■ 1 ■
智也は腰掛ける格好のまま、寝台に横たわる澄泉を見下ろしていた。
幾度となく生唾を呑み込む。
まるで濃厚な粘り気を嚥下するがごとく、その“現実”の受け入れには時間を要した。
「……感動しちゃうな。あの澄泉ちゃんの裸なんだよね、今見てるのって。
澄泉ちゃんってあんまり可愛いから、トイレしてる姿が想像できないって、
クラスの皆が噂してたんだよ」
智也はかすかに震える声で告げた。
自分が何を言っているのかは、上空を漂うような意識でしか解らない。
「そうみたい、だね……ラウラから聞いたよ。ちょっと特別扱いしすぎだけど。
私だって、皆と同じようにトイレくらいするよ」
澄泉は和人形のような愛らしさに、やや恥じらいを浮かべてはにかむ。
よく見れば見るほどに、現実からかけ離れた容姿だ。
どちらかといえば吊り気味な、宝石と見紛うばかりに深い黒を内包する瞳。
極上の生地からほんの少しつまみ出したような鼻梁。
品のよさと大人しさを感じさせる、ごくごく小さな唇。
それら逸品の数々が、まろみを帯びた顎へ繋がる輪郭の中、絶妙に配置されている。
全体には下寄りの配置。子供の顔の特徴だ。
けれども澄泉の顔を見て受ける印象には、妹のような愛らしさだけでなく、
母性とでも表すべき厳かさもある。
まるで男が惹かれる要素を計算し尽くし、神が悪戯で作り上げたかのように。
澄泉が不幸な体験をしてきたのは同情すべきことだが、けれどそれも仕方がない、と智也は思う。
世のほとんどの男にとって、ここまでの容姿の持ち主と関われる経験はまずないだろう。
であれば、何かしらの働きかけをしてみたくなるのが本能というもの。
色恋に極めて消極的な智也でさえ、それは痛いほどに理解できた。
長い時間を経て、ようやく智也の中に現実感が戻ってくる。
彼は静かに左手を伸ばした。
一旦伸ばしかけ、少し躊躇ってから、再び伸ばして澄泉の頬に触れた。
触感を以って、目の前のものが現実であると確信するために。
( うわ……すごい、ふくふくのほっぺた。赤ちゃんみたいだ )
澄泉の頬を軽く摘むと、それだけで衝撃が走った。
絹のような肌触りと、つきたての餅のようにふわりとした肉。
それは指先にえもいわれぬ至福をもたらす。
「ふふっ」
小さな笑い声がし、智也を見上げる澄泉の瞳が和らいだ。
「ご、ごめん!」
智也は何が悪いのかも解らぬままに謝罪を口にし、手を引っ込める。
澄泉の薄い微笑みは変わらない。
「……いいよ。もっと……触っても」
澄泉の腕が動き、シーツに乾いた音を立てた。
つられてそちらに目をやった智也が捉えるのは、澄泉の肢体。
月明かりだけの暗い部屋でなお、その肌の白さが解る。
天使のように華奢な身体つきだ。
けれどもこの裸体は、垢抜けた服で着飾っていた時より肉感的に見える。
けして無機質ではなく、二の腕や太腿のふっくらと柔らかな肉付きは、十分に智也の情欲をそそった。
「澄泉、ちゃん…………」
本能の赴くまま、智也は澄泉に顔を近づける。
そしてひとつ生唾を呑み込んで、ゆっくりと唇を奪う。
憧れの澄泉とのキス。
それは拒まれることはなく、柔らかい唇で迎え入れられた。
爽やかな香りが鼻腔を抜ける。
唇よりやや弾力のある舌を探し出して、絡めさせる。
舌へ纏わりつく澄泉の唾液は、無味無臭であるはずなのに甘く感じた。
造りのいい鼻から漏れる吐息は、口づけが長引くほどに荒ぶっていく。
生きているのだ。この人形のように美しい少女も。
智也は唾液の糸を引きながら、澄泉の唇を解放する。
そして次には、細い首へと口づけを触れさせた。
「ふっ」
澄泉の喉が強張るようにうごめく。
それを舌先に感じながら智也は、少女の鎖骨、さらにその下へと舌を這わせていく。
産毛さえないような肌。しっとりとしていて、暖かい。
胸骨の辺りを嘗めていると、左右の手に柔らかいものが触れた。
乳房だ。見た目にはさほど膨らみがないものの、実際に触れてみると間違いなく柔らかい。
白い丘の頂点に芽吹いた突起を摘むと、澄泉の身体が震える。
「んっ……!」
澄泉のその反応は、その蕾が間違いなく女性の性感帯なのだと智也に知らしめた。
そうなれば俄然興味が湧いてくる。
右手で胸の肉を摘むように盛り上げ、頂上の蕾を口に含む。
左手も同じように胸の肉を搾り出しながら、指の腹で蕾を挟む。
そうして左右の突起を、慈しむように優しく転がしはじめた。
「あ、うんんっ!!ん、んんっ……!!」
反応は確かなものだ。
智也が見上げると、澄泉は軽く握った手を口に当てて智也を見下ろしていた。
嫌がる素振りはない。
それを悟って、智也は胸への刺激を再開する。
押し殺したような澄泉の声が何度も上がり、細い身体が震えた。
その結果として、胸の突起は次第に、次第に、その硬さを増していく。
はじめは慎ましかった見た目が、いつしか赤らんで尖りはじめる。
( 気持ちいいんだ、これ )
澄泉の小刻みな吐息を間近に感じ、智也は確信する。
胸の小さな女性は、遮蔽物の無いぶん感度がいい。
いつだったか金髪のクラスメイトから聞いた話が脳裏に浮かんだ。
智也もまた、自分が澄泉に快感を与えているという事実が心地良い。
智也の舌はさらに澄泉の身体を下り、極上のベッドのような腹部を過ぎて、
とうとう恥じらいの部分に至る。
風呂場で手入れしたのか、薄めの茂みは綺麗な逆三角だ。
そしてその下に、ほんの僅かに淡い桜色が覗いている。
智也の興味が『そこ』へ達した事に気付いたらしく、澄泉はゆっくりと脚を開き、膝を立てる。
ついに露わになった、澄泉の性器。
智也は夢の中で、あるいは妄想に耽りながら、何度その部分を思い描いただろう。
かくしてそれは、希望を壊すことはなく、慎ましい出で立ちをしていた。
さすがに思い描いていたような、縦一文字にぴっちりと閉じているということはなく、
何度も使用されたと思わしきやや花開いた秘裂ではあったが、色合いはなお淡い桜色だ。
智也はもう何度目になるのか、息を詰まらせて凝固したような生唾を呑み込む。
古地図に描かれた財宝へ辿り着いたような興奮が沸き起こる。
「さ、触るよ」
智也は宝の持ち主に了承を求めた。可憐なその主は、口に手を当てたまま小さく頷く。
暗くてよくは判らないが、その顔はかなり紅潮しているように見えた。
智也もまた頬を赤らめながら、ゆっくりと澄泉の花弁に触れる。
柔らかかった。
頬に触れた時と同じような快感が、指先に走る。
その柔らかな花弁を両の親指で押し広げると、中からはより淡いピンクが覗いた。
内臓の色だ、けれども、なんと鮮やかなのだろう。
しかもその鮮やかな肉は、かすかに何かの液で濡れ光ってもいた。
そのてかりは、智也から理性を奪う。
まるで引き寄せられるように、智也は顔を澄泉の恥じらいの部分に近づけていた。
一舐めする。澄泉の内腿がぞくりと反応するが、構わず舌を這わせる。
鼻腔に流れ込む、澄泉の根源の匂い。
全くの良い芳香という訳でもない。
これほど美しい少女でもやはり人間なのだと解る、生々しい匂いだ。
けれどもそれは、智也の野性を的確にくすぐる。
智也は澄泉の柔らかな腿に手を掛けたまま、秘部に舌を這わせ続けた。
獣になった気分で何度も舐め上げ、舐めまわす。
しかし、今ひとつ愛撫の仕方というものが解らない。
舌だけというのも面白くないと、おもむろに2本指を捻じ込もうとすると、
今までにない勢いで澄泉の身体が跳ねた。
「いっ……!!」
澄泉の顔が明らかな苦痛を示している。
「えっ!?」
智也は狼狽するばかりだった。
十分に濡れているように見えたし、秘部もかなり使われている筈なのに、あれで痛いのか。
申し訳ない事をした。怒らせてしまった。
少年が瞳を惑わせていると、澄泉が静かに彼の瞳を覗きこむ。
「ごめん、ビックリさせちゃったね。智也くん……こういうの、初めて?」
逆に澄泉から気遣われるような格好になり、智也はばつの悪さを感じる。
けれどもその問いには、正直に答えることにした。
「う、うん。実は……初めて、なんだ。ごめん」
また意味もなく謝ってしまう。本当に澄泉と話していると、ペースが狂いっぱなしだ。
けれども澄泉は、その愛らしい顔に穏やかな笑みを湛えるだけだった。
「わかった。じゃあ、任せて」
澄泉は諭すようにそう囁くと、身を起こして智也に圧し掛かるようにした。
少女の細身ながら、智也はベッドの上で簡単に体勢を崩されてしまう。
「緊張しなくていいよ。私、ちょっとは慣れてるから」
澄泉は照れ半分、慈しみ半分の柔和な表情で、智也の顔を抱くように見下ろしていた。
窓からの月明かりが後光に差すその光景を、きっと智也は、いつになっても忘れないことだろう。
「あ、あああ……あっ!!」
智也は、声が抑えられなかった。
彼はシーツに仰向けに寝る格好で、澄泉に逸物を舐め上げられている。
初めての『フェラチオ』は、想像を遥かに凌ぐ心地の良さだった。
小さな口が深々と智也の逸物を咥え込み、その奥で舌がチロチロとカリ首を舐めまわす。
吸引するように口を窄めて上下され、小さな手でも玉袋や肉茎を弄ばれれば、たちまちに漲ってしまう。
快感で刻一刻と逸物が大きさを増しているのを感じるが、澄泉の口戯に滞りはない。
「ふふ、足がピクッてしてる。気持ちいい?
……智也くんのは、舐めやすくていいな。やっぱり日本人の口には、日本人のサイズが合うみたい」
言外に外人の物を咥えた経験談を含ませながら、澄泉は問うた。
智也には答えるような余裕はない。
物理的な気持ちのよさに加えて、視線を下ろせば澄泉の顔がある。
憧れの相手に奉仕されているという事実がもたらす精神的快感は、最も危険だった。
「あ、あ、くあぁあぁああっ!!!」
もう射精してしまうから一旦止めて。
その想いを声に出そうと決めた次の瞬間にはもう、智也の逸物は猛り狂って澄泉の口から外れた。
「わっ!!」
澄泉の驚きの声がした直後、逸物の尿道口が開いて白い飛沫が噴き上がる。
それは幾度にも渡って放出され、澄泉の顔を白く汚した。
「あ、ご、ごめんね!」
思わず謝罪を口にする智也だが、澄泉は冷静にそれを受け止める。
そして傍らのティッシュを一枚抜いて顔を拭った。
「やっぱり若いね、凄い。……それに、まだいけそうだし」
澄泉はようやく射精を終えた逸物を摘みながら苦笑する。
そこは射精を経験してなお、限界の勃起状態を保っていた。
自慰の際にはありえない事だ。
恐らくは澄泉と裸体を寄せ合っているという、極度の興奮がそうさせるのだろう。
澄泉はその逸物を手で握りながら、横たわる智也の身体へ跨るようにして背を向けた。
「今度は、智也くんも私にしてみて」
澄泉はそう言いながら腰を後ろへずらし、智也の顔の付近へ秘部が来るようにする。
今一度、智也の胸が高鳴った。心臓が張り裂けそうで、今日でかなり寿命が縮むのではと思えた。
改めて間近に晒される、澄泉の恥じらいの部分。
先ほど目にした時よりもさらに、いやらしく濡れ光っているように見える。
そして、眼に映るのは性器だけではない。その後ろ、肛門までもが丸見えだった。
そこも開発されたのであろう事は一目で解る。
慎ましかったであろう蕾は、今や手の薬指ならば悠に通りぬけそうな大きさに開いている。
菊輪の色にしても、秘部よりやや色濃く、小豆の色をやや控えめにした程度。
それは、何とも淫靡な“性器”だった。
智也はその禁忌に惹かれ、尻穴に指を掛けて押し開く。
澄泉の身体が強張った。
「あ……や、やだ、お尻も見えちゃうんだよね、しまったなぁ……。
そこ、開いちゃってるよね。だいぶ使われちゃったから。
小さな女の子の腕くらいなら、入ったんだよ」
澄泉は衝撃的な言葉を口にする。
今さらながらに、智也はその異常性に気がついた。
あまりに淫靡だから指を掛けたとはいえ、そこは排泄の穴だ。
膣を犯されるならばまだしも、そんな場所まで用いられていたのか、澄泉は。
「おしり……も……?そ、そんなの、痛くない?」
智也が間の抜けた問いを投げると、澄泉はやや寂しげな表情で振り向いた。
「痛いっていうか、ショックだったな、初めは。凄く不愉快だった。
うんちの穴に、絶対入りっこないって大きなアレが入って、無理矢理出し入れされて。
でも……いつの間にか、それで感じちゃってた。
お尻から無理に引き抜かれる時の感じとか、ものすごいし。
子宮をトロトロに蕩かされてる状態で奥まで犯されると、薄皮越しに刺激が来て堪らないの。
排泄する、出すための穴なのにね……誤魔化しようもなく、感じちゃった。
前と後ろで挟み込まれて犯されると、身体がカラッポになってアレに満たされてるみたいで、抵抗する気が失せちゃうんだ」
澄泉はそう呟き、それ以上は語らないと言いたげに顔を伏せて逸物を咥えた。
智也はそれにぞくりと反応しながら、肛門から指を離す。
そして指を滑らせるように前へ移動させ、秘裂を割り開いた。
やはり、蕩けている。
智也の顔へ跨る格好なので、正面からの時よりも脚が開いており、それゆえ舌の挿入も容易かった。
柔らかな秘肉を掻き分けて、奥へと進む。濃厚な匂いが再び鼻腔を満たす。
今度はより丹念に舌を這わせた。
心地よさを与える事を目的に、秘部の周りから奥へと舌を蠢かす。
知識としてだけ知っていたクリトリスも、あまり強くせず舌や指で転がせば良い反応が返ってきた。
「ん、ふうんんっ……!!す、すごい、うまい、よ……!!」
澄泉は時おり逸物を吐き出し、荒い息と共に智也の愛撫を褒める。
それに気をよくして、さらに智也は一度目には為しえなかった指の挿入を果たした。
今度こそは充分な潤滑があり、挿し入れた中指は滑り込むように内へと入り込む。
暖かく、ぬめった不可思議な空間。
指で円を描くと容易に膣壁に触れられ、かなり狭いのが解る。
さらに人差し指も含めた2本を挿し入れれば、それだけである程度の締め付けが感じられた。
まるで初物を思わせるようなきつさだ。
澄泉の態度などからは、かなり執拗な情交が窺えるが、それでこれほどの締まり具合とは。
いや、だからこそ飽きられることがなかったのかもしれない。
智也はそんな事を考えながら、指と舌でひたすらに澄泉の秘裂を刺激し続けた。
やがて、澄泉の恥じらいの部分がいよいよ乱れてくる。
ぽたぽたと智也の顔へ滴るほどに蜜が垂れはじめ。
顔の横で踏ん張っている脚から時おり力が抜けて、顔面へと強い圧力が加わり。
澄泉のような華奢な身体でも、腰の重さは相当なものだった。
柔らかで芳しい秘肉が密着し、窒息しそうになる。だがそれはそれで良いか、とさえ思える。
ともあれ澄泉の方も、長い前戯を経ていよいよ昂ぶってきたようだった。
「はっ、はっ、はぁっ……だ、ダメ、腰が……もたない、姿勢戻すね」
澄泉は肩で息をしながら智也の上を跨ぎ、ベッドの上に腰を下ろす。
そうしてしばし呼吸を整えた後で、抱きしめるように智也の顔を腕で挟み込み、唇を重ねた。
ちゅっ、と音のする、ごく浅いキス。
けれどもそれは、今一度、智也の心に甘酸っぱい気恥ずかしさを灯らせる。
澄泉は一旦身体をベッド脇に伸ばし、コンドームの入った袋のひとつを拾い上げた。
そしてそれを慣れた手つきで破り、智也の勃起した逸物に被せる。
「じゃ、始めよっか。」
澄泉は再び智也に覆い被さる。
少年の視界いっぱいに白い裸体を晒し、開いた脚の間に智也の分身を宛がう。
そして熱さが、智也の先端を包み込んだ。
「う、うあっ!!うああ、うああ、ああああっっ!!!」
智也は何度も声を上げ、脚を強張らせる。
ベッドが軋みを上げ、彼の体の上では、澄泉の柔らかな肉が揺れている。
澄泉のセックスの技術は高かった。
華奢な身体で少年の上に跨り、腰を前後左右に揺すりながら、絞り上げるように膣を絞める。
智也はその一連の動きで幾度も射精直前にまで導かれ、暴れそうになるが、
澄泉に完全に動きをコントロールされて殆ど身動きも叶わない。
快感だけが、腰から湧き出ては逸物の中を巡っている。
噴出すれば只事ではないと重々解っているにも関わらず、解き放てない。溜まっていく。
智也はただ、腰を揺らす澄泉を見上げることしか出来なかった。
(ほんとうに、天使か妖精みたいだ)
切迫した射精感がある一方で、そうした澄泉への賛美も脳に浮かぶ。
顔は勿論、身体つきも愛らしい。
腰を遣いながらこちらを見下ろしてくる視線は、やはり少々生意気そうだ。
角度によっては悪戯っぽくも見え、小さな淫魔のようにも思えてしまう。
いずれにせよ、ただの少女とも、また成熟した女性とも違うものを持っている。
その彼女に『征服される』この状況こそが、最も強く智也の情欲を煽るのだった。
「ふふ、智也くん可愛い、感じちゃってるんだ。膣の中でも、ずいぶん暴れてる。
それに、その眼……私、特別扱いされてるのかな」
澄泉は微笑を湛えながら、智也の上で腰を振る。
自分の姿が映り込む、澄み切った少年の瞳を覗いて。
少年の身体は、何度も射精の欲求に見舞われて強張っているが、
少女の身体もまた、刺し貫くような刺激を受けて幾度も震え上がる。
少女は、快感の中にいた。
■ 2 ■
初めて『濡れた』のは、少年が自分の為に泣いてくれたのだと気付いた時。
愛液こそ分泌されなかったが、心が快感を覚えるという意味で『濡れた』のはこの時だ。
その後の、身体のあちこちを少年に舐められた際の快感も強かった。
何しろ、心が開いているのだ。
ニノに初めて抱かれた際も、その後の地下室でも、ペッティングを受けた事はある。
けれどもその時は不快感しか起こらず、早く終わって、と屈辱に耐えるだけだった。
しかし今回は違う。
今まで触れてきた男とは違う、純朴そのものの少年の舌は、澄泉の快感を素直に引き出す。
キスの際には心臓が高鳴った。
乳房を舐められていた際には、本来ならばもっと大きな喘ぎを漏らしたいところだった。
そして、秘部。
智也が生唾を呑んだのと同じタイミングで、澄泉もまた息を呑んでいた。
多少とはいえ好意を抱いた男に秘部を晒すのが、こうも緊張することだとは。
いつしか男に秘部を見せる事が当然となっていた澄泉にとって、衝撃的な心持ちだった。
不快ではない。
彼に意識されることは、何も不快ではない。
むしろ、心地良い。彼に快感を与える事も、その時の顔を見る事も心地良い。
けれども、それは単純な色恋ではないのだ。
肉欲を前提とせず、心で繋がっているから。
澄泉の不遇を自分の事のように感じ、泣いてくれる智也だから、愛せる。
欲情を超えた友情、そしてそれをさらに超えた愛情。
澄泉が追い求め続けてきた、この世で最も尊く美しい関係だ。
それが築けた今、澄泉の快楽を邪魔するものはない。
一突きごとに快感が押し寄せてくる。
智也の逸物は、大きさこそ今までの経験より小さいが、それでも小柄な澄泉の子宮口を突くには充分だ。
かつてないほど精神的快感で準備の整った子宮口を。
そうなれば快感も凄まじい。
少年の透き通るような瞳に見つめられながら、澄泉は腰を蠢かす。
憧れそのものの視線を浴びながら、絶頂の予感に冷や汗を垂らす。
(あっ!だめ、本当にいきそう……っ)
澄泉が性感の淵ギリギリの所で腰を止めようとした、その瞬間。
「ああ、もう!!もう、射精るっ!!!!!」
あろうことか智也が限界を迎え、澄泉の腰を強く引きつけながら射精に及んだ。
「あ、あっ!?だめっ、今そんな……あ、ああ、くああぁぁっっ…………!!!!」
予想外の行為で表面張力を破られた澄泉に、もはや絶頂を止める術はない。
膣の深くで薄いゴム越しの射精を感じながら、澄泉もまた後ろへ仰け反って快感に打ち震える。
仰け反ったおかげで顔は見られていない筈だが、身体の震えが明確な絶頂を訴えている。
ひとしきり未知の快感に打ち震えたところで、澄泉は姿勢を前に戻した。
すっかり息は上がり、汗が額から滴り落ちる。
「澄泉ちゃんも、イッたの?」
同じく汗を掻いた智也が尋ねてくる。
澄泉は気恥ずかしさで眉を顰め、一度視線を逸らしてから横目に少年を見下ろす。
一種の照れ隠しなのだが、他人からはさぞかし生意気な目つきに見えることだろう。
「……うん。いっちゃ……った」
まず言葉で認め、次に頭で理解する。
勿論、地下室での度重なる調教で感じやすくさせられている事も影響しているだろう。
けれどもその無理矢理達する時とは明らかに別次元の心地よさが、今の絶頂にはあった。
充足感。至福。そのような言葉が脳裏に浮かぶ。
澄泉は一旦腰を上げて智也の逸物を抜き出し、精液塗れになったゴムを取り去る。
さすがに二度続けて射精した今は半ばほどの勃起具合だが、手で扱いた感触はまだいけそうだ。
何より、少年の煌めく瞳は、まだ澄泉から興味を失っていない。
すぐに勃起しない事を残念がっている風にも見える。
「ちょっと休んだら、またしよっか」
智也の気持ちを汲み取って澄泉が告げると、少年の瞳にさらに輝きが宿った。
シーツに包まりながら他愛のない話をし、リビングから熱い紅茶を運んで飲み、
気分が昂ぶれば身体を交える。
まるで付き合い始めた恋人のように、その一夜は濃厚に過ぎていった。
何度身体を重ねても、澄泉の奥底に流れる心地よさは変わりない。
今までの行為が嘘に思えるほどの、心の底から満たされるセックスだ。
少年の瞳の中で踊る澄泉の姿は、最初とは見違えるほどに活き活きとしている。
最初の頃は、本当に寂しい瞳をしていた。
まるで全てに絶望するような、哀しい瞳。
(……そういえば、あの眼って…………)
そこで澄泉は、かつてそれと同じ瞳に出遭った事を思い出す。
澄泉を女にした相手。
今と同じように、朝まで交わり続け、しかしついに最後まで絶頂を迎えなかった、あの男。
あのニノの瞳は、まさにかつての澄泉と同じものだった。
愛を知らない瞳。あるいは、愛を失った瞳。
何故、あのような瞳をしていたのか。
今さらになって、澄泉にはそれが気に掛かり始めた。
どのみち、ケジメをつけなければならない相手だ。
ニノという存在から逃げた所で、澄泉の未来に光はない。
※
「……何か、吹っ切れたように見えるよ」
翌朝。
洗濯した服に身を包み、玄関口に立つ澄泉を見送りながら、智也は微笑む。
一夜の楽しい夢は終わった。
名残惜しい気持ちはあるが、けれども澄泉に良い影響を与えられたなら、それに越したことはない。
智也の夢は、澄泉といつまでも共にある事ではない。
澄泉という幻想的な美少女と、時に語らいながらも、その眩い輝きを見守っていくことだ。
「うん、智也くんのお陰。こんな愛し方があるなんて、今まで全然知らなかった。
セックスって、皆がただ快楽の為にする野蛮な行為だと思ってたけど……
やっと、その本当の意味が解った気がする」
澄泉はもはやはにかむ事をせず、真っ直ぐに智也に笑みを送る。
それは朝の光に包まれ、今までで一番の笑顔として智也の記憶に刻み込まれた。
カメラで写すように、鮮明に。
「……でも、それをまだ知らない人間もいるみたい。
私は、その相手にもう一度会わないといけない気がするの」
澄泉がそう告げると、智也が口を開く。
「ニノ先生の、事?」
その言葉に、澄泉は驚きを隠せない。
けれども黙って視線を交わすうちに、その驚きも納得に変わっていく。
そう、この少年も、人の心を鋭く観察して読み取る感性の持ち主だ。
その感性によって澄泉も救われたのだから、何も驚くことはない。
澄泉は静かに長い睫毛を閉じ、そして力強く開いた。
かつての智也が一目で心を奪われた、凛とした少女らしく。
「本当に、色々ありがとう。智也くんのこと、どうなっても絶対に忘れないよ」
「うん、僕もだ!」
澄泉が智也の手を取ると、少年は力強く頷いた。
多くは語らず、けれども心で通じ合って、2人は手を握りしめる。
「…………行ってきます!」
そして和人形のような少女は踵を返す。
太陽が燦燦と降り注ぐ、外へ。
智也は腰掛ける格好のまま、寝台に横たわる澄泉を見下ろしていた。
幾度となく生唾を呑み込む。
まるで濃厚な粘り気を嚥下するがごとく、その“現実”の受け入れには時間を要した。
「……感動しちゃうな。あの澄泉ちゃんの裸なんだよね、今見てるのって。
澄泉ちゃんってあんまり可愛いから、トイレしてる姿が想像できないって、
クラスの皆が噂してたんだよ」
智也はかすかに震える声で告げた。
自分が何を言っているのかは、上空を漂うような意識でしか解らない。
「そうみたい、だね……ラウラから聞いたよ。ちょっと特別扱いしすぎだけど。
私だって、皆と同じようにトイレくらいするよ」
澄泉は和人形のような愛らしさに、やや恥じらいを浮かべてはにかむ。
よく見れば見るほどに、現実からかけ離れた容姿だ。
どちらかといえば吊り気味な、宝石と見紛うばかりに深い黒を内包する瞳。
極上の生地からほんの少しつまみ出したような鼻梁。
品のよさと大人しさを感じさせる、ごくごく小さな唇。
それら逸品の数々が、まろみを帯びた顎へ繋がる輪郭の中、絶妙に配置されている。
全体には下寄りの配置。子供の顔の特徴だ。
けれども澄泉の顔を見て受ける印象には、妹のような愛らしさだけでなく、
母性とでも表すべき厳かさもある。
まるで男が惹かれる要素を計算し尽くし、神が悪戯で作り上げたかのように。
澄泉が不幸な体験をしてきたのは同情すべきことだが、けれどそれも仕方がない、と智也は思う。
世のほとんどの男にとって、ここまでの容姿の持ち主と関われる経験はまずないだろう。
であれば、何かしらの働きかけをしてみたくなるのが本能というもの。
色恋に極めて消極的な智也でさえ、それは痛いほどに理解できた。
長い時間を経て、ようやく智也の中に現実感が戻ってくる。
彼は静かに左手を伸ばした。
一旦伸ばしかけ、少し躊躇ってから、再び伸ばして澄泉の頬に触れた。
触感を以って、目の前のものが現実であると確信するために。
( うわ……すごい、ふくふくのほっぺた。赤ちゃんみたいだ )
澄泉の頬を軽く摘むと、それだけで衝撃が走った。
絹のような肌触りと、つきたての餅のようにふわりとした肉。
それは指先にえもいわれぬ至福をもたらす。
「ふふっ」
小さな笑い声がし、智也を見上げる澄泉の瞳が和らいだ。
「ご、ごめん!」
智也は何が悪いのかも解らぬままに謝罪を口にし、手を引っ込める。
澄泉の薄い微笑みは変わらない。
「……いいよ。もっと……触っても」
澄泉の腕が動き、シーツに乾いた音を立てた。
つられてそちらに目をやった智也が捉えるのは、澄泉の肢体。
月明かりだけの暗い部屋でなお、その肌の白さが解る。
天使のように華奢な身体つきだ。
けれどもこの裸体は、垢抜けた服で着飾っていた時より肉感的に見える。
けして無機質ではなく、二の腕や太腿のふっくらと柔らかな肉付きは、十分に智也の情欲をそそった。
「澄泉、ちゃん…………」
本能の赴くまま、智也は澄泉に顔を近づける。
そしてひとつ生唾を呑み込んで、ゆっくりと唇を奪う。
憧れの澄泉とのキス。
それは拒まれることはなく、柔らかい唇で迎え入れられた。
爽やかな香りが鼻腔を抜ける。
唇よりやや弾力のある舌を探し出して、絡めさせる。
舌へ纏わりつく澄泉の唾液は、無味無臭であるはずなのに甘く感じた。
造りのいい鼻から漏れる吐息は、口づけが長引くほどに荒ぶっていく。
生きているのだ。この人形のように美しい少女も。
智也は唾液の糸を引きながら、澄泉の唇を解放する。
そして次には、細い首へと口づけを触れさせた。
「ふっ」
澄泉の喉が強張るようにうごめく。
それを舌先に感じながら智也は、少女の鎖骨、さらにその下へと舌を這わせていく。
産毛さえないような肌。しっとりとしていて、暖かい。
胸骨の辺りを嘗めていると、左右の手に柔らかいものが触れた。
乳房だ。見た目にはさほど膨らみがないものの、実際に触れてみると間違いなく柔らかい。
白い丘の頂点に芽吹いた突起を摘むと、澄泉の身体が震える。
「んっ……!」
澄泉のその反応は、その蕾が間違いなく女性の性感帯なのだと智也に知らしめた。
そうなれば俄然興味が湧いてくる。
右手で胸の肉を摘むように盛り上げ、頂上の蕾を口に含む。
左手も同じように胸の肉を搾り出しながら、指の腹で蕾を挟む。
そうして左右の突起を、慈しむように優しく転がしはじめた。
「あ、うんんっ!!ん、んんっ……!!」
反応は確かなものだ。
智也が見上げると、澄泉は軽く握った手を口に当てて智也を見下ろしていた。
嫌がる素振りはない。
それを悟って、智也は胸への刺激を再開する。
押し殺したような澄泉の声が何度も上がり、細い身体が震えた。
その結果として、胸の突起は次第に、次第に、その硬さを増していく。
はじめは慎ましかった見た目が、いつしか赤らんで尖りはじめる。
( 気持ちいいんだ、これ )
澄泉の小刻みな吐息を間近に感じ、智也は確信する。
胸の小さな女性は、遮蔽物の無いぶん感度がいい。
いつだったか金髪のクラスメイトから聞いた話が脳裏に浮かんだ。
智也もまた、自分が澄泉に快感を与えているという事実が心地良い。
智也の舌はさらに澄泉の身体を下り、極上のベッドのような腹部を過ぎて、
とうとう恥じらいの部分に至る。
風呂場で手入れしたのか、薄めの茂みは綺麗な逆三角だ。
そしてその下に、ほんの僅かに淡い桜色が覗いている。
智也の興味が『そこ』へ達した事に気付いたらしく、澄泉はゆっくりと脚を開き、膝を立てる。
ついに露わになった、澄泉の性器。
智也は夢の中で、あるいは妄想に耽りながら、何度その部分を思い描いただろう。
かくしてそれは、希望を壊すことはなく、慎ましい出で立ちをしていた。
さすがに思い描いていたような、縦一文字にぴっちりと閉じているということはなく、
何度も使用されたと思わしきやや花開いた秘裂ではあったが、色合いはなお淡い桜色だ。
智也はもう何度目になるのか、息を詰まらせて凝固したような生唾を呑み込む。
古地図に描かれた財宝へ辿り着いたような興奮が沸き起こる。
「さ、触るよ」
智也は宝の持ち主に了承を求めた。可憐なその主は、口に手を当てたまま小さく頷く。
暗くてよくは判らないが、その顔はかなり紅潮しているように見えた。
智也もまた頬を赤らめながら、ゆっくりと澄泉の花弁に触れる。
柔らかかった。
頬に触れた時と同じような快感が、指先に走る。
その柔らかな花弁を両の親指で押し広げると、中からはより淡いピンクが覗いた。
内臓の色だ、けれども、なんと鮮やかなのだろう。
しかもその鮮やかな肉は、かすかに何かの液で濡れ光ってもいた。
そのてかりは、智也から理性を奪う。
まるで引き寄せられるように、智也は顔を澄泉の恥じらいの部分に近づけていた。
一舐めする。澄泉の内腿がぞくりと反応するが、構わず舌を這わせる。
鼻腔に流れ込む、澄泉の根源の匂い。
全くの良い芳香という訳でもない。
これほど美しい少女でもやはり人間なのだと解る、生々しい匂いだ。
けれどもそれは、智也の野性を的確にくすぐる。
智也は澄泉の柔らかな腿に手を掛けたまま、秘部に舌を這わせ続けた。
獣になった気分で何度も舐め上げ、舐めまわす。
しかし、今ひとつ愛撫の仕方というものが解らない。
舌だけというのも面白くないと、おもむろに2本指を捻じ込もうとすると、
今までにない勢いで澄泉の身体が跳ねた。
「いっ……!!」
澄泉の顔が明らかな苦痛を示している。
「えっ!?」
智也は狼狽するばかりだった。
十分に濡れているように見えたし、秘部もかなり使われている筈なのに、あれで痛いのか。
申し訳ない事をした。怒らせてしまった。
少年が瞳を惑わせていると、澄泉が静かに彼の瞳を覗きこむ。
「ごめん、ビックリさせちゃったね。智也くん……こういうの、初めて?」
逆に澄泉から気遣われるような格好になり、智也はばつの悪さを感じる。
けれどもその問いには、正直に答えることにした。
「う、うん。実は……初めて、なんだ。ごめん」
また意味もなく謝ってしまう。本当に澄泉と話していると、ペースが狂いっぱなしだ。
けれども澄泉は、その愛らしい顔に穏やかな笑みを湛えるだけだった。
「わかった。じゃあ、任せて」
澄泉は諭すようにそう囁くと、身を起こして智也に圧し掛かるようにした。
少女の細身ながら、智也はベッドの上で簡単に体勢を崩されてしまう。
「緊張しなくていいよ。私、ちょっとは慣れてるから」
澄泉は照れ半分、慈しみ半分の柔和な表情で、智也の顔を抱くように見下ろしていた。
窓からの月明かりが後光に差すその光景を、きっと智也は、いつになっても忘れないことだろう。
「あ、あああ……あっ!!」
智也は、声が抑えられなかった。
彼はシーツに仰向けに寝る格好で、澄泉に逸物を舐め上げられている。
初めての『フェラチオ』は、想像を遥かに凌ぐ心地の良さだった。
小さな口が深々と智也の逸物を咥え込み、その奥で舌がチロチロとカリ首を舐めまわす。
吸引するように口を窄めて上下され、小さな手でも玉袋や肉茎を弄ばれれば、たちまちに漲ってしまう。
快感で刻一刻と逸物が大きさを増しているのを感じるが、澄泉の口戯に滞りはない。
「ふふ、足がピクッてしてる。気持ちいい?
……智也くんのは、舐めやすくていいな。やっぱり日本人の口には、日本人のサイズが合うみたい」
言外に外人の物を咥えた経験談を含ませながら、澄泉は問うた。
智也には答えるような余裕はない。
物理的な気持ちのよさに加えて、視線を下ろせば澄泉の顔がある。
憧れの相手に奉仕されているという事実がもたらす精神的快感は、最も危険だった。
「あ、あ、くあぁあぁああっ!!!」
もう射精してしまうから一旦止めて。
その想いを声に出そうと決めた次の瞬間にはもう、智也の逸物は猛り狂って澄泉の口から外れた。
「わっ!!」
澄泉の驚きの声がした直後、逸物の尿道口が開いて白い飛沫が噴き上がる。
それは幾度にも渡って放出され、澄泉の顔を白く汚した。
「あ、ご、ごめんね!」
思わず謝罪を口にする智也だが、澄泉は冷静にそれを受け止める。
そして傍らのティッシュを一枚抜いて顔を拭った。
「やっぱり若いね、凄い。……それに、まだいけそうだし」
澄泉はようやく射精を終えた逸物を摘みながら苦笑する。
そこは射精を経験してなお、限界の勃起状態を保っていた。
自慰の際にはありえない事だ。
恐らくは澄泉と裸体を寄せ合っているという、極度の興奮がそうさせるのだろう。
澄泉はその逸物を手で握りながら、横たわる智也の身体へ跨るようにして背を向けた。
「今度は、智也くんも私にしてみて」
澄泉はそう言いながら腰を後ろへずらし、智也の顔の付近へ秘部が来るようにする。
今一度、智也の胸が高鳴った。心臓が張り裂けそうで、今日でかなり寿命が縮むのではと思えた。
改めて間近に晒される、澄泉の恥じらいの部分。
先ほど目にした時よりもさらに、いやらしく濡れ光っているように見える。
そして、眼に映るのは性器だけではない。その後ろ、肛門までもが丸見えだった。
そこも開発されたのであろう事は一目で解る。
慎ましかったであろう蕾は、今や手の薬指ならば悠に通りぬけそうな大きさに開いている。
菊輪の色にしても、秘部よりやや色濃く、小豆の色をやや控えめにした程度。
それは、何とも淫靡な“性器”だった。
智也はその禁忌に惹かれ、尻穴に指を掛けて押し開く。
澄泉の身体が強張った。
「あ……や、やだ、お尻も見えちゃうんだよね、しまったなぁ……。
そこ、開いちゃってるよね。だいぶ使われちゃったから。
小さな女の子の腕くらいなら、入ったんだよ」
澄泉は衝撃的な言葉を口にする。
今さらながらに、智也はその異常性に気がついた。
あまりに淫靡だから指を掛けたとはいえ、そこは排泄の穴だ。
膣を犯されるならばまだしも、そんな場所まで用いられていたのか、澄泉は。
「おしり……も……?そ、そんなの、痛くない?」
智也が間の抜けた問いを投げると、澄泉はやや寂しげな表情で振り向いた。
「痛いっていうか、ショックだったな、初めは。凄く不愉快だった。
うんちの穴に、絶対入りっこないって大きなアレが入って、無理矢理出し入れされて。
でも……いつの間にか、それで感じちゃってた。
お尻から無理に引き抜かれる時の感じとか、ものすごいし。
子宮をトロトロに蕩かされてる状態で奥まで犯されると、薄皮越しに刺激が来て堪らないの。
排泄する、出すための穴なのにね……誤魔化しようもなく、感じちゃった。
前と後ろで挟み込まれて犯されると、身体がカラッポになってアレに満たされてるみたいで、抵抗する気が失せちゃうんだ」
澄泉はそう呟き、それ以上は語らないと言いたげに顔を伏せて逸物を咥えた。
智也はそれにぞくりと反応しながら、肛門から指を離す。
そして指を滑らせるように前へ移動させ、秘裂を割り開いた。
やはり、蕩けている。
智也の顔へ跨る格好なので、正面からの時よりも脚が開いており、それゆえ舌の挿入も容易かった。
柔らかな秘肉を掻き分けて、奥へと進む。濃厚な匂いが再び鼻腔を満たす。
今度はより丹念に舌を這わせた。
心地よさを与える事を目的に、秘部の周りから奥へと舌を蠢かす。
知識としてだけ知っていたクリトリスも、あまり強くせず舌や指で転がせば良い反応が返ってきた。
「ん、ふうんんっ……!!す、すごい、うまい、よ……!!」
澄泉は時おり逸物を吐き出し、荒い息と共に智也の愛撫を褒める。
それに気をよくして、さらに智也は一度目には為しえなかった指の挿入を果たした。
今度こそは充分な潤滑があり、挿し入れた中指は滑り込むように内へと入り込む。
暖かく、ぬめった不可思議な空間。
指で円を描くと容易に膣壁に触れられ、かなり狭いのが解る。
さらに人差し指も含めた2本を挿し入れれば、それだけである程度の締め付けが感じられた。
まるで初物を思わせるようなきつさだ。
澄泉の態度などからは、かなり執拗な情交が窺えるが、それでこれほどの締まり具合とは。
いや、だからこそ飽きられることがなかったのかもしれない。
智也はそんな事を考えながら、指と舌でひたすらに澄泉の秘裂を刺激し続けた。
やがて、澄泉の恥じらいの部分がいよいよ乱れてくる。
ぽたぽたと智也の顔へ滴るほどに蜜が垂れはじめ。
顔の横で踏ん張っている脚から時おり力が抜けて、顔面へと強い圧力が加わり。
澄泉のような華奢な身体でも、腰の重さは相当なものだった。
柔らかで芳しい秘肉が密着し、窒息しそうになる。だがそれはそれで良いか、とさえ思える。
ともあれ澄泉の方も、長い前戯を経ていよいよ昂ぶってきたようだった。
「はっ、はっ、はぁっ……だ、ダメ、腰が……もたない、姿勢戻すね」
澄泉は肩で息をしながら智也の上を跨ぎ、ベッドの上に腰を下ろす。
そうしてしばし呼吸を整えた後で、抱きしめるように智也の顔を腕で挟み込み、唇を重ねた。
ちゅっ、と音のする、ごく浅いキス。
けれどもそれは、今一度、智也の心に甘酸っぱい気恥ずかしさを灯らせる。
澄泉は一旦身体をベッド脇に伸ばし、コンドームの入った袋のひとつを拾い上げた。
そしてそれを慣れた手つきで破り、智也の勃起した逸物に被せる。
「じゃ、始めよっか。」
澄泉は再び智也に覆い被さる。
少年の視界いっぱいに白い裸体を晒し、開いた脚の間に智也の分身を宛がう。
そして熱さが、智也の先端を包み込んだ。
「う、うあっ!!うああ、うああ、ああああっっ!!!」
智也は何度も声を上げ、脚を強張らせる。
ベッドが軋みを上げ、彼の体の上では、澄泉の柔らかな肉が揺れている。
澄泉のセックスの技術は高かった。
華奢な身体で少年の上に跨り、腰を前後左右に揺すりながら、絞り上げるように膣を絞める。
智也はその一連の動きで幾度も射精直前にまで導かれ、暴れそうになるが、
澄泉に完全に動きをコントロールされて殆ど身動きも叶わない。
快感だけが、腰から湧き出ては逸物の中を巡っている。
噴出すれば只事ではないと重々解っているにも関わらず、解き放てない。溜まっていく。
智也はただ、腰を揺らす澄泉を見上げることしか出来なかった。
(ほんとうに、天使か妖精みたいだ)
切迫した射精感がある一方で、そうした澄泉への賛美も脳に浮かぶ。
顔は勿論、身体つきも愛らしい。
腰を遣いながらこちらを見下ろしてくる視線は、やはり少々生意気そうだ。
角度によっては悪戯っぽくも見え、小さな淫魔のようにも思えてしまう。
いずれにせよ、ただの少女とも、また成熟した女性とも違うものを持っている。
その彼女に『征服される』この状況こそが、最も強く智也の情欲を煽るのだった。
「ふふ、智也くん可愛い、感じちゃってるんだ。膣の中でも、ずいぶん暴れてる。
それに、その眼……私、特別扱いされてるのかな」
澄泉は微笑を湛えながら、智也の上で腰を振る。
自分の姿が映り込む、澄み切った少年の瞳を覗いて。
少年の身体は、何度も射精の欲求に見舞われて強張っているが、
少女の身体もまた、刺し貫くような刺激を受けて幾度も震え上がる。
少女は、快感の中にいた。
■ 2 ■
初めて『濡れた』のは、少年が自分の為に泣いてくれたのだと気付いた時。
愛液こそ分泌されなかったが、心が快感を覚えるという意味で『濡れた』のはこの時だ。
その後の、身体のあちこちを少年に舐められた際の快感も強かった。
何しろ、心が開いているのだ。
ニノに初めて抱かれた際も、その後の地下室でも、ペッティングを受けた事はある。
けれどもその時は不快感しか起こらず、早く終わって、と屈辱に耐えるだけだった。
しかし今回は違う。
今まで触れてきた男とは違う、純朴そのものの少年の舌は、澄泉の快感を素直に引き出す。
キスの際には心臓が高鳴った。
乳房を舐められていた際には、本来ならばもっと大きな喘ぎを漏らしたいところだった。
そして、秘部。
智也が生唾を呑んだのと同じタイミングで、澄泉もまた息を呑んでいた。
多少とはいえ好意を抱いた男に秘部を晒すのが、こうも緊張することだとは。
いつしか男に秘部を見せる事が当然となっていた澄泉にとって、衝撃的な心持ちだった。
不快ではない。
彼に意識されることは、何も不快ではない。
むしろ、心地良い。彼に快感を与える事も、その時の顔を見る事も心地良い。
けれども、それは単純な色恋ではないのだ。
肉欲を前提とせず、心で繋がっているから。
澄泉の不遇を自分の事のように感じ、泣いてくれる智也だから、愛せる。
欲情を超えた友情、そしてそれをさらに超えた愛情。
澄泉が追い求め続けてきた、この世で最も尊く美しい関係だ。
それが築けた今、澄泉の快楽を邪魔するものはない。
一突きごとに快感が押し寄せてくる。
智也の逸物は、大きさこそ今までの経験より小さいが、それでも小柄な澄泉の子宮口を突くには充分だ。
かつてないほど精神的快感で準備の整った子宮口を。
そうなれば快感も凄まじい。
少年の透き通るような瞳に見つめられながら、澄泉は腰を蠢かす。
憧れそのものの視線を浴びながら、絶頂の予感に冷や汗を垂らす。
(あっ!だめ、本当にいきそう……っ)
澄泉が性感の淵ギリギリの所で腰を止めようとした、その瞬間。
「ああ、もう!!もう、射精るっ!!!!!」
あろうことか智也が限界を迎え、澄泉の腰を強く引きつけながら射精に及んだ。
「あ、あっ!?だめっ、今そんな……あ、ああ、くああぁぁっっ…………!!!!」
予想外の行為で表面張力を破られた澄泉に、もはや絶頂を止める術はない。
膣の深くで薄いゴム越しの射精を感じながら、澄泉もまた後ろへ仰け反って快感に打ち震える。
仰け反ったおかげで顔は見られていない筈だが、身体の震えが明確な絶頂を訴えている。
ひとしきり未知の快感に打ち震えたところで、澄泉は姿勢を前に戻した。
すっかり息は上がり、汗が額から滴り落ちる。
「澄泉ちゃんも、イッたの?」
同じく汗を掻いた智也が尋ねてくる。
澄泉は気恥ずかしさで眉を顰め、一度視線を逸らしてから横目に少年を見下ろす。
一種の照れ隠しなのだが、他人からはさぞかし生意気な目つきに見えることだろう。
「……うん。いっちゃ……った」
まず言葉で認め、次に頭で理解する。
勿論、地下室での度重なる調教で感じやすくさせられている事も影響しているだろう。
けれどもその無理矢理達する時とは明らかに別次元の心地よさが、今の絶頂にはあった。
充足感。至福。そのような言葉が脳裏に浮かぶ。
澄泉は一旦腰を上げて智也の逸物を抜き出し、精液塗れになったゴムを取り去る。
さすがに二度続けて射精した今は半ばほどの勃起具合だが、手で扱いた感触はまだいけそうだ。
何より、少年の煌めく瞳は、まだ澄泉から興味を失っていない。
すぐに勃起しない事を残念がっている風にも見える。
「ちょっと休んだら、またしよっか」
智也の気持ちを汲み取って澄泉が告げると、少年の瞳にさらに輝きが宿った。
シーツに包まりながら他愛のない話をし、リビングから熱い紅茶を運んで飲み、
気分が昂ぶれば身体を交える。
まるで付き合い始めた恋人のように、その一夜は濃厚に過ぎていった。
何度身体を重ねても、澄泉の奥底に流れる心地よさは変わりない。
今までの行為が嘘に思えるほどの、心の底から満たされるセックスだ。
少年の瞳の中で踊る澄泉の姿は、最初とは見違えるほどに活き活きとしている。
最初の頃は、本当に寂しい瞳をしていた。
まるで全てに絶望するような、哀しい瞳。
(……そういえば、あの眼って…………)
そこで澄泉は、かつてそれと同じ瞳に出遭った事を思い出す。
澄泉を女にした相手。
今と同じように、朝まで交わり続け、しかしついに最後まで絶頂を迎えなかった、あの男。
あのニノの瞳は、まさにかつての澄泉と同じものだった。
愛を知らない瞳。あるいは、愛を失った瞳。
何故、あのような瞳をしていたのか。
今さらになって、澄泉にはそれが気に掛かり始めた。
どのみち、ケジメをつけなければならない相手だ。
ニノという存在から逃げた所で、澄泉の未来に光はない。
※
「……何か、吹っ切れたように見えるよ」
翌朝。
洗濯した服に身を包み、玄関口に立つ澄泉を見送りながら、智也は微笑む。
一夜の楽しい夢は終わった。
名残惜しい気持ちはあるが、けれども澄泉に良い影響を与えられたなら、それに越したことはない。
智也の夢は、澄泉といつまでも共にある事ではない。
澄泉という幻想的な美少女と、時に語らいながらも、その眩い輝きを見守っていくことだ。
「うん、智也くんのお陰。こんな愛し方があるなんて、今まで全然知らなかった。
セックスって、皆がただ快楽の為にする野蛮な行為だと思ってたけど……
やっと、その本当の意味が解った気がする」
澄泉はもはやはにかむ事をせず、真っ直ぐに智也に笑みを送る。
それは朝の光に包まれ、今までで一番の笑顔として智也の記憶に刻み込まれた。
カメラで写すように、鮮明に。
「……でも、それをまだ知らない人間もいるみたい。
私は、その相手にもう一度会わないといけない気がするの」
澄泉がそう告げると、智也が口を開く。
「ニノ先生の、事?」
その言葉に、澄泉は驚きを隠せない。
けれども黙って視線を交わすうちに、その驚きも納得に変わっていく。
そう、この少年も、人の心を鋭く観察して読み取る感性の持ち主だ。
その感性によって澄泉も救われたのだから、何も驚くことはない。
澄泉は静かに長い睫毛を閉じ、そして力強く開いた。
かつての智也が一目で心を奪われた、凛とした少女らしく。
「本当に、色々ありがとう。智也くんのこと、どうなっても絶対に忘れないよ」
「うん、僕もだ!」
澄泉が智也の手を取ると、少年は力強く頷いた。
多くは語らず、けれども心で通じ合って、2人は手を握りしめる。
「…………行ってきます!」
そして和人形のような少女は踵を返す。
太陽が燦燦と降り注ぐ、外へ。