※前回前後編に分けると約束したな。アレは嘘だ
アナル・スカトロ・NTR要素にご注意下さい
五時半ごろ、外で時間を潰していた伊田と瀬川が屋敷に戻ってきた。
乱暴に玄関の戸を開けて上がりこみ、勝手にテレビを点けた上で煙草をふかし始める。
完全に自分の家気取りだ。
「これから地下の清掃に入りますから、調教再開は6時からでお願いします」
俺がそう声を掛けても返事はなかった。伊田はソファで欠伸交じりに背中を掻き、瀬川はリビングのガラステーブルに足を乗せたままだ。
男と話すつもりがないのか、それともガキと思って舐めているのか。
調教師という人種には7人ほど出会ったが、ここまで傍若無人な連中は他にいない。
俺は苛立ち混じりに地下へ下り、扉を開け放った。途端に、むっとする匂いが漏れ出してくる。
しとどな汗に、愛液、精液……それらを分泌した中にどれだけの美少女がいたとしても、饐えた臭いが緩和される事はない。アイドルだろうが令嬢だろうが、臭いものはやはり臭い。この仕事を続けていると、その事実を痛感する。
手探りで電気を点けると、散らかった部屋の中が一望できた。
入口にほど近い場所にあるベッドは、シーツが見事なほどに乱れている。
一番皺がひどいのは中央左側。そこだけは乱れるどころか、シーツが握られた形のままで隆起している。
イラマチオを受けた入宮が、その未曾有の苦しみに耐えるべく必死で掴んでいた場所だ。
その場所から少し下部に視線を移すと、広範囲にシーツのごわつきが“見て取れた”。体液が染み込んだまま固まった時の特徴だ。毎日ベッドメイクをやっていると、シーツの色合いだけで触感が判ってしまう。
ごわつきの周りには色々な道具が散らばっていた。
ローションボトルに、ローター、3種類の太さのアナルディルドウ、ビー玉大のものが数珠繋ぎとなったアナルパール。
あの畜生共は、意識を失った入宮の初々しい肛門に、こんな物まで使ったのか。
そう思いながらよく見れば、アナルパールの先にはかすかに黄色い汚れが付着している。ベッドシーツを注視すれば、そこにも薄茶色いシミがある。執拗に肛門責めをされ過ぎて、宿便でも漏れたのだろうか。
入宮自身が気付いていなければいいが。そう考えた直後に、そんなはずはないと思い直す。
彼女は起きてすぐに、自分の状態に気付いただろう。
伊田の肩に担ぎ上げられていた右脚を下ろし、肛門へ入り込んだディルドウを抜き出した後で、ベッドの惨状を必ず見たはずだ。
その時の彼女の心境はどんなものだったろう。そして連中は、どこまで辱めれば気が済むんだ。
俺は怒りに任せて一気にシーツを取り替えた。
ベッドの上が整えば、次はその周りだ。
ベッド脇……昨日入宮が洋物AVさながらのイラマチオを受けていた場所を覗くと、やはりここも汚れていた。
床の上に、夥しい精液が広がったまま乾いている。そしてそれより一層下に、やはり乾燥した黄色い物が見える。
吐瀉物だ。それに気付いた瞬間、また胸が締め付けられる。
モニター内の映像では必死に耐えていたように見えたが、やはり入宮は相当吐いてしまっていたらしい。
それはそうだ、あんな目茶苦茶をやられて耐え切れるわけがない。
じゃあ、何だ。昨日見たイラマチオの終盤、剛直の抜き差しされる中で入宮の髪から垂れていた光る液体は、ほとんどが吐瀉物だったのか。
何とか耐えている。俺がそんな間の抜けた判断をしていたまさにその最中、入宮は地獄の苦しみの中で何度も嘔吐していたのか。すると、あの時瀬川が必死に嘔吐させようとあの手この手を使っていた、という推測もまるで見当違いということになる。
恐らくは、ベッドの脇から頭を垂らさせるようなイラマチオに移行してから程なくして、入宮は陥落……つまり『吐いた』。
しかし、その瞬間に勝ち誇った表情を浮かべたであろう瀬川の変化を、カメラの角度的にか俺の不注意からか見落としてしまい、かろうじて勝負が続いているなどという空想をしていた事になる。
どこまで愚かなんだ、俺は。
※
畳敷きのエリアからも道具を回収し、洗い場で洗浄していく。
調教師には、自らの使う道具は手入れも絶対に自分でやるという拘りを持つ人間も多いが、その点でも伊田と瀬川は異端だ。
仕事道具をローションや汚物に塗れさせたまま、平然と放置する。その消毒や洗浄、手入れを行うのはすべて俺だった。
すっかり慣れたはずの作業に、今日はやたらと動揺してしまう。
これが今朝まで、入宮の肛門に入り込んでいたんだ。
これが昨日、入宮の膣を拡げていたんだ。
道具を手に取るたびにそんな事を考えては、頭を振って邪な考えを振り払う。
偽善でもいい。初恋の相手だけは、能動的に穢すことはしたくなかった。
地下牢を出てリビングに向かうにつれ、何かの音が聴こえ始める。
ぬちゃっ、にちゃっ。そういう粘った水音のようなものだ。
歩みを速めながら飛び込むようにしてリビングを覗けば、昨日とよく似た光景が繰り広げられていた。
ソファに腰掛けた制服姿の入宮が、醜悪な男二人に纏いつかれている。
ただし昨日とは逆で、瀬川は上半身、伊田は下半身だ。
違っている場所は他にもある。例えば昨日夏服だった入宮が今日は冬服であること。
校則通りリボンまで着けた固い格好だけに、シャツをたくし上げて乳房を揉まれる、という状況が昨日以上に背徳的だった。
下半身の状況もやや異なる。
昨日は大きく脚を開いたまま、ショーツの中に指を潜り込ませる責めだった。
それが今日は、開脚の度合いこそ同じでありながら、ショーツが左腿に絡みつくようにして垂れている。
そして完全に曝け出された秘部には、容赦なく伊田の5本指が入り込んでいた。
小指と薬指を肛門に潜り込ませ、中指と人差し指で膣の浅い部分を捉え、親指を陰核に宛がっての三所責め。
瀬川が舌での嬲りにおいて抜きん出ているように、、伊田もまた細やかな指遣いに長けた調教師だ。
10分か、20分か。たかだかその程度の責めで、入宮はもう濡れていることが音で判った。
伊田の中指と薬指が膣内をかき回すたび、チュクッチュクッチュクッチュクッと、ひどく水気のある音が立つ。
ひょっとして、もう何度か潮を噴いているのでは。そう思えるほどの水っぽさだ。
下半身がそれだけの状態にも関わらず、喘ぎは一切聴こえない。理由は入宮の顔を見ればわかる。
「くひひっ。これで2日目だが、相変わらず現役女子高生のおクチは甘くてうんめぇなあ?
高校で他の女子高生の股ぐら通った空気を腹いっぱい吸って、未熟なガキ特有の甘さが戻った感じだぜ」
吐き気を催すような言葉と共に、瀬川は延々と入宮の口を貪っていた。唾液まみれ、涎まみれで。本当に獣のような男だ。
その獣に執拗なキスを強いられる入宮は、まともに息ができていないように見えた。
伊田の指でまた絶頂させられたのか、細い身体がびくりと痙攣する。だが声は聴こえない。ちゅうー、ちゅるっ、という貪りの音に塗り潰されている。
入宮がかろうじて酸素を吸えるのは、瀬川自身も息継ぎをする数秒のみ。
2,3秒というごく短い間だけ、はぁーっはーあと湯気がでそうなほどに熱い喘ぎを発し、またすぐに唇を塞がれる。
「んんっ、いや…………ってばっ…………!!」
入宮は、口づけに明らかな抵抗を示していた。瀬川と唇が触れ合おうとする瞬間、大きく頭を振って阻止を試みる。
だが、抵抗を続けるには相応の体力が必要だ。そして今の彼女に、それはもう残っていないらしい。
「…………は、はっ………ぁ、はぁっ…………」
苦しげな喘ぎの中で、ある時ついに否定の首振りが止まる。その瞬間、瀬川がすかさず唇を奪う。
呼吸を遮られた直後だけは、むぐぅーっという声が上がるものの、その声すらもやがて瀬川の口で封じられてしまう。
汚辱と快感。伊田と瀬川は、それを徹底的に入宮に刷り込むつもりのようだった。
普段は地下という隔離空間でのみ行われる調教が、入宮に限っては日常空間であるリビングから始まる。
それは彼女の反抗心が強いことの証明なのだろうか。あの伊田と瀬川がスタイルを変えざるを得ないほどの難敵という事だろうか。
どうかそうであってほしい。彼女だけは最後まで、彼女のままでいてほしい。思わずそう願ってしまう。
それが虚しい願いである事は、奴らの調教を見続けてきた俺が、一番解っているはずなのに。
※
ヤクザという人種は、獲物についたほんの小さな傷口に吸い付き、肉を食い破りながら生血を吸い尽くすヒルのような生物だ。
だとすれば、女の調教こそまさに最もヤクザらしい所業といえるだろう。
奴らは相手の弱い責めを見つければ、それだけを執拗に繰り返す。親父がすぐに飽きると言っていたのはまさにこの事だ。
AVならば長くても数十分で責めが切り替わるが、ヤクザの調教では女が音を上げやすい責めを、何時間でも、何日でも繰り返す事がままある。
3時に見ても5時に見ても10時に見ても同じ光景が続いていたら、監視も嫌になるというものだ。
入宮への調教にも、やはりその兆候が見える。
丸裸に剥かれた入宮にまず施されたのは、瀬川によるアナル舐めだ。
主に電極責めを行うための特殊なマッサージチェアに深く掛け、命じられるままMの字に脚を開く入宮。
するとその足元に瀬川が跪き、肛門を両の親指で開く。
「んっ! …………まさかまた、お尻舐めるの? 可笑しい。これじゃまるで、あんたの方が奴隷みたい」
入宮は瀬川を睨み下ろして強がるが、瀬川の薄ら笑みは消えない。
「ほぉ、この俺を奴隷扱いたぁ言うじゃねぇか。うし、なら一つ下克上ゴッコとしゃれ込もうぜ。
俺が奴隷なら、テメェは女王だ。まさか女王様ともあろうお方が、奴隷に尻の穴舐められて感じるなんて事ァねぇよなぁ。
昨日と同じくグイグイ行くぜ。しっかり声抑えろや、女王様?」
そう前置きしつつ、瀬川は桜色の肛門にむしゃぶりつく。
「…………っ!!」
入宮は怨みのこもった視線で瀬川を睨みつつ、唇を引き結んで耐え始めた。
アナル舐めという責めは、効果はともかく見た目の変化に乏しい。
モニター越しに目を凝らせば様々な情報が存在するものの、固唾を呑んで見守るようなものではない。
そしてその変化の乏しい映像は、瀬川の性格からしてあと数十分は続くはずだ。
俺はそう判断してモニターを離れ、屋敷の管理人としての仕事に取り掛かる。
まずは洗い物だ。
地下室の清掃の際に回収した洗濯籠を持って、洗い場へ。
洗濯籠には入宮と男二人の脱いだ服が入っている。何を置いてもまずは、入宮と男二人の服を分けていく。
間違っても女の子の服を、野生動物のような匂いを放つ連中の物と一緒に洗うわけにはいかない。
夏用制服の上下と、靴下、Tシャツ…………そして、ショーツ。
赤いレース柄の入った、桜色の下着。間違いなく昨日入宮が穿いていたものだ。
鼓動が早まる。クリトリスを嬲られた事で散々愛液に塗れ、肌色を透けさせていた光景が脳裏に浮かぶ。
恐る恐る裏返してみると、やはりクロッチ部分に白くパリパリとした物がこびり付いていた。
乾いた愛液だろう。中学の頃には寝ても覚めても想い続けていた彼女の、愛液。
どんな匂いがするんだろう。
ショーツを握りしめたまま、生唾を呑み込む。手が震え、鼻先にクロッチ部分を近づけようと動く。
「…………やめろッッ!!」
しかし、すんでのところで床を殴りつけて耐えた。いくら思春期の衝動とはいえ、これじゃ伊田と瀬川を笑えない。
俺は洗面所で顔を洗い、頭を切り替えて黙々と洗濯を進めた。一段落して時計を見ると、まだ20分しか経っていない。
あれから20分。地下では今、何が行われているんだろう。さすがにまだアナル舐めの最中か。
入宮は今も肛門を舐めしゃぶられ、その汚辱にじっと耐えている事だろう。
そう考えながら親父の部屋のドアに手を掛けた、その瞬間。
『だらしねぇなあ女王様よ。声が出まくってんじゃねぇか』
瀬川の下卑た声が聴こえてくる。俺は思わず硬直した。
馬鹿な。まだ、たったの20分だ。いくら瀬川のアナル舐めが巧みでも、あの我慢強い入宮がこんなに早く声を漏らす筈がない。
そう自分に言い聞かせながら、俺は部屋の扉を開く。
喘ぎが、耳に飛び込んできた。
あっ、ああっ、という女の声。この屋敷に女は入宮一人。ゆえにその声は、入宮以外のものではありえない。
映像に目をやると、その推理は強烈に裏付けられた。
入宮の引き締まった太腿を浅黒い手が掴み、その合間に顔が埋められている。
顔がかすかに蠢く間、入宮は歯を食い縛って耐えていた。日常的に筋トレをする人間特有の、強く我慢ができそうな歯の噛み方だ。
だが、足の合間の顔が『舌を捻じ込む』動きを見せた途端、閉じ合わされた白い歯は簡単に開いてしまう。
「あぁあ…………ああああぁ………………!!」
喘ぐ時の入宮の顔は悔しそうだ。だがその声色は、“たまらない”という本音を訴えていた。
それからさらに10分程が経った頃、ようやく瀬川は肛門から口を離す。
「今日のアナルの味も最高だったぜ、嬢ちゃんよ。おまけに昨日より充血が早ぇし、ヒクつきもすげぇ。すっかり俺の舌に慣れちまったみてぇだな」
瀬川は言葉責めを交えながら、両の親指で肛門を左右に押し開く。
唾液でぬらぬらと濡れ光り、かすかに口を開いた肛門が楕円形に伸びていく。確かに昨日よりも伸びがいい。
入宮はぐったりとしていた。
ようやくアナル舐めから開放され、椅子に後頭部を預けてはぁはぁと喘いでいる。白い喉が妙に色っぽい。
情のある人間ならそれを見て小休止を取る所だが、歪みきったサディストである瀬川達は逆に燃え上がったようだ。
「さて。前戯はここまでだ」
瀬川はそう言って立ち上がった。
「ぜん、ぎ…………?」
瀬川の言葉を繰り返す入宮の声には、信じられない、という色が見える。
入宮は今のアナル舐めで、何度も達したんだろう。だから息を荒げている。それを前戯と断じられては、狼狽するのも当然だ。
「そうだ。瀬川の舌ばかりではつまらんだろう。これからは、こういう道具で楽しませてやる」
伊田はそう言って入宮の注意を引きつつ、鞄から道具を取り出しては床に並べていく。
長さ、太さ、材質、凹凸のそれぞれ異なる、計32種類のアナルディルドウ。
使い込まれて黒いゴム部分が波打つようなアナルバルーン。
鳥のクチバシに似た銀色の肛門鏡。
大小様々な玉が数珠繋ぎになったアナルパール。
卵形、あるいは細長い楕円形のカラフルなローター。
スライヴと呼ばれる強力な電気マッサージ器。
さらにはボールギャグにスパイダーギャグ、ノーズフック、ラバーマスクに、アームバインダー。
「……………………っ!!!!」
責め具の数が増えるにつれ、入宮の表情は青ざめていく。スポーツ一筋に生きてきた彼女からすれば、初めて見る物ばかりだろう。
伊田はくっくっと笑った。
「そう固くなるな、何もこの全てを使おうという訳ではない。今のおまえのアヌスには、到底入らんだろうからな。
だが、近い将来には迎え入れる事になる道具達だ。顔見せしておいて損はあるまい」
そう言いながら、伊田は黒いベルト状のものを拾い上げる。
手足を固定する為の、拘束帯と呼ばれる道具だ。
「さて。これから本格的な調教に入るわけだが、その前にこれで、太腿から下を固定させて貰おうか。
これからやる調教は少々刺激が強くてな。大抵の奴隷が暴れるのだ」
伊田はわざとらしく言い聞かせながら、瀬川と入れ替わる形で入宮の足元に屈みこむ。
そしてさも愛おしそうに桜色の太腿を撫ぜてから、拘束帯を巻きに掛かった。
「……今まで一体何人の子を、こうやって辱めてきたの? 相当恨み買ってるよ、あんた達。もう地獄にも行けないんじゃない?」
入宮の渾身の毒舌を受けてもなお、伊田の笑みは消えない。
「なるほど。確かに私達の末路としては、地獄ですら生ぬるいな。何しろ私達は、地獄の先を知りすぎた。
おまえにも教えてやる。自我の崩壊や、脳を焼き切る快楽……そういった苦しみの果てに辿り着く『恭順』こそ、女にとっての至福だと」
もはや宗教じみた持論を述べつつ、伊田の手は手際よく拘束を進めていく。
膝を折った状態で腿と脹脛を密着させ、腿の半ば辺りをぐるりと帯で巻いてからベルトで締める。まずは右脚、次に左脚。
さらにそれらの帯と鎖で繋がった手枷を入宮の両手首に嵌めれば、拘束の完成だ。
「くくっ。いいカッコだなぁおい、まるで潰れたカエルだぜ。マンコもケツの穴も丸見えで惨めこの上ねぇ。
このザマをテメェの知り合いにも見せてぇもんだな。お前が振った男やら、バスケ部の可愛い後輩やらによォ」
瀬川の悪意をたっぷり込めた言葉責めに、入宮の表情が険しくなる。
「さて。では、楽しませて貰うとするか」
そう言ってアナルディルドウを拾い上げる伊田の顔には、対照的に満面の笑みが浮かんでいた。
このまま、映像を見続けていいのか。俺は迷った。
あの入宮が裸を晒し、禁忌である肛門性感を目覚めさせられていく。
それに興奮するのは事実だ。実際昨日はモニターの映像を見守りながら、痛いぐらいに勃起していた。
だが、同時に胸が苦しい。伊田と瀬川に初恋の相手が堕とされていくのを見るのはつらい。
俺はその葛藤と戦った。だが、結局は悩むまでもない。
たとえ映像を見なくても、彼女はいま何をされているんだろうと常に考えてしまう。ならばいっそ、事実を把握できたほうがマシだった。
「どうだ、この味は。覚えているか? 昨日の晩、眠りこけるおまえにたっぷりと御馳走してやったのだがな」
桜色の肛門にアナルディルドウを抜き差ししつつ、伊田が囁く。
直径は俺の中指より少し太く、螺旋型にソフトシリコンの溝が彫られている。
菊輪を刺激する事を目的とするなら、かなり効果的と思える一本だ。
「やっぱり。退屈で、このまま寝ちゃいそう」
入宮は冷たい目で伊田を見下ろして挑発する。
強がりであることは明らかだ。ディルドウが挿入され、引き抜かれるたびに、腰がぴくりと反応する。
加えて彼女は今、アナル責めと同時にクリトリスにローターを宛がわれてもいた。
陰核と肛門の同時責め。これは本格的にアナル調教を始めた時、伊田がいつも使う手だ。
複数箇所から同時に快楽を受けると、脳内の処理が追いつかず、一箇所のみを責めるよりも明らかに堕ちが早いらしい。
となれば入宮も、言葉通り平然としていられる筈がなかった。
「なるほど、このサイズはもう余裕か。ではお言葉に甘えて、もう一段階進めさせてもらうとしよう」
伊田はほくそ笑みながらアナルディルドウを床に置き、その近くの一本を拾い上げる。
アナルパール……昨日ベッドで使われていたビー玉大の物よりも、さらに一回り太さのある代物だ。
「どうだ、この太さは。次はコイツをくれてやろう」
伊田は責め具を入宮に見せつけながら、たっぷりとローションを垂らしていく。そして入宮の尻肉を掴み、先端を肛門に宛がう。
先ほどの責めでローションの入り込んでいる肛門が、ひくりと反応した。
「…………っ!!」
ずぐり、とアナルパールが入りこんだ瞬間、入宮は顔を横向け、歯を食い縛って声を堪えていた。
「ほう、悠々と入るな。もっと肛門を締めろ。……もっとだ!」
伊田は低い声で命じ、尻肉を平手で打ち据えながらさらに命じる。
桜色の肛門はきゅ、きゅっと窄まり、アナルパールの玉へやや膨らんだ菊輪が吸い付く状態になった。
その瞬間、アナルパールが一気に引き抜かれる。
「っっ!!」
入宮は一瞬口を開きかけたが、すぐに歯を噛みあわせて持ち直した。
「ふむ、流石に我慢強いな」
伊田が感心したように言う。だが、それも最初に限った話だ。二度目にアナルパールが潜り込んだ時には、陰核責めも再開された。
「では、抜くぞ」
そう宣告された時点で、入宮は耐える準備を整えただろう。だがその瞬間、ローターに陰核を舐められて守りが崩れる。
その最中にアナルパールの引き抜きを受ければ、声は抑えきれない。
「ああああ…………っ!!!」
瀬川に舌入れをされた時と同じ……あるいはそれ以上に甘たるい声が吐き出される。
自分の出した声に気付いたのだろう。すぐに入宮ははっとした表情で口を閉じるが、すでに遅い。
「良ーい声だ。血の巡りがいいせいか、おまえは本当にアヌスの感度がいい。だからこそ、人並み以上に感じるだろう。
普通であればせいぜい数ヶ月に一度しか得られん快便の感覚……今のはそれだ。
まずはその感覚を、徹底的に身体に覚えこませてやる。今日も、明日も、その次もだ」
その言葉と共に、肉厚な手がアナルパールの柄を握り直した。
※
改めて観れば、伊田の責めは実に巧みだ。
一見するとただ陰核にローターを這わせているだけだが、ローターを押し付ける強さや角度を微妙に変え、刺激に慣れることなく絶頂に追い込んでいく。
そしてまさに陰核で絶頂を迎えるというその瞬間、アナルパールを引きずり出す。
こういう玄人技を使われては、性的に未熟な人間は耐えられない。
「あああっ……!!」
何十回と抜き差しを経た今でも入宮から声が上がるのは、そういう理屈からだろう。
「色々と奴隷を調教してきたが、おまえほど思惑通りに絶頂する豚は初めてだ。口の減らない娘らしからぬ、素直なカラダだ」
伊田はそう言いながら、右手でゆっくりとアナルパールを引き抜いていく。
左手にはローションボトルを握っているのだから、本来であればローションを追加して責めを続行するつもりだったのだろう。
だが、アナルパールが完全に穴から抜け出た瞬間、伊田が動きを止める。
「…………おや」
奴はそう言って、ゆっくりとアナルパールを掲げてみせた。入宮の視界へ入るように。
「何か付いているな。何だこれは?」
入宮の顔がゆっくりと起き上がり、伊田の手を見やる。そして、大きく眼を見開いた。
「あっ!!」
彼女の澄んだ虹彩は、はっきりと映し出した事だろう。銀色をしたアナルパールの先端に、汚物が纏いついている事に。
「昨日あれだけ洗浄してやったというのに……下品な豚だ」
「…………っ!! あ、当たり前でしょ。あ、あんた達が弄くってるのは、そ、そういう、場所なんだから。
あたしは最初っから、そんな所やだって言った。それを無理矢理したのは…………!!」
伊田の詰りに、入宮は泣くような震え声で返す。だがそうして弱みを見せたが最後、調教師はさらに攻め込んでくる。
「しゃあねぇ。なら、改めて綺麗にするしかねぇな」
映像の端に、瀬川の鶏ガラの様な足が映る。その足がさらに一歩進めば、奴の手にした物も映りこんだ。
洗面器、ガラス瓶、そして浣腸器。
奴は洗面器を入宮の座る椅子の傍に置き、怯えるような視線に見守られながらガラス瓶の蓋を開ける。
「ほう、いきなり酢か」
伊田が鼻をヒクつかせて言う。
酢浣腸。その言葉に、思わず冷や汗が出る。過去の調教映像でも、何度もそれを目にした事がある。
「お、お酢……? そ、そんなのお尻に入れるなんて、頭おかしいんじゃないのあんた!!」
入宮は不甲斐ない後輩を叱咤する時以上の声量で怒鳴る。
だが椅子に深く腰掛けたまま、大股開きで腿を拘束された女子高生が何を叫ぼうが、大の男の脅威にはなりえない。ただ、玩具にしか。
「ああ、うるせぇうるせぇ。その声量、後に取っとけや。どうせクソ生意気なテメェも、こいつにゃびーびー泣き喚くんだからよ」
洗面器に張られた酢の中で、浣腸器の空気を追い出しながら瀬川が言う。
「え……?」
入宮の顔が強張った。
「酢ってなぁ、昨日のグリセリンとはまた違う刺激なのよ。入れたその瞬間からカーッと来る類でな、中々我慢ができねぇ。2週間グリセリンに慣らしたガキでも、こいつをぶち込んだ瞬間から騒ぎ出して、こんなの我慢ができませんってボロボロ涙を溢したもんだ。
負債持ちのテメェにゃ、いきなりコイツで泣いて貰うぜ。なーに3.5倍に薄めてやってんだ、腸は荒れねぇよ。
今のテメェじゃ、死ぬほど辛ぇがな」
瀬川は浣腸器を引き上げ、雫を垂らしながら桜色の肛門に宛がった。
「つめたっ……!」
ガラスで出来た浣腸器の先端が入り込んだ瞬間、入宮が小さく呻く。
「ひひ、冷たいのはこっからよ。おら」
瀬川は浣腸器の尻部分を押し込むと、シリンダーに詰まった黄色い液体が肛門の中に追いやられていく。
「あ……ぁ、はあ、ぐうっ!!!」
酢が腸を灼くのか、入宮から小さな呻きが漏れる。
瀬川はそれを楽しみつつ、じっくりと時間を掛けて一本目を空にし、再び洗面器の中身を吸い上げ始めた。
「さぁ、2杯目だ。酢は体にいいからなぁ。育ち盛りのスポーツ少女にゃあ、たーっぷりと飲ませてやんねぇとな」
そう言って注入する瀬川を、入宮はなおも睨み据えている。早くも額に汗を掻きながら。
「なに、教育者気取り? だったら馬鹿丸出し。嫌がってる相手に無理矢理飲ませるのは、虐待っていうんだよ」
入宮の嫌味も、妙なスイッチの入った瀬川には通じない。
「いいや、躾さ。テメェは俺に躾けられるんだ。下さい下さいっつってシッポ振るような忠犬にな」
さらに3本目を注入した後、床からアナルプラグを摘み上げて肛門へとねじり込む。
「はぐう゛っ!!」
浣腸のつらさか、腸内の圧か、それともプラグの太さゆえか。入宮からかなり低い呻きが漏れた。
伊田と瀬川がゆっくりと立ち上がり、惨めな姿となった入宮を見下ろす。
入宮は睨み上げようとするが、その瞬間に下腹が切なく鳴り、固く目を瞑りながら歯を食い縛る。
「さて、我慢強さを見せてもらおうか豚。いや、今日のテメェは女王気取りだったな。
早くも脂汗塗れだが……日に二度も無様を晒すなよ、女王様?」
瀬川はそう言いながら、余裕たっぷりに腕を組んだ。
※
「どうした、いつ出しても構わんぞ。そのためにビニールシートを敷いているんだからな」
伊田が、入宮の陰核にローターを宛がいながら囁いた。
「ふぐっ……ぐっ、くふっぅ…………ッく…………!!」
入宮は顔中にじっとりと脂汗を掻きながら、歯を食い縛って耐えていた。
その腹部からは、腹を下した時特有の、遠雷のような音が絶え間なく続いている。
しかしどれだけ暴れたくとも、拘束帯でがっちりと両腿を固めていては姿勢を変える事ができない。
伊田はそうした入宮の苦悶を楽しみながら、なおも陰核をローターで舐め続けていた。
伊田だけではない。瀬川もまた醜悪な笑みを浮かべながら、入念な乳房責めを繰り返している。
屹立しきった乳首が挟み潰される様には、今にも母乳が噴出しそうな程のインパクトがあった。
「あうぐぅううっ…………!!」
気持ちいいのに苦しい。もう我慢ができない。そういう本音を眉とへの字の唇に表しながら、入宮は身を震わせる。
狂ったようにひくつく肛門のアナルプラグは、昨日のバルーン栓と違ってひり出せない代物ではない。
むしろ入宮が我慢を諦めれば、今すぐにでも弾け飛ぶだろう。
その栓としての頼りなさは、プラグの周囲から次々と汚液が吹きだし、入宮の理想的な尻肉の合間を伝っていく事実から見て取れる。
ぐぉるるるる、とまた一際大きな腹の鳴りが響き渡った。
「へへへ、またすげぇ音させてやがる、完全に下痢便だぜこの音ァ。……にしても、不思議なもんだよなぁ。
汗まみれとはいえまだまだ清楚って感じのテメェが、その薄皮一枚下じゃあ、下痢便に腸をかき回されてんだからよ!」
瀬川が詰りながら乳首を捻り上げた瞬間、入宮の細身がガクガクと痙攣する。
そしてその痙攣は、直前までと違い、しばらくすれば収まるものではなかった。
「……お…………おね、がい……もう、我慢できなっ…………とっトイレに、トイレにいかせてっっ!!」
細目を開き、入宮がついに懇願を口にする。浣腸から10分あまり、本当に限界なんだろう。
だが伊田と瀬川は、あくまで嘲笑混じりに見下ろすだけだ。
「駄目だ。そのままここで、惨めったらしく排便しろ」
どうあっても公然での排泄を強いるつもりらしい。調教主の意向には逆らえない、それを身に染みて理解させるためだろう。
目の前で排尿と排便を繰り返させる。下劣極まりない行為だが、実際、人間のプライドを折るという意味ではこの上なく効果的だ。
去年の今頃に伊田と瀬川が陥落させた『奴隷』は、ヤクザ6人を半殺しにして調教を受ける羽目になったレディースだった。
狂っているのかと思えるほど気が強く、常に大声で恫喝していて、伊田の丸一日かけたGスポット責めで都合70回以上潮を噴いても、
まだしゃがれ声で悪態をつき続けているような有様だった。
さすがに伊田達もその声量に辟易し、途中からは常にボールギャグを噛まされていたものだ。
その彼女を壊したのも、強制排泄だった。入宮が今座っている椅子に前後逆で縛り付けられ、突き出した肛門に様々な浣腸が施された。
イチジクを100本用いたり、、イルリガートルでゆっくりと3リットルを注いだり、、洗面器に作った薬液をエネマシリンジで送り込んだり、
浣腸器でコーヒーを、牛乳を、トマトジュースを注ぎ込んだり……。
多種多様な浣腸が繰り返されたが、一点だけ共通する事があった。排便するその瞬間には、必ず肛門に指が入っていたことだ。
まるで摘便のように、指で肛門内を蹂躙されながら便を排出する。
これを何時間か続けた末、ようやくボールギャグが取り去られた時には、あのレディースの顔が別人のように変わっていた。
幼児のように泣きじゃくりながら、堪忍してください、もうお尻に触れないでください、と哀願し続けるばかりだった。
人前で排泄を晒すっていうのはそういう事だ。
伊田と瀬川は、その威力をよく知っている。そして奴隷が反抗的となれば、容赦なくやるだろう。多分そのうち、入宮にも。
「もうぉ…………もぉ、本当にだめっ…………ぁ、ふぁああ゛あ゛っ…………!!!」
いよいよ余裕のない様子で痙攣しはじめる入宮を見下ろしながら、伊田は陰核の裏筋にローターを触れさせる。駄目押しだ。
「だめっ、だめだめ、あああああッッだッめぇぇえ゛ぇ゛ーーーーっっ!!!!!」
入宮は歯をむき出しにする必死の表情で叫んだ。その直後、ぶぼっという音と共にアナルプラグが吹き飛んでいく。
決壊が始まった。入宮にとって絶望的な、調教師二人にとっては垂涎の排泄が。
ざばばばばば、と音を立てて噴出液がビニールシートに広がっていく。
「おほーっ、酸っぺぇ匂いだ。おいクソガキ、人様の屋敷に何てぇ臭い充満させやがんだ、ええオラッ!」
瀬川の笑いつつの怒声が響き渡る。
何が人様の屋敷だ、俺の家だぞ。許す許さないを決めるのは俺だ。俺は彼女を責めない、責めるもんか。
そう思いながら入宮に視線を戻すと、狂ったように黒髪を振り乱す彼女の姿があった。これもまた、見たことのない姿かもしれない。
「いやあああっやめてぇえやめてぇーーーっ、おねがいっみないでーーーーっっっおねがぁぁあぁーーーーいっっっ!!!!!」
裏声というんだろうか。方言じみても聴こえる出鱈目な抑揚で、入宮は絶叫し続けていた。
物凄い声だ。女子バスケの県代表決定戦で、キャプテンとして『これまでの成果見せるよっ!!』と叫んでいた時には、大声でも澄んでいたのに。
「ぎはははっ、ひっでぇザマだぜ。これが本当にあの、見るだけでおっ勃ちそうだったバスケ部キャプテン様かよ!?」
瀬川の声はさらに大きさを増す。伊田も歯を剥き出しにして笑っている。
美しい物を崩壊させ、在りし日の姿を重ねて倒錯感に浸る。そういうアブノーマル性に浸っているんだろう。
勝手にすればいい。入宮さえ……あの入宮さえ、ターゲットにしないのであれば。
「…………おーおー、またすげぇ飛ばしたもんだなぁ。さすがは陸上とバスケで鍛えた下半身だ」
地下室の壁際にまで飛んだ汚液を見ながら、瀬川が嘲った。
「どうだ。大嫌いな俺らに見られながら、惨めったらしくクソした感想は?
やめてやめてって喚いてた割にゃあ、えらく長ぇことブリブリブリブリとひり出しまくってたよな。
正直に言えや嬢ちゃん。浸ってたんだろ? 俺らに見られて惨めにクソ漏らすのが気持ちよかったんだろ?」
瀬川は聞き逃せないようはっきりとした口調で、入宮に詰りの言葉を吹き込む。
入宮は正面が向けないのか、俯いたままで歯軋りの音を立てた。
「あたしが……したんじゃない。あんた達が、普通にさせなかった…………あんなの、我慢できるわけ、なかった…………」
ボソボソとそう呟いている。正論だ。だが調教師が、『奴隷』の正論に付き合うことはない。
「さて、んじゃあ恥の掻きついでだ。もっと惨めな姿を晒してもらうとしようか。ちっと待ってろや」
瀬川はそう言って映像から姿を消す。
不思議に思って親父の部屋を出て屋敷を探すと、キッチンに瀬川の姿があった。
冷蔵庫から何かを取り出し、ボウルに湯を注いでいる。
「あの、何か手伝いましょうか」
調教師のサポートを任されている立場上、そう声を掛けざるを得ない。しかし、いつもの如く返事はない。
近づいて手元を見ると、ボウルの湯に山盛りの玉蒟蒻が浸されていた。
それを見た瞬間、その用途がわかってしまう。これを肛門に入れるんだ。適度な質量と弾力を持つこれを直腸に詰め、排泄させる。
そうした擬似排便を繰り返し強いることで、排泄の快感を目覚めさせるつもりらしい。
「チッ」
俺の姿が視界に入った瞬間、瀬川は露骨に舌打ちする。相変わらず目は合わせないが、歓迎されている風ではない。
そして湯がある程度冷めた頃、水滴を撒き散らしながら乱雑にボウルの水を切る。
――クソガキが
ボウルを手にキッチンを後にする瞬間、奴はボソリと呟いた。
何なんだ、何がそんなに不満なんだ。確かに若輩も甚だしいが、一応は舎弟頭の板間さん直々に屋敷を任された身だ。
サポートの仕事だって手を抜いた事はないし、少なくとも表面上は先生と呼んで顔を立てている。それで何故、目の敵にされるんだ。
まさか、若さに嫉妬しているのか?
入宮や、その他同年代の女子と恋仲になれる可能性のある若さが嫉ましいのか?
まさかそんな、大人気ない。そうは思うが、女子中高生に限って異様なまでの執着を見せる奴だ、有り得なくもない。
あんな奴が今まさに入宮に近づいていっているなんて、気が狂いそうだ。
でもだからといって、俺に何ができるんだろう。
ない。『クソガキ』にできる事なんてない。親父の部屋に戻り、惚れた女が穢されていくのを見る以外には。
※
瀬川が手にしたボウルの中身に見上げ、映像内の入宮が訝しげに眉を顰める。
そう、普通は解らない。ボウル一杯に盛った、玉蒟蒻の用途など。
「そんなの、生じゃきついよ」
ボウルを手に屈みこむ瀬川に対して、入宮は戸惑いながら続けた。
その純朴さがひどく哀れだ。彼女は玉蒟蒻を、与えられる食事だと思ってしまっているらしい。
いや、ある意味で彼女はそれを“食べさせられる”。まさに腹がはち切れそうになるほど、山のように。
「安心しろ、食べやすくしてやる」
瀬川はそう言って、玉蒟蒻の山にローションをぶちまけた。そしてそれを山全体に塗り拡げた後、一粒を拾い上げる。
与える先は、不気味そうに肩を縮こめる入宮の口じゃない。その口から続く先の出口……直腸だ。
「えっ、な、何してるの!? まさかっ!!」
ようやく事情を察した時にはもう遅い。玉蒟蒻の一つ目は、浣腸で口を開いた肛門内へつるりと飲み込まれてしまう。
「い、いやああっ、何これっ、やだっ!!!」
入宮は半狂乱だ。無理もない。これまで彼女の肛門が受け入れてきたのは、舌と細い棒だけ。
対して今度は、玉蒟蒻という丸みを帯びた異物だ。固形便を想起させるその汚辱感は、これまでとは比にならないはずだった。
嫌がる入宮をよそに、瀬川はひとつ、またひとつと玉蒟蒻を拾い上げては、肛門へと咥え込ませていく。
時間が経って、良い具合に人肌まで冷めているだろう異物を。
「やめて、待って…………くるしい………………」
10個目を押し込もうとしたところで、入宮が音を上げた。我慢した方ではあるが、瀬川達に容赦する気配はない。
直腸が膨らみきるまで異物を詰め込み、我慢させ、一気に排泄させる。そうして排便の快感を教え込むのが目的だろう。
「我慢しろ」
瀬川は淡々とそう命じながら、肛門内へ玉蒟蒻を強く押し込んでいく。明らかに最初より入りづらくなっているようだが、力技で押し込む。
「おら、入るじゃねぇか。直腸の入口に溜まっていただけよ。今奥へ崩れたからな、まだまだ行けるぜ」
瀬川の声がそう告げる。
「やめて…………く、苦しいってばっ!!」
額に脂汗を滲ませながら叫ぶ入宮。未知の苦痛は耐え難いのか、物凄い声量だ。
だがその苦悶の声を耳にしても、瀬川と伊田は笑みを浮かべるばかりだ。
「まだまだあるんだ。我慢しろ」
ボウルに盛った玉蒟蒻はあと半分以上も残っている。当然責めの手は緩まず、より強引に肛門へ玉蒟蒻を押し込んでいく。
だが、相当に腹圧が高まってきたのだろう。12個目は、瀬川が力を込めた瞬間、肛門と親指の間から弾け飛んでしまう。
顔を覗かせた入宮の肛門は、親指がそのまま入りそうなほど口を開いていた。
「おーおー、中で灰色がひしめき合ってんぜ。どうやら12個で、ひとまずの限界らしいな。
もっとも、最初からいきなり25個全部呑み込めるたぁ思ってねぇがよ」
「うむ。呑み込めない理由は容量ではなく、あくまで異物に慣れていないがゆえの力みだ。
力みをなくすには、目的とする行為を繰り返させて慣らすのが一番いい。
今回の場合、限界まで目一杯に玉蒟蒻を呑み込ませ、ひり出させることを繰り返せば、呑み込める数は増えていくはずだ」
「ンな事ァわぁってるっつーの。任せろや」
伊田の解説に苛立ちを露わにしつつ、瀬川は肛門をつつきはじめた。
「まだ出すんじゃねぇぞ」
今にも玉蒟蒻の飛び出しそうな肛門を左手親指で押さえながら、瀬川は入宮の下腹を揉みしだく。
蠕動運動を促すためだ。腸のうねりに伴って、今にも出口から噴出そうとする蒟蒻の群が崩れ、圧が減る。
その後、瀬川はローターを手に取った。宛がう先は勿論クリトリスだ。
「んぐうっ!!」
振動がクリトリスの頭を舐めた瞬間、入宮からいかにも苦しそうな声が漏れる。
さらにローターで円を描くようにすると、腰がピクピクと動き出す。
「なんだお前、感じてるのか? 玉蒟蒻を腸詰めされてよ」
瀬川が煽ると、入宮は唇を噛みしめる。
「……こんな事ばっかりしてると、いつか罰が当たるよ」
恨みのこもった入宮の言葉も、けだもの連中には甘い囁きと変わらないのだろう。
それからしばらく瀬川は、親指で肛門を押さえながらクリトリスを刺激し続けた。
2度か3度は小さくイッたんだろう。瀬川自身の細かな状況解説によれば、肛門は何度もヒクつき、そのたび腰も小さく震えるらしい。
そしてまた絶頂の気配がし始めたところで、ついに入宮が口を開いた。
「い、一回、出させて…………お願い」
見ると、瀬川の親指を押しのけるような勢いで、入宮のピンク色の肛門が盛り上がっている。
いかにも辛そうだ。だが、だからこそ焦らされる。
「駄目だ」
瀬川はそう言いながらローターを置き、別の道具を拾い上げた。
スパンキングラケット。硬質の革で出来た、『奴隷』の尻を叩く為の道具だ。
それが、容赦なく入宮の尻を打ち据える。
パシィンッという凄まじい音が響いた。俺がこれまで耳にしたスパンキングの音の中でも、最もよく通る類の音だ。
「あう゛っ!?」
入宮が目を見開いて狼狽し、逆に瀬川は笑みを浮かべた。
「ひひっ、さすがに良い音するな。尻の肉が引き締まってる証拠だ。たまんねぇや」
そう言いながら、さらに尻を打ち据える。
無駄な肉のない入宮の尻肉は、打たれた肉が波打つ事はほとんどない。それでも筋肉の強張り具合から、痛みがひしひしと伝わってくる。
執拗なスパンキングを受け、桜色の尻肉はその右側だけが瞬く間に赤く腫れていった。見るからに痛そうだ。
そういう激しい痛みを受けた時、人は2通りの反応を見せる。萎縮するか、激昂するか。そして入宮は、後者だった。
「い……ったい、いたいってばっ!! 殺されたいの、あんたっ!?」
三白眼で瀬川を睨み据え、怒号を飛ばす。およそ俺の周りにいる奴で、その剣幕に逆らえる生徒はいない。無頼を気取る不良でさえ、入宮にこうして食って掛かられれば、数分後には気まずそうに頭を掻きながら煙草を揉み消すものだった。
だが、瀬川には通じない。
「当たり前ェだろ、こりゃ豚の躾だ。わざと痛ェようにしてんだよッ!!」
そう言いながら、さらにスパンキングを激化する。鋭い音が断続的に響き渡り、入宮の悲鳴がそれに混じった。
やがて右の尻肉がすっかり赤く染まる頃。
「んくぅううっ!!」
一際辛そうなうめきと共に、とうとう秘裂から透明な液体があふれ出す。椅子から次々と流れていくそれは、愛液ではない。失禁だ。
「お、お、こいつ小便まで漏らしやがった! 今日びの甘ったれたガキにゃあ、オチオチ折檻もできねぇってか!?」
瀬川がねっとりとした口調で煽ると、入宮は一筋の涙を溢しながら目を見開いた。
「…………死ねばいいのに。あんたなんか」
涙を流し、激しく呼吸を乱しながら、それでも入宮の闘争心は萎えていない。本当に強く、本当にプライドが高い。女子でなくとも憧れるほどに。
「ほう。こんだけシバかれて、小便まで漏らして、まだ恨み言が出るかよ。見上げたサドだなテメェも。
だが、だからこそ良いマゾになる。元がサドに振り切れてる奴ほど、心の壁を崩したら最後、いきなりマゾの深層へドボンだ。
断言してやる。テメェは一度崩れたら最後、もうマゾの呪縛からは戻れねぇ。
それが嫌なら、せいぜい心が折れねぇように歯ァ食い縛って耐えな。24時間、2対1の状況でボコられ続けて、一度もダウンしねぇように。
ま、無理だろうがよ」
瀬川はそう言いながら、長らく肛門を押さえていた左手親指を離す。その瞬間、数個の玉蒟蒻が飛び出していく。
「あっ!?」
入宮が状況を察した時にはもう遅い。腹圧に圧され、入口付近に溜まっていたと思しき玉蒟蒻が、ぼとぼととビニールシートの上に落ちていく。
「はははっ、これはまた勢いのいい排便だな!」
「ああ。品性のカケラもねぇ、惨めなクソだ!!」
伊田と瀬川がそれを大いに嘲笑い、入宮の顔を歪めさせた。
さらに瀬川は、シート上を転がる玉蒟蒻の一粒を拾い上げ、わざわざ入宮本人に見せつけもする。
「見ろ、お前の腸液だ。こんなにヌルヌルと纏いついていやがる。お前まさか、もうケツで感じてんのか?
2日目でここまでになる奴隷はお前が始めてだぜ。これでよくもまぁ他人のことを変態扱いできたもんだよなぁ、ええオイ」
確かに瀬川が摘む玉蒟蒻は、妙なテカリを帯びていた。おそらくはローションのせいだ。
たとえ腸液がついていたとしても、それは異物を詰め込まれたために腸が取った防衛手段に過ぎない。
だが瀬川の言葉を真に受けたのか、入宮の視線は粘液の滴る異物に縫い付けられていた。
それをじっくり楽しんだ後、瀬川は手にした一粒をボウルに戻し、さらに一粒、また一粒と拾い上げてはボウルに移していく。
2個、3個、4個、と口に出しながら。そしてそのカウントは、9で止まった。
「んん?おかしいな。きっちり数えたのに、9個しかねぇや。さっきは間違いなく12個入れたのによ。
おい、未練たらしく咥え込んでねぇで、さっさと全部吐き出せ」
瀬川のわざとらしい物言いに、いよいよ入宮の顔が赤らんでいく。
「そんなの、言われなくても…………ん、んん、く…………っ!!」
目を固く閉じて息む入宮。盛り上がってはへこむ桜色の肛門が、その力みようを物語る。しかし、残る3粒が出ない。
「どうした、出てこねぇぞ」
瀬川が肛門を突きながら嘲った。
「はぁ、はぁっ…………こ、この姿勢じゃ無理。せめて、立たせてよ」
疲労困憊という様子で告げる入宮に対し、瀬川が大仰に溜め息をつく。
「ったく、自力でクソひり出す事もできねぇのかよ。しょうがねぇ、手伝ってやるよ」
そう言いながら中指と人差し指にローションを振りかけ、肛門へと挿し入れる。
「ちょっ、ちょっと! 姿勢変えれば自分で出すから、やめてっ!!」
入宮が叫んでも、瀬川の指は止まらない。
「おっ、指先に触れたぜ。かなり深いな。だがこうして刺激してやりゃあ……ははっ、何だよオイ、菊輪がえれぇヒクつくじゃねぇか。感じてんのか?」
言葉責めを交えながら、二本指が肛門の中で回り続ける。
「おら、出てきた、出てきたぜぇ。ほら、テメェももっと力入れてひり出せよ。俺の指の付け根ばっかり、美味そうにパクついてねぇでよ」
そう瀬川が囁いた直後、まず一粒が瀬川の手の平の上を滑るようにして排泄された。
「ひぅっ……!?」
入宮が叫ぶ。その表情は戸惑いに満ちていた。指でかき回されながらの排泄が、それほど異様だったのだろうか。
さらに二粒目、三粒目と続けてひりだしていく中で、入宮の顔の引き攣りも酷くなっていく。
「うへぇ、こーりゃすげぇ。さっき以上にヌルヌルだぜ」
そう言って瀬川が3粒の内の一つを摘み上げると、床に幾筋も糸が垂れていく。
確かに今度は、単なるローションのヌメリじゃない。明らかに腸液が表面全てに絡み付いている。
モニター越しでさえそれが見て取れるのだから、目の前に突きつけられた入宮には、さらに詳細な『現実』が見えていることだろう。
「腸液ってなぁケツの愛液だぜ。つまりテメェは、ケツで感じたんだよ。蒟蒻なんぞ詰め込まれてよ」
腸液塗れの異物を晒しながら瀬川が囁きかける。
入宮は、一瞬視線を泳がせた。明らかに動揺した。だが流石に気丈だ。ひとつ瞬きする間には、もう表情を引き締めている。
「あたしは……感じてなんかいない。快感なんて、ないっ!!」
俺の初恋相手は、あくまで毅然とした態度でそう断言した。瀬川が、ほー、と感心したような声を出す。
だが、奴は『奴隷』に格好をつけさせたままでは終わらない。獲物の顔が涙や涎でグズグズになるまでは、調教をやめない。
「そうか。なら、まだまだ続けねぇとな」
そう言いながら、満面の笑みで玉蒟蒻の一粒を摘み上げた。
玉蒟蒻を限界まで詰め込み、ひり出させ。また詰め込み、ひり出させ。モニターの中では、それが繰り返されていた。
回を追うごとに、詰め込む数は増える。12個から15個、19個……そして今は、『今度こそ全て押し込む』という宣告から始まった。
「本当に、くるしい…………お腹の奥まで、詰まっちゃってる…………こ、こんなの、もう、出なくなっちゃう…………!!」
21個目で、入宮が呻いた。
汗がひどく、表情も苦しげだ。限界と言うのは本当なのかもしれない。だが、瀬川に容赦はなかった。
「あとたったの4つだ。我慢しろ!」
そう言いながら、親指で強引に22個目を押し込む。しかしまた、その一粒が弾き出される。
「出すな、ケツ締めてろ!!!」
瀬川は怒鳴りながら、零れた一粒を拾って肛門に宛がった。そして粘土へめり込ませるように、両手の親指を重ねて親指で強引に捻じ込んでいく。
「いやあぁっ!! 奥に来た、ねぇっ、今、本当に奥に入っちゃったの、もうやめてよ!!」
入宮は悲鳴を上げた。瀬川がかすかに笑みを見せる。
「また随分とパニくった声だな。大方、直腸の奥にまで玉蒟蒻の塊が届いてて、今のでS字結腸へ入り込んだか? なーにそう焦るな、感触ほどヤベェ事態じゃねぇよ。ひり出すのに、ちっと……直腸の三倍ぐれぇの気合が必要になるだけだ」
悪魔的なその言葉の最中、瀬川の背後で般若が歪み、25個全てが力尽くで押し込まれてしまう。
「やっ、くるしっ、くるしいっ! 出させて、ねぇっ出させてっ!!!!」
入宮は、恥も外聞もなく哀願を始めた。
無理もない。浣腸にしてもそうだが、人は本来保護されているべき粘膜を責められると弱い。そういう風に出来ている。加えて、直腸すべてとS字結腸にまで異物が詰まる状況など、日常生活ではまず有り得ないことだ。
入宮の脳内では今、彼女がかつて味わった事もない、最大級の警鐘が打ち鳴らされているに違いなかった。
だからこそ、伊田も瀬川も容赦はしない。
肛門に親指ごと捻じ込むようにして蓋をしつつ、陰湿に入宮を嬲る。
陰核をローターで嘗め、膣に指を入れ、乳房を揉みしだき、その上で下腹を撫で回す。逐一言葉責めを交えながら。
一方の入宮には余裕がない。
「ださせて、ださせておねがい…………っっ!!………………くぅしい、くるしい、くるしい…………!!!」
ひとつ呟いた言葉を繰り返す形で、何度も解放を乞う。たまに絶頂時の息が詰まったような反応が混じるものの、またすぐに哀願に戻る。
その状況がたっぷり10分は続いた所で、ようやく瀬川が許可を出す。
「ったく、うるせぇガキだ。しゃあねぇ、ぶち撒けさせてやる。ひり出す感覚を意識しろよ」
節張った親指が肛門から引き抜かれた瞬間、怒涛のように灰色の玉蒟蒻があふれ出した。
十を超える異物が、マッサージチェアの座部を滑り落ちては床に転がっていく。
その第一波の後、入宮の必死の息みに応えてさらに3個。さらに2個。
しかし、そこで止まった。計25個のうち、18個しか出ないまま。
「どうした、もう出ねぇのか」
「……はぁーっ、はーっ、はーっ…………だ、だから、この姿勢じゃ、お腹に力が、入れにくいんだって。姿勢、変えさせてよ」
激しく喘ぎながら抗議する入宮。
瀬川はここまで数度、入宮の姿勢変更の要望を聞き流していた。しかし、今回に限っては違う。
「いいぜ、最後だ。思いっきり踏ん張らせてやる」
そう言って伊田と目配せをし、入宮の腕と脛の辺りを抱えてひっくり返す。
大股開きで椅子に腰掛ける姿勢から、その逆……曲げた両膝を肘掛けに乗せ、座部に爪先立ちになる格好へ。
「どうだ。和式便器スタイル、一番ひり出しやすいカッコだぜ?」
瀬川が入宮の尻を撫でながら笑った。確かに排泄はしやすいが、相当な恥を伴う格好だ。何しろ肛門を突き出す形なんだから。
当然、入宮も表情を変える。
「い、いやっ、何これっ!!」
「ゴチャゴチャうるせぇな。姿勢変えろっつったのはテメェだろ。おら、さっさとひり出せよ」
瀬川はそう詰りながら、肛門に二本指を突き入れた。そして指を開閉させながら回転させ、腸内を攪拌する。
腹圧が強まった為だろう。たちまち数個の玉蒟蒻が排泄され、びちゃっ、ぼとっ、という音を立ててシートの上に落ちていく。
「いやぁーーっ!!」
入宮は枷のついた手で肘掛けを握りながら絶叫した。その羞恥の声を心地良さげに聞きながら、瀬川は二本指での蹂躙を続ける。
「くくっ。こんだけ色々やっても、まだ力むたびに俺の指を食い千切りそうな按配だ。ほんっとに良い括約筋してんなあテメェはよ。早くこのアナルにブチ込みてぇ……っと、そら、また1個出てきたぜ。どんどんひり出せや、ヨガりながらよ!」
「う……く、くぅ…………くぅう、んん、んっ…………!!!」
入宮は必死に振り返って後方を睨みつつも、異物が肛門を通り抜けるたびにびくりと腰を震わせていた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ…………ふむ、あと6つが出ねぇな。しゃあねぇ、コイツで掻きだしてやるか」
指では残りが出ないと見るや、瀬川は細めのディルドウを手に取り、肛門に宛がう。
「えっ……!? ちょっ、ちょっと、まだ中に入っ…………!!!」
抗議の声はディルドウの挿入であえなく途切れ、入宮は口を開いたまま硬直する。
「ひひっ、どうした。玉蒟蒻が奥にある状態で突かれて、脳がフリーズしちまったか? これだから汚れ知らずのガキは。こんなモンはまだ、序の口も序の口だぜ。テメェはこれから3ヵ月かけて、排便の快楽を徹底的に脳髄へ叩き込まれるんだからよ!!」
ディルドウが往復した後に引き抜かれると、奥に残った玉蒟蒻が転がり出す。何とも惨めな“排泄”だ。
「ああ、あぁああぁ゛ーっっ!!!」
入宮の叫びが胸に痛い。その悲痛な声が出るたび、矜持という殻が削がれていくのが感じ取れた。
※
月曜から木曜までは、こうして夜間に調教が行われ、朝からは高校へ通う、というサイクルが繰り返された。
貞操帯という邪魔はあるものの、学校にいる間は調教から逃れられる。あまり褒められた事じゃないが、睡眠という休息も取れる。
ゆえに金曜の夜からが、入宮にとっての本当の地獄だ。
さすがに一週間全てを肛虐に充てるともたないため、土曜はアナルを休ませる日と定まった。
しかし、だからといって土曜が休息日になるかといえば、そんな事はまるでない。
何故ならこの日には、入宮のアナルを除く全身に対して、徹底的な性感開発が行われるからだ。
「今日はおまえの身体に、イキ癖をつけてやる」
9月の第2週……つまり初めての土曜日の朝、伊田が改まった口調でそう告げた。
瀬川の獣のような性欲も厄介だが、頭脳派の伊田による理詰めの調教にはまた違った危険さがある。
まず入宮は、久々にゆっくりと風呂に入るよう命じられた。
男二人による監視つきとはいえ、地下室のバスタブにたっぷりと湯を張って浸かれば、必然的に身体はリラックスする。
そうして身体がほぐれれば、次はマットの上でのオイルマッサージだ。
肩から背中、腰、乳房から太腿、足指の先に至るまでを、時間をかけて入念に揉みほぐしていく。
伊田も瀬川もこれが上手い。最初は警戒していた『奴隷』が皆、自然と眉を下げるほどに。
しかし、だからこそ危険だ。
胸を開発する時は乳房から責める方法が最上であるように、他の性感帯もまた、外堀から迫るやり方が一番効く。
特に太腿。全身をくまなくほぐして血流を高めた上で太腿を丹念に揉みほぐせば、それだけでごく軽い絶頂に至る事すらあるらしい。
ただでさえ敏感な入宮が、それを凌げるはずもない。
「ん、んんっ…………んああ、ああ…………あああっ………………」
伊田と瀬川の二人がかりで太腿を撫で回され、入宮から甘い声が漏れる。苦しさは微塵もない、太腿の色と同じピンクの吐息という風だ。
にもかかわらず、彼女の顔には恐怖が見て取れる。
「や、やめて。もう触らないで。さっきから、何か、変…………っ!!」
マッサージ開始から30分が過ぎた頃、入宮はかすかに震える声でそう訴え始めた。
瀬川の手が大腿部を擦るたび、伊田の手が内腿を撫でるたび、想像を超える快感が走るのだろう。
しかし、伊田と瀬川が手を休める事はない。休める訳がない。獲物に間違いなく毒が回っていると知れたのだから。
こうして実に1時間以上に渡って性感を研ぎ澄まされた後に待つのは、容赦のない快楽地獄だ。
ベッドの上に大股を開いた状態で座らされ、背後から瀬川に羽交い絞めにされる。
そして執拗な乳房責めを受けながら、陰核をマッサージ器で責められ続ける。
マッサージ器はスライヴと呼ばれる強烈な奴だ。血の巡りがいい状態のクリトリスにそれを宛がわれれば、まず誰でも10秒ともたない。
「あぁあっ!!!」
入宮も僅か8秒で、内腿に筋を浮かせる絶頂の様子を見せた。
そして、絶頂は一度では終わらない。そこからは嫌になるほど徹底的に、クリトリスでの絶頂を迎えさせられる事になる。
細やかな責めに長けた伊田のこと、マッサージ器の扱いひとつを取っても寒気が走る。
マッサージ器は刺激が強烈なだけに、下手に扱えばやがて陰核が麻痺してしまう。
しかし、伊田に限ってそれはない。マッサージ器を押し当てる秒数やタイミングを絶妙にコントロールし、常に刺激に変化をつける。
その結果『奴隷』は、常に絶頂の高原状態を彷徨うことになる。
そしてそれは、入宮とて例外ではない。
「ん、んんんっ……ふ、ふぅっ…………だめ、く、くるっ!! また、くるぅっ…………!!!」
唇を引き結んで必死に耐えていた彼女は、やがて唇を開いて絶頂を口にした。
「くる、じゃない、『イク』だ。絶頂する時には『イク』と言え。必ずだ」
マッサージ器を微妙に傾けながら、伊田が命じる。多少は対話をする瀬川に比べ、伊田は自分のルールを『奴隷』に強要する傾向にあった。
「ああぁあぁああっ!! っく、いくっ、いくいくいくっっ!!!!」
陰核にマッサージ器を押し当てられたまま叫ぶ入宮。それを見て瀬川が笑う。
「ひひひ、すげぇすげぇ、イキまくりだ。プライドの高いガキと思ったが、こんなアクメ面を俺らに晒しても平気なんだな」
「…………っ!!」
瀬川の挑発を受け、入宮は表情を凍りつかせる。そしてそこから数十秒は、歯を噛みあわせて耐えていた。目の前の瀬川を睨み据えながら。
しかし、その状態でさらに絶頂を続けると、次第にその視線が上方を彷徨いはじめる。
そして5回ほど絶頂と思しき反応を見せた辺りからは、また目を固く閉じてしまう。
「へへっ、また逆戻りってか?」
「そう意地の悪い事を言うな、瀬川。あれだけ入念なオイルマッサージで性感を目覚めさせられたんだ。逝き通しにもなる」
伊田は瀬川を制しつつ、入宮の膣の中に指を挿し入れる。そして、ゆっくりと指を蠢かせた。
「んぐぅううっ!!!」
噛み合わされた歯の合間から、たまらないという響きの声が上がる。
さらにマッサージ器が再び陰核に宛がわれると、歯の合間からの声は、んぐぅっ、ぎぅうっ、と断続的に続くようになった。
「絶頂する時には『イク』と言え――そう教えたはずだ!」
伊川は厳しい表情でマッサージ器の角度を変える。その些細な変化で、入宮の意地は突き崩された。
「あぁぁ…………ああっ、ああああっ“イク”っ!!! いくっ、いくぅいくっ、いくぅううっ!!!!」
上下の歯が離れ、はっきりとした絶頂宣言が為されはじめる。従順というよりは、極限状態で強く命じられたことを無意識に行っているという風だ。
そしてその極限状態は維持される。意図的に、熟練の技でもって。
ちょうどこの頃から、映像内に変化があった。マッサージ器が宛がわれている入宮の脚の合間から、飛沫が飛び散りはじめたんだ。
ライトを受けて煌めくその飛沫は中々量が多く、最初は潮吹きかとも思った。しかしマッサージ器が宛がわれている限り、断続的に数分も続くことからして、そうではない。
愛液だ。入宮の秘裂からあふれた愛液が、マッサージ器の振動で四散しているんだ。
ローターによる陰核責めでは見られなかった現象。あらためて、あのスライヴという器具の強烈さを思い知る。それで陰核を責められては、絶頂続きになっても無理はない。
そう。入宮が悶え狂っているのは、意思ではどうにもならないレベルの摂理なんだ。
「あっ、あぁー…………あぁっ、う、あっ、イクっ!! ああ、ぁぁぁ…………はぁっ、ああぁ…………くぅううっ、んんっ…………いっ……く…………!! はぁっ、はーっ、はぁーっ…………ふんんんんっ………………ふぁぁあああっいっ、イグぅうううっ!!!!」
シャトルランを繰り返すような激しい呼吸の中、必死に快感に耐えようとし、しかし堪えきれずに絶頂に至る。
その恥辱が延々と続いていた。
20回目の絶頂時から、入宮の両手が背後の瀬川の左右の腕を掴むようになったのは、乳房責めを嫌ってのことか、それとも何かに掴まらなければ自我が保てないと感じてのことのか。
絶頂が30回を超えたころには、命じられた大股開きを閉じようとする気配も見せていた。
「脚を閉じるな。浅ましく開いていろ!!」
伊田がそう言って脚を押し戻すが、さらに数度絶頂するたび、また脚が閉じかけてしまう。明らかにそれ以上の絶頂を嫌がっている反応だ。それでも伊田は、責めの手を緩めない。それどころかむしろ、マッサージ器を長時間宛がう頻度が高くなっていく。
絶頂40回目からの入宮は、ほとんど泣き叫んでいると言うべき状態だった。
「やめてーーっ、とめてえーーっ!! イクっ、イクよぉっ、いってる、まらいってるぅっ!!! おねがいとめてっ!! ああぁあぁああっイグーーーーッ!!!!」
唾液をたっぷりと含んだ怪しい呂律で、体育館に響きわたりそうな声量を発し続ける。
大きく開いたがに股の脚が何度も浮き上がり、ガクガクと痙攣する。
それでも、伊田は止めなかった。奴がようやくマッサージ器の電源を切ったのは、絶頂70回あまり。入宮から声が発されなくなった後だ。
伊田はベッドに膝をついたまま前へ詰め、ぐったりと項垂れた入宮の瞼を開いた。そしてじっくりと観察し、ほくそ笑む。
「ふふ、これはまた……早くも快感で脳がドロドロらしい。良かろう、しばし休憩だ。今日は長いからな」
その呟きは、果たして入宮の耳に届いたのか。少なくとも俺はそれを聞き、底知れない恐怖を感じていた。
※
「やめてっ、いやーーっ!! やめてよっ、ふざけないでっ!!!」
休憩後に響き渡った入宮の叫びは、金切り声というのか、日常生活では滅多に耳にしない類のものだった。
彼女が今行われようとしているのは尿道開発。文字通り尿道に異物を差し入れ、拡張していく責めだ。
床の上で“マングリ返し”と呼ばれる格好を取らされつつ足首を掴まれた時、入宮は、またクリトリス責めかと思ったことだろう。
だからこそ、尿道の入口に綿棒が宛がわれて初めて驚愕する。
今までの『奴隷』も皆そうだった。当然だ。アナルにしてもそうだが、排泄の穴を開発されるなど、予めの知識がなければ予想すらできない。
俺も最初に尿道責めの映像を見た時には、綿棒が入り込んでいるのが膣ではなく尿道なのだと理解するのにかなり掛かった。
正確には言えば、見抜けはしなかった。ただ『奴隷』が、「そんな所に挿れてはいけない」「垂れ流しになる」と、普段の文学少女然とした雰囲気をかなぐり捨てて叫んでいたから察せただけだ。
「ふふ、存外に愛らしい反応をするものだな。瀬川よ、この様を見てもこの娘をサディストだと思うか?
本当のSであればこうした苦境にも、グッと歯を食い縛って耐えるものだが」
「ああ、どうやら俺の勘違いらしい。こいつの矜持は紛いモンだ」
伊田と瀬川は入宮の顔を覗きこみながら煽る。そう言われては入宮も、続く非難を呑みこむしかない。
心身共に束縛された入宮は、自らの尿道へ異物が入り込む様を黙って睨み上げていた。
まさに挿入というその瞬間には、瀬川が押さえ込む足首に深く溝が入った。
「安心しなさい。キシロカイン――麻酔薬を含んだゼリーをたっぷりと付けてある。痛みは直に消える」
伊田はそう諭しながら、改めて指で秘裂を拡げなおした。
太い指に押し拡げられた鮮やかなピンクの中へ、再び純白の棒の頭が押し付けられる。
「…………い、ぃきっ………………!!」
入宮の眉が顰められ、歯が食い縛られる。痛みのせいか、恐怖のせいか。どちらに起因しているにせよ、伊田の手が止まることはない。
尿道開発はじっくりと進んだ。
綿棒の先を押し当てては離し、押し当てては離し、を数度に渡って続けた後に、ごく浅く挿入する。
先端の膨らみの半ばほどまでを呑み込ませてから、一旦引き抜き、再び呑み込ませる。
その次は、半ばほど呑み込ませた状態から、捻るようにしてさらに深く沈めていく。
そうして少しずつ少しずつ、尿道の奥へと進んでいくやり方だ。
入宮の表情は複雑だ。睨むような瞳の裏には、恐怖か戸惑いのどちらかがある。
痛みはなさそうだ。時折り眉を顰める事はあるが、後は綿棒が進んだ時や捻られた時に、あ、と小さく声を上げるばかり。
綿棒がスムーズな前後移動を始めた段階でも、それは変わらなかった。
「どうだ。尿道をこうして擦られるのは。思った以上に心地いいだろう」
尿道へ突き刺さった綿棒から一旦手を離しつつ、伊田が問う。
「……自分にもあるんだから、実践してみれば? あたしが割り箸でもぶっ刺してあげるよ」
当然、入宮は反抗の意思を見せる。伊田はその反応を想定していたのか表情を崩さず、ローターを拾い上げてスイッチを入れた。
そして、突き立った綿棒に触れさせる。
「あ、ああっくっ!?」
入宮は声を上げた。ローターの振動が綿棒を介して、直に尿道へと響いたのだろう。
「忘れていたよ。おまえの口は嘘をつく。不必要に自分を飾る。ここはやはり……素直な身体の方に訊くとしよう」
伊田はそう告げて尿道責めを再開する。
尿道へ嵌まり込んだ綿棒を前後に揺らし、捻り、ローターを触れさせ。
半ばほど埋没させた状態で一旦放置し、人差し指を膣に入れて膣壁越しに綿棒を回転させる。
これらの責めは、確実に入宮に変化をもたらしていた。
声は出ない。だが抑えきれないという様子で、熱い吐息が少しずつ早まりながら繰り返し吐かれる。
その責めが五分ほど続いた後。
「だめ…………で、でちゃう………脚離して……………!」
必死に何かを耐える様子を見せていた入宮が、頭上の瀬川を見上げながら乞う。
だが瀬川は薄ら笑みを浮かべているだけだ。
人差し指で膣内にちゅくちゅくと水音を立てていた伊田もまた、待ち侘びていたとばかりに頬を緩めながら指を抜く。
そして、かなり深く入り込んでいた綿棒が引き抜かれた瞬間。まるで異物との別れを惜しむかのように、秘裂の上から液体があふれ出す。
液体は一度低い放物線を描いてから途切れ、再度少し高い軌道でやはり放物線を描いて途切れ、
「んん、んやぁーーっ!!!」
妙に幼さを感じさせる入宮の息みと共に、三度目で本格的な放尿となる。
小さな黒点から発された液体が、まず透明な三角の膜を作り、それが収束して高らかな放物線を描いた後に四散する。
入宮自身が“マングリ返し”の格好を取らされている以上、その飛沫のかかる先は当然――彼女自身の顔付近となる。
「ぶはっ、ぷあっ!! ちょ、ちょっと……あぶふっ!!!」
自らの小便を顔に受けるうち、少なからぬ量が口に入ってしまっているようだ。
よほど溜まっていたのだろうか、放尿はかなり長く続いていた。放物線が形を保てなくなるまでには、10秒は掛かっていただろう。
恥辱の後には、入宮の無惨な姿があった。今ようやく海から陸へ上がってきたばかりという風に、濡れた髪が顔や首に貼りついている。
「おーおー、まさに小便臭いガキってやつだなこりゃ!!」
足首を掴む瀬川が嘲笑うと、入宮の目が見開かれ、殺意すら感じる視線を投げかけた。
「誰のせいで、こんなっ…………!!」
「おまえ自身のせいだ」
入宮の怒声を、冷静な伊田の声が遮る。虚を突かれたのか、入宮が言葉を止めた。
「は、はぁっ?」
「忘れたのか。おまえは負債持ちの身だ。今で3つ……いや、4つか。そうして小便を浴びているのは、おまえ自身が築いた負債のせいだ。
おまえの不誠実な態度は、やがて恥辱となっておまえ自身に返ってくる。少しでも快適に過ごしたいのなら、大人しくしておくことだ」
冷ややかに見下ろす伊田に対し、それでも入宮は睨むことをやめない。誇り高く生きてきた彼女の矜持が、退くことを許さない。
「まぁ、こちらとしては……歯ごたえのある方が好みだがな」
伊田はそう言って、新たな道具を拾い上げる。緩やかなカーブを描いた、サージカルステンレス製の尿道ブジー。
「や、いや。やだっ…………!!」
それがゆっくりと尿道に近づけられるにつれ、入宮の目元が引き攣っていく。
ああああ、という声が上がったのは、その数秒後のことだった。
※
尿道ブジーが使われはじめてから、何分が経っただろう。
映像の中では、伊田と瀬川の手により、より入念な尿道責めを行う体制が出来上がっていた。
屈辱的な“マングリ返し”の姿勢はそのままに、膣が器具で大きく開かれている。
伊田はその状態で尿道にブジーを前後させつつ、陰核を指で刺激し続けていた。
激しさはまったくない。
尿道ブジーは激しく抽迭される訳ではなく、傍からは、尿道から伸びた細い糸をクイクイと指で手繰っているようにしか見えない。
陰核を責める指もまた、陰唇の上端を優しく左右に弾いたり、親指と人差し指を使って摘み上げている程度のものだ。
にもかかわらず、入宮は今や完全に感じている時の反応を示していた。
歯を閉じて、シーッと違和感に耐えるような息を吐き出したかと思えば、その直後には、ああぁ、ぁぁぁーっ、と、本当に気持ちの良さそうな声を漏らす。
そして5回に一度は、『あ』と『お』の間のような、濃厚に絶頂の気配を匂わせる吐息を吐く。
快感は身体的特徴としても表れていた。
伊田が様々に弄くり回す陰核……それがもう、ハッキリと見て取れるほどに勃起しきっているからだ。
ぼうっと見ていても、最初の頃のように大陰唇の皺の一部などとはもう思えない。それほどの尖りを見せている。
陰核は神経の塊だ。そこが極限まで研ぎ澄まされている状態で、親指と人差し指に挟まれて扱き上げられれば、たまらない。
「ぉおおあぁああぉっっ…………!!」
そうした快感の凝縮した喘ぎを漏らすのも、仕方のないことだ。たとえ、憎い男に見られながらでも。
伊田はじっくりと責めを続けながら、なぜそれほどに感じてしまうのか、そのメカニズムを入宮に対して説いていた。
外から見えているクリトリスと呼ばれる部分は、陰核亀頭と呼ばれ、陰核体という組織のごく表面的な部分に過ぎない。
ちょうど男の陰核と同じで、そこだけを刺激しても絶頂には達するが、根元からじっくりと目覚めさせた時の快感には遠く及ばない。
その根元を目覚めさせる最も効果的な方法が、尿道を責めることだ。
尿道と薄皮一枚で接する陰核客を丹念に擦り上げ、神経を研ぎ澄ませた状態で陰核亀頭を刺激すれば、この通りだ。
そうして現状を認識させつつ、さらに陰核を昂ぶらせていく。
「知らない、そんなの、知らないっ!!」
入宮は何度も首を振り、伊田の囁きを耳に入れないようにしているようだった。脳が仕組みを理解したが最後、快感の質が変わると察したからだろう。
だがいずれにせよ彼女は、快感から逃れられない。
「おーっ、見ろよ伊の字。このガキ、気持ちよすぎてヨダレ垂らしてやがんぜ!?」
入宮の顔を飽きずに観察していた瀬川が、嬉しそうに言う。画面を凝視すると、確かに入宮のだらしなく開いた口の端に何かが見えた。
はっとした様子で表情を引き締める入宮だが、もう遅い。
「出来上がったな。ちょうど陰核も、これ以上はないというほどに固くなっていることだ。そろそろベッドに戻ろうか」
伊田のその一言で、入宮の顔がゆっくりと上を向く。
「え…………?」
その表情をにこやかに受け止めながら、伊田は続けた。
「ベッドへ戻るんだ、豚。改めて、マッサージ器で可愛がってやる」
伊田の太い指が陰核を摘むと、ただそれだけで入宮の腰が跳ねる。そんな状態で、またマッサージ器を使われれば……。
「いやああぁーーーーっ、やめてやめてっ、やめてよ、とめてーーーーっ!!!!」
映像の中に悲鳴が響きわたる。
ベッドに戻された入宮は、瀬川に太腿を抱え込まれながら陰核にスライヴを宛がわれていた。
あえて拘束はされていない。瀬川共々汗まみれになったまま、格闘でもするように刻一刻と姿勢を変える。
入宮は、明らかに陰核への刺激を嫌がっていた。
性器の状態も異常だ。一度目の終盤に見られたような愛液の飛沫が、もう起きている。
スライヴが陰核へ宛がわれるたびにブジュブジュと透明な汁が飛び散り、見た目にはほぼ小便と変わらない。
「おーおー暴れやがる。やっぱすげぇ脚の力だぜこいつ」
暴れる入宮の太腿が一旦瀬川の拘束を振り切るが、瀬川は冷静に膝裏を掬い上げて大股を開かせる。
そこへスライヴが押し付けられる。
「あああぁ“--っ、いやぁーっ、いや゛ぁああ“っっっ!!!!!」
顔まで噴き上がるほどの飛沫の中で入宮が激しく首を振る。
「絶頂する時は『イク』と宣言しろ。同じ事を何度も言わせるな!」
伊田が恫喝する前で、入宮は全身を痙攣させる。
「あああ……あ゛ぁああ゛っ!! だ、だってあらし、さきからずっといってる、いきっ、できなっくらい…………!!
だからとめてって、ああ、あぁああぁあいくーっいくーーーっ!!またイグぅぅうううっっ!!!!」
入宮の垂れ下がった目からは涙が零れ、鼻からは鼻水が、口からは牛のように涎が出続けている。
あの凛とした入宮と同じ人物だとは、到底思えないほどに。
だが、紛れもなく彼女だ。変わっていく様をずっと見続けてきた俺には解る。あれは入宮なんだ。
暴れる中でとうとう入宮はうつ伏せの姿勢になり、瀬川に覆い被さられたまま、突き出した尻にスライヴが宛がわれる。
獣同然の惨めな格好だ。前方のシーツをガリガリと掻き毟りながら、いくぅいぐぅー、と繰り返す様は品性の欠片すらない。
『イキ癖をつける』
伊田が一日の初めに宣告した目的は、見事に達せられたと言えるだろう。
事実、入宮はこの土曜以来、明らかに陰核責めに弱くなった。
翌日の日曜には、畳の上で這う格好のまま、瀬川にアナル舐めを受けながら陰核を弄られる責めを受けたが、
その時に彼女が上げた声は、聞いているだけで変な気持ちになるようなものだった。
「おーおーおーおー、なんだこりゃ。ドロッドロじゃねぇか」
アナル舐めを中断した瀬川が秘裂の辺りをまさぐると、入宮のスレンダーな身体がぞくっと跳ねる。
この時の入宮は、煽られたにも関わらず後ろを睨むことをしなかった。
それどころか、顔を見られたくないという風に、肘を突いた両手で頭を挟み込んでいた。
アナル舐めの後、道具を使った肛門拡張が始まってからも様子がおかしいのは変わらない。
アナルパールやアナルディルドウを用いられると同時に陰核を刺激されると、即座に細い腰が震える。
真正面から顔を見られる格好のため、入宮も最初は睨むような瞳で凛としていた。
だが5分が経つ頃には、右手の甲で口を押さえ、視線を脇に逸らすようになる。
そしてそこから時が経つにつれ、表情が苦しそうなものに変わっていく。
眉が顰められ、横へ投げ出した視線が鋭さを増し、口元は手の甲を噛むような形になり。
そして最後には額にじっとりと汗を掻いたまま、瞼が固く閉じられてしまう。
基本的に表情が強張ったまま変わらないが、時折り、ぴくっ、ぴくっ、と口元が動いていた。
ごく短い一言。多分、『いく』と繰り返していたんだろうが、俺には真実は解らない。同じ場所にいる伊田や瀬川と違って。
※
月曜の朝になってもなお、入宮の様子はおかしいままだった。
睡眠が足りていないという事もある。
入宮の反抗心を削ぐためか、伊田と瀬川は入宮に充分な睡眠を与えない。
まったく眠らせない訳ではないが、眠る入宮には必ず嫌がらせが加えられた。
身体中を舐め回したり。乳首をクリップで挟み潰したり。鼻をフックで吊り上げられたり。逸物をしゃぶらされたり。
「いいかげんに、してよ………………!!」
心の底から迷惑そうにする入宮の態度も、瀬川達には興奮材料にしかならないらしい。
ただこの月曜に限っては、単なる睡眠不足とは雰囲気が違った。
寝惚けているのではなく、蕩けている、と表現すればいいのか。
「んっ!?」
キッチンの椅子に腰掛けた瞬間、彼女は小さく呻いて背筋を伸ばした。
そしてしばらく目の前を見つめ、困惑した表情で顔に手を当てる。
「あれ……何か、ふわふわする………………なんだろ、これ………………?」
そんな事を呟いている。
朝食の間もぼうっとし続けで、危うく手にした汁椀を落としそうな有様だった。
もはや恒例となった瀬川による貞操帯取り付けの際も、普段とは違う。
股座を濡れタオルで拭く、という時、んっ、という声の後に乾いた音がした。多分、入宮が瀬川の腕を掴んだ音だ。
「今日は、ほんとにやめて…………!!」
そんな事を口走りもする。入宮だって馬鹿じゃない。弱みを見せれば、瀬川を付け上がらせるだけだと理解しているだろうに。
結局入宮はこの日、腕を掴んだ罰と称して、貞操帯以上の恥を課せられる事となった。
通学途中は常にスカートを鞄で隠し、教室の中では常に脚を閉じ合わせ。
昼休みに旧校舎の屋上へ辿り着いて初めて、普通に歩けるようになる。
「ほんと、最悪……」
フェンスに寄りかかって頭を抱えながら、入宮は溜め息をついた。
事情を知っているだけに、何と声を掛けていいか悩む。
この日の入宮の太腿には、制服のスカートでかろうじて隠せる範囲に、びっしりと淫猥な言葉が書き連ねられている。
『ジジイに奪われる予定の処女マンコ』
『ユルユルの小便穴』
『ズル剥けのデカクリ。クリ逝きで失神経験有り』
『現在拡張中。アナルパール深さ24cm、アナルプラグ直径6cmまで入ります』
性器を指す矢印と共に、そうした言葉がピンク色の肌を覆い隠す。
クールなカリスマとして学年中から注目される入宮のこと、どれを読まれても一大事というものだ。
だが、フェンスに寄りかかる入宮の頬が赤い理由は、その羞恥ばかりでもないらしい。
「ねぇ、岡野。あたしのこと……褒めてよ。何でもいいからさ」
グラウンドからの風に黒髪を靡かせながら、入宮が呟いた。かける言葉を探していた俺は、思わずその横顔を見上げる。
「な、何だよ。どうしたんだ?」
妙な胸騒ぎと共にそう訊ねると、入宮はしばし黙り込んだ。そして、ふっと口元を緩める。
「冗談、冗談。」
そう呟いて、また遠くへ視線を投げる。明らかにおかしい。
「その、入宮…………」
居たたまれずにそう切り出しはするものの、続く言葉がわからない。
入宮は一瞬俺の方に視線を落とし、またフェンスの先に視線を戻す。
「…………ごめんね。なんか朝から、変な事ばっかり言ってる。今のも別に、深い意味とかないんだ。
ただ、岡野に励まされると、あたしすっごい元気出るからさ。ちょっと聞きたかっただけ」
その言葉が、俺の胸に刺さる。
つまりそれは、励まされないと無理なぐらいに参ってるって事じゃないのか。
「そんなに……やばいのか?」
俺は入宮を見上げた。多分苦い表情で。入宮は、またちらっと俺に視線を寄越した。
「どうかな……。精神的には、まだ大丈夫。あたしのままで居ようって気持ちは変わんないよ。
でも、身体の方がさ。なんか、変なんだ」
ローファーが踏みかえられ、入宮の身体が俺の方を向く。
フェンスに片手を掛けたその姿は、シルエットだけなら先月までの彼女と変わりない。
でも、何故だろう。雰囲気がまるで違う。どこか…………娼婦のような。
「ごめん、ちょっと吐き出させて」
入宮は憂いを帯びた瞳でそう前置きし、手を握り締めながら語り始めた。
土曜日にクリトリスを調教されたこと。
伊田達の責めには屈するかと頑張ったものの、無理だったこと。
快感が強すぎて、何度か失神したこと。
今も勃起状態が続いていて、歩いたり座ったりするたびにショーツに擦れて感じてしまうこと……。
「多分今も、その……濡れてる、と思う。それ知られたらまた、鬼の首取ったように淫乱だとか言われるんだよ」
毒を吐き出すようにそう告げてから、入宮は深呼吸を始めた。
制服のブレザーを上下させながら。気のせいかまた、胸が育ったような気もする。
「ふーーっ、よし、弱音終了っ! ごめん、愚痴に付きあわせちゃって!」
爽やかな笑みを浮かべ、パンと手を合わせる入宮。
少しは元気になったようだ。さすがにスポーツで結果を残してきただけあり、自分なりの気の持ち直し方があるらしい。
そしてその発散対象に選ばれた事が、素直に嬉しかった。
こんな事を言える立場にない事は重々承知だが、それでも俺は、入宮に笑顔でいてほしい。
「全然。キツくなったら、またいつでも言ってくれ」
俺はそう言って笑った。
頑張れ、頑張ってくれ――――心の中で、切実にそう叫びながら。
続く
アナル・スカトロ・NTR要素にご注意下さい
五時半ごろ、外で時間を潰していた伊田と瀬川が屋敷に戻ってきた。
乱暴に玄関の戸を開けて上がりこみ、勝手にテレビを点けた上で煙草をふかし始める。
完全に自分の家気取りだ。
「これから地下の清掃に入りますから、調教再開は6時からでお願いします」
俺がそう声を掛けても返事はなかった。伊田はソファで欠伸交じりに背中を掻き、瀬川はリビングのガラステーブルに足を乗せたままだ。
男と話すつもりがないのか、それともガキと思って舐めているのか。
調教師という人種には7人ほど出会ったが、ここまで傍若無人な連中は他にいない。
俺は苛立ち混じりに地下へ下り、扉を開け放った。途端に、むっとする匂いが漏れ出してくる。
しとどな汗に、愛液、精液……それらを分泌した中にどれだけの美少女がいたとしても、饐えた臭いが緩和される事はない。アイドルだろうが令嬢だろうが、臭いものはやはり臭い。この仕事を続けていると、その事実を痛感する。
手探りで電気を点けると、散らかった部屋の中が一望できた。
入口にほど近い場所にあるベッドは、シーツが見事なほどに乱れている。
一番皺がひどいのは中央左側。そこだけは乱れるどころか、シーツが握られた形のままで隆起している。
イラマチオを受けた入宮が、その未曾有の苦しみに耐えるべく必死で掴んでいた場所だ。
その場所から少し下部に視線を移すと、広範囲にシーツのごわつきが“見て取れた”。体液が染み込んだまま固まった時の特徴だ。毎日ベッドメイクをやっていると、シーツの色合いだけで触感が判ってしまう。
ごわつきの周りには色々な道具が散らばっていた。
ローションボトルに、ローター、3種類の太さのアナルディルドウ、ビー玉大のものが数珠繋ぎとなったアナルパール。
あの畜生共は、意識を失った入宮の初々しい肛門に、こんな物まで使ったのか。
そう思いながらよく見れば、アナルパールの先にはかすかに黄色い汚れが付着している。ベッドシーツを注視すれば、そこにも薄茶色いシミがある。執拗に肛門責めをされ過ぎて、宿便でも漏れたのだろうか。
入宮自身が気付いていなければいいが。そう考えた直後に、そんなはずはないと思い直す。
彼女は起きてすぐに、自分の状態に気付いただろう。
伊田の肩に担ぎ上げられていた右脚を下ろし、肛門へ入り込んだディルドウを抜き出した後で、ベッドの惨状を必ず見たはずだ。
その時の彼女の心境はどんなものだったろう。そして連中は、どこまで辱めれば気が済むんだ。
俺は怒りに任せて一気にシーツを取り替えた。
ベッドの上が整えば、次はその周りだ。
ベッド脇……昨日入宮が洋物AVさながらのイラマチオを受けていた場所を覗くと、やはりここも汚れていた。
床の上に、夥しい精液が広がったまま乾いている。そしてそれより一層下に、やはり乾燥した黄色い物が見える。
吐瀉物だ。それに気付いた瞬間、また胸が締め付けられる。
モニター内の映像では必死に耐えていたように見えたが、やはり入宮は相当吐いてしまっていたらしい。
それはそうだ、あんな目茶苦茶をやられて耐え切れるわけがない。
じゃあ、何だ。昨日見たイラマチオの終盤、剛直の抜き差しされる中で入宮の髪から垂れていた光る液体は、ほとんどが吐瀉物だったのか。
何とか耐えている。俺がそんな間の抜けた判断をしていたまさにその最中、入宮は地獄の苦しみの中で何度も嘔吐していたのか。すると、あの時瀬川が必死に嘔吐させようとあの手この手を使っていた、という推測もまるで見当違いということになる。
恐らくは、ベッドの脇から頭を垂らさせるようなイラマチオに移行してから程なくして、入宮は陥落……つまり『吐いた』。
しかし、その瞬間に勝ち誇った表情を浮かべたであろう瀬川の変化を、カメラの角度的にか俺の不注意からか見落としてしまい、かろうじて勝負が続いているなどという空想をしていた事になる。
どこまで愚かなんだ、俺は。
※
畳敷きのエリアからも道具を回収し、洗い場で洗浄していく。
調教師には、自らの使う道具は手入れも絶対に自分でやるという拘りを持つ人間も多いが、その点でも伊田と瀬川は異端だ。
仕事道具をローションや汚物に塗れさせたまま、平然と放置する。その消毒や洗浄、手入れを行うのはすべて俺だった。
すっかり慣れたはずの作業に、今日はやたらと動揺してしまう。
これが今朝まで、入宮の肛門に入り込んでいたんだ。
これが昨日、入宮の膣を拡げていたんだ。
道具を手に取るたびにそんな事を考えては、頭を振って邪な考えを振り払う。
偽善でもいい。初恋の相手だけは、能動的に穢すことはしたくなかった。
地下牢を出てリビングに向かうにつれ、何かの音が聴こえ始める。
ぬちゃっ、にちゃっ。そういう粘った水音のようなものだ。
歩みを速めながら飛び込むようにしてリビングを覗けば、昨日とよく似た光景が繰り広げられていた。
ソファに腰掛けた制服姿の入宮が、醜悪な男二人に纏いつかれている。
ただし昨日とは逆で、瀬川は上半身、伊田は下半身だ。
違っている場所は他にもある。例えば昨日夏服だった入宮が今日は冬服であること。
校則通りリボンまで着けた固い格好だけに、シャツをたくし上げて乳房を揉まれる、という状況が昨日以上に背徳的だった。
下半身の状況もやや異なる。
昨日は大きく脚を開いたまま、ショーツの中に指を潜り込ませる責めだった。
それが今日は、開脚の度合いこそ同じでありながら、ショーツが左腿に絡みつくようにして垂れている。
そして完全に曝け出された秘部には、容赦なく伊田の5本指が入り込んでいた。
小指と薬指を肛門に潜り込ませ、中指と人差し指で膣の浅い部分を捉え、親指を陰核に宛がっての三所責め。
瀬川が舌での嬲りにおいて抜きん出ているように、、伊田もまた細やかな指遣いに長けた調教師だ。
10分か、20分か。たかだかその程度の責めで、入宮はもう濡れていることが音で判った。
伊田の中指と薬指が膣内をかき回すたび、チュクッチュクッチュクッチュクッと、ひどく水気のある音が立つ。
ひょっとして、もう何度か潮を噴いているのでは。そう思えるほどの水っぽさだ。
下半身がそれだけの状態にも関わらず、喘ぎは一切聴こえない。理由は入宮の顔を見ればわかる。
「くひひっ。これで2日目だが、相変わらず現役女子高生のおクチは甘くてうんめぇなあ?
高校で他の女子高生の股ぐら通った空気を腹いっぱい吸って、未熟なガキ特有の甘さが戻った感じだぜ」
吐き気を催すような言葉と共に、瀬川は延々と入宮の口を貪っていた。唾液まみれ、涎まみれで。本当に獣のような男だ。
その獣に執拗なキスを強いられる入宮は、まともに息ができていないように見えた。
伊田の指でまた絶頂させられたのか、細い身体がびくりと痙攣する。だが声は聴こえない。ちゅうー、ちゅるっ、という貪りの音に塗り潰されている。
入宮がかろうじて酸素を吸えるのは、瀬川自身も息継ぎをする数秒のみ。
2,3秒というごく短い間だけ、はぁーっはーあと湯気がでそうなほどに熱い喘ぎを発し、またすぐに唇を塞がれる。
「んんっ、いや…………ってばっ…………!!」
入宮は、口づけに明らかな抵抗を示していた。瀬川と唇が触れ合おうとする瞬間、大きく頭を振って阻止を試みる。
だが、抵抗を続けるには相応の体力が必要だ。そして今の彼女に、それはもう残っていないらしい。
「…………は、はっ………ぁ、はぁっ…………」
苦しげな喘ぎの中で、ある時ついに否定の首振りが止まる。その瞬間、瀬川がすかさず唇を奪う。
呼吸を遮られた直後だけは、むぐぅーっという声が上がるものの、その声すらもやがて瀬川の口で封じられてしまう。
汚辱と快感。伊田と瀬川は、それを徹底的に入宮に刷り込むつもりのようだった。
普段は地下という隔離空間でのみ行われる調教が、入宮に限っては日常空間であるリビングから始まる。
それは彼女の反抗心が強いことの証明なのだろうか。あの伊田と瀬川がスタイルを変えざるを得ないほどの難敵という事だろうか。
どうかそうであってほしい。彼女だけは最後まで、彼女のままでいてほしい。思わずそう願ってしまう。
それが虚しい願いである事は、奴らの調教を見続けてきた俺が、一番解っているはずなのに。
※
ヤクザという人種は、獲物についたほんの小さな傷口に吸い付き、肉を食い破りながら生血を吸い尽くすヒルのような生物だ。
だとすれば、女の調教こそまさに最もヤクザらしい所業といえるだろう。
奴らは相手の弱い責めを見つければ、それだけを執拗に繰り返す。親父がすぐに飽きると言っていたのはまさにこの事だ。
AVならば長くても数十分で責めが切り替わるが、ヤクザの調教では女が音を上げやすい責めを、何時間でも、何日でも繰り返す事がままある。
3時に見ても5時に見ても10時に見ても同じ光景が続いていたら、監視も嫌になるというものだ。
入宮への調教にも、やはりその兆候が見える。
丸裸に剥かれた入宮にまず施されたのは、瀬川によるアナル舐めだ。
主に電極責めを行うための特殊なマッサージチェアに深く掛け、命じられるままMの字に脚を開く入宮。
するとその足元に瀬川が跪き、肛門を両の親指で開く。
「んっ! …………まさかまた、お尻舐めるの? 可笑しい。これじゃまるで、あんたの方が奴隷みたい」
入宮は瀬川を睨み下ろして強がるが、瀬川の薄ら笑みは消えない。
「ほぉ、この俺を奴隷扱いたぁ言うじゃねぇか。うし、なら一つ下克上ゴッコとしゃれ込もうぜ。
俺が奴隷なら、テメェは女王だ。まさか女王様ともあろうお方が、奴隷に尻の穴舐められて感じるなんて事ァねぇよなぁ。
昨日と同じくグイグイ行くぜ。しっかり声抑えろや、女王様?」
そう前置きしつつ、瀬川は桜色の肛門にむしゃぶりつく。
「…………っ!!」
入宮は怨みのこもった視線で瀬川を睨みつつ、唇を引き結んで耐え始めた。
アナル舐めという責めは、効果はともかく見た目の変化に乏しい。
モニター越しに目を凝らせば様々な情報が存在するものの、固唾を呑んで見守るようなものではない。
そしてその変化の乏しい映像は、瀬川の性格からしてあと数十分は続くはずだ。
俺はそう判断してモニターを離れ、屋敷の管理人としての仕事に取り掛かる。
まずは洗い物だ。
地下室の清掃の際に回収した洗濯籠を持って、洗い場へ。
洗濯籠には入宮と男二人の脱いだ服が入っている。何を置いてもまずは、入宮と男二人の服を分けていく。
間違っても女の子の服を、野生動物のような匂いを放つ連中の物と一緒に洗うわけにはいかない。
夏用制服の上下と、靴下、Tシャツ…………そして、ショーツ。
赤いレース柄の入った、桜色の下着。間違いなく昨日入宮が穿いていたものだ。
鼓動が早まる。クリトリスを嬲られた事で散々愛液に塗れ、肌色を透けさせていた光景が脳裏に浮かぶ。
恐る恐る裏返してみると、やはりクロッチ部分に白くパリパリとした物がこびり付いていた。
乾いた愛液だろう。中学の頃には寝ても覚めても想い続けていた彼女の、愛液。
どんな匂いがするんだろう。
ショーツを握りしめたまま、生唾を呑み込む。手が震え、鼻先にクロッチ部分を近づけようと動く。
「…………やめろッッ!!」
しかし、すんでのところで床を殴りつけて耐えた。いくら思春期の衝動とはいえ、これじゃ伊田と瀬川を笑えない。
俺は洗面所で顔を洗い、頭を切り替えて黙々と洗濯を進めた。一段落して時計を見ると、まだ20分しか経っていない。
あれから20分。地下では今、何が行われているんだろう。さすがにまだアナル舐めの最中か。
入宮は今も肛門を舐めしゃぶられ、その汚辱にじっと耐えている事だろう。
そう考えながら親父の部屋のドアに手を掛けた、その瞬間。
『だらしねぇなあ女王様よ。声が出まくってんじゃねぇか』
瀬川の下卑た声が聴こえてくる。俺は思わず硬直した。
馬鹿な。まだ、たったの20分だ。いくら瀬川のアナル舐めが巧みでも、あの我慢強い入宮がこんなに早く声を漏らす筈がない。
そう自分に言い聞かせながら、俺は部屋の扉を開く。
喘ぎが、耳に飛び込んできた。
あっ、ああっ、という女の声。この屋敷に女は入宮一人。ゆえにその声は、入宮以外のものではありえない。
映像に目をやると、その推理は強烈に裏付けられた。
入宮の引き締まった太腿を浅黒い手が掴み、その合間に顔が埋められている。
顔がかすかに蠢く間、入宮は歯を食い縛って耐えていた。日常的に筋トレをする人間特有の、強く我慢ができそうな歯の噛み方だ。
だが、足の合間の顔が『舌を捻じ込む』動きを見せた途端、閉じ合わされた白い歯は簡単に開いてしまう。
「あぁあ…………ああああぁ………………!!」
喘ぐ時の入宮の顔は悔しそうだ。だがその声色は、“たまらない”という本音を訴えていた。
それからさらに10分程が経った頃、ようやく瀬川は肛門から口を離す。
「今日のアナルの味も最高だったぜ、嬢ちゃんよ。おまけに昨日より充血が早ぇし、ヒクつきもすげぇ。すっかり俺の舌に慣れちまったみてぇだな」
瀬川は言葉責めを交えながら、両の親指で肛門を左右に押し開く。
唾液でぬらぬらと濡れ光り、かすかに口を開いた肛門が楕円形に伸びていく。確かに昨日よりも伸びがいい。
入宮はぐったりとしていた。
ようやくアナル舐めから開放され、椅子に後頭部を預けてはぁはぁと喘いでいる。白い喉が妙に色っぽい。
情のある人間ならそれを見て小休止を取る所だが、歪みきったサディストである瀬川達は逆に燃え上がったようだ。
「さて。前戯はここまでだ」
瀬川はそう言って立ち上がった。
「ぜん、ぎ…………?」
瀬川の言葉を繰り返す入宮の声には、信じられない、という色が見える。
入宮は今のアナル舐めで、何度も達したんだろう。だから息を荒げている。それを前戯と断じられては、狼狽するのも当然だ。
「そうだ。瀬川の舌ばかりではつまらんだろう。これからは、こういう道具で楽しませてやる」
伊田はそう言って入宮の注意を引きつつ、鞄から道具を取り出しては床に並べていく。
長さ、太さ、材質、凹凸のそれぞれ異なる、計32種類のアナルディルドウ。
使い込まれて黒いゴム部分が波打つようなアナルバルーン。
鳥のクチバシに似た銀色の肛門鏡。
大小様々な玉が数珠繋ぎになったアナルパール。
卵形、あるいは細長い楕円形のカラフルなローター。
スライヴと呼ばれる強力な電気マッサージ器。
さらにはボールギャグにスパイダーギャグ、ノーズフック、ラバーマスクに、アームバインダー。
「……………………っ!!!!」
責め具の数が増えるにつれ、入宮の表情は青ざめていく。スポーツ一筋に生きてきた彼女からすれば、初めて見る物ばかりだろう。
伊田はくっくっと笑った。
「そう固くなるな、何もこの全てを使おうという訳ではない。今のおまえのアヌスには、到底入らんだろうからな。
だが、近い将来には迎え入れる事になる道具達だ。顔見せしておいて損はあるまい」
そう言いながら、伊田は黒いベルト状のものを拾い上げる。
手足を固定する為の、拘束帯と呼ばれる道具だ。
「さて。これから本格的な調教に入るわけだが、その前にこれで、太腿から下を固定させて貰おうか。
これからやる調教は少々刺激が強くてな。大抵の奴隷が暴れるのだ」
伊田はわざとらしく言い聞かせながら、瀬川と入れ替わる形で入宮の足元に屈みこむ。
そしてさも愛おしそうに桜色の太腿を撫ぜてから、拘束帯を巻きに掛かった。
「……今まで一体何人の子を、こうやって辱めてきたの? 相当恨み買ってるよ、あんた達。もう地獄にも行けないんじゃない?」
入宮の渾身の毒舌を受けてもなお、伊田の笑みは消えない。
「なるほど。確かに私達の末路としては、地獄ですら生ぬるいな。何しろ私達は、地獄の先を知りすぎた。
おまえにも教えてやる。自我の崩壊や、脳を焼き切る快楽……そういった苦しみの果てに辿り着く『恭順』こそ、女にとっての至福だと」
もはや宗教じみた持論を述べつつ、伊田の手は手際よく拘束を進めていく。
膝を折った状態で腿と脹脛を密着させ、腿の半ば辺りをぐるりと帯で巻いてからベルトで締める。まずは右脚、次に左脚。
さらにそれらの帯と鎖で繋がった手枷を入宮の両手首に嵌めれば、拘束の完成だ。
「くくっ。いいカッコだなぁおい、まるで潰れたカエルだぜ。マンコもケツの穴も丸見えで惨めこの上ねぇ。
このザマをテメェの知り合いにも見せてぇもんだな。お前が振った男やら、バスケ部の可愛い後輩やらによォ」
瀬川の悪意をたっぷり込めた言葉責めに、入宮の表情が険しくなる。
「さて。では、楽しませて貰うとするか」
そう言ってアナルディルドウを拾い上げる伊田の顔には、対照的に満面の笑みが浮かんでいた。
このまま、映像を見続けていいのか。俺は迷った。
あの入宮が裸を晒し、禁忌である肛門性感を目覚めさせられていく。
それに興奮するのは事実だ。実際昨日はモニターの映像を見守りながら、痛いぐらいに勃起していた。
だが、同時に胸が苦しい。伊田と瀬川に初恋の相手が堕とされていくのを見るのはつらい。
俺はその葛藤と戦った。だが、結局は悩むまでもない。
たとえ映像を見なくても、彼女はいま何をされているんだろうと常に考えてしまう。ならばいっそ、事実を把握できたほうがマシだった。
「どうだ、この味は。覚えているか? 昨日の晩、眠りこけるおまえにたっぷりと御馳走してやったのだがな」
桜色の肛門にアナルディルドウを抜き差ししつつ、伊田が囁く。
直径は俺の中指より少し太く、螺旋型にソフトシリコンの溝が彫られている。
菊輪を刺激する事を目的とするなら、かなり効果的と思える一本だ。
「やっぱり。退屈で、このまま寝ちゃいそう」
入宮は冷たい目で伊田を見下ろして挑発する。
強がりであることは明らかだ。ディルドウが挿入され、引き抜かれるたびに、腰がぴくりと反応する。
加えて彼女は今、アナル責めと同時にクリトリスにローターを宛がわれてもいた。
陰核と肛門の同時責め。これは本格的にアナル調教を始めた時、伊田がいつも使う手だ。
複数箇所から同時に快楽を受けると、脳内の処理が追いつかず、一箇所のみを責めるよりも明らかに堕ちが早いらしい。
となれば入宮も、言葉通り平然としていられる筈がなかった。
「なるほど、このサイズはもう余裕か。ではお言葉に甘えて、もう一段階進めさせてもらうとしよう」
伊田はほくそ笑みながらアナルディルドウを床に置き、その近くの一本を拾い上げる。
アナルパール……昨日ベッドで使われていたビー玉大の物よりも、さらに一回り太さのある代物だ。
「どうだ、この太さは。次はコイツをくれてやろう」
伊田は責め具を入宮に見せつけながら、たっぷりとローションを垂らしていく。そして入宮の尻肉を掴み、先端を肛門に宛がう。
先ほどの責めでローションの入り込んでいる肛門が、ひくりと反応した。
「…………っ!!」
ずぐり、とアナルパールが入りこんだ瞬間、入宮は顔を横向け、歯を食い縛って声を堪えていた。
「ほう、悠々と入るな。もっと肛門を締めろ。……もっとだ!」
伊田は低い声で命じ、尻肉を平手で打ち据えながらさらに命じる。
桜色の肛門はきゅ、きゅっと窄まり、アナルパールの玉へやや膨らんだ菊輪が吸い付く状態になった。
その瞬間、アナルパールが一気に引き抜かれる。
「っっ!!」
入宮は一瞬口を開きかけたが、すぐに歯を噛みあわせて持ち直した。
「ふむ、流石に我慢強いな」
伊田が感心したように言う。だが、それも最初に限った話だ。二度目にアナルパールが潜り込んだ時には、陰核責めも再開された。
「では、抜くぞ」
そう宣告された時点で、入宮は耐える準備を整えただろう。だがその瞬間、ローターに陰核を舐められて守りが崩れる。
その最中にアナルパールの引き抜きを受ければ、声は抑えきれない。
「ああああ…………っ!!!」
瀬川に舌入れをされた時と同じ……あるいはそれ以上に甘たるい声が吐き出される。
自分の出した声に気付いたのだろう。すぐに入宮ははっとした表情で口を閉じるが、すでに遅い。
「良ーい声だ。血の巡りがいいせいか、おまえは本当にアヌスの感度がいい。だからこそ、人並み以上に感じるだろう。
普通であればせいぜい数ヶ月に一度しか得られん快便の感覚……今のはそれだ。
まずはその感覚を、徹底的に身体に覚えこませてやる。今日も、明日も、その次もだ」
その言葉と共に、肉厚な手がアナルパールの柄を握り直した。
※
改めて観れば、伊田の責めは実に巧みだ。
一見するとただ陰核にローターを這わせているだけだが、ローターを押し付ける強さや角度を微妙に変え、刺激に慣れることなく絶頂に追い込んでいく。
そしてまさに陰核で絶頂を迎えるというその瞬間、アナルパールを引きずり出す。
こういう玄人技を使われては、性的に未熟な人間は耐えられない。
「あああっ……!!」
何十回と抜き差しを経た今でも入宮から声が上がるのは、そういう理屈からだろう。
「色々と奴隷を調教してきたが、おまえほど思惑通りに絶頂する豚は初めてだ。口の減らない娘らしからぬ、素直なカラダだ」
伊田はそう言いながら、右手でゆっくりとアナルパールを引き抜いていく。
左手にはローションボトルを握っているのだから、本来であればローションを追加して責めを続行するつもりだったのだろう。
だが、アナルパールが完全に穴から抜け出た瞬間、伊田が動きを止める。
「…………おや」
奴はそう言って、ゆっくりとアナルパールを掲げてみせた。入宮の視界へ入るように。
「何か付いているな。何だこれは?」
入宮の顔がゆっくりと起き上がり、伊田の手を見やる。そして、大きく眼を見開いた。
「あっ!!」
彼女の澄んだ虹彩は、はっきりと映し出した事だろう。銀色をしたアナルパールの先端に、汚物が纏いついている事に。
「昨日あれだけ洗浄してやったというのに……下品な豚だ」
「…………っ!! あ、当たり前でしょ。あ、あんた達が弄くってるのは、そ、そういう、場所なんだから。
あたしは最初っから、そんな所やだって言った。それを無理矢理したのは…………!!」
伊田の詰りに、入宮は泣くような震え声で返す。だがそうして弱みを見せたが最後、調教師はさらに攻め込んでくる。
「しゃあねぇ。なら、改めて綺麗にするしかねぇな」
映像の端に、瀬川の鶏ガラの様な足が映る。その足がさらに一歩進めば、奴の手にした物も映りこんだ。
洗面器、ガラス瓶、そして浣腸器。
奴は洗面器を入宮の座る椅子の傍に置き、怯えるような視線に見守られながらガラス瓶の蓋を開ける。
「ほう、いきなり酢か」
伊田が鼻をヒクつかせて言う。
酢浣腸。その言葉に、思わず冷や汗が出る。過去の調教映像でも、何度もそれを目にした事がある。
「お、お酢……? そ、そんなのお尻に入れるなんて、頭おかしいんじゃないのあんた!!」
入宮は不甲斐ない後輩を叱咤する時以上の声量で怒鳴る。
だが椅子に深く腰掛けたまま、大股開きで腿を拘束された女子高生が何を叫ぼうが、大の男の脅威にはなりえない。ただ、玩具にしか。
「ああ、うるせぇうるせぇ。その声量、後に取っとけや。どうせクソ生意気なテメェも、こいつにゃびーびー泣き喚くんだからよ」
洗面器に張られた酢の中で、浣腸器の空気を追い出しながら瀬川が言う。
「え……?」
入宮の顔が強張った。
「酢ってなぁ、昨日のグリセリンとはまた違う刺激なのよ。入れたその瞬間からカーッと来る類でな、中々我慢ができねぇ。2週間グリセリンに慣らしたガキでも、こいつをぶち込んだ瞬間から騒ぎ出して、こんなの我慢ができませんってボロボロ涙を溢したもんだ。
負債持ちのテメェにゃ、いきなりコイツで泣いて貰うぜ。なーに3.5倍に薄めてやってんだ、腸は荒れねぇよ。
今のテメェじゃ、死ぬほど辛ぇがな」
瀬川は浣腸器を引き上げ、雫を垂らしながら桜色の肛門に宛がった。
「つめたっ……!」
ガラスで出来た浣腸器の先端が入り込んだ瞬間、入宮が小さく呻く。
「ひひ、冷たいのはこっからよ。おら」
瀬川は浣腸器の尻部分を押し込むと、シリンダーに詰まった黄色い液体が肛門の中に追いやられていく。
「あ……ぁ、はあ、ぐうっ!!!」
酢が腸を灼くのか、入宮から小さな呻きが漏れる。
瀬川はそれを楽しみつつ、じっくりと時間を掛けて一本目を空にし、再び洗面器の中身を吸い上げ始めた。
「さぁ、2杯目だ。酢は体にいいからなぁ。育ち盛りのスポーツ少女にゃあ、たーっぷりと飲ませてやんねぇとな」
そう言って注入する瀬川を、入宮はなおも睨み据えている。早くも額に汗を掻きながら。
「なに、教育者気取り? だったら馬鹿丸出し。嫌がってる相手に無理矢理飲ませるのは、虐待っていうんだよ」
入宮の嫌味も、妙なスイッチの入った瀬川には通じない。
「いいや、躾さ。テメェは俺に躾けられるんだ。下さい下さいっつってシッポ振るような忠犬にな」
さらに3本目を注入した後、床からアナルプラグを摘み上げて肛門へとねじり込む。
「はぐう゛っ!!」
浣腸のつらさか、腸内の圧か、それともプラグの太さゆえか。入宮からかなり低い呻きが漏れた。
伊田と瀬川がゆっくりと立ち上がり、惨めな姿となった入宮を見下ろす。
入宮は睨み上げようとするが、その瞬間に下腹が切なく鳴り、固く目を瞑りながら歯を食い縛る。
「さて、我慢強さを見せてもらおうか豚。いや、今日のテメェは女王気取りだったな。
早くも脂汗塗れだが……日に二度も無様を晒すなよ、女王様?」
瀬川はそう言いながら、余裕たっぷりに腕を組んだ。
※
「どうした、いつ出しても構わんぞ。そのためにビニールシートを敷いているんだからな」
伊田が、入宮の陰核にローターを宛がいながら囁いた。
「ふぐっ……ぐっ、くふっぅ…………ッく…………!!」
入宮は顔中にじっとりと脂汗を掻きながら、歯を食い縛って耐えていた。
その腹部からは、腹を下した時特有の、遠雷のような音が絶え間なく続いている。
しかしどれだけ暴れたくとも、拘束帯でがっちりと両腿を固めていては姿勢を変える事ができない。
伊田はそうした入宮の苦悶を楽しみながら、なおも陰核をローターで舐め続けていた。
伊田だけではない。瀬川もまた醜悪な笑みを浮かべながら、入念な乳房責めを繰り返している。
屹立しきった乳首が挟み潰される様には、今にも母乳が噴出しそうな程のインパクトがあった。
「あうぐぅううっ…………!!」
気持ちいいのに苦しい。もう我慢ができない。そういう本音を眉とへの字の唇に表しながら、入宮は身を震わせる。
狂ったようにひくつく肛門のアナルプラグは、昨日のバルーン栓と違ってひり出せない代物ではない。
むしろ入宮が我慢を諦めれば、今すぐにでも弾け飛ぶだろう。
その栓としての頼りなさは、プラグの周囲から次々と汚液が吹きだし、入宮の理想的な尻肉の合間を伝っていく事実から見て取れる。
ぐぉるるるる、とまた一際大きな腹の鳴りが響き渡った。
「へへへ、またすげぇ音させてやがる、完全に下痢便だぜこの音ァ。……にしても、不思議なもんだよなぁ。
汗まみれとはいえまだまだ清楚って感じのテメェが、その薄皮一枚下じゃあ、下痢便に腸をかき回されてんだからよ!」
瀬川が詰りながら乳首を捻り上げた瞬間、入宮の細身がガクガクと痙攣する。
そしてその痙攣は、直前までと違い、しばらくすれば収まるものではなかった。
「……お…………おね、がい……もう、我慢できなっ…………とっトイレに、トイレにいかせてっっ!!」
細目を開き、入宮がついに懇願を口にする。浣腸から10分あまり、本当に限界なんだろう。
だが伊田と瀬川は、あくまで嘲笑混じりに見下ろすだけだ。
「駄目だ。そのままここで、惨めったらしく排便しろ」
どうあっても公然での排泄を強いるつもりらしい。調教主の意向には逆らえない、それを身に染みて理解させるためだろう。
目の前で排尿と排便を繰り返させる。下劣極まりない行為だが、実際、人間のプライドを折るという意味ではこの上なく効果的だ。
去年の今頃に伊田と瀬川が陥落させた『奴隷』は、ヤクザ6人を半殺しにして調教を受ける羽目になったレディースだった。
狂っているのかと思えるほど気が強く、常に大声で恫喝していて、伊田の丸一日かけたGスポット責めで都合70回以上潮を噴いても、
まだしゃがれ声で悪態をつき続けているような有様だった。
さすがに伊田達もその声量に辟易し、途中からは常にボールギャグを噛まされていたものだ。
その彼女を壊したのも、強制排泄だった。入宮が今座っている椅子に前後逆で縛り付けられ、突き出した肛門に様々な浣腸が施された。
イチジクを100本用いたり、、イルリガートルでゆっくりと3リットルを注いだり、、洗面器に作った薬液をエネマシリンジで送り込んだり、
浣腸器でコーヒーを、牛乳を、トマトジュースを注ぎ込んだり……。
多種多様な浣腸が繰り返されたが、一点だけ共通する事があった。排便するその瞬間には、必ず肛門に指が入っていたことだ。
まるで摘便のように、指で肛門内を蹂躙されながら便を排出する。
これを何時間か続けた末、ようやくボールギャグが取り去られた時には、あのレディースの顔が別人のように変わっていた。
幼児のように泣きじゃくりながら、堪忍してください、もうお尻に触れないでください、と哀願し続けるばかりだった。
人前で排泄を晒すっていうのはそういう事だ。
伊田と瀬川は、その威力をよく知っている。そして奴隷が反抗的となれば、容赦なくやるだろう。多分そのうち、入宮にも。
「もうぉ…………もぉ、本当にだめっ…………ぁ、ふぁああ゛あ゛っ…………!!!」
いよいよ余裕のない様子で痙攣しはじめる入宮を見下ろしながら、伊田は陰核の裏筋にローターを触れさせる。駄目押しだ。
「だめっ、だめだめ、あああああッッだッめぇぇえ゛ぇ゛ーーーーっっ!!!!!」
入宮は歯をむき出しにする必死の表情で叫んだ。その直後、ぶぼっという音と共にアナルプラグが吹き飛んでいく。
決壊が始まった。入宮にとって絶望的な、調教師二人にとっては垂涎の排泄が。
ざばばばばば、と音を立てて噴出液がビニールシートに広がっていく。
「おほーっ、酸っぺぇ匂いだ。おいクソガキ、人様の屋敷に何てぇ臭い充満させやがんだ、ええオラッ!」
瀬川の笑いつつの怒声が響き渡る。
何が人様の屋敷だ、俺の家だぞ。許す許さないを決めるのは俺だ。俺は彼女を責めない、責めるもんか。
そう思いながら入宮に視線を戻すと、狂ったように黒髪を振り乱す彼女の姿があった。これもまた、見たことのない姿かもしれない。
「いやあああっやめてぇえやめてぇーーーっ、おねがいっみないでーーーーっっっおねがぁぁあぁーーーーいっっっ!!!!!」
裏声というんだろうか。方言じみても聴こえる出鱈目な抑揚で、入宮は絶叫し続けていた。
物凄い声だ。女子バスケの県代表決定戦で、キャプテンとして『これまでの成果見せるよっ!!』と叫んでいた時には、大声でも澄んでいたのに。
「ぎはははっ、ひっでぇザマだぜ。これが本当にあの、見るだけでおっ勃ちそうだったバスケ部キャプテン様かよ!?」
瀬川の声はさらに大きさを増す。伊田も歯を剥き出しにして笑っている。
美しい物を崩壊させ、在りし日の姿を重ねて倒錯感に浸る。そういうアブノーマル性に浸っているんだろう。
勝手にすればいい。入宮さえ……あの入宮さえ、ターゲットにしないのであれば。
「…………おーおー、またすげぇ飛ばしたもんだなぁ。さすがは陸上とバスケで鍛えた下半身だ」
地下室の壁際にまで飛んだ汚液を見ながら、瀬川が嘲った。
「どうだ。大嫌いな俺らに見られながら、惨めったらしくクソした感想は?
やめてやめてって喚いてた割にゃあ、えらく長ぇことブリブリブリブリとひり出しまくってたよな。
正直に言えや嬢ちゃん。浸ってたんだろ? 俺らに見られて惨めにクソ漏らすのが気持ちよかったんだろ?」
瀬川は聞き逃せないようはっきりとした口調で、入宮に詰りの言葉を吹き込む。
入宮は正面が向けないのか、俯いたままで歯軋りの音を立てた。
「あたしが……したんじゃない。あんた達が、普通にさせなかった…………あんなの、我慢できるわけ、なかった…………」
ボソボソとそう呟いている。正論だ。だが調教師が、『奴隷』の正論に付き合うことはない。
「さて、んじゃあ恥の掻きついでだ。もっと惨めな姿を晒してもらうとしようか。ちっと待ってろや」
瀬川はそう言って映像から姿を消す。
不思議に思って親父の部屋を出て屋敷を探すと、キッチンに瀬川の姿があった。
冷蔵庫から何かを取り出し、ボウルに湯を注いでいる。
「あの、何か手伝いましょうか」
調教師のサポートを任されている立場上、そう声を掛けざるを得ない。しかし、いつもの如く返事はない。
近づいて手元を見ると、ボウルの湯に山盛りの玉蒟蒻が浸されていた。
それを見た瞬間、その用途がわかってしまう。これを肛門に入れるんだ。適度な質量と弾力を持つこれを直腸に詰め、排泄させる。
そうした擬似排便を繰り返し強いることで、排泄の快感を目覚めさせるつもりらしい。
「チッ」
俺の姿が視界に入った瞬間、瀬川は露骨に舌打ちする。相変わらず目は合わせないが、歓迎されている風ではない。
そして湯がある程度冷めた頃、水滴を撒き散らしながら乱雑にボウルの水を切る。
――クソガキが
ボウルを手にキッチンを後にする瞬間、奴はボソリと呟いた。
何なんだ、何がそんなに不満なんだ。確かに若輩も甚だしいが、一応は舎弟頭の板間さん直々に屋敷を任された身だ。
サポートの仕事だって手を抜いた事はないし、少なくとも表面上は先生と呼んで顔を立てている。それで何故、目の敵にされるんだ。
まさか、若さに嫉妬しているのか?
入宮や、その他同年代の女子と恋仲になれる可能性のある若さが嫉ましいのか?
まさかそんな、大人気ない。そうは思うが、女子中高生に限って異様なまでの執着を見せる奴だ、有り得なくもない。
あんな奴が今まさに入宮に近づいていっているなんて、気が狂いそうだ。
でもだからといって、俺に何ができるんだろう。
ない。『クソガキ』にできる事なんてない。親父の部屋に戻り、惚れた女が穢されていくのを見る以外には。
※
瀬川が手にしたボウルの中身に見上げ、映像内の入宮が訝しげに眉を顰める。
そう、普通は解らない。ボウル一杯に盛った、玉蒟蒻の用途など。
「そんなの、生じゃきついよ」
ボウルを手に屈みこむ瀬川に対して、入宮は戸惑いながら続けた。
その純朴さがひどく哀れだ。彼女は玉蒟蒻を、与えられる食事だと思ってしまっているらしい。
いや、ある意味で彼女はそれを“食べさせられる”。まさに腹がはち切れそうになるほど、山のように。
「安心しろ、食べやすくしてやる」
瀬川はそう言って、玉蒟蒻の山にローションをぶちまけた。そしてそれを山全体に塗り拡げた後、一粒を拾い上げる。
与える先は、不気味そうに肩を縮こめる入宮の口じゃない。その口から続く先の出口……直腸だ。
「えっ、な、何してるの!? まさかっ!!」
ようやく事情を察した時にはもう遅い。玉蒟蒻の一つ目は、浣腸で口を開いた肛門内へつるりと飲み込まれてしまう。
「い、いやああっ、何これっ、やだっ!!!」
入宮は半狂乱だ。無理もない。これまで彼女の肛門が受け入れてきたのは、舌と細い棒だけ。
対して今度は、玉蒟蒻という丸みを帯びた異物だ。固形便を想起させるその汚辱感は、これまでとは比にならないはずだった。
嫌がる入宮をよそに、瀬川はひとつ、またひとつと玉蒟蒻を拾い上げては、肛門へと咥え込ませていく。
時間が経って、良い具合に人肌まで冷めているだろう異物を。
「やめて、待って…………くるしい………………」
10個目を押し込もうとしたところで、入宮が音を上げた。我慢した方ではあるが、瀬川達に容赦する気配はない。
直腸が膨らみきるまで異物を詰め込み、我慢させ、一気に排泄させる。そうして排便の快感を教え込むのが目的だろう。
「我慢しろ」
瀬川は淡々とそう命じながら、肛門内へ玉蒟蒻を強く押し込んでいく。明らかに最初より入りづらくなっているようだが、力技で押し込む。
「おら、入るじゃねぇか。直腸の入口に溜まっていただけよ。今奥へ崩れたからな、まだまだ行けるぜ」
瀬川の声がそう告げる。
「やめて…………く、苦しいってばっ!!」
額に脂汗を滲ませながら叫ぶ入宮。未知の苦痛は耐え難いのか、物凄い声量だ。
だがその苦悶の声を耳にしても、瀬川と伊田は笑みを浮かべるばかりだ。
「まだまだあるんだ。我慢しろ」
ボウルに盛った玉蒟蒻はあと半分以上も残っている。当然責めの手は緩まず、より強引に肛門へ玉蒟蒻を押し込んでいく。
だが、相当に腹圧が高まってきたのだろう。12個目は、瀬川が力を込めた瞬間、肛門と親指の間から弾け飛んでしまう。
顔を覗かせた入宮の肛門は、親指がそのまま入りそうなほど口を開いていた。
「おーおー、中で灰色がひしめき合ってんぜ。どうやら12個で、ひとまずの限界らしいな。
もっとも、最初からいきなり25個全部呑み込めるたぁ思ってねぇがよ」
「うむ。呑み込めない理由は容量ではなく、あくまで異物に慣れていないがゆえの力みだ。
力みをなくすには、目的とする行為を繰り返させて慣らすのが一番いい。
今回の場合、限界まで目一杯に玉蒟蒻を呑み込ませ、ひり出させることを繰り返せば、呑み込める数は増えていくはずだ」
「ンな事ァわぁってるっつーの。任せろや」
伊田の解説に苛立ちを露わにしつつ、瀬川は肛門をつつきはじめた。
「まだ出すんじゃねぇぞ」
今にも玉蒟蒻の飛び出しそうな肛門を左手親指で押さえながら、瀬川は入宮の下腹を揉みしだく。
蠕動運動を促すためだ。腸のうねりに伴って、今にも出口から噴出そうとする蒟蒻の群が崩れ、圧が減る。
その後、瀬川はローターを手に取った。宛がう先は勿論クリトリスだ。
「んぐうっ!!」
振動がクリトリスの頭を舐めた瞬間、入宮からいかにも苦しそうな声が漏れる。
さらにローターで円を描くようにすると、腰がピクピクと動き出す。
「なんだお前、感じてるのか? 玉蒟蒻を腸詰めされてよ」
瀬川が煽ると、入宮は唇を噛みしめる。
「……こんな事ばっかりしてると、いつか罰が当たるよ」
恨みのこもった入宮の言葉も、けだもの連中には甘い囁きと変わらないのだろう。
それからしばらく瀬川は、親指で肛門を押さえながらクリトリスを刺激し続けた。
2度か3度は小さくイッたんだろう。瀬川自身の細かな状況解説によれば、肛門は何度もヒクつき、そのたび腰も小さく震えるらしい。
そしてまた絶頂の気配がし始めたところで、ついに入宮が口を開いた。
「い、一回、出させて…………お願い」
見ると、瀬川の親指を押しのけるような勢いで、入宮のピンク色の肛門が盛り上がっている。
いかにも辛そうだ。だが、だからこそ焦らされる。
「駄目だ」
瀬川はそう言いながらローターを置き、別の道具を拾い上げた。
スパンキングラケット。硬質の革で出来た、『奴隷』の尻を叩く為の道具だ。
それが、容赦なく入宮の尻を打ち据える。
パシィンッという凄まじい音が響いた。俺がこれまで耳にしたスパンキングの音の中でも、最もよく通る類の音だ。
「あう゛っ!?」
入宮が目を見開いて狼狽し、逆に瀬川は笑みを浮かべた。
「ひひっ、さすがに良い音するな。尻の肉が引き締まってる証拠だ。たまんねぇや」
そう言いながら、さらに尻を打ち据える。
無駄な肉のない入宮の尻肉は、打たれた肉が波打つ事はほとんどない。それでも筋肉の強張り具合から、痛みがひしひしと伝わってくる。
執拗なスパンキングを受け、桜色の尻肉はその右側だけが瞬く間に赤く腫れていった。見るからに痛そうだ。
そういう激しい痛みを受けた時、人は2通りの反応を見せる。萎縮するか、激昂するか。そして入宮は、後者だった。
「い……ったい、いたいってばっ!! 殺されたいの、あんたっ!?」
三白眼で瀬川を睨み据え、怒号を飛ばす。およそ俺の周りにいる奴で、その剣幕に逆らえる生徒はいない。無頼を気取る不良でさえ、入宮にこうして食って掛かられれば、数分後には気まずそうに頭を掻きながら煙草を揉み消すものだった。
だが、瀬川には通じない。
「当たり前ェだろ、こりゃ豚の躾だ。わざと痛ェようにしてんだよッ!!」
そう言いながら、さらにスパンキングを激化する。鋭い音が断続的に響き渡り、入宮の悲鳴がそれに混じった。
やがて右の尻肉がすっかり赤く染まる頃。
「んくぅううっ!!」
一際辛そうなうめきと共に、とうとう秘裂から透明な液体があふれ出す。椅子から次々と流れていくそれは、愛液ではない。失禁だ。
「お、お、こいつ小便まで漏らしやがった! 今日びの甘ったれたガキにゃあ、オチオチ折檻もできねぇってか!?」
瀬川がねっとりとした口調で煽ると、入宮は一筋の涙を溢しながら目を見開いた。
「…………死ねばいいのに。あんたなんか」
涙を流し、激しく呼吸を乱しながら、それでも入宮の闘争心は萎えていない。本当に強く、本当にプライドが高い。女子でなくとも憧れるほどに。
「ほう。こんだけシバかれて、小便まで漏らして、まだ恨み言が出るかよ。見上げたサドだなテメェも。
だが、だからこそ良いマゾになる。元がサドに振り切れてる奴ほど、心の壁を崩したら最後、いきなりマゾの深層へドボンだ。
断言してやる。テメェは一度崩れたら最後、もうマゾの呪縛からは戻れねぇ。
それが嫌なら、せいぜい心が折れねぇように歯ァ食い縛って耐えな。24時間、2対1の状況でボコられ続けて、一度もダウンしねぇように。
ま、無理だろうがよ」
瀬川はそう言いながら、長らく肛門を押さえていた左手親指を離す。その瞬間、数個の玉蒟蒻が飛び出していく。
「あっ!?」
入宮が状況を察した時にはもう遅い。腹圧に圧され、入口付近に溜まっていたと思しき玉蒟蒻が、ぼとぼととビニールシートの上に落ちていく。
「はははっ、これはまた勢いのいい排便だな!」
「ああ。品性のカケラもねぇ、惨めなクソだ!!」
伊田と瀬川がそれを大いに嘲笑い、入宮の顔を歪めさせた。
さらに瀬川は、シート上を転がる玉蒟蒻の一粒を拾い上げ、わざわざ入宮本人に見せつけもする。
「見ろ、お前の腸液だ。こんなにヌルヌルと纏いついていやがる。お前まさか、もうケツで感じてんのか?
2日目でここまでになる奴隷はお前が始めてだぜ。これでよくもまぁ他人のことを変態扱いできたもんだよなぁ、ええオイ」
確かに瀬川が摘む玉蒟蒻は、妙なテカリを帯びていた。おそらくはローションのせいだ。
たとえ腸液がついていたとしても、それは異物を詰め込まれたために腸が取った防衛手段に過ぎない。
だが瀬川の言葉を真に受けたのか、入宮の視線は粘液の滴る異物に縫い付けられていた。
それをじっくり楽しんだ後、瀬川は手にした一粒をボウルに戻し、さらに一粒、また一粒と拾い上げてはボウルに移していく。
2個、3個、4個、と口に出しながら。そしてそのカウントは、9で止まった。
「んん?おかしいな。きっちり数えたのに、9個しかねぇや。さっきは間違いなく12個入れたのによ。
おい、未練たらしく咥え込んでねぇで、さっさと全部吐き出せ」
瀬川のわざとらしい物言いに、いよいよ入宮の顔が赤らんでいく。
「そんなの、言われなくても…………ん、んん、く…………っ!!」
目を固く閉じて息む入宮。盛り上がってはへこむ桜色の肛門が、その力みようを物語る。しかし、残る3粒が出ない。
「どうした、出てこねぇぞ」
瀬川が肛門を突きながら嘲った。
「はぁ、はぁっ…………こ、この姿勢じゃ無理。せめて、立たせてよ」
疲労困憊という様子で告げる入宮に対し、瀬川が大仰に溜め息をつく。
「ったく、自力でクソひり出す事もできねぇのかよ。しょうがねぇ、手伝ってやるよ」
そう言いながら中指と人差し指にローションを振りかけ、肛門へと挿し入れる。
「ちょっ、ちょっと! 姿勢変えれば自分で出すから、やめてっ!!」
入宮が叫んでも、瀬川の指は止まらない。
「おっ、指先に触れたぜ。かなり深いな。だがこうして刺激してやりゃあ……ははっ、何だよオイ、菊輪がえれぇヒクつくじゃねぇか。感じてんのか?」
言葉責めを交えながら、二本指が肛門の中で回り続ける。
「おら、出てきた、出てきたぜぇ。ほら、テメェももっと力入れてひり出せよ。俺の指の付け根ばっかり、美味そうにパクついてねぇでよ」
そう瀬川が囁いた直後、まず一粒が瀬川の手の平の上を滑るようにして排泄された。
「ひぅっ……!?」
入宮が叫ぶ。その表情は戸惑いに満ちていた。指でかき回されながらの排泄が、それほど異様だったのだろうか。
さらに二粒目、三粒目と続けてひりだしていく中で、入宮の顔の引き攣りも酷くなっていく。
「うへぇ、こーりゃすげぇ。さっき以上にヌルヌルだぜ」
そう言って瀬川が3粒の内の一つを摘み上げると、床に幾筋も糸が垂れていく。
確かに今度は、単なるローションのヌメリじゃない。明らかに腸液が表面全てに絡み付いている。
モニター越しでさえそれが見て取れるのだから、目の前に突きつけられた入宮には、さらに詳細な『現実』が見えていることだろう。
「腸液ってなぁケツの愛液だぜ。つまりテメェは、ケツで感じたんだよ。蒟蒻なんぞ詰め込まれてよ」
腸液塗れの異物を晒しながら瀬川が囁きかける。
入宮は、一瞬視線を泳がせた。明らかに動揺した。だが流石に気丈だ。ひとつ瞬きする間には、もう表情を引き締めている。
「あたしは……感じてなんかいない。快感なんて、ないっ!!」
俺の初恋相手は、あくまで毅然とした態度でそう断言した。瀬川が、ほー、と感心したような声を出す。
だが、奴は『奴隷』に格好をつけさせたままでは終わらない。獲物の顔が涙や涎でグズグズになるまでは、調教をやめない。
「そうか。なら、まだまだ続けねぇとな」
そう言いながら、満面の笑みで玉蒟蒻の一粒を摘み上げた。
玉蒟蒻を限界まで詰め込み、ひり出させ。また詰め込み、ひり出させ。モニターの中では、それが繰り返されていた。
回を追うごとに、詰め込む数は増える。12個から15個、19個……そして今は、『今度こそ全て押し込む』という宣告から始まった。
「本当に、くるしい…………お腹の奥まで、詰まっちゃってる…………こ、こんなの、もう、出なくなっちゃう…………!!」
21個目で、入宮が呻いた。
汗がひどく、表情も苦しげだ。限界と言うのは本当なのかもしれない。だが、瀬川に容赦はなかった。
「あとたったの4つだ。我慢しろ!」
そう言いながら、親指で強引に22個目を押し込む。しかしまた、その一粒が弾き出される。
「出すな、ケツ締めてろ!!!」
瀬川は怒鳴りながら、零れた一粒を拾って肛門に宛がった。そして粘土へめり込ませるように、両手の親指を重ねて親指で強引に捻じ込んでいく。
「いやあぁっ!! 奥に来た、ねぇっ、今、本当に奥に入っちゃったの、もうやめてよ!!」
入宮は悲鳴を上げた。瀬川がかすかに笑みを見せる。
「また随分とパニくった声だな。大方、直腸の奥にまで玉蒟蒻の塊が届いてて、今のでS字結腸へ入り込んだか? なーにそう焦るな、感触ほどヤベェ事態じゃねぇよ。ひり出すのに、ちっと……直腸の三倍ぐれぇの気合が必要になるだけだ」
悪魔的なその言葉の最中、瀬川の背後で般若が歪み、25個全てが力尽くで押し込まれてしまう。
「やっ、くるしっ、くるしいっ! 出させて、ねぇっ出させてっ!!!!」
入宮は、恥も外聞もなく哀願を始めた。
無理もない。浣腸にしてもそうだが、人は本来保護されているべき粘膜を責められると弱い。そういう風に出来ている。加えて、直腸すべてとS字結腸にまで異物が詰まる状況など、日常生活ではまず有り得ないことだ。
入宮の脳内では今、彼女がかつて味わった事もない、最大級の警鐘が打ち鳴らされているに違いなかった。
だからこそ、伊田も瀬川も容赦はしない。
肛門に親指ごと捻じ込むようにして蓋をしつつ、陰湿に入宮を嬲る。
陰核をローターで嘗め、膣に指を入れ、乳房を揉みしだき、その上で下腹を撫で回す。逐一言葉責めを交えながら。
一方の入宮には余裕がない。
「ださせて、ださせておねがい…………っっ!!………………くぅしい、くるしい、くるしい…………!!!」
ひとつ呟いた言葉を繰り返す形で、何度も解放を乞う。たまに絶頂時の息が詰まったような反応が混じるものの、またすぐに哀願に戻る。
その状況がたっぷり10分は続いた所で、ようやく瀬川が許可を出す。
「ったく、うるせぇガキだ。しゃあねぇ、ぶち撒けさせてやる。ひり出す感覚を意識しろよ」
節張った親指が肛門から引き抜かれた瞬間、怒涛のように灰色の玉蒟蒻があふれ出した。
十を超える異物が、マッサージチェアの座部を滑り落ちては床に転がっていく。
その第一波の後、入宮の必死の息みに応えてさらに3個。さらに2個。
しかし、そこで止まった。計25個のうち、18個しか出ないまま。
「どうした、もう出ねぇのか」
「……はぁーっ、はーっ、はーっ…………だ、だから、この姿勢じゃ、お腹に力が、入れにくいんだって。姿勢、変えさせてよ」
激しく喘ぎながら抗議する入宮。
瀬川はここまで数度、入宮の姿勢変更の要望を聞き流していた。しかし、今回に限っては違う。
「いいぜ、最後だ。思いっきり踏ん張らせてやる」
そう言って伊田と目配せをし、入宮の腕と脛の辺りを抱えてひっくり返す。
大股開きで椅子に腰掛ける姿勢から、その逆……曲げた両膝を肘掛けに乗せ、座部に爪先立ちになる格好へ。
「どうだ。和式便器スタイル、一番ひり出しやすいカッコだぜ?」
瀬川が入宮の尻を撫でながら笑った。確かに排泄はしやすいが、相当な恥を伴う格好だ。何しろ肛門を突き出す形なんだから。
当然、入宮も表情を変える。
「い、いやっ、何これっ!!」
「ゴチャゴチャうるせぇな。姿勢変えろっつったのはテメェだろ。おら、さっさとひり出せよ」
瀬川はそう詰りながら、肛門に二本指を突き入れた。そして指を開閉させながら回転させ、腸内を攪拌する。
腹圧が強まった為だろう。たちまち数個の玉蒟蒻が排泄され、びちゃっ、ぼとっ、という音を立ててシートの上に落ちていく。
「いやぁーーっ!!」
入宮は枷のついた手で肘掛けを握りながら絶叫した。その羞恥の声を心地良さげに聞きながら、瀬川は二本指での蹂躙を続ける。
「くくっ。こんだけ色々やっても、まだ力むたびに俺の指を食い千切りそうな按配だ。ほんっとに良い括約筋してんなあテメェはよ。早くこのアナルにブチ込みてぇ……っと、そら、また1個出てきたぜ。どんどんひり出せや、ヨガりながらよ!」
「う……く、くぅ…………くぅう、んん、んっ…………!!!」
入宮は必死に振り返って後方を睨みつつも、異物が肛門を通り抜けるたびにびくりと腰を震わせていた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ…………ふむ、あと6つが出ねぇな。しゃあねぇ、コイツで掻きだしてやるか」
指では残りが出ないと見るや、瀬川は細めのディルドウを手に取り、肛門に宛がう。
「えっ……!? ちょっ、ちょっと、まだ中に入っ…………!!!」
抗議の声はディルドウの挿入であえなく途切れ、入宮は口を開いたまま硬直する。
「ひひっ、どうした。玉蒟蒻が奥にある状態で突かれて、脳がフリーズしちまったか? これだから汚れ知らずのガキは。こんなモンはまだ、序の口も序の口だぜ。テメェはこれから3ヵ月かけて、排便の快楽を徹底的に脳髄へ叩き込まれるんだからよ!!」
ディルドウが往復した後に引き抜かれると、奥に残った玉蒟蒻が転がり出す。何とも惨めな“排泄”だ。
「ああ、あぁああぁ゛ーっっ!!!」
入宮の叫びが胸に痛い。その悲痛な声が出るたび、矜持という殻が削がれていくのが感じ取れた。
※
月曜から木曜までは、こうして夜間に調教が行われ、朝からは高校へ通う、というサイクルが繰り返された。
貞操帯という邪魔はあるものの、学校にいる間は調教から逃れられる。あまり褒められた事じゃないが、睡眠という休息も取れる。
ゆえに金曜の夜からが、入宮にとっての本当の地獄だ。
さすがに一週間全てを肛虐に充てるともたないため、土曜はアナルを休ませる日と定まった。
しかし、だからといって土曜が休息日になるかといえば、そんな事はまるでない。
何故ならこの日には、入宮のアナルを除く全身に対して、徹底的な性感開発が行われるからだ。
「今日はおまえの身体に、イキ癖をつけてやる」
9月の第2週……つまり初めての土曜日の朝、伊田が改まった口調でそう告げた。
瀬川の獣のような性欲も厄介だが、頭脳派の伊田による理詰めの調教にはまた違った危険さがある。
まず入宮は、久々にゆっくりと風呂に入るよう命じられた。
男二人による監視つきとはいえ、地下室のバスタブにたっぷりと湯を張って浸かれば、必然的に身体はリラックスする。
そうして身体がほぐれれば、次はマットの上でのオイルマッサージだ。
肩から背中、腰、乳房から太腿、足指の先に至るまでを、時間をかけて入念に揉みほぐしていく。
伊田も瀬川もこれが上手い。最初は警戒していた『奴隷』が皆、自然と眉を下げるほどに。
しかし、だからこそ危険だ。
胸を開発する時は乳房から責める方法が最上であるように、他の性感帯もまた、外堀から迫るやり方が一番効く。
特に太腿。全身をくまなくほぐして血流を高めた上で太腿を丹念に揉みほぐせば、それだけでごく軽い絶頂に至る事すらあるらしい。
ただでさえ敏感な入宮が、それを凌げるはずもない。
「ん、んんっ…………んああ、ああ…………あああっ………………」
伊田と瀬川の二人がかりで太腿を撫で回され、入宮から甘い声が漏れる。苦しさは微塵もない、太腿の色と同じピンクの吐息という風だ。
にもかかわらず、彼女の顔には恐怖が見て取れる。
「や、やめて。もう触らないで。さっきから、何か、変…………っ!!」
マッサージ開始から30分が過ぎた頃、入宮はかすかに震える声でそう訴え始めた。
瀬川の手が大腿部を擦るたび、伊田の手が内腿を撫でるたび、想像を超える快感が走るのだろう。
しかし、伊田と瀬川が手を休める事はない。休める訳がない。獲物に間違いなく毒が回っていると知れたのだから。
こうして実に1時間以上に渡って性感を研ぎ澄まされた後に待つのは、容赦のない快楽地獄だ。
ベッドの上に大股を開いた状態で座らされ、背後から瀬川に羽交い絞めにされる。
そして執拗な乳房責めを受けながら、陰核をマッサージ器で責められ続ける。
マッサージ器はスライヴと呼ばれる強烈な奴だ。血の巡りがいい状態のクリトリスにそれを宛がわれれば、まず誰でも10秒ともたない。
「あぁあっ!!!」
入宮も僅か8秒で、内腿に筋を浮かせる絶頂の様子を見せた。
そして、絶頂は一度では終わらない。そこからは嫌になるほど徹底的に、クリトリスでの絶頂を迎えさせられる事になる。
細やかな責めに長けた伊田のこと、マッサージ器の扱いひとつを取っても寒気が走る。
マッサージ器は刺激が強烈なだけに、下手に扱えばやがて陰核が麻痺してしまう。
しかし、伊田に限ってそれはない。マッサージ器を押し当てる秒数やタイミングを絶妙にコントロールし、常に刺激に変化をつける。
その結果『奴隷』は、常に絶頂の高原状態を彷徨うことになる。
そしてそれは、入宮とて例外ではない。
「ん、んんんっ……ふ、ふぅっ…………だめ、く、くるっ!! また、くるぅっ…………!!!」
唇を引き結んで必死に耐えていた彼女は、やがて唇を開いて絶頂を口にした。
「くる、じゃない、『イク』だ。絶頂する時には『イク』と言え。必ずだ」
マッサージ器を微妙に傾けながら、伊田が命じる。多少は対話をする瀬川に比べ、伊田は自分のルールを『奴隷』に強要する傾向にあった。
「ああぁあぁああっ!! っく、いくっ、いくいくいくっっ!!!!」
陰核にマッサージ器を押し当てられたまま叫ぶ入宮。それを見て瀬川が笑う。
「ひひひ、すげぇすげぇ、イキまくりだ。プライドの高いガキと思ったが、こんなアクメ面を俺らに晒しても平気なんだな」
「…………っ!!」
瀬川の挑発を受け、入宮は表情を凍りつかせる。そしてそこから数十秒は、歯を噛みあわせて耐えていた。目の前の瀬川を睨み据えながら。
しかし、その状態でさらに絶頂を続けると、次第にその視線が上方を彷徨いはじめる。
そして5回ほど絶頂と思しき反応を見せた辺りからは、また目を固く閉じてしまう。
「へへっ、また逆戻りってか?」
「そう意地の悪い事を言うな、瀬川。あれだけ入念なオイルマッサージで性感を目覚めさせられたんだ。逝き通しにもなる」
伊田は瀬川を制しつつ、入宮の膣の中に指を挿し入れる。そして、ゆっくりと指を蠢かせた。
「んぐぅううっ!!!」
噛み合わされた歯の合間から、たまらないという響きの声が上がる。
さらにマッサージ器が再び陰核に宛がわれると、歯の合間からの声は、んぐぅっ、ぎぅうっ、と断続的に続くようになった。
「絶頂する時には『イク』と言え――そう教えたはずだ!」
伊川は厳しい表情でマッサージ器の角度を変える。その些細な変化で、入宮の意地は突き崩された。
「あぁぁ…………ああっ、ああああっ“イク”っ!!! いくっ、いくぅいくっ、いくぅううっ!!!!」
上下の歯が離れ、はっきりとした絶頂宣言が為されはじめる。従順というよりは、極限状態で強く命じられたことを無意識に行っているという風だ。
そしてその極限状態は維持される。意図的に、熟練の技でもって。
ちょうどこの頃から、映像内に変化があった。マッサージ器が宛がわれている入宮の脚の合間から、飛沫が飛び散りはじめたんだ。
ライトを受けて煌めくその飛沫は中々量が多く、最初は潮吹きかとも思った。しかしマッサージ器が宛がわれている限り、断続的に数分も続くことからして、そうではない。
愛液だ。入宮の秘裂からあふれた愛液が、マッサージ器の振動で四散しているんだ。
ローターによる陰核責めでは見られなかった現象。あらためて、あのスライヴという器具の強烈さを思い知る。それで陰核を責められては、絶頂続きになっても無理はない。
そう。入宮が悶え狂っているのは、意思ではどうにもならないレベルの摂理なんだ。
「あっ、あぁー…………あぁっ、う、あっ、イクっ!! ああ、ぁぁぁ…………はぁっ、ああぁ…………くぅううっ、んんっ…………いっ……く…………!! はぁっ、はーっ、はぁーっ…………ふんんんんっ………………ふぁぁあああっいっ、イグぅうううっ!!!!」
シャトルランを繰り返すような激しい呼吸の中、必死に快感に耐えようとし、しかし堪えきれずに絶頂に至る。
その恥辱が延々と続いていた。
20回目の絶頂時から、入宮の両手が背後の瀬川の左右の腕を掴むようになったのは、乳房責めを嫌ってのことか、それとも何かに掴まらなければ自我が保てないと感じてのことのか。
絶頂が30回を超えたころには、命じられた大股開きを閉じようとする気配も見せていた。
「脚を閉じるな。浅ましく開いていろ!!」
伊田がそう言って脚を押し戻すが、さらに数度絶頂するたび、また脚が閉じかけてしまう。明らかにそれ以上の絶頂を嫌がっている反応だ。それでも伊田は、責めの手を緩めない。それどころかむしろ、マッサージ器を長時間宛がう頻度が高くなっていく。
絶頂40回目からの入宮は、ほとんど泣き叫んでいると言うべき状態だった。
「やめてーーっ、とめてえーーっ!! イクっ、イクよぉっ、いってる、まらいってるぅっ!!! おねがいとめてっ!! ああぁあぁああっイグーーーーッ!!!!」
唾液をたっぷりと含んだ怪しい呂律で、体育館に響きわたりそうな声量を発し続ける。
大きく開いたがに股の脚が何度も浮き上がり、ガクガクと痙攣する。
それでも、伊田は止めなかった。奴がようやくマッサージ器の電源を切ったのは、絶頂70回あまり。入宮から声が発されなくなった後だ。
伊田はベッドに膝をついたまま前へ詰め、ぐったりと項垂れた入宮の瞼を開いた。そしてじっくりと観察し、ほくそ笑む。
「ふふ、これはまた……早くも快感で脳がドロドロらしい。良かろう、しばし休憩だ。今日は長いからな」
その呟きは、果たして入宮の耳に届いたのか。少なくとも俺はそれを聞き、底知れない恐怖を感じていた。
※
「やめてっ、いやーーっ!! やめてよっ、ふざけないでっ!!!」
休憩後に響き渡った入宮の叫びは、金切り声というのか、日常生活では滅多に耳にしない類のものだった。
彼女が今行われようとしているのは尿道開発。文字通り尿道に異物を差し入れ、拡張していく責めだ。
床の上で“マングリ返し”と呼ばれる格好を取らされつつ足首を掴まれた時、入宮は、またクリトリス責めかと思ったことだろう。
だからこそ、尿道の入口に綿棒が宛がわれて初めて驚愕する。
今までの『奴隷』も皆そうだった。当然だ。アナルにしてもそうだが、排泄の穴を開発されるなど、予めの知識がなければ予想すらできない。
俺も最初に尿道責めの映像を見た時には、綿棒が入り込んでいるのが膣ではなく尿道なのだと理解するのにかなり掛かった。
正確には言えば、見抜けはしなかった。ただ『奴隷』が、「そんな所に挿れてはいけない」「垂れ流しになる」と、普段の文学少女然とした雰囲気をかなぐり捨てて叫んでいたから察せただけだ。
「ふふ、存外に愛らしい反応をするものだな。瀬川よ、この様を見てもこの娘をサディストだと思うか?
本当のSであればこうした苦境にも、グッと歯を食い縛って耐えるものだが」
「ああ、どうやら俺の勘違いらしい。こいつの矜持は紛いモンだ」
伊田と瀬川は入宮の顔を覗きこみながら煽る。そう言われては入宮も、続く非難を呑みこむしかない。
心身共に束縛された入宮は、自らの尿道へ異物が入り込む様を黙って睨み上げていた。
まさに挿入というその瞬間には、瀬川が押さえ込む足首に深く溝が入った。
「安心しなさい。キシロカイン――麻酔薬を含んだゼリーをたっぷりと付けてある。痛みは直に消える」
伊田はそう諭しながら、改めて指で秘裂を拡げなおした。
太い指に押し拡げられた鮮やかなピンクの中へ、再び純白の棒の頭が押し付けられる。
「…………い、ぃきっ………………!!」
入宮の眉が顰められ、歯が食い縛られる。痛みのせいか、恐怖のせいか。どちらに起因しているにせよ、伊田の手が止まることはない。
尿道開発はじっくりと進んだ。
綿棒の先を押し当てては離し、押し当てては離し、を数度に渡って続けた後に、ごく浅く挿入する。
先端の膨らみの半ばほどまでを呑み込ませてから、一旦引き抜き、再び呑み込ませる。
その次は、半ばほど呑み込ませた状態から、捻るようにしてさらに深く沈めていく。
そうして少しずつ少しずつ、尿道の奥へと進んでいくやり方だ。
入宮の表情は複雑だ。睨むような瞳の裏には、恐怖か戸惑いのどちらかがある。
痛みはなさそうだ。時折り眉を顰める事はあるが、後は綿棒が進んだ時や捻られた時に、あ、と小さく声を上げるばかり。
綿棒がスムーズな前後移動を始めた段階でも、それは変わらなかった。
「どうだ。尿道をこうして擦られるのは。思った以上に心地いいだろう」
尿道へ突き刺さった綿棒から一旦手を離しつつ、伊田が問う。
「……自分にもあるんだから、実践してみれば? あたしが割り箸でもぶっ刺してあげるよ」
当然、入宮は反抗の意思を見せる。伊田はその反応を想定していたのか表情を崩さず、ローターを拾い上げてスイッチを入れた。
そして、突き立った綿棒に触れさせる。
「あ、ああっくっ!?」
入宮は声を上げた。ローターの振動が綿棒を介して、直に尿道へと響いたのだろう。
「忘れていたよ。おまえの口は嘘をつく。不必要に自分を飾る。ここはやはり……素直な身体の方に訊くとしよう」
伊田はそう告げて尿道責めを再開する。
尿道へ嵌まり込んだ綿棒を前後に揺らし、捻り、ローターを触れさせ。
半ばほど埋没させた状態で一旦放置し、人差し指を膣に入れて膣壁越しに綿棒を回転させる。
これらの責めは、確実に入宮に変化をもたらしていた。
声は出ない。だが抑えきれないという様子で、熱い吐息が少しずつ早まりながら繰り返し吐かれる。
その責めが五分ほど続いた後。
「だめ…………で、でちゃう………脚離して……………!」
必死に何かを耐える様子を見せていた入宮が、頭上の瀬川を見上げながら乞う。
だが瀬川は薄ら笑みを浮かべているだけだ。
人差し指で膣内にちゅくちゅくと水音を立てていた伊田もまた、待ち侘びていたとばかりに頬を緩めながら指を抜く。
そして、かなり深く入り込んでいた綿棒が引き抜かれた瞬間。まるで異物との別れを惜しむかのように、秘裂の上から液体があふれ出す。
液体は一度低い放物線を描いてから途切れ、再度少し高い軌道でやはり放物線を描いて途切れ、
「んん、んやぁーーっ!!!」
妙に幼さを感じさせる入宮の息みと共に、三度目で本格的な放尿となる。
小さな黒点から発された液体が、まず透明な三角の膜を作り、それが収束して高らかな放物線を描いた後に四散する。
入宮自身が“マングリ返し”の格好を取らされている以上、その飛沫のかかる先は当然――彼女自身の顔付近となる。
「ぶはっ、ぷあっ!! ちょ、ちょっと……あぶふっ!!!」
自らの小便を顔に受けるうち、少なからぬ量が口に入ってしまっているようだ。
よほど溜まっていたのだろうか、放尿はかなり長く続いていた。放物線が形を保てなくなるまでには、10秒は掛かっていただろう。
恥辱の後には、入宮の無惨な姿があった。今ようやく海から陸へ上がってきたばかりという風に、濡れた髪が顔や首に貼りついている。
「おーおー、まさに小便臭いガキってやつだなこりゃ!!」
足首を掴む瀬川が嘲笑うと、入宮の目が見開かれ、殺意すら感じる視線を投げかけた。
「誰のせいで、こんなっ…………!!」
「おまえ自身のせいだ」
入宮の怒声を、冷静な伊田の声が遮る。虚を突かれたのか、入宮が言葉を止めた。
「は、はぁっ?」
「忘れたのか。おまえは負債持ちの身だ。今で3つ……いや、4つか。そうして小便を浴びているのは、おまえ自身が築いた負債のせいだ。
おまえの不誠実な態度は、やがて恥辱となっておまえ自身に返ってくる。少しでも快適に過ごしたいのなら、大人しくしておくことだ」
冷ややかに見下ろす伊田に対し、それでも入宮は睨むことをやめない。誇り高く生きてきた彼女の矜持が、退くことを許さない。
「まぁ、こちらとしては……歯ごたえのある方が好みだがな」
伊田はそう言って、新たな道具を拾い上げる。緩やかなカーブを描いた、サージカルステンレス製の尿道ブジー。
「や、いや。やだっ…………!!」
それがゆっくりと尿道に近づけられるにつれ、入宮の目元が引き攣っていく。
ああああ、という声が上がったのは、その数秒後のことだった。
※
尿道ブジーが使われはじめてから、何分が経っただろう。
映像の中では、伊田と瀬川の手により、より入念な尿道責めを行う体制が出来上がっていた。
屈辱的な“マングリ返し”の姿勢はそのままに、膣が器具で大きく開かれている。
伊田はその状態で尿道にブジーを前後させつつ、陰核を指で刺激し続けていた。
激しさはまったくない。
尿道ブジーは激しく抽迭される訳ではなく、傍からは、尿道から伸びた細い糸をクイクイと指で手繰っているようにしか見えない。
陰核を責める指もまた、陰唇の上端を優しく左右に弾いたり、親指と人差し指を使って摘み上げている程度のものだ。
にもかかわらず、入宮は今や完全に感じている時の反応を示していた。
歯を閉じて、シーッと違和感に耐えるような息を吐き出したかと思えば、その直後には、ああぁ、ぁぁぁーっ、と、本当に気持ちの良さそうな声を漏らす。
そして5回に一度は、『あ』と『お』の間のような、濃厚に絶頂の気配を匂わせる吐息を吐く。
快感は身体的特徴としても表れていた。
伊田が様々に弄くり回す陰核……それがもう、ハッキリと見て取れるほどに勃起しきっているからだ。
ぼうっと見ていても、最初の頃のように大陰唇の皺の一部などとはもう思えない。それほどの尖りを見せている。
陰核は神経の塊だ。そこが極限まで研ぎ澄まされている状態で、親指と人差し指に挟まれて扱き上げられれば、たまらない。
「ぉおおあぁああぉっっ…………!!」
そうした快感の凝縮した喘ぎを漏らすのも、仕方のないことだ。たとえ、憎い男に見られながらでも。
伊田はじっくりと責めを続けながら、なぜそれほどに感じてしまうのか、そのメカニズムを入宮に対して説いていた。
外から見えているクリトリスと呼ばれる部分は、陰核亀頭と呼ばれ、陰核体という組織のごく表面的な部分に過ぎない。
ちょうど男の陰核と同じで、そこだけを刺激しても絶頂には達するが、根元からじっくりと目覚めさせた時の快感には遠く及ばない。
その根元を目覚めさせる最も効果的な方法が、尿道を責めることだ。
尿道と薄皮一枚で接する陰核客を丹念に擦り上げ、神経を研ぎ澄ませた状態で陰核亀頭を刺激すれば、この通りだ。
そうして現状を認識させつつ、さらに陰核を昂ぶらせていく。
「知らない、そんなの、知らないっ!!」
入宮は何度も首を振り、伊田の囁きを耳に入れないようにしているようだった。脳が仕組みを理解したが最後、快感の質が変わると察したからだろう。
だがいずれにせよ彼女は、快感から逃れられない。
「おーっ、見ろよ伊の字。このガキ、気持ちよすぎてヨダレ垂らしてやがんぜ!?」
入宮の顔を飽きずに観察していた瀬川が、嬉しそうに言う。画面を凝視すると、確かに入宮のだらしなく開いた口の端に何かが見えた。
はっとした様子で表情を引き締める入宮だが、もう遅い。
「出来上がったな。ちょうど陰核も、これ以上はないというほどに固くなっていることだ。そろそろベッドに戻ろうか」
伊田のその一言で、入宮の顔がゆっくりと上を向く。
「え…………?」
その表情をにこやかに受け止めながら、伊田は続けた。
「ベッドへ戻るんだ、豚。改めて、マッサージ器で可愛がってやる」
伊田の太い指が陰核を摘むと、ただそれだけで入宮の腰が跳ねる。そんな状態で、またマッサージ器を使われれば……。
「いやああぁーーーーっ、やめてやめてっ、やめてよ、とめてーーーーっ!!!!」
映像の中に悲鳴が響きわたる。
ベッドに戻された入宮は、瀬川に太腿を抱え込まれながら陰核にスライヴを宛がわれていた。
あえて拘束はされていない。瀬川共々汗まみれになったまま、格闘でもするように刻一刻と姿勢を変える。
入宮は、明らかに陰核への刺激を嫌がっていた。
性器の状態も異常だ。一度目の終盤に見られたような愛液の飛沫が、もう起きている。
スライヴが陰核へ宛がわれるたびにブジュブジュと透明な汁が飛び散り、見た目にはほぼ小便と変わらない。
「おーおー暴れやがる。やっぱすげぇ脚の力だぜこいつ」
暴れる入宮の太腿が一旦瀬川の拘束を振り切るが、瀬川は冷静に膝裏を掬い上げて大股を開かせる。
そこへスライヴが押し付けられる。
「あああぁ“--っ、いやぁーっ、いや゛ぁああ“っっっ!!!!!」
顔まで噴き上がるほどの飛沫の中で入宮が激しく首を振る。
「絶頂する時は『イク』と宣言しろ。同じ事を何度も言わせるな!」
伊田が恫喝する前で、入宮は全身を痙攣させる。
「あああ……あ゛ぁああ゛っ!! だ、だってあらし、さきからずっといってる、いきっ、できなっくらい…………!!
だからとめてって、ああ、あぁああぁあいくーっいくーーーっ!!またイグぅぅうううっっ!!!!」
入宮の垂れ下がった目からは涙が零れ、鼻からは鼻水が、口からは牛のように涎が出続けている。
あの凛とした入宮と同じ人物だとは、到底思えないほどに。
だが、紛れもなく彼女だ。変わっていく様をずっと見続けてきた俺には解る。あれは入宮なんだ。
暴れる中でとうとう入宮はうつ伏せの姿勢になり、瀬川に覆い被さられたまま、突き出した尻にスライヴが宛がわれる。
獣同然の惨めな格好だ。前方のシーツをガリガリと掻き毟りながら、いくぅいぐぅー、と繰り返す様は品性の欠片すらない。
『イキ癖をつける』
伊田が一日の初めに宣告した目的は、見事に達せられたと言えるだろう。
事実、入宮はこの土曜以来、明らかに陰核責めに弱くなった。
翌日の日曜には、畳の上で這う格好のまま、瀬川にアナル舐めを受けながら陰核を弄られる責めを受けたが、
その時に彼女が上げた声は、聞いているだけで変な気持ちになるようなものだった。
「おーおーおーおー、なんだこりゃ。ドロッドロじゃねぇか」
アナル舐めを中断した瀬川が秘裂の辺りをまさぐると、入宮のスレンダーな身体がぞくっと跳ねる。
この時の入宮は、煽られたにも関わらず後ろを睨むことをしなかった。
それどころか、顔を見られたくないという風に、肘を突いた両手で頭を挟み込んでいた。
アナル舐めの後、道具を使った肛門拡張が始まってからも様子がおかしいのは変わらない。
アナルパールやアナルディルドウを用いられると同時に陰核を刺激されると、即座に細い腰が震える。
真正面から顔を見られる格好のため、入宮も最初は睨むような瞳で凛としていた。
だが5分が経つ頃には、右手の甲で口を押さえ、視線を脇に逸らすようになる。
そしてそこから時が経つにつれ、表情が苦しそうなものに変わっていく。
眉が顰められ、横へ投げ出した視線が鋭さを増し、口元は手の甲を噛むような形になり。
そして最後には額にじっとりと汗を掻いたまま、瞼が固く閉じられてしまう。
基本的に表情が強張ったまま変わらないが、時折り、ぴくっ、ぴくっ、と口元が動いていた。
ごく短い一言。多分、『いく』と繰り返していたんだろうが、俺には真実は解らない。同じ場所にいる伊田や瀬川と違って。
※
月曜の朝になってもなお、入宮の様子はおかしいままだった。
睡眠が足りていないという事もある。
入宮の反抗心を削ぐためか、伊田と瀬川は入宮に充分な睡眠を与えない。
まったく眠らせない訳ではないが、眠る入宮には必ず嫌がらせが加えられた。
身体中を舐め回したり。乳首をクリップで挟み潰したり。鼻をフックで吊り上げられたり。逸物をしゃぶらされたり。
「いいかげんに、してよ………………!!」
心の底から迷惑そうにする入宮の態度も、瀬川達には興奮材料にしかならないらしい。
ただこの月曜に限っては、単なる睡眠不足とは雰囲気が違った。
寝惚けているのではなく、蕩けている、と表現すればいいのか。
「んっ!?」
キッチンの椅子に腰掛けた瞬間、彼女は小さく呻いて背筋を伸ばした。
そしてしばらく目の前を見つめ、困惑した表情で顔に手を当てる。
「あれ……何か、ふわふわする………………なんだろ、これ………………?」
そんな事を呟いている。
朝食の間もぼうっとし続けで、危うく手にした汁椀を落としそうな有様だった。
もはや恒例となった瀬川による貞操帯取り付けの際も、普段とは違う。
股座を濡れタオルで拭く、という時、んっ、という声の後に乾いた音がした。多分、入宮が瀬川の腕を掴んだ音だ。
「今日は、ほんとにやめて…………!!」
そんな事を口走りもする。入宮だって馬鹿じゃない。弱みを見せれば、瀬川を付け上がらせるだけだと理解しているだろうに。
結局入宮はこの日、腕を掴んだ罰と称して、貞操帯以上の恥を課せられる事となった。
通学途中は常にスカートを鞄で隠し、教室の中では常に脚を閉じ合わせ。
昼休みに旧校舎の屋上へ辿り着いて初めて、普通に歩けるようになる。
「ほんと、最悪……」
フェンスに寄りかかって頭を抱えながら、入宮は溜め息をついた。
事情を知っているだけに、何と声を掛けていいか悩む。
この日の入宮の太腿には、制服のスカートでかろうじて隠せる範囲に、びっしりと淫猥な言葉が書き連ねられている。
『ジジイに奪われる予定の処女マンコ』
『ユルユルの小便穴』
『ズル剥けのデカクリ。クリ逝きで失神経験有り』
『現在拡張中。アナルパール深さ24cm、アナルプラグ直径6cmまで入ります』
性器を指す矢印と共に、そうした言葉がピンク色の肌を覆い隠す。
クールなカリスマとして学年中から注目される入宮のこと、どれを読まれても一大事というものだ。
だが、フェンスに寄りかかる入宮の頬が赤い理由は、その羞恥ばかりでもないらしい。
「ねぇ、岡野。あたしのこと……褒めてよ。何でもいいからさ」
グラウンドからの風に黒髪を靡かせながら、入宮が呟いた。かける言葉を探していた俺は、思わずその横顔を見上げる。
「な、何だよ。どうしたんだ?」
妙な胸騒ぎと共にそう訊ねると、入宮はしばし黙り込んだ。そして、ふっと口元を緩める。
「冗談、冗談。」
そう呟いて、また遠くへ視線を投げる。明らかにおかしい。
「その、入宮…………」
居たたまれずにそう切り出しはするものの、続く言葉がわからない。
入宮は一瞬俺の方に視線を落とし、またフェンスの先に視線を戻す。
「…………ごめんね。なんか朝から、変な事ばっかり言ってる。今のも別に、深い意味とかないんだ。
ただ、岡野に励まされると、あたしすっごい元気出るからさ。ちょっと聞きたかっただけ」
その言葉が、俺の胸に刺さる。
つまりそれは、励まされないと無理なぐらいに参ってるって事じゃないのか。
「そんなに……やばいのか?」
俺は入宮を見上げた。多分苦い表情で。入宮は、またちらっと俺に視線を寄越した。
「どうかな……。精神的には、まだ大丈夫。あたしのままで居ようって気持ちは変わんないよ。
でも、身体の方がさ。なんか、変なんだ」
ローファーが踏みかえられ、入宮の身体が俺の方を向く。
フェンスに片手を掛けたその姿は、シルエットだけなら先月までの彼女と変わりない。
でも、何故だろう。雰囲気がまるで違う。どこか…………娼婦のような。
「ごめん、ちょっと吐き出させて」
入宮は憂いを帯びた瞳でそう前置きし、手を握り締めながら語り始めた。
土曜日にクリトリスを調教されたこと。
伊田達の責めには屈するかと頑張ったものの、無理だったこと。
快感が強すぎて、何度か失神したこと。
今も勃起状態が続いていて、歩いたり座ったりするたびにショーツに擦れて感じてしまうこと……。
「多分今も、その……濡れてる、と思う。それ知られたらまた、鬼の首取ったように淫乱だとか言われるんだよ」
毒を吐き出すようにそう告げてから、入宮は深呼吸を始めた。
制服のブレザーを上下させながら。気のせいかまた、胸が育ったような気もする。
「ふーーっ、よし、弱音終了っ! ごめん、愚痴に付きあわせちゃって!」
爽やかな笑みを浮かべ、パンと手を合わせる入宮。
少しは元気になったようだ。さすがにスポーツで結果を残してきただけあり、自分なりの気の持ち直し方があるらしい。
そしてその発散対象に選ばれた事が、素直に嬉しかった。
こんな事を言える立場にない事は重々承知だが、それでも俺は、入宮に笑顔でいてほしい。
「全然。キツくなったら、またいつでも言ってくれ」
俺はそう言って笑った。
頑張れ、頑張ってくれ――――心の中で、切実にそう叫びながら。
続く