大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2013年03月

満ちた月

※くノ一拷問物。姉寝取られ要素があります。



小郎太は空を見上げた。
月は海原のように広がる雲に覆われ、欠片ほどもその姿を見せない。
辺りはまさに漆黒の闇。
夜の散策には不向きながら、今から小郎太が為そうとしている事を考えれば、その闇は僥倖といえた。
この闇の中ならば、濃緑色の装束に身を包んだ小郎太の姿を目視する事は不可能に近い。

無論、それは小郎太が標的を見つける場合についても同じ事が言える。
しかし、小郎太はこの夜、標的がどこに居るのかを前もって知っていた。
彼が立つこの母屋から、緩やかな坂を上った先にある一本松。標的はその下に居る。
大まかな場所さえわかれば、住み慣れたこの地で光など必要ない。
小郎太は音もなく駆け出し、緩やかな丘陵を上る。
一本松まであと二駆けでたどり着くという場所まで着くと、小郎太は一旦足を止めた。
大きく息を吸う。
そのまま肺で留める。
呼吸を止めると同時に気配も絶つ忍びの技だ。
この状態に入れば、臆病な野兎に近づいて背後から掴み上げる事も容易い。

息を止めたまま、小郎太はじりと距離を詰める。
前方から気配が漂ってきていた。
こちらに全く気付いていないような、ごく平然と垂れ流された気だ。
小郎太はその気の流れに細心の注意を払いながら距離を詰める。
そして距離が一駆けで足るまでに詰まった瞬間、矢のように飛び出した。
事実、その疾さは不慣れな農民が放つ矢とさほど遜色が無いかもしれない。
草を擦るかすかな足音が、左右に分かれて複数個所で同時に鳴る。
音は一本松から少し手前で消失し、疾走していた主が跳躍した事を物語る。
瞬きにも満たぬ間。
走行の勢いそのままに飛び蹴りを放つ小郎太は、その足先に肉の感触を期待した。
しかしそれは、当初予想していた瞬間には得られない。
否、さらに一刻が過ぎても、足先に肉の感触はない。

「ッ!?」
小郎太はそこで、自らの飛び蹴りを避けられた事実に気付く。
相手の足が動いた気配はなかった。
棒立ちのまま避けたのならば、その方法は前屈みか反り返りかのどちらかだ。
どちらだ。小郎太がそう考えたとほぼ同時に、彼の後頭部へ固い物がぶつかる。
骨……否、脛だ。
相手は小郎太の蹴りを反り返ってかわし、そのまま片脚を振り上げて後頭部を蹴ったらしい。
小郎太は軽い眩暈を覚えながら着地し、よろめく。

全身にどっと汗が噴き出していた。息も吐き出してしまっていた。
それでも敵に背を見せていることはまずいと直感し、背後を振り向く。
しかし。そこにもう相手の気配はなかった。
「なっ……!!」
明らかな狼狽を示しながら相手を探す小郎太。
しかしどこにも気配がない。前、左前方、右前方、真横……。
そこで、小郎太は首筋に当たる何かを感じ取る。
冷たく、鋭い。しかし刃ではない。手刀だ。
その手刀は小郎太の首筋をトン、と軽く叩いた。
それは小郎太を傷つけることはなかったが、彼に完全な敗北を悟らせる。

さぁ、と風が吹き、雲の切れ間から月が覗いた。見事な満月だ。
視界は明るく澄み渡り、小郎太の装束と、その傍らに立つ相手の姿を浮かび上がらせる。
頭の後ろで結われた、長く艶やかな黒髪。
雪のように白い肌。
細い顎と、切れ長で水面のように静かな瞳。
女だ。
それも、類稀なほど美しい女。
格好こそ百姓のような袖の短い麻の着物だが、その身体つきが並ではない。
膨らんだ乳房に、締まった腰つき、細く鍛え上げられたすらりとした脚線。
花町を歩いていても違和感のない艶と、かすかな未熟さ、そして隙なく練られた鋭さが同居している。
その肉体は、およそ目にする者が男であれば、視線を吸いつかせて離さないだろう。


「……参ったよ、氷雨(ひさめ)姉ぇ」
小郎太は指で口当てを下げながら嘆息した。
14歳という年齢に相応の、あどけなさを残す面立ちが表れる。
その幼い顔は、先ほどまで完全に気配を消し、矢のように駆けていた人物とはとても思えない。
しかし彼が忍びの里で生まれた子供である以上、それは別段特異な事でもなかった。
事実、小郎太の横に立つ氷雨は、彼より二つ年上であるだけに、より忍びとして高度な域にいる。

気配を漏らすがままにしていたのも故意での事だろう。
手合わせを望む小郎太にあえて居場所を教え、奇襲させ、それを後の先で制するために。
それは容易な事ではない。
襲われるにしても、どう襲ってくるかまであらかじめ知る事は不可能だ。
小郎太は蹴りで足を狙いにいったかも知れないし、がら空きの腹部を殴るという選択肢も有り得た。
氷雨の凄みは、至近まで小郎太を引きつけ、彼が攻撃に移る際のかすかな殺気を読んで対処した事にある。

小郎太を迎え撃つ際、氷雨には一切の感情の動きがなかった。
顔面を狙われた焦りも、それをかわせた安堵も、反撃に移る際の殺気も、一切がなかった。
さらには反撃としての後頭部への蹴りも、小郎太が後遺症を患わない程度に加減している。
これは、普通に蹴り上げるよりも遥かに筋組織への負担が高く、かつ難しい。
それらを易々とこなす氷雨は、小郎太よりも遥かに高みにいると言えた。

「やっぱり凄いや、氷雨姉ぇは」
小郎太は疲弊したように草の上に座りこむ。
言葉は本心だった。あまりにも差があり、あと二年で今の彼女と同じ域に辿り着けるのか不安になる。
男であるのに、彼女に腕力や基礎体力を含めて何も勝てる所がない。
氷雨は十年に一人の逸材だ。誰もが言う。
同年代のくノ一として抜きん出た心技体を備え、男を惑わすに充分な器量をも備えている、と。

「あんたも、強くなってたよ。正直……驚いた。」
氷雨は小郎太と並ぶように座り、傍らの花を指先で器用に摘んだ。
二つ摘んだうちの一つを口に咥え、一つを小郎太に差し出す。
小郎太はそれを受け取り、花弁を裏返して蜜を啜る。
花に含まれる蜜の量は一本ずつ違うが、氷雨が選ぶものはいつも格別に甘かった。
小郎太が選ぶとそうはいかない。
「……気休めはやめてよ」
小郎太が花を咥えながら呟くと、氷雨は瞳を瞬かせる。
忍として本格的に修練を積んだ彼女は、今ではほとんど感情を表に出すことがない。
あえて演技している場合を除き、小郎太がその表情や気配から喜怒哀楽を読み取ることはできない。
しかし今の氷雨は、『笑った』ように見えた。

「本当の事よ、気配をよく殺してた。あんたが走り出すまで、近くに来てた事に気付けなかった。
 次か、その次か……そろそろ一発貰っちゃうかも」
氷雨はそう言って目を細める。明らかな笑みだ。
まるで小郎太に敗れるその日を、心待ちにしているかのような。

どくん。

その笑みを見て、小郎太は心臓が強く脈打つのを感じる。
「じゃあ、そろそろ戻るね……いつまでも抜け出してる訳には、いかないから」
氷雨はそう言って立ち上がった。
ふわりと匂いがする。
甘い花のような、懐かしい氷雨の体の匂い。
そしてそれよりも随分と弱く、しかし確かに臭う、男の精の匂い。
それは、立ち上がった氷雨の脚の合間から漂ってくる。

どくん。どくん。

小郎太の心臓が、さらに強く脈打ちはじめる。

微かな音を立てながら草原を駆ける氷雨。その後ろ姿を、小郎太は複雑な心境で見守っていた。



まだ幼い頃、小郎太たち里の少年と氷雨は、いつも同じ小屋で寝起きし、同じ修業に励んでいたものだ。
しかし氷雨は、その才を買われ、頭首の屋敷で一人特殊な修練を積むようになった。
屋敷へ入る前の約束通り、満月の夜だけ、氷雨は屋敷を抜け出して小郎太と手合わせをする。
氷雨の様子は会うたびに変わっていった。
よく笑い、誰よりも先に木に飛びついて登っていった少女は、次第に感情を表に出すことがなくなった。
か細かった肢体は、良い物を食べているのか程よく肉感的になっていった。
乳房は成長期という事を鑑みても尋常でないほど豊かになり、男の視線を誘う器官に変貌した。
そして何より彼女の纏う雰囲気が、小郎太と二つしか違わないとは思えないほどに大人びている。
それは、彼女がもう『乙女』でない事を端的に示していた。

考えてみれば当然のことだ。
氷雨は屋敷の中で、『くノ一としての』修練を積んでいる。
となれば座学や肉体鍛錬だけでなく、当然に臥所での振舞い方も仕込まれることだろう。
また最近では、万一敵に捕まった時のために、拷問の修業も課せられているようだ。
小郎太は噂に聞くよりも先に、拷問された後の氷雨を直接目にして知っていた。
屋敷の枯山水の庭を、ぐったりとした氷雨が男に両脇を抱えられて運ばれていく姿。
それは今でも、小郎太の目に焼きついている。
氷雨の美しい手足の指は、ひとつ残らず滴る血に塗れていた。

『クソ、あの餓鬼……初っ端から無茶やりやがって!手足の十本全部に刺してやがった』
『ああ、しかもあんな太いのを、可哀想によ。一体どこで拵えたんだ』
『ありゃあ、遊郭で折檻の時に使われる針さ。大方、お父上殿が廓遊びのついでに持って帰ったんだろう。
 今までのだって、“ぶりぶり”やら“酒をかけての蚊責め”やら、みんな遊女への折檻が元さ』
『け、とんでもねぇや。しかも明日からは、俺達を締め出して連中だけで修行を続けようってんだろ。
 本当の所は氷雨の才を恐れて、体よく責め殺そうってんじゃねぇのかい』

氷雨を抱える男二人は、そのように恨み言をぼやきながら母屋へ戻っていく。
拷問。
氷雨がそれを受けていると知った時、小郎太は胸が締め付けられるようだった。
動揺自体は、幼い頃から氷雨と遊んでいた他の二人の少年とて同じだっただろう。
しかし小郎太の思いは格別だ。
彼は知っている。氷雨が、自分と血を分けた実の姉なのだと。
いつ敵味方に分かれるとも知れないこの里では、住民同士での血縁関係はけして明らかにされない。
新たに生まれた子は一所に集められ、子供同士だけで生きるよう強いられる。
けれども小郎太は知っていた。
里の片隅でいつも野菜を作っていた女が、病で息を引き取る間際、看取る小郎太に堪りかねて明かしたのだ。
氷雨と小郎太という二人の姉弟こそ、自らの世に残す宝だ、と。





「おい、いい抜け道を見つけたぜ。大人達はまだ誰も知らねぇし、そもそも俺達じゃなきゃ入れねぇ場所だ」
少年の一人が、声を潜めて言った。
小郎太ともう一人は、どういう事だ、と耳を寄せる。
少年は片眉を上げて続けた。
「氷雨姉ぇが、近頃お館様の屋敷で拷問の修行受けてるのは知ってんだろ。
 その場所は母屋からちょっと裏に行った離れなのも解ってるよな。
 そのいい場所ってのは、ちょうどその離れの中が見えるようになってんだよ。
 俺が覗いたときも、氷雨姉ぇと大人何人かと、あとすげぇ嫌なヤツの姿がばっちり見えたぜ」
その言葉に、小郎太達は目を丸くした。
そして三人で連れ立ち、すぐにその場所へ向かう。

少年の言葉通り、そこは里の大人では入れない場所にあった。
屋敷を囲む木塀の一部に損傷があり、そこから子供であれば身を捩って侵入できる。
草の生い茂る塀の内側をしばらく進み、林立している欅の樹の一本に登れば、なるほど屋敷が一望できた。
離れの中の様子も、明り取りの窓から伺える。
多少の距離はあるが、見習いとはいえ忍びである小郎太にはその木目の一つ一つまで把握できた。
上からの見晴らしはいいが、逆に屋内から樹を見上げても、逆光である上に枝葉が生い茂っている。
熟練の忍びであろうと、あらかじめそれと解ってでもいない限り、小さな人影を見つけ出す事は困難だろう。
確かにそこは、絶好の場所と言えた。
「な、いい場所だろ。それより見ろよ、アイツ……。アイツが毎日、氷雨姉ぇを拷問してんだぜ」
少年が言い、離れの片隅を指す。
小郎太は改めて離れの中を覗き込んだ。

中央に氷雨がいる。
両腕を開き掲げたまま、その両手首を天井の梁から通されているらしい縄で縛り上げられている。
身体には麻の着物らしきものを纏っているが、それは所々が無残に破れていた。
背中には焼いた網を押し付けたかのような無数の笞跡があり、何とも痛々しい。
その左右では、濃紺の忍び装束を着込んだ男数人が、腕組みをしたまま睨みを利かせている。
頭巾と口当てではっきりとは解らないが、いずれも里では見かけない顔のようだ。
忍び装束の色もこの里のものとは違う。
そしてそれら余所者の間、氷雨の背後にあたる空間から、ふと一人の少年が姿を現した。
年の頃は小郎太達と同じ。
しかし細く締まった彼らの姿とは対照的に、その少年の姿は暴食を思わせるだらしのないものだ。
彼こそ、この離れを見つけた少年が言う『嫌なヤツ』だろう。
「あ、あいつ……!!」
そしてその姿は、小郎太の目にも苛立ちの色を浮かべさせた。


肥え太った少年は、名を伊輔という。
聡明さを感じさせる響きの名とは裏腹に、愚鈍を絵に描いたような子供だった。
生い立ちだけは恵まれている。今や小郎太達の里を実質的に抱えている、奥滋藩藩主の倅だ。
城暮らしが長く、本来はこのような山間の田舎里に居座る類の人間ではない。
そんな彼を里に引き留めている要因は、偏に氷雨の存在だ。

伊輔が初めてこの里を訪れたのは、藩主である父に連れられての事だった。
藩主自らが忍びの里という、藩にとって薬とも毒ともなりうる場所を検分する間、伊輔は里の子供と戯れるよう言いつけられた。
しかしそこは、物心つく前から蝶よ花よと育てられてきた若君だ。
共に戯れるどころか、すぐに小郎太達を下男とみなして身勝手な命を発した。
それを堂々と拒絶したのが、子供組の姉代わりであり、当時まだ勝気の盛りだった氷雨だ。

『何度も言わせないで、いやよ。大体、二言目には偉いんだ偉いんだって、そんなのあたし達には解んないわ。
 もしあんたがあたし達より上だっていうなら、何か勝ってるって所を見せてちょうだい!』

氷雨は毅然とした態度でそう迫った。
伊輔は余裕の表情でそれを受けたが、現実には何をやっても氷雨に敵わない。
駆けっこでも、木登りでも、木の棒を用いた剣術でも、挙句には慣れているはずの乗馬でさえ氷雨に遥か劣った。
庶民と見下していた相手、それも女に負ける。
その事実は、伊輔の矜持を深く傷つけたようだった。

考えてみれば、氷雨が将来有望として一人だけ屋敷に招かれたのは、この少し後の事だ。
感情を表に出す事がなくなり、極端に口数が減った時期も、妙に女らしくなった時期も、それほど間は空いていない。
誰にも話したことはないが、氷雨が屋敷に移ってからしばらく経った頃、小郎太はある夢を見たことがある。
氷雨が床に押さえつけられている夢。
激しく暴れる身体を数人の大人に押さえ込まれ、その腰から半分に折れた体の上に、
気色の悪い笑みを湛えた伊輔が覆い被さる。
でっぷりと肥えた腹を揺らしながら、幾度も幾度も腰を打ちつけていく。
氷雨は猿轡を噛まされた口元を忙しなく蠢かすものの、声としては聞こえてこない。
しかしその瞳や皺の寄った眉間からは、嫌悪と明確な恐怖が見て取れる。
氷雨が怯えた顔など見せるのは初めてだ。

『氷雨姉ぇっっっ!!!』
実姉の陵辱を見守るうち、小郎太は自分の中で何かが弾けるような思いを抱き、
目が覚めたとき、彼は自分が寝小便をしている事に気が付いた。
いい歳をして、と他の二人には散々に笑われ、その気まずさから無意識に記憶から消していた夢だ。
しかしよくよく思い起こせば、その次に会った時だった。
氷雨の瞳の表情ががらりと変わり、三人に言葉を失わせたのは。


「…………あれは……夢じゃ、なかった…………きっと」
小郎太は思わずうめく。
伊輔はすでに城に帰ったものと思っていた。
父親がとうに藩へ戻っており、元々田舎嫌いである上、氷雨にしてやられた伊輔が里へ残る筈もないと。
しかし、伊輔は現実として離れにいる。
屋敷から離れへの僅かな移動でも籠が使われる所を幾度か目にしたが、それが伊輔だったのだ。
恐らくは父親に無理を言ってこの里へ残ったのだろう。
そして父の権威を笠に、氷雨への拷問の修行をさせるよう頭領達に迫ったに違いない。

忍びを志す以上、そうした修行もいずれはするにせよ、当時まだ氷雨は15歳。
肉体的にも精神的にも成熟してはいない。
加えてそうした修行は、里の人間内でやるもので、伊輔のような分別のない余所者に任せるなどもっての外だ、
頭領達は難色を示したに違いないが、しかし互助関係を築こうとしている藩主の倅を無碍にもできない。
ゆえに伊輔の駄々で押し切られる形となったに違いない。

「小郎太、大丈夫か? なんか顔色悪いぞ」
隣の少年が小郎太の顔を覗き込んで問う。
彼は、伊輔の件で多少気を害したように見えるが、それでも平素と大差はない。もう一人も同じくだ。
当然だろう、彼らは小郎太とはやや事情が違う。
歳が近く、氷雨の幼馴染であるという共通点はある。
しかし、彼らは氷雨が伊輔に犯される夢を見たわけではないし、何より血を分けた実の弟ではない。
とはいえ、彼ら二人には何も責などないのだ。
「……大丈夫だ」
わざわざ全てを話して、沈む気分を伝播させることもないだろう。小郎太はそう考え、少し眉を下げてみせた。


離れでは、伊輔が手の中で笞を弄びながら氷雨に近づいていた。
そして肉のついた手を振り上げ、重そうに笞を振るう。
下手な笞打ちながら、先の平たい笞は氷雨の背中で激しい音を立てる。
「――――っ!!」
その瞬間、氷雨が背を逸らしながら顔を跳ね上げた。
声こそ漏らさないが、歯を食い縛っている事が肩の付け根の動きで解った。
まだ白い部分の残っていた左脇腹に、新たな赤い筋が浮かぶ。

「どうだ、痛いか。ええ、どうなんだ?」
伊輔は可笑しそうな声色で言いながら、ゆっくりと氷雨の背後で歩を巡らせる。
そして荒い息を吐く氷雨の不意をつき、やおら笞を浴びせかける。
流石というべきか、氷雨は笞が振るわれる瞬間に背中の筋肉を固め、衝撃に備えていた。
もしそうしていなければ、背の肉はとうに幾筋か裂けていることだろう。
いくら伊輔の動きが緩慢とはいえ、笞打ちには本来それだけの威力がある。
「……っ!!」
笞を受けた直後は、氷雨の背筋が痙攣するように蠢いているのが見えた。
縛られた手首の先は固く握り締められ、膝が笑い始めている。
恐らくは腹筋も攣りかけているだろう。
容赦のない笞打ちを浴び続け、いかな氷雨とて消耗しているようだ。
しかし、その様を見ても伊輔のだらけた笑みは消えない。

「まだ頑張るのか。……おい、あれを」
伊輔は傍らに立つ忍び装束の男に呼びかける。
男はすぐに応じ、足元の壷を拾い上げて伊輔の方へと口を向ける。
「ひひひ、今日こそ良い声をだせよ」
伊輔の肉の乗った手の平がその壷の中に差し込まれ、引き抜かれた時には白い粒を大量に掴んでいた。
それが何かを察し、小郎太は樹の上で目を剥く。
その視界の中で、伊輔の白い粒を纏った手の平は、無数の傷のある氷雨の背中へと叩きつけられた。
瞬間。
氷雨の背中がそれまでにないほどに深く反り、手首の縄が小郎太達にもはっきり聴こえるほどに軋む。
身を反らせる事で爪先立ちになった足の震えも尋常ではない。



「――――ッ!!あ、あ゛ッ……!!………………っっ!!!!」

氷雨は決死の覚悟で声を殺しているのだろうが、それでも抑えきれぬといった様子で声が漏れる。
ひとしきり身を暴れさせた後、氷雨は糸が切れたように力なく項垂れた。
吊るされた両腕が歯止めとなり、細い身体は肩を盛り上げるような歪な格好を取る。
ほんの一瞬髪の合間より覗いた左頬から、光る雫が滴り落ちるのが小郎太には見えた。

一方の伊輔は、どこか苛立たしげに笞を手の平に打ち付けている。
「なんだ、また失神したか。碌な悲鳴も上げずに……。おい、ぼさっとせず水を掛けろ」
父親に似た尊大な物言いをし、水を掛けられて意識を取り戻す氷雨を眺めている。
そしてまた笞を振り上げた。
びしっ、びしっと肉を打つ音が響く。縄の軋む音がそれに続く。
声は聴こえない。
その音を延々と耳にしながら、小郎太は自分の袖が引かれている事に気がついた。
横を向くと、隣で見ていた少年が小郎太に小声で呼びかけている。

「おい、おい小郎太!いい加減戻るぞ。すっかり暗くなっちまった」
彼の言葉を受けて周囲を見回すと、確かに夜も更けて空が闇に包まれている。
離れの中でも丸行灯が用意され始めているようだ。
行灯の灯りで黄色く浮かび上がった氷雨の背中は、汗で濡れ光っていた。
そこへ笞が襲い、美しい肌を朱で隠す。
小郎太はせめてその様をいつまでも見続けたかったが、夜通しここにいる訳にもいかない。
眠りこけて樹から落ち、見つかりでもすれば大事だ。
そうなれば少なくとも、再びこの場所で覗く事は叶わなくなる。
ゆえに、小郎太は少年たちに続き、細心の注意を払いながら樹から滑り降りた。

場を完全に後にする瞬間、後方より一際高い笞の音が響き渡る。
ううう、という悲痛な呻きが聴こえた気もする。
そしてその余韻を打ち消すかのように、伊輔の知性を感じさせない笑い方がした。
「はははは!こいつ鳴きこそせんが、ついに小便を漏らしおったぞ。
 ああ出すがいい、折檻が済んだら床に這い蹲らせて、一滴残さず舐め取らせてやる!」

耳を疑うようなその言葉を背に、小郎太は木塀の穴をくぐり抜ける。
もし眼前の闇に伊輔の気配があったなら、今の彼は後先を考えず殺人の技を用いるかも知れなかった。





拷問修業の様子を覗ける場所は確保できた。さりとて、連日気軽に通えるわけではない。
あくまで大人に見つからないようする事が前提だ。
もし大人の一人にでも知れれば、絶好の場所を失う羽目になる。
そのため三人で同時に張り付いたのは最初の一日だけで、それ以降は交代制にした。
三人のうちの二人は里に残り、修業に励んでいる所を里の大人に見せる。
そうしていわば二人を囮にする形で、残る一人が木塀の中に滑り込むのだ。
一人が居ない程度であれば、山に入っているとでも言い訳が立つ。
しかし三人纏めてとなれば不審を買う。
ゆえに、離れを見張れるのは最高でも三日に一度。
それ以外の間に起こった事は、見張っていた一人に聞くか、氷雨の様子や伊輔の言葉から推察するしかない。
これが小郎太にとって、かなりのもどかしさを感じさせた。

ひとつ確信を得た事がある。
伊輔はやはり、氷雨の操を奪っていた。
ひとしきり拷問を終えた後、伊輔は必ずと言っていいほど氷雨を抱く。
伊輔はけして体力があるほうではなく、拷問終わりは常に息を切らしているが、性欲は極めて強い。
あるいは相手が氷雨ゆえ、か。
かつて自分に恥辱を味わわせた相手を、抵抗もできないほど痛めつけた後に犯す。
そこに生き甲斐を感じているようだ。

水責めをしている際も、伊輔は露骨に性欲の炎を滾らせていた。

真裸のまま後ろ手に縄を打たれた氷雨が、髪を掴まれて水桶に顔を漬けられている。
「っぶはっ!!は、はぁっ、はぁあ、あっ、はあっ!!」
飛沫を上げながら、伊輔に髪を掴まれた氷雨が水面から顔を上げた。
水中で五分以上も息を止められる氷雨とはいえ、断続的に空気を奪われ続けては堪らない。
すらりとした体を捩り、顔を振りながら噎せ返る。
伊輔はその苦悶に満ちた表情を嬉しそうに覗き込み、氷雨が息を吸う瞬間に再び水の中へと頭を漬けた。
氷雨の肩がひどく暴れる。しかし後ろ手に縛られた彼女には、できる抵抗も限られている。

それにつけても、水へ沈めるまでの間の取り方が憎らしいまでに巧妙だ。
氷雨がもっとも多く水を飲む拍子を、伊輔は見極めている。
水責めはこれが初めてではないというから、幾度も繰り返すうち、氷雨が最も嫌がるやり方を会得したのだろう。
今日だけですでに三十数回。
いかに鍛えられたくノ一とはいえ、流石に忍耐ではどうにもならない頃だ。

伊輔は氷雨の後ろ髪を掴んだまま、別の手で頭を押さえ、氷雨の抵抗をその体重で抑え込む。
そして水面に気泡が浮かばなくなってからさらに数秒待ち、無理矢理に後ろ髪を引いて顔を上げさせる。
氷雨の顔を覗き込んだ伊輔は、満面の笑みを浮かべた。
すでに忍びの限界を迎えている頃だ、氷雨の顔は溺死寸前のごとき悲惨なものとなっているだろう。

「いい顔だな。どうだ、苦しいか? 許してくださいと一言言えば、楽にしてやるぞ」
伊輔は勝ち誇ったような顔でそう言いながら、氷雨の乳房に手を掛けた。
そのまま自らの所有物とでも言うべき無遠慮さで揉みしだく。
氷雨は黙ってその恥辱に耐えていた。
しかしその後も図に乗った伊輔が胸への刺激を続けると、間近に迫ったその耳元で何かを呟く。
それは小郎太の耳にも拾えないほど小さな声ではあったが、伊輔はそれを聞いて目を見開く。
そして愛撫の手を止め、怒りに満ちた表情で氷雨を睨みつけた。
「こ、この礼儀知らずが……っ!!」
そう呻くように言うと、荒々しく氷雨の髪を掴んで水桶へと叩き込んだ。
さしたる間もなく引き上げ、すぐにまた沈める事を繰り返して氷雨を消耗させる。
そうして氷雨が水桶の縁に頬を乗せてぐったりとした頃合いで、伊輔は袴をたくし上げて氷雨の背後についた。
「 ぐ 」
一瞬の後、小さな呻き声がし、横向きになった氷雨の奥歯が噛みしめられる。
小郎太にとって最も度し難い時間の始まりだ。

二人分の体重を受け、水を湛えた巨大な桶がぎしぎしと揺れる。
「いいぞ、相変わらずよく締まるな。水責めで昂ぶったのか? このふしだら女め」
伊輔は下卑た言葉責めを交えながら腰を打ちつけていく。
氷雨のすらりとした足に挟まれた、醜悪な伊輔の尻。
それが前後に揺れるたびに、氷雨の足の内側に筋が浮き、おぞましい肥満体の逸物をねじ込まれていると知れる。
何度見てもおぞましい光景だ。
特に今の伊輔は、避妊具である魚の浮き袋を用いていない。
下手に笞で打たれるよりも、直に伊輔の劣悪な精を刷りこまれる方が氷雨にとってはつらいだろう。
事実氷雨は、汚辱からか呻きながら、恨みの籠もった瞳を背後の伊輔に向けていた。
しかし一方の伊輔はそれで退く謙虚さなどなく、体位をずらして氷雨の顔を水に漬けながら突き続ける。

やがて、強く腰を掴んで大きく腰を前後させたかと思うと、伊輔は尻肉を震わせながら射精を始めた。
「むぅぅあっ…………!!」
どくり、どくりと音が聴こえるような、身体を小刻みに震わせる射精だ。
伊輔の射精時間は押しなべて長く、並の男と比べても精液の量はかなり多いものと思われた。
「ふぅ、よく出た。お前のごとき下忍には本来乞うても得られん子種だ。零さず呑み込め」
伊輔はそう言いながら腰を引く。
暗がりになった氷雨の秘所から、大量の白いぬめりが零れていくのが見える。
伊輔はそれが床へ落ちる前に指で掬い取り、改めて刷り込むように秘裂へと戻した。
かすかに見える唇のような秘裂の合間で、太い指がぐちゅぐちゅと音を鳴らす。
伊輔を睨む氷雨の瞳に、かすかに怯えの色が浮かぶ。
それを見た瞬間、小郎太は硬く拳を握り締めていた。
しかしだからとて、彼にはどうする事もできない。ただ忍ぶ事、それ以外には。





被虐が止む日はない。
氷雨は、離れにいる間はほぼ常に縄で縛られ、伊輔の征服欲を満たす的となる。

ある日には、駿河問いを受けたまま伊輔の逸物を咥えさせられていた。
天井から吊るされた縄がぎいぎいと鳴る。
伊輔はでっぷりとした腹と尻を揺らし、氷雨の頭を掴んで腰を打ちつけていた。
吊るされる氷雨の細い身体と対比になり、その肥えた身体は滑稽なばかりだ。
「お、おお゛っ……おご、ごおぉっ…………」
氷雨の喉から声が漏れていた。
伊輔は縮れた陰毛で氷雨の顔を覆うまでに深くねじ込んでいる。
となれば当然喉奥まで入り込んでいるはずで、声が漏れるのも仕方のない道理といえた。

声が出る一方で、氷雨自身の顔は無表情を貫いていた。
逸物の出入りの影響で頬や鼻筋に皺が寄ることはあるが、目から上は涼しげに閉じられている。
相手が苦しむ姿を好む伊輔にしてみれば、さぞや興の醒めることだろう。
しかし伊輔は、根比べだと言わんばかりに淡々と氷雨の喉を使い続ける。
「やすく喉が開くようになったな。初めのころは、涙を流して暴れたくっていた分際で」
過去にも同じ責めを繰り返していたと匂わせる言葉を漏らす。
そしてまた、口を噤んで腰を前後させ始める。

桜色の唇の内側で、しとどな唾液のかき混ぜられる音が続いた。
川の流れが堰き止められた箇所で鳴る音。あるいは、囲炉裏鍋の中で湯が煮えたぎる音。
それとよく似た音が続く。氷雨の口の中で。
その異常性は、やがて唇からあふれ出す唾液という形で表れていく。
喉奥を掻き回されているのだ。そして縛められた氷雨は、口を拭う事ができない。
ゆえに唾液も涎も垂れ流された。いかに元が整った顔立ちであろうと、惨めなものと化してしまう。

「どうだ、苦しいか」
伊輔は一旦逸物を引き抜き、唾液に塗れた氷雨に問いかける。
氷雨はしかし、目を静かに閉じ、唇は何事もないかのような一文字に引き結んで涼しい顔を作る。
伊輔は舌打ちし、再び逸物の先で氷雨の唇を割り開いた。
再び喉奥を蹂躙する音が始まる。

見た目には大きな変化のない責めではあったが、水面下では刻一刻と状況が進んでいたらしい。
喉奥を抉る伊輔は、氷雨を見下ろしたまま徐々に笑みを深めていった。
伊輔が氷雨の顎を持ち上げ気味にして喉を突く際、微かながら氷雨の眉間に皺が寄るようにもなる。
そうした事を幾度も繰り返した後に、伊輔は期を得たとばかりに一際腰を深く突き込んだ。
さらにはそのまま氷雨の頭を引きつけ、もっとも喉奥の深い部分で留めてしまう。
氷雨はしばし、静止したように耐えていた。
しかし眉間に強く皺を寄せた直後、その海老反りの身体が大きく震え上がる。
そして喉奥から破裂音がし、ついに、伊輔の陰茎や玉袋を伝って吐瀉物の線が伝い落ちていく。
伊輔は満面の笑みを湛えたまま、嘔吐している最中の喉奥を浅く前後に突き回した。
「ご、もおぉお゛……っっ!!!」
いつになく水気の多い攪拌の音が響き、うがいをするような氷雨の低い呻きが漏れる。
床には品のない音を立て、更なる吐瀉物が打ち付けられた。

嘔吐が終わった後、伊輔は逸物を唇から引き抜く。
それは異常な量の粘液に塗れ、夕暮れとなりはじめた離れの中で怪しく煌いている。
氷雨は疾走を繰り返したような荒い息を吐いていた。
薄く目を開き、床に広がる吐瀉物を暗い瞳で眺めている。
その鼻先に、伊輔が逸物を突き出した。

「どんな気分だ、自分の臓腑の匂いが辺りに漂っているというのは?
 ……まぁいい、続けるぞ。お前の胃が空になるまでだ。
 もっとも、しおらしく哀願すれば赦してやらん事もないがな」

氷雨は視線を汚物塗れの逸物に向ける。
しかしなお無感情を貫いたまま、伊輔の言葉を聞き流している。
伊輔は一際大きく舌を打つと、荒々しく氷雨の黒髪を掴み上げた。



伊輔は、どうにかして氷雨の心を折ろうと苦心しているらしい。
憎い相手から繰り返し恥辱や陵辱を受け、精神を磨り減らす。
それは拷問の修業としては、ある意味で非常に実践的ともいえる。
しかし伊輔にはまるで容赦が無い。
思いつく限りのやり口で、氷雨の心身を責め立てる。

ある時、小郎太が離れを覗くと、氷雨は伊輔に覆い被さられる形で犯されていた。
大股を開く屈曲位といった体勢だ。
性交時の氷雨の顔を好む伊輔は、その体位を多用する。屈曲位自体は何もおかしい訳ではない。
しかしながら、その時は氷雨が妙に声を出していた。
「あ、あ!あ、あ、あ、あっ……!!」
小刻みに怯えるような声を発する。
瞳も見開かれ、結合部の付近を見下ろしている。
普段であれば、犯されている間じゅう何事も無しといった顔を貫く彼女が、だ。
何故だ。
小郎太が訝しがりながらも見守っていると、程なく伊輔自身の口から真相が明かされる。

「本当によく締まるな、お前の糞の穴は。名残惜しげに根元から先まで吸い付いてくるわ。
 女陰よりも具合が良いかも知れんぞ。
 どうだ? お前にくっついていた腰巾着の小僧三人にも、これを味わわせてやっては」

伊輔のその言葉を聞いた瞬間、小郎太は衝撃を受けた。
糞の穴……すなわち後孔を性交の箇所として用いられているのだ。
なんとおぞましい。
しかしそうであるならば、氷雨が声を上げたり、表情を変えているのも得心がいく。
氷雨の不浄観念は、小郎太と大差ないはずだからだ。
その氷雨は、伊輔の言葉に対して鋭い視線で睨み上げていた。
射殺すような眼光。ところが伊輔は怯む様子もない。
すでに何度もその視線を受け、しかし自分に危害を加えられないと確信しているようだ。

「なんだその目は。あいつらの話をするとすぐにそれだ。
 怒気が漏れているぞ、くノ一は喜怒哀楽を表したりはしない……じゃ無かったのか」
伊輔は嘲笑いながら腹の肉を揺らし、氷雨の中に滾りを打ち込む。
そうと知れれば、確かに結合の位置は普通よりも低い。
伊輔の陰毛越しに、氷雨の桜色の秘所が半ばほど覗いている。
しかし。
小郎太は目を擦った。
光の加減だろうか。どうもその秘じらいの場所は、蜜に濡れているように見える。
「……まぁいい。どの道、もう間もなくお前は『喜』を隠せなくなるんだからな。
 いい加減、薬も回ってきた頃合いだろう。繋がっているおれも血の巡りが止まらんわ」
伊輔は笑みを湛えながら告げ、氷雨の茂みの中に指を差し入れた。
水音が立つ。

「これで薬も三日目、今宵が山だ。このまま突き続ければ、女はやがて自我を失くす。
 少なくとも遊女共は皆そうだった。忍びとて女は女、別ではない。
 せいぜい、夜明けまでそうして睨んでいるがいい。
 お前が尻の穴だけであさましく乱れ狂っていく様を、この奥滋藩次期藩主が自ら見届けてやる」

伊輔は氷雨の両腿を掴み、匂い立つ体臭を嗅ぎながら力強く尻穴を穿つ。
氷雨は足指に痛いほど力を込めていた。
すっかり豊かに膨らんだ乳房を上下に揺らし、艶やかな黒髪を川のように床へ広げて。

小郎太は屋敷を後にする事ができなかった。
欅の樹を滑り落ち、木塀をくぐり抜けたところで女の叫びが聞こえたからだ。
心を刺すほど悲痛な叫びと、暴れまわる何かを数人が押さえつける音。
そして、聞き慣れた伊輔の笑い声。
木塀にもたれ掛かってそれらを耳にしながら、小郎太はひとり俯く。

顔の影となった地面に、細かな水滴が滴り落ちる。
小さな影はそれから間もなく、宵闇に紛れて輪郭をなくす。
まさにその瞬間。
小郎太は、自分の中の冷静な何かがぶちりと千切れ落ちる音を聞いた。
決起を誓ったのは、この時だ。





氷雨は今、太い柱へ大の字になるように縛られ、伊輔の連れてきた婀娜な女に責め立てられている。
女は手にした壷から妙な薬を手に取り、それを氷雨の秘所に近づける。
責めるのは常に同じ箇所だ。
秘裂の最上部に息づく、小豆のような突起。
女はそこだけを指で嬲っている。

「ああ、ああああああっ!!!うあああ、ああ、あああああああっっ!!!!」

氷雨は身も世もなく身悶えていた。
小郎太に女体の知識はないが、その小豆ほどの器官が女の急所である事が、その乱れ様から推して知れる。
狙いが急所であることを念頭に入れれば、女の指遣いはいよいよ残酷に映った。
片手親指で包皮を剥き上げ、薬を絡めた別の指で挟むようにして嬲る。
強弱をつけ、捻りを加え、さすり、弾き、押し潰し。休み無く。
それらの刺激によって、氷雨の秘部の突起は刻一刻と充血していった。
数日前は普通には見えないほどの大きさしかなかったはずだ。
それが、嬲られはじめてしばし経つと小豆程度になり、今は大きさだけなら大豆にも等しい。
総身から立ち上る汗の匂いもいつになく濃厚で、欅の樹上にいる小郎太達にさえ届くほどだ。

「ああっ、あああああっっ!!!はぁ、もっ、やめっ……あ、あっああ!!!
 ああああぅううあああああおおおおおおおっっ!!!!!」

氷雨はもはや忍ぶどころではない。
固く閉じた目から大粒の涙を零し、鼻水や涎に塗れて歪む顔は美貌の影すらない。
必死に脚を閉じようともがいているが、その欲求はただ太い縄を軋ませるだけで叶わない。
「ふふ、どうしたんだいくノ一、そんなに喚き散らしてさ。
 最初はえらく強情だったけど……一度タガが外れてからは凄いもんだね。
 可愛い女の場所からも、ひっきりなしに蜜が零れてるよ。ほぉら、また」
婀娜な女が氷雨の女陰を開きながら告げた。
女の指での開きにあわせ、一筋の艶が氷雨の白い脚を伝い落ちる。
それは膝頭を回ったところで滴り落ち、下に広がる液溜まりに小さな飛沫を上げた。

「ははは、責め殺すんじゃないぞ。まだ愉しめるんだからな」
伊輔は大名さながらの豪奢な肘置きに身を預け、女のする事を見守っている。
傍には器を掲げた若い女が侍っており、伊輔はその器に手を伸ばしては、醍醐を掬い取って嘗めていた。
彼にとっては美食の肴に過ぎないのだ。氷雨がどれほど悶え苦しもうと。

「心得ております、若様。ただこの女芯責めは、女の地獄ですから。
 これを延々と続ければ、どれほど強情な娘でもしおらしく変わるものです。
 それにこの薬を用いている以上、この娘は身体の奥から快楽に蕩けていくはず。
 この薬で極まり続けた末に房事に至れば、男も女も桃源郷を彷徨うが如き心地と申します。
 もっとも……女の頭がその後も正気を保てるかは、分かりかねますが」
女は軽い口調でそう語る。
伊輔もそれは楽しみだと上機嫌に笑う。
氷雨が刻一刻と瓦解しようとしているその前で。

小郎太は音もなく欅の樹を降り、屋敷の傍へ戻る。
しかし、今度は泣く事はなかった。
涙を流す代わりに、全身を濃緑色の忍び装束で包んでいる。
今宵は満月。しかし……今日彼が戦うのは、氷雨ではない。
口当てを鼻の上まで上げ、小郎太は時を待つ。

ひゅーい、と遠くで口笛の音が響いた。
小郎太は懐刀の位置を確かめ直し、勢いをつけて屋敷の塀の上へと手を掛けた。
塀の内では騒ぎが起こっている。どこかで火の手が上がっているらしい。
どうやら、他の二人は上手くやったようだ。
小郎太は塀に刺した刀を足がかりに瓦を乗り越えながら、大きく息を吸った。

目的は、氷雨の奪還。
そして、どす黒い怒りの塊を伊輔の喉笛に叩き込む事だ。
三人共に覚悟は決めている。三者三様に、煮えたぎる思いを孕んでいる。
中でも最も憤りの深い小郎太が、最も危険な役割を担う事になった。
まだ子供の彼らは、『仕方がない』と割り切って氷雨を諦めることなどできない。
大人達がしないならば、自分達の手で彼らの姉を奪い返す。怨敵に誅を下す。
たとえ、誰かの命が欠けようとも……。


              
                           終
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プリズン六区

※ 排便・飲尿・嘔吐などスカ属性ありのダークなレズいじめ物です



西暦2074……。
社会人のモラル欠如が問題視され始めてから、七十余年。
思いやりの欠けた人間が子を産み、自分本位に育て、その子供がまた子を産む。
そうした未成熟さの連鎖の果てに、世の中は荒み切っていた。
昨年行われた調査によれば、ある公立学校の一学年のうち、実に85パーセントに当たる生徒が拘置所に入った経験があったという。
あまりにも犯罪者数が多いため、拘置所を兼ねた刑務所が各市町村に設けられたほどだ。

刑務所内は罪状の重さに応じて六つの区画に分かれ、その段階に応じて報道規制が強まる。
最重犯罪者を擁する『第六区』に至っては、一切の内部情報が秘匿され、あらゆる事が所長の裁量次第で決定される。
特に女性刑務所においては、女特有の陰湿なハラスメントが横行しているとの噂があった。
江堀北女性刑務所も、そうした噂が流れる施設の一つだ。



 ※

「ほぅらどうだい、美味しいかい。毎日色んな人間が使ってる便器の水は!」

矯正長の階級章を光らせる女が、口端に笑みを浮かべてがなり立てた。
気に喰わない同性を合法的に嬲るため勉学に勤しんだという、人格に難のあるサディストだ。
その視線の先では、鼠色の囚人服に身を包んだ女が洋式便器に顔を突っ込まれ、執拗な水責めを受けている。
髪を掴み、肩を抑えて刑を執行するのは、常に恵美子の周りを固めている矯正副長と看守長達だ。
どの女も同性を嬲ることに最上の悦びを感じる類であり、嘉川恵美子との利害は一致していた。

「げほっ、えぇほっ!!いや゛っ、もぉ゛いやああぁあ゛あ゛あ゛っ!!!」

囚人服の女は咳き込みながら涙を流し、看守達から逃れようともがく。
それを数人掛かりで押さえ込み、深く便器に顔を漬ける所業は直視しがたいものだ。
広い特別懲罰房の隅には、罰を受けている女と面識のある女囚がギャラリーとして集められ、所在無げに視線を彷徨わせていた。

「そろそろヤバいんじゃない……あれ」

見守る受刑者の一人が堪らず漏らした言葉を、隣の女性が慌てて遮る。

「シッ、滅多な事言うもんじゃないよ!矯正長へ楯突いたばっかりに、真冬にスッポンポンで運動場に立たされた人もいるんだよ!」
「そうだよ。智子も可哀想だけど、ああいう人らに目付けられたんだもん。どうしようもないって……」

受刑者達は一様に同情的でありながらも、嘉川恵美子の率いる看守に逆らう気力がないようだった。
しかしその中でただ一人だけ、拳を握り締めて嘉川恵美子を睨みつける女がいる。
名を雨宮沙桐(あまみやさぎり)という。



沙桐は、極道の女だ。
極道とはいえど、この時代における暴力団は特殊な意味合いを持つ。
暴力団の中に、悪事を先導する非道の組織も無論多くある。
しかし警察機構すら腐敗しきったこの世の中で、真に頼りになるのは義を重んじる非合法組織である事もまた事実だった。
沙桐が属する白江会は、まさにそうした古き良き『任侠』の組織だ。
法で裁けぬ悪を裁く、国が救わぬ弱きを救う。それを絶対の行動指針とし、地域住民から篤い信頼を得ていた。

しかしながら、清廉潔白であればそれだけで何者かから疎んじられる世の中だ。
白江会先代会長が突如病に倒れ、若頭・山蔵昭一が跡を継ぐ準備が進められている頃、突如別の組の構成員が彼を襲撃した。
間の悪いことに、山蔵は近く籍を入れる予定にあった沙桐と久方ぶりに愛し合っている最中であり、護衛役の舎弟は席を外していた。
とはいえそこは、当代きっての武闘派としても知られる“山昭”だ。
硝子の灰皿を手に孤軍奮闘し、血気盛んな鉄砲玉の数人を返り討ちにする。
しかしながら、任侠で知られる組を継ごうという時期に、スキャンダルの元となる暴力沙汰は余りにまずい。
特に今回山蔵は、女を庇いながら抵抗したとあって手心を加えられず、無茶をしてきた二人を死傷させてしまっている。
その状況を憂慮し、自ら殺人の罪を被って自首したのが沙桐だ。

恋人が投獄されたと聞き、山蔵は狼狽した。
女の手で凶器を手にした筋者を殺せるはずがない、殺ったのは俺だと幾度も訴えた。
しかし、警察がそれを聞き届けることはない。
一説によれば、白江会の次期会長となる男を直接捕らえるよりも、その女を人質として抑え、交渉材料とする方が良策との判断が働いたのだともいう。
さらに敵対組織の襲撃そのものが、白江会を煙たがる警察の手引きによるものだとの噂もあった。
事実、ちょうど襲撃のあった頃、組の門前に警官数名が訪れてガサ入れをするかどうかの悶着を起こしており、その隙に鉄砲玉の侵入を許している。

ともあれ、沙桐は無実の罪で『第六区』に収容される事となった。
そしてそこで、義理人情とは程遠い看守によるハラスメントを目撃する。
沙桐はその隔絶された地獄でも、白江会の心意気を示すべく弱者の味方であり続けた。
獄中に蔓延っていた理不尽な仕来りを廃し、周囲の女に上手く看守の叱責から逃れる術を教えた。
彼女自身、警察の無理難題から山蔵や先代会長がするりと逃れるさまをよく目にしており、相手の立場を逆手に取って制するやり口が上手かった。
沙桐が収監されて以来、獄中で行われる折檻の数は目に見えて減っている。
女囚が揃いも揃って小賢しくなり、さらにはそれが沙桐の入れ知恵によるものだという事は明らかだ。
またそれを別にしても、嘉川恵美子には雨宮沙桐という女個人が気に食わない。

和服に映える、艶やかで長い黒髪。
柳のような眉に、利発そうなキリリと鋭い瞳。
日本人らしく、慎ましやかに整った鼻筋と口元。
女らしさを感じさせる胸のふくらみに、帯で細く引き締められた腰つき。
彼女がしゃんと背を伸ばして廊下を歩けば、男女を問わず言葉さえ失くして見入ることだろう。

嘉川恵美子には、そのすべてが火花のように眩く、下劣な虫籠である塀の中にそうした女がいる事実が耐えがたい。
その異分子を、徹底的に畜生にまで貶めなければ気が済まない。
ゆえに沙桐の入所以来、嘉川恵美子は遠回しに彼女を挑発しつづけてきた。
情に厚い姉御肌の沙桐には、自らが虐げられるよりも、可愛い妹分が目の前で嬲られる方が堪えるはずだ。
そこで彼女と一度でも親しく話した女は、理由をこじつけてでも公衆の面前で嬲り者にした。
今、便器に顔を漬けられている娘も、沙桐を姉のように慕っている一人だ。

その悪逆非道を前に、耐えに、耐えに、耐え続けてきた沙桐も、今日この日、とうとう限界を迎えたようだった。



「……き、貴様ッ、誰が列を離れていいと言った!!」

女看守の甲高い叫びで、嘉川恵美子が後ろを振り返る。
沙桐はその横面を、一分の躊躇いもなく打ち抜いた。

「ぐあっ!!」

嘉川恵美子は短く叫んでたたらを踏む。そこへさらに逆側からの一撃を浴びせる。

「や、やめろ!!おい何してる、全員で押さえ込むんだよッ!この、大人しくしな!!」
「こいつ、舐めやがって!テメェ、自分が何やったのか解ってんのか!!」

すぐに看守の数名が集まって沙桐を取り押さえた。
床へ引き倒され、片手を極められて眉を顰めながらも、沙桐は射殺すような瞳で嘉川恵美子を睨み上げる。
嘉川恵美子は頬を押さえながら、憎悪に染まる瞳で沙桐を睨み返した。

「……よくも、やってくれたね!こんな事してタダで済むと思ってんのかい!!」

そう凄むも、沙桐は表情を曇らせない。すべて覚悟の上での行動だ。
これ以上妹分への横暴を見過ごす事は、彼女自身の矜持を殺すことに等しい。
たとえ命を懸けてでも義を通す。それこそが、山蔵昭一の妻となる筈だった女の生き様だ。

「まさか、どうぞお好きに。ここまでされて何もしないってんじゃ、矯正長さまの面子が保てないでしょう。
 何なら、あたしがその子の身代わりになったっていいのよ」

沙桐はそう澱みなく言い切った。
その提案に、嘉川恵美子は目を見開く。果報が転がり込んできたような気分なのだろう。
嘉川恵美子が自分を釣り上げるべく餌を撒いていることに、沙桐はかなり以前から気付いていた。
徐々に、徐々に、皺の多い顔に笑みが広がり、嘉川恵美子の口は魔女のごとく歪む。

「言ったね、雨宮沙桐。皆も聞いただろう。……その言葉、呑み込むんじゃないよ!!」

凄むように念を押し、傍らの看守長に目で合図する。
看守長はよく心得たもので、女看守へ指示を出して沙桐の服を脱がせにかかった。
荒々しい手つきで鼠色の薄い囚人服が引き抜かれ、ショーツが取り去られて沙桐を丸裸にする。
沙桐の豊かな乳房と、ダンサーのように引き締まった腹部、そして伸びやかな脚線が、何十という同性の視線に晒された。
白い右肩に彫り込まれた椿の刺青が、只の女にはない独特の迫力と気高さを際立たせている。





「じゃあ、お前の覚悟ってやつを見せて貰おうかい。
 誰か、チチでも揉んで気分ださせてやんな。お前は頭の後ろに手を組んで、ジッとしてるんだよ!」

嘉川恵美子が、女らしからぬドスの利いた声で命じる。
沙桐は命じられたまま、肩幅に脚を開く格好で頭後ろに手を組んだ。
そこへ看守長が歩み寄り、鎖骨へ掛かっていた沙桐の黒髪をそっと指で払う。
そして直後、彼女は沙桐の顔へ向かって唐突に痰を飛ばした。痰は左目の瞼に命中する。

「…………ッ!!」

沙桐は反射的に左目を閉じたが、そこは勝気な彼女だ。痰が流れ落ちる最中にも関わらず、あえて左目を開いて看守長を睨み据える。
細かに泡立つ痰を絡みつかせ、目から涙のように伝わせながら、しかし射殺すような眼光で。
そこには極道の女としての胆力が表れている。
しかし、それでかえって嗜虐心を燃え上がらせるのがこの『第六区』の看守達だ。
看守長はゆっくりと沙桐の背後に回り、囁きかけるように黒髪へ顎を埋めつつ、下方から乳房を包み込んだ。

「へぇ、生娘みたいな弾力があるじゃないか。お前は25だったね、それでこの張りはちょいと珍しいよ。
 デカいし、さぞや男に喜ばれるだろうね。白江会の若頭からも、毎晩のように揉まれてたんだろう、ええ?」

看守長は舐めるように言葉責めをかけながら、沙桐の乳の房を揉みしだいていく。
桜色の柔肌は、看守長の指の間で様々に形を変えた。
看守長はそうした行為に慣れているのか、なんとも心地の良い揉み方をする。
親指を乳腺尾部に宛がい、他の指でアンダーバストから掬い上げるように刺激する。
外側から内に向け、焦らすように、病的なほどに丹念な愛撫を施す。
揉むリズムも脈拍と一致した自然なものだ。
どれほど感度の鈍い女でも感じてしまう。そのような説得力があり、見守る女囚の数人が喉を鳴らした。
嘉川恵美子も用意された椅子に掛け、殴られた頬をさすりながら、興味深げに見物している。

沙桐は静かに目を閉じたまま愛撫を受けていた。喘ぐことは無論なく、何の反応も示してはやらない。
しかし彼女とて女だ。愛撫を受け続けるうち、やがて肉体に変化が現れる。
乳房全体が透き通って見える風になり、薄っすらと静脈が見えはじめる。そして、その他の性感反応も。
間近で監視する女看守達は、その反応を見逃さなかった。

「あらあら、乳輪がふっくら膨らんできてるじゃない。乳首も、だんだん固くなって」

まるでその煽り言葉を受けるかのごとく、背後からの看守長の指も乳輪を捉える。
ほのかに粟立つ乳輪は、乳首に次いで感覚の鋭敏な性感帯だ。
そこへ人差し指と中指の先を宛がって、なぞる。上へ、下へ。円を描くように……また上下に。
それを執拗に繰り返すうち、沙桐の胸の蕾はいよいよ尖りだす。
すると、看守長の指先がいよいよその蕾を捉えた。
乳頭の側面を摘み、ダイヤルを刻むように捻る。または先端から乳輪にかけてがテントを張る形になるまで引き伸ばし、戻し、また伸ばす。

「くっ……!!」

沙桐も、これにはさすがに眉を顰めた。


「ははっ、こいつチチで感じてやがんの。クールぶって目閉じてるけど、蕩けた女の目を見られたくないだけなんじゃねぇの?」
「指の腹で軽ーく掴めるくらいまで勃起してちゃあね。
 我慢してるつもりだろうけど、何かされる度に腋がへこむし、頭の後ろで組んでる手も力コブみたいに力むし、バレバレなんだよね。
 あはっ、指摘したら余計解りやすくなっちゃった。こいつプライド高いだけあって、言葉責めに弱いわ」
「実際さ、何度かは軽くイッてんじゃないの?あんな乳首勃起するなんて、相当じゃん」

女看守の謗りが飛び交う。
沙桐は気丈に耐え忍んでいたが、看守長の長い指がついに乳頭正面を叩くと、ギクリと薄目を開いた。
最上の性感帯のひとつである乳首の中でも、さらに一際敏感な場所だ。
普段であれば触れられても痛みを感じるばかりだが、乳腺の性感を充分に高められた今は、陰核と同等の弱点となってしまっている。
看守長も無論それは熟知しているらしく、焦らすような指の動きでしばし均一的な圧迫を続けた。

「あ、う……ん゛っ」

それだけで、沙桐は弱い電流を流されたかのような反応を示してしまう。
そして指先がとうとう垂直に乳頭の先へ当たり、掻き毟るような動きをし始めたとき、沙桐の細い腰は解りやすいほどに震え上がった。

「んぁあぁあああ゛っ!!!!」

喉の奥から切迫した呻きが上がる。
それを耳にし、女看守達は一斉に甲高く笑いはじめた。嘲りを多分に含む黄色い笑い声。
沙桐はその渦中にありながら、腰を震えさせて官能を示すしかない。

「はははははっ、浅ましいったらないねこの女!胸揉まれただけで腰ガクガクになってやがるよ!」
「色んな所の筋肉がピクピクしてるねぇ、こんなの初めて見るかも」

そうした嘲笑に混じり、嘉川恵美子も機嫌よく笑う。

「せっかく善がってんだ。チチだけじゃなく、マンコの方も可愛がってやんな!」

その言葉に今度は矯正副長が返事をし、沙桐の足元に屈みこんだ。

「おい、もっとマタを開け!」

そう鋭く命じ、慣れた様子で沙桐の腿を平手で打つ。相当に大きな音が響いた。
沙桐はゆっくりと脚を開き、憎い相手の指先が恥じらいの場所へと入り込む汚辱に耐える。

「おや、ちょっと湿ってるじゃないか。お前のGスポットは……ふん、ここだね、見つけたよ。
 あたしゃココの責め方が悪い意味で嫌らしいって悪名高いからね、せいぜいはしたなく悶えるがいいさ」

矯正副長は笑いながら指を蠢かせる。
そこから程なくして、沙桐は、ぐ、と小さく呻いて腰を引いた。快感半分、嫌がり半分だ。
矯正副長はその様を鼻で笑いながら、再び沙桐の白い腿を凄まじい音で打ち据える。


矯正副長は右手の二本指で花園を責め苛む一方、左の手で沙桐の陰毛を弄びはじめた。
陰毛はやや整然性に欠け、デルタゾーンを覆うばかりに生い茂っている。
沙桐に限った話ではない。
『第六区』の囚人は剃刀をはじめ一切の刃物の使用が禁じられ、ゆえに体毛の手入れも出来ない。
基本は伸ばすがままであり、入浴時に看守が目視確認の上、健康を損なうレベルと判断した場合のみ鋏で無造作に切り取る。
体毛の管理ができない事は、女性にとっては相当な精神的苦痛を伴うものだ。
特に、沙桐のようなキリリとした隙のない美人は、手入れの行き届いていない陰毛がことさら滑稽に映る。
矯正副長は、それを承知で沙桐の陰毛を弄び、周囲からの笑いを誘うのだった。
とはいえ、陰毛ばかりを弄ぶわけではない。長い指は時に茂みに隠れた陰核を探り当て、柔らかに扱きたてる。

「ほぅら、気持ちいいだろう。ここに来てから四ヶ月ばかり、仲睦まじい恋人と離れ離れだった訳だからね。
 聞けば、雑居房の慣習になってるレズ行為にも、孤高気取って一度も参加してないらしいじゃないか。
 25の熟れはじめた身体がタマッてるのは、解りきってるんだよ?」

そうした言葉責めを絡めつつ、淫靡な手つきで秘裂を嬲る。
乳首と陰核、そして膣内という三つの性感帯を同時に責め立てられ、沙桐は腰を蠢かせていた。
顔はなるべく平静を保とうとするが、身体の反応までは御しきれない。
10分もしない内に、伸びやかな脚の合間からは微かな水音が漏れ始める。
沙桐は屈辱で肺が震えるほどだった。妹分達の前でそのような恥辱を晒される現実が、彼女の矜持を切り刻んでいく。

「あーあ、濡れちゃったぁ。ヒクヒクしてやらしいマンコだわ」

口汚く罵りながら、矯正副長の指遣いはより容赦のないものとなった。
水音は粘り気を増しながら間断ないものとなり、茂みの下から光る雫が飛び散る様が視認できるほどになる。
そこへ来て矯正副長は、沙桐の膝を押し開いてがに股のような惨めな格好を取らせ、溢れる蜜が手首までを濡らす様を周囲にまで明らかにする。
沙桐は凛とした態度を保ちながらも、幾度も唇を噛みしめた。絶頂に押し上げられたからだ。

背後から乳房を愛撫され、がに股の格好で秘裂を掻き回される。
その姿を散々に笑いものにした後、ようやくにして矯正副長の指は秘裂から引き抜かれた。
そして愛液で濡れ光るその指先を、誰の目にも触れるように高々と掲げる。
それは沙桐のカリスマ性を貶めるのに、ある程度の効果を上げたようだ。
沙桐を慕っていた者が沈痛な面持ちになる様を、女看守達が指をさして長笑う。
その空気の中、嘉川恵美子が椅子から立ち上がった。


「さて。じゃあそろそろ、お前にも便器の水を味わって貰おうかね」

嘉川恵美子の一言で、女看守達の瞳が嗜虐の色に染まる。命ぜられるまでもなく沙桐を這い蹲らせ、便器の前に引き立てる。
と、その便器の前に嘉川恵美子が立ち塞がった。

「おっと、そういえば尿意があるね。丁度良い、この便器にしようか」

わざとらしくそう告げながら、制服の前を開いて便器への放尿を始める。
これには沙桐も表情を強張らせた。押さえつける看守達は、対照的に愉快そうだ。

「ふぅー、出たよ出たよ。しばらくこの部屋にカンヅメだったから、なかなかに濃いね。さ、始めな」

嘉川恵美子は、水の湛えられた便器を示しながら告げる。便器内の水は、事実はっきりと黄色と解るほどに変色していた。
女看守達は沙桐を引きずり、その便器の真上に顔が来るように這わせる。

「くぅ、ぐっ…………!!」

立ち上るアンモニア臭に顔を顰める沙桐。
看守の一人が便器を跨ぐようにして立ち、荒々しく沙桐の後ろ髪を掴んだ。

「この日をずぅーっと待ってたよ、雨宮。クソ生意気なお前にとうとう折檻できるなんて、興奮で震えちまうよ。
 せいぜい苦しんで、その澄ました潔癖づらが歪むさまを見せとくんな」

悪意に満ちた笑みを見せる看守は、強く沙桐の後ろ髪を掴んだまま、さらにうなじの部分にも手を掛けて力任せに押し下げた。
筋肉質な看守の全体重に首だけで抗える道理もなく、沙桐は這ったまま前屈みになって便器へと顔を落とし込む。
ちゃぷりと頭が水に浸かった瞬間、見守る女囚達から絶望的な悲鳴が上がった。

「……ぶはっ!!っはぁ、はぁ、はっ!!」

水から引き上げられると同時に、沙桐は喘ぎながら酸素を求める。
それと同時に生理的嫌悪感から、素早く首を振って顔についた汚水を切る。
そこには普段の肝の座った彼女の姿はないだろう。しかし、それどころではない。
わずかに三度ほど呼吸をした所で、看守は再び後ろ髪を掴み直し、首後ろを押し込んで便器の中へと押し込んだ。
ざぶりと水音がし、四秒ばかり水中へ沈め、引き上げる。

「ぷうはっ、あはっ!はっ、はっ、あっ……!!」

顔の横から海草のように濡れた髪を垂らし、沙桐は顔を上げた。堪らずといった風で首を振る。
鼻腔をむせ返るようなアンモニア臭が満たしていた。
それに苦悶しながら、大口を開けて犬のように空気を求める姿は惨めな限りだ。



「どうだい味は。お前なんぞじゃ、本来頼み込んでも飲ませて貰えない矯正長の黄金水だよ、よぉく味わいな」

看守は目を異様に光らせ、さらに沙桐を沈めた。
豊かな乳房が便器の縁に当たって滑り落ち、ぶるりと揺れる。
その先端がなおも隆起している事を指摘しつつ、看守達は散々に笑った。
その最中にも、また沙桐は水から引き上げられ、喘ぎ、再び水に沈められ続ける。

七度目の時には、呼吸の苦しさから顔を横向けて大きく酸素を求めている所を無理矢理に沈められたため、かなりの水を飲んでしまった。
苦味と共に、それが憎い女の小水である事が思い出され、沙桐は一瞬ながら半狂乱になって暴れる。
はじめに水責めを受けていた娘がそれを見てパニックに陥った事を筆頭に、見守る女囚達も騒ぎ立てていた。
彼女達の中で多少なりとも神格化されていた雨宮沙桐像が、音を立てて崩れ去っているのだろう。

「うふぁあっ!!……あはっ、あ゛、はあっ……あ、ああお゛っ!!」

次第、次第に、沙桐の声は悲痛なものに変わる。
人間の声色には色々あり、例えばナイフで刺された際に出る声は非日常的な深刻さを孕んでいるものだが、今の沙桐の呻きはそれと同種だ。
異常なことには、同じその声を耳にしているにもかかわらず、看守達はさも愉快そうに笑うのだった。
むしろ沙桐が苦しげな反応を示すほど、より容赦なく責め立てる。
頭部側にいる人間は交代で頭を押さえつけ、胴体側にいる人間は、退屈を紛らわすべく秘裂へ警棒の先をねじ込んで“遊んでいる”。
瀕死でのたうつ人間を、さらに棒で小突き回すような異常性だ。

「ほら、まだまだあるんだから遠慮しないの。どんどん飲みな」

嬉々として水に沈めようとする看守に、沙桐はここで抵抗を示した。呻きながら、便器横の床に突いた両手で踏ん張る。
息の整わない内に沈められた事が三度続き、血中に全く酸素が足りていない。
今沈められれば間違いなく失神するという警鐘を、彼女の脳が打ち鳴らしていた。
しかし看守たちは、無慈悲にその腕を払いのけにかかる。

「今さら抵抗してんじゃないよ!!お前が出来ないなら、他のヤツにやらせてもいいんだよ!!」

そう脅しを掛けられると、沙桐は観念して腕の力を緩めた。その瞬間、頭が勢い良く汚水に漬けられる。
今回は見せしめとばかりに、それまでよりもかなり長く漬けられた。
沙桐としてはとても堪らない。意識とはかけ離れた次元で身体が抵抗し、看守達との鬩ぎあいが起こる。
しかし数人がかりの押さえ込みに敵う筈もなく、やがて沙桐の身体は苦しみの極限を超えて弛緩した。
冷え切った頭部とは対照的に、太腿を流れる暖かさが感じられる。

「ん?おいコイツ、小便漏らしてやがんぞ!!」
「やあだぁー、ばっちぃ!」
「誰も小便の許可なんて出してないのにね。こりゃあ、もっと仕置きが必要だ!!」

看守達の謗りと共に、沙桐の顔は汚水から引き上げられた。
沙桐はもう顔の水を切る気力さえなく、強い吐き気に見舞われ、しかし瞳だけはなお変わらずに看守を睨み据える。
それをする事でさらに責めが加えられることは明白だったが、それでも屈するつもりは無かった。



水責めからようやく開放された頃、沙桐の腹部はメリハリなく膨れていた。
かなりの水を飲んでしまったことは誰の目にも明らかだ。

「腹が膨れて苦しそうだねぇ。誰か、指でも突っ込んでラクにさせてやんな」

嘉川恵美子が沙桐を見下ろしながら告げた。すぐに女看守が沙桐を引き起こし、顔を掴む。

「ほら口開けな。さっさと、開けるんだよ!!」

渋る沙桐の唇に指を宛がい、数人がかりで鼻や顎を掴んで無理矢理に開口させる。
そして口内へ素早く手を差し込んだ。沙桐の喉から、ごもぉっ、という苦しげな呻きが漏れる。

「旦那のチンポの代わりに、この指でたっぷりと喉奥を可愛がってやるよ。
 もし噛んだりしたら承知しないからね!」

女看守は厳しく釘を刺しながら、沙桐の喉奥に指をねじ込む。
そこには一片の慈悲すら感じられない。

「ごっ!!ごぁ゛、ろ゛、ぉっご、ぐ!!が、アあ゛、ごぁああ゛……があ゛……っ!!」
「ふふふ、すごい声。喉の奥が指に絡み付いてきて面白いわ。だんだん、開いてきたし」

沙桐は呻きを上げながら、指責めを受け続ける。
限界まで縦に開いた唇からは、まず涎が垂れた。その涎は次第に空気と混じって泡だっていく。

「んごお゛ええ゛ぇ゛っ!!!」

やがて、特に切迫した呻きと共に胃液が漏れた。
直後、沙桐の喉はさらに大きく蠢き、先に流れた薄黄色を上書きするかのごとく黄色い奔流が溢れ出す。
喉を流れる感触からして、固形物も混じっているようだ。
女囚達が何度目かの悲鳴を上げる場面だった。

「おお、出た出た。でも、やっぱ指じゃ奥まで届きづらいね。道具使うか」

女看守は一旦粘液に塗れた指を引き抜き、腰の道具袋から一本の責め具を取り出す。
いくつもの瘤が連なったような形状のディルドウだ。
沙桐を背後から押さえ込む女性が、沙桐の首に手を回して天を仰がせる。
そしてもう一人が、慣れた手つきでディルドウを喉奥へと進めた。

「羽交い絞めでのイラマチオだ。嬉しくて女を濡らすんじゃあないよ」

ディルドウを掴む女看守は、サディズムに満ちた瞳で微笑んだ。



ディルドウは女の二本指に比べれば太さがなく、その分スムーズに喉奥の深くまで入り込む。
そのため、えづき声こそ指の時よりも少ないとはいえ、効果は上だ。
ディルドウがゆっくりと前後する過程で、沙桐の腰は幾度も浮き上がった。
深くまで送り込まれ、そのまま奥で止められると、喉奥が自分の物ではないかのように勝手に蠢いてしまう。
窒息と喉の異物感に、全身からどっと冷や汗が噴き出す。
まさに生き地獄ともいうべき苦しみだった。

「さぁ、胃の中のモンを余さずぶちまけちまいな!!」

背後の女看守が沙桐の首を抱えなおし、もう一人がディルドウの末端を摘んで念入りに奥を抉り回す。
それらの連携が喉奥責めの致命的な角度を生み、沙桐の瞳はたちまちに大きく見開かれた。
熱いものが瞬時に喉をせり上がり、鼻腔を酸い匂いが満たす。

「ごもぉお゛っ……!!!!」

やがて、惨めなえづき声と共に再び吐瀉物があふれ出した。
今度はかなりの量であり、たちまちの内に沙桐の首から胸、腹部にかけてを覆い尽くしていく。
沙桐の左脚は、あまりの苦しさに胸に付こうかという高さにまで跳ね上がっていた。
女看守達は、その姿をも笑いものにする。

「どんな気分だい、雨宮沙桐。自分のゲロに塗れて、それを知り合いのみーんなに見られてるんだよ!
 ほら、お前のゲロをローション代わりにして胸を揉んでやるよ。腹にも擦り付けて……丸見えのマンコにも塗りこめてやろうねぇ!」

背後から首を抱え込んでいる一人が、そう言いながら沙桐の身体を弄っていく。
女囚の何人かが口を押さえて青い顔をしている一方で、看守達は愉しさしかないといった表情だ。
ひとしきり嬲り者にした後は、再度ディルドウを使って喉奥を責め立てた。
吐瀉物の量はある程度を境にして減っていくが、しかしその減少に反比例して沙桐の苦しみも増す。
少量を嘔吐するたびに両脚が跳ね上がり、汚れた足の裏までもが衆目に晒されるほどだ。

「あっはっは、苦しそうだねぇ、カワイソーに。吐きたくても胃が空っぽで吐けないっていう、空嘔吐が一番しんどいからねぇ」
「はは、見なよ、鼻からもゲロ噴いてるよ。生意気な目も流石に焦点が合ってないし、今日はここらが限界かね」

そうした看守の嘲りを総括するかのごとく、嘉川恵美子が手を叩いて笑う。

「さぁ女囚共、よぉくこの光景を目に焼き付けとくんだよ。これが、あたしらに反抗した人間の辿る道だ。
 もっともこの女は、あたしの大切な顔に青痣までつけたんだ、こんなもんで済ましやしないけどね。
 この痣が綺麗さっぱり消えるまで、イジメてイジメて、イジメ抜いてやるよ」

嘉川恵美子は青黒く変色した頬を擦りながら、沙桐の顔を蹴りつける。
嘔吐に次ぐ嘔吐で意識も定かでない沙桐は、無防備に顔を蹴り続けられる屈辱の中、ボロ雑巾のように意識を手放すしかなかった。





灯りの消された薄暗い懲罰房。
沙桐はその中で、丸裸のまま後ろ手に拘束され、柱に括りつけられていた。
下半身は胡坐縛りに縛められており、身じろぎも叶わずにいる。
異様な事に、その下腹部は妊娠中期のように膨れていた。
数リットル単位での浣腸を施されているためだ。
腹部の奥からはまさしく耐え間もなく、大小さまざまな腹鳴りが続いている。
それは、実に三日前から引き続いての事だった。

「はぁっ、はあっ……。お、くぉっ……ああ、ぐっ、おおっ……ハッ、はあっ、はーっ……。」

沙桐は、荒い息を吐きながら苦悶の声を漏らす。
排泄欲は脳髄を焦がすばかりに高まっているが、実際に排泄することはできない。
肛門に限界まで膨らんだアナルプラグが嵌り込んでいるからだ。
それは暗証番号を入力してスイッチを切らない限り、けして抜けず漏らせない絶対的な栓であり続ける。
趣味の悪い事に、この栓には不定期に振動して便意を煽る機能さえ備わっている。
これらの機能の為に、沙桐はこの三日間でいったい何十度、正体を失うほどの苦悶を味わったか解らない。

肩で息をするたびに、豊かな乳房も上下に揺れた。
その乳房は縄で上下から搾り出されているが、その先端の蕾には、洗濯バサミで挟み潰された跡が網の目のように残っている。
看守達の折檻の跡だ。
彼女らは浣腸責めに苦しむ沙桐の元へ定期的に現れては、下剤入りの食事を無理矢理に食わせつつ折檻を加える。
一人などは、身動きできない沙桐を嘲笑いながら、咥えていたタバコを使って『根性焼き』さえ見舞った。
最初は数回で止めるつもりだったようだが、沙桐が瞳に涙を溜めながら睨みつけるのがよほど面白かったのだろう。
胡坐縛りをされて張った太腿に八箇所、両の乳房の下に二箇所、下腹に三箇所。
沙桐が大粒の涙を流し、噛みしめた唇から血を滲ませるようになるまで、執拗にいたぶり続けていた。

ただ沙桐にとってそれ以上に精神を消耗したのは、尿道を抉られた昨夜だ。
尿道マニアだと自称するその女看守は、胡坐縛りのまま動けない沙桐を前に、自慢のコレクションを並べて解説を加えた。
その半数は到底尿道に入れるべき形状・大きさとは思えないもので、沙桐を絶句させる。
結局はそれらを一つ一つすべて試され、沙桐はそれまでに出したこともない声を絞り出された。
次から次へとおぞましい責め具を取り出され、尿道に近づけられる。
沙桐は恐怖で足が震えるのを必死で押し殺してはいたものの、その内にストレスに耐え切れずに失神した。
しかし尿道の違和感で叩き起こされ、その際に上げた声で失笑を買ったものだ。
その最後に用いられた道具は、今もなお沙桐の尿道に嵌り込んで尿の排出を妨げている。

暗い部屋の中、それらの記憶が沙桐の頭を巡る。
と、その時、彼女の耳は階段を下りる何者かの足音を捉えた。
今では足音だけで判別できるようになっている。あの横柄な歩き方は、矯正長である嘉川恵美子のものだ。
彼女が来て、ろくな事になる筈もない。
沙桐は絶望的な気分になりながら、来るべき時を待つしかなかった。



「…………排泄を禁じられてから、今日で三日目かい。流石に、いいザマになってきたね」

看守を引き連れて姿を現した嘉川恵美子は、沙桐を見るなりそう言った。
嫌味ばかりでもないだろう。
強烈な便意と定期的に行われる折檻のせいで、沙桐はこの三日間ほとんど眠れていない。
睡眠を妨げられる事は、何よりも心身を疲弊させる。
沙桐の凛としていた瞳は虚ろになって光を失い、大きな隈を作っている事だろう。
頬もこけているに違いない。
髪もほつれて艶やかさなど残っているはずもなかった。

嘉川恵美子はあえてそれらを指摘する事は無く、哀れみ蔑むような視線で歩み寄る。
そして沙桐の傍で屈み込むと、薄笑いを浮かべながら尿道栓に手を触れた。

「おやおや、可愛い玩具だこと」

そう言いながら、嘉川恵美子は栓の尻を掴み、無遠慮に引きずり出す。
その動きに合わせ、薄黄色の液体が奥まりから漏れ出した。

「く、んふぅっ……!」

沙桐から呻きが漏れた。
抜き出された尿道栓を見れば、それも当然の事だとわかる。
栓の太さは人間の小指ほどもあり、また随所に瘤のような凹凸が備わっている。
栓を抜き出した途端に小便が漏れたところからして、隙間なく嵌まり込んでいたのだろう。

「ふぅん、こんな太さを尿道に咥え込んでたのかい。昨日の見張りはそういえば尿道マニアだったからね。
 コレクション全部を試せた上に、すごい声を引き出せたって吹聴してたのは、これの事だった訳だ」

纏わりつくような悪意の囁きに、沙桐は隈の濃い瞳のまま睨み据える。
嘉川恵美子はほくそ笑み、その沙桐の腹部を鷲掴みにした。

「がっ……ぐう、うあ゛っ!!!」

効果は大きく、沙桐は見るからに苦しげな表情で悶え苦む。
三日三晩の排泄我慢で、すでに腹筋は腐り落ちるような痛みに苛まれているからだ。

「随分と苦しそうじゃないか。どうだい、勘弁して下さいって床に頭擦り付けて哀願すれば、考えてやらんでもないよ」

嘉川恵美子は、ふと声色を変えた。
無論偽りだろう。彼女は沙桐がそのように赦しを乞うとは思っていないし、赦すつもりもない。
それを知る沙桐は、閉じそうな瞼を必死にこじ開け、再び敵意の篭もった瞳を相手に向ける。

「だ……誰が、あんた達なんかに…………っ!こんな理不尽で、何でも思い通りにできると思わないで!!」
「ほう、まだ意地を張り通すのかい。天晴れな心意気だけど、身体の忍耐の方はどうかねぇ。
 ……おいお前達、こいつの脚の縄を解いて、尻を向けさせな!」

嘉川恵美子の指示で、周りにいた看守が沙桐の足縄を解く。そして無理矢理に引き立て、柱に頭をつける形で尻を向けさせた。
安産型の尻から続く肛門周りは……沙桐自身にも嫌というほど自覚がある。
汚液に塗れているはずだ。
どれほど密着して嵌り込んでいようと、液体の一部は肛門栓を通り抜け、尻肉を茶色く染め上げる。
立ち上がった事で、その線は伸びやかな美脚をも汚すはずだ。
さらにその脚自体も、限界をとうに超えた排泄我慢の影響で、立っているのがやっとというほどに震えていた。
嘉川恵美子ら一同は、その無様な姿を散々に笑う。

「やれやれ、偉そうな事のたまいながら無様なもんだ。仕方がないからそろそろ出させてやるよ。
 ただし……お前にとって最悪の場所でね」

嘉川恵美子はそう言って沙桐を懲罰房から連れ出した。
そして歩く道すがら、おもむろに肛門栓のパスワードを入力して解除する。
肛門栓はたちまちに萎み、ごどりと音を立てて尻穴から抜け落ちた。
沙桐が脱糞の憂き目に遭う上で、最悪の場所。それは、彼女がかつて収監されていた雑居房のエリアだ。

「あ、くっ……!?最低よ……わざわざ、こんな所で…………!!!」
「おや、感謝の言葉が足りないね。こっちは憐れんで、三日ぶりに出させてやる慈悲をかけてるってのに。
 まぁいい、存分に腸の中身をひり出すがいいさ」

看守達の前でならばまだいい。だが、かつて互いに叱咤激励して理不尽に耐えてきた仲間の前で排泄するなど耐え難い。
沙桐は懸命に括約筋を収縮させる。
しかし、浣腸液の効果で気も狂わんばかりに蠕動を促された、三日分の排泄を理性でなど留められない。
まるで抵抗を嘲笑うかのように、それは勢いよく噴出し始める。

「……くっ、い、や……あああ゛う゛ううぐうぅんんん゛ッッ…………!!!」

沙桐は後ろ手に縛られ、両乳首と陰核に結わえられた糸で強制的に歩かされながら、排便の生き恥を晒すこととなった。
とどまる事を知らず土石流のようにあふれ出す汚物。
それは沙桐自身の美脚を汚しながら、彼女の通った道を汚していく。

「え、いや!臭い、なに!?」

雑居房の女囚から一斉に非難の叫びが起きる。
格子戸から覗く人間には、汚物を零しながら連れ歩かされる沙桐の姿が見えただろう。

「臭いだろう、汚いだろう!恨むなら雨宮沙桐を恨むんだよ、これはこの女のクソの匂いなんだからね!!
 おまえ達の今日の作業は、このクソの掃除だ。この女が逆らったばっかりに嫌な仕事が増えた事実を、ゆめゆめ忘れるんじゃないよ!!」

嘉川恵美子は声高らかにそう宣言して回る。
沙桐は俯いたまま、血の出るほどに唇を噛みしめてその後をついて歩く。
そこにはかつての輝きなど微塵もなく、惨めとしか言いようのない姿だった。

「酷い、酷いよ……沙桐さん!畜生っ、何であんな事……!!」
「くっそぉぉおッ、てめぇら、よくもあたいらの沙桐姐さんをッ!!!」

雑居房からは、口々に同情と怒りの叫びが発せられる。
しかし……その一方で、沙桐へ疫病神でも見るような視線を投げる女囚も、確かに存在するのだった。





「臭っ……もう、ホント最悪!」
「だよねー、こっちは毎日大人しくしてるってのに……こういうとばっちり勘弁して欲しいわ」

沙桐が撒き散らした……否、そう『させられた』汚物の掃除をしながら、不満の囁きが噴出する。
その都度見張りの看守が注意を与えるが、不満はあまりに大きく、怒気を帯びた囁きが止まらない。
そんな中、一人黙々とモップを掛け続ける女がいた。
池内智子。沙桐が身代わりになると申し出た、執拗な汚水責めを受けていた女だ。
智子は、沙桐に並ならぬ恩義を感じている。
今回身代わりになってくれたというだけではない。それ以前から、沙桐だけは智子の味方だった。

智子は要領のいい娘ではない。
気が弱く、周囲に流されるまま犯罪グループに加担しながらも、いざ足がつくと罪の全てを被せられた。
放火、強盗、恐喝、詐欺……それら数知れぬ犯罪が彼女の首謀で行われたのだと。
謂れなき罪で『第六区』に落とされてからも、虐げられる生活は続く。
雑居房に入ったその日のうちに要領の悪さを見抜かれ、裸での浅ましい犬真似を強要された。
それからも延々と苛めを受けた。
秘部舐めを始めとするレズ奉仕をさせられ、歯磨き粉を流しに捨てられ、ストレス解消に腹部を殴られ……。
その地獄から彼女を救ったのが、沙桐だ。

『寄って集って弱いものイジメ? まったく下らないわ』

仲間入りの条件として智子を蹴るよう命じられた沙桐は、きっぱりとその要求を跳ね除けた。
数人が生意気だと力づくで折檻しようとしたが、逆にすべてを返り討ちにして説教を喰らわせたほどだ。
その日をもって雑居房の頭は沙桐に替わり、一切の悪しき慣習が消えた。
智子への虐めもだ。
智子にとって沙桐は、単に頼りになる姉御というだけではなく、暗い人生を照らす太陽のような存在になっていた。
ゆえに彼女は、沙桐の後始末を黙々とこなす。

やがて、ようやく智子達が掃除を終えて雑居房エリアに戻った時、ふと別の房から声が聞こえた。

「うわ、すごっ……本当にお尻に入ってるんだぁ」
「へえぇ。沙桐さんって、意外に可愛いオマンコしてんのね。子作りの為に、旦那と結構やってたらしいけど」

格子窓から覗き込むと、女囚たちはテレビを食い入るように見つめながら語り合っている。
智子は嫌な予感を得ながら、すぐに自室のテレビを点けた。


映像が映し出される。
その特有の生々しさから、正規のテレビ番組ではなく、所内カメラのライブ映像である事が一目で解った。
映されているのは、紛れもなく沙桐本人だ。
懲罰房の床に裸で寝かされ、頭の後ろに手を組んだまま両脚を開いている。
ずいぶんとやつれたようだ。
眼光こそキリリとしてはいるが、目の下には濃い隈ができており、眠る事も赦されず追い込まれている事実を物語っていた。
いいように嬲られたのだろう、乳首には何かで挟み潰された形跡があり、身体中に残る根性焼きの痕も痛々しい。
恥毛も綺麗に剃り上げられていた。
その丸見えになった股座に、女看守の指が入り込んでいる。
指は明らかに秘裂よりも下……排泄の穴を捉えているようだった。

「51番、もっと脚を開け!」

腕組みをして見下ろす看守が、沙桐の囚人番号を呼ぶ。
沙桐は命ぜられるままに両脚の角度を広げた。160度ほどには開いているだろうか。
その脚の間に膝をつく女看守が、指にワセリンを付けながら執拗に尻穴へ指を送り込む。

「尻の穴は、ずいぶんとおぼこいじゃないか。指が食い千切られそうだよ」

女看守が嘲るように囁く。それを明確に拾うところからして、マイクの精度は高いようだ。
沙桐は言葉責めに取り合わず、鋭い視線を横に投げたままでいる。
その気丈さが、しかし素裸のまま尻穴を嬲られる今は、かえって滑稽に映った。

「姿勢を変える。膝立ちになって尻を突き出せ」

しばし指責めを行っていた看守がそう命じる。
沙桐は身を起こし、膝立ちのまま床に手をついて尻を掲げた。
看守は二本指にワセリンを塗りなおし、菊のような輪の中に滑り込ませる。かすかに沙桐の腰が浮いた。

「今日はこのまま、一晩中指で尻の穴を嬲ってやるよ。あたしはこれに慣れてるからね、そりゃもう具合よく解れるさ」

女看守はそう言って笑う。
その言葉通り、指責めは見るからに手馴れたものだった。
右手の二本指でしばし慣らした後は、両手の人差し指を上下に揃えて挿し入れ、自在に内部で蠢かせる。
直腸の浅い部分を押し込み、かなり深い部分を掻くように動かし。
尻穴の奥からリズミカルに漏れるクチュクチュという水音が、また何とも心地よさそうだ。
事実、沙桐も表情こそ解らないが、身体は反応している。
背中の筋が深まり、腰がびくりと浮き。

「……ねぇ、なんか沙桐さんさ、アレ感じてない?」
「まさか、あの人がケツで感じるわけ……」
「でもホラ、なんかスゴイ反応してるじゃん。ああいう縦の腰の動きってさ、嫌がるのとは違うんじゃないの……?」

テレビの前で見守る女囚達から、様々な噂話が漏れ始める。
智子はそれらを耳にしつつ、悲痛な表情で映像を見守った。



巧みな指責めは続く。
女看守の白い手はいま、さらに白い沙桐の尻肉を上から鷲掴みにするように覆い、両の人指し指だけを内部に潜りこませていた。
尻穴を横向きに押し開くようにしつつ、奥からくちくちと音を立てる。

「んっ!!」

やがて、不意に沙桐が息を詰まらせたように呻きながら腰を揺らした。
女看守が鼻で笑う。

「ふふ……だんだんと感じるポイントが増えてきたじゃないか、ええ?」

そう詰りながらさらに指を押し込み、四本指で大きく肛門を押し開く。
カメラは決定的瞬間を逃すまいとばかりに接写した。
四つの指で押し開かれた肛門内の様子が、画面に大きく映し出される。
薄暗い内部では、赤黒い粘膜が鼓動のように蠢き、妙に生々しい粘液にまみれていた。
それは好意的な視線で見る智子にすら、沙桐の尻穴の中に、無数の淫靡な生き物が生まれているように映った。
しばしの絶句が房内を満たす。

「あはははっ、腸液でヌルヌルじゃないか。早くも性器の仲間入りって風情だ。
 だが、まだだよ。もっともっと、尻穴で善くしてやる。どうやったって浅ましい尻の快感を忘れられないぐらいにね!!」

女看守は嬉しげに笑いながら、穴を縮めつつさらなる指責めを続ける。
彼女の宣言どおり、指責めの様子はその日一日に渡って各房内のテレビに流され続けた。





「……どうだい、様子は」

嘉川恵美子は懲罰房に足を踏み入れながら、近くの看守に尋ねた。
外出していたらしく、厚手の外套を傍にいる一人に持たせている。

「はい。51番は、特に優秀な折檻役に任せていますから……順調に“育って”おります」

女看守は、含みのある笑みを湛えたままそう答えた。
それを裏付けるかの如く、懲罰房の中からは、はっ、はっ、と艶かしさのある吐息が漏れ聴こえている。

沙桐は指でされていた時と同じく、頭の後ろで手を組んだまま仰向けに横たわり、両脚を開いていた。
その尻穴の蕾には、かなり太さのあるアナルパールが差し込まれている。
玉の直径は、女の指を四本ほど束ねた太さだ。
床にはその他にも様々な道具がローションに塗れて転がっており、
部屋の隅には多様な色の浣腸液が混ざり合ったまま泡立って、ガラス浣腸器と共にボウルに収められている。
沙桐がかなりの長時間に渡って、様々な尻穴への嬲りを受けていた事は明らかだった。

「さぁ、よくほぐれたわ。それじゃ、今日も元気に卵を産みましょうか」

アナルパールを用いていた女看守が、沙桐に語りかけながら皿に入った卵に手を伸ばす。
殻つきのゆで卵だ。
殻の上にローションを回しかけ、充分に潤滑を増した状態で沙桐のやや開いた菊花に押し付ける。
菊花は苦しそうに蠢きながらも、卵の滑りに抗しきれずに呑みこんでしまう。
一つだけではない。二つ、三つ、そして四つ。
それぞれに夥しいローションが付いた状態であり、沙桐の菊輪越しにでもローションの艶光りが見て取れるほどだった。

「ほら、お腹一杯でしょう。今日もちょっとだけ我慢したら、すぐ出させてあげるからね」

女看守は沙桐の下腹部を撫でながら囁きかけた。その指先は尻肉を回り、肛門を柔らかくほじくる。

「……う、あっ……うう」

沙桐は苦しみのためか、目を固く瞑ったまま下を向いていた。
その沙桐の黒髪を女看守が掴み上げ、強引に顎を上げさせる。
沙桐の恨めしげな瞳が女看守の方を向いた。
しかしすぐにその視線は、強い排泄欲に戸惑うものへと変わる。
小さく呻き、腰を揺らし、身を捩り、そして尻穴から破裂音が響いた。
ぶび、ぶびびっと音が鳴り、尻穴を押し広げて卵が転がり出る。

「ははは、いい音ね。極太のうんちしてるような気分でしょう、感じるわよね?
 今朝も特製のブレンド浣腸ひり出す時に、ソソる顔してたものねぇ。
 いい加減認めな。お前はもう、排泄で感じる身体になってるって事をさ」

女看守はそう言いながら満ち足りたように笑う。
周囲を囲む他の看守達も同じくだ。
その嘲笑の中で、沙桐はひり出した卵と尻穴の間に糸を引かせながら歯噛みする。
しかし、いつまでも休んでいる事は許されない。
次だ、と看守の一人が命じると、沙桐は調教された犬のように平伏し、尻を高く掲げる。
看守達はその掲げられた沙桐の肛門へ、アルミニウム製のじょうごを近づける。
じょうごの口は広く、差込口ですら下手なディルドウよりも太さがあった。
女看守達は慣れた様子で、その広口の筒を沙桐の肛門へと押し込んでいく。

「さぁ、奥まで入ったよ。自分で支えてな」

看守が沙桐を見下ろして命じた。沙桐はその言葉に従い、じょうごの注ぎ口の縁を指で押さえる。
沙桐の腸内が露わになった。
じょうごによっておし拡げられ、腸壁のぬめりや蠢きまで見て取れた。
看守達はその肛門の様子を面白そうに覗き込みながら、ガラス瓶を傾けて透明な液体をじょうごへ注ぐ。
腸奥が少しずつ水で満たされ、やがてはじょうごの底にまで水が上がってくる。
そこでガラス瓶の傾きが戻され、別の女看守に場所を譲った。
新たな女看守の手には、玉蒟蒻を山のように積んだガラスボウルがある。

「さて51番。昨日はこの中に白滝をぶっこんでやったけど、今日は玉蒟蒻だ。たんと喰いな」

陰険な笑みを浮かべながら、女看守は玉蒟蒻の一つをつまみ上げる。
そして開かれた腸の中に放り込んだ。また一つ、また一つ。
ガラスボウルに山積みされていたほどの量だ。
やがてはその玉蒟蒻も、腸に収まりきらずにじょうごの底でひしめき合う事となる。
女看守達はその様にいよいよ嘲笑いを深めながら、長い木の棒をじょうごの上から垂らしていく。

「ほぅら。尻穴に関しちゃ、すっかり旦那以上の馴染みになった木のペニスだよ。
 今日もこれで、奥の奥まで突きこんでやる。またいやらしーい腰振りを見せとくれよ!」

看守二人の手で木の棒の幹が握られ、別の一人が棒の末端を上から手の平で押し込む。
そうした一切容赦のない力でもって、棒は玉蒟蒻のひしめき合う腸内へと送り込まれた。

「あ、ふんっぐううぅっ!!!」

沙桐にしては珍しい。腸内に棒が叩き込まれた瞬間、彼女は明確な悲鳴を上げた。
木の棒が幾度も大きなストロークで叩き込まれるにつれ、沙桐の反応も大きくなる。
尻肉が引き締まり、伸びやかな美脚に筋が張り、腰がゆれ、じょうごの端を押さえる手が震え。

「ああ、あああうっ!!あう、ぐぅおっ……あ、あああううううおおお゛う゛う゛っっ!!!!」
「はははっ、今日のもすごい声。大股開きでケツ弄っても、基本澄ましてるヤツだから、この瞬間が楽しいわ」
「だねぇ。今日も小便漏らすか、賭けよっか」
「いやぁ、賭けにならないだろ。最後にはほとんど毎回漏らしてるからな。
 すっかり尿道がバカになってんだ、コイツ。それに関してだけは早い内からやり過ぎだな」

女看守は沙桐の反応を存分に楽しみながら、至福の語らいの時を過ごしていた。
やがて沙桐の腰が痙攣をはじめ、悩ましげに左右に蠢くと、その語らいにもより熱が篭もる。

「ははは見なよ、ダンスが始まったよ。完全に男を誘う動きだよこれ」

そう皆で嘲笑った。
じょうごを挿してから最初に注いだ液体は、濃度の濃いグリセリンに酢を混ぜたものだ。
それを注がれた上で玉蒟蒻を詰め込まれ、攪拌されたのでは沙桐とて堪らない。

「あッ、あああっ!!!っか、あああああぐぐふぅうううっっ!!!!」

沙桐は眉根を寄せながら呻き、一際大きく腰を震え上がらせた。
そしてその震えに呼応するかのごとく、じょうごの中で動きが起こる。
詰められた玉蒟蒻が渦を巻くように蠢き、やがてそのいくつかが勢い良く外へと飛び出した。
便意の極地といった排泄だ。
そのあられもない姿を、看守達は散々に笑う。

「おやおや、愉しそうだねぇ」

嘉川恵美子も遠巻きにその様子を眺めながら、目元を緩めた。
尻穴調教は着実に進み、沙桐の心を蝕んでいる。
そしてこの惨め極まりない沙桐の現状が、ライブ映像を通じて雑居房にいる女囚のすべてに知れ渡っている事だろう。
果たしてどれだけの女囚が、未だ彼女を『哀れ』などと思っている事か。
沙桐という太陽のような女のカリスマは、風雨に晒されたが如く腐食しているのではないか。
そう考えれば、嘉川恵美子の笑いが止まらない。

充分に楽しんだ。殴られた顔の傷も、数度の通院を経てもはや痛まなくなった。
そろそろ、仕上げるか。彼女はそう考えていた。



「……おやおや、すっかり一丁前の性器って風格だねぇ」

嘉川恵美子は、沙桐の菊花を覗き込みながら呟いた。
看守達によって尻肉を割られ、そこはすべてが露わになっている。
尻穴が二本指ほどの大きさに口を開けている様も。
かつて皺に過ぎなかった括約筋の一つ一つが活性化し、瘤のように盛り上がっている様も。
それを前にし、嘉川恵美子が指を鳴らす。
すると矯正副長が銀のトレイを携えて現れた。
トレイは静かに床へ置かれる。中には数本の、ごく細い注射器。
沙桐が目を剥いた。
信じがたいといった表情でトレイを見つめ、そしてその視線に怒気を含ませて嘉川恵美子にぶつける。

「……仮初めにも警察の人間が、クスリに手を出すなんて。どこまで腐ってるの」

怒りに震える声での非難にも、嘉川恵美子は涼しい顔だ。

「それでも警察官は警察官なんだよ、雨宮沙桐。そしてお前はヤクザの情婦だ。
 お前をいくらシャブ漬けに落としたところで、元から中毒だったと報じれば誰も疑いやしないさ」

嘉川恵美子の指が、注射器の一つを拾い上げる。
沙桐は抵抗を示したが、それを看守達が押さえつけた。
無理矢理に足を開かせ、肛門を曝け出させる。

「ッ地獄に堕ちろ!!」

注射器の針が括約筋の盛り上がった一つに宛がわれた瞬間、沙桐は叫んだ。
嘉川恵美子は押し込む指の形を完成させて笑う。

「地獄か、そうだねぇ。そのうちに面白い土産話でもしてやるけど、まずはお前さ。
 地獄ならぬ『天国』に至った人間の反応を、あたしらに教えとくれよ」

指が動く。注射器の針が刺さり、中の液体が注入される。
一つの膨らみから引き抜かれれば、別の一本がその隣の膨らみへ。
開発された括約筋のそれぞれの山に対して、薬液が打ち込まれていく。
沙桐は叫んだ。喚いた。しかしどれだけ抗っても、投薬を防ぐ事は叶わなかった。





「うわ……ねぇあれ、絶対普通じゃないよね…………?」
「ああ、多分クスリを打たれたんだ。後は壊れるだけだよ、あの人も」

雨宮沙桐はその日、所内各所のテレビを通じて晒し者になっていた。
特設の磔台に両手首と腿で吊り下げられ、カメラへ向けて大股を開く格好だ。
看守の一人が、淡々とその尻穴を刺激している。
指で浅い部分をくじり回し、引き抜いて、尻穴が物欲しげにひくつく様を周囲に見せ付ける。
ただその繰り返しだ。
しかしそれを受ける沙桐の様子が、普通ではなかった。

あの鋭かった視線は酔ったようにとろりと蕩け、時おり正気を取り戻すものの、焦点は合っていない。
唇は閉じ方を忘れたかのように開いたまま、尋常ではない量の涎に塗れている。
全身を流れる汗の量も異常だ。
特徴的だった右肩の刺青もくすみ、凡庸な印象のものとなっている。
そして何より目を惹くのは、恥じらいの花弁から間断なく滴る愛蜜だった。
尻穴を指で浅く刺激される。たったそれだけであるにも関わらず、異常な濡れ方。
薬物の影響は誰の目にも明らかだ。

「そんな、酷い……薬なんて、もう、元に戻れないじゃない!
 …………いくら沙桐さんが憎いからって、何でここまで…………!!」

池内智子が悲痛な叫びを上げた。その叫びに同調する女囚も数人はいた。
しかしその他大多数は、醒めている。
連日、連日、沙桐が尻穴を調教される様を目にしてきた。
テレビさえ点ければ、いつでもと言っていいほどにその調教記録が流れていた。

様々な形や大きさの道具が肛門に出し入れされるさま。
色とりどりの浣腸液を注がれ、日に幾度となく排便を晒すさま。
逆にトイレに行くことさえ許されぬまま日がな一日道具を用いられ、
肛門から責め具が抜かれる度に汚物がついてくるさま。
ウズラの卵やプチトマト、マヨネーズやソースといった食物をねじ込まれ、看守達の好きに遊ばれるさま。
それらの様子を、女囚達はすべて目にしている。
その上でなお信仰を持ち続けるほど、第六区の女囚たちは甘い人間ばかりではない。

「あっ、あ、ああっ……あああ、あっ……うあっ……あ、っう…………」

拘束されたまま浅く尻穴を嬲られ、沙桐は涎を垂らしながら声を漏らす。
目は虚ろで、艶やかだった黒髪はほつれ、肌にも張りがない。
その惨めな有様は、かつての彼女とはかけ離れたものだ。
そうした事実がより一層、女囚達を醒めさせる。

あられもない沙桐の姿が、どれだけ映された頃だろう。
映像の中に、嘉川恵美子が姿を現す。

「ごきげんよう、皆々様。この余興は楽しめたかい」

嘉川恵美子は、拘束された沙桐を指し示しながら告げた。
そして見守る人間がその惨めさを再認識するだけの間を置いて、続ける。

「言わずもがな、これがあの雨宮沙桐……お前達のかつてのボスだ。
 ところがこの通り、ちょいとイジメすぎて壊れちまってね。
 このまま肉便器としてどこぞのルートに流しても構わないんだが、ふと思いついた。
 お前達も、この女に思うところがあったんじゃないかとね」

嘉川恵美子はそこで沙桐に歩み寄り、細い顎を掴み上げる。
沙桐は視線を揺らしたまま小さく呻いた。

「そこでだ。最後の判断は、お前達囚人に委ねよう。
 雨宮沙桐は有罪か、それとも無罪か。
 有罪を選べば、この女はお前達にくれてやるよ。鬱憤が晴れるまで、好きに嬲ればいい。
 無罪を選べば、この場で開放。雨宮沙桐は監獄のボスに返り咲きだ。
 今から各部屋に紙を配るからね、○か×かで答えを示しな!」

嘉川恵美子のその言葉と同時に、看守が各部屋の扉を開ける。
そして藁半紙を切った粗末な投票用紙を配り始めた。
その紙を受け取った瞬間、智子は唇を噛みしめる。

「お、お願いしますっ!!」

智子は叫んだ。同じ部屋内のみならず、フロア中に届くほどの大声で。

「お願いします!!みんな、沙桐さんを助けてください!!!
 沙桐さんは、私を救ってくれた、大切な、大切な恩人なんです!」
「おいっ、票操作に繋がる発言は禁止だ!!」
「皆だって、一度くらい沙桐さんに助けて貰った事があるはずです!!
 沙桐さんはそういう人です、だからっ!!!」
「貴様、いい加減にしろ!!!」

看守に遮られながらも、智子は声を張り上げる。
最後には口を塞がれ、警棒で頭を殴りつけられて雑居房の外へと引きずり出された。
看守達に罵られながら懲罰房に押し込まれる最中にも、智子は沙桐の無事を祈る。
しかし、世は無慈悲だ。慈悲のない世の中だ。

『 ○ 21票、× 486票! よってここに、雨宮沙桐の有罪を認める!!! 』

女看守が高らかに読み上げる声が聴こえた時、智子はその場に泣き崩れた。





「ほぅらどうだい、沙桐さんよ。玩具でのアナルセックスがそんなに善いのかい」

女囚の蔑んだような声が聴こえる。
鉄格子の中では、一人だけ真裸の沙桐が、石の床に這いつくばって手足を押さえられていた。
そしてその肛門には、極太のディルドウが抜き差しされている。

「おお、おおおお゛っ!!!んおぉおおおお゛お゛っっ!!!!!」

沙桐は色白の裸体を震わせながら呻いた。
俯いている上に、汗に濡れた黒髪と床についた腕に隠れ、表情は伺えない。
しかし突き込みにあわせて前後に揺れる乳房の先は、痛々しいばかりに尖っていた。

「はははっ、すげぇヨガり声だ。やっぱヤクを追加した直後は反応がいいねー」

女囚の一人が、床に転がる空の注射器を蹴り飛ばしながら笑う。

「声もだけど、身体もね。おーらおら、グチュグチュに濡れちゃってるぅ~」

別の一人は、這う姿勢を取る沙桐の股下に手を滑り込ませ、指を蠢かせる。
はっきりと聴き取れるほどの水音と共に、よく開いた花弁から透明な飛沫が噴き上がる。

「ほーら、奇麗なお顔も見せてくださいよお」

さらに別の一人が、沙桐の髪の毛を掴んで無理矢理に顔を上げさせた。
瞳孔が開ききり、目の下に厚い隈を作り、ゼェゼェと荒い息を吐き。
完全に薬物中毒となった沙桐の顔。

「あははっ、可愛い可愛い。ねぇ沙桐さん、お尻の穴がヒクヒクしてますよ、もう一本欲しいの?」
「いやぁ、まだまだイケるっしょ。借りたやつ全部ぶちこんじまえば?」

女囚達は楽しげに語らいながら、すでに太いディルドウを咥え込んでいる肛門に二本目をねじ込んでいく。

「うああああああーーーーっ!!!!」

絶叫としか呼び様のない、それでもどこかに甘さを感じさせる声が響き渡る。
智子が懲罰房から出され、雑居房生活に戻ってからも、その地獄が続いている。
智子は目を瞑った。
耳を塞いだ。
この腐った世界から、一秒でも早く身を切り離したいと、ただそれだけを願って。



                              終
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