大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2015年04月

甘美な焦らし

 ※レズ寸止め焦らし&男による連続絶頂セックス。
  ただし、焦らされてるキャラと連続絶頂するキャラは別。
  スカトロやアナル成分はありません。



クラスメイトの陽菜から聞いた話は、にわかには信じがたかった。
俺のクラス……条貝高校2年3組の女子の間で、『焦らし遊び』というものが流行っているという。
女子グループ数人で、ターゲットの女子1人へと性的な焦らし責めを加える。
期間は一週間。その間、ターゲットには貞操帯が嵌められ、自慰は一切禁止される。
そうして欲求不満を募らせて、登下校時や授業中のターゲットの変化を愉しむのだそうだ。

「土日に始めて、次の金曜まで焦らしっぱなしなの。
 ウチのクラスでも、もう何人かの女子が餌食になってんだけど、気付かなかった?
 真美とか、祥子とか……先週だと佳苗とかさ」
言われてみれば、確かに思い当たる節がある。
今挙がった女子には全員、どこか『変』な週があった。
いつもキビキビ動くイメージの山岡真美が、頬を赤らめたままボーッとしていたり。
クラス一活発なオトコ女である佐々木祥子が、大得意の体育を見学したり。
引っ込み思案な大越佳苗が、授業中やたらとトイレを宣言したり。
生理なんだろうと思って気にも留めていなかったが、なるほどそういう訳だったのか。

「その『焦らし』っての、今も誰かやられてんの?」
俺はふと気になって陽菜に尋ねる。
その問いに対する答えは、俺にとって意外なものだった。
「勿論。今週は、桜だよ」
桜……といえば一人しかいない。
舟形桜。黒髪のセミロングヘアという、やや地味な見た目のクラスメイトだ。
特徴はといえば、とにかく笑わない。驚かない。
いつも人形のようにクールで、表情の変化に乏しい。
口数も少なくて、2、3人が喋っている横で、その会話を静かに聞いているタイプだ。
陽菜の言う『焦らし遊び』の輪に加わる類とは思えない。
とはいえ、女子の交友関係は複雑だ。
いつも仲の良さそうな2人が、影では互いの悪口を言い合っている事もある。
ならその逆で、一見接点の無さそうな女子同士が実は仲良し、という事もありえるだろう。

「でさ。見てれば解ると思うけど、桜ってすっごいクールじゃん?
 そーいう相手を嬲るってなったら、皆なんか熱入っちゃって、今までにない事しようって流れになってるんだ」
「えっと……具体的には?」
「ハッキリ言うとね、目の前でセックスしてるの見せ付けて、欲求不満を煽ろうってわけ。
 で、その為のサオ役を調達しなきゃなんだけど……葛西が頼まれてくんないかな?
 流石のあたしも、こんなの頼めるのって葛西しかいなくてさ。何とか頼むよー!」
陽菜は頭の上で両手を擦り合わせながら懇願する。
葛西、というのは俺の事だ。
確かにこんな頼みごとは、小3からの腐れ縁である俺にしかできないだろう。
とはいえ、突然の展開にまだ頭が付いていっていない。
「そ、そう言われてもなぁ……」
こんな妙な話をホイホイと受けていいものか。実はイジメに加担させられようとしてるんじゃないのか。
大体、俺は童貞だ。セックスを見せると言っても、上手く見せられるとは思えない。
色々な不安が頭を巡る。
「大丈夫だって、ただのイタズラ遊びなんだから。ね、ね? あの史織だってグループに混じってんだよ?」
陽菜のその言葉で、俺の雑多な考えがふと止まった。
今コイツは、史織と言ったか。
「史織……って、もしかして鞘本史織!?」
「そうそう、あの史織。ね、来たくなったっしょ?」
陽菜はいよいよ俺の喉元に迫って熱弁を振るう。
鞘本史織といえば、学年のアイドルだ。いかにも清純派で、お嬢様っぽい雰囲気を漂わせる女子。
芸能界入りしていないのが奇跡とすら言われる次元の美少女。
その彼女が目を両手で覆い、ドキドキしているのを想像しただけで、俄然その場への興味が増す。
「ったく、解ったよ……」
俺は陽菜の熱意に折れた風で答えた。ただその心中には、下衆な下心しかない。


放課後、俺は陽菜と一緒に喫茶店で時間を潰していた。
ターゲットである桜とその他数人が先に下校し、『準備』をしておくのだそうだ。

微妙な立地のせいか、この喫茶店は客の入りが悪い。
今も窓際の席でサラリーマンが音楽を聴いているだけで、ほぼ貸切状態だった。
「土曜から焦らし始めたんなら、今日が木曜だから……えっと、6日目か?」
俺はスマホを弄る陽菜に尋ねる。陽菜は小悪魔じみた笑みで頷いた。
「そ。あたし撮影係でさ、スマホで撮ったのあるんだけど、見たい?」
そう誘われて、断る思春期の男がいるだろうか。
「お願いします」
「フフ、素直でよろしい。んじゃ見せるけど、くれぐれもこんな所でオナり出さないでよ?」
陽菜はいよいよ悪戯っぽく微笑みながら、俺の耳にイヤホンを嵌めた。そして、細い指でスマホを撫でる。
揺れと雑音の激しい映像が始まった。

カラオケボックスの一室だろうか。コップや軽食の乗ったガラステーブルと、L字型の赤いソファが映り込んでいる。
ソファには数人の女子の姿があった。全員がウチの制服姿だ。
1人が大きく脚を開いて腰掛け、その両脇の2人が膝を押さえている。
そして正面に膝立ちになった1人が、開脚した女子のショーツにローターを這わせていた。
開脚しているのは桜だ。
相変わらず人形のような無表情で、されるがままになっている。
制服のスカートは取り去られていて、ショーツから伸びる脚が丸見えだった。
そしてその脚がまた、色白でほっそりとしていて、いい脚なんだ。正直かなり好みだ。
「意外といいスタイルしてるっしょ、桜って」
陽菜の言葉にドキリとする。
今まで桜を見ても、人形のようだとしか思ったことがなかった。
女子の殆どがスカートを短く詰めているのに、桜はやや長めだったから、脚線を意識する事自体が皆無だった。
ところが、あの膝丈スカートの中に、こんな魅力的な脚線があったなんて。

『ふふ、勃ってきた勃ってきた。なーんだ。無表情だけど、ちゃんと感じてんじゃんか』
動画の中から、不意に声がする。
声を発した主の視線は、桜のショーツを捉えていた。
映像が遠いせいではっきりとは見えないが、多分クリトリスが勃起した事を言ってるんだろう。
『ねぇ舟形さん。澄ました顔してるけど、感じてるんでしょ?』
桜の向かって右に座る女子が、掴んだ膝を揺らしながら重ねて問う。
『ええ』
桜は感情の読めない声で答えた。小さく唇が動いただけで、鼻から上には一切変化がない。
『相変わらずロボットっぽいなー、桜は。おいちゃん心配になるぜ!
 まぁ、こっから女らしくなってくのに期待かな。
 今日はクリがギチギチに勃起するまでやるから、覚悟しなよ?』
向かって左に座る女子が、桜の耳に息を吹きかけるようにして言う。
多分冗談でやってるつもりなんだろうが、その絵面はやたらとレズっぽい。
ここで1つ目の映像が終わる。
「へへ、どーぉ?」
陽菜は、俺の顔を覗きながら訊いた。自信作の感想を待つ、という様子で。
「なんつーか……すげぇエロいな。女子同士の絡みって」
俺は思ったままを口にする。実際、俺の中に新しい世界が開けた感じだ。
陽菜はそれを聞いて、でしょでしょ、と満足げに笑った。
「じゃ、次のも見せたげる。無修正のモロ見えだけど、ショック受けないでね」
やや声を潜めながらのその言葉が、変に俺の鼓動を早める。


2つ目の映像が始まった。
同じ場面らしく、赤いソファに腰掛けた桜が画面中央に映っている。
左右に女子が張り付いているのも、正面に膝立ちの1人がいるのも変わりがない。
大きく違うのは、まず桜のショーツが取り去られていること。
そして、最初の映像よりも開脚の度合いが増している事だ。
丸見えの上に140度ほどの大開脚……とくれば、俺の視線は自然と秘部へと吸い込まれてしまう。

初めて見るクラスメイトのあそこは、綺麗だった。
肉の裂け目が、ごくごく薄い茂みの下から始まっている。
太腿に比べて濃い肌色をした陰唇。その内側にある、鮮やかなピンク色の粘膜。
と、その粘膜の上側……ちょうど陰核の真下から、何か白い棒が突き出ているのが見えた。
綿棒だ。細い一本の綿棒が、秘裂の中に突き立っている。
しかし妙だ。もしその綿棒が本当に秘裂に刺さっているのなら、何かの拍子に落ちてしまうんじゃないだろうか。
たとえ桜が処女だったとしても、産道というのは綿棒1本を固定できるほど狭いものじゃないだろう。
「なぁ。あの綿棒ってさ……」
俺は片耳のイヤホンを外し、隣に座る陽菜に尋ねた。陽菜は、待っていたとばかりの笑みを浮かべる。
「ふふん、気付いたかね? あれねぇ、おしっこの穴に入ってるの」
「なっ!!」
陽菜の囁きに、俺は思わず叫んだ。慌てて口を押さえつつ周囲を探るが、ほぼ貸切の店内に変化はない。
とりあえず一呼吸置き、再び動画に意識を向ける。

動画の中では、ねっとりとした女子の責めが続いていた。
1人が綿棒の端を摘み、ゆったりと上下させるように揺らめかせる。
同時に別の1人が、女子特有の細い指でクリトリスを弄ぶ。木の芽を揉み解すような、柔な刺激だ。
「下手に真似しちゃいけないけどさ、尿道に綿棒入れられるのって、すっごいんだよ。
 綿棒で膀胱に『の』の字描かれるだけで、どんどんクリが勃起してくんの。
 おまけに、親指・中指・人指し指使ってクリ潰しまでされたら……グイグイ絶頂が近づいてくるんだよね」
陽菜がうっとりとした口調で告げる。妙に実感の篭もった話しぶりだ。
映像の中の桜も、どうやら気持ちがいいらしい。
「はっ…………はぁっ…………はぁっ…………はっ…………」
顔こそ人形のような無表情のままだが、その唇からは、同じペースで吐息が漏れていた。
女子の責めに呼応するペースだ。
確実に“効く”やり方を繰り返され、じわじわと快感が蓄積している最中なんだろう。
その果てには、当然ながら絶頂が待っている。桜も動画の中で、まさにその時を迎えようとしていた。
「っ……」
息を詰まらせた気配の直後、内腿がピクンと強張る。明らかに絶頂の間際だ。
しかしその変化があった瞬間、女子達は急に一切の責めを止めた。
綿棒は尿道の中で角度をつけて止まり、陰核をぬるぬると嬲っていた指も、布を摘み上げるような形で静止する。
「…………んんっ!!」
桜の鼻から、何とももどかしそうな息が漏れた。ポーカーフェイスが一瞬崩れ、小さく下唇が噛まれる。

『っふふ、残念。またイケませんでしたぁ』
『ゴメンねぇ、イジめてる訳じゃないんだよ。こういう遊びだからさ』
『そうそう。この寸止めが、これから一週間続くんだよぉ。皆それガマンしてきてるんだからさ、桜もガンバ!』

女子達は口々に言い、桜の気分が静まるのを待って責めを再開した。
再び映像内に繰り返される、桜の吐息。
映像はそこで終わったが、責め自体はその後もまだまだ続いた事だろう。
「つ、次はあるのか?」
俺は逸る気持ちを隠せぬまま陽菜に尋ねる。陽菜は当然とばかりに頷いた。
「はいはい~。たっぷり焦らし責めして、30分ほど経過したものがこちらでございまーす」
陽菜は、料理番組さながらの口調で動画を再生する。

新しい映像の中で、桜はいよいよあられもない格好を取らされていた。
両の足裏がガラステーブルの上に見えるほどまで、足首を高く持ち上げられている。
そしてその股の間に、女子の細い指が潜り込んでいた。
『ほらぁ桜、Gスポがもうこんなに出てきちゃった』
映像内に、はっきりとその言葉が聴こえる。その直後、腕が蠢き、にちゃ、ぬちゃ、という音が聴こえた。
多分な水気を思わせる音。事実、桜の内股やソファの座部は夥しい量の愛液で濡れ光っている。
『…………あぁ、あっ…………あ』
桜は、ソファの背もたれに後頭部を乗せて天井を仰いでいた。
相変わらずのポーカーフェイスだ。ここまで来ると、本当に人形なのかとすら錯覚してしまう。
ただし、それはあくまで顔に限った話。ひとたびカメラが身体を接写すれば、途端に人間らしさが浮き彫りになった。
女子の指がクリトリスと膣内で踊るたび、陰唇がヒクヒクと蠢く。内腿が筋張る。ガラステーブル上の足指が、ぎゅっと縮こまる。
『やっ、かわいー。細い脚がピクピクしてる』
『感度自体はかなりいいよねー。不思議なくらい顔に出ないけど』
『だね。そろそろヒドい顔も見てみたいな』
映像の中の女子達は、桜の反応を愉しみながら、根気強く焦らし責めを続けた。
特にクリトリス責めは入念で、ローターや指の他、化粧グッズから取り出した刷毛のようなものが用いられる事もあった。
それは間違いなく効果的で、ポーカーフェイスこそ崩せなかったものの、様々な身体の反応を引き出していた。

3つめの動画がようやく終わった後も、俺の興奮は収まらない。
この動画が先週末のものだとするなら、桜は今週の前半ずっと、絶頂寸前のお預け状態だった事になる。
しかしよくよく思い返してみても、一切そんな気配はなかった。
常に注意して見ていた訳でもないが、普段が人形のようであるだけに、牝臭い雰囲気が少しでもあれば目立つ筈だ。
相当な演技派なのか、それとも性欲のスイッチを切り替える事でもできるのか。
いずれにせよ興味深い。

 ――でさ。見てれば解ると思うけど、桜ってすっごいクールじゃん?
  そーいう相手を嬲るってなったら、皆なんか熱入っちゃって、今までにない事しようって流れになってるんだ

陽菜の言葉を思い出す。確かに神秘的な桜なら、嬲り甲斐もひとしおだろう。
今さらながら、この後向かう先が楽しみになってきた。おまけに僥倖というべきか、そこには憧れの鞘本史織までいるんだ。
「ほいじゃ、ボチボチ行きますか……?」
俺の逸る気持ちを汲んだのか。陽菜はスマホをポーチにしまいながらそう言った。





陽菜に案内された先は、カラオケボックスではなく個人宅だった。
2階建てで、小さな庭と車3台分の車庫を備えた、そこそこ金のありそうな人間の家だ。
綺麗な石でできた表札に『舟形』とある所からして、誰の家かは想像がつく。
どうやらここが、今週の女子の『遊び場』らしい。
「桜んとこって、親が超忙しくてさ、年に数日しか帰らないんだって。
 おまけに一人っ子だから、この城を毎日独占ってわけ。ちょっと羨ましいよね」
陽菜はそう語りながらインターホンを鳴らした。
「ハーイ、あたしだおー。サオ役連れてきたよん」
開口一番、そう恥ずかしげもなく言い放つ。いつもながら明け透けな奴だ。
まぁこういう奴だからこそ、女子と話すのが苦手な俺でも気軽に付き合えるんだが。
「うい、入ってー。つっても、アタシん家じゃないけどさ」
苦笑交じりに返事があり、チョコレートのような玄関のドアが開かれる。

中もやはり広かった。土間からすぐに幅広の廊下が伸びていて、右手の階段を上れば2階のようだ。
ドアを開けた女子は、俺に階段を上るよう合図する。
「……ん?」
階段に足をかけた瞬間、俺は思わず鼻を鳴らした。何か嗅ぎ慣れない、生々しい匂いがする。
匂いは階段を上るにつれて強まった。どうやら元凶は、『桜の部屋』というプレートのかかった一室らしい。
入室に覚悟の要る場面だ。
俺が部屋の前で立ち尽くしていると、陽菜はその横を通り抜けて扉を開けた。
室内の様子が視界に飛び込んでくる。
無機質な桜の部屋とは思えないほど、女の子女の子した部屋だ。
閉め切られたカーテンはピンクのディズニー柄で、窓に面した学習机にもヌイグルミが山のようにいた。

意を決して足を踏み入れれば、室内にはそれなりの広さがあることが解る。
8畳ほどだろうか。壁際には巨大な液晶テレビがあり、映画さながらの迫力でAVが再生されていた。
それを真正面から鑑賞できる位置にソファが設置してある。
桜はその上にいた。
左右に大きく開脚したまま、膝を曲げる格好。太腿と脛が赤いロープで何重にも巻かれ、脚を伸ばす事はできそうもない。
その逃げられない状況で、秘部に白いマッサージ器が宛がわれていた。
マッサージ専用の道具だけあって、音も振動もローターの比じゃない。ヴヴウウウ、という駆動音は胸にくる。
すでに桜の女の部分は蜜にまみれ、マッサージ器の唸りに合わせてプシャプシャと愛液を撒き散らしていた。
しかも今は、映像内でそうだったように、下だけ剥き出しなんてレベルじゃない。
上も下も、正真正銘の裸……いや、紺のハイソックスだけが何故か残されているが、ほぼ丸裸だ。
ゴクリ、と喉が鳴った。
桜の色白な肉体が、網膜に焼き付く。
制服を着ている時でも華奢に思えたが、実際裸で見るとさらに細い。腕も腰も細く、胸もない。
ただし、乳首は興奮のせいかしっかりと勃起していて、平坦な板の上に赤いベリーが2つ乗っているようだ。
「あぅぅあ…………!」
と、ここで呻き声がする。
視線を上げると、ボールギャグを噛まされる桜の顔があった。
瞳は相変わらずガラス玉のようだが、ボールギャグの穴からは、かなりの唾液が胸板へと垂れていた。
おまけによく見れば、全身がオイルを塗りたくったように汗まみれだ。

 ――パッと見は人形みたいだけど、汗も唾液も出すって事は、やっぱ人間なんだな。

俺は今さらながらに思った。そう思わせる何かが桜にはある。だからこそ、女子達も責めに熱を上げるんだろう。


「ほーら桜、またイケないねぇ。残念ねぇ?」
桜が呻いた直後、女子はマッサージ器をあそこから離す。
とうとう目の前で露わになった、クラスメイトの『オマンコ』。スマホの粗い映像で見るより、やはり格段にいやらしい。
大陰唇は赤く充血して、膣の中が見えるぐらいに開ききっていた。
そしてその上部では、この離れた位置からでもはっきり解るほどクリトリスが勃起している。まるで小豆だ。

「ひえー……。この2時間弱で、やる事やってるねぇ」
陽菜が呆れたような口調で告げた。
いつも思うが、こいつは先陣を切って突っ込む割に、周りが盛り上がってくると引くタイプだ。
「あれ、ヒナじゃん」
女子の1人が陽菜の存在に気付いて顔を上げる。
「や。男優連れてきたよん」
陽菜が片手を挙げて俺を紹介すると、場の6対の瞳は一斉にこっちを向いた。
全員が俺のクラスメイトだ。そしてその中に、一際印象深い娘がいる。
サラサラの長い黒髪に、整った顔立ち。見間違える筈もない。俺のアイドル、鞘本史織だ。
でも……その印象は、教室でのものとは180度違った。
ベッドに寄りかかったまま、ショーツが見える事も厭わずに片膝を立てている。
俺を見上げる瞳は、いつもの穏やかなものとは違う、ヤンキーさながらの三白眼だ。
「えーっと……誰コイツ?」
史織ちゃんの口が開き、ドスの利いた声が漏れる。こっちとしてはその言葉、そのまま返したい所だ。
「や、クラスメイトじゃん。名前は忘れたけど。」
「えっと、確か葛西だよ」
女子が顔を見合わせながら言葉を交わす。こういう時、女子と接点のない身はつらい。完全なアウェーだ。
「つーかさぁ、男優って割にパッとしなさすぎ。大体、こんなの連れてきて大丈夫なわけ?
 もしアタシの本性が噂になってたら、元カレにチクッて埋めるから」
何よりつらいのは、史織ちゃんが顎を上げ、露骨に俺を見下しながら吐く言葉だ。
その一言一言が、2年間俺の抱いてきた恋心をズタズタに切り裂いていく。
週に2回は、彼女の恥らう姿を妄想して抜いていたのに。
「アハハハッ、史織ってば辛辣すぎ。マジで冴えない男子嫌いだよねー、アンタ」
「しかも笑えんのが、これで男子の一番人気って事だよねー。女ってホント怖いっしょ、葛西君?」
女子達が腹を抱えて笑う。
「大丈夫大丈夫、葛西ってクチ固いから。そこはあたしが保障するよ」
陽菜からのささやかなフォローが、せめてもの救いだ。

「うむぅ゛っ…………!!」

場の雰囲気を一変させたのは、桜のその呻きだった。
女子の1人が面白半分に陰唇を弄くったのが堪らなかったんだろうか。
「なによ、騒いで。ビラビラ指で擦られんのが、そんなにイイわけ?」
「こんだけ充血してたら、神経むき出しって感じなんじゃないの。
 あたしが大学生の彼氏に前戯されまくった時だって、触られるだけで感じたけど、ここまで膨れてなかったもん」
「クリに化粧して、マンコにマッサージ器当てて、指入れて……ってもうずっとやってるしね。
 桜って責めても顔にでないから、ついついやりすぎちゃうんだよねぇ」
女子の数人が、意地悪そうに目を細めて桜を眺める。
一見するとイジメのようだ。イジメとイジリは一文字違い、という言葉を思い出す。

「んでさぁ、陽菜。そこに突っ立ってるサオ役、この中の誰とやらせんの?
 追い込みの仕上げに、桜の目の前でセックスさせんでしょ」
史織ちゃんがより深くベッドにもたれながら、俺を顎で示して言う。
俺は肩が強張った。本性が見えたとはいえ、あの史織ちゃんに名指しされると緊張が隠せない。
「んー、それなんだけどさ。出来れば史織にお願いしたいんだよね。葛西って、史織の事好きらしいし」
陽菜が言うと、史織ちゃんの顔が露骨に不機嫌になる。
「はぁっ!?」
三白眼がまず陽菜を見やり、次いで俺を威圧するように睨み上げる。
「ねぇ、ソレ本気で言ってんの?」
顔は可愛いのに、ひどく怖い。場の注目もあって、俺は一瞬否定しようとした。
でも、心の底から欲が湧いてくる。何かの間違いででも、あの史織ちゃんとセックスができるチャンスなんだ。
けして女子にモテる方じゃない俺にとって、こんな機会は二度とはないだろう。
だから俺は、生唾を呑みこみ、史織ちゃんの三白眼を見つめ返した。
「…………実は、そうなんだ。ずっと好きだった」
「ウザッ、キモッ!!」
俺の言葉を想定していたかのように、即座に罵倒が飛んでくる。
それでも俺は、運に恵まれていた。
「まぁまぁまぁまぁ。アタシに免じて、一つ折れてやってよ。こいつ、これで悪い奴じゃないんだよ?」
まず陽菜がフォローをくれる。もっとも、俺がNGになって別の男を連れてこいという展開を面倒がってだろう。
しかしこれがきっかけとなって、場の雰囲気が変わる。
「そうだよ、やっちゃいなって史織。どうせ、もう何十人も喰ったビッチマンコなんだからさぁ」
「そうそう。第一これぐらいの顔の方が、セックスが生々しくていいって。どっちもアイドル級の美男美女とか、つまんねーし」
「だよねー。美女と野獣ってやつだよ」
クラスの女子3人の意図は解らないが、多分『どうでもいい』んだ。
自分達がセックスを見せる流れ以外なら何でもよくて、とりあえず熱の冷めないうちにショーを始めたい。そんな所か。
「は? ふっざけろって!」
史織ちゃんはいよいよ不良丸出しの口調で反論したが、陽菜も含めると4対1。
口達者な4人を相手に勝ち目などなく、5分後には渋々ながら承諾する形となった。
俺のせめてもの夢が現実になった瞬間だ。


「ジロジロ見んなよ!」
史織ちゃんから罵声が飛んでくる。
制服を脱ぎ捨てる彼女を、少し長く見すぎたらしい。
でも仕方のない事だ。ずっと憧れていた相手が、すぐ目の前で服を脱いでいるんだから。
態度や顔つきが変わり果てていたとしても、身体は毎日こっそり覗き見ていた彼女のものに違いない。
膝上スカートから伸びる理想的な脚線。ほっそりとしたウエスト。Cカップはありそうなお椀型の胸。
さすがは全高校男子のアイドルにして、『芸能界入りしていないのが奇跡』とまで言われる女子だ。
同性である女子さえ、そのスタイルに見入っている。
いち早く制服を脱ぎ終えていた俺は、用意していたコンドームの袋を取り出した。
袋を破り、丸い輪になったゴムを取り出す。そしてそれを、興奮ですでに勃起しきっている亀頭へと宛がった。
しかし、そこからが上手くいかない。
両手の4本の指でゴムを掴み、アレの形に沿って下ろそうとするも、ゴムのたるみの部分が解けない。
何度も変にひっかかり、手間取ってしまう。
「うわ……まさか、童貞?」
服を脱ぎ終わった史織ちゃんが、ゴミでも見るような目で罵ってくる。女子の笑い声もする。
視界の端では、桜の瞳がこっちを見つめているのも見えた。
気のせいだろうか。いつもガラス玉のように見える瞳が、今は少し濡れているように見えるのは。
その些細な発見がガス抜きになって、俺に少しの冷静さをくれる。
落ち着いてやれば、コンドーム装着はそう難しい事でもなかった。

ヴァージンロードを歩むような気分で、史織ちゃんと横並びのままベッドに近づく。
ベッドの場所は、ソファに対して左斜め60度の位置。距離も俺の足一つ分ほどしかない。
ソファに腰掛ける桜達にも、している所がよく見える事だろう。
「あたしがリードするから、寝といてよ童貞」
言われるがままに、俺はベッドに横になる。史織ちゃんはそんな俺をしばし睨み下ろした後、ベッドに乗った。
細い脚が俺を跨ぐ。ギシリ、とベッドが軋む。
「動くなよ」
史織ちゃんは、右脚を直角に立て、左膝をベッドに突いて挿入の姿勢を整えた。
やわらかく暖かい肉の感触が、俺の右足の付け根に広がる。
あの鞘本史織の脚の肉。そう考えると、勃起がさらに強まって痛いほどだ。
史織ちゃんの指が俺のモノを掴んで固定した後、少しずつ腰が沈んでくる。
「ああっ…………!!」
殺す余裕もなく声が出た。
パンパンに張った俺自身が、熱く柔らかい肉の襞に包まれていく。その未知の感覚が凄すぎた。
挿入はスムーズで、俺のモノは二秒とかからず、すべて史織ちゃんの中に埋没する。
膣内はすでに濡れていた。桜が延々と寸止めされているのを見て、密かに興奮していたんだろうか。
こういう場所に顔を出している所からして、興味がない訳ではないんだろうから。
一方で締め付けはあまり感じない。
初めてのセックスだから、他の女子と比べて緩いのかは知らないが、湯を含ませた真綿で包まれているような感覚だ。
けれども、俺は満たされていた。
産毛ひとつない、憧れの女子の下腹が目の前にある。手入れされた彼女の陰毛が、俺のそれと絡み合っている。
その事実だけで、もう精神的に射精しそうだ。
「うわぁー入った。ねぇ史織ぃ、どうなのよ?」
「超ビンビン。気持ち悪すぎ」
女子の問いに対し、史織ちゃんは吐き捨てるように言う。そして同時に、腰で水平な円を描くような動きを始めた。
「ぁうううっ!!!」
俺は裏返った声を発しながら、無意識に腰を浮かせてしまう。
勃起しきり、精神的にも充足した状態のモノでグリングリンと円を描かれてはたまらない。
「動くな、っつってんだろ!」
史織ちゃんは綺麗な眉を顰め、平手で俺の脇腹を叩いた。バチンッ、と音がする。
でも今の俺には、それすらも快感を増す刺激になってしまう。史織ちゃんの膣襞を押しのけるようにして、いよいよ勃起が深まっていく。
「んっ!?」
瞬間、史織ちゃんから声が漏れた。
「どうかしたの、史織?」
「べ……別に何でもないし」
女子からの問いには平静を装うものの、間近で繋がった俺には解っている。
史織ちゃんは多分、俺が勃起した瞬間に感じたんだ。見開いた瞳で一瞬下腹を凝視した事が、その根拠だ。


仲間内に何でもないとアピールした手前、史織ちゃんは余裕を見せて腰を動かすしかない。
でも、上下左右に腰を振りたくるうち、少しずつ変化が始まる。
まず何よりも、膣の締め付けが増した。膣壁が八方から迫ってきている、という感じだ。
襞が膨張したせいか、それとも身体に力が入っているせいか。いずれにしても、明らかに感じているんだろう。
俺のその予想を裏付けるように、史織ちゃんが上下に腰を振るたび、水音が大きくなっていく。
明らかに愛液のせいだ。
最初は膣内が潤んでいる程度だったものが、今や俺の陰毛を朝露まみれのような状態にさせている。
尻穴の方にもとろりと生暖かいものが垂れることがあった。
「あ…………あっ、あ…………ぁっ………………!!!」
色っぽい小声が漏れ始める。とうとう、史織ちゃんの表情そのものが変わってきていた。
仲間に見えないよう俯いても、真正面から見上げる俺にだけは隠せない。
眉根を顰め、唇をいの字に合わせて耐えようとするものの、すぐにその両方がふわっと解ける。
あ、という喘ぎ声が漏れるのはその時だ。
その様子は純粋に可愛くて、されるがままだった俺の心に良くないSの心を目覚めさせた。
いつの間にか史織ちゃんの腰は『逃げ』に入っている。
なるべく長持ちするように、ほとんど動いていないに等しい、小さな円運動ばかりだ。
その生殺しのじれったさが、俺の理性の蓋を壊した。
俺は責めに出る。

視界の端で再生されているAVも、ちょうど女主導の騎乗位だ。
その動きを参考に、俺は両の手の平を天に向け、史織ちゃんの太腿を押し上げた。
これまでの浅い抜き差しから一変し、怒張の半分以上が空気に触れるほどのストロークだ。
「ちょっ、触んなって…………」
史織ちゃんは俺の鳩尾に手を突いてコントロールを取り戻そうとする。
しかし、それよりも俺が手を離す方が早かった。
高々と持ち上げていた腕の力を、すっと抜く。すると当然、太腿は急降下する。
加速度に自重も合わさり、怒張の根元まで深々と。
「ッッああぁあああっ!!!」
効果は覿面だ。AVの中の喘ぎとシンクロするように、史織ちゃんの声が響き渡った。
史織ちゃんが天を仰いだために表情までは解らないが、女子達の様子から察する事はできる。
「うわ、え、え、何? チョー気持ち良さそうなんだけど」
「ちょ、ちょっと史織ィ…………あんたまさか、コイツ相手にイッた?」
同性というものは辛辣だ。異性ならオブラートに包むような問いを、ズバズバと投げかける。
「ふざっけ…………そん、な…………」
史織ちゃんは息を切らせながら反論しようとする。その気丈な姿は、やたらと嗜虐心を煽った。
なるほど今なら、こいつらが桜に執心だった理由もよく解る。
虚勢でも平然としているタイプほど、責め甲斐がある。
俺は再度『史織』の太腿を持ち上げた。そして反抗の隙を与えず、落とす。
「くぁっはああぁっ!!」
期待通りに上がる声。俺はいよいよ調子づいて繰り返した。
持ち上げては落とし、持ち上げては落とす。俺自身の望むストロークで膣を突く。
当然、その度に嬌声が上がった。女子達も最初こそ顔を見合わせて戸惑っていたが、いつの間にか合いの手など入れてくる。
そうなれば祭りだ。ワッショイワッショイ、と学年のアイドルを追い込んでいく。
史織は、最初こそ前屈みになり、俺の胸へと手を突いていた。それが抜き差しを重ねるごとに、頼りなく揺れ始める。
そして最後に安定を求めたのは、俺の膝付近を掴んでの弓反りの姿勢だった。
その時点でもう彼女の腿に力はなく、俺の上でペタンと、いやグニュリと腰を抜かしている。
「へへ……終わったぜオマエ」
気付けば俺は、自分でも意識しない言葉を吐いていた。学年のアイドルを傀儡化する悦びに酔っているのか。
汗まみれの腿から両手を外し、脚の付け根を伝って、細いウエストを鷲掴みにする。
これまでは微妙に遠く、抵抗される恐れもあった為に掴めなかった場所だ。
ここさえ掴んでしまえばこっちのもの。強烈なストロークに加え、深々と腰を沈めさせる事すら可能になる。
「ちょ、ちょっと…………」
史織が見下ろして何か言っているらしいが、知った事じゃない。童貞の猛りはもう止まらない。

パコッ、パコッ、と股座に空気を含ませつつ肉のぶつかる音がする。
グチュッ、グチュッ、という水音も、それに掻き消されないほどに生々しく響き渡る。
「すごーい、超音してるよ」
ソファの女子達は、その音を聞いては囃し立てていた。
音も確かに凄い。ただ、膣内の混乱状況はそれ以上だ。
両手で史織の腰を高く持ち上げてから、逆に引きつけるようにして膣奥を突く。
すっかり膣が狭まり、恐らく『子宮が降りてきた』状態の史織には、これだけで感じる要素として充分だろう。
俺はこれを何度か繰り返しては、トドメの駄目押しをした。
腰を下ろさせる瞬間、俺自身も大きく腰を反らせて、いよいよ強烈に膣奥を突き潰す。
この瞬間、史織は確実に逝っていた。
声こそ出なくとも、膣内の異常なほどの締め付けで絶頂の瞬間がわかる。
それが終わると膣がふぅっと緩くなるが、俺にしてみればちょうど良い小休止だ。
腰を小刻みに揺らしながら、スカスカになった膣を突き上げ、奥をイジメて締め付けを復活させていく。
この繰り返しだ。
何度が射精しているのかもしれないが、萎える気配はない。
何しろ俺の上で、憧れだった鞘本史織のスレンダーな身体が揺れているんだ。
妙に甘ったるい汗の匂いもするし、胸板に滴ってさえいる。
それが興奮材料となって、俺のモノにマックス以上の勃起状態を維持させていた。
「ひぃっ、ひっ…………! はっ、ひぃっ…………!!」
荒い呼吸に混じって、悲鳴のような声が聴こえ始めた。そして史織は、最後の力を振り絞って身を捩る。
でも、男と繋がったままで動ける範囲なんてたかが知れたものだ。
悪戦苦闘の末、結局はベッドに崩れ落ちた彼女に俺が覆い被さる、正常位の格好になった。
方向が180度変わったせいで、AVを参考にする事はできなくなった。
しかし今度は、その向かい側、桜達のいるソファが見える。

俺は、ここで初めて桜の変化に気付いた。
いつの間にだったのか。彼女はもうポーカーフェイスじゃない。
ボールギャグを噛まされたまま、幼い女の子のように目を見開いている。
そしてその秘部は、誰も触っていないにもかかわらず、ヒクッ、ヒクッ、と喘ぐような開閉を繰り返していた。
割れ目から愛液がねっとりとあふれているのも見える。
どうやら彼女もまた、俺と史織の獣のようなまぐわいに見入っているらしい。
そうと判れば、いよいよ熱が入るというもの。
俺は史織の両膝の辺りを掴み、力強く腰を打ちつけた。
「あ、ああっ……あああ、やっ……ああっあ………っっ!!」
史織は自然に喘ぎを漏らすようになっていた。
姿勢の移動で力を使い果たしたのか、両腕で枕を抱え込んでされるがままだ。
この晒された腋が妙にエロい。勿論腋だけでなく、腕も、乳房も下腹も足も、全部がシミ一つない綺麗な肌だ。
俺はその至高の芸術品を蹂躙し続けた。
体位が変われば音も変わる。
膝立ちになった俺の足と史織の背中がシーツに擦れ、さすさすさすさす、という摩擦音が絶えない。
これでは見世物として寂しいというものだ。
だから俺は、掴む場所を変える。史織の膝から、両脚の付け根へと。
「やぁっ、やめっ…………そ、そ…………っ、ん゛んんっっ!!!」
脚の付け根を引きつけながら腰を打ちつけると、徐々に史織の腰が浮いてくる。
結合部が膝立ちになった俺の股間である以上、本来はそれが自然。今までが上からねじ込む形だっただけだ。

抜き差しがスムーズになったと同時に、肉の弾ける音が再開する。
パンッ、パンッ、パンッ、という派手な音と、その裏で鳴るグチュグチュという水音。
すでに史織の中は大洪水なんだから、それは音も凄い。膣内での攪拌は水飴を練るがごとくだ。
パフォーマンス目的で行ったこの責めは、意外にも史織の弱みを抉ったらしい。
「はぁっ、はひっ、ヒッ……はぁっはっ、あ、やあっ……はっ、はーっ……!!!」
息遣いが刻一刻と早まっていく。
掴んだ太腿の付け根に筋が浮き、背後ではピーンと伸びた足指がシーツを掴んだ気配がする。
そしてその直後。
「あっ、ああ、ああっ…………あああ、ああイクッ!
 ……ああっあっああっはああッ…………いっくっっ…………!!!」
史織は切迫した喘ぎを繰り返した果てに、身体を弓なりに反らせてイッた。
勿論、絶頂という行為そのものは今さらだが、今のは宣言まで行ったのがでかい。
ちらりと横を見ると、桜の秘裂がいよいよ物欲しげにヒクついているのが解った。
他の女子達も落ち着きがなく、余所見をしていたり、スカートを上から押さえていたり、カレンダーを確認したりしている。

俺はその様子に嬉しくなり、汗まみれの史織の腿を掴み直す。
「ほら、シャンとしろよ」
ぐでっとシーツに背中を付けた史織に言うと、学年のアイドルだった女は、目に涙を溜めながら頭を振った。
「いや…………イッたから。今、イッたから…………」
「何言ってんだ、さっきからイキまくってただろ」
俺がバッサリ斬って捨てると、史織の顔が歪んだ。

「やーまさか、ここまで乱れる史織が見られるとは思わなかったよ。
 桜嬲ってる間に、すっかり温まっちゃってたのかな」
「ひょっとしてだけどさ。葛西クンって、実はすんごいヤリチンさんだったり…………?」
「や、っていうか絶対そうでしょ。腰グイグイ押し付ける動きとか、手慣れすぎだもん。
 あんなの、誰だって感じるに決まってっし」
「もしくは、単純に凄い身体の相性が良かったり……?」
「つーか陽菜さ、やたら葛西推しなのが最初から怪しかったんだよね。
 実は味見済みで、リーサルウェポン送り込んだんでしょ?」
「いやいやいや、違うって! あたしもこの展開はビックリっていうか、何ていうか…………」

周囲のざわめきを心地良く感じながら、俺は史織を喰らい尽くす。
対面座位から、身体を横に割る側位に変えて突く。さらに這う格好を取らせ、背後から腰を掴んでグイグイとねじ込む。
バックで突けば、つぱっ、つぱっ、と変わった音が繰り返された。
学校中の男子が夢中になっている美脚の間から、次々と愛液が零れていく。俺の膝にも垂れてきてむず痒い。
「あああうああっ、いくぅいくっ、いくーっ!! やばい、やばいやばいこれっ……ああっ、くぁああま゛だイグウぅうぅーッッ!!!!」
史織は完全に我慢をやめ、愛液同様に本音を漏らすがままになっていた。
クラスメイトから、顔やばいよ、などと茶化されても、反応する余裕すらないらしい。
俺はその状態の史織を容赦なく責め立てながら、ただ一点を見つめ続けた。
瞬きも忘れてこっちを凝視する、桜の瞳を。自分がどんな顔をしているのかも解らないまま、ただ真っ直ぐに覗き込んだ。





その日は、どうやって家に帰ったのか覚えていない。
立て続けのセックスで疲労困憊なうえ、桜の家の場所すら良く知らないときた。
気絶した史織を返す為にタクシーが呼ばれた所までは覚えているから、それに同乗して帰ったのかもしれない。
気付いた時には自分の部屋で、ベッドに横になったままボーッとしていた。
疲れはあるが、興奮の方が大きくて寝付けない。
妙な集いに誘われて、初めてクラスメイトの裸を見て、憧れのアイドルと散々にセックスしまくった。
1日で色々と起こりすぎて、何の現実味もない。
強いてリアリティを挙げるなら、右手を鼻に当てて嗅げば、指の間から史織の匂いがする事ぐらいだ。
クラスの連中が史織とすれ違ったとき、ふわりと香ったと狂喜乱舞するものの、何百倍も何千倍も濃厚な匂いの原液。
それが手に染み付いている。
「…………つーか、さすがに殺されそうだな。俺」
つい、独り言が漏れてしまう。学年のアイドルである史織が涙を見せれば、漏れなく全男子が俺の敵になるだろう。
これはもう、ほとぼりが冷めるまで学校を休むしかないか。
丁度俺がその結論に達した時、携帯が鳴る。
知らない番号だ。まさか明日といわず、早くも史織親衛隊が怒鳴り込みに来たんだろうか。
俺はしばらく悩んだ末に、その電話に出ることにした。
「葛西です」
まずは名乗って様子を見る。開口一番に怒鳴られる事を考え、スマホ本体はやや離して。
しかし、そこから数秒間、何も聴こえない。
不審に思ってスピーカーに耳を当てると、小さな声が聴こえてきた。
「あの…………葛西くん?」
聴こえないのか、という空気の声だ。俺は悪い事をしたと思い、すぐに返事をする。
「あ、ああ」
「あ、聴こえる? ……よかった」
声は確実に女だ。女のボソッとした感じのハスキーボイス。だが、誰なのかが解らない。
陽菜の常時腹から出しているような声とは、まずまったく違う。史織のそれとも質が違う。
「ごめんね、急に電話したりして。今、大丈夫?」
「あー……ああ」
俺は訝しみつつ、一応相手の言葉に応える。多分最初の方で名乗っていたんだろうから、改めては訊きづらい。
女子と簡単に仲良くなれるタイプの奴なら、ここでスパッと訊くのかもしれないが、俺には無理だ。
「陽菜にこっそり教えてもらったんだ、葛西くんの番号」
陽菜にこっそり教えてもらった。このワードを聞いて、俺は唐突に思い当たった。
桜だ。
「あ、あのー…………舟形さ」
「桜でいいよ。なに?」
カマをかけると、見事に正解。焦らし責めを受けていた、あのポーカーフェイスの桜だ。
「や、その……急に電話くれるなんてさ、ちょっとビックリして。どうかしたの?」
俺がそう訊ねると、電話の向こうで沈黙が降りた。訊いてはまずい内容だったかと焦った矢先、返事がある。
「ううん、どうもしない。どうもしないけど、何となく人恋しくて電話したの。
 陽菜から聞いてるかもしれないけど、この遊びね、夜の間は貞操帯を着けさせられるんだ。
 だからどれだけ火照ってても、その、自分では鎮められなくて。だからせめて、誰かと話して気を紛らわそうって思ったの。
 …………ごめん。自分で言ってて思ったけど、すごく身勝手だよね、こんなの」
普段の無口さが嘘のように、桜は淡々と語り続ける。
今の分だけでも、教室内で発した言葉の量を上回ったんじゃなかろうか。
「いや、それは全然構わないんだけど……話し相手、俺でいいの?」
「うん。無関係な人には言いづらいし、陽菜達には、私がこうして弱音を吐いてるって事、知られたくないんだ」
桜の声には、確かな感情があった。普段の人形のようなイメージとは違う。
ひょっとすると、その『人形のようなイメージ』自体、彼女が必死に演じているものなんじゃないだろうか。
だとすれば、俺だけに胸の内を明かしている今、本当の彼女はどんな表情をしているんだろう。


俺はそれから、桜と初めて話をした。
話と言っても、他愛もない事ばかりだ。最近ハマっているテレビ、教師の陰口、好きな芸能人。
そういった話をしている最中にも、桜は荒い呼吸を続けていた。
やがてはその呼吸が早まり、電話の向こうから衣擦れのような音が聴こえるようになる。
「もしかして……してる?」
気になってそう訊ねると、桜はあっさり認めた。
「うん。貞操帯があるから、叩いても擦っても楽にならないのは解ってるけど……先週末からずっと、する事しか考えられなくて」
その言葉に、俺は胸が痛む。
「……悪かった。我慢してる桜の前で、あんな事して。ヘラヘラ笑ってる場合じゃなかったよな」
俺の謝罪で、再び桜に沈黙が降りる。ただ気のせいか、今度の沈黙は前とはまた違うように感じられた。

「…………ねぇ、葛西くん。セックス、気持ちよかった?」
不意に、その質問が来る。
「あ、ああ」
「やっぱり。すごく気持ち良さそうだったもんね。史織ちゃんだってそう。
 あんな史織ちゃんを見るのは、初めてかな」
桜はそこで一旦言葉を切り、息を吐いた。耳元にゾクッと来るような溜め息を。
「実は、私ね。史織ちゃんがしてるのを見て、いつのまにか自分に重ねてたの。
 腰がぶつかり合って、音がするたびに、自分がされてる気分になった。
 焦らされてる時以上に、愛液が止まらなかった」
電話の向こうで、衣擦れの音が激しくなる。吐息もいよいよ熱くなる。
「葛西くんは、そんな私を見てたよね。すごい目力で、ずーっと…………」
「あ、いや、あれは…………」
「あの視線でね、私、壊れちゃった。葛西くんに見られて、ヘンになっちゃった。
 本当は、何となく人恋しくて電話したなんて嘘。他の子に弱みを見せたくないっていうのも嘘。
 ……葛西くんがね、葛西くんのあの目が忘れられなくて、夜中に迷惑だって解ってたけど、堪らなくて電話したの」
ほとんど泣くような声。無機質なんてとんでもない。ここまで感情の乗った声なんて、滅多に聞かない。
俺は自分でも無意識に、桜の名前を呼んでいた。
桜はすぐに返事を返す。
「明日は金曜日だから、やっと私の番も終わり。明日からはもう貞操帯もない。好きにしていい。
 でももう、自分で慰めたって満足なんてできないよ。
 葛西くん、お願い。明日もまた、ウチに来て。今度こそ、本当に私を抱いて。
 私、初めてだから、泣いたり取り乱すかもしれないけど、気にしないで。
 今日史織ちゃんにしたみたいに、滅茶苦茶にして!」
まさに必死の哀願。
ここまでされて断るバカはいないだろう。いくら女に不慣れな俺だって、そんな事はしない。
「わかった。心配すんな、嫌ってほど滅茶苦茶にしてやる。……また明日な、桜」
俺は、腹の底から力を込めて約束する。電話口の向こうから、安堵の溜め息が漏れた。






次の日俺は、登校直後から大人数の視線に晒される破目になった。
とはいえ、恐れていたような敵意の視線じゃない。多くの視線が物語るのは、嫉妬と驚愕だ。
「お早う、葛西くん」
元凶となったのが、史織のこの一言だ。
普段通り大和撫子然とした顔で、にこやかに俺に挨拶なんぞをしてくる。
高嶺の花どころか、エベレストの山頂に咲く花のような鞘本史織がそんな事をすれば、嫌でも目立つ。
「ああ、おはよう……」
そう言い捨てて逃げるように教室内へ入ると、ここでもまた同じ事が起きた。
「おはよう、葛西くん」
自分の席へ向かう途中で、そう声が掛けられる。
無口で無表情、ロボットか人形かと言われている舟形桜が、自分から男子に声を掛けるなど、こちらも世紀の珍事件だ。
ざわめきが教室の内外に広がっている。
まさか平々凡々な俺が、人の噂の中心になろうとは。いい迷惑だし望んでもいないが、逃げ出す訳にはいかない。
俺は男として約束したんだ。桜を満足させてやると。



「…………痛いか?」
俺は組み敷いた桜に問いかける。
「へいき」
桜は目尻からつうっと涙を流しながら、小さく首を振った。
いつもはガラス玉を思わせる瞳が、やけに生々しく濡れている。
陶器のような肌は頬を中心に赤らみ、汗に塗れている。
黒いセミロングヘアも汗で萎びて、部分部分が首筋や頬にくっついている。
ついに表れた『舟形桜』の人間的な表情は、ゾクッとくるほど可愛いかった。
おまけに桜の締め付けは、史織以上に強い。きゅうきゅうと吸い付いてきて堪らない。
今思えば膣奥が複雑にうねる史織の中も良かったが、桜はまたタイプの違う名器に思える。
「じゃ、動くぞ」
俺は一言断りを入れ、ゆっくりと腰を使い始めた。ぱんっ、ぱんっ、と乾いた音がする。
「んっ……あ、ああ…………あ」
桜はすぐに甘い声を上げ始めた。つい先ほど破瓜を経験したばかりなのに、感じているようにしか見えない。
焦らしに焦らされて、すっかり快感を得る準備が出来ていたせいだろうか。
俺は少し安心して、約束通り桜を『滅茶苦茶にする』準備に入った。
昨日史織にしたように、膝立ちでしっかりと腰を掴む。そして引きつけながら、こっちも強く腰を叩きつける。
「ぃひっ!!」
悲鳴が上がり、どこを見ても華奢な身体が弓反りになる。でもその顔は、苦しみながらも笑っていた。
そして俺が獣のような突き込みを繰り返すにつれ、その笑みはますます蕩けるように変わっていく。

「ねぇ、ちょっとぉ。いつまで桜としてるわけ? いい加減、こっちも焦れてるんだけど。
 あたしを待たせるとか、他の男子が知ったら大ブーイングだよ?」
ソファの方から声がする。見れば史織が、ソファの背もたれに肘を乗せてふて腐れていた。
そもそも呼んですらいないんだが、俺と桜の約束を看破したらしく、勝手に下校ルートを付いてきたパターンだ。
「お預けだよ。たまにはいいだろ、なぁ桜?」
「うん……焦らされた後の方が、普通にするより気持ちいいよ」
「はんっ、それって完全にイヌの発想なんだけど。…………ったく、じゃ待っててあげるから、さっさと交尾済ませなよ」
俺と桜の言葉に、史織は刺々しく返す。ただ、緩んだその瞳と頬には、満更でもないという色が窺えた。

桜をイカせるだけイカせたら、次はまた史織を足腰が立たなくなるまで責め抜いてやる。
史織が終わったら、また桜だ。
そうしてお互いがお互いのセックスを見て焦れている様は、さぞ可愛い事だろう。
問題があるとすれば、この色魔さながらの表情を見せ始めた二人を相手に、俺自身がどこまでもつかだが…………
そこは何とか、辛抱するとしよう。



                                          終わり

 
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緋艶蝶

※アナル中心のレズいじめ物。
 羞恥責めの連続なので、各種スカ(大・小・嘔吐)成分アリ。



日本には、“眠らない街”と呼ばれる繁華街がいくつかある。
喜多茅町もその一つだ。
古くには博徒の街として栄え、明治以降はチャイニーズマフィアの溜まり場であるこの街には、警察権力も及ばない。
交番など完全にお飾りで、かつてそこで息巻いていた正義感溢れる新任婦警も、2年後には薬漬けのソープ嬢となっていたという。
喜多茅を治めるのは法律ではなく、鉄のルールだ。
当然、主要産業である風俗店の間にも独自のルールが存在する。
『年度内に最も多い売り上げを記録した店は、2位以下となった店のNo.1嬢を引き抜く事が出来る』というものだ。
400を超える店の売り上げ争いは熾烈を極める。
エースを引き抜かれた店は没落し、首位を捕った店が天下を握る……その乱世が喜多茅の常だった。
しかし。ここ3年ほどの間、喜多茅の空気は落ち着いている。
すべては、蓮宮京香という嬢の存在ゆえだ。

『緋艶蝶』の京香といえば、今や押しも押されぬ喜多茅No.1ホステスと噂されている。
しかし、京香に水商売の女という雰囲気は微塵もない。むしろ一般的な女子大生よりもよほど清楚に見える。
それもそのはず。京香は地方屈指の名家、蓮宮の令嬢なのだから。
家の没落で風俗に売られる事になったとはいえ、その育ちの良さは誰の目にも明らかだ。
高校卒業と同時に『緋艶蝶』へ入った当初、京香は先輩風俗嬢から様々な嫌がらせを受けたという。
しかし、1年が経つ頃にはその噂も聞かなくなった。
呆れるほどに真面目で、心優しく、誇り高い京香と接するうち、店中の人間が毒気を抜かれたのだそうだ。
客からの評判も大変に良い。
親身になって客の話を聞き、時には休みを潰してまで客に付き合う。
その心遣いに感動した人間は、次々に京香の常連となった。
大の風俗嬢嫌いで知られる県議会議員でさえ、視察で京香と話して以来、熱烈な支持者に転身した。
そして、京香の特異性はもう一つある。
キャバクラ嬢による枕営業が横行する喜多茅において、京香は一度も身体を売った事がない。
純粋な真心だけで、数知れぬ男を虜にするのだ。
その理想的な在り様は自然と他の嬢にも伝播し、『緋艶蝶』で枕をする者はついに居なくなった。
それでも売り上げは底無しに上がり、喜多茅でも4、5番目に甘んじていた『緋艶蝶』は、やがて頂点の座を手にする。
京香の率いる良心的な『緋艶蝶』が王座に尽いた事で、喜多茅の争いにも凪が訪れた。

それから3年が経った今……とうとう平穏が破られる。
黒い噂の尽きないSMクラブ『セピア・リップ』が、『緋艶蝶』を抑えて覇を成したのだ。
噂では、京香が現れて以来の和やかな喜多茅をよく思わない店が結託し、様々な工作をしたのだという。
違法薬物を使い、客を無理矢理縛り付けたという説まである。
しかし事実はどうあれ、鉄のルールは曲げられない。
『街で最も多い売り上げを計上した店は、2位以下となった店のNo.1嬢を引き抜く事が出来る』。
『セピア・リップ』はこの引き抜き対象として、迷わず京香を指名した。

< 天誅の対象は、勿論『緋艶蝶』の京香だ。
  清純ぶったその化けの皮を剥がして、最底辺のメス奴隷へと作り変えてやる。
  人を惑わす蝶の翅を引きちぎって、活気ある喜多茅を取り戻す!  >

その、悪意に満ちた宣告と共に……。





「まさか、お前を調教できる日が来るとはねぇ…………京香」
「人生解らないものね。腕が鳴るわ」
2人の女……恵美と碧が、京香を見下ろしながら笑った。
赤いボンデージ姿の恵美は、熟年体型とでもいうべき軽度の肥満で、お世辞にも美形とは言い難い。
青いボンデージ姿の碧は、対照的に華奢で童顔、小悪魔風のルックスだ。ただし、目元口元に底意地の悪さが浮き出ている。

一方の京香は、ほぼ丸裸だった。唯一身に着けているのは、犬のような鎖つきの首輪のみ。
その新雪を思わせる白肌や、ほどよく実った乳房や太腿、薄い茂みを隠す術はない。
喜多茅町の誰もが目にしたことのない姿だろう。
馴染みの常連客でも、胸元やミニスカートから覗く白い太腿まで、
更衣室を同じくする同僚達でさえ、上下の下着姿までしか、京香の素肌を見た事がない。
その絶対秘匿の宝玉がついに暴かれた。隷属という、最も屈辱的な形で。
「私こそ、あなた達のような人種と関わる日が来るとは思わなかったわ」
京香は、姿勢も正しく正座しながら2人の女を睨み上げている。
恵美と碧の両名に思う所があるようだ。
京香に限った話ではない。『セピア・リップ』に得意客を奪われ、潰されたホステスは多い。
客の身を本気で案じる京香となれば、なおの事そうした行為は許容しがたいのだろう。
「あーらナマイキ。『緋艶蝶』って、目上への礼儀は教えないのね。だから没落するんだわ、どこぞの名家みたいに」
碧が嘲り笑うと、京香の目つきがいよいよ鋭さを増した。
「何だいその目は。お前はウチの新米で、アタシらはそのお前に講習をつけてやろうって立場なんだよ。
 だったら、どうすればいいかぐらい理解できるだろ。仮にもこの街でNo.1を張ってたならさ」
恵美が嘲るように追い討ちをかけると、京香は唇を引き結ぶ。
低俗な人間に頭を下げるなど、軽々しくできる事ではない。しかし、“やらねばならない”事でもあった。
 
京香は静かに三つ指をつき、少しずつ頭を下げていく。
腕の細かな痙攣から、いかに屈辱を感じているのかが伝わってくる。
恵美と碧の2人は、その様に口端を吊り上げた。
「…………私の、お尻の穴の調教を…………お願い致します」
屈体の後、震える声での宣言がなされる。
京香にしてみれば充分に屈辱的な宣言。しかし調教師の女2人は、不満げに眉を顰めた。
「カマトトぶるんじゃないよ。お尻の穴じゃなく、“薄汚いアヌスの調教を”だ。やり直しな!」
赤いエナメルブーツで京香の頭を踏みつけたのは恵美だ。
まるみを持たせた手の甲に額を擦り付けながら、京香の肩が強張る。

「わ、私の……………………う、薄汚いアヌスの調教を………お願い、いたします…………」

間を置きつつの苦しげな宣言。床についた手が握りこまれた様子からも、並ならぬ屈辱が読み取れる。
京香はその心根と同じく、器量に優れる娘だ。
背の半ばほどまで伸びた、織物のように上質な艶の流れる黒髪。
くっきりと開いた、いかにも優しげな瞳。
ごく小さな鼻梁に、やはり小さな気品溢れる唇……。
肩書きを一切伏せても、その上質さは隠せない。世界的なアイドルか、あるいは女優か。
それほどの逸材が、床のタイルの上で、丸裸のまま土下座をしている。
しかもその床には、ガラスの浣腸器やボウル、アナルパールやボールギャグなど、様々な淫具が散乱しているのだ。
その光景は、異常という他はない。

「そう、それでいいのよメス豚」
碧がブーツを鳴らしながら歩み寄り、恵美が首輪の鎖を引き上げる。
「ぐっ…………!」
上向いた京香の優しげな瞳は、しかし不屈の意志を秘めていた。
「あら、まだこの目だわ。面白い」
碧は言いながら、床に落ちていた道具の一つを拾い上げる。
通称『豚鼻フック』。相手の鼻にフックを掛けて吊り上げ、顔を醜く歪める事で屈辱を与える道具だ。
京香は、フックの先から碧の顔へと、苦々しい視線を這わせた。
「まずはその、澄ましたお面を剥いであげる。」
碧はそう言いながら、鈍く光るフックの付け根を握り直した。

 
「……っしゅんっ! くしゅっ、んん゛っ!! あっ、はッ……はーっ…………」
立て続けにくしゃみの音がし、荒い呼吸がそれに続く。音を立てたのは京香だ。
素晴らしい形をした彼女の鼻は、鼻腔が完全な三角になるまでフックで引き絞られている。
そしてその鼻腔の中には、今また2本の“こより”が碧の手によって挿入される。
京香の細目が、不安そうにその手元を追った。
「あっ、あっ…………ン゛っ、ふぁっ…………!!」
“こより”が慣れた手つきで前後左右上下へと揺り動かされると、京香の目はいよいよ細まる。
ぞくん、ぞくんと細い肩が震えていた。
鼻の粘膜を弄られてすっかり敏感になったのか、刻一刻と反応が早くなっていくようだ。
柳眉がつらそうに顰められ、整った顎が浮き、白く揃った歯が『い』の形のまま震え……限界が来た。
「っぷしっ! っくし、っくしゅっ! はぁっ、はぁあっ……ああっ!!」
こよりを吹き飛ばした一度目は勿論、抜かれてからも断続的にくしゃみが出る。鼻水と涎が散る。
「あーあー、ズルズルになっちゃって」
碧が笑いながらこよりを投げ捨て、京香の鼻の下を手で覆った。
そしてしとどな鼻水と涎を、ヌチャヌチャと音を立てながら京香の顔中に塗りつける。
「んっ!!」
京香は露骨に顔を歪めるが、それで手を緩めるような碧ではない。
彼女の足元には、粘液で使い物にならなくなった“こより”が20本以上も散らばっており、
恥辱の鼻責めがかなりの時間に渡って続けられた事を物語っていた。
「惨めだねぇ。喜多茅のNo.1ホステスともあろうお方が」
背後から京香の肩を押さえ込んでいた恵美が、前方に回りこみながら言う。
当然、京香の表情を歪ませる目的でだ。
「…………はっ、はあぁっ…………こ、この程度で恥を掻かせたなんて思わないで。
 あなた達のような人間に何をされたって、私は、不運なアクシデントとしか思わないわ」
依然として荒い呼吸のまま、京香は調教師の2人を睨み据える。
並の人間なら気圧されて一歩後ずさるような気迫だ。そう、並の人間なら。

「あーらそうかい、そりゃ好都合だね。まだ洗礼の序の口なんだから、この程度でネを上げられちゃ興醒めさ」
冷ややかな口調で、恵美が囁きかける。
彼女の片手には、ステンレス製の刺々しい開口具が握られていた。
「これは、ホワイトヘッド開口器といってね……耳鼻咽喉科で扁桃腺手術をする時なんかに使われる器具さ。
 お次は、これで口の開きを良くしてから、ディープスロートの特訓と行こうじゃないか。
 鼻水や涎なら出しても平気のようだけど、ゲロをブチ撒けても、まだその澄まし顔が出来るかい?」
その言葉が終わらない内に、碧が慣れた手つきで京香の口を開かせにかかる。
頬を両側から押し込み、同時に鼻を摘む。こうされては、ただでさえ呼吸の苦しい京香は大きく口を開くしかない。
そこにスパイダーギャグが嵌め込まれた。恵美の太い指が素早くネジを巻き、ギャグを開口状態で固定する。
口の開き具合は凄まじく、舌はおろか上の歯並びや喉奥の様子まではっきりと視認できてしまう。
鼻フックと相まり、惨め極まりない有様だ。
「ほぅらご覧よ、すごいじゃないか。こんな表情をするのは生まれて初めてなんだろ、お嬢様?」
頬を叩いて京香に横を向かせながら、恵美が言う。
その視線の先にあるのは、調教部屋の壁を一面覆い尽くす巨大なミラー。
「うあ……ゃ、あ」
ミラーに真正面から顔を映すことになった京香は、今一度眉を顰める。
「フフ、何言ってるか解らないわ。まぁ何を言ってたとしても、今さら遅いけどね」
碧は満面の笑みを浮かべながら、京香の首輪を引いた。


「どうだい、立派なもんだろう」
恵美が京香に問う。
正座した京香の前には、人間大のガラス板が設置され、ちょうど男の腰ほどの高さに黒いディルドウが嵌め込まれている。
極めて精緻に男性器の特徴を模したものだ。
「これが大体、男の平均サイズさ。最も本物は、血管が浮き出て男臭くて、恥垢やら毛に塗れてるのもあるけどね。
 そのリアルに比べりゃあ、こんなものは可愛いオモチャさ」
ディルドウの先を撫でながら、恵美は笑った。
「………………」
京香は毅然とした態度で、その恵美を冷ややかに見上げている。
すでに鼻フックも口枷も取り去られ、美貌は元の通りだ。
しかし、今度は両手首に木枷が嵌められ、首と横並びになるよう拘束されていた。
一時的に首輪が取り去られたとはいえ、虜囚としての惨めさは変わらない。

「さぁ、じゃあそろそろおっ始めようか」
2人の調教師は、その有様をしばし面白そうに眺めてから行動に移った。
碧が京香の顎を掴み、恵美が後頭部を両手で押し込んでディルドウに近づけていく。
「っ…………!!」
京香は一瞬苦々しい表情を見せたが、ここで抗っても仕方がない。
慎ましい桜色の唇を開き、ディルドウを迎え入れた。ディルドウは女2人の力により、ずるりと喉の奥まで入り込む。
「……………………ぅ゛っ、う゛ぇっ………………!」
ディルドウが8割ほど埋没したところで、京香が小さく肩を竦めてえづきを漏らした。
口戯の経験さえ全くない彼女に、喉奥への刺激はさぞ辛かろう。
しかし調教師達の目線で言えば、獲物が見せる弱みこそが、つけ込める絶好の隙なのだ。
「ほぅら、どう、美味しい? 今まで何十人って娘のえづき汁を吸ってきたディルドウよ。甘く感じるんじゃない?」
碧はよく通る声で囁きかけながら、恵美と息を合わせて長いストロークを取る。
大きく引き、押し込み、大きく引き、押し込み。
それを都合4回繰り返した後、最奥まで呑み込ませたままグリグリと捻り込むように頭を左右させる。
そこで3秒ほど留め、引き抜く……と見せかけて、浅く引いただけでまた最奥まで押し込む。
寒気がするほど良く慣れたディープスロートの仕込みだ。
「…………ン、ふっ…………フーッ………………」
意外なことに、京香はこの間、えづき声を出さない。たまに鼻から小さく漏らす程度だ。
しかし喉からはカポッ、カポッと空気と水分の混じりあった音が鳴っており、間違いなく喉奥を蹂躙されていると判る。
また、眉の角度は平坦ながら、その間隔が狭まる事もある。けして楽ではないのだろう。

2回ほど上の行動が繰り返された後、トドメとばかりに4秒ほど最奥に押し付けてから、初めて調教師の手が離される。
「ォあっ!……はっ、ハッ、……はーーっ…………はーっ……!!」
京香は弾かれたようにディルドウを吐き出し、俯きがちに荒い呼吸をはじめた。
口周りに唾液は見えない。しかし……ディルドウの方には、先ほどまでの反応の薄さが嘘のような量が付着している。
全体がヌラヌラと濡れ光り、凹凸のある部分は白くさえ見えた。
「アハハッ、玩具がドロドロじゃない! これが、あの『緋艶蝶』の京香が出したえづき汁なのね。
 ここに纏わりついてる分だけでも、万札出して買う客がいそうだわ」
「いいねぇ、ホントに売っちまおうか。こいつの身体から出る汁という汁を売り捌きゃ、いい小遣い稼ぎになりそうだ。
 馬鹿みたいなカリスマぶりも地に堕ちるだろうしねぇ」
辱めの言葉をかけて京香を煽りながら、調教師達は再び京香の頭を掴む。
「っ…………!!」
「ふふ、“まだやるのか”って感じの顔だねぇ。生憎、今のはただの慣らしさ。ここからが本番だよ」
恵美の口元こそ笑う形をしているが、瞳はそうではない。それは、強い信念を持って凶行に及ぶ者の特徴だ。
京香の喉が、被虐への覚悟を決めるようにゴクリと鳴った。

 
2度目のディープスロート。それは、初めから前回とは違っていた。
恵美と碧の手でディルドウを喉奥まで咥え込まされた直後から、京香の喉がケコッ、ケコッ、と鳴りはじめる。
「ぶふぁっ!!」
鼻から噎せるような声がそれに続いた。それでも、調教師達は最奥まで呑み込ませたままだ。
その間にも喉奥からはカコッカコッと音が鳴る。
京香の胴体に動きはないが、木枷の上で両手が握られ、眉がとうとう角度をつけて顰められる。明らかに苦しげだ。
そこから、さらに3秒。
調教師の手が離れた瞬間、京香は堪らずといった様子で横を向いた。
「こぉっ…………あはっ、あ…………えァっ………………!!」
ディルドウの直径そのままに大口を開け、かなりの量の唾液を吐きこぼす。
唇を閉じて唾液の糸が切れてからも、さらに数滴が俯いた顔の下へと滴り落ちていく。
明らかに前回よりも余裕がない。さらに今度は、休息すら許されなかった。
「まだよ。休ませないわ!」
碧が珍しく厳しい口調で告げ、涎まみれの京香の顎を掴みあげる。そして、すぐにディルドウへと向かわせた。
本当の地獄は、ここからだった。

「ン゛んも゛ぉおぉえ゛…………っっっ!!!!」
京香が令嬢らしからぬえづき声を上げたのは、4度目のディープスロートを強いられた時だ。
ガラス面にべったりと鼻を押し付けるほどにまで深く咥えさせられ、さすがに我慢のしようもなかったらしい。
醜く開いてへし曲がった唇からは、しとどな唾液が溢れてガラスを伝う。
ディープスロートが進むごとに唾液の線は増え、ガラスに泡をつけて洗浄しているような光景になる。
「ぁぶはあっ!!!」
たまに息継ぎを許される時には、床にびちゃびちゃと音を立てて大量の涎が零れるようにもなった。
涙こそ流れないが、その表情は若い娘が人目も憚らず号泣する時のもの。
本来の京香は、人前でそのような顔を見せる娘では断じてない。
借金の肩に売られた時でも、『緋艶蝶』でいびりを受けていた頃ですら、一切の弱さを見せずに周囲の度肝を抜いてきた。
しかしその鋼の清冽さも、喉奥を抉られ、かき回される物理的な被虐の中では崩れ去るしかないようだ。

最初の『決壊』は、意外にも淡白なものだった。よく見返せば、前兆は確かにあったようだ。
それまでされるがままにディープスロートを受けていた京香が、何度も顎を上げ、ディルドウを吐き出そう吐き出そうとする。
ぶふっ、ぶふっ、と鼻から咳が噴き出す音もしていた。
おそらくはこの時、京香はどうしようもない吐き気に襲われていたのだろう。
当然、恵美と碧がこの変化を見逃す筈がない。彼女らは顔を見合わせ、さらに数度のストロークを経て京香の頭を引く。
ずるりとディルドウから京香の口が滑り落ちる、その瞬間、吐瀉物が零れた。
「あうぇお゛っ…………」
すでに口の下半分を満たすほどに溜まっていたものが、開いた口からヌルヌルと流れ出す。
京香の口と同じ幅から細い流れへと絞り込まれ、静かに床へ滴っていく。
そして流れが終わった後は、残りが千切れたミルクの膜のように木枷へと張り付く。
「あーあー、吐いちゃって」
碧がそう言いながら、京香の肌へと指を這わせた。
顎に、首元、木枷を通って、太腿……吐瀉物が落ちたラインと併走するように。
「はぁっ、はっ、はっ! …………あ、あなた達が…………はあっ……吐かせ、たのよ………………!!」
かつてないほどに息を切らせ、京香は調教師達を睨み上げる。
様になるものだ。芸術品のような目尻から、苦しみの涙さえ零れていなければ。
「そうだったかしら。でもその太腿に乗った熱い液は、お前自身の胃にあったものよ。……そして、今からかかる分もね」
碧はそう言い、京香の髪を鷲掴みにする。同時に恵美も、陰湿な笑いを湛えながら京香のうなじを掴む。
そして、何の容赦もなくディープスロートを再開させた。


「ごぉお゛ぅうええ゛っ!!! もごっ、ふぉぉお゛お゛ぅえウ゛エえ゛ッッ!!!!
嘔吐後の再開時からは、明らかに京香の反応が違っていた。
えづき声がとにかく凄まじく、身の捩り方も尋常ではない。
腹筋は激しく蠢き、太腿はきつく閉じられたかと思えば、左右いずれかの膝頭を跳ね上げる。
「フフ、凄い。一度吐いちまえば、この女でも脆いもんだね」
恵美が京香の横顔を覗き込みながら、面白そうに告げた。
その言葉通り、今や京香はひたすらに嘔吐を繰り返している。
「ごぶっ、ぶふゅっ!!げおっ、がぶふっ!!」
激しく頭を前後されている間には、吐瀉物とも涎ともつかない液体が大量にディルドウを伝い、ガラス表面を上書きする。
「けっ……は、かッ…………オお゛ぅえ゛っ…………!!」
喉奥まで咥え込ませてから解放すれば、すぐに俯いて吐瀉物を零す。
あれほどぴしりと整っていた美しい正座が、もはや影もない。
全体として膝立ちに近く、足指はつま先を立てるようになり、常に吐く準備をしているような前傾姿勢だ。
明らかに品がなく、だらしない。当然その姿勢も恵美達の罵りの種になったが、京香からすればそれ所ではない話だ。

一体どれほどの時間、この醜悪な地獄が繰り返されたのか。
一体何十度に渡り、嘔吐と空嘔吐が繰り返させられたのか。
京香は、生理的な反応に塗れていた。
額にびっしりと汗を掻き、虚ろな両目からは涙の線を零し、閉じない口からは唾液を零す。
胃液とえづき汁の混合物は、木枷の穴を通り、京香の前身を濡らしていた。
白く美しい首筋が、乳房が、下腹が、泡立つ汚液で汚されている。
特に太腿などは一面ヌラヌラと濡れ光り、その脚の間には、まさしく『夥しい』量の薄茶色をした半固形物が広がっていた。
「ああ、臭い臭い。この部屋じゅうに、お前のゲロの匂いが充満してるよ」
「ホント。客からの噂じゃ、お前ってどんな時でもいい匂いをさせてるって噂だけど、とんだ嘘。
 男が憧れるピンクの唇からちょっと奥にいけば、こんな汚物溜まりなんだから……詐欺みたいよね」
わざとらしく鼻を摘みながら、恵美と碧は思いつく限りの罵りの言葉を並べていく。
「…………あ…ああ゛………」
自らの吐瀉物を見るともなしに眺めながら、京香はしばし呆然としていた。
しかし、数秒後。強く手を握り締めると、はっきりとした意思を秘めて顔を上げる。
「こんな事で、私は折れないわ……。どんな辱めにも耐えて、きっと『緋艶蝶』に返り咲いてみせる」
その瞳はまさしく、緋色に輝く艶やかな蝶そのものだ。
恵美と碧も、ここに来てのこの気迫に、一瞬侮蔑の言葉を途切れさせた。
しかし、冷や汗が首元に届くよりも前に、彼女らは冷たい笑みを取り戻す。この辺りは流石に、一流の調教師というべきか。

「へぇ、そうかい。でもそれは、随分と空しい覚悟だよ、メス豚。
 ここは、お前が従順になるまで調教をする部屋だ。逆に言えばね、お前は堕ちるまで、この部屋から出られないんだよ!」
「そうよぉ。お前みたいなハネッ返りは、今まで何人もいたけど……全員、この部屋で変わったんだから。
 そいつらの一人は、そうねぇ…………『これ』で汚物をぶちまけた時に、ポッキリいったわね」
恵美の罵りを碧が引き継ぎ、床からガラス製の浣腸器を拾い上げる。
「お前にもご馳走してあげるわ。グリセリンとか酢とか、色んな物のスペシャルブレンドを、たっぷり。
 浣腸に慣れたブタでもウンウン唸るようなキッツイのを、丸一晩我慢させてあげる」
まさしく悪魔のような表情で、碧が笑う。
「勝手に……すればいいわ」
京香はなお毅然とした表情で言い放った。しかしその美しい額からは、また新たな汗が伝い始めていた。





「…………と、ここまでが昨日の調教内容さ」
臨時休業となった『緋艶蝶』ロビーのソファに腰掛け、恵美が告げる。
その恵美を上座に据えたまま、数十人が固唾を呑んで巨大なモニターに見入っていた。
モニターには、調教部屋の様子を記録した映像が流れている。
3箇所のカメラが京香の被虐を撮影していたらしい。
首輪だけの丸裸で土下座する姿を、俯瞰から。
鼻責めに苦悶する姿を、前方から。
イラマチオで嘔吐する姿を、ガラスを隔てた真正面から。余す所なく、1秒の飛びもなく記録してある。
それを見せられた『緋艶蝶』関係者の表情は暗い。
先輩ホステスは、初めこそ嫉妬の念があったものの、今では京香を一流の人間と認め、多くは妹のように可愛がっている。
後輩ホステスは、京香を純粋に尊敬し、その在り様に憧れて水商売の世界に立っている。
ボーイ達も一人の例外なく京香に好意的で、信奉に近い想いを抱く者さえいる。
その京香が虐げられている様が、愉快であろう筈もなかった。
しかし、文句はつけられない。『セピア・リップ』はこの街のルールに則っているからだ。少なくとも、表に見える部分では。

「い……今は、何をしてるの!?」
後輩の1人が、堪らずといった様子で尋ねた。やや垢抜けない、運動部の後輩という印象を与えるホステスだ。
恵美は可笑しそうに後輩ホステスを見やった。
「いい質問だね。あのメス豚は……今この瞬間も、浣腸を我慢してる最中さ。
 昨日の晩、盥一杯に浣腸液を作ってご馳走してやったのさ。
 幼児用のプールに出来そうなサイズの桶で、しまいにゃああの娘、下腹がポッコリ膨れてたっけね。
 ポンプ式の絶対に漏れないアヌス栓を嵌めたから、自力での排泄は無理だ。
 アタシはそこで仮眠に入ったけど、今はもう1人が張り付いて、監視ついでに遊んでるだろうね」
その答えに、後輩ホステスの表情が強張る。
恵美は満足げな表情で続けた。
「そんなに気になるなら、ウチの店に着いてきな。それも、なるべくなら多いほうがいい。
 10人のギャラリーが揃うまで、排泄させないって決めてるのさ」
先輩ホステス、後輩ホステス、ボーイ……その全てが、この言葉に息を呑んだ。
そして、互いの腹の内を探るように顔を見合わせる。
育ちのいい京香のプライドを傷つけると知りながら、見に行くか。
10人が揃わないまままごつき、余計に京香の苦しみを増すか。
誰にとっても難しい決断だった。
恵美はその動揺した空気に、いよいよ機嫌を良くしていく。
「老婆心から忠告するけど、決めるんなら早くしな。
 京香にした浣腸は結構強力なヤツでね。実際、栓をしてから3分も経たないうちに、出したいなんて言い出してたんだ。
 それを一晩我慢してるんだから……解放は、一秒でも早い方がいいんじゃないかい」
この言葉をきっかけとして、後輩ホステスの数人が立ち上がる。
「あ、あたし、行きます!」
「私も!!」
その空気に煽られ、他のホステスやボーイからも次々に志願者が出た。
悲壮な表情の並ぶ中、恵美のそれだけが違う。
「おやおや。家族も同然の身内が、こんなに居る前でひり出すなんて……
 今度こそ心が終わるかもねぇ、京香」
その醜悪な囁きは、誰にも認識される事はなかった。



調教部屋に入った瞬間、『緋艶蝶』の面々は目を見開いた。
先導する恵美が口に指を当て、声を上げるな、という合図を出す。

調教部屋の中央には、首輪だけをつけた汗みずくの女が吊るされていた。
腕は万歳をする形、脚は大股開きの状態で枷を嵌められ、天井から下がる鎖と繋がれている。
当然、秘裂や肛門を隠す術はない。極めて屈辱的な格好だ。
目隠しとボールギャグで顔は解らないが、その美しい黒髪や新雪のような白肌は、それだけで京香だと特定し得た。
しかし、その本来美しいウェストラインは歪に膨れ、雷轟のような音を立て続けている。
「ようやく来たのね。待ち侘びたわ、私も…………この豚も」
碧がそう言いながら、京香の乳房の先を捻った。
「うもぅうっ!!」
「あらぁ、イイ声。さっきまで針山みたいに扱われてたココが、そんなに善いのかしら」
ボールギャグから漏れた切ない呻きを、即座に碧が詰る。
京香の両の乳房は、果たしてどれだけ嬲られたのか。全体のサイズが、前日の映像より2周りは大きい。
乳輪は明らかに肥大化してふくりと盛り上がり、乳首はしこり勃ち。
碧が捻っていないほう……左の乳首などは、今もなおニップルポンプが取り付けられ、限界まで細長く吸引を続けていた。
乳房だけではない。
恵美の言葉通り、京香の肛門には菊輪を覆い尽くすような栓が嵌まり、さらにそこからバルーンが垂れ下がっている。
臀部の下辺からは汚液が滴っていた。
直下の床は汚液溜まりと言っていいほどだ。しかし、それすらもごく一部。大半は栓に阻まれ、出したくても出せないのだろう。

女性器の周辺にも変化があった。
薄い茂みがすっかり剃られ、幼児のような白い丘にされている。
それによりいよいよ露わになった性器の上部から、細いチューブ状のものが垂れていた。
チューブは中ほどでピンチコックによって留められ、尿道側からの液体の流出を阻んでいるようだ。
「浣腸だけじゃ物足りないだろうと思って、膀胱にも“ちょっと”入れてみたの。
 便意だけじゃなく尿意まで限界のまま一夜を過ごすって、たまらないでしょう?」
「ああ、そりゃそうだ。碧の事だから、ちょっとなんて言って、軽く600ミリ以上は入れたんだろ?
 膀胱の容量が大体500ミリ。膀胱壁が膨らめばもっと溜められるとはいっても、そこまでになった時点で脂汗ダラダラだ。
 それを、4時間だか5時間だかなんて…………ゾッとするよ」
恵美は、背後の人間へ聞かせるように語りつつ、指を鳴らして合図を出した。
それを受け、碧が冷笑を湛えながら京香のボールギャグを外す。
濃厚な唾液が無数の糸を引いた後、桜色の唇が忙しなく動いた。

「っぷはっ!! ……だ、出させてっ! おねがいっ、は、早く、はやくさせてっっ!!!」

まさに“必死”の哀願。いかに気品溢れる京香といえど、身を焦がす排泄欲には抗えないようだ。
『緋艶蝶』のメンバーが一斉に顔を顰める。
「あらぁ、4時間前とは打って変わって素直ねぇ。でも、したいってだけじゃ伝わらないわ。『何が』したいの?
 『おしっこをしたい』のか、それとも、『下痢便をぶち撒けたい』のか。どちらかを復唱なさい」
その言葉で、京香の口の動きが止まった。
狡猾な選択肢だ。本当の所、京香は何よりも排便を望んでいるのだろう。
しかし、こうも屈辱的な復唱を強いられては、京香自身のプライドがそれを許さない。
答えは一つしかなかった。
「お……おしっこが、したい…………したくてたまらない」
震える声で京香が告げると、碧はわざとらしく手を叩く。
「あーら、そう。私はてっきり、うんちの方かと思ったんだけど……そっちはまだ我慢できるの。お前って凄いのね」
嘲るように囁く碧。そして京香が反論するより前に、その指は鮮やかにピンチコックを解いた。

「うっ!?……くっ、ぁああ、……ふぁああああーーーっ!!!」
膀胱内の圧が変わり、溜めに溜めていた尿が一気に放出される。
その開放感に、京香は声を抑えられない。
「ハハ、すごいすごい、大洪水じゃないか! こりゃあ600ミリどころでもなさそうだね。
 おーおー、せっかくゲロを掃除したってのに、また真っ黄色に汚しちまってさ」
放物線を描いて床に飛沫を上げる放尿。それを前に、恵美もまた声を高める。
無論、感動からではなく、京香の恥辱を増すためだ。恵美と碧の全ての行動原理は、それに集約される。

ようやくに放尿が終わった後、京香の下半身からは雫が滴り続けていた。
尿の一部が前方ではなく、性器の方へと滴っていたからだ。
それを濡れタオルで拭き清めながら、碧は京香に何事かを囁き続ける。
京香の顔が歪む事からして、聞き流せるような事でもない。
恐らく碧は一晩中、そうして京香の恥辱を煽り続けたのだろう。
そこへ恵美が歩み寄った。腰に手を当てながら京香の陰核の部分を凝視する。
「おや、クリトリスがすっかり勃起してるじゃないか。まぁ小便を我慢してると、勃っちまう奴隷もいるけどね」
「どうやらこの生娘のお嬢様も、おしっこを我慢して興奮しちゃうマゾみたいね。
 どうせだから、もうちょっと高めてあげましょうよ」
碧はそう言うと、床の箱から一つの道具を取り出した。綿棒ほどの、凹凸のある細い棒だ。
「メス豚、これが何か判る? これはね、おしっこの穴を開発する為の道具よ。
 ほら、解るでしょう。この凸凹が、尿道の入口と、奥側のクリトリスの根元を絶妙に刺激するの。
 一度これを味わったら最後、みーんな病み付きになっちゃうんだから」
京香の頬に淫具を擦り付けながら、碧は告げる。
そしてアルコールで除菌した後、改めて尿道口に押し当てた。
「はぐっ……!」
挿入の瞬間、京香は小さく呻く。しかし碧の指がゆるゆると前後しはじめると、ただ荒い息を吐くばかりとなった。
「ほぅら、どう。気持ちいいんでしょう」
碧は熟練の手つきで道具を前後させる。その度、京香の内腿がびくりと強張った。
「おやおや、こりゃ善さそうだ。どれ、こっちも可愛がってやるよ」
恵美の方も、尿道責めでいよいよ屹立しはじめた陰核を摘み上げる。
「ふうああっ!!」
「ふふ、珍しく可愛い声が出るじゃないか。まぁ無理もない、私と碧の二箇所責めは、女泣かせだからねぇ」
言葉が切れると共に恵美の指が蠢き、京香の身体がぶるりと震えた。

「う、くそ…………京香さんっ………………!!」
『緋艶蝶』の人間は、ただ歯噛みしながら眼前の陵辱劇を見つめる。
調教部屋の四隅を『セピア・リップ』御用達の暴力団員が固め、無言の圧力を掛けているせいだ。
下手な真似はできない。
しかし無力に見守っている間にも、京香はいよいよ追い詰められていく。
「あああっ、ああっ、くぁああ……あああっ!! もっ、やめっ…………はぁああっっくぅ!!!」
京香は喘ぎ、歯を食い縛りながら激しく頭を振っていた。
その声色からは、彼女が幾度も幾度も絶頂に至っている事が生々しく伝わる。
手足の鎖が煩く鳴るのも、異常性を際立たせる。
「フン、まだまだ止めるもんか。もっと派手に突き抜けるんだよ、メス豚!」
「そうよ。可愛らしい声出す余裕があるうちは、休ませないわ」
女2人は巧みな指遣いで京香を責め立てた。
京香は身を震わせ、愛液を散らしながら喘ぎ続け…………やがて、その声色が変わる。

「やめてぇっ、やめっ……!! あ、くぁぁああ…………おお゛っ!!
 あぐっ、ひっぐっ…………んんんんああああ゛っ、あっはあああっおおお゛お゛っ!!!!」
喘ぐのではなく、口を尖らせて腹から出すような嬌声。
その快感の凝縮された呻きは、数限りなく陰核絶頂を迎えた先の段階である事が明白だった。
「お、出た出た。やっぱりこの声じゃないと、アクメ極めさせてるって感じがしないわね」
「ああ。ゾクゾクくる声だ。『カワイソウな私』演技が上手いねぇ、元お嬢様は」
調教師達は笑いながら、さらにしばし京香に絶頂を迎えさせる。
その果てに、京香には別の限界が表れた。

「お、お願い…………出させてっ! これ以上は、私、ほんとうにおかしくなる!!」
今までともまた切実さの違う懇願。碧と恵美が手を止めた。
「ふぅん、そう。それで、何がしたいの?」
今一度、問う。京香は歯を食い縛り、息を吐き出すように開いた。
「うん、ち……うんち!! はやくはやく、したい、したいはやく出させてぇっ!!」
あれほど聡明であったはずの京香が、単語でしか会話できていない。
これは排泄欲が本当の限界を迎えている人間の特徴だ。
そもそも、全身を覆いつくさんばかりの発汗や痙攣自体が、異常という他はない。
もはや瓦解は時間の問題。調教師の女達は、ここで最後の一押しに入る。
「何度も言わせるんじゃないよ。『下痢便をぶち撒けさせて下さい』……そうお願いするんだよメス豚ッ!!」
恵美が叫びながら、京香の尻肉に強かな平手打ちを見舞った。
「くうううっ!!!」
便意の限界の中、それはどれほどに効くことだろう。
再度訪れた、屈辱的な選択肢。しかし…………さすがにもう、拒む気力も体力も京香にはない。
むしろ、ここまでが耐えすぎたほどだ。
京香は強く歯を食い縛り、全身を震わせながら口を開く。

「…………お、お願いしますっ、下痢便をっ、ぶち撒けさせてくださいっ!!!
 言ったっ、ねぇっ、確かに言ったわ! だからはやく、はやく栓を抜いてぇっ、
 はやくぅウウううーーーーーッッ!!!!」
もはや京香の声は、普段とは全く違っていた。
見守る10人の同僚達さえ、目を瞑って聞けばそれが京香の声だとは思わない。本当の限界なのだ。
「はいはい。それなら、たっぷりと出しなさい……皆に見られながらね!!」
碧はそう言いながら、肛門栓から垂れているバルーンのスイッチを切った。
同時に恵美が、素早く京香の目隠しを取り去る。
「ふあぁあああああっっっ!!!」
肛門栓を吹き飛ばし、溜まりに溜まった大量の汚液があふれ出す。その開放感に、京香は高らかに声を上げた。
しかし、極楽気分もそこまでだ。
陶然として放出の快感に浸っていた京香は、ふと下方からの視線に気がつく。
そちらにぼやける視界を移し、見知った顔が並んでいる事に気付いた時…………京香の顔は、ふたたび凍りついた。
「え…………えっ? ど、どうしてっ!?
 い、いや…………いやぁあああぁっっ!! 見ないで、みないでぇえぇええーーーーっ!!!」
絶叫。しかし、肛門から溢れる汚液を留める事はできない。
手で恥部を隠すことすら叶わない。
「はははっ、それだけ盛大にひりだしといて良く言うよ。お前が力んで止めたらどうだい」
「全くだわ。人前でブリブリ下品な音を立てて、あさましい女。優しい同僚さん達も、さすがに見るのがつらそうよ」
恵美と碧は、桶に溜まっていく汚液を見下ろし、ギャラリーにも見せ付けるようにして嘲笑う。
『緋艶蝶』の人間からは、すすり泣きや苛立ちからの歯軋りがしはじめる。
「う、ふうっ……く、くぅ……うう゛っ…………!」
京香はとうとう、大粒の涙を流し始めていた。
苦痛に起因する反射的な落涙ではない、悲しみの涙。冷血なサディストにとって、砂糖より甘美な涙を……。


「この大人数の前で糞をひりだした気分はどうだい、京香お嬢様」
汚物の匂いが漂う中、恵美が粘着質な声で問う。
「………………っ!!」
京香は耳までを赤く染めて俯いた。恨み言の一つも返したい所だが、その余裕すらない。
京香は、人に寝巻き姿を見せる事すら女の恥、と教わって育った令嬢だ。
入浴後にもかっちりと洋装に身を包み、就寝直前の自室でのみ寝巻きの着用を許されたものだった。
その京香が、公衆の面前で排便を晒すなど……容易に受け止められる羞恥ではない。
何か言葉を発しようとするも、胸がつかえて涙ばかりが零れる。
そんな京香の様子を見かね、『緋艶蝶』のホステスの1人が拳を握り締めた。
「い……いい加減にしなよっ! あんた達、人間じゃないわ!」
「そ、そうよ! あの京香さんにここまでさせて、いい加減アンタらも気が済んだでしょ!?」
他の人間も便乗し、恵美と碧に批判的な視線を送る。
しかし……百戦錬磨の調教師2人は、それだけの敵意を向けられても涼しい顔を崩さない。
「フン。気が済んだ、なんてとんでもない。ホントのお愉しみはこれからさ。
 何せウチのボスからは、『アヌスを犯されただけで絶頂するメス奴隷になるまで』調教しろと言われてるからね」
「私達もプロだから、堕とす相手はきっちり堕とすわ。どんな手段を使っても、ね。
 お前達には私が人間じゃないように見えるようだけど、最終的に人間でなくなるのは、京香の方よ」
調教師としての自信に満ち溢れたその態度に、どのホステスも二の句が継げない。
その様子を恵美達は満足げに見やる。
絶望的な空気。それを破ったのは、か細い声だった。

「し、心配……しないで…………このぐらい、平気よ」
恵美と碧、そしてホステス達の視線が同じ方向に集まる。
そこには、汗みずくで息も絶え絶えながら、しかし瞳に確固たる決意を宿らせた京香がいた。
「私は、私のまま…………必ず戻るわ」
彼女とて余裕などない。けれども家族に等しい同僚達に、これ以上心配はかけられない。
それが、京香という女の矜持だ。
その姿に、ホステス達は切なさと希望のない交ぜになった表情を浮かべ、調教師2人は喜びを露わにする。
「へぇ、面白い。まだ頑張るなんて」
「その位でなきゃ張り合いがないさ。何しろ、この街で最も上等な女だそうだからね」
恵美と碧は、凛とした京香の瞳を闇で覆うかの如く、至近で覗き込みながら囁きかけた。
「さぁ続きだ、京香お嬢様。そのお綺麗な心が変質するまで、徹底的に躾けてやるよ…………!」





恵美の口から、今一度の含み笑いが漏れた。天井から縄で吊るされた京香の裸を見てのものだ。
排便の時と同じ……否、それ以上に惨めな格好。
乳房を搾り出すように後ろ手縛りを施された上で、その両手首を頂点として天井から吊るされている。
脚は両の爪先がかろうじて床につく。ただし太腿と足首は外側から縄で引かれ、菱形に近い形を強いられていた。
となれば当然、京香の肛門は丸見えの状態で、恵美の方へと突き出されることとなる。
「傑作だね、お嬢様。ストリッパーでもやらないような、あさましい格好だ」
恵美が、京香の伸びやかな脚に指を這わせて罵った。
「私は……あなたの悪趣味な縛めに、身を預けているだけよ」
京香は謗りを無視できない。口惜しげな表情が正面のミラーに映り込む。
上質な織物を思わせる彼女の後ろ髪は、その一部が手首の縄に巻き取られ、主の俯く動きを阻害している。
このため京香は、表情のすべてを、ミラーを介して背後の恵美に把握される状況にあった。
これはよく出来た嫌がらせだ。
恥辱の表情を常に確認できるのは勿論、責めを嫌って京香が身を捩るたび、彼女自身の体重が『女の命』である髪を痛めつけるのだから。

「……それにしても、ウチの特製浣腸はよっぽど効いたようだねぇ。
 おまえ、自分のアヌスが今どんな風か解るかい? すっかり開いて、ダリアの花みたいになっちまってるんだよ」
恵美はさらに言葉責めを続けた。
「いやっ!!」
排泄の穴を観察される恥辱に、京香の身が強張る。
自分の肛門が普通でない現状は、京香自身にも痛いほど解っていた。
括約筋は緩みきり、外気が腸内を撫でている。どれほど力を篭めようとしても、普段通りには締まらない。
「おや、今度はヒクヒクしはじめたよ。一体何を欲しがってるんだろ。
 口ぶりとはまるで逆の、本当にあさましい女だね、おまえは」
恵美は、京香の挙動の全てをあげつらい、言葉責めに利用する。
それは事実として効果的だった。する事の全てを否定されると、人間は心が消沈する。否定する相手に従順になる。
しかし京香には、まだ気概が残っていた。

「どうして、そこまで他人を見下せるの!?」
京香は鏡越しに背後を睨みつける。すると恵美は、よくぞ訊いたとばかりに口元を吊り上げた。
「なぜってそりゃあ、そうしていると愉しいからさ。
 上等な女が、自分の調教で下劣な生物に成り下がっていくのが面白いんだ。
 男が女の膣内へ欲望をぶちまけるように、私も上等な女の体内へドス黒い感情を塗りこめる。それだけだよ」
恍惚とした表情を浮かべながら、恵美は語る。
「自分で最低だとは思わないの? 他人に悪意ばかりを向ける人間は、いつか必ず報いを受けるわ」
京香がそう指摘すると、恵美の口元はいよいよ歪に歪んでいく。
「いかにもお前らしい考えだねぇ。生まれながらにして金持ちで、上品で、お美しい京香お嬢様。
 おまえみたいに綺麗事ばっかり並べる女が、一番イジメてて楽しいんだ。
 おまえから出る涙が、悲鳴が、呻きが――堪らないよ!」
恵美の分厚い掌が、京香の尻肉に宛がわれた。
生暖かさに京香の腰が震えるのを、恵美は面白そうに眺める。
「今だって本当は、この肛門に極太のアナルフックを引っ掛けて、縦に引き裂いてやりたいんだ。
 流石のおまえも、その瞬間にゃあ男みたいな叫び声を上げて、火がついたようにのたうち回ることだろうね。
 その光景はさぞや甘美だろうが、早々に壊しちゃあ調教も何もないもんだ。
 肉体は切り裂けないが、その代わり…………綺麗事づくしのその高潔な精神を、ズタズタにしてやるよ」
悪魔そのものの表情を浮かべながら、恵美は京香の尻肉を撫でた。
それを見て京香は理解する。この恵美という女は、言葉こそ通じるが、人間の心を持ってはいないのだ、と。


恵美は、両手で尻肉を鷲掴みにし、2本の親指で肛門を割りひらく。
浣腸でふやけた“ダリアの花”は容易に左右へと拡がり、桜色の直腸粘膜を悪魔に晒す。
「っ………」
京香は視線を斜め前に向けた。鏡を利用して背後を確認するためだ。
その京香の行動を読んでいたのだろうか。鏡の中では、恵美が醜悪な表情を湛えて待ち受けていた。
「丸見えだよ、お嬢様」
囁くような口の形で、恵美が告げた。それを見聞きした瞬間、京香はゾッとする。
釈迦の手の平の上で踊る孫悟空のように、行動の全てを掴まれているようだ。
 (この女が特別なんじゃない。調教師としての経験で、パターンを読んでいるだけよ)
京香はそう考えて平常心を取り戻そうとした。しかし、
 (…………でも、慣れている。気を抜けばきっとそのまま、ズルズルと堕とされてしまうわ…………)
不安が過ぎる。それは浅くだが心に根ざし、容易に除去できそうもない。

その心境を知ってか知らずか、恵美が次の行動を開始した。
膝立ちのまま肛門へと鼻を近づけ、わざとらしいほどに鼻息荒く匂いを嗅ぎ回る。
「ひぃっ!?」
京香は腰をびくりと跳ねさせた。
「ふん、何だい……内臓の匂いしかしないじゃないか。お前も所詮、ただの女なんだね。
 毎日上等な料理を食べて育ったお嬢様の腸からは、薔薇の香りでもするかと期待してたのにさ」
相手の羞恥を煽って反応を愉しみつつ、指先で菊の輪を撫で始める。
「くっ、ううっ…………!!」
京香はもどかしい気持ちのまま、鏡の中に視線を彷徨わせるしかなかった。
鏡面には、調教部屋の空虚な様子が映し出されていた。

『緋艶蝶』のギャラリーは、排便後の片付けの最中で退出させられている。
恥辱を与える用は済んだ、ここから肛門性感を仕込むにあたっては、野次馬が居ても邪魔なだけだ。
恵美は渋る一堂を追い立てながら、そうした事を口走っていたように思う。
相方である碧は部屋内にこそいるものの、一晩に渡って京香を嬲っていた疲れからか、椅子で寝息を立てていた。
すなわち今の状況は、京香と恵美の2人きりという事になる。
それはけして楽ではない。個別での調教は、二対一とはまた違う、ねっとりと纏わりつくような悪寒がある。
京香は前日の排泄我慢の際も、一晩中碧に張り付かれて乳房を嬲られながら、何度も悲鳴を上げそうになったものだ。

「もういい加減にして……気色が悪いわ。他人のお尻にばかり執着して、惨めな女ね!」
京香が嫌悪感も露わに言い放つ。
しかし恵美は、京香の花開いた菊輪をくじりながら、ただ歪に微笑むのみだ。
反論は追い詰められている証拠だと知っているのだろう。
実際、堪らない。
丸一晩に及ぶ浣腸の影響で、京香の肛門はすっかり敏感になってしまっている。
恵美はそのふっくらと膨らんだ紅の輪を、360度中の1度ずつ愛するような丹念さでもって嬲っていた。
親指と人指し指で内外から菊輪の一部を挟み込み、ゆるゆると、あるいはゴリゴリと扱く。
地味ながらこれが効く。極小の針で突くようなむず痒さと、じわりとした熱さが、肛門入口で踊り続ける。
「肛門だって立派な性器さ。お前だって、いい加減それが解ってきた頃だろう?」
恵美が嘲るように告げた。いよいよ喘ぐような肛門の蠢きを見ての言葉だろう。
「解るはずないわ」
京香としては、肛門性感など認められない。
名家の元令嬢として、眠らない街のNo.1ホステスとして、排泄の穴で感じているなどと公言する訳にはいかない。

「フフ、まだまだ強情だねぇ。愉しませてくれるじゃないか」
恵美は嬉しげに言いながら、今度は舌を使い始めた。
まずは肛門全体に口をつけ、強く吸引する。そのまま舌を伸ばし、穴の周りを丹念に舐めていく。
「ふああっ!?」
おぞましい未知の感覚に、京香は悲鳴を殺しきれない。
一方の恵美は、分厚い両手で京香の細い腰を鷲掴みにしながら、さらに舌での嬲りを深めた。
時には穴の内部にまで舌を入れ、腸壁の浅くへ唾液を塗りこめた後、猛烈な音を立てて啜り上げる。
ずずずっ、ずずずずうっ、という品のない音が調教部屋に反響する。
「や、やめ、てっ…………!!」
京香はたまらず震え声を漏らした。
汚辱感が強い。特に腸内に溜まった唾液を啜られる時には、羞恥心が自制を振り切ってしまう。
悲鳴だけでなく手首の縄までギシギシと音を立て、後ろ髪が根元から痛めつけられる。
「ぷはっ…………ふふ、いい反応だねぇ。本当にお前はアヌスの才能があるよ、京香お嬢様。
 羞恥心の強い人間ほど、背徳的な場所を責められれば弱いもんさ」
「い、いい加減な事を言わないで!」
「いい加減なもんか。アヌスの才能の有無ってのはね、キツめの浣腸をぶち込んでみりゃあ解るんだよ。
 才能のある人間は、ようやく来た開放の瞬間に、苦痛じゃなく蕩けた表情を見せるからね。
 ちょうど、さっきのおまえがそうさ」
言葉責めを交えつつ、恵美の指が肛門を撫でた。そしてそのままの動きで、肛門内部に埋没する。
「はぐっ!」
京香の喉から自然に声が漏れた。
「感じるだろう。おまえの出すための穴に、初めて外から侵入する固形物さ。しっかりと味わいな」
恵美は左手で京香の尻肉を鷲掴みにしつつ、右手中指で肛門内を弄り回す。
そして間もなく、人指し指も加えた二本指でも責め始めた。
「う、うぐっ…………!!」
京香にしてみれば堪ったものではない。
昨晩バルーン式の肛門栓を受け入れはしたが、自在に蠢く肉感的な恵美の指とは、比較にもならない。
おぞましい。ただ、おぞましい。

「……おまえの糞穴はぬるくて気持ちがいいよ。奥までしっとりと纏わり尽いてきて、これは良いねぇ。
 アヌスがこれだけ甘ったるく指を咀嚼してくるんだ。おまえだって本当は感じてるんだろう?」
肛門内で二本指を蠢かしながら、恵美が笑う。
恵美は、肥満体に似つかわしい太い指……その第二関節を巧みに用い、菊輪を刺激してきた。
前後に動かすのみならず、捻りを加えて。時には二本指を大きく縦に開き、肛門内を外気に触れさせて。
固い指でそれをされれば、腰も勝手に動こうというものだ。
「肛門で感じる事なんて、ある訳ないわ。すべてあなたの、都合のいい妄想よ」
京香は、この段階になってなお反論をやめない。
しかしその表情には、多分に戸惑いの色が混ざっている。恵美はその表情を観察しつつ、さらに指を増やした。
左手の二本指までも肛門内に捻りこみ、4方向から力を加えて、ぐっぱりと肛門を開口させる。
「ほぉーらご開帳だ。おやおや……どうやら“残留物”はないようだね。あったら、ガラスの棒で掻きだしてやったのに」
「く、ううっ…………!!!」
開ききった肛門内部をつぶさに観察される中、京香は奥歯を噛み合わせて恥辱に耐える。
同僚達の懐かしい笑顔だけを、心の光にして。


10分か、あるいは20分か。
恵美はどれだけの時間、指と舌を用いて京香の肛門をなぶり続けた事だろう。
その効果は確かなものだった。今や京香の肛門は、恵美に触れられていない時でさえじわりと熱を持ち続けている。
肛門周りの唾液が外気に冷やされていく様とは対照的に、温水の輪が肛門に嵌まっているかのようだった。
「ふぅ。これだけやりゃあ、下準備としては充分だね」
恵美は肥満顔を綻ばせた。下準備、というその言葉に、京香の目元が引き攣る。
 (精神的な疲れで、もう倒れそうなのに…………まだ本番があるっていうの?)
その京香の心中を他所に、恵美はまた一つの道具を拾い上げた。
ゼリーのような物体。女の恵美が普通に握れる以上、太さはさほどでもない。しかし、長さが尋常ではない。
加えてその表面には、大小様々な突起が無数に存在していた。
「よくご覧、京香。今からこの鰻みたいなディルドウを、おまえの腸にご馳走してやるよ。
 長さがあるぶん奥の奥まで届くし、合計64個のイボが、順々に肛門を刺激していく逸品さ。
 おまえのヒイヒイ善がる様が目に浮かぶよ。今まで何十という女が、私の目の前でそうなったからねぇ」
右手に握ったディルドウへ豪快にローションを塗りたくりつつ、恵美が語る。
「そう、危ない玩具ね。指を切らないように気をつけて遊びなさい」
京香は眉を吊り上げて嘲った。
その内心は憤りに満ちている。自分を自在に追い込めると頭から信じている恵美にも腹が立つ。
しかし同時に、ディルドウを迎え入れる事を、どこかで期待している自身が許せなかった。
浣腸で解れた所へ、指と舌で丹念に性感を目覚めさせられた肛門。そこをディルドウに穿たれれば心地が良い。
たとえそうした理屈が通ろうと、排泄の穴であまさしく感じる行為には違いない。
流されるものか。京香は口元を引き締めて決意を固める。
「そうだね、壊れないように気をつけようか」
恵美は呟きながら、ローションの一部を京香の肛門へと塗りつけた。
そしてディルドウの先端を、開いた菊輪の隙間に押し当てる。
「敏感になってる今の内に、しっかりと菊輪の快感を覚えこませてやるよ。後戻りできないレベルにまで、ね」
言葉が紡がれると同時に、ディルドウが僅かずつ肛門内部へ潜り込み始めた。
「………………っ!!」
京香は顎に力を溜めて堪える。

ディルドウの質量感は、恵美の二本指ともまた桁が違った。
みちみちと音もしそうなほどに肛門を押し開き、腸の深くまで入り込んでくる。
そこへ加わるのが瘤状の突起による刺激だ。縦、横、斜めの8方向の突起が、時間差で肛門を抉っていく。
突起の間隔は8方向でそれぞれ違い、タイミングが図れない。不意に大玉が来ることもあり、思わず腰が跳ねてしまう。
「どうだい、飽きが来ないだろう」
恵美はそう言いながら、じわりとした挿入を続けていた。
「ん、くくっ…………」
わずかに奥深くへ入り込まれるたび、京香の『未知』が塗り替えられていく。
極めて粘度の高いゼリー状のものが、みしりと腸奥までを満たす感覚は、極限の便意に近い。
臓器や子宮が圧迫され、ひどく息苦しい。そしてそれが、刻一刻と増していく。
「……はぁ、はぁっ…………!!」
自然と、京香の呼吸は荒くなった。緊張からか、身体中にひどい汗を掻いている。
その時間が延々と続いた後、ようやくにディルドウは腸奥に至った。
京香の頬の汗が、ぽたりと床に伝い落ちる。
ただ一度入れられただけで、ここまで疲弊してしまうのか。ならばこの先は、どうなってしまうのか。
挿入前には毅然として背後を睨んでいた瞳も、今や下方を彷徨うばかりとなっていた。

「苦しそうだねぇ、お嬢様。なら、抜いてやるよ」
恵美はそう告げてディルドウを掴み直す。
腸内の質量が後退をはじめ、子宮が下がる。同時に無数の瘤が、内側から肛門を抉り始めた。
「あぐっ!!」
ここで京香は、ついに声を漏らす。
異物が外から内へ入る時と、内から外へ出る時とでは感覚がまるで違った。
京香は挿入時と同じ気分で堪えようとしていた為に、瘤の“排泄”に対応できなかったのだ。
「ふふふ、出る時の方が凄いだろう。肛門は何と言っても、ひり出す為の穴だからね」
恵美はそう言ってディルドウを抜き去る。
無論、それで終わりではない。恵美は肩で息をする京香をしばし眺めた後、再びディルドウを肛門へと宛がった。
そして、ずぐりと突き入れる。
「んん!」
小さく声を漏らす京香。その肛門で、いよいよ本格的にディルドウの抜き差しが始まる。
巧みという他はない責め方だ。緩急をつけての抜き差しを繰り返し、京香に慣れることを許さない。
時おりディルドウを引き抜く事で空気を含ませ、ぶび、ぶりっと放屁のような音を立てさせもする。
その快感と恥辱により、京香は着実に追い詰められていた。
赤ら顔を下げて俯きたい所だが、手首の縄に後ろ髪を絡め取られていてはそうもいかない。

「はっ、はぁっ…………ああ、あ…………っ!!」
鏡の中では、京香はその類稀な美貌を崩し、大口を開けて喘いでいる。
無理もない。肛門を無数の瘤が往復し、ゼリー状の物が腸奥と子宮裏を突き上げてくるのだから。
この感覚は、本来声を上げずには耐えられない程のものだ。
『お』の口の形から発される呻きを、京香はもう何度噛み殺したか解らない。
恐らくその呻きは、肛門性感の結晶なのだろう。
「素直におなりよ。腹の底から湧いてきた呻きが、今にも喉から零れそうなんだろう?
 『おおお゛』、ってさ。この責めを受けると、皆そうなっちまうんだ。クラス一の美少女って言われてたヤツでもね」
恵美は囁くように言いながら、勢いよくディルドウを引き抜いた。
「んッグぅうっ!!」
京香は顎を上げ、甘い声を漏らす。
彼女の肛門はディルドウと同じ直径に口を開けたまま、異物が除去された後もほとんど閉じない。
そしてその下にある菱形の脚は、かろうじて床に付きながらガクガクと痙攣を始めている。
それは彼女の快感の根拠として、あまりに充分なものだ。
肛門から伝い落ちる過剰なローションが、初雪のような白肌の上で、女の蜜に見えてくるほどに。

恵美は抜き出したディルドウを片手で扱いた。
ディルドウに纏わりついた透明な液体が、飛沫を上げて散らされる。
「ふぅん……随分と“ローション以外のもの”が増えたね。お嬢様の腹ン中は、すっかり腸液まみれって訳かい」
勝ち誇ったような表情で発せられたその言葉に、京香が一層顔を赤らめた。
流石に反論のしようもない。
彼女自身にも、恵美の指の輪から、明らかにローションよりさらりとした液が滴るのが見えていたのだから。
「可愛くなってきたじゃないか」
恵美は京香の様子を眺めて言い、再びの挿入を開始する。
無数の瘤で肛門を擦りつつ、最奥まで。しかし……引き抜く動きに移るかと思いきや、そのまま動きを止める。
「………………?」
京香が目線を上げると、それを待っていたような鏡中の恵美の視線とかち合った。
「さあ、今度は自分でひり出してみな」
恵美はそう言って片手を下げる。ディルドウから完全に手を離したらしい。
「な、何を……!!」
「嫌ならいいさ。ずっとそうして、ディルドウを咥え込んでりゃあいい」
恵美にぴしゃりと告げられ、京香は分の悪さを悟る。確かに、異物を腸内に留めたままとはいかない。
しかし、擬似とはいえ、恵美の眼前で排泄を晒すには勇気が要った。
「ほら、するなら早くしな!」
恵美は痺れを切らしたように京香の太腿を平手で打つ。
相当な痛みだ。ここでいくら意地を張っても、同じように嬲られるだけだろう。
「ん、んんっ…………!!」
京香は息み、下腹に力を篭めた。少しずつディルドウが抜けていくのが解る。
「はは、出てきた出てきた。随分と立派な排泄だよこれは」
案の定というべきか、恵美は嘲り笑った。しかし今の京香には、それを恥じる余裕すらない。
「んぐ、ぐっ!! …………くぁっ、はぁぁあ……お゛…っ!!」
自力でのディルドウの排泄は、京香の想像よりも遥かに心地の良いものだった。
排泄の為に力を込めたことで、直腸と肛門の全体が極限まで締まっている。
その状態でディルドウが抜け出れば……瘤が菊輪を通り抜ける感触も、腸内の開放感も、今までの比ではない。
どくっ。
最後にディルドウが自重で滑り落ちた瞬間、京香は、身の奥で蜜の吐かれる音を聞いた。
腿の痙攣もいよいよ激しくなり、隠しようもない。
「うんうん、いい調子じゃないか。段々と雌の匂いがしてきたよ。そら、もう一丁行こうかい」
恵美はそう言いながら、再びディルドウを腸奥まで押し込んだ。
さらに今度は、手で京香の尻肉を両側から挟み込む。
「ちょっと、それじゃ出せないわ!」
「いいや、出るさ。この圧迫を跳ね除けるくらいに、力強く気張るんだよ!」
恵美に強く命じられては、京香も従うしかない。
彼女はする前から解っていた。これだけ圧迫感が強い中での排泄が、どれほど心地良いのかを。
そして…………ディルドウを吐き出し始めた瞬間、その悪い予想は見事に当たる。
腸内が勝手に蠢き、菊輪が甘い悲鳴を上げる。花園から蜜が吐かれる。
「んお゛っ…………お…………ぉっあぉおおおお゛っっ!!!」
もはや京香には、本気の声を押しとどめる余裕などなかった。
手が使えればあるいは止められたかもしれないが、拘束された今は漏れるがままだ。
「ははは、いい声だね! そうだ、どんなに見目が良かろうと、女は皆その声でアナルアクメを極めるんだよ。
 今からはそれを、完全に習慣づけてやるからね、京香!!」
恵美は勝ち誇ったように笑いながら、眼前で身を痙攣させる獲物を叩き続けた。





それからというもの、京香には、様々な肛門用の道具が用いられた。
完全な休息を取れることはほとんどない。
食事の時も、濡れタオルで身体を清められている間も、何かしらの性的な快感が与えられている。
睡眠は特に曖昧で、背後から恵美に乳房を揉まれ、碧の手でアナルプラグを抜き差しされる中、気絶するように眠る程度だ。
眠らせないのは、正常な判断力を奪うためだろう。人間は睡眠が不足すると、催眠状態に陥りやすくなるという。
そうした意識の定まらない状態こそ、肛門の快楽を刷り込むには絶好の機というわけだ。

「これを…………お尻に入れろっていうの?」
京香はへたり込んだまま、疲れの見える声色で告げた。
その横には、ガラスボウルへ山のように盛られた球体がある。灰色をした、特有の匂いを放つ固形物……玉蒟蒻だ。
「そうよ、豚。自分で、入れられるだけ入れてごらん」
腕組みをした碧が、京香を見下ろしながら命じた。小柄で華奢なこの調教師は、しかしこれで容赦がない。
京香が反抗的な態度を取るたび、折檻と称して様々な責めを課した。
鼻でタバコを吸わせようとしたり、髪を掴んだまま執拗に洗面器の水へ顔を漬けさせることもある。
『舐められやすい』容姿ゆえ、苛烈に罰して服従させるスタイルを採ったのか。
しかしそれでも、彼女が旺盛な嗜虐心を持つ事には変わりない。現に今も、彼女の青い手袋には鞭が握られている。
「…………解ったわ」
京香は、左肩の鞭痕を押さえながら承諾した。
中腰の姿勢になり、ガラスボウルから玉蒟蒻の一つを摘み上げて肛門に押し当てる。
玉蒟蒻には暖めたローションがたっぷりと掛かっているため、一つ目はつるりと内部に収まった。
「いち」
小悪魔を思わせる碧の唇が、挿入の数をカウントする。そのカウントは、京香の動きに合わせて、に、さん、と増えた。
「はち」
碧がそう告げた所で、京香の指が止まる。ようやく動き出しても、肛門に押し当てた玉蒟蒻は入らず、つるりと床に転がっていく。
「ちょっと、何やってるの。まだたったの8個なのに」
「も、もう……無理よ。お腹が張って、入らない…………」
逆光の中で碧を見上げ、京香が眉を顰める。碧は暗い影の中で苛立ちを見せた。
「へーぇ、無理なんだ。じゃあ今から私達が手伝ってあげるけど、もう一つも入らないはずよね? もし入ったら、酷いわよ」
碧はそう言って恵美に合図を送る。
恵美は慣れた手つきで京香の身体を転がした。いわゆる『まんぐり返し』の格好を取らせ、その両の足首を掴む。
「くぅっ…………!!」
余りにも屈辱的な格好に、京香は鋭い瞳で恵美を睨み据えた。
「へぇ、まだその目が出来るのかい。元気な獲物だよまったく」
恵美は余裕ぶり、その背後からボウルを持った碧が近づく。
「さぁて、それじゃあ本当に無理なのか、試してみましょうか」
言うが早いか、碧の細い指が玉蒟蒻の一つを摘み上げた。そしてそれを、強引に京香の肛門へと押し込んでいく。
姿勢が変わって腹圧が変化したためか、玉蒟蒻はぬるりと肛門内へ消えた。
「ぐうっ……!!」
「ほら、入るじゃないの嘘つき。この調子じゃ、まだまだ余裕そうね」
碧の指が、さらに玉蒟蒻を摘み上げ、挿入する。2個、3個、4個……。
「ふぐっ、うううむ…………!!」
刻一刻と増していく圧迫感に、京香は呻きを漏らした。しかし、暴れる事はしない。出来ない。
彼女に許されるのは、調教師の悪意を身が膨らむまで受け入れる事だけだ。

しばしの後、京香の身体に変化が見られた。
恵美の押さえつける足首が浮き始め、額にはじっとりと脂汗が浮いている。
「もう、本当に限界よ…………」
京香は荒い呼吸のまま告げた。相当に苦しげだ。
「まだ23個じゃないの。キリが悪いわ、我慢しなさい」
碧はそう斬り捨てるが、肛門に押し当てた玉蒟蒻が、実際にもう入っていかない。
無理に押し込もうとしても、逆に肛門が開き、中にある3個ほどが外に出ようとする。
どうやら本当の限界らしい。普通の判断であれば。
「ふぅん、また限界のフリ? こういう小食アピールする女って、首絞めたくなるわ。
 エミ、ちょっと穴塞いどいて。すぐ戻るから」
碧はそう言い残して立ち上がる。すかさず恵美が片足首を離し、まさに玉蒟蒻を吐き出そうとする肛門を指で押さえた。
「ぐ、ぐっ…………!!」
噴出を妨げられ、肺が潰されるような呻きを上げる京香。そしてその上を、再び碧の影が覆う。
その手には、銀色をした烏の嘴のような器具が握られていた。
碧はその器具……肛門鏡を京香の排泄の穴に近づけ、恵美の指と入れ替わりに挿入する。
肛門鏡の烏口が栓のように玉蒟蒻を押し戻す中、碧は手早く弁を開いてネジで固定する。

「ふぅーわ、中に玉蒟蒻がギッシリ。これ写真に撮って『緋艶蝶』のホステスに見せたら、卒倒する娘もいるんじゃない?」
碧と恵美が、肛門鏡の中を覗き込んで嘲り笑った。その下で、京香は奥歯を鳴らす。
「あら怖い顔。でもその顔、どこまで保っていられるかしら?」
碧は床からディルドウを拾い上げて言う。そしてそれを、肛門鏡の上に翳した。
「っ!? ま、まさか!」
京香の声と同時に、ディルドウは肛門鏡の中に入り込む。
入り口近くまで出かかっていた玉蒟蒻が、その上からの圧力で腸の奥へと入り込んでいく。
「お゛っ…………おっぐぁあ、あ゛っ!!!」
京香の口から、何とも苦しげな声が漏れた。それは2人の調教師にとって、いい笑いの種となる。
「ははっ、何だい。本当の限界なんて言って、まだ入るじゃないか!」
「だから言ったでしょ、この豚は嘘つきなのよ。こうしてっ押し込めば、結腸の方にでも腸奥にでも、いくらでも入るんだから。
 最初に無理って言ったのは、たったの8個だったかしら。今はこれで……33個目。25個もサバを読んでたわ。
 こんな舐めた態度を取る奴隷には、どういう罰を与えればいいのかしら」
恵美と碧は笑いながら、ディルドウで玉蒟蒻を奥へと押しやり、新たな1個を放り込み、またディルドウで突く。
「おぐっ……ぶっ、ごぉふっ…………!」
京香は目を見開き、頬を膨らませて苦悶していた。
「げぶ、ぶふっ!!」
玉蒟蒻の数が42個になった時…………桜色の唇が数度咳き込み、細く吐瀉物を吐き出す。
碧を睨み上げる瞳も細まり、目頭から涙を伝わせていた。
そしてその直後、肛門が大きく盛り上がる。
「おっと」
慌てて碧が肛門鏡を押さえようとするが、すでに遅い。
肛門鏡は勢いよく上へ吐き出され、それに続いて夥しい数の玉蒟蒻が溢れ出る。
ローションや腸液の線を引きながら、一面に飛び散る異物。それは当然、京香自身の顔へも降りかかった。
「おやおや、大した噴水だ」
恵美が茶化す中、碧は散らばった玉蒟蒻を一つずつ拾い上げてはガラスボウルに戻していく。
それを横目に見ていた京香は、ある事に思い至って青ざめた。
その予想通り、再び碧がガラスボウルを持って京香を見下ろす。
「さて。あとちょっとだったけど、餌のお残しをしたからやり直しよ、豚。
 菊輪の方は性器らしくなってきたようだから、今度は腸奥への圧迫で濡らすようになるまで躾けてやるわ」
碧はそう言って、天使のような微笑を見せた。






いつしか調教部屋の壁には、無数の写真が貼られていた。

『京香 1日目  19:00』
『京香 2日目  11:00』
『京香 3日目   7:00』 ・・・・・・

そのように日付と時間の記入された写真が、壁の一面を埋め尽くしている。
全て、恵美と碧による京香への調教記録だ。
その中で京香は、延々と辱められつつ、肛門性感を刷り込まれていた。
初日にはまさに光り輝かんばかりだった美貌も、日を追うにつれてくすんでいく。
精神力は強いのだろう。
11日目になってなお、残飯らしき白いものを無理矢理口に押し込まれながら、その目は毅然として前を睨んでいる。
しかしその4枚後の写真では、かなり太さのあるディルドウに自ら跨ったまま、蕩けきった表情を浮かべていた。
よく見れば、写真はいずれの日付も、凛とした姿と蕩けた姿の両方を捉えている。
しかし後の日付になるほど、明らかに後者の比率が上がっているようだ。
今もまさにメスの姿が、部屋のカメラに映されていた。

「ああっ、あ、ああっ……! はぁっ、お゛っ…………おお゛っ……は、あっ…………!!」
艶かしい声の主は、紛う事なき京香だ。
彼女は犬のように這い蹲ったまま、背後から膝立ちになった恵美に突かれていた。
勿論自前のものではなく、黒いゴムパンツから生えたペニスバンドでだ。
かなりの長さと太さのあるであろうそれが、深々と肛門に突き刺さっている。
恵美が腰を振るたび、その恵美の肉体と京香の腿とがぶつかり、肉の音が弾ける。
そしてその音以外にもう一つ、クチュクチュという水音もしていた。
ペニスバンドが肛門内をかき回す音……にしては、ペースが速い。
その正体は、恵美の右腕に着目すれば明らかになる。京香の美脚の合間に弄り入れられた、太い右腕に。
「今日はまた随分と濡れるじゃないか、ええ? 昨日碧にやられたドナン浣腸で、すっかり出来上がっちまったかい」
恵美は声を低めて囁きながら、右腕の先を蠢かす。すると京香の頭が下がり、ううう、と呻きが漏れた。
「さ、どうだいどうだい。そろそろ、ケツでイッてもいいんだよ」
恵美が再度囁き、濡れそぼった右腕を引き抜いた。そしてその手で腰を掴み、いよいよ力強く腰を打ちつける。
「あ、ああ! くぁああっお゛!!」
切なそうな声と共に、京香が頭を揺らした。細い涎の線が床と繋がる。
そしてその線が途切れた後、京香の頭は逆に天を仰いだ。
「いっ、いぐうっ!! イグー…………っ!!!」
その声を最後に、京香の嬌声は、喉からのキュゥゥーッという声ならぬ声に変わる。
そしてその声すら絶えた後は、ガクリと項垂れて荒い息を吐き始めた。
「ふん、かなり深くイッたらしいね。あさましい女だよ」
恵美は満足げに腰を引き、ペニスバンドを引き抜く。
名残惜しそうに腸壁が纏いつき、クポリと異物が抜けた後には、ただ泡立つローションを垂らす空洞があるだけだ。
咲き誇る紅華のようなその排泄孔が、わずか2週間ほど前には未使用だったなどと、一体誰が信じるだろう。

「さぁ豚、立ちなさい。慣らしは終わりよ」
碧が手の平を打ち鳴らし、京香の注意を引く。京香は汗に塗れた顔を上げた。
「ま、待って…………今イッたばかりで、まだ腰が…………」
「何、口答えするの? 散々理解させたかと思ったけど、ほんとオツムの緩い女ね。
 昨日のドナン浣腸。アワ噴いて痙攣はじめたから開放してあげたけど、今度はもっと先まで行きたいのね?」
碧が冷ややかな瞳で告げると、たちまち京香の顔色が変わる。
下唇を噛み、手のひらを握り締め、しかし碧と目線を合わせようとしない。
碧はその視線の先に回りこみ、会釈のように腰を曲げながら笑顔を見せた。
「さぁっ、始めましょう。エミがたっぷり解してくれたから、今日こそはいけるはずよ」
碧はそう言いながら右の手袋を外し、子供のように華奢な腕にローションを塗す。
そしてへたり込む京香の尻穴へと、その腕を近づけた。
「っ…………!!」
顔を引き攣らせる京香。その尻穴に碧の指が触れる。
1本、2本、3本、4本。揃えた4本指が、開いた蕾をさらに押し拡げていく。
肛門の皺という皺が伸びきる。
「ひ、ひぃい゛っ…………く、あ゛ぁあ゛あ゛ッッ!!!」
「そんなに固くならないで、力を抜いて。んっ、ホラ、もうちょっと……よ!」
碧が肩へ渾身の力を篭めると、ついに手の甲の最も幅のある部分が肛門を通り抜けた。
そうなれば、後は奥へと入り込んでいくのみだ。
「あああ、ふわあっ……あぁああ゛ッッッぐううっっ!!!」
「煩いわね豚、耳元で喚かないで。
 ……でもま、仕方ないかな。とうとううんちの穴に、腕まで入れられたんだから。
 ホラ感じるでしょう。ここが直腸の奥で、こっちが、んっ、S字結腸よ。
 あらあら、なぁにこれは。指の先で、結腸の溝にある何かが触れるねぇ。何かしらねぇこれ?」
碧が陰湿に囁くと、京香の顔がいよいよ緋色に染まる。
「…………もう、充分でしょう…………。
 私は、すっかり変わってしまったわ。決して元には戻れないほどに。
 これ以上こんな私を、どうしようっていうの…………!?」
美顔を歪めて涙ながらに訴えるも、調教者達の表情は変わらない。
「いいや。おまえにはまだ、見る人間が見れば解るような輝きが残ってる。
 その淡い光すら消え失せて、惨めたらしいメス豚になるのがおまえの末路だよ」
「最底辺のアヌス奴隷に成り果てるまで、たっぷりと可愛がってやるわ。
 まずは、そうねぇ。せっかくフィストが出来たんだから、この結腸をクチュクチュかき回し続けてあげる。
 そうして結腸の快感に目覚めたら、次は6号ディルドウに挑戦よ。フィストまで出来たんだから、無理とは言わせないわ」
2つの唇から紡がれる悪魔の言葉。
それは京香にとって、どれほど絶望的に聴こえた事だろう。

「う、うう゛っ…………うふぅ……く、ぃひぃ………………っ!!」

いつしか哀れな深窓の令嬢は、力なくその細腕を垂らし、調教師達の為すがままになっていた。
『緋艶蝶』の京香。
その呼び名は、今の彼女にこそ相応しい。
羽をもがれ、檻の中で嬲られる、緋色の艶やかな蝶にこそ…………。



                                終わり
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