大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2008年10月

温泉……混浴……(´;ω;`)ウッ

今日からしばらく連休なので、ちと遠出して友人と温泉にでもいこかなーと思ったんですが、
計算してみたら3人でマイカーだと余裕で諭吉さんとお別れです。
ガソリン高いよ!でも新幹線は嫌だよ!

えーいもうずっと引き籠ってやるわワシャシャシャシャ



……暇なのでパチンコ行ってミニスカ分補給してきます

私は変な癖が多いとよく言われます。
例えば…

・缶コーヒーは必ず一気飲み(生中もだいたい一気)。
・つまようじのコケシ部分を折る。
・割り箸の袋を折りまくってバネにして飛ばす。
・飴は嘗めはじめて数十秒で噛み砕く。
・チューインガムじゃないガムでも膨らまそうとする。
・九九の七の段を失念する。
・右と左を逆に覚えている。
・Hのことを「にゃんにゃん」「ぱんぱん」と言う。
・初対面の人間の心霊体験を訊きたがる。
・夜でも「おはよーございますぅ」と言う
・鼻を押さえたくしゃみが象の鳴き声
など。
私がK-1にでた場合、「右来るぞ!」と言われて左をガードし、インターバルで水を一気飲みし、
マウスピースを必死に膨らまそうとしていると思います…。

全てに「あるあるww」と思った方は私のドッペルゲンガーです。
世界のどこかにいる三人目を一緒に探しましょう

楽艶祭  第二話(前半)

1.


また同じ夢。
目の前に優しい黄色の小さな天井が見える。
その端には、自分のまわりを囲むようにして純白のカーテンがはためいている。
はじめの頃は何だか分からなかったが、いつか読んだ絵本に出てきて知った。
これは、天蓋付きの豪華なベッドに寝ている夢。
そんな経験はあるはずもなかったが、結花はたまにこの夢を見る。
つらい事があった夜に。

結花は目を覚ました。
うすく拓けた視界には、輝かしい夢の中とは逆に、真っ黒な闇が静かに満ちている。
結花は体を起こし、掛け布団をのけた。
振り返って見た枕元の時計は、まだ5時過ぎを指している。
しかし、結花は二度寝しようとは思わなかった。
深く眠れたのだろう、頭が妙にすっきりしている。
 カーテンに手をかけ、一気に引く。
しかし外はまだ暗く、部屋の闇は薄れない。
代わりに閉まった窓の隙間から冷たい風が吹き込み、結花は身を震わせた。

布団の上で立ち上がろうとして曲げた膝に力を込めた瞬間、太腿の後ろに鈍い痛みが走る。
「くうっ!」
膝が若干伸びたことで、結花は無様に尻餅をついてしまう。
 (痛い…。そうだ私、昨日あんなことを…)
前日の暴行を思い出し、きゅっと眉をしかめる。
 (昨日…だけじゃない。今日からどうなるの)
結花はシーツを掴み、しばし固まって何かを考えていたが、やがてそれを吹っ切るように
勢いよく立ち上がり、部屋の電気をつけた。
室内を見回しても、狭い六畳の部屋にはまだ母の姿はない。

簡単な朝食を済ませ、歯を磨いて着替えに入った時、彼女は今一度昨日の出来事を
思い出させられた。
異常なほど短く切り取られたスカート。
リカは昨日、これを履いて登校することを命じた。
下にスパッツなどを履けば下着を見られることはないが、そんな校則違反がリカ達の批判の種に
なることは容易に想像できた。
なるべく人目につかないためには、人の少ない朝早くに登校する必要がある。
早くに目が覚めたのが吉と出て、結花は素直に喜んだ。

再び洗面台に立ち、櫛で寝癖のついた髪を梳く。もちろん前髪も下ろす。
視界が狭まり少し不便ではあったが、外に出るときはその髪でないと不安だった。
朝食を作るついでに入れた弁当を持ち、母に食事の作り置きがあるとのメモを残して
結花は家を出た。
「いってきます」
その言葉が、応える者のない暗い室内に空しく響いた。

2.

早朝の澄みきった空気が胸を満たし、何ともいえない清涼感を与えてくる。
今は十月、バス停へ向かう道の脇にも色の変わりはじめた木々がざわめく。
しかし結花はそんな風情を楽しんでばかりもいられなかった。
視線が痛い。
足を運ぶたび、坂を登るたび今日の下着の色が道行く人に知れていく。
実際には皆が皆見ているわけではないのかもしれない。
地味を通している彼女になど目もくれない可能性もある。
だが結花にとってそんな事は関係なかった。
見られていると思い込む彼女の頭の世界では、今前からきたサラリーマン、後ろにいるOL風の
女性は、みな蔑んだ目で彼女の姿を追いかける。
 (昨日よりマシ、今はちゃんと下着を履いてる。誰も私になんか興味ない、見てない…!)
頭の中で繰り返しながらバスが来るのを待ち続け、永遠にも思える時間の後、
ようやく密閉された空間に逃げ込んだ。

 まだ朝早いのでバスに人はほとんどおらず、空席に座ってようやく結花は一息ついた。
彼女はそこでやっと、自分の鼓動がマラソンの後のように激しく鳴っているのを感じた。
息が苦しくて仕方ない。これは人の目を避けてきた弊害だろうか。
今時の女子高生ともなれば、彼女ぐらいのスカートを履いている者は何人もいる。
しかし結花は、ただそれだけのことで、すでに眩暈さえ覚えるほどに感覚を昂ぶらせていた。
 (如月さ・・リカとかなら、また違うのかな…)
頭を傾け、窓に映る顔を見ながら結花は思った。

学院へ着くと、結花はまた視線を受け始めた。
しかし、今度の目はそれまでとは意味が違う。
『コンテスト出場を目論む身の程知らず』
その意を込めた視線が、思い過ごしではなく全ての人間から向けられる。
遠慮がちに盗み見ていたさっきとは違い、真っ向から見つめて非難の色を露わにしている。
地味でいたい少女にとって、耐えがたい苦難だった。

 教室へ入っても、その異様な雰囲気はつきまとった。
端の席に座り、うつむいたままじっと時を過ごす。
それは彼女の常だったが、今日だけは膝の上に置いた手が小刻みに震えている。
 かなり経って、朝の学活が始まり、担任の貴子が教壇に立った。

「さて…皆すでに知っている事と思いますが、なんとこのクラスの鼓さんが
 我が校の美少女コンテスト出場者に選ばれました」
貴子は第一声、爽やかな笑みで語った。
視線が一層強くなる。
 (やめてください…本宮先生)
結花はスカートを握りしめた。
「これは大変名誉なことです。鼓さん、頑張ってね。」
目を上げた結花の視界に映るのは、大好きだった白い歯。
 (何を頑張るの…?頑張って、いじめに耐えて?)
結花は再び俯き、鳴りはじめた万来の拍手の中、小さく呟く。
「・・・・はい・・・・」

結花の新しい学園生活が始まった。

3.

二時間目の授業が終わった。
今のところ、表立った嫌がらせは何もない。
結花は少し拍子抜けしたと同時に、急に激しい尿意に襲われた。
丈の短いスカートを履き、寒い朝の風を受けて脚が冷えたせいだろう。
結花は席を立ち、トイレへ向かった。

 百合嶺女学院では学年ごとに使用するトイレが決まっている。
一年生は一階、二年生は二階のトイレ以外を使ってはならない。
一階トイレは、昨日リカが割った鏡が外され、床は綺麗に掃除されていた。
トイレの奥に、三人の生徒が集まって何かをいじっており、結花の姿を見ると横に並ぶように
それを隠した。
トイレで女子が集まって何かをしているのはいつもの事、きっと校則違反の物でも持ち込んで
見せ合っているんだろう。
結花はそう思い、足早に個室へ入ってカギを閉めた。

スカートとショーツを膝下まで下げ、便座に腰掛けて下半身に力を込める。
ところが、さっきあれほどに尿意を感じていたというのに、一向に出る気配がない。
「ん…うんっ、ふ…んっ!!」
太腿を手で押さえつけ、体を前屈みにしてさらに力むが、あと少しの所で出せない。
 その時、ドアの上の方でゴン、という音がした。
見ると、そこにはかなりの太さのホース状のものが乗っかっている。
いや、細いポンプといった方がいいかもしれない。
その口は妙な形に絞られており、何か特殊な用途で使われる事が窺える。
結花がそれをいぶかしげに見つめていると、やがてそれが押し出されて結花の頭上に
垂れ下がり、揺れ始めた。
どこかできゅっ、という音がした時、その揺れは急に激しくなり、直後。
ガボンッと何かが破裂するような音と共に大量の水が噴き出し、結花は肩に石が落ちたような
痛みを受けた。

「きゃあああぁッ!!」
あまりの水圧に体ごと吹き飛ばされ、便座からずり落ちて床に叩きつけられた。
肩の外れそうな痛みに加え、水は腹部、脚と体中に降り注ぐ。
「い、痛い、いたいぃッ!!何、いやぁ!」
昨日の暴行の記憶が蘇える。
丸太で突かれるような衝撃に堪えきれず、体を反転させて四つん這いになった。
背骨が軋む。
「ううあ、ぐう…うう、く…ッ!」
尿が漏れそうになっているが、もう便座に戻ることはできない。
結花は這うようにして個室のドアに近づく。
なんとか激流から逃れると、膝立ちになってカギを開け、外に出ようとした。
しかし、外から何かが押さえつけているのか開かない。
「来てる、来てる!」
誰かの声がし、ホースが動くのが見え…頭にがん、ときた。
床に仰向けに倒れ込むと、腹部に、続いて顔面に熱さが走る。
結花は冷え切った体で、熱いものが流れ出す腿だけが感じられた。
 目の前が、ふっと暗くなった。

(ちょっと…ちょっとあんた!)
強く肩を揺さぶられ、結花は意識を取り戻した。
と同時に、ゲホゲホとむせ返る。
かなり水を飲んでいるらしい。
目の前にいる少女は顔をしかめている。
見た事はないが一年だろう。
「あんた、何やってんの!?床水浸しにした上で漏らすなんて…頭おかしいんじゃないの?
服もびしょびしょだし…ていうか、これじゃ他の子が使えないでしょ!?」
厳しい口調でまくしたてられ、結花は少しおどおどしながら答えた。
「わ、私じゃない…!誰かがホースで水を…」
「誰かって誰よ?今はまだ授業中よ、私みたいに抜け出さない限り、誰も居やしないわよ」
その言葉を聞き、結花は慌てた。
「授業中?…何時間目なの!?」
少女の目が馬鹿にしたようなものに変わった。
「は?四時間目に決まってんでしょ。あんたいつからここにいんのよ」
その時、廊下の方からベルが聞こえた。時限終了の合図だ。
「あ、終わった。とにかく、さっさと掃除しなよ」
そういうと少女は隣の個室に入っていった。
「ちょっとー、こっちにまで水来てんじゃない。サイテー!」
少女の上げた非難の声に今一度身を強張らせ、結花は黙ってトイレットペーパーを引き出す。
その時、腕に赤いものが滴った。鼻血だ。
その鼻血は、しばらく止まらずに結花を困らせた。

結花が教室の戸を開けると、それまで騒がしかった教室がしんと静まり返る。
ぐしゃぐしゃの前髪を押さえつけ、結花は自分の席に向かった。視線がついてくる。
結花が席に座ると、机の上に一冊のノートがあった。
結花がトイレに向かった時、それは机の引き出しに入れていた筈だ。
そのノートを手に取り、ぱらぱらとめくる。
どこかでくひっと息を漏らす声と、それをたしなめる声がした。
そのノートの、一番新しいページ。
そこには、黒いマジックでこう書かれていた。

 『水も滴るいい女』

教室が揺れるかのような大きな笑い声が沸き起こる。
結花は恐れていた事がついに現実になったことを知った。
しばらくして、やっと笑い声が収まった頃、結花は体が震え出した。
体中が冷たい。
「っくしゅん!」
手で口を覆い、思わずくしゃみをした途端。
「きゃーー!!」
結花の前の席に座っていた生徒が大袈裟に悲鳴を上げた。
「いやぁん、鼓さんのツバ飛んできたぁ!汚ーい!!」
「うわ、髪洗ってきなよ静香」
「っていうかこの子なんか臭くない?窓開けて、早く!!」
口々に好き勝手を言って教室の窓が開け放たれ、外の風が吹き込む。
それとなく結花の席を囲む生徒のせいで、席を立つこともできない。
濡れた服を体に貼りつかせたまま、結花はくしゃみをし続け、その苦しさと一層の悪口で
流れそうになる涙を必死で堪えた。
その鼻からは、また血が噴き出した。
「うわー鼻血出してる。何に興奮してんのぉ?」
鼓動の音が結花の耳の奥を覆い、誰かの蔑むような言葉が遠く聞こえる。

4.

4時限の授業が終わり、今は昼休みだ。
しかし、結花は昼食を食べる気にはなれなかった。
たらふく水を飲み、腹が膨れたというのも理由の一つだが…。
結花は朝と同じように俯いて席に座ったままだ。
しかし泣いてはいない。
泣かないと家を出る前に決めた。
体が震えて仕方ないが、それはあまりの寒さのせいだろう。
 
数十分後、5時限を受け持つ現国教師・広瀬は目を疑った。
教室の端の席で、全身に水を被った女生徒が震えたまま座っている。
しかも傍へ寄ると、かすかにアンモニア臭までしているのだ。
「おい鼓…どうしたんだ、ずぶ濡れじゃないか。早く着替えろ、風邪引くぞ!!」
まだ着任して日の浅い広瀬は、今起きているいじめを理解していない。
「…着替え、持ってないんです。」
顔を上げた結花は、唇がすっかり紫に変わり、目も少しうつろになっていた。
頬だけは真っ赤なものの、その顔面は蒼白だ。
「おい、お前ら!誰も鼓の様子に気付かなかった訳じゃないだろう。なんで助けてやらない!」
広瀬は他の生徒に向かって怒鳴った。怒りでその口元が歪んでいる。
その迫力に、一瞬教室が静まり返った。
しかしその時、生徒の一人が言った。
「私達も、鼓さんが心配だったのですが…、鼓さんは、何度言っても放っておいてと
 言うばかりで… ねえ、皆。」

少女は森嶋 灯(もりしま あかり)という。
クラスのリーダー的な存在であり、その点で結花とは対照的といえた。
彼女は、確かに良いクラスメイトであり、親しく結花に話し掛けてくれた事も何度かあった。
彼女は今、結花を心配し、困る優等生の顔をしている。
しかし、心では笑っていた。

他の生徒が灯の言葉に頷くのを見て、広瀬は結花を振り返った。
「鼓、本当なのか…?」
結花は上げていた顔を下げ、黙り込んだ。
学校ぐるみでいじめられていますなどと言えるはずもない。
それを見て、広瀬は小さく溜め息をつく。
「…お前が他人に頼らずに一人で頑張る奴だってのは知ってるがな。
 同じクラスの友達なんだ、少しは頼ってやれ。」
広瀬は声こそ生徒思いの教師のそれだが、その表情は呆れ果てていた。

「とにかく、保健室へ行こう。さ、立て」
広瀬が結花の肩に手を置いた時、灯とは別の生徒が声をかけた。
「先生、保健室へ行く前に、結花ちゃんを着替えさせたほうがいいと思います!」
今度は、結花が落書きされたノートをめくっている時、堪えきれずに吹き出した少女だった。
「おいおい、ここで着替えるのか?それに鼓は着替えを持ってないって…」
うろたえる広瀬に、他の生徒が一斉に騒ぎだした。
「着替えなら体操服置いてる子がいるんで、貸してあげましょうよ」
「先生、何か鼻息荒くなってませ~ん?」
「どうせ女しかいないんだし、ここでいいでしょ」
「先生は鼓さんのスケスケの制服がいいんですかあ?」
こうなると、もう男性教師は強くは出られない。
広瀬がもごもごと口ごもっている間に、結花の次の運命が決まったのだった。

 (後半に続く)
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中学以来のラクガキ

私の最大の欠点は妥協ができない所です。

中学の頃にちょっと絵の練習もしたのですが、とにかくラフ画というものが苦手でした。
下書きだけでなく全て描き切りたい性分だったんですね。
手や関節の練習なども、その一部分にとどまらず一々全身を描いて。
未熟なので当然上手くいかず、次第に面倒になってやめたのを思い出しました。

今でもSSの出来に納得が行かなければ何週間でも放置してしまうあたり、
直ってないなぁ…。と反省。

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ペイントで描くのって難しいね

楽艶祭  第一話

楽艶祭 序章もどうぞご覧下さい

1.

耳慣れない言葉の続く数学の授業はまだ終わらない。
先程から生徒達は、腕時計を見ては溜め息をついている。
終業のベルがすでに鳴っているというだけではない。
彼女達の心を焦らせるのは、学園の中庭から聞こえてくるざわめきが原因だった。
今日は学園祭の一ヶ月前。
中庭には、その目玉である美少女コンテストの出場者の名前が示された掲示板が出ている。
 
やっと授業の終わりが告げられた。
生徒達は待っていたと言わんばかりに即座に起立・礼をすませ、部屋を飛び出していく。
そして教室には、結花だけが残った。
結花は、そんな掲示にはさして興味がなかった。

「鼓さん、あなたは見に行かないの?」
数学教師で担任の本宮 貴子が結花に笑いかけた。
数学教師に似つかわしくない良く日焼けした顔に、白い歯が覗く。
「…いえ、別に…」
唐突に話し掛けられ、結花は漠然とした答えを返す。
授業に厳しく、しかしそれ以外では気さくで、何故か特に自分の事を気に掛けてくれる貴子。
結花は心の底で彼女に好意を抱いていた。
だからこその、そっけない対応。
結花は軽く自己嫌悪に陥った。
「…失礼します。」
鞄を閉じ、貴子に一礼をして、うつむきがちに教室を出る。
 その後ろ姿を見送り、貴子はふふんと小さく鼻を鳴らした。


掲示板は結花達の学舎から正門までの間に立っている。
結花は特に気に止めずにその前を通り過ぎるつもりだった。
しかしその途中、彼女は妙な違和感を感じた。
何人かの生徒が、結花を指差して近くの生徒に耳打ちしている。
結花は戸惑った。

 ――なんだろう、私が何か変なんだろうか?

そう思い、制服の肩などを見ていると、突然前方から声がかけられた。
「あらぁ、そこにいる貴女はC組の鼓結花さんよねえ?」
声の主は、同学年でA組の如月 リカだった。
アメリカの大病院院長の娘で、すらっとした長身に西洋風の整った顔立ち、
涼やかな目元の彼女は、はっとするほどの美少女、いや美女であり、
コンテストの優勝候補との声もよく聞く。
学園内には、いや学園外でさえ、すでに多くのファンがいた。

リカは、いつものように後ろに何人もの取り巻きを従え、悠然と結花を見下ろしている。
腰まで伸ばした艶のある黒髪が、風によそいでさらさらと揺れた。
「あ、えっと…こんにちは、如月さん。何か用、ですか?」
控えめな声で答える結花は、少し俯きがちに顔を伏せ、長い前髪で顔を隠した。
他人と話すとき、彼女がいつもそうするように。

二人は対照的だった、
結花はそう背は高くない、せいぜい154,5といったところだ。
体型は少し痩せ型、胸にしろお尻にしろ、まだまだ発展途上の感を与える。
リカの身長は170近く、体は出るところは出る、すでに成熟した大人の体型をしている。
顔、スタイル、どれをとっても一流のモデルが霞むほどに完璧だ。
ただ、二人の印象の差を決定付けるのは、その雰囲気だった。
どこか挑戦的にすら見える自信に溢れ、人の視線を受ける事に生きがいを感じるかのような美女。
目を隠し、自信なさげに人の目を避けようと俯く少女。
まるでそれは、人生における勝者と敗者のサンプルにさえ思えた。

リカは告げる。
「如月さん、はよそよそしいわ。リカって呼んで。
 …だって私達、同じコンテストに選ばれた子同士じゃない」
「…コンテスト?……え、何、…!?」
うろたえる結花に、リカは例の掲示板を示した。
二人の様子を遠巻きにみていた少女たちが後ずさり、結花の視界にその名が映る。

    
   鼓 結花


コンテスト参加者が名を連ねる中、確かにその名が刻まれている。
結花は言葉を失った。
 
コンテストに出場することは重大な意味を伴う。
そのため、コンテストに参加するには特別な資格――百人単位の生徒の推薦、学院の有力な
関係者の薦めなど――が必要だった。
どちらも結花ごときにはまるで無縁の話。
事実、結花のような何の変哲もない生徒が出場者に選ばれることなど前代未聞だった。
中庭の異常なざわめきの原因を知り、結花はただ呆然と立ち尽くす。

「貴女が選ばれた理由は分からないけれど、仲良くしましょう。
 さっそくだけど、とりあえず一緒に来てくれないかしら?」

目を上げた結花の視界の中で、一人の少女とその取り巻き、さらにそれを囲む中庭の
無数の生徒が笑みを浮かべている。
結花も馬鹿ではない。
仲良くする事の意味も、もう逃げる事が出来ないのも理解している。

結花は、自分が本能的に掲示板を避けていた理由を悟った。

2.

「きゃああ!」
女子トイレの個室に投げ込まれ、結花と壁が同時に悲鳴を上げる。
閉じた便座の上に尻餅をついた結花の前に、戸を塞ぐように何人もの少女が立ちはだかった。
その先頭には如月リカの姿がある。

「どうして貴女のような子が選ばれたのかしら…まあ、運が悪かったわね。
 貴女は私のライバル…つまり、私のファン数十、いえ数百の生徒が貴女の敵に回るわ」
リカは柔らかい口調で、しかし冷たく言い放つ。
結花は当然不服そうだ。
「そ、そんなの無茶苦茶だわ!私だって何のことか分からないもの。
 きっと何かの間違いよ!!」
立ち上がって逃げようとする結花を、リカの横にいた二人の取り巻きが押さえつける。

「あの掲示は、この学院で最も重要と言ってもいい物。間違いの筈はないわ。
 とりあえず、今日はご挨拶ね」
便座の上に押さえつけられている結花の腕を、背後に跨った別の少女が絡め取った。
「足を開かせて」
その声で、戸の外から伸びた腕が結花の足首と膝も固定する。
いくつもの手で体の自由を奪われ、さらに個室の中で何人もの体が密着しているので、
結花はほとんど体を動かせない。

リカは静かに結花を見下ろして観察した。
前髪のせいで顔はよく見えないが、肩まで伸びた後ろの髪は左右に分けて括られており、
一応最低限の身だしなみには気を使っているらしい。
しかし制服のスカートを膝下まで下ろしているのが、リカの癇に障った。

「貴女ねえ、女の子ならもっとスカートの長さとか考えなさいよ、みっともないわね。
 そんなに脚に自信がないのかしら」
そう言うと、結花のスカートの裾を掴み、一気にたくし上げようとして、ふとその手を止める。
そして一瞬残酷そうな笑みを結花に投げかけると、後ろにいた少女に何かささやいた。
結花が不安になって尋ねても、リカは今に解る、とほくそえむだけだ。

やがて、戻ってきた少女の手には大きなハサミが握られていた。
結花の顔色がさっと変わる。
「な、何を切る気なの?や、やだ……!」
無意識に、慌てて髪の毛を押さえようともがく結花。
リカはそれを馬鹿にするように鼻で笑うと、受け取ったハサミの鈍く光る刃で結花の太腿を
つうっとなぞりあげた。

「確かにバッサリ切りたいような髪だけれど、今はやめておくわ。
 まずは無粋なスカートを短くしてあげる。
 騒いだり暴れたりしたら、明日からズタズタの腿を晒して過ごすことになるから覚えておいて?」

刃が走った箇所に、赤い線が描かれる。
それを見た結花は、自分の制服のスカートに穴が空き、破れていく様を唇を噛んで眺めるしかない。

「ほら見なさい。短くなって随分魅力的じゃない。
 ま、貴女の身長じゃ関係ないかしら」
リカにそう嘲られ、結花は鋭い目で彼女を睨み据える。

結花のスカートは、屈めばすぐに下着が見えるほどに短く切り取られた。
しかもその断面はほころびて、いくつも糸が飛び出す惨めなボロ布のようになっている。

「何か言いたそうね。良いわ、何でも言ってご覧なさいよ」
取り巻き達の結花を押さえる力が強まったのを確認し、リカは結花の顔を覗き込むように
顔を前に突き出した。
直後。
ギリッと奥歯を軋ませる音に続き、鈍く重い音がトイレに響く。

「…ぃ、っぎゃあああッ!!」
頭突きを喰らった額を抱え、リカの体は後ろに崩れ落ちた。
一瞬の間を置いて、取り巻き達の悲鳴が上がる。
それを怒りに燃える目で見つめる結花。
彼女は普段こそ大人しく地味に振る舞っているが、決して気が弱いわけではない。
しかし。
「こ、の…やってくれたわね!!」
四肢を拘束された彼女に、憤怒の形相で立ち上がったリカの蹴りを避ける術はなかった。

 ズ  ン 

「ぐう…お……ッ!!!」
靴のつま先がめり込んだ腹部から、低く濁りきったうめきが搾り出され、唾液を散らした。
「リカさんに何すんのよ、ブス!」
「調子乗ってんじゃないわよ!」
周りを囲む取り巻き達も、すぐに彼女を痛めつけ始めた。
「ぎゃあ!ぐ…ぅ、うあ!い、痛い!やめて、いづッ!
 っう、…ぅ、…るして、許してぇ、ゆるしてよお――――!!!!」
始めこそ歯を食いしばって耐えていた結花も、体中の骨がひび割れるかのような感覚に恐怖し、叫ぶ。
それほどに少女達の暴行は容赦がなかった。

「う、…っう、く…ひぐ…っく」

時間にして数十秒。
その間に幾度の蹴り、何発の拳が彼女の華奢な体を襲ったろう。
四肢を拘束されたまま頭を垂れ、襲いくる吐き気に耐えていた。
だが、彼女を見下ろすリカの目からは、未だに怒りの色が消えていない。

「もう一度、足開かせてくれる?」
形の上では頼んでいるようで、しかし絶対的な命令を受け、周りの少女が再び結花の脚を掴む。
リカはハサミを手に取ると、それを結花の短くなったスカートの中に差し入れた。
その刃が狙うのは、もちろん結花の履く白いショーツだ。

「そ、それはやめて! お願い、私コンテストには出ないから!
 だから、もう、家に帰して…!!」
肩で息をし、ぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら、必死にリカに訴えかける結花。
しかし、プライドの傷ついた彼女が、そんな願いを聞き入れるはずがない。

「はあ?コンテストには出なさいよ、それがこの学院のルール、逆らう事は許されないわ。
 それに、これはそんな事とはもう関係ない、私の顔を傷つけた罰よ!!」

リカの外見には全く損傷はないが、よほど堪えたのだろう。
威嚇するように怒鳴りつけながら、リカは滅茶苦茶にハサミを使ってショーツを破っていく。
いつ肌を傷つけてもおかしくない乱雑さに、結花はその様を凝視したまま震え上がった。


いくつかの赤い線が血の玉を噴きだしたところで、ようやくショーツだったものが
結花の秘部から剥ぎ取られた。

覆うものがなくなった割れ目は、まだ使われた事はないらしく、ぴっちりと閉じている。
その肌色の慎ましい線の上には、あまり毛の生えていない申し訳程度の茂みが見える。
 
リカの指が無遠慮に大陰唇に触れ、強引に重なりを割り開いた。
「いやあ、そんなとこ見ないで!!」
結花は、手で顔を覆うことも出来ずに、これから何をされるのかと経験の乏しい頭を巡らせる。
そんな少女の初々しい割れ目の中を覗き、リカと取り巻きは少したじろいだ。
「……随分とキレイじゃない。地味女の癖に…」
「なんか、へこむ…っていうかむかつく」
取り巻きが囁きあうのを、リカは睨みつけて制した。

「綺麗なピンク色ね。ここに物を入れた事はある?」
変に優しく笑いかけるリカに、結花は少し戸惑いがちに首を振って否定した。
「オナニーは?指も入れていないの?」
相変わらずの笑みのまま、リカが親指と中指で広げた割れ目に人差し指をうずめる。
んっ、と声を漏らしながら、結花はうつむいて黙り込んだ。
「・・・聞いてるんだけどな」
リカの切れ長の瞳が細まり、人差し指が一気に突き込まれる。
「んあ!な、ない、ないわよ、ないっ!」
第二関節ほどまで沈められ、焦りまくった口調で答える結花。
その答えを聞いて、リカは少し満足げに笑うと、人差し指を抜き、制服の胸ポケットから
ボールペンを取りだした。

「そう。じゃあ、これが貴女の初めての相手ね。」
そういうや否や、二本の指で拡げたままの膣口にそのボールペンをあてがった。
さすがの取り巻き達も、これには不安そうに顔を見合わせている。
当の結花は、すでに言葉も出せず、ただ力なくわずかに首を振るだけだ。
そして、自らの体内に異物が入る感覚に目を見開いた。
「っく…ッああ、だめ、嫌ぁ!許して、お願い!それはもう本当にだ…んむ!?」
悲鳴を上げる結花の口は、リカの片手で塞がれた。

「うるさいわ。このぐらいじゃ膜は破れたりしないわよ。
 …まあ、偶然当たってしまうのは仕方ないかしら」
リカがボールペンを浅く抜き差しすると、それに合わせて結花も嗚咽を漏らす。

やがてその速さが増した時、結花の喉からひぃっという叫びが上がった。
そして、彼女はあまりの心細さに、思わずリカへの不満を叫ぶ。
「もうやめてよ!こんなことして、あなた普通じゃないわよ!!」
 その言葉で、リカの瞳に消えかけていた光が再び宿る。
「あらあら何?また蹴られたいのかしらぁ!?」
妙にドスの利いた声と共に、結花の前髪を引っ掴んで顔を睨みつける。
しかしその時、リカの表情が固まった。

「そ、その顔・・・・」

リカがうめく。
前髪を掴まれたことで丸見えになった結花の顔は、先程の暴行で少し腫れてはいるが、
特に変わったものではない。
ところがリカは、結花の顔を覗き込んだまま顔面を蒼白にし、身動き一つしない。
結花は戸惑った表情で恐る恐るリカの顔を窺っている。
「リ、リカさん!どうしたんですか!?」
取り巻きの声で我に返ったリカは、ポールペンを取り落としてふらふらと後ずさる。
取り巻きがそれを支えた。

「…な、なんでもないわ。ただあんまり地味でひどい顔だったから、吐きそうになっただけ」
首をぶんぶん振って何かを払い、リカは吐き捨てるように言った。
取り巻きがなあんだ、確かにそれなら分かるわぁといって笑う。
だがその陰でリカがまた表情を曇らせたのを、結花ははっきりと目にした。

リカは肩に掛かった髪を大袈裟に後ろへ払いのけると、トイレの入り口に向かって歩き出す。
そしてあるところで足を止め、振り返らないまま結花に告げた。

「貴女、明日からそのスカートで登校するのよ。
 もし別のに替えたら、顔中血まみれにしてあげるからね。
・・・・こうやって!!!」

突然彼女は、掃除用具入れからモップを取り出すと、その柄で横にあった鏡を叩き割った。
耳をつんざく音とその異常な行動に、結花と取り巻きは同時に叫び声を上げる。
放射線状に亀裂の走る鏡を一瞥し、完璧な美貌に歪んだ笑みを浮かべて、リカはトイレを後にした。
取り巻きが慌ててそれを追う。
 
後には、無残に割れて床を覆うガラス片と、結花の秘所に埋められたボールペン、
そして惨めな姿にされた少女だけが取り残された。

3.

痛む体を引きずり、結花は半泣きになりながら帰り道を歩く。
今や彼女の制服のスカートは、普通に履いて歩けば何もつけていない秘部が見え隠れしてしまう。
そのため、茂みの上ぎりぎりまでスカートをずり下げているが、端から見ればそれは
かえって露出の気があるように映る。
今がまばらとはいえ人通りのある夕方だからいいものの、深夜ならば確実に変質者の餌食だろう。
もっとも、人通りの多いのもまた年頃の少女にとって耐えがたい事なのだが。
 
何人もに視姦されながらも、結花は何とか家にたどり着いた。

「ただいま……」
とりあえず帰ったことを告げるが、返事がないことは百も承知だった。
この時間、彼女の家には誰もいない。
彼女の家は、コロッケ屋を経営している。
とはいっても、働いているのは結花一人だ。

金に余裕のあった父が、気まぐれに始めた店。
その男は、気まぐれに当時まだ14歳で路頭に迷っていた結花の母、美鈴を抱き、
彼女が結花を生んですぐ、気まぐれに姿をくらましたという。
 
結花の記憶の中で、その母はいつでも結花に対して冷たく接した。
始めは、愛は欠けていても義務をしっかり果たす母親だった。
店の経営、家事、子育て、全てを子供ながらに卒なくこなす。
しかし、結花が物心つき、店の仕事や家事を覚えると、美鈴はそれらを全て放棄した。
今の彼女は、娘が必死に働いて稼いだ金を使って真っ昼間から遊び呆け、
夜中になって酔っ払って帰宅する、最低の母親だ。
 
彼女はいつも口癖のように言う。
「お前が稼いだ金で暮らしてると思うと気分が晴れるわ。
 恨むならあの男を恨みなさい、お嬢さん」

全く未知の存在である父親は恨みようがなかった。
だが、結花が美鈴を恨む事もなかった。
彼女も結花と変わらない歳の頃に自分を育ててくれた。
これが普通なのだと、そう思っていた。

とりあえず新しいショーツを履き、スカートを古いGパンに替えてエプロンをつける。
くしゃくしゃになった髪を梳き、左右に分けてピンで留める。
額を出すと、彼女の印象はがらりと変わった。
例え何があっても、店を潰すわけにはいかない。
家に帰った彼女は、根暗で地味な幽霊学生ではない。
快活な看板娘、その姿でいなければならない。
今日は帰るのが遅れた、もう少しすれば常連客が店の前に集まりはじめる。

「すぐに店の支度に掛からなきゃ…」
自分に言い聞かせるように呟き、結花は立ち上がった。
その時、腹部の鈍い痛みが呼び覚まされ、まなじりにじわっと涙が浮かぶ。
それでも、彼女はそれをこらえていつもの仕事を始めた。

唇を、きゅっと噛み締めて。


     ―――学園祭まで、あと一ヶ月―――
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