大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2012年02月

性の探求

※ 和姦系アナル物です


現金書留なるものを受け取ったのは、22年の人生でそれが初めての事だった。

見慣れない緑淵の封筒を開けると、中からは千円札二枚と五百円玉一つ、
そしてピンクの罫線が透けて見える愛らしい手紙が姿を見せる。

『ハカセ、久しぶり。元気にしてる?』

出だしの一文を目にした瞬間、俺には手紙の差出人が特定できた。
俺は名前の読みこそ“ひろし”だが、博士という字ではない。
その俺をハカセなどと呼ぶ人間は一人だけ。
山瀬 愛美(やませ あゆみ)、中学の時のクラスメートだ。

山瀬の事は思い出深い。
最初の印象は、いかにもなお嬢様というものだった。
肩までの長さの、毛先がふんわりと柔らかくカールした黒髪。
頭に乗せた、日によって色と形状の異なるカチューシャ。
喋り方や歩き方、鞄の開き方に至るまでのあらゆる動作も落ち着いていて、品がある。
女子中学生ならクラスにもまだ清純派は多いものの、山瀬の場合は纏う雰囲気からして違った。

それもそのはずだ。
山瀬自身は全く語ろうとしないが、彼女がお嬢様だったのは間違いない。
雨の日には必ず、校門から一つ角を曲がった先で高級車に迎えられる所が目撃されたからだ。
とはいえ、山瀬がその育ちの良さを鼻にかける事はない。
むしろ人当たりは良い方で、話し友達は男女を問わずかなり多かったように思う。

ただ、彼女について一つ噂されていることがあった。
Hな話だけはNG、というのがそれだ。
友人間で話をしている時、話題がいわゆる下ネタになると明らかに山瀬の乗りが悪くなるという。
今でもまだ、当時のクラスメートは誰もが『山瀬は潔癖』というイメージを持ったままだろう。
俺だけはそれが、とんでもない誤解だと知っているけれども。



あれは中学2年の秋頃のこと。
くじ引きの結果、文化祭のポスター係に偶然選ばれた山瀬と俺は、
放課後の遅くまで巨大な画用紙を相手にペンキで格闘していた。
山瀬はこういった行事にはかなり積極的で、普段淑やかに振舞う反面、
やるとなれば勢いよく腕や裾を捲って取り掛かる。
俺はその細い二の腕や脹脛についたペンキを視界の端に捉えて、ひどく心臓を高鳴らせていたものだ。

俺は当時、マンガの影響でバスケットに熱中するスポーツ少年で、
男とならともかく女の子と話をする事など大の苦手。
だから、山瀬が話しかけてくる事に歯切れの悪い返事を返すばかりの体たらくだった。
やがて会話もほとんどなくなった頃だ。
さすがに山瀬に悪いと思った俺は、息抜きついでに自販機のジュースでも奢ろうと思って鞄を漁っていた。
しかし目当ての財布には中々手が届かず、代わりに一冊の本が転げ落ちて山瀬のすぐ横に落ちてしまう。
物理の教科書か?
そんな事を思いながら本に目をやった瞬間、俺は息を呑む。

それは今朝方、近所の本屋で買ったSM本だ。
正直に白状すれば、俺は純真なスポーツ少年などではない、当時から生粋の変態だった。
初めは父親の書斎にあった大人向けの小説を見てだったが、そこからどんどんとエスカレートし、
小遣いの全てをそうしたコアなエロ本に費やしていたのだ。
俺は、自分の学校生活が終わったと確信した。
山瀬にHな話は厳禁。その噂は、女子グループと接点のない俺でも知っていた。
その山瀬の目の前に、とびきりのSM本を落としたのだ。
悲鳴で済むならいいが、それからどんな拡がり方をするのか、考えただけで嫌な汗が噴き出した。

「…………っ!!」
山瀬は、落ちた本の表紙に視線を落として眼を見開いた。
その視線は緩慢な動きで俺の顔へと這い上がる。
「ち、違、これはっ!!」
俺は震えながら身を屈め、素早く本を回収する。その時、耳元で囁かれた。

「…………すごい…………」

その言葉の意味を量りかねた俺は、山瀬の方へと目を向ける。
彼女は普段からぱちりと開いた瞳を、さらに一回り大きく輝かせていた。

「ねぇ、その本SMマニュアルでしょ?もっとよく見せて!!」
そう続ける山瀬。
俺は困惑しながらも、少なくともそこに非難の色がない事を感じ取る。

本の表紙を再び凝視した山瀬は、次第にうっとりとした表情を作り始めた。
「やっぱり……見間違いじゃなかった。
 綺麗に胸を搾り出した菱縄縛りに、つらそうな胡坐縛り、大きな浣腸器!きゃあ、本格的!!」
片手を頬に宛がいながら囁く山瀬は、噂とはまるで違う。
「……む、六ツ傘駅の前にある本屋で、買ったんだ。あそこエロ本の品揃えいいし」
俺は恐る恐るそう言葉を掛ける。
すると山瀬は俺の方を振り向いて笑顔を見せた。
「そうなんだ……。中学生でこんなに凄いエッチな本持ってる子がいるなんて、思わなかった!」


結論から言えば、山瀬はいやらしい話が嫌いな訳ではない。むしろ大好きだ。
潔癖という噂の原因となった、猥談で乗りが悪かったというのも、
中学生の年相応の下ネタが馬鹿らしくて反応もしなかった、というだけに過ぎない。
こと性的な知識に関しては、山瀬は意外なほどに貪欲で求道的といえた。
そしてそれは、俺としても全く同じこと。

それからというもの、俺と山瀬は授業の合間などにこっそりと紙の受け渡しをし、
他人に知られれば卒倒されるような濃厚な猥談を交わすようになった。
当時はすでに携帯電話もそれなりに普及してはいたが、そんなメールの履歴を見られては大変だ。
だから紙の受け渡しという古典的な方法を取り、その悪戯じみた秘密の共有もまた心地の良いものだった。

山瀬が俺を『ハカセ』と呼び始めたのは、その手紙の中でのことだ。
幼稚園の頃から親父の本で培ってきた俺の性知識は、彼女を大層感心させたらしく、
それがエロ博士という敬意と茶化しの混じった渾名となったらしい。



メモ紙のやり取りは一日3通ほど、全て合わせればどれだけの数になるだろう。
山瀬の書く字はミミズののたくるような俺のものとは違い、筆記ドリルの見本を写したような精緻なものだった。

秘密を共有するという高揚感からか、俺と山瀬は紙の上でかなりプライベートな部分までを曝け出した。
自惚れるわけじゃないが、当時の山瀬の事について俺以上に詳しかった奴はいないだろう。
苺が好きだとか、胸の大きさがBカップだとかいう情報を知っている奴はいても、
トイレの後はいつも後ろから前へ拭いていること、
入浴の際には浴槽の淵で腰を上下して陰核を押し潰し、絶頂を迎えなければ入った気になれないこと、
洋式便所で用を足す際には必ず便座カバーに足の裏を乗せ、公開排泄をさせられる妄想に浸っていること、
などを知る人間は俺以外にはいなかったはずだ。

住んでいる家には広い庭があってプールと喫茶セットが備えられ、家政婦も数人いる。
本当は雨の日にも高級車での送り迎えなど恥ずかしくてしてほしくないが、
両親が風邪を引いてはいけないと過保護気味に迎えに来てしまうとも綴られており、
やはり本物のお嬢様なんだと実感させられた。

そのお嬢様と、俺は今考えてもとんでもない事をやった。
とんでもない事とは、親が外出している俺の部屋でのAV鑑賞。
それもただのAVではなく、川原に捨てられていた相当にドギツイSMものだ。

男同士というならともかく、まだ付き合ってもいない中学生の少年少女が一つ部屋でAVを鑑賞する。
さらにはただ鑑賞だけもつまらないと、お互いが下を脱ぎ去って自慰までも見せ合いながら。
この辺りはさすが未熟ゆえのブレーキの壊れ具合。
俺達は映像の中の中年女性が縄を打たれ、浣腸を施され、男達の前でブリブリと惨めたらしく排泄を晒し、
数人の男達に揉みくちゃにされながら犯され回すのを、固唾を呑んで見守った。

山瀬は俺のベッドに腰掛けたまま脚を開き、秘部の中に間違いなくその細い指を差し入れていた。
指に光を反射する液体が纏い付いている映像は、今でも俺の脳裏に焼きついているほどだ。
薄い繁みの奥から響くぬちゃぬちゃという音が、間違いなく自慰をしている最中なのだと伝えてくる。
「すごい音してるよね……興奮しちゃってるみたい」
山瀬は俺が秘部を凝視しているのに気付くと、やや恥ずかしそうに微笑んだ。

性に潔癖なお嬢様として知られ、誰一人告白さえ出来ずにいるというあの山瀬愛美が、
俺の目の前で自慰をしている。
俺はもうビデオの内容だとそっちのけで、その事実を糧に痛いほど勃起しきった逸物を擦り上げた。
山瀬が珍しいものを見るように目を輝かせているのが、どこか誇らしくさえあった。



自慰をしている所を見せ合いはしたが、流石に絶頂の瞬間を冷静に観られるのは恥ずかしい。
さらにはお互い異様なほど昂ぶっていた事もあり、俺は気がつけばさらに問題になるような行為に及んでいた。
ベッドに腰掛けた山瀬の足元に跪くようになり、脚を手で押し開いたのだ。
中学生のそれに相応しい、色素沈着のない桜色の縦筋。
自慰によってかすかな乱れの見えるそこを指先で割り開き、口をつける。
「あっ!!」
山瀬は一瞬驚きの声を上げたが、それ以降は抵抗するどころか、身体を反らし気味にして舐めやすいようにしてくれた。
産まれて初めて味わう女の秘裂は、予想よりもずっと生肉臭く、年齢のせいか酸っぱくもある。
ただ、それが同級生達が夢にまで見る山瀬愛美のアソコだと考えれば、もはや興奮しかない。

俺は潤みの中に舌を捻じ込み、味わいつくすように舐り回しながら、役得とばかりに太腿を揉みしだく。
山瀬の女の子の太ももは、まるで骨がないのではと思えるほどに柔らかかった。
「ああっ……き、気持ちいいっ……!!こ、こんなになんて……あ、あ…………いくっ!」
山瀬はあらかじめ昂ぶっていたせいか、数分ともたずに身体を震わせた。
同時に両の太ももが俺の頭を挟みつけ、あれほどに柔らかかったにも関わらず鈍い痛みを与えてくる。

山瀬が達した後、今度は仁王立ちになった俺の前に山瀬が膝立ちになってのフェラチオ。
勿論、一度されてみたかったという俺の願望と、経験してみたいという山瀬の希望あってのことだ。
それは夢のように気持ちよかった。
柔らかい唇に亀頭が包まれ、意外なほど弾力のある舌が裏筋をなぞり、啜り上げられる。あの山瀬愛美によって。
それらの刺激で、俺のほうも一分ともたずに射精を迎えてしまう。
それまでに経験のないほどの大量の精が山瀬の口内へと注ぎ込まれ、山瀬はそれを飲み下そうと頑張ってはいたが、
やがて眉をしかめたままティッシュの中に大量に吐き出した。
「けほっ……!け、経験に一度飲んでみたかったんだけど、ハカセのすごく喉に絡んできて、無理みたい」
山瀬は軽く汗を掻いた顔で俺を見上げる。
その瞬間俺は、まるで恋人になったかのような幸せな錯覚に陥った。

実際、ここまでの事をしておきながら付き合う訳でもなく、セックスさえしなかったのは異常ともいえる。
ただ山瀬は子供ながらに、そこまでやってしまうともう遊びではなくなると理解していたんだろう。
俺達がやっていたのは、酒や煙草に手を出すのと同じ、あくまで知的好奇心を満たすための悪戯。
それゆえ、中学卒業を期に行く先が分かれてからは、山瀬は嘘のように俺との関係を断った。
俺がハカセと呼ばれることは二度となくなった。

そこから8年の年月を隔てて届いたのが、あの現金書留。
習字の手本のように綺麗な字でしたためられた、紛れもなく山瀬本人からの手紙だ。



手紙には、無事に四年制大学を卒業した山瀬が一人暮らしを認められ、
桜上水に高級マンションを買い与えられた事が綴られていた。
越したばかりの頃こそ両親の世話焼きがあったが、今は完全に一人で暮らせている、と。

『昔は親や家政婦さんの目を盗んでお風呂でしか出来なかったオナニーも、
 今では好きな時に好きなだけ出来るの。憧れるだけだったお尻でだって。
 でもね、お尻を弄くってると、どうしてかいつもハカセのこと思い出しちゃうんだ。
 ませてた中学生の頃に、ちょっと変わった話とかしただけなのにね。
 ……一緒にエッチなビデオを観たこと、ハカセは覚えてるかな。
 あの時のこと、最近よく夢に見るんだ。あれがきっと、人生で一番ドキドキした日だったよ。

 気持ち悪いって思われちゃうかもしれないけど、ハカセと別れたあの日から、まだ誰とも付き合えてないんだ。
 アナルだって、まだ指を入れたぐらいで固いまんまなんだよ。
 また、久しぶりに会って話がしたい。今度は大人と大人として、堂々とHな事に浸りたい。
 この現金書留の2500円は、友達に教えてもらったハカセの家から、私のマンションまでの往復の電車賃。
 迷惑じゃなかったら、また暇な時に遊びに来てほしいな。
 でももしハカセに、他にもっと大切な人がいるなら、本当に少ない額だけど感謝の気持ちとして役立てて』

その文面の後に、マンションの詳しい住所と電話番号、そして山瀬の署名が続き、懐かしい文字は終わる。
変わっていない。
俺に対して甘えるようにワガママな所がそのままだ。
こっちだって新社会人としてやる事が多いというのに、自分都合で呼び出す身勝手さ。
俺との関係を一方的に終わらせ、失恋の痛みを味わわせておいて平然と便りを寄越す奔放さ。
そして、行間から滲み出る愛くるしさ。

断るなどという選択肢は端からなかった。
俺はつい昨日別れた友人と再び待ち合わせるような気楽さで、手紙の住所へと辿り着く。
軽く考えなければ、夢のような興奮に卒倒しそうだったから。


三重のセキュリティに護られたマンション16階、一戸建てを彷彿とさせる巨大な扉の奥に山瀬はいた。

「久しぶり、ハカセ!変わらないね」
俺を招き入れ、山瀬は微笑む。こちらとしてもほぼ印象通りだ。
昔よりやや伸びて腰近くまでを覆い、柔らかなウェーブを描く黒髪。
シンプルな藍色のカチューシャ。
白のワンピースと薄桃色のキャミソールに包まれた、スレンダーに整った身体。
胸や腰周りに落ち着きが加わったことで、昔よりもさらに令嬢らしさが増したように思える。

「そっちも、相変わらずだな。結構男に振り返られたりするだろ」
俺はそう問う。
答えを聞きたいというよりは、振り返られるような令嬢と話している、という現実を再確認するためだ。
本来、俺などには分不相応もいいところなのだから。
山瀬は口に手を当てて笑った。
「ふふ、ハカセも女たらしっぽいこと言うようになったね。
 でもそうだね、大学ではお淑やかに振舞ってたから、色々と勘違いさせたかも」
山瀬は優雅に微笑みながら告げる。
確かに何も知らない状態でそれを見れば、穢れを知らない天女のようにも見えるだろう。
ただ、俺は何も知らない訳じゃない。

「リビング行こ」
山瀬は自然に俺の手を引き、部屋を奥へと進んでいく。
5人家族でも充分に暮らせそうな広さだ、一人暮らしでなら使わない部屋が幾つあることか。
「広い家でしょ」
俺の心を見透かしたかのように、先導する山瀬が声を投げた。
「………………寂しいんだよ」
山瀬はそう続け、リビングに入った瞬間に熱っぽい視線で俺を見上げる。

鼻の呼吸が阻害され、唇が柔らかなものに圧され、甘い香りが脳を突き抜けた瞬間、
ようやく俺は唇を奪われたのだと理解した。
胸が甘たるく蕩ける。キスをせがまれては仕方がない。
ここからは、この無防備すぎる令嬢を、好きなように穢していい時間のはずだ。
いい加減に気持ちを押し殺すのにも疲れた。
俺に対してだけ奔放なこのお嬢様があからさまな好意を向けてくるなら、
俺だって8年前から、山瀬愛美に抱いていた欲望のありったけをぶつけてやる。
今度はもう、“遊び”じゃない。





「……さあって。こんだけ浣腸すりゃあ、中は綺麗なもんだろう」
俺は凝り固まった肩を回し、山瀬の手足の縄を解きにかかった。
「う……ああ…………」
断続的な浣腸責めで蕩けたような顔をしたまま、山瀬の手足はだらしなく浴室のタイルに垂れる。
口の端にかすかな涎の跡が見え、乳首が角ばりはじめている。
かつての同級生にこれが山瀬愛美だと言って見せても信じないほどのだらしなさだ。
だがこのお嬢様にはこれから、もっと乱れて貰うことになる。

「ほら、寝室行くぞ」
器具の散乱した浴室の片付けは後回しにし、俺は山瀬を助け起こして寝室に向かった。
ダブルベッドの上に山瀬を寝かせ、俺も寝台に上がる。
「尻を上げてみろよ」
正座を崩す山瀬に、あえて高圧的に命じると、彼女は当惑するような瞳で這う格好を取った。
俺はその尻肉を掴んで押し広げ、窄まりに目をやる。
綺麗だ。
膣のように桜色とはいかないものの、やや濃い肌色で、浣腸によってかすかに開いている。
俺はそこに口をつけた。
「あっ!」
期待通りに上がる驚きの声。
浣腸した時にも思ったが、山瀬は中学の頃から変態じみた知識を備えていて、
なおかつそれから8年が経っているにも関わらず、肛門性感は初心なままだ。
指ぐらいは入れているかもしれないが、本格的な拡張は間違いなくやっていない固さ。
俺を想って取っておいたのであれば涙ぐましいものだが、いずれにせよ好都合だ。

俺は肛門の皺の周辺を舌で舐めまわしながら、じっくりと肛門性感を目覚めさせていく。
浣腸液で執拗に洗われたせいか、ほぼ無味無臭の肛門。
しかしそれが山瀬の、視界のすぐ横に伸びる美脚の持ち主の物だと思えば、美味に思えるのが不思議だ。
「ひゃっ……!!」
舌を蠢かすたび、山瀬は可愛らしい悲鳴を上げながら尻を震わせた。
俺はその反応を愉しみながら、さらに皺の一本一本までを舐め取り、
あるいは活火山のように盛り上がった尻孔そのものを強引に横断するかのごとく舌でなぞり上げる。
「はっ……う!!」
山瀬の声は明らかに感じているものだった。
俺はそんな山瀬に問いを投げる。

「なぁ山瀬。前に本で見たんだけどさ、女って、こうして四つん這いで尻穴を舐められたら、
 色んな妄想を掻きたてられて異様に興奮するんだってさ。
 丁寧に尻穴を舐められたら、クリトリスが熱くなって濡れてくるんだと。本当だと思うか?」
俺が問うと、山瀬は這ったまま身体を震わせて答えた。
「はっ……はっ……ほ、ほんとだと、思う…………。
 犬みたいなこの格好も、おしり舐められてるのも、あそこ丸見えなのも、死ぬほど恥ずかしい。
 おまけに、おしり自体もすごく気持ちよくて……ハカセがいなかったら、変な声いっぱい出しちゃうよ」
「どんな声なんだ?聞かせてみせてくれよ」
「嫌、絶対幻滅させるから……本当、そんな風な声なの……あぁおううっ!!?」
言葉の最中に、山瀬は妙な叫びを上げた。
俺が尻穴の隆起の真ん中に、尖らせた舌先を突き入れたからだ。
尻穴ではこれが一番気持ちがいい。そうアナルセックスの本にあった通りのようだ。

そこから俺は、山瀬の尻肉を掴んだまま尻穴を舐り続けた。
時に陰核にも刺激を与えつつ、尻の孔を丹念に唾液でふやかすように。
山瀬は何度も尻を振り、身を震わせて反応してくれた。
幻滅させるような変な声、というのが具体的にどれなのかははっきりしないが、
本当に気持ちいい時に脚の筋肉を引き締めながら『おおお』と呻きかけ、しかしそれを必死に堪える事から、
おそらくはそれを幻滅されると思っているらしい事が窺えた。
責め手としては、それほどに快感の凝縮された呻きなど、嬉しくこそあれ幻滅などする筈もないのに。

肛門の華が舐りで開いた頃、俺はようやく舌を止める。
山瀬は腰だけを高く突き上げたまま、上体をベッドに沈ませるだらしのない格好になっていた。
「はぁ、はぁ、へへ、どうだ。舌だけで、何回くらいイッたんだ?」
俺は息を荒げながら、山瀬が確実に達していた事を前提に訊く。
「……はーっ、はーーっ……さ、3回は、確実に……。で、でも、弱いのもいっぱい……」
余裕がないのか、曖昧な答えを返す山瀬。
これでも中学の時には、模試で全国12位を取った事もある才女だというのに。

俺はその山瀬の乱れっぷりがむしろ嬉しく、さらに壊したくなってくる。
すでに息は荒く、胸は興奮でつまり、勃起もかなり痛いほどになっているが、
それでもまだまだ山瀬の肛門を嬲ってふやかし、徹底的に快感を刷り込んでやりたかった。
「……次は指でやるぞ」
俺が興奮も露わに告げると、山瀬は力なくシーツへ身を沈ませたまま、かすかに期待するような瞳で見上げてくる。


俺は一旦ベッドを降り、部屋の隅にあった姿見を山瀬の正面に引きずってくる。
目的はもちろん、肛門への指責めを受ける山瀬の顔を拝むことだ。
「やだ……映っちゃう」
鏡に顔を映された山瀬が恥じらう表情を見せたが、俺は構わずワセリンを中指に付ける。
そうしてゆっくりとその中指を山瀬の尻穴へと送り込んだ。
「んふっ……」
山瀬は声を上げたが、舌で充分にほぐれた菊輪は易々と指の第一関節を呑み込んでしまう。
俺はそのまま菊輪を纏いつかせるようにして中指を前後させ、感触を確かめてから人差し指を添えた。
2本指での挿入。さすがに今度は、指を握りしめるような圧迫感が返ってくる。
「ふんんんっ……!!」
山瀬の声が鼻にかかったものに変わった。

「気持ちいいか?」
俺がそう聞いた時、鏡の中で動いた視線にどきりとする。
とろんとしながらも鋭く見上げるような、不思議な眼。
ただ解るのは、山瀬が催促しているという事だ。
「じゃあ、いくぞ」
俺は左の手で山瀬の左の尻肉を押し開き、右の2本指を動かし始める。
指先で腸の入り口の際を擦りあげるように。
第二関節で菊輪を刺激するように。
奥の深くで2本指を開き、腸粘膜を外気へ晒すように。
考えつく限りの心地よさを与えるべく、ぬめった山瀬の腸内で指を蠢かす。
効果はそれなりにあるようだった。

「あっ、ああっ、あうっ!!」
山瀬の唇から声が漏れる。
鏡には、柔らかく目を閉じたまま口を開き、何とも美人らしく喘ぐ顔があった。
改めて本当に可愛いと思う。お嬢様である事を差し引いても、そのルックスだけで特別たりえる。
それを意識すると、俄然指にも力が籠もった。
何度も何度も、呆れるほどに指を抜き差しし続ける。
その俺の動きに併せて、山瀬からああ、と声が漏れ、尻肉が引き締まり、すらりとした脚が強張る。
女らしいふくらはぎが盛り上がり、足の指がつらそうにシーツに沈み込む様は、何ともエロかった。

「どうだ、感じてるか?」
あえてそう問うと、山瀬は首を揺らして喘ぎながら頷いた。
「う、うん……す、凄く興奮して、もうクリトリスも痛いくらいに勃起してるの。
 それがシーツに擦れて……もう何回も、いっちゃってる」
山瀬はそう言いながら、また反則的な背筋のラインを震わせる。

顔もまた色っぽいものだ。
目を閉じ、薄く開き、見開いて、様々に変化させながら瞳を惑わせる。
唇もパクパクと開閉しては涎を垂らすがままだった。
声はあっ、あんと甘たるい響きを漏らすのが基本だが、時おり俯くようにしながら「いくっ」と小さく呻くのが、
思わず抱きしめたくなるほど可愛らしい。
その声をもっと引き出したくて指を抜き差しし続ける。

腕が疲れると一旦動きを止めながら山瀬の身体のあちこちを愛撫し、また再開する。
それを繰り返すうち、やがて尻穴からぬちゃぬちゃと異なる音がし始めた。
おそらくは腸液が充分なほどに溢れ始めてきたのだろう。完全に感じているわけだ。



俺は肛門から、異様な粘液に塗れた指を引き抜いた。
菊輪がめくり返り、山瀬の桜色の唇がああっと艶めいた息を吐く。
指という責め手を失い、宿主の吐息に併せて喘ぐようにひくつく肛門。
それを見るうち、俺の興奮もいよいよ限界が来る。

「…………挿れて、いいか?」
俺はトランクスを脱ぎ捨てながら山瀬に訊いた。
鏡には、すでに惨めなほどに勃起しきり、先走りに濡れた欲望が映り込んでいる。
山瀬はそこに視界を向け、とびきりの優しい笑みをくれた。
「いいよ……はやく来て」
その声の響きさえ、首筋を羽毛で撫でられるようにこそばゆく、俺の理性を消し飛ばす。

俺はもう余裕もなく、山瀬の下半身を横向きに抱えるようにして亀頭を肛門へと宛がった。
すでに舌と指によってほぐれるだけほぐれた肛門。
そこは、亀頭を押し付けると、まるで優しく包み込むように俺の物を迎え入れた。
しかしそれでも、並ではないほど入り口の締め付けが強い。
「うっ!!」
挿入時のその呻き声は、俺のものか山瀬のものか解らなかった。
そのぐらい、どちらにとっても衝撃的だったから。

不安定な姿勢のまま挿入を迎え、そのまま射精感を堪えながら奥へと押し進む。
幸いというべきか、腸の奥へと入ってしまえば締め付けは緩い。
根元をリング状の菊輪で締め付けられる状態にすれば、とりあえず一息つけそうだ。
「あっ……い、今、は、入ってるんだよね……。
 ハカセの熱くて硬いのが、私のおしりの穴に入っちゃってるんだよね?」
山瀬は鏡の向こうで、肩越しのこっちを振り返りながら言った。
夢にまで見た、とばかりの陶然とした表情で。

「ああ。あんだけほぐしたのに、反射で物凄い締め付けてきて射精ちまいそうだ」
俺は答えながら、文字通り体勢を立て直すべく山瀬の腰を抱え上げる。
そうして再び四つん這いの姿勢に戻すと、ゆっくりと逸物を引き抜き始めた。
「ぃひっ!……そ、その引かれるの、すごいぃ……!!」
山瀬が声を上げる。どうやら、カリ首が菊輪を抜け出る瞬間が効くらしい。
俺としてもその瞬間は刺激が強く射精の危険があるが、五分五分というところか。

「そんなにこれがいいのかよ?」
俺はあえて肛門付近で亀頭部分を抜き差しし、山瀬に声を上げさせる。
姿勢を安定させるべく山瀬の腰を掴むと、これがまたしっとりと手に吸い付くような肌触りで、
おまけに柔らかく暖かな極上の肉だ。
さらにはその奥、艶やかな黒髪の流れる白い背中にも汗が光っていて異常に艶かしい。
「くっ!!」
思わず幸福からの射精感を覚えて目線を伏せれば、山瀬の脚の間が視界に入った。
指での嬲りの最中、何度も絶頂を訴えていたそこからは、確かに銀の糸が垂れてシーツに蜜溜まりを作っている。
間違いなく俺が感じさせた証だ。俺が今、尻を犯しているこの高嶺の花に。
そう考えた瞬間、凄まじい射精感が玉袋を押し上げた。止めようもない。



「うううっ!!」
俺は呻き、亀頭を山瀬の菊輪に挟み込んだまま、動かすこともなく射精を迎えた。
「あっ、出てる……すごい出てるよ!」
山瀬が解りきったことを親切にも解説してくる。
俺は今までの人生でもかつてなかったほど強烈な射精感を浴びながら、陶然としていた。
「……お?」
しかし一連の濁流が過ぎ去った後、俺は違和感を覚える。
萎えない。一度射精をしたにも関わらず、ほとんど逸物の硬度が失われていない。
興奮しすぎているからか。射精までに溜め込んだ鬱憤が膨大すぎたからか。
ともかく、これでまだ楽しめる。心置きなく山瀬を犯せる。
「さて、まだまだこっからだぜ」
俺は山瀬の腰を掴みなおし、力強く腰を打ちつけた。

パンッ、パンッと肉を打ち付けあう小気味良い音が響く。
俺の強張った太腿と、山瀬のしなやかな裏腿がぶつかって生まれる音だ。
その音が鳴っているということは、俺の逸物が根元まで深々と山瀬の肛門に入り込んでいるということ。
「うう、うううっ……!!」
山瀬は胸の前に揃えた両手でシーツを掴みながら、歯を喰いしばって呻いていた。
苦しそうにも見える、けれども快感を必死に堪えているようにも俺には感じられた。
都合のいいように考えるしかない。どの道、もう止まれない。

バックスタイルで深く繋がったまま、俺は自ら寝台に尻餅をつくようにして山瀬の身体を抱え上げる。
俺の脚の間に山瀬が座り込み、後ろから抱きしめるような格好だ。
肛門の紅い輪が捲れ上がり、深々と突き刺さった逸物が引きずり出される様。
それに併せて熟れきった果実のような割れ目が嬉しげにひくつく様。
深く突きこまれるたびに引き締まるしなかやな腹筋に、波打つ太腿、弾むように上下する乳房。
それらの何もかもが鏡によって丸見えになってしまう。
「ふああ、ああ……あ…………!!!」
山瀬はそのあられもない姿を自分の目に焼き付けながら、何ともいえない悦びの声を上げた。

俺は自らベッドの上で跳ねるようになりながら山瀬の肛門を責め苛み、
どうしようもないほどの絶頂感が来ると深々と突き込む事で、奥の空洞で熱を冷ました。
そうして長く長く、山瀬お嬢様の汚らわしい部分を愛しぬいてやる。
彼女が悦ぶように。
「あああーーーっ!!!おおあああああああっっーーーーーー!!!!
 いい、いいよおっ、はかせ、ハカセえぇっ!!!!」
山瀬はいよいよ喉の奥からの嬌声を吐き出しながら、俺の頭へ腕を回して口づけを求めてくる。
俺はそれに応えつつ、さらに激しく腰を打ち付ける。

まだまだ、まだまだ、今日という日は長い。
このセックスに精も根も尽き果てれば、今度は玩具を使って山瀬を愉しませてやる。
そうしてまた浣腸し、狂うほどに犯し抜いてやる。
あの頃の俺達が貪るように追い求めた、すべての知識を確かめ合うように……。



                            終わり
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Maher's Nightmare

※ 2/17金曜ロードショーのアバターを観てムラッと来たので執筆。
  ダーク・NTR系な上、女を貶める手段の一つとして僅かに男色シーンありなのでご注意。



それは、文明圏の人間による一方的な侵略だった。

現地で採れる秘石を信仰し、緑豊かな森で慎ましく暮らす一族“シジル”が襲われた理由はひとつ。
彼ら一族の崇め奉る飴色の石が、人間にとって画期的なエネルギー源であるからだ。
同質の石同士を強く打ちつける事で、石の内部に微細な振動が生じ、それがやがて高度な熱エネルギーとなる。
そのエネルギー効率は石油やガスを燃焼させる場合を遥かに上回り、
上手くすれば二つの石だけで半永続的にエネルギーを供給できうる神秘の石だ。

地球人はこの新たなエネルギー源に飛びついた。
始めは人道的見地から、シジルの一族に『飴』を与えて懐柔する方針を取る。
だが元々シジルとて、全くの未開の部族という訳ではない。
森と心を共にする一族であるため火こそ使わないが、入浴、排泄、薬事などの様々な知識を有している。
日々髪を丹念に洗って梳き、針葉で歯を磨いて薬草で口を濯ぎ、樹液でクリームを作っては肌を潤す。
粗い作りとはいえ、ワインに近いものまで醸造して嗜んでいた事には地球人も驚かされた。
その文化的レベルは高い。母なる森と共生する事を考えれば、それ以上を望むべくもないほどに。

そんなシジルに、地球人からの贈り物は効果が薄かった。
Tシャツやチョコレート、高級な赤ワインなどはそれなりに興味を引いたようだが、
秘石の採掘権と天秤に掛ければ話にならない。
シジルにとって秘石は、信仰の対象であると同時に血族の一員のようなもの。
いくら物を与えても、その石の採掘権を譲る事は決してなかった。

結果、交渉は無理と断じた地球人は、武力という『鞭』の行使に踏み切る。
とはいえ、戦車やミサイルなどの大掛かりな戦力を投入する訳にはいかなかった。
森に埋まっている秘石のためだ。
シジルの秘石は便利な反面、実に厄介な性質を併せ持っている。
同質のものを打ちつければエネルギーを発するが、逆に異質なもの、例えば鉄や火薬で過剰な力を加えると、
たちまち内部組織が崩壊して二度とエネルギーを得られなくなってしまうのだ。
ダイヤを削るにはダイヤを用いるしかないのと同様、秘石に触れるものは同じ秘石でなければならない。
戦車やミサイルで土壌を蹂躙すれば、むざむざ戦利品の大半を殺す事になる。
これが地球人にとって最も難儀だった。

戦車が使えない以上、シジル制圧には白兵戦しかない。
それは容易い事ではなかった。
まず森に棲む未知の虫や蛇、動物などが外敵を追い出そうと襲ってくる。
さらには幼い頃から森で暮らしてきたシジル自体の強さも侮れない。
狩りの要領で統率を取り、樹の上から弓矢を射、近距離では蹴りと共に槍を振るう。
単純な瞬発力や筋力で見ても、女でさえ鍛え上げた軍人のそれを上回る。
しかしそんなシジルも、一度生け捕られれば前線の兵士にとっての愉しみとされた。

森に棲む異種族とはいえ、シジルの見目は原始人とは程遠い。
純度の高い金のような髪、瞳孔という彫りの入ったルビーのような瞳。
豊富な酸素で紫外線から守られるため、その肌は白人さえ目を見張るほどに淡白い。
植物を主食とする上に日々身体を使っているため、体型は男女を問わず健康的で伸びやかだ。
食している実の効能か、シジルの汗腺からはいつも爽やかな花の薫りがした。
適当な一人を選んでモデル業界に放り込めば、まず間違いなくカリスマとなるだろう。
その極めて優れた風貌は『耳の短い幻想種(エルフ)』とも呼び称される。

兵士達はあえて実弾の使用を控え、麻酔銃や電気網を用いて次々にシジルを生け捕った。
そして母艦に連れ帰り、そこで散々に辱める。
犯すことは勿論やった。
美しい女は何十という兵士に群がられ、中世的な見目の男も男色の兵士に欲望をぶつけられた。
まだあどけない子供でさえ拷問にかけられ、秘石の取り出し方や詳細な所在地について問責された。

しかし、兵士らの一番の関心事は別にある。
祭祀長の孫娘であり、一族の統率者でもあるメアの存在だ。
メアの美しさはシジルの中でも際立っていた。
美しい金髪を風に靡かせ、燃え盛るような紅の瞳で相手を睨み据える。
弓を射る時の、くっきりと線の浮き出る腹筋や太腿は、今まさに命のやり取りをしている兵をさえ見惚れさせた。

メアの美しさに導かれた部隊は、ことごとく森の奥に迷い込み、あるいは落とし穴や蔓の罠に掛かって壊滅する。
弓の腕前も80メートルの距離から葉と葉の間を抜けて相手を狙う驚くべきもので、何十という兵が反撃も敵わず倒された。
しかし彼女は甘い。
彼女に限らず、シジルという部族そのものが慈悲深過ぎる。
遠方から急所を正確に狙い打つ技術を持ちながらも、メアは決して兵士の命を奪わない。
森で迷わせるにせよ、罠に掛けるにせよ、いずれも脱出に時間が掛かる程度のものだ。
それが災いしたのだろう。メアは次々と復帰する兵に八方を包囲され、徐々に追い詰められていく。

やがて小動物の如く木々を跳びまわるメアの脚は、ついに投擲されたワイヤーロープに絡め取られた。
足をもつれさせて背中から地面に落下したメアは、咳き込みながら、それでも上体だけで激しく抵抗する。
兵士達はその抵抗を楽しみながら細い腕を縛り上げ、散々手を焼かされた敵部族のリーダーの服を破り、白く豊かな乳房を露出させて嗤い合った。





メアは今、水を張った水槽に横たわるようにして沈められていた。
身体には何も纏っておらず、手足はX字を描くように水槽脇の穴へはめ込まれているため、
その白い肌や豊かな乳房、金色の繊毛のすべてを見物人に晒すがままになっている。
美しい鼻筋は左右から鼻栓で挟み潰されてもいる。
その状態で水に沈められるのは、どれほどに苦しい事だろう。

「ゴッ……カボッ、ゴガゴボッ……!!」

やがてメアの唇から大量の泡が吐き出され、赤い瞳が見開かれる。
それを確認し、水槽脇に立つ尋問官が操作盤に三つあるレバーの左端を引いた。
すると駆動音と共に水槽の底の一部が盛り上がり、メアの肩より上が水面上に押し上げられる。
「かはっ……!!あ、ゲボっ、えほっ!!!はあっ、はっ、はっ、はっ、はっ……」
メアは激しく咳き込み、酸欠時の浅く短い呼吸を繰り返す。
瞳は前方の一点を凝視し、頬は紅潮して相当に苦しそうだ。

「さて、そろそろ答える気になったか?
 あの飴色の石を地下から掘り出すには、どのようにすればいい。
 ……シラを切っても無駄だぞ、知っているのだろう?
 貴様らがお守りと称して胸に下げている分だけでも、かなりの量を採掘している筈だ」

レバーを握る尋問官が、メアの掛けていた秘石の首飾りを弄びながら問う。
メアはそちらに紅の瞳を向けて口を開いた。

「……何度も言わせるな、野蛮な侵略者め。
 その『アクィト』は森の力の結晶、森に受け入れられた者だけが力を取り出せるものだ。
 貴様らのように自然を踏みつけ虐げる者には無理だと言っている」

メアがそう答えると、尋問官は鼻白みながらレバーを押し込んだ。
水槽の底が沈み、メアの頭も水面の下に入り込む。
「ごばっ……!!」
口から気泡を吐き出しながら、メアは瞳を固く閉じて苦しみ悶えた。

「話の通じん連中だ。私が聞きたいのは、そんな一銭にもならん精神論ではない。
 貴様の口に水が入り、肺にまで流れ込んで苦しめる、そうした物理的なアプローチだ」

尋問官はあくまで冷徹な瞳でメアを観察する。
他の男は、水中で身悶える白い裸体を下卑た視線で舐め回している。

「へっ、いいカラダしてやがんぜ、マジにエルフみてぇだな」
「締まった二の腕に、窪んだ腋の下、でけぇオッパイ、肋骨、割れた腹筋、真ん中の盛り上がりまくった太腿。
 いやぁー、どこに眼ぇやっても最高だぜ。陣中見舞いに来たチアガールどもの比じゃねぇや」
「すげぇ苦しみようだな。森ン中じゃ麻酔銃も当たらねぇほどすばしっこく跳び回ってて、体力あったのによ」
「奴らの生息地は酸素濃度が高いからな。逆に酸素のない場所じゃ俺達以上にきついって事さ」

様々な意見が交わされる中で、尋問官は操作盤中央のレバーに指をかけた。
レバーを引くと、今度は水槽の中央部が盛り上がり、メアの身体がブリッジをするように持ち上がっていく。
「ゴボッ、ガボボボッ……!!」
よりつらい姿勢となり、メアの苦悶も増していく。
「ひょお、たまんねぇ!!」
逆に男達は、反り返った事でいよいよ力の入る膝頭や大臀部に、惚れ惚れしたような口笛を送る。
それは確かに、力強く、艶かしく、そして何より獲物の必死さを窺わせる妙に性的なものだった。
水面へ持ち上がったやわらかな乳房や、水を滴らせる下腹部の繊毛。
そしてその下に薄っすらと見える、色素沈着もわずかな桜色の切れ目。
それらもまた戦帰りの男達を刺激する。

「どうだ、吐くか」
操作盤から手を離した尋問官が、メアの髪を掴んで顔を上げさせる。
メアはすでに焦点も合っておらず、血の気の引いた紫色の唇をしていたが、
紅色の瞳でかろうじて男に侮蔑の視線を寄越した。
「……そうか」
尋問官は冷たい表情のままメアの髪を掴み直し、首元に手を掛けて深く水に沈める。
「………………!!!」
メアの口がつらそうに開き、両脚が痙攣を始める。
尋問官は終始表情を変えぬままメアの頭を沈め、限界が来れば水面上へ出し、また沈める。
メアが自白の意思を見せるまで。

だが気高いシジルのリーダーは折れなかった。
幾度もその艶かしい身体を痙攣させ、やがては繁みの奥から小便を漏らして水槽に水を濁らせて、白目を剥いたまま気絶してしまう。
当然気絶した後も乳首を捻り上げて覚醒させ、再び水責めを行ったが、
またすぐに気絶してしまうために中断せざるを得なかった。
「……強情なことだ」
尋問官は溜息をつく。ほんの僅かだけ、嬉しげに。





美しいメアは当然の如く、男達の慰み者になった。
はじめは森で捕らわれた時だ。
両の脹脛をワイヤーロープで括りつけられたまま、腰から下の衣類をナイフで引き裂かれた。
「やめろ!!やめろぉっ!!!」
メアの抵抗たるやそれは凄まじく、腕を縛るまでに7人の男が顔や腕を引っ掛かれて血を流した。
しかし男軍人数人の体重でもって押さえつけ、両腿を胸につけるようにさせて挿入を果たした時、
メアからも同じく血が流れる。
皮膚からではない、結合したからだの奥から。

「うへぇ、おいおい……んな成熟したエロい身体してやがって、処女かよぉ!」
「シジルの女は生涯夫一人にのみ操を立て、婚礼まで性行為はおろかキスさえしない……だっけか?
 んな時代遅れも甚だしい考えをマジで守ってやがるとはなぁ。
 どうだシジルのリーダーちゃんよ、そいつのぶっといのが奥まで入り込んでんぜ!?
 休みのたびスロットで給料スッちまうボンクラだが、こんなのでも夫にするか?ハハハッ!!!」

兵士達から笑い者にされながら、メアは鋭い瞳で男達を睨み上げる。
「貴様ら……一体どこまで心が淀みきっている!
 そこで嗤っている貴様、深い窪みに落ちた時、脱出用の蔓を切って垂らしてやったのを忘れたか!
 そこの貴様も、貴様もだ!!わざと急所を外したのを、気付かなかった訳でもあるまい!!
 その仕打ちがこれなのかっ!!」
牙を剥き出すような相貌は並ならぬ迫力があった。野生の動物でも足を止めるだろう。
しかし、すでに挿入を果たしている男達にはすでに効果がない。
目の前にいるのは勇猛たる部族の女戦士ではない、破瓜を経験したばかりの娘だ。

「おお、いい具合だ。そうか命を救って下すったか、そりゃあ有難うよ。
 お返しにマイフェア・レディに育て上げてやるぜ!!」
挿入した男は容赦なく腰を遣い、メアの引き締まった身体に圧し掛かるようにして苦悶させる。
その1人目がしっかりと膣内で果てると、次の2人目はメアを樹に寄りかかるようにして背後から犯した。
続く3人目は、腕を別の1人が掴みあげての騎乗位で。

やがて切り裂かれたボロ布のような民族服を纏い、精液で汚れたメアは母艦へと連れ込まれる。
シャワーで身を清められ、カプセルの一つに拘束された後、再び艦内の男達によって陵辱が始まる。

男達は我先にとカプセルに入り込み、メアの脚の拘束具を押し広げる事で大股を開かせて挿入する。
森林での戦いを経験した者なら、誰もが一度は辛酸を舐めさせられた相手だ。
またそれ以上に、木々の上を跳びまわるその肢体に耐え難い興奮を覚えた相手でもある。
ゆえに次々とメアは襲われた。
鍛え上げられた肉体の眺めや、食い千切られるような締め付けも逸品ながら、
気丈な赤い瞳がやがて涙と共に閉じられ、口の中でかすかに謝罪の言葉を紡ぐ様も貞淑で良い。

拘束されてからしばしメアは犯し続けられたが、尋問と称する水責めが終わった後にはさらに容赦がなくなる。
意識が朦朧としているメアの腕だけを拘束し、口も使用しての乱交が続けられた。
猛りきった男の物を喉へと押し込まれ、歯を立てる余力もないまま口から鼻から大量の水を掻き出されるメア。
男の陰毛の辺りを薄めでぼんやりと眺める表情はなんともいやらしく、男達は次々と精を浴びせかけた。
やがて胸元までが白濁した粘つく糸に覆われた頃、ようやくに彼女は解放される。
くっぱりと開ききった赤い割れ目から、止め処なく人間の欲望を吐き出して。





「ねぇ。例のシジルの女リーダーって、どうなってんの?」
尋問官用に設けられた休憩室で、少年がコーヒーを注ぎながら傍らの男に尋ねた。
少年……と呼ぶべきかは定かではない。
この軍の侵略拠点と言える艦隊に、本当の子供が乗り込める筈もないからだ。
しかし彼の背丈はせいぜいが中学生程度にしかなく、光を受けて煌めく瞳も少年そのものだ。
もっとも純真な少年とは明らかに違う、三白眼で相手を蔑むような生意気な類だが。
「む……」
少年から受け取ったコーヒーを一口啜り、男は僅かに眉を顰めてカップを置く。
少年はあははと笑いながら塩の瓶を投げ捨てた。

「……あのシジルの雌か。肉体的苦痛への耐性は見上げたものだ。
 痛覚シュミレータで、十指全てへの爪剥ぎ、乳首・陰核へのピアシング及び天井吊り、
 全身二十四箇所への焼き鏝責めとやってはみたが、まるで折れる様子がない」
男はさして興味も無さそうに語る。
この無表情な男は、メアに淡々と水責めを課していた男だ。
少年がふーん、と呟いた。
「痛覚シュミレータって、あの頭にメットみたいなの被せて擬似体験させるオモチャ?
 あれつまんないよね、せっかくの若い女相手でも血と鉄の匂いがしないし」
「少なくとも失血死は起こらない。お前は少し殺りすぎだ」
男はそう言いながら立ち上がり、モニターに向かって歩き出した。
「そちらこそ、尋問はどうなっている」
男が少年の担当している捕虜達の様子を尋ねると、少年は笑みを作る。

「こっちはまあまあ愉しいよ。やっぱあいつら、仲間意識が強いよね。
 仲間を殺すぞって脅すと、プライドの高い瞳ギラつかせながら何でもやるよ。
 まーあっけなさすぎて、無抵抗な相手を撃ち殺すみたいな虚しさがあるけどさ」
「そうだな。自白剤の使用や直接的な脅しなど、素人でも出来る。尋問としての品がない」
少年の言葉に、男は頷きながらモニターを操作した。
モニターに無機質な部屋の一つが映し出される。

そこには、胸元の大きく開いたエナメルスーツで身体の線を浮き彫りにされたメアがいた。
腕は後ろ手にスーツの中へ組み込まれ、首へ繋がれたワイヤーが高い位置で繋がれている為に、
直立の姿勢以外をとれずにいるようだ。
さらに異様な事には、メアの鼻から下は酸素マスクのような物で覆われ、紫の煙と吐息の水分で曇っている。
そしてメアの顔は、まるで発情しきったかのように赤らんで汗を掻いていた。
「……ははあん、これって」
「ああ、“ガス”を吸わせている。もう一時間ほどになるか。
 すでに思考能力は殆ど奪われ、体中が雌の性感反応を示し、膣分泌液が足下まで伝い落ちている頃だろう。
 あのまま夜まで放置する。夜が更けてトレーニング帰りの兵士どもにあの部屋を開放すれば……」
「なーるほど、そりゃあひどい事になりそうだ。
 あれ使った後って脳が完全にバカになってるから、普通のセックスでも出る声がすんごいんだよね。
 シジルの女の肺なら何kHzまで出るのか、記録させとこーっと」
男は、一人は無表情に、一人は目を煌めかせながら、スーツの中で艶かしく腰を蠢かすメアを観察し続けた。

やがて男達が映像内に現れてからも、2人は淡々と語り合う。
いかにしてメアを陥落させるか。いかにして極上の獲物への尋問を味わい尽くすかを。





「ハイ。調子はどう、お姉さん」
少年が部屋の入り口の照明をつけ、隅で這い蹲るメアに呼びかけた。
メアは今、アームバインダーと呼ばれる拘束具で後ろ手に拘束され、膝頭と頭で這う窮屈な姿勢を取らされている。
その膝裏にはチタン製の棒が噛まされ、その両端からの縄が首を跨いでいるために立ち上がる事も叶わない。
口にはボールギャグを噛まされ、秘部と、さらには肛門でもバイヴレーターが唸りを上げる。
メアはその状態で、暗い部屋に一人取り残されていたのだった。
「うわ、なにこの部屋、暑いねぇ」
少年はシャツの首元を仰ぐ。
部屋内はサウナのような温度に設定されており、ダメ押しに不快感を煽っている。
事実、メアの白い身体は一面汗で塗れ光り、ほのかに酸い花の香りを立ち昇らせていた。

「かなり堪えたんじゃなぁい?」
少年は人懐こい笑みでメアの口元に屈み込み、ボールギャグから滴る涎を指につけて舐め取った。
「……うん、なかなか」
ぼんやりとしていたメアの瞳が、それを見て不愉快そうに少年を睨み上げる。
「なに、お姉さん」
少年はメアの首裏に手を差し入れ、ギャグのベルトを外す。
途端にメアは涎塗れの口枷を吐き出した。
「はっ……はぁっ……い、いつまでこのような事を続けるつもりだ……。
 殺すのならば早くした方が良いぞ。貴様らは知らないのだ、我らの結束の堅さを、我らが神の力を」
メアが睨み上げながら告げる言葉を、少年は嬉しそうに聞いている。

「そっかそっか、もし神の助けなんてあるなら見てみたいよ。嫌味じゃなくて、本気でね。
 アンタ達の神様はぁ、祭祀長の孫娘であんなに頑張って戦ったアンタを、どこまで堕とせば怒るのかなぁ」
少年はそう告げながら、本当に嬉しげに部屋の隅からあるものを引きずり出す。
酸素マスクのような呼吸器、巨大なタンク。
「うっ!」
メアの赤い瞳が見開かれ、奥歯が音を立てる。
「知ってるよねぇ、これ。お姉さんはもう何回も吸引してるんだから……ほーら、いくよぉ」
少年は笑いながらメアにマスクを取り付け、タンクのスイッチを入れる。
シュウッという音で紫の煙がパイプを通り、マスクの中へと舞い上がっていく。
「ンン!!!ンムウウウンンっ!!!!!」
メアは何か抗議めいた悲鳴を上げるが、すぐに声にもならなくなる。
頬が紅潮しはじめ、眼が酩酊したかのように鋭さを失い、額から耳後ろから、珠のような汗が流れ始める。

「あはっ、やっぱこれ凄いねぇ、乳首がムクムク立ち上がってきてる」
少年はメアの変化を観察しながら、メアの足の裏に手を回して膣用のバイヴレーターを前後させる。
「うあ、あっ!!」
「同じ場所で震えるばっかりじゃ、いい加減感覚も麻痺しちゃってるでしょ。
 これでゆっくりゆっくり、やわらかーく子宮を突いてあげる。膣壁のツブツブも刺激しながらね。
 ほーら、凄いでしょこの角度。愛液が手の平まで溢れてきてる。
 スポットも捏ね回して……あはは、腰が跳ねたね。逝っちゃったの、お姉さん?
 何日か前までは処女だったのにねぇ。今じゃもう殆ど一日中、トロトロになりっぱなしだね。
 ここまでになってもまだ観てるだけなんて、アンタらの神様も罪な人だね。ほら、またビクってなってるよ」

少年は巧みに言葉責めを織り交ぜながら、メアの顔を覗きこんで膣を責め立てる。
メアはその言葉に時に眉を吊り上げ、時に瞳を惑わせながら、成す術もなく蜜を垂らし続けていた。





「……やはりあの雌は、自分がいくら痛めつけられた所で口を割らんか」
尋問官の男が溜息を吐いた。
「多分、死ぬまでね」
同じく少年が肩を竦める。
「不本意だろうけど……仲間の情報でも使ったほうがよさそうだ」
少年の言葉に、男が渋々と頷く。


その日メアは、暗い部屋に連れ込まれ、巨大なモニターの前にある椅子へ身体を拘束された。
頭には顔の前面の開いたメットのような物が被せられる。
尋問官はそのメットの目に近い部分の端子を操作し、メアの瞼を上下から割り開かせた。
「く!」
メアは目を見開く状態を強制させられ、さすがに不安を顔に表す。
「対象を眠らせない為に開発された拷問椅子だ。
 瞳は開き放しになるが、お前の普段の瞬きと同ペースで点滴がなされるから心配はいらん」
男は淡々と告げながら、巨大なモニターに映像を映し出す。

母艦の尋問室へ至る廊下を、撮影者目線で映し出した記録映像だ。

「この尋問の目的は、お前を眠らせない事ではなく、お前の同胞が受けた仕打ちを教える事にある。
 何時間分になるのか確かめては居ない、お前の言う『大切な家族』の映像だ……見逃すなよ」
男はそう言って微かに口元を吊り上げた。
この無表情な男が笑いを示すほどの享楽。メアの喉がゴクリと鳴る。
隣では少年がさも嬉しそうに笑っていた。

そして始まる、地獄のような映像。
それは彼女の仲間1人1人についてのドキュメンタリーだった。
森の中で拘束され、この母艦に連れ込まれて慰み者にされていく映像。
始めの方に捕らえられたシジルは、異種族として研究の対象にされたらしい。
物々しい装備で銃を構えた兵士達に取り囲まれたまま、様々な生態の調査をされていく。

男女一人ずつを“つがい”とし、地球人達の見守る前で望まぬ性交を強要するケースもあった。
恐怖のあまり萎えている男を殺させないため、震えながら口での奉仕を行う女。
やがて勃起に至り、尻に銃口を押し付けられながら挿入する男。
女はまだ幼さの残る若い娘であったため、当然に経験などなかった。
ヘコヘコと腰を遣う男に純潔を散らされ、それでも娘は銃を前に快感を得ていると宣言させられる。
兵士達はその『交尾』を指差して嘲笑った。

痛みを訴える娘に同情した性交をやめると、男女は共に“ガス”を吸引させられた。
瞳の様子が変わるほどに吸引を受けた後、再びまぐわらされた男女はまさしく獣のようで、
その『発情期』がまた兵士達の物笑いの種となる。
やがて男女は両手首と腰を互いの身体に結わえ付けられたまま、狭い個室に閉じ込められた。
絶え間なく続く生々しい喘ぎの果てに、扉の奥から身体の変調を訴える男女の叫びが響いても、
すでに飽きた兵士は誰一人として構う事はなかった。

また別の男は、シジルの雄の身体能力を調べるという名目でトレーニングマシンで酷使され、昏倒した。
また別の女は、異種族の排泄の様子を観察するといって浣腸を施され、
座り込んだまま片脚を機械に吊り上げられる屈辱的な格好で脱糞を衆目に晒された。

やがて実験の末、シジルも人間とさして変わりないという事が証明されると、
娘達は仲間を人質に屈辱的な奉仕を強要されるようになった。
ソープ嬢の真似事を教え込まれ、尋問官の尻の穴から会陰部、玉袋までを唾液に塗れさせて口腔奉仕を行う。
三日ぶりの食事を賭け、女同士で涙ながらに痩せた身体を殴り合い、教わった関節技で手足を破壊する……。

終わりがないのではと思えるほどに長々と続く、仲間達の悲劇の記録。
尋問官達は早々に去り、メアは暗い部屋で、たった一人でその映像を見続けた。
「やめろ……やめろ、やめろ、もうやめろぉぉっ!!
 お願いだ、誰か、誰かネーウィを助けてくれ!まだ小さな子供なんだ、死んでしまう!!!」
メアは涙を流し、恐怖に震え、怒りに叫び続けた。
極度の興奮状態で嘔吐や失禁が起きても、映像が止まる事はなく、メアの瞳が閉じられる事もない。


何時間が経っただろう、何十時間が経っただろう。
いや、何日目になっただろうか。
尋問官が再び部屋へ踏み入れた時、メアは憔悴しきっていた。
痙攣するメアの肩に手を置き、尋問官が口を開く。
「最後だ」
彼はそう言い、新たな映像を流し始める。
濃く隈の張った瞳でそれを眺めたメアは、驚異に瞳孔を収縮させる。

「…………ナァト…………?」

そのメアの反応に、尋問官は満足げに顎を撫でた。
映像の中には、中世的な風貌をした線の細い男が映っている。
彼こそはメアと契りを交わした相手に違いない。
まだシジルの民に対して懐柔作戦を取っていた頃、メアがナァトと湖岸で楽しげに話し込む姿が頻繁に目撃されていた。
ナァトは器用な手先で花飾りを編んでメアの頭に乗せ、メアはひととき肩書きを忘れて幸せそうにはにかんだ。
その相手が今、映像の中にいる。
母艦の中でも最底辺の薄汚れた部屋の中に跪き、両の手首を天井からの二本の鎖に繋がれて。

『……このような事をしても、あなた達は何も得られはしません。私達の思想を理解しなければ。
 あなた達が精神論と蔑む部分こそ、あの石から力を譲り受ける資格なのです。
 科学を万能と信じる曇った視点では、人智を超えたものを理解することなどできません』

映像の中のナァトは、唇の端から血を流しながら、それでもなお穏やかな口調で男達に告げる。
その瞳はピンクに近い穏やかな紅色で、他のシジルともまた違う神々しさを秘めていた。
ほんの少し癖のある金髪が首元まで垂れ下がり、細い身体の線も相まって実に中世的な魅力を醸し出している。
それに惹かれたのだろうか。
跪くナァトの周りでは、筋肉質な男達が隆々と股間を勃起させている。
「……や、やめ……!……まさか……」
メアが椅子に拘束されたまま震え始める。
『もういい、犯せ。ここにいる人間で夜まで犯し抜け!』
尋問官の号令で、男達がナァトのほっそりとした身体を背後から掴む。
『うっ……!!』
ナァトはさすがに顔を苦しげに歪め、呻き声を上げ始めた。

「…………こ、こんな…………。ナァト、ナァトッ!!!」
メアが涙を流し始めていた。点滴のこぼれる雫ではない、心の底が張り裂けそうな痛みからの雫。
ナァトの犯される映像は延々と続いていた。
女と見紛うような細身が揺れ、大柄な男に深々と尻穴を穿たれて悲痛な声を漏らす。
メアはその様子を前にただ叫び、豊かな乳房を揺らして言葉にもならない叫びを上げるしかない。
「煩いぞ」
尋問官がそのメアの口に酸素マスクを固定する。すぐに紫のガスが充ち、メアに悲鳴を上げさせた。
同時に少年がメアの脚の間に指をねじ入れる。

「あれぇ、お姉さん濡れちゃってるねぇ。仲間が酷いことされてるの観て興奮しちゃった?
 それとも好きな人がお尻犯されてるのを観てかなぁ、どっちにしても変態だねぇ」
少年はそう言いながら指を蠢かす。
「あ、あう……あ゛……」
メアは紫のガスに脳を犯されながら、ガクガクと痙攣を始めた。
「あははっ、凄い凄い。やっぱ丸四日寝てない上でガスを吸っちゃあひとたまりもないか。
 信じてたものが何もかも壊れてたって知って、精神的にも相当キてるだろうしね」
少年が嬉しそうに言いながら、蜜に塗れた指を引き抜く。
少年の視線を受け、男も頷いて、尻穴から血を流してぐったりとするナァトの映像を消し去った。

「さて、仕上げだ」





『…………聴こえるかな、シジルの雌犬よ』
尋問官の声が、メアの頭部に嵌められたメットから響く。

メアはやはり椅子に拘束されていた。
今度は先ほどの椅子とは違い、産婦人科の分娩台を思わせる椅子だ。
事実メアはこれから子を産むかのように、両脚を大きく広げた格好で拘束されていた。
その本来子を産むべき場所には、パイプに繋がった物々しいマシンバイブが入り込んで秘唇を拡げている。
またその上方では、小豆のように充血し肥大化した陰核にキャップが取り付けられ、
壁の電子盤とチューブで繋がって妖しく発光している。
さらには尻穴にも太いチューブが入り込み、黄色いゼリー状の何かが入った容器に繋がっている。

また、部屋自体も何とも言えず不安を煽るものだ。
まるで脱出艇さながらの、椅子を中心とした圧迫感を感じるほどに狭い部屋。
室内は機器の発するライトのみが光源で薄暗く、数字の並ぶ様々な計器と電子音に満ちている。
文化人であっても解剖されるのではと恐怖に駆られるだろうが、文明を知らないメアにとっては尚更だろう。

『それがお前に贈る、おそらくは最期の責めになるだろう。
 すでにお前の血中には、もはや払拭しきれないレベルで“ガス”が溶け込んでいる。
 前の部屋で、ガスを吸引した途端にお前の身体が痙攣を起こしただろう、あれが末期状態だ。
 その上で、今性器に取り付けられている器具が、お前を終わりのない絶頂状態へと引きずり込む。
 ……ひとつずつ行こうか』

尋問官の声がそう告げると共に、陰核のキャップが煌々と光りはじめる。
「ぐっ!?」
メアの身体が一瞬強張り、やがて腰をいやらしく上下に蠢かし始める。
時おりびくりと痙攣しているのは絶頂か。
「あ、あ、あぐ……っゥ!!あふっぅううああ……!!!」
メアは必死に唇を噛んで耐えようとするが、男を誘うような腰の動きは止まらない。

『耐え切れまい。局部周辺が痺れるような快感に覆われている筈だ。
 吸引具が陰核を吸い上げて根元までを緊張させ、随所を刺激している。
 陰核亀頭の下部では痛覚を感じない程度のごく微小な針が周囲から無数に突き刺され、
 中腹から先端を潤滑剤を含んだ刷毛状のブラシが三層立てで撫でていく。
 さらには陰核の根に当たる部分にも微細な針が差し込まれ、直接電気信号を送ってもいるのだからな』
 
男はそう解説を加え、理屈を理解してますます陰核の快感に翻弄されるメアを眺める。
そして数分後、ようやく陰核のキャップが発光を弱めた。

『では次だ』
再び男の声がし、次は肛門に入り込んだチューブがごぼりと音を立てる。
「ひっ!?」
メアが目を見開いた。
『肛門に何かが入り込んでくる感覚は初めてだろう。
 その黄色いゼリーはほどよい質感と共に、腸の蠕動を促す成分が含まれている。
 それをたっぷりと尻の穴へと注ぎ込む……直腸部分を満たし、十二指腸に至るまでな。
 その便意たるや凄まじいものだ』
男が告げる通り、メアは瞳を左右に泳がせて未知の感覚に惑っている。

「や、やめろ……もう入れるな!もう、で、でるっ……出てしまう!!!」
『お前の同胞達も、何人も同じように腸を満たされ、兵士どもの前で醜態を晒していたな。
 ……そろそろ頃合いか』
男は淡々と語り、次の瞬間、チューブが妙な音を立てる。
直後、メアの腸へ満ちに満ちたゼリーが、腸を激しく蠢かしながら吸い込まれ始めた。
「くああああううっ!!!?」
メアの眉が顰められ、おぞましいその感覚に身震いする。
「……っあ、あっ……は……っは」
しかし数秒をかけての吸引が終わった後には、一転して荒い息を吐いて腰を痙攣させた。
『おや、たったこれだけで達してしまったのか。
 本来これは軟便を一気に排出する快感を刷り込み、少しずつ気分を昂ぶらせる物だが
 ……思った以上に肛門性感が敏感なのかもしれんな。
 何にせよ、それが肛門の快感だ。お前の恋人も犯されていた場所のな。
 幾度となく繰り返す内に、あの男がどういう感覚だったのかに想いを馳せるがいい』
男はそう言って肛門部分のチューブの動きを止めた。

『……そして、これが三箇所目だ』
男の声がすると共に、ついに蕩けきっていた場所、秘唇の中に埋められた器具が唸りを上げ始める。


「ああああっ!!!ああっぐ、ああ、うあああああうっぐうう!!!!!!」

数分後、メアは絶叫を繰り返していた。
桜色の唇が開き、端から涎の糸を垂らす。開かれた内腿に深く筋が張る。
そして脚の中心では、陰唇からはみ出た機械の末端が激しく振動を繰り返し、
内部からくっちゃくっちゃと何ともいえない音を立てていた。

『どうだ、堪らないだろう。今までに採取したデータを元に、
 お前の膣にとって最も心地のよい刺激をするようプログラムが組んである。
 陰唇の刺激方法、侵入角度、膣壁への圧迫度、子宮口への突き込み。
 全てがお前の最も嫌がる、致命的なまでに効果的な刺激となっているはずだ』

その言葉通り、メアの引き締まった身体は台の上で何度も跳ね回る。

「ああああ、ぐ、くあああんああっ!!!あああやめろ、そこは、そこだけはぁっ!!!!
 ふああああ、な、なんだ、これ、奥の方が焼ける様に熱いっ……!!!
 ど、どんどん蜜が溢れて、ぞわぞわしたものがつま先から頭の奥まで……っ
 あああ、またっ……!!くあッ、くそ、またあああぁっ!!!!
 奥がグズグズになって、そんなに強引に押し込まれると、頭がジンとする……っ!!!!
 ゃ、休ませて、くれっ……さっきから、何度も、何度も身体の中痺れてて……
 こ、ここでやすまないと……あ、あたまが、どうか……んん、くふぅあああああああっっ!!!!!!」

メアは大波の如く襲い来る膣性感に溺れ、相好を歪ませながら絶叫し続ける。
その最中に陰核のキャップが再び赤く発光し始め、メアの嬌声をいよいよ獣じみたものに変えていく。

「あ、あ、来る、また来る、んんくぁあああああおおおぉおおおお゛っ!!!!
 や、やめろ、あああああ゛あ゛どめろおぉぉぉおっ!!!!」

苦しみもがくように咆哮を続け、蜜を噴きこぼすメア。

『おやおや、凄いものだ。……初めに伝えた通り、おそらくはこれが最期だ。
 今実演してみせた三箇所の責め具が、ある時には一つ、ある時には三つ同時にお前を愛する。
 その刺激の方法は実に様々だ。人は単調な責めが続くと慣れてしまうからね。
 機械自体も優秀だが、今のお前は“ガス”で常時発情の頂にいる状態。
 ともすれば快感に頭が焼き切れて本物の獣と成り果てる事も十二分に考えられる。
 我々に何か情報をもたらす気になったならば、いつでも発言しなさい。
 私達はモニターの前で、紅茶でも嗜みながら君の事を見守り続けているのだから……』

尋問官の男はそう言い、そこで初めて笑い声を漏らす。
快感の荒波に溺れるメアには、遠いそれが、まるで死神の笑い声のようにさえ聴こえるのだった。


                              END
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桐羽落涙

※スカトロ注意


暴力団『桐羽組』の頭はと問われれば、多くの人間が現組長の名を上げる。
しかし実情はそうではない。
桐羽組を実際に指導しているのは、先代組長・桐羽平治の妻である雪美(ゆきみ)だ。

雪美は国立卒のエリートであり、故あってホステスをしていた所で桐羽平治と知り合った。
巷でも噂の立つほど人気の嬢であったという。
椿の葉のようにキリリと吊りあがった、狼を思わせる瞳。
細く凛々しい眉。すっと通った鼻筋に、薄い唇。シャープな輪郭。
どれ一つとして凡庸な部分のない顔の造りは、まるで磨き上げた氷を思わせ、それゆえに男達を魅了した。

彼女は普段やや冷めた態度で客をもてなしつつも、ここぞという場面では相手を思いやる言葉を漏らす。
男は皆がその暖かな一言に落とされた。職業柄女遊びに慣れた桐羽平治でさえも。
その言葉が心に響くのは、雪美が真に情の深い性格をしているがためだろう。
彼女が桐羽平治と求めあったのは、地位や金を目当てにしてではない。
ただ彼の夢を聞き、それに共感し、生涯をかけて支えてゆきたいと覚悟した上での事だった。
平治と雪美の初夜は、抱き合ったまま、口づけを交わし合ったままで三日三晩に渡って続けられたというから、
その愛の深さも窺い知れようというものだ。

また雪美は、その度胸も並ではない。
桐羽組にとって過去最大の苦境とされる黒綿会との抗争に於いて、
雪美は黒綿会の鉄砲玉に七首で脇腹を刺され、しかし血に塗れる中でなお黒綿会の幹部に向けて啖呵を切ってみせた。
その命を賭した気迫には誰もが感服し、黒綿会に圧倒的有利な状況であったにも関わらず、
即時痛み分けでの手打ちが為されたと伝わっている。

誰よりも桐羽平治という男を理解し、目下への情が深く、度胸もある。
当然の如くに組員からの人望も篤い。
平治が病に死した時、次期組長を襲名した男は、姉御と慕っていたこの雪美に自ら後見役を願い出た。
こうして若干28の若き極道の妻は、桐羽組の実質的な女親分となったのだった。
桐羽組は雪美の指導の下、地域に密着しての活動で着実に勢力を伸ばし、今や地方有数の勢力を有する組織だ。
その桐羽組の長である雪美を我が物に、と考える敵対組織は多かれど、実際に手を出せる組織は存在しない。

……表に顔の知れた組織ならば。
だがその逆、どこかの組織が秘密裏に傘下とする不良団体となると話は別だ。
彼ら・彼女らに怖いものはない。現実を深く知らないゆえに恐怖心も薄い。
魅力的な報酬をちらつかせて命じれば、本職であれば怖気づくような大物でさえ易々と攫ってしまいうる。
新興レディースチーム『朱蛇(しゅじゃ)』が雪美を攫ったのも、同様の理由からだろう。
朱蛇のメンバーは、雪美が贔屓にしている銭湯の女湯で彼女を囲み、スタンガンで昏倒させた後に部活用の荷物袋に詰めて運び出す。
外にいた桐羽組護衛がそれに気づいたのは、脅された番頭が恐る恐る打ち明けた、数十分も後のことだった。



雪美は、市の中心部から遥か離れた山間にあるラブホテルに監禁されていた。
ホテルとはいえ廃墟も同然で、オーナーが自殺して以来は恐ろしがって取り壊されもせずにいる物件だ。
その一室で、雪美の身体は椅子に縛り付けられていた。
手は後ろで背もたれに括り付けられ、両脚は大きく開かされたまま肘掛けに括り付けられ、
さらには彼女の胸をくびり出すように縄が掛けられてもいる。
当然ながら服などは一切纏っておらず、その脚の間からは秘匿すべき部分が晒されるがままとなっていた。
それだけではない。
豊かな乳房の先に息づく桜色の蕾は、どちらも鈴の下がった洗濯バサミで挟み潰されている。
さらには陰核にも電動式のマッサージ器が宛がわれ、その下の花園から蜜を吐き零させてもいた。

『朱蛇』のメンバー達は、その雪美のあられもない姿を笑い声と共にカメラに収めていく。
雪美の身体が幾度もフラッシュで影を作る。
その裸体は、顔同様に無駄なく絞られて美しく、スポーティな印象を受けた。
肌はくすみのない桜色で見惚れるばかりだが、右の脇腹にだけは縫い傷があり、噂が真実であったのだと知らしめる。

「ふぅん、さすがはあの桐羽組の女ね。
 そんなに脚おっぴろげてオマンコのドアップ写真撮られてるのに、涼しい顔のままなんて」

朱蛇のリーダーである亜衣が、雪美の割れ目へと指を沈めながら囁いた。
そして中でクチュクチュと音をさせた後、その指をゆっくりと引き抜いてカメラに晒す。
人差し指、中指、薬指。広げられたその3本の指の間に、艶かしい蜜が糸を引いて滴り落ちる。
少女達が嘲笑う中で、雪美は眉間に皺を寄せた。

「いい加減にしな、いつまでこんな馬鹿げた遊びに付き合わせるつもりだい!
 今頃ウチの連中600人からが、血眼になってアタシを探してる筈さ。見つかったら酷いよ?
 だがここらで止めりゃあ、若気の至りって事で寛容に対処してやっても良いんだ」
あくまで毅然と言い放つ雪美に、亜衣は苛立ちを露わにする。

「ちいっ、しぶとい女ね……いいわ。あんた達、“アレ”をやるよ。準備しなっ!」
亜衣の一言で、少女達が肘掛けと繋がっていた雪美の脚を解放し、床に膝をつかせて新たにまた縄をかけ始めた。
右太腿の膝に近い部分へと縄を回し、首後ろを経由して左腿へ、同じように。
腕から胸にかけての縛めもそのままだ。
その状態で這うような姿勢を取らされると、雪美は後ろ手縛りで尻を掲げた格好から身動きが取れなくなる。

「あーら、お綺麗な落書きね。その無様な格好だとよく見えるわ」
亜衣が雪美の背中を踏みつけて笑う。
その背には、桔梗や野菊など、様々な花の咲き誇る見事な刺青が彫り込まれていた。
「このガキ……!!」
任侠人の誇りである入墨を足蹴にされ、雪美の眼が亜衣を睨み上げる。
亜衣はそれをおかしそうに見下ろしながら、背後の少女達に指で合図した。
薄笑いを浮かべながら雪美の背後に回る少女達。
その手には、イチジクの形をした容器が握られている。
雪美の目が見開かれた。

「今までにもあんたのような跳ねっ返りは随分居たけどね、
 尻を剥いて浣腸をすれば、男も女もヒイヒイ泣いて赦しを乞うたもんよ」
亜衣の言葉が終わると共に、少女の一人が雪美の肛門にイチジクを突き立てた。
そして容赦なく捻り潰し、薬液を腸へと注ぎこむ。
「っ!」
雪美の鋭い瞳が細まった。
「ずいぶん微々たる量でしょう、でもかなり効くわよ?」
亜衣が言う間にも、また別の少女がイチジクの薬液を雪美の肛門へと注ぎ入れる。
二個、三個……四個。

ぐるるるうぅぅうぅ…………。

四個のイチジク溶液を受け入れた雪美の腹部から、早くも異音が鳴り始めた。
「うう……っ」
雪美は尻を掲げて這う姿勢のまま、額に汗を滲ませて苦悶する。

「どう、ウンチしたくて堪らないでしょ。でもそのままじゃあ、その場でぶち撒けるしかない。
 でもあたしだって鬼じゃないからね。奴隷になると誓うなら、トイレに行かせてやるよ」

亜衣は苦悶する雪美にそう言葉を投げた。勝ちを信じきっているという顔だ。
しかし雪美は、なお凛とした瞳のままで嘲る少女達を睨む。

「……本当に馬鹿なガキ共だね。浣腸されて便が出るのは、ただの生理現象だろ!
 そんな物を見られたところで、女の尊厳は穢されやしない!醜いのはそうさせるお前らさ!!
 アタシの排便が見たいのかい?見たいなら見せてやるさ、目ェかっぽじって、とくと見な!!!」

雪美はそう啖呵を切ると、太腿に力を込めて息みはじめた。
そして少女の一人が大慌てで差し出した盥に、勢いよく腹の中の物をぶちまける。
盥に当たる水音と汚らしい音、そしてむうと立ち昇る臭気。
そのおぞましい環境の中でなお、雪美の瞳は力強く亜衣達を睨み上げていた。

「どうだい、お望み通りやってみせたよ?何てこと無かったけどね。
 こんなもんで女を辱める気になってたなんて、ウブなネンネもいいとこさ。
 さぁ、解ったならとっとと縄を解きなッ!」

雪美に強くそう命じられると、少女の数名がびくりと背筋を伸ばした。
また何人かは、自分の方が恥ずかしげに顔を覆ってもいる。
女にとって最大の羞恥であるはずの公開排泄さえ、心の傷たり得ない鋼の精神。
それを前に、彼女達は完全に圧倒されていた。
ただ一人、亜衣を除いて。

「ふ、ふーん、これでも平気なんだ。でもねぇ、アンタ拉致しといて、ここで引き下がっちゃマズイのよ。
 あたしら朱蛇がこの世界で箔をつける為にも、アンタには奴隷になって貰わないとね。
 ……ほらあんた達、ぼーっとしてるんじゃない!!
 攪拌棒と浣腸器、それから『にがり』を持ってきな。こいつが参るまで、アレを耐えさせるんだよ!!」

亜衣が鋭い口調で命じると、少女達は我に返って部屋のクローゼットを物色し始める。
一人が脱脂綿の巻きつけられた棒を探し出し、亜衣に手渡す。
亜衣はそれに、鞄から取り出したローションボトルの中身を含ませて雪美の肛門へと押し当てた。
桜色のきゅっと窄まった肛門へ、脱脂綿に巻かれた棒が入り込んでいく。
「あくぐっ……!!」
さすがの雪美も、これには顔を歪ませて苦痛を露わにした。
亜衣は棒を根元まで押し込むと、そのままローションを棒へ伝わせながら前後させ、腸へと塗りこんでいく。

「ほーら、お尻の穴にずっぷり入ってるわよ。嬉しいでしょ?」
亜衣はそう解説を加えながら棒を抜き差しし、やがて勢いよく引きずり出す。
「うーわうわ」
どこか嬉しげに声をあげ、雪美の視界へ入る場所に棒を晒す亜衣。
白い脱脂綿の巻かれた棒には、その各所に茶色い汚れがこびり付いていた。

「腸に残ってるうんちを掻き出しちゃったみたい。ごめんね、気持ちよかったでしょ」
亜衣は不可思議な謝罪をしつつ、雪美の顔を覗きこむ。
「……ガキだね、本当に」
雪美は忌々しそうに呟いた。
そうこうしている内に、少女達がガラスの浣腸器と白い粉の入った袋を抱えて戻ってくる。
盥にも新たに水が汲まれ、そこに袋の中身が溶かされた。

「あの白い粉はねぇ、『にがり』……塩化マグネシウムよ。
 塩化マグネシウムを溶かした水はドナン浣腸液っていって、即効性があるから昔は医者がよく使ったの。
 ただあんまりにも患者が苦しみ悶えるもんだから、今では製造自体廃止されちゃった。
 解る?今から自分に注がれる液が、どのくらいキッツイか……」

亜衣は怪しげな笑みを浮かべて浣腸器に水を吸い上げ、一度吐き出させて空気を追い出す。
そして再度吸い上げると、雪美のローションに照り光る肛門へと押し込んだ。
ちゅうっという音で、薬液が少しずつ腸へと流し込まれていく。
「さっきのグリセリンもじわーっと効いてくるけど、これは本当に即効性が高いわよ。
 普通なら200ccぐらいで止めるところだけど、強情なアンタには特別に400まで入れてあげる」
亜衣がそう言いながら薬液を注ぎ終え、浣腸器を抜き去った時だ。

「あぐうっ!!」
苦しげな呻きと共に、雪美の腰が跳ね上がった。
「ふふふ、早い早い。ブランデーを直呑みしたみたいに、腸がカアッと熱く燃え上がってるんでしょ」
亜衣が雪美の尻肉を撫でながら問うた。
だが雪美はそれに反応する余裕など無く、やがてその肛門は緩み、便と混じった薬液をぼとぼとと零しはじめる。
「あれ、もう限界なんだ?さっきあんなに啖呵切った癖に、だらしないねぇ」
亜衣に謗られるも、雪美の肛門はますます開き、外に向けてめくり開かれるばかりだ。

「ま、ドナンを入れられたら誰だって、勝手に肛門が開いて駄々漏れになっちゃうみたいだけどね。
 しょうがないなぁ、栓したげるよ」
亜衣はそう言い、鞄からテニスボールを取り出して雪美の肛門に押し当てた。
普段であれば入るはずのない直径のテニスボールは、しかし肛門の緩みきっている今ならば呑み込まれ、
ちょうどアヌス栓のようにすっぽりと嵌まり込む。
「さ、固定固定」
亜衣はそこで他の少女達に指示を出し、雪美の身体を抱え上げさせた。
そして尻穴のゴルフボールを押さえつけるように椅子へと座らせ、肩を押さえ込み、膝を押さえつけてしまう。
「うぐあああはっ……!!!」
狂いそうなほどの排泄欲を封じられ、雪美が苦悶の声を漏らす。
「さて、そこからどれだけ耐え切れるか。桐羽組女親分の根性とやら、見せてもらうよ」
亜衣はポケットからストップウォッチを取り出し、悠々と壁に寄りかかりながらスタートを押した。



そこからの雪美は地獄のようだった。
「あああう゛……あう゛はああぁあああ゛あぐはっ……!!!」
雪美はナイフで刺されたかのような苦悶の声を上げ、身を捩らせる。

下腹部からは、只事ではない、濁流の渦巻くような音が響いていた。
全身にも酷い汗を掻いていた。
歯を食いしばったまま眉間に皺を寄せ、頭を左右に振りたくる様。
天の一点を仰いだまま下唇を白い歯で噛みしめ、喉の奥からキツネの鳴き声のような声ならぬ声を漏らす様。
押さえつけても押さえつけても背筋が伸び、むちりとした太腿が跳ね上がる様。
そのいずれもが異常と呼ぶ他なかった。

しかしながら、雪美は解放されない。
自らの体重と押さえ込む少女達の力で、尻穴にぐっぽりと嵌まり込んだゴルフボールが肛門を封じている。
びぶっ、ぶぶりっと小さな破裂音はして座部に茶色い液を広げてはいるが、それでも楽にはならない。
「ほーら、まだ24分だよ。もっと頑張れるよねぇ?」
亜衣はストップウォッチに目をやりながら、その雪美の様子をおかしそうに観察していた。

「あははっ、すっごい顔。顎が汗でビッショビショじゃん」
「さすがに効いてるねぇ。いくら羞恥責めで屈服しないっつっても、終わりのない苦痛には音を上げるもんだよ」
「おナカの音もすごいしねー。完全に下痢の音だよ」

当然、その他の少女達も悶え狂う雪美の様子を、各々の持つカメラや携帯電話で記録している。
またその内の何名かは、荒れ狂う雪美の膨れた腹部を、残酷にも細い指で揉みたくってすらいた。
「ふぐうううウウッ……!!!」
雪美はその状況下、なお進退叶わぬ無感地獄に悶え続ける。

さらに数分が経った頃。
「ねぇ、そろそろヤバイんじゃない、このオバサン」
押さえ込む少女の一人が、雪美をおぞましそうに見下ろして囁く。
雪美は後ろ手に縛られたまま、その鎖骨の辺りを電流でも流されたかのようにビクン、ビクンと痙攣させていた。
顔は白い首を晒したまま白目を剥いている。
「はーっ、ア゛…………あア゛…………ア゛……はーっ……」
涎と少量の泡に塗れた口の奥からは、そのようなあまり生命力を感じさせない呻きが漏れていた。

やがて。


「……させて……!!」
雪美から、大粒の涙と共にその声が出た。
「ハァ?」
「と、トイレを……させとくれ……もう限界だ、これ以上は……耐え切れない…………ッ!!!」
「何その言い方、もっとちゃんと考えてよね」
亜衣がばっさりとそう切り捨て、押さえ込む少女達がその力を強める。
雪美はガクガクト身体を震わせながら、さらなる涙を零した。

「…………くっ…………ど、奴隷に、なります……なんだって、しますっ…………。
 だからどうか、もう、もう…………堪忍してください…………!!」

そう涙ながらに宣誓する雪美に、亜衣がストップウォッチを止めて近づく。
「33分40秒。……ま、一応ドナンでの新記録か」
そして下に着けていた衣類を脱ぎ去り、雪美の前で性器を露わにした。
「ここに接吻しな」
亜衣がそう命じると、雪美は精一杯に前へ屈み、その花びらへ口をつける。
その瞬間だ。雪美の肛門に栓をしていたテニスボールが腹圧で弾け飛び、直後、おぞましい排泄が始まった。

それは少女達が聞いたどんな下痢便の音よりも汚らしく、長く、また無様なものだ。
彼女達は一様に鼻を摘み、指を差して雪美の陥落を嘲笑った。
記録にも数知れぬ枚数が残され、ビデオとしても録画されている。
雪美は、亜衣の下腹部に顔を埋めるようにして泣いていた。




その後、桐羽雪美は街から姿を消す。
出所不明のおぞましい写真を多数残し、桐羽組の構成員に絶望を植え付けたまま。
噂では、遥か遠い田舎町でそれらしい人物を見かけたという話もある。
だがそれは、およそ以前の彼女ではなかった。
木製の枷に手首と胴を拘束され、路面に尻だけを突き出している公衆便器だ。
『ご使用下さい』と入墨のなされた尻穴からは夥しい精液が溢れ、その脇にある缶には貨幣が捻じ込まれてある。
雪美であったものは、その金から少女達に餌を買い与えられ、感情のない瞳でただ咀嚼するのだという……。



                              終
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山吹の冬

※ フィクション要素てんこ盛りの花魁小説。
  浅学ゆえ、妙な点も多々あるでしょうがご勘弁を。
  スカトロ・アナル・ダーク属性など注意。



多少なりとも遊女屋への興味があって、“紅華太夫”の名を知らぬ者はいないだろう。

紅華は、遊女となる前は武家の令嬢であったという。
密かに遊郭遊びへ赴いた大名さえ、彼女の凛とした気迫に惚れ込んだ……という逸話がある。
その紅華が、太夫になった折に立ち上げた遊女屋こそ『山紫苑』。
大名の贔屓にしている遊女屋として有名で、往時には色街でも指折りの格を持つ廓だった。

しかし大名の血筋が断絶した時、その山紫苑の名も地に堕ちる。
紅華も時を同じくして病に臥せった事から、巷では分家による陰謀論がまことしやかに囁かれた。
今や戸も閉め切られ、過去の栄華が語られるのみとなった山紫苑。
……その山紫苑を、それでも今、再び甦らせようとする一人の娘がいる。

名は山吹、齢は十五。
腰までの艶やかな黒髪と聡明そうな瞳、月光を帯びた桜の如き肌を持つ彼女は、紅華太夫の一人娘だ。
幼少の頃より城主への目通りを経験し、三味線や和歌、茶道など、あらゆる芸事を仕込まれてきた。
その素養は武家の娘をも上回り、御殿暮らしで育まれた品格はまさしく令嬢のもの。
しかしながら山吹は、けして自らの育ちの良さを鼻にかける娘ではなかった。
庭先を掃く者、渡り廊下に雑巾をかける者、全てに足を止めて労いの言葉をかける。
寒い中で雪かきをしている者には、自身が手縫いで拵えた半纏を手渡す。
傲慢になる事無かれ、周りに感謝を忘るる事無かれ。
その人徳を以って太夫にまで登り詰めた紅華の、そうした教えが染み付いている故だろう。

山吹は母が病に倒れて以来、自ら冷たい水で手拭いを絞り、その看病を行ってきた。
その手は苦労を知らぬ純白ではない。
ある時には薙刀を振るい、ある時には扇子を持って舞い、ある時には洗物をこなす。
そうして苦労を積み重ねた手だ。
ほんとうに物の解った人間には、その手の価値が読み取れるもの。
いつか花魁となるならば、そのような人を一人でも多く見つけ、愛されなさい。
それが紅華の最後の言葉だった。

15の春。最愛の母を腕の中で看取った山吹は、太夫を目指すべく山紫苑の敷居を跨ぐ。
名目上は女将として。
しかし彼女自身、色事のいの字も知らぬ生娘だ。
ゆえに、かつての紅華の従き人で、信頼も篤い『お志乃』を遣手とし、廓全体の管理を一任する。
そして山吹は女将としての仕事の傍ら、自らも遊女として経験を積む。
それが母・紅華の遺言であったし、山吹自身にも最も適切な選択に思えた。

彼女はまだ世を知らなかったのだ。
女が女に抱く嫉妬の情。いつの時代にも歴史の裏で繰り広げられる、その業のおぞましさを……。



志乃は紅華が病に臥せった頃、娘の山吹が山紫苑再興の意思を見せるや、進んでその後見人を申し出た。
しかし、それは紅華母娘が感謝するような義理人情の心からではない。
志乃は紅華を内心で嫌っていた。
生まれついて自分より器量が良く、育ちが良く、遊女としての格すら違う。
彼女の後ろについて花魁道中を歩くたび、志乃は胸を刻まれるような口惜しさを感じていた。
志乃にとって『山紫苑』での奉公は、その恨みを晴らす絶好の機会に過ぎない。

志乃は着々と山吹を追い詰める準備を進める。
まずは山吹の屋敷を売り払わせ、得た金を山紫苑の修繕費、及び再営業許可取付け資金等とする事で、帰る場所を失わせた。
お母上も亡くなられた今、貴方の生きる場所はここしかない……そう諭せば、今の山吹に屋敷を売らせる事は容易い。

さらに、山紫苑に置く遊女は器量の良くない者ばかりを揃えた。
そうすれば彼女達による稼ぎは少なく、山吹自身が身を削らなければ廓の経営が立ち行かない。
また醜女であれば当然に美しい山吹に嫉妬しやすくなり、心理的立ち位置からして反山吹の志乃寄りとなる。
これの理由付けは至極簡単で、最近まで幽霊屋敷のようだった山紫苑に行きたがる器量良しはいない、
力不足で申し訳ないと苦い顔をすれば、山吹の方からとんでもない、気苦労をかけてごめんなさいと頭を下げ返してくる。

こうして志乃は、いとも容易く山吹を廓の内で孤立させる事に成功したのだった。
さらに、ただ孤立させるだけではない。彼女に無力な味方を一人だけつける事も、志乃は怠らなかった。
その味方は、遊女の着物の洗濯や風呂沸かしなどの雑務をこなす下働きだ。
その下働きには、かつて山吹の下男をしていた男から一人を選んだ。
男の名は辰吉という。
志乃は女の勘で、このまだ年若い男が山吹に惚れている事を見抜いていた。
さらには山吹の方も、真正直で働き者の辰吉のことを以前から憎からず思っていた様子。

山吹が屋敷を売ったことで解雇となった辰吉は、その山吹が働く遊女屋での下働きを快諾した。
それは仕事にありつける喜びというより、再び山吹の傍で働けるという事への悦びだろうと志乃は看破する。
彼に与えられた私室は、折檻部屋の真横に位置する物置を整理しただけのものだった。
遊女への折檻が、その声も音も、余す所なく聴こえる悪夢の部屋。
その折檻は、やがて山吹に最も多く与えられ、そのたび辰吉の眠りを妨げることとなる。



「私の水揚を、人目に……?」
志乃の前に座した山吹が、強張った面持ちで問う。
志乃は頷いた。
「そうさ。遊郭内じゃ、未だこの山紫苑が再興した事さえ知られていないのが現状だろう。
 ここから山紫苑が並居る遊女屋を押しのけて繁盛するにゃあ、何はともあれ話題性が不可欠だ。
 そしてそれに足る絶好の題材はひとつ。
 紅華太夫の娘・山吹の初夜……ここを余さず隠さず衆目に晒してこそ、
 山紫苑には大した花魁がいるらしい、って噂も流れようってもんさ」
志乃がそう続けてもなお、山吹の表情は和らがない。

遊女の水揚、すなわち初夜は重要な意味を持つ。
特に将来的に太夫を志す娘なら、その水揚は品格に溢れ、かつ秘匿された物でなければならない。
まかり間違えても下世話な客寄せなどであってはならない。
山吹はそう考えているのだ。
元より頭の悪い女ではない、思考の引っ掛かりをそのままに流しはすまい。

しかし志乃とて裏の渡世を経験してきた苦労人。人を疑う事を知らない山吹を、口説き落とせない訳ではなかった。
食い物や落語の上演場所などを引き合いに出し、娯楽が大衆化しつつある事を説く。
今や武士も質素倹約、わざわざ廓に入る余裕はないが、それでも外から美しい姿が見えれば惹かれもしよう、と煽る。
そうして何とか山吹を得心へと落とし込んだ。

「……そう……太夫従きの遊女として勤め上げたあなたが言うなら、きっとそうなのよね。
 遊女というのも、綺麗事ばかりではいけないんだわ」
やがて山吹は、思う所はあれども、経験者の志乃を立てる形で瞳を閉じた。
元より人柄が良い上、志乃に遣手として廓内の一切を任せているという負い目もある。
どの道彼女が断ることなどありえないのだ。
「すまないね。後追いの小さな見世としちゃ、他に繁盛の糸口が見当たらないんだよ」
志乃は心苦しそうな表情の裏で、陰惨な悪女の笑みを浮かべた。


山吹は東の角部屋、畳の敷かれた和室に連れられる。
粗末な部屋だ。畳には布団が敷かれてはいるが、綿の薄い煎餅布団に過ぎない。
床入りをする目的で誂えられたというよりは、汚れてもいいよう体裁を整える為だけに存在する物だろう。
逆を言えば、普通の敷布団では勿体無いほどに布団の汚れる事が、予め解っているとも取れる。
山吹はその事実に歯噛みしながらも黙していた。

「さて、じゃあいくよ」
志乃が山吹へ向けて告げ、角部屋の障子を開け放つ。
タン、タンという木の打ち鳴らされる音の後、角部屋の中は渡り廊下を隔てて吹き曝しとなった。
庭の竹垣の向こうには、すでに黒山の人だかりが出来ている。
彼らは肩の高さほどの竹垣から身を乗り出し、我よ我よと山吹の姿を拝もうとしていた。

「おおおお、あれが紅華太夫の娘っ子か!流石に綺麗な顔してるもんだなぁ!」
「本当だ。こんな小見世じゃ勿体ねぇ、かなりの大見世でも通る器量だぜ。
 まぁ格式高い遊女屋じゃあ、こうして己らが水揚げを拝む事は叶わなかっただろうがよ」
品の無い声が山吹に浴びせられる。
その中で、山吹に見えぬよう口元を緩めながら志乃が手を叩いた。

「さぁ山吹、観衆の皆様に素肌を晒しな」
その声で、男達の歓声が高まる。
山吹は羞恥に歯噛みするが、しかし今さら拒む訳にもいかない。
「……ええ」
彼女は覚悟を決めたように顔を上げ、白く細い指で帯をつまんでしゅるりと解いた。
そして長襦袢の襟元に手をかけて腕へと滑らせ、雪のように白い肩を露わにする。

「うひょお、あの『紅華太夫』の娘のハダカが拝めるなんて、生きてて良かったぜ」
「しかし良い肌だな。乳房も娘っ子そのものの桜色で、うんまそうだあ」
「十五の割にゃ体つきもいやらしいもんだ。さぞかし良いもん食ってきたんだろうなぁ」

下卑た品評を為されながら、山吹は身に纏っていたものを全て畳の上に舞わせていく。
そうして一糸纏わぬ丸裸となった所で、部屋奥の襖が志乃の手によって開かれた。
その奥から姿を現した二人の男に、観衆が息を呑む。
大柄な身体つきに隆々と盛り上がった筋肉、剃り上げた頭、そして肩と背に彫り込まれた入墨。
「今日の為に特別にお呼びした、『仙蓮』って見世で遊女の仕込みをなさってるお二人さ。
 どっちもおんなの扱いに関しちゃ一流だよ」
志乃は山吹に向けてか観衆に向けてか、よく通る声で告げる。
「そういう事だ。愉しませてやるぜェ嬢ちゃん」
男の一人が、玄武の入墨の入った太い腕を掲げて山吹の顎を持ち上げる。
「っ……お願いします」
山吹は一片の恐怖すら映さない凜とした瞳で、荒くれた男を見つめ返した。
その品格高い気丈さは、男達も観衆をも虜にする。


「あ、あっ……ああっ……あっ…………あ」
和室に若い女の声が漏れていた。
それは春のやわらかな風に乗り、観衆の耳を悦ばせる。

山吹は、背後に座る男の胸板へ寄りかかるようになり、その豊かな乳房を揉みしだかれていた。
白い乳肉が男の浅黒い手の中で形を変え、根元から波打つように丹念に揉み上げられる。
そうしてじっくりと胸の性感を目覚めさせたあと、微かに粟立ちはじめる乳輪を指先でなぞり、
それら全ての焦らしでついに切なく尖り始めた胸の突起が挟み潰される。
「はふぅっ!!」
その瞬間は山吹にとって堪らないものであるらしかった。
まだ男を知らない未成熟な胸が、男の巧みな愛撫によってほぐされ、屹立し、解放される。
それが一度二度ではなく、延々と続けられているのだ。

「すげぇ……荒っぽい見目に反して、えらく上手ぇなあの野郎」
「ああ。うちのカカァなら、ああもやられちゃあもう十辺は乳汁搾り出されてらぁ」

観衆達はその巧みな胸への愛撫に感嘆する。
しかし、山吹が刺激されているのは胸の膨らみばかりではない。
彼女は背後の男に背を預けたまま、膝を折る形で脚を開かされていた。
その間に晒された桜色の秘裂には、別の男の舌が入り込んでいる。
舌は山吹の陰核と花びらを丹念に舐めしゃぶり、内側に湿り気をもたらしたのち、指での慣らしに繋いだ。
まだ未使用で痛みの強い十五の花弁へ、一寸ずつ僅かに押し進めて戻し、また一寸だけ潜り込ませる。
そうして丹念に慣らした末に、ついに山吹の花壷は男の二本の指を受け入れられるようになる。

そこへ至れば、男にも容赦はなくなった。
幾度も幾度も、節ばった指の関節を花弁へ通り抜けさせ、その内なる肉を弄る。
奥まりで指をひらいては狭穴の中に蜜の糸を引かせ、臍側へ曲げた指の頭で臍下の一帯を擦りまわす。
「……っ!!…………っ!!!」
それらはどうにも効果的なようで、山吹は声を殺しつつ、足裏を幾度も煎餅布団から離していた。

「へへ。十五の餓鬼の女陰(ほと)が、とろとろに蕩けてきやがったぜ。
 蜜もこりゃあ美味ぇもんだ。内も外も身奇麗にし続けてきた生娘、ってのが味で解らぁ」
前方の男は山吹の花壷から指を抜き、付け根までの全体に纏いついたぬめらかな愛液を舐り回す。
山吹の頬は林檎のように赤らみ、目元は恥辱に歪んでいた。
何も言わずとも、何も纏わずとも高貴さが滲み出るような淑やかな娘。
その山吹が調教されているという光景は、竹垣外の男を狂乱させるに充分なものだった。
「ええい、退け小僧ッ!」
「なりません、敷地内への立入はご遠慮下さい!!」
興奮の余り肩丈までの竹垣を乗り越えて踏み入らんとする男を、下男である辰吉が抑え込む。
辰吉はその見張りの仕事を黙々とこなしながらも、心中はけして穏やかではなかった。



入墨の男達は山吹を散々に蕩かした後、その身体を畳の上に這うようにさせた。
「しゃぶれ」
男の一人が褌を取り去り、自らの逸物を衆目に晒す。
おおおっとどよめきが起こった。
それは男の体格に見合った立派なもので、隆々と反って天を向き、血管さえ浮き立たせて脈打っている。
「ひっ……!」
山吹は両手で口を押さえながら目を見開いた。
彼女とて遊女になるべく育てられた子供。勉学の一環として、下女が下男と交わる様を目の当たりにし、
その際に屹立した男のものを記憶に焼き付けている。
だが今鼻先に突きつけられているのは、その記憶の中のものよりも遥かに凶悪だ。

「おら、花魁がブツを前にボケッとすんな!」
痺れを切らした背後の男が山吹の肩を掴み、前方の男の逸物に顔を近づけさせた。
痛烈な男臭さが鼻をつき、山吹の美貌を歪ませる。
しかし、確かに彼女は一流の花魁となるべくここにいるのだ。逃げてはならない。
山吹はおぞましさを振り払い、恐る恐る男の逸物に手を添えた。
その光景は、それだけで刺激的であり、観衆を沸き立たせる。

「んっ……んむっ、んんっ……!!」
山吹は逸物の先へと丹念に舌を這わせ、唾液で塗れ光る先端を口の中へと含んだ。
そうして舌を使って舐めしゃぶる。
「もっと舌を伸ばして裏筋をなぞっていけ。喉の深くまで咥え込め」
だが前方の男は、容赦なくその口戯に注文をつける。
山吹がその通りに試みても、やはり拙く思えるのか険しい表情は変わらない。
「ええい、思い切りの悪ィ餓鬼だ!こう……すんだよっ!!」
男は叫ぶように言い、山吹の黒髪を掴んで自らの腰へと引き寄せる。
「ごえぇっ!!」
山吹は目を見開きながら喉の奥で叫んだ。
その声に辰吉が振り返る。

(……お、お嬢様……!!)

振り返った先では、山吹が入墨男に髪を掴まれ、口一杯に男の怒張を捻じ込まれていた。
眉の顰め具合からして、喉のかなり深くまで入り込んでいるのだろう。
そのまま頭を前後させられ、その際に漏れる声などは、人間が日常で生活していて出る声ではない。

「お、オエッ!!!」
やがて男が逸物を抜いた瞬間、山吹の口からえづきが漏れた。
きつく閉じられた瞳から涙が伝い、そして逸物が抜き去られた事で露わとなった口元からは、
夥しい唾液と混じってかすかに黄色い半固形の物が零れ落ちている。
「これしきで吐くな!」
入墨男はそれを目にするなり、強かに山吹の頬を張った。
一瞬にして山吹の左頬は赤く腫れ、俯いた泣き顔から涎の糸がぽたぽたと滴る。
「……続けるぞ」
男が再び山吹の頭を鷲掴みにし、逸物を唇へと割り入らせる。

山吹はそれを拒める立場になどなかった。
かつて経験がないほどの苦しさに涙を零しながら、男の命じるままに逸物を手で扱き、深くまで喉で受け入れる。
そして辰吉もまた、山吹を救える立場にはない。
かつての雪の日、自分に手縫いのあたたかな半纏をくれた、あの純真な女主人が穢されていく。
それをただ、竹垣から響く喧騒にまみれながら傍観しているしかなかった。

這うような姿勢で口戯を仕込まれる山吹の後ろには、もう一人の男が貼り付いていた。
彼はまだ肉付きの甘い山吹の尻を手で割り開き、そこに顔を埋めている。
そして鼻先で尻穴の匂いを嗅ぎまわりながら、花弁に執拗に舌を這わせているようだった。
先ほどまで散々に嬲られていた山吹の花弁は、それによっていよいよ蜜を垂らすほどになっていく。

「おうお、塗れちまったもんだ。甘ぁい蜜が、太腿にまで垂れてきやがった。
 ……おい、もうそろそろ頃合いだ、やるとしようぜ」
背後の男が、少女に逸物をしゃぶらせている男に呼びかけた。
その男は頷き、いよいよ一回りほど大きさを増した逸物を山吹の口から引き摺り出す。
「抱いてやる。布団の上に寝転がんな」
男が唾液に塗れた逸物を反り立てて命じると、山吹は覚悟したように布団に仰向けに横たわった。
いよいよ破瓜の刻だ。
観衆の騒ぎを耳に入れるまでもなく、辰吉にもそれが解った。


男は山吹と顔を合わせる対面位で、山吹の脚をわずかに曲げさせて挿入を開始した。
「んっ……!!」
指や舌で慣らされているとはいえ、初めての挿入はつらいのだろう。
山吹は目を細め、唇で指を噛みしめてその痛みに耐えているようだった。
「さてそろそろだ、一気にいくぜ」
半ばほどが入り込んだとき、男が山吹に囁きかけた。
そうして一呼吸置き、腰を強く掴んだまま一気に逸物を押し進める。
「…………うあッ…………!!!!!!」
山吹は布団に髪を押し付けるようにして天を仰いだ。
男の侵入が終わり、腰が止まる。
ざわめきが一旦落ち着いたことで、山吹がもう操を失っている事実が辰吉の心に突き刺さる。
山吹は騒いでなどいない。
目尻に大粒の涙を溜め、唇を引き結んで高貴さを保っている。

「へぇ、流石に静かなもんだな。女の初めてってなぁ煩いもんだと聞くが」
「この大人数の前だ。乱れちゃならねぇと、あの細い身体で必死に我慢してるんだろうさ。
 見ろよ、ちっこい手がぎゅうっと敷き布団を掴んでてよ、健気なもんじゃねぇか」

観衆達がいよいよ興味深く見守る前で、男はゆっくりと腰を動かし始める。
「ん……く」
山吹は流石に小さく呻きながらも、男にされるがままになっていた。

「ふん、まあまあの締まりって所か。あの紅華太夫の娘っつうから、期待してたんだがな。
 この界隈にゃあこれより具合のいい女なんざゴマンといるぜ?
 蚯蚓千匹や数の子天井なんざ当たり前で、その上で俵締めや巾着みてぇな技を持ってる女までいる。
 そういう女共から男を奪い取るにゃあ、並じゃねえ苦労が必要だ。
 だがまぁ安心しな。これから俺達がたっぷりと時間を掛けて、テメェのおんなを目覚めさせてやる。
 どんな男でも逝かせられるようになるまで仕込んでやる」

男は山吹の汗に塗れた顔を撫でながらそう告げる。
そうしてゆっくりと花壷から逸物を引き抜いた。
どろり、と結合液が垂れる。愛液に薄められたかすかな朱が、敷き布団に染みを作る。
紛れもない純潔の証。
たった今名も知れぬ男によって女にされたばかりの山吹は、そこから数日に渡って、
筆舌に尽くしがたい遊女調教を受ける事となった。



昼も夜も角部屋に面した障子は解放され、廓の表から無銭にて見放題となっていた。
遊ぶ金のある者は鼻で笑って顔をしかめ、普段遊郭に来ない貧しい男達は、見世先に齧りついて各々に慰めはじめる。
辰吉もまた、庭先で枯葉を掃き集めながら、ちらちらとその調教を盗み見ていた。
ついこの間まで仕えていた、美しく優しい主人が穢されているのだ。気にならない筈がなかった。

「こ、こんなっ……けだもののような格好!」
山吹は背後から男に抱かれ、信じがたいという非難の声を上げた。
男がほくそ笑む。
「ふん、面つき合わせて抱く以外は皆けだものの性交か?ガキの癖に古臭ぇ考えしてやがるぜ。
 まぁいいさ、もうすぐテメェも、けだものの『ような』なんて言えねぇ位に乱れるんだからよ。
 オラ、いい声で啼いてみろ」
男はそう言いながら山吹の腰を掴み、力強く腰を打ち付ける。
パンッパンッと肉のはじける音が響き渡り、山吹の豊かな乳房が前後に揺れる。
山吹は気恥ずかしげに唇を噛みながら、布団に肘をついて突き込みに耐えていた。

「おら、甘えるみてぇに感じてばっかいねえで、テメェの方からも締め付けろよ。
 テメェは入り口こそよく締まるが、ナカがまだまだ緩いんだ。
 こうやって後ろから突きゃあ、奥までよく届くだろう。そこで腹に力を入れてみろ」
男は山吹の尻を手の平で叩きながら命じた。
これはただの情交ではない、あくまで生娘を金の取れる花魁とする為の調教なのだ。
辰吉は改めてそう気付く。

「あ、ああ……っ!!……くあ……っ!!!!」
山吹は言われた通りに腹部をへこませ、結合部に意識を向ける。
しかしそれによって喘ぎ声が漏れ、さらには太腿に痙攣が起きてしまう。
「ふん、また逝ったのか?テメェは奥に意識を向けるとすぐに逝くな。
 まだまだへばってんじゃねーぞ。おら、自分で腰ィ動かせ」
男は溜息を吐きながら、山吹をなおも犯し続ける。
その前方では、別の一人が山吹の顎をつかみ、逸物を咥えさせてもいた。
「ったく、下手糞な花魁がいたもんだな。禿(かむろ)の方が、まだ男の悦ばせ方を知ってんぜ」
男達は山吹の未熟さを散々罵りながら、前後からの陵辱を加え続ける。

辰吉にはその中で、山吹が涙を流すのが見えた。

山吹も母の華々しい逸話を聞き、また自分なりの太夫への夢を馳せる中で、憧れは様々にあっただろう。
身元は潔白で羽振りがよく、男前のきりりとした好青年に優しく抱かれる。
それが本来、山吹ほどの女の『初夜』があるべき状況だ。
その栄光への道は、今や地に堕ちてしまった。
饐えた匂いを発する下卑た男共に晒されるほど。道ゆく市井の民にすら蔑まれるほど。
これではまるで、調教ではなくただの辱めだ。

「馬鹿野郎ッ、誰が勝手に逝っていいっつった!!」
男の怒号が飛び、山吹の胸の突起が捻り上げられた。
「あううっ!!……ご、ごめんなさい……」
山吹は苦痛に顔を歪ませながら、男達に謝罪する。

彼女は布団に腰掛けた男へ後ろ向けに覆い被さるようになり、背後から深々と花弁を貫かれていた。
肩幅以上に広げられた膝の間から、ぬちゃっぬちゃっと何とも艶かしい音が立つ。
山吹は布団に手をつくようにしながら、その音が立つたびに身体を細かに震わせていた。
「いいな、『逝く』んじゃねぇ、『逝かせ』ろ!!
 ここで心地の良さに飲み込まれるような奴は花魁じゃねぇ、ただの素人だ!!」
男はそう言いながら、さらに容赦なく山吹の背を反らせて腰を打ち付ける。
「あっ!!ううっ、くっ!!!」
山吹は快楽に顔を歪ませ、懸命に堪えているようだった。

「おーまだやってる、可哀想だねぇ。今日で三日目だっけ?朝も晩もなく、ようやるよ」
「そうだなぁ。逝くなっつったって、こう何日もかけて逝き癖をつけられちゃあ無理ってもんだ。
 あの生娘だった紅華の娘を、数日でここまで愉悦に染め上げるのは流石って所だがな」
「布団がすっかり濡れてしなびてやがらぁ。腰が動くたびにニチャニチャいってやがるしよ。
 あれ、ほとんど嬢ちゃんの汗と愛液だろう?そりゃあ逝きっ放しにもならぁな。
 花魁になるってのも、どうにも大変だねぇ」

初日に比べればまばらとなった竹垣の観衆達が、山吹達の情交を眺めながら言う。
その最中にも、男の精を搾り取る前に絶頂を迎えた山吹が、強かに頬を張られる音が響いてきていた。
何度目に頬を張られた頃だろう。
山吹の白い脚の間から、水の溢れる音がした。それは微かな飛沫を上げながら布団に広がっていく。

「ちっ、漏らしやがった。ビビッたのか、それとも心地が良すぎたのかよ?
 この衆目の前で用が足せるなんて、さすが太夫を目指す女は器が違うね。
 どうだいお集まりの皆々様。この女が見事太夫になった暁にゃ、『小便太夫』とでもお呼びしようじゃあねぇか!」

男は高らかに笑いながら、小便と愛液に塗れた山吹の花園を開いてみせた。
もはや見慣れた光景となったそれに、観衆は誰も声など上げない。
ただにやついた不愉快な笑みでもって、山吹を見つめるだけだ。
その顔は言っていた。早く山吹を抱きたい、この娘を自分の物で善がらせたい、と。





見世に顔を出すようになって以来、山吹は、日に最低五人は相手をすることになった。
他の娘が日に一人か二人しか客を取れない上、来客の殆どが山吹の身体目当てなのでそうせざるを得ないのだ。

また山吹には、器量の他にも客から好まれる要素がある。
彼女はたとえ一仕事の後で疲れ果てていても、身体を正して三つ指をつき、有難う御座いましたと礼を述べる。
そして真裸のまま、一客のために本格的な茶を点てるのだ。
洗練された茶筅の動きが醸し出す侘び、しかし面を上げれば美しい女の裸体。
その品格高くも艶かしい異様な光景には、遊郭に通い慣れた伊達男でさえ、一時声を上げるのを忘れるほどだった。
山吹が人気を博すのも、至極当然の事と言える。

しかしまだ15に過ぎず、男に慣れきってもいない山吹の身体には、日に五人の相手でもつらい。
連日の無理が祟って高熱で倒れて以来は、五日続けて見世に出た後、一日は裏方に徹して休養するようになった。
この休養日は、色町の男達から“枯山吹”と呼ばれ、大層残念がられたという。
だが、その山吹の苦労を知ってなお、志乃の追い込みは終わらない。
彼女としては、美しく才豊かな山吹がより惨めに潰れてくれた方が気分が良いのだ。


「名目上は女将だか知らないが、所詮は娼妓の何たるかも知らない小娘さ。
 たっぷりと世の厳しさを教えておやり、嫌な客は全部山吹に回すんだよ」

志乃は山吹以外の遊女全てにそのように言い含めていた。
言われずとも、『紅華太夫』の血を引く山吹には皆が危機感を抱いている。
普通に客を取らせれば、たちまちに花魁の頂点へと登り詰めていく事は明白だ。
ゆえに、遊女達は志乃の謀りに乗った。
一度ついた客で嫌だと思う者がいれば、次からは山吹指名と伝えて回すのだ。
山吹はその裏心を察知してはいたが、それでも困った時は助け合いだからと快諾する。
そうしていざ相手をする段になって、その客が忌避される由を嫌というほど思い知らされるのだった。


一人は、信じがたいほどの巨根を有していた。
着衣で話をしている時から自分本位な性格が見える難ありの客ではあったが、
いざ褌を取り去って逸物が露わになった時、山吹は悲鳴を上げるのを堪えるのがやっとだった。
指で摘むなど到底出来ない、両手の指で包み込んでなお全く足りない。
それを愛撫するには、腕で抱き込むのが最も適切ではないかと思えるような規格外の巨木。
男はそれを誇らしげに揺らしながら笑った。

「どうだ、聞いたとおりデケェだろ。
 前にここで相手ばした女は、勘弁して下さいばっがで話んなんねがったかんな。
 ここの女将なら相手ば出来る言うがら、おらマス掻きもしねぇで溜めて込んできただ。
 ほら、とっととしゃぶれぇ」
男は山吹の鼻先へ逸物を突きつけて言う。
「は、はい。失礼いたします」
山吹は自身の女将としての責任感と男への憐れみから、その逸物へと口を近づける。
しかし余りに大きすぎた。顎が外れる寸前まで口を開いても、その亀頭部分さえ含めない。

「お前ェのそのちんまい口じゃあ、おらの物咥えるのは無理だぁ。
 口ですんのはもうええがら、さっさと女の場所に挿れさせてくんろ」
男がそう要求すると山吹は立ち上がり、部屋の戸棚にある陶器の蓋を開けた。
多少大きな物を受け入れるための油が入っている。
山吹はやや逡巡した後、その全てを男の逸物に注ぎかけた。
「うおっ!!へへ、冷たいじゃねが」
「しばし、ご辛抱を……」
山吹は自らの花弁にもその油を塗りこめ、いざ男の上に跨ろうとする。
しかしそれを男が制した。

「まで。なしてお前ェが上になる、おら女に主導されんのはきれぇだ。
 挿れんのはおらがしてやっがら、女は寝そべってされるがまんまにしどげ」
男のその発言で、山吹の心臓が震え上がった。
入る見込みなどまるでない極太だが、自分で腰を沈めて調整しながらならばまだ何とかなる。
しかし相手任せとなれば、自衛のしようがない。
「ほれぇ、さっさとそこさ寝そべれ」
男はなおも横柄に命じてくる。山吹は、ただそれに従うしかなかった。


「あうっ!!」
極太が花弁を通り抜けた時、山吹は思わず目を見開いた。
男の力に任せた、みしりと音を立てるような無理矢理の挿入。
骨盤が砕けそうなほどに軋み、下腹部を尋常でない圧迫感が襲う。
嫌な汗がどっと全身から噴き出す。
「ほーら、入っていくぞぉ、やらけぇ所に、おらのぶっといのがよぉ」
男はそう言いながら、いよいよ腕を痙攣させつつ強引に奥までを蹂躙する。
「くああああああああっ!!!!!」
山吹の瞳から涙が零れ落ちた。

身体が耐えられるような痛みではない。自分の歳で許容できる大きさではない。
息が苦しい。
それでも、山吹は耐えていた。
女将として、この不満を持つ客を満足させるのだ、という使命感で。
男が欲望に任せて無理矢理に腰を動かすと、細い身体を精一杯に踏ん張ってそれを助けた。
その甲斐あり、男は絶え間ない抜き差しの果てに、ついに射精に至る。
「おおっ、ええぞ、果てるぞ、果てるぞッ!!」
男は叫びながら、山吹の奥深くで精を放った。
避妊具の在庫にも限りのある山紫苑では、膣内射精は原則禁止となっているが、そんな事はどうでもいい。

ようやく終わった……。
酸欠で意識も朦朧としている山吹が安堵の息を吐いた時、男が口を開いた。
「ああ善がった、たまんねえなぁ。ほれ、寝とらんと次いくぞ」
男はそう言いながら、射精してなお大きさの変わらない逸物を山吹の中で動かし始めた。
精液が攪拌され、再び呼吸が阻害される。
「そ、そん、な…………も、もう、い……いき……が…………」
山吹は、すでに限界を超えていた。
使命感だけでかろうじて酸欠状態を乗り切った彼女に、余力などない。
山吹は口から泡を噴きながら意識を落とした。
男が喚いている声が遠くに聴こえ、胸が痛むが、もはや気力でどうにかなる状態でもなかった。


目を覚ました山吹の視界に入ったのは、険しい顔をした志乃。
そしてその周りで、呆れ果てたように山吹を見下ろす遊女達だ。
「やってくれたね山吹。お客からの大顰蹙だ。
 他の女から盥回しにされ、あの女なら出来るというから期待していたのに、何だあの様は、
 あれで女将を名乗るなぞ笑止と仰って、店の中で随分と暴れてくれたよ」
志乃は荒れ果てた店内を指し示しながら告げる。
なけなしの金で買った壷も掛け軸も、無残に破壊され尽くしていた。
「本当に怖かったのよ。しかもその原因が、女将の不手際だったなんて。
 反省してくれないと、あたいらだって身の振り方を考えるよ」
志乃と遊女達に糾弾され、山吹はただ青い顔で頭を下げる。

これらは全て、志乃達の目論見通りだった。
性格にかなり問題のあるあの客が腹を立てていたのは事実だが、店を荒らしたのは志乃達自身だ。
全ては山吹を追い詰めるために。





「ほーら、調教の時間だよ。どんなご立派様でも咥え込めるように蕩かそうねぇ」

折檻部屋の襖が開け放たれ、蝋燭を手にした遊女達が姿を現す。
その紅色の光が照らす輪の中には、竹轡を噛まされたまま柱に縛り付けられた山吹の姿があった。
その乳首と陰核には細い糸が結わえ付けられ、天井近くの横木に繋がれている。
「ふう、いつ見てもいい格好。
 ただいま女将さん、六ツ時から一人放置されて、寂しかった?」
女郎達はその山吹の姿を笑い、各々筆を取り出した。
そして部屋の隅にある壷へ筆先を浸し、粘質な薬を掬い取っては山吹の乳首と陰核に塗りつけていく。
「ふうううっ!!」
竹轡越しに山吹の声が漏れた。
「そんなに感じるの?まぁもう胸の方もオサネの方も、可哀想なくらい膨れ上がってるけど。
 こわーい薬なのね、これって」
遊女達は嬉々として筆を操る。

そうして陰核と胸の蕾へ散々薬を塗布したところで、繋がれた糸をピンッと弾いた。
「ふぁうううああっ!!!!!」
山吹が竹轡越しに呻く。噛みしめた口の端から唾液が零れ落ち、床の液だまりに弾ける。
「もう我慢できないみたいね。今朝はその割れ目にも、筆で直接お薬を塗り込んであげたもんね。
 しょうがないな、ちょっと鎮めてあげる」
遊女の一人が言い、持参した桐の箱を開ける。
中からは、縄を結び合わせて作ったような責め具が姿を現した。

「あなたのお蜜でふやけた随喜よ。昨日以来だから待ち遠しいでしょ?」
遊女はそう囁きながら随喜を取り出し、先端を指でぬちょぬちょと弄びながら笑った。
そうして山吹の瞳をしっかりと覗きこみつつ、ゆっくりと花弁へと挿入していく。
「んんん……!!」
「ふふ、女将さんったら腰がいやらしく蠢いてる。
 でも御免ね、二寸までしか入れては駄目と、お志乃さんに仰せ付かってるの。
 だからこうして、入口辺りをくすぐるだけ……そうしていくら強請っても駄目なのよ。
 ほら……随喜のお汁が染み渡って、堪らないでしょう。
 そんなに切なそうな顔したって、男じゃない私たちは篭絡できっこないんだから無駄よ。
 もっともっと酷い顔で、けだものみたいに呻くようになるまで止めないから。
 そうやって欲しくなって欲しくなって、最後には私らの腕を飲み込める位にしてしまうのよ。
 あははっ、すごいお汁出てきたわね。想像してお小水漏らしちゃった?
 さすがは“小便太夫”さまだわ」

女郎達は淫靡な表情で、山吹の秘所と胸の突起を責め苛み続ける。
同性ならではの的確すぎる責め。呆れるほど容易く、そして切なく昂ぶらされてしまう。
「ううう、うう……うううぅうんんっ!!!」
拘束された山吹は、その同性の手がもたらす責めに、涙と涎を零しながらただ耐え忍ぶ他なかった。





山吹に回される『嫌な客』は、巨根の男ばかりではない。
初夏に訪れたある男は、服を着ていれば紳士的だったが、いざ床となると愛撫の折に執拗に尻穴を刺激する。
「い、いやっ、そんなところ!!」
山吹は恥じて身を捩るが、男は止める気配もない。
「何が嫌だ!客の男が望む事あらば、何であれ聞くのが遊女であろうがっ!!」
そう激昂し、尻穴へ膏を塗って指で解したあと、無理強いでの挿入を試みた。
「いやああああああっっ!!!!」
出すための穴を犯されるのは、いかに山吹とはいえ許容できない。
山吹は何とか逃れようともがくが、男はその狂乱をも愉しんで彼女を背後から押さえ込む。

「ふん、艶のある綺麗な背中をしおって。
 女の分際で、飢饉なぞとは縁のない、満ち足りた生活をしてきたのであろう。
 だがそのような娘の後ろの孔を使っていると考えれば、これほど気分のいい事もない。
 農家の娘が腹を空かせて泣いているその時に、育ちの良い娘もまた糞の穴を犯されて泣くのだ。
 これぞ天下泰平、平等至極。
 ……ほらどうした、入口から奥までよく絡み付いてくるぞ、この穴は!!」

男はそう罵りながら腰を打ちつけ、ついに肛門の中で精を放った。
男が逸物を抜き出すと、桜色の肛門からは白濁液に混じって茶色い筋が流れ落ちていく。
「ふん、花魁ともあろうものが浅ましい。糞汁が漏れているではないか」
男が機嫌悪く言う横で、山吹は懐紙を用いて尻を拭い、男へ向けて三つ指をついて頭を下げる。

「………………ありがとうございました」

どのような事をされても、相手がどのような人物であれ、意識がある限り続けている作法だ。
だが男の表情は晴れない。
「それだけか?」
男のその言葉に、山吹は目を見開いた。
「『紅華太夫』の娘は、母親と同じで事を終えた後に茶を点ててくれるのだろう?
 私に限って無いというのは些か寂しいものだが」
そう言われると、山吹も返す言葉がない。
かくして、彼女は男の望み通りに茶を点てた。犯された尻穴の痛みを堪えながら。

「ふむ、美味いな。その正座した脚の間から、精液と入り混じった糞汁を垂らす女が淹れたとは思えん。
 ……忘れるな、次も後ろでやるぞ。
 今日の所は挨拶程度で済ませたが、次なる時は私に跨ったまま、夜通し尻穴のみで奉仕してもらう。
 痛いのが嫌というなら、次に私が来る時までに、張り型でも使って慣らしておきなさい。
 もし自ら致すのが嫌なら、下男の誰かにでも頼むといい、紅華のお嬢様。
 お前が相手となれば、およそ男なら誰であろうと喜んでやるだろう」

男のその言葉を偶然に耳にし、庭先で拳を握り締める人間がいた。
辰吉だ。
「……ふざけるな、あの野郎……!」
彼には耐えがたかった。
山吹が後ろの穴を犯された事も、その後に関する侮辱も。
本心では男を殴りつけたいが、彼の身分ではそんな事は叶わない。
そして何より山吹自身が、その蛮行を望まないはずだった。


男はその後、実際に再び見世に現れ、横柄な態度で山吹を呼びつけた。
蒸し暑い夜で、男は薄く障子を開けて事を行ったため、庭先で水を汲む辰吉にはその様子がすべて見えていた。

「ふん、あれほどに言っても尻穴を拡げずにいるとは、大した変態振りよ」
男は脚を開いた山吹の正面に座り、尻穴を指でほじくって罵る。
「……済みません。奉仕は抜かりなくさせて頂きます」
山吹は頬を赤く染めながら答えた。
夏の頃には暑さに猛る客が殺到しており、山吹に尻穴を開発している暇などなかったのだ。
「ふん、まぁいい。私がこの場所を育て上げてやる」
男は未だ初物のような尻穴を指でほじくり回しながら、嬉しそうに笑っていた。

辰吉はそれから、男が山吹の肛門を辱める様を、仕事の合間に断片的に目にした。
男は数日に一度見世に顔を出し、山吹の尻穴を嬲り回す。

ある時には茶を点てるのに使う鉄瓶を使って山吹の腸へと水を注ぎ込み、
男の鼻先に置かれた盥へと屈み腰で排泄させた。
そうしてその姿勢のままで尻穴を指で延々と抉り回すのだ。
この時には障子は完全に開け放たれ、山吹が花園を晒しながら蹲踞の格好を取っている様が、
庭のどこにいても丸見えとなっていた。
山吹はその惨めたらしい格好のまま後孔を指で嬲られ、大声であっあっと喘ぐことを強制されていた。
耳まで真っ赤に染めたまま、尻に全ての神経を集めるよう命ぜられる山吹。
男の言葉をそのまま信じるなら、彼女の尻の輪はその最中にも、さも心地良さそうに解れていったという。

さらにしばらくの後、晩秋の頃。
山吹は柱に背を預けたまま正面から抱かれ、両脚を男の肩に乗せるようにして尻穴を犯されていた。
その光景が、やはり薄く開いた障子から覗き見えている。
山吹の顔は、いつしか苦痛に歪むこともなくなり、前でする時と同様に蕩けたようになっていた。
汗の浮かぶ額、上気した頬、確たる輪郭をなくした瞳。

「どうだ、腹の中で熱く硬い逸物に糞を掻き混ぜられるのも、大分心地良くなってきただろう。
 顔、両胸の芽、花園にあふれる蜜……全てが女の感じた姿そのものだからな」
男はそう言いながら、山吹の尻肉を掴んでゆっくりと腰を打ち付ける。
ぬちゃり、ぬちゃりと音がする。
「あ、ああ」
山吹は桜色の唇をひらいて小さく喘ぎながら、男の肩に乗せた両の脚をひく、ひくんと蠢かせていた。
月の光さながらに白い、細く伸びやかな脚。
その太腿も、脹脛も、足指も、全てが波打つような快感にひくついているようだ。

その様を目にして、辰吉は悟ってしまった。
あの愛らしかった山吹が、またひとつ変わってしまったのだ、と。



その事件は秋口に差し掛かる、ある日に起こった。

「……有難う御座いました」
山吹がようやくに事を終え、三つ指をついて男に礼を述べていた時だ。
突如襖が騒々しく開き、遊女の一人が姿を現した。
「お、お鶴!?お前、今日居たのか」
男が動揺した声を出す。どうやらその遊女とは顔馴染みらしい。
その遊女は男に一礼をくれたあと、事情の飲み込めていない山吹を睨みつけた。

「……この、泥棒!!」
お鶴はそう叫ぶと山吹に掴みかかる。
「ま、待てよお鶴、落ち着いて……」
男が割って入ろうとするが、お鶴に跳ね飛ばされて畳に尻をつく。
そこでお鶴の剣幕を思い知った男は、そそくさと衣服を整えて退散した。
「い、いたい!!ちょっとお鶴さん、何するの!?」
髪を掴まれ、肩に爪を立てられた山吹は気が動転するばかりだ。

「何を白々しい。あんた今、あたしの上客と寝てたでしょう!
 あの男はね、ずーっとあたしを指名してくれてたの、お得意様だったのよ。
 それを知ってて、取ったんでしょう!!元から人気の癖に、まだ男が欲しいの!?」
「そ、そんなの誤解よ!!私は、指名があったというからこの部屋に来ただけ。
 お鶴さんへの悪意なんか、これっぽっちもなかったわ!!」

そうして騒いでいるうち、志乃が他の遊女を連れて駆けつける。
「やめな!一体何事だい!?」
お鶴を引き剥がした志乃は、双方の言い分を聞いた後に裁定を下す。
「……そうかい。なら今回悪いのは、山吹だね」
「どうして!?私は、何も知らなかったのよ、悪意なんて……」
「いや、悪いのはお前さ。女将の立場でありながら、誰の客が誰かも把握できていない。
 別の遊女の贔屓にしてた男に手をつけた事も、間違いのない事実。
 仮に罪が五分五分でも、お前が怒りを汲んでやる事で丸く収まろってもんさ」
志乃は冷たく言い放ち、傷だらけの山吹の心を絶望に染める。

これは言いがかりに近い裁定だった。
どの遊女がどの客を取っているのかは、全て遣手である志乃のみが把握している。
志乃はそれを元に下男に指示を出して遊女を誘導させる。
山吹に出来る事といえば、辰吉に連れられて部屋へ赴き、そこで客を取ることだけだ。
一日に何人もの客を取り、誰よりも働きづめで常に疲労困憊である山吹に、他に何が出来るというのか。
しかし山吹は折れるしかない。
理不尽さは感じるが、山紫苑を維持するには、山吹自身が頭を下げるしかなかった。



折檻部屋に、再び地獄が繰り広げられる。

「さてと。人の客を取るような泥棒には、それ相応の折檻が必要だねぇ。
 ここいらじゃ、泥棒にどういう責めをしてんのか、その身体に教えてやるよ」

お鶴は、紅白色の腰巻だけを山吹に着けさせ、上は丸裸のまま柱を抱えさせた。
そしてその両手首を、腋を晒す格好のまま上方で結び合わせる。
背中を隠す長い黒髪は、首と掲げた腕に挟み込むようにして脇に垂らした。

その状態で遊女の一人が箒尻を手に取り、無防備な白い背中を打つ。
耳を切り裂くような容赦のない音が響き渡る。
「あぐうっ……!!」
山吹の口から苦悶の声が漏れた。
「顔は打つんじゃないよ」
お鶴が命じる中、山吹の美しい肩、肩甲骨、背筋、腰つきに赤い線が描かれていく。
時には三重四重と平行に走り、時には交差して、傷のない所がないほどに徹底的に刻み込まれる。
「うっ、んぅぐっ……!うぐうぅぅッ…………!!」
山吹の全身からは汗が噴出し、細い身体がうち震えた。

数刻の後、ようやく手首の戒めを解かれた山吹は力なくその場に倒れこむ。
しかしその両腕は抱え上げられ、容赦なく後ろ手に縛り上げられた。
「うあ……!!」
山吹は背中の痛みで覚醒する。
「おや、お目覚めかい。よくお眠りだったから、今度は水に漬けて起きて頂こうと思ったんだけど。
 まぁどっちでもいいわ、やんな」
お鶴の声で、後ろ手に縛られた山吹の足首にも縄が巻かれる。
その縄は天井の滑車に通され、山吹の身体は遊女達の引きに合わせて天井近くへ吊りあがった。
離れていく床の一部には、並々と水の汲まれた巨大な桶がある。
「ひっ……」
これからなされる事を把握した山吹が顔を引き攣らせた。

彼女の予想通り、吊られた山吹の身は勢いよく桶の中に沈められた。

「がぼっ……!!がぼっ、がぼぼっ……!!」
水に落とされた衝撃で空気を吐き出しながら、山吹は胸に強い痛みを覚えていた。
季節は秋口、寒いとまではいかないが暖かい季節ではない。
その時期に冷たい水に漬けられるのは、かなり心肺への負担がかかる。
苦しみもがく山吹の身体が、一旦水から引き揚げられた。

「げほっ、げほっえほっ!!うええええっ!!!」
かなりの水を飲んで空気を足りていない山吹は、酷く咳き込む。
「どうだい気分は、反省したかい」
そうお鶴に問われても、咄嗟に答えが返せる状態ではない。
すると、山吹の身体は再び水に漬けられた。

再度あふれ出す空気、全身を襲う寒気。窒息の苦しみ。
「さぁ、どうだい」
次に水から引き揚げられた時、山吹はすぐに口を開いた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!!!」
しかしそうして謝罪しても、底意地の悪いお鶴が容易に赦すはずもない。
「誠意がないね。長めに漬けな」
そう冷たく言い放ち、山吹に更なる苦しみを与える。

肺の空気がなくなっても、大量に水を飲んでも終わらない三度目の水責め。
山吹の身体は苦しみに痙攣し、やがてその腰巻の一部が変色しはじめる。
それは腰巻から流れ落ち、腹部を伝い落ちる時に薄黄色をしているのが解った。
それは桶の中の水に溶け、かすかな刺激臭を漂わせる。
「あはは、流石は失禁太夫さまね。これだけ苦しめられても自己流を貫くなんて、大したものだわ」
お鶴が笑いながら引き揚げる指示を出す。
意識も朦朧として口から水を吐き零し続ける山吹は、お鶴を眺めて口を動かした。

「…………お、おつるさん…………ほ、ほんとうに、反省、しているの…………。
 ごめんなさい、わたしが、わるかったわ…………」

何とか赦しを得ようと、失神寸前の状態で言葉を紡ぐ山吹。
その彼女に、お鶴は冷ややかな表情の裏で思う。
何を言っても無駄、どう媚びたって無駄。
お前の地獄巡りは、私が飽きるまで続くのよ……と。





「お嬢様、お嬢様っ!大丈夫ですか!?」
辰吉は、机に寄りかかったまま眠る山吹を揺り起こした。
山吹が眠そうな瞼を開く。
白い吐息が辰吉の頬を撫でた。
「……辰吉さん……?ああ、ごめんなさい、眠ってしまっていたのね」
「いけませんよ。火鉢を焚いているとはいえ、まだまだこの部屋は冷えます。
 お休みになるなら、布団の中になさった方がいいです」
辰吉はそう言い、ぶるりと身震いする山吹の背に半纏を掛ける。
「暖かいわ」
「そうでしょう。憶えていらっしゃいますか、これ、あの雪の日に……」
「ええ、私が縫ったものよ。肩口がどうにも上手く縫えない頃で、別の布を当てて誤魔化しているんだわ」
山吹は半纏の裏を見ながら、恥ずかしそうに笑った。
辰吉は彼女に温かな柚湯を淹れる。

「……店の方は、どうですか」
辰吉は、山吹の手元にある帳簿を見やりながら問うた。
山吹はやや寂しそうに首を振る。
「厳しいわね、この時期はお客様も少ないし。
 本当は私が一日十人ほどお相手出来ればいいのだけど……痛くって」
どこが、と山吹は言わず、辰吉も聞かない。
山吹はしばしの沈黙の後、それに、と付け加えた。
「帳簿の計算も合わないの。
 金銭に関わる部分はお志乃さんにだって任せてないのに、 毎月三両近くが見世から無くなってる。
 見世の皆を疑うわけじゃないの。でも、これ以上はもう……」

山吹がそう言った時だ。俄かに見世先が騒がしくなりはじめた。
「……何かしら」
山吹は帳簿を閉じ、引き出しにしまってから障子を開ける。
それが地獄の釜の蓋だとも知らずに……。



山紫苑の見世先には二十人余りの男達が詰め掛けていた。
男達は玄関口で志乃と言い合っている。
「お志乃さん、一体何事なの!?」
山吹が下駄を鳴らして姿を現すと、男達が喚き出す。

「この見世で、今日は何人ででも遊べるってぇから来たんだぜ!?
 それをあの女、今日相手が出来る新造は三人だけだなんぞと抜かしやがる。
 こりゃあ一体どういう事だ、ああ女将さんよぉ!?」

男達は怒り心頭といった様子で山吹に詰め寄った。
山吹には何の事やら解らない。
確かに今日出られるのは、山吹を含めても三人だ。最近は寒く、客足も遠のいている。
そんな折に何人も見世にいても、という遊女達の言葉を聞き入れ、休暇を与えていた所だった。
それを見透かしたようなこの大人数。
他の見世による妨害か、あるいは……。
山吹がそう考えていた所へ、まさに疑惑の当人である志乃が声を掛けた。

「これはまずいよ山吹。あの人らは、遊郭でも頻繁に姿を見かける常連だ。
 その人達を怒らせたままじゃあ見世の風評が悪くなって、お取り潰しの憂き目に遭っちまう」
志乃はさも山紫苑の心配をしているという風を装っている。
しかし今の山吹には、その本心が透けて見えた。

やはり裏で糸を引いているのはこの志乃だ。
先ほど志乃と男達が言い合っていた時の空気と、今騒ぎ立てている空気。
その微かな空気の違いを比べれば、志乃とこの男達が内通している事は容易に感じ取れる。
志乃の謀も杜撰になったものだ。
何度も彼女の顔を立てて従っているうちに、山吹の事を考える頭のない木偶とでも見たか。
……しかし。しかしながら山吹は、今回も志乃の謀に乗らざるを得ない。
母の遺した山紫苑を護るために。

「……わかりました。女将である私が、皆様のお相手をいたします」

思った通り、山吹がそう申し出ると、男達の雰囲気ががらりと変わる。
怒りの空気から、飢えた獣のような気配に。
「そうかいそうかい。じゃあ愉しませてもらうぜ、紅華太夫の娘さんよぉ」
顔を舐めるようにして告げる男の濁った目を、山吹は凛とした瞳で受け止める。


「む、無茶です、壊れてしまいます。お嬢様……!!」
何十という男と共に門を潜る山吹を見送りながら、辰吉は言い知れぬ悪寒に唇を噛んだ。


その地獄は、山紫苑の「松・竹」二部屋を仕切る襖を取り払い、吹き抜けとした仮設の大部屋で繰り広げられた。

「おらおら、次々代われよ!まだ後が支えてるんだからよ!!」
そう野次が飛び、果てた男と入れ替わりに一人が背後から山吹の身体を抱いた。
「おおっ……。へへ、餓鬼のくせにしっかり締め付ける技を身につけてるじゃねぇか。
 奥が吸い付いてくるみたいで、たまらんぜぇ」
男は強く山吹の腰を掴み、一切の容赦なく腰を叩きつける。

山吹の顔側では、また別の男が逸物をしゃぶらせていた。
肉茎をやわらかく指で扱き上げ、先端を口の中で転がす絶妙の口戯。
「ああ、あ、駄目だこれ、すげえっ……!!!」
一人が忽ちに射精へと導かれ、しかし間髪置かずに別の男が山吹の唇へ逸物を宛がう。
山吹は一刻の間隔さえなく、常に複数の男達に群がられていた。
前後左右様々な姿勢から逞しい物で花壷を犯され、口唇奉仕を強要される。
花魁としての経験と技巧を身につけた山吹は、群がる男を次々に射精に導いていくが、いかんせん数が多すぎる。

「はっ、はぁっ、はぁ、はあっ……」
山吹は何十度目かの口戯の最中、息が続かずに怒張を掴んだままで息を整えた。
その顔は汗に塗れ、彼女がどれほど疲労しているのかをよく物語っていた。
しかしそれを隙と考えた男が、山吹の頭を掴んで喉奥深くへ逸物を叩き込む。
「えおっ!?」
「へへ、ようやっと余裕のない顔が出たな。女は素直が一番だぜ?
 ……ふむ、中々いい具合に喉奥へ入っていくな、こんなのももう経験済みってか」
男は言いながら、山吹の喉奥を掻き回す。
「おっ、おえっ、げぼっ……!!!」
山吹は嘔吐こそしないものの、涎を次々に吐き零し、鼻からも汁を垂らして苦悶した。

山吹の身体は時が経つほど乱雑に扱われるようになり、やがては前へ挿入されている最中の山吹へ、
もう一人が密着して逸物を宛がう。
「あうっ!!」
喘ぐばかりだった山吹が突如として大声を上げた。
「へへ、おい見ろよ!!こいつ糞の穴にも入るぜ!?」
「マジかよ!?おいおい、早く代われよ、どんな具合なんだ?」
「糞穴に入れるなんざ正気じゃねーなぁ。だがせっかくの機会だ、試してみるか」
男達は新たな加虐手段に目を光らせ、前後から山吹を犯し始める。
「あ、あう!あう!!ああううううっ!!!!!」
多くの客を取ってきた山吹とて、前後から挿れられる経験は初めてだ。
彼女はその未知の感覚に顔を歪め、男達に抱え上げられた両脚を強張らせて悶え狂う。


悲痛な宴は夜が明けきるまで続けられた。
二部屋の至る所が精液や汗、その他様々な体液で汚され、酒と男の匂いで噎せ返るほどだった。
やがて畳に倒れ伏したまま動かない山吹を残し、男達が引き上げようとする。
「…………まって…………お、お代…………」
それを山吹の声が引き留めた。
彼女は意識も朦朧としているような有り様ながら、這うようにして男達ににじり寄る。
「あ、ああ……そらよ」
最後尾の男は顔を引き攣らせながら銀貨をばら撒いた。
そこに残っている、五人分の料金だけを。
山吹の目が見開かれた。

「ご、五人なはずないでしょうっ!」
そう叫ぶ山吹に、男の数人が気圧される。しかし中には平然としている者もいた。
「……何言ってる、ここにいるのは5人さ。
 文句があるなら、何人いたと思うのかをきっちり教えな。
 言うまでもねぇが、1人でも多く吹っ掛けやがったら承知しねぇぞ」
そう言い放たれ、山吹の瞳が惑った。
山吹が硬直している間にも、男達は一人また一人と帰り始めている。
やられた。
山吹を犯した正確な人数、そんな物は解るわけがない。
例え的確な人数を言い合てたとしても、証拠がない以上は相手の言い分でどうにでも覆せる。
「そんな…………こんな、こと……って…………!!」
山吹は絶望の言葉を吐きながら意識を失い、力なく畳へと倒れ伏した。


「ええーっ嘘、『松・竹』の二部屋貸切にした上に、これだけ廓中汚されて、たったの五人分?」
遊女の一人が信じられないといった表情で山吹を睨む。
他の遊女も、志乃も、同じく山吹の吊るし上げに加担していた。

「何人の客を相手にしたのかも把握できないようじゃ、花魁失格だよ。
 加えて見世に大損害を与えるなど、女将としても度し難い。これは猛省が必要だね」
志乃は正座させた山吹を見下ろしながら宣言する。
今になって解る、心の内から愉しそうな表情。
あるいは紅華が病に伏せるよう仕向けたのも彼女かもしれない。そう思える異常性。

「……おや山吹、なんだいその瞳は。まさかお前、このあたしに逆恨みでもしてるのかい。
 とことんまで性根の腐った女だね。
 お前達、こいつの骨身に染みるような、一番きっつい折檻をしてやんな!!」
志乃はそう言い放ち、遊女達に山吹を引っ立てさせる。
人を疑えない、心優しい山吹は、しかしついに彼女へと不屈の視線を向け始めていた。





数刻の後。
山吹は、駿河問いの格好で吊るされたまま笞打ちを受けていた。
顔も含めた全身至るところを滅多打ちにされている。
さらには用いる責め具も、牛の革で作られたしなやかな笞だ。
以前に使われた箒尻とは格が違い、皮膚の張り裂けるような鋭い痛みを対象者に与える。

「ぎゃッ!!あっ、うあぁっ!!ひいぃッ!!!」

山吹は悲鳴を上げ続けていた。
悲鳴を上げては暴れ、また悲鳴を上げ、やがて息をすることさえままならなくなっていく。
吊られる『駿河問い』のつらさと、笞の痛み。
しかもそれだけではない。
足の親指と人差し指の間に、右足は赤、左足は白の蝋燭を括りつけられており、
痛みに身を捩るたびに色とりどりの蝋が美しい背中を汚す。
「あははっ綺麗な紅白だよ。さすが芸事を修めてらっしゃるだけあって、芸術的だねぇ」
笞を振るうお鶴が嬉しげに笑った。

山吹の涙が、頬から顎先へ伝う。全身も至るところが汗で濡れ光っている。
その身体を容赦なく笞が襲った。
「ぎゃあっ!!……っあ、あうぅ……」
苦痛のあまり山吹が気を失うと、冷水が浴びられて無理矢理に意識を引き戻される。
「はぁ、はぁ、い、いつまで、続けるつもり……?」
「さぁ、特に何も言われてないわ。別にあんたが死ぬまででもいいのよ?」
そのようなやり取りが何度も交わされ、山吹は何度も失神しては目覚めさせられた。
やがて声さえ発さなくなった頃、ようやくにお鶴は笞打ちを止める。

「ふん、情けなく失神してるわ、汗やら何やらでくっさいわねぇ。
 まぁこれからもっと酷い有り様になるんだから、関係ないか」
お鶴はそう吐き捨てながら、山吹の縄を解かせ始めた。



山吹は朦朧とした意識の中で、湯のみ一杯の液体を飲まされる。
「うえっ……!」
あまりに不味いのか吐き出しかけるが、全て飲み干す事を強要された。
「今飲ませたのは、強烈な下剤よ。あと少しで効いてくるわ」
お鶴はそう言いながら、再び遊女達に山吹を拘束させ始めた。

首を支えに逆立ちをした状態で、両膝を頭の側面まで降ろす姿勢。
秘部と肛門が天を向く格好だ。
惨めさもさる事ながら、散々に背中を笞打たれた山吹にとっては、
その姿勢を維持する事自体が涙の出るような苦行だろう。

「ふふふ、いい格好。あの紅華太夫の娘が三流遊女の前でこんな姿を晒すなんて、
 一体誰が思ったかしら」
お鶴はそう言いながら山吹の尻肉へ指をかけ、肛門を開いて見せた。
「可愛い不浄の穴ねぇ。散々犯されて、さすがに開いてしまってるけど」
その言葉と共に肛門を開いて、閉じて、を繰り返すと、周りの遊女から笑いが起きる。
「くっ!!」
山吹は顔を顰めた。
「何だか後ろの穴は物欲しそうだわ。折檻部屋には大抵何か転がってるから……
 うん、これがいいわ」
お鶴は手近な箱から張り型を取り出し、山吹の肛門に宛がう。
「ちょっと、そっちはもっやめ……!!」
山吹の非難も空しく、張り型は桜色をした直腸内へと入り込んでいく。
そしてある程度まで入ると今度は抜き出され、また挿し込まれ、一定のリズムで抽迭され始めた。

「う! う! う! うっ!!」
山吹は後ろの穴が弱いのだろうか、一突きごとに呻きを上げる。
「なんだ、煩いねぇ。これでも咥えときなよ」 
別の遊女にとっては山吹の喘ぎは耳障りだったらしい。
彼女は山吹の口に竹の一節だけ切り取ったものを嵌め込み、それを縄で首裏に括りつけた。
その簡易な猿轡で、山吹の声は殺される。
「んおうぅぅあえーーーっ!!!」
だがしばらくすると山吹は、それでもなお漏れるほどの声を上げ始めた。
何が起こったのかと訝しむお鶴達は、その直後に事実を知る事となる。

「あーあー、出てきた出てきた!」
一人の遊女が、山吹の肛門を差して叫ぶ。
彼女の差す先では、お鶴の抜き差しし続けていた張り型を押しのけるようにして茶色い液が漏れ始めている。
「おっと、ようやくかぁ。随分とよく堪えてたものね」
お鶴が満面の笑みで張り型を抜くと、その瞬間栓が抜けたかのように汚液が溢れ始めた。
「んむうううううぅぅーーーーっ!!!!!」
山吹が目を見開いたまま頭を振る。
下痢便は幾度か飛沫のように噴き上がり、次いで肛門を押し開くように流れ出して山吹の身体を汚した。
剥き卵のような尻、すらりとした脚、細い腰つき、柔らかな乳房、すっきりとした首元……。
「いああああーーーっ!!!」
汚液は山吹の顔にも容赦なく流れ落ち、小鼻や固く閉じた瞼の上を通り過ぎていく。
しかし竹を噛まされた口だけは防ぐすべもなく、奔流の幾筋かが舌へ絡み、喉奥へと入り込んでいく。

「あっはっはっはっは、ぶり、ぶびびいいって物凄い音!
 匂いも鼻が曲がりそうに堪らないわ」
「惨めねぇ。あの『紅華太夫』の娘なんていっても、うちらと何も変わりやしないわね。
 今までの世の中が、変にこいつを特別扱いしすぎてたのよ。
 せいぜいそうやって、自分自身が出した汚物に塗れたまま一晩を過ごしなさいな」

お鶴達はそれで満足したのか、なおも溢れ出る汚物に塗れたままの山吹を残して部屋を出る。


辰吉は布団に包まり、その全てを耳にしていた。胸が張り裂けそうになりながら。

やがて彼は『禁忌』を犯す。
志乃達全員が寝静まった頃、折檻部屋へと忍び入ったのだ。
すぐに鼻の曲がりそうな異臭が漂ってくる。
辰吉はその只中にいる山吹の傍へ屈み込み、水に塗らした布でその顔を拭った。
そして縄を解いて口枷を抜き取った時、辰吉は山吹の瞳を見る。

「………………負けない」

ぞくり、とした。

「…………絶対に花魁の中の花魁に、なってやる…………」

しわがれた声で呟く山吹を前に、汚れた布を握りしめながら辰吉は、どうしてか涙を零していた。


                       終わり
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最愛の犠牲者

※ おつまみ的小ネタ


悠斗は小学校の中で、いわゆる虐められっ子に属する。
給食の白米に牛乳をぶちまけられ、体操着を引き裂かれ、机の中に虫を入れられる。
校舎裏で自慰を強要される事も日課の如くだ。
しかし、彼は耐えていた。
人間の邪悪な心は長続きはしない。耐えていれば、いつか虐めっ子たちも飽きると信じて。
だがそんなある日、加虐者の1人が薄ら笑いを浮かべて放った言葉に、彼の心は凍りつく。

「しっかし、お前の姉ちゃんもすげぇよなあ」

彼はそう言いながら、一枚の写真を跪く悠斗の鼻先に舞い落とした。
悠斗の目が見開かれる。
それは、高校生である彼の姉・郁美が、虐める側の少年達に犯されている写真だった。

「驚いたぜ。お前みたいなウスノロの姉貴が、県大会で優勝したあの大和崎高校ソフト部の主将だとかよ。
 クソ真面目そうな黒髪まっすぐ肩まで伸ばして、自信満々に前だけ見てて、正直ビビッたぜ。
 ま、流石にお前と同じ血筋だけあって、弟の恥ずかしい写真見せまくったら顔真っ青になってたけどな」

悠斗は、一週間ほど前から急に家に戻らなくなっていた姉を想う。
勉強にもスポーツにも熱心に励み、小学校時代から学生の鑑と言われ続けてきた。
母以上に厳しく、悠斗が悪友に誘われて万引きをした時には泣いて怒り、店主に土下座した生真面目な姉。
その姉が、写真の中で虐めっ子達に穢されている。

「おい、あの映像見せてやれよ。最初にケータイで撮ってたの、コウタだろ」

1人が言うと、コウタは騒々しくガムを噛みつつ、片手ポケットのまま携帯を操作する。
そして小学生らしからぬ笑みで液晶画面を悠斗に向けた。
動画が映っている。
どこかのマンションらしく、窓の外にビルが立ち並ぶ部屋。
そのソファに全裸の郁美が脚を広げて座らされ、少年達にその身を嬲られている。
虐めっ子達は高校生の郁美と並ぶと小柄に見えた。
その小柄な悪魔達は、ある者は郁美の秘部に指をいれ、ある者は乳房を揉みしだく。

「おねーさんのデカパイ、マジやらけー。モチみてぇ」
「アソコ濡れてきたねぇ、真面目一筋に見えるけど、意外に遊んでるんだ?」

虐めっ子達は言葉責めをかけながら、郁美を嬲り者にしていた。
郁美はその悪辣な小学生に屈するものかと言いたげに、顔を横向けたまま怒りの表情を見せている。
しかし携帯の画面がアップに撮る秘部は、少年の指の嬲りによって明らかなテカリを帯びていた。
そこで動画が終わり、コウタが携帯を閉じる。

「お前のねーちゃん、マジ頑固なんだよね。裸にしてアソコとかチチ触りまくっても、全然反応しねーし。
 どう感じてるか言わねーと弟ボコるぞっつっても、クソ不機嫌そうな棒読みばっかすっし。
 ま、マンコの具合は結構よかったけど。な!」

虐めっ子の一人は薄笑いを浮かべて言い、隣の少年に問いかける。
その少年も品のない笑いを浮かべて頷く。

「マジあれはキモチよかったな。女のマンコってこんなに締め付けてくんだ、って感動したし。
 しかも相手は高校生のねーちゃんだしよ。
 ずっと年上の女に弟の為だろ、つって自分で腰動かさせるのは最高だったわ」
「ああ。俺らとした事がセックスに夢中になりすぎて、誰も映像に撮ってなかったのは失敗だったけどな。
 かなり色々やりまくったぜ。ネットで48手とか検索して、試せるだけ試したりとかよ。
 まー俺らがチビでねーちゃんの方がでかいから、できねー体位も結構あったけどよ」

虐めっ子達は陵辱の状況を思い出すかのように笑いあった。


「お、ラッキー。ちっとだけ携帯に画像残ってんぜ。いつ撮ったかおぼえてねェけど」
1人がそう言い、携帯の画面を周囲に見せる。
それを覗き込んで口を吊り上げた後、意地の悪い視線と共にその画像が悠斗に向けられた。
姉の陵辱、の断片。
全裸のまま床に転ばされ、大股を開いた上で腕を掴まれて挿入を受けている。
小学生ながら充分に男の象徴たりえる逸物が、見間違いようもなく姉の秘裂に入り込んでいる。
10年近くぶりに見る姉の秘部は陰毛が薄く、結合の瞬間がはっきりと見えてしまっていた。
郁美の顔は、虐めっ子達が言うように無反応を貫いている。
性交という運動によってほのかに頬が紅潮してはいるが、顔はきりりとしたいつもの姉だ。
だからこそ、か。
その姉の姿に被さる何人もの少年の影が、異様なほどおどろおどろしく見えるのは。

「おら、もう一枚だ」

虐めっ子の指が液晶を撫で、次の画像が表示される。
床に両手をつき、バックスタイルで犯される姉の姿を下から捉えたもの。
ちょうど抜け出た辺りを撮ったのか、郁美の桜色の秘部に入り込む逸物の大きさがありありと解る。
先ほどの画像よりも郁美の身体に力が入る格好のため、その引き締まった身体も際立っていた。
細いながらに、二の腕に必要なだけの筋肉がついた手。
運動部らしくたるみなく引き締まった腹部。
挿入を受け、大股を開きながら筋張っている、やや筋肉質ながらも意外なほど柔らかそうな脚。
観たこともない姉のカラダ。

それは美しい……のではなく、おぞましく悠斗には感じられた。
いつもの姉ではない姉。穢されている姉。犯されて耐えている姉。
今のこの映像は、先ほどのものより少々時間の経った後なのだろう。
姉の身体に滴る汗の量も違えば、その肌の赤みも違っている。
郁美はもう全くの無表情とはいかず、歯をかすかに食いしばって挿入に耐えていた。

悠斗が動悸を速めながらもう一度挿入部付近に目をやれば、新たに残酷な発見がある。
姉の秘部の周りには、先ほどにはなかった雫が流れており、そのうちの一筋は内腿を伝って、
今まさに映す画面へと滴ろうとしている。
虐めっ子達に嘲笑われながらも携帯に目を近づけてよくよく観れば、その綺麗な脚には、他に幾筋も薄い雫が伝っている。

虐めっ子はそこで携帯を手元に戻し、映像を消した。
悠斗に向けた笑い声が場に広がる。
それをひとしきり終えた後、1人がなお肩を震わせながら告げた。

「ま、ほとんど画像がねーが、何となくは解ったか?ねーちゃんがどんな目に遭ったか。
 でもまー、繰り返すけどホント強情なねーちゃんだったぜ。
 あんまり落ちねーから、俺らもちっと頭に来て、風呂場でスゲー事したんだ。
 そっからはちゃんとデジカメ探し出して記録してっから、まぁ一緒に観ようや」

虐めっ子は悠斗の横へ座り込み、肩を強く抱いて囁きかけた。
別の1人が鞄からデジタルカメラを取り出し、周りと笑いあいながら悠斗の目の前で再生する。



それは、直視も憚られるような映像だった。
風呂場に連れ込まれた郁美が、数人の手で壁に手をつくように押さえつけられる。
そしてシャワーヘッドを外したホースを尻穴に入れられて湯を注ぎこまれるのだ。
きゆううぅ、っと独特の音を立てて水が水道管を流れていく。
それはホースを通じて郁美の肛門へと入り込む。
肛門とホースの間から溢れる湯が、間違いなく湯の入り込んでいる決定的な証拠だった。

湯は勢いこそ弱いようだが、着実に郁美の腸へと入っていく。
郁美は表情こそ変えないが、やがてその腹部のへこみが緩くなっていく。
そしてかすかに膨らむほどに見えたとき、急激に郁美の脚が震え始めた。
「おやおやおねーさん、もう限界なんですかぁ?」
虐めっ子が嘲るような口調で茶化すが、郁美にもう余裕などない。
浣腸など初めてなのだから当然だろう。

そうして湯を軽く腹の膨らむまで入れた後、美しい姉は、そのまま中腰での排泄をさせられた。
凛とした顔つきのまま、洗面器に茶色い汚液をぶち撒けさせられる姉。
湯が思った以上に入り込んでいたのか、汚液の勢いは強く、洗面器から飛沫きつつ溢れて風呂場のタイルを汚す。
それら全てを嘲笑い、映像の中には頭のおかしくなる様な、爆音の如き喧騒が反響し続けていた。

デジタルカメラでの映像はそこまでで、それ以後は静止画での記録となる。
郁美はそこから、尻穴の調教を受けたようだった。
わざわざ拘束しての指入れから始まり、様々な道具を使って調教を行われていた。
いくつもの真珠のような球が連なった棒を出し入れされる途中からは、責め具を伝って排泄物が溢れているのも見て取れた。
虐めっ子達は周到なもので、それらを姿見を使って全て姉に見せ付けているのだった。
郁美の顔は、凛としたものから、しばしば目を細めるようになり、やがて瞼を強く閉じて唇を噛むようになっていく。

「ちなみに、これが昨日の晩だよ。どう弟としては、マジかわいー姉ちゃんだと思わねぇ?」

虐めっ子はそう告げながら、デジカメの最後の一枚を表示させる。
その中の郁美は、騎乗位のままさらにその後ろからも挿入を受け、目を見開く凄絶な表情を見せていた。
その太腿には、意味は定かではないが6つほどの正の字が書かれ、
また彼女の桜色の乳首の両方を、冷たそうな銀のピアスが貫いている。
ぞくりとしながらよくよく目を凝らせば、画像中の挿入部分、クリトリスと呼ばれる部分にも銀の光が見えた。

「お前の姉ちゃん、今センパイとかにマジ気に入られてっから、俺らの財布ホクホクなんだ。
 だいぶお前にも興味なくなってきたし、そろそろ遊ぶのもやめてやってもいーかもな」

虐めっ子達はそう言いながら、デジタルカメラを取り上げる。
そして満足げに笑いながら。放心状態の雄太の元を去りはじめた。



                               終わり
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