大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2015年10月

工事完了です。。。。

ブログ内のリンクを貼り直しました。『シリーズ目録』内の物はきっちり直っていると思います。
その他記事内のリンクも、見つかった範囲では直しておきましたが、いくつか漏れもあるかもしれません。
もし不具合や未修正箇所など見つかりましたら、ご報告頂けると助かります。
宜しくお願いします。

記事作成テスト

という訳で、ニュー・大樹のほとりが始まりました!
まずは練習がてら新しい記事をば。

とりあえずちょこちょこブログ設定をイジってみたんですが新緑を意識したこのテンプレート、如何でしょう。変えました。
見づらい読みづらいゲロ以下の匂いがプンプンする、など何でも結構ですので、忌憚のない意見を私の心が折れない範囲でお寄せ下さい。

各記事のリンクは未だにFC2ブログ時代のままですが、今週末にガッツリ貼り直しておきますのでご容赦下さい。
あの美しいの演出も、もう見納めですので・・・・・・


※なお、この鬱陶しい文字サイズの変化や色の変化などは、機能テストの為にワザとやっているだけです。基本はFC2ブログ時代と同じ感じでやっていきます。

ブログ移転を検討中です

皆様こんばんは。
いつも当ブログをご覧頂きまして、まことに有難うございます。
随分と長く利用してきたこのFC2ブログですが、例の件以来、FC2全体がアダルトに非情に厳しくなっているようです。
その例に漏れず、このブログも連日『fc2stuff』というパスワードで強制プライベートモードにされるという制裁を喰らってしまっております。
もはやアカウント停止も時間の問題と思われますので、近いうちブログ移転をと考えている次第です。

詳細が決まりましたら、リンクを張った上でご報告いたします。
アダルトOKでなおかつ使いやすいところ、となると中々見つからないのですが……。
皆様のオススメなどありましたらお教え頂けると、燻製ねこは大変喜びます。
以上諸々、何卒よろしくお願い致します。

向こう岸の彼女 最終話(GOOD-END)

※ こちらはGOODEND。
  DVDを見終えるシーンまではBADEND側と共通です。
  2人に幸あれ。



覚悟はしてたんだ。
手紙の内容とは裏腹に、刑務所の門を出ても、そこに和紗の姿はない…………その最悪の事態への覚悟は。
でも、いざそれが現実になった時、僕はただ呆然と立ち尽くしてしまった。

  ――なぜ?

その二文字が、真っ白になった頭を数限りなく通り過ぎる。
なぜ、いない。出所前に貰った手紙には確かに、門の前で待ってると書いてあるのに。
待ち合わせ場所が違うのか? どこかに裏門でもあって、和紗は間違ってそっちで待ってるのか?
そんな事を考えては、すぐに有り得ないと打ち消す。
彼女に限って、刑務所の正門を間違えるようなバカをやるもんか。
むしろ間違えるとすれば僕の方で、彼女はいつもそんな僕を笑いつつ、正しい方へと手を引いてくれていたじゃないか。
和紗。いつでも優しく、頼もしく、愛おしい僕だけの宝物。
立ち尽くしたままその笑顔を思い出すうち、不意に僕の目からは涙があふれ出した。
ようやく出所という日に往来で泣くなんて、惨めこの上ない。でも、涙が止まらない。
そうして涙を溢していると、ふと横から肩を叩かれた。顔を向けると、そこには守衛さんの顔がある。
守衛さんは素早く左右に視線を配りながら、僕の手に紺色のハンカチを押し込んできた。
「返さなくていい」
一言そう告げて、守衛さんは素早く僕から離れる。
僕はしばし呆然として、直立不動に戻った守衛さんを眺めていた。でもまた涙があふれて、思わずハンカチで目元を抑える。
他人のハンカチを暖かく感じるのは2度目だ。前に拭ったのは嬉し涙だったけど、今度の涙はひどくつらい。

涙を拭いた僕は、和紗を待つことをやめ、足早に家路を辿りはじめた。
和紗はきっと、何か事情があって家で待っているに違いないんだ。
逮捕から約2年ぶりに見るマンションは、宅配ポストの苗字が半分近く変わっていた。
いよいよ湧き上がる不安を抑え込みつつ、僕らの部屋である202号室へ。ドアノブを掴み、回す。
…………開かない。
ガスメーター下の小さなタヌキの置物を拾い上げ、お腹の部分を開ければ、案の定見慣れた鍵が出てくる。
その鍵で開いた先の空間からは、なぜか懐かしさは感じなかった。
家具も内装も、僕がいた頃のままだ。
和紗と協力して組み立てたクリスマスツリーが、季節外れにもかかわらず出たままになっている。
それどころか、電話の上のカレンダーすら、2年前の12月22日…………僕が逮捕された日のまま捲られていない。
まるで僕が逮捕されたあの日以来、時が止まってしまっているみたいに。
でも。
あの頃にはなかったものが、さっきから視界の真ん中に入っている。
リビングの机の上、テレビの正面に積み重ねられた、大量のDVDの山だ。
僕は旅館の額縁裏にお札を見つけた時みたいに、そこから嫌な気配を感じて仕方がなかった。
そして“それ”から逃れるように、家の中を見て回る。
「和紗、いるの?」
声を掛けては見るものの、返事が無いことはわかっていた。
けして広いとはいえない我が家。妻がいるかどうかを知るには、リビングからぐるりと見回せば十分だ。
床のホコリの無さから考えて、何年も人が居なかったという訳でもないらしい。むしろ、つい最近まで居たに違いない。
じゃあ、いつまで居たんだ?
僕は、ふとそれが気になりはじめた。どうでもいい事なんだけど、たぶん現実逃避の一種なんだろう。
今の状況を受け止める覚悟がないから、些細な事を考えて気を紛らわせようとしてるんだ。
ゴミ箱が目に留まる。
ゴミ。そうだ、レシートでもあれば、和紗がいつまでここに居たのか判るじゃないか。
僕はそんな事を考えながら、ゴミ箱の中に手を突っ込む。
がさり、と紙の束が手に触れた。それを勢いよく引き抜き、丸まった紙を開いて…………息を呑む。
ゴミ箱に捨てられていた、くしゃくしゃの紙。それらはすべて、塀の中に入っていた僕へ宛てた手紙だった。
ただし、ひとつとして最後まで書かれたものはない。
最初は几帳面な字での挨拶から始まり、何気ない話に話題が移り、でもそこからどんどん字が崩れて、最後には殴り書きみたいになる。
罫線を大きくはみ出し、ペンでぐしゃぐしゃと塗り潰す書き方は、どう見ても普通じゃない。


      ごめんなさい     ごめんなさい
           ごめんなさい
    ごめんなさい ごめんなさい    ごめんなさい 

        ごめんなさい      ごめんなさい


ペンのインクがまだ新しい手紙の中には、そうして延々と謝罪の言葉が並んでいるものが多かった。
一体和紗は、何をそんなに謝ってるんだ。そんなに謝らなくちゃいけない事をしてたのか?
それに、僕が塀の中で和紗からの手紙を貰ったのは一度きりしかない。
こんなにも沢山の手紙を書こうとしておきながら、どうして僕の元には最後の一通しか届かなかったんだ?
僕はいよいよ混乱しながら、ゴミ箱をひっくり返す。
そして床に広がった何十という紙の束を、震える手で片っ端から開いていく。
そこに書かれていた事に目を通せば通すほど、僕の手の震えはひどくなった。
手紙には、この2年近くの和紗の心境が、生々しく書かれていたからだ。

この家から僕がいなくなって、胸に穴が空いたように寂しくいこと。
何度もカレンダーを捲ろうとしたけど、どうしても日付を前に進められないこと。
毎日のように英児に身体を求められること。
休日に丸一日中イカされ続けて、本当に頭が変になりそうだったこと。
乳の出が悪くなってきたこと。
英児と外出すると、周りからの視線を物凄く浴びること。
膣の奥を突き上げられる時に、頭の中がドロドロになる感覚をよく味わうこと。
バックスタイルで力強く犯されると、情けない声と涎がどうやっても止められないこと。
僕が背を向けて去る夢をよく見ること。
朝からぶっ通しの甘いセックスで前後不覚になって、知らぬ間に英児とのキスを受け入れてしまっていたこと。
もう、自分が本当に自分なのかがわからないこと。

それらを読み進めるうち、僕はとうとうその場にへたり込んでしまう。
ゴミ箱横にあったベッドに、かろうじて肘をつく。と、その肘に当たる感触が一部おかしい。
身を起こしてベッドシーツを撫でると、原因がわかった。
ゴワついてるんだ、シーツの一部が。まるで何か粘ついた液体が染み込んで、そのまま乾燥したみたいに。
いっそ、僕の頭が子供なら良かった。それが示す意味を理解できないぐらい、未熟なままなら良かった。
でも僕の脳は、起きた現実をしっかりと分析してしまう。
足元に散らばる手紙の内容が、リビングの“あの”DVDによって裏付けられるだろう事も――――。



DVDの表面にはそれぞれ日付が記されていた。
一番古いものは、3年前。僕らが死産の悲しみに暮れていたはずの頃だ。
僕はその一枚を手に取り、デッキに差し込む。
ゴクリ、と喉の鳴る音がした。
テレビに映し出されたのは、まだお腹の大きい和紗。
画質といい、手ブレ具合といい、いかにもホームビデオという風だ。
和紗は小さな赤ちゃんを腕の中に抱きつつ、喪服のような黒いブラウスを捲り上げて乳をあげていた。
この時点で、僕の頭はフリーズする。
なんだ、あの赤ん坊は。子供ながらにハンサムさを感じさせる、クッキリとした二重瞼。
どこかで見た覚えがある。そう。ちょうどこのビデオの背景と同じ、目も眩むような高層マンションで。

『ほら、何固まってんだ。もっとあやしてやれよ。俺とお前の、可愛いガキだろ』
映像の中から声がする。聞き間違える訳もない、英児の声だ。
『あなたと望んで子作りをした覚えなんて、ない』
カメラに不機嫌そうな視線を向けながら、和紗が告げる。
 ――俺とお前のガキ?
  ――望んで子作りをした訳じゃない?
それってつまり、レイプされたって事か。和紗が、僕の“親友”に。
どういう事だ。和紗が喪服のような格好で出掛けていた本当の理由は、石山に脅されていたからじゃないのか?
『だが結果的にゃ出来ちまったんだ。要はお前のカラダが、あの腑抜けの遺伝子じゃなく、俺のDNAを欲しがったんだよ』
腑抜け。英児がそう表現する対象は、状況からして僕以外に有り得ない。
英児は本当に、僕の親友じゃなかったっていうのか。
あんなに優しくて、頼もしくて、いつでも僕を助けてくれた彼が、心の中ではいつも僕を……。
『そんな言い方、やめて!』
和紗はいよいよカメラを睨みつけて叫ぶ。その気迫で腕の中の赤ちゃんが泣き出すと、和紗は困り顔で腕を揺すり始めた。
なんだろう。ひどく手慣れている感じがする。まるでその赤ん坊を、もう何度もあやしているみたいに。

『チッ、つれねぇな。まあいい、お約束の時間といこうぜ』
英児の声がそう言った後、カメラが一歩ずつ和紗に近づいていく。
そして目の前にまで迫ると、画面下部から現れた赤黒い何かが和紗の頬を叩いた。
先の太い独特の形状。
同じ男の僕には、それが勃起したペニスだとすぐに判る。
ただ、大きさが僕の常識と違った。まるで外人のペニス。太さだって長さだって、僕の最大時より2周りは上だ。
おまけに血管の脈打つ様子からは、かなりの逞しさまで備えている事が伝わってくる。
まさに須永英児という人間を象徴するような男性器だ。
『んっ!!』
そのペニスを鼻先に突きつけられ、和紗は嫌そうに顔を背ける。でも、英児らしい影が動きを止める事はなかった。
『今さら拒否ンなよ。そのガキを家に置いた上、養育費を払ってんのは誰だと思ってんだ?』
その言葉で、和紗が目を見開く。
大方の事情が見えてきた。
どのタイミングかは判らないが、和紗は英児からレイプされ、身篭ったんだ。多分、僕らの愛でていたお腹の子がそうだったんだろう。
そしていざ産んでみれば、あからさまに英児の血を引いた子供。当然、僕には話せない。
だから和紗は、死産を装いつつ密かに英児に預け、その交換条件として体を要求されているんだ。
芳葉谷にいた頃から子供好きだった和紗のこと。たとえ英児との子だったとしても、見捨てたくなかったに違いない。
だとしたら、なんて卑劣なんだ、英児は。
その英児に踊らされていた自分が情けない。本当の敵はすぐ傍にいたってのに、石山なんかに敵意を向けさせられて、その陰でこれか。
一体、僕のこの2年近くの獄中生活は何だったんだ。

『しっかり咥え込めよ?』
英児の低い声がする。前なら惚れ惚れしたような低音。今は悪魔のそれにしか聴こえない声。
映像の中には、喉奥まで剛直を咥え込まされた和紗の顔がアップで映っていた。
英児の視点とほぼ同じ位置から、見下ろすように撮影しているらしい。
片手でカメラを構え、片手で和紗の黒髪を押さえつける英児の影。
和紗はまだ授乳の最中だ。当然、その細まった目にも垂れた眉にも、迷惑そうな色しかない。
でも英児は、それを微塵も気にしていないようだった。脚の長さを活かし、ソファに座る和紗の口へ真正面から腰を打ち込んでいく。
『ああ、いいぜ。上手くなってきたじゃねぇか』
刻一刻と唾液に塗れていく逸物が、しっかりとカメラに映されていた。
顎を縦一杯に開き、ほとんど泣くような顔で咥え込む和紗の様子も。
時々唾液の糸を引きながら口から吐き出させ、また咥え込ませる。何度も、何度も。
『俺のペニスの味はどうだ? 色んな女が嬉しそうに舐めてきたシロモノだぜ。
 お前にゃ、特に念入りに憶え込ませてやっからな』
英児の言葉が、一々僕の心臓を鷲掴みにする。
そうしてたっぷり数分をかけて和紗の口内を蹂躙したあと、英児はついに射精を始めた。
『んん、んんん、ンっ……!!』
和紗の頬が膨らみ、咳き込み、唇の端から白濁した液が滴り落ちていく。
笑い声と共に、揺れるカメラがそれを映し、そこで1枚目のDVDは終わった。

テレビ画面が真っ暗になった瞬間、ドッと疲れが来る。
覚悟はしていた。覚悟はしていたけど、実際に親友が妻を穢す映像を目にすると、胸やけに近い吐き気がこみ上げてくる。
刑務所から出たら食べようと思い焦がれていたアレもコレも、今は喉を通りそうにない。
目の前には、依然として山のようなDVDがある。今と同じような、白昼の悪夢を収めたDVDが。
見たくはないけど、見ないわけにはいかない。タンスの裏に逃げ込んだゴキブリを、放っておくわけにはいかないように。



2枚目を再生する。
日付は1枚目の数ヵ月後。ずっと喪服のようだった和紗の格好が、カジュアルなものに一変した後だ。
そのカジュアルな服が、ベッド周りに散乱している。
カメラはどこか台のような所に置かれ、ベッドの上の痴態をブレることなく淡々と映していた。
お腹もへこんでモデル体型に戻った和紗を、背後から英児が愛撫する。
カメラに向けて大股を開く格好だから、恥ずかしい部分はモザイクすら無しで丸見えだ。
真っ白な和紗の肉体。生々しい性器。
禁欲を重ねた僕にとっては目の毒だ。ズボンの中で勃起が始まってしまう。
映像内に他の男の姿さえなきゃ、すぐにでも気持ちよく抜けるのに。

英児の愛撫は見るからに巧みだった。
乳房を揉みしだくにしても。クリトリスを指先で転がすにしても。膣の中を2本指でくじり回すにしても。
何十という女性相手に経験を積んできた説得力がある。
和紗だって女だ。そんな巧みな愛撫を延々と受け続けて、何も感じずにいられる筈がない。
『はぁっ、はぁっ、はーっ……はっ、ハッ、は…………』
荒い息を吐きながら、時に緩く目を閉じ、時に薄目を開けてカメラを意識している。
その頬は刻一刻と赤らみ続けていた。
胸の蕾も硬くしこり勃ち、乳房を揉みあげられるたびにミルクを噴き出すようになる。
Mの字になった脚は何度も内股に閉じかけ、腰を突き出すようにして堪らなそうに跳ねる。
そして一番変化が解りやすいのは、何といっても秘裂そのものだ。
最初は慎ましく閉じていたピンクの割れ目が、いつしか充血して開き始めている。
晒された粘膜から次々と愛液があふれているのが、カメラ越しの肉眼でも確認できる。
音もぬちゃぬちゃといやらしい。僕のいるリビングを覆い尽くしそうな水音だ。
『カメラの前で、こんなに濡らしやがって』
英児がそう呟きつつ、和紗のアソコから手を離す。浅黒いその指は、5本全てが透明な粘液で濡れ光っていた。
自分の愛液を見せつけられた和紗は、ただ恥ずかしそうな顔で喘ぐばかり。
何も言わないけれど、女として発情しきっていることは確かだ。

『さ、そろそろ本番いくぜ。また過呼吸にならねぇように、今のうち深呼吸しとけ。
 壮介のヌルいセックスとは次元が違うって、いい加減思い知ったろ?』
英児はそう言い放ちながら、ベッドの上で和紗を押し倒した。
和紗の表情が強張る。あんなに真剣で、あんなに怯えている顔は、僕の前で見せたことがない。
筋肉質な英児の肉体が、すらりとした和紗の脚の間に入り込む。
茂みの下にピタリと宛がわれるのは、僕のよりずっと立派な男の象徴。
英児は体を前傾気味にして調節したあと、グッと腰を押し込んだ。
『あぐっ…………!!』
和紗の唇から悲鳴が漏れる。
悲鳴――いや、果たしてそうだろうか。嬌声じゃないのか。
経験のない処女ならともかく、和紗はある程度セックスを知っている人妻だ。
その人妻が、あれだけドロドロに濡らされた上で、逞しい逸物に貫かれたら――漏れるのは嬌声じゃないのか?
その僕の不安は、映像が先に進めば進むほど、ハッキリとした輪郭を持ちはじめた。
ベッドが激しく軋む。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、と肉のぶつかり合う音もする。
英児と和紗、男女の理想とも言えるプロモーションを持った2人がセックスをする音だ。
和紗の左脚を英児が肩に担ぎ上げての交わり。それを受ける和紗は、右手でシーツを掴んで何かに耐えていた。
両目は閉じられたまま開かない。でも、その瞼の動きが雄弁だ。
『っふぅうんん…………!!』
唇から漏れる艶かしい声も、主がどういう状況かをわかりやすく伝えてくる。
英児はそういう反応に薄笑いを浮かべ、いよいよ和紗の左脚を抱え込むようにして結合を深めた。
抽迭のストロークも長くなる。和紗の腰がゾクゾクと反応し、英児に担ぎ上げられた脚の先が空を掴むように蠢く。
それは異常なほど官能的で、僕の勃起をいよいよ強める。
『ヘッ。お前、今またイッただろ。だんだんイキやすくなってきたなぁオイ?
 壮介しか知らなかった頃は、いっぺんイカせるまでにえらく手間掛かったってのによ』
英児のその言葉にも、和紗は唇を噛みしめるだけだ。どうやら全てが事実らしい。

このセックスの映像は、そこから40分以上に渡って続いた。
体位は少しずつ変わり、最後の方は、英児が上から和紗を押し潰すようにして腰を打ちつけている状態だ。
『うう、ぅあっぃ…………あ、あっ……ッぃ、ふぅうううんんっ…………!!!』
和紗は両手で枕を握り締めながら、必死に言葉を噛み殺していた。
『いく』という言葉を。
彼女が何度も達しているのは、映像で冷静に見ている僕には嫌というほどわかる。
映像は抽迭の果てに英児が中出しし、勝ち誇った笑みでビデオを拾い上げる所で終わりを告げた。
でも、こんなものは氷山の一角だ。悪夢のDVDはまだまだあるんだから。



3枚目、4枚目、5枚目、6枚目にも、同じく英児のマンションでの交わりが記録されていた。
内容に大きな差はない。でも、そうした行為が繰り返されているという事自体が問題だ。
どの映像を見ても、和紗は英児にセックスの快感を仕込まれている。“イキ癖をつけられて”いる。
それは、全身の皮膚の下で毛虫が這い回るような感覚を僕にもたらした。
危機感。焦燥感。そうした物が体表面を駆け回る。
すぐにでも外に駆け出して叫びたい気分だったけど、かろうじてそれは思いとどまった。
7枚目のDVD。その表面に記された日付は、僕が塀の中に入って以降のものだと気付いたからだ。
僕の存在を気にすることなく、一日中和紗を独占できる状況。そこには、どんな光景が広がっているんだろう。
その興味が何にも勝り、僕の指を動かした。

7枚目は、台所に立つ和紗を背後から撮影しているシーンから始まった。
和紗は擂り鉢で何かを擂り潰しているようだ。
格好は乳白色のニットセーター。和紗がセーターを着ると、胸のふくらみが強調されるせいか母性が増して見える。
セーターの上にエプロンをつけた和紗は、本当に良妻って感じなんだ。
ただ……今は違う。今の彼女は、下半身に何も穿いていない、ひどく屈辱的な格好だ。
カメラはその和紗の真後ろに寄ると、何かを弄りはじめる。
『んっ!……ちょっと、やめて。あの子の離乳食作ってるんだから』
和紗はカメラの方を振り返り、困ったような表情で告げた。でもさらにカメラが揺れると、腰がビクッと反応する。
『何がやめてだ。丸出しで料理しながら、密かに期待してたんだろうが』
『そ、そんな訳ないでしょ!』
『だったら、この濡れ具合は何だよ? もう俺の手首にまで垂れてきてるぜ。欲しくて仕方ねぇって感じだ』
その会話の後、カメラは下を向いた。
台所の木目の上に、透明な雫が滴り落ちていく。クチュクチュ、という水音に呼応するタイミングで。

床を映したところで一旦映像が途切れ、数秒後、次の場面が始まる。
映ったのは、騎乗位で激しく腰を振る和紗の姿。
セーター越しに乳房を揺らしながら、額の汗を散らして上下に揺れている。
『おおおスゲー、絞り取られるみてぇだ。やっぱオマエいい締まりしてるわ』
英児の上ずった声が和紗を褒める。
和紗はその英児の胸板と太腿に手を置きながら、一心不乱に腰を振り続けていた。
『はぁ、はぁっ…………は、早くイって…………。時間が、もう時間がないよ!』
和紗は壁の時計を見上げながら言う。何か急ぎの用事でもあるんだろうか。
『だったら、俺を早くイカさねぇとな。愛する旦那様のツラ拝むチャンスが潰れちまうぜ?』
英児はいよいよ性悪そうな口調で答えた。
ああ、そうか。これは、僕が逮捕されてから初めての面接の日なんだ。
確かにこの乳白色のセーターには見覚えがある。そしてあの日、和紗が妙に顔を赤くしていた理由もこれで解った。
あれは緊張のせいなんかじゃなかった。
僕に面会するその少し前まで、英児とセックスしてた名残だったんだ……。



次のDVDには、ベビーカーを押したまま街を歩く和紗の姿があった。
ビデオの中に道行く人達の姿が映りこむ。誰もが撮影者と和紗を見て、表情を綻ばせる。
なんてお似合いの夫婦なんだ―――そう言いたげに。
和紗は専らベビーカーに乗った赤ちゃんの世話を焼いていた。
英児に話しかけられると一瞥し、短く言葉を返す。
和気藹々という感じじゃない。でも、気のせいだろうか。DVD1枚目の頃にあった刺々しい雰囲気が、弱まっているように思えるのは。
日差しを避けるように入った店のテラスで、3人は食事を摂りはじめる。
赤ちゃんに柔らかいリゾットのようなものを与える和紗と、それを傍で見守る撮影者。
これじゃまるで、新婚の夫婦じゃないか。早々に暗雲たちこめた僕との生活よりも、ずっとそれらしい。
胸が痛む。
僕が塀の中で現世と切り離されているうちに、こんな事が起きていたなんて。
「やめてくれ、和紗、もうやめてくれ……。
 英児の傍から離れるんだ、そんな所に居ないでくれっ!!」
僕はテレビに向かって叫ぶけど、当然、そんな独り言が届くわけもない。
和紗はその後も英児の傍にいて、皿に盛られた山盛りのパスタを分け合っていた。
店を出て英児がベビーカーを押し始めると、命じられて渋々の事とはいえ、その姿をビデオで撮り始めもした。
時にハリウッドスターさながらの笑みが画面一杯に映り、背後では若い女の子が黄色い声を上げる。
傍から見ればまるで映画の撮影だろう。でも僕にはその笑みが、僕に的を絞った勝利宣言にしか見えない。

  ――――見てるかよ、マヌケ。奪い獲ってやったぜ?

そう宣言しているようにしか。



今から4ヶ月前の日付が記された3枚組みのDVDでは、和紗が延々と絶頂に追い込まれていた。
『今日は、徹底的に快感を覚えこませてやる』
映像の冒頭、英児は和紗にそう宣言する。そしてその宣言通り、執拗に和紗を昂ぶらせはじめた。

数十分に渡り、英児が開脚させた和紗の股座に顔を埋めている映像が続く。
指と舌で丁寧に陰唇の性感を目覚めさせているらしい。
『んん、んんっ…………ぁ……』
和紗は困ったような視線を下に向けつつ、ただされるがままになっていた。
何故だろう。やっぱりその瞳には、今ひとつ敵意の類が感じ取れない。ただ“困っている”だけだ。
わからない。困るって一体、何を。気持ちでは受け入れたくないのに、身体が期待している、とでもいうのか。
僕の中で不安が膨らんでいく。
映像に大きな変化はない。でも僕に見えない部分で、刻一刻と、何かが熟成されていってるのは確かだ。
『………………っっ!!!!』
そして。ある時ついに、和紗の喉から声にならない声が絞り出される。
モデルのような下半身がピクピクと痙攣を始めて、両手が所在なさげにシーツの上を彷徨って。
と、そこで英児の両手が動いた。和紗の開いた足の脇を通り、彷徨っていた両手をしっかりと握りこむ。
和紗の瞳が見開かれ、手の方を向いた。
英児はそれに余裕の笑みを返しつつ、舌を使っての愛撫を続ける。
見た目にはただ手を繋いだだけ。でも、それには大きな意味があったみたいだ。
『……くぅ、く……んっ…………ぅうんっ!!』
子犬のような鼻に掛かった泣き声と共に、和紗が身を震わせる。
それまで彷徨うばかりだった両手に、しっかり英児という支えを伴って。
手が固定されたぶん、震えは下半身に凝縮されたように思える。太腿から下が、何度も、何度も筋張っては弛緩していく。
まるで、小さな絶頂を繰り返すみたいに。
『んん、ふっ、くぅぅうんっ…………!!』
とうとう和紗の頭が、枕を深く沈ませながら左を向いた。
顔はくしゃくしゃだ。アナウンサーを思わせる小奇麗さは名残もない、生々しい表情。
快感を必死に堪えてきたけど、もう限界。そう訴えるかのようだ。
そしてそんな変化を、百戦錬磨の英児が見逃すわけがない。
『頃合いだな。そろそろハメてやる』
英児は和紗と手を繋ぎ合わせたまま、和紗の身体を持ち上げ始めた。
腰を浮かせてから、180度回転させ……後背位に。

 ――バックスタイルで力強く犯されると、情けない声と涎がどうやっても止められない

和紗の手紙にあった一文が脳裏を過ぎる。
そして英児は、和紗の腰に両手を宛がい、力強く挿入を果たした。
『はぁ、うっ…………!!』
和紗の声は大きい。蕩けに蕩けきった膣内へ、英児の特大の逸物をねじ込まれたせいだ。
『嬉しそうな声出しやがって。おまけにまた、よく締めやがるっ……!』
英児の勝ち誇ったような声が憎い。
和紗が。僕の和紗が、ヤられている。今さらになってその実感が強まり、じっとりと脂汗が滲んでくる。
『あ、あああ……ああぅっ、うっsあぁぁっ!!』
最初こそシーツに手をついていた和紗は、すぐに腕を枕にするようになり、やがて完全に突っ伏す格好に変わる。
腰だけを英児に向けて突き出したまま。
『ハ、ハァッ……どうだ、感じてんだろ!?』
腹の底から出た英児の雄の声が、動画内に響き渡る。
和紗は返事をしない。いや、絶え間なく喘いでいるから出来ないのか。
でも、その顔を見れば十分だ。カメラの正面に映された和紗の顔は、目を半開きにし、口を大きく開けただらしないものだ。
よく見れば、その口の端からは涎のようなものすら見える。
泥酔したか、危ないクスリを使ったのか。そう思えるほど、快感に蕩けきっている。
まだ、セックスは始まったばかりだっていうのに。
『フッ、フッ、フゥッ!!!』
英児は鋭く息を吐きながら、片膝を立てて猛烈に突き込み続ける。さっきまでの無言の舐りとは正反対だ。
その獣のような犯しぶりを受け、和紗の頭上で腰が跳ねる。
パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、というキレのいい音。ぐちゃっ、ぐちゃっ、という濃厚な水音。ベッドの軋む音。
それが不協和音のように混ざり合う。
『あうっ!』
無限に続く突き込みの最中、和紗は急に叫んで顔を上げた。
相変わらず半開きの瞳の中、視線が上の方を彷徨う、明らかに余裕のない顔。
『はぁ、はっ…………あ…………い、いっちゃう…………!!』
その事実を告げた後、和紗は少し固まった。そして項垂れ、恥らうような表情を作る。
『ああ、イけよ。どんどんイけ! 一日中イカせてやる』
英児はそう言いながら、さらに腰を振るペースを早めた。
右手を和紗のお尻に、左手を背中に宛がったまま、リズミカルに抽迭を繰り返す。
当然、その中で和紗は新たに何度も達していた。何かを振り払うように頭を揺らし、でもその動きが止まった瞬間、唇が動く。
いく、と。
そして、さらに十分あまり。和紗の身の震えが大きくなってきた所で、英児は和紗の抱き方を変えた。
後背位はそのままに、両脇の下を抱え込むようにして結合を深める。
『あひぃっっ!!!』
和紗は眉を垂れ下げながら叫んだ。
脱力していた上半身を無理矢理に引き起こされ、それまで以上の深さで挿入されてるんだ。それは悲鳴も上がる。
僕だったら絶対にしない、和紗への配慮を欠いた荒々しすぎるセックス。
でもそれは間違いなく、和紗に深い快感を与えているみたいだった。
『いや、だめっ! か、体が、こわれるっ…………!!!』
口の端から唾液を、乳房や腿から汗を散らしつつ、和紗は叫んでいた。その声量は、いつの間にか英児並みに大きくなっている。
僕とのセックスの時はいつも淑女みたいだった彼女が、本能を晒す獣みたいになっている。
和紗は何度も、何度も悲鳴を上げ、その果てに強く歯を噛み合わせた。
『ふぐぅぎぎ、ぃぃぅううんっ…………!!』
快感に必死に抗おうっていうのか。そうだ、頑張れ和紗。そんな愛のないセックスに溺れるな!
その僕のエールは、でも、届かなかった。
和紗はその直後、噛み合せていた歯を開く。そこに表れるのは、ぐずって泣く女の子の表情。

『…………やだ、やんだ…………こんなの、おっかねぇ………………!!!』

その一言を聞いた瞬間、僕は身が硬直した。
とうとう、出てしまった。本来の田舎訛りが。都会じゃ僕しか聞いた事の無かったはずの、彼女の素の喋りが。
それは彼女があらゆる殻を壊しつくされ、『鵜久森 和紗』としてのすべてを曝け出したに等しい。
『おっ、何だそりゃ。地元訛りか? はは、いいじゃねぇか。スゲェ可愛いぜ』
英児は上機嫌に笑いながら、後背位でのラストスパートをかける。
和紗の腋の下を抱え込みつつ、ズン、ズン、と腰を打ち付けていく。
『あひぃっ、ひいいっ…………んんっぐぅうううんっ………………!!』
和紗は表情をぐるぐると変え、時には舌を出し、時には歯を食い縛ってスパートに耐えている。
そして数十秒後、とうとう英児が射精を始めた。
『あぁ、スゲー出てる』
奥の奥まで繋がったままく足を筋張らせ、ドクドクと音も聴こえそうなほどに長く。
和紗は放心状態でそれを受け、ようやく身体を開放されると、ドサリとベッドの上に転がった。
快感の余韻に浸っているのか、身体中を細かに痙攣させながら。
英児は息を荒げ、膝立ちのままそれを見下ろしている。
悔しいけど、筋肉質な身体をしとどな汗に塗れさせたその様は、戦いを終えた戦士みたいだ。
そして、戦いはまだ終わっていないらしい。
『今日は、これで終わりじゃねぇぞ。シャワー浴びたらまた続きだ』
その宣言に、和紗が顔を上げる。
目を見開いた愕然とした表情……に見える。でもその眼にはかすかに、何かを期待するような色が見て取れた。
英児がそれを笑いつつ、カメラの方に歩いてきて、DVDの1枚目は終わる。
でも、この日の分は他に2枚あるんだ。
徹底的に快感を覚えこませる。その英児の言葉を裏付けるように。

事実、2枚目、3枚目には、快感を刷り込まれる和紗の様子がまざまざと映し出されていた。
時々素の方言を出しながら、まさに限界という感じで絶頂を続ける和紗。
英児は驚異的な精力でもって、その和紗を愛し続けていた。
四十八手というのがあるけど、それの殆どをやってるんじゃないかってぐらい、色々な体位で。
特に衝撃的だったのは、3枚目が始まってから約一時間後の光景だ。
胡坐を掻くような格好の英児の上に、和紗が乗っている。
細い両腕を英児の逞しい肩に回し、すらりとした足をしっかりと英児の腰に絡めて。
『おーおー、自分から腰振りやがって』
英児は悪魔のような笑みを浮かべながら言った。
その言葉がウソでないのは、彼の手が膝に置かれている事実で証明されている。
いくら英児でも、女性の腰を掴まずに抽迭するのは無理だろう。
つまり、英児自身は微動だにせず、和紗が自発的に動いているとしか考えられない。
『はっ、はっ、はっ…………』
英児と抱き合うと子供のように見える和紗は、ひたすらに短い喘ぎを繰り返していた。
喘ぎの感覚の短さは、そのまま興奮の高まりを表す。
『……あ、いく。…………ぃく、また いくっ………………!!!』
まるでうわ言のようにそう告げ、身体を震わせる和紗。勿論、手も脚も、しっかりと英児に絡みつかせたままだ。
もう否定のしようがない。
動画の中の和紗は、完全にイキ癖をつけられている。
繰り返し繰り返し快楽を覚えこまされ、少し奥を突かれただけでも絶頂に至ってしまうように。
すでに理性なんてほとんど残ってないんだろう。そう、きっと、だからなんだ。
『ん、んむっ…………』
英児がキスを求めると、和紗は嫌がる気配すら見せずにそれを受け入れる。
それはきっと、判断力がなくなっているせいなんだ。
心の中でそう繰り返しつつも、僕は不安で仕方なかった。
DVDの最後の1枚。ほんの2日前の映像を記録したその中で、和紗はちゃんと元に戻っているのか。
それを知るのが怖いんだ。



最後の1枚が再生される。
映像はクリームやファンデーションの隙間から、暗い寝室を覗く形で始まった。
隣の部屋には明かりがついている。
狭いリビング。和紗と英児が洋酒を酌み交わしている姿がかろうじて見える。
いつもの広々としたマンションじゃない。モヤシやアロエが栽培されている、所帯じみたキッチンを奥に臨むリビング。
――間違いない。
これは、ウチだ。今僕がDVDを鑑賞している、このマンションの部屋だ。
和紗と英児は、淡々と何かを話しているようだった。
目を凝らせば、2人とも少し頬が赤くなっているのが解った。眼をトロンとさせたその雰囲気は、どこかいやらしい。
『そろそろ、始めるか』
会話の最中、英児が妙にハッキリとした口調で告げる。
『……うん』
和紗が頷く。
何をだ。一体何を。そこは、僕らの家なんだぞ。僕は嫌な予感をひしひしと感じ取りつつ、画面を凝視する。
2人はキッチンの椅子から立ち上がり、カメラが正面に映す方……寝室へと足を踏み入れる。
そして、お互いに服を脱ぎ始めた。
他の映像で和紗の裸はさんざん見たけど、脱ぐところを見るのは久し振りだ。
和紗の下着は昔と違っていた。
僕と住んでいた頃は、居酒屋のバイト時代に買った、モスグリーンやブルーのシンプルな下着ばかり。
でも今は、真っ赤な生地に黒いレースのついた、扇情的かつ高価そうな下着だ。まるで、一流の娼婦がつけてるような。
『なかなか似合ってるじゃねぇか』
英児はその下着に満足げな笑みを見せつつ、脱がしにかかる。
和紗は恥ずかしそうに目線を下げたけど、抵抗する素振りはない。

お互いがモデル級の裸を晒す段階になると、英児が和紗を抱き寄せた。そして、キスを迫る。
和紗は、最初少し身を強張らせているようだった。でも英児の手がうなじを撫でると、ゾクッとしたように震える。
そうなれば、キスももう拒まなかった。
何度も何度もキスをして、ハグを交わして、そのまま2人はベッドへと倒れこむ。
ベッドの上でもする事は同じ。ひたすらに英児が和紗の身体中を愛撫し続け、和紗もそれに控えめに応える。
長い、長い前戯。
見ている方はつまらないけど、当事者2人は刻一刻と燃え上がっているのがわかった。
何しろお互いの背中や肩が、汗びっしょりになっていってるんだから。
英児はたまに顔を上げて柱時計を確認しつつ、前戯を続けていた。
それを見るうち、僕も彼がやろうとしている事に気付く。
“ポリネシアンセックス”だ。
前に和紗とのセックスを模索している時、ネットで見かけた。
スローセックスっていって、大きな動きをせずゆっくりと交わると、そのうち断続的な絶頂状態になるらしい。
普通のセックスとは比べ物にならないほどの幸福感や興奮が得られるとも書いてあった。
僕も一度、和紗と試してみた事がある。
でも僕だとどうにも勃起力が持続できなくて、ただイチャイチャした後で普通にセックスするだけの結果になった。
英児は今からそれをやろうとしてるんだ。

『どうだ和紗。ダンナと毎晩のように愛し合ったベッドで、こうしてんのは。興奮すンだろ』
英児は愛撫を続けながら、和紗の耳元に囁きかける。
和紗は顔中を汗に塗れさせたまま、困ったように眉を下げた。
『い、言わないで。罪悪感が凄いんだから』
『よく言うぜ、その罪悪感をオカズにして興奮する変態のくせに。
 憶えてっか。すぐそこの駐車場でカーセックスした時のよ、お前の締め付けは凄かったよな。
 石山の取り巻き共に、公園でマワされてた時もだろ?
 そういう女なんだよ、お前は』
カーセックス。その単語が僕の頭を殴りつける。
まさか、帰りの遅い和紗を待つのに疲れ、一人で晩酌したあの晩か。
だとしたら、僕はあの晩、妻が寝取られている現場でオナニーをした事になる。
『んんんっ…………』
和紗は甘い吐息を漏らした。相当に昂ぶっているみたいだ。
その和紗の髪を撫でつけつつ、英児はキスを迫った。そしてそのまま、ゆっくりと挿入を果たす。
『くぅっ』
挿入の瞬間に出た声は、和紗と英児のものが重なって聴こえた。
そしてそのまま、しばらく声は聴こえなくなる。いつもの挿入後のように、ベッドがギシギシと軋む事もない。
ただ、深呼吸の音だけが聴こえてくる。
英児が上になり、和紗が下になった格好のまま。
僕にはその光景が耐えがたかった。和紗という宝物が、英児に密着されている時間だけ汚染されていくみたいで。
離れろ。早く離れろ。
僕は今日だけで何十回、テレビに向かってそう念じたことだろう。でも、それが実を結んだ事はない。実を結ぶ訳がない。
これはあくまで、過去に起こったことの記録なんだから。

『んっ…………』
何分が経った頃だろうか。和紗の小さな呻き声が、ようやく画面から聴こえてきた。
とはいえ、動きはほとんどない。
『噂通りスゲェな、これ。俺がちっと体動かすだけで、下半身がピクピクしてんじゃねぇか』
英児が状況を解説する。僕には知りようのない状況を。
『はーーっ、はーーっ、な、何か変…………はーっ、はーー、変だよ………………』
和紗は深呼吸を繰り返しながら、うわ言のように呟いている。
『ああ、変だよな。なんつーか、興奮して頭爆発しそうだ。あと、いつも以上にスゲーお前が可愛く見えてきた。
 なんかクスリやってるみてー』
英児も疲れたような半笑いだ。
この頃になると、英児の汗の量も半端じゃなくなっていた。
もう単に背中がテカっているって段階じゃなく、全身から滝のような汗が噴き出している。まるでバスケットの試合の最中みたいに。
そんなに興奮してるのか。それほどのエネルギーが生まれているのか。
僕はそう考えて愕然とする。
和紗だって普通じゃない。荒い息遣いはまったく変わってないけど、目が虚ろだ。
『おい、大丈夫か?』
たまに英児がそう尋ねても、ハッキリとした返事は返さない。泥酔した時みたいに、う゛ー、と呻くばかりだ。
僕の心配をよそに、そんな状態がさらに数十分は続いた。
そしてその最中、急に英児の腰が跳ねる。
『うあ゛っ…………!?』
その低い呻きの後、和紗、英児の両方が目を見開いて、結合部を見つめている。
『あああ、ヤベェ何だコレ…………動いてねぇのに、いきなりスゲェ出た…………』
『な、何で、急に…………?』
『急にったって、お前の膣内がグニグニ動くからよ、さっきからスゲーやばかったんだって。
 ああ、こんな出たの初めてかもしんねー。しかも全然萎えねぇし。こりゃマジで半端ねぇぞ』
英児は和紗と言葉を交わしながら、小さく腰を動かし始めた。本当に小さく。目を凝らさないと解らないぐらいの腰の引きで。
でも、その効果は絶大らしい。
英児も和紗も、下半身どころか全身を痙攣させ、何度となく絶頂に浸っていた。
『ああ、だめ、だめこんなのっ……おかしくなる、おかしくなっちゃう…………!!』
特に和紗のハマり具合は異常だ。手足を英児の体に絡みつかせながら、艶々とした黒髪を乱して感じ続ける。
その様子は、最愛の彼女が英児の手で“作りかえられた”事を、よく物語っていた。



すべてのDVDを見終え、僕はしばし放心する。
いつの間にか窓の外は夜になろうとしていた。ほぼ丸一日、妻の痴態を眺めていたらしい。
ふと下半身に違和感を覚え、ズボンをずり下げる。
射精していた。
情けなくて涙が出る。いくら刑務所暮らしで禁欲生活が続いていたとはいえ、妻が寝取られる映像で達するなんて。
そう、僕は妻を寝取られたんだ。ずっと無二の親友だと思っていた男に。
これから、どうすればいいんだろう。
こういう場合、妻を奪われたといって民事訴訟でも起こすのが普通だろう。
ちょうどお誂え向きに、ここには大量の証拠DVDだって残されている。
でも、どうにもその答えじゃしっくり来ない。
この映像を見る前なら、いや、この家に帰ってくるまでなら、その方法も魅力的だっただろう。
でも今は、和紗に訪れた変化を知ってしまっている。
もしも英児を相手に裁判を起こし、勝ったとして…………その結果、和紗が僕を捨てて英児について行ったらどうする?
そうなれば僕には、もう何も残らないじゃないか。
何より、裁判なんかで第三者に結論を下されたって、僕自身が納得できない。
相手はあの英児なんだ。直接奴に会って、決着をつけてやる。





2年ぶりに訪れた親友のマンションは、相も変わらず豪華な限りだ。
今になって考えれば、奴がこんな所に住んでいる事自体を怪しむべきだった。
明らかに社会人1年目が住めるような代物じゃない。引っ掛けた女の子に金を出させているとか、何か裏があるに違いない。
「僕だ」
英児の部屋……1805室のインターホンを押し、そう告げる。
いくつものセキュリティを通り抜け、重い金属製のドアを開いた先には、懐かしい顔があった。
かつては頼もしく見えた笑顔。今は、何よりも憎むべき敵の顔。
「君があんな人間だったなんて、思わなかったよ。…………ずっと、僕を騙していたんだな」
僕は心からの恨みを込めて言った。
何人もの人間が、こういう病的な僕を見て顔を強張らせたものだ。でも、英児は笑みを消さない。
心の底から僕を下に見ている感じだ。
「何だよ、おっかねぇ顔しやがって。俺の事も刺すのか、犯罪者? 今度は初犯じゃねぇ分、勤めは長ぇぞ」
確かにそうだ。
世間一般から見れば、僕は前科者、英児は善良な市民だ。理不尽だけど、それが事実。
でも、だからといって退いたらここまで来た意味がない。
「もし裁判になったら、全部話すさ。ウチにあったDVDの事も含めて、全部だ」
僕は燃え滾る怒りを抑えつつ、静かに告げた。
普段怒り慣れていないせいか、声が震えているのが解る。
英児は、それでも顔色を変えない。むしろ、嘲りの色を濃くするだけだ。
「フン、バカかお前」
「…………なんだと?」
「冷静に今の自分の立場を考えてみろよ。人をブッ刺してムショ入りして、出てきたその日にまた傷害。
 おまけに襲った相手はどっちも、昔からの知り合いときてる。
 本人がどういう事情を喚こうが、傍目にゃあただの気が狂った猟奇殺人者だぜ?」
確かにその通りだ。でも。
「それでも、お前を野放しにはしておけない!」
「野放しにせずに、どうするってんだ? 俺が入院するなり死ぬなりして、お前はムショに逆戻り。
 そうすっと和紗のやつは、たった1人で子守しながら働き口を探すことになる。それがお前の思いやりって奴なのか?」
一理ある。
確かに和紗は、子守をしていて大変な時期のはずなんだ。
英児を刺さずに裁判で決着をつけたとしても、その結果として残るのは、前科一犯で職もない夫との生活。
元通りの生活だなんてとんでもない。石山を刺した時点で、僕の運命は決したんだ。
そして僕が石山を刺すように誘導したのは、多分英児で間違いない。
つまりは全部、英児の手の平の上だったってことか。
 ――まったく、もう笑うしかないな。
僕は項垂れながら自嘲する。
「な、解ったろ。変な気を起こさずに丸く治めんのが、一番和紗の為になるんだ」
英児は宥めるように僕の肩を叩いた。
そして僕が何も言わずにいると、勝ち誇った笑みを湛えながら服の内ポケットを弄り始める。
何か切り札的なものを取り出そうっていうのか。
でも、無駄だ。
僕には初めから、このゲス野郎と交渉なんてする気がないんだから。

「ナメるなよ、英児ッッ!」

僕は俯いたままそう言うと、ズボンの背中側に隠していたナイフを引き抜く。
そしてそのままナイフを構えて突進し、英児を

……………………

刺せ、ない。

僕の突進は英児にあっさりとかわされ、逆に手首を絞り上げられてしまう。
まるで、行動を読まれていたみたいに。
「おー、危ねぇ危ねぇ。残念だったなァ。
 石山ン時みてぇにいくと思ったか? 自惚れんなよ。あんなもん、不意打ちのマグレだ。
 正面切ってのケンカで、テメーが俺に勝てる訳ねぇだろ」
折れそうなぐらいに僕の手首を握りこみながら、英児は笑う。
「テメーが何かしてくる事ぐれぇ、解りきってんだよ。
 テメーみてぇなバカが今選べる道は、俺の言う通りにするか、自暴自棄になって暴れるかしかねぇからな」
「ぐ、アっ!!!」
英児の言葉と共に握りが強まり、僕はとうとうナイフを取り落としてしまう。
「さーて、んじゃあ正当防衛開始だ。
 テメーがナイフ持って襲ってきたとこは、キッチリ撮影してあっからよ。
 とりあえず俺に半殺しにされてから、ムショん中で好きに喚けや。
 誰も聞きゃあしねぇだろうが、な!!」
英児の拳が、アッパー気味に僕の腹部を抉る。
「ごぇえっ!!!」
今まで出した事もないような低い呻きが出た。
唾液の濃いものが口からあふれ出す。肋骨が折れたように痛む。
この一発で解ってしまう。勝てない。実際にケンカをすると、僕と英児じゃ、こんなにも差があったのか。
でも、退けない。
僕は昔、誓ったじゃないか。和紗を笑顔にするって。ここで英児に屈したら、和紗を笑顔にすることなんて二度とできない。
バカだから理屈は解らないけど、本能がそう叫ぶんだ。
「ぐ、ぅ……ぁあああアっ!!!!」
渾身の力を込めて、肩で英児の身体を押し返す。
「なっ……テメェ!!!」
英児の身体の軸がぶれた。でもそれはほんの一瞬。すぐに英児は足を踏み変え、強烈なフックで僕の顎の辺りを殴りつけてくる。
「ぐぶふゅっ……!!!」
鈍く痺れるような痛みに続き、口の中に血の味が広がっていく。視界も揺れる。
でも、英児から離れない。
「死にてぇのか、このグズがっ!!」
英児はこめかみに青筋を立てながら、僕の身体中を殴りつけてくる。
多分急所を打たれてるんだろう。一発一発が僕の脳に警鐘を鳴らさせる。鼻から血がどんどん溢れ、体がふらついて壁際に押し込まれる。
鳩尾にまた良いのを貰ってしまった。息がつまり、あらゆる行動が止まる。
もう、限界だ。ここで死ぬかもしれない。
そんな考えが脳裏に浮かぶ。
その朦朧とした状態の中で、僕は見た。リビングの奥……ベッドルームの扉が静かに開くのを。
そしてそこからネグリジェ姿の女の人と、銀色に光る何かが飛び出して――

「むぐ、ぅっ…………!!?」

直後、英児の口から妙な声が漏れた。
何事かと奴の顔を見上げると、その口から薄く血が流れ落ちてくる。
そして英児は震えながら背後を振り返り、目を見開いた。
「テメェ…………っか、和紗………………!!!」
そう。
そこにいたのは、間違いなく和紗だ。
和紗が手にした刺身包丁を、深々と英児に突き刺している。
「はーっ、はぁーーっ…………」
和紗は恐怖に慄くような顔で包丁を離し、壁に寄りかかった。
同時に、僕の手首を掴む英児の手から握力が消える。
英児は顔面を蒼白にしたまま、力なくその場にへたり込んだ。
「ああ、あああ……っ、痛ぇ…………いってぇ…………。
 ち、畜生………………刺しやがった……刺しやがっ、たな…………!」
傷口を押さえる英児の手も、徐々に赤く染まっていく。
和紗は少し怯えている様子だったけど、すぐに口元を引き締め直した。
そして左手から指輪を抜き取り、英児の目の前にそれを落とす。
大粒のダイヤを冠したリングは、その重さの分、ひどく寂しい音で床を跳ねる。
「刺したよ。もう、逃げるのはやめたの。
 夫の為だとか、子供の事を想ってだとか、そんなの全部ただの言い訳。
 本当は不甲斐ない自分から目を逸らしたくて、あなたとのセックスの快感に逃げてただけ。
 でも、こうしてまた壮介が命を張ってくれてるの見て、目が覚めた。
 私だってもう逃げない。
 警察と救急車はもう呼んでるよ。そろそろ来る頃だろうから、命が惜しいならじっとしてたら?」
和紗は凛とした様子で言い放って、立ち尽くす僕に向き直った。
ネグリジェの内側から白濁した雫が滴り落ちる。そしてその脇で握り締められた手は、かすかに震えている。

「…………ごめん、壮介。
 今から自首するから、せめて途中まで、一緒にいてくれないかな」

久し振りに聴く彼女の声は、手と同じく震えていた。
つらいんだろう。僕には、その心境が解る。僕だって2年前、同じように震えた夜があったから。

「ああ。もちろんだ」

僕はそう答えて、血まみれの妻の手を取った。
和紗がどきりとした様子で手を引こうとするけど、離さない。
もう、絶対に離さない。

「テメェ和紗…………自分が何したか、わぁってんだろうな!
 テメェはこの俺の秘書なんだぞ。そのテメェが事件を起こして、全部バラしてみろ。マスコミ共のいい餌食だぞ?
 そうなりゃ、これから一生その汚名は消えねぇ。この先ずっと母子揃って、後ろ指差されながら生きてく事になる!
 な、逃げないとか自分に酔ってる場合じゃねぇだろうが。
 この傷はそこのバカがやった事にしてよ、サツに口裏合わせて――」

腰を抜かしたまま、英児が何か言っている。和紗はすぐにその言葉に反論しようとした。
でも僕は、その和紗を手で制する。これ以上、和紗には一言だってコイツと話してほしくない。
「――英児。君はやっぱり、僕らをナメてるよ」
僕がそう言うと、英児の表情が一変した。
「なっ!?……テ、テメーにゃ訊いてねぇんだよ、すっこんでろ!!」
「その手はもう食わないよ、英児。君は僕らに上からモノを言えるほど、絶対的な人間じゃない」
予想外の言葉なのか、凍りつく英児。
僕はさらに続ける。
「君は確かに、何かを得るって事に関しては、僕らよりずっと優れてるんだろう。でも、何もかもが上って訳じゃない。
 君は得ようとする事に躍起になるあまり、捨てることに無頓着すぎた。
 君の『捨てる』覚悟は――僕らの足元にも及ばない!!」
そう。
お互いがお互いの為に自分を捨てる覚悟を決めた僕らに、もう失うものなんて何もない。
英児の土俵に立ってやる事なんてないんだ。
「……………………ッッ!!!!!」
英児は眼を見開いたまま僕を見上げ、一言も返せずにいた。
頭は良い奴だ。失うことを恐れない人間相手には、どんな交渉も無意味だと悟ったんだろう。
「行こう、和紗。」
僕は愛する妻の手を握り直し、精一杯の笑みを浮かべた。







「おばちゃーん、団子まだーー?」
「はいはい、ちょっと待ってね。
 壮介ぇー、悪ィけどこっちーお茶くなんしょーー!!!」
いつもの子供の声に続き、和紗の声が響きわたる。
子供達は聞き慣れない言葉を、くなんしょ、くなんしょ、と繰り返しながら笑っていた。
和紗をおばちゃん呼ばわりってのも気になるところだ。
もっとも、あれぐらい小さな子にとっては、20代後半で甘味処をやっている女性はおばちゃんに見えるのかもしれないけど。
「お待たせしました」
僕は淹れたてのお茶を縁側のお客さんに配って回る。
「おお、おお、今日も頑張っとるの」
常連のおじいさんが労いの言葉をくれる。どこか和紗のおじいさんを思わせる雰囲気だ。


あれから、5年。
和紗は言葉通り自首し、裁判ですべてを明らかにした。
石山をも利用した英児の自己中心的な所業は、女性裁判官を大いに憤慨させ、刑期はたったの半年で済んだ。
急成長を続けるベンチャー界の超新星、と呼ばれていた英児は、彼自身が予想していた通りの大スキャンダルに巻き込まれた。
笑えるのは、彼に捨てられた数知れぬ女の子達が、英児の破滅をきっかけとして一斉にマスコミへのリークを始めたことだ。
これによって英児は連日週刊誌の記事を賑わせる事になった。
世間の反応が英児=絶対悪、となっていく様子はおかしくもあり、恐ろしくもあった。
彼が今どうしているのかは知らない。体面がすべてみたいな男だから、子供を連れて海外へ逃亡でもしたんだろうか。
案外、恨みを持つ女の人に殺されているかもしれない。
でもどっちにせよ、今の僕らには関係のない話だ。
僕らは今や東京から遠く離れ、この長閑な山奥で新しい生活を始めているんだから。

「いんやー、今日もお客さん多かったべー」
ようやく後片付けを終えて、和紗がちゃぶ台に突っ伏す。
「ふふ。お疲れさま」
僕はそんな和紗の背中を撫でた。
「壮介おめ、なしてそんなに元気なんだ? 昔ゃ逆だったのに」
「ん? うーん……そうだなぁ。和紗と一緒に働いてるから、なのかな」
何気なくそう言うと、ちゃぶ台の上で和紗の顔がみるみる赤くなっていく。
そして和紗はむくりと起き上がると、僕の肩を小突き始めた。
「だ、だーからっ、そういうこと真顔で言うなよー!!」
あ、共通語になった。これはいよいよ照れている証拠だ。
「あははっ、ごめんごめん」
僕はそう言いながら、和紗を優しく抱きしめる。
すると和紗の猫のような叩きもピタリと止み、華奢な身体を預けてくる。
僕はそのまま、慣れた手つきで和紗の和装を脱がしに掛かった。
ブラジャーのホックも外し、ショーツも曲げた脚から抜き取って、いよいよ和紗を生まれたままの姿にする。

何十度となく目にしてきた和紗の身体。
でも最近は妙に忙しくてご無沙汰だったから、つい興奮で頭がクラクラしてしまう。
もう30手前だっていうのに、和紗のプロポーションは昔とほとんど変わらない。
せいぜい妊婦時代に比べて、乳房の張りが収まったぐらいか。
まぁ体型が若いままなのは僕もなんだけど、これも山の幸の力なのかな。
「綺麗だよ、和紗」
僕は和紗の唇に軽くキスしつつ、本心からそう囁きかけた。
今さらという気もするけど、毎回欠かさず言っている。言うべきことはすぐに言う。それが大切だって知ってるから。
「ありがとう」
和紗はそう笑いつつ、深いキスを返してくる。
人肌より暖かい舌が絡み合う、濃厚なキス。お互いの息がお互いの肺を通り抜け、興奮を増していく。
ほのかに香るいい匂いに、僕の分身も硬さを増してきた。
「んっ! ……ふふふ」
股座に異物が当たるのを感じたのか、和紗がキスの合間に笑う。
外向きとは違う、子供のように天真爛漫な笑い。僕の大好きな顔だ。
「そろそろ、いいかな」
僕はまた囁きかけた。
久しぶりのディープキスのせいか、僕の理性は爆発寸前だ。下半身に血が巡って仕方ない。
「もちろん。…………とっくにだよ」
和紗は蕩けるようなとびきりの笑みをくれる。
それが最後の引き金となって、僕は彼女を畳の上に押し倒した。

愛を込めて黒髪を撫でつつ、身体中を愛撫していく。
まだまだ張りを失っていない、手に吸い付くような珠の肌。
でも胸の先端には、かすかな傷跡が残っている。英児によって開けられたピアスの穴だ。
せっかく綺麗なピンクの蕾だっていうのに、残酷な事をする。
そこに触れると、未だに和紗は肩を強張らせる。でも僕は、あえてその傷跡も含めて愛撫する。
逃げてるだけじゃ、新しい今は作れないから。
僕は精一杯の愛情と共に、和紗の胸の蕾を甘噛みし、舌でくるんで転がした。
「ん、んんっ…………っふ、んんっ…………!!」
それほどの時間も要らず、和紗の唇から甘い吐息が漏れ始める。
その間隔も、身体を重ねるごとに段々と短くなってきているみたいだ。
我ながら充分と思えるほど愛撫してから、和紗の恥じらいの場所に触れる。
驚くほどによく濡れていた。
「挿れるよ」
「うん」
僕は和紗と顔を見合わせたまま、ゆっくりとお互いの粘膜で繋がりあった。
ぬるりとした締め付けが僕自身を包み込む。
なんて気持ちいいんだ。久しぶりだから、余計に脳髄への刺激がビリビリくる。
「…………気持ちいい」
僕の心を代弁するようなその一言が、和紗の唇から囁かれた。
僕はそれに、心の底から安堵する。
最初の頃は、和紗の締め付けは殆どなかった。すっかり英児のサイズに慣らされていたせいだ。
だから僕の物を奥まで入れても、和紗は明らかに演技と解るぎこちなさで快感を訴えるだけだった。
それが今は、こんなに真心を込めて囁いてくれる。
ようやく彼女の奥深くも、英児という呪縛から開放されつつあるんだ。
「好きだよ、壮介…………大好き」
和紗は潤んだ目で囁きながら、伸ばした左手で僕の頬を撫でた。
薬指にかすかな冷たさが感じられる。僕の左手に光る、慎ましい愛の証と同じものが。

僕らは結婚してから随分と長い間、川の対岸に居たような気がする。
一人で必死に泳いでもとても届かないほど、黒く、大きな川だ。
でもその川だって、2人で泳げば手を取り合える。2人で力を合わせれば、どんな困難だって乗り越えられる。
それが結婚という行為の、本当の意味なんだ。
僕は2度と和紗を離さない。これから一生、彼女を笑顔にし続けてみせる。

『向こう岸の彼女』は、もう、終わりだ。




                       ~ FIN ~

『向こう岸の彼女』完結!(追記あり)

※一部本編ネタバレあり。ご注意。

終わりましたッ!
今までの連載の中では(超短編だった『堕ちた双子』を除けば)最短で終えられたんではないでしょうか。

そして、今までの私の連載の中では初となるBADEND的な終わり方です。
でも、個人的にNTR物ってのはドロドロしてるのが醍醐味だと思うので、この結末にする事は最初から決めていました。
ハッピーエンドを期待して下さっていた方には申し訳ありませんが……
一応和紗とイチャイチャはできるENDですので、どうかご容赦を。

ちなみにこの向こう岸の彼女、elfの傑作NTRゲー『ボクの彼女はガテン系』のオマージュ的な作品です。
エロパロ板の寝取り・寝取られスレで話題に出てたのでやってみてドハマリした結果、NTRやりたい!と思って考えた話です。
主人公とヒロインの出会いから話が始まり、最後まで心は堕ちないけど身体は堕ちている、という辺りを参考にしました。
あ、それから事の発端がヒロインの泥酔レイプな所も共通です。
結構いいお値段してしまいますが、未プレイで興味のある方にはオススメですぞ。非常にエロいしハートフルボッコされます。

ではでは、裏話はこの辺りで。
また次の作品でお会いしましょう!

※ 2015.10.13 追記
この作品の結末がBADENDのみというのがどうにも自分の中でしっくり来なかったので、GOODENDを追加しました。
BADENDをお望みの方には蛇足かもしれませんが……マルチエンディングという事でひとつ。

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