大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2010年09月

他人(ひと)の皮を被る 3話


 結局、一週間が過ぎても晃が捕まる事はなかった。
 どうやら奈津美は、自らが穢されたと他人に知られる事を良しとはしなかったらしい。
 晃は不安から夜ごと由希を呼び出しては抱いていたが、ようやく安堵して動き始める。

 次に興味を惹かれたのはスワッピングだった。
 カップル同士が互いのパートナーを交換し、マンネリ打破や嫉妬による欲情を目的に楽しむというものだ。
 他人を装って手に入れた恋人を、さらに別の男に抱かせる。
 それにひどく興奮した。
 ネットで探すと、スワッピング相手を募集しているカップルはかなりいた。
 だがほとんどが中高年カップルだ。
 せっかく由希という極上の女を出すのだから、相手にもそれと釣り合うだけの魅力が欲しい、と晃は思う。

 妥協せず探っていると、一人妙な人間を見つけた。
 山のようにスワッピングを申請されながら、それを全て撥ねつけている須川という男だ。
 調べてみると、どうも須川自身は50過ぎであるにも関わらず、パートナーが現役の女子高生らしい。
 添付された写真を見ると、なるほど中々に可愛かった。

 髪は黒のセミロングで、女子高生らしい若い体つきをしている。
 スカートから覗く太腿は由希と奈津美よりややふっくらしているが、脚の綺麗すぎるあの2人と比べるのがそもそも間違いかもしれない。  
 普通に高校のクラスにいて、学年に2、3人はファンがいそうなタイプだ。

「女子高生か。若い娘ってのも美味そうだな」
 晃は心中で舌なめずりし、その男にメールを送る。
 勿論由希の写真をつけてだ。
 須川はすぐに喰いついた。素晴らしい、こういう女性を待っていた、など大層な興奮ぶりだ。

 晃はその熱い文面を以前の自分と重ねて懐かしくなる。
 由希の事は今でも愛しているし、会うたびに見惚れる。
 だがいつでも呼び出して抱ける、という状況になって以来、魅力が褪せたのは事実だった。

「他人に俺達のセックスを見せるんだ、たまには良いだろ?」
 晃は由希にスワッピングをそう説明した。
 正確ではないが、それもプレイの一環として含まれるので嘘でもない。
 だが、それでも由希は躊躇った。
「……知らない人に裸を見せるのは……嫌だよ……」
 身を掻き抱いて呟く。
 晃はつい、とっくに俺に見せてるんだぜ、と暴露したくなった。
 だが今はあくまで康平として、優しく由希を抱きしめる。
「ごめんな由希。でも俺、由希とのセックスを誰かに見て欲しい。俺の由希はこんなに可愛いんだぞって、他の男に自慢したいんだ」
「……康ちゃん……?」
 晃の演技に、由希が驚いた表情になった。
「……うー、ん……確かに康ちゃん、前からちょっと変わった性癖だったよね。
 淡白っていうか、受身なのが好きっていうかさ。
 最近ちょっとワイルドになったかと思ったけど、そうかぁ……」
 由希は少し嬉しそうに笑い、腰に手を当てて続けた。
「よし!じゃあ他の人にエッチを見せるってプレイ、許可したげる。
 私と康ちゃんの愛し合いっぷりを見せ付けてあげようよ!」
 そう笑う由希に、晃もまた微笑んだ。心中で更に深い笑みを湛えながら。


       ※

 スワッピング会場は都内のホテルだった。
 名目上晃達も一部屋を借りた上で、あらかじめ待機していた須川の部屋をノックする。
「やぁお二人さん、待ちかねたよ。遠慮せず入りたまえ」
 須川はネットのプロフィール通り、50過ぎの脂ぎった親父だ。
 背が高く、中年太りながら柔道でもやっていたようながっしりとした体格をしている。
 言動に染み付いた横柄さからそこそこの地位にいる人間だと窺えるが、顔つきは粗野そのものだ。
 感じのいい男とは言い難く、由希などはあからさまな嫌悪の目を向けている。

 ホテルの室内は豪勢だった。
 宿泊が2万円とあって由希と2人で焦ったものだが、それだけあってシティホテルの部屋とほとんど変わらない。
 キングサイズのベッドやソファは勿論、マッサージチェアや露天風呂まで完備されている。
 充分に生活していけるな、と晃は感じた。
 件の女子高生はマッサージチェアでファッション誌を眺めている。
 流石に制服ではなく、黄色いTシャツに、ダボッとした右肩掛けの黒いオーバーオール姿だ。
「レミ、2人が来たぞ」
 須川が声を掛けると、レミと呼ばれた女子高生が入り口に目を向けた。
 薄いアイラインで彩られたぱっちりとした瞳が晃達を見定める。
「ふぅん、ボンボンとお嬢さまってとこか」
 レミはそう呟いてファッション誌を閉じた。


「じゃあお2人さん、始めてくれるかね」
 須川がソファに掛けながら言う。
 晃は由希と顔を合わせ、キングサイズのベッドに腰掛けた。
 ベッドの高さはおおよそ晃の膝丈、電車の座席程度で座りやすい。

 レミと須川の視線を正面から受けつつ、由希がベルトを外した。
 デニムスカートを脱ぐと白い脚線が露わになる。
「ほおおぉ……!」
 須川が鼻の穴を拡げ、レミが舌打ちする。由希は頬を赤くして俯いた。
 すると晃がおもむろにその由希のショーツへ手を潜らせる。
「え、ちょっと……」
 由希が声を上げるなか、晃の指は温かな丘を滑って茂みに潜った。
「んんっ!」
 秘裂へ指が入り込んだ瞬間に由希の表情が変わる。
 秘裂の中はすでに湿り気を帯びていた。晃が指を動かすと、粘膜が爪の辺りに絡みつく。
「凄いな、纏わりついてくるぞ。気持ちいいのか?」
 晃が問うと、由希が頷いた。
「どうして……?いつもより、感じちゃう……気持ちいい」
 由希はそう言って晃の首に手を回す。顔を斜めに向け、唇を舐めてキスをねだる。
 晃はその由希の舌を吸うようにキスに応じた。
 由希と口づけをかわしながら、秘裂の中をゆっくりと撫でまわす。
 激しく擦るよりも優しく撫でた方が喜ぶのは解っていた。
 由希の太腿が内股に閉じ、中が熱さを増していく。蜜の分泌も充分だ。

 晃は由希の唇を離し、持参した鞄を開けてバイブを取り出す。
 太さはないが、その分長い。
「由希、パンツを下ろして」
 晃の指示に従って由希がショーツを下げた。きちんと手入れされた茂みが露わになる。
 須川が随分と嬉しそうだ。
 晃はバイブを由希の秘唇に宛がい、ゆっくりと挿し入れた。
「ふうんっ……!!」
 由希が顔を顰めるが、潤んだ秘唇は抵抗なく異物を呑みこんでいく。

 バイブを深く挿入した後、晃は由希にショーツを戻させた。
 愛液に濡れたショーツはバイブの尻に突き上げられ、またそのピンク色を透けて見せる。
 スイッチを入れるとバイブは不気味な羽音で震え始め、由希に細い叫びを上げさせた。
「舐めて、由希」
 晃がジーンズの前を開いて逸物を取り出すと、由希は静々と床に降り、這った姿勢で逸物に片手を添える。
 その淀みない動きは、由希が恒常的にその姿勢での奉仕を仕込まれている事実を物語っていた。

 由希は片手を床につき、尻を突き出した姿勢で逸物を舐めしゃぶる。
 艶やかなダークブラウンの髪が背中に揺れた。
 幹を握りしめ、亀頭を小さな舌で包む熱心な奉仕だ。
 その一方で、バイブの唸る腰は不規則に震えていた。
「んっ、んっ……んふっ!……ッん、んん……!!」
 由希の漏らす息もかなり昂ぶったものとなっていく。
 須川は由希の内腿を凝視していた。白い内股は秘部から溢れる蜜で妖しく濡れ光っている。

「どうだ、うまいか?」
 晃は由希の顔を見下ろしながら訊ねた。
 晃は由希の心理を想う。
 ショーツ一枚の下半身に深々とバイブを呑み込んだまま、男の足元にかしずいて逸物を舐る。
 しかもその姿を見知らぬ人間に見守られながらだ。
 それを考えると、由希のかすかな舌の震えや腰のうねりが、どれほど妖艶に思えることか。
「お、おいひい……よ……」
 潤んだ瞳で逸物を咥える由希と目が合った瞬間、晃はたちまち射精感が沸きあがった。
 晃の欲情が爆発するのは、いつもある一瞬だ。
「いくっ……!!」
 晃は呻き、由希の唇の奥に精を放つ。
 由希はすっかり慣れたもので、放たれた精液を舌でかき集め、テイスティングするように咀嚼した後、一息に飲み干した。


 ごくん、と由希の喉が鳴った瞬間、須川が手を叩いた。
「いやいや、素晴らしい。妬けるような熱愛ぶりですな!」
 その言葉に、由希は照れくさそうな顔をする。
 しかし続けて出された台詞に、その表情は凍りついた。
「して。急くようで実にお恥ずかしいが、ここで早速パートナーの交換と行きませんかな」
 晃が不敵に笑う前で、由希が視線を左右させる。
「え?……どういう、こと……?」
「聞いたろ、パートナー交換だ。今度はあのオジサンが由希とするんだよ」
 由希はゆっくりと須川に目を向けた。須川は下卑た目で由希を観察している。
「いやあっ!ぜ、絶対に嫌よ!!」
 由希の叫びに須川が苦笑する。

「おやおや、随分な嫌われようだな。まぁこのビール腹だ、慣れたものだがね。
 しかし実際こうしてスワッピングに参加している以上、嫌ですできません、では困るんだよ。
 こちらとしてもね」
 須川は眼にぎらついた光を湛えて告げる。一刻も早く由希を喰いたいという獣の眼だ。
「……そんな事、言われても……」
 由希がさらに渋ると、今度は女子高生のレミが溜息をついた。

「あー嫌やわぁ、彼氏の前でだけカワイ子ぶる女って」
 由希がレミに視線を向ける。
 レミは続けた。
「大体、阿呆とちゃう?どうせ、見られるだけ、とか宥めすかされて参加したんやろうけど、
 こういう事態になるかもとか思わんわけ?
 可愛いから不幸な目に遭わなくて当然、男は自分を守ってくれるナイト、
 とか勘違いしてるんとちゃう?」
「な、何ですって……!」
 レミの言葉に由希も目尻を吊り上げる。
 晃の前でこそ大人しいが、本来は気の強い女性だ。

 晃はそんな由希を背後から抱きかかえた。
「ご、ごめん由希!言ってなかった事は謝るよ、けど俺、由希が他人に抱かれてる状況に
 凄く興奮するんだ。
 変なのはわかってる、けどこれも、もっと由希を好きになるためなんだ……!!」
 晃からそう言われても、流石に由希の怒りは収まらない。
 しかし負けず嫌いの由希の性格は、場から立ち去るのではなく、立ち向かう方を選んだ。

「……わかった。じゃあ今夜一晩だけ、この人に抱かれてあげる。それでいいでしょ」
 肩を怒らせながら、晃に背を向けて静かに呟く。
 須川が満面の笑みを浮かべた。
「素晴らしい、実に素晴らしい!!では善は急げだ、早速隣の部屋へ移ろうじゃないか」


       ※

 由希が須川に肩を抱かれて出た後、部屋には晃とレミだけが残された。
 晃が微妙に気まずい思いをしていると、レミの方から話しかけてくる。
「ごめんね、ちょっと彼女さんのことキツく言い過ぎたかも」
 レミはしおらしくして言った。
「だってお兄さんの彼女、凄い可愛いんだもん。正直、嫉妬しちゃうよ」
 指を組んで済まなそうにするレミに、晃は冷たい視線を向ける。

「猫被りはやめな。素でいいぜ」
 そう言う晃も、先の御曹司じみた雰囲気は失せ、チンピラまがいの空気を漂わせていた。
 レミは面白そうに目を細める。
「あれぇ、お兄さん……実は“そっち側”の人間やないんとちゃう?」
 セレブではない、という事だろう。晃は陰湿な笑みで頷いた。
「詮索はすんなよ。俺もお前が何歳か気になってるが、あえて訊かねぇ」
「そら有り難いわぁ。けど誤解されとうないから言うとくけど、お金の為ちゃうよ」
「金じゃないなら、ブランド狙いか?」
「ちゃうて。 ……まぁブランド、ゆうんはある意味そうかな。
 制服着るような年齢の娘は、オヤジにとって特別らしいんよ。一種のブランドなわけ。
 せやからウチも現役のうちに、オヤジ達にちやほやされて優越感に浸る。
 ついでに気持ち良い事も教えてもろぅて、お金も貰える。
 そういう期間限定のバイトなんよ」
 レミはそう語りながら、晃の手を取って自分の太腿に触らせた。

 確かに格別な肌だ。すべらかな感触と、纏いつくようなもちもちとした触感。
 押せば跳ね返し、弾力も充分にある。
 自分がその身体を持っていたなら、確かに資産として使いかねない。晃はそう感じる。
「ろくでもねぇ娘だな」
 晃が嘲った。
「お兄さんかて、ウチの数倍やばい人生歩んでそうやん」
 レミも返す。
 どうやら晃とは気が合いそうだ。

 晃は服を脱ぎ、レミと共に露天風呂へ向かった。
 上には満点の星空が広がり、はるか遠くにはライトアップされた街並みが臨めて、
 妙に子供心をくすぐる浴室だ。

 レミは制服姿だとややむっちりして見えたが、脱ぐとそれなりに細いのが解る。
 同じスレンダータイプの由希よりは括れが若干見劣りするものの、それも若く代謝が良いゆえの緩みだろう。
 普通に学校生活を送る少女にしてはよく磨かれている方だ。
 胸がほとんどないのも今時の女子高生らしいと言えばらしい。

 2人は熱い湯に浸かり、身体の芯から温まる。
 晃が夢見心地でいると、ふとレミが声をかけた。
「あ、そやお兄さん。何かひとつ、今日のプレイのルールを決めてぇな」
「プレイのルール?」
「うん。声を出すなとか、イク時に目を瞑るなとか。
 須川さんの定番で、交換した女の子にひとつだけルールを守らせる事になってるんよ。
 彼女さんも、あの壁の向こうで何や誓わされとる筈やよ」
 レミはそう言って隣室を指す。その言葉に晃は異様な興奮を覚えた。

「ルールか……じゃあ、風俗嬢みたいに奉仕してくれるか」
「へぇ、お兄さん風俗好きなんや?」
「いや、興味はあるが好きじゃねぇ。ただお前、肌が良さそうだからよ。密着してえんだ」
「なるほど、ええ読みしてるやん。実はウチも風俗苦手やけど、興味はあんねん。
 2人でたっぷり風俗ごっこしよな」
 レミは笑い、晃の手を引いて湯から上がる。
 手のひらの感触は肉球のようで心地良かった。

「ほな、床にうつ伏せんなって」
 湯船から上がったレミが晃に命じる。晃は石造りの床に腹をつけた。
 火照った体に石の冷ややかさが染み入る。
 晃が見上げる視界では、レミがボディソープを前身に塗りつけていた。
 控えめな乳房から、なだらかな下腹、丘の茂みまでがたっぷりの泡に塗れていく。
 そして晃が腿に柔らかな重さを感じた直後、レミが背中に覆い被さってきた。
 熱い。
 暖かいではなく、風呂の湯をそのままかけ回されているような確かな熱さが背を覆った。
 その熱さは同時に柔らかさでもあり、そして滑らかでもあった。
 若い肌が背筋を撫でていく。
「ああ、すげぇ……!!」
 晃は直感的にそう零した。
「ふふ、ウチの肌は気持ちええやろ?こればっかりはあのお姉さんにも負けへんよ?」
 レミが自慢する通り、その肌触りはこれ以上なく女らしい。
 不思議なものだった。
 未熟な果実に過ぎない小娘が、肌触りという一点に於いては、その後のどんな年齢よりもはっきりと女を感じさせるのだ。

 レミは胸と股座の茂みを使って丹念に晃の背を洗ってゆく。
 腿の後ろを股座で擦られた時などは、危うくそれだけで達しそうな妙な快感があった。
「気持ちええ?なぁ、お兄さん。気持ちええの?」
 相手の快感が気になるのか、レミは晃を清めながら幾度も問う。
「ああ、すげぇよそこ。アレが疼くぜ」
 晃が率直に感想を告げると、レミはますます熱心に腰をうねらせる。

「今度は、仰向けんなって」
 晃の背面が泡塗れになったところで、レミは晃を仰向けにさせた。
 晃の腕を少し持ち上げ、レミが跨って腰を前後させる。
 女子高生の瑞々しい身体が腕の上で腰を振るのは絶景だ。
 湿気でしなびたセミロングの髪も清楚そうで良い。
 タワシのような茂みとぬめりを帯びた柔肉が交互に触れていく。

 レミの秘部のぬめりは段々と増していた。
 気持ち良いのだろうか、と晃が思い始めて暫くした頃、晃の二の腕を擦っていたレミがふと腰を止める。
 見上げると、レミは目を瞑ったまま汗を垂らしていた。
「おい、どうかしたのか」
 只事ではない様子に晃が声を掛けると、レミはゆっくりと瞼を開いた。
「……あかんわ……ウチの方が先にイッてしもた」
 震える声で呟きながら、照れ隠しか晃の手をきゅっきゅと握る。
「感度が良いんだな」
 晃が言うと、レミが頷く。

「……ウチな、須川さんにクリトリス開発されてんねん。あん人、前戯大好きやし。
 でもまさか、こんな簡単にイッてしまうようなっとったやなんて……」
 レミは自分の股座を眺めて声を落とす。
 晃は溜息をつきながら半身を起こし、その細い肩を抱いた。
「なーにしょぼくれてんだ。感度がよくて嫌がる男がいるとでも思うのかよ?」
「……お兄さん……」
 レミは晃の言葉に目を細めた。
「そやね。大人の女に近づいただけか!」
 レミはそう言って檜の桶を手に取り、湯を掬って思い切り頭に被った。
 突然熱い湯がかかり、晃が悲鳴を上げる。
「あっち!おい、いきなり何してやがる!!」
「あはは、まぁまぁ。身体洗うのはひとまず終了、ほら、キレイにするよ」
 そう言ってまた湯を浴びせる。

 晃の身体から泡がすっかり流れ落ちると、レミは晃の背後に回った。
 訝しむ晃の後ろで、レミは突然晃の肛門に吸い付いた。
「うおっ!?」
 晃はその感覚に思わず仰け反る。
「ほらぁ、逃げたらあかんて」
 レミはその晃を追いかけてさらに肛門を吸った。
「おおおっ……!!」
 晃は膝の抜けそうな感覚を必死に堪えた。

 少し前に奈津美の尻を舐った事はあるが、される方にはこれほどにおぞましく、
 また気持ちの良い事なのか。
「ふふ、凄い声。これ、どのオジサンも大好きなんよ。あそこにビンビン響くんやって。
 普段はよっぽどお金積まれてお願いされなせぇへん事やけど、お兄さんにはサービスや」
 レミはそう言って尻穴を舐る。
 さらには後ろから手を回して陰嚢を掴み、亀頭にも触れた。
 そこから一気に責めが始まる。
「あああうぅうおお!!」
 晃は仁王立ちしたまま腰を震えさせた。
 女子高生に肛門を舐められ、陰嚢をこりこりと刺激される。
 あまつさえ亀頭に触れる指は包皮を剥き上げては戻し、鈴口を掻くように弄くるのだ。
 被虐の快感が晃の背筋を駆け上る。半勃ちだった逸物が見る間に逞しくそそり立っていく。

 何分ほどもっただろうか。
「ううっ!!」
 晃が小さく呻くと同時に、鈴口から小さく白い雫が滲んだ。その雫はたちまち球となって張力を破り、幹を伝い落ちる。
 さらにそれに続いて濃い液が鈴口から溢れ、幹を流れ、陰嚢を真っ白に染めて床へと滴っていく。
 堰をきったような射精は裏筋が痺れるほどの快感をもたらした。
「うわぁー、濃いのいっぱい出たねぇ。やっぱり若いっていいね」
 レミは満足そうに肛門から口を離し、指に纏いつく精液を舐め取った。

「……ふうぅ、ええお湯やった」
 露天風呂から上がったレミはしみじみと言い、冷蔵庫のスポーツ飲料を喉を鳴らして飲む。
 首筋に浮いた汗が実に健康的だ。
 晃もコーヒー牛乳を取り出して一気に飲み干す。
 ビンを捨てながら時計を見やると、長く感じた風呂だがまだ一時間しか経っていない。

「隣はどうなっとるやろねぇ」
 時計を見る晃にレミが言った。
 さぁな、と晃が答える。
「断言してもええわ、今頃彼女さん、まだまだ前戯で焦らされとる最中やで」
 晃の横顔にレミが語りかける。
「ウチもあれだけはホンマに嫌や。昂ぶらされても昂ぶらされても、絶対にイカして貰われへん。
 叫びとうなっても、ううん、ホンマに叫んでも須川さんは止めてくれへんのんよ。
 あんなんされたら、もう他のオジサンの相手なんて出来ひんわ」
 晃はそのレミの言葉に生唾を呑んだ。
 レミが笑う。
「興奮した?どうせ宿泊やし、気になっても朝まで待つしかあらへんよ。それまでベッドで続きしよ」
 レミは若い肢体をキングサイズのベッドに投げ出して言った。
 晃も隣室の方から顔を戻し、レミのいるベッドへ潜る。
 そして二回戦が始まった。


「ああ凄ぇ、気持ちいいぜ」
 レミに騎乗位で跨られ、晃が声を上げる。
 レミは若さに任せて腰を上下させ、激しくベッドを軋ませた。
 締まりもかなりよく、晃は時間をかけて、相当大きな快感を得てからゴムの中へ精を放つ。
 騎乗位の後は互いに裸のまま抱き合い、素股のような形で愛し合った。
 二発立て続けに射精した晃はさすがに逸物に鈍痛を感じていたが、素股なら気負わず楽しめる。
 またレミの若い肌は抱き合うと夢心地になれた。
 レミも積極的に身体を絡みつかせてくる。
 晃とレミはそうやって抱き合いながら、ベッドの中で幸せな時を過ごした。
 特に言葉はなかったが、抱き合うだけで演技を忘れて安らげた。


 翌朝は朝鳥の泣き声で目を覚ます。
 外はもう明るみはじめており、晃はレミの頭の下からそっと腕を抜き取った。
 隣はもう起きているだろうか。
 晃がそんな事を考えながら缶コーヒーを開けると、眠そうにレミも目を覚ます。
 顔を洗い、荷物を纏めているとレミが晃を呼んだ。
 何やら紙切れを差し出している。
「ウチの番号とメアド。お寿司でも奢ってくれたら、またご奉仕したげんで?」
 レミはけらけらと笑いながら言った。
「生憎だが、俺は回る寿司しか知らねぇぞ、ガキ」
 晃が笑いながら返すと、レミは笑顔のまま頬を膨らませる。

 ホテルの廊下に出ると、須川と由希もちょうど部屋を後にする所だった。
 須川は顔が艶やかだが、由希の方はひどく疲れきっている。
「おい由希、大丈夫かよ?」
 晃が由希の肩に手をかけようとした瞬間、由希がびくりと身を仰け反らせた。
「……由希?」
「ご、ごめん康ちゃん。ちょっと、その、急な仕事が入って。もう行くね」
 由希は顔を伏せたまま晃の横を通り過ぎ、エレベーターへ向かう。
「おい、由希!」
 晃が声を上げると、背後の須川が野太い声で笑った。
「いやはや、あのお嬢さんは少々初心すぎたのかもしれんな」
 晃が須川を睨む。
「あんた、何やらかしたんだ?」
 すると須川は宥めるように晃の肩へ手をかけた。
「何、そう大した事はしとらんよ。疑うなら、後日君のメール宛にこちらの部屋映像を送ろう。
 君も我々のしたプレイが気になって仕方ないだろうからね」
 そう言って豪快に笑いながら歩き去る。レミも一瞬晃を振り返りながら、足早にその後を追う。
 広い廊下には晃だけが残された。

        ※

 翌日、須川から映像ファイルの添付されたメールが届いた。
 彼の言う通り、隣室の記録映像のようだ。
 晃は生唾を飲みながらファイルを再生する。
 カメラは由希が露天風呂に入っている間に部屋へ設置されたらしい。
 といっても明らかに盗撮だ。

 映像は浴衣姿の須川がレンズの向きを調節するシーンから始まった。
 カメラを設置し終えた須川は、由希が上がるのをビールを飲みながら待ち焦がれる。
 数分後、由希が身体から湯気を立てて現れた。
 雪のように白い肌が桜色に火照り、この上なく色っぽい。

 由希はタオルを身体に巻きながら、俯きがちにベッドへ座った。
 その横へベッドを大きく沈ませて須川が腰掛け、由希に酒を勧める。
 だが由希は断固としてそれを拒み続けた。
 それはそうだろう、須川のような好色親父に酔わされたらどうなるか解ったものではない。

 須川は残念そうに首を垂れた後、由希に向き直って当夜の『ルール』の存在を告げた。
 晃がレミに教わった、あの男女間のルールだ。
 由希は当然聞いていないと抗議するが、須川の一言で口を噤んだ。
「もしこのルールを拒否したり、破ったりした場合は、パートナーの男性に罰則が科せられるが……構わんかね?」
 須川がそう言うと、由希は暫く逡巡した後、仕方なくルール制度を受け入れた。

「よろしい。では私のルールだが……私は淑やかで従順な女性が好きでね、
 生きた人形に強く憧れている。ゆえに君へ求める条件はこうだ。

 『何をされても、許しがあるまで指一本動かすな』 」

 須川の条件に、由希は顔面を蒼白にする。
「そう脅える事はない。何もその美しい体を傷つけたりはせんよ。
 ただ人形のように私に抱かれて欲しいだけだ。
 それから、首から上は動かして構わん。女性の喘ぎは好きだからな」
 由希はそのルールに肩を震わせる。
 しかし否定はしない。

「……可愛い子だ。さあ、力を抜きなさい」
 須川は甘ったれた声を囁きかけ、由希のバスタオルを剥ぎ取った。
 そして由希をベッドに横たえ、静かに唇を合わせていく。

 由希は口づけを受けながらも、須川とは決して目を合わさない。
 須川はそれを気に留めた様子もなく、淡々と由希の唇をしゃぶった。
 その舌先は唇から鼻先へ、下顎へと移り、首筋を伝い降りる。
 そこからがレミの言っていた、本当に嫌な前戯の始まりだった。
「ふんんん……!!」
 由希がたまらない様子で鼻を鳴らす。
 彼女は須川に片腕を持ち上げられ、その腋の下を執拗に舐られていた。
 その映像を見て、晃はそら恐ろしくなる。
 晃も女の体を舐るのは好きだ。だが須川のねちっこさは晃の比ではない。

 首筋、うなじ、背筋、臍、脇、内腿、足指の間。
 細部の窪みに到るまで恐ろしいほど丹念に舐りまわし、的確なソフトタッチで性感をくすぐる。
 それがどれほど心地良いのかは、受けている由希の反応で見るしかない。
 しかし荒い呼吸やしこりたった乳首、一刻ごとに強張る手足を見て、感じていないというには無理がある。
「ううう……っ!!くううううぅん……っっ!!!」
 由希は歯を食い縛って体中の舐りに耐え忍んでいた。レミが言うように叫び出したいのだろう。
 だがおそらく、一度叫べば我慢の糸が切れると解っているのだ。
 跳ね回りたい極感を、声を殺す事でかろうじて押さえ込んでいるのだ。

 舌での舐りはたっぷりと一時間半は続いた。
 レミが言った通り、晃達が風呂から上がった一時間の時点では、まだ由希は体中を舐られている段階だったのだ。

「ふむ、いい乳をしている」
 須川は由希の乳房を根元から愛撫していき、その先端に震える突起へ吸い付いた。
「ううあっ!!」
 無意識にか由希の身体が竦みあがる。眉根を寄せてなんともつらそうだ。
 須川はそんな由希の様子に満足げな顔を浮かべ、由希の太腿に手をかけてぐいと開かせた。
 そして今度は由希の茂みへ口をつける。
 一時間半も体の細部を舐って焦らしておき、ようやくの女陰責めだ。
 当然の事ながら須川の啜る秘部からは、潤みきった音がカメラにまで漏れ聞こえている。
「う、うん、くぅあああううっ!!」
 由希は声を上げていた。 しかし快感にというより、苦悶の声に思える。

 原因はすぐにわかった。
 須川はようやく秘部を責めようと思ったのではない。
 茂みの上で包皮を半ば剥きあげるほどに尖った陰核を、舌で舐り始めただけだ。
 つまりそれは、焦らした上での更なる焦らし。
「いや、いやああぁあ゛っ!!」
 由希は顔を左右に振り乱しながら泣くような声を上げる。
 達しそうになっては陰核から口を離し、また舌で昂ぶらされ……を延々と繰り返されているのだろう。
 それがどれほどつらい事か、男である晃にも想像はついた。
 前戯などという生易しいものではない。須川が行っているのは、明らかに拷問の域だ。

「ほれどうだ、イキたくてたまらんだろう。腰に散り散りの電気が走って、おかしくなりそうだろう?」
 須川が顔をぐしゃぐしゃにした由希へ問いかける。
「いぎたい、イギたいいぃっ!!もおおがしぐなるっ、イカせて、イカせてえええぇっ!!!」
 秘部を舐められ始めて何分が経った時点でか、由希は大声で懇願した。
 須川は陰湿な笑みで割れ目に中指と薬指の二本を沈める。
 須川が中で指を曲げ、激しくかき回し始めてすぐだ。
「う、ああぁあ!?いぐっイグイグうっ!!だめこれ、いくっいっちゃ、いっちゃはああううぅぅ!!!」
 由希が激しく身を痙攣させて絶叫しはじめた。
「おい、人形のようにしていろというルールは忘れたのかね?」
 須川が脅すと、由希はシーツを掴んで必死に快感を堪える。
「だ、だめっ、いく、いくいぐうっ!!!」
 だがすぐに背は跳ね上がり、内腿にこれでもかというほど筋を張って、再び須川の指遣いに翻弄されていった。

 カメラには由希のピンク色の秘裂に節ばった指が潜り込み、その隙間から蜜が漏れ出す様子がはっきりと映っている。
「うぅ、ううぅぅっ…………ッあ、いくいくいぐ、もうやめて、そこだめええぇっ!!!!」
「ふん、酷い顔だな。まあ散々に焦らされて、膨らみきったGスポットを私に擦られているんだ。
 耐え切れる女性など居たら、それこそ本物の人形だな」
 須川はそう語りながらも手首の動きを止めない。
 ちゃっちゃっちゃっちゃと鋭い水音をさせ、由希の秘部から透明な飛沫を噴き上げさせる。
 シーツにはその飛沫で、由希の尻を起点とした楕円状の染みが広がっていた。


 須川がようやく秘部から汁まみれの手を抜いたとき、由希は両脚をだらしなく投げ出して肩で息をしていた。
 清潔感のある顔は涙と鼻水に塗れて面影もない。

 須川は乱れた由希の姿を見下ろしながら、ゆっくりと浴衣を脱ぎ捨てる。
 その瞬間、晃と映像内の由希は同時に声を上げていた。
 黒光りする須川の逸物は恐ろしく大きい。
 太さで晃より二周り、長さは10センチは違う。まるで黒人の持ち物だ。
 しかもそれが、血管を浮き上がらせるほどの張りを見せている。
「いや、怖い……」
 由希が両手で口を押さえた。

 須川は逸物を悠々と扱きながら、その由希の股座にのし掛かる。
「……あの、ご、ゴムぐらい付けてください!」
 由希は震えながら、勇気を振り絞って叫んだ。須川が面白そうな顔をする。
「ほう、生は嫌か、なら君が付けてくれ。一時的に手の使用を認めよう」
 須川が言うと、由希は震える手で鞄を漁ってコンドームを取り出した。
 しかし袋を破って被せようとした時、由希の動きが止まる。
「どうかしたかね?」
 須川は全て理解している様子で訊ねた。
 由希が用意していたコンドームは一般的なサイズ、とても須川の剛直を包める代物ではない。
「……ぐっ……!!」
 由希は悔しげに、心から悔しげにコンドームを投げ捨てる。
 須川が嘲るように目を丸くした。
「愛しの彼に合わせたゴムでは、私には不足だったようだね。さぁ、力を抜きなさい」
 須川はそう言って、横を向いた由希の秘部に剛直を押し当てる。

 浅黒い亀頭が由希のピンク色の秘裂に沈み込んだ。
「あっ!」
 須川がビール腹を震わせて一気に腰を進めると、由希の背が仰け反った。
 痛みからか、汚辱からか、眉間には深い皺が刻み込まれている。
「いい締め付けだ。私の太いモノが食い千切られそうだよ」
 須川は上機嫌でさらに深く逸物を押し込んでいく。
 規格外の大きさの逸物に、由希の秘部が限界まで拡げられる。
 そうして暫し挿入を試みた後、半ばほどまで入ったところで須川が大きく息をついた。

「ふむ、普通にやってもここまでしか入らんな。膣の中も可愛らしいサイズだ」
 たった半分で、由希は苦しそうに眉を顰めている。
 だが須川はそこで諦めた訳ではなかった。由希の腰を掴み、繋がったままベッド脇に立ち上がる。
 駅弁と呼ばれる体位だ。
 男女にかなりの体格差がないと出来ないが、体格の良い須川は小柄な由希を楽々と抱える。
 そして大きな手で由希の尻を鷲掴みにし、激しく由希の身体を上下し始めた。
「いやあっ、お、奥に入ってる……!!」
 由希が悲鳴を上げる。
「おおう、これは最高だ。膣の形まではっきりと解るぞ!どうだ、君も逸物を感じるだろう、うん?」
 須川は歓喜の声を上げながら由希に問いかけた。
「……う、ううぅ…………!!!」
 由希は顔を歪めながらも、須川を強く睨みつけ、そして腕をだらりと下げる。
 ルールに従う余裕がある、という反抗的な意思表明だ。
 須川は嬉しそうに笑みを深める。
「そうだ、人形のように大人しく快感を受け入れなさい。天国に連れて行ってやろう」
 須川の言葉と共に、逸物が激しく由希の奥深くへ叩き込まれた。

 そこからは、駅弁での激しい交わりが延々と続いていた。
 どちらも言葉を漏らさず、黙々と肉を打ちつけ続ける。
 由希はだらりと腕を下げたまま耐えていた。
 その声は始めこそ苦しげな呻きだったものが、次第に色気のある喘ぎ声へと変わっていく。
 秘部からも愛液が溢れて須川の逸物に纏わりついており、感じているのは誰の目にも明らかだ。
 それでも由希は、絶対に須川と目を合わせなかった。
 視線を遠くの壁に張り付かせたまま、白い体を汗まみれにして突き込みに耐えていた。

「君は愛液が多いな、私の足にボタボタ垂れているぞ。下にバスタオルを引かねばならんタイプか?
 清楚そうな顔をして、困った娘だ」
 須川は由希をなじった。
 事実、須川の足には由希の秘部から溢れる蜜が幾筋も垂れ落ちている。
 そこまでになっているということは、当然突き上げの度に相当感じている筈だ。
「んん!……うんんんん!!」
 由希は顔を歪め、逸物が奥に届くたびに腰を震わせている。
 荒い呼吸で閉じなくなった口の端からはうっすらと涎の線が見え、足の指は快感にぴんと張っていた。
「……しかし、君の忍耐力には恐れ入るな。あれだけ焦らされて、ポルチオも硬くなって、
 それを何度も突き上げられても悶え狂わんとは。
 すでに何度も達しているだろうに」
 須川は由希を褒め称える。
 だがその口元は笑っており、音を上げるまで責めるつもりである事が明らかだった。

 由希はその後も気丈に耐え続けたが、20分が経った頃、ついに大きな変化が現れ始めた。
「あ、あああ、い、いく、いく、またいぐ、いいぐうっ……!!!」
 汗と涙に濡れていた顔からさらに鼻水までが溢れ出し、溺死する寸前のように激しく喘ぎ始める。
「ふん、達しすぎてもう呼吸もままならんか」
 須川は腰を使いながら楽しそうに由希を観察した。

 由希は快感を振り払うように何度もかぶりを振り、下げた手に握り拳をつくり、
 最後に天を仰いでぎりぎりと歯を鳴らす。
 だが須川が大きく由希の尻を上下させ、ぐちゅっぐちゅっという嫌になるほど粘ついた音が響くと、
 とうとう須川の頭に手を回して救いを求めた。
「ああああぁ、うあああああうっっ!!!」
 口を大きく開き、涙を流して須川の導くままに腰を震えさせる。
 秘部からは夥しい潮が噴きこぼれ、腿のような尻肉に沿って流れていく。

 結合を終えた後、由希は愛液の広がる床へ放り出された。
 汗に濡れたダークブラウンの髪を顔に張り付かせ、乳房を大きく上下させて肩で息をする。
 無残なその姿は海で溺れた人間そのものだった。


 須川は満足げな笑みで由希を見下ろす。
 逸物は結合前ほどではないものの、未だ人が目を疑うほどの大きさを残していた。
 須川はその逸物を指で整えながら由希に話しかける。

「随分と気をやったようだね、今までに経験がなかったほど気持ちよかっただろう」
 由希は疲労困憊の中、眩しそうな目で、それでも須川を睨み上げる。
 須川はその心意気に嬉しそうな顔をする。
「……ところで由希くん、覚えているかな。我々の交わしたルールは、
 『人形のように指一本動かさない』プレイであった筈だ。
 それを踏まえた上で、今回はどうだったかね」
 須川が問うと、由希が表情を固くした。
「そうだ。君は最後、明らかに私の首に抱きついた。
 前戯の段階で身悶えていた事は大目に見るにしても、あれは少々興醒めだ」
「そ……それは……あの」
 由希は返す言葉が見つからず、顔面を蒼白にしていく。

「そうだな、君自身も解っているようだ。この件は本来なら、連れの彼に通す事になる。しかしだ」
 須川は一旦言葉を切り、由希の視線を受けて続けた。
「私もこの歳になると、若い男女の諍いをあまり目にしたくはない。
 君の誠意次第では、不問としてもいいんだよ」
「誠意……ですか?」
「そう、誠意だ」
 須川は繰り返し、由希の桜色の唇に逸物を押し当てる。
「要求はシンプルに、君の口を使う。ただし今度こそ本当に、手も舌も使わない人形の奉仕だ」
 須川は巨大な剛直を由希に見せつけながら告げた。
 由希が顔を強張らせる。
 だが唾を飲み込み、意を決して頷いた。
「……わ、わかりました」
「いい子だ」
 須川が由希に顎を掴み、開かせた口に剛直を押し込んでいく。

「あ、あが……」
 由希は額に汗を浮かべ、顎が外れそうなほど口を開き、息を震わせてその瞬間を迎えた。
 やがて逸物が喉の奥まで届くと、須川が由希の頭に手を置いた。
「くれぐれも歯だけは当てないようにしなさい。いいね」
 その言葉に由希が目で頷くと、須川が腰を引く。そして喉奥へ向け容赦なく捻じ込んだ。
「ほごおおぉっ!?」
 由希の泣いて赤らんだ瞳が見開かれる。

 須川はそれから、全く遠慮のないイラマチオを始めた。
 カメラはその様子を横から捉える。
 由希の慎ましい唇に極太の剛直が出入りする所がよく見えた。
 剛直にはローションのように粘ついた由希の唾液が絡み付いている。
「うお、おおぉ、おぐっごおおぉええっ!!!」
 よほど喉深くまで入れられているのだろうか。
 由希は激しくえづき、正座した太腿を震わせていた。
 手はその脚の間に突かれ、苦しむたびに指で床を握りしめた。

「ああこれは最高だ、喉奥の震えがよく亀頭を締めるぞ!」
 須川は悦に入ったまま由希の頭を前後させる。
 「おごろえええぇぇっ!!!」
 由希がそれまで発した事もないような汚いえづき声を上げた。
 口に深く入れられたまま小刻みに頭を振らされ、カコカコと喉奥をかき回す音をさせる。
 その音程が少しずつ高まってきた頃、今度は素早く逸物が抜き取られる。
 濃厚な唾液の線で亀頭と繋がれながら必死に酸素を求めている間に、また深々と咥え込まされる。

 一番の奥底まで咥えさせられたまま、須川がじっと腰を留める事もあった。
「あ、あおええ……」
 由希はそんな時が一番苦しそうで、喉奥から苦悶の声を漏らし、目を細めて涙を零す。
 それが一体どのぐらい繰り返されただろうか。
 可憐な由希の顔が涙や涎、鼻水で見る影もなくなり、やがて床につく手が痙攣し始める。

 そしてついに限界が訪れた。
 須川に頭を掴まれ、何度も何度も喉奥に突きこまれ、須川がまた最奥で腰を留めて
 喉奥のうねりを楽しんでいた時だ。
「う゛っ!!」
 由希が突如頬を膨らませ、須川の腰を押しのけて口を押さえた。
 その細い指の間から黄色い半固体が溢れ出す。

「……やれやれ、品のない事だ。結局人形になる事はできなかったな」
 須川はそう毒づき、由希の髪へ精を浴びせかける。由希は惨めな姿のまま目を閉じた。


        ※


 須川から送られた映像はここで途切れている。
 それを見終った時、晃は携帯にメールが来ていることに気付いた。
 由希からだ。

『 ホテルでは、ごめんなさい。あの時、ちょっと気が動転してて。
 すごく自分が汚れた気がして、康ちゃんにだけは触られたくなかったの。
 本当にごめんなさい。
 でも、あれで解った。私、やっぱり康ちゃんが好き。康ちゃん以外の人には触られたくない。
 ……もしも、こんな私でも良かったら、また康ちゃんがお休みの日にデートがしたいです。 
                                      
                               由希   』

 そのメールを見て、晃はふと胸に痛みを感じた。
 罪悪感などという真っ当な物かはわからない。
 だがともかく晃は、由希にできるだけ優しくメールを返した。
 そして由希からの嬉しげな返信を確認し、康平の携帯を閉じる。

「…………康ちゃん、か…………」

 革張りの椅子へ深く沈み込み、晃は一人呟いた。
 
                            続く

他人(ひと)の皮を被る 2話

※スカトロ注意


 バーのある通りに入ると、その瞬間に奈津美の存在が解った。
 風俗嬢だらけの中にあって、クールな彼女は明らかに浮いている。
 パンツスーツに白ブラウスという固い格好ながら、なお艶やかな女らしさが漂う。
 しかしナンパを仕掛ける者はいなかった。ホスト連中でさえ遠巻きに耳打ちし合うだけだ。
 当然だ、と晃は思った。
 あからさまに無理そうな感じがする。
 パンツスーツを着用しているのは、スカートで男に媚びる気などないという表明だろう。
 同時に己の価値をよく自覚しているタイプだろうし、恋人にも切磋琢磨しあえるだけの資質を求めるクチだ。
 裏通りにたむろする男では相手にならない。
 無論それは晃も同じで、高嶺の花である奈津美に近づくことなど許されなかった。
 ……ほんの、数日前までは。

「おい、アイツ…………!」
 晃が奈津美の前に立つと、通りに緊張が走る。ついに無謀な馬鹿が出た、と。
 だが奈津美が拒否ではない表情を見せた時、その緊張はざわめきに変わった。
「あら、早いのね。偉いわ」
 奈津美は腕時計を見やり、約束の10分前である事に賛辞を与える。
 晃達より4つ下らしいが、上に立つ姿がひどく堂に入っていた。
 小学校でクラス委員、中高で生徒会長をしていたタイプだろう、と晃は思う。
 根拠のない憶測だが、あながち間違ってもいない筈だ。

 奈津美は横に並ぶと170cm台の長身であることがわかる。何しろ晃と目線が同じだ。
 股下はありえない長さで、ベルトラインが晃の臍より高い。
 完全に西洋人モデルの体型だった。
 由希が可憐であったように、この奈津美もまた麗しい。
 珠玉に次ぐ珠玉。晃は涎が垂れそうになる。

「すみません、私などの為にわざわざお時間を下さって」
 晃が康平らしい謙虚さで頭を下げると、奈津美はふっと笑った。
「部下の面倒を見るのが上司の仕事よ、気にしなくて良いわ。飲みながら話しましょう」
 奈津美はショートヘアを靡かせてバーの戸を開ける。
 気楽に、とはよく言ったものだ。
 こうして二言三言会話を交わしただけで、もう通りの視線を集めているというのに。

 バーは薄暗く、しかし夜だけあって客で溢れかえっていた。
 喧騒が辺りに飛び交う。
「ずいぶん賑やかですね」
 晃には少し意外だった。奈津美の雰囲気からしてシックな店を選ぶと思っていたからだ。
「社外秘の話をする時は、こういう場所がいいのよ」
 奈津美はそう言いながら奥まりのテーブル席へ向かう。
 姿勢を正した歩き姿は絵になり、カウンターの男達が口笛を吹いた。
 晃が奈津美の向かいに座ると、サービスだというジン・トニックのグラスが運ばれてくる。
「こういうショットバーには来たことがある?」
 奈津美はそう切り出した。間近で見ると恐ろしいほど整った顔だ。
「え、ええ、何度かは」
「そう、でも何だか落ちつきがないわ。取引先との接待ではしゃんとしなさい」
 ぴしゃりと述べる言葉には気迫がある。
 晃は内心で震えた。
 奈津美の挙動や目配りには隙がなく、下手を打てば即座に成りすましが暴かれそうだ。

 しかし、対話は意外と穏やかに進んだ。
 奈津美は晃が恐れる休職理由への言及はしない。
「休職の必要があるならキッチリと休みなさい。半端に仕事を続けるより良いわ。
 復帰後は周囲の評価が厳しくなるけれど、そこは踏み堪えなければいけない所よ」
 それが奈津美のスタンスだ。口調こそきついが、この場は純粋に激励目的で開いたらしい。
 厳しくも温かな上司、といった所だ。
 そうなれば晃が考えるのは、この女をどう酔わせるか、それだけでいい。

 ただそれも一筋縄ではいかなかった。
 晃は会社勤めで上司を酔わせるノウハウを身につけていたが、奈津美はそれをさらりとかわす。
 逆に晃が飲まされるほどだ。
 恐らくは暗に接待のやり方を仕込んでいるつもりなのだろうが、晃からすれば厄介この上ない。
 正攻法では晃が先に酔い潰れるのは確実だった。

 だが、晃にはひとつ策がある。普通なら絶対に使ってはならない、危険な策だ。


「……それでですね、私は思うんです。我々が建前と呼んでいる物とは、突き詰めればですね……」
 晃は下らない話を続けてとにかく時間を進めた。
 奈津美はアルコールに強く、今はシングルモルトのスコッチを味わっている。
 そのまま飲み続けてもお開きまでは潰れないだろう。だが、そんな彼女でも避けられないことがある。

 晃がなお語り続けていた時、奈津美がふとそれを遮った。
「ごめんなさい、5分だけ席を外すわ」
 そう言い残してトイレに向かう。晃はしてやったりとほくそ笑んだ。
 奈津美にトイレへ向かわせる事こそが時間稼ぎの目的だ。
 人は水分を摂れば尿意を催す。特に女の膀胱は男より小さいため、その間隔も短い。

 晃は店内を見渡した。
 宴もたけなわ、店中が馬鹿騒ぎで晃へ注意を払う者はいない。
 晃はその隙に懐から粉入りの袋を取り出す。康平の部屋にあった抗うつ剤だ。
 袋に貼られたメモによると、

 『水溶性が高く味も薄めで、ジュースに溶かせば苦味がわからない。
 レスリン・テトラミドが含まれ、鎮静効果ですぐに深く眠れる』

 らしい。
 晃は最初にメモを見て笑った。
 まるで人を眠らせるのに使え、とでも言うようではないか。
 実際、その効果は強烈だ。
 アルコールと薬の催眠効果が重なれば、どんな酒豪も一発で沈む。
 ゆえに決して行うべきではない危険な行為だ。
 だが晃はあえてその禁忌に踏み入った。

 奈津美のスコッチに粉を入れ、かき混ぜる。粉は一瞬にして溶けた。
 スコッチほどクセの強い酒なら味で解ることもないだろう。

「……悪かったわね、話に水を差して」
 ややあって奈津美が席に戻る。
 涼しい顔をした晃の前で、奈津美は飲みさしのスコッチを傾けた。

 テーブルがガタンと揺れたのはその数分後だ。
「課長、どうなさったんです!?」
 晃が白々しく声を掛ける先で、奈津美は机に突っ伏していた。
 店の視線が奈津美に集まる。
「ど、どう……して…………?」
 奈津美は震えながら肘をついた。一気に酔いが回り、もう瞼を開けているのも辛いはずだ。
「大丈夫ですか、課長!!」
「……くっ!」 
 晃が大仰に心配すると、奈津美は無理矢理に背を起こす。
 部下が酔い潰れる前には絶対に落ちない覚悟だ。
 だが晃の演技で他の客も騒ぎ出し、急遽店先にタクシーが呼ばれる。

「降ろ……しなさい……ひとりで……帰……れるわ……」
 奈津美はタクシーの中でも抗った。
 実際、記憶をなくすほど酔っていても、自宅には自力で帰り着くタイプだろう。
 だが前後不覚のなか康平のマンションに連れ込まれ、ソファに座らされた瞬間、
 奈津美はがくりと首を垂れた。
 さすがの奈津美も、安堵した時の睡魔には勝てなかったらしい。


   ※

「なんとか上手くいったか……」
 晃はソファで息を吐いた。深く眠り込んだ奈津美に起きる気配はない。
 晃はその奈津美のスーツをそうっと脱がしにかかる。
 ブラウス姿にすると酒の匂いが強まった。
 クールな美人が頬を染めて酒の匂いをさせるのはそそる絵面だ。
 さらにブラウスのボタンを外していくと、青い宝石つきのネックレスが覗く。
「高価そうだな。この石ころで何百万するんだ?」
 晃が毒づいた。奈津美という人間の恵まれぶりを象徴するようだ。

 晃は劣等感に苛まれながら奈津美のブラジャーを剥ぎ取った。
 豊かな乳房が零れ出す。
 カップはEかFか、28歳とあって少し崩れてはいるが、突き上げればさぞかし揺れるだろう。
 乳輪と中心の尖りは初々しいピンクで、男の扱いに長けるイメージとはややギャップがある。
 ボディラインはスレンダーだ。
 縦に一筋入った腹筋はスポーツジムの女を思わせる。
 海で焼いたのだろうか、肌がほどよく色づいた中で乳房だけが白い。
 晃はさらに奈津美のベルトに手をかけた。
 ベルトを外しロングパンツを脱がせると、黒のストッキングが視界に飛び込む。
「……すげぇ脚だな……」
 晃は息を呑んだ。西洋モデルのような脚線に黒ストッキングは反則的だ。

 ブラウスをはだけ、下はストッキングのままソファに横たわる美女。
 いかにも襲われたオフィスの女という格好だった。
 晃はそれを逃がすまいと、箪笥から麻縄を取り出す。
 康平の金で買い漁ったアダルトグッズの一つだ。
 いきなり本格的な緊縛は無理だが、動きを封じるぐらいはできる。

 晃はまず奈津美の手首を後ろ手に縛った。
 それから奈津美を革張りの椅子へ腰掛けさせ、脚をMの字に開いて脛と太腿を結び合わせる。
 大股開きの、シンプルながら羞恥心を煽る縛りだ。
 椅子の座部はよく沈み、普通に座っても立ち上がるのに力がいる。
 そこへ縛られ押し込められたとあっては、自力ではまず抜け出せまい。
 奈津美にとっては絶望的な状態だが、観る者には極楽だ。

「人生最高の眺めだぜ、こりゃあ」
 晃が目を細めた。奈津美のすらりと長い脚はこの縛りに映える。
 晃は上機嫌で次の準備に移った。

 ビデオカメラを取り出し、USBでそのカメラとデジタルレコーダー、テレビを繋ぐ。
 そうすればビデオに撮った映像をテレビで直接観ることが可能だ。
 試しに眠る奈津美へビデオを回すと、スクリーンのような大画面にあられもない姿が映し出された。
 部屋の四隅にあるサラウンドシステムが些細な息づかいまで響かせる。
「ちょっとしたAVのつもりだったが、まるで映画だな」
 晃はビデオカメラを三脚に取り付けながら笑う。

 奈津美を縛り上げ、撮影の準備も整い、万一に備えて服も隠した。
「さて、と」
 晃は息を整え、奈津美のストッキングを股部分から引き裂く。
 下着はピンクの“紐パン”だ。パンツスタイルでもショーツラインが出にくいためだろう。
 その紐パンを解くと、ついに奈津美の秘部が露わになる。

 恥毛がかなり毛深い。臍から尻穴にまで墨を塗ったように生い茂っている。
 こうやって秘部を見られる事など想像もしていなかったのだろう。
 あるいは商社の課長ともなれば、毛の処理をする間もないほど多忙なのかもしれない。
「あんなお高くとまった顔してて、こんな剛毛を隠してたのかよ。奴らに知られりゃ暴動もんだぜ」
 晃は遠巻きにしていたホストを思い出す。

 濃い茂みは晃の欲望を増幅した。ただ濃すぎるため、肝心の割れ目がほとんど見えない。
「これはこれで良いもんだが、仕方ねぇな」
 晃はバスルームに入ってシェービングクリームと剃刀を探しあてる。
 そして奈津美の恥毛にたっぷりとクリームを塗りつけた。
 テレビ画面に恥毛の剃られていく様が映し出される。
 恥毛を剃られる間も奈津美は目を覚まさない。その寝顔は子供のようにあどけなかった。
 人前で寝顔など晒さない女だろうから、かなり貴重な映像だ。

 毛をすべて剃り落とすと、見違えるほどに綺麗な肌が覗いた。
 上半身同様、太腿は健康的に焼けているのに三角地帯だけは雪のように白い。
「おおっ……」
 晃は股座を覗き込みながら、ある一点に目を奪われていた。
 奈津美の肛門だ。
 背を座部につける格好のため、肛門は晃の真正面に晒された。
 白い尻肉の中心に放射状に皺が並び、全体に淡い桜色をしている。
 排泄器官と称するのが躊躇われるほど慎ましい蕾だ。
「これが、奈津美のケツの穴か。へへ、マジでこんなに綺麗だったなんてな……」
 晃は吸い寄せられるように肛門へ口づけした。
 味はわからない。だがあの奈津美の肛門を舐めているのだという事実が晃を満たす。

 3日前、奈津美を知ったときからこうしたかった。
 高貴な彼女を尻穴で悶えさせたいとグッズを揃え、その使い方を調べながら、
 どう辱めようかと妄想を膨らませた。
 それを実現させる時が来たのだ。


   ※


 晃は夢中になって奈津美の肛門を舐め続けた。
「……な、何をしてるの!?」
 そう悲鳴が漏れたのは、数分後の事だった。奈津美がようやく目覚めたらしい。
 晃は意に介さずに尻穴を舐り続ける。
「やめなさい!」
 奈津美は鋭い声でさらに叫んだ。
 目が覚めれば見知らぬ部屋で縛られ、裸で尻穴を吸われている。
 しかもあれだけ剃っていなかった恥毛が、いつの間にか残らず処理されてもいる。
 その恥辱たるや如何ほどのものだろう。
 晃はそれを想いながら、肛門の皺へ舌を這わせて唾液を塗りこめる。
 桜色の蕾がひくついた。

 蕾周りの肉を親指で押しやり、蕾に口を開かせて門に舌を這わす。
 蕾を形成する内向きに膨らんだ筋肉を、一つずつ、慈しむ様に丹念に舐め上げ、
 時に押し開く力を緩めて蕾そのものを吸い上げる。
 ずぞぞぞっという音が機器で部屋中に響き渡る。かなり唾液が入っていたらしい。
「やめなさい、いい加減にしなさい!!」
 プライドの高い奈津美は高圧的に命じ続けた。
 だがそんな彼女も、酔ったまま全裸で尻を吸われ、確実に感じてきているようだ。
 小刻みに強張る太腿はそれを如実に表していたし、肛門を啜り上げながらふと見ると、
 割れ目も物欲しそうに喘いでいる。

 気持ちの良くないはずがなかった。
 人はみな幼少時に肛門期を経て育つ、たとえ一生女陰の性感を知らずに終わる令嬢でもだ。
 鹿や狼でさえ肛門の快感は知っていて、仲間同士舐めあったりする。
 肛門のもたらす快感は生物の根源に関わるものだ。
 この極上の女とて、尻穴を延々と舐られれば凛然としてはいられない。
 特に酒の入っている今は、身体が快感にむけて開いているはずだ。
「本当にもうやめなさい、クビになりたいのッ!?」
 恥辱に塗れた奈津美の怒号。尻穴から漂いはじめる肉の香り、異臭。
 それらを楽しみ、晃は呆れるほど残酷に尻穴を舐り続ける。
 受けるだけの奈津美はどんどんと追い詰められていく。

「ううっ!!」
 ある時ついに奈津美が声を上げた。
 見上げると、彼女は天を仰いでいる。その瞬間強い女の香が漂い、割れ目から濃厚な蜜がどろりと伝い落ちた。
 蜜はゆっくりと肛門の脇を流れていく。
 肛門を吸い続けられた奈津美が、ついに達したのだ。
「オフィスの高嶺の花が、尻を吸われて絶頂か。人間の身体なんて単純なもんだな」
 小指大に口を開いた肛門を撫でると、奈津美の太腿が跳ねた。
 それに気を良くしながら、晃は小指を肛門にゆっくり沈めていく。
 食い千切るようなきつさの中を進むと、あるところで硬いものに行き当たった。
 それが何かを悟り、晃は口元を吊り上げる。

「おいおい、なんだこれ?アンタでもクソが溜まるのかよ。
 涼しい顔して男の目を浴びてたくせに、皮一枚かっさばきゃあただの糞袋ってわけだ」
 晃が煽ると、奈津美の射殺すような視線が晃を捉えた。
「に、人間なら排泄物が出るのは当たり前でしょう!
 あなたはどうなの?一度もトイレに言った事はないとでも主張するつもり!?
 自分の事を棚に上げて、人の欠点ばかり挙げる。大したお人柄ね!」
 凛々しく正論で返す奈津美に、晃は可笑しさが止まらない。

「解ってねえなぁ。全然違うんだよ、俺とアンタじゃ。
 ゴミみたいな俺にクソが詰まっている事実と、女神みてぇなアンタにクソが詰まっている事実。
 こりゃもう全く別の話だぜ」
 晃は言いながら、箪笥を開けてローションボトルと烏口の器具を取り出した。
 妖しく銀色に光るそれを見て奈津美が危機を察する。
「これを知ってるか?」
「知らないわ、あなたみたいな変質者の得物なんて。……それで何をするつもり?」
「こいつは肛門鏡っつってな、この20cmばかしの烏口を肛門に差し込んで、
 腸の奥の奥まで開こうってんだ。きっとよく見えるぜ、何が入ってるかよ」
 晃のその言葉を耳にし、さしもの奈津美も動揺を隠せない。
「くっ、うっ!」
 後ろ手に縛られた手首を揺すって逃げようともがく。
 だが底なし沼のような椅子の中では、自力で逃げ出すことなど傍目にも絶望的だ。

 晃は肛門鏡の烏口にたっぷりとローションを垂らし、奈津美の肛門へと宛がう。
「暴れんなよ。仮にも金属なんだ、明日からトイレで泣くことになるぜ」
 晃が脅すと、奈津美は承服しがたい顔ながらも抵抗をやめた。
 狭い腸内にゆっくりと肛門鏡を押し入れると、20cmの烏口はかなり深くまで入っていく。
 奈津美は冷たい感触に眉を顰めた。
 晃は烏口を完全に埋め込むと、今度はゆっくりと開いていく。
 徐々に腸壁が見えはじめ、完全に開くと奈津美の腸内が露わになった。
 晃はそれを満足げに眺めながら、三脚からビデオカメラを外した。
 そして奈津美の前で腸内をアップに撮りはじめる。

「……ぐう、うっ!!」
 奈津美が悔しげに俯いた。
 無理もない、144×95cmのテレビ画面に自分の腸内が大きく映し出されたのだ。
 女が直視するにはあまりにも残酷な映像だった。
 だが晃は片手でビデオを撮りながら、もう片手で奈津美の顎を掴んで無理矢理に観させる。
「どうだ、え?ずいぶんと溜まってそうだなあ」
 晃も大画面を観ながら嘲笑う。

 画面には複雑にうねるピンクの腸壁がはっきりと映し出されていた。
 その洞穴のようなものの底、画面下部に黒茶色の水溜りがある。さながら洞穴のせせらぎだ。
 晃がカメラをやや下に向けると、そのせせらぎが画面中央に映された。
 泥団子に似た汚物がアップになる。
 汚いそれをたっぷりと映像に残した後、カメラを引いて美しい奈津美自身も映像内に入れる。
 愛液をてからせた割れ目、白い乳房、宝石のネックレス、顎を掴まれた美顔。
 奈津美が目を見開く。

「綺麗な身体だよなあ、顔も別嬪さんだ。でも下を見りゃあんなに汚ねぇ。
 アンタにクソが詰まってるのは別の話って意味……解ったろ?」
 晃は奈津美の顎を離し、肛門鏡をゆっくりと引きずり出した。
 広がりきっていた肛門は再び菊の花に戻り、中心からわずかにローションの泡を覗かせる。
 奈津美は汚辱の映像が途切れたことで大きく息を吐いた。
 安堵か失望かは解らない。
 第一、晃にはもう奈津美の心理を考えている余裕など無かった。
 写真を一目見ただけで心臓が破けそうに高鳴った相手の、腸内の有り様を覗いたのだ。
 手足まで震えるほどに興奮している。


「さあ、あんだけ汚れてたんだ。綺麗にしねえとなぁ」
 晃は息を荒げながら準備を始めた。奈津美はその内容に目を見張る。
 まず床と椅子の座部に粗相用のシーツが敷かれた。
 次いで洗面器にぬるま湯が汲まれ、そこに透明な薬液が落とされて無色のとろみが広がる。
 さらには注射器に似たガラス製のシリンダーが薬液に浸された。
 グリセリン浣腸だ。
 奈津美がそれをされた経験など勿論ないだろう。
 だが彼女の洞察力なら、それが薬液を注ぐための準備であることが解るはずだ。
 そして注がれる先とは、今までの会話から奈津美の腸内に違いなかった。
 晃は奈津美の表情を楽しみながら、浣腸器に薬液を吸い上げては吐き出させる。
 空気を追い出す為だ。
 それが終わった後、改めて薬液を吸い上げて奈津美の前に戻る。

 奈津美の肛門は先ほどの舐りでかすかに口を開いていた。
 晃は浣腸器を片手に、ボトルからローションをひと掬いしてその肛門に塗りつける。
 窄まりがひくんと反応するのが面白い。
 そうやって潤滑を増した後、ついにガラスの嘴口を奈津美の肛門へと宛がう。
「や、やめなさいっ!!」
 奈津美はここへ来ても高圧的な態度を崩さない。
 しかし肛門を見下ろす表情には明らかな怯えが見て取れる。

 晃は奈津美の荒い呼吸を読み、タイミングを合わせて嘴口を押し込んだ。
「うんっ……」
 奈津美が目を細める。叫ばないのは流石といったところか。だが、まだこれからだ。
「入れるぞ」
 晃は一声かけてシリンダーの尻に手をかけ、強く押し込む。
 奈津美の腹圧による抵抗がくるが、無理矢理に注ぎ込んだ。
「いや、は、入って……くるっ……!!」
 奈津美は余りの汚辱に呻いた。紛れもなく腸内に水が入っているのだ。
「ああそうだ、奈津美。お前のきたねぇクソ穴を浄化してくれる、ありがたい水だぜ!」
 晃は腕が震えるほど興奮しながら罵った。

 すぐに一本目の浣腸器が空になる。
 100ml入りの容器なので、初めての浣腸とはいえまだ入るはずだ。
 晃は嘴口を抜き出し、再度洗面器へ浸す。
「はぁ……はぁ……っ」
 奈津美は目を閉じたまま呼吸を荒げていた。
 そして晃の指がまた肛門を押し開くと、信じられないという顔になる。
「まだ入れる気なの……?」
「当たり前だろう、まだ100mlだぜ」
「嘘をつきなさい、あれがたった100mlなわけがないでしょう!」
 奈津美は晃に叫ぶ。腸内への僅かな注水は、彼女にとって凄まじい容量に思えたらしい。

「お前がどう感じようが、事実は事実だ。そら、もう一本いくぞ」
 晃は再度嘴口を肛門に咥えさせた。桜色の蕾が押し開かれる様は小人のフェラチオのようだ。
 シリンダーをゆっくりと押し込むと、腹圧に勝って少しずつ水が入っていく。
「んんん、ぁ、熱い……っ」
 奈津美が小さく唸った直後、彼女の下腹の奥がきゅろろろ、と小さく唸った。
「腹が鳴ってるぜ。腸ん中がぬるま湯で刺激されてきたか?」
 晃が問うと、奈津美は答えずに目線を逸らす。
「へっ、強情な女だ」
 晃は嬉しそうに呟いた。

 洗面器に汲んだ湯を粗方吸い上げ、4本分、400mlが奈津美の中に注がれた。
 初めての浣腸としては入った方だろう。


「さ、さぁ、気が済んだでしょう。この縄を解きなさい」
 注入を終えた瞬間、奈津美が言った。
「はぁ?何でだよ」
 晃は惚けたような笑みで答える。勿論言わんとしている事を知っての上でだ。
「トイレに行くのよ、それぐらい解るでしょう!」
 奈津美は顔を赤らめて怒鳴りつける。晃はますます笑みを深めた。
「いや、全く呑み込めねぇ。何でお前をトイレに行かせなきゃいけねぇんだ」
「何を言ってるの、じゃあどうやって……」
「牛豚でも解るハナシだろ。“ここ”でするんだ」
「なっ……!!」
 晃が淡々と返すと、奈津美の顔が怒りに震えた。
 晃は世話が焼けると言いたげに肩を落とす。
「わかったよ、じゃあ……10分だ。10分だけ耐えられたらトイレを使わせてやる」
 晃はそう条件をつけた。
 初めてのグリセリン浣腸は5分と耐え切れない、という噂を思い出した上での酷な提案だ。
 だが晃が譲歩した以上、奈津美も意地を見せて頷く。
「……じゅ、10分ね、いいわ。必ずよ」
 すでに声が震える中、タイマーが設置され、奈津美の地獄が始まった。

 晃は浣腸に耐える奈津美を悠々と観察しはじめる。
 惨めな格好だ。
 肌は健康的に色づき、乳房と三角地帯だけが白い。
 上は乳房を露わにした丸裸で、後ろ手に縛られ、高価そうなネックレスだけが提がっている。
 下は脚を開いて縛られ、股部分の大きく破けた黒ストッキングが絡みついている。
 肛門は薬液を漏らすまいときつく閉じたままだ。

 晃は眺めるに飽き足らず、その美しい身体に舌を這わせはじめた。
 縦線の入った腹筋を舐め上げつつ乳首を摘むと、奈津美の肩が震える。
「牛みてぇな乳だな。よく痴漢されるんじゃないのか、ええ?」
 晃がなじると、奈津美の目がふと悲しみの色を湛えた。

「……白戸くん、あなたは知っている筈でしょう?私が昔、給湯室で部長に痴漢をされていた事」
 今までとは違う目だ。晃は胸が高鳴る。
「その部長を止めてくれたのは、あなたじゃない。
 私はあの日、男にだけは負けないと誓う一方で、あなたの力になろうと決めたのよ。
 出世コースを外れたあなたを、何とか引っ張りあげるつもりでいた。
 ……それなのに、こんな、男だったなんて……!!」
 奈津美はそう言って涙を零した。

 なるほど美談だ。
 だが晃にしてみれば、また康平か、と黒い想いが募るばかりだった。

「……ああ、そうだったな。確かにあん時も、お前はこうやって陵辱されてたっけ。
 さすがの俺も頭に血が上ったよ。
 なにせお前を犯すのは、この俺の悲願だったからなぁ!」
 晃は歯を剥きだして笑う。康平のイメージを自ら穢していく事が快感だった。
「……き、気が狂ってる……!」
 奈津美は親の敵のように晃を睨み据える。
 晃はその奈津美の乳首を吸いながら、片手の小指を奈津美の尻穴へと埋めこんだ。
「あっ!」
 奈津美の桜色の唇が開いた。晃が指を捻ると、ますます口の開きが増す。
「どうした?」
「や、やめてっ!今そんな事されたら、が、我慢がっ……!!」
「我慢がどうなんだ?」
 晃は意地悪く指を抜き差しする。
 奈津美が唇を噛む。

「じゃあ率直にこう言いな。
 『お尻の穴に指をズボズボされると、我慢できなくてうんちを漏らしてしまいます、
 どうかお止めください』 ってな」
「だ、誰がそんな事……!」
 晃の提案を、奈津美は眉を顰めて拒否する。
 だが指がさらに奥へ入ると、首を跳ねさせて声を上げた。
「わ、解ったわ、言うわ!……お、お尻の穴に指を、ズボズボされると、我慢っ、できなくて……
 う、ちをっ、うんちを、漏らしてしまいます! ど、どうかお止め……くださいっ!!」
 その哀願はテレビにしっかりと映し出され、部屋中に響き渡る。
 晃は大袈裟に笑いながら小指を引き抜いた。

「そこまで惨めったらしくお願いされちゃあ、しょうがねぇ。大人しくケツでも観てるか」
 そう言ってビデオカメラを拾い、奈津美の尻穴をアップで写しはじめる。
 限界が近いのは明らかだった。
 奈津美の肛門は喘ぐように細かく開閉し、その開きに応じてごく小さな放屁が起きる。
 同時に穴の奥から泡が溢れ、奈津美の呼吸でその泡が吸い込まれた直後、
 黒い空洞となった内部から茶色い汚液が流れ出す。
 その汚液で白い尻肉はすっかり汚れきっていた。
 奈津美自身もその映像を目の当たりにし、汗まみれの眉を顰める。
 一気に限界が近づいたことだろう。傷口を見たときほど痛いものはない。


「……じゅ、10分まであと、どのくらいなの?」
「4分26秒だ。良かったな、あと少しだ」
 晃は白々しく褒める。時間はあと半分近くもあり、とても保つわけがない。
「ふんんん……!」
 奈津美は目を強く瞑って必死に耐えた。だがそれも無駄な抵抗だ。
 それから40秒後、ついに奈津美が叫び声を上げる。
「お願いッ、トイレに、トイレにいかせてぇ!!もう本当に、耐え……っられない!!」
「あとたったの3分だぞ。無理なのか?」
「もう本当に限界なの!お腹が痛くて、これ以上はもう……!」
 汗まみれで懇願する奈津美に、晃は笑いながら洗面器を置いた。
 そして膝立ちになり、戸惑う奈津美をゆっくりとその洗面器の上に抱え上げる。
 カメラの間近で、はっきりと全体を捉えられる位置だ。

「い、いやあっ!何の真似よこれは!?」
 奈津美は幼児が小便をさせられる格好で叫ぶ。
「お前のトイレはこの洗面器だ。ほんの10分も我慢できない馬鹿女には充分だろ」
「ふざけないで!こんな事……う、ううんっ……!」
 奈津美はあくまで反抗的な目をしたが、腹が強烈に鳴り始めるとその威勢もなくなった。
「い、いっ……、いやああああああぁーーーーーっ!!!」
 断末魔の悲鳴が部屋中に響く。
 直後、排泄が始まった。

 勢いよく噴きだした汚液が洗面器に鈍い音を立てる。噴いては止まり、間欠泉のように溢れ出す。
 抱えられる奈津美の足指が強く曲げられる。
 桜色の肛門は激しく開閉して水を吐き続けた。排泄の勢いは次第に弱まり、雫のみとなる。
 だが出たのは注入した水ばかりで、肝心のものが出ていない。
「何だよ、もっと息めよ」
「して……るわ、でも、出ないの……っ!!」
 奈津美が苦しそうに呻く。姿勢のせいか、あるいは慣れない浣腸だからか。

「ったく。オツムばっかりで、世話の焼ける女だな」
 晃は奈津美の身体をシートに降ろし、その足の縄を解く。手は後ろに縛られたままだ。
「跨がれ」
 晃が洗面器を叩きながら命じた。奈津美は渋々と洗面器を跨ぐ。
 晃は箪笥からラテックスの手袋を出して嵌め、奈津美のバランスを取る為に片手で髪を掴んだ。
 そしてもう片手で奈津美の尻穴を弄ると、おもむろに指をねじ込む。
「あうっ!」
 奈津美はその感覚に思わず叫んだ。
「変な声出すなよ」
 晃は野次りながら尻穴を弄繰る。奈津美は耳まで赤らめてそれに耐える。

 どれほどの羞恥だろう。
 商社でのし上がってきたような女が、後ろ手に縛られ、髪を掴まれ、洗面器を跨ぎ、
 尻穴に入った指で排泄物を掻き出されているのだ。
「ああ、あったけぇ。ケツ穴の締まりも最高だぜ」
 晃は奈津美の尻穴を二本指で捏ねくり回す。
 ぐちゅぐちゅと尻穴の中で音がし、指を大きく開くたびに洗面器へ粘ついた音が落ちていく。
「おお……おおおっ!」
 尻穴への嬲りがよほどおぞましいのか、奈津美は何度も声を上げていた。
「ははっ、何がおお、なんだ?もっと可愛らしく喘げよ」
 晃が罵っても、奈津美は腹の底からの嬌声を止められない。
 羞恥からか胸の突起をしこり立たせている。
「あぁあああっ!!」 
 尻穴から何度も熱い奔流を垂れ流し、ついには失禁まで犯して恥辱に耐えた。
 すべてがビデオに収められていると知りながら。


    ※

 屈辱の摘便が終わった後、晃は濡れタオルで奈津美の体を拭き清めた。
 尻穴からの汚液はストッキングを伝って足首にまで届いており、ストッキングを全て脱がせて拭う。
 奈津美はただ大人しく裸体を晒していた。奥歯を噛み締めるが、逃げようとはしない。

 逃げられないのだ。
 ここから無事に逃げ遂せるには、ビデオを破壊し、かつ衣服を調達する必要がある。
 ただ逃げてもビデオを残していては、恥辱の映像をネットに流されて破滅する。
 衣服がなければ、裸で見知らぬマンションの周りを駆け回ることになる。
 責任ある立場の奈津美にはどちらも不可欠な条件だが、手を縛られている上に晃の目があっては不可能に近かった。
 第一、こうもプライドの高い女性だ。男に排泄を晒したばかりで冷静な判断ができるはずもない。
 晃もそれを承知しているため、じっくりと奈津美を堪能できる。


 晃は奈津美の身体をゆったりとしたソファへ運んだ。
 仰向けに寝かせ、両脚を持ち上げて頭の横に下ろさせる。
 身体を腰から半分に折ったような形だ。
 脚が極端に長い奈津美にはそこまで苦しい体勢ではない。しかし奈津美は顔を顰める。
「腕と背中が痛いわ」
 彼女が呻いた。後ろ手に縛られた腕が背に圧迫されるらしい。だが晃はそ知らぬ顔だ。
「へぇ、そうかい。俺は痛くないね」
 その問答は今の2人の関係そのものだった。
 奈津美は溜息をつき、自ら手首の位置を腰の下に調節して痛みを和らげる。
 それは結果的に、尻穴を晃の目の前にまで掲げることとなった。

 晃は今一度、奈津美の尻に見惚れる。
 豊かな双丘と桜色の蕾。
 あれだけ薬液を排泄し、あれだけ二指で弄繰り回したにも関わらず、もう慎ましい菊の花に戻っている。
 そこを指で押し開き、口をつける。
「う、またお尻っ……!!」
 奈津美は驚愕の表情を浮かべた。
「こんだけ美味そうな尻してるんだ、興味を持たない方がおかしいぜ」
 晃は奈津美の尻肉を揉むようにほぐしながら肛門を舐める。
 尻を責められている、という感覚を強く煽るためだ。

「どうだ、気持ちいいか?」
「はぁ……はぁ……お、お尻で感じるわけ……ないじゃない」
 奈津美は鋭い目をしながら快感を否定する。
 だが、尻を揉まれながら肛門を舐められる、やはりこれが効いたらしい。
 奈津美の割れ目は次第に喘ぎ出し、ある時どろりと蜜を吐いた。
 濃いその蜜は腹筋を滑り落ち、横になったネックレスを伝って床に滴り落ちる。
「なんだ?また尻穴でイッたのかよ。着実に開発されてきてんなぁ、お前のケツも」
 晃が嬉しそうに言葉をかけた。奈津美は晃の視線を逃れるように目を伏せる。

 晃はさらに辱めようと、中指にたっぷりとローションを垂らして尻穴に押し付けた。
 最初の抵抗を越えると、滑り込むように中に入り込む。
 奈津美の腰が跳ねた。
 摘便の時は二本指も入った肛門だが、今は中指一本でも圧迫感を感じるほどに狭まっている。
 手前から奥までが指に絡みつくようだ。
 絡みつきを楽しみながら指を抜き差しすると、ローションのぬちゃぬちゃという音がしはじめる。
 それが尻穴に指を入れているという事実をよく表した。

「どうだ?指一本なんざ逸物に比べりゃ細いもんだが、それでもこっちの穴に入れられる屈辱感は堪らねえだろ、なあ課長さん」
 晃がさらに奈津美のプライドを揺らす。奈津美は何も答えないが、身体は正直だ。
 充分に中指を出し入れした後、晃は一旦指を抜いて肛門を観察した。
 指の分だけ開いた口が窄まり、艶やかに光る。やはり小人の唇だ。


「ちょっと待ってろ」
 晃は奈津美に一声かけて箪笥を漁り、直径2cmの球が連結した棒を取り出す。
 アナルパールという道具だ。
 10個の球が並ぶ形状も異様だが、細部まで純金製である事がさらに無機質さを増している。
「こんな道具も用意したんだ。金ピカで、きっとお前によく似合うぜ」
 晃は奈津美の目の前にアナルパールを見せ付ける。
 奈津美が顔をひきつらせた。

「ま……まさか、それを私のお尻に入れるつもりじゃないでしょうね。絶対に嫌よ!」
 生理的な恐怖からか、奈津美が身を捩る。
 だが不自由な体勢では力も入らず、すぐに晃に押さえ込まれた。
「暴れんな!クソひり出してるシーンをネットに流されてぇのか!?」
 晃が怒鳴りつけると、奈津美は観念したように抵抗の力を緩めた。
「賢い奴は好きだぜ。なに、これもすぐに良くなるさ」

 晃は純金のアナルビーズにローションを垂らし、先端の一球を肛門に宛がう。
 球の後ろを押してぐうと押し込むと、蕾に飲み込まれるような形で一球が消えた。
「まずは一個だ」
 晃は言い、次の球も同じように押し付ける。
 二個、三個……と同じ直径の球が次々に奈津美の腹へ入っていく。
「う、くうう、うぅ……」
 奈津美は苦しそうに顔を顰めていた。
 その苦しそうな顔とは裏腹に、柔軟性のある腸内は次々に球を飲み込む。

「奈津美、今いくつ入ってるか解るか」
「ろ、6個でしょう……」
 奈津美が薄く目を開けて答えた。
「正解だ。一個入るたびに数えてたみたいだな、この変態め」
 晃が嬉しそうに笑い、アナルパールを半ば飲み込んでいる尻肉を揉み始めた。
「いやあっ!」
「どうだ?こうされると腸に入ったパールがごりごり擦れあって堪らないらしいぜ」
 晃は尻肉を前後に揺さぶって更に辱める。
 奈津美は確かに中の感触を感じているのか、脚を震えさせている。

 晃はしばらくそうしていた後、ふと身体をよけて奈津美の尻をビデオに撮らせた。
「見ろよ奈津美。すげぇ似合ってるぜ」
 晃はテレビの方へ顎をしゃくった。大画面に奈津美の尻が大きく映し出されている。
 白い尻肉の中、桃色の蕾から、金色の真珠が連なって提がっている。
「いい眺めだな、おい」
 晃は真珠を指で弾き、肛門から揺れさせた。
 奈津美は目を見開いて見入る。
 その直後、晃の指が真珠の末端にある輪にかかった。
 指が輪にかかったままアナルパールが持ち上がり、斜め上に真っ直ぐ伸びた直後、
 一気に引き抜かれる。
「きゃああぁぁっ!?」
 それは初めての、奈津美が初めて放つ、完全な少女の叫びだった。
 アナルパールが一気に引き抜かれる瞬間、彼女の肛門からは様々な液体が雫となって飛び散った。
 ローションかもしれないし、晃の唾液かもしれない。
 あるいはもっと別の、奈津美の腸内から滲み出た体液かもしれない。

「へーぇ、いい声だ」
 晃は雫の滴るアナルビーズを提げて面白そうに笑う。
「な、な……に、今の……」
 奈津美は腰をひくつかせ、茫然自失の表情をしていた。
「今のがアナル性感ってやつだ。クソを続けざまにひり出すような感じで気持ち良かったろ?」
 晃は嬉しそうに奈津美の尻を開き、再度アナルビーズを宛がう。
「やめて……」
「何がやめてだ、ケツはさっきより断然うまそうに飲み込んでくぜ。期待しやがって」
 奈津美の拒みをよそに、晃の指が次々とアナルパールを押し込んでいく。

「8個……と、おい、息を吐け。次が入らねぇぞ」
 9個目を押し込みながら晃が命じた。
「んうう……も、もうお腹が一杯なの、もう無理よ!」
「俺とさして背も違わねぇくせに、何言ってやがる。まだまだ入んぜ、お前の腹には!」
 晃はぐいぐいと球を押し込む。球の詰まった腸内に更に一個押し込み、最後に残った10個目も指の力任せにねじ込んだ。
「くううぅ、う……!!」
 奈津美が苦しそうに眉を顰める。晃はかすかに鳴る奈津美の腹を撫でた。
「……苦しいか?」
 晃が問うと、奈津美はすぐに頷いた。
「よし、なら3、2、1で抜いてやる。しっかり呼吸を合わせろよ」
 晃がそう言ってアナルパールの尾を掴む。
「3、2、」
 カウント1に合わせて奈津美が息を吸う瞬間、晃は勢いよくアナルパールを引き抜いた。
 10個の純金の球が粘液に塗れて溢れ出す。
「ふぐうううぅっ!?」
 完全に不意をつかれた奈津美は目を見開き、白く長い脚を震え上がらせて身悶えた。
 10個の球が抜けた後、それを追うように開いた肛門から粘液が垂れる。

「おーお、液まみれじゃねえか」
 晃は抜き出したアナルパールを翳して声を上げた。
 触るとほのかに暖かく、独特の内臓臭もして、紛れもなく奈津美の腸内へ入っていたと解る。
 晃は興奮が限界に近づくのが解った。逸物がはち切れそうに痛むが、解放にはもう少しだ。
「ずいぶんと盛大に感じたみたいだな、奈津美?」
 晃が奈津美の尻穴を覗き込んで言った。尻穴は球の直径と同じだけ口を開いている。
 奈津美は放心したまま涙を零していた。



「……しかし、よく拡がったもんだ」
 晃は肛門へ二本指を捻じ込む。粘液に塗れた腸内は二本の指を容易に受け入れる。
「へへ、あんがとよ、こんなに腸液を滲ませてくれて。ローションより滑りがいいぜ」
 晃は言葉で辱めながら奈津美の腸内を弄繰り回した。
 中指一本の時と違って指を開けるため、尻穴責めにもバリエーションが出る。
 晃は二本指の腹を腸内の膣側に当て、左右にゆっくりとくゆらせながら、次第に激しく振動を与えはじめた。
 アナル経験のある人間の実体験で、最も気持ちよかったという嬲り方だ。
「うくううぅっ!!」
 奈津美は嫌がって腰をうねらせる。スレンダーな身体が艶かしく汗に光る。

 晃はその反応を楽しみながら、さらに指を増やして三本を突き入れた。
 晃の読みどおり、奈津美の柔らかな括約筋はその逸物より太い質量をも飲み込んでしまう。
「いやあ、こっ、壊れるわっ!!」
 奈津美は叫ぶが、そんな事は決してない。
 三本指に拡げられた腸内は洞窟のように開き、中からはローションのような乳白色の粘液と大きな泡が覗いていた。
 挿入は十分に可能だ。
 開ききった肛門を覗きながら、晃は確信する。


 指を引き抜き、恍惚の表情を浮かべて横たわる奈津美を横目に、晃は亀頭にローションを塗りたくった。
 腸液で潤滑は十分にも思えたが、何しろ本来入れる場所ではない排泄の穴だ。
 どれだけ潤滑を増してもしすぎる事はない。
 晃がローション塗れの逸物を反り立てて奈津美に跨ると、彼女は悲鳴を上げた。
「ちょ、ちょっとっ、何をするつもりよ!!」
 頭のいい奈津美のことだ、見当は付いているのだろう。
 ただ余りに自分の常識から外れているため、受け入れられないだけだ。
「大丈夫だ、もうお前のケツはこれより太いやつも飲み込んでる。暴れるな」
 晃は腰から折り返された形の奈津美にのしかかり、その肛門を亀頭で探る。
 ぬめる粘膜を擦り付けあい、弾力感のある肛門を見つけた瞬間、
 亀頭を強く押し込んだ。
「や、やめてええぇっ!!!」
 奈津美の心地よい叫びが耳を震わせると同時に、血の通った亀頭が肉の輪にめり込む。

 晃は慌てず、ゆっくりと怒張を沈み込ませた。
「あああぁぁぁ……入ってくるぅぅ……!!!」
 奈津美が泣くような、或いは快楽に狂うような声を上げる。
 その様子を見ながら、晃はさらに奥へと進める。
 一番太い亀頭が菊門へ吸い込まれた。
「いたい!」
 奈津美が小さく呻く。
 亀頭が腸内の襞を掻き分けるのがわかる。
「む、無理よ……。もう、入……らない……!!」
 奈津美は前傾して縮こまるように恐怖に耐えていた。
 押し出そうとする奈津美の亀裂と、捻じ込む晃の槍。
 当然槍が勝り、憤った怒張が奈津美の腸へ奥深く入り込む。

 しばし後、晃の怒張は根元まですべて奈津美の中へ収まった。
「何が無理だよ、全部飲み込んだじゃねえか」
 晃が言うと、奈津美は首を激しく振って抵抗する。
「嫌あぁっ!!いや、いやよ、何で……わ、私のお尻に、こんな深くに、ああぁ、男の……っ!」
 肛門に挿れられたショックで錯乱しているようだ。
 無理もない。
 男であれ、女であれ、肛門を男性器で貫かれるという行為は、完全に屈服させられた事に等しい。
 今日まで男に負けるものかと凛々しく居た女が、今、男によって征服されたのだ。
「おい、動くぞ」
 晃はゆっくりと抽迭を開始した。
 奈津美のアナルと繋がっている。奈津美の尻穴が今、大きく拡がり、自分の怒張を咥え込んでいる。
 それを怒張へ絡み付く粘膜にたっぷりと感じながら。


 結合はとても心地の良いものだった。
 恥毛を残らず剃り落とした秘部は肌触りが抜群だ。
 奈津美の太腿を押し倒す格好だとその膝裏が筋張っているのが見えて美しい。
 太腿を押し込むと健康的な弾力も窺える。
 抱く相手の顔は、汗と涙に塗れたとはいえ、オフィスの華というだけの美しさがあった。
 濡れたショートカットが涼しげな美貌に貼りつく様は、なんと犯し甲斐のあることか。
 そして尻穴の熱くきつい潤みは、およそこの世の快楽とは思えない。
 比喩でも何でもなく、浮遊している気分にさえなった。

「ああああ、あああああ!!」
 叫びが漏れているが、果たしてどちらの叫びなのか解らない。
 晃も叫んでいるし、奈津美も叫んでいる。
 甲高く、あるいは低く、狂気に塗れて唸る声は、もはや性別の判断さえつかない。
 晃の腰使いが次第に早まり、肉の打つ音が響きわたる。
「うう、いくぞ、いくぞ!!」
 晃は奈津美を深く突き上げた後、その腸奥へ白濁を注ぎ込んだ。
「うあ……!!」
 奈津美はそれがわかったのか小さく呻く。
 晃が逸物を抜いた後、奈津美の肛門にはぽっかりと穴が開いていた。
 だがそれもほんの数秒で閉じてしまう。

 晃は奈津美と共に大きく息を吐いた。
 しかし、晃にはこれで奈津美との性交を終わらせるつもりなどない。
 この時の為に3日間精を溜め、心待ちにし、今日もずっと射精せずに耐えていたのだ。
 一度で疼きが収まるはずがなかった。


 晃はそれから、奈津美と2人、ビデオカメラの前で繋がり続けた。

 突き上げに応じて後ろ手に縛られた奈津美の乳房が揺れる。
 それが巨大なテレビに余すところなく映し出された。
 大音量で音も聞こえる。
 ソファが軋み、粘り気たっぷりで結合する音。
「聞こえるか?あの音。映像も見えるよな。セックスしてるんだぜ、今。尻の穴でよ」
 晃は奈津美の耳元で何度も囁き続けた。

 由希と同じく、奈津美も正常位、側位、後背位と様々に抱いた。
 何度も何度も奈津美の尻穴で抜き差しを続け、射精した。しかしまたすぐに勃起する。
 晃自身これには驚いていた。
 20代でも、クスリを使ったときでさえ、自慰でそれほどの射精と勃起を経験したことなどない。
 だがこうして奈津美のショートヘアに顔を埋め、歯を食いしばった悔しそうな奈津美の顔を眺め、
 長い脚を掴んで抜き挿ししていると、脳内から自然に性欲が溢れるのだ。

 無論明日になれば逸物は腫れ、腕や腰は筋肉痛になるだろう。
 だが今は、痛覚が麻痺したかのように延々と奈津美を犯すことができた。

 ぬちゃっぬちゃっぬちゃっぬちゃっ……

 粘膜の捏ね合う音がし、汗まみれの暖かい柔肉が腰の上で跳ねる。
 晃はその繰り返しの中でふと腰を止めた。
 そして奈津美の身体を持ち上げ、白濁塗れの亀頭でひくつく肛門を撫で回す。

「重てぇ女だぜ、何キロあるんだ?」
 そう奈津美をなじる。
 いくらスレンダーといえど、170cmの奈津美は50kgを下らないはずだ。
 晃はその奈津美の尻穴を亀頭で焦らし、肛門が物欲しげに吸い付くと再び逸物を沈めた。
「うん……っ!!」
 奈津美が艶かしい声を上げる。
 晃はそれにそそられ、奥まで貫いたまま奈津美の秘部を弄った。
 そこはとろとろに蕩けている。
「へっ、あんだけクールだった女が、尻を嬲られただけでここまでにしやがって」
 晃がそう言いながら、指を割れ目の奥へ潜り込ませた。
 その時だ。

「いたいっ!!」
 奈津美が急に叫んだ。晃は虚を突かれる。
 あれほどに潤んで、指もすんなりと入ったのに。
 だが今の叫びの鋭さは、ただの演技ではありえなかった。
「……もしかして、お前……処女、なのか?」
 晃はまさかと疑りながら問いかける。すると、奈津美はかすかに頷いた。
「へ、へへっ……」
 晃は笑いが堪え切れない。
 あの高嶺の花が、本当に一人の男も知らない初物だった。
 そして晃はその処女に、清らかなままアナル性感を教え込んだのだ。

「そうかい。処女のままアナルで濡れちまって、お前もこれで変態の仲間入りって訳だ!」
 晃は俯く奈津美を抱きかかえながら、さらに腰を使い続ける。
「ああ、ああ、あああっ、ああ……」
 息も絶え絶えな声が交じり合って響く。
 互いに疲れ切っても結合は続けたままだ。
 晃は奈津美を後ろから抱きかかえ、腸奥で逸物を脈打たせたままとろとろと眠りに落ちる。


       ※

「う、ん……」
 朝陽に顔を照らされて目覚めると、奈津美は晃を揺すって起こした。
 晃が奈津美を抱え上げて逸物を抜く。
 奈津美の肛門内はローションや精液、腸液で溢れかえっており、ソファと床へ盛大に垂れ落ちた。
「こんなに床を汚しやがって」
 晃はそうなじりながら奈津美の手の拘束を解く。
 ようやく手が自由になった奈津美はゆっくりと肩を鳴らした。手首には深く縄の後が残っている。
「シャワー……使わせて貰ってもいいかしら。これから、出勤だから」
 奈津美は少し困ったような顔で晃に申し出た。
「好きにしろ」
 晃は横柄に頷き、バスタオルを投げ渡す。
 風呂ぐらい使わせても困ったことにはならない。むしろ奈津美が間近でシャワーを浴びるのは嬉しくさえある。
 奈津美のシャワーはかなり長いこと続いていた。その音が晃を興奮させた。

 ようやく風呂場から上がった奈津美が、バスタオルで身体を拭う。
 晃はその格好に見惚れた。
 何度見ても見事なボディラインだ。
 晃はゆっくりと裸の奈津美に近づいた。奈津美が身体を震わせる。
 奈津美からは石鹸のいい香りがした。汗臭さもいいが、やはりこういう香りは美人によく合う。

 乳房に顔を埋めると、奈津美が抵抗を示した。
「やめなさい、せっかく洗ったんだから……」
 口調は以前の居丈高なものに戻っているが、どこか歯切れが悪い。
 晃が片手をそっと尻穴へ潜らせると、奈津美の身体が竦んだ。
「まだかなり拡がったままだな」
 晃は指二本が楽に入る肛門をなじった。指を抜いて匂いを嗅ぐと、ここも石鹸の香りがする。
「へぇ、ケツの中に指を突っ込みでもして洗ったのか?」
「…………」
 晃の言葉に、奈津美は顔を赤らめる。ひどく恥じ入っているようだ。

 その後奈津美は、晃の差し出した昨日のスーツを着て出社準備を整えた。
「勿論解ってるとは思うが、昨晩の事はビデオに撮ってあるからな。
 今後も大人しく従うなら、あのビデオは俺の秘蔵で終わる。
 もし妙な事をしたと解れば、その時点でネットに流す。いいな」
 晃は玄関口の奈津美に呼びかけた。
 奈津美はドアノブに手をかけたまま、背後の晃に吐き捨てる。
「……あなたなんか、死んでしまえばいいのに」
 そう言ってドアを閉めた。オートロックが硬い音を立てる。


「ふぅ……」
 晃はリビングで溜息をついた。
 欲望に駆られ、実に無計画で危険な橋を渡ったものだ。
 ビデオ映像という脅しはかけたが、奈津美が警察に届け出れば晃の生活は終わる。
 安全な確立は五分だろう。
 結局は奈津美がどういう性格かに尽きた。純潔とプライド、どちらを重視するタイプかだ。
 『あなたなんか、死んでしまえばいいのに』
 これはどちらの決意から発された言葉だろう。

「 …………とうに死んじまったよ、奴ぁ 」

 晃は日記を眺めて呟いた。
 康平を見た辺りから、自分が狂い続けている気がする。
 死んだ人間に成りすまして家に棲みつくなど正気の沙汰ではない。
 それでも晃は、この康平の家を離れられないでいる。
 一度富や権力を得た以上、何もない生活に戻るのは、怖かった。


                                続く

他人(ひと)の皮を被る 1話

 世界には同じ顔をした人間が3人いる。
 ドッペルゲンガーとも呼ばれる有名な都市伝説だ。
 大門晃(おおかどあきら)はそれを、ぶらりと足を伸ばした街の喫茶店で思い出した。

「いらっしゃい……あら、久しぶり」
 喫茶店の女主人は晃を見るなりそう笑いかけた。晃は訝しむ。
 その店に入ったのは間違いなく初めてだ、久しぶりとはどういう事か。
「ええと、どこかで会ったっけ?」
 晃が問うと、女主人は目を丸くした。
「何言うんだい、お前さん」
 そう言って晃の頭からつま先までを何度も見やる。
「……確かにいつもみたいにスーツじゃないけど、じゃあ何、他人の空似かい」
「おそらくは」
 晃が頷くと、女主人はふうん、と唸った。
「驚いたね、瓜二つじゃないか。まるで双子だよ」
 晃はそれに愛想笑いを返しつつ、かの都市伝説を思い浮かべる。

 ドッペルゲンガーの知り合いは女主人だけではなかった。
 公園を歩くと老婦人が会釈をし、砂場の子供が挨拶をする。
 どうもそれなりに有名で、かつ人望のある人間のようだ。
 そうなってくるとその人物に俄然興味が湧く。
 晃は是非とも会いたいと思うようになった。
 普段はスーツ姿だというからサラリーマンだろう、そう当たりをつけて連日夕刻に街を探し回る。

 しかし5日が経ってもそれが実を結ぶ事はなかった。
 晃は歩き疲れた足を止め、ショーウィンドウに映る自身を見やる。
 中肉中背、適当に床屋で刈り上げた髪に、甘ちゃん坊やのような顔立ち。
 その実は今年で32になり、新卒で入った会社をクビになって以来、アルバイトで食っているしがない男だ。
 不況の中にあってすでに正社員への望みはなく、その日暮らしが性根にこびりついている。
 貯金ができれば仕事をやめ、生活費が底をつけばまた働くという自堕落な生活。
 さらには内向的で風俗嫌いでもあるため、32年生きて女と肌を合わせた経験すらない。

 ……こんな人間にそっくりなもう一人は、果たしてどんな生活を送っているのだろう。
 晃がショーウィンドウを眺めながら思ったとき、突如背後から声がかけられた。

「……あの、すみません!」
 店員が注意でもしに来たか、と振り向いた晃は目を疑う。
 そこには自分がいた。いや、正確には自分と見紛うほどに瓜二つな男だ。
 耳の形、瞳の輪郭、笑うような口元、顎の黒子、全てが奇跡的なまでに合致している。
 晃が言葉を失っていると、男はふっと笑みを作った。
「ああ、良かった。ちゃんとした人間だ」
 安堵した様子でそう述べ、不可解な顔の晃に頭を下げる。
「失礼しました。実は数日前にあなたの姿を見かけ、あの目にすると死ぬというドッペルゲンガーか、などと勝手な疑いを持っていたのです。
 その相手にこうしてまたお会いできたので、たまらず事実を確認したくなりお声をお掛けしました。お許しください」
 その慇懃な態度に晃はつい破顔した。
「気にすんな。俺も同じだよ」
 晃の言葉で男も嬉しそうに顔を上げる。
 2つの笑い声が重なった。

 2人は夕日を背に公園の噴水脇へ腰掛け、互いの身の上を語り合った。
 男は白戸康平(しらとこうへい)といった。
 晃と康平にはやはり奇妙なほど共通点が多い。
 背格好は勿論、日の焼け具合もそっくりで、歳も同じ32歳。
 誕生月こそ半年離れているものの、産まれた日付と時刻は一致している。
 声質も似通っており、晃は康平の話を聞きながら、時折自分が話しているような感覚に捉われた。
 肉体的な要素には当人達でさえ違いが見出せない。

 ただ内面は違っていた。康平は晃よりも気性が穏やかだ。控えめで、話すよりも聞くことを望む。
 人好きのする性格だと晃は感じた。
 その性格が幸いしてか、康平の生活は円満そのものだ。
 独立系の専門商社に入社して10年、多忙ながらも恵まれた職場環境の中で係長に昇進し、また現在、ある女性と恋仲にあるらしい。

「この娘なんだけどね」
 康平が携帯で撮った画像を翳す。晃はそれを見て息を呑んだ。
 愛らしい娘だ。
 ダークブラウンに艶めく胸元までの髪、白い肌。
 瞳は小動物のように爛々と輝き、桜色の唇はぽってりと柔らかそうだ。
 さらにブラウス越しにも胸の膨らみが窺え、脚線は細く、とスタイルも整っている。
 ファッションに疎い晃にさえその服飾のセンスの良さがわかった。

 現代風に垢抜け、かつ品の良さも窺える娘。都心でもそう見かけるものではない。
 童貞の身にはあまりに眩しく、晃はつい鼓動が早まった。

「由希(ゆき)っていうんだ。結構可愛いでしょ」
 康平の問いに、晃は動揺を悟られぬよう頷く。
「ああ、かなりな。いくつ?」
「24歳。学生の頃からバイトしてたブティックで副店長をしてるそうだよ」
 なるほど、と晃は得心が行った。確かにそのような感じを受ける。
「しかし、24か……若いな」
 晃はしみじみと呟いた。
 自分達より8つ下。ようやくに学生気分が抜け、社会人としての自覚が芽生え始める頃だ。
 小学生だった時分は24の担任教師を見て大人だと憧れたものだが、
 30を超えた今から思えば小娘に過ぎない。
 そのような新鮮な娘と交際できるなど、晃からすれば夢物語に等しかった。
 だが出来る人間には出来ているのだ。
 康平のように人柄がよく、社会的な地位もある人間になら。

 晃は密かに歯を噛み締める。劣等感で吐息が黒く染まりそうだった。

「……そろそろ暗くなってきたね。帰ろうか」
 携帯を戻した康平が空を見上げ、にこやかに言う。
「そうだな」
 晃も尻をはたいて立ち上がる。
「明日もまた、ここで待ってて貰ってもいいかな。もっと話を聞きたいんだ」
 公園の出口で康平が言うと、晃は頷いた。
「ああ。俺もだ」
 そう言って互いに笑い、手を振って別れる。

「…………由希、か」
 晃はネオン街を歩きながら呟いた。
 大通りには夜が更けた後も人が絶えない。
 超ミニを履いたキャバクラ嬢、制服からむちりとした脚を覗かせる女子高生。
 だがそのいずれもが、先ほど目にした画像に及ばない。

「……由希、由希、由希ッ!」
 アパートに帰った晃はその名を繰り返しながら激しく自慰に耽った。
 妄想の中で由希はブラウスを捲り、豊満な白いバストを晃の眼前に晒す。
 晃がそれを揉みしだくと心地良さそうに目を細め、花園に指を差し入れれば切なげに腰をうねらせる。
 柔らかな唇で行われるフェラチオは至上の快楽で、そそり立った怒張を膣へ捻じ込めば愛しげに締め上げてくる。
 その悦楽を享受するのは康平ではない、晃だ。
 妄想の中には康平はおらず、それと全く同じ顔をした晃が何も知らない由希と愛を育んでゆく。

 晃はそれ以来、よく康平と会うようになった。
 康平はそれなりに多忙なようではあったが、残業を早く切り上げては夕方の公園に現れる。
 晃は会うたびに康平のプライベートを聞きだした。
 由希とは偶然に知り合った事。
 康平はどちらかといえば性に淡白で、セックスは由希にリードされている事。
 由希はうなじから背筋にかけてが弱い事。
 付き合い始めてもう2年目であり、そろそろお互いに結婚を意識している事……。
 晃はそれを聞きながら、由希との妄想をよりリアルなものにしていった。

 晃の頭にはもう由希の白い太腿しかない。
 康平とはきっと無二の友になりえただろう。
 しかし由希の画像を見たあの瞬間から、目の前のにこやかな男は嫉妬の対象でしかなくなった。
 口先で親友の契りを交わしながら、心中では康平に成り代わる事ばかり夢想する。
 晃が昔読んだ小説にも、人に取って代わるドッペルゲンガーがいた。
 ならば、晃の方こそ康平のドッペルゲンガーなのか。康平は近いうちに死ぬのか。
 そう嘲笑う。

 しかし、それも所詮は負け犬の遠吠えだ。
 晃とて本気で人一人を殺し、その人生を演じる気などない。
 ただ惚れた女が人のものである事実から逃避しているに過ぎない。
 晃自身もそれは十分に理解していた。

 ……だから、よもや本当に康平に異変が訪れようなどとは、
 その時は思いもしなかった。


     ※

 晃が康平と知り合って3ヶ月が経った頃だ。
 晃はその日も約束通り、夕暮れの公園で康平を待っていた。
 しばらくして康平が公園前に姿を現す。
 しかし康平はそのまま、晃には目もくれずに公園を通り過ぎた。
 晃は首を傾げる。公園の先に用事があるのかとも思えるが、康平の律儀な性格なら、
 待たせている晃に一礼ぐらいはしていくはずだ。
 何かが妙だった。

「おい、康平!」
 晃は呼びかけながら公園の外に出る。
 康平はよほど足早に歩いているのか、すでに2つ先の角を曲がるところだった。
「くそ、速ぇな!どうしたってんだ」
 晃はいよいよ不安になって走り出す。
 角を曲がり、路地に入ったところでようやく康平の後姿が見えた。
 その歩く先は山奥へ向かうトンネルだ。

 晃はぞくりと悪寒がした。
 晃にはこの辺りの土地勘がない。一月前にぶらりと足を伸ばしただけの街だからだ。
 そんな晃でも、その場所だけは知っていた。
 その山の頂には滝に繋がる古いダムがある。
 県内でも有名なスポットだ。ただし観光名所としてではない。

 自殺の名所だから、だ。

 転落死した者の霊が呼ぶ、絶景の余りふらりと水面へ飛び降りたくなる。
 そんな噂の絶えない場所だった。
 康平が今入っていったのはそういう山だ。
「……まさか、あいつ!!」
 晃は歯をうち鳴らし、足を震えさせて康平を追った。警察に通報する事さえ気が動転して忘れていた。
 今はただ、友人を止める事しか考えていない。

 トンネルを抜け、森へ入っても康平の足取りは衰えなかった。
 スーツ姿のまま枝葉を掻き分けて突き進む。
 同じ体格でラフな格好の晃が、何度も足止めを喰らうのにだ。
 この山道に慣れているのか、それとも何らかの執念に駆られてか。
 登り始めたのは夕暮れだったが、いつのまにか月が出ていた。
 夜の山道、すでに康平の姿は見えないものの、ガサガサと鳴る草の音で居場所は推測できる。
 それを追ううち、次第に滝の音が鼓膜を震わせ始めた。
 気温も低まり、火照った体に纏いつくようだ。

 晃が息を切らせて小休止を取ったとき、ふと前方の草の根が止んだ。
 はっとして晃が顔を上げた直後、水面に何かが落ちる音が響き渡る。
 小石や枝などではない、もっと大きなモノだ。
 例えば、人間のような。
「こ、康平えええええぇぇっ!!!!」
 晃は叫び、山道を駆け上がった。驚くほど体が早く進む、なるほど必死の力は強い。

 晃が山頂に辿り着いた時、開けたそこには誰の姿もなかった。ダムの水面に目をやる。
 月が翳っている暗さでほとんど見えない。
 だが無数の枝葉が滝壺へ向かって流れており、そして目を凝らした晃は、断崖絶壁の岸辺にある物を見つけて脚が震えた。
 流木に絡まる康平の背広だ。
 先ほどまで追いかけていたのだから見間違える筈もない。
「う、嘘…………だろ?……おい」
 晃は立っていられずにその場にへたり込んだ。
 死ねば良いと空想したのは事実だ。だがまさか本当に、目の前で人が死ぬとは。

『 もう一人の自分に会うと、死ぬ 』

 そんなものは脅かしで作られた、下らない都市伝説ではないのか。
「うっ!」
 晃は気が昂ぶるあまり、喉元へ熱さがこみ上げるのを感じた。
 口を押さえて傍の茂みに駆け寄り、胃の内容物を吐き出す。
「はっ……はぁっ……はぁっ……!!」
 這いつくばって息を整えながら、ふと晃は視界の端に何か光るものを見つけた。
 携帯だ。 開くと待ち受けに由希の画像が表示される。
 間違いなく康平のものだ。
 さらにはその近くに財布も落ちていた。中には現金と免許証、会社の名刺などが入っている。
 転落する際に誤って落としたのか、或いは自殺するにあたって発見者に身元を知って欲しかったのか。
 いずれにせよ貴重な個人情報だ。

 成りきれる。

 滝の音に思考を乱されながら、晃はふと思った。
 康平の家の場所は話に聞いて知っている。彼の家の鍵もある。カードもあるし携帯もある。
 そして何より、瓜二つの身体がある。
 これだけあれば康平という一人の男になりすます事も不可能ではない。
 無論死んだ康平に対する冒涜だとは思う。
 だがそれまで絵空事でしかなかった成りすましが、今や成立しうる状況にある。
 掴めば映画のヒーローになれる蜘蛛の糸が目の前にぶら下がっているのだ。
「はは、ははは……」
 晃は激しい動悸の中で笑った。
 そう、康平はヒーローだ。彼が死んだとあっては皆が悲しむ。親も、会社の人間も、
 そして恋人である由希も。
 ならば晃が死んだ康平を演じる事が、それらの人間に幸福を与えることになるのではないか。

「…………そうだ、相棒。俺が……お前の人生を続けるんだ」
 晃は財布と携帯を拾い上げ、ゆっくりと立ち上がる。そして康平の沈む暗いダムを見下ろし、目を細めた。

 晃は山を下り、以前康平から貰ったメモを頼りに彼の家を探し当てる。
 公園からほど近い高層マンションの7階だ。
 広い所だった。3つの部屋は洒落たインテリアで飾られ、窓からは街の夜景が広がる。
 目を引くのが58インチのプラズマテレビで、144cm×95cmの画面には子供がすっぽりと嵌りそうだ。
「……ちっ、商社の係長殿は住む世界が違うね」
 晃は毒づきながら革張りの椅子に腰掛けた。クッションが柔らかく、腰がどこまでも沈む。
 座り心地は最高だが腰を痛めそうだ。いかにも成金趣味の椅子だった。

 ふと見ると、目の前のパソコンデスクに日記がある。
「死者の日記か……」
 晃は恐る恐るそれを手にした。
 マメな康平らしく毎日欠かさず記してある。
 同僚の話、上司の話、同じ顔の晃を見て驚いた事、いい親友になれそうな事などが誠実に綴られていた。
 しかし少し前の日付から様子が変わる。
 文章が破綻し始め、気持ちがどんどん不安定になっていく事、時々ふらりとベランダから飛び降りそうになる事、
 調子が悪く二ヶ月ほど休職する事などが書き連ねられ、今日の日付以降は真っ黒に塗り潰されていた。
 晃はぞっとした。だが妙に納得もした。
 いずれにせよ康平はもういない。今や彼の全ては晃の物だ。
 例え、それが恋人であっても。

 晃は拾った携帯で由希のアドレスを探し、週末のデートを提案した。
 10分後、由希から嬉しげなメールが返信される。返事は勿論OKだ。
「くくっ。せいぜい楽しもうぜ、由希ちゃんよ」
 晃は隆起した逸物を愛でて呟く。あまりに待ち遠しくて体が震えた。
 32年間絡み付いてきた童貞という垢を、愛らしい他人の女で落とせるのだ。


       ※

 週末、由希は初春の令嬢といった出で立ちで現れた。
 ダークブラウンの髪が風を孕み、上は袖と裾に余裕のあるフリルつきの水色シャツ、
 下は萌黄色のホットパンツにブーツ。
 首元にはピンクのリボンが巻かれている。
 ホットパンツから覗く生足は道行く男の目を引いていた。

「お待たせー。今日はなんだか暑いね」
 由希は首を仰ぎながら晃に歩み寄る。涼やかな香りが立ち昇った。
 身長は160cm弱といったところか。
 性的な魅力を醸しながらも、小動物のような瞳のせいか発育の良い小学生のようにさえ見える。
 晃は緊張から喉を鳴らした。
 本物の康平をよく知る由希に、成り代わりが悟られないか。
 このファーストコンタクトが重要だ。

「ん、どうかしたの?」
 自分をじっと見つめる晃に、由希が首を傾げる。疑ってはいないようだ。
「いや、か、可愛い格好だなと思ってね」
 晃は康平の口調を真似て声を聞かせる。
「えっ……そ、そうかな」
 由希は嬉しそうに顔を綻ばせた。
 顔を見ても、声を聞かせても疑わない。
 これで晃は確信した。晃は今、完全に康平になっている。
 とはいえいつボロが出ないとも限らない。
 本番である夜までは慎重に行こう、と晃は気を引き締めた。

 だが結局それも杞憂に終わる。由希は康平を疑う気配がまるでなかった。
 恋は盲目、というものだろうか。
 川原では手の込んだ自作弁当が披露された。
 和風で彩りが良い。筍や人参などの野菜は、旨味を殺さないままにしっかりと味付けされており食べやすかった。
「康ちゃん、ほら。あーん」
 由希は具を一つずつ箸で摘んで食べさせてくる。そして咀嚼する晃を眺めながら頭を撫でた。
 お姉さんか、或いはお母さんでいるつもりなのだろう。
 心から康平に惚れ込んでいる様子だ。
 晃が瞬きをすると同じく瞬きをし、指を組みながら話せば同じく指を組んで聞く、
 そんな無意識下の同化動作も見られた。
 相手に心を許していなければ起こらない現象だ。
 勿論それも晃の迫真の演技あってこそで、その裏には確実に様々な職歴が生きている、と晃は思った。

 ともかくも晃はつつがなくデートを終え、ついに目的のホテルへと辿りつく。


 ホテルの部屋に入るなり、晃は由希の唇を奪った。
「んっ……」
 由希が小さく声を上げる。
 柔らかい唇を割ると中から弾力のある舌が覗き、それを嬲るとじわりと唾液が溢れ出す。
 若い娘の唾液だ。そう思っただけで晃の逸物が硬さを増した。
 晃はその逸物を擦り付けるように由希の体を抱く。
 柔らかい、と晃は驚いた。細いのに、まるで骨がないような柔らかな抱き心地だ。
 その由希も晃を抱きしめ返してくる。

 2人はしばし口づけを堪能したあと、体を離した。
「服脱ぐから、あっち向いてて」
 由希がはにかみながら晃に言う。
 晃は冗談ではないと思った。気弱な康平なら大人しく従うのかもしれないが、そこは譲れない。
「いや、目の前で脱いで」
「えっ!?」
 由希が驚いたように目を丸くした。まさか脱衣を見られるとは思わなかったのだろう。
「で、でも……」
 胸を手で庇いながら晃を窺う。しかし晃が折れないと知ると、渋々といった様子で手を下げた。

 まず首に巻いたリボンが解かれる。ふわりと香水が薫った。
 次にフリルのシャツが捲り上げられ、ブラジャーが外されると白い乳房が露わになる。
 Dカップといったところか。綺麗な椀型で、晃の手の平に何とか収まる大きさだ。
 ホットパンツの下では、三角地帯を薄紫のショーツが覆っていた。
 由希はショーツを恥ずかしげに摺り下ろしていく。
 半ばほどまで下ろすとなだらかな下腹に黒い茂みが覗きはじめた。
 抱かれる事を想定していたらしく、きちりと逆三角に剃りこまれて不潔さがない。
「おおっ……」
 晃が思わず声を上げると、由希はぴくりと手を止めた。ショーツを秘部の下に絡ませて躊躇する。
陰毛を見られることがたまらなく恥ずかしいのだろう。
「ほら、どうしたの?」
 晃が声をかけると、由希は大きく息を吸い、吐いて、一気にショーツを摺り下ろした。

 ショーツが足首から抜かれると、24歳の真裸が晃の視界に晒される。
 ちょうどいい大きさの乳房、締まった腰、すらりとした脚線。
 大人の豊満さと女子高生の青さの中間にあたる肉付きだ。
 肌は白い。男の身体はゴツゴツとしているが、由希は違う。
 なだらかな曲線に縁取られ、むらなく乳白色を塗りつけたような美しさだ。
 無機質でさえある白さの中、目を射止めるのは生々しい髪、陰毛、そしてせり出した胸の膨らみ。
 晃はその乳房にむしゃぶりついた。
 塩気がある。暑い日に出歩けば乙女とて汗を掻く。
「いやっ、シャ、シャワー浴びないと……!」
 由希の嫌がりも意に介せず、晃は湿り気のある乳房を吸い続けた。

 何しろ32年の人生で初めての女体だ。
 晃は獣のように息を荒げ、下腹から腋から臍から、由希の体中の臭いところを舐めしゃぶる。
 白い身体が唾液にてかる。
「お、勃ってきたぞ」
 晃は乳首をしゃぶりながら歓喜した。
 乳房を揉みながら先の尖りを口に含めば、段々とその尖りが硬くなっていく。
 乳首が勃つということは気持ちいいのだ。
 しょっぱい乳首をねぶりながら由希を見ると、切なげに内股をすり合わせているのが分かる。
 晃は逸物に痛みを感じた。
 ジーンズから逸物を開放すると、それは興奮で反りかえり、先端から先走りさえ垂らしていた。
 ここ数年は無かった勃ち具合だ。

「由希、舐めて」
 荒々しい気分で、しかしそんな時こそ康平を真似る。
 何も知らない由希は乳房を揺らしながらカーペットに跪き、仁王立ちした晃の逸物に手を添える。
「手は使わないで」
 晃は興奮に震える声で命じた。由希は困惑した表情で晃を見上げる。
 康平とのセックスでは常にリードしてきた女性だ、命じられる事には慣れていないのだろう。
「……今日はずいぶん意地悪なんだね」
 由希はやや憮然とした声色で呟き、膝立ちのまま床に手をついて舌を出す。
 洗っていないため匂う亀頭に眉を顰め、ゆっくりと口に含んでゆく。
 晃はさらさらの髪を指で梳きながら見守った。

 晃の意図は、由希の素のフェラチオを知ることにある。
 指遣いに頼れず、頭を掴んで無理矢理させられるわけでもない。
 となれば由希は自ら進んで晃の逸物を口に含み、唇を窄め、舌を動かさなければならない。
 すなわち由希が普段康平の物にどんな顔で吸い付いているか、どんな音で啜り上げているか、
 その情報が一切誤魔化されずに晃に伝わるのだ。晃はまずそれを暴きたかった。

「んっ、んん、う、んえぁっ……」
 由希ははち切れそうな怒張の大きさに呻いていた。
 頬を染め、息を荒げ、額に汗を浮かべながら舌を使う。その顔からは恥辱に耐える心理が見て取れる。
「き、気持ち、いい……ッ!」
 一方の晃は腰の抜けそうな快感に襲われていた。
 裏筋に添えられた舌が陰嚢からカリ首までをくすぐり回し、
 小さな口いっぱいに溜められた唾液がじゅるじゅると音を立てて怒張をくるむ。
 窄まった唇の輪が肉茎を這い上がる。
 愛らしい由希の美貌は原型を留めぬほどに崩れ、口からは唾液が零れて床に落ちる。
 その狂った美を見下ろしながら、晃はとうとう一線を越えた。
「で、出るっ!!!」
 素早く怒張を抜き、舌を出した由希の顔に精をぶちまける。
 白濁は恐ろしい勢いで飛び散り、由希の舌はおろか鼻先にまで降りかかる。
 由希は目を細めながら、自らの口に白濁が注がれるのを見つめていた。

 ようやく射精が止まった後、晃は白濁を吐き出そうとする由希を制する。
 自分の子種を由希に飲ませる気なのだ。
「ちゃんと飲んで」
 そう命じられた由希は、嫌いなピーマンを食えと言われた子供の顔になる。
 だが仕方なく白濁を唾液と混ぜて飲み込みはじめた。
 よほど濃いのか、何度も噎せては口端から零れさせる。
 ようやく全て飲み下した時には、由希の額には玉の汗が浮いていた。

「さあ、今度は由希の番だ」
 晃は由希を抱き起こしてベッドに座らせる。
 脚の間に恥じらいの部分が覗いた。毛の処理がしてあるので秘唇がくっきりと見える。
 やや縦長で挿入しやすそうだ。
 肉びらには歪みがなく、そう経験が多いわけでもないのがわかる。

 晃がその肉びらに手をかけた時、急に由希が膝を閉じた。
「いや、そこだけはやめてっ!!」
 泣き出しそうな顔で首を振る。
 洗っていない秘部からは、膝を閉じた状態でも汗と愛液の匂いが漂っていた。
 しかし晃はその匂いにそそられる。けして芳しくはないが、雄の本能をくすぐる臭さだ。
「開いて。由希がどんな匂いか知りたい」
 晃は由希の目を見て囁いた。由希はかなり躊躇した後、少しずつ膝を開く。

 今度こそ秘部が露わになった。
 指で割りひらくと桃色の鮮やかな襞が覗く。
 愛液にぬめったそこは最高級の霜降りのようだ、晃にはそれしか浮かばない。
 そのぐらい生々しく、艶かしく、美味そうだ。
 そしてそれが美しい由希の体内だと考えれば、もう見るだけではおれなかった。
 むしゃぶりつく。
 鼻頭にこそばゆい陰毛を感じながら舌で襞をえぐり、啜る。愛液が顎を伝う。
 むうっとする雌の香が肺を満たす。
「やあ、あっ……!!」
 濡れ光る内腿は啜るたびに筋張り、同時に愛らしい呻きが漏れた。
 目線を上げれば細身ゆえの腰骨の浮きが見え、スレンダーな由希を舐っているのだと晃に自覚させる。

「ああ由希、由希ッ!!」
 ずじゅ、じゅずるっと音をさせ、晃は生涯初めての女の部分を味わいつくした。
 およそ32とは思えぬ飢えぶりだ。
 晃は妄想で何度由希を抱いただろう、だが現実はその比ではなかった。
 太腿の肌触りも、性器の匂いも、愛液の生臭さも、五感にくる全てが予想以上だ。
 晃の分身はいきり立った。フェラチオで抜いていなければ弾き割れたのではと思えるほどだ。
 むせ返る雌雄の匂いの中、晃は由希の秘部に指を入れる。
 やわらかく、暖かい。かなりの具合の良さが想像できた。

 晃は指を抜き、代わって逸物を割れ目へ宛がう。
「由希、いくぞ」
 晃が声をかけると、由希は汗まみれで頷いた。晃はゆっくりと腰を進める。
 挿入自体は苦ではなかった。だが快感に膨らんだ膣壁はぎっちりと怒張を咥え込む。
 捻じ込むように進めると、怒張の7割ほどが入った時点で何かしこりに当たった。子宮口に達したのだ。
 全て入らないかと腰をねじ入れても押し返される。
「んん、ふ、深いっ!!」
 由希が苦しげな声を上げた。
「いつもと比べて、どうだ?」
 晃はその由希に問うた。すでに康平を真似る余裕もないが、それももう些細な事だ。
「今日凄いよ、いつもよりずっと太い。興奮してくれてるんだね……康平」
 由希は陶然とした顔で男の名を呼ぶ。晃は笑いを堪えるのに必死だった。
 この瞬間まさに、晃は由希を征服したのだ。
 膣の奥まで生で繋がっている。ゴムをつけろとは言ってこない。
 安全日なのか、あるいは将来の結婚相手ゆえに孕んでも良いと考えているのか。
 いずれにせよ、実は見知らぬ男と性器を擦り合わせているとは思いもすまい。
 晃は心中で嗤い、大きく腰を振り始めた。

 初めは正常位だ。脚を開いた由希へ被さって犯す。
 愛液が怒張に絡みつき、締め付けの割に抽迭は楽だった。
 怒張からの快楽も相当なものだが、由希の感じる顔、曲げた膝に潰される乳房も晃の目を楽しませる。
「ん、ん、ふん、んううっ……!!」
 由希は顔を見られて恥ずかしいのか、指を噛んで必死に喘ぎを押さえていた。
 だがパンパンと休みなく腰を打ち付けるうち、その指も離れて歯を覗かせながら喘ぎはじめる。
 元よりあどけない顔だ、その表情はどれほど反則的なことか。

 正常位を十分に堪能した後、由希の右足首を掴みあげて側位に移る。
 どうせなら様々な体位を試そうというのだ。
 歳のおかげか、初セックスながらに保ちはよかった。
「な、何これっ、あ、はぁああ……っ!!」
 横臥したまま深々と貫かれ、由希の喘ぎが大きくなる。
 人は未体験の快感に弱い。片脚を掴まれるこの側位は、常に濡れ場をリードする女には無縁のはずだ。
 掴んだ右足指のびんと張るさまが、由希に流れる凄まじい快感を表していた。

 側位で互いに登りつめた後、最後はバックスタイルだ。
 由希をベッドにうつ伏せにさせ、背後から獣のように叩き込む。
 これが最高だった。正常位では7割しか入らなかった逸物が根元を残して埋没する。
 膣の締め付けは最も強く、奥まりに亀頭がごりごりと当たる。
 視界には由希の白い背中があった。
 ダークブラウンの髪が肩に艶めき、腰の括れもはっきりとわかる。
 その括れを掴んで腰を叩き込むと、尻肉がパンパンと軽快なリズムを刻む。
 前に手を回せば垂れ下がる豊かな乳房が掴める。
 バックは女を征服する体位だ。
「ああ、ああうっ、ああ、くあああぁんっ!!!!」
 由希もバックが一番感じるのか、シーツに顔を埋めたまま悲鳴のような喘ぎを繰り返す。
 彼女の足腰は快感で痙攣しており、溢れる本気汁は互いの腿に挟まれてにちゃにちゃと粘った。
 清楚な顔に似合わず分泌が多い。ベッドはもう寝小便をしたような濡れ具合だ。
 感じる由希を見下ろしながら、晃はふと康平の言葉を思い出す。

 『由希はうなじから背にかけてが弱い』。

 晃は繋がりながら由希の髪を掻き分け、うなじを舐めた。
「ああっ!」
 由希の締め付けが急に強まる。きつい。カリ首を引く際に気持ちが良すぎて頭が真っ白になる。
 晃は快感に叫びを上げた。
「ど、どうだ由希、イヌみたいに犯されて気持ちいいか?」
 晃が尋ねると、由希はシーツの上で何度も頭を上下させる。
「へへ、もう変態だな。そろそろ逝くぜ、しっかり受け止めろよ!!」
 晃は叫びながらスパートをかけた。ベッドを軋ませ肉音を弾けさせ、深く逸物を捻りこむ。
 肛門が締まり、玉袋がせり上がる。
「くうっ!」
 晃は暖かな膣奥でたっぷりと精を吐き出した。精管を引き裂くような射精の勢いだ。
「ふあ、あ、あぁっ……!!」
 由希が喘ぐ。由希の膣奥も射精を受けながら細かく痙攣していた。

 射精を終えた後、晃はゆっくりと逸物を抜き去る。
 由希の中から大量の白濁が零れ落ちた。フェラチオの時の倍は出ている。
 晃は30過ぎの初セックスでそれだけの射精を成し遂げた事、
 そして本当にこの美しい由希を抱いたのだという事実に酔いしれた。

 晃はベッドに倒れ伏す由希を起こし、胡坐を掻いたまま逸物を突き出す。
「お前の愛液で汚れたんだぜ、舐って綺麗にしろよ」
「……うん」
 由希は頬を真っ赤にして逸物に舌を近づけた。
 幹の愛液をぴちゃぴちゃと舐め取り、尿道に残った精液も啜り上げる。
 何も命じていないのに口だけでの奉仕だ。
 康平のセックスをリードしていたという24歳の女は、被虐の快感に取り憑かれたらしい。
「ひもひ、いい?」
 フェラチオをする由希が晃を見上げて訊ねる。晃は満足げに由希の髪を梳いた。


    ※

 翌朝、散々キスをしながら由希と別れた晃は、康平の携帯に留守電が入っていることに気付いた。
 迷った後にメッセージを再生する。
『白戸くん、夜遅くにごめんなさい。大原です。休職の件で一度、お酒でも飲みながら話を聞かせて貰えないかしら。
 悩みが随分と深刻なようだったから。上司として……いえ、職場の仲間としても、力になれるかも知れないわ。
 では、連絡を待っています。おやすみなさい』
 メッセージはそこで途切れた。女の声だ。声質からみて30前後といったところか。
「大原、とか言ってたな……?」
 晃はその名を康平の日記で何度か見かけた。
 マンションで日記をめくるとすぐに見つかる。懇意にしているらしく、情報は多かった。

 大原奈津美、28歳。
 国立を卒業して商社入りし、現在は課長職、つまり4歳上の康平の上司に当たる。
 典型的なできる女で、女性蔑視と受身の部下を嫌い、他人に弱みを見せない。
 一方で器量は良く、性格と美人すぎる事から『社内一結婚の遠い女』と噂されているらしい。
「へぇ、美人なのか」
 晃は興味が湧いてさらに奈津美関連の資料を漁る。
 本棚に商社の社内報があり、そこに奈津美の写真が載っていた。
 パリッとしたスーツを着て社の下半期の方針について語っている記事だ。
「……お、おいおい……マジで居んのかよ、こんなの……!」
 晃は思わず目を疑った。

 アイシャドウで縁取られた芯の強そうな目、すっと通った鼻筋、ルージュの映える淑やかな唇。
 黒髪はうなじでショートに切り揃えられ、金のイヤリングがまた似合う。
 キャリア。一言で表すとそれだ。
 銀行員でもスチュワーデスでも、アナウンサーでさえ通用しうる凛とした美しさを放っている。
 もっとも商社でのし上がるような女、当然といえば当然なのだが。
 記事の写真ではスタイルまでは解らないが、顔だけで最高級の女である事が確信できた。

「康平の野郎……由希だけじゃなく、こんな上司までいやがったのかよ!」
 晃は力を込めて康平の日記を折り曲げる。
「……上等だ。アイツの身分を使って、今度はこの女を犯してやるか」
 晃は呟いた。
 恐ろしいことを口走っているのは気付いている。だがすでに一犯した後だ。
 そもそも仮に下手を打って捕まっても、底辺に戻るだけのこと。
 ならば極上の女をもう一人手篭めにできるこの機会は、ローリスクハイリターンというものだ。

 晃はまず奈津美に電話をかけ、3日後にバーで会う約束を取り付けた。
 その3日間に康平の預金でアダルトグッズを買い漁る。奈津美を辱める準備だ。
 そして当日、晃はある袋を懐に忍ばせて夜の街へ繰り出した。
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眠れないので唐突に拍手コメント返し

ストライクウィッチーズで好きなキャラは
一位:ミーナ中佐 二位:シャーリー 三位:リーネ
とことんおかーさん系かおねーさん系が好きなんだと再認識。
家庭的でおっぱい包容力がある女性はいい。


以下、拍手レス&秘密のコメ返し。ワカる人にしかワカらない。

>ツモ さん
有難うございます。私は貴方の様な趣向の合う変態同志の為に書いているようなもんです。
日々ニッチな方向へ邁進している気がするんですが、
趣向が合う限りは満足させて見せますぜッ!!!

……とまで言い切れれば格好良いなあ。

>フェニモー さん
そう、あのキャラです。実にマイナーですけどね。
これからも宜しくお願いします!

>安藤三千夫 さん
ありがとうございます。アナルは正義。

その他、拍手レスやコメント下さった方、返すのを忘れている場合もあるかもしれませんが、
頂いたコメントは全て目を通して感涙してます。
いつも誠に有難うございます!

追加
>飽食豚 さん
まじやばい感想ありがとうございますw
これからもモリモリ書いていけたらなあ、と思います。

続々・腹は災いの元

その因縁はあるTV番組から始まった。
様々な世界で活躍する女アスリートを集めての討論番組だ。
ゴルフ、水泳といった各種競技の選手が集まる中、格闘に携わる女性も2人呼ばれていた。
一人は女子キックボクシングのスーパーフライ級王者、芦屋恭子(あしやきょうこ)。
こいつは俺の恋人でもある。
そしてもう一人が、『クルーエル・ビー』所属のレスラー、ラミア朝岡だ。

『クルーエル・ビー』は新興のハードコアレスリング団体で、
女同士での電流・有刺鉄線マッチといった過激なガチンコ対決を売りとしている。
ただその人を選ぶコアな性質のせいで、興行収入はあまり芳しいとは言えない。
だから、番組内でラミア朝岡が芦屋恭子に絡みはじめたのは、
美形王者として名の通った恭子と因縁を作って話題を攫おうという団体の意向だろう。

最初の言いがかりは何だったか。そんな物に意味はない。
大切なのは、ラミアがカメラの映す中で恭子を焚きつけ、ついにはビンタまで張り、
とうとう恭子の怒りに火をつけたという“結果”だけだ。
「この……人が下手に出てりゃ、つけ上がりやがって!!」
恭子が椅子を蹴って立ち上がる。
恭子もかつて番長を張っていたような女、頬まで叩かれて黙っていない。
睨み上げる恭子を同じく立ち上がったラミアが見下ろす。
160cm51kgの芦屋恭子に対し、ラミア朝岡は168cm62kg、見た目では2回りほど大きい。
健康的なそのスタイルは、レスラーというよりはフィットネスモデルといった印象だ。
日本人とカナディアンのハーフらしく、美しいブロンドの長髪と豊満なバスト、
そして長い脚が目を引く。
しなやかなその美脚は同時に恐ろしい凶器でもあった。
ラミアの名が表す通り、上半身こそ美しい女だが、足は蛇のように相手を捉えて容赦なく締め上げる。
軍隊格闘をルーツとしたその関節技は多くの女達にタップを強いてきた。
対戦相手はみな大声で泣き喚きながら痙攣を起こしたような速さでタップをするというから、
その技の痛烈さが窺えようというものだ。

「あら、怒ったのおチビちゃん?」
ラミアは恭子を見下ろして笑う。恭子の表情が一層険しくなった。
恭子はキックの二階級を他を寄せ付けない強さで制した王者だ。
ただ強いだけでなく、並のアイドルが霞むほどの清楚なルックスまで備えている。
それまで女子キックを馬鹿にしていた男が恭子の一試合を観ただけでファンになる。
女子高生やOLは闘う女の最終到達地点として教祖のごとく崇める。
それが芦屋恭子だ。
その知名度とカリスマ性はマイナー団体の一レスラーの比じゃない。
ラミアは本来、こうして共にテレビ出演が叶っただけでも感謝するべきところだ。
しかし彼女は執拗に恭子を挑発し続ける。
番組の司会や他のゲストは、鍛え上げた2人の女の放つ空気に圧されたのか、
ただ苦笑して内輪で討論を続けるばかりだ。

舌戦を繰り広げる2人。だがある時、ラミアがふと恭子に問うた。
「……ああ、そういえば。あなた付き合っているオトコがいるんですって?」
その瞬間に恭子の言葉が途切れる。
これはお茶の間にとっては周知の事実だ。
インタビューなどでは恭子自身が何故か胸を張って言いまくっているし、
試合に勝つたび俺に抱きついてくるのは一種のお約束にもなっている。
最初こそ物議を醸したが、あまりにも恭子が隠すことなく嬉しそうに語るので、
いつしかその強さと美しさの秘訣として公に受け入れられるようになっていた。
無論、良くも悪くも規格外な恭子ならではだが、少なくともそれを暴かれて困る事はない。
それでも恭子は俺の話題に表情を強張らせる。
そこが口論における、恭子にとってのNGワードなのだ。

「それが……どうかした?」
抑えるような低いトーンで告げる恭子に、ラミアが答える。
「別に?少し残念なだけ。本当ならあなたみたいな強い娘と戦ってみたかったんだけど、
 男がいるんじゃあだめね。だってオトコの出来た女は、恥ずかしがって股も開けなくなるもの。
 それってつまり、ファイターとして終わりってこと。せいぜい男の下であんあん言ってなさいな」
くく、と笑いながらラミアが言った。
その瞬間、ぶちんという音が聞こえそうになったのは俺だけではないだろう。
恭子はラミアを睨み上げた。これ以上ないほどに瞳孔を開いて。
拳が震えているが、手は出ない。
そんな生易しい怒りではない、とでもという風にだ。
「…………OK。そこまで言うんなら、そっちお得意のガチンコで白黒つけてやる!!」
燃えるような瞳で告げる恭子に、ラミアは涼しげな顔で返す。
「へぇ、いいの?それで恥をかくのはあなたでしょうに」

芦屋恭子とラミア朝岡との因縁は、こうして始まった。


放送直後から、この諍いはネットファンの間で大いに話題になった。
噂によればあの放送自体が罠で、クルーエル・ビー側が先行投資という形で
深夜番組のプロデューサーを買収したのだという。
全ては名の通った恭子と所属選手との異種格闘技戦を実現させる為だ。

恭子が他競技の相手と戦うこと、それ自体は珍しいことではない。
いくら今がキック熱のある時期とはいえ、やはりキックの興行だけでは喰っていけない。
ゆえに恭子はキック界の代表として様々な相手と試合を行ってきた。
ボクシング、ムエタイ、シュート……。
しかしそれはあくまで同じ立ち技競技の相手とだ。
仮にも現役のキック王者がプロレスラーと戦うなんて、普通なら考えられない。
だがそれだけに話題性もある。
常に金儲けを考えなければ明日も危ういキック界には、むしろ望ましい事態なんだろう。
また恭子側も、普通の格闘家ならばレスラーとの口約束など反故にして逃げる所を、そうしない。
番組で頬を張られたシーンをお茶の間に晒してしまった。
レディースも、格闘好きな女子高生も、皆が恭子に期待している。
売られた喧嘩は買う気骨あるイメージで知られる恭子には、逃げる事など許されないのだ。
そもそも恭子自体、そのイメージ通り、ここで退くタマではなかった。
トレーナーであるジムの会長は渋ったようだが、偉大な王者である恭子の意向に勝るものなど無い。

……恋人である俺の言葉でも、だ。


「大丈夫だって、あんなヤツこのキックでぶっ倒してやるから」
俺の頭を掠めるようなハイキックを繰り出し、恭子は笑った。
風切り音が凄い。繁華街を往く人間が何人もこちらを振り向く。
「それとも何?モヤシくんともあろうお人がまさか、私の勝ちを疑うわけ?」
恭子はくっきりとした瞳で俺の顔を覗きこむ。
自信に満ち溢れた表情だ。
「まぁ、お前が誰かに負けるシーンなんて想像もできないんだけどな」
俺が率直に答えると、恭子はくすりと笑った。
以前にこいつとデートをしていた時、4人の不良に襲われたことがあり、
その際に腹を殴られて地に沈むのを見たことはある。
しかしそれは俺を人質に取られていたからで、まともにやれば連中4人がかりでも5分ともたない。
ましてや一対一で押されるなどありえない事だ。

しょっちゅう恭子の身体に触れている俺だから言える。
薄っすらと6つに割れた腹筋は岩のように硬く、本当に人間が鍛えて作れる肉体なのか、
筋肉の下に鉄板でも埋め込んでいるんじゃないかと疑うほどだ。
キックで鍛え上げた脛などは金属バットのよう。
椅子に腰掛けたままぶらつかせてぶつけられただけでも鈍い痛みを覚えるほどだ。
力を入れて蹴れば、大の、そう文字通りラガーマンのような大男が3発で沈む。
恭子を喧嘩で倒すぐらいなら大型犬とやりあったほうがまだ勝ち目が見える。
そうは思うのだが、しかし何故だろう。
俺は嫌な予感を覚えて仕方が無かった。

「……見ててね、哲哉」
恭子はネオンの輝く街路をぶらぶらと行きつつ、背中越しに声を投げてくる。
どんな顔をしているのかは見せない。
「私、きっと証明してみせる。哲哉との触れ合いが、私の強さの源なんだって。
 好きな人のいる事は弱さに繋がったりしないんだって、証明してみせるよ」

いつになく真面目な口調でそう語る恭子に、俺はああ、と答える事しかできなかった。


『当日のリングにレフェリーは立たない。ゆえに反則はなく、TKOもない。
 決着は、どちらかが意識を失うか、降参の意思を告げた場合のみ』
そのデスマッチルールに、恭子とラミア朝岡の両者が同意を示した。

「普段競技者として試合をされている恭子選手には、やや不利な条件と思われますが?」
記者会見でそう問われた恭子はからからと笑った。
「何でもあり、だったらむしろ相手の方が可哀想ですよ。私、喧嘩じゃあ負けたコトないから」
そう腕を振り上げて答える。
カメラ正面に映るのは、その硬く鍛えられ飛び出した肘。
相手が可哀想、というのは何も大袈裟な事ではない。
恭子はやろうと思えば、その肘で日本刀のように相手の皮膚を切り裂く事が出来る。
鋼鉄のような脛で後頭部を蹴れば悪くすれば即死だ。
それがキックボクサー。
その頂点である元番長と何でもありなど、ほとんどの挑戦者が涙目で拒否するだろう。
しかし、怖いもの知らずなのか、或いは絶大な自信があるのか。
ラミア朝岡は恭子の隣でインタビューを受けながら、実に涼しい顔をしている。

記者会見もたけなわとなった頃、ラミアはふと恭子を見つめた。
「あなた、綺麗な髪をしてるわね」
そう静かに告げ、自らの髪を撫でる。
「私も、このブロンドヘアには自信があるわ。艶々で綺麗ってよく褒められるの。
 これは私の誇り、そんなに丁寧に手入れしてるんだもの、あなたもそうよね。
 髪は女の命。……だから、ね、私達この戦いに、その命を賭けない?」

ラミアが言わんとしているのは、勝負に負けたほうが髪を切る、という追加条件だ。
場は騒然となった。俺もテレビで見ていて、凍りついた。
バカな事をいうな。
俺は恭子がどれだけ髪を大切にしているか知っている。
肩甲骨の辺りまで伸びた、艶の流れる黒髪。
練習後には必ず丹念に洗い、いい匂いを含ませて風に遊ばせている。
俺が恭子に一目惚れしたのは、無論顔の良さもあるが、一番は金髪ばかりのジムでただ一人、
清楚なその黒髪が心を打ったからだ。
黒髪は恭子という美人を形造る重要なファクターだ。その髪を、切るなんて。
恭子も目を見開いて言葉を失くしていた。しかし、
「出来ないの?」
半眼のラミアに侮るように笑われると、気負いの世界で生きる彼女に退くことは許されない。
恭子は燃えるような瞳でラミアを睨み上げる。
「……いいよ。そんな約束持ち出した事を、リングの上で後悔させたげる」

2人の選手の合意が得られ、ここに対決は『敗者髪切りデスマッチ』へと変貌を遂げた。




美しきキック王者・芦屋恭子と関節技に長ける麗しいレスラー・ラミア朝岡の奇跡の対決。
女子キックボクシングが強いか、女子ハードコアレスリングが強いのか。
その興味もあり、また負けた方は公衆の面前で女の命である髪を切られるというのだ。
芦屋恭子もラミア朝岡も、モデルでも通用しそうな和洋の美人格闘家。
どちらが恥を晒すことになっても見物であることには違いない。
そうした背景から噂が噂を呼んで、当日の会場には超満員の客がつめかけていた。

決戦のリングは、キックの物とさして変わらない。強いて言えばロープがやや分厚いぐらいか。
そのリングには天井から真っ白な照明が降り注ぎ、最前列席にいる俺をも汗ばませる。
これでリングに上がって動き回るとなれば、どれほど暑くなることだろう。
そして熱気の源は照明だけじゃない。

『殺せ、朝・岡!! 殺せ、朝・岡!!! 殺せ 殺せッ締め殺せ!!!!』
『恭子さーん、やっちまえーー!喧嘩でアンタに勝てるヤツなんかいねえよっ!!』

観客席の至る所から叫びが上がる。恭子とラミアの応援団だ。
場はその応援合戦で戦争のような状況になっていた。
その空気の中で、しかし恭子は動じることなくコーナーにもたれ掛かっている。

コスチュームは普段キックの試合をする時と同じものだ。
上は豊かな胸に密着する薄桃色のタンクトップ。
長さはアバラまでで、締まった白い腹部が丸見えになっている。
下は炎の描かれたゆったりめのボクサーパンツ。
足にはシューズを履かず、素足にアンクルサポーターのみを着けている。
何人の男がその姿に一目惚れしてきたことだろう。
今やキック界にも、恭子に憧れて門を叩いたモデル級のスター選手が続々と現れ、
アンチからは時代遅れのロートルとすら揶揄される恭子。
だが、やはりその威圧感溢れる美は並ぶ者がない。

日々鍛えているだけあって恭子のボディラインは見事なばかりだ。
片手で何とか掴める程度の、つんと上向いた胸の膨らみ。
側筋がくっきりと浮かび上がり、薄っすらと六つに割れた凹凸の芸術的な腹筋。
一気に絞り込まれ、引き締まった太腿へと繋がる腰つき……。
それは例えば、胸の大きく太腿のむちりとした瑞々しい女子高生がいたとして、
その整った身体の肉をさらに都合よく上によけ、押し固めして人工的にあつらえたような美だ。

膨らみとくびれという女体美、引き締まった筋肉という機能美、
さらには生まれついての清楚な美貌と、肩甲骨までの艶やかな黒髪。
これだけの条件を兼ね備えるわけだから、これはもう衆目を惹きつけない訳がない。
殺せ、殺せと叫ぶ連中も皆、露わになった恭子の腹筋を涎も垂らしそうに凝視している。
要は夢中なのだ。
清楚そうな健康娘の恭子が滅茶苦茶になる所が見たい、との衝動から騒いでいるに過ぎない。

正統派キックコスチュームの恭子。
それに比べ、対角線上のコーナーにいるラミア朝岡は目を疑うような格好だった。
リングコスチュームは肩から太腿半ばまでをすっぽりと覆うユニタード型だ。
色は朱色、素材は照り具合からいってラバーだろう。
大きく開いた胸元は豊かな胸の谷間を大胆に覗かせ、
腹部には鍛え上げられ隆起した腹筋を称えるかのようにラバーが密着する。
スパッツ風の股下などは割れ目の形まで見えるようだ。
美しい曲線を誇る脚は黒タイツで包まれている。
その黒タイツにより、朱色のコスチュームが一瞬まるでドレスのように映る。

正直目のやり場に困るが、まぁここまではいい。
問題はその靴……ハイヒールだ。
黒い漆皮のハイヒールパンプス、ヒールの高さは8センチはあるだろう。
披露宴に貴婦人が履いていくような靴だ。
素早いステップはおろか、歩く事にすら不便を感じるに違いない。
確かにその靴は、ドレスのようなコスチュームの締めとしてよく似合っている。
外国系のすらりと伸びた脚に黒タイツ・ヒールという破壊力は凄まじく、観客の声援も相当だ。
ここがファッションショーなら恭子でも勝ち目はないだろう。
しかしキックボクサーとのガチンコをしようという今、ハイヒールは舐めているとしか思えない。
恭子も相手の足元を見て眉を顰める。
しかし当のラミアは、やけに自信に満ちた表情で恭子を見つめ返すのだった。




『芦屋恭子 vs ラミア朝岡』

電光掲示板にカラフルな色合いで互いの写真が映し出された。
どちらも拳を突き出した凛々しい姿だ。
グラビアアイドルが構えるボクシングごっことは違い、様になってもいる。
だがそれこそモデルのように美しい2人だ。
その2人が選手として表示されている現実が、事の異常性を今一度会場に認識させた。

恭子はコーナーで静かに深呼吸している。
普段ならセコンドの会長がアドバイスでもしている所だが、この試合にはいない。

ラミアの方はリング下から飲料の入ったボトルを受け取っていた。
ボトルを掲げて軽く喉を潤した後、彼女はロープ際を伝って移動を始める。
行き先はこちらの方……
いや、こっちの方どころじゃない、まさに『俺』だ!
ラミアの目線からそれを悟った時には、ラミアは俺が座る席の真上にいた。
ブロンドの髪が逆光にライトを浴びて輝く。
そしてラミアはにんまりと笑うと、いきなり手に持ったボトルを俺に投げつけてきた。
「うおわっ!!」
俺は驚き、目の前で腕を振って叫ぶ。一瞬遅れて額に鈍い痛み。
何故いきなり俺に、と考え、すぐに一つの結論に達した。同時に叫ぶ。
「待て、落ち着け恭子っ!!」
ラミアの狙いは俺ではない。俺を傷つけた時に憤る人物、恭子を煽るためにやったのだ。

ダンッ、とマットを蹴る音が響いた。
「おい、アイツ!」
観客が叫ぶ。その視線の先では、恭子がラミアに襲い掛からんとしているはずだ。
ロープ際のラミアを見上げる俺からは、その背後から凄まじい速さで近づく素足しか見えないが。
慌てたように試合開始のゴングが打ち鳴らされる。
「せあぁッ!!」
裂帛の気合と共に、ロープ際のラミアへ恭子の跳び蹴りが襲う。
ようやく見えた恭子の顔は、やはり俺を狙われた怒りで我を失っているようだ。
その恭子の顔を視界に捉えながら、同時に俺は、ラミアの顔も見えていた。
口元を吊り上げている。計画通りといった風に。
まずい、という直感が俺の脳裏によぎる。嫌な事にその直感は当たっていた。


恭子の跳び蹴りがラミアの腰を捉えようとしたその刹那、ラミアは最小限の動きで身体をずらした。
恭子の蹴りは不発に終わり、右足がロープの外に飛び出る。
「ちっ……」
恭子がその足を引き戻そうとした途端、ふとその動きが止まった。
ラミアがロープ外の恭子の右足首を左手でしっかりと掴んだからだ。
恭子の脚がぴんと張る。
さらにラミアは左手で足首を捉えたまま、右腕を直角に折り曲げた。
そしてその肘を恭子の膝上に宛がうと、飛び上がって肘を体重ごと膝上に叩きつける。
ぐぎん、と鈍い音がする。
「ぎぁああああああっ!!?」
ダメージは恭子のその叫び声で窺えた。
ひどいものだ。伸びきった脚に全体重で肘を叩き込むなど、折れてもおかしくない。
「う、う……っ!!」
恭子は片足立ちのまま顔をしかめて汗を垂らす。
「ざまあ見ろ、奇襲なんかかけた報いだぜ!」
「ふざけんな、ラミアが客に手ェ出したんだろうが!恭子さんはそういうの許せねぇんだよ!」
観客席で口論が起きはじめた。

「ふふ、どう?膝が割れそうに痛むでしょう」
肘を打ち下ろしたラミアが意地悪く問う。
「ぐう、は、離せよっ……!!」
恭子は掴まれた足を引き抜こうとラミアの背を手で押しやるようにしていた。
つまり恭子の重心はこの時、後ろに倒れ込む方向にかかっているわけだ。
そこをラミアに利用される。
ラミアはにやりと笑い、肘を打ち下ろした右腕を恭子の脛に置く。
そうしてその置いた手を支点に素早く身を翻した。恭子に背を向ける姿勢から、向かい合う姿勢に。
その動きはただの向き変更ではない。
足首を捉えていた左手を放し、回転の勢いをつけて恭子の首に巻きつける。ラリアットだ。
「ぐふっ!?」
恭子の喉から押し殺した悲鳴が上がった。
元々後ろ向けに重心をかけていた恭子にラリアットを食らわせ、さらに遠心力で身体ごとぶつかる。
するとどうなるか。
簡単だ、片足立ちの恭子は後ろ向きに倒され、後頭部からマットに叩きつけられる。
ダゴンッ!という凄まじい音が会場に響き渡った。
そう、凄い音だ。それまで騒ぎ立てていた会場が水を打ったように静まり返るほどの。
だってそうだ、後頭部からマットに打ち付けられる、下手をすれば死ぬじゃないか。
 ――恭子!
俺はそう叫ぼうとした。しかし呑んだ息が喉につかえ、声にならない。

折り重なってマットに横たわる恭子とラミア。しんと静まり返った会場。
そのうちラミアの言葉が、その静寂を打ち破った。
「……へぇ、さすが。あそこから反応できちゃうんだ」
ラミアは恭子の後頭部に目をやって呟く。
見れば、マットと後頭部の間に恭子の右腕が挟まっていた。
あの超スピードで倒れこむ間に、腕を挟んで直撃を避けたのだ。
「うわ、しぶてぇ……」
「良い反応してんな、あいつ。あの倒れこみの最中で普通は動けねえよ」
場には惜しがる声と感嘆の声が混じった。

その声に包まれるリングの中で、恭子がラミアを跳ね除けて後退を始める。
さすがにダメージを殺しきれなかったらしく、腰を抜かしたままでだ。
だが何かその動きが妙だった。
その状況なら両腕で身体を引きつけて後退するのが普通なのに、何故か右腕を使わない。
左腕だけで身体を引き摺っていく。
だがすぐに理由はわかった。使わないのではなく、使えないのだ。
恐らくは右肩を脱臼でもしたのだろう。
考えてみれば無理もない。後ろ向きの重心とラリアットで生まれた凄まじい速度の中、
自重とのしかかるラミアの重さ、合わせて113kgのクッションになったのだ。
しかも下はしっかりとしたマット、これでは脱臼して当然だ。

ある程度距離を取ると、恭子は左手を背後につき、膝を曲げて立ち上がろうとする。
「く、うう……」
しかしもう少しというところで腰が砕け、右手でバンと受身を取った。
何度も練習を繰り返したゆえの無意識だ。
「ああああ゛っ!!!」
瞬間、恭子は悲痛な叫びを上げ、右肩を押さえてのた打ち回った。
右肩の脱臼はもう確実だ。そして後頭部強打により、足腰が立たないことも。
「ふふ、惨めぇ。男の事なんかでアツくなった結果がそれよ?高い授業料だったわねえ」
ラミアは面白そうに恭子を追いながら笑った。
恭子は右肩を押さえ、尻餅をついたままで後退する。

「はははっ、見ろよ追いかけっこだぜ。蛇に睨まれた蛙だな!」
観客から野次が飛ぶ。
「恭子さーん、凌いで!!ダメージ回復するまで!!」
レディース達からの声援も起こる。
実際恭子にはそれしかなく、ラミアと睨み合いながらその足首を狙って低空の蹴りを放つ。
何しろラミアはハイヒールなのだ。
蹴りさえあたればまず倒れるだろうし、そうなれば恭子がマウントを取れる可能性だってある。
しかし、その蹴りが当たらない。ラミアは遊ぶように恭子の蹴りをかわしている。
安定性のないハイヒールでだ。
間違いなくラミアはハイヒールでの戦いに慣れている。或いはいつもその靴なのかもしれない。
また慣れだけでなく、そもそもバランス感覚や反射神経もいいのだろう。
当たれば倒せる、当てる!
そう必死に蹴りを繰り出していた恭子の足を、ついにラミアが絡め取った。

「 いただきまぁす 」
ラミアが恭子の左脚に抱きついて笑う。恭子の額に汗が流れる。
ラミアはそのまま恭子の脚を抱え込むようにしてリングに転がった。
「ぎいゃあああああっ!!!!」
恭子の痛切な悲鳴が響き渡る。聞く方が心を抉られるような声だ。
リングでは恭子の左脚が締め上げられていた。捉えられた脚で限界以上に股を開かされている。
その左脚の根元にはラミアの両足が絡みつき、
脚全体が捻りあげられた挙句に、足首の腱あたりを十字に組んだラミアの腕が押さえつけている。
たしか膝十字固め、という技だ。
俺は関節技に詳しくはないが、見るからに危険な捻りなのが解る。
だって真横に開いた足の先がほぼ真下を向いているなんて、どう考えてもおかしいじゃないか。

恭子の膝はいま甚大なダメージを受けていることだろう。
実際恭子はひどい顔をしている。
目を固く瞑って唇を噛み締め、顔中をくしゃくしゃにして。
脂汗が何滴も顎から伝い堕ちる。
「あらあら、綺麗でたくましい左脚がびくん、びくんって痙攣してるわ。可愛い」
ラミアは恭子の左脚を捻り上げながら、その指先に舌を這わせる。
「ひっ」
恭子が肩を跳ねさせた。
艶光るラバー姿で巻きついてチロチロと舌を出す、その姿はまさしく蛇女(ラミア)だ。

恭子の膝は悲鳴を上げているはずだ。
恭子は本格的な関節技など受けた事はない。
立ち技競技の選手なんだから当然だ。
未知の痛みには覚悟も出来ず、不安から痛みは増して感じられるだろう。
「ううう!!!」
さらに締めがきつくなる。
その余りの痛みに、恭子の手の平が床スレスレまで下ろされた。
そのまま数回マットを叩けばギブアップのサインだ、地獄から逃れられる。
だが恭子は、そこから拳を握りしめてマットに叩きつけた。
降伏など断固拒否、という意思表明だ。ラミアが面白そうな笑みを浮かべる。
観客席からも恭子の根性に感嘆する声が漏れた。
俺はその健気さに居ても立っても居られなくなる。
「きょ、恭子おおっ!!!」
椅子から立ち上がり、バンバンとリングを叩いて叫ぶ。
恭子は一瞬だけこちらに目を向けたが、すぐに締められる苦しみに目を瞑った。
痛みの最中でそれどころではないのだ。
俺はバカなことをした、と思いながらただ立ち尽くす。リングがひどく遠く感じる。
彼氏なのに、俺に出来るのは他の観客と同じように応援する事だけだ。

降参を拒否したところで、恭子がラミアの関節技を破る術はない。
ロープブレイクのない今、恭子はラミア自らが技を解きでもしない限り、ただ膝を壊されるのみだ。
脱臼していない左腕で殴ろうにも、腰が入らず手打ちにしかならない。
そもそもその打撃が届くのだって、せいぜい自分の腿を締め上げるラミアの脚にだけ。
恭子は成す術もないままマットの上で足掻く。

「ああいいわぁ、この太腿のびくんびくんって脈打つ感覚。あなたすごく力強い。
 その辺りの素人女を締め上げたって、こんなの絶対味わえないものね。
 でも男ともまた違う……すべすべの肌に、むちっとした美味しそうな脚のカタチ。
 ああやっぱり、鍛えた女を痛めつけるのはたまらないわ!」

ラミアは恭子の苦悶する姿を眺めながら官能的に囁き続ける。
明らかに真性のサディストだ。
そして存分に愉しんだラミアは、身体を反らしていよいよ膝を痛烈に捻り上げ始めた。
「ぎゃああああああああっ!!!!!」
恭子の澄んだ声が痛々しい絶叫となって響き渡る。
無事な右足までもが激しく痙攣しはじめ、どれほどの苦痛が襲っているのかを表していた。




ようやくラミアが左脚を解放した時、恭子は息も絶え絶えになっていた。
右肩はV字の隆起と妙な腕の長さから明らかな脱臼が見て取れ、
左脚はだらりと力なくマットに投げ出されている。
よく見れば、最初に肘を受けた右膝も異常に腫れ上がっていた。
利き手と両足がほとんど死んだも同然だ。

ラミアはその仰向けに横たわった恭子にゆっくりと近づいていく。
リングにコツ、コツとヒールの音を響かせながら。
「ぐったりしちゃったわね、恭子ちゃん」
ラミアにそう嘲られても、恭子は動くことができない。
ラミアはその恭子の身体を眺め回す。そして薄っすらと割れた腹筋で視線を止め、笑った。
「おい、マジかよ!?」
ラミアの行動に驚きの声が上がる。
ラミアは片足を上げ、あろうことか恭子の腹部に踏み込んだのだ。
履いているのはヒール高8cm、直径3cmほどのハイヒール。
恭子は咄嗟に腹筋を固めた。側筋が浮かび上がり、鍛えられた岩のような腹筋が輪郭を深める。
その固い腹筋に細いヒールの先が沈み込む。
「ぐぅえ、えっ!」
恭子が悲鳴を上げた。
51kgの恭子に対し、ラミアは62kg。
自分より11kgも重い人間が腹に乗り上げたのだ。
つま先部分はともかく、直径3cmのヒール部分でそれをやられては堪らない。
堪らず手を伸ばして敵の足を外そうとする恭子だが、その手首が逆に掴まれた。
まず左手、そして次に脱臼した右手。
そしてラミアはその両手を引き絞ったまま、もう片足も恭子の腹に乗せる。
「この最初がキモなのよね」
ラミアはそう言いながら巧みにバランスを取り、ついに腹筋の上で立ち上がった。
「うう……っぐ!」
脱臼した腕を引かれる痛みと腹の苦しみに、恭子が顔を歪める。

「ああ凄い、さすがよく鍛えられた腹筋だわ。ぶよぶよのお腹じゃ、こうして立てないもの。
 並の人間なら下手をするとアバラが砕けてしまうんだけど、あなたなら大丈夫よね?」
ラミアが嬉しそうに告げた。
それは逆に言えば、腹筋を固めていなければアバラも砕けうる、という脅しだ。
恭子は頬を膨らませて息を吸い込み、必死に腹筋に力を入れる。
足が無事ならば身体を反転させて振り落とすことも可能だが、今は足がまともに動かせない。
両腕もラミアに掴み上げられてしまっている。
ゆえに恭子は、ただ腹筋への踏みつけに耐え忍ぶしかない。

恭子の地獄は、こうして始まった。


6つに盛り上がった恭子の腹筋を破り、ヒールが深く沈み込む。
「うん、うんいいわ。十分に固くって、でもアスファルトみたいな無機質な硬さじゃない。素敵よ」
ラミアは興奮気味に告げ、その場で足踏みを始めた。
片方のヒールが引き抜かれれば、同時にもう片方のヒールが深く抉り込まれる。
ぎちっぎちっと汗に塗れたしなやかな筋肉が悲鳴をあげる。
「……っ!!…………っ゛!!!」
恭子は歯を喰いしばって耐えていた。
投げ出された太腿が踏み込みに合わせて筋を立てる。それがいやに艶かしい。

「どう、私の重さを感じてくれてる?」
ラミアが見下ろしながら問うと、恭子は口を結んだまま殺しそうな目で睨みあげる。
「そう、残念。ここは筋肉が密集しててまだ鈍感なのかしら。
 オッパイと同じ、周りからよくほぐさないとね」
ラミアはそう言い、ゆっくりと足の位置を変える。
「う、ぐくっ……!?」
恭子の呻きが必死さを増す。ラミアの靴が腹筋から前へ進み、水月を踏みつけたのだ。
そのままラミアの足は、恭子の乳房から下腹にかけてを歩きはじめる。
「あははっ楽しい。肉の道ってところね」
ラミアはすっかり上機嫌だ。
「う゛、ぐぶっ、う、う゛っ…!!!」
一方の恭子は、腹筋下の小腸から肺、胃……と順番に踏みつけられ、徐々に顔を赤くしていく。
白い腹には足跡がついていった。
靴のつま先部分は桜色、細いヒール部分は深紅に窪んでいる。
ラミアはその足跡を楽しそうに眺める。雪原に真新しい足跡をつけるかのようだ。
俺はそのはしゃぎように苛立ちを覚えながら、それでも恭子をただ見守るしかなかった。
下手に声をかけて恭子の緊張の糸を切りでもしたら大変だ。

ラミアは今一度笑い、ちらりと客席に目を向ける。
「皆、この感触がどんなか解る?足元が柔らかくて、しかも恐怖に震える息で小刻みに振動するの。
 バランスを取るのも大変。落ちないためにはどうしても足を踏ん張らなきゃいけないわ。
 でも力を入れるとそれだけヒールが食い込んで、より一層苦しみだす……皮肉よねえ」
ラミアはそう言いながら恭子の右腕をぐいと引いた。
肩を脱臼している方の手だ。
その痛みで恭子が歯を食いしばり、割れた腹筋の道がよりはっきりと浮き出る。
ラミアはそれに満足そうに笑い、石畳を歩むように優雅に歩を進めた。

腹筋の筋に沿って歩むラミアは、ある地点で意地悪そうに笑う。
「あらっ、ココふにょんふにょんね」
ラミアが足先でつつくのは、恭子の下腹……膀胱の辺りだ。
筋肉の付きづらいそこを見つけると、ラミアは身体を傾けて片足に全ての体重をかける。
「れあああっ!?」
恭子が目を見開いた。膀胱を圧迫されてはたまらない。
ラミアがさらにぐりりとヒールを捻りこむと、恭子の腰がびくんと跳ねた。
そして直後、炎を模した恭子のボクサーパンツから黄色いせせらぎが溢れ出す。
ゆったりとしたパンツの裾と、その奥に見える暗がりの隙間から、大量に。
マットにできた黄色い水溜りがボクサーパンツの下部を染めていく。
鼻をつく匂いが漂い始める。
「うわっ、あいつ漏らしてんぞ!!」
「いやーーー!!!」
観客の男や女子高生が、あるいは歓喜の叫びを、あるいは失意の悲鳴を上げた。
俺は視線を恭子の太腿辺りに釘付けにされる。
ショックで頭が痛むようだ。

「あぁら、盛大に漏らしちゃって。私がそんなに重いって言うの?失礼ね」
ラミアはそう言いながら、さらに膀胱をぐりぐりと抉る。
「い、いだっ、あああ゛!!」
恭子は耐え切れずに凄い声で脚をばたつかせはじめた。
「う、うわっ……と」
その暴れように、ラミアが流石にバランスを保てなくなって倒れ込む。
どん、と恭子の乳房に膝をついてだ。
膝の下で乳首がごりりと捻り潰される感触に、恭子の美貌が壮絶に歪む。

「もう、あなたが暴れるのがいけないのよ?」
ラミアは膝頭で恭子の乳房を押し潰しながら、改めて恭子の腕を掴み直す。
「さて、立たないと」
そう言うと足首で踏ん張り、膝を起こして立ち上がった。
すると当然、ラミアの体重が余すところ無く恭子の腹にかかることになる。
靴のつま先が深々と腹筋に突き刺さった。
「うむっ!?んう、ごおおううぇえええ!!!」
恭子としてはたまったものではない。
目が一杯に見開かれ、口内に留めていた涎がごぼりと流れ出す。
「うわ、すんごい低い声。でもあなたの苦しみが純粋に込められてて、耳に気持ちいいわ」
ラミアは今日一番の笑みでそう告げた。
そして極度の苦しみに苛まれている恭子の上で、細かに膝を震わせる。
「げおっ!っろ、おろっう゛ええ゛!!!!」
度重なる呼吸困難と腹筋へのヒールの突きこみで、恭子も限界に近い。
そこへ来て腹の上で細かく脚を震わされると、恭子の身体も激しく反応してしまう。
「面白ーい。上で揺さぶると、それ以上の振動で下が痙攣するわ」
ラミアは夢中になって踏みつけた腹部へ振動を浴びせた。
形は電気アンマのようだ。
だが恭子の苦しみはそんな比ではない。

「うっ、えぶっ……!ぐう、うぅおおええ゛え゛……!!!」
口の端から涎を垂らし、時に舌を突き出して危険な声でえづく。
タイミングを見計らって酸素を取り入れ、腹筋を締めるが、それも苦しくなってきている。
まるで硬かったステーキが、ラミアの体重を乗せた捏ねで挽き肉になっていくようだ。
「ほらどうしたの?どんどん硬さがなくなってきたわよ?」
ラミアがそう煽りながら動きを変えた。
何度か強く腹部を押し込んだあと、徐々に力みの薄れてきた腹筋の弾みを利用してホッピングをはじめる。
「うおおえ゛、ええ゛っ、んおおお゛……ッう!!!!」
恭子の声がますます低く、そして間の大きいものになっていく。
身体の底へ何かが着実に堪っていくようにだ。
恭子の腹が着実に壊されている。間近で観る俺はそれがはっきりと解り、掌に冷たい汗がでた。

「はぁ、はぁ、ふふっ。さっきは肉の道だったけど、今度は新手のダイエットマシンね。
 ねぇ嬉しい?あなた今、私がもっと完璧な身体に近づくお手伝いが出来ているのよ」
ラミアは恭子の腹筋で跳ね弾みながら罵る。
フィットネスモデルのようなラミアが弾みながら脚を交錯させる様は、確かに絵になる。
しかしその下で腕を掴まれ、相手の一跳ねごとに身体を痙攣させる恭子だってまた、
本来ならそれに負けないぐらい魅力的な女なんだ。
それが何故、あれほど惨めな姿になっている?

恭子のやや硬さを失った、しかしまだ十分な弾力を持つはずの腹筋を、ラミアのヒールが抉る。
突いて、突いて、耐え切れず崩壊した腹筋に突き刺さる。
突いて、突いて、突き刺さる。
美しく逞しかった恭子の腹筋にはいくつもの深い溝ができ、脂汗に塗れたかすかな血を流した。
その傷だらけの雪原にまた、新たな杭が叩き込まれる。
「んんんああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
恭子はラミアのその容赦ないホッピングに耐え切れず、とうとう大きく口を開いた。
腹の底から叫び、涙の筋を零し、大量の涎があぶくとなって溢れ出す。
すらっと伸びた脚はMの字に開かれ、地を踏みしめながら限界まで筋張っていた。
「ああ、いーい声……。なぁに、泣くほど嬉しいの?」
ラミアは涙を流す恭子の顔を見つめながら、ますますホッピングを激しくしていく。
ずちゅっ、ずちゅっ、と汗に塗れた柔らかい腹筋から音が漏れる。
水気のある肉の音、軋むマットの響き、荒い2つの呼吸の音、頬を伝う涙。
全てが俺の心に鈍い切り傷を残していく。

はっ…は、ひゅっはひゅっ、は、あひゅっ

恭子の呼吸はどんどんとおかしくなっていく。
その呼吸の合間に、恭子は何度か真っ赤な頬を膨らませる動きを見せ、
また喉の奥からうがいをするような水気のある喘ぎをしていた。
「あはははっ、面白いわ」
ラミアは笑いながら、恭子の顔を見つめてさらに腹への蹴り付けを痛烈にする。
胃腸も筋肉もまとめて捏ね潰そうと言わんばかりだ。
ラミアの頬から流れる汗が恭子に降り注ぎ、涙となって垂れ落ちていく。
それはラミアの足の下で弄ばれるだけの玩具となった恭子を象徴するようだった。

恭子の上で妖艶なステップを繰り返すラミアは踊るかのようだった。
汗を振り乱しながら伸ばした脚で柔肉を押し込むと、下の“台”が背筋を伸ばして呻く。
女の脚が抉るようなターンを描けば、台の女の脚が膝を立てて打ち震える。
まるでその様なショーだ。
初め悲喜交々だった観客席も、いつしかその倒錯的なショーに見入っていた。
歓声をうけるのはステージで煌びやかに踊る女。
嘲笑にまみれるのは靴に腹を抉り回されて身悶える浅ましい台座。それが俺の女だ。
ラミアの足捌きはますますキレを増し、客席の盛り上がりもヒートアップする。
そしてその興奮の頂点で、俺の女は喉を蠢かせた。
ごぐっ、という押し潰した音がする。

「っお、おげぅろおおおおっっ!!!!!」

もはや女の、いや人の発するものでない音を奏でながら、下の女は口から吐瀉物を吐き上げた。
それはラミアの勝ち誇った笑顔に見つめられながら続く。
ラミアの悩ましい脚線がぶるりと蠢けば、恭子の喉から茶色い半固形のものが溢れ出す。
客席を満たすのは、笑い、笑い、笑い。
何故だ。
恭子はキックボクシングの王者、正統派の覇者じゃないか。誰が馬鹿にできる。
誰か知っているのか。
あいつがどれだけ練習して、どれだけ汗を流して、
どれだけ強くてどれだけ自信があって、どれだけ一途に俺を愛してくれたか。
ふざけるな。笑うな、あいつを笑うな!!

俺がそう拳を握りしめた時、リングの上で物音がした。
恭子の手がラミアの腰を掴んでいる。
恭子から降りて勝ち誇っていたラミアは振り向くのがやっとだ。
恭子は背を仰け反らせると、朱色のラバーに覆われたラミアの腹部へ痛烈な頭突きをぶちかます。
ドンッ、と鈍い音が響いた。
「げはああっ!?」
ラミアは腰をくの字におって倒れこむ。涼しげだった目は見開き、口から涎が零れる。
それはそうだ、恭子の頭突きは強烈なのだから。
中学で番長だった頃、その『パチキ』であらゆる男を泣かせた、とジムの伝説にもなっている。
その頭突きがラミアの腹筋にぶち込まれたのだ。
「あっは、が、あはっ……!!」
腹を抱えて丸くなるラミアを、同じく腹に手を当てて苦しみながら恭子が睨み据える。
気迫に場が静まり返った。

ラミアの目がまず驚きを示し、ついで怒りに燃える。蛇の目だ。
しかし恭子も引かない。ダメージは比べ物にならないほどあるが、睨み返す。
その恭子の腹を、弾くように出したラミアの蹴りが襲う。
「げぁ、っは……!!!」
気丈にしていてもダメージは深刻だ。恭子は目を瞑り、口から涎を零して後ろに転がる。
その恭子を立ち上がったラミアが追った。
そして繰り出される、ストンピングの嵐。
怒りに燃えたラミアの蹴りは、腹部をガードする恭子の腕を何度も蹴りつけ、
ガードが固いと解ると整った顔を容赦なく蹴り潰して無理矢理ガードを上げさせ、
また腹部へ踏み付けを叩き込む。
恭子の下にあるマットに新たな吐瀉物や血液が垂れ落ちていく。
恭子は声も出せずに低く呻きながら、必死に身体を丸めて耐え忍んでいた。
恐怖か痛みか、細かにその身体を震わせながら。
「恭子おおおおっっ!!!!!」
俺は叫んだ。声の限りだ。細かい事は考えない、ここで叫べなければ、とてつもないものを失う気がして。
俺の叫びが届いたのか、それは解らない。
しかし恭子は、一度だけ甘く入ったラミアのストンピングを捉え、膝裏に手をかけて転ばせる。
そして逆にラミアの上に覆い被さり、思い切り振り上げた足でその腹を踏みつけた。
「ぎぃやうああああっっ!!!?」
咆哮、とも言えるような叫びが涼やかなラミアの美貌から発せられる。
恭子はさらにその体勢のまま、腹へのストンピングを浴びせかけた。
ドゴォン、ドゴォン、と凄まじい音がしてリングが震える。

会場が騒然となった。
「お、おい何だよあの音。あんなの、聞いたことねぇぞ……死ぬよ」
「ひぇっ、ま、マジにキック王者なんだなあれ、怖えぇって」
先まで恭子を舐め切って嘲笑っていた連中が顔を青ざめさせている。
いける、と俺は手を握りしめた。
「いけぇっ、恭子おおおぉっ!!!!!」
俺はダメ押しで叫ぶ。関係性はどうあれ、さっきは俺の声と同時に状況が変わった。
だからゲン担ぎの意味を込めて今一度叫ぶ。
その時、恭子が俺をちらと見た。俺はぞくっとする。
あいつの顔は真っ青だった。汗が恐ろしいほど顔中に滴り、歯茎が震えていた。
その極限状態の中、恭子は『心配すんな』とでも言いたげに目を細める。
しかしその時まさに、ぐったりと動きを止めていたラミアが足を引き付けるのが見えた。
危ない!
そう叫ぼうとした瞬間、その蹴りは痛烈に恭子を蹴り飛ばしていた。

ごおん、といやな音をさせて、恭子はコーナーポストに叩きつけられる。
「あう……」
恭子は力なく天を仰ぎながら崩れた。そこにラミアの影が落ちる。
「やってくれたわね、小娘」
ラミアは前半の余裕が嘘に思えるような蛇の目つきだ。
そしてコーナーに崩れたままの恭子の腹へヤクザキックを叩き込む。
鈍い音でコーナーが揺れ、恭子の身体が跳ねる。
俺の方からは顔は見えないが、その手足がだらりと投げ出されているのが見えた。
死。
そんな言葉が脳裏をよぎる。
「おい、やめろよ!もう失神してんだろ!?」
俺が叫ぶと、ラミアが凍りつくような碧眼を俺に向けた。
「してないわ。……こいつまだ、こんな目で私を見ていやがんのよっ!!!」
ラミアはそう言って恭子の襟元を掴み、自分の前に引き摺り起こした。
恭子は口から血を流しながら、じっとラミアを睨み据えている。
ラミアは忌々しそうに額に血管を浮き出させた。

「お、俺初めて見たよ、朝岡があんなにキレるの……」
観客席から囁きが聞こえる。
客席が固唾を呑む中、ラミアは歯軋りして恭子の身体を抱え上げた。
そしてその身体を肩に担いだままロープを上っていく。
何をするんだ、と場の皆が見上げる中、ラミアはトップロープを蹴った。
そしてリング上空に飛び上がり、掲げた恭子の身体を振り下ろしながらその腹に膝を添える。
ダンッ、と着地の音が響いた後、水の音がした。
ラミアの膝で腹部を突き上げられた恭子の口から、凄まじい量の吐瀉物が溢れ出している。
随所に赤い流れまで含ませて、だ。

「……もう死ぬよ、あれ……!」
客席からは声が失せていった。俺も声を出す余裕なんてとうに無かった。
静けさに覆われたリングの中、崩れ落ちた恭子を放り投げてラミアが背を向ける。
失神、試合終了だ。ゴングがまさに打ち鳴らされようとした時、ラミアの足を白い手が掴む。
ラミアはいよいよ驚きを浮かべて振り向いた。
恭子が這いずり、去るラミアの足に縋りつく。
目は虚ろで、口は細かく震えながら、恭子は小さく呟いていた。
「…………つや………てつ……や……。
  ……ぃじょうぶ、わらひ、まけ……ない……まけたり、ひない……」
恭子は呟きながらラミアの足を掴み続け、
やがてがくりと首を折る。
厳しい表情をしたラミアの首筋に汗が伝い落ちた。

ゴングが打ち鳴らされる。 ここに恭子の敗北が、決した。




その後恭子は、当初のルールに従って断髪を施行された。
大観衆が見つめる中、ラミアに荒々しく髪を掴み上げられ、鋏で切り捨てられていく。
時と共にリングに広がる、艶やかな長い髪。女の命。
それを見つめながら、恭子はただ虚ろな目をしていた。
はらはらと髪が舞い、今までの芦屋恭子が消えていく。
あの日、ジムで出会った、清楚な長い髪の少女。
それが殺されたのだ。

鋏で乱雑に切り払われたショートカットを散々衆目に見せつけた後、
ラミアは恭子をリング外に投げ捨てた。
俺が慌ててそれを抱きとめる。
「大事に持って帰りなさい、彼氏さん。そんなゴミ、ウチでは処分できないからね」
ラミアはそう言って花道を通り、控え室へと悠々と引き返していく。
客も今日の壮絶な体験を口々に語り合いながら、出口へ向けて去っていく。
照明の消えたリングの傍で、俺は気絶した恭子を抱きかかえていた。

試合の最後の方、俺の体は動かなかった。
あれほどの状態になっていた恭子に対し、声を掛けることができなかった。
自責の念からだ。
恭子が試合始めで不覚を取ったのも、いやそもそもこんなバカげた試合を受けたのも、
俺という存在が居たせいだ。俺が恭子の弱みなんだ。

「……モヤシ、くん……。……ないて……るの……?」

不意に掛けられた声に、俺は肩を竦ませる。
恭子が薄目を開けて俺を見ていた。ひどい状態だ。
ボロボロになった恭子を眺めながら、俺は意を決した。
別れを告げる。
当然、嫌いになった訳じゃない。むしろこれ以上ないぐらい大好きだ。
あんな目にあっている恭子を見て、俺は心からこいつに惹かれているんだと解った。
一緒に歩いていてこんなに幸せな奴はいない。一緒に過ごしていてこんなに楽しい奴はいない。
人生で遭えるのはきっとこの一人だけ、そう大袈裟じゃなく思える。
だけど、だから、俺はこれ以上こいつのお荷物になるべきじゃないんだ。


「俺さ、きょう……」
そう言いかけたその瞬間、パンとその口が塞がれる。
気の抜けるような音に目を瞬かせると、恭子がむすっとした顔で睨んでいた。
「許さない、から。モヤシくん、が、居なくなったりしたら、その瞬間に、死んで、やるから」
息を整えながら途切れ途切れに言う。
「死ぬって、お前な……」
「大体!あいつに負けた事で、別れたりしたら、それこそオトコ云々って
 アイツの言い分を、丸ごと認めることになんじゃない。にじゅうの敗北よ」
恭子にそう言われ、そういやそうか、と納得した。
「負けてもせめて己の道を進むのが、一流の人間よ。
 ……ったく、そんなだからモヤシくんは、いつまでもモヤシなんだよ」
恭子は訳のわからない事を呟きながら、俺の胸に顔を埋めた。
無残に切られた後ろ髪がまばらにうなじへ垂れている。
ふと、その華奢な首筋が震え始めた。俺の首に幾つかの水滴が垂れ落ちる。
居たたまれない気持ちになった。

「……悔しいよ……悔しいよ、くやしい、よ …………哲哉…………っ !!!」

恭子は俺の肩を叩きながら、その拳を固く握りしめて嗚咽を繰り返す。
俺はその小さな身体をぎゅっと抱きしめ、少し前のバカな自分を頭の中で殴り飛ばした。
こんな状態のこいつを置いて別れるつもりだったのか。
自分のせい? 逃げてるんじゃねぇ、馬鹿野郎。

「……俺さ、恭子」
泣きじゃくる恭子の耳元で、俺は囁いた。恭子が目を開けて俺を見つめる。
「最初は、お前の髪に惚れたんだ。清楚そうな子だなって、一目で思った」
「……知ってるよ。モヤシくんの目は解りやすいから」
恭子が少し歪んだような笑みを見せる。
「でもな恭子。俺は……その、な。途中から髪なんか見てないっつうか、ええとだな。
 ショートヘアも良いかもしれない、というか、いや過程から良くはないんだが、」
俺はしどろもどろになって言葉を続ける。
要は落ち込むな、と伝えたいのだが、上手い言い回しが思いつかない。
思えば恭子をまともに褒める事なんて殆どした事がない。
この大事な時に、そのツケがきた。

俺が落ち込んで項垂れていると、くすくすと笑い声が聞こえてくる。
「あは、あっははは!全くモヤシくんはぁ、フォローが下手すぎるよ」
そう笑ってから少し咳き込み、恭子はふと別の笑みを見せた。

「…………ありがとうね。負け惜しみなんかじゃなく、思う。
 私は、モヤシくん……ううん、哲哉のおかげで強くなれてるんだ。
 だからこれからも一緒に居てほしい。一緒に強くなって、今度こそ勝つんだ……アイツに」
恭子はぐ、と拳を握り締めて言う。
「ああ、望む所だ」
俺もその拳に拳を合わせて応えた。

俺達は決意を新たにし、また新しい目標に向かって歩き始めた。
ただその第一歩は、世間から見るとやや突拍子もないことだったかもしれない。


『 キックボクサー芦屋恭子、プロレスに電撃移籍!! 』


その見出しがスポーツ各誌を賑わしたのは、また別の話になる。


                        END
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