大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2011年02月

オリヴィア・ブラウン

※腹責め。一部グロ要素あり注意


空港にオリヴィア・ブラウンが姿を現した瞬間、一斉にフラッシュの嵐が浴びせられた。

「ミス・ブラウン、今のご気分は!」
「拘束中、貴女は何をされたのですか?性的被害はありましたか!?」
「公開されたビデオは既に確認されましたか?あれは真実なのでしょうか、ミス・ブラウン!」

記者達が我先にと質問を投げかける。
オリヴィアは警備に守られながら、沈んだ瞳を下に向け、乱れた髪を揺らして人垣を過ぎった。

やつれていてもなお美しい女だ。
頭頂部から艶めくダークブラウンの髪がふわりと下がり、胸の付近で自然なウェーブを描く。
ガラス片のようにくっきりとした瞳は知性と高潔さを現し、唇にもだらしなさの欠片さえない。
スタイルなどは正に驚くばかりだ。
女らしい胸の膨らみと、そこから慎ましやかに括れゆく腰、その締まりを裏切る尻肉の豊かさ、
むちりと肉感的でありながら、伸びやかに整った脚線。
今やボロ切れを一枚羽織るだけの格好だが、それさえハリウッド女優が映画撮影の為にそうしているように思える。
しかし彼女、オリヴィアは女優ではない。演技は演技でも、国単位で騙し通す美しき女スパイだ。

アジア某国から、アメリカの特定企業に対するサイバーテロが多発したのが一昨年。
甚大な被害を受けた企業群は一時的に結託し、秘密裏に諜報員を雇い入れた。
それがオリヴィア・ブラウンだ。
父方の祖母が華僑であるオリヴィアには、アジア系の血が混じっている。
顔立ちもどちらかといえば東洋人の好みに近い。

オリヴィアは持ち前の器量と狡猾さを駆使して組織内部に取り入り、ついに機密を突き止めた。
しかし深夜にオフィスへ忍び込み、データを抜き出していた所を取り押さえられてしまう。
オリヴィアにミスらしいミスはなかった。
監視を事実上無効化し、人的にも物的にも綿密に隙を作り上げた上での決行だった。
悪かったとすれば、それは『その日に限り日課を忘れた警備が、深夜に偶然舞い戻った』……という不運でしかない。

いずれにせよ、オリヴィアは捕縛され、尋問を繰り返された。
オリヴィアが自白する事はなかったが、業を煮やした男達は、その尋問の様子をネットの海へ放流する。
断片的な映像でしかなかったが、そこには間違いなく当のオリヴィアが殴られ苦悶する様、
女の部分に逸物を抜き差しされている様、あるいは口から延々と水を流し込まれる様が見て取れた。

『米国美人スパイ、某国にて捕縛され強姦!!』

メディアは即座に喚きたて、戒厳令を敷く暇もなく事件を世に周知させる。
そのオリヴィアが交渉の末ついに解放されたのが、まさに今日この日であった。



「……ご苦労だったな、同志・ウェルズドーター」
迎えの車の中で、運転手がオリヴィアに告げる。
オリヴィアは驚きに顔を上げた。
ウェルズドーター(ウェルズの娘)とは、組織におけるオリヴィアのコードネームだ。
それを知っているという事はつまり、この男はオリヴィアの身内と考えられる。

「どこへ向かっているの?」
オリヴィアは問うた。
「我々の貸し切ったホテルだ。クレインを待たせてある。
 ……今夜は何も考えず、彼の傍で寝るといい」
運転手はそう答えを返す。
オリヴィアの氷のような瞳が、微かな光を孕んだ。

クレインは組織におけるオリヴィアの想い人だ。
オリヴィアを組織に招いたのも、諜報員としてのイロハを教えたのも彼だった。
オリヴィアにとって、兄よりも父よりも近しく、頼りになる恋人。



「……大変だったね、オリヴィア」
クレインは椅子から立ち上がってオリヴィアを出迎えた。
「……クレイン……」
オリヴィアはドアに後ろ手をかけたまま、気後れするように立ち止まる。
「おいで、オリヴィア。」
クレインは彼女の心を解きほぐすように笑った。
「…………私は……あんなミスを、して…………ボスに、組織、に……」
オリヴィアは気丈な顔を崩し、小さく肩を震わせる。
クレインは首を振った。
「……大丈夫だ、オリヴィア。僕が居る」
クレインが一言幼子を諭すように言うと、そこでようやくオリヴィアの氷が解ける。

オリヴィアの長い脚が柔毛のカーペットを撫でた。
クレインはオリヴィアを抱きとめ、髪を撫でる。
「オリヴィア、何があったか……話してくれ」
クレインが問うと、オリヴィアは言いにくそうに口を開く。

「……あの日は……セキュリティを完全に遮断したの。人員の把握も……」
「そうじゃない」
オリヴィアの答えをクレインが遮る。
オリヴィアが言いよどむのは、それが後ろめたい事だという以上に、
『本当に伝えたくないこと』を隠すための時間稼ぎだ。

「そうじゃないんだ、オリヴィア。君がどう捕らえられたかは問題じゃない。
 そんな事は取引の際に、向こうの連中が自慢げに語ってくれたさ。
 僕が聞きたいのは……君が 『何をされたか』 だよ、オリヴィア」

クレインにじっと瞳を見つめて問われると、オリヴィアももう言い逃れはできないと悟った。
自分の愛する男にだけは見せたくないと思った部分を、もう隠せない。
建前はどうあれ、薄氷を渡るようなこの危うい空気の中、隠し立てをしては信頼回復は望めない。
そう女の直感で嗅ぎ取ったのだ。

ゆえにオリヴィアは、切ないほどの恥じらいを以って身に纏う衣を脱ぎ捨てた。
その醜く変化した腹部を、愛する男の視界に晒しながら。





オリヴィアの記憶に焼き付いたのは、その部屋に満ちた“香”の匂い。
人間の汗、体臭、性汁と妙薬をない交ぜにした、フェロモンのような匂いだ。
それは場に居る人間の鼻腔を侵し、性本能を炙りたてる。
オリヴィアを取り巻く男達は、皆一様に屹立した怒張で下穿きを膨らませていた。
眼前の女を丸々72時間に渡って犯しぬいた後だというのにだ。
だがオリヴィアの方もまた、乳房が膨張し、乳輪がほんのりと赤みを帯びるセックスアピールを晒していた。

男達は吊るされたオリヴィアが睨み返すのを愉しみながら、その色づいた肢体を眺め回す。
突如、そのオリヴィアの身体を鞭が襲った。
パシンッと鋭い音を立て、鞭が背中側からオリヴィアの胴に巻きつく。
『ぐっ!』
鞭の先端が腹筋に食い込み、オリヴィアは目を見開いた。
『そら、どうだ?』
背後の男が手首を返し、鞭をオリヴィアの腋、内腿へ浴びせかける。
そうして気を散らした直後、再び蛇が噛み付くように腹筋へと先端を食い込ませた。
『う゛んっ!!』
オリヴィアは歯を食いしばって耐える。
鞭の衝撃はかなりの物であるはずだが、彼女の鍛え上げられた腹筋も、また並ではない。

『ひゅーう、ほんとお宝だぜこの腹は』
オリヴィアの正面にいる男達が口笛を吹いた。
彼女の腹は何度も鞭を浴びせかけられ、細かな金網で焼かれたようになっている。
しかしそれでも腹筋は確かな形を保っていた。

ブロンズ像を思わせる艶やかな腹筋。
鳩尾から繁みまでの楕円形の骨組みの中に、6つに割れた腹筋が盛り上がっている。
臍を縦断する中心線が美しい。
本格的に鍛え上げられた凹凸を備えながら、しかし流れるようなスタイルの邪魔をしない。
男女を問わず見惚れさせる、実に見事な腹筋だ。


「……だから、ここを狙われたのか?」
クレインは裸で立つオリヴィアの足元に跪き、腹部に舌を這わせて問う。
それにぞくぞくと反応を示しながら、オリヴィアは頷いた。
「あっ……!……そう、何度も、何度もお腹に鞭を浴びせられて、殴られたわ。
 でも私はそんな事では折れなかった。だから連中も、だんだん躍起になっていったの」





一番の剛力と思われる大男の拳が、オリヴィアの腹部にめり込んだ。
『う゛ぉ゛っ!!』
オリヴィアは目を見開いて苦悶する。しかし決定打にはならない。
天井から吊るされる状態ゆえ、殴られる度に身体が後ろに泳ぎ、ダメージを逃がす形となっていた。
しかしそれでも衝撃は大きく、オリヴィアは手首から血を滲ませながら脚をぶらつかせる。

『ちっ、クネクネしやがって。オイ、これじゃせっかくの俺の豪打が活かせねェじゃねえか!』
大男は岩のような肩を鳴らし、見た目通りのガラの悪さで叫んだ。
『そうかねぇ。俺は吊るされた女が、腹殴られて無様に踊る姿が好きなんだが……まぁいい。固定しようか』
ネズミのような顔つきをした男が、オリヴィアの後ろに回る。
『ふぅ……ふぅ……!!』
オリヴィアが荒い息を吐きながら、そちらに視線を向けた。
何かを覚悟するように唇を噛み締めて。
『んッ!!!』
にちっと音がした数瞬の後、オリヴィアの脚が硬く強張った。

『へへ、お前もケツの穴が好きだね。昨日も散々使ってやがっただろう』
『ああ、暖かくてキツくって最高だぜ?どんなアバズレも、ここに突っ込みゃあ顔を歪めるしよ。
 それにこっちを犯されると、ヒトってのは勝手に腹筋が固まっちまう』
男はオリヴィアの腹を撫で回しながら告げる。
確かにそこは、歪められた顔と同様、彫りも深く浮き出ている。
『ほぉ、確かにいいカタチだ。お前がそこで繋がってる限り、支えにもなるし、な!!』
豪腕の大男は嬉しげに笑いながら、思いの限り腕を引き絞った。
『…………!!』
オリヴィアの顔色が変わる。
男の山のような三角筋が盛り上がり、巨大な拳を唸らせてくる。
自分は先ほどと違い、それを受け流せない。肛門をこじ開けられたまま、背後の男とで鋏潰される。
それが避けられない。

ドンッという小気味良い音が鳴り響き、上空の鎖がじゃらじゃらと鳴った。

『ぐぅお゛おぉぉお゛お゛っ!!!!!』
その時の声は意外なものだった。
美しく知性溢れるオリヴィアから漏れたとはとても思えないほどの、低く汚らしい叫び声。
『げはっ、げえはっ!!おえ、ううう゛おぉえっ!!!!!』
オリヴィアは何度も腹部を折り曲げ、足をばたつかせて身悶えた。
口の端から涎が垂れる。

『ひゅー、すげぇ衝撃。背後でこんなキッツイなら、こいつなんか悶絶モンだな。
 あー、ケツがキュウキュウ締まって最高だぜ』
オリヴィアを後ろから抱く男が笑いを浮かべた。
『はっはっは、本当に悶絶してるぜ。涎が飛び散りやがった!いやァいい図だぜ!!』
男達もオリヴィアの乱れた姿に腹を抱える。
『…………ッ!!』
オリヴィアがそれを睨みつけようとした刹那、再び男の拳が腹部を抉りあげた。

『ごぉあああぁ゛あ゛っ!!!』
鎖の音が、濁った悲鳴が仄暗い部屋に鳴り響く。




『…………しかし、女だてらによく鍛えられてるもんだよなぁ。
 俺のパンチをここまで耐えといて、一般人ですなんて言い張るつもりか、姉ちゃん?』
十数発の腹打ちの後、大男が項垂れたオリヴィアを見下ろして告げた。
オリヴィアはにちにちと音を立てながら肛門を犯されつつ、荒い息で大男を睨み上げる。

『……はっ、はっ…………そ、総身に知恵が回りかねてるみたいね、大男さん。
 女が、この程度で音を上げると思っ、てるなんて、笑っ……ちゃうわ』
オリヴィアのその挑発に、大男は眉根を寄せる。
『おいおいおい、チャンにそれ言っちゃあ殺されンぜ?』
周りの男達は可笑しそうに笑いあった。

大男はオリヴィアの顎を掴み、美しい唇をへし曲げさせる。
『面白い事を言う姉ちゃんだ。だがな、こうして口を開けさせられると、歯ァ喰いしばる事もできねぇだろう。これなら流石に効くんじゃねぇのか?』
大男はそう語りかけ、オリヴィアの瞳がかすかに惑うのを愉しんだ後、おもむろにその腹を殴りつけた。
『あうぇええ゛え゛っ!!?』
口を開かされた状態で上がる、女の悲鳴。
オリヴィアは先程よりも明らかに狼狽し、目を白黒とさせていた。
『へへ、どうだイイだろう?もっと味わえ』
大男は笑みを浮かべながら、さらにオリヴィアの顎を押し潰し、腹を抉りぬく。
バスッ、バズンッという鈍い音が美しい腹筋から溢れた。
『おええ゛え゛っ!!んうぇぇええ゛え゛っ!!!』
『へへ、いい声だなぁ。ケツもきゅんきゅん締まって最高だ……ああ、出る、、出るぞッ!!!』
背後から尻穴を犯す男が叫び、苦悶するオリヴィアの腸内に精をぶちまけた。
どぐっ、どぐんと何度も怒張を脈打たせ、注ぎ入れる。

『えほっ、うおえっ……!!』
オリヴィアの口が噎せ返るのに呼応するかのごとく、肛門から怒張が抜き出された。
怒張は小柄な男に似合わずかなりの大きさで、オリヴィアの蕾はぽっかりと口を開け、
わずかに黄色く染まった白濁を腿の裏へと垂らしはじめる。

『良かったなぁ、ケツで射精して頂けたぜ。テメェも実はヨガってたんじゃねぇのか?』
大男は下卑た口調で問いながら、腹に当てた拳を下に滑らせた。
女らしい下腹部の膨らみを過ぎ、繁みを越えて、恥じらいの場所へ指が入り込む。
『……うンっ……』
オリヴィアはかすかに呻いた。
大男はそのオリヴィアの女の部分を撫ぜ回しつつ、口元を歪める。
『ふん。やっぱりな、湿っていやがる』
『おいおい本当かよ、理解に苦しむな。この変態女め!』
男達は口々にオリヴィアを嘲った。オリヴィアは柳眉を吊り上げる。

濡れるのは仕方のない事だ。
つい昨晩まで、昼も夜もなく男女の交わりを強要され、女を目覚めさせられていた。
先ほどまでの腹責めの合間にも体中を弄られていたし、そもそもこの部屋には興奮剤のような香が焚かれている。
女の事を嘲うまでもなく、男共も逸物を屹立させ、先走りの汁を滲ませているではないか。
オリヴィアは心中で毒づきながら、ただ嘲笑を耐え忍んだ。
だがやがてその嘲笑は、女への嗜虐の心へと昇華される。

『折角だ、うんと気持ちよくさせてやるよ。力を抜きな』

男の一人がそう告げ、オリヴィアの脚を開かせた。そして足首に鎖を繋げ、床に固定する。
艶めく太い棒を手にしたまま。



「それは、バイブレーターか何かか?」
オリヴィアの腹部へ舌を這わせながら、クレインが問う。
「……違う……そんなものじゃない。あれは電気責めのための、“責め具”だったわ」
オリヴィアは想い人の舌遣いに目を細めながら答えた。
クレインの舌が這う腹部、それが数日前に受けた悲劇を思い起こして。



『流石に濡れていただけあって、それがスルリと入っていくな』
オリヴィアの秘部に極太の電極棒が挿し込まれる様を見て、男が呟く。
『ああ、子宮の入り口辺りまでは入ったろう。もう抜けねぇはずだ』
挿し込んだ男はくつくつと笑い、電極棒に繋がる機械を弄くった。
一瞬火花の散る音が聞こえ、直後、オリヴィアの引き締まった身体が痙攣する。
『があああアアっ!!!?』
『ほほ、踊りよる踊りよる。さすが西洋の女は浅ましい腰つきをするもんだ』
男達はオリヴィアの苦悶を楽しみ、その腹部に手を触れた。
バチリッ、と静電気のような痛みが手に噛み付く。
『おっほ、腹越しにでもビンビン電気を感じるぜ!?こりゃすげぇや!』
『ああ、中じゃどんだけの電流が走ってるんだかな。可哀想だねぇ全く』

男達がひとしきり奇異を体験したところで、電流が一旦止められた。
『か……はぁっ!!ああ、あ、あっ……!!!!』
オリヴィアが溜めていた息を吐き出し、汗を散らしながら項垂れる。
だが甘い香りの息が場に広がった頃、再び電流が流された。
『ああぁあッッ!!!!!』
オリヴィアは白い喉を衆目に晒して伸び上がる。

『どうだ、つらかろう。だが所属する組織を吐くだけで、お前はこの地獄から逃げられるんだ』
男の甘い囁きを、オリヴィアは鋭い眼光で拒んだ。
『……なるほど、ならば仕方がない。おい、やってやれ』
男がそう言うと同時に、先ほどまで散々オリヴィアを苦しめた大男が立ちはだかる。
その手には8オンスほどの黒いグローブが嵌められていた。
『へへ、素手で殴るとこっちまで痺れちまうからな、ゴムで出来た特製のグローブだ。
 だがベアナックルより楽だ、なんて考えない方がいいぜ』
大男は両拳を打ち合わせながらオリヴィアに近づく。
そしてフックの軌道で一撃を叩き込まれた瞬間。
『ごぉう゛っ!!!』
今までの人生で出した事もないような声と共に、オリヴィアの視界はホワイトアウトした。




ばしゃりと水を浴びせかけられ、オリヴィアは意識を取り戻す。
見渡す視界には、男達の笑いばかり。
『おいおい、一発で意識飛ぶとか、そりゃ無ぇんじゃねえのか?』
大男がグローブを揺らしながら茶化した。
その姿を見た瞬間、オリヴィアは意識を飛ばす直前の状態を思い出す。

男の大きな拳が、腹の中に“入り込んで”きた。
以前までの表面をゴツゴツと殴られる感触とはまるで違う。
柔らかなゴム製のグローブが衝撃で腹筋の溝に張り付き、余すところ無く衝撃を伝播させる。
その結果内臓に直接衝撃が叩き込まれ、挙句に膣内の電流と結託したのだ。
それで脳が焼き切れた。

『ベアナックルより楽だ、なんて考えない方がいいぜ』

大男の言葉通り。このグローブで電流の流れる腹を叩かれる責めは、先までの比ではない。
なにしろ頭の神経が即座にブツリと逝ったのだ。
おまけに今度は足首を固定されているため、衝撃を受け流す事が叶わない。
『今度は耐えろよ?』
大男が腹部にジャブを触れさせる。
膣に入った電極棒にも再び電流が流れ始めた。
『あ゛……あ゛』
オリヴィアは声にならない声を漏らし、しかしすぐに唇を噛み締める。
直後に叩き込まれるストレート。
しっかりとジャブで距離を取り、無駄をなくした重撃が腹へ潜り込む。
『げはっ、あぁ゛あ゛!!!』
オリヴィアの口から銀色の飛沫が飛んだ。
そのまま下唇を突き出す無様な顔を晒し、男の太い腕が腹から引き抜かれる瞬間、
それを追う様にして胃の中の物を溢れさせてしまう。

『おお、ついに吐きやがったぜ!っつっても、ゲロだけどなぁ!!』
『はっは、品のなさもここまで来ると笑えるぜ!』
男達の嘲笑う中、オリヴィアは身体をくの字に曲げて咳き込み続ける。
『おら、吐いても続けるぜ』
大男はグローブでオリヴィアの額を押し上げ、顔を上げさせてもう一撃を叩き込んだ。
『おぉええぇぇ゛え゛っっ!!!!!』
苦悶の叫びが上がる。
さらに、上がる。

肉を打つ音、鎖の鳴る音、苦悶の叫び、笑い声。
それぞれ数パターンしかないその響きが組み合わさり、まるでセンスのない人間が作った楽曲のように、単調に単調に繰り返される。
しかしその音色の一つ一つは、吐き気がするほどに痛切で、また、おぞましかった。



『…………いやはや、感服するね。ここまで辛抱強い女だったとはね』
どれほどの時間が経ったのか、男達は項垂れたオリヴィアを眺めて呟いた。
オリヴィアの足元には液だまりができている。
繰り返しの電流責めにより、感情を無視して垂れ流された汗や小水、愛液、胃液などの混合液だ。
オリヴィアは肩で息をし、目の下には隈のような疲れきった証を浮かべていた。
美しい全身が湯上りのようにほのかな桃色に染まっている。
唯一殴り続けられた腹部だけは、六つの割れ目すべてが赤紫色に変色していた。

そこまでになりながら、オリヴィアは一切の情報を口にしない。
電流と腹責めで朦朧とする中、様々な誘導尋問が行われたが、血液型や家族構成などの初歩的な問いにさえ、何一つ情報を明け渡さずにいた。

『くそ……どんだけ強情なアマだよ、こいつ!!』
大男がイラついた様子でオリヴィアの下腹を蹴りつける。
『ぐっ!』
オリヴィアは小さく呻いた。
『ふむ、確かに強情という他ないな。追い込まれているのは間違いないが……』
プライドを傷つけられ憤慨する大男に対し、男の一人はどこか嬉しげな素振りを見せる。
『……あ、あんた達なんかには……死んでも屈しないわ』
俯いたままオリヴィアが呟いた。
その言葉に、男の笑みはますます深まる。
『ほう、死んでもか。いい信念だ。だがそれを実際に貫ける人間など、居はしないよ』
男はそう言ってオリヴィアの拘束を外した。
オリヴィアはその場に力なく崩れ落ちる。咄嗟に逃げ出すような体力はとうに無かった。

男は無力なオリヴィアを拘束台に横たえ、改めて手足を縛りつける。
そして水の入ったヤカンを持ち上げた。
『生命の水をやろう、女』
男は笑みを浮かべたまま告げる。

『…………!!!』
男の意図を察し、オリヴィアが目を見開いた。
『……ああ、なるほどな!』
当然、理解したのはオリヴィアだけではない。
他の男達も拘束台に群がり、ある者はオリヴィアの鼻を摘み上げ、ある者は唇を上げさせ、
またある者はその口の中に漏斗を差し込んだ。
『あえぇっ!!えあっ!!!!』
オリヴィアが抗議の声を上げる中、その遥か上方でヤカンが傾けられる。
水責め、だ。

どぐどぐどぐどぐ、と水は漏斗の窄まりへ泡を立てて流れてゆく。それはそのまま、開かれたオリヴィアの喉奥へ。
『えごっ!!あぇごっ、おごおおおおっっ!!!!』
うがいをするように喉を泡立てながら、オリヴィアは次々と水を飲んだ。飲まされた。
溢れた水がオリヴィアの顎を、喉を、そして乳房までをも濡れ光らせる。
『ほーら、美味しいか。お替りもあるぞ』
一つのヤカンが空になると、即座に次の一つが手渡された。
紙一重でオリヴィアが窒息死しない程度の感覚を空け、水がなみなみと注がれ続ける。

やがて、細く締まっていたオリヴィアの腹は膨れだす。
割れていた腹筋は風船のように丸まり、見る間にドーム状に肥大化した。
『おおげっ!!ごぼっ、ごぼぼごげおろおお゛お゛っ!!!!』
拘束されたオリヴィアがいくら暴れても、暴れても、その変化を止める事は出来なかった。


『ひっ……ひィ、っ……ひいぃ…………っ!!!!!』

静脈が浮き出るほどに腹が膨らみきったオリヴィアは、息をするだけで震え上がっていた。
当然の事だ。
視界を遮るほどに膨れ上がった腹、浮き出た血管、周りから感じるおぞましい気、笑い。
その何もかもが恐怖を煽るのだから。
もはや体中が、脂汗などというものでは済まない、粘ついた液に覆われている。

『死んでも情報を漏らさない……だったな』
男達は木の棒で肩を叩き、あるいは手の平で弄びながらオリヴィアを取り囲む。
ガクガクとオリヴィアの身体が震え始めた。死の直感でだ。

神よ。我が信仰する偉大なる神よ。
オリヴィアは口には出さぬまま、心の中で祈りを捧げる。
だが神はいない。この世で人が触れられるのは悪魔しかいない。

ドンッ、と腹の頂点に木の棒が振り下ろされた。樫の樹のように堅い棒だ。
『げは……っ!!!!!!』
オリヴィアは口から水を吐きこぼす。それはオリヴィアを美しい髪を無残に汚した。
『はは、効いてるぜ!』
木の棒が引き戻された直後、別の男の拳がオリヴィアの腹を抉る。
垂直に、そして奥まで。
『があああああ゛あ゛!!!!!』
オリヴィアは目一杯に開いた口からさらに汚水を吐きこぼし、手足をばたつかせた。
さらに棒が、拳が、グローブが、上からオリヴィアの膨腹を滅多打ちにする。
『がぇああああ゛あ゛おお゛お゛お゛っっっ!!!!!』
オリヴィアにできるのはもう、叫ぶ事だけだった。
内臓が軋んでいる感覚が伝わってくる。
ビニールに包まれた生肉を押し潰した時のような……いやひょっとしたら、すでに弾けてしまっているかもしれない。
この状況を抜け出ても、絶対に無事ではすまないだろう、そう確信できる。

『いいねぇこれ、腹殴る度に喚いて、手足が強張ってよ。セックスより興奮するぜ』
『確かに傑作だ。だが、腹筋の力が無くなっちまってイマイチ歯応えがねぇぜ。
 顔は相当にクるけどよ!』
『見ィろよこいつ、小便漏らしちまってんぜ?脚はすらーっと長い美人風なのに、情けないねぇ』

男達の声が、バリバリという耳鳴りにかき消されてゆく。
喉奥から溢れる水が、鼻に、脳に、耳にまで入り込んでしまったかのようだ。
地獄に思えた。
臓腑という臓腑が押し上げられる、抉られる、すり潰される。
今へこんだのは腎臓か、いや肝臓かもしれない。胃が、原型を留めていないのは確かだ。
肺だけは正常らしい、いや、それも下から何かが押し上げてきて、へし曲がる。
熱いものが絶え間なく喉を押しひらいて迸る。
苦しい、苦しい、苦しくて、たまらない。


『こ……殺してえっ!!!もぉ゛いっぞころじでえぇ゛え゛え゛っっ!!!!!』


とうとう視界に血を吐き出しながら、オリヴィアは哀願した。
悪魔のような男達は満面の笑みを湛えながら棒を、拳を振り下ろす。
気が狂いそうなほど恐ろしい情景だった。しかしあまりにも苦痛が強すぎ、気を失う事もできない。
手足の筋肉がいきり立ち、拘束された縄に食い込んでゆく。
側頭部の血管がぶちぶちと切れてゆく。


やがて自分が生きているか死んでいるのかも解らなくなった頃に、遠くで部屋の扉が空いた。
交渉が成立、その女は即時解放すべし……との伝令と共に。






「…………そうか…………辛かったね」
クレインはオリヴィアの赤紫にただれた腹から舌を離し、彼女を抱き寄せた。
「うん……」
オリヴィアは愛する男に導かれるまま、壁を背にして抱きしめられる。
「オリヴィア」
「なぁに」
「……オリヴィア」
「なぁに、クレイン」
オリヴィアは瞳に安堵の色を浮かべて繰り返す。
クレインの思いつめたような顔が間近にあった。彼が自分を案じてくれている事が、オリヴィアにはとても喜ばしかった。

しかし、次の一瞬。その至福は地に落ちる。
クレインの左手がオリヴィアの首を押さえた。右手は背中の後ろに回り、鋭利なナイフを取り出している。
クレインがぐっと肩を入れた直後、オリヴィアの白い肌を朱が流れた。


「………………
                え       …………?」


オリヴィアは腹部に差し込む冷たさに思考を失う、
何が、どうなっている。なぜ、腹が焼けるように熱い。

「げおっ、ごはっ……!!あ゛、げは、あっ……!!!」

喉から血があふれ出す。痛みに耐え切れず前屈みになり、クレインの袖を掴もうとするが、
力及ばずに倒れ伏す。

「い……たい……いたいよ?……ク…………クレイ……ン…………」

自失したまま、オリヴィアは空を掻き毟る。ぬるりとした血が背中の滑りだけを助ける。

クレインはナイフを手にしたまま、オリヴィアに覆い被さった。
暴れる手足を封じ込め、再び腹にナイフを突き入れる。
今度は抜かず、ずっ……と腹筋に沿って肉を裂いてゆく。

「ぎぁああ、あ゛っ……!!!っひ、ひだい、ひだい、っよオぉ!!!!!
 グレイン、グレインッ!!おなか、おなかが…………こんなに血が、ひどいの。
 …………どうひて…………クレ…………ぃ…………ン…………」

オリヴィアは子供に戻ったように泣きじゃくり、クレインに感情を訴えた。
その瞳の光がやがて薄れ、人形のように無機質に変わる。
美しかった手足がだらりと垂れ落ちた。



クレインはすでにオリヴィアでないものの腹部をまさぐり、その血を浴びる。
時に掬い、自らの口に含みながら、一滴ずつ指にふれさせてゆく。

「つらかったろうね。こんなに腹を殴られて、口惜しかったろうね」

そう呟きながら、腹の穢れた部分を血で洗うかのように触れ続ける。
やがてその赤い肉に、透明な雫が滴りはじめた。

「……許してくれ、オリヴィア。これが僕に与えられた任務なんだ。
 任務に失敗したばかりか、世界規模で事件を知られ、犯罪組織に弱みを握らせた。
 君は死ななければならないんだよ。ならせめて僕の手で、ね。
 でも心配はいらない。……言ったろう。“僕が居る”、って」

クレインはナイフの刃を自らに向ける。
そして飛沫を上げ、抉り出して、愛する女性の上に覆い被さった。
その薔薇のように朱に染まった肉体を、内まで溶け合うように絡ませて……。



                                 FIN
続きを読む

サンキュークレープ

『恵瀬(えのせ)クレープ店 アルバイト募集。』
求人雑誌の片隅にその広告を見つけたとき、俺は胸がときめいた。

恵瀬クレープ店は小さな店だ。
市の中心街からひと駅離れ、いい具合に落ち着いた街にひっそりと店舗を構えている。
会社の近くにあったので俺も時たま買いに行ったものだ。
そこは家族三人で経営されていた。
夫であり、厳格そうなフランス人のアルバン・リゴ氏。
いかにも令嬢然として大らかな恵瀬八重子夫人。
そしてその娘の恵瀬都(えのせみやこ)ちゃん。

当時8歳ぐらいだった都ちゃんもよく店に出て働いていた。
俺は父であるリゴ氏が苦手だったため、八重子夫人と都ちゃんが居る時だけ買いにいっていた。
その狙いはクレープよりも都ちゃんだ。
都ちゃんはフランス人とのハーフだけあって、見たこともないほど愛らしかった。
雰囲気は母親に似て和風だ。つやつやの黒髪は今どき見事に大和撫子している。
しかしすらりとしたスタイルと透けるような白肌は、その辺りの日本人少女とはモノが違う。
あまりに縁遠すぎてファンタジーにさえ思える美しさだ。

その彼女と一緒に働けるかもしれない。
会社を首になり再就職もままならなかった俺は、そこの求人広告に飛びついた。


八重子夫人はイメージ通りの優しい方で、意外にも俺を歓迎してくれた。
「まぁ、29で首切りに…大変でしたね。
 でも今日、こちらへいらして下さって本当に良かったですわ。
 求人を出したところで誰も知らないだろう、と思っていましたもの。」
夫人はゆったりした喋り方で話し続けた。

聞けば、主人であるリゴ氏が少し前に亡くなったのだそうだ。
新たに店の長となった八重子夫人はそれまでリゴ氏に頼りきりで業務に詳しくないし、
原料の仕入れや売り上げ管理で手一杯のため店に手が回らない。
都ちゃんはしっかりしているが、現在12歳の少女に1人店を任せるのは不安がある。
だから俺のようなバイトが必要になったらしい。
「それじゃ、しばらくの間は都が学校から帰ってくる夕方から夜にかけての勤務ね。
 主に都からお仕事を教えてもらう事になるけれど、よろしくお願いします」
八重子夫人はそう頭を下げる。

このようにして、若干12歳の少女が俺の上司になったのだった。





間近で見る都ちゃんは、店の外で見るよりずっと愛らしかった。
俺は妖精のような姿に見惚れる。
「よろしくお願いします、斉藤さん。」
そう礼儀正しく挨拶する姿は、もう立派な社会人に見えた。
「よ、よろしく。僕、何度かここに買いに来た事があるんだけど、憶えてる!?」
俺は舞い上がってそう切り出した。
俺が彼女を覚えているからといって、彼女が客の1人でしかない俺を覚えている筈が無いのに。
「え、ええと……う~ん……」
当然、都ちゃんは少し困った笑顔で首をかしげた。
やってしまった。都ちゃんはいきなり俺を変な奴だと思っただろう。

それでも都ちゃんは、俺に丁寧に仕事を教えてくれた。
レジの打ち方、商品の説明、渡し方…。俺が失敗しても、彼女は笑ってフォローしてくれる。
和やかに話もした。
彼女の話によれば、八重子夫人は実は病気を煩っているらしい。
もともと身体の丈夫な方ではなかったが、夫を喪った嘆きでさらに病状が悪化したのだそうだ。
そのため最近では頻繁に病院通いをしているらしい。
八重子夫人自身はもう店を畳んで都ちゃんを実家に帰したほうが…と思っているそうだが、
夫人がどれほどこの店を愛しているかを知っている都ちゃんは、たとえ1人ででも続けようと思ったらしい。
いじらしい話だ。俺はぜひ力になりたいと思った。

しかし、俺の要領の悪さはひどいものだった。
何しろ会社をクビになるような男だ、当然のように何度もミスを繰り返した。
それは3日経っても、1週間経っても変わらない。
何かとフォローしてくれた都ちゃんもさすがに堪忍袋の緒が切れたのか、その態度は次第に冷めていった。



「ちょっと、釣り銭足りないんだけど。」
金髪のギャルが俺を睨みつけて言った。千円札が足りなかったらしい。昨日もやったミスだ。
都ちゃんがこちらを振り向く。唖然としたような顔は、明らかにまたやったのか、と言っていた。
「も、申し訳ございません!!」
都ちゃんは大慌てでこちらへ駆け寄り、俺の横に立つと、ドンッ!と思いっきり俺の足を踏みつけた。
「ぐ!」
俺は思わず叫びそうになるが、客の手前堪える。
都ちゃんは客に平謝りしている。ギャルはその頭越しに様々な罵声を浴びせていた。
俺は申し訳なくて頭を下げたまま縮こまる。

ギャルがようやく帰った後、都ちゃんはこちらにゆっくりと向き直った。
その顔は疲れ切っている。俺は息を呑んだ。
「どういう…つもりですか」
都ちゃんは静かに言った。
「このお店、潰そうってつもりなんですか」
俺はぶるぶると首を振る。
「…だって、ひどいじゃない。もう何回目のミスよ!!あんた何歳なの、30前じゃないの!?
 一体そんな歳まで何を学んできたのよ!!!」
都ちゃんはその令嬢然とした顔を憤怒に歪めてこちらを睨みつけてきた。
可愛いなどという感情は起きない。その美しい顔が、今はただ怖い。
「クビにしちゃいたいわ。こんな状況じゃなきゃ、絶対あんたなんかと仕事しないのに」
都ちゃんは最後に吐き捨てるように言って業務に戻った。
そこにはあの礼儀正しかった都ちゃんなどいない。
だがそうさせたのは俺だ。



都ちゃんだって、本当は俺を頼りたいだろう、仲良くしたいだろう。
29歳がバイトに入ると聞いて、最初は心強かったに違いない。だが実際はこんなクズだ。
今さら俺を首にして新しい奴を雇うのは大変だ。
第一そんな事を進言すれば、俺を雇った八重子夫人の心に様々な負担を掛けることになる。
だから俺をクビにするわけにはいかない。
明らかに都さんの足を引っ張ってしかいないのに。
俺は情けなくて涙が出そうだった、だがそうして心を乱れさせていると、また失敗が起きる。
「何だこの渡し方は、汚らしい! チッ……少し見ぬ間に最低な店になったな!!」
スーツ姿の男性が俺に罵声を浴びせる。
最悪な事をしてしまった。
相手は店の常連らしい。俺はクレープを渡す時、その常連客の手に誤ってチョコをつけてしまったのだ。
あわてて都ちゃんの方をみると、顔から完全に血の気を引かせていた。
「すす、済みません岸江様!うちの者がとんだ無礼を……」
すぐにタオルをもって駆け寄り、男性の手を拭う。
男性はこちらを指差して何かを言っていた。何をいっているのかショックで聞こえない。
都ちゃんは涙ながらに許しを請うていた。まだ小さな小6の少女が。俺のせいで。

結局男性はどれほど謝罪しても聞き入れず、二度と来ないと叫んで立ち去った。
都ちゃんは呆然と立ち尽くしていた。立ち尽くし、がくりと腰を抜かすようにショーケースに寄りかかると、拳を握り締める。
俺の背中に冷や汗が伝った。
「裏へ来て」
俺に背を向けたまま、都ちゃんが呟いた。店先に「準備中」の札をかけている。

都ちゃんに続いて店奥の座敷に入ると、いきなり彼女が俺の股を蹴り上げた。
ぐちゃっと音のするような感触と共に足の甲が触れ、太い電流が腹を突き刺す。
「がああああああああアアアアアア!!!!!!!!」
俺は絶叫してその場に倒れこんだ。やばい痛みに涎と汗が噴き出す。
痛みに喘ぐ俺の顔に、さらに都ちゃんの踏み付けが見舞われた。
鼻の骨がへこむ感触の中、むうっと臭気がする。一日中仕事をしていた都ちゃんの靴下の匂いだ。
その白い靴下の裏が執拗に俺の顔を踏みつける。微塵の容赦もない。
「死ね、死ね、しんじゃえこの能無し!グズ!!疫病神ッッッ!!!!」
都ちゃんはミニスカートから白いパンツを覗かせ、口汚く罵りながら俺を踏みまくる。
ハーフ少女の蒸れた汗の匂い。澄んだ声で叫ばれる罵声。
俺はあまりの出来事に頭がおかしくなったのか、その状況にゾクゾクと感じていた。
腰が淫らに蠢いてしまう。
「ははっ!何よこの反応、あんた嬉しいの、こういうのが?
 もしかしてこういうコトされたくてあんな事してたってたわけ!?」
都ちゃんの細い脚から繰り出される蹴りが俺の竿を穿つ。はっきりいって相当痛い。
だが刺激的なのは否定しがたい事実だ。
たまらず四つん這いになった時、都ちゃんの足先が背後から強かに玉袋を捉えた。
「うぐふあああっ!!!」
俺は情けない叫び声で腰を抜かす。信じたくないことに、下着の中に熱い物を感じた。

鋭い都ちゃんは突っ伏した俺を転がすと、ズボンと下着を一気にずり下げる。
まだ先端をビクつかせたまま、トランクスの前に白いとろみをぶちまける逸物が曝け出された。
栗の花とも形容される生臭さが立ち昇る。
「くさっ……本当に射精してたんだ、あれが嬉しかったんだ…。考えてた以上のキチガイね。
 じゃあいいよ。明日から、お望みどおり失敗した分だけお仕置きしたげる。」
俺の小さな上司は、冷たく見下ろしたままそう言った。



その言葉は事実だった。
その次の日から、俺は大きな失敗をした回数だけ辱められる事になったのだ。
次の日は土曜日だった。かきいれ時で忙しく、俺は6回ひどい失敗をやらかした。
その夜は八重子さんが出かけていたため、俺は都ちゃんに連れられて部屋に上げられた。
ぬいぐるみのある女の子な部屋だ。
俺はそこで服を脱がされ、紐で手を後ろに縛られた。
その上で全身鏡の前に正座させられる。
都ちゃんはその俺の後ろで膝立ちになり、俺に買ってこさせたコンドームを開封した。
そして箱の説明文を一瞥してするりと逸物に嵌める。器用だ。

「今日は6回やらかしてくれたよね。じゃ、6回悪いのだそうね」
都ちゃんは俺の耳元で囁き、コンドーム越しに逸物を握り締める。俺は体が震えた。
「ねぇほら変態、鏡見て?男なのに女の子に縛られて、射精させられてるのよ?情けない」
都ちゃんが乳首を弄ってくる。くすぐったい。
俺はそのくすぐったさと状況への興奮から、すぐに一度目を射精する。
握り締める都ちゃんの小さな手から生ぬるい液が溢れ、コンドームを伝って陰毛を濡らす。
さらには透明な液部分が尻穴にまで垂れていって気持ちが悪い。
しかし今はそれより快感が勝っていた。
「1回目。あそこがビクビクしてる。あんたの腐った遺伝子が無駄に殺されてるのよ。お似合いだよね」
都ちゃんは意地悪く囁くと、間髪入れずにまた扱きはじめる。
生暖かい精液が潤滑油になり、ゴム越しの小さな手がすばやく逸物を擦り上げる。
たまらない快感で、俺は2分とせずに2回目を放出した。
「あああああ」
声が出てしまう。気持ちいい。尿道の中を熱さが迸っている。

だが、気持ちが良かったのはそこまでだった。
2回連続で達しては玉袋が萎んでしまい、後は扱かれても逸物の芯が鈍く痛むだけ。
「どうしたの?さっさとぶちまけようよ」
都ちゃんが鏡の中の俺を覗き込みながら言う。俺の顔は歯を食いしばり、つらいのが見え見えだった。
「ほらさっさと出そう、さっさと出そう。」
都ちゃんは傷口を抉るが如く、逸物をより大きく扱くと共に片手で俺の乳首を弄り回した。身体が跳ねてしまう。
小さな手は乳首から、脇腹、腹を少しつまみ、太腿へ。
そして吸い込まれるような動きで肛門へ至った。
指先が肛門付近の白濁駅を集めると、それを潤滑油に穴の中に捻りこまれる。
「うああ!!」
声が出た。
「何それ、まるでおまんこ触られた女の子だね。でも気持ち悪い声で喘いでも可愛くないよ、29歳のダメおじさん。」
くすくすと都ちゃんに笑われる。
「やっぱここ弱いの?少女マンガで見たんだ。……ま、あのマンガの受け手はジャニ系のイケメンだったけど。
 あーあ、私なんでこんなダメオヤジのお尻掘ってんだろ。
 そのヒゲ面で、この黒いお尻の穴からくっさいうんちこいてるんでしょ?うあーやだやだ。」
都ちゃんは尻の穴をかき回しながら、俺の心まで切り裂いていく。
だがその傷口からじんわりとした悦びが這い出てきて、鏡のなかのハーフ少女と重なった瞬間、
俺の逸物は3度目の射精を経験していた。
精管から先ほどより熱い精がじわりじわりと湧き上がり、カリの辺りで収束した後に尿道口から気持ち悪く溢れる。
1度目2度目がどろり、なら、今度はちょろりだ。湧き出た熱さに対して出た量が情けなさすぎる。
その差分が暴れるように、俺の逸物の根元がぎりぎりと傷んだ。

「ああ゛…でだ……いま゛でだぁ……。」
俺は汚い声で都ちゃんに訴えかけた。
なぜなら彼女は、3度目を搾り出したばかりの逸物をなお同じように扱きあげているからだ。
なんと残酷な。女ゆえの残酷さ。男ならどれだけ冷血を売りにしている奴でもできまい。
「まだ3回目でしょ。6回出させるって言ったじゃない」
都ちゃんは、この残酷で愛くるしい悪魔は、俺をゴミのように見て告げた。
じょぐじょぐじょぐじょ
コンドームに包まれたザーメンが逸物に擦れて音を立てる。
俺は絶望に声が出なくなり、2回無意味に口を開いた。
「ひはっ、ひは」
情けない息の後、ようやく声の出し方を思い出す。しかし強気な声が出ない。
「らすけて……痛いんだ、もう出ないんだ、わかって、もう痛いんだ、もう無理ッ…なんだ……!!」
俺はまさしくレイプされる女のように涙ながらに哀願した。
しかし俺に死ねといった都ちゃんは、それを聞き入れる事などしなかった。

そこから本当に6回射精できたのかは覚えていないが、朝まではやっていただろう。
次の日は出勤が休みだったが、俺は縛り上げられたまま、都ちゃんの布団の中に隠されていた。
都ちゃんが休憩時間に帰ってくるまで、俺は少女の甘酸っぱい寝汗を吸ったシーツを嗅ぎ続け、でも勃起できずに苦悶した。





それからも八重子さんの目の無い日を狙って辱めが続いた。
都ちゃんは俺を心の無い肉玩具とでも思っているのか、聞きかじった事を何でも試した。
俺の尻穴を弄り回して開発し、風呂場で小便を飲ませ、尿道に綿棒を突っ込んできた事もあった。
屈辱だったのは尻穴オナニーを強要された時だ。

新聞紙を敷き並べた部屋で買ったディルドーを尻に入れさせられる。
しかもただのアナルオナニーではない、射精するのに手を使ってはいけないという。
前立腺のみを刺激しての射精、いわゆるトコロテンという奴だ。
都ちゃんは俺にそれをさせながら、ベッドに座ってデジカメで俺を撮り続けていた。
惨め、この上なかった。
ローションをたっぷりと垂らし、地面に固定したディルドーを一気に飲み込む。
湧き上がる感覚に喘ぎ声が出る。
「うわー、ヒゲ面の喘ぎ顔。最悪にきもちわるーい!」
都ちゃんは端正な顔を歪めて俺を撮っていた。ベッドの淵にニーソックスを履いた足が垂れている。
美しい脚だ、おれはそれをオカズに腰を上下させる。
「う!う!う!!」
ディルドーの亀頭部に前立腺が擦られて声が出てしまう。

「ねぇ、いまどんな気分か聞かせて?」
時には都ちゃんが蔑んだ目で問いかけてくる。
「は、恥ずかしいです、あと苦しくて、手、手を、手を使ってだしたいです」
「ダメ。豚は前足つかって扱かないでしょ」
俺の訴えなど聞き入れられず筈もない。
手を後ろに置き、無我夢中で腰を上下させる。
だが動きが苛烈になると、固定していないディルドーが尻穴から抜けた瞬間に弾け跳んでしまう。
せっかく性感の頂が見えたのに、そうなるとまたディルドーを置いてやり直しだ。
都ちゃんはディルドーが飛ぶたび、あははと無邪気に笑っていた。
それを聞きながら俺は腰を使い、ディルドーを強烈に叩き込んで何とか射精に持ち込んだ。
尿道口からとろっと流れ出る白濁を確認した瞬間、足が震えて倒れこむ。汗だくだ。

都ちゃんに顔を撮られながら、俺は乙女のように恥じて身をかき抱いた。





そんな壮絶な体験をしながらも、俺はそこのバイトをやめることはしなかった。
なぜか? 何度も己に問いかけ、そのたび苦笑する。
都ちゃんに惚れているからだ。いや惚れているのではない、憧れているのか。
都ちゃんが横でスマイルを振り撒いているのを見るのが楽しい。
都ちゃんの吐く息を吸えているのが、腋の間を通った空気を感じていられるのが有り難い。
始め屈辱的でしかなかった罰も、今では都ちゃんに見つめられるだけで射精しそうになってしまった。
完全な恋だ。

だから、俺はその後何年もバイトとして居続けた。その間に環境は変わっていった。
都ちゃんは中学校を卒業する頃、新しいバイトを雇った。
クラスメイトだというその少年は、いかにも現代風のいけている少年だった。
仕事もでき、俺が3年かけて積み上げたノウハウを2週間で会得しきった。
彼は都ちゃんの俺に対する態度と俺の動きから無能さを察したらしく、すぐに態度を悪化させた。
資材を運ぶ時など、わざとらしくぶつかっていく。
「邪魔だよ、オッサン」
彼がそう吐き捨てると、都ちゃんもこっちを睨んできて今度は何したの、と詰め寄る。

彼が入ったおかげで仕事が円滑に進むようになり、八重子さんは安心して実家で養生をはじめた。
保護者がいなくなった事で、都ちゃんと少年の行動にますます遠慮が無くなる。

2人はやがて恋仲になった。
時期はちょうどクリスマスで、3人で店じまいを終えた後、俺はさっさと帰れと追い出された。
何をするかが解っていた俺は、そっと裏口に回って中を覗く。そこからは都ちゃんの部屋が見える。
「み、ミチヒロ、ミチヒロぉ!!きもち…いいよぉ!!」
「へぇ、処女なのに痛くねーのか?」
「い、痛いよ。痛い、けど、ミチヒロに抱かれて感じる痛みなら…わたしうれしいよ」
「お前、マジ可愛いな。やっぱ一生の女にするわ」
甘ったれた声の会話。水音。ベッドの軋む音。
俺はそれを聞きながら、暗く寒い路地の中で逸物を取り出して扱き出した。
かつてこれを握ってくれた小さな手を思い出す。

涙が出た。



12月25日、都ちゃんはミニスカートのサンタ姿で売り子をしていた。
ミチヒロはそれに手を振りながら店番をしていた。
俺は裏で大掃除の蜘蛛の巣取りをしながら、そんな2人を眺める。
「オッサン、サボってんじゃねーよ。首にすっぞ」
ミチヒロが気付き、俺の首元を掴んだ。
「……あと、俺の女なにジロジロ見てんだよ。きめぇよ」
そう囁いて乱暴に手を離す。そして都ちゃんに駆け寄った後、何かを囁いていた。
都ちゃんは目を丸くし、こちらを睨むとミニスカートの後ろを隠した。


それから4ヶ月後の4月1日。都ちゃんとミチヒロは結婚式を挙げた。
純白のドレスとタキシードに包まれた2人は実によく似合っていた。

そしてその日が、俺の最後の出勤日だった。
夜には式を終えて帰ってくるだろう都ちゃんの為に、俺は一つ余計にクレープを作っておく。
生クリームをたっぷりとつかって文字を書く。



THANK YOU・・・




                    おわり
続きを読む

009ノ1 その最期

※石ノ森章太郎作品 『009ノ1(ゼロゼロクノイチ)』 二次創作&女スパイ拷問モノ。
 主に2006年度アニメ版に準拠。一部想像上の設定あり。

時代背景:
冷戦がずっと続いてる2080年ぐらい。
世界はイースト・ブロックとウェスト・ブロックで二分されてて、常に核を巡ってスパイ合戦。
情報戦を制すれば即パワーバランスが崩れる状況。
主人公ミレーヌ・ホフマンはウェスト・ブロックの『00機関』に所属する最高級のエリートスパイ。






ミレーヌ・ホフマン、通称009-1(ゼロゼロナイン-ワン)。
地上を二分する世界のひとつ、ウェストエリアでも指折りの女諜報員だ。
明晰な頭脳、サイボーグゆえの高い戦闘能力、そして男の本能をくすぐる美貌。
そのいずれもが一流と言えた。
しかし……それほどの女も、数限りなく任務をこなしていれば捕縛される事もある。

今回に限っていえば、ミレーヌの捕縛は作戦の内だ。
敵方であるイーストエリアは事の初期から、ミレーヌが動いている情報を掴んでいた。
というより、ミレーヌ側があえてその情報を漏洩させていた。
最も警戒されるであろうミレーヌの動きを逐一流しつつ、別の言い方をすれば敵に『注目させ』、捕縛させる。
そうしてイーストエリア側が一息ついている間に、別働隊が任務と救出を行う手筈だ。

捕まったら最後、ミレーヌ・ホフマンには容赦のない尋問が待っているだろう。
極めて危険な事態だ。だが、だからこそ敵の目を欺ける。
文句無く最大の脅威である、ゼロゼロ機関のエリートスパイが自らの手の内に落ちた。
この状況で安堵しない理由はない。



「こちらの諜報員にも、罠と知りながらなお君と寝たがる男がいるらしいが……
 ふむ。頷ける話だ」
中年の尋問官・ケベルはミレーヌを眺めながら呟く。
彼女は一糸纏わぬ姿のまま、X字を描くように手足を繋がれていた。
胸の膨らみ、腰のくびれ、太腿の張り……全てのパーツが男の情欲をそそる。
その造形美は、顔から体型まで全てが男を落とすために改造されたのか、との疑念さえ抱かせた。

真裸の中で、唯一ミレーヌの乳首だけはクリップのようなもので潰されている。
これはミレーヌが、乳腺から液体金属を分泌、瞬時に固形化して打ち出すギミックを有するためだ。
この対策を怠り安易に吊るすと、マシンガンのような射撃でたちまち蜂の巣になってしまう。

「カラダを褒めてくれるのは嬉しいけど、女の裸を眺めるなんて……良い趣味じゃないわよ」
ミレーヌは薄い嘲笑をケベルに向けた。
ケベルはそれを受け、より大きな笑みで返す。

「この状況でその冷静さ、流石はウェストエリアの誇るエリートスパイだ。
 私は気高い女が好きだが、同時にそういった女を苦しめるのがこれまた大好きでね。
 君のその澄ました表情を醜く歪めたいと、先ほどから焦がれているんだよ」
ケベルが醜悪な笑みを深めた。
ミレーヌはそれを鼻で笑う。
「可哀想。そんな捻れた考えを持つぐらい、女に縁のない生活をしてきたのね」
そう精一杯言い返すが、同時にケベル達が着々と準備を進める様子に眉をひそめた。
彼らはミレーヌの肢体を下卑た視線で見つめている。
どんな尋問をされても耐え切る自信はあるが、女としてあまり好ましい状況ではない。



「さて、では君のスパイとしての心意気を試すとしよう」
ケベルが片手を上げて告げた。
周りの尋問官達が笑みを湛えてミレーヌを取り囲む。
彼らは2人がかりでミレーヌの尻肉を左右に割り開き、中央にある窄まりを露わにした。
そしてその窄まりへ捻じ込まれる、ホースのような質感。
「うっ……!」
ミレーヌが片目を細める。

ホース状の物が直腸深くへ入り込んだ後、背後にあるタンクのバルブが開かれた。
ごぼんっ、と大きな気泡の浮く音がし、やがてミレーヌの腸内を冷たさが襲う。
浣腸だ。ミレーヌはそう理解した。
尻から液を入れ、糞便を出させる恥辱の拷問。
苦しいのは言うまでもないが、排泄という惨めな行為を人前に晒すのも精神的にきつい。

「その溶液は特別性でな。グリセリンよりも浸透圧が高く、便意を催しやすい。よく効くぞ?」

ケベルが嬉しそうにそう語る間にも、ミレーヌの腸内へごぼりごぼりと液が流れ込んでゆく。
ミレーヌの引き締まった腹部が徐々に膨れ始めた。
「うっ……!!……っく!!」
ミレーヌが苦悶する中、腹の膨らみは刻一刻と増し、やがて臨月の妊婦ほどになってしまう。

「うへえ、腹ぁパンッパンになっちまってんぜ? これ何リットル入ってんだ?」
尋問官達がミレーヌの腹を指差して笑った。
ミレーヌは、尋常でない息苦しさなのだろう、額に薄っすらと汗をかいている。
「計器によれば4.6ℓだ。サイボーグとはいえ、そろそろ限界だろう。……おい、固めろ」
ケベルがそう命じると、タンクの前にいる人間が切り替えの操作を行った。
今までの液に代わり、ゼリー状のものがミレーヌの肛門を通り抜ける。
「う゛ぐっ!!」
限界の所をさらに少し押し込まれ、ミレーヌの呻きも重さを増した。

「苦しいか。だがそんな苦しみなどまだまだ序の口だぞ。
 今注入しているのは、先ほど注いだ溶液を固める薬品だ。
 さすがに溶液すべてには行き渡らんが、肛門に近い大部分がスライムほどの硬さに固形化する。
 少量であればひり出せる硬さだが、それだけ腸内でひしめき合っていては排泄も不可能。
 ……我々が赦しを出し、溶解させるための薬液を注がん限りはな」

ケベルはそう嬉しそうに告げ、ミレーヌの表情を愉しんだ。



その言葉通り、ミレーヌの尾骨の下辺りで妙な質量が生まれ始める。
まるでそれは溜めに溜めた固形便の様な、いやまさしく、何キロという重さの便。
同時に腹の上方からは、ギュルルル……という下痢便特有の音が鳴り始めていた。
極限の便秘と下痢が同時に襲う形だ。
ミレーヌはこの責めの恐ろしさを、改めて現実のものとして痛感する。

「良い顔だな、ミレーヌ・ホフマン。願わくばいつまででもそうして苦しめ続けたいほどだ。
 しかしこれは仮にも尋問。いい加減飽きの来た内容だが、一応答える機会を与えよう」

ケベルは脂汗を浮かべるミレーヌを眺めて口を開いた。

「お前がここに潜り込んだのは、データを盗むためだという事は解っている。
 だが身体検査でデータチップらしきものは見つからなかった。
 ……どこへ隠した」

ケベルは、もう何人もの尋問官が行った質問を繰り返した。
いくら聞いても無駄だ。ミレーヌは初めからチップなど持っていない。
彼女の眼はアイカメラになっており、また脳には情報を記録しておける人工知能が備わっている。
つまり、目当てのデータを目視さえすればそれで済むのだ。
……とはいえ、その事実が敵に知れては大変な事になる。
機密を詰め込んだミレーヌの脳が解析されれば、所属する00機関はおろか、世界そのもののパワーバランスが崩壊しかねない。
ゆえに、ミレーヌも敵に『データチップを隠している』と思わせていた方が得といえた。

そもそも、ここの尋問官達はまだ本気で情報を吐かそうとはしていない。
緊急性があればとうに自白剤を使っている筈だ。
彼らの目的は、あくまでミレーヌ・ホフマンを嬲ることにある。
拘束した以上は時間はいくらでもある、じっくりと様々な情報を吐かせれば良い。
そう思っているに違いない。
もっとも、いずれにせよミレーヌは、仲間が救出に来るまで耐え忍ぶしかないのだが。

「……答えんか。その蛙腹で排泄のチャンスを棒に振るとは、正気の沙汰ではないな。
 まぁそれでも構わん。ならばその腹を抱えたまま、一晩中悶え苦しむがいい。
 我々には貴様への憐憫の心など欠片ほどもない。
 貴様を苦しめる事もまた、祖国を勝利に導くのと同じほどに心地良いのだ」
ケベル達は気丈なミレーヌを見やり、笑いながら部屋を後にする。
「ぐ……!!」
ミレーヌは広い尋問室に一人残され、拘束された手足を握りしめた。



そこから地獄のような一夜が始まった。
ケベルが言った通り浣腸液の効き目は強く、30分もしないうちに足が震え始める。
額に脂汗が滲み、排泄欲が脳裏を焦がす。
だがどれほど踏ん張っても、ほんの僅かも排泄することができない。
「ううっ……!!!うっ!!う、うう……っく……!!!!」
ミレーヌは誰もいない部屋の中、小さく呻き続けた。
括約筋に繋がる内股の筋肉が強張り通しだ。寒気が体中を襲う。

「よう、調子はどうだ」
一時間ほどがした頃、尋問官の一人が瓶を片手に戻ってきた。
その瞬間、ミレーヌの苦悶の表情がふっと涼しげに変わる。
弱みを見せまいと、身体の異常を押し殺したのだ。
「へぇ、元気そうじゃねえか」
尋問官は嬉しそうに言い、手に持った瓶をミレーヌの口に押し付ける。
水を飲め、と言うのだろう。
「いらないわ、そんな何が入ってるかわからない水……」
ミレーヌは顔を背けて拒絶する。
「素直に飲んどけって。浣腸ってのは汗とかで結構身体の水分が飛ぶんだ。
 こっちとしても死なれちゃあ困るんだよ」
彼は笑いながら、瓶を掲げてミレーヌの頭から水を浴びせかける。
氷のような冷たさにミレーヌの身が震えた。

「しっかし、ホント良い女だよなぁお前。メリハリある身体ほど磔が似合うってね。
 丸見えの脇がセクシーだぜ」
尋問官はX字に吊るされたミレーヌの腋へ鼻先を擦り付けた。
驚きか羞恥か、ミレーヌの左腕が竦み上がる。

尋問官はすんすんと鼻を鳴らしてミレーヌの腋下の匂いを嗅ぎまわった。
「やっぱり結構汗掻いてんじゃねーか。商売女らしい、やけにそそる匂いだけどよ」
尋問官が笑い、さらに鼻先を滑らせていく。
かすかに肋骨の触れる脇腹に、妊婦のように膨らんだ下腹部。
「おーお、すげえわこれ」
腹を押しこんで尋問官が歓声を上げた。
「……お゛あっ!!!」
逆にミレーヌは苦しさが倍増し、声にならない悲鳴を上げる。
尋問官はそれをしっかりと聞き届け、意地悪く臍を弄くり回した。

しばし腹をこね回した後、彼はとうとうミレーヌの恥じらいの場所へ指を触れる。
ミレーヌの顔の強張りもいよいよ深まった。
「さて、ここはどうかな」
尋問官はミレーヌの美貌を見上げながら、指で女陰を割りひらく。
薄い繁みの下に赤い肉が露わになる。



「へええ……こんな所まで綺麗なんだな。処女なワケねぇのにな。
 すげえや、大物がどんどん釣られる筈だ。どんだけ男を喜ばせる身体してんだよ?」
尋問官は嬉しげに逸物を取り出した。
ミレーヌの身体を見ていたためか、すでに勃起しきっている。
尋問官はそれを、断りも無くミレーヌの秘唇に宛がった。
ミレーヌは脚を内股に閉じて無言の拒絶を示したが、男の脚に割り開かれると、それ以上の抵抗はしなかった。
男がいる以上、どのみち強姦ぐらいはされるのだ。

尋問官は逸物の先端をミレーヌの割れ目に押し当てる。
女が吊るされたやりづらい姿勢だが、性器はゆっくりと結合を開始した。
ミレーヌの極上とも言われる膣内を、浅黒い男の肉棒が侵食してゆく。
「おう、キツい……!!ケツの方がパンパンになってっから、締まりが凄いぜ!」
尋問官は陶然とした表情で溜息を漏らした。
ミレーヌは嵐が去るのを待つようにされるがままになっている。
だがよく見れば、その口元は何度も小さく噛む仕草をしており、彼女が耐えがたい恥辱あるいは苦痛を感じている事が見て取れた。

「……へへ、すげぇ目で睨みやがって。悔しいのか?それともクソしたくてたまんねぇのか?
 だが何もできねぇよ、拘束されたテメェには!!
 ああ、すげぇ!すげぇよ!!こんな気持ち良い穴初めてだ!!
 小便くせぇガキをぶち破った時より締まってンぜ!!!おあああ!!!!!」

尋問官は下卑た言葉を発しながら抽迭を続けた。そして、やがて絶頂を迎える。

「……ふうぅ、良かったぜ女スパイさんよ。親兄弟でも落とせるような、いいモノ持ってるぜ。
 また水やりに来てやっから、まぁ楽しみに股濡らしとけや」
尋問官はそう言い残して部屋を後にした。
ミレーヌはその後姿を睨みつけ、扉が閉まると同時に大きく息を吐き出す。
その瞬間にどっと汗が噴き出した。
明らかに余裕の無い顔色になっている。腹の鳴りも激しく、脚も震えている。
この様子を尋問官に晒していれば、ハイエナのような彼らは間違いなく嗜虐心を煽られただろう。

俯いたミレーヌの視界に、滴る汗と混じって、大切な所へ吐き出された白濁が垂れ落ちていた。
まるで穢された証のようだ、とミレーヌは考え、さらなる不浄の唸りに顔をしかめる。



それから何度か、水入りの瓶を持った尋問官が部屋を訪れた。
初めこそ水を拒否していたミレーヌも、やがて耐えがたい渇きに、不本意ながら水を求めてしまう。
ただでさえ膨れ上がった腹へ、さらに水。必要とはいえつらいものだ。
腹部の苦しみも次第に隠しようがなくなってゆく。
尋問官が来た瞬間に涼しげな顔を装えたのは最初だけで、数時間が経つ頃には、
男達の好色な笑みの前でも露骨な苦しみを晒してしまっていた。

「あっ……!あアっ……!!あぁ、あ……はぁっ…………!!!」

尋問官が来ない間、独り残された部屋の中で、ミレーヌは幾度も苦悶の声を上げた。
ぐるるる、ぎゅるるるる……という腹の鳴りがそれに重なる。

せわしなく両膝を擦り合わせるせいで、彼女の膝頭はすっかり朱に染まっていた。
脚はもう痙攣する事さえやめて妙な硬直状態だ。
括約筋の付近も、心臓の動きに合わせて熱く蠢く。
頭が茹だるようだ。肺が軋み、体中から汗の匂いが立ち昇っている。

苦しい、などというものではない。
日常生活では絶対に起こりえないほどの便秘と下痢に見舞われているのだ。
ミレーヌは何度か本当に死を選ぼうかと考えた。
彼女の左足の親指には即効性の、右足の親指には遅効性の毒が仕込まれている。
その爪で足の甲を傷つければ楽になれる。
そう思いはしたが、しかし、助けが来ると解っている以上は生を諦めるわけにもいかなかった。
ゆえに、その地獄のような苦しみをただ耐えるしかない。

長い長い一夜。
汗が頭頂部から足裏まで流れ落ちる動きを何十回と感じた。
一定周期で排泄欲の臨界点が訪れ、括約筋が狂ったように脈動する。
直腸末端でゼリー状に固まったものが邪魔をし、結局排泄は叶わない。

しかし、本当の限界はその強固な栓さえ超える。
何十度目かに腹が鳴り、直腸が裂けそうに拡がった末、ついに小さな破裂音が肛門から漏れた。
そして床に、ぴちゃ、ぴちゃっと液の垂れる音がする。
なにしろ肛門から垂れる液だ。
ぞっとしながらミレーヌが脚の間に視線をやると、汗に塗れて床に何滴かの雫が見えた。
茶黄色の雫。
「………………!!」
ミレーヌは目を見開き、すぐに視線を前に戻す。
誇り高い彼女にとっては、恥辱で頭が煮えそうな情景だった。



丸一晩が経過し、朝になって、ようやくケベル達が部屋に戻ってきた。
「ふむ、だいぶ参っているようだな」
ケベルはミレーヌを見て嬉しそうに言う。
ミレーヌは青白い顔で、目からは涙を、口からは涎を零していた。
妊婦のような腹から漏れる音は、何とも表現しようのない怪音となっている。
美しい女の弱りきった様子。それは眼前のサディスト達の嗜虐心を煽った。

一人が前に歩み出し、ミレーヌの腹を鷲掴みにした。そして強く捏ね回す。
ミレーヌの顔がたちまち歪んだ。
「いっ……!!いた、あッ……あ!!」
ただでさえ気を失いそうな腹痛を丸一晩堪えていた所に、そんな事をされては耐え切れない。
ミレーヌは苦悶し、口の端から涎を零した。
その銀色の雫は腹をまさぐる男の手に落ちる。男は笑い、手を口に近づけて雫を舐め取る。
ミレーヌの視線が気恥ずかしそうに横を向く。

また別の一人は、吊るされたミレーヌの背後に回る。
彼は汚液の流れる内腿を見て嘲笑った。
「へっ、中がゼリーで埋まってるってのに、ちっと汚ねぇのが漏れちまってらぁ。
 どんだけ完璧に栓をしても、それを超えちまう。人間の身体ってなぁ恐ろしいもんだぜ。
 ……っと、こいつはサイボーグだっけな」
尋問官はそうなじりながら、ミレーヌの尻肉を割る。

「はっは、固まった透明なゼリーがちっと飛び出しちまってるぜ。
 どんだけ気張っても、これが邪魔で出せねえんだよな」
尋問官の指が肛門のゼリーを摘み、軽く引き出す動きを見せる。
その動きにミレーヌの内股が反応を見せた。
「意地張っても、俺達ぁいつまでもそのままにしとくぜ。ひり出したいなら情報を吐きな」
尋問官はそう言ってミレーヌを追い詰める。
だがミレーヌはその美しい瞳をもって、断罪するかのように男達を睨みつけた。
その表情が、尋問官達のサディズムをより一層激化させる。

しばし、ミレーヌは見世物にされた。
乱れた顔を、汗まみれの身体を、床に落ちた汚液をなじられた。
「気丈なもんだなぁ。俺達がいねぇ間は、あんなにウンウン唸ってた癖によ」
「そうそう。一回すげぇ音してクソ漏らしちまってたもんな。
 しかもこのアマそれ自分で気付いて、わざわざ下向いて確認までしやがって。
 全部モニターで見えてたんだぜ?」
言葉責めを繰り返され、ミレーヌは恥辱に唇を噛み締める。
しかしどれほど追い詰められても、ついに彼女が口を開く事はなかった。



「……流石というべきか、こんなありふれた尋問では吐かないらしい」
やがて根負けしたかのように、ケベルが呟いた。
だがミレーヌが目線を和らげた瞬間、彼は続ける。
「ならばそろそろ楽にしてやろう。溶解液を流し込んでやる。
 ここで存分にクソをぶちまけるがいい」
「なっ……!?」
ミレーヌの目が驚愕に見開かれた。
それに満足したかのように、ケベルが笑う。

「何を驚く。まさかトイレでさせてもらえるとでも思ったのか。
 我々は尋問官、君を苦しめる役職だ。君が嫌がる事を積極的に行う。
 何千回何万回懇願してもやめはせんよ。
 君の心身を衰弱させる為なら何でもしよう。
 クソをぶちまける姿、浅ましくセックスに耽る姿、貴様の全てを見させてもらうぞ」

ケベルがそう言いながら傍らの男に指示を出す。
するとミレーヌの頭上で滑車が動き、腕を拘束する鎖が伸びて膝立ちに近い姿勢を取らされた。
次いで尻の下に大きな金属バケツが置かれる。
そしていよいよ尻穴に再びホース状のものを嵌められ、薬液が流し込まれる。
「う゛ぶっ……!!」
元々限界だった腹へさらに液が注がれ、猛烈な嘔吐感にミレーヌが頬を膨らませた。
しかしその苦しみの最中、さらに大きな“異常”が襲い掛かる。
腸で水を塞き止めていたゼリー状のものが溶け、腸の中が動き始めたのだ。

「う、ンああああああ゛あ゛っ……!!!!!」
耐えに耐えた排泄の始まりに、ミレーヌは耐え切れず叫びを上げる。
止めようもない怒涛の排泄。
ゴバッ、とゼリーの塊が肛門を通り抜けた。続いてその後ろから温い液が溢れ出す。
凄まじい勢いだった。蛇口を全開にしたようにバケツに流れ出てゆく。
激流というべき汚液の流れ、その中にいくつもゼリー状の弾力が混じる。
ぶりぶり、じょろじょろ、にゅるにゅる、感覚を現すとそうした風か。
かつて経験した事もないいような異様な排泄。
その激しさと苦しみは、尻から子供を産むかのようだった。

「すげえ、バケツにどんどん溜まってくぜ」
「はは、しかしすげぇ匂いだ!」
「ああ。透明だったはずのゼリーも液も、しっかり茶色になってやがるしな。
 こんだけ綺麗な顔した女でも、やっぱ腹ン中は糞だまりってわけだ」
「違いねぇ!しっかし恥ずかしそうな顔してやがんなぁ!?
 調査段階じゃどんな時でも素の感情を見せねぇ仮面の塊って事だったが、
 今はそのまんま恥ずかしいんだろうなぁ、俺らの前でクソをぶりぶりひり出してよ!」
「いやいや、それさえ演技かもしれねぇぜ?排便見られて嬉しがるんだよ、ウェストエリアの女は!」
「おい見ろ、こいつクソに混じって小便まで漏らしてやがるぜ!
 ったく、一番でかいバケツ用意したってのに、こりゃ溢れちまうんじゃねぇかあ?」

尋問官達はミレーヌの排泄を散々に嘲笑い、罵声を浴びせる。
ミレーヌはもう排泄を止めたかったが、一度始めた排便を止められるはずもなく、
ただ腕の鎖を握りしめながら、一刻も早く終えようと息む他なかった。

「…………ご苦労。実に良い映像が撮れたよ。
 君が排便する様は、このブロックで働く全従業員の目に触れさせよう。
 排泄とはいえ美しい君の姿だ、きっと皆喜んで自慰の種とすることだろう」
排泄を終え、ぐったりとしたミレーヌにケベルが囁きかける。
ミレーヌはその衝撃的な宣告に、ただ所在無げに瞳を彷徨わせた。





排泄の後、ミレーヌは手足の鎖を外され、汚れた身体をシャワーで洗い流される。
そして別の部屋で改めて拘束された。
柱を背にし、両腕を頭の後ろに組んだ形でだ。

部屋には研究員らしき女がいた。
彼女はミレーヌを嘗め回すように眺めながら、両手に透明な素材の手袋を嵌める。
そして傍らのデスクから瓶を取り出し、中身を片手に空けた。
薄桃色のゼリー状の薬品。
「自分の肌につかないよう気をつけろよ、シェリー。大変な事になるぞ」
ケベルが女に呼びかけた。
「へいへい、解ってますよ」
女は嬉しそうに笑いながらミレーヌに近づく。そして股座に手を近づけた。
「くっ!」
ミレーヌは唇を噛み締める。
自分達には絶対に肌に触れさせないような薬品を、たっぷりとこちらに塗るつもりなのだ。

関節にバネの仕込まれたミレーヌの脚ならば、ここで女を蹴り殺す事など造作もない。
だがそれをした所で何の解決にもならず、むしろ下手に動いて身体のギミックに気付かれれば、
それこそ最悪の事態だ。
ミレーヌは自分が今抵抗できる状況にない事を、嫌というほど理解していた。

女の手はミレーヌの股座を割り、秘部に入り込む。薬品のぬるみが粘膜を侵す。
ミレーヌは少しでもそれを逃れようと腰を捩る。
「ふふん、怖い?これはね、女のコをとってもいやらしく変えるクスリなの。
 手が自由なら一日中おまんこを弄くり回しちゃうような、あっさましいメスブタにね。
 肌から粘膜から、ぐんぐん吸収されるから、サイボーグのあなたでも耐え切れないわ」
女は囁きながら、ミレーヌの秘部に薬を塗りこめる。
それもただ塗っているだけではない。
女ならではの巧みな指遣いで、ミレーヌの女の部分を弄んでくる。
ミレーヌは足を閉じてなるべく指の侵入を拒むが、薬液の潤滑を得た細い指を柔肉で防ぎきる事は出来ない。

しばし、女の指が踊り続けた。
「はっ……はぁっ……!!!」
次第に、次第に、ミレーヌの息遣いが荒くなってゆく。
薬物には多少の耐性を持つミレーヌではあるが、この薬品の効果は並外れている。
おそらくは副作用などを度外視し、媚薬としての効果のみを追い求めた薬品だろう。
それによって死者が出ても問題なし、という考えで作られた悪魔の薬だ。
それが聞くのは当然だった。
しかもそれを敏感な秘所の粘膜に、溢れるほどたっぷりと塗り込められているのだ。



「…………っ!!…………はっ…………!!」
ミレーヌは熱い息を吐き、瞳を惑わせながら耐え忍ぶ。
どんどん身体が発情しているのがわかった。
白い肌はほのかに上気し、風呂上りのようになっている。
勃起力の強い乳首も勃ちあがり、先端を封じるクリップでより一層痛めつけられる。

「ほぉら、気持ちいいでしょう?とっくに自分でも気付いてるでしょうけど、
 ナカが私の指をきゅんきゅん締め付けてくるの。もう“濡れてる”し……」

女に見透かされたような言葉を掛けられた直後、ミレーヌはある感覚を覚えた。
危機感。それは絶頂を予見するものでもあった。
しかし、普通の絶頂ではない。薬物による特殊なもの。
感覚や理性をふっ飛ばして引きずり込まれる、諜報員にとって致命的な心地よさ。
女の指と粘膜を密着させている限り、それを避けられない。

「おっ!」
周りで見守る男達から驚きの声が上がった。
ミレーヌが、それまでぴっちりと閉じていた脚を開いたからだ。
秘部を弄られながら股を開く。
浅ましいその動きは、まるで気高い女諜報員が快感に負けたかのようだった。
実際には快楽に負けじとした行動であったのだが、脚を開いた直後、ミレーヌは後悔する。
女の指がより深く潜りこんできたのだ。
脚を開いたことで密着性は下がったものの、それまで触れられなかった部分までもが熱に炙られる。

ぞくぞくとする心地よさがミレーヌの背筋を駆け上った。
「あ、ああ、あっ……!!!」
ミレーヌは震える叫びを上げた。
意思に反して勝手に股が開いていく。愛液が溢れ出す。
「へへ、あの女、とうとうおツユが零れはじめたぜ?」
内股から脚線に沿って伝い落ちる愛液を指差し、男達が囁きあう。

女の指は延々と蜜壷をくじりながら、一旦糸を引いて引き抜かれる。
そして薬液をたっぷりと指先につけ、再びミレーヌの股座へ舞い戻った。
しかし次に指が触れたのは、女の花園ではない。
それより少し後方に位置する、肉の蕾だった。
「あ、お、おしりっ!?」
ミレーヌが目を見開き、女の顔を凝視した。
周りの男達が耳を疑う。普通に股の間に指を入れたように見えたが、後孔だったのか。
「あら、ごめんなさい。さっきの浣腸で緩んでたものだから、つい」
女は笑い、指を前に滑らせて割れた柔肉を弄ぶ。
しかししばらくして、また指の先で後ろの孔を穿り返した。
「ひっ!」
故意だ。ミレーヌはそうはっきりと理解した。
この女は故意に尻穴に薬液を塗りこんでいる。

「いい反応。後ろは初めてなの、エリートスパイさん?
 まぁいくら名のある男と寝たって言っても、こんな所でする紳士さんはいないでしょうしね。
 でもここも解しておかないと。あなたこれから、ここの男共に散々犯されるんだから。
 お口とアソコだけじゃ、到底追いつかないわよ」

女はそうミレーヌの耳に言葉を流し込み、指を蠢かし始めた。



「ん、ンんんっ!!」
ミレーヌは鼻にかかったような声を上げていた。
口を固く結び、瞳もまだ凛としてはいるものの、明らかに昂ぶっている。

事実、肛門に薬液を塗られるのは、膣以上にきつかった。
粘膜なのは同じだが、やはり大腸というものが消化において『水分を吸収する』役目を持つゆえか、
そこに薬を塗り込められると膣以上に激しく火照ってしまう。
また粘膜に限らず、菊輪を刺激されるだけでも心地よかった。
薬が菊輪に触れた瞬間は異常な痒みを感じた。
だがその痒みが、指を抜き差しされる度に言いようもない快感に変わるのだ。
虫刺されを掻くときの百倍ほどの心地よさ。
「くんっ……!!んっは、んン…………!!」
いかにミレーヌとはいえ、人間的な感覚が残っている以上、それに反応してしまう。

女は飽くことなくミレーヌを嬲り続けた。
時にはミレーヌのすらりとした右脚を肩に抱え上げ、大きく開いた後孔へ指を出し入れする。
初めは中指だけだったものが、やがて薬指も交えた2本指になる。
「おしりが気持ち良いんでしょ、ねぇ?」
「ふん。そんな訳、ないでしょ……!!」

女の言葉を否定しながらも、ミレーヌは自覚している。
菊の花のようだった肛門が変わり始めていた。
菊輪の部分が薬の効果で肥大し、小さく盛り上がっている。
そこに指が出し入れされるたび、ぎぽっぎぽっと水気のある音が漏れた。
「あああ゛!!うああ、ああああ!!!」
やがてミレーヌもとうとう声を上げはじめる。
目はなお毅然として女を睨みつけるが、肛門を音を立てて弄くられると、たまらず秘唇から愛液が零れる。
「ふふ、イイ声。そうして解りやすい反応してくれると、責め手としては助かるわぁ。
 反応の凄かった責めを繰り返すだけで、勝手に堕ちていってくれるんだもん」
女は囁きながら、巧みに指を蠢かす。

膣と肛門、その両方を交互に、時に同時に責め立てられるのはたまらなかった。
愛液が溢れ、小便を漏らした時のように膝の横を通り抜けてゆく。
陰核に薬を塗りつけられるのも痛烈だった。
神経の塊であるそこは、薬は触れただけで燃えるように熱くなる。
その場所へ、時に指先で挟むように、時に指の腹で押し付けるように薬を塗り込められてしまう。
「ふあぁああああああああっっ!!!!!」
ミレーヌは身体全体を震わせ、大口を開いて何度も天を仰いだ。

それが、何時間も続けられた。

数時間後、席を外していた男達が部屋に戻ると、女がミレーヌの身体を撫でていた。
「……出来上がったわよ、オスの皆さん。」
床に空のビンが転がっている所から見て、薬をすべて使い切ったのだろう。

ミレーヌは柱に背を預けたまま、むちりとした両脚をだらしなく開いている。
下半身は愛液に塗れ、何度か失禁さえしたらしく、床に薄黄色の液だまりができていた。
とろんとした瞳から涙が零れ、開いた口から乳房いっぱいに涎が垂れ。
「良い顔だ」
すっかり発情したメスとなった女諜報員に、男達が嬉しげな表情を作る。





ミレーヌは後ろ手に拘束し直され、股を大きく開く形で床に転がされた。
2人の尋問官が靴底でミレーヌの左右の膝を踏みつけ、熟れた秘所を公然に晒す。
桜色も鮮やかだった秘唇は赤く膨れ、時折り痙攣を起こしながら奥から蜜を吐きこぼす。
誰も触れてすらいないのにだ。

「薬はすっかり浸透しているようだな」
ケベルがその様を眺めて言った。
「火照ってたまらんだろう、今お望みのものをくれてやる。死ぬほどにな」
ケベルの言葉が終わらぬうちに、尋問官達がミレーヌを取り囲む。
カチャカチャとベルトを外し、ギラついた目で見下ろしながら。
「……っ!」
輪姦されるのだ、とミレーヌの本当が告げた。
妙な薬品をたっぷりと秘所に塗り込められ、昂ぶらされた状態での輪姦。
その快楽は心の持ちようで制御できるものではないだろう。
だが、ミレーヌにも矜持がある。
身体一つで地位ある男達を骨抜きにし、情報を引き出してきた女諜報員としての矜持が。

「も、もう我慢できねえ、犯るぞ!!」
男の中でも若めの尋問官がミレーヌに覆い被さる。
勃起しきった逸物を秘肉に擦りつけ、愛液を塗して挿入する。
「ああっ!!」
男は心地良さそうに声を上げた。そのまま獣のように腰を振りたくる。
「ああすげぇ、すげえよ!!!」
何度もそう声を上げて。だが、次第にその様子がおかしくなり始めた。
「うわ、やばい……やばい、何だこれ!?」
男の声に浮かぶ明らかな焦り、そして彼に組み敷かれるミレーヌの薄い笑み。
「うあああ、うあああああ!!!!!」
男はとうとう声を震わせ始めた。
「おい、どうした!?」
周りの尋問官達が男に問いかけると、男は助けを求めるように彼らを振り仰ぐ。

「こ、こいつの中、おかしいんだ。異常な締め付けで、根元から先っぽまで、膣が扱き上げてくる。
 ありえないような名器なんだよ、普通じゃねえよこれ!!
 き、きき気持ちよすぎて、さっきから俺もう、5回ぐらい射精させられてるんだ。
 このままじゃ袋の中身、根こそぎ全部搾り取られちまう。
 しかもナカの締め付けが強すぎて、抜こうとしても抜けねぇんだよ!!」

男は真っ青な顔で周りの男達に訴えかける。
その様子に、普段は強気な尋問官達も汗を流した。
「あら、この程度でへばったの?この私を犯すっていう位だから、良い度胸してると思ったのに」
ミレーヌは男を弄ぶように囁いた。
男の視線がいよいよ恐怖に震える。
しかし男達がミレーヌの手中に陥る中、先ほどまでミレーヌを狂乱させていた女が笑った。




「情けないわね、女スパイを尋問するエキスパートでしょう。
 この女は強がってるだけよ。本当は薬で身体が火照ってしょうがないのに、無理して隠してるの。
 膣で翻弄されるっていうなら、まずは先にそれ以外で蕩かしちゃいなさい。
 たとえば……その子が弱い、おしりの穴とかね」

女の言葉に、男達が得心のいった顔になる。同時にミレーヌの顔には緊張が走った。
「……なるほどな。遥か昔に居たっていうくノ一みたく、性技を使ってたわけだ。
 だが普段使わないケツの穴なら、それも発揮しようがねぇ」

男の一人がミレーヌ達をひっくり返し、尻の穴を晒させる。
少し前まで蕾のようだった後孔は、女による嬲りでほのかに盛り上がり、喘いでいた。
「さぁて、じゃあこっちも……頂くか!!」
男が後孔に怒張の先を宛がい、力を込める。
太さのある怒張は少しずつ、少しずつ括約筋の抵抗を押しやり、ある時吸い込まれるように腸内へ入り込んだ。
「あぐっ!!」
ミレーヌが苦悶の声を上げる。先ほどまでとは全く違う声色だ。
この声で、一気に場の魔法が解けた。
恐ろしい女諜報員から、ただ2つ穴が開いているだけのメスへと認識が改まる。
「おらおら、どうだ!あ!?」
後ろの男はミレーヌの腰を掴み、叩きつけるように尻穴を刺激する。
「あう!!ああ、違う、そっちは……違……ぁう!!」
ミレーヌは非難の叫びを上げながら視線を惑わせた。
必死に心を落ち着け翻弄しようと試みるが、未経験の尻穴での性交に心惑わされてゆく。
一突きごとに、ミレーヌは菊輪を擦られる奇妙な快感に酔いしれた。
「うあ、ああ……ぁ!!!」
やがて、悩ましい声と共に白い喉が晒され、膣壁は繋ぎとめていた男を取り逃がしてしまう。

「ふうぅ……やっと解放されたぜ」
最初に襲い掛かった男が逸物を抜き、ミレーヌの傍を離れた。
「お疲れさん。じゃ、次は俺だな」
間髪いれず、次の男がミレーヌの膣内へ侵入する。
尻穴を犯されている最中のミレーヌに、それをあしらう術はない。
「う、くうぅ!!!」
「おう何だ、入れただけで甘ぇ声だしやがって。もしかしてイッたのかよ?」
男になじられ、ミレーヌは睨み返した。
だがその顔には隠しようもないほどの快感が窺える。

「口に咥えさせんのはまだやめとけよ。大事なモノを食い千切られちまうかもしれんぞ」
そう若い衆に声を掛け、ケベルは壁に寄りかかった。
「経験談ですか?」
横に並び、女が言う。
「バカ、あくまで可能性だ。……しかしまあ、あの女狐もそうとう一杯一杯だな」
「それはそうですよ、あの薬を全部塗りこんだんですから。
 私が嬲ってた時も、最後の方は下半身が痙攣して止まらなくなってましたしね。
 もう今じゃ子宮口を突かれるだけで身悶えしちゃうぐらいの筈ですよ」

「尻もか?」
「あら、お尻だって、入り口を擦る動きとか、奥で子宮裏を擦る動きが凄く気持ち良いんだから」
「ほう、女は大変だな」
「あの子の場合はまた特別だけどね。あの薬を使ってどんな気分になるのかは、さすがに試したくないしさ」



「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ……!!」
ミレーヌの喘ぎ声が呼吸に合わせて吐き出される。
女一人に対するまぐわりは果てることなく続いていた。

「おお、きついきつい。尻の穴がこんなにイイもんだとは思わなかったわ」
「前の穴も、こんだけヤり続けでもまーだ締まるぜ」
膣と尻穴に入れ替わり立ち代わり逞しい肉棒が挿入され、美しい女体を悶えさせる。

さらには2穴だけでは足りないと、口を使おうとする者も出てくる。
「いくらサイボーグっつっても、こいつを嵌められちゃあ噛めねぇだろ」
そう言って、中央部に穴の開いた鉄製のギャグをミレーヌの口に嵌め込む。
そして押さえつけたミレーヌの口へ逸物を捻じ込んだ。

「……おえ゛っ、え゛ぼっ、え゛、おう゛ぇ、う゛ええ゛ぇえ゛ッッ!!!」

数時間後、栗の花の匂いに包まれた部屋には濁った声が響いていた。
「おお気持ちいい、喉奥まで最高だわコイツ」
椅子に腰掛けた男がそう呟いた。
彼の前では、後ろ手に縛られたミレーヌが背後から犯されている。
そしてその枷の嵌められた口は、椅子に座った男の逸物を深々と呑み込んでいた。
というより、髪を押さえつけられて“呑み込まされている”、という方が正しい。
先ほどからの濁った声は、その喉奥から発せられているようだ。

「しかしその女、ディープスロートまで会得してやがったんだな。
 おめぇのそのデケェのをそこまで咥え込めるってのは、誰でもできる事じゃねぇぞ」
何度かミレーヌを犯し終え、一息ついた男が声を掛けた。
椅子に座る男は満足げに答える。
「ああ、何もかも一級品さ、こいつは。だがさっきから、流石に苦しそうにえづいてやがる。
 こりゃあ吐くのも時間の問題だろうぜ」
そう言いながら、ミレーヌの頭を掴んで前後に揺さぶり始めた。
「あごぉおお゛お゛っ!!!!」
さしものミレーヌも、喉奥を逸物の先で突かれる行為には耐え切れない。
何度も何度もえづき上げ、やがて白い喉を波打たせる。
「おえ゛っ、げぼッオ゛……!!!!」
周りで歓声が上がる中、ミレーヌは枷に空いた穴から黄色い半固形のものを吐き出した。
「おお熱い、しかも吐いてるのが、すげぇ顔だ!……っと、あぁ出ちまった」
興奮のあまりか、椅子に座っていた男はまさに嘔吐しているミレーヌの喉奥に精を流し込んだ。
吐き出される吐瀉物に、白い濁りが混じる。

「へへ、これでこの女の下痢便も、吐瀉物さえ見ちまったわけだ」
「最初見たときはおっそろしく美しい女神にも思えたもんだが、こうなっちゃただのメスだな」
男達は口々にミレーヌを罵りながら、それでもなお彼女を犯し始める。
神聖さこそ薄れたものの、依然交尾をしたいメスだ、という気持ちは変わっていないようだ。


「 ひや……やひゅまへ、へ……ちょっと、ひゃひゅ、まひぇ……へ……!! 」


口枷の奥から漏れるミレーヌの声に、誰も耳を貸すものはない。
たとえ少し休もうと思っていても、休ませて欲しいと言われれば一気に責め立てる。
何をしてでも心を折りにかかる。
ここはミレーヌにとっての敵地なのだ。
それが解っていて、なお助けを求めてしまうほど、ミレーヌも極限を感じたのだろうが。







数十人の男達がとうとう精を吐き切って打ち止めになった頃、部屋の扉が開いて新しい男が入ってくる。
ミレーヌは涙に滲む瞳で入り口を見やり、その目を見開いた。

入ってきたのは明らかに真っ当な人間ではない。化け物だ。
皮膚は爬虫類のそれのように薄緑色をし、亀甲状のうろこも見て取れる。
盛り上がった手足の筋肉もヒトというよりは獣のそれだった。
特に異彩を放つのが逸物で、長さはミレーヌの顔より大きく、太さは彼女の握り拳ほど、
そしてその亀頭部分は、キノコの傘のごとくに拡がっている。
「…………!!」
化け物の異常さに、さすがのミレーヌも驚きを隠せない。
彼女や他のゼロゼロナンバーズが00機関で肉体改造を受けたのと同様、
目の前のこの男もまた、明らかに人為的に改造された生物だ。
捕らえた女を犯すために。

「驚いているようだね、まぁこれを前にしては仕方がない。
 だがモノが大きいだけではないぞ。こいつは人間だった頃は強姦の常習犯でな。
 毎日女を抱かなければ満足できんほど性欲が旺盛で、
 しかし逸物が大きすぎるために、商売女にさえ断られる始末だった。
 今では改造で理性を失い、ただ女を犯したいだけの化け物になっているがな」

尋問官が解説する間にも、改造された男はミレーヌを凝視していた。
血走った瞳。理性のある様子ではない。

「こいつは現在、もう2週間に渡って女を抱いていない。
 ミレーヌ、お前が怪しい動きをして、我々の作戦を妨害していたせいだ。
 今のこいつなら、何十時間でも眠らずにお前を犯してくれるだろう。
 さっきまでのセックスとは、質も量も段違いというわけだ。
 最初の男の不甲斐なさに憤慨していた君の事だ、嬉しいだろう?
 せいぜい狂わない程度に愉しめよ」

尋問官はそう言い残し、ミレーヌに布でできた轡を新たに噛ませて部屋を出た。
他の人間も、化け物を気味悪げに見ながら後を追う。
ミレーヌを火照らせた女だけは、かわいそかわいそ、と楽しげに繰り返していた。

化け物と2人きりになった途端、ミレーヌの総身に悪寒が走る。
ここまで解りやすい雄の性欲を、彼女はかつて受けた事がなかった。
「んん!!!」
猿轡の下から悲鳴を上げつつ、ミレーヌは身を捩る。
化け物はそれを押さえつけ、傘の張った極太を、彼女の恥じらいに押し付けた。



「んんん゛ん゛ん゛!!!んんんん゛ン゛ン゛ン゛ーーー!!!!」

数十分後、部屋には猿轡に殺された痛々しい叫びが響いていた。
女……ミレーヌの秘部には、彼女の腕と遜色ないほどの大きさを誇る怒張が出入りしている。
怒張は開かれた脚の間に深々と入り込み、女の腰を跳ね上げさせた。
明らかに最奥に達していると解る長さだが、それでも七割ほどしか入っていない。
化け物はそれを全て入り込ませたいとでも言うように、ミレーヌの腰を掴んで叩きつける。
「んんんンン゛ーーー!!!!!」
その動きのたび、哀れな犠牲者は目を見開いて呻きを上げる。
およそ普通ではない情景だ。セックスをするべき種族が違っている。
まるで人間がリスと交尾をするような異常性がそこにはあった。

しかし、その結合部は愛液に塗れている。
通常では考えられないほどの透明な飛沫が上がり、女の内腿を流れてゆく。
それはその交尾の異常さゆえか、女が長らく嬲られ続けたゆえか、あるいはその両方か。
いずれにせよ、女はその交尾に狂おしいほどの快感を感じているようだった。
そして、化け物の方も。
「オオオオオオォォ!!!!」
明らかにヒトならぬ咆哮を上げながら、化け物はミレーヌを犯し続ける。
ミレーヌは後ろ手に縛られたまま、顎を床に擦り付け、身体全体を揺らされてそれを受け止める。
いや、受け止めるしかなかった。

ぬちぬち、ぬちぬちと結合の音が繰り返される。

剛直を一突きされるたび、女の美しいふくらはぎに力が籠もった。
暴虐的な傘が奥から引きずり出される時には、華奢な背中が快感にぶるりと震える。
息は刻一刻と荒さを増し、やがて気丈に前を睨んでいた瞳までもが酩酊したように据わりはじめた。
ある時猿轡が外れ、口の端から気持ち良さそうに涎が滴り落ちた。
よく見れば、その唇が小さく動き、何かを呟いているのが見て取れる。

「おい、女の口元を拡大しろ!」
ミレーヌの様子からそれが重要な情報だと見抜いたケベルは、モニター前の部下に命じた。
ミレーヌの口元が拡大される。声は結合の音が大きすぎて聞き取れないが、
読唇術専門の尋問官が口の動きを訳す。
ミレーヌは、薬と効果と快感で意識が混濁する中、こう小さく呟いていた。

『ぜろぜろ……すりー……、ぜろぜろ……ふぉー……、ぜろぜろ……せぶん……。
 …………はやく…………はやくたすけに……きて…………
 わたし……もう……げんかい…………。もうなんにちも……たえら……れない…………』

「なるほどなるほど、003や004というコードネームを持つお仲間が助けに来る、という訳か。
 つまり以前からのこいつは陽動、別働隊が今も動いているという事だな?
 通りでこいつも悠長に構えているわけだ。……おい、至急本部へ連絡を繋げ!
 D~F地区の全隔壁も封鎖しろ、こいつの仲間が潜伏しているとすればそこだ!!」

ケベルの命で、場の人間たちが動き始める。
まさに作戦決行へ向けて機を窺っているゼロゼロ部隊を捕縛するべく。
イーストエリアの機動部隊もザルではない。
おおよその作戦内容が読めれば、捕まえる時はきっちりと捕まえる。
特にミレーヌの機転がない今なら。
事態は絶望的な方向へ動いていた。
だが延々と化け物に犯され、今ついに尻の穴まで押し広げられようとしているミレーヌに、それを知る術などなかった。





『ああああぁああぁあああああ゛あ゛あ゛っっ!!!!!!!!』

映像内に絶叫が響き渡った。
裏返り、音程も不規則なので聞きづらいが、ミレーヌの声だ。
映像の彼女は水平な台に拘束され、体中に電極を付けられて電気責めに掛けられていた。

膣と肛門に電極棒が捻じ込まれ、乳首、陰核にもクリップが挟まっている。
脇腹や下腹部、手足など至る所にも吸盤が張りついている。
その状態で火花の散るような電流が流されるたび、ミレーヌの身体はびくんと跳ねた。
美貌は目を見開き、大口を開けて、まるで溺れる人間の表情だ。

全身は汗で濡れ光っていた。
首筋から、肩口、太腿の付け根に至るまでの筋肉が盛り上がるほどに緊張しきっている。
電流で自律神経が壊れたのだろう、体液も垂れ流しだった。
涙、涎、あぶく、愛液、腸液、小便。
電流責めを行う尋問官達は、取り囲むように上からミレーヌを見下ろし、
股座から溢れる小便や愛液を指差して笑う。
露骨に匂いを嗅ぐ者さえいる。
ミレーヌはその中央で、電流責めにびくんびくんと反応を示しながら、ただ絶叫を繰り返す。

電流責めの後は、火照りきった身体を男達に輪姦された。
筋肉が弛緩しきっているために膣の締まりが無い、と不平を漏らす男達の手で、
尻の穴に電極棒を差し込まれて微弱な電気を浴びながらの性交。
これが凄まじかった。
尻穴深くまで流れる電流が子宮を肉壁腰に刺激してくる。
意思とは無関係に膣がぎゅうぎゅうと締まり、肉棒の感触を伝えてくる。
加えて電流責めで蕩けに蕩けきった子宮口への、まるで容赦のない突き込み……。
それらの複合効果には、いかに性経験豊かなミレーヌも耐え切れない。

一人の性交がやっと終わったと思った直後、また別の男が覆い被さる。
それを10人以上の数で延々と繰り返される。

何度も何度も、何度も絶頂を迎えさせられた。
背筋を太い快感の電流が走りぬけ、脳をスパークさせる。分刻みで目の奥に火花が散る。
イキすぎて死ぬ、とミレーヌは思った。
途中からは床につけた頭が溶けたように感じており、そして、映像が途切れる。




「……また、その映像ですか」
部屋の扉を開け、一人の尋問官がケベルに話しかける。
「ああ」
ケベルは黒い画面を見つめたまま答えた。
「ミレーヌ・ホフマンの脳に記録されていた、最後の情景……ですね。
 この尋問を最後に、彼女は他のゼロゼロナンバーズ同様に脳を暴かれ、解析された」
「その通りだ。……これが、最後だった」
「……ケベルさん、まさか、ですが」
尋問官は画面を見つめ続けるケベルに問う。
「彼女に気でも?」
ケベルは小さく肩を竦め、首を振った。

「俺に恋なんて人間らしい感情はもうないさ。だいたいあれはサイボーグだ、人間じゃねぇ」
ただよ、とケベルは続ける。
「サイボーグでも、心はあった。アイツの脳の回路には、色んな物語が詰まってた。
 ……つい余計な事考えちまうほどにな」
ケベルはそう吐き棄て、言葉に詰まる尋問官の肩を叩いた。

「ま、とりあえず今日は飲もうや。今やウェストエリアに気を遣うこともねぇ。
 我らの軍が世界一、我らの酒場が世界一だ。
 009-1のおかげで……な。」



                             FIN
続きを読む
アクセスカウンター

    ありがたいコメント
    さくさく検索
    月別アーカイブ
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    プロフィール

    kunsecat

    • ライブドアブログ