大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2013年07月

姉の思い出

※若干NTR気味な、姉が調教される昭和なお話。ダーク。


「弘、そろそろ起きな。学校遅れるわよ」
かつては姉のその声が、弘にとっての『目覚まし』だった。
5つ歳の離れた姉、咲子。典型的な優等生タイプであったと弘は記憶している。
髪を毎朝きっちりと三つ編みに結い、校則通りに制服を調えて家を出る。
勉強も運動も部活も、全てにおいて卒なくこなす。
外面だけではなく、家の中でも咲子がだらしなくしている記憶は弘にはない。
「また肘ついてる。やめなってば」
弘の行儀の悪さについての注意は、母よりも多い。
しかし、厳しいだけではなかった。
「ねえちゃん、僕、トイレ……」
幼い弘は夜中の便所が怖く、催した時にはいつも隣の姉を揺り起こす。
「……もう、また? そろそろ一人で行けるようになりなよ」
咲子はそう叱るが、しかしどれほど眠くても必ず付き添ってくれた。
便所に限った事ではない。
「弘、寒いの? ……こっちおいで。」
夜中に弘が震えていれば、自分の寝ている布団に迎え入れてくれる。
そもそも毎朝、寝ぼけた弘を起こし、朝食を食べさせるのも咲子だ。
口では厳しい事をよく言うが、面倒見の良い姉である事は疑いようもない。
弘はそんな咲子の小言を苦手にしながらも、同時にこの優しい姉を慕っていた。

否、依存していた、と言うべきか。
頼もしい姉の存在は、結局は弘の自主性を育てなかった。
靴下を左右揃えて履いたり、ハンカチを忘れなかったり、そうした躾けこそ行き渡っているが、
『今がどういう状況なのか』を判断する能力が著しく乏しかった。
ゆえに弘は、漠然と自分を取り巻く環境が悪化していくのを感じつつも、
本当に悪い事態ならば姉が何とかしてくれるだろうと楽観視している所があった。
決定的な状況変化が訪れた時には、咲子は若干14歳。
まだまだ一人で状況を打開できる年齢には至っていなかったにも関わらず。

弘自身はよくは知らなかったが、彼の家はそこそこ裕福であったらしい。
昭和の中頃であるため、家は木造で隙間風もひどかったが、学友からは屋敷と呼ばれるような建物だった。
毎朝食べているバター付きの食パンも、他の人間は滅多に口にできないものらしい。
つまり弘は『お坊ちゃん』、咲子は『お嬢様』と呼ばれる存在であったといえる。
それが、どうして転落したのか。それは弘には解らない。
情報は色々と転がっていたはずだが、当時の弘はそれに関心を向けることをしなかった。
何か自分の気付くべきことがあれば、姉が忠告してくれる筈だ。
姉が黙っているという事は、本当に切迫している事態ではないのだろう。
そう考えていた。
両親がいつの間にか姿を消し、屋敷を引き払い、粗末な古アパートで咲子と二人暮らすようになっても。

「……今日も遅くなるから、これ食べて、いい子で待ってて。勝手に外へ出ちゃダメよ」
週末になると、握り飯を拵えながら咲子が言う。
弘は画用紙に鉛筆で絵を書きながら生返事を返す。
咲子は何かを告げるような瞳で弘の横顔をしばし眺め、扉を開けて姿を消した。
外で車に乗り込む音がし、ドアが閉まり、いずこかへと走り去る。
弘は窓からそれを見下ろしていた。
姉がどこへ出かけるのかは知らない。訊いても咲子は答えない。
しかし少なくとも愉快な場所でない事は、弘とて気付いていた。
このアパートに移り住んで以来、咲子の笑みはぎこちない。
外出から帰るなり狭い風呂場に入り浸り、何時間も出てこない事がある。
心配する弘に、大丈夫、と一拍置いて答える表情は、今にも泣き出しそうに思える。
車で咲子がどこへ向かうのか。
弘は常にそれが気がかりだったが、突き止める手段も無く、待つ他はなかった。
家に一人の女が訪ねてくるまでは。



「咲はいるかい」
白いコートを身に着けたその女……吉江は、無遠慮に弘の家へ上がり込むなりそう告げた。
上等な化粧をしてこそいるが、目は細く、底意地の悪さを隠し切れないといった風貌だ。
『今日からこの人が、あたし達の新しいお義母さんよ』
咲子からそう紹介された時、弘はとても不安な気持ちになった事を覚えている。
咲子もまた、吉江に心を許していない事が雰囲気で伝わってきた。
ちょうどその次の日から、古アパート暮らしが始まった事も印象が悪い。
「……チッ、一足遅かったか。面倒だね」
吉江は部屋を見回すなり吐き棄てるように言い、輪ゴムで括った百円札の束を放り出した。
「今月の駄賃だって咲子に言っときな。くれぐれも、フラフラして手間掛けさせんじゃないよ」
弘を見下ろしながらそう言い残し、扉を開けて出ていく。
弘は、直感的にこれをチャンスだと感じた。
今から吉江の向かう場所こそ、姉の居る場所に違いないと。

弘はすぐに百円札を数枚抜き取り、懐へと忍ばせた。
そして吉江に気付かれないよう、白いコートを目印にその後を追う。
いくつも路地を通り抜け、黄色い車体に赤い線の入った都電の中で人混みに揉まれ、降車してさらに歩く。
その末に辿り着いたのは、居酒屋に挟まれるように長屋の並んだ通りだ。
酔漢や浮浪者ばかりが目に付き、治安の悪さは弘にもはっきりと理解できた。
吉江はその中の一軒の引き戸を開けて内に姿を消す。
さすがにそのまま後を追う訳にもゆかず、弘は途方に暮れた。
しかしふと思い直し、路地裏へと回り込む。
昔遊んでいた場所にも長屋は多く、その立て付けの悪さをよく知っていたからだ。
 (……あった)
弘は心中で呟く。案の定、路地裏側の一箇所に細い板の隙間がある。
隙間があるのは洗い場の一箇所らしい。
目を凝らせば畳敷きの室内が覗け、逆に向こうからは暗い路地側のこの隙間には気付けないだろう。
弘は周囲を素早く見回し、人の気配がない事を確かめてから長屋の壁に身を寄せる。

隙間に顔を近づけた瞬間、むっ、と匂いが吹き付けた。


「こりゃあ吉江さん、お珍しいこって。ささ、どうぞご覧になって下せぇ」
低い男の声が告げる。
弘の視界にまず映ったのは、先ほどまで追いかけていた吉江の姿だ。
屋内の光源は蝋燭らしく、暗い蜂蜜色で見えづらいが、白いコートは見間違いようがない。
彼女は脱いだコートを傍らに投げ捨てる。
その視線の先には薄い布団が敷かれ、そこに一人の裸の女性が横たわっていた。
そこへ目をやった瞬間、どくり、と弘の心臓が高鳴る。
理屈を抜きにして、理解してしまっていた。
その女性……白い肌と黒髪が印象的な彼女は、紛れもなく咲子だ。
たとえ顔がはっきりと解らずとも、長年に渡って甘えてきた女性の雰囲気を間違う事はありえない。

咲子は丸裸だった。
普段三つ編みにしている髪はほどかれ、若干の癖を残したまま敷布団に広がっている。
細い腕は両腋を晒す形で頭の後ろに敷かれ、枕代わりになっていた。
乳房は、弘が『ビニ本』で見た大人の女性にはさすがに敵わないものの、寝ていても膨らみが解るだけはある。
たしかにパジャマ姿の彼女にも膨らみは見て取れたが、いざ露わになった乳房に感じる女らしさはその比ではない。
そして……もうひとつの女らしさ、女性器そのものも当然ながら曝け出されている。
両膝を曲げた状態で大股を開き、眼前の男に性器を見せ付けるようにして。
咲子本人は進んでそのような格好をする女性では断じてないため、強要されているのだろう。
ごく薄い茂みの下に、恥じらいの部分がある。
初めて目にする姉の性器は…………思っていたよりも、ずっと大人びたものだった。
あるいは繰り返しの調教で、そのようにされてしまったのか。
まるで桜を内包した赤い華。
比較的左右対称で整った形をしているが、その生々しさは弘に衝撃を与えた。
その性器には男の太い指が2本、左右からくじるように差し込まれている。
男の背中には、姉の性器よりよほど毒々しい華の刺青が彫り込まれていた。
よく見れば他にも刺青を入れた男達が何人もおり、臥せった咲子を見下ろすようにしている。
その異様な情景は、弘の膝を無意識に震えさせた。

男の指が蠢くたびに、くちゅりと水音が立つ。
それと同時に大股を開いた白い脚が震え、姉が間違いなく秘裂を弄られているのだと弘に理解させる。
はっ、はっ、と呼吸の音もしていた。
弘の忘れ物を、走って教室まで届けにきてくれた時とまったく同じ呼吸のリズムだ。
蝋燭に照らされた咲子の身体は、油を塗りたくったような汗に塗れていた。
光沢のある腹部が沈み、また戻る繰り返しが妙にいやらしい。
甘くも酸い匂いが漂い続けている。
弘は、最初に屋内を覗き込んだ時にした異臭は、その汗と、秘裂からの芳香だったのだと気がついた。
普段嗅ぎ慣れていない姉の匂いだと。

「またオマンコがよく締めてくるようになったぜ。蜜もドンドン溢れてきて掬いきれねぇ。
 さすがにこう毎度やってるだけあって、こなれて来たもんだ。
 なぁ、善いんだろうお嬢様? もう三度ばかし、限界を超えた辺りのはずだからな」
秘裂に指を入れる男は、そう下卑た口調で告げながら秘裂へと口を近づける。
そして当人へ聞かせるかのごとく、故意に音を立てて愛液を啜り上げる。
喘ぎ続ける咲子の口が、一瞬横一文字に引き結ばれる。
「随分と出来上がってるじゃないか」
吉江が咲子を見ながら告げた。
咲子が薄く左目を開き、吉江を見上げる。一瞬ではあったが、確かな敵意を込めて。
「膣のごく浅い部分にだけ、延々と刺激を与えてるんですよ。もうかれこれ2時間ばかしですかね。
 女の身体ってなァ不思議なもんで、挿入を思わせる指遣いで繰り返し浅く嬲ってると、奥までが蕩けてくるんでさ。
 多分男を迎え入れる準備をするんでしょうなぁ。
 ただ、この段階じゃどれだけ蕩けてもイカせることはしません。何時間にも渡って、ギリギリでの寸止めです。
 全員が調教師としちゃ一級ですから、辛いなんてもんじゃねぇですぜ」
男のその言葉を裏付けるかのごとく、指責めを受ける咲子の腰がぶるりと震えた。
刺青男が薄笑いを浮かべて続ける。

「それにしても、このお嬢様の辛抱強さにゃあ舌を巻きましたよ。
 普通この寸止め地獄は、調教はじめに4時間ばかし入念にやるんです。
 すると、イキたくてもイケないって生殺しの状態が何時間も続く訳ですから、ふつう音を上げるんですよ。
 イカせてくれ、はやくぶち込んでくれってね。でも、このお嬢様はそれが一回もない。
 こっちにも意地がありますからねぇ、一度それならと、10人ばかりで交替しもって、8時間ほど続けたんですよ。
 朝呼び出してから夕方まで、ずーっとね。でも、それでも折れなかった。
 足の指爪先立ちにして、歯を食い縛って鬼気迫る様子で耐え抜きましたよ。もう、皆して根負けです。
 ……もっともそれだけ焦らした後だ。いざ突っ込むと、一発で潮噴いちまいやがった。
 そっからは腰振るたびに潮噴きの連続でね。そうそう、声もそりゃあ凄かった。
 ま、ともかく根性が半端じゃないってだけで、感度そのものは人並み以上にありますぜ」

男が自慢げにとうとうと語る話を、吉江が興味深そうに聞いている。
しかし弘にしてみれば、脳を強く揺さぶられるような衝撃的な話だった。


「さて、依頼主様も来てらっしゃる事だ。ちと早ぇが本番と行くか」
刺青の男が告げると、他の男達も色めき立つ。
そして各々が床の縄を拾い上げて咲子を取り囲んだ。
「う…………」
戸惑いの表情を浮かべる咲子に、まず男の一人が目隠しを被せた。小さな悲鳴が上がる。
男はそれに構わず、慣れた手つきで咲子の手首を後ろに縛り上げていく。
さらに別の2人が彼女の両足首を掴まえ、胡坐を掻くような格好で結び合わせる。
「座禅転がしかい。また惨めな格好にされたもんだね」
「江戸の頃から、女に対する一番惨めな格好として伝わってきたぐれぇですからね。
 身じろぎもままならない上に、あそこから尻穴からが丸見えだ。自尊心の高い女ほど、堪える」
吉江達がほくそ笑む中、男の一人が逸物を扱きながら咲子に近づく。
弘にはそら恐ろしくさえ思えるほど、カリの太く張った逞しい怒張だ。
それが濡れ光る咲子の秘裂に宛がわれ、躊躇もなく突き込まれる。
「んんっ……!!」
咲子は歯を食い縛って声を漏らした。
男はその咲子の太腿を掴み、より深い結合を強要する。
「おおお、相変わらずよく締まるな……。これに慣れると、他のスケのがユルく感じていけねぇや。
 へへ、おら、もう奥まで届いたぜ。すっかり子宮が降りてきてやがる。奥を叩かれてんのがわかんだろ。
 今日もまたこっから、丁寧に仕込んでやるからな」
男はそう言って腰を打ちつけ始めた。

咲子の口は始めこそ堅く閉じていたが、やがて、あ、あっ、と喘ぎを漏らすようになっていく。
「はは、ありゃあ見るからに心地良さそうだねぇ」
「ま、当然でさ。散々にお預けを喰らって蕩けきってる所に、極太をぶち込まれたんだ。
 毎週毎週、何十人と女を抱いてきた手練の技で、徹底的に男の味を覚え込ませてる。
 恥ずかしい格好が興奮を煽るうえ、目隠しで否応なしに快感に集中しちまう中でね。
 あれで感じない道理なんざありゃあしませんぜ」
刺青男の言葉は、弘の耳には絶望的に響いた。
しかし事実、座禅転がしで突かれ続ける咲子から感じられるのは、快感そのものだった。

怒張が抜き差しされるたびに、じゅぶっ、ぐぶっと淫靡な音が響く。
男達は口元に下劣な笑みを張り付かせながら抽迭を繰り返していた。
射精に至りそうになると一旦逸物を抜き出し、別の男が代わりとして入る。
そうして男達の方はクールダウンを入れられるが、咲子には休みがない。
刺青男が言った通り、弘にすら熟練と解る、粘りつくような腰使いで奥の深くを叩き続ける。
咲子の反応たるや、それは生々しいものだ。
座禅転がしによってむちりと肉感的になった太腿が、突き込みに応じて小さく跳ねる。
幾度も、幾度も。幾度も、幾度も。幾度も。
両足首を結ぶ縄が軋む。10本の足指の先が、むなしく空を掻き毟る。

「あっ、あ、ああっ……!!ああ、あっ、あ……い、いくっ…………あああ、いく、いくだめっ…………あ、あ!!」
咲子は喘ぐような、嘆くような口調で呟き続けていた。
口の端からは涎が零れ、顎から滴っていく。
弘が味噌汁で口元を汚すと怒る、あのきっちりとした姉が、だらしなく涎を垂らしている。
口の開きは時と共に大きくなり、だらしなく舌を出すようになっていく。
「ほーら、気持ちいいですかぁお嬢様。っへへ、犬みてぇに舌出して喘ぎ始めやがった。
 2時間しか焦らしてねぇのに、すっかり身体が俺らに馴染んじまったなぁ」
「もう50回以上はイってんじゃねぇか、このお嬢様。頭ン中ドロドロで、地獄だろうぜ」
「脚の筋肉の張りが尋常じゃねぇな。快感が強すぎて、脚でも振り回さなきゃあ発散できないんだろう」
「ま、それを見越してのこの縛りだがな。発散できないエネルギーが中に溜まって、ますます深みに嵌っちまう。
 はは、見ろよあの顔。完全にドーブツだぜ」
犯す男達は、咲子の反応をあげつらっては笑った。
そして舌を大きくはみ出させた咲子の目隠しに手を掛け、取り去る。
咲子の瞳が露わになった。すでに眼に光はなく、ぐるりと上向いた黒目は半ば瞼に隠れている。
「おっと、“振り切れ”ちまってたのか、えらく早いな。……どうします、あんたの娘。一旦返しますかい」
男が問うと、咲子を面白そうに眺めていた吉江は首を振る。
「いや、まだだね。そろそろ逝き癖ってもんをつけておいてもいい頃だ。
 休ませずに、徹底的に犯しておやり。鼻水と涎に塗れて泣き叫んで、ゲロを吐くぐらいまでね。
 クソ生意気な餓鬼だから、それぐらいで丁度いいさ」
「へへ、さすがは吉江姐さん。義理の娘を次々と風呂屋に沈めてきた女傑なだけはありますぜ」
「つまらない事をくっちゃべってるんじゃないよ。ホラ順番に犯しな!」

義母の声と、男達の笑い、そして姉の苦しげな呻き。
それらが入り混じる空間を、弘はただ呆然と見守っていた。
しかしふと我に返り、長屋の壁から離れる。
帰らねば。いざ姉が送り返された時、自分が家にいなければ変に思われる。
それに……ひどい吐き気がする。胃の中を楽にするにせよ、ここではまずい。
弘はおぼつかない足取りで都電に向かう。

家に辿り着いた頃には、弘は疲れきっていた。
身体に震えが走るほどに、良くない状況であることは理解していた。
しかし、どうすれば良いのかが解らない。
おぼろげながら、姉は大人の事情に巻き込まれているのだと思った。
大人の考えには口を挟まない。咲子は幾度となく、弘にそう教えた。状況が悪くなって以来、一層口酸っぱく。
その教えに従うべきなのか。でもそれでは、咲子が救われないのでは。
いや、しかし咲子自身が何も言わないのだ。
何か状況をよくする考えがあるのかもしれない。
あれは大人の女になる為に必要な事なのかもしれない。
……いや、本当にそうだろうか。
様々な考えが弘の頭の中を巡る。その末に彼は、ただ薄暗い部屋で姉の帰りを待った。

ぎし、ぎし、と木製の廊下が軋む音がする。
音は弘が膝を抱える部屋の前で一旦止まり、息を整えるような間を置いた。
ゆっくりとドアが開く。
「…………あんた、まだ起きてたの?」
姉は……咲子は、弘の姿を見て咎めるように言った。
しかし返事をせず、身じろぎもしない弟を見て、案ずるように部屋へ上がる。
「弘、あんたどうかしたの? もしかして、お腹減ってる? ご飯足りなかった?」
顔を覗き込みながら聞くが、弘は首を振るばかり。
そして一瞬の間を置いて、咲子の胸に飛びこんだ。
まるで乳飲み子に戻ったように、咲子に強く抱きつく。
咲子は驚きを見せたが、すぐに目を細めて弟の頭を撫で始めた。
「………………ねぇ、弘。また二人で、活動でも観に行きたいね。
 お姉ちゃん、もう少ししたらお仕事で稼げるようになるから。そうしたらまた行こうね」
弘は唇を噛む。
いつもの通りの姉のぬくもり、姉の匂い。けれども、どこか違って思える。
「うん」
彼は小さく一言を呟いた。それが、精一杯だった。





咲子は平素中学に通いつつ、毎週末には例の場所へ向かうようだった。
弘はできれば姉に起こっている事の全てを、せめて知っておきたかった。
しかし姉の元へ行くには往復の都電が必要となり、その運賃を考えれば、菓子代といって誤魔化せるのも月一が限度だ。
見るたびに、咲子への調教は進んでいった。
繰り返し繰り返し、逸物を舐めさせられ、膣の奥を突かれ……男の味を覚えさせられていく様が見て取れた。
今も咲子は、横たわった男の上で腰を揺らしている。
弘にとっては包み込んでくれる大きな姉だが、そうして大人の上になっていると、なんと華奢に映ることだろう。
「あっ、あっ、あっ……あ、あっ…………」
長い黒髪が背中に揺れる。
全身に大汗を掻き、瞳は疲れきったようにとろりとし、閉じる力を失ったような口から涎が滴り落ちる。
下になった男が容赦なく突き上げると、そのたび腰が細かに震える。
それらの様からは、もうすでに長時間に渡り、『男を覚え込まされている』事がありありと見て取れた。
「バテてきやがったな。もう一本ばかし打っとくか」
男の一人がそう言い、床の箱から一本の注射器を取り出した。
寂れた路地裏、ボロ服をまとって座り込む男の横に転がっている類の薬だ。
咲子の瞳が意思を取り戻す。
「……も、もう…………今日は止めてください………………」
気の強さをもはや感じさせない、惨めに哀願するような口ぶり。
しかし、男達はそれを聞き入れない。
「駄目だ、もう追い込みの時期だって言っただろうが。今月一杯で仕上げなきゃならねぇ。
 お前が馬鹿みてぇに頑固だったせいで、調教の計画がズレ込んでんだからよ。今日はとことんやるぜ」
そう言って咲子の腕を取り、注射針を差し込んだ。
薬液が注入されていく。咲子は針を凝視しながら、恐怖に顔を歪めていた。
見守る弘にも戦慄が走る。
間違いない。姉には余裕などない。抵抗する事もできず、ただ大人に嬲られているだけだ。
助けたい。だが身体が動かない。足も、声帯すら。
弘は、自分の意気地のなさと無力を心の底から思い知った。


「ひ、ひいっ、あうああ、あ……あひ、いっ…………」
薬を打たれて以来、咲子の様子は一変した。
それまでの疲弊した表情が、喜びに満ちたものになる。
眼を爛々と見開き、震える唇を噛みしめて、楽しくてたまらないといった表情に。
しかしそれは、明らかに姉の自然な表情ではなかった。
自暴自棄になった人間の壊れた笑いに近く、弘は背筋が冷たくなる。
「おおぉ、よっく締まるぜ。ヒロポン様様だな、ったくよ」
下になった男が笑った。
咲子の方は、挿入時の身体の震えも大きくなり、結合部からはなんとも心地良さそうな水音を立てていた。

「……っしゅ、しゅごい……。きら、まら、きたぁ……。あはっ、き、きてぅっ、おぼれちゃ……ぅうっっ…………!!」

桜色の唇から、知性の欠片も感じさせない言葉が発せられる。
いつもはっきりと喋れと弘に叱る姉と同一人物だとは、とても思えない。
男の突き上げに合わせて激しく腰を前後左右に振りたくリ、快感を貪り続ける。
その果てに咲子の瞳は、いつか見た白目を剥くようなものに変わっていく。
唇もだらしなく縦に開き、涎に塗れた舌をぶら下げるようになる。
「はは、キマっちまったか。だが、今日はそこで休ませねぇぞ。おら、お前らも来いよ。空いてんぜ?」
男の言葉で、見守っていた他の刺青男達も咲子に群がり始めた。
一人は犯されている膣の後ろ……排泄の穴に逸物を宛がい、無理矢理に嵌めこんでいく。
いま一人は、喘ぐ咲子の口に逸物を咥えさせる。
「ふぁぁっ、もう、もうやめぇっ……んぐ、ぐっ!!」
咲子の非難の言葉はすぐに掻き消され、逸物をしゃぶる音に変わる。
否、しゃぶるなどというものではない。男は咲子の頭を掴み、無理矢理にその喉を犯していた。
男の腰が前後するのに合わせて、咲子の白い喉が膨らみ、凹む。
どれほどに苦しいことだろう。しかし、咲子はえづかない。吐く事すらない。
それは、彼女が幾度となくそうした事を繰り返しながら、十分すぎるほどに仕込まれた事を示唆していた。

「もういやぁっ!!もうやすましぇて、もぉう、しないでぇっっ…………!!」

口が逸物から開放されるたび、咲子は救いを求めていた。
しかしそれを、入れ替わった別の男の逸物が塞ぐ。
口だけではない。膣も、肛門も。入れ替わり立ち変わり、様々な男によって使い回されていく。
その繰り返しの果てに、姉はまた高みに押し上げられていった。
白目を剥き、涎を垂らし。まるで獣になったかのごとく、淫らに作り変えられていく。
いつまでも、いつまでも。




  
それから、二週間の後。
咲子はついに、家に帰ってくる事がなくなった。
彼女の通っていた中学校によれば、保護者申請による転校とのことらしい。
そして弘もまた、迎えに来た義母によって別の町に連れてゆかれ、育つ事になる。
いくらぐずっても、弘が姉に引き合わされる事はなかった。

それから30余年。
弘は起業し、一代での大きな成功を収める。
けして他人の言う事を鵜呑みにせず、自らの頭で徹底的に考えるそのビジネススタイルが、
波乱の世にあって成功した要因だとされている。
後に会長職を辞するに際して、彼はそのスタイルが少年期のコンプレックスによって確立された事を明かした。
家族が消える。
昭和の中期まではよく聞かれたこの悲劇に遭いながらも、彼は逞しく生き抜いた。
そして彼は、姉もまたどこかで幸せに暮らしていることを、今でもなお、信じ続けているのだという。



                                了
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風前の灯

※スカトロ(嘔吐、排便)注意


その時代の多寡見町を知る人間は言う。
赤月静花の名は、『最強のスケバン』として広く知れ渡っていた、と。
いわゆる不良ではありながら義に厚く、妹分に手を出す人間は堅気・筋者の見境なく叩きのめす。
そんな静花は、同時に稀に見る美人でもあった。
豊かな胸にサラシを巻き、咥え煙草で木刀を担ぐ静花。
多くの男が、その麗姿を恐れる一方で、手慰みの助けにしていたという。

多寡見の女王とも呼ぶべき彼女は、しかしある時を境に姿を消した。
無茶をし過ぎたせいでヤクザの怒りを買い、簀巻きにして海に沈められたという噂もある。
あるいは心を入れ替え、どこか遠くの町で真っ当に生きているという噂もある。
しかし、事実はそのどちらもでもない。
静花は風俗に落とされたのだ。妹分の身代わりとして。
妹分は騙されて多額の借金を負っていた。
しばらくは色々と尽くしたが、ついに進退窮まって静花に泣きついたのだ。
腕ずくで解決できる話でもなく、静花が悩んだ末に導き出した答えが、妹分の身代わりになることだった。
静花の見目は人が振り返るほどに優れている。妹分よりもよほど稼げる。
闇金融側もこの話を断る理由はなかった。
ただ静花にとって不幸だったのは、この闇金融が、かつて彼女に叩きのめされた“チンピラ”と繋がりを持っていた事だ。
このため、静花に対する調教には、彼女に恨みを持つ男達が多数加わる事となった。





恐らくは暴力団の所有物であろう、古いアパートの一室。
そこに踏み入った静花の姿を見て、居並ぶ男達は一様に言葉を失った。
静花が、白い着物の襟を左前にした、いわゆる『死に装束』を纏っていたからだ。
今までの自分はすでに死んだ、という覚悟を表したもの。
18の小娘とは思えないほど落ち着いた鋭い眼光も相まり、言葉を失わせるに十分な迫力があるはずだ。
しかし、男達はすぐに表情を変える。
かつて最強のスケバンと呼ばれた静花も、今は売られた身。男達の欲望の捌け口に過ぎない。

「なるほど、確かにあん時のガキだ。よーく覚えてんぜ、お前ぇの蹴りで脛の骨折られた痛みはよ」
一人の男が静花に歩み寄り、その細い顎を摘み上げる。
静花は男の視線を受け止め、睨み返す。
身を捧げる覚悟こそ決めたが、心まで服従する気は毛頭なかった。
「俺は殴って歯をガタガタにされたっけな。しばらく物喰うのが億劫で仕方なかったぜ」
別の男が静花の後ろに回り、器用に白装束を脱がせ始める。
「アタシは、自分から喧嘩を売ったことは一度もないよ。全部、アタシか仲間に手ぇ出したそっちの責任さ」
静花は臆する事もなく言い放つ。
その毅然とした態度を嘲笑うかのごとく、装束の前がはだけられた。
瞬間、歓声が上がる。
静花は涼しい顔を保ちながらも、内心で歯噛みしていた。すべてを見られてしまう。
普段サラシに押さえつけていた、豊満な胸。夢のように鮮やかな桜色の乳輪。
細く括れた腰に、薄らと割れた腹。
手入れしたばかりの逆三角の繊毛に、ストリップ嬢から交換して欲しいと言われるほどしっとりと艶かしい脚。
そのすべてが。

「おいおい、勿体無ぇ話だな。こんな美味そうなカラダを、喧嘩にしか使ってなかったのかよ」
男達は舌なめずりしながら静花の身体に群がり始める。
乳房を揉み、太腿を撫で。
静花はされるがままになりながらも、蔑みの表情で男達を睨み続けた。
「犯すんならとっととしな。こっちはソープで200万から稼がないといけないんだ。時間が惜しいんだよ」
静花がそう言い放つと、男達は手を離す。しかし、下卑た笑みは消えない。
「そうか。なら望みどおり、“とりあえず”輪姦してやる。
 だが勘違いするな、それが目的じゃねえ。俺達ゃ、お前を徹底的に穢し尽くす積もりでいるのよ。
 たっぷりと時間をかけてな」
静花を取り囲みながら、男達が醜く笑う。静花は不快感を隠せず眉を顰めた。



「しっかし、まさか処女だったとはな」
「ああ。あんだけの美人だってのにな。硬派気取りってのは本当らしい」
「硬派? はは、おっかなくて近づく野郎が居なかっただけだろ」

六畳間の端に座り込んだ男達が、煙草をふかしながら語らっている。
静花はその傍で、なおも犯されていた。
煎餅布団には純潔の証である朱色の染みができている。
しかし静花は、まるで痛みや苦しみを顔に出さずにいた。
断続的な運動による発汗や息切れは仕方がないとして、基本的にはなされるがままになっている。
無論、痛みがないわけではない。
固い男のものを身体の深くまで叩き込まれると、身が引き裂かれるような感覚に襲われる。
破れた処女膜の辺りが擦れるたびに、背中に冷たい汗が噴き出す。
しかし、それを表に出さない。

逆に犯す男は、よほど具合が良いのだろうか、勃起しきった逸物を夢中で叩き込んでいる。
「クソッ、こいつなんて名器持ってやがる! 腰が、止まんねぇっ…………!!!」
男は苦しげにそう言うと、小さくうめきながら逸物を抜き出した。
それとほぼ同時に、赤黒い逸物の先から白濁が噴き上がる。
「どけ、次は俺だ!」
すかさず次の男が静花に覆い被さり、隆起しきった己自身を捻じ込んでくる。
男は静花の身体を持ち上げ、荒々しく突き上げながら尻肉を鷲掴みにした。
「おら、こっちにまだ使える穴が空いてんぜ! 誰かぶち込んでやれや!!」
男の叫びに、さすがの静花も一瞬視線を惑わせる。
男が空いているというのは、膣の後ろの穴に違いない。
そこへの侵入を受けるには、さすがにかなりの覚悟が要った。
だがそれは徒労に終わる。
「オイ何言ってんだ、そこはまだ使うなって久賀さんに言われてただろうが!」
別の男の言葉で、先の男は押し黙る。
どうやらこの場での使用はないらしい。しかし『まだ』という事は、後々には使用するということだ。
静花はそれを察し、小さく奥歯を噛みしめた。



「おら。歯ぁ立てんじゃねぇぞ」
一目で柄の悪さが解る刺青男が、静花に逸物を咥えさせながら言う。
男の物はそれなりの大きさがあり、根元まで咥えこむのは中々に難儀だ。
静花は風呂場で膝立ちになり、シャワーの雫を身に纏ったままで口を使われていた。
男が小さく腰を震わせ、口内に精を放つ。
静花は男を睨み上げながらその精を嚥下した。無論、強要されての事だ。
ぐっ、と喉を鳴らし、絡みつく粘りを無理矢理に喉の奥へと流し込む。
一体、何度目になるだろう。

「今度はこっちだ。てめぇに休んでる暇なんざ無ぇぞ」
直後、別の男が静花の頭を掴んで逸物を突きつける。
静花は口元に唾液と精液を絡ませ、息を荒げながらも男の逸物を咥え込んだ。
手は膝立ちになった脚の横に力なく垂らし、指先の一本さえも動かさない。
それが彼女に課せられた条件。それを守らなければ、妹分に危害が及ぶと脅しを掛けられている。
「へへ、まさかお前にしゃぶってもらう日が来るとはよ。……おお、クソ生意気な瞳だ」
男は嬉々として腰を振りながら、静花の顔を覗き込む。
静花はされるがままになりつつも、出来うるだけの目力を込めて眼前の男を睨み上げた。
無抵抗を義務付けられた今は、その気丈な姿がかえって男達を煽る要素となってしまうが、それでも意思は示し続ける。
矜持は通し抜けるはずだった。この程度の相手ばかりなら。
しかし……現実は残酷だった。

「そろそろ俺も、混ぜて貰おか」
それまで座って様子を見ていた一人が立ち上がる。
周りの男が慌ててスペースを空けた所からして、この集団の頭……先ほど『久賀』と呼ばれた男だと解る。
静花はそれまで以上に鋭い視線を久賀に向けた。
しかし久賀が意に介する様子もなく、静花の前へ歩み出て下着を脱ぎ捨てる。
その瞬間、静花は息を呑んだ。他の男とは比べ物にならない怒張だ。
長さは、あるいは静花の頭部の奥行きと等しいほど。
太さは、咥える事に恐怖を感じるほどであり、カリ首は逞しく張っている。
斜め上にせり立ったその威容は、太い木の枝を思わせた。
「さ、咥えろや」
凍りついた静花に対し、久賀は低く命じた。
静花はすぐに視線を引き締め直しながらも、規格外の怒張を前に冷や汗を禁じえない。
縦長に口を開くが、それでも怒張を迎え入れるに小さすぎる。
「ふん、俺の物はデカ過ぎて入らんか。ええわ、ネジ込んだるから口開けとれや」
久賀が笑みを浮かべながら告げた。
だが事実、それはいきなり自力で呑み込むには大きすぎた。
静花は口惜しげに歯噛みした後、顎が外れそうになるほどに開く。久賀が腰を押し進める。
極太の亀頭が唇を割り、ずるりと内部へと入り込む。尋常でない圧迫感が静花の脳髄を凍りつかせる。

逸物の先が喉の奥まで達した瞬間、静花は思わずえづき上げた。

「んごぉ゛っ、う゛う゛おぇええ゛え゛っ……!!!!」
静花のえづき声が風呂場に響く。
久賀の規格外の怒張を咥え込む以上、それは当然の反応だ。
しかし、その事実は静花の心を傷つけていく。
「へへ、すげぇ声出してやがる!」
「アゴが外れそうになってやがんな。俺がアゴ外された時の痛み、思い知るといいぜ!」
「にしても、えづき汁がマジ半端じゃねぇな。久賀さんのがドロドロになってやがるぜ」
外野の男達が逐一状況を囃し立てた。
その中で、静花は無理矢理に口を犯されている。

「どや、美味いか?」
久賀が一旦怒張を引き抜いて問うた。
静花は声を出せる状態ではなかったが、口に溜まったえづき汁を吐き捨て、久賀を睨み上げて敵意を表す。
「なるほど、俺の物を咥えさせられて心の折れんスケは本物や。こらァ、徹底的に可愛がったらな」
久賀は嬉しそうに言うと、再び逸物を静花の口へと潜り込ませた。
静花は眉を顰める。
彼女は自分で解っていた。今の自分に、久賀の物を受け入れるのは無理がある。
大きさもそうだが、技巧に余りにも差がある。
実のところ、静花は久賀の手の平の上で踊らされているような状態にあった。
久賀ほどの物をただ乱暴に喉奥へと突き込まれれば、ほどなく嘔吐してしまうだろう。
しかし久賀はあえてそうさせない。
かろうじて嘔吐しないような動きで喉奥を掻き回し、静花の息苦しさを増している。
直火ではなく、あぶり焼きでじっくりと焼成しているようなものだ。
そうされた結果、いずれ訪れる決壊時の苦しさの総量が跳ね上がる事は、静花にも容易く想像できる。

惨めだった。
「おお゛ぇええ゛っ!!げお゛っ、ごっ!!お゛え、エ゛ぇえお゛っっ!!!!」
喉奥を突かれ、反射的にえづき声が上がるのが煩いほど聞こえる。
えづき汁は次々と溢れ、口元から滴っていく。
かろうじて久賀を睨み上げてはいるものの、苦しみが増すと白目を剥いたようになってしまう。
それらを、下衆な輩に見られている。耐え難い屈辱だ。
久賀が可笑しそうに笑いながら変化を見せた。
「さぁ、出すで。しっかり飲めや!!」
その言葉が聞こえた直後、久賀の物が一気に喉奥近くへと入り込んでくる。
奥の奥、口と鼻の穴が通じている部分へ密着するように。
「!!」
静花は本能的にその危険を察し、身を捩ろうとする。しかし、遅かった。
久賀の物が一瞬痙攣した直後、夥しい量の精液が喉奥へと浴びせかけられる。
喉のみならず、鼻にまで精液が逆流し、生臭さが静花の鼻腔を満たす。
「ぐ、ぐぶふぅっ!!!」
静花は当然噎せかえった。しかしその苦しみの只中で、久賀はさらに逸物を押し込んでくる。
喉が詰まるほどに。
それをされては、静花はもう堪らない。
「うう゛ぉお゛お゛っっっ!!!!」
意思とは無関係に呻きが上がり、背中が痙攣する。
脇に垂らしていた腕が勝手に持ち上がろうとするが、それだけは意思の力でかろうじて抑え込む。

久賀はさらに責め立てた。
容赦なく抜き差しを繰り返し、窒息して静花の顔色が紫色になる頃にようやく逸物を抜く。
そして十分な休息も与えぬままに、再び喉奥を掻き回す。
静花にしてみれば溺れているようなものだ。
息継ぎのタイミングが解らず、やがて酸い熱さが喉元を駆け上がる。
「んも゛ごおぉ゛ええぇ゛え゛え゛え゛っっ!!!!」
静花は空中を睨み据えたまま、胃の中の物を逆流させた。
滝のように凄まじい嘔吐だ。
周囲の男達が喚きたてる声は聴こえるが、ひどい耳鳴りで内容までは解らない。
風呂場のタイルに液体の跳ねる音が響く。

「はっ、はっ、はぁっ、はっ、はーっ…………」
汚物塗れの逸物が抜き出された後、静花は床に手を突いて息を整えるのが精一杯だった。
歯の間から、唾液に塗れた酸い液体がなおも滴っていく。
身体中から汗が噴きだし、前のめりの身体から落ちていく。
うっすらと開いた視界に映るのは、間違いなく自分が出した薄黄色い吐瀉物。
風呂場のタイルに沿って広がり、固形物さえ見て取れる。何とも惨めな光景。
男達の罵声が聞こえる。今まで耳にしたどんな言葉よりも心に刺さる罵倒だ。
しかし、その地獄すらも終わりではなかった。
久賀は静花の身を起こさせ、なおも逸物を桜色の唇へと押し当てる。
「まだや、まだ終わっとらんぞ。ここからや」
その言葉で、静花の苦しみは再開した。

再び風呂場に響くえづき声。
声そのものは低くくぐもったようなものに変わったが、内なる苦しみはより増している。
本当の苦しさは嘔吐そのものよりも、その後にあった。
吐き癖がついたとでも言うのだろうか、静花は柔くなった喉奥を怒張でかき回されると、容易く嘔吐するようになった。
しかし二度目以降、久賀は嘔吐の最中すら怒張を抜かない。
それどころか両手で強く静花の頭を押さえ込み、吐瀉物を押し戻すようにする。
「ぶふぁっ!!」
逃げ場を失った吐瀉物は、静花の鼻から溢れ出した。その苦痛たるや並ではない。
静花は両手で足首を掴みながら、この地獄に耐え忍んだ。
苦しみを受け止めるのが精一杯で、とても目を開けていられない。
しかし、その心理を見逃す久賀ではなかった。
「どうした、さっきまでみたいにこっち見ぃや」
そう煽られると、静花とて逃げられない。
必死に目を剥き、陵辱者を睨み上げる。相当な根性が要った。
「ほぉ、ここでまだそないな眼ェ出来る女は久しぶりや。こらぁ愉しみやなぁ。
 ……しゃあけど、それもいつまでもつやろか。ソープ嬢はあんまり気が強ぅても可愛げがないさかいな。
 徹底的にその心、折らしてもらうで」
久賀はそう笑い、静花の喉奥を蹂躙し続ける。
静花のえづき声と嘔吐の音が、それに入り混じった。





徹底的に心を折る。
久賀のその言葉通り、静花には様々な恥辱が与えられた。

ある時には風呂場で『マングリ返し』の格好を取らされ、幾度も浣腸を施された。
両の足首を押さえられ、逃げる事が叶わない。
その状態で下腹部が膨れるほど、洗面器のグリセリン溶液を注ぎ込まれる。
「くっ……! こ、こんな事で、アタシがあんた達に屈するもんか!」
静花は精一杯強がるが、刻一刻と増していく便意を消し去る術はない。
便意の波が来ては堪え、さらに大きな波に翻弄される。
逆さになった静花の視界の中、憎い男達が苦しむ静花を見下ろしていた。
それを渾身の気力で睨み上げ、静花は唇を噛みしめる。血が出るほどに。
しかし……それでも決壊の時は訪れる。

「く、うう、うううっ……!! あああ、あああ゛っ! ああーーーーっ!!!!!」

切ない叫びと共に、剥き卵のような臀部から汚辱が噴き出す。
それは高く吹き上がり、女の白い肌の随所に浴びせかかる。
茶色い奔流は、内股を通り、腹部を抜け、首筋にまで。
決壊と同時に、男達の手元で幾度ものフラッシュが焚かれるのが解った。
「ぐうう、う……っぐ!!」
自らの汚物の匂いに塗れながら、静花は口惜しげに顔を歪める。
「はははは、あの澄ましてた美人がクソ塗れだぜ、ザマァねぇな!」
「全く、惨めだねぇ。お前のそのザマを写したネガは、きっちり可愛い妹分共に配ってやるよ」
男達の嘲笑いが、いよいよ彼女の自尊心を切り刻んでいく。
誇り高い、『多寡見の女王』の自尊心を。



静花は連日犯されていた。
用いられるのは、膣ではない。肛門ばかりを休みなく使用された。
今も静花の菊輪は、久賀の規格外の怒張によって押し拡げられている。
始めは苦痛だったそれも、今ではすっかり慣らされ、エラの張ったカリ首が抜き出される度に快感を覚えるほどになった。
しかし如何に心地よかろうとも、『排泄の穴を用いられている』という事への抵抗が無くなる事はない。
妹分の存在を盾に肛門調教を受けながら、静花は悔し涙を堪えるのに苦心する。
「んっ、んぉっ……あ、ああおっ…………お」
肛門を貫かれる静花の口から、かすかに声が漏れた。
嬌声。まさに漏れ出したというに相応しい、快感の色を含んだ声だ。
しかし、周囲の男達がそれに難色を示す。
「おい、また声が低くなってんぞ。オンナの声出せっつってんだろうが」
「可愛い妹がどうなってもいいのか、え?」
男達がそう凄むと、静花は心から口惜しげに鼻へ皺を寄せ、再び声を上げた。
「あっ、あ、ぁあっ…………」
先ほどとは一変した、少女の喘ぎ声。
まるで天使を思わせる声が、勇ましい女スケバンの喉から発せられる。

声を女のものにさせられるだけではない。
彼女は格好もまた、赤いスカートに白ブラウスというガーリッシュな出で立ちだ。
その状態で、後ろから抱くように肛門を犯されている。
そしてその様を見せつけるかのように、正面には大きな姿見が置かれていた。
「へへへ。そうしてると可愛いぜぇ、静花ちゃんよ」
男達は下卑た笑みを浮かべながら、静花の黒髪を撫でる。
髪に指を絡ませる形で、丹念に、執拗に。
さらには女の声を上げる静花の唇を、一人の男が奪う。
「んむっ、む、んんんんんっ……ん、あ…………」
蕩けるようなキスが始まった。
まるで想い合う男女がするような、深く舌を絡ませるフレンチキス。
妹分の身代わりである静花は、それを甘受するしかない。
女の格好をしたまま、為すすべもなく排泄の穴を犯され続け、髪を撫でられ、キスを強要される。
妙な感覚だ。頭がドロドロに溶けてゆく。

始めこそ静かな瞳で相手を睨んでいた静花の表情が、次第に、変わり始めた。
頬が紅潮し、瞳が蕩け……
その瞬間、はっとしたように静花は芽を見開く。
「や、やめろっ!!」
焦った口調で叫びながら、素早く顔を引いて男の口づけから逃れる。
周囲で笑いが起きた。
「おやおや、まーた女の気分になっちまったのか」
「そろそろ浸っちまえよ。その方が突っ張ってるより自然なんだ、楽になるぜ」
その言葉に、静花は強く頭を振る。
「違う、違う!! ア、アタシは、そんな女々しい心は持っちゃいない!!」
必死に否定するが、状況は変わらない。
「正直になったらどうや。女の扱いされながら尻穴犯されて、すっかり心が女になりかけとるやろ。
 なんぼ言葉で否定しても……ここは正直や」
背後から犯す久賀が、静花の秘裂に手を伸ばした。
静花の顔が青ざめる。
彼女自身も解っていた。女の扱いをされ、女の声を強要されるうち、自分に変化が起きている事が。
女として、濡れ始めていることが。
「そんなもの、ただの自衛反応だ……う、うふうう゛っ!!!」
必死に強がりを見せる静花。
しかし濡れた事を意識しながら尻穴を抉られた瞬間、再び彼女の声は快感に染まった。

女として『作り変えられていく』無間地獄の中、静花はただ瞳を彷徨わせる。
果たして自分は、自分の矜持が保てるのか。
静花にとって、今やそれは風前の灯が如く、ひどく儚げなものに思えるのだった。


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