※甘めの風俗嬢モノです。
夜だけ開く遊園地。
会社帰りにふらっと立ち寄り、イルミネーションも眩い絶叫マシンでリフレッシュできる。
1人が寂しい人は、キャバクラのアフターよろしく女の子をレンタルしてのデート気分まで味わえる。
そんな場所があるのを、どれだけの人が知っているだろうか。
実際これは、優れた商売だと思う。
独身男性にとって都合がいいのは勿論、『嬢』にとってもキャバクラで延々と男の話に合わせるより、
仕事中に公然と絶叫マシンを堪能できるこっちの方が良いに決まってる。
それで“お水”なみのお給料が貰えるんだから、文句なんて出るわけもない。
もっとも、同じ嬢とはいえやる事は様々だ。
本当にただデートをするだけの子、デート後にさらに大人のサービスもしてしまう子。
私は後者だ。
別に今さら気取るつもりもないし、誰かに強制されている訳でもない。
ただそれを望んで、続けてる。
お客からの指名が来るまでは、基本的に私たちは控え室で待機だ。
女性が働く職場ならどこでも同じ、ガールズトークの繰り広げられる溜まり場。
お客が見たら一発で幻滅しそうな風景だ。
いかにも童貞受けしそうな真面目風の子が多いけれども、それがそこら中にいろんなものを投げ捨ててる。
今日は妙に蒸すせいか、みんな色々ともろ出しだ。
豪快にスッポンポンになってるあの人が、ナンバーワン嬢だなんてとても信じられない。
「おっとぉ、これは下着祭りですなーーっ!?」
明るい声を張り上げて出勤してきたのは、私の親友の美紀。
職場のムードメーカーであり、私のかつてのクラスメイトであり、風俗嬢としての先輩でもある。
ある事情で借金まみれになっていた私に、安心して働ける風俗店を紹介してくれたのも彼女だ。
それ以来私は彼女に頭が上がらず、半ば信仰にも近い親愛の情を持っている。
「花蓮(カレン)ちゃーん、さっそく御指名だよー!」
美紀に続くようにして、ボーイが控え室を覗き込んで私を呼ぶ。
さすが慣れているだけあって、控え室の惨状を前にしても涼しい顔だ。
「はぁい!」
私は揚々と立ち上がる。そろそろ待つのに退屈してきた頃だったので、丁度いい。
「うひー、また花蓮ノスケが第一号かぁ」
「やっぱ顔が天然モノで可愛いとねー。あーあ、もうナンバーワン取られちゃうー」
すぐに周りから茶々が入った。
「……あはは」
私は苦笑しつつ、鏡で前髪を整える。
鏡に映るのは、見慣れた顔。べつに可愛いとは思わないし、思いたくもない。
私が過去に付き合った4人の男は、みんな口を揃えて私を可愛いと褒めたけれども、最後には捨てていった。
彼らの言う『可愛い女』=『利用しやすい、チョロい女』という図式が私の中に出来上がってしまい、
そのせいで可愛いという表現にマイナスイメージを感じているのが実情だ。
「頑張れよぅ、花蓮。しつこくされたら、すぐアタシに言うんだぞ」
美紀が私の肩に手を置いて笑った。
彼女はいつだって私を護ってくれる。私のつらい過去を、全部知った上で。
「ありがと。行ってくるよ」
私は笑顔を作りながら控え室を出た。
最近はずいぶん自然に笑えるようになったものだと、我ながら思う。
「あ……」
待合室へ出た瞬間、彼の姿が見えた。今日の私のお客。
深山さん、というらしい。勝手ながら、入社二年目かそこらだと見当をつける。
少なくとも、私の“本当の年齢”よりは下だろう。
「花蓮です。よろしく」
私はなるべく柔らかい笑みを浮かべながら告げる。
「あ、は、はい……」
深山さんは一瞬私の顔を覗き込んだ、けれども……ああ、目を逸らしちゃったよ。
何とも内気で、頼りがいがない。
顔も、悪いとまでは言わないけれど、少なくとも整っている方じゃない。
女の子が付きたいと思うタイプかといえば、残念ながらノーだろう。
ただ、私にとっての第一印象は悪くなかった。
高校一年の先輩から始まり、この人こそはと思った彼氏から4連続で痛い目に遭わされた私だ。
自分の『だめんず』ぶりを身に染みて感じると同時に、少々イケメンというものに辟易している。
その点、今目の前にいる深山さんのように、頼りなげな男の人というのは変に安心する。
利用されなさそうというか、ついリードしてあげたくなるというか。
お客に対して失礼ではあるけれども、ウーパールーパーを見ているような妙な癒しの感覚がある。
「今日は楽しみましょう、深山さん!」
彼の腕を取って言ったその言葉は、あながちリップサービスという訳でもない。
「あ、はい……よ、よろしくお願いします」
おどおどとそう答える様子に、つい蕩けそうな笑みが出てしまい、彼を赤面させる。
いけない、妙な空気になってしまった。
「と、とりあえず、あれ乗りましょう!!」
私は誤魔化すように彼の手を引き、すぐ目の前にあるジェットコースターを指差した。
そこまでハードという訳でもなく、スタートダッシュに迫力があるだけのオーソドックスなコースター。
まずはこれに乗り、お客が絶叫系を『イケる口』なのかを確かめる。
嬢によっては可愛くメリーゴーラウンドから始めたりするらしいけれど、私はわざとらしくて嫌いだ。
たまに言われるように、少し、肉食系女子なのかもしれない。
意外というべきか、深山さんは絶叫系が強かった。
怖がりはするけれども、叫ぶというよりは恐怖を緊張して静かに堪えるタイプ。
回転ブランコ、フリーフォールと色々連れ回してみたけれども、そのスタイルは崩れない。
私もまったく同じタイプなので、これは嬉しかった。
サービスだから表には出さないけれど、絶叫マシンで連れ合いに煩くされると少し醒めてしまうのが私だ。
その点深山さんとは、自然体で擬似デートを楽しめる。
『イケる口』の深山さんと連れ立って、五番目に並んだのが園内最凶のコースター。
これに挑戦できる人はけして多くない。
乗る前から、その恐ろしさが嫌というほどに伝わってくる。
目が眩むほどに高い最高到達地点、コースターが地表近くを走り抜ける際の爆風に轟音、
そして今まさに乗っている人達のあられもない絶叫、絶叫、また絶叫……。
これで怖さが想像できない人なんているわけない。
大抵のお客はこれに尻込みするし、逆にお客から催促された嬢もほとんどが半泣きで嫌がる。
まさに規格外のモンスターマシンだ。
私は以前に一度だけ、完成直後のこれにスタッフ特権で乗った事がある。
結果、絶叫系にかなりの自信があった私が……大抵のコースターなら両手離しも余裕の私が……失神しかけた。
身体中の血が冷え切って、座席に座ったまま氷漬けになったみたいだった。
ただそのドキドキはどうにも忘れがたいもので、機会があればもう一度と思っていたところだ。
「それは……す、凄そうですね」
私の熱い体験談に聞き入った後、深山さんは目を輝かせて言った。
最初の頃すぐに目を逸らしていた人とは思えないほど、爛々と輝く瞳で見つめてくる。
これは、心の底から絶叫マシンが好きな人だ。スリル中毒だ。
「じゃあ、行ってみますかっ!?」
私は眼力を強め、挑むように尋ねた。
「は、はい!」
深山さんは、それでも全く逃げずに私を見つめ、強く頷く。
なんだろう。この子、可愛すぎる。
「ひぃいい、いい…………!!!」
私は、思わず細い悲鳴を上げていた。
コースターがゆっくり、ゆっくりと最高地点に向けて登っていく。
山が遥か下に見えるほどのめちゃくちゃな高度。
ライトアップされた園内が豆粒のように小さくなり、深海を見下ろしている気分になる。
高高度独特の冷たく、乾いた風。
カテタン、カテタンと音を立てながらコースターが上がり、時々不具合が起きたかのように軋む。
山なりになった頂点が少しずつ近づいてくる。
なんともゆったりとした時間。でも私の心は、すぐに訪れる恐怖の瞬間にはち切れそうになっている。
それら全てのスケールが、一般的なコースターの数倍……いや、比べ物にすらならない。
ちらりと隣に視線をやると、さすがの深山さんも表情を凍りつかせていた。
それは、そうだ。こんなにはっきりと死を意識するような場面、そう何度も経験する訳ない。
その悲壮な顔を見ているうち、まるで本当に彼と2人で死地へ向かっている気分になる。
危機的状況で恋に落ちやすくなる、『吊橋効果』だろうか。
と、深山さんの手が動いた。
座席を越えて、私の方に伸び……空を掴む。
たぶん、私の手を握りたがっているんだ。でもそうしていいか解らずに、宙にぶら下がってる。
私は溜め息をついた。
そして同じく手を伸ばして、絡みつくように彼の手を取る。
深山さんの顔が弾かれたようにこっちを向いた。
汗まみれだ。きっと私も、同じような顔で彼を見つめ返している。
「い、いよいよ…………ですよ」
私は言葉を搾り出した。強風の中という事を別にしても、変に震えていた。
深山さんは情けない顔で頷き……私の手を握り返す。
2人とも、もう悟っていた。ここが頂点、今からがクライマックスだと。
一秒。
二秒。
そして…………世界が凍る。
コースターから降りた時、私も、深山さんも千鳥足だった。
他の乗客だって皆そうだ。
あまりの恐怖で、誰もが腰を抜かしてしまう。
しばし休憩用の柵に身を預け、弾んだ息を整え……1人また1人と、心が屈強な順に出口へ向かい始める。
だいたい、グループの先頭は女だ。
私も深山さんを助けて出口を通り、売店に向かう。
このコースターは、最も恐ろしいポイントを通過する時に遠赤外線カメラで撮影が行われる。
昼に撮る写真よりもさらに悲壮な顔になっている事が多く、これはもう傑作だ。
「っぷふはは、こっこれっ、あはははっ、へ、ヘンな顔!!!」
深山さんが受け取った写真を目にした瞬間、私は思わず噴き出してしまう。
そこにはあられもなく顔を歪め、顔中の肉という肉を波打たせた私達がいたからだ。
しかし第一の笑いの波を乗り切った時、私はしまったと思った。
仮にもお客に向けて、ヘンな顔とは何事か。
恐る恐る深山さんの顔を窺うと、しかし彼も写真を見て大笑いしている。
「ははは、これは凄いや!!」
実に朗らかな笑いだ。
助かった。深山さん、懐の大きい人だ。
「……楽しかったですね。外でちょっと休憩したら、次あっち行きませんか?」
私は嬉々として、お化け屋敷を指差す。
深山さんは笑ってくれる。
正直に言うと、私はこの時点で、かなり深山さんを気に入っていた。
サービスを抜きにして、自然と深山さんと腕を組んでいた。
粋な支配人の計らいで、お化け屋敷は入るたびに仕掛けが変わり、私達スタッフでも新鮮な怖さを味わえる。
その中で叫び、深山さんにしがみついたのは、断じて計算ではない。
とても楽しいデートになった。
……そして、大人のデートにはまだ続きがある。
絶叫マシンとお化け屋敷で存分に気分を高めた所で、園内からほど近いホテルに移る。
「……あ、あ、あの、ほ、ほ。本番も……き、希望してるんだけど…………」
部屋に入った瞬間、深山さんは臆病さを復活させて呟いた。
私は返事をしなかった。
服を着たまま、靴も半分しか脱がないまま、硬直した彼の首に腕を回す。唇を奪う。
熱く、深く、熱いキス。
本気が多分に混じっているから、相手もきっと、蕩けてくれる。
もどかしささえ感じながらシャワーを浴びて、ベッド脇で深山さんに奉仕する。
態度は小心者ながら、しっかりと成人した男の人らしい大きさがあった。むしろ、少し大きめかもしれない。
「あ、あ、ああ」
私が先のほうを舐めるたび、深山さんはかぼそい声を上げた。
そういう声を出されると、私はさらに責めるというか、奥まで咥え込みたくなってくる。
「ひうあ、あ!!」
深山さんは腰を震わせながら、私の髪に手を置いた。
見上げるまでもなく、彼の熱い視線がディープスロートをしている私の顔に注がれているのが解る。
手は控えめに控えめに、私の頭を押さえつける。
それを感じて私は、あえて自分から深く咥え込んだ。
昔の風俗店で仕込まれた、喉奥を開いてアレの先を飲み込むディープスロート。
こちらの苦しさは尋常ではないけれども、相手の受ける刺激も半端ではないらしい。
「うわあ、ああ!!な、なにこれ、すごい、凄いっ!!!!」
深山さんは腰を震わせて、1オクターブは高い声で快感を表していた。
私が喉で先端を締め付けつつ扱くと、さらに堪らなそうな声になる。
ただ、私はある程度で彼のものを吐き出した。
そのまま続ければ、射精してしまうのが解るからだ。
20も過ぎた男は、一回の射精がとても重要だと私は知っている。
だからこそ、深山さんにこんな所で果てさせるのは忍びない。
「ふふ、おっきくなったね」
私は自分の唾液で濡れ光るものを手で扱きながら、彼をベッドの上に誘導した。
シックスナインの格好で彼の上に被さり、ゆるく口での奉仕を続けながら秘部を晒す。
少し、勇気が要った。
今の私は、正直に言って本気で発情しかけている。
元々目のない絶叫マシンに、死ぬほど乗った高揚感。それを相性の良いパートナーと堪能した満足感。
私なんて女は単純なもので、それだけをオカズに濡れてしまうわけだ。
『だめんず』ここに極まれり、と仕事仲間に笑われるのも仕方ない。
深山さんには、指を入れればローション無しでも水音のする秘部を見られてしまう事になる。
お客を相手に本気で濡れるなんて、嬢としては結構プライドが痛むものだ。
それでも、晒してしまう。
たどたどしい手つきで、舌遣いで責められ……私は2分か3分かの後に、物理的なものとはまったく別の絶頂を得た。
「うわ、すごいっ……」
何を指していたんだろう。
深山さんのその小さな声が、私には死にそうなほど恥ずかしく、けれども嬉しかった。
キスしたまま彼のものにコンドームを被せ、正常位で繋がる。
「あ、熱い……そ、それに凄く、締まる」
深山さんが驚いたように呟いた。
私はべつに頑張って締め付けているわけじゃない。
ただ、割と本気で感じているだけだ。膣の中がふっくら膨らんで、彼自身を圧迫しているだけだ。
大股を開いて繋がる。
何もかもが彼から丸見えになっていて、もうどうしようもない。
深山さんは真剣な表情で腰を打ちつけてくる。
その正中線を真っ直ぐ下ろした場所の熱く硬いものが私の中に通じ、奥まりを突く。
それと同じリズムで快感が足の先にまで流れ、弾ける。
ジェットコースターで氷のように冷え切った身体が、温まって痒みすら感じているかのように。
「可愛いよ、花蓮さん……」
駄目押しのように、深山さんはそんな事を真顔で告げてくる。
私は……一秒だけ彼の瞳を覗き返したけれども、たまらず顔を背けてしまった。
頬がちりちりするほど赤くなっているのを感じる。
本当になんなんだろう。この、コースターが急降下するような惚れっぽさ。
突かれるたびに揺れる私の下半身のせいで、結合の姿勢は少しずつずれていく。
そしてついに反転し、バックスタイルになってしまう。
シーツに顎と胸をつけ、お尻だけを高く掲げるような格好だ。
深山さんはそんな私の腰をしっかりと掴み、さらに突き込みを開始した。
バックは正常位よりも簡単に奥まで届いてしまう。
より激しい快感が、私を貫く事になる。
「あ、あ……あ、ひっ……ひぃいいいいいっ!!!!」
私は数分と経たずに、その声を上げた。
なさけない喘ぎ声。
初めての時から一貫して、私はバックである程度以上気持ちが良くなるとこの声が出てしまう。
きっと、何かが怖いから。
きっと、何かが私の許容量を越えてしまったのが解るから。
その声が出た後の結果はいつでも同じ。
私は背後の人間に従属し、依存し、望んで良いようにされてしまう。
深山さんですら……そんな変化に気付いてしまったみたいだ。
両手で腰を掴んでいた彼は、その片手を離して私の背中を撫でてくる。
本当に、勘弁して欲しい。
そういうことをされると、私はシーツを掴み、腰をさらに高く上げ、膣を絞って……
『可愛い名器』に成り果ててしまう事が、もう身に染みて解っている。
「ううう、うう、ああああっ!!!!」
やがて深山さんが叫び、私の中で熱さを震えさせる。
薄いゴムが膣内でふよふよと漂うような感覚。でもすぐに張りをもって……かなり出ているとわかる。
「……はぁ、はっ、はっ……はぁ、あっ…………あ」
私はすぐに言葉も出せなかったけれど、膝を曲げて腰をずらし、態度で彼に抜くよう懇願した。
深山さんはすぐにそれを悟り、ずるりと物を抜いてくれる。
私は彼から用を終えたゴムを抜き、新たな一枚を被せた。
彼のものは少しお辞儀をしていたけれども、十分な硬さが見て取れたから。
もう一度、正面から抱き合う。
今度はもっと近く。深山さんの首を抱え込み、膝の上に乗るようにして繋がる。
言葉を交わす余裕がない。
はっ、はっ、という息と、あっ、あっ、という喘ぎ声だけが響いていて、それがまた興奮を煽る。
自分から浅ましく腰を振っているのに気付いてはいるが、止める気にならない。
もっと、浅ましく。もっと、露骨に。もっと、気付いてもらえるように。
彼の首を抱きしめ、色んな場所に口づけをする。乳房を押し付ける。膣を締める。
深山さんは、そんな私の努力を流さなかった。
すべてに反応をくれ、慣れない風ながらに返してくれた。
泥沼。
反復
飽和。
カーテンから黄色く光が漏れるまで、私達は繋がっていた。
さっと血の気が引く。
「あ……あ、うそ、ごめんなさい…………か、会社が!」
まだ平日。
深山さんには、今日も朝から出勤の義務がある筈だった。
けれども彼は晴れ晴れとした顔で、私の髪を撫でる。
「たまには、徹夜もいいよ」
そう笑う顔は、とても逞しい。私はどれだけ、人を見る目がないんだろう。
「…………また、指名してくださいね」
彼に後ろからシャツを着せつつ、私は言った。
営業文句ではけっして無く、本心から彼とまた遊びたいと思っていた。
勿論、私は風俗嬢だ。
彼に限った話ではなく、他の誰かにも似た感情を持つことはある。
でも、二個でも三個でも、本物の好意には違いない。
「ええ。また必ず」
深山さんはそう言って、軽やかな足取りでホテルを出る。
私も、それから数分の間を置いて。
「お、まーたツヤツヤの顔して戻ってきやがった。全く参るねぇカリスマさんにゃ」
「その調子じゃ、結構ヒットだったみたいね」
控え室に戻ると、中に残っていた娘達が私の顔を見て言う。
私は、照れて笑ってしまった。
終わり
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夜だけ開く遊園地。
会社帰りにふらっと立ち寄り、イルミネーションも眩い絶叫マシンでリフレッシュできる。
1人が寂しい人は、キャバクラのアフターよろしく女の子をレンタルしてのデート気分まで味わえる。
そんな場所があるのを、どれだけの人が知っているだろうか。
実際これは、優れた商売だと思う。
独身男性にとって都合がいいのは勿論、『嬢』にとってもキャバクラで延々と男の話に合わせるより、
仕事中に公然と絶叫マシンを堪能できるこっちの方が良いに決まってる。
それで“お水”なみのお給料が貰えるんだから、文句なんて出るわけもない。
もっとも、同じ嬢とはいえやる事は様々だ。
本当にただデートをするだけの子、デート後にさらに大人のサービスもしてしまう子。
私は後者だ。
別に今さら気取るつもりもないし、誰かに強制されている訳でもない。
ただそれを望んで、続けてる。
お客からの指名が来るまでは、基本的に私たちは控え室で待機だ。
女性が働く職場ならどこでも同じ、ガールズトークの繰り広げられる溜まり場。
お客が見たら一発で幻滅しそうな風景だ。
いかにも童貞受けしそうな真面目風の子が多いけれども、それがそこら中にいろんなものを投げ捨ててる。
今日は妙に蒸すせいか、みんな色々ともろ出しだ。
豪快にスッポンポンになってるあの人が、ナンバーワン嬢だなんてとても信じられない。
「おっとぉ、これは下着祭りですなーーっ!?」
明るい声を張り上げて出勤してきたのは、私の親友の美紀。
職場のムードメーカーであり、私のかつてのクラスメイトであり、風俗嬢としての先輩でもある。
ある事情で借金まみれになっていた私に、安心して働ける風俗店を紹介してくれたのも彼女だ。
それ以来私は彼女に頭が上がらず、半ば信仰にも近い親愛の情を持っている。
「花蓮(カレン)ちゃーん、さっそく御指名だよー!」
美紀に続くようにして、ボーイが控え室を覗き込んで私を呼ぶ。
さすが慣れているだけあって、控え室の惨状を前にしても涼しい顔だ。
「はぁい!」
私は揚々と立ち上がる。そろそろ待つのに退屈してきた頃だったので、丁度いい。
「うひー、また花蓮ノスケが第一号かぁ」
「やっぱ顔が天然モノで可愛いとねー。あーあ、もうナンバーワン取られちゃうー」
すぐに周りから茶々が入った。
「……あはは」
私は苦笑しつつ、鏡で前髪を整える。
鏡に映るのは、見慣れた顔。べつに可愛いとは思わないし、思いたくもない。
私が過去に付き合った4人の男は、みんな口を揃えて私を可愛いと褒めたけれども、最後には捨てていった。
彼らの言う『可愛い女』=『利用しやすい、チョロい女』という図式が私の中に出来上がってしまい、
そのせいで可愛いという表現にマイナスイメージを感じているのが実情だ。
「頑張れよぅ、花蓮。しつこくされたら、すぐアタシに言うんだぞ」
美紀が私の肩に手を置いて笑った。
彼女はいつだって私を護ってくれる。私のつらい過去を、全部知った上で。
「ありがと。行ってくるよ」
私は笑顔を作りながら控え室を出た。
最近はずいぶん自然に笑えるようになったものだと、我ながら思う。
「あ……」
待合室へ出た瞬間、彼の姿が見えた。今日の私のお客。
深山さん、というらしい。勝手ながら、入社二年目かそこらだと見当をつける。
少なくとも、私の“本当の年齢”よりは下だろう。
「花蓮です。よろしく」
私はなるべく柔らかい笑みを浮かべながら告げる。
「あ、は、はい……」
深山さんは一瞬私の顔を覗き込んだ、けれども……ああ、目を逸らしちゃったよ。
何とも内気で、頼りがいがない。
顔も、悪いとまでは言わないけれど、少なくとも整っている方じゃない。
女の子が付きたいと思うタイプかといえば、残念ながらノーだろう。
ただ、私にとっての第一印象は悪くなかった。
高校一年の先輩から始まり、この人こそはと思った彼氏から4連続で痛い目に遭わされた私だ。
自分の『だめんず』ぶりを身に染みて感じると同時に、少々イケメンというものに辟易している。
その点、今目の前にいる深山さんのように、頼りなげな男の人というのは変に安心する。
利用されなさそうというか、ついリードしてあげたくなるというか。
お客に対して失礼ではあるけれども、ウーパールーパーを見ているような妙な癒しの感覚がある。
「今日は楽しみましょう、深山さん!」
彼の腕を取って言ったその言葉は、あながちリップサービスという訳でもない。
「あ、はい……よ、よろしくお願いします」
おどおどとそう答える様子に、つい蕩けそうな笑みが出てしまい、彼を赤面させる。
いけない、妙な空気になってしまった。
「と、とりあえず、あれ乗りましょう!!」
私は誤魔化すように彼の手を引き、すぐ目の前にあるジェットコースターを指差した。
そこまでハードという訳でもなく、スタートダッシュに迫力があるだけのオーソドックスなコースター。
まずはこれに乗り、お客が絶叫系を『イケる口』なのかを確かめる。
嬢によっては可愛くメリーゴーラウンドから始めたりするらしいけれど、私はわざとらしくて嫌いだ。
たまに言われるように、少し、肉食系女子なのかもしれない。
意外というべきか、深山さんは絶叫系が強かった。
怖がりはするけれども、叫ぶというよりは恐怖を緊張して静かに堪えるタイプ。
回転ブランコ、フリーフォールと色々連れ回してみたけれども、そのスタイルは崩れない。
私もまったく同じタイプなので、これは嬉しかった。
サービスだから表には出さないけれど、絶叫マシンで連れ合いに煩くされると少し醒めてしまうのが私だ。
その点深山さんとは、自然体で擬似デートを楽しめる。
『イケる口』の深山さんと連れ立って、五番目に並んだのが園内最凶のコースター。
これに挑戦できる人はけして多くない。
乗る前から、その恐ろしさが嫌というほどに伝わってくる。
目が眩むほどに高い最高到達地点、コースターが地表近くを走り抜ける際の爆風に轟音、
そして今まさに乗っている人達のあられもない絶叫、絶叫、また絶叫……。
これで怖さが想像できない人なんているわけない。
大抵のお客はこれに尻込みするし、逆にお客から催促された嬢もほとんどが半泣きで嫌がる。
まさに規格外のモンスターマシンだ。
私は以前に一度だけ、完成直後のこれにスタッフ特権で乗った事がある。
結果、絶叫系にかなりの自信があった私が……大抵のコースターなら両手離しも余裕の私が……失神しかけた。
身体中の血が冷え切って、座席に座ったまま氷漬けになったみたいだった。
ただそのドキドキはどうにも忘れがたいもので、機会があればもう一度と思っていたところだ。
「それは……す、凄そうですね」
私の熱い体験談に聞き入った後、深山さんは目を輝かせて言った。
最初の頃すぐに目を逸らしていた人とは思えないほど、爛々と輝く瞳で見つめてくる。
これは、心の底から絶叫マシンが好きな人だ。スリル中毒だ。
「じゃあ、行ってみますかっ!?」
私は眼力を強め、挑むように尋ねた。
「は、はい!」
深山さんは、それでも全く逃げずに私を見つめ、強く頷く。
なんだろう。この子、可愛すぎる。
「ひぃいい、いい…………!!!」
私は、思わず細い悲鳴を上げていた。
コースターがゆっくり、ゆっくりと最高地点に向けて登っていく。
山が遥か下に見えるほどのめちゃくちゃな高度。
ライトアップされた園内が豆粒のように小さくなり、深海を見下ろしている気分になる。
高高度独特の冷たく、乾いた風。
カテタン、カテタンと音を立てながらコースターが上がり、時々不具合が起きたかのように軋む。
山なりになった頂点が少しずつ近づいてくる。
なんともゆったりとした時間。でも私の心は、すぐに訪れる恐怖の瞬間にはち切れそうになっている。
それら全てのスケールが、一般的なコースターの数倍……いや、比べ物にすらならない。
ちらりと隣に視線をやると、さすがの深山さんも表情を凍りつかせていた。
それは、そうだ。こんなにはっきりと死を意識するような場面、そう何度も経験する訳ない。
その悲壮な顔を見ているうち、まるで本当に彼と2人で死地へ向かっている気分になる。
危機的状況で恋に落ちやすくなる、『吊橋効果』だろうか。
と、深山さんの手が動いた。
座席を越えて、私の方に伸び……空を掴む。
たぶん、私の手を握りたがっているんだ。でもそうしていいか解らずに、宙にぶら下がってる。
私は溜め息をついた。
そして同じく手を伸ばして、絡みつくように彼の手を取る。
深山さんの顔が弾かれたようにこっちを向いた。
汗まみれだ。きっと私も、同じような顔で彼を見つめ返している。
「い、いよいよ…………ですよ」
私は言葉を搾り出した。強風の中という事を別にしても、変に震えていた。
深山さんは情けない顔で頷き……私の手を握り返す。
2人とも、もう悟っていた。ここが頂点、今からがクライマックスだと。
一秒。
二秒。
そして…………世界が凍る。
コースターから降りた時、私も、深山さんも千鳥足だった。
他の乗客だって皆そうだ。
あまりの恐怖で、誰もが腰を抜かしてしまう。
しばし休憩用の柵に身を預け、弾んだ息を整え……1人また1人と、心が屈強な順に出口へ向かい始める。
だいたい、グループの先頭は女だ。
私も深山さんを助けて出口を通り、売店に向かう。
このコースターは、最も恐ろしいポイントを通過する時に遠赤外線カメラで撮影が行われる。
昼に撮る写真よりもさらに悲壮な顔になっている事が多く、これはもう傑作だ。
「っぷふはは、こっこれっ、あはははっ、へ、ヘンな顔!!!」
深山さんが受け取った写真を目にした瞬間、私は思わず噴き出してしまう。
そこにはあられもなく顔を歪め、顔中の肉という肉を波打たせた私達がいたからだ。
しかし第一の笑いの波を乗り切った時、私はしまったと思った。
仮にもお客に向けて、ヘンな顔とは何事か。
恐る恐る深山さんの顔を窺うと、しかし彼も写真を見て大笑いしている。
「ははは、これは凄いや!!」
実に朗らかな笑いだ。
助かった。深山さん、懐の大きい人だ。
「……楽しかったですね。外でちょっと休憩したら、次あっち行きませんか?」
私は嬉々として、お化け屋敷を指差す。
深山さんは笑ってくれる。
正直に言うと、私はこの時点で、かなり深山さんを気に入っていた。
サービスを抜きにして、自然と深山さんと腕を組んでいた。
粋な支配人の計らいで、お化け屋敷は入るたびに仕掛けが変わり、私達スタッフでも新鮮な怖さを味わえる。
その中で叫び、深山さんにしがみついたのは、断じて計算ではない。
とても楽しいデートになった。
……そして、大人のデートにはまだ続きがある。
絶叫マシンとお化け屋敷で存分に気分を高めた所で、園内からほど近いホテルに移る。
「……あ、あ、あの、ほ、ほ。本番も……き、希望してるんだけど…………」
部屋に入った瞬間、深山さんは臆病さを復活させて呟いた。
私は返事をしなかった。
服を着たまま、靴も半分しか脱がないまま、硬直した彼の首に腕を回す。唇を奪う。
熱く、深く、熱いキス。
本気が多分に混じっているから、相手もきっと、蕩けてくれる。
もどかしささえ感じながらシャワーを浴びて、ベッド脇で深山さんに奉仕する。
態度は小心者ながら、しっかりと成人した男の人らしい大きさがあった。むしろ、少し大きめかもしれない。
「あ、あ、ああ」
私が先のほうを舐めるたび、深山さんはかぼそい声を上げた。
そういう声を出されると、私はさらに責めるというか、奥まで咥え込みたくなってくる。
「ひうあ、あ!!」
深山さんは腰を震わせながら、私の髪に手を置いた。
見上げるまでもなく、彼の熱い視線がディープスロートをしている私の顔に注がれているのが解る。
手は控えめに控えめに、私の頭を押さえつける。
それを感じて私は、あえて自分から深く咥え込んだ。
昔の風俗店で仕込まれた、喉奥を開いてアレの先を飲み込むディープスロート。
こちらの苦しさは尋常ではないけれども、相手の受ける刺激も半端ではないらしい。
「うわあ、ああ!!な、なにこれ、すごい、凄いっ!!!!」
深山さんは腰を震わせて、1オクターブは高い声で快感を表していた。
私が喉で先端を締め付けつつ扱くと、さらに堪らなそうな声になる。
ただ、私はある程度で彼のものを吐き出した。
そのまま続ければ、射精してしまうのが解るからだ。
20も過ぎた男は、一回の射精がとても重要だと私は知っている。
だからこそ、深山さんにこんな所で果てさせるのは忍びない。
「ふふ、おっきくなったね」
私は自分の唾液で濡れ光るものを手で扱きながら、彼をベッドの上に誘導した。
シックスナインの格好で彼の上に被さり、ゆるく口での奉仕を続けながら秘部を晒す。
少し、勇気が要った。
今の私は、正直に言って本気で発情しかけている。
元々目のない絶叫マシンに、死ぬほど乗った高揚感。それを相性の良いパートナーと堪能した満足感。
私なんて女は単純なもので、それだけをオカズに濡れてしまうわけだ。
『だめんず』ここに極まれり、と仕事仲間に笑われるのも仕方ない。
深山さんには、指を入れればローション無しでも水音のする秘部を見られてしまう事になる。
お客を相手に本気で濡れるなんて、嬢としては結構プライドが痛むものだ。
それでも、晒してしまう。
たどたどしい手つきで、舌遣いで責められ……私は2分か3分かの後に、物理的なものとはまったく別の絶頂を得た。
「うわ、すごいっ……」
何を指していたんだろう。
深山さんのその小さな声が、私には死にそうなほど恥ずかしく、けれども嬉しかった。
キスしたまま彼のものにコンドームを被せ、正常位で繋がる。
「あ、熱い……そ、それに凄く、締まる」
深山さんが驚いたように呟いた。
私はべつに頑張って締め付けているわけじゃない。
ただ、割と本気で感じているだけだ。膣の中がふっくら膨らんで、彼自身を圧迫しているだけだ。
大股を開いて繋がる。
何もかもが彼から丸見えになっていて、もうどうしようもない。
深山さんは真剣な表情で腰を打ちつけてくる。
その正中線を真っ直ぐ下ろした場所の熱く硬いものが私の中に通じ、奥まりを突く。
それと同じリズムで快感が足の先にまで流れ、弾ける。
ジェットコースターで氷のように冷え切った身体が、温まって痒みすら感じているかのように。
「可愛いよ、花蓮さん……」
駄目押しのように、深山さんはそんな事を真顔で告げてくる。
私は……一秒だけ彼の瞳を覗き返したけれども、たまらず顔を背けてしまった。
頬がちりちりするほど赤くなっているのを感じる。
本当になんなんだろう。この、コースターが急降下するような惚れっぽさ。
突かれるたびに揺れる私の下半身のせいで、結合の姿勢は少しずつずれていく。
そしてついに反転し、バックスタイルになってしまう。
シーツに顎と胸をつけ、お尻だけを高く掲げるような格好だ。
深山さんはそんな私の腰をしっかりと掴み、さらに突き込みを開始した。
バックは正常位よりも簡単に奥まで届いてしまう。
より激しい快感が、私を貫く事になる。
「あ、あ……あ、ひっ……ひぃいいいいいっ!!!!」
私は数分と経たずに、その声を上げた。
なさけない喘ぎ声。
初めての時から一貫して、私はバックである程度以上気持ちが良くなるとこの声が出てしまう。
きっと、何かが怖いから。
きっと、何かが私の許容量を越えてしまったのが解るから。
その声が出た後の結果はいつでも同じ。
私は背後の人間に従属し、依存し、望んで良いようにされてしまう。
深山さんですら……そんな変化に気付いてしまったみたいだ。
両手で腰を掴んでいた彼は、その片手を離して私の背中を撫でてくる。
本当に、勘弁して欲しい。
そういうことをされると、私はシーツを掴み、腰をさらに高く上げ、膣を絞って……
『可愛い名器』に成り果ててしまう事が、もう身に染みて解っている。
「ううう、うう、ああああっ!!!!」
やがて深山さんが叫び、私の中で熱さを震えさせる。
薄いゴムが膣内でふよふよと漂うような感覚。でもすぐに張りをもって……かなり出ているとわかる。
「……はぁ、はっ、はっ……はぁ、あっ…………あ」
私はすぐに言葉も出せなかったけれど、膝を曲げて腰をずらし、態度で彼に抜くよう懇願した。
深山さんはすぐにそれを悟り、ずるりと物を抜いてくれる。
私は彼から用を終えたゴムを抜き、新たな一枚を被せた。
彼のものは少しお辞儀をしていたけれども、十分な硬さが見て取れたから。
もう一度、正面から抱き合う。
今度はもっと近く。深山さんの首を抱え込み、膝の上に乗るようにして繋がる。
言葉を交わす余裕がない。
はっ、はっ、という息と、あっ、あっ、という喘ぎ声だけが響いていて、それがまた興奮を煽る。
自分から浅ましく腰を振っているのに気付いてはいるが、止める気にならない。
もっと、浅ましく。もっと、露骨に。もっと、気付いてもらえるように。
彼の首を抱きしめ、色んな場所に口づけをする。乳房を押し付ける。膣を締める。
深山さんは、そんな私の努力を流さなかった。
すべてに反応をくれ、慣れない風ながらに返してくれた。
泥沼。
反復
飽和。
カーテンから黄色く光が漏れるまで、私達は繋がっていた。
さっと血の気が引く。
「あ……あ、うそ、ごめんなさい…………か、会社が!」
まだ平日。
深山さんには、今日も朝から出勤の義務がある筈だった。
けれども彼は晴れ晴れとした顔で、私の髪を撫でる。
「たまには、徹夜もいいよ」
そう笑う顔は、とても逞しい。私はどれだけ、人を見る目がないんだろう。
「…………また、指名してくださいね」
彼に後ろからシャツを着せつつ、私は言った。
営業文句ではけっして無く、本心から彼とまた遊びたいと思っていた。
勿論、私は風俗嬢だ。
彼に限った話ではなく、他の誰かにも似た感情を持つことはある。
でも、二個でも三個でも、本物の好意には違いない。
「ええ。また必ず」
深山さんはそう言って、軽やかな足取りでホテルを出る。
私も、それから数分の間を置いて。
「お、まーたツヤツヤの顔して戻ってきやがった。全く参るねぇカリスマさんにゃ」
「その調子じゃ、結構ヒットだったみたいね」
控え室に戻ると、中に残っていた娘達が私の顔を見て言う。
私は、照れて笑ってしまった。
終わり
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