大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2017年02月

2/26のりょなけっと7で本を出します。

皆様こんばんは、燻製ねこです。

今日は同人活動のお知らせです。

来週2/26開催のりょなけっと7内イベント『東京地下闘技場 TOKYO UNDERGROUND COLOSSEUM』にて、私、燻製ねこと漫画家のbowaliaさん(http://bowalia.tumblr.com/)が組んだリョナい同人誌を発売します。

スペースNo. 地1
サークル名 TLG (bowaliaさん主催のサークル)
です。

結構ブランクがあったにしては脳汁全開のノリノリで書けました。また、bowaliaさんのイラストに至ってはもう流石という他はなく、本職の漫画家さんの凄まじさというものを堪能できる仕上がりになっております。

残念ながら私は当日現地にはおりませんが、もし都内まで出られて、かつ都合のつく方がいらっしゃいましたら、ぜひよろしくお願いいたします!
なお、Boothでのダウンロード販売も予定されているとの事ですので、そちらもお願い致します
(詳しくはbowaliaさんのツイッター http://www.pixiv.net/member.php?id=57650 をご覧下さい)!

以下、作品サンプルです↓

rensa1

rensa2

rensa3


黒い瞳に囲まれて

※レズいじめモノ。スカトロ要素(大・嘔吐)ありのためご注意を。



――自分には何もない。

美杏 (メイアン)は昔から、そう考えて生きてきた。
環境に恵まれていないとは思わない。むしろ、恵まれすぎている。
学のない孤児に過ぎなかった自分が、偶然の巡り会わせで名家である藩家に拾われ、召使としてではあるが衣住食を保障される。
これほどの僥倖はない。
自分の全ては偏に幸運によって与えられ、保障されているもの。
召使の同僚である紅花(ホンファ)を見ていると、特に美杏のその想いは強くなる。

紅花は元々、美杏と同じく孤児だった。
藩家に拾われてきた時期も同じなら、歳も同じ。
藩家夫人である静麗 (ジンリー)は、美杏と紅花を初めて引き合わせた日、互いを姉妹と考えて仲睦まじく過ごすように命じた。
そしてそれは、何ら難しいことではなかった。
紅花は頭がよく、気立てがよく、裏表のない性格の少女であったからだ。
静麗夫人に対しても、古株の使用人に対しても、そして美杏に対しても、常に誠実な態度で気持ちよく接する。
命ぜられた仕事には一つのミスもないどころか、大抵は期待以上の働きで応え、その合間に他の者の手助けすらこなしてしまう。

そのあまりに卒のなさすぎる才女ぶりには、家中の誰もが一度は『裏の顔』を探ろうとしたほどだ。
しかし、しばらく紅花を観察すれば、誰もが自らの思い違いに気がついた。
紅花には、本当に裏がない。
若くして苦労を重ね、持ち前の聡さでこの世の醜穢を悟りつつも、なお愚直なまでに誠実で、心優しい少女なのだ。
そのような紅花には、当然ながら人望が集まる。
いつしか召使達に仕事を振り分ける使用人頭のような立場になり、静麗夫人もまた折り入っての頼みを紅花に持ちかける事が多くなった。
藩家を訪れた客達もまた、目まぐるしく働きつつも作法の乱れない美しき召使をいたく気に入り、方々で良い噂を流す。
中には、是非ウチにと藩家当主に大金を積む事すらあるらしい。
しかしそのたび静麗夫人が嫌がり、また紅花自身も『藩家には深い御恩がありますので』と引き抜きに応じない。
最近の藩家当主は、酒に酔えば必ずその話を始め、娘の自慢話をするように機嫌よく笑うという。

対して、美杏はどうか。
美杏はけして要領の良い方ではない。何事につけても動作が遅く、決断力に乏しく、社交的といえる性格でもない。
今や実質的に藩家を取り仕切っている紅花の陰で、ごそごそと倉の整理などをしているのが常だ。
あの紅花と同い年なのに。誰もがそう陰口を叩いている気がした。
いつも紅花に対して負い目を感じていたし、またいかに紅花とはいえ、いい加減自分に愛想を尽かしているに違いないと考えていた。
そしてある日、ついに美杏達より4つ下の召使から、はっきりと言葉に出されてしまう。

「ねぇ。美杏さんと紅花さんって同い年で、同じぐらい長くココで働いてるんですよね。でも、全然感じ違いますねー。
 紅花さんはいかにも熟練って感じで格好良くて憧れますけど、正直美杏さんはとろいっていうか、ちょっとああはなりたくないなって思います。
 紅花さんも大変ですよね、あんな人の尻拭いし続けて。でも同い年だから注意しづらいんでしょ? 同情しますよ」

少女が紅花にそう告げるのを偶然耳にした瞬間、美杏の背を冷たい汗が伝った。
恐れていたことがついに現実になったのだ。
無理もない。自分の不器用さは誰が見ても腹立たしいだろうし、実際紅花に負担もかけている。
そうよ、もううんざり。そんな本音が今にも紅花から発されるだろう。美杏は物陰に隠れながら、それを覚悟した。
しかし。
直後、美杏の耳に飛び込んできたのは、乾いた音だった。
「えっ……?」
少女の虚を突かれたような声が続く。
紅花が少女の頬を張ったのだ。その事実を把握するのに、美杏は数秒を要した。
「美杏を、馬鹿にしないで」
紅花はあくまで静かに、しかし毅然とした口調で告げる。
「確かに美杏は、人より仕事をこなすのに時間がかかるかもしれない。でもあの娘はいつだって、どんな仕事だって、一生懸命にやるの。
 長い付き合いだけど、手を抜いているところは見た事ない。本当に優しくて他人への思いやりがないと、そんな事できないよ。
 私は、そんな美杏を凄いって思う。従者として……ううん、人としてだって、大事なのはそういう事なんだって。
 要領が良いか悪いかじゃない。美杏っていう娘が何をして、何を考えて毎日を生きてるか、ちゃんと見てあげてよ!」
一語一語を噛みしめるようなその言葉は、紛れもない本心に思えた。
否。たとえ美杏の存在に気付いた上での甘言だったとしても、その言葉を耳にしただけで、美杏は長い苦しみから救われた。


その夜、従者用に宛がわれた相室の中で、美杏は初めて自らの胸中を紅花に曝け出す。
ずっと自分に自信がなかったこと。
初めて会ったときから、何でも卒なくこなしそうな紅花にどこか苦手意識を抱いていたこと。
家中での扱いに差がつくたび、焦りと共に妬み嫉みといった感情が膨らんでいったこと。
何の非もない紅花に嫌悪感を抱く自分自身が嫌でたまらないこと。
本当は紅花が自分を見下していると思っていたこと。
昼間、偶然紅花の言葉を耳にし、申し訳ないという感情で胸が詰まったこと。
美杏が次第にしゃくり上げながら紡ぐその懺悔を、紅花は、ただ静かに聴いていた。
そして最後、美杏が言葉にならない音で謝罪を繰り返すようになった時点で、紅花は……美杏を抱きしめた。
何も言わず。
ただ、いつも品のある振る舞いをする彼女にしては、荒々しくさえ思える力強さで。
「ほ、紅花…………?」
美杏が捩れた麻の服越しに紅花の横顔を覗けば、その頬には透明な雫が見てとれた。
涙の意味は解らない。美杏の心中を察しての涙か、それとも本音を打ち明けられた事が嬉しかったのか。
いずれにせよ、この日の涙をきっかけに、二人の関係は変わった。近しい同僚から、無二の親友へと。
出会って以来、常に二人の間にあった隔たりは消え、悩みや迷いがあれば何でも相談しあう仲になった。
美杏から相談するのは勿論、紅花もまた美杏を頼るようになり、美杏にしてみればそれが嬉しい。

腹を割って話してみると、いかに紅花といえど、周りが思うほど完璧ではないことが判った。
彼女も美杏同様、ミスもすれば物忘れもする。
ただ、それが問題となる前に火種を消し止めたり、傍目には最善と思えるほど丁寧に次善策を講じているだけだ。
美杏はそれを明かされ、逆に改めて紅花の優秀さを思い知ることになる。
そしてそれ以上に、彼女の藩家に対する忠誠心に胸を打たれた。

紅花が熱心に従者の勤めを果たす理由は一つ、拾ってくれた藩家への恩義ゆえだ。
人目のない所でさえ常に行儀よく振舞うのは、万が一にも来客に無作法を見られて藩家の評判が落ちないようにするため。
誰より多く仕事をこなす傍ら、他の者にも助力を惜しまないのは、家中の安泰を願っての行為だ。
その忠臣ぶりたるや、美杏の比ではない。
「静麗奥様に拾って頂かなかったら、私は……とても生きてはいられなかったから」
忠義を尽くす理由として、紅花は短くそう告げた。
藩家によって救われたのは美杏も同じだが、紅花の過去はそれ以上に暗いものらしい。
美杏は、紅花が闇から救われてよかったと感じた。そして、これからの彼女にも幸多き事を切に願った。
しかし。その少女の無垢な願いは、後に無惨にも踏みにじられる事となる。
不運でもなければ、事故でもない。
彼女らと同じ“人間”が抱く、どす黒い悪意によって……。





「白家に…………ですか?」

静麗の言葉を復唱しながら、さしもの紅花も表情を強張らせた。
白家といえば、この一帯で知らぬ者はない由緒正しき家柄だ。それも藩家の比ではない。
たかだか2代前に財を築いて名門入りした藩家に対し、白家は数百年も昔から役人を輩出し続けている名門中の名門。
もしその白家当主の機嫌を損ねでもすれば、藩家など忽ち一家断絶の憂き目に遭うだろう。
藩家はこれまで、この白家に対して礼を尽くしてきた。金子や各種名産品…………そして、“人”の上納という形で。
「ごめんなさい」
藩家夫人である静麗は、紅花に頭を下げる。この静麗自身も、今回白家に貸し出される貢物の一つだ。
30を超えてなお若々しい美貌を持つ静麗は、白家当主にいたく気に入られていた。
白家当主が唾をつけている『妾』は他に何人もいるが、今年は久方ぶりに静麗に白羽の矢が立ったらしい。
白家に呼ばれた夫人は、白家の敷地内に建てられた屋敷に出向き、そこでおおよそ一月から二月の間軟禁状態に置かれる。
そして出向く際には、家の召使のうち一人を同伴する決まりになっていた。
名目上は、静麗の世話係として。しかし実態は、白家に仕える召使達の遊び道具としてだ。
大家である白家は、召使の数も数十に上る。女の数が増えれば派閥も生まれ、軋轢が生じやすい。
その軋轢を緩和する為に、妾の滞在中、『下賎な家柄』の従者を召使達に与え、一丸となって憂さ晴らしをさせる。
実際、こうした共同作業で一人を思うさま虐げた後しばらくは、白家の召使達も派閥の垣根を越えて談笑するという。

堪らないのは、供物として捧げられる従者の方だ。
仔細は明らかになっていないが、断片的な噂によれば、白家に捧げられた従者はこの一月から二月の間、
女の身で考えうるあらゆる恥辱を繰り返し味わわされるという。
仕えていた先では誰より聡明で、誰より美しく、誰より責任感が強いと謳われた最上の従者が、この白家への『奉仕』を最後に、ほぼ例外なく暇を申し出て姿を眩ませるという。
そして、それは単なる噂ではない。藩家においても、4年前に一人の犠牲者が出ている。

美杏と紅花にとって姉も同然の存在であった彼女――怜(リン)は、さばさばとした勝気な女性だった。
卒のない紅花にも内向的な美杏にも同じように接し、確かな愛情を注いでくれた。
その彼女が、白家から戻ってきた時には、まるで別人のようになっていたのだ。
髪は乱れ、肌はくすみ、瞳には何の光も宿していない。
「…………もウ、私のことをヒトだと思わないでクれ」
心配して駆け寄る美杏と紅花に対し、怜は不安定な抑揚でそう呟いた。そして。
「…………あんた達が、あんた達が羨ましい。まだ堂々と、ヒトで居られるあんた達が…………」
もはや恨みすら感じられる眼で、美杏を一瞬、そして隣の紅花を実に6秒ほど睨み下ろした後、怜は踵を返す。
そしてそのまま、二度と藩家の敷居を跨ぐ事はなかった。
美杏と紅花は義姉の後ろ姿が見えなくなった後、その場にへたり込み、肩を震わせて泣いた。
子供ながらに気付いたのだ。あの頼もしく、優しかった姉が、白家で壊されたのだと。
それから、4年。
先日19歳の誕生日を迎えたばかりの紅花にもまた、白家への呼び出しが掛かってしまった。
白家当主直筆の文書によって。

「…………わ、私では…………駄目なのでしょうか」
重苦しい沈黙が場を支配する中、美杏は意を決して告げた。
静麗が、紅花が、場の全ての人間が目を丸くして美杏を見やる。
「な、何を言うの!?」
紅花のその言葉を遮るように、美杏は続ける。
「私も、この藩家に仕えて長い従者です。私では、紅花の代わりになれないのでしょうか!」
静麗は、その美杏の真剣な眼差しを受け止め、つらそうに首を振る。
「駄目よ。今回は先方がはっきりと、紅花を指名してきてるもの。多分、あちこちで紅花の良い噂が広まった弊害ね」
「で、でもっ、恐れながら白家の当主様ご自身は、紅花の顔をご存知ないのではないでしょうか!
 でしたら、代わりに私が…………っ!!」
普段大人しい美杏が息が切れるまで捲し立てた所で、紅花がその肩に手を掛けた。
「確かに、ご存知ないかもしれない。でも、ご存知かもしれない」
びくり、と美杏の肩が震え、その顔は涙で崩れながら親友へと向く。
「…………ありがとう、美杏。美杏のその気持ちだけで、充分。おかげで元気出たよ。
 私、向こうでどんな事されたって絶対に耐えて、またここに戻ってくるから。
 それまで、この家のこと……お願いね」
紅花は、普段通りの整った顔立ちのまま、少し唇を曲げて器用に笑ってみせた。





それからの日々を、美杏は仕事に没頭して過ごした。
現実問題として紅花が抜けた穴は大きく、一時的とはいえその代役をこなすのに忙殺されていた事もある。
しかし仕事以外の事を考えようとすると、どうしても今も白家で虐げられているであろう紅花の事を想ってしまう。
その苦しさから逃げるように、起きている限りは藩家の問題に意識を向けた。その甲斐あり、おおむね仕事は上手く進んでいる。
以前美杏に対して否定的な態度を取っていた一人も含め、美杏の主導に文句を出す者もいない。
もっともそれは、他ならぬ紅花が、美杏に後を託したという事実に拠るのかもしれないが。


そうして2週間が経ったある日、白家の従者が藩家を訪れた。
名目上は、白家への献上品の礼を述べるため。しかしその実、本当に用がある相手は、美杏達藩家の召使であるようだ。
白家からの従者は香月(シィァンユェ)と名乗った。
香月は、使用人部屋の中で最も上等な椅子に深く腰掛け、すらりとした足を組む。逆に美杏達は、その周りの床に座らされていた。
たとえ召使同士であろうと、仕えている家に応じた『格』がある。私は上で、お前達は下だ。香月は入室後の第一声でそう嘯いた。
何人かが口惜しそうに歯噛みする中で、美杏はただ香月の言葉を待つ。その視線を受け、香月が可笑しそうに眉を顰めた。
「ふぅん。野ネズミの中に、中々良い眼した子が混じってるのね。あなた、名前は?」
「……美杏です」
「そう。じゃあ美杏、耳を澄ませなさい。あなたがさっきから聞きたがってること……紅花の事を話してあげるわ」
香月はそう言いながら、残忍そうに唇を舐めた。

ここから香月は、紅花が最初に受けた『洗礼』について語り始めた。

白家の召使用に宛がわれた部屋の中で、紅花はまず纏っていた着物を女達の手で引き裂かれたのだという。
「どうしてわざわざ、こんな所から話を始めるか解る? あいつねぇ、服が破かれるってなった途端に、物っ凄い眼で睨んできたのよ。
 それで、ちょっと頭にきたコもいてね。3人で髪を掴んだまま、30回くらい頬に挨拶してから訳を聞いたの。
 そうしたらあいつ、頬真っ赤に腫らして涙目になりながら、奥様から頂いた着物を粗末にしないで下さい、とか言って。
 着物っていったって、ウチじゃみっともないから捨てるように言うような安物よ? 貴女たち、ここじゃ服もまともに着させて貰えないの?」
香月の煽りに、美杏達は唇を噛む。
あの紅花のことだ。出立の際に静麗から着物を賜り、どれほど有り難がったことだろう。
そしてそれを無惨に破られ、満足に憤ることすら出来なかった彼女の心情たるや、如何ばかりのものだろう。
そうした美杏達の心中を知ってか知らずか、香月は話を進める。

裸に剥かれた紅花は、その生まれたままの姿を悪意ある視線に晒しながら、さまざまに屈辱的な格好を取らされたらしい。
香月が傍らの召使に命じて真似させたその格好は、着衣状態であろうと羞恥で思わず頬が染まるものだ。
それを紅花は、腋も乳房も恥部も、なにもかも丸見えの状態でさせられたのだという。
さらに、ただ見られるだけではない。あられもない格好を晒す紅花は、15人以上の悪意ある同性から、口々に罵倒を受けた。
香月によれば、この言葉責めは罵声のえげつなさに応じて拍手が起き、その拍手をより多く受けた者が、優先的に次の責めに関われる仕組みなのだという。
ゆえに、浴びせられる罵声の熱意も並ではない。
乳房を揉みしだきながら、この柔さとでかさはまるで売女だと詰り。
太腿を鷲掴みにしては、腐り落ちる寸前の豚の大腿部のようだと罵り。
染みひとつない白磁の肌を、病気で死んでいく犬のような青白さだと揶揄し。
陰毛を引きちぎった時の濁った悲鳴を嘲笑い。
やがて素体を貶す言葉が尽きると、紅花を姿見の前に引きずり出し、鼻の穴を指で持ち上げたり歯茎を露出させ、
整った顔立ちを強引に歪めてまで悪し様にこき下ろす。
紅花は、耳を聾するようなその罵声に心を切り刻まれながら、命ぜられるままに恥辱の格好を晒し続けなければならないのだ。
実に1時間以上に渡って。
「要はただ野次られるだけなんだけどね。これで泣かなかった女は、今まで一人もいないの。
 不思議と芯の強そうな娘ほど、グズグズの泣き顔を晒すのよ」
香月はそう言い、囁くように、紅花も泣いたよ、と続ける。
予想よりは耐えたものの、大股開きのまま両手で尻肉を割り開き、肛門の粘膜すら晒したまま心無い罵声を浴びたところで、床にポタポタと水滴を滴らせ始めたという。
「あの娘って意地っ張りだから、この家じゃ人前で泣く事なんてなかったんじゃない? もしそうなら見せてあげたかったわ。普段はまあ見れる顔なのに、あの時はとっても、とーっっても不細工だったんだから! アハッ、やだ思い出しちゃった!!」
香月は言葉も終わらぬうちから、さも愉快そうに笑いはじめた。
美杏達の顔も逆の理由で歪む。今すぐにでも目の前で足を組む女を張り倒したい、そういった表情だ。
しかし、出来ない。それは場の皆が理解している。美杏も、香月も。





初日の洗礼が終わった後も、紅花に休む暇など与えられなかった。
本来は4人でこなす量の仕事を紅花一人に課し、さしもの彼女も疲労困憊で足元がおぼつかなくなる頃に、再び“歓迎の宴”が催される。
まずは朝から何も口にしていないのだから空腹だろうと、特製の七色団子が与えられる。
無論、純粋な団子ではない。唐辛子や花椒、野菜の苦汁、虫など、摂取出来なくはないが生ではつらい物が七つ全てに混ぜ込まれている。
団子の皿を前に、紅花は顔を青ざめさせたという。しかし白家の召使に煽られては、好まざる物と知りつつも口にするしかなかった。
ぐむっ、ぐぶうっ、という呻きと共に頬が膨らむ中、一つまた一つと団子が紅花の口へ押し込まれていく。
そしてようやく七つ全てが口に収まった瞬間、ついに限界が訪れたのか、紅花の顎が嘔吐の前兆を見せた。
しかし、それは白家の召使達の想定内。1人が背後から素早く紅花の顎を押さえ、別の1人が前から口に手を当てる。
嘔吐を阻まれた紅花は、一瞬目を見開いた後、きつく目を閉じて苦しむ他はない。
『ほーらぁ、観念して飲み込みな、死んじゃうよー。大丈夫だって、別に死ぬような毒なんて入ってないから』
『そうそう、今まで何人にも食わせてきてるのよ。ま、皆大抵はお腹下すんだけどさ』
そのような詰りが飛び交う中で、紅花に2度目の限界が訪れた。
今度の逆流は凄まじく、口を押さえる召使の指の間からあふれ出してしまう。
『うわっ、こいつ! きったない!!』
『あーあーあー、戻しちゃった。あたしら直々に御馳走した物をこんな扱いされて、面子丸潰れだよ。もうこれは仕置きしかないね』
『だね。そうだ、ちょうどいい。そんなに吐きたいなら、胃の中身ぜんぶ吐けるように協力してあげるわ。ほらっ、押さえつけて!!』
一人が命じると、すぐに数人の少女が紅花に詰め寄り、椅子から引き起こしつつ羽交い絞めにする。
そうして身動きを封じられた紅花の口内に、一人が二本指をねじ込んだ。
『ぉがっ!!』
思わずえづく紅花だが、蹂躙者に躊躇はない。
『言っとくけど、くれぐれもこの指は噛まないようにね。もし傷でも残ったら、旦那様に見せて報告するから』
『!!』
そう言われた途端、紅花は少し考える素振りを見せ、やがて顎の力を緩めた。
反抗心を残している彼女だけに、命じられたから、でない事は明らかだ。
白家の当主ともあろう者が、本当に使用人の言葉を鵜呑みにして藩家を取り潰すとは考えにくい。しかし、有り得ないという確証もない。
事実として白家は、この悪趣味な催しを黙認しているのだ。世間一般の常識が通じる相手と考えるべきではない。
聡明な紅花のこと、瞬きほどの間にそう判断したのだろう。
『へぇ……噂通り頭がいいのね。でも残念。私達、そのよく回る頭を錆つかせて、命令に従う事しかできない馬鹿犬を作るのが目的なの。
 お前のこれからは、全部私達が決めてあげる。利口さはもういらないの。
 何も考えなくっていい。今は……私達の前で、惨めったらしく、くっさい吐瀉物を撒き散らす事だけに専念なさい』

そこから紅花は、女の二本指で喉奥を掻き回され続けた。
事前に大量に嘔吐していたせいか、逆流の気配はない。しかし指が喉の深くに入り込むたび、紅花の細い顎が浮き上がり、ゴえっ、グェエッ、という『潰れた蛙のようなえづき声』が上がる。そしてそれらは当然、物笑いの種にされたという。
「でね、あの子ってまぁまぁ……うーん、もういいか。正直言って素面だと、相当綺麗な顔してるじゃない。ウチにも色んな娘が来るけど、あの子は数年ぶりの当たり。だから、顔グシャグシャにするのがまた楽しくってねぇ。
 おまけに唐辛子団子が効いたのかしら、ヨダレとかえづき汁がもう凄くて。顎から喉を通って、胸の方にまで垂れていくの。
 それがまたゾクゾクしてね。気付いたら、誰ともなしに、こう!……してたわ」
香月は興奮から頬を赤らめつつ、傍らの少女の胸元を強引に肌蹴させた。薄い麻の服から、幼い乳房が露出する。
「きゃあっ!!」
「ふふ、そうそう。紅花も叫んだわ。喉を掻き回されながらの汚いえづき声でね。
 で、これは流石に再現できないみたいだけど、知ってる? 紅花って結構、立派なおっぱい持ってるのよ。
 だから皆してそれを摘んで、えづき汁を塗りたくって、先っぽをこねくり回したの。あの子もウブよね、ギャアギャア暴れたっけ。
 もう、本当に楽しかった! だから気分が高揚してね、指で喉虐めるだけじゃ物足りなくて、こんなのまで使っちゃったの」
香月はそう言いながら、持参した袋の中から棒状の道具を取り出した。
藩家の召使の中に、その道具そのものを知る物はいない。しかし一人は、その形状に覚えがあると言った。
「へぇ、男を知ってるの。売春宿からここに貰われてきたクチかしら、さすが節操のない藩家さまねぇ。
 ま、いいわ。これは殿方の性器を模した道具で、張型っていうの。うちの奥様は旦那様がいらっしゃらない夜に、よくお使いみたい。
 これを指の代わりに、紅花に咥え込ませてやったの。ちなみにこれね、実際に紅花に使った張型そのものよ。
 誰か、あの紅花を慕ってる子がいるなら、愛しい匂いでも嗅いでみたらどう?
 ああ、でもやめた方がいいわね。だってこれ、あの子の吐瀉物に散々塗れてるんだもの」


不慣れな刺激ゆえか、張型を半ばほど喉に送り込まれた時点で、紅花は嘔吐の寸前という表情になった。
『ごっ、ぉおおっ、ふもガッ!!」
さらに数度喉奥を突いてやれば、いよいよ嫌がって頭を振り始めた。しかし、白家の者の意思は嘔吐させる事で一致している。
すぐに数人の手で、紅花の抵抗を封じる手段が取られた。
一人の手が紅花の側頭部の窪みを鷲掴みにし、張型を送り込む一人も、紅花の顎を変形するほどに強く掴む。
そうしていよいよ本格的に動きを封じられた紅花に、もはや逃れる術はなかった。
側頭部と顎を掴まれている以上、左右に顔を振る事は叶わず、となれば上下に首を振るしかないが、そこに罠があった。
天を仰ぐように顔を上向けた瞬間、張型が直線となった食道へいよいよ深く送り込まれるのだ。
『……ッヵ“ァ、お“エ“エ“ッ!!!!!』
それまで薄目を開けていた紅花も、この時ばかりは目をきつく閉じ、鎖骨を浮かせながら肩を跳ねさせ、嘔吐そのものを思わせるえづきを響き渡らせるしかない。
『あははっ、ねぇ見た? こいつ今、自分から咥え込んだよ!』
『ね。にしても凄い顔、もう原型ないよ。人間の顔って、苦しいってだけでここまで変わるんだねー』
『あ、もうそろそろ本当に吐きそう。あ、出る、出るよ!!』
何十という悪意の瞳が見守る中で、いよいよ張型が奥深くまで捻じ込まれ、引き抜かれる。
一度目の決壊は、まさにその引き抜く動作に追随する形で訪れた。

『っんも゛ぉ゛おお゛お゛おえ゛おお゛ぇァっ!!!!!』

およそそのようにえづき上げ、首を前方に投げ出しながら、紅花は盛大に嘔吐した。
吐瀉物の色は黄色く、風呂場で指を使って水を飛ばした時のように、ぴゅっ、ぴゅっと二筋に分かれて飛ぶ嘔吐だった。
それを視界に収めながら、少なくとも香月は、恍惚に近い状態にあったという。
原因は、その時の得た情報全て……特に紅花の表情と、女を捨てきったかのようなえづきだ。
香月はこの時初めて、自分の中で紅花という少女がどれほど高く評価されていたのかを知った。
公の場に出ればたちまち旦那衆を骨抜きにするだろう顔立ちに、白家第一夫人付きでも通用するほど洗練された所作、そして類稀なる聡明さ。
およそ使用人としての質で、この紅花を上回る逸材などそうは居まい。
紅花に嫉妬していた。おそらく、あの時部屋にいた誰もが。
だからこそ、その紅花が女として終わる瞬間を目の当たりにした時、誰一人として反応ができなかったのだ。
『ああ……』
『おおぉ…………』
そのような意味のない感嘆を漏らしながら、ただ紅花の決壊を見つめる。それは、男の射精にも等しい恍惚だったのだろう。
そして、その恍惚を消化しきった時、女達は一様に口端を吊り上げた。

「……もっと無様に、もっと苦しそうに吐かせてやる。あの時は多分、みんなの頭の中がそれで一杯だったんでしょうね。
 冷静になった今思うと、あの後の紅花はちょっとだけ可哀想だったかな。女が一つの目的で団結した時ほど、怖いものってないのよ」
香月は手にした張型を振りながら笑う。
そして香月は、その後の凄惨な状況についていよいよ楽しげに語ってみせた。

紅花の被虐美にあてられた女達は、それから様々な方法で紅花を嬲ったという。
白磁の肌を余すところなく撫でさすりながら、交代で喉奥を苛め抜く。
羽交い絞めで張型を送り込むほか、床に張型を固定し、這うような格好で咥えさせもした。
美しい紅花が、初々しい菊輪と性器を晒し、獣のように這い蹲りながら、頭を押さえ込まれての前後運動を繰り返す。
そしてその果てに、ゴエゴエとえづきながら、張型の幹に沿って薄黄色い胃液を吐きこぼすのだ。
この方法の苦しさは格別らしく、紅花は前髪を張り付かせた額にじっとりと汗を掻きながら、かつてないほど固く目を瞑って嘔吐する。
内臓が圧迫されるせいだろうか。張型が喉から抜けた後も、ぶほっと後追いの形で嘔吐が起こり、粘ついた唾液を何本も床に伸ばした。
『はぁ、はぁっ、はっ、はーっ…………も……もぉ゛………………やめ゛て下さい……………………』
極めつけは紅花自身が、息も絶え絶えに香月達を見上げ、懇願を口にする。
その無様を見下ろす香月達には、再びの恍惚が訪れたという。

当然、加虐は止まなかった。
さらに何度か吐き戻させ、やがて透明な胃液すら出ない空嘔吐に至ると、強制的に胃を満たしてから責めが再開された。
水に近い粥を強引に摂取させ、戻させる。酒を飲ませて酩酊状態に陥らせてから、吐かせる。
そうしてとうとう紅花の四肢が力を失い、横様に倒れたまま起き上がらなくなった所で、ようやく宴はお開きとなる。
精も根も尽き果てた末に、ようやく訪れた休息の時。しかし、それすらが甘い罠だ。
紅花には仕事がある。一日の最初にする仕事は、誰よりも早く起き出し、召使に向けた食事の支度をすること。
泥のように眠りこける紅花は、当然この仕事をこなせない。そしてそれがまた、厳しい仕置きを正当化する理由にされるのだ。





「……浮かない顔ね。紅花は親友だって、さっき言ってなかった? 親友に会いに行くのに、そんな顔ってないわ」
馬車に揺られながら、香月が対面の美杏に告げる。
美杏はその香月の顔を見据えながら、ただ黙していた。
馬車の向かう先は白家だ。
白家に帰るついでに、一人だけなら馬車に乗せて同行させてやれる。特別に現在の紅花の様子を見せてやる。
その提案に続き、香月が指名したのが美杏だった。
香月から紅花の話を聞く間、最も痛切な表情を浮かべていたのが美杏だったのだろう。
そこから紅花と近しい人間である事を看破され、その近しい人間相手に恥を晒すことで、さらに紅花を追い詰めようという魂胆だ。
しかしその姦計に気付いてなお、美杏は白家への同行を承諾した。
確かに自分が行くことで、紅花を追い詰める可能性はあるかもしれない。
しかし逆に、自分が声を掛ける事により、紅花をヒトとして瀬戸際で踏み止まらせる可能性もあるかもしれない。
香月の語った紅花の悲劇は、美杏の想像を超えていた。
話を聞けば聞くほど、いかに紅花といえども耐え切れないように感じられた。
そして美杏は、怖いのだ。かつての怜のやつれた顔が脳裏に浮かび、なぜか紅花に重なって思えてしまう。
もう、失いたくない。紅花を一人地獄にいさせちゃいけない。それが、美杏が白家に向かう理由だ。

そうした美杏の心境を知ってか知らずか、香月は直近の紅花への責めについて話し始めた。

「苦しめてばっかりじゃ悪いからね。最近じゃ、紅花を気持ちよくさせてあげてもいるのよ。
 乳首と、陰核……あそこの上にあるお豆ね、この三点を舐めたり指で転がしたりして、快感を与えるの。
 どれだけ性的に未熟な相手でも簡単に感じる場所だから、紅花もすぐ昂ぶったわ。
 まぁ、私達の手で絶頂を迎えるのが嫌だったんでしょうねぇ。必死に我慢してたけど、それがまた可笑しくって」

香月はその情景を生々しく語り聞かせる。
紅花は丸裸のまま大股を開き、股座の一人、両脇の二人から三所責めを受けた。
初めこそ涼しい顔で耐えていたが、次第にその唇が開き、浅い呼吸が漏れ始める。同時に桜色の肌にもじっとりと汗が滲み出す。
やがて太腿の筋肉がピクピクと痙攣を始め、薄い筋のような秘裂もまた疼きを見せるようになる。
足指は堪らないという様子で握りこまれ、手指は緩く拳を作り。
そしてついに、顎が持ち上がって後頭部が床に擦り付けられた。その直後にふうっと脱力が見られた事からして、絶頂に至ったのだろう。

「そこでイッた……ああ、絶頂したっていう意味ね。それは明らかだったけど、本人は認めないのよ。
 だから責める子達も変に燃えちゃってね、そこからは丁寧に丁寧に責めて、何度も絶頂させ続けたの。
 頭を床に擦り付けるたびに絶頂してるんだろうなとは思ったけど、みんなわざとそ知らぬ顔してね。
 絶頂する時には『イキます』って宣言するのよ、なんて囁きながら、ずーっと責めてたの。
 そうしたらあの子、我慢強いわよねぇ、7回も8回もイッてるはずなのに、歯を食い縛って頑張るのよ。
 口開いちゃったあそこに指を入れたら、もう中は愛液でドロドロでね、膣の浅い所にオンナの泣き所があるんだけど、
 そこを指の腹でざりざり擦ってあげたりすると、腰がびくんって跳ねたりするんだけど、イクとだけは言わないのよ。
 そういうのって、こっちが負けたような感じがして癪じゃない?
 だから我慢比べってことで、次の日は一日中今言った性感帯を開発しまくってやったの」

一日中責め続ける。これは責める側にとっても並ならぬ負担だ。しかし白家の召使には、それを進んでする者がいる。
普段、白家の中で虐げられている最下層の召使達だ。
紅花を絶頂させた回数に応じて、紅花が去った後の待遇を上げる。そう持ちかけると、一心不乱に紅花を責め始めたという。

「もう本当に、腹を空かせきった野犬みたいだったわ。上手くすればもう虐められずに済むんだから、必死にもなるでしょうけど。
 ただ私が見た限り、それだけじゃないわ、あれは。普段自分達が虐げられてる憂さを晴らしてたのよ。
 いかにも選択肢のない被害者ですっていうような泣き顔しながらね。だって……後が凄かったもの」

香月達は、最初こそ3人の娘の責めをおかしがって見ていたが、次第に飽きが来て一旦部屋を離れたらしい。
そうして翌朝に再び部屋を訪れた時には、仰天したという。

「まず匂いが凄いのよ。汗と女の匂いが部屋中に充満しててね。
 おまけに床が、桶をひっくり返したみたいにびしょ濡れなの。壁のあっちこっちにも飛沫みたいな痕があって。
 3人は揃ってクタクタでへたり込んでたけど、紅花はもっと悲惨だったわ。
 よっぽどあれこれ余計な事を喋ったのか、口の中一杯に布が詰め込まれてるの。
 しかもその布引き抜いたら、紅花のヨダレでぐっしょり濡れてるのよ。
 まぁヨダレだけじゃなくて泡も噴いてたし、そもそも鼻水とか額の汗とか、もう色んな所がすごいんだけどね。
 でも、一番ぎょっとしたのは目ね。あの生意気そうな目が、もう半分以上上瞼に隠れちゃってて。
 そうそう。おまけに完全に意識失ってる感じなのに、体中がビックンビックン痙攣してるの。もう、ずーっと。
 道具なんかは一切置いていかなかったから、指と舌だけでそこまでにしたのねぇ。
 思えばあの日からだわ、あの子の様子が変わったのは。
 それまでは……藩家だったかしら?あなた達の家について少しでも貶すと、すぐムキになって睨んできたのに、
 今は悔しそうにはするけど、もう私達と目を合わせないの。
 言いたいことあるなら言いなさいって顎掴んで顔上げさせても、震えながら横の方見てるのよ。
 あなた達何をしたのって当の三人に聞いても、あの時は必死すぎて覚えてませんとしか言わないんだけど」

何があったのかしらね。香月はそう話を締め、愉しげに笑う。
しかし、美杏にしてみれば笑う所ではなかった。
今の話が事実であるとするならば、紅花はすでに心を折られかけている。
「…………っ!!」
友の心中を想い、美杏は膝の上で手を握り締めた。香月に面白そうに見つめられながら。





噂通り、白家は藩家など比にならないほど広大だった。
充分すぎるほどの大きさの館が敷地内にいくつも立ち並ぶ様は、まるで小さな町のようだ。
使用人用の屋敷すら、門構えを始めとして豪奢の限りが尽くされている。

かくして、紅花はその屋敷の一室にいた。
一糸纏わぬ丸裸のまま、背を柱に預ける形で両手を頭上に拘束されている。
尻は地面につき、すらりとした両脚は、天井の梁を通る縄で高く掲げたまま吊るされている。
見事なまでに身動きを封じる縛めだ。
さらによく見れば、その口には強制的に開口させる器具が嵌め込まれており、股座にも香月が手にしていたものより遥かに胴の太い張型が、ほぼ根元まで埋め込まれてもいた。
「う…………!!」
調教が進んでいる現実をまざまざと見せ付けられたようで、美杏は絶句する。それを尻目に香月達がわざとらしく足音を立てて部屋へ入ると、紅花はゆっくりと頭をもたげた。そして入室者の中に美杏の姿を見つけると、目を見開く。
「おあごあっ!?」
開口具に阻まれた悲鳴を上げながら、足をばたつかせる紅花。秘部を隠そうというのだろうか。しかしそうして暴れたところで、縄で擦られた梁がみしりと音を立てるだけだ。
「ホン……!!」
思わず親友の名を叫ぼうとする美杏の肩に、冷たい手が乗せられる。
「さぁ、美杏さん。お茶の準備が出来たようです。お菓子もありますから、お話しましょう。
 あなたのお友達のこと、藩家の奥様や旦那様のこと……使用人の目から見てどうなのか、お聞かせ下さい。
 ああ、そうそう。あそこにいる豚は、少し悪さをして反省中なのです。
 知性の乏しいけだものゆえ、お話中に何か啼くこともあるかもしれませんが、どうぞお気になさいませんよう」
美杏が叩かれた肩の方を振り向くと、そこには黒い瞳が並んでいた。
その瞳を見た瞬間、美杏は悟る。ここの使用人達は、言葉が通じる相手ではないと。

テーブルを囲んで様々な質問に答えている最中にも、美杏の意識は常に紅花の方を向いていた。
秘部を隠すために足を閉じようとするのは諦めたらしいが、それとはまた別に、ひどく落ち着かない様子でいる。乳房と同じ高さで吊り下げられた足首を執拗に動かし、尻を上下させる。口枷からは常にアアア、と切ないような呻きを漏らし、そして数分に一度という周期で、その呻きは急激に大きくなる。
「アア゛!! アア、ア゛アアッ!! アアアァッ、アァオオッ、オアアアァア゛ーーーッ!!!」
背を向けていても美杏には解る。その悲痛な叫びは、自分達に向けられているのだと。

 ――助けて、助けて! 私、もうだめっ!!

親友のその声が聴こえるようで、美杏は居たたまれなかった。


やがて、美杏達が話し合いを始めて30分ほど経った頃。
「――あら、いけない。もうこんな時間だわ!」
「あ、ほんと、うっかりしてたわ。ごめんなさい美杏さん。私達、これから少し用事がありますの。
 そのうち戻りますから、どうぞお茶を楽しんでいてくださいまし」
白家の召使達が慌てた様子で席を立ち、一人また一人と部屋を出て行く。
そうしてテーブルには美杏だけが残された。
「えっ……? こ、これって…………!!」
美杏は素早く室内を見回し、他に人影のない事を確かめてから立ち上がる。
好機だ。先ほどからひどく苦しそうにしている紅花を助け、言葉を交わす唯一無二の機会だ。

「紅花!!」
美杏はすばやく紅花の元へ駆け寄り、その足首を縛る縄を解いた。
ついで、手首の縄。そして、開いた口にすっぽりと嵌まり込んだ口枷を取り外す。
「は……っ!!」
開放されたかのような吐息が漏れ、ひどく粘り気のある唾液が口枷との間に糸を引いた。
ひどく久しぶりに思える紅花の顔。面影自体は変わっていないが、以前より明らかにやつれている。
「大丈夫、紅花!?」
美杏が問うも、紅花は虚ろな瞳で、言葉にならない言葉を掠れ声でつぶやくばかりだ。
長時間口枷を嵌められていたせいで、思うように顎が動かないのだろう。
美杏は必死に紅花の口元に耳を近づけ、その真意を図ろうとする。
「…………ァい…………ぁや……ぃ………………て………………」
途切れ途切れにかろうじて音が拾える状態だ。
それを何度も、何度も聞くうち、ようやく美杏の脳内に一文が組みあがった。

「…………おねがい…………
     …………厠………………厠まで、行かせて………………!!!」

「か、厠っ!?」
美杏はその言葉に耳を疑う。厠……便所に行きたいというのか。
尿意か、それとも便意か。いや、そもそもにして、この屋敷の厠はどこにあるのか。
頭に浮かぶ事は数あれど、ともかく紅花には明らかに余裕がない様子だ。
「捕まって、紅花。今連れて行ってあげる!!」
やはり長時間縛られていたせいで足腰が立たない紅花に、美杏は肩を貸す。
しかし二歩、三歩と歩を進めるうち、紅花がいよいよ苦しげにうめき始める。
「頑張って、紅花!!」
美杏が声を掛けるも、紅花の顔はすでに青ざめきっている。そして。
「あ、あ…………ああもう、もうっ…………っだめぇええええーーーーーーっ!!!!!」
耳を聾するようなその絶叫と共に、紅花の足の間から張型が弾き出された。
そして同時に、夥しいほどの茶色い奔流が、あるいは紅花の足を伝い落ち、あるいは勢いよく床に叩きつけられていく。
「ああっあああ……あぐっ、ふっぐ……ぅわあぁぁああっっ!!!」
紅花はその場に膝をつきながら、声帯の割れたような悲壮な嗚咽を漏らしはじめた。
美杏は鼻の曲がるような異臭の中、ただ呆然と立ち尽くしていた。
何が起きた? 
 ――紅花が、糞尿を撒き散らしながら泣いている。あの、紅花が。
足元に何が転がっている?
  ――張型だ。恐ろしく太い、責め具。これがかろうじて、肛門の栓の役割を果たしていたのだ。


「あらあらあら!! 大きな声がしたと思ったら……とうとうやったのね、紅花」

突如として部屋に響きわたった大声に振り向くと、満面の笑みを湛えた香月達がそこにいた。
彼女達はその悪魔じみた笑みを浮かべたまま、美杏と紅花を取り囲む。
「あ、あの……これは!」
美杏は弁解を図るが、その先が続かない。紅花が大便を漏らし、美杏がそのきっかけを作った。その事実は動かない。

「豚の事は気にするなと、忠告しましたでしょう。由緒あるこの白家のお屋敷で、粗相だなんて」
氷のようなその一言に、美杏はびくりと肩を震わせる。
「後ほんの少し我慢していれば、専用の桶でさせてあげたというのに。ねぇ、紅花?
 今日の今日までずーっと、我慢して、我慢して、我慢してこれたのに…………どうして今日に限って、厠を使おうなんてしたのかしら」
「仕方がないわ。おうちで一緒に育った、姉妹みたいな子が縄を解いてくれたんだもの。助けて貰えると思っちゃったんだわ。
 でも、縋るべきじゃなかったわねぇ。普段通りにしていれば、今日だってきっと我慢ができたでしょうに」
「本当に馬鹿な豚ね。今日さえ我慢して乗り切れば、お尻は勘弁してあげるって約束は本気だったのよ」
「でも、約束は約束。そうでしょう、紅花?」

目を細めながら、口々に呪詛のような言葉を紡ぐ香月達。その様子は余りに不気味であり、美杏は思わず口を開く。
「な、何なんですか!? 一体、何の話をしてるんですか!?」
美杏の叫びを受け、紅花への語りかけが途絶える。
そして女達の視線は、ゆっくりと美杏の方にずれた。黒い硝子玉のような数十の瞳が、美杏を映す。
その視線の中心に晒された時、美杏は、ぞくり、とした。
この世ならぬ者。そう思えるほどの異質さが、この屋敷の女達にはある。

(なに、怖い。怖くて、たまらない。何もかも捨てて、今すぐにでも逃げ出したいぐらいに。
 …………え、待ってよ。じゃあ、じゃあ紅花は、こんな環境で、ずっと…………?)

「安心して。あなたには関係のない話よ、美杏。誓約を交わしたのは紅花の方。罰を受けるのは紅花だけ。
 『一週間、毎日浣腸をして、もしも桶と厠以外の場所で粗相をしたら、泣こうが喚こうが、徹底的にお尻の穴を開発する』
 これに紅花は合意したの。だってこの条件さえ達成すれば、明日からはもうほとんど責めを受けなくて済んだんだから。
 でも、それはもう無い話。誓約を破った今日からは、毎日毎日けだものみたいに這い蹲らせて、徹底的にお尻を調教してあげる。
 指で慣らして、道具で拡げて、毎日色んな液を注ぎ込んではひり出させて、排便の快感だけで濡れるようにして。
 お尻にモノ突っ込まれただけで絶頂するような、あさましい豚に作り変えてあげるわ!!」

香月のその悪魔じみた宣言に、白家の女達はいよいよ笑みを深めた。
美杏は思わず後ずさりし、何かにぶつかって転ぶ。
「きゃっ!!」
悲鳴を上げつつ横を向くと、そこには蹲ったまま、力なく床を見つめる紅花がいた。虚ろな瞳にもはや光は見当たらない。
一縷の望みが潰え、絶望に沈んでいるのだろうか。
聡明であるがゆえに、この家の女から肛門調教を受けては耐え切れないと悟ったのだろうか。
美杏が縄を解かなければ、彼女は下手に動こうとしなかったかもしれない。
美杏が助け起こそうとしなければ、肛門から張型が抜ける事はなかったかもしれない。

 (…………わたしの、せいだ。わたしが、紅花の希望を…………摘み取ったんだ)

その考えに至り、美杏は絶望に沈む親友を前に、欠ける言葉を失った。
親友が自我を失いそうであれば掛けようと思っていた、“頑張って”という言葉が、今やただ虚しい。

「さぁ、では美杏さん。お屋敷への帰りの車を用意しましたので、参りましょう。
 ここはもう、あなたのような真っ当な方が立ち入られるべきではない…………ただの豚の、飼育場ですから」






「…………あっ、あっ、あ、あっ…………あっ、ああああっ…………!!」
「……あああ、ああっ! …………あああ……ああっ、ぅ…………っあ!!」

広い部屋の中に、二つの喘ぎ声が繰り返される。
一つは美杏。そしてもう一つは、隣の紅花の発するものだ。
「もっと肛門をお締めなさいな。ったくお前は、覚えが悪いね」
「……すみません」
女から浴びせられる叱咤の声に、美杏は謝罪を返した。そして命じられた通り、括約筋に力を込める。
肛門内の異物の感触が強まり、えも言われぬ感覚が脊髄を走り抜ける。
曲げた膝を大きく開き、乳首と陰核を刺激されながら肛門に異物を出し入れされる。
この調教が、もう何日繰り返されている事だろう。
肛門内部への異物挿入は、未だもって不快感しかない。
乳房や陰核への刺激と平行して刺激されれば、脳が錯覚を起こして肛門が気持ちいいのだと感じる。
当初そのような説明をなされたが、どうやらその兆候はない。そして、あってほしくもない。

「ああ…………ああああっ…………いっ、イクゥっ…………イギ、ますっ…………!!」
「あらあら、もうクリトリスの刺激もいらないの? 本当にお尻だけでイクようになったのねぇ、豚。
 飲み込みが早いっていうのも、考えものね」
隣では、紅花がとうとう肛門への異物挿入だけで絶頂に至り始めたらしい。
彼女の調教は順調だった。すでに乳房と陰核の性感帯が目覚めているせいで、膣の奥が蕩けやすいそうだ。
そうして蕩けた膣の奥を、直腸側からグッグッと押し上げると、凄まじい快感が湧き上がってくる。
香月は昨日、まるで暗示をかけるように紅花にそう語り聞かせ、紅花は虚ろな顔のまま、反射的にか頭だけを上下させていた。
その様子に、美杏は歯噛みする。

『さぁ、では美杏さん。お屋敷への帰りの車を用意しましたので、参りましょう。
 ここはもう、あなたのような真っ当な方が立ち入られるべきではない…………ただの豚の、飼育場ですから』

そう言葉を掛けられた時、美杏は現実への帰還を拒んだ。そして、自らも彼女らのいう“豚”となる決意を表した。
紅花に対する贖罪…………それもある。しかし何よりも、彼女を救う機会を窺うために残ったのだ。
白家の悪意に長く晒されすぎた紅花は、もはや一人で浮かび上がれる状態にはない。
一人でこの暗闇に残しておけば、間違いなく怜と同じ道を辿るだろう。
だから、美杏が引き上げる。
この先、あとどれほどの時間耐えねばならないかは定かでないが、美杏だけでも自我を保ち、二人で家に帰るのだ。


「さーて、と……紅花もイッたことだし、そろそろ次に行こうか」

その掛け声で、美杏は顔を強張らせた。
次は、今よりきつい。そして、苦しい。泣き喚いてしまいたいぐらいに。
「ほーら、自分で入れなさい」
美杏と紅花の前に、それぞれ山のような球体の入った皿が置かれる。
球体の量は拡張の度合いに応じて増え、全て入れると常に腸には一切の隙間がない状態になる。
胃は圧迫され、ただ座っているだけでも吐き気がこみ上げる。
その状態で、『排便よし』の声がかかるまで、一球さえ溢さずに耐え切るのだ。
当然その間には、悪意ある女達から様々な妨害が行われる。勿論、球体を排出させて惨めな罰を課すために。
美杏はこれが苦手だった。
「ほら、何をやってるの。まだ全部入れることさえできてないの? ったく、とろいわねぇ。
 隣をごらん。紅花は優秀だよ」
女が鞭で指し示す先では、美杏以上の球体を詰め込んで歪に腹を膨らませた紅花が、様々な被虐を受けていた。
白い肌に五月雨のように鞭を浴びせられ、乳首を長い爪で捻り上げられ。
そして挙句には、両手を頭の後ろで組んだまま深々と張型を咥えこまされて、びちゃびちゃと真下に吐瀉物を吐きこぼす。
「ごえっ、ごぼ、ぶぼばがっ…………えっ、けほっ、けほっ!! う、うっ…………!!」
今や虚ろな瞳をするばかりの紅花も、さすがに喉奥を抉られて吐く際には人間らしい顔を取り戻す。
目尻から涙を溢しつつ、怯えたように加虐者達の顔色を窺い始める。

その様を横目に、自らも同じ境遇を迎えんとする美杏は、気弱そうな垂れ目を見開きながら前を向く。


( 私を、なくすもんか―――― ! )


燃える決意を胸に、美杏は大きく口を開き、歪な悪意を待ち構えた。


                                       終





<初出:2chエロパロ板 『【陰湿】レズいじめ2【ドロドロ】』  スレ>

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