※スカトロ注意
夕霧(ゆうぎり)は困惑していた。
くノ一として菱堀の城に潜入し、狙い通り密書を盗み出したまでは良い。
脱出する過程で敵の忍に勘付かれ、追われる羽目になった事も、
上手くはないにせよ不可解ではない。
しかし、その忍達の動きが夕霧の不審を煽った。
手練である事はその些細な挙動から見て取れる。
しかし、彼女らは夕霧の行く手を阻むばかりで、討ち取ろうとする気配がない。
攻勢に出てくれれば夕霧としても返り討ちにする機を得やすいのだが、
多勢で守りに入られるのは実につらい。
より地の利が活かせる日没を狙っているのか。
焦れる夕霧はそう読みをつけ、戦局を切り開くべく手近な1人に斬りかかった。
剣客にも劣らぬ不可視の一閃。
「あっ!!」
狙われた忍は鎖帷子の効能で命こそ落とさないものの、胸元を紅く染めて倒れ込む。
「……まったく、何をしておるのじゃ!狙いづろうて敵わんぞ」
その夕霧達の戦いを、遠くから弓を構えて見つめる少女がいた。
菱堀の城が姫、八千代だ。
彼女にとって、城に忍び入ったくノ一を射抜く事は鷹狩りと同じ。
菱堀の忍が夕霧を霍乱するのは、この八千代の道楽に付き合わされてのものだった。
特に今日は難度が高い。
八千代は矢じりに神経毒を塗った矢を掠めさせ、敵を生け捕りにする心積もりなのだから。
「大人しくさせましょう」
八千代の苛立ちを感じ取った護衛が、夕霧を取り囲む忍に向かって手を上げる。
すると、それを見取った1人が死角から夕霧に斬りかかった。
「っ!」
今の今まで膠着を保っていた中での急襲。しかも複数いる中でも、恐らく一番の使い手だ。
夕霧は刀でかろうじて防ぐが、体勢を崩した事で脚が止まる。
その瞬間、八千代が引き絞っていた弓を放った。
道楽の一環とはいえ中々の腕だ。
放たれた矢は斜め上方から夕霧の首筋を舐め、畳に突き刺さる。
「ぐっ!?」
夕霧は不覚と言わんばかりに目を見開き、両の手で忍者刀を握りしめたまま内股に堪えた。
「あ、…… あ゛……!!!!」
しかし毒には抗えず、やがて白目を剥きながら横様に倒れ込む。
取り囲む忍達から安堵の息が漏れた。
「射取ったぞ!どうじゃ、見事な腕じゃろう!!」
そう能天気に誇る姫君の声だけが、嘆息混じる屋敷に吸い込まれる。
数時間の後、拷問蔵に厳しい水責めの音が響き渡っていた。
夕霧は捕縛された時のまま、黒装束に篭手や脛当だけを身につけた出立で逆さ吊りにされている。
その足首には幾重にも縄が巻かれ、天井からの滑車に連なっていた。
手首もやはり頭の下で縛られ、水を吸って海草のようになった結い髪を絡みつかせながら雫を垂らす。
「沈めな」
1人の女が告げると、滑車が回転し、夕霧の身体が木桶の中に沈む。
人の背丈よりも高さのある、水責め用の本格的な桶だ。
腰までが水に浸かった後、女の厳しい目つきが夕霧を捉える。
水面に泡の浮く音。
荒縄のギシギシと鳴る独特の音。
初めは何の動きもない夕霧の脚線が、やがて細かに震えだし、ついには滑車を軋ませるほどの激しい痙攣となりはじめる。
そこに至ってようやく、女は頭上に手を振り上げた。
「ぶはぁっ!!あはぁっ、ああ゛っ、あ゛え゛っほえ゛ほっ、あはあっ、はあっ!!!!!」
命の危機を感じさせる勢いで夕霧が空気を求め、咳き込み、空気を求める。
どれほどつらいのかがその息遣いだけで伝わってきた。
よく注意すれば、桶の周辺からはかすかに小便の匂いが漂ってさえおり、
この容赦の無い水責めが相当な時間続けられている事も窺い知れる。
「いい加減に素性と、盗んだ密書の隠し場所を吐け」
女が夕霧を見上げて問う。
だが夕霧はひとしきり咳き込んだ後は、貝のように口を閉じて語らない。
「……按配はどうじゃ」
拷問蔵の扉を開け、従者を従えた八千代が姿を現した。
女は苦い顔で首を振る。
「相当な調練を受けた忍です。捕らえてより、『鞭打ち』、閉所に閉じ込めて薪を焚く『地獄蒸し』、
そしてこの『水責め』と続けていますが、碌に声すら発しません」
女がそう告げるのを聞き、八千代が口端を吊り上げた。
「ほう、それは責め甲斐のある女じゃ。
素性はともあれ、あの状況でくノ一が物を隠すとなれば、体の内と相場が決まっておる。
その女を降ろし、口の中を調べよ。指を突き込んでな」
「は!」
八千代の言葉に従い、すぐに夕霧の縄が解かれはじめる。
八千代自身は項垂れた夕霧を見下ろせる位置に移り、興味深げに状況を見守った。
夕霧は正座する格好のまま、腕を高手後手に縛られている。
その夕霧の顎を先ほどの女が掴んだ。
朦朧としていた夕霧の瞳が、微かに意思を宿す。
「……いいかい、これからお前の口に物が隠されてないかを調べるよ。
もしこの指を噛んだりしたら……そうだね、足の指を切り取るとしようかね」
開かせた夕霧の口内に指を差し入れながら、女は淡々と継げた。
命に関わらない足指を指定する辺り、ただの脅しではないだろう。
「ぐぐ……!!」
夕霧はこめかみに汗を伝わせながら、口を開いて指を迎え入れるしかない。
「……ぐ、ぉぐ、ぐえ!!えお゛っ、おおお゛ぇっ、ぐええっ!!!」
拷問蔵に苦悶の声が響く。
夕霧は喉奥深くに指を捻じ込まれて身悶えていた。
吊り気味の瞳は固く閉じて涙を溢し、薄い唇からは幾筋もの唾液を垂らしている。
責め手の女はそんな夕霧を満足げに見ながら、顎を掴む手で顔を上向けさせ、
喉奥をコリコリと刺激しつづけていた。
「とーうとうお前の声が聞けたよ、薄汚い声だねぇ」
上機嫌でそう告げながら、琴を弾くように指を蠢かす。
そのたびに喉奥からクチャクチャと粘り気のある音がし、夕霧の閉じた瞳が震える。
――やがて。
「ゴぇ、ぉぉお゛っ……!!!!」
夕霧の眉が地図のように深く顰められ、顔が一段と上向きになる。
それを見て取った女は、満面の笑みで涎まみれの指を引き抜いた。
同時に下を向く夕霧の顔。
「ぐボっ……げぇっ、おげろ゛っ……!!!!」
嘔吐だ。
その吐瀉物の線は、下を向く過程で一部前方へと投げ出され、次いで正座した太腿へと堆積していく。
白く美しい太腿が卵のようなものに穢されていく様、
引き締まった身体を持つ黒髪の美女が、痙攣しながら嘔吐するその様は、背筋を刺すような凄みがあった。
吐瀉物が粗方吐きだされた後、責め手の女は薄笑いを浮かべながら夕霧の顔を上向かせる。
「あ…………あ、 う …………」
涙の線と吐瀉物の跡をはっきりと残す夕霧。
だが女の指が再び喉奥を狙って入り込むと、その虚ろな瞳は驚愕に見開かれる。
「えお゛っ!?」
「ふん、一度や二度で済むとでも思ってんのかい。
何か隠してやしないか、おまえの胃臓が空っぽになるまで続くんだよ」
嗜虐心に満ちた女の指が、再び夕霧の口内で踊り出す。
「ごげ、……お゛っ……!!」
夕霧の瞳が閉じられ、後ろ手の縄が音を立てる。
拷問蔵に、ぐえ、おえっ……という呻き声は、それからかなりの時間続く事になった。
胃の中に何もない事が明らかとなっても、夕霧への責めが終わるわけではない。
とうに夜も更け、拷問蔵の中には幾本もの蝋燭が灯されている。
その蝋燭の灯に照らし出され、柱に結わえ付けられた夕霧の裸体は白く浮かび上がっていた。
太い木の柱に腕を回すようにして後ろ手に縛られ、脚を大きく開かされる格好だ。
大きな汗の珠が全身を伝ってもいる。
「はぁ、はっ……はっ、はっ…………!!」
縄の軋む音に混じり、粘つくような呼吸がなされていた。
それは瘤つきの猿轡を噛まされた、夕霧の口から発せられているらしい。
興奮している。
その原因は彼女の股座を見れば明らかとなった。
幾つも瘤を作られ、膏でなめされた縄が、夕霧の女の部分を責め立てているのだ。
柱の下部に開いた穴を通して扱かれるその縄には、夕霧の蜜が濃厚に纏いついている。
「愉快じゃな。ぬしの柔肉の感触が、縄越しに手の上へ伝わってきおるわ」
八千代が縄尻を引き絞りながら笑うと、夕霧の口からはつらそうな呻きが漏れた。
尻肉を引き締め、たたらを踏みながら悶える夕霧。
秘所を巻き込むようにしながら縄が前後する。汁気が縄を伝い、夕霧の腿全体へと拡がっていく。
その異常ともいえるような濡れようは、股縄による刺激によってのみではない。
夕霧の秘所には、あらかじめ女の指で薬が塗り込められている。
色修行を修めたくノ一でさえ狂わせる、強めの薬が。
縄で心ゆくまで夕霧を悶えさせたあと、八千代は縄を捨て、従者に夕霧の両脚を抱えさせる。
秘部が自分に向けて露わとなるように。
「……ふん、女陰を間近で見る事もそうはないが、何とも奇怪なものよ。
馬肉のような下品な赤さに、弄くるほど奥から溢れる生ぬるい液。
斯様なものが己の下についておるなど、卒倒しそうじゃ」
まだ幼さの残る八千代が、夕霧の秘唇をつぶさに観察し、詰りながら弄繰り回す。
それが耐えがたいのか、夕霧の猿轡から悲痛な呻きが漏れた。
八千代は愉しげに笑うと、傍らの女性から男性器を模した極太の道具を受け取る。
「さて、女穴の中に何かを隠しているか確かめるにしても、ただ手で弄るのでは面白うない。
ゆえに、この『随喜』で悦ばせてやる事にしよう。
わざわざ肥後から取り寄せている一級品ぞ、心して味わえ」
八千代はおよそ子供とは思えない残忍な笑みを浮かべながら、随喜に薬を振り掛ける。
そして逃れようと身を捩る獲物を愉しみながら、その開かれた脚の間に随喜を捻じ込んだ。
「あっ、ああ、いああああっ……!!!!」
八千代の小さな掌に蜜を垂らしながら、随喜の抽送が開始される。
八千代は相手の様子を見ながら、容赦なく、蕩けきった最奥を穿ち始めた……。
八千代にとって、夕霧は大層お気に入りの玩具となったようだ。
今までにも幾人かのくノ一を生け捕りにしては嬲ってきたが、夕霧はそれとも違うらしい。
凛とした目元や後ろで結われた艶やかな黒髪が、彼女の姉である登世(とせ)に近いからだろうか。
全てに秀で、名家に嫁いで八千代の嫉妬の対象となっていた登世に似ているからだろうか。
ともあれ八千代は、夕霧を弄び続けた。
夕霧は今、石抱き責めの拷問を受けている。
それもただの石抱きではない。『半日は下痢が止まらぬ』という腹下しを呑まされた上で、だ。
膝の上に乗った石の重みで、膝下の波打つような突起が食い込んでくる。
そのつらさの中、彼女の限界を迎えた肛門を八千代の指がほじくり返していた。
「姫様、いけませぬ!そのような所、汚のうございます!!」
周りがどう騒ごうとも、八千代は夕霧の肛門を責め続ける。
夕霧には堪ったものではなかった。
普通でもつらい石抱き責めだが、その責めを軽くしようと腰に力を入れれば、
たちまち腹下しの効果で下痢便をもらしてしまう。
しかし下痢便に気を取られて重心を前に置くと、今度は膝が潰されそうに痛む。
どちらに転んでも地獄だった。
「女よ。着ておった装束の染めを見る限り、ぬしは越中辺りの出であろう。
越中の女は油虫でも喰ろうて暮らしておるのか?貴様の糞は、匂うて敵わんわ。
おうお、次々と出てきおる。密書を斯様な所に隠しておらば、即座にその首叩き切るぞ」
激しい腹鳴りと共にひくつく肛門を、さらに指でほじり返しながら八千代が蔑む。
その指には、抗いようもなく下痢便がこびりついていた。
「や、やめ、ろ……!!み、密書など、知らぬ…………!!!」
夕霧は、八千代が肛門をひらく動きに導かれるように下痢便を漏らしつつ、必死に白を切る。
だがその顔は耐えがたい羞恥に歪んでいた。
もしも密書を持ち帰るという任務が無ければ、即座に舌を噛み切るところだ。
密書は追われている最中に屋根裏へ道具を使って隠したが、絶対に見つからないという仕掛けでもない。
何とかあれを奪還される前に、この窮地から抜けださなければ。
夕霧はその使命感によってのみ、生き永らえていた。
だが脱出の目処は立たない。
常に手か脚を縛られており、絶え間ない責めで体力は消耗するばかり。
夜になれば、逃げ出せないよう蛸を秘裂と肛門にねじ込まれ、空が白むまで犯され続けた。
八千代は、蛸によって妊婦のように腹が膨らみ、絶頂に踊り続ける夕霧を飽きもせず観察する。
どの夜も、どの夜も。
その歪んだ笑顔を毎晩見続けるうち、夕霧は、
『自分がもう助からないのでは』……と、そう思うようになりはじめていた。
終わり
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夕霧(ゆうぎり)は困惑していた。
くノ一として菱堀の城に潜入し、狙い通り密書を盗み出したまでは良い。
脱出する過程で敵の忍に勘付かれ、追われる羽目になった事も、
上手くはないにせよ不可解ではない。
しかし、その忍達の動きが夕霧の不審を煽った。
手練である事はその些細な挙動から見て取れる。
しかし、彼女らは夕霧の行く手を阻むばかりで、討ち取ろうとする気配がない。
攻勢に出てくれれば夕霧としても返り討ちにする機を得やすいのだが、
多勢で守りに入られるのは実につらい。
より地の利が活かせる日没を狙っているのか。
焦れる夕霧はそう読みをつけ、戦局を切り開くべく手近な1人に斬りかかった。
剣客にも劣らぬ不可視の一閃。
「あっ!!」
狙われた忍は鎖帷子の効能で命こそ落とさないものの、胸元を紅く染めて倒れ込む。
「……まったく、何をしておるのじゃ!狙いづろうて敵わんぞ」
その夕霧達の戦いを、遠くから弓を構えて見つめる少女がいた。
菱堀の城が姫、八千代だ。
彼女にとって、城に忍び入ったくノ一を射抜く事は鷹狩りと同じ。
菱堀の忍が夕霧を霍乱するのは、この八千代の道楽に付き合わされてのものだった。
特に今日は難度が高い。
八千代は矢じりに神経毒を塗った矢を掠めさせ、敵を生け捕りにする心積もりなのだから。
「大人しくさせましょう」
八千代の苛立ちを感じ取った護衛が、夕霧を取り囲む忍に向かって手を上げる。
すると、それを見取った1人が死角から夕霧に斬りかかった。
「っ!」
今の今まで膠着を保っていた中での急襲。しかも複数いる中でも、恐らく一番の使い手だ。
夕霧は刀でかろうじて防ぐが、体勢を崩した事で脚が止まる。
その瞬間、八千代が引き絞っていた弓を放った。
道楽の一環とはいえ中々の腕だ。
放たれた矢は斜め上方から夕霧の首筋を舐め、畳に突き刺さる。
「ぐっ!?」
夕霧は不覚と言わんばかりに目を見開き、両の手で忍者刀を握りしめたまま内股に堪えた。
「あ、…… あ゛……!!!!」
しかし毒には抗えず、やがて白目を剥きながら横様に倒れ込む。
取り囲む忍達から安堵の息が漏れた。
「射取ったぞ!どうじゃ、見事な腕じゃろう!!」
そう能天気に誇る姫君の声だけが、嘆息混じる屋敷に吸い込まれる。
数時間の後、拷問蔵に厳しい水責めの音が響き渡っていた。
夕霧は捕縛された時のまま、黒装束に篭手や脛当だけを身につけた出立で逆さ吊りにされている。
その足首には幾重にも縄が巻かれ、天井からの滑車に連なっていた。
手首もやはり頭の下で縛られ、水を吸って海草のようになった結い髪を絡みつかせながら雫を垂らす。
「沈めな」
1人の女が告げると、滑車が回転し、夕霧の身体が木桶の中に沈む。
人の背丈よりも高さのある、水責め用の本格的な桶だ。
腰までが水に浸かった後、女の厳しい目つきが夕霧を捉える。
水面に泡の浮く音。
荒縄のギシギシと鳴る独特の音。
初めは何の動きもない夕霧の脚線が、やがて細かに震えだし、ついには滑車を軋ませるほどの激しい痙攣となりはじめる。
そこに至ってようやく、女は頭上に手を振り上げた。
「ぶはぁっ!!あはぁっ、ああ゛っ、あ゛え゛っほえ゛ほっ、あはあっ、はあっ!!!!!」
命の危機を感じさせる勢いで夕霧が空気を求め、咳き込み、空気を求める。
どれほどつらいのかがその息遣いだけで伝わってきた。
よく注意すれば、桶の周辺からはかすかに小便の匂いが漂ってさえおり、
この容赦の無い水責めが相当な時間続けられている事も窺い知れる。
「いい加減に素性と、盗んだ密書の隠し場所を吐け」
女が夕霧を見上げて問う。
だが夕霧はひとしきり咳き込んだ後は、貝のように口を閉じて語らない。
「……按配はどうじゃ」
拷問蔵の扉を開け、従者を従えた八千代が姿を現した。
女は苦い顔で首を振る。
「相当な調練を受けた忍です。捕らえてより、『鞭打ち』、閉所に閉じ込めて薪を焚く『地獄蒸し』、
そしてこの『水責め』と続けていますが、碌に声すら発しません」
女がそう告げるのを聞き、八千代が口端を吊り上げた。
「ほう、それは責め甲斐のある女じゃ。
素性はともあれ、あの状況でくノ一が物を隠すとなれば、体の内と相場が決まっておる。
その女を降ろし、口の中を調べよ。指を突き込んでな」
「は!」
八千代の言葉に従い、すぐに夕霧の縄が解かれはじめる。
八千代自身は項垂れた夕霧を見下ろせる位置に移り、興味深げに状況を見守った。
夕霧は正座する格好のまま、腕を高手後手に縛られている。
その夕霧の顎を先ほどの女が掴んだ。
朦朧としていた夕霧の瞳が、微かに意思を宿す。
「……いいかい、これからお前の口に物が隠されてないかを調べるよ。
もしこの指を噛んだりしたら……そうだね、足の指を切り取るとしようかね」
開かせた夕霧の口内に指を差し入れながら、女は淡々と継げた。
命に関わらない足指を指定する辺り、ただの脅しではないだろう。
「ぐぐ……!!」
夕霧はこめかみに汗を伝わせながら、口を開いて指を迎え入れるしかない。
「……ぐ、ぉぐ、ぐえ!!えお゛っ、おおお゛ぇっ、ぐええっ!!!」
拷問蔵に苦悶の声が響く。
夕霧は喉奥深くに指を捻じ込まれて身悶えていた。
吊り気味の瞳は固く閉じて涙を溢し、薄い唇からは幾筋もの唾液を垂らしている。
責め手の女はそんな夕霧を満足げに見ながら、顎を掴む手で顔を上向けさせ、
喉奥をコリコリと刺激しつづけていた。
「とーうとうお前の声が聞けたよ、薄汚い声だねぇ」
上機嫌でそう告げながら、琴を弾くように指を蠢かす。
そのたびに喉奥からクチャクチャと粘り気のある音がし、夕霧の閉じた瞳が震える。
――やがて。
「ゴぇ、ぉぉお゛っ……!!!!」
夕霧の眉が地図のように深く顰められ、顔が一段と上向きになる。
それを見て取った女は、満面の笑みで涎まみれの指を引き抜いた。
同時に下を向く夕霧の顔。
「ぐボっ……げぇっ、おげろ゛っ……!!!!」
嘔吐だ。
その吐瀉物の線は、下を向く過程で一部前方へと投げ出され、次いで正座した太腿へと堆積していく。
白く美しい太腿が卵のようなものに穢されていく様、
引き締まった身体を持つ黒髪の美女が、痙攣しながら嘔吐するその様は、背筋を刺すような凄みがあった。
吐瀉物が粗方吐きだされた後、責め手の女は薄笑いを浮かべながら夕霧の顔を上向かせる。
「あ…………あ、 う …………」
涙の線と吐瀉物の跡をはっきりと残す夕霧。
だが女の指が再び喉奥を狙って入り込むと、その虚ろな瞳は驚愕に見開かれる。
「えお゛っ!?」
「ふん、一度や二度で済むとでも思ってんのかい。
何か隠してやしないか、おまえの胃臓が空っぽになるまで続くんだよ」
嗜虐心に満ちた女の指が、再び夕霧の口内で踊り出す。
「ごげ、……お゛っ……!!」
夕霧の瞳が閉じられ、後ろ手の縄が音を立てる。
拷問蔵に、ぐえ、おえっ……という呻き声は、それからかなりの時間続く事になった。
胃の中に何もない事が明らかとなっても、夕霧への責めが終わるわけではない。
とうに夜も更け、拷問蔵の中には幾本もの蝋燭が灯されている。
その蝋燭の灯に照らし出され、柱に結わえ付けられた夕霧の裸体は白く浮かび上がっていた。
太い木の柱に腕を回すようにして後ろ手に縛られ、脚を大きく開かされる格好だ。
大きな汗の珠が全身を伝ってもいる。
「はぁ、はっ……はっ、はっ…………!!」
縄の軋む音に混じり、粘つくような呼吸がなされていた。
それは瘤つきの猿轡を噛まされた、夕霧の口から発せられているらしい。
興奮している。
その原因は彼女の股座を見れば明らかとなった。
幾つも瘤を作られ、膏でなめされた縄が、夕霧の女の部分を責め立てているのだ。
柱の下部に開いた穴を通して扱かれるその縄には、夕霧の蜜が濃厚に纏いついている。
「愉快じゃな。ぬしの柔肉の感触が、縄越しに手の上へ伝わってきおるわ」
八千代が縄尻を引き絞りながら笑うと、夕霧の口からはつらそうな呻きが漏れた。
尻肉を引き締め、たたらを踏みながら悶える夕霧。
秘所を巻き込むようにしながら縄が前後する。汁気が縄を伝い、夕霧の腿全体へと拡がっていく。
その異常ともいえるような濡れようは、股縄による刺激によってのみではない。
夕霧の秘所には、あらかじめ女の指で薬が塗り込められている。
色修行を修めたくノ一でさえ狂わせる、強めの薬が。
縄で心ゆくまで夕霧を悶えさせたあと、八千代は縄を捨て、従者に夕霧の両脚を抱えさせる。
秘部が自分に向けて露わとなるように。
「……ふん、女陰を間近で見る事もそうはないが、何とも奇怪なものよ。
馬肉のような下品な赤さに、弄くるほど奥から溢れる生ぬるい液。
斯様なものが己の下についておるなど、卒倒しそうじゃ」
まだ幼さの残る八千代が、夕霧の秘唇をつぶさに観察し、詰りながら弄繰り回す。
それが耐えがたいのか、夕霧の猿轡から悲痛な呻きが漏れた。
八千代は愉しげに笑うと、傍らの女性から男性器を模した極太の道具を受け取る。
「さて、女穴の中に何かを隠しているか確かめるにしても、ただ手で弄るのでは面白うない。
ゆえに、この『随喜』で悦ばせてやる事にしよう。
わざわざ肥後から取り寄せている一級品ぞ、心して味わえ」
八千代はおよそ子供とは思えない残忍な笑みを浮かべながら、随喜に薬を振り掛ける。
そして逃れようと身を捩る獲物を愉しみながら、その開かれた脚の間に随喜を捻じ込んだ。
「あっ、ああ、いああああっ……!!!!」
八千代の小さな掌に蜜を垂らしながら、随喜の抽送が開始される。
八千代は相手の様子を見ながら、容赦なく、蕩けきった最奥を穿ち始めた……。
八千代にとって、夕霧は大層お気に入りの玩具となったようだ。
今までにも幾人かのくノ一を生け捕りにしては嬲ってきたが、夕霧はそれとも違うらしい。
凛とした目元や後ろで結われた艶やかな黒髪が、彼女の姉である登世(とせ)に近いからだろうか。
全てに秀で、名家に嫁いで八千代の嫉妬の対象となっていた登世に似ているからだろうか。
ともあれ八千代は、夕霧を弄び続けた。
夕霧は今、石抱き責めの拷問を受けている。
それもただの石抱きではない。『半日は下痢が止まらぬ』という腹下しを呑まされた上で、だ。
膝の上に乗った石の重みで、膝下の波打つような突起が食い込んでくる。
そのつらさの中、彼女の限界を迎えた肛門を八千代の指がほじくり返していた。
「姫様、いけませぬ!そのような所、汚のうございます!!」
周りがどう騒ごうとも、八千代は夕霧の肛門を責め続ける。
夕霧には堪ったものではなかった。
普通でもつらい石抱き責めだが、その責めを軽くしようと腰に力を入れれば、
たちまち腹下しの効果で下痢便をもらしてしまう。
しかし下痢便に気を取られて重心を前に置くと、今度は膝が潰されそうに痛む。
どちらに転んでも地獄だった。
「女よ。着ておった装束の染めを見る限り、ぬしは越中辺りの出であろう。
越中の女は油虫でも喰ろうて暮らしておるのか?貴様の糞は、匂うて敵わんわ。
おうお、次々と出てきおる。密書を斯様な所に隠しておらば、即座にその首叩き切るぞ」
激しい腹鳴りと共にひくつく肛門を、さらに指でほじり返しながら八千代が蔑む。
その指には、抗いようもなく下痢便がこびりついていた。
「や、やめ、ろ……!!み、密書など、知らぬ…………!!!」
夕霧は、八千代が肛門をひらく動きに導かれるように下痢便を漏らしつつ、必死に白を切る。
だがその顔は耐えがたい羞恥に歪んでいた。
もしも密書を持ち帰るという任務が無ければ、即座に舌を噛み切るところだ。
密書は追われている最中に屋根裏へ道具を使って隠したが、絶対に見つからないという仕掛けでもない。
何とかあれを奪還される前に、この窮地から抜けださなければ。
夕霧はその使命感によってのみ、生き永らえていた。
だが脱出の目処は立たない。
常に手か脚を縛られており、絶え間ない責めで体力は消耗するばかり。
夜になれば、逃げ出せないよう蛸を秘裂と肛門にねじ込まれ、空が白むまで犯され続けた。
八千代は、蛸によって妊婦のように腹が膨らみ、絶頂に踊り続ける夕霧を飽きもせず観察する。
どの夜も、どの夜も。
その歪んだ笑顔を毎晩見続けるうち、夕霧は、
『自分がもう助からないのでは』……と、そう思うようになりはじめていた。
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