大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2019年12月

二度と出られぬ部屋 第二章 喉奥凌辱

※イラマチオ回です。嘔吐要素があるため、ご注意ください。



■第二章 喉奥凌辱


【ディープスロート】
 地下16階の部屋には、入口にそう彫られた銀プレートが掛かっていた。そして扉の奥からは、生々しいえずき声が漏れ聴こえている。
 「おえ゛っ、おぉお゛え゛! おええ゛っ!!」
 濁りきった声。音だけ聴いていれば、泥酔した中年男が集団で嘔吐している光景が脳裏に浮かぶ。だが、いざ扉を開けて目の当たりにしたえずき声の主は、中年男などとんでもない、揃いも揃って格別の美少女だった。
 狭苦しい和室だった地下15階とは打って変わり、この部屋は煌びやかだ。眩く輝くシャンデリアに、いくつもの長ソファ。ガラステーブルの上にはフルーツ盛り。朧げな記憶ではあるが、似た光景に覚えがある。確か、キャバクラとかいったか。
 えずき声は、部屋内の3箇所から漏れていた。左奥、右奥、そして中央。ガラステーブルを臨むソファに一人ずつ制服姿の少女が腰掛け、左右をホスト風の男に挟まれている。
 少女3人は、ちょうど同じ責めを受けているようだ。口を開きっぱなしにする透明な器具を嵌め込まれ、歯茎まで露出させられた上で、喉の奥へ細長い道具を差し込まれる責め。敏感な喉へ異物を突っ込まれるんだから、無反応でいられる道理はない。3人は眉を顰め、身体を前後に揺らしながらオエオエとえずきまくる。そしてその苦しみぶりを、対面のソファに腰掛けた親父共が愉快そうに観察していた。
 顔面を変形させられ、元の顔の造りがわからないからだろうか。3人の腰掛けるガラステーブルには、それぞれ名札と写真が置かれていた。写真には個性が出ている。右奥の少女は、彼氏らしき年上男と腕を組んでいる。左奥の少女は、ぎこちない感じではにかんでいる。
 そして真ん中の少女は……ツインテールを揺らしながら、両手のピースサインを突き出すような一枚だった。後ろに映る友達達を隠さんばかりの、圧倒的な自己主張。しかし、そこに鬱陶しさはない。子供の無邪気さをつい許してしまうように、彼女のはしゃぎぶりも微笑ましいものだ。
 …………いや、少し嘘をついた。俺がその写真に好感を抱いたのは、無邪気さもそうだが、それ以上に彼女──『千代里』の容姿に因る部分が大きい。
 
 千代里は、俺がエレベーターで出会った女子高生集団の一人だ。皆が美形揃いだったせいで、あの場では特に意識はしなかった。だが改めて千代里個人に目を向ければ、その愛らしさは信じがたいレベルにある。
 写真の中で、千代里は白い歯を覗かせ、満面の笑みを浮かべている。その好感度は只事ではなく、生で目にしたら最後、確実につられて笑ってしまうだろう。
 好感度の理由は二つ。
 一つに、とにかく眼が輝いている。ふつう「綺麗な目をしている」と評される人間でも、瞳に輝きが一つあるぐらいが関の山だろう。しかし千代里の瞳の虹彩には、3つも光が踊っている。正面の光景を映し出す澄み具合はもちろんのこと、瞳それ自体が光り輝いているようだ。
 そしてもう一つは、歯並びのよさ。天然のものではなく、地道な嬌声の結果なんだろうが、そのあまりに整った歯並びは、笑顔の質を数段上げる。女優かアイドルのような、ひどく神聖な存在に思わせてくる。
 そしてこれら二つの武器を、幼い顔立ちが包んでいるのが絶妙だ。目にしろ口にしろ、整いすぎた部位は、ともすると気取った印象を与えかねない。しかし輪郭が幼いせいで、嫌味な印象は払拭され、『許せてしまう』。
 髪の色がやや軽めのブラウンであることも、ツインテールに結んだ髪形も、そうした美と愛嬌のバランスの邪魔をしない。まさに、奇跡的な愛らしさ。エレベーター内で友人と触れ合う彼女には、どこか天然気味な印象を受けたものだが、それはそうだ。彼女であれば、たとえどれだけズレた事をしようが、惚けたことを言おうが『許される』。同性異性関係なく、周囲のあらゆる人間から可愛がられるはず。つまり、天然のまま育つことを許された存在なんだ。この千代里は。
 ただ、彼女は周りの皆に愛されてきたようだが、天にまで愛されたわけではないらしい。もし天にすら愛されていたなら、彼女は今、この地の底で喉奥を掻き回され、醜く顔を歪めたりはしていないはずだから。

「どうだ、気持ちよくなってきただろ。ノドの奥にも、性感帯ってのはあるんだぜ?」
 千代里の喉に細い道具を捻じ込みながら、ホスト風の男が囁いた。
「げぇっ、は……っ!!」
 千代里は小さく噎せかえる。しかし、男の手は止まらない。
「エグついてる場合じゃねぇぞ。まだ半分しか入ってねぇんだ」
 ピンク色をした凹凸だらけの責め具を、さらに奥まで差し込んでいく。少しずつ、少しずつ。
「ほら、どんどん奥に入ってる。ノド開いてくのがわかんだろ?」
 男が問いかけても、千代里は前を凝視したまま、はっ、はっ、と怯えるような息を漏らすだけだ。男はそれを見て口元を緩めながら、さらに指先を押し込んでいく。責め具を掴んでいる親指と人差し指が、完全に口の中に隠れるぐらいまで。
「そーら、全部入った」
「かはっ……がはっ!!」
 男が全挿入を宣言するのと、千代里が咳き込むのはほぼ同時だった。
 一旦男の手が引かれる。ズルズルと引き出された細い責め具には、粘ついた唾液がべっとりと纏わりついていた。奥まで入れられていただけに、持ち手付近までが泡に包まれている。
「おーっ、すげぇすげぇ」
 重力に従って垂れ落ちるその糸を、もう一人の男がカクテルグラスで受け止める。カクテルグラスの中には、泡立つ液体がもう数センチも堪っていた。ただ、千代里の汁はまだ少ないほうだ。他の2人の少女は、その倍はえずき汁を出しているようだった。
「くくっ。やはりディルドーイラマはいい。アイドル級の子が、あんな濃いえずき汁を。これがテレビなら放送事故モノだ」
「まったくです。少し見目がいい程度の女だと、ああしてマウスオープナーをつけられたら最後、頬肉が吊り上がって不細工面になるものですがね。この子は目元だけでも逸材だとわかる」
 千代里の対面に座る人間が、それぞれ感想を口にする。他の少女2人には3人ずつしか観客がいないのに、この千代里にだけは4人がソファを占拠した上、さらにその後ろに立ち見で10人ほどが張りついている。一番可愛い子に群がるとは、現金なものだ。もっとも、立ち見に交じっている俺が言えたことでもないが。

「どうだ、これが全部入ったんだぞ」
 ホスト風の男は、唾液に塗れたディルドーを千代里に見せつける。
「はぁ、はぁ……」
 千代里は荒い息を吐きながら、信じられないという視線を責め具に向けていた。
「よし、もう一度いくか」
 一旦引き抜かれたディルドーが、また千代里の喉へと押し込まれていく。8割程度までは実にスムーズだったが、最後の一押しというところで、千代里の肩が跳ねはじめる。喉の奥からうがいをするような音がし、口の中で舌が暴れている。
「全部入ったぞ」
 千代里の変化など意に介さず、ディルドーはまた根元まで捻じ込まれた。千代里の瞳が細まり、涙が滲む。その涙はすぐに雫となって、整った目元をつうっと伝い落ちる。
「とうとう涙が出てきましたな」
「ああ。見た目が幼いだけに、背徳感が堪らんよ」
 見守る親父共が前のめりになりはじめた。その中で、またディルドーが引き抜かれる。纏わりつく粘液の量はさっきより多い。そうしてまた引き抜かれ、ほんのわずかなインターバルを挟んでまた挿入される。
 ただし、この回はさらに悪質だった。それまで通り指が口に入り込むぐらいまで押し込んでから、男の手がまったく動かなくなる。
「あ゛……ぉ……っ!?」
 責め具に喉の中心を杭打ちされ、千代里が呻く。唇の周辺は時が止まったように静止しているが、エネルギーがなくなったわけじゃない。そのエネルギーは、まるで暴発する銃のように、愛らしい少女の喉を不自然に蠢かせる。
 それまで小動物じみた上目遣いをしていた瞳が、急激に細まっていく。
「…………っ!…………ぐっ………………!!!」
 声にもなりきれない音がかすかに漏れ、瞼が揺れる。瞼の合間に覗く瞳はほとんど動かないが、それだけに、受けている衝撃の大きさが伝わってくるようだ。
「ぐっ……ぶほっ、ごぼっ!!」
 とうとう、千代里は咳き込みはじめた。その動きを受けて男が指を引くが、その最中にも何度も噎せてしまう。
「くはっ……は、はっ、はっ…………!!」
 何秒にも渡って呼吸管に蓋をされていたため、千代里の呼吸は荒い。舌も完全に開口具の外に飛び出してしまっている。そしてその舌に送り出されるように引き抜かれたピンクディルドーからは、もはやゼリー状と化した粘液が滴っていた。
「いいぞ。喉奥の汁がでてきた」
 ホスト男はほくそ笑み、さらにディルドーを押し込んでいく。奥へ、奥へ。
 千代里の反応は大きい。目をぎゅっとつむり、オエッ、オエッ、と連続でえずきはじめる。
「おーおー、苦しそうだ。すごい顔になってますよ」
「ふむ。しかし未経験でこれだけやられれば、普通はとうに吐いてしまっているものだが」
「確か彼女は、合唱部所属だそうですよ。それもソプラノパートの中心的な存在だとか」
「ほう。蒼蘭の合唱部といえば、コンクールで上位入賞していたな」
「蒼蘭は全国から才ある女子生徒を集めますんで、全国レベルの部活も多いですがね。逆にいえば、その環境下でなお抜きん出る人間は、紛れもなく天才と呼べるでしょう」
「なるほど、天才か。しかし可哀想なものだな。出る杭であったばかりに、こうして打たれることになる」
 ギャラリーは口々に千代里を謗り、嘲る。そしてその言葉は、間違いなく千代里自身にも聞こえているはずだ。だが、千代里にはそれに反応する余裕すらないようだった。閉じた目から涙を流し、噎せかえり。透明なえずき汁が、着々とカクテルグラスに溜まっていく。
「うおーっし、満タン!」
 そんな中、左奥に座る男がカクテルグラスを振り上げた。掲げられたグラスの中は、確かに液体で満ちている。ただし、千代里のそれと比べれば透明度は低い。白濁していたり、黄色かったり。
「はえーなオイ!」
「つーかそれ、半分ぐらいゲロじゃねぇ?」
「いいじゃん別に。早くグラス一杯にした組の勝ちだろ」
 ホスト風の連中同士でひとしきり盛り上がった後、勝った男共は嬉しそうに酒を呷り、負けた2組は眉を顰めて担当の少女に向き直る。
「ったく。お前ェが無駄に頑張っから、一番取られてんじゃねーかよ。もうディルドはやめだ、指で拡げてやる!」
 そう言ってディルドーを引き抜くと、二本指を開口具の内側へ突っ込みはじめる。指二本をあわせた直径は、さっきの極細ディルドーより明らかに上だ。当然、千代里達も激しく反応しはじめる。
「う、う゛!げっほ、あはっ!!」
 苦しそうな呻きと、咳き込み。細いディルドーでなら数秒は耐えられたそういう反応が、即時に出てくる。
「だから頑張ろうとすんなって。ゲー吐いてでもグラス一杯にしねーと、次行けねーぞ!?」
 男は苛立たしげに言いながら、指をさらに喉奥深く突っ込んでいく。喉の上側を刺激するのも強烈そうだが、指を横向け、喉奥の横腹を刺激されるのはもっときついらしい。
「お、オエ゛っ!!かはぇえエエッ!!!」
 乾いた咳のような声と共に、突き出た舌に沿ってどろどろと唾液がでてくる。
「出てきた出てきた。ネッバネバ」
「ああ。唾とか涎とかは少なめだけど、えずき汁がすげーなこいつ」
 男2人は、出てきた液を指に絡みつかせながら、さらにしつこく刺激する。
「ははは、すごい顔だ!」
「しかし、あの子なかなか吐きませんね。そこまで喉に耐性があるようにも見えませんし……こう言ってはなんですが、さして根性があるようにも」
「分かりませんよ。なにしろあのルックスだ。美形には美形特有のプライドがありますからね。無様を晒すまいという意地は、案外強いもんです」
 ギャラリーが茶化す中、千代里ともう一人は何度もえずき上げた。唾液やえずき汁の量は刻一刻と増え、喉奥を掻き回す男の手の甲を流れてグラスへ滴っていく。
 そして十数分後、3つのグラスはとうとう全て満たされた。
「お待たせしましたお客様。さあ、この美少女3人の唾液、おいくらでしょう!?」
 ホスト風の男達が立ち上がり、グラスを掲げて問う。俺にはいまいち趣旨の掴めない問いだったが、常連客らしい他の男共は色めき立つ。
「10万だ!」
「20万!」
「40万出そうッ!!」
 札束が投げ出され、オークションさながらに値段が叫ばれる。
「……?」
 千代里は、未だ開口具を外されないまま、雄の熱狂を小ウサギのような瞳で見上げていた。合コンでやるなら満点に近い反応だが、アンダーグラウンドな世界では格好の餌食にされる弱々しさだ。

 結局、60万の大台を叫んだ男が勝者となり、ホスト男からカクテルグラスを渡される。そして奴は、訝しげに見つめる俺や千代里の前で……ひと息に、その中身を飲み干してみせた。つまり、千代里の喉から掻き出された、濃厚なえずき汁を。
「っ!!」
 千代里が目を見開く。シャンデリアの明かりを余さず映す瞳が、明らかな動揺を示す。その表情が示すのは、困惑、そして軽蔑。そんな千代里の頬に、右側のホスト男が平手を見舞う。
「オイ! お客様になんて目ェ向けやがる!!」
 そう怒鳴りつけながら、荒々しく開口具を取り外す。千代里は突然の暴力に怯えながら、ようやく自由になった口をぱくつかせる。
「す、すみませんでした……。」
 小動物の瞳で、正面の客に謝罪する千代里。これで許さない男は、たぶん居ない。
「フフ……いいよいいよ、ああいう眼も興奮するものだ。えずき汁も雑味がなくて濃厚で、実に味わい深かったしねぇ」
 グラスを買い取った男は、口髭に泡を纏いつかせて笑う。時々口を蠢かし、内に含ませた粘液を味わいながら。
 美少女との『関節キス』でご満悦というところか。気色が悪い。
 だが……本来の俺も、こいつと同類かもしれないんだ。

「よし。んじゃ、本格的に喉のストレッチ開始だ」
 ホスト風の男達がそう言って、ガラステーブルに何かを置く。男のアレそっくりに作られた、本格的なディルドーだ。太さは俺のものより少し細めだが、楽に飲み込めるサイズじゃ決してない。
「これを、喉に……!?」
 千代里が顔を強張らせる。それはそうだろう。だが、ホスト男の表情に変化はない。
「なに、無理とか言うつもり? マンコ使うのはどーーしてもイヤだっつぅから、口で奉仕するだけで許してやったっつぅのによ。上の口でできねぇってんなら、下にぶち込むしかねぇぞ?」
 ドスの利いた声でそう釘を刺されると、千代里はさらに固くなる。でも結局は、
「…………わかりました」
 そう答えるしかない。
「うし。なら自分で咥えてみろ。目標は全呑みだ」
 右の男が、さらっと衝撃的な事を言う。今テーブルに置かれているディルドーは、どう見てもさっきまでの責め具より丈がある。その上で太さときたら、悠に3倍はあろうというのに。
 それでも、千代里は拒めない。目の前の凶器を前に息を呑み、恐る恐るという感じで根元を掴んでから、前屈みになって咥え込む。当然、スムーズに喉奥までとはいかない。太さがネックなのか、半分も飲み込まないうちに動きが止まる。
「ウ゛…ぐっ…………!!」
 呻き声を漏らしながら、涙を零し、なんとか喉奥へと苦戦した末に、とうとう耐え切れなくなって異物を吐き出す。明らかに奮闘してはいたが、その結果は調教役の不興を買ったようだ。
「お前、ふざけんなよ? 半分も入ってねぇじゃねえかッ!」
「根性出せや根性ォ!!!」
 男共は口々に怒鳴りつけ、膝立ちになって千代里の頭を鷲掴みにした。そして腕力にものを言わせ、強引に頭を押し下げていく。
「えあ゛……ぇかはっ!! あが……がああ゛っ…………!!」
 異物に太さがあるぶん、千代里のえずき声の深刻度合いも増していた。両の掌をガラステーブルにつき、必死の抵抗を見せている。だが、若い男2人の圧力に抗いきれるはずもない。ぐいぐい、ぐいぐいと、顔が押し下げられていく。異物が喉奥へと入り込んでいく。
「まだだ、もっと奥までいけ!」
 男共に容赦はない。髪のボリュームを完全に殺すぐらいまで力を込め、奥深くで咥え込ませ続ける。そうしてたっぷり10秒以上は押し留めてから、ようやく解放するんだ。
「んぐはっ、あはああっ!! ふ、……ふーーっ、ふーーーっ……!!」
 千代里は酸素を求め、溺死寸前の顔で呼吸する。その瞳からは、何筋もの涙が滴り落ちていた。
 束の間の解放。だが数秒の間すら置かず、次の地獄がくる。まさに極限状態。こういう状況だと、人間の取る行動は限られてくる。
「おら、掴むんじゃねぇよ!!」
「手ェどけろッ!!」
 左右の男が怒声を張り上げた。その視線の先を見れば、千代里の右手がディルドーを鷲掴みにしている。引き抜こうとしてか、それとも手をクッションにして、少しでも喉奥へ入り込むのを阻止しようとしてか。
「離さねぇと、後ろ手に縛りあげんぞオラッ!!」
 恫喝と共に、白い細腕が掴み上げられる。そうして手がテーブル下に戻された後は、追い込みにますます手心がなくなった。力むあまり血管さえ浮き立たせた4本の腕は、改めて千代里の小顔を掴み直す。それも今度は、後頭部を押すだけじゃない。首後ろを掴み、額に指を食い込ませて、完全に逃げ道を封じた上で頭を押し下げていく。
 その無茶は、当然ながら受ける側の反応となって顕在化する。
「ふも゛ぉおお゛えっ!! えがっ、がはっ……があああっ!!!」
 低いえずき声と共に、喉奥で何かが弾けるような音がする。バイブと口の隙間から、唾液がどろどろとあふれ出し、たっぷりと泡立ちながらガラステーブルに広がっていく。
 十二分に激しい反応だが、千代里の表情もまた壮絶だ。眉間に皺を寄せ、頬の線を完全に浮き立たせ、何度も噎せるうちに鼻水まで噴き出してしまう。
「おーおー、苦しそうになってきた!」
「これはこれは、間違っても美少女とは呼べませんなぁ!!」
 前列のギャラリーが、一人また一人とソファを降り、ガラステーブルを下から覗きこんで歓喜する。千代里の美貌が崩れれば崩れるほど面白いらしい。
 こうしたギャラリーの反応のよさが、ますますホスト風の男達を調子づかせる。他の2人の少女がテーブルから移動した後も、千代里だけが居残らされ、この覆い被さるようなディープスロートを続けられた。

「おら、もっといけんだろ。喉開け!」
「オメー合唱部だろうが、軟口蓋開ける訓練とかやんねーのかよ!?」
 ガラの悪い怒声を浴びせつつ、体重をかけて千代里の頭を押さえ込む男2人。
「うぶっ、ごふっ!!」
 千代里の口の端から唾液が零れていく。その中には時々、異様に真っ白い粘液が交じることもあった。
 明らかに辛そうなその状況でも、千代里は耐えていた。何度もオエッとえずき、肩を震わせながら。頭が動かないかわりに、腕が彼女のつらさを代弁する。ガラステーブルを掴んだり、肘をついたり。時には、背後のソファを握りしめることも。
 そんな中、彼女はソファの飾りボタンを思いきり掴み、千切りとってしまう。
「あっ、お前! どうすんだよ、ボタン取っちまいやがって。備品だぞこれ!?」
 男は2人して振り向き、焦りを見せた。ようやく呼吸ができた千代里も、事態を把握して青ざめる。
「あっ。ご、ごめんなさい……!!」
 彼女は頭を下げ、千切ったボタンを元の場所に埋め込もうとする。何度も、何度も、必死に。それを見て……青筋を立てていた男も、思わず吹き出す。
「ぶははっ!オイお前、笑わせんなよ!?」
「ば、馬鹿かお前! ンなんで戻るわけねぇだろうが!」
 調教役2人、そしてギャラリーの男達も大受けだ。その渦中で、千代里だけが戸惑っていた。
「え…? え……?」
 俺にはわかる。あれは、笑いを取ろうとしたわけじゃない。彼女なりに真剣に行動した結果、常識とズレてしまっただけだ。まさに天然。本来であれば場を和ませ、プラスに働くはずの性質。だが今この場では、『抜けている』ことは折檻の口実にしかならない。
「ここまでやられてボケるなんざ、いい度胸してんなぁオメー! ちっと躾が足んなかったか?」
 険しい顔つきを取り戻したホスト男達が、千代里の腕を掴んで無理矢理に立たせる。
「『平行棒』は……と、ちょうど空いてんじゃねぇか」
 ホスト男の片方が、ある方角を見て笑った。視線の先には、壁に備え付けられたディルドーがある。これまでの縦方向のディープスロートから一転、横向きに咥えさせるための責め具らしい。
 そしてその責め具には、明らかな『使用感』があった。具体的に言えば……ディルドーの周囲とその真下に、半固形の吐瀉物がこびりついているんだ。
「ヒュウ、いい彩りじゃねぇか!」
 根っからのサドらしいホスト男は、千代里の腕を掴んだまま口笛を吹いた。逆に千代里は凍りついている。そしてその顔を、跪く別の少女が見上げていた。
「あのっ。ご、ごめんね千代里ちゃん。私っ……は、吐いちゃって…………!!」
 どうやら彼女が、ディルドーを咥えさせられて嘔吐した当人らしい。
「ぎゃはははっ! オイ犯人見つかったな。奴隷同士だがキレていいぞ、ふざけんなっつってよ!」
「う……っ!!」
 ホスト男の罵声を浴び、跪いている子が泣きそうな表情をする。それを前にして、千代里は……
 にこやかに笑った。
「んーん、全然平気っ! 気にしないで、皐月ちゃん!」
 恨む気持ちなど微塵も感じさせず、にっと白い歯を覗かせて笑う。相手の失態のせいで、これから自分が、吐瀉物まみれの道具を咥えさせられるというのに。
 その朗らかな笑みは、どれだけ相手を勇気づけることだろう。彼女は確かに、少し天然気味なのかもしれない。世間一般の普通からは、いくぶん外れているのかもしれない。でも、いい子だ。奇跡的なぐらいに。
「ほー、『全然平気』ときたか。すごいねぇ、じゃチャッチャと咥えろや!」
 ホスト男2人は、プライドを傷つけられたのか、腹立たしげに千代里を壁のディルドー前まで引きずっていく。そして後頭部と顎に手を宛がい、強引に咥えさせる体勢に入った。
「う……!!」
 吐瀉物に塗れた異物を前にして、さすがに千代里も小さく呻く。
「ほらどうした、止まってんなよ。『全然平気』なんだよなぁ!?」
 千代里は、男2人の手で壁際に押し付けられ、渾身の悪意をぶつけられた。手で後頭部を押さえ込み、鼻が潰れるぐらい顔を壁に密着させて、千代里の喉奥までディルドーを嵌めこんでしまう。おまけに、そのまま男2人は動きを止めた。喉奥留めだ。
「おら、どうだお友達のゲロの味は」
「朝何食ったか当ててみろよ。ま、正解しても何もやんねーけどな?」
 男2人は、軽口を叩きながらも押さえる力を緩めない。
「ぶっ、ごぶう゛!!」
 千代里の身体が反射で暴れ、噎せる。それでも、彼女は耐えていた。震えながら、懸命に。
「これじゃラチあかねーな。甘ったれたガキみてぇな顔して、根性あんじゃん」
 ホスト男の一人がそう言い、一旦後頭部から手を離す。そして片足を上げると、今度は足の裏でもって千代里の頭を圧迫しはじめる。
「んお゛っ!!」
 壁際から小さな呻きが漏れた。
「脚の力は手の三倍、ってな。やろうと思えば、いくらでもキツくできんだぜ。おい、手!」
 ホスト男は笑みを浮かべ、もう一人に顎で合図する。
「OK!」
 そいつも薄笑みを浮かべながら、壁に宛がわれた千代里の両手のうち、右手首を掴み上げる。
「うう゛……!!」
 千代里の顔は見えない。が、怯えて右手を見上げているのが気配でわかった。
「うっしゃあ!!」
 千代里の頭を足蹴にしている男も、膝を曲げて上体を前に倒し、千代里の左手を掴んだ。そのまま2人が身を引けば、千代里は両腕を後方に引き絞られたまま、弓なりのような姿勢を取らされる。しかも、顔だけは男の足裏でディルドーに押し付けられたまま。明らかに不自然な格好。体にかかる負担は尋常じゃない。
「むう゛っ、ん゛ぉ……ぼぉお゛エ゛ッ!!」
 千代里の喉から、えずき声が漏れる。想像よりずっと低い声だ。ふわふわした女の子らしい彼女のイメージとは真逆の、男の声。
「ぎゃっはっはっは、すげぇ声。これってソプラノ?」
「違うな。だいぶ低めのテノールってとこだ。バスの一歩手前」
 千代里の声を聴いて、男2人の笑みが深まる。左右の細腕がますます直線に引き絞られ、明るい茶髪を押さえつける足裏は、駄目押しとばかりにグリグリと左右に捻られる。あんなひどい声まで漏れるコンディションの人間が、それに耐え切れる道理はない。
「おお゛っぉっろ……えろ゛お゛えええ゛っ!!!」
 耳を覆いたくなる声と共に、黄褐色の吐瀉物が千代里の太股の合間から覗く。筆荒いの水を捨てた時ぐらいの勢いで、ビチャビチャと床に音が立つ。
「おーおーおー、すげぇ出んじゃん。なーにが『全然平気!』だよ!」
「イキっといてこれはダセぇわ。友達の倍は吐いてんぞお前?」
 散々に笑い者にしながら、ホスト風の男2人が手足を離す。千代里の顔がようやくディルドーから外れ、ゲホゲホとひどく咳き込みはじめる。
「ひどいよ」
 横からそう声がした。さっき、千代里に吐いたのは自分だと自白した子だ。
「は?」
 責め役の数人が、一斉に鋭い眼を向ける。
「っ……だ、だって!」
 怯える彼女に、ゆらりとホストが近づこうとした、その時だ。
「ぐほっ、げほっ!! あ、あはは。ホント、吐いちゃうね、これ……。」
 千代里が、笑い声を上げた。寸前まで彼女は、喉を押さえて咳き込んでいる最中だったんだ。とても笑えるような状態じゃなかった。それでも無理をする理由は決まっている。ひとつは、場の空気を変えるため。そしてもうひとつは、「これは吐いても仕方ない」と同調することで、級友の罪悪感を軽くするためだ。
 なんていい子なんだろう。在り来たりな表現ではあるが、まさに天使だ。だがその天使を取り囲むのは、逸物を反り勃てた悪魔ばかり。

「さて。お集まりの皆様に、お願いがございます」
 ホスト風の男が、客側へと向き直った。これまでの野蛮な口調から一転、恭しい言葉遣いに変わっている。ただ、慇懃無礼という感じで、その眼差しは悪意を隠そうともしない。もっともそれは、聞き入れる客側にしても同じだが。
「ここは、美しい少女の喉奥をご堪能いただくお部屋。そのため本来は、充分にディープスロートに慣れた奴隷のみを、皆様に提供する決まりとなっております。しかしご覧の通り、この娘は若輩の我々では手に余る。そこで百戦錬磨のマニアたる皆様に、お力添えいただきたいのです」
 自分を下げ、相手を持ち上げての呼びかけ。回りくどいが要するに、剛情な千代里の喉奥を全員で輪姦せ、ということだろう。
「ほう?」
 この悪魔じみた提案に、居並ぶ雄が眼をギラつかせる。
 連中にとっては願ってもない話だろう。千代里は、ディープスロートに慣れていないどころか、キスの経験すらあるか怪しい娘だ。風俗で例えるなら、マットの研修すら受けていないまっさらな新人を、好き放題に抱けるようなもの。そんな好機を、マニア連中が逃すはずもない。
「いいだろう。熟成した大人の味を、たっぷりと教えてやる」
 歪んだ笑みは次々と伝染し、数秒かからずに千代里を包囲する。
「…………え…………?」
 千代里は、脂ぎった中年男に四方を囲まれ、困ったような笑みを浮かべた。彼女はこれまで、その人懐こさと笑顔でもって世の中を渡ってきたんだろう。そしてそれは、悪いことじゃない。彼女のように徳の高い人間が、笑って生きていける世界。それこそ、人類が目指すべき理想郷なんだから。
 しかし、理想はしょせん理想。そしてここは、血生臭い現実がすべてを支配する地の獄だ。
「さて。まず誰から始めるかだが……口の処女は、最古参である私に譲ってもらおうか。この場の誰よりも、『クラブ』のために金を落としてきたんだからね」
 腹の出た中年男が、千代里に歩み寄る。
「ははは。フロアのファーストナンバーをお持ちのHさんにそう仰られると、返す言葉がありませんな」
 一人がそう肩を竦める。異議を唱える声が出ないところを見ると、他の客も“H”と呼ばれるその男に一目置いているようだ。
「始めようか」
 Hはズボンを脱ぎ捨て、逸物を衆目に晒す。年季の入った赤黒いそれは、無慈悲にも千代里の鼻先につきつけられる。


 天使の顔から、ついに笑顔が消えた。



               ※



「ふふふ、初々しいものだ」
 仁王立ちになったHが、嬉しそうにほくそ笑む。千代里はその足元に跪き、逸物をしゃぶっている。俺はどうやら、そこまでセックスに詳しい人間じゃない。そんな俺でも見ていて判るぐらい、たどたどしいフェラチオだ。
 Hは、玩具遊びをする幼児を見守るように、しばらくそれを楽しんでいた。しかし数分が経つと、その目は足元の人間を童としてではなく、“女”として捉えるようになる。
「よし。ではそろそろ、しっかりと咥えてくれ」
 Hにそう告げられ、千代里の肩がびくりと震える。とはいえ、彼女も覚悟はしていたんだろう。一旦逸物を口から離し、ごくっと喉を鳴らすと、口を開いて逸物を口内に迎え入れていく。一気に半分ほど。けれども、たった半分。当然、ディープスロートマニアであるHは満足しない。
「駄目だな。もっと深く……こうだ!」
 そう言って千代里の頭を掴み、自分の腰へと引きつける。
「う゛、う゛えっ!うえ゛ぇっ!!」
「どうした、まだ7割ほどしか入っていないぞ。さっきのディルドーのように、根元まで咥えなさい!」
 千代里の頭を掴んだまま、前後に動かすH。
「う、う゛えっ!んえ、おえ゛ぇっ!!」
 一方の千代里は、その動きと同じペースでえずき上げていた。ディルドーの時は我慢強かったものだが、一度吐いたことで何かが変わったんだろうか。あるいは、脂ぎった中年男の匂いを受けつけないのかもしれない。無機物であるディルドーと、本物の生殖器との『滑り』の差という可能性もある。いずれにせよ、千代里はHの物を咥えるのに苦戦していた。
「駄目だ駄目だ、ノドを開け。えぐついた所で、グッと堪えてみろ! ディープスロートは慣れがすべてだ。ある程度素質に左右される膣やアナルと違って、喉奥は特訓すれば誰でも『使える』ようになる。何しろ食い物という固形物を通すための穴だからな。それが開かんなどというのは、ただの甘えだぞ!」
 中年男は持論を説きつつ、深々と咥えさせつづける。
「うえっ、うぇうぇ゛……んむえ゛ぇっ!!」
 千代里は低く呻き、手で相手の太股を押した。とはいえ、力任せに突き飛ばしたわけじゃない。小さな手で控えめに遠ざける、女の子らしい抵抗だ。Hが身を引いたのは、相手の窒息を危惧してのことか。
「くはっ、はあっ、はあっ……!!」
 実際、ようやく解放された千代里は、完全に肩で息をしていた。
「まったく、根性のない。相手が勢いづいている時は、苦しくても水を差すな。外気に一度触れるだけで、せっかく熱くなったものがリセットされる」
 Hはそう言って、今度は横から千代里の頭を鷲掴みにした。そして、また深く咥えさせる。
「う゛っ、むうう゛っ! げほっ、えほ……う゛っふぇぇ! おえ゛っ…おえ゛おえ゛っ!!」
 千代里の噎せ方も、一気にひどくなる。何度も噎せ、えづき。十回ほど喉奥を突いてから一旦逸物が抜かれた時には、必死な様子で舌を回して涎を切っていた。顎の下に垂れ落ちていく涎の量を見れば、必死さの理由も解ろうというものだ。
「ふむ、良くなってきたぞ。さすがに合唱部というだけあって、喉そのものは鍛えられているな。あとは我慢さえ覚えれば、性欲処理の道具としては及第点だ」
 Hは上機嫌で3度目の口内侵入を果たし、千代里のツインテールを前後に揺らす。そして今度こそ、逸物は抜かれない。右手で千代里の後頭部を押さえ込み、左手を顎の下に添えて、ラストスパートをかける。
「おえ゛、えごぇこえ゛っ!えごあ゛っ、う゛、う゛…ぃぉア゛っ!!」
 千代里のえずきはいよいよ声から遠ざかり、口内の深い部分を凌辱されている事実をわかりやすく伝えてくる。
「おおお、いいぞ、いい……出るぞっ!!」
 Hは口元を緩め、手の動きを早めつつ足を踏み変えた。そしてその一秒後、動きを止める。
「んん゛っ!?」
 千代里から驚きの声が漏れた以上、『何か』が起こったことは明らかだ。それは何か。決まっている。男が極限まで快楽を貪った果てに至る行為。射精だ。
「よーし。途中まではどうなることかと思ったが、どうにか形になったな」
 Hが腰を引き、逸物を抜き出した。千代里の唇と逸物の先を、太い糸が結ぶ。それは自重で下へ拡がり、泡立つ三角形の膜を形作る。
「ほう、お歳の割に見事ですな。不慣れな娘相手にこの一発とは……ハードルを上げてくださる」
「ふふふ。よちよち歩きの子馬の手綱を握り、思惑通りに走らせ、フィニッシュに至る──マニアの腕の見せ所だ。諸君も愉しみたまえ」
 『諸君』。Hのその言葉で、口内の精子を手に吐き出していた千代里が顔を上げる。そう、Hはあくまで1人目。そのHの後ろには、いつの間にかずらりと列ができている。
 列の二人目がズボンを脱いだ。色白で細身な、典型的デスクワーカーという風情の男。
「あ……あの、すみません。ティッシュありませんか? これ、拭かなきゃ……」
 千代里は迫り来る男に怯えつつも、右手の精液を見せて問いかける。だが、目の前にいる男の目は冷たかった。
「そんなもの、どうだっていいでしょ。君はどうせこれから、全身ザーメンまみれになるんだから」
 そう言いながら、痩躯に反して重量感のある逸物を突きつける。千代里は、何かを訴える目で相手を見上げていたが、意思の疎通が図れない事を悟ると、諦めたように口を開いた。

 この二人目の責め方は、Hとはまた違う。
 彼は最初こそ、やや深めに逸物を咥えさせ、軽快に腰を前後させていた。じゅぼじゅぼと唾液交じりの音が繰り返される、オーソドックスな『イラマチオ』だ。だが、ある時から様子が変わる。千代里の鼻先が変形するほど深く咥え込ませたかと思えば、今度はカリ首が覗くまで一気に抜く。それを繰り返しはじめた。
「しゅっ!」
 掛け声と共にまた逸物が引き抜かれ、千代里の口から唾液の糸が垂れる。
「げほ、げはっ!」
 千代里は咳き込み、さらに唾液を垂らす。そして……
「…………ゲェェェオ…………ッ!!」
 縦に開かれた口から、とうとう空気が漏れた。ひどい音を立てて。その女の恥を、この場の連中が見逃すはずもない。
「はっはっはっは、なんて音だ! 合唱部の生徒が、間違っても出していいシロモノじゃないぞ!」
「まったくだ。この娘を評価したコンクールの審査員にも、これを送りつけてやりたいよ!」
「アイドル級の娘から、このゲップを引き出すとは。Sさんは楽しませてくれる!」
 手を叩いて大笑いし、賞賛が沸き起こる。浮かない顔をしているのは、恥を掻かされた千代里本人と、その被虐を見守る級友2人だけだ。
「ふふふ、拍手有難うございます。私のモノは横幅がありますから、穴に空気を送り込みやすいんです。妻と普通にしていた頃も、よく『マン屁』が起きて怒られたものですよ」
 Sと呼ばれた男は、そう言ってまた笑いを取り、気をよくして千代里に向き直る。
「さて、パフォーマンスはここまで。ここからは、純粋に喉奥を堪能させてもらうとしましょう」
 そう言って千代里の下顎に指を当て、口を空けさせてから、ゆっくりと逸物を挿入していく。
 そして、ディープスロートが再開された。今度は引き抜かず、喉の深い部分を蹂躙する。
「う゛、ウう゛……!!」
 クチュクチュという音と同じ調子で、千代里の呻きが聞こえる。
 千代里の表情は険しかった。Sの陰毛の生え際を睨みつけるような目をしつつ、頬を膨らませている。怒り心頭の表情にも見えるが、短い間隔で噎せているところを見ると、苦しさゆえの顔なんだろう。Sの言葉が真実なら、奴の逸物は横幅がある。それに喉奥を掻き回されれば、ああいう表情になるのも不思議はない。
 可哀想なのは、彼女の手だ。千代里は未だに、右手の精液を床へ零さないように掲げている。そのせいで、苦しさのあまり相手の足を跳ね返すのも、左手でしかできない。当然そんなものは、大の男に対する抑止力にはなりえない。
「あああいい、いいよ……!」
 Sはうっとりとした顔をしながら、激しく腰を使う。千代里の呻きのペースも早まる。そして、その数分後。
「あああ、出る、出るからねぇ!全部飲んで、全部ゥッ!!!」
 Sは甲高い声で叫びながら、千代里の頭を引きつけて喉奥で射精しはじめる。しかも、射精してすぐに逸物を抜いたHと違い、このSは千代里の頭を押さえ込んだまま、じっと腰を押し付けている。
「ん、んんー!んンン゛っ!!」
 千代里が顔を顰め、左手で何度もSの腰を叩く。それでもSは動かない。千代里はとうとう、それまで宙に浮かせつづけてきた右手まで使ってSの足を叩くが、それが最後の抵抗となった。
「んんんん゛ーーーー!!!」
 Sの太股で精液が弾けた瞬間、千代里の忍耐も限界を迎える。そして彼女は、ごぐっと喉を鳴らした。精液を飲み下した……いや、『飲まされた』んだ。
「ふふ、そうそう。喉奥射精してもらったら、ちゃんと飲まないと。口淫奴隷として失礼だよ?」
 Sはそう言って、ようやく千代里の頭から手を離す。ツインテールを靡かせながら、千代里の頭が後ろに弾ける。
「ぶはっ……あ゛っ、げほっ!!げっほえほっ!!」
 唾液の糸を垂らしつつ、千代里は激しく噎せかえった。普通の日常なら、誰かが大丈夫かと背中でも擦るような状態だ。誰もに愛される千代里であれば尚のこと。だが、この場に配慮などはない。苦しむ少女を労わるどころか、さらに苦痛を与えるべく、3人目が千代里の前に立つ。そしてかなりの長さのある逸物を、喘ぐ唇へと捻じ込んでいく。

 喉奥へ迎え入れるなら、多少の幅があるより、長い方が苦しいんだろうか。3度目の喉奥奉仕で千代里が見せた表情は、壮絶だった。縦に開いた口が強張り、顎には複雑な皺が寄り、喉にも中央に筋が浮き立つほどの力が込められている。
「きぃゅうううおおお゛っっ!!」
 そんな風に聴こえる喘ぎ声も、今日初めて耳にするものだ。相手がそれほどの表情を晒していても、3人目の男に責めの手を緩める気配はない。それどころか、喉奥に咥えさせたまま千代里の身体を引きずり、ソファの傍まで移動すると、ソファの座部に片足を乗せて責めはじめる。
 自分の足で千代里の身体を隠すことなく、背後の人間にも痴態を見せることができる。そういうパフォーマンスかと思いきや、そればかりでもないらしい。
「ははは、先にやられちゃいました。あれ、見栄えもしますが、やってて気持ちいいんですよね」
「ええ。片足に負荷がかかる分、射精感が強まりますよね。仁王立ちでのイラマチオは征服感こそありますが、力の込めどころが難しい。若い時分ならともかく、歳を食って射精力が弱まってくると、ああいう一工夫が大事になってきます」
「おまけにあの長さだ。あれでもって、力の込めやすい体位で喉奥まで押し込まれれば……かなりきついはずですよ」
 客達は、3人目の男の行為を興味深そうに評している。この連中が賞賛するということは、それだけ千代里が追い詰められる責めということでもある。
「とュア゛……っ!」
 また、聴いた事もない音がした。おかしなものでも口に含み、大量のツバと共に吐き出すような音。
 どうやら、3人目の男の逸物が引き抜かれたらしい。太い唾液の線が、平行に二本伸びていく。その先では、濡れ光る逸物がぶらんぶらんと揺れ、透明な液を飛び散らせていた。改めて目を凝らしても、やはり長い。平均の倍近くはあるかもしれない。
「ふーっ、ふーーーっ……!!」
 逸物を引き抜かれた千代里の顔が、またひどい。口を閉じ合わせているが、その合間から精液と涎があふれ、完全に下唇を覆い隠している。ほんの少し皺の寄った顎にも、ダラダラと泡立つ筋が流れている。どうやらあの3人目は、何も言わず静かに……千代里にすら予告せずに精を放ったらしい。その不意打ちの結果が、あのおかしな音だったんだ。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ……」
 千代里は俯きながら、荒い息を吐いていた。その彼女の影に、いくつもの影が重なる。
「ほら、休んでる場合じゃないぞ。まだまだ次がいるんだ」
 もはや順番すら待ちきれなくなったのか、3人の男が千代里を囲む。千代里は顔を上げ、眉根を下げる。前と違って、笑顔は浮かべないが。

 制服姿の少女が、3人の中年男に奉仕している。
「ほら、手もちゃんと使って。すぐ硬いのが咥えられるように整えておくのも、イラマチオ奴隷の仕事の内だぞ」
 右の男にそう促され、小さな右手が動きを早めた。その逆の手でも別の一本を握り、桜色の唇で正面からの突き込みを受け止めながら。
「う、ぐっ!ぶはぁっ……!!」
 小さな呻き声の後、千代里が大きく口を開いた。白い前歯さえ覗かせるような大口。その口内には、唾液と交じっていない、粘ついた白濁が見える。あきらかに今射精されたものだ。正面の男に射精の宣言はなかった。黙々と腰を振り、快感に浸り、当たり前のように予告なしで射精したんだ。相手を女性としてではなく、性欲処理の道具として見ているのが、その気遣いのなさに表れている。そしてそれは、左右の男にしても同じ。
「今度はこっちだ」
 左側の男が千代里のツインテールを掴み、強引に横を向かせる。
「痛っ……!」
 この時ばかりは天使のような彼女も、割と本気で腹を立てたようだ。だが睨むよりも早く勃起したもので口を塞がれ、怒りの行き場を失くしてしまう。
「おぼっ、ごえっ!ごえっ、もえ゛っ!!」
 低い声でえずき、だらだらと涎を零す本格的なイラマチオ。この時点で制服のブラウスはかなり濡れていて、向日葵色のブラジャーが透けて見えていた。お嬢様学校らしいシックな濃紺のブレザーも、白濁液や透明な汁でかなり汚れてきている。それだけ執拗に喉奥を凌辱されてきたということだ。決して体力のある方には見えない、文科系という感じの千代里にとって、それはどれだけつらいことだろう。
 左右の男をかろうじて『処理』した頃、彼女はぐったりとしていた。半開きの口で細い呼吸を繰り返す様は、今にも気絶しそうに見える。そんな彼女の周りで、また男共が入れ替わった。
「へへへ、とうとう俺の番か」
「間近で見ても、やはり上玉だな」
「確かに。可愛い女と思いきや、化粧で『作っている』だけというパターンも多いですが、この子は正真正銘のすっぴん美少女ですよ。汗とザーメンで流されれば、どんな化けの皮も剥がれますからね」
 まだ射精していない7番目から9番目の男は、勃起した物を握りしめ、ニヤケ面で獲物を見下ろす。
「おら、ボサッとすんな。次のお客様がお待ちだ!」
「はぁ、はぁ……少し、休憩させてください……」
 壁際で見守るホスト男が怒声を上げると、千代里が薄目を開いた。本当に疲労困憊という様子だ。その姿に、客達が溜め息をつく。
「なるほど、駄目か」
「では仕方ない。キャスト君。あちらの奴隷、どちらか使わせてもらえるかな」
 客の指が、テーブルで喉奥開発を受けている二人の少女を指し示す。
「!?」
 少女2人も、そして千代里も、目を見開いた。
「仕方ありませんな。おい」
 壁際のホスト男が了承し、少女2人の脇を固める調教師に呼びかけた。
「ふふ、結構。だが私達はあくまで、このアイドル級の子が相手をしてくれると思って、楽しみにしていたんだよ。言っては悪いが、あそこの2人はこの子よりも幾分容姿で劣る。となれば、埋め合わせのために少々過激な『使い方』をすることになるが……構わんかね?」
「ええ、ご自由に」
 満足げに頷きつつ、耳を疑う要求を口にする客。そしてそれを、二つ返事で受ける従業員。その双方に、少女3人を気遣う気はないらしい。

「……少し休憩させてやるぐらい、べつに良いだろう」

 俺は見かねて、そう提案した。その瞬間、客と従業員の顔が一斉に俺を向く。
「なに?」
 眉を顰めた一人が、こっちへ歩み寄ってくる。そして俺の頭から爪先までを、不審そうに見回した。
「見ない顔だが、新規の入会者か?」
「あ、いや……」
 身元を尋ねられるとつらい。俺自身にも、俺がここにいる理由も、資格もわからないんだから。
「怪しいな。本当にメンバーか?」
「レストランで見かけた気はするが──そういえば、あの時も挙動不審だったな」
 次々と、疑いの目が俺を向く。レストランなら、確かに怪しかったかもしれない。食べ物の好みも、アレルギーすら判らない俺は、その場にあるすべての食べ物を少しずつ皿に取り、実験でもするように口に運んでいた。およそ普通の人間が取る行動じゃない。
「お客様」
 たじろぐ俺に、ホスト風の男が声をかける。
「生憎ですが、我々は無理を申し上げて皆様に助力を乞うている身。その上で、皆様にご満足いただけるサービスを提供できないとなれば、その補償をする義務がございます。それが、あちらの2人なのです」
「お客様。どうか我々に、挽回のチャンスを」
 ホスト男2人は、そう言って深々と頭を下げる。だが、そこに誠意は感じられない。低い声色は威圧的な証拠だし、眼には鋭さがある。
『記憶喪失の部外者は黙っていろ』
 今にもその本心が聴こえてきそうだ。
「あ……そ、その……」
 何十という冷ややかな眼に囲まれ、俺は返答に窮した。記憶がないというのは、こういう時あまりにも不利だ。理の拠り所がない。
 俺の常識は、はたして世間的に正しいのか。こいつらを外道と思う気持ちがそもそも誤りで、俺の方が変なんじゃないか。
 視線が痛い。
 余計な口を挟まなければよかった。己の数日前の行動さえわからない奴が、確たる日々を積み重ねてきた人間相手に何を語るというんだ。
 無言の圧力に耐えかねて、土下座すら考えた、その瞬間。

「────あ、あのっ!」

 鈴を揺らすような声が、部屋に響く。客も従業員も、一斉に声の源を振り向く。
「あ、あたし、もう大丈夫です。息がちゃんと出来るようになったので、またお相手させてください」
 千代里だ。床にへたり込んだ、幼い雰囲気の彼女は、しかしはっきりと宣言する。客が望む通りの答えを。
「なるほど。それなら問題ない」
「ああ。こちらとしても、君が相手をしてくれるのが一番いいんだ」
「うむ。それさえ満たされるなら、文句はない」
 客は、一人また一人と千代里の下へ戻っていく。まるで俺の存在など忘れたように。
「さて。せっかく千代里チャンもやる気出してくれたんだ。ここらで少し、キツめのいこうか」
 千代里の背後に立つ客がそう宣言し、勃起した逸物を千代里の顔に置いた。
「……!?」
 千代里の見開かれた目が横を向く。俺も奴の意図を察して凍りついた。
 背後から……というより、ほとんど真上から咥えさせる気だ。その苦しさは容易に想像できる。普通に飲めば何でもないペットボトルの水ですら、角度をつけて飲むと途端に噎せてしまう。俺も大浴場から上がって喉が渇ききっている時、売店の牛乳でやらかしたものだ。噎せて、鼻にも入って、地獄だった。それを男の逸物で、意図的にやらせようというのか。
「ほら、どうした。俺達の相手をするんじゃなかったのか。無理なら、やっぱりお友達にやってもらうか?」
 ピチピチと逸物で顔を叩かれ、千代里の表情が強張った。でも、それは一瞬のこと。
「いえ、やります。その前に、ちょっと……」
 その言葉の後、千代里の視線が俺を向く。人の輪から外れて、ひとり立ち尽くす俺の方を。
「あのっ。ありがとうございました!」
 千代里はそう言って、控えめな笑顔を作った。性格の良さが滲み出た笑顔。だからこそ、見ていてつらい。
 俺がどう答えようかか迷っているうちに、その権利は横から掠め取られた。
「はい、どういたしまして!!」
 千代里の背後にいる男が、そう言って逸物に角度をつけた。赤らんだ先端が千代里の唇を押しのけ、無遠慮に中へと入り込んでいく。
「あ……かっ!おぐっ……ぅも゛えっ、んも゛お゛お゛えええ゛っ!!!」
 不自然な角度での喉奥挿入が、普通でない声を発させる。普通に体調不良で嘔吐した時の方が、まだ人の声に近いのでは。そう思えるほど、濁った声。それが、あの朗らかな笑みをくれた千代里の喉から漏れているんだ。
「やあ、君。さっきは脅かしてしまってすまなかったね」
 凌辱を凝視する俺に、横から声が掛けられる。Hだ。最初に千代里から奉仕を受けたこの男は、ソファに腰掛けたまま、手の平で横を示す。座れ、ということか。
「我々も、君に敵意があるわけじゃない。だが君の発言は、あまりにも的外れだったからね。皆、つい訂正しようとしてしまったんだな」
 ソファへ腰掛けた俺に対し、Hは諭すようにそう言った。
「的外れ……とは、どんな風に?」
「簡単だ。君はあそこにいる3人の女を、まるで人間のように捉えている」
 人間のように? どういうことだ。
「いや、人間だろう。あの制服を見ろ、ごく当たり前の高校生だ」
「違う。あれは、我々の欲望を満たすための『奴隷』だよ。本質的には、排泄欲を解消するために設置された小便器と変わらん」
「なっ……!?」
「先ほどの君は、その小便器の連続使用に疑問を呈したんだ。おかしな話だと思わんかね。小便器があり、尿意を催した人間がいれば連続で使えばいい。一つの便器が『詰まった』ならば、その隣の便器を使えばいい。それだけのことだ」
 思わず、絶句する。その淡々とした物言いに。発言の内容も内容だが、もっと信じがたいのは、Hがそれを普通のトーンで話していることだ。冗談を言っている風じゃない。本気でそう考えている、という感じだ。
 おかしい。俺ははっきりとそう感じている。だがこの部屋にいる人間は、客も施設の従業員も、皆がその常識に基づいて行動しているようだ。女は性欲処理の道具。そういえばあのエレベーターガールも、職務中に凌辱されておきながら、それを当たり前のように受け入れていた。それが、この世界では普通なのか? 俺の意識だけが、この世界に適合していないのか?
 ──いや、違う。もしそれがこの世界の常識なら、千代里があれほど嫌がっているはずがない。あくまで、この連中の間だけで共有されるルール。この閉鎖空間に限っての法なんだ。

「はは、すっげぇヨダレ……いいのかよお前。お嬢様学校の制服が、ドロドロんなっちゃうぜ?!」
 後ろから咥えこませる男が笑う。だが今の千代里に、服の心配などしている余裕はないだろう。
「うぉ゛うむ゛、うお゛っ!!うお゛、ッコほっ……!!」
 千代里は、何度も肩を跳ね上げ、低い声でえずき上げていた。
「すごい声ですな。ああいう子供っぽい子がバスの音色を出すのは、いつ見ても堪りませんよ」
「ええ。人間誰しも平等だと感じますな」
 客達は、その様子を腕組みして見守りながら、したり顔で評価する。
「どうかね。ああいうものを見ていると、逸物がいきり勃つだろう。破滅の美学というやつだよ」
 俺の横でも、Hがウォッカグラスを傾けながら、先走りの滲む逸物を弄くりまわしている。
 俺は……勃起していない、わけじゃなかった。何か、非常に根源的なものにあてられて、ズボンの中が膨らんでいる。だが、俺はそれを望まない。H達に交じって、年端もいかぬ少女への凌辱を楽しむ気分にはなれない。
「人生など短いんだ。雄としての欲求を、早く認めてしまった方が楽だぞ」
 Hは諭すように言うと、冷笑しつつ俺から目を外した。
 そうした一連の間にも、千代里の喉は真上から犯されつづける。ストロークは充分に大きいが、音は地味だ。じゅぶじゅぶという音と、小さな呻き。少し距離のあるここでは、意識を集中しないと拾えない。だが、それが嵐の前の静けさなのは明らかだ。なにしろ、真上から充分なストロークで出し入れされているんだから。
 “嵐”の前兆は、3回の小さな音。
 ちゅっ、ちゅぶっ、ちゅうっ。いきなりそういう、逸物を強く吸う音がした。後追いでの分析だが、多分これは千代里が口を窄めた結果、偶然そうなったんだろう。じゃあ、なぜ口を窄めたか。相手により強く奉仕するため? 違う。肉体の反射行動を繰り返すばかりの彼女に、そんな余裕があろうはずもない。となれば、結論はひとつ。『吐きそうだったから』。それしかない。
 そして事実、3回の音が響き渡った数秒後、千代里の喉は決壊する。
「んも゛ぉっ!おろ゛……も゛ぉお゛う゛ええ゛え゛っっ!!!」
 限界を迎えた人間に、女も男もない。千代里は真上を向いたまま、地獄のように低く汚い声を響かせ、吐瀉物をあふれさせる。決壊の時、逸物はまだ口に入ったままだったから、黄色い汚物は口周りに沿って三方へ流れおちた。そして逸物が引き抜かれれば、自由に噎せられるようになったとばかりに、吐瀉物が噴き上がる。
「おう゛うぇれあ゛っ!!」
 そんな、あられもない声と共に。
「おおおおっ、吐いた!すっげぇ絵面!」
「ははは、これは盛大な!!」
 どっと場が沸く。その音圧と熱気は、ソファに座りながらもクラリとくるほどだ。
「はーっ、はーっ……はーっ……」
 千代里は上を向いたまま口を、胸を上下させて激しい息を繰り返す。
「ほら、休んでる暇ァないぞ」
 そう、千代里は休めない。嘔吐を晒してなお、次の責めを強いられる。他の2人の少女は、自分もディルドーで喉奥を開かれながら、千代里の方を凝視していた。その眼はひどく同情的だが、「自分が代わる」という言葉は出ない。でも、それを冷たいというのは酷だろう。安易に代われるわけがないんだ。噎せかえり、えずき上げ、吐瀉物を撒き散らし、それでも休む間すらなく逸物を咥えさせられる。そんな現場を目の当たりにしたら。


             ※


「歳のせいで勃ちが悪くてな、竿をしゃぶられるだけでは、中々勃起できないんだ。だから、タマも併せて刺激してくれ」
 千代里の前に立った男は、そう注文をつけた。千代里に逆らう術はない。命じられた通り、口で逸物を転がしつつ、男の毛だらけの睾丸を弄ぶ。舌も手も、かなり熱心に動かしているようだ。
「おっ、いいぞ。なかなか上手いものだ。口の中でイチモツが硬くなってきたのがわかるだろう」
 男は上機嫌だ。指揮者にでもなったつもりなのか、仁王立ちで股間を刺激させながら、指を空中で躍らせる。
「素晴らしい。ここまでギチギチに勃起するのは久しぶりだ。かわいい君がその小さな手で、丁寧にタマを刺激してくれたお陰だよ。お礼に、たっぷりと喉奥で堪能させてあげよう」
 男の左手が千代里の頭を掴み、強引に前後させる。
「う゛、おぼっ……おお゛っ、うお゛っぉ……」
 千代里から漏れる声は苦しそうだ。自分の奉仕で屹立させたもので苦しめられるのは、さぞかし屈辱的だろう。おまけに男の指揮は、素人目に見ても滅茶苦茶なものだ。合唱部として活動してきた人間にとって、そんなふざけた指揮は許せないに違いない。
 ただ、千代里の心中はどうあれ、男はますます調子づいていく。
「さぁっ、もっと強く!フォルティッシモだ!!」
 そう言って千代里の頭を強く引き寄せつつ、自分の腰も前に打ち出していく。まるでセックスと同じ腰遣いに、千代里は何度も噎せかえる。
「ごっ、おごっ!ほおお、お゛っ……え゛うぉえあ゛っ!!」
 20回を超す抽迭の果てに、千代里の口の端から吐瀉物があふれだす。
「ああああ熱い、ああ熱い……。いいぞ、いい喉奥合唱だったぞぉ!!」
 奴は下半身で嘔吐を浴びつつ、その最中に射精しているようだった。また眩暈がする。あれはさすがに理解できない。だが奴自信は満足らしく、たっぷりと時間をかけて精を放ち終えてから、逸物を抜き去った。濃茶色の指揮棒は、半勃起状態で斜め下に垂れ下がり、ぽたぽたと悲劇の残滓を滴らせている。
「いやー、お見事お見事。Tさんのプレイは、いつも楽しそうでいいですなあ。バレー部の子へのスパイク喉奥射精も見応えありましたが、今回は指揮ですか」
「ええ、なかなか楽しめましたよ」
「ははは、結構なことで。では私も、やりたいようにやるとしましょうか」
 次の男はそう言って、床に寝そべる。千代里は怯えた様子でそれを眺めていた。
「ほら、何してるんです。客が横たわったなら、覆いかぶさってしゃぶらないと!」
「……ごめんなさい」
 千代里は命じられるまま、男に覆い被さっていく。
「おほほ……制服姿の女子高生に圧し掛かられるなんて、夢のようです。しかも思ったより胸あるんですねぇ。とはいえ、せいぜいCカップでしょうが。そうそう、知ってます? これね、シックスナインって体位なんですよ」
 男の舌はよく回った。発言内容は最低だ。だがどんな相手でも、千代里は奉仕するしかない。勃起したものを口に咥え、深々と飲み込むことで。
「うん、いいですね。では、ここから……」
 男は両足を持ち上げ、千代里の頭後ろで交差させる。菱形の足で顔を圧迫する形だ。
「う゛っ!?」
 視界外からの圧迫を受け、千代里から驚きの声が漏れる。
「ははは、AVでよく見るやつですな!」
「ええ、一度やってみたくってねぇ。中々征服感があっていいですよ、喉の締まりも増してますしね」
 男はそう言いながら、足で作った菱形を狭めていく。
「ん゛んん゛っ、んん゛っ……りゅ、っく…………!!」
 呻き。そして、喉奥で気泡が潰されるような音。それが漏れ聴こえた。
「いいですよいいですよ、ほら。逃げられないままフェイスファックされる気分はどうです!」
 たるんだ脹脛が、繰り返し千代里の後頭部を叩き、深いイラマチオを強要する。
「うえ、うえ゛、う゛え゛、うえ゛っ!!」
 後頭部を叩かれるのと同じペースで呻きが漏れ、クチュクチュという水音もそれと交互に聴こえている。
 毛深い足に囲われた千代里の顔は、眠っているように静かだ。印象がだいぶ違うのは、大きな特徴であるツインテールが足で隠れ、ショートカットに見えるせいか。濡れた茶色の前髪が揺れ、柳の葉のように顔をくすぐっている。静かだ。だが顔を圧迫されたまま喉を抉られて、何ともないはずがない。ああして静かにしていることで、かろうじて耐えられているんだろう。
 実際、ようやく男が足を組むのをやめ、千代里を開放した瞬間、彼女の顔面は壮絶なことになっていた。
「あはははっ、見ろよ。ひょっとこだぜ!?」
 誰かが叫んだとおり。口を窄め、鼻の下を伸ばしきった、あの有名なふざけ顔だ。勿論、彼女はふざけてなどいないだろう。普通でない責めをされ、それに耐えるための努力に違いない。だがその顔は、物笑いのタネになる。
 しかも、それだけでは終わらない。ようやく自由を得られ、勢いよく顔を上げれば、また彼女は恥を晒すことになる。
「べはあ゛っ!!」
 ずるうっと逸物が引き抜かれたばかりの口は、喉奥が完全に開いていて、奥の穴がはっきり見えた。そしてその開いた喉奥から、黄色い吐瀉物を噴出したんだ。
「ふひゃひゃっ、すっげぇ。こんな細ぇゲロ見たことねぇや!」
「まるで喉から放尿しているようですな!」
 心無い罵声に、千代里は目を伏せてしまう。だが、これはあくまで小休止だ。
「ほら、ちょっと休んだら再開ですよ!」
 千代里に奉仕させている男は、そう言ってまた足を組み、菱形の中に千代里の頭を閉じ込める。そして前とまったく同じ容赦のなさで、強制的に深く咥えこませる。

 二度目も千代里は静かに耐えた。最初の3分ほどは。だが、今度は耐えきることができなかった。3分経過後、顔全体がビクビクと震え、頬が持ち上がって『ひょっとこ顔』が覗きはじめる。ぶほっ、ごぼっ、と2回噎せ、細く開いた目の中でぐるりと白目が覗く。
「おっと……おいUさんよ、ちょいストップ。なんかやばそう」
 その声で、男が足を離す。その瞬間、また千代里の顔が跳ね上がる。

「ふぅーーーお゛っっ!!!」

 目を瞑り、縦に開いた口の中に逸物を挟んだまま、彼女は嘔吐する。真っ白な涎が上唇の辺りから噴き出す、ここ数度では一番澄んだ嘔吐。
 吐いた物は澄んでいても、漏れたえずきは最悪だ。
「はははっ、今のがバスか。なあ、そうだろう?」
「ええ、間違いありません。男でもあそこまでの低音を出すのは難儀しますよ」
「さすがは蒼蘭合唱部の星。音域が広い上に、こちらの心を揺さぶってきますなあ!」
 悪意に満ち満ちた暴言の数々。それを耳にして、千代里がどんな表情をしているのか見ようとして……俺は、ひどいものを目にした。
 最低な嘔吐で茫然自失となっている彼女の顔に、精が浴びせられる瞬間だ。下になった男は、元々射精寸前だったのか、何の刺激もなしに暴発した。
「ら゛っ!? ぷあっ!!」
 鼻の辺りに射精を浴び、唐突に漏れた声は、ちゃんと女の子のそれだ。酷いことさえされなければ、彼女はそういう声でいられるんだ。彼女は、同年代女子の中でも、確実に上位に入るぐらい女の子らしいんだから。
 だが、この場の連中の望みは、そんな彼女にあえて惨めな思いをさせることなんだろう。

「あーあ、射精ちゃいましたねUさん。申し訳ないけど、替わってもらいますよ」
 次の男が、拍手しつつUに歩み寄った。この部屋の中でも、俺と並んで若く、30前半に見える。事実、タンクトップとジーンズを脱ぎ捨てた下からは、割れた腹筋と小麦色の肌という若々しい肉体が現れた。
 奴は千代里をUの腹上から引きずり下ろし、仰向けに寝かせてから、その顔の上に跨る。勿論、勃起しきった逸物を口の中に捻じ込みつつ、だ。
「お゛え゛っ!!」
 ストレートなえずきが響きわたる。
「俺もUさんに倣って、AVで見かけたプレイでいきます」
 男は、腰にかかる上着の裾を払った。そしてゆっくりと腰を上下しはじめる。ずっ、ずっ、という動き。抜き差しに速さはないが、千代里の反応は激しい。
「んお゛っ、おお゛あ゛っ!! うも゛ッ、ほごおお゛っ!!!」
 喉を圧迫されているのがはっきり伝わる、典型的なえずき声が繰り返される。そして同時にその喉からは、キュォオオッという妙な音もしていた。
 さらには、足。チェックのミニスカートとハイソックスに包まれた足が、激しく暴れている。膝を曲げて、地団太を踏むように床を蹴ったり。あるいはそれに失敗し、踵から滑ってまっすぐに伸びたり。足に相当な力が込められていないと、そうはならない。手は手で、男の太股へしがみつくように握っていて、必死さが窺える。
「相当な苦しみぶりですな。やっぱり若いと、逸物の張りが違うんでしょうね」
 一人がそう感想を漏らすと、男は笑った。
「はは、デカさも張りもそこそこっス。強いて言えば、反りですかね。喉のヤなとこに当たって、結構苦しいらしいです。前に一度、風俗嬢相手にもコレやったんですけど、嬢に秒でマジギレされちゃって。だから、ここでまたやるの楽しみにしてたんですよ。ここって、わりと何でもアリじゃないですか。おまけにこの子、その風俗嬢のパネマジ前より可愛いし」
 男はそう言い、千代里の頭の下に手をくぐらせた。そして頭を持ち上げての挿入を開始する。苦しむ千代里の表情を、真上から見下ろしつつ。
「う゛おお゛え゛っ、え゛っ!!ええ゛ぇあ゛っ!!」
 栞のえずき声は大変なものだった。両目を硬く瞑り、眉根を寄せた顔にも余裕はない。そして極めつけはその脚だ。この段階になり、脚がとうとう地団太をやめた。両の足裏をしっかりと床につけ、耐える体勢に入る。子供体型というか、やや肉付きのいい印象だった太股がきゅっと直線に引き締まっていて、かなり力が入っているんだと判る。
「あ、すげぇ締まる。聡美のマンコよりすげぇかも」
 彼女だろうか、男は誰かの性器と比較しながら、千代里の喉奥を犯し続ける。いつの間にか、腰を上下するペースもかなり早まっていた。くちゃかっ、くちゃかっ、くちゃかっ、という、時代劇で馬が走るような調子の音が響く。
「ん゛おえ゛っ!! ん゛う゛おお゛あえ゛っ!!!」
 文化系の千代里の太股へ、体育会系生徒に特有のラインが隆起していく。そしてとうとう、華奢な身体そのものがブリッジを始めた。まさに喉奥レイプを見ている気分だ。
「うわ、ちょっ! 暴れんなって!!」
 圧し掛かっていた男は姿勢を保てなくなり、横に尻餅をつく。だが、奴は近くにあった千代里の頭をすばやく太股で挟み込む。
「ほら、逃げちゃだめだって!」
 そう言って後頭部を押さえつけ、イラマチオを続行する。
「んんん゛っ、んああ゛っ!! あああ゛え゛あっ!!!」
 上からではなく横からの捻じ込みになったことで、えずきの種類が「お」から「あ」に変わった。とはいえ、苦しそうな声であることに何ら違いはない。実際千代里の脚は、まだ暴れている。横様に倒れたまま、床の上で滅茶苦茶に振り回す。
「おー、すごい暴れようだな!」
「あはは、パンツ見えてんぞー女子高生!!」
「おやおや。名門女子校の生徒ともあろう者がはしたない!」
「つか、今どき白パンなんて穿いてる子いるんだ」
 周囲にいた客が、茶化しながら避難を始めるぐらいの勢いだ。
 そうして暴れても、男からのイラマチオは止まない。そして、頭を押さえているだけでいい男と全力で暴れる千代里とでは、消耗するエネルギーが違いすぎる。結果、数分もその状況が続けば、千代里だけが一方的に疲れ果てることになる。

「ふーっ、やっと大人しくなったか。合唱部っていうから、もうちょっと大人しいのかと思った」
 男はそう言って、また千代里を仰向けにし、上からの捻じ込みを再開する。しかも、さっきは顎側からの挿入だったが、今度は頭の上に陣取っての喉奥蹂躙だ。
「お゛もおお゛っ!? こうぇっ、もぉ゛……もう゛あげげっ!」
 もうやめて。その声が、逸物を捻じ込まれながらもはっきり聴こえた。
「やめない。だって超いい感じになってきてんもん、喉マンコ」
 男にも言葉は通じたらしいが、肝心の心が通じない。太股を手で押しやられるのが鬱陶しくなったのか、千代里の両手首を握りしめながら、激しく腰を上下させる。
「んも゛え゛っ、も゛エ゛っ、も゛えっ、も゛ごえっ!!」
 千代里のえずき声も重苦しく、早くなっていく。
「すげー、チンコびっくんびっくんしてる。これ、どんだけ射精できんだろ」
 犯す男の方は呑気なものだ。彼は目の前の少女の激しい反応を見つつも、その苦しみを本当には理解していない。理解していないから容赦もしないし、そのせいで千代里は、ますますひどい領域まで引きずりおろされてしまう。
「こァッ……」
 その一言を発してから、千代里の動きが急に緩慢になる。それまで激しく脚をばたつかせていたのに。
「あれ、オチた?」
「や、違うぞたぶん。脚にすげー力入ってる」
 そんな会話が聴こえた。確かに失神とも思える感じだが、筋肉が弛んでいない。がに股に開かれた足……その太股は存外に平坦だが、膝から下、脹脛の周辺が相当に強張っている。
「オチてねぇってんなら、一体……」
 その疑問が発せられた、直後。千代里の股の間で変化が起きる。文字通り“一瞬”の間の変化。ミニスカートの奥にある純白のショーツが、黄色く染まっていく。その液体は、当然ショーツに染みただけでは止まらず、床へ不定形に広がっていく。
「あーっ、漏らした漏らした!!」
「ははは、とうとうやったか!」
「あーあ、白パンなんて穿いてっから真っ黄っ黄だよ。ま、嫌いじゃねーけど」
 場の人間が騒ぎ、イラマチオを強いていた男が顔を上げる。
「えっ? こいつ、漏らしたんスか!?」
 奴のいる位置だと、スカートに邪魔されて股の様子が見えないようだ。驚いた様子で手を伸ばし、ショーツに触れた。千代里の両膝がびくんと内に閉じる。
「うわ、すげぇグチャグチャ。はは、なんだよ。漏らすぐらい良かったってか!?」
 奴は、歯を見せるぐらいの満面の笑みを浮かべ、さらに力強く腰を使う。片膝を立てて、奥深く、しっかりと捻じ込んでいく。当然、千代里は反応を見せた。
「も゛っごっ、ごも゛ぉおおっ!! んも゛おおお゛っ!!!」
 呻きながら、また脚で地団太を踏みはじめる。さっきとの違いは、激しく身を捩りながらローファーで床を踏みつけるたび、びしゃ、ばしゃっと自らの尿を撒き散らしてしまうことだ。
「あああいいっ、いいっ……あ出る、出るぞっ!!!」
 男は、若くして遅漏なんだろうか。何十回と腰を使った末に、ようやく射精の時を迎える。千代里の口と自分の陰毛を密着させ、激しい息を繰り返しながら動きを止める。
「あ、うあ、出てる……マジで、どくんどくんって……すげぇ」
 男はうわ言のように感想を呟いていた。
 見た目に大きな変化はないが、男の腹筋がピクピクと動き、掴み上げられた千代里の指が何度も握られていることから、ずっと射精が続いているのがわかった。
「ふーーっ。ウンコまで出るかと思った」
 十何秒後なのか。ようやく男が、息を吐きながら腰を上げる。途端に、大きく開いた千代里の口から、じゅばーっという音が立った。
「ぷはあっ!!はあっ、ああああぁっ……!!」
 今日一番といえるぐらいの激しさで息を求める千代里。逸物と前歯を繋ぐ糸は恐ろしく太く、耳と同じサイズにまで気泡が膨らんでいる。千代里の喘ぎでその気泡が弾ければ、幼さを残す顔を涎の糸が縦断する。
「すごいヨダレの量だ。もう顔中ドロドロだな」
「ええ。ほぼ全員が喉奥射精しかしていないのに、連続でぶっかけられたみたいになってますね」
 男共が疲労困憊の千代里を見下ろし、脂ぎった顔に笑みを浮かべる。
 おそらく今で、ようやく半分の人間が射精したぐらいだろう。俺は、そろそろ見ているのがきつくなってきた。

「ほら、早く立て。できないなら……」
「い、いえ……やり、ます……」

 卑劣な脅しと、健気な宣言。それを聴きながら傾けるグラスからは、血に近い味がする。


             ※


 それからも、千代里の地獄は続いた。

 14人目は、自称『マウントイラママニア』。相手の顔にマウントし、それなり以上のサイズのある逸物で喉奥をグリグリと抉りまわすのが生き甲斐らしい。
「おふぉえあ゛っ!!」
 千代里の苦しみようは相当だった。何度も噎せ、薄い吐瀉物が口の端から流れ出す。顔を左右に振って嫌がっているが、喉奥に杭を通された状態では逃れようがない。
「んがぁぁあらっ……!」
 やがて、うがいをする時のような声がし、千代里が両手を握りしめた。
「おっと、窒息はいかんな」
 男がそう言って逸物を抜く。
「ぶはっ、はっ、はっ!!」
粘ついた糸と共に逸物が抜かれ、千代里は眉を顰めながら大きく空気を求める。その、直後。横向いた口から、細い吐瀉物が流れ出す。えろっ、えろっ、という声と共に。
 普通なら焦るような状況だが、自称マニアの男は顔色ひとつ変えない。
「よし、気道確保できたな。続けるぞ!」
 そう言って、また喉奥深くへ挿入していく。猛スピードでの喉奥攪拌。当然、千代里にはすぐにまた限界が来る。
「んーむ゛おえっ、ごふっ、ぶふっ!!」
 激しく噎せながら、口内の異物を吐き出そうとする。だが、それは叶わない。
「何をしている、そこで鈴口を吸いなさい!」
 そう厳しい声で命じられ、両手で顔を固定される。ぷちゅぅううっ、という音で、千代里が命令に従ったのがわかった。そして、ここでようやく逸物が抜かれる。
「んーむおえ゛っ! ぐ、ごふっ、ぶふ、ごはっ!!」
 悲惨な状況だ。白い顎が何度も跳ね上がる。真っ白な精液が、鼻の横から髪の生え際までを横断する。噎せるたびに大量の汁が噴出し、細い紐のようになって顔を覆う。
 その状況を前に、マニアの男は腰に手を当て、満足そうに頷く。そして最後の締めとばかりに、自らの手で逸物を扱き、ようやく呼吸ができるようになった千代里の鼻の穴に射精する。
「は、ぎゃあっ!!」
 千代里の悲鳴に、男の頷きはますます深まった。

 17人目の爺さんも、なかなかに陰湿だった。
 異様な目つきに怯える千代里を床に寝かせ、潰れた蛙のような格好でイラマチオを強いたんだ。
 乳房の上に跨って、口に逸物を捻じ込み、両の太股を足の甲で押さえつけるようなやり方。かなりの歳を食っている割に、ペニスのサイズは周囲と変わらず、硬さも備わっていたようだ。なにしろ、この変わった体位で数分ばかり喉を突かれるうちに、千代里が吐いてしまったようだから。
 俺が見ているテーブルは、爺さんの尻側だから、逸物の抜き差しの場面は爺さんの体に隠れて見えない。だから吐いたというのも、いくつかの状況証拠からの推測でしかない。
「んおおおええ゛っ!!」
 もはや聴き慣れた、人が吐く時の声。
「おっ、吐いたぜ!」
「へへ。ジジイの萎びたペニスで限界とは、弱くなったなあ合唱部のノドも」
 千代里の頭側から見ていた連中の、そんな嘲り。
 押さえつけていた爺さんの足の甲を撥ねのけ、苦しそうに崩れる脚。
 これだけ証拠が揃えば、状況を知るには充分だ。
「我慢してなさい」
 爺さんは厳しい声でそう命じ、足の甲で千代里の太股を叩く。千代里はぴくっと太股を強張らせたあと、がに股を作り直す。その太股を爺さんの足の甲が押さえつけ、さらに枯れ木のような手が万歳をする千代里の手首を掴めば、潰れたカエルの出来上がりだ。
 そしてまた、爺さんが腰を振りはじめる。
 俺の側から見えるのは、爺さんの湿布の張られた背中と、汚い尻、そしてピクピクと脈打つ千代里の足だけだ。
 その上下を見比べると、老化の残酷さが実感できた。上で揺れている枯れ木は灰色、下で耐えている柔肉はピンク寄りの肌色。瑞々しさがまるで違う。ぼうっと眺めていればそれは、セピア写真がカラー写真を侵食している図に見えてくる。
 侵食は淡々としたものだった。痩せた灰色の尻が上下するたび、カコカコカコカコと棒で喉奥を掻き回す音がする。ある程度の距離があるせいか、甲高い攪拌音は聴こえやすいが、くぐもった呻きはあまり聞き取れない。それでも意識を集中させれば、たまに聴こえてくる。
「う゛」
「お゛え」
「ごえ゛っ」
 そういう、苦悶の声が。千代里は、あんな枯れ木のような爺さんに、間違いなく喉を犯されているようだった。
 やがて、爺さんの腰の位置がやや高くなる。射精に向かっているんだろう。尻を振るスピードも、徐々に早まってきた。
「出るぞっ!」
 爺さんが喝を入れるかのように叫び、腰を沈める。シミだらけの太股と尻肉が引き締まり、セピアの写真は、そのまま静止する。動きはない。ないが、その不動ぶりと千代里の開かれた脚のこわばりが、大量に喉奥へ注がれている事実を物語っていた。
「ふうー……」
 ジジイが大きく息を吐き、膝を立てて逸物を引きずり出す。てゅぽっと妙な音がし、逸物が抜ける。
「う゛、えほっ、ごほっ!!」
 千代里の咳き込む音が聴こえた。爺さんが尻を浮かせているから、ここでようやく千代里の顔が見えるようになる。爺さんの陰に入っている部分も多く、明瞭じゃない。それでも、千代里の顎が粘液に塗れているのがわかった。いい齢をしているくせに、なんて量だ。
「こんなに出したのは20年ぶりだ。良いノドを持っとるのお」
 そう褒められても、千代里は嬉しくなどなかっただろう。よくよく見れば黄色く濁っている精液は、いかにもエグ味が強そうだった。

 そして、20人目……順番最後の男は、ずっとソファに座って酒を煽りながら、凌辱を見て逸物を弄りつづけていた禿げ親父だ。

 奴は、最初こそ普通にしゃぶらせていたが、やがて千代里のツインテールを鷲掴みにして顔を前後させはじめた。色白で毛深い足に、ツインテールの童顔が叩き込まれていくのは、犯罪的な絵面だ。
「いあ゛っ、あ゛っ!はごっ、おも゛っ……お゛っ!!」
 突然の暴力に驚いたのか、髪を掴まれる痛みか、それとも奥まで咥え込むのが苦しいのか。千代里は目を見開く。
 しかもこの親父が、またしつこい。何度も喉奥を抉り回しては、一旦口を離させる。そして自分の娘ぐらいの歳の子供が上目遣いで喘いでいるのを観察してから、またツインテールを掴んでしゃぶらせるんだ。
「うろ゛っ、お゛ろ゛っ、おも゛っ、う゛ろ゛っ…………」
 千代里の喉からは、早いペースで苦悶の声が漏れていた。一つ一つは壮絶なえずき声というわけじゃない。だがとにかくペースが速く、また小休止を挟みつつもしつこく繰り返されるとなれば、蓄積していく苦しさは並大抵じゃない。
 開始から15分あまりが経った頃、強制的に前後させられる千代里の顔は、完全に白目を剥いていた。小さな嘔吐が気つけになったんだから、酷い話だ。
 軽く10回以上は小休止とツインテールを掴んでの凌辱を繰り返し、そこでようやく禿げ親父はスパートに向かう。このスパートは単純に苦しいらしく、千代里はゴエゴエと喉を鳴らしつつ、激しく咳き込むような表情で受けていた。最後に喉奥射精された時の眉根の皺は相当深く、限界を感じさせた。
 そして、その予想通り。射精の最中、急に千代里の頬が膨らんだかと思うと、嘔吐が始まった。口内で水袋が破裂したような嘔吐で、かなり異質だった。場が沸いたのを見るに、マニアでもあまり見ない嘔吐だったらしい。

 そして、20人の相手を終えてなお、千代里が開放されることはなかった。さっきのは、あくまで『一巡目』。この後もまた2回3回と奉仕し、脂ぎった親父達を満足させきらなければならない。
 そう宣言された時の、千代里の表情が忘れられない。絶望、というのは、まさしくあの顔のことだろう。

 20人の雄に囲まれる、終わりのない喉奥凌辱。もはや立っている気力すらなく、床にへたり込んだまま、四方から突き出される男の象徴を喉で迎える。
 何度えずいても、何度吐いても、ついに吐けるものすらなくなって空嘔吐だけを繰り返す状態になっても、凌辱は終わらない。まさに、地獄。
「おら、こっちも!!」
 一人に奉仕したばかりの千代里のツインテールが掴まれ、逆側を向かされる。そしてまた、勃起しきったものを口に捻じ込まれる。その瞬間、千代里の身体がぶるりと震えた。そして千代里は、口の中の逸物を吐き出す。
「おい、ちゃんとやれ!!」
 怒声が飛ぶ。千代里は、その声の主を見上げた。涙ながらに。
「お、お願いします。口は、もうやめてください……!」
「なに!?」
「喉奥奴隷が口使わず、どうするつもりだ!」
 不機嫌そうな眼に囲まれ、千代里は肩を竦める。そして、かなりの躊躇の後、言葉を続ける。
「…………し、下も…………使って、いいですから!」
 その言葉に、数人の目元が変わる。
「下?」
「あ、あそこ……です。あそこも、使っていいですから、だから、口は……もう、やめてください!」
 まさに、必死の訴え。千代里にとって、処女は軽いものではないだろう。ましてや、散々に自分を痛めつけた相手に純潔を奉げるなど、望もうはずもない。それでも、千代里はあえてその交換条件を提示したんだ。
「なるほど、処女か」
 欲望に濁った視線が、制服に包まれた千代里の肢体を舐め回す。千代里の喉が鳴る。
 屈辱的でも、交渉の甲斐はあった。条件は呑まれ、彼女の酷使された喉は、しばらくの休息を得られるだろう。俺はそう思った。
 だが。
「────駄目だな。」
 千代里の哀願は、あっさりと切って捨てられる。
「……え?」
 千代里が眼を見開いた。
「他のフロアなら、その提案は喜んで受け入れられただろう。君はアイドル級にルックスがいい。スタイルも悪くない。……しかしだ」
 屈み込んだ中年男が、震える千代里の顎を掴み上げる。
「私達は違う。私達は、喉奥を好む故にここにいる。喉奥を開かれ、抉られ、注がれる女の姿。それに伴って搾り出される“なま”の声。耐え切れずあふれ出す涎や胃液。肉体の反射行動。そして、涙を流しながらメスマゾに変わっていく人格。私達が愛でるのは、それらだ。女性器を用いたノーマルセックスなど、フェチズムを知らん子供のお遊びだよ」
 千代里の歯が、凍えるようにガチガチと鳴り始める。男は、顎を押し下げてその危険信号を断ち切ると、開かれた歯の合間に逸物を送り込んでいく。
「い゛おえ゛……っ!!」
「そう、いい声だ。もっとその歌声を聴かせてくれ。部活で教わる声楽ではない。お前というメスが、極限の状況下で発してしまう、真実の声だ。なに、安心したまえ。苦しさはじきに消える。一線を超えたその先にあるのは、脳を蕩けさせる快楽だ」
 男はゆっくりと腰を前後させながら、穏やかな口調で語る。
「あ゛え、あ……く…………?」
 千代里は、その言葉を口内で繰り返す。

 そして千代里は、蕩けていった。
 回数を数えることすら億劫になるほど、延々と喉奥を『使われ』、次第に反応が薄くなっていく。うめきも、えずきも、嘔吐も。気絶しかけているのか、それとも何かに目覚めさせられたのか。

「あ……あえ、あえあ…………あ」

 眠たそうな瞳で半ば白目を剥き、涎を垂らしながら、太股をひくつかせる千代里。その姿は、男に抱きつきながら陶然とする祐希に重なった。
「……おや、お帰りかね」
 グラス片手に汗を拭き、Hが近づいてくる。奴も千代里で楽しんだばかりらしく、逸物とその根元の茂みが濡れ光っている。
「ああ」
 俺は一言そう答え、シャンデリアの照らす部屋を後にした。

 ( 俺は……何なんだ。催しを楽しむこともできず、止める事もせず。
   俺が存在する意味って、何なんだ )

 自問自答しても、答えは出ない。


 ひどく、疲れていた。

 

二度と出られぬ部屋 第一章 人格破壊3P

■第一章 人格破壊3P


 何日が経ったのかはわからない。
 極上のベッドで7回目の惰眠を貪った翌朝、レストランで昼食を済ませたお俺の元に、一人のスタッフが近づいてきた。
 この施設を初めて訪れた時、エントランスで俺を出迎えた男。
 俺を担当するコンシェルジュで、名前は端塚というらしい。汚れひとつないタキシードに身を包み、両手には白い手袋を嵌めている。少し白髪の交じった髪をオールバックに固め、左目を眼帯で覆っているのも印象的だ。
 年齢は、よくわからない。白髪の量から見て50以上は確実だと思うが、還暦を超えているかもしれない。
 そしてその人となりは、年齢以上に計りづらかった。コンシェルジュを自称するだけあり、こちらが何かを要望したり、尋ねたりすれば、落ち着いた様子で不足なく対応してくる。過不足がないわけじゃない。少々過剰に思えるサービスもあったが、それが『こういう世界』での常識なのかもしれない。
 高級ホテルさながらの設備からも判るとおり、ここは明らかに資産家向けの施設だ。ケーキをひとつ所望しただけで、小洒落た布製のナプキンがついてくる。あまりに上質すぎて、俺なら使うのを躊躇うような代物だ。だが、この施設を利用している他の客達は、それをごく自然に使い捨てているようだった。
 そう。俺なら気後れするような上物であろうと、惜しみなく使い捨てる。それが許される。ここは、そういう場所なんだ。

「貴方にぜひ、ご覧になっていただきたい催しがございます」
 端塚はそう言って、俺をレストランから連れ出した。向かう先はエレベーターホール。自室や大浴場に向かうにはホールを通る必要がないため、あまり訪れることのない場所だ。
 そこには、すでに大勢の人間が集まっていた。当然だが、浴場やレストランで見かけたことのある顔ばかり。裸や部屋着姿ではわからなかったが、いざ着飾ってみれば、どいつもカネの匂いを振りまいている。どこぞの社長といった雰囲気の中年。会長らしい貫禄を持つ老人。若い娘もいるにはいるが、例外なくドレスやジュエリーで着飾った御令嬢や奥様方だ。おそらくは俺自身、そうした人間に交じって高級時計を見せびらかす類の人間だったんだろう。
「今日は何階へ?」
「16階がようやく解禁になったようですからね、まずはそちらに顔を出そうかと。その後は、日課となっている17階のチェックです。そろそろ、いい具合に熟成されてきているようで」
「ああ、あれは良いですね。職人の熱意を感じるというか」
「まったくです。やはり素材にクセのある方が、仕込み甲斐があるんでしょうね。熟成といえば、18階の展示はご覧になってますか?あちらも見応えがありますよ」
「ええ、勿論。あれを見逃すのは一生の損ですからね。とろ火でじっくり煮込まれ、少しずつ柔らかくなっていく……あれこそ、旨味を最大限に引き出すやり方ですよ」
 ホール内の会話は、ずいぶんと盛り上がっていた。『熟成』や『クセのある素材』、『とろ火』といったワードからして、試食会でもやっているんだろうか。
 確かに金持ちの余興といえば、チーズだの鴨だのを小皿に取り分け、ワインと共に味わう催し、というイメージがある。もしそうなら楽しみだ。記憶を探る一環で、レストランでも色々なものを賞味したが、どうやら俺の舌はワインとチーズを好むらしい。熟成された肉、とろ火で柔らかくなるまで煮込まれた何か、というのも食欲をそそる。

 会話が盛り上がる中、チンと音が鳴ってエレベーターが下りてくる。
「上へ参ります」
 アナウンサーのような雰囲気のエレベーターガールが、15階のボタンを押す。15階といえば、ショートヘアの子が下りた階だ。
 あの子も可愛かった。日に焼けていて、脚はやや短め。女性的な魅力という点では他に劣るが、白い歯を覗かせる向日葵のような笑顔が印象的だった。さばさばとした性格をしていそうだし、男子人気もあるがそれ以上に女子にモテるタイプだろう。
「……祐希か。名前からして中性的だ」
 エレベーターの中で、一人が隣の奴に話しかけた。手にはパンフレットのようなものを握っている。
『へっへっへ。“ユウ様”、いってらし~』
 ショートカットの娘が下りるとき、ツインテールの娘が茶化していた言葉を思い出す。ユウ様、というのが彼女の渾名なら、祐希という名前と矛盾はない。
 まあ、ただの偶然だろう。ユウがつく名前なんていくらでもある。俺はそう思い、さして気にも留めずにいるつもりだった。だがその次に聴こえてきた言葉に、思わず耳を疑う。
「美少女というより、クールな美男子という感じの顔ですな。何しろ女学校だ。こういうタイプは、さぞかし同性からモテるでしょうな」
 別の場所でも、何人かが笑い合っている。そして奴らは、ひとしきりパンフレットに目を通し終えると、まったく同じ笑みを浮かべた。
「楽しみですなぁ。そんな娘が、『オンナ』にされるなんて」
 オンナにされるって、どういう意味だ?
 俺がそう疑問を抱いた瞬間、ちょうどエレベーターがフロアに到着する。
 ドアが開く瞬間……いや、正確にはその少し前から、何かが漏れ聞こえていた。

 喘ぎ声だ。

「彼女は、名門・蒼蘭女学院が誇るソフトボール部のエース。同性からの人気が高く、去年のバレンタインには、チョコを押し込まれすぎて下駄箱が壊れたほどです。そんな彼女ですが、腕のいい調教師2人に丸三日可愛がられ……ずいぶんと変わってしまいました」
 見覚えのある制服を着た少女が、部屋の奥を示して説明する。声が震えているのは、同学生徒の被虐を見かねてのことか、それともスカートの下に潜り込む2本のコードのせいか。

 部屋の奥からは、音と匂いが漏れていた。
 源は、畳敷きの空間に敷かれた布団だ。そこに、男2人に挟まれる形で一人の少女が横たわっている。
 ……間違いなく、ショートカットのあの子だった。小麦色に焼けた肌も、腰から上と下が同じぐらいのスタイルも、すっきりとした顎のラインも、すべてが記憶と合致する。
 ただし、彼女の浮かべている表情だけは、記憶とまったく重ならない。ケラケラと変わっていた口は、左の男に濃密なキスを迫られ、困ったように舌を絡めるばかり。猫のようにキリリとしていた瞳は、薄く開いたまま涙を滲ませている。
 布団の周りには、生々しい情事の跡が残されていた。丸まったティッシュのうち、何枚かはピンク色に滲んでいる。蓋の開いたローションボトルもあれば、中身のたっぷりと入ったコンドームが、雑に口を結ばれたまま転がってもいる。あのボーイッシュな少女が、ここで純潔を散らされ、スレンダーな身体を弄ばれているんだ。
「ほら、また『お客さん』だよ。祐希ちゃん」
 右側から乳首を吸っていた男が、俺達の気配に気付いてそう囁く。
「!!」
 ショートカット娘は、弾かれたように入口を見た。怯えた眼だ。
「ほら。この人達にも、カワイクなったとこ見てもらおう」
 左右の男が、乳房を柔らかく揉みしだき、割れ目に指を沈める。
「い、いや…ぁっ!!」
「嘘つき。マン汁どんどん出てくるじゃん」
「乳首もピンピンに固くなっちゃって。見られて興奮するんでしょ?」
 祐希が嫌がっても、男2人は愛撫をやめない。俺達に聴かせるように、ぐちゅうっぐちゅうっと物凄い音を立てている。まるで水飴の攪拌。どれだけ濡れていれば、どんな力加減でかき回せば、女の穴からあんな音が出るんだろう。
「はぁっ……はぁ、あぁ……。はぁ……んっ」
 異常な音はダテじゃない。その愛撫を受ける祐希は、普通じゃないぐらい気持ちがよさそうだった。たぶん彼女は、あれでも我慢してるんだ。運動部で培った身体の使い方をフルに活かして、反応を抑え込もうとしているに違いない。それでも、あまりの快感に腰が動く。太ももが強張る。白い歯を食いしばり、軽く力瘤さえ浮かせながら、腕の全力で敷布団を掴んでしまう。
「また溢れてきた。すごい、お尻の方までドロッドロ」
 祐希が力んだ後には、必ず男がそんな風に囁いていた。全力で力み、弛緩しながら、深く深く絶頂する。その一連の流れに、もはや疑いの余地はない。
 よく力んでいるだけに、汗もすごかった。顔も、首筋も、腹筋も。胸の膨らみこそ若干あるとはいえ、全体的に流れるようなスレンダーな身体だから、汗を掻くとオイルを流したようで妙に芸術的だ。ただし匂いは、いかにスポーツ少女の健康な汗とはいえ、鼻を近づければ噎せるほどに濃いんだが。
「しゃぶって」
 それまで乳房を責めていた左の男が、膝立ちになって逸物をつきつける。男の俺が言うのも変な話だが、綺麗な体をした男だ。膝立ちになった腰からのラインも、逸物の形さえ、彫刻のように無駄なく整っている。甘いマスクも相まって、相当に女にモテそうだ。
「いいなぁ……颯汰(そうた)さまの舐められるなんて」
「ねぇ。羨ましいわ」
 実際、俺のすぐ後ろからは、女2人のそんな声がしていた。
 だが、祐希は相手を受け入れてはいないようだ。困ったように眉を下げ、颯汰とこっちを交互に見ている。
「……できないの?」
 颯汰が、ぼそりとそう口にした。口調こそ柔らかいが、氷のような冷ややかさ。祐希の肩がびくりと震え、さらに少し躊躇った後、身を起こして逸物の先を口に咥える。

「教えた通り、吸って、舐めて、しゃぶるんだよ」
 颯汰が祐希の髪を撫でながらそう言うと、少しずつ口から漏れる音が大きくなっていく。ずっ、じゅっ、じゅぶっ、じゅぷっ……と、AVさながらの水音に。
「あー、気持ちいい……。そこらのヘルス嬢は完璧に超えてるよ」
 祐希の後ろ髪を押さえつけたまま、目を細める颯汰。もう一人の男の方も、祐希が身を起こすことで脚が開いたのをいい事に、右の膝裏を持ち上げて見せ付けるように『手マン』を繰り返す。いざはっきりと見えるようになれば、この指のテクニックも相当なものだとわかった。ぎちゅぐちゅとすごい音をさせるだけでなく、指を往復させるたびに小さな飛沫が飛び散っている。連続で小さく潮噴きをさせつづけているようなものだ。祐希の腹や太ももが堪らない反応を示す理由も、それを見ればすとんと胸に落ちた。
「ああ……出るよ」
 やがて、颯汰が囁きかけ、祐希の髪を掴んで腰へと引き寄せる。
「れろ、あえ……う゛!」
 祐希の口元から苦しそうな声が上がり、直後、颯汰の股に筋が浮き立った。
「うあ、すげー出てる。マジ最高のフェラだったよ」
 生々しい感想を口にしながら、颯汰は口を閉じ、息を吐き出した。彫刻のような腰がゆっくりと離れると、祐希の口元と逸物の先は細い糸で結ばれていた。
「口開けて。中、みんなに見せてごらん」
 颯汰が祐希の顎を摘んで上を向かせる。口での奉仕を終えたばかりの祐希は、抵抗する元気もないようだった。言われるがままに、ゆっくりと艶のいい唇を上下に開いていく。
「…………っ!」
 俺の周りで、何人もが息を呑んだ。それぐらい、その光景は衝撃だった。
 今、祐希の顔を遮るものは何もない。整った顔は縦に歪み、舌を突き出している。その舌の上には、白く濁ったゼリーのような物体が、広がった舌からこぼれ落ちそうほど盛り上がっている。
 王子様然としたクール少女が、男の精に口内を征服されている。それが、余すところなく切り取られた一幕だ。
「なんて濃さ……」
「すごい。あんなの、絶対孕んじゃう……」
「やっぱり優秀な雄って、精子からして違うのねぇ!」
 何人もの女が、うっとりとした声を上げる。その中で、祐希は散々に口の中を見世物にされ続けた。やがて、その肩が小さく震えはじめたころ、颯汰の手の平が祐希の口を覆う。
「さあ。飲んで」
 口を塞がれた祐希に、もう吐き出す術はない。口内に異物を止めておくのも限界らしく、彼女は命令があってすぐに嚥下した。
 おぐ、んっ。
 その重い音が、俺の鼓膜にまではっきりと届く。祐希のさほど日焼けしていない喉を、膨らみが下りていく。そしてそれを追いかけるように、彼女の目からも、つうっと一筋の雫が伝った。
「どう? 美味しかった?」
 しっかりと祐希の涙を見ていた颯汰が、畳み掛けるように問う。
 祐希は…………答えない。
「ちょっと! 颯汰さまの精液飲ませてもらって、なんで何も言わないわけ!?」
「いやいやいや有り得ないでしょ! 自分のラッキーさ解ってないの!?」
 女達が身を乗り出し、悲鳴に近い声を上げる。女の嫉妬というやつか。
「………………」
 それでも、祐希は声を出さない。最後の一線を守るかのように口を噤み、誰とも視線を合わさないよう目を逸らす。エレベーターの中で会った彼女なら、こんな状況下、どれほど強い瞳で俺達を睨め付けたことだろう。
「あーれ、三日目でまだ頑張っちゃう? さすが体育会系、根性パネェな。しゃーない、んじゃ否定できないとこから責めるか」
 颯汰の向かいに座る男が、祐希の脚をさらに大きく広げさせた。
「あっ!」
 何かを察した祐希が顔色を変える。
「ハメるよ。ゴムなくなっちゃったし、ナマでいいよね」
 奴は有無を言わさず、祐希の脚の間に腰を割り込ませる。
「はぁ、あっ……!!」
「ううあ、やっぱナマはいいわー。ダイレクトに絡み付いてくる」
 呻く女と、喘ぐ男。わかりやすいほど一方的な征服だ。
「やめ、てっ……ゴムないと、赤ちゃん、できちゃ……!」
 祐希はまだ正気な部分が残っていたらしく、足の裏で相手を押しのけようとする。でも、結局は無駄な抵抗でしかない。
「ほら、暴れんなって。抱っこしてやっから」
 男はそう言うと、祐希の腰を軽々と抱え上げ、自分の腿の上に乗せた。繋がったままハグをする格好だ。そうなると、もう女側にろくな抵抗はできない。もがけばもがくほど、自重でずぶずぶと挿入が深まるばかり。
「あああ、ふ、深いっ……!!」
 祐希は目を閉じ、両手で相手の首にしがみつく。ソフトボールで鍛えた肩はそれなりに出来てはいるが、男のそれと並べば華奢なものだ。
 ぐちゅう、ぐちゅうっ、と水音が響く。
「すげ、奥までみっしり絡んでくる。最初めっちゃ固かったのに、こなれたねぇ祐希ちゃんのマンコ」
 犯す男は上機嫌で、苦しそうな祐希の顔を間近で眺めては、その呼吸を遮るようにキスを迫る。それも、唇を合わせるような浅いものじゃない。舌を奪うように吸い、絡ませ、唇の端から唾液まで零すようなディープなものだ。
 祐希はどうやら、こういう本格的なキスに弱いらしい。単に犯されているだけなら、祐希の眉の角度は水平以上に持ち直すこともある。しかし、唾液を交え、呼吸を乱しながら何度も何度もキスを強要されると、眉の角度は目に見えて下がっていく。
「祐希ちゃんって、いっつもキスでスイッチ入るよね」
 後ろから胸を責めながら、颯汰が囁きかける。重低音で耳元に吹き込むあのやり方は、洗脳の常套手段だ。暇に飽かして読んだ実用書に、そう書いてあった。 
 あの気丈なスポーツ少女は、何度そうやって洗脳されてきたんだろう。何度、判断力の鈍った頭に歪んだ情報を注ぎ込まれてきただろう。
 たとえ元が事実無根であろうとも、丁寧に刷り込めばそれは真実。祐希は『キスでスイッチが入り』、自分でも無意識のうちに、抵抗する気概を失ってしまったらしい。なぜなら、まさにこれ以降、祐希の喘ぎの質が完全に変わったんだから。
「うあああぁ……あっあ、うわぁぁぁあ~あーーーーっ!!」
 喘ぎというより、もはや嘆き。駄々をこねる子供の声をずっと聞いていると、時々はっとするほど真に迫った声色が混じっているものだが、それをほんの少しマイルドにした程度の声が、ずっと響きわたっている。こんな声がマンションの隣室からしていれば、間違いなく通報されるだろうという嬌声。
 俺はいま、ヒトが壊れる瞬間を目の当たりにしているんだ。はっきりとそう感じた。
「どう祐希ちゃん。気持ちいいでしょ、セックス。」
 わかりきったタイミングでそう尋ねる颯汰の心は、その甘いマスクとは裏腹に、腐った臓物のごとくドス黒いに違いない。
 祐希は、その言葉に顎を上げた。
「っ……きもち、よぐ…ない! おとこなんかに、男、なんか、にぃぃィッ……!!」
 言葉ははっきり聴こえるのに、発声の間、祐希の歯は噛み合わされたまま動かなかった。まさに意地。力を出す時には歯を食いしばると心得た部活女子が、すべてを搾り出した末の矜持だ。
 それは、本来尊いはずだった。でも、それを尊ぶかどうかは受取る人間次第。
「はっ、嘘つきなよ。さっきから腰動きまくってんじゃん!!」
 第一声を放った女は、少女の決意をゴミのように破り捨てる。
「そ、それは……突き上げられてるからっ……!」
「あーれぇ祐希ちゃぁん。もしかして、気付いてナイ?」
 祐希の必死の反論は、のらりくらりとした男の口調で遮られる。
「俺さ。もうずーっと、腰動かしてないんだよ?」
 軽い口調で放たれた一言は、しんと静まった部屋の中でよく響いた。いや、静まったというのは、あくまで人間の声の話。
 ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゃっ、ぐちょっ……。
 部屋の中には、そういう重い水をかき混ぜるような音がずっと繰り返されている。その音の源を見れば、男の言葉の正しさが証明された。布団の上に腰を下ろしたまま、むしろ諫めるように祐希の腰を掴む男。そしてその股ぐらに乗ったまま、胎内を自ら串刺しにする勢いで腰を上下させる少女。
「…………な?」
 勝ち誇ったその男の笑みが、『まともな』クール少女の見た最後の光景だったろう。

 直後、祐希は何かを叫んだ。でもそれは、ヒトの言葉じゃなかった。強い感情が込められた叫びには違いないが、俺はその感情が何かを考えるのがしんどかった。根幹にあるものが、悲しみでも、絶望でも、動揺でも、喜びでも、同じこと。
「じゃあそろそろ、俺がガチで腰使ったらどうなるか教えてやんよ」
 男がそうニヤケ顔を晒した時点で、俺は踵を返した。
 俺とあの子に接点なんてない。たまたま同じエレベーターに乗り合わせただけで、言葉を交わしたわけでもなければ、視線があった記憶すらない。ほぼ他人だ。
 でも、まともだった頃の彼女を少しでも知っているから、その子が完全に変質してしまう光景は心に来る。
 人間の耳ってのはよく出来たもので、音を聴くだけでも、背後で何が起こっているかおおよそ理解できてしまう。
 だんっ、だんっ、だんっ、という音がするのは、快感を受け切れなくなったあの子が、鍛えられた足の裏で地団太を踏んでいるからだろう。
「ははは、必死にしがみついて。もう自分からキスしているも同然だな」
「妊娠の可能性があるセックスは、格別に気持ちいいですからな……新婚の頃を思い出しますよ」
「にしても、あのカオ! 女学院の王子様が、変われば変わるもんね」
 すれ違う人間の一言一言が、見ていないはずの情景を浮かばせる。

 一体、ここはなんなんだ。
 何も知らなかった純粋無垢な女子高生を、丸三日セックス漬けにして壊したのか。
 なぜ。なんのために。なんの権利があって。
「おや。この部屋は、もうよろしいのですか?」
 壁に手をついてエントランスに出ると、端塚が声を掛けてくる。
「ああ」
「承知いたしました。では、下のフロアに……」
「待て。ここは一体、何なんだ」
 涼しい顔で次へ進もうとする端塚に、俺は問いかける。目は必死でも、語気は弱かったろう。俺は、この施設が……そして、この施設に関係するすべての人間が、恐ろしくなりはじめている。
「ここは、『本当のあなた』を解放する場所です」
 端塚は、そう言ってにこやかに笑った。

「……下へ、参ります」
 地下16階のボタンを押しながら、エレベーターガールが無機質な声で宣言する。
 このエレベーターガールも、最初に見た時には、アナウンサーを思わせるほどきっちりした女性だった。それが今はどうだ。
 制服は上も下も無惨に破かれ、赤い手形の残る乳房と、白濁液の滴る股ぐらを衆目に晒している。リップが豪快に乱れた口元には、縮れた毛が絡み付いてもいる。トラブルなのか、そういうプレイだったのかは知らないが、複数人から荒々しく犯されたとしか思えない。

 狂ってる。
 以前の俺は、ここがこんな場所と知って足を踏み入れたのか?
 それともやっぱりこれは、悪い夢なんじゃないのか?
 混乱する思考を纏めるには、ワンフロアの移動では短すぎる。俺はろくな覚悟も決められないうちに、薄暗いエントランスへと放り出された。


 地下16階。
 ここは、ツインテールの子が下りたフロアだ。

二度と出られぬ部屋 プロローグ 消えた記憶と、5人の少女

■プロローグ 消えた記憶と、5人の少女


 気付くと俺は、エレベーターの中にいた。
 でかいエレベーターだ。20人は乗れそうな広さと、どうやっても手の届かない高さ。蜂蜜色のランプで照らされた空間は薄暗く、レトロな雰囲気と共に、仄かな恐怖を感じさせる。
 俺は何故こんなものに乗っているんだろう。どうしてかそれが思い出せない。いや、それどころか、自分に関する事の一切が不明瞭だ。
 名前は。歳は。住所は。…………何も、思い出せない。

 賑やかな笑い声がする。エレベーターの操作盤の前に、女子の集団がいるようだ。
 ブレザータイプの制服姿。ミニのチェックスカートと紺ハイソックス、そしてそれに挟まれたむちりとした脚が眩い。おまけに顔立ちときたら、アイドル集団かと見紛うばかりの美形揃いだ。
 可愛いというよりカッコいいという感じの、黒髪ショートの子。茶髪をツインテールに纏めた、ひどく愛嬌のある子。生真面目そうな三つ編み娘に、凛とした雰囲気のポニーテール少女。それぞれが実に個性的だった。
 でもそういう雑多な個性は、瞬く間に背景と化す。俺の意識は、グループ内のある一人を視界に入れた瞬間、“吸い寄せられた”。
 異質な、一人。
 比較的きっちりと制服を着こなす集団の中にあって、一人だけブラウスの首元を大胆に開いている。他の少女が灰色のカーディガンを内に着込んでいる中、一人だけピンクのカーディガンだ。スカートは周りよりもさらに数センチ短いマイクロミニで、なぜかハイソックスではなく黒いニーソックスを穿いている。そしてその際どすぎる下半身の装いでもって、寄りかかる壁に片方の靴底を押しつけてもいた。つまり、今にも下着が拝めそうなポーズ、ということだ。
 品がなく、恥じらいもない“ビッチ”。記憶のない俺でも、自分の理想が慎ましやかな大和撫子であることは本能的に理解できる。そんな俺にとって、あんな恥知らずなど、本来唾棄すべき存在のはず。けれども俺は、なぜかその“ビッチ”から視線を外せずにいた。
 数瞬遅れて、理解する。
 絶妙なんだ。確かに首元をはだけてはいるものの、ピンクのカーディガンを合わせているせいで、色気と愛らしさの調和が取れている。扇情的な雰囲気がありながら、髪留めをつけた長い黒髪はド直球のお嬢様風。そして極めつけは、その脚線美だ。身長こそ周りの子と大差ないものの、腰の位置がまるで違う。そのモデル級の等身が、マイクロミニのスカートと黒いニーソックスでいよいよ決定的に印象づけられる。挙句に美脚を曲げ、壁を踏みつけるスタイリッシュなポーズまで取っているんだから、目も奪われようというものだ。
 一見自然体に見えて、全てが計算尽く。あれは世に溢れるビッチじゃない、男を惑わすサキュバスだ。俺がそう考えた、まさにその瞬間。黒髪のサキュバスは、俺の視線に気がついた。そして、
「────ふっ」
 目を細めて、そう笑ってみせたんだ。
 普通に考えれば、年頃の少女の嘲笑。だが今の俺にはそれすらも、淫魔の誘いにしか思えない。
 ゾクッとした。本気で、うなじの毛がささくれ立った。

 まずい。何か他の事を──そうだ、今は何時だ? 
 淫魔の眼から逃れるように、腕時計へと視線を落とす。俺の嵌めている時計は、金属製らしくずっしりと重かった。サファイア色をしたダイアルは積算計のせいで狭苦しく、肝心の時刻が見やすいとは言い難い。
 いざ意識を向ければ、時計のみならず、スーツにしろ革靴にしろ、服飾の全てがいかにもな高級品だ。内ポケットを弄ると、やはり極上の手触りのハンカチがあった。どうやら少し前までの俺は、金回りのいい人物だったらしい。

「これから何すんだろうねー、あたしら。どうせなら座学じゃなくて、身体使う系がいいな」
 ショートヘアの女子高生が、頭後ろで手を組みながら呟いた。どうやら根っからの体育会系らしい。
「なんかさ。こう地下深くだと、裏カジノとかありそうじゃない?」
「ははっ、いいなカジノ! ベガス的な?」
「もうっ、馬鹿言わないの。授業の一環って聞いたでしょ」
 ツインテールの子がはしゃぎ、ポニーテール娘が同調し、三つ編み少女が窘める。ツインテールの方は天然で、ポニーテールの方はあえてそのボケを拾っている感じだ。一方で窘めた三つ編みの子は、身長こそグループ内で一番低いものの、保護者のような落ち着いた雰囲気を纏っていた。
「あ、あたしここだ。うわぁ、いざとなったらダルぅ……」
「へっへっへ。“ユウ様”、いってらし~」
「バーカ、お前も他人事じゃないだろ。じゃ、お先」
 そんな会話と共に、まずは地下15階でショートカット娘がエレベーターから降りていく。その後も、地下16階でツインテール娘、地下17階でポニーテール娘が姿を消した。
 それにしても、随分と下りるものだ。地に潜れば潜るほど、日の当たる場所からは遠ざかる。つまりアンダーグラウンドな性質が強まるということだ。揃って顔立ちがいい以外、ごく普通の女子高生達が、そんな怪しい場所で下りるものだろうか。

 ( ────夢なんじゃないか、これ? )

 思わずそう思ってしまうほど、薄暗い密室には現実感がない。
 ただ、夢にしては生々しいのも事実。下るエレベーターの、細かな音や振動にしてもそう。エレベーターの扉が開く際、吹き付ける風の冷たさもそう。そして何より、地下18階で三つ編み少女が下りた後、例の『サキュバス』と2人きりになってからの緊張感は、この上なくリアルだった。

 彼女はずっとスマホに視線を落としていて、俺を意識している様子はない。ただただ俺が一方的に、彼女を視姦しているだけだ。
 見れば見るほどに、稀有。
 なんというスタイルの良さ。なんという理想的な脚。なんという端整な横顔。
 おまけに彼女は無防備だ。俺さえその気になれば、ほんの少し後ろに突き出た尻に触れることも、肩幅に開いた脚の合間を覗くことだって出来そうに思える。その一方で、誘いに乗ったら最後……という破滅の香りもする。まさに、人を狂わせる魔性。
 その後、地下19階でついに彼女はエレベーターを下りた。俺には一瞥をくれることもなく。その後姿を見送り、俺は大きく息を吐く。いくら可愛いとはいえ、小便臭い小娘一人にこれほど心を揺さぶられるなんて、普通じゃない。
 一人残ったエレベーターは、とうとう最下層の地下20階に達する。左右にドアが開くと、視界に広がるのは、煌びやかなエントランス。まるで超一流のホテルだ。
 恐る恐る一歩を踏み出した俺に、タキシード姿の男が近づいてくる。警戒ではなく、歓迎の笑みを湛えて。
「お待ちしておりました」
 どうやら俺は、招かれざる客というわけではないらしい。


            ※


俺が記憶を失くしている事を、『そこ』のスタッフはすでに承知していた。むしろそれを前提として、施設内での療養を勧められたほどだ。
 大浴場で温まり、レストランで腹を満たし、与えられた個室で眠る。一日に一度、医者が血圧を測りに来るが、それ以外は常に自由。

 時間はいくらでもあったから、俺は適度にリラックスしつつ、記憶を取り戻せるよう努力した。
 テレビを見た限り、全ての記憶がないわけではないようだ。少なくとも、『自動車』や『旅客機』、『銀行』といった一般的な名称は理解できている。ただ、そこをもっと掘り下げた部分……たとえば、自動車メーカーの○○や△△、というレベルになれば、知っているものと知らないものが分かれてくる。零細メーカーを知らないなら不思議はないが、なぜか俺の場合、シェアトップの超有名企業だけを知らない、というケースが多かった。まるで、一部の記憶だけが抜き取られてでもいるように。

 一部が抜き取られるといえば、部屋に届いていたスーツケースにも怪しい点がある。
 俺の私物らしきスーツケースの中には、なぜか個人の特定に繋がるものは一切なかった。免許証や保険証、パスポートもなし。その代わり、『時代をリードする男たちの共通点』『世界に通じる経営者の鉄則』といった実用書や、独特な香りのボディコロン、整髪料、手鏡などが詰め込まれていた。
 自分の名前がわからないというのは、かなりのストレスだ。名は体を表すともいう。名乗れる名前がない事は、存在がない事に等しい。少なくとも俺は、そう感じてしまっていた。
 ただ、名前はわからずとも、どういう人間だったのかを推して知ることはできる。
 風呂上がりに鏡で確認したところ、体はよく鍛えられていた。特に大胸筋や腹筋の発達具合は、『見せる』ことを目的に作り上げたことが明らかだ。その事実とスーツケースの中身を併せ考えれば、人物像はかなり絞られる。
 他人の目を強く意識する、上昇志向の強い人間。そして、人を『使う』立場にあるか、少なくともその野望を抱く男。おそらく、それがかつての俺だ。
 立派なものだと思う。社会にはそういう人間が必要だとも。しかし。

( ……めんどくせぇな )

 つい、そう思ってしまう。
 行動力を支える信念が消え去った今、俺の心はすっかり俗物に堕ちている。実際、ここ数日の俺は、風呂に入り、飯を貪り……あとは、自室で自慰に耽っているだけだ。
 エレベーターで乗り合わせた、あの女のことが忘れられない。スカートとソックスに覆われた、モデル級の脚線美。俺にほんの一瞬向けられた、誘惑するような笑み。それらが網膜の裏にこびりつき、逸物に血を漲らせる。
「う、うっ! ……ふうっ……」
 たぶん自分の半分ほどしか生きていない小娘に執着し、猿のようにマスをかく。それはいかにも病的に思えたから、恥を忍んで医者に相談したほどだ。すると彼は、俺を軽蔑するどころか、嬉しそうに膝を叩いた。
「おお、素晴らしい! 毎日射精できるということは、健康な証です!」
 彼女への執着が肯定された。俺はそれに安堵しつつも、ほんの少し、気味の悪さを覚えもした。

 たぶんそれは、俺の本能が発した警告だったんだ。

今年も一年、ありがとうございました。

皆様、お久しぶりです。燻製ねこです。

早いもので、もう2019年も終わり。オリンピックイヤーが来てしまいますね。

今年は『緋色の首輪』を書いたり、『止まらないカメラの向こうで』のDL販売をしたり、
『深淵に響く命の歌』の後編を発売したりして、そこそこ充実できていたのではないかな、
と思っております。

来年もまた頑張っていきます……と、その前に、年内最後の新作の前半部分を投下します。
プロローグ+本編6章+エピローグという構成で、今回は一章ずつ投下してみようかな、と思います
(これの間に余計なものを挟みたくないがために、ここで年末の挨拶をしていたり……)。

ともあれ、今年も一年、有難うございました。
燻製ねこが頑張れるのは、皆様のおかげです。

来年も、何卒よろしくお願いいたします!!
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