大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2019年04月

緋色の首輪  最終話

※ポルチオ絶頂回です。



 『仕上げろ』。
 宮路がそう言い残して出て行った後、部屋には気まずい空気が流れていた。
 磯崎はいつも通りの無表情だけど、新渡戸も、あの皮肉屋の栖村でさえ、神妙な顔つきになっている。
 何分かの沈黙の後。
「お前、ホンマに…」
 栖村が私の目を見据えたまま、何かを言いかけた。でもその瞬間、隣の新渡戸が栖村の4段腹へと肘を叩き込む。
「う゛っ!!」
「コラ。おどれ、何言うつもりじゃ?」
 栖村を見上げる新渡戸の眼は、見たこともないほど険しかった。いつもはニヒルっぽい笑みを浮かべ、目尻も垂れ気味なのに、眼を見開いた今は鬼の形相だ。体格で栖村より3回りは劣るのに、今目の前で2人が殴り合ったら、絶対に栖村は勝てない……そう思えるぐらいの気迫があった。その気迫に圧されてか、あの栖村が目を逸らす。
「…………すんまへん」
 異様な仲間割れだった。そしてそれは、ひとつの事実を示してもいる。調教師の間にさえ方向性の違いが出るぐらい、これからされる行為がえげつないということ。宮路の『仕上げろ』という言葉から考えても、それは間違いない。
「磯崎、まずは外から“ポルチオ開発”や。栖村はアタマ冷やしとけ」
 新渡戸は磯崎に指示を出しつつ、栖村に反省を促していた。
 ポルチオ。これまでの調教でも、何度か耳にした言葉だ。子宮の入口のことで、女にとって最大最後の性感帯。刹那的なクリトリスの快感とも、下半身に痺れが走るようなGスポットの快感とも違う。性感帯として目覚めるには時間が掛かるけど、その分得られる快感の深さは凄まじくて、雷に打たれたような快感がずっと続く。そう聞いた。
 最初は大袈裟だと思ったけど、今は笑い飛ばせない。それに近い感覚なら、実際に何度か体験しているから。栖村のディープスロートで、磯崎とのアナルセックスで、そして新渡戸に抱かれる中で。
 特に新渡戸にじっくりと抱かれ、あそこの奥まりを丁寧に突かれていると、そのうち体がガクガクと揺れはじめる。太腿が痙攣するだけじゃなく、背中まで浮き上がるぐらいに。あれは、まさに感電しているような感覚だ。もしそれが強まれば、『雷に打たれた』という表現だって大袈裟じゃなくなる。
 そんな快感に、私は――――耐えられるだろうか?

 いや、耐えられるかどうかじゃない。絶対に耐えなきゃいけないんだ。
 グループの皆のために。ファンのために。そして、私自身の夢のために。

「う、うつ伏せに寝ろ」
 ベッドに上がった磯崎が、どもりながら私に命じる。私が従うと、磯崎は私の足の間に片膝をつくように位置取り、両手でお尻の両サイドを包み込んでくる。
 そこから、マッサージが始まった。これ自体は珍しいことじゃない。これまでだって、前戯の一部として全身を揉まれる事は多かった。でも今回は少し違う。ただお尻周りを揉み込むだけじゃなく、掌の少し膨らんだ部分を使って、細かに振動を与えてくる。
「んっ……くすぐったいよ!」
 私は思わず腰を捩るけど、磯崎に反応はない。いつも通りの無口無表情のまま、黙々とマッサージを続けていく。お尻の両側だけじゃなく、腰の辺りや、肛門の近くまで。しかもそれが、いやに長い。
 変な感じだ。掌を押し付けたまま揺すられると、振動が身体の中まで入ってくる。電気マッサージ器をクリトリスへ宛がわれると、お尻の方にまでズーンと振動が来るけど、感覚としてはそれに近い。しかも磯崎の掌は表面積が大きいぶん、腰全体に刺激が来る。それをじっくりやられると、何だかお腹の奥がムズムズしてしまう。

「お前はいっつもそうやのぉ、栖村」
 ふと、新渡戸の声が聴こえてきた。栖村と差し向かいで飲みながら、何かを諭しているようだ。
「ちっと共同生活送っただけで、奴隷に入れ込みおって。磯崎を見てみぃ、調教師としてブレとらんわ」
 新渡戸はそう言ってこっちを指す。
 栖村は、私に同情してるんだろうか。あれだけ私を嫌ってたのに。でも、一時的にどういう感情を持とうが、奴はあくまで調教師。私の敵なんだ。
「…………すんまへん。切り替えます」
 栖村は静かにそう宣言し、新渡戸が頷く。

 そんな2人を尻目に、磯崎は淡々と刺激を続けていた。
 お尻全体を揺さぶりながら、そのうち親指で肛門を押さえはじめる。たったそれだけで、刺激の種類が変わった。腰全体がほぐされる中で、肛門にだけは杭を打たれたような圧迫感がある。
「あ、ああっ!!」
 声が出た。もともと開発されている肛門に杭打ちの刺激が来れば、感じるなという方が無理な話だ。そして、肛門のむず痒さにお尻を引き締めると、掌の振動がよりしっかりと内部へ伝わるようになる。どっちに転んでも、ズルズルと堕ちていく……まるで蟻地獄。
 そうしたお尻への刺激が、10分以上は続いただろうか。
「あ、仰向けになれ」
 磯崎が一旦手を離し、そう命じてくる。
「…………っ」
 私は……それを躊躇った。
「は、早くしろ」
 そう急かされて、渋々と身体を反転させる。磯崎は私のあそこに視線をやり、口の端を持ち上げる。
「……いっ、淫乱女め」
 腹の立つ侮辱だ。でも両の親指で割れ目を拡げられれば、反論のしようもない。お尻へマッサージを受けただけで、愛液があふれるんだから。
 磯崎は無表情に戻ると、私のあそこへ掌を触れさせた。前貼りのようにぴったりと塞ぎ、その上で揺らしはじめる。今度は、膣に振動が伝わってきた。
「あぁ…………はっ………………」
 息が荒くなる。こればっかりは、どんな子だってそうだ。そういう風に身体が出来てるんだ。私はそう考えて気を落ち着かせながら、刺激に耐える。
 逆にいえば、いきなりそんな“言い訳”を考えなければならないほど、この快感はハッキリとしていた。
 この責めも、呆れるぐらいじっくりとやられた。股関節から恥骨にかけてを、少しずつポイントをずらしつつ揺さぶられる。
「あっ、はっ……ぁぁっ、はっ……はっ…………!!」
 私は荒い息を吐きながら、左右の膝を立てたり伸ばしたりを繰り返した。
 片膝を立てると腹圧がかかるから、尿意と共に絶頂感が強まる。かといってピンと足を伸ばすと、それはそれでストレートに感じてしまう。
「あ、愛液があふれてきてるぞ。ただのマッサージで濡れるのか、す、助平め」
 刺激を続けながら、磯崎が呟く。実際その掌の下からは、ぐちゅぐちゅと水音がしはじめていた。愛液だ。何度も軽く絶頂している自覚はあったけど、改めて指摘されると恥ずかしい。
「スケベはアンタでしょ!? 手つきがいやらしいのよ、変態!!」
 そう反論しても、磯崎の表情に変化はない。私の反応を窺いながら、ロボットのように淡々と刺激してくる。
 こういう性感開発では、単純な繰り返しが一番きつい。着実に、着実に、快感が私の中のコップに溜まっていく。最初に比べて、遥かに容量の増したコップに。
 バケツ大か、ドラム缶大か……今のコップのサイズは、私自身にも測れない。でも、一つだけ確かなことがある。それだけの容量があふれた時には、以前よりずっと深刻に溺れてしまうということだ。
「んんんっ……うんっ、んっ!!」
 息が荒くなってきた。そんな私の反応を見て、磯崎がまた新しい責め方を織り交ぜてくる。お臍の下を、掌の付け根でぐうっ、ぐうっ、と押し込む動き。場所が子宮の真上だけに、かなり直接的な気持ちよさがある。
「んっ、ん!! ふうっうんん゛っ…………!!」
 勝手に腰が動いてしまう。そこが弱点だと、暴露するように。

 その弱点は、当然ながら徹底的に突かれた。お尻の下に枕を挟み、腰が浮いた状態にした上で、お臍まわりを刺激される。
 方法は、本当に色々だった。掌の付け根はもちろん、4本指の先だったり、緩く握った拳だったり、掌そのものだったり……色々な手段で圧迫される。
 かと思えば、お臍からデルタゾーンにかけてを指先でトントンと叩かれることもあったし、電気マッサージ器を持ち出されて振動を与えられることすらあった。
 でも、それだけ念入りに子宮を刺激しておきながら、肝心の割れ目にはほとんど触れられない。せいぜい、ビラビラの両サイドに指を宛がって振動させるか、指の一本をごく浅い部分で蠢かすだけの生殺し。
 これを、磯崎、栖村、新渡戸の3人交替で、延々と続けられたんだ。
 多分、映像としては今までで一番地味に違いない。腰を揺らしたり、足を強張らせたり、膝を曲げたり伸ばしたり……そういう動きはあるものの、いわゆるセックスとは縁遠いから。
 でも、その一番地味な前戯で、私の胎内は決定的に目覚めていく。
 長い刺激の中で、10回以上は足が攣ったけど、痛みにのた打ち回った覚えはない。肉離れの痛みより、子宮からどぐんどぐんと生み出される快楽の方が、ずっと上だったからだ。
 信じられるだろうか。この責めの最後の方で、私は、呼吸するだけでイクようになっていた。すうっと酸素を取り込み、お腹をへこませながらふうっと吐く。この当たり前の動作の中で、割れ目をヒクつかせながら絶頂してしまっていた。

 お尻に敷いた枕から厚みが消え、体の下のシーツが生乾きになった頃。ようやく、本当にようやく、私のお臍まわりから刺激がなくなった。でも、もう遅い。私は両足を投げ出すみっともない格好のまま、自分の荒い呼吸でイってしまう。全身に滝のような汗を掻き、目と口を開いた姿はきっと、溺死寸前の人間に見えるだろう。
 そんな私に、新渡戸が近づいた。真珠入りのペニスを隆々と勃起させながら。
「…………ひっ…………!!」
 私は目を見開いて呻く。
 ただ、恐怖があった。今のコンディションで『あれ』を受け入れれば、さらに決定的に壊れてしまう。そう本能的に理解したから。
「今から次の握手会までは、ちょうど72時間ある。それまで、一遍も抜かんと犯し抜いたる」
 新渡戸が腕時計を見ながら、静かにそう告げた。どこか好々爺めいた、人誑しな雰囲気はもうない。娘を勘当した父親のように、冷え切った目で私を見下ろしている。
「お前は一番人気や。握手会の直前キャンセルは手配が面倒やさかいの、水曜までは正気保っとれや?」
 新渡戸はベッドに膝をつき、私の右脚を掴み上げる。
「んんっ!」
 その足の揺れが全身に伝わり、軽い絶頂感となって染み渡った。
 普通じゃない。狂っている。神経も、脳味噌も。
「や、やめて……今は、だめ…………!!」
 私は新渡戸の方へ手を伸ばしながら、掠れ声で哀願する。でも新渡戸には、私の言葉に耳を貸す気なんてないらしい。
 亀頭を割れ目に擦りつけて愛液を塗りこめると、力強く腰を突き入れる。
「っはああああぁっ!!!!!」
 太腿が、胸が揺れる。体中が歓んでいる。
「ふん。挿れただけでイッたか、情けないやっちゃのぉ。オウ栖村、握手会キャンセルの準備進めとけ。このアマは水曜までもたんわ」
 新渡戸は光を感じさせない目で、吐き捨てるように言う。
「ッす、わかりました!」
 栖村は腕組みをやめ、どこかに電話を掛けはじめる。
 シビアな上下関係に基づく、キビキビとした連携。ここからが、本当の奴隷調教の始まりなんだ。

 ずちゅっ、ずちゅっ、という水気のある音が繰り返される。
「グチョグチョのマンコが、浅ましゅう絡みついてくるわ。ヤクザマラにここまでむしゃぶりつくとは、いよいよカタギの女として終わっとんのぉ」
 新渡戸は耳元で呪詛のように呟きながら、激しく奥を突き上げる。無数の真珠が蕩けきった膣壁にゴリゴリと擦れ、硬い亀頭が駄目押しとばかりに子宮口を押し潰す。
 その2つの刺激を前に、今の私が耐えられるはずもなかった。
「ああああっ!!!」
 右腿を抱え上げられた姿勢で、たちまち二度目の絶頂へと押し上げられる。でも、その余韻に浸る間もなく、ほぼ真横に足を開く格好を取らされる。
 しかも、それだけじゃない。新渡戸は駄目押しとばかりに、指先で私の腹部を撫ではじめた。恥骨から、臍の下まで。そこから腰骨に沿って、円を描くように。当然その間も、腰の打ち込みは止まない。物凄い力強さで奥の奥を突き上げてくる。
「ああ、ああ!! あああ!!!」
 3回目の絶頂、そして続けざまに4回目。私は目を見開き、顎を浮かせながらガクガクと痙攣した。
 そしてその直後、あそこの中で変化が起きる。凶悪だった新渡戸のペニスの感覚が、急になくなったんだ。
「ふん、バルーン現象が露骨になってきとるわ」
 新渡戸は鼻で笑うように呟く。
「バルーン、現象……?」
「イク直前に、マンコの中が拡がる反応や。精液をちっとでも多く貯め込むためにな。要するにお前の身体が、ワシのザーメンを欲しがっとる証拠や」
 その言葉に、私は息を呑んだ。
「はあ、はあ……う、嘘……っ!!」
「嘘な訳あるかい。お前の反応全部が、ワシの虜や言うとるわ!!」
 その叫びと共に、さらに激しいピストンが始まった。
 ベッドが軋む。水音が響く。コリコリした子宮口がリズミカルに亀頭に潰され、あそこの奥がヒクヒクと痙攣する。
「ああ、ああうう…………あっぐうううーーーっ!!!」
 さっきよりひどい痙攣と共に、5度目の絶頂が全身に染み渡る。
「はあ、はあっはあっ……くっ、くるうしい………苦しいっ!!!」
 私は激しく喘ぎながら、新渡戸の耳元に囁きかける。甘えるつもりなんて微塵もないけど、体力の尽きかけた状況で意思を伝えるためには、縋りついて囁くしかない。
「……磯崎、水や!」
 冷ややかな眼のまま、新渡戸が命じる。磯崎はガラステーブルのペットボトルを拾い上げると、フタを外して新渡戸に差し出す。すると新渡戸はそれを一口飲んでから、いきなり私の唇を奪った。
「ん、んんっ!?」
 混乱する私の喉に、水が入ってくる。自分で思う以上に喉が渇いていたらしく、この水は甘く感じた。ヤクザからの口移し、という点さえ忘れられれば。
「まだまだ、これからや。徹底的に、“中でイク”感覚を覚えこませたる」
 新渡戸は私の目を見据えながら、太い声で宣言する。
 そして、それは事実だった。新渡戸は私と繋がりあったまま、何度も何度も膣の奥での絶頂を味わわせてきた。
 いつもいつも、激しく腰を打ちつけるわけじゃない。深くまで挿れたまま、ほとんど動かないことも多かった。でも、そういう時間が休憩だと思えたことはない。
「はぁっ、はぁっ……あああ、ああぁぁぁ…………っ!!!」
 両足首を肩へ担ぎ上げられるような体勢で、私は何度も絶頂した。数十分に渡って腰が動くことはなかったのに、膝頭を掴まれてあそこの中に存在感を示されるだけで、震えながらイってしまった。
 こんな状態で4度も逝くと、本当に余裕がなくなる。だから私は、足に残った力を振り絞って、両足を右に倒した。意外にも新渡戸は、この動きをあっさりと見逃す。
 でも、それは罠だった。ベッドへ右向きに横たわり、両足をぴっちりと閉じる――この状態で新渡戸の物を挟み込むと、さっきよりもっとダメな部分に真珠が食い込んでしまう。
「うあっ!? あ、あっ!!」
 反射的に顔を跳ね上げた時には、もう遅い。新渡戸の手は私の太腿を押さえ込み、上に下にと撫で回す。産毛を撫でるようなその動きすら、敏感になった今はたまらない。
「ああああっ、くあああっ!! ああぁぁーーー……っ!!!!」
 私は両腕の間に顔を埋めながら、絶頂の波に呑み込まれる。
 かなり頑張ったとは思う。歯を食いしばり、眉を顰めて。でもあそこのむず痒さと圧迫感は、刻一刻と強くなっていく。そしてその果てに、私はとうとう失禁してしまった。
「なんや、もう小便漏らしよるんか。まだ2時間と経っとらんぞ」
 新渡戸は小馬鹿にした口調でそう吐き捨てると、私の腰を抱え上げる。お尻だけを高くつき上げ、這いつくばる格好だ。
 その屈辱的な格好で、久しぶりに突き込みが再開される。挿入に角度をつけることで真珠の引っ掛かりを最大限にし、ぶじゅうっ、ぶじゅうっ、とあそこの汁気を掻き出すピストン。これに、私の下半身は震え上がった。
「いやあああアアア゛゛ーーーーーっ!!!!」
 物凄い声が漏れた。自分でも、自分の声とは思えない類の、男じみた声だった。そしてその裏で、ベッドが軋む。私自身の腰の痙攣に引き摺られて。
「はっ、ひどい声や。今までブッ壊してきた女の中でも最低やぞ、お前の品のなさは! 仮にもメス犬なら、ちったぁ主人に媚びてみい!!」
 新渡戸は怒鳴りつつ、私のお尻の肉を両サイドから挟みこむ。ついでに肛門にも、2本の親指を捻じ込みながら。
「んひぃ!! あうっ、あうっ……はああっ!! んああああぁぁーーーっ!!!」
 私はシーツを掴んで絶叫し、涙をこぼす。そしてそのまま叫びつづけ、ある瞬間にふっと意識が途切れた。
 ただ、意識がなくても、五感は働いていたんだろう。私はおぼろげながら、この後の事を覚えている。潮やおしっこで濡れたベッドの上を引きずり回され、色んな体位で犯されたことを。
 屈辱的なM字開脚、ぐらぐらと前後に揺れる騎乗位、家畜のようなバックスタイル――――。

「…………い、おいっ! 起きんかい!!」
 耳元で叫びながら揺り起こされ、ようやく私の意識は空気の匂いを捉えはじめる。精液、愛液、そしてアンモニアの饐えた匂いを。
「水曜や。とっとと握手会に行く準備せぇ!」
 腕を掴んでベッドから引きずり下ろされるけど、私はそのまま床にへたり込む。足と内腿に力が入らない。なんとか立ち上がり、シャワールームまで辿り着くには、かなりの時間と労力が要った。


    ※           ※           ※


 握手会が始まってからも、私の火照りは治まらなかった。
 ファンからぎゅっと手を握られるだけで、全身がゾクゾクする。まるで、全身が性感帯になったみたいに。
「ゆ、結衣ちゃん……なんだか今日、エッチだね……?」
「ほっぺた赤いよ、熱っぽいの?」
 何人かにそう指摘されてしまうぐらい、体中が熱かった。
「リーダー……大丈夫? すごい汗だよ」
 ついにはグループの皆にさえ、そう心配されてしまうぐらいに。
「大丈夫大丈夫、平気だから!!」
 取り繕った笑顔でそう答えるけど、ひどく虚しい。
 大丈夫じゃない。そしてこの握手会が終わった後、もし例のチンピラ達に犯されれば、ますますおかしくなってしまう。
 私はそう思って、握手会会場の窓から逃げ出した。裏口であいつらが張っているのはわかっていたから。
 でも結局は、路地裏ですぐに追いつかれてしまう。
「おー、いたいた結衣ちゃん。探したぜぇ?」
「!!」
 路地の向こうから声がして、私は思わず立ち竦む。嫌というほど聞き覚えのある声。
 振り返ると、案の定“あいつら”がいた。


 そして、今。
 私はラッパー風の男達に手を引かれ、ホテルに連れ込まれている。
「へへへ。すっかり濡れてんのがデフォになっちまったな、結衣ちゃんよ」
 ショーツをずり下げたドレッドヘアが、茶化すように笑う。
「ああ。さっきも、グチョグチョってすげぇ音してたもんな!」
 また別の一人も、私の胸を揉みながら笑みを浮かべていた。

『……もう、こんなのやめて……』

 そう拒絶する私の言葉に耳を貸さず、あそこに指を入れてきた男だ。しかも、いつ人目につくかもしれない路地裏で。
 こんな連中の言いなりになってたら、いつか取り返しのつかない事になりかねない。でも、弱みを握られている以上、無視するわけにもいかなかった。

「おら、今日もくれてやんよ。自分で跨れー?」
 斜め帽子の男が、ベッドへ寝そべりながら手招きする。私は下半身に着けていたものを脱ぎ去り、命じられた通りに行動する。
「ははっ、こいつもう濡れてやがる! 会うたびに変態になってくなぁ、伝説のアイドルちゃんよぉ!?」
 斜め帽子は、勃起した物の先を割れ目へと擦りつけてきた。ただそれだけで、かなりの快感が背筋を這い登る。
「ん、く……っ!!」
「いい顔だ。ローションも要らねぇし……都合のいい女だぜお前は!」
 屈辱的な言葉と共に、割れ目の中を貫かれる。太さもなければ、長くもない。でも蕩けたあそこを満足させるには、充分すぎる刺激だ。
「あ……ふぁあっ!!!」
「ハハハッ! こいつ、挿れただけでイったぜ!?」
「完全にチンポ中毒じゃん! こんなビッチが本当にアイドルかよ!?」
 馬鹿にされている。それを脳味噌はちゃんと判ってる。でも、身体がいうことを聞かない。
「ふう、うううっ…………!!」
 斜め帽子が腰を突き上げるたび、全身がビクビクと痙攣する。快感が強すぎて、たちまち絶頂へと追い込まれてしまう。このままじゃダメだ、仕切り直さないと。
「だ、だめっ!!」
 私は相手のお腹に手を置いて、動きを止めようとする。でも、その手はすぐに払いのけられた。
「今さら抵抗すんなって。イキまくっちまえよ、好きだろお前も?」
 そう言ってあそこの奥を突き上げられれば、すぐに2度目3度目の絶頂が来る。
「くはっ……い、いぐっ……あああぁっ!!!」
 絶頂のせいで感度が上がり、ますますイキやすくなってしまう。足掻けば足掻くほど落ちていく、蟻地獄。頭に浮かぶのは、いつもそのイメージだ。
「ああやべっ、俺もイクッ!!」
 斜め帽子が呻きながら、あそこの中で精を放つ。膨れたゴムが襞に触れる。
「はぁっ……、はぁっ……」
 私は喘ぎながら、その射精にどこか物足りなさを覚えていた。中へ生ぬるい“ザーメン”を浴びないと、一区切りついた気がしない……。

 ( ―――馬鹿、何考えてんのよ!? )

 私ははっと我に返り、頭を振って変な考えを打ち消した。
 おかしい。最近はすぐボーッとして、ろくでもない事を考えてしまう。同じ射精されるなら、ゴム付きの方がいいに決まってる。中出しみたいに気持ち悪くないし、妊娠の心配もしなくて済むんだから。
「なーに頭振ってんの結衣ちゃん? 止めちゃイヤイヤってか? 安心しろよ、まだまだ可愛がってやっから!!」
 その言葉で、私はベッドへうつ伏せに組み敷かれる。そして間髪入れず、割れ目を硬い物で貫かれた。
「くんんっ……!!」
「ははっ、気持ちよさそうな声。俺もスゲーいいわ、最高のマンコだ!!」
 男は腰を振り続けるながら、嬉しそうに言った。するとその言葉に、別の一人が反応する。
「ちょっと、それアタシより上ってイミ? 失礼じゃん!?」
 反応したのは、金髪を縦ロールにしたヤンキー風の女の子だ。発言内容からして、今私を犯している男の彼女なんだろう。
「や、でもスゲーんだってコイツ!」
「はぁ!? そんなビッチ以下とか、プライド傷つくんだけど!!」
「くくっ、ビッチとかよく言うぜ。こないだまで俺ら全員の咥えこんでた癖によ!」
「でもこの女みたいに、ヤりはじめてすぐは濡れなかったじゃん!」
「そーかね、お前も相当好きモンだと思うけど?」
「なら、比べてみっか? どっちがイキやすいビッチかってよ!!」
「ハハハッ、面白そーだなそれ!!」
「上等じゃん、そんな女に負けるわけないし!」
 口論から始まって、場がどんどん盛り上がっていく。私の意思なんてお構いなしに。
「ちょっと、勝手に決めないでよ!!」
「あ? バーカ、端っからお前に拒否権なんかねーんだよ!」
 解ってはいたけど、私の抗議が聞き入れられることはない。私の発言力は、この場の誰よりも弱いんだ。

 そしてそこから、比べあいが始まった。
 さっきの子とベッドに横並びになって、それぞれ数人の男から犯される。
「うーわ、キモい! ちょっとハメられただけで、マン汁だらだら垂らしてさぁ。ホントに変態女じゃん!!」
 競争相手の子は、横で犯される私を見ながら散々に罵倒してきた。
「だ、誰が……んむう゛っ!! んっ、ふううんん゛っ…………!!」
 一方で私は、口にアレを咥えさせられるせいで、ろくに反論もできない。そして喉奥とあそこを同時に犯されていると、だんだん意識がボヤけてくる。
「ん、もごぉっ……はあっ、ああああ゛っ…………!!」
 何度もイかされて、頭が真っ白になって、ついには自分がどういう状況かさえ判らなくなってしまう。かろうじて認識できるのは、周りからの罵声と嘲笑だけ。でもそれすら、絶頂の快感に比べれば二の次三の次でしかない。

 私は変わってしまった。多分、もう戻れないぐらいに。


    ※           ※           ※


 ラッパー風の男達にたっぷりと犯された後、ふらつく足で調教部屋に戻る。すると新渡戸達が、駄目押しの『ポルチオ』開発の準備をして待ち構えていた。
「これから何日もかけて、体中の性感帯をじっくりと開発したる。マスク被せたるさかい、寝たなったらいつでも寝ぇ。“寝られたら”、の話やがな」
 新渡戸はそう言って、私の頭に黒いマスクを被せた。
 呼吸用に、鼻と口の部分にだけ穴が空いたマスクだ。目を覆われてしまうから、視界は利かない。代わりに、ゴムの匂いがやけに鼻をつく。
 視界を奪われる――この怖さは、身に染みていた。怖いぐらい感覚が鋭くなって、いつも以上に悶え狂ってしまうんだ。
「また目隠し? 調教師だとか言ってる割には、芸がないわね!」
 私は叫ぶ。視界を奪われる事だけは、何とか回避したくて。でも、調教師3人が聞き入れることはない。私が弱音を吐くような事こそ、奴らにとって好都合なんだから。
「ああ、それで結構や。効くとわかった責めなら、なんぼでも繰り返したる。ワシらはパフォーマーやのうて、玄人(プロ)やさかいな」
 新渡戸のこの言葉に続いて、重苦しい羽音が唸りはじめた。それも、一つじゃない。二つ、いや三つ。3人それぞれが何かの道具を手にしているようだ。
「くっ……!!」
 私は歯を食いしばる。少しでも長く、まともでいられるように。

 そこから、地獄が始まった。
 これまでの総決算のような嬲りだ。ベルトで足をMの字に拘束されたまま、3穴とクリトリスを責め抜かれる。
 まずはカテーテルですっかり尿を抜かれた後、何かの液体を足して嵩を増した上で膀胱へ戻された。そして限界の尿意に脂汗まみれで苦しんだ後、夢のような開放感と共にカテーテルへ失禁する。
 これを何度も繰り返して尿道をほぐしてからは、無数のイボのついた尿道バイブで延々と尿道を刺激された。
「あうっ、あああう゛っ!! ひうっ、ぃい゛んう゛っ!!!」
 尿道を抉られる感覚には慣れない。あまりにも敏感すぎる場所だから、バイブの突起ひとつひとつを膣以上に深刻に感じてしまって、とにかく違和感がひどい。

 ( ――――ダメだ、これ、ダメだ!! )

 頭はそう煩いぐらいに警鐘を鳴らすし、私自身も「やめて」「抜いて」と口に出すのに、それを無視して刺激されつづければ、そのうち痺れるような快感が襲ってくる。Gスポットの快感に近いけど、それよりもっと深刻な……『核』に近い気持ちよさ。それに浸っていると、クリトリスがぐんぐん勃起してくる。男のアレそっくりに亀頭が硬くなって、はち切れそうになる。
 調教師3人は、当然その変化を見逃さない。色んな方法で、勃起したクリトリスをさらに刺激してくる。油のようなものをつけた指で、筆で、舌で、ローターで、マッサージ器で。そうして刺激されると、絶頂は避けようがない。
「あああっ、イヤーーーっ!!やめでぇ!クリさわんないでっ、やあ゛あ゛ーーーーっっ!!!」
 裏声気味にそう絶叫しているうちは、まだまだ『キレイ』な方だ。そこからさらに何十回と絶頂させられれば、もう言葉になんてならない。
「いいーーーっ、いいいイイ゛ーーーっ!!ひぎっ、いいいっひぎぃいいいーーーっ!!!!!」
 マウスオープナーを噛まされた時以上に、口をくっきりと『い』の字にへし曲げ、ただただ悲鳴を上げつづける。クリトリスという神経の塊で何十回もイかされたら、もう精神の強さも何もない。ガタガタ震えながら悲鳴を上げるしかない。どんなに鍛えたアスリートだって、どんなに育ちのいいお嬢様だって。
 惨めな有様だ。数日前までだったら、どれだけ栖村達に嘲笑われたことだろう。でも今は、3人の誰一人として笑わない。罵倒や侮蔑の言葉すらなく、黙々と私を追い込み続ける。それが、かえって私の不安を駆り立てた。
 ここまで無様を自覚している状況なら、いっそ口汚く罵られた方が……この状況に何らかの反応を示してもらえた方が、ずっと楽なんだ。何も言われないからこそ、色々と考えてしまう。他ならぬ自分が自分を追い込んでしまう。そうして精神的に不安になれば、ますます快感に抗えなくなる。
「はひっ、はひっ、ひっ…………いああああ゛イイイイーーーっ、はあっ、はあっ……ヤあああ゛っイギいイイっ!!!!!」
 もう何度、クリトリスでイかされているんだろう。50回か、100回か。
 時々ほんの少しの休憩が挟まるけど、それで火照りが治まることはない。むしろその休憩のせいで、麻痺しかけた感覚が正常に戻って、その後がイきやすくなってしまう。
 愛液をとろとろと溢れさせ、小さく失禁し、前と同じようにオナラまで出して……そこでようやく、クリトリスから刺激が消えうせる。

 でもこれは、あくまで『下準備』でしかなかった。

「はーっ、はーーっ……はっ、はぁーーーっ…………」
 私が荒い呼吸を繰り返していると、いきなり割れ目に指が入り込んできた。その指は、あっという間に一番奥の子宮口に触れる。
「よーし。子宮の入口がトロトロんなって、降りてきとるわ」
 そんな新渡戸の声がした直後、また重苦しい羽音が鳴りはじめる。でも、今回の音はなんだか変だ。今まで聞いた機械音が、同じ場所から同時に聴こえてくる。ヴヴヴヴヴという振動音、キュイッキュイッという回転音、そしてカシュカシュというピストンの音……。
「初めて聴く音やろ?」
 私の反応に勘付いたのか、新渡戸がそう訊いてくる。
「これはな、ポルチオ開発専用のバイブや。こいつ一台で、ピストン・スイング・パールの回転の3つの責めができる。それぞれ10段階に調節しもってな」
 その言葉の直後、何かが割れ目へ入り込んでくる。確かな硬さと弾力がある、シリコン製のバイブだ。無数のパールがゴリゴリとあそこの襞を刺激する。処女の頃だったら痛くて堪らなかっただろうけど、新渡戸の真珠入りの物に慣らされた今は、気持ちよくて仕方ない。
「くぅううっ、はぁ……っ!!」
 あそこが蕩けきった状態だと、ただバイブを挿れられただけでも甘い息が漏れた。
「よし、子宮口に届いとるな」
 新渡戸はグリグリとバイブを奥へ押し付けながら、念押しで確認する。そして、カチカチとバイブのスイッチを切り替えはじめた。その途端、バイブの動きが変わった。子宮の入口を小刻みに突き上げるピストン。上下左右に揺さぶるスイング。そして奥まった部分全体をかき回すような回転。それが一気に襲ってくる。
 この刺激は強烈だった。我慢しようと身構える間もなく、おしっこが漏れる時のようにあっさりと絶頂させられてしまう。しかも一度きりじゃない。二度も三度も、小刻みにだ。
「うあっ!? くうっ、んゥっ、うぐううう゛う゛っ!!!」
「どうや、堪らんやろ。これ使われたら最後、どんな女でも痙攣しながらイキっぱなしになるんや。お前の前にもガキが4人、この責めで折れたわ」
 新渡戸はそう言いながら、バイブの刺激を強めていく。振動を、ピストンを、スイングを、回転を。その刺激で、背筋を電流が走りぬけた。その電流は神経を伝って、手足の指先にまでじーんと広がっていく。
「ひぐっ!! あ、あ゛……いぐっ、いくうう゛う゛っ!!!」
 為すすべなく、絶頂へと押し上げられた。
 このバイブはやばい。人力では無理なぐらい、繊細に、力強く、ピンポイントで子宮口を刺激してくる。子宮口は、亀頭で潰されるだけでも簡単に絶頂してしまう急所中の急所。そこへこんな責めをされたら、とても耐えられない。
「あっあっあっ、あァーーーっ!! くっ、あ……くぅゥゥ…ん゛ん゛っっ!!!」
 喘ぎは、すぐに悲鳴に変わった。刺激が強すぎると、大口を開けて叫ぶか、歯を食いしばって『何か』に耐えるしかない。あっという間に頭が白んでくる。ただでさえ安眠を誘うような暗闇の中なのに、意識まで薄れていく感覚は…………たまらなく、気持ちいい。
 そんな気分に浸っている中で、いきなりバイブが引き抜かれた。バイブへ纏いつくようにうねっていた襞が、裏返る。
「う゛あ、あ゛………んああああっ!!!!」
 私は叫びながら、これでもかというほど太腿を強張らせる。その直後、割れ目がひくついて、大量の潮が噴き出した。見えなくても、感覚でわかる。ベッドを越えて、ミラーにまで浴びせかかる潮噴きだと。
「よう飛ぶのぉ」
 栖村の呟きで、自分の感覚が正しいんだとわかる。
「よし、慣らしはこんなもんやろ。栖村、磯崎。ワシは仮眠取るさかい、後は任せたで。こっからは、いつ壊しても構わん。休まず責め続けぇ」
 新渡戸の言葉には、もう一欠片の情すら感じられない。あくまで淡々と指示を与えている。その静かな口調は、どんな恫喝より怖い。
 だからこそ私は、大きく息を吸い込んだ。
「あ……アンタ達なんかに、壊されるわけないでしょ!!」
 自分自身へ喝を入れるために、目一杯の声で叫ぶ。
 壊れるわけには、いかないから。


    ※           ※           ※


 視界を奪われると、自分がどれだけ視覚に依存しているのかを思い知らされる。
 周りで何が起こっているのかが解らない。
 自分がどうなっているのかも解らない。
 どれぐらい、時間が経ったのかも。

 磯崎と栖村は、時には交代しつつ、時には2人がかりで私を責めつづける。
 基本はバイブで子宮入口を刺激しつつ、クリトリスにマッサージ器を宛がうやり方だ。シンプルだけど、ピストンやスイング、回転に細かく変化をつけられると、刺激に慣れる暇がない。
 そして当然、別の責めを織り交ぜられることもあった。
 バイブを抜かれた代わりに、蕩けきったあそこへ指を入れられ、延々と潮を噴かされたり。
 痛いぐらいに勃起した乳首を、クリップで挟み潰されたり。
 お腹が膨れるまで浣腸された上で、アナル栓を嵌めたまま子宮口を刺激されたり。
 どの責めもすごかった。悔しいぐらい絶頂に直結した。
「ああ、ぁああ……い、いくっ! イッてる、イってるイってるっ!!!」
 私はぼやけた頭のまま、数え切れないぐらい絶頂を宣言した。Mの字に拘束された足を暴れさせながら。
「そ、そうだ。何度でも逝け」
 磯崎はそう言って、私の膝の辺りを踏みつけてくる。その足の力は強く、私が限界を感じて叫びながら身を捩っても、少しも体勢を変えられない。
 そしてその無理は、確実に私を壊していく。
 やがて私には、バイブの各種機能さえ必要なくなった。お尻とあそこに太いだけのシンプルなバイブを捻じ込まれ、お尻の肉を割り開かれる……たったそれだけで、身を震わせながら絶頂してしまうようになった。
「あああ、ああ……はぁあああっ…………!!」
 暗闇の中で喘ぎつつ、割れ目からバイブが抜け落ちていくのを感じる。その感覚すらたまらなく気持ちよくて、また軽く絶頂してしまう。

「ケツ突き出したまま、浅ましゅう痙攣しおって。完全にイキ癖がついたらしいな」
 そう呟く新渡戸の声は、随分久しぶりに感じた。もう何週間も、栖村と磯崎の呼吸しか聞いていない気がする。
「そろそろ、ホンマもんのチンポが欲しゅうなってきた頃やろ?」
 新渡戸がそう言いながら、私の背後で膝をつく気配がする。嫌な汗が出た。少し前ですら、快感のあまり泥沼のように嵌まってしまった新渡戸とのセックス。それを今の状態で受け入れたら、どうなるか判らない。
「ほ、ほしくなんか……ない…………」
 私は絶頂の余韻に浸りながら、否定の言葉を口にする。心が折れていないという証を、自分自身に示したかったから。
「身体の方は、そう言うとらんぞ」
 新渡戸はそう言いながら、割れ目を指で開いた。そしてヒクつくそこに亀頭を擦りつけると、愛液を潤滑油にして一気に挿入してくる。
「んあああっ!!!」
 快感は半端じゃなかった。真珠の凹凸で膣のスポットを擦り上げられただけで、かなり深くイってしまう。太腿から膝裏にかけてが信じられないほど強張り、ぶるぶると震えはじめる。
「ふん。何が欲しないや、大喜びで纏わりついてくるやないけ!」
 新渡戸は吐き捨てるように言いながら、腰を使いはじめる。ぬちゅっぬちゅっと水音が鳴りはじめ、奥までをリズミカルに突かれたあそこから、痺れるような快感が這い上がってくる。
「ああっ、あああ…………ああああっ!!!」
 声を抑えようと頑張っても、勝手に喘ぎが漏れてしまう。
「はは。マンコも子宮も、トロトロに蕩けきっとるわ。まあ、プロの調教師の手ェでじっくり煮込まれたんや、こうなって当然やがな!」
 新渡戸の腰の動きが激しさを増した。ただピストンが速まっただけじゃない。今この瞬間に責められると致命的……そういう急所を、私の腰の捩りから的確に見抜いた上で、たっぷりとスピードを乗せて擦り上げてくる。そんな事をされて、平気でいられるわけもない。
「あっ、あ、あ……あああああっ!!!!」
 大口を開けて、ただただ嬉しい悲鳴を漏らしてしまう。

  ( そこがいい、そこが気持ちいいのっ!! )

 頭の中がその考えで埋め尽くされ、情けないとか悔しいという気持ちすら吹き飛んでしまう。

「はぁっ、はあっ、はひゅうっ、ひゅーっ、はひゅーーっ…………」

 ようやく新渡戸がアレを抜き去った頃、私は変な呼吸を繰り返していた。小さい頃から歌やダンスの練習をしてきた私は、肺活量にかなりの自信がある。だからこそ、ショックだ。
 その呼吸を整える間もなく、頭のマスクが取り去られる。
「……うっ……!!」
 久しぶりの光で目が眩む。何度か瞬きを繰り返すと、白黒に近い風景の中に新渡戸の顔が見えた。以前の柔和さなんて欠片もない、ヤクザらしい顔つきだ。
「まだまだ休ませへんぞ。本番はこっからや」
 新渡戸はそう言いながら、ベッドへ腰を下ろす。そして私の身体を軽々と抱え上げると、背を向ける形で跨らせる。背面騎乗位とかいう体位だ。
 この体位は強制的に大股を開かされるから、足の踏ん張りが利かない。自分自身の体重でアレが奥まで入ってくるし、快感で足がブルブル震えるのも誤魔化しようがないから、肉体的にも精神的にもかなりきつい。
「この体位やとよう解るやろ、一番奥まで届いとんのが」
 耳元でそう囁きかけながら、腰を突き上げられると、あそこの奥が切なく疼く。
「あ……ひああっ! あっ、んあ……あああっ、あ…………!!」
 顎が跳ね上がり、全身が硬直する。吐息が途切れ途切れになっていく。
 まずい状況だ。こうしてフリーズした後には、いつも溺れるほどの快感の波が来ていた。
「奥の、ポルチオの感覚に集中せぇ。ココで気をやる感覚を、徹底的に覚えこませたる。何遍も、何遍もや!!」
 新渡戸の腰遣いがさらに強まる。お臍の下にごりっごりっと硬い物がこすれる感覚があり、そこから一拍置いて奥が突き上げられる。絶対に守らなければいけない子宮の入口が、私自身の体重で変形する。
「だ、だめええええーーーっ!!!!」
 私は危機感から叫んだ。鼓膜がビリビリ震えるぐらいの声が出たし、シーツについた両手の手首には、血管が浮き上がるぐらいの力を篭められた。私の上半身には、しっかりと意思が漲ってくれた。
 でも。肝心の下半身に、その意思が伝わっていない。強張るどころか、骨までくにゃくにゃに蕩けたまま、重力に逆らう気配がない。
 逆にマグマのように煮えたぎった子宮には、異様な存在感があった。奥を潰されるたび、その存在感がどくんと脈打って、全身の血管に入り込む。手足の痺れた感覚がわかりやすいけど、もっと露骨なのは乳首だ。見えない手で引き絞られたような蕾は、それ以上を求めるように切なく疼き続ける。
「くくくっ、浸っとるな。全身に電気が走る感じか? それとも絶頂の波に溺れとるんか? どっちにしろエエ傾向や。お前はもう、挿れただけでイク段階にまで“出来上がっとる”さかいのぉ。あとナンボか逝き癖つけるだけで、絶頂が一気に深ぅなる。意思なんぞでは、どうにもならんレベルまでなぁ!!」
 呪いのような言葉を吹き込みながら、下腹をさすり回す新渡戸。私はその手足に絡め取られながら、ただ全身を震わせつづける。
「はっ……あ、あっ!! はぁっ…あっ……あァ゛!!」
 大股を開き、シーツに手をついた状態で、全身がフリーズする。呼吸が浅く、早くなっていく。
「はァっ、あはっ……いやっ、いや………!」
 割れ目が怖いぐらいヒクつく。あそこの中が煮え滾る。そのまま、グチュグチュと奥を突き上げられると……フリーズしてでも保とうとした決定的な『何か』が、溶け落ちた。
「あっ、あ、ア゛っ………………はああァああああ゛っ!!」
 私の身体は大きく仰け反り、新渡戸の肩に頭を預けたまま、ガクガクと痙攣しはじめた。イっている。これまでと違うのは、その絶頂の感覚がずっと継続していることだ。
 そして新渡戸が、そんな私の異変を見逃すはずもなかった。
「よっしゃ、我慢せんでええぞ!! 逝け、逝ってまえッ!!!」
 激しく奥を突き上げながら、野太い声で叫ぶ。その声の太さは、混乱している私の頭にひとつの方向性を与えるのに充分な効果があった。私の身体は命じられるままに、絶頂に向けてほどよく弛緩していく。
「い…いやっ、こんなのいやっ!こんなのいやああぁあぁあっっ!!!!」
 私は同じ言葉を繰り返しながら、大口を開けて痙攣しつづける。口の端から涎が垂れていく。
「はっ、ヨガりまくっとって何がイヤや、正直にならんかい!!」
 心臓へ叩きつけるような怒号と共に、新渡戸の突き上げがさらに強くなる。ピストンの速さは落ちたものの、ぐううっ、ぐううっ、と一回ごとに致命的な深さで子宮口を押し潰すやり方だ。そしてどうやら今の私には、それが一番効くようだった。
「いーーーっ、いいい゛い゛ーーーっ!!! いぎっひ、いいいぃ゛い゛ーーーーーっっ!!!!」
 舌の先にまで出かけた『イク』という言葉を、歯を噛み合わせる事で押し殺す。それが精一杯の抵抗だ。
 一方で、身体の反応は止めようがない。ステージでダンスを披露する時以上に、内腿が強張っている。顎が浮き、視界が定まらない。
 汗もひどかった。大雨に打たれたのかというぐらい、びっしょりだ。不思議と喉の渇きはなくて、ただひたすら汗だけが流れていく。
 私の絶頂は、そのまま何分もキープした。いや、キープ『させられた』。
「は…あ゛、あ……あーーーっ、あーーーーー……っ!!」
 ようやく絶頂の波が和らいだところで、ようやく喘ぎまじりの呼吸ができる。
 体のだるさが普通じゃなかった。あらゆる部分が筋肉痛で、でも痛みがないような感覚。とにかく身体に力が入らない。
 そこまでになっても、新渡戸は私を休ませようとはしなかった。トッ、トッ、トッ、と亀頭の先で子宮入口をノックしてくる。早くもないし、強くもない。でも今の私はそれだけで、腸に響くような絶頂に押し上げられてしまう。

 作り変えられている。根っこの部分から。
 新渡戸から繰り返し犯されるうちに、それを嫌というほど思い知らされた。
 座位、側位、駅弁スタイル、立ちバック……新渡戸はこれまでの集大成とばかりに、色々な体位で私を犯し抜く。その新渡戸が食事や仮眠を取る間すら、私に休息が与えられることはない。
 胡坐縛りのままベッドに転がされ、丸出しになった3穴を嬲られる。
 中でも一番つらいのは、先端が大きな球体になっているディルドウを使ったプレイだ。この球体を子宮口へぴったり嵌まる形で挿入され、バイブのお尻へマッサージ器を宛がわれれば、これは子宮口をマッサージ器で直に揺さぶられるのと同じ。当然、堪えられる訳がない。
「はっ、はっ…はっ……ああ゛ーっ!! はあ゛あ゛、あ゛っア゛ッ!!!」
 私にできる事といえば、喘ぎ、髪を振り乱し、叫び、痙攣することだけだ。
 しかも、この責めはあくまで基本でしかない。場合によっては、大小の排泄を我慢しながらのポルチオ刺激もある。磯崎の極太をお尻に捻じ込まれながらのことも、栖村の物を咥えながらのことも。そういう余計な条件が加われば、私の状況はもっと惨めになった。
 逝けば逝くほど、私の全身は信じられないほど敏感になっていく。そのうち、背中にシーツが擦れたり、体位を変えるために手足を掴まれるだけで、軽く絶頂するようになる。
 そんな中で私は、必死に我慢を続けた。眉を顰め、歯を食いしばり、爪が食い込むほど手を握り込んで。
 でもそれは結局、結末を先延ばしにするものでしかない。

 限界が訪れたのは、ポルチオ調教が始まって一週間あまりが経った頃。もう何度目になるのかもわからない、『スカーレットチョーカー』のライブ裏での事だった。
「……はぁっ、あっ…う、ふうっ!! う゛うう゛ぅ゛………っ!!」
 顔をつき合わせる格好で抱かれながら、とうとう涙があふれ出す。
 追い詰められる要素はいくらでもあった。でもトドメになったのは多分、仲間を見ながらイかされまくるストレスだ。
「ああっ、ふあああっ! こ、こんなにイクなんて……こ、怖い゛っ!!」
 一度涙があふれてしまうと、もう止まらない。次から次へと、滝のように頬を伝っていく。人生でもほとんど経験がないような量で、それだけ涙が出ているという事実そのものに不安を感じるほどだ。
「なんや、泣いとるんか!? はははははっ!!」
 新渡戸は、泣きじゃくる私を組み伏せ、可笑しそうに笑う。最初の頃の優しい面影はない。獣そのものの顔つきだ。私はその顔の下で大股を開きながら、ガクガクと痙攣を繰り返した。
「あっ、あはァ゛あ゛っ!! もう゛っ、もぉ゛奥突くのやめでっ!! い゛、イクっ、またイグっ……イっぢゃぅううう゛う゛ーーーっ!!!!」
 電流が全身を巡り、脳を白く焼き尽くし、それを最後に意識を手放す


  …………はず、だった。本当なら。


 でも私は、ギリギリのところで頬を張られて正気に戻る。
「…………ふ、ぇ…………?」
 歪んだ視界に、天井のライトが映った。ライトの一部は黒い影で遮られている。新渡戸達以外にもう一人、仮面で顔を隠した、ロマンスグレーの男が立っていた。
「ふっ。心身共に限界――という感じだな」
 顔が見えなくても、その声でわかる。宮路だ。
 この悲劇の引き金になった男。この地獄の鍵を握る、ただひとりの人間。
「ええ、とうとう嬉しゅうてヨガリ泣くようになりましたわ。もうマトモさは残っとりません。そろそろ、“タネ明かし”の頃合いや思いますけど……ええですか?」
 新渡戸は、組み敷いた私を包むように両手を広げる。
 タネ明かし。新渡戸は今、確かにそう言った。
「ああ、構わん。やってくれ」
 宮路は腕を組んだまま、入口側のミラーに背を預ける。明らかにリラックスして、何かを見守る体勢だ。
「わかりました。聞いたな、お前ら!」
 新渡戸が口元を吊り上げて命令する。磯崎は目をギラつかせ、栖村は逆に目を閉じて頭を振りながらベッドを降りた。向かう先は、ステージ側のミラーを覆い隠すカーテンだ。
 胸がざわつく。
 ずいぶん前に、歌声も曲も聴こえなくなった。ライブはとっくに終わっているはずだから、片付けのスタッフに見物させるつもりか。でも、それならいつもと同じだ。タネ明かしでも何でもない。
 その私の疑問は、すぐに解消された。
 いつも通り……じゃない。カーテンが開かれるにつれ、眩い光が入ってくる。なぜかスポットライトのついたままの会場内が、ミラー越しに透けて見える。


 目を、疑った。


 ステージ上を埋め尽くす、人、人、人。
 まさしく黒山の人だかりが、ステージの数箇所へ殺到する形で蠢いている。年齢も違えば、体格や人種も違う。共通点といえば、全員が男である事と、丸裸のままアレを勃起させきっている事の2点だけだ。
 そして何人かだけ、その共通点にすら当てはまらない人影がある。他の人間のように毛深くない、すべすべの肌。手足の細長い、抜群のスタイル。
 普通の人間とは華が違う。アイドル特有の華がある。
 間違いない。見間違えるわけがない。ステージにいるのは……ステージで犯されているのは、
 早苗と、
 良子と、
 あんりと、
 乃音歌だ。

「………………どう いう、こと………………?」

 一音ずつが喉から漏れる。頭の回転も同じく鈍い。頭のどこかでは正解を弾き出してるのに、そこまでの経路が詰まっているようだ。
 それでも、少しずつ、少しずつ、現実が染み出してくる。
 あの4人が毒牙に掛かっている。その現実が。
「なんも難しい事ぁあらへん。あの4人も、とうに“調教済み”っちゅうだけのこっちゃ」
 新渡戸は緩く腰を使いながら、磯崎に目配せする。すると磯崎は、ソファ下の収納スペースから黒いハンディカムを取り出した。そして動画の再生モードを起動させると、液晶モニターを私に向ける。

 画面に映し出されたのは、薄暗い部屋の中だった。煎餅布団が敷かれ、一番手前に早苗、その少し奥側に良子、そのさらに向こうに乃音歌の姿が見える。あんりの姿はないけど、早苗より手前に別の布団の端が見えるから、画面外にいるんだろう。
 全員裸で、頬が赤かった。汗がひどいし、息も荒い。それもそのはず、3人の足元には刺青の入った男が座り込んでいて、指で絶えずあそこを刺激している。
 ポーズは3人ともほぼ同じ。薄い布団に寝そべったまま、枕を抱え込むように腕を上げ、大股を開かされている。早苗と乃音歌は片足を抱え上げられる形だけど、いかにもなお嬢様の良子だけは下品ながに股だ。
『……お、お願い……だから……い、イかせて…………っ!!』
 映像の中で、早苗が哀願する。見たことのない表情を浮かべながら。
 ファンから王子様扱いされるぐらいクールで、私達が喧嘩していても、いつも冷静に仲裁してくれたのが彼女だ。そんな彼女が、完全に参ってしまっている。
 でも、刺青男は耳を貸す様子すらなかった。あくまで淡々と、指であそこの浅い部分だけを刺激し続ける。私も経験があるから解るけど、あれはつらいんだ。あそこの奥がヒクヒクしっぱなしで、愛液がどんどん溢れていく。でも、満たされる事はない。絶対に。
『ああ、あああっ!! もう、もうやめてくださいっ!! ずっとじらされるばっかりで……おかしくなりそうなんですっ!!』
 良子も同じく、見たこともないほど大口を開けて叫んでいる。
『もういやあ!! ウチに帰してえぇーーっ!!!』
『くそっ……テメェら、いい加減にしろ! マジでブッ飛ばすぞ!!』
 乃音歌とあんりの声もする。でも、誰一人として責めから解放される事はない。
 
 この映像は、そこで一旦途切れた。でも磯崎は、すぐに次の映像を再生する。

 今度も多分同じ部屋で、4人は天井から吊るされていた。そして一人につき2人以上の刺青男がつき、それぞれの方法で追い込んでいる。
 早苗は、目隠しとボールギャグを付けたまま片膝を吊り上げられ、あそこにバイブを捻じ込まれていた。しかもその身体には、不定期に鞭まで飛んでいる。
『う゛っ、ふむうう゛っ!! ふうむ゛うう゛、うう゛むぐう゛うっ!!!』
 苦しそうに呻きながら身を捩る様は、見ていられない。背中や太腿へ、網の目のように刻まれた鞭痕も痛々しい。でも刺青男達には、情けをかける素振りすらなかった。
『落とすなや、落としたらまた罰やぞ!』
 そう言って鞭を浴びせる。パシーンという凄い音は、それだけで脅しの材料として充分だ。おまけに視界を塞がれた早苗には、鞭がいつ来るか解らない。覚悟のしようがないから、怖くて堪らないんだろう。
 結果、映像開始から数分ともたずに失禁し、バイブがあそこから抜け落ちる。
『あーあー、落としおった。ったくこのユルマンが!』
 一人がそう恫喝し、もう一人が大笑いする。
『くっ……』
 クールでプライドの高い早苗は、悔しそうに、本当に悔しそうに唇を噛んでいた。

 その横では、良子が吊り下げられている。こっちは胸を搾り出すように縄を打たれ、真っ白な乳房に蝋燭を垂らされたり、乳輪に針を刺されたりしていた。充分つらい責めだけど、早苗と同様にそれだけじゃ済まない。天井と手首を繋ぐ縄をグルグルと回転させつつ、周りの男3人から不規則に犯されもする。
『あああっ、嫌です、嫌ですっ!! お願いですから、お尻の穴だけはやめてください!!』
 そう叫んでいるから、どうやら後ろを使われているようだった。品のいい大和撫子の、排泄の穴を……。

 乃音歌の姿は映像内にはないけど、独特のソプラノのような鳴き声が入っていた。そしてそれに被さる男の笑い声と、肉のぶつかる音も。

 そして、一番悲惨なのがあんりだった。彼女は吊るされた上で、胴が床と平行になるように木枷を嵌められている。そうして抵抗の術を失ったあんり一人を、5人が取り囲んでいた。うち一人はあんりの正面に立ち、喉奥まで勃起した物を咥え込ませる。何度も、何度も。
『んも゛ぉ゛ええ゛お゛ア゛お゛ぇっ!! え゛えぉ゛あえお゛……!!!』
 とにかくえづき声がひどい。あんりは元ロックバンドのボーカルだから、喉の強さなら私以上のはずなのに。
 でも彼女の口元を見れば、納得するしかなかった。咥えさせている男の物は、磯崎より少し細いだけで、かなりの数の真珠が入ってもいる。今の私でさえあんな物を咥え込まされれば、えずき上げずにはいられない。
『おお゛ぉお゛ろ゛ロロっ…………!!!』
 何度も何度もえずいた末に、とうとうあんりの口から黄色い吐瀉物があふれ出す。私自身がもう何十度もやったことなのに、汚い、と思ってしまう。でも、あれが嘔吐なんだ。本来はあんなに惨めで、みっともない事なんだ。だからあんりの目尻から涙が零れてたって、何も変じゃない。
 でも、男達は笑う。鬼の首でも取ったように。多分あんりに反抗されて、相当苛立ってるんだろう。あんりは、気が強いから。
『おいおいおい。カンベンしろやこのゲロ袋が。もう太腿どころか、足首までドロドロじゃねぇか』
 男はそう言って、吐瀉物まみれのアレであんりの頬を叩く。口から吐瀉物を溢しながら喘いでいたあんりは、その言葉で顔を上げた。
『はぁ、はぁ……殺されてぇか、てめえ』
 言葉こそキツいものの、その瞳に生気はない。白目を剥きそうになるのを、根性で堪えているという感じだ。
『ハッ、やれるもんならやってみぃ!』
 男はそう言って、あんりの口にアレを突き入れる。喉が鎖骨の方まで盛り上がり、ごええっというえずきが響きわたる。
『おらおらどうした、噛み千切ってもええんやで? 一晩中しゃぶらされて、まだンな力が残っとったらやがなぁ!!』
 ゲラゲラという悪意ある笑いで、この映像は締めくくられた。

「そして、あのザマや」
 ハンディカムが除けられ、今この瞬間の地獄が視界に飛び込んでくる。
 ブリッジの体勢で犯されながら、穏やかに微笑む早苗。
 喉奥まで咥えさせられても、罵声のひとつさえ浴びせないあんり。
 がに股で男に跨ったまま、だらしなく涎を垂らす良子。
 大の字に手足を広げたまま貫かれ、うっとりとした表情を浮かべる乃音歌。
 全員が変わり果てていた。いや、『変えられていた』。
 わからない。
 グループを結成してからは、ずっと一緒にやってきた。それぞれ学校やバイトみたいな用事はあったけど、練習で顔を合わせない日なんてなかった。じゃあ、私がここへ来てからだろうか。
「……いつから? 皆はいつから、調教されてたの?」
 私がそう呟くと、後ろで宮路の笑い声がする。
「いつも何も、最初からだよ。正確に言うなら、君が駅前でメンバー集めしていた時にはすでに、調教は完了していたんだ」

 嵌められた。
 私が必死で勧誘した気になっていた4人は、宮路の手駒だったんだ。

 あんりが因縁をつけてきたのも。
 早苗が爽やかな笑みで、ジュースを差し入れてくれたのも。
 良子がたまたま駅前を通りかかったのも。
 乃音歌が面白がって、一緒にチラシ配りをしてくれたのも。
 全部、演技。

 すべては、私にもう一度『アイドルごっこ』をさせるために。作り物の仲間を想い、苦しませるために。

 何が、『スカーレットチョーカー』だ。何が、緋色の魂だ。

 私が呆然としていると、急に部屋の照明が点けられた。しかも、いつもより眩しい。まるでステージのスポットライトみたいに。
 すると、ステージの方に変化が起きる。男が皆こっちを見て、頬を緩ませはじめる。この部屋の中が見えてるみたいに。
 私はそこで、はっと気がついた。
 実際に見えてるんだ。マジックミラーが機能するのは、二つの部屋に明るさの違いがある時だけ。両方の部屋がどっちも明るいという状況なら、ただのガラスと同じなんだ。
「い、いやあっ!!」
 私は悲鳴を上げて恥ずかしい部分を隠そうとする。でも新渡戸に正常位で組み敷かれている状況では、せいぜい胸を隠すことしかできない。
「今さら恥ずかしがんなや。ここに集まっとる連中は、お前の本性ぐらいとうに解っとるわ!」
 新渡戸はそう言って、私の身体をうつ伏せにすると、勢いよく抱え上げた。小さい子供におしっこをさせるポーズだ。その姿勢のままベッドを降り、ミラーの前に立てば、何もかもが至近距離で晒されてしまう。赤らんだ頬も、全身の汗も、愛液まみれの結合部さえ。
「やめて、こんなのいや………っん、はうっ!!」
 私は首を振って抵抗したけど、それも新渡戸に突き上げられるまでだった。
 ポルチオ逝きの持続性は高い。肌を撫でるだけでゾクゾクするような感覚の鋭さは、今もずっと続いている。そんな状態で子宮口を突き上げられれば、スイッチが入るのは一瞬だった。
 子宮を突き上げられる度に、足指の先にまで痺れが走る。その感覚は脊髄を通って、あっという間に脳を白ませる。薄まった世界の中で感じる幸福感は、普通じゃない。それさえあれば他に何もいらない……そう思えるぐらに甘い。
 そして、私をそんな状態にまで作り上げた新渡戸は、当然すべて見抜いている。
「ほら、これがええんやろ! ああッ!?」
 耳元で野太い雄の声を張り上げながら、ゴリッゴリッと力強く奥を突き上げてくる。
「ああああっ、はぁああああっっ!!!!」
 私は大口を開けて叫んだ。叫ぶ以外の行動を取れなかった。両足が空気を蹴るように跳ね上がる。内腿が筋張る。下腹がヒクつき、絶頂する。
 その全部を、ステージの人間すべてに観られていた。
 知らない男も多いけど、握手会で挨拶を交わした顔ぶれもいる。リュネット時代からのファンも、ドレッドヘア達の姿もある。そして、長らく私の心の拠り所だった仲間達も。
 そうした人間の視線に晒されながら、私の震えはいよいよ酷くなっていく。
 わかってる。私は、視られるのに弱いんだ。アイドルとしてちやほやされたい欲求が人一倍強いだけに、無惨な姿を見られた時のショックも大きい。そのショックが、いつも私の殻を壊す。
「おらイけ! イッてイッて、イキまくれっ!!」
 新渡戸はトドメとばかりに、角度をつけてあそこを突き上げた。ぎちゅっぎちゅっぎちゅっという水音と共に、全身に電気が走り、下腹部に何かが渦巻く。頭が茹であがって、何も考えられなくなる。
「こ、こんなの初めて!! 頭が……ああっ、もおおかしくなるっ、お゛かしくなる゛う゛う゛ぅぅーーーーーっっ!!!」
 私は思いついた言葉を意味もなく叫びながら、絶頂した。全身が病気のように痙攣し、潮が噴き出る。潮はミラーに勢いよく浴びせかかり、白褐色の跡を残して垂れ落ちていく。
 それを、大勢に見られていた。読唇術の心得がなくたって、彼らの言葉がわかった。
『おいおいおい、あの四元結衣が潮噴いたぜ!?』
『噂通り、スゲー変態じゃん!!』
 そんな風に笑われているに違いない。
 今ならわかる。握手会でファンが興奮気味に見えたのは、私に久しぶりに会えたからじゃない。いつか私を抱けると思ってのことだ。いつ退院できるのかと訊いてきたのもそう。いつ抱けるのか、という時期の確認でしかない。

 私には、純粋なファンなんていなかった。仲間すら偽者だった。
 じゃあ私は、なんのために――――

「フフフ。公衆の面前でマーキングとは、いよいよ駄犬だな。もはや奴隷の価値もない。そろそろ、向こうの連中に払い下げるとしよう」
 宮路のその言葉が、胸に刺さる。
 宮路は私を見限って、捨てようとしてるんだ。今のこの状況より、もっとひどい場所へ。
 アイツの全部が嫌いだった。色気づいたロマンスグレーが。格好つけたスーツが。きついコロンの香りが。鈴佳を追い詰めた外道ぶりが。あんな奴の言いなりになるぐらいなら、地獄に落ちた方がマシ――その一心で、ずっと耐えてきた。
 でも、何もかもが嘘だと知った今、地獄より酷い場所に落ちる覚悟は持てない。そうなったら、今度こそ私は私でなくなってしまう。


「 社長…………わ、私を、買ってくださいっ!! 」


 私は、宮路の方を振り向いて叫んだ。
「なんでもします! なんでも言うこと聞きます、だから――!」
「もう遅いよ」
 私の決死の哀願は、たった一言で斬り捨てられる。
「…………え?」
「君は、その資格をとうに失っている。いや……自分から捨てたんだ」
 宮路の眼は、冷ややかだった。
 本気で私を捨てる気だ。私が、誘いを拒んだから。
「お、お願いします! このままじゃ、わたし、本当に変になっちゃう! 私じゃいられなくなるっ!!!」
「お断りだ。ヤクザの肉便器にされたような女を、私が抱くとでも思うのかね?」
 宮路はそう吐き捨てると、ミラーの向こうに目を向ける。
「だが、心配はいらん。そんな君を有り難がる連中が、あそこに1000人から集まっているんだ。たっぷり愛されてきたまえ。“アイドルらしく”ね」
 宮路のその言葉を合図に、私は栖村と磯崎から両腕を掴まれた。そしてそのまま、ズルズルと床を引きずられていく。調教部屋の外へ……ステージに繋がる廊下へと。
「やめて、あそこへ行くのはいや!!」
 私がいくら叫んでも、二人の足が止まる事はない。
「もう遅いんや、観念せぇ!!」
 栖村は私を怒鳴りつけ、腕を掴む手に力を込める。その手はブルブルと震えていた。
「………この、阿呆が」
 巨体に似合わない、搾り出すような言葉。それは、私がもう戻ってこれないことを嘆いているようだ。


「へへへ、来たぜユイユイちゃんが!!」
「ひゃひゃっ、待ってました!」
「早くやろうぜ結衣ちゃんよ、散々熱い握手しあった仲だろ!?」
 私が舞台袖に現れた瞬間、男達が殺到し、ステージ中央へと引きずっていく。
「いたい、いたい!! やめて、離してええーーっ!!!」
 痛みと恐怖で叫んでも、誰一人として聞いてはくれない。あっという間に私は床に組み伏せられ、取り囲まれる。
「っしゃ、俺から行くぜ!!」
 一人がそう叫び、勃起しきったものを割れ目に宛がった。そしてそのまま、何の遠慮もなく生で中へと入ってくる。
「うははっ、キモチいいーーっ! 堪んねーわ!!」
 男の熱量は半端じゃなかった。待ちに待ったという感じで、驚くほど硬い物を叩き込んでくる。数ヶ月前なら間違いなく痛みを覚えていた突き込みだ。でもポルチオを開発された今は、その荒々しい刺激さえ快感に変わってしまう。
 しかも奴には、テクニックもあった。元々あったのか、早苗達を犯す間に身につけたのか、グッグッと的確に膣内のスポットを突いてくる。その安定感のあるピストンは、今のコンディションで絶頂するのには充分すぎた。
「はぁっ、はぁっはぁっ……あぁああ゛っ!!!」
 馬鹿にされたくない……そう思って我慢しても、すぐに声が漏れてしまう。でもその声は、すぐに封じられることになった。色黒な男が前に立ちはだかり、アレを咥えさせてきたからだ。
「む゛、うぐっ!! うぶう゛っ!!!!」
 苦しさで呻いても、色黒男は容赦なく私の頭を鷲掴みにした。
「ほら、もっと咥え込めよ! ヤクザから喉マン調教されてんだろうが!?」
 怒鳴るように言いながら、喉の奥を抉り回す。
「ほおごおおっ……!!!」
 食道に脈打つものが入り込んできた。苦しいし気持ち悪い。でも同時に、頭が白く霞む。脳イキだ。
「あはははっ、凄ぇ! もともと手で握られるぐらい締まってたのに、しゃぶらされた途端もっとキツくなりやがった。両手で絞られならがら、グニグニ揉まれてるみてぇ!!」
 後ろから挿入する男は、声を上ずらせながら腰の振りを早めていく。
「ああ、ああ!! これ駄目だ、もたねぇ……あああっっ!!!!」
 そう言い終わる前に、ドクドクとあそこの中に射精する。若いせいか、射精の勢いは栖村より凄い。あそこの奥に水鉄砲を叩きつけられる感じだ。
「おお、スゲー出た。コイツ普通にハメ穴として最高だわ!」
 下品な言葉と共に、アレが割れ目から抜き出される。入ってくる外気と入れ替わりに、どろりとしたものが茂みを流れていく。
「おい、中に出すなって!」
 周りから非難の声が上がった。最初はキレイなアソコを使いたい、という事だろう。男は皆そうだ。
「しょうがねぇだろ、溜まってたんだからよ!」
 男も言い返し、険悪な空気が流れはじめる。その流れを断ち切ったのは、また別の一人だった。
「やめろ。済んだことグチャグチャ言ってもしゃあねぇだろうが!」
 いかにもチンピラという感じの、ガラの悪そうな刈上げ男。かなり鍛えているらしく、胸板の厚さが半端じゃない。
 その迫力に、言い争いが止まる。それを見て、刈上げ男はさらに続けた。
「それによ、中出しした後のマンコも悪くねぇぞ。なぁ?」
 そう言って、すぐ近くの仲間らしき人間に話を振る。ツーブロックカットのそいつは、含み笑いを浮かべながら頷いた。
「ああ。誰か試しにやってみろよ」
 そう煽られれば、当然乗る人間も出てくる。
「よし、なら俺が行く」
 一人が甲高い声で名乗り出ると、硬いものを一気に割れ目へと捻じ込んでくる。
「はぐっ!!」
 さっきと同じく、硬く熱い。熱した鉄棒を受け入れた気分だ。
「お…っ!? へへ、ホントだ! マン汁ともローションとも違うヌルヌル具合がたまんねぇ!!」
 男はたぶん、満面の笑みを浮かべていることだろう。そういう声色だ。ただ、正直それどころじゃない。
 中出し直後のセックスが気持ちいいのは、女も同じ。立て続けにあそこを使われると、いくら慣れていても、そのうち擦れて痛くなってくる。でも中にヌルヌルした精液が入っていれば、膣の壁を保護してくれるから痛まない。むしろ直前までの挿入で敏感になっているぶん、快感だけが何倍にもなって襲ってくる。
「ん、んんん……っ!!」
 私はあっという間に絶頂へ押し上げられ、呻きを上げた。
「おら、口休ませてんじゃねーよ!!」
 その言葉と共に、アレまで口に押し込まれる。休む暇がない。逃げ場もない。
「んむっ、んん……お゛えっ、あぐ……うん、うんっ…ん、んぐうっ!!」
 前と後ろから荒っぽく突かれ続け、ほぼ同時に射精される。
「がぼっ、ぷわああっ!!」
 噎せずにはいられない。口の中が生臭さで一杯になり、鼻からも精液が垂れていく。
「くははっ、ひでー顔。どうだよ結衣、精液便所にされる気分は?」
 さっきの刈上げ男が、嘲るように見下ろしてくる。
「はぁっ、はぁっ、はあっ…………!!」
 私は喘ぎながら、その顔を睨もうとした。でもその途中で、横から鼻を摘みあげられる。
「今度はこっちだ、しゃぶれ!」
 そう言って、深々と咥え込ませてくる。嗅ぎ慣れた匂いが鼻を満たす。
「つーかこれ、前だけじゃ回んねーな。オイ、後ろも使ってやれや!」
 その言葉をきっかけに、私は3人に囲まれることになった。下からあそこを突き上げられつつ、後ろからお尻に挿れられ、口にも一本を咥えさせられる。
「あごもぉおおっ!!」
 前後2本挿しの圧迫感は普通じゃない。それに子宮口を前後から挟み潰されると、イクのを堪えるのも難しい。
「うう、お……ほお゛ええ゛えぇっ!!!」
 私は硬いアレを咥え込んだまま、精液を吐きこぼしつつ絶頂する。子宮と脳の同時イキだ。
「ハハハッ! こいつ、白目剥いてやがる!!」
 一瞬薄らいだ意識を、その嘲笑がかろうじて繋ぎ止めた。
「ぷは、はあ……っ!!!」
「お、息吹きかえしたか、いいねー。簡単に折れられても面白くねぇからな。完全に狂うまで、休まず犯してやる!」
「ああ。ザーメン漬けにしようと思って、一週間オナらずに溜めて来てんだ!」
「俺もだ。あの結衣抱けるって思っただけで、金玉がムズムズするよ」
「よっしゃあ、体中の粘膜って粘膜に、たっぷり塗り込んでやろうぜ!!」
 男達は異様な熱気を発しながら、私の手足を掴み上げる。
 どこを見ても、ギラついた視線とぶつかった。
 ステージの上だけでも視界を覆い尽くすほどの人数がいるけど、客席側からもまだまだ人だかりが上ってくる。このライブハウスのキャパ上限は1000人。今日は多分、その上限一杯まで客が詰め込まれている。
 ボスの怒りに触れた私を、確実に圧殺するために。


    ※           ※           ※


「ぶはっ!! がっ、げほっ!ごほっ!!」
 私はアレを吐き出し、ひどく咳き込む。
「おら、休むなっつってんだろうが!!」
「まだ一巡もしてねーんだからよぉ、気合入れてやれって!」
 すぐに非難の声が浴びせられ、息継ぎ途中の口でしゃぶらされる。
 顎が疲れているから手を使いたいけど、そうもいかない。腕は後ろに引き絞られ、あそこへの挿入の手綱代わりにされてるんだから。
「あぶっ、ぶぼっ……んごっ、ゴエエエッッ!!!」
 胃液が顎の方へ垂れても、それを拭うことすら叶わない。
「あははっ。ひどい顔だよ、リーダー」
 隣で同じく犯されている早苗が、私の横顔を覗き込んで笑った。客の大多数が『本命』である私に殺到している関係で、早苗達は随分と楽そうだ。
 その気楽さが憎い。ずっと、私を騙していたくせに。私が苦しんでいるのを知っていて、陰で笑っていたくせに。
 私は早苗を睨もうと、目元に力を込める。でもやっぱり、そういう力みが絶頂を呼び込んでしまう。
「あっ、ぐうう゛う゛っ!!」
 全身が痙攣し、ぞわぞわした感覚に包まれる。
「はっ、はっ、はっ、はっ。はっ……」
 私が過呼吸気味になり、眼を見開きながら震えていても、男連中に容赦はない。
「ほら、どんどん突っ込め! 後つかえてんぞ!!」
 そういう思いやりの欠片すらない言葉と共に、熱い肉棒が殺到する。前後の穴はあっという間に埋まり、口には3本が同時に捻じ込まれる。
「んゴエエッ、あがっ!! ごぶっ、ごぉおう゛……んごおお゛ぇっ!!」
 3本で交互に喉奥を抉られると、えずきがひどい。胃液も次々あふれていく。私の中の『まともさ』と一緒に。

「……ははっ。見ろよコイツ、自分から腰振ってやがるぜ!」
 その言葉でようやく私は、相手の男が腰を使っていない事実に気がつく。激しく突き上げられているとばかり思っていたのに。
「へっ、このドスケベアイドルが!!」
 罵られれば罵られるほど、震えがひどくなる。
「おっ? ようお前ら、もっと罵れ。こいつ、言葉責めされるたびにキュウキュウ締め付けやがる!」
 そう茶化されながら乳房を鷲掴みにされると、
「はぐうぅう……っ!!!!」
 また、イってしまう。
「はははっ、マジで変態じゃねーか。プライドとかねーのかよ!?」
「いいじゃねーか。肉穴に変なプライドなんてあったって、邪魔なだけだろ」
 心ない言葉が浴びせかかる。でも、そう言われても仕方がない。
 私はもう、まともではないんだから。


    ※           ※           ※


 何日が経ったんだろう。
 あるいは、何週間が過ぎたんだろう。
 私は、1000人近くの男達から狂ったように犯されつづけた。トイレに行く暇すら与えられず、小便まみれ、体液まみれで。
「へっ。こいつ、もうワキ毛ボーボーだぜ?」
 組み伏せられ、両手を掴みあげられた私の腋を、一人がくすぐる。
「だな。ついでに言やぁ、マン毛もケツの方まで生えてやがる。いくら伝説のアイドルっつっても、処理しねぇとフツーに無駄毛だらけになるってこった」
「夢のねぇ話だな、それも」
「バーカ。夢なんざ端っからねぇんだよ。その有りもしねぇもんを、いかにも有りそうに見せんのがアイドルって商売だ。要は役者よ」
「んでもってコイツは、その役者としても失格と。化けの皮が剥がれるだけ剥がれて、そこらの女よりみすぼらしくなっちまったな」
 男達は口々に馬鹿にしながら、飽きもせず私を犯し抜いていた。
 何人か、とにかく私の顔に射精したい人達がいて、顔の至る所へ精液が浴びせかかっている。特に目の部分は乾いた精液が何重にも層になっていて、簡単には開けない。そうなると目隠しをしているようなものだから、嫌でも感覚が研ぎ澄まされてしまう。
「どうした、もっと締めてみろ。マンコの締め付けだけでザーメン絞り取んだ。マンココキだよ、マンココキ!」
 荒い息と共に、元気の有り余った肉棒を叩き込まれる。力強く、リズミカルに。でも流石に連続で犯されすぎて、アソコに力が入らない。
「締めろっつってんだろうがよ! ったく、マンコとケツの締まりまでなくなったら、いよいよ肉便器として終わりだぞオマエ。まだ他の4人のが『使える』っつーの」
 不満そうな声で、肉棒が引き抜かれてしまう。もっと刺激が欲しいのに。奥を突いて、脳まで痺れさせて欲しいのに。
 そんな私を、何人かが見下ろしている気配があった。
「なあオイ。そろそろマンコにピアス空けてみねぇか? コイツがどこまで狂うか、見てみてぇ」
 遊び半分で口にされる、悪魔のような提案。でもそれを耳にした瞬間、私の胸に沸き起こったのは、『期待感』だった。
 クリトリスにクリップを取り付けられた時の、新鮮な快感を思い出す。あれをあそこに取り付けられたら、どんなに刺激的なことだろう。
「よーし。チクッとするけど、暴れんじゃねぇぞ?」
 そう言ってビラビラが摘み上げられた、直後。鋭い痛みが襲ってきた。
「きゃああああっ!!!」
 敏感な場所だけに、痛い。でもその痛みは、そのうち痺れに変わる。快感とよく似た痺れだ。
「へ、キツイだろ。でも、刺激ってのは良いもんだぜ。ヤミツキになる」
 ビラビラが掴み直され、またザクリとした感触が伝わってくる。
「いぎいいぃーーっ!!」
 私は、歯を食いしばって叫んだ。さっき以上の痛みと、さっき以上の痺れに浸りながら。

 結局ピアスは、左右の陰唇に4つずつ、合計8個取り付けられた。
「よーっし。だいぶ派手になったな」
 ピアスの並んだ部分を、指で上下に擦られる。それだけでビラビラがピアスに引っ張られて、ハッキリとした痺れが生まれる。
「はううぅん……っ!!」
 割れ目の入口を軽く撫でられる――私は、それだけで絶頂した。体中が敏感になっているとはいえ、異常なことだ。
 ただ、悪い気分はしない。気持ちいいのは良い事だ。いつ終わるとも知れないこの地獄で、唯一不安を和らげてくれる。
「さて、んじゃこの状態でハメっか!」
 一人がそう言って、亀頭を割れ目に擦り付ける。
「ん、んんっ……!!」
 腰が動いて、甘い声が出てしまう。割れ目も期待にヒクついて、いつも以上に愛液があふれ出す。その愛液をたっぷりと塗りつけた上で、とうとう挿入が始まった。
「ひぃあ、ああ……あ、あっ!!!」
 挿入が深まるほどにピアスへ擦れ、ビラビラが引っ張られる。その刺激は、肉棒の出し入れが始まってから、いよいよ強まっていく。
「おおっ、すげー。ピアスがグリグリ当たって、なんか新鮮だわこれ!」
 男が腰を振りながら、嬉しそうに言う。新鮮……それは、私にとっても同じことだった。ピアスの刺激に促されて、麻痺していたはずのあそこが蠢きだす。そうなると性感も高まっていくから、子宮をドッドッと突かれるたびに、足の先まで痺れるほど感じてしまう。
「あっ、はあ……んあああっ、ああぁああぁ…っ!!」
 快感の波は刻一刻と高まり、ある瞬間、最大級に達した。下半身が痙攣し、脳の中で火花が散る。私の中で枷が外れる。
「ほおっ、いっ、イグ……おお…お………ぉおお゛おお゛オ゛っっ!!!!」
 快感の凝縮された声が、喉からあふれ出した。
「……ははははっ!! 今の声、女の出す声かよ!?」
「おいおい、お前一応はアイドルだべ!? そういうのはねーだろって!!」
 嘲笑に晒されるけど、気持ちで我慢できるようなものじゃない。そんな領域はとっくに過ぎている。
「いぐっ、いぐいぐいぐっ!! いってる、イッでるぅううっ!!
 お願いやすませてっ、いき、できなっ……ふ、あぐ……んう゛ぅぅっ!!」
「おお、こりゃいいぜ。ようやく締め付けが戻ってきやがった!」
「ほー。んじゃ締まるついでに、またマンコへの“2本挿し”いっとくか? ありゃキモチいーべ?」
「ははっ、懲りねーな。つか、それやったせいでユルくなったんじゃねーの?」
「いいじゃねーか。締まらなくなったらなったで、フィストなりで遊べっしよ」
 色々な声を聴きながら、私は痙攣しつづける。


 ( ……私、いつまで犯されつづけるの?

   ダメ……頭も身体も、気持ちよさを求めてる。

    私、もう、逃げられない…んだ………… )


 その結論に辿り着いた時。自分の中から、芯が抜け落ちるのがわかった。
 芯のなくなった私は、ただ、蕩けていく。

「あはっ、いく、いぐーーッ! いい、きもちいいぃっ! もっと突いて! イかせて、イカせまくってっ、わたしを壊してえええーーーっっ!!!!」

 真っ白にとろけた頭で、私は叫んだ。
 光のあふれるステージに、大粒の涙を溢しながら。
 


    ※           ※           ※



「………………い、結衣!!」

 激しく肩を揺らされて、私は目を覚ます。
 顔を上げると、ステージ衣装に身を包んだあんりがいた。
「あれ、私……?」
「ああ、熟睡してやがったな。ったく、頼むぜ」
 あんりは肩を竦めて溜め息をつく。
「ごめん、ごめん……」
「気にしないでください。結衣さん……昨日、あまり眠れなかったんでしょう?」
「うん。結衣ちゃん、寝つき悪かったみたい。あんりちゃんはイビキかいて爆睡してたけど」
「あ? ふざけんな、イビキなんかかくかっつーの!」
「かいてたもん! チョーうるさかった!」
「もう、また喧嘩して。本番前だよ、やめなってば!」
 いつも通りの騒ぎが起きて、そのうちにライブの本番がやってくる。

『スカーレットチョーカーです。宜しくお願いします!』

 眩いステージに立ち、無数のファンに囲まれながら、私は高らかに宣言する。
 5人で息を合わせ、練習通りに歌い、思い通りに踊る。
 まさに夢の舞台だ。


 ただし、『私達のとっての』夢じゃない。
 これはあくまで、ファンに夢を見せるためのパフォーマンスだ。私達が正統派アイドルの“フリ”をすれば、後の興奮が増すそうだから。

 私達の夢が叶うのは、ステージ後半。
 歌いながら、踊りながら、ステージ衣装を脱ぎはじめてからだ。
 フリルのついた衣装の前を肌蹴れば、乳房を搾り出す形のボンデージコスチュームが現れる。乳首にはファンからプレゼントされたピアスが揺れてもいる。
「おおお……!!」
 客席から感激の声が飛びはじめた。
 その中で、私達は目を見合わせ、お互いの身体に触れ合う。深くキスを交わし、指を肩や腰に這わせて、純白の衣装をすっかり取り去っていく。5人それぞれのキャラクターを、視線や吐息で演じながら。
 そう、これは演技。私達にレズの気なんて全くない。
 私達が好きなのは、男。より正確に言うなら、獣のような雄に従属させられることだ。
 これから犯してもらえる。そう思うだけで、内腿に熱い蜜が垂れてしまう。

「皆様、本日は私共ブタの為にお集まりいただき、誠に有難うございます。感謝の気持ちと致しまして、皆様に誠心誠意ご奉仕させていただきます」
 私達はそう言って、指であそこを拡げてみせる。
 家畜としての挨拶を口にするだけで、自然と笑みがこぼれてしまう。
 そう、私達はアイドルじゃない。アイドルという皮を被った、卑しい雌豚だ。
 でも、それでいい。卑しい雌豚だからこそ、生々しく快楽を貪ることができる。家畜である事こそ、私達の幸せなんだ。


「どうかこの薄汚い牝穴を、お好きなだけ、ご賞味くださいませ……」


 眩いステージの上で、私達は深く傅く。
 5つの首に、緋色の首輪を揺らしながら――――。



                                 END


緋色の首輪  6話

※頭下げイラマチオ、浣腸アナルセックス回です。
 嘔吐、水下痢、レズ要素あり。




 日を追うごとに、私のアナル性感は開発されていった。それをハッキリと感じたのは、磯崎にあそこを犯されながら、お尻にもディルドーを突っ込まれた時だ。
 磯崎の規格外のペニスを挿れられると、あそこには一切の余裕がなくなる。お臍側がぼこりと膨らみ、直腸の方もひしゃげてしまう。そこへディルドーを捻じ込まれるんだから、たまらない。
 しかも、磯崎に容赦はなかった。数あるディルドーの中でも、特に太くて長く、反りのある物を選び、結腸の方にまでグリグリと捻じ込んでくる。
「あああっ、あははああっ……あ…おおお゛お゛っ!!!」
 私は犬のような格好で辱められ、濁った喘ぎ声を上げつづけた。お腹に余裕のない状態でイかされつづけると、どうしてもそうなってしまうんだ。
「エエ声出させとるわ。変わり者やが、スイッチ入るとえげつないのぉ磯崎は!」
 栖村は笑いながら酒を呷る。ただ、見た目は上機嫌でも、胸の内では磯崎への対抗心を燃やしていたんだろう。
 水曜日……握手会へと出かける直前、栖村は悪意たっぷりに私を辱めた。
『アヌス拡張中。触るな!』
『黒人サイズのチンポも咥え込むドスケベマンコ』
『変態』
『ヤリマンビッチ』
『SEX中毒』
『肉便器予備軍』
 そういう下品な言葉を、マジックでお腹やあそこに書き殴られる。
 腕や太腿には書かれなかったから、握手会の衣装を着ていればギリギリ見られない。でも、いつものように『浮いた』ファンに脅され、ラブホテルで裸に剥かれた時には、全部バレてしまう。
「はははははっ、何だこのラクガキ!?」
「アナルも開発されてんだー、あの四元結衣が!」
「やっべ、すげームラムラしてきた!!」
 そんな風に笑い者にされる。
 でも、この日に限って彼らに犯されることはない。なぜなら私のあそこには、貞操帯が取り付けられているから。

「んだよ、ハメらんねーじゃん!」
「あー、拡張中だからか。前と後ろにバイブ入れっぱなワケね」
「くそっ。せっかく3日シコらねーで来たのによ」
 ホテルへ集まった7人は、口々に残念がる。でも、だからといって諦めもしなかった。
「しゃーねぇ、なら口でさせっか!」
「だな。オイ、そういうわけだ。気合入れてしゃぶれや!!」
 そう言ってズボンを脱ぎ捨て、勃起しきった物を私の口に近づける。
 私は仕方なく、口と手で奉仕する。ベッドで膝立ちになったまま、正面の一人の物をしゃぶり、横の2人の物を手で扱いて。
「んっ、ふっ……んんむっ…………」
 熱心にやったつもりではある。でも、アイドルの私がしゃぶるなんて……と無意識に考えてしまうせいだろう、彼らを満足させる事はできない。
「ダメダメ、もっと舌使ってよ!」
「全然イケる気しねーわ。今日び、中学生でももっと上手ぇぞ?」
 何人もから駄目出しされ、ついには頭を鷲掴みにされる。
「もういいわオマエ。ノド使うから、手ェ下げてじっとしてろ!」
 黒髪をコーンロウ風に編み込んだ一人が、不機嫌そうに叫んだ。そして仁王立ちのまま、勃起した物を深く咥え込ませてくる。
「うむ゛…っ」
 多少の引っ掛かりはあったものの、ヤクザ3人より太さがないぶん、簡単に喉奥の窄まりを通り抜けた。
「すげぇ、ズルーッと奥までいったわ!」
 男は驚きつつ、喉奥深くで出し入れを繰り返す。そのストロークは段々と大きくなり、セックスとそっくりの腰つきになっていく。
「ん、ぐっ、むぐっ……う゛っ!!」
「おーっ。やっぱイラマのが断然気持ちいいぜ!!」
 男は髪を揺らしながら、夢中になって腰を振っていた。
「む゛、ぐむっ、ぶ、ぐっ………ぶえ゛っ!!」
 調教師達に比べればマシとはいえ、喉奥を突かれると苦しい。濁ったえずき声が出るし、反射で唾液も染み出してくる。事実、コーンロウ男が一旦抜き出したペニスは、全体がぬらぬらと濡れ光っていた。
「はぁっ、はぁっ……ふっ……ふうっ……!!」
 私は口を開閉して唾を切りながら、必死に酸素を求める。でも完全に呼吸を整える前に、また深々と咥えさせられてしまう。これをされると辛い。
「おコッ!? カッ…ぼゴッ、かぁ………う゛ぉお、おぼ……っ!!」
 何度も噎せ返り、さっき以上に染み出した唾液が口の端から垂れていく。
「くははっ、すーげ」
 コーンロウ男は笑いながら私の頭に指を食い込ませ、小刻みに喉奥を突いてきた。
「おぶっ……っぐ、ごお゛! おうおう゛ぶっ……ぶはあっ!!」
 えずきが一段とひどくなり、一旦抜かれた時には唾液の線がいくつも伸びる。
「ハハハッ。ヨダレすげーな!!」
「ゴエゴエ言ってたしな。まだ始まったばっかなのに、大丈夫かね?」
「ゲロったらフロントの店員に言って、説教してもらおうぜ!」
 後ろの方で茶化されても、反応する余裕はない。
「マジでいいわコレ。えずく度にノドが締まっから、すげぇ刺激強ぇの。帰ったらオンナにもやらせよ」
 コーンロウ男の声が上ずっていく。射精前の特徴だ。
「……ああいい、いくぜ!!!」
 一番奥まで捻じ込んだまま、腰が止まる。
「うむっ……ゴォエ゛っ!!」
 喉がヒクヒクと蠢き、えずき声が漏れる。まさにその最中、喉奥へぬるりとしたものが浴びせかかった。
「はぁっ、はぁっ……へへ、溜まってる割にゃチョロチョロ出んな」
 男が言う通り、射精の勢いは弱い。でも匂いはきついし、やたらと苦かった。

 精液まみれのアレが、私の口から引き抜かれた瞬間。明らかに場の空気が変わる。満足した仲間を見て、周りも興奮したらしい。
「今度は俺だ、代われ!」
 横からそう声が掛かると、コーンロウの男は私の頭を解放する。でも、休めない。息を整える暇すらない。無理矢理横を向かされ、頭を押し下げられる。
「ザーメン溜まってハチ切れそうなんだ、楽しませろよ!」
 髪を紫に染めたこの男は、ベッドへ座ったままの状態で咥えさせてきた。これは想像以上に苦しい。反り返ったアレが、仁王立ちで咥えさせられる時以上に喉を突き上げてくる。
「あごあ゛、う゛っ、う゛ぐっ……ぼぅあ゛っ、ぇえ゛ぇおお゛ア゛っ!!!」
 嘔吐する寸前のような声が立て続けに漏れる。あんまりにも苦しくて、男の太腿を両手で押さえつけるようにしてペニスを吐き出す。その瞬間にさえ、ひどいえずき声が漏れた。
「おら、離すんじゃねーよ。オマエの喉奥に入れてねぇ間は、オレが気持ちよくねぇんだからよ!!」
 自分勝手な発言と共に頭を引き込まれ、また深く咥えさせられる。
「あ゛っ、げほっ、ごぼぼごぉ゛っ!!!」
 まだ咳き込んでいる最中に喉を抉られ、苦しさで顔が歪む。
「ぎゃははっ、今の顔すげぇブス!」
「ああ、皺くちゃのババアみてぇ! アイドルがしていい顔じゃねーわ!!」
 正面にいる数人から馬鹿笑いが起きた。
「苦しいんだろ。あの四元結衣に咥えさせてるって思うと、怖ぇーぐらい勃起すっからよお、さっきから喉チンコにゴリゴリ擦れてんだわ」
「はははっ、そりゃヤラれるほう地獄じゃねーか。お前は良いだろうがよ!」
「っつか、そんな状態でよく吐かねぇな、このオンナ」
 そんな会話を上空で交わされつつ、延々と頭を上下させられる。
「うっぶ、あぶっ……ぶう゛っ、むう゛ぅ……ぇ゛お゛っ!!」
 下向きのディープスロートでは、喉が狭まるからえずく事は少ない。地味に噎せるばかりだ。そんな中、紫髪の男が動きを見せた。
「あ、そーだ。AVで観たあれ、試してみっか!」
 そう呟くと、両足首を持ち上げ、私の頭を足で抱え込んでくる。そんな事をされたら最後、アレを根元の根元まで咥え込むしかない。
「むう゛っ!? ぶっぶふっ……う゛う゛ぇお゛っ!!」
 私は驚き、激しくえずいた。その反応を間近で見ながら、男はますます足の締めを強める。私の頬が太腿の筋肉で潰れるぐらいに。
「う゛、ぐぶっ!!」
 半端じゃなく苦しい。私は文字通り『必死』で相手の太腿を引っ掻いた。叩きもした。でも、男は力を緩めない。
「もお゛ぉ゛っ、お゛オ゛ぇろあ゛っ!!」
「おおっ、すげえ。オレ全然動いてねぇのに、喉が勝手にグニョグニョ動いてら。蠕動っつーんだっけ、こういうの。ヤッベェわ……あああ出ちまう出ちまう、クソ勿体ねぇっ!!!」
 男は呻きながら、一番の奥で射精する。今度はさっきと違って、ドロドロとしたものが勢いよく喉奥に浴びせかかる。むしろ勢いが強すぎて、激しく噎せてしまう。
「ぶふっ、ぶほっ……ぅえ゛おっ!!!」
 噎せるたび、生臭い匂いが強まった。理由は簡単だ。
「ひゃははっ! おーいマジかよ、鼻からザーメン垂らしてんぜコイツ!?」
「うわキメェ、カンベンしてくれよ『ユイユイ』ちゃんよぉ!!」
 私の顔を見て、男達が腹を抱えて笑う。
 悔しい。私が芸能界に入ったのは、こんな連中の玩具にされるためじゃないのに。
 でも、こいつらの機嫌を損ねる訳にはいかない。調教部屋へ戻るのが遅れたら、私達の未来は閉ざされるんだから。

 3人目のモヒカン頭は、仰向けになった私へ圧し掛かるようにして喉を虐め抜く。この苦しさも相当だ。特にこの男は、カリ首のエラが張っているから、喉粘膜への刺激が並大抵じゃない。
「オエ゛ッ、ゴエ゛……ぶっ、ぐじゅっ……うウ゛ぉエ゛ッ!!」
「ははっ、今日一番すげぇ声だな。キツイだろ、俺のマウントイラマは!」
 何度も顎を跳ね上げる私を見て、どこか自慢げに語るモヒカン頭。
「お前も好きだねーソレ。そのせいで風俗出禁になったくせに」
「タコ、だからこういう時にしかできねーんだろうが!」
 モヒカンは仲間と話しながら、腕立ての要領で腰を振りつづける。それを何度も受けつづけているうちに、本気で余裕がなくなってくる。
「うぶっ、ぶふっ……ぉッえ゛えっ!!!」
 何度も噎せ、唾液が頬を伝って垂れ落ちていく。その中で私は内股になり、腰を跳ね上げた。必死の苦しさアピールだ。それでも喉奥を突き続けられるから、足の裏を激しくシーツに叩きつけて抗議する。
「ははっ、足バタバタしはじめやがった。相当苦しいなこりゃ」
「おーいヒデ君よ、いっぺん息させてやれー」
 その声で、ようやくモヒカンが動きを止めた。そして腋の辺りから汗を滴らせながら、ゆっくりと腰を引く。
「ぶはっ、はぁ……ふっ、はあっ!!」
 必死に酸素を吸いながら薄目を開けると、モヒカンが自分の物を扱いているのが見えた。
「んんっ……んっ!!」
 苦しそうな声を出しながら、私の顔に精子を浴びせかけてくる。
「ひひっ! さんざん喉突いといて、最後はセルフかよ!!」
「るせぇ。ルックスのいいオンナ犯った時ゃ、顔にブッかけることにしてんだよ。俺イジってねぇで次いけ次!」
 その言葉で、また別の一人がベッドを軋ませる。金髪の、いかにもホスト崩れという感じの男だ。
「んじゃ俺な。俺もAVで観たのやってみるわ」
 金髪はそう言いながら、私の身体を引きずっていく。ベッドの端ギリギリ……頭だけが垂れ下がる位置にまで。
「え、ちょっと……!」
 頭がベッドから落ちるのは凄く怖くて、私はつい叫んでしまう。でも金髪は涼しい顔でベッドを降りると、私の顎を左手で押さえつける。
「あ、それ知ってるわ! 洋物のサイトでよく見るやつ!」
「そうそう。いっぺんやってみたかったんだけどさぁ、彼女に『やったら別れる』ってキレられたんだよ」
 ろくでもない会話の中、右手でアレの位置が調整され、一切の遠慮なく喉へと入り込んでくる。
「んも゛ぉおお゛お゛お゛え゛っ!!!」
 驚くほど余裕のない声が出た。でも仕方ない。頭だけを直角に落とすなんて、それだけでも喉が突っ張った感じがしてつらいのに、その状態で喉奥を突かれたら悶絶ものだ。
「うははっ、気持ちいいー! ノドまで挿れたの初めてなんだけど、ヤバイねこれ。マジ癖になるかも!!」
 金髪は嬉しそうに叫び、私の顎を両手で挟みこんで腰を振る。
「ん゛っ、む゛ぁ……あ゛ッ、あ……っこ、コォ゛…………」
 えずき声は出ない。出るような喉の形ができていない。口から漏れるのは、グチュグチュと言う水音だけ。唾液だけは異常にあふれた。喉奥じゃなく、舌の裏側と頬の内側あたりからとろとろと流れてきた。何もかもが今までと違う。
「首んとこスゲー筋浮いてんな。ちっと怖ぇぐらい」
「見ろよ。チンポ入った分だけ、ノドが盛り上がってんぜ。こんなん、この体勢でしか見れねーよな」
 そういう周りの声で、自分の現状が嫌でも理解できてしまう。

 ぐちゅぐちゅという音が、20回は続いただろうか。そこでようやく金髪が腰を止め、太さを増したアレを抜き出した。その後を追うように唾液の線が伸び、自重に負けて私の鼻の方へ垂れ下がる。
「はっ、はっ、はっ、はっ……こ、これやめでっ!!!」
 言葉を喋れるようになった途端、私はそう叫んだ。荒い呼吸は、酸素を求めてるんじゃなく、パニックになって息が乱れているからだ。
 どっ、と笑いが起きる。
「はははっ、もう音ェ上げてやがる! やっぱキツいんだなーあれ」
「そうか? 動画の外人女は結構耐えてんの多いぜ?」
「バーカ。そりゃディープスロートに慣れてるプロ女優だからだろ。おまけにアッチはフニャチンらしいしよ」
 そんな声が飛び交う中、金髪がまた私の顎を掴む。逆光を受けながら見上げるペニスは、かなり大きく見えた。
「んぐっ……ぐっ、うう……うぶうっ、げお゛っ!!」
 少しずつ喉が開き、えずき声が漏れはじめる。ぐちゅぐちゅという音も相変わらず大きい。
「ああ、そうそう。俺って遅漏だからさ、結構長めに楽しませてもらうわ。よろしくー!」
 金髪は腰を振り続けながら、軽い口調でそう告げた。
 そしてその言葉通り、こいつはまるで絶頂する気配がなかった。何十回か喉を突いてはアレを抜き出す、の繰り返し。私は口が自由になるたびに激しく喘ぎながら、顔中に唾液を垂らす。5回目の息継ぎでは、とうとう前髪にまで泡だらけの唾が絡みついた。そしてそこから、さらに2回サイクルが回った頃。
「あ、あ、あーすげ、イキそ……! 出すよ、飲んで!!」
 金髪は喘ぐようにそう言うと、中途半端な位置で絶頂する。射精場所はちょうど舌の上あたり。おかげで味わいたくもない生臭さを、たっぷりと感じ取ってしまう。
「んぶっ! はぁっ、はぁっ、はぁっ…………!!」
 精液塗れのペニスが引き抜かれた。細い視界に映るそれは、明らかに最初より大きい。

 ( 気持ちよかったんだ……私は、こんなにしんどいのに )

 そう思うと、殺意すら芽生えた。でも視線を少しずらすと、恨みの気持ちなんてどこかに吹き飛んでしまう。
 他の6人が、下半身の物を反り立てながら、私ににじり寄るのが見えたから。


 「う゛ぉえ゛え゛っ、おぶっ……!! お゛エオエ゛、お゛ごっ!!」
 激しく喉奥を掻き回され、汚い声を絞り出される。一人がようやくペニスを抜いたかと思えば、また別の一人が顔を掴み、深々と咥えさせてくる。満足に息継ぎができるのは、わずか2秒弱。
 その地獄の中で、私の顔は唾液に塗れていた。もう濡れていない場所がない。髪の生え際も、額も、鼻も頬も顎も、あらゆる場所がぬるりとした不愉快な液で覆い尽くされている。それを嘲笑われたのも、随分前の事に思える。
「どうだ結衣。若い男のモン、とっかえひっかえでしゃぶってる気分は。逆ハーレムって感じで嬉しいだろ? あのヤー公相手じゃ、こんなん絶対味わえねぇぜ」
 ドレッドヘアが腰を使いながら、そう問いかけてくる。私にできるのは、すっかり太さを増したペニスを吐き出し、喘ぎながら首を振ることだけだ。
「ヘッ、そうかよ。なら嬉しくなるまでやってやらぁ。おら、また出るぜ……出されたザーメンは全部飲めよ、簡単だろ?」
 ドレッドヘアの太腿が強張り、喉の奥にドロドロとしたものが注がれる。
「ぶ、ぶふっ……ごぶっ!」
 立て続けに精液を飲まされているせいで、もう喉が受けつけない。
「あーあ、クチから溢れちまってら。全部飲めっつってんのによ」
「ま、しゃーねえっちゃしゃーねぇけどな。もう連発15回目ぐらいっしょ?」
「一人2発として、そんなもんか。そう考えるとすげーよな。次3回目なのに、まだフル勃起だぜ? やっぱモノホンのアイドルにしゃぶらせんのって最高だよな」
「ああ、バイアグラ並みにやべーわ。今日10発ぐらいいけっかも!」
 弱る一方の私と違って、7人の目はギラついている。彼ら自身が言うとおり、もう何度も射精しているのに硬いままだ。
「んっ、ぶ……ぐううっ、おえ゛っ……ぃお゛え゛っ!! うおお゛え゛っ!!」
 不自然な体勢で喉奥を抉られつづけると、吐きそうになる。何度も何度も、喉元まで酸っぱいものがこみ上げてくる。でも私は、それを必死に押し止めた。アイドルとしてのプライドだ。
「しっかしこいつ、ノド強えーな。こんだけやっても吐かねぇとか。さすが、歌いまくって鍛えてただけあるわ!」
 私の粘りに、呆れたような声まで漏れる。でもその時にはもう、本当のギリギリだった。
「なーに、もう時間の問題だって。俺がトドメ刺してやんよ!!」
 一人がそう言って、こめかみの辺りを掴んだ。そこから始まるのは、何の情けもない挿入。膣でのセックスでもそこまでしないんじゃと思うほど、ストロークが大きい。しかも頭を強引に押し下げられているから、反ったアレが喉奥の鎖骨側をもろに刺激する。
「ェお゛お゛っ、ほごぇえ゛……ごほっごぼっ、ぉごええ゛っ!!」
 何度も何度も吐き気がこみ上げる。喉がぶるぶると痙攣をはじめる。必死でシーツを掴んで堪えるけど、もう決壊が目の前に見えていた。
「無駄に頑張んじゃねーよ、オラッ!!」
 その怒鳴り声が聴こえた直後、喉奥までが貫かれる。そしてそのまま、鼻を潰す勢いで腰を押し付けられ、そのまま止められてしまう。
「んぼっ……ご、おごッ!! んん゛ん゛も゛お゛おぉ゛ーーっ!!!」
 苦しくて、吐きそうで、必死になって抵抗した。シーツから両手を離し、相手の腰を押しやろうとしたり。足で滅茶苦茶にベッドを踏み鳴らしたり。でも、咥えさせている一人は動じない。
「くくくっ、喉がピクピクしてきたぜ?」
 そう言って、私の喉に両の親指を宛がい、食道まで入り込んだアレを縁取るように扱きはじめた。これが、トドメになった。ほんの僅かにあった余裕が、これで気泡のように潰れてしまう。そして。
「ァか、お゛……んも゛ぉえ゛オエ゛ェッ!!!」
 これまでで一番と断言できるぐらい汚いえずきと共に、私は噎せかえる。喉奥から溢れて唇の隙間から噴き出ていくそれは、はっきりとした酸味を帯びていた。
「うっわ、とうとう吐きやがったこのオンナ!」
「あーあー。せっかくのキレイな顔が、えずき汁とザーメンゲロで汚れちまって!!」
 そういう罵声で、嘔吐が確定する。
「だから言ったろ、時間の問題だって!」
 その立役者を気取る一人は、ゲラゲラと笑いながら腰を振りはじめる。
「む゛っオエ゛ッおえ゛……ぶぼっ、ごぇ゛エエ゛っろ゛エ゛っ!」
 吐いたばかりの敏感な喉を刺激されると、とても耐え切れない。私は何度も何度も噎せ返り、精液交じりの胃液を吐きこぼす。泡だらけの汁が鼻の横を通り、前髪の間に流れ込んでいく。そしてそれを追うように、目尻から涙が零れた。

 そこからは、酷いものだった。
 全員が全員、夢中になって私を吐かそうとしてくる。頭を鷲掴みにし、興奮で硬さや太さを増したアレを深々と打ち込みながら。
「うひょーっ! ゲロでヌルヌルんなった喉マン、気持ちいーーっ!!」
「玉カラッポでもう射精ねぇけど、突っ込んでるだけで満足できんのがスゲーよな。これもう、オンナのマンコじゃ物足りなくなりそうで怖ぇわ」
「ははっ、いいじゃねぇか。どうせ毎週コイツ犯れんだ、週イチの風俗と思って使ってやれや! なんならお前のオンナ連れてきて、直に具合比べてみれば?」
「やー無理無理。コッチのがイイっつったら殺されるわ、この女が!」
 部屋中で騒ぎ立てながら、代わる代わる私の喉を犯しつづける。
 向こうは楽しくても、こっちは地獄だ。
「いやああっ、やめてえっ、もお゛やめてえ゛え゛ーーっ!!!」
 何度もそう絶叫した。そのたびに、歯茎の間を吐瀉物が流れていくのがわかった。
「い゛ーーっ、いいい゛ーーーーっ!!!!」
 少しでも休む時間が欲しくて、歯をがっちり噛み合わせて抵抗したりもした。
 でも、7人には少しの配慮もない。鼻をつまんだり、頬を掴んだりして強引に口を開かせ、深く咥え込ませてくる。
「ゥお゛う゛え゛、ぁ゛がっ……んも゛ぉうえ゛え゛え゛っ!!!!」
 頭が固定されている限り、首を振っても無駄だ。そうなったらもう、首から下で反抗するしかない。手足をバタバタと叩きつけて。
「ぎゃははっ、苦しそー!」
「オイ、あんま暴れんなって。店員来んだろーが!」
 傍から見てもかなりの暴れようだったんだろう、ついには数人がかりで足を抱え込まれた。でもそうなると当然、割れ目へ食い込む貞操帯に意識が集まってしまう。
「そういや、コッチは放置プレイだったな。ちっと慰めてやるよ」
 そう声がして、割れ目のバイブが押し込まれる。
「んごぉ゛っ!?」
 ほとんど意識していなかった場所への刺激に、堪らず呻く。
「イイ声出んなァ! どうだ、膝でバイブ押し込まれんのは。俺の膝で犯されてるみてぇだろ、ハハハハハッ!!!」
 大笑いされながら、バイブを奥深くへ打ち込まれる。しかも、それだけじゃない。
「あ、そうだ。コイツに使おうと思って、コレ持ってきたんだよ!」
 一人がそう言って、何かゴソゴソと探しはじめる。
「おっ、『デンマ』かよ。いいね~!」
 私は最初、その言葉が何を指しているかわからなかった。でもその直後に聴こえてきた重苦しい羽音で、一瞬にして理解する。電動式のマッサージ器、略して『電マ』だ。
 そこから、いよいよ悲惨なプレイが始まった。
 貞操帯のバイブにマッサージ器を宛がわれ、胸を揉まれながら、延々と喉奥を突かれて吐かされる。
「おー、イってるイってる!!」
「乳首ピン勃ちじゃねぇか。こんな状況で感じてんのか、この変態アイドルが!!」
「オエオエってすげぇ声出んな。俺、お前の声わりと好きで、CD買ったり番組録画してたりしたんだけどよ、こりゃ幻滅だわ!!」
 笑われ、蔑まれ、詰られ……その中で、抵抗もできずにえずくしかない。
「オエ゛ッおえ゛ェお゛お゛っ、むごぇえ゛……ごほぉええ゛っ!! ごぇ゛エエ゛っろ゛エ゛っ! んも゛おおお゛お゛お゛ええ゛ぇ゛っっっ!!!!」
 何度も何度も、吐瀉物があふれ出した。涙が零れた。エネルギーの満ちた不良7人が、全員疲れ果てるまで。

 そしてこの日は、最後までロクでもなかった。
 上半身が吐瀉物まみれの私は、シャワールームで身体を洗われることになる。でもその時になって、一人がこう言ったんだ。
「せっかくだからよ、ションベンで綺麗にしてやろーぜ!」
 その一言に、他の人間も乗った。
「はははっ、それいいな! どうせヤクザの肉便器なんだしよ!!」
「うっし決まりだ。すぐ出せそうな奴から前出ろや!!」
 そう言って、座り込んだ私を取り囲む。
「え……い、いやっ、本気なの!? やめてっ!!!」
 懇願しても、男達は止まらない。4本のアレの先から黄色い液が噴きだし、湯気を立てながら私の顔に浴びせかかる。
「いやああーーっ!! やめて、やめてえええーーーーっ!!!」
 悲鳴を上げると、その顎を掴まれて口の中に尿を注がれる。ゴボゴボとうがいのように喉奥が泡立つ。
「アハハハハッ! 信じらんねーよな、あの四元結衣にションベン飲ませてるなんてよ!!」
「ああ。それも、散々クズだのカスだのって言われてる俺らがだぜ? 人生どう転ぶかわかんねーよな」
「ウチの弟、こいつのガチ恋勢なんだがよ、これ見せたらドン引きだろーな!」
「言っとくが、動画撮ったりとか足つくようなマネすんなよ。ヤクザに目ェつけられんぞ」
 7人は大笑いしながら、私に尿を飲ませつづける。
 しかも、これだけでは終わらない。
「いやああっ、いやあああーーーっ!!!」
 私が何度目かの悲鳴を上げた瞬間、いきなりドアがノックされた。全員が固まる。
 ドアの外には何人かが集まり、何か話し合っているらしかった。 
「んだよ、もうすぐ出てくから待ってろって!!」
 ドレッドヘアがそう叫ぶとのほぼ同時に、ドアが開いて警官が踏み込んでくる。

 私達は、ホテルの客か店員かに通報されたようだった。
 当然だと思う。明らかに複数の男と一人の女がいる部屋から、悲鳴や普通じゃないえずき声、暴れる音なんかが聴こえてくるんだから。
 私達は服を着せられ、到着した警官数人から取調べを受ける。
「……お騒がせして、すみません。これは、合意の上での、その……プレイ、です」
 私は、警官にそう説明した。下手なことを喋ってヤクザとの繋がりがバレたら、いい結果にはならないと思ったから。
 他の7人も同じような事を話して、いくつか注意は受けたものの、いわゆる“警察沙汰”にはならずに済んだ。
 ただ、つらい事もあった。
 身分証明として名刺を出すと、相手の若い警官はそれを見て目を丸くし、私の顔を覗き込んでくる。私が『あの四元結衣』だと気付いたんだろう。警察官という堅い職業の人に身バレするのは、チンピラ相手よりずっと恥ずかしい。
 それに、もう一つ。取調べを受けている間も、貞操帯のバイブは動きつづける。これがきつかった。貞操帯の鍵が外せない以上、バイブを止める手段はない。
 吐瀉物まみれのベッド縁に腰掛け、警官から質問されながら、二穴のバイブで悶える。いけないと思えば思うほど感じてしまって、途中で何度か軽い絶頂すらした。若い警官は、目深に被り直した帽子の下から、そんな私をじっと視ていた。
 時々、ゴクリと喉を鳴らしながら……。


    ※           ※           ※


「なんや、ヌルヌルになっとんのぉ。マンコとケツのバイブが、そんなに嬉しかったんけ?」
 栖村は私のスカートをめくり上げ、面白そうに目を細める。そのニヤケ顔を見ていると、無性に腹が立った。私の苦労なんて、何も知らないくせに。
「ハイハイ。いいよ、そういう事で」
「なんや、やさぐれとんのぉ……まあええ」
 カチッと音がして、貞操帯の鍵が外される。黒いベルト部分が下に引かれると、二穴からバイブが抜けていく。
「おお、半日太いモン咥えさせた甲斐があったわ。こんだけ拡がっとれば、“ほぐし”はもう充分やろ。ケツの穴にハメたる、犬のポーズで這い蹲れ」
 栖村は笑みを深めながら、顎でベッドを指し示した。

 私はベッドで這う格好を取りつつ、正面のミラーを睨みつける。これから惨めな目に遭うからこそ、シャンとしていないといけない。どんな環境でも、緋色の心は失くさない――皆とそう決めたんだから。
「エエ目しとんな。最初はその鼻っ柱の強さにイラついたもんやが、なんや愛しゅうなってきたわ。もうじき見られんようになると思うと、余計にな」
 ベッドを深々と沈ませながら、私の背後につく栖村。そういえばこの男は、初対面で青筋を立てて詰め寄ってきた。あの日から、もう何週間になるんだろう。
「決めつけないで。私はさっさと借金返して、ここから出ていくんだから!」
「ふっ。これまでワシらに調教された女も、揃って同じような事言うとったもんや。果たしてお前の根性が、そいつら全員を超えられるか……楽しみやのぉ」
 挑発的な言葉と共に、肛門へ何かが塗りこめられる。滑りの強さからいって、ローションじゃない。
「な、何を塗ってるの!?」
「ワセリンや。汁のようけ出るマンコと違うて、ケツ穴にローション入れてもすぐ乾いてまうからな」
 栖村は私の問いに答えながら、お尻にアレの先を宛がう。
「…………っ!!」
 私は下唇を噛み、屈辱に耐えた。ディルドーやバイブなら経験はあるけど、男の性器を挿れられるとなると、またショックの度合いが違う。人間としての尊厳を貶められる気分だ。でも、まさにそれが栖村達の狙いなんだろう。こいつらは、私を『メス奴隷』に堕とすのが目的なんだから。
 栖村の亀頭が肛門を無理矢理開き、中へと押し入ってきた。ミチミチという音が聴こえてきそうだ。
「ははははっ! 散々バイブで拡げとったっちゅうのに、えらいキツいのぉ!」
 栖村は黄色い歯を見せて笑いながら、さらに深く腰を沈める。熱く脈打つペニスの存在感は、バイブとはまるで違った。腸の中を『逆流』され、脚が震えだす。
「っし、動くで!」
 私の震えを知ってか知らずか。栖村は腰を掴み直すと、激しく腰を打ちつけてくる。お尻に平手打ちでも受けているように、バチンバチンと栖村の腹肉がぶち当たった。あそこを犯される時の、お尻を突き上げる痛みとは全く違う。

 ( ほんとにお尻……犯されてるんだ…… )

 シーツを掴んで揺れに耐えながら、はっきりとそう認識する。
「どうや、尻の穴犯されるんも気持ちエエやろ!?」
 栖村は激しく腰を打ちつけながら、そう囁きかけてきた。
「はっ、はぁっ……そんなわけ、ないでしょ!!」
 当然、認めはしない。でも正直なところ、違和感はほとんどなかった。バイブで拡げられていたのもあるだろうし、あらかじめ何日もかけて、お尻で感じる下地を作られていたのも大きい。
 変な感じだ。ずぶずぶとお尻に出し入れされるたびに、肛門が擦れて気持ちいい。それに比べて、腸奥の感覚はぼんやりとしている。分厚い麻袋越しに蜂蜜を味わうような……確かな甘さは確信できるのに、それがひどく遠い。
 結局その甘さをはっきりと感じる前に、栖村が限界を迎えた。
「ああ、いくで……っ!!」
 そう言ってお尻からアレを抜き、背中に精子を浴びせかける。相変わらず凄い量で、背筋から腰の方にまでドロドロとしたものが流れていく。
「まあまあやな、やっぱワシは喉マンが一番やわ。おう磯崎、代わったるわ。お前、ずっとやりたがっとったやろ!」
 栖村がベッドに座り込み、磯崎へ手招きする。磯崎はベッドへ上がり、私の背後についた。ミラーに映るその顔は、無表情ながらも眼が血走っていた。
「い、入れるぞ」
 その言葉で、挿入が始まる。肛門どころか、その周りの骨まで軋む規格外の直径。冷や汗が噴き出す。
「やめてっ、ちょっと待って!!」
 咄嗟に腰を引こうとするけど、磯崎は私の尻肉を鷲掴みにして逃がさない。どう考えても無理なサイズが、ミリミリと直腸へ入り込んでくる。両脚が普通じゃないぐらい痙攣しはじめる。
「す、すっ、栖村相手に、か、感じていたな。俺が、もっと、拡げてやる!」
 磯崎は言葉を詰まらせながら、ますます力を込めて腰を押し込んできた。
「んは、あぐっ……あぐ、ぁ…………!!」
 私は目を見開き、舌を突き出して凍りつく。本当に苦しい時、人間はフリーズするんだと思い知らされる。
 何十分にも何時間にも思える挿入の末に、ようやく磯崎の動きが止まった。亀頭が腸の奥まで届いたからだ。
「さすがケツやと深ぅまで入るのぉ、デカマラが七割方隠れとるやんけ。マンコの方やとすぐ子宮口にぶち当たって、半分も入っとらんかったのに」
 横から挿入を見守っていた栖村が、ビールを煽りながら笑う。正直、そんな言葉は聴かせないでほしかった。あの磯崎の巨根が、七割も入ってしまっている事実。それは、私の震えを酷くする。
「あああ、い、いいぞ……纏わりつく」
 磯崎は奥まで突き入れた状態で、アレをビクンビクンと跳ね上げる。それだけで私の腸奥からは、排泄欲に近い何かが沸き起こった。
「いっ、今まで辛抱したんだ、愉しませろ。お…俺を、満足させてみろ!!」
 吼えるような声。それが、ピストン開始の合図だった。腸壁を捲り返しながら腰を引き、ミチミチと肉を押しのけながら突きこむ。それが一切の遠慮なく繰り返される。
「あ゛、あ゛っ……あっ、あ゛あ゛あ゛っっ!!!!」
 私の喉から迸るのは、完全に悲鳴だった。バックで膣を犯された時より、膝が深くシーツへめり込み、ギシンッギシンッとおかしい音でベッドが揺れた。
「い、いい……いいぞっ、いいぞぉ!!!!」
 山賊のような顔を歪ませて、磯崎が唸る。私の直腸とのサイズ差なんて一切考えず、暴力的なペニスを叩き込みながら。
「ああ゛っ、うあああ゛っ!! あ゛っ、あ゛っ!!!」
 腸全体を押し込まれる感じで、息がしづらい。骨盤が悲鳴を上げていて、這う格好を取っていなければ、すぐにでも腰から崩れ落ちそうだ。
 苦しい。苦しくて耐えがたい。
 なのに。なぜか磯崎から深々と突きこまれるたび、お腹の奥が切なく疼く。愛液がとろりとあふれてしまう。
「気持ちええやろ?」
 そんな私の状態を見透かしたかのように、栖村が一言呟いた。
「はあっ、はぁっ………!!」
 私は激しく喘ぎながら、栖村を見上げる。栖村は、逆光の中で笑っていた。
「磯崎のはデカイからのぉ。直腸圧迫するだけやのうて、子宮まで押し潰しよる。子宮は一番の性感帯やさかいの、どの女もヒイヒイ泣いて善がるもんや」
 諭すようにそう言われると、妙に納得してしまう。疼いているのは確かに、お臍のすぐ下……子宮の辺りなんだから。
 だとしたら、私も過去の『メス奴隷』と同じ道を辿っていることになる。それは駄目だ。その先にあるのは、私の望む未来じゃない。
「うう゛っ、うう゛う゛……っ! はあ゛っう゛、う゛ああ゛あ゛あ゛っ!!!」
 私は、歯を食いしばって快感に耐える。でも、硬い亀頭で結腸付近を擦られるとどうしても声が漏れるし、愛液が内股を垂れていく。
「うう……いくぞ、いくぞぉおおおっ!!!!」
 呆れるほど長く腰を振った末に、磯崎は吼え、腸奥で射精した。かなり長めの射精が終わり、肛門からずるりとペニスが抜けると、腸内が外気に晒される。
「はっは、さすがやのぉ。ケツの穴がパックリ開いとるわ!」
 遠くから眺めていた新渡戸が、私のお尻を見て笑った。

 そこから私は、延々とお尻を犯され、嬲られ続けた。
 ベッドの上だけじゃなく、ソファの背もたれに手を掛け、お尻を突き出した状態で犯されもする。土曜日には当たり前のように、仲間のライブを眺めながら、ミラーに手をつく形で犯されつづけた。ライブ終わりにマングリ返しの格好を取らされ、お尻を指で弄られると、背中やお腹に大量の白濁液が零れていくぐらいだった。
 もちろんその合間合間には、お腹の中を綺麗にするための洗腸も挟まれる。ただ浣腸するだけじゃなく、我慢ついでにまた玉蒟蒻やプチトマトを詰め込まれたり、太いアナルパールを出し入れされたりもした。
 そしてそういう調教は、当然ながらライブハウスのスタッフに見られている。だから水曜の握手会後には、チンピラ数人からも似たような辱めを受けるハメになった。

 前回騒ぎになった所とは別のラブホテルで、浣腸を繰り返される。
 まずは『イチジク浣腸』というものをお尻に注入され、色々な方法で排泄させられた。
 人差し指やアナルバイブで刺激されるのなんて、ほんの序の口だ。そのうち何人かでアイディアを出し合って、より惨めなやり方を考え出される。
 例えば、ある時には5本のイチジク浣腸を入れられた上で、浣腸を我慢しながら男の物を咥えさせられた。しかも、このフェラチオにはストローク回数の制限がある。
「今度は30回だ。30回以内に俺をイカせられたら、普通にトイレでさせてやる。もし30回しゃぶった時点で俺がイってなきゃ、その格好のままでぶちまけろ」
 そういう風に命令されるんだ。当然、拒否権なんてない。
 イチジク浣腸の即効性は凄くて、5個も入れられるとすぐにお腹がキュルキュルと鳴りはじめる。それを我慢しながら、なるべく相手に快感を与えられるよう、喉奥まで咥え込むディープスロートでゆっくりとしゃぶりつく。
「うっ……へへ、中々クるなこりゃ」
 男はバスタブの縁に腰掛けたまま、気持ち良さそうに声を漏らしたりする。でも、20回や30回で絶頂にまで持っていくのは無理だ。単純に刺激が足りないのもあるし、浣腸の効果でお腹がグルグル鳴っている状態だと、イかせる事に専念することすら難しい。
「にじゅうきゅーーう、さーーーんじゅうっ!!」
 悪意に満ちたカウントダウンが、ホテルの部屋に響きわたった。
「どーよマサ、イけたか!?」
「うんにゃ、全然。あと30回は余裕で耐えれるわ!」
 そんな白々しいやり取りの後、全員の視線が私に集まる。
「じゃ、約束通りひり出せや。自分でケツおっぴろげてよ!!」
 私は自分の尻肉を指で掴み、限界まで割りひらく。そして思いっきり息み、高まりきった便意を放出する。ラブホテルのバスルームは一面ガラス張りだから、私の出した液はまずガラスに浴びせかかり、場の全員に見守られながら垂れ落ちていくことになる。
「もう、きったないんだけどー!」
「ウチら今スムージー飲んでんだからさぁ、そういうのやめてくんないマジで!!」
 そう金切り声を上げるのは、私服姿の女の子2人組だ。後で判ることだけど、まだ高校に入りたてという歳らしい。
 この2人の存在は、大きかった。調教師にしろ、不良にしろ、男に辱められるのはまだマシだ。男は獣だ、獣には酷いことをされても仕方ない……そう割り切れるから。でも同性となると、訳が違ってくる。
「マジキモい!」
「うーわ、アレありえないって!!」
 そんな言葉をぽろりと呟かれるだけで、ひどく動揺してしまう。
「はははっ! ドMの変態でも、同じ女に笑われんのはキツいかよ!?」
「ま、そりゃそうだ。『リュネット』の頃にゃ、女子のカリスマとか言われてチヤホヤされてたもんな。で、その味方だったはずの相手から、今はゴミみてぇに見下されてるわけだ。その落差、俺だったら死にたくなるわ!!」
 不良達は私の立場を笑いながら、恥を掻かせつづける。
 さっきの責めで言えば、何度も繰り返された挙句、ついには頭を押さえつけてのイラマチオを強いられる。
「おら、手伝ってやんよ。喉奥で50回も扱きゃイケそうだ、せいぜいガンバレや!!」
 そう言って喉奥まで咥えさせられるんだ。イチジク浣腸を我慢している状況で、これはあまりにも辛すぎる。
「んぶっ!? お゛お゛うえ゛っ!! ふぅう゛むんん゛お゛お゛おえ゛え゛っ!!!」
 グルグルとお腹が鳴り、何度も激しくえずき上げる。
「え、何今の声!? アンタ達のじゃないよね?」
「ああ、正真正銘こいつの声だ。ちっと奥まで咥えさせると、すーぐゴエゴエえずきやがんだよ」
「うは、ちょっと流石に無さすぎ……ねぇ?」
「うん、ナイナイ。熱愛スキャンダルとかってレベルじゃないから、この幻滅感!!」
 そんな血も涙もない罵倒を受けながら、私は上も下も限界を迎える。
「んろ゛ぉえ゛お゛えお゛…………っ!!!!」
 えずきながら黄色い吐瀉物を吐きこぼし、開いた肛門からも汚液を噴き出す。全員に見られ、大声で馬鹿にされる中で。

 女の子2人は、私を嬲る役に回っても厄介だった。
「こいつ、すぐ潮噴くんだぜ。やってみろよ」
「えー、マジ?」
 男の誘いに乗って、金髪に染めた子が割れ目に指を捻じ込んでくる。同じ女だけに、急所をほとんど外さない的確な責め。当然、何分ももたない。
「あははっ、ホントだ。イってるイってる、すごっ!!」
 彼女は大袈裟に身をかわしながら、ゲラゲラと笑う。
「ねぇお姉さん。お姉さんって私より年上ですよねぇ。私なんかにイカされて、悔しいとか思わないんですか? 私15のガキですよ? そんなガキにちょっとオマンコ弄られただけで、くっさいマン汁ビュービュー吹き散らしてさぁっ!!」
 そんな言葉の一つ一つが、胸に突き刺さる。

 ( いや、イキたくない! 感じちゃ、だめ…………!! )

 そう思えば思うほど、下半身の筋肉が強張って、潮を噴きやすくなってしまう。
 そんな惨めな私を前に、もう一人の子がもっとロクでもない事を思いつく。
「そーだ。せっかくだし、シャワー浣腸しよーよ!」
 シャワー浣腸――シャワーヘッドを外し、ホースでお尻に直接ぬるま湯を注ぐ行為。
「だめよ、もう無理っ! もう、は、入らないわっ……!!」
 お腹が膨れるほど浣腸されたところで、飛沫を撒き散らしながらホースが引き抜かれた。
「まだ漏らすんじゃねーぞ。お前はすぐ漏らすからよ、俺ので栓してやるよ!!」
 すかさず男の一人が私を抱え起こし、硬くなったアレを緩んだお尻に捻じ込んでくる。
「え、い、いやっ!! なにっ、ダメ、ダメええっ!!!」
 私は半狂乱になった。でもその反応が、また面白がられてしまう。
「はははっ!! どうだ。こうされると、クソが逆流しそうで堪んねぇだろ!?」
「だめ、だめぇっ! こんなの、へ、変になっちゃううっ!!」
「オウ、なっちまえ! ケツの穴犯されて、ブリブリ糞ひり出しながらよ!!」
 こんな状況がずっと続いた。一人が射精してアレを抜けば、すかさずホースで湯を足され、また別の一人とのアナルセックスが始まる。
「まだまだ休ませねぇぞ。ケツの穴が腫れ上がって、クソができなくなるまで突いてやらぁ!!」
 そう脅す奴もいれば、
「随分苦しそうだな。俺は気持ちいいぜ? お前のケツの穴『使う』とよ!!」
 そんな風に、ただひたすら愉しむ奴もいる。
「あああっ、だめぇだめっ!! いっやああああーーーーっ!!!!」
 ついには私は、床のタイルへ仰向けに転がり、お嬢様座りでもするように脚を揃えて犯されるようになった。獣のような男の視線と、ゴミを見るような女の視線の下で。
 そして。
 認めたくない。絶対に認めたくないけど、私は、この状態で絶頂を迎えた。何度も、何度も。
「おおっ、おっほぉ、お゛………んんン゛お゛お゛お゛おお゛っっ!!!!」
 酷すぎる状況でお尻を犯されるうち、胸の奥から純粋な快感の声があふれ出す。そして一度あふれると、もう止まらない。お尻からのぬるま湯のように。
「あはははははっ、ひっでぇ声!!!」
「完璧にケツでアクメきめてんな、この馬鹿女! どうよお前ら、コイツ見て」
「や。どうもも何も……ただのドーブツじゃん、こんなの。」
 爆笑と、冷ややかな言葉。私の耳は、その両方をしっかりと捉えていた。

 いっそ、まともでなければ楽だったのに。
 ホテルからの帰り道、暗い公園のベンチで、顔を覆ってしゃくり上げずに済んだのに。


    ※           ※           ※


 後ろの穴が使えるようになってからは、調教部屋での責めがますます激しさを増した。口とあそこ、お尻の3穴を同時に犯されるようになったんだ。
 特に、栖村に喉奥を、磯崎にお尻を、新渡戸にあそこを犯されると、悶え狂わずにはいられない。
「ぃお゛え゛お゛ええ゛っ!! ごぼっ、ごほっ……や、やずま゛ぜで……!!」
 ディープスロートにえずきながら、口が自由になるたびに休憩を求める。何度も立て続けにイカされつづけると、意識が朦朧としてしまうから。
 でも、3人がその哀願を聞き届けることはまずない。
「アホウ、まだまだまだまだ、これからや! 弱音吐けるノドがあんねやったら、気ィ入れてしゃぶらんかいッ!!」
 栖村は私をどやしつけ、腹の肉で呼吸を塞ぐぐらいに腰を押し付けてくる。
「い、いいぞっ……!」
「おお、イラマさせながらだとよう締まんのぉ。ノド責めと二穴責めの相性は抜群や!」
 上下から私を挟み込む2人も、一切腰の打ち込みを止める気配がない。

 この頃になると、私に与えられる食事は、ほとんどが3人の精液になっていた。口から直接飲まされるだけじゃなく、あそこやお尻に出された分を皿に注ぎ直して飲まされたり、あるいはドッグフードの上に掛けて与えられたりもした。
 私は最初、当然それを拒否した。普通に気持ち悪かったし、それを飲んだら最後、体の内まで穢されそうな気がしたから。
 でも、そこから丸4日間水しか与えられなくなると、贅沢を言っていられなくなる。極限状態になって思い知ったけど、飢えると心が弱くなるんだ。肉体的なつらさも勿論だけど、それ以上に自我を保つのが難しくなる。精神的にすごく不安定になって、狂いそうになる。
 だから、たとえ大嫌いな人間の精子だとしても、胃に入れるしかない。

 でも、プライドを捨てきった訳じゃない。私の中には、まだ意地が残っている。
 それが解ったのは、3穴責めが始まってから5日目の夜。調教部屋の扉を開け、見覚えのある男が現れた時だった。
「どうだ、調練の進み具合は」
 そう語る男の全身からは、精液の匂いすら消し飛ぶほどのコロンの香りが漂っている。何より恨みの強い香りだから、特に嗅ぎ分けられるのかもしれない。
「どうも旦那、見ての通り順調です。完全に骨抜きになるんも、時間の問題ですわ!」
 栖村がそう言って、仁王立ちのまま深々とペニスを咥えさせてくる。
「んぼ、ごぇ゛……ぃお゛え゛アっ!!!」
 今日はもう6回以上吐かされているから、私の喉粘膜はボロボロだ。当然、えずき声も酷い。
「さて、磯崎よ。こっちもスパート掛けよか!!」
「ウッス」
 新渡戸と磯崎も、上下から私を挟み込んだまま、激しく腰を使いはじめた。どっちも私の弱い部分を知り尽くした動きだ。それを前後同時にやられると、立て続けにイってしまう。
「んごぁ゛、あ゛っあ゛! ひぃう゛っ…い゛オ゛ぇ゛おおア゛ッ!!!」
 喉奥への蹂躙にえずきながら、新渡戸の腰を挟むように足首を浮かし、何度も何度も痙攣しながら絶頂する。
「よっしゃ、こっちゃそろそろイクで!!」
「こっちもや、口に出したる。しっかり飲めや!!」
 栖村と新渡戸が怒鳴りながらペニスを抜き、私の顔の前で扱き立てる。直後、二つの白い液が噴き出し、私の顔に浴びせかかった。最初は前髪や鼻へ。そして狙いが定まってくると、激しく喘ぐ口の中へと注ぎ込まれる。
「あはっ、ごほっ!! オッエエ゛エ゛……!!」
 噎せ返る口の中に、生臭いぬめりが溜まっていく。今や私の主食である『ザーメン』が。
「ははは、すっかり従順になったな!」
 入口に立つ男が、私を見下ろしながら笑う。その笑い声を耳にした瞬間、私の中でスイッチが切り替わる。
 新渡戸にも、栖村にも、磯崎にも笑われたって構わない。でも、あの男――宮路に笑われることだけは、私の最後に残ったプライドが赦さない。
「……さて、四元結衣くん。君がこの部屋の住人となってから、今日でちょうど2ヶ月だ。そろそろ、柔軟な考え方ができるようになった頃かと思ってね」
 宮路はそう言って、ロマンスグレーの髪を撫でつける。
「ひどく汚れてはいるが、それでも君は、私にとっての愛娘だ。その愛娘に、今一度問おう。私と共に、来る気はないかね?」
 余裕たっぷりの笑み。ここまで追い込めば、断るはずがない。そう信じきっている顔だ。鈴佳の時みたいに、脅せば何でも通ると本気で思ってるんだろう。
 私は、そんな宮路の顔を見上げ……思いっきり、口の中の精液を噴きかける。
「ぬうっ!?」
 白濁した液が、宮路の左瞼に浴びせかかった。何の備えもしていなかった宮路は、面白いほど上体を揺らしてよろける。
「こんな事、いくらやっても無駄よ! 私は借金を返しきるまで、責任を全うしてみせる。あの日、アンタに言った通りに!!」
 そう啖呵を切る私に、新渡戸と栖村が強張った表情を向けた。こいつらヤクザにとって、宮路はいわばスポンサー。その顔に泥を塗られて、戦々恐々というところだろう。でも、悪いとは思わない。後悔はない。
「…………なるほど。“おまえ”の気持ちは、よく解った」
 宮路は懐からハンカチを取り出し、静かに左目を拭う。そして開いた左目は……完全に、ヤクザの元締めのそれだった。
「栖村、磯崎……それに、新渡戸」
 宮路に名を呼ばれ、3人の緊張が一気に高まったのが解る。どこか緩んでいた数分前までの空気とは、まるで違う。
 その空気の中、宮路は抑揚のない声で命じる。


 ――――『仕上げろ』、と。


緋色の首輪  5話

※セックスカラオケ、尿道、アナル開発回です。



『今日は、あまり喋れません。ごめんなさい』

 ディープスロートで『脳イキ』した日、握手会の私の列には、ずっとその張り紙が張り出されていた。
 ライブに出られない私にとって、握手会はファンと触れ合える貴重な機会。本当は皆といっぱい話したい。でもこの日は、一晩中栖村達の物を咥えていたせいで、顎に力が入らなかった。気を抜くと口が半開きになってしまうから、苦肉の策でマスクをしていたぐらいだ。
 ファンの皆は、すごく心配してくれた。
「大変だね……応援してるから、頑張ってね!」
「また結衣ちゃんの歌が聴きたいよ。ずっと待ってるからね!」
 そんな温かい言葉までくれる。私は喋れない分、一人一人の手をいつもよりしっかり握った。それだけで、皆すごく喜んでくれた。ヤクザ3人の玩具にされている、こんな私の手でも。

 ただ、私の列に並ぶ皆が皆、純粋なファンってわけじゃない。前の時と同じく、今日も『浮いた』見た目の集団がいた。そしてそいつらは、思った通り私に脅しをかけてくる。
「よう結衣。“ヤー公のケツ”は、美味かったかよ?」
 握手を交わしながら、耳元でそう囁かれた。前にもいたドレッドヘアの男だ。
「前と同じトコで、待ってっから。」
 そう言い残し、ドレッドヘアは列から離れる。次の先頭は、同じく見覚えのある、帽子を斜めに被った男だ。
「首絞められてアヘッてるオメーの顔、傑作だったぜ。しかもその後、ガンガン中に出されてんのに全然気付かねーのな。マジ笑ったわ」
 その次の、アゴ髭を生やした男も、サングラスにピアスの男も。何人もの男が、私が調教部屋でされた事を耳元で囁きかけてくる。
「すみません、皆さん。メンバーとお話される際には、もう少し離れてお願いします!」
 流石に見かねたのか、近くにいたスタッフさんがそう注意喚起するぐらいだった。
「結衣。オメー、変なのに絡まれてるんじゃねぇだろうな。もしそうなら言えよ、二度と近づかねーようにシメてやる!」
 楽屋に戻った後、あんりもそう気遣ってくれる。私はそれに感謝しながらも、力なく首を振るしかない。
 あんりからすれば、私のこの反応も歯応えがなく感じるだろう。以前の私はとにかく鼻っ柱が強くて、こんな風に詮索されたら『何でもないったら!』と強めの言葉で返していたはずだ。でもその気の強さが、あんりとうまく噛み合っていた。
 初めて会った時も、駅前でビラを撒く私にあんりが因縁をつけてきて、激しく言い合った末に根性を認められたんだ。いかにもなヤンキーで押しが強いあんり相手に、真っ向から喧嘩を買う子はあまりいないらしい。
 でも今の私は、メンバーに対して負い目しかない。練習にもライブにも参加できず、嘘をつき続けてもいる。とても強気には出られない。償う方法はただひとつ。借金を返し終わるまでこの苦境に耐えて、笑顔で皆の元へ帰ることだけだ。
 だから私は逃げない。碌な目に遭わないとわかっていても、例の公園に足を向ける。
 公園には6人の男がいた。その中には当然、ドレッドヘアと斜め帽子の姿もある。
「ヒューッ、本当に来たぜ。マジで『リュネ』の四元結衣じゃん!」
「やべぇ勃ってきた。コイツたまんねーわ!!」
 新顔の4人は、私の全身を舐めるように眺めまわした。
「お前ら、視姦は後にしろ。この人数であんま目立ちたくねーしな。お前もついてこい。ダチのやってるカラオケボックスで、たっぷり可愛がってやんよ」
 斜め帽子が仲間と私に呼びかける。投げ捨てた煙草を、靴で踏みにじりながら。

 カラオケ屋の個室で、私は早々に裸に剥かれ、6匹の獣に犯された。
「うわ、気持ちイイーっ! 入口から奥まで、ねとーって絡み付いてきやがる。マジでミミズ千匹だわこれ!!」
「な、言ったべ? こいつのガチで名器だって」
 頬を緩ませるアゴ髭と、自慢げなドレッドヘア。どっちを見ても虫唾が走る。
私はされるがままになりながら、相手に冷ややかな視線を送りつづけた。『喜んでいる』『蕩けている』なんて、間違っても捉えられないように。
 でもそういう態度は、かえって相手を燃えさせてしまうらしい。
「おい。せっかくカラオケ来てんだしよ、コイツになんか歌わせよーぜ」
 その一言が、悪夢の始まりだった。
「それいいな。そうだ、せっかくだからよ、『リュネット』の歌とかどうよ?」
「ははっ、最高だな!!」
「でもよぉ、こいつ握手会ん時、声出ないとかって張り紙してなかったか?」
「いいんだよ。アイドルのくせに、歌えねぇコンディションにしてる方が悪ィんだ!」
 6人は勝手に盛り上がりながら、リュネット時代の曲を選びはじめる。一人はまだ私に圧し掛かったままだ。
「ちょっと! 歌わせる気なら、せめて離れてよ!」
 私は犯している一人に抗議する。でもそいつは、腰を止めようともしない。
「ほれ。自分の曲なんだからよ、90点以上は余裕で取れるよなぁ!?」
 そう言いながら、マイクを手渡された。どうやら採点機能まで使うつもりらしい。つくづく馬鹿にした連中だ。
「ほれ、始めるぜ。準備いいか!?」
 そう声が掛けられ、私の返事すら聴かないままに前奏が始まる。私は奥歯を鳴らしながらも、仕方なくマイクを握った。

 判りきってはいたけど、まともには歌えない。顎の力が入らないと、はっきりした発音が難しい。犯されながらだから、歌声に余計な息や喘ぎが交じる。挙句にギシギシとソファの揺れる音や、肉のぶつかり合う音までマイクが拾うんだから、高得点なんて望めるわけもなかった。
「はははははっ! 28点かよ、『リュネット』のセンターがよぉ!!」
「これもうソックリさん以下だろ。俺らが歌っても、これ以下にゃなんねーぜ?」
「お前、よくそれでセンターやれてたな。実は口パクだったとか?」
 画面に映った悲惨な結果を前に、6人は散々に笑う。私は、悔しさのあまり歯を鳴らした。確かに宮路のコネはあったけど、必死に努力だってしてたんだ。こんな連中に笑われる理由なんてない。
「こんな状態で、まともに歌えるわけないでしょ!!」
 怒りを込めて叫ぶけど、6人はニヤニヤ笑うだけだ。
「他人のせいにしてんじゃねーよ、バーカ!」
「おら、もう一曲だ。90点以上取れるまで、何遍でもやり直しな」
 そう言って、次の曲をスタートさせる。
 私はそこから、何曲も何曲も歌わされた。ソファに寝そべり、腰掛け、ガラステーブルに突っ伏し、背中を乗せ……色んな格好で犯されながら。

 持ち合わせのコンドームが尽きてからは、部屋の入口に立たされたまま、指で延々と潮を噴かされるようになった。調教師の3人ほどではないとはいえ、この連中も手慣れていて、指責めされるとあっという間に濡れてしまう。
「おーっ。スゲーなこの女、もうグチャグチャだわ!」
「そりゃそうだろ。毎日Gスポ開発されまくってんだから」
 そんな会話を掻き消す勢いで、グチュグチュという音が部屋に響きわたる。
「アイの、かけらが……ん、んんっ、はううぅ゛っ!!」
 ただでさえ感じやすいのに、サビに入ってお腹に力を入れると、一気に快感が強まって潮を噴いてしまう。そうなったら当然笑われるし、歌の点数もボロボロになる。
 そんな中、私の頭は混乱しきっていた。屈辱と快楽、そして焦りで。
 12時を回っても調教部屋に戻らなかったら、逃亡したものと見なされる契約だ。そうなると何もかもが終わり。移動の時間を考えたら、少なくとも11時半にはこの部屋を出なきゃいけない。
 そんな中、部屋の時計は着実に進んでいく。8時15分、8時30分、8時50分……視界に入れるたび、着実に。でも、カラオケの点数は全然取れない。一番うまく歌えた時でも78点止まり、90点があまりに遠い。
 そうしてしばらく経ったころ、焦る私に更なる追い討ちが掛かった。
「あれ、なんか変な音しね?」
「ね、するよね。グチャグチャ、みたいな」
 若い女の子の声が、廊下の方から聴こえてくる。時計の表示は、9時50分を少し過ぎたところ。22時に店を出ないといけない未成年の子達が、ぞろぞろと帰りはじめてるんだ。この部屋の前を通りながら。
 ローファーと思われる硬い足音が、部屋の前まで来る。私が背を向けるドアの、すぐ前まで。
「ここだぁ!」
「だねー。……って待って待って、これ誰か手マンされてんじゃん!!」
「アッハハ、ホントだ! しかも歌わせながらとか、マニアックぅー!!」
 そんな事を言いながら、足音は完全にドアの前で止まる。
「おう、グチョグチョだぜ!!」
 割れ目に指を入れている一人が、笑いながらそう叫んだ。するとドアの外で、どっと笑いが起きる。私は歌い続けながら、どんどん顔が赤くなるのを感じていた。
「あれー、そんなとこで何固まってんの? 何かあった?」
「やー、何かっていうかさ、この部屋で誰か手マンされてんの。しかも歌いながら!」
 また別の足音が近づいて、ドアの前に合流する。
「あれ。ってかこの曲、リュネットの『星色ミューズ』じゃん」
「そ、そ。今日リュネメドレーやったのに、これやんなかったよね」
「だってこの曲、サビむずいもん。あれ完璧に歌えるのなんて、ユイユイ本人ぐらいっしょ」
 この子達は、リュネットの曲をよく知ってる。当時の私の愛称まで。
「へへ。だとよ、“ユイユイ”ちゃん。」
 男の一人が、嘲るように囁きかける。本人なんだからちゃんと歌え、そう言いたいんだろう。言われなくてもそのつもりだ。もう時間もないんだから。
「月よりきらめーいてー……ほしっ、いろのぉ…………!!」
 足をガクガクと震わせながら、サビの入りを熱唱する。当時と同じように。でも、それがまずかった。
「はは、声震えちゃってるよ。でもさぁ、なんか…声、めっちゃ本人に似てない?」
「あ、それ思った。もしかして、本当にユイユイ『本人』かも!」
 無邪気に発されたその一言が、ギリギリで保っていた私の一線を断ち切る。
 バレた。知られてしまった。そのショックで身が震え、太腿が強張る。
「ミュー……あ、あ゛っ!……あはあっおオオ゛お゛お゛っっ!!!」
 変に耐えようと頑張ったことが仇となって、私はひどい声を上げながら、盛大に潮を噴き散らした。目の前の男達からは大笑いが起き、後ろの子達は笑い半分、引き半分という反応が窺える。私はその真ん中で、呆然と決壊を見守っていた。
「アハハハッ、きったない声!」
「ちょっとさぁ……冗談でもやめてよ、これがユイユイとか言うの。あたし本気でファンだからさ、笑えないんだよね!!」
「あー、ゴメンねナミ。そういやあんた、髪型とか私服まで真似るぐらいのガチだったもんね。大丈夫大丈夫、こんな変態女とユイユイじゃ、人間としての次元が違うから!!」
 そんな事を言いながら、ローファーの足音が遠ざかっていく。
「はははははっ、ひっでぇな!!」
「俺らでもあそこまで言わねーわ、人間としての次元が違うとか!」
「ホント、無邪気ってコエーな!!」
 男6人に笑われ、水気の飛び散った床を眺めながら、
「……うっ、う……っく、ひっく………ひっ………!!」
 私は、泣いていた。
 それどころじゃないのに、涙がどうしても止まらなかった。


    ※           ※           ※


 なんとか日付が変わる前に調教部屋へ戻った私は、栖村達から次の調教方針を宣告された。
「お前の股ぐらに開いた3穴全部を、たっぷりと開発したる」
 栖村はそう言って、“3つの穴”へ順番に触れた。
 膣、肛門、そして……尿道。
「なっ……な、な、何考えてんの!? あ、頭おかしいんじゃない!?」
 私は3人の前で取り乱し、震えながら叫んだ。この時点での私にとって、膣以外を弄られることなんて完全に想定外だ。だから驚いたし、怖かった。でもそういう初々しい反応は、調教師という人種を余計やる気にさせてしまう。

 3穴のうち、膣は充分ほぐれているから、残りは肛門と尿道。
 まずは、尿道の開発から行われた。
 どっしりとした椅子に大股開きで拘束され、クリームと剃刀を使ってあそこの毛を剃られる。これは結構な恥ずかしさだ。剃られている間はもちろん、子供みたいにツルツルになったあそこを凝視されるのも耐えがたい。
「スースーして気持ちええやろ。感度も跳ね上がるぞ」
 栖村は私のデルタゾーンを撫で回しながら、ゴムでできた細い管を取り出した。
「カテーテルっちゅう道具や。こいつを小便の穴に突っ込んで、中身を出しきらしたる」
 栖村はそう宣言して、私の顔が引き攣るのを楽しみながら、椅子の下に洗面器を置く。そして、カテーテルを尿道へと近づけた。
「い……いや、やめてよっ!!」
 管の先が尿道に触れた瞬間、私はたまらず叫んだ。でも、栖村が止めるはずもない。
 ゆっくりと、尿道に異物が入ってくる。
「う、くっ……!!」
 私は歯を食いしばって痛みに耐えた。そしてそのまま、さらに挿入された時……突然、今までに感じたことがないほどの、激しい尿意に襲われる。
「だ、だめっ!!」
「どうや、初めての感覚やろ。しかし、お前は我慢強いのぉ。この時点で体震わせて、漏らす女も多いんやが」
 栖村は私を観察していた。憎らしいほどの余裕顔で。
 確かに、体が震える。今にも漏らしそうだ。でも、栖村の前でなんて漏らしたくない。私はその一心で、下唇を噛んで耐えていた。
「ま、結局は同じや。このまま、もうちっと挿れたったら……」
 その言葉で、またカテーテルが入ってくる。ほんの1cmぐらいだろうか。でもその1cmが、私の我慢の限界を突き破った。
「あ、あ……いやっ!!」
 尿の流れ出ていく感じが、はっきりとある。その感覚はカテーテルから黄色い液体となってあふれ出し、洗面器にパタパタと音を立てた。
「うひひ、真っ黄色や。そういや今日は、ほとんど水飲ませとらんかったの」
 栖村は洗面器を覗き込みながら笑っていた。
「いや、見ないで、みないでよっ!!!」
 一度尿が出始めると、もう意思とは関係なく、次々に漏れつづける。膀胱が空になるまで。
「おーおー、結構な量出したのぉ」
 ようやく尿が出きったところで、栖村はカテーテルを揺らして水滴を切り、洗面器を持ち上げる。角度のついた洗面器の中には、かなりの量の黄色い液体が溜まっていた。それを直視させられるなんて、ひどい屈辱だ。
 でも、この責めはここからが本番だった。
「さて。小便も出しきったことやし、これでようやっと“中”を弄れるのぉ」
 栖村はそう言って、綿棒の入れ物と白色ワセリンの缶を取り出した。そして綿棒を一本引き抜き、ワセリンをつけてから、私の尿道に宛がう。
「な……何してんの!?」
 そう訊きながらも、本当はこれから何をされるのかわかってた。わかった上で、認めたくなかったんだ。
「は、うっ……く……!!」
 綿棒は、カテーテルよりもさらに異物感が強い。ワセリンのせいか痛みはそれほどでもないけど、尿道に物を入れられているという事実が怖い。それでも私は、必死に栖村の目に焦点を当てていた。目が泳ぎそうになるのを、かろうじて押し止めながら。
 浅く差し込んでは引き、また差し込み……それを繰り返して慣らしてから、本格的に尿道開発が始まる。
「あっ、あっ! あああ、あああ……あぁ…………!!」
 未知の感覚に、声が抑えられない。
「どうや、小便の穴を弄られるんは。生まれて初めての快感やろ?」
 栖村は私に語りかけながら、綿棒でグリグリと尿道を刺激してくる。
「やめてったら!! 垂れ流しになったら、どう責任取ってくれんの!?」
 私は声を震わせながら叫ぶ。怖かった。
 でも、そうして尿道を弄られ続けているうちに、妙な感覚に襲われる。
 気持ちいい。クリトリスの内側が、ムズムズする。クリトリスが勃起しかけている。
「気持ちようなってきたやろ。特に、クリがムズムズするんちゃうけ?」
 心を見透かすような栖村の言葉に、私は目を見開いた。
「安心せぇ、当然のこっちゃ。クリトリスっちゅうんはな、女のマンコを取り囲むように根を張り巡らしとるんや。その根の中でも特に太い部分が、尿道のすぐ傍を走っとる。せやから、こうして尿道を弄ったったら、どんな女でもクリがバキバキに勃ってまうんや」
 栖村は、勝ちを確信した口調でそう告げる。
 その言葉は事実だった。尿道を刺激されるうちに、どんどんクリトリスが充血し、膨らんでくる。マッサージ器を延々と宛がわれていた時みたいに。
 そうして充分に勃起しきったところで、本当の嫌がらせが始まった。尿道を綿棒で刺激しつつ、指でクリトリスを撫ではじめたんだ。
「ん、くっ……ふうっ、うっ、んっ…………!!」
 激しさはない。でも、この気持ちよさは普通じゃなかった。尿道で感じている……それを嫌でも意識してしまう責めだ。
 おまけにこの日は、どこかのグループがライブをやる日だったらしい。聴き慣れない音楽と共に、歓声が聞こえてくる。そしてライブ中の調教となれば、当然マイクが持ち出される。
「ぐ……!!」
 口元へマイクを突きつけてくる磯崎に、私は精一杯の敵意を向けた。でも、磯崎も栖村も、手を止めようとはしない。
 どこのグループかは知らないけど、迷惑を掛けるわけにはいかない。だから私は、必死に口を閉じて声を殺す。でも、それだって簡単じゃない。
「……ふ、くっ!! んんっ、ふんんっ……!!」
 栖村の刺激には色々と変化がつけられるから、不意を突かれるとつい声や息が漏れてしまう。
 特に途中からは、責め自体もハードになっていった。尿道には綿棒の代わりに、尿道ブジーという道具が使われるようになる。ビーズ状の凸凹がついたステンレス製のこれは、綿棒とは比べ物にならないほど刺激が強い。痛さはあまり感じないけど、ピリピリと響く。当然、クリトリスはますます勃起して、石のように硬くなる。
 栖村は、そんな私の変化を見逃さなかった。クリトリスから一旦手を離し、また別の道具を手にする。細いチェーンのついた、挟む形のピアス。それで、充血しきったクリトリスを挟みつぶしたんだ。
「~~~~~~ッ!!!」
 マイクを構えられていたから、声は殺した。正直、よく殺しきれたものだと思う。目元と首元が強張り、足が痙攣する、そのぐらいのショックだったのに。
 このピアスは厄介だった。常にじんわりと痛みがある上に、チェーンを引かれると鋭い痛みまで来る。こういう痛みを我慢するのは、本当にしんどい。下唇を噛んでも、鼻から悲鳴が抜けていく。
「……ふんん! っ!! ん-んんっ、ふぅぅ……んんんっ……!!」
 私は、栖村の笑みと無慈悲なマイクに囲まれたまま、延々と苦しめられた。声を我慢するたびに、疲労と快感が溜まっていくのがわかった。そしてそれは、ある瞬間に爆発する。
 尿道にプジーを差し込まれ、クリピアスのチェーンを掴まれながら、私は全身を痙攣させて耐えていた。マイクのスイッチが入っていたから。でも、その緑のランプが消えると同時に、栖村にチェーンを引き絞られた瞬間、私の中から無理が噴き出す。
「お、ほっ……お、おおおおお゛お゛っ!!!!!」
 今まで出した事もない、絶対に出すべきじゃない声が、喉の奥からあふれ出た。
 その声で、栖村が大笑いする。他の2人も噴き出している。
「はははははっ!! なんや今の声! それがアイドル……っちゅうか、そもそも女の声かいな!?」
 直球の罵倒が、私の心に食い込んだ。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…………」
 罵倒を浴びながら私は、激しい呼吸を続けていた。尿道で感じてしまった……そのショックを、すぐには受け止めきれなくて。


    ※           ※           ※


 膣、尿道と開発された以上、後は肛門だけだ。そしてこの肛門調教には、特に強い悪意が感じられた。

 ライブがあった日の夜……つまり片付けのスタッフが大勢いるタイミングで、栖村達は私を拘束した。両手首を頭の後ろで縛り、大股開きになるよう脚を抱え上げて。
「くっ……!!」
 あまりにも屈辱的な格好に、私は顔を顰める。栖村はそんな私の反応を面白がりながら、見覚えのあるチューブを取り出した。
「懐かしいやろ。お前の鼻に、たらふくミルクをご馳走したブツや。今度は、ケツの穴にくれたる。それがこの“エネマシリンジ”の、ホンマの使い方やからのぉ」
 栖村は歯を見せて笑いながら、次の準備に移る。ベッドの下から洗面器を引っ張り出し、その中に磯崎から手渡された瓶の中身を注いでいく。
「ぬるいセッケン水や。浣腸液にも色々あるが、コイツが一番腹ン中がキレイになる」
 そう解説しながら、栖村はエネマシリンジに黒い栓のような物を嵌め込んだ。バルーンが繋がった栓だ。この時点で、嫌な感じしかしない。
「よーし、準備完了や」
 栖村はエネマシリンジを洗面器の液に浸すと、半笑いのまま私の顔を見る。私は複雑な思いを一瞬忘れ、その顔を睨みつけた。
「相変わらず不機嫌そうなツラやのぉ。まぁ、すぐに顔色が変わるやろうけどな」
 栖村の手が栓のような部分を掴み、私のお尻の穴へ宛がう。栓の先には油のようなものが塗ってあるらしく、ぬるりと中へ入ってくる。
 その瞬間、熱さが来た。ひどい摩擦のような熱さだ。
「あうっ!!」
「どうした、目が泳いどんぞ。しっかりコッチ睨まんかい!」
 栖村の煽りは耳に入るけど、それどころじゃない。肛門がヒリヒリ……いや、ミシミシ痛む。お尻の輪より一回り大きい骨があって、それにヒビでも入ったみたいに。磯崎に膣を犯された時より、もっとダイレクトに涙腺に来る痛みだ。
「かはははっ! 何や、もう泣いとんのか!」
「まあ、そらそやろ。あんだけ膣をギュウギュウ締めるんや、括約筋もキツいに決まっとる。せやけどな嬢ちゃん、ホンマにしんどいんはこっからやで?」
 栖村の笑いに新渡戸が応えつつ、私に覚悟を促す。その直後、シュッ、シュッ、と空気の流れる音がした。音の出所を見ると、栖村が栓に繋がったポンプを握り込んでいる。
 最初は、それで何が変わったのかわからなかった。でも、さらにシュッシュッと音が聴こえた瞬間、お尻の中で決定的な変化が起きる。
 お尻に嵌まり込んだ栓が、風船のように膨らみはじめていた。圧迫感がある。その圧迫感は、栖村がバルーンを握りこむたび、どんどん洒落にならなくなっていく。
 どっ、と冷や汗が出た。背骨と腰の辺りが、カクカクと震えはじめた。
「い、いやあっ!! な、なにこれ、なにこれっ!! いやっ、抜いて、お願い抜いてえっ!!」
 私は叫ぶ。意地も何もない。腸の粘膜が圧迫される感覚は、私から余裕を丸ごと奪ってしまう。
「まだや、まだまだ。どんだけ息んでも、抜けんようにせんとな」
 栖村の口から、恐ろしい言葉が吐かれる。その最中にも、腸の中の栓は膨らみつづける。
 やがて、私の歯がカチカチと鳴る頃、ようやく栖村はバルーンを離した。私は腸の異物感に耐えられず、視線を横に逸らす。栖村の顔もミラーも見たくないから、腕に顔を埋めるようにして。
「大人しゅうなりおって。刺激与えたら顔出すかのぉ?」
 栖村は遊ぶような口調でそう言うと、今度はエネマシリンジの方のバルーンを握り込む。ボコボコッ、と洗面器から音が立ち、中身が吸い上げられていく。中身は、確か“セッケン水”。紛れもない異物だ。
 栖村が十回ほどバルーンを握り込むと、とうとうぬるい湯がお腹の中へと入ってくる。この違和感も半端じゃない。普段出すだけの穴に、逆流してくるんだから。
「んんんんっ……!!」
「くははっ、ええ顔しおる。眉が八の字ィなっとるで。元が小奇麗な女ほど、浣腸された時のツラは情けないもんやのぉ」
 栖村は私の反応を楽しみながら、休みなくバルーンを握りつづける。洗面器の中身がすっかり私のお尻に入りきり、下腹が軽く膨らむまで。

 そして、ここからが地獄の始まりだった。
 腸一杯に注ぎこまれたセッケン水は、私の便意を激しく刺激する。おまけに私はこの時、4日ほど大きい方をしていなかった。いくら固形物をあまり与えられないとはいえ、溜まるものは溜まる。5分と経たないうちに、お腹がキュルキュルと鳴り、便意が下腹に渦巻きはじめる。
 3人はそんな私に対して、数え切れないほどの嫌がらせを繰り返した。強張っているお腹や太腿を撫でたり、後ろから乳房を捏ね回したり。
「はぁっ、はぁっ……も、やめ……てよっ、お腹、苦しいんだからっ!!」
 ただでさえ余裕がない所を追い詰められると、弱々しく呻くしかない。でも、それで止めるような3人じゃなかった。
「どうせ出そ思ても出せへんねや、観念して堪能せぇ。じき、その苦しさがクセになってくるわ!」
 栖村はそんな事を言って、とうとうマッサージ器まで持ち出しはじめる。狙いは、毛を剃られて剥き出しになったビラビラとクリトリス。お腹に響く重低音を鳴らしながら、その敏感な場所を昂ぶらせては開放し……いつかのように生殺しで焦らしてくる。
 嬲る側は面白くても、やられる側はたまったものじゃない。お腹の音はギュルギュル、ゴロゴロと濁ったものに変わり、全身に嫌な汗が滲み出す。
「さすがに、顔が青ざめてきおったな」
「唇も紫になってますわ。こう血色が悪いと、元トップアイドルや言うても色気感じんもんですなぁ!」
 3人の言葉で、自分の見た目までわかってしまう。でも、それを冷静に分析する余裕はもうない。荒れ狂う便意で、とうとう全身が震えはじめている。今までお腹を下した事は何度かあるけど、ここまでの便意は初めてだ。出したい、楽になりたい。それしか考えられない。
 それでも私は、必死に耐えた。眉を顰め、血の味がするまで下唇を噛んで。
 
 ( アイドルが、人前で排泄なんて…………!! )

 私を支えるのは、その一心だ。前に小さい方の粗相はしてるけど、だからこそ今度だけは耐えないと。そう思って、便意の波をやり過ごす。
 ぶっ通しでダンスの練習をしたみたいに、下腹の筋肉が攣っている。お尻の穴がヒクヒクして、膨らみきったアナル栓の縁からぶびぃっと下痢のような音が漏れる。その全てを詰られ、笑われても、涙を呑んで堪える。
「もうじき30分か。粘りよるのぉ」
 ついにはあの栖村が呆れた声を出すほど、長く耐えた。
 でも、排泄という本能的な欲求に、いつまでも抗えるわけがない。かろうじて便意の波をやり過ごしても、その次にはもっと高い波になって襲ってくる。その波は、問答無用で足を掬い、体を攫う規模になっていく。
「…………っ、う…………くぅ、う……ううううっ!!!」
 歯を食いしばり、頭を振って耐えるのも、もう限界だ。
「おね…がいっ、もうっ……させてっ、お願い出させてえ……っ!!」
 私は汗を散らしながら、目の前の3人に訴える。恥も外聞もないとはこの事だ。救われたかった。音を上げたんだから、ともかく楽になれると思った。
 でも、調教師という人種は甘くない。こっちの心が折れかけている時にこそ、もっと追い詰めてくる。
「何を、出したいんや?」
 栖村は私を見下ろしながら、静かな口調で尋ねてくる。
「え……!?」
「だからや、何を出したいんや。ちゃんと言うてみぃ」
 改めてそう求められると、口にしづらい。
「なんや、言わんのか。まだ余裕があるらしいな」
 そう言ったのは、新渡戸だった。新渡戸は私の脚から一旦手を離すと、私の上に覆い被さってくる。硬くなった物を、割れ目に宛がいながら。
「な……や、やめてよ! こんな時に……!!」
 私が抗議した時にはすでに、挿入が果たされていた。
「くっううう゛っ!!!」
 鼻から抜けるような声が出た。普通の男より二周りは大きいペニスに圧迫されて、便意が洒落にならないほど強まる。尾骨の辺りまでピリピリするほどに。
 そして、苦しいだけじゃない。嫌がらせで焦らされ続けたクリトリスや割れ目は、すでにしっかりと濡れている。そこへ新渡戸の真珠だらけの物が割り入ってくるのは、堪らなく気持ちいい。散々セックスに慣らされているのもあるし、極限の便意という一種の興奮もあるんだろう。
「ああっ、あああっ!! いやっ、あっ、あああ……くぅんんああっ!!」
 圧し掛かるようにして新渡戸に犯されながら、いつも以上に声が出た。パンッパンッパンッというキレのいい音と同調するように、便意の波の間隔が狭まっていく。お尻の穴がヒクついて止まらない。
「ほら、言うてみぃ! 何が出したいんや!!」
 新渡戸の口調は、普段の優しげなものじゃなく、凄むようなものだった。こういう場面で脅す辺り、やっぱりこの男もヤクザなんだと思い知らされる。
「うう゛、ふうう゛う゛う゛…………っ!!!」
 ヤクザに辱められている。改めてそう認識した私は、最後の意地で首を振った。口の端に違和感がある。たぶん、泡を噴いてるんだろう。
「チッ、ホンマ見上げた根性やのぉ。しゃあない……磯崎、トドメ刺したれ!」
 新渡戸はそう叫び、素早くアレを抜き去った。そして入れ替わりに、磯崎が私の上に覆い被さる。無毛のデルタゾーンに触れるのは、血管の浮き立ったビール瓶のような凶器だ。それは一切の遠慮なく、開いた割れ目へと捻じ込まれる。
 メリメリと音もしそうな挿入。それは極限状態への“トドメ”として、充分すぎる効果があった。私の脳裏で、ぎゅうぎゅうに中身の詰まったソーセージが万力で押し潰され、破裂する。
「あああああ゛っ、だめぇっ本当にだめえええっ!! したいっ、ウンチしたいいィィい゛ーーっ! おねがいっ、おねがいうんち、ウンチさせてぇええーーーーっ!!!」
 とうとう私は、絶対に言わないでおこうと誓っていた言葉を口にする。幼児退行でもしたように、何度も、何度も。
「ハハハハハハッ、とうとう言いおったわ!! なんぼ格好つけとっても、所詮はアイドルも人間っちゅうこっちゃ! よっしゃ、ほなたっぷりひり出せや……腹に詰まった、生々しいクソをな!!!」
 その叫び声と共に、私の両足首は高く持ち上げられた。そしてその直後、空気の抜ける音がし、アナル栓がしぼんでいく。腸を限界以上まで拡げていた蓋がなくなり、ついに決壊が始まる。
「いやあああぁあぁああ゛ーーーーーーーっ!!!!!!」
 お尻の穴から汚液が噴き出す瞬間、私は顎が外れんばかりに叫んだ。その叫び声の中、カンッという硬い音が響き渡る。アナル栓が吹き飛び、ミラーに当たった音だろう。その後に続くのは、聴くもおぞましい排泄音。最初の方は水音が大きいからマシだけど、後半になるにつれ、ひどい水下痢の音になっていく。
 私はその生々しい現実を感じながら、ただ呆然としていた。
「お……おお、いいぞ……うねる」
 私のあそこに挿入している磯崎が、動きもせずに射精しはじめた。後ろからは出し、前には注がれる。それを同時に体験すると、自分が何かの容れ物になった気分になる。
 いや、いっそ本当に容れ物ならよかった。感情のない『物』なら、この後の現実と向き合わなくて済む。嘲笑われても、罵られても、動じなくて済むんだ。


 こうした浣腸絡みの嫌がらせは、この日以降頻繁に受けるようになった。必ずといっていいほど、アナル栓やアナルプラグをお尻に捻じ込まれ、簡単に出せないようにしてから嬲られる。
 浣腸してからの嬲り方は三者三様だ。
 新渡戸は正面から抱く他に、私に足を開かせ、横から犯すことを好んだ。それが一番、腸の動きを感じられるからといって。
 磯崎は、私を膝の上へ抱え、下から突き上げるのが好きだった。
 栖村はといえば、相も変わらずディープスロートを絡めてくる。仰向けで浣腸を我慢させながら、顔の上へ圧し掛かるようにして咥え込ませるんだ。
 勿論、これ以外にも色々とやられた。アナル栓を嵌めたまま、前にもバイブを差し込まれ、這う格好で部屋内を歩かされたり。あるいはお腹が膨らんだ状態で、スクワットをさせられたり。
 最後の瞬間にはいつも、屈辱的な宣言をさせられた。
『薄汚い私に、排泄の許可をください!』
『私が下痢便をひり出すところを、見てください!』
 こういう具合にだ。
 これは本当に屈辱的で、何度やらされても慣れなかった。拳を握りしめ、涙を浮かべながら怒りに震えた。だから感情面がだらしなくなったとは、少しも思わない。
 でも、身体の方は違った。何度も浣腸され、排泄しているうちに、後ろの穴は着実に“ほぐれて”いた。
 私は、この後の調教……アナル開発の段階で、それをハッキリと思い知らされることになる。


    ※           ※           ※


 アナル開発は、栖村と磯崎の2人がかりでされる事が多かった。
「大したもんやでお前は。前だけやのうてコッチまで、具合がええんやからな」
 お尻の中に人差し指と中指を挿れたまま、栖村が語りかけてくる。
「人間のケツ穴には二種類あるんや。入口だけキツぅて中が緩いタイプと、入口から奥までほどほどに締めつけるタイプ。せやけど稀に、お前みたいな良えとこ取りが生まれおる。入口で締めつつ、奥までしっとり纏わりついてくる『名器』がな。こら間違いなく気持ちエエで、ハメるんが楽しみやわ!!」
 栖村はひどく嬉しそうだ。逆に私は、嬉しくもなんともない。名器だと褒められても、それでこいつらを悦ばせてしまうんだと思うと、忌々しくすらある。
「何喜んでんのよ、馬鹿みたい。うんちする穴でしたがるなんて」
 私は本心から吐き捨てつつ、栖村に蔑みの視線を投げる。でも栖村は、むしろ嬉しそうに唇の端を吊り上げた。
「おぼこいのぉ。ケツの穴は立派な性器や。じっくり開発してやれば、マンコよりハマる女もぎょうさん居る」
 栖村はそう言って、2本指を大きく開いた。にちっ、と音がする。
「大方、『アイドルの私がお尻でされるなんて』とか考えとるんやろうが、諦めぇ。これがオノレの天運や。ツラが良ぅて健康体で、マンコもアナルも極上……そんな出来過ぎた人間は、どっかしらでマイナスを抱えな勘定が合わん。お前の場合、この状況がその帳尻合わせなんや」
 栖村の口から出るのは、いつも通りの無茶な理屈だ。
「ふざけないで! 人を脅して不幸にしておいて、運が悪い? 冗談じゃないわ。アンタ達さえ関わってこなかったら、私はこんな目に遭ってない。全部、アンタ達のせいじゃない!!」
「ククッ、甘いな。ワシらがやらんでも、別のモンが依頼を受けるだけや。裏の人間が居らなんだら……なんて考えても無意味やで。真っ当に生きるモンがおる限り、その真っ当さにつけいる輩は必ず出てくる。お天道様の下歩いとれば、自然と影ができるようにや」
 栖村は、私の恨み言さえ楽しみながら、巧みに指を動かしつづける。
 違和感は強い。肛門近くを刺激されるたびに、便意に似た感覚が沸き起こった。でも刺激され続けるうちに、その違和感はだんだんと薄らいでいく。
 そして厄介なことに、栖村か磯崎からお尻の穴を刺激される時には、必ずもう一人が別の快感を与えてきた。乳首を転がしたり、クリトリスを撫でたり。
 乳首とクリトリスは、この時点で一ヶ月近く、休まず開発され続けていた。セックス中も、ディープスロートの最中でも、寝ている間でさえ。そのせいでいつもしこり勃っていて、指にオイルでもつけて扱かれれば、2分ともたずに浅い絶頂まで持っていかれる。そんな場所を刺激されながらお尻の穴を嬲られると、快楽と違和感の区別がつかなくなる。
 特にクリトリスの場合、お尻と近いだけに感覚が混ざりやすかった。お尻がムズムズして気持ち悪い、でもクリトリスは気持ちいい。最初はそう分けて理解できているのに、気がつけば『お尻が気持ちいい』と錯覚している自分がいる。

 このアナル開発に関しては、栖村よりも磯崎の方が厄介だった。もちろん、一々反応をあげつらう栖村の責めも無視はできない。でも磯崎は、茶々を入れない代わりに、黙々とお尻を嬲ってくる。
 磯崎は一晩のアナル責めの中で、色んな道具を使い分けた。中でも『アナルパール』という責め具は衝撃的だった。一つ一つ大きさの違う玉が、肛門の窄まりを往復する……それは、延々と排泄を繰り返している感じでたまらない。
「あぁっあ! あぁっ、はぁぁあ……あうっあ、ぁぁ、ぁ……あっ!!」
 アナルパールを出し入れされる間中、情けない声を上げつづける。それを無表情のまま見守られるのは、詰られるより辛い。自分がどれだけ惨めか、自分自身で解ってしまうだけに。

 開発が始まって4日目には、肛門鏡という道具でお尻の中を拡げられ、2本の細いガラス棒で腸の中を刺激された。よりによって、マングリ返しの格好で。
 しかも磯崎はこの時、やたらと肛門にローションを注いできた。そのせいで腸の中からは、ぐちゅっぐちゅっと凄い音がする。それでいて当の磯崎は無表情のままなんだから、妙に胸がざわつく。
「なんや、えらい音しとんのぉ。クソでも掻き回しとるんか?」
 栖村が尋ねても、磯崎はお尻の穴を覗き込んだままで反応しない。
「アカンわ、没頭しとる。こいつは筋金入りの変態やさかいの、相手するんは相当キツいで?」
 栖村は肩を竦め、私にそう囁きかける。この言葉に、間違いはなかった。磯崎の責めは、執念すら感じる変態的なものだ。

 アナル開発5日目には、栖村と新渡戸に口で奉仕している最中に浣腸された。針のない注射器のような器具で、何度も薬液を注がれる。しかも、それだけじゃない。磯崎は、這う格好の私のお尻に、色んな物を押し込んでくる。アナルバイブ、スーパーボールに続き、その後は食べ物になった。キュウリにプチトマト、ポークビッツ、うずらの卵、そして玉蒟蒻……。
「なに考えてるの、やめて!!」
 私が唾液まみれのペニスを吐き出して抗議しても、磯崎は止まらない。肛門を凝視しながら、指で異物を押し込み続け、洗面器に排泄させる。それを何時間も繰り返させた。
「う、ぐううっ……いやっ、いやあああっ!!」
 苦しさと恥ずかしさで、私は涙を流した。
「ガッツリ入れとんのぉ、磯崎。あんま無茶すんなや?」
 新渡戸が見かねてそう声を掛けたぐらいだったけど、磯崎は明らかに“無茶”をしていたと思う。特に玉蒟蒻なんて、一体何個入れられたことだろう。12個までは数えてたけど、それ以上は頭がパニックになって無理だった。
「無理よっ、もう入らないってば!!」
 磯崎は、私がいくらそう言っても聞かず、次々と玉蒟蒻を押し込んでくる。腸が詰まって反発が強くなると、バイブで無理矢理奥へ押し込んでまで。その圧迫感は普通じゃない。お臍の下にまで、みっちり便が詰まっている感じがする。這う格好のまま、膝が笑うほどの苦しさだ。そんな状態でさらに浣腸をされたら、とても堪えきれない。
「いやーっ! 苦しいっ、苦しいっ!! むりっ、もう無理いいぃっ!!!」
 決壊の瞬間、私は絶叫した。お尻からすごい破裂音がして、磯崎の構える洗面器の中に玉蒟蒻が叩きつけられていく。もちろん、汚液も。
 しかも、バイブを使って奥まで押し込まれた分に関しては、普通に気張っても排泄しきれない。だからそれに関しては、磯崎がガラス棒やディルドーで刺激を与えて掻き出す。これは屈辱的だ。そして同時に、妙な感覚もあった。
 ガラス棒で腸の奥を突かれ、直腸よりもっと深い部分からぬるりと玉蒟蒻が滑り落ちる瞬間、信じられないほどの『快便の感覚』が背中を駆け抜ける。
「ふぁあああっ…………!!」
 喉から甘い声が漏れた。すぐに栖村に笑われたけど、ゾクゾクとする快感からすぐには抜け出せなかった。たぶん、軽くイったんだと思う。尿道で感じた時と同じ、ダメだと思いながらも癖になる……そんな快感に呑まれて。

 腸の奥の奥……『結腸』の快感。磯崎の狙いは、私にこれを覚えこませる事だったらしい。実際その後も、結腸までを刺激する責めが続いた。『スカーレットチョーカー』のライブ当日にも。
 ライブ中の磯崎の責めは、正気を疑うほど変態的なものだった。3日間排泄を禁じた私をマングリ返しの格好で拘束し、フックで4方向から肛門を開いたまま、腸内を刺激する。そんな事をすれば当然汚物がついてしまうけど、むしろ磯崎は積極的に汚物を掻き出しては、私へ見せ付けるようにガラスプレートへと乗せていく。
 私は、叫びたかった。罵りたかった。でも、できない。栖村が肛門のすぐ近くに、マイクを構えていたから。自分の汚物を掻きだされる、ぬちゃっ、にちゃっ、という音を拾われ、仲間のライブで流される――そんなアイドルがいるだろうか。私は死にたいとさえ思い、悔し涙を流す。
 でも、そう思えていたのも最初のうちだけだった。延々と腸内を刺激され、汚物を掻きだされるうち、不意にあの『快便の感覚』が目覚めはじめる。

 ( ありえない……こんな、状況で……!! )

 私は驚き、気のせいだと思おうとする。でも、気のせいじゃない。拘束された太腿が、ぶるぶると震えだす。割れ目がヒクついているのが目で見える。
「……くははっ、なかなか耳のええ客がおんのぉ。『ライブ中、ヌチャヌチャ音が聴こえてた』やと!」
 ライブが終わった後、栖村がスマホを眺めて笑う。私はその横で、磯崎に肛門を拡げられていた。左右の二本指で、ヒクつく括約筋を横に伸ばされて。

 羞恥責めと、結腸責め。ライブが終わってからも、これが毎日繰り返される。
 ある日には、肛門に太いソーセージを挿入され、自力での排泄を強いられた。しかも、出しきれるわけじゃない。
「そ、そこで止めろ」
 半分近く出しかけたところで、いきなり磯崎がそう命じてくる。
「……んっ!!」
 私は仕方なく、肛門に力を入れてソーセージを締めつけた。
「さ、散歩するぞ。ついてこい」
 磯崎は私の腕を引き、調教部屋から連れ出す。部屋の外に広がるのは、薄暗い廊下。私はそこを、お尻からソーセージをぶら下げたままで往復させられる。
「い、いいか、落とすな……落としたら、罰だ」
 何を考えているか解らない表情で、磯村が呟いた。でも半端に抜けかけたソーセージは、いくら肛門を締めたところで、歩くたびに少しずつ落ちていく。結局4往復目で、ソーセージはぼとりと床に落ちた。
「お、お……落としたな」
 磯崎はそう言って私を見下ろす。微かに笑みを浮かべながら。

 その“罰”は、とんでもなかった。肛門に空気を浣腸して、100回おならをさせるというものだ。
「う、く…くぅ、うっ……!!」
 磯崎達の方へ尻を向け、お腹に溜まったガスをひり出す。自分の手でお尻の肉を掴み、肛門を開ききりながら。
「ああ臭い臭い! このアホ女、とうとう人前で屁ェコキ散らすようになりおったか! 東京っちゅうんはおかしな街やのぉ、こんな女をアイドルやーいうて祀り上げるんやから!!」
 栖村は膝を叩いて大笑いし、新渡戸も酒を噴き出して笑う。そんな中でのおならは、屈辱的過ぎて涙まで出た。
 しかもオナラと認められるのは、はっきり音が出た時だけだ。だから恥ずかしくても、ぶすっ、ぶううっ、と思いっきり音をさせなくちゃいけない。
 それに100回ともなれば、最初に浣腸された分の空気じゃ足りないから、おならが出なくなった時点で追加を願わないといけなかった。
「お、おねがい、します……わたしの、お尻に…また、く、空気を、入れてください…………っ!!」
 屈辱に震えながら、懇願する。どっと笑いが起きる。
 しかも、恥はこれだけじゃない。おならが60回を超える頃には、お尻周りの筋肉が麻痺して、普通には出せなくなる。だから、別の方法を取らされた。ガラステーブルの上にディルドーを置いて、その上で腰を振る、という。
「はっ、はぁ……はあっ、はっ、はっ…………」
 疲れきり、汗まみれになりながら、ディルドーをお尻に宛がう。そしてそのまま、腰を押し下げて自分から異物を咥えこむ。
「……く、ぅううっ……!!」
 かなり深くまでディルドーが入った所で、無性に情けなくなって腰を止めた。
「なんや、ケツの穴でイッとるんか!?」
 栖村が野次を飛ばしてくるけど、まずは過呼吸にならないよう、気持ちを落ち着かせる必要がある。
 ここでの一呼吸は大事だったと思う。もしここで気を静めなかったら、きっと泣き喚いていただろう。そう思えるぐらい、この後はミジメだった。
 キッキッとガラステーブルを軋ませながら、必死に腰を上下させる。3本指より少し太いディルドーを腸の半ばまで受け入れ、一気に引き抜く。ぶうっ、という嫌な音が漏れだす。これを、何度も繰り返すんだ。ゲラゲラと笑われながら。
「はあっ、はあっ、はあっ…………!!」
 激しく腰を上下させながら、私はずっと俯いていた。3人の顔を見たくないというのもひとつ。でもそれ以上に、泣いているのを悟られたくない。顔を下に向けていれば、汗と涙の区別はつかないはずだ。私は途中まで、そう考えていた。
 おならの音が、ぶりゅっ、ぶぶうっ、と下痢のような音に変わり、いよいよ情けなくて嗚咽しはじめるまでは。
「う、くっ……ふうう゛…………っ!!!」
 しゃくり上げながら、それでも終わりが近いのを確信して歯を食いしばる。磯崎のカウントは、とうとう『97』まで来ていた。あと3回、もうひと頑張りだ。私はそう思って足の幅を広げる。
 でも、これがいけなかった。足元は、汗で濡れていたから。
「あっ!?」
 私は足を滑らせ、尻餅をついた。ディルドーへ圧し掛かる形で。
 異物が入り込んでくる。直腸奥を突く勢いのまま、さらにその横……結腸にまで。
「はぐうぅぅっ!!?」
 私は目を見開き、全身を硬直させた。脳が危険信号を打ち鳴らし、下半身がガクガクと震えだす。腸奥からの衝撃が尿道にまで走りぬけ……そして私は、失禁した。
「あ、ああ、あ……っ!!」
 じょばじょばとガラステーブルを流れていく。ものすごい量。ずっと肛門まわりに力を込めつづけていたから、尿が出やすい状態だったんだ。
 ぶっ、ぶううっ、ぶちちちっ。
 奥の奥までを貫かれた腸内から、実でも漏れたような音がする。それが、ラストの3回。
 見事に目標を達成した私は、深くディルドーを咥えこんだまま呆然としていた。笑い声は聴こえていたけど、反応できなかった。
 5秒ぐらいしてようやく、頬を涙が伝いはじめる。私には、その涙が一番残酷に思えた。その感触さえなければ、悪い夢だと思えたから。

『止まらないカメラの向こうで』のDL販売を予定しています。

こんにちは。燻製ねこです。
以前の『幕を引くのは』に続き、『止まらないカメラの向こうで』もDL販売を予定しており、追加でちょっとした加筆を検討中です。
それにあたり、追加シチュ希望があれば、当記事のコメント欄や、twitter(@kunsecat)へのリプライ・DM、メール(kunsecat@gmail.com宛)等で教えていただけますでしょうか。

なお、予定しているのはあくまで『ちょっとした』追加なので、ハッピーエンド追加などの大規模な加筆が必要なものは難しいです。
すみません……その分今の連載がんばります。

4/21(日) 23:59:59までリクエストを受け付けておりますので、よろしくお願いします!

緋色の首輪  4話

※イラマチオ調教回です。嘔吐注意。
 ごく一部に、吐瀉物を身体に塗りつける描写が(サラッと)あります。




 それから3人は、じっくりと時間をかけて、私のあらゆる性感を開発していった。

 たとえば、膣。
 基本はセックス漬けだ。指と舌で何時間もクリトリスや陰唇を刺激し、割れ目の中がヒクつきはじめたところで、丹念にペニスの味を憶え込まされる。
 体中にキスを浴びせられながら、恋人同士がするみたいに抱かれたり。四十八手とかいう体位を、全部通しでやらされたり。単純にきついし、どんどん快感も深まっていくしで、毎日何度も失神した。特に新渡戸は抜群にセックスが上手くて、抱かれるたびに膣内のスポットが怖いぐらい開発されていくのがわかった。
 仮眠を取る間も、何かしらの形で責められる。
 一番多かったのは、目隠しの上で万歳するように両手を拘束され、あそこにバイブを挿れられる方法だ。
 わざわざショーツを穿かされることで、バイブは緩く固定される。リモコン式のバイブだから、動くのも止まるのも調教師の気まぐれ。目隠しをしている限り、いつ動作するのかは判らない。おまけに視界が利かないぶん、感覚が研ぎ澄まされてもいる。だから、バイブが割れ目の中で唸るたびに、嫌でも反応してしまうんだ。
「……はうっ!!」
「はははっ、やらしい腰つきやのぉ!」
「足の付け根がヒクヒクしとるわ。そんなオモチャ相手に逝っとるんか?」
 当然、ヤクザ達は私の反応すべてをあげつらい、嘲笑を浴びせてくる。このストレスは相当で、全身にびっしょりと嫌な汗を掻いてしまう。
 ただ、この責めで最悪なのは起きている間じゃない。まどろみだしてからだ。
 セックス中の失神を除けば、睡眠を取れるタイミングはここだけ。だから緊張していても、いずれは睡魔に負ける。そうして眠りに落ちる間際の、半覚醒状態……ここで何かを言われると、嘘がつけない。
「オマンコ汁がどんどん染み出してきよるわ。気持ちエエんやろ? 『オマンコ気持ちいい』て言うてみぃ」
 たとえばこんな言葉責めは、普段なら無視して終わりだ。でも意識がボケている状態だと、
「…………うん…………き、きもちいい……おまんこ、きもっひ、いい………」
 そう呟いている自分がいるんだ。
 最初は夢か現実かわからない。でもすぐに3人の大笑いが聴こえて、最悪な『現実』に引き戻される。こんなことが一晩中続くんだから、たまったものじゃない。
 朝になってバイブが抜き去られる時には、じゅぽっという普通じゃない水音がする。固形物を失った割れ目の中が、喘ぐように開閉しているのも自覚できた。
「ホンマにお前には、見せモンにされるんが一番効くらしいのぉ。ワシが4時間かけて“ほぐした”時より、よっぽど濡れとるやないけ」
 栖村の物言いに頬が熱くなって、その反応をまた笑われる。挙句にこのあと新渡戸あたりに抱かれると、かなりの喘ぎ声が出て、嘲笑はさらにひどくなる。


 乳首やクリトリスへの刺激も念入りに繰り返された。
 感覚が麻痺しない程度に間を置きながらも、常に勃起状態をキープさせられる。指や舌、ローターにマッサージ器、クリップ……色々と使われて。
 特に、搾乳機とクリトリスの吸引器を同時に使われた時は衝撃的だった。
 母乳絞りに使われる搾乳機で、左右の乳首を引き伸ばされる。同時にクリトリスも、マニア向けのニップルポンプという物で吸引される。
「ふっ、くううっ……!!」
 吸引の感触は想像以上で、声が我慢できない。
「ほれ、堪らんやろ。クリが引っ張り出されて、チンポみたいになっとるわ」
 栖村の言葉通り、ポンプの中で充血したクリトリスが伸びていった。男のペニスでいう、『亀頭』そっくりに。
「こうしてクリの表面積を増やすとな、感度がごっつぅ上がるんや。ほとんどクリで感じんっちゅう女でも、絶叫するぐらい感じるようになる。お前は元から敏感やさかい、どうなるか楽しみやのぉ!」
 栖村はそう言って、吸引器のポンプを握り込む。
「んっ、くうっ!! くふうっ、ううぅ……っん!!」
 私は栖村の顔を睨みながら、何度も小さい絶頂を繰り返した。擦られたり、摘まれたり……そういう責めなら慣れてたけど、“搾り出される”感覚には耐性がなかったから。
 こうして限界まで勃起させられた乳首とクリトリスは、その後もたっぷりと嬲られた。尖った先端部分を、糸でVの字に結び合わされ、その糸を弾いて遊ばれたり。
 部屋の対角線に張ったロープの上を、跨ぎながら何度も往復させられたり。
「ひいっ、あひっ!! ひぃいっ……いい……っ!!」
 最初こそ歯を食いしばって耐えたけど、3回も4回もクリトリスで絶頂してからは、情けない声が抑えきれなくなる。クリトリスの神経の全てが、ドクドクと脈打っている感じだった。
「ははははっ、こら傑作や! アイドルが股濡らして、ヒイヒイ善がっとるわ!!」
 笑われても、貶されても、本能が漏らす声は止まらない。


 快楽責めだけじゃなく、心を折るための嫌がらせもあった。
 たとえばある日の磯崎は、私を向かい合う格好で犯しながら、両手で首を絞めてくる。いつも通りの無表情で。
 磯崎の物は大きいから、挿れられるだけで息が苦しい。その上で首を絞められたら、すぐに溺れるような苦しさが来る。
「か、はっ……かあっ!!」
 目を見開き、必死に身を捩っても、磯崎の巨体を跳ね除けることはできない。
「……い、いいぞ。く、首を絞めると、下もよく締まる」
 磯崎の口元には、珍しく笑みのようなものが浮かんでいた。苦しむ私を嘲笑うように。
 そしてその騒ぎは、すぐに栖村に気付かれる。
「お、なんやオモロイことやっとるやんけ。ワシも混ぜぇや」
 栖村はそう言ってベッドに上がり、私の背後につく。そして太い腕で、私の頚動脈を締め上げた。
「んげ、ぅっ……!! ぐっ、ゲホッ、かはッ!!」
 私は咳き込みながら、栖村の腕を掴む。でも、締めは緩まらない。
「そら、どうや。こうやって裸締めされると、フワーッとなって気持ちエエやろ?  下も上も気持ちエエ、まさに極楽やのぉクソガキ!!」
 栖村の言葉が、どんどん遠くに聴こえるようになる。
「く、くぅひ……ほ、ほんろに、ひまっ、へ………や、やぇ………て………!」
 いくら助けを求めても、栖村の絞めが緩むことはない。怖くて、苦しくて、涙が出る。涎も、鼻水も。そして最後には、失禁まで。そういう恥にまみれながら、私はそのうち意識を失った。最後まで残った聴覚で、耳障りな嘲笑を聴きながら。

 次に目覚めた時にも、やっぱり犯されているのがわかった。すっかり日常的なものになった挿入の感覚が、はっきりとあったから。
「ようやっと気ぃついたか。呑気なもんやのぉ」
 目を開いた私の視界を、栖村の巨体が覆い尽くしている。割れ目を天井に向ける格好……『マングリ返し』で犯されているらしい。
 栖村が腰を引くたびに、割れ目からヌルリとしたものが滴ってくる。精液だ。失神している間に、かなりの量を中へ注がれてしまったみたいだ。
「中に出さないでって言ったでしょ!?」
 私は眉根を寄せて叫ぶ。でも、栖村には悪びれる様子もない。
「なに言うとんじゃ、ちゃんと確認したやろ。中に出すぞ、エエかーいうて。けどお前がシカトこくさかい、こうして遠慮のう種付けしとるんやろうが」
 無茶苦茶だ。失神している人間相手に、確認も何もない。大体、本当は質問すらしてないんだろう。
 つくづく、憎い連中だ。そして、そんな人間に好き放題される私の様子は、ステージ側のギャラリーにもしっかり見られているに違いない。そう思うと、悔しくて涙が出そうになる。
「かははっ、エエ顔しとるわ。お前のその悔しそうな顔見とると、金玉がムズムズしてたまらんのぉ!!」
 一方の栖村は、ますます図に乗って腰を振り、何度も射精しつづける。私の顔を、嬉しそうに覗き込みながら。


    ※           ※           ※


 心を折るための責めは、首絞めだけじゃない。
 ある日には、鼻責めから始まり、喉の奥までを蹂躙された。

 ハーネスのついた鼻フックを2本使って、鼻の穴を3方向に引き伸ばされる。ステージ側のミラーの中で、自分の顔が醜く変わっていく。
「くはははっ! 澄まし顔のアイドルも、こうなっちゃ只のブタやのぉ。ほれ、ブーブー鳴いてみぃ!」
「はぁっ!? ブタはアンタでしょ!」
 肥満体の栖村へ反論しつつも、不安でしょうがない。このまま鼻の穴が戻らなくなったら……そう心配になるぐらい、引き伸ばす力は強かった。
「ふん、口の減らんやっちゃ。今のオノレに、人の見た目どうこう言う資格があるかい。鏡見てみぃ、鼻の穴の奥まで丸見えやぞ。鼻毛だらけのなぁ!」
 栖村は私の髪を掴み、鏡に向き直らせた。
 鏡の中に、鼻の穴を拡げられた自分がいる。そしてその鼻の穴には、確かにかなりの毛が生い茂っていた。
「………っ!!」
 愕然とする。
 アイドルとして、無駄毛の処理には人一倍気を遣って生きてきたんだ。監禁されていて処理をする時間がなかったとはいえ、ショックが減るわけじゃない。
「今のアイドルは、鼻毛ボーボーでも平気なんか。時代は変わったのぉ」
 栖村にそう茶化され、恥ずかしくて死にたくなる。
「そんなわけ……ないでしょ!!」
「ま、そやろうなぁ。安心せぇ、処理はしたる」
 私が怒りまじりに叫ぶと、栖村は肩を揺らして笑いながら、傍の道具箱から毛抜きを取り出した。
「暴れんなや」
 栖村はそう言って私の顎を掴むと、毛抜きを鼻の穴に近づける。そして顔が強張る私をおちょくるように、わざと鼻柱やその周囲をつまんでから、いきなり鼻毛を引き抜いた。
「ぃっ!!」
 私はその痛みに叫び、肩を竦める。一秒遅れて、右の目頭から、つうっと涙が流れていく。ハハハハハッ、と栖村の大笑いが聴こえた。
「ああ、笑い死にそうや。アイドルが鼻毛抜かれて泣く映像なんぞ、マニアに大受けやぞ!」
 栖村は、部屋の隅にあるカメラをちらりと見た。
 そうだ、見られる可能性があるのは、ミラーの向こうだけじゃない。この部屋のすべてが、色んな角度から撮影されてるんだ。
「さて。元トップアイドルの鼻の穴は、まだまだ毛だらけや。どんどんいくで」
 栖村は満面の笑みで毛抜きを持ち直し、片手で私の鼻頭を押さえつつ、ブチッ、ブチッ、と毛を抜いていく。
「んっ、んんぃい゛っ! ぅぐ、ぐ……!!」
 痛みと悔しさで、気持ちが爆発しそうになる。とはいえ、私はあくまで人質、暴れても碌な結果にはならない。私にできるのは、足の上で静かに拳を握りしめながら、涙まじりに贅肉ダルマを睨み上げることぐらいだ。

「……ようやっと、人並みの鼻になったのぉ」
 栖村はミラーを覗き込みながら、私自身に鼻の穴を確認させた。確かに、さっきと比べて毛はほとんど見当たらない。代わりに目元には、何筋も涙の跡が出来ている。
 ひどい顔だ。でも、そのショックに浸っている間はなかった。
「ほな、次や」
 栖村はそう呟き、道具箱から縦長の洗濯バサミを拾い上げた。そして喘ぐ私の舌先に、いきなりそれを取り付ける。
「あえっ!?」
 洗濯バサミの端には錘がついていて、舌が垂れ下がってしまう。
「おーおー、ますます情けないツラになってくのぉ。舌もダラーッと垂らして、さしずめブタ犬ってとこか」
 栖村はそう茶化しながら、黒ずんだ麻縄を手にした。そう、縄。
「っ!? らにを、しゅるき……っ!?」
 舌を伸ばされたままだと、うまく喋れない。
「なーに、ちょっとした遊びや。お前は気にせんと、いつも通りの澄ましたツラ続けときゃあええ」
 栖村は縄を扱きながら笑うと、私を後ろ手に縛り上げていく。
「くっ……!!」
 しっかりと拘束されたところで、栖村がまた別のものを握っているのが見えた。細く丸めた紙のようなもの……『こより』だ。

「はっ、はああっ……はっ…………ぇくしゅっ!!」
 こよりで鼻の奥をくすぐられると、どうしてもくしゃみが出てしまう。舌を引き伸ばされた状態だから、普段とは少し違う感じで。
 何度もくしゃみを繰り返すのは、かなりしんどい。そして、恥ずかしい。
「ひ、ひっ……へぶっ、じゅぅっ!!」
 十数回目には、鼻水や涎を撒き散らすようになってしまう。
「おうおう、また色々と飛び散っとんぞ。東京のアイドルっちゅうんは、つくづく品がないのぉ」
 満を持してという感じで、栖村から嫌味が飛んでくる。悔しいけど、否定のしようがない。目の前の鏡に、私の噴き出したものが垂れ落ちているんだから。
「……はぁ、はぁ……う、うるひゃい!!」
 喘ぎながら、涙を溢しながら、栖村へ鋭い眼を向ける。それが精一杯だ。
「こんなザマで、よう意地が張れるもんや」
 栖村は濡れたこよりを捨てると、今度は綿棒を拾い上げた。
「や、もぉやぇれよ……っ!!」
 批難の声を上げても無駄だ。太い指で摘まれた綿棒は、淡々と鼻の穴に入り込んでいく。
「はが、ぁあ゛っ!」
 グリグリと鼻の中を弄られると、恐怖と怒りが同時に湧く。栖村はそんな私の表情に満足そうに笑うと、綿棒を引き抜き、先端と鼻を繋ぐ糸を見せつけてくる。
「マンコだけやのうて、鼻からも汁垂らしとるんか。しょうがない女やのぉ」
 栖村は嫌味ったらしく言いながら、また綿棒を押し込んでくる。
「えぁ! ア゛、はふぅっ……ぁがっ!! あ、えエ゛ぁああ゛っ!!」
 延々と鼻の奥を掻き回されると、えずいてしまう。鼻水や涎も止められない。
「おーおーおー、もうここら一面ヌルヌルやんけ。アイドル様の顔面汁で」
 栖村はわざとらしく腰を浮かせながら、私の顔の真下を覗き込む。そこには、私自身の垂らした鼻水と唾液が広がっていた。恥ずかしさで顔が歪む。いっそこのまま気を失って、二度と目覚めなければ、とすら思う。
 栖村はそんな私の表情を満足げに眺めながら、さらに嫌がらせを繰り返す。床の汁を掬い上げては、私の口元や乳房に塗りつけて。
「きゃっ! あ、アンタ、いつか本当に殺すわよ……!!」
「そら楽しみやが、まぁ無理やろ。この稼業やっとると、そんな台詞はオカンの子守唄よりよう聞くが、終いにゃみーんな逆の事言うようになるんや。『もっとして』か、『殺してくれ』か…………お前は、どっちかのぉ?」
 私が恨みをぶつけても、栖村は慣れた様子で受け流すだけだった。真剣味がまるで違う。小さい子供と、使い捨ての玩具のように。
「……っと、準備できたけ?」
 ニヤついていた栖村が、ふと横を向く。視線の先にいたのは、磯崎だ。
「こ、これで、いいのか」
 磯崎はそう言って、洗面器を栖村に差し出した。洗面器には白い液体が満たされ、両端にチューブのついたポンプが浸されている。匂いからして、液体は牛乳で間違いない。
「おう、これやこれ!」
 栖村は上機嫌で洗面器を受け取り、正座した私の膝に乗せた。
「汁撒き散らして、ノド乾いとるやろ。たっぷり飲ませたるわ……鼻から、な」
 栖村の手が、牛乳の中からポンプを拾い上げる。ポンプが握りこまれ、水面にポコッ、ポコッと泡が浮かび上がる。そういう光景が、やけにゆっくりと見えた。

 チューブを左の鼻の穴に差し込まれてから、数秒後。鼻の奥に冷たいものが流れ込み、牛乳の匂いが満ちる。冷たさはすぐに右の鼻の穴から流れ出し、唇を伝って、縄で絞り出された乳房の上に弾けた。
「くははははっ、傑作や! アイドル自称する女が、鼻から牛乳噴き出しとる!!」
 栖村は膝を叩いて笑う。
「ぁぁあはっ……はっ……」
 私にできるのは、荒い呼吸をしながら相手を睨みつけることぐらいだ。
「格好つけても無駄じゃ。鏡でオノレのツラ拝んでみぃ!」
 栖村は牛乳を送り込みながら、横へどいて私の前にスペースを作る。
 改めて見る自分の顔は、ますます酷いものに成り果てていた。
 豚のように拡げられた鼻と、犬のように突き出した舌から、次々と牛乳があふれ出している。その苦しさで顔を顰めるから、頬の境界線が深々と浮き出て、40歳ほど老け込んで見えた。グシャグシャの顔の中、悔しそうな目だけが浮いていて、かえって滑稽だ。
「がはっ……かはっ、あはっ…………!!」
 私にできるのは、鼻から注がれる牛乳に噎せかえり、力なく喘ぎ続けることだけだ。栖村の笑みを、見開いた目で凝視しながら。
「睨め睨め。人間サマを羨んでのぉ」
 栖村はゲラゲラと笑いながら、チューブを鼻から抜き去った。そして私の咳き込みが治まるのを待ってから、喘ぐ形の口に指を突っ込んでくる。
 指先が触れるのは、喉の上側。
「げぇあっ!!?」
 牛乳のせいで喉奥の粘膜が湿っているから、摩擦感はない。でも、反射的にえずいてしまう。
「鼻から牛乳入れたんはな、ブザマな顔を撮るんだけが目的とちゃうねん。牛乳には粘膜を保護する作用があるさかいの、喉奥調教の前準備として都合がええんや」
 栖村は喉奥で指を動かしながら、私に語りかけた。
「お……ほごっ、オ゛おう゛っ!!」
 えずき声が、どんどん酷くなっていく。
「気持ち悪いやろ。けどな、この喉の上のデコボコも、れっきとした性感帯なんやで。歯ブラシでなぞるだけでもゾクッとして、ドバドバ唾が出るやろ。ここが充分開発されたら、キスん時に舌で舐められたり、マラを深ぅ咥えこんだだけで脳ミソが蕩けるようになる。お前もドMの雌犬として、ここでのイキ方を覚えんとな」
 栖村は一旦指を引き抜くと、私の舌先から洗濯バサミを外した。解放されたことで痛覚が戻り、辛い料理でも食べたように舌が痺れだす。
「られが、ろえぬのメスいぬよ……!」
 抗議したはいいものの、呂律が回っていない。栖村はそんな私を見下ろしながら立ち上がり、ベッドに腰を下ろした。土砂崩れを思わせる脂肪と、垢のこびりついた気色の悪い性器……それが私の視界を覆い尽くす。
「しゃぶってみぃ」
 栖村はいつも通り、偉そうに命令してくる。
「ふざけないでよ。そんな汚いもの口に入れたら、病気になるでしょ!!」
 私は顔を背けながら言い捨てた。口にした事は本心だった。栖村は少し不機嫌そうな顔をして、ベッドから腰を浮かせる。そして私の腕を掴むと、無理矢理自分の方に引き寄せた。生理的に受け付けない中年男の性器が、鼻先にまで近づく。
「うっ……!」
 見れば見るほど最悪だ。カリ首にびっしりと垢がこびりついているし、その分匂いもひどい。腐ったチーズみたいで、頭が痛くなってくる。すぐにでも離れたいけど、栖村に腕を掴まれている限り逃げ場はない。
 観念するしか、なかった。

「……せめて、手の縄ほどいてよ。まずその汚いの、何とかしないとでしょ」
 私は栖村を見上げて訴える。前の時みたいに、まず指で垢を取り除くつもりで。でも栖村は、肉を波打たせながら首を振った。
「アカン。今度は、それも口でせぇ。指でさせてやったんは、最初だけのサービスや」
「なっ! 口で……って、ふざけないでよ!?」
「ちぃともふざけとらん。この部屋におる限り、お前はワシらの奴隷や。奴隷は主人の汚れを、口で清めるもんやで」
 その言葉の直後、栖村の大きい手が、私の頭を覆い尽くす。そして物凄い力で、私の頭を反り立つアレに近づけていく。
「いやっ!!」
 私は必死に抵抗したけど、栖村の力には敵わない。むしろ叫んでいたことで、スムーズにアレが口に入ってしまう。舌にねっとりとした感触がこびりつき、苦味が感じられる。それが恥垢だということはすぐにわかった。
「や゛っ! や゛ああ゛ーーっ!!」
 半狂乱になって叫ぶけど、栖村は私が嫌がれば嫌がるほど、嬉々としてアレを咥えさせてくる。
「ディープスロートなんぞ、結局んところ慣れや。ノドの開き方さえ覚えたら、誰でも出来るようになる」
 栖村の落ち着き払った態度が、ひどく腹立たしい。
 頭を鷲掴みにされたまま、激しく前後される。太い物が頬を突き、上顎をなぞり、喉の奥に入ってくる。
「お゛ええ゛え゛っ!!!」
「ノドに入ったな。せやけど、まだまだ浅いで」
 私がえずき上げても、栖村の手は私の頭から離れない。頭を押さえつけられるたび、喉の奥に棍棒のようなものが押し入ってくる。何度も、何度も。
「げえっ、お゛ぉっええ゛!! う゛えっ、ごふっ……げえ゛え゛っっ!!!」
 私は恐怖に目を見開きながら、無様にえずくしかなかった。
「ええヌメり具合になってきよったわ」
 栖村は気持ちよさそうにそう言いながら、頭の押さえつけを緩めた。私は反射的に身を起こす。
「ぐふっ、おはぁ……っ!!」
 噎せながら唇を引くと、生い茂った栖村の陰毛は、私の唾液で銀色に光っていた。脈打つアレの幹部分にも、信じられない量の唾液が絡み付いている。それはすぐに二つの膜になって、静かに床に垂れ落ちていった。
「はっ、はぁ……っ」
 唇を閉じて涎を切りながら、視線を上げる。栖村に抗議の意思を伝えるためだ。こんな無茶をやられて、黙っていられるわけがない。でも栖村は、頬の肉を緩ませるだけだった。
「ほれ、もういっぺんや」
 そう言いながら、私の頭を掴み直してアレを咥えさせる。
「ごおっ、お゛え゛……おお゛お゛え゛っ!!」
「気持ち悪ぅても我慢せぇ。そのうち、その苦しいんが快感になるわ」
 私の顔を前後させるペースは、どんどん上がっていく。
「ええぞ。喉へ突っ込むたびに、キューッと締まった喉奥が亀頭を咥えこんできおる。どうや。太いもんが嵌まって、抜けて……感じるやろ!」
 栖村の言葉通り、喉の狭まった部分を、グボッグボッと極太が出入りしていた。
 でも、感じるどころじゃない。意思とは無関係に首がビクついて、鎖骨が浮き出る。涎も次々とあふれては滴り落ち、ぴちゃ、ぴちゃっ、と水溜りでも作っていそうな音をさせる。
 息も苦しい。喉での呼吸は遮られているから、鼻でかろうじて空気を吸っている状態だ。でもその鼻先さえ、栖村の四段腹に塞がれて、たまにしか酸素が得られない。
「ん゛、ぐぶっ……ごぶう゛っ! ごほっ、ほぉ゛ぉ゛お゛えええ゛っ!!!」
 何度も何度も喉に叩き込まれ、吐きそうになってしまう。私は顔を横向け、唾液を顔に塗りつけられながら咳き込んだ。
「このボケ、いちいち吐き出すなや。根性出さんかい!」
「はっ、はぁ……アンタの腹肉のせいで、息ができないの!!」
 栖村はイラついた声を出すけど、こっちだって死に物狂いだ。本当に窒息しかねない。でも、栖村がそんな私に配慮するわけもなかった。鷲掴みにした頭を、グリグリと捻るようにして真正面に戻され、また強引に咥えさせられる。
 唾液や涎がたっぷりと出ているせいか、最初よりも動きはスムーズだ。カコカコカコと、喉奥を掻きまわされる音が耳元に響いた。でも、いくらスムーズとはいえ苦しさが減るわけじゃない。むしろ喉奥を素早く刺激される分、気持ち悪さは増している。
「ほぉおお゛え゛っ!!」
 反射的に噎せた瞬間、かすかに笑い声が聴こえた。私は栖村を睨み上げる。オエエ、とえづきながら。
「大したもんや。喉をオナホール扱いされながら睨める女は、そうおらんで」
 栖村の声も、途切れ途切れにしか聴こえない。カコッカコッという攪拌音の方が、ずっとよく鼓膜に響いているから。
「おえっ、げっ……えおお゛……っ!!」
 喉奥を掻き回されると、吐きそうになる。でも嘔吐までしてしまったら、どんなに笑われるかわからない。だから私は必死に耐えた。戻しそうになるたびに、喉元に力を込めて。歌声を伸ばす要領でやれば、ほんの少しだけ喉奥に隙間ができる。何度か酸っぱい匂いを鼻の奥で感じたけど、その度にかろうじて押し留めることができた。
「フウッ、フウッ……はっ、腐ってもアイドルか。こんだけやっても吐かんとは、なかなかノド強いやんけ」
 栖村は呆れたような、感心したような顔でそう言うと、片手で顎の汗を拭う。そして改めて私の頭を掴み直し、激しく前後させはじめた。
「ええで、ええ具合や、お前の喉マンコは! そろそろイキそうや!!」
 私の喉でアレを扱きながら、栖村の息遣いが早まっていく。
「ん゛ぇあっ!!」
 こんな状態で出されるなんて冗談じゃない。私は肩を揺らして抵抗する。でも、栖村の押さえ込みがそれで外れるはずもなかった。
「出るで! 主人の子種やぞ、一滴残らず胃で受けとめぇやっ!!」
 その言葉の直後、栖村の太腿が盛り上がる。同時に喉奥で、ぐうっとペニスが反りかえった。射精だ。
「ん゛ぐっ!!」
 どくっ、どくっ、と粘ついたものが喉へ流れ込み、思わず呻く。
「おお、出る出る……マンコの時より量が出とるわ」
 気持ち良さそうな栖村とは逆に、こっちは地獄だった。ドロドロして喉越しは最悪だし、なんだか生臭い。そもそも、殺したいほど憎い相手の精液を飲むこと自体が屈辱的だ。
 そして何より最悪なのは、量が半端じゃなく多いということだった。栖村自身、「ブタは射精量が自慢」なんて自虐してたけど、普通じゃない量が流れ込んでくる。
「おえっ、ゲエエエ……ッ!!」
 とうとう私は、強引に栖村のアレを吐き出し、口に残った精液を床へぶちまけた。
「なっ!? このアホンダラっ、残さず飲め言うたやろうが!!」
 栖村は怒鳴りながら、私の髪を掴みあげる。私は痛みに顔を歪めながらも、栖村の血走った眼を睨み返した。
「わかった、なんて言ってないでしょ。ブタの精子なんか、捨てられて当然よ!」
「なんやと、コラッ!?」
 私の言葉に、栖村の目元が吊り上がっていく。張り手でも食らわせてきそうな雰囲気だ。でも、栖村は暴力を振るう事はなかった。代わりに、少し離れた場所で様子を見ていた磯崎の方を見る。
「オイ、磯崎。次はお前の咥えさせたれや」
 冷たい一言。それを耳にして、私の体は凍りつく。
 磯崎のアレは、栖村の比じゃない。黒人並みのサイズは、亀頭部分を口に含むだけでも一杯一杯だ。それを、咥えさせられる……?
「むっ、無理が、あるんじゃないか」
 磯崎が呟くように言った。すると、栖村は鼻で笑う。
「それがエエんやないけ。無理のない範囲でやらしとっても、コイツが調子付くだけや。アゴ外れるぐらいの目ェに遭わしてはじめて、従順になるっちゅうもんやろ」
 とんでもない言葉が、さらりと吐かれる。
 顎が外れるぐらい? 冗談じゃない。歌や舞台挨拶が基本のアイドルにとって、顎は生命線のひとつだ。
「待ってよ! わ、私は人質なんでしょ。だったら私の体は、アンタ達の組にとっての資産じゃないの? その資産を、独断で傷つけてもいいわけ!?」
 ショートしそうな頭を働かせて、助かる道を模索する。でも、額に青筋を浮かべた栖村は聴く様子もない。責任者であるはずの新渡戸も、ソファから興味深そうにこっちを眺めているだけで、止めようとしない。
「ピーピー喚くなや。磯崎も我慢できんやろ、“いきり勃たせ”おって」
 栖村は私に吐き捨ててから、視線を横に向けて笑う。つられて横を向くと、ちょうど近づいてくる磯崎が見えた。その股間の物は、血管を浮き立たせながら反りかえっている。性欲が抑えきれないとばかりに。
「ひっ……む、無理よ、あんなの……!!」
 私の顔は、恐怖で引き攣っていたと思う。栖村はそんな私の肩を掴み、逃げ場を封じた。
 プロレスラーを思わせる磯崎の巨体が、目の前まで近づく。
「いや、いやあっ!!」
 必死に首を振るけど、栖村に顎を掴まれ、無理矢理に口を開かされた。その隙間に、磯崎の物が入りこんでくる。
「おごっ、ご……ぉおお゛あア……ッか…………!!」
 限界まで口を開かされ、唇の端が痛んだ。頬の肉もピリピリと引き攣った。でも、そんな痛みは些細なものでしかない。上顎と下顎の両方に存在感を残しながら、テニスボール大の亀頭が喉奥へと入り込んでいく。普通なら絶対に無理なはずのサイズ。でも唾液や涎で滑りやすくなった今は、その無理が通ってしまう。
 圧倒的な質量が、ずるうっと喉を通り抜けた瞬間。私の頭は、真っ白になった。眼を見開き、顔中から嫌な汗を噴き出しながら、硬直した。
「ひゃはははっ、お前凄いのぉ!! チンポ入れた分だけ、喉がボッコー膨らんどるで!!」
 横から見ている栖村が、膝を叩いて笑う。私の頭は、余裕がないくせに、そういう言葉だけはしっかりと理解してしまっていた。喉が盛り上がっているのも、その盛り上がりが磯崎のアレの脈打ちと同じ早さで蠢くのも、確かに感じる。

  ( 喉、征服されてるんだ…………コイツに………… )

 そう思うと、虚しいような気持ちがこみ上げた。
「の、喉を開け」
 固まっている私に、磯崎が命じる。喉が詰まっている状況は、私にとってもつらい。言いなりになるのは癪だけど、行為自体に依存はない。
 でも、上手くいかなかった。あまりのサイズに口や喉が突っ張っているのか、上手く喉奥が広がらない。さらに首元に力を込めると、喉奥から空気が漏れはじめた。
「ガボッ……ブボッ、ぶぼっ……」
 水気をたっぷりと含んだ口内を空気が通り抜け、おならにも似た音が出てしまう。
「かはははっ!! こいつ、口から屁ェこいとる!!」
 当然その音は栖村に聴かれ、嘲笑の的になった。でも、それを恥じる暇はない。さっきの音と一緒に隙間ができたのか、磯崎の物がさらに喉奥深く入り込んでくる。
 今まで押さえ込まれていた喉奥の突起が、少しだけ真っ直ぐに戻る感覚があった。多分、一番太いカリ首が喉奥を通り抜けたんだろう。その感覚を覚え、さらに亀頭が喉奥へ進むのを感じた瞬間。私の中で大きな変化があった。
「んも゛ぉお゛おお゛ぅ゛う゛っ!!!」
 今までに聴いた事のない声が、喉の奥から漏れだす。それとほぼ同時に、下顎がヒクつき、熱いものが一気に食道を逆流する。
 粘膜で触れ合っていた磯崎にも、そんな私の異変が伝わったんだろう。磯崎は私の額を押すようにして、半分ほど入り込んでいた物を引き抜きにかかる。
 でも、結果としてそれがトドメになった。真珠の入った極太が、喉を裏返して引き抜かれていく。それはまるで、吐瀉物の通り道を確保しているようなものだ。
「おおお゛え゛え゛え゛っ!!」
 これ以上ないほど汚いえづき声と共に、私は胃の内容物をぶちまける。酸っぱい味が鼻一杯に広がった。苦しくて苦しくて、涙がこぼれた。
「おーおー。このアマ、とうとうゲロ吐きおった!!」
 勝ち誇ったような栖村の声が、狭い部屋に響く。

 ( 声、大きすぎ……ステージに聴こえてなきゃいいけど…… )

 私は顎に吐瀉物のぬめりを感じながら、ぼんやりとそんな事を考えていた。どうやら私は、本当に追い込まれると現実逃避する癖があるみたいだ。

 ( ……馬鹿。何、他人事みたいに考えてんのよ! )

 私は頭の中で、自分自身に喝を入れる。『スカーレットチョーカー』のリーダーが、そんな事じゃだめだ。
「はっ……はっ! はぁ、はあっ…………!!」
 私は嘔吐しながら、目を上向ける。栖村を睨んでいた時と同じように。
「むっ……」
 磯崎の表情に、変化があった。驚いている。
「かーっ、ホンマええ根性や、吐かされてもまだ睨むか。オウ磯崎、こら気合入れなアカンぞ。このアマ、お前のこと舐めくさっとるわ!」
 栖村のこの言葉を受けてか、磯崎は喘ぐ私の口に亀頭を宛がい、押し込んでくる。
「ん゛ぇあ゛ああ゛オ゛ッ!!!」
 吐いたばかりの口と喉は、唾液よりずっと滑りやすいらしい。太い亀頭はあっさりと喉奥の突起を通過し、ズルズルと食道に入り込んでいく。大きな蛇を丸呑みにしている気分だ。恐怖と苦しさで、縛られた手が震えだす。
 でも本当の恐怖は、ここからだった。
 ペニスの半分以上が入った所で、磯崎はゆっくりと腰を引く。そして、えずく私の喉へ、また深く突き入れた。
「げおっ!!」
 妙な声が漏れる。これが始まりとなって、磯崎はセックスする時と同じように、私の喉奥を“犯し”はじめる。
 あまりにも太い上に、いくつも真珠が入った磯崎のペニスは、栖村のようにカコカコと喉をかき回すだけじゃすまない。ゴリッ、ゴリッ、と喉奥を抉ってくる。
「うぶっ、ごぶっ……はぶっ、ぶふっ!! んぉオ゛えっ、ごぉお゛えエ゛ッ!!! がおっ、けえぉお゛っえええ゛え゛っ!!!」
 特にひどい声を上げた直後、とうとう涙が零れはじめた。涙を流し、胃液とえずき汁の混ざり合ったものを吐き続ける。これは、かなりしんどい。
「はっは、とうとう白目剥きだしおった!」
 栖村の言葉を聞いて、自分が気絶しかけていた事に気付く。そこまでしても、磯崎が果てる気配はない。
 しばらくして、私がまた気絶しかけたところで、一旦磯崎がアレを引き抜く。
「な、舐めろ」
 磯崎は、いつも通りつっかえながら命じた。
 私は喉を鳴らす。反り返ったペットボトル大のペニスには、私自身の胃液やえずき汁が絡みついている。正直、口をつけたいとは思えない。でも、そんな大きさの物でまた喉奥を抉られることを考えれば、舌で舐めたほうがずっとマシだ。
「はっ、はっ……うえっ、えろ……んちゅっ……」
 荒い息を吐きながら、必死に舌を使う。できれば舌で絶頂させられるように。それが無理でも、せめて呼吸を整える時間を稼ぐために。
 でも結局、そのどちらも叶わない。
「……もういい。口を開け」
 磯崎は淡々とした口調でそう言うと、私の顔を両手で挟み込み、また喉奥を犯しはじめた。
「ごぉえ゛……ぉオ゛ぉお゛え゛ッ!! ぉお゛おおえ゛え゛っっ!!!」
 私は、涙を溢し、胃液を吐きこぼすしかない。磯崎が満足するまで、延々と。


    ※           ※           ※


 喉の調教は、それからも栖村の主導でしつこく続けられた。
 私に吐かせるのがよっぽど気に入ったんだろうか。栖村は、ソファや革張りの椅子に私を縛りつけたまま、ディルドーを喉奥に突っ込んで何度も吐かせてくる。
「どうや? こんなオモチャやのうて、ワシのマラが欲しゅうなってきたやろ」
 私の口からディルドーを抜き出しながら、栖村は何度もそう尋ねてきた。
「はぁっ……はぁっ、まさか。アンタの臭いもの咥えるぐらいなら、こっちの方がずっとマシよ!」
 当然、私は否定する。そのたびに栖村は不愉快そうな顔になり、ディルドーを掴み直してグイグイと喉奥に押し込んでくる。
 このディルドーというのがまた特殊で、普通に男の性器を模ったものじゃない。双頭ディルドーといって、レズ同士がセックスする時、お互いの割れ目に入れて楽しむための道具だ。当然、長さは半端じゃない。そんなものを食道にまで押し込まれたら、どうしたって嘔吐してしまう。

 私は何度となく吐かされながら、栖村は嫌がらせをしたいんだと思っていた。
 実際、そういう側面はあったと思う。
 普段、この部屋で私に与えられる食料は多くない。最低限の栄養が取れるように、ゼリーやドリンクが与えられるぐらいだ。でも嘔吐責めをする時だけは、しっかりと固形物を取らされた。コンビニのおにぎりやパスタなんかを。その上で、半端に消化したものを吐かされるんだ。
 精神的に一番キツかったのは、土曜日……『スカーレットチョーカー』のライブ中に吐かされた時だ。
「どうや。頑張っとる仲間を見ながら、ゲロゲロ吐く気分は」
 栖村は、私の顎を左手で掴んだまま、右手でディルドーを出し入れする。一方の私は、どっしりとした座椅子に大股開きで拘束され、身動きも叶わない。そんな状態で、汚くえずきながら、半固形の吐瀉物を吐きこぼすんだ。
「んぶっ、ぶっ……おっぼぇ゛っお゛ぇ、ぇお゛ろろぉお゛おえ゛っっ!!」
 皆の姿を見ていると、どうしても嘔吐を堪えようとしてしまう。でもその踏ん張りが、かえって決壊時の状況を悪くした。たっぷりと泡を含んだ吐瀉物がドロドロと顎を伝い、鼻からもあふれ出していく。
 栖村はそんな私を散々に嘲笑いながら、吐瀉物をわざわざ手で掬い、乳房や首元に塗りつけてくる。
「な、何してんのっ!? やめてよ、きたないっ!」
 私が叫んでも、栖村は塗りつけるのをやめない。それどころか、吐瀉物をローション代わりにして乳首やクリトリスを刺激しはじめる。
「ふざけないで、いやあっ!!」
 おぞましさに震えながら抗議する。でも、念入りに乳首とクリトリスの性感を目覚めさせられた私は、気持ちとは裏腹に絶頂した。仲間の歌声が響く中で。
 もし、私の同級生……普通に進学して女子大生になったような子が同じ目に遭ったら、これ一回だけで一生もののトラウマになったっておかしくない。
 こんな嫌がらせを何度も受けると、心が磨り減る。従順になることで、やめてもらえるなら……そんな風にも考えてしまう。それが栖村の狙いなんだと、私は思っていた。
 でもどうやら、それだけじゃなかったらしい。

 毎日吐かされていると、自然と“吐き慣れて”いく。吐くことに抵抗がなくなれば、喉が開きやすくなって、激しいディープスロートにも耐えられるようになる。
 ただ、そこで羞恥責めが織り交ぜられると話は別だ。恥ずかしい、吐きたくない……そういう気持ちがストッパーになって、中途半端に喉を強張らせてしまう。結果としてこれが、喉奥の性感帯を致命的なほど敏感にするんだ。クリトリスを刺激する時、リラックスしきった状態より、適度に足を強張らせていた方が逝きやすいように。
 私がそれに気付いたのは、少し後……セックスと喉奥への蹂躙を、同時に行われはじめてからのことだった。

 ベッドの上で犯されながら、同時にアレを咥えさせられる。アソコを犯すのは新渡戸か磯崎で、咥えさせるのは必ず栖村だ。
 これは地味に厄介だった。犯され続けて意識が朦朧としてくると、セックスの快楽とディープスロートの快感がごちゃまぜになってしまう。ましてや、ディープスロートで感じる下地ができている状態だと、毒されるのも早い。

 新渡戸とのセックスは、疑う余地もなく気持ちよかった。若者顔負けの硬さをもつ真珠入りの物を、熟練の腰つきで打ち込まれるんだ。グチュッ、グチュッと音を立てて膣のスポットを刺激されるたびに、足指の先にまで痺れが走る。ほんの少し腰を逃がすような動きを全部把握して、一番やめてほしい部分を狙い打たれるから、堪えようがない。何度も何度も腰を浮かせて、盛大に絶頂してしまう。
「はははっ、またイッたか。お前はホンマに敏感な、ええ身体しとるの」
 栖村とは違って、私の反応をいちいち肯定してくるのも厄介だった。どんなに嫌いな相手でも、セックスの最中に褒めちぎられると、無意識レベルで体がほぐれる。そこで上手すぎる突き込みを受ければ、あっという間に蕩けてしまう。
 もし、犯されている状況でなかったら、もし、『リュネット』時代に芸能人としてこの男に出会っていたら、私は新渡戸の腰に足を絡め、自ら望んで快楽に溺れていただろう。そう確信できるぐらい、新渡戸とのセックスは甘かった。
 磯崎とのセックスも強烈だ。新渡戸との交わりが、メリーゴーラウンドで幸せを感じるものだとすれば、磯崎とのそれはジェットコースター。ありえないほどの恐怖と苦痛で、している最中はもう嫌だと思うけど、妙な中毒性がある。新渡戸より逝くのが難しいかわりに、いざ絶頂した時の快感の深さは半端じゃない。
 この2人に代わる代わる犯されると、一時間も経たないうちに思考力が落ちていくのがわかった。その状態でしゃぶらされると、スカスカになった脳におかしな情報がどんどん刷り込まれていく。

「どうや。そろそろワシのマラをしゃぶるだけで、ツバが止まらんようになってきたやろ。毎日毎日、ワシの匂いを脳ミソへ刷り込んで、カスまで舐めとらせたったからのぉ」
 栖村のこんな言葉を、嫌というほど耳にした。そしてその言葉は、どうやら事実だ。栖村の物を口に突っ込まれていると、唾液があふれてくる。栖村の体臭が、恥垢の苦味が、甘い痺れとなって脳に伝わる。
 本来栖村は、どこを取っても惚れる要素のない男だ。不摂生な肥満体も、生ゴミのような体臭も、シラフの状態なら拒絶したい要素でしかない。でもセックス漬けで脳が蕩けた状態だと、そういう面が気にならなくなる。むしろきつい体臭に関しては、『この匂いのものをしゃぶっていると、濡れる』という刷り込みを、よりスムーズにしているようだった。
「もごっ、ほご……っお゛! んんおぉお゛……ごぶっ、おごっ…………!!」
 圧し掛かるようにして喉の奥までを犯されながら、私はまた頭が白んでいくのを感じていた。
 上に反り気味の物で上あごをなぞられると、脳にピリピリとした痺れがいく。喉をぐううっと押し込まれるように貫かれれば、白目を剥きかけながら快感に浸ってしまう。
 栖村、磯崎、新渡戸……3人全員の物を何度も咥えさせられたけど、栖村のペニスが一番脳に響いた。新渡戸の物は真珠が多すぎて喉への刺激が強く、いちいち噎せて現実へ引き戻される。磯村の物は無理のありすぎるサイズだから、顎が外れる恐怖と苦痛で快感どころじゃない。
「おおっ、凄いのぉ。どんどん本気汁が出てきおる」
 割れ目を犯す新渡戸が、驚いた様子で下を向いた。私自身にも自覚がある。新渡戸のセックスは元々気持ちいい。でもその新渡戸に突かれるペースよりももっと早く、どろっ、どろっ、と愛液があふれていく。原因はひとつ。栖村から喉奥を蹂躙されているからだ。

 ( ありえない……。こんな奴のを咥えさせられて、濡れるなんて )

 頭の中でいくら否定しても、愛液は止まらない。
「悔しそうなツラやのぉ。大嫌いなワシ相手に、感じる訳がないってか。甘いのぉ。背徳感こそ、興奮のスパイスなんやで」
 私の口に腰を押し付けながら、栖村が笑う。私の心を見透かしたように。


 刻一刻と、着実に、私の喉奥は開発されていった。
 そして、水曜日――握手会の日がやってくる。

「おら、もっと舌使うなり、口窄めて吸うなりして工夫せんかい。気合入れてしゃぶらんと、いつまで経っても終わらんで」
 昼の1時から握手会というこの日も、私は延々と3人の物をしゃぶらされていた。3人全員を口と手で射精させれば終わり、というのが条件だ。
 でも3人は、呆れるほどの我慢強さで射精を耐えつづける。おまけに、何十分かしゃぶりつづけてようやく射精の前兆が見えても、
「今度はこっちや!」
 そう言って強引に中断させられ、また別の一人の物をしゃぶらされるんだ。
 こんな事を何時間も続けられると、指も舌も動かなくなってくる。となると最後には、髪を掴まれて『喉奥を使われる』のを、甘んじて受け入れるしかない。
「あがっ、オごっ…! ぅおお゛えっ、むぅお゛ぇあっ!!」
 新渡戸、磯崎のペニスは、相変わらず喉が受け付けない。膣でのセックスなら、怖いぐらい感じさせてくるのに。その点、悔しいけど栖村のペニスはしっくりきた。けして楽ではないけど、無理でもない。ちょうどいい圧力で喉奥の輪を出入りする。奉仕続きでぼうっとした頭に、ジーンとした快感が駆け上る。
 そして、栖村の足がとうとう細かに痙攣しはじめた頃。栖村は、一番の奥まで咥え込ませたまま、強く私の頭を引きつけた。
「そのまま咥えとれ!!」
 汗と疲れで馬鹿になった耳に、栖村の怒声が響く。
「あ、が……おぐぅっ…………!?」
 太いペニスを、食道まで咥え込んだままでの静止。1秒2秒ぐらいなら経験があるけど、10秒以上経っても栖村の力は緩まない。呼吸などさせるか、とばかりに。
「ぃおっ、ぐ……ぶふっ、ごぉお゛……っ!!」
 喉から汚い呻きが漏れたけど、私自身の状況はもっと悲惨だった。吐き気と酸欠で苦しい。喉奥が狂ったように収縮する。両手で栖村の太腿を押しやろうとするけど、大木の幹を押しているようにビクともしない。
「あは……お、ああ…………」
 吐き気と酸欠が、ますますひどくなっていく。頭に霞がかかったようになり、冗談事じゃなく“死”を感じるようになる。
 でも、まさにその瞬間。信じられないほど強烈な感覚に襲われた。酸味も熱さもないから、嘔吐じゃない。クリトリスや膣での絶頂ともどこか違う。手足が痺れ、ぶつっ、ぶつっ、と停電したように目の前が暗くなり……そして気付いた時には、私は膝立ちのまま失禁していた。
「おおっ! よっしゃよっしゃ、来おった! このアマ、『脳イキ』しとんで!!」
 栖村の興奮気味に叫ぶ声がする。その声を聴きながら、私の頭はローションでも巻き込んだようにゆっくりと回転しつつ、言葉の意味を拾う。
 『脳イキ』……なんてしっくりとくる言葉だろう。そうだ、確かにこれは脳でイっている。本当に死んで極楽にいるようだ。そうなった原因は、はっきりしている。喉だ。今や本当の膣のように、ねっとりと栖村のアレを包み込んでいる喉からの快感が、すぐ近くの脳へダイレクトに届いてるんだ。
「あっはっはっはっは、エッライ顔なっとんのぉ!! これが仮にもアイドルのする顔かいや。もう完全に脳ミソん中ドロドロになっとんぞ、こいつ!!」
 栖村は大笑いしながら、私の手の中で太腿を盛り上がらせる。すると、喉奥に嵌まり込んだペニスが持ち上がった。ぐっ、ぐっ、と角度が上がり、Gスポットを指で押し込むように、上顎と喉奥の性感帯を抉ってくる。今の私には、それが致命的な一押しになった。
「ほっぉおお゛おお゛もお゛ぉ゛お゛えええ゛え゛っっっ!!!!」
 自分の声だとは絶対に認めたくない。そんな低いえづきと共に、私は絶頂した。ぐるりと白目を剥きながら、贅肉だらけの栖村の太腿へ、めり込むほどに指を食い込ませる。ぶしゅっ、ぶしゅっ、と失禁か潮かわからないものを噴き散らす。
「おおおおっ、エエぞっ、喉奥がマンコみたいに搾り取りおる!!いくで、オイ雌豚、全部出すでっ!!!!」
 栖村は鼓膜が破けそうな声で叫びながら、またペニスを跳ねさせる。その直後、どくっ、どくっ、と熱いものが喉奥へ流れ込んでくる。発酵させすぎたチーズの匂い。大嫌いな栖村の体臭を、何倍にも凝縮させたもの。そのはずなのに、鼻の奥でその匂いを知覚するたびに、ゾクゾクと快感が来る。髪の生え際を巨大なムカデに這い回られるような、とても無視できない快感――。
「へへ……あんなに嫌がっとったくせして、ゴクゴク飲んどるわ。脳イキっちゅうんはヤバイのぉ」
 そんな声が聴こえる。そこでようやく私は、あれだけ喉越しが悪いと思っていたものを飲み下していることに気がついた。でも、吐き出せない。手足はもう、指の先まで痺れてるんだから。
「ふうっ、よう出たわ。久々にタマん中カラッポかもわからん」
 その言葉の後、私の喉奥と癒着するようだったペニスが、ゆっくりと引き抜かれていく。真っ白い糸を何筋も垂らしながら、それは私の口から離れた。精液塗れ、唾液まみれの巨大な男根。完全な勃起状態ではないものの、表面には血管が浮いていて、どくっどくっと脈打っている。私の喉にとって、ものすごく馴染みのあるペースで。
「どうや。初めてまともに飲んだ、ワシのザーメンの味は。濃ゆぅてウマイやろ」
 そう聴かれて、栖村の精液を飲み干した事実を思い出す。
「ご、ぼっ……!!」
 私はゲップをするように噎せ返り、喉元に引っ掛かっていた分を吐き出した。床に拡がった精液は真っ白だ。もし膣で受けていたら、ピルを飲んでいても妊娠しそうな濃さ。それが、胃に詰まってるんだ。
 呆然とする私の傍に、誰かが屈み込む。視界がぼやけてるけど、品のいい香水の匂いで新渡戸だとわかる。その新渡戸は、膝立ちになった私の股の間に指を差し入れた。ぐちゅっ、と粘ついた水音がする。
「濡れきっとんな。昨日の晩シャワー使わしてから、指一本触れとらんのに。
 とうとう、ノドで逝けるようになったか」
 声を聴くだけでも、新渡戸が笑みを浮かべているのがわかる。栖村は大笑いを始めるし、磯崎まで含み笑いしているのが気配でわかる。
 そんな状況の中、私はただ呆然としていた。


 笑われているのに。大嫌いなクズに蔑まれているのに。


 私は、何も反論できずにいた。
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