大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2014年02月

上海夢中料理

※中華を喰らうだけ。


入社4年目にして、貧乏クジを引いたものだ。
得意先の会長である史沼氏との会食。
それは、中途退社の目安である3年目を乗り越えた社員への、洗礼の儀式である。
偉大なる俺の先輩方は、口を揃えてそう言った。
聞けば、史沼老人は某難関私大の出である事を誇りに思っており、同大学出身の者を贔屓するという。
そしてもし、会食の『犠牲者』が別の大学出身であった場合、史沼氏には苦言を呈される事となる。
態度が悪い、喋りがつまらない、食事のマナーが云々……。
それらのクレームを会社が受け止め、恩を売る形で『犠牲者』を萎縮させる。
そうしてこの会社は、某大学の出身者を中心として派閥を形成してきたのだそうだ。
大学を出たばかりの頃、俺はその話を信じなかった。
しかし、入社以来3人の『犠牲者』を見てきた今は、もはや信じざるを得ない。
まさか自分がその『犠牲者』になるとは思いもしなかったが。

史沼老人に連れられて中華料理屋に向かう最中も、俺の心は晴れなかった。
俺は件の大学などとは全く無縁の人間。暗黒の未来がすでに見えるというものだ。
そもそも、中華料理屋という時点で色々と勘繰ってしまう。
近年重要な市場である中国への理解度を試そうというのか。
俺が中華料理を食べる様を見て、マナーがなっていない、学習意欲に欠けるとこき下ろすつもりか。
そのような疑惑が頭の中を駆け巡る。

事実、席についてからも史沼老は快い反応を一切示さなかった。
俺の世間話は確かに大したものではなかったかもしれないが、それに対して返事もろくにしない。
ただ仏頂面でこちらを観察しているだけだ。
そうして場の空気が依然として硬いまま、届いた食事を摂る破目になった。
俺が頼んだのは“上海套餐”。
いくつかの上海料理が少量ずつ楽しめ、値段も手ごろというお得なセットだ。
史沼老が頼んだものに合わせたのだから、チョイスに文句を言われる筋合いはない。
となれば、後は食べ方だ。
史沼老は相も変わらず、今ひとつ読みづらい表情で静かにこちらを観察している。
馳走を前にしてその視線に晒される。
それは俺にとって、耐え難かった。
趣味の少ない俺だが、食に関する興味は強い。そこを侵されるのは、たとえ得意先の会長とて度し難い。
この怒りが俺を開き直らせた。
それまで続けていたおべんちゃらを放棄し、目の前の料理に専念する。
もはや相手の評価は考えない。悪くて元々、だ。



それなりに高級そうな中華料理店だけあり、セット料理はいかにも美味そうだった。
サラダに麻婆豆腐、シュウマイ2つ、若鳥の唐揚げ。それに白米とワカメスープ。
それらを一瞥した瞬間、俺の頭に直感が走る。
“白米が足りなくなる”、という危惧が。
セットの中で、白米を消費するのは麻婆豆腐、シュウマイ、唐揚げの三種。
シュウマイ2つの消費量はたかが知れているとしても、唐揚げが問題だ。
一瞥して美味いことが判別できる類の、衣も美しい大振りの唐揚げ……それが8個。
俺は、本当に美味いメインディッシュはどうしても白飯を添えて食いたい。
しかし、茶碗一杯の飯では明らかに足りなかった。
唐揚げに一口かぶりつくたび、チマチマと箸の先に白飯を乗せる、とやっても、唐揚げ分だけで飯が消える。
通常であればそれでもいいかもしれないが、問題は残る麻婆豆腐だ。
何しろこの麻婆豆腐、黒い。
赤い色をしているなら、唐辛子系の味として割と普通に食える。
しかし経験上、本場の黒い麻婆豆腐はヤバイ。花椒の舌にビリビリくる辛さは、白米なしには耐えられない。

「すみません、ご飯のお替りできますか」
俺は食事に入る前に、まずそれを店員に確認していた。
中国人らしき店員は、一瞬俺の言葉を頭の中で確認して首を振る。
メニューの白米欄を指し、ツイカ、と呟いた。
どうやらお替り自由ではなく、替わりが欲しければその都度ライスを頼む必要があるらしい。
しかし、背に腹は変えられない。たかだか200円、軽い傷だ。

俺は店員に、ライス追加の予定があり、今から10分ほど後にもう一椀持ってきて欲しい旨を伝えた。
10分後、さりげないが譲れない線だ。
俺の脳内では、すでに料理の攻略がシュミレートされ始めている。
シュウマイを軽く片し、肉厚大振りの極上唐揚げを堪能する時間が約10分。
そこで一杯目の白飯が空になり、すかさず追加の白飯で麻婆豆腐に挑む……これが理想。
あまり早く追加の飯が来て冷めるのはNG。かといって待たされるのも辛いものだ。
メインの一品ごとに、まだ熱い飯をガツガツといきたい。

ちなみに俺は、『三角食べ』が出来ない人間だ。
一品に手をつけると猪突猛進。付け合せの青野菜まで食い切り、皿を空にするまで他には目もくれない。
それが俺の培ってきた食事作法だ。今さら変えられないし、変える気もない。
史沼氏の評価は、いよいよ下がってしまうだろうが。


中華料理特有の長い箸を手に取り、いよいよ食事開始だ。
こちらを見つめる史沼老はとりあえず無視し、本能に身を委ねる。
俺の箸はまず、無意識に唐揚げを掴みあげた。
作法としては多分最悪だ。
和食の場合は汁物から手をつけるべきだし、消化吸収を考えるなら、前菜でもあるサラダから行くべきだ。
しかし、俺の腹は減りすぎていた。こうなっては、まず唐揚げ以外にはありえない。

澱みない動きで唐揚げを口へと運ぶ。
半ばほどへ歯を立てると、ジュリリ、と衣の割れる音が響いた。耳に心地良い。本当に良質な衣である時の音だ。
衣自体にほのかな醤油めいた風味がついているので、レモンも山椒塩も必要なさそうだ。
衣を愉しみながら、さらに肉の中へと噛み進めると……当然、肉汁が来る。
その瞬間、俺は見えないながらに確信した。この肉汁の色は、澄んだ黄色だと。
前歯の圧迫で飛沫き、舌の上へと広がる油。
尋常でない快感が、そそそそと細く脳を駆け上っていく。
美味い、これは美味い!
あまりの美味さに、舌の柔らかさが増していくのが解る。
味蕾はふつふつと歓喜し、新たな肉汁が伝うたび、舌の先がくるりと巻いてしまう。
極上の肉汁を逃がすまいという反応だろう。
衣には、ジュリ、ジュリと噛める絶妙な湿り具合の部分もあれば、サクサクとした香ばしい部分もちゃんとある。
この衣の多様さこそが本当に良い唐揚げの条件だと、俺は勝手に思っている。
勿論、肉自体も質が良い。
歯で噛むとサクリと抵抗無く切れる柔らかさ、臭みのない肉の味、そしてあふれ出す汁。
牛豚ならともかく、鶏肉にこれ以上の説明なんて必要ないだろう。最高だ。

1つ目の唐揚げを咀嚼しながら、白米をかき込む。
当初箸の先にちびちびと乗せて喰うはずだった計画は早くも崩れた。
箸先に乗るギリギリを掬い取ってがばりと喰らう。そうでないと肉の旨みとの調和が取れない。
噛みしめれば、たちまちコメの甘さが唐揚げの味わいを覆い尽くしていった。
飯ひとつを取っても丁寧な焚き方だ。この甘さからいって、たぶん釜炊きだろう。
改めて、細部まで拘った立派な料理屋だ。
白米が美味いのも誤算となり、唐揚げの消費と共に米もみるみる減っていく。
ここは計画を変更し、いくつかの唐揚げは単体で食すしかない。
コメの甘みと共に味わう機会が減るのは悲しいが、たまに肉本来の旨みを堪能するのも変化がついて良い。

そんな事を考えるうち、茶碗は完全に底を晒す。
唐揚げは残り2個。
うち1つを口に含み、付けあわせの野菜も口に放り込んで咀嚼する。
生野菜なぞ嫌いな俺だが、こうすればかろうじて食える。しかし、これを最後に持ってくるのは愚策だ。
唐揚げと併食してもなお残る野菜の青臭さを、残る1つの唐揚げで完全に払拭する。
白米も野菜も気にすることのない、純粋に味わえる肉の旨み。ある種金曜の夜に近い開放感がある。


ついに唐揚げの皿が空になり、膳の中にぽっかりとスペースが空く。
ここまででおよそ4分弱、美味だっただけあって計画より早く平らげてしまっている。
次の白米が来るまではやや猶予がある状態だ。
が、視界を巡らせると誤算に気付く。まだシュウマイもサラダも残っているのだ。
いずれも俺の中でのメインディッシュたり得ない。麻婆豆腐を堪能した後でこれを食べる状況は御免だった。

仕方なくサラダに手を伸ばす。青臭さを先に取り、シュウマイで口直しする作戦だ。
だが、思ったよりこのサラダは口当たりが軽かった。
上にかかっている中華ドレッシングのせいか、あるいは千切り大根の効果か。
いずれにせよあっさりとサラダを平らげ、シュウマイに移る。
こちらは、まぁ予想通り。肉汁充分、大きさもあって、ただ流石に若干冷めているのが残念だ。
とはいえ、俺の中でシュウマイは唐揚げより優先するものではないので、多少の劣化は仕方ない。
期待外れではないので上等だ。

と、ここでタイミング良く白米の2杯目が運ばれてくる。
となれば、いざ麻婆豆腐との対決だ。
ごろごろとした豆腐を真っ赤な唐辛子が縁取り、さらにそれを花椒が覆い隠している。
上に飾られた刻みネギが良いアクセントだ。
皿を手前に引き寄せた時点で、ツンと来る挑戦的な匂いが鼻腔を支配する。
しかし、臆するわけにはいかない。
添えられたレンゲで勢い良く豆腐を掬い、口に運ぶ。
レンゲから啜るように食せば、たちまち清涼感が頭をつき抜けた。
そこから後追いでラー油の辛さが舌を炙り、そしてあの舌のビリビリくる辛さが燃え上がる。
たまらず白飯を口に放り込んだ。
コメの甘みが、かろうじて麻婆豆腐の辛さを中和してくれる。
まだ湯気の立っている暖かい飯だと、余計に甘さが感じられて助かるものだ。
辛い、本当に辛い。
しかし……本格的な麻婆豆腐なのは疑う余地も無かった。
そして本格的な麻婆豆腐の悪い点は、非常に中毒性が高いことだ。
舌の痺れが、いつのまにか次なる快感を待ちわびる疼きへと変化している。
唾液が止まらず、自然と指が動いてしまう。

2口、3口、4口5口6口……。
豆腐の口当たりの良さも手伝い、中毒になったように次々と手が動く。
食べ進めるほどに、辛さにも慣れてしまうのが凄い。
飯も凄まじい勢いで減っていき、ちょうど麻婆豆腐との共倒れという形で空になった。

ふぅーと長い息を吐く。
痺れた舌を細い空気が通っていき、むず痒い。
額にびっしりと汗を掻いている中、視界は唯一残るワカメスープを捉えていた。
この辛さに対する口直しにはもってこいだ。
俺はやはりレンゲを使い、ワカメを掬い上げて口に含んだ。
痺れた舌へ湿布のように張り付かせ、スープを染み渡らせてから飲み込む。
とろりと蕩けたワカメが喉を通る感触は最高だ。
それを数度繰り返した後に、ほどよく冷めたスープを一気に飲み干す。
最後の最後でまた胡椒の味が多少したとはいえ、良い口直しだ。

また、息を吐く。今度はさっきよりも長く。
視界にはもう何も食い物は映らない。ただ白い皿と黒い茶碗が並んでいるばかりだ。
そして、ここで初めて俺は気がついた。
正面にいる史沼老が、呆けた様な表情でこちらを凝視している事に。
さすがに無視が過ぎただろうか。反応が悪くとも、もっと丁寧に接待するべきだったかもしれない。
これは最悪、左遷もありうるかもな。
俺は食後の心地良い気だるさに包まれながら、ぼんやりそう考えていた。



数日後。
史沼氏の俺に関する評価が、噂通り会社経由で伝えられた。
それを聞かされた俺は、なにやら妙な気持ちが今も抜けずにいる。
だって、仕方ないだろう。

『じつに素晴らしい喰いっぷりだった』

毒舌で知られるあの史沼氏が、ただ一言、そう伝えたきりだったというんだから。



                     終わり
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Water boarding

※水責め&腹責めモノ。嘔吐・失禁注意。


Water boarding……それは世界中で最も重宝されている拷問の一つだ。
いわゆる水責めの一種だが、頭を逆向けにしたまま水を飲ませるため効果が高い。
人間の脳は、頭を下にして水を飲んだ場合、即座に溺死の危険を察知するようにできている。
反射的なパニック状態からの自白率は極めて高い。
そのため各国特殊部隊では、こぞってWater boardingの訓練を行っている。
某国においては特殊部隊のみならず、軍属の者すべてがこの特訓への参加を義務付けられているほどだ。
この風潮にほくそ笑むのがバドという男だった。
階級は中尉ながら、態度だけは将官クラスと揶揄される男。
彼は敵地にてWater boardingの尋問を受け、それに耐え抜いたという逸話がある。
実際には、今まさに尋問を受けようとしていたところを救出されただけなのだが、真実は彼のみぞ知るところだ。
このように虚偽と欺瞞で自身を塗り固めたバドには、眼の敵にしている同僚がいた。

レスリー・リセント。
バドと同じ中尉でありながら、こちらは物が違う。
レスリーには華があった。
やや垂れ目気味ではあるが眼光は鋭く、意思の強さが顔つきに表れている。
顎までの長さで切り揃えられた金髪は陽によく煌めく。
首から上は映画女優と言っても違和感がない。
しかし、鎖骨から下に視線をやれば、その煌びやかなイメージは一変する。
現役軍人さえ目を見張る、鍛え抜かれた肉体がそこにある。
弛みのないボディラインが美しい。
特に腹筋の発達は顕著であり、酒宴の後でさえしっかりと8ブロックに分かれているほどだ。
自分を甘やかさず、面倒見もいい彼女は部下からの人望も厚い。
バドもまたレスリーに惚れた一人だ。
『貴様はマシな女だ。特別に今のうちから、私の傍に置いてやろう』
この調子で高圧的に交際を申し入れ、あえなく一蹴された経緯がある。
それはバドのプライドを傷つけた。
以来バドは、いつでもレスリーへの報復を画策し続けている。
とはいえ真正面から争って敵う要素はバドにはなく、歯軋りする日々を過ごしていた。

その折に飛び込んできたWater boarding訓練は、彼にとってまさに天からの恵みだ。
彼はここぞとばかりに上層部に訴えかけ、自らの逸話を元に訓練教官の座を勝ち取った。
教官の肩書きがある限り、訓練中に限ってはバドが部隊の最高権力者となる。
レスリーとて一時的に指揮下へ入らざるを得ない。
たとえ、どのような仕打ちを受ける破目になろうとも……。



Water boardingの特訓に大掛かりな仕掛けは必要ない。
対象者は傾いた台へ頭を下にして寝かされ、身体の各所を拘束される。
その際両手は体前部のどこかに置き、薄い円状のプレートを握る。それだけだ。
水責めに耐え切れなくなった被験者は、ギブアップの印としてプレートを落とす事になっている。
プレートを離せば溺死の恐怖から開放される訳だ。
鍛えに鍛えられた特殊部隊の男といえど、この『溺死の恐怖』を平然と乗り切る者など居はしない。
顔に布が被せられ、水が注がれはじめてからプレートが落ちるまでの平均タイムは僅かに4秒足らず。
しかしこれを不甲斐ないと思うべきではない。
貼りついた布が顔から引き剥がされた時、被験者の顔は一様に恐怖に引き攣っているものだ。
目と口を裂けんばかりに開いたその表情は、Water boardingという拷問の恐ろしさを見る者に焼き付ける。
レスリーはこの拷問を、数十人分に渡って見せ付けられた。
彼女の順番は最後の最後。
名目上は上官であるゆえだが、その実は残り時間を気にせず嬲り者とするためだ。
「…………っ」
膝の上へ乗せられたレスリーの手に、刻一刻と力が篭もる。
いかに気丈な女軍人といえど、圧し掛かる恐怖が尋常ではないのだろう。
単に水責めへの恐怖だけではない。
大勢の部下が見守る前だ、無様など晒せない。ギブアップ制度など無いに等しいと思うべきだ。

「……さてレスリー、私が誰か解るかな?」
台に横たわったレスリーを見下ろしながら、バドは下卑た笑みを見せる。
レスリーは嫌悪の表情を作った。
「ええ、教官殿。盗撮とボディ・タッチが御趣味だそうね」
レスリーの言葉で、どこからか笑いが漏れた。
バドは顔を見る間に赤らめ、目を剥いて周囲を威圧しながら続ける。
「ふん、いいだろう。ともかく、とうとう貴様の番だ。
 散々見て知っているだろうが、ギブアップなら宣言の代わりにプレートを投げろ。
 もっとも、それを投げる行為が『仮想敵への屈服』を意味する事は忘れんようにな。
 上官たる貴様が、もしもそのような不甲斐ない姿を晒した場合……教育的指導をせねばならん」
バドの顔に再び歪んだ笑みが浮かぶ。
言動共にいやらしい男だ。
「言われなくても、理解してるわ」
レスリーの眉間に皺が寄る。
バドは満足げに頷きながら、周囲の男達にレスリーを台へ拘束するよう命じた。
男達はバドお抱えの隊員だ。
バドも下衆として知られる男とはいえ、それはそれで同じ人種からの人気がある。
特にあのレスリー・リセントを嬲れるとあれば、その気のある者は嬉々として馳せ参じる。

太い拘束帯がレスリーの鳩尾へと巻きつけられた。
これにより、レスリーの女らしい胸が否応なく強調される。
支給のタンクトップは深く皺を作り、肩口からインナーが覗く。
すべて白一色の無味乾燥なものではあるが、女気のない特殊部隊においては充分すぎる興奮材料だ。
「へへへ……中尉殿の胸に、こんだけのボリュームがあったとは驚きだ」
「ああ、いやらしく上向きに突き出してやがる。もっと早くから拝んどくべきだったぜ」
「仕方ねえだろう。真面目な中尉殿の胸なんぞ覗けば、どんなお叱りを受けるか解ったもんじゃねえからな」
男達はレスリーを前に辱めの言葉を口にする。
「お前達、誰の事を言ってるつもり? 随分と良い根性してるじゃない」
レスリーから貫くような視線を向けられてもなお、臆する素振りはない。
まるでこの特訓の後も、レスリーに叱責される恐れはないと確信しているかのごとく。


男達はさらにレスリーの腰周り、そして腿の付け根を手際よく固定していく。
身動きを封じるよう厳重に拘束する中、腹部にだけは拘束帯を巻かないのは、特別な意図あってのことだろう。
訓練を監視すべき軍医がひとつ欠伸をする。
本来ならば拘束段階から神経を張り詰めておくべきところだが、彼もすでに買収済みという事らしい。
初めからレスリーに勝ち目などない勝負、しかし退けない。
レスリーを慕う部下達が、遠巻きにこちらを見ているのだ。
彼らの前で無様を晒すわけにはいかない。バド相手に降伏の意思を示すことさえ恥だ。
レスリーは、今まさに手の上へ乗せられたプレートを強く掴んだ。決して離すことのないように。
「さあ、しばし空気とお別れだ」
男が下卑た笑みを浮かべつつ、レスリーの顔へと赤い布を被せた。
すかさず別の一人がその端を押さえつければ、布地は隙間なくレスリーの顔面を覆う。
今は布が乾いているため、布越しの呼吸もかろうじて可能だ。
しかしそれが一度水を含んだが最後、たちまち未曾有の地獄が襲い来ることとなる。

バドが舐めるような足取りでレスリーに近づいた。
「どうだレスリー、まさか怖いのか? そう硬くなるな、私でさえこの尋問を耐え抜いたのだ。
 その私をあろうことか軟弱などと罵った貴様なら、何の問題もなかろう」
陰湿にそう囁きかけ、レスリーが布越しに唇を噛みしめると、傍らの男へと合図を送る。
「やれ」
男はすかさず水を垂らした。
まずはタンクトップの胸の部分……フェイントを兼ねた性的な嫌がらせだ。
「!!」
レスリーの身体がびくりと反応し、バド達の笑いを誘う。
タンクトップは水に触れた分だけ透け、余った水は一筋の流れとなってレスリーの首を伝う。
「へ、興奮するぜ」
ペットボトルを握る男は喉を鳴らしながら、再度レスリーの上でボトルを傾けた。
今度は頭の上でだ。
銀色に光る流れが、顔を覆う布の表面で弾けていく。
一秒。二秒。三秒。
恐ろしく長く思える時間の中、刻々と男達の限界タイムが近づく。
当然、レスリーも苦しみを隠せない。
下腕が持ち上がって拘束帯を軋ませ、布の張り付いた顎が喘ぐように尖りを見せる。
「止めろ」
五秒経過時、バドの号令で給水が途切れた。
そして素早く顔の布を取り去れば、そこにはかろうじて溺死を免れた、生々しい女の顔がある。
「ぷはっ……!! はぁ、はっ……は、あ゛っ…………!!」
目を見開き、奥歯さえ見えるほどに口を開いて短く空気を求めるレスリー。
しかしその鬼気迫る表情にも、やはり凛々しさが残っている。少なくとも今までの男とは別物だ。
「死地から舞い戻った気分はどうだ?」
「…………そのニヤケ面を見るぐらいなら、布があった方がマシね」
見下ろすバドの問いに、レスリーは憎々しげな表情で告げた。
元より負けん気の強い性格が、バドを前にしてさらに頑なになっているようだ。
しかしその気丈さがまた、バド達の嗜虐心をくすぐる。
「ほう、そうか。ならば続けよう。水は、まだいくらでもある」
バドは満面の笑みを浮かべたまま、再び布でレスリーの視界を奪った。


数分が経ってもなお、レスリーは良い見世物となっていた。
引き締まった健康的な身体をしているだけに、苦悶する様子も見応えのあるものだ。
中でも目を惹くのがやはり腹部だった。
日々100回×6セットの腹筋を自らに義務付けているというだけあり、均等に8つに割れた腹筋。
それが捲れたタンクトップの裾から覗いている。
ちょうど拘束帯の隙間にある白い肌は、下手に露出が多い格好よりもよほど性的に映った。
おまけにその腹筋は、溺死の苦しさを表すように、激しく上下に形を変えるのだ。
「この腹、やっぱ堪らねぇな」
男の一人がついに我慢の限界を迎えたらしい。
レスリーの腹部に手を近づけ、臍周りを軽く押し込む。
直後、レスリーの腹部が激しく震えた。唐突に触れられた驚きか、あるいは苦悶の動きの延長だったのか。
いずれにせよ、その反応がバド達を刺激してしまう。
「ふふふ、良い反応をするな。……そうだ、名案を思いついたぞ。
 よく鍛えているこの女には、ただの水責めなどでは手ぬるかろう」
バドは芝居がかった口調で呟きながら、レスリーの腹の上で拳を握りこむ。
彼の目はちらりと軍医を見やったが、軍医が表情を変えることはない。
ただ新調した金縁眼鏡を拭いているだけだ。

なんと残酷な事だろう。
バドが腕を振り上げる瞬間と、レスリーの顔から布が取り去られる瞬間はまったく同じだった。
幾度目かの溺死から開放されたレスリーは、激しく咳き込みながら視界にバドを捉える事だろう。
今まさに振り上げた太い腕を、自らの腹部へと振り下ろすバドを……。
「ぐぅうええ゛お゛!!」
状況把握もできぬまま、レスリーから苦悶の声が搾り出される。
一方のバドは恍惚の表情を禁じえなかった。
充分な弾力のある、ゴムタイヤのような腹筋が己の拳を受け止めている。
拳が弾かれる感触は異常な心地よさだ。
おまけに眼下では、憎きレスリーが苦しみ悶えている。
右目を細めて左目を見開き、大口を開けた、『当惑』そのものの表情で。
それはバドの歪んだ心をよく満たした。
自分よりも有能で、人望があり、強い女を苦しめる……その望みが叶っているのだと実感できる。
堪らない。
バドは再度拳を握り締めながら、周りの男達に合図を送った。
混乱の渦中にあるレスリーの瞳が、再び赤い布に覆い隠されていく。
その後にバドが拳を叩きつければ、赤い布は歪な形での尖りを見せた。
「お゛ぁああ゛……っ!!」
発声の不自由そうな悲鳴も漏れる。
これから彼女が徐々に水を飲んでいけば、その悲鳴と腹部の感触はどう変わっていくのか。
バドはそれが気になって仕方がない。
「ああ愉しみだ……レスリー、まだまだお前の肉を叩いてやる。
 女だてらに生意気に鍛え上げた腹部を、殴って殴って、メス本来のやわらかい肉に戻してやるぞ!!」
下劣な本性を剥き出しにしながらバドが吼えた。
その横暴を止められる者はいない。
軍内部の上下関係は絶対だ。レスリー自身も、それを慕う部下達も、訓練教官であるバドに抗議などできない。





拳が打ち込まれるたび、明らかに腹筋は張りを失っていった。
ただでさえ水を飲まされている最中だ。
胃の中へ少しずつ飲み下した水が溜まっていき、体力の消耗も著しい。
いかに鍛えた肉体とて、いつまでも腹筋の硬度を保っていられるはずはない。
「ぼはぁあっ!!」
レスリーの口から水が吐き出され、赤い布を通して染み出てくる。
布越しに目をきつく瞑っている様子が透けて見えた。
しかし、レスリーはけして手にしたプレートを離そうとはしない。
むしろ苦しくなればなるほど、指先が白くなるほどに強く握り締める。
「しぶとい女だ。そうでなくてはな」
バドは嬉しげに腕を振り上げた。
ドツン、とでも形容すべき音と共に、彼の拳はレスリーの腹筋を突き破る。
腹筋は、拳を緩やかに内へと呑み込むような動きを見せた。
レスリーの均整の取れた身体が痙攣する。
布の下から妙な音も聞こえた。排水溝が詰まったような音。
「ほう?」
バドはその変化を聞き逃さない。
打ち終えたばかりの肉体を酷使し、素早くもう一打をレスリーに見舞う。
ドブ、と鈍い音が響いた。
鈍い音、しかしそうであればあるほど効果がある事を、兵士達は日々の格闘訓練で知っている。
今のはまずい……多くの者がそう感じただろう。そしてその予測は正しい。
「も゛ごぉおう゛っっっ!!!」
レスリーの上げた呻きは、それまでのどんなものよりも苦悶に満ちていた。
拘束された膝下が暴れて拘束台を軋ませる。
腹筋が左右に揺れながら痙攣する。
ここまでは今までどおりながら、今度はとうとう喉元までが激しく蠢いている。
「お゛は……っ!!」
レスリーが発したその“音”の意味を、誰もが一瞬のうちに理解しただろう。
嘔吐。
どれほどの美女でも醜男でも、その音は同じだ。
かくして、レスリーの顔を覆う布から一筋の吐瀉物が流れ出す。
大量に水を飲んでいるため、ほとんど水に等しい薄黄色の流れだ。
それがレスリーの美貌を横切り、陽に煌めく金髪の合間へと伝い落ちていく。
「ひゃはははは、こいつとうとうゲロ吐きやがった!!」
「ああ。実技訓練の時、おもっくそ腹に蹴り入れても平気で反撃してきやがる女がな。
 まったく水責め様様だなぁ、いいもん見たぜ!」
「貴様等、私の拳の威力だとは考えんのか? ……まぁいい」
バド達は鬼の首を取ったように騒ぐ。
逆にレスリーを慕う者たちは、怒りと嘆きをそれぞれの表情に宿している。

「教官、もう止めましょう! 中尉は嘔吐までしているんですよ!?」
兵士の一人が堪らず叫んだ。
それに対し、バドは蔑みの視線を寄越す。
「何を言うか。実際にこの拷問を受けた時、嘔吐した程度で解放されると思うのか?
 貴様等雑兵は溺死体験だけで済ませたが、この女は違う。
 階級の高い人間は、重要な機密を知らされて作戦に臨むものだ。
 当然、自白によって我が軍が被る損害は、貴様等などとは比較にもならん。
 ゆえに訓練とはいえ、より実践的なものにせねばならんのだ。
 それとも、どうだ中尉、もう降参か。貴様にはその権利もある。
 私の時は……そのような物はなかったがな」
バドは建前を並べ立てた上で、巧みにレスリーを挑発する。
その物言いをされては、レスリーに選択肢などない。
「ひっ、ひっ、は、はひっ、ひ……ひっ、はっ……まさか!!」
短い呼吸を繰り返しながら、気丈に叫ぶレスリー。
涙と汗、そして吐瀉物に塗れているとはいえ、美貌は崩れていない。
むしろその穢れた美女の顔は、いよいよバド達のサディズムに火を点けていく。
「中尉は続けて構わんそうだ」
バドが命じるまでもなく、取り巻きの男はレスリーの顔に布を被せ直していた。
空気を遮断されるその直前、レスリーは決死の表情で大きく息を吸う。
恐怖はあるだろう。
しかし、降伏を示すプレートは未だ固く握られたままだ。
見守る者の中には、その姿に涙を浮かべる者さえ現れていた。
そして、満面の笑みで拳を握り締める男も。

バドは足を肩幅に開いたスタンスで、大きく肩を引き絞る。
斜めになったレスリーの腹部へ、垂直に近い角度で拳を打ち込めるように。
一方彼女の頭部付近では、やはり容赦のない水責めが再開されていた。
「おら、たっぷり飲めよ」
満面の笑みを湛えた男が、布を被せられた口周りにペットボトルを宛がう。
水は静かに布へと染みこんでいく。
「っ!!!」
声にならない叫びと共に、レスリーの顎が左右に揺れた。
男はそこで一旦ペットボトルを離し、布を押さえる役が位置を調節する。
そしてまた男がペットボトルを宛がい、注ぐ。
何度も何度も、飽きるほどに繰り返されている地獄。
レスリーの豊かな胸が激しく上下し、溺死の苦しさを訴える。
そこからさらに足までが暴れ始めれば、そこでおおよそ五秒だ。
「ぶはぁっ!!」
顔を赤らめたレスリーが、布のどけられた口で大きく息を吸う。
バドはまさにその瞬間、彼女の腹部へと拳を打ち込んだ。
「ん゛ごはぁああ゛っ!ぐ、くくっ…………!!!」
当然、レスリーはあられもない声を上げて身悶える。
唇からは新たな吐瀉物が溢れ、地面に飛び散っていく。
瞳はきつく閉じられ、開くと同時に目尻から一筋の光を流す。
それでもなお、プレートを持つ手だけは微動だにしない。
矜持は穢させないと、見る者すべてへ示すように。
「生意気な女だ」
追い込む立場にあるバドは、余裕の表情で再度拳を打ち込んだ。
それはちょうど水責めの始まったタイミングであり、レスリーの喉から激しく水を逆流させる。
「げほっ、げえぇほっ、うえ゛あはあっ!!!!」
まさに悶絶というべき有様で、レスリーは首から上を暴れさせた。

「……もう、やめてくれよ…………!!」
一人が痛切な声と共に頭を抱える。
その横に立つ兵士もまた、辛そうに目を伏せていた。
ドン、ドンという打撃音が、鳴るたびに彼等若き兵士の肩を震わせる。

レスリーの腹部は、一打ごとに拳を深く受け入れるようになっていた。
各所が赤く窪んだ腹筋は、もはや鎧としての役目を果たさない。
水を注がれるタイミングで殴られれば、混乱と共に多くの水を飲まされ。
布のないタイミングで殴られれば、飲んだ分以上の水を吐瀉物として吐き零す。
レスリーは人形の如く、これら2つの動作を不規則に繰り返していた。意思とはまったく無関係に。
「ごほ、がはっ……!!おおお゛うう゛う゛え、あ゛げええ゛お゛っっ!!!」
かつて誰か一人でも、レスリーのそのような汚い姫を聞いた事があっただろうか。
少なくともマーシャル・アーツの模擬戦においてすら、彼女はそのような声を上げた験しがない。
まさに極限に近づいている人間特有のえづき声に、場はいよいよ騒然となる。
悲喜交々の歓声が上がっていた。
「へへへ、美人ぶりが見る影もねぇな。ゲロやら涙やらでズルズルだぜ」
「ずっと蛙みたいに喘いでるばっかりだしな」
男達はレスリーの顔の布を剥がしながら、獲物が刻一刻と限界に近づく様を愉しんでいる。

またしても、強烈に肉を打つ音が響く。
バドはもはや、目の色すら変えてレスリーの腹筋を叩き続けていた。
「ぐぅっ、ごぼぉっ!!ご、がは……あ゛ぐお゛お゛ぉっ!!!」
レスリーからは絶え間ない悲鳴が上がる。
とうに腹筋は張りを失い、内臓を直に叩かれている状態だ。
地獄のような苦しみだろうが、幾重もの拘束帯を全身に巻かれては身を捩ることすらできない。
「どうだ、苦しいか。苦しかろう、ええッ!
 貴様の腹を叩き潰しているのは、私の腕だ。『鍛錬が足りん』と貴様の言い放った、私の腕だ!!」
バドが肩を入れて放った打撃が、今一度レスリーの腹部に沈み込む。
「がぁああ゛ああ゛っ!!!」
台ごと軋むような衝撃を受け、レスリーの肢体が痙攣する。
そして拳が引き抜かれた瞬間、ズボンの尻の部分がかすかに変色しはじめた。
染みは次第に濃く広がり、台を伝って背中の方へと流れだす。
「ふん、失禁か。あわれなものだな!」
バドは笑みを深めながら、なお打ち込みを続けた。
たっぷりと身を仰け反らせてのテレフォンパンチ。通常では当たるはずのない、最大限に体重を乗せた一打。
それが今だけは、易々とレスリーの腹部を叩き潰す。
拘束台が生命を持ったかのように暴れ回る。
一撃、一撃。また一撃……。
「ご、あがっ!!あがあげっ、ごがっ…………!!っぐ、げぇっ……!!!
 ぐ、ぐるじ……が、ああっ……いぎ、がっ…………むうう゛っ、むげごあぁあ゛っっっ!!!!!」
レスリーはいよいよ危険な声を発しながら悶え狂う。
涙を流し。唾液を零し。空嘔吐を繰り返し。 挙句には口から泡があふれ出す。
ついに意識が途切れたのだろう。
それまで頑なに握り締められていたプレートは、とうとうレスリーの指の間から滑り落ちた。
回転しながら落下するプレートは、キン、と冷たい音を立てて地面に転がる。
「おーお、とうとう落としちまいやが…………」
女軍人の陥落に、水責めを繰り返していた男達が喜びに湧きかけ、そのまま固まる。
その沈黙を破るように、重い打撃音が響き渡った。

「お、おいおい……」
さしもの男達も顔を引き攣らせる。
その視線の先では、無我夢中でレスリーの腹部を殴りつけるバドがいた。
瞳は赤く凹凸の出来たレスリーにしか向いておらず、足元に転がるプレートを意に介していない。
病的な集中力でレスリーの腹部を叩き続けている。
「ごぁああ゛っ……!!?」
哀れなレスリーは、腹部への更なる打撃で無理矢理に覚醒させられた。
そしてまず手にプレートが無いことに驚愕の表情を見せ、
続いて、なおも視界で暴れ狂うバドの拳を見て顔を歪める。
「ま、待って、もう…………!!」
必死に訓練の終了を訴えようとするが、その言葉を言い切る暇は無い。
「いいぞ、柔らかくなってきた……いい女の肉になってきたぞ。心地良い……心地良い!!」
歯止めのきかないバドの拳が、すぐにその腹部を抉りこむからだ。
「あ゛あぁあああ゛っ!!がふっ、げぶっ!!あごろろえげぇえあぁああ゛っっ!!!!」
まさに悲鳴と呼ぶべきものが迸った。
口から夥しい量の水を吐き零しつつ、レスリーは溺死さながらに悶え狂う。
傍観者の誰もが、しばし固まるほどの光景だった。
危険を察した者達がバドを止めに入るまで、追加で10発以上が叩き込まれていた事がその証明だ。

すべてが終わった時、レスリーはその美貌が見る影もなくなっていた。
完全に白目を剥き、半開きの口から泡を噴き、鮮やかな金髪には垂れた吐瀉物が絡み付く。
全体としての表情は溺死の恐怖に引き攣っている。
腹部には余す所無く赤い陥没ができ、何かの事故に巻き込まれたかのような有様だ。
仮にも現役の軍人が何十発も殴ったのだから、当然といえば当然なのだが、
レスリーを信奉する者達にはさぞや衝撃的だろう。
「フウ、フウ…………結局この女も、私のようにWater boardingに耐え抜く事はできなかったな。
 貴様等も証人としてよく憶えておけ。この女は、この程度が限界だった。
 よって今から、腑抜けたこの女の性根を叩き直す事とする。誰も私のテントに近づくなよ」
荒い息を吐きながら、バドは目を輝かせた。
状況はどうあれ、彼はついにレスリーを屈服させたのだ。
レスリーを慕っていた男達が膝から崩れ、バドに従う男達が下卑た笑みでレスリーの拘束を解いていく。
その様は、実に対照的なものだった。


以来、レスリー側だった若き兵士達は耳を塞いで夜を越すようになる。
指を離せば聴こえてくるからだ。

「やめて、もうやめてっ!…………お願い、休ませてよ…………!!」

あの逞しく美しいレスリーが、バドの思うままに弄ばれている様。
狂気じみたスタミナで夜毎犯され、殴られ、苦悶の声と共に果てる様が。
テントの周りは“お零れ”に与らんとするバドの側近達が固めている。
加えてテントの主は『絶対的な』上官だ。
レスリーを慕う兵士に、乱交を止める術はない。
たった一つの命と引き換えにでもしない限り……。



                       終
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