
「うぅ…………あ、あぅあ…………」
膝から崩れ落ちた格好のまま、呻きながら顔を上げる。
そしてさすがに数秒ほど躊躇いながらも、渋々といった様子で奉仕を始める。
俺はまた机を叩きそうになるが、さっきの小指の痛みを思い出して何とか思い留まった。
入宮は左手で逸物を掴みながら口内に迎え入れ、必死に舌を使っていた。だがその責めは、かなり拙いものらしい。
「うはっ、こーりゃヒデェ。小学生ってんならともかく、高校でここまで知識のねぇ女は初めてだ。
テメェよお、部活一筋だか何だか知んねぇが、今時フェラチオすら満足に出来ねえ女子高生なんざいねぇぜ?
さんざっぱら他人の事を非常識呼ばわりしてたがよ、テメェ自身が時代錯誤の塊じゃねえか。
……ったく。いくら素人嗜好っつても、こんなの納品した日にゃあいい笑いモンだ。
こうなりゃ俺がイチから教え込んでやっから、その通りにやれや。逆らったり間違えた日にゃ小便飲ますぞオラッ!」
入宮の汗でしなびた黒髪を鷲掴みにして怒鳴る瀬川。
俯きがちな入宮の表情は窺えないが、どんな表情をしていたにしろ、従う以外の道はない。
そこから、フェラチオ調教が始まる。
瀬川は入宮の側頭部を鷲掴みにして抽迭をコントロールしながら、唸るような声で繰り返し指示を出していた。
――カリ首の膨らみに沿って三周舌を這わせろ。そう、そのキノコの傘みてぇな部分だ。
――鈴口から滲み出た先走り汁を啜れ。俺の体から出た汁は、一滴残らず腹に溜めろ。
――唾液をまぶせ。もっとだ。えづき汁でもいい。出ないなら出させてやる。奥を突くから、喉を開いてじっとしていろ。
――吐くな。吐くんじゃねぇ。そのえづき汁をまぶせ。全体にだ。そうだ……それを潤滑油にして、前後に頭を振れ。
――根元まで咥えこめ。なんだ、もう入らねぇのか。減らず口が多い割にゃ、チンケな口マンコだなぁオイ。ま、しゃあねぇ。俺のブツはデケェからな。
――オイ、何休んでる。根元まで咥えこめって指示は消えてねぇぞ。クチに入りきらねぇなら、喉にも入れてやる。行くぜ。
――さっきみてぇに喉を開け、息は鼻でしろ……っと、おら嵌まったぜ。ははっ、喉がビクンビクンしてやがら……っ、待て、こいつ!!
――あーあーあー、吐きやがってバカが。にしても、また汚ねぇえづき声だったなぁ今のァ? 流石にあんな声出す女と知れたら、誰もテメェにゃ告らねぇよ
俺は柄の悪さの滲み出たそういう恫喝を聞きながら、思わず目を覆っていた。
今まで何人もの女の調教映像を見て、散々オカズにしてきていながら虫のいい話だと思う。
過去の罪だけじゃない。今も俺は勃起している。制服のズボンは三角に尖り、トランクスの先は先走りで濡れている。
それでも俺は、初恋の相手が悶え苦しんでいる場面を、それ以上見ていられなかった。
目を覆っても、耳から情報が入ってくる。
じゅぶっじゅぶっという、下手なAVよりも下品なフェラチオの音。水気たっぷりに喉奥を掻き回す時の粘ついた音。
ケおっ、こおっ、という、喉奥の刺激に慣れていない子に特有のえづき。腹を下した時の雷のような音。
ぷはっと空気を求める声がした後には、酸素を求める荒い呼吸が続くものの、3秒と間を空けずにくぐもった呻きに変わる。
最後の方は悲痛なえづき声ばかりが連続し、そのえづきが特に低くなった直後に、決壊の声が響きわたる。
上品さの対極にあるような声。男が出したものと言われた方がしっくりくる、胃から搾り出したような濁りきった呻きだ。
俺はその声に、とうとうモニタ5に目をやってしまう。そこには決壊直後の同級生の姿があった。
縋りつくように右手で瀬川の太腿を掴んだまま、左手で下向いた口を押さえる入宮。
その左手の指の間から次々と黄色い吐瀉物が零れ落ち、彼女自身のむちりとした太腿にも滴りながら床に広がっていく。
よく見れば、膝立ちになった彼女の肛門の間からも液体が滴っており、出口側も限界を迎えていた事が見て取れる。
俺はその映像を見ながら、暗く沈んだ気分でいた。
脱力したように椅子に深く背を預け、妙な倦怠感からそのまま眠ってしまおうかとも思った。
だが、瀬川が漏らした罰として入宮に命じた内容を耳にし、考えが変わる。
『そいつを上のトイレに捨てて来い』
そう言って瀬川が指差したのは、入宮自身の汚物を受け止めた桶だ。
自分の排泄したものを持ち歩かせ、家人のいる屋敷内を延々と彷徨わせる。伊田・瀬川組の定番の仕置きの一つだ。
汚物を手に彷徨う時間が長くなるほど、奴隷はその尊厳を腐らせていく。
伊田と瀬川が調教初日に強制排便を繰り替えさせるのは、プライドの高い女を大人しくするのに、汚物責めが最も効果的であるがゆえだ。
逆に言えば、あの二人の悪意を直撃させればさせるほど、入宮の心は壊れやすくなってしまう。
そう思うと、俺は居ても立ってもいられなかった。考えるより先に部屋の扉を開け、地下から出る道へ向かって歩みを進めた。
今やっていることは、ひょっとしたら悪手なのかもしれない。
同級生に汚物を手にした姿を見られるのは地獄だろうし、何と声をかければいいのかも定まっていない。でも、何かしないとと思った。
※
秋口とはいえ、8時をとうに過ぎた時間の廊下は薄暗い。その廊下をしばらく行くと、向こうからも人影が向かってくる。
モデルのようにほっそりとしたシルエット。間違いなく入宮だ。
ただ、桶の中を見つめたまま、半ば死んだような表情で俯くその歩き姿は、まるで彼女らしくはなかった。
「トイレは、こっちじゃないよ」
俺がそう声を掛けると、入宮の足が止まった。そしてゆっくりと顔を上げる。
表情は暗かった。
唇から顎にかけての乾いた吐瀉物の痕が、さっきの映像は紛れもない現実なのだと物語る。
「……………………。」
入宮は虚ろな瞳を俺に向けたまま、じっと佇んでいた。
その状況に至っても、かける言葉が見つからない。言葉が出ないって事は、何も言うべきじゃないって頭が理解してるんじゃないか。
じゃあ、何でここに出てきた。わざわざ彼女の無様を見て、追い討ちを掛けるためか?
違う。トイレの場所を教えるためだ。なら、それだけ伝えればいい。それだけを伝えて、この場を去ろう。
俺はしょせん部外者。関わらない方がいい。
俺はそう結論を出して、何度も他の『奴隷』にしたように、トイレまでの道順を説明する。物悲しげな虫の声を聞きながら。
「わかった」
入宮は暗く沈んだ瞳でそう呟く。疲弊しきった表情は、薄暗さのせいもあって怖いぐらいだ。
その表情が、俺の心を抉った。
だから、だろうか。彼女が背を向ける気配を感じ取った瞬間――俺は無意識に、何かを口走っていた。
「お、俺っ! 今でも、入宮が好きだ。…………き、綺麗だと思うし、本当に、凄いと思う。
だから、その…………上手く言えないけど、頑張って」
何とも漠然とした、何とも歯切れの悪い台詞だ。こんな事を言ってどうする。傷口に塩を塗り込む言葉だったらどうする。
でも、言ってしまった。恐る恐る窺う入宮の目は、ほんの少し大きさを増したようだ。
しばらく、廊下が静まり返った。虫の声だけが変わらずに聴こえていた。
静寂を破ったのは、俺自身の喉を鳴らす音だ。
固まったまま冷や汗を垂らす俺を前に、入宮は二つ瞬きをしてから、辛そうに顔を歪めた。
背中を冷たい汗が伝う。
「ごめん。あたし今、頭ぐちゃぐちゃでさ。何て答えればいいか、わかんない」
その言葉を残し、入宮は今度こそ踵を返した。
「あ、いや。俺の方こそ、ごめん!」
俺はもうほとんど泣きそうになりながら、反射的に謝罪を口にした。その言葉は、果たして入宮に届いたのかどうか。
彼女は俺に背を向けて歩き出し――数歩ほど先で足を止める。
「…………でも」
心なしか、さっきとは違う声色。
「嬉しかった。ありがと」
時間にしてほんの2秒の一言。それを発した後、入宮の後姿は俯くのをやめた。背筋を伸ばし、視線を前に向けて歩み始めた。
その凛とした歩き姿は、紛れもなく俺の憧れた入宮知佳だ。
※
「ンだ? こいつ、眼の光が戻ってやがんぞ」
「ふむ、意外だねぇ。完全に心折れるかとも思ったが……マゾヒズムに目覚めたか?」
入宮が地下に戻った時、伊田も瀬川も驚きを露わにした。
それもその筈だ。地下から出て行くときには半ば死んだような眼をしていた『奴隷』が、帰ってきた時には前を見据えていたんだから。
「あんた達の知った事じゃない。それより、もう夜も更けたみたいだけど、この遊びっていつまで続くわけ?
夜更かしって肌に悪いから、早く寝たいの。あんた達だって、あたしの商品価値が下がったら困るんでしょ」
男二人を睨み据えながら、憎まれ口を叩いてみせる入宮。やられたらやり返す、いつもの彼女だ。
その豹変振りに、流石の伊田達も面食らう。ただ、あくまで一瞬だけだ。
連中にもプライドがある。調教師を名乗る身として、奴隷に言わせたままでは終わらない。
「言うねぇ。吐く物吐いて、舌の滑りがよくなったじゃねぇか。だがよ、いくらレディーから豚に成り下がるっつっても、慎みは失くすもんじゃねぇぜ。
『1の反抗には3の折檻』。それが俺らのポリシーよ。身の丈一杯に噛み付いたが最後、テメェの容量限界の3倍痛めつけられるワケだ」
瀬川はドスの利いた声を出しながら、入宮の顎を摘み上げた。
射殺すような視線がぶつかり合う。
「おい。そういう眼がヤベェって話を、今俺はしてんだぜ……? 下らねぇ反抗心を出すたびに3倍返しだ。
勿論、身の丈3つの折檻を一気にやるとブッ壊れちまうからよ、負債は分割払いで返させてやる。
言う事さえ聞いてりゃあ平和なフェラチオ練習で済んだモンが、開口具越しに俺の極太咥え込まされて、ゲロ吐き散らしながら泣き喚く地獄に早変わり。
大人しくしてりゃあベッドでぐっすりだった休養日を、一晩中アナル犯し抜かれて脂汗まみれで過ごす破目になったりもする。
そこまでまるっと覚悟の上での、苦い苦ーいトリプレッソをご所望ってんなら、喜んで提供するぜ」
負債……その言葉選びは故意なのか。親の借金が原因でここにいる入宮に対して、あまりにも無神経だ。
当然、入宮の表情はさらに険しくなる。
「ふーん……確かにそれは、ちょっときついかな。あんた達って、女の子にダメージ与える天才だもん」
その入宮の言葉に、伊田が眉を顰める。
「ほう、これは意外な高評価を貰ったものだね。して、その心は?」
「心もなにも、本心だよ。だってあたし、あんた達の顔見ただけで卒倒しそうなんだもん。おまけに二人揃って臭いしさぁ。
さっきはお風呂場で吐いちゃってごめんね。あれ、喉が苦しかったんじゃなくて、あんまりにもアレが匂うから、つい戻しちゃったんだよね。
女子高生のフェラチオ経験がどうとか聞こえたけど、あんなのしゃぶれる子なんていないと思うな。
援交で100万円積んでお願いしても断られるレベルだよ。あ、もしかして、だからこんな仕事してるの?」
嘲りを含んだ入宮の言葉は、調教師二人を凍りつかせる。
モニター越しにでも判る、火花の散るような睨み合い。入宮が大事な『商品』である以上、流血沙汰はないだろうが、危険には変わりない。
さすがに止めに入るべきか。俺がそう思い始めたところで、瀬川が立ち上がった。
俺も、入宮も身を強張らせる。
しかし瀬川は、意外なほど冷静な眼をしていた。
「チッ、下らねぇ。テメェみてぇな小便臭ぇガキの挑発に乗るほど、こっちもイノシシじゃねぇんだ。
……だがよ、これだけは忘れんな。テメェ今、『負債』を一つ抱えたぜ」
インテリヤクザの本性を表した伊田にもゾッとしたが、怒りを超えて冷静になった瀬川も想像以上に恐ろしい。
闇を抱えている事は前から解っていたが、これはヘドロのように底が見えない闇だ。
モニター前の俺はただ、そのヘドロに首まで浸かった入宮の身を案じるしかなかった。
※
「へへへ、いい格好じゃねぇか。ケツもマンコも丸見えだぜ」
入宮を見下ろし、瀬川が嘲笑う。入宮は畳に頬を付けながら奥歯を噛みしめていた。
入宮に施されているのは、胡坐縛りという緊縛だ。
両の乳房を搾り出されながら後ろ手に縛り上げられた挙句、下品に胡坐を掻く姿勢で固定される。
座っているだけでも惨めだが、一度尻を突き上げて這う格好にされたが最後、あそこや肛門が丸出しになり、おまけにそれを隠せない。
それどころか横に転がる事さえ叶わず、完全に無力な状態で恥を晒し続ける事となる。
この胡坐縛りは女にとって最も屈辱的な格好らしく、江戸時代の女囚などはこの縛りをされただけで羞恥のあまり罪を認めたらしい。
そうした説明を、瀬川が入宮に対して行っている。
責めの持つ意味を奴隷自身に認識させつつ、『買い手』達へ向けて解説するために。
一通り言葉責めを終えると、瀬川は入宮の足元に膝をついた。
そして形のいい双丘に手をかけ、ゆっくりと揉みしだきはじめる。
「くっ……て、手つきがやらしいよ、変態!!」
入宮の罵倒にも、瀬川が動じる様子はない。
「上の口は下品だが、ケツの穴はまたえらく可愛いもんだな。ここまで鮮やかなピンクってなぁ珍しいぜ。
おまけにこの、ケツ自体の弾力もたまらねぇ。運動部の女を嬲る時の最高の楽しみだな。
こういう引き締まったケツは、丁寧に揉み込んでやると大層な性感帯になんだよ。チチの時と一緒だ。
だからよ。今日はこっからたっぷりと時間をかけて、ケツの穴と尻肉をほぐしてやる。
肛門の皺を一本ずつ舐め上げて、真ん中の穴に舌を突っ込んで、ツバ塗りこめて、そのツバ啜って……徹底的に舐めしゃぶってやる」
瀬川のこの宣言は、明らかに脅しじゃない。心の底からやりたがっている声色だ。
入宮もその気配は感じている筈だが、彼女とて退けない。
「ああそう、せいぜい頑張ってね。ぬるい責めだったら、あたし、きっとこのまま寝ちゃうから」
頬をつけていない方の眼で瀬川を睨みながら、言い放つ。
その言葉にくっくっと笑いを漏らしたのは、それまで傍観に徹していた伊田だ。
入宮の鋭い視線が伊田に移る。
「いかんいかん、私が笑うべきではなかった。だが、おかしくてな。そこにいる瀬川は、こと菊門舐めにおいては無二の傑物だ。
技術もそうだが、何といっても執念が凄い。同じアヌスを一日中でも犬のように舐めていられる調教師は、そうはおらん。
淡いピンク色をしたおまえのアヌスを一目見た時から、いかにも奴好みだと思っていたよ。
色素沈着の少ない、美しい排泄器官を持って生まれた事を悔やみたまえ」
伊田はそう宣言しながら、腰を落として入宮の顔を覗きこむ。
「断言してもいい。おまえは、瀬川の菊門舐めで女を濡らす。
たとえ今日を耐えても、奴はけだものだ。暇さえあれば一日中でも、好き好んでお前のアヌスを舐めしゃぶるだろう。
こんな話もある。奴は私と組む前、タイに輸出するシーメールの調教を受けた事もあってな。
そのシーメールは、縛られたまま瀬川にアヌスを舐められ続けて、たった一夜で22度の射精に至った。
当然と言うべきか、“彼女”の脳は快感で焼き切れて、未だに自分の名さえ思い出せないらしい」
「へっ、古い話を持ち出しやがる。だが勘違いするな。俺があの調教を受けたのは、ヤツが並の女が霞むぐれぇの美形だったからよ。
だがまぁ、所詮は昔話だ。今はこのクソガキにしか興味が持てねぇ。
ケツもいい、脚もいい、おまけに現役女子高生ってぇステータス付きだ。生意気(ナマ)言うところも嗜虐心を煽られるしな。
こんだけ肛門舐めやってっとよ、自分がこれからどんだけ没頭できんのか、何となーく判んのよ。
その勘から言やぁ……あのニューハーフを狂わせた夜より、もっと滾るぜ俺ァ」
瀬川のこの発言もまた、誇張ではなさそうだ。
入宮の痴態を映すモニターとは別の一台に、瀬川の醜悪な笑みがありありと映し出されている。
無精髭の生えた涎塗れの口周りに、何度も何度も舌を這わせながらの笑み。
そんな奴に肛門を舐められるなんて、考えただけで頭がおかしくなりそうだ。
「ひどい顔。見るからにヤク中だよ。あとさ、せめてヒゲぐらい剃ってくれない?」
入宮は気丈に瀬川を睨み上げて意地を示すが、その引き攣った頬には流石に不安の色が見えた。
「ご名答、脳内麻薬でギンギンにキマってんぜ。お前にもじきに分けてやる。
それにヒゲもな、このジョリジョリ感が癖になるってぇもっぱらの噂だぜ? ま、味わってみろよ」
瀬川はその言葉を最後に、目の前の肛門へ顔を近づけた。カメラの位置が悪くてよく見えないが、音からして舌を這わせているのか。
「気持ち……わるいっ!」
入宮の心底からという感じの声が響きわたる。
こうして、地獄の肛門舐めは始まった。
伊田と瀬川は、数いる調教師の中でも毛色が違う。
この屋敷で調教を行った他の調教師や、板間さんからボーナスとして貰った調教記録を見るとハッキリする。
調教師は年中女の調教ばかりしているだけに、女に対するギラつきは枯れている事が殆どだ。
だから効率最優先で女を昂ぶらせ、絶頂させ続けて快楽に慣れさせ、調教終了、出荷と機械的に進んでいく。
だが、伊田と瀬川はそうじゃない。
奴らだけは年中女に触れていても、童貞を思わせる脂ぎった欲望を微塵も失わない。
思春期真っ盛りの健全な高校生である俺さえ、奴らの調教映像を見ているだけで、いい加減食傷気味だというのにだ。
特に調教対象が若くて美しいとなれば、奴らは一日中でもその身体中を舐りまわす。心から愉しそうに。
男二人からそれだけの執念を受け続けると、どんな人間でも変わってしまう。
『もう触らないで、おかしくなる!!』
奴等の調教を受けた女は、調教終盤に取り乱した様子でそう叫ぶ事が多かった。そしてその言葉がでた数日後、本当に狂ってしまう。
他の調教師を宛がわれた娘が、気持ちいいと言いながら幸せに出荷されていく一方で、
伊田と瀬川に欲望を塗り込められた娘は、快楽を貪ることしか考えられないけだものとして出荷される。
それが『買い手』に喜ばれるのかは知る由も無いが、奴らがこの屋敷で常連となるほど仕事を任されている以上、評価はされているんだろう。
中でも、瀬川のアナル舐めの執念には怖気が走る。
奴は入宮の尻肉の合間に顔を埋めたまま、もう20分以上も顔を離していない。
畳エリアのカメラは瀬川の背中を斜め後ろから撮る形のため、責めそのものは見えない。ただ、音だけでその入念さが窺い知れた。
ぴちゃぴちゃというわざとらしい水音と、それをずぞぞぞーっと啜り上げる音が繰り返される。
たまに音が止んだ時には、必ず瀬川が入宮の尻を鷲掴みにしたまま、頭を小さく左右に揺らしている。多分、肛門の中に舌を入れているんだろう。
入宮は、角度的に胡坐縛りされた脚と左肩の辺りしか見えないが、啜る音と舌入れの時には、必ずといっていいほど内腿に筋が走った。
無駄な脂肪のほとんどない脚だけに、力が込められた時の筋もくっきりとして深い。
――俺が見てたあの試合でも、ドリブルで切り返すたびに、ああして筋が浮いてたのかな
思わずそんな妄想をしてしまうくらい、妙な色気がある。そしてそれは、誰より瀬川が特等席で感じているはずだ。
そう。背中の般若を歪ませて舐めに没頭する奴には、全て伝わっている。入宮の体温も、匂いも、味も。
多分少し苦しょっぱいだろう肛門に舌を捻じ込めば、尻を鷲掴みにした手の平と頬に、ゴムのような筋肉の張りが感じられることだろう。
延々と顔を尻肉に埋める様は不気味この上ないが、奴の心中だけは生々しく伝わってくる。
アナル舐めを続ける中で、奴の浅黒いペニスが徐々に固さを増し、今や天を突くほどに勃起しているからだ。
興奮しているんだ、奴は。入宮の排泄の穴を舐めしゃぶって……。
駄目だ、変な事ばかり考えてしまっている。ほんの少し羨ましさまである。ふざけるな。入宮を辱める行為なんだぞ、あれは。
「顔を上げなさい」
まるで俯く俺に投げかけられたような音声で、俺はモニターに視線を戻した。
映像の中には、這う姿勢のまま首を起こした入宮の眼前で、ハンディカメラを構える伊田の姿があった。
そして直後、瀬川も動きを変える。尻肉に皺が寄るほど鷲掴みにし、首を大きく左右に振る。舌入れだ。それも多分、かなり深い。
「うあっ!?」
受ける入宮も堪らなかったんだろう。アナル舐めが始まって以来、初めての声を上げてしまう。
「いい顔だ。しっかり撮れているぞ」
伊田は笑みを浮かべながら、入宮の顔にカメラを向けていた。
「成人もしてない子供の苦しむ姿が、そんなに面白いの? さっさと頭の病院に行きなよ」
そう恨み言を返す入宮の耳は赤らんでいる。多分、頬や鼻頭はもっとだろう。
「勘違いはやめたまえ。これはホームビデオのようなものと言っただろう。あくまで、在りし日の記録だよ。
おまえはあと何週間もしないうちに、その気丈な顔ができなくなるんだ。
私達がアナルを舐め、ほじくり、犯すたびに、浅ましい絶頂顔を浮かべるようになる。
そう成り果ててしまってからも過去の自分を振り返れるように、こうして記録に残しているんだ。
見目のいい豚ほど、昔の自分を懐かしむ。まあ、過去との落差にショックを受けて壊れるケースもあるがね」
伊田の発言の最中にも、瀬川は執拗に舌を送り込み続けているようだった。入宮の脚に何度も筋が浮く。
「どうした、瞳孔が収縮しているぞ。息もイヌのように荒いな。まるで、感じているようだ」
伊田が囁くと、入宮は顎を引いた。
「はっ、はっ…………バカじゃない? お尻の穴なんか、いくら舐められても、感じるわけないでしょ」
一言ずつ吐き出すような入宮の言葉を、伊田は薄笑いで受け止める。
「そうでもない、肛門は立派な性器だ。例えば赤子には肛門期といって、排便に快感を感じる時期がある。
この感覚は成長と共にあまり意識されなくなっていくが、無くなるわけではない。つまり肛門は、歴とした性感帯だ。
そこを舐められて快感を得ること自体は、ありえない話ではない。
もっとも、『ケツ穴を舐られて浅ましく濡らす女』という事実は変わらんがな」
論理的に逃げ道を封じられ、入宮の髪が細かに揺らぐ。
と、ここでようやく、瀬川が肛門から顔を離した。ぷはっと酸素を求めながら、達成感のある表情で天を仰ぐ。
思わず視線のいく肛門は――かなり、変わっていた。
少し前の映像ではまさに菊の華という感じの慎ましさだった肛門が、ぱっくりと開いている。
中指がそのまま入りそうなぐらいの穴。おまけにその穴の周囲の輪も、充血して赤く膨らんでいるようだ。
「くくくっ。まったくよ、自分の勘の良さが恐ろしくなるぜ。よお伊田。こいつはすげぇ、凄すぎるぜ。やっぱ最高のアナルだ!
尻回りの筋肉も、股関節の筋肉も、パンパンに鍛え上げられてやがる。
ここいらが鍛えられてっと、括約筋の締めも良くなるんだ。おまけのその肝心要の括約筋が、またよく伸びる。
俺はよぉ、感動しちまったよ。こんなアナルなら、一年中でも舐め続けられるぜ」
瀬川は入宮の肛門の縁に親指を宛がい、左右にひらいてみせた。すると、確かに良く伸びる。
「やっ、やめてよ、変態っ!!」
「つれねぇ事言うなよ。俺だって、テメェのファンの一人なんだぜ。なぁ、桂眞高女バス部のエースさんよ。
8月にあった夏の大会……テメェ目的でわざわざ観戦に行ったんだ。
惜しかったよなァ。残り4秒って時に、テメェのパスを6番が取りこぼさなきゃ、まず逆転出来てたろうによ」
瀬川が放った言葉に、入宮の目が見開かれた。俺も度肝を抜かれる。
「驚く事ァねえ。俺ら調教師にゃあ、2ヶ月以上前に獲物の情報が知らされんだ。下調べ用の期間としてな。
調教相手の普段の生活やら、癖やら弱みやら……それを知ってんのと知らねぇのとじゃ、調教のしやすさが違うのよ。
そこの似非インテリ野郎は、どこぞで仕入れた情報を組の女相手に試すばっかだったが、俺はマジメにテメェを張ったぜ。
俺が見ただけでも、3人に告られてたな。茶髪ロンゲと癖毛メガネ、あとマルコメ君だよ。しかも全員、速攻で振られちまった」
堰を切ったように語り始める瀬川。
「だから何? ストーカー野郎」
それを見上げる入宮の目頭には、汗が伝っていた。
「ひひっ、これだ。あの坊主共も、こんなキツイ女選んだのが運の尽きってもんだが、ま、ガキも盛るわな。
何せテメェは、あの学校ン中でも抜群に美味そうなカラダしてっからよ。
俺も毎日、車ン中からテメェの脚を見てたぜ。ケツと太腿の形から、いいアナル持ってんのが判んだよな。
こいつを調教できるって思うと勃起してよ、つい昨日まで、猿みてぇにセンズリ扱きまくってたのよ……テメェの隠し撮り見ながらな!!」
感情が乗るあまり声を上ずらせながら、瀬川は入宮の両足首を掴んだ。
そしてそのまま、入宮の身体を180度回転させる。突き出した肛門を天に向けつつ、瀬川と顔を見合わせる方向に。
「くっ…………!!」
潰れた蛙のような格好で瀬川と正対することになり、入宮は奥歯を噛みしめる。
「顎もようやく温まってきた。こっからが本番だぜ……お嬢ちゃぁん」
逆に瀬川は、チロチロと細長い舌を覗かせて嗤った。
そうか。こいつのヒョロ長い身体に、ギラギラした瞳……何かに似ているとずっと思っていたが、蛇だ。
人間にとって、生理的に受け付けないものの代表格である嫌われ者。そして、執念深い危険生物。
「ひっ!!」
蛇に肛門へ吸い付かれ、入宮は小さく悲鳴を上げた。
そこからの光景は、前以上に惨めなものだった。
膝立ちになった瀬川が背中を押さえるせいで、入宮の肛門は完全に真上を向く形になっている。
その状態で太腿を鷲掴みにされ、肛門を舐めしゃぶられるんだ。
映像にしっかりと撮られはじめた瀬川の肛門舐めは、ゾッとするほどに入念だった。
菊輪のふくらみに舌を這わせ、唇で挟み、ずろりと舌で外周を嘗め回してみせ、上下に弾くように舌で舐め上げ、ちろちろとくすぐり、
時には舌を穴の中に浅く突き入れたりしながら、唾液が溜まってきたら肛門に吸い付いてわざと音を立てながら啜る。
そして頃合いを見計らい、尻の窪みに頬骨を密着させながら、かなり深く舌を送り込んでいく。
それを休みなく続けているんだ。
入宮の内腿には相変わらず何度も深い溝が刻まれていたが、そんな事は当然のように思えてしまう。
あれだけ執拗な責めを受けたら、変化があって当然だ。声が出たって、何も恥じるべきことじゃない。
最初の10分くらいだろうか、入宮はピンク色の唇を引き結んで、必死に声を抑えていた。
ただアナル舐めが長引くにつれて、段々と荒い呼吸を抑えきれなくなっていく。
「はーっ……はーっ、はーっ……はーっ…………」
逆さになってもまだ釣鐘型に近い形を保っている乳房の辺りから、首に向けて汗をだらだらと垂らし、喘ぐ。
乱れることなく規則正しい呼吸はさすが陸上とバスケットの経験者という感じだ。
でも、スポーツには酸欠の苦しみはあっても、快感はない。
責めが15分を過ぎる頃には、肛門舐めの最中に、入宮の尻付近がぶるぶると震える事が多くなった。
その変化があると、瀬川は待っていたとばかりに入宮の太腿を抱え込み、尻の窪みに頬骨を密着させる。
「あーー…………っっ!!!」
舌が深く送り込まれる瞬間、入宮は長い声を出す。
内腿には異常なほど深い筋が刻まれ、胡坐縛りを受けた足の指は、親指と人差し指の間が裂けるのではと思えるほどに反り返る。
送り込まれる瞬間だけではない。
瀬川が送り込んだ舌を蠢かすような頬の動きを見せれば、入宮の腰は、嫌がるようにぐらぐらと揺れ始める。
「あっ、ああっ!! あああ、ああっ!! あああっあっあっ……あああ、あ、あ……っ!!!」
この時にはもう、リズミカルな呼吸は出来ていない。運動下手な俺が持久走でやるような、場当たり的な呼吸だ。
「随分と声が出るようになったな。感じているのか」
伊田が、入宮の顔を覗きこみながら問う。俺でも着目するような変化を、調教師が指摘しない筈もない。
「はーっ…………はーーーっ………………そんなわけ、ない………………」
「その割には、随分と息が荒いぞ」
「き、気持ち悪いだけ……さっさと、舌、抜かせてよ…………」
汗まみれで必死に反論する入宮に対し、伊田は、ふん、と納得するような疑問を呈するような、奇妙な声を漏らした。
そして、おもむろに入宮の秘裂へと指を潜り込ませる。
「あっ!?
驚きの声を上げる入宮をよそに、伊田は水音を立てながら秘裂をかき回す。
その後に引き抜かれた指は、全体的に濡れ光っていた。
「濡れているじゃないか」
ヌラヌラと光る指を見せ付けられながら指摘され、入宮は息を詰まらせる。
「…………知らない」
そう答えるしかない。下劣な男に感じさせられた、と認めない為には。
「無理をするな、感じているはずだ。さっきは言い忘れたがな、アヌスには肛門以外にもう一つ性感帯が存在するんだ。
肛門から2センチ奥まった場所に息づく、『歯状線』という部分。此処こそ、アナル性感を最も色濃く感じられる場所だ。
おまえは瀬川の舌で、肛門とこの歯状線を何度も何度も刺激されている。だから、腰が揺れる」
「しらない、知らないったら!! うんちの穴なんかで、あたしが感じる訳ないっっ!!!」
伊田の得意げな解説を、入宮はあくまで否定する。
小学校は男勝りなクラスのリーダー、中学では陸上部の女ボス、そして高校では県内屈指のバスケ部部長。
ずっとそうして、プライド高く生きてきたのが彼女だ。だからこそ、排泄の穴で感じているなどとは認められない。
しかし、その頑なな態度は調教師にとって格好の餌だ。
突っ張り棒をへし折る事こそ、積み重なった自我を崩落させる、最も簡単な方法なのだから。
「ふむ。天地逆さの格好をしているせいか、どうも私とおまえとでは見えている世界が違うようだ。では…………もっと解りやすくしてやろう」
伊田はそう言って立ち上がり、化粧箪笥を漁る。そして、ある道具を取り出した。
黒いゴムベルトの両端に、ステンレス製のフックが2つずつついた器具。何度か見た事がある。
あれは……膣を開いたままにする拘束具だ。
伊田はまずフックのうち2つを入宮の膣に差し入れてから、ゴムベルトを太腿を経由してぐるりと腰に巻きつけていく。
「い、いや、何!?」
「お、お得意のご開帳かよ。好きだねーお前も」
入宮と瀬川がそれぞれ反応するのを無視し、伊田はベルトの長さを調節する。
「おまえは腰が細いからな……この辺りか。ふふ、この位置は久しぶりだ」
独り言を呟きながらゴムベルトを逆側まで到達させ、引き絞りつつ残る二つのフックを膣に引っ掛ければ……ぐぱっと膣が開ききる。
「いやああぁぁぁっ!!」
この時の叫びは、どんな女性であろうと共通だ。戸惑いと拒絶感を反射的に喉から迸らせる。
それはそうだ。斜め四隅に引っ掛けられたステンレスフックがゴムベルトに引き絞られ、秘匿すべき膣を奥の奥まで開くのだから。
子宮口まで遮るものなく丸見えなのだから、見ているほうのインパクトも凄い。
「ほぉ、膣粘膜までこのピンクぶりか。本当におまえは……外見のみならず、内粘膜まで見せる為に生まれてきたような奴隷だな」
賞賛とも侮蔑とも取れる伊田の言葉に、入宮の瞳が吊り上がる。よく見れば、少し泣いてしまっているようだ。
『ああ、あれ?泣かされたんじゃないよ。知佳って、結構カッとなるタイプだから、マジ切れすると泣くんだよね』
以前にクラスメイトの一人から、そう聞いた事がある。果たして今の涙は、それなのか。
「へへっ、ますます惨めだな」
「意地を張るからそうなる。どうだ?気分は」
伊田と瀬川が嘲笑を浴びせながら、入宮の脚を掴んで揺らした。
すると開ききった膣から、一筋の雫が伝い落ちる。その一滴は、真下に位置する乳房へ筋をつけた。
調教師二人の嘲笑が大きさを増す。
「どうだ、今の一滴はおまえの愛液と思うが?」
伊田から勝ち誇ったような顔で囁きを受け、入宮は歯を食い縛った。
「ふざけないで。あんた達みたいな気持ち悪い変態に何されたって、ゼッタイ濡れない。
生理現象で何か出たって、そんなの濡れたうちに入らない!!
せいぜい12月が来るまで、あたし相手にそうやって馬鹿みたいに遊んで、後で悔し泣きしたらいい。
あんたらみたいな陰険な奴には、それが似合ってるよ?」
言われたら言い返す。それがサディストの性質だとすれば、入宮も相当なものだ。
ただ、今の彼女は絶対的に弱い立場にいる。それが解っていてもなお、退けないんだろう。
「…………やれやれ。俺もフラれちまったよ、伊田」
瀬川がわざとらしく肩を竦めながら、入宮の太腿に手を掛ける。
「ああ、そうらしい。ではお言葉に甘えて、たっぷりと遊ばせて貰うとしよう。
私達はいい大人だからなぁ、何回か玩具を壊してしまうかもしれんが……玩具自身がいいと言ってくれたんだ。遊ぼうか」
歪んだ執念を全身に塗り込める。それが伊田と瀬川の調教だ。
だが未だかつて、入宮ほど濃厚な執念を塗り込められる『奴隷』はいなかったことだろう。
「感じていない…………か。これで、よく言えたものだ」
伊田は笑みを湛えながら、入宮の乳房付近を撫で回す。入宮がはっとした表情を作る。
今まで下半身ばかり見ていて気付かなかったが、その乳房の先端は痛々しいほどに屹立していた。
伊田は乳房に触れるか触れないかのソフトタッチを仕掛けつつ、少しずつ先端に迫った。
そしてかすかに膨らんでいる乳輪部分を指先で掻き毟り、
乳首をひねり上げる。
「ああぁあっっっ!!!」
入宮の唇から絶叫が迸った。今の今まで、声を漏らすまいと固く結んでいた唇から。
「何だこの玩具は、ボリューム設定が壊れているのか?」
伊田はそう揶揄しながら、さらに乳首責めを続けた。あ、あああ、と入宮から声が漏れる。
カメラ越しには、ただつねったり転がしたり押し潰したり、それを繰り返しているだけにしか見えない。
ただ今までの記憶を遡る限り、伊田の技術は相当巧みなんだろう。特に乳首や陰核といった小さな部分を責めるのが上手いようだ。
執念よりも、知識や技術が物をいう分野だからかもしれない。
性欲の瀬川、知識欲の伊田。昔親父が酒に寄った時、そう称していた事もある。
伊田の乳房責めで、入宮が何度も声を上げさせられている最中。
それまで肛門を舐めしゃぶっていた瀬川がまた尻の窪みに頬をはめ込み、舌を深く送り込み始める。
「あああーーーっ!!」
入宮は、やはり声を抑える事ができなかった。瀬川の長い舌を挿れられるのが、本当に気持ちよくてたまらないんだろう。
そして伊田の言葉が事実なら、舌が『歯状線』という場所を舐め取りはじめてからは、快感はさらに強まる。
「ああぁ、あああーーぁ、ぁ、ああっ、ぁぁあ…………あ、あ゛っ」
押し潰したような、じっとりとした脂汗を思わせる呻き声。派手さもなければ可愛いとも言いづらい。
でも、それ以上の快感はないのではと思えるぐらいに重苦しい喘ぎだ。
かつて瀬川からアナル舐めを受け、気が狂うまでドライオーガズムに至ったというシーメールもまた、今の入宮と同種の呻きを上げていたに違いない。
性差させ超越させうる、排泄孔という禁忌の場所。
そこを開発されるのは、一体どんな気持ちになるんだろう。解らないが、平然と流せるものでない事は確かだ。
だから、仕方がないんだ。
入宮の脚が、攣りそうに思えるほど何度も何度も強張るのも。
刺激を嫌がって逃れるように、括れた腰が左右に揺れるのも。
舌を深く挿れられるたび、中世的にも思えるほど深く色濃い灰色の呻きを漏らすことも。
その上で、女性特有の性感帯である乳房まで弄繰り回されれば、絶頂するのも無理はない。入宮は、少しも変なんかじゃない。
だが、悪魔のような伊田と瀬川は、それら全ての変化を容赦なく詰った。
限界を迎えたがゆえの発汗や筋肉の蠢き、そして喘ぎ。それを異性二人から逐一嘲笑われる環境は、地獄以外の何物でもない。
プライドの高い人間であればあるほど耐え難いだろう。それが余計に、入宮を不安定にするのか。
器具によって開かれた膣から、何度も何度も光る筋が滴るのが、カメラ越しにでも解った。
その落下地点を伊田の指が掬い取り、乳房に塗りこめて、ローションマッサージの要領で刺激し続ける。
それでまた入宮の身体が硬直し、暴れ、光の筋がこぼれるという状況が繰り返された。
モニター越しに監視する限り、膣から滴った愛液はせいぜい7,8筋というところだ。
ところが伊田の手元付近を注視すると、それがまったくの間違いであると解る。
入宮の乳房から鎖骨、首筋、顎にかけては、明らかに汗とは違うオイルめいた輝きを纏っていた。
伊田の言葉責めを真に受けるなら、『娼婦100人の乱交現場にいるような』ものすごいメスの匂いもしているらしい。
そう野次を飛ばされた時には、入宮はすでに反論すらできない状態になっていた。
胸から上は、目を閉じたまま気を失っているようにしか見えない。ただ下半身だけは、責めが終わった後も細かに痙攣を続けている。
胡坐縛りが解かれ、一糸纏わぬ姿のまま右足首を掴み上げられた時もまだ、ガクガクと身体が揺れていた。
その姿はいかにも生物らしくなく、異様としか表しようのないものだった。
※
翌朝、入宮の目に下にはくっきりと隈ができていた。
俺に促されるままにキッチンの椅子に腰掛け、ぼうっと空中を眺めている。
『奴隷』向けに用意されているサイズ違いのネグリジェが、余計に怠惰な――場末の娼婦のような印象を与えた。
彼女らしくない。いつもの入宮がここに居たなら、朝食の準備を進める俺の手際の悪さに業を煮やし、
『取り皿はどこにあんの』『ご飯はあたしがよそうから、あんたはこれ運んでよ』と来るはずだ。
喧嘩っ早くて仕切り屋でお節介。誰と結婚しても姐さん女房になるに違いない。入宮はクラスの皆からそう言われている。
そんな彼女がここまで呆けている以上、疑いの余地はない。彼女は昨日、ほとんど眠れていないんだ。
執拗なアナル舐めで立つことすら出来なくなった後、入宮はベッドに運ばれた。
ただし、伊田も瀬川も、そのまま休ませるような連中じゃない。
まずは仰向けに転がる入宮の顔を跨ぐようにして、瀬川が膝立ちになる。
そして入宮の頬を叩き、薄らと目を開かせる。
彼女の視界に映るのは、アナル舐めによって天を突かんばかりに勃起しきった醜悪な怒張。
太さや長さも相当だが、雁首の張り具合や幹に浮き立った血管は、男の俺でさえ目を疑うほどだった。
『咥えろ。舌とノドでうまくイカせられたら、寝かせてやる。
風呂場じゃ結局吐いて有耶無耶になっちまったからな、補習ってやつだ。高校でもやるだろ?悪ィ点取った時によ』
瀬川はそう言いながら入宮の鼻を摘み、開いた口へと怒張を送り込んでいく。
ほとんど意識を失っているような状態の入宮は、されるがままだ。
だが、怒張が半ば以上唇の中へ入り込むと、さすがに苦しかったんだろう。
『もごォうあ゛っ!?』
目を剥いて顎を跳ね上げながら、瀬川の太腿を手で押しやろうとしはじめる。火事場の馬鹿力か、一瞬瀬川の腰が浮く。
とはいえ、瀬川も細身ながらに男だ。ベッドのヘッドボードを掴み、腰の力だけで強引に怒張を押し進めていく。
『ん゛も゛ぉお゛お゛オ゛ぇ゛っ!!!!』
美人顔の入宮に男のような低いえづきを上げさせつつ、あっという間に剛直の8割ほどが口内へ入り込んだ。
『やっぱ上から押し込むとラクだな、簡単に食道まで届くぜ。ケヘヘッ、そうビビんなって、鼻から息すりゃ死にゃしねぇよ。
なんだ、何か言ってやがんのか? 喉奥がモコモコ動いてすげぇ気持ちいいぜ、まるでアソコの奥だ。
……そうだ、膣代わりといくか。テメェのバージンを奪えねぇのは癪だが、代わりにこの喉マンコを、ガバガバになるまで犯してやるよ!』
瀬川はそうがなり立てながら、太腿を膨れ上がらせて腰を押し込む。
普段は鶏ガラのような脚のくせに、こういう時の筋肉の張りは目を見張ってしまう。
あの腿から生み出される腰の押し出しは、多分男子の俺でさえ、腕だけで押し返す事は不可能だ。
いかにスポーツ少女とはいえ、女子である入宮に当然抵抗の余地はなく、瀬川が望むままのペースで喉を穿たれることとなる。
『ごぉお゛おう゛ぉえっ、んもも゛お゛ぉ……お゛お゛えぇァ゛がっ!!!』
皺の跡がつきそうなほど固く目を瞑り、限界まで口を開くがゆえに頬に深く線の入った顔は、とても美人とはいえない壮絶なものだ。
だが、地獄の底から響くような凄まじいえづき声を聞けば、その顔を茶化す奴はいなくなるだろう。
そのぐらい異様で、そのぐらい説得力のある苦しみの悲鳴だ。
そもそも瀬川の剛直は、入宮の上品な口と明らかにサイズが合っていない。
目一杯に開いた唇と剛直の直径にほとんど差が見られないのだから、咥え込めている事自体を奇跡というべきだ。
それをコンディション度外視の身勝手なペースで叩き込まれるのだから、女らしさの欠片もない表情になるのも無理はない。
『あああすげぇ。えづき汁でヌルッヌルの食道が、俺のデカブツにびっちり張り付いてやがる。こりゃあ堪らんぜ。
なァ、テメェにも解んだろ、俺の極太で喉のカタチ作り変えられてんのが?
……っと、ハハハッ、なんつーツラしてやがんだテメェ。カツアゲされたガキかよ。おらどうした。俺が憎いんだろ、睨んでみろよ!!』
瀬川にそう煽られた以上、入宮も黙ってはいられない。
苦しい中で必死に瞳を開き、目頭から涙の粒を開放しつつ、かろうじて瀬川を睨んでみせる。
だがそれも、ほんのコンマ数秒という間の話。
瀬川が満面の笑みで根元近くまで剛直を送り込めば、
『んろ゛おおおぉ゛ぉおえ゛え゛っ!!!』
喉が潰れそうなほど低くえづき、目元に深く皺を作るしかない。
彼女の手は、苦しさからか怨みからか、必死に瀬川の太腿に食い込んでいる。
だが同じ掴みにしても、バスケットボールを軽々と扱っていたあの頼もしい手に比べて、なんと弱弱しく見えることだろう。
二度、三度。瀬川が休みなく腰を突き出し、剛直を深く入り込ませる。
『ほごぉおおお゛おう゛っっ!!』
それがよほど苦しかったのか、入宮の脚がバタバタと暴れ始めた。
すると、彼女の足元に座っていた伊田がその脚を捕らえ、慣れた様子で肩に担ぎ上げる。
『愉しそうだな。どれ、私はこちらの具合でも見るとするか』
そう言いながら、入宮のすらりとした脚の間……低さから見ておそらく肛門に指を差し入れる。
『ほも゛ぅあ゛っ!?』
入宮が剛直を咥えたまま“あ”の叫びを上げた事からして、やはり肛門で間違いないだろう。膣なら、その叫びにはならない。
『ひひっ。ケツに指挿れられたぐれぇで、何テンパってんだよ。俺の舌で散々ふやかしたんだ、今さら指の一本なんぞ綿棒みてぇなモンだろ。
それとも何だ、さっきから女捨てたツラでゲェゲェ鳴いてるもんだから、おぼこい所見せてバランス取ろうって腹か?』
もはや悪意の塊しか感じられない言葉責めを浴びせながら、瀬川は悠々と腰を振りたくる。
唇から零れるほどえづき汁が溢れているせいか、ストロークの速度は上がっていた。
入宮の喉からも、クチュクチュという水気をもった攪拌の音がしはじめていた。
しかし、おえっ、ごえっというえづき自体は変わらない。そして何より、脂汗まみれの泣き出しそうな彼女の顔には、ひとかけらも『楽』が見当たらない。
対照的なのが瀬川で、こちらは腹立たしいまでに快楽と征服欲を貪っていた。
『んも“おお“おお“エ“っっ!!』
突き込み十回につき一回ほどの割合で、入宮は本気の嘔吐の兆候を見せる。
頬が膨らみ、皺だらけの顎が震え、唇の端でこぴゅっと泡が弾けて、顔全体が上向く。
その前兆を認めるや、瀬川は必ず駄目押しを仕掛けた。
入宮の額を押し込んで、顔の角度をさらに強め、明らかにやばい角度で怒張を送り込んだり、だ。
『ほお、よく締まる。これはすごい』
伊田が喜びの声を上げる中、瀬川も吠える。
『どうした、吐くのか? お? 吐いても構わねぇぜ、テメェの寝るベッドなんだからな!!』
瀬川はそう言ってスパートをかけるが、入宮は泡まみれのえづき汁を吐きこぼすだけで、吐瀉物らしき物を見せない。何度やられても。
一度バスルームで胃の中身を空にしているとはいえ、よく吐かなかったものだと思う。
俺はそんな彼女の意地に感動したが、瀬川にしてみれば敗北したような気分だったろう。
その証拠に奴は、途中から姿勢を大きく変えた。
涎で濡れ光る剛直を口から抜き出し、一旦ベッドを降りる。そして入宮の肩を掴んで向きを変えさせ、後頭部だけがベッド側面から落ちるようにする。
その上で、剛直を咥え込ませたんだ。
洋物のビデオでたまに見かけるこのプレイは、見た目の絶望感が凄い。いや、見た目だけじゃない。
『かァ……お“あ“っ、こごおぉおお“…………おも“おろお“ぇエがああ“……っ!!!』
痰を吐くときのような音を絡ませてのえづきには、さっきまでとはまた違う悲愴さがあった。
細い手指はベッドシーツを強く握りしめていたし、伊田の肩に抱え上げられた右脚も、足首を起点に腰を持ち上げるほどの力みを見せる。
極めつけは、真っ直ぐに伸びた彼女の白い喉に、ほんの僅かながら確かに、剛直の膨らみが見えたという事実だ。
瀬川が腰を押し進めるたび、喉の膨らみも鎖骨の方へと伸びていく。俺の目の錯覚であってほしいが、その長さはとんでもなかった。
屋台で売っているフランクフルト。あくまで長さだけだが、それが脳裏に浮かんだ。
それだけの凶悪な長さのものが、さらに悪意を込めて送り込まれる。
瀬川の目的は、射精よりも入宮を苦しめること……いや、多分『吐かせること』だ。そう断言できるぐらい、奴の行為は露骨だった。
白い喉に両の親指を宛がい、怒張の膨らみを縁取るように押さえつけたり。
喉を激しく責め立てながら、ピンクの乳首を弄繰り回したり。
シーツを掴むことで必死に苦痛を紛らわせている入宮の手を離させ、あろうことか、垂らした頭の後ろで組ませて支えとしたり。
あるいは抽迭の果てに根元まで……陰毛が鼻腔を覆い隠すほどの根元まで咥え込ませた所で、ぐっと腰を留めて6秒ほど駄目押しをしたり。
それでもなお、入宮は吐かなかった。
もっとも、正確なところは解らない。入宮の顔に陰が入らずハッキリ見えるのは、瀬川がストロークを大きく取ろうと腰を引いたときだけだ。
後は、濃い黒と薄い黒という世界。
妙にきらめく液体が桜色の唇からこぼれ、小鼻を通り、逆さになったショートヘアに絡みながら落ちていく様……見えるのはそれぐらいだ。
頑張れ、吐くな、耐えろ入宮。耐え切って瀬川に悔しがらせてやれ。俺は心の中でそう声援を送り続けた。
ぐもっ、ごおおっ、かぽっ、ぐぼっ、ぐごっ、かこっ…………
そういう水音を多分に含んだえづきが、絶え間なく響きわたっている。
正直ずっとそれを聴いていると、そんな音を漏らす喉に挿入したら、ものすごく気持ちいいのではと思えてしまう。
そしてそれが事実である事が、瀬川自身の唸りで証明された。
『ハァッ、ハァッ、ハッ…………俺としたことが、アナル舐めで興奮しすぎたか。そろそろマジでイキそうだぜ。
オウ伊田、このままイッパツいいか。朝まで嬲るつもりだったが、この喉マンコが凄くてよォ、もう辛抱できねぇ!!』
瀬川が上ずった声で言うと、伊田は少し考える素振りを見せてから頷いた。
『いいだろう。ただし、出すからにはきっちりと“飲ませて”やれ』
『おお、わぁってらぁ!』
そうした会話が交わされた後、瀬川はスパートに入った。それまでの様々な技巧を捨て去った、ただひたすらの抽迭。
皮肉にも、これが一番入宮を追い詰めていた。
『んむ“ぅう、う゛っ、もお“おお゛っお、う゛ぅうおお゛っ……げ、ごっ、ほごごぼぇおお“っっ!!
ごはっ……ん゛ごおおっ!!ん、ん“おあ“ごろおッ、おがっ、こッ……お“ぉおえ゛ごげおお゛おおお“っ!!!』
それまで以上に切実な呻きが響きわたり、細い顎が何度も何度も跳ね上がる。
唇からは異様に粘ついた糸が次々と顔面に垂れ落ち、凄まじい速さで抜き差しされる剛直の幹からも飛び散っていく。
膨らんだりへこんだりを繰り返す入宮の腹筋が、彼女自身の苦しみを代弁していた。
スパートはどれほど続いただろう。数十回の抽迭の末、ついに瀬川が射精に至る。
『くうっ、出すぞ! 全部飲み下せよ!!!』
瀬川はそう叫びながら、逸物を半ばほど咥え込ませたまま腰を止める。そして、全身をぶるぶると痙攣させ始めた。
この瀬川はもういい歳をしていながら、射精の量は相当に多い。
過去の映像でも、『奴隷』の尻から抜いた怒張から放たれた精子が、背中のみならず髪の毛にまで飛び散る事がよくあった。
若い俺でも相当昂ぶっている時で手の平一杯がせいぜいだというのに、その何倍もの精力を有する獣だ。
そんな勢いと量を誇る精液を口で受けるなど、無理な話だ。
俺がこれまで見てきた奴隷が皆そうであったように、入宮もまた、その圧倒的な射精を受けて噎せかえった。
あっという間に頬が膨らみ、ぶぷっ、ぶほっと咳き込み始める。そしてその後、鼻からも白い物が噴出す。
ただ、瀬川も慣れたものだ。
「吐き出すな。飲め」
あくまで腰を動かさず、入宮の容のいい鼻を摘み上げて、呑むしかない状況を作り出す。
そして、数秒後。白い喉がごくん、ごくんと嚥下の動きを見せると、ようやく怒張が抜き出された。
アーチ上に垂れ下がった、相当な長さの怒張。それは唾液と精液に塗れながら、ひどく泡立っていた。
「どうだ、俺のザーメンは美味かったか?」
意地の悪い笑みを浮かべながら瀬川が問うと、入宮が薄く目を開いた。
そして荒い呼吸を整えながら、天を仰ぐような姿勢のまま告げる。
「……全然、苦くてえぐいだけ。あんたって本当に不健康なんだね。そろそろ死ぬんじゃない?」
その言葉に瀬川が固まり、逆に伊田は笑い出す。その笑いで、瀬川はいよいよ機嫌を損ねたらしい。
「……約束は約束だ、今日はこのまま寝かせてやる。だがな、今のふざけた発言は負債2つ目だ。
テメェも利子ぐれぇは早ぇとこ返してぇだろ? だからよ、特別調教といこうじゃねぇか。
テメェが寝てる間も、俺らで朝まで肛門を開発しといてやる。たっっぷり指入れして、舐め回してやっからな。
良い夢見ろや?」
入宮の細い身体をベッド中央に戻しながら、唇を舐める瀬川。
疲労困憊のこの状況下で、なお満足な休息すら取れない事実に、入宮の表情が強張る。
「クソがしたくなったら言え。もっとも、アナル責めはやめねーけどな」
瀬川はそう追い討ちを掛けてから、ベッドの上に這い上がった。
俺は変に目が冴えていたせいで、その後も2時近くまでモニターを監視していた。
映像内では、疲れからか死んだように眠る入宮の肛門を、伊田と瀬川が嬲り回している。
指入れが続くだけでも入宮の息は荒くなっていたが、瀬川が両の脹脛を抱え上げながら尻穴舐めを始めると、
完全に寝入っているはずの入宮の口から、あっ、あっ、と声が漏れ始めていた。
気付けば俺もそのまま眠ってしまっていたが、朝食を作るために掛けた目覚ましで起きると、モニターにはやはり乱れた光景があった。
伊田と瀬川がベッドの上、入宮を嬲る格好のままで項垂れている。
特に伊田は、入宮のすらっとした右脚を肩に担ぎ上げたまま、肛門に手を触れる形で鼾をかいていた。
寝ぼけ眼を擦ってよく見ると、その手の中にはピンク色の柄が見える。
道具まで使っているようだ、入宮が無抵抗なのをいいことに。
それに気付き、俺は無性に苛立った。朝食用に卵を溶いている時でも怒りは収まらず、初めてボウルから中身を溢してしまったぐらいだ。
エプロンをどろりと汚す黄ばんだ白濁にさえ腹が立つ。相当に情緒不安定になっている。
実のところ、怒りの矛先は俺自身にも向いていた。
入宮が昨晩まともに休めなかったのは、俺のせいなんじゃないか。
昨日の俺の言葉が変に発破をかける結果となり、彼女に意地を張らせてしまったんじゃないか。
だから、余計な仕置きを受けたのでは。そう悩んでしまう。
そしてそう思ったが最後、目の前で隈を作りながらぼうっとしている入宮が哀れでならない。
「ほら、コーヒー。目ぇ覚めるぞ」
せめて眠気覚ましになればと、コーヒーを淹れたマグカップを差し出した。
「…………ん……あ、ありがと」
入宮はそう言いながらカップを受け取ろうとし、しかし、上手く掴めずに取り落としてしまう。
「あっ!!」
マグカップは無慈悲にも床に転がり、白濁の混じった茶褐色が広がっていく。
「ご、ごめんっ!!」
「ああ、いいっていいって。それより、火傷とか大丈夫か?」
心配になって入宮の体に目をやり、はっとする。
うっかりしていた。彼女が今着ているのは、ダボッとしていながらも裾の短いピンクのネグリジェ。
上から覗き込めば胸元が、下に視線をやれば生足が視界に飛びこんでくる。
本当に形がいい……というより、十中八九男を狂わせる類のエロい脚だ。
思わず赤面してしまう。
入宮は、そんな俺の視線にも気付かずに俯いていた。
「大丈夫。…………何やってんだろ、あたし。すばしっこいのだけが取り得なのに」
すっかり意気消沈している様子だ。そんな彼女を見ているのはつらい。無理とは解っていても、元気でいてほしかった。
「そんな事ないだろ。入宮の良いところは一杯ある。いつも明るいし、優しいし、ノリが良くて面倒見もいいし。
皆そういう入宮から、元気貰ってんだぜ。俺だってそうだ。ガキの頃からずっと」
俺がそう言うと、入宮はゆっくりと顔を上げた。
その瞳は涙で潤むようで、俺の姿は映っていない。でも、綺麗だと思った。
「ありがとう。こういう、追い込まれた時にちょっとでも励まされると……沁みるね」
そう呟き、二度瞬きをする入宮。
「昨日の晩もそう。あの時あたし、結構ガンガンやられちゃっててさ。いきなりで面食らっちゃって、折れかけてた。
でもあの言葉のおかげで、あたしは今も、あたしのままでいられてる。
あんな気持ち悪い奴らに好き放題やられて、根っこまで変えられちゃ堪んないよ」
「入宮……」
俺が思わず名を呼ぶと、初恋の相手は俺の視界でふっと笑ってみせた。
「あたしさ。このまま12月まで持ちこたえて、あたしを『買った』やつに会ったら、一発ビンタでもかましてやるつもりなんだ。
まぁ、そんな事したらまたお仕置きされるんだろうけど…………その後は、どうにか生き延びてくよ」
笑顔でそう言われると、返す言葉が見つからない。
笑い返すわけにもいかないので、俺は少し黙って、朝飯に手をつけ始めた。
入宮も箸を取って食べ始める。俺が彼女のため、今までにないぐらい丹精込めて作った料理を。
「おいしい……ちゃんとダシ引いてるんだ」
味噌汁を一口啜った瞬間、入宮は感動したような口調で言った。そう言って貰えると、作った側としても報われる。
この味覚の鋭さは、小さい頃から母親の手料理を食べて、正統派の味を舌で覚えているが故だろう。
彼女は大切に育てられてきたに違いない。当然だ。惚れ惚れするぐらい、良い娘なんだから。
「まるで新婚ごっこだなぁ、ガキ共」
俺達の束の間の憩いは、品のない声と共に終わりを告げた。
「……寝てるんじゃなかったの?」
入宮は雰囲気を一変させ、刺すような視線を声の主……瀬川に向けた。
逆に瀬川は醜悪な笑みを浮かべながら、ゆっくりと近づいてくる。動物のような体臭で、一気に飯が不味くなる。
こんな奴と一晩中一緒にいたなんて、改めて入宮には同情しかない。
「大事なモンを忘れててよ。危うくテメェに、いつも通りの学生生活を送らせちまう所だった。
今日からは、こいつをパンティ代わりに穿いて登校してもらうぜ」
瀬川はそう言って、手に下げたものを掲げる。
奴隷調教を見慣れた俺には、それが何なのかすぐに解った。被装着者の性交や自慰を防ぐ、施錠装置つきの下着……貞操帯だ。
貞操帯にも何種類かあるが、瀬川の手にしたものは、肛門へ挿入されるようにバイブレーターが固定されている物だった。
バイブレーターのサイズは、俺の親指より少し太いぐらい。一番細いサイズだと思うが、それでも慣れない内はきつい。
「こいつはこう見えてGPS内蔵でよ、テメェの居所が手に取るようにわかるんだ。
下手に逃げようとしてみろ。その時点でテメェの商品価値は消滅。犯されながら頭カチ割られて、次の朝にゃあ簀巻きだぜ」
耳元へ吹き込むような恫喝は、いよいよ筋者のそれらしい。
「これから、シャワー浴びようと思ってたんだけど?」
「こいつを着けてから、好きなだけ浴びりゃいいさ。股は、俺が濡れタオルで拭いてやる。大事な部分が蒸れちゃいかんからなぁ。おら、下脱いで股開け」
その会話の後、入宮は心底嫌そうに溜め息をつきながら箸を置いた。
俺は、さっと目線を逸らす。視界に入るのは、入宮の食べかけの食事。米粒のついた茶碗に、半分ほど減った味噌汁、身の割れた焼き魚。
その日常的な光景の脇から、『音』が入り込んでくる。
服を脱ぐ衣擦れの音、タオルの擦れる音。意識しないようにしても、耳が勝手にそれらの音を拾ってしまう。
「んっ、ちょっ、と!!」
「へへへ、感じたのか?」
「ふざけないで。いちいちそんな所触らないと体も拭けないの!? 変態!」
「テメェはすぐそれだ、二言目にゃ変態変態ってよ。だがな、朝っぱらからこんな所しこり勃たせてるテメェこそ変態だぜ。夢ン中でケツ犯されて興奮したのか?」
「あんた、いい加減に…………!!」
「おー怖ぇ怖ぇ。さて、綺麗になったな。んじゃ嵌めんぜ」
「…………ん、ぐっ……!? ちょ、ちょっと! 何これ、太すぎるって!!」
「何が太いだ、一番細ぇ奴だぜ。正真正銘一番上のサイズとなりゃ、山芋みてぇな太さだ。病み付き具合もな。
テメェもいつか穿くかもしれんぜ。少なくともこんな楽が出来んのは、今だけだ」
げへげへという下卑た笑い声がする。
入宮と瀬川の会話は、必ず瀬川の笑いで幕が下りた。歯軋りの音を掻き消す、太く黒い笑いで。
※
いつも通りに教室へ入った入宮は、クラス中の注目を浴びる事となった。
入宮が長袖の冬服に変えていたからだ。
動きやすい軽装を好む入宮は、衣替えの時期でも一番最後まで半袖を着続ける。
知佳が長袖を着るようになったらいよいよ秋だな、とも言われたものだった。
それをまだ残暑の残る今変えているんだから、驚かれるのも不思議はない。
「いやー、何となく。気分だよ気分!」
入宮は朗らかに笑ってみせたが、俺は知っている。長袖を着ているのは、緊縛の跡を見られないためだ。
昨夜胡坐縛りで責められ続けた彼女の身体には、今もくっきりと縄の跡が残っている。
胸や足首の縄跡は夏服とソックスで隠せても、後ろ手縛りをされた際の上腕や手首の跡は、夏服で隠すにはやや厳しい。
シャツの襟を閉めてリボンまで結んでいるのも彼女らしくないが、首にまで跡がある以上は仕方ない。
彼女はそれらを隠さなければならなかった。そして、隠すべきことはもう一つある。
「どうした入宮。トイレか?」
数学教師の前川が、落ち着きのない入宮にそう声を掛けた。
入宮は赤い顔で俯いていたが、やがて机に手をつきながら立ち上がる。
「……すみません、行ってきます」
椅子を離れてから扉を開けるまでの足取りも覚束ない。
「お、おい、大丈夫なのか入宮!? 保健委員、誰だ? ついて行ってやれ」
前川の言葉に保健委員が立ち上がるが、入宮は首を振る。
「いいっていいって、ちょっとお腹痛いだけだから」
そう言って扉を閉め、廊下へと姿を消す。
クラスはにわかにざわついた。
――聞いたかよ。あの学年一の健康優良児が腹痛だとよ
――そっか、だから冬服着てんのかな
――中学ン時から一緒だけどよ、アイツが授業中にトイレ行くとこなんて初めて見たぜ?
――珍しいよな。ハラ痛くても我慢するタイプかと思ってた。意地っ張りだし
――我慢できないレベルだったんでしょ。ひょっとしたら生理かもしんないじゃん
――バーカ。生理痛とか、それこそあのメスゴリラにゃ無縁だろ
――男子に何が解るわけ? たまに酷いときはマジ死ぬんだってば
「おまえら、その辺にしとけ。追い込みの時期だぞ!」
前川が一喝し、クラスはとりあえず受験モードに戻る。だが皆どこか落ち着きがなく、入宮を意識しているのは一目瞭然だ。
無理もない。入宮はクラス一の人気者だ。いつも人の輪の中心にいる姉御的存在。
昔から入宮が仕切るクラスだけはいじめが無かったし、学校で困り事があったら真っ先に彼女に相談する風潮もあった。
クラスの女子からは憧れの的とされ、同じくクラスの……いや、ひょっとしたら学年の大半の男子から性的な視線を浴びる生徒。それが入宮知佳だ。
俺は今日からそんな入宮と、昼休みを共に過ごす事になる。勿論恋人としてじゃなく、あくまで監視役として。
だが、それでも得難い体験だ。中学以降の入宮は、常に女子グループの中心として昼休憩を過ごしていた。
そんな入宮が男子と一緒にお昼を食べるなど、小学校卒業以来、俺が初めてじゃないだろうか。
今やほとんど使われていない旧校舎の屋上……人目につかない場所として入宮が教えてくれたそこで、二人して弁当を広げる。
「うわ、すごっ……!!」
弁当箱を開けるなりのその一言が、ひどく嬉しい。何しろ頑張ったんだ、特別に。
振られて以来、俺が入宮を真正面から見る機会はぐっと減った。
有耶無耶になった今朝を除けば、物を食べる彼女を間近で見るのは、いつも頬に絆創膏を貼っていた小学校の頃以来だ。
入宮はとても美味しそうに物を食べる子だった。
グルメレポートのような大きなリアクションもなければ、満面の笑みでもない。でも、箸を黙々と進めるその姿は雄弁だった。
「口に、合うか?」
少しの不安と共にそう訊ねると、入宮ははっとした様子で顔を上げた。
「あっ、ご、ごめん、ずっと黙ってて。なんか、お腹減ってたせいで夢中になっちゃってさ。美味しいよ、すごい美味しいっ!!」
その言葉だけで俺は、今朝の苦労分以上に満たされる。
食事を終えた後は、二人してしばらく校庭を眺めていた。
状況が状況だけに会話の切り出し方が難しく、ただグラウンドで青春を燃やす下級生達を見守る。
しかしその空気にも耐えられなくなった時、俺は意を決して訊ねた。
「2限の時のあれ、大丈夫だったのか?」
入宮が退出した時の事だ。本人は腹痛だと言っていたが、真相は多分違う。
貞操帯に嵌め込まれたアナルバイブが、ボタン電池が切れるまでの間、不定期に直腸を責めるせいだ。
「ああ、うん。あのまま授業受けるのは厳しそうだったから、ちょっと休んでただけ」
「そっか。今は平気なのか?」
「……ん」
俺の問いに、彼女はやや視線を外し気味で答える。いつも他人の目を見て話す彼女としては不自然だ。
何となく、彼女が無理をしているのが解った。
「別に無理しなくていいぞ。俺だけは事情知ってるんだから」
俺がまさにそう言った最中、入宮が肩を跳ねさせた。そして目を見開き、前方を見つめはじめる。
アナルバイブが動き始めたんだろう。
「むこう、向いててくれる?」
しばらく無言が続いた後、入宮はそう呟いた。
「え?」
「…………ちょっと、恥ずかしいことする」
間の抜けたような声を出してしまう俺に対し、入宮が篭もった声で続ける。俺は言葉の意味を認識し、急いで後ろを向いた。
後ろでごそごそと音がする。ん、んんっ、という押し殺したような声も続く。数分に渡って。
「もう大丈夫。ごめん」
その声で振り向くと、入宮の頬は赤く染まっていた。
「収まった?」
何が、とはあえて訊かない。
「ちょっとはマシになった。……んっ。でも、まだちょっとムズムズするかな。
はぁっ、やだやだ。嫌いなんだよね、こういう中途半端な状態って。いっそ取り出して丸洗いしたいよ」
さらりと発されたその言葉で、俺はフリーズする。それは、“腸を”ってことか。
「ん?」
入宮は不思議そうに俺を見つめ、直後、自分の発言の意味に気付いたのか口を押さえる。
「あっ! う、うそうそっ、何言ってんだろ!! そのっ、変な意味じゃなくって……って、思いっきり変な意味だけど!
あぁ、もうやだ……頭おかしくなってんのかな、あたし」
今にも泣きそうな顔で目元を抑える入宮。そんな彼女はひどく華奢に見え、居たたまれない気持ちになる。
確かに彼女の思考は歪められているのかもしれない。でもそれは、断じて彼女に責任があるわけじゃない。
「俺、そんな変な言葉聞いたかな。ただ単に、入宮がそういう気分になったってだけだろ。
それを言葉にするなんて…………ふっ、普通だと思うけどな」
何とか励ましたい。その一心で発した言葉は、何でもない風を装いすぎて噛んでしまっていた。
かなり恥ずかしく、俺は頬が赤くなっていくのを自覚しながら空を見上げる。
だから俺には、この時の入宮がどんな顔をしていたのかはわからない。
笑いか、泣きか、それとも虚を突かれたような表情か。
「今日二回目かぁ。岡野も、ズルいね」
俺を名指しした上で、入宮はズルい、と評した。
「何が?」
青空から視線を下げると、肩を竦めながら溜め息をつく入宮が見えた。
「だってあたし、前に岡野のこと振ったじゃん。運動できない奴は嫌だ、とかいって」
驚いた。俺の告白を覚えていたのか。おまけに、断った理由まで。
「でもそうやって振った相手が、実はすごい優しくて、こんな美味しいお弁当まで作れるとかさ。あたしの見る目って何?って感じだよ」
弁当箱を少し傾けながら、どこか拗ねたような口調で言う。
一見すると普段の彼女らしいが、必死に明るいところを演じているだけだろう。
「そりゃ買いかぶりだ。俺がそんな手の込んだ力作弁当作んのも、イイ奴ぶんのも、相手が入宮だからだって。
誰にでも優しくするわけじゃない。他の奴には普通に冷たい事もある」
俺は、思わず顔を顰めながら言葉を搾り出した。
実際そうだ。今の俺の行動は、すべて下心から出ている。
初恋の相手に好かれたい。嫌われたくない。その損得だけでしか動いていない。
大体俺は今まで、屋敷で女が調教されて変わっていく姿を、AVでも見るような気持ちで眺めていたクズだ。
何人もの人生を狂わす鬼畜の所業に、間接的に加担してきたんだ。
そんな俺が、今更惚れた相手だからと優しさを見せたところで、所詮は反吐が出るほどの偽善に過ぎない。
俺は自分が心底嫌になり、深く溜め息をついた。
でも、何故だろう。目の前の入宮の面影が、変に俺自身と重なって思えるのは。
「…………そっか」
入宮はそう呟いて俺の瞳を見つめ、にへら、という感じで笑った。11年ほど見てきた中で、初めて見る笑い方だ。
「じゃ、お互い色々ダメってことで」
どこか投げ出すような言い方で、二言目が吐かれる。その軽さはどこか可笑しいほどで、つい釣られてしまう。
「だな」
俺も同じく、肩の力を抜いて笑った。するとなんだか、楽になった。
しばらく砕けた空気が漂う。でも昼休みが終わりに近づくにつれ、互いに口数は減っていった。
当然だ。
この休みが終わって、午後の授業を終えて……その後はまた、地獄が始まるんだから。
続く
これでようやく半分って…過去最長なのでは
そうなんですよねぇ、目の前で好きな娘が汚されるのは本当に同情できるんですけど、お前の一族もなによりお前自身もやってきたことじゃねぇかとツッコめてしまい、一概に「かわいそう」と思えない(思ってはいけない)絶望感が絶妙でした
導入でまた善良な女の子が堕とされるやつだなと察せたので、読後寝込まないように日を改めてコンディション整った日に読みました!が、…さあ後編読めるかなぁ…まあ道中どうなろうが売られることが決まってる時点で暗黒エンドは逃れられないんだろうけど…なによりタイトルが不穏ですな…
後編で隕石落ちて借金とヤクザの事務所と中国潰れないかな…(危険思想)
細かい所では、胡坐縛り→膣フックの流れが最高に下劣で最高でした。縛りと辱めを両立できて胡坐縛りいいですよね
それと、ちょっと分かり辛かったんですけど「岡野」ってキャラは所謂俺君って認識で合ってますね?
あと、言動から察するに入宮はカメラで調教の様子を見られていることに気づいていないのかな