※スカトロ(嘔吐、小、大)注意。


健史にとって、押木戸有紗(おしきど ありさ)は強さの象徴だった。
屈強な男が幅を利かせるアウトロー世界において、女だてらに、身一つで地位を築き上げたからだ。
身一つで、とはいえ、体を売った訳ではない。
時には腕っ節に物を言わせ、時には悪魔じみた冷酷で合理的な策略を用いて。
純粋な力で以って、周囲に自分の存在を認めさせてきたのが有紗という女だ。

「あぐっ……す、すいま、えん…………れした…」
強面のドレッドヘアが、地に這い蹲ったまま哀れな声を漏らす。
それを聞き、ようやく有紗は彼の頭からピンヒールを退けた。
ドレッドヘアはよろめきながら逃走を図る。
裏路地は血にまみれ、そこで起きた争いの苛烈さを生々しく物語っていた。
しかし、有紗に付着した血液はすべて返り血だ。
ドレッドヘアは有紗より体格がよく、木製バットまで持参して不意打ちをかけた。
それでも一方的に叩きのめせるほどに、有紗は強い。
「……す、すげぇ…………」
健史は、金の入ったバッグを抱え直しながら呟いた。
いや、ようやく『呟けた』。

「ったく、要らねぇ時間取らせやがって」
有紗は煙草を取り出して火をつけながら、不機嫌そうに舌打ちする。
煙を吐く横顔は整っていた。
切れ長のくっきりとした瞳に、ハーフめいた鼻筋、血色のいい薄い唇。
油断なく引き締まったその表情は、多くの男から『中々にイイ女』と評される。
パンツ姿の似合う腰のくびれを有しており、スタイルもけして悪くない。
敵対するグループからも、有紗の容姿を貶める噂だけは聴こえてこない。
「さっさと行くぞ。無駄に時間喰ったからな」
有紗は短く告げた。
「あ、はい!」
足早に先を行く有紗を追い、健史も小走りに駆け出す。
向かうのは次の集金場所だ。
闇金業者として貸し付けた金を、利息分だけでも回収に回る。
無論、渋る相手は多い。
特に集金に来たのが若い女とあれば、ごねて場を切り抜けようとする顧客は数知れない。
しかし…………それで逃げ切れた相手を、健史は見たことがなかった。
有紗はあらゆる手段を用いて金を回収する。
元より、仕事に関してはタガの外れている女性だ。
違法スレスレの手段で相手を追い込みもすれば、倫理にもとる手段さえ辞さない。
バックについているヤクザを利用しての恐喝などは基本の基本だ。
それが元で逮捕される事になっても、有紗は微塵も恐れないのだから、追い込まれる側は地獄だ。

有紗には、怖いものなどないのではないか。
健史は常々そう思う。
しかし、そんな事はない。どれほどの強者にも、天敵というものは存在する。
有紗にとっての天敵とは、『金主』だ。
闇金業者として欠かせない資本を提供する、広域暴力団幹部。
有紗はその『金主』から金を借りている形であり、普段彼女が顧客へ強いているように、毎月利子をつけて返済しなければならない。
「いいか。『金主』の野郎に渡す分の金だけは、必ず確保しとけよ?」
有紗は日頃から、口癖のようにそう語っていた。
万が一その用意が出来なかった際の事を、何よりも危惧しているかのように。

そしてついに、その危惧が杞憂で済まない日が来る。
舎弟の一人が、目先の欲に走って大金を使い込んだ挙句、『金主』の組にまで多大な損害を与えたのだ。
単に金の返済ができないだけでなく、『金主』の顔に泥を塗る失態。
その報が齎されたとき、健史は初めて、血の気の引いた有紗の顔を目にした。



健史は有紗に付き添って、『金主』への金の受け渡し場所に向かう。
歓楽街にある高級キャバクラ……そのワンフロアを貸切にして、『金主』は愛人に囲まれていた。
「申し訳ありませんでした!!」
『金主』を前に、有紗は額をカーペットへ擦り付けて土下座する。
普段の“強者たる”彼女であれば、逆の立場こそあれ、まずありえない行動だ。
健史は、その異様な光景を目にして初めて、事の重大さが本当の意味で理解できた。
『金主』は頭を下げる有紗を物憂げに見下ろし、大仰に溜め息を吐く。
「とりあえず顔を上げなさい」
その言葉で有紗が正座に直ってからが、陰湿な嫌がらせの始まりだ。
「お前には期待してたんだけどなぁ。もう失望しすぎて、怒る気力もないよ。
 …………お前たち、私に替わって、ちょっと仕置きしてくれないか」
そう言いながら『金主』が両脇の娘の肩を撫でると、彼女達の瞳が面白そうに細まる。
普段は猫を被っているが、心の底は捻じ曲がった女揃いだ。
健史は、有紗がそうぼやいていた事を思い出す。

「えーっと、そうだなぁ。じゃあマッ君を困らせちゃったんだからぁー、反省しなさい!」
女の一人がそう告げてソファから立ち上がり、ガラステーブルにあったグラスを手に取る。
そして正座する有紗の頭上で、そのグラスを傾けた。
紫色をしたカクテルが降り注ぎ、有紗の茶色い髪で弾けて伝い落ちる。
仕立てのいいスーツに染みが広がっていく。
「っ!!」
健史は思わず息を呑んだ。あの有紗に、何と言うことを。
しかし有紗は、真っ直ぐに前を見据えたまま微動だにしない。
顔をカクテルが伝い落ちている最中にも、瞳を閉じず、眉さえ動かさない。
その根性の座り具合は、さすがと言う他なかった。
しかし『金主』を取り巻くのは、そうした侠気を理解できる女達ではない。
「なにこいつぅ、チョー生意気なんだけどぉ」
「じゃあ別の罰ねー、服脱いで。………………オラ、脱げ、っつってんの」
金主に声が届く範囲では猫を被り、有紗の耳元では地の声を出して、女達は有紗を追い詰める。
「わかりました」
有紗はすくと立ち上がり、スーツのボタンに手をかけると、見事な脱ぎっぷりを披露しはじめた。
微塵の躊躇も見せず、微塵の気後れも見せず。
無論、羞恥心がないわけではないだろう。どれだけの露出狂でも、自分の部下が見守る前で脱げるものではない。
ただそうした感情を、相手に悟らせないだけだ。

初めて目にする有紗の裸体に、健史は心奪われた。
普段、服の上からでもスタイルの良さが見て取れた有紗の肉体は、脱げばいよいよ魅惑的なものとなる。
肌は思った以上に若く、充分な張りと艶を併せ持っている。
胸の大きさはCカップといったところで、服を着ている時よりも控えめだ。
しかしそれも、スレンダーな体型によくマッチしている。
尻や脚の形も美しく、こちらに背を向けた後姿は、成熟した女優のようなそれだった。
「ほぉ。脱いでも中々の女だ」
『金主』が感心した風で告げる。
すると、その言葉がまた取り巻きの女達の嗜虐心を煽ったらしい。
彼女達は有紗の両腕を掴み、強引にソファへと掛けさせる。
『金主』の真正面……開いた脚の合間が丸見えになるようにだ。
「さぁ、マッ君にあそこ見てもらお。足閉じちゃ駄目だよ」
女の一人が有紗へ囁きかけるのを聞き、『金主』の口元に下卑た笑みが宿る。
「じゃ、いくよ」
チン、と硬質な音がし、ステンレスのマドラーがグラスから引き抜かれた。
先端に小さな球体のついたマドラー。それが有紗の秘所へと近づいていく。
しかしその狙う先は、秘裂にしては妙に上向きすぎていた。
「っ!」
有紗はいち早くその意図を察したのか、表情を険しくする。
その直後……マドラーは、有紗の尿道へと押し当てられた。
女の指の腹が容赦なくマドラーを送り込み、狭い尿道入り口を突き破らせる。
「っっっ、ぅ“っ!!!!!」
有紗はかろうじて悲鳴を噛み殺した。
口を固く引き結び、前方に視線を向けて、背筋をまっすぐに堪えている。
しかし女の指がゆるゆると前後に揺れ始めると、引き締まった腹筋が蠢くのが見えた。

そこからは、女達がそれぞれに有紗を弄び始める。
「あはっ、おしっこ出てきたぁ」
にち、にちっと音を立てて尿道をマドラーでかき回し、粗相を指摘する女。
有紗の鼻を掴んで顔を上向けさせ、どれだけ口から零れようが、無理矢理にカクテルを飲ませ続ける女。
むき出しになった乳房やその先端を、指先で弄び続ける女……。
『金主』は延々と続くその嫌がらせを肴に、薄笑いを浮かべながらグラスを傾ける。
健史には理解できない神経だ。

一時間ばかりその状態が続いただろうか。
「ごほっ、おぐっ…………う、え゛……あ……っぁ」
無理に酒を飲まされ続け、アルコールに強い有紗もさすがに意識が朦朧としはじめていた。
飲酒による尿意が訪れては、マドラーで掻き出される繰り返し。
ソファの下には、水溜りを思わせるほどの夥しい失禁跡が広がっていた。
「まったく…………食事マナーばかりか、排泄のマナーまで悪い女だ。
 せっかくのまぁまぁいい女が台無しだな」
『金主』はナプキンで口元を拭うと、立ち上がりながら続ける。
「自分で出したものだ、自分で舐めて綺麗にしろ。店に迷惑をかけるなよ、有紗」
その言葉を聞き、有紗がよろよろと身を起こす。
泥酔しているにしては力のある眼差しをソファに向け、命ぜられるまま、赤い舌を出して自らの小水を舐め始める。
健史は今日幾度目になるか解らない衝撃を受けた。
彼にとってそれは、最底辺の人間がする行為に思えたからだ。
あの強い有紗が。
小柄な自分のコンプレックスを払拭してくれる、強さの象徴たる有紗が……。

「これはいい、お似合いだぞ有紗。お前はガキの頃からの癖で、肉料理でもスープでも犬食いするからな。
 そういう意地汚い根性だから、部下がしっかり育たないんだ。
 …………ともかく、払えなかった金と私への損害分は、おまえ自身の体で支払ってもらうぞ。
 明日から、数本のAV撮影だ。見目はいい女だってのが、せめてもの救いだったな」

『金主』は大理石の床を嘗め回す有紗を見下ろし、満足げに笑いながら出口へと消える。
健史の耳には、しばしその高笑いがこびりつくように残っていた。



『金主』の言葉通り、その翌日から有紗のAV撮影が始まった。
港にほど近い倉庫の中に簡単なセットが組まれ、複数の男優を招いて撮影が進められる。
『金主』の意向なのか、撮影は有紗に羞恥を味わわせる類のものに偏っていた。

「ほーらドロドロだぁ、気持ちいいだろ。うん?」
男優が有紗に問う。
有紗は後ろ手に縛られたまま、喉奥深くに男の2本指を咥え込まされていた。
男の問いに答えはない。答えるような余裕は有紗にはない。
「あがっ……え、えあ゛っ……あ、っらぁ、ああ゛………………!!」
階段から突き落とされて腕の骨を折ったときでも、有紗は呻き声ひとつ上げなかったという。
その有紗は今、生理的な反応からのえづき声を絞り出されていた。
鼻はフックで豚のように醜く吊り上げられ、縦に大きく開いた口からは前歯が覗いて、若干の幼さを感じさせる。
瞳だけはなおも気丈に男優を見据えているが、片目は常に苦しさから歪んでいる。
男優の喉奥嬲りは執拗の一語に尽きた。
片手は常に有紗の後頭部を押さえており、苦しさから有紗の頭が上下左右に揺れても、的確にその動きに沿って指をねじ込む。
有紗の喉奥からは、幾度も嘔吐の前兆と思えるような泡立つ音が鳴っていた。
特に、天を仰いだ際に指を深く突き込まれる際には、さすがの有紗も目をきつく瞑ってしまう。
そのまま約2秒も責められれば、堪らず顎を引いて唾液を吐き出すしかない。
「けほっ、えぉっ…………あーっ、ああはっ…………う゛っ」
激しく喘ぎながらゆっくりと頭を戻し、前方から喉を弄くられる段になってようやく相手を睨めるようになる。
しかし……男優もよく解ったもので、有紗が睨むタイミングで都度指を引き抜いた。
すると、白く泡立った唾液がしとどに指に纏わりついてくる。
それを有紗の顎に塗りつけてしまえば、どれほど気丈に睨みすえようとも、威厳も何もない。
「っあーっ、あーーっ…………っはーっ…………!!」
指を抜かれた際の有紗の息遣いは、紛れもなく女のものだ。
ショッピングに興じる女子校生のものと、何も変わらない。
普段ドスの利いた声で男勝りに振舞う彼女のものとは、到底思えないほど女らしい声だ。
健史はその声を聞いた瞬間、口惜しいような、けれども興奮するような、妙な気分になった。

「…………おうタケシ。ちょっと飲み物やら漫画やら、買ってこいや」
撮影を仕切るヤクザの一人が、健史に札束を突き出しながら命じる。
健史は撮影現場を見守っていたい心境だったが、『金主』子飼いのヤクザに逆らえるはずもない。
「わかりました……」
そう言いながら小走りに倉庫の出口へ向かう。
ちょうどその背後で、状況の移ろうとしている会話が聞こえてくる。
「にしてもこいつ、喉つえーな。こんだけやっても吐かねぇ」
「だったら、もうそろそろ咥えさせちまうか?」
「だな。撮影スケジュールとはちと違うが、たまにゃこういう流れがあってもいいだろ。
 もういい加減、興奮してビンビンだかんよォ」
男優達のそうした言葉を捉えながら、健史は走る。
せめて、少しでも早く戻るために。

……しかし、場所は港の傍。
最寄のコンビニエンスストアさえ数キロ離れた場所にしかなく、さらには指定された漫画雑誌の一つが中々売っていない。
結局健史が倉庫に戻ったのは、実に2時間以上が経過した後の事だった。
当然、状況はまったく変わっていた。
健史の目の届かない場所で、何もかもが違う状況になっていた。
「んぶっ、んぐっ…………む゛ぇっ、ごぇえ゛え゛っ…………げぇえっ、げごっぉ゛っ…………!!!」
健史ははじめ、それを人の声でなく、軽リフトか何かの駆動音かと思った。
それほどに尋常でないえづき声が、一突きごとに発せられる。
勃起しきった複数人の男に囲まれ、膝立ちの有紗がイラマチオを強いられている。
尻を突き出し、相手の膝を力なく掴む逃げの姿勢。
およそ押木戸有紗という女傑が、男の物を咥えこまされて取るポーズとは思えない。
しかし。よくよく状況を見れば、それも仕方のない事だとわかる。
膝立ちになった有紗の足元には、バケツを誤って倒した時のような、夥しい量の吐瀉物が広がっているからだ。
一体それまでに何度、あるいは何十度に渡り、嘔吐させられたのだろう。
おそらく初めの内は雄雄しい佇まいを崩さなかったであろう有紗が、女としてのなまの反応を示してしまうほどに。
「ぶはっ!! ……もっ、もう…………やめ……て、くれっ…………!!」
怒張が一旦引き抜かれた瞬間、その時を待っていたように有紗が叫ぶ。異常なほどかすれた声だ。
しかし、その哀願が聞き届けられることはない。男達の嘲笑の的にしかならない。
「おら、まだまだやるっつってんだろ。逃げてんじゃねぇぞ!!」
男の一人が怒号を浴びせながら、無理矢理に有紗に怒張を咥え込ませようとする。
「ん、んん゛んっ!!」
有紗は必死に抵抗し、膝立ちから崩れるように寝転がった。
しかし、男はその上に圧し掛かるようにしてあくまで咥え込ませる。
「ん゛ーーーーーっ!!!!」
悲鳴と共に、有紗の足がばたついた。
よく引き締まった、相当な威力の蹴りを放つ足。しかしそれは今、レイプされる少女と同じ動きを辿るだけだった。
男達は、なおも暴れる有紗の腕を押さえつけ、完全に抵抗を封じてしまう。
「や゛あ゛ぁあ゛ああ゛あ゛っ!!!」
断末魔のような叫びを最後に、有紗の姿は男達の体の影に隠れた。
健史は、それでもかすかに覗く垂れ下がった有紗の眉を、魅入られたように眺めていた。
「おっ、帰ってたのか。ご苦労さん。
 …………へへ、すげぇだろ。あんまり暴れるんで、壁に頭押し付けて咥えさせてよぉ、
 3度くらい連続で吐いて、鼻からもデロデロ出てきた辺りから、急に弱弱しくなっちまった。
 ゲロで溺れる恐怖ってのは、あれほどのじゃじゃ馬にも有効らしいぜ」
ヤクザ男はそう笑いながら、ペットボトルを袋から抜き取る。
中心を失った袋の中身は、ガラリと音を立てて崩れた。



一週間が経った今も、有紗へのビデオ撮影は続いている。
健史は男達の買出しを請け負いながら、ただその撮影の様子を見守っていた。
すでに感傷はない。鳶が小動物を攫う瞬間を見守るが如く、自然の摂理を眺めているだけだ。

昨日の撮影は、有紗が男優の手で延々と潮を噴かされるシーンだった。
健史は場所取りが悪かったために、肝心のところが見えなかった。
男優の身体越しに覗くのは、有紗の膝から下と足の裏、そして足の間に飛び散る透明な飛沫のみ。
しかし、それはそれで刺激的だった。
肝心な部分が見えないからこそ、有紗の甲高い声や足の蠢きから状況を想像する楽しみがある。
飛沫が次第に蓄積し、床へ水溜りを作っていく様も生々しかった。

今日は一転し、スカトロの撮影らしい。
またしても健史の位置は悪く、有紗を背後から見守る格好だ。
けれども、それもいい。
有紗は低めの作業代の上に腰掛け、両手を後ろについたまま、脚を大きく広げていた。
2人の男がそのそれぞれの腿に手を宛がいつつ、もう片方の手で何かしている。
「ほーら、浣腸7つ目だ。そろそろ限界だろう、うん?」
逐一そうした言葉責めがあるため、行動を察するのは容易い。
有紗の表情はまったく解らないが、後ろ髪の位置から、俯いて後門を凝視していると思われる。
「まったく、辛抱強い女だ。しゃあねぇ、そろそろこいつで掻き出してやるとするか」
男の片手が一旦隠れ、棒状の何かを携えて現れる。
有紗の後ろ髪が動いた。顔を上げ、男の持ち出したものを確認したらしい。
ローションのボトルがへこむ音がする。
そして数秒後、ぐちゅりと湿った音が続いた。じゅぐ、じゅぐ、とその音は断続的に続いていく。
「おーらおら、出てきたぞぉ。へへっ、こらあすげぇ!!」
男達は嬉々としてその状況を覗き込んでいた。
有紗に恥辱を味わわせる事が愉しくて仕方ないようだ。
「…………や………………」
ほんのかすかに、有紗の声が聴こえる。男達の笑いが大きくなった。
「いや、じゃねぇんだよ。この様子はなぁ、全部ビデオに取ってんだ。ン千人って人間が見るんだよ、これを!!」
男達はがなり立てながら、有紗の腿を幾度も叩いた。
その中で有紗は、再び俯いてしまう。

状況こそみえないが、かすかに有紗の匂いが漂い始めていた。
彼女の中にあった、穢れの匂い…………。
今の健史には、それすらも魅惑的に感じられるのだった。


                                  終
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