大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2011年05月

少年スパイ セラ

※ショタアナル注意


その少年兵は、どんな拷問も声すら上げずに耐え忍んだ。
情報を漏らす事も無論ない。
唯一解っているのは、セラ=エッゲルトという活動に使っていたコードネームのみ。

「真っ白でキレイな身体が、こんなにボロボロになって……。
 もう一度冷静になって考えなよ。
 その情報は、そこまでして守る価値のある物なの?」

尋問官の女が少年に水を与えつつ体を撫で回す。
繰り返し鞭や火箸で痛めつけられた、北国出身とおぼしき白い手足。
女はそれを労わる態度を見せるが、白肌を可笑しそうに痛めつけていたのもまた、彼女に他ならない。

「子供だてらに特殊な訓練を受けてるスパイよ、痛みには強いんでしょうね。
 だったら……責めの趣向を変えるしかないわ」

別の尋問官がそう告げながら、少年の背後に回りこんだ。
細長い指が肉付きの甘い尻を掴み、割り開く。
少年の瞳が背後を振り返った。

「あらぁ、可愛いお尻の穴ねぇ……桃色で、きゅっと窄まって。
 おいしそうな性器よ、これは」
女の指が薬壷からたっぷりと軟膏を絡みつけ、少年の尻穴に塗りこめる。
「……やめろっ!」
セラは小さく拒絶の言葉を吐いた。初めて発する声だった。

「ふふ、嫌なの?やめて欲しければ、どうすればいいかは解ってるでしょう?
 坊ちゃんそのものって顔してる割に、大人の駆け引きを心得てるみたいだしね」
女は尻穴の中で指を蠢かしながら囁いた。
少年の眉が顰められ、くの字に折れた左脚が足首の鎖を煩く鳴らす。

指はぬちゃぬちゃと音を立てて尻穴の中を動き回った。
「ああ、よく締まるわ、具合のいい腸を持っているものね、財産よこれは」
女はセラの尻穴を賞賛する。
「……アっ……!あ、ああっ……、あッ………ア…!!!」
セラは次第に、自らの肛門を責め苛む指使いに声を押さえられなくなっていた。
まるで少女、いや天使のようなその苦しみ声は、尋問官である女達を大層喜ばせる。



「さて、そろそろ頃合いね」
かなりの時間が経った頃、女はセラの尻穴から指を引き抜いた。
肛門は指2本の大きさにぽっかりと口をあけ、指に繋がる糸を引きながら内粘膜を覗かせている。
女はそれを満足そうに眺めながら、自らの秘部に淫具を取り付けた。
ペニスバンドと呼ばれるものだ。
ゴム製の帯から2つの突起が出ており、その片方だけは成人男性の平均よりもやや大きい。
象の牙を思わせる逞しさだった。

「ほぉらご覧なさいな、立派でしょう。これが今から、あなたの尻に入るのよ」
「…………ッ!!」
擬似男根を鼻先に見せ付けられ、セラが息を呑む。
不安からか、その白い膝頭がきゅ、と擦り合わされた。
その背後に女が陣取り、牙の先を少年の蕾に宛がう。
そしてめりっと押し入った。
「ンん゛っ!!」
少年の鼻から声が漏れる。

牙の先端は桃色の輪を突き破り、ついにその内部へと潜り込んだ。
セラは歯を食いしばって恐怖を露わにした。
「や、やめっ、ろ……!!むりだ、裂けるっ、裂けちまうっっ……!!!!」
「そんな事ないわ。尻穴が美味しそうに咥えこんでいくのが、ここからだとよく見えるもの。
 むしろスムーズに入っていく方よ。あなた、本当は経験があるんじゃない?
 金貨が価値を持たないこの街で、男に身体を売って情報を得ていたんじゃないの?
 男好きもしそうな顔だしね」
肛辱を嫌う少年に、女が嘲りを飛ばす。
その直後、ついに牙は根元まで少年の体内に包み込まれた。

「どう?裂けちゃうなんてカマトトぶってたけど、ゼンブ呑みこんじゃったじゃない。
 奥まで届いてるの、解るでしょう」
女がそう囁きながら、奥まで入り込んだままの状態で腰をうねらせる。
牙の先端がセラの腸の奥を広げ回す。
「うあっあ、ああ、あ゛……!!」
少年は目を見開き、引き締まった両の腿を震えさせた。



「さぁ、じゃあいよいよ犯しにかかるわよ」
女がはっきりとした声で告げ、ペニスバンドを浅く抜き出した。
そして少年の細い腰を掴むと、丁寧に、かつ力強く腰を打ち付ける。
「う゛あ゛っ!!?」
少年が低めの唸りを上げた。
「どう、今の凄かったでしょう?前立腺がごりって擦れちゃったの、解るよね。
 オトコノコにとってこれ以上気持ちいい事なんてないのよ」
女は言いながら、さらに何度も同じ動きを繰り返す。
「ん゛っ!!んンン゛っ!!!」
セラは下唇を噛みしめてえもいわれぬ感覚に耐え忍んだ。

だが心で耐えても、体の反応が止められない。

「あー、セラくんったら勃起してきてる!」
「あ、ホントだー!うふふ、キモチいいんだねぇ」
少年の前身にぶらさがる男の象徴が隆起をはじめていた。
尻穴から前立腺を直接擦られているのだから、止めようもない反応だ。
ゆえにセラは、自らの赤い逸物が女達の前で包皮を剥き上げるのを、恥じらいながら晒す他なかった。

そして、勃起するだけではない。
背後の女がごりごり、ごりごりと前立腺を擦りあげるうち、逸物の中に熱さが生まれる。
はじめ朧だったそれは時とともにはっきりとした大きなものとなり、やがて。
「あっ!」
嬉しそうにする女の眼前で、精となって溢れ出る。
まずは鈴口から滲む程度に数滴が滴る。
次いで堰を切ったような第二の波。こちらは小便を思わせるほどにびしゃりと床に浴びせかかった。
床に白い液だまりができたことから、小便ではないと解る。

「きゃあ、凄い勢いね!!」
「ふふ、溜まってたんだろうねぇ。若い男の子が、少なくとももう3日はシてないんだから。
 可哀想だから、皆でたっぷり搾り取ったげようよ!」
黄色い声がざわめく中、少年は細い脚を震わせながら未知の快感に震えていた。
とてつもなく気持ちがいい。だが明らかに危険さも孕んだ気持ちよさだ。
意思で押さえ込めるものでは、ない。



尻穴責め。それは肛門を犯すだけという、この上なくシンプルで、しかし痛烈な拷問だ。
「あっ、ああ、ああああっ、ンああああうっ!!!!」
セラは今も、吊り下げられたまま女の淫具に肛門を責め苛まれている。
「すっごーい。あんな太いのが、本当にお尻に入ってるんだねー」
「驚くよね。お尻がまくれ上がる所までよぉく見えるわ」
1人が犯し、数人がその様を見て嗤う。
その状態が何日も何日も続いていた。

尻の穴だけを犯され続ける毎日。休みはなく、排泄さえも赦されず、延々と尻穴を嬲られる。
セラの下半身は自らの放った生乾きの精で白く汚れていた。
いかにも心地良さそうな射精ぶりだが、今の少年の顔は苦悶のみを映している。
とうに快感を得る域は越え、今はただ、常に下痢便を催すような奇妙な感覚とともに、ぬるい腸内を犯され続けるだけだ。

終わらない、休めない、休まらない。
ただ声だけが、ああ、ああと女のように続く。
体中に毛虫の這うようなおぞましさが巡っている。快感に近い、しかし全く別の何かだ。
それが脳の中までを埋め尽くした時、自分は自我を失い発狂するだろう。
それだけは確信できた。そしてその事態は、もうすぐそこに迫っている。


「おねがいです…………もう、もうやめてくださいっ!!
 なんでも話しますから、もう、ボクのお尻を壊すの、やめてください……!!!」


頭の中にその言葉が響き、しかしすぐにそれが夢だと気付いてセラは首を振る。
今回は乗り切れた。
だが幼いスパイのなかで、もはやその現実と夢の境界は、極めて曖昧なものとなっていた……。


                         FIN
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ヒーロー・ドラゴンキッドの“死”

『TIGER & BUNNY』ドラゴンキッドの腹責め物。
スカトロ表現に加え、やや特殊な腹責めあり。




『NEXT』と称される特殊能力者が世に現れて45年。
ここシュテルンビルトでは、日夜様々な犯罪者とヒーローの戦いが繰り広げられている。
今回の事例は、それらの中でも特に世の注目を集めていた。
近年街を脅かしている強盗団が、ヒーローへ向けて挑戦状を残したからだ。
挑戦状を叩きつけられてこれを逃せば、イメージの低下は避けられない。
そう考えた各スポンサー及びテレビ局は、何としてもこれを捕らえよ、とヒーローに厳命を申し渡す。

かくして夜の10時。ヒーロー達は一団が現れると思しきエリアを囲んでいた。
空にはスカイハイ、東の袋小路にはロックバイソン、西に続くストリートの6カ所ではその他のヒーローが目を光らせる。
しかし、不審者が訪れる気配は一向にない。早々にシャッターの閉まった店舗がいくつか見受けられるとはいえ、通りはおおよそいつも通りに稼動していた。

「なんか拍子抜けだな……。こんだけ俺達が見張ってる中で、ホントに強盗団なんて来んのか?
 タダの悪戯じゃねーの」
ワイルドタイガーこと鏑木虎徹が大きく息を吐いて肩を竦めた。
「気を抜かないでください、オジサン。ただでさえいつもボーッとしてるんだから」
相方であるバーナビーが赤いマスクで虎徹を見下ろす。
何だと、と虎徹が言い返すのをよそに、彼もまた腰に手をあてて嘆息した。

「……とはいえ、確かにこんな場所へノコノコと現れるとは考えにくい。
 上のほうの人達は、何を根拠にこんな場所へ僕らを並べるんだ」
「何でも、有力な筋からのタレコミがあったらしいわよぉ。詳しい事は知らないけど」
バーナビーの呟きに、やや女めいた口調のファイアーエンブレムが答える。
「タレコミ、ですか……。まぁ何の根拠もなく人数を散らすよりはマシかもしれませんね」
バーナビーが言い、会話に一旦の途切れが出来た時だ。急に歓声が上がった。

「あれ、なんか美味しそうな匂い!」
ショーウィンドウにもたれていたドラゴンキッドの声だ。
細い路地へ少し入った所に屋台が出ており、その匂いを嗅ぎつけたらしい。
醤油が焼け、砂糖が焦げるなんとも香ばしい匂いが漂っている。
赤い提灯と、『DANGO』と書かれた暖簾が目を引く屋台だ。
「うわぁ、お団子だっ!あれニッポンのお団子だよ!!」
日本通である折紙サイクロンがキッドと同じく目を輝かせる。
彼に限らず、このシュテルンビルトでもかつての日本文化はカルト的な人気を誇るため、
週に何度かはそのような『和』の催しが見受けられた。



「ほらほら、焼きたての熱々だよ!ヒーローさん達、これからひと踏ん張りするんだろ?
 腹が減っちゃあ戦はできないぜ、安くしとくからよ、1本どうだい!!」
中年の域に入った店主が声を張り上げる。
その前ではすでにドラゴンキッドと折紙サイクロンが串を手にかぶりついており、
至福の笑みを浮かべていた。
「あら、美味しいわぁ。見た目よりずっと繊細な味がするのね。癖になりそ」
ファイアーエンブレムも指先で串を引き抜いて賞賛する。
「美味い!そして、デリシャスだ!!」
「へぇ、結構いけるスイーツね」
さらにはスカイハイ、ブルーローズ。
「おお、マジでうめぇなこれ!!」
「ああ、ちょうど腹減ってたところだし、余計にな!」
末には虎徹、そしてロックバイソンまでもが匂いにつられて輪に混じっていた。

「ちょっと先輩達、そんな事してる場合じゃないでしょう!
 僕らは強盗団を見張ってる最中なんですよ。
 大体カメラも回ってるかもしれないのに、僕達ヒーローがこんな……」
1人輪の外にいるバーナビーにも、湯気の立つ串を手にした虎徹が迫る。
「そう言わずに、バニーちゃんも食えよ。何時間もこんなトコにいて、腹減ったろ。
 まだ何の事件も起きてないんだし、カメラも回ってねえさ」
「僕は結構です。第一、手が汚れそうだし」
「いいから喰えって、美味いから!!」
いつもの調子で、虎徹が無理矢理にバーナビーに串を渡す。
バーナビーは溜息をつきながら仕方なく団子を口に運んだ。

途端に鼻を通り抜ける、砂糖の香ばしい香り。
醤油の混じった甘辛いタレが味覚に染み渡り、唾液を分泌させ、
柔らかな団子の食感が口に心地よさを加える。
噛みしめると不思議な弾力とともに味わいが深まり、飲み込むのが惜しいほどだった。
「……おいしい……。」
バーナビーは思わず呟き、嬉しそうな虎徹に気付いて慌てて顔を逸らす。
遠方で爆発音が響いたのは、その直後だった。


『西4キロの地点で爆発を確認、各ヒーローは至急現場に向かいなさい!』

『ヒーローTV』のプロデューサーであるアニエスの声が無線から響く。
団子に頬を緩める8人のヒーローは、すぐに表情を引き締めて立ち上がった。
だがその瞬間、1人の表情がさらに変わる。

ぐぎゅるるるるるぅ…………。

暗雲が立ち込めるかのような腹鳴りは、ドラゴンキッドことホァン・パオリンの腹部から漏れ聴こえた。
「う゛っ……!」
キッドはヒーロースーツの腹部を押さえ、内股になって壁に寄りかかる。
その額には早くも脂汗が浮き始めていた。
調子に乗って団子を食べすぎた、とキッドは後悔する。
空腹のうえに美味だった事もあり、あのメンバーの中でも特に豪快に団子を平らげていたのがキッドだ。

「ねぇ、大丈夫?」
折紙サイクロンがキッドの顔色に気付いて身を案じた。
キッドは汗の浮く顔に無理矢理笑みを作る。
「わ、悪いけど、ボクちょっとトイレに寄ってから行くね」
「解ったよ。強盗団は僕らの方で何とかしとくから、気にしないで!」
折紙サイクロンの気遣いを嬉しく思いながら、キッドは一礼して路地裏に入る。
路地を通り過ぎた辺りに公衆トイレがある事を知っていたためだ。
だが事はそううまく運ばない。
この犯罪の満ちたシュテルンビルトにおいて、キッドがヒーローである以上は。

「……ごきげんよう、ドラゴン・キッド」
路地の脇から突如、数人の男が姿を現す。
いずれも武闘派を思わせる立派な体格で、フルフェイスのマスクと特殊な防護服を身に纏っている。
ただのチンピラではない事は明らかだった。

『おーっとぉ!?いきなり強盗犯の集団とヒーローの遭遇があったようです!
 いち早く犯人に辿り着いたのは、稲妻カンフーマスター・ドラゴンキッド!!!』

ヒーローTVのアナウンサーが声高に宣言する。
ビルの上と路地の出口から撮影も行われているようだ。
普段なら歓声を受けて心地よくなる場面であるにもかかわらず、今のキッドの表情は険しかった。



「どうかしたんだろう?顔を見れば一瞬で解るぜ」
男の1人が嘲笑交じりの声を掛けた。
キッドは腰を落とし、両端に龍を象った棍を構える。臨戦態勢だ。
じり、と男達が歩み寄った動きに合わせ、キッドも攻勢に出る。
「はあっ!」
棍を力強く地面に突きたて、それを軸に身を回転させての回し蹴り。
それでまず1人を昏倒させるつもりだった。しかし。
「お……っと、あぶねぇ!」
キッドの蹴りは、狙った男にすんでの所で回避されてしまう。
「っ!?」
キッドの顔に動揺が浮かんだ。
しかしそのまま硬直するキッドではなく、着地した後の余力を利用して棍を勢いよく振り回す。
風切り音とともに円と化した棍は、間違いなく数人にヒットした。
だが、それでも倒れる者がいない。

「ぐ、う……!!」
遠心力を失った棍が手中で直線に戻った頃、キッドは膝をついて呻いていた。
ぐるるるる、ぐぉおおうるるる……。
細い腹部の鳴りが、いよいよ重く断続的なものになっている。
決定打が放てないのもそのせいだった。
格闘において最も重要な、丹田の氣が散漫になっている。
強烈な便意の中、括約筋を引き締めようとするばかりで、その上に力が振り分けられない。

「おいおい、俺達ゃまだ何にもしてねぇってのに、もうヘバったのかよ。
 それでよくカンフーマスターが名乗れたもんだぜ」
蹲ったキッドに男達の嘲笑が浴びせられる。
その直後、キッドはおもむろに顔を上げ、男達へ掌を向けた。
「やあぁッッ!!」
その小さな掌から、青白い光が迸る。電撃を放つNEXT能力だ。
たとえ身体が満足に動かずとも、『稲妻カンフーマスター』は無力な訳ではなかった。
まさしく稲妻のような電撃が辺りを白く染め上げ、煙とともに焦げた匂いを立ち昇らせる。
「……ちょっと、やりすぎたかな」
キッドはそう呟きながら、棍を頼りに立ち上がった。
しかしその視界から煙が薄まった時、その目が大きく見開かれる。

男達は、立っていた場所から微動だにしていなかった。
避ける動作すら見せず、正面からキッドの全力の電撃を喰らい、泰然と立っている。

「……若いねぇ、稲妻カンフーマスター。俺達がヒーローの対策をしてないと思うのかい。
 このスーツとヘルメットは絶縁体で出来ている。
 耐火性にも優れ、さらには虎の咬合力でも食い千切れない強靭ぶりさ」

煙を上げながらゆっくりと迫る男達に、キッドは唇を震わせた。
勝てない。実力に劣っているわけではない。だが今のこの状況では、勝てない。
持ち前の戦闘勘からそれを悟ったドラゴンキッドは、それでも棍を取る。
「うぅあああああッッ!!!」
地を蹴り、腰の捻りを存分に活かして棍を振るった。
しかしその一閃は男が身を屈めたことでかわされ、別の1人に懐へ潜り込む隙を与えてしまう。

「あ…………!」
キッドは目を見開き、脇の下に迫る男をその瞳に映した。
拳が迫る。男のゴツゴツとした拳に厚手のグローブを被せ、さらに金属で過剰に補強した凶器。
それが、ごりっと自らの腹部へ入り込むのを、キッドははっきりと感じた。
ヒーロースーツなど役に立たなかった。
元より『ドラゴンキッド』のスーツは身軽さを重視し、防御力を二の次としたものだ。
腹部に当たる部分は同様の理由から特に装甲が薄い。
そんなもので、補強された男の鉄拳を防ぎきれる筈もなかった。



カメラには、下腹に拳が打ち込まれた瞬間、キッドの身体が持ち上がった映像が残されているという。
「うぉ゛おはっ……!!がはっ、あ゛っ……は、がア……っ!!!」
キッドは横様に倒れこみ、腹部を押さえて激しく咳き込んだ。
唇の端からかすかに黄色い液が漏れている。
内臓への壊滅的なダメージを思わせる、予想以上の一撃だった。

「ああ、そういや言い忘れてたな。俺達の着てるこのスーツのウリは、防御性能だけじゃないぜ。
 攻撃力も、お前らのパワードスーツの強度を考慮して設計してあるんだ」
男が言い、キッドの後ろの男に目配せした。
するとその男は蹲るキッドの腋を抱え込み、無理矢理に引き起こす。
「うう……!!」
腕を取られたまま無防備な腹部を晒す格好だ。キッドの顔が歪んだ。

「さて、カンフーマスター。さっきは何がどうなってるか解らなかったろう。
 今度はばっちり見えるその格好で殴ってやるから、よぉく見てろよ」
男が言い、鋼鉄の拳を引き絞る。
「ひっ……」
キッドの引き攣った顔を愉しみながら、男は勢いよく拳を打ち込んだ。
フックの軌道で下腹へ至り、拳の表面が当たる瞬間、男の手首の辺りで蒸気が噴き上がる。
同時に拳から先が人力では到底及ばない速度で打ち出された。
「んごぉうおおおォお゛お゛っっ!!!!!!」
キッドの口から、その顔には似つかわしくない呻きが上がる。
上を向いた唇から吐瀉物が溢れ、喉を通って黄を基調としたヒーロースーツを汚していく。

「おやおや、可愛い顔して無様な事だ。これをヒーローなんて呼んでいいのか?」
男はますます機嫌をよくしながら、再度キッドの腹部に拳を押し当てた。
肘を引き、勢いをつけて撃ち貫く。
やはり手首から蒸気が噴き出し、男の拳に機械の破壊力を上乗せして。
「おごぉお゛っ……!!え゛はっ、あ゛ぁ゛はっ……!!!」
キッドはきつく目をつむり、下を向いた唇からビチャビチャと吐瀉物を滴らせた。
もはやそれは唇からに留まらず、鼻の穴からさえも溢れている。
「お゛うっ……!ン゛、うえ゛ぇ……ッあはっ……!!!」
ひとしきり吐いた後も、キッドの唇からは銀色に滴る唾液が幾筋も伝い落ちた。
そのスーツの腹部は拳の形に皺が寄り、そのさらに奥からは、なおも鳴動が続いている。

「おうおう、すげぇもんだな。この腕で殴っても、これだけ反動が来るとはなぁ」
「おい、お前ばっかり楽しむんじゃねえよ、俺達にもやらせな。
 さっきコイツに棒で殴られた時にゃ、ちいとばっかし痛かったんだからよ」
機械仕掛けの腕を持つ男の他にも、キッドを痛めつけたいと思う男は数多くいた。

男の1人がキッドの前でメットの前面を開け、汗まみれのあどけない顔に舌を這わせた。
「……ッ!!!」
キッドがおぞましさに睨み返すと、男は嬉しげに笑みを浮かべる。
そしておもむろに腹部へ重い一撃を叩き込んだ。
「う゛んっ!!」
キッドの苦しげな声に満足そうにし、次の男とタッチを交わす。
次の男もまた、キッドのスーツから覗く生肌の部分、腋下や腿を撫で回した後で、腹部に痛烈な一撃を見舞っていく。
それが数人の男の間で、ローテーションで繰り返された。



「ほう。腹下しの入った団子を貪ってから20分余り……。
 そろそろ腹も限界だろうに、こうも殴られてまだクソを漏らさんか」
しばしの後、男が愉快そうに口走った。
キッドは息を切らせながら男を睨む。
「あ、あのお団子屋も……あんた達の仲間だったってわけ?
 一体目的は何さ。今のじゃまるで、ボクのお漏らしが見たい、ってふうに聴こえるよ」
キッドが嫌味交じりに言い放つが、男はそれに頷きを返した。

「いかにも。貴様らヒーローに、二度と世間へ顔向け出来んような恥を与える事が目的だ。
 貴様らは戦士である前に、市民の鑑たる存在であらねばならない。
 もしも公衆の面前で醜態を晒すような事があれば、その名声は地に堕ちる。
 スポンサーには見限られ、市民からも必要とされない。すなわち、死んだも同然だ」

男はそう告げ、キッドの顔が引き攣る様を愉しむ。
そして手を上げて一人を呼んだ。
「そろそろ、お前さんの出番だ。……来いよ」
男がそう言うと、通りの奥からのっそりと1人の男が姿を現す。
目つきが定まらず、呼吸が荒く、およそまともな人間とは思えない。
先ほど周りのメンバーがキッドを痛めつけている間も、ただ一人傍観していた男だった。

男は足を引きずるようにしてキッドの前に辿り着き、陰湿な笑みを浮かべる。
そしてかすかに痙攣するキッドの腹部に手を当て……『沈み込ませた』。
「うああっ!?」
キッドがそれまでとは全く違う悲鳴を上げる。
それもそのはずだ。彼女の胸の辺りに、男の手首が埋まっているのだから。
「お、おれのNEXT能力は……“透過”だ。人間の皮や脂肪をすり抜けて、直接内臓に触れるんだぜ。
 ほら、今俺の指辺りまで、あんたの中に入ってるんだ。
 ドックン、ドックンって、脈が力強いなぁ。健康な証拠だ、こういう中身は大好きだ。
 最近は顔だけよくて中身がつまらないのばっかり触ってたから……
 ああ、キモチいいなぁ」
男は陶然とした表情でキッドの中を弄る。
経験のないおぞましさと男の異常さに、キッドの顔がいよいよ恐怖に歪んだ。

「稲妻カンフーマスター様のカラダだ、そりゃ逸品だろうさ。
 遠慮する事はねぇ、どっかしら潰してさしあげな」
機械男が言うと、キッドに入り込む男はその手首をキッドのアバラの辺りに持ち上げた。
そして体の内部で、ぎゅっと何かを握りつぶす仕草をする。すると。
「ふんっ、グ……!?んう、ごうぇォえぇっ……!!」
突然、キッドの口から奇妙な音が発せられた。
直後、それまで腹打ちで吐いた量とは比にならない量の吐瀉物が、滝のように口から溢れ出る。
キッドの苦しみようは溺れた時さながらだった。
「へへ、胃をじかに握りつぶされたのは生まれて初めてだろ。
 魚のエラ袋みたいなのがキュンキュン手の中で抵抗してて、面白いぜ」
男は言いながら握りを離し、鼻の穴を大きく開いて息を求めるキッドを眩しそうに見つめる。




「綺麗だなぁ……。臓器の逞しさと、表面の肌とかの綺麗さ、純粋な外面の可愛さ。
 完璧だよ、あんたの本当の部分を、もっと見たいよ」
男はうっとりとした口調で呟きながら、キッドの下腹まで手首を下ろす。
機械男達が、いよいよだと囁きあって笑った。
「……も、もう、、やめ、て……!!」
キッドは汗まみれの顔で、縋るように男に言った。
だが男は、哀れなキッドの顔にいよいよ笑みを深め、その下腹の中で力を込める。
逞しい五本指の間で、キッドの大腸がぐじゅりと形を変えた。
「くわあああああああっっっ!!!!」
キッドの絶叫が響き渡る。
外からの刺激ではなく、直接腸を握りつぶされたとあっては耐えようもない。
キッドの括約筋が蠢き、奥から押し出される形で排泄物が溢れ出す。
それはカボチャパンツのような形をしたズボンの裾からはみ出し、白い腿を茶色く汚す。
男が下腹の中でぐ、ぐ、ぐと力を込めるのにやや遅れて、ぶぼっ、ぶぼっ、ぶぼっと糞便が流れ出していく。
自らの意志とは全く関係のないところで、腸を直接鷲掴みにされて便を送り出される。
ヒーロー『ドラゴンキッド』として、いや、ホァン・パオリンという1人の少女としても、人生で一番酷い瞬間だ。

『ドラゴンキッドを映すカメラを止めて!!汚らわしい映像を送るのをやめなさいっ!!!』
無線機の向こうで、ヒーローTVを取り仕切るアニエスがヒステリックな叫びを上げていた。
だがその部下達も混乱状態にある。
『ダメです、現場が指示に従いません!恐らくは現場の人間が、すでにあの強盗団と入れ替わっているかと……!』
絶望的な状況だ。キッドの醜態は延々とカメラに撮られ、街中に中継されている。
他のヒーロー達がいつまでも助けに来ないという事は、彼らも同じく窮地に陥っていると考えるべきだろう。

「あ゛……あ゛……おなが……ボクのおながが……ああ、あああ゛あ゛あ゛…………」

キッドは、現実を直視する事を諦めたガラスのような瞳で、
自分の下腹を襲う信じがたい現実を見ていた。
その繁みの奥からは糞便のみならず失禁までもが起こっており、元ヒーローの無力さを物語っていた。

そうして『ドラゴンキッド』の醜態を延々と垂れ流した後、男達はキッドを連れていずこかに姿を消した。
それはまさに瞬く間の事で、何か仕掛けがあったのか、NEXT能力を使ったものかは未だに解っていない。



それから数日の後。ドラゴンキッドは、まだ息をしていた。
しかし無事かというとそれも疑わしい。
彼女はヒーロースーツを取り去られた裸のまま、例の男に身体の中を弄られていた。
その瞳はぼんやりと天井を見つめたまま、腹の中をこねくり回される感覚を淡々と受け入れているようだった。
「ああキモチいいなぁ、最高だよお前の中は……。弾力といい血脈といい、新鮮すぎる。
 お前もキモチいいだろう、なぁ……?」
男はそう言いながら、キッドの腹部に手首までを沈めて内部をこねくり回す。
ハンバーグを作るような手つきだ。
「あっ……うあ、あ…………っあ」
キッドはかすかに口を開き、快感とも驚きともつかない声を上げている。
その子供めいた華奢な手足がぴくんぴくんと跳ねるのが、不相応にに色めいて見えた。

その動きにそそられたのか、男の数人がキッドの方へ歩み寄る。
「おい、お前ばっかり楽しんでないで、俺達にも貸してくれよ」
1人が言うと、腹をこね回す男はキッドの股座に視線をやった。
「良いよ……アンタらは、その『外の入り口』からこいつの中を味わうといい」
そう言うと、男達は下卑た笑みを見せる。

「へへ、なら遠慮なく……っと、おいおい、もう濡れてんのかよ?」
キッドの力ない片脚を持ち上げた男が、その繁みを見て言った。
確かに少女のそこは、かすかに濡れ光っている。
「腹の中を弄り続けられて感じちまったか?
 それとも腸やらと一緒に子宮まで捏ねくり回されて女にされたか?
 まぁどっちでもいいがな」
そう言ってキッドの中に押し入っていく。
「んん……」
キッドはほんの僅かに鼻に掛かった声を上げた。

「ふむ。相変わらず中々の締まりだが、あの強烈さを覚えちまうと物足りねぇな。
 おい、ちっとこいつの腎臓の辺りを掴んでくれ」
挿入する男が言うと、内臓を弄る男がキッドの繁みの上で力を込める。
「ふあっ!!」
キッドが愛らしく叫び、男が呻いた。
「うおおっ……!!これだ、この締め付けだ。こいつがタマらねぇ」
そう言って実に心地よさげに腰を使う。
その抜き差しを受けながら、先に内臓を押し潰し握りこまれ、キッドもまた身体を跳ねさせて反応する。
その奇妙なまぐわりは、キッドが助け出されるいつかの日まで、絶え間なく続くのだった……。



  ※



「…………という夢を見たんだ」
「最低ですよ、オジサン」



                         終わり
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旨味の跡

※エロ無し、飯食ってるだけ

外へ出た時にはすでに陽が昇っていた。
シンと空気の張り詰めた波止場をしばし歩くと、朝の早くから異常に活気づいた場所が見えてくる。
朝市だ。

「オヤッさんどうだい、焼きたての秋刀魚は!この煙見てくんな、脂が乗ってる証拠さ!!」
威勢のいい声に呼び止められ、足を止める。
売っているのは、魚よりよほど脂が乗っていそうな小太りの男だ。
だがその団扇の扇ぐ先を見てみると、なるほど美味そうな秋刀魚があった。
大振りな一匹が七輪の上で狐色に焼け、香ばしい匂いの煙を空へ流している。
身の表面で弾ける汁は何とも食欲をそそった。

「一匹くれ」
俺がまんまと釣られたのを見て、魚屋の隣に座る男もこちらを向いた。
「どうじゃ、こっちも買うていかんか。秋刀魚はいい皿に乗せてこそ映えるってもんだ」
男は皿を売っているようだ。
四角い中に、川の流れを模したらしき濃い青と水色の焼きが入っている。
ウン千万の価値がある物だと言われれば、なるほどそうかと思うし、
硬貨ひとつで買える安物だと言われれば、なるほどそうかと思う一品だ。
陶芸に疎い俺にはさして必要もない物だが、あえてこちらにも釣られてやる。
今朝は財布にも余裕があった。

秋刀魚と皿の袋を手に、潮の薫る市場を突っ切る。
物置のような様相を呈する一角へ潜り込み、赤い暖簾をよけると馴染みの店だ。
朝市で買った品をその場で食える、簡素な定食屋。

飲み屋のように薄暗い店内には3人の先客がいた。
一番奥の禿頭だけが見知った顔だ。
「いらっしゃ……」
店の娘が一瞥をくれ、俺だと解った途端に言葉を切る。
「どうした、お帰りなさいは言わねぇのか」
「馬鹿」
赤ら顔の禿頭が茶化し、娘が短く答えた。
その額には薄く汗が浮いている。
半袖の白シャツと、腰へ黄色のパーカーを巻きつけた格好で、厚着な訳でもない。
それだけよく働いているという事だろう。

健康的に焼けた肌、耳の辺りに切り揃えた髪、挙動のたびにシャツを揺らす乳房。
街を歩く女共とはまるで違うが、この港の界隈では珍しい雌の分子だ。
見慣れない客2人も娘に下心を抱いているようだった。

俺は奥まりの指定席に腰を下ろしながら、その娘が俺の下で見せた表情を思い出す。




俺が買った袋の中身を見ながら、娘は黙々と献立を組み立てた。
主賓である秋刀魚の皿を中心として飯と汁椀を置いていく。

飯には白身の魚が炊き込まれてある。
何という魚かを説明はされたが、名の覚えが悪いのでよく解らない。
二文字か三文字か、頭に残るのはせいぜいそのぐらいだった。
吸い物も三文字の魚で取った一番ダシに、ハマグリのみを沈めた単純なもの。
あくまでここで獲れた物にこだわる造りが粋だ。
秋刀魚の皿にも山盛りの大根おろしが添えられ、醤油の瓶が脇に置かれていよいよ朝食の支度が整う。

「いただきます」

俺は手を合わせて頭を下げた。
この習慣が身についたのは、そこそこ長く生きた中でのつい最近のことだ。
食う前にこれをしないと、食材への感謝が足りないだのぎゃあぎゃあと煩くする奴がいる。
それに辟易し、どうせ一銭を払うわけでもないのだからと渋々始めた形だった。
それも今では随分と自然な動作になっている。

俺はまず醤油の瓶を手に取り、大根おろしの山へと注いだ。
風味の抜けたものには味を誤魔化すように回しかけるが、今は違う。
ここで出されるものは卸したての清冽なものだ、醤油の量で味の生き死にが分かれる。
半ばほどまでに醤油が染みた所で、俺は瓶を戻した。
そのまま箸でおろしの全体へと醤油を馴染ませる。
そしてそれを少量摘み、秋刀魚へ乗せてザクリと皮を割った。汁が皿へ流れ、白い身が現れる。
口元へ近づけるほどに香ばしい匂いが鼻を満たし、柔らかな口応えと共に舌の上へ。

美味い。
ほのかな甘みと汁の酸味、脂の乗った濃厚なうまみが舌へと浸透していく。
次の瞬間には大根おろしのシャリリと音のしそうな澄んだ辛味が味覚を引き締める。
鼻がすうっと通るのが感じられた。
辛い。しかし不快感を催す事はなく、醤油がほどよく和らげている。
俺はそれによって醤油の量が適切であった事を理解した。
誘われるようにもう一箸。身を切り取り、贅沢におろしを乗せて口へ運ぶ。
身を隠すほどに乗せても、娘の用意した量は十分で、後々を気に病む必要がない。

まろやかな旨味が口に残っているうちに、今度は飯へと箸を伸ばす。
仄白い魚の身と、ダシで炊き込まれかすかに色づいた米。
その一角を掬い上げて頬張る。
薫り高さが味覚を包み込んだ。ダシで際立った米の甘みに、品のよい白身の味が合わさる。
まるで鯛を炊き込んだ飯のようだ。
娘が言っていたのは鯛ではなかったと思うが、それに匹敵する旨味がある。

控えめながら和の心をくすぐる味わいだった。
醤油や味噌、そういった日本古来の調味料の根底に通じる旨味が、この飯にはある。
米に因るものか、ダシに因るものか、あるいはこの魚ゆえに出せるものかは定かではないが、
この飯全体としての旨味、調和の巧みさには文字通り舌を巻かざるを得ない。

また控えめな味ゆえに、主菜たる秋刀魚の邪魔をしないのも素晴らしい。
いや、邪魔でないどころか、秋刀魚とはまた趣の違う甘みをもってその美味さを引き立ててもいる。
単に白飯に秋刀魚を合わせるより、遥かに複雑で後味の良い旨味をもたらしてくる。
ただの三口ほど秋刀魚と炊き込み飯を合わせ食っただけで、俺は深い深い息を吐いて興奮を抑えねばならなかった。

汁に手を伸ばす。
ずず、と吸い上げると、期待通りの落ち着いた味わいが俺の味覚を整えてくれた。
重厚な旨味に上書きされて雑多な味が調和していく。
なんと複雑で、且つ、なんと爽やかなことだろう。その味は海そのものを思わせた。
酒の肴としても十分にいける吸い地だ。
奥深い旨味に触れ、俺の口からはいよいよ唾液が溢れ出した。
過多な水分を吸わせる目的で飯を放り込み、口内を整えて再び主菜に箸を伸ばす。

魚、飯、魚、汁、魚、飯、汁、魚。
夢心地になるような味の組み合わせを続け、やがて最初に飯が尽きる。
秋刀魚はまだ片面の半分以上が残っている状態だ。
「……綺麗に食べてくれたね、おじさん。ちょっとは料理の出来る女になった?」
娘が俺の平らげた椀を翳しながら言う。俺は小さく笑った。
100点はとうにやったはずだが、どこまでいけば満足するのか。
奴のこの貪欲さはセックスの時も同じだ。




こいつが思いつめた顔で夜の海辺に佇んでいたのは、もう5年も前になる。
用もなく近くを歩いていた俺は、気紛れにその近くへ腰を下ろした。
煙草をふかしながら沈黙を続けているうちに、奴は聞いてもいない事情をぽつぽつと話してきた。
彼氏に騙されて玩具にされた、学校から追い出され、親にも勘当されてしまった……。
詳しくは忘れたが、世の不幸話を縫い合わせたような内容だったはずだ。
当人にすれば死に値するような重い話だろうが、俺はそれを大した興味もなく耳にしていた。
生まれて以来かなりの間、俺はそういう人間だったからだ。

娘が話を終えても、俺は返事をしなかった。
ただ黙って時間を過ごし、日が昇ってきた頃、ただの一言、
「綺麗だな」
そう呟いたぐらいだ。
娘は泣いていた。さんざん泣き通した末に、近くの市場で獲れたての刺身を食い、また泣いた。
5年も前のことだ。
今では奴なりに、奴なりの人生を歩んでいるように見える。
俺はあの日、奴の死に方に興味を持ったのと同じように、その生き様を時々ぶらりと見に来ていた。

俺は馳走を食い終わり、席を立つ。
「お勘定は?」
「……ツケとけ」
娘の問いに、短く言葉を返した。娘が小さく笑う。
気がつけば、店にもう客の姿はなかった。

「ツケた以上は、また来てもらうからね、おじさん!」

娘の言葉に、俺は肩を竦めて店を後にする。

朝の市場はさらに活気を増していた。
雑多な人ごみを歩きながら、俺は煙草に手を伸ばそうとして考え直す。

口に残る旨味が、惜しかった。


                       了
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カンノングライ

※ある怪談の改変です

この話は正直ヤバイ。
聞く方には何でもない話でも、俺にとっては生死に関わる問題だ。
でも、世の中にはこんな不思議な事があると知ってもらいたくて話してる。

俺は元々、その筋の人達の使いっぱしりをしてた。
今の時代、ヤクザも末端のやばい仕事はアウトソーシングですよ。
俺がやってたのは、ワンボックス乗り回して業者から花を買いつけ、
それを界隈のホストクラブやバーに数十倍の値段で売る仕事。
ホストクラブに入ると必ず入り口に花あるじゃん?あれ。
その仕事をヤクザのNさんって人に個人的に雇われてやってた。
あくまで組じゃなく個人で雇っているのがミソだ。
万が一警察にバレた場合、トカゲの尻尾切りで逃げられるから。

ホストクラブの連中と揉めたりはしょちゅうの大変な仕事だったけど、
俺はそれを根気強く続けて、結構Nさん以外の組の人からも信用されるようになった。
で、そのうちワンボックスを運転して、ダンボールなんかの荷物を運ぶ仕事も任されるようになったんだ。
組員のベンツについていって、止まれと言われた所で止まり、荷物がどこかに運び込まれるのを待って、帰る。
それだけで驚くような金額が渡された。
運んでたダンボールの中身が何かは気になるけど、動く金額から考えてもまともな物じゃないだろう。
第一、それは俺のような外注の素人が知っていい情報じゃない。
だから俺はそれには言及せずに、黙って任される仕事をこなしてた。

でも、ある日に呼び出された仕事は空気が違ったんだ。
普段はNさんと同僚のTさんがいるだけの待ち合わせ場所に、幹部のSさんまでいる。
そして3人とも明らかにピリピリとした雰囲気を出していた。
「……はこのまま帰せ」
「あいつは大丈夫です、それより……」
俺のほうをチラチラ見ながら小声で話し合っている。
しばしその状態が続いた後、俺はワンボックスに乗るよう言われて車を出した。

随分走ったと思う。普段こういう仕事では使わない国道を使って県を越え、山中のトンネル付近で止まった。
「ここだ」
幹部のSさんが草むらを掻き分け、鉄製の重そうな扉を開く。
大人が屈んで何とか入れる程度の大きさで、普段は草とトンネルに隠れてどの角度からも見えない。
まず大きな麻袋を担いだNさんとTさんが中に入り、俺がそれに続く。
さらにSさんが俺の後ろから入って扉を閉めた。



中は入り口に比べて随分広く、下水道のようなしっかりとした作りになっている。
というより、本当に下水道なのかもしれない。4人でその中を黙々と歩いた。
荷物を担ぐNさんとTさんは薄っすらと汗をかいていたが、俺に手伝えとは言わなかった。
荷物はやけに大きい。
まるで人一人が入れるぐらい。麻袋の端から覗く黒い袋は、死体袋と呼ばれる物に似ていた。
そもそもこれだけ慎重を期し、運ぶ当人達が神経質になっている仕事だ。
死体を捨てに行く途中……そんな風にしか思えなかった。

30分以上も歩くと、それまで人が4人並べるくらいに広かった通路が急に狭まる。
俺の肩幅よりちょっと広い程度だ。
Nさん達は、袋を肩に抱えなおしてその道を進む。
さらに10分ほど行くと、再び通路は広くなった。そこでNさんが足を止める。
「ここだろ」
「ここ、ですね」
SさんとNさんが短い会話を交わした。
その目線の先には鋼鉄製の大きな扉がある。

扉には薄く何かが書かれていた。
掠れていてほとんど見えないものの、やたらと旧字体が多い。
『帝國陸軍……第弐拾壱……禁倉……』
そんな具合だ。まるで歴史の教科書に出てくるような古めかしさで、
俺はそこが現実だとしばらく把握できずにいた。
単に書かれている字体に馴染みがないから、だけじゃない。
その扉の中から感じる只事でない空気が、俺から現実感を奪っているように感じる。
正直すぐにその場から逃げ出したかったが、もしそうしたら、俺もSさん達に殺されるだろう。

Nさん達3人は、扉の前に一旦腰を下ろして休憩に入った。
俺もそれに合わせて腰を下ろす。
3人とも無言だったので、俺も黙っていた。



しばらく休憩して、ようやく出発しようという頃だ。
Nさんが袋の端を持った時、いきなりその袋が暴れ出した。
驚いてNさん達が手を離した隙に、袋の口が開いて中身が飛び出す。
覗いたのは色白の女の顔だった。
軽くウェーブを描くダークブラウンの髪が首筋までをなぞり、
はっきりとした目鼻立ちが印象的な美人だ。
どこかで見たような顔の気がするが、いまいち思い出せない。

「おい、何でここでクスリが切れんだ!!さっさともう一回打て!!」
Sさんの怒号が響き渡った。
Nさんが忙しなくポケットをまさぐり、注射器を取り出す。
そしてSさんとTさんが女を押さえつける中、その首筋へ針を打ち込んだ。
女は小さく呻いた後、がくりと項垂れる。
その意識をなくす寸前、女は俺に気付いて救いを求めるような視線を寄越した。
その顔は一生忘れられないだろう。
「……女の顔、見たのか」
Sさんが俺のほうを振り向いて言った。
俺は余りの事に返事が出来なかったが、あの状況で見ていない筈はない。

俺達は鋼鉄製の扉を越えてさらに進む。
前と違うのは、袋を支える真ん中に俺が入ったこと。被害者の顔を見た以上、一蓮托生だ。
麻袋の感触はやわらかかった。

扉をさらに奥へ進むと、やがて古い井戸が見えてきた。
井戸の蓋はやはり頑丈そうな鋼鉄製で、端に鎖が繋げてある。
滑車を通して鎖のもう一方の端を引くと、少しずつ井戸の蓋が持ち上がっていくという仕組みだ。
扉の前で感じた気味悪さの正体は、この井戸だ、と俺は直感的に悟った。

Tさんが鎖を引き、井戸の蓋を開けていく。
するとNさんが麻袋を持ち上げて一気に中へ放り込んだ。
パシャッとかすかな水の音がするものの、井戸の中は枯れているようだった。



「おい、中を見てみろ」
Tさんが俺に命じた。俺はペンライトを手に井戸の底を照らす。
何度か井戸の壁が照らされた後、ついに底の地面が光の輪に入った。
白い女の裸体が転がっている。落ちた時の衝撃で袋の中から出たらしい。
女の手首足首は縄できつく縛られているようだった。
スタイルは非常にいい、顔の良さもすでに見た通り。
こんな井戸に放り込んだが最後、もう出てくることは出来ないだろう。
捨てるにはあまりに惜しい美人だ。
風俗でもさせれば相当稼げるだろうに、どうしてこんな事を。

俺が裸を見ながらそんな事を考えていると、突如光の照らす中に異様なモノが見えた。
「うわっ!」
俺は自分でも解らないうちに悲鳴を上げていた。
形は裸の人間だ。でもその肌はライトに照らされる中で白く濡れ光っている。
ナメクジ、俺が思い起こしたのはそれだ。
大体、見目が人間であっても、こんな辺境の井戸の中にいるモノが尋常である筈がない。
「どうした」
NさんとTさんも井戸の中を覗き込み、俺と同じ反応をする。
2人とも事情を知っている訳では無さそうだ。

「終わったか」
後ろからSさんの声がした。俺とNさん、Tさんはすぐに今見た者の話をする。
すると、Sさんだけは訳知り顔で息を吐いた。
「……“カンノングライ”だ。深い意味は知らなくていい、忘れろ」
そう言って井戸の蓋を閉める。
でもまさに蓋が閉じる瞬間、俺は聞いた。
中から響く女の声。
「い、いやあっ!何これ、いやあああっ!!!!」
そう言っていた。その言葉が俺の耳にこびり付いた。



それから一週間後の事だ。Nさんから電話があった。
Sさんが消息を絶ったらしい。俺も早く逃げろとNさんは言っていた。
状況が解らないので説明を求めた所、Nさんは散々渋った後でようやく口を開く。

あの日俺達が運んだ女は、組長の娘だったそうだ。
若頭であったSさんは組長の娘と妙な関係にあり、脅されてもいた。
いよいよそれが洒落で済まなくなった時、Sさんは娘を片付ける事を決意した。
それもただ殺すんじゃなく、その娘を生贄に、組長達に呪いを掛ける事を思いついたそうだ。
それがあの井戸。
あの時Sさんが言った“カンノングライ”は、漢字で書くと“観音喰らい”。
井戸に投げ込まれた女の観音様、つまり性器を徹底的に貪り、
挙句にはその女の血縁に当たる一族にまで死をもたらすという祟り神だ。

Sさんはそれで組長の死を狙った。組長さえ死ねば、Sさんがその跡目になれるらしい。
組長の娘を攫い、運ぶのに、Sさんは俺のような外部の人間を使って組に情報が漏れないようにしていた。
それでもついにその事実がばれ、Sさんは組に消されてしまったのだという。
そう聞いて俺は思いだした。
確かに運んでいた女の顔に、俺は見覚えがある。
組に出入りしている若い女で、美人ではあるがやたら態度がでかく偉そうだったのを覚えている。

さらに井戸の一件より少し前、車の中で犯される現場にも立ち会った。
路地で睡眠薬を嗅がせて拉致し、ワンボックスの後部座席でNさん達が輪姦していたのだ。
始めはガラの悪い怒鳴り声を上げていた女も、何度もクスリを打たれて犯されるうちに普通の女になっていった。
俺は外での見張りを命じられてて、車内を覗こうにも黒張りのガラスで見えなかったけど、
誰かがタバコを吸いに外に出る瞬間にチラッとだけ中の様子が解る。

初めて見るNさん達のアソコはとんでもなく大きく、真珠まで埋め込まれているようだった。
それを深くまで捻じ込まれる女は、足をピーンと伸ばしていていかにも気持ち良さそうだ。
口にも一本咥えさせられていて、その泣きそうな目からは、いつもの偉そうな態度なんか微塵も見当たらない。
その一瞬の場面だけで、女がどれだけ念入りに犯されたのかが窺えた。
あの日俺が運んだのは、まさにその女だ。

その電話が来て以来、Nさんからは連絡を貰っていない。Tさんも同じくだ。
俺は組から距離を取っていたせいか今のところ無事だけど、正直今でも安心はできない。
特にこんな話をした以上は。



一度だけ、俺1人であの井戸の様子を見に行った事がある。
ヤバイと解っていても、どうしても様子が気になって仕方なかったからだ。
辿り着くまでの恐怖は夜の学校の比じゃなかった。
1人で旧字体が書かれた鋼鉄製の扉を空け、井戸に近づく。
その瞬間に耳鳴りのようなものを覚えた。
しかしよく耳を澄ますと、それが耳鳴りではなく、かすかな“声”だと解る。
高い女の声だ。
俺は確信を抱きながら鎖を引き、夢中で井戸の蓋を開けた。
途端に声が大きさを増す。

「ああっ、いいっ、いいいいっ!!おしり、おしりすごい、大きいっ!!!
 いいイイイィィィよおおおおおおおっっ!!!!」

その声が聴こえ、ペンライトで井戸を照らすと、1人の女が這う姿勢でナメクジに群がられていた。
後背位に近い形だ、声から言って尻に入れられているのだろうか。
俺はその異常な交尾にしばし見入る。
すると、ライトに気付いたのか、『それ』がいきなり顔を上げた。覗き込む俺と視線が合う。
そこで俺は叫びを上げた。
『それ』には顔がなかった。のっぺりとした顔に鼻の穴だけが空いている。
明らかにこの世のものではない顔だ。
俺はぞっとしてすぐに蓋を閉じ、その場に力なくへたり込んだ。

井戸からはまだ微かに女の声が聴こえてくる。
それが耳に入るたび、女の気持ちが入り込んでくるようだった。
蓋の閉められた暗い井戸の底、あのナメクジのような顔無しに群がられ、犯される。
もう絶対に助けの来ないだろう環境で、延々と。
俺はその情景を想像して、何度も身震いした。

もうどうしようもない。こんな深い井戸の底にいる人間を助ける術など見つからない。
女自体もすでに化け物の仲間になっている可能性は捨てきれないし、
何よりあの化け物の傍に降りるなんて出来る筈もなかった。
罪悪感が押し寄せる。俺はそのせめてもの償いに、井戸の傍にしばらく座り込んで、生贄の嘆きを聞いていた。

ちなみにNさんの組の組長は、今でもまだ現役だそうだ。


                      終わり
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私でない私

※ 姉NTR・ダーク系・スカトロ注意

『私、そんなに優等生じゃないよ。』

それが私の口癖だった。小学生の頃から、ずっと。
確かに成績は常に上位で、部活にも熱心に取り組んできた。素行も悪くはない。
ただ、優等生と思われやすい本当の理由は、私の“いかにも”な見た目だろう。

髪は常に黒のロングストレートだ。
幼い頃は母の言いつけでそうしており、やがて級友に持て囃されるようになると、
私自身が進んでそうするようになっていた。
艶のある長い黒髪はどこででも人気を得る。
さらに私自身、顔立ちはいいほうだ。
整形した顔の華やかさにはさすがに適わないとはいえ、素の素材としてはこれ以上を望むべくもない。
もちろん自惚れの意味ではなく、その顔をくれた両親に感謝する、という意味で。
くっきりとしつつも優しげな垂れ目に、ぽってりとした唇は、適度に知的で穏やかな印象を与える。
私自身、時に鏡に映った自分をどこのお嬢様かと思うほどだ。
私は確かに生真面目な方かもしれないけれど、鏡に映った見た目ほどではない。
まるで外面だけが“私でない私”みたいだ。

その清楚な見た目は私に何度かいい思いをさせてくれた。
恋愛に不自由した事はないし、人受けもいい。
けれども逆に、その見た目のせいで嫌な思いも沢山した。
テニスの試合のたび、スコートの中を盗撮されたり、ストーカー被害に遭ったり。

特に忘れられないのが高校3年の時の甲子園観戦だ。
その年は母校が奇跡的に甲子園へ出場し、私もクラスメイトと共に応援に回っていた。
応援団用の白い帽子とパーカー、体操服に身を包んで。
すると、試合模様を写していたカメラマンが露骨に私を撮影しはじめたのだ。
最初は観戦席を回し撮っていた動きが、私をレンズへ捉えた途端に止まる。
メガホンで打者へ声援を送る様も、タオルで首筋の汗を拭う様も、水を飲む様も撮られていた。

「うわぁ、香菜……さっきから超撮られてるよ。
 甲子園のカメラマンって、かわいい子ばっか撮るって聞いたけどマジなんだ」
友達がそう囁いてきたのを覚えている。
とはいえ映像はライブ中継だろう。撮るのをやめろと抗議する訳にもいかず、
私はカメラに気がつかない風を装うしかなかった。
結果、試合展開のない間は私の映像がお茶の間に延々と流される事態となる。

その反響は大きかった。
恐ろしくて私自身では確認していないが、友人の話では、当時ネット上は試合内容より
『あの可愛い子は誰だ』という話題で持ちきりだったという。
私とキスしたい、口に男の物を咥えさせたい、セックスでよがらせたい。
そんな自分本位な書き込みが連日なされ、高校にも私目当ての不審者が押しかけて職員会議まで開かれた。

そんなどこまでも優等生じみた私の見目は、私自身の他にもう一人の人生をも狂わせる。
3つ下の弟、翔太だ。
翔太は、常に優等生だと持て囃される私を見てきた。
自分が頑張っても私ほどには褒められない毎日。
あの子が同じく満たされない友人とつるんで非行に走ったのも、今思えば仕方のない事だったのかもしれない。

けれども私は、朝帰りする翔太を放任主義の親に代わって事あるごとに叱り付けた。
憎らしいのではなくて、その将来が不安になったから。
翔太は昔から泣き虫で、要領が悪く、一人で何も決められないタイプだ。
それが不良になり粋がったところで、悪い人間に騙されるのは目に見えていた。
そしてその不安は、ついに最悪の形で的中する。

「ねえちゃん、お、俺……どうしたら、いいんだろ……?」
翔太はアパートの玄関口で泣き崩れた。
年上の不良に騙されて闇金で借金を重ね、毎日暴力団に脅されているという。
周り中が共犯で頼れる人間もおらず、親に泣きつく事もしたくないので、
大学入学を期に家を出た私を頼ったというわけだ。
私はそれを迷惑とは思わない。むしろよく知らせてくれたと思う。
「……解った。お姉ちゃんと一緒に何とかしよう」
しっかりと翔太の肩を抱いて告げ、その場で行動に移した。

翔太を連れて、脅しをかけているという暴力団の事務所を訪ねる。
翔太自身も騙された側で、まだ話の全容を理解していない。
まずは一度話を整理する必要があった。
こちらが事態を把握していない事には、警察にせよ弁護士にせよ、相談のしようがないから。
もちろん一度話し合っただけで解決するとは思っていない。
けれどもポケットにボイスレコーダーを仕込み、もし恫喝でもされれば録音して証拠とするぐらいの自衛手段は考えていた。
いかにヤクザとはいえ、この法治国家でいきなり一般人をどうにかする事はないだろう。
私達はそう考え、事務所の戸を叩いた時には、当然アパートに無事帰れるものと信じていた。



妙だと気づいたのは、事務所でいかつい男達に囲まれ、話し合いを始めてからだった。
視線が私に集まっている。犯したい、嬲りたいという露骨なオスの目だ。
私は背筋に寒いものを感じながら、努めて冷静に話を進める。
翔太の負債は利子も込みで800万円。さらに利子は10日で一割という暴利だという。
私はその時点で、こんな馬鹿げた話が通るはずがない、と確信した。
弁護士を通せばチャラとまではいかないまでも、現実的な金額にしてくれるはずだと。

ところが……同時に私は、別の事にも気付き始めていた。
このヤクザ達は普通ではない。大人しく話を聞いているように見せて、
“何か”良からぬ事を狙っているように感じる。
「ね、ねえちゃん」
翔太もそれに気付いたらしく、落ち着かない様子で私の袖を引いた。
それを受けて私も話を纏める方に向かわせる。でも、遅かった。

「ぐあっ!!」
いきなり隣に座る翔太が叫び、頭を抱えて蹲った。
その背後には木刀を構えた組員がおり、翔太を殴り倒したのだと解る。
「ちょっと、いきなり何……」
私が抗議の声を上げる前で、さらに数人が翔太を蹴りつける。悲鳴が上がった。
「ちょ、や、やめてよっ!!」
私は止めようとするが、それを後ろから羽交い絞めにして遮られる。
離して、と暴れる私の前で、翔太は数人の暴力団員に痛めつけられた。
脅しというレベルには思えない。
靴で歯を踏みつけて折り、側頭部を殴り、鼻を潰し……そのまま殺しそうな暴力だ。
私の身体に震えが起こった。

「……驚かせて悪いな、お姉ちゃん。だが、こっちももう散々延滞喰らってんだ。
 どうあっても、本日この場で800万返す目処を立てて貰わないとねぇ」
血みどろになった弟の襟首を掴み、1人の組員が言う。
私は言葉がなかった。視線が弟のシャツを変色させる血に貼り付いた。
男はじっと私の身体を眺めている。
その視線で、私は悟った。この男達は、私の身体を狙っているのだと。

「方法は問わねぇよ。このクソガキにゃあ払いようもねぇが、姉ちゃん。あんたは別だ。
 稼げそうなモノを持って生まれてる。
 あんたほどの上玉が“大人の喜ぶ映像”を撮らせてくれりゃあ、800でも返せるさ」
男はそう言って弟を揺さぶった。血が滴る。
私は男の狙いが解っても、どうすべきか決められずにいた。
こんな外道の慰み者になるのは絶対に嫌だ。けれど、そうしなければ弟が殺される。
私が迷っていると、男は今一度翔太を蹴りつけた。
「……ア゛!!」
鈍い悲鳴が弟の口から上がる。このままだと本当に、死んでしまう。
「わ、わかりました!!」
私は反射的に叫んだ。男達が下卑た視線を向ける。
口惜しい。野蛮な恫喝行為だ、法治国家でこんな事がまかり通るなど信じられない。
けれども、私はそのストレートな暴力に、屈するしかなかった。

「……わかりました。……なんでも、しますから。だから、もう弟を蹴らないでください」
「なんでも?そりゃ結構だ。だが800万って金額にするには、普通のビデオじゃあ無理だぜ。
 ちょいと変わった撮影をさせてもらう事になるが……いいんだな?」
男の笑いながらの問いに、私は唇を噛みしめた。
端から選択肢などありはしない。



気絶した翔太が縛り上げられた後、私は男達に囲まれてストリップを強要された。
「おお、細ぇなあ!だが胸はある方か。グラドルでもイケそうだな」
「うっは、オイシそーな太腿!こりゃまたすげェ上玉が転がり込んできたもんだ!!」
私がブラウスやレギンスパンツを脱ぎ捨てるたび、男からの品評が飛ぶ。
叶うなら張り倒したい下劣さだ。
最後にショーツを足首から抜き取ると、私の性器に視線が集まった。
「そこに座って、足開け」
男の一人が顎でソファを指し示す。
私は男を睨みつけながらも、従った。してやったりという笑いが耳につく。

私はソファに腰を下ろし、男達に向けて脚を開くポーズを取った。
当然隠すべき所を晒すことになる。
すぐに一人の男が私の脚の間に腰を下ろし、秘部を覗き込んだ。
「っ!」
羞恥に足を閉じかけるが、膝を押さえて制される。
男は面白そうに私の顔を見上げながら、指で陰唇を割り開いた。
そして中から覗くだろう粘膜をも凝視しはじめる。
「お、綺麗なピンク色じゃねぇか。まさか姉ちゃん処女か?」
男が嬉しそうに言った。
それはない。私も意中の人と愛を交わす行為くらいした事はある。
とはいえ慣れているかというと、それも違った。

「うへへ、美味そうだ」
秘部を覗いていた男が、急に割れ目へと口をつける。
「ひっ!」
私はつい女らしい声を上げて後悔した。弱みは見せたくない。
けれどやはり、見知らぬ男に秘部を舐められるのはおぞましかった。
「へっ、今どき珍しいウブさだな。アソコ舐められただけであんな顔するとはねぇ」
「今のガキはマンコ舐めさせながら、しれっとケータイ弄るようなのばっかだしな。
 ゾクゾクくるぜ。本番の撮影に入ったらどうなるやらだ」
男達は私の表情を愉しんでいるようだ。
私はそれが癪に障り、目線を横に流して意識を逸らす。

秘部を舐られているうち、やがてソファの後ろからも手が伸びて私の胸を掴んだ。
「あっ!?」
不意の刺激に肩が跳ね上がる。
「おお、こりゃすげえぞ!?吸い付くようなモチ肌に、やらけぇ乳だ!!」
男は喜びの声を上げて私の乳房を弄ぶ。
男達の興味がますます高まったのがわかった。
「へぇ、胸は上々かい?だがマンコもいいぜぇ、匂いも控えめで、美味ぇもんだ」
前の男が鳥肌の立つような言葉を吐く。
そこからしばし、秘部を舐られ、乳房を揉みしだかれる状況が続いた。

「おい見ろよ、こいつ盗聴器なんて持ってやがったぜ!?見かけによらず怖えー女だな」
私の脱いだ服を嗅ぎまわっていた1人が、ジャケットからボイスレコーダーを取り出して叫ぶ。
男達の顔が一瞬強張り、次に私を面白そうに眺めた。
「残念だったな、計算通りに行かなくてよ。だがせっかく持ってきたんだ、活用してやろうぜ」
その言葉でボイスレコーダーが私に近づけられる。
そして秘部を舐める音や、性感帯を刺激されて漏れてしまう喘ぎを延々と録音し続けた。



「ね、ねえちゃんッ!?」

突如、空気の違う叫びを放ったのは翔太だ。
無事に目を覚ましたらしく、縛られたままこちらを見上げている。見開かれたその瞳がつらい。
私は今、ソファで大きく脚を開いて秘部を舐められ、乳房まで揉まれている状態だ。
とても弟に見せられる有様ではなかった。けれども、安心させてやらなければ。
「ショウ、そんな顔しないの。大丈夫、お姉ちゃん殺されたりしないから。
 ちょっと我慢すれば、ショウの借金なんてすぐに返せるんだから。
 ね、ほら? そんな顔……しないの……」
私はなるべく事もない顔で言ったつもりだった。
けれども、弟の顔が悲痛に歪んでいくのを見て、こちらまで居たたまれない気持ちになる。

「そうそう、未成年の弟クンは邪魔しねーの。お姉ちゃん今、気持ちよくなってんだぜ。
 オッパイ弄ってやってもう30分になるか。
 でかい房がますますやぁらかく張ってきちまって、乳首もほれ、コリコリだぜ」
後ろの男が私の胸の突起を摘みながら言う。
「……ッ!」
私はとっさに唇を噛んで声を殺したが、胸の先に存在する熱いしこりは否定できない。
ああ、と甘い声を上げるのが正直一番無理のない反応だ。
「気持ちいいんだろ?おい、マンコの方はどうよ、もうドロドロになってんじゃねえか?」
男は前の一人にそう声をかける。
前の男はようやく私の秘部から口を離した。
「さぁ、俺のツバで濡れてて解らねぇ。だがまぁ、ぴっちり閉じてて初々しいぜ。
 処女とほとんど変わらねぇ、締まり具合はここ最近の中でも抜群だろうな」
男は私の顔を眺めながらにやける。

その時、ガン、と何かを蹴る音がした。
翔太だ。縛られた脚で、傍らの棚を蹴りつけたらしい。
「クソッ!!テメェら、っざ、けんなよ……ブッ殺してやらぁ!!!!」
翔太の瞳は、今まで見た事もないほどに荒々しかった。
そんな顔が出来るという事は驚きではあるけれど、同時に不安も過ぎった。
「……あ?ナニ粋がってんだ小僧、今度こそマジに死ぬか?」
男達が翔太を踏みつける。
「おう、殺せよ!俺を殺してねえちゃん離せッ!!」
翔太も引かない。放っておけば取り返しのつかない事になる。だから私は、一団に呼びかけた。
「あ、あの!そ、そろそろ場所を変えませんか?
 私、なんだか火照っちゃってて。でもこんな所じゃ……」
屈辱を押し殺し、色を込めてそう囁く。予想通り、男達の顔が好色そうに綻んだ。

「……ふん、まぁいい。そのガキは適当な所に押し込んどけ、嬢ちゃんの人質だ」
そう結論づけられ、何とか騒ぎは収まる。
私は元通り服を着直し、黒い高級車に乗せられた。翔太の絶望的な表情に見送られて。





連れ込まれたのは、ビルの地下階にある閉塞的な部屋だった。
灰色の壁にはビスケットのような独特の窪みがあり、防音仕様だと解る。
天井には強い照明があり、他にも三脚つきのビデオカメラや反射鏡など、撮影用の専門的な道具があちらこちらに設置されている。
そこが裏ビデオの撮影現場だということは容易に理解できた。
その部屋で私は、後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされたまま椅子に座らされている。
そして正面からその様をカメラに捉えられていた。

「いいねぇ、さすがは上玉だ。今までにねぇペースで視聴者が増えてやがる」
スキンヘッドの男がノートパソコンを覗き込んで呟く。
どうやら私を映すカメラのデータはそのパソコンに転送されており、会員制サイトのライブ中継として流されているようだ。
その視聴時間に応じて課金がなされ、それに人数を掛けたものが儲け、という図式らしい。
男の口ぶりからして、恐らく私の顔にモザイク処理などはなされていない。

「ほう、相当高い時間帯料金に設定してるっつうのに、もうかなりの人数がいるな。
 皆してあの数秒ばかしのサンプル映像に釣られやがったか。
 並の女高生ひっ捕まえてきても、ブスだなんだと文句つける目の肥えた連中だってのによ。
 このオスブタ共をこうまで惑わすたぁ、恐ろしい姉ちゃんだ」
髭面の男がやはりパソコン画面を覗いて漏らした。
その暴言もマイクに拾われて視聴者に届いているはずだが、男に気にする様子はない。
消費者至上の風潮に照らして考えれば、視聴者は暴言を吐かれてなお見続けるほどのクオリティを認めている、という事だろう。
もちろん、これから私になされる事も含めて。

「お、お客から早速ご要望だぜ。『オッパイ見せてください』だってよ」
スキンヘッドが告げると、私の傍にいる男達が笑みを浮かべた。
そして私のブラウスに手を掛けると、一気に左右に引き千切る。
「んんー!!」
私の抗議の声も聞かず、無遠慮にブラジャーまでも破り去られた。
隠す術を失った乳房がカメラの前に零れ出る。
「おうおう、連中すげぇ喜んでやがるぜ。ヤクザ様万歳だとよ」
「へへ、カワイソーな連中だぜ。オッパイ見るだけでそんなに嬉しいのかよ。
 俺なんかは、こうしてやらけー感触を味わったり、この別嬪の体臭を嗅ぐことさえ出来るんだぜ?」
髭面が勝ち誇ったような笑みで乳房を掴み、さらには持ち上げて乳房の下に鼻を寄せる。
「んむううっ!!」
私は再度非難のうめきを上げた。しかし何の効果も無い。

「おいおい、お前が煽るせいで視聴者サマがお冠だぜ?
 しゃーねーな、詫びにこん中で一番キッツイ要望を叶えてやるよ。
 ふむ……これだ。『この清楚美人に腹が膨らむほど浣腸して、糞をひり出させてやれ!』。
 ハンドルネームGUREN、あんたも救いようのない変態だね。だが叶えよう。
 ……ん、何?そんなS級素人にスカトロはどうせNGだろうって?
 アンタこのサイト初めてだね?ここじゃ女にNGなんて言わせねぇよ。
 事によっちゃキー局アナだろうが縛ってロウ垂らして、針でもぶっ刺してやるさ。
 悪いこた言わねぇ、目ぇひん剥いて見てな。これからこの清楚な女子大生のスカトロショウだ」

スキンヘッドの高笑いと共に、カメラが私の顔をアップに捉える。
私は心が抜け落ちるほどの恥辱を感じながら、それでも屈しまいとその映像を睨みつけた。



私は一旦拘束を解かれて服をすべて取り去られ、縄で後ろ手に縛り直される。
動画での盛り上がりは相当のもののようだ。
不特定多数の人間に裸を晒す……どうしてこんなことに。そう涙が零れそうになる。
翔太の為という正当性がなければ、とうに泣いているだろう。

縄で縛められた後は、バスルームに連れ込まれて浴槽に片足を乗せるよう命じられる。
またしても大きく秘部を開く形だ。私の人生で2度目のはしたない姿になる。
「きゅっと締まった、いいアナルだな。未使用ってのが一目で解るぜ」
1人が私の後孔を弄くり、ワセリンを塗りこめる。その様子もしっかりとカメラが捉えている事だろう。
でも私には、そんな事は些細な事でしかなかった。

これから私は、浣腸を施され、意思にかかわらず排泄をさせられるのだ。
その時に限って映像に撮られない、というのは余りにも都合のいい空想だろう。
頭が痛い。おかしくなりそうだ。
排泄を晒す?女の子が、そんな事を?この人間たちは、そんなものを見たいの?
理解が出来ない。荒唐無稽な話に思える。
しかし現実は非情に進行した。

円状の硬さと共に、シャワーノズルの外されたホースが私のお尻の穴に押し付けられる。
入る訳がない、という私の思いとは裏腹に、それはワセリンの力で少しずつ滑り込んでくる。
「いっ……!!」
悲痛な声しか出なかった。
ホースがある程度入り込むと、ついに蛇口が捻られる。
人肌程度にぬるいおぞましさが流れ込んでくる。
括約筋の内側から、その奥へ、さらにお臍近くに異常な冷たさを感じさせて。
片足を上げたまま腸内に湯を注がれる私を前に、カメラは無慈悲にも顔を映した。
惨めな顔を撮ろうというのだろう。
私は表情を引き締め、在らん限りの怒りを込めてカメラを睨みつける。
「ほう、惨めなカッコで浣腸されてるってのに気丈な顔だな。
 客も喜んでるぜぇ、気位の高い女ほど辱めたいって連中だからよ」
男達にそう嘲笑われても、私は睨みを緩めない。

水道管を水が流れる音とともに、刻一刻と私のお腹は重苦しくなってくる。
ぐるる、という腹の鳴りもしはじめた。額と背中に脂汗が浮く。
「頑張るねぇお嬢さん?もう細っこかった腹回りが膨れてきてるってのによ」
男にそう言われて視線を落とすと、確かにやや体型が変わっていた。
テニスと毎日のストレッチで作った括れがない。
脇腹から腰にかけてが、メリハリのない寸胴になっている。
カメラはハイエナのようにその醜い腹を捉えた。私は憤りに唇を噛む。


私は耐えた。
お腹の膨らみはカエルのように明らかなものとなり、体中に脂汗が流れている。
浴槽に乗せた左脚が痙攣を起こしたようになってもいる。
私は排泄を乞うことはしなかったが、やがてついに腸の限界が来る。
ぶしゅっという音で後ろの穴から湯があふれ出し、ホースを弾き飛ばした。
じゃあ、じゃあっとたちまち腸内の湯までがあふれ出す。
「おい、構えろ!」
男の叫びで、私の脚の間に洗面器が差し出された。
洗面器への排泄などとんでもないけれど、選り好みできる状況にはなかった。
お腹に力を入れて思いのままに排泄する。

何度も何度も惨めたらしい音が出た。
腸内から止め処なく水が溢れ、内腿を通って脚を伝い落ちていく。黄色かった。
単に汚液だけでなく、その中に目を背けたくなるような半固形のものも混じっていて、とぐろを巻くように右脚を滑り落ちる。
当然、お尻の穴からも何度も質量が抜け出し、洗面器の中に飛沫を上げた。
それら全てがカメラに収められている。
恐らくは私が把握できる範囲をはるかに逸脱した汚らわしさまで、余すところなく。
「う……ううう、ううッウ、うう゛……っ!!」
私は後ろ手に縛られたままで俯き、奥歯を噛みしめて涙を流した。
視界の両端に涙の雫が落ちていき、その中央でカメラのレンズが私の真正面を捉えた。

「最高だぜぇ嬢ちゃん、視聴者サマがもう大喜びだ!
 嬢ちゃんほどの上玉が、初出演でここまでハードな事やるとは思わなかったらしいな。
 何日溜めてたんですか?って質問が殺到してるぜ、答えてやんなよ」
パソコンを覗く男がそう告げ、周囲の笑いを呼んだ。

「さて、アンコールの声も多いからよ、もう一回かますぜ。全部キッチリと出し切んな。
 なんせ視聴者サマの熱いご要望に応えて、この後はアナル調教だ。
 時間かけてこってりと指入れしてやる。
 その最中にクソを漏らしたりしたらお前ぇ、ライブ映像だからモロバレだぜ」
男達はさらに醜悪な言葉を続けている。
私はお尻の穴に再びホースを捻じ込まれながら、それをぼんやりと耳にしていた。
あまりの羞恥に、感覚は鈍かった。





「うあっ!うあああっ!!」
私は堪えきれず声を上げてしまう。男の中指と薬指の第二間接が、菊輪の窄まりをヌルリといやらしく通り過ぎたからだ。
私は革張りの台に仰向けに寝かされ、お尻への執拗な指責めを受けていた。
手首は万歳をする格好で皮手錠に繋がれ、脚は180度近くに大股を開いたまま、太腿部分に拘束帯を嵌められている。
両脇を晒し、大股を開いて秘部を見せつける惨めな格好だ。

その格好を取らされてから、色々な事をやられた。
繁みの毛一本まで映り込む距離で秘部を接写された挙句、クスコと呼ばれる器具で膣を拡げられ、子宮の入り口までをも映像に収められた。
これに私が過剰気味に反応したのがいけなかったのだろう。
膣の中をペンライトで照らしながら何度も接写され、次に私の顔を撮り、を執拗に繰り返された。
わざわざ子宮の様子をカメラで撮って見せつけられもした。
それを続けられると変な気分になってしまい、やがては膣の奥が潤んだ、潤まないといった水掛論を聞く羽目になる。

膣内の撮影が飽きると、今度はついにその下に息づく排泄の穴が標的にされた。
指先で何度も何度も蕾の盛り上がりを撫で回し、筆まで使って刺激される。
そうして感覚を目覚めさせられると、今度はローションを塗した綿棒を中に挿し入れられた。
1本だけではすまない。2本、3本……お尻の穴が限界まで拡がるように。
綿棒の数が増えるたび、クスコで晒された膣の底にも盛り上がりができ始めたらしく、それを嘲笑われた。
これ以上お尻が拡がらないとなると、その綿棒の塊はゆっくりと前後される。
ローションの助けがあるとはいえ、未知の感覚。私は声を上げた。
それを気に入られてしまったのか、綿棒の塊は何度も私の不浄の穴を通過する。
言うまでもなく、カメラにその様子をしっかりと捉えられながら。

ようやく綿棒が抜かれると、今度は僅かに口を開けたお尻へ男の2本指が入り込む。
それが現状だ。
バスルームで男が言った通り、指入れはこってりとした念入りなものだった。


男はお尻の穴の責め方というものを心得ていた。
中指と薬指を揃えて浅く抜き差しし、関節部分で菊輪を刺激する巧みさ。
残りの人差し指と小指で陰唇を揉むように刺激し、親指で時おり優しく陰核をなぞる動き。
性器一帯がまるごと快感に潤み、強かったお尻への抵抗感が和らぐ。

さらには空いた方の手で内腿の辺りを撫で回されてもいて、これが地味に効いていた。
お尻への刺激と合わせて内腿をさすられると、括約筋がきゅうと締まってしまう。
その動きを待っていたように2本指で菊の華を押し拡げられると……これはもう衝撃的だ。
「お゛……っ!!」
妙な叫びと共に、勝手に腰が跳ね上がる。
快感、というものとは違うかもしれないが、腰が落ち着いてしばらくも荒い呼吸が収まらない。

「ははっ、また腰が跳ねたぞ。ホント反応いいなぁ、女優としても逸品だ」
「視聴者にも優しいしな。『脚の動きがエロい』ってコメントが山のように来てるぜ」
「ほうほう……腿やら脹脛の筋肉が波打ったり、足先がピーンって張る所がいいのか。
 映ってる部分しか情報がないとはいえ、よく見てやがるな」
「確かに。ここで全体見てっと、チチの揺れやら表情やらがエロすぎて脚なんざ目に入らねぇ」

男達は腕を組んで私を見下ろしながら、口々に品評していた。
そんな言葉を耳にすると、意識するまいと思っても脚の強張りが解ってしまう。
たちまちカメラも含めた視線が痛くなる。
炙るような恥じらいが割れ目の奥を刺激し、じわりと何かが滲み出る錯覚を覚えた。

その生ぬるい感覚に取り付かれながら、私は台に後頭部を沈ませる。
革独特の一面に張力が漲った反発。今までそれが何度も私を現実に引き戻してくれた。
しかし今やその感触を得てなお、尻穴責めの妙から抜け出せなくなりつつあった。
わずかしか潜り込んでいないはずの男の指が、長く感じる。
腸の奥まりまで入り込んでいるように。
指に犯されている。排泄の穴を、男の指に犯されている。
こんな公衆の面前で、お尻の穴を、また深く……捻られて……引きずり出されて……。

乱れた思考の末に、私の身体からは力が抜けた。
身体が革張りの上に溶け出したように感じる。
流体の身体の中、お尻の穴の感覚だけが感じられ、
その穴からまたどろどろと熱いものが流れ出しているような……感覚。


「ひゃっひゃ、おい見ろよ。アップで撮ってやれ!!」

男の品のない声で、私の意識は突如引き戻された。
視界に映るのは、男達のおかしそうな笑み。カメラは私のお尻を接写しており、
それまで淡々と指責めを施していた男までもが笑っている。

「よう、気分はどうだいお嬢様?ああ悪い、解ってんだ。気持ちよかっただろうなぁ。
 尻の穴に指ズボズボされて、所構わずクソを漏らすほどによ」
一人の男が私に告げる。
「うひひ、ネットの方も完全に祭り状態だぜ。
 まぁこんな清純そうな娘がケツほじられて、さんざっぱら感じた挙句に中身を漏らしたんだ。
 変態共にゃあ国宝級の一本になった事だろうぜ」
別の男もパソコンを前に笑った。さあっと血の気の失せるのが解る。
「どんな有り様か気になるだろ。見せてやれ」
その言葉で、自分のお尻の穴が写された画像を見せられる。

朱色に盛り上がった肉の輪。それを2本の指が割り開き、大量の泡を掻きだしていた。
静止画にもかかわらず肉の輪の心地よさが伝わってくるような図だ。
そしてその指の下部分……尾骨を通って背中側に向かう方へ、黄色い筋が見えた。
同じものが穴の周りにも広がっている。無駄なく引き締まった尻穴周辺と、その汚らわしさ。
それはおぞましいというより、むしろ官能的にさえ思えた。
それが私のお尻を写したものでさえなければ。

「時間も時間だ。今日の配信もそろそろ終わりにしようと思ってた所だが、最後にイイ山場ができたな。
 ただ尻を弄繰り回して終わりよりずっといいぜ。視聴者も大方が抜けたみてえだしよ」
「ああそうだ。それによ、指抜き差しされるたんびに顎上下させて、ああ、ああって喘ぎながらクソ漏らしてんのは、はっきし言って相当にエロかったぜ。
 生半可なセックスより、よっぽどな」

男達は笑いながらカメラを止め、私の拘束を解いて撮影の片付けに入った。
その中で私は呆然と座り込む。脳内の価値観が何一つとして繋がらなかった。





撮影後、私は別室に用意されたお風呂に浸かり、一階事務所の宴会に呼ばれた。
とはいえ気分よくお酒を飲めるはずもなく、酌をして回る役だ。
男達は酒が入ったことで、ある人間は陽気になり、ある人間は横柄さが増す。
陽気な方は、跪いて酌をする私の浴衣を肌蹴け、乳房を揉みしだいたり秘部を弄くった。
横柄な方は、私にも呑むよう命じ、何杯も一気飲みをさせてきた。
また私の注いだ酒をわざと男性器にこぼし、舐め清めるよう命じてきたりもした。

よく知りもしない相手の、それも相当に男臭い怒張だ。
大きさにしても今まで触れ合ってきた相手とは比にならず、先端は浅黒く、
根元は何か球状のもので凹凸ができている。
私は何度も生唾を飲み込み、やっとの事で覚悟を決めた。

先端を舌で舐めまわし、唾液を絡め、唇で吸い付きながら舌で輪郭をなぞる。
手で睾丸の入った袋を何度か握りながら、窄めた唇を上下させる。
今まで付き合ってきた人がみな喜んでくれたやり方だ。
「おお、結構手馴れてんじゃん」
ヤクザの中からもそういった声が上がる。
しかし、私に奉仕させる男には気に入らなかったらしい。

「おい、手をどけろ」
男は睾丸に触れていた私の手を離させると、いきなり頭を押さえつけた。
私にしてみれば咥えた男性器を喉奥に叩き込まれる事になる。
「うお゛ぉう゛っ!!?」
目をむいてえづき上げるのは当然の反応だった。
男は男性器を吐き出そうと首を上げる私をまた押さえつける。
「ごぉおお゛おぅえ゛っ!!」
連続の喉突きに、私のえづき声もひどくなった。

「あーあ可愛そうに、あんなデッケェもんいきなりイラマチオかよ」
「テッさんも好きだねぇ。おお、頭鷲掴みにしてグッポグッポ行ってやがる。ひでえわ」
そんな声が聴こえるが、誰も本気で同情などしていない。
むしろ男の太腿に手をかけて逃れようとする私を、面白そうに眺めている。
事実、ようやく男を射精に導いた後も順番に口でさせられ、必ず喉奥まで飲み込む事を強要されたのだった。

口でしている間にも、相変わらず背後から抱きつかれて割れ目を弄ばれる。
何しろ私自身にも少なくない量のお酒が入っている状態だ。
その状態で口を使われ、蜜壷まで刺激されれば……これはもう、濡れるしかない。
「へへ、そそるねぇ。ついに清楚なお前さんでも、トロトロになっちまったってぇワケだ?」
割れ目から指を抜かれ、糸を引く様を見せつけられた時、私の中の何かが急速に弱まった。




「うおおお、すっげぇ!マジでよく締まるわ」
サーファーのように日焼けした男が私の上で呻いた。その性器は私に入り込んでいる。
私は男に対してMの字を描くように脚を開いていた。
そのまま脚を押さえられて挿入を受ける。
カメラはない。動画の配信時間はとうに過ぎており、この交わりは一円の稼ぎにもならない。
撮影とは無関係なセックス。男達はいわば役得として、私の身体を使っているのだ。

「しっかし儲けモンだよなぁ、まさかこんな上玉とオマンコ出来るなんてよぉ!
 M字開脚がこんなに似合うスラーッと長い脚の女なんて、初めてじゃねえか?
 おっまけに下唇噛んだこの顔!たまんねぇだろ、どこのアイドルだよマジで!!」
男は興奮気味に叫びながら腰を打ち付けた。
性器の根元に埋め込まれた丸いものがゴリゴリと秘唇を刺激する。

「ああ、ああ、挙句の果てがこの締め付けだよ!まるっきし処女だぜこりゃあ!!
 突っ込むたびに中で一回引っ掛かって、そのまま折れそうに締め上げてよ。
 これが名器ってやつかよ、悪魔的だぜ!!
 名器なんてもんは顔で稼げねぇスケの為に用意された武器だろうが、
 なんでお前みたいに見ただけでおっ勃つ女にコレが付いちまったんだよ!
 俺の彼女にいっぺん詫びいれろや、なぁ!?」

男の言葉は興奮とともに言いがかりに近いものに変わっていった。
今まで入ってきた男も全員がそうだ。
私に搾り取られたと言っては、負け惜しみのような口調で野次りまわす。
それでも熱心な腰使いは止めない。むしろ熱が入っていく。

丹念に突かれれば、当然繋がりあう私にも影響はあった。
パンパンという肉を打ち付ける音に合わせて喘ぎが漏れそうになる。
それを指を噛んで耐え忍んだ先に、不意に腰の抜けそうな予感がする事もあった。
経験はないものの、おそらく中逝きと呼ばれるものだろう。
快感の象徴だ
私はそれを嫌い、腰が抜けそうになる度に頭を振って絶頂の感覚を振り払った。
それらの動作は、男達に清楚と受け取られ、余計に奮起させてしまうようだったけれども。

「チッ、ここまで気持ちいいなら、ゴムなしの生でやりてぇなあ」
「そう贅沢言うな。1人をこの人数で輪姦そうってんだぜ?
 一々生でやってりゃあ膣んなかがザーメン塗れで、気色悪いだろうがよ」
「それもそうだ。でも生の感触が気になるよなぁ」
男達は好き勝手な意見を交わし、入れ替わり立ち代わり、私の中に入り込んだ。



それから2時間ほどが経った頃、事務所へバイクの乗りつける音がし、ノックの音が続いた。
招き入れられたのは坊主頭の子供だ。まだ学生だろうか。
手には宅配ピザの箱があった。
「ま、毎度有難うございます!あのっ、ピ、ピザのお届けに上がりゃーした……」
暴力団事務所への宅配が怖いのだろう、声が震えている。
角刈りの男が財布から金を出す間、その視線は彷徨い、やがて私とぶつかる。

私はその時まだ事務所の片隅で犯されていた。
片脚を男の肩に担ぎ上げられ、横向けのまま深々と結合する。
腕は雰囲気が出るからと後ろで縛られ、口にもようやく咥えられる太さの怒張を捻じ込まれていた。
ピザ屋の子はそんな私を見て硬直していた。

「なんだボウズ、ヤりてぇのか」
財布から万札を抜いた角刈り男が訊ねる。小さな背筋が伸びた。
「あ、いや俺はっ……!」
「なぁーに、いいんだぜ?どうせここにいる人間全員で輪姦してる最中だ。
 今さらガキの1人増えたところでどってこたぁねえ。
 よぉーく見てみな、別嬪だろ?ボウズのクラスメイトにあれほどのがいるか?
 あそこまでの相手と出来る機会がそうそうあると思うか?」
男の囁きに、ピザ屋の子の喉が鳴る。
彼は鼻を膨らませて私を見ていた。私の顔、胸、脚……。
私にはその視線が痛い。

「…………みないで…………」

何とかそう言うのが精一杯だった。
その瞬間、ピザ屋の子は脅えたように身を竦ませ、勢いよく飛び出していく。
「オイ、金!」
角刈りの言葉も聞こえていないようだ。
「……へへ、若いねぇ。だがどっかにチクらねぇか?」
「いや、あれは無理だな。何年野球やっても部長になれねぇタイプよ」
男達はそう嘲笑いながらピザに喰らいつく。

私はまた片脚を抱え込まれてグッグッと力強く犯されながら、あの子供のことを思い出していた。
どこか頼りなげな、守ってやらなければならない存在。
そう考えた時、翔太の顔が脳裏に甦り、先ほど見た顔と重なる。
「う!!」
その瞬間、私の中を強い電流が流れた。明らかな絶頂の予感。
私を抱いていた男もそれに勘付いたのか、一気に奥まりを突いてきてしまう。
「………………くっっ!!!!!」
その瞬間、私の奥で何かが弾けた。
膣の奥が何度も痙攣するように収縮するのがわかり、足先まで震えがくる。
男の笑いが聴こえた。

「オイ、お前いまイッただろ?なぁイッたよな、俺に突かれてよ!
 傑作だぜ、そんなにさっきのガキに見られたのが善かったのかよ!?」
男は声高に叫び、脚を離して私の腰を持ち上げるようにして挿入しなおす。
「ああ!」
私は声を上げた。絶頂を迎えたばかりの中が蠢く。
他の男達も私の絶頂に興味を示しはじめているようだ。
私は初めて経験する膣内での絶頂に浸りながら、この先、一体何度絶頂を迎えるのだろうとうち震えた。




翌日の夕方からも、ライブ中継での撮影が行われた。
昨日の動画のせいか、開始時点ですでにかなりの人間がいるという。

「いっ、いくいくいくいくっ!!ああっいく、いくう、いっちゃううっ!!!!」
私は恥も外聞もなく叫び、身を捩っていた。
バスルームの洗面台に腰掛け、陰核にシャワーを浴びせられながら。
シャワーの強度はかなりのもので、またその水圧以外に、ゴム手袋をした指で優しく撫でるように転がされてもいる。
私の手首はタオル掛けに結わえ付けられ、逃げることも叶わない状態にあった。

「すげぇなぁ。嬢ちゃんの、もう小ぶりなアズキみてぇになってんぜ」
「皮もズル剥けだしな。あのままもう何回クリ逝きしてんだ、20回くらいか?
 40回連続逝きなんて無茶なリクエストだと思ったが、案外速攻かもな」
「その視聴者サマの意見も残酷だぜ。
 『清楚って聞いてきたけど、叫んで暴れてるばっかりで清楚かどうか解らない』とさ」
「へ。クリトリスでアクメし続けて、清楚さを保てる女なんざこの世にゃ居ねえって」
「そうそう。お嬢ちゃんが気持ち良さそうなんだからそれでいいだろ。
 あの蕩けきった顔見てみろよ、エロすぎだろ。
 まぁクリトリスじゃなくて、ケツの方が気持ちイイのかもしれねぇけどな」

クリトリスを柔らかく刺激され続ける私は、同時に今日もお尻を嬲られていた。
昨日と同じようにこってり丹念に指入れをされる。
「気持ちいいだろ?」
お尻に指を入れる男は、隙を見て私の耳元で囁いた。
最初は不快なだけだったその囁きも、時間が経つにつれて頭に刷り込まれてくる。

気持ちいい。クリトリスが気持ちいい、おしりも気持ちいい。
いく、クリトリスでいく、おしりを弄られながらクリトリスでいく、おしりでも……いく。

そうして、快感を得るたび、絶頂を極める度にお尻の快感と繋ぎ合わされる。
陰核の快感をお尻の快感だと何度も何度も刷り込まれ、
やがて陰核に刺激が与えられずとも、お尻の方を弄繰り回されただけで繁みの奥が潤むようになってしまう。
「ああっいくっ、もう、やすませ……ッあああいくいぐいぐっ、またイグんうううっっ!!!」
私は脳の信号が人為的に切り替えられた事実に恐怖しながらも、今はただ絶え間なく押し寄せる快感に身悶えるしかなかった。



その後も私のお尻への調教は執拗に続いた。
ある時は、私は裸のまま後ろ手に縛られ、片脚のみを天井から吊り下げられた。
縦方向に大きく脚を開いたまま秘部を晒す格好だ。
その状態で、さらに目隠しまでもが加えられる。
「いやっ、怖い!!」
私は堪らず叫んだ。
視界が遮られ、解るのは人の気配と、恥じらいの部分を見られているという事実だけ。
気が触れそうな状況だった。
その状況下で、丸見えになったお尻の穴を開発される。
その日は指入れもそこそこに、様々な道具が使われた。
アナルパールというらしい、いくつもの球が連なった道具。
アナルバルーンと呼ばれる、腸内を強烈に膨らませる心臓に悪い器具。
時には冷たく硬い栄養剤の瓶さえも捻じ込まれた。

けれども、それまでの調教ですっかり肛門の性感帯を目覚めさせられた身には、そのどれもが明らかな快感。
視界を奪われたことで感覚も鋭敏になり、お尻を弄られ、それをビデオに撮られている、という余りにもひどい状況で感じてしまっていた。

唸りを上げるバイブレーターが何度も抜き差しされる中、ついに足首に蜜が垂れるのを感じる。
「おうおう、嬢ちゃん、とうとう尻穴ほじくられて濡れたのかい」
間髪入れず指摘された事で、私自身の心もその事実を受け入れる。
機械的な羽音をお尻の穴から生じさせながら、私は幾筋も、幾筋も、蜜を溢していた。
「あ、あああ、あああ…………あ」
堪えようもなく声が上がった。
秘裂だけではなく上の口からも涎が零れていく。
床へ爪先立ちになった足指にも、太腿にも、背筋にも首筋にも、脳天にまで快感が走り抜ける。

見守る男達から雌の心を満たす声が掛けられる。
ネットの向こうの人間達からも好評を得られているらしい。
けれども私には、そんな事はどうでも良かった。私にはそれよりも、この快感に身を委ねる事のほうが心地良いのだから。






「あああ、あああああ、あああ……あああ、ああ…………」
自分の上げる声が耳元で煩く聴こえる。
私はベッドの上で膝を突き、お尻を大きく突き出す格好で這っていた。
後ろでは逞しい身体つきをした男の人が、私のお尻の穴へちんぽをねじ込んでいる。
正面から撮るカメラへの映りがいいよう、わざわざがに股に脚をひらく形での抜き差しだ。
実に大変なものだと思う。私などは楽なものだ。
ただ被害者ぶった哀れそうな顔をして、向こうが突き込んで来てくれるのを待てばいいのだから。

「フッ、フッ、フッ、フッ……!!!」
後ろの彼はトレーニングの時のような息を吐き、全力を込めて腸を穿ってくれる。
そもそも日本人では稀な極太さをもつ上に、あちこちに真珠の埋め込まれた力作だ。
それを男の逞しい力で叩き込んでくれるのだから、どうなるか。
真珠でゴリゴリと菊輪が擦れ、腸の形をへし曲げられ、奥を突かれる。
コレはもうたまらなく気持ちいい。
「んああーーーーーっ!!!!」
私は下半身全てを震え上がらせながら、シーツを掴んで乱れた口元を隠す。
私のようなアバズレに、なぜそんな楚々とした癖があるのか、自分でもわからない。
まるで私の内面に、“私ではない私”がいるみたいだ。

「へっ、相変わらず気持ち良さそうにセックスするなぁ嬢ちゃん。
 解ってるか?抜き差しされる尻穴から、背筋にどろーって液が垂れててよ、やらしいぜぇ」
別の男の人が私に声をかけて来る。
あの人は、いつも私の喉奥までちんぽをくわえ込ませる人だ。
始めは苦しくて、ビデオの前で嘔吐した時は死にたくなったけど、今は喉奥に呑み込むのが気持ち良い。
私はひどい事されるほど感じるから。もっともっとひどい事がいい。
今まで私が死にたいと思ったぐらいにひどい事をフルコースでして欲しいぐらい。

こうしてバックでお尻を犯されるのなんて普通すぎる。
どうせなら、浣腸したまま縛って吊るして、極太でお尻を犯すのをまたして欲しいな。
その情景を下からカメラで撮影するの。
犯されるたびに私の顔が歪んで、おっぱいが揺れて。
そのうちお尻セックスで堪えきれなくなって、カメラへ向けてうんちが垂れるのよね。
私がいくら泣き叫んでも、浣腸されたお尻からは止まらなくって、一突き毎にひどい事になる。
それでも前の穴からも蜜が垂れるものだから、映像を観た人には誰からも同情されなかったっけ。

ギロチン台みたいな場所に頭と手首を固定されて、前後から犯されるのも凄かったな。
前からは口の中に思うままにちんぽをねじ込まれて、ゲロゲロ吐いちゃう。
同時に後ろからも犯されて、前で吐かされるのと同時に動かれて、あんまりにも苦しいから内股になっちゃうのよね。
そしたら、見栄えが悪い、脚開けって腿を真っ赤になるまで叩かれたっけ。
そうして惨めたらしく爪先立ちのがに股のまま犯されて、私は可愛そうに泣きじゃくるのよ。
それが余計に虐めたい心をくすぐるんだって、もしかしたら私、あの時点で気付いてたのかな?

……私って本当、救いようのない変態だよね。
でも私の映像が有名になった今になって、どこかの球場にいた清楚な娘なんじゃ、なんて言われてるらしいの。
おまけにその噂を真に受けて、1人の男の子が『ねえちゃんゴメン』って叫びながら自殺未遂までしたんだって。
笑っちゃう。そんな人達には、ハッキリと言ってあげたい。

『そんなに優等生じゃないよ。』

……って。

                      
                              END
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