大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2010年10月

The edge ep.10-1

1.

「いたた……」
神崎茜は控え室のベンチに腰掛け、赤らんだ手首を押さえた。
先ほどの試合終盤、決着を急いて少々杜撰な受けをしてしまったようだ。

悠里が消息を絶って三ヶ月。アリーナでは今、暫定王座決定戦が行われている。
トーナメントには猛者が殺到した。
化け物じみた女王が不在で、全国制覇の柔道家・高峰青葉も欠場。
その好機に虎視眈々と王座を狙う女が押し寄せたのだ。
激戦に次ぐ激戦が繰り広げられた。
リングは朱に染まり、担架が忙しなく行き交う、まさしく戦場だ。

その厳しいトーナメントもようやく終わりを迎える。
決勝へ駒を進めるのは、勝ち上がったのが奇跡と言われる茜と、もう一人。
帰国したばかりの沙里奈というカリスマダンサーだ。
クールな容姿からファッションモデルの仕事も多いが、その見た目に反してダンスを応用したカポエイラも得意とする。
正対して打ち合うことが基本の格闘技において、その三次元的な戦いには定評があり、
足技という類似点もあって悠里との対決が心待ちにされている選手だった。

その脅威は控え室に流れる試合映像からも伝わってくる。
左右の蹴りが休みなく相手のガードを叩き、たまらず覗いた顎へ的確なハイキックが叩き込まれる。
速い。
茜は固唾を呑んだ。凄まじい回転の速さだ。
鞭のような蹴りには、空手ほどの重さはないが、鋭さがある。
そもそも蹴りをフックのように打ち込まれては、到底腕で防ぎきれる筈がない。

「……防ぎきれない、か。」
バンテージを巻き直しながら茜は笑った。
5年前。まだ高校生だった頃も、同じような不安に駆られていたのを思い出して。





その日、茜は日課のロードワークを放棄して繁華街を彷徨っていた。
何か目的があるわけではない。空手の試合に負けての現実逃避だ。
負けたのも惨めだが、それよりも深刻なのは、敗戦に「悔しさ」を感じられないことだった。
悔やむ事さえできない試合内容。

  ――なんだあのちっこいの、守るばっかじゃねぇか。
   ――あーあ、神崎センパイったら、まーた亀だよ?

茜の試合ではよくそうした野次が飛んだ。
茜は道場での型稽古なら様になるものの、試合となるとからきしだった。
相手に過剰な恐れを抱いて硬直してしまう。相手の体格に脅え、突き・蹴りに身が竦む。
身体は染み付いた受けを行うが、そのうち倒される。いつもそれだ。
幼少時から毎日のように空手漬けで、その有様。
自分に戦いは向かない。
茜はそう確信し、街を彷徨いながら空手から身を引く決心を固めていた。

そんな茜が、項垂れて路地を通り過ぎた時だ。
不意に微かな音が耳をくすぐった。 斧を振るう時の風切り音に似た、何か。
何だろうと路地を覗き込んだ瞬間、茜の眼前に人影が降り立つ。

その人物を目にした瞬間、茜の背筋に本能的な寒気が這い登った。
中華系の切れ長の瞳は、老人のように穏やかだが、それが殺し屋の目だと直感で解る。
人を殺めても眉一つ動かさない人種だと。
殺し屋の指が弾かれるのを目にしても、茜は身動ぎさえ叶わなかった。
ただ死を覚悟する。
その彼女の前を突如、手刀が凪いだ。チィン、とアスファルトに金属音が響く。
そこに目を落とし、それが闇に紛れた黒針だと気付いて膝が笑い出す。
そして同時に、茜は手刀の主が自分と同じ制服を着た少女だという事にも気がついた。

中華系の女性がその少女に腰を落としての崩拳を見舞う。
少女はそれを捌き、返礼に前蹴りを浴びせる。
女性は吹き飛んでゴミの山へと埋もれた。
オーソドックスな前蹴り、しかし威力が異常だ。
今の吹き飛びようは、まるで力士のぶちかましを受けたようではないか。
どれほどの威力があれば、踏ん張った人間があの速度で飛ぶというのか。

手刀の少女が振り返る。涼やかに整った顔立ちが覗いた。
「ごめんね、驚かせちゃって。危ないから早く逃げ……」
そう言いかけ、彼女は茜を見て目を丸くした。
「……?」
茜は不思議に思う。
同じ学校だという事への反応かもしれないが、別段驚くほどではないだろうに。
ただ、事情はどうあれ少女は態度を変えた。
「あなたなら、大丈夫そうね。少し離れてて」
そう言い残し、芥の山から這い出た中華系の女性と再び対峙する。
革靴が鋭い音を立てた。

その戦いは全てにおいて茜の理解を超えていた。
打撃が当たったときの鼓膜の底に響く音、明らかに人の限界を超えた反応。
助走なしの垂直飛びで茜の胸辺りまで跳び上がり、配管と壁を蹴って頭を狙うなど、映画の中でしか見たことがない。
「いい加減にしろ、小娘!奴を生かして貴様に何の得がある!!」
「さぁね。でも、殺そうとするとこ見ちゃったからさ。目の前で人殺しなんて、させやしないわ」
二人は論を交わしながら、どれ一つとっても致死的な攻撃を次々と刺し合う。

 ――どんな風に感じるんだろう。

茜は目まぐるしい動きを眺めつつ考えた。
自分が思う限界を遥かに超えた戦い。
あそこまで鍛えたら、あの攻撃をかわせたなら、どう感じるのだろう。
知ってみたい。
もっと、もっと先があるんだ。これほどに遠い高みが。
数時間前に敗北を喫した相手など、これに比べればなんと人間じみていたことだろう。
やがて少女の脚が一閃し、路地裏の激戦は終結する。
茜には終始絵空事のような戦いだった。だがそれでも、価値観は根底から覆された。

茜が負けず嫌いになったのはその日からだ。
以後も試合では相変わらず負けた。県内にさえ茜を圧倒する猛者は数多く居たからだ。
それでも茜は、「悔しがる」ようになっていた。負けた時に心の底から泣いた。
それは、彼女が総力を尽くした証拠だった。





遠い、遠い存在。
悠里に対するその想いは、今でも変わる事はない。
むしろ彼女をよく知るほど、自らの立つ場所との違いを思い知らされる。
10の練習をして10しか得られない茜と、20、30を得る悠里。
今から戦う沙里奈も、その20、30を得るタイプだろう。
正直、勝てる気はしない。
観客にも既に沙里奈の勝利を祝うムードが漂っている。
茜など、沙里奈が対悠里戦への箔をつける為のかませ犬だ、
かつて悠里に手も足もでなかった茜が沙里奈に敵う筈がない、と。

以前の茜ならそれらを気に病み、吐くほどに緊張していただろう。
しかし今の茜は落ち着いていた。
床に正座し、ひたすらに集中力を高める。
中学の団体戦で大将を務め、しかし肝心な一戦で期待に応えられなかった事。
高校になっても何が変わるわけでもなく、試合の度に歯痒い思いをした事。
待望のリングで、悠里にろくに触れられもせず敗れた事。
自分が他人に比べて華のない事。
それらへの忸怩たる思いもすべて受け止めて気を研ぎ澄ます。
そうすると開き直りにも近い安らぎが心の内から滲み出た。
他人と比べてどうかは考えない。
勝てるかどうかも問題にしない。
ただ、全力を出す。己に恥じない戦いをする。

「神崎選手、決勝の準備……を…………」
部屋の外から呼びかけた係員が、驚いたように目を丸くした。
正座する茜の気迫が、一瞬かつての悠里に重なって見えたからだ。

「……わかりました」
茜は瞑想を解いて立ち上がる。
そして部屋を後にする間際、控え室を今一度振り返った。
薄紫のハンドタオル、水素水のボトル、鉤状に黒ずんだサンドバック。
控え室には悠里の名残が残っている。
「行ってきます、悠里先輩!」
茜は虚空へ向けて突きを放ち、空気に自らの色を付け加えた。



2.

きしっ、きしっ。
茜の重みでリングへ通じる金網が軋む。
足の裏に伝わる網の冷たさで、足裏が熱くなっているのがわかる。
胸はもっと熱い。
会場の熱気にあてられ、焼きたてのパンのように膨らんでいる。
茜は硬いロープを力いっぱい開いてリングに入った。
汗の出るほどのライトが身を焦がす。

沙里奈はすでにリングに入っていた。
コーナーを私室化するような態度は、すでに新人のそれではない。
クール。印象はその一言に尽きる。
ショートに整えられた髪、アイシャドウで彩られた吊り目、シャツから覗く締まった腹は、
女性ならば間違いなく嫉妬するほどに美しい。
雰囲気から、物事を卒なくこなすタイプであることが伝わってくる。
戦いにおいても最小限の努力で鰻登りに実力をつけていくのだろう。
不器用な茜とは好対照だ。
彼女は茜へ視線をやり、溜め息を吐いてヘッドホンを耳に当てた。
見られることが当然と思うのか、観衆の黄色い声さえ気にする様子がない。
茜はそのタイプが苦手だった。なぜ試合前に奔放に振舞えるのかが理解できない。
何をやっても敵わない気がする。

 (それでも……負けられないんだ)

茜は黒帯を締めて気合を入れ直す。
茜はこの5年、自分を磨き続けてきた。
空手の腕だけではない。容姿も、思考も、自分なりのスタイルを模索した。
全てはこの時のため。
いつか必ず姿を消すであろう悠里の代わりに、彼女に誇れるような王者になるためだ。

かくして、決勝のゴングが打ち鳴らされた。



茜は丹田を中心に円を描くように構え、じりじりと沙里奈との距離を詰める。
沙里奈は腰を深く落としたまま茜を迎えた。
その踊るような奇怪な足捌きは、ボクシングの小刻みなステップとは違う。
浮遊する海洋生物を思わせる捉えづらさだ。

茜が攻めあぐねていると、沙里奈が突如蹴りを放った。
豪快に腰を切っての旋風脚に似た蹴り。
ただし旋風脚と違い、両脚が立て続けに襲い掛かってくる。
「ぐっ!!」
咄嗟に初段を肩で受けた茜だが、二段目が頭に直撃してしまう。
身体が揺らいだ。
時間にしてほんの数瞬、しかしその間に沙里奈は十分な追撃をかける。
先の豪快な蹴りで崩れた体勢のまま、マットに手を突いて脚を振り回したのだ。
倒立しての回し蹴り。

 (マットに手を……?あの目線は……お腹っ!)

茜は沙里奈の視線を読んで腹部を庇う。
何とか直撃は免れた。しかしスピードの乗った蹴りはガード越しでもつらい。
「ぐぶっ!!」
茜は身体をくの字に折って呻いた。
沙里奈は蹴り上げた脚がマットに落ちる動きを利用して直立に戻り、
さらに上下に分けての蹴りを振り回す。
茜はそれを捌き切れずにいた。速いなどというものではない。

『凄まじいラッシュだ!蹴りに次ぐ蹴り、これはまるでキックの雨です!!』
実況が叫ぶ。
試合が始まってまだ2分弱、だが茜は既に追い詰められていた。
映像で見た以上の厄介さだ。
沙里奈はブレイクダンスのように、腰を捻り、あるいは逆立ちして腕で回り、
予想もしない動きから無数の蹴りを繰り出してくる。
技の一つとしての蹴りなら対処できる、だが一連の流れ全てが蹴りなど未経験だ。

「…………ッ!!」
茜の脳裏に数え切れない蹴りの軌道が浮かんだ。
それは自分が喰らいうる、あらゆる攻撃。
上か、下か、横か?
どこからどの角度で蹴りがくる?その見当がつかない。
通常の立ち技選手と違い、キックを繰り出す体勢が滅茶苦茶なのだ。
これがあの悠里をもスタンドで翻弄するといわれる三次元的な攻撃。
所詮は空手やボクシングも、互いが直立している事を前提にした勝負に過ぎないのだと思い知らされる。
「げふ、うッ!!」
茜が腹に一撃を喰らって呻いた。
沙里奈はそれを見逃さず、ガードの甘くなった脇腹へ更に蹴りを放り込む。
その目は逆立ちしていても常に茜を観察していた。
ありありと余裕を窺わせながら。

 (どうすれば……!)

茜は肘と膝で蹴りを防ぎつつ悩む。
リーチ差がありすぎて成す術もない、勝ち目があるとは思えない。
茜が下を向いたとき、

   ――――よく頑張ったね

頭に澄んだ声が閃いた。
あの時もこのリングだった。
悠里のラッシュで体中をボロ切れのようにされ、それでも前へ出た。
怖かった。何度も死を意識した。
それでもその結果、彼女に一筋の手傷を負わすことが出来たのだ。
あの絶対王者に。

 (……そうだ……やれるだけは、やらなきゃ!)

茜が左半身に構え、ガードを下げる。
その瞬間、衝撃と共に彼女の視界が黒に染まった。顔への被弾だ。
沙里奈の足の甲は頭骨の固い部分をうまく避け、頬と鼻へ絡みつくように潰してくる。
鼻血が盛大に溢れ出す。
「バッカだねぇ……」
沙里奈の嘲る声が聴こえた。
『き、決まったぁーー!顔面に食い込むカリスマダンサーの痛烈な蹴りぃッッ!!!』
「いいぞー、サリナ!悠里に代わる女王はやっぱお前だよ!!」
実況が叫び、観衆の大歓声が沸き起こる。場の誰もが沙里奈の勝利を確信していた。
ただ一人、茜を除いて。

彼女にはその顔面への蹴りが予測できていた。
あの局面でガードを下げれば、沙里奈の体勢からして顔を狙うだろうと。
顔に来ることさえ解っていれば、歯を食いしばって耐えられる。
鼻をへし折られつつ、茜は腰を落とした。
崩れ落ちたわけではない。それは下段蹴りの初期動作だ。
「うあ……ぁああっ!!」
足元を踏み定めた後、茜の右足が弧を描く。至る場所は、沙里奈の軸足、その踝。

ズバァンッ、という音が響き渡った。
瞬間、客の歓声が止む。実況が目を見張る。
その視線の先では、軸足を蹴り払われた沙里奈が風車のように回転していた。
「ぐっ!!」
小さな悲鳴が漏れる。肩からマットに打ち付けられた沙里奈のものだ。
それを最後に場が静まり返る。
ふううぅっ……、と茜の吐き出した息が聴こえるほどに。

一撃必殺。
空手道が追い求め続ける理想だ。絵空事、と言ってもいい。
実際そんな事は、悠里のような一握りの才人でなければ実現し得ない。
しかしそれでも空手家はその夢を見て、休まず拳を鍛え続ける。
茜はそんな馬鹿げた道が好きだった。
霞むほどの高みを見上げながら、雨の日も風の日も鍛え続けてきた。
たとえ回りにどう映ろうが、遅い歩みだろうが、その修練の日々は真実だ。
それに裏打ちされた下段蹴り。これがヤワであろう筈がない。

「すっ……すげぇ…………!」
客席から声が漏れた。
「すげぇ、何だ今の蹴り!?悠里みてぇだ!!」
「お、おうっ。見たかよ、180度回ったぞ!」
茜の下段蹴りに場が沸き上がる。
『こ、これは驚きました!神崎選手、顔面へ蹴りを受けながら、
 沙里奈選手の軸足を狙った豪快な下段蹴りっ!!
 見た目の派手さもさる事ながら、空手に身を捧げた女の蹴りは、威力も凄まじい!!』
実況が興奮気味に叫んだ。
「う……」
その声に反応するように沙里奈が呻く。
彼女はリングに這い蹲り、蹴られた左足を信じられないといった表情で眺めていた。

茜は残心を取ったまま沙里奈が立ち上がるのを待っている。
余裕を見せている訳ではない。
あくまで立ったまま勝負するという、空手家としての誇りだ。
その茜を見上げ、沙里奈が眩しそうに目を細めた。
見下ろす茜には後光が差すようだった。
照明の直接的な光ではない、秘めたる心の輝きが。



沙里奈はロープを頼りに立ち上がり、耳に嵌めたヘッドホンを場外へ投げ捨てる。
そして続行可能である事を示すようにトントンと跳んでみせた。
眼が最初と違っている。
構えを取る茜に、沙里奈は意外にも頭を下げた。
「ごめんなさい」
これもまた意外な言葉に、茜は訝しげな顔になる。
「あんたを見くびってた。子供っぽくて、お父さんの空手着を着てみたお嬢様みたい。
 どうせアイドル空手家とかそんなのだろうって、さっきまで思ってた。……ごめんなさい」
沙里奈はそう告げると、先ほどまでよりも低い構えで身を揺らし始める。
それが彼女の本気だと眼でわかる。
「いいですよ。よく言われるんです、格闘家らしくない、って」
茜は照れくさそうに笑った。

確かに格闘家らしくない、いい匂いのしそうな娘だ。
童顔で、髪には軽くウェーブがかかり、瞳はまるきり人を疑うことを知らなさそうな澄みようで、
格闘家が10人いれば10人ともが多少なりとも侮る、そんな容姿。
それでもその強さは本物だ。

「胸、貸してもらうよ」
沙里奈がにぃと笑う。最初のクールな印象とは打って変わって、情熱的な顔だ。
茜も満面の笑みで返した。
「光栄です。……私も、全力で!」
二人はまるで十年来の親友のようになっていた。互いを認め合ったからだ。
そして、格闘少女の交友は談笑ではない。
沙里奈は腰を捻った回転で、茜は摺り足で進んで互いの領域を侵す。

『さぁ仕切り直しだ!本気になった2人、優れているのは果たしてどちらか!?』
実況の叫びをゴングに、少女達の脚がマットを蹴った。



3.

沙里奈の身体捌きはいっそう複雑に、そして軽やかに変わった。
頭の中のリズムが入れ替えられたのだとわかる。
「りゃああああっ!!!」
繰り出される蹴りもいよいよ鋭さを増していた。
空中を無数の鎌が乱れ飛ぶようだ。
速さも相当だが、そうも鋭いとなると、当たり所が悪ければ一発で意識を断ち切られてしまう。
だが茜はあえてそこに突っ込んだ。
リーチでも手数でも勝負にならない以上、懐に潜るしか勝機はない。
鬱蒼と茂った雑木林をバイクで突き抜けるような危険さだ。
茜は肩に胸にと被弾し、弾き飛ばされる。それでも何度でも猛進する。
その様子はまさに『必死』。
茜が常に揶揄されてきたファイトスタイルだ。
女闘を見に来る客の多くはそれを見苦しい、華がないと蔑む。
しかし死を賭して真っ直ぐに突き進むその姿は、相手にとってどれほどの脅威である事か。

「ちぃっ!!」
沙里奈が顔を顰める。
茜の勢いに押されていつの間にかコーナーを背負っていた。
だが彼女は軽やかなバク宙で難なく茜の脇をすり抜ける。
そして時に跳ねながら茜に蹴りを浴びせ、時に倒立しながら蹴り上げた。
立ち技選手が必ず当惑する三次元的な闘い方だ。
しかし、茜はいつしかそれを防ぐのではなく、自らの拳足をもって迎撃するようになっていた。
「せぃやっ!!」
茜の放った前蹴りが沙里奈のキックを弾き飛ばす。
「う……!」
沙里奈の額に汗が流れる。

それは茜の臆病さがなせる業だ。
自らの受けうる攻撃を、相手の視線、呼吸、体勢などから無意識に感じ取る。
まだ未熟だった学生の頃は、その情報を前にただ呆然と立ち尽くすだけだった。
しかしその臆病さに勇気が加わった時、茜の真価は発揮される。
何を恐れるべきか。最も守るべき場所は何か。それを理解して行動できる。
悠里と戦った時もそうだった。
覆しがたい圧倒的な実力差がありながら、それでも瞬殺された訳ではない。
粘り、粘り、一撃を返すまでになってようやく限界を迎えたのだ。




沙里奈は汗を浮かべながら、しかし手を出し続けた。
硬直状態になっては茜のペースに引き込まれる。
だが迷い半分で放った蹴りは、茜の洗練された回し受けによって絡め取られる。
茜はその蹴り足を腋に抱えたまま、沙里奈をコーナーへと叩きつけた。
「……掴まえた!」
沙里奈の鼻先でそう囁き、痛烈な膝蹴りを浴びせる。
「うっ、はぅ……ンッ!!」
沙里奈が目を剥いて呻いた。ハスキーな良い声だ。
「把ああぁっ!!!」
茜は責めの手を緩めない。早く勝負を決する必要があった。
鼻が潰された事で酸素がうまく取り込めず、スタミナが尽きかけている。
体ごと回る豪快な蹴りを捌いてきた腕も折れそうに痛い。

茜は腕を引き絞った。
狙いはシャツから覗く沙里奈の腹部だ。
ダンサーだけあってよく鍛えられ、8つに隆起したそこへ、渾身の掌底を打ち込む。
「うぐおおおォッ!!」
今度はうめきなどではない、明らかな叫び声だった。
「……サ……サリ、ナ…………?」
観客の声が驚き一色に統一されていく。
沙里奈のクールな容姿とは似つかわしくない声が衝撃的だったのだろう。
「これで……どうですかッ!」
茜は打ち込んだ掌の上から、さらに重ねて掌底を沈める。
「うぇ……っ!うぐ、あ……ッッ…………!!」
沙里奈の口から唾の塊が飛んだ。彼女の跳ねでリングポストが軋みを上げる。

ただ掌底を2発重ねただけにしては大きすぎるダメージだ。
茜は、この「掌底重ね当て」が奥義と呼んでも良いほどの威力を持つことを確信していた。
それは発勁の一つ、浸透勁に近い。
筋肉を掌で押さえて弾力を封じ、その上から力を加えて効率よくダメージを与える。
掌底の重ね当てはまさしくそれで、強烈な心臓マッサージの如くに相手の奥底を叩く。
空手にはない技だが、その掌底を突き込む動作は紛れもなく空手で培ったもの。
既存の技術を守るばかりが空手家ではない。
これは鍛錬に鍛錬を重ねた末に会得した、茜なりの極意だ。

「ぐ……く、うあ、あ゛……っ!!」
沙里奈が口を押さえる。
そのすらりとした脚が震えはじめていた。もう立っているのも限界なのだろう。
『形勢逆転、今度は沙里奈選手が悶絶ーー!!』
実況が叫ぶ。
その直後、沙里奈の頬が膨らみ、ぐびゅ、と音がして押さえた手から吐瀉物が零れた。
「はぅッ………う、う…………んんろお゛おおぉええええッッ!!!」
生々しく嘔吐する。
観客から悲鳴が上がった。いや、正確には悲鳴ではない。
女同士の殴り合いを見に来るような酔狂な客だ、それは悲鳴に模した歓喜だろう。
『沙里奈選手、やはり堪え切れない!!
 ストリート時代を含め、彼女はここまで殴られた事があったのでしょうか?
 しかし、ここではそれがあります!芸術的な身体を躊躇なく破壊できる女がいます!!』
実況の煽りに釣られ、大歓声が沸き起こる。


「う、うう……う」
ようやくに嘔吐を終えた後、沙里奈は腹を抱えてよろめいた。
しかし、ただ逃げているわけではない。 その眼はなおも最後の光を残している。
「はぁっ!!!」
茜は危機感を覚えながらも、回復の間を与えまいと前蹴りを放った。
だが同じく放たれた沙里奈のフロントキックにリーチで負けて弾き飛ばされる。
沙里奈はその反動を利用して後ろのリングポストを蹴った。
そしてそのまま茜へと飛び掛かる。
「きゃっ!」
茜は沙里奈の体重を支えきれずに倒れこんだ。
その首に沙里奈の足が巻きつく。
「ぐうッ……う、が……はっ………!」
茜が目を見開いた。沙里奈は自らの足首を掴み、引き絞って絞めを深める。
「ははん、かかったね!ストリートでの常勝技だよ、これで終わりっ!!」
沙里奈が高らかに笑った。
互いに疲労もダメージも限界だ、ここでこの技を決められたのは僥倖だった。

沙里奈の脚は柔らかくも暖かく、母親の乳房のようだ。
しかしその首絞めは強く、かなり危険な角度で入っていた。
『スリーパーが入った!沙里奈選手の長い脚が茜選手の頚動脈を締め上げる!
 傍目には喜ばしい光景ながら、この局面に来て一転、茜選手大ピンチです!!』
沙里奈の脚が蠢くたび、ブリッジのような格好の茜の腰が浮いて、沈む。
空手着を着ていてもなお細い脚の震えが解った。
「……あ………ひゅっ………」
真っ赤な顔で涎を垂らす、その顔は先ほど嘔吐した沙里奈とよく似ている。
しかし、違うところがあった。

『おおっと、これは茜選手…!?』
場がどよめく。沙里奈も言葉を無くす。
茜は沙里奈を首に巻きつけたままコーナーに寄りかかり、身を起こし始めたのだ。
沙里奈は不穏な雰囲気を感じて絞めを解こうとするが、出来ない。
なんと茜自身が彼女の脚を掴んでいる。
まさしく自分の首を絞める行為だが、そうしてまで彼女は攻撃に転じる。
沙里奈と茜で決定的に違うところ。
それはこの試合にかける執念に他ならない。

 (……王者になるんだ……)

茜は首に巻きついた沙里奈を高々と掲げる。

 (勝って……先輩と同じ、王者になるんだ!!)

茜は沙里奈をリングポストに叩きつける。リングポストの頂点に、強かに股座を打ちつけるように。
「ぐ、うああああああああああああ!!!!」
沙里奈の脚がびくつき、背が電気の流れるように震える。
同時に茜への絞めも解け、二人は同様にリングへと倒れこんだ。

先に茜が立ち上がる。ひどく咳き込みながらも内股で構えを取る。
次いで沙里奈が立ち上が……れは、しなかった。
彼女は長い脚を閉じ合わせたままリングに伏し、そのまま立ち上がることができない。
顔は真っ青になり、今出始めたという量ではない脂汗を浮かせていた。
疲労もあるだろう。
だがそれ以上に、それをきっかけとしてぶり返した股間や腹部の痛みが、彼女の試合続行を赦さなかったのだ。
代わりに彼女は腕を伸ばし、自分に正対する茜の拳に軽く触れる。
『し、試合終了ーーーッ!暫定王者に輝いたのは、不退転の空手家……神崎 茜!!』
沙里奈のタッチを認め、実況が高らかに勝者の名を呼んだ。
あちこちで拍手が起きる。
「茜ー!!よく頑張ったぞー!!」
「見直したぞ、根性娘ーー!!!!」
そのような茜への声援も飛び交った。



「……凄いねあんた、今のあたしじゃ勝てる気がしないや。
 どうやったらそんな風に強くなれるのかな」
歓声の収まらぬ中、沙里奈は仰向けに横たわって茜に問う。
茜は沙里奈を抱き起こしながら笑いかけた。
「恩返しが、したいんです。」
茜が呟く。沙里奈は、その茜の目に一抹の寂しさを読み取った。
「王者になって、ある人の代わりに強くなりたいんです。
 その人は、きっと自分の生き様を否定するでしょうから、私がそれを継ぐんです。
 それが私の恩返し。………私の強さは、彼女に貰ったものだから」
彼女はするりと黒帯を解く。
すっかりくたびれたその黒帯を、茜は静かに握りしめた。

The edge ep.9-5

1.

いつしか悠里は座敷牢のような寝室で、ほとんどストレッチをしなくなった。
いや、正確には『出来なくなった』。
楓の手で秘部に塗り込められた膏は、一夜が明けてもその効果が消える事はない。
楓の恥辱と、紗江の嬲り。
その繰り返しで悠里は女の快楽を徐々に身体に刷り込まれた。
もはや悠里にとって、寝室で横臥している事さえ休息にはならない。
秘部は疼き、胸は膨らみ、息は荒ぶり。
そんな状態で一夜を過ごすのだ。ストレッチに使う体力など残らない。

悠里の肉体に変化が起きている事は、当然クミ達にも見破られた。
裸に剥かれたとき、その桜色の秘部が必ず潤んでいるようになったからだ。
「うーわ、変態。嬲られること期待して、もう濡らしてるよこいつ!」
そう笑い物にされ、仕置きも肉体を嬲るものから、性的に辱めるものへと変化していく。



道場が休みの日には、悠里はレディースの根城である廃工場へと連れ込まれた。

「うわこいつ、身体柔らか……ここまでいけるんだ?」
悠里を見下ろしながら門下生達が驚愕する。
悠里は仰向けのまま両脚を上げ、脛が頭を通り越して床につくまで折り曲げられていた。
門下生は嗜虐心の赴くままに脚を倒したが、いくらやっても悠里が表情を変えないため、
とうとうそれ以上いけない所に至ったのだ。
悠里は腰から半分に折れ、秘部が二時の方向を、肛門が真上を向く姿勢を取らされる。
さらにその頭上に一人の女子高生が座り込み、両脚で悠里の脚を押さえつけた。

「どう、折檻の一つ『マングリ』は?正確には戸川固めって言うらしいけど。
 それね、何気に羞恥系の中で一番キッツイやつなんだ。
 敵チームの頭とか生け捕りにした時に、それやって侘びを入れさせるの。
 どんなに生意気なヤツでも、それで泣かなかった女はあたし見た事ないよ」
クミが悠里を見下ろして告げる。悠里はそれを強気な瞳で睨み返した。
クミはおかしそうに笑い、悠里の傍に屈みこむ。

「そうそう。レディースの頭も、最初は皆そういう眼してるの。
 でも、これは本当に恥ずかしいんだから。例えば、こうして……」
クミが悠里の剥き出しの秘部へ指を潜りこませる。
指は水音を立てて悠里の膣内を捏ねくり回し、愛液を溢れさせた。
溢れた愛液は下に垂れ落ちて悠里の顔に飛沫を上げる。
「っ!」
悠里が目を細めた。
「ね?自分のおツユが顔に掛かって、恥ずかしいっしょ。
 普通はバイブで散々アソコを弄くり回してようやくそうなるんだけど、
 あんたはいやらしいから楽でいいよ」
クミは秘部を弄りながら嘲った。
悔しいが、潤みきった狭まりを弄られては感じるしかない。
勃ち上がった陰核を撫でられると、数瞬後、愛液の塊がどろりと下腹を垂れ落ちる。
信じられないほど気持ちが良かった。
息を荒げる悠里を見下ろし、円陣を組んだクミ達が嘲笑う。



「あーあ、純真なオマンコなら弄くって楽しめるんだけど、あんたは駄目だね。
 たぶん紗江辺りにされたんだろうけど、もう牝の性器になりかけてる。
 ま、でも大丈夫。この『マングリ』の真骨頂は、膣なんてありきたりな所じゃないから」
クミはそう言って膣から指を抜き、その指を後ろに滑らせた。
狙いは桜色の窄まり。クミはそこへ唾液を足し、中指を押し付けはじめる。
指先が括約筋の抵抗を押し破り、中へと沈み込んでいく。
「おしりっ!?」
さすがに悠里が驚きを露わにした。
まともに生活していれば、そこを排泄以外に使う事などない。

「ふふ、やっぱこっちは処女?武闘派の女って大体はそうだよね。
 リングの女帝さまが尻穴経験済みなんて、それこそ幻滅だもん。
 ……まぁ、今からそれどころじゃない幻滅が待ってるんだけど。
 あたしがケツをほぐしてる間に、覚悟を決めといてねぇ。
 誇り高い女王様に屈辱のあまりショック死されたら、寝覚めが悪いしさ」
クミはそう言いながら、中指を執拗に悠里の肛門へ出し入れする。
やがてそこに薬指までが加わり、二本指に。
「うんうん、いいアナルだねぇ。締め良し、伸び良し、ヌメり良し。
 紗江も言ってたけど、あんた全身の筋肉とか粘膜が恵まれすぎてるよ」
クミは抜き差しを続けながら語る。
「すごい、本当におしりに入ってる……!!」
女子高生達は手で顔を覆いながら、指の間から嬉々としてそれを見つめた。
携帯のフラッシュが悠里の秘部に浴びせられる。

悠里は恥辱に唇を噛み締めた。
敵対するレディースの頭がそれを受けたというが、彼女らもそうだったのだろうか。
悠里はそんな事を考え、しかしアマチュアと自分を比べる愚かしさに頭を振ってかき消した。
自分は自分だ。世界中の人間が屈しようと、自分だけは話が違う。
数百戦無敗の相手も、単に自分と戦う機会がなかっただけだ。
そう信じてここまで登り詰めたのではないか。
こんなレディースの、遊び半分の嬲りに屈する訳がない。
悠里は自分に暗示をかける。

しかし、彼女はまた心のどこかで理解していた。
追い詰められている。
莉緒との戦いのショックも癒えぬうちに楓に叩きのめされ、
門下生に辱められ、恥部の火照りに苛まれ、性感を教え込まれてきた。
『カーペントレス』の岩の如き自尊心が今、腐食するように剥がれ落ちている。
快楽を求める只の女にされつつある、と。



「ずいぶん美味しそうに咥えるようになったねぇ、悠里ちゃんのお尻の穴」
尻穴に延々と2本指を抜き差ししていたクミが言う。
実際、彼女の細い指が引き抜かれる度、悠里の菊輪は名残惜しそうに捲り返った。
もう大丈夫かな、と呟いてクミは指を抜き、鞄から何かを取り出す。
「そろそろ太いのが欲しくなったでしょ。次はこれを入れてあげる」
クミが手に持ったのは、各所に不思議な仕掛けのある黒い棒だった。

「何だと思う、これ?マイクなんだ、実は。結構高かったんだよぉ。
 先っぽが水中マイク、根元が普通のマイクになってて、ケツの中の音を拾ってくれんの。
 元々はカラオケで使うようなマイクをケツにぶッ刺してたんだけど、
 すぐに壊れたりクソが詰まったりで、ろくに音を拾ってくれなかったの。
 だからオヤジ狩りとかで金集めてこれを買ったわけ」
クミがマイクを振り回しながら言う。
すると、コードでつながれたスピーカーから空気の揺れる音が響いた。
まるで電車の通過する音だ。
この音量で腸の音を拾われたら、と思うと、どれほど気丈な女でも不安の影が差すだろう。

「聴こえたよね?こんな調子で、ケツの中に出し入れしてあげる。
 当然ケツなんだから、皆その内にうんちを漏らしちゃうの。
 我慢しようったって無理。だってうんちを“漏らすまで”やるんだもん。
 チームの頭張ってたような女でも、これは嫌がるよぉ?
 ケツへ抜き差しされる時に出る下痢みたいな音を工場の外まで響かせて、
 ビチャビチャのうんち漏らし続けてるうちに、どんな強情な女でも泣いちゃうの。
 もう絶対に逆らわねぇから、傘下に入るよ入らせてくれ、ッつってね。
 美人な女ほど嫌がるんだ。悠里ちゃんも怖いよね?」
クミは悠里の菊輪を撫ぜて言う。

「ただ、これは最初に誠意みせれば止めたげる事にしてんだ。キツいからね。
 悠里ちゃんは一回あたしを蹴っ飛ばして肩脱臼させたから、
 そうだね、あたしのオシッコを一滴残らず飲み干せたら許したげるよ。どう?」
クミはサディストの笑みを浮かべて提案した。
しかし悠里が首を縦に振る筈もない。
「あら、残念。私、貴女がいつも相手にしてるような援交おじ様とは違うの。
 ファーストフードで濁りきったガキのなんて、到底口に含めないわ」
悠里は同じく嗜虐心に満ち溢れた瞳で見つめ返す。
崩壊の予兆を感じた女王の、最後の意地だ。
クミの額に筋が浮く。
「へぇーえ、そういう事言っちゃうわけ。いけないなぁ、いま良心がぶっ飛んだよ」
クミは傍らの少女らに何かの指示を出す。

1人が悠里の窄まりに指を差込み、無理矢理に左右へ引き開いた。
そうして楕円形に拡がった悠里の腸内へ、別の少女がボトルを逆向けに翳す。
パッケージからして中身はローションだ。
「いいよ、全部入れちゃいなよ」
クミの声で、ローションのボトルが握りつぶされる。
半ばほど残っていたローションが悠里の腸内へと流れ込み、纏いつき始めた。
「……!!」
腸内がぬめりに満たされる感覚に、悠里の表情が強張る。
「アーア、いい度胸だねお前」
頭上から囁きが聴こえた。悠里の脚を腿で押さえつける少女だ。
「クミを切れさせちゃってさ。あれじゃクソ漏らすぐらいじゃ終わんねーよ?」
その言葉を裏付けるように、マイクを窄まりに宛がうクミは冷えきった眼をしていた。
彼女らもまた、弱者を喰らう獣なのだ。



にちゃっ、にちゃっという音が工場内に反響していた。
ローション塗れてマイクが抜き差しされる音だ。
女子高生達は腰に巻いたセーターの袖で拍手しながら、それに聞き耳を立てる。
「エっロい音ー。エッチがいっちゃん気持ちいい時に鳴る音だよ、これ」
「ああ、お互い一度逝った後の2回戦で、抱き合いながらぬちゃぬちゃしてる時のだよね。
 あいつも気持ちいいんじゃない?おまんこからお汁垂れまくってるしさ」
女子高生達の視線が悠里の秘部に集まる。
確かに後孔への抜き差しの度に悠里の腰が揺れ、潤みきった秘部から雫が垂れていた。
それは悠里の鼻先に滴り、隙のない美貌を穢していく。

「……っ……!…………ッ…………!!」
悠里は口を結んで尻穴を見つめていた。
黒い棒が引き抜かれるたび、腸一杯に注がれたローションが溢れている。
同時にその引き抜かれる感触は、菊輪に妙な感じをもたらした。

 (おしりに……おしりに、抜き差しされているの?あんな物を、本当に……!?)

悠里の頭が未知の恥辱に掻き乱される。
未使用の尻穴にマイクの抜き差しはきつい。
しかし柔軟性に富む悠里の筋肉は、早くもその奥底に何かを見つけ始めていた。
快便の感覚だ。
膣で感じるようなはっきりとした気持ちよさではない。
だが原初的なそれは、抗いようもないほど深い部分から徐々に湧き上がってくる。
悠里はその感覚に危機感を覚えた。
悠里の体を蕩かそうとしている紗江などならともかく、クミが快感を与える為に肛門への抜き差しをする筈はない。
彼女は淡々と尻穴への抜き差しを続けながら、快便の感覚の先に訪れるものを待っているのだ。
悠里がそう考えたとき、彼女の腸の奥のほうが疼いた。
ぐぉろろろ、ろろう。腸奥のマイクが悠里の腹の鳴りを響かせる。
女子高生達が顔を見合わせて笑った。

 (だ、だめ……っ!腸の奥が刺激されて、中身が出そう……!!)

悠里は目を細めた。
かつてこの責めを受けた族の頭もそうだったのだろうか。
一度は捨てた甘い考えがまた脳を横切る。悠里は己を恥じた。
その裏にあるのは、ならば仕方がないという甘えだ。
腐っても王者だ、そんな安いプライドを提げてなどいない。
悠里は唇を噛み締めて便意の波を押しとどめる。
クミの顔にかすかな驚きが浮かんだ。


しかし、いくら耐えようとも状況は改善しない。
防戦一方の試合と同じ、いつかは限界が来て打ち崩される。
「はあー、もう疲れた。ほい交替」
クミは天を仰いで汗を飛ばし、傍らの少女にマイクを手渡した。
「おっけ!」
少女は待っていたとばかりにマイクを掴み、悠里の尻穴深くへ叩き込んでいく。
「んっ!!」
悠里から声が漏れ、尾骨付近が引き締まった。
「あ、これ楽しいね、餅つきみたい。突いたらぶにょんって感じで抵抗あるんだ。
 音もぬちゃぬちゃ言ってるし、お尻の肉はほっかほかだしさ。たーのしい!」
少女は悠里の尻肉を撫でながら抜き差しを繰り返す。
クミが鼻で笑った。
「何いいとこのガキみたいな事言ってんのよ。大体それ、餅つきじゃなくて糞つきだから。
 ま、そのうち出てくるもんは餅米みたいだけどさ」
「えーやだ、ばっちい!」
クミの言葉に少女は手を引っ込め、代わりに革靴の底でマイクを押し込み始めた。
レディース達の迫力ある大笑いが起きる。
その轟音に包まれながら、悠里は腸の奥へ延々と抜き差しを受け続けた。
悠里の表情は刻一刻と苦しげになっていく。汗の量が半端ではない。

やがてスピーカーから、放屁のような音が響いた。
排泄感が限界を迎えたのだ。
「やっ!?ぬ、抜いて、早く抜きなさいっ!!」
悠里は汗まみれの顔でマイクを踏む少女に命じた。
少女は一瞬虚を突かれた表情をしたが、すぐに意地悪そうに笑う。
「抜きなさい?ははっ、えっらそう。いつまで女王気分なんだろうね」
クミが嘲笑った。
「チコ、いいよ。スパートかけてやんなよ」
クミの指示の元、少女がマイクを踏みつけて大きく抜き差しし始める。
「ああ、あッッッ!」
悠里の脚が内股に締まり、背に骨が浮き上がる。
腹筋が層を為し、首に筋が浮く。
一流格闘家の全身へ力みが駆け巡った直後、弛緩の時は訪れた。

 ――ぶりいいぃいっっ!!!

下劣なその音はスピーカーに拡大され、廃工場の天井に反響する。
間違いなく外へ漏れてもいるだろう。
さほど人通りの多くない通りだが、それでも何人もに排便の音は届いたに違いない。
「うわっ、出た出た!!」
数人がさも大変な事のように叫んだ。

ぶ、ぶぶっ、ぶりいぃっ、びち、びちいっ。

穢れた音は続く。
黄色く濁ったローションの奔流に塗れ、蕩かされた軟便が流れ落ちる。
内臓の熱さが背を撫でる。えもいわれぬ匂いが立ち昇る。
女子高生は腹を抱え、悠里を指差して笑い転げていた。
手でメガホンを作って罵っている姿も見えた。
しかし悠里には、それらの音は届かない。自らの排便の音に掻き消されて。

「は……っ……はひゅっ、ひゅ……っ!」
悠里の胸が上下し、過呼吸のような妙な息が漏れた。
人前で排便を晒したのは初めてだ。アルマの時も、それが嫌で耐え続けたのに。
女王としての尊厳?プライド?
そんなもの、自分が持つ資格があるのか。
素人同然の女子高生の靴底で尻穴に棒を蹴り込まれ、下痢便を漏らす女が。
これほどに臭く、惨めな女に、女王が名乗れるのか……?
「……あっ、ねぇクミ、クミ!!」
脚を踏みつけていた女が、悠里の顔を覗きこんでクミを呼ぶ。
鼻を摘みながら談笑していたクミは、悠里の方を振り返って眼を丸くする。
「ん、あれぇえ?ははっ、悠里ちゃあん」
そして今度は意地悪そうに眼を細め、悠里の傍に屈み込んだ。
顔には満面の笑みを湛えている。

「 泣いちゃったんだ? 」

クミの視線の先で、悠里は目から大粒の雫を流してしゃくりあげていた。
工場に来た時の女王然とした様子からはかけ離れた泣き顔。
垂れ下がった瞳は、クミの視線を避けるように俯く。

これが悠里の転機だった。





それからも、悠里への調教は昼夜を問わず続いた。
ただ一日の休息さえ与えられず、気高い精神は同性の手で磨り減らされていく。
責めが終わって眠りに落ちるまでの間さえ、安息の時ではなかった。
ただ疼き続ける秘部を持て余し、次の調教を待ち侘びるように心を導くだけだ。


「あら、またお粗相?流石の貴女も膀胱ばかりは、普通の方とお変わりないのね」
紗江がにこやかに悠里の腿を撫でる。
悠里は右腕と右脚、左腕と左脚をそれぞれ結び合わせた格好で股を広げていた。
腰には赤い褌を巻いていた跡が見えるが、それは緩み、恥じらいの部分を人目に晒してしまっている。
その部分は濡れ光り、桃色の粘膜を覗かせていた。
そして驚いた事には、小陰唇の上、尿道の部分が細く口を開いている。
綿棒と同じ大きさに開いたまま閉じない所を見ると、かなりの時間調教され続けているようだ。

失禁し、たまらず腰を退く、という動きが繰り返されているのだろうか。
悠里の足元には透明な失禁の跡があり、その跡は蛇行しながら部屋の中央へ続く。
当然、室内には強いアンモニアの匂いが立ち込めていた。
悠里はその臭いがするたびに柳眉をひそめて恥じ入っている。

紗江は尿道に再び綿棒を近づけた。球状の先が尿道口をつつき、中へ潜り込む。
「ん、あああああ゛あ゛!!」
悠里が目を見開いて絶叫する。
「痛い、悠里さん?違いますよね。ここも、こんなにされて」
紗江は尿道に綿棒を刺し入れながら、悠里の陰核を撫でた。
充血して小豆のように膨らんだ陰核は、その動きで包皮から顔を覗かせる。
「あ、はあ……っ」
悠里の瞳が快感に染まった。
裸のまま脚を開き、きちんと衣服を纏った小娘に尿道を責められる。
その屈辱的な状況に、悠里は肩で息をしながら耐えていた。

「じっくり、じっくり、この孔を気持ちよくして差し上げます。
 花園は楓さんに、お尻の穴はクミ達に可愛がられてるみたいだから、羨ましくて。
 この孔だけは私のもの。ふふ、期待してらっしゃるみたいですね」
紗江は悠里の瞳を覗き込みながら囁いた。
悠里は疲れきったような瞳でそれを受け止める。
「ああ、あああ、あ……!」
うわ言のように呟き、尿道の開発を受ける悠里。
やがてその薄い唇が開き、これ以上なく気持ち良さそうに涎が垂れた。



2.

「躾けられたもんやなぁ」
楓は布団に横になった悠里を見下ろして言った。
悠里は入浴を終えたばかりで身体を桜色に上気させている。
だが顔色はひどく悪かった。満足に寝ていないため、虚ろな目をしている。
「ここも、ようほぐれて」
楓は悠里の後孔に指を差し込んだ。
そこは指三本が楽に入るほどにふやけ、息めば奥から腸液が溢れ出る。
寝る間もなく拡げられ、嬲られた。
ペニスバンドで貫かれて深い絶頂を迎えたとき、尻穴も立派な性器だと教えられた。
尿道口もすっかり開発されている。
やや覚悟は要るが、少女の小指を飲み込める程だ。
抜き差しされるとたちまち陰核が勃ち上がり、愛液が溢れて、やがて潮を噴きこぼす。

だがもっとも深刻に作り変えられたのは膣だ。
マグマのように滾る空洞。
繰り返し例の膏を塗りこまれ、女の悦びを叩き込まれた。
もうその火照りが骨の髄まで染み渡ってしまっている。

楓はその全てを知っているらしかった。
肩、脇腹、腰。整体でもするように悠里の身体中を撫で、最後に秘部に触れる。
「声ぇ、出してもええんよ」
くちゅりと指を差し込み、蠢かす。

  (――くそぅ、上手い…!…頭が、あ、とろけちゃう…。 )

悠里の顔は快感に歪んだ。
「あんたはメスとしては可愛い女や。それでええ。それが皆にとっての幸せや」
楓が膝立ちになり、何かを股座に着けていた。
それは本物の男根と見紛うほどリアルなペニスバンド。
いや、刺激に飢えた今の悠里にはそれも本物と変わりない。
ぐちぃっ。
股を開いて楓が押し入ってくる。
悠里は恐怖した。蕩けきった秘裂への浸入はあまりに心地よかった。
無意識に予見したのだ。心の奥底まで犯され、支配される事を。


楓は悠里の疲れた身体を恋人のように抱いた。
悠里はそれに抵抗できなかった。
心地が良いだけではない。心が、抗おうとしない。
正常位でしばらく腰を打ち付けあったあと、楓は悠里の伸びやかな脚を肩に乗せた。
楓の掌が足首をしっかりと掴んでいる。

  (――折られる!! )

悠里は身体を硬直させるが、楓はそのまま悠里の脚をまとめ、横に倒した。
そしてより深く入り込んでくる。
思い過ごしだ。楓の一挙手一投足に臆するあまりの。

  (――怖がる…?この、私が…?そんな、馬鹿な。)

腰を捻っての性交に喘ぎながら、悠里は浮かんだ考えを否定する。
だが、ならばなぜ、自分の身体は抵抗する事ができないのか。
答えは明らかだ。
彼女の心がもう、楓という壁に立ち向かう気力をなくしているからに他ならない。

「あ、あ、あ、ああ、あっ…あ!」
悠里は、いつしか自分が唄うような喘ぎを発している事に気がついた。
ぐちゅっぐちゅっと楓が突きこむたび、背筋を凄まじい電流が走る。
踊らされていた。
「ふ、ああ、ふああ、んは…うっ!!」
快感に足が宙を蹴る。
もっとしっかりしたものが欲しくて、楓の腰へと脚を巻きつけてしまう。
楓がふっと笑った。
膣の奥までを強く貫いたあと、楓は快感に打ち震える悠里の腰を掴み、自らは動きを止めた。
「あぇ……?」
悠里はいきなり快感の満ち干きが途絶えて狼狽する。
そして数秒後、はっと気がついた。

「……いかせて欲しいん?」
楓が訊く。悠里は答えない。
「…いかせて、ほしいんやろ?」
ぐぐっと楓が腰を押し付けた。悠里の腰が震える。
楓の瞳が悠里を映しこみ、悠里は凍ったようにそれに捉えられていた。
そして、楓の手が悠里を撫で下ろす。首元から、胸へ。胸から、下腹部へ。
肋骨に楓の指が触れる。
敗北の時が思い出され、悠里の身体を戦慄が突き抜けた。

それは、圧倒的な力の恐怖。
かつてカーペントレスと呼ばれた女性が、数多の相手に刻み込んできたもの。
それが自分に降り注いでいる。
「ううっ!」
頭が焼けつくように感じた瞬間、彼女の腰を痺れが巡った。
犯されて極まっている。身体が楓に服従している。
調教をされる前はいつか倒し返すと奮起していたのに、今は敵う気がしない。
もう正面から向かっていく事さえ出来そうにない。
包まれている現状に安心してしまっている。

  (……こ、こんな。こんな、ことって…… !!)

楓が数度腰を使った。
暖かい肉の感触が太股を撫で、身体の底が貫かれる。
脳が快感に蕩ける。


「 ……………お、おねがい、です……。
  ………い、いかせてくだ……さい……… 」


悠里は涙ながらに懇願した。 もう、そうするしかなかった。
「それでええ」
楓は満足そうに笑みを浮かべ、華奢な身体を抱え上げる。
はっ、はぁっ。
吐息が部屋に木霊する。
小さな影が大きな影に喰われている。
悠里の脚は、楓に絡みつき、緩まって、

「んんっ…!!」

やがて、力なく投げ出された。






この日を境に、悠里は一切の抵抗をやめ、楓の元で茶や華の稽古に励むようになる。
ただ一人の女として、楓に抱きしめられて日々を過ごす悠里。
日の差す廊下を歩むその顔に、かつての女王の面影は、なかった。

The edge ep.9-4

1.

囚われの悠里に寝室として宛がわれたのは、座敷牢のような一室だった。
後ろ手には革手錠が掛けられている。
その状況下で、悠里は時間の許す限りストレッチを繰り返した。

「ふっ……ん……!」
180度以上に脚を開き、乳房が床につくまで前屈する。
傍から見ると背骨が折れているのでは、と思うような柔軟だ。
驚くばかりのしなやかさだが、しかし悠里は、自らの身体が鈍っている事に焦りを感じていた。
それは磨き上げられた刀の如く。
一日手入れを怠れば所有者に、
二日手入れを怠れば近しい者に、
そして三日も手入れをしなければ初見の者にさえその翳りが見破られる。
それが研ぎ澄ましたアスリートの身体というものだ。

悠里は身体を鍛えられない現状にストレスを感じていた。
出来る事なら、なまった身体に喝を入れるべく、今すぐフルマラソンに挑みたい。
何千回と巻き藁を突き、サンドバックを蹴り、スクワットで脚を音が立つほどに硬く鍛え直したい。
楓に手も足も出なかった屈辱が、処女を失った時のように心にドロドロと纏いついている。
シャワーをいくら浴びても消すことはできない。
消す方法は楓に勝つ事しかないが、気力も体力も鈍っていく現状、差は広がるばかりだ。
不自由な状況下、悠里はせめてものストレッチを繰り返す。
全身に水を浴びたような汗を掻いて。
その汗の量だけが、かろうじて悠里の心を正常に保たせてくれる。

研ぎ澄まされた神経の片隅に、ふと足音が聞こえた。
その瞬間悠里は焦りの表情を消し、能面のような平然とした顔を取り繕う。
「……まだまだ元気だねぇ、悠里ちゃん」
クミが数人の門下生を引き連れて姿を現した。
なお涼しげな顔でいる悠里を面白そうに眺めている。
「族のヘッド〆た時でも、そろそろ乙女顔になってたんだけどなぁ。
 ま、そうこなくちゃ総合の女王さまとしちゃ面白くないよな」
クミはそう言って座敷牢の鍵を開けた。

これからまた、一日かけて『族抜けの儀式』を施されるのだ。
そう知っている悠里は、緊張に身を強張らせながら、しかし凛然とした態度を押し通す。
脅えて笑われるような真似だけはしたくなかった。





「げほっ!!げぇほっ、おえっ……っ!!!」
悠里が苦しげに何度も咳き込む。前髪から水滴が滴り落ちる。
悠里はレディースに髪を掴まれて池に顔を沈められていた。いわゆる水責めだ。
後ろ手に手錠を掛けられたままなので、いかに悠里といえど抗う術はない。
「沈めて」
悠里の顔を覗きこみながら、クミが命じる。
それに合わせて髪を掴むレディースが悠里の頭を池の中に沈めた。
近づき始めていた池の鯉がまた驚いて逃げていく。
悠里は、初めのうちは微動だにしない。
だがやがて耳の辺りに細かな水泡が浮き始め、身体が細かに痙攣し始める。
それを見てクミが手を上げた。
「げほっ、げほ……!!」
悠里の顔が再び水から引き上げられ、同時に激しく咳き込みはじめる。

よく見れば、その口には猿轡のように布が押し込まれていた。
端が細かに切り分けられた布は、水を吸う事で喉の奥に貼りつき始める。
完全に気道を塞ぐほどでは無いが、息苦しさは尋常ではない。
拷問のようによく考えられた苦しめ方だ。
かなり気の強いレディースでも、これを7度8度も繰り返されれば泣いて赦しを請い始める。
死に直結するような苦しみだからだ。
しかし悠里は8度目の今に至ってなお、強い意思を秘めた瞳でクミを睨み返した。

クミも周りの門下生達も、流石のしぶとさに驚きを示す。
しかし状況は何一つ変わらない。
「もう一回だね」
クミは髪を掴む娘に命じながら、水音を立てる悠里の背後に回った。
「悠里ちゃんも頑張るねぇ。散々恥晒して、今さら意地張る意味なんてないのに」
クミの手は悠里の脚の間に潜り込み、茂みの下の秘部へ至る。
「お、いつも以上のすっごい締め付け。息が苦しいからかな。締めるってか、痛いぐらい」
クミが秘部へ指を差し込みながら評価を下す。
2本指を手で握りつぶすような膣圧は、鍛え上げた悠里の足腰を端的に物語っている。
クミはそれを実感しながら嬲る事が好きだった。



幾度も水責めが繰り返され、やがてシャツを着た悠里の腹は醜く膨れ上がる。
かなりの量の水を飲んでしまったらしい。
その状態で後ろから羽交い絞めにされ、悠里の前に門下生達が群がり始める。
道場に着いたばかりでほとんどが制服姿だ。
ブレザーの前を開け、スカート丈を下着が見えそうな超ミニにした少女達。
顔こそ普通そうな者が多いが、雰囲気は皆いじめっ子のそれだった。

門下生の1人が悠里の前に歩み出て、小さな手で悠里の頬を撫でる。
あまり顔を見ない少女だ。
週一で道場へ通っている、といった所か。
「うわ、すっごい。遠目で見たよりかなり美人じゃん、読モとかなれそう。
 でもゴメンねお姉さん、思いっきり腹ブッ叩くよ」
少女は嬉しそうに言った。悠里は腹に揺れる水を感じつつも、怯えを顔には出さない。
「せぇー、のッ!!」
女子高生はまだ素人らしく、身を後ろに泳がせて拳を引き、勢いよく殴りかかった。
姿勢の定まらない殴りは悠里の下腹ではなく、その上の鳩尾に吸い込まれる。
「ぐぅおおおおっ!!!!!」
悠里は一瞬にして目を見開き、頬を膨らませて吐き気を堪える。
「お、やるじゃん。こいつ吐きそうになってるよ」
周りから拍手が起こった。

悠里が何とか吐き気を呑み込んで息を整えていると、次の少女の脚が視界に入る。
小太りの少女だ。
後ろから羽交い絞めにする少女が姿勢を正した。
それによって悠里も腹を前へ突き出す形を取らされる。
「一度は堪えられても、今度はどうかなぁ。私のはけっこ重いよ?」
少女はそう言うと右手を振りながらリズムを取り始め、素早い動きで突きを放った。
素早い、とは言っても悠里には止まって見える速さだが、羽交い絞めにされた今は避けられない。
「んぐ!!」
二発目の拳は、なるほど重く、悠里の水膨れの腹に深々と突き刺さった。
それだけでもかなりの苦しさを感じる悠里だったが、それでは終わらない。
「ッ!!」
悠里が目を瞑った。少女が突き込んだ拳をさらに回転させて押し込んでくる。
「貴重な体験だもん、こうしなきゃ勿体無いよね」
少女が悠里の耳元で叫び、ようやく拳を抜く。
「ううっ!!うう、ええっ!!!」
悠里は身体を前後に揺すりながら苦悶した。
素人ながら恐ろしく重いパンチだ。もはや平静を装うどころではない。
嘔吐感が喉元まで上り詰め、下顎が痙攣を始める。

「よーし、じゃあトドメ!!」
さらに一人の少女が走り寄り、苦悶する悠里の腹へタックルを喰らわせた。
「うう、こお…………ッお」
悠里の口が大きく開いた。そして数秒後、げぽっ、という音と共に黄色い吐瀉物が吐き出される。
「おっ、吐いた吐いた!!」
大歓声が上がる中、悠里は水に薄められた胃の内容物を喉元へ溢れさせていく。
ようやくに羽交い絞めが解かれ、力なく膝を突きながら。
「げろぉっ……おお、うえぇええ……」
悠里は吐瀉物の溢れる口を押さえて目を瞑った。
頭の焦がれそうな屈辱と共に、かすかな無力感が頭を掠める。



水膨れの腹を打たれて嘔吐させられた後、悠里は汚れた服を全て脱がされた。
そして畳部屋へ上げられ、少女達に囲まれる。
「さぁ総合の女王様、いい加減戦わないと勘が鈍るよね。
 ハンデばっかりも何だし、たまにはフェアな勝負もさせてあげるよ」
クミがそう言って一人の少女を人垣の中へ送り出す。
やはり中々に意地の悪そうな顔をした女子高生だ。

門下生達が囲んだ擬似リングの中、その少女とサシで勝負しろとクミは言う。
しかし悠里は水責めと吐くまでの腹部への殴りで、もはや足元も定まらない状況だ。
今さらになってフェアな戦いなど、どの口が言うのだ、と悠里は歯軋りする。
対照的に相手の少女は乗り気なものだ。
悠里の虚ろな眼を見て勝利を確信し、軽快な足運びで距離を詰める。
足裏を畳から離さない、滑るような移動。
それなりに古武術を身に着けてもいるようだ。
「せゃっ!!!」
少女が動いた。
畳の滑りを利用し、ありえない距離から蹴りを繰り出す。
その遠い蹴りは、まだ防御の形を作り終えていなかった悠里の腕を弾き飛ばし、
しくしくと痛む腹を痛烈に穿つ。
「ぐ!!」
悠里が歯を食いしばって前のめりになった。
そこへ少女が駆け寄り、後頭部に肘を、ほぼ同時に顔面へ膝を突き上げて悠里の頭を挟み込む。
少女のミニスカートが捲れ上がり、青いショーツが露わになった。
「あう、う…………!」
頭への前後同時の攻撃。逃げ場をなくした衝撃が悠里の脳を跳ね回る。
朦朧とした意識にますます濃い霧がかかる。
その状態で再度腹部へ荒々しい蹴りを入れられると、もうそれは人間の耐え切れるダメージではない。
悠里は前のめりのまま、膝もつかずに倒れこむ。
試合なら即座にストップがかかる危険な倒れ方だ。
悠里の美しい裸体は畳に倒れ伏したまま、ぴくりとも動かなくなる。
「ひゅう、先輩やるーぅ!」
「あーあ、こんなフェアなタイマンで負けんのかよ。もう駄目だなこいつ」
制服姿の少女には賛辞が、その足元で倒れ伏す悠里には罵倒が浴びせられる。
しかし悠里には、もうそれに憤るだけの意識さえ残されてはいなかった。





またある時には、悠里は道場に併設されたトレーニングルームで裸のままランニングマシンに乗せられた。
手を機械に結び付けられ、第三者がスイッチを切らない限り延々と走らされるものだ。
走るトレーニング自体は悠里の望む所ではある。
しかしこの仕置きは、僅かな休息や水分補給もないまま、何十キロという道のりを全速力で駆ける無茶苦茶なものだ。
しかも、汗まみれの肌や、限界を迎えて引き攣る全身の筋肉を好奇の目に晒しながら。
「ぜはっ、ぜぇはっ、ひは、ああ……っ!!!」
悠里は試合では30分以上動き回る事もザラだ。
とはいえ、そのスタミナも無限ではない。
「ハッ、ゼッ、ゼェ゛っ……!!!」
走り続ければやがて息は上がり、呼吸困難により嘔吐し、失禁し、泡を噴いて昏倒する。
門下生達はそれら悠里の反応を笑いながら、それでも機械に走らされ続ける姿に歓声を上げる。
ようやく機械が止められた時、悠里は溺れたように汗塗れて痙攣を繰り返した。

そうして疲れ果てた悠里に、少し休んだだけで勝負が挑まれる。
相手は今までともまた別の女子高生だ。
どうやら道場の全員が順番に悠里を叩きのめすつもりらしい。
悠里は疲労のあまり目も見えないような状態だったが、それでも少女の挑戦に応じて立ち上がる。
そして良いように打撃を打ち込まれ、倒れた所へ上から圧し掛かられた。
スカートから覗く女子高生のむちりとした腿が、悠里の首を絞め付ける。
「う゛ぐっ!!!」
悠里は堪らずに少女の腿へ手を掛ける。だが疲労が大きすぎて力が入らない。
「やぁだ、この女王さま、痴漢してくるよぉ」
女子高生は可笑しそうに腿を掴む悠里の手を払いのけ、太腿での首絞めを強める。
「ねぇどう、現役女子高生の幸せ絞めは?オヤジならそろそろ射精してる頃だよ」
女子高生は笑いながら悠里の顔に唾を垂らす。
しかし悠里は憤るどころではなく、目を見開いて苦悶している。

少女が圧し掛かって首を絞める傍らで、別の少女達は一糸纏わぬ下半身に群がっていた。
「ねぇねぇ、今日コレ買って来たんだけど、試してみない?」
「おお、膣圧計じゃん!面白そうだな」
一人の少女が、取り出した道具へコンドームを被せ、悠里の恥じらいの中へ挿し入れる。
悠里の腰が跳ねた。
「おおすげぇ、80ちょいか。平均の倍はあるよな」
「あ、待って、すごっ……。首絞められた瞬間は100くらい行ってるよ?」
「おいおい、それ男のアレがへし折れるんじゃねーの?怖ぇ女」
そう口々に言いながら、限界を迎える悠里にさらなる恥辱を与えていく。



このような悠里への暴虐は連日続いた。
修練の前、制服姿の門下生達が集まってしばらくが悠里への『仕置き』の時間だ。
気の強いレディースを心から服従させる為の儀式の数々。
それは一つの例外もなく痛烈で、悠里はどれほど平静でいようとしても、
最後には泣きを入れてしまう。
そういう人間としての根幹を抉る責めを、レディース達は熟知しているのだ。

拷問に等しい責めで恥辱を味わった後は、必ず門下生との戦いが組まれた。
前後不覚の中で、複数対一で、衣服の端を掴まれた状態で。
それはあまりに公平さを欠いた戦いであり、負けても敗北と思う必要さえないものだ。
しかし悠里のような格闘家にとっては負けは負け。
さらに、例え世界中の人間が悠里の負けではないと認めたとしても、
悠里自身がその屈辱を胸に刻みつけてしまっている。
門下生達はただ強い悠里を負かす事が楽しい、というだけだろうが、
敗北を重ねさせるというその行為は、誇り高い王者の心を着実に疲弊させていった。



2.

門下生達に終わりの無い敗北を与えられる裏で、もう一つ悠里を追い詰める物がある。
紗江と楓による色責めだ。

「だいぶ辛そうやねぇ、悠里」
楓は湯飲みを傾けながら悠里を見やった。
夜の帳が下りた和室の中、行灯に照らされた2つの影が揺れる。

悠里は胡坐をかく格好のまま、床に顎をつけるようにして縛られていた。
高く掲げた尻に三つの灸が据えられているのが見える。
彼女の臀部にはちくりと刺すような熱さがもたらされている事だろう。
胡坐をかいた足裏は指同士を擦りつけるようにぴっちりと結び合わされ、
後ろに縛られた手もまた合掌の形で結び合わされ。
口には細い棒状の口枷を深く奥歯にまで咥えさせられていた。
口枷は紐で頭後ろに固定され、さらに手首にまで結わえられて悠里に俯くことをさせない。
畳につく悠里の顎下には負担を緩和する為の座布団が敷かれており、責めが長時間に渡る事を物語る。

普通の女性ならば数分で音を上げるような姿勢ながら、
バレエダンサーに匹敵する柔軟性をもつ悠里にはさしたる負担でもないだろう。
しかし悠里の顔からは、彼女がかなり参っている事が窺い知れた。
額が汗で濡れ光る。
猫科の獣を思わせる瞳は充血して涙を湛え、
唇からは溜まった唾液が零れ出し、口枷を伝って座布団に泡立つ染みを成す。
容のいい鼻からは荒い息が吐かれた。

何が彼女を追い詰めるのか。
その疑問の答えは、彼女の後ろへ回った時に明らかになる。
胡坐をかいた悠里の秘部に、何か膏状のものを塗り込めた痕があった。
そしてその痕を覆うように、開いた秘唇からしとどな蜜が溢れ出ている。
秘唇は充血して厚みを増し、まるで本物の唇のようだ。
明らかに異常な状態だった。


「うう、うう……う」
悠里はうつ伏せのまま、奥歯に噛み締めた猿轡から呻きを漏らす。
秘所が火照って仕方がない。
一体何が含まれている膏なのか、秘肉を溶かすように潤ませて露を搾り出していく。
恥毛の茂みは水気を含んで垂れ下がり、畳に音を立てて滴を垂らす。
内腿がぬるぬるとした液に塗れていく。
膣奥が疼く。炙るような熱さは、尻の上に据えられた灸とよく似ていた。
「ふーっ……ふーっ……」
顎を座布団に沈めたまま、悠里は目の前の楓を睨み上げる。
楓は優雅に茶を啜っていた。
鼻から荒い息を漏らし、座布団を涎で濡らす惨めな悠里とは対照的だ。

「そろそろ、堪らんのやろ?」
楓が立ち上がり、扇子を手に悠里の背後に回った。
「ひどい有り様や」
悠里の秘部を見下ろして楓が告げる。
「んん……」
恥辱のあまりか、悠里の身体がぐらりと揺れた。
その瞬間、楓の持つ扇子が悠里の腿をぴしゃりと叩く。
「ッぐ!」
悠里はつらそうに眼を閉じ、姿勢を元に戻した。
もうずっとその調子だ。
楓は涼しげな顔で悠里を見張り、悠里が姿勢を崩そうとするとその背や腿を扇子で叩く。
そして冷酷なまでに静かに、悠里の秘所を眺め続けるのだ。
この単調な焦らしは、しかし誇り高い悠里の心を根元から炙り焦がした。

合掌したまま胡坐をかき、前のめり。この状態からどうやっても逃れられない。
灸は尻肉を刺すように炙り、秘所の膏が性感を研ぎ澄ます。
畳には一定の感覚で愛液が滴り落ちていく。
みずからの女の匂いが吸気と共に肺の奥へ流れ込んでくる。
それを何十分、あるいは何時間と味わい続けながら、やがて悠里の意識は薄らいでいった。
「どうや、悠里。なんぼ鍛えたかて所詮は女、っちゅう事を思い知るやろう」
楓の言う通りだ。
疼いて、疼いて仕方が無い。
秘裂の中を滅茶苦茶に掻き回してほしい。乳首を捻り潰してもいい。
陰核を撫でさするだけでも楽になれる。
そうした浅ましい女の欲求が何度も限界を迎えた末に、悠里は別の部屋に移される。
紗江の待つ部屋へ。



「くっ……くう、ううん!ん……、ッ……あ、あああああっっ!!!」
夜の室内に叫び声が響き渡る。悠里の声だ。
かなり長いこと必死に声を抑えていたが、とうとう堪えきれなくなったらしい。
彼女は縄を打たれたまま布団の上に転がされ、紗江に抱き枕のように絡みつかれていた。
紗江の白い指はあるいは乳房を摘み、あるいは秘所に潜り込む。
「悠里さん、火照ってたまらなかったのね。指にこんなに纏わりついて……。
 お分かりになります?愛液が白いでしょう、本気の証拠なんです、これ。
 ほら、ココをこんなにして差し上げます。良いでしょう?」
紗江は悠里の耳元で囁き、様々に指を遣う。
悠里はその度に叫びながら身を捩らせた。
紗江のレズビアンテクニックは、恐ろしいほど洗練されていた。

「うんんっ!!!」
紗江の指が秘肉を割り開いた瞬間、悠里の秘所から飛沫が上がる。
それは一度短く飛沫いたあと、紗江が陰唇を数度押し込むのに合わせて
ぴゅ、ぴゅっとさらに噴き出した。
「あら、もう潮噴き。こんな指での慣らし程度でお出しになるなんて。
 本当に出来上がってるらっしゃるのね」
紗江は嬉しそうに言い、さらに肌をすり合わせるように密着して悠里の深くに指を差し入れる。
潮噴きを経験したばかりの悠里は、目を細めてそれを嫌った。
「やめてっ!……あ、あなたの指、何かおかしいわ!!」
悠里は膝をすり合わせて拒否する。
しかし紗江の指が巧みに秘所を弄くると、その閉じた膝が簡単に開かされた。
こと性戯に関しては、この歳若い紗江の方が数段上らしい。
抵抗できない。関節技を取られたようなストレスが悠里を襲う。

「いや、あああっ!!!!!」
喘ぎながら悠里の目は寝室を彷徨い、壁際に置かれた姿見へ吸い寄せられた。
そこには縛られたまま、黒髪の少女に成す術もない自分が映っている。
無様な姿……悠里はそう感じた。
その瞬間視界が涙に塗れ、強張っていた太腿の力が抜けた。
同時に紗江の指がいよいよ身体の奥へ入り込み、膨大な快楽を悠里の脳に送り込む。

 (ああ……私、またイくのね……)

悠里は白んだ頭のまま、何度も潮を噴き零すカラダを淡々と見下していた。

The edge 簡易(?)キャラ設定

<悠里>
・滅多に書かれないが、本名は奈波悠里。
 とはいえその名前も、スナッフビデオを撮る目的で開かれていた裏のリングで他人から奪い取った末、
 養親に便宜的に付けられた物であるので、悠里は自分の名前に愛着がない。
 代わりに自分自身で勝ち取った王座への執着は誰よりも強い。
 リングに上がると攻撃的になるのも、獣が自分のテリトリーを守るために吠えるのと同じ原理。
 (1話でリングで戦っているにも関わらず茜に優しかったのは、
  茜に王座を奪い取ろうといった意思が全くなかったから。)
 ただしリングで戦い続けるうち、段々とリングの凶暴な人格が本来の心優しい人格を 
 侵食しはじめている模様(これが第一章時点)。
・中学時代までは欧米や中東を初めとして世界中で武者修行の旅をしていた。
 そのため今でも日本文化にはやや疎いところがある。
 作中に描写はしていないが、喋りにたまに英語が混じったりもする。
・ファイターとしての強みは一撃必殺の蹴り……と思われがちだが、
 実は最大の長所は化け物じみた天性のスタミナ。
・スピード・パワー・テクニック・リーチ・スタミナの全てが抜群に優れている。
 ただ、寝技に極端に弱い事、メンタル面の不安定さから苦境に立つ事もしばしば。
 しかしそれら全てひっくるめて圧倒的な人気を得ている。
 野次が飛びやすいのも愛されている証拠。

<神崎茜>
・ファイターとしての能力は至って平凡、ただ一つの武器はド根性。
 戦闘スタイルはよく「必死」と揶揄されるが、その必死さに打ち倒されたトップファイターは数多い。
・極度に臆病であり、相手が行動した瞬間にその攻撃による最悪のビジョンが頭に浮かぶ。
 しかしその臆病さが、彼女に堅実な戦いを可能とさせている。
・とにかく弱そうに見え、空手で全国有数の実力を身につけた今でも、当たり前のように不良に絡まれる。
・どんな対戦相手にも嫌われる事がない不思議な魅力を持つ。

<ヴェラ・ウェーステラン>
・現役時代は猛牛の突進に例えられる踏み込みの速さと豪打で無敗を誇った。
 しかし当時王座に君臨していた怪物王者に勝てる気がせず、暴行事件を起こして無敗無冠のまま引退。
・ヴェラはこの事を深く後悔しており、以来酒浸りの生活を繰り返す。
 しかし親友であったヒールレスラーを再起不能に追い込んだアルマが日本に居ると知り、来日。
・20年近く自堕落な生活を続けた今でこそ悠里に全く敵わないが、
 全盛期にやっていれば手も足も出なかったのは悠里の方かもしれない。

<早紀>
・大堀西高等学校、通称“西高”の不良を寄せ集めたレディース集団の頭。
 悠里が住む『奈波フロンティアビル』付近の公園を根城とする。
 縄張りの近いクミの一団とは、以前から敵対関係にある。
・かつてタイマンでの喧嘩無敗を誇ったが、悠里とは対峙した時点で心を折られた。
・共に悠里を追いかける者ゆえか、茜とは息が合う。
・身体を鍛えると決めて以来禁煙しているが、口寂しいので常に点火前の煙草を咥えている。

<高峰青葉>
・生まれて以来ずっと、世界は自分の為に回っていると思って生きてきた。
・通称『お嬢系柔道家』。
・寝技のセンスは天才的であり、作中最高クラス。
 悠里の攻略法を考えて練習を繰り返すなど、努力家でもある。
・悠里に初黒星を付けられ、現実を知る。
 しばし自暴自棄になっていたが、やがて打倒悠里を目指して
 再びアンダーグラウンドな戦いに明け暮れ始めた。
 しかし初の敗戦以来イマイチ調子が出ず、意外にも負け越しているとか。

<李香蘭>
・元は上海で両班の暗殺依頼を請け負う女だった。
 日本の要人を暗殺するべく潜り込んだが、路地裏で当時女子高生だった悠里と戦い、
 その奔放な戦いぶりに感銘を受けて暗殺業を控えるようになる。
・龍を模した形意拳を好むが、本来は鍼系の暗器と毒が専門。
 豊富な攻撃手段を持ち、テクニックは作中最高クラス。

<アルマ>
・山岳民族リス族の六女。幼少時からムエタイで鍛えた近隣の男児よりよほど強かった。
 紐で身体を結び合わせたまま戦う「ミール」が得意。
・とにかく相手を嬲る事を好む。
 プロレスも好きだが、それはヒール(悪役)の存在が気に入ったから。
・過去にヴェラの親友であるヒールレスラーを再起不能にした事がある。
・日本に来たのは、「チビの癖に欧米人ぶった日本人」を嬲り者にするため。
・作中では意外に珍しい、根っからの悪女。

<高峰莉緒>
・高峰青葉の妹。
・元々は怪力ながらも気弱で淑やかな令嬢であり、快活な姉に憧れていた。
・その姉が自我を崩壊させる所を目にした事で、抑えていた何かが吹っ切れる。
・良くも悪くも無邪気。大切に育てられすぎたため、虫を殺すように躊躇いなく人を傷つける。
・力のリミッターがないので攻撃力は作中トップクラス。
 またほとんど痛みを感じないので異常に打たれ強い。
 欠点はスタミナがない所。短期決戦で決められないとジリ貧になりやすい。

<岸辺楓>
・戦前から続く古武術の師範。古い考えの持ち主で、見世物である総合格闘技を嫌悪している。
・しかし自身も若い頃はかなり無茶をやった。
・表立っては言えない仕事を請け負う事もあり、過去に香蘭と文字通りの「死闘」を繰り広げている。
・豊富な戦闘経験から、相手の攻撃を「見切る」技術に長ける。

<クミ>
・楓の門下生。道場の学生部最古参の一人。
 レディース集団では折檻役を担い、人間が嫌がる攻撃を知るために古武道を研究している。
 しかし一方的に嬲る事ばかりしているため、対等な戦いでは滅法弱い。

<岸辺紗江>
・楓の娘。幼少時は泣き声が余りに煩かったため、楓が稽古をつけている昼間は道場から少し離れた屋敷に預けられていた。
 だが寂しさのあまり母を追って道場に忍び込む事が多く、そのたび門下生達に可愛がられた。
 それがいつの間に真性レズビアンになったのかは定かではない。
・新しく楓の道場に来た少女には、よほどの荒くれでない限り、屋敷へ連れ込んで悪戯をする。
 そのせいで気弱な者は即座にやめてしまい、道場は気の強いレディース御用達となっている。

<沙里奈>
・アメリカで人気を博すカリスマダンサー。ダンスを応用したカポエイラを使いこなす。
・アメリカにいた頃はストリートを薄着で歩き、襲い掛かってきた男を憂さ晴らしに叩きのめしていた。
・初対面では無愛想だが、一度自らが認めた相手には信頼を置くタイプ。
・クールな見た目や足技使いである事、華のある戦いぶりなど、悠里との類似点が多い。

<鳳麻耶>
・悠里の前にアリーナの女帝であった女。マーシャルアーツを使う。
・シャープな輪郭に八重歯の覗く口元は狼を思わせ、かつては“女狼”と恐れられた。
・全てにおいて高いレベルで纏まっており、決め時を見極めて仕掛ける思い切りの良さもある。
 反面、決め手に欠け、突出したものを持つ相手にはその長所で押し切られる場合もある。
・今でも悠里に挑んでは負け続けている。登場以前の戦績は41戦39敗2分。
・悠里の事を生意気だと嫌う反面、かつて女王であった為に、その気苦労は誰よりも理解している。

The edge ep.9-3

1.

悠里は板張りの部屋で、膝立ちの格好を取らされていた。
麗しい身体には何も着せられていない。
ただその桜色の肌や胸の膨らみを、年頃の少女達に晒すままになっていた。
両腕は後ろで結ばれ、脚もまた足首を重ねるようにして縛られている。
そして首には麻縄が掛けられていた。
縄尻は左右に伸び、それぞれ少女の手に。

「怖いでしょ、悠里ちゃん。族抜けの罰の一つ、『首狩り』は」
片方の縄を持つ少女・クミが笑った。悠里は正面を見据えたまま美貌を崩さない。
それを見て、クミは逆側の少女に目配せする。
その少女は嬉々として縄を引き絞り、同時にクミも縄を引く。
悠里の桜色の首に縄が食い込んだ。
「…………っ!!」
悠里が目を見開く。
声こそ上げないが、手足の指の動きからかなりの苦悶が見て取れる。

「とっても苦しいよねぇ悠里ちゃん。息ができなくて死んじゃいそう?
 心配しなくてもいいよ。この縄には細かい切れ目が入っててね、
 思いっきり引き続けてると窒息死する寸前に千切れるようになってんの。
 だから死ぬことはないんだけど、ただし」
クミがそう語りながら、再度逆側の少女に合図を送る。
縄の引きが弱まり、悠里の首に食い込む縄が緩まった。
「くは!!」
悠里が堪らず息を求める。
「ただし、こうやって緩めながらだとなかなか千切れないの。
 族抜けの中でも罪が重い場合は、こうやって生かさず殺さず嬲られるんだ。
 もっちろん悠里ちゃんには、その一番キッツい方を味わってもらうよ?
 なんせ鍛えてるプロ格闘家様なんだからさ」
クミがそう言いながら合図をはじめ、再び強烈に縄が締まる。
「あ゛!」
不意を打たれたのか、悠里の喉奥から苦悶の叫びが起きた。
力を入れ損ねた首を麻縄が容赦なく握り潰す。
「げぇ、ええ゛……ぇお」
悠里の口から濁った悲鳴が漏れ始めた。
手の指は堪らなさそうに空を掻き毟り、形のいい腿が筋張る。

「あはは、凄い苦しみようじゃねぇか!チョークが完全に入ったようなもんだしなぁ」
「そうだね、でも格闘女王様がそのままやられっぱなしだなんて有り得ないよ。
 鍛えてらっしゃるんだもん、あんな手足の縄ぐらい引き千切れるでしょ」
「おいおい、そんな虐めてやるな。どんだけ鍛えたって女にそれは無理だって。
 いくら女帝だの何だの言われても、ああなっちゃどうしようもないさ」

蔑みと哀れみの言葉が交わされる中、クミ達がようやく縄を緩めた。

「……がアっ!!あ゛っ、ヶほ!!げほ、っがは、ええ゛ほっっ!!!!」

悠里は前屈みになって激しく咳き込む。
本気で気道が絞まっていたのだろう、顔は真っ赤になり、額を汗が流れる。

「あれマジで苦しんでるよねぇ、あーあー情けな!殺すのを許して貰った感じじゃん」
「師範が訓辞で言ってた、生殺与奪の権を握られてる、ってヤツだよね」
「そうそう。“これぐらい”自力で何とかしてくれないとさぁ、萎えるよねえ」

間違いなく悠里以上に無力であろう少女達は、口々に悠里を嘲笑った。
それに悠里が睨みをくれようとした瞬間、また首が絞まって地獄の苦悶が始まる。



何度、窒息と解放を繰り返されただろう。
悠里の首には深い縄の痕が刻まれ、その顔は疲れ果てていた。
さながら水責めを繰り返された女囚のようだ。
もっともその凛とした瞳からは、町娘というよりもくノ一に近い印象を受けるが。

その美貌を乱した悠里の前に、ある一人の少女が屈み込んだ。
育ちのいい雰囲気を持つ娘だ。
黒の長髪。いかにも真面目そうで、クラスでは委員長など任されるタイプだろう。
「お綺麗な顔ですね」
少女は訝しむ悠里の頬に手を触れ、そっと口づけを迫った。
「んん!?」
悠里が驚きの表情を浮かべる。
少女は悠里の唇を丹念に嘗め回した後、舌を絡み合わせて本格的にキスを始める。
同時に空いた手で悠里の胸の尖りを摘み、こりこりと揉み潰し始めた。
「…………っ!!」
無理矢理キスを迫られながら乳首を弄ばれる。悠里には相当な屈辱だろう。

悠里の目に冷静さが戻り始めたそのとき、クミ達が再び縄を引き絞った。
「ああ゛!!」
悠里の口から押し潰した悲鳴があがる。
キスを迫る少女はその状態の悠里になお、口づけを求めた。
その瞳は蕩けたようになり、またスカートの下から腿部分に透明な液も見える。
興奮しきっているのは誰の目にも明らかだ。

「アイツなかなかの鬼畜だねぇ、あれじゃ鼻でしか息ができないじゃんか。
 何か本気で熱を上げてるっぽいし、レズなの?」
「あれ、アンタ知らないの?ま、男みたいなアンタは狙われないか。
 あいつ紗江ってんだけど、真性のレズだよ。
 道場に新しく来たコを必ず実家の豪邸に連れ込んで、ヤッちゃうんだ。
 まぁ私もしたんだけど、一度抱かれてみなよ。一時間で心底うんざりするから」

観衆の一人が思い出したくないといった風に首を振る。
その視線の先で、紗江は悠里の裸体へ寄りかかるように纏いついていた。


紗江はなおも悠里に口づけを強要し、右手で胸の突起を弄ぶ。
そして空いた左手でも秘部を弄りはじめた。
悠里の腰が反応する。

「ふふ、首が絞まるとこっちも締め付けるんですね。
 我慢なさらないで、とっても気持ちよくいかせてあげますから。
 ほら、ちょっとずつ指が入る……中で曲げたのがわかります?
 ふふっぴくぴくしてる、気持ち良いんですね。
 この膨らみを撫でて……ちょうどこの強さ。たまらないでしょ、たまらないですよね?
 こうしていると、だんだんお蜜が奥から流れ出してくるんですよ。
 ……ほうら、来た。
 このお蜜を指に絡めて、中をもっと愛して差し上げます」

紗江は目を細めて悠里の産道の中を弄繰り回す。
「んあ!んあああ!!!!」
悠里の腰が跳ね、後退する様に内腿をもじつかせる。
「うひ、嫌がってる、嫌がってる!」
「本当、いい反応だね。どんなボディよりきついんじゃない?」
周りの野次も次第に大きくなっていった。
紗江はその状況を嬉しそうに受け止めながら、一層巧みに嬲り始める。

「さあ、もっと凄くしますね。
 先ほどはこの膨らみを撫でるだけでしたけれど、今度は指の腹で押し込んで。
 あはっ、そんなに指を締め付けては痛いですよ。
 でも解ります、締め付けちゃうんですよね。ここをこうされると、嫌でも締め付けちゃう。
 それが女の身体なんです。
 私達じゃ想像もできないくらい鍛えたあなたも、その範疇から抜け出す事はできない。
 それどころか、鍛え上げた事で神経が研ぎ澄まされて、とっても敏感になってる。
 締めつけも強くて、指がひとつにひしゃげそうです。
 っふふ、身体を褒められて嬉しいんですか、またすごく蜜を吐いて。

 何だか私、この短時間であなたの膣のこと、ほとんど解ってしまいました。
 ああ、脅えないで。ただそれだけ的確に、あなたをとろとろにできるってだけなの。
 毎日こうして差し上げても結構ですよ。
 あなたが生まれてから今までに垂らした蜜よりずっと多くの量を、溢れさせてみせます。
 嘘だと思いますか?
 思えないでしょう、だって今もうこんなに、あなた濡れてらっしゃるんですもの。」



紗江の指が沈む悠里の秘唇からは、すでに夥しいほどの愛液が溢れていた。
「ああああ!!ああああああ!!!!」
悠里は叫び、髪を振り乱す。余裕などまるでなかった。
紗江の悪魔的な指使いが秘部を蕩けさせ、首への絞めで脳が警鐘を打ち鳴らす。
極上の快楽と生命の危機という異常性。
その2つの圧倒的質量に脳を板挟みで押し潰され、悠里は少女の導くままに愛液を分泌させられていた。
窒息に次ぐ窒息で、手足には力が入らなくなる。宇宙空間に漂うようだ。
その浮遊感の中で少女の指が性感帯を擦り上げる。
「ふぁあ、あア……あ!!!」
悠里はあさましく股を開きそうになるのを、必死に堪えていた。
何しろ気持ちよくて仕方がない。
脳に酸素が行き渡らずに思考が遮断された世界で、そうしてしまう事は当然だ。
だがその当然を意地で無理矢理に押し留める。
それがまた紗江達を喜ばせるのだが。

「必死に耐えてらっしゃるのね、そういう誇り高い方は大好きです。
 でもほら、もうそろそろ限界みたいですね」
紗江の言うとおり、悠里の腰のねりは次第に激しくなっていた。
「やーだ何あれ、男でも誘ってるの?」
「ほんと、顔もすっかりだらしなくなっちゃって」
野次が飛び交う中、悠里は紗江の指の導きで高まりへと押し上げられていく。

「……ああそうだ、悠里さん。ここでお小水を漏らしてくださいません?
 師範との戦いで粗相をなされたと伺いましたが、わたし目にしておりませんの。
 綺麗なあなたのお小水を見てみたいわ」
紗江はそう言いながら悠里の秘唇の中をこねくり回した。
「ああ!!」
悠里の背が快感にのけぞる。
突き立てられた紗江の指を蜜がつたった。
「悠里さん、わたしが見たいのはお蜜ではなくてお小水ですわ。
 とても気持ちがよろしいんでしょうけれど、もうお蜜は結構です」
紗江が少し気分を害した様子で指の繰りを速める。
そしてその瞬間、クミ達も全力で縄を引き絞った。
最後とばかりに引いて引いて、そしてついに縄が引き千切れる。
「ごぉおおおっ!!」
悠里の顔が天井を仰ぐ。
秘部の何もかも投げ出したくなるような愉悦と、窒息の苦しみ。
それらが一瞬のうちに脳を焼き焦がす。

「あああ゛あ゛っっ!!!!!」

裏返ったような悠里の悲鳴が響き渡った。
苦痛と快楽を十分に孕んだその叫びは、聴いた者の心に深く響く。
そしてその余韻も消えぬうち、ぶしゃあっと飛沫の音がしはじめた。
悠里がついに失禁したのだ。
何も纏わない秘部から、板張りの床にかなりの勢いで透明な尿が噴出していた。
「ああすごい、尿道が開いて噴き出しているのが見えますわ。
 本当に凄い勢い、ウォーターカッターを思い出します。
 足腰の筋肉を鍛えてるからこんな勢いが出せるのかしら。本当に何もかもが違うのね」
紗江は尿飛沫を手の平で受け、恍惚の表情を浮かべる。

失禁を終えた後も、悠里は力なく項垂れたままだった。
周りの少女がその顔を覗き込む。
悠里は薄く開いた瞳の中で白目を剥き、鼻水と涎に塗れた顔を晒していた。
あまりにも明確な失神顔だ。

「すげえ、これちょっと写メ撮っとこ!」
「あ、あたしもー!絶対王者様が失神KOしてるシーンなんて、超貴重だし!!」
「はっは、しかしガチ失神だなこりゃ。こんだけバシャバシャ撮られてて、全然目ェ覚まさねえ」
「ねーエリコ、ちょっと後ろから首に手回してみて。絞め落としましたって感じで。
 こいつに勝ちましたってなったら、西高の連中マジでビビルよ?
 あそこ、こいつに絡んでボコボコにされた奴らばっからしいしさ」
「あ、いいねぇ。どうせなら肩に手のっけて、タップしてましたって風にしようぜ。
 でもアタシは許さず、ついに失神させちゃいました!みたいな」
「アッハハ、最高!!しっかしエリコと並ぶと、こいつってガリだよね。本当に強いの?」
「さーあ?格闘技ってヤオもあるらしいしね、美人が勝つブックがあんのかもよ」

失神する悠里の周りで、門下生達が好き勝手に囃したてる。
悠里はその様な事実を知る術もなく、ただ苦悶に満ちた表情でされるがままになるしかなかった。



2.

「やっとお目覚めかい?悠里ちゃん」
悠里が目を開いた瞬間、クミの声が飛んでくる。
悠里は中庭の松の木から下げた紐で手首を結ばれ、足を肩幅に開く格好を取らされていた。
その足の間には膝下まで焚き木が積まれている。
「……今度は、魔女裁判ごっこでもするつもり?」
悠里は嘲るような視線をクミに投げた。
何度も窒息に追い込まれる恐怖を味わった直後だというのに、まだまだ瞳は気丈だ。

クミはライターを手に、可笑しそうに笑う。
「ははっ、魔女なんてとんでもない。ちゃんと総合格闘技の王者だって解ってるよ。
 ただ、今一度それを確かめたくてね。
 何しろアタシら、アンタが師範にボコられるシーンしか見てないんだ。
 それじゃ本当に強いのか解らない。だからもう一度、タイマンでやり合って貰おうと思ってさ」
クミが言うと、悠里も不敵に笑い返した。
「あら、どうも。私としてもあの無様な一戦だけじゃ寂しいし、願ったり叶ったりよ」
手を縛られている時点でまともな戦いではない、と悠里も解っている。
それでも孤高の王者は、挑まれた戦いは胸を張って受けるしかなかった。

その背景を知った上で、クミが口角を吊り上げる。
「良かった。それじゃ、あたしとやってよ。喧嘩にはちょいと自信あるからさぁ」
クミが腕を捲り上げ、悠里の前に立つ。
「あ、ただしちょっとハンデを着けさせてね。悠里ちゃんプロなんだから。
 まずそうやってバンザイした格好のまま、蹴りだけで戦うこと。そして……」
クミは言いながら、ライターを悠里の足元へ放り投げた。
すなわち、焚き木の中に。
よく乾かした上に油も染みこませてあったのか、焚き木は一瞬にして燃え上がる。
「……っ!?」
悠里は熱風に前髪を煽られながら目を細めた。

「ハンデその2、お股の下が燃えている状態で戦うこと。
 『コンブ踊り』っつってね、これも族抜けの罰の一つなんだ」
クミが説明しながら構えを取る。
そして炎の熱さに辟易する悠里の腹部へ、いきなり強烈なストレートを打ち込んだ。
「お゛うっ!」
悠里はギリギリで腹筋を固めたものの、足場が定まらない状態では持ち堪えられない。
悠里の身体は後ろに流れ、そして戻った瞬間に炎が内腿を撫でる。
「あ、熱いっ!!」
悠里ははっきりと叫んだ。
痛みも苦しみも耐えられる悠里だが、炎の熱さばかりはどうしようもない。
「あーあー、そんなにおっぱい揺らして踊っちゃって。気をつけないとね。
 そんじゃ、正々堂々のタイマン勝負と行こうか」
クミは悠々とステップを刻み始める。
悠里は厄介さに奥歯を噛み締めた。



炎の熱気と煙が悠里の体を取り巻いていた。
熱風で恥毛が煽られる。
炎は悠里の膝までなので、大股を開いてる限り肌が焼けることはない。
逆に言えば、常に大股を開いていなければならない。
手を吊られて脚しか使えない中で、しかも常に大股を開く状況。
それはおよそ戦いなどとは言えないものだった。

「ホラどうした?そんなにお股見せつけてても、男じゃないんだから欲情しないよ」
クミは嘲りながら余裕で近づいてくる。
悠里は熱気で揺れる視界の中、慎重に距離を図り、クミがある地点を越えた刹那に鋭いローキックを放った。
しかし、速さこそあれど大股開きの状態から放つキックに威力などない。
ぺチッ、と普段の彼女の蹴りからは想像もつかない弱弱しい音が響いた。
周囲からどっと笑いが起きる。
「あれ。なぁにこれ、全っ然効かねぇよ?」
クミも余裕綽々で肩を竦めて見せた。
「蹴りってなぁよ、こうするもんだろ、女王さま!」
そう言いながら、これ見よがしに軸足に力を込めて蹴りを放つ。
蹴りはずばぁんっと音がして悠里の脚に炸裂した。
「くっ……!!」
悠里は目を細めた。しかし蹴りのダメージではない。
蹴り自体はほとんど効いていないが、内に流れた腿を炎が舐めたのだ。

一方で、クミの方も飛び上がった。
「い、痛ってぇ!」
クミが足の甲を見ると、そこはたった一発で赤く腫れている。
周囲の笑いが引いた。
あのすらりとした悠里の脚がどれだけ硬いのか。
やはり次元の違う存在だ。
だがそれだけに、こうして嬲れる事が楽しくて仕方ない。
周囲から笑い声は引き、代わりに喉を鳴らす音がしはじめる。



「おぉっらぁ!!」
クミが悠里の腹部にボディブローを打ち込んだ。
「うぐお!!」
煙に巻かれている悠里はその攻撃が見えず、直撃を喰らってしまう。
腰が内股に落ち、しかし炎に炙られてがに股に変わる。
その仕草に爆笑が起きた。
「げほっ、げほっ……えほ、ごほっ!!!」
煙が顔に当たって悠里が酷く咳き込む。
赤く充血した瞳からぼろぼろと涙が零れ出す。
「クミー、アンタちょっと強すぎんじゃないの?王者さんマジ泣きしてるよぉ」
そんな野次が飛んだ。
実際のところ、まともに受けられればアマチュア以下の打撃など効く訳もないのに。
悠里はそう歯を喰いしばる。
だがその顔をさらに熱気と炎が襲い、さらにひどく咳き込んでしまう。
「え゛ほ!!げえぇ……っほ!!!」
鼻水や涎も出て実に酷い有り様だ。
そこへ追い討ちをかける様に、クミの拳が悠里の腹へ潜り込んだ。
どちゃっと水気のある音がする。
火に煽られ続けているため、悠里の裸体には随所に球の汗が浮いているのだ。
「うわ濡れてる、気持ち悪い!」
クミは手を振って水気を切りながら叫び、周囲の笑いを呼んだ。
その言葉と笑いが、悠里の気高い心を切り刻んでいく。

さらにクミは執拗に悠里の腹を叩き続けた。
すでに悠里の腹筋は息苦しさによって崩壊しており、クミの裸拳を深々と受け入れている。
そうなってしまえば流石に効かない道理はなく、悠里は大口を開けて苦しみ悶えた。
「げええぇっ!!お゛っ、ぐぅおおお゛お゛!!!!!!」
美しい顔からはおよそ想像できないような低いえづき声が繰り返される。
クミは楽しそうにステップを刻みながら悠里の腹部を叩き続けていた。


「ホラ、さっきみたいにおしっこ漏らしたらぁ?火ぃ消えるかもしんないよ~」
クミがボディを打ち込みながら嘲る。
「クミ、おしっこなんて言っちゃ失礼でしょ、お小水よ、女王様のお小水。
 まっ、いくら美人っつったって、尿道おっぴろげてぶっしゃーって出るのが分かったし、
 しっこで十分かもね。
 どうせ膀胱ん中には、ドブスと同じ匂いのくっさいアンモニア袋があるんだからさ」
「え待って、その表現おかしくな~い?見なよアイツの顔。十分に今ドブスだって!」
「あ、ホントだぁ。涙と鼻水と涎と、うわぁキモい!」
他の少女達が煽りをさらに被せていく。

場には下劣な爆笑が巻き起こる。
そんな中、クミは悠里の様子を窺いつつ、そろそろ失神するだろうと目星をつけた。
そうしたら仕方がないから水をぶっかけ、気つけすると同時に火を消してやろう。
ただどうせなら、失神は呼吸困難ではなく打撃でのKOが良い。
そう考え、クミはとどめのステップを踏む。
ここまでグロッキー状態になった相手を何人も葬ってきた一撃だ。
その一撃を美しい女帝に叩き込めることに、クミは笑い出しそうな快感を覚える。

しかし微笑みながら悠里を観察していたクミは、目を疑った。
悠里が燃えるような瞳でこちらを見返してきている。
屈辱が臨界点を超えた、というように。
みっともなくがに股に開いていた悠里の脚が狭まり、しっかりと足元を定める。
その瞬間に周囲の馬鹿げた笑い声も消えた。
悠里の軸足となるべき左脚は、炎の中心に突き立っていたからだ。
焚き木が音を立てて崩壊する。
炎が足首に絡みつきながら燃え盛る。
クミはぞっとした。
炎を嫌がるのは本能だ。炎に自ら突っ込むような人間が居るはずがない。
そんな本能的に絶対に有り得ない事をするほど、悠里が『ぶち切れて』いるのだ。

クミの視界には全てがスローに映った。
悠里の蹴り足が炎を巻き上げ、赤い線を描いたまま少女を襲うシーンを、
ゆっくりとゆっくりと感じていた。
速すぎる。認識はできても反応ができず、ガードが叶わない。
中途半端な力を持った少女は成す術もなく吹っ飛ばされ、
突然速さを増した世界の中で池に飛沫を上げる。

場は一瞬にして静まり返った。

焚き木が壊された事で火の勢いは弱まり、悠里がそれを跨ぐ形で仁王立ちしている。
「どうしたの?正々堂々の勝負、だった筈よね。まさかやりすぎたとでも言うつもり?
 文句があるならかかってきなさいよ。さぁ!」
悠里は怒りに燃え盛った瞳で周囲を睨みつけた。
手を吊るされた裸体でありながら、その総身からは途方もない威圧感が放たれている。

誰も声を出すことすらできずに表情を凍りつかせていた。
言葉こそなかったが、このとき誰もが改めて感じていたはずだ。
やはりこの女はとんでもない、と。
その静寂を破ったのは、池に蹴り落とされたクミが這い上がる音だった。
少女は右肩を押さえながら大量の鼻血を噴き出していた。

「テメェ、随分強気じゃねぇか。ならもっと、自分の立場を分からせてやんねぇとな!」

クミは常に余裕ぶっていた態度から一変し、三白眼で悠里を睨みつける。
悠里も同じくクミを睨み返したが、それ以上はどうする事もできない。


3.

その後、悠里は木の床に仰向けで縛り付けられていた。
無茶をした左脚には治療の跡があるが、そこ以外は丸裸だ。
足元には椅子に腰掛けたクミがおり、足の先で悠里のクリトリスをこりこりと弄んでいる。
器用に足の指でクリトリスを摘み、時には皮を剥きあげて、
親指の腹やかかと、足刀など様々な部位でクリトリスを揉み潰す。

きっちりとよそ行きで身を固め、片方のソックスだけを脱いで嬲る少女。
それに対し全裸の悠里。
いくらボディラインが優美とはいえ、その光景はやはり惨めなものだった。
女王が寝そべり、小娘の足先でさも汚そうに陰核を嬲られている。
これほどに不似合いなものがあろうか。

足の裏で陰核を弄ぶ、というこの行為はかなりの時間続いているのだろう。
既に悠里の肉芽はぬめらかな愛液に塗れ、クミの足指の先に纏いついている。
「何か足先についてくるよ、なぁにこのヌルヌル?言ってみなよ、高潔な女王さま」
愛液が足の裏で下腹部に塗りまわされ、肌を艶かしく濡れ光らせていく。
悠里はたまらない様子で美脚を強張らせながら、ただクミを睨み返すしかない。
唇から漏れる呼吸の荒さが、相当な快感を得てしまっている事を物語っていた。
「どうした、言えないの?私のオマンコ汁です、って」
クミが嘲りながら、愛液のたっぷりついた足先で悠里の鼻先をぐりぐりと踏んでまわる。
悠里の整った顔が自らの愛液で惨めに濡れ光る。
「解らないなら、ちゃあんと覚えな。それがお前のオマンコ汁の匂いよ、あははははっ」

クミはひとしきり笑うと、再度足の指で陰核を剥き上げ始める。
悠里の睨む目つきに困惑が混じる。
「結局さぁ、お前もただの人間なんだよ。格闘女王だの何だの言ってもさ。
 こうやって雑魚のあたしにクリちゃん弄り回されてるだけでビンビンに勃っちまって。
 あげく足の指に絡みつくような愛液まで漏らしちまう。
 所詮はただの人間なんだ。 ……なぁ、お前もそう思うだろ」
クミがふと背後に声を投げた。
すると襖の陰から黒髪の少女、紗江が姿を現す。

「……そうかな。私は悠里さんのお身体に興味が尽きないわ。
 ちょうど普通の女の子に飽いていたところだから」
紗江は秘部の辺りを押さえながら悠里を見つめた。
恍惚の表情。
悠里はその表情に、クミよりもよほど恐ろしいものを感じ取る。
「へっ、そうやってまともなヤツをどんどん追い出してったくせに、ちいとも反省しねえな。
 このお嬢様はよ」
クミが可笑しそうに笑った。
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