1.
半年以内に、茜と王座を賭けて再戦する。
それが悠里の最終目的だ。
だがそこへ辿り着くには、楓に勝って自らの生き様を認めさせなければならない。
一度は為す術もなくやられた相手。
アリーナの絶対王者と呼ばれる悠里とて、今度ばかりは勝てる確証などなかった。
しかし逃げる訳にはいかない。
「大目的を果たすには、まず小目的をクリアするのが基本……よね」
悠里は目の前のビルを見上げて呟いた。
『奈波フロンティアビル』
青ガラスにその文字が見える。
悠里がその名を白人少女から奪い取った瞬間、彼女の家となった外資系のビルだ。
世間では、悠里はそこの社長令嬢という事になっている。
自動ドアを開いて悠里が中に入ると、身なりの整った受付嬢が目を見開いた。
「お、お嬢様、ご無事だったのですね!?
3ヶ月前にトレーニングに出られて以来戻られず、何かあったのではと心配しておりました!」
受付嬢は涙ながらに悠里に駆け寄った。
「あははっ、ごめんごめん」
悠里は頭を掻きながら済まなそうにする。
心配もするだろう。ここに戻ったのは莉緒に絡まれた日以来だ。
そしてここに帰ったのは、ただ家であるから、だけではない。
「……マヤさん、いる?」
悠里がそう問うと、受付嬢が事情を察したように表情を変える。
鳳麻耶(おおとりまや)。
悠里の住む奈波フロンティアビルの警備責任者だ。
『強そうだ』とレディースに絡まれては返り討ちにする悠里には、ビル近辺に敵が多い。
当然、悠里の住むビルにイキの良いレディースが乗り込んでくる時期もあった。
そんな時、男の警備員では少女を殴れない。
男が年端も行かぬ少女を殴ったとあっては、例え正当防衛でも周りが騒ぐ。
ゆえに腕の立つ女用心棒が必要だった。そこで雇われたのが麻耶だ。
麻耶を推薦したのは悠里自身だった。悠里は彼女の強さを良く知っていた。
何しろ麻耶は、悠里が女王の座に就く以前、その地位にいた“先代女王”なのだから。
その世代交代劇は、今でもマニアの間で語り草になっている。
破竹の勢いで王座挑戦権を得た女子高生・悠里と、マーシャルアーツの“女王”麻耶の激突。
共に長い黒髪にスタイル抜群の、女王然とした美女だ。
試合開始前、拳を突き合わせた時には誰もが互角のやり合いを予感しただろう。
だが試合開始4分余り、場は早くも驚愕に包まれた。
それまでの全試合を鮮やかな一本勝ちで決めていた悠里が、リング上で亀のように丸まったのだ。
後のビデオによる再生によれば、鳩尾に強烈な貫手を喰らって崩れ落ちたらしい。
丸まった悠里の背中へ麻耶が覆い被さり、悠里の顔へパンチを浴びせる。
腰を切らずにコンパクトに当てるロシアンフック。
それをうまくガードの隙間に打ち込まれ、美しい悠里の顔はたちまち血に塗れていった。
リングサイドの最前列で観戦していた男女3人が、それを見て口を押さえながら席を立ったと言われる。
麻耶のファンはその容赦のなさに歓喜の叫びを上げ、
悠里のファンになりつつあった者達は、せめて美貌の取り返しがつく内に棄権してくれと祈った。
ようやく悠里が亀状態からまろび出た時、その顔は原型が分からぬ程に腫れ上がっていたという。
コーナーを背にようやく立っている状態だ。
その悠里にトドメとばかりに麻耶が迫った瞬間、観客からは悲鳴が上がった。
しかし数秒後、その客の悲鳴を麻耶自身の悲鳴が掻き消す。
「きぇぁああああ゛あ゛!!!!!」
麻耶は絞められた鶏のような叫びを上げ、左足を抱えてリングに倒れこんだ。
左足は膝下がくの字に折れている。
対する悠里は、コーナーに追い詰められたまま残心を取っていた。
下段蹴りで女王の足をへし折ったのだ、というのが、その構図から良く分かった。
左脚を粉砕された後も、鳳麻耶は王者の意地で悠里に挑みかかった。
だが悠里は、斧のように鋭く重い蹴りで彼女のアバラを打ち砕く。
そして麻耶が血飛沫を吐きながらマットに沈んだ時、悠里は王座と共に2つ名を得たのだ。
“カーペントレス(木こり娘)”と……。
王座から陥落して以来、鳳麻耶は落ちぶれた。
悠里にやられた傷が癒えても、リングには戻らず、酒を浴びるように飲み、
高額な料金をふっかけるバーで女だてらに用心棒をしていた。
それを知った悠里がバーを訪れ、奈波フロンティアビルの警備を持ちかけたのだ。
当然、麻耶は怒った。
誰のせいでこうなったのだ、馬鹿にするな、と。
だが悠里の放った言葉で、その怒りは形を変える。
「だから、いつでもリベンジ出来る場所をあげる、って言ってるのよ。
王座挑戦権とか、客の需要とか、そんなの一切関係ナシ。
同じビルに住んで、いつだって寝首を掻きに来るといいわ。
常にそういう緊張感があった方が、私も強さに磨きが掛かる気がするしね」
それ以来、麻耶は奈波フロンティアビルの用心棒となった。
悠里を狙って乗り込んできたレディースは叩き出し、不審者も誰一人見逃さない。
彼女さえいれば悠里のいない間も安心、と皆からの信頼も上々だ。
しかし、悠里との勝負は依然として続いている。
試合が不完全燃焼で終わった日は、悠里は必ず麻耶に勝負を持ちかけた。
もちろん、麻耶が悠里に宣戦布告する事もある。
その戦歴は、悠里が41戦39勝2分。
総合の戦い方に慣れ、格闘家として脂の乗った悠里に、ロートルの麻耶が敵う事はなかった。
地力が違い、反応速度が違い、センスが違う。
そして悠里に負けて以来、酒浸りで弱い者いじめをしていた期間の差も大きい。
まさにその間に、悠里は王者としての風格を身に着けていったのだから。
ただ、今はそれが逆になっている。
悠里は楓の元にいる間に鍛錬が出来ず、麻耶は悠里を倒すべく日々稽古を積んだだろう。
出会って4年近くが経ち、それなりに腹を割って話せる関係にはなった。
しかしプライドの塊である麻耶は、今でも悠里の事を小憎らしく思っている。
勝負を持ちかければ、いつでも試合さながらの気迫で襲ってくるのだ。
「マヤ、全力で来て頂戴。私を倒せたら、一晩好きにさせてあげる」
広い自室の中、リングのそれと同じ照明を浴びて悠里が手招きした。
結った後ろ髪が獅子の尾のように揺れる。
対する麻耶は、全身に青いボディスーツを纏っていた。
腰まで伸ばした若干癖のある黒髪に、冷たい細目、八重歯の覗く口。
輪郭はシャープで、狼を思わせる精悍な顔つきをしている。
殺気を漲らせる悠里とはまた違う、冷酷な女王といった見目だ。
「言われずとも。でも良いの、お嬢様? 見た所、以前の冴えは無いようだけど」
麻耶は目を輝かせて告げる。
実に嬉しげだ。悠里の鈍りを見抜き、自らの勝機を嗅ぎ取ったらしい。
その腕は武者震いし、今にも相手を打ち砕こうと戦慄く。
「……行くわよ!」
麻耶が笑みを浮かべて駆け出した。姿勢を低くしての突進。
タックルだ、と読んだ悠里は膝を合わせての迎撃を狙った。
だが麻耶は寸前で踏みとどまり、突き出た悠里の腿を外へと払う。
「あっ!?」
悠里は大股を開く形でバランスを崩す。
その崩れた隙を狙い、麻耶の左手が悠里の襟を掴んだ。
「っせァ……ああ!!」
麻耶はそのまま悠里を引きつけ、自らは背を向けながら悠里の内腿を蹴り上げる。
柔道の内股だ。
バァン、と轟音が響き、円転した悠里の身体は床に叩きつけられた。
「がはぁっ……!!」
肺の空気が押し出されて噎せる悠里。
そこに麻耶の影が落ちる。
「はッ!!」
打ち込まれたのは体重を乗せた下段突きだ。
しまった、と悠里が思った時にはもう遅く、それは腹部に突き刺さった。
腹筋を固める事を忘れた柔肉に、深々と。
「う゛っ…………んげろ゛ッ!!!」
苦悶の後、悠里の口から黄色いものが噴きあがった。吐瀉物だ。
それを汚らしそうに見下ろしながら、麻耶が嘲笑った。
「あなた、本当に悠里お嬢様?……にしては、ちょっと反応が遅すぎるんじゃない」
「…………ッ!」
悠里は横に転がりながら口元を拭う。
普段の悠里ならここで嫌味を返すところだが、今は苦悶の表情を深めるばかりだ。
腹に相当重く入ったらしい。
それほどまともに喰らったという事であり、まさに反応が遅い事の証だった。
(重い、身体が……重い……!)
麻耶の猛攻を必死に捌きながら、悠里は思う。
動体視力は落ちておらず、相手の動きは全て見える。
しかし捌こうにも身体がついてこない。
緩慢な麻耶の膝蹴りが、動かない腹部に突き刺さった。
「おえ゛え゛っ!!」
悠里の口から声が上がる。
腹筋は驚くほど軟く、膝蹴り数発で簡単に崩壊してしまう。
気がつけば悠里は後頭部を掴まれ、密着して膝を腹に打ち込まれていた。
首相撲だ。
以前の悠里なら、自分に首相撲を挑むなど良い度胸だ、とばかりにやり返し圧倒したものだが、今は苦悶して腹を捩じらせる事しかできない。
耐えるので精一杯、対抗して膝を打ち込むなど到底不可能だ。
(マヤ相手に、ろくに……動けない……。ここまで鈍ってるなんて……!!)
物心ついて以来、常に鍛え続けてきた悠里が迎えた、初めての空白期間。
その代償は大きく、悠里は嘔吐しながら麻耶の首相撲に屈した。
「…………ぁ…………あ、ぅ………………」
麻耶の身体を滑り落ち、力なく地に伏せる。
麻耶が高らかに腕を突き上げた。
「…………ふふ、ふふふふ。どれだけ、どれだけこの瞬間を待ち望んだか……!
さーぁ悠里お嬢様。約束通り、一晩“好きに”させて貰うわよぉ?」
悠里の顎を持ち上げて麻耶が告げると、現女王は口惜しそうに俯いた。
2.
「ああ、すっごいコレ。中にすっぽり収まって、本当に犯してるみたい。
いつかあなたに使える事を夢見て、買っておいた甲斐があったわ」
麻耶がペニスバンドで悠里を犯しながら言う。
悠里は女子高生時代の制服を着せられていた。
麻耶を女王の座から引きずり下ろした時のものだ。
白と紺のセーラー服に、赤いスカーフ。
スカートは普通の少女が履けば膝上5センチの丈だが、脚の長い悠里が履くと超ミニに映る。
更にはベッドで犯されているにも関わらず、紺のハイソックスと革靴まで履かされていた。
制服を着てなど、皺になるし汚れる。
悠里はそう憤ったが、一晩好きにさせると宣言した手前、断る事はできなかった。
麻耶は悠里をベッドに腹ばいにさせ、尻だけを高く掲げさせて犯し続ける。
捲れたスカートから時おり極太のペニスバンドが覗く。
ディルドーは双方同じ長さで、悠里と麻耶自身の秘部へ深々と沈み込んでいた。
「悠里お嬢様、顔をお上げなさい」
麻耶が悠里に命じる。
一夜に限り絶対のその言葉に従い、俯いていた悠里が前を向いた。
姿見に2人の女の交わりが映し出されている。
一人は制服を着た女、一人は女王然としたコスチュームに身を包んだ女。
悠里は女子高生時代に戻ったかのようだった。
もしかすればあったかもしれない、王座争奪戦における敗北の結末だ。
惨めたらしい姿だった。
逆に麻耶は、なんと満ち足りた顔をしている事だろう。
「でも驚いたわ。まさか私に殴られて、こんなに濡らしてるなんて。
私のご主人様はずいぶんな変態だったみたいね。
4年前のあの時も、後ろから顔を潰されながら濡らしてたのかしら?」
麻耶は腰を遣いながら悠里に問う。
結合部からは粘ついた音が立っていた。確実に感じている音だ。
悠里は唇を噛み締める。
確かに悠里は濡れている。しかし快感からではない。
3ヶ月の間、楓や紗江、クミ達から女の悦びを教え込まれた。
寝ている間にさえ開発を進められた。
女達に数時間に渡って絶頂状態を維持させられ、泡を吹いて失神した事も何度もある。
そうする内に、悠里の肉体はすっかり火照りやすく作り変えられてしまった。
ただでさえ敏感だったのに、だ。
もはや痛みでも苦しみでも、何もかもが快感に摩り替わる回路が脳に出来上がっている。
濡れるのは仕方のない事だった。
しかし麻耶が、それで追求を止める筈もない。
「本当に凄い。下の唇が呑み込むみたいに蠢いて、蜜を塗りつけてる。なんてエッチなのかしら」
麻耶は結合部を見つめながら言葉責めを続ける。
「それに、ほらなぁにここ?突かれる度にヒクついてるじゃない」
麻耶の指が、秘裂より後ろにある蕾を弄くった。
悠里の腰が跳ねる。
「い、いやっ!お尻はやめて!!」
その反応に、麻耶はいよいよ楽しげに口元を吊り上げた。
「へぇ……あなた、お尻が弱いの?これは良い事を知ったわ」
麻耶は秘裂からペニスバンドを抜き、濡れ光るそれを悠里の後穴に宛がう。
「んぐ!!」
「ふふ、簡単に入っていくわ、相当慣れてるみたいね」
麻耶は嘲笑いながら腰を進めた。
ペニスバンドが根元まで入り込むと、麻耶は悠里を膝立ちにさせる。
そしてその尻穴へ深々と抜き差しを始めた。
「う、うぐ……!!」
悠里は顔中に皺を寄せて耐える。
開いた脚の間に突く手が震えていた。
「あら、膣よりもずっと気持ちよさそうな顔してるわね。排泄の穴よ?ここ。
仮にも私の跡を継いで女王を名乗る女が、こんな所で感じるだなんて」
前女王が悠里をなじる。細い腰を掴み、尻穴に抽迭を繰り返して。
悠里の唇が固く結ばれた。
口惜しいが、反論する資格はない。自分は勝負に負けたのだ。
いくら自分が鈍っているとはいえ、ロートルで負け続けのマヤに遅れを取る筈がない。
心のどこかでそう思っていた。その結果がこれだ。
麻耶は膝立ちになった悠里の尻穴に何度か深い突きこみを入れた後、
腸内を捲り返す勢いで引き抜く。
そして花のように開いた蕾が閉じきらない内に、再び深々と突き刺す。
これを何度も繰り返した。
「んううう……!!」
肛門性感のうち最も敏感な菊輪が強く刺激され、悠里は思わず甘い声を上げる。
当然、麻耶がそれを嘲笑った。
「お尻の穴深くに抜き差ししてるのに、うんちがつかないのね。
事前に綺麗にしてきたの?それとも毎日ここで自慰をしてるからかしら?」
引き抜いた極太のディルドーを見つめ、麻耶が問う。
悠里は答えない。
麻耶はさほど気にもしない様子で、突いて、抜いて、挿入する動きを繰り返す。
その意図に悠里が気付いた時には、もう遅かった。
ある時、ぶうっ、と悠里の後孔から空気が漏れる。
悠里が目を見開いた。
「あらお嬢様。アナルセックスが気持ちいいからって、おならはいけないわ」
麻耶が馬鹿にしたように笑う。
あの引き抜いてすぐに挿す行為は、腸内に空気を入れる為だったのだ。
空気を抱き込んだ悠里の腸内は、抜き差しの度にぶう、ぶううっと卑しい音を立てる。
悠里の美顔が耳まで朱に染まった。
「……よっぽど、私が憎いみたいね」
掌を握り締めながら悠里が呟く。
「ええ、当然でしょう?私を王座から引き摺り下ろしたのはあなたなんだから。
あのクソガキの尻穴を、今こうして犯してる。楽しくって堪らないわ!」
麻耶は心から嬉々とした様子で答えた。
それから麻耶は、膝立ちになった悠里の後孔を延々と穿ち続けた。
「うぐっ……!ひぃっ……!!!」
悠里は身体を震わせながら声を漏らす。
気張るような体勢であるため、抜かれる度に強い排便の快感を得る。
逃げ出そうと思えばいつでも出来た。
しかし一晩好きにさせると言った以上、どれほどおぞましくとも耐えるしかない。
「ねぇどうなの、排泄する所にこんな太いのを捻じ込まれる感覚って?
私はそんなおぞましい経験したくもないけど、後学の為に聞いておきたいわ。
気持ちいいの、悠里お嬢様?」
麻耶はセーラー服の上着越しに悠里の胸を弄った。
「あかっ……!!」
悠里が切ない声を上げる。
麻耶の抜き差しには全くの容赦がなかった。
悠里の腰を鷲掴みにし、圧倒的な質量を腸の最奥まで突き込んでくる。
一突きごとに丹念に、丹念に。
そこには麻耶の執念が満ちていた。
悠里を犯すという行為を、気の遠くなるような時間、夢想し続けたのだろう。
その執念が腸奥を抉り回す。それで感じないはずがない。
「あっ……!んっ………う……!!……あぁっ……!!!」
悠里は喘ぎながら内腿に蜜が溢れていくのを感じた。
膝立ちの姿勢が保てなくなり、ベッドにうつ伏せに倒れこむ。
それで大きく脚を開いてしまう事になり、麻耶のものが決定的なほど深く入り込んでくる。
「…………あ゛…………!!!」
極感が、悠里の唇を無理矢理に開かせた。
そこへ抜き、嵌める動作が加わると、もう悠里の力みはほとんど無くなってしまう。
「……もう、許して……」
どのくらいが経ったのか、悠里はシーツを掴みながら乞うた。
「……もう…………おしりはやめて……っ!」
腸内に異様な感覚が生まれていたからだ。
明確な快感ではないが、身を任せれば心地が良いと確信できる感覚だ。
スリーパーで絞め落とされる最期の一瞬に近い。
何もかも捨てて浸りたい、極めて危険な感覚が悠里の脳に疼いていた。
膣に比べれば遥かに凡庸な快感を幾重にも重ねられると、そのうち足がつかないほど深い快感の波が来る。
一度その波に呑まれると後戻りが利かない。
頭が快感に染まって失神するまで、満たされる事がない。悠里はそれを恐れた。
だがようやく目を蕩けさせた悠里を、麻耶が休ませる筈もない。
「冗談でしょう、お嬢様? 私が勝ち取った一夜は、まだまだこれからよ」
麻耶は汗と愛蜜で濡れたベッドから悠里を降ろし、傍らのソファに寄り掛からせる。
悠里はソファの背もたれに肘をついた。
突かれる度にソファが軋む。
ぼたたっ、と液の滴る音も聞こえた。見るとソファの革の座部に、秘部から漏れた蜜が滴っている。
さらさらとした透明な液だ。
腸は荒れ狂い、膣も内臓が溶け出しそうだというのに、溢れる蜜は何と純粋なのだろう。
麻耶はソファに移ってからも変わりなく、ぐっ、ぐっと執念を込めて尻穴を穿つ。
「あっ… はっ…… !! あ、 あがっ…… う! 」
悠里はその一突きごとに声を絞り出された。
とてつもなく気持ちがいい。
愛液がとめどなく溢れて脚を伝い、ハイソックスを濡らし、革靴にまで入り込む。
おかげで快感に足を踏みかえるたび、にちゃにちゃと粘ついた音がした。
腰が抜けそうだ、いや実際に抜けかけている。
ソファに膝を預ける脚が痙攣を始めていた。
「あら悠里お嬢様、脚が震えていらっしゃるわ。どうしたのかしら。
まさか、もう足腰に限界が来た……なんて事はないでしょうね。
私も同じものを中に入れて、同じように腰を遣っているのに平気なのよ。
……本当に限界なの?何度も言うけど、あなた本当に悠里?
他人があのお嬢様の皮を被ってるだけとしか思えないわ」
麻耶は悠里の太腿を自らの腿で叩きながら嘲る。
彼女の言う通り、その脚はまだまだ堅強だ。
息も多少しか乱れていない。
気がつけば悠里などは、すでに気息奄々となっていた。
快感と、口を閉じるのがつらいのとで、桜色の唇の端から糸が垂れる。
どんな有様になっているのだろう。
それが恐ろしくも気がかりで、悠里はふと横目で鏡を見やった。
セーラー服姿の女が犯されている。
結合部が背骨に近いため、排泄の孔を使われているのだと解る。
ソファにつく細腕と、上着越しにも解る巨乳が見事だ。
座部に膝を預ける形でくの字に折れた脚も素晴らしい。
元々の長い脚が、制服のミニスカートとハイソックス、革靴に彩られている。
快感のあまり爪先立ちになっている足が何ともエロチックだ。
とても愛らしく、美しい女。女体美の完成系とさえ思える。
しかし・・・・・・弱い。
彼女は弱い。
後ろで尻穴を犯しているロートル女にさえ、まるで敵わない。
悠里は奥歯を鳴らした。
鍛錬だ。身体全てを作り変えるような覚悟での鍛錬が必要だ。
この悔しさをバネに、次こそこの麻耶を打ち崩し、かつての調子を取り戻すのだ……。
3.
「はっ……はっ……はぁ、はっ……」
桜の舞い散る中、悠里は波打ち際で走り込みを続けていた。
その美しい脚の膝から下には、厚い布が巻かれている。
それらはたっぷりと海の水を吸い、相当な重さとなっている事だろう。
しかし悠里はそれを意にも止めず、淡々と波の上を走り続ける。
簡単そうに見えるが、波打ち際は尋常でない走りづらさだ。
水の中では浮力で足の踏ん張りが十分に利かない。
押し寄せる波が腰を押しやり、走る姿勢を崩してくる。
さらには海底の砂に紛れた小石や貝殻などを踏む事になるため、
よほど足裏の皮膚が丈夫でないと痛くて走るどころではない。
そのような過酷な状況だ。
ゆえに身体の鈍り具合もよく解った。
「……はっ……はぁ、……は、ぁ……!!!」
かつての半分ほどの距離を走っただけで、もう悠里は息が上がっている。
3カ月間鍛錬を怠り、一番に失ったのはスタミナだ。
かつての強さを取り戻すには、ランニングを繰り返して体力をつける事が最優先だった。
他にも鈍った部分は数多い。
手足が冷たい、と悠里は思った。身体の末端にまで血が行き渡っていない。
かつては体中をどくどくと熱い血が漲り、平熱も人より2度は高かったというのに。
基礎体温が高いと、それだけ免疫も代謝も良くなる。
今はそれが悪い状態だ。
腹筋の軟さも分かりやすい劣化だった。
悠里は腹を鍛え抜きたい、と焦れたが、先に背筋や大腿筋を鍛えるべきだとも理解している。
筋肉はバランスよく鍛えなければ、実戦で役に立たないのだ。
遠回りのようでも地道に鍛えていくしかない。
ある日には、悠里はスポーツジムで汗を流した。
ボクサーやプロ格闘家さえ利用するハードなジムだ。
会員には筋肉隆々の男しかおらず、並みの人間なら一歩入っただけで気後れするだろう。
“女人禁制”という男女平等を嘲笑うような垂れ幕が掛かってもいる。
だがその垂れ幕をさらに嘲笑うかのように、悠里はその真下にあるチンニングバーにぶら下がっていた。
そのままレッグレイズ(足上げ)を繰り返す。
一見すると握力と腹筋さえあれば数をこなせそうに見えるが、
実際には体が前後にぶれるため、上半身を安定させる体幹の強さが問われる。
疲労が溜まるほどに体がぶれ、足上げどころではなくなるのだ。
「……ふっ……ふっ……んッ……!!」
悠里は頬を膨らませ、タイミングよく呼吸しながら脚を上げる。
「へぇ……やるじゃねぇか」
「けっ、あんなガリだから出来るんだろうよ。俺らじゃ体格が良くて難しいが」
男達から賞賛と嫉妬の目が向けられる。
いずれも悠里の鍛錬が興味深い、という風を装っているが、
その実は悠里の肉体に心奪われているのが見え透いていた。
男臭い世界に女優のような美女が混じっているのだ、それも仕方のない事かもしれない。
そしてそれは、悠里がジムを使う目的と合致してもいる。
鍛錬で最も大切なのはイメージだ、というのが悠里の持論だ。
例えば腹筋を鍛える際、最も大切な事は何か。
それは一日のメニューを終えた後、腹筋を鏡に映して成果を確かめる作業だ。
そうして腹筋のつき具合を誇り、また将来の理想像を再確認する。
人体とは不思議なもので、それをする事で漫然と鍛える場合よりも遥かに効率よく鍛えられるのだ。
悠里の場合もこれに似て、他人の視線を受けながら鍛錬すると効率が良い。
素晴らしい身体だ、抱きたいほど良い女だ。そんな視線が悠里の肉体をより良く仕上げてくれる。
とはいえ無闇に男臭いジムへ寄ると、ストーカー被害が頻発する。
無論レイプしようとした所で、悠里を組み敷ける男などそうはいないが、鬱陶しい事には変わりがない。
ゆえに悠里がジムを使うのは、ここぞという時に限られていた。
「……んっ……んくっっ……!!!」
苦しげに顔を顰めながら、悠里のレッグレイスは続く。
「お、おい、まだいけんのかよ?」
初め否定的だった男達の顔にも、次第に驚愕の色が浮かびはじめた。
彼らの記録を目の前で大きく塗り替えられたからだ。
悠里のランニングシャツにスパッツという格好が汗に濡れ、ボディラインを浮き彫りにしていく。
垂れる事のない豊かな胸、逆三角に締まった腰つき、魅惑的に盛り上がった尻、
すらりとしながらも腿やふくらはぎに力強さが窺える脚線。
芸術的なほどに鍛えられた女体美だ。
すでに極上であるのに、これ以上鍛え上げるつもりか……と男達はいよいよ息を呑む。
悠里にはその視線が心地よかった。
その後も悠里は様々なトレーニングをこなした。
殆どが自重や筋肉の反発を利用したものだ。
筋肉を肥大させるのではなく、限界まで活性化させるための。
※
何時間もいじめ抜いた手足が震え始めた頃、悠里は最後の締めに入る。
シーテッド・アダクションマシンを使った、足の開閉運動だ。
股関節の内転、屈曲を行う大内転筋を鍛えられる。
ハイキックを放つ時などはこの筋肉の柔軟性が肝となる。
悠里はマシンに深く腰掛け、息を吐きながら脚を閉じ始めた。
そして完全に閉じたところで、今度は息を吸いながらゆっくりと戻していく。
「はぁ、ふぅっー……、はぁ、ふぅー……」
足の開閉を淡々と繰り返しながら、悠里は妙な感覚に苛まれていた。
大内転筋は恥骨と触れ合う筋肉であるため、そこを刺激し続けると、当然の如く性感が沸く。
加えて周囲の男達はトレーニングに勤しみながらも、目の端で悠里の股座を凝視している。
人に見られながらの足の開閉は何ともむず痒いものだ。
大内転筋の活性化と、雄の視線。
それを浴びながら、悠里は何度もオーガズムに匹敵する電流を秘部に感じていた。
トレーニングの最中はそれに没頭できるのでまだいい。
だが1セットを終えた後、インターバルの休憩に入ると、忘れていた感覚が一気に沸き起こる。
息は荒く、身体は熱く、熱湯のような汗に塗れている。
それを男の視線に晒すのだ。
「ん……!!」
悠里は陰核がスパッツを押し上げるように勃ち上がり、溢れた蜜が尻肉を濡らすのを感じた。
鍛錬を終えてトイレに入った悠里は、ショーツを下ろして溜息を吐く。
「……濡れてる。糸まで引いて……前は、ここまでじゃなかったのに」
これが3ヵ月に及ぶ調教の痕だ。
すっかり身体が火照りやすくされてしまっている。
男に精が溜まるのと同様、一日に数度は性欲を発散させたくて堪らない状態になる。
「うん、ンんっ……!!」
悠里は便座に寄りかかる姿勢で自らを慰めはじめた。
以前より膨らんだ乳房をこね回し、先端の蕾をひねり潰すと、叫びそうに心地良い電流が駆け巡る。
その快感を貪るように、陰核を指先で弄び、秘部に指を入れてかき回す。
「ひぃっ!!」
快感に背筋がそそけ立った。
秘裂からは潮が吹き出し、便器から溢れて床に零れる。
「はぁ、はぁ……」
自らの愛液の線を見下ろしながら、悠里は身体が変わってしまった事実を改めて噛み締めた。
この火照りのせいで、長時間のトレーニングではどうしても集中が途切れてしまう。
鍛錬や実戦よりも、まずはこれをどうにかする必要があった。
半年以内に、茜と王座を賭けて再戦する。
それが悠里の最終目的だ。
だがそこへ辿り着くには、楓に勝って自らの生き様を認めさせなければならない。
一度は為す術もなくやられた相手。
アリーナの絶対王者と呼ばれる悠里とて、今度ばかりは勝てる確証などなかった。
しかし逃げる訳にはいかない。
「大目的を果たすには、まず小目的をクリアするのが基本……よね」
悠里は目の前のビルを見上げて呟いた。
『奈波フロンティアビル』
青ガラスにその文字が見える。
悠里がその名を白人少女から奪い取った瞬間、彼女の家となった外資系のビルだ。
世間では、悠里はそこの社長令嬢という事になっている。
自動ドアを開いて悠里が中に入ると、身なりの整った受付嬢が目を見開いた。
「お、お嬢様、ご無事だったのですね!?
3ヶ月前にトレーニングに出られて以来戻られず、何かあったのではと心配しておりました!」
受付嬢は涙ながらに悠里に駆け寄った。
「あははっ、ごめんごめん」
悠里は頭を掻きながら済まなそうにする。
心配もするだろう。ここに戻ったのは莉緒に絡まれた日以来だ。
そしてここに帰ったのは、ただ家であるから、だけではない。
「……マヤさん、いる?」
悠里がそう問うと、受付嬢が事情を察したように表情を変える。
鳳麻耶(おおとりまや)。
悠里の住む奈波フロンティアビルの警備責任者だ。
『強そうだ』とレディースに絡まれては返り討ちにする悠里には、ビル近辺に敵が多い。
当然、悠里の住むビルにイキの良いレディースが乗り込んでくる時期もあった。
そんな時、男の警備員では少女を殴れない。
男が年端も行かぬ少女を殴ったとあっては、例え正当防衛でも周りが騒ぐ。
ゆえに腕の立つ女用心棒が必要だった。そこで雇われたのが麻耶だ。
麻耶を推薦したのは悠里自身だった。悠里は彼女の強さを良く知っていた。
何しろ麻耶は、悠里が女王の座に就く以前、その地位にいた“先代女王”なのだから。
その世代交代劇は、今でもマニアの間で語り草になっている。
破竹の勢いで王座挑戦権を得た女子高生・悠里と、マーシャルアーツの“女王”麻耶の激突。
共に長い黒髪にスタイル抜群の、女王然とした美女だ。
試合開始前、拳を突き合わせた時には誰もが互角のやり合いを予感しただろう。
だが試合開始4分余り、場は早くも驚愕に包まれた。
それまでの全試合を鮮やかな一本勝ちで決めていた悠里が、リング上で亀のように丸まったのだ。
後のビデオによる再生によれば、鳩尾に強烈な貫手を喰らって崩れ落ちたらしい。
丸まった悠里の背中へ麻耶が覆い被さり、悠里の顔へパンチを浴びせる。
腰を切らずにコンパクトに当てるロシアンフック。
それをうまくガードの隙間に打ち込まれ、美しい悠里の顔はたちまち血に塗れていった。
リングサイドの最前列で観戦していた男女3人が、それを見て口を押さえながら席を立ったと言われる。
麻耶のファンはその容赦のなさに歓喜の叫びを上げ、
悠里のファンになりつつあった者達は、せめて美貌の取り返しがつく内に棄権してくれと祈った。
ようやく悠里が亀状態からまろび出た時、その顔は原型が分からぬ程に腫れ上がっていたという。
コーナーを背にようやく立っている状態だ。
その悠里にトドメとばかりに麻耶が迫った瞬間、観客からは悲鳴が上がった。
しかし数秒後、その客の悲鳴を麻耶自身の悲鳴が掻き消す。
「きぇぁああああ゛あ゛!!!!!」
麻耶は絞められた鶏のような叫びを上げ、左足を抱えてリングに倒れこんだ。
左足は膝下がくの字に折れている。
対する悠里は、コーナーに追い詰められたまま残心を取っていた。
下段蹴りで女王の足をへし折ったのだ、というのが、その構図から良く分かった。
左脚を粉砕された後も、鳳麻耶は王者の意地で悠里に挑みかかった。
だが悠里は、斧のように鋭く重い蹴りで彼女のアバラを打ち砕く。
そして麻耶が血飛沫を吐きながらマットに沈んだ時、悠里は王座と共に2つ名を得たのだ。
“カーペントレス(木こり娘)”と……。
王座から陥落して以来、鳳麻耶は落ちぶれた。
悠里にやられた傷が癒えても、リングには戻らず、酒を浴びるように飲み、
高額な料金をふっかけるバーで女だてらに用心棒をしていた。
それを知った悠里がバーを訪れ、奈波フロンティアビルの警備を持ちかけたのだ。
当然、麻耶は怒った。
誰のせいでこうなったのだ、馬鹿にするな、と。
だが悠里の放った言葉で、その怒りは形を変える。
「だから、いつでもリベンジ出来る場所をあげる、って言ってるのよ。
王座挑戦権とか、客の需要とか、そんなの一切関係ナシ。
同じビルに住んで、いつだって寝首を掻きに来るといいわ。
常にそういう緊張感があった方が、私も強さに磨きが掛かる気がするしね」
それ以来、麻耶は奈波フロンティアビルの用心棒となった。
悠里を狙って乗り込んできたレディースは叩き出し、不審者も誰一人見逃さない。
彼女さえいれば悠里のいない間も安心、と皆からの信頼も上々だ。
しかし、悠里との勝負は依然として続いている。
試合が不完全燃焼で終わった日は、悠里は必ず麻耶に勝負を持ちかけた。
もちろん、麻耶が悠里に宣戦布告する事もある。
その戦歴は、悠里が41戦39勝2分。
総合の戦い方に慣れ、格闘家として脂の乗った悠里に、ロートルの麻耶が敵う事はなかった。
地力が違い、反応速度が違い、センスが違う。
そして悠里に負けて以来、酒浸りで弱い者いじめをしていた期間の差も大きい。
まさにその間に、悠里は王者としての風格を身に着けていったのだから。
ただ、今はそれが逆になっている。
悠里は楓の元にいる間に鍛錬が出来ず、麻耶は悠里を倒すべく日々稽古を積んだだろう。
出会って4年近くが経ち、それなりに腹を割って話せる関係にはなった。
しかしプライドの塊である麻耶は、今でも悠里の事を小憎らしく思っている。
勝負を持ちかければ、いつでも試合さながらの気迫で襲ってくるのだ。
「マヤ、全力で来て頂戴。私を倒せたら、一晩好きにさせてあげる」
広い自室の中、リングのそれと同じ照明を浴びて悠里が手招きした。
結った後ろ髪が獅子の尾のように揺れる。
対する麻耶は、全身に青いボディスーツを纏っていた。
腰まで伸ばした若干癖のある黒髪に、冷たい細目、八重歯の覗く口。
輪郭はシャープで、狼を思わせる精悍な顔つきをしている。
殺気を漲らせる悠里とはまた違う、冷酷な女王といった見目だ。
「言われずとも。でも良いの、お嬢様? 見た所、以前の冴えは無いようだけど」
麻耶は目を輝かせて告げる。
実に嬉しげだ。悠里の鈍りを見抜き、自らの勝機を嗅ぎ取ったらしい。
その腕は武者震いし、今にも相手を打ち砕こうと戦慄く。
「……行くわよ!」
麻耶が笑みを浮かべて駆け出した。姿勢を低くしての突進。
タックルだ、と読んだ悠里は膝を合わせての迎撃を狙った。
だが麻耶は寸前で踏みとどまり、突き出た悠里の腿を外へと払う。
「あっ!?」
悠里は大股を開く形でバランスを崩す。
その崩れた隙を狙い、麻耶の左手が悠里の襟を掴んだ。
「っせァ……ああ!!」
麻耶はそのまま悠里を引きつけ、自らは背を向けながら悠里の内腿を蹴り上げる。
柔道の内股だ。
バァン、と轟音が響き、円転した悠里の身体は床に叩きつけられた。
「がはぁっ……!!」
肺の空気が押し出されて噎せる悠里。
そこに麻耶の影が落ちる。
「はッ!!」
打ち込まれたのは体重を乗せた下段突きだ。
しまった、と悠里が思った時にはもう遅く、それは腹部に突き刺さった。
腹筋を固める事を忘れた柔肉に、深々と。
「う゛っ…………んげろ゛ッ!!!」
苦悶の後、悠里の口から黄色いものが噴きあがった。吐瀉物だ。
それを汚らしそうに見下ろしながら、麻耶が嘲笑った。
「あなた、本当に悠里お嬢様?……にしては、ちょっと反応が遅すぎるんじゃない」
「…………ッ!」
悠里は横に転がりながら口元を拭う。
普段の悠里ならここで嫌味を返すところだが、今は苦悶の表情を深めるばかりだ。
腹に相当重く入ったらしい。
それほどまともに喰らったという事であり、まさに反応が遅い事の証だった。
(重い、身体が……重い……!)
麻耶の猛攻を必死に捌きながら、悠里は思う。
動体視力は落ちておらず、相手の動きは全て見える。
しかし捌こうにも身体がついてこない。
緩慢な麻耶の膝蹴りが、動かない腹部に突き刺さった。
「おえ゛え゛っ!!」
悠里の口から声が上がる。
腹筋は驚くほど軟く、膝蹴り数発で簡単に崩壊してしまう。
気がつけば悠里は後頭部を掴まれ、密着して膝を腹に打ち込まれていた。
首相撲だ。
以前の悠里なら、自分に首相撲を挑むなど良い度胸だ、とばかりにやり返し圧倒したものだが、今は苦悶して腹を捩じらせる事しかできない。
耐えるので精一杯、対抗して膝を打ち込むなど到底不可能だ。
(マヤ相手に、ろくに……動けない……。ここまで鈍ってるなんて……!!)
物心ついて以来、常に鍛え続けてきた悠里が迎えた、初めての空白期間。
その代償は大きく、悠里は嘔吐しながら麻耶の首相撲に屈した。
「…………ぁ…………あ、ぅ………………」
麻耶の身体を滑り落ち、力なく地に伏せる。
麻耶が高らかに腕を突き上げた。
「…………ふふ、ふふふふ。どれだけ、どれだけこの瞬間を待ち望んだか……!
さーぁ悠里お嬢様。約束通り、一晩“好きに”させて貰うわよぉ?」
悠里の顎を持ち上げて麻耶が告げると、現女王は口惜しそうに俯いた。
2.
「ああ、すっごいコレ。中にすっぽり収まって、本当に犯してるみたい。
いつかあなたに使える事を夢見て、買っておいた甲斐があったわ」
麻耶がペニスバンドで悠里を犯しながら言う。
悠里は女子高生時代の制服を着せられていた。
麻耶を女王の座から引きずり下ろした時のものだ。
白と紺のセーラー服に、赤いスカーフ。
スカートは普通の少女が履けば膝上5センチの丈だが、脚の長い悠里が履くと超ミニに映る。
更にはベッドで犯されているにも関わらず、紺のハイソックスと革靴まで履かされていた。
制服を着てなど、皺になるし汚れる。
悠里はそう憤ったが、一晩好きにさせると宣言した手前、断る事はできなかった。
麻耶は悠里をベッドに腹ばいにさせ、尻だけを高く掲げさせて犯し続ける。
捲れたスカートから時おり極太のペニスバンドが覗く。
ディルドーは双方同じ長さで、悠里と麻耶自身の秘部へ深々と沈み込んでいた。
「悠里お嬢様、顔をお上げなさい」
麻耶が悠里に命じる。
一夜に限り絶対のその言葉に従い、俯いていた悠里が前を向いた。
姿見に2人の女の交わりが映し出されている。
一人は制服を着た女、一人は女王然としたコスチュームに身を包んだ女。
悠里は女子高生時代に戻ったかのようだった。
もしかすればあったかもしれない、王座争奪戦における敗北の結末だ。
惨めたらしい姿だった。
逆に麻耶は、なんと満ち足りた顔をしている事だろう。
「でも驚いたわ。まさか私に殴られて、こんなに濡らしてるなんて。
私のご主人様はずいぶんな変態だったみたいね。
4年前のあの時も、後ろから顔を潰されながら濡らしてたのかしら?」
麻耶は腰を遣いながら悠里に問う。
結合部からは粘ついた音が立っていた。確実に感じている音だ。
悠里は唇を噛み締める。
確かに悠里は濡れている。しかし快感からではない。
3ヶ月の間、楓や紗江、クミ達から女の悦びを教え込まれた。
寝ている間にさえ開発を進められた。
女達に数時間に渡って絶頂状態を維持させられ、泡を吹いて失神した事も何度もある。
そうする内に、悠里の肉体はすっかり火照りやすく作り変えられてしまった。
ただでさえ敏感だったのに、だ。
もはや痛みでも苦しみでも、何もかもが快感に摩り替わる回路が脳に出来上がっている。
濡れるのは仕方のない事だった。
しかし麻耶が、それで追求を止める筈もない。
「本当に凄い。下の唇が呑み込むみたいに蠢いて、蜜を塗りつけてる。なんてエッチなのかしら」
麻耶は結合部を見つめながら言葉責めを続ける。
「それに、ほらなぁにここ?突かれる度にヒクついてるじゃない」
麻耶の指が、秘裂より後ろにある蕾を弄くった。
悠里の腰が跳ねる。
「い、いやっ!お尻はやめて!!」
その反応に、麻耶はいよいよ楽しげに口元を吊り上げた。
「へぇ……あなた、お尻が弱いの?これは良い事を知ったわ」
麻耶は秘裂からペニスバンドを抜き、濡れ光るそれを悠里の後穴に宛がう。
「んぐ!!」
「ふふ、簡単に入っていくわ、相当慣れてるみたいね」
麻耶は嘲笑いながら腰を進めた。
ペニスバンドが根元まで入り込むと、麻耶は悠里を膝立ちにさせる。
そしてその尻穴へ深々と抜き差しを始めた。
「う、うぐ……!!」
悠里は顔中に皺を寄せて耐える。
開いた脚の間に突く手が震えていた。
「あら、膣よりもずっと気持ちよさそうな顔してるわね。排泄の穴よ?ここ。
仮にも私の跡を継いで女王を名乗る女が、こんな所で感じるだなんて」
前女王が悠里をなじる。細い腰を掴み、尻穴に抽迭を繰り返して。
悠里の唇が固く結ばれた。
口惜しいが、反論する資格はない。自分は勝負に負けたのだ。
いくら自分が鈍っているとはいえ、ロートルで負け続けのマヤに遅れを取る筈がない。
心のどこかでそう思っていた。その結果がこれだ。
麻耶は膝立ちになった悠里の尻穴に何度か深い突きこみを入れた後、
腸内を捲り返す勢いで引き抜く。
そして花のように開いた蕾が閉じきらない内に、再び深々と突き刺す。
これを何度も繰り返した。
「んううう……!!」
肛門性感のうち最も敏感な菊輪が強く刺激され、悠里は思わず甘い声を上げる。
当然、麻耶がそれを嘲笑った。
「お尻の穴深くに抜き差ししてるのに、うんちがつかないのね。
事前に綺麗にしてきたの?それとも毎日ここで自慰をしてるからかしら?」
引き抜いた極太のディルドーを見つめ、麻耶が問う。
悠里は答えない。
麻耶はさほど気にもしない様子で、突いて、抜いて、挿入する動きを繰り返す。
その意図に悠里が気付いた時には、もう遅かった。
ある時、ぶうっ、と悠里の後孔から空気が漏れる。
悠里が目を見開いた。
「あらお嬢様。アナルセックスが気持ちいいからって、おならはいけないわ」
麻耶が馬鹿にしたように笑う。
あの引き抜いてすぐに挿す行為は、腸内に空気を入れる為だったのだ。
空気を抱き込んだ悠里の腸内は、抜き差しの度にぶう、ぶううっと卑しい音を立てる。
悠里の美顔が耳まで朱に染まった。
「……よっぽど、私が憎いみたいね」
掌を握り締めながら悠里が呟く。
「ええ、当然でしょう?私を王座から引き摺り下ろしたのはあなたなんだから。
あのクソガキの尻穴を、今こうして犯してる。楽しくって堪らないわ!」
麻耶は心から嬉々とした様子で答えた。
それから麻耶は、膝立ちになった悠里の後孔を延々と穿ち続けた。
「うぐっ……!ひぃっ……!!!」
悠里は身体を震わせながら声を漏らす。
気張るような体勢であるため、抜かれる度に強い排便の快感を得る。
逃げ出そうと思えばいつでも出来た。
しかし一晩好きにさせると言った以上、どれほどおぞましくとも耐えるしかない。
「ねぇどうなの、排泄する所にこんな太いのを捻じ込まれる感覚って?
私はそんなおぞましい経験したくもないけど、後学の為に聞いておきたいわ。
気持ちいいの、悠里お嬢様?」
麻耶はセーラー服の上着越しに悠里の胸を弄った。
「あかっ……!!」
悠里が切ない声を上げる。
麻耶の抜き差しには全くの容赦がなかった。
悠里の腰を鷲掴みにし、圧倒的な質量を腸の最奥まで突き込んでくる。
一突きごとに丹念に、丹念に。
そこには麻耶の執念が満ちていた。
悠里を犯すという行為を、気の遠くなるような時間、夢想し続けたのだろう。
その執念が腸奥を抉り回す。それで感じないはずがない。
「あっ……!んっ………う……!!……あぁっ……!!!」
悠里は喘ぎながら内腿に蜜が溢れていくのを感じた。
膝立ちの姿勢が保てなくなり、ベッドにうつ伏せに倒れこむ。
それで大きく脚を開いてしまう事になり、麻耶のものが決定的なほど深く入り込んでくる。
「…………あ゛…………!!!」
極感が、悠里の唇を無理矢理に開かせた。
そこへ抜き、嵌める動作が加わると、もう悠里の力みはほとんど無くなってしまう。
「……もう、許して……」
どのくらいが経ったのか、悠里はシーツを掴みながら乞うた。
「……もう…………おしりはやめて……っ!」
腸内に異様な感覚が生まれていたからだ。
明確な快感ではないが、身を任せれば心地が良いと確信できる感覚だ。
スリーパーで絞め落とされる最期の一瞬に近い。
何もかも捨てて浸りたい、極めて危険な感覚が悠里の脳に疼いていた。
膣に比べれば遥かに凡庸な快感を幾重にも重ねられると、そのうち足がつかないほど深い快感の波が来る。
一度その波に呑まれると後戻りが利かない。
頭が快感に染まって失神するまで、満たされる事がない。悠里はそれを恐れた。
だがようやく目を蕩けさせた悠里を、麻耶が休ませる筈もない。
「冗談でしょう、お嬢様? 私が勝ち取った一夜は、まだまだこれからよ」
麻耶は汗と愛蜜で濡れたベッドから悠里を降ろし、傍らのソファに寄り掛からせる。
悠里はソファの背もたれに肘をついた。
突かれる度にソファが軋む。
ぼたたっ、と液の滴る音も聞こえた。見るとソファの革の座部に、秘部から漏れた蜜が滴っている。
さらさらとした透明な液だ。
腸は荒れ狂い、膣も内臓が溶け出しそうだというのに、溢れる蜜は何と純粋なのだろう。
麻耶はソファに移ってからも変わりなく、ぐっ、ぐっと執念を込めて尻穴を穿つ。
「あっ… はっ…… !! あ、 あがっ…… う! 」
悠里はその一突きごとに声を絞り出された。
とてつもなく気持ちがいい。
愛液がとめどなく溢れて脚を伝い、ハイソックスを濡らし、革靴にまで入り込む。
おかげで快感に足を踏みかえるたび、にちゃにちゃと粘ついた音がした。
腰が抜けそうだ、いや実際に抜けかけている。
ソファに膝を預ける脚が痙攣を始めていた。
「あら悠里お嬢様、脚が震えていらっしゃるわ。どうしたのかしら。
まさか、もう足腰に限界が来た……なんて事はないでしょうね。
私も同じものを中に入れて、同じように腰を遣っているのに平気なのよ。
……本当に限界なの?何度も言うけど、あなた本当に悠里?
他人があのお嬢様の皮を被ってるだけとしか思えないわ」
麻耶は悠里の太腿を自らの腿で叩きながら嘲る。
彼女の言う通り、その脚はまだまだ堅強だ。
息も多少しか乱れていない。
気がつけば悠里などは、すでに気息奄々となっていた。
快感と、口を閉じるのがつらいのとで、桜色の唇の端から糸が垂れる。
どんな有様になっているのだろう。
それが恐ろしくも気がかりで、悠里はふと横目で鏡を見やった。
セーラー服姿の女が犯されている。
結合部が背骨に近いため、排泄の孔を使われているのだと解る。
ソファにつく細腕と、上着越しにも解る巨乳が見事だ。
座部に膝を預ける形でくの字に折れた脚も素晴らしい。
元々の長い脚が、制服のミニスカートとハイソックス、革靴に彩られている。
快感のあまり爪先立ちになっている足が何ともエロチックだ。
とても愛らしく、美しい女。女体美の完成系とさえ思える。
しかし・・・・・・弱い。
彼女は弱い。
後ろで尻穴を犯しているロートル女にさえ、まるで敵わない。
悠里は奥歯を鳴らした。
鍛錬だ。身体全てを作り変えるような覚悟での鍛錬が必要だ。
この悔しさをバネに、次こそこの麻耶を打ち崩し、かつての調子を取り戻すのだ……。
3.
「はっ……はっ……はぁ、はっ……」
桜の舞い散る中、悠里は波打ち際で走り込みを続けていた。
その美しい脚の膝から下には、厚い布が巻かれている。
それらはたっぷりと海の水を吸い、相当な重さとなっている事だろう。
しかし悠里はそれを意にも止めず、淡々と波の上を走り続ける。
簡単そうに見えるが、波打ち際は尋常でない走りづらさだ。
水の中では浮力で足の踏ん張りが十分に利かない。
押し寄せる波が腰を押しやり、走る姿勢を崩してくる。
さらには海底の砂に紛れた小石や貝殻などを踏む事になるため、
よほど足裏の皮膚が丈夫でないと痛くて走るどころではない。
そのような過酷な状況だ。
ゆえに身体の鈍り具合もよく解った。
「……はっ……はぁ、……は、ぁ……!!!」
かつての半分ほどの距離を走っただけで、もう悠里は息が上がっている。
3カ月間鍛錬を怠り、一番に失ったのはスタミナだ。
かつての強さを取り戻すには、ランニングを繰り返して体力をつける事が最優先だった。
他にも鈍った部分は数多い。
手足が冷たい、と悠里は思った。身体の末端にまで血が行き渡っていない。
かつては体中をどくどくと熱い血が漲り、平熱も人より2度は高かったというのに。
基礎体温が高いと、それだけ免疫も代謝も良くなる。
今はそれが悪い状態だ。
腹筋の軟さも分かりやすい劣化だった。
悠里は腹を鍛え抜きたい、と焦れたが、先に背筋や大腿筋を鍛えるべきだとも理解している。
筋肉はバランスよく鍛えなければ、実戦で役に立たないのだ。
遠回りのようでも地道に鍛えていくしかない。
ある日には、悠里はスポーツジムで汗を流した。
ボクサーやプロ格闘家さえ利用するハードなジムだ。
会員には筋肉隆々の男しかおらず、並みの人間なら一歩入っただけで気後れするだろう。
“女人禁制”という男女平等を嘲笑うような垂れ幕が掛かってもいる。
だがその垂れ幕をさらに嘲笑うかのように、悠里はその真下にあるチンニングバーにぶら下がっていた。
そのままレッグレイズ(足上げ)を繰り返す。
一見すると握力と腹筋さえあれば数をこなせそうに見えるが、
実際には体が前後にぶれるため、上半身を安定させる体幹の強さが問われる。
疲労が溜まるほどに体がぶれ、足上げどころではなくなるのだ。
「……ふっ……ふっ……んッ……!!」
悠里は頬を膨らませ、タイミングよく呼吸しながら脚を上げる。
「へぇ……やるじゃねぇか」
「けっ、あんなガリだから出来るんだろうよ。俺らじゃ体格が良くて難しいが」
男達から賞賛と嫉妬の目が向けられる。
いずれも悠里の鍛錬が興味深い、という風を装っているが、
その実は悠里の肉体に心奪われているのが見え透いていた。
男臭い世界に女優のような美女が混じっているのだ、それも仕方のない事かもしれない。
そしてそれは、悠里がジムを使う目的と合致してもいる。
鍛錬で最も大切なのはイメージだ、というのが悠里の持論だ。
例えば腹筋を鍛える際、最も大切な事は何か。
それは一日のメニューを終えた後、腹筋を鏡に映して成果を確かめる作業だ。
そうして腹筋のつき具合を誇り、また将来の理想像を再確認する。
人体とは不思議なもので、それをする事で漫然と鍛える場合よりも遥かに効率よく鍛えられるのだ。
悠里の場合もこれに似て、他人の視線を受けながら鍛錬すると効率が良い。
素晴らしい身体だ、抱きたいほど良い女だ。そんな視線が悠里の肉体をより良く仕上げてくれる。
とはいえ無闇に男臭いジムへ寄ると、ストーカー被害が頻発する。
無論レイプしようとした所で、悠里を組み敷ける男などそうはいないが、鬱陶しい事には変わりがない。
ゆえに悠里がジムを使うのは、ここぞという時に限られていた。
「……んっ……んくっっ……!!!」
苦しげに顔を顰めながら、悠里のレッグレイスは続く。
「お、おい、まだいけんのかよ?」
初め否定的だった男達の顔にも、次第に驚愕の色が浮かびはじめた。
彼らの記録を目の前で大きく塗り替えられたからだ。
悠里のランニングシャツにスパッツという格好が汗に濡れ、ボディラインを浮き彫りにしていく。
垂れる事のない豊かな胸、逆三角に締まった腰つき、魅惑的に盛り上がった尻、
すらりとしながらも腿やふくらはぎに力強さが窺える脚線。
芸術的なほどに鍛えられた女体美だ。
すでに極上であるのに、これ以上鍛え上げるつもりか……と男達はいよいよ息を呑む。
悠里にはその視線が心地よかった。
その後も悠里は様々なトレーニングをこなした。
殆どが自重や筋肉の反発を利用したものだ。
筋肉を肥大させるのではなく、限界まで活性化させるための。
※
何時間もいじめ抜いた手足が震え始めた頃、悠里は最後の締めに入る。
シーテッド・アダクションマシンを使った、足の開閉運動だ。
股関節の内転、屈曲を行う大内転筋を鍛えられる。
ハイキックを放つ時などはこの筋肉の柔軟性が肝となる。
悠里はマシンに深く腰掛け、息を吐きながら脚を閉じ始めた。
そして完全に閉じたところで、今度は息を吸いながらゆっくりと戻していく。
「はぁ、ふぅっー……、はぁ、ふぅー……」
足の開閉を淡々と繰り返しながら、悠里は妙な感覚に苛まれていた。
大内転筋は恥骨と触れ合う筋肉であるため、そこを刺激し続けると、当然の如く性感が沸く。
加えて周囲の男達はトレーニングに勤しみながらも、目の端で悠里の股座を凝視している。
人に見られながらの足の開閉は何ともむず痒いものだ。
大内転筋の活性化と、雄の視線。
それを浴びながら、悠里は何度もオーガズムに匹敵する電流を秘部に感じていた。
トレーニングの最中はそれに没頭できるのでまだいい。
だが1セットを終えた後、インターバルの休憩に入ると、忘れていた感覚が一気に沸き起こる。
息は荒く、身体は熱く、熱湯のような汗に塗れている。
それを男の視線に晒すのだ。
「ん……!!」
悠里は陰核がスパッツを押し上げるように勃ち上がり、溢れた蜜が尻肉を濡らすのを感じた。
鍛錬を終えてトイレに入った悠里は、ショーツを下ろして溜息を吐く。
「……濡れてる。糸まで引いて……前は、ここまでじゃなかったのに」
これが3ヵ月に及ぶ調教の痕だ。
すっかり身体が火照りやすくされてしまっている。
男に精が溜まるのと同様、一日に数度は性欲を発散させたくて堪らない状態になる。
「うん、ンんっ……!!」
悠里は便座に寄りかかる姿勢で自らを慰めはじめた。
以前より膨らんだ乳房をこね回し、先端の蕾をひねり潰すと、叫びそうに心地良い電流が駆け巡る。
その快感を貪るように、陰核を指先で弄び、秘部に指を入れてかき回す。
「ひぃっ!!」
快感に背筋がそそけ立った。
秘裂からは潮が吹き出し、便器から溢れて床に零れる。
「はぁ、はぁ……」
自らの愛液の線を見下ろしながら、悠里は身体が変わってしまった事実を改めて噛み締めた。
この火照りのせいで、長時間のトレーニングではどうしても集中が途切れてしまう。
鍛錬や実戦よりも、まずはこれをどうにかする必要があった。