大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2015年01月

もうひとつのSHIROBAKO(SHIROBAKO二次創作)

※アニメ『SHIROBAKO』二次創作。クールな総務・興津由佳の枕営業モノ。
 独自設定・オリキャラありのため注意。



「ふう……。これで音響の人は終わりだから、後は、えっと…………」
宮森あおいは呟きながら、手にしたリストに目を通す。
武蔵野アニメーションに制作進行として入社し、半年あまり。
初の担当作である『えくそだすっ!』が先日無事に納品となり、今は関係各所に挨拶回りの最中だ。
製作進行中は、日々トラブルの連続だった。その事に対して侘び、感謝し、今後の協力を願う。
そうしたコミュニケーションこそ、製作進行の肝なのだと、今のあおいは身に染みて感じる。
「次は、美術さんかな」
あおいが考えを纏め、唇からペンを離したその時。
彼女の乗る営業者の窓が軽く叩かれる。視線を向けると、一人の中年男が立っていた。
佐野という、広告代理店の中堅社員だ。

「こんにちは!」
あおいはドアウィンドーを下げて笑顔を見せる。つられるように佐野も笑った。
「相変わらず忙しそうだね、宮森さん」
「いえ……あ、確かに忙しいのは忙しいんですけど、山場は乗り切りましたから!」
「そっか。ホント台風一過って感じだね。聞く所じゃ、今回もトラブル続きだったらしいじゃない、“ムサニ”さん」
「いやー…………お恥ずかしい限りです」
あおいはバツが悪そうに頬を掻いた。
武蔵野アニメーション、通称“ムサニ”の動向は、やはり同業者から注目されているようだ。
無理もない。前作で『ぷるんぷるん天国』という、アニメ史に残る作画崩壊をやらかしたばかりなのだから。
その汚名返上をモットーに始動した『えくそだすっ!』でまた進行トラブルとくれば、業界人にとってさぞや良いネタになろう。
「業界一年目でいきなり火事場に放り込まれるなんて、大変だったね」
佐野は瞳に同情の色を含んで尋ねた。
アニメーション業界において、対岸の火事などというものはない。慢性的に人手が足りず、常にどこかの現場が阿鼻叫喚の中にある世界だ。
よって他所の惨状を笑っていても、そこには少なからず自虐的な意味合いが含まれている。

「正直、毎日いっぱいいっぱいでした。特に4話の最後の方は、私、完全にショートしちゃって。
 まさか最後の最後でサーバートラブルが来るなんて思いもしませんでした。
 まさに『万策尽きたー!』って感じです」
「ああ、あのFTPサーバー止まった時でしょ? あれ、影響ヤバそうだなーって皆で噂してたんだよ」
「危うく、4話で早くも総集編になっちゃう所でした。
 何とかなったのは、先輩の矢野さんが状況を整理してくれたり、興津さんが私の抱えてたもう一件を引き継いでくれたおかげです」
あおいがそう告げた瞬間、佐野は目を丸くする。

「興津って、あのムサニの興津由佳!?」
「え、はいっ、そうです!」
あおいはたじろぐ。何の気なしに出した言葉であり、そこに食いつかれるとは思いもよらなかった。
「彼女、まだ現場やってたんだ」
「あ、いえ、今回だけは特別なんです。多分私が、本当に余裕がなかったから……」
「お、そか。そうだよな……あんな事があっちゃ、そうそう現場復帰しないよな」
ぽつりと佐野の口から零れた一言が、あおいの心に絡みついた。
「何か、ご存知なんですか?」
あおいはドアウィンドーから身を乗り出して尋ねる。
佐野は“しまった”という表情を見せた。
「あ、ああ、何でもない何でもない」
そうはぐらかそうとするが、あおいは手を伸ばして佐野の袖を掴んだ。
「気になります、教えてください佐野さん!」
喰らい付くようにしてさらに問うと、佐野はひとつ溜め息をついた。
「いや……でもコレはさ、君に言っちゃうと、セクハラとかって問題になるかもしれないんだよ。つまり、そっち系の話ってこと」
「っ!!」
佐野の言葉に、あおいは目を見開く。
枕営業。咄嗟にその言葉が脳裏を過ぎった。あのクールな興津がそんな事をするとは思えないが、それでもだ。
「詳しく教えてください。セクハラなんて、絶対に言いません!」
あおいは佐野の瞳を覗きこみながら告げる。
佐野はその後もしばし逡巡していたが、やがて諦めたように肩の力を抜いた。
「……くぅー、解ったよ、降参! ホント、ムサニの女子って強いよな。
 じゃあ夜になったら俺のマンションに来て。今はまだ仕事中でしょ」
佐野は住所をメモ帳に記すと、ページを千切ってあおいに渡す。

そこからの午後の仕事は、あおいにとっていつになく長いものに思えた。
会社での由佳は普段と変わらず、淡々と伝票整理を行っている。
何かあったようには見えない。しかし仮に何かあったとしても、それを社員に見せるような女性でもない。
「どうかしましたか」
あおいの視線に気付き、由佳がクールな美貌を向ける。
「あ、いえ!」
あおいは慌ててスケジュール表に視線を移した。
(あんまり見るのはまずいよ。さっきのだって、ただの噂かもしれないし)
(そう思うなら、さっさと聞けばいいじゃん。枕したんですかー、って)
(そんな事、訊ける訳ないよ。誰にでも、踏み込んじゃいけないラインはあるよ)
あおいの心中で、2つの人形が会話を交わす。精神的に余裕がない時の癖だ。
あおいはそれを振り払い、得意先に電話をかける。仕事に没頭するしか、逃げの道がなかった。


興津由佳。
武蔵野アニメーションの総務を務める彼女は、あおいから見ても魅力的な女性だ。
片目を隠すようなショートヘアに、あまり表情を変えない整った顔立ち。
総務らしくカッチリと着こなしたスーツも相まり、まさしくクールビューティといった雰囲気を持つ。
仕事面は極めて有能であり、個人の担当業務を完璧にこなす一方で、全体をよく見てもいる。
社内が浮ついた雰囲気になった時、一喝して場を鎮めるのは主に彼女だ。
あおいの先輩である矢野や落合が由佳の現場復帰を促した事から考えて、制作進行時代から優秀であったと判る。
新米のあおいからすれば、まさしく『大人の女性』という印象があった。

「その興津さんが、枕営業なんて…………ちょっと信じられません」
佐野のマンションで正座しながら告げるあおい。
佐野は、2つのマグカップにコーヒーを注ぎながら苦笑した。
「俺は、枕営業なんて言ってないでしょ。……ま、実際はそうなんだけどさ」
あおいの前にカップを置き、その対面に座り込んでから、佐野はふと表情を固くする。

「一応彼女にフォローを入れとくとね、仕方がないんだ。
 君の世代は知らないだろうけど、この業界もちょっと前までは暗黒時代でさ。
 その時代の制作進行なんていったら、それこそ何でもしなきゃいけなかった。
 調べたら判るけど、その頃の制作の自殺率ってハンパじゃないぞ。俺の知り合いも2人死んでる。
 興津さんも、その生き馬の目を抜くような時代の制作だからね。枕をしてたとしても変じゃない。
 自分から提案しないにしても、この人こそと決めた相手から条件を出されれば、断り切れない状況だってある」
「それは、確かに……そうかもしれません」
わずか一年足らずの経験ながら、佐野の語る理屈はあおいにも理解できる。
外注業者には癖のある人間が多くいた。理屈屋や金に煩い人間、サボり癖のある人間。
その中に、日々のカンヅメ作業で性欲を溜め込み、肉体を求めてくる男がいても何ら不思議ではない。
他に宛てがなく、時間的余裕もない状況下で、一度抱かれれば請けてやると迫られれば…………あおいには、断固拒絶する自信がない。
「じゃあ、その事を理解した上で……というより、興津さんの『ムサニを護る』って覚悟を汲んだ上で、コレを見てくれ」
そう言って佐野は、ラックから一枚のDVDを抜き取った。
シンプルな白いパッケージ。
「白箱……?」
あおいは思わずそう呟いた。それは、作品が完成したときにスタッフに配られる、白い箱に入ったDVDとよく似ていた。
つい数日前、『えくそだすっ!』の白箱を手にして感極まったばかりなだけに、あおいにとっては印象深い。
「その発想になる辺り、宮森さんもすっかり業界人だね。これは、ただ映像を焼いただけのヤツだよ」
佐野はそう言いながら、ひらひらとDVDを翳す。ケースの表面には、マジックで殴り書きがなされていた。
『興津 由佳 (武蔵野アニメーション) 200× 11/12』
所々が掠れているが、紛れもなく由佳の名前と所属、日付が記されている。
「本当に……興津さん…………!?」
あおいの心臓が強く脈打った。



DVDがデッキに飲み込まれてからしばし。
テレビの画面に、薄暗い室内が映し出される。妙に生活観のあるアパートのリビングだ。
部屋の至る所に男性用衣類が散乱し、フィギュアや成人指定らしきゲームソフト、丸めたティッシュペーパーが転がっている。
漫画ばかりを収納した棚や、パソコン・ステレオセットなどの機器が壁を埋め尽くし、床には配線が踊る。
典型的な『オタク』と呼ばれる人間の部屋だ、とあおいは感じた。
そしてその部屋の中央、薄汚れた敷布団の上に、一人の女性が映し出されている。
端整な顔立ちと、金のリングピアス。白い肌に、スレンダーなボディライン。
見間違えよう筈もない。それは先ほどまで会社で目にしていた興津由佳当人だ。
彼女は丸裸に剥かれ、華奢ともいえる肢体を露わにされいた。
脚をMの字に大きく開き、後方へもたれかかる格好だ。
後ろには冴えない容姿の肥満男が座り、もたれかかる由佳をたるんだ胸板で受け止めていた。
(テンプレートな『オタク』だね)
(ウチの監督に無精髭生やして、10倍不潔にしたようなブタね。見てるだけで匂ってきそう)
あおいの脳内で、再び2つの人形が会話を始める。

映像を見る限り、挿入はなされていない。
代わりに由佳の身体には、男の太い指が這い回っている。
愛撫……と言えるのかすら曖昧な、触れるか触れないかというソフトタッチだ。
「色んな意味でいやらしいよな。ああいうフェザータッチってのは、女性の感度を飛躍的に上げるらしい。
 好きな相手と見つめあいながらああされると、普段以上に濡れるんだとさ。
 …………っと、余計な情報だったな」
佐野は興奮気味に語りつつ、傍にいるのが年頃の女である事に気付いて口を噤む。
(はい、セクハラ一回目。最低だね)
(それは言わない約束じゃないか。それに、状況を解説して貰えるのは有り難いよ。ボクらには経験がないんだから)
あおいの脳内の人形劇が活気を増していく。
それは逆に、あおい本人がいよいよ余裕を無くしている事を意味した。
同じ女である以上、あおいには本能で理解できる。男のタッチが、どれだけ堪らないかが。
『はっ…………あっ、はぁっ……』
映像は、由佳が熱い吐息を吐き出す音までを拾っていた。
演技か素なのかは判らない。しかし、妙に真に迫っているように思える。
『ウヒヒ、感じてきた?』
『…………はい…………』
男の問いに、由佳が答える。
『そうかそうか。今日は由佳のオマンコを、指と舌だけでドロドロにしてあげるからね』
男は由佳の耳を舐めながら囁きかけた。その間も5本の指先での愛撫は止めない。
じっくりと時間をかけて乳房を下から撫で回し、乳輪をくすぐり。
そしてその末に、とうとう胸の先が震えるほどになった瞬間、狙い澄ましたように乳頭を摘み潰す。
『あっ…!』
由佳の唇から吐息が漏れた。かすかだが、発情の色がある。

(あの声は、完全に感じてるよね)
(そんなの見れば解るじゃん。胸の先がもう四角くなってるんだから。勃起よ、勃起)
(あの男の人、意外に上手いよね。興津さんの体の事を、よく知ってる感じがするよ)
(普通の女のコに相手にされないから、こういう時に発散するしかないんでしょ。情けないヤツ!)
(興津さんは可哀想だよね。あんな男の良いようにされるなんて、堪らないよ)
(あのデブにだって、枕を迫れるだけの実力があるんでしょ。力のある人間にはハイハイって従うしかないの、制作は)
あおいの2つの心が討論を続ける。
その間も、由佳は男のねっとりとした責めを受け続けていた。
様々に姿勢を変えながら、全身を這う指先。それはとうとう、由佳の内腿を重点的に責め始める。
『ふんん……っ』
由佳は両脚をM字に開く格好を取らされながら、小さく喘ぐ。
撫でられている太腿はともかく、腹部や肩、頭の先までもがむず痒そうにさわさわと動いている。
それは、微弱な電流が彼女の体の内を貫いている事を示すかのようだった。
顔もそうだ。瞳こそまだ冷静さを保っているものの、眉は常に垂れ下がり、口は半開きのまま閉じない。
自慰をはじめてから10分以上が経ったころ、鏡の中のあおいが見せる表情と同じだ。
『良い表情になってきたじゃないか、由佳』
男は肥満体を揺らしながら由佳の顎を掴み、キスを強いる。
『んっ……んっ……はっ、んむぁっ…………ん』
由佳は抵抗しない。それどころか、自らたっぷりと舌を絡め、唾液を交し合う。まるで本物の恋人にするかのように。
「ううっ……」
あおいは思わず眉を顰める。
「凄い根性だよねぇ、ここ。中々できる事じゃないよ」
あおいの横で、佐野も苦い表情を作った。

男は濃厚なキスを交わしながら、太い手を少しずつ由佳の股座へと近づけていく。
2本指が薄い茂みを越えた所で、ぐちゅりと音が立った。
『ぷはっ。はは、よく濡れてる。ちょっと淫乱過ぎるんじゃないか』
『……すみません』
男の煽りに、由佳は静かな瞳で謝罪する。見た目には依然としてクールだ。女を濡らしているとは、とても思えないほどに。
しかしそのクールさこそが、男の嗜虐心を焚き付けるのだろう。
『まあいい。もっと、嬲ってやる』
男はそう言うと、由佳の体を押し倒した。そして仰臥した由佳の足の間に顔を埋める。
『さあ由佳、いつものをしてやるよ。しっかり踏ん張れよ』
『わかりました』
股座に鼻を埋めているせいでくぐもった男の声と、銀行員のように明瞭な由佳の声。
対照的なそれらに続き、何かを啜る音が動画内に響いた。
何か。状況からして考えるまでもない。男が由佳の愛液を啜っている音だ。
「ひっ!!」
これには、見ているあおいの方が悲鳴を上げた。生理的な嫌悪感から、背筋が粟立つのが解った。
映像内の由佳は悲鳴を上げない。
けれども、男の視線がなくなったせいか、先ほどまでとは反応が違っていた。
瞳は先ほどまでとは違い、かすかに潤みを帯び始めている。
頬を赤らめ、視線を小さく彷徨わせるその姿は、大人の女性どころか少女のようだ。
あおいは知っている。由佳はクールに振舞う反面、可愛らしい女性の一面も持っている事を。
社内のデスクは誰よりも少女趣味で、愛らしいぬいぐるみや小物が並んでいる。
打ち上げでは意外にも高揚してよく話す。自社のアニメが好評と聞くと、一瞬とはいえ目を輝かせて喜ぶ。
そうした愛らしさが興津由佳という女性の素であり、普段は努めて鉄の女を演じているのだろう。

男は、飽くことなく由佳の秘裂を舐め続けていた。
女に飢えているらしい露骨さだ。
くの字に折れた由佳の伸びやかな脚……その両膝の下を押し込むようにして脚を開かせ、秘部を舐めしゃぶる。
柑橘系の果実に直接口をつけて貪るかのような、品のない音で。
ムードも何もあったものではなく、あおいならば堪らず悲鳴を上げている所だ。
『あっ、あっ……はぁっ、あ…………!!』
由佳は規則正しく喘ぎ声を発していた。同じ女であるあおいには、演技だとすぐに解る。
しかし男は、下卑た笑みを浮かべている所からして、その演技を真に受けているようだ。
『どう由佳、気持ちいい?』
『はい……とても気持ちいいです』
男が顔を上げて問うと、由佳は相手の望む通りに答えを返す。男の笑みが深まる。
『グフフ、ならもっとしてあげるよ』
男はそう告げ、由佳の膝下をやや上方向へと持ち上げた。
くの字を描いていた由佳の両脚が、揃えられたまま天井を向く。
男はその脚線をしばし堪能し、やがて上向きになった秘裂へ、覆い被さるようにして口をつけ始めた。
ずずっ、じゅるるっ、と水音が再開する。
『自分で脚、押さえといて。もっと情熱的にしてあげる』
男が命じると、由佳は細い腕を伸ばし、自らの膝裏を抱え込んだ。
両手が自由になった男は、舌だけでなく指も用いて秘裂を責め立てる。
秘裂を舐めながら、その上方……おそらくはクリトリスを指で捏ね回し。
舌と指の両方で穴を弄くり。
あるいは、10本指を用いて夢中で膣の中を拡げ、観察し続ける事もある。

(まるで人形遊びみたいな熱心さだね)
(本当に、人形相手で満足してればいいのに。相手する女の気持ちにもなれっての)
(でも……あれだけ色々とされたら、女の子の方も感じちゃうんじゃないかな)
(なワケないじゃん。防衛本能で濡れるだけ!)

あおいは映像を眺めながら、いよいよ精神的に余裕がなくなっていくのを感じていた。
女の地獄……まさしく、それを目にしている気分になった。
「大丈夫、宮森さん? やっぱもう、止めようか」
顔色の悪さを案じたのか、佐野が尋ねる。
「大丈夫です。続けてください」
あおいはきっぱりと答えた。
確かに直視に耐えがたい代物だ。けれどもせめて、由佳に何が起こったかだけでも把握しておきたかった。


『ウヒヒヒ……すっかりトロトロになった』
呆れるほど執拗な秘所責めの後、男が呟いた。
由佳は恥じらいを隠し切れずにいる。目を泣いたように潤ませ、頬を赤らめ、口元を噤み。
『いい顔だ、可愛いよ。じゃあそろそろ、挿れてあげる』
男はそう言って、由佳の体を反転させた。光の角度が変わり、由佳の背中から脇腹にかけての汗がよく見えるようになる。
常にクールな印象のある興津由佳ながら、その汗はひどく生々しい。
『あああ、いいよ由佳。やっぱりこの視点が一番そそるよ』
男は、由佳の背を見下ろして涎を啜った。
確かに由佳の這う格好は、仰臥とはまた雰囲気が違う。
仰臥ではすらりと長い脚が目を引くが、這う格好では華奢なボディラインが印象的だ。
黒いショートカットと金のピアス、すっきりとしたうなじまでは大人の女という風だが、その下のラインはひどく細い。
そのアンバランスさは、異様な魅力を放っていた。
映像を見るだけでは解らないが、由佳の汗の量からして、映像内には濛々としたおんなの匂いが立ち込めてもいるのだろう。
これだけ条件が揃っていて、女に飢えたオスが猛らぬはずもない。

『さ、さぁ、挿れるぞ由佳!』
男は息遣いも荒く由佳の腰を掴む。由佳は素早く後方を振り返った。
『ゴムを付けて下さい』
『あ、ああ、そっか。君は、ナマ嫌いだったっけ。…………でもさコレ、結構面倒なんだよね』
男は傍らからコンドームの袋を拾い上げて開封し、拙い手つきで隆起した逸物に被せていく。
そして、改めて由佳の腰を掴んだ。
隆起した逸物の先端が、由佳のヒップラインの中ほどを数度ほど擦る。
そして動きが止まると、少しずつ逸物の輪郭がヒップラインに隠れ始めた。
『んっ…………』
艶かしい動きは、間違いなく挿入がなされている事の証明だ。
「………っ!!」
あおいは、正座した膝の上で手の平を握り締めた。
こうした知識がない訳では勿論ない。しかし見知った人間が挿入される映像を見るのは、なんとも妙な感覚だった。
『ううううっ……相変わらず、締まるなぁ。幼女の処女マンコみたいだよ』
男は挿入を深めながら呻いた。
たるみきった腿を前に突き出し、掴んだ腰を引き付け、とうとう陰毛付近までの全てを由佳の体内に埋め込んでしまう。
『さぁ、一番奥まで入ったぞ。これから、動くからな』
舐めるように由佳の耳元へ囁きかける男。由佳は半ばほど振り返り、薄い笑みを浮かべてみせた。

一度男の腰が引かれてから、たんったんったんっとリズミカルに肉の弾ける音が響き始めた。
次いで大きいのが、シーツの擦れる音。そしてそれらに混じり、かすかに粘ついた水音も聴こえている。
男の過分な脂肪の乗った下腹や腿が脈打ち、華奢な由佳の身体へと圧し掛かる様は、ひどく犯罪的だ。
間違いなく根元まで入っているだろう。そう考えた時、あおいにはひとつ疑問が浮かんだ。
「あの…………佐野さん」
どうしても気になり、隣でやや気まずそうにしている佐野に声を掛ける。
「ん?」
「あの、この人のあそこって…………その、大きいん……ですか?」
頬を赤らめ、やや上目遣い気味に尋ねるあおい。佐野はそれに一瞬虚を突かれ、破顔する。
「ははっ。宮森さんは、まだ詳しくないってわけか! そうだなぁ。まぁ、平均よりちょっと大きめ、ってところかな」
「ちょっと大きめ……ですか。あ、ありがとうございますっ!」
あおいは、耳まで赤らめて佐野に頭を下げた。しかしその最中にも、映像内の腰を打ちつける光景が脳裏に浮かんでいる。
男の物は、傍目にもひどく大きく思えた。それを後ろから受け入れる、それも、自ら望まぬままに……。
あおいは今一度、膝の上で手を握り締めた。言葉に出来ない思いが渦巻いていた。

愛のないセックスに、気持ちよさなどある筈はない。それが、年頃の女としてあおいが持つ考えだ。
しかし、映像を見ているとその考えが揺らぎそうになってくる。
『ヒヒ、凄い愛液だ』
男は腰を打ちつけながら呟いた。事実、水音や由佳の内腿のてかりから、かなりの愛液が分泌されているとわかる。
それは果たして、ただの防衛反応からか?
『ああ、あっ……はっ、あ、あっ…………あ、ああっ…………』
由佳は深く挿入を受けながら、絶え間なく喘いでいた。
枕営業をかけている以上、相手を悦ばせるために演技するのは自然なことだ。
しかし、その喘ぎに妙に熱が篭もっているように思えて仕方がない。
挿入を受けて微妙に震える左脚の動きや、シーツを掴む右手の動きは、明らかに感じた女の反応に思える。
『ううっ。この奥のうねり、最高だっ!!』
男は挿入を繰り返しながら、かなり深い部分に挿入したまま、腰を留める事がある。
それどころか由佳の細い腰を両手で掴み、グリグリと円を描くように押し付ける動きさえする始末。
『くあっ!!』
そうした時の由佳の声は異質だ。鋭く、そして甘い。由佳という女性を体現するように。
俯いていた顔も、この時ばかりは前方に持ち上がる。細目を開き、唇の真ん中だけを噛みしめ。
女が本当にたまらないときに見せる顔だ。
「………………」
あおいは、正座のまま内股を狭める。
由佳の性的な反応を見るうちに、いつしか妙な気分が湧き上がってしまっていた。
もし隣に佐野という異性がいなければ、秘部への刺激を始めているほどに。

官能からくる様々な反応を表しつつ、雄と雌の激しい交わりは続く。
それはやがて、汗を散らしながらのスパートに至った。
『あ、いくっ!! いくよ由佳、射精るよっ!!!』
男は由佳の腰を掴みながら叫ぶ。
『は、はい、下さい……奥に、下さい!』
由佳も同じ調子で男に応えた。
その2秒後。男は奥深くまで結合したまま腰を留める。お、おうっ、という呻きと共に、由佳の腰を掴む手に力が篭められる。
射精しているのは明らかだった。
やがて男が逸物を抜き出すと、被さったコンドームの先端は呆れるほど膨らんでいた。
本来であればそれが由佳の膣内に浴びせられていたという事で、妊娠の危険性はかなり高かっただろう。
『ふいいーー、出た出た。一週間ぶりだったからなぁ』
男が腰を下ろすと、由佳も両脚を揃えたまま向き直る。
『お粗末様でした』
横髪をかき上げながらそう告げると、男の逸物からコンドームを外して咥えこむ。
『うっ! へへ、相変わらず、上手いお掃除フェラだよ。ここまでされちゃあ断れない。仕事はキッチリさせてもらうよ』
『ふぁい……ありがとうございます』
男は由佳の髪を撫でながら満足げに告げ、由佳は逸物をしゃぶりながら上目遣いに笑みを見せる。
そこには間違いなく、2人のプロの姿があった。


「どうだった、宮森さん?」
映像の消えたテレビから視線を外し、佐野が問う。
「あ、え!? ええっと……」
茫然自失という様子のあおいは、慌てて佐野の方を向いた。
しかし、どう、と言われてすぐに答えられそうもない。
「ああ、いいよいいよ。女の子にこんな映像見せて、どうだったもないよな。忘れてくれ」
佐野は苦笑しつつ、デッキからDVDを取り出す。そしてあおいに背を向けたまま、ふと動きを止めた。
「…………ひとつ言っておくとね、これを参考にはしない方がいいよ。
 枕なんてのは、すぐに噂になる。これは本当に、そうするしかなかった時代の最終手段だ。
 ただ、彼女……興津さんは、そうしてでもムサニを守りたかったんだと思う。
 どうかその意思だけは、知っておいてほしい」
「ムサニを、守る…………」
佐野の言葉に、あおいは胸に手を当てた。
確かにそうだ。興津由佳は、誰よりも武蔵野アニメーションを大切に思っている。たとえ泥を被ってでも、守ろうとするほどに。
「わかりました!」
あおいは、佐野に向かって笑顔で告げた。

翌日も、その笑顔は変わらない。
(興津さん……ありがとうございます!)
淡々とパソコンに向かう由佳をちらりと見やり、心の中で深く感謝する。
「よーしっ、今日もどーんと行きますか!!」
「おっ、みゃーもり気合入ってるねぇ」
「万馬券でも当たったかぁ?」
矢野や高梨といった同僚に驚かれるほど、あおいは強い決意を口にする。
その様を見て、由佳もかすかな笑みを浮かべた。
年が明ければ、また新たな企画がスタートするはずだ。制作進行の新人も入社し、いよいよ忙しくなるだろう。
しかし、それでもあおいは進む。
かつて由佳がそうしていたように、武蔵野アニメーションを守っていく。

『もうひとつの白箱』の事だけは、誰にも明かさないままに……。



                                終わり

ハプニング・バーでの調教(後編)

ハプニング・バーでの調教(前編) の続きです。
やはりブツ描写はありませんが、エネマ・イラマチオ成分多めにつき注意。



待ち合わせ場所に現れた瑞希を見るたび、宗佑は思う。
昨日までの事は、すべて夢なのでは……と。
道行く瑞希には隙がなかった。
容疑者を日々追及する刑事特有の瞳。キリリと斜め30度ほどに吊り上げられた眉。
そこから成る目力の強さは並ではなく、覚悟をせずに視線を合わせれば、ひゅっと妙な息が出るほどだ。
「待たせたようね。生田」
瑞希は宗佑に近づき、よく通る声で告げる。
「あ、いえ!」
宗佑は緊張も露わに答えた。
瑞希の姿を至近で見れば、その静電気を帯びるような雰囲気以上に、美貌が男の脳を支配する。
長い睫毛、ツンと小さく尖った鼻、ごく薄い唇に、シャープな顎。
そして片目を覆うように分けられた漆黒の前髪。
氷を思わせる冷涼さを有した、まさに“寒気のするほど”整った顔立ちだ。
厳しくも美しい。およそ宗佑の知る中では、もっとも性的なものとは縁遠い存在。
それが、あれほどに……。

「……生田、生田! どうかしたの?」
瑞希の呼びかけで、宗佑は自分が瑞希の顔を覗きながら自失していた事に気付いた。
「す、すみません」
宗佑はひとつ咳払いし、話題を切り替える。
「今日こそは、瀬尾のヤツ……現れるでしょうか」
「そうね……過去の取引記録からすれば、今日辺り動きがあってもおかしくないわ」
モデルさながらに腰に手を当てて告げる瑞希。
本当にスタイリッシュだ、本当に魅力的だ。宗佑は今一度それを噛みしめる。
そして。
「綾元先輩っ!」
彼は考えるよりも先に、憧れの女刑事の名を叫んでいた。完全な無意識だ。
「……な、何よ?」
流石の瑞希も、若干の動揺を見せる。宗佑は冷や汗を垂らしつつ、それでも言葉を続けた。
「先輩……だ、大丈夫なんですか。このまま、あんな事を続けていて」
 
あんな事。
明瞭でない表現ながら、その意味するところは一つしかない。
瑞希はここ一ヶ月近く、毎日後孔を開発され、責め立てられてきた。
最近では、ゼリーを用いて擬似排泄を繰り返すだけで、しとどな愛液があふれ出す。
腸奥を淫具で抉り回されれば、あられもない声を発しながら潮を噴き散らすまでになっている。
どう考えてもまともな状況ではない。
女としてあってはならぬ方向へ突き進む、憧れの女刑事。宗佑はそれが見るに耐えなかった。
「…………生田………………」
瑞希は僅かに眉を下げ、沈黙する。
彼女とて女だ、変わりゆく自らの身体に思うところがあるのだろう。
しかし、それもほんの一瞬。すぐに瑞希は目元を引き締め直す。
「……『刑事は、現代社会でもっとも忍びに近い職業だ』。
 刑事課に配属になった頃、ある先輩からそう教わったことがあるの」
「忍び?」
「そう、忍びよ。あなたも充分解っていると思うけど、私達の仕事はすごく泥臭くて、根気が要るでしょう。
 本当に現れるかも定かでない標的のために、何ヶ月も張り込んだり、時には浮浪者に扮して情報を集めもする。
 闇を暴くために、地に潜り、耐え忍ぶ。これはまさに、忍びの仕事よ。
 私は、それに誇りを持っているの。どれだけ辛くても、きっと耐え忍んでみせる。
 でも、もしも。もしも私の心が耐え切れなくなったその時には、生田…………あなたにすべてを託すわ」
宗佑を見つめながら、瑞希は毅然として告げる。
言葉の一片にも曇りがない、まさに本心だけを語っているらしき力強さだ。
「ぼ、僕に」
宗佑は喉を鳴らした。ベテラン刑事である瑞希の期待を一心に背負うなど、荷が勝ちすぎているとも思う。
しかし。ここでその期待に応えられないようでは、男が廃るというものだ。
「…………解りました」
宗佑は震えつつ、しかし腹の底からの声で返事を返す。
「頼んだわ」
瑞希はかすかに笑い、若き相棒の肩を叩いた。


 


耐え忍ぶ。
瑞希はどれだけの覚悟を秘めて、その選択をしているのだろう。
彼女は今もディープスロートでの奉仕を強いられていた。
「ん゛っ、おぐっ……んぐっ、おお゛…………っご…………」
呻き声が漏れる。
平均以上の男根を、後ろ手に拘束されたまま咥え込んでいるのだから当然だ。
「ヘッ、噂通り最高だぜこのバーは。まさか、ここまでイイ女を『使える』とはよ」
今日初めてバーに会員登録したという男は、薄笑みを浮かべて告げる。
瑞希のような厳格な美女を服従させる状況が、面白くて堪らないという様子だ。
猫科のような瞳でキリリと睨みあげる瑞希。
それを見下ろしながら、男は後頭部を掴む手に一層の力を篭めた。
「オラ、雌豚が澄ましてんじゃねぇよ。ンな目ぇ出来んならもっとイケんだろうが、ア゛?」
品のない言葉を発しながら、男は瑞希の頭を強く引きつける。
鼻頭が、自らの恥骨で潰れるまで。
「む゛ごっ!!!」
これには瑞希も苦悶の声を漏らした。
目元が歪み、鼻を中心に深い皺が寄る。元の造りがいいだけに、より凄絶な顔だ。
しかし、それら当然の反応のみだ。
食道の深くにまで怒張をねじ込まれ、唾液や胃液の類を顎から垂らすまでになっても、身を捩りすらしない。
あくまで奉仕を始めた時と同じ膝の形のまま、真正面に男を受けきっている。
「チッ、ホントいい根性してるぜ。口便器の分際で、露骨に女王様アピールしやがって。
 …………あああクソッ、もう我慢できねぇ。喉ン中に出すぞ、零さずに呑めよッ!!!」
男は顎を上げて呻き、最奥まで咥え込ませた状態で動きを止めた。
そしてその直後、射精が始まる。数秒に及ぶ射精……その全てを、瑞希は顔色ひとつ変えずに嚥下する。
まるで熟練の娼婦のように。

「ふむ、見事なM嬢ぶりだ。そろそろ、“彼”の審査に掛けてもいい頃かな」
志藤が顎を擦りながら呟くのを、宗佑は聞き逃さなかった。
「彼?」
「瀬尾という男でな。このバーのVIPだよ」
どくん、と宗佑の心臓が脈打った。
 
「VIP……それはまた、凄そうですね」
宗佑は、あくまで肩書きに興味を惹かれたという体で問う。
瀬尾という名に反応すると、怪しまれて情報を出し渋られる可能性があるからだ。
「ああ。彼の眼鏡に適えば、恩恵はデカいぞ。合法・非合法を問わずな」
志藤は指で輪を作って答えた。
「ただ、彼は何かと煩くてな。下手な人間を上納すると、生爪を剥がされかねんのだよ。
 だから正直、君の彼女がホールに現れた瞬間には心が躍ったものだ。
 名刀のような凛とした雰囲気といい、あくまで強気な態度といい……まさしく極上だ。
 もし君達さえ良ければだが、一度瀬尾に会ってみんかね。思う所はあるだろうが、決して損な話ではないぞ」
志藤のこの提案は、勿論願ってもない話だ。
しかし宗佑はあえて考え込む演技を挟み、意を決したように顔を上げた。
「……そう、ですね。VIPに認められるのは、僕はチャンスだと思います。この世は金と人脈ですから」
「ほう、年の割に悟っているな。その通り。金と人脈こそ、人生の選択肢を増やす鍵だよ。
 となれば後は、聡明な彼女次第だが……どうかね?」
志藤が瑞希を見下ろすと、瑞希は妖艶に笑う。
「素敵な話ね。あなた達一人一人にS嬢だと認めさせるより、そのVIPの男を篭絡する方が早そうだわ」
「そうか、そうか!」
当事者の承諾を得たことで、志藤は頬を緩ませ、しかしすぐに引き締め直した。
「では決まりだ。とはいえ、無条件ではないぞ。先も言った通り、下手な人間を寄越すとわしの身が危うい。
 彼女が瀬尾の要求に応えうるレベルか、テストさせて貰おう。
 かなりハードだが…………構わんかね?」
志藤の強い眼力で凝視されると、宗佑は自然と背筋が伸びてしまう。
とはいえ臆している場合ではない。この機は逃せば、これまでの捜査が水泡に帰す。千載一遇のチャンスだ。
「……お願いします!」
宗佑は腹の底からの声で答え、瑞希を見やる。瑞希も覚悟を秘めた表情で頷いた。


 


「では、覚悟が熱いうちに始めようか」
志藤が指を鳴らすと、ボンデージ姿の女達が歩み寄った。
手には、中央に大きな穴の空いた、ラバー製開口マスク。
「あら、可愛いわね」
瑞希は皮肉たっぷりに告げる。
「ふん、本当にナマイキな女。昨日も私らに泣かされたっていうのにさ。
 態度だけはS嬢だけど、どうかなー、本当になれるかなぁ? ってかなれなかったら、一生笑い者だよね。
 ま、いっか。じゃ嵌めるよぅ。おっきくクチ開いてね。喉チンコ見えるくらい、あーーって」
女の一人が言葉で責めながら、瑞希の後頭部と顎を掴んだ。
そして別の一人が開口マスクを嵌めていく。
リング部分の筒を歯の間に咥え込ませ、ラバーで口元を覆い、後頭部で引き絞った三重のベルトを留める。
「あがっ!」
リング内から瑞希の声が漏れた。輪の直径がかなり大きく、大口で絶叫する形になった苦しさか。
赤い舌と喉奥が露わなその姿は、どれほど眼力が強かろうと……むしろ、それゆえ惨めに映る。

マスクを嵌められた瑞希は、次にお立ち台の床に寝転がるよう命じられた。
「さて、ではテストの時間だ」
志藤がそう言いながら、みっちりと腹部を圧迫するズボンを脱ぎ捨てる。
志藤が下半身を露出させるのは初めてだ。
トドのように膨らんだ三段腹。その下方に聳え立つ男の象徴は、圧倒的なサイズを誇っていた。
「………………!!」
宗佑は慄く。並外れた、という形容でさえ温い。
宗佑が自らの物を慰めようと思えば、逸物を無造作に掴んで上下に軽く扱けばいい。
しかし志藤の剛直で同じ事をしようと思えば、指の輪を目一杯に広げ、肘から先を大きく動かさなければならないだろう。
宗佑が男としての自信を揺らがせる一方で、瑞希の見開かれた瞳は、驚愕の他に憤りの色も宿していた。
志藤は面白そうに嗤う。
「おいおい大丈夫かね、この程度で驚いてくれるなよ。瀬尾の持ち物なぞはペットボトル並だぞ?
 しかも奴は、それだけの物を持ちながらディープスロートが好きでな。ゆえにまずは、喉奥の耐久テストだ。
 今からお前に、これをタップリと咥えさせてやる。その間、暴れずにじっとしていろ。
 わしの物で騒いでいるようでは、とても瀬尾の相手は出来んからな」
重々しい声で宣告し、志藤は横たわる瑞希の顔を跨いだ。
そして笑みを浮かべながら、覆い被さるようにして腰を沈めていく。
肥えた大型の獣が圧し掛かるような光景。それはソファで見守る宗佑を、ひどく不安な気持ちにさせた。

 
「う゛、ごおっ!!」
数秒後、ホールにえづき声が響き渡る。当然ながら瑞希のものだ。
剛直が開口マスクのリングを通り抜けたのだろう。
いくらディープスロートに慣れたとはいえ、あれほど長大な物を真上から突き込まれては堪らない。
志藤はその瑞希の反応に構わず、悠々と腰を上下させはじめた。
「ごお゛ぉっ、げっごっ!! ごぇえっ、えごおお゛っ、がっ……ああ゛っ! があごっ、ごぉええぇ゛え゛っっ!!!」
瑞希の声は秒単位で深刻さを増していく。
切れ長の瞳はかろうじて志藤を睨み据えているが、苦しさを隠しきれていない。
両手の10指はピタリと床につき、太腿はびくんびくんと痙攣しはじめる。姿勢を保つために、かなり無理をしているようだ。
 (ああ、綾元先輩……っ!!)
宗佑はソファに掛けながら、その陵辱劇を悲痛な顔で見守っていた。
すると、その傍らにボンデージ姿の女が腰掛ける。
「ふふ、凄い。でも彼女ばっかりずるいわよねぇ、ボクも愉しませてあげるわ。
 せめて彼女にされてると思って、愉しんでね」
女は囁くように告げ、いつの間にか隆起していた宗佑自身の皮を剥いた。
「あ、ちょっと!」
宗佑は抵抗しかけたが、女がパクリと逸物を咥え込むと、そのえもいわれぬ快感に腰砕けになってしまう。
口内で茎にねっとりと舌を絡みつかせ、亀頭部分を喉奥の輪で扱く、極上のディープスロート。
それは、興奮の中にあった若き刑事にとって、絶望的なまでに心地良いものだった。

「ぐごっ、おごッ……ごぉ、おッ…………!! お゛、お゛っも゛ぉオッ、ごッぉ゛! おっおあ゛お……お゛、ご、ぉお゛っっ!!」
瑞希の悲痛な声が、ホール内に響き渡る。
声だけではない。硬い怒張が喉奥を抉る時のカコカコという音、逃げ場を失って鼻からぶふっと噴出す音。
それらもまた、どうやっても聞き逃しようがないほどの明瞭さでもって耳に届く。
「フゥッ、フーッ……よし、抜くぞ……。ふふ、歳を取るとこの格好も堪えるわ」
志藤は20回ほど喉奥を蹂躙するたび、逸物を引き抜いた。
「はぁっ、はあっ!! あはぁっぁっ……はっはっ……はあっはあぁっ、はぁっ…………!!!」
その時、マスクのリングから漏れる吐息は、無関係な人間からすれば滑稽なほどに余裕がない。
常に凛としてクールな瑞希の息とは思えないほどに。
化け物の尾のような志藤の怒張には、べっとりと白い唾液がこびり付いている。
それは僅かな休止の間に次々と滴り落ち、マスクのリング内へと消えていく。
そして数秒後、それを追うようにして怒張が杭のように沈み込むのだ。
宗佑の目にはそれらがスローモーションで映った。残酷な未来に到達せぬよう、哀願するように。
しかし。現実時間にして1秒足らずの後、悲願は打ち砕かれる。

「んごぉ゛っごぉお゛ええっ……え゛、あがお゛っ…………!!!」
これ以上はあるまいと思われた前回のえづきよりも更に悲痛な声が、瑞希の美貌から迸る。
開口マスクの下から覗く白い喉が、下向きにボゴリと膨らみを拡げていく。
ぶっ、ぶふっと鼻から汁が噴きだし、ついには口からも泡立つ液体があふれ、黒いマスクの表面を滑って粘り落ちていく。
液体の粘度からして、ただの唾液ではあるまい。えづき汁、もしくは胃液までもが混ざっていると考えるべきだろう。
そこまでの状態になっては、いかに瑞希とてキリリとした眼を保てない。
「ごぉう、うごっご……ご…………おーーえ゛っっ…………!!」
剛直がググウと喉元を押し広げる瞬間には、注射を我慢する少女とまるきり同じく、目元をきつく閉じている。
その後、奥で押し留められる間こそキッと睨んではいるが、引き抜かれ始めると、
「もごぉうええ゛え゛っ!!」
獣のようにえづきながら目を細め、涙をボロボロと零してしまう。
そこには、誤魔化しようもない、等身大の瑞希がいた。
高嶺の花とはまるで違う。排泄もすればえづきもし、涙も零す。なまの肉となまの粘膜をもった、一個体の女としての瑞希が。
 
 (綾元先輩…………っ!!!!)

瑞希という女性の“底”が露わになった瞬間、宗佑の心臓が締め付けられるように痛んだ。
小学生時代、凄惨ないじめを見てみぬ振りをし、間接的に級友を見殺しにし、それを深く悔いて以来の強い心の動き。
しかし……大人になり、刑事になった今もなお、彼は目の前の陵辱に何もできずにいる。
宗佑には、それが堪らない。
そしてこうした胸の昂ぶりは、そのまま興奮として下半身に血を巡らせてしまう。
ボンデージ姿の美女から、ねっとりとしたディープスロートを受けている最中ならば、尚更だ。
「ほーら見てぇ、彼女さんすっごい事になってる。今は本当に、地獄の苦しみって所ね。
 先生のって、素面じゃ絶対無理ってぐらいおっきくて、咥えさせられると、胸が不安で一杯になるの。
 いっそ死んだ方がマシってほど苦しくて、鼻水とか胃液とかどんどん溢れてきて、たまに抜かれるんだけど、また挿れられて。
 その生死の境みたいな状況が、ずーっと、ずーーっと続くんだよ」
ディープスロートをする女とはまた別の一人が、宗佑の耳に囁きかける。
「でもねぇ。される女の子には地獄でも、やってる方は、ものすっごく気持ちいいんだって。
 あなたもちょうど今されてるんだから、その感覚よく解るでしょ。
 女の私は体験できないから羨ましいなぁー。ねぇ、教えてよ。アレを女の子にスロートされたら、どんな風に気持ちいいの?」
女の囁きが、宗佑の倒錯感をひどく煽る。
足元で行われる熱心なディープスロートと、視線の先にある瑞希の地獄。それが脳内で混ざり合ってしまう。

宗佑の亀頭が喉奥に呑み込まれる瞬間に、ごぇえっと瑞希がえづく。
喉奥を微細に蠢かされている間中、カコカコという音と鼻水を噴出す音がしている。
そして亀頭が狭洞から開放される時には、もごぉお゛っと最も苦しそうなえづきが響き渡る。
完全にタイミングが同じだ。同じになるように調節されている。
「う、うう……うう、あっ…………!!」
その絶妙なシンクロを何度も何度も体験するうち、とうとう宗佑は、瑞希本人に怒張を咥え込まれているように錯覚してしまう。
そうなれば決壊は早かった。

 (先輩……あの綾元先輩が…………僕に…………っ!!!)

興奮は刻一刻といや増し、宗佑は女の巧みなディープスロートの前に、あえなく射精へと導かれる。
「くうううっ!!!」
腰を震わせ、精の滾りを名も知らぬ女の喉奥に注ぎ込んだ。
学生時代さながらの量と濃さが、どぐどぐと尿道を駆け抜ける。気だるい脱力感が身を包む。
「おやおや、もう出してしまったのか。君のパートナーは、随分と堪え性がないらしい」
志藤が宗佑を見て笑う。
汗まみれで息も荒い。それでも志藤には、精力的な余裕が窺えた。
宗佑よりも遥かに長く、激しい抽迭を繰り返しているにも関わらず。
「だが確かに、これは心地がいいからな。特に、お前のような気の強い女を蹂躙するのは最高だ。
 オスとして満たされていくのを感じるよ」
志藤はほくそ笑みながら、いよいよ激しくリングの中に怒張を突き入れる。
「ごぉえがっ、あごっ…………もごお、ぉお、あ゛ああお゛っ!!!」
当然、瑞希は苦しんだ。眉をかつてないほどに厳しく寄せ、見開いた瞳から涙を零しつつ。
それでも手足は動かさない。遠目にも解るほど手足の筋肉を強張らせ、必死にフローリングに貼り付いている。
まさしく執念というものを感じる抵抗だ。
「なるほど、いい意地だ。……むぅっ、わしもそろそろ限界だな。喉に射精すぞっ!!」
志藤は唸りながら、深く腰を落として動きを止める。
 
「お……ううおおほぉおっ…………!!」
声とたるんだ尻肉の動きからして、志藤が射精しているようだ。
会心の一回であった宗佑のそれと同等……いや、それ以上に長く。
「ぐ、ぶぼっ、ぶほっ!! あううぇおあ゛っっ!!」
射精開始から10秒ほどのち、とうとう瑞希は堪らずに噎せかえる。
開口マスクのリングのみならず、鼻からも白濁があふれ出す。
「フゥ、フゥッ……おぉお出た出た、大洪水だ。フフ、さすがに少し多すぎたかな?」
志藤はようやくに逸物を抜き、溢れた分の白濁を指で掬ってマスクの開口部に流し込んだ。
そして後頭部のベルトを外し、マスクを外す。
ねろりと濃厚な白濁や唾液に塗れ、リングの筒部分が瑞希の口から抜き出される。

「どうだ、わしの物は。美味かっただろう」
「はぁっ……はあっ…………まさか、最悪な味だったわ。あなた、もう先が長くないんじゃない?」
喘ぎながらも、眼光鋭く志藤を睨みつける瑞希。
志藤は口元を歪めた。
「本当に責め甲斐のあるお嬢さんだ。だが、いつまでその口が利けるかな。次はキツイぞ?」
志藤の言葉が終わらぬうちに、ホテルのルームサービスで使われるようなワゴンが運ばれてくる。
ワゴンの上には、もはや見慣れた責め具が置かれていた。
透明な液体の張られたガラスボウルと、そこに立てかけられたガラス製浣腸器、そして太い肛門栓。
「また浣腸? 芸がないわね、いい加減飽きたわ」
瑞希は蔑むように嘲笑う。
辟易しているのは事実だろう。プライドの人一倍高い彼女は、連日排泄を晒していても、未だに耳まで赤くする。
「そう、浣腸だ。ただ、今回は趣向を変えよう。
 以前からの希望通り、君にはS嬢として彼氏くんを責めさせてやる。浣腸を施したままで、な。
 “出す”前に彼をイカせられたなら、瀬尾に会う方法を教えよう」
志藤の提案に、瑞希は顔を強張らせた。
しかし、絶望的というほどではない。これまでにも、浣腸したままでホール内を散歩させられる、といった趣向はあった。
その甲斐あってか今の瑞希は、高濃度のグリセリンであれイチヂク浣腸であれ、かなりの時間を我慢できるようになっている。
「またそんな事……下らないわ」
瑞希は吐き捨てるように言いながらも、心中では勝算を感じていただろう。
宗佑も、不安げな表情の下で安堵する。しかし。

「ああそうだ、注意点が1つだけある。……今回の浣腸液には、ドナンを使うからな」
その言葉が発せられた瞬間、宗佑と瑞希の顔色が変わる。
ドナン浣腸。その恐ろしさは以前、志藤自身の口から聞かされたことがあった。
『にがり』……つまり塩化マグネシウムを溶かしたドナン液こそ、この世で最もきつい浣腸だと。
本来はグリセリンでも排泄できない重便秘の人間に用いるものであり、当然その効き目は苛烈極まりない。
数分と耐えられる者はいない。
その特徴は、最高レベルの便意と同時に沸き起こる、地獄の苦しみ。
よく削岩機が例えに出される通り、ドドドドと猛烈な熱さが腸を駆け下る……。

「彼氏くん、壇上へ上がりたまえ。今日は君も主役の片割れだ」
志藤が嬉々として宗佑を招く。
「楽しみだぜ。ドナン浣腸、一遍見てみたかったんだよな!」
「ありゃ体質次第じゃ本気で無理らしいからな。あの生意気女がどうなんのか、見ものだぜ!」
場の人間も興奮も露わに叫び始める。
祭りのような騒ぎの渦中で、宗佑と瑞希の2人だけが、拳の中に冷たい汗を握りこんだ。


 
宗佑はステージで服を脱ぎ捨てながら、ひたすらに祈るような気分でいた。
裸を衆目に晒す恥など二の次だ。ドナンに関する志藤の説明が、ただの脅しである事を祈る。
しかし……ガラス浣腸器が薬液を吸い上げ、注入し終えた瞬間。
すぐに瑞希は顔を歪めた。
「うう……うううう……っく!!」
「あら、可愛い声。きつい酒を一気飲みしたみたいに、腸がカーッと熱くなるって、ホントなんだ?」
女はそう言い、ガラス浣腸器を置く。
たったの1本、200cc程度だ。女がそれで手を止めた事が、かえって宗佑を不安にさせる。
ごく少量で充分。それだけのきつさがあると言っているようなものではないか。
「じゃあ、栓したげる。頑張ってねぇ」
女は笑いながら、太さのある肛門栓を瑞希の脚の間にねじ込んだ。
う、という小さな呻きの後に、栓は姿を消す。
「さぁ、ではお前のサディズムを見せてもらおうか」
ソファに深く掛ける志藤が告げ、恥辱が始まる。

「く……うう、っく…………!!」
赤い手袋、ガーター付のビスチェ、黒のブーツソックス。
その『女王様』スタイルは、クールな美貌も相まって奇跡的なほど瑞希に似合っている。
しかし。今の瑞希に、SMの女王に必須である“余裕”はなかった。
バラ鞭を手に取るも、手が震えている。二、三度取っ手を握り直して、ようやくまともに掴めるほどだ。
「あの、大丈……」
宗佑が見かねて声を掛けると、瑞希は片目を閉じながら睨み下ろした。
「誰が発言を許可したのっ!!」
そう叫び、鞭を振り下ろす。
さすがに刑事だけあり、叫び声には張りがある。喧騒の中でも鶴の一声となりうる声だ。
しかし、叫び声とは裏腹に、鞭には全く力がない。ぴちんと情けない音を立て、宗佑の身体を撫でるだけだ。
ホールから笑いが起きた。
「はははっ、何だよその情けねぇ鞭は。もっと腰入れろ腰!!」
「そうそう。今まで散々鞭受けてきたくせに、何見てたの? アッタマ悪ぅ!」
野次を受け、瑞希は奥歯を噛みしめる。そして脚を踏みしめ、強く鞭を振るった。
「うう゛っ!!!」
漏れた声は、宗佑だけのものではない。鞭を振るった瑞希もまた、振り切った体勢のまま苦悶する。
すでに顔中に脂汗が滲んでおり、雨中にいるように顔から滴り落ちていく。
ひっ、ひひっという呼吸も普通ではない。
明らかに普通の浣腸とは違う反応だ。宗佑はこの瞬間、志藤の説明が真実であったのだと理解した。

「ハァッ……はあぁアっ…………ほら豚、おまえはこうして握りつぶされるのだって、気持ちが良いんでしょう?」
瑞希は、片目を覆うように分けられた前髪を揺らし、切れ長の瞳を見開いて宗佑に問いかける。
冷涼な雰囲気、芯の通った声、そして色香も充分な美しさ。
どれをとっても女王に相応しい。扱く手つきも、平均的な風俗嬢よりやや上手いかもしれない。
しかし宗佑は、まるで絶頂に至れる気がしなかった。
原因は複数ある。
まず、扱きあげられて気分が昂ぶっても、すぐにその責めの手が緩んでしまうこと。
「っつ、っぃぎ、ぐくくきっ…………!!」
こうした声で限界の便意の波を乗り切ろうとする瑞希が心配になり、性的な気分が萎えること。
そして何より、先ほどボンデージ女のディープスロートにより、溜め込んだ精液の大半を搾り取られていることだ。
 
「ああ、ああ、くっ…………!!」
宗佑は声を上げ、何とか気分を高めようと試みる。しかし、芳しくない。
 (何でだ、何でっ! さっきと違って、今度は本当に、本物の綾元先輩にして貰ってるんだぞ!
  イケよ、イケって!! 早くイカないと、先輩だって限界なんだ!!)
気ばかり焦るが、そうして焦れば焦るほど余計に気が萎える。
「んっ、ぐむぅうう゛う゛っ!!」
瑞希が固く目を瞑り、切なそうに呻く。
「どうした、ケツの穴がえらいヒクついてるぜ! アナル栓が意味なくなっちまってらぁ!!」
野次が飛び、瑞希は細く目を閉じた。
そして姿勢を変える。前屈みで逸物を扱いていた状態から、立ち上がって踏みつけるように。
宗佑の頭上へ逆光を浴びて聳え立つ、美しい身体。
しかし、その体には随所に夥しい汗が流れ、締まった腹筋は激しく凹凸を繰り返して腸内環境を窺わせる。
内腿には、留めきれないのだろう液が幾筋も伝い落ちてもいる。
なんと痛々しい姿だろう。
「お、足コキかよ。あのおっそろしい美脚でなぁ……野郎が羨ましくなってくるぜ」
男の羨望の視線を浴びながら、宗佑は半ばほど屹立した逸物を足で捏ね回される。

「はぁっ、はーーっ…………くっ、ううっ……あう゛…………はぁっ、うう゛、あぁア゛…………っ!!!」
直立したことで括約筋へ多少力を篭めやすくなったとはいえ、限界は限界だ。
瑞希の余裕は刻一刻と削り取られていた。
まさに便が漏れる瞬間というのは、どう抗おうとも無駄。宗佑にも、経験からそれぐらいは解る。
「どうしたの? は、早ぐ……イキッ、なさい゛…………!!!」
強靭な精神力で右脚を上げ、宗佑の睾丸を指先で握りつぶす瑞希。
軸足が全く安定していない。柔道三段の強姦犯を単独で組み伏せたという武闘派女刑事の姿は、すでに跡形も無かった。
「オイオイ何だよ、もう限界かよ女王様!」
「そんなんで満足できるほど、Mってのは浅くねぇぞ姉ちゃんよ!!」
客からは変わらず野次が飛び続けていた。
 (すみません。すみません、先輩!!)
宗佑は心中で必死に謝罪する。
今の時点でも全く射精欲求は沸き起こらず、もはや瑞希の決壊が先であることは目に見えていた。
「ひっぐぅあう゛ぅううう゛っっ!!!!」
瑞希はとうとう聞いたこともない呻きを上げる。
それでも必死に耐えようと、下唇を血が出るほど噛むが、今度こそは無理だ。
下半身がガクガクと病的なほど震えはじめ、下腹が蠢き、力強い瞳孔が収縮する。そして。

ブグチュッ、ビブリ、ブッ、ビブババッッ!!!

下劣な破裂音。床に水と肛門栓の叩きつけられる音が直後に続く。
すでに腸内洗浄は済んでいるために固形物こそないが、グリセリンと比べても屈辱的に過ぎる排泄だ。
「……あ、あ…………」
煩いほどの嘲笑が沸き起こる中、瑞希は力なくその場にへたり込む。
「やれやれ、失敗か。これは折檻が必要だな。徹底的にドナンに慣らしておく必要がありそうだ」
落ち着き払った志藤の声が、騒がしいホールにもよく響いた。


 


「おら、シャンとしろ。持ち上げてやっから、しっかり跨れよ?」
瑞希を両脇から抱える男達が命じる。
彼らの前にあるのは、背の丸い木馬のような腰掛けだ。
高さは男でも下に爪先がつかない程であり、座部後方に白いディルドーが固定してある。
また、腰掛けの下にはキャスター付きの台が備え付けられ、その四方からは枷つきの鎖が伸びてもいた。
「ん……?」
宗佑はふとディルドーに目を凝らす。初めはただの白いディルドーに見えたが、どうも違うらしい。
ディルドーの表面を、白い何かが覆っているようだ。
「気付いたかね。細いディルドーの表面に、にがりや海草を煮溶かした物なぞを何層にも塗りこめて、蝋のように固めたんだ。
 いわば固形のドナン浣腸だな」
志藤が言った。その意味を理解し、宗佑は志藤を振り返る。
「え……っ!? 固形のって、じゃ、そんなものに跨らせたら……」
宗佑がそう言いかけた瞬間、後方から呻き声が漏れた。
「くあ゛ぁあっ!!」
見れば、男達に抱え上げられた瑞希が、肛門に深々とディルドーを咥え込まされる所だった。
早くもドナンと同じ効果が現れ、彼女に声を上げさせたのだろう。

瑞希が悲痛な呻きを上げても、男達に容赦はない。
「すげぇな、この太いのが簡単に入るぜ。聞いた通りドナンって、ケツの穴が開きっぱなしになるんだな」
「ああ。特にこの『ドナン地獄』の後は、ダリアの花みてぇにクッパリいくぜ。まぁカメラの用意しとけや」
男達は非情な言葉を交わしながら、瑞希の腿を押し下げる。
そしてディルドーが根元まで埋没すると、瑞希の手足に台の枷を嵌めていく。
瑞希の手足は、下に伸ばした形で固定され、殆ど抵抗が叶わない。
「く、ぐぅっ……っ!!」
瑞希はかつてないほど眉を吊り上げ、切れ長の目を見開いて男達を睨み下ろす。
凶悪犯をも竦ませる仁王の顔。しかし、檻の中の虎を怖がる人間はいない。
「何だよその顔は、生意気だな!」
「ふん、今の内に粋がっとけ。どうせこの『ドナン地獄』じゃ、お前もすぐに参っちまうんだからよ」
悪意と嘲笑が入り混じる、最悪の舞台。
宗佑は、目の前の全てが人殺し以上の犯罪者に思え、手近な者から取り押さえたい衝動に駆られた。
それが出来ればどれだけ楽だろう。しかし、それに意味は無い。瑞希が自分に期待しているのは、そんな事ではない。
「ンン゛ッ!!」
腰掛の上で、瑞希が汗みずくのまま咳払いする。
 (解っています、先輩!)
宗佑は口元を引き締め、笑みを湛える志藤に歩み寄った。

「志藤さん。彼女がこの折檻を乗り切ったら、瀬尾という人に会う方法をお教え頂けませんか」
「ん? ああ……ふむ。君達の熱意はまぁ伝わるが……しかし、瀬尾もじつに神経質な男だからな。
 例えばこの折檻を30分、弱音を吐かず耐え切れるほどでなければ紹介できんよ」
「耐えさせます!」
宗佑は毅然として言い切った。志藤がやや意表を突かれたように目を丸くする中、瑞希を見上げる。
瑞希も宗佑の方を向き、凛とした表情で頷く。
 (すみません綾元先輩、結局また、あなた頼りです。僕はエールを送るしかない……でも!!)
宗佑が瞳を揺らがせながら伝えた想いは、果たして瑞希に届いたのか。
瑞希の瞳は一瞬柔らかく笑いかけたように見え、しかし次の瞬間、炎に焼かれるかのような苦痛に染まる。
 
「あッぐぐう、ぅふう゛うう゛う゛っ!!!」
瑞希の白い歯が噛み合わされ、背中が反る。
2つの肩甲骨は衝突間際にまで接近し、腕の付け根に深い皺を無数に寄せた。
一体どれほどの苦痛を受ければ、ヒトはそこまでになるのか。

「うほっ、キタキタキタ、すげぇ弓なり! さっきのドナンは結構薄かったみてぇだが、今度はマジだぜ!!」
「ちっと今ネットで調べたらよ、ドナンって腹ン中が、茹でた鍋みたくグラグラ煮え立つ感じなんだと。
 んーで痒いわ熱いわって思ってたら、次の瞬間にはもの凄ぇ下痢みてぇに、腸が蠕動してクソ漏らそうとするんだってよ。
 腸内洗浄なしで浣腸したら、意識するより前にドバドバ出てくらしいぜ?」」
「へぇ。つっても、あんなぶっといディルドー咥えこんでたら出しようなくね? 手足鎖に繋がってて動けねぇしさ」
「だーから地獄なんだっつの。しかもあれ、濃さ20%近いドナン液を参考に作られてんだぜ。
 うちの奴隷だってンなもん、5分もたねーし。我慢しきれるわけねー」
「でもでもあの彼氏くん、さっき30分我慢させます!とか先生に言ってたよ?」
「案外あいつも鬼畜なんじゃね? あの女に毎日尻に敷かれて、さりげなく復讐してんだろ」

ギャラリー達の冷酷な会話が、瑞希を中心に勢いを増していく。
宗佑には熱さはなかった。想い人のの手術結果を待つが如く、冷や汗が背中を伝う。鼓動が煩い。
焦れて志藤の腕時計に目をやるも、たったの2分しか経過していない事に絶望を覚える。
「いぎぅうう゛っ!!!」
瑞希の呻き声が響くたび、宗佑は蒼白な顔を上げた。
2分。わずかそれだけで、瑞希は疲弊しきっていた。
今また弓なりに反っていた身体が、ガクリと前方に傾ぐ。
豊かな乳房が揺れ、ストレートな黒髪が肩を撫でながら垂れ下がる。
ハの字の眉や半開きの瞳は、まるで40度の熱にうなされる患者のようだ。
発汗もひどく、顔や肩、背中など見える部分の全てが、碧いライトを浴びてヌラヌラと濡れ光っている。
時には小さな痙攣も起きていた。

「うーっわ、すっげぇ。おいお前ら、ちっとこの女のフトモモ触ってみろよ。なんつーかよぉ、何か上手くいえねーけど、勃つぜマジ」
一人の男が、苦悶する瑞希の脚に手を触れて告げる。
その嬉々とした様子に興味を惹かれた別の男達が同じことをし、やはり目を輝かせる。
「うお、確かにこれやらしいわ!」
「しかも何つぅの? エロい以外に、クスリ極めて死にかけてる、みたいな背徳感あるよな!」
「俺もうマジこの脚好き、形も感触も。ああクソッ、自分のオンナにしてぇ!」
男達のその下卑た態度は、おそらく瑞希が最も嫌うものだ。
「ひぃっ、ひっ、はアっ…………っき、気安く、触らないで…………っ!!」
瑞希は、細めた目で精一杯睨みながら叫ぶ。
しかし弱弱しい抵抗は、サディストにとって最高の旨味だ。
「あんさぁ。いちいち女王様ぶって命令しないで貰える? 最底辺の奴隷のクセにさ!」
細目のボンデージ女が瑞希の背後に歩みより、腰を掴んだ。
そしてそのまま力の限り、腰を下方に押し付ける。
「ッカ、おオ゛ぉっおおオ゛っっ!!!」
凄まじい声が迸った。痰の絡んだような音に続く、イラマチオさながらの低い呻き。
喉が極限まで絞られた状況でしか出ないその声は、膨大な苦痛を容易に想像させる。
「うーわっ、すっごい声。さすがに罪悪感かな? でもせっかくだから、もぉっとグリグリしちゃう。
 アタシって好奇心旺盛なトコが可愛いって、よくカレに言われんだよねぇ」
女はさらに瑞希の腰を下方に押し込む。
「おほっ、すげぇ! ものっすげぇ盛り上がってんぞ!?」
太腿に触れる男達が、顔を見合わせてほくそ笑んだ。
 
「ホーラホラ、いっちばん奥の結腸辺りが、ゴリゴリ刺激されるでしょ。
 ドナンでお腹の中ひどい下痢みたいになってて、そんでこうされたらさ、どう?
 男だったら間違いなく射精してるトコだけど、女はどうなんの、潮吹きとかしそう?」
「サチが訊いてんだから答えなよぉ。あんた一応、S女のつもりなんでしょ!」
同性への陰湿さにかけては、やはり女が優れるのか。
完全に人間を捨てたような笑みを浮かべ、ボンデージ女達は瑞希を責め続けていた。
よく観察すれば、その手はただ瑞希の腰を下に引いているだけではない。
時には前寄りに、時には後ろに傾け、あるいは左右に傾斜をつけて。自在にディルドウを呑みこませている。
何しろ女の手だ。子宮の体内位置も、肛門側から子宮を刺激される感覚も、知り尽くした同性だ。
「や、やめて、くれ…………」
宗佑は無意識に、蚊の鳴くような声で呟いていた。総身の皮膚が、瑞希の危機を感じ取っていた。

「……っああ゛あ゛あ゛っぐぅうっっ! う゛うう……あぐっ、いぎぎぐっうぐあああ゛あ゛っっ!!!!」
宗佑の警鐘は大袈裟ではない。
瑞希は声帯が破れかねない声を上げ、天を仰いだ。
本当の美人だけあり、どれだけ歪んでいてもなおゾクリとする横顔だ。けれども尋常でない。
眼窩に沿って伝う雫や、口から垂れる液。
それら全てが涙や涎であるなら……そんな苦痛は、宗佑の経験の範疇外だ。
「フフフ、ようやく10分経過だ。先は長いぞ」
志藤が時計を見やりながら告げる。
 (まだ……それだけか!)
宗佑は顔を歪めた。明らかな限界の覗くここで、まだ三分の一だというのか。
宗佑の胸の不安は刻一刻と膨らんでいく。すでにそれは肺の許容量を超え、彼の息を著しく乱していた。
あるいは、瑞希の溺れるような呼吸に引き摺られているのかもしれない。
 (どうせ同じように苦しいんなら、せめて、少しでも肩代わりできればいいのに……!!)
そうした無意味な考えが、浮かんでは霧散していく。
情けない事に、見守る宗佑の心の方が折れかけていた。それを繋ぎとめているのが、瑞希の踏ん張りだ。

「ほーら、抜いてくよぉ」
瑞希の腰を掴む女は、狐のような顔で瑞希の腰を浮かせていく。
そして半ばほどディルドーが覗く所で止めた。
白いディルドーはやや変色して細まり、一部が瑞希の腸内に吸収されている事を物語る。
「んじゃ、深呼吸して。これから子宮裏をなぞる角度でズグゥーッといくから、心臓麻痺しないようにさ」
悪魔じみた台詞。瑞希が空気を求め終えた所で、女の細い指は血管を浮かせ、瑞希の腰を引き摺り下ろす。
「…………っァ……うぁ、カッ、っァ…………!!!!!」
この時の瑞希の悲鳴は、ほとんど音を成すことはなかった。
それでも喉から漏れ出す空気の音が、雄弁に最高の悦楽を周囲に悟らせる。
ディルドーの設置面に着いた瑞希の尻肉が、さらに押し潰された次の刹那……下劣な排泄音が響き渡る。
びぶっ、ぶりっ、びぶぶりっ……。
それまでにも幾度か発されていた音だが、今度のものは深刻さが違う。まるで、ズボンの中であえなく溢れたそれだ。
勿論、すっきりとした排泄はない。太いディルドーに邪魔をされ、それでも噴出した分がだばりと広がる。
それは緩慢さに腰掛けを伝い、四方に鎖の震える台へと滴っていく。
「うひひ、キツそぉ! ドナン液がもう漏れますーって状態なのに、出ないんだぁ!!」
「ザマミロって反面、ちょっとぐらい頭撫でてあげたくなるヒサンさだよね。アタシでも、ここまでの地獄知らんわ」
「お前らマジ悪魔な。でもすげぇわ。この女の太腿触ってっと、苦痛がゼンブ伝わってくんだけどよ、今ので流石に先走りでた」
瑞希に群がるサディスト達は、そうして口々に悦びを分かち合っていた。


完全に客観視できたならば、今の瑞希の姿は確かに欲情を煽るだろう。
キリリとクールな顔に、武闘派女刑事として説得力のある肉体。
それが四肢を鎖で繋がれたまま、台に跨って限界を訴え続けているのだから。
「くぁぁ゛っ! ……ァ゛っ、あァ……ぐ、つッァはっ…………!!」
瑞希が呻くたび、脚が動く。
グラビアモデルが嫉妬しそうな美脚は、男達の手で太腿を撫で回されながら、痙攣し、脹脛を病的に強張らせていた。
瑞希の癖か、苦痛ゆえか、あるいは本当に攣っているのか、足指は親指だけが下を向き、他の四指が外を向く。
親指の先からは、汗と腸液、ドナン液の混合物だろう、粘ついた液の雫が滴り落ちていく。
引き締まった腰や臀部は、人体とはこれほど動くのかと思うほどの凹凸を見せた。
いわゆる『尻えくぼ』が浮き出た直後には、極太のディルドーを咥え込む肛門から破裂音が漏れる。
締まった腹筋はそれに応じて収縮を繰り返す。
豊かに張った乳房もまた、肉体の緊張にあわせ、下から見えない手に持ち上げられるように揺れていた。
「そろそろ限界近くかな?」
ボンデージ女は笑い、瑞希の腰から手を離す。離れた瞬間、ぬるりと汗の帯が脇腹を流れ落ちる。
確かに限界はありありと見て取れた。
「うう゛ーーーっっ!!!」
すでに女による強制がないにも関わらず、瑞希の腰は跳ねる。
足先が台につかない以上、接点は肛門のディルドウのみだ。そのディルドウを排泄する動きが、瑞希を浮かせているらしい。
「うひゃ、また浮いたよ」
「限界の排泄欲って凄いんだねー。ちょびっととはいえ、胴体持ち上げられるんだ?」
女達は、瑞希の肛門に目線を合わせて囁きあう。
そしてそれがしばし続いた後、とうとう瑞希の体には本当の限界が訪れはじめた。
これまでにも凍えるように続いていた脚の痙攣が、病的なほどに大きくなりはじめたのだ。
ジャギジャギジャギジャギ、と足の鎖が騒々しく鳴り響く。

「わ゛ぁあむん゛んああ゛ぁあっ! ……ぎうう゛んあ、ッあぁぁ……はう゛うーーーっっ!!
 あっ、うんん゛っぐぁああぎいっっ…………!!!」
瑞希の呻き方は、それまでのどれとも異なった。
白い歯を剥き出しにして噛み合わせ、天を仰いだ顔をゆっくりと左右に揺らす。
瑞希はきっと出産の瞬間でも、もう少し穏やかな顔をしているだろう。
本当に本当の限界。
「志藤さん、今何分ですか!?」
宗佑は堪らず志藤に詰め寄る。すると志藤は、口元を歪めて笑った。
「おっと……君にはエスパーの心得でもあるのかな。今この瞬間で、ちょうど15分00秒。折り返し地点だ」
その言葉に、宗佑は膝から崩れ落ちそうになる。
(む……無理だ。15分であれなのに、ここから更に15分。耐え切れるわけがない。
 ひょっとするとこの志藤って男、最初から僕らに瀬尾の情報を渡す気なんて無いんじゃないのか?
 いっそ何か理由をつけて連行して、尋問にかけた方が…………!)
拳を握り締めたまま、そのような思想にさえ走ってしまう。
事実、彼の先輩刑事にはそうする者もいるだろう。ならば、いっそ。
「……あと、半分…………なの、ね………………?」
その時、瑞希の声がした。宗佑が振り仰ぐと、瑞希が薄目を開けて見下ろしている。
その目は確かに言っていた。耐えてみせる、妙なことをするな、と。
「そうだ、あと半分だ。君達の輝かしい未来までな」
志藤は笑い、重厚な掌で宗佑の肩を叩いた。


宗佑にとって、今ほど時間が長く感じる事はなかった。
国家公務員試験の合否を待つ間ですら、もう少し心の余裕があっただろう。
 (綾元先輩、綾元先輩、綾元先輩…………どうか、どうか頑張ってください!!)
憧れの女刑事の名を、心の中で100度念じる。そして目を開ければ、それでようやく1分だ。
当然その間も、瑞希は苦しみの中にあった。
「うっ、はぐっ…………ふンん……ぐっうう゛あお゛……う゛っ、おお゛っぐう!!」
病的な汗に塗れ、瘧にかかったような痙攣を繰り返し、体中で未曾有の苦悶を表し続ける。
もはやその股座からは、ディルドーの栓が意味を為していないのでは、と思えるほどの腸液が滴っていた。
しかし、不自由な排泄は止まらない。
下劣な排泄音と共に、肛門からなお太いままのディルドーがひり出される。
しかしその勢いが無くなれば、また自重でもって腸の最奥にまで飲み込むことになる。

「なんだか、腰振ってアナルオナニーしてるみたいねぇ、S女さま?」
「ホントにね。しかも、おお゛おお゛喘いじゃって。今の自分の姿が、女として最底辺って気付いてる?」
「もし仮にS嬢認定されたとして、誰もおまえを女王なんて認めないわ。だって、こんなあさましい女だもの!」
「確かにあさましいな。体中汗でヌルヌルだぜ」
「くくっ、あっちこっちに鳥肌が立ってやがる。ついでにホクロでも数えてやろうか?
 堪んねぇよな。こんな美人がよ、俺みてぇな男にハダカ晒して、体中の秘密を知られちまうんだぜ!」

女は口々に罵詈雑言を浴びせ、男は苦悶する瑞希の身体を鼻息荒く撫で回す。
まさしく、女の地獄。
それでも瑞希は耐えていた。どれほど苦悶しようとも、ただの一度も音を上げない。
「……20分。ふむ、中々にやる」
志藤がシャンパンを傾けながら唸った。
宗佑はただ祈る。残りの10分が無事に過ぎることを。
しかし、まさしく限界を超えた領域だ。瑞希の体力にも精神力にも限りがある。
「ぐふっ、ううぐっ…………おおおっ、おごっ…………お゛」
瑞希は口から泡を噴き、時には白眼さえ剥き始める。
そしてその苦悶の時間が過ぎれば、瞳孔は天井を向いたまま、ふっと焦点を逸するようになる。
どんな時でもキリリと吊りあがっていた眉は、とうとう水平にまで下がった。
限界だ。誰もがそう思った、その時だ。

「はっ、かはっ……い……“いく”…………っ!!」

瑞希は気絶の縁に落ちる間際、うわ言のように呟いた。開いた瞳孔で宗佑を見下ろしながら。
「ハッ。この女、とうとうイキはじめたわよ!」
「ふふっ……まぁあれだけ毎日、アナル弄りながら浣腸しては出させ、浣腸しては出させってやったものねぇ。
 とうとう、ひり出すだけで絶頂するメス豚にまでなっちゃったのね!」
女達は瑞希の言葉を笑いの種にする。男達も嘲笑う。
しかし、宗佑だけは理解していた。
“いく”……それは絶頂の宣言ではない。宗佑の本当の苗字、『生田』と呼びかけているのだ。
誰にも知られぬように。
 (綾元、先輩…………!!)
宗佑は、瑞希の本当の名を呼び返す訳にはいかない。けれども代わりに、目を見開いて瑞希に応える。
弱りきった瑞希の瞳と、眼力も強烈に見上げる宗佑の瞳。
それが重なった瞬間、まるで元気を与えられたかのように、瑞希の瞳孔に精気が宿る。
「く、くうう゛っ!!」
瑞希は歯を噛み合わせ、気を持ち直した。
「…………っ!!」
観衆の女も、男も、そして老獪な志藤でさえ、その様に目を見開く。
宗佑は堪らず笑みを零した。
 (先輩……あと少し、あと少し頑張ってください。僕がついています。僕だけは、あなたの味方です!)
そう瞳で訴え、瑞希と無言で語り合う。
永遠にも思える長い会話。そしてその果てに、とうとう終わりの時が来る。
「…………開放してやりなさい」
なおも女達が瑞希を嘲笑う中で、志藤が告げた。女達は、はっとした様子で志藤に向き直る。
「え、えっ? …………まさか」
「ああ。30分だ」
志藤は時計を女達に翳した。一堂は躊躇いがちに視線を合わせ、やがて瑞希の身体を開放しにかかる。

 (や、やった…………!!)
宗佑は無意識に涙を零していた。
志藤が頭を掻きながら宗佑に向き直る。
「やれやれ。本当はここで失敗させ、さらなる折檻と称してもう少し愉しむつもりだったのだが……完敗だな。
 約束通り、瀬尾の小僧に会う方法を教えよう」
志藤はたるんだ顎を一度指で弾き、笑った。
その瞳には、何かを諦めたような、あるいは満ち足りたような、不思議な色があった。

「ちぇーっ。何よ、『ドナン地獄』を耐えきるなんてさ」
「ま、根性あるのは認めるしかないんじゃない。先生もそんな感じだしさ。
 にしてもこれ、すっごい……本当にダリアの花みたいね」
宗佑達からやや離れた場所では、ようやくに開放された瑞希が、なお空排泄を繰り返していた。
その肛門は赤く膨れ、粘膜の一部が外へはみ出そうとするかのようにせり出している。
淫靡。まさしくその形容が相応しい。
女達は誰からともなく屈みこみ、瑞希の後孔に咲く大輪の華に見入っていた。
「ね、ちょ、ちょっと、触ってみよっか」
「うん、うん!」
その言葉で、女達の指が瑞希の肛門に触れる。その瞬間、瑞希がびくりと反応した。
「や、やめっ……なさい」
「あははっ、調子戻ってきた。でもでも、今すっごい気持ちよかったでしょ?」
「そ、そんな事!」
「でもわたし、聞いた事あるよ。こういう時の直腸粘膜って、感じきっててすごい敏感になってるんだって。
 そんでアナルが“女”になっちゃったら最後、穴の縁をクリクリって少し掻かれるだけで、おまんこ以上にオルガ感じるらしいよ?」
「え、マジ、マジ? なんか、すっごいんだけどソレ!」
一人のボンデージ女が興奮気味に語り、その周囲の女達も目を輝かせる。
「そ、そんな訳ないでしょう!」
瑞希は身の危険を感じて叫ぶが、身体に力の入らない状態では抗いようもない。
「悪いねー、イジワルはこれで最後にすっからさ。ちょーっと、好奇心からの実験に付き合ってヨ」
「そうそう。こんなになるまでドナン耐えられる子なんて、そんなにいないの」
女達がにじり寄り、瑞希の身体を拘束する。
一人は羽交い絞めの要領で腕を封じ、別の2人が脚を抱え込み、その他多数が肛門へと指を伸ばす。
「はぐっ! や、やめっ…………あなた達、覚えてなさ…………あっ、ああうう゛っ!!」
無数の女の指に肛門の華の縁を掻かれ、摘まれ、撫でられ。
その刺激で、瑞希は為すすべなく導かれていく。
「あッ、あぐうっ、お゛っ!! ……お、おお゛、ンぉおおっほおお゛ぉおお゛っっっ!!!」
「うっひゃー、すっごい声。ね、コレ絶対気持ちいいんだよね?」
「ひひひ、聞いてるだけでヘンな気分になりそ。アナルの快感って、やっぱし『お゛』なんだね。マンコと違って」
「お腹の中からじわーっと快感が来るんだろうねー。って言っても、今は入り口弄ってるだけだけど。あー、いい顔してる」
コツを掴んだ女達の指は、いよいよ楽曲を奏でるように菊輪の内外を踊り、絶望的なまでに瑞希を昂ぶらせていく。
そして。
「っくァっ、おぉおお゛お゛っっ!!!!」
とうとう瑞希は、秘裂へ一切触れられる事なく、盛大に潮を噴き散らす。
それは取り囲む女達の顔や髪すらも濡らし、滴った。
「うっひゃ、すっごい。噴いた噴いた!」
「ホントだ! クリでもGスポットでも、こんな噴き方ってしなくない? おまんこより感じるっての、マジだよこれ」
「だね。へへ、腸液でヌルヌルで、コリコリしてて、やらしーよねぇこれ。もうちょっと遊ぼ」
まるで童女に戻ったかのような女達の手によって、瑞希はさらに未知の快感を刻み込まれていく。
男達や、バーに不慣れな新人達、そして話を終えた志藤や宗佑が遠巻きに苦笑する中、瑞希は身悶え続ける。
おおお゛っ、おおお゛お゛っと、濃厚な快感の声を上げて……。





事件は終わりを迎えた。
瀬尾は宗佑が得た情報を元に身柄を拘束され、彼の関わっていた麻薬組織にも捜査の手が伸びている。
瑞希はこの手柄から表彰を受けた。
そして宗佑もやはり功績を評価され、瑞希とペアを組んでの難事件解決を期待される事となる。
しかし、変わったのは環境だけではない。

「生田、捜査に協力なさい」
瑞希は長い黒髪を靡かせ、宗佑に歩み寄る。
宗佑は人懐こい笑みを浮かべた。
「いつもの場所、ですか?」
「ええ」
慣れた調子で会話が交わされ、2人は颯爽と歩き出す。
スレンダーな肢体が風を切り、重厚なホールの扉を開け放つ。
中にいたボンデージ姿の女や裸の男達が、瑞希を見て一斉にひれ伏した。
「こ、これは、刑事の姐さん!! よ、ようこそおいで下さいましたっっ!!!」
瑞希はその人の輪の中を歩み、一人の女の頭をブーツで踏みつける。
「あら、少し呼び方が違うんじゃない?」
「あ、しっ、失礼しました、女王様!」
かつて瑞希を散々に嬲りぬいた女は、化粧の落ちるほど汗を垂らして詫びる。
瑞希は屈みこみ、女の髪を掴んで引き摺り起こすと、氷のような微笑を浮かべた。
「イケナイ子ね、後でたっぷりとお仕置きしてあげるわ。カエル腹のまま我慢してひり出すの、好きでしょう?」
「は、はひっ…………!!」
瑞希の言葉に、女は泣くような笑うような、何ともいえぬ表情を浮かべた。
瑞希は満足げに女の髪を解放し、ホール中央へと歩を進める。
中央にあるのは、主の帰還を待ち侘びるような白いダブルベッド。メイキングも完璧だ。
その前でくるりと振り返り、瑞希は笑った。それまでの女王然とした態度が嘘のように消えている。
「さあ。今日も、私を……捕らえてちょうだい」
美しい両手首を合わせ、前に差し出す瑞希。
するとその手首に、鈍い銀色の手錠が掛けられた。SMプレイ用の玩具ではない、正真正銘の本物だ。
「良いんですか。もう、逃げられませんよ」
宗佑は薄い笑みを浮かべて告げると、瑞希をベッドの上に押し倒した。

『奴隷』達の畏怖と憧憬の瞳に見守られる中、今日も2人の交わりが始まる。

「ん、んっ…………んんっ、はぁっ…………」
宗佑と瑞希は熱い口づけを交わしながら、互いの下穿きを剥ぎ取っていく。
ショーツを抜き取るが早いか、宗佑は瑞希の肛門に指を挿し入れた。
人差し指と、中指。それはふっくらとした肛門の内に沈み込み、心地良く締め付けられる。
「ふあっ」
快感の声が瑞希から漏れた。
宗佑は笑い、瑞希の両脚を掴んで持ち上げる。
いつか触れた太腿と同じ、やわらかくも密な肉が手の平で踊る。
「ふふ。今日も、素敵です」
目の前に晒された後華を、宗佑は讃えた。
度重なる肛門開発で、しっかりと色づき、厚みを持った肛門。
それを口に含めば、まるで柔な唇同士で触れ合うような感触がもたらされる。
「ふっ、ああっ……! ああっ、ふ、あっ…………!!」
宗佑の舌が肛門を舐め回すと、すぐに瑞希は甘い声を上げ始めた。
そしてそこからほどなくして、肛門内部がしっとりと湿ってくる。
胸を膨らませる特有の匂い。美しい瑞希が、肛門で宗佑を迎え入れる準備を整えた匂いだ。

「いきますよ?」
宗佑は屹立した怒張を、瑞希の肛門に宛がった。それだけで瑞希の菊輪は、亀頭にキスをするように蠢く。
「ええ」
満ち足りた笑顔で答える瑞希。その顔を正面から見下ろしながら、宗佑は腰を押し進めた。
ぬるりと先端から中ほどまでが潤みに包まれる。温かく、柔な瑞希の体内に。
「んんっ」
声を上げたのは、2人同時だ。
かつては『眉の角度が常に水平以上』と言われた瑞希が、眉根を下げて和顔を晒す。
そしてその聖母のような笑みに誘われ、宗佑は背筋を曲げた。
「ん、ふんっ……んちゅっ、はむっ…………」
唇を触れさせあい、舌を絡ませながらの濃厚なキス。
それを続けながら、後孔での結合も深まっていく。睾丸に至るまでくっぽりと嵌まり、先端が結腸に緩く潜る。
「あっ! ふふ……宗佑が、奥に届いてるわ」
瑞希が名前で呼ぶのは、相手に甘えている証拠だ。
ならば宗佑も、瑞希、と甘え返したい所だが、そこが未だに踏み込みきれない。
もっとも……だからとて、焦る必要もないだろう。これから時間をかけて名前呼びに至ればいい。
これから腰を打ちつけるたび、瑞希の、より深い部分へと至れるように……。



                              終わり

小ネタ『結腸ホール』

任意の人間の結腸とリンクさせる事ができる、小さなオナホール状の謎道具。
ある陰湿な女がこの道具を手に入れて、クラス一の美少女(好きな男子を取られた嫉妬相手)のS字結腸にこの道具をリンクさせる。
そして授業中や休憩時間、家に帰った後とか深夜とか、時間を問わず狂ったようにホールを指で弄くり回す。
これのひどい所は、トイレの最中とか食事中とかでも、常に刺激が続くこと。
特にトイレの時は、実物がでる快感とホール越しの刺激が同時に襲ってきて、もう訳がわからなくなる。

美少女は、最初のうちはキャー!とか悲鳴を上げて飛び上がる、とかの初々しい反応してる。
でも一週間ぐらいすると、授業中に涙目で必死に口押さえるようになる。
それでその押さえた手の中から、『おおおお゛……!!』とかめちゃ気持ち良さそうな声が漏れてる。
陰湿な少女は、「かわいそうだねー。S字結腸って便が出口に近づいてるって警告発する場所だから、特別敏感だもんねー。
それを一週間もずーっと刺激されちゃあねー」とかほくそ笑んでる。
美少女の友達やファンも、最初は美少女を心配するんだけど、そのうち「変な奴」扱いになり、美少女は孤立。
陰湿な子は慰めるフリをして美少女に近づいて、仲良くなったら家に呼ばれる。

そしてその家でトイレ借りて、猛烈にホール責め。
でたっぷり30分くらいやって指が攣るころに部屋に戻ると、美少女は床の上で横向けに倒れてる。
頬真っ赤で涎垂らして、完全に連続絶頂後みたいな感じ。
陰湿っ子は心配するフリして美少女問い詰めて、ズボンを下ろしてみる。
そしたら、まったく未使用のぴっちりピンクアナルから、薄く一筋の液が漏れてる。勿論腸液。
で、何故か持参してた肛門鏡で開いてみると、もう中は腸液でドロッドロ。しかも奥は、喘ぐみたいにヒクヒクしてる。
陰湿っ子は、これは悪霊の仕業とか適当なこと言って、いい加減にお守りこしらえて美少女に渡す。
そしたらその日から数日、S字結腸への刺激が止まって美少女大感激。
この間は陰湿っ子がホールを弄くってないだけなので当たり前なんだけど、これを切っ掛けに美少女は陰湿っ子の信奉者みたいになる。
それから徐々にレズっぽい関係になって、アナルラブ。
美少女は結腸を刺激して欲しいんだけど、そのためには未開発の肛門から拡張していかなきゃいけない。
だから陰湿っ子が蕾を開発する中で、美少女がはやく奥を刺激してー、とか哀願し続けるという世にも奇妙な状況に。
時々思い出したようにホールを弄くって美少女を泣き悶えさせながら、飽きるまで遊びつくす陰湿っ子であった。


                         結

あけましておめでとうございます。

2015年も『大樹のほとり』を宜しくお願いいたします。
今年も変わらず、バンバンエロい小説を書いていきたいと思っております。
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