大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2018年10月

純白の豚

※SSSS.GRIDMANの六花ちゃんを見てムラムラして妄想。
 ごく短い作品ですので、おやつ感覚でつまんでください。


「まっしー、今日帰りにららぽ行こうよ」
 クラスメイトの祐美が振り返りながら誘う。しかし真白は、申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめん、今日用事あってさ」
 その言葉に、真白を囲む二人が興味深そうな笑みを見せる。
「ほーう? 金曜の夜に用事とは……さてはオトコだな?」
「や、違うって」
 祐美のからかいを苦笑いで流す真白。するとそれを受けて、真白の横に立つ律子が口を開いた。
「そうそう、んな訳ないって。考えてもみなよ、真白だよ? 誰かと付き合ってるなんてなったら、大スクープじゃん!」
 そう言って律子は、真白を称えるようなポーズを取る。
「神格化しすぎだし」
「いや、割とマジなんだけど。こないだセンセーには却下されたけどさ、うちでミスコンやったら、まず間違いなくまっしー優勝じゃん? 男子人気1位の恋模様なんて、話題性ないわけないっしょ!」
 男子人気1位。何度となく耳にした言葉だ。
「それさ、なんか納得できないんだよね。だいたい私、足太いし……」
「わかってないなぁ、まっしー。そ・れ・が良いんだよっ!」
「その通り。結局男が好きなのって、スカートから覗くフトモモなんだよ、フトモモ!」
 祐美と律子は笑いながら、制服から覗く真白の太腿を叩く。
「ちょっと、痛いんだけど!」
 真白はそう怒るフリをしてみせ、大仰に逃げ出す賑やかな2人に肩を竦める。

 視線を横に向ければ、窓ガラスには冷たい雰囲気の女子高生が映っていた。
 天然二重の吊り目に、控えめな鼻梁、薄い唇。胸あたりまで伸びた黒のストレートロング。確かに男好きのする要素は多い。そして校内校外問わず、男子人気が高いのも事実。ネット全盛の時代だ、自分の高校名と名前で検索すれば、自分がどう見られているのかがはっきりと視認できてしまう。
 1年前に彼女をターゲットにしたファンサイトが立ち上がって以来、様々な妄想が日々書きなぐられていた。
 冷たい視線で罵られたい、踏まれたい、足コキされたい……。
 願望の多くは、真白からサディスティックな責めを受けたいというものだ。
 確かに真白はツンとした雰囲気がある。言いたい事ははっきり言う方で、そういう意味ではキツい性格ともいえる。
 しかし、ファンサイトの妄想を実行する気にはなれなかった。
 ただしそれは、お高く留まっているからでもなければ、性的な事を嫌悪しているからでもない。

 彼女の本質がサディストではなく、むしろ救いがたいほどのマゾヒストであるからだ。


  ※


 高校の最寄駅から7駅離れた繁華街。真白は制服姿のまま、颯爽とその人混みに踏み入った。その途端に、異性の視線が突き刺さる。飲み会の途中らしきサラリーマン集団も、女連れの男も、部活帰りの男子生徒達も。
 不思議だった。
 スタイルが良い方だとは思わない。自分にとって理想の女性である読者モデルは、皆がすらりとした脚線を誇っている。であれば、その対極に位置する自分が魅力的であろうはずがない。
 にもかかわらず、彼女は人一倍異性の目を惹いた。誰と歩いていても、どこを歩いていても、自分に視線が集まっている事が自覚できた。
 自己評価と周りからの評価の食い違い。これが彼女を歪ませた。同級生に告白されても、街で遊びに誘われても、受け入れられない。醜い自分を付け上がらせ、後で笑い者にしようとしているのでは……そういう疑心暗鬼に陥ってしまう。
 その果てに彼女が辿り着いたのは、いっそ徹底的に穢れる道だ。ターミナル駅の西口で、自分の好みとはかけ離れた醜悪な男を誘い、自暴自棄のまま純潔を散らした。ここまでであれば、ただの自傷行為に等しかった。
 しかし、この男の趣向が、真白に新しい世界を垣間見せる。
 SM。
 フックで鼻を吊り上げられ、開口具で奥歯が見えるまで口を開かされて、『クールな美貌』と称されたものを徹底的に歪まされる。
 縄で動きを封じられたまま、鞭で打たれ、蝋を垂らされ。肛門から水を入れられ、親と変わらない齢の男が見守る前で排便し。挙句にはその排泄の穴に、指や舌、専用の道具まで捻じ込まれる。
 どれだけ罵っても、許しを乞うても、責めは止まない。その中で真白はただ、子供のように泣き叫び、汚辱に震えるしかない。
 そうしたプレイの果て、最後に姿見で見せつけられた自分の姿は、醜かった。議論の余地もないほどに。
 しかし真白は、そんな状態になぜか安心感を抱いた。
 灰色が一番つらい。白でも黒でも、どちらかに振り切れた状態でありたい。
 とはいえ、彼女はまだ高校生だ。集団生活を強いられる立場である以上、学校では灰色のままでいるしかない。
 その欲望を発散できる場所は、ただ1つ。無数のネオンが煌めく繁華街の外れ、高層マンションの一室で開かれる非合法な宴だけだ。

 ※

 マンションのドアは、一般の部屋と何ら変わりない。しかし、真白がチャイムを押すと、見慣れた経営者の男が顔を覗かせる。
「へへへ、いらっしゃい真白ちゃん。そろそろだと思ったぜ」
 彼はそう言って、制服姿の真白を部屋に上げた。
 リビングでは、すでに7人の男が集まって酒盛りを始めている。いずれも真白の顔馴染みであり、かつ年頃の少女が生理的に嫌うタイプの男達だ。
「いつ見ても、キモいのばっかり」
 真白はローファーを脱ぎ、学生鞄を放り捨てる。その一挙手一投足を、たっぷりと視姦されながら。

 ( すっごい目……今日は、何されるんだろ )

 ゾクゾクとした背徳感が背筋を上っていく。そう、これだ。この苦味のような物がなければ。同年代の男子との甘たるい恋愛では、もはや満足できない。
「遅いぜぇ、マシロちゃん。見ろよ、一升空けちまった」
 赤ら顔の一人が、酒瓶を振りながら笑う。その他の6人も、同じく緩んだ笑みで椅子から立ち上がる。
「ああ、この匂いだ。女子高生ってなぁ、何でこうイイ匂いがすんだろうなぁ」
「今日も可愛いぜぇ、真白ちゃんよう」
 下卑た笑いを浮かべながら、7人が真白を取り囲んだ。そして、無遠慮に手を伸ばす。女子高生の肌……その禁忌の領域に。
「んっ……ちょっと、制服シワになっちゃうじゃん。やめてよ!」
 カーディガン越しに胸を掴まれ、ミニスカートから覗く太腿を撫でさすられながら、真白は男達を睨み上げる。元より黙って耐える性質ではないため、自然とそういう反応が出てしまう。とはいえ、嬲る側としても多少反骨心のある獲物の方が好みらしい。
「そんなこと言って、興奮してるんだろ」
「ああ。痴漢プレイから始めたほうが、断然よく濡れるからなぁ」
 言葉責めを交えながら、7対の手が柔肌を揉みしだく。
 真白は身を捩りはするものの、本気で振りほどく気はない。『嬉々として受け入れている』と思われるのが癪で、嫌がってみせているだけだ。だから最終的には、男達のしたいようにさせる。
 やはりと言うべきか、この男達は今日も真白の脚に強い執着を見せた。
 一人が、ソファに腰掛けた真白の膝を肩に担ぎ上げ、むちりとした太腿の合間に顔を埋める。
「……よくやるよね鈴木さんも、自分の娘くらいの歳の子にさ。このヘンタイ」
 男の後頭部を見下ろしながら、冷ややかに告げる真白。しかし、その頬は緩みかけている。友人に見られれば悲鳴が上がるだろうこの状況が、面白くてたまらない。
 もっと穢せ。もっと辱めろ。そう瞳の奥で求めてしまう。
「もうクリトリスが勃ってるじゃないか。華の女子高生が、いやらしいものだな」
 ショーツから口を離した鈴木が笑う。その視線の先では、唾液で半ば透けたショーツが、小さな突起に押し上げられていた。
「……し、仕方ないじゃん」
 真白は視線を横に流しながら、やや憮然とした声を漏らす。被虐願望がある一方で、詰られるとやはり腹が立つ。
 鈴木はそうした真白の反応を面白がりながら、両手でショーツの端を掴む。
「さ、もうこんなものは脱いでしまえ」
 真白自身が腰を浮かせて協力したこともあり、ショーツはスムーズに脚を滑り降りる。ただし、足首から抜かれるのは左側の輪だけだ。右半分は改めて、肉感的な太腿まで戻される。
「いつもなんだけどさ。なんでちゃんと脱がさないの?」
「その方が興奮するからだ。特にお前みたいに、いい太腿してるとよ」
 真白の問いに対し、7人は笑みを深めるばかりだ。答えを聞いても、真白に理解はできない。ただ何となくそれは、世の男達が自分の脚を凝視する原因と似通ったものに思えた。あえて紺のソックスが脱がされないのも、同じような理由だろう。
 興奮するというならばそれでもいい。その興奮で、責めがよりねちっこく、より容赦なくなるというならば本望だ。真白はソファの背もたれに首を預けながら、そう思う。

 そして、真白の望み通り、“ねっとりとした”責めが始まる。
 大股にひらいた脚を、何本もの指先が撫でさする。触れるか触れないかというフェザータッチだ。
 真白はその刺激に、声を堪えることができなかった。
「ふ、んんんっ……んんっ、ん……っん!!」
 唇を引き結んでも、息を止めようと試みても、声が漏れる。特別に肌が敏感な方だとは思わないが、毎週毎週、丹念なフェザータッチを施された今は、ものの数分で肌が粟立つほどに感じてしまう。腰が浮いてしまう。
「かなり敏感になってきたな」
「ああ、さすが若ぇ娘の肌だ。感度がいいぜ」
 脚を撫でさする3人は、そう言って笑う。
 それと同じような笑いは、真白の顔のすぐ傍でも起きていた。
「敏感になったっていやぁ、胸も相当だぜ。もう勃ってやがる」
 真白の背後に立ち、ガーディガンとブラウスを開いて乳房責めを施す一人だ。
 この男の責めも生半可ではない。乱暴に揉みしだくのではなく、むしろその逆。乳房全体に触れるか触れないかというフェザータッチを繰り返し、じっくりと乳腺の快感を呼び起こす。乳腺が目覚めれば、その快感はやがて先端に集まり、乳凛に膨らみを与え、乳首を屹立させる。そこを、不意に刺激するのだ。
「んんんあああっ!!」
 しこり勃った乳首を捻りあげられれば、ますます声は抑えられない。胸の周辺の筋肉を痙攣させながら、あられもない声を上げるしかない。たとえそのせいで、嘲笑が沸き起こると知っていても。
 太腿と、乳房。神経の集まる二ヶ所に丹念なフェザータッチを受けつづければ、当然真白は『濡れる』。そしてその濡れる場所……秘所が放置されようはずもない。
 そこには鈴木が陣取り、呆れるほど丁寧にほぐしていた。舌と指、ローターを使い分けてクリトリスを刺激しつつ、膣内へ浅く差し入れた指でGスポットを擦り立てる。経験豊かな熟練の技でこれをやられれば、ますます愛液があふれ出す。秘裂が目覚めるほど、太腿と乳房の感度が増し、その逆もある。
 鶏が先か、卵が先か。いずれにせよ男達の責めは複雑に作用し合い、真白を昂ぶらせていく。
「もうドロドロだな」
 何分が経った頃か。鈴木が秘裂を両の親指で押し拡げながら笑う。
「……はぁっ、はぁ、はぁ…………っ」
 真白は両手をソファにつきながら、大きく呼吸を繰り返す。興奮のあまり、憎まれ口を叩く余裕もない。いや、あったとしても、そうはしなかっただろう。
 呼吸を繰り返す間にも、それ以上のペースで陰唇が開閉を繰り返している。休憩などいらない。早く責めて欲しい。それだけが今の真白の願いだ。
「どんどん蜜があふれてくるぞ。本当にこれが、女子高生のアソコなのか?」
 鈴木は言葉責めを加えながら、1本のバイブを受け取った。無数のイボが表面をびっしりと覆った独特の代物だ。全体が柔らかい素材でできており、押し込めばどんな形の膣にもフィットする。特に先端は4股に分かれるようになっており、子宮口をすっぽりと覆う形での刺激を可能にしている。真白はもう何十度、いや何百度、そのバイブによって絶頂させられたことだろう。
「今日はこの間の約束通り、1時間たっぷり虐めてやる。覚悟はいいな?」
 鈴木が囁きかけ、バイブのスイッチを入れる。
「…………っ!」
 真白は喉を鳴らしながら、じっと耐える他なかった。

 ※

「ひぃっ、だ、だめっ!! いくっ、いくぅうう゛っ!!!」
 真白が悲鳴を上げながら、腰を大きく跳ねさせる。それを見て鈴木がバイブを引き抜けば、堰を切ったように透明な飛沫が噴き出した。これが初めてのことではない。六度目か、七度目か……体液は床の至るところへ飛び散っている。
「ひひ、凄ぇなこれ。メスの匂い撒き散らしてよ。こんなエロい女子高生いねぇだろ」
 一人が真白の秘裂を指で割り開いて笑った。充血しきり、愛液に塗れた秘裂。最初の頃であればいざ知らず、もはや年頃の乙女らしい初々しさはない。
「もう何回ぐらいイッたんだ?」
 鈴木が、再びバイブを沈み込ませながら問う。
「知らない……数えて、ないし」
 真白はそう答えるのが精一杯だ。すでに余裕はない。そして同時に、更なる崩壊を待ち侘びてもいる。
「ま、そうだろうな」
 そして、再び羽音が唸りはじめる。
「はぐううっ!!」
 真白の肉感的な太腿がさらに盛り上がり、細かに痙攣する。
「すげー、イキまくりだ」
「ああ。この歳ですっかり中イキを覚えちまったらしい」
 男達は笑いながら、さらに真白を追い詰める。痛々しいほど屹立した乳首をつまみ上げ、太腿をさすって。
「だ、だめっ、今そんなことされたら……っは、あ、あああ゛っ!!」
 効果は覿面で、真白はそれらのあらゆる快感に翻弄され、天を仰ぎながら短い呼吸を繰り返す。バイブを抜かれるたびに、惨めたらしく潮を噴き散らしながら。

 ※

「ほら、離すな」
 俯いて咳き込む真白の髪を、男の一人が掴み上げる。
「う゛っ、ごほっ!! もう無理っ、ちょっとぐらい、休ませて……!!」
 真白の顔が歪んだ。彼女の身体はほぼ丸裸に近い。紺のソックスだけがかろうじて残され、あとは名の通りの白い肌を晒している。その肌は、すでにかなりの量の白濁で汚れていた。それは、幾度も口内に精を放たれ、飲み下しきれずに吐き溢したことを物語っている。
 そして、彼女にはもう一つ変わった点があった。視界を覆う目隠しだ。
「さて、そろそろ答えてもらおうか。今しゃぶってるのは、誰のだ?」
 真白の横に立つ一人が囁きかける。真白の肩が強張った。
 咥えた性器の形と匂いを元に、奉仕している相手を当てる遊び。並の女子高生であれば汚辱に震えるようなこのプレイを、真白はもう小一時間にも渡って強いられていた。
「……え、えっと…………林野、さん…………?」
 真白は震えるような声で告げる。明らかに自信がなさそうだ。真白の前で逸物を扱く男が笑う。
「残念だな、大外れだ!」
 男はそう叫びながら真白の顎を掴み、深々と咥え込ませる。
「んぶっ、ぐう……うお゛っ!!」
 怒張を喉奥まで押し込まれ、真白の喉からくぐもった呻きが漏れた。
「どうだ、苦しいか? ハヤッさんよりは俺の方が、カリが張ってんだろうが。現役の女子高生にしゃぶらせてるってぇ興奮で、俺まで若返ったみてぇにバキバキよ。一週間この瞬間を楽しみに生きてきたんだ、たっぷり楽しませてくれや!」
 奉仕を強いる側は上機嫌だ。しかし、容赦はしない。真白が鼻から精液を垂れ流し、涙を溢すようになってもなお、休まず咥えさせ続ける。
 それこそが、真白の内なる望みだと知るからだ。
 中年男の饐えた匂いを覚えこまされる地獄の中で、真白の呼吸は刻一刻と荒くなっていく。
「ん、おぐっ……ぶふっ、んも゛ごぉ……あ、あ゛っ!!」
 噎せ返り、えづき上げ、ついには白濁混じりの胃液を吐きこぼす。
 口内から粘度の高い糸を垂らして苦悶する少女の瞳は、しかし、涙とはまた違う濡れ方をしていた。

 ※

「うぅっ、う゛うむ゛ぅうう゛っ!!!」
 くぐもった呻きがプレイルームに響く。
 一面タイル張りの、特殊プレイ用に改造された洋部屋。
 真白はそこで、恥じらいの部分を突き出すようにして拘束されたまま、延々と肛門を指で弄くられつづけていた。
「ううう゛っ……!!」
 また、呻きが漏れる。
 彼女とてアナルプレイに不慣れなわけではない。むしろ、毎週の開発で相当肛門はこなれている。
 それでも少女が苦しむのは、床に置かれた洗面器と、その中に立てかけられた浣腸器が関係している。
 グリセリン溶液を、1リットル。量としては多くないものの、肛門を指で割り開かれながら易々と耐えられるものではない。
「どうした、我慢しろ。あとたったの3分だ。こんな所で漏らしたら、また『お仕置き』だぞ」
 7人の男は交代で、ある者は尻穴に指を捻じ込み、ある者は乳房を揉みしだき、ある者は太腿を擦りつづけている。そうした一見何でもない愛撫が、着実に真白から余裕を奪い去っていく。
「くくっ、ムチムチの太腿が痙攣してきたぞ。腹の中の浣腸液が相当効いてきたらしいな」
 太腿へ手の平を這わせる岩田が、愉快そうに笑う。
「うう゛、むうっ!!」
 真白は岩田を睨んで呻くが、ボールギャグに阻まれて言葉にはならない。そうした事が繰り返された果てに、ボールギャグからは幾筋もの唾液が垂れ、銀色に輝きながら鎖骨へと滴り落ちていた。 
「……ふう゛、う゛ーっ!! うう゛うむぅう゛う゛ーーーっ!!!!」
 やがて、真白は激しく首を振りながら呻きはじめる。腹部が膨らんでは凹み、両脚の痙攣もいよいよ激しくなり。便意が限界を迎えているのは誰の目にも明らかだ。
「まったく、仕方がないな」
 肛門を嬲っていた山ノ江が苦笑交じりに指を抜き、アヒル型の補助便座を真白の肛門へと近づける。その直後、激しい破裂音が響きわたった。
「うう゛、ふう゛ぅ……むううっ…………!!!」
 何人もの男の視線に晒され、嘲笑われながらの排便。その羞恥に、真白の頬が紅を差したように赤らむ。しかしその瞳は、いよいよ色めいたように潤んでいた。
「嬉しそうな目ェしやがって、この変態め!」
 男達は真白の反応を見逃さない。そして薄笑みを浮かべながら、彼ら自身の嗜好と真白の被虐欲求を共に満たすべく、本格的なSMプレイを繰り広げる。
 後ろ手に縛ったまま天井から吊るし、乳房や乳首、尻など至るところを洗濯バサミで挟んだ上で、鞭を振るってそれらを叩き落す。
 背中にくまなく蝋を垂らし、層ができれば剥がして、敏感になった肌へまた垂らす。
 乳首とクリトリスにタコ糸を結びつけ、四方八方から引き絞る。
 それらの責めは、真白から涙と悲鳴を搾り出した。全身から脂汗が噴き出し、息は持久走の最中であるかのように荒くなっていった。だがそれらはすべて、真白を更なる発情へと導く要因でしかない。

「あああ゛あ゛っ!! うぁ……あがああああーーーーっ!!!」
 這う格好で肛門に挿入され、真白は大口を開けて絶叫する。そこには普段のクールさなど微塵もない。
「くく、相変わらず“こっち”を犯すと声が凄いな。いいぞ、最高の締まりだ。もっと浸れ。もっと狂え!!」
 後孔を犯す緑山が、真白の腿を掌で打ち据えながら笑う。
「いや、た、叩かないで、痛いっ……!!」
 拒絶の言葉と同時に、むちりとした腿の合間を愛液が滴り落ちる。
「おーおー、ケツ掘られてるだけで、もうトロトロじゃねーか」
「全く信じられないな。こんな淫乱娘に、あれほど熱心なファンクラブがあるとは」
 まぐわいを見守る男達は、逸物を扱いて準備を整えつつも、言葉責めを欠かさない。
「っ!!」
 心に突き刺さる言葉の刃。真白の目が見開かれ、唇が引き結ばれる。
 しかし、それもほんの少しのこと。
「それ、奥に出すぞ!!」
 力強い宣言と共に腸奥で精を放たれれば、
「あ……あああぁっ!!!」
 真白もまた唾液の糸を引きながら大口を開き、羞恥の悦楽のない交ぜになった表情を晒す。
「よし、今度はこっちだぞ! 大好きなデカマラで可愛がってやる!」
 胴太の怒張を誇る山村が、自分の腰の上へと真白を抱え上げる。
「ふん、ん……んああぁあっ!!!」
 品のある表情で耐えられたのはほんの数秒。
「いいぞ、お前のアナルは最高だ……お前は、世界一のメス豚だ!」
 薄汚い言葉で詰られ、ぐじゅぐじゅと水音を立てながら不浄の穴を抉り回され。
「くぁあ、あ……お、ぉっ……おっほおおぉおぉお゛っっ!!!」
 真白の整った顔立ちは見る間に蕩けた。

 夜を明かしての被虐の宴。その中で、真白は解放されていく。
 ただ、一匹の『豚』として。



                               終

禁忌のステーキソース・パスタ

※久々の飯を食うだけ小説です。


「……とにかくね、すっごい変なの、あのレストラン!」
その締めの言葉を聞いて、やっと俺は、優貴のジェスチャーが『すっごい変』を表していたことに気付く。よさこい踊りでもなければ、俺を呪っていたわけでもないらしい。

優貴が熱く語るレストランの名前は、『A Rank × B Rank』。一流の料理と二流以下の料理を掛け合わせ、フランクな満足感を与えるとかいう、よくわからないコンセプトの店だ。
メニューは日替わりの一品のみ、価格帯もまちまち。先週オープニングセールに乗じて優貴が行った時には、『フカヒレと金華ハムをあしらったラーメン』が出てきたそうだ。正直ゲテモノにしか思えないが、優貴的には相当イケたらしい。つまりは高級食材を使ったB級グルメか、嫌いじゃない。
でも。いざ店の前に行き、『本日の予算 4,000円』の看板を見た時には、少し腰が引けた。美味いという確証もない店に、そうそう使える額じゃない。後ろから猛烈な勢いで押してくる彼女がいなければ、数秒で踵を返していたところだ。

恐る恐る足を踏み入れたレストランは、案外ちゃんとしていた。シャンデリアが照らす空間に、真っ白なクロスの掛けられたテーブルが並び、畳んだナプキンなんかも置かれている。壁には絵画も掛かっていて、俺のような庶民の目には充分高級レストランに映る。
「ふわぁ、今日はこういうのなんだ……」
優貴の呟きからすると、前に来たときはまた雰囲気が違うらしい。
先客はすでに何組かいて、格好はフォーマルからカジュアルまで色々。少し失礼かもしれないが、まさに一流から二流まで、という雰囲気だ。
「お客様。こちらへどうぞ」
入口近くで突っ立っていると、中央あたりの席を案内された。白いテーブルクロスに置かれた銀のカトラリーは1セットのみ。これが3セットも4セットもあるとそれだけで混乱してしまうから、ありがたい。

「食前酒にシェリーとキールをお選びいただけますが、どちらになさいますか」
渋い声でそう尋ねられるが、そもそもどっちも知らない。
「キールで!」
悩む俺とは対照的に、正面の優貴がキッパリと答えた。これは意外だ。子供っぽい見た目のくせに、案外酒を知って……
「で、キールってなに!?」
ウェイターが踵を返した直後、優貴が俺に囁きかける。まあ、解ってはいた。解ってはいたが、なぜ知らない酒を自信満々に頼むんだ。さすがは大学のサークル仲間から、『愛嬌だけで世を渡る女』と呼ばれるだけはある。もっとも、その愛嬌にほだされて付き合い、挙句こんな所にまで駆り出されている俺が偉そうに言えたことでもないが。

キールとは、ショートドリンクに分類されるカクテルの一種で 、白ワインに少量のカシスのリキュールを加えたものを言う。らしい。もちろん出展はウィキペディアだ。
そうと判った上で運ばれてきたグラスの中身を飲んでみれば、確かにカシスらしい味がする。白ワインの爽やかな酸味も相まって、胃が開いていく感じがする。なるほど、これが食前酒か。そう感心しつつグラスの中身を空けたころ、早くもメインディッシュが運ばれてくる。
メインは肉。それも、肉の中の肉、ステーキだ。
肉汁が弾ける音のする鉄板に、ブ厚い肉の塊が乗っている。400g以上は軽くあるだろう。さすがの優貴も、そのステーキの皿を前にしては言葉がない。そのぐらいの熱気と、存在感と、期待感の塊なんだ。
皿から立ち上る湯気を吸い込んでいるだけで、身体がとろけてしまいそうになる。原因は直感でわかった。バターだ。ステーキにはたっぷりのソースが掛かっているんだが、そのソースが肉汁を絡めたたっぷりの焦がしバターで作られてるんだ。そこへ仄かに混じる香りは、ガーリックとタイムか。逆に言えば、その2つの独特の香りすら背景になってしまうぐらい、バターの香りが圧倒的なんだ。
「よ、涎でちゃうね、これ……」
ようやくという感じで優貴が口を開く。下品な、とはいえない。こればっかりはしょうがない。
香りに散々あてられながら、肉を見つめる。肉汁がプチプチと音を立てる表面にはしっかりと焼き色がついていた。でもその一方で、横にはまだ赤みが差している。ブ厚い肉なのに、見た目だけでとてつもなくやわらかいのが理解できてしまう。
誘われるようにカトラリーの1セットを手に取り、フォークで肉を固定しつつナイフを滑らせる。すると、あっさりと肉が“裂けた”。想像していたよりもさらにやわらかい。ただ手前に引くだけで、驚くほどなめらかな断面ができる。
断面は、見事なレアだった。ごく表面だけが黒く、中に行くほど淡いピンクになっていく。そしてそのピンクの隙間隙間に、これでもかというほど肉汁が光っているんだ。
もう、理性も何もない。今切り取ったばかりの肉の端を、口の中へ放り込む。噛みしめる……までもなく、歯で軽く挟んだ時点で肉汁があふれ出し、敏感になっている舌を覆い尽くす。ジューシーな牛の野生味が、ダイレクトに心臓まで届いてくる。このパンチの強さは豚や鶏には真似できない。
そしてそれに浸る間もなく、舌がバターの旨味を感じ取る。『まろやか』という言葉を思わず使ってしまいそうなぐらい、有無をいわせずとろかしてくる味。優しいのにしつこくて、反則的なまでに人を骨抜きにする風味。ただ舌に乗せているだけでこれなのに、噛んでしまえばもう幸せな地獄だ。ますます存在感を増していく肉汁のパンチと、バターの風味、ガーリックの憎いまでの香ばしさがない交ぜになり、立て続けに舌と脳を刺激してくる。刺激が強いのに、噛む速さが勝手にどんどん増してしまう。
 スジをほとんど感じない肉が口の中でどろどろに解けた頃、ようやく飲み込むことを許される。喉を心地良い塊が滑り落ちていけば、後は口の空洞に旨味が漂うばかり。後味がいい、なんてものじゃない。中毒だ。俺はその至福に酔いながら、壁に目をやった。席まで移動する間に確認していたんだ。『本日の予算 4,000円』……入口と同じその文言が、壁のボードにも描かれているのを。
4,000円。店に入る前とは逆の意味で信じられない。このステーキは、そんなものじゃない。店が店なら、1万、いや2万円取られたって文句が言えないレベルだ。
俺はそこまで考えてから、またナイフを滑らせる。最高の肉だけに、最高の食べ時を逃すのが惜しい。そういう小市民的な考えで。
二口目でも、三口目でも、俺の舌と脳はパンチを喰らい、とろかされてしまう。肉自体も凄まじく美味い。でも何といっても、ソースが反則的だ。ミシュランで星いくつを取るレストランの、秘伝のソース――そういう触れ込みでもなければ逆に不自然に思えるぐらい、悪魔的な旨さを秘めている。おまけにこのソース、相性がいいのは肉に対してだけじゃない。付けあわせで盛られたマッシュポテトにも、オリーブオイルで素揚げしているらしいブロッコリーやニンジンにも、恐ろしいほどマッチする。

気付けば俺は、最初圧倒された400gあまりの肉をあっという間に平らげていた。安い肉なら300gでも飽きが来るのに、負担らしい負担を感じる瞬間は一度もなかった。本当に、いつの間にか最後の一切れを食ってしまっていた。そしてそれは俺だけじゃなく、向かいの優貴も同じくだ。
「あれ、もうなくなっちゃったぁ……」
その言葉は、まるで俺の脳から漏れたかのようだった。
肉のなくなった皿には、俺を悩殺したあのソースだけが残っている。俺は、それがあまりにももったいなかった。もしここで他人の目がなかったら、まず間違いなく皿を持ち上げて舐め取っているだろう。
そもそもよく考えれば、なんでステーキなのにパンがないんだ。それさえあれば、このソースへたっぷりと浸し、絡ませて堪能できるのに。俺がそう思った、まさにその時だ。
「美味しくお召し上がりになったようですね」
さっき肉を運んできたウェイターが、俺達の横で足を止めた。手にはドーム型の蓋が被せられた皿が乗っている。心なしか、さっきより砕けた雰囲気だ。
「お腹の具合はどうですか。まだ……いけそうですか?」
なんだろう。こっちの『何か』を察しているような、誘っているような口ぶりだ。俺と優貴は、その誘いにまんまと乗って頷く。すると、ウェイターが笑みを浮かべた。
「かしこまりました」
そう言ってウェイターは、ドーム型の蓋を開ける。
中から現れたのは、もうもうと湯気の立つパスタ。
「失礼します」
ウェイターは蓋をテーブルの端に置くと、トングを取り出し、パスタを俺と優貴の皿へと取り分けていく。ステーキのソースが、たっぷりと残った皿にだ。
「では……当店自慢のソースを、心ゆくまでご堪能ください!」
そう言ってウェイターは、白い歯を見せて笑った。最初は高級レストランのウェイターとして違和感がなかったのに、今では悪巧みを打ち明ける兄貴に思える。
ほどよく盛られたパスタの1本を、下品と知りつつ摘み上げる。そして食べてみれば……ほとんど味はしない。うっすらと塩味がついてはいるが、いたって普通。安い弁当のスペースを埋める目的で敷き詰められている、あの素パスタとほぼ同じだ。
なるほど、これがBランク。さっきのこれでもかというほど上等なAランクの余韻を、これで汚せというわけか。高級に慣れた人間の中には、馬鹿にしているのかと怒る人間もいるだろう。最後はこれでは格調も何もない。
でも、下賎な身……それこそ人の目がなければ皿を舐めとろうと考える人間にとっては、まさしく禁忌の誘惑。
「たまんないね……これ…………!!」
優貴が堪え切れないという風に笑う。それはたぶん、俺も同じ。

そして、俺達は史上の残飯を食い漁った。極上の肉汁と、香ばしいガーリック、そして脳をとろかすバター……それらを安っぽいパスタに存分に絡め、思うさま啜る。
つくづく合理的だった。それ自体に味のないパスタだけに、ソースの味が最大限楽しめる。喉の通りのいいパスタだけに、ステーキを食った後でもツルツルいける。ほんの少し物足りなかった腹具合もきっちりと満たされ、何より極上のソースを最後の一滴まで余さず消費できる。本物の高級店なら、こんな真似は許されないだろう。どれほど上質なソースを作っても、ステーキを食い終わった時点で皿は下げられ、ソースは捨てられてしまう。これはまるで、そんなソースと、それを作った職人の無念を晴らす一品に思えた。
「たまんねぇな、これ……」
心も腹もすっかり満たされた頃、俺はフォークを置きながら、思わずそう呟いていた。正面の優貴と、遠くから見守っているウェイターに、心地いい笑みを向けられながら。



                                (終わり)

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