※ 若干ホラー風味
俺の従兄は三流ゴシップ誌のライターで、口を開けばおよそいつも下らない話ばかりしている。
ただ、時々は面白い話が混じっている事もあった。
特に風俗関係の話には、大学生である俺の興味をそそるものが多い。
『ハイレベルな正真正銘の風俗素人が、いかがわしい事をする店』
とっておき、と言いつつ今回奴が持ってきたネタはそれだった。
事前に情報を得ていないと風俗店とは解らず、告知などもないため、存在を知る者は殆どいないそうだ。
俺は発信源が発信源だけに眉唾物だと思いつつ、確認するだけなら……とその店の地図を受け取った。
※
特急も止まるそこそこ規模の大きな駅で降り、より栄えた方の出口へ。
地図を頼りに、パチンコ屋やカラオケボックスが立ち並ぶ大通りを突き進む。
かなりの繁華街だ。こんな場所の風俗店など、すでにどこもかしこも踏破され尽くしているのではないか。
そう猜疑心が持ち上がるが、ともかく行ってみなければ始まらない。
迷いながらも通りを進むうち、ようやく地図に記された建物へと辿り着いた。
裏通りへ一歩踏み入れた所の古い雑居ビルで、錆びた看板に居酒屋の名前などが雑多に並んでいる。
ここで『偶然』足を止める人間は、なるほど100人中1人いるかどうかだろう。
気分よく遊ぶ事を考えれば、誰もが本能的に通り過ぎるような小汚い路地の一角なのだから。
俺はともかくもビルに入り、地図にメモされてある通りにエレベーターで8階へ向かう。
扉の閉まる早さ、階移動の妙な軽さがいかにも安っぽい。
まるで貧乏学生の住むマンションについているような……。
その俺の考えは、8階に到着し、扉が空いた瞬間に比喩ではなくなる。
まさに安普請のマンションだ。
エレベーターを降りてすぐに見える、ペンキの剥げかけた扉。
『801』の号室表示もそのままに、『エクール企画 資材倉庫』と印字して貼り付けられたシール。
他の扉も似たようなものだった。
合計5つのドアのうち、4つが聞いたこともない会社の倉庫として使われている。
建物を間違えたか、さすがにこんな場所に目的の店はないだろう。
そう思いながら一番奥の扉を見た時、俺の微かな希望は打ち砕かれた。
そこの表示が、探していた店の名前と一致していたからだ。
“Rubelite(ルーベライト)”
……店の名前でネット検索してみて知ったが、赤い色合いのトルマリンを差す言葉らしい。
その店名が、確かに目の前のドアに張られている。
ただしドアには磁石もついていて、そこから細いチェーンで「CLOSE」という小さな看板がぶら下げられてもいた。
時間は夜の6時を少し回ったところ。
共有廊下から遥かに見下ろせる街並みも、すっかり夜の模様になっている。
風俗店でもそろそろ開いていておかしくはないはずだった。
今日がたまたま休業日だったのか、或いはとうに警察に摘発されて営業停止を喰らったのか。
いずれにせよ致し方ない。俺は渋々とエレベーターへ引き返す。
しかし下行きのボタンを押す段階になって、手が止まった。
何の為にここまで辿り着いたのだろう。
ここまで延々と来ておいて、このまま帰ってしまっていいのだろうか。
本当にあの店はやらないのか?ネットにも載っていない無銘店だが、休みかどうか調べる術はないか?
そう思い悩んでいた時だ。俺の目の前にエレベーターが到着した。
ああ、来たか。 ……いやでも待て。まだ俺は、ボタンを押してないぞ。
戸惑っている間にも、エレベーターのドアが開いて中から人が降りてくる。
俺は目を見開いた。
出てきたのは若い女の子だ。制服を着ている。門限間近であるように、ひどく息を切らせてもいた。
胸の下辺りまで長く伸ばされた、艶やかに光の輪の揺れる黒髪。
少しハーフっぽい、すっきりと整った涼やかな顔立ち。
何より目を引くのは、紺のチェックスカートとハイソックスに挟まれた太腿だ。
驚くほど鮮やかなピンクの肌をしている。
変態じみた表現をすれば、『美味しそうなフトモモ』というやつだ。
最近は街を歩く女性にも白い肌は多いが、こうも瑞々しく、観ただけで触り心地の良さが伝わってくる娘は中々いない。
「…………!」
彼女は俺の存在に気がつくと、気まずそうに目を伏せ、足早にエレベーターホールを出ていく。
若い後ろ姿。あの細い肩やすらっとした腰のラインは、いかにも現役の女子高生だ。
ほんの数年前まで高校にいた俺がいうのだから間違いない。
肩から提げている鞄から、楽譜のようなものが覗いている事も見て取れた。
音楽をやるのか。確かに品がある、いかにもそんな感じはする。
そんな事をつらつらと考えているうちに、彼女の姿はホールから見えなくなる。
俺は息を吐いた。
最後にいい物が見れたもんだ。その為にここへ来たと思うのもいいだろう。
そう思って今度こそエレベーターに乗ろうとした瞬間、俺は気付く。
――待て。
彼女は今、どこへ向かった?
一見普通のマンションに見えるために見過ごしかけたが、ここがどんな場所かは今見てきた通りだ。
ここにあるのは、どこかの会社の倉庫と俺の探していた風俗店のみ。
学校帰りの女子高生が、制服姿のまま会社倉庫に来るか?……考えづらい。ならば。
この考えに、俺の願望が多分に含まれていた事は否定できない。
それでも確信に近いものがあった。
すれ違った時に感じたあの妙な色気。それとはまた別に感じた自然な女子高生っぽさ。
あれこそはきっと、間違いなく……俺の探していた風俗店の匂いだ。
かくして、その俺の読みを祝福するかのごとく、突き当たりの看板は変わっていた。
細いチェーンが8の字に絡まるような形で捻られ、「OPEN」を示している。
急いで変えたことは明らかだ。
俺は感動にも似た悦びにうち震えた。
自分の勘が珍しく当たった事もひとつ。そして今店にいるのは、さっきすれ違ったあの子だ。
従兄の話が正しければ、あの子が何か性的なサービスをしてくれるかもしれない。
その普通なら甘すぎる夢も、今なら実現しそうな気がした。
しばらく息を整える。いきなりチャイムを押すのは勇気が要った。
何しろ、たった今エレベーターですれ違ったばかりなのだ。
すぐにチャイムを押せば完全にストーカー紛いだし、
そうでなくともドアを開けて怪訝な顔をする彼女の顔がありありと目に浮かぶ。
しかし、いずれにせよここで帰る訳にもいかない。
俺は意を決し、チャイムを強く押し込む。
部屋の中にチャイムが鳴り響く音がし、続いてしばしの無音。
長く感じられる重い時間だった。
この間にも、彼女が覗き穴から俺の姿を発見し、顔を引き攣らせているのでは。
後ろめたさからそんな懸念を抱く。
そんな中、「OPEN」札の下がったドアは勢いよく開かれた。
ドアから覗く姿を見た俺は、本日二度目に目を見開く羽目となる。
そこには居たのは当然に先ほどの彼女だが、その制服は実にだらしなく乱れていた。
首のタイは解かれ、ブラウスの襟は第二ボタンまで開けられて、薄い水色をしたブラジャーが薄っすらと覗いている。
彼女はドアノブに手をかけ、こちらを見上げたままぱちくりと目を瞬かせた。なにやらリスのようだ。
「あ、さっきの……」
彼女がそう声をかけてきたのをきっかけに、俺も声を出す。
「ああ、さっきはどうも。えっと……知り合いから、ここが風俗系のお店って聞いてきたんだけど」
相手が無銘の店ゆえに、慎重に言葉を選ぶ。
というより、見た感じいかにも清楚な部活帰りの少女を前に、風俗店という自信がなくなったのも理由のひとつだ。
すると彼女は、急に笑顔になった。
「……あ、“ご存知”の方なんですね?」
俺を訳知りと判断し、警戒を解いたようなその囁き。その笑顔が安心をくれる。
やはり従兄の情報も嘘ばかりではない。さらにどうやら彼女は、少なくとも俺を不審がっていない。
しかし彼女は、すぐに照れくさそうな顔になった。
「えっと、じゃちょっと待ってて頂けますか?
予約はないんですぐにご案内できるんですけど、私まだ、シャワー浴びてなくて」
そういう彼女をよく観てみると、額や首筋に細かな汗の粒が見える。
まるで一駅ほどの距離を走ってきたように。
そう思い至ったちょうどその時、ほのかに漂っている彼女の汗の香りにも気付く。
新鮮かつ少々尖り気味な新玉葱のような匂いと、さわやかな制汗スプレーの匂いが混ざりあっている。
嫌な匂いではない、かといって良い匂いと断じる事もできない。
それは反則的な程にそそるものだった。
股間に響く。この美少女がこの匂いをさせているのか、そう考えるとにわかに勃起してくるようだ。
「いいよ、そのままで」
気がつけば、俺は自分でも気がつかないままにその言葉を発していた。
「えっ!?」
女の子は当然驚いたような顔をしたが、ちらりと腕時計に目を落として笑みに戻った。
「……い、いえ、わかりました。実は私、今日ちょっとだけ遅刻してるんですよね。
時間割ったのは私のせいですし、お待たせもしちゃったみたいなので、すぐにご案内します。
ただ、ちょっと匂うかも……」
「良いよ。その匂いすごく好きだし」
俺がいよいよ変態めいた発言をすると、彼女ははっきり解るほどに頬を紅らめながら、俺を室内へと招き入れた。
外から見ると安普請に見えたマンションだが、中は意外と広かった。
7畳ほどのキッチン兼リビングの奥に、左右ひとつずつまた7畳ほどの部屋がある。
壁際に置かれている備品のために目測は多少誤っているかもしれないが、それなりに広いのは確かだ。
眺めもかなりいい。
最近は夜でも暖かいためか、窓は奥のどちらの部屋も開け放されていて、薄手のカーテンを靡かせている。
地上8階ともなれば同じような高さのビルもそう多くはなく、遠くの山稜までがよく見える。
人気は無い。
あの女子高生の子が帰ってくるまで「CLOSE」となっていたのだから、当然といえば当然だが、
このがらりとした空間に彼女と2人きりとは、まるで同棲のような妙な気分になる。
物を弁えない人間なら、この時点で彼女に襲い掛かるのではないか、とすら思う。
「お茶、冷たいのでいいですか?」
彼女が声を掛けてきた。俺はあわてて頷いた。
同棲、などというやましい考えをしていたのが見透かされた気がしてくる。
なぜだろう、急に余裕がなくなってきた。
先ほどまで半信半疑だった店に実際に踏み入り、しかも相手はあれほどに可愛い女の子だ。
その事実を脳がようやく受け入れ始めているということか。
やがてコップに入った麦茶と共に、メニュー表らしきものが運ばれてくる。
中身はプレイの一覧だが、その種類の豊富さは驚くばかりだった。
即尺やアナル舐めなどのヘルスでもありそうなものから、
イラマチオ・アナルファックなど普通の風俗店では滅多にできないものまで。
ただし、メニューの下に大きな赤字で、
『初回は担当嬢のオナニー鑑賞のみ、お選び頂けます』
と記されていた。
どうやら最初はごくソフトな物のみで、そこから回数を重ねるごとにハードなプレイが可能になるらしい。
どこか江戸時代の遊郭を思わせる、数を通うことを前提とした店のようだ。
「……ちなみにここのプレイ、君は全部できるの?」
俺が聞くと、女子高生は首元のボタンを留めなおしながらこちらを向いた。
「いえ、まだ全部は。私は……というかここの店に来る子はみんな風俗未経験なんで、
風俗店に出向いてそこの店長さんに研修を受けるんですけど、私はまだアナル開発の段階なんです。
結構多めに浣腸されて、お風呂場で正座したまま、お尻の中でバルーンを膨らまされるんですが……つらくって。
すぐに音を上げては中止にしてしまって、もう一週間くらい講習を受けてるんですが、全然先へ進めません」
彼女は臀部を振り返るような仕草で告げる。
俺は、そんな講習は完全に店長の個人的趣味だろうと感じたが、波を立てないために適当に頷いておく。
そしてメニュー表を閉じ、唯一出来るらしい『オナニー鑑賞』に期待を寄せた。
「それでは、改めて……里穂(りほ)です、よろしくお願いします」
女の子は里穂と名乗り、恭しく頭を下げた。高校生らしからぬ整った頭の下げ方だ。
雰囲気といい、もしかするとかなり育ちのいい子なのかもしれない。
そう思い、少し探りを入れてみる。
「さっき帰ってきた時、鞄から楽譜みたいなのが見えたんだけど、楽器でもやるの?」
俺が問うと、彼女は一瞬しまった、という顔になり、頷いた。
「……ピアノを、小学校の頃から」
「へえ、コンクールなんかには出たの?」
「はい……一度だけ、優勝したことがあります」
あまり身元を明かしたくないのか、言いづらそうにする彼女。その様子で、俺の中での彼女は令嬢と決まった。
そして彼女の言葉を照らしてよく観れば、里穂の指は実に綺麗なのがわかる。
雪のように白いうえ、すらりと細長く、関節間の長さも曲げた時にちょうど美しく映えるもの。
ピアノを弾く時に限らず、今のように身体の前で組まれているだけでも、男の胸をくすぐる妖艶さがある。
その指で行われる彼女の自慰。俺はそれを、早く見たくて仕方がなくなった。
「はじめましょうか」
里穂は俺の意を察したかのように告げ、奥の部屋へと歩いていく。
そして部屋の中央で俺のほうを向き直し、胸のボタンへと指をかけた。
美しい指は、まるで鍵盤を弾くような滑らかさでワイシャツのボタンを外していく。
その動きも幻想的だが、ワイシャツがはだけた下から現れたピンク色の肌はさらに凄い。
初見で目を奪われたフトモモの鮮やかさが、より広い範囲で目に飛び込んでくる。
腰が細い。
臍周り以外がすっきりとくびれ、腰骨などの位置もわかる。
後ろに回った手でブラジャーが外されると、胸も推定Dカップほどはある事がわかった。
腰を捻るようにしてスカートが脱ぎ捨てられた時には、ショーツのみを纏ったその身体はモデル級に見えた。
これほど可愛い娘が目の前でショーツ一枚になっているのも中々考えづらい事だが、
さらにその白い指はショーツへ掛かる。
それなりに高価なのだろうと解る、薄いシルクの生地に花柄が刺繍されたショーツ。
その両端へ細長い指が滑り込み、布地を捲り返しながら、少しずつ摺り下げていく。
ショーツは太腿の半ばほどで紐のようになりながら、脱ぎやすいよう浮かせた右足の膝をまず抜ける。
そしてハイソックスに包まれたすらりとした膝下を通り、足首をから引き抜かれた。
続いて左脚も同じように。
「……ソックスは……残しておいた方が、いいですか?」
里穂が俯きがちだった顔を上げ、俺に問う。
おそらくは朝から履き通しで、かなり蒸れてしまっているのだろう。
だが俺は、あえて履いたままを命じた。
すると、よくある需要なのだろう、さほどの抵抗もなく里穂の手がソックスから離される。
靴下だけを身につけた里穂の身体は、本当に眩いほどだった。
里穂はそれを隠そうともせずに俺に晒している。
そのように教育されているのか、あるいは裸を晒すことで、これから行う自慰に向けての興奮状態を作ろうというのか。
俺を見上げる濡れたような瞳を覗き込んでも、そのどちらかが解らない。
里穂はしばし俺の前で舞うようにして身体を晒し、そのまま窓際にある黒い革張りのソファに座り込んだ。
「おさわりは禁止ですけど、近づいて観るのは大丈夫なので、よぉく観ていてくださいね」
里穂はそう俺に告げ、ゆっくりと脚を開き始める。
白い腹部の下、徐々に露わになっていく繁みと、赤い割れ目。
すらりとした脚は順調に開いていき、やがては大きなMの字を描いて秘部の全てを俺に晒す。
中々に綺麗だ。
陰唇には多少の色素沈着があるが、形はそれほどには崩れていない。
さすがに処女ではないだろうが、経験は多く無さそうだ、と感じられた。
「どうですか? 私のあそこ」
突然掛けられたその声に、俺は視線を上へ向ける。
里穂は俺の方を見下ろしてはいるが、焦点がこちらにあっていない。
見ているようで見ていない、かなり恥らっている様子だった。
服を脱ぐあたりではかなり場慣れしているかに見えたが、そんな事もなかったらしい。
「綺麗だと思うよ」
俺は余計な事を言わずにシンプルに答えた。里穂の目尻がかすかに緩む。
「……ありがとうございます」
彼女はそう囁くように言い、左手を秘部に宛がって、中指と薬指で秘唇を割り開いた。
陰唇より数段鮮やかな、ピンクの粘膜が露わになる。
次いで里穂の右手も滑り降り、中指でその粘膜を上下に擦りまわし始めた。
「あ、ぅ……」
里穂の唇から小さな声が漏れる。
瞳を閉じかけ、薄い唇を半開きにしたその顔は、改めて間近で見ても可愛いものだ。
「……えへへ」
俺が熱心に見上げているのに気付くと、こちらへ細目で笑みを投げかけてもくれる。
その笑い顔はあまりにキレイすぎ、一歩間違えれば本気の恋に落ちかねなかった。
本当にハーフでは、とテレビタレントを基準にして思ってしまう。
体型もモデル系だし、こんな子がクラスにいれば、まず隠れファンクラブが出来ていておかしくない。
なぜそんな子が、このような場末の風俗をやっているのか。
俺は幸運を感じつつも、それが不思議でならなかった。
だが彼女の自慰の様子を延々と観察し続けるにつれ、その理由は明らかになっていく。
秘部を中指で擦りまわすだけだった右手は、やがてクリトリスの辺りで止まり、
そこを小さな動きで押し潰すようにしはじめた。
「はーっ、はーっ」
長い呼吸の音が聴こえてきた。
初めに性器を擦っていた時には、彼女もこちらに向けて綺麗な笑みを見せてくれたりもしていたのが、
そうしてクリトリスを弄くりはじめてからは余裕が無くなっている。
視線は局部に落とされたまま動かず、唇は白い歯をわずかに覗かせる半開き。
明らかに感じている顔だった。
身体の方に視線を落とせば、かすかに波打つ乳房の間が濡れ光っているのが見えた。
さらに目を凝らせば、それが細かな汗の粒で、ごく細い雫が幾筋か伝い落ちているのもわかる。
右手指の下で捏ね回されるクリトリスも、最初よりはっきりと視界に映るようになってきたようだ。
クリトリスが指の腹で弾けるほどに膨らんだ頃、また指先が秘部へと戻り、延々と刺激を始める。
そうやって充分に秘部の粘膜を慣らした辺りで、里穂は親指以外の4本指を揃えた。
そしてその揃えた4本指の腹で擦りまわす。
「うーん……っ!!」
その瞬間漏れた声は、明らかに今までで一番快感の色の濃いものだった。
徐々に里穂の脚が開いていく。
「はっ、ああっ、はっ、はっ……あ!!」
どこか苦しそうな息を吐きながら、里穂は徐々に高まっていく。
やがて感じすぎたのか、ソファの背もたれに黒髪を流すようにして頭を預けた。
「はっ……、はぁっ……!!!」
柔らかそうな乳房が上下し、その形に沿うようにして汗が流れる。
その様子は何とも艶かしい。
少し離れた場所で膝をついている俺の所にも、意識せずとも嗅げるほどのその汗の匂いは届き始めていた。
もはや制汗剤の匂いよりも、里穂自身のにおいの方が強い。
それもなお悪臭ではなかった。
ひどく艶かしい匂い。きっと里穂に少なからず好意のある俺だから、そう感じるんだろう。
「感じてるんだな、里穂。そういう匂いがしてきたぞ」
ソファに後頭部をつけて休んでいる里穂へ、俺は声をかけた。
里穂が長い髪の擦れる音をさせながら顔を上げる。
「ええ、すごく……感じてしまいました」
緩慢な喋り方でそう答え、里穂はさらに身を起こす。
先ほどと同じように脚を大きくひらく形に戻り、さらにそこから腰を浮かせた。
「んっ……!!」
恥じらいからか、あるいは快感を堪えているのか、口を引き結びながら。
出来上がったのは蹲踞の格好だ。
柔らかいソファに座っている時と比べ、腹圧がかなり大きくかかる格好といえる。
里穂は蕩けるような瞳をしながら、その蹲踞の姿勢で秘部へと指を挿し入れた。
初めての指の挿入だ。
とはいえ秘裂の中では、すでに充分なほどの潤滑があったらしい。
指はかすかな潤みの音をさせながら、一度の引っ掛かりもなく奥へと入り込んでいく。
「あっ、ああっ、あっ……」
里穂の実に気持ちの良さそうな声と共に、細長い指は前後する。
「……ゥんッ!!」
やがて、里穂が急に切羽詰った呻きを上げた。
その直後だ。
彼女の手首の後ろから前方へ向けて、ついに透明な飛沫が飛び散った。
夜空をバックに秘部を見上げていた俺には、その瞬間が銀色に煌めいて幻想的に見えていた。
飛沫は俺の頬を掠めるように飛び散り、床のカーペットに転々と黒ずみを作る。
「あっ、あぁあー……っは……」
一度目の潮噴きを経験して力が抜けたのか、里穂は椅子の座部に片腕を乗せ、寄りかかるような格好をしていた。
品ある見た目からすると意外なほどの乱れようだ。
里穂は目頭に汗の溜まるような有り様だったが、まだまだその自慰は終わらない。
再度、湿り気を帯びた秘部にその手を置くと、少し曲げた手で性器一体をぐいっぐいっと擦りあげるような動きを始める。
「はっ、はぅう……うあっ」
漏れる声も中々自然な気持ちのよさを表していた。
実際、かなり気持ちいいだろう。あの周辺には肛門、会陰、陰唇、陰核と性感帯が密集しているというから。
しばしそうした刺激を続けた後、にわかに指の動きが早まってくる。
そこから里穂は、蹲踞の格好を保ったままソファの背もたれに左手をつき、残った右手で秘裂を割った。
まるで探るように浅くで右手が蠢いたその直後、声もなく里穂の顔が天を仰ぎ、2度目の潮吹きが訪れる。
今度は男の小便のように、まっすぐ遠くまで飛び散るものだ。
蹲踞の姿勢のまま絶頂を迎えたために固く強張ったすらりとした脚、割れ目から放たれる擬似射精。
その中世的なエロさは、ますます俺の興奮を狂おしく炙っていく。
やがて里穂は崩れ落ちるようにソファの座部へと背中を預け、斜めに寝転ぶような格好に変わった。
「んぁ、はんぁ……ぁあ」
同時に、今までハッキリとした「あ」の発音だった喘ぎ声が、鼻にかかったような不明瞭さを帯び始める。
それにより、彼女もいよいよ本格的に気が入ってきたのだと理解できた。
ソファの座部へと背中をベッタリ付けるようにし、限界まで開ききった両脚は、くびれた腰に太腿をつけるようにしてある。
その姿勢は、最初の『ソファに座って脚をM字に開く』形が、そのまま快感で崩れ落ちたもののようにみえた。
見るからに快感が余すところなく巡りそうな格好だ。
事実、里穂にとってもその格好の安定性は抜群らしく、今までよりも明らかに丁寧に、秘部への指嬲りを進めていた。
中指の腹に人差し指を引っ掛けて反らせたまま、ミキサーのように潤みの中をほじくり回す事もあり。
奥の奥までを俺に晒すかのごとく、左右の指を秘唇に引っ掛け、目一杯に拡げてしまったり。
オーソドックスに2本指でGスポットらしき辺りをいじめ抜く事もあり。
潮吹きこそ起こらなかったものの、それらは着実に彼女を小さな絶頂へと導き、潤みから露を溢れさせ、
淡いピンク色をした美味しそうな内腿あるいは尻肉を、いよいよ艶かしく濡れ光らせていく。
俺はもう興奮のし過ぎで息も苦しく、黙って観ているばかりでは襲い掛かりかねないため、時おり彼女に質問を投げた。
「女子高生とは思えないくらい、色んなやり方知ってるんだね。家でも結構オナニーしてたの?」
そう問いかけると、彼女は意外なほど穏やかな瞳を寄越した。
「いえ……私の家では、自慰をしちゃいけなかったんです。将来の夫を欺く行為、って宗教上の理由で。
始めてこういう事を知ったのは、友達に誘われて受けたここの研修で……。
初めてのお客さん相手にしなければならない基本中の基本だから、って、女の先輩に教えられたんです」
里穂はそこで言葉を切り、遠い昔を思い出すようにして続ける。
「全身の映る大きな鏡の前で膝立ちにされて、先輩にあそこを触られて、何度も……いかされました。
どんなに気持ちよくても、よすぎておかしくなりそうでも、先輩の手つきを観て覚えなきゃいけなくて。
膝立ちを崩すだけでも怒られちゃうので、脚の全部が私の愛液でぬるぬるになるぐらいまで、
ずっと……倒れないようにしてました。
でも、それが全てじゃないんです。そこから経験を積んで、今は自分にとって一番良いやり方を見つけ……!!」
その言葉が終わらないうち、また大きな快感の波が来たらしい。
「はぐうぅううっ!!!」
理穂は快感で開く口を、握りかけた手の平で隠しながら絶頂を迎える。
開かれた両脚がかすかに痙攣してもいた。
改めて今の里穂の周囲を見れば、すでにソファの座部には愛液によるテカリがそこかしこに見て取れる。
カーペットの惨状は更にひどく、彼女の座っている場所を中心にして、小雨が降ったように黒ずみが広がっていた。
それでもなお、里穂の性欲は衰えを見せない。
彼女の白い腕は、上から秘部を覆い隠すようにし、長い指を深くまで入れてグッポグッポと水気たっぷりの攪拌を再開する。
指が深くへ入り込むたび、両の脚がびくんびくんと跳ねている。
俺はその様子をよく見るべく身を乗り出した。
肛門の上に位置する秘部へ、右手の中指と薬指が侵入している。
余った人差し指を真っ直ぐに立てたまま、入り口近くをぐちゅぐちゅと刺激しているようだ。
よく見れば、左手の方が包み込むようにして陰核をこね回しているのもわかる。
そこからしばらくすると、とうとう人差し指も含めた3本指がまとめて割れ目へ入り込んだ。
視界に映るその手はお嬢様らしい上品なもので、腿も気品あふれるピンク色、指の間から見える秘部も初々しい。
それだけに、その3本指の並列挿入は不安になる。大丈夫なのか、と。
「んん、んあぁーー……っん…………!!」
だが当人は気持ちがいいようだ。
3本どころか時には固く曲げた4本指で、膣内の汚れを掻きだそうとでもするかのように痙攣させながら引き抜きもする。
また本当に気持ちのいい場所となれば、指を抜かずに何度も何度もその場所を深く抉っているのも窺えた。
プロのAV男優でも女優の身を案じてやらないような、徹底したGスポット責めだ。
自分の身体だからこそ、限界のギリギリが解るのだろう。
「あ、あっ……あ!!」
里穂は、しばらく3本指で中を拡げるかのようにかき回した後、
クリトリスを弄くっていた左手を右手の手首に重ね、自らの秘部へ引き込むようにして深く挿入し始める。
「ふああああんんっ!!!!!」
甲高い叫び声と共に、腰がビクンビクンと跳ねる。
自分自身の指で性感帯を弄くっているのに、腰が跳ね回ってしまうという異常性。
その光景は、俺を呼吸さえ忘れて見入らせた。
もう声も掛けられない。この、目の前の可愛らしい少女が、どこまで性を貪るのか。それを見ていたいだけだ。
里穂の指はピアノ弾きに相応しい、細長くて綺麗なものだった。
その繊細で芸術的な指が、4本纏められ、ぶちゅうっと凄まじい音を立てながら秘部へ突き刺さる。
薄桃色の内腿を筋張らせる。
ようやくにその指が抜かれたかと思いきや、抜かれたのは人差し指の1本のみで、
他の指はその抜けた人差し指が作る隙間の向こうで、わななく陰唇を虐待するかのように責め苛む。
指の暴れる先から、どろっ、どろっと蜜がこぼれては、美しい尻肉を流れていく。
散々そうして蜜を吐かせた後には、また4本指が揃えられ、秘裂を深々と抉りこむ。
内腿はそのあまりの激しさに、胎盤の形そのままに歪に強張り、
責める手の平もまた、拳を握るかのごとく拳頭を浮き上がらせてその先の指を力強くうねり狂わせる。
それは柔肉への繊細な指の侵入……というにはあまりにも痛烈で、重厚なものだった。
当然、その激しさの中で理穂は何度も達していた。
「ああ、いくっ、いくうううぅうっっ!!!!!!」
笛の音を思わせる高らかな叫び声の後、秘裂から潮が噴き上がった。
一度だけじゃない。彼女自身の腹部へ向けて、びゅっびゅ、と四・五回、間欠泉のように。
「あ、ああう……ああ…………」
その連続の絶頂は流石に応えたのだろう。
理穂はしばらく寝転んだまま、ガクガクと余韻に浸っている。
俺はそれを目にして、充分に自慰を堪能した、と自分の中で締めに入る。
充分に満足だ、と。
……ところが。里穂は、まだ立ち上がる気配を見せはじめる。
座部に片膝をつき、肘掛けに別の脚を乗せる形への姿勢変え。
両脚の高低差で大きく開く形となった秘部ははっきりと見え、
微妙に力の入る姿勢からむちりとした太腿がより肉感的に視界に映る。
ハイソックスも実に映え、女子高生なのだと言う事を改めて生々しく認識させる。
「はっ……はっ……。えへへ、すごいえっちでしょ、この格好?」
肘掛けに乗せた脚の下から蕩けた顔を覗かせるようにし、秘部を弄り始めた。
少し刺激し、やがてびくりとして手を引っ込める。
そして両脚の位置を調節し、慎重に再び刺激し始めた。
おそらく思っていたよりもずっと刺激が強く、本格的にやろうというのだろう。
俺はその気迫に押されながらも、下から覗き込むようにしてその部分を凝視した。
中指薬指で「キツネ」を作るようにして秘部を刺激し続けているのが見える。
初々しかった秘部は、もはや原型もないほどに蕩けていた。
見えげる俺の顔に、かすかに白濁した雫が幾滴も垂れ落ちてくる。まるで、雨だれのように。
かすかに暗がりになっている里穂の表情も、かなり余裕のないものである事が窺える。
「ねぇ、もっと見て?私がぐしょぐしょになっていく所、もっと見てよ。ねぇ」
理穂は快楽に蕩けた顔で訴えてくる。俺はそこで始めて、ぼんやりと気がついた。
おかしいじゃないか。
こんなに可愛い娘が、こんなに激しいサービスをしてくれる店。
しかもこれは、はじめて来た客用の、あくまで初歩的なサービスだという。
なら当然、いくら知るものぞ知るとはいえ、予約の取り合いになっておかしくないはずだ。
かつてこの店に訪れた先客達は、この娘のような子に骨抜きにされたはずの彼らは、
今どうしているんだ?
「ね、ほらお兄ちゃん、もっと見て。もっと……わたしみてよぉ……」
恐ろしいほど整った顔の里穂を見つめながら、俺はぼんやりと、従兄の顔を思い起こした。
終わり
続きを読む
俺の従兄は三流ゴシップ誌のライターで、口を開けばおよそいつも下らない話ばかりしている。
ただ、時々は面白い話が混じっている事もあった。
特に風俗関係の話には、大学生である俺の興味をそそるものが多い。
『ハイレベルな正真正銘の風俗素人が、いかがわしい事をする店』
とっておき、と言いつつ今回奴が持ってきたネタはそれだった。
事前に情報を得ていないと風俗店とは解らず、告知などもないため、存在を知る者は殆どいないそうだ。
俺は発信源が発信源だけに眉唾物だと思いつつ、確認するだけなら……とその店の地図を受け取った。
※
特急も止まるそこそこ規模の大きな駅で降り、より栄えた方の出口へ。
地図を頼りに、パチンコ屋やカラオケボックスが立ち並ぶ大通りを突き進む。
かなりの繁華街だ。こんな場所の風俗店など、すでにどこもかしこも踏破され尽くしているのではないか。
そう猜疑心が持ち上がるが、ともかく行ってみなければ始まらない。
迷いながらも通りを進むうち、ようやく地図に記された建物へと辿り着いた。
裏通りへ一歩踏み入れた所の古い雑居ビルで、錆びた看板に居酒屋の名前などが雑多に並んでいる。
ここで『偶然』足を止める人間は、なるほど100人中1人いるかどうかだろう。
気分よく遊ぶ事を考えれば、誰もが本能的に通り過ぎるような小汚い路地の一角なのだから。
俺はともかくもビルに入り、地図にメモされてある通りにエレベーターで8階へ向かう。
扉の閉まる早さ、階移動の妙な軽さがいかにも安っぽい。
まるで貧乏学生の住むマンションについているような……。
その俺の考えは、8階に到着し、扉が空いた瞬間に比喩ではなくなる。
まさに安普請のマンションだ。
エレベーターを降りてすぐに見える、ペンキの剥げかけた扉。
『801』の号室表示もそのままに、『エクール企画 資材倉庫』と印字して貼り付けられたシール。
他の扉も似たようなものだった。
合計5つのドアのうち、4つが聞いたこともない会社の倉庫として使われている。
建物を間違えたか、さすがにこんな場所に目的の店はないだろう。
そう思いながら一番奥の扉を見た時、俺の微かな希望は打ち砕かれた。
そこの表示が、探していた店の名前と一致していたからだ。
“Rubelite(ルーベライト)”
……店の名前でネット検索してみて知ったが、赤い色合いのトルマリンを差す言葉らしい。
その店名が、確かに目の前のドアに張られている。
ただしドアには磁石もついていて、そこから細いチェーンで「CLOSE」という小さな看板がぶら下げられてもいた。
時間は夜の6時を少し回ったところ。
共有廊下から遥かに見下ろせる街並みも、すっかり夜の模様になっている。
風俗店でもそろそろ開いていておかしくはないはずだった。
今日がたまたま休業日だったのか、或いはとうに警察に摘発されて営業停止を喰らったのか。
いずれにせよ致し方ない。俺は渋々とエレベーターへ引き返す。
しかし下行きのボタンを押す段階になって、手が止まった。
何の為にここまで辿り着いたのだろう。
ここまで延々と来ておいて、このまま帰ってしまっていいのだろうか。
本当にあの店はやらないのか?ネットにも載っていない無銘店だが、休みかどうか調べる術はないか?
そう思い悩んでいた時だ。俺の目の前にエレベーターが到着した。
ああ、来たか。 ……いやでも待て。まだ俺は、ボタンを押してないぞ。
戸惑っている間にも、エレベーターのドアが開いて中から人が降りてくる。
俺は目を見開いた。
出てきたのは若い女の子だ。制服を着ている。門限間近であるように、ひどく息を切らせてもいた。
胸の下辺りまで長く伸ばされた、艶やかに光の輪の揺れる黒髪。
少しハーフっぽい、すっきりと整った涼やかな顔立ち。
何より目を引くのは、紺のチェックスカートとハイソックスに挟まれた太腿だ。
驚くほど鮮やかなピンクの肌をしている。
変態じみた表現をすれば、『美味しそうなフトモモ』というやつだ。
最近は街を歩く女性にも白い肌は多いが、こうも瑞々しく、観ただけで触り心地の良さが伝わってくる娘は中々いない。
「…………!」
彼女は俺の存在に気がつくと、気まずそうに目を伏せ、足早にエレベーターホールを出ていく。
若い後ろ姿。あの細い肩やすらっとした腰のラインは、いかにも現役の女子高生だ。
ほんの数年前まで高校にいた俺がいうのだから間違いない。
肩から提げている鞄から、楽譜のようなものが覗いている事も見て取れた。
音楽をやるのか。確かに品がある、いかにもそんな感じはする。
そんな事をつらつらと考えているうちに、彼女の姿はホールから見えなくなる。
俺は息を吐いた。
最後にいい物が見れたもんだ。その為にここへ来たと思うのもいいだろう。
そう思って今度こそエレベーターに乗ろうとした瞬間、俺は気付く。
――待て。
彼女は今、どこへ向かった?
一見普通のマンションに見えるために見過ごしかけたが、ここがどんな場所かは今見てきた通りだ。
ここにあるのは、どこかの会社の倉庫と俺の探していた風俗店のみ。
学校帰りの女子高生が、制服姿のまま会社倉庫に来るか?……考えづらい。ならば。
この考えに、俺の願望が多分に含まれていた事は否定できない。
それでも確信に近いものがあった。
すれ違った時に感じたあの妙な色気。それとはまた別に感じた自然な女子高生っぽさ。
あれこそはきっと、間違いなく……俺の探していた風俗店の匂いだ。
かくして、その俺の読みを祝福するかのごとく、突き当たりの看板は変わっていた。
細いチェーンが8の字に絡まるような形で捻られ、「OPEN」を示している。
急いで変えたことは明らかだ。
俺は感動にも似た悦びにうち震えた。
自分の勘が珍しく当たった事もひとつ。そして今店にいるのは、さっきすれ違ったあの子だ。
従兄の話が正しければ、あの子が何か性的なサービスをしてくれるかもしれない。
その普通なら甘すぎる夢も、今なら実現しそうな気がした。
しばらく息を整える。いきなりチャイムを押すのは勇気が要った。
何しろ、たった今エレベーターですれ違ったばかりなのだ。
すぐにチャイムを押せば完全にストーカー紛いだし、
そうでなくともドアを開けて怪訝な顔をする彼女の顔がありありと目に浮かぶ。
しかし、いずれにせよここで帰る訳にもいかない。
俺は意を決し、チャイムを強く押し込む。
部屋の中にチャイムが鳴り響く音がし、続いてしばしの無音。
長く感じられる重い時間だった。
この間にも、彼女が覗き穴から俺の姿を発見し、顔を引き攣らせているのでは。
後ろめたさからそんな懸念を抱く。
そんな中、「OPEN」札の下がったドアは勢いよく開かれた。
ドアから覗く姿を見た俺は、本日二度目に目を見開く羽目となる。
そこには居たのは当然に先ほどの彼女だが、その制服は実にだらしなく乱れていた。
首のタイは解かれ、ブラウスの襟は第二ボタンまで開けられて、薄い水色をしたブラジャーが薄っすらと覗いている。
彼女はドアノブに手をかけ、こちらを見上げたままぱちくりと目を瞬かせた。なにやらリスのようだ。
「あ、さっきの……」
彼女がそう声をかけてきたのをきっかけに、俺も声を出す。
「ああ、さっきはどうも。えっと……知り合いから、ここが風俗系のお店って聞いてきたんだけど」
相手が無銘の店ゆえに、慎重に言葉を選ぶ。
というより、見た感じいかにも清楚な部活帰りの少女を前に、風俗店という自信がなくなったのも理由のひとつだ。
すると彼女は、急に笑顔になった。
「……あ、“ご存知”の方なんですね?」
俺を訳知りと判断し、警戒を解いたようなその囁き。その笑顔が安心をくれる。
やはり従兄の情報も嘘ばかりではない。さらにどうやら彼女は、少なくとも俺を不審がっていない。
しかし彼女は、すぐに照れくさそうな顔になった。
「えっと、じゃちょっと待ってて頂けますか?
予約はないんですぐにご案内できるんですけど、私まだ、シャワー浴びてなくて」
そういう彼女をよく観てみると、額や首筋に細かな汗の粒が見える。
まるで一駅ほどの距離を走ってきたように。
そう思い至ったちょうどその時、ほのかに漂っている彼女の汗の香りにも気付く。
新鮮かつ少々尖り気味な新玉葱のような匂いと、さわやかな制汗スプレーの匂いが混ざりあっている。
嫌な匂いではない、かといって良い匂いと断じる事もできない。
それは反則的な程にそそるものだった。
股間に響く。この美少女がこの匂いをさせているのか、そう考えるとにわかに勃起してくるようだ。
「いいよ、そのままで」
気がつけば、俺は自分でも気がつかないままにその言葉を発していた。
「えっ!?」
女の子は当然驚いたような顔をしたが、ちらりと腕時計に目を落として笑みに戻った。
「……い、いえ、わかりました。実は私、今日ちょっとだけ遅刻してるんですよね。
時間割ったのは私のせいですし、お待たせもしちゃったみたいなので、すぐにご案内します。
ただ、ちょっと匂うかも……」
「良いよ。その匂いすごく好きだし」
俺がいよいよ変態めいた発言をすると、彼女ははっきり解るほどに頬を紅らめながら、俺を室内へと招き入れた。
外から見ると安普請に見えたマンションだが、中は意外と広かった。
7畳ほどのキッチン兼リビングの奥に、左右ひとつずつまた7畳ほどの部屋がある。
壁際に置かれている備品のために目測は多少誤っているかもしれないが、それなりに広いのは確かだ。
眺めもかなりいい。
最近は夜でも暖かいためか、窓は奥のどちらの部屋も開け放されていて、薄手のカーテンを靡かせている。
地上8階ともなれば同じような高さのビルもそう多くはなく、遠くの山稜までがよく見える。
人気は無い。
あの女子高生の子が帰ってくるまで「CLOSE」となっていたのだから、当然といえば当然だが、
このがらりとした空間に彼女と2人きりとは、まるで同棲のような妙な気分になる。
物を弁えない人間なら、この時点で彼女に襲い掛かるのではないか、とすら思う。
「お茶、冷たいのでいいですか?」
彼女が声を掛けてきた。俺はあわてて頷いた。
同棲、などというやましい考えをしていたのが見透かされた気がしてくる。
なぜだろう、急に余裕がなくなってきた。
先ほどまで半信半疑だった店に実際に踏み入り、しかも相手はあれほどに可愛い女の子だ。
その事実を脳がようやく受け入れ始めているということか。
やがてコップに入った麦茶と共に、メニュー表らしきものが運ばれてくる。
中身はプレイの一覧だが、その種類の豊富さは驚くばかりだった。
即尺やアナル舐めなどのヘルスでもありそうなものから、
イラマチオ・アナルファックなど普通の風俗店では滅多にできないものまで。
ただし、メニューの下に大きな赤字で、
『初回は担当嬢のオナニー鑑賞のみ、お選び頂けます』
と記されていた。
どうやら最初はごくソフトな物のみで、そこから回数を重ねるごとにハードなプレイが可能になるらしい。
どこか江戸時代の遊郭を思わせる、数を通うことを前提とした店のようだ。
「……ちなみにここのプレイ、君は全部できるの?」
俺が聞くと、女子高生は首元のボタンを留めなおしながらこちらを向いた。
「いえ、まだ全部は。私は……というかここの店に来る子はみんな風俗未経験なんで、
風俗店に出向いてそこの店長さんに研修を受けるんですけど、私はまだアナル開発の段階なんです。
結構多めに浣腸されて、お風呂場で正座したまま、お尻の中でバルーンを膨らまされるんですが……つらくって。
すぐに音を上げては中止にしてしまって、もう一週間くらい講習を受けてるんですが、全然先へ進めません」
彼女は臀部を振り返るような仕草で告げる。
俺は、そんな講習は完全に店長の個人的趣味だろうと感じたが、波を立てないために適当に頷いておく。
そしてメニュー表を閉じ、唯一出来るらしい『オナニー鑑賞』に期待を寄せた。
「それでは、改めて……里穂(りほ)です、よろしくお願いします」
女の子は里穂と名乗り、恭しく頭を下げた。高校生らしからぬ整った頭の下げ方だ。
雰囲気といい、もしかするとかなり育ちのいい子なのかもしれない。
そう思い、少し探りを入れてみる。
「さっき帰ってきた時、鞄から楽譜みたいなのが見えたんだけど、楽器でもやるの?」
俺が問うと、彼女は一瞬しまった、という顔になり、頷いた。
「……ピアノを、小学校の頃から」
「へえ、コンクールなんかには出たの?」
「はい……一度だけ、優勝したことがあります」
あまり身元を明かしたくないのか、言いづらそうにする彼女。その様子で、俺の中での彼女は令嬢と決まった。
そして彼女の言葉を照らしてよく観れば、里穂の指は実に綺麗なのがわかる。
雪のように白いうえ、すらりと細長く、関節間の長さも曲げた時にちょうど美しく映えるもの。
ピアノを弾く時に限らず、今のように身体の前で組まれているだけでも、男の胸をくすぐる妖艶さがある。
その指で行われる彼女の自慰。俺はそれを、早く見たくて仕方がなくなった。
「はじめましょうか」
里穂は俺の意を察したかのように告げ、奥の部屋へと歩いていく。
そして部屋の中央で俺のほうを向き直し、胸のボタンへと指をかけた。
美しい指は、まるで鍵盤を弾くような滑らかさでワイシャツのボタンを外していく。
その動きも幻想的だが、ワイシャツがはだけた下から現れたピンク色の肌はさらに凄い。
初見で目を奪われたフトモモの鮮やかさが、より広い範囲で目に飛び込んでくる。
腰が細い。
臍周り以外がすっきりとくびれ、腰骨などの位置もわかる。
後ろに回った手でブラジャーが外されると、胸も推定Dカップほどはある事がわかった。
腰を捻るようにしてスカートが脱ぎ捨てられた時には、ショーツのみを纏ったその身体はモデル級に見えた。
これほど可愛い娘が目の前でショーツ一枚になっているのも中々考えづらい事だが、
さらにその白い指はショーツへ掛かる。
それなりに高価なのだろうと解る、薄いシルクの生地に花柄が刺繍されたショーツ。
その両端へ細長い指が滑り込み、布地を捲り返しながら、少しずつ摺り下げていく。
ショーツは太腿の半ばほどで紐のようになりながら、脱ぎやすいよう浮かせた右足の膝をまず抜ける。
そしてハイソックスに包まれたすらりとした膝下を通り、足首をから引き抜かれた。
続いて左脚も同じように。
「……ソックスは……残しておいた方が、いいですか?」
里穂が俯きがちだった顔を上げ、俺に問う。
おそらくは朝から履き通しで、かなり蒸れてしまっているのだろう。
だが俺は、あえて履いたままを命じた。
すると、よくある需要なのだろう、さほどの抵抗もなく里穂の手がソックスから離される。
靴下だけを身につけた里穂の身体は、本当に眩いほどだった。
里穂はそれを隠そうともせずに俺に晒している。
そのように教育されているのか、あるいは裸を晒すことで、これから行う自慰に向けての興奮状態を作ろうというのか。
俺を見上げる濡れたような瞳を覗き込んでも、そのどちらかが解らない。
里穂はしばし俺の前で舞うようにして身体を晒し、そのまま窓際にある黒い革張りのソファに座り込んだ。
「おさわりは禁止ですけど、近づいて観るのは大丈夫なので、よぉく観ていてくださいね」
里穂はそう俺に告げ、ゆっくりと脚を開き始める。
白い腹部の下、徐々に露わになっていく繁みと、赤い割れ目。
すらりとした脚は順調に開いていき、やがては大きなMの字を描いて秘部の全てを俺に晒す。
中々に綺麗だ。
陰唇には多少の色素沈着があるが、形はそれほどには崩れていない。
さすがに処女ではないだろうが、経験は多く無さそうだ、と感じられた。
「どうですか? 私のあそこ」
突然掛けられたその声に、俺は視線を上へ向ける。
里穂は俺の方を見下ろしてはいるが、焦点がこちらにあっていない。
見ているようで見ていない、かなり恥らっている様子だった。
服を脱ぐあたりではかなり場慣れしているかに見えたが、そんな事もなかったらしい。
「綺麗だと思うよ」
俺は余計な事を言わずにシンプルに答えた。里穂の目尻がかすかに緩む。
「……ありがとうございます」
彼女はそう囁くように言い、左手を秘部に宛がって、中指と薬指で秘唇を割り開いた。
陰唇より数段鮮やかな、ピンクの粘膜が露わになる。
次いで里穂の右手も滑り降り、中指でその粘膜を上下に擦りまわし始めた。
「あ、ぅ……」
里穂の唇から小さな声が漏れる。
瞳を閉じかけ、薄い唇を半開きにしたその顔は、改めて間近で見ても可愛いものだ。
「……えへへ」
俺が熱心に見上げているのに気付くと、こちらへ細目で笑みを投げかけてもくれる。
その笑い顔はあまりにキレイすぎ、一歩間違えれば本気の恋に落ちかねなかった。
本当にハーフでは、とテレビタレントを基準にして思ってしまう。
体型もモデル系だし、こんな子がクラスにいれば、まず隠れファンクラブが出来ていておかしくない。
なぜそんな子が、このような場末の風俗をやっているのか。
俺は幸運を感じつつも、それが不思議でならなかった。
だが彼女の自慰の様子を延々と観察し続けるにつれ、その理由は明らかになっていく。
秘部を中指で擦りまわすだけだった右手は、やがてクリトリスの辺りで止まり、
そこを小さな動きで押し潰すようにしはじめた。
「はーっ、はーっ」
長い呼吸の音が聴こえてきた。
初めに性器を擦っていた時には、彼女もこちらに向けて綺麗な笑みを見せてくれたりもしていたのが、
そうしてクリトリスを弄くりはじめてからは余裕が無くなっている。
視線は局部に落とされたまま動かず、唇は白い歯をわずかに覗かせる半開き。
明らかに感じている顔だった。
身体の方に視線を落とせば、かすかに波打つ乳房の間が濡れ光っているのが見えた。
さらに目を凝らせば、それが細かな汗の粒で、ごく細い雫が幾筋か伝い落ちているのもわかる。
右手指の下で捏ね回されるクリトリスも、最初よりはっきりと視界に映るようになってきたようだ。
クリトリスが指の腹で弾けるほどに膨らんだ頃、また指先が秘部へと戻り、延々と刺激を始める。
そうやって充分に秘部の粘膜を慣らした辺りで、里穂は親指以外の4本指を揃えた。
そしてその揃えた4本指の腹で擦りまわす。
「うーん……っ!!」
その瞬間漏れた声は、明らかに今までで一番快感の色の濃いものだった。
徐々に里穂の脚が開いていく。
「はっ、ああっ、はっ、はっ……あ!!」
どこか苦しそうな息を吐きながら、里穂は徐々に高まっていく。
やがて感じすぎたのか、ソファの背もたれに黒髪を流すようにして頭を預けた。
「はっ……、はぁっ……!!!」
柔らかそうな乳房が上下し、その形に沿うようにして汗が流れる。
その様子は何とも艶かしい。
少し離れた場所で膝をついている俺の所にも、意識せずとも嗅げるほどのその汗の匂いは届き始めていた。
もはや制汗剤の匂いよりも、里穂自身のにおいの方が強い。
それもなお悪臭ではなかった。
ひどく艶かしい匂い。きっと里穂に少なからず好意のある俺だから、そう感じるんだろう。
「感じてるんだな、里穂。そういう匂いがしてきたぞ」
ソファに後頭部をつけて休んでいる里穂へ、俺は声をかけた。
里穂が長い髪の擦れる音をさせながら顔を上げる。
「ええ、すごく……感じてしまいました」
緩慢な喋り方でそう答え、里穂はさらに身を起こす。
先ほどと同じように脚を大きくひらく形に戻り、さらにそこから腰を浮かせた。
「んっ……!!」
恥じらいからか、あるいは快感を堪えているのか、口を引き結びながら。
出来上がったのは蹲踞の格好だ。
柔らかいソファに座っている時と比べ、腹圧がかなり大きくかかる格好といえる。
里穂は蕩けるような瞳をしながら、その蹲踞の姿勢で秘部へと指を挿し入れた。
初めての指の挿入だ。
とはいえ秘裂の中では、すでに充分なほどの潤滑があったらしい。
指はかすかな潤みの音をさせながら、一度の引っ掛かりもなく奥へと入り込んでいく。
「あっ、ああっ、あっ……」
里穂の実に気持ちの良さそうな声と共に、細長い指は前後する。
「……ゥんッ!!」
やがて、里穂が急に切羽詰った呻きを上げた。
その直後だ。
彼女の手首の後ろから前方へ向けて、ついに透明な飛沫が飛び散った。
夜空をバックに秘部を見上げていた俺には、その瞬間が銀色に煌めいて幻想的に見えていた。
飛沫は俺の頬を掠めるように飛び散り、床のカーペットに転々と黒ずみを作る。
「あっ、あぁあー……っは……」
一度目の潮噴きを経験して力が抜けたのか、里穂は椅子の座部に片腕を乗せ、寄りかかるような格好をしていた。
品ある見た目からすると意外なほどの乱れようだ。
里穂は目頭に汗の溜まるような有り様だったが、まだまだその自慰は終わらない。
再度、湿り気を帯びた秘部にその手を置くと、少し曲げた手で性器一体をぐいっぐいっと擦りあげるような動きを始める。
「はっ、はぅう……うあっ」
漏れる声も中々自然な気持ちのよさを表していた。
実際、かなり気持ちいいだろう。あの周辺には肛門、会陰、陰唇、陰核と性感帯が密集しているというから。
しばしそうした刺激を続けた後、にわかに指の動きが早まってくる。
そこから里穂は、蹲踞の格好を保ったままソファの背もたれに左手をつき、残った右手で秘裂を割った。
まるで探るように浅くで右手が蠢いたその直後、声もなく里穂の顔が天を仰ぎ、2度目の潮吹きが訪れる。
今度は男の小便のように、まっすぐ遠くまで飛び散るものだ。
蹲踞の姿勢のまま絶頂を迎えたために固く強張ったすらりとした脚、割れ目から放たれる擬似射精。
その中世的なエロさは、ますます俺の興奮を狂おしく炙っていく。
やがて里穂は崩れ落ちるようにソファの座部へと背中を預け、斜めに寝転ぶような格好に変わった。
「んぁ、はんぁ……ぁあ」
同時に、今までハッキリとした「あ」の発音だった喘ぎ声が、鼻にかかったような不明瞭さを帯び始める。
それにより、彼女もいよいよ本格的に気が入ってきたのだと理解できた。
ソファの座部へと背中をベッタリ付けるようにし、限界まで開ききった両脚は、くびれた腰に太腿をつけるようにしてある。
その姿勢は、最初の『ソファに座って脚をM字に開く』形が、そのまま快感で崩れ落ちたもののようにみえた。
見るからに快感が余すところなく巡りそうな格好だ。
事実、里穂にとってもその格好の安定性は抜群らしく、今までよりも明らかに丁寧に、秘部への指嬲りを進めていた。
中指の腹に人差し指を引っ掛けて反らせたまま、ミキサーのように潤みの中をほじくり回す事もあり。
奥の奥までを俺に晒すかのごとく、左右の指を秘唇に引っ掛け、目一杯に拡げてしまったり。
オーソドックスに2本指でGスポットらしき辺りをいじめ抜く事もあり。
潮吹きこそ起こらなかったものの、それらは着実に彼女を小さな絶頂へと導き、潤みから露を溢れさせ、
淡いピンク色をした美味しそうな内腿あるいは尻肉を、いよいよ艶かしく濡れ光らせていく。
俺はもう興奮のし過ぎで息も苦しく、黙って観ているばかりでは襲い掛かりかねないため、時おり彼女に質問を投げた。
「女子高生とは思えないくらい、色んなやり方知ってるんだね。家でも結構オナニーしてたの?」
そう問いかけると、彼女は意外なほど穏やかな瞳を寄越した。
「いえ……私の家では、自慰をしちゃいけなかったんです。将来の夫を欺く行為、って宗教上の理由で。
始めてこういう事を知ったのは、友達に誘われて受けたここの研修で……。
初めてのお客さん相手にしなければならない基本中の基本だから、って、女の先輩に教えられたんです」
里穂はそこで言葉を切り、遠い昔を思い出すようにして続ける。
「全身の映る大きな鏡の前で膝立ちにされて、先輩にあそこを触られて、何度も……いかされました。
どんなに気持ちよくても、よすぎておかしくなりそうでも、先輩の手つきを観て覚えなきゃいけなくて。
膝立ちを崩すだけでも怒られちゃうので、脚の全部が私の愛液でぬるぬるになるぐらいまで、
ずっと……倒れないようにしてました。
でも、それが全てじゃないんです。そこから経験を積んで、今は自分にとって一番良いやり方を見つけ……!!」
その言葉が終わらないうち、また大きな快感の波が来たらしい。
「はぐうぅううっ!!!」
理穂は快感で開く口を、握りかけた手の平で隠しながら絶頂を迎える。
開かれた両脚がかすかに痙攣してもいた。
改めて今の里穂の周囲を見れば、すでにソファの座部には愛液によるテカリがそこかしこに見て取れる。
カーペットの惨状は更にひどく、彼女の座っている場所を中心にして、小雨が降ったように黒ずみが広がっていた。
それでもなお、里穂の性欲は衰えを見せない。
彼女の白い腕は、上から秘部を覆い隠すようにし、長い指を深くまで入れてグッポグッポと水気たっぷりの攪拌を再開する。
指が深くへ入り込むたび、両の脚がびくんびくんと跳ねている。
俺はその様子をよく見るべく身を乗り出した。
肛門の上に位置する秘部へ、右手の中指と薬指が侵入している。
余った人差し指を真っ直ぐに立てたまま、入り口近くをぐちゅぐちゅと刺激しているようだ。
よく見れば、左手の方が包み込むようにして陰核をこね回しているのもわかる。
そこからしばらくすると、とうとう人差し指も含めた3本指がまとめて割れ目へ入り込んだ。
視界に映るその手はお嬢様らしい上品なもので、腿も気品あふれるピンク色、指の間から見える秘部も初々しい。
それだけに、その3本指の並列挿入は不安になる。大丈夫なのか、と。
「んん、んあぁーー……っん…………!!」
だが当人は気持ちがいいようだ。
3本どころか時には固く曲げた4本指で、膣内の汚れを掻きだそうとでもするかのように痙攣させながら引き抜きもする。
また本当に気持ちのいい場所となれば、指を抜かずに何度も何度もその場所を深く抉っているのも窺えた。
プロのAV男優でも女優の身を案じてやらないような、徹底したGスポット責めだ。
自分の身体だからこそ、限界のギリギリが解るのだろう。
「あ、あっ……あ!!」
里穂は、しばらく3本指で中を拡げるかのようにかき回した後、
クリトリスを弄くっていた左手を右手の手首に重ね、自らの秘部へ引き込むようにして深く挿入し始める。
「ふああああんんっ!!!!!」
甲高い叫び声と共に、腰がビクンビクンと跳ねる。
自分自身の指で性感帯を弄くっているのに、腰が跳ね回ってしまうという異常性。
その光景は、俺を呼吸さえ忘れて見入らせた。
もう声も掛けられない。この、目の前の可愛らしい少女が、どこまで性を貪るのか。それを見ていたいだけだ。
里穂の指はピアノ弾きに相応しい、細長くて綺麗なものだった。
その繊細で芸術的な指が、4本纏められ、ぶちゅうっと凄まじい音を立てながら秘部へ突き刺さる。
薄桃色の内腿を筋張らせる。
ようやくにその指が抜かれたかと思いきや、抜かれたのは人差し指の1本のみで、
他の指はその抜けた人差し指が作る隙間の向こうで、わななく陰唇を虐待するかのように責め苛む。
指の暴れる先から、どろっ、どろっと蜜がこぼれては、美しい尻肉を流れていく。
散々そうして蜜を吐かせた後には、また4本指が揃えられ、秘裂を深々と抉りこむ。
内腿はそのあまりの激しさに、胎盤の形そのままに歪に強張り、
責める手の平もまた、拳を握るかのごとく拳頭を浮き上がらせてその先の指を力強くうねり狂わせる。
それは柔肉への繊細な指の侵入……というにはあまりにも痛烈で、重厚なものだった。
当然、その激しさの中で理穂は何度も達していた。
「ああ、いくっ、いくうううぅうっっ!!!!!!」
笛の音を思わせる高らかな叫び声の後、秘裂から潮が噴き上がった。
一度だけじゃない。彼女自身の腹部へ向けて、びゅっびゅ、と四・五回、間欠泉のように。
「あ、ああう……ああ…………」
その連続の絶頂は流石に応えたのだろう。
理穂はしばらく寝転んだまま、ガクガクと余韻に浸っている。
俺はそれを目にして、充分に自慰を堪能した、と自分の中で締めに入る。
充分に満足だ、と。
……ところが。里穂は、まだ立ち上がる気配を見せはじめる。
座部に片膝をつき、肘掛けに別の脚を乗せる形への姿勢変え。
両脚の高低差で大きく開く形となった秘部ははっきりと見え、
微妙に力の入る姿勢からむちりとした太腿がより肉感的に視界に映る。
ハイソックスも実に映え、女子高生なのだと言う事を改めて生々しく認識させる。
「はっ……はっ……。えへへ、すごいえっちでしょ、この格好?」
肘掛けに乗せた脚の下から蕩けた顔を覗かせるようにし、秘部を弄り始めた。
少し刺激し、やがてびくりとして手を引っ込める。
そして両脚の位置を調節し、慎重に再び刺激し始めた。
おそらく思っていたよりもずっと刺激が強く、本格的にやろうというのだろう。
俺はその気迫に押されながらも、下から覗き込むようにしてその部分を凝視した。
中指薬指で「キツネ」を作るようにして秘部を刺激し続けているのが見える。
初々しかった秘部は、もはや原型もないほどに蕩けていた。
見えげる俺の顔に、かすかに白濁した雫が幾滴も垂れ落ちてくる。まるで、雨だれのように。
かすかに暗がりになっている里穂の表情も、かなり余裕のないものである事が窺える。
「ねぇ、もっと見て?私がぐしょぐしょになっていく所、もっと見てよ。ねぇ」
理穂は快楽に蕩けた顔で訴えてくる。俺はそこで始めて、ぼんやりと気がついた。
おかしいじゃないか。
こんなに可愛い娘が、こんなに激しいサービスをしてくれる店。
しかもこれは、はじめて来た客用の、あくまで初歩的なサービスだという。
なら当然、いくら知るものぞ知るとはいえ、予約の取り合いになっておかしくないはずだ。
かつてこの店に訪れた先客達は、この娘のような子に骨抜きにされたはずの彼らは、
今どうしているんだ?
「ね、ほらお兄ちゃん、もっと見て。もっと……わたしみてよぉ……」
恐ろしいほど整った顔の里穂を見つめながら、俺はぼんやりと、従兄の顔を思い起こした。
終わり
続きを読む