※かなり長いため、後編を3つに分けます。
 相変わらずアナル・スカトロ・NTRにご注意下さい。



入宮が陰核での『イキ癖』を付けられたのが9月の第二週目。
彼女はそれから実に一ヶ月以上に渡り、入念に恥辱と快楽を刷り込まれ続けた。
人一倍反骨心の強い入宮だけに、課せられる羞恥責めも通り一遍のものでは済まない。

学校から帰り次第、制服姿のまま壁に手をつかされ、貞操帯の鍵を外された上でアナル栓を引き抜かれる。
そのアナル栓の匂いをわざとらしく嗅がれ、開いたアナルをさらに指で拡げられての言葉責め。
これが調教前のお約束のようなもので、その後に日替わりの責めが待っている。

中でも忘れられないのは、16日目のプレイだ。
この日入宮は、先端にCCDカメラが内蔵されたスティックを洗浄前の肛門に挿入され、大写しになった腸内の映像を自ら実況させられた。
透明な液を纏ったピンクの内臓が押し拡げられ、一日分の汚物が攪拌される様を、だ。
およそスポーツ一筋に生きてきた女子高生が正視できる代物ではない。
当然、最初の数分はそのような責めを行う伊田達への罵詈雑言が続く。だが、実況しない限り責めは終わらない。そのため、やがてはトーンの落ちた声での解説が始まる。
もっと声を張れと何度も命じられ、最後には入宮も半ば自棄で恥辱の言葉を吐き出すようになる。勿論と言うべきか、悲痛に顔を歪めながら。
その後に待つのは浣腸だ。
瀬川がガラス浣腸器で腹が膨れるまで液を注ぐ傍ら、伊田が録音してあった入宮自身による腸内実況を再生する。
入宮が目を見開いて嫌がっても再生は止まらず、地獄のような時間を過ごした末に、片足を掴み上げられた状態で排便を晒す。
挙句にはその惨めな姿を、二人がかりで言葉を尽くして詰られるのだ。
そんな事をされた人間の心境など、同じ状況にならなければ想像すら及ばない。
ただ、あの気丈な入宮が涙を流す様を目の当たりにすると、俺の胸まで締め付けられる。



24日目には不意打ちで、帰宅前に調教が始まった。
俺と歩きながら他愛もない雑談をしつつ、帰宅後の調教への覚悟を少しずつ固めていく。それが人懐こい入宮のペースだ。
しかしその日に限っては、伊田と瀬川が学校帰りの俺達を待ち構えていた。
「!!」
俺が息を呑む横で、入宮も表情を強張らせる。
「よう。いつも門限通りのマジメな帰宅じゃ、つまらねぇ大人になっちまうぜ。たまにゃあ寄り道して遊ばねぇとな」
瀬川達はニヤケ面のまま歩み寄り、俺には目もくれずに入宮を公園の方へと歩かせはじめた。
「そう怖ェ顔すんなって。陽も落ちて薄暗ぇんだ、見つかりゃしねぇよ」
瀬川に肩を抱かれて自転車除けの脇を通り過ぎる時点では、入宮は怒りも露わに前を睨み据えている。
しかし二時間ほど後に帰宅した時、彼女は俯いたまま鼻を啜っていた。
前髪に白濁がこびりついている。
さらには学校指定の制服から、生足にコートという格好に変わってもいる。
玄関が閉められ、コートが剥ぎ取られれば、亀甲縛りの上で股縄を打たれた裸が露わになった。
「………………っ!!」
入宮の視線が一瞬俺の足元に移り、唇が引き結ばれる。あられもない姿をクラスメイトに見られるのが辛いんだろう。
俺は黙って背を向け、すでに乾かしの段階に入っていた食器を意味もなく濯ぎはじめた。
それでもやはり、“音”は意識から外せない。
くちゅり、という水音。
「また随分と濡れているな。その歳で被虐の快感に目覚めたか」
伊田の嬉しげな囁き。
「そりゃそうだ。誰が通るかも解らねぇあんな茂みで、そこらのヘルス嬢よりよっぽど気ィ入れてしゃぶるド変態だぜ。
 いくらクソが漏れそうだからっつっても、あんなにジュボジュボやれらちゃあもたねぇよ」
瀬川がそう言いながら、机の上に何かを置いた。
乱雑に畳まれた制服と、スーパーの袋だ。中には押し潰された無数のイチジク浣腸と、太めのアナルプラグ、そして粘液に塗れたいくつもの道具が見て取れる。
俺はそれを目にした瞬間、入宮に降りかかった不幸を理解した。
公園に連れ込まれた入宮は、茂みの陰で何本もイチジク浣腸を入れられ、排泄の条件としてフェラチオを強いられたのだろう。
いかに辛抱強い人間だろうと、原始的な欲求に抗い続ける事は不可能だ。
入宮も最初は拒んだだろうが、排泄欲に脳を灼かれてからは、不本意ながら懸命に奉仕したに違いない。
そして、どのタイミングかは不明だが制服を剥ぎ取られ、緊縛と辱めを受けた。2時間という長さや瀬川の置いた道具から考えて、おそらく相当な辱めを。
「テメェも幸せな痴女だぜ。露出プレイでいい具合に火照った挙句に、これからタップリと楽しめるんだ。俺らプロを二人もつけてな。
 そこらの淫乱OLが半年かけて堪能する喜びを、一晩で味わわせてやるぜ」
股縄を引き絞りながら瀬川が笑い、歯軋りの音が続く。
俺の耳に生で届く音はそれだけで、そこからはいつも通り、別世界のようなモニター越しにプレイを見守るしかない。

この晩は徹底してSMが行われた。
陰核を始めとする性感帯を、延々と筆先で刺激したり。
縄で縛めたまま、桜色の肌を覆い尽くすほどに溶けた蝋を垂らしたり。
乳房を鉄板で挟み潰しつつ、乳頭に何本もの針を刺し通したり。
片足吊りにした上で、尻と太腿にバラ鞭を浴びせ続けたり。
カテーテルで膀胱に塩水を溜めては放尿させたり。
鼻フックと開口具で整った顔を歪めたまま、鼻腔をこよりで責め、舌をペンチ状の道具で引き出し、喉にアナルディルドウを押し込んで、鼻水や唾液、えづき汁をコップ半分ほども“採取”したり。
プライドの高い入宮にとって、これらを受けるストレスは相当なものだろう。
事実彼女は、これらのプレイの合間合間に、何度も本気の怒号を散らしていた。相当な剣幕だった。
しかし、秘裂に指を差し入れた伊田によれば、彼女はそうして怒りを露わにした時に限って、『浅ましく濡れて』いたらしい。



33日目には、俺に見せ付けるようにリビングでの喉奥凌辱が行われた。
学校帰りの制服姿のまま、ソファに腰掛けた瀬川に奉仕を強いられる。開口具を嵌められ、後ろ手に縛られ、ひたすら頭を押さえ込まれて。
「お、喉がピクピクしてきたな、吐くのか? このまま吐いたら大変だぞぉ。テメェ制服、夏冬一着ずつしか持ってきてねぇんだろ。ゲロ引っ掛けたら最後、学校行けねぇぞ。
 まぁ休むなら休むでいいんだがな、丸一日調教してやるだけよ。学校への連絡は俺がしてやっから安心しろや。
 娘は今ケツに浣腸ぶち込まれてて、これから下痢便ぶちまけるんで学校にゃ行けませんってよォ!!」
そう瀬川に煽られれば、入宮も黙っていない。力の限り瀬川を睨み上げる。口の動きも変わる。しかし、無力なものは無力だ。
「へっ何だ、必死にモゴモゴしやがって。口枷ごと噛み切ろうってか? 馬鹿が。ンな事したってこっちゃあ、ヌルヌルの喉粘膜が纏わりついて気持ちいいだけだぜ。
 おら、もっと奥まで挿れてやるよ。ギュゥーッと締めて鬱血でもさせてみな」
瀬川はそう言って入宮の頭を掴み直し、腕に筋を浮かせながら腰に押し付ける。奥の奥、入宮の整った顔が、瀬川の腰で潰されるまで。
「んもっごぉおお゛お゛っ!!!」
入宮から物凄い声が上がった。鋭い眼は一瞬にしてぐるりと上向き、目尻からも目頭からも、涙がボロボロと零れだす。まるで初めてのイラマチオといった体だ。
彼女が瀬川の物を最奥まで咥え込んだ経験は何度もある。だがそれはあくまで、ある程度調教がなされ、興奮や叫びという形である種のウォームアップが済んでからのことだ。
だが今は違う。学校という憩いの場から帰宅したばかりで、被虐への備えができていない。そこへ来ての食道凌辱は、あまりにもきついのだろう。
恐らく今回も、入宮は嘔吐する。瀬川の逸物はエラが発達していて、快感を得て勃起が強まれば、いよいよキノコのように笠を張る。
そんな物で喉奥を掻きだされるようにされては、嘔吐せずにいる事など不可能だ。
「ああぁぁ最っ高だ、カリ首に粘膜が引っ掛かる感触が堪んねぇ。えづき汁でズルズルだしよぉ、マジでアソコに突っ込んでるみてぇだ。
 この気持ちよさを知らねぇなんざ一生の損だぜ、なぁ伊の字?」
瀬川は満足げな笑みを漏らしつつ、伊田に向けて言う。傍観者である俺への当てつけだろう。
ヤクザ社会の末席に連なる立場上、俺はそんな態度を取られても、兄貴分同然の瀬川を殴ることはできない。それどころか、不快感を顔に表す事すら許されない。
だから俺は、瀬川達に見えないように、机の下で拳を握りしめた。
せいぜい下に見ていろ。たとえ入宮が吐いたって、俺がその日の内に綺麗にしてやる。
伊達に雑用係をやってきたわけじゃない。手洗いで丁寧に汚れを落として、隅から隅までアイロンを掛けて、新品同様に戻してやる。
そう心に誓った。
しかし、いくら外見上の汚れを落とせても、中身となればそうもいかない。


「ねぇ、岡野。最近……あたしのこと、臭いって思うことない?」


10月の半ば。やや肌寒くなりつつある屋上で、入宮はふと俺にそう尋ねた。
「えっ……。い、いや、どうだろ」
俺は突然の質問に戸惑いつつ、控えめに入宮の纏う空気を吸う。すると臭いどころか、胸が躍るような芳香が鼻腔を抜けた。
まずはシャンプーの薫り。俺が彼女の為に、自腹を切って用意したものだ。
そしてそれに混じり、ほのかに甘い香りもあった。性感スプレーの類かもしれないし、ひょっとすると、女子特有のいい匂いがあるのかもしれない。
そもそも、最近の入宮は俺よりも早く起きて、毎朝1時間程もシャワーを浴びている。
風呂場から聞こえる音やスポンジの消耗具合からして、何度も何度も執拗に肌を擦っているらしい。受けた恥辱を洗い流すかのように。
そんな入宮から、嫌な臭いなどするはずもない。
「すげぇいい匂いだ。これを臭いって言う奴なんて、居ないって」
素直にそう告げると、入宮は安堵したような、しかしどこか納得していないような、複雑な表情を作る。
「……そっか。気のせい、なのかな」
「気のせい?」
俺が思わず訊き返すと、入宮はしばらく黙り込んでから続けた。
「あたしさ、毎晩、瀬川の“あれ”……しゃぶらされてるんだ。嫌で堪らないんだけど、しないと寝られなかったり、トイレとか……行けなくて。
 で、さんざん苦しめられた挙句に、すごい量の精液飲まされるの。その匂いが、ずっと……鼻の奥から消えないんだよね」
入宮はそこで言葉を切り、それ以上は語らなかった。だが、その寂しげな横顔は雄弁だ。
俺も瀬川の異様なほどの射精量は知っている。毎日出しているくせに、高校生の俺が3日溜めた分より多い。
そんな量を飲まされ続ければ、何かの拍子に匂いが感じられるのも当然だ。
内面の穢れとなれば、俺でも濯ぎようがない。入宮自身に踏ん張っていて貰うしかない。
しかし。
「んくっ!!…………あ、お、岡野、いつもごめん。ちょっと、向こうむいてて」
入宮は急に屋上のフェンスを握りしめ、小刻みに震えながら訴えた。
貞操帯のアナルバイブが振動を始めたのだろう。俺の勃起時より一回り小さいだけの異物が。
「あ、ああ!」
俺は入宮が望む通りに背を向けるが、その途中、彼女の様子がちらりと視界の端に映る。
頬を染めたまま、蕩けた眼で虚空を見つめる、『雌豚』の顔。以前の彼女なら、間違ってもしなかった筈の表情。

調教は順調だ。どれほど否定的に見ようと、そう認めざるを得ない。
ピンク色の身体に深々と刻まれた傷口は、素人の俺から見ても痛々しいほどだ。
瀬川達はその傷口に指をかけ、強引に引き裂いて入宮から涙と悲鳴を搾り出す。何度も、何度も。
どれほど心が強かろうが、そんな地獄に耐え続けられる人間はいない。いつかは狂う。
そう、いつかは。



調教51日目。
入宮はマッサージチェアに深く腰掛け、電極責めを受けていた。
乳房や脇腹、太腿、仙骨、恥骨といった場所に電極を取り付け、電気によるマッサージを行う。
電気を流すことによって性感帯が活性化し、感度が飛躍的に上昇する。
元より感度のいい入宮がそれを受ければ、素肌を撫でられただけでごく軽い絶頂状態に至ってしまう。
その危険性を誰よりも認識しているのは、他ならぬ入宮自身だろう。
「…………うう、くっ…………はぁ、はぁ、はあっ…………!!!」
入宮の表情は固い。身体の各所に電気が流されるたびに筋肉が強張り、呼吸が荒くなっていく。
刺激のためではなく、刻一刻と感度が上がっていく事そのものを恐れているらしい。
それは一旦電流が切られ、瀬川が下卑た笑みで太腿を撫ではじめた直後に証明される。

「触らないでっ!!」

必死。
まさにそういった様子の金切り声を上げながら、入宮の手が瀬川の腕を払いのける。
瀬川が短く舌打ちをし、しばしの無音が場を支配する。
「負債21個目だ。今日も寝れねぇな、テメェ」
瀬川の静かな宣告を耳にした瞬間、入宮の顔が歪んだ。嫌悪の表情ではなく、泣き出す瞬間のそれに。
「負債負債って……もう、いい加減にして! 嫌なものは嫌なのっ!!」
入宮は喚くようにそう叫び、耳を塞ぎながら顔を伏せる。肉感的な太腿に次々と水滴が落ちていく。
それを見た瞬間俺は、とうとうこの時が来たか、と思った。
限界だ。いくらクラス一芯が強いと言われ、カリスマ的な部長として尊敬を集めていても、俺と同い年の女の子である事に変わりはない。
悪魔じみた調教師二人の手練手管で追い詰められ続ければ、早晩潰れるのは避けようのない事実だ。
そんな事は初めから解っていたんだ。
モニター前の安穏とした場所に居ながら、涙が出そうになる。傍観しかしない第三者の分際で、叫びたくなる。
子供のように小さくなって肩を震わせる入宮を見ていられない。

まるでそんな俺の想いと同調したかのように、瀬川が深く溜め息をつく。
「チッ、これだからガキは……。わーったわーった。今のは見なかったことにしてやるよ」
瀬川はそうぼやきながら、入宮の肩に手を置いた。入宮の肩の震えが一瞬止まり、涙に濡れた瞳が瀬川を見上げる。
「俺の言うことを、たった一つだけ聞きゃあな」
いつになく優しい声。それを耳にした瞬間に俺は、思わず拳を握りしめていた。
外面だけは、まるで俺の心がモニターの中に顕現したかのようにも思える。だが、罠だ。
こいつらヤクザに限って、情に絆される事など有り得ない。もうじき堕とせる。そう確信を得た上で、あえて飴を与えているだけだ。
追い詰められた人間の心理は幼児に極めて近い。親との喧嘩終わりに飴を与えられると、子供は満面の笑みを見せる。
効くんだ、こういう時の甘言は。どれほど気丈な人間にでも。
「俺のケツを舐めな、嬢ちゃん」
かつてないほど醜悪な笑みと共に、瀬川は入宮に囁きかける。
入宮の目が見開かれた。
究極的な選択だ。単なる行為の問題ではない。ここまで示し続けてきた矜持を捨て去るか、否か。それが問われている。
一度この要求を呑んだが最後、『奴隷』としての格付けが定まってしまう。
「………………っ!!」
入宮は吹雪の中で凍えるように青ざめた表情をしていた。何度も唾を飲み込み、口元を震わせる。
「いつも散々テメェのケツを舐めてやってんだ。たった一度、その恩返しをすりゃいいだけよ。その従順さを見せりゃ、負債なんぞチャラにしてやる」
瀬川はさらに選択を迫った。湧き出る笑いを噛み殺すようなその口調は、九分九厘要求が通ると思ってのものだろう。
だからこそ、だろうか。
入宮は、一度固く目を瞑った後に、くっきりと見開いた。
「そんなに負債を負わせたいなら、何十でも何百でも負わせればいい。あたしは、あんた達の掌の上じゃ踊らないっ!!」
炎が燃えるような虹彩の中には、薄汚れた瀬川の姿がくっきりと映し出されているに違いない。
モニターの中にいるのは、やはり俺の知る入宮知佳なんだ。改めてそう感じさせるような、懐かしい瞳。
伊田も瀬川も、その輝きに当てられたように、しばし言葉を失う。
ただ、それでも数秒後には、その口元に笑みが戻った。
結局のところ、先程の悪魔じみた二択で困窮するのは入宮だけでしかない。伊田と瀬川にしてみれば、どちらでも同じ事だ。
ここで服従し、奴隷への道を転がり落ちるも良し。
常人の限界を超えてなお踏み留める極上の獲物を、さらに追い込むも良し。
いやむしろ、後者こそが望まれたものであった可能性すらある。
「ヘッ、そうかよ。そりゃあ、残念だ」
瀬川はそう言いながら、わざとらしく口元を舐め回す。伊田もまた、大黒天じみた笑みの裏に底知れない黒さを覗かせる。
悪意の夜は終わらない。入宮が本当に潰れる、その時まで。

「さて、ではそろそろ今日の調教に入ろうか。あれだけの啖呵を切ったのだから必要もあるまいが、念の為に縛るぞ」
伊田が4本の縄を扱きながら告げると、入宮の表情が強張った。奴が緊縛を行う時は、大抵ろくでもない責めが待っているからだ。
「おう。どうやっても動けねぇように、ギッチリとふん縛ってやんな」
入宮の肩を掴む瀬川も、嬉々とした声を上げる。
そこから伊田によって、憎らしいほど手馴れた緊縛が始まった。
まずは乳房を搾り出すような後手縛り。そしてその縄と、腿に回した縄とを結び合わせた開脚縛り。
「またこんな格好? いい大人の男が二人もいて、よっぱどあたしに暴れられるのが怖いんだね」
そう毒づいてみせる入宮の頬は、赤く染まっていた。
いくら連日のように受けているとはいえ、Mの字に大股を開く羞恥には慣れないようだ。
「怖がってんのはテメェだけだ。俺らはむしろ、楽しみだぜ?」
瀬川のその言葉に、伊田もまた頷いてみせる。両手にマッサージ器と、アナルバルーンを携えながら。
入宮は下唇を噛みしめる動きを見せた。怯えているらしい。
彼女の忍耐が最も容易く破られるのが、マッサージ器――スライヴによる陰核責めだ。
それに加えてアナルバルーンは、調教の最初、浣腸による排泄を阻んだ悪夢の象徴。
特に伊田が今手にしているものは、アナル栓とは違う。調教用の特注品だ。長さは実に30cm、直腸はおろか悠にS字結腸にまで達する。
恐怖心が湧き上がるのも当然だった。
「これまで、指やディルドウばかりで悪かったな。こいつを使ったが最後、おまえの決意が砕けるかと思って躊躇していたのだ。
 だが……先程の気概を見て安心できたよ。おまえはまだまだ、私達を愉しませてくれるらしい」
伊田は白々しく告げながら、ハンドポンプを握りしめる。
シューッ、シューッ、と空気の送り込まれる音がしはじめ、垂れ下がったバルーン本体が膨らんでいく。
黒い蛇のようなゴムが太さを増し、あらゆる責め具の直径を凌駕していく様は、入宮の目にどれほど異様なものと映るだろう。
入宮の恐怖を存分に堪能した後、瀬川は親指で開放ボタンを押し込んだ。すると、ペットボトルほどにも膨らんだバルーンが一瞬にして萎びていく。
「ご覧の通り、この道具ならばいくらでも苛烈な責めが楽しめる。これまでの責めの記憶を一新するほどにな。では、始めようか」
瀬川は笑みを見せ、バルーンにたっぷりとローションを塗りこめて責めの準備を整える。
その奥では、入宮もまた唇を引き結び、耐える覚悟を固めていた。



「どうした、まだ半分だぞ」
伊田がそう言いながらハンドポンプを握りこむと、入宮の足指が縮こまる。
伊田はさらにシュッ、シュッと二度空気を送り込み、様子見に入った。
早くも勃ち上がりつつある陰核を人差し指で押し込みながら、やや濃さを増した陰毛を指先で弄ぶ。
「大分伸びてきたな。ここも、腋の下も。華の女子高生……それも学年一の人気を誇る器量良しとは到底思えん」
恥辱の言葉。それは容赦なく入宮の表情を歪ませる。
そう。伊田達は『負債』を理由に、入宮に様々な嫌がらせを課した。睡眠妨害、排泄管理、露出、そして無駄毛処理の禁止。
いかに女子とはいえ、人体構造上、守るべき場所には毛が生える。
その処理を一ヶ月余りも禁じられれば、相応に伸びるものだ。文句のつけようもない美少女である入宮であろうと。
「あんた達が、そうさせてるんでしょ……!! あ、あたしだって、剃りたくて堪んないよっ!!!」
無駄毛の伸びを野次られるのは、入宮が最も嫌う事のひとつだ。当然この時も怒りを露わにする。
しかしまさにその瞬間、伊田が勢いよくアナルバルーンを引き抜いた。計6回分空気を入れた状態で。
「っんああああ゛っ!!」
入宮の表情が、憤怒から驚愕にすり替わる。
括約筋が痛まないよう計算はしているのだろう。だがバルーンが抜き出される瞬間、その縁にあたる菊輪は一瞬ながら明らかに捲れ上がっていた。
透明な汁を撒き散らしながら、ぐっぱりと開いた腸内が空気に晒される。
「良い啼き声だな。すっかり快便の虜というわけか」
さも可笑しそうに笑う伊田を、入宮は息を荒げつつ睨み下ろした。
「む……無茶苦茶しないで!!」
「なに、そろそろ無茶が出来る頃合いだ。そのために今日まで、括約筋を伸ばす調教に徹してきたのだからな。
 その証拠に、見ろ。バルーンがもうおまえの腸液塗れだ」
伊田は落ち着き払って入宮の怒りを受け止めつつ、その鋭い視線の先までバルーンを持ち上げる。
奴の言う通り、バルーンからは今も透明な雫が滴り落ち続けている。明らかにローションの粘りとは別物だ。
「く、うっ…………!!」
腸液。その決定的な証拠を持ち出されたが最後、入宮はそれ以上反論を持ち得ない。ただ心から口惜しそうに、怨敵を睨み続けるしかない。

「いい眼だ。どれ……次はまた、腸の奥まで入れてやろう」
伊田はそう言い、アナルバルーンを開いた肛門の中へ挿入しはじめる。全長の約三分の二、20センチの辺りまで。
シュッ、シュッ、と音がするたび、厳しい入宮の表情に不安が混じった。
今度の空気入れは7回。入宮の鼻頭の皺が、腸内の相当な圧迫感を物語る。
「どうだ、奥の奥までみっしりと埋め尽くされた感覚は。バイブにディルドウ、玉蒟蒻にピンポン玉、茄子……色々と入れてきたが、腸壁に張り付いたゴムが拡がる圧迫感は格別だろう。
 腹にグッと力を込めて息んでみろ。腸の中身を感じろ」
伊田は再び入宮の茂みを弄びながら命じた。入宮はその伊田をただ睨み据えている。
伊田の口角が上がった。
「出来ぬのなら……私が息ませてやる」
その言葉と共に、伊田の親指と人差し指が陰核を捉えた。そして、ごく軽く剥くような動作をする。その瞬間。
「んくっ!!」
入宮の右膝が跳ね、目が固く瞑られる。伊田の指がくり、くりと動きを見せれば、白い歯まで覗くようになる。
信じがたい事ながら、完全にクリトリスでの絶頂をコントロールされているようだ。
そして入宮がいよいよ絶頂に至ろうとしたその瞬間、伊田の手首に筋が浮き、一気にバルーンが引き抜かれる。
「ふわぁあぁああああうっ!!?」
一瞬にして入宮の目が見開かれ、絶叫が響きわたる。
肛門はバルーンを惜しむように火山口の如く捲れ上がり、内に引き込まれてからも、喘ぐような開閉を繰り返す。
そしてある程度の張りを備えたまま垂れ下がるバルーンの先からは、やはり透明な汁が垂れていた。
「おまえに憧れる男子高校生にも教えてやりたいものだ。おまえ達の惚れた相手は、擬似的に一本糞をひり出すだけで絶叫するような女だとな」
調教師二人のうち口が減らないのは瀬川だが、伊田もまた言葉責めに容赦はない。相手の嫌がる部分を的確に突いてくる。
「はぁ、はぁっ……皆、あんたが考えるほど馬鹿じゃない。あたしの状況くらい、解ってくれる!」
肩で息を吐きながら、入宮は必死で反論を口にした。
「ヘッ、花畑なコト抜かしやがる。マン毛伸ばして腋毛も生やして、ケツ穴ヒクつかせて。傍から見りゃ今のテメェは、オツムのいかれた痴女でしかねぇんだよ!!」
傍らで様子を見ていた瀬川が、下劣極まりない横槍を入れる。
勝手を言いやがって――! 俺は思わずそう憤り、モニターの乗った机に拳を叩きつけてしまう。
「好き勝手言わないで! 全部、全部あんた達がそうした事でしょ!?」
当然、入宮も声を張り上げた。当然だ。いくら追い込まれているとはいえ、こんな理不尽を黙って受け入れる入宮である筈がない。
だが、所詮俺達はただの子供だ。権力もなければ自由もない。心の限りを叫んだところで、悪意ある大人相手では嘲笑われて終わりだ。
「そうだな。ルビーのように一際の輝きを放っていたおまえを、こうも浅ましく成り果てさせたのは私達だ。
 今のおまえは最早、ひび割れたガラス玉が赤い染料を纏っているだけに過ぎん。半端は惨めだ。その染料も、ここで洗い流してやろう」
伊田は笑みを浮かべながら、バルーンを肛門内に押し込んでいく。
深く、深く。先程直腸奥と言っていた20cmを超えても、なお。
「あっ!? ちょ、ちょっと!!」
バルーンが根元まで到達しようという頃、入宮が声を上げた。呼吸の感覚が妙に短くなり、視線が惑い、明らかに様子がおかしい。
それは伊田にも伝わっている筈だが、奴はただ淡々とハンドポンプを握りつぶしにかかる。
「い、いやーっ! は、入ってるっ、変なところに入ってるってば!! 一回抜いてよ、やっ、やだああっ!!」
錯乱したような入宮の発言で、事情が判った。どうやらバルーンの先が、結腸の方に入り込んだらしい。
正確には、伊田によって『入れられた』というべきか。
「そう喚くな。玉蒟蒻が入ったこともあっただろう。深いアナル性感を得るためには、欠かせぬ場所だ」
伊田はハンドポンプを握り込んでいく。6回、7回、8回…………11回。
「やっ…………く、苦しっ……お、お腹、破れちゃう!!」
「この程度では破れん。そのまま、グッ、グッ、と括約筋を締めてみろ。腸の奥まで詰まった感触を味わえ」
諭すような伊田の言葉と共に、さらにポンプが握られる。入宮から悲鳴が上がる。
そして数秒後、伊田の親指が空気を抜くスイッチを押し込んだ。
「はぁっ、はぁっ……はあっ、はーっ、はーーっ………」
入宮の呼吸は乱れていた。顔の汗もひどい。そして何より俺を不安にさせるのは、瞳だ。
まだ調教が始まってそこまで時間は経っていない。にもかかわらず、入宮の瞳に燃えるような力強さはない。その瞳の動きはむしろ、危うい童女を思わせる。
いつになく追い詰められているのは間違いない。
伊田の手の平が、再びハンドポンプを握りつぶす。10回、11回……12回。
「んぐぅううう゛っ!!!!」
入宮の表情は本当に辛そうだ。バスケの試合で負傷した時でさえ、部員の前で不敵に笑ってみせたあの入宮が、顔をぐしゃぐしゃに歪めている。
「どうだ、感じるだろう。男なら前立腺が刺激され、ドライオーガズムを迎える頃だ。今のおまえなら、その気分も理解できるだろう」
伊田の手が握り込まれる。シュッと音がする。
「はぐっ……!!」
入宮の鼻腔は開き、白い歯が再び噛み合わされた。
「ははっ、情けねぇツラしてやがる。ケツメドアクメを迎える寸前ってぇ感じだな」
瀬川の煽りで薄らと眼を開くものの、苦しげな表情は変わらない。
伊田の指が動き、シューッと空気が抜けると、
「ああぁあぁ…………!」
そこでようやく、涎すら垂らしかねないほどの安堵の表情が浮かんだ。しかし、その束の間の平穏はすぐに破られる。
「さて、『慣らし』はこのぐらいにしておくか」
伊田ははっきりとそう告げ、腸液に塗れたアナルバルーンを引き抜いていく。
「慣らし……?」
入宮の声と、俺の心に浮かんだ言葉が重なり合う。
「そうだ。おまえには今日、随分と格好をつけられてしまったからな。調教師の面子にかけて、恥を晒して貰わなければならん。なぁ、瀬川よ」
伊田は老獪な笑みを浮かべつつ、スライヴを手にした瀬川を振り仰いだ。
「だな。音頭は任せるぜ」
瀬川も心得た様子でスライヴの電源を入れる。
心臓まで震わせるような重い振動音が響きはじめ、入宮の美貌が歪んでいく。
その様子を楽しみながら瀬川は、床からアイマスクを拾い上げ、悪魔じみた笑みで入宮の視界を塞いだ。
「あっ!!」
驚く入宮の声は悲鳴に近い。
「今更脅えることもなかろう。この一ヶ月、何度か目隠しでのプレイはしてきたはずだ。
 いや……だからこそか? 視界を奪われる――ただそれだけで、人間の感度は跳ね上がる。
 二度目に蝋を垂らした時も、六度目に陰核での絶頂を覚えこませた時も、おまえの反応はそれは凄まじかったからな」
わざとらしい気付きの演技を交えつつ、瀬川はボールギャグを手にする。そしてそれを、恐怖で強張る入宮の唇に咥えこませた。
幼少期の俺でさえ惚れた、桜色の上品そうな唇。それが穴のあいた球体によって、ひどく下品に開く。
「はも゛っ、ほお゛ぉも゛っっ!!」
入宮は何かを叫んでいた。だがその意思はもう、俺や伊田という“外の人間”には届かない。
目隠しとボールギャグ。そのたった二つをつけただけで、誰よりも人間らしいはずの入宮が、異形の生物に見えてしまう。
伊田はそんな入宮を満足げに見下ろしつつ、瀬川に何か耳打ちする。
「ヘッ、そりゃいい。テメェも大したゲスだぜ、相棒」
瀬川の賞賛するような表情が、不安を煽って仕方がない。
そして気に入らない事はしない主義の瀬川は、嬉々として準備に入る。椅子の裏に小さなプレイヤーのようなものを置き、そこから伸びるヘッドホンで入宮の耳を覆い。
「んもぅっ!?」
ボールギャグ越しに入宮が呻き、瀬川の笑みが深まった。
「聞き覚えあんだろ? なんせテメェ自身の声だからな。クリにスライブ当てられて、何遍も気絶しながらイキまくってた時のよォ!」
瀬川が哄笑する中で、伊田も含み笑いを漏らす。
そして伊田はアナルバルーンを肛門に捩じ込み、瀬川はスライヴのスイッチを改めて入れた上で、入宮の開いた脚の間に触れさせる。
「おもぉぉおオっっ!!」
ギャグに阻まれた悲鳴が必死さを増し、そこから地獄が始まった。

責めの手法は多岐に渡った。
獣じみた荒々しい責めを好む瀬川だが、当然ながらローターやマッサージ器を用いた細やかな責めにも精通している。
スライヴの先や側面を、微妙に変化をつけつつ陰核に陰唇、太腿に這わせ、幾度となく絶頂させていく。
その傍らで瀬川も、アナルバルーンで肛門を苛め抜いていた。
ごく浅く、腸の半ばまで、深く、それ以上に深く。様々にバルーンの挿入深度を変えつつ、限界まで膨らませては萎ませ、最後には腸壁を捲り上げる勢いで引き抜く。
どうしても気になってネット検索をかけたが、結論は変わらない。
成人女性の直腸の長さが約20cm、バルーンの長さは30cm。つまりどう考えても、20cm以上バルーンが侵入している時は、直腸の先……S字結腸にまで入り込んでいる事になる。
日常生活では、まず刺激を受ける事がありえない場所。
スポーツ一筋に生き、爽やかなスポーツマンと結婚していたはずの入宮には、生涯無縁であったはずの刺激。
そう考えると、入宮の狂乱が本当に居たたまれない。

「うむぉおおあううーーっ!! おおぅああああぅうおぉうーーーーーっ!!!」
入宮はニ所責めを受けながら、悲痛な叫びを上げ続けていた。責めそのものがつらいのか、それともイヤホンから漏れる自身の嬌声に狂わされているのか。
「本当にどこまでも素直な雌だ、よくあふれる。なぁ瀬川」
伊田はそうした呟きを漏らしながら、嬉々として責めを続けた。
「オウ。小便漏らしてるみてぇに駄々漏れだ」
瀬川もそう返し、濡れそぼった秘裂にスライヴを宛がっては水しぶきを散らす。
入宮の反応は刻一刻と酷くなっていく。
「うむぅうーうーっ、ほぁむぉおおうおーーーっ!! おもぁあおお、あおおーっ、おもおおーーーーっ!!」
そうした不自由な嬌声が、絶え間なく上がった。
両腿の筋肉を隆起させながら何度も何度も内股に閉じようとし、縄の巻かれた際の部分に濃い紅白のコントラストを作る。
膝から下は地団太でも踏むように暴れては足裏をマットに叩きつけ、ぴしゃっぴしゃっと水溜りを叩くような音を立てる。
胸の上下幅も只事ではなく、背中が完全に椅子から浮く事が何度もあった。
イヤホンを嵌められた頭は何度も天を仰ぎ、ぐぐぅーと白い首を突き出しては、脱力するように顎が引かれた。
9月第一週の土曜を思わせる……いや、明らかにそれ以上の絶頂状態だ。
俺からすれば痛々しいその反応を、伊田達はただ愉しむ。
「おほっ、すげぇすげぇ。すまねぇな伊の字、また腕に掛かっちまった。こいつがあんまりにも潮噴くんでよ」
「なに、むしろ本望だ。こうして美少女の汁に塗れる瞬間にこそ、生きている実感を得られる」
瀬川は目元の液体を拭いながら、恐ろしいほどのハイペースでハンドポンプを握りつぶしていく。
「うう“-っう“、ほぉお゛ぉお゛おおお、ああっお゛っっ!!」
ボールギャグの脇から涎を垂らしつつ、くぐもった悲鳴が発せられる。まず間違いなく、伊田の無茶のせいだろう。
凌辱。
もはやその言葉しか浮かばない。
そしてその凌辱が30分あまりも続いた頃、伊田と瀬川は頷きあい、ボールギャグの留め具を外しに掛かった。
さらに指で、口内の球体部分を取り出す……までもなく、入宮自身の舌が堰を切ったようにボールギャグを押し出す。
信じがたい量の唾液が入宮の顎を伝っていく。しかし、その衝撃はすぐに上書きされた。
「あああぁいくっ、いくいくいくぅっ!! わぁあああああいぐうっ、いぐぅいぐいくぅぅううーーっ!!!」
そうした叫び――まさに絶叫が、桜色の唇から放たれたからだ。
断続的に絶頂を訴える様は土曜日と同じだが、声量がまるで違う。多少は声を抑えようという意思も感じられた前回に比べ、今は声にセーブが掛かっていない。
「おー、うるせぇうるせぇ。耳が塞がってるもんで、ボリュームがバカになってやがら。
 この調子じゃあ、イヤホンから聴こえる音か、自分が喚いてる声かの判別すら付いてねぇな、このガキ」
蔑みの表情を浮かべる瀬川。その傍に膝をつく伊田の眼もまた、冷酷な筋者のそれだ。
「だろうな」
短い呟きの後、限界まで膨らまされていたと思しきバルーンの空気が抜けていく。
同時に瀬川の手がアイマスクを取り去ると、その入宮の瞳が露わになった。
一変していた。
普段の溌剌とした光はない。大粒の涙を溢しながら、眩しそうに瞬きを繰り返す様は、まるで無力な子供のようだ。

「自分の状態が解るか? 中々に酷い有様だぞ。男勝りも結構だが、そこまで女を捨てる事もあるまい」
伊田はそう言いながら、責め具の入ったバッグから手鏡を取り出して入宮に見せ付ける。
さすがにそれを見れば、入宮も表情を凍りつかせた。
確かに無惨だ。
艶のある黒髪は汗を吸って額や肩に張り付き、鼻腔からは汁が垂れ、口元にも涎の跡がある。
乳首は常に捻り上げられるような形に尖り、秘裂から内腿にかけてはぬらぬらと濡れ光る。
陰唇も肛門もぱっくりと口を開き、喘ぐように開閉する。
「っ………………!!!」
自らのその惨状に、入宮は言葉もない。
「ひひっ、こりゃまるでヤク中の娼婦だぜ。それもスラムの路地裏で、一回2,3ドルで股を開いてるような底辺の類だ」
瀬川にそう嘲笑われては、入宮もさすがに黙っていない。目元を震わせながら、瀬川と伊田を睨みあげる。
「馬鹿にしないで! あんた達がそうやって偉ぶれるのは、この狭い部屋の中でだけでしょ!?
 外に……日の当たる場所に出れば、あんた達なんて皆に気持ち悪がられるだけ。あたしより上なんて、誰も認めない!!」
いかにも入宮らしい、強い眼だ。だがそこには、芯の通った決意ではなく、必死さしか感じられない。
蝋燭の最後の一本にかろうじて火を灯し、獣を近づけまいと振り回しているような。
だが彼女を囲む二匹の獣は、火を恐れない。そして何より、ヒトの肉の旨さをよく知っている。
「ほう、おまえは私達よりも上等なつもりか。では、ぜひ見せてくれ」
瀬川はその言葉を待っていたとばかりに、入宮の手足の縄を解きにかかる。
「おら、しゃんと立て!」
絶頂と緊縛のせいで足元のおぼつかない入宮を、瀬川が抱えるようにして立たせた。
そしてこの後、俺と入宮は思い知る。地獄には、さらにその下があるのだと。



「さてと。んじゃあこれから、テメェがどんだけ価値のある人間が拝ませて貰うわけだがよぉ。
 その前にひとつ、面白ェもんを見つけちまったぜ?」
瀬川はそう言って、折り畳まれた白い布を傍の箱から取り出す。
その物体に目を凝らし、何なのかを理解した瞬間、俺は頭を殴られたような衝撃を受けた。
それは、ユニフォームだった。入宮が3年間着続けていた、白いバスケットユニフォーム。
当然それは、誰よりも入宮自身が見慣れたものだ。俺が意識を向けた時には、当然ながら彼女も硬直していた。
「これよぉ、どこにあったと思う? ここの上にガキが住んでるだろうが、奴のタンスの中よ。裁縫でもしようと開けたらビビったぜ。あんな人畜無害そうな顔して、とんだフェチ野郎だぜ奴ァ」
瀬川は額を抱えて笑う。入宮の俺への評価を落とすのが、よほど嬉しいらしい。
奴は二つ許せない事をした。
一つは、嘘をついたこと。あいつが自分で裁縫をする訳がない。何もかも俺にやらせている奴だ、家捜しの理由は他にあるに違いない。
そしてその目的とは恐らく、許せない理由のもう一つ、入宮のユニフォームの奪取だ。

『あたし今、後悔は一杯あるけどさ。それでもバスケやってた事だけは、誇って生きてくつもりなんだ』

ある日入宮は、真剣な表情で俺にそう告げた。バスケットに出会って、心身ともに成長して、仲間が出来て、後輩が出来て。その思い出は宝物だと。
だから、その思い出の詰まったユニフォームだけは、瀬川達の手が届かない場所に隠しておいてほしい。
うなじまで見えるぐらいに深々と頭を下げて、入宮は俺にそう頼み込んだ。
俺はそれを請け負い、自宅のタンスの奥に大切にしまったと伝えた時には、感動のあまり頬にキスまでくれた。
俺はその幸せにしばし酔いしれた。まさか、俺の生活空間にまで踏み込まれるとは思いもせず。
いくら兄貴分とはいえ、非常識にも程がある。だが……だからといって、訴える先はない。
舎弟頭の板間さんに密告しても、兄貴分のやる事にケチをつけるなと釘を刺されるに決まっている。
では窃盗罪として警察かといえば、これは論外だ。女子高生への奴隷調教。人身売買。そもそもそれらに加担する俺自身が未成年と来ては、痛い腹が多すぎる。
だから俺は、決定的な証拠を前にして、泣き寝入りするしかない。
「あ、あんた達、どこまで最低なの……? やっていい事と悪い事も判んないの!?」
入宮はそう一喝した。さすがに彼女の怒りは凄まじい。だが、瀬川の笑みは消えなかった。
「テメェ自身も言ってたじゃねぇか。この狭い部屋の中じゃ、俺達が偉いってよ。
 ここにいる限り、テメェに何をしたって悪いコトにゃならねぇんだよ」
そう言って瀬川は、入宮の耳を舐め上げた。
「ち、ちょっ!!」
入宮は露骨に嫌がる。だがそれと同時に、瀬川達が理屈の通用する相手ではないと改めて悟ったらしい。
モニター越しにも怒気が見て取れる動作でユニフォームを引ったくり、命じられるままに着用しようとし、はたと止まる。
「…………その、あれは?」
入宮の視線の先は、自らのデルタゾーンに落ちている。瀬川が目を細めた。
「言っとくが、ブラもパンティもなしだ。その方が動きやすかろうよ」
嘲るようなその物言いに、入宮の表情が心底嫌そうなものに変わる。
「スポーツ舐めてるよ、あんた達」
穿き捨てるようにそう言い、ズボンを履きかける入宮。しかしそれを、今度は伊田が止めた。
「何なの?」
「いや、なに。少しスパイスを加えようと思ってな」
そう言って伊田が手にしたのは、先刻散々に入宮を苦しめたアナルバルーンだ。入宮の目が怒りに見開かれる。
「そう怒るな、ほんの余興だ」
伊田はそう言いながら、乾いたアナルバルーンに改めてローションを塗りたくり、入宮の肛門に挿入していく。嫌な予感はしたが、やはりS字結腸にまでだ。
「な、深っ…………ふざっ、けないで…………!!」
「何を言う、お前ならば問題なかろう。そら、いくぞ」
その言葉と共に、空気が送り込まれ始めた。シュッ、シュッ、という音が続き、その度に入宮の顔が僅かに歪む。
「あまり限界までという訳にもいかんからな、この辺りか」
伊田はユニフォームのズボンを入宮の腰まで引き上げつつ、動きやすいよう広く作られた裾からコードを垂らす。
「はははっ、まるでシッポだぜ。格好だけは早くもイヌってか!」
瀬川が嘲笑う中、入宮は終始憮然とした表情で着替えを進める。

数分後には、俺の見慣れた姿がそこにあった。
深めのVネックが、胸の谷間が覗くかもしれない、という淡い期待を抱かせ。
鎖骨から胸の頂点、そして腹直筋をなぞるように走る二本のラインが、抜群のスタイルをさらに際立たせ。
膝上丈の余裕のあるズボンが、かえって膝から下の脚線美を強く印象付ける。
白ソックスや赤と白のバッシュも懐かしい。
入宮に惚れていた俺は、その姿を目当てに何度も試合会場へ足を運び、そのたび下心を忘れて純粋に熱狂した。
コートを縦横無尽に駆ける入宮は、紛れもなくスターだ。
試合終了直前、ゴール下で強豪校のエース二人に阻まれて逆転の目が潰えたかに思えても、入宮はけして諦めない。
振り返って完全なパスの動きを見せ、体育館中を騙しながら、素早くボールを手の内に引き戻す。
そして電光石火のバックロールターンで敵ディフェンスの脇をすり抜けて、シュートを放つ。
信じられない、という顔に見守られながらのブザービーター、奇跡の逆転。県大会優勝候補筆頭からの大金星。
俺はその姿に思わず涙を流し、入宮の名を叫び続けた。俺だけじゃない。クラスメイト全員……いや、違うクラスの奴らさえ、同じように泣いていた。
最後の戦いとなった全国大会2回戦でも、結果的に敗退こそしたが、後に準優勝する敵チームのエースをして『あの化け物がもう一人いたら勝てなかった』と言わしめる活躍ぶりだった。
学年中を探せば、入宮より可愛い女子や、性格のいい女子だっているだろう。だがそんなものとは比較にならないぐらい、入宮は俺達、桂眞高校男子にとっての憧れなんだ。

その彼女は今も、下劣な男達の手で穢され続けている。

「どうした、たったのスクワット100回だぜ。まさかバスケ部の部長ともあろうお方が、こなせねえ訳ァねえよなあ?」
瀬川が煽る前で、入宮は両手を頭の後ろに組み、膝を落としては伸ばしている。
本来の入宮なら、100回のスクワットなど問題にならない。
体育館近くを通ると、たまに女子バスケ部の練習風景が見えたが、そこでの入宮はいつも軽々とスクワットをこなしていた。
後輩と同じセットをこなしながら、『もっと膝曲げて』、『あと20回、声上げていくよ!!』などと、体育館に響く声量で号令をかけていたものだ。
そもそも陸上に打ち込んでいた中学時代から、野球部やサッカー部の男子とスクワット対決をやり、軽く汗しながら悠々と勝利していた。
そのせいで入宮には、スレンダーな美人にも関わらず『雌ゴリラ』などという不名誉な渾名がついたぐらいだ。
だが。その入宮が今は、40回の時点で足が錆付いたように動きを鈍らせていた。
「ほらどうした、しっかり立ってろや。俺らとは違って、スポーツで鍛えた健康な脚なんだろ。
 それとも俺らの尻穴調教があんまりにも善すぎて、脚の髄までトロけちまったかよ?」
瀬川はなおも煽りながら、内股になりかけた入宮の太腿を平手で打つ。
「痛い、って……!!」
入宮は不服そうに口をゆがめながら、少しずつ脚を開いていく。
顎から汗の粒を垂らし、床を見つめながら必死に呼吸を整え。そんな彼女を見るのは初めてだ。
だが、無理もない。入宮はつい10分ほど前まで、両脚に本格的な緊縛を受けた上で、何十回と絶頂を迎えさせられていた。
驚異的な意地を見せてはいるが、立っているのもやっとだろう。
「ヘッ、すげぇ汗だ。足もガクついてっしよぉ。テメェそれで本当にバスケ部か? こうなりゃ部長様どころか、スタメンだったのかも怪しいぜ。
 しかしあれだ。一ヶ月も剃らねぇと、さすがに腋毛の黒さも目立ってくるもんだな。テメェみてえなド直球の美形にも容赦なく毛を生やすなんざ、神さんもイイ趣味してるぜ。
 ンな睨むなって、元はテメェ自身が撒いたタネだぜ。テメェが大人しくしてりゃあ、毎日8時間は眠らせてやるし、毛の処理もさせてやるぜ。
 オラどうした。俺を睨む元気があんなら、さっさと立て。そうやって屈んでっと、ズボンの端からマンコが見えちまうぜ?」
瀬川は煽り続ける。入宮の恨みを買えば買うほど、愉快そうに。
入宮は歯噛みしながら、必死にスクワットをこなしていく。
「あ……ぁああっ…………あ、ああっ………………ん、くうっ…………」
腰を落とすたび、入宮から声が漏れた。普通スクワットといえば、身を起こす時にこそ苦しいもののはずだ。
つまりこの入宮の呻きは、スクワットの苦しさが主因ではない。恐らくはアナルバルーンの圧迫のせいだ。
スクワットで腰を下ろした状態は、和式便所に腰掛ける姿勢に近い。つまり、最も強く腹圧がかかる姿勢だ。
腰を落とすにつれ、入宮から漏れる声が大きくなる事実を鑑みても、まず間違いない。
しかしそうなれば、バルーンによる圧迫を受けただけで動けなくなるほどに、入宮のアナル性感が開発されきっている事になる。

「どうした、まだ38回分残ってんだぜ。いつまでそうして浸ってるつもりだ、腋毛女」
瀬川がさらに追い込むと、入宮が顔を上げた。
「くそ、ぅ……っ!!」
汗まみれで歯を食い縛り、手首や内腿にに筋を浮かせながら、決死の様子で腰を持ち上げる。しかし、捗らない。
そもそも彼女の今のコンディションで、62回をこなしている事自体が異常といってもいい。すでに常人の限界は遥かに超過しているのだろう。
「遅々として進まんな。どれ、気合を入れてやろう」
伊田がそう言いながら、入宮のズボンから垂れ下がるハンドポンプを手に取った。そして、シュウッ、シュウッ、と空気を送り込む。
「いやあっ、やめて!!!」
入宮はぞっとした様子で背後を振り向いた。その様子を見る限り、やはり腸の圧迫が最大の壁らしい。
「さあ、再開だ」
伊田に文字通り尻を叩かれ、入宮は渋々ながらスクワットを再開させる。だがそれ以降、腰の重さはさらに増していた。
下半身を痙攣させながら汗まみれで腰を上げ、10回分ほど呼吸を整えてから、唇を引き結んだ覚悟の表情で腰を落としていく。
「あぁ……ぁああ、あ…………ぁあああ、ぁああっ…………っく、はっ…………ぁ………………っ!!」
腰が深く落ちるにつれ、熱い吐息が吐き出され、最後には泣くような声になる。
腹圧が増し、腸を満たすバルーンの圧迫を強く感じてしまうせいだろう。
ともすればペットボトルほどにまで膨らんだ風船が、結腸に至るまでギッチリと詰まった状態。確かにそれは辛いだろう。だがその事実に思い至った時、俺には別の考えも浮かんでいた。
腰を降ろすたびに声が漏れ、深々と降りきったところでぶるぶると打ち震える。これはまるで――
「まるで、アナルセックスに浸る豚だな」
俺の考えを、まさに瀬川が言ってのけた。入宮の肩が跳ね、頭が持ち上がる。その驚愕の表情は、図星と白状しているも同然だ。
「ち、違っ……!!」
「違わねぇ。テメェはケツで感じてんだ。生意気通そうってんなら、もう少し駆け引きってもんを身につけな。今のテメェは、誰がどう見ても、ゴム風船相手のアナルセックスに浸ってたぜ」
俺は瀬川が心底嫌いだが、今の発言に限っていえば、奴の言う通りだ。
「あ、あたし…………あたしは、お尻で、感じて……なんか………………」
入宮はうわ言のようにそう呟き、意地を見せてスクワットを続けようとする。しかし立ち上がり切れず、尻から地面に崩れ落ちてしまう。
その瞬間。
「おお゛お゛ぉっ!!!」
物凄い声がした。俺は最初その声が、瀬川の呻きなのかと思った。そのぐらい、女らしさのない低い呻きだった。
入宮がはっとした表情で口を押さえるも、もう遅い。
「おいおいおい、何だ今の声は? 今のが女の出す声かよ!!  くくひっ、いや、いや良い。確かに色気はあった。えっらく気持ち良さそうなのが伝わってきたぜ。
 だがな。あんな露骨なヨガり声、俺だって恥ずかしくて出さねぇよ!!」
瀬川がまず嬉々として嘲る。
「ああ、今の声は良い。アナル性感が極まり、腹の底から搾り出された声だ。これが自然と出るようなら、『完成』も近いな」
一方の伊田の発言は、嫌味がないだけに恐ろしい。
「ち、ちがっ、違うっ!!」
入宮は泣きそうな表情で否定の言葉だけを繰り返すが、何がどう違うという論理的な説明はできていない。
そして俺も、今の声は快感からのものだと思う。推論ではなく、知識として知っている。
俺が今までのこの屋敷で見てきた奴隷は皆、アナル調教の終盤であの『お』行の声を出しはじめるんだ。
女の子に本来求められる愛らしい喘ぎの対極。ぶりっ子の演技や虚飾、強がり。それら一切が取り払われ、純粋な快楽を喉から漏らすときの声。
仮にも女性として生きてきた人間だ。ともすれば男のそれにも思える低い喘ぎを、わざと発する事などありえない。
つまりそれは、出すのではなく、“出てしまう”のだろう。アナル性感が本当に極まった時には、自然に。
「ちがうっ……違う、ちがう違うちがうっ、違う…………!!!」
動揺を隠せず、狂ったように同じ言葉を繰り返す入宮。
だが、瀬川と伊田が責めの手を緩める事はない。あと半歩で相手が落ちると解っている崖際で、躊躇なく突き飛ばせる無情さ。それが、調教師の調教師たる所以だ。

入宮が驚異的な粘りを見せて100回のスクワットを達成し、その場に項垂れた後。
今度は水分補給とわずか10分の休憩を挟み、地下10周分のうさぎ跳びが命じられる。
意地を見せている入宮は、当然これを拒めない。
うさぎ跳び。これは飛び上がっての着地が繰り返される分、スクワット以上に腸への加圧が高くなる。そのため、入宮の苦しみぶりも大変なものだった。
しかしそれでも、入宮はあくまで根性を見せつける。
「桂高……女バス部をっ、甘く…………見るな………………っ!!!」
額からの珠の汗が涙のように目元を流れ落ちる中、入宮は眼前だけを見据え、歯を食い縛りながら地下を円周する。
その鬼気迫る様は、皮肉屋の瀬川にすら口笛を吹かせるほどのものだった。
病的なほどの意地。それは恐らく、部活の思い出の詰まったユニフォームのせいだろう。
何かに一心で打ち込んだ人間は、その思い出の品に仲間の影を見るという。
『自分達が力及ばないばかりに、主将を優勝台へ連れて行けなかった』
そう嘆くチームメイトを、入宮は一人一人抱き寄せ、皆が居てくれてよかった、皆と戦えたから悔いはない、と胸を張っていた。
そんな入宮だからこそ、ユニフォームを着た姿での屈服は許されない。身を切ってでも要求を呑みきろうとする。
感動的な姿だ。もしも俺がそんな入宮の調教役なら、どんな事情があろうと思わず情が湧いてしまう。
そういう意味で伊田と瀬川は、やはりある種のプロといえる。
奴らはバスケ部主将の燦爛と輝く意地を目の当たりにしてもなお、微塵もぶれない。
伊田は入宮が少しでも止まるたび、気合を入れると称して空気を注入したり、またはわざと空気を抜き、限界まで入れ、を繰り返す。
一見意味のない行動だが、入宮が顎を持ち上げながら必死に再開した直後、意図が明らかになる。

ぶっ、ぶうっ。

跳躍を前に力んだ直後、入宮のズボンから放屁の音がする。
「あっ!?」
今もって純情な入宮は、顔を赤らめて泣きそうに恥じ入り、逆に伊田達は大いに笑う。
明らかに、伊田がわざと空気を入れ、放屁をしてしまうように仕向けたのだろう。
「おいおい腋毛女、そりゃいくら何でも女を捨てすぎだぜ。確かにンな事されちゃこっちも萎えて、無意識に調教も手抜きになるかもしれんがよぉ。そこまでやるか?」
口の減らない瀬川は、当然ながら言葉責めを加えた。
「バカじゃないの。本当、あんた達って子供みたい…………うちの一年の方が、よっぽどしっかりしてるよ」
入宮は反論しつつも、よほどの恥なのか涙ぐんでいた。

その恥辱を経て、さらに自重による恥辱を数十も越え、ついに入宮は10周のうさぎ跳びを完遂する。
本当によくやった。まるで足を怪我した人間がフルマラソンを走りきったような感動がある。
ただ、やはり瀬川達にそれはない。
「はぁっ、はぁーーっ、はぁあっ、はーっ、はーーっ…………」
うさぎ跳びの着地姿勢のまま、肩で息をする入宮。瀬川がその前に屈みこむ。
「うーい、お疲れ」
何の感動もないその言葉と共に手を伸ばし、入宮のズボンに潜らせる。
「あ、ゃっ…………!」
入宮は当然拒絶するが、疲労困憊の彼女では瀬川の手を止めきる事はできない。そして直後、瀬川はしてやったりとばかりに顔を輝かせる。
「うおっ…………オイオイオイオイ、何だよこりゃ! オウ伊の字、すっげぇぞこれ。ドロドロなんてモンじゃねぇ、グショグショだ!!
 スライヴん時の汁ならもうとっくに乾いてる筈だからよぉ、こりゃ完全に、ケツで濡れた分だぜ!!
 はははっ! あの声聴いた時にもしやとは思ったがよぉ。このガキ、完璧にアナル性感に目覚めやがった!!」
喜怒哀楽を隠さない瀬川だが、ここまで激しく感情を出す機会は多くない。
そして、その言葉自体はおおよそ真実なのだろう。節張った指が膣内を掻き回すたび、かなりの液体がズボンの裾から飛び散っていくのが見える。
伊田もそれを前に、したり顔で頷いていた。
悪意ある調教師二人が揃って満足する状況――それが俺達にとって、喜ばしいものである筈がない。
俺が鳥肌の立つような悪寒を覚え始めたまさにその瞬間、入宮も恐怖の只中にいたのだろう。
そして。
「離せっ!!」
入宮はついに激昂し、秘裂をくじり回す瀬川の頬を叩く。
「ぐっ!」
瀬川が小さく呻き、その瞬間、入宮がはっとした表情になる。
入宮の悪い癖だ。あまりに感情が昂ぶると、対異性に限ってらしいが、手を出してしまう。そしてこの部屋で調教師に手を出すと、碌な事にならない。
入宮は頬を押さえる瀬川に、一瞬謝罪しようとする素振りを見せた。しかしその必要なしと思ったか、堂々と胸を張り直す。
「このユニフォームは、あたしたち女バス部員の魂なんだ。あんたなんかが、軽々しく触っていい物じゃない!」
あくまで真っ直ぐに己の信念を叩きつける入宮。
瀬川はその入宮に、ひどく静かな瞳を返した。瀬川との付き合いが浅くない俺でも、あまり見た事のない眼だ。
「一度のみならず、二度までも……ってか」
瀬川はそう告げると、手を後ろに伸ばして何かを手にする。その腕がゆっくりと戻り、入宮の前で止まる。
幾度となく入宮を泣かせてきた責め具――スライヴを手にした手が。
「立ちな」
瀬川がそう言って、入宮の顎を軽くスライヴで叩く。入宮はその瀬川を真正面から睨み据えたまま、ゆっくりと立ち上がる。
さすがにまだ足腰が万全ではないらしく、数歩よろけ、それを背後から伊田が止めた。
「頭の後ろで手を組め。スクワットん時と同じだ」
背面の塞がった入宮に対し、瀬川が言う。入宮が言葉に従うと、いよいよ瀬川は距離を詰め、スライヴを入宮の股間に宛がった。ユニフォーム越しに。
「手では触らねぇぜ。代わりにまたコイツで楽しませてやる。たっぷりとな」
「…………ほんと最低だね、あんた」
これから受ける責めを察した入宮が、それでもあえて顔を上げ、胸を張って瀬川に対峙する。
粗暴な瀬川に対し、ここまで真正面から対峙する『奴隷』は初めてだ。改めて入宮は、気が強く、芯の強い女性だったのだと思う。
だが、それもここまででは。その予感が、どうしても離れない。
「テメェだ。最低になんのは」
瀬川はそう言ってスライヴのスイッチに指をかけつつ、入宮の太腿を叩いて脚を開かせる。
その対面で伊田もまた、アナルバルーンから伸びるポンプを握りしめる。
入宮が瀬川を睨み据え、奥歯を噛みしめた直後。二つの責め具が彼女を苦しめはじめた。



30分は過ぎただろうか。
モニター内から漏れる音の大半は、変わり映えのしないものだった。
ヴヴーンというスライヴの駆動音と、衣擦れの音。アナルバルーンに空気が入っていく鋭い音と、解放の音。はあー、はあーっ、という乱れきった呼吸音。
だが、それらに混じる“あえぎ声”は刻一刻と変わっている。
ああ、ああ、と女の子らしい透明感があったのはすでに過去の話。
今、入宮の血色のいい唇から漏れる声には、かなりの頻度で『お』行の声が混じっている。

「おら、まーた腰が引けてンぜ。体育会系の意地とやらはどうしたんだ?」
スライヴを操りながら、瀬川が舐めるような声を出す。
そう言われては入宮も、瀬川を睨みつつ、歯を食い縛って腰を押し出すしかない。スライヴを自ら秘裂へ押し付けるように。
その状態が4秒ほど続いた、直後。
「お“、おっ、お“!!………っっお゛お゛おお“ぉお゛っっっ!!!!」
何度か喉で堰き止められた末に、またしても純粋な快楽だけを帯びた嬌声が迸る。
「ハハハッ、また出たぜ。ほんとに女のガキが出す声かよ!?
 いくら今の女子高生にゃ品がないっつっても、ンな男みてぇな声出してんのはテメェだけだぜ、女子憧れの部長サマよぉ!」
濃厚な嬌声が出るたび、瀬川は大いに入宮を嘲った。伊田もほくそ笑みつつ、駄目押しとばかりにバルーンを膨らませて苦しめる。
対する入宮は、それ以上恥を晒すまいとまた必死に堪え始めた。
しかしそれはつまり、スライヴとアナルバルーンから齎される快感を余さず受け止めることを意味する。
それを散々繰り返した果てに、入宮の足元にはバケツを倒した時のような液溜まりができていた。
スライヴが唸るたび、ズボンの広い裾から液体が漏れ出しては、がに股を作る両腿を伝って滴り落ちる。その結晶としての液溜まりだ。
当然、ズボンの股布部分は小便を漏らしたように変色し、裾の前部分は筋張った太腿にぴっちりと貼りついている。
コートの上ではあれほど格好良かったユニフォームが、今では性的なイメージしか訴えてこない。
そしてそれは、服の主も同じだ。
「そら。テメェの一番好きな角度行くぜ。正気保ってろや」
瀬川はそう囁きながら、スライヴに角度をつける。秘裂の上側を覆いつつ、クリトリスを下から舐め上げるような形に。
これが効いた。
「んぐぅううう゛っ!! お゛、お゛っ……っほぉおお゛お゛お゛お゛っっ!!!!」
下半身を激しく痙攣させ、夥しい量の愛液を散らしながら、天を仰いで絶叫する入宮。
相当絶頂の根が深い。多分一度きりではなく、我慢していた二度分、三度分を含んだ絶頂だ。なまじ快感を抑えようとしているせいで、反動が凄まじいんだろう。

「ひひ、出た出た。……っと、うへぇ、これじゃ足の踏み場もねぇや。身体中の水を愛液にしちまった感じだな。
 一旦補給させてやる。飲め」
瀬川は近くの床にあった瓶を拾い上げ、入宮の口に含ませる。そうして水分補給をさせてから、改めて責めの仕上げをするのが常だ。
「ぶ、ぶはっ。はぁっ、はぁ、はあっ……」
入宮はもう、水さえまともに飲めるコンディションになかった。息切れが激しい他に、動悸の乱れもあるのだろう。
そんな彼女に瀬川は、アイマスクを見せ付けた。
入宮の顔が一瞬驚愕の色に染まり、瀬川を見上げる。
「第二ラウンドはこいつを使う。アイマスクと、ボールギャグ、イヤホン。要はさっきと同じ五感封じよ。
 ただし、今テメェ自身が体感した通り、立った状態での責めってのは座った状態で受けるより遥かにキツい。こりゃ効くぜぇ」
瀬川はそう言いながら、黒いアイマスクで入宮の刺し貫くような視線を覆い隠す。
「………………っ!!!」
入宮の肩が強張り、唇が引き結ばれる。その唇を指でなぞりながら、瀬川はさらに畳み掛けた。
「ここまで来たら認めてやるよ。確かにテメェの意地は凄ぇ。高校の部活仕切ってるだけじゃ勿体ねぇ位よ。
 でも、悲しいよなぁ。最初はスジ肉みてぇに手のつけられなかったテメェも、コトコト弱火で煮込まれ続けて、今じゃ菜箸が簡単に通るほど柔くなっちまった。
 今からも、やる事自体は変わらねぇ。十分蕩けたスジ肉に、圧力鍋でさらに2時間ほど念を入れるってだけよ」
瀬川はそう囁きかけながら、入宮の白い歯の合間に球体を押し込む。同時に伊田も、ヘッドホンで彼女の頭を挟み込んだ。
「これは俺からの頼みだがよ、せいぜいシャンとしててくれや。
 鍋の蓋開けたら最後、煮崩れきってて原型がねぇ……ンな悲しい光景は嫌なんだよ」
音の届かない入宮の前で呟く瀬川。その顔はいよいよ悪魔じみた笑みに満ちている。無論、伊田も。

そこからまた、地獄が始まった。
ボールギャグからは何度も何度も切ない呻きが響き渡り、入宮の全身が痙攣する。
陰核と陰唇、直腸に結腸。そこでの快感を『徹底的』という言葉すら生ぬるく思える執拗さで刻み込まれ、彼女はモニターの中で狂った。何度も、何度も。
朝になり、貞操帯を嵌められる時には嫌そうにしていたから、心が屈した訳でもなさそうだ。
それでも身体の方は、すでに快楽に染まりきっているらしい。



「すみません。トイレ……行ってきます」
入宮はここ最近毎日そうであるように、授業中にもかかわらず教室を出て行く。
もはや日課となった今は、騒ぐ奴もいない。そもそも高3の11月も目前の今、教師も生徒も受験一色で、非進学組である俺達に意識が向く事自体がほとんどない。
ただその日に限っては、入宮の戻りが妙に遅かった。20分以上が経っても、戻ってくる気配がない。
「……すんません。俺もトイレ、行かせてもらいます!」
俺は嫌な予感がして、入宮と同じく席を外した。
教室から程近い女子トイレは、全て個室が開いている。ここにはいない。ならばと俺は階段を上がり、音楽室の横にあるトイレへ急いだ。
すると案の定、声が聴こえてくる。あっ、あっ、という、妙に色っぽい声が。
「入宮。大丈夫か?」
俺がそう声を掛けると、声がはたと止んだ。そして、数秒してからゆっくりと扉が開く。中に居たのは、やはり入宮だ。
「岡野…………!」
頬を赤らめ、スカートの裾を乱したまま、入宮は泣きそうな声を出した。

入宮は教室を出てからずっと、トイレの個室で自慰に耽っていたらしい。股座を貞操帯ごと便器に擦りつけて。
8週に渡って絶頂の味を覚え込まされた弊害は大きい。完全に快楽中毒で、達している時だけ、水中から顔を出すように楽になる。
誰も訪れる事のない屋上で、入宮はそう語った。
俺は返答に悩む。想い人が快楽中毒になっている……それを認めたくはなく、しかし否定のしようもない。
そう悩んでいると、ふと視界の端に、こちらを凝視する入宮の姿が映った。
半端を嫌い、相手の顔を見るなら真正面から、というタイプの入宮にしては珍しい行動だ。
「入宮? どうかした――」
俺がそう言いかけた瞬間、それ以上の言葉が出なくなる。
唇を奪われた。そう理解したのは、たっぷり数秒が経ってからのことだった。
ぷはっ、という声で、俺と入宮は空気を求める。
「え……え、えっ!?」
訳が解らない。なんだ、急に。
そうか、これは夢だ。俺が入宮にキスするならまだしも、入宮からなんて都合のいい展開は、夢以外にありえない。
そう結論付けつつも俺は、これが現実である事も認識していた。
首筋に触れる風が冷たい。11月になろうという時期の風は、リアルすぎる冷気を吹きつけてくる。
ただ、寒くはなかった。全身が火照るようだし、頬も間違いなく赤い。
そんな俺を今度こそ真正面から見据え、入宮が口を開いた。

「岡野はさ。今でもあたしのこと、好き?」
妙に真剣な瞳。澄んだ虹彩の中に、戸惑う俺の姿が映りこんでいる。
ああ、入宮だ。俺は改めてそう実感した。そして相手が入宮である以上、答えに迷いはない。
「ああ、好きだ」
ハッキリと、そう言葉に出した。一生一度の勇気を振り絞った中三の時より、しっかりとした声が出た。
「よかった」
頬を緩ませながら、俺に歩み寄る入宮。シャンプーのいい香りが鼻腔を満たす。
「ねぇ、岡野…………抱いて」
「なっ!?」
入宮から発せられた言葉に、思わず動揺してしまう。
抱いてと言ったのか、今。あの入宮が。
「な、何言って……!?」
混乱する俺に、入宮が身体を密着させてくる。そしてそのまま、フェンスに追い詰められた。
「無理しなくていいのに。興奮してるんでしょ」
入宮はそう言いながら、俺の制服のズボンを弄る。確かに俺は勃起している。
ベルトが外され、チャックが下ろされ、トランクスがずらされた。入宮の手で。
逸物が露出し、冷たい外気に冷やされる。だがその冷たさは、一瞬にして消えた。
咥え込まれたんだ。俺の物を。
「うあっ!」
思わず声が漏れた。
あの入宮の口の中に、俺の物が入っている……そう思うだけでも心臓が破裂しそうだが、その巧みさにも驚かされる。
裏スジを舐め上げ、カリ首を舌の先で刺激し、尿道から滲む先走り汁を啜り上げ。
時に睡眠の条件として、時に排泄の許可を得る手段として瀬川に仕込まれ続けた舌遣いは、3分と経たないうちに俺の物を痛いほどに勃起させる。
ある程度逸物が固くなれば、亀頭丸ごとがぬめった喉奥に迎え入れられることもあり、こうなれば女のような喘ぎが抑えきれなくなる。
挙句に顔が映りこむほど澄んだ瞳で、キリリと見上げられるんだから、この興奮は只事じゃない。
俺は瀬川が死ぬほど嫌いだが、この快感を知っては、奴がイラマチオに拘る理由も解らなくはなかった。
「れあっ……ふふ、大きくなった。やっぱりこれぐらいのサイズが一番舐めやすいよ」
瀬川達より2周りは小さい俺の逸物を握りながら、入宮は笑う。
この状況は反則的だった。普通じゃない。そう思ってはいても、思わず没頭してしまう。
気付けば俺は、フェンスを背に腰砕けになり、されるがままに下を脱がされていた。そして、入宮自身もスカートを脱ぎ捨てる。

目の前に現れるのは、正真正銘、あの入宮の生足だ。
すらっとしていて、シミ一つ見当たらない桃色の脚。本当に宝物のようだ。逆に秘裂を覆う貞操帯は実に無機質で、憎らしくさえある。
と、その貞操帯を疎むうちに、俺はある疑問を抱いた。
「……抱くって、どうやって?」
そう、彼女の性器は貞操帯に守られている。その鍵を開けない限り、抱きようがない。
すると入宮は、スカートのポケットを弄りはじめた。
「大丈夫、鍵あるから。この貞操帯って何種類かあるんだけど、鍵穴は全部共通でさ。鍵も同じのが一杯あって、こっそり一つ持ってきた。
 たぶんバレないよ。道具の管理なんてまともにしてないから、あいつら」
そう言って小さな鍵を取り出し、貞操帯の鍵を開ける。そしてショーツ部分をずり下げつつ、太い肛門栓を抜いていく。
「ふんんっ…………」
鼻から抜ける声は本当に気持ち良さそうだ。やはりアナル性感が目覚めきっているらしい。
びちゃり、という音を立てて貞操帯が落ち、いよいよ入宮の秘部が目の前に現れた。
毎日モニター越しに見ているから、色や形は知っている。それでも、実物を目の当たりにする衝撃は想像以上だ。
黒々とした茂みが妙に生々しく、さらにその中に、屹立した陰核が見える。茹で小豆を思わせるそれは、最初の頃とはまるで別物だ。
秘裂を見上げて呆然とする俺を前に、入宮は喉を鳴らす。
そして覚悟を決めたような表情で、俺の上に跨った。
「本当は、前でしたいんだけどね……だめなんだ。だから、お尻でしよ」
入宮自身の指で開かれた肛門は、最初の頃のような可憐な窄まりとは違う。
度重なる調教で口を開き、紅い菊輪の一つ一つが確かな膨らみを見せている。挿入に問題はなさそうだ。
だが、俺は迷った。
「い、入宮。でも……!」
監視役である俺が、『奴隷』と肉体関係を持つなんて――俺のその現実的な考えは、次の瞬間に吹き飛んだ。
唇のような触感の肛門に、亀頭が触れ、包まれる。
その感覚はすぐにカリ首、そして幹に移り、根元まで一気に進む。
締め付けは相当だ。肛門に咥え込まれた部分には、何重にもゴムが巻かれたような感触がある。スポーツ少女だけあって、本当に括約筋が強い。じんわりとした痛みすら覚えるほどに。肛門に指入れをする際、瀬川も伊田も締まる締まると喜んでいたが、それがようやく理解できた。
そして、腸内の感触もまた絶妙だった。肛門に比べれば刺激は緩いものの、塗れた粘液がしっとりと絡み付いてくる感触は只事じゃない。入宮自身の呼吸にあわせて腸壁の圧迫も変わり、まるで四方八方から緩やかに舌で舐められているようだ。
「あぁぁあ…………!!」
俺は思わず声を上げ、入宮も喘ぐ。挿入を果たした事で感じたのか。
「すごい、中で脈打ってる……本当に入ったんだ」
入宮は強張った表情で呟きながら、俺の手を握ってくる。
「強引で、ごめん。後ろの処女、無理矢理あげちゃった。いくら違う穴でも、あいつらが最初なんて嫌なんだ。せめて少しでもあたしの事、想ってくれる相手としたくて……」
その言葉が、俺の心を変に暖かくする。外気の冷たささえ忘れさせるほどに。

そして、入宮は腰を遣い始めた。
ただでさえはち切れそうに勃起した逸物に、ゴム束で扱くような刺激が延々と往復して、堪らない。
俺の太腿と入宮の尻肉が当たるパンパンという音は、まさにセックスそのものだ。
生々しい匂いもする。愛液の匂い。シャンプーの爽やかな香り。そして、それともまた違う甘い芳香。
俺の目の前で弾む、健康的な美脚。
そして何より、あの入宮と『一つになっている』という事実。
それらが凄まじい快感となって、脊髄を駆け抜けていく。
これが『セックス』か。溺れる人間も多いわけだ。入宮もまた、この快感に浸っているのか。
「あ、ああ、ぁあぁっ、岡野っ…………!!」
入宮は激しく腰を叩きつけていた。汗を滴らせ、歯を食い縛り、まるで壊れろと言わんばかりの激しさで。
 ――壊れろと、言わんばかり?
事実、そうなんじゃないか。入宮は今、俺の上で壊れようとしているんじゃないのか。瀬川達の責めに、もう耐え切れないという確信があって。
「岡野、岡野、いいよ岡野っ!! もっと、もっと滅茶苦茶にして。何も考えられないぐらい!
 今日帰ったら、きっと、あいつらにお尻でされる。そしたら、あたし……耐えられない!!
 あいつらに壊されるのはいや! ねぇっ、岡野、ここであたしを壊して!!
 どうせおかしくなるなら……こんなあたしを、まだ好きって言ってくれる岡野がいいのっっ!!」
思った通りだ。俺の名を連呼しながら、入宮は必死にそう叫ぶ。

その悲痛なまでの思いに応えたい、とは思う。だがそれには、相応の覚悟が必要だ。
屋敷には戻れない。貞操帯のGPSを囮に時間を稼ぎ、どこかのATMで金を下ろしての逃避行しかないが、至難の業だろう。
精神崩壊した入宮をつれて、ヤクザから逃げ続けるのは無理がある。そして掴まったが最後、俺にも入宮にも、死んだほうがマシと思えるようなリンチが待っている。
さらに言えば、周りにも不幸が降りかかるだろう。俺の親父や、入宮の両親……その身柄は組に押さえられている。
逃避行の最中には、まず間違いなく、親父達の無惨な末路を新聞やニュースで目にする事になる。

そういった現実を考え始めたが最後、俺は射精したくてもできなくなった。
その変化は、粘膜で繋がりあった入宮にも伝わったのか。必死に腰を使っていた入宮が、俺の顔を見た。
しばし目を見合わせる。

そのまま、何分が経っただろうか。

「…………ごめん、勝手言って」
入宮はやがて動きを止め、ゆっくりと腰を浮かせた。肛門から勃起状態を保った逸物が抜ける。
入宮の表情は複雑だった。
部長として、俺よりずっとしっかりとした考え方をしてきた彼女のことだ。ここで俺相手に狂ってもどうにもならない事ぐらい、理解しているに違いない。
それでも衝動的にこんな行動を取ってしまうほど、追い詰められているのだろう。
本当に、その彼女の思いを汲まなくていいのか。
散々傍観者をやって、それを後悔して。そしていざ入宮本人から助けを求められても、見殺しにするのか。
よくもそれで、入宮が好きだなどと言えるものだ。
「い、入宮、俺っ!!」
そう言いかけた俺の唇に、入宮は指を触れさせる。
「今のは、あたしのワガママ。忘れて」
指先で念を押すように唇を押さえてから、入宮は立ち上がり、貞操帯を拾い上げた。
「やっぱり、岡野って優しいよ。あたしが凄い無茶言ってるのに、さっき本気で悩んでくれてたよね。
 おかげで何か吹っ切れた。あたし、調教は受けるけどさ。あいつらの手で狂ったりしない。
 身体をどれだけ変えられても、心はあたしのままでいる。約束するよ」
呟くように言いながら、貞操帯を自ら嵌めていく入宮。地下へ戻る決意をしたんだ。素面のままで。
「ね。岡野。もし、あたしがあたしのままで調教に耐えきれたら…………その時は、花でもちょうだい。
 あたしバカだからさ。今までいろんな男の子がプレゼントくれたけど、一回も受け取った事ないんだよね。
 最後の最後くらい、女の子っぽい体験してみたくてさ」
その言葉と共に入宮が浮かべた笑みは、爽やかでとても格好がいい。見ているだけで安心感が湧いてくる。
「あ……ああ。任せろよ。すげーの持っていくからさ!」
俺は渦巻く不安を振り切るように、力一杯頷いた。
友人との約束は必ず守る。それが、入宮知佳という女の子だから。





「ふん、相変わらず強情だな。一言『挿れて下さい』って言やぁ、楽になれるのによ」
ベッドに這う入宮を見下ろし、瀬川が溜め息をつく。
逆に入宮は荒い息を吐き出しながら、汗まみれの顔を横向けた。
「……あんた達が、挿れたくて我慢できないだけでしょ。あたしは、このまま……朝になってもいいよ」
入宮の言葉は、無論強がりだ。本当のところ彼女は、すぐにでも肛門を刺激して貰いたくて堪らないに違いない。

肛門を突き出す格好でベッドにうつ伏せになり、後手に革手錠を嵌められた入宮。
その菊輪は痛々しいほど紅く膨れ上がっている。最初の頃の愛らしい窄まりが見る影もない。
原因は、瀬川の右手手袋に付着したクリームだ。
山芋の5倍の痛痒感を与えるという悪趣味な代物で、以前そうとは知らずにクリーム付きのバイブを素手で触った時には、親指と人差し指の間から半日以上も痒みが取れなかった。
入宮はそれを嫌というほど塗り込められ、普通であればあまりの痒さに泣き叫ぶところを、歯を食い縛って耐えていた。
俺との約束のせいだろうか。
調教初日の夜を思い出す。あの日も入宮は、俺の下手糞なエールに応えて耐え忍んでいた。
複雑な気分だ。それでも、応援せずにはおれない。
「……ったく。こんだけマンコ濡らしといて、今更格好付ける理由もねぇだろうが」
瀬川はそう言いながら、左手を秘裂に潜り込ませる。
「はぐっ」
入宮から小さく声が漏れた。理由は、瀬川の指の動きと同調する水音から推して知れる。
「グチョグチョだぜ。今日はまだ尻しか可愛がってねぇのによお? 子宮もすっかり下りてきてんじゃねぇか」
瀬川が言葉責めを繰り返す中で、入宮は腰を跳ねさせた。
シーツに顔を埋めているにも関わらず、ふむぅーっという声が漏れている。痒みと心地良さの相乗効果で、叫びを抑えきれないのだろう。
「ほう、子宮が下りているか」
マッサージチェアに腰掛けて見守っていた伊田が、瀬川に問いかける。
「おお、ちっと指入れりゃあ簡単に触れんぜ。おまけに処女の癖に、もうグニグニに柔らかくなってやがらぁ」
上機嫌に応じる瀬川。ただ伊田の問いに答えているだけではなく、入宮自身にも言い聞かせているのだろう。
痛がる人間に切り傷を見せつけるように、現状を自覚させる。
受ける側にしてみれば、これを無視はしきれない。入宮もまた、不安げな表情で後方に目を向けた。
その視線を待ち構えるのは、伊田と瀬川の獣の眼。入宮の表情が強張る。

「いいぜ。テメェの粘り勝ちだ。こんなエロい濡れよう見せられちゃあ堪らねぇ……ぶち込みたくて、ぶち込みたくてよぉ!!」
瀬川は唸りながら、怒張を握りしめた。
俺の勃起時より二周り……いや、それ以上に大きいかもしれない。幹には太い血管が浮き、何よりカリ首の張り具合が異常だ。
これから入宮に挿入されると思うと、いよいよその凶悪さが脳裏に焼きついてしまう。
「すげぇぜ、こうも勃起すんのは久しぶりだ。毎晩毎晩テメェのケツを舐めながら、この瞬間を妄想してたんだよ俺ぁ!!
 今からコイツを御馳走してやる。一番槍は貰うぜ伊田!!」
浅黒い手に入宮の尻肉が鷲掴みにされ、怒張の先が開いた肛門に宛がわれる。
「ゼリー付きのアヌスだぞ。ゴムは要らんのか」
「バカヤロウ、貫通記念だぜ? ナマ以外は有り得ねぇ。痒くなったらなったで、擦り切れるまでケツ穴でコクまでよ!!」
伊田の忠告も、今の瀬川には通じない。
鶏ガラのような腕にまで血管を浮き立たせ、肛門の結合部に力を込めていく。
メリメリと音でもしそうな挿入。菊輪がぴっちりと伸びきり、笠の張った亀頭部分を迎え入れていく。
やがて最も太いカリ首が通り抜けると、菊輪がちょうど唇が窄まるように幹部分へ吸い付いた。
「いや、太い……っ!!」
入宮から悲鳴のような声が漏れる。
瀬川の怒張のサイズはどうやら未経験らしい。直径だけであればアナルバルーンの方が上だろうが、挿入物の硬度は圧迫感に大きく影響する。逆に同じ硬度なら、単純に太さが物を言う。
入宮はほんの数時間前、俺の逸物を迎え入れた。つまり瀬川が意気揚々と謳う『開通記念』は幻だ。しかし、なぜかそれを手放しで喜べない。
「き、きつい……! 一度抜いて、裂けちゃうっ!!」
瀬川の剛直を挿入されて苦しむ入宮の姿は、どう見てもアナルセックス未経験のそれだ。実は俺とも経験があるなどと主張したところで、虚しさしか生まれない。
「裂けるかよバカ。しかし、こりゃすげぇ。入口は食い千切りそうに締めるくせに、奥までみっしり絡み付いてきやがる。
 普通は入口が締まる代わりに奥が緩いか、入口から奥まで一貫して密着するかのどっちかなのによ。マジで名器だぜこりゃあ!
 おらっ、そろそろ直腸の奥に届くぜ!!」
入宮の細い腰を掴んだまま、強引な挿入を果たす瀬川。入宮は目を硬く瞑り、シーツを掴んでそれに耐えていた。
しかし。瀬川の怒張が根元近くまで入り込んだその瞬間、彼女の様子が変わる。
「っは…………!!」
鋭く息を吐き出しながら、入宮は急に顔を上げた。その瞳は“信じられない”とでも言いたげに見開かれている。
「どうした、まさかケツで感じたのか?」
瀬川が勝ち誇ったような表情で囁きかけると、入宮の瞳は睨みを返す。
「そうだ、そのまま意地を張ってろ。クソガキらしくな」
瀬川は歯を剥き出して笑いつつ、大きく腰を引き、本格的に入宮を犯し始めた。

瀬川と、入宮のセックス。斜め上から見下ろす形のカメラは、その全てを捉えていた。
ベッドに広がる艶やかな黒髪。
普通の女子よりも明らかに発達した、肩甲骨周りの肉の盛り上がり。
すっと筋の走る背中。
桜色の裸体の中で一際目立つ黒の革手錠。
革手錠の下にはくびれた腰があり、そこを瀬川の両手が力強く鷲掴みにしている。
その掴みを支えに、瀬川の腰が入宮の尻肉へと叩きつけられる。
およそ尻穴に入るとは思えないほど太い怒張が、腰のグラインドで深々と入宮の内側へ隠れていく。
パンッ、パンッ、パンッ、という肉と肉の弾ける音が響き渡る。
瀬川が入宮を犯している。その残酷な現実を裏付けるかのように。
「ひひひ、締まる締まる。待ち侘びた甲斐があったぜ!」
瀬川は満面の笑みを浮かべて腰を打ちつける。たまに映る背中の般若すら笑っているようだ。
受ける側の入宮は、顔を僅かに横向けながら耐えていた。
「や……ぁあ、あ、あっ…………」
呻くようなそうした声以外は、はっ、はっ、と短い呼吸だけが繰り返される。
細身はただ震えていた。肉感的な太腿だけが、突き込みの度に筋肉を隆起させている。
「大分感じてきたようだな」
アナルセックスを見守っていた伊田がそう呟くと、入宮の顔がさらに横を向く。
「感じてなんか……ない…………!!」
あくまでも入宮は否定する。たとえその強がりが、調教師を悦ばせるだけだと知っていても。
「だ、そうだ」
伊田が笑みを湛えて瀬川を見やると、瀬川も口端を吊り上げる。
「ほお……なら、もっとキツくしてやるか」
その言葉と共に、瀬川は入宮の腰を掴み直した。そしてそのまま上へと持ち上げていく。這う形だった入宮の足を、直線に伸ばすように。
「いやっ! やめてよ、こんな格好!!」
入宮が拒絶しても、瀬川は止まらない。さっきと同じ、いやそれ以上に力強く腰を打ちつけていく。
ここで初めて、入宮の反応の全てが露わになった。
「あぁぁああ…………ああ!! んくぅ、くふぅ…………はぁああっ、はぁ、はっ…………ああああ…………」
剛直が入り込む動きと共に声が漏れ、奥深くを突かれたところで一際高い声が出る。
逆に剛直が引き抜かれる際には、歯を閉じ合わせたまま耐えるような声に混じり、心地良さそうな息が漏れていく。
乱れた黒髪から時折り覗く顔には、明らかに快感の色が混じっていた。
そして何より、すらっとした足の合間からは、しきりに光る雫が散っていた。愛液だ。
「股座から何かあふれているぞ」
「…………!!」
伊田に事実を指摘された入宮は、口惜しそうに唇を噛む。
入宮は感じている。感じない筈がないんだ。
2ヶ月もの間絶えず絶頂を覚えこまされれば、ポルチオ……つまりは子宮口は蕩けきる。その蕩けたポルチオを直腸側から薄皮越しに刺激されては、感じない道理がない。
特にカリ首の発達した瀬川の怒張は、子宮の裏をさぞ効率よく潰すことだろう。
「はぁああっ……!!」
また入宮の甲高い声が上がった。見れば、瀬川の剛直が根元の根元まで尻の合間に消えている。
まさに今、入宮はポルチオを直腸側から突き上げられ、確かな絶頂の中にいるのだろう。
尻肉を頂点に折れ曲がった入宮の身体が力む。肩周りが盛り上がり、ハの字に開いた脚にも筋が浮き……そして、脱力する。
「くぅうううはっ…………あはあぁうあっ…………!!」
怒張が引き抜かれる時にもやはり太腿は痙攣し、その最中、股座から雫が滴り落ちていく。
奥を突かれる時だけではない。怒張が抜かれる瞬間も、入宮は間違いなく感じている。
それはそうだ。あれだけエラの張った極太が強引に引き抜かれるのだから、平然としていられる筈もない。
「あああ…………最高だぜ。テメェの糞の穴は最高だ! こんなモン、そうそう我慢できやしねぇ!!」
瀬川は吠えるように叫び、涎さえ垂らしながら夢中に腰を打ちつける。
そのケダモノのような蹂躙を受けて、入宮もまた高まっていく。
「あ、あ、あ、あっ、あ゛っ!! くひゅっ、あくゅっ……う、うあ、うあああっ…………ああ、あっ、はああああ゛あ゛っ!!!」
頬をシーツに擦り付けるようにしながら、早く短い息を吐き続ける入宮。
最初こそ声を抑えようという気配が見えるものの、次第に『なまの声』がそのまま迸る機会が増えていく。
脚の合間に飛び散る汁気も量を増し、特にボディラインに隠されていない右の内腿には、どろどろと愛液が伝っているのも見えた。
「うう、出るっ、出るぞっ!!!!」
数十に及ぶ凄まじい抽迭の末に、瀬川ががなり立てた。汗を散らしながら入宮の脇腹を掴み、腰を震わせはじめる。
「い、いやぁ! せめて、せめて外に出してよっ…………!!」
完全に息を上げながら、入宮は頭を振っていた。しかし、瀬川の射精を止める術はない。
たっぷり数秒をかけた射精の後、ようやく怒張が引き抜かれる。異様なほどの粘液と白濁に塗れた怒張は、いよいよ眼を見張るほどの大きさに変貌していた。
これまでに見せた完全勃起状態をさらに上回るそのサイズは、入宮との肛門性交がどれほど心地良かったのかを端的に表している。
明らかに、俺よりも入宮との接触を楽しんでいる。
あんなに入宮に嫌われているくせに。愛情の欠片すらない交わりなのに。俺以上にの快楽を貪り尽くしたんだ。
「チッ。ケツ穴でコいてる間は気にならなかったが、人心地つくと痒ぃなこりゃ。その分、このガキも感じまくってたみてぇだがよ。
 伊の字、やるんなら洗ってからにした方がいいぜ」
瀬川は入宮の身体を横倒しにしながら告げる。
入宮の肛門部分がカメラに映った。病的なほど赤らんで開き、恐ろしい量の白濁があふれ出している。その様を見下ろしながら、伊田は当然とばかりに頷いた。
「これだけ盛大に出されては、続けて使う気にもなれん。私としても待望の時間だ。最高の状態で愉しませてもらう」



シャワー浣腸で肛門と腸内の洗浄を終えた後に、伊田のアナルセックスが始まった。
「確かにこれは凄いな、アスリートの中でも最上の部類だ。子宮もいい具合の位置にあって、堪らんな」
冷静に入宮の腸内を分析する伊田。
獣のように荒々しく犯す瀬川とは対照的に、伊田は技巧派だ。今も、Mの字に足を開かせた入宮に正常位で挿入し、同時にスライヴで陰核を責めている。
ピストンの速度は遅く、スライヴの駆動音から判断できる出力はごく弱い。にもかかわらず、入宮は相当に感じているようだった。
挿入された直後は、気丈に伊田を睨み上げている。
しかし、最奥まで挿入した伊田がゆっくりと腰を蠢かせれば、鋭い眼光が勢いを失い、横に視線が投げられる。
さらに低出力のスライヴが陰核に触れれば、5秒もしないうちに声までもが変わった。
「あぁ……ぁああ、あはあっ、はあああ、あ……ぉ、おお゛っ…………!!!!」
腹筋を収縮させながら低く呻いた末に、『お』の音で呻く。
1秒の間もなく濃厚な快感の声が漏れ続ける様は、入宮が常に浅い絶頂状態に留められている事を意味する。
当然、入宮にも緩やかに変化が起きていった。
伊田の怒張が緩やかに抜き差しされるたび、内腿に筋が浮き、足指がたまらなそうに折れ曲がる。
声にこそ出ないが、下唇の噛まれるたび、『いく』という言葉が殺されたのが解る。

入宮の変化を充分に認めた上で、やがて伊田は体勢を変えた。
広げさせていた入宮の両脚を閉じさせ、ほぼ真上から肛門へ圧し掛かるように挿入する格好だ。
「くぁっ、あはあああっ…………!!」
一度目の挿入時点で、入宮から声が漏れる。驚きか、苦痛か、それとも快楽か。最初の一声では判断が付きづらいが、伊田が腰を動かし始めればすぐに明らかになる。
「くぁあああっ、はぁっ、はぁっ……んぁあああっ!!!」
狭まった肛門を穿たれ、入宮は何度も声を上げた。明らかに心地良いという響きの声。脚を閉じた事で、肛門や子宮口への刺激が強まったのだろう。
瀬川はそんな入宮を淡々と追い詰める。
瀬川はとにかく射精が遅い。生来の遅漏なのか技術なのか、挿入から小一時間以上は嬲り続けるのが常だ。
射精しない最大限の勃起状態で、じっくりと肛門を穿たれ続ける。これは入宮にしてみれば、地獄以外の何物でもない。
時間をかけて入宮の肛門を堪能した伊田は、実に40分後、ようやく射精に至る。
瀬川のような腸内射精ではない。一旦怒張を引き抜き、自ら扱きながら入宮の足を開かせ、顔に向かって白濁を散らす。
「あっ、ぷぶっ!!」
入宮は前髪といい鼻といい、顔中に白濁を浴びる事となった。瀬川に比べれば白濁の色も量も少ないとはいえ、明らかに俺以上の量だ。
伊田にすら精力で劣る。その事実が、俺の雄としての心を掻き毟る。
「くさい……最低っ!」
精液を浴びた入宮は、伊田へ鋭い視線を向け、そのまま固まる。原因は、伊田の後ろで再び剛直を反り立たせている瀬川だ。
「ちょ、ちょっと待って……い、今終わったばっかりなんだから、少しぐらい休ませてよ」
入宮は震える声でそう願った。しかし瀬川は、背中の般若を歪ませながら入宮ににじり寄る。
「い、今は、今はいやっ! 絶対いやあっ!!」
切ない叫びも虚しく、入宮は組み伏せられ、強引に肛門を貫かれる。
合意など一切ない蹂躙。伊田によって嫌になるほど丹念に昂ぶらされた直後のアナルセックス。これは入宮を追い詰めた。
「あぁあああっ、くぅはあああっ……はあっ!! ああっ、あッ…………んあああおおお゛っっ!!!!」
狂ったように脚をバタつかせ、シーツを掻き毟り、荒い呼吸と快感の呻きを上げ続ける。
その地獄は延々と……少なくとも俺が精神的に疲弊し、知らぬ間に眠りに落ちるその瞬間まで続いていた。



この日を最後に、入宮は学校に通う事がなくなった。
地下に事実上監禁され、伊田と瀬川から絶えず責めを受け続けるのだ。
いわゆるラストスパート――連中は、入宮を間もなく堕とせるという確信を得たのだろう。

俺は、学校にいる間ですら気が休まらなくなった。
こうしている間も、入宮はあいつらに犯されているのか。
今はどんな変態的な事をやらされているのだろう。
まさに今この瞬間にも、彼女の自我は崩壊しつつあるのでは。
そう考えると気が狂いそうになる。
憧れの入宮と束の間の談笑を楽しむ時間だった下校は、肺が破れそうになるほど全力で疾走する時間に変わった。
そして家に戻るなり、鞄を抱えたまま親父の部屋に飛び込み、モニターに齧りつく。
入宮の芯の強さを信じてはいる。それでも現実的に考えれば考えるほど、いつ折れてもおかしくはなかった。
薄暗い地下に閉じ込められ、悪臭を放つ伊田や瀬川の慰み者になる。このストレスは計り知れない。
さらには最後の追い込みだけあり、責めそのものも陰湿かつ徹底したものに変わっている。

伊田と瀬川は仮眠を取り合いながら交代で責める事が多いが、二人が揃っていると凶悪だ。
片方に尻穴を犯されつつ、もう片方に口での奉仕を強いられるのだから。
バックスタイルを好む瀬川が肛門を『使っている』時には、伊田が這う格好でのイラマチオを強いる。
正常位を多用する伊田が犯している時には、瀬川がマウントイラマチオを強いる。
そんな事をされては入宮も堪らない。
「んも゛ぉっ、はおお゛ごもぉっ!? ごぉっ、お゛-ーっ、む゛おお゛っ!!! お゛も゛おぉおお゛ーーーーっっ!!!!」
過去のイラマチオと比べても、格別に悲愴なえづき声。それを何度も喉奥から迸らせ、細腕で必死に瀬川達の腰を押し戻そうとする。
しかし現実は無情だ。女子の必死さは、男の力で簡単に封じられてしまう。時には手首を掴み上げられ、時には腰の力だけで、強引にディープスロートが敢行される。
やがて入宮の抵抗が弱まり、腕が相手の腰に添えられるだけになった頃、瀬川達は喉奥から怒張を引きずり出してほくそ笑むのだ。
『見ろよコイツ。また“飛んじまった”ぜ』
その言葉の後でカメラに映る入宮の顔は、白目を剥いているか、泥酔したように精気がないかのどちらかだった。
入宮が必死に瀬川達の腰を押し戻そうとするのは、二所責めが苦しいからじゃない。
アブノーマルなセックスで心身ともに余裕のない中、イラマチオで醜悪な男の匂いを刷り込まれる……それを恐れるせいだ。
皮肉にも彼女自身の失神によって、その危険性が証明されたことになる。
たとえ意識を失っても、入宮がただで休める事はない。意識の朦朧とした彼女に対し、伊田達は肉体改造を施し続ける。
おそらくは肛門を犯されながら眠る一時が、今の入宮にとって最も楽な時間だ。
「んあぁあ……くふあああ、あうふあぁっっ…………!!」
まどろんだ状態で犯される時、入宮の声量はかなり増した。バスケット部の部長として声を張る日々だっただけに、元々声のボリュームが大きいのだろう。
そして嬌声の大きさは、快感の大きさでもある。眠りながら犯される入宮は、『起きている時以上に、簡単に蜜を吐く』らしい。

こういう事もあった。
学校から飛んで帰ってモニターに齧りつくと、畳敷きの空間を映す一台に男女の結合シーンが映っている。
ここのカメラには死角があり、画面に二人いる人間の胸から上は映っていない。それでも脚の形だけで、誰なのかは特定できた。
畳の上に仰向けに寝そべった、鶏ガラのような毛深い脚は瀬川のもの。その上に乗る形で、やはり仰向けになった美脚は入宮のもの。
瀬川の脚は膝を頂点に三角を作るように曲がり、上になった入宮を細かに突き上げる動きを続けていた。
受ける側の入宮は、両膝を纏めて胸の方へ引き寄せたまま、膝下をしっかりと瀬川に掴まれている。
その状態で、二組の脚が前後に揺れるのだ。
瀬川の腰が動くたび、畳から、にちっ、にちっ、と湿った音が立つ。
そしてそれを掻き消すように、荒い息遣いと入宮の嬌声が響いていた。
そう、入宮は声を上げている。あああ、ああああ、と相当な明瞭さで。
確かに今の彼女の体勢は、腹圧が強まってかなりきつい事だろう。しかし、それにしても普段必死に声を抑えようとする彼女らしくない。
「おいおい、さっきせっかくシャワー浴びたばっかだっつぅのに、もう濡れまくりじゃねぇか。俺のケツにまで垂れてきてんぜ。本当にテメェは、この責めに弱ェなあ?」
腰を揺らしながら瀬川が煽る。となれば当然、入宮からは猛反論があるものと思われた。
しかし。
「やめて…………いい加減、出させて。こんなの、お、おかしくなっちゃう…………!!」
入宮から発されたのは、その哀願だった。
顔が映っていないため、表情は解らない。しかし声色を聴くだけで、かなり参っていることが痛いほどに伝わってくる。
出させて。彼女はそう言った。浣腸をされているのか。それとも逆に、浣腸すらされないまま犯されているのか。
俺はその二つを考えたが、後に明らかになる事実は、このおぞましい想像をさらに超えるものだった。
「バカヤロウ、俺らはテメェのクソみてぇなプライドをブチ折りに掛かってんだぜ? 参りそうな責めが判ってて容赦するかよ。
 大体おかしくなるっつっても、テメェの快楽中枢はとうにイカれてんだろうが。
 昨日は何遍気ィ失ったか覚えてっか? しまいにゃあ、伊の字に乳首捻り上げられただけでスゲェ声出しながら気絶しやがって。
 もう普通じゃねぇんだ、テメェは。浅ましい雌豚だよ」
瀬川はそう言いながら、入宮の膝下から手を離した。そのまま数度突き上げれば、入宮の脚は膝を曲げた形でゆっくりと降り、ちょうど瀬川の脚と重なる形となる。
そこで、瀬川の責めが再開された。
脚を密着させたまま、小刻みに、しかし入宮の腰周辺が浮くほど力強く突き上げる。その上で、子宮の辺りを撫で回したり、指先でトントンと叩きはじめる。
この威力は格別だった。すぐに入宮の身体が暴れ始める。
「あああっ、くあああーーっ!! いやっ、これっ、これやめてえっ!! くるっ、すごいきちゃうからぁっ!!」
「何も縛ってる訳じゃねぇんだ、逃げたきゃあそうしても構わねぇぜ。だが本当は、コイツが好きで堪らねぇんだろ?
 ここんとこ毎晩、テメェが寝てる間にしてやってる事だ。テメェ自身は知らねぇだろうが、舌ァ出して涎垂らしながら、何十篇もイキまくるんだぜ」
そう言って瀬川が一際角度をつけて抉ると、あぐうっ、という呻きが迸った。
入宮の脚は瀬川のそれの間で、しきりに暴れていた。快感が耐え難いのか、それとも逃げようと足掻いているのか。
いずれにせよ、逃げ遂せる事はできない。彼女は恐らく腰が抜けている。それを知っているからこそ、瀬川も責めに専念しているのだろう。

一定のペースで丹念に腸奥を突く瀬川。こうした責めは、普通であれば伊田の専売特許だ。
しかし、だからこそ奴らはたまに逆タイプの責めをする。
調教が長引くほど、『奴隷』は誰に抱かれている時にどういう責めがくるかを無意識に覚悟するものだ。
瀬川であれば荒い責め。伊田であれば粘ついた責め。
各々の体臭が鼻をついた時点で、自動的に脳が刷り込まれたパターンを選び、耐えられるようにコンディションを整える。
そこへ来てまったく逆の責めが課せられれば、不意打ちで余すところなく恥辱や快楽を浴びる事となる。
これが効く。
「あぁぁ……あっ、はぁあ、ぁあ……あぁぁあ、あひ、ひ…………くっ、くるっ、きちゃう……っ!!!」
入宮は延々と心地の良さそうな吐息を吐きながら、悔しそうに絶頂に至っていた。僅か20分足らずの間に、6度は大きく達しただろう。
6度目の絶頂後、瀬川は腰を止めた。これで終わり……の筈はない。奴は入宮の太腿を掴み上げて脚を上げさせ、膝下を引きつけて元の姿勢に戻す。
体位は巻き戻っても、入宮の状態は別物だ。
「ああ……あっあっあっ、くああっ!! くぅああああ、ああぅふああっっーーーー!!!」
抑えきれないという様子で叫びながら、脛を強張らせる。その直後、脚の間からぷしゃっと体液が迸った。
「ひひ、すっかり潮吹きが癖になっちまったなぁクソガキ。せっかくだ。今日はこのまま、あと4回は噴かせてやる」
瀬川はそう宣言し、膝下を掴む腕に筋を浮かせた。
いつもの脅しや大言であれば良かった。しかし今日の奴は、それを着実に実現へ近づけていく。
自らの上で脚を上げさせ、腹圧を最大限に高めた状態でのアナルファック。
脚を降ろしてリラックスさせ、子宮を撫で回しながらの緩やかな連続絶頂。
瀬川はこの2パターンを何度も繰り返し、入宮を3度の潮噴きに追い込んだ。
特に3度目……最後の潮吹きは衝撃的だ。
それまでと違って両脚をピンと伸ばし、子宮口付近をトントンと叩かれる中で、入宮の爪が畳を掻き毟る。そして。
「んおおお゛お゛っっ!!!!」
入宮自身が何より嫌う、純粋な快感の呻きが迸る。その直後、黒い茂みの下から大量に液体が噴き出したのだ。
相変わらず首から上はカメラに入っていない。しかし背中の角度を見るだけでも、入宮がすっかり脱力し、瀬川の胸に身を預けている事が見て取れた。
「ひひひっ、すげぇすげぇ。腸の中がぐ脈打つみてぇに動いてやがる。こりゃ相当深くイッたなテメェ」
瀬川はそう言って入宮に小さな呻きを上げさせてから、改めて耳元にこう吹き込んだ。

  ――まだまだ、終わりじゃねぇぞ。

その言葉は事実だ。

互いに水分を補給してから、這う格好の後背位で調教が再開された。
今度はいかにも瀬川らしい、獣欲を剥き出しにしたアナルセックスだ。パンッ、パンッ、パンッ、と肉のぶつかり合う音がハイペースで響き渡る。
「さっきも中がえれぇ事になってたが、こっちはこっちで堪らねぇ。オラ、どうだ気分は?」
瀬川にそう問われても、入宮は前髪を畳につけるほどに項垂れるばかりだ。
「こ、こんなの……お、おかしくなっちゃう。ほ、本当に…………!!」
熱い吐息と共に吐き出すようにして、かろうじてその言葉が紡がれる。普段のよく通る声とはまるで別物だ。
「なれよ。ブッ壊れちまえ」
瀬川は満面の笑みを浮かべながら、片手で入宮の乳房を揉みしだく。その瞬間入宮の背中が震え、とうとう畳へ倒れ込むようになってしまう。
それでもまだ、瀬川は止まらない。倒れこんだ入宮の上にぴったりと重なったまま、尻穴へ上から叩き込む形で腰を振る。
「くうううっ!!」
入宮は歯を食い縛って呻いた。一見すれば口惜しさに歪む顔のようだが、よくよく見れば違うと解る。
彼女の表情筋を歪ませているのは、快感だ。どれだけ抑え込もうとしても留めきれない、溢れんばかりの快感。
「やめて、やめて! こんなのいやっ!!!」
激しく腸奥を穿たれながら、入宮は脚をばたつかせて叫んだ。瀬川はその脚に自分の足を絡ませるようにして封じつつ、徹底的に尻穴を凌辱する。
そこから導かれる未来は一つだ。
「ああぁあ…………ぁあぁあああ…………!! んはっ、はぁああぁあ、ぁぁぁ…………ぁああおおおお゛っ!!!」
組み敷かれた入宮が発する喘ぎは、次第に快感の濃度が増していく。
瀬川がぐりりと奥まった部分で腰を捻れば、入宮の腰も堪らないという様子で震える。
それはやがて、瀬川の動きと連動しなくなっていく。瀬川が腰を打ちつけるペースとは全く関係なく、入宮の腰が激しくうねる。
彼女自身が腰を遣っている――疑う余地もなく。
「おらっ、そろそろいくぜ。全部注ぎ込んでやるからな!!!」
瀬川がそう言いながら激しく腰を打ちつけると、入宮は激しく畳を掻き毟った。
「いやっ、あ、あ……あああおおお゛っっ!!!」
瀬川の野生が伝播したかのような低い呻きと共に、入宮の腰が跳ねる。そして、畳の上に飛沫が飛び散り始めた。
潮吹きだ、小水と見分けがつかないほどの。
その最中、瀬川も絶頂に達しているようだった。流石に奴も体力の限界らしく、汗まみれで声すら出さず、入宮の背筋を凝視しながら腰を震わせている。
長い射精を終えて瀬川が怒張を抜き出すと、後を追うように白濁が零れ落ちた。
そしてその直後、このセックスの真実が転がり出てくる。
玉蒟蒻だ。白濁と粘液に塗れた玉蒟蒻が、瀬川の怒張と同じサイズに開いた肛門から転がり出てくる。
「へへ、すっかりザーメンまみれだ」
瀬川がそう言って肛門に指を入れると、さらに幾つかが零れだした。
合計6つ。6つの玉蒟蒻を腸奥に詰め込んだまま、瀬川の怒張でアナルセックスを強いられていたのだ。
それはどれほどきついことだろう。そして、どれほど腸奥や子宮に対する圧が高まっていた事だろう。
絶頂するのも当然だ。潮を吹くのも無理はない。狂ったとしても……おかしくない。
「どうだ、気分は?」
つぶれた蛙のような格好の入宮を見下ろし、瀬川が満面の笑みで訊ねる。
入宮の口からは、しばらくは荒い息が吐かれるばかりだった。しかし息が整い始めると、入宮の瞳はしっかりと瀬川を睨み据える。
「最低」
その一言で、瀬川の顔が引き攣る。
少し前の奴であれば、その気丈さにほくそ笑む余裕もあっただろう。だが11月も半ば近くまで進んだ今、リミットは着実に迫っている。
肉体開発という目標は達成できても、服従させられなければ調教師の名折れ――連中はそう考えているはずだった。
「クソが……とうに狂ってるくせに強がりやがって。伊の字ッ、いつまで眠りこけてやがる、次ァてめぇの番だぜ!?
 このメスガキは限界寸前だ、キッチリ追い込んで潰してやれや!!」
瀬川は部屋に響き渡る怒声を散らし、マッサージチェアで眠る伊田を現実に呼び戻す。
伊田は一つ欠伸をした後、入宮の惨状を見下ろして目を細めた。



入宮の心は、まだ折れていない。
それでも肉体の方は、すでに後戻りできない領域にまで堕ちきっているようだ。
『自分から腰を振る』
この現象はこれ以降のセックスでも、度々見受けられた。


「あああーーーっ、んはああああーーーっ!!!」

天を仰いだ入宮の絶叫が響きわたる。
ベッドの上で騎乗位の姿勢を取り、伊田から強烈なアナルファックを受けてのことだ。
ぎしっ、ぎしっというスプリングの軋みも相当な音だが、それを入宮の声が完全に掻き消している。
当然、それには理由がある。
入宮はこのセックスが始まるほんの数分前まで、実に7時間以上に及ぶ焦らし責めを受けていたのだ。
壁に下がった手錠で爪先立ちを強制されたまま、クリトリスと陰唇にスライヴを宛がわれ続ける。時に大股を開かされ、時に片方の膝裏を吊り上げられて。
そのまま絶頂続きとなるならばもはや日常の光景だが、絶対に達する事は許されない。
絶頂に至ろうと身が強張るその瞬間、残酷にもスライヴが離されるのだ。
後に残るのは、達する事が出来なかったというもどかしさのみ。
伊田と瀬川は交代しながら、延々とこの焦らしを続けた。初めこそ唇を噛んで耐えていた入宮だが、半端を嫌う彼女にこの責めは辛すぎる。
一時間が経つ頃には、言葉を尽くして伊田達を罵り、ボロボロと大粒の涙さえ零しはじめた。
それでも寸止めが止むことはない。
やがて、瀬川達がいくら股を開かせようとしても、内股で力なく項垂れるばかりとなった頃。満を持して伊田のアナルセックスが始まったのだ。

狂おしいほど快感に飢え、ポルチオが蕩けきった状態でのアナルセックス。
これで声を抑えられるわけがなかった。天を仰ぎ、喉が裂けんばかりの嬌声を上げるのも当然だ。
伊田は入宮の細い腰を鷲掴みにし、瀬川を思わせるような荒々しい突き上げで入宮を追い込んでいく。
相手の弱点を見つけるのが悪魔的に上手いのが伊田だ。傍目には些細に思える突き込みの変化や腰遣いが、入宮当人には致命的なのだろう。
「あぁ、はあぁああっ……はああああ、あ、あ、あ…………くる゛ぅっ……くる、また…………くる゛っ…………!!!」
伊田の胸板に手をつき、180度近い開脚のままスプリングを揺らす入宮。その全身は汗で濡れ光っており、相当な興奮が見て取れる。
しばらくは俯きながら苦しそうに呟いていたが、伊田の突き上げがさらに激しさを増すと、再び天を仰ぎ始めた。
「はっ、はっ、はっ…………ふくっ、んぐぐぅっ…………!! くふっ、あお゛っ、おっ…………んんんんおおおおお゛お゛っっ!!!!」
右手で必死に口を押さえるも、声を殺しきるには至らない。
目を見開くと同時に、彼女が必死に隠したがっている呻きが響き渡る。
「くくくっ、出たぜ出たぜ。学年一番人気の女子高生が、女ァ捨てた声だ。もうまるで隠しきれてねぇじゃねぇか?
 ンな声出しといて人間気取りたぁいかねぇよな。認めろよ、テメェが浅ましい豚だって現実をよ!!」
瀬川の煽りを受け、入宮は必死に声を殺そうとする。しかし、出来ない。
「ああううおお゛っ、おはあぅう……あああおお゛っっ!!!」
乳房を上下に揺らし、スプリングを軋ませながら、入宮は悶え狂う。伊田のたるんだ腹部と接する茂みから、潮が吹き散らされる。
しかし、どこか変だ。
そうした入宮の乱れように比べ、伊田が静か過ぎる。入宮の太腿の下に手を添えたまま…………動きを、止めている。
つまり今の入宮は、伊田に犯されて乱れているわけではない。快感のあまり前後不覚になり、彼女自身が腰を振り続けて快感を貪っているだけだ。
俺はモニター前で拳を握りしめた。テレパシーでも何でもいい、入宮に事実を伝えたかった。
しかし、それは叶わない。
「いつまで、そうしているつもりだ?」
入宮に現実を知らしめるのは、冷ややかな伊田の一言。それを耳にして、入宮が目を見開く。
そして陶然とした瞳で、自らの身体を見下ろした。静止した伊田の腰。今の今までベッドのスプリングを軋ませていたのは、伊田ではない。入宮自身だ。
「健気なことだ。私に快感を与えるために、そうまで腰を振りたくるとは」
伊田の一言で、入宮の顔が歪む。
「いやあああああっ!!!!」
入宮は顔を覆って叫んだ。プライドの高い彼女には、到底受け入れがたい現実だろう。
そうして泣き崩れる入宮を、調教師2人はただ放ってはおかない。
入宮の髪を掴んで強引にベッドに這わせ、伊田が背後から挿入し、瀬川が怒張を咥えさせる。
ドギースタイル。犬が交尾する格好で奉仕を強い、自らが雌犬であると刷り込む気だ。限界の限界でこれをやられれば、『奴隷』は折れる。
「やめろ、やめてくれ!!」
誰も聞く者のいない空間で、俺は虚しく叫んだ。
今まで何年も地下を監視してきた身だけに、肌で解る。モニターに映っている女性は、もう限界だ。
瀬川達に計算づくで性感を開発され、羞恥に晒され、犯され抜いた。その上で自分の身体が心を裏切ったという事実を突きつけられて、耐えられた例はない――。

「 ………… やく …………そ、く ………… 」

頭を抱える俺の耳元に、か細い声が届く。
モニターを見れば、瀬川の怒張を吐き出した入宮が、唾液を溢しながら唇を動かしていた。

「約束…………こんなんじゃ、折れない…………………」

彼女は確かにそう告げた。途切れ途切れの言葉に、虚ろな瞳。だが、意味ははっきりと伝わってくる。
「ンだこいつ、まだ頑張る気かよ!? クソッ、もっと激しくすんぞ!!」
瀬川は激昂し、入宮の喉奥まで剛直を咥え込ませる。伊田もまた、尻肉を両側から押さえ込みながら挿入を深める。
それでも、入宮は耐え続けた。モニターの中で、いつまでも。

悪夢のような11月が終わりに差し掛かる頃、俺は板間さんから電話を受けた。
吉報か、凶報か。そのどちらとも言い難い。
入宮のオークションの日程が決まった。12月7日の夜。
その日が調教のリミットだ。そして、入宮が決定的に遠いところに行ってしまう日でもある。

この情報を聞いて以来、調教師2人はいよいよ躍起になって入宮を責め立てた。
特に瀬川は、『奴隷』に嘗められたまま逃げられるという事実が耐え難いらしく、陰湿な責めを繰り返した。
イラマチオで何度も吐かせた挙句に、小便を飲ませたり。木枷で首と手の動きを封じた上で、強制的にアナルを嘗めさせたり。
それでも入宮は最後まで、瞳に炎を宿したままで悪態をついてみせた。
伊田と瀬川の手では堕ちない。それを、見事に達成したんだ。

12月7日。俺は学校帰りに、生まれて初めての花束を買った。
かなり財布に厳しかったが、豪華で可愛い花ばかりを選んでもらった。
今までの労いと、新たな旅立ちの祝福。少々恥ずかしいが、それを伝えるために。
だが。
家に帰ったとき、すでに地下には誰もいなかった。
入宮の姿がない。伊田も、瀬川すらいない。
何故だ。何故いない。瀬川達が自棄を起こして、入宮をどこかに連れ去ったのか?
動転する気をかろうじて落ち着かせ、板間さんに連絡する。
何度掛けても不通だったが、4度目でようやく繋がる。
「急な話だったんでな、伝える暇がなかった。前にチラッと話したろ、買い手の最右翼、中国のお大尽がいるってよ。奴さんが気まぐれを起こしてな、深夜まで待てん、夕方から始めろなんて言い出しやがった。おかげでこっちゃあてんてこ舞いだ。伊田と瀬川にゃもう伝えてこっち向かわせてるが、ったく参るぜ。得意客だから無碍にもできねぇしよ。
 ……っと、愚痴になって悪ぃな。ともかく、お前の仕事はひと段落だ。金はいつもん所に振り込んどく。世話かけたな」
それだけを捲し立て、板間さんは電話を切った。

携帯を片手に、俺はただ呆然と立ち尽くす。
確かに今日、入宮と別れる事は覚悟していた。でもまさか、一言も交わせずになんて。最後に彼女の姿を眼に焼き付ける暇もないなんて。
せっかく入宮が楽しみにしてくれていた花束を、渡せず仕舞いだなんて。

がらんとした家の中のどこを見ても、虚しさしかない。
俺と朝飯を食っていた頃、入宮が使っていた箸に茶碗、湯飲み。
リビングの端に折り畳んで置かれている、入宮の制服とユニフォーム。
無人の空間だけを映すモニター。
そして地下の随所に生々しく残る、彼女の残滓。
そのどれもが過去のものだ。
もう二度と、彼女を見ることはないのか。俺は変色した畳に膝をつき、拳を握りしめながら嘆いた。

俺には知る由もなかった。
俺のこの考えが後に、想定外の形で否定されるなどとは――。



                                 続く