※幼馴染のお姉さんが、家庭教師先のクラスメイト達に犯される小説です。NTR風味注意。
 長いので前後編に分けます。




 どこの小学校にも、異様にモテる奴が一人はいる。
 登下校時には女子から黄色い声が上がり、休み時間も女子に囲まれ、バレンタインの日には抱えきれないぐらいのチョコを渡される奴。
 うちの学校では、天崎悠真という子がそれだった。家は裕福らしくて、実際育ちの良さそうな見た目をしている。勉強も運動も卒なくこなすし、誰とでも無難に付き合う。人畜無害な『王子様』、という風だ。
 ただ僕は、そんな彼がたまに見せる、妙に冷めた表情が気になっていた。なんだか、周りの程度の低さに飽き飽きしているような。でもクラスの奴は「そんな表情は見たことがない」と口を揃えるし、女子には「クールなだけ」と返される。
 同意が得られない。その事実を前に、僕はかえって、天崎悠真という人間への興味を強めていった。
 今ならわかる。悠真君は、『見込んだ人間にだけ』陰のある表情を見せていたんだ。撒いた餌にしつこく食らいつく好奇心の強い人間に、ある誘いをかけるために。

 『自分には美人の家庭教師がいる』

 授業のある土曜日。校舎裏へ僕を呼び出した悠真君は、そう切り出した。正直、意外だ。僕はそれまで彼と、そう親しかったわけじゃないから。それに大人びた彼は、こういう俗っぽい話を振ってくるイメージでもなかった。でも、彼だって僕と同じ年の子供。美人なお姉さん相手に舞い上がり、クラスメイトに自慢したくなってもおかしくない……そう思った。特に何も、疑うことはなかった。

 悠真君の家庭教師は、難関私大に通う女子大生だそうだ。悠真君のお父さんもその大学の出で、息子も同じ大学へ行かせたい。でも無理強いする気はないから、まずは息子に大学への興味を持ってほしい。そのためには、大学の“今”を知る現役学生に教わるのが一番、というのがお父さんの考えだという。
「で、父さんが大学の教授に掛け合って、選ばれたのがこの人ってわけ」
 悠真君はそう言って、僕にスマホの画面を見せた。
「…………!!」
 僕は目を疑う。いかにも大学教授好みの、真面目そうな外見。それに見覚えがあったから。

 香月 栞さん。ウチの近所にある本屋の、一人娘。
 ネット社会の今、個人経営の本屋なんてほとんど誰も立ち寄らない。だからかその本屋では、休みの日になると、まだ中学生の栞さんが一人で店番をしていたりした。僕も昔から本が好きで、でもオトナの人と喋るのは苦手だったから、栞さんが店番の時を狙ってよく遊びに行ったものだ。
 栞さんは物静かで、社交的な方じゃない。でも仲良くなってみると優しくて、僕にオススメの本を何冊も貸してくれた。
 誰も来ない店の中、蝉の声と風鈴の音を聴きながら、カウンターを挟んで栞さんと本を読み耽る。これは、僕が一番好きな夏の過ごし方だった。栞さんといる時は、無理に何かを喋らなくてもいいから気が楽だ。
 そして、本へ静かに視線を落とす栞さんの横顔は、すごく綺麗だった。僕は何度も栞さんと話すうち、上品で物知りな彼女に惹かれていた。たぶん、それが僕の初恋だった。

「“栞さん”っていうんだ。胸もおっきいぜ」
 悠真君はそう言って唇の端を吊り上げる。栞さん。悠真君は、間違いなくそう言った。
「今日も授業の日だからさ。お前もウチ来るだろ、匠?」
 家庭教師をする栞さん……その姿をひと目見たい。その気持ちを抑えきれず、僕は悠真君の誘いを二つ返事でOKする。何の疑いも持たずに。


       ※        ※        ※


「帰ろう、匠くん」
 下校時間になり、悠真君がそう声をかけてきた。後ろに何人も取り巻きの女子を連れているのが流石だ。
「えーっ、私と帰ろうよー!」
 そう甘え声を出すのは、クラスで一番人気の桜井さん。小学生ながらにモデルをしていて、化粧まで覚えている派手めな子。僕も一時期好きだった子だ。
「ごめん。また今度ね」
 悠真君は、爽やかな笑顔で桜井さんの誘いを断る。少し前までは、彼のそんな態度が不思議だったけど、栞さんを知った後なら理解できる。いくら背伸びをしていようと、小学生はあくまで小学生なんだ。

「よう」
 校門近くで、僕と悠真君はそう声を掛けられた。横を向くと、色黒なサッカー少年の岡村と、眼鏡をかけた三橋が立っている。どっちも僕らと同じクラスだ。
「……行くぞ」
 悠真君は前を向いたままそう言った。2人がついて来る事は想定内という感じで。
「2人も、家庭教師のお姉さんに会いに?」
 僕が訊くと、岡村が笑う。
「ああ。勉強が終わったら、一緒に“遊ぶ”んだよ」
 岡村は、確かにそう言った。僕はこの時、まるで警戒心がなかったから、その言葉をそのまま信じた。外遊びばかりしているイメージの岡村が、悠真君と部屋で遊ぶなんて意外だな……そう思ったぐらいだ。
 多分この時には、岡村も、三橋も、すごく悪い顔をしていたはずなのに。


       ※        ※        ※


「ここだよ」
 20分ほど歩いたところで、悠真君が一軒の家を指差した。
 立派な一戸建てだ。庭と広いガレージつきで、敷地の入口には門まである。一人くらいならメイドがいたって不思議じゃない。
「遠慮なく上がって。今は親いないから」
 鍵で通用口を開きながら、悠真君が僕に言う。
 悠真君のところは、お父さんが単身赴任、お母さんが稽古事の先生をしている関係で、家に居ないことが多いらしい。栞さんが家庭教師として雇われたのは、単に勉強を教えるだけじゃなく、姉代わりに世話を焼いてほしい、という意味もあるんだとか。
 当の栞さんは、恩師の頼みということもあり、そして何より彼女自身が小学校の教師を志望していたため、快く引き受けたそうだ。
 あの内気な栞さんが、教師志望だったのは意外だった。
  (――もしかして、僕に何かを教えるのが楽しかったからかな)
 つい、そんな都合のいい考えまで浮かんでしまう。

 悠真君の部屋は2階にあった。一人っ子だけに部屋は広く、クローゼットを除いても軽く10畳はある。ベッドも本棚もカーテンも、インテリアのすべてが高級で、ガラステーブルに至っては8人ぐらいが並んで使えそうだ。まさに王子様の部屋、という感じがする。ここにクラスの女子を呼べば、キャーキャーと歓喜することだろう。
「暑ぃなー。エアコンつけようぜ!」
 岡村は無造作にランドセルを放り捨てながら、リモコンを手に取った。三橋も同じくランドセルを置き、ベッド横に座ってスマホを取り出す。
 岡村は元々遠慮なんてしなさそうなタイプだけど、三橋までこの寛ぎ具合というのは意外だった。もう何度もこの部屋に来てるんだろう。
 
 悠真君の持ってきたジュースを飲み終え、いよいよ手持ち無沙汰になった頃。部屋のインターホンから、チャイムの音が鳴り響く。その瞬間、岡村と三橋が待ち侘びたとばかりに顔を上げた。悠真君も大きく反応はしないものの、明らかに雰囲気が変わる。
 インターホンの画面には、女の人が映っていた。栞さんだ。改めて正面から見ると、やっぱり顔立ちがすごく整っている。芸能人と言っても通じるぐらいに。
「入っていいよ」
 悠真君は解錠ボタンを押しながら、一言そう呟いた。普段女子と話す時より低いトーンで。相手がお姉さんだけに、オトナぶってるんだろうか。僕は呑気にそう思った。

 子供部屋に入ってきた栞さんは、なんだか懐かしい感じがした。
 襟にほんの少しだけフリルのついたVネックの白シャツに、紅いカーディガン、黒いロングスカート。女性らしいけど、浮ついた感じがない、教師として一線を引いているような服装だ。長い黒髪を後ろできっちりと結い上げているのも、昔のまま。化粧はごくうっすらとしているだけだけど、それがまた自然で格好いい。これに比べたら、桜井さんの化粧なんてママゴトに思えてしまう。
 そして、背が高い。僕らの身長は小5の平均、145センチぐらい。それに対して栞さんは、160センチ半ばぐらいだろうか。身長差約20センチ。僕の視線の高さは、ちょうど栞さんの白い首あたりにくる。昔は腰に縋りつくのがせいぜいだったんだから、それよりは差が縮まったとはいえ、まだまだ大きい。
 そして懐かしい栞さんにも、明らかに昔と違うところがある。悠真君も言っていた、大きな胸だ。中学生の頃は控えめだったそこは、今はシャツに皺を作るほどまで育っている。
 これが……これが、オトナになった栞さんなんだ。

「し…………」
 僕は懐かしさのあまり、笑顔で栞さんの名前を呼ぼうとした。でも次の瞬間、喉まで出かかった言葉を飲み込む。
 栞さんの雰囲気が、ピリピリしていたから。一瞬こっちを見て目を見開いた以上、僕の存在には気付いたはずなんだ。でもすぐに目を逸らし、横を通り過ぎてしまう。まさか、よく似た別人なのか。そう思えるぐらい、つれない態度。
 そんな栞さんを、ガラステーブルに肘をついた悠真君が、薄笑みを浮かべて見上げていた。
「や、先生。今日も暑いね」
 笑みは笑みでも、普段クラスで見せている『王子様』の顔じゃない。相手を小馬鹿にしたような、どこか悪魔じみた笑み。
 僕の中で、違和感が増す。
 悪ぶっているにしては、あまりにも自然すぎる。もしかして、こっちが天崎悠真という人間の『本性』なのか?
 その事実に気付いてから、改めて振り向けば、岡村と三橋の表情も違って見える。好意的に見れば、子供が綺麗なお姉さん相手に鼻の下を伸ばしているだけ。でも悪意ある見方をすれば、性欲を持て余した獣の笑みだ。


       ※        ※        ※


 フローリングにクッションを敷いて座り、背の低いガラステーブルに教科書を広げて、悠真君の授業が始まる。
 さすがに難関私大を目指しているだけあって、授業の内容は明らかに小学生のレベルを超えていた。学校のテストでほぼ満点しか取らない僕が、さっぱり理解できなかったんだから。でも悠真君は流石で、その内容を完全に理解しているようだった。栞さんが問題を解くように促すと、悩む様子もなくサラサラとペンを動かし、正解を貰ってしまう。
「流石ね、もう解けない問題なんて無いんじゃない? わざわざ私に教わる必要なんてないと思うけど」
 栞さんの口調は、一貫して冷ややかだった。悠真君の事を嫌っている……というより、警戒しきっている感じだ。
 ただ、僕から見てもその日の悠真君は変だった。
「まさか、全然だよ。今日の分だと……ここが不安かな。もうちょっと難易度が上がったら詰まるかも。母さんにそう言っといてよ」
 今しがた迷いなく解いてみせたグラフ問題を指で叩きながら、そんな事を言う。わざとらしいほどの白々しさで。

 そして妙だといえば、岡村と三橋もそうだ。漫画を読んだりスマホでゲームをしたりしながら、頻繁に栞さんに視線を送り、ヒソヒソ話をしては笑っている。そしてその果てに、とうとう岡村が立ち上がり、口元を緩めたまま栞さんに抱きついた。
「きゃっ!?」
 背後から急に覆い被さられ、栞さんが悲鳴を上げる。
「へへへっ!」
 岡村はニヤけたまま、栞さんの服に手を入れはじめた。シャツの下から肘までを滑り込ませ、ロングスカートも一気に捲り上げてから、手首までを潜らせて。
 いきなりのその行動にも驚いたけど、すぐ横にいる悠真君のリアクションの小ささも意外だった。まるで、岡村が栞さんに襲い掛かると知っていたようだ。何かがおかしい。
「ちょっと。勉強中は、邪魔しないでって言ってるでしょう!?」
 あの物静かな栞さんが声を荒げる。でも岡村は怯まない。
「別にいいよ、構ってくんなくても。勝手に“遊んでる”から」
 そう言ってにやけ、服の中で手を動かし続ける。
「ホラ先生、授業授業。今日は218ページまでやるんでしょ?」
 悠真君も面白そうな表情を浮かべながら、栞に勉強の再開を促す。
 そんな2人を相手に、栞さんは眉を顰め、唇を結んだ。悔しいのに、言いなりになるしかない……そんな感じだ。

 岡村の妨害を受けながら、授業は続く。
 後ろからだと、弟を背中に背負ったまま授業をこなす姉、という風にも見える。でも、ただ甘えられているにしては、栞さんの反応が普通じゃない。意地でも家庭教師の仕事を続けようとする中で、その息はどんどん荒くなっていく。頬にも赤みが差してきたみたいだ。
「へへへ、先生。乳首勃ってきてるぜ? 構ってくんなくていいって言ったじゃん」
 岡村は勝ち誇った様子で言いながら、さらに肩を動かしつづける。
「クリも硬くなってきてっし、マンコも湿ってきてんなぁ。やっぱ三日ぶりだと感じんのかよ、ええ先生!?」
 岡村の声はでかい。耳元に囁きかける内容が、全部聴こえてくる。
 僕はその光景を前に、呆然としていた。すると、三橋がすぐ横に近づいてくる。
「……あいつの言う『クリ』ってわかる? クリトリスのことなんだけど」
 三橋の差し出すスマホ画面には、図入りで女性器の名称が並んでいた。クリトリス、という単語もその中にある。知らない知識だ。でも、今はそんな事どうでもいい。
「あ、あれ、止めないとまずいんじゃ……?」
 僕が岡村を指して耳打ちすると、三橋は驚いた顔になった。
「え? ……なんだ、聞かされてなかったんだ。さすが悠真、意地悪いなあ」
 そう言って面白そうに笑い、この部屋で起こった事を話しはじめる。

 その内容は、衝撃的だった。
 栞さんがこの家に雇われたのは、3ヶ月ほど前。それからしばらくは、理想的な家庭教師と生徒として過ごしていたらしい。その様子は目に浮かぶ。悠真君は人畜無害な優等生を演じるのがうまい。クラスの皆も、たぶん教師も、皆その演技に騙されてるんだから。
 そうして母親が安心し、家を空けることが多くなった頃……悠真君は、栞さんの飲み物に睡眠薬を混ぜ、眠らせたまま犯したらしい。そしてその時に撮られたビデオのせいで、栞さんは逆らえなくなった。
 そこからは悠真君が目を付けた何人か……岡村や三橋達と一緒に、この部屋で栞さんを玩具にしてるんだそうだ。
「そ……そんな事って……!?」
 絶句する。相手は学校の先生とほとんど歳の変わらない、いい大人なんだ。僕ならいくらムラムラしても、襲ったり、ましてや脅す気になんてならない。
 でも僕は同時に、どこかで納得してもいた。
 悠真君なら。
 彼には何か、底知れない部分がある。彼にじっくりと策を練られたら、いくら大人でも為す術がないかもしれない。
 事実、栞さんは岡村の“イタズラ”を受けながら、碌な抵抗ができないでいた。一応、岡村の腕を払いのけてはいるようだけど、そんなものは一時しのぎにしかならない。
「すげー、グチョグチョになってきた」
 岡村がそう言って、一旦腕を引き抜く。するとその指先は、オイルでも塗ったように濡れ光っていた。
「くくくっ……!!」
 僕のすぐ横で三橋が笑う。栞さんの横で悠真君も笑う。子供らしくない、歪んだ笑みで。
 そこから、数十分後。岡村から妨害を受けつつ、栞さんは根性で家庭教師としての仕事をやり終えた。でも、その代償は大きかったみたいだ。

 ベッドの上で、栞さんの服が脱がされていく。シャツがたくし上げられ、ほとんど脱げかけだったスカートがずり下ろされて。
 栞さんの下着姿。想像したことがないといえば嘘になる。でも実際に見たその姿は、想像よりもずっと生々しかった。着やせする方なのか、胸も太股もすごく『オトナ』だ。でも、決して太っているとかじゃない。スタイルはいい。まるで、グラビアアイドルでもできそうなぐらいに。
「ははっ、スケスケ!」
「もうビチョビチョじゃない、先生?」
 栞さんの両脚の間を覗き込みながら、岡村と三橋が冷やかす。薄い純白のショーツはすっかり濡れて、肌とアソコの毛を透けさせている。
「すげぇだろ。アレ全部、女が感じた時に出る汁だぜ。マン汁っつーんだ」
 岡村が、僕を振り返りながら笑った。自慢げだ。でも実際、僕には彼の真似はできない。女の人を感じさせるどころか、どこに指を入れればいいのかさえ解らないんだから。
 岡村も、三橋も……ただのクラスメイトだったはずの相手が、なんだか遠い存在に思えてくる。
「……さて、先生?」
 岡村は栞さんに向き直り、ショーツの前を強く引っ張った。
「んっ!!」
 股布が割れ目に食い込み、栞さんから小さな声が漏れる。
 上品そうな唇が尖るのも、なんだかエッチだったけど……僕の視線はすぐに、変形した割れ目へと吸い寄せられた。
 真ん中に純白のラインが食い込んだ、赤茶色の性器。お腹の方へ向かって茂った毛がやけにリアルだ。
 あれが、栞さんの…………恥じらいの部分。
「はは、見入ってる見入ってる」
 三橋が僕の方を見ながら、ゆっくりとショーツを脱がしに掛かった。
「っ!」
 栞さんは一瞬脚を閉じようとしたけど、岡村がぐっと膝を掴むと、諦めたように力みを解く。
 ショーツがすらっとした白い足の間を滑り、とうとうアソコ“そのもの”が僕の視界に飛び込んできた。
 ネット全盛のこの時代、女の秘部なんていくらでも目にする機会はある。でも、初恋相手の性器となれば話が別だ。
 動悸が早まる。息も、心も苦しいのに、アソコが勃ってきている。
「しかし、ホントよく濡れてるな」
 そう声を発したのは、悠真君だった。勉強していた時の位置のまま、ガラステーブルに肘をついて栞さんを見上げている。彼がそうしていると、本当に王子様に見えるから不思議だ。
 栞さんの表情が強張る。明らかに悠馬君を警戒している。そのピリピリした気配を肌で感じる距離なのに、岡村も三橋も態度を変えない。
「ああ。ちょっとイジったらすぐコレだ。最初は、抵抗するわ、ろくに指入んねーわ、全然濡れねーわで大変だったのに」
「そうなるように僕らで調教したんでしょ。週に何度も、たっぷり時間かけてさ」
 一見、仲間内の会話のよう。でもそれは、明らかに僕に聞かせるための言葉だ。まるで、秘密基地でも自慢するように。
 彼らは知っているんだろうか。その秘密基地が、元々は僕の遊び場だったことを。

 三橋と岡村は、僕に見せつけるように栞さんへのイタズラを続けた。いや、イタズラというより『愛撫』だ。後ろから乳房を揉み上げ、先端の膨らみを指で転がすのも、人差し指と中指で、クリトリスを擦るのも、AV男優みたいに手馴れている。彼ら自身が言っていたように、たっぷりと経験を積んだ結果だろう。どっちも僕と同い年なのに、女性経験の差は明らかだ。そう思うと、なんだか劣等感が湧き上がる。
 一方の栞さんは、地獄だろう。自分よりずっと年下の子供に、いいようにされるんだから。
「……んっ、ふっ…………ふゥ、んっ…………!!」
 栞さんは、眉根を寄せて空中を睨みながら、小さく声を漏らしはじめていた。其の反応を見ながら、三橋が笑う。そして栞さんの足を大きく広げると、いきなりアソコに口をつけた。
「んっ!!」
 栞さんの息が詰まる。
 三橋は両手の親指で割れ目を開きながら、犬が水を飲むみたいに、ぴちゃぴちゃと音を立ててアソコを舐め回していた。それが気持ち悪いのか、感じるのか、栞さんの足が強張る。
「メチャクチャ敏感になってるね、先生のUスポットとカリナ」
 三橋はそんな事を言っていた。意味はわからないけど、性感帯の名前なんだろう。
 さらにしばらく経つと、三橋は舐りでさらに濡れた栞さんのアソコへ、指を2本突っ込んだんだ。
「すごい、さっきより濡れてる。ほんと小学生にアソコ舐められんの好きだよねー、先生って。小学校の教師目指してるらしいけど、それってこういうの期待してだったり?」
 嫌みたらしい言い方をしながら、アソコの中の指を動かしはじめる。
「……っ!!」
 栞さんは、強い眼で三橋を睨んでいた。学校で先生が叱る時にする目だ。三橋は決して気が強い方じゃない。小3の時も同じクラスだったけど、先生に怒られるたびにベソを掻いているような奴だった。でも、今は随分と雰囲気が違う。栞さんに睨まれているのに、面白そうに笑っている。
「うわぁ、どんどん溢れてくる。Gスポ完璧に捉えてるもん、堪んないよね?」
 そう言いながら、指を複雑に蠢かす。AVでよく見る激しい動きじゃなく、ぐっ、ぐっ、とあそこの中を押し上げるような手つきだ。
「……ふっ……くっ……!! んんっ、ふ、ぅっ……!!」
 栞さんの呼吸が、段々と苦しそうになっていく。
「どうほら、こんな濡れちゃって。興奮してるんでしょ? 僕らのチンポ、欲しくなってきたんでしょ?」
 三橋は指を動かしながら、栞さんの目を見て尋ねた。栞さんは相変わらず強い瞳をしたまま、でも時々、その目が泳ぐ。たぶん、その瞬間彼女は絶頂してるんだ。知識の乏しい僕にさえそれが判った。となれば当然、三橋達も調子づく。
 とにかく、音がすごかった。三橋が指を動かすたびに、ぐちゅっぐちゅっという水音が立つ。栞さんの愛液……そう思うと、いよいよアソコが熱くなる。
 岡村が栞さんの右腿を引きつけ、三橋が左腿を押さえながらの『手マン』となると、栞さんの呼吸もいよいよ荒くなりはじめた。
「はぁっ、はぁっ……はあっ!!」
「へへへ、グチョグチョだね先生。いい加減我慢しないで言っちゃいなよ、チンポ欲しいって!」
 掌を上に向けたまま激しく動かしながら、三橋が囁く。
「…………!!」
 栞さんは答えない。代わりに白い内腿が、ピクピクと反応を示す。
「ほーら、噴いちゃえっ!!」
 そう叫びながら三橋が指を抜くと、栞さんの赤い割れ目から、ぷしゅっと液体が噴きだしていく。潮吹き、だ。AVで見たことのある光景だけど、目の前で起きるとやっぱり興奮度合いが違う。栓の役目を果たしていた指が抜けたせいか、むうっ、と嗅ぎ慣れない匂いが漂ってくるのも、生の現場ならではだ。生臭くて、本当なら悪臭と思ってもいいはずの匂い。でも、なんだろう。妙にアソコがムズムズする。すごく、興奮する匂いだ。
「ふうっ……ふっー……」
 栞さんは、やや視線を落とし気味にしたまま、ひどく荒い息を吐いていた。岡村と三橋の小さな手に掴まれた両脚が、細かに震えている。そして何より目を引くのは、潮を噴いたばかりのアソコだった。
 ビラビラの部分が充血してはいるけど、思ったより綺麗な形だ。何度も悠馬君達に『使われて』いるはずなのに、グチャグチャにはなっていない。未経験の大人のアソコ、と言われても信じられるぐらいだ。でも代わりにそこは、大量の愛液で濡れ、ヒクヒクと喘ぐように開閉を繰り返していた。
「あーあー、オマンコひくつかせちゃって。今日はずいぶん頑張るね、先生?」
 三橋が栞さんのアソコを見下ろして笑う。そしてその笑い顔は、次に僕の方を向いた。
「やっぱりそれって、新しいギャラリーがいるから?」
 その言葉で、場の視線が僕に集まる。岡村も、悠真君も、僕を見て口元を緩ませる。
「はははっ! んだよ、すげー勃起してんじゃん。ズボン膨らんでんぞ?」
 岡村がゲラゲラ笑う。確かに、勃っているのは自覚があった。ズボンに圧迫されて、痛いぐらいになっているのも。
 ただ……それを栞さんに見られるのは、すごく恥ずかしい。
「…………。」
 栞さんは、伏せがちな視線を少し上げて、前髪の間から僕を見ていた。
 栞さんは魅力的だ。ただ美人なだけじゃなく、どこか陰があるせいで、つい“覗き込みたく”なってしまう。あの悠真君ですら興味を惹かれるのもわかる。
 ただ、それに賛成できるかは別の話だ。こんな事は間違ってる。学校の先生に言っても、親に話しても、とんでもないと怒られるだろう。やっちゃいけないし、見過ごしてもいけない。頭ではそう解ってるのに、口も、身体も動かない。この場の空気に、呑まれてしまっている。
「……そうだ。せっかくだからさ、あいつのアレ、しゃぶらせようぜ!」
 岡村が悪い笑みを浮かべて、そんな事を言う。
「面白いね。よし、先生。やれよ」
 悠馬君も笑って、有無を言わせぬ口調で栞さんに命じる。
「えっ……!?」
 僕と栞さんは、同時に声を上げた。まだ声変わりしていない僕と栞さんの声のトーンはよく似ていて、完全に被る。
「え、じゃないって。いつもオレらにやってるみたいにしてみろよ!」
 岡村は、栞さんの手を引いてベッドから下ろす。床に足をついた栞さんは、バツが悪そうな表情を浮かべ、ゆっくりと僕に近づいてくる。
「あ、あっ……」
 一方の僕は、未だに状況を呑み込めていない。
 傍観者から、いきなり主役になってしまった。あの、栞さん相手に――。
 戸惑っているうちに、とうとう栞さんが僕の目の前に来る。近くで見ると、本当に綺麗だ。テレビでみるアイドルやアナウンサーより、もっと顔立ちが整っているかもしれない。
「あ、あのっ……!」
 僕は意味もなく声を出す。俯きがちだった栞さんの視線が上向き、僕の瞳とぶつかった。とても静かで、澄みきった目だ。僕の顔がそのまま瞳に映り込むぐらい。
「…………。」
 栞さんは俯き、僕のズボンをずり下げる。トランクスに引っ掛かりながらぶるんと飛び出たアレは、今までにないぐらい勃起していた。12センチか13センチか……大人に比べれば、全然な大きさなんだろうけど。
 栞さんが薄桃色の唇を引き結ぶ。そしてゆっくりと前屈みになりながら、真っ直ぐに突き立った僕のアレを咥えこんだ。
 ぬるっ、とした温かさが、僕の大事な部分を包み込む。
「あああっ!!」
 甲高い声が出て、三橋達に笑われる。恥ずかしい。でもそれより、興奮の方が大きかった。生温かい粘膜が敏感な部分に纏わり付いてきて、ゾクゾクする。弾力のある舌がチロチロと先端を嘗め回してくると、尿道が強張る。射精の感じが、ぐんぐん近づいてくる。
 栞さんは今、どんな気持ちだろう。そんな事に思いを巡らせる余裕すらない。
「ふあっ、すごい……!!」
「へへへ、気持ちーだろ。オレらがガッツリ仕込んだからな!」
「そうそう。最初の頃は恥ずかしがって、全然咥えらんなくてさ。悠真が髪掴んで無理矢理やらせたんだよね」
 僕が声を上げると、それを待っていたように岡村と三橋が語りはじめる。そんな自慢も、今は興奮材料にしかならない。
 栞さんを汚したくない。でも射精感が限界だ。なんとか我慢しようと視線を巡らせると、目の前に広がった栞さんの背中が目に飛び込んでくる。
 白くて、大きい背中だ。肩甲骨や背中の筋がはっきり浮き出ていて、着替えの時に見るクラスの女子のそれとは全然違う。身体のしっかり出来た大人の女性……僕の憧れのお姉さんだった彼女が、僕の物をしゃぶってるんだ。
 その気付きが、最後のトドメになった。尿道が痛み、焼けるように熱くなる。
「あ、もう……出るっ!!」
 そう叫ぶと同時に、アレが痙攣する勢いで射精が始まった。液体だけじゃない。ゼリーのような感触の物が、いくつもいくつも尿道を通りぬけていく。
「んっ、んんっ!!」
 栞さんから、くぐもった声が漏れた。でも、口を離そうとはしない。何秒も続く射精の間、栞さんは片手でしっかりと僕の分身を支え、精液を口に受けつづけていた。
 ようやく射精が終わり、栞さんが顔を上げる。するとその口の端から白い筋が垂れていて、それがメチャクチャ興奮した。
「よし、全部受け止めたな。いつもみたいに見せてみろ」
 悠馬君が、かすかな笑みを浮かべながら命じる。クラスの女子なら泣いて喜びそうな、クールな命令。それを受けて、栞さんは……ゆっくりと口を開いた。口の中……舌の上に、自分でも驚くような量の精液が乗っている。
 こんな量を、口で受け止めたのか。そしてその事実を相手に晒すのは、彼女にとってどんなに恥ずかしいことだろう。
 実際、栞さんの頬は赤くなっていた。屈辱からか、恥じらいからか、あるいはその両方か。
「ははっ、スゲー量!」
「ホントだ。ひょっとして、これが精通だったり?」
 僕の横へ来た岡村と三橋が、栞さんの口内を覗き込んで笑う。さすがにこれが精通ってわけじゃない。栞さんによく似たアイドルの写真集で、たまらずオナニーした経験がある。でも、ここまで大量に出たのは初めてだ。
「よし。じゃ、飲み干せよ」
 悠馬君が続けてそう命じる。すると栞さんは、口を閉じてから喉を蠢かし、んぐっ、という音をさせた。飲み込んだんだ。あんな量の精液を。
「美味しい? 先生。」
 悠真君がそう問うと、栞さんは眉を顰めた。おしっこの穴から出るドロドロしたものが、美味しいわけがない。栞さんは仕方なく飲んだに決まってるんだ。弱みを握られていて、逆らえないから。
「良かったな。これで、お前の匂いも覚えてもらえたぜ!?」
 岡村がそう言って笑う。するとその後ろで、テーブルに肘をついていた悠馬君が立ち上がった。
「フェラのついでに、セックスもさせてやろうか?」
 淡々とした口調で、衝撃的な発言が飛び出す。僕と栞さんが目を見開いたのは、同時だった。
「え……?」
「まだ勃起したまんまだし、もう一発いけるだろ? フェラなんかよりずっと良いぞ」
 ニヒルな笑みを浮かべる悠真君。冗談を言っている感じじゃない。
 確かに、僕はまだ射精できる。あれだけ出したばかりなのに、アレが少しも柔らかくならない。ある程度の刺激があれば、またかなりの射精ができる確信がある。
 でも。
 それだけは駄目だ。セックスだけは。最後の一線だけは越えちゃいけない。
「……僕、いいよ」
 口ごもるように、そう言う。フッ、と笑い声がした。岡崎か、三橋か、それとも悠真君か。
「そ。じゃあ、いつも通り俺らでやろっか」
 硬い表情の栞さんを囲いながら、3人の悪魔が笑った。


       ※        ※        ※


 ベッドへ仰向けで横たわる栞さん。それを追うように、服を脱いだ悠真君もベッドへ上がる。白くて、すごく綺麗な体だ。女子に黄色い声を上げられるだけのことはある。
 彼のアソコは勃起していた。栞さんを前にして、興奮してるんだ。年頃の男の子としては普通のことだけど、どこか達観した風な悠真君だと不思議な感じがする。
「先生の処女奪った時も、この体位だったよな。あの時は手縛ってたけど」
 悠真君は、栞さんの両脚をMの字に曲げさせながらそう言った。
「…………!!」
 栞さんの表情が険しさを増す。
「そうそう、その顔もまんま同じ。で、その後、すげぇ暴れたんだよね。腰の力だけで、ハメてる俺を振り落としてさ。さすがオトナだなーってビックリしたよ」
 しつこく栞さんを犯した話をするのは、自分が興奮するためだろうか。それとも新参者の僕に自慢してるんだろうか。
 聞きたくない。知りたくない。初恋の相手が犯された話なんて。
 悠真君は笑いながら、勃起したアレを割れ目に宛がった。大きさは僕と変わらない、十センチちょっとだろう。ただ僕のと違って、皮がエラの張った先端部分の下まで剥けていた。何度もセックスしているとそうなると聞いた事があるけど……やっぱり、そうなんだろうか。
 アレが前後に擦りつけられ、愛液が纏わりついていく。肌色の肉がヌラヌラ光っていると、妙にエロい。本能的に、これから男女の『営み』が起きるんだと理解できてしまう。
「いくよ、先生」
 悠真君が薄笑みを浮かべた。そして強張る栞さんの気配を楽しみながら、ゆっくりとアレの先を割れ目に沈めていく。沈み込むほど、栞さんが息を詰まらせ、逆に悠真君は息を吐き出していく。
「あー、キモチいいー……」
 悠真君の腰が、栞さんの茂みにくっついた。奥まで入ったんだ。そこから悠真君は、ゆっくりと腰を引き、前後に腰を動かしはじめた。
 膝を折り曲げた大人の女性に、小さな子供が覆い被さって揺れ動く。まるで子供がお母さんにプロレスごっこでもしてもらっているみたいだ。
 そう、見た目だけなら。でもそれ以外のあらゆる情報が、目の前の行為を『セックス』だとはっきり示している。
 パン、パン、と肉のぶつかる音。ぬちゃっぬちゃっという湿った水音。真剣味を感じる、押し殺したような呼吸。そして、匂い――汗とは違う、もっと生々しいもの。
「すげー、腰止まんないや。やっぱオナ禁して3日ぶりにハメると、メチャクチャ良いね」
 悠真君は激しく腰を遣いながら、笑みを深めた。
「知ってる先生? この歳でオナるの我慢すんのって、すごい大変なんだぜ。3日目の今朝なんか、クラスのガキ共まで美味しそうに見えちゃってさ。帰ったら先生に思いっきりぶちまけようと思って、一日耐えたんだぜ」
 声も、話す内容も、とてもあの悠真君だとは思えない。クールで爽やか、王子様と言われてるあの悠真君が、内心ではクラスメイトに欲情してたなんて。昨日までの僕に話したって、到底信じないだろう。
「ふうっ、ふうっ……!!」
 栞さんは下になって犯されながら、悠真君に強い瞳を向け続けていた。情けない顔など見せない、という意思が感じられる目だ。でも悠真君は、その目を愉しんでいる。パンパンという肉のぶつかる音が、どんどん早くなっていく。
「ああ駄目だ。先生、出すぞっ!!」
 悠真君は、栞さんの目を覗きこみながら宣言する。一方の栞さんは、強い眼のまま唇を噛みしめた。その、直後。
「ううっ!!」
 小さな呻き声と共に、悠真君が動きを止めた。そして彫像のように綺麗な腰を、小さく痙攣させはじめる。
 射精してるんだ。栞さんの膣内に。そう実感すると、胸がしくしくと痛んだ。
「ふーっ……」
 長く思えた数秒の後、悠真君が腰を引いた。少し張りをなくしたペニスがずるりと抜け、割れ目から白い液があふれ出す。相当な量だった。僕が普段オナニーして飛び散る量より、ずっと多い。
「うへー、すげぇ出したな王子様!?」
 岡村が茶化すように笑った。
「やっぱ三日ぶりだと溜まってるな。生ハメってのもまた気持ちイイし」
 女性の膣の中に射精したというのに、まるで緊張感のない会話が続く。僕より進んでる彼らなら、知らないはずないんだ。そんな事をしたらどうなるか。
「あ、あのさ……中に出すのは、まずいんじゃあ……」
 僕は、恐る恐るそう声を掛けた。場の空気が少し変わる。内輪で盛り上がっているところに部外者が割って入った時の、あの白けた空気。僕は昔から、この空気がすごく苦手だ。だから近所の子が遊んでる時にも、『よせて』の一言が言えなかった。言えなくて、本の世界に逃避していたんだ。
「ああ、それなら大丈夫。先生、妊娠しないクスリ飲んでるから」
 悠真君は、ベッドの上から僕を見下ろしてそう答えた。岡村と三橋が肩を竦めるようにして笑う。まただ、この疎外感。この3人が知っていて、僕が知らない事実が、あといくつあるんだろう。
「さて、交替だ」
 悠真君はそう言ってベッドを降りながら、岡村とタッチする。今度は岡村が、栞さんを犯すんだ。
「はぁ……はぁ…………」
 栞さんは真上を向いたまま、静かに胸を上下させていた。僕が横顔を凝視しているのは多分気付いてるんだろうけど、こっちに視線を向けようとはしない。
「さーて先生、次はオレだ。昨日シコっちまったけど、安心しろ。オレって精力スゲーから。ま、嫌ってほど知ってるだろうけどな!」
 岡村はそう言って、反り返るぐらい勃起した物を扱き上げた。


       ※        ※        ※


 岡村は、栞さんを犬みたいに四つ足で這わせ、後ろから犯した。栞さんの腰を掴んだまま、激しく自分の腰をぶつけるやり方だ。これも体格差があるせいで、前後に揺れる栞さんのお尻に、岡村がしがみついているように見えてしまう。
 でも意外に、その犯し方が栞さんを追い詰めているみたいだった。
「はあっ……はあっ………はあっ!!」
 這う格好のまま、髪の結った部分が上を向くぐらいに俯く栞さん。その口から漏れる呼吸は、だんだんと荒くなっていく。
「しっかし、マジすげーなこのマンコ。突くたびにキュウキュウ締め付けてくるわ。もう何遍もやりまくってんのに、ヤればヤるほど具合よくなってんじゃね?」
 岡村は満面の笑みで腰を振りたくりながら、大声を轟かせた。
「こなれてきてる、ってのはあるかもね。ネットの体験談とか見ても、夫婦が毎日セックスするうちに具合よくなったって例はあるみたいだし」
 三橋がスマホを弄りながら、淡々と答える。
 ガサツな岡村と理屈っぽい三橋。改めて思うけど、変な取り合わせだ。でも、悠真君がこの2人を選んだ理由はわかる。栞さんを犯すパートナーとして考えるなら、体力馬鹿でガツガツ犯りまくれる岡村も、知識欲旺盛で色々と責め方を工夫する三橋も、クラスじゃピカイチの逸材だ。
「ああああイクッ!!!」
 デカイ声で喚きながら、とうとう岡村が射精を始めた。腰を止めて射精に専念した悠真君とは違い、腰の動きは止めない。浅く打ち込みながらの射精だ。
「うひょー、キモチいいーっ!!」
 グチュッグチュッと粘ついた音をさせながら、岡村はニヤけきっていた。その顔だけで、射精しているのが見て取れる。嫌だ。心にドロドロしたものが生まれてしまう。
「ふうーーっ。やっぱ兄貴のAV観てシコるより、ナマの女ハメた方が10倍キモチいわ!」
 最後の最後まで声量は下げないままに、岡村が逸物を抜き出した。抜く勢いが強くて、辺りに白い飛沫が飛び散っていたし、半勃ちのアレからは塊に近い精液が垂れて、シーツに重い音を立てた。
 そして、栞さんの割れ目からまた白いものが垂れる。
「すげぇな、2発でコレかよ。オレ昨日見てたの、10人の男優にオンナ1人がヤラれるビデオなんだけどさ、そのシメのシーンと同じぐらい出てんぜ」
「AV男優って下積み長いらしいし、活躍できる頃には結構トシだからね。僕らみたいな思春期入りたてに、射精量じゃ勝てないでしょ」
 岡村の言葉を受けつつ、今度は三橋が栞さんの腰を引き寄せる。

 こうして栞さんは、3人に代わる代わる犯された。一巡目でたっぷりと射精して満足してからは、それぞれが余裕を取り戻し、少し凝った責め方をするようになった。
 例えば悠真君なら、1巡目とは逆で自分が寝そべり、栞さんに跨るようにして腰を使わせたり。岡村なら、また後ろから挿入しつつ、抱きつくようにして胸を揉みまくったり。三橋なら、向き合う形で犯しながら、ローターという道具でクリトリスを虐め、自分が射精するまでに何度も何度も小さくイカせたり。
 こんな事を繰り返されれば、栞さんも無反応ではいられない。
 上品だからか、それとも子供の前だからか、アンアンとAVみたいに喘ぐことはない。代わりに息が荒くなる。口を引き結んでいた間は、んふーっ、んふーっという鼻からの息が。そのうち口が開きだしてからは、はあーっ、はあーっ、という、湯気まででそうな息を漏らしはじめる。
 身体の反応も生々しい。
 いつからか、太股の筋肉は犯される間じゅう、グニグニと蠢くようになっていた。足の5本指は必ずといっていいほど揃っていて、かなり力が入っていることがわかった。愛液の出方も普通じゃなくて、内腿から膝の辺りまでがテラテラと光っていた。
 そして、乳首だ。最初はツンと尖っていて、せいぜい指で転がされるくらいの大きさだった。でも特に岡村の指で何度も何度も擦られるうちに、どんどん尖り方が増してくる。そして1時間が経つころには、親指と中指で横から挟み潰せるぐらいになっていた。
 こうした変化は、3人にもすぐに見つけられ、ここぞとばかりに言葉責めのネタにされた。そして栞さんも根が真面目だから、言葉責めを受けるといちいちそれに反応してしまう。
『太股がヒクヒクしてきてるよ。そんなにイイの?』
 そう囁かれれば、下半身に意識を集中してしまうらしく、胸への責めで肩を震わせてしまう。
『乳首がすげぇ尖ってきてるぜ。やらしいなぁ先生?』
 その言葉で胸に注意を向けられれば、下半身の突きこみでの反応が増す。まさに、いいオモチャだ。

 昼過ぎから始まったセックスの中で、栞さんは何回、悠真君達にイカされたんだろう。
「あれ、もうこんな時間かぁ」
 三橋のその一言で時計を見ると、そろそろ3時半になろうというところだった。同じく時計を見上げた栞さんが、はっとした表情になる。
「は、離れて……そろそろ、服を着ないと……!」
 栞さんは、正面からしがみつくようにして腰を振る岡村に言った。
「いいじゃん。もうすぐイキそうなんだからさ」
「駄目っ、早くして!!」
 ひどく慌てた様子で岡村を引き剥がし、ベッド脇のウェットティッシュで股間を拭いはじめる。岡村も不満そうにしながら、同じく股間を拭きだした。悠真君はすでにちゃんと服を着終えていて、部屋の中に消臭スプレーを撒いている。
「……何かあるの?」
 僕は、スマホを見ながらズボンを履いている三橋に尋ねた。
「そろそろ、悠真のママが帰ってくるんだよ。ナントカ教室の生徒と一緒にね」
 その言葉の直後、インターホンが鳴り響く。
「あーくそっ、今日は早ぇな!」
 まだ服を着ていない岡本が焦る。栞さんも姿見で服装や髪型をチェックしつつ、体に香水のようなものを振り掛けている。
「はーい。今開けるよ」
 部屋の中をちらりと確認しつつ、悠真君が開錠ボタンを押し込んだ。


「先生、今日もありがとうございます」
 悠真君のお母さんは、そう言って深く頭を下げた。歳はうちの母親より少し上みたいだけど、悠真君の生みの親だけあって、すごく綺麗な人だ。そしてなんだか、おっとりとしたお嬢様っぽい雰囲気もある。
「いえ。こちらこそ」
 栞さんはすっかり『先生』の表情に戻り、あらかじめ悠真君が言い含めていた通りの苦手分野について話をしていた。悠真君のお母さんは、ニコニコしてそれを聞いている。
 一階のリビングからは、何人かの賑やかな話し声が聴こえていた。
「母さん。僕、皆に挨拶してくるよ」
 悠真君はお母さんにそう一声かけ、いつもの王子様らしい顔で階段を降りていく。その直後、リビングの方からキャーッと黄色い声が響いてきた。学校の教室で、聞き飽きるほどに聞いた歓声だ。
「……相変わらず、人気ですね」
 栞さんが、悠真君のお母さんに言う。表面上は笑みを浮かべて。
「ふふふ。ありがとうございます」
 お母さんの方は、幸せそうに笑うばかり。自慢の息子に、問題などあるわけがない――そう信じきっている感じだ。もっとも、あの悠真君の親ならそうなるだろう。猫を被っている悠真君は、人畜無害な優等生としか思えないんだから。

 悠真君のお母さんが部屋を後にし、階段を下りていった後。
「ふーっ……危なかったな」
 岡村は大きく息を吐き出し、抑えめの声で呟いた。
「やっぱ夏場はいいよね。ちょっと汗臭かったりヘンな匂いしても、不思議がられないから」
「だな。直前にスプレーしたぐらいじゃ、完全に匂い誤魔化せないし」
 愛液まみれのティッシュが入ったゴミ箱を見つつ、三橋と悠真君が笑う。
 すっかり場の空気は変わった。お母さん達も帰ってきたことだし、ここでお開きだろう。僕はそう思った。見ていただけなのにひどく疲れていて、早く家に帰って横になりたかった。
 でも、まだまだ終わりなんかじゃなかったんだ。
「さてと……中途半端なトコで終わったから、まだチンポビンビンだよ。再開しようぜ先生」
 そう言うが早いか、岡村がズボンを脱いで、勃起しきった物を露出させる。栞さんが目を見開いた。
「ほら早く。硬くなりすぎてて痛ぇんだって!」
 岡村はそう言いながら、フローリングの上でまた栞さんのスカートを脱がしに掛かる。
「ちょっ…と、やめて。またいつお母様がいらっしゃるか、わからないのよ!?」
 栞さんは当然反抗するけど、岡村の手は止まらない。
「大丈夫だって、足音ですぐわかるから。あんま抵抗してっと、『あの映像』ネットに流しちまうぞ」
 岡村が耳へ吹き込むようにそう言うと、栞さんの表情が固まった。岡村の手首を掴んでいた手が、ゆっくりと開いていく。
「そうそう。大人しくしてんのが一番だって」
 岡村は笑いながら栞さんの左脚を上げさせると、ショーツを横にずらす形で挿入を果たした。
「んっ!!」
 悔しそうな顔で小さく呻く栞さんと、頬を緩める岡村。その顔は対照的だった。

 そしてまた、セックスが始まる。
 今度は、パンパンという肉のぶつかる音はしない。ぬずっ、ぬずっ、という感じの、すごく地味な挿入の音がするだけだ。
「ははっ。焦らされてビンビンの状態だと、余計気持ちいいぜ!」
 岡村は興奮して喘いだり笑ったりしてるけど、栞さんはずっと息を殺している。フローリングに這い蹲って右耳をつけ、床へ視線を向けながら。多分、誰かが2階へ上がってこないか必死に探ってるんだ。もちろん悠真君達もそれは警戒してるし、僕はあえてドアの前に立って、いきなりは開けられないようにガードしてる。でも、栞さんにしてみれば気が気じゃないんだろう。万一この光景が見つかったなら、一番怒られるのは栞さんだ。僕らと違って、大人だから。責任を自分で負わなければいけない立場なんだから。
 でもそういうプレッシャーは、栞さんから確実に余裕を削り取っていく。

 2回戦が始まってから、何分が経った頃だろうか。
「ははっ。なんだよ先生、マンコがすげぇヒクついてきてんぜ」
 岡村が、嬉しそうにそう言った。その言葉で改めて見れば、淡々と繰り返されていたはずの光景は、かなり変わっていた。
 上半身裸の岡村は、冷房が効いている中でも汗びっしょりだ。となれば当然、犯されている栞さんだって涼しい顔はしていない。頬は赤いし、横顔には目で見えるぐらいの汗が何筋も流れていて、閉め忘れた水道みたいに顎から滴りつづけている。床に這い蹲るポーズは変わらないけど、もう明らかに階下の音は聞いていない。右耳を床につけているというより、こめかみを擦りつけて何かを必死に誤魔化している感じだ。支えとなっている左手も、たまに床を掻くような仕草をしていて、堪らない感じが伝わってくる。
 そして一番違いがあるのは、やっぱりあそこの付近だった。
「あそこグチョグチョだしよ、感じてんだろ?」
 どこか自慢げに岡村が囁く通り、栞さんは明らかに濡れていた。抜き差しを繰り返される割れ目から、左の太股を伝う形でかなりの汁が垂れている。それはお腹を流れる汗と交じりあって、フローリングに小さな水溜りを作っていた。
「んっ、んっ…………!!」
 栞さんは何も答えない。口を閉じ、鼻から荒い息を出しながら、近くの壁を睨んでいるだけだ。
「あああすげぇ、いくっ……! いくぞ、先生……!!」
 生々しいピストンの果てに、岡村が呻き、腰を振りが緩やかになる。射精だ。
「あああ、すげぇ……すげぇ量出てるよ、なぁ先生?」
 岡村はいちいち栞さんに語りかけ、相手が嫌がるのを楽しんでいた。そういえば元々、気に入った女子をからかうのが好きな奴だったっけ。
 岡村のペニスが抜かれれば、やっぱり割れ目から白いものがあふれ出す。
「はぁっ……はぁっ……」
 栞さんと岡村の荒い息が、静まり返った部屋に響く。でも、当然これで終わりなんかじゃない。
「じゃ、次は僕でいいかな?」
 三橋がそう言ってズボンを脱ぎ捨てる。こっちの勃起具合も相当だ。三橋はそのまま栞さんの背後に寝そべり、下半身を密着させた。
「わ、すっごい汗。背中も太股もヌルヌルじゃん。声出せない状況でヤられて、余計にエネルギー使っちゃったとか?」
 そんな事を言いながら、栞さんの左の太股を抱え上げ、開いた足の間に遠慮なく勃起したものを沈み込ませていく。亀頭部分が飲み込まれる瞬間には、ぶちゅうっ、というなんともいえない音がした。栞さんの女の部分が、表面まで水気たっぷりだという証だ。
 アソコが痛い。大人の女性が悔しそうに犯される場面を見ながら、勃起してしまっているらしい。
 皮膚につくような汗の匂い、生臭い男と女の匂い、夏の日差しとは無関係な暑さ。部屋の中心から一番強い僕さえ、それに当てられてしまっている。
 こんなの、ダメだと思ってるのに。わかってるのに。
「すごい。子宮が下りてきてるって奴かな、簡単に奥まで届くよ。ホラここ、コツコツ当たってるでしょ?」
 三橋も岡村と同じく、しつこいぐらい栞さんに意見を求めていた。栞さんはやっぱり答えない。答えないままに、ちょっとずつ変わっていく。
 僕の位置からは、全部見えた。子供ペニスを突き込まれるたび、栞さんの内腿に筋が刻まれるのも。シャツから覗く、白い腹が蠢くのも。抱え上げられた左足の先が、見えない壁を蹴り込むように強張るのも。とうとう普通には声を抑えきれなくなり、支えだった右手で口を押さえだすのも。支えを失ったせいで、栞さんの大きな身体が、いよいよ『されるがまま』に揺れはじめるのも……。
 3人は、繰り返し、繰り返し、栞さんを犯し続けた。一回あたりの時間は10分未満とはいえ、いったい何周したんだろう。僕は、正直呆れ返った。僕だって同じ年頃だから、裸の女性を前にムラムラする気持ちはわかる。でもそれにしたって、底がなさすぎる。
 その性欲をまともにぶつけられる栞さんは、たまったものじゃない。
「はぁっ、はぁっ……はあっ、はぁぁっ…………!!」
 抑え気味ではあるけど、そのぶん重苦しく、熱い息が吐き出される。感じているのは疑う余地もない。

 結局この日のセックスが終わったのは、下の階からカレーのいい匂いがしてきた頃だった。時計を見ると6時半過ぎ。3人は、再開してから実に3時間ほど、ぶっ通しで栞さんを抱いていたことになる。
「ふーっ、そろそろ夕飯か」
「ガッツリやったなー。チンポヒリヒリするわ」
「なんかメチャクチャ興奮したよね、バレるかもって思うと。先生もそうだったっぽいけど」
 3人は座り込んだまま笑い合う。その視線の先では、ようやく両脚を閉じられた栞さんがぐったりと横たわっていた。そのお尻の間……完全にヨレたショーツの横からは、目を疑うような量の精子が溢れている。
「ほら先生。いつまでも浸ってないで、後始末しないと」
 悠真君が明るい口調でそう言うと、栞さんの肩がぴくりと動いた。そしてゆっくりと立ち上がると、悠真君が置いたクッキー缶の蓋に跨り、指で割れ目を開いて“中身”を掻き出す。動きの迷いのなさから考えると、いつもやっていることなんだろう。
「スゲー、これ3人で出した最高記録じゃね?」
「ああ、こんなに出るんだ。こうして征服感味わえるから、生ハメってやめらんないよな」
「そうそう。他の奴が出した穴でやるのって抵抗あるけど、ゴム有りじゃこの瞬間が見られないし」
 蓋に溜まった精子を眺めながら、3人が笑い合う。
「…………ッ!!」
 栞さんだけは、苦々しい表情で唇を噛む。
 その4人の表情は、支度を整えて降りていった1階ではガラリと変わった。
 子供は子供らしい、先生は先生らしい表情に戻る。特に悠真君は、普段学校で見せている、人畜無害な王子様の顔そのままだ。
 (……あれは、夢だったのか……?)
 さっきまで素顔を見ていた僕でさえ、そう思ってしまうほどの演技力。
 改めてゾッとする。悠真君は、本当に底が知れない。

「結局、一回もやんなかったな。匠」
 家を出て間もなく、悠真君がそう話しかけてきた。振り向くと、素の顔をした彼がいる。相変わらず底知れない雰囲気だ。
「……うん。なんか、いざとなったら怖くって」
 僕は悠真君の目を見ながら、搾り出すように言った。目を逸らしながら言えば、一瞬でウソを見抜かれる気がしたから。
「ふーん。ま、それが普通なのかもな。オトナ相手だし」
 頭の後ろで手を組む悠真君に、気負った様子はない。あれだけの事をした後なのに。
「……ゆ、悠真君は、怖くないの? 栞さんに……あんな事して」
 僕は意を決してそう尋ねる。どうしても聞きたかった。
 悠真君は、少し意外そうな顔をした後、空を見上げる。濃い紫色で、まだ完全な黒というわけじゃない。でも、澄んだ部分もない。まるで、悠真君自身のように。
「怖いっていうか……ドキドキしてるかな」
 悠真君の第一声は、それだった。
「頭がよくて、品があって、しっかりしてて。今時、あんな真っ当な女子大生なんてそういないと思う。だから、それを俺らみたいなガキがどこまで変えられるか……楽しみじゃん」
 その言葉に、岡村と三橋もニヤついた顔になる。
「そうそう。先生、順調にエロくなってきてるしね。最初の頃は、いかにも処女って感じでなかなか濡れなかったし」
「今日は特に濡れまくってたよな。なんでだろうな?」
 盛り上がる2人を見てふっと笑い、悠真君は僕に向き直った。
「でさ、匠。これでお前も、共犯だよな」
「えっ……!?」
 胸がざわつく。
「おっ、有無を言わせずか。気に入られたねぇ!」
 三橋が面白そうに眼鏡を押し上げた。岡村も意外そうな顔だ。その反応からして、彼らの時より強引な誘いらしい。
 なんで、僕に限って。僕はこの続きを望んでない。僕の存在に気付いた時の、栞さんのピリピリした雰囲気が忘れられないんだ。昔馴染みの僕に見られるのは、栞さんにとって望ましくないに決まってる。だから僕は、もうあの部屋に行くべきじゃない。なのに、なんで。
 そこまで考えて、ふと悠真君の視線に気付く。彼は、じっと僕の眼を見ていた。心の内まで見透かすような、冷めた瞳。とても同い年とは思えない。
 彼は、全部知ってるんじゃないか。僕と栞さんが知り合いだって事も、僕が栞さんに惚れている事も。だとしたら、今まであまり接点のなかった僕を誘ったのもわかる。
 もし、そうだとしたら……逃げられない。もし共犯という言葉を認めずに立ち去ったなら、きっと彼は報復してくる。僕の学校での立場が悪くなるぐらいならいいけど、その子供特有の残酷さが栞さんに向いたなら、最悪だ。考えたくもない。
「うん……」
 僕が迷った末に頷くと、悠真君はパッと笑顔になる。
「じゃ、また来いよ。メールするから」
 最後のその言葉は、僕にとって呪いに等しい。
 彼からのメールに応じなければ、裏切りだと取られるだろう。だから、行くしかない。

 でも本当は、それだけじゃなかった。
 乱れる栞さんを見て、興奮している自分がいたんだ。
 最初は信じられなかった。初恋相手が同い年の奴に犯されたなんて、ムカムカした気持ちになるし、胸がざわつく。でもその一方で僕は、痛いぐらいに勃起してたんだ。家について横になっても、アレが膨らんで寝付けない。だから僕は、操られるように自慰に耽った。
「くそっ……くそっ! くそっ……!!!」
 栞さんが穢される姿を思い出しながら、何度も、何度も、何度も。
 ドス黒い気持ちを抱えながらのオナニーは、最悪だったけど、今までにない量の精子が出た。ティッシュを4重にして受けても、まだ染み透っていくぐらい。その量はきっと、あの3人にだって負けていないはずだった。



       ※        ※        ※



 それから僕のスマホには、頻繁に悠真君からのメールが届くようになった。夏休みに入れば、それこそ毎日のように。事実上の召集命令だから、無視はできない。とはいえ呼び出されても、僕は『行為』には加わらなかった。いつも部屋の隅で見ているか、金を預かってアイスやジュースの買出しをやるかだ。
 悠真君は、僕に行為への参加を強制しない。それは有り難い一方で、あえて僕に見せつけているようにも思え、複雑な気分にもなった。

 何度も参加していると、色んなことが解ってくる。この間の岡村と三橋は常連だ。クラス一の体力馬鹿と頭脳役として、悠真君の側近的な立場にいる。そしてそれ以外にも、不定期に顔を出す準固定メンバーが何人かいるようだ。そいつらは全員、栞さんに関する事を口外しないと誓い合っていた。栞さんを嬲るという、最高の『遊び』を終わらせないために。
 その『遊び』のターゲットは、本当に不幸だ。今はスマホで少し調べれば、エッチの知識なんていくらでも出てくる。栞さんは、その仕入れた情報を試すための、格好のオモチャにされたんだ。
 前々から、こういう実験は続いていたらしい。女性の性感帯の基本である『クリトリス』や『陰唇』、あそこに浅く指を入れ、臍の方へ曲げた辺りにある『Gスポット』から開発を始め、さらにクリトリスから尿道の間にある『Uスポット』、尿道から膣の間にある『カリナ』と呼ばれるスポットを目覚めさせよう……という頃に僕が入ったみたいだ。
 そのせいか、最初はだいたいこのこのUスポットやカリナへの刺激から始まった。どうやらそこは、刺激されるとかなり気持ちいい場所みたいだ。クリトリスや陰唇を含めて、舌や指で延々と刺激されると、栞さんのあそこは『どんどん濡れてくる』らしいから。
 そうして濡れれば、膣の中の刺激が始まる。とはいっても、いつもGスポットばかりを責めるわけじゃない。

「今、Gスポット押さえてるんでしょ……で、そのちょうど裏側が『裏Gスポット』だってさ」
 大股を開かされた栞さんのあそこに、2人がそれぞれ指一本ずつを差し入れている。そしてその2人に、三橋がスマホを見ながら指示を飛ばしていた。
「んー……ここか? 裏っつーとこの辺だよな?」
「お、今ビクってしたぞ。そこで当たりっぽい!」
「よーし、じゃあ『アダムGスポット』ってのも探してみよっか。第二関節を折り曲げて当たる部分から、さらに1.5センチぐらい奥へ指を侵入させて、指の腹が恥骨に当たる部分――だってさ」
「また細けぇな……要するに恥骨らへんだろ? なんか感覚でわかるわ。指で中グリグリしてっとき、恥骨あたり擦ると明らかに反応違ってたし!」
「さすが。ちなみに責め方は、Gスポットと同じ感じで、指の付け根を支点にしてタップするのがいいらしいよ」
「任しとけって、その辺りのコツは完璧に把握してるから。何遍もGスポ責めやってるしな」
 そんな会話を交わしつつ、膣内のいくつものスポットを刺激しまくるんだ。
 しかも、それだけじゃない。上半身は上半身で、胸へのマッサージが施されていた。こっちもスマホでやり方を確認しつつ、一番効くらしいやり方を実践している。
「乳房は脂肪の塊だから、外側から時間をかけてじっくりと揉みほぐすこと。そうして乳腺を活性化させれば、だんだん乳輪や乳首の快感も目覚めてくる……ってさ」
 そんな事を言いつつ、オイルまで使ってマッサージを繰り返す。

 栞さんにしてみれば地獄だろう。自分の半分しか生きていない子供から、オモチャ扱いされる……それだけでも、精神的ストレスは凄いと思う。でもそこに、はっきりとした快感も加わるんだ。
 いくら子供でも、ネットで知識を得つつ実践を繰り返せば、そのうちテクニックは身につく。というより、技術の習得という点では大人以上だ。先入観がないぶん、ゲームを攻略するみたいに、柔軟な発想であらゆる方法を試せる。その結果、『栞さんをイカせること』に特化した責め方を、スポンジが水を吸うように吸収していく。
 そんなことをされて、栞さんが無反応を貫けるはずもない。
 何度も何度も栞さんがイカされるのを見ているうちに、僕にも彼女の感じ方のパターンがわかるようになってしまった。
 最初は、何をされても無反応を貫こうとするんだ。ベッドで胸を揉まれながら、大股を開かされ、あるいは片足を抱え上げられての性感帯責め。その中で栞さんは、眠っているかのように反応を示さない。
 でもそのまま刺激を続けられると、まずは息が荒くなってくる。口を薄く開いたまま、ふーっふーっと息を吐き出すようになり、頬に汗も伝いはじめる。
 そこからさらに責められれば、次はピンと伸びた方の足――大股を開いている時は、より直線に近い方の足――の膝が浮きはじめるんだ。当然その動きはわかりやすいから、
「どうしたの先生? まさか、俺らガキに手マンされて感じちゃってんの?」
なんて言葉責めを受けることになる。この時は栞さんもまだ余裕があって、聴こえない風に無視するか、全然、と切って捨てたりする。
 でも、さらにそこから先となると……もう何回もイってる段階なんだろう。栞さんの反応も、一気に激しくなっていくんだ。
 最初の変化は、左右どっちかの手がシーツを掴み、お尻が深くベッドに沈みこむこと。少しでも身体を安定させようとしてるんだろう。でもその努力も虚しく、両足は力みながらグラグラと揺れ、お腹も上下しはじめる。
 この辺りからだ。手マンされている割れ目から、グチュグチュグチュグチュ、とすごい音がしはじめるのは。
「あーあー濡れちゃって。やっぱ感じてんじゃん先生。ほら言ってみろよ、小学生の指マン気持ちいいですーって!!」
 水音をきっかけに、そんな言葉責めが飛ぶのがこの頃だ。栞さんはこういう時、学校の先生以上に迫力のある顔になる。
「ふざけないで、子供のくせに! こんなの、膣を乱暴に刺激されて、保護液が染み出してるだけ。ただの生理現象よ。気持ちいいわけないでしょ!?」
 首筋から汗を流しつつ、よく通る声で主張する栞さん。子供に感じさせられたなんて、屈辱でしかない。否定するのは当然だ。でもそうやって強がられた以上、責める側だって退かない。なにしろ、子供なんだから。
「へーぇ、そう。じゃあ生理現象じゃない、マジの反応が出るまで遊んでやるよ!」
 そう言って、ただでさえ水音がひどい割れ目の中を、さらに激しく刺激しはじめる。こうなったら、我慢強い栞さんだって5分ともたない。あ、あぁ、と小さな声が漏れはじめ、下腹を中心に全身がピクピク痙攣しはじめるんだ。そしてその次には、決まって足を内股に閉じるような動作が起きる。僕はいつもそこに、栞さんという女性の慎ましさを感じるんだけど、結局はまた何人もの手でこじ開けられてしまう。
「はははっ! あーらら、とうとう潮吹いちゃったよ先生!!」
 そう嬉しそうな声が上がるのは、大体このタイミング。そしてここから、本気の絶頂が始まるんだ。
「ああぁっ、ああっ!! はぁぁっ、あ……っあ!!」
 生々しい声と共に、全身の痙攣が早まり、腰から下が左右に暴れだす。それまでシーツを掴むぐらいだった手も、近くにあるもの……頭の下に敷いた枕だったり、誰かの太股だったりにしがみつこうとする。
 それに、この段階では胸も開発されきってるから、乳房や乳輪への刺激にも強く反応するようになる。特に尖った乳首を捻りつぶされる時には、歯を食いしばって声にならない声を上げるから、イッたんだとすぐにわかる。
「ははっ、イってるイってる!! どうしたのー先生、これさすがに生理現象ってレベルじゃないよねぇ。本気汁がドンドン溢れてくるじゃん。カンペキに膣イキ覚えちゃってるよねぇこれ?」
 そんな茶化しが入っても、栞さんは首を縦には振らない。ただ体は正直で、とうとう背中そのものが仰け反りはじめる。
 栞さんが凄いのは、この段階になっても、呼吸に育ちの良さが感じられることだ。周りの男連中が興奮してハアハア喘いでいるのに対し、栞さんはふうっ、ふうっ、という感じの呼吸をする。スープを冷ますお嬢様みたいに。
 でもそういう品の良さは、遊び甲斐のある玩具だとアピールしているようなものだ。

「不器用だよなー、あのヒト」
 壁際で見守る僕の横に、悠真君が腰掛けて笑う。
「不器用?」
「ああ。ウソでも『気持ちいい』とか『感じてる』とか言って媚びればさ、一時的にはあいつらも盛り上がるだろうけど、逆に飽きるのも早くなるだろ?」
 悠真君はそう言った。確かにそうだ。僕も一時期、クラスの嫌な奴にからかわれていたからわかる。からかわれるとはいっても、せいぜい消しゴムを取られるぐらいのイタズラだ。でもそいつは、明らかに僕の嫌がったり困ったりする反応を面白がっていた。もし僕が『消しゴムぐらい取ってもいいよ』という態度を取れば、一時的に行動がエスカレートしても、そのうち飽きてやめただろう。
 でも、そう理解してたって、実行できるかは別だ。僕でさえ、相手に尻尾を巻くようで悔しくて、嫌がらせを受け入れるなんてできなかった。あくまで『やめて』『いい加減にして』と反抗して、結局クラスが変わるまでからかわれ続けた。
 栞さんなら尚更だろう。なにしろ、からかってくる相手は自分より遥か年下だ。そんな相手に媚びるなんてできるわけがない。
「栞さんだって、それぐらい解ってるよ。解ってても、できないんだ。それに、そんな栞さんだから悠真君も気に入ってるんでしょ?」
 僕がそう答えると、悠真君は面白そうに目を細めた。
「まあね」
 一言そう呟いて、また栞さんに視線を戻す。僕も同じく、前に向き直った。飽きることなく嬲られる、誇り高い女性に……。

 乳房と、膣内のスポット。それを1時間以上に渡ってたっぷりと開発され、栞さんは何十度という絶頂に追い込まれる。でも、当然それで終わりじゃない。性感帯の開発は、あくまで“前戯”だ。
「さーて、ヤるか!!」
「へへへ。興奮しすぎて、先走り汁がやべーよ!」
 潮を噴き散らし、ぐったりとした栞さんの周りで、次々とズボンが脱ぎ去られる。現れるのは、斜め上を向くほど勃起しきったペニス。
「くうっ……!!」
 栞さんにできるのは、汗まみれの顔を歪ませ、心の準備をすることだけだ。どれほどの覚悟が必要なのか、僕には到底わからない。熟しきった割れ目に、溢れんばかりの若いエネルギーを叩き込まれるのは、途方もなくしんどいだろうから。


       ※        ※        ※


 夏休みに入ってしばらくすると、悠真君のお母さんは、発表会の準備だとかで夜中まで帰らないことが増えた。だから、栞さんを犯せる場所は家じゅうに広がった。家の中に招き入れられれば、いきなりリビングのソファで栞さんが犯されている……そんな光景も珍しくない。
「おっ? なんだ、急に締まって……すげえっ!」
「へへ。なに先生、家の人間が帰ってきたと思ってビビッたの?」
 僕が部屋に踏み入ると、決まってそんな声が聴こえてくる。何も喜ばしくなんてないけど。

 栞さんと犯している連中には20センチぐらいの身長差があるから、その差を埋めるために、変わった体位で交わることも多かった。
 たとえば、栞さんに床へ手をつかせたまま、ソファで膝立ちになった一人が挿入したり。あるいは二階へ通じる階段に栞さんを這い蹲らせ、上の段差に足を乗せながら挿入したり。
 そういう妙なセックスは、普通にやるより挿入しづらい。だからそこまで気持ちよくもないはずだ。でも、インパクトは凄かった。そして何より栞さん自身、不自然な体勢で犯されるのは精神的につらいだろう。
「ん、ふっ……ん゛ん゛!!」
 あくまで目も口も閉じて淡々と犯される彼女だけど、ふとした瞬間に顰められる眉や握り込まれる手から、それが見て取れた。

 悠真君のお母さんが家を空けるのは、大体8時半ぐらい。その後、だいたい9時ぐらいから皆で集まって栞さんを犯し、3時間もすれば昼時になる。昼を作るのは栞さんの仕事だ。冷蔵庫の中を見てメニューを考え、調理に取り掛かる。
 栞さんの手際は良い。野菜の刻み方や炒め方が、主婦並みに手馴れていた。ただ、その腕を常に発揮できるわけじゃない。スタイルのいい栞さんが、裸にエプロンだけを着けてキッチンに立っている……そんな状況に、性欲の塊のような連中がそそられないわけがなかった。まるで電灯に引き寄せられる蛾のように群がっては、胸を揉み、尻を撫で、割れ目に指を捻じ込む。
「やめて、危ないでしょ!?」
 当然栞さんは厳しい口調で咎めるけど、それで言うことを聞くような『良い子』は一人もいない。結果として栞さんの料理は、いつも不完全なものになる。
「アハハハッ、見ろよ。このニンジン全部繋がってらぁ!」
「あーあー、ここ焦げちゃってるよ。ヘッタクソだなぁ!!」
 そんな詰りを受けながらの食事は、どんなにつらい事だろう。行儀よく箸を口に運ぶ栞さんの表情は、いつだって硬い。だから僕は、
「……おいしい」
 時々、そう小さく呟いた。周りがほどよく騒いでいて、栞さんにだけ聴こえるようなタイミングを見計らって。
 栞さんはそういう時、はっとしたように目を見開いた。そしてあくまで僕とは目を合わさないまま食事を続け、同じく僕だけが意識を向けている瞬間に、
「ありがとう」
 そう、小さく呟き返してくれるんだ。
 その一瞬と一瞬が、僕にとっての生き甲斐だった。いつもできるわけじゃなかったけど、できた時にはずっと胸がときめいた。もっとも、そうやって心が躍ったぶんだけ、再開したセックスを見届けるのがつらくなってしまうんだけど。

       ※        ※        ※

 栞さんがイタズラされるのは、家の中に限らない。時には、外へ出て栞さんを辱めることもあった。
 忘れられないのは、花火大会に行った日のことだ。
 シャツと短パン姿で集まった僕らは、初めて見る栞さんの浴衣姿に興奮した。黒髪でお嬢様っぽい栞さんには、とにかく和装がよく似合った。
「行こう、お姉ちゃん!」
 悠真君は完全に猫を被って、栞さんの手を引く。
「そーだよー! はやくはやくー!」
 岡村や三橋も、同じく無邪気なフリをして浴衣の袖を引っ張る。
 すれ違うカップルや家族連れが、そんな悠真君達を見て笑っていた。さぞ微笑ましい光景に映っただろう。仲のいい兄弟と思ったかもしれない。
 そう、気付くわけがないんだ。栞さんのあそこに、バイブが埋め込まれているなんて。
「ちょっと、引っ張らないで!」
 弟に手を焼く姉――という感じの彼女が実はノーパンで、いつバイブが抜け落ちるか恐々としているだなんて。
 悠真君達は、そんな栞さんを最大限辱める。
「あーっ、全然取れないや! お姉ちゃん、カタキ取ってよーっ!!」
 金魚掬いやスーパーボール掬いに失敗して、栞さんにもやらせようとする。
「いい加減にしなさい。いつまでも専有してると迷惑でしょ」
 栞さんはそう宥めて立ち去ろうとするけど、
「いいよいいよ。お姉ちゃん、タダで良いからやってきな。弟さんに良いトコ見せないと!」
 テキ屋のおじさんは、必ずといっていいほど栞さんを引き留める。和服の栞さんがそうそう見られないレベルの美人だからだ。事実そうした親父は、栞さんが仕方なく裾を直して屈み込むと、鼻の下を伸ばして足を眺めはじめた。栞さんは、そうして覗き込んでくる店主からバイブの存在を隠しつつ、ゲームを成功させないといけない。それがどれだけ大変な事かは、しばらく後にわかった。
「すっげー、ドロドロじゃん先生!」
 花火が打ちあがる直前、林の中で浴衣の前を肌蹴た岡村が歓声を上げた。暗くてよくは見えないけど、直に内腿に触れている奴が言うんだから間違いないだろう。
「ふーん、興奮してたんだ。あのオッサン、必死で先生のアソコ見ようとしてたもんね。バイブの事バレちゃいけないから大変だったでしょ? それとも、ああいうヤクザにガツガツ犯されるの想像して濡れちゃった?」
 悠真君がそう煽ると、栞さんの目つきが険しくなる。
「ふざけないで!」
「あはは、そう怒んないでよ。わかってるって。先生はさ、俺らに犯されるのが好きなんだよね。ほら、やろうよ……いつもみたいにさ」
 悠真君がそう言ってバイブを引き抜くと、はっきりと濡れ光る何かが見えた。
「よーし、やろうやろう!」
 三橋と岡村が栞さんの向きを変えさせ、木に寄りかかるような格好を取らせる。そして浴衣の裾を捲り上げると、白い尻を露出させた。犯す気なんだ、ここで。
「やめて、こんな所で! 誰か来たらどうするの!?」
「誰も来ないって。花火が見られる場所からは離れてるし、そもそもほとんど山の中なんだから。どうしても心配なら、茂みに隠れるくらい腰落としなよ。その方が俺達もハメやすいしさ」
 有無を言わせない感じで、悠真君がズボンを下ろす。そして腰を低くした栞さんに、遠慮なく挿入しはじめた。
「う゛っ!!」
「凄いな、グチョグチョだ。やたらと纏わりついてくるし。これ完全にメスとして喜んじゃってるよね、先生?」
 悠真君の問いに、栞さんは答えない。ただ、音の生々しさが充分な裏付けになっていた。悠真君が腰を前後させるたびに、ぬちゃっ、ぬちゃっ、と凄い音がしているから。でもその湿った音は、すぐに轟音で掻き消された。空が赤く染まる。いよいよ花火大会が始まったらしい。
 空の赤は、緑や白に色を変えながら、栞さん達を照らしだす。
 髪をきっちりと結い上げた、浴衣姿の栞さん。いつか彼女と夏祭りに行くのは、僕の夢の一つだった。なのにその相手が、クラスメイトに犯されている。しかも僕はそれを見ながら、また痛いぐらいに勃起している。その事実に、頭がおかしくなりそうだ。
「……僕、誰か来ないか見張っとくよ。一応」
 僕はそう言い残して、茂みの中から抜け出した。おう、という返事を聞きながら、僕は辺りを見回し、こっそりとズボンを下げてアレを取り出す。
「はっ、はっ……あぁ、はぁあ……っ」
「あははっ、イイ声出てきたじゃん先生。ま、こんだけ濡れてるんだもんな」
「夏休み入ってから、裏Gスポットとかの開発もかなり進んだからねー。もうチンポで擦られるだけで逝っちゃうでしょ?」
 藪の向こうから聞こえてくる声をオカズに、脈打つアレを扱く。悠真君達が極上のカルビを堪能しているとしたら、僕はその匂いで白米を掻き込んでいるようなものだ。虚しいオナニー。でも僕は、段々とこれにハマりつつある。単純に信じられないぐらい気持ちがいいし、引っ込み思案な僕にお似合いの慰め方だとも思うから。

 栞さんは、花火大会の間じゅう犯されつづけた。ドン、という轟音と、パラパラという花の開いていく音。その合間に、肉のぶつかる音と激しい喘ぎが聴こえてくる。
「あ、はんっ……あぁ! はっあ……ん、ああ、はあっ!!」
 普段あんなに淑やかな栞さんからも、かなりの声が出ているようだ。
「先生、膝ガクガクになってんぞ。どんだけ感じてんだよ!?」
「やー、外ですんのって最高だね。めっちゃ興奮するし、先生の反応もいいしさ。これからもたまにやろうよ」
 そういう賑やかな会話も、ひっきりなしに続いていた。

 やがて、フィナーレの四尺玉が空を照らし、花火大会が終わる。僕はそれを見届けて茂みの中に戻った。途端に、噎せかえるような男女の匂いが鼻をつく。他所で同じようなことをしているカップルは何組もいるだろうけど、そのどれよりも強烈な匂いだろう。この匂いの元が清楚な美人と子供だといっても、誰も信じないに違いない。その生臭さは、セックスに携わっていた4人の興奮の度合いを表しているようだった。
「はぁっ……はぁっ……」
 悠真君達3人は、片膝を立てて蹲ったまま、激しく肩を上下させている。そしてその奥にいる栞さんもまた、太い木にしがみつくようにして震えていた。開いた足の間……そのちょうど下の地面には、暗闇の中でもわかるぐらいの白濁が液溜まりを作っている。僕だけが参加しなかった祭りの、その痕だ。
 栞さんのあそこから精子が垂れているのは、もう何度も見てるけど、そのたびに嫌な気分になる。憧れが穢される苦しさ、だけじゃない。犯した人間が“栞さんと交じり合っている”一方で、僕だけが取り残されているような焦り――いつもそれが、ドス黒く胸に渦巻く。この時もそうで、僕は割れ目から滴る白濁を見ながら、同級生3人に置いていかれている気持ちになった。



       ※        ※        ※



「今日、ハメんのは無しだ」
 花火大会の翌日。悠真君は、部屋へ集まった人間にそう宣言した。
「えーっ嘘、ハメらんねーの!?」
「なんでだよー!!」
 当然、不満の声が上がる。でもその表情は、悠真君が取り出した『ある物』を見て変わった。
 ハンディタイプの電気マッサージ器。ウチの家にも、肩こりの解消用として置いてある。
「ははぁ、なーるほどねえ!」
「ははっ、そういうのも面白そうだな!」
 何人かが納得した様子で笑みを浮かべる。一方で僕は、悠真君がなぜそんなものを持ち出したのかわからなかった。栞さんに使うことは予想できたけど、まさか体を労わろうってわけでもないだろう。でも、たとえばお腹だとかに押し当てたって、軽いイタズラにしかならないはずだ。
「…………?」
 ちょうど部屋を訪れた栞さんも怪訝そうな顔をしたから、きっと同じような考えだったに違いない。
 でも、甘かった。マッサージ器は、使い方次第で女の人を追い詰める道具にもなるんだ。僕と栞さんはこの日、その事実を嫌というほど思い知ることになる。

 まずは悠真君の指示で、フローリングに淡い水色のおねしょシーツが敷き詰められる。まるで、大量の液体が撒き散らされることが分かってるみたいに。
 いつも通り服を脱ぎ去った栞さんは、そのおねしょシーツの中心に座らされる。
「今日は、先生を本気で感じさせてあげるよ。ガキらしく“オモチャ”使ってさ」
 悠真君はそう言って、マッサージ器のスイッチを入れた。途端に、腹の底へ響くような重低音が響き渡る。
「へへへ。じっとしてろよ、先生!」
 さらに数人が栞さんの手足を掴み、身動きを封じてしまう。
「……好きにすれば」
 一方の栞さんは、疲れた母親という感じだ。大股を開かされても、まったく反応しようとない。
 でも、いざマッサージ器がアソコに宛がわれ、ジジジッと音を鳴らした瞬間。
「んっ!!」
 息を詰まらせたような声が一瞬漏れた。ニヤリとした笑いが栞さんを囲む。
「足、ちゃんと押さえてろよ」
 悠真君は左右に目配せしつつ、マッサージ器を宛がい続けた。

 まだ短い僕の人生でも、最近わかってきたことがある。
 音は威力だ。
 『手マン』でグチョグチョとすごい音がしている時には、栞さんの反応も激しくなる。挿入の音がエロい時には、栞さんの腰も堪らなさそうにうねる。
 だったら、ものすごい駆動音と接触音で僕の内臓を揺さぶる電気マッサージ器が、生半可な威力であるわけがない。
 実際、効果はすぐに表れた。舌や指での前戯より、ずっと早く。
「ん……んんっ」
 最初の変化は、声だった。下唇を内側へ巻き込むようにしつつ、鼻から抜けるような声を出す。指と舌で割れ目を刺激するやり方なら、10分以上続けてようやく出はじめる段階の反応だ。
「電マってすごいだろ。意思とは関係なくどんどん昂ぶって、ムリヤリ絶頂させられるんだぜ。クリとかUスポットとか、アソコの表面開発されまくってる先生なら尚更だ」
 悠真君はそう言いながら、撫で回すようにマッサージ器を這わせ続ける。
「んん、ん゛っ……!!」
 栞さんは声こそ漏らすものの、視線の集中する下半身はピクリとも動かさずに耐えていた。ただ、そうやって無理をしたツケは他の箇所で払うしかない。
 例えば、両腕。おねしょシーツについた手首に、少しずつ、少しずつ、筋が浮いていく。同時に、内側へ捻るような動きも。力んでいるんだ。下半身を固定させるための支えとして。その力みはそのうち、肩の震えとして周りの目に止まる。
「お、なんか震えはじめてんぞ?」
「オッパイすげぇ揺れてるよー、先生!」
 すかさず野次が飛んだ。全員が栞さんの挙動に注目している証拠だ。
 その視線に晒されながら、栞さんの中には着実に快感が堪っていく。
 次の変化は、下腹。普段からスレンダーな感じのお腹には、中央の縦線がややくっきり、その横の腹筋がうっすらと浮かび上がっている。
「すげー、骨盤の形わかるわ。改めて思うけど、ムダ肉ほんと少ないな」
 そういう言葉も出るぐらい、腰周りは極端に凹んでいた。
「ホント我慢強いねー。遊び甲斐あるよ」
 悠真君は嬉しそうにマッサージ器の角度を変える。その瞬間。本当に一瞬だけ、栞さんの腰がググッと持ち上がった。当然、悠真君がそれを見逃すはずもない。
「ふぅん。この辺かぁ」
 そう言って、念入りにクリトリスのすぐ下の辺りを刺激しつづける。
 その効果は、確かだった。
「んっ……ぃひっ…………んっ、んっ…………」
 それまでずっと閉じあわされていた栞さんの口から、とうとう声が漏れはじめる。顎は左の鎖骨へ半ば埋まるぐらいにまで俯き、首の横のラインは小さな山脈かと思うぐらいに盛り上がる。
「はははっ、すんげぇ力んでる。そろそろ我慢の限界なんじゃない?」
 そういう野次にも、つい納得してしまう。

 そして、マッサージ器を押し当てられてから10分が過ぎた頃。とうとう一度目の限界がやってきた。
「けはっ……はっ!」
 ずっと息を殺していた栞さんから、小さな咳が漏れ、太股が震える。ぴくっぴくっと小さく痙攣し、腹筋がさらに浮き彫りになり、シーツに押し付けたお尻が前後に動く。
 恥じらいの場所では、ちょうどマッサージ器が割れ目を抜け、下から押し上げるようにしてクリトリスを圧迫しはじめたところ。その圧迫開始から3秒後、栞さんは弛緩した。鎖骨に埋まっていた顎が持ち上がり、腹筋と腰周りにちょうどよく肉が戻る。
 なぜ力まなくなったのか――その謎はすぐに解けた。マッサージ器を押し当てられた部分から、おしっこを漏らすような音が聴こえてきたから。
「あははっ、先生漏らしちゃった!」
「うわ、すごい出てる。おねしょシーツ敷いといてよかったねー」
「ねぇ先生、僕らの倍の年齢でおねしょとかやめてよー。なっさけない!!」
 一気に場が沸く。本当に楽しそうに。
「…………っ!」
 栞さんは横を向いたまま、静かに目を閉じていた。脱力する寸前に覚悟を決めていたのか、横顔は寝ているように安らかだ。でも、息は荒い。そしてその呼吸に合わせ、男子の目を惹きつけてやまない乳房も大きく上下する。
「大の大人が我慢できなくなる瞬間って、やっぱいいね。先生みたいに、常識人ぶってる人だと特にさ」
 悠真君はそう茶化しながら、マッサージ器を持ち上げた。マッサージ器の先から、ぽたぽたと雫が滴っていく。
「はぁっ……はぁっ…………」
 荒い息を吐いたまま、栞さんは細く目を開く。見据える先は、当然悪ガキのボスである悠真君だ。
「いいね、その目。まだまだ続けられそうだ。……おい、足離すなよ。このまま5回は潮吹きさせるぞ」
 悠真君は楽しそうに笑うと、栞さんの足を押さえる2人に念を押した。


 マッサージ器での責めが再開される。
 これは人間なら皆そうだろうけど、一度絶頂してしまうと脆い。水気たっぷりの割れ目を再び責められる栞さんも、反応ペースは早かった。腰が左右に揺れ、口が半開きになっていく。更には、腰が上下に跳ねたり、上体が前屈するような動きを見せはじめる。明らかに、快感をじっとは堪えきれないという風だ。
「ほーらぁ、逃げちゃだめじゃん先生!」
 嘲るように言いながら、数人が栞さんの押さえ役に加わる。太股と膝上、そして脇腹の辺りを6人がかりで押さえ込まれ、栞さんの動きが止まった。ただ、それも一時的なことだ。マッサージ器が唸りを上げ続け、栞さんの身体中が汗で光りはじめる頃になると、また栞さんの太股が跳ねはじめる。
「んっ、はーっはーっ…ああ!あ゛……あ!!」
 栞さんの口が開き、喘ぎが大きくなっていく。そして同じく、下半身の震えも。
「じっとしてろって!」
 押さえ役が怒鳴るように言っても、どうにもならない。痙攣するすらりとした足が、いよいよ激しく暴れだす。
「い゛っ、んああああ゛ーーっっ!!!!」
 そのはっきりとした絶叫がきっかけとなり、ついに押さえ役が跳ね飛ばされた。
「わっ!!」
 何人かの悲鳴が重なって響き、栞さんの美脚が宙を蹴る。
「ほら、押さえて押さえて。膝と足首!」
 落ち着いて指示を出しているのは、悠真君だ。大騒ぎの中、彼だけは栞さんの抵抗を面白がっていた。その指示が功を奏し、栞さんは両脚をくの字に曲げた格好で自由を奪われてしまう。
「ふうっ。あんま手間かけさせないでよ先生。子供の遊びをオトナが邪魔するなんて、ありえないよ?」
 悠真君はそう言って肩を鳴らし、隣にいた奴にマッサージ器を手渡した。
「交替。どこに当てたってそのうちイクんだ、好きに遊べよ」
 そう言われた方は、鼻の穴を膨らませて栞さんに向き直る。
「……っ!!」
 栞さんは、汗を垂らしながら真っ直ぐに相手を睨んでいた。でもその視線は、マッサージ器が割れ目で重苦しい音をさせはじめると、すぐに宙を彷徨うことになる。
「あ……ッああ、ふぅっ……ああ、は……っあ!!」
 首を左右に振りながら、必死に耐える栞さん。でもいくら意思の力が強くたって、何度もイキ続ければ、身体の反応は激しくなっていく。M字に開いたままバタバタと暴れる足を押さえるには、片足につき2人が必要だった。
「あはっ、すげぇ力!」
「必死だねー先生。こんな“お遊び”にさぁ!」
 抱きつくようにして足を押さえ込み、岡村達が笑う。その笑い声が響く最中にも、潮が吹き散らされていく。

 そんな状況が続いたまま、数分後。とうとう栞さんは限界を迎えた。
「ふううっ、ん、ん゛っ……ぃきっ、ふいい゛い゛ーーーーっっ!!!」
 食いしばった歯の間から悲鳴が漏れ、栞さんの腰が浮き上がる。そして腿と膝下に数人をぶら下げたまま、盛大に潮を吹きはじめた。水道の蛇口を指で押さえた時のような、四方八方に飛び散る潮吹きだ。
「おおーーっ、すげぇ!!」
「っつーか、どんな足の力だよ。火事場の馬鹿力ってやつか?」
 見守っていた連中が一斉に大笑いする。その中には悠真君もいた。
「アハハッ、最高。潮吹きまくりじゃん先生!!」
 そう罵る悠真君の顔は、一見楽しそうに見える。でも、その目は笑っていない。潮を噴き散らす栞さんを、ひどく冷静に見つめていた。


 その後も、水分を取らせては潮を吹かせ……がずっと続く。僕が予備のポカリスエットを買って帰った時には、栞さんは両腋を抱え上げられ、がに股の格好でマッサージ器責めを受けていた。
「ほら先生、自分の足で立たないと!」
「そうそう。俺らと違って、身体が出来てるいい大人なんだからさぁ」
「最初はあんなに生意気そうだったのに、案外だらしねーのな!」
 そんな言葉責めを受けると、栞さんは詰りの出所を睨みつける。でも、それも一瞬のこと。すぐにまた目を瞑り、絶え間ない絶頂に悶えるハメになる。
 すでに足腰は限界らしくて、痙攣が止まらない。その痙攣を受けて、胸が上下に揺れるのも衝撃的だ。
「あ、ああっ……はっ、はっ……んぐうっ!! あああ、あ゛っっ!!」
 口から漏れる声もすごく苦しそうだし、涎まで垂れていた。
 そして、そのすべてが嘲笑のネタにされる。アハアハ、ギャハギャハと、耳障りな声が絶えない。
 そんな中、ポケットに手を突っ込んだ悠真君が笑みを浮かべた。
「そろそろ格好変えようぜ。“Y字バランス”とかさ」
 その一言で、栞さんを囲む連中にも笑みが広がる。
「ははっ、いいなそれ!」
「でもあれって、相当身体柔らかくないと無理なんじゃないの? バレリーナとかがやってるやつだろ?」
「大丈夫だって。いつも変な格好でハメてるけど、痛がらないじゃん!」
 連中は騒ぎながら、数人がかりで栞さんの左脚を持ち上げていく。汗とも愛液ともつかない液体が、筋となって太股を伝い、尻の辺りから滴り落ちていく。
「うっはぁ、エッロ!!」
 大股を開くことで、完全に曝け出された栞さんのあそこ。それを前に、一人が興奮して叫んだ。
 確かに、すごい。陰唇が唇より赤く充血し、厚く膨らんでいる。愛液に塗れたまま、潰されたようになっている陰毛も悲惨なイメージを強める。
「あああクソ、ハメてぇな!!」
「ああ、勃起しすぎてチンポいてーよ!」
「匂いがたまんねーな。どんだけフェロモン撒き散らしてんの先生? 俺らガキ相手にさ」
 悔しがる奴、苦しがる奴、軽口を叩く奴。色々いる中、ついさっきまでマッサージ器で責めていた一人が、辛抱堪らず栞さんの腰に抱きついた。
「おい!!」
 すぐに他の奴が止めるけど、そいつは指で栞さんのあそこを開き、むしゃぶりつくように口をつける。そして、ずずずーっと物凄い音を立てながら愛液を啜りはじめた。
「うっ!!」
 栞さんの表情が引き攣る。たぶん恥ずかしいからだろうけど、気持ち良さそうにも見えてしまう。
「ははっ、アイツほんとマン汁好きだよな!」
「まあ解らなくもねーけどな。先生って、無性にマンコ舐めたくなるタイプだし」
 好き勝手な言葉が飛び交う。でも、僕にも少しは理解できる。栞さんは見るからにしっかりしていて、清潔そうで、たとえ性器を舐めたって汚くない感じがするから。
「うわ、すげぇ……奥からドンドン溢れてくる! 電マのせいか、ちっと焦げ臭い味するけど」
 むしゃぶりついていた一人が、口周りを濡れ光らせながら顔を離した。
「い、いい加減に……う、う゛っっ!!!」
 恥ずかしそうに抗議する栞さん。でもその言葉も、マッサージ器がまたあそこに宛がわれると、切ない呻きに変わってしまう。
「ふ、うっ……んぐっ、んぐううっ!!!」
 呻きはどんどん惨めになっていった。そして惨めといえば、下半身の様子もさっきよりひどい。普通にやってもきついY字バランスで責められるものだから、内腿の強張り具合が普通じゃなかった。特に斜め上へ持ち上げられている左脚ともなると、透明な瓶を埋め込まれてるのかと思うぐらい、くっきりとした窪みができている。当然、支えとなる右脚だってじっとはしていない。激しく痙攣して色々な液体を撒き散らしながら、浅い屈伸でもするみたいに膝を曲げて上下する。
「もー先生、ちゃんと立っててよ。ヒザ曲げてたらY字バランスじゃないじゃん!」
「っていうか重……ほとんど全体重かけてきてない? やめてよ。先生、色々デカいんだから!」
 当然、栞さんの動作は言葉責めのネタにされる。いつも、いつもそうだ。ただ普段だったら、栞さんはそういう詰りを受けるとすぐに睨む。たとえ玩具にされる身でも、嘲笑まで良しとしているわけじゃない……そう主張するように。でも今の栞さんには、そんな余裕すらないようだった。
「んぐっ、んぐっううう゛っ!! ふーーっ、ふーーっ……んぐっ、ふっぐううっ!!!」
 歯を食いしばりつつ、赤くなった顔を何度も振り、それでも切ない呻きが殺せない。腋を抱えあげている2人の袖口をぎゅうっと握りしめ、皺まで作っているのが痛々しい。そして肝心のあそこからは、絶え間なく汁が飛び散っている。ずっとお漏らしでもしてるみたいに。
「つーか、そろそろおねしょシーツでも限界なんじゃね? ちゃんと吸い取れてんのかアレ」
「そういや、もうビショビショだな。下まで染みてそう」
「ああ。もう何十回イってんだろうな」
 何人かが、栞さんの足元を眺めながら囁きあう。確かに下に敷かれた水色のシーツは、栞さんを中心として変色しきっていた。
 本当に、何度イカされてるんだろう。『手マン』の時はなんとか数えられそうだったけど、今はとても無理だ。多分、ずっとイキ続けてるんだから。それは、どれほど苦しいことだろう。
「しっかし、すげー根性だな。こんだけ電マでやられたら、普通もっとギャーギャー喚くもんだろ」
「そうまでしてオトナぶりたいかね、こんだけションベン撒き散らしといて。逆に情けなくね?」
 責めている奴からも、呆れ声が漏れる。そして少しでも余裕を失くさせようと、マッサージ器を押し当てる角度を変えたり、乳首を捻り潰したりと色々な嫌がらせを繰り返す。
 栞さんは、それを必死に耐え忍んだ。とうとう白目を剥き、すっかり腰が抜けるまで。

「はははっ、グッタリしちゃって」
 一人がマッサージ器のスイッチを切りながら笑う。栞さんは身体を抱える3人にもたれたまま、自力では立つこともできないようだった。
「水、飲ませてあげな」
 悠真君の指示で、僕の買ってきたポカリスエットが栞さんの口に流し込まれる。栞さんは、よっぽど水分を失ってたんだろう、ゴクゴクと喉を鳴らして飲み下していく。
「どう先生、気持ちよかったでしょ。本気で感じちゃったんじゃない?」
 栞さんがひと息ついた事を確認して、悠真君が囁きかけるように尋ねた。その言葉で、栞さんの目に力が戻る。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……くだらない。こんな“オママゴト”で、気分が出ると思うの!?」
「ふふ、さすが」
 悠真君は口笛を吹きながら、一旦栞さんの元を離れた。そして部屋の隅に置かれた紙袋へと、細い腕を差し入れる。
「いつか先生に使おうと思ってた、とっておきのオモチャがあるんだよ。強情な先生には、これぐらい使わないとね」
 そう言って引き抜かれた彼の右手には、見慣れない道具が握られていた。
 見た感じはバイブに近い。でも、先端に切れ目が入っているのが妙だ。それにグリップ部分からはコードが延びていて、その先にはコンセントプラグがついている。電池じゃなく、コンセントの電流が必要なんて普通じゃない。
「あ? なんだそれ?」
 あの岡村さえ首を傾げるんだから、初めて披露される道具なんだろう。
「こないだネットで見つけてさ、ついお年玉貯金崩しちゃったよ。でも、面白いんだぜコレ」
 悠真君はそう言って、バイブの先端を指で押し込んだ。すると、切れ目の部分が外に向かって簡単に広がっていく。かなり柔らかい素材みたいだ。
「膣に突っ込んで奥まで届くと、こうやって先が広がって、ポルチオ……つまり子宮口を包み込むんだ。おまけにスイッチ入れたら、低周波マッサージみたいに電流も流せるらしい。すげぇ効くぜ、きっと」
 楽しそうな悠真君の声を聞いていると、不安になる。でもそんな僕をよそに、場はいよいよ盛り上がりはじめた。
「ポルチオに直で電流か。たまんねぇな!」
「おお、マンコが火照ってるうちにやっちまおうぜ!!」
 数人が色めき立ち、栞さんを仰向けに寝かせながら足を開かせる。
「さて先生、“オママゴト”の続きだよ。先生はお姉さん役なんだから、ぎゃあぎゃあ泣き喚かないでよね」
 悠真君はそう茶化しつつ、コンセントにプラグを差込み、バイブを割れ目へと押し込んだ。よく濡れているだけぶん、バイブはスムーズに入っていく。
「……っ!」
 栞さんから小さく息が漏れ、かすかに腰が動いた。
「うん、楽勝で奥まで届くな。覚悟しときなよ、先生。ポルチオでイクのって、クリとかGスポットとは全然違うらしいから」
 悠真君は深くバイブをねじ込みながら、グリップ部分にあるスイッチを押す。すると、割れ目の奥の方から音がしはじめた。ヴヴウーン、ヴヴウーン、という感じの、機械的な規則正しさのある音。
「う……っ!!」
 栞さんが眉を顰める。苦しそうだ。そしてその反応は、ここにいる僕以外の全員が望んでいるもの。
「くくっ。これが子宮口に電流流された女の顔か!」
「さすがに、まだ我慢してるな」
「ああ。このお高く留まった顔がどう歪むか、楽しみだ」
 悠真君も、岡村も三橋も、栞さんの顔を覗きこんで、その表情の移り変わりを期待する。
「くっ……!!」
 一方、視線に晒される栞さんは、唇を閉じて気丈な表情を作るしかない。

 初めのうち、栞さんは無反応を貫いていた。もちろん、散々マッサージ器で責められた直後だから、顔は赤いし汗もひどい。でも、『全力で走ったあと、ベッドでクールダウンしている』……そんな風にも見えるぼど、反応は薄かった。
 でも、そう出来ていたのも最初だけ。
「ん……んっ!」
 ほんの2分も立たないうちに、栞さんから声が漏れる。そして腰がヒクヒクと上下に動き、唇が薄く開いて、息が吐き出された。あれは、まるで……
「あははっ、もうイってる!!」
 一人が叫んだその言葉で、確信できた。やっぱり、あれは絶頂のサインなんだ。
「そりゃイクって。あんだけしつこくクリ逝きさせたんだから、ポルチオもトロットロにほぐれてるだろうしさ。そこへ電気なんて流されたら……」
 悠真君はそう言いながら、バイブを奥へと押し付ける。栞さんの足を押さえつける連中も、60度ぐらいに開かせたまま、全体重を掛けている。そんな状況の中で、栞さんの腰はさらに激しく動きはじめた。
「ああぁ、あ……あ!!」
 口から漏れているのも、もう吐息なんかじゃない。はっきりとした、生々しい声だ。
「へへ、もうヨガリ声出てんぞ!」
「クリ責めとか手マンの時だって、あんなに我慢してたのにね。やっぱポルチオってすげー気持ちいいんだ」
「ああ。ネットの読んだ時は大袈裟じゃね?って思ったけど、実際見ると納得だわ」
「どーう先生、気持ちいいでちゅかー?」
 下品な笑い声と共に、いくつもの視線が栞さんの体中を舐め回す。栞さんのことだ。そんな視線に晒されている以上、それまでと同じく、必死で快感に耐えようとしたんだろう。それは、喘ぎながらも歯を食いしばったり、頭上へ投げ出された手がおねしょシーツを掴んでいることからも明らかだ。
 とはいえ、そうして耐えるにも限界がある。その限界までの時間は、これまで以上に短かったし、その反応は今まで以上に激しかった。

「ふっ、んん、ん……ふんんんんんっ!!!」
 開始から、わずか5分あまり。栞さんは歯を食いしばり、自由の利かない身体を左右に振りたくって悶えはじめる。
「あははははっ、イッてるイッてる! すごい力だ!!」
 開脚を強いる何人かが、Mの字になろうとする足を抑えながらはしゃぐ。
「どんどんイク時間短くなってんな。もうほぼ毎秒イってんじゃね?」
「やー、さすがに2秒に一回ぐらいだろ。まあこの感じだと、毎秒イクようになんのも時間の問題だろうけどな!」
 別の何人かも、横たわる栞さんを見下ろして笑う。
 屈辱的な状況。でも栞さんにはもう、意地を張る余裕すらないらしい。
「ふくっ、う、う゛っ!! うう、あ……うあああ゛っ!!!!」
 苦しそうな呻きの後、とうとう栞さんから大口を開けての叫びが漏れた。同時に、くびれた腰が浮き上がり、海老反りの形になる。
「はははっ、すっげぇ表情(かお)!」
「先生って基本クールビューティだけど、マジでイッてる時はたまにスッゲェ顔するよなー!」
 栞さんの頭上にいる数人が、大笑いしながら肩を揺らす。
「さすが。いい反応してくれるね、先生」
 悠真君はバイブを駄目押しとばかりに押し込みつつ、グリップ部分のスイッチを切り替える。
 バイブの音が変わった。ヴヴウーン、ヴヴウーン、というリズムから、ヴヴッ、ヴヴッ、という短い周期に。1周期ごとの音の強さは、さっきより増している気がする。
「かっ、あ゛!?」
 どうやら、僕の心配は当たったみたいだ。栞さんからは、即座に息を詰まらせたような声が漏れた。鳩尾を思いっきり殴られたりだとか、よっぽど不意打ちでショックを受けないと出ない声だ。
「あかっ、かっ!! かあっ、はっ、かはっ……!!!」
 栞さんは陸で溺れるような息を繰り返しながら、何度も何度も腰を跳ねさせる。お尻はおねしょシーツから拳ひとつ分以上離れていて、ぜんぜん落ちてこない。当然その間、足の筋肉の強張りはすごい事になっていて、押さえ係の数人も思わず手を離し、すげぇ、と呟くだけのギャラリーになっていた。
「やっぱキクんだねーこれ。購入サイトのサンプル映像と同じ反応だよ。っていっても、あんまり強くばっかりやると慣れちゃうか」
 悠真君は満足げに笑い、またスイッチを切り替える。割れ目の奥で、規則正しい音が復活し、1秒後に栞さんのお尻もシーツに着地する。でも、けっして元通りになったわけじゃない。激しくイかされ続けたダメージは、着実に栞さんの中に溜まってしまったらしい。
「あああっ!! はぁっ、はっ、はあっ! も、もう、こんな事っ……やめなさい!!」
 栞さんはお尻をつくなり、すごい剣幕で周りを睨みつけながら、バタバタと足を暴れさせはじめた。でもそれで怯む程度の『悪い子』なら、そもそもここまで大それた真似はしない。ここに集まる悪ガキは、相手が嫌がれば嫌がるほど、悪戯心を燃え上がらせるんだ。
「何言ってんだ。こんな面白ぇこと、まだまだ終わらせるわけねぇだろ!」
「そうそう。飽きるまで遊ばせて貰うよ、先生!」
「別にいいじゃん。先生はただ、ヨガりまくってりゃいいんだからさぁ!!」
 口々に好きな事を言いつつ、栞さんの自由を奪おうとする。栞さんは、まさしく必死でそれに抵抗していた。膝を閉じ合わせたり、振り上げたり。でも数の不利は覆らない。あっという間に足のあちこちを掴まれ、これでもかというほど足を開かされてしまう。ほとんど一直線……股割きに近い角度だ。
「ふ、ふざけないでっ!! こんなのやめてっ!!」
 栞さんは直球で否定の意思を示していた。それぐらい『まずい』事なんだという自覚があるんだろう。でも、だからこそ、悪ガキは止まらない。太股と脹脛を抱え込み、足首まで掴んで、片足につき3人がかりでガッチリと押さえ込む。いくら相手が子供でも、そこまで念入りにされたら払いのけようがない。
「準備万端だね。たっぷりイキ顔見せてよ先生」
 悠真君はそう言って、グリグリとバイブで円を描く。
「あがああっ!!あがっ!! く……くっ、んっくぅううっ!!!」
「はははっ、まーたスゲエ顔んなってる!」
「何その声、イクって言葉ガマンしてんの? んなに歯ァ食いしばってたら歯茎痛めちゃうよー、せっかく歯並びいいのに」
 呻きと詰りの声が、蒸し暑い部屋の中で交じり合う。
 栞さんの表情はすごかった。目元が裂けるんじゃないかというぐらい目を見開き、鼻も開き、皺が出来るぐらい下唇を噛みしめている。普段の穏やかで品のある顔とは、似ても似つかない崩れ顔だ。普段は雪のように白い顔が真っ赤になっているのも、別人らしさに拍車をかける。
 でも、それだって仕方がない。栞さんの肉体が示す反応を見ていると、そう思えた。腹筋も、太股も、足指の先に至るまでが強張りまくっている。その様は、直に触れている人間ならもっと実感できるようだ。
「ははははっ、すっげえなこれ。足の筋肉がビックンビックン動いててよ。太股に電気流れてるみてぇ!」
「足の指もピーンと張ったまんまだしな。マジで感電してる感じ」
「極まったポルチオイキって、髪の毛とか足の指先にまで電気走るぐらいの快感らしいからな。まさに今そんな感じじゃね?」
「しかも、その深い快感が半日とか一日とか、ずっと残るんだろ。やべえよな」
「俺らみてーなガキが、オトナの女をポルチオでイかせてるとか、なんか感動すんね」
「おう。俺らみたいな小学生、絶対他にいねぇぞ?」
「将来の武勇伝決まったじゃん。マジカッケェ!」
 子供らしい笑みで、悪魔のようなセリフが吐かれる。それを見ていると、自分の中の血が冷えていくのがわかる。でも同時に、僕は勃起していた。初恋相手のお姉さんが、目の前でオモチャのように扱われているっていうのに。

 悶え狂う栞さんは、あの手この手の『イタズラ』の餌食になった。
「ピンピンに勃たせちゃって、しょーがないなぁ。コッチでもイカせてやるか!」
 栞さんの傍に立つ2人がアイコンタクトを送りあい、すでに尖っている乳首を左右同時に捻り上げる。
「はっ、あぐううっ!!?」
 栞さんは目を剥き、悲鳴を漏らした。
「あははっ、キモチよさそー。乳首でもイケちゃうんだ、先生?」
「女ってガチで感じてくると、この3箇所責めが相当イイらしいよ。効くのも判ったんだ、どんどんやってやろう!」
 2人はそう言って、色々な方法で乳首を責め立てる。指先で掻き、指の腹で押し潰し、ローターを這わせ……。
 その行為と反応を面白そうに見ながら、悠真君は次の指示を出した。
「そろそろ誰か、子宮を外からも刺激してやんなよ」
 そう言って、片手でバイブを押し込みつつ、もう片方の掌で臍の少し下を押し込んでみせる。
「うぐうっ!!」
 たったそれだけで、栞さんは明確に絶頂の声を上げた。
「なるほど、そういやネットにあったな。体外式ポルチオ刺激、とかなんとか」
「へへ、いかにも効きそうだな。よーし、念入りに可愛がってやる!!」
 何人かが目を輝かせ、栞さんの下腹部に手を這わせはじめる。スマホで動画を確認しながら、撫で回し、指で押し込み、マッサージ器まで使って刺激しまくる。
 多分これが決定打になって、栞さんはとうとう歯を食いしばることさえできなくなった。
「くはぁああっ、ああぁぁあ゛っ!!! んぐっ……あはっ、ああはあああ゛あ゛ーーっ!!!」
 肺からの息で口をこじ開けられるみたいに、大口を開けながら叫びはじめる。顎から首までは涎まみれで、上品さなんて欠片もない。そこにあるのは、完全に『女』の顔だ。
 首から下だってひどいもので、もう栞さんは、どこを触っても感じる状態になっているようだった。腋を擦られても、横腹をくすぐられても、太股を撫で回されても、その都度確かに反応している。
「すげぇ反応。マジで全身性感帯なんかな」
「ああ。面白いけど、自分がこうなったらって思うとゾッとするよ」
「女って、ある意味可哀想だよな。開発すればするほど、どんどん弱点増えてくんだから!」
 責める側は狂ったように喜んでいる一方、責められる栞さんはまさに死に物狂いだ。身体中に纏わりつく相手を引き剥がしながら、少しでも『正気でいられる』格好を求めて暴れていた。何度も何度もブリッジの格好になっていたし、がに股のまま這う格好を取ることもあった。でも結局、どんな格好でもポルチオ絶頂の快感から逃れる事はできなかったようだ。
 みっちりと周りが固められていたから、壁際の僕からは詳細が見えない。かろうじて覗く足先が、感電するみたいにピクピク痙攣している様子。堪らなさそうな呻き声。その呻き声が途切れた際の、白目を剥いてるだの、気つけしろだのという同級生の声。それが、僕に届く情報のすべてだ。

 やがて日が傾き、部屋に夕陽が差し込んだ頃。ようやく、“遊び”の時間は終わる。
 横様に倒れたまま、足を前後に開き、完全に白目を剥く……それが栞さんの最後の様子だった。全身の汗がとにかくひどい。濡れた髪が顔に張り付いているせいで、今の今まで溺れていたようにも見えてしまう。
 責めていた連中は満足げだった。ズボンを膨らませているのが窮屈そうだけど、これまでにないほど栞さんを追い込んだことに満たされているようだ。そしてそれは、あの悠真君も同じ。
「……ホラ先生。そろそろ起きて」
 頬を叩いて栞さんの意識を呼び戻し、虚ろな瞳と視線を合わせる。
「だいぶ意識飛んでたね。俺らの“オママゴト”が、そんなに良かった?」
 聞き覚えのある問い。
「…………っ!!」
 でも栞さんは、その問いに口を噤む。悔しそうだ。失神するほど感じまくっていた手前、否定のしようがないんだろう。悠真君はその反応を見て、改めて笑みを深める。
「さすがに疲れたでしょ。今日はもう帰っていいよ。……ま、アソコが疼いて仕方ないっていうんなら、いつもみたいにハメてあげてもいいけど?」
 その答えに、周囲が色めき立つ。
「おおおっ、いいねえ!」
「そうだ、あんなオモチャだけじゃ物足りねぇだろ? 俺らの熱くて固いのが欲しいよな!?」
 いよいよ挿入できる可能性ができたことで、惨めなぐらい必死にアピールする。でも、さすがにこの提案まで呑む栞さんじゃない。
「そう、じゃあ帰るわ。疲れたの、あなた達子供の相手なんて、うんざり」
 吐き捨てるようにそう言うと、ふらつく足で立ち上がる。そして、よろめいて膝をつき、また必死で腰を持ち上げる。かなりつらそうだ。
「なんだよー、マジでハメらんねーのかよ!?」
「いいや、もう辛抱たまんねぇ。無理矢理でもやっちまおうぜ!!」
 納得しない何人かが、痺れを切らした様子で栞さんを押し倒そうとする。
「きゃあっ!! ちょっと、やめっ……!」
 栞さんが悲鳴を上げた。でも、欲望に駆られた子供がそんな事で止まる筈もない。
 栞さんの華奢な身体が引き倒され、足を広げられ、いよいよ犯される……という、まさにその瞬間。

「――――やめろ!」

 凛とした声が響いた。その異様な響きで、栞さんを押し倒す数人の動きが止まる。まさに、鶴の一声。それを発せられるのは、この部屋でただ1人しかいない。
「ハメるってのは冗談だ。今日は、機械であんだけ責めてんだぜ。これ以上無茶させて、壊れたらどうする。朝言った通り、セックスはなしだ」
 静かだけど、有無を言わさぬ感じの言葉。それを前に、例の数人も栞さんから手を放す。
 改めて思う。悠真君のカリスマ性は、とても同い年のものじゃない。こんなに癖の強い、獣のような同級生達を抑えてしまうんだから。
 その凄みを改めて感じると同時に、僕は安心してもいた。
 ともかく、これ以上栞さんがひどい目に遭わずに済んでよかった。あれだけ悶え狂った後に輪姦なんてされたら、どうなっていたかわからない。このまま帰って、ひと眠りでもしたら、きっとまた元気になるはずだ。そう思った。

 つくづく、甘い。
 あの悠真君に限って、楽をさせるために解放するなんてことが、あるわけもないのに……。



                              (続く)