※アナル調教物。ブツ描写はないですが、排泄シーンあり。


「あなたが、生田ね?」
「は、はいっ!」
冷淡な声で放たれた問いに、新米刑事・生田宗佑は改めて背筋を伸ばす。
緊張の原因は、眼前に立つ女性にあった。
綾元瑞希。若干27歳にして『マル暴』のベテラン女刑事だ。
猫科のように鋭く切れ上がった瞳、長い睫毛、ツンと小さく尖った鼻、ごく薄い唇に、シャープな顎。
そして片目を覆うように分けられた漆黒の前髪。
顔のパーツすべてが冷涼な印象を与えてくる。
さらには、『常に眉の角度が水平以上の女』と噂されるだけあって隙がなかった。
実際、宗佑はただ相対するだけで、先刻から嫌な汗が止まらない。
切れ上がった瞳で直視されると、厳重な取調べを受けている気分になってしまう。

そして、緊張の理由はもう一つ。
瑞希は抜き身の女であると同時に、恐ろしいまでの美人でもある。
顔の整いようは論を俟たず、スレンダーなボディラインも女体の在り方として一つの究極系に思える。
事実、そのクールな美貌に下心を抱く男性警察官は数多い。
刑事課のマドンナ的存在と言っても過言ではなかった。
新米の宗佑にしてみれば、雲の上の存在だ。
だからこそ、現実味がない。これから彼女と連れ立ち、ハプニングバーへ向かうという現実が。
勿論、プライベートでの娯楽ではなく、歴とした潜入捜査だ。
ターゲットは、麻薬密売容疑の掛かっている暴力団幹部・瀬尾。
中々行方を掴めずにいるこの男が、時折り都内某所のハプニングバーに現れるとの垂れ込みがあった。
そうした場への潜入捜査となれば、カップルを装った男女2人組が好ましい。
そこで抜擢されたのが、新米刑事である宗佑だ。
宗佑は、見た目からしていかにも温室育ちという風であり、取調べ中の容疑者に舐められることも多い。
しかし、その特徴も状況次第では武器になる。特に一般人を装うには打ってつけだ。
今回、ベテランの綾元瑞希とペアを組むことになったのも、まさにその素人じみた風貌を見込まれての事だった。

「……そう硬くならなくもいいわ。事情聴取のついでに、風俗嬢から一通り責め方の手解きを受けたの。
 程々に手加減してあげるから、あなたは安心して身を任せるだけでいいのよ」
瑞希は一呼吸置き、背筋を伸ばしたままの宗佑に告げる。
淡々とした語り口調ながら、眼光は心なしか和らいでおり、宗佑の緊張をほぐそうとしているようだ。
しかしその言葉の内容が、宗佑をまた別の意味で固くさせる。
これから宗佑達が向かうハプニングバーは、コアなSM愛好家の溜まり場となっているらしい。
宗佑はそこに気弱なマゾヒスト男性として潜入し、同じくサディストを装った瑞希から責めを受ける手筈となっている。
笞打ちか、あるいは蝋か。
あくまで場に溶け込むための芝居とはいえ、瑞希ほどのクールな美女から責めを受けるとなれば、緊張せずにはおれない。
「ただし。電話でも伝えた通り、情報収集だけは怠らないようにするのよ。どんな些細な会話が標的に結びつくか判らないもの。
 怪しまれない程度に、機会があり次第探りを入れていきなさい。良いわね」
瑞希は最後にそう念を押し、モデルのような優雅さで歩み始めた。

 (…………近くで見ると、噂以上に綺麗な人だな)

宗佑は、改めて前を行く瑞希を観察する。
瑞希の私服は黒で統一されていた。
黒シャツに、膝上までの黒いボトム、黒ストッキングに、これもまた黒いハイヒールパンプス。
挙句には、ストレートに手入れされた髪まで黒い。
青いカーディガンを指し色にしている点を除けば、見事に黒一色だ。
それはキリリとした瑞希の佇まいと相まって高貴さを演出すると共に、肉体のスレンダーさを殊更に強調していた。
恐らく、瑞希自身に浮ついた意図はないのだろう。
しかしそのファッショナブルな出で立ちは、男の欲を直撃する。
後ろを歩く宗佑は、努めて理性を働かせつつも、沸き立つ若さを抑えきれずにいた。


呼び込みを断りつつ、夜の飲み屋街を歩くことしばし。星の数ほどあるネオンの一つが目的地だ。
地下への長い階段を降り、受付で捜査用の偽名を用いて会員登録を済ませる。
そして重厚な扉を開けてホールに入った瞬間、宗佑は息を呑んだ。
まずは、心臓に来るような重い爆音。
続いて、バブル時代のディスコに逆戻りしたかのような、煌びやかなミラーボール、純金のシャンデリアが視界に飛び込んでくる。
遠くには青や赤のライトで照らされたお立ち台も何箇所かあるようだ。
そのような場所にあっては、ボンデージ姿の女性も往時のボディコンのように思えてくる。
ただ、随所に縄を掛けるためのフックや梁、三角木馬や磔台、水車などが設置してある辺りは、さすがSMバーと言ったところか。
「何とも……バブリーね」
瑞希も宗佑と同じ感想を抱いたらしく、唖然として呟いた。
その直後、タキシードを着た男が床を鳴らして近づいてくる。糸目の、見ていて不安になるほどにこやかな男だ。
「いらっしゃいませ。よろしければ、コスチュームや道具等をご用意致します。役割のご希望はございますか?」
「ええ。私がS役、彼がM役よ」
「承知しました。では念の為、会員証を拝見させて頂きます」
「これの事ね」
瑞希は、先刻登録したばかりの真新しいIDカードを差し出した。すると、店員の表情が変わる。
「…………おや、ご新規の方ですか。ではお客様、誠に恐縮ですが、ご希望には添いかねます。
 当店では、登録後間もない女性会員様は、必ずM役でお願いおりますので」
その言葉に、一瞬瑞希の表情が強張った。しかしそこは場数を踏んでいるベテランだけあり、すぐに切り替える。
「まぁ、そうなの?」
「ええ。以前、素人同然のお客様が初回でS役をお選びになり、問題を起こされた事がございまして。
 以来、当店が正式に認めるまでは、M役となって頂く決まりになっております」
そう説明を受けては、意義を挟む余地はない。
確かに、未熟な人間が鞭を振るったり縛りを行えば、人命に関わる事態になりかねない。
「解ったわ。じゃあ、彼がS役、私がM役のコスチュームでお願いね」
瑞希は渋々ながらも了承するしかなかった。

「ハハッ。コスチューム、だと?」
と、ここでまた別の男が笑いながら瑞希に歩み寄る。
裕福そうな身なりをした、肥満体の男。相当に酒が入っているらしく、顔が赤い。
「………………」
宗佑は、傍にいる瑞希が棒立ちのまま臨戦態勢に入ったのを感じ取った。
「おいおい別嬪のお姉さんよ、新参のM嬢にコスチュームなんぞあるかね。
 ハダカだよ、ハダカ。新米M嬢は生まれたままの丸裸を皆に見てもらって、ありがたく罵っていただく。
 それが、ここの昔からの流儀なんだ。なぁ、そうだろう?」
肥満体の男が周囲に賛同を求める。酒のせいか、異様なほど声が大きい。
そしてその力強い声に引き寄せられるように、場が沸く。そうだそうだ、脱げ脱げ、とコールが起こる。
 
大注目だ。特に男は、皆が瑞希の身体に食い入るような視線を浴びせていた。
潜入捜査としては好ましからざる状況といえる。
理想はカップルの一つとして場に溶け込み、誰からも注目されずに監視を続けることだ。
「ま、待ってくだ…………!」
堪らず言いかけた宗佑の腕を、瑞希が掴む。
こうして注目されてしまった以上、場の要求を拒否して余計に目立つのはまずい。
とりあえずは流れに身を任せ、飽きられるのを待つのが次善の策だ。
瑞希の鋭い瞳は、宗佑にそう訴えかけていた。
「解ったわ。脱げばいいんでしょう」
瑞希は臆した様子を見せず、凛として言い放つ。
歓声がいよいよ激しさを増した。
「おお、いいぞっ!!」
「ヘヘヘッ、こりゃあ見物だぜ。何せ、いかにも気ィ強そうな美人だからな」
「パリッとした見目だが、さすがこんなトコに来るだけはある。このアマ、変態の気があるぜ!」
下卑た声を上げながら、人の輪が狭まっていく。
宗佑には、人の悪意が八方からなだれ込んでくるように感じられた。

瑞希は目を閉じ、眉間にくっと力を込めてから見開いた。
細い指で青のカーディガンを掴み、風に舞わせるように脱ぎ捨てる。
黒いシャツも力強くたくし上げ、首から抜いて床に落とす。
続いてブラジャーのホックが後ろで外されると、零れんばかりの乳白色の乳房がライトに浮かび上がった。
スレンダーなボディラインからは想像も付かないサイズだ。
「おおっ、意外にでけぇチチしてるじゃねぇか!」
「ああ、しかも垂れてねぇぞ。こりゃあ上物だ!」
男達が色めき立つ中で、宗佑もまた動悸が早まるのを感じていた。
署内でも噂の種、憧れの的だった綾元瑞希の裸体が露わになっていく……その事実を目の当たりにして。
「………………。」
瑞希は沸き起こる歓声も、纏いつく視線をも無視し、淡々とハイヒールパンプスを脱ぐ。
続いてその指はベルトへ。
恐ろしいほどに細く絞られていたベルトが解けると、黒いボトムはふわりと柔らかさを有した。
美脚に絡ませながらそれをも脱ぎ捨て、残るはショーツと黒ストッキングだ。
ゴクリ、と何人もが生唾を飲み込んだ。それほどに、黒で縁取られた瑞希の脚線は美しい。
瑞希が膝を曲げ、ストッキングを下ろす瞬間を、場の皆が注目していた。
薄っすらと透ける黒が刻一刻と下がっていき、その分だけ艶かしい肌の色が露わになっていく。まさに、劇的だ。
丸まったタイツを床に落とし、瑞希はとうとうショーツのみの姿となる。
ここで瑞希は、初めて動きを止めた。ショーツの両側に指を挟んだまま。
そこには静かながら、かなりの躊躇が見て取れた。
「どうした、早くしろ」
急かすその声で、渋々と最後の一枚をずり下げる。
その瞬間、黒い茂みが覗いた。やや濃く、端に縮れがある。
「あーら、意外に剛毛ねぇ! こういう所に来るんだったら、あらかじめ処理しとかなきゃダメよぉ」
「どうせ自分だけはボンデージ着て、恥ずかしい所は晒さないつもりだったんでしょ。甘いのよ、新入りの癖に」
すぐに観衆の女から、鬼の首を取ったような野次が飛んだ。
瑞希は目を伏せ気味にして耐えている。
 (瑞希さん……!)
宗佑は、その姿に同情を禁じえない。
 
ショーツが床に落ち、ついに瑞希の裸体が衆目に晒される。
荒事を担当する刑事だけあり、その身体は機能的に整っていた。
ミラーボールのライトを浴び、裸体は赤や青、あるいは妖しい紫に染まる。
それは同時に影を生み、見事な肉体をいよいよはっきりと縁取る。
この上なく官能的な肉体美だ。
宗佑は、ストリップショーが薄暗い中で行われる理由を知った気がした。
「いいねぇ。どこにも緩みのない、見事な身体だ」
「確かにメス豚というより、女王といった風だな」
好色そうな目をした男達が、四方から瑞希の肉体を品評する。
瑞希は腰に片手を当て、軽く脚を開いて周囲を睨みつけていた。
自然にその格好ができる辺り、本当にスタイリッシュな女性だ、と宗佑は改めて惚れ直す。
しかし陵辱嗜好の人間は、また違う感想を抱くらしい。
「なにそのポーズ。新米M嬢のクセにナマイキじゃない?」
最初に声を上げたのは、ボンデージ服に身を包んだ女性だった。それに続き、別の女性達も騒ぎ出す。
集団で盛り上がる女性ほど手を焼くものはない。
「そうよ、アンタまだ女王様気分なんじゃないの?
 今のアンタは、ここで一番地位の低い奴隷なの。だったら、それに相応しいカッコウしなさいよ!」
「ほらぁ、後ろ向いてケツ突き出して、自分でアナル拡げてみな。刑務所入る前に検査される時みたいにさ!」
「そうだ、確かにそうだ!」
さらに男も加わるとなれば、あまりに多勢に無勢。瑞希は反論のしようもなかった。

「…………解ったから、騒がないでちょうだい」
瑞希は眉を普段以上に吊り上げ、拳を握り締める。
そして後ろを向くと、命ぜられた通りに臀部を突き出し、尻肉の両端に指を添えた。
菊輪は尻肉の間に挟まっていてはっきりと見えないものの、瑞希にとっては充分に屈辱的だろう。
しかし場の人間たちは、さらにその『下』を要求する。
「もっとケツ開きなよ。よく見えないじゃん」
「そうそう。カマトトぶってんじゃないよ」
一人の女が野次を飛ばし、周りの人間が乗る。
瑞希は、ギリッ、と奥歯を噛みしめる音をさせ、尻肉を掴む手に一層の力を篭めた。
すると剥き卵のような尻肉が左右に割れ、とうとう菊輪が衆目に晒される。
 (うわ……!)
宗佑は思わず息を呑んだ。
おそらくは警察の男として初めて目にする、あの綾元瑞希の排泄孔だ。
肛門に詳しくない宗佑が見ても、いかにも初々しいものだと判った。
ごく薄い桜色をした円の上に、放射状の短い皺が伸びている。
両手の指で左右に拡げられてなお、皺の中心部はわずかばかりも中を覗かせない。
「おぉ、これは……!」
「まさに菊の花だな。調教のしがいがあるというものだ」
SMに慣れた男達も同様の評価を下した。
 
ひとしきり肛門を評した後、さらに一堂の視線は、瑞希の後姿全体を捉える。
背中まで伸ばされた、神経質なほどストレートに手入れされた黒髪は、白い背と対照的で美しい。
まさに日本人的な美だ。
さらに、くっと締まった腰と、緩みのない健康的な臀部、そこから伸びる細い脚線というラインも見事だ。
ジーンズを穿けばさぞや映えるだろう。
その極上の下半身を前に、男達から下卑た笑いが起きる。
「ほう……ケツと脚も、いいモン持ってんじゃねぇか」
「ああ。特に、尻の肉がきゅっと締まっているのがいい。最近の奴隷は、尻のだらしない女ばかりだったからな」
「かなりスポーツをやってるらしいな。って事ァ、欲情の度合いも凄そうだ。体育会系ってのは、案外タメ込んでやがるからな」
「溜め込んでるのは、欲だけじゃないかもよ。まずは、お腹の中の物を出させましょうよ」
「賛成ー! 気の強い女を服従させるには、まず浣腸よねぇ」
場の悪意が繋がりあい、瑞希へ蜘蛛の糸のように絡みつく様……宗佑にはそれが見えるようだった。
しかし、だからといって止める事はできない。それが許される状況なら、瑞希自身がとうにやっている筈だ。
あくまで彼女は潜入捜査官。場を乱さず、耐え忍ぶ以外にはない。
「ではそろそろ、新米M嬢の調教といくかね?」
ソファでワイングラスを傾けていた肥満男が告げる。
何人かが様子を伺うように振り返ったところからして、やはりこの男の影響力は強いのだろう。
「となれば、まずは緊縛だが……君は不慣れだろうから、こちらで準備を進めよう。
 じっくり見て覚えたまえ」
肥満男は、宗佑にソファを勧めながら立ち上がった。
そして周囲の男に何か指示を与えながら、睨みつける瑞希を取り囲む。
宗佑はソファに座りながら、ただ状況を見守るしかない。

瑞希は、ガラステーブルに腰掛けたまま、男達の手で縛られ始めた。
肥満男の縄を打つ動きに淀みはなく、実に手馴れたものだ。
最初に、前へ突き出した両の手首を縛り合わせ、それを頭の後ろに持ってくる。
そこから縄を垂直に下ろし、乳房の下へ回すようにして横向けに一周させ、肩甲骨の下辺りで交差させる。
次に乳房の上をまた一周。
肩の上を経由しつつ縄を前に持ってきたと思うと、胸の谷間に捻れを作り、背中側へ縄を戻して強固に結びつける。
そうして上体をしかと結ぶと、それと連結させつつ、重ねた足首、そして腿を手際よく縛っていく。
あれよあれよという間に完成したのは、両腋をさらしたままの胡坐縛り。
縄の中にいる者にとってはこの上なく恥ずかしく、しかし見る者にとってはひどく芸術的だ。
「いつ見ても志藤さんの縛りには感心させられますな。さすがは縄師だ」
「ホント、惚れ惚れしちゃう。にしても、元々でかいチチが搾り出されて、いよいよいやらしいモンねぇ!」
「でも見てよあの顔。『それがどうした』って感じで澄ましちゃって、ナマイキ。ねぇ、はやく浣腸ぶち込みましょうよ」
見守る男からは感嘆の、女からは嫉妬の声が上がる。
 (志藤……それがあの男の名前か!)
宗佑は鼓動の早まる中、しかとその情報を脳髄に刻み込んだ。


 
浣腸の準備は着々と整えられていた。
木桶一杯に貼られた水へ、『グリセリン』とラベルの貼られた瓶の中身が注がれる。
次にその中へガラス製の浣腸器が浸され、空気を追い出した後、瑞希自身に見せ付けながら薬液を吸い上げていく。
瑞希はいつも通りの眉と目つきを保っているが、内心穏やかであるはずもない。
恐ろしいのは、責め手が女であることだ。
同じ女の身でありながら、浣腸という恥辱を与える事に躊躇がないのか。宗佑は心中でそう訴える。
「色々ある浣腸の中でも、屈服させるにはこれが一番効くの。何しろ、見た目のインパクトが違うもんね」
女は宗佑の心の訴えなど知る由もなく、さも愉しげに浣腸器を持ち上げた。
ペットボトル程度の大きさにも関わらず、ガラス容器というものはひどく重そうに見える。
「尻の力を抜け」
瑞希の身体を左右から支える人間の1人が、指にワセリンを付けながら囁いた。
そしてそのワセリンを瑞希の尻穴へと塗りこめていく。
瑞希は小さな反応を示したが、胡坐縛りをされた上で左右から身体を抑えられては身じろぎも叶わない。
「さぁ、入れるわよ。初めての浣腸を堪能なさい、自称S嬢さん」
女の言葉と共に、浣腸器の嘴管が菊輪を割り開く。
そして女が浣腸器の底を押すと、ちゅぅぅ、という音と共に薬液が注入されていく。
「う……っ!」
瑞希は眉を吊り上げたまま、唇の端を噛み、側方を睨みつけるようにして耐えていた。
「おお、いい顔だ!」
「浣腸されてる最中にあの表情ができるとはな。気丈な女だ」
場の興奮が増す。瑞希という獲物の気丈さが嬉しいらしい。
「あらあら、強気なこと。じゃあもう1本ぐらいイケるわよね」
責め役の女はそう告げ、再び木桶に浣腸器を浸す。そして勢いよく薬液を吸い上げ、再び肛門に突き刺した。
「ほぅら、2本目。ぬるま湯がどんどん入ってくるでしょう。出すばっかりだったお尻にね。
 …………これで1リットル。大きなペットボトル1本分よ」
女の舐めるような喋り方は、離れて聞いているだけの宗佑でさえゾクリとするものがある。
間近で、浣腸を受けながらの瑞希であれば尚更だろう。
しかし、瑞希は気丈な瞳を濁らせない。
「それが一体何なの? 案外大した事ないわね」
「あら。ふふふ、生意気。そんなに言うなら、たっぷり我慢してね。
 そうねぇ……結構濃い目に作ったし、初めてなら普通は10分なんだけど、特別に20分我慢させてあげるわ」
女はそう囁きつつ、男からダイヤのあしらわれたアナル栓を受け取った。
太さのあるものだ。それに一旦ワセリンを塗り、躊躇なく瑞希の肛門へと埋め込む。
「く、うっ!!」
これには流石の瑞希も苦しい声を漏らした。未使用の肛門を無理矢理に拡げられたのだから、無理もない。

「さあ、準備万端だ。ここまでくれば、後は待つだけだな。
 オイ、適当にカクテルを持ってきてくれ!」
ソファに腰掛けた志藤が、近くのウェイターに声を掛ける。そしてグラスが運ばれてくると、その一つを宗佑に手渡した。
「来た来た。さあ、飲みたまえ。浣腸に耐える女を眺めながらの酒は格別だ。特に、こんな別嬪ならな」
志藤は乾杯の真似をして言う。
「ええ……では、頂きます」
宗佑は愛想笑いを返しつつ、ただ瑞希を見守るしかない。
グラスを持つ手に、知らず力を篭めながら。

 
今の宗佑には、酒の味が感じられなかった。
あの綾元瑞希が丸裸のまま胡坐縛りを施され、晒し者になっているのだから。
捜査の一環とはいえ、それがどれほど屈辱的な事かは宗佑にも痛いほど解った。
いや……瑞希のプライドの高さは宗佑などより遥かに上だろうから、本当の所は『想像を絶する』ものなのだろう。
それを思うと、宗佑は胸が締め付けられるようだった。

「…………はぁ……はっ………………」
いつしか音楽も止み、静まり返った場に瑞希の息遣いだけが響く。
当初は口を真一文字に結んでいた彼女だが、5分が経つ頃には息を荒げ始めていた。
キリリと吊り上がった2つの眉も、その間に皺を寄せる。
便意だ。普通ならば出すだけの穴に薬液を注ぎ込まれ、便意を刺激されて苦しんでいるのだ。
「ただ待ってるのも退屈でしょう。暇を忘れさせてあげるわ」
横から面白そうに様子を伺っていた女が、つと瑞希の傍に歩み寄った。
そして瑞希の豊かな乳房を撫で、その先端を摘みあげる。
「うっ!!」
不意打ちに等しい刺激に、瑞希は声を上げた。
するとまた別の女も、面白そうに逆側の突起を弄び始める。
「う、っく…………!!」
クリクリと両側から乳首をこね回され、瑞希はいよいよ表情を険しくした。
恥辱か、苦痛か……。
 (瑞希さん……!)
宗佑が今一度グラスを握り締めた瞬間、瑞希が一度咳払いをする。
「ンッ!!」
「あら、どうしたの? 感じすぎて息が詰まっちゃった? いやらしいブタね」
胸の尖りを弄ぶ女が嘲るが、瑞希の視線は何かを訴えるように宗佑を見据えていた。
その瞬間、宗佑は思い出す。
前日の電話の中で、咳払いは互いへの合図にすると決めてあった。
単に注意喚起したい場合は咳払い1回、ターゲットを発見した場合は咳払い2回。
すなわち、今の瑞希は宗佑に注意している。
機会があれば情報収集に努めろ、と。
 (そうだ……)
宗佑も理解した。今はまさに好機。横でグラスを傾ける志藤は、間違いなくバーにおいて影響力のある人間だろう。
その人間からならば、有益な情報が引き出せる可能性が高い。
「……そういえば、前から気になっていた事があるんですが」
宗佑は意を決し、志藤に語りかけた。
「ほう、何かな?」
志藤は、興味深そうに目を見開く。
そこから宗佑は、必死にたわいもない世間話を続けた。
捜査だと疑われないよう慎重に言葉と態度を選び、核心に迫る糸口を探りに探る。
しかし。その努力が実を結ぶよりも、瑞希の限界の方が早かった。

宗佑が話している最中にも、視界の端に瑞希の苦しみようが見えていた。
「はぁーっ……はぁっ、はあっ…………はあっ、うっ…………!!」
はっきりと口を開ける喘ぎ。そこに苦しげな呻きが混じる。
冷ややかな美貌は刻一刻と汗に塗れ、額から顎から、大粒の雫が流れては滴り落ちていく。
その身体はやがて、細かに震えてガラステーブルを揺らし始めた。
「どうしたの震えちゃって? ああそっか、感じてるんだ。乳首も勃ってきたしね」
瑞希から見て左の女が、面白そうに囁きつつ胸の尖りを摘み上げる。
「っぅ!!!」
瑞希は呻きと共に片目を細めた。明らかに刺激を受けた様子だ。
よほど快感が強いのか、あるいは反応を隠せないほど、便意が強まっているのか。
「イイ反応。ねぇ、堪らないでしょう。恥ずかしい格好で縛られたまんま、おまんこをこの大人数に晒しちゃって。
 おまけにお尻の中じゃ、もううんちしたくて堪らなくって、グルグル鳴ってる。
 その上でこうやってチクビを捏ね回されたらさ、そりゃあ声だって出ちゃうよねぇ。
 むしろあんた、S女を名乗るだけあってよくガマンしてるよ、実際。
 でも…………いくら耐えたって、苦痛も快感もなかった事にはならないよ。ううん、むしろ……増幅しちゃうの」
女は蕩けるような話し方で瑞希に語りかける。
さらに、巧みに乳房の先端を刺激しつつ、もう片方の手を瑞希のアナル栓に添えた。
埋め込まれたダイヤを愛でるように数回撫でた後、中指で軽く弾く。その瞬間。
「はぐうっ!!」
瑞希から、久方ぶりにはっきりとした声が発せられた。
その声は、周囲の談笑をピタリと止め、宗佑の言葉をも途切れさせる。
1秒の沈黙。それを破ったのは、栓を弾いた女の嘲笑だった。
「あはっ、あっはっはは!!! なによ、いい声がでるじゃないの。さてはあんた、もう本当に限界なんでしょう」
女は言いながら手をスライドさせ、瑞希の尻肉に添える。
女の笑みが深まった。
「ふふん、やっぱり。ビクッ、ビクッ、ビクッ、ビクッて、すごい速さで強張ってる。
 いま栓を引き抜いたら、すぐに噴き出すんでしょうねぇ、S女さま?」
その言葉通り、瑞希の太腿は鼓動よりも早いペースで強張っているのが視認できる。
その強張りは肛門栓を中心として収縮し、菊輪の皺を伸ばしてはひしゃげさせる。
改めて見る瑞希の顔はすっかり汗に塗れ、歪み、まさに限界の様相を呈していた。
ただでさえ初心者にはつらい浣腸であった事に加え、肛門栓への刺激が止めを刺したのだろう。
「も、もう無理よ…………!!」
瑞希は心から口惜しげな声色でそう呟いた。
すっかり責め役として定着した左右の女が、目を合わせて嗤う。
「あら、弱音吐いちゃって。でもまぁ、しょうがないか。初心者なら10分もたない濃さの薬液で、もう15分ちょっとだしね」
「そうね。ねぇ、どうします先生? ここでぶちまけさせるか、向こうでさせます?」
女は嘲笑いつつ、志藤に呼びかけた。志藤は肉のついた顎を撫でる。
「そうだな……皆が皆、スカトロがいける口というわけでもないだろう。とりあえず、向こうでさせたまえ」
重厚なその声が決定意思となり、数人の男の手で瑞希の身体が持ち上げられる。
そして彼女は運ばれた。宗佑の縋るような視線が届かない、舞台裏へ。

 
「……なるほど。では大学のサークルで見かけた時点で、一目惚れしていたという訳か。
 なんとも初々しいものだな」
志藤は肥満腹を揺らして笑う。
「ええ、一目惚れでした」
宗佑は、瑞希との馴れ初めについての作り話を続けながらも、意識の半分は耳に集まっていた。
舞台袖の隠れた部分から、おぞましい音が漏れ聞こえている。
ぶっ、ぶびいっ、という音に続き、女の嘲笑が沸き起こる。
「うわぁ、出た。でも、この量で全部ってワケじゃないでしょう。たっぷり入れて貰ったんだものね。
 ホラどうしたの? 私達にしか見えてないんだもの、思いっきりなさいよ」
「そんなに力まないの。うんちって、本当はとても気持ちがいいのよ。余計なことは考えなくていいの。
 じゃあこうして、手で目を覆ってあげるわ…………安心して、集中できるでしょう?」
「あははっ、出てきた出てきた。ねぇ解る? いま、腰が小さく2回跳ねたの、それ、ゾクゾクしたからよね?
 あなた、立派なMの資質があるわ」
様々な女の声が、哀れな排泄姿を晒す生贄に浴びせられる。
「それで…………あー……えっ、と…………」
それを耳にするたび、宗佑はつい志藤との会話から意識を外してしまう。
しかし志藤自身、そうした宗佑の上の空ぶりを愉しんでいる節があった。
 (…………何が可笑しいんだ)
宗佑は、その底意地の悪さに内心で憤る。
そして同時に、この倒錯的な状況下、徐々に勃起しつつある自分をも嫌悪するのだった。

「ふむ、良い表情になったな?」
瑞希が再びガラステーブルに戻されると、志藤はそう告げた。
舞台裏で相当な恥辱を味わったのだろう。瑞希の顔は、キリリとした眉をそのままに、赤く染まっていた。
「まさかとは思うが、排泄で感じたのか」
「……ふざけないで、そんな訳ないでしょう」
瑞希はあくまで頑なな態度を貫く。それがかえって、場を興奮に導くのだが。
「なるほど、ではじっくりと開発する必要があるようだな」
志藤はそう言いながら、宗佑の肩を叩いた。宗佑が振り返ると、志藤の顔が歪に歪む。
「さあ彼氏くん、出番だ。頑なな彼女のアナルを、君がほぐしてあげたまえ」
「えっ……!?」
その言葉に、宗佑は息を呑む。確かにここはSMバーだ、アナルプレイも特別な事ではないのだろう。
しかし、設定上でこそ恋人とはいえ、綾元瑞希の肛門に触れるなどあまりに畏れ多い。
刑事課のマドンナなのだ。宗佑の先輩も、上司も、その心中では瑞希を意識しているようだった。
その相手に。
ごくり、と喉が鳴ったのは、宗佑自身も無意識だった。
「どうした、そう緊張することもあるまい。君は彼女から、そうした事をされるためにここへ来たんだろう?
 その立場が少し変わるだけだ」
「なんなら、俺らが代わってやってもいいぜ?」
「そうだ。俺は慣れてて上手ぇからよ、カノジョが別の男の指でヒイヒイ言ってんのが見てぇってんなら、任せなよ」
志藤の言葉に続き、別の男達も宗佑に言葉を投げかける。
その異様な熱気に、宗佑は今一度生唾を呑み込んだ。頭の中がグルグルと混乱する。
「…………やりなさい」
宗佑の混乱を解いたのは、瑞希当人の声だった。
驚いて宗佑が顔を見やると、瑞希は厳しい表情はそのままに、何かを訴える目をしている。
場に逆らうな。おそらくは、そう言いたいのだろう。
そんな目をされては、宗佑もさすがに退く事はできない。
「わかりました」
宗佑の一言で、場はわっと沸いた。心臓を震えさせるのに充分な盛り上がりだった。
 
ゴクリ、と宗佑は、何度目になるか解らない生唾を呑み込む。
宗佑は瑞希を見た。胡坐縛りにされた美しい脚。その中心に息づく、排泄でほんの少しだけ口を開いた肛門。
それは何とも愛らしく、慎ましい。
「失礼します」
宗佑は一声掛け、瑞希の白い太腿に触れた。
驚くほど肌触りがいい。肌の曲がり角は過ぎているはずなのに、充分に瑞々しい。
刑事課に配属されて以来宗佑が女日照りである事を抜きにしても、圧倒的に『女』を感じさせるものだ。
手の平で少し押し込めば、しっとりとした肌は内に沈み、肉の感触をもたらしてくる。
柔らかくも、密だ。ナイフでさくりと切れそうな柔さと、強靭なバネを思わせる弾力が共存している。
瑞希は武闘派としても名を馳せる女刑事だと聞くが、なるほどこの脚か、と納得させられてしまう。
宗佑の鼓動が早まった。
一度触れてしまえば、内から男の欲が滲み出てくる。
 (すみません……!)
心中で瑞希に謝罪しつつ、宗佑は行動を開始した。
太腿から手を滑らせて、瑞希の腰を掴み、手前に引き寄せる。
「!!」
瑞希の小さな反応があった。それもその筈。
胡坐縛りで腰を引き寄せられるという事はつまり、性器と肛門をまっすぐ正面の男に晒すという事だ。
「お、ちゃんと舐めやすいポジションにしやがった。結構ヤる気だぜ、あの坊や」
「うんうん。見た目ボンボンっぽいけど、只のいい子ちゃんがココへは来ないだろうしね。
 内にはどんな獣を飼ってるのか、愉しみねぇ!」
ギャラリーの煽りも、高揚した今の宗佑にはさほど苦痛ではない。
 (いいさ。場に溶け込めてるって証拠だ)
そう自分自身を納得させながら、宗佑は瑞希の肛門へと顔を近づける。
ふうっと肉の匂いがした。出所は瑞希の秘裂だ。
どれほどの美女であろうと、生物は生物。内臓の入り口が匂わない道理はない。
その匂いも決してきついものではなく、いやらしく鼻腔をくすぐって欲情を煽ってくる。
あの綾元瑞希の“おんなとしての”匂い。そう意識したとき、宗佑は逸物が七分ほどまで勃ち上がるのを感じた。
宗佑の指は知らず尻肉を掴み、左右から肛門を押し開く。
そしてその中心、ごく薄い桜色をした円の上に、放射状の短い皺が伸びる部分へと口をつける。
「ん!」
小さな声がする。その声は、宗佑が舌で皺をひと舐めすると、もう一度同じ音色で繰り返された。
排泄の穴に味はない。ただ舌先に、皺のざらりとした感触が残るばかりだ。
にもかかわらず、宗佑は一心に皺を舐り続ける。建前は、アナルを解すため。本音は、瑞希の反応が気になるからだ。
皺の一本一本までを舌先でなぞるようにしつつ、10回ほど時計回りに舐め回す。
そうしてわずかにほぐれた穴の中へ、舌を入り込ませる。
びくり、と小さく瑞希の脚が強張った。

 
「へー、意外と丁寧じゃん。でもカノジョ、澄ました顔しちゃってるよ。あんた男のクセに甘く見られてんのよ」
「ま、普段S気取ってリードしてる相手に無様は晒せねぇよな。でも、それを突き崩すのがSMの醍醐味だからよ」
「そうそう。ほらカレシ、変化つけなよ。もっと深く舌入れたり、おっきく穴全体を舐めてみたり、息噴きかけてみたりさ」
「菊輪を甘噛みすんのもいいみたいよ。上手くやれば、アナル舐めだけで男を射精させられんだから。頑張れ」
ギャラリーは様々なアドバイスを宗佑に送る。宗佑はそれを黙々と実践した。
顔を左右に傾けながらグリグリと舌を送り込み、腸壁のやや深い部分を舌で舐め回す。
少し舌を下げつつ、菊輪を甘噛みして咀嚼するように刺激する。
一旦口を離し、息を吹きかけて微かに責めつつ、アナル全体を下から上へ、上から下へ、ベロリと舐める。
それら全てが、かすかながら瑞希に反応を示させる。宗佑には手の平越しにそれが良く伝わってきた。
「お、上手い上手ーい。けっこ物覚えいいじゃん、この子犬系カレシ」
「多分、普段から熱心に奉仕してくれるんだろうね。あ、ホラ見なよ、あの女ちょっと気持ち良さそうな顔してる」
その声に宗佑が顔を上げると、確かに瑞希の顔には羞恥の色が見えた。
「次は指を入れてみたまえ」
志藤が告げる。宗佑は振り返って返事をし、中指をやや拡がった瑞希の肛門に宛がう。
「いきます」
一声だけをかけ、ずぐりと挿し入れた。
「!!」
同時に、指の腹が締め付けられる。瑞希の括約筋は相当に強いようだ。
しかし抵抗も入り口部分だけで、そこさえ通り抜けてしまえば、後はスムーズに進む。
指先を曲げればすぐにしっとりと濡れた腸壁に当たった。生暖かなその柔肉は、瑞希の内臓なのだ。
宗佑はまたしても生唾を呑み込みながら、中指で肛門内を弄り回す。
瑞希は羞恥の色を頬に浮かべつつ、視線を泳がせていた。
一見、指責めに戸惑っている風だが、本当の所はターゲットである瀬尾の姿を探しているのだろう。
 (瑞希さんだって、この状況でもちゃんと自分の仕事をこなしているんだ。
  …………僕も、やれるだけはやろう。今は、場に馴染むことだ)
宗佑はそう誓い直し、中指と薬指、2本指を用いて肛門嬲りに没頭する。
場を盛り上げるため。志藤を初めとする人間達に、好意的に迎え入れられるために。
ぐぷっ、ぐぽっ、ぬるっ、ぐぷっ…………。
延々と続く指責めは、淡々としながらも間違いのない効果をもたらしている。
事実、初めの頃はまだギシギシと固かった瑞希の肛門も、終盤には舌の上で蕩けるのではという柔さになっていたのだから。

「…………ふむ、だいぶ解れたらしいな。いい所だが、今日はこの辺りにしておくか。
 あまり一気に調教しようとしても上手くはいかんからな、続きはまた次回としよう」
指責めがひと段落した頃、志藤が間を見計らったように告げる。
ホールに散った他の人間達も、瑞希の姿を肴に各々愉しみ終わった様子だ。
「できればまた明日も会いたいものだ、強情なお嬢さん?」
志藤は、手際良く瑞希の縄を解きながら告げた。
「男の誘いは聞き飽きたわ。明日来るかどうかは、私の気分次第よ」
瑞希はうんざりした様子で肩を回す。
その手首や腿にくっきりと残った縄痕が、宗佑の胸をチクリと刺した。

「今日は、瀬尾は現れなかったようね。張り込み係を残して解散しなさい」
バーから出た瑞希は、外で待機していた私服警官達に指示を出す。
「は!」
若き警官達はキレのいい返事を返すが、その視線は瑞希の身体を盗み見ていた。
回収したストッキングが見事に伝線してしまっていたので、今の瑞希は生脚だ。
そしてその美脚には、縄で縛られた痕がくっきりと残っている。
瑞希は何でもない風に振舞っているが、当然自分の状態に気付かない筈もない。
宗佑は、その様が居たたまれなかった。
「ごめんなさい、生田」
しかし意外なことに、その瑞希自身が宗佑に歩みより、抑え気味の声で謝罪する。
「え?」
「…………その、お尻を舐めたり、指を入れたりして。あの状況では仕方なかったとはいえ、嫌だったでしょう」
「あ、いえ、あの!」
宗佑は答えに窮した。正直に興奮したとは言えない。
「それより僕は、綾元先輩の事が心配です。これからどうなるか…………。もう、やめますか?」
宗佑がそう言うと、瑞希は毅然とした瞳を戻して首を振る。
「いいえ。あんな事までやらされると判っていながら、他の婦警に身代わりをさせる訳にはいかないわ。
 …………それと、出来ることなら、これからも生田に相手をお願いしたいの。あまり、刑事課の他の人間に知られたくないもの」
言葉の前半は刑事としての正義感に溢れ、後半は一人の女としての弱さを見せる。
それを見ては、宗佑とて退けない。退けるわけがない。
「解りました!」
宗佑がはっきりそう答えると、瑞希の眉がほんの少し下がった。少なくとも宗佑にはそう見えた。
「ともかく、今日はお疲れ様。明日は、なるべく腸を綺麗にしてくるわ」
瑞希はそれだけを言い残し、背筋を伸ばした凛とした姿勢で立ち去る。
その後姿を見送りながら、宗佑はひとつ深呼吸をした。
明日も、明後日も、その次も。瀬尾に辿り着くまで、今日のような事が続くのだ。
宗佑は瑞希を心配すると同時に、ひどく火照る自分を感じていた。


 


次の日もまた、瑞希と宗佑はバーを訪れた。
瑞希への恥辱の調教が行われると解っていながら。
「…………っは、はぁっ……はあっ…………!!」
瑞希の荒い息遣いが、ギャラリーの中心で繰り返される。
この日も浣腸から始まった。ただし前日とは違い、エネマシリンジを用いての注入だ。
ガラスボウルになみなみと作られた溶液をたっぷりと注がれた。少なく見ても1リットル以上の量を。
当然、瑞希は苦しむ。便意に加え、大量の水によって腹部の圧迫されるためだ。
その美しい裸体は、昨日と同じく見る者を虜にする。
今日は茂みもきっちりと手入れされており、いよいよ洗練された裸体に映った。
しかし、志藤の表情はどこか冷ややかだ。
「…………おい」
短く呼びかけて瑞希に顔を上げさせてから、志藤は続ける。
「今日はここで出してみろ」
「どういうつもり? スカトロはご法度なんじゃなかったのかしら」
瑞希は苦しげに下腹部を押さえながら問うた。しかし志藤は答えない。
同時に女の1人が、薬液の入っていたガラスボウルを瑞希の下に滑り込ませる。
「ッ…………ふん……救えない変態ばかりね」
すでに便意の限界である瑞希は、不満を漏らしつつも逆らう術がない。
仕方なくガラスボウルを跨ぎ、床に両手をついて息む。
 (綾元先輩……っ!)
宗佑は思わず目を細める。しかし決壊には間に合わない。
汚辱の音と共に、水が勢い良くガラスボウルに叩きつけられていく。
しかし……その水に汚れはない。宗佑がどれほど目を凝らしても、透明な水だ。
「やはりか」
志藤は、若干の苛立ちを含ませて呟いた。
「お前の性格からして、今日はあらかじめ腸を洗浄してくると思ったよ。陰毛もきっちりと手入れしてきたしな。
 だが、浣腸は汚物が漏れるかもしれんという恥じらいがキモだ。その行為は裏切りにも等しい。
 これは、仕置きが必要だな」
志藤の一声で、場に妙な空気が流れ始める。獲物を囲む獣のような、不穏な空気が。
「そうですね。じゃあ今日は、これを塗ったまま放置しちゃおうかな」
女の1人がそう言って、チューブ入りの軟膏のようなものを取り出す。
その一方で別の男達が、瑞希の身体の自由を拘束帯で奪い始めた。今日は縄ではなく、エナメルのボンデージだ。
「離して!」
瑞希は不自由な姿勢を嫌がり、神経質なほどのストレートヘアを乱して抵抗する。
それを数人の男が押さえつけて拘束していく様は、実に犯罪的だ。
結果として瑞希は、両の肘と膝だけで床を這う、屈辱的な格好を取らされてしまう。
「いいザマねぇ、S女さま」
見るからに意地の悪そうな細目女が、瑞希の背に片足を乗せて告げた。
瑞希が鋭い視線で見上げると、面白そうに笑いながら足をどけ、瑞希の尻側に屈みこむ。
「おまけにナマイキ。イラッときたから、もう多めに塗っちゃお。いいよね志藤さん」
女はそう尋ねながら右手にゴム手袋を嵌め、左手に握り締めたチューブの中身を指先につける。
「な……何を!?」
宗佑は不安を感じて立ち上がるが、志藤の手がそれを制した。
「仕置きだと言っただろう。今日は、君とて手出し無用だよ、彼氏クン」
ガマガエルを思わせるその不気味な迫力は、宗佑から抵抗の機会を奪い去る。
 
「っ!」
チューブの中身が瑞希の肛門に塗り篭められる瞬間、瑞希が顔を顰めた。
明らかに強い刺激を受けた様子で、素早く後ろを振り返る。
「ふふ、効くでしょ? それねぇ、時間が経てば経つほど、どんどん辛くなってくのよ」
女はいよいよ下劣な表情を作りつつ、執拗にチューブから何かを搾り出しては瑞希の肛門に塗り重ねていく。
6度ほどそれが繰り返され、ようやくにして女は瑞希を解放した。
「さぁて、下拵え終了。さ、皆で見よ。このナマイキ女が、品なく身悶えるとこをさ!」
悪意に満ちた口調で告げられる言葉。その意味は、それから10分もせぬうちに明らかとなった。

「んくっ…………くっ、くう、うっ…………!! んぎっい、いい、いいっ…………!!」
瑞希は美貌を歪め、歯を食い縛って何かに耐える様子を見せ始める。
発汗が滝のようにひどい。常にクールな印象のある彼女が、それほどに苦悶を露わにするとは。
「あ……あれ、肛門に塗った物のせいですよね。一体、何なんですか!?」
堪らず宗佑は志藤に問うた。志藤は瑞希の苦悶を見下ろし、ようやくに少し機嫌を直したようだ。
「あれか。何、山芋並みに痒みを与えるゼリーだ。本物の山芋と違って、皮膚がかぶれる心配もない」
志藤のその言葉を聞いてから瑞希を見れば、確かに相当な痒みに耐えているように見える。
背中や肩がひどく強張り、拘束された手足の先は、空を掻き毟るように五指を蠢かせている。
体中の異常な汗も、山芋を肛門に塗られて放置されているのであれば納得だ。
「ひっぎいいぃいい゛い゛っ、かっ、かゆい…………がゆいいいいい゛い゛い゛っっ!!!!」
30分が経過する頃、瑞希はとうとう彼女らしからぬ裏返った声を上げ始めた。
目は見開かれてはきつく閉じられ、口からはダラダラと拭えない唾液を零し、あげくに鼻水まで垂らしている。
今の顔を写真に収めて彼女のファンに見せても、雰囲気の似た別人だと思われるだろう。
「アハハハッ、いいザマ。まるで芋虫みたい!」
「芋虫っていうか、これ品がない売春婦の腰つきじゃない? ヘコヘコして、ほーんと下品!」
「だよねー。おまけに浣腸も耐えられない、この薬も我慢できない。おまえって、案外だらしない女ね!」
ギャラリーは、醜く苦しむ瑞希を散々に笑い者にする。
「くっ……!!」
宗佑は奥歯を噛み締めた。それを横から覗く志藤は、満足げな笑みと共に口を開く。
「ふふ、大層な苦しみようだ。そろそろラクにしてやるとしようか。なぁお前達」
志藤が視線を向けると、瑞希を取り囲む女達が笑みを深めた。
「はぁい。じゃあ…………ねぇ変態女、そんなにシてほしいんなら、可愛がってあげる!」
女は、球の連なったようなディルドウを瑞希の肛門に宛がい、一気に押し込んだ。
「んんっぐぅう゛う゛っ!!!」
その瞬間、瑞希から低い呻きが漏れる。苦しみ一杯という風の声だ。
「やだ、きたない声。気持ちいいんなら、もっと気持ち良さそうな声出しなよ」
女はさらにディルドウを押し込み、引き抜き、また押し込む、と繰り返す。
「んあ、あぐっ……くぁああっ、ああ゛…………んぉおおお゛お゛うっっ!!!!」
瑞希から漏れる声は、いよいよ獣じみたものになっていく。それに呼応するように、周囲の盛り上がりも増す。
「うっへ、すげぇ声。限界まで痒い肛門を抉られたら、こんな声出んのか?」
「やだ、一緒にしないでよ。こいつが特別に変態なだけ。ふつう女の子が出す声って、『キャー』とかでしょ」
ギャラリー達は口々に罵りながら、瑞希の肛門を責め立てた。
瑞希は激しく身を捩じらせ、苦痛とも悦楽の極みとも取れる声を上げ続ける。
「んおぉおお゛お゛お゛っ!!!!」
やがて、一際尋常でない声と共に、とうとう瑞希は失禁を晒した。夥しい量の黄色い水が、床へ飛沫を上げる。
「ははは、とうとう漏らしやがった。完全にアナルで感じちまったか、この女!」
「あ、ホントだ、肛門拡がってるし」
「まだヒクヒクしてるね、物足んなそう。もう一回漏らすまでやる?」
瑞希の恥を前に、責め役の女達はますます活気を増していく。まるで、獲物を囲んで宴を催すかのように。


 


それからというもの、瑞希は様々な道具でアナル性感を開発され続けた。
ある時は、大股開きで手首足首を左右でそれぞれ結ばれたまま、アナルパールを丹念に抜き差しされた。
場所は一堂の視線に晒されるお立ち台だ。
その周囲にはイチヂク浣腸が転がっており、すでに浣腸が施された事を物語る。

「ほぅら、感じてきたんでしょう。みんなの前でおまんこ丸出しにして、うんちしてる気分だものね。何回も、何回も。
 もっと太いのにしてあげるわ。どう、根元に向けて太くなっていくけど、最後の方は凄いでしょう。
 今までとは比にならないほどに凄いわよ。入れるときも、ひり出す時も……」
瑞希を責めるボンデージ姿の女が、舐めるような声で囁く。
垂れ目やアヒル口はいかにもM嬢という風だが、不思議に責めている姿も堂に入っていた。
「さぁ? 別に……何も感じないわ」
瑞希はあくまで冷静に返すが、その額にはうっすらと汗を掻いている。
「まぁた強情張って。大体、アナルに興味がないなら、こんなに毎日来ないでしょ。お尻を虐められるって解ってるのにさ」
「私がここに通うのは、一日も早くS嬢になって、お前たちに仕返しをするためよ。
 受けた屈辱は必ず返すタイプなの、私って」
「あら、大層なこと。でもアナルパール抜き差しされて、ケツ穴ひくつかせながら格好付けられてもねえ。
 おまんこの奥だって、そろそろジュンと熱くなってきてる頃でしょう?
 今日はいろんな道具使うから、最後にはあんたもきっと蜜が零れちゃうわ。
 女には前立腺こそないけど、子宮口の裏とか、側面辺りを柔らかく擦り続けられると……案外グイグイ逝けるの。
 実はアタシも、ここで覚えこまされてさ……。んああーっ、んああーってスゴイ声上げながら、潮噴きまくっちゃった。ホントよ?」
女はそう言いながらアナルパールを引き抜く。
粘液のたっぷりと纏いついた胴体を瑞希にしばし見せ付けてから床に置く。
そして次に、湯の張られたトレイを引き寄せた。
湯の中から取り出されたのは、ステンレス製のアナルボールだ。
「これはね、ロリポップっていうの。飴みたいで可愛い名前でしょ。
 でもねぇ、こうしてお湯に漬けといたアツアツの状態で、肛門の深くを抉られると……すっごいよ?」
女はそう言いながら、ステンレスの球部分を肛門へと押し付ける。
そして内部へと侵入させ……奥へ至る頃、瑞希の背がビクンと跳ねた。
「……はあ、うっ!!」
「そうそう、その声。解るなあ。お腹の深い部分に、ジュワーって焼き鏝でも押し付けられたみたいなんだよね。
 最初はビックリして脚バタつかせちゃうんだけど、よくよく味わってみると、すっっごく気持ちいいの。
 ロリポップって、持ち手が細いからこっちも動かしやすいし、先っぽだけはちゃんと質量あるしね。
 これでグリグリ奥を弄られ続けると、そのうち結腸を物が通り抜けるだけで、フワーッて腰が抜けちゃいそうになるのよ」
女は唄うように語りながら、ロリポップを様々に蠢かす。
バーの客達は、各々に酒の満たされたグラスを手にしながら、淫靡なレズビアンショーに見入っている。
それは宗佑も同じだ。周囲から出来うる限り情報を集めつつも、その視線は事あるごとに一方向へ吸い寄せられていた。

やがてお立ち台には数人の女が上がり、様々に瑞希を責め始める。
女としての快感だけでなく、女としての恥辱をも知り尽くした同性だ。その責めには容赦がない。
「あー、出てきた出てきた!」
今は、ガラス浣腸器で大量のぬるま湯を注いだ後に、ロリポップで内部を掻き回している所だった。
ロリポップを引けば、小便のように湯があふれ出し、押し込めば止まる。
それをまるで玩具でも扱うように、繰り返して遊んでいるようだ。
瑞希からすれば、陰湿な同性によって排泄を完全にコントロールされているようなものだ。堪らないだろう、と宗佑は思った。
ひとしきり排泄を終えれば、次にはロリポップを半ばほどまで挿入して放置されることもあった。
そのまま乳房などの性感帯を刺激し、肛門に刺さったガラス棒が上下に揺れるさまを観衆の笑いの種とするために。
かなり長い間、瑞希はその恥辱にも涼しい顔を保っていた。
しかし、呆れるほど執拗に責められ、恥を晒させられるうち、次第に羞恥を隠せなくなってくる。
「ほら。恥ずかしい顔を、ちゃんと皆に見てもらいなさい。皆が、お前のあさましい顔に注目してるんだから」
瑞希が堪らず俯くと、必ず女の誰かが顎を上げさせた。
「か……勝手に、見ればいいわ」
瑞希は視線を横向けたまま告げる。
「またそんな強がっちゃって。でーも、しっかり感じてるんでしょう? こんなに硬くしちゃって。皆に丸見えよ」
女は手馴れた様子で、瑞希の陰核を指先でトントンと叩く。場の視線が瑞希の秘所へと集まった。
「………………っ!!!」
瑞希は両脚を強張らせ、注目への抵抗を示す。しかし大股開きで拘束されている以上、隠す事が出来ようはずもない。
ただされるがままに、己の最も秘匿すべき部分を晒され、弄ばれるしかなかった。

この日はディルドウ類に留まらず、初の異物挿入も行われた。
三角木馬に跨らされたまま、ゆで卵大の玩具を5個も6個も挿入される。
「ん、んんぐぐ、うっう゛…………!!」
「ほーら、ケツの力抜きなって。次で最後なんだからさ」
木馬の上で苦しむ瑞希の後ろから、女達がローション塗れの玩具を押し付ける。
そうして無理矢理に押し込み、排泄させ、また押し込む……この繰り返しだ。
三角木馬の背で秘裂と陰核を刺激されながら、公衆の面前で幾度も排泄を晒すに等しい。
この事実が、抜き身の女であったあの綾元瑞希にどれほどの影響を与えたのだろう。
宗佑はそう考えずにはいられなかった。瑞希の股座から、愛液が伝い落ちるのを発見して以来は。
「はははっ、コイツ濡れてやがるぜ!」
「なにがS女だよ、ドMじゃねえかこいつ。おおすげぇ、ドロドロだ。こりゃ、相当前から濡れてやがったな!」
愛液の件はすぐに別の人間にも知られ、更なる笑いの種となる。
瑞希の口元が噛み締められる様が、宗佑には不思議にはっきりと見えた。

その夜、バーを出る瑞希に土産が付けられた。
特殊な鍵付きの貞操帯。アナルの中に3個のローターを埋め込んだまま、外せなくする悪意の下着だ。
「今日も、瀬尾はいなかったわ。でもそろそろ、現れてもおかしくないタイミングよ。各自、気を引き締めなおして……」
外で待機している警官に指示を出す間も、瑞希のズボンからはブーンブーンと音が漏れてしまっている。
少なくとも宗佑にはそう感じられた。私服警官達がそ知らぬ顔をしているのが、逆に不気味なほどだ。
「では、これで解散よ」
そう言い残し、瑞希は足早に場を立ち去る。宗佑はどうしても心配になり、密かにその後を追った。
そして、彼は目撃する。工事現場脇のフェンス。そこに瑞希が指でしがみ付き、寄りかかる所を。
「はぁっ、はぁっ…………はぁっ…………」
ひどく息が荒い。日常生活ではあまり聞かないほどに、艶かしい発情の吐息だ。
「あ、あ…………っふ」
宗佑が電柱に隠れて見守る中、瑞希はついに内股になり、膝同士をすり合わせ始める。
 (イッてるんだ……)
宗佑はそう確信した。あの厳しい見た目で知られた綾元瑞希とは思えぬ痴態。
瑞希の肉体は、着実に変えられつつあった。





「ほら、もっと素直に喘いでみなよ。感じてるのは、皆わかってるんだから」
意地の悪そうな女が、瑞希の耳元で囁く。
「あ……あああ、ふぁっ…………あくっ、あ…………っあ」
瑞希は上ずった声を上げなが天を仰いだ。
身体はしっとりと汗ばみ、乳房はふっくらと豊かに膨らみ、一見して性感が目覚めているのだと判る。
そしてその肛門からは、ビニールに包まれた固めのゼリーが、ゆっくりと排泄されていた。
幾度も幾度も繰り返させられる排泄。それが瑞希に悦楽を齎している事は、もはや疑う余地もない。
びちゃりと音がし、長大なゼリーが床に落ちる。腸に詰まっていた事が信じがたいほどの長さだ。

「ふふ、濡れ濡れ。準備オッケーだね」
瑞希の両側に立つ女達が、秘裂を開きながら笑った。
瑞希を調教するのは主に女だ。妖艶なレズビアンショーは人気があるし、一応は宗佑に配慮しての事かもしれない。
「じゃ、今日もこれ使おっか。アンタの大好きな、極太ロリポップ」
女はそう言いながら、再度ロリポップを取り出した。
今度の物は、以前よりも球が大きい上、全体に長く、反りも強い。まさに上級者向けの代物だ。
「はぁっ……はっ…………好きと言った覚えはないけど…………勝手にすればいいわ」
瑞希は荒い息を吐きながら、鋭い瞳でロリポップの持ち主を睨む。その気丈さに、ホールからは歓声が沸いた。
「言われなくても使うってば」
1人が苦笑し、別の1人が鼻で笑う。
「ていうかアンタ、昨日これ使って、自分が最後どんな風だったか覚えてないわけ?
 ボヤーっとした目して、いくぅいくぅー、て10回ぐらい繰り返してたじゃんか。
 いくら1時間くらいこってり仕込んだからって、記憶まで飛ばしてんなよな。ま、今日はそれ以上いくけど」
その言葉に、瑞希の表情が強張った。しかし、それで責めの手が休まるはずもない。
女達の手馴れた動きで、大振りのロリポップは瑞希の腸深くまで送り込まれる。
「ほーら、ここが直腸の奥……っで、こっから…………はーい、S字結腸に嵌まりましたァ」
場にいる人間と瑞希自身に知らせるように、ロリポップを持つ女が叫ぶ。
「ん、んんんっ…………!!」
瑞希は何とも苦しげな、そして悩ましげな声を上げて腰をくねらせる。
その様子だけで、どれほどS字結腸に球を引っ掛けられる事が異様な事なのかが窺えた。
「じゃあいつもみたいに、ゴリゴリ可愛がってあげる。今日は何分、人間の顔保ってられるかなぁ、S女さん?」
底意地の悪さを隠そうともせず、女は嗤う。そして肩を回した後、ゆっくりとロリポップを蠢かし始めた。

「あ、あっああ!! んぁぁあっ、ふあっ…………はぁあっ、あ……ふう゛うーーーーっ!!!」
衆人環視の中、瑞希は艶かしい呻きを上げ続ける。
その両脚は2人の女によって掴まれ、開脚を余儀なくされていた。
「私、S字結腸弄くり回されてる自称S女の脚掴むの、好きなんだよねー。
 Mって自覚してるコより、ずっと反応がいいんだもん。ほぉら、またビクってなった。もうすぐイッちゃうね。ねぇ、イクでしょ?」
その2人もまた、絶え間なく言葉責めを囁きかけていた。
「はーーっ、はぁっ……あ、ああぁぁあっ………………」
それは瑞希の強気の視線を曇らせ、惑わせる。心の奥まで染み透っていくかのように。

その日の帰り際。
荒い息で私服警官達に指示を出し終えた瑞希は、踵を返す動作の中でふらりとよろめく。
「大丈夫ですか!?」
すぐに抱きとめた宗佑も、もはや掛ける言葉が見つからない。
「何も言わないで…………お願いよ」
瑞希は宗佑の腕の中で懇願した。
濡れきった瞳。今日はジーンズだが、その中もまた、ショーツから溢れる愛液で濡れ光っていることだろう。
宗佑には、それがはっきりと理解できた。
瀬尾はまだ姿を現さない。この付近の捜査網にも掛かっていないようだ。
果たして瀬尾の居所を突き止めるのが先か、それとも瑞希が完全に作り変えられるのが先か。
それはもはや、全く読めなくなっている。

 (綾元先輩。頑張って…………どうか頑張ってください…………!!)

寝息を立て始めた麗人を抱えながら、宗佑はただ、乾いた唇を噛み締めるしかなかった。



                                    終
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