大樹のほとり

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2020年01月

二度と出られぬ部屋 第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)

※長くなったため分割しています。
 前回同様、アナル・浣腸・スカトロ回につき、ご注意ください。




■第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)


 自販機で渇いた喉を潤し、部屋中央のソファで休憩を挟んでから、俺は部屋の右側へと踏み込んだ。
 後半にあたる5~8日目のエリア。ここも4日目までと展示方法は変わらない。いくつもの写真と、通し番号が振られたモニター、そして横長のショーケース。ただし前半部分と比べ、こっちには人が多い。それぞれのモニター前に何人もが群がり、映像に齧りついている。
「見ろよアレ、愛液垂れまくり。キモチいいんだろなー」
「ああぁエロいよ、トウカちゃぁん!!」
 そんな気色悪い声を出す奴もいれば、ズボン越しに股間を弄る輩までいる始末だ。

 『5日目』エリアには、ショーケースに妙なものが飾られていた。
 洗面器に山盛りになった、灰褐色の物体。白い粉状のものが表面に付着しているが、どうやら玉蒟蒻らしい。
 ──何故、こんなものがここに。
 ──決まっている。これが使用された『道具』だからだ。
 自問自答の中、視線が横のモニターに引っ張られていく。俺は惹かれているのか。食材を使った、背徳的な責めに。


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 映像の中では、宙吊りにされた藤花がドレッドヘアの男に犯されていた。
 藤花を吊る紅い縄は三本。高手後手に縛り上げる一本と、左右の膝に回された二本だ。膝裏には摩擦防止の当て布がしてあるが、不自由な格好をさせた上でのそんな配慮は、かえって白々しく思えてしまう。
 ドレッド男は、身動きの取れない藤花の尻を抱え上げ、自由勝手に腰を打ち込んでいた。たんっ、たんっ、たんっ、と肉のぶつかる音がし、膝で吊られた藤花の足が揺れる。横からの撮影だから判りにくいが、挿入部分は尾骨に近い。使われているのはアナルだ。
『……あ、はっ……あ、ぁ……あ……っく、は、ぁ……っ』
 結合はかなりの時間続いているんだろう。藤花の顔は下を向き、荒い呼吸を繰り返していた。
『いい声が出るようになってきたじゃねぇか』
 犯しているドレッド男が、嬉しそうに藤花の腿を撫で回す。
『はぁ、はぁっ……冗談は、その頭だけにしろ……』
 藤花は顔を横に持ち上げ、男を睨み上げた。疲れが見えるが、その眼光はまだまだ鋭い。
『ふん、口の減らねぇガキだな。“8個もぶち込みゃあ”、ちっとはしおらしくなるかと思ったのによ』
 男は意味深な言葉を吐きながら腰を引く。ずるりと逸物が引き抜かれ、肛門との間に銀色の糸を伸ばす。
『はぁ、はぁ……っ』
 激しく喘ぐ藤花を前に、ドレッド男が片膝をつく。藤花の肛門を間近に望む位置だ。奴には今、凛とした女剣士の恥じらいの場所が、余すところなく見えていることだろう。
『へへへ、おいおい。俺ので奥まで押し込んでやったってのに、もう入口近くまでひり出されて来てんじゃねぇか。ええ? 我慢のできねぇケツだな』
 肛門を覗きこんだドレッド男が、膝を叩いて笑う。そうして相手が愉快そうにするほど、藤花の表情は硬くなっていく。
『当たり前だろう……そこは、出すための穴だ』
『違うな、そりゃフツーの人間の話だ。ケツ穴奴隷のテメェの場合、ここは第二の性器。つまり、突っ込まれるための穴なんだよ』
 男は嘲るように言いながら、左方向に手を伸ばす。その方向にあるのは、ローションボトルと玉蒟蒻入りの洗面器だ。
『なっ……やめろ、もう入れるな!』
『だからよぉ、違ェだろ? 「もう入れないでください、お願いします」だ』
 血相を変えて叫ぶ藤花に対し、男が要求するのは恥辱の哀願だ。しかし、武人気質の藤花がそれを受け入れる筈もない。
『く……!!』
 ドレッド男を睨み据えたまま、ただ口惜しげに歯噛みするばかり。“苦みばしった”と形容したくなる表情は、時おり美青年の顔にも見える。肉体の方は、主張しすぎるほど女の特徴を備えているというのに。
『ったく、強情な女だぜ。ま、その方がイジメ甲斐があるがよ』
 男は呆れた様子で笑いつつ、ローションボトルを拾い上げた。そして哺乳瓶のような先端部を藤花の肛門へと押し込みつつ、ボトルを握り潰す。
『うっ!』
 藤花が小さく呻いた。
 男は、二度、三度とボトルを握りこんでから引き抜くと、ローションの残りを玉蒟蒻の山にふりかける。もはや疑う余地もない。奴はあの玉蒟蒻を、藤花の尻へ入れるつもりだ。
 ──“8個もぶち込みゃあ”、ちっとはしおらしくなるかと思ったのによ
 ──俺ので奥まで押し込んでやったってのに、もう入口近くまでひり出されて来てんじゃねぇか
 こうした言葉の意味も、はっきりと理解できてしまう。
 藤花は、さっきアナルを犯されていた時点で、あの大粒の玉蒟蒻を8つも入れられていたんだ。

『さっきみたく、ケツ締めとけよ』
 ドレッド男はそう言って、玉蒟蒻の一つを摘み上げる。カメラが斜めに移動し、藤花の肛門周りを捉えた。男の指で肛門へと押し付けられた玉蒟蒻は、わずかな抵抗のあと、ずぶずぶと紅い輪の内側へ沈みこんでいく。
『…………っ!!』
 藤花の身体が強張った。太股も、腹筋も。男はその反応を目で追いつつ、一つまた一つと玉蒟蒻を摘み上げては、尻肉の合間へと押し込んでいく。
 それが何度繰り返されただろう。洗面器の中身が、半分ほどに減った頃。
『本当に、やめろ……もう無理だ!』
 藤花が、呻くようにそう告げた。男はまた鼻で笑う。
『けっ、なにが無理だ。テメェのケツはどんどん飲み込んでくじゃねぇか。大体テメェ、ロドニーさんのデカマラを咥え込んだんだろ? アレの方がこんな蒟蒻なんぞより、よっぽど嵩あんだろうが』
 そう言って、部屋のゴミを捨てるぐらいの気安さで、次々と異物を挿入していく。
『く、ぅっ……は、くっ…………!!』
 藤花は耐えるしかない。白い歯を食いしばり、悔しそうに目を細めて。
 洗面器の中身は着実に減っていく。それはつまり、スレンダーな藤花の腸内に、減った分の体積が移ったということだ。となれば当然、肛門の抵抗も強まり、玉蒟蒻を挿入する男の動きも変わっていく。初めこそ軽快に押し込んでは次の一個を摘み上げ、というペースだったのが、ぐっぐっと何度も押し込むようになる。
『おら、ケツ開けって。クソ我慢するみてぇに腸は閉じながら、穴ンとこだけ緩めんだよ!』
 ドレッド男は、苛立ち気味に無茶な注文をつけていた。玉蒟蒻が肛門から弾き出された時などは、舌打ちもする。品もなく、慈悲もない男。そんな輩が指の力任せに無理を押し通していく様は、見ていて背筋が寒くなる。

『……おら、全部入ったじゃねぇか。無理だのなんだのほざきやがってよ』
 何分が経ったのか。あれだけあった洗面器の中身が、すっかり藤花の中へと収められてしまう。
『くっ……この野郎!』
『そう睨むな。ケツってなぁ、苦しいのがキモチイイんだ。お前だって、とっくに承知してるようによ』
 ドレッド男は藤花の怒気を受けてもなお、余裕の笑みを崩さない。それどころか、悠々と逸物を扱きたて、藤花の尻に押し当てる。あれだけ無茶な異物挿入をした上で、また犯そうというのか。
『や、やめっ……!』
 当然、藤花も信じがたいという様子で目を剥いていた。
『女のイヤよは、待ちきれないの合図──ってな!』
 男はあくまで相手の主張を聞き入れず、尻肉を鷲掴みにして腰を突き入れる。男の腰も、藤花の腰も細かに震えていた。ミリミリ、メリメリと音がしそうなほどに。
『ぐううっ!!』
『うへぇ、キッチィなこりゃ!粘土板にでも突っ込んでる気分だぜ。勃起力の弱ぇオッサンやモヤシ野郎じゃ出来ねぇな、このプレイは』
『はっ、ぐ……もうやめろ!尻の穴が、裂ける……!!』
『だから裂けねぇっつーの。テメェの括約筋がよく伸びる逸品だってのは、とうに判ってんだ。それによ、テメェだって実はイイんだろ? 直腸に圧かけられて、子宮圧迫されて、結腸にまで玉蒟蒻が詰まってる。アクメの条件は十二分に揃ってんだよ!』
 男はそう言って、藤花の尻に腰が密着するまで挿入しきった。そして、ゆっくりと抜き差しを開始する。
『う、ぐあ……あ!!』
 藤花の苦しそうな声と共に、パン、パン、とスローペースで肉のぶつかる音がしはじめた。そしてその音は、少しずつ、少しずつ、速さを増していく。
『くっは、まじでキッツイぜ。だが悪くねぇ。四方八方から生ぬるい弾力が包み込んできやがらぁ!!』
『んあ、あ……あっ、あ…っく、うくああ゛っ!!』
 何十個もの玉蒟蒻を腸に詰め込んでのアナルセックス。それが刺激的でない筈もなく、犯す側も犯される側も顔を歪めている。ただし、対照的な理由で。あの藤花が絶え間なく声を上げるんだから、相当だ。
 たっぷりとローションを注ぎ込まれているせいか、抜き差しの度に漏れる音もひどい。
 にちゅ、にちゅ、と人が口で言っているような音。
 ぶちゅっ、ぶぼっ、という水気のある屁のような音。
 S気の強い調教師が、それを聞き逃すはずもない。
『すげぇ音させてんじゃねぇか、ケツからよ。恥ずかしくねぇのかよお前?』
 異音と同じぐらい粘ついた悪意を込めて、囁きかける。藤花の眉が吊り上がった。
『恥だと? 何の恥だ……その音をさせているのは、貴様だろう!』
 気丈に反論するものの、その顔は堂々とはしていない。肛門を犯されて放屁のような音をさせ続けるなど、耐えがたい恥だろう。たとえそれが、強いられたものであっても。
 異物を大量に押し込まれた状況といい、漏れる音といい、苛烈な責めであることに疑う余地はない。さらには男もいやらしいもので、刺激が一層強まるような行為を繰り返す。例えば、揃えた4本指で臍の下……ちょうど異物がひしめいているだろう場所を圧迫したり。尻肉が変形するぐらい深く突きこんでから、腰を据えてグリグリと円を描くように動かしたり。
 そんな苦難を受けながら、藤花はじっと耐えていた。男の突き込みで前後に揺れはするが、それ以上の反応は見せない。悪童にじゃれつかれる育児疲れの母親よろしく、じっと時が過ぎるのを待っているように見えた。
 だが、それは外観だけの話。今までもずっとそうだったように、見た感じで変化がなくても、内では着実に何かが蓄積しているんだ。ボーイッシュな祐希は、その果てに自我が崩壊した。天使のようだった千代里は、我慢の末に嘔吐した。そして、藤花にも変化が起きる。
 ぶちゅ、ぶりいいっ、ぶちゅっ……そんな音と共に、代わり映えのしない抜き差しが続いていた、ある瞬間。男の腰が引かれると同時に、結合部で小さな破裂音がした。
『うあ……っ!!』
 同時に藤花の口が開き、声が漏れる。ハスキーではあるが、今までよりずっと女の子らしさのある声。それがはっきりとマイクに拾われてしまう。
 何が起きたのか。その疑問の答えを示すように、一つの玉蒟蒻が床を転がっていく。排泄されたんだ。男の逸物を挿入されたままで、無理矢理に。それは、どれだけ刺激が強いことだろう。女の子の声が出てもおかしくない。
『ぎゃはははっ! お前出すんじゃねぇよ、ハメてる最中によぉ!!』
 ドレッド男は鬼の首を取ったように笑いつつ、藤花の尻を打ち据える。
『っ! く、ぅっ……!!』
 藤花の表情がまた歪んだ。あまりに唇を曲げているせいで、笑っているようにすら見える顔だ。
『んなに良かったのかよ、ええ? 嵌められながらデカイのひり出して感じちまったのか、この変態が!!』
 男の言葉責めは止まらない。腰の動きも再開する。そしてここから、不動だった藤花の様子が変わりはじめた。太股が強張り、足指が折り曲げられる。まるで空気を噛むように。
『うおっ、すげぇ締まってきた。脚に力入れて、ケツ穴引き締めてんのか? 相変わらずクソみてーな根性だな。ならせいぜい、頑張ってみろや!!』
 男はそう言って、激しく抜き差しを繰り返した。パンパンと肉のぶつかる音がし、結合部の異音もいよいよ粘ついたものに変わっていく。
『うぁ、ううあ…っ!!』
 藤花の口からも、堪らずという感じで声が漏れている。
 そして。
『あ!! ぁぁ゛あ゛っ!!!!』
 藤花からまた悲鳴が上がり、その直後、床に数個の玉蒟蒻が垂れ落ちた。ぬらりとした粘液に塗れたまま。
『おーおー、また出やがった。見てみろよ、腸液まみれだぜ? こんだけイジめられて腸液出すとか、誤魔化しきかねぇマゾッぷりだなぁ、剣術小町ちゃんよお!!』
『ふざけるな、ただの防衛本能だ! 無茶をさせられているせいでな!!』
 下卑た口調で茶化されれば、藤花も黙っていない。即座に反論を浴びせる。本当にプライドの高い娘だ。
 だがそんな彼女にも、忍耐の限界はある。この映像では、その『底』が垣間見えるようだった。
『おらっ、ケツに出すぞ変態女!!!』
 数十回のピストンの末、男が射精に至る。腰を密着させたままたっぷり数秒かけて精を送り込み、身体を離す。その解放をもって、ようやく藤花の肛門は排泄を許された。びゅぶっ、ぶちいっ、と凄まじい音を立てながら、次々と灰褐色の珠が飛び出ていく。その最中、藤花は下唇を噛みしめていた。普通なら、声など漏れないはずだ。それでも、映像にはしっかりと記録されている。
『んんーー~~~っ!!!!!』
 鼻を甘い声が通り抜ける。快便の心地良さに呑まれているのは明らかだ。
『ぎゃっはっはっはっは!!』
 男は腹を抱えて大笑いしていた。映像が暗転する瞬間まで。

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 俺は暗転したモニターから視線を外し、改めてショーケースを見やった。
 表面に粉状のものが付着した、玉蒟蒻。映像を観た今ならわかる。あの粉は、腸液が乾燥したものだ。つまりあれは、間違いなく映像にあった実物。そう思うと、静かにケースに収められている無機物から、宿主の嘆きが聴こえてくるようだ。
 俺はその嘆きから逃れるように、次のエリアへと歩を進める。
 
 『浣腸した上でアナルを責める』。
 6日目は、それだけがひたすら繰り返されたらしい。モニター7には、その様子がダイジェストで纏められているようだ。


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 一つ目の映像では、藤花はバスルームで拘束されたままで嬲られていた。両肘の少し上と、折り曲げた脚の半ばを縄で巻かれた達磨状態。その藤花に対し、調教師数人が好き勝手をやっている。
 藤花の顔側に座り込む男は、整った顔を弄くりまわしていた。鼻の穴に指を引っ掛けて、縦に引き伸ばしたり。同じく口に指を引っ掛けて、横にへし曲げたり。そうして、相手の不快そうな表情を楽しんでいる。
 肛門側にも一人が片膝をつき、延々と浣腸を施していた。浴槽に溜めた液体を浣腸器で吸い上げては、藤花の腸へと注ぎ込んでいく。一体どれだけ入れたのか、すでに藤花の腹部は膨れ上がっている。
『やえろっ、おうむいだ……!!』
 口と鼻をへし曲げられながら、無理を訴える藤花。だが男共は聞き入れない。
『まだまだ。お前より細ぇ女でも、3リットルは入るもんだ』
 そう言いながら注入を続け、臨月かというレベルにまで腹を膨れさせる。終わるタイミングにしても、容赦した訳じゃない。浣腸液を注ぎ込もうとしてもすぐに噴き出す、限界の限界を迎えたからだ。
 それだけの浣腸を施すだけでも、充分に外道の仕打ちといえる。だが男2人の悪意が発露するのは、むしろここからだった。
 何しろ連中は、妊婦のように腹が膨れた藤花をひっくり返し、這う格好にして肛門を犯しはじめたんだ。
 けして細くない、むしろ平均以上の逸物が、限界まで詰まった腸内を蹂躙する。抜き差しのたびに、肛門からブビブビとみっともない音が発され、後方に水が噴き出していく。場所が浴室だけに、音がいちいち反響するのがまた悪趣味だ。
『いいねぇ、生あったけぇのがどんどん溢れてくんぜ。女と温泉でハメた時みてぇだ。ケツの締まりも悪くねぇしよ。つっても、こんだけビシャビシャ出しまくっといて、締めるイミあんのかって話だがな』
 後ろの男は上機嫌で、ますます膝に力を込める。
 さらに彼女の前方では、床タイルに寝そべった男が逸物を咥えさせてもいた。
『おい、歯ァ当たってんだよヘタクソが! ったく、上達しねぇ奴だな。オマエ次歯当ててみろ、また漏斗でションベン飲ませんぞ。髪とアゴ掴まれて、泣きながら白目剥きたかねぇだろ?』
 男は奉仕を強いながら、不機嫌そうに愚痴りつづけている。
 藤花は、その地獄のような状況にじっと耐えていた。手足を曲げて拘束された彼女に、抵抗の術はない。肘と膝のみを支えとして這い、悪意を受け止めるしかない。
 この状況でも取り乱さないのは流石だ。しかし、苦しいのは間違いない。腹を下したような音が酷いし、尻穴からは下痢便を噴き出す音が続いている。逸物を深々と咥えこまされる喉元からも、ゴエエッとえずきが上がっている。
 そして何より、彼女の引き締まった尻が、激しく暴れていた。黒人にターキーのような逸物を挿入されていた時ぐらいに。
『はっ。さすがのお前でも、ハメられながらひり出し続けんのはキツイらしいな。だが、だいぶ楽になってきたろ? カエル腹がようやっと凹んできたぜ』
 後ろの男は激しく腰を打ちつけつつ、藤花の下腹を鷲掴みにする。
『むぐう゛っ!!』
 藤花から呻きが上がり、下半身の暴れ方が酷くなる。その反応が後ろの男を焚きつけ、さらに激しく下腹を揉みしだく。その果てに、藤花の口の方から妙な音がした。呻きとも攪拌音とも判別のつかない音。
『うぅわ! お前きったねぇな、ゲロを吐くなよゲロを。オレはテメェと違って、汚物にまみれる趣味はねンだよ』
 どうやら異音の瞬間、藤花は嘔吐したらしい。散々喉奥まで咥えさせておきながら、前の男が顔を顰める。
『何だよ、前からも噴いてんのか? ほどほどにしとけよ。今日は一日中浣腸責めだ、いちいちゲロってっと体力もたねーぞ』
 そう嘲りながらも、後ろの男は下腹から手を離さない。前の男も、舌打ちしながらまた逸物を咥えさせる。その悪意に挟まれて、藤花の手足はひどく強張っていた。

 一日中浣腸ファックされる。この男の言葉は、脅しでも何でもない。これ以降の映像でも、藤花はバスルームで浣腸を施されたまま、直腸を蹂躙され続ける。

 浴槽内の湯をポンプで直に汲み上げて注入し、藤花を悶絶させている映像もあった。この注入の後には、一人が肛門が上を向くように抱えたまま、もう一人が極太のバイブでアナル責めを施す。藤花は、自分の肛門から噴き出す液をすべて身に浴び、顔を左右に振って苦しむしかない。
 さらに別の映像でも、床にへたり込むように緊縛され、イチジク浣腸の散乱する中で延々とバイブ責めを受け。
 また別の映像では、血のように赤い液体を吹き散らしながら騎乗位を強いられ。
 緑色をした液を右脚に伝わせながら、Y字バランスで犯し抜かれ。
 そしてこれら全ての映像には、ギャラリーの姿があった。いつか見たように、ガラス張りのバスルームをぐるりと囲み、好色そうな眼で中を覗いている。何らかの罵声を浴びせていることもしょっちゅうだ。

 そんな苦境でもなお、藤花は調教師と客を睨みつけていた。汚液やシャワーが顔に掛かる時はさすがに目を閉じるが、すぐに顔を振って鋭い眼を取り戻す。
 そういう態度がますます相手を増長させると、気付いてはいる筈だ。それでも武芸家としてのプライドが、舐められ放しでいることを許さないんだろう。常に和を尊ぶ千代里とは、見事に真逆の性質。藤花と千代里がエレベーターで談笑していたのが、もう遥か昔のことのようだ。


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 映像が終わる。
 6日目エリアのショーケースには、動画内で浣腸に用いたものが展示されていた。
 『グリセリン』とカナ表記のされたボトル。『酢酸』と書かれたビン。イチジクの形をした容器。ペットボトル入りのトマトジュース。青汁の粉……。
 俺はSMに詳しいわけではないから、そういう物を腸に入れた際のメリット・デメリットは判らない。ただ1つ確実に言えるのは、それらが悪意をもって選ばれているということだけだ。
 そして、その悪意はエスカレートし続けている。『7日目』エリアへ進めば、それが肌で感じ取れた。何しろ、7日目と8日目はとにかくギャラリーが多い。そして黒山の人だかりが出来ているモニターからは、時々悲鳴のような叫びが漏れ聴こえている。

 7日目エリアのモニターには、画面上側の縁にテプラが貼ってあった。
『絶叫が続く動画につき、他のモニターよりも音量を下げております』
 テプラにはそう印字されている。音量を下げてなお、離れた場所で悲鳴が聴こえるのか。その事実を前に、嫌な予感が膨らんでいく。


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 モニターでは、藤花が4人の男から嬲られていた。かなり徹底的な責めだ。
 大股を開いたまま、左右の手首と足首を一纏めにベルトで拘束された藤花。そのアナルにはかなり太さのあるディルドウが押し込まれ、肛門から飛び出た部分には大型のマッサージ器が宛がわれている。
 秘裂の上側……尿道からはチューブのようなものが延びていて、空のパックに繋がっている。導尿用の処置かと思いきや、どうやら逆だ。チューブは尿道に近い部分がクリップで挟み潰されていて、尿道側からあふれ出す黄色い液を押し止めている。
 そして、そのすぐ上に位置するクリトリスには、やはりマッサージ器が宛がわれて唸りを上げていた。
 挙句、両の乳房には搾乳機のようなものが取り付けられ、先端が円錐形に変形するほど吸引しているし、恥骨の辺りや内腿には電極パッドが取り付けられ、ボックスからの電気供給を受けている。

 それだけの事をやられて、肉体が反応しないはずがない。
 搾乳機の中の乳首はしこり勃ち、マッサージ器が離された時に覗くクリトリスは小豆のように膨らんでいる。三角形に溝の刻まれた内腿や、一纏めにされた手足の指の強張り具合は、相当な快感を受けていることを物語っている。
 そもそも藤花が拘束されている辺りには水色の吸水マットが敷かれているが、そのマットはかなり広い範囲が変色していた。1メートル以上も離れた場所が飛沫状に青くなっているのを見るに、何度も潮を噴き散らしているようだ。
 それでも、藤花の顔は崩れていない。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、口の端からは涎を垂らしてもいるが、瞳はくっきりとした輪郭を保っている。
『すげぇなお前、まだ睨めんのか。結腸までディルドー突っ込まれて、膀胱パンパンにされて、さんざっぱらクリ逝きまでさせられてんのによ』
 藤花を囲む調教師の一人が、呆れた様子で呟いた。
『はあっ、はぁ……こんなもので、どうにか出来る気でいたのか? こっちは三つの頃から、激しい稽古に耐え抜いてきたんだ。お前らがクズ同士馴れ合って、人生を浪費している間にな!』
 藤花は息を荒げつつも、背筋を伸ばして反論する。自分は今なお清廉潔白だ、お前達とは違う──そう全身で訴えるように。
 そういう態度は、さぞ調教師の逆鱗に触れることだろう。次の場面では、藤花の横っ面が叩かれるかもしれない。俺はそう覚悟したが、モニター内の男達は、怒るどころかむしろ嬉しげだ。
『よく言った。わざわざBコースでもてなしてんだ。こんなヌルい責めで泣き入れられたら、肩透かしってもんだぜ』
 一人がそう言って肛門のディルドを握りしめ、ズルズルと引き抜いた。抜け出ても抜け出ても、なかなか先端が覗かない。恐ろしく長いバイブだ。3号と呼ばれていたバイブが20センチ弱だとすれば、こっちは悠に30センチはありそうだ。これだけの長さがあれば、直腸の突き当たりのさらに奥、S字結腸まで入り込むのも容易だろう。
 デュポッという音を立てながら、ディルドーが完全に抜ける。男はそのディルドーを見つめ、ほくそ笑んだ。
『見ろよ。“お釣り”つきだ』
 そう言って隣の調教師にディルドーを見せる。大蛇のようなディルドーは、先端部分がかすかに汚れているようだ。
『ははっ。昨日の晩からさせてねぇからな。食物繊維たっぷりの餌が消化されて、ようやっと結腸まで下りてきたってことか。いい頃合いだ』
 男はそう言い、一旦画面の外に消えた。他の連中もそれぞれに動き出す。藤花の乳房から吸引機を外し、尿道からチューブを抜き、下腹や内腿のパッドを外し。
『んっ! ふうっ!!」
 藤花はその一つ一つに性的な反応を示しつつ、訝しそうに眉を顰める。
『なんだ、今日はもう終わりか? それとも、飽きたから他の遊びにするのか?』
 不安だからこそ、あえて憎まれ口を叩く。それが藤花のスタンスらしい。今までは調教師がそれに呼応し、ある意味で上手く噛み合っていた。だが、今は何かが妙だ。調教師が余所余所しい。死刑執行前の刑務官のように、黙々と作業をこなしている。

 藤花は一旦縄を解かれ、手首足首を軽くマッサージでほぐされた。そこへ、さっき画面外に出た男が戻ってくる。手にしているのは洗面器。中には透明な液体が張られ、針のない巨大な注射器が立てかけてある。
『またそれか。つくづく芸がないな』
 見飽きたとばかりに目を細め、嫌味を刺す藤花。だが、男は余裕の態度だ。
『いいや。コイツばっかりは、これまでのとは別モンだぜ』
『……なんだと?』
 自信に満ちた男の言葉に、藤花が眉を顰めた。
『“ドナン浣腸”っつってな。昔は病院で便秘患者に使われてたんだが、あんまりにも効果が強すぎるってんで使用禁止になったシロモノだ。浣腸慣れしてねぇ奴に使った日にゃ、アワ噴いてもおかしくねぇキツさなんだが……お前なら、この程度の“お遊び”は余裕だよな?』
 男の一人が浣腸器を拾い上げ、藤花の顎を叩きながら挑発する。
『く……ッ!』
 藤花の目元が引き攣った。明らかな危機を感じ取りながらも、直前に啖呵を切っている以上は拒めない。さぞ歯痒いことだろう。
 調教師達はそんな藤花の表情を楽しみながら、浣腸器を薬液に浸した。一度シリンダー内の空気が追い出され、慣れた手つきで薬液が吸い上げられる。
『ケツ向けろ。それともブルッちまったか、オトコ女?』
『……ふん。相手を見て物を言え』
 浣腸器片手に挑発されると、藤花は不本意ながらも従うしかない。鍛えこまれた背筋がカメラに晒され、引き締まった尻肉が突き出される。
『よーし、いくぜ』
 浣腸器の先端が、つるりと藤花の肛門を通り抜けた。初めの頃は指一本の挿入も厳しい蕾だったのに、拡がりやすくなったものだ。
 男の手がシリンダーを押し込む。キュウウッと音がして、薬液が肛門内へと入り込んでいく。きつい浣腸だそうだが、我慢強い藤花のことだ、しばらくはじっと耐えるだろう。俺は無意識にそう思っていた。ところが、その予想は外れる。
『ぐあっ!?』
 浣腸液を送り込まれた、まさにその瞬間。藤花は悲鳴を上げ、目を見開いて振り返った。
『おいっ、ちょっと待て! これは、アルコールじゃないのか!?』
 新鮮なその反応に、男共が笑う。
『いいや、間違いなくドナン液だ。粘膜に触れた瞬間、ウォッカをストレートで煽ったようになんのが、こいつの特徴よ。しかも、即効性があるだけじゃねぇ。意思とは無関係にケツがめくれて、ダラダラ糞が漏れちまうんだ。しかもお前は今、結腸までクソが降りてきてっからよ、格別にキツイはずだぜ』
 男はそう言いながら、また浣腸器に薬液を吸い上げた。同時に他の調教師は、暴れる藤花の腰を押さえにかかる。
『なっ!? 貴様、そんなものをまだ……ッ!!』
『ああ入れるぜ。普通なら一本で勘弁してやるが、俺はお前が嫌いなんでよ』
 2本目の薬液が注入される。その後の反応は、グリセリンとは全く違った。
『ぐああぁっ、はぐっ!!うあ、か、勝手に、ぃ……っ!!?』
『へっ、効いてきたな。もうぐっぱり開いてやがる』
 悶え苦しむ藤花の肛門に、男の指が挿入される。拳ダコのある男の4本指が、抵抗なくぬるりと入り込んでいく。ウソのような光景だ。
『おーおー、ユルッユルだぜ。何もひっかかんねぇ。おいオトコ女、当ててみな。指は何本入ってる?』
『し、知るか……それどころじゃない事ぐらい、見て判れ……!!』
 藤花は歯を食いしばりながら言葉を搾り出す。そのすらりとした脚は、早くもガクガクと膝が笑っている。だが、当然だ。彼女の菊の輪は、ゴムを抜いたズボンのように、歪な形に開いているんだから。その惨めな様は、陰湿なサディストにとってさぞ面白いものだろう。

『あんま早く出させても、面白くねぇからな』
 そう言って、調教師の一人が肛門近くの人間にある物を渡す。ラグビーボールに近い形をしたアナルプラグ。ただし、サイズが普通じゃない。男の掌でようやく底を掴めるかという大きさだ。
『……ッ!!?』
 それを視界に収め、藤花が眼を見開いた。
『うお、7号プラグはやっぱ重てーな。ダンベルみてぇ』
 肛門傍の男は、両手でプラグを抱え直すと、藤花の肛門へと捻じ込んでいく。
『かはっ!!』
『おーすげ、やっぱ直径10センチとなると絵面がやべーな。大砲の弾でも詰め込んでんかよ!』
『ああ。こんなのが余裕で入る……っつか、こんなんでなきゃ栓にならねーとか、ヤベーよなドナンって』
『サツの女ん時ゃ、テニスボール嵌めこんでもダダ漏れだったもんな。ヤメテーヤメテーとか喚きながら、ボールごとブリブリひり出しやがってよ』
『いたなー、あの説教大好き女! ドナン漬けにしたら、説教どころか「んおお」とかしか言わなくなったけどよ』
『終いにゃ馬とやってアヘッてたらしいぜ、あの女。そういや、あれも剣道やってたよな。4段だっけか。おう嬢ちゃん、お前は何段だ? ……って、答える余裕ねぇか』
 武勇伝で賑わう調教師達の足元では、藤花が苦しそうに呻いていた。
『ふ……ふぐっ、う……あ、あく……!!』
 眼を見開き、顔中に汗を噴き出させ、歯を食いしばり。浣腸を我慢する顔は嫌というほど記録されていたが、ここまで苦しそうな顔はなかった。
 だが、無理もない。彼女の腹部からはすでに、グリセリン浣腸を10分耐えた時よりも酷い音がしはじめているんだから。
『苦しそうだなぁ、オトコ女。楽になりてぇだろ?』
 調教師の一人がしゃがみ込み、藤花の顎を持ち上げる。その背後では、別の一人がアナルプラグを膝で押さえ込んでいる。
『……はぁ、はあ、はあ…………』
 藤花は、酷い風邪でも引いたような顔のまま、荒い呼吸を繰り返す。この状況で悪態を吐かないのは意外だが、その余裕すらないんだろう。
『なら、こう言え。「ウンチを出すところを見てください」ってな。それが言えりゃあ、オマルでさせてやるよ』
『な…ッ!!』
 男の要求に、藤花が表情を強張らせた。人一倍プライドの高い彼女が、そんな要求を呑む筈がない。普通なら。
 だが今は、痛烈な排泄欲に身を焦がされている最中だ。人間は生理的欲求には抗えない。大半の人間は、プライドと生理的欲求を秤にかけた時、欲求の方に流れるだろう。
 だが、藤花は違った。
『……はぁ、はあ…っく! あは……ぅ、くうううっ!!』
 腹部から凄まじい音がするたび、藤花の目が見開かれる。だが彼女はすぐにその眼を細め、調教師を睨み据えた。驚異的な精神力だ。
『まだまだ折れねぇってか。こりゃ時間かかんな』
『ああ。待ってんのも面倒だ、素直になるまで放っとこうぜ』
 調教師達は薄ら笑みを浮かべ、床の縄を拾い上げる。動画の最初で、藤花の手足を縛っていたものだ。
 普段の言動こそ軽薄だが、腐っても調教師だ。連中は鮮やかな手つきで、藤花を高手後手に縛り上げてしまう。さらには足首と膝にも縄を通し、縄頭を天井のフックに引っ掛ける。
 結果として藤花は、尻を床に密着させたまま、伸ばした両脚を吊られた格好となる。
『う……!!!』
 股の方に視線を落とし、顔を青ざめさせる藤花。そんな藤花を見下ろしながら、調教師達が口元を吊り上げる。
『いいカッコになったなあ、俺女。俺らはレストランで、うんめぇメシ食ってくっからよ。しばらくそのまま過ごしとけや。ま、つってもドナンはキツイだろうからな。どうしても俺らに何か伝えたいって気になったら、コレ押せや』
 一人が嫌味たらしく言いながら、細長いスイッチを取り出した。
『ナースコールみてぇなもんでよ。この端っこにあるボタンを押し込みゃ、俺らんとこに合図が来んだ。命綱だと思って、しっかり握っとけよ?』
 男はそう言って、縛られた藤花の右手にスイッチを握らせる。
『おーい、行くぞー』
『待てって! じゃあな、せいぜい頑張れや』
 調教師達が扉を開けて去り、薄暗い部屋には藤花だけが取り残された。

 カメラは床に置かれているらしく、孤独な藤花の様子を定点で撮影しつづけている。

『……く、ううっ!! はぁっ、ああ、あ゛……ぐっ!!』

 藤花から呻きが漏れた。
 実際、地獄だろう。
 足を吊られていると、下半身に力を込めるのが難しい。つまり、中途半端にしか排泄を我慢できない。では出して楽になれるかといえば、それも無理だ。何しろ彼女は、尻餅をついた状態。常に全体重でアナルプラグに圧し掛かっている形だから、排泄どころか、もがくほどにグリグリと深く栓をされてしまう。
『……ぐ、む……んん、んぐううっ!! お、おい、誰か、見ているんだろう!? こ、こんな事をして、タダで済むと、思う、なよ…………!!』
 薄暗い部屋の中、藤花の声が空しく響く。
 返事はない。ただ藤花自身の荒い呼吸と、遠雷のような腹の音だけが繰り返される。
『い、いい加減にしろ……このままでは、腸が、爛れるぞ……!』
 数十秒後、藤花はまた訴えかける。だが結果は同じだ。
 無駄と悟ったのか、それとも言葉を話す余裕すらなくなったのか。これを最後に、藤花が何かを話すことはなくなった。

 そして、強い便意に襲われた人間の、生々しい反応が始まる。

 荒い呼吸と腹の音にまず割って入ったのは、縄の軋む音だった。ぎしぎしという、根源的な恐怖を煽るような響きが、暗闇の中で繰り返される。
 その次は、アナルプラグが床に擦れる音。かなり硬い材質なんだろう。藤花の尻肉が左右に揺れるたびに、ゴリッゴリッと硬い音がしている。
『……う、う…ふんぐゥう゛う゛っ!!』
 藤花が、ここで悲痛な呻きを上げる。今までも相当な便意に苛まれていたはずだが、ここで特大の波が襲ってきたんだろう。
『ああ……あぐ、ぐうう゛っ、ふむうううう゛っ!!!』
 藤花は、脚の親指だけを立て、他の4本指を曲げて、なんとか大波を凌ぐ。だが、かろうじてだ。第一波を過ぎた後、彼女の引き締まった肉体は震えはじめた。縄の軋む音、アナルプラグの擦れる音が激しくなる。呼吸や腹の音の酷いものになっていく。
『あああっア゛っ……ぐ!!!』
 また悲鳴が上がり、下腹からグロロロゥという不気味な音が響く。これが、第二波だろう。

 生々しい映像ほど、心に訴えてくるものはない。ほんの数分が数時間にも思えるような彼女の気持ちが、俺にまで伝わってくるようだ。
『滝行を思い出せ……腑抜けるな、廣上 藤花ッ!!』
 孤独な部屋の中、藤花は便意に抗いつづける。全身に汗を垂らし、歯を食いしばりながら。
 だがそんな努力を嘲笑うように、便意の波は何度となく彼女の足を攫う。死に物狂いでいくら凌いでも、回を追うごとに波は大きくなり、間隔も短くなっていく。
『……ぁああ゛あ゛ッ!!!』
 俯き気味に耐えていた藤花が、ついに顎を跳ね上げた。その直後、肛門付近から破裂音が響く。ぶぢいっという音。下痢に耐え切れなかった時のみ耳にするその音は、彼女の我慢の限界を示していた。
 そして、彼女は右手に握ったボタンを押し込む。彼女の鋼のプライドが、終わりのない地獄についに屈した瞬間だ。
 
 だが、映像内に変化はなかった。
 調教師達がレストランで食事をしているとすれば、フロア移動に多少の時間が掛かってもおかしくないが、それもせいぜい数分のことだろう。
 ところが、藤花が両脚をもじつかせていくら待っても、扉が開くことはない。足音さえしない。
『まだ、か……?』
 藤花は歯を食いしばりながら、またボタンを押し込んだ。だが、やはり何の変化もない。助けを求めると決めて何かの糸が切れたのか、藤花の腹の音はいよいよ悲惨なことになっていた。ぐぉるるる、きゅるるる、ごおうう……そんな、何匹もの動物が唸っているような音色だ。
『一体何をしてる!? 早く……早く、はやくっ!!』
 カチカチカチカチと耳障りな音が繰り返される。剣道で握力を鍛えた藤花の指が、何度もスイッチを押し込んでいる音だ。それでも、変化はない。
『どういうことだ……これは命綱だと、そう言っただろう!! 命綱なんだろう、これは、俺のッ!!!』
 藤花はスイッチを連打する。入口の方を見ながら、何度も、何度も。

 人間の心が一番脆くなるのは、闇の中にいる時じゃない。闇の中で、なお拠り所としていた光が、幻だったと気付いた瞬間だ。

『なんで ……なんで、だれ、も゛…………』
 藤花はそう呟き、目尻から涙を流す。
 ここから彼女は、緩やかに壊れはじめた。
『……ぅあっ、あがああ゛っ!!ひいぎぃああ゛うう゛ああっ!!!』
 見えない壁を蹴るように、膝を曲げて両足を暴れさせ。見えない敵に齧りつくように、頭を前後に振りながら歯を噛み合わせ。その果てに、とうとう全身が病的な痙攣をはじめる。脚の縄が断続的に軋み、煩いほどだ。
『も゛う無理だ!!出したい出したい出したいっ、出したくてたまらない! 誰でもいいから来てくれえ゛っ!!!』
 かろうじて言葉の体は為しているものの、短い単語を何度も繰り返すばかり。もはや言葉を選ぶ余裕すらないらしい。
 ぶびっ、ぶぶぶっ、という破裂音がまた響く。
『あああ゛、ああ゛……く、っうはあア゛ああ゛!!!』
 藤花は絶叫し、天を仰ぎ──そのまま、しばらく動きを止めた。カメラの角度的に見えづらいが、よくよく見れば、白目を剥いていることがわかる。防衛本能が働き、苦痛で脳が壊れないように失神させたんだろう。だがその休息すら、極限の便意によって妨げられる。
『ごぼっ!はっはあっ……うう゛っ、んぐうう゛う゛あっ!!!』
 噎せながら意識を取り戻し、悶え苦しむ藤花。その顔は、苦痛でか恐怖でか、壮絶に引き攣っている。
 ここで彼女は、武芸家としての最後の意地を見せた。
『ぃあアッ、せぇああっ!!イぃヤァアア゛ア゛ッ!!!!』
 剣道の試合さながらの掛け声を発しながら、両足を振り下ろす。日々の鍛錬で育まれた脚力は、足首の縄を激しく軋ませ、細く引き伸ばす。だが、膝の縄がどうにもならない。
 藤花は目的を達せないままに力を使い果たし、原始的な欲求に呑まれていく。
『はっ、はっ、は……っ!! だ、誰か助けてくれっ!! 出したいんだ、頼むから!!頼むからッ!!!』
 心も身体も消耗しきった藤花に出来るのは、恥も外聞も捨てて助けを求めることだけだ。その姿は、もはや一般の少女と変わりない。
 誇り高い少女が、その誇りをかなぐり捨てて希う。そこまでしてもなお、救いは与えられない。

『はあっ、はあーっ…ぐっ、んむうッ、ひぐっ!! んああ゛あ゛っ!!』
 藤花は、喘いだ。呻いたし、叫んだ。激しい痙攣の果てに白目を剥いて失神しては、苦痛で意識を取り戻す。
『ひいっ、ひっ……も、もう゛、ほんろ゛に゛、らめら゛……い、いしきが……たもて……ない…………』
 最後の方では口の端から泡まで噴き、ほぼ常に白目を剥いている状態になっていた。そんな中で藤花は、ついに限界を迎える。

『 うわぁぁあ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ーーーーっ!!!! 』

 モニターの音量が下げられているとは、到底信じがたいボリュームの絶叫。それが天を仰いだ藤花の喉から迸ると同時に、細い身体が跳ねるように浮いた。肛門が床から離れ、アナル栓が吹き飛んで、横に回転しながら壁にぶつかる。
 栓さえ抜ければ、もはや排泄を阻むものはない。
 ぶばっ、ぶばばっ。びちゃびちゃ、ぶばばっ、ぶびいいいっ。
 思わず耳を塞ぎたくなる音が、長々と響き渡る。その品のなさと長さこそ、藤花がよく耐えていた証だと思うと、やるせない気分になる。人間の死に物狂いの努力は、こんな形で虚仮にされるべきじゃない。
 だが、俺がいくらそう思おうと、映像内の価値観は変わらない。

『おーっす、どうだ調子は……って、くっせぇ!』
『うーわ、こいつ漏らしやがったな!!』
 決壊からさらに十数分遅れて、調教師達が戻ってくる。悪意に満ちた表情で。
 連中はわざとらしく鼻をつまみながら藤花に近づき、右手に握りしめられたスイッチを取り上げる。
『ったく。こうなる前に押せっつったろ、バカが』
 そう言って、半笑いのままスイッチの裏をスライドさせる。電池を入れる場所……そこには、あるべきはずのものがない。
『あ、悪い。コレ、電池入ってねぇわ!』
 男はそう言いながら笑みを浮かべた。項垂れたままの藤花が、ぴくりと動く。
『ははははっ、ひっでぇなお前!!』
 他の調教師達が笑い、スイッチを手にした男が頭を掻く。白々しい。わざと電池を入れなかったに決まっている。藤花を極限まで苦しめ、絶望させるために。
『まあ許せって、な?』
 男がそう言って、藤花の髪を掴み上げた。
『ぎゃはははっ、ひっでぇ顔!!』
 藤花の正面にいる男達が笑い転げる。
 確かに、彼女の顔は崩れていた。鼻水と涎が垂れ、口の端からは泡を噴いている。そして虚ろな二つの瞳からは、涙が零れつづけていた。
『あーあー、泣いちまいやがったか。ま、こんな状況なら泣けるわな』
 調教師達は嘲笑しながら、藤花の縄を解きにかかる。
『うおっ。おい見ろよ、この足首の縄。ほとんど千切れかかってんぜ?』
『マジだ……どんな力だよ』
『良かったなー、念のために膝も吊っといて』
 そんな会話の中、藤花の身体が床に下ろされる。
『さて、ケツはどんな具合かね』
 男達は藤花の片足を掴むと、大股を開かせて肛門を覗きこんだ。
 ここでカメラが拾い上げられ、藤花へと近づいていく。
 映像の中央に収められた藤花の肛門は、ダリアの花のように開ききっていた。
『うへへ、すげぇ……』
『ドナン浣腸の後のアナルってなぁ、何度見ても面白ぇよな』
『おう。このガバガバの穴が、つい一週間前までは桜色の蕾だったんだぜ? 信じらんねーよな』
『まったくだ。まぁそりゃともかく、色々と綺麗にしねえとな。おら、立てよ“クソッたれ”』
 同情の欠片もない言葉と共に、藤花は腕を掴まれ、強引に立ち上がらされる。
 縄痕の残る手首に、改めて手枷が嵌められた。手枷はさらに、天井の滑車の一つと鎖で結ばれる。つまり藤花は、両の手を頭上に掲げた格好を強制されたわけだ。

『さてと。こっちはこっちで、バキバキに硬くしとかねーとな』
 一人がそう言って、小さな箱を開いた。箱の中身は注射器だ。男はそれを手に取ると、ズボンを下ろし、躊躇なく逸物に針を突き刺した。奴の顔面には、瞼にも鼻にも唇にも、やたらとピアスが取り付けられている。あるいは刺す感覚の中毒なのかもしれない。
『うあー……キクわぁ』
 薬液を打ち込むほどに、ピアス男の表情は緩んでいく。そしてそれとは逆に、逸物は硬く屹立していた。奴の逸物は元々でかいが、それが一回り以上も膨れたようだ。
『コイツの出番も久々だな。ここんとこ、ドナンまで使う事なかったしよ』
 別の調教師が、役目を終えた注射器と交換で筒状のものを手渡す。筒の材質はシリコンらしく、表面には複雑な凹凸が見て取れる。
 ピアス男は、受け取ったそれを勃起した逸物へと嵌め込んだ。幹の部分がすっぽりと筒で覆われるように。なるほど、あれは逸物のサイズを補強するぺニスサックらしい。
『あいよ、もう一丁』
 また別の男が、もう一つのサックを手渡す。さっきよりも一回り大きいサイズだ。それもまた、そそり立つ逸物の外側へと嵌め込まれる。
 結果として造り上げられたのは、空き缶サイズの直径を誇る極太だ。最大径こそロドニーという黒人に劣るものの、こっちは根元から先端までが満遍なく太い。長さも以前の動画に出てきた3号バイブを上回っていて、直腸奥まで届くのは確実だ。しかもその表面は、二つのカバーの突起が合わさって、ゴーヤのような複雑な凹凸を形成している。
『う……っ!!!』
 禍々しい巨根を目の当たりにし、藤花の顔が凍りつく。
『スゲェだろ。ドナンで緩みきったケツに、普通のもん突っ込んでも話になんねーがよ、この特製チンポブラシなら大丈夫だ。穴の奥の奥まで、キッチリ掃除してやるぜ』
 ピアス男は、規格外の逸物を揺らしながら、ゆっくりと藤花の後ろに回る。
『や、やめろ……』
 藤花は背後を取られまいと身を捩るが、周りの調教師がそれを良しとするはずもない。
『おら、じっとしてろ』
 そう言って腕を掴まれるだけで、藤花の自由は奪われる。
『そう怖がんなって。天国へ逝かせてやっからよ』
 ピアス男がついに藤花の背後につき、腰を掴む。空き缶サイズの極太が尻肉に宛がわれ、押し込まれていく。普通なら絶対に入らないだろう。だがドナンで開ききった藤花の肛門は、その無茶なサイズをも受け入れてしまう。
『んん……くっ!!』
 藤花は眉根を寄せるが、痛みというより屈辱の表情という感じだ。
『いつ見てもすげぇな。あんなサイズが入っちまうなんてよ』
『全くだ。AVでもそうは拝めねぇぜ』
 他の調教師達は、腕を組んでハードな挿入を見届けている。
 そして、二重のサックに覆われた極太はすっかり腸内に入り込んだ。
『よーし、入ったな。じゃ、動くぜ?』
 ピアス男が笑みを浮かべ、ゆっくりと動きはじめる。ドナン浣腸でドロドロに蕩けた、直腸の中を。

 たしか、立ちバックと言ったか。互いに直立したままの後背位で、肉がぶつかりあっている。カメラは、それを真横からのアングルで撮影していた。正直、この撮影者はよくわかっていると思う。藤花のように無駄なく引き締まった身体は、横からの見栄えが抜群にいいんだ。
 ほぼ垂直に床を踏みしめる美脚。結合部である腰と手首の鎖を支えに、弓なりになった上半身。その柔軟に反った鋭利な姿は、日本刀そのものを思わせる。
 ただし、いやらしさがないわけじゃない。刀身のような上半身の中ほどでは、豊かな乳房が派手に揺れている。その揺れ具合こそ、突き込みの激しさの指標だ。
 ピアス男に遠慮というものはなかった。後ろから両手を回して、藤花の恥骨辺りをがっしりと掴んだまま、ゴーヤのような怒張を抜いては突き込む。どぱんっ、どぱんっ、という肉のぶつかる音といい、無駄肉のない藤花の尻が波打っている事といい、相当な強さで腰をぶつけているのは明らかだ。
 藤花は、両足を肩幅に開いて踏みとどまり、じっとそれに耐えているようだった。ただ、最初の頃の、触れれば切れるような覇気は感じられない。
『はぁっ、はぁっ……。はぁっ……はぁーっ…………』
 息は荒く、顔は項垂れたまま。だいぶ参っている様子だ。
 ピアス男は、そんな藤花の肛門を激しく犯しながら、恥骨に宛がった手を上に滑らせる。つまり、下腹を押さえる形だ。
『なんだよ、全部出てねぇのか? 腹ァ膨れてんじゃねぇか』
 奴はそう言った。映像で見る限り、藤花の腰回りはダンサーと見紛うほどにくびれていて、腹が膨れている様子など微塵もない。だが、真相がわかるのは藤花本人と、肌で触れ合っているピアス男のみ。そして藤花は、今もグルグルと不穏な音をさせている下腹を見ながら、思うところがあるようだった。
『しっかりケツ締めとけよ。アナルファック中にダラダラ漏らしやがったら、タダじゃおかねぇぞ』
 ピアス男はそう言って藤花の尻を叩き、腰を振りたくる。その勢いで前後に揺られながら、藤花も体勢を変えた。肩幅に開いていた脚をさらに広げ、膝を曲げて腰を落とす。さらには両の足親指で床を噛む。いかにも古武術的な、『耐える』構え。
 綺麗だ。筋肉のカットに思わず見惚れてしまう。日々鍛錬を積み重ねてきたゆえの筋肉美と、彫刻のような機能美、そして女体としての純粋な魅力。それらが渾然一体となって、究極とも思える美を形作っている。そう感じるのは俺だけじゃないらしく、隣でモニターに見入っている連中も、腰を落とした藤花の脚を凝視している。
 だが、価値観は千差万別。少なくとも映像の中のピアス男は、藤花の美に目もくれない。奴の狙いはただ、アナルレイプの中で藤花に恥を掻かせることだけだ。
『おい。クソ漏らすなっつってんだろうが』
 ピアス男は、ドスを利かせた声で藤花に囁きかける。藤花の頭がピクリと反応した。
『も、漏らしてなど、いない……』
『嘘つけよ。さっきから俺の太股に、ヌルヌル流れてきてんじゃねぇか。これがクソじゃなきゃなんだ? 腸液か? もし腸液ならお前、それこそケツで感じてるって証拠じゃねぇか』
『ち、違う! 不浄の穴でなど感じるかっ!!』
『ほう、そうかい。じゃ、もう一度チャンスをやるよ。ケツの穴グウッと引き締めて、この生ぬりぃクソ汁を止めてみろや』
 パンパンという小気味いい音を背景に、そんな会話が交わされる。

『……はっ。ピアス君もいい性格してんぜ。一度ドナン浣腸でぐっぱり開いちまったケツを、そうすぐに締められっかよ』
『どんだけ筋肉ある女でも、垂れ流しになっちまうからな。だが、ケツを締めようとさせんのはいい作戦だぜ。実際にゃ締まらねぇにしても、ケツに意識向けて、まだ痺れてねぇ子宮周りの筋肉緊張させりゃあ、アナル性感がグングン高まっちまう』
『そういや、アナル狂いになった女共も言ってたな。ドナンで直腸やら結腸溶かされる感覚はヤベエって。そのアクメの味知ったら最後、普通のセックスなんぞじゃ刺激が足んねぇんだと』
『ああ、そりゃ俺も聞いたな。特にああいう、クソ真面目で融通の利かねぇ女ほど、アブノーマルから抜け出せなくなるんだ』

 かろうじてマイクに拾われる声量で、調教師達が囁き合っている。アナルセックスの音に邪魔され、藤花には届かない会話。生真面目な藤花は、乗せられたレールの行方も知らぬままに走り続ける。
 腰を落としても肛門を閉じられないからか、藤花の脚はまた閉じあわされた。ただし、今度は両脚を伸ばしているわけじゃない。左足が爪先立ちになり、かすかに膝を曲げている。クリトリスで絶頂する時も、藤花はああして爪先立ちになっていた。絶頂を堪えようとして、床を噛んでいるのか。それとも絶頂に耐え切れないから足裏が浮くのか。その因果関係は定かでないが、行きつく先は同じだ。
『はぁっはぁーっ、はぁっ……あ、あ…ああ! はあ、あっ…あっ……!!』
 最初は、途切れがちな呼吸なのかと思った。だが時が経つごとにはっきりしていく。
 藤花は、喘いでいた。あっ、あっ、と。激しく肛門を犯されながら、艶かしく爪先立ちの脚を蠢かしながら。
『だいぶ、良くなってきたらしいな』
『ッ!?』
 ピアス男の囁きに、藤花がはっとした様子で顔を上げる。遅まきながら、自分が浸っていた事実に気がついたんだろう。
『ふざ、けるな……!』
『何もふざけちゃいねぇよ。俺がどんだけ女のケツ犯してきたと思う。わかんだよ。こうやって腸の奥まで、グリグリやってりゃ。それによぉ』
 ピアス男はそう言って、藤花の足の合間に指を差し入れる。
『んっ!?』
 ぐちゅりと音がした瞬間、藤花が発したのは、女の声だった。いつものハスキーボイスと同じ喉から出た声とは思えない。
『ほら見ろ、マンコがグチョグチョじゃねぇか』
 ピアス男の指が割れ目から抜かれ、藤花の目の前で開く。指の合間には、ねっとりとした糸が引いた。
『この状況で、どう屁理屈を捏ねるんだ? こんなネバネバの本気汁出しといて、まさか防衛本能とか抜かすつもりじゃねぇよな。なにせ、テメェのマンコにゃ何も入ったことがねぇ。昨日も今日も、後ろしか使われてねぇんだからよ!!』
 耳元で叫ばれる理論に、藤花の目が泳ぐ。初めて見る反応だ。相手を睨めない時はあっても、藤花の視線は常にどこか一点を見つめていた。まっすぐ前だけを見ている感じだった。それが今は、揺れている。自分を見失っているかのように。
 そして、そんな弱った気配を、サディストが見逃す筈もない。
『乳首も、コリコリに固くしやがって。よくこれで誤魔化せると思ったもんだぜ』
 愛液を塗りつけるように、ピアス男の手が乳房を包む。
『ふんん……っ!!』
 二つの指の腹で先端部分を扱かれれば、藤花からは本当に気持ちの良さそうな声が漏れた。ピアス男の口元が吊り上がる。
『チンポに響くいい声だ。好きだぜそういうの』
『くっ!黙れ……黙れえっ!!!』
『いいや、まだまだ言い足りねぇな。ここまで来て感じてねぇとか、白々しいウソ抜かすバカにゃよ。だいたいテメェ、もうドナン浣腸の効果なんざとうに切れてんのに、ケツがぐっぱり開きっぱなしじゃねえか』
『そ、それは……お前が後ろでしてるからだろうっ!』
『にしてもだ。普通はいい加減狭まってくるもんだぜ。お前みたいに武道やってる奴は、8の字筋が鍛えられてっから、余計に戻りは早ぇもんだ。実はケツでされんのがきんもちよくてよぉ、テメェの意思で括約筋トロかしてんだろ?』
 ここが決め時だとばかりに、畳み掛ける。言葉の真偽は判らない。ドナンの効果がどれだけ持続するかなど、普通に生活を送っていれば知る機会はない。だからこそ、その言葉を否定しきるのは難しかった。特に心が揺らいでいる人間は、自分を疑いがちだ。ありえない理論でも、自信満々に言い切られれば、それが真実だと思えてしまう。

『違うっ!! 俺は、俺はおかしくなんか、ないっ!!!』

 藤花は目を泳がせながら、不安定な声色で叫ぶ。そして曲げた左足で右足の甲を踏みつけはじめた。まるで幻惑の中、ナイフで身を傷つけて正気を保とうとするように。
『くひひっ。どうした、刺激が足んねぇか変態女? なら協力すんぜ!!』
 ピアス男はそう言って、弄くりまわしていた乳首を捻り上げる。乳房全体が変形するほどの強さで。
『んぐうううっ!!!』
 藤花は天を仰いで呻いた。彼女の過去映像を見た人間なら誰でも、それが彼女の限界を示す仕草なんだとわかる。クリトリスとアナルの同時責めで深く絶頂した時も、ドナン浣腸で決壊した時も、そうだった。
 右足への踏み付けが止まる。左足の裏が床につき、身体全体が芯を失ったように傾ぐ。その結果、彼女の震える脚が選択したのは、内股だった。いつもどっしりと地を踏みしめる彼女らしくもない、女の子の立ち方。
 『大和男児』の首が、切り落とされた瞬間だ。
「ひひひっ、可愛くなっちまって。ケツん中も締まってきたなあ。俺のチンポブラシに、粘膜が甘えてきてんぜ?』
 ピアス男は上機嫌で藤花の恥骨を抱え直し、腰の振りを再開する。しかも今度は、自分が腰を打ちつけるだけじゃない。地に根ざすことのなくなった下半身を、自分の方へ引き寄せもしつつの双方向ピストンだ。となれば当然、腸奥を貫く衝撃も倍になる。今の藤花に、それを撥ね退ける気力はない。
『ああっ、あはぁああ……あっ、あっ、あっ……!!』
 はっきりとした喘ぎを漏らしながら、されるがままに腰を揺らす藤花。
 もはや日本刀どころか、風にそよぐ柳も同然だ。その変わり果てた姿をしばらく捉えてから、モニター画面は黒に染まった。


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 暗転したモニター画面を前に、立ち尽くす。
『絶叫が続く動画につき、他のモニターよりも音量を下げております』
 そのテプラが目に入った。
 なるほど、調整は必要だ。クリトリスで絶頂していた動画でも叫びは凄かったが、この動画には及ばない。声の大きさも、その悲惨さも。出来ることなら、いっそ音声などなくして欲しかった。憧れすら抱いた『男児』の崩壊を、生々しく知ってしまうぐらいなら。

 だが果たして、本当に彼女はもう駄目なんだろうか。
 3つの頃から稽古に明け暮れてきたという彼女は、芯が強いに違いない。雨が降ろうが風が吹こうが、そう易々と心が折れたりはしないはずだ。
 俺はそう願いながら、最後のエリア……『8日目』へと足を踏み入れる。黒山の人だかりと、その連中の顔に浮かぶ薄笑いに、嫌な感じを受けながら。


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 映像は、女の肛門のアップから始まった。
 慎ましかった桜色の蕾は、もうその面影もない。プレイ前らしき今も、指の2本ぐらいなら難なく入りそうな隙間が空いている。菊の輪のひとつひとつも紅色に膨らみ、若干とはいえ外にめくれている。
『すげぇな。もうアナルマニアの貫禄だぜ』
 前の動画で散々耳にした声が茶化す。
 カメラが少し引かれ、撮影場所の背景が映り込んだ。もはや半ば藤花の専用室と化している、ガラス張りのバスルームだ。周囲にはいつも通り、客の姿もある。
 ただ、いつもと違う事がひとつ。藤花が、拘束されていない。
 これまでは藤花がどれだけフラフラになっていても、しつこいぐらいに縄や手枷足枷が取り付けられていた。前の動画では2回も縛り直された。
 とはいえ、それ自体は仕方のないことだ。怒りに任せて暴れ、フロア中を混乱の渦に巻き込んだ前科がある以上、行動を制限するのは当然。だからこそ、そんな猛獣にも等しい藤花が拘束されていないのは異常だ。映像を見る限り、バスルームの中には彼女とピアス男の2人しかいないのに。
 ではなぜ、拘束されないのか。決まっている。その必要がないと判断されたからだ。もはや藤花は脅威ではない。大立ち回りを演じる気概はない。その烙印を押されたということだ。
 俺には、それがまたショックだった。

『んじゃ、始めっか。テメェの大好きなドナンをよ』
 ピアス男がそう宣言し、洗面器を引き寄せる。ガラスの外で客が沸き立った。
『大好きな訳……ないだろう』
 ぼそりと、そう呟く声がする。俺は最初、それが藤花のものだと思えなかった。ギャラリーの誰かの声が入っているんだと思った。いつも堂々と己の信念を訴えていた彼女のイメージとは、あまりに違いすぎたから。
『ほう。テメェ昨夜の問答を、また蒸し返す気かよ? かーっ、恩を仇で返された気分だぜ。二回目のドナンファックでガチ泣きしてっから、特別にアナル舐めで勘弁してやったってのによぉ!』
『…………ッ!!!』
 冷ややかな声で発された一言に、藤花の体が強張る。
 どうやら昨日の映像には、非公開の続きがあったようだ。これまでの映像でカットされていた場面を考えると、ピアス男の言うように“アナル舐め”だけで済んだのかは疑わしい。男の肛門に舌を這わせ、その先があったんじゃないか。そしてその結果、藤花に『もはや脅威足りえない』という烙印が押されたんじゃないか。つい、そんな風に考えてしまう。
『まあいい。なら、今日で中毒にしてやるよ。改めてな』
 ピアス男は、ガラスの浣腸器でドナン液を吸い上げ、無遠慮に藤花の腸内へと注ぎ込む。今回もそれが2回繰り返された。さすがに3回目はない。昨日の映像を見る限り、そんな事をしたら多分、藤花の肛門は使い物にならなくなるだろう。今彼女に注がれたのは、それほどの劇薬だ。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……』
 藤花は這う格好のまま、深めの呼吸を繰り返していた。緊張した感じではあるが、まだまだ規則正しい息遣い。だが、それも今だけだ。
『さ、栓するぞ』
 ピアス男は浣腸器を戻し、また別の道具を手に取った。小さな風船にチューブと握りのついたもの。
『こいつはアナルバルーンっつってな、腸の中で膨らむんだ。シンプルだが使い勝手のいいストッパーだぜ。これから何度も使われるだろうから、よく慣れとけ』
 ピアス男の手が、風船部分を肛門の中へ押し込んだ。そしてポンプ部分を何度も握り込む。
『うあ……っ!?』
『すげぇだろ。身体の内側から粘膜を圧迫されると、脳が全力で危険信号を鳴らすんだよな。ま、気にすんな。ひり出せないレベルまでは膨らませるがよ』
 ピアス男は笑いながら、何度も何度もポンプを握り込む。シュッ、シュッ、と音がし、藤花の尻が震える。あるいはその震えは、すでにドナンの効果が出ているせいかもしれない。なにしろ彼女の肛門からは、バルーンによる栓が間に合わなかった汚液が、早くもあふれ出しているんだから。
 
 この日も藤花は、たっぷりとドナンを我慢させられた。
 昨日とは趣向が違うが、陰湿さでは大差がない。
『はーっ、はーっ、はーーっ、はぁーーっ……!!』
 重苦しい呼吸を繰り返す藤花に対し、ピアス男は嫌がらせを繰り返す。例えば、バルーンをさらに膨らませたり。あるいは逆に少しだけ空気を抜き、中途半端に汚液を噴き出させたり。
 さらには極細かつ凹凸のあるステンレス棒を、尿道に出し入れさえする。客が興奮気味に尿道ブジーと呼んでいたこの責め具は、かなり刺激が強いらしい。
『や、やめろ……垂れ流しに、なる…………』
 尿道にブジーが挿入されはじめたとき、藤花はぜぇぜぇと肩で息をしながら、初めて後ろを振り返った。だがピアス男の指は止まらない。
『ああそうかよ。これも昨日の問答の繰り返しになるが、ションベンの穴拡げられんのとクリにピアス嵌められんの、どっちがいいんだ? 俺は横に貫通させるピアスがオススメなんだがよ』
 そう問われれば、藤花は悔しそうに尿道と答えるしかない。どっちも不可逆な責めには違いないが、ピアスという証を刻まれるのは流石に避けたいんだろう。

 ピアス男は、ゆっくりと尿道ブジーを前後させながら、そのうちクリトリスにも手を出しはじめた。奴によると、尿道の奥は薄皮一枚を隔ててクリトリスの根元と接している。だから尿道を開発する事で、自然とクリトリスの感度も上がっていく……らしい。
 事実、尿道にブジーを抜き差しされながら、オイルを塗されたクリを扱かれる中で、藤花は何度も絶頂していたようだ。
 最初こそ必死に耐えていたが、そのうち自分の左腕を噛んで声を殺しながら、いぐいぐいぐ、と呻くようになった。元々隠しごとが得意なタイプには見えない。それで意地さえ張り通せなくなれば、自然と解りやすい反応になるんだろう。

 問題は、これらの嫌がらせが、ドナン浣腸と平行で行われていることだ。
 あまりに強すぎる便意で、痙攣し、失神し、白目を剥き、泡を噴く、最強最悪の浣腸。それに悶絶しているところに、尿道やクリトリスからも無視できない苦しさや快楽が発せられる。苦痛と快感の板挟みになり、狂いそうになることだろう。
 実際、藤花も苦しみ抜いていた。
 犬の交尾と揶揄されるほど、下痢の音を響かせる腹部を上下させたり。
 歯を食いしばって天を仰いだかと思えば、俯いて何かの液体をタイルに垂らしたり。
 藤花の後方に位置するカメラには、その表情は映らない。だがガラス越しに見物している客の表情から、悲惨な状況らしいという推測はできる。
『昨日の映像よりひどい』
『若い女のする顔じゃない』
『目隠ししてやった福笑いのようだ』
 そんな言葉も聞き取れる。あの凛とした美貌が、どれだけ崩れれば福笑いなどと形容されるんだろう。初日の時点では、調教対象の6人の中で、最もそれから遠い存在だったはずなのに。

『もう……許してくれ。ほんとうに、意識が、保てない……』
 腹から異音を轟かせつつ、藤花がとうとう音を上げた。するとピアス男は、その言葉を待っていたとばかりにクリトリスから手を離す。腕にかかった黄色い液を振り落としながら。
『そうか。ま、俺ァいいけどよ。問題は、お客が許してくれるかだな』
 ピアス男は藤花の腕を取って立ち上がらせ、痙攣で足元のおぼつかない彼女を、バスルームの壁……つまりガラスの前に立たせる。
『お、何だ何だ?』
『おほほっ、そんな近くで見せてくれんのかよ!?』
 客達はそれを見て、一斉に藤花の対面へと集まりはじめた。
『……いや……普通にさせてくれれば、いいんだが……』
 藤花は凍えるように震えながら、手で胸とあそこを覆う。これも意外な反応だった。ほんの2日前までの彼女なら、手で隠すのではなく、「見ると殺す」という眼光で客の目を逸らさせていたはずだ。
 その彼女らしくない仕草を、ピアス男が荒々しく払いのける。
『したけりゃ、お客さんにお願いするんだ。「私の汚いウンチを見てください」ってよ』
 ピアス男がそう言うと、藤花の眉が動いた。怒りとも困惑ともつかない角度だ。逆に客の方からは拍手と歓声が起きる。
『そ、そんなこと……』
『言わねぇってんなら、栓は外さねぇ。昨日みてぇに栓をぶっ飛ばすまで我慢しろ。ただ、気ぃつけろよ? 昨日は滑りのいいアナルプラグだったから上手く抜けたが、今日は摩擦の強ぇゴム風船、しかも限界まで膨らませたやつだ。んなもん無理矢理ひり出したら、ケツが裂けてもおかしかねぇぜ』
 渋る藤花に対し、ピアス男は淡々と答える。威圧的でないだけに、その言葉には妙な真実味があった。だからこそ、藤花は迷う。何分も葛藤する。
 だが結局、生理的な欲求に抗いつづけるのは無理だ。下腹から凄まじい音がなり、肛門から破裂音がし、バルーン栓を越えた汚液が太股を伝いだした頃。
『…………しの……ない……を、……てくだ……ぃ…………』
 藤花は俯いたまま、何かを呟いた。宣誓の言葉らしいが、いかんせん声が小さすぎる。
『ああ? 聴こえねーよ。もっとデケェ声出せや、俺らに啖呵切ってた時みてぇによ!』
 ピアス男が苛立ちを見せ、客も口々に再宣誓を求める。
 藤花は、唇を噛み、手を握りしめた。そして腹の音に急かされたように、再び口を空ける。

『 わたしの汚いウンチを、見てくださいっ!!!! 』

 涙を零しながら、藤花は叫ぶ。剣道の気合の声より、もっと大きいかもしれない。それは映像内で音割れを起こすほどで、ピアス男も客達も、全員が耳を押さえている。
『うおっ……お前、バカか!? デケェ声っつったけど、限度ってモンがあんだろうが! どんだけ融通利かねぇんだよ』
 ピアス男は呆れた様子で、アナルバルーンの解放ボタンを押す。ブシュウッと空気の抜ける音がし、直後。
『あ……くあああああ゛ぁ゛ぁ゛!!!』
 藤花の悲痛な叫びと共に、決壊が始まった。ガラス盤に薬液を叩きつける形だから、外にいる客には開ききった肛門から太股の痙攣具合まで、すべてが見えていることだろう。


 そして、責めはこれで終わりじゃない。
 この日の藤花は、排泄の直後、客に肛門を晒すことを強いられた。
 まだ太股が痙攣したままの状態で、客の方へ尻を突き出し、自らの両手で尻肉を割りひらく。その屈辱は相当なものだろう。
 散々見世物になり、口汚い言葉を浴びせられても、まだ終わりじゃない。
『よし。今日ここに来てるダンナ方には、特別サービスだ。上のディープスロートフロア解禁って誘惑にも負けねぇ、生粋のアナルマニアだしな』
 ピアス男はそう言って、巨大なディルドーを取り出した。ただし、一般的のディルドーとは2つ違うことがある。
 一つは、そのディルドーがスケルトン……つまり透明な素材でできていること。
 そしてもう一つは、底に巨大な吸盤がついていることだ。
 奴はその吸盤を、バスルームのガラスに吸着させた。吸盤はかなり強いのか、ディルドーの自重にも負ける気配がない。吸盤も含めてすべての素材が透明だから、バイブ越しにも向こうの景色が見える。そしてその高さは、藤花の腰丈よりやや下だ。
『さて、準備完了だ。この後どうするか判るよな?』
 ピアス男に問われ、藤花は奥歯を軋ませた。

 こうして藤花は、より一層の恥辱を味わうことになった。
 中腰の姿勢のまま、ガラスに尻を押し付ける形でディルドーを迎え入れる。ガラス向こうの客に、腸の奥までを晒しながら。
 客はもう大騒ぎだった。ガラスに張り付けるポジションを醜く奪い合いながら、興奮気味に何かを叫んでいる。俺はそこに混じりたいとは思わないが、興奮の理由はよくわかった。
 まず何といっても藤花はスタイルがいい。ダンサーやスポーツインストラクター系の健康美人だが、同時に胸も大きいとなれば、男の視線を集めるのも当然だ。あるいは俺のように、凛とした雰囲気に魅力を感じる人間もいるだろう。猛獣が牙を抜かれていくのを面白がる人間もいるだろうし、その猛獣に逆鱗に触れて怪我を負い、逆恨みしている人間もいるようだ。
 ともかく、少なくない人間が、藤花に興味を抱いているのは事実だ。
『んっ、く……ふん、んん……ん゛っ!!』
 藤花はディルドーに腰を打ちつけながら、つらそうに呻いていた。

『気持ち良さそうな呻きだ。やはりドナン浣腸の後だと、腸が敏感になっているらしい』
『羞恥もあるでしょうね。何しろ、腸の奥まで覗かれてるんですから』
『しかも自分で腰を振る、公然アナニーだぜ。俺なら途中で、何やってるんだろうって情けなくなるわ』
『まだドナンの残り汁が噴き出してますしね。この大人数の前で下痢便を噴き出しながらディルドー遊びだなんて、私にはちょっと……』

 客は口々に感想を漏らし、悪意ある笑みを浮かべる。そしてその悪意が、藤花への恥辱責めをさらにエスカレートさせていった。
『ほら、新品だぜ』
 ピアス男が、藤花に竹刀を手渡す。藤花は、この時ばかりはさすがに眼光の鋭さを取り戻した。だがピアス男がじっと眼を覗き込むと、眼を見開いて視線をそらす。どうやら、調教師との上下関係は完全に刷り込まれてしまっているようだ。
 今までどおり中腰でディルドーを咥え込んだまま、竹刀でビーチボールを割ること。それが藤花の新しい課題だ。
 中腰でアナルを抉られる状態では、充分な力は発揮できない。結果、いかに藤花といえど、なかなかビーチボールを割ることはできなかった。
 ぱすっ、と情けない音で竹刀が振り下ろされるたび、客からは野次が飛ぶ。
 肛門でよがってるからそのザマなんだ。
 剣術道場の娘として恥ずかしくないのか。
 剣道の全国大会優勝など疑わしい、その歳で色仕掛けでもやったのか。
 そんな、プライドを踏みにじるような野次だ。
『く、く……っふ、くうう゛っ……うああァッ!きぃええエッ!!』
 藤花は、顔を真っ赤にし、悔し涙を流しながら竹刀を振るいつづける。だがそうして感情を乱せば、ドナンに荒らされた肛門にも余計な力が入ってしまう。結果、彼女は必死になればなるほどに恥を晒すことになった。
 ディルドーの出入りする肛門から、みっともない音で放屁を繰り返したり。凄まじいがに股を晒したり。
 そして、最悪なのは終盤だ。何度叩いてもビーチボールを割れない藤花は、腰を据えての一打を放とうと思ったんだろう。あえてディルドーを根元まで咥えこみ、尻肉をガラスに宛がった状態のまま、ぐっと重心を定めた。するとまさにその瞬間、ディルドーが結腸の入口を抉ったらしい。
 ──ドナンで直腸やら結腸溶かされる感覚はヤベエ
 前の動画で、調教師が言っていた言葉を思い出す。
 ほんの一瞬の偶然で、藤花は深い絶頂に呑まれてしまった。

『んあ゛お゛っ!?』

 虚を突かれたような声がし、藤花の背中が仰け反った。そして割れ目の辺りから飛沫が吹き、手から竹刀が滑り落ちていく。
『おお、なんだなんだ!?』
『潮噴いたのか!?』
『アナル……つか、結腸アクメ!?』
『うわ、すげぇ足ケイレンしてるよ。がに股で……』
 客がそう騒ぎ立てる中、藤花はなおも結腸の入口を串刺しにされたまま、絶頂の余韻に浸るしかなかった。背後のガラスに後頭部を預け、頬に沿って涙を零しながら。
 

 そうして散々に恥を晒した後は、公衆の面前でのアナルファックが始まる。昨日と同じくピアス男が2重にペニスサックを着け、ゴーヤのような怒張を作っての肛門凌辱だ。
 直前に結腸で達しているからか、それとも心が弱っているからか。雑にタオルを敷かれたタイル床に這う格好を取らされた時点で、すでに藤花は弱々しく見えた。体を支える手足に力は感じられず、切れ長な瞳は水平にまで下がっている。
 それでも、完全に矜持を無くした訳でもないらしい。カメラが顔をアップで撮れば、口元を引き締めてレンズを見据える。背後でピアス男が巨根で尻肉に『挨拶』すれば、肘を狭めて顎を引く。まるで竹刀を構えるように。
『……っ!!!』
 極太が狙いを定め、尻肉に割り入った時でさえ、一瞬口を開いただけで声は上がらなかった。

 ただ、気持ちがいいのは確からしい。カメラが藤花の頭側から結合部を映す中、ゴーヤのような逸物が出入りするたびに、映像下部で背中と尻肉が引き締まる。
『……んひぃっ……ぐ、ぐひぃっ……!! ……う、んっあ、あ……っ!!!』
 そんな小さな呻きも録音されている。
『バカみてーに我慢強いお前でも、さすがに声が抑えらんねぇか。ドナンは肛門から結腸まで、満遍なくトロかすからな。しかも刺激が強ぇだけに、やればやるほどハマっちまう。言ってみりゃケツでのキメセクよ』
 ピアス男はそう囁きつつ、藤花の脚の付け根をがっしり掴んで腰を打ち込んでいく。藤花の肛門は、ドナンのせいで開ききっているんだろう、極太が滑らかに出入りする。カメラはその結合部を中央に捉えたまま、男の胸板と藤花の肩甲骨までが入る程度の俯瞰で撮影を続けていた。
 派手さはない。でも、それだけに生々しい。
 パンパンという肉のぶつかる音よりも、呼吸音の方が大きく聴こえた。男はさすがプロという感じで、全く同じリズムでの呼気と吸気を繰り返す。逆に藤花の息は明らかに乱れていた。マラソンで息が上がった時のような息だ。
『体力自慢の剣道娘も、さすがに息が上がってきたな』
『ええ。泣いているようにも聴こえますな』
『無理もないでしょう。何しろ、あんなデカいものを出し入れされてるんですからね。苦しくてキモチよくて、堪らないはずですよ』
『単純に肺が潰されているというのもあるかもしれませんね。体格がいいとは言っても、まだ身体の出来上がっていない娘っ子ですから』
 バスルームを囲む観客のものだろう、色々な声色が映像に入り込んでいる。その中でピアス男は、淡々とした力強いアナルセックスを繰り返す。アナル性感を徹底的に目覚めさせようとでも言うように。
 ぐちゅぐちゅと音が鳴るたびに腰が浮き、荒い息が漏れる。それが何十度も続く。
『そら、また深ぁくいくぜ?』
 脚の付け根に掌をめり込ませながら、ピアス男がぐうっと腰を突き入れた。
『んぐうう゛っ……!!』
 藤花から呻きが上がり、画面端で太股が引き締まる。
『へっ、直腸の奥がにゅるにゅる動きやがる。それともこりゃ、ドナンで蕩けた子宮の動きか? サックを二枚も被せてっと幹の感覚はねーが、そのぶん先っちょは敏感になるんだよな。せっかくのドナンファックだ、お前もたっぷり粘膜の快感に浸れよ? つっても、言うまでもなく感じてるみてぇだがな』
 ピアス男はそう囁きながら、円を描くように腰を回す。たぶん直腸奥の粘膜ごしに子宮を押し上げているんだろう。
『んん、あ、あ゛!! や、やめッ……!!』
 藤花の肩甲骨が狭まり、背中の中心に深い溝が浮く。アナル舐めの時、無意識に示していた反応とそっくりだ。ただし、今の藤花には意識がある。にもかかわらず、反応を止められない。
 ピアス男の顔はカメラに収まっていないが、それでも笑っているのがわかった。奴は一番の奥まで挿入したまま、グリグリと腰を押しつけはじめた。妙な動きだ。それが何をしているのかは、すぐにわかる。
『くあ゛!? そこは……っ!!!』
 藤花が悲鳴を上げ、腰を左右に捩りはじめる。だが、男の腕力から逃げるのは不可能だ。
『ああ、結腸だよ。チンポじゃ入口くすぐる位が限界だが、ドナンで敏感になってる今は効くだろ? さっきもディルドーがここ入って、すげぇ声でイってやがったからな』
 ピアス男は駄目押しとばかりに腰を押し付けてから、またピストンを再開する。パンパンと肉のぶつかる音と、ぐちゅぐちゅという水気の多い攪拌音がバスルームに響き渡る。
『…………ふッ!!! …………んんん゛ッッ!!!!!』
 藤花は、声を押し殺してそれに耐えているようだった。
『頑張んなって。こっちは昨日、散々ケツでやってんだぜ。お前の弱ぇトコぐらい、全部わかってんだよ』
 その言葉通り、ピアス男の腰遣いに澱みはない。確実に何らかの狙いを持って、力強く腰を打ちつけていく。そして、その狙いは確実に成果を出していった。
『ああ……あっ、あ!! んん゛……うんん゛……っ!!!』
 艶かしい声が漏れては途切れ、また漏れる。カメラが少し引くと、這う格好で歯を食いしばる藤花の姿が映り込んだ。まさに必死だ。
 男が腰を打ち込むたび、よく鍛えられた肉体が縮こまる。首から肩にかけての筋肉の凹凸は凄まじいが、床のタオルを握りしめる腕は女の子そのものだ。皺の寄る眉根は、限界まで緊張する中で、ある瞬間ふっとリラックスする。だがすぐにそれを拒絶するように、また眉を顰める。その繰り返しだ。
 外から見える部分だけでも、藤花の限界が近いのは明らかだった。
 そして何度も映像で見た通り、セックスでの内的な変化は、外から見える部分よりもずっと激しい。ピアス男が一旦逸物を引き抜くと、それをまた実感させられた。
『つか、マン汁多すぎだろ。俺のシモの毛が全部濡れちまった』
 その言葉で、カメラが斜めに位置を変える。雫の滴る男の股間と、藤花の脚の間が映り込むように。
『マンコがどうなってるか、撮っといてやるよ。後で自分でも見られるようにな』
 ピアス男が背後のスマホを拾い上げ、動画モードの起動音が響く。

 一瞬の暗転を挟んで、映像が切り替わった。

 アングルは、結合部を真下から捉えたものになっている。スマホを藤花の腰の下に置いてるんだろう。
 アップで映し出されるのは、尻肉に出入りする空き缶並みの逸物。凄まじい大きさだ。それが難なく抜き差しされるなど、異常としか言いようがない。そしてその“異常”が何十分も繰り返されれば、何かが軋んで当たり前だ。
『……っと、位置が悪ぃな』
 ピアス男の声がし、カメラの位置が移動する。抜き差しされている部分の少し下、割れ目が大写しになるように。
 まさに、藤花が壊れつつあることを象徴するような光景だった。肛門に逸物が出入りするたび、割れ目から雫が滴り落ちてくるんだから。
『あ、あ……あぁぁ゛、ぁあぁ……ああ゛っ!!!』
 藤花は、もう喘ぎ声を抑えきれていない。歯を食いしばる余裕すら失くしたらしく、腰の揺れに合わせて艶かしい喘ぎを漏らしつづけている。
『イイ声が出てんなオイ、可愛いぜ“オトコ女”。……っと、この呼び方ももう違ぇか。お前はもう、オトコ女ですらねぇ。ケツだけで濡れちまう、ただのメスだ』
 ピアス男が、洗脳するように囁く。
 メス。極限下で耳にしたその言葉が、誇り高い藤花の支えをへし折ったのか。
『くかっ、あ、ああああぁ……!! ゆ、ゆるして、くれ……陸兄ぃ……篤志、勇、聡太、俊春…………父さん…………!!!』
 藤花は切ない呻きの後、家族らしき相手への謝罪を始めた。そうして懺悔を済ませた後、彼女はいよいよ深みに嵌まりはじめる。

『あっ、あっ、ひっ、あああぁっ……!! はぁっ、はぁっ……んああああっ、ひっあああっ、はああ、はあっ、ひっ、ああっ!!!』

 はっきりとした喘ぎ声が、絶え間なく発される。場所がバスルームだけに、その声はよく反響した。カメラに接写される割れ目からは、何かの栓が抜けたように愛液があふれ続けてもいた。
『はっはっは、スゲェ声だ! でもしゃーねぇよな、ケツでイッちまってんだもんな?マンコにゃまだ指すら突っ込まれた事がねぇってのに、何遍も子宮イキしやがって。剣道屋だけに一直線だなぁ、このド変態女が!!』
 ピアス男はそう言いながら、極太を力強く叩き込む。割れ目を接写するアングルで、伝わってくる情報は多くない。それでも、充分だ。
 逸物が深く叩き込まれる瞬間には、ひいっという声がし、肛門周りと割れ目が収縮する。ビラビラも閉じるから、雫の滴りは一旦途切れる。凍りついたように。
 だが逸物が引き抜かれれば、凍った時間が動き出す。ああああ、と本当に堪らなさそうな声が響き渡り、肛門と膣の筋肉が弛緩していく。ピンク色の縦筋が口を開き、ぽたぽたとカメラへ雫を垂らす。
『いい具合だ。こなれて、締まって。普通なら2ヶ月はかかるってのに、8日でここまで仕上がるとは恐れ入ったぜ。これならお客にも出せるな。ま、その前に……俺もそろそろ限界だ!!』
 ピアス男は荒々しい口調で叫ぶと、突き込みのペースを上げる。
『うあっ!! はっ、はぁっ、あっ!!!』
 藤花の喘ぎも早まり、そして数秒後。
『出るぞ! 結腸の中に流し込んでやっからよ、よく味わって消化しろや!!』
 ピアス男はそう叫ぶと、一番の奥まで挿入しきってからグリグリと腰を押し付け、そのまま射精体勢に入る。
『あ、やめろ、やめっ…………あ、あ……ああああっ!!』
 藤花は絶叫した。おそらく、腸奥に熱い精液を浴びると同時に。
『くくっ、見たまえよ。あれほどに仰け反って……』
『表情も凄まじいですな。下の奥歯まで丸見えだ』
『うんうん。気の強い女が“壊れる”瞬間は、何度見ても感動しますね』
 ギャラリーの言葉から、藤花の様子が嫌でも想像できてしまう。
 映像の中で、ピアス男の睾丸は激しく収縮していた。かなり大量に射精しているらしい。
『はああ、最ッ高だぜ。ケツ粘膜と子宮側からの圧迫で、たっぷりイジめられちまったからな。出る量がハンパねぇ』
『あああ……く、うっ……』
 愉悦に浸るピアス男と、悔しげな藤花。声色は対照的だ。

 やがて逸物が抜き出されると、ぽっかりと拡がった肛門から白濁があふれ出す。それは、藤花の決壊とあふれる涙を象徴しているかのようだった。
『ふーっ、出た出た。はっ、何だよお前、ライオンが吼える真似か?』
 ピアス男は満足げな息を吐きながら、藤花を嘲笑う。そして、さらに言葉を続けた。
『だが、これで終わりじゃねぇぞ。水分補給しつつシャワ浣して、再開だ。今はまだドナンのおかげでケツが緩んでっから、出し入れもスムーズだったが、こっからは時間が経つごとにドナンの効果が薄まっていく。このイミが解るか? つまり……このデカマラを、シラフに近ぇ状態で受け入れるってこった』
『な……っ!!!』
 ピアス男の言葉に、藤花の身が強張った。
『そうそう、イイ顔だ。睨みきれねぇって感じのその顔が、一番見てて楽しいぜ。腰が立たなくなるまでヤッてやるから、まぁ堪能しろや』
 悪意に満ちたその一言を最後に、カメラが拾い上げられ、悪魔じみたピアス男の顔を大写しにして暗転する。


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 ついに、見てしまった。あの藤花の心が、ポキリと折れる瞬間を。
 左を見ても、もう次のエリアはない。何もないスペースと、入口横に設置された自販機が見えるばかり。
 いや……違う。次はある。部屋の中央奥、厚い扉に隔てられた先に、現在の藤花の姿があるはずだ。
 正直、もう充分だ。あまりにハードなものを見させられつづけて、胸焼けを起こしている。
 だが同時に、俺の内にはこの先を見たいという気持ちもあった。水っ腹でなお、激しい喉の渇きを覚えるように。
 死にゆく愛犬の最期を、せめて看取りたいといった感情なのか。
 それともこの情動こそ、本来の俺の性質なのか。
 今朝の夢を思い出す。
 あの育ちの良さそうな女は、俺の手の届く場所で壊れていった。あれこそ、俺の願望なんじゃないのか。もしそうなら、俺は立派にこの施設にいる資格がある。紛うことなき外道なんだから。

 一度その疑念を抱いた以上、俺にはもう帰るという選択肢はなかった。
 確かめなければならない。俺がどういう人間なのか。この先に待つ光景を見て、どう感じるのかを。


              ※


 扉を開けて中に入ると、ホテルのフロントを思わせる場所に出た。フロントの左右にはやはり分厚いドアがあり、『A』と『B』の文字が刻まれている。さらに、順番待ちが発生した場合に備えてなのか、左右の壁際には長ソファと雑誌棚が備え付けられてもいた。
「いらっしゃいませ。プレイルームへようこそ」
 カウンターに立つ2人の女が、恭しく俺に頭を下げる。どちらもアナウンサーを思わせる極上の美人だが、ほぼ丸裸だ。乳房とあそこを囲むように細いボンデージベルトを装着しているが、藤花の着けていたものと同じく、かえって性的な印象を強めている。しかし、彼女達に恥じている様子はない。まるで精巧なロボットのように、ぴんと背筋を伸ばしている。
「AコースとBコース、どちらをご覧になりますか? 現在、Aコースの調教対象はこちらの4人、Bコースの調教対象はこちらの1人のみとなっております』
 右の受付嬢が、そう言って5人分の顔写真を並べる。さらりと流されたが、おかしい。初日の情報と食い違っている。
「4人? 初日の映像だと、Aコースには5人いたように思うが」
「確かに、当初は5人おりましたが……6日目に1人が調子を崩し、以降はお客様への公開を控えさせていただいております」
 左の受付嬢が、能面のような表情でそう告げた。日本語とは便利なものだ。婉曲的な表現をすれば、いくらでもショッキングな事実を伏せることができる。たとえその意図するところが、『精神崩壊』あるいは『肉体の欠損』などであっても。

 6人の顔写真の上には、AとBという記号が印字され、右側には今までに施された調教内容が列記されていた。
・アナル舐め
・アナル異物挿入(指、ガラス玉、スーパーボール、ミニトマト等)
・浣腸(湯/グリセリン/酢酸)
・アナル拡張:直径4cm迄(アナルプラグ2号を10分キープ)
・アナル挿入:深さ16cm迄(ディルドー2号クリア、3号挑戦中)
・バラ鞭、パドル
・ニップルピアス
・水責め
・公然排泄(大、小)
・ディープスロート
 Aコースの4人はそんな具合だ。何の変哲もない女学生が一週間で受けた調教としては、この内容でも充分に地獄だったことだろう。だがBコースとなれば、文面のハードさが違う。
・アナル舐め
・アナル異物挿入(フィスト、玉蒟蒻、ボーリングピン、ゼリー 他多数)
・浣腸(湯/グリセリン/酢酸/トマトジュース/青汁/塩化マグネシウム溶液 等)
・アナル拡張:直径12cm迄(アナルプラグ6号を8時間キープ)
・アナル挿入:深さ25cm迄(ディルドー8号クリア)
・バラ鞭、一本鞭、乗馬鞭
・水責め/汚水責め/汚物漬け
・飲尿
・食糞
・公然排泄(大、小)
・ディープスロート(嘔吐経験有)
 そんな内容が無機質に列挙されている。字面を追うだけでも眩暈がしそうだが、これも一種の婉曲表現だ。たとえば『水責め』というたった3文字の責めにしても、実際のプレイ映像は鳥肌が立つほどに壮絶だった。
「……Bコースは、凄いんだな」
 ぼそりと俺が呟くと、それを賛辞と受け取ったのか、左右の受付嬢が頭を下げる。
「はい。皆様からご好評を頂いております」
「連日、入場規制が掛かるほどの盛況ぶりでございます」
 機械音声のように抑揚のない口調、互いに言葉を被せ合う配慮の無さ、光を宿さない虹彩。態度こそ恭しいが、この受付嬢2人もマトモではなさそうだ。俺がそう思った時。

「くーっ、もう辛抱たまらんぜ!!」

 ガラの悪い声と共に、Bコースの扉が開いた。カジュアルな格好の中年男が姿を現し、受付に近づいてくる。ただし、カウンターの内側へ入り込む形で。
「お客様。現在は、別のお客様の対応中でございますので……」
「んないいんだよいいんだよ、2人居んだから。悪いな兄さん、コッチ借りるぜ」
 男はそう言って、右側のフロント嬢の腕を引き、カウンターの外へと連れ出した。そして長ソファに荒々しく押し倒すと、大股を開かせて肛門に逸物を押し付ける。
「お……おいおい。いきなり何やってんだ、あんた!?」
 俺は面食らいながらも叫ぶ。さすがに目の前でレイプ現場を目にしていて、スルーという訳にはいかない。すると男は俺の方を向き、怪訝な顔をする。
「何、って……ははあ、なるほど。アンタ新顔かい」
 そう言って1人頷くと、どこか見下したような眼で続けた。
「いいかい新顔さん、よく覚えときな。このクラブにいる女は全員、いつでも気が向いた時に『使って』いい奴隷なんだよ。エレベーターガールだろうが清掃係だろうが、受付嬢だろうがな。っつーか、こういう説明は会員登録ん時に聞かされるハズだがな。それとも何かい、アンタも裏ルートから抜け道通って来たクチかい。えらく若いモンなあ」
 男は1人で、気持ちよく論を展開していく。
「く……!」
 反論しようにも、言葉に詰まる。こういう状況は毎度きつい。ここがどこか、自分は何者か、どうやってここに来たか。それらが何一つ判らない状態では、答えようもなかった。
「フン、図星かよ。社会的なステイタスがなくても、カネとコネさえありゃ潜り込めるなんてな。アングラ中のアングラと呼ばれたココも、緩くなったもんだ」
 男は鼻で笑う。奴自身も下町の工場で働いていそうな風体であり、社会的なステイタスがあるようには見えない。だが案外、こうして一方的に主張を通す強引さで、辣腕経営者と呼ばれているのかもしれない。
 奴は俺に見せつけるように、フロント嬢の胸を揉みしだいていた。それを受けるフロント嬢は、一切抵抗する素振りを見せない。それどころか、
「お客様。私共を『お使いになる』場合には、避妊具の着用を推奨いたします」
 そう言って、雑誌棚の上からコンドームを取り出しさえする。
「おっと、いけねぇ。そうだよなぁ。公衆便所なんざ、どんなビョーキ貰ってっか分かったもんじゃねぇからな」
 奴は侮蔑的な言葉を吐きながら、コンドームの包みを摘む。その指は震えていた。
「ああクソ、焦っちまうな、あんなエロいもん見せられちゃあよぉ。珍しくギャラリー参加型だっつうから昨夜シコらずに来たが、辛抱堪んねぇや」
 コンドームの包みが荒々しく破られ、上向きに勃起した逸物へと被せられる。そして奴はフロント嬢に脚を広げさせると、まず割れ目に亀頭を宛がってから、思い直したようにその下へと挿入する。つまり、アナルセックスだ。
「あーあー、緩いなぁオメェ。ゴムの抜けたジャージ穿いてる気分だぜ。あの剣道女の代わりにと思ったが、これじゃ妄想のオカズにもなんねえよ」
「……申し訳ございません」
「ったくよぉ。謝るぐらいなら、部屋に人数制限でも掛けてくれや、5人までとかよぉ。どいつもこいつも、若ぇJKに蟻みてぇに群がりやがって。おかげでこの俺が、こんな賞味期限の切れたアバズレ相手に性欲処理かよ、クソッ!!」
 男は悪態を吐きながら、フロント嬢相手に腰を振りたくる。
 蟻とは、なかなか的確な自己紹介だ。砂糖という価値の高いものが、何の理由か数粒ばかり地面に零れ、そこに黒蟻が群がっている。ここで起きている悲劇は、まさにそういう印象だ。
 果たして俺の望みとは、その蟻に混じって甘美に酔うことなのか。あるいは、その宴を遠くから眺める人間でいることなのか。その答えは、扉の先でしか解らない。

「Bコースを見せてくれ」
 俺はソファの痴態から目を離し、左のフロント嬢に話しかける。
「承知いたしました。せ……」
 彼女はそう言いかけ、そこで口を噤む。感情の乏しい子だが、今はかすかな焦りの雰囲気があった。
 せ──それに続く言葉は何だ。
「おい、どうした」
「……いえ」
 俺が問いかけると、フロント嬢は顔を左右に振る。ロボットのようだった彼女の動きと、明らかに違う。急にどうした。何を隠している。俺の記憶に関する事なのか。
「どうしたと、聞いているだろう!!」
 焦りからか、不安からか。気付くと俺は、つい嬢の肩を掴んでいた。その瞬間、フロント嬢の全身がびくりと震える。
「ひいいっ!!!」
 光を宿さない瞳に、明らかな怯えの色が浮かぶ。
「な……!?」
 俺はその反応に驚き、手を離した。すると、フロント嬢も肩を竦める。
「はっ、はっ、はっ、はっ……!!」
 全力で走った後のような荒い息。なんだ、この異様な反応は。
「おいおい兄さん、乱暴はいかんぜ」
 ソファの男が茶化してくる。奴に押し倒された時、右のフロント嬢は怯えてなどいなかった。乱暴の程度なら、肩を掴んだ俺よりも、レイプ同然に『暴行』している奴の方が上のはずなのに。
 この左のフロント嬢が、特別に臆病なのか。それとも、俺があの下卑た蟻より恐ろしいとでも言うのか。
「……と、取り乱して、しまい、たんヘンな失礼をいたっし、ました。Bコースは、ああ、あちら、右手奥に、なります……」
 左のフロント嬢は、そう言ってBコースの扉を示す。ただし、身体は依然として震えていて、俺と目を合わせてくれることもない。まるで、羆にでも案内をするように。
「ありがとう。…………怖がらせてしまって、すまん」
 俺は感謝の言葉と共に頭を下げ、フロントを後にする。何か言いたげな視線を、扉が閉まるまで感じながら。


              ※


 Bと刻まれた扉を開けると、また通路が延びている。通路は薄暗く、まるでホラー映画に出てくる閉鎖病棟だ。
 通路の右側にはいくつもの扉があり、格子状の窓が取り付けられている。しかし部屋の中は薄暗く、中を覗いても闇が広がっているだけだ。Bコースは藤花1人しか調教対象がいないから、空き部屋ばかりなんだろう。
 ただ一つ、突き当たりの扉からは光が漏れていた。まるで、俺を呼んでいるように。

 扉を開けて中に入る。
 部屋に一歩を踏み入れた瞬間、俺は理解した。ここか、と。
 肛門に竹刀を挿された藤花が激昂し、暴れ狂った部屋も。
 前後から穴を使い回されていた時の部屋も。
 リンチのような水責めを受けていた部屋も。
 ドナン浣腸を施され、放置された時の部屋も。
 すべて、この部屋だったらしい。壁や床の汚れ、シミ。天井に取り付けられた滑車やフック。ガラス張りのバスルーム。どれもこれも、モニターの中で目にしたものばかりだ。
 そして、見慣れたものは他にもあった。
 刺青や迷彩ズボン、ドレッド頭に、ピアス男。動画内で目にした調教師達が首を揃え、縛られた少女を見下ろしている。

 ポニーテールが印象的な少女──藤花。ついに見えることができた。俺にしてみれば、テレビで見続けてきたアイドルを生で拝んでいる気分だ。
 彼女は部屋の壁際で、胡坐縛りを施されていた。上半身は後手縛り、下半身は胡坐を強制する形で足首を縛り上げ、胸元の縄と足首の縄を連結させる縛り方だ。
 彼女の緊縛姿はモニター越しに何度も目にしたが、今は大きく違う点が3つあった。
 1つ目は、彼女が上半身に制服を身につけ、ハイソックスを履かされたままであること。鍛え上げられた裸体も見応えがあったが、“お堅い”女学校の制服を着込んでいると、また印象が変わる。女子グループの中に1人はいる、頼りになる姉御肌……そういう感じだ。またブレザーやハイソックスを着用していることで、調教対象が現役の女子高生である事実を改めて実感させられる。ここの客は女子高生というブランドが好きだから、さぞや気分が盛り上がることだろう。
 2つ目は、目隠しがされていること。視界を奪われれば、人間の感覚は嫌でも研ぎ澄まされる。胡坐縛りの窮屈さも、周囲からの視線も、その他の刺激も、すべてを普通以上に感じてしまうことになる。
 そして3つ目は、彼女が尻を押し付けている場所に、極太の黒いバイブが設置されていることだ。尻餅をつく格好で極太の栓とくれば、例のドナン浣腸を思い出す。さすがにあの砲弾のようなアナルプラグには程遠いが、藤花の肛門から覗く部分は、ビール瓶ほどの太さは悠にあった。ドナンで緩んだわけでもない素面状態で咥え込むのは、相当にきついはずだ。
 しかも、太いだけじゃない。腸奥に届くぐらいの長さもある。なぜ藤花の腸に埋まっているバイブの長さが判るかといえば、そのバイブと同じ物が、藤花の左右で唸りを上げているからだ。たぶん3人を横並びで調教するためのスペースなんだろう。藤花の左右を見る限り、3つのバイブの動きは完全に連動しているようだ。
 そして左側のバイブには、ご丁寧に女の腰から太腿半ばまでを模した置物が嵌めこんであった。
 『特殊シリコン製 重さ20kg』
 バイブの根元には、そう記された紙が留めてある。
 置物には、女らしい肉付きのみならず、膣や子宮、膀胱、直腸に至るまでが空洞で再現されていた。つまり、その中に透けて見える黒バイブの動きを観察すれば、藤花の腸内の様子も判る。どういう角度で、どういう深さで、どこを責められているのか……そういう情報が筒抜けになるということだ。
 この悪趣味ぶりは尋常じゃない。

「んぐぅうっ!!!」
 目隠しされた藤花が白い歯を食いしばり、顎を浮かせる。その左側では、バイブが尾骨の辺りを舐めるように撫ぜていた。最初に見た時より丈が縮んでいる。どうやら、太い根元に収納する形で自在に長さを変え、ピストン運動まで再現しているらしい。
 そしてバイブは、のたうつ蛇のようにゆっくりと長さを伸ばしながら、シリコン内の直腸を臍方向に抉った。それはつまり、子宮頸部を直腸側から圧迫するということだ。
「ッかは…!?」
 閉じあわされた藤花の歯が開き、息が漏れる。太腿が強張って身体が少し浮き、縛られた足首が痙攣する。
「おや、これはイキましたかな?」
「どうでしょうな。しかし、ドナン責めで蕩けることを知った子宮を潰されるんだ。相当な快感には違いないでしょう」
 客達の囁きが聴こえた。奴らは調教師よりもさらに内側、特等席で藤花の痴態を見下ろしている。そしてその言葉は、確実に藤花に届いているようだ。
「…………っ!!」
 口惜しそうに藤花の唇が噛みしめられる。だが、重苦しい羽音を立ててバイブが腸を抉り回せば、どうしても反応せざるを得ない。
「う、くっ……くうぅっ、はぐっ…う、あ゛…………!!」
 藤花は、時に歯を食いしばり、時に喘ぎながら責めに耐えていた。
 彼女からすれば地獄だろう。ビール瓶に近い直径のバイブがみっしりと直腸に詰まり、のたうち回るんだ。その威力の程は、藤花の左側を見ればわかる。
 左のバイブに被さったスイカ大の物体は、メモによれば20kg。それだけの重量がありながら、置物はバイブの威力に振り回されていた。バイブが力強くうねるたび、置物も空中で渦を巻く。時々腰の部分が壁にぶつかっては、ドッ、ドッ、と鈍い音を立ててもいる。
 さすがに藤花の身体は、バイブに振り回されたりはしない。しかし動かないということは、バイブの運動エネルギーを固定された腸内で余さず受け止めるという意味でもある。その凄まじい感覚は、目隠しのせいで上増しして感じられることだろう。耐え切れずに足をバタつかせようにも、胡坐縛りをされた状態ではエネルギーの発散させようがない。結果、
「くぁぁああ゛っ!! いひっ、は……ぐッ、んいいいぃ゛っ!!!」
 こうした生々しい声を漏らして、嘲笑の的になるしかない。
「っはは、また凄い声だ」
「また『はぐっ』が出たな、これで何度目だ?」
「『はぐっ』は直腸を横向きに刺激されると出やすい呻きのようですな。一方で腸奥を背骨側に押し込まれると、『い』の音が出るようです。ほら、今も『んいい』と鳴いてるでしょう?」
「ははは、本当ですな。ではいっそ、バイブの刺激で喘ぎ声を調節して、歌でも歌わせてみては如何です?」
「ほう、面白いですなぁ! 調教師の皆さん、やって貰えますか?」
「……ったく、ダンナ方の発想にゃ参りますよ。さすが、変態としての年季が違う。オッケーっす、やれるだけやってみます!」
 客の要望に応え、ドレッドヘアがリモコンを握り直す。あれでバイブの動きを制御しているようだ。
「まずは、カエルの歌あたりでいきますか」
 その言葉と共に指が素早く動き、直後、藤花の背中が仰け反った。
「んがっ!!」
 連中の狙い通り、『か』と聴こえる悲鳴が響く。そして、それだけでは終わらない。
「かはっ、えあっ、う゛っ! ん…おっ、おお゛っ……ふグ……ぐうう゛っ!!!」
「おう、惜しい。“カエルの”までは聴こえてきましたな」
「流石に、上手く歌わせるにはノウハウの蓄積が足りませんか」
「ふむ。私には、歌を成立させまいとして強引に歯を食いしばったように見えたが」
「なるほど、この女ならやりかねませんな。では、どうするか」
「なーに。何度も歌わせれば、茶々を入れる余裕もなくなっていくでしょう」
「それもそうですな」
「おっし、また最初からいくぞ。お客の前で、何度もハジ掻かすんじゃねーぞ」
「があっ、あ! ぅあっ、んぐっ……ぇあ゛っ!!」
「おいおい、一回目より原曲から遠いじゃないかね」
「しかし、これはこれで面白いですよ。さっきより惨めな声だ」
「確かに。さながら、カエルというよりガマの歌ですな!!」
「ははははっ、上手いことを言う!」
 藤花は、10を超える人間から玩具にされ、嘲笑されていた。嘲笑されれば自尊心が傷つき、余裕がなくなっていく。余裕がなくなれば、ますますバイブの齎す快感に抗えなくなる。その悪循環だ。
 
「でもホント、凄い声出てるよね。アレ、そんなに凄いのかなぁ」
 祭りのような騒ぎの中、ぽつりとそう漏らしたのは若い女だ。茶色い髪を肩の辺りでふんわりとカールさせた、割と可愛い感じの女。
「ほう。興味があるのですか、奈緒子」
 女の横にいる着流しの老人が、興味深そうに目を開く。確かこの二人は、資料館で見かけた歳の差夫婦だ。あの時も女の方は、ターキーのような黒人ペニスに興味を示していた。どうやら、かなりのマゾらしい。
「なら、ちょっと遊んでみなさい。ちょうど右側が空いているんだ、構いませんね?」
 老人の方がそう言うと、迷彩ズボンの男が頷く。
「いっスよ別に。ただこのバイブ、8センチありますからね。いきなしはキツいんじゃないっスか?」
「いえ、ご心配なく。この奈緒子は、こう見えてアナル上級者でしてね。ダブルフィストまで出来るんです」
 控えめな口調ながら、自信に満ちた老人の言葉。それに周囲から感嘆のため息が漏れる。
「そ。あれ位のサイズなら、ちょっとほぐせば普通に入るよ」
 奈緒子と呼ばれた女も、余裕の表情で指にローションを塗し、露出させた肛門を指で開いていく。よく開くその穴は、確かによく使い込まれている様子だ。
「じゃ、ちょっと味見……」
 奈緒子は右側のバイブの上で腰を下ろす。一時的に動きの止まったバイブが、紅色の肛門へと呑み込まれていく。
「ん……。思ったより硬いんだ、このゴム……」
 そんな呟きを漏らしながら、奈緒子は順調に腰を沈めていく。
「おーっ、凄いな。簡単に」
「流石はマニアですな」
 客や調教師達も、その熟練振りに感心している様子だ。だが、それも最初の内だけ。
「じゃ、再開しますよ」
 ドレッドヘアがそう言って、バイブのスイッチを入れる。
「くっ……!!」
「うひゃっ!!」
 藤花と奈緒子は、同時に反応を示した。そして一旦口を噤み、耐える姿勢に入る。ウィンウィンという駆動音が響く中、彼女達はじっと耐えていた。その左側では、これまでと同じようにバイブが蛇のようにのたうっている。
 そのまま、3分ほど過ぎた頃。
「く、ぁっ……き、きひぃっ……うあああっ、むりっ、もう無理ぃっ!!!」
 それまでじっと耐えていた奈緒子が、絶叫しながら足を震わせはじめた。
「いや、いやっ!!これやだあ゛っ!!!」
 足をハの字に開いたまま立ち上がろうとし、バランスを崩して後頭部を壁に打ち付ける。
「奈緒子!!」
 着流しの老人と他数人が助けに入り、奈緒子はなんとかバイブから解放される。足取りのおぼつかない奈緒子が必死に押さえているのは、後頭部ではなく肛門だ。前屈みで内股の姿勢を作るその様は、いかにも辛さに耐えているという風だった。
「なんだよ、バージン失った直後みたいな格好して。そんなにキツいのか?」
 客の一人が不思議そうに問うと、奈緒子は涙目でそいつの方を向く。
「ッたり前だし。ヤバいって、これ! お腹の中ムリヤリこじ開けられるし、すっごいウンチしたい気分になるし、どうにかなっちゃいそう! 今もお尻の奥に、杭みたいなの刺さってる感じだよ。あーーもう、やめときゃ良かったよぉ!!」
 そう恨み事を吐き、最後に藤花を睨みつけた。負けた悔しさか、あるいは自分の失態を藤花のせいとでも思っているのか。
 いずれにしても、アナルマニアを自負する女がものの数分で音を上げる責めなのは確実だ。となれば当然、場の視線は今もそれを耐える藤花へと集中する。
「しかしそうなると、すげぇなコイツって。まだ歯ァ食いしばって頑張ってやがる」
「まったく。何度言ったかわからんが、見上げた根性だよ」
「しかも、さっきの子はM字開脚だったが、こっちは胡坐縛りだろう? 腹圧は掛かるわ、エネルギーは逃がせないわで、余計にキツかろうに」
「そういえばそうですなぁ。やあ、大したものだ」
 どこからともなく、藤花を誉めそやす声が上がりはじめた。だが、加虐趣味の連中に興味を持たれるのは、決して幸せなことじゃない。

「なあ、調教師君。もう少し激しくは出来んか? そろそろ、この女の泣くところも見たいのでな」
 藤花があくまで耐えるとなれば、当然そういう意見も出てくる。そして調教師連中は、その言葉を待っていたかのように笑みを浮かべた。
「モチロン、まだ先がありますよ。実はこのバイブ、こっからがスゲェんす」
 ドレッドヘアは陰湿な笑みを浮かべたまま、リモコンを両手の指で操作する。何かのボタンを長押ししつつ、ツマミを押し上げるような動きだ。その操作がなされた数秒後、藤花が呻きを漏らした。
「うあっ、な、なんだ!? ふ、深いっ……やめっ、どこに、入って、え……!!!」
 太腿を強張らせながら、明らかに動揺している。
 彼女の左へ目を向ければ、『深い』という言葉の意味がわかった。黒いバイブの先端が、シリコンで出来た直腸の最奥よりも、さらに奥……S字結腸の方に入り込んでいる。
「ほほお、結腸に……!」
「あれは流石にキツいでしょうなあ。あの太さでゴリゴリやられるんですから」
 藤花の傍に立つ客達が、口々に歓喜の声を上げた。確かに、ビール瓶大のディルドーが意思を持つように蠢き、シリコンを変形させていく様は壮絶の一言に尽きる。嗜虐的な人間にとっては最高の興奮材料だろう。だが、やられる方となれば堪ったものじゃない。
「やめろっ、やめろおぉっ!! 無理だっ、これは無理だっ!! 腸の形が、無理矢理変えられて……ッ!」
 藤花は悲鳴を上げながら、縛られた足首を上下させる。本当に余裕がなさそうだ。だが、その藤花を囲む連中に同情の気配はない。特にドレッドヘアの男は、スイッチのボタンを力強く押している。
 シリコンでできた結腸の入口で、バイブが激しく唸りを上げ、そしてある瞬間。バイブの亀頭部分そのものが、ぬるりと結腸の門をくぐり抜けた。劇的な一瞬。アクセルを踏み続けた車が、ついにスタックから抜け出したかのような。
 状況は一変する。
 細かに震えていた藤花の腰の動きが、ぴたりと止まった。
 藤花の口が開ききり、口の端に皺が寄った。

「 んわあああああ゛あ゛あ゛ぁ゛ーーーっっ!!!! 」

 まさに、絶叫。鼓膜を震わせるほどの叫びを上げながら、藤花の身体は弓なりに仰け反った。ハイソックスに包まれた足指がぎゅうっと握りこまれ、公然に晒された割れ目がヒクヒクと痙攣する。誰の目にも明らかな絶頂。
「お……」
「へへ…………」
 2人ほど、声を上げようとした人間がいた。絶頂を嘲ろうとしたんだろう。だがその2人共が、言葉を呑み込む。
 藤花の目隠しの下から、雫が零れていたからだ。気丈な人間の涙は、ありふれた嘲り以上の意味を持つ。
 はっ、はっ、はっ、と荒い呼吸音が繰り返される。後頭部を壁につけ、天を仰いだ藤花の呼吸だ。その頬にまた、はらはらと涙が零れた。
「…………俺は…………強くないと、いけないのに。男より強くないと、いけないのに……。なんで、尻の穴で、こんな……ッ……!!!」
 食いしばった歯の間から、悔恨の言葉が吐き出されていく。
 剣術道場に生まれ、周りは皆が男という状況で、彼女は女である事を呪ったに違いない。男と女の筋力差は絶対的だ。父や兄には追いつけず、年下の弟にすら基礎体力では敵わなくなっていく。そんな彼女が縋れるものといえば、精神力しかない。どんな苦難にも屈しない、鋼の精神。それを得るために、血の滲むような努力を重ねてきたことだろう。抜き身の刃のような彼女の雰囲気は、それを如実に物語っていた。そんな彼女にとって、結腸で果てるなど、あってはならない事に違いない。
「どうして? んなもん決まってんだろ。お前が、ド変態だからだよ」
 刺青男が、冷ややかに告げた。荒々しさのない静かな口調は、弱った心によく染みる。
「変態……この俺がか……!?」
「ああ。お前は、ケツマンコで逝きまくる正真正銘の変態だ」
 念を押すようなその言葉に、藤花の表情が引き攣った。
「ち、違う!!お、おれは、俺は……っぁ゛、あ゛……おぉお゛っ!!」
 相手の言葉を否定しきるより前に、また結腸逝きを余儀なくされる。
「はっ。んな野郎みてぇな声でケツイキしといて、違うわきゃねーだろ。サムライ気取ってんなら、潔く認めろや!」
 容赦のない罵声と共に、またリモコンが操作される。今度押し込まれたのは、今まで触れられていなかった小さなボタンだ。調教師達がにやける中、俺と客の視線が左のバイブに集まる。
 
 ピストン、うねり、結腸責めと来て、今度の仕掛けは擬似射精だ。半透明の
シリコンの中に何度か液体が噴射され、直腸を模した凹凸の底へと溜まっていく。
「あああっ!!」
 藤花からも悲鳴が漏れた。泣きそうな声だ。
「おや、凄い反応だ。一体、何を噴射してるんです?」
 客の一人が尋ねると、ピアス男が得意げに笑った。
「“ドナン”です」
 その一言で、客達が色めき立つ。俺の胸もざわつく。あのモニター映像を観た人間なら、誰だってそうなるだろう。
「ほんの2パーセントほどに薄めてますが、ああして時々噴き出させて、量を入れますからね。段々と腸の奥から入口までが、煮え滾ったようになってきますよ」
 ピアス男の言葉に、客の姿勢が前のめりになっていく。そして中には、別の事実に気付く奴もいた。
「おや……なにやら、いい匂いもしますな」
「おおー、さすが良い鼻っスねえ。実はあの噴出液には、石鹸水も混ぜてあるんです。何しろこの後、皆さんに使っていただく訳ですから、匂いも汚れもスッキリ洗い流そうってわけで」
「ははは、石鹸水か。そんなものを噴出されては、ますますあの極太が動きやすくなってしまいそうだ」
「ええ。ヌルヌルとした滑らかな動きで、子宮裏や結腸を抉り回されるとなると……さぞかし気持ちいいでしょうなぁ」
 外道が和やかに語らう足元で、藤花の顔が歪んでいく。

「お、おォっ、ほ…………んおぉおお゛お゛お゛っ!!!!!」

 まるで下卑た会話を掻き消すように、藤花の嬌声が響き渡る。剣道における気合の雄叫びさながらの、凄まじい声量。マイク越しに聞けば音割れを起こしているだろう。
「ほぅ、凄い声だ」
「アナルで逝く時は、やはりああいう声になるんですな。女子高生らしさはないが、妙に下半身に響きますよ」
 客達は満足げだ。その反応を見ながら、迷彩ズボンの男が歩み出る。
「今の声もまあアリっすけど……こうすると、もっと楽しいッスよ!」
 奴はそう言って藤花の横に屈み込むと、掌で左腿を押さえ込む。
「うあっ!? や、やめっ……はうっ、ぐ、ぐあ……」
 押さえ込まれた藤花の脚が暴れ、尻肉が収縮する。肛門から、びすっと何かの破裂音が響く。
「おおお゛お゛うん゛っ!!!」
 その果てに、藤花の喉からはますます惨めな声が漏れた。
「ははははっ、なんだ今の!」
「長いこと気張って、ようやく排便できた時の声だぞ。気持ち良さそうだ」
「なるほど。やりようによっては、あんな声も絞り出せるのか。面白い!!」
 調教師によって伝えられた新しい遊び方は、瞬く間に客を虜にする。奴らは欲望のままに、あるいは藤花の太腿を押し込み、あるいはブラウス越しに乳首を捻りつぶす。玩具の耐久性など省みもせずに。
「はぁっ、はぁっ……やめろっ、きさまら! ふざ、け……くう゛、ん……ん゛う゛っ!ふう゛、う゛……ん゛あああ゛あ゛っ!!!」
 藤花は眉根に皺を寄せ、身を捩って悪意ある掌から逃れようとする。だがそれも、四方を敵に囲まれた状態では虚しい足掻きだ。むしろ、もがけばもがくほど息は上がり、全身の脂汗もひどくなっていく。
 バイブの動きも、いよいよ激しさを増しているようだ。左側のバイブに被せられたシリコンが、幾度となく壁に叩きつけられて鈍い音をさせている。その威力で結腸に出入りしつつ抉り回されるんだから、藤花の脚が痙攣するのも無理はない。
「そらっ、イけよ!!」
 藤花の両脇に立つ客が、左右の太腿を強く押し下げる。同時にバイブの先もぐるりと結腸入口に円を描く。この3重の追い込みは、藤花の快感のキャパシティを軽々と上回った。
「あああ゛、ああ……うあ゛、あ……はぁあぁおお゛……っ!!!」
 藤花は眉を下げ、情けない声を漏らす。その直後、彼女の割れ目から透明な液体が噴き出した。
「おおっ、潮吹きか!?」
「小便を漏らしただけかもしれませんよ。あまりに快感が強いと、恐怖で失禁するといいますから」
 両腿を押さえる2人は焦る様子もなく、アーチを描く水流を眺めていた。

「たのむ、もうやめてくれ。ドナンが効いてきて、腹の奥が煮えたぎったようになってるんだ。このまま責めつづけられたら……ほ、本当に、気が狂ってしまう…………!!!」
 藤花は汗みずくになり、全身を痙攣させながら、何度もそう頼み込んでいた。同じ言葉を繰り返すのは、余裕のない証拠だろう。
 だが誰一人として、その懇願に耳を貸す人間はいなかった。むしろ嬉々として、あらゆる方法で藤花を追い詰める。ブラウスの上から乳房を揉みしだいたり。脇腹をくすぐったり。鼻の穴に指をかけて引っ張り上げたり。あるいは縛られた足首を持ち上げ、腹圧を極限まで高めたり。
 その悪意あるイジメの中で、藤花は何度も崩壊を迎えた。モニターで散々目にした通り、ドナン浣腸の圧倒的な便意の前には、抗う術などない。蕩けた結腸をかき回されれば、感じずにいられるはずがない。

「んああああ゛っ、はあァああ゛あ゛ーーーっ!! アクメが、まら゛っ……かはァっ、はっ……みひぎひい゛っ!! いぐいぐっ……あつい、ああああついっ、イイ゛っぐウウ゛うっ!!!!」

 汗、涙、鼻水、涎を顔中から垂れ流し、口の端から泡まで噴いて、藤花は絶頂し続ける。口から漏れる言葉は、極限の状況下で耳にした客からの罵倒が色濃く反映されていた。
「ほら、またイクんだろう変態女!? ケツだけで浅ましくなぁ!!」
「おーお、またブリブリひどい音を漏らして。もう腸液しか出るものがないっていうのに、何でこんなに酷い音がするんだ?」
「ひっでぇ顔だな、このケツアクメ女が! それでも女子高生かよ!?」
 客達は思いつく端から嫌がらせをし、思いつく端から罵倒を浴びせる。
 最初の頃の藤花になら、そんな嫌がらせや罵倒など何の効果もなかっただろう。蹲踞の姿勢で排便を晒しつつも、射殺すような眼光を浴びせていた彼女になら。
 だが、もうあの頃とは違う。
 何度も全身を暴れさせた末に、とうとう外れた目隠しの下からは、鋭い眼光など放たれてはいなかった。瞼に黒目が半ば隠れた、力のない眼が二つあるだけだ。

「はっ、気絶したか」
 ピアス男が藤花を見下ろして鼻で笑う。そして、他の調教師と協力しつつ緊縛を解きはじめた。
「おや。この責めはもう終わりかね?」
「ええ、そろそろ良い頃合いでしょ。こっからは、お客さん自身がコイツを可愛がってやってください」
 刺青男と迷彩ズボンの男が、藤花の両腋を抱えて立ち上がらせる。ジュポンッという音で粘液まみれのバイブが肛門から抜けると、藤花の身体はそのまま、部屋の隅に敷かれた煎餅布団へと投げ捨てられる。
 高く掲げられた尻肉。その肛門部分は、毒々しいほどの朱色に染まり、外側へ捲れ返っていた。
「ほぉう、見事なアナルローズだね」
「しかし、これから犯そうという肛門がここまで緩んでいてはな。私のモノでは、碌な刺激にならんのではないか?」
 腫れあがった藤花の肛門を見て、客の一人が感動を口にし、別の一人は疑問を呈する。ちょうどそこへ、ピアス男が銀色のワゴンを運んできた。ワゴンの中には、カラフルなペニスサックが山のように用意されている。
「ご心配なく。この状態の肛門でも楽しめるよう、サイズアップ用の道具を用意しました。太さ補強、長さ増強、真珠入りの名器変身セット。選り取り見取りです」
 いくつかのサックを手に取りながら、ピアス男は陰湿な笑みを浮かべる。その笑みは、瞬く間に客の間にも広がっていく。
「なるほど。ドナンで蕩けた腸内を、擬似巨根で蹂躙する……か。面白そうだ」
 客達がワゴンに群がり、自分好みのサックを選びはじめる。
「よし、私はこれだ」
 早くも一人がサックを装着し、早いもの勝ちとばかりに藤花の背後につく。
「たのむ、休ませてくれ……腸の中が、ヘンなんだ……」
 藤花は眉根を下げて男を振り返った。だが、男は聞き入れない。
「尻を上げろ」
 そう命じると、這う格好の藤花に背後から覆い被さる。サックで凶悪なほど太さを増強させたペニスが、メリメリと肛門に入り込んでいく。
「ふ、太い……っ!!」
 藤花は両手で布団を握りしめながら、苦しそうに顔を顰めた。
 パンパンと肉のぶつかる音が始まる。
 目の前で行われる、“なま”のアナルセックス。それはモニター越し見るものとは、まるで違うものだった。
 汗の匂いがする。内臓の匂いがする。腸液の匂いがする。
 ブレザーと布団の擦れる衣擦れの音も、尻肉の弾ける音も、結合部の水音も、すべてが細部まで聴こえる。
 そして何より、視界が自由だ。カメラの映像とは違い、自分で位置を移動して、見たい場所を見ることができる。
 とはいえ、俺は最初の場所をしばらく動けなかった。藤花と1人目の結合を、ほぼ真横から眺める位置。そこからは、サックのついた逸物が肛門に出入りするところがよく見えた。そして、その周辺も。
「どんどん溢れてきますな」
「ええ。本気で感じていると見える」
 俺のすぐ傍に立つ2人組が、興奮気味に囁き合っている。その感想は俺と同じ。この位置からは、藤花の内腿を流れていく愛液がよく見える。
「いいぞ……お前をひと目見た時から、この時を待ってたんだ」
 藤花を犯す男は、リズミカルに腰を打ち付ける。
「あっ……ああぁぁ……っあ、はぁぁ……あ、あっ!!」
 藤花は、その突き込みのたびに荒い息を吐いていた。本当に気持ちがよさそうに。

 藤花はアナルセックスで感じていた。
 1人目の男が精を放ち、2人目、3人目の相手に擬似巨根を打ち込まれる段階になれば、それはいよいよハッキリする。
「はっ、あ……あッ。ああ、あつい……溶け………」
 藤花の口からは、うわ言のようにそうした言葉が漏れていた。腕はやがてシーツを使う事すらやめ、力なく投げ出される。その一方で尻肉は高く持ち上げられ、相手の挿入をスムーズにする。その様は、まさしく布団に溶けるかのようだ。
 この3人目の相手は、奈緒子だった。彼女は嗜虐心に煽られるまま、極太のペニスバンドに凹凸の激しいサックを嵌めこんで藤花を犯している。
「ほら、どうしたの? 脳ミソまでトロかしてないでさぁ、しゃんと……しなよッ!!」
 奈緒子はそう言って、右手で藤花のポニーテールを鷲掴みにする。そしてそれを引き絞り、強引に藤花の背中を弓反りにさせながら、激しく腰を打ち込んでいく。
「う゛あっ!! い、いたい……」
「そう、痛いね。でも痛いのがキモチいいんだよね、お前マゾだもんね。あんだけアナルバイブで滅茶苦茶されて、平気な顔してんだからさぁ」
 妬み嫉みの感情を剥き出しにしながら、奈緒子は藤花の髪を引き絞り続けた。藤花の身体の反りが深まり、斜め下から突き上げられる格好となる。

 見た目には、多少風変わりな体位というだけだ。だが奈緒子は、同性でありアナルマニアでもあるという深い知見に基づいて、この体位を選んだらしい。
「あ、あ! ああ、ぁぁあ……はぐっ、んん゛っ!!く、いっぐ…………!!」
 膝立ちになった藤花の脚が震える。顎は浮き、口の端から涎を垂らす。そして、うわ言のような絶頂宣言。何かに陶酔しているという感じだ。
「なに、またイってんの? どうしてそんなに簡単にイッちゃうの?あたし同じ女だけど、ちょっとそれはわかんないかなー」
 奈緒子は軽蔑の色を込めてそう囁き、左手を藤花の割れ目へと潜らせた。
「は……っぁ!!」
「ほーら、ドロドロ。恥ずかしくないのかなぁ。同じ女におシリ犯されて、こーんなに濡らしちゃうなんて……まるでブタだよ?」
 これ以上ないほど意地の悪い囁きに、藤花が眼を見開いた。だがその目は、すぐにとろりと蕩けてしまう。
「んあ……あはっ、あ、ああぁっ…………」
 藤花は、しばし呆然とした様子でさらに突き込みを受け続け、ある瞬間に首を振って顔を歪める。

「もぉやめろおおおお゛お゛お゛っ!!!」

 藤花は大口を開けて叫ぶと、強引に上体を前に倒した。
「おっ…と」
 小さく呟く奈緒子。その瞬間。彼女の右手の中で、藤花のトレードマークが弾けた。常に後ろで纏められていた髪が解け、ウェーブした長い黒髪となって背中に垂れ落ちる。それはまるで、藤花の一本芯の通った部分が抜き取られたかのようだ。

 半狂乱になった藤花は、奈緒子の手中から逃れるように前へ走る。だが、足元が覚束ない。わずか数歩すら直進できず、そのまま右手の壁に手をついてしまう。
「へへ、なんだよ。今度は俺にハメてほしいってか?」
 ちょうど藤花の近くにいた男が、役得とばかりに藤花の腰を掴んだ。
「ち、ちが……っ!!」
「あー違くてもいいんだ。もう辛抱たまんねぇからよ!!」
 男はそう言って、サックで長さを増強したペニスを突き入れる。
「くああっ!! ふ、ふかいっ………!!」
 藤花は壁に寄りかかったまま、悲鳴のような声を漏らした。そして男に抜き差しを始められると、あっという間に腰砕けになってしまう。
「おーいいぜ。あの強気娘を犯してるってのがたまんねぇ。なあ覚えてっか? 俺よ、ちっと前に竹刀持ったお前にボコられたんだぜ。その復讐が出来てると思うと、胸がスカッとすんぜ! おら、どうだ。テメェの大好きな結腸ファックだぜ。ゴリゴリ届いてんのがわかんだろうが!!」
 男はそう言いながら、大きなストロークで藤花の肛門を犯す。ペニスサックで長さを増強していたのは、結腸を犯すためか。
 藤花の結腸は、すでに極太のバイブで開発されきっている。だが、だからといって一般的なペニスサイズでの刺激を感じなくなるわけでもないらしい。むしろ、効果は絶大だ。
「ぜっ、はっ、はっ、はっ、はあっ……や、やめろ……やめてくれ……。竹刀で叩いたことは、あ、あやまる、から………今そこは、か、堪忍してくれ……ッ!!!」
 弱々しい声色で音を上げながら、藤花は脱力していく。もはや壁に寄りかかる力さえなくし、壁に涎を擦りつけながらズルズルと崩れ落ちていく。
 そんな藤花の顎を、また別の男が掴み上げた。
「おい、シャンとしろよ。許してほしいんなら、まず奉仕。それが奴隷の鉄則だ」
 そう言って、鼻先に逸物を突きつける。
「ハア……ハア、ハア…………。」
 藤花は、男を見上げていた。以前なら鋭く睨みあげているところだろう。だが今は、困ったように眉を下げ、上目遣いになっている。
「早くしゃぶれ」
 再び命じられれば、彼女は疲れ切った顔のまま、男の物を口に含む。その背後で、不浄の穴を『使われ』ながら。


 俺は、ここで集団に背を向けた。
 これ以上を観る必要はない。いや、もう観たくない。


 閉鎖病棟を思わせる薄暗い通路を抜け、フロントに戻る。
「お帰りなさいませ」
 部屋に入るなり、2人のフロント嬢が頭を下げた。ただし左のフロント嬢は、相変わらず俺の方を見ようとしない。
 だがそんなこと、今はどうでもよかった。
 『大和男児』の死を目の当たりにした疲れがひどい。
 ただ1つの収穫といえば、この陰鬱な気分を通して、改めての確認ができたことだ。


 俺は、『蟻』じゃない。少なくとも、今はまだ。



 

二度と出られぬ部屋 第三章 肛虐に堕ちる剣姫(前編)

※長くなったため分割します。
 アナル・浣腸・スカトロ回につき、ご注意ください。



■第三章 肛虐に堕ちる剣姫(前編)


 気がつくと、目の前には一人の女がいた。
 髪を丁寧に結い上げ、着物に身を包み、いかにも育ちが良さそうだ。見目もよく、ぜひお近づきになりたいものだが、残念ながら知らない顔だ。
 一体誰だろう。あんな所で蹲って、どうしたんだろう。俺はそう思いつつ、一歩近づいてみる。すると。
「近寄らないで!」
 目の前の女の顔が歪み、大声が発された。
「な……!?」
 俺が面食らい、目を瞬かせた次の瞬間。
 女の姿は変わっていた。髪はそのままだが、着物がはだけ、大事な部分が丸見えになっている。そしてさっきは俺と少し距離があったのに、今はすぐ目の前だ。
「あ、貴方なんかに……!」
 彼女は、恨めしげな眼をこちらに向けている。親の仇を見る目、とはこれのことだろう。
「おい、なんだよ一体!!」
 いきなりの敵意に動揺し、俺はまた目を瞬かせる。
 目を開けると、また目の前の光景は変わっていた。俺の手が届く場所に、女のあられもない姿があるのは同じ。だが今度は、女の表情がすっかり変わっていた。目は涙を浮かべながら陶然とし、半開きの口からは涎があふれている。きっちりと結われていた髪は、乱れて女の白い肌に張り付いている。明らかに、何か起きた後の姿だ。
「あは、あははっ……し、してぇっ……もっとしてぇ……!!」
 女は正気を失った表情のまま、うわ言のようにそう繰り返す。
「おい、しっかりしろ! おい!!」
「無駄だ。すでに堕ちてる」
 思わず駆け寄ろうとした俺を、背後からの声が呼び止めた。
「そいつはもう、ヒトじゃない。豚だよ」
 異様な姿を前にしておきながら、ひどく淡々とした声。その落ち着き具合が、妙に腹立たしい。
「誰だ!」
 俺は苛立ちながら振り向く。

 そこには、光があった。目の眩むような眩い光。そしてその中に、一つのシルエットが浮かび上がっている。

 あれは────



「…………はっ!?」
 
 そこで、目が覚めた。
 紫陽花柄のシーツが視界に入る。すっかり見慣れた、自室のベッドだ。
 少しずつ記憶が甦ってくる。祐希と千代里の被虐を立て続けに目にした俺は、ひどい倦怠感に襲われ、倒れこむようにベッドに入ったんだ。風呂へも入らず、飯も食わずに。

 それにしても、嫌な夢を見たものだ。
 女が壊れていく夢。
 女が壊される場面に耐え切れず、逃げ込んだ先の夢でもあれとは。本当にいい迷惑だ。

 目覚めが悪いと、全てのリズムが狂う。レストランの食事すら味気ない。昨晩は何も食べていないんだから、腹は減っているはずなのに、胃が詰まっている感じがする。
 前々から噛み合わせのおかしい奥歯も鬱陶しい。軽快に食事が進んでいる内ならいざしらず、こういう調子の悪い時だと、煩わしさも弥増すというものだ。
「クソッ」
 毒づく俺の元に、固い足音が近づいてくる。
「あまり、お食事が進んでおられないようですね」
 汚れひとつないタキシードに身を包み、両手に白手袋を嵌めた眼帯男。俺のコンシェルジュである端塚だ。
「ああ。食欲がないんだ」
「それはいけません」
 すでに察しはついていたんだろう。端塚は俺の言葉を聞くなり、パキッと指を鳴らし、近づいてきたウェイターに何か耳打ちする。
 そのウェイターがレストランの奥に引っ込んでから、僅か数分後、クロッシュ付きの皿が運ばれてきた。
 端塚が恭しくクロッシュを持ち上げ、中身を晒す。
「お疲れのようでしたら、こちらなど如何です?」
 現れたのは、ぬらりと艶光る赤黒いもの。縦に細く切ってあり、横に青ジソとすりおろした生姜が添えられている辺りは、魚の刺身を思わせる。
「これは?」
「豚の生レバーでございます。当レストランでは通常提供いたしませんが、特別に御用意させていただきました」
 豚の生レバーときたか。またクセの強いものを出してきたものだ。だが、レバーはとにかく精がつくと聞く。沈んだ気を持ち直すには、これぐらい食っておくべきなのかもしれない。俺だって、好きで沈んでいるわけじゃないんだ。
「じゃあ……」
 箸で1枚摘み上げ、口へ放り込んで咀嚼する。

 美味い。

 ワインよりも、チーズよりも。舌というより、俺の肉体そのものが喜んでいるのがわかる。
 単に鉄分が足りてなかったんだろうか。そういえばこの一週間、昨夜を除いて自慰に耽りまくっていた。それこそ一日5、6回というペースでだ。それだけ射精していれば、鉄分が不足していても不思議はない。 
「なかなか味わい深いでしょう? 豚の臓物は」
 思わず笑みをこぼす俺に、端塚が問いかけた。随分と嫌な言い方をするものだ。

『そいつはもう、ヒトじゃない。豚だよ』

 最悪なタイミングで、今朝の夢の言葉が甦る。こういう記憶こそ、さっさと消え去ってほしいものだ。

「ところで、ご記憶の方は如何です? 御自身の事に関して、何か思い出されましたか?」
 端塚は、レバーを食べ進める俺に対して質問を重ねた。
「いや」
「……左様ですか」
 俺が否定すると、端塚は残念そうに視線を落とす。
 気になる反応だ。俺の記憶とは、こいつらにとっても特別な物なのか? だからこそ、こうも手厚いサービスをしてくるのか?
「承知いたしました」
 端塚はすぐに顔を上げ、俺の方に笑顔を向ける。
「お食事が済み次第、昨日同様、各フロアの展示を心ゆくまでご堪能ください。地下15、16階はすでにご覧になられたようですから……本日は、地下17階など如何です?」
 映画鑑賞でも勧める気軽さで、端塚は言った。実際こいつらにとっては、あれも興味深い映画同然なのかもしれない。だが俺には、目の前で壊されていく子を役者として見るのは難しそうだ。
「それなんだが……俺は、見たくない」
 はっきりと否定の意思を示す。俺を厚遇するこいつらのこと、当然この意思も尊重されるだろう。そう俺は思っていた。
「いえ。こればかりは、是が非にもご覧になっていただきたい。」
 まさに予想外。端塚の口から発せられたのは、有無を言わせぬ強制の言葉だった。
「なに……?」
「お気を悪くされぬよう。必ずや、あなた御自身の為になることです。他に時間を潰せるものも、ここには御座いませんので」
 端塚は、落ち着き払った口調でそう言い含める。
 確かにこの一週間は、生ぬるい地獄のようだった。リラックスできる時間とは、日々忙しくしていればこそ尊いもの。記憶がなく、ただ時間を浪費するばかりの身にとって、休息はむしろ苦痛だ。何かしら動いた方が楽なのは間違いない。

 しかし、『あなた御自身の為になること』とは、どういう意味だろう。



                     ※



 地下17階。凛としたポニーテール少女が、エレベーターから下りていった場所だ。
 地下15階、16階と、エレベーターで見かけた少女の被虐が続いている。『最悪な偶然』が三日続くなんてありえない。俺はそう希望を抱きつつ、部屋の扉に近づいた。
 部屋の入口には、地下16階の時と同じく銀プレートが掛かっている。
『SM』
 たった二文字の言葉。意味は知っているが、現時点での理解などに意味はない。扉の先にある光景はきっと、俺の価値観を塗り替えるだろうから。


 扉を開けた時、最初に受けた印象は『資料館』だった。
 白い壁に四方を囲まれた、だだっ広い空間。壁には無数の写真が飾られ、その壁に沿うように、ガラス製のショーケースも設置されている。さらにいくつかの場所では、展示映像も流れているようだ。
 それら展示物の前には、黒山の人だかりが出来ていた。どいつもこいつも目をギラつかせ、口元を緩めて、食い入るように展示物に見入っている。その中に混じるのは抵抗があるが、端塚の言葉を信じるなら、俺自身の為にもそうするしかないようだ。
 順路と書かれたパネルに沿って、入口左手に進んだ俺は、三日続けての『最悪な偶然』に出くわすことになる。
<現在の調教対象>
 その表記と共に、何人かの少女の写真が壁に貼られていた。全部で6人。全員が一糸纏わぬ丸裸に剥かれ、怯えや戸惑いの表情をカメラに収められている。そしてその中に、例のポニーテールの少女もいた。彼女だけは他の5人と違い、床に正座したまま堂々とカメラを見据えている。目尻のくっきりとした吊り目からは、相当な意思の固さが窺えた。
 彼女の強さは、展示にもはっきりと残されている。

『1日目』
 さらに左に進むと、そんなプレートが目に入った。視線を巡らせれば、少し離れた場所に2日目、3日目のプレートも見える。どうやらこの部屋では、調教初日からの少女の様子を記録し、それを順に展示しているらしい。
 展示を見る限り、調教対象の子が初っ端にやられたのは、浣腸のようだ。6つの瑞々しい裸体が横並びになり、尻を突き出している様。その初々しい肛門が指で拡げられ、つぶさに観察される様。そして、針のない巨大な注射器のようなものが、その肛門へと突き立てられている様。それがすべて写真に収められ、展示されている。
 前から写した写真も1枚あり、そこでは5つの口が大きく開かれ、何かを叫んでいる様子が見て取れた。ただ、左から二番目……ポニーテールのあの子だけは、心頭滅却とばかりに平然としている。ショーケース横で垂れ流されているモニターの映像では、その違いが更に顕著だ。


*********************************
 

『い、いやあ……っ!!』
『お願いっ、見ないでくださいっ!』
 映像内に哀願が響き渡る。
 哀れな6人の娘は、蹲踞の格好のまま、首と両の手首が一直線に並ぶように木枷で拘束されていた。膝下が縄で結ばれているせいで、立ち上がることすらままならない。当然、胸やアソコを隠すような配慮があるわけもなく、丸裸を晒すがままになっている。
 年頃の娘にとっては、これだけでも耐えがたい苦痛だろう。だが、彼女達の表情を歪ませる直接の原因はそれじゃない。
 最大のストレス要因は2つ。1つは、浣腸のせいで極限まで高まった便意。そしてもう1つは、それを必死で耐える顔を、真上から客に覗き込まれている状況だ。
『ひひひ、堪りませんな。化粧を覚えたてのうら若い娘が、必死に生理的欲求に抗う顔は』
『ええ。この紅潮した頬と、荒い息がまた。最愛の恋人とのセックスに耽っているかのようだ』
 初日にこの部屋を訪れた客だろうか。冴えない中年男十数人が、6つの顔を覗きこんでいる。両手で顔を挟み、逆向きのキスを迫るように顔を寄せる男。ぐるぐると鳴る腹に耳をつけながら、逸物を扱きたてる男。変態共の行動は色々だ。そしてそのすべてが、少女達の顔を引き攣らせていた。
 ただ1人、ポニーテールの娘を除いて。
 彼女だけは、客達が何をしようと動じず、鋭い眼光で前を見据えている。凄まじい目力だ。祐希が体育会系だとするなら、こっちはまさに武人。画面越しでも、触れれば切れるような雰囲気を纏っているのが伝わってくる。エレベーターで見た時は気さくな印象だったが、あれは気の置けない友人に向けた態度なんだろう。

『この状況でまだ睨めるとは、大した反骨心だな』
『廣上 藤花(ひろがみ とうか)、満17歳。兄一人、弟四人の父子家庭で育ち、実家は剣術道場……か。なるほど、勇ましくもなろうというものだ』
『ほう。剣術をやるとは聞いていましたが……廣上流でしたか』
『ご存知なんですか?』
『ええ。廣上流といえば、スポーツ剣道とは一線を画す“撃剣”の流派として、一部で有名なんですよ。組んで良し、蹴って良しの超実戦派としてね。しかもそこの一人娘といえば、去年、女子剣道の全国大会で優勝しているはずですよ』
『なるほど、それで。こうして視線を浴びていると、首後ろがヒリつくわけです。パンフレットによれば、末の弟曰く「お弁当がおいしい、優しいおねえちゃん」だそうですが……』
『身内には甘いんでしょうなあ。その甘さを異性にも向けられれば、さぞ生きやすかろうに』
『まったくです。凛とした美人で、スタイルも極上なのにねぇ』
 客達はパンフレットを手に、ポニーテールの少女を品評する。確かに、藤花と呼ばれたその少女は見目がいい。キリリと整った顔、弛みなく引き締まった身体。まさに女剣士という佇まいだ。
 6人の中で彼女だけは、蹲踞の姿勢のまま腰がぶれていない。彼女とて、他の5人同様に浣腸を施されているんだ。その影響は、当然ながら表れている。額や胸にはじっとりとした汗が浮き、悪意をもって揉みしだかれる下腹部からは、ゴロゴロ、ギュルルル、という、人間として当たり前の『便意の音』が響いている。他の娘はその苦痛と恥辱に耐えきれず、顔を左右に振ったり、不自由な身を前後に揺らしたりと大変な暴れようだ。その中で、膝を床と平行に保ちつづける藤花の姿は異彩を放っていた。根性もすごいが、足腰の強さも尋常じゃない。

『ああああっ!もうだめ、もうだめえぇぇっ!!』
『と、トイレに、トイレに行かせてください!もう、本当に漏れちゃう!!』

 さらに数分が経った頃、映像内は阿鼻叫喚の地獄と化していた。年端もいかぬ少女達が涙を流して哀願し、それを中年男が笑い、そして決壊が始まる。ブリブリと音を立てて、足元に置かれた盥の中に軟便が排出されていく。
『ははははっ、出たぞ出たぞ!』
『おお臭ぇ臭ぇ! 華の女子高生っつっても、クソの匂いはそこいらのババアと変わんねぇな!?』
 客達は大仰に鼻をつまんで謗り、加虐対象から涙を搾り取る。
 その中でもなお、藤花だけが胸を張り、眼に光を宿し続けていた。その光は、客の節ばった指がぐりぐりと尻肉の合間に捻じ込まれてからも、その果てにとうとう限界を迎えて排便が始まってからも、揺らぐことはない。
『はっ。コイツ、ぶっ太ぇ一本糞ひり出しながら、まだ格好つけてんぞ』
『恥じらいってもんはねぇのか? 仮にも年頃の女だろおめぇ!』
 そう嘲る客達は、からかい半分、悔しさ半分という様子だ。なおも目尻の下がらない藤花の瞳が、その連中を睨み据える。
『こんな事で傷つくほど、俺の矜持は柔じゃない』
 藤花は堂々とそう言い放った。一人称は“俺”だが、耳慣れたそれとは印象が違う。“お”と“れ”の両方にアクセントがつくそれは、『己(おのれ)』を縮めた感じだ。少女には本来似つかわしくない自称。だが、風変わりな口調共々、不思議と違和感はない。そもそもが抜き身の刃という雰囲気で、女の子らしいイメージとはかけ離れているせいだろうか。
『ふ……。いかにも古流の剣術道場で育ちました、という感じだな』
『ええ。この気概、今時の若い男にも見習ってほしいものです』
 客もそんな藤花の態度を面白がっている様子だ。
 ただ、皆が皆そうってわけじゃない。

『さっきから、客になんて眼ェ向けてやがんだ。このオトコ女!!』
 一人が怒声を上げ、藤花の髪を掴み上げる。藤花達の後ろで腕組みして様子を見ていた金髪男だ。
『ぐっ!?』
 藤花の口から、初めて苦悶の呻きが漏れる。髪の生え際が変形する程なんだから、無理もないが。
『いいかオトコ女。お前ェはよ、お客様にイジメて楽しんでいただくための奴隷なんだよ……ガン飛ばしてんじゃねぇッ!』
 男は掴み上げた手を左右に振り、藤花の苦痛を煽ると、荒々しく手を離す。これにはさすがの藤花もぐらつき、ついに右膝を床についた。
『貴様……ッ!』
 いよいよ眉を吊り上げ、紙を翳せば火が点きそうな勢いで男を睨む藤花。
『だぁら、睨むなっつってんだろうがよ!』
 男は忌々しげに舌打ちしつつ、煙草の煙を吐きだした。
『あくまで上等コクってんなら、こっちにも考えがあんぜ』
 そう言って、別の男に目配せする。その男は頷き、床にバッグを置くと、中から道具を取り出しはじめた。
 千代里が喉奥調教される際に見た、凹凸のある細い棒。真ん中が膨らんだ、様々なサイズの栓のようなもの。やたらに長さのある、男性器を模したディルドー。蛇腹のバイブ。無数のビー玉に、スーパーボール。
『……っ!』
 床に置かれていく多種多様な責め具を見て、藤花の表情が強張る。その目の前で、チンピラ男が道具の一つを拾い上げた。
『今晩からは、テメェだけ特別調教──通称<Bコース>だ。フロアの調教師総がかりで、そのプライドへし折ってやんよ』


*********************************
 

 ここで一旦映像が途切れ、暗転の後、最初の浣腸我慢のシーンが再生されはじめる。このモニターで見られる映像はこれだけらしい。

 左へ目を映すと、映像の続きと思しき写真が展示されていた。
 少女が、客から色々な変態プレイを受けている。
 ある写真では、客を前にして、がに股での指入れオナニーをさせられ。
 ある写真では、生クリームとチョコで彩られた女体にむしゃぶりつかれ。
 ある写真では、両手を吊り下げられた状態で鞭を打たれ。
 ある写真では、乳房と割れ目を中心に蝋を垂らされて絶叫していた。
 しかし、そこには5人の少女しか映っていない。俺が一番関心を持っている、藤花の姿がない。
 と、ここで俺は、今見た写真の上に<Aコース>と書かれた紙が貼られている事に気がついた。そしてそこから少し左下に、<Bコース>という紙があり、その下に1枚だけメモがピン留めしてある。
『1日目 後半のダイジェスト映像を作成しました。モニター2をご覧ください』
 その文章と合わせて、左下を示す矢印が書かれている。果たしてその矢印の先では、また一台のモニターがある映像をリピートしているようだ。


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 他の5人が客相手にSMプレイを繰り返している間、藤花だけは、何人もの調教師から入念なアナル開発をされていたようだ。

 俺がモニター2で観た最初の映像は、バスルームに這う格好で拘束された藤花が、シャワー浣腸を受けているシーンだった。
 シャワーの勢いは強いらしく、シャアアアという水の流れる音がし、肛門からは次々に水があふれ出てもいた。
『どうだ、感じるか?』
 ぼそりと、映像に声が入る。
『こうやってぬるま湯を流し込めば、腸内の洗浄と拡張が同時にできる。そして、排泄の感覚をずっと味わわせる事もできる。腸壁に水が当たる感覚を、しっかりと意識しろ。排便の快楽に酔え』
 口を開けずに喋っているのか、言葉が聞き取りづらい。だがどうやら、腸内感覚に意識を向けるよう促しているようだ。
 俺が観た限り、藤花に大きな動きはなかった。引き締まった張りのある尻肉をカメラ側に向けたまま、ただじっと四つん這いの姿勢を保っている。
 だが、数分してようやくシャワーホースが抜かれ、男が指で尻穴をほじくり回す段階になれば、少しずつ変化が表れはじめる。腸内にかなり水が残っているんだろう。男の指が穴に出入りするたび、ぶびっ、ぶびびっ、と何かを漏らすような音がバスルームに響く。するとその音に反応するように、理想的な流線型の太股がぴくぴくと蠢くんだ。ほんの僅かな筋肉の隆起だが、そこには藤花という誇り高い女の恥じらいが見て取れる。
 俺でさえ視認できるんだから、間近で尻を眺めている男が気付かないわけもない。それでも男は、あくまで淡々と作業をこなしていた。歯科医が嵌めるような手袋を嵌め、最初は中指で、さらにはそこに薬指も添えた二本指で、じっくりと肛門をくつろげていく。時々わざと二本指に隙間を作って腸内に空気を入れ、ぶりっ、ぶりっ、と放屁のような音をさせるのが嫌らしい。
 多分それは、客を喜ばすためのパフォーマンスだ。バスルームの壁は四方がガラス張りになっていて、中の様子が外から覗ける。そして映像内では、バスルームを囲む形で十数人のギャラリーが張りついていた。外の声は映像にほとんど入ってはいないが、それでも藤花の名前を叫んだり、侮蔑的な言葉を投げかけていることがわかる。だからこそ藤花は、両肘の合間に顔を埋めるようにして、バスルームのタイルだけを見据えていなければならなかった。たとえ、自らの肛門からブリブリとあられもない音が響こうと。四方からどんな謗りを受けようと。


 ここで一度画面が暗転し、すぐに別の場面が映し出される。
 藤花は、頭を床につけ、尻を高く上げる格好で手足を拘束されていた。両膝の裏にバーを通され、そのバーに手枷へ繋がる鎖を固定した、厳重な拘束。さっきのバスルームにしてもそうだが、よほど藤花に暴れられるのが怖いとみえる。
 その藤花を、2人の男が見下ろしていた。
 最初の映像に映っていたチンピラ同様、ガラの悪い2人だ。
 1人は肩にドクロのタトゥーを入れていて、タンクトップで上半身の筋肉とタトゥーをアピールしている。もう1人は唇にピアスを開け、アゴ髭を蓄え、ダボダボの迷彩ズボンで下半身を大きく見せている。その見た目は、威圧的の一言に尽きた。
 まずは刺青男が屈み込み、藤花の尻肉を親指で割る。
『お、シャワ浣でちっと拡がってんな。ヒロキもやるじゃん』
 刺青男が笑みを浮かべる中、迷彩ズボンの男がガラストレーから氷をつまみ上げた。かなり大粒の氷だ。
『なっ! ま、まさか……それを入れる気か……!?』
 藤花が目を見開く。どう見ても無理のある氷のサイズに、動揺を隠せない様子だ。
『オウ。なに、やっちまえば簡単よ』
 迷彩ズボンの男はそう言いつつ、指の中で氷を転がす。
『こうして指の熱で表面を溶かしゃあ、粘膜に張りつく心配もねぇ。解けかけた氷面の水は、この世で最高の潤滑剤だ』
 節ばった指が氷を弾き、刺青男の手中にパスを通した。刺青男は手首を振って水気を切り、氷を指に挟みなおす。
『おら、ケツ穴にグッと力入れろ。の方が入りやすいからよ』
 刺青男の親指が、氷を菊の輪に押し込んでいく。
『ぐっ! や、やめろ、無茶だ! 入…らない……っ!!』
 藤花から苦しそうな声が漏れた。口調こそ男のそれだが、声はやはり女の子だ。恐怖で震えているぶん、余計に。
『バーカ、もう8割方が入ってんだよ。後はお前ェがケツ穴締めて、腸ン中に収めりゃ終いだ』
 刺青男はそう言って、親指の腹を肛門内に押し込む。
『ぐううっ!!』
 ここでカメラが側方に回り、藤花の横顔を捉えた。目を瞑り、歯を食いしばり、かなり苦しそうだ。だが、それはほんの数秒のこと。
『……あ……?』
 次第にその表情筋は弛み、戸惑いがちに背後を窺う。
『どうだ、大したことなかったろ? 氷ってなぁ、ケツ穴拡げんのにえれぇ便利でよ。滑りがいいぶん、未拡張でもスルッと入っちまうが、硬ぇから圧迫感が半端ねぇ。でもって最高なのが、腸のあったかさで溶けて液体になる事よ。なんせ、ケツに一番負担のかかる“固形物をひり出す”って動作がいらねぇんだからな』
 男はそう解説しつつ、2つ目の氷を肛門に押し当てる。
『ぐっ……う゛!!』
『いい声出んなオイ。後は楽っつっても、入れる時ゃあ苦しいもんなぁ? ケツ穴が裂けるだとか、括約筋が切れるだとか、大袈裟な奴だと骨盤が軋むなんて戯言抜かすガキもいるぐれぇだ。お前はなんて音を上げるんだ、ええ剣道女。 竹刀でアナニーした時よりイタイですぅ~ってか!?』
『ギャハハハッ、いいねぇ竹刀アナニー! そりゃ、オトコ女の思春期にあんな棒がありゃ、ケツにも入れてみようってもんだわなぁ。それか、親父に折檻でぶっ込まれたとかよ!!』
 刺青男が茶化し、迷彩ズボンが手を叩いて笑う。
『……言葉を慎め、下衆が!』
 竹刀と父を引き合いに出されたのが、逆鱗に触れたのか。藤花は右頬を地面につけたまま、凄まじい眼光で迷彩ズボンを睨み上げる。
『お前超睨まれてんじゃん。つか、こっちにも殺気向けてる?こいつ』
 刺青男が鼻で笑い、迷彩ズボンの男に手招きのような動作をする。
『ああ、生意気な眼ェしてやがんぜ。よっぽどイジメてほしいみてぇだ』
 迷彩ズボンの男は、そう言って氷入りのガラストレーを蹴飛ばした。刺青男がそのトレーを受け取り、氷を掴み上げる。一気に、3個ほどを。
『うーし、んじゃ望み通りヤキ入れてやんよ。つっても、冷てぇヤキだけどなあ!』
 刺青男の声は、恫喝する声色そのものだ。そして奴の殴りダコのある手は、氷を次々に藤花の肛門へと押し込みはじめた。桜色の蕾が小さく盛り上がり、開いては閉じる。
『う゛、あ゛! ……く、うう゛!!』
『もっと声出せよ。出せねぇってんなら、出るようにしてやろうか? おらズッポンズッポン……どんどん入ってくぜえ!!』
 刺青男に遠慮はない。指の力に任せて、立て続けに氷を押し込んでいく。
『う、うう゛っく、ぁ、あ゛あ゛……!!』
 藤花は、必死に耐えていた。手枷で拘束された手を床につき、肘をぶるぶると震わせて。


 調教師達によるアナル開発は、悪意に満ちていた。少しでも藤花の羞恥心を煽り、無様な反応を引き出そうと計算し尽くしているように。
 例えば次の映像では、藤花は『マングリ返し』の格好で拘束されたまま、延々と尻穴を弄られていた。それも、ローションボトルの中身を直腸内に流し込んだ上で、時に激しく、時にゆったりと、円を描くように二本指でかき混ぜるやり口だ。こんな事をやられれば、当然腸内を経たローションが顔や乳房に浴びせかかる。普通の人間なら、激しく顔を振って半狂乱になるような状況。
 その次の映像では、藤花は肘掛けと背もたれのある椅子に大股開きで拘束されたまま、やはり尻穴を弄りまわされていた。用いられているのは、指とアナル用のディルドー。そして途中からは、何らかの薬液を肛門内に注ぎ込み、その上で指や道具の出し入れを続けて、藤花に恥を掻かせようともしていた。
 ところが。
 藤花は、このどちらの責めに対しても、大きく取り乱すことなく耐えていた。もちろん生理的な反応はある。指責めが続いたり、薬液の効果で腸の蠕動が始まると、手足の指が握り込まれる。息は次第に荒くなり、汗も全身に浮き出てくる。それでも彼女は声を漏らさず、じっと調教師の顔を睨みつけていた。大股開きのまま排便という生き恥を晒し、調教師と客から心無い罵声を浴びた時でさえ。
 まさに鋼の心。俺は映像を見ながら感服した。映像内で繰り返される『オトコ女』とはまったく違う意味で、彼女は大和男児の魂を持っていると感じた。

 だが、そんな鋼の心が発揮できるのも、あくまで意識があるうちだけだ。彼女は夜通し嬲られているようだった。いかに剣術で鍛えていようと、いずれは体力の限界がやってくる。恥辱責めで疲弊していれば尚更だ。
 モニター2の最後の映像は、藤花が緩く湾曲した台の上にうつ伏せで寝かされ、四肢を台の根元に括りつけられるシーンから始まった。
 そうして身動きを封じられた彼女のアナルを、一人の調教師が割りひらく。
『へへへ……たまんねぇな。クールJKのケツマンコか』
 そいつは身の毛がよだつような笑みを浮かべながら、指で露出させた蕾に吸い付いた。
『!!』
 藤花はその一瞬だけ身を強張らせたが、その後は持ち前の精神力でもって耐える。ただし、最初の内だけだった。
 ここで、左上に<早送り>というメッセージが表示され、右上で経過時間がカウントされはじめた。3分、4分、5分……と時間が進み、12分を超えた頃。映像内の藤花の後頭部が、がくっと下がった。かろうじて背中に乗っていたポニーテールも、その衝撃で肩を滑り、耳を覆うように垂れ落ちる。眠ったんだとはっきり判る脱力ぶりだ。
 藤花が“落ちて”からも、肛門を舐る男は動きを止めない。様子を伺うために顔を上げることさえせず、肛門を舐ることだけに専心している。
 よくよく注視してみると、そいつの舌使いは恐ろしく巧みだった。窄まりに存在する皺の一本一本、およびその合間に至るまでを掃除するがごとく、尖った舌先を丹念に往復させる。あるいは舌を平らにし、輪全体をべろりと舐め回す。時には尖らせた舌で浅く肛門入口をくすぐったり、時には驚くほど深くまで捻じ込むこともする。肛門に唾液が溜まってくれば、蕎麦でも啜るように、ずずーっと吸い尽くす。これを、一秒も休まずにずっと続けているんだ。
 俺にアナルを舐められた経験はない。それでも、あの舌使いがとんでもなく気持ちがいいのは容易に想像できてしまう。あれを受けて射精せずにいられる自信は、正直ない。
 そして気持ちがいいのは、藤花であっても同じようだ。

『……うあ…!』
 『…う゛あっ……』

 本当に、本当に小さな呻きが、藤花の口の辺りから漏れ聞こえる。彼女のうなじは依然として斜め下を向いているから、意識が戻ってはいないようだ。つまり、あれは無意識の喘ぎ。
『くふふっ……!』
 ここでついに、アナルを舐めしゃぶっていた男が笑みを浮かべる。しかし、それだけだ。ほんの一瞬嬉しそうにしただけで、また尻穴責めに没頭しはじめる。まさに狂気。そして、その生暖かく弾力のある狂気に晒されつづける藤花には、着実に快感が堪っていく。
 ぐちゅぐちゅ、ぴちゃぴちゃという水音と、藤花の喘ぎだけが繰り返される空間。それを見守るギャラリーは、少ないとはいえ何人かはいるようだ。しかし意地の悪い事に、誰も野次を飛ばさない。面白そうに状況を見守るばかり。騒がしくなって藤花が目を覚ませば、また肛門の快楽に抗えるだろうに。そうはならなかった。

『……あ、うあ…… ぅうう…あぁぁ……!
  はぁ、っう、は…く、ぅあ……あふゅっ……ううあ……っ!!』

 藤花の上げる声は、ますます艶めいてきている。女が──いや人間が、本当に気持ちいい時に出す声という感じだ。それこそ男が心ならずも射精してしまう時のような、か細く、情けなく、心地良い響きがそこにはあった。
 そしてこの段階になって、とうとう藤花の肉体までもが主を裏切りはじめた。まずは、びくっびくっと腰が跳ね、腰と肩に震えとなって伝播する。背筋には深々と溝が刻まれ、肩甲骨まわりに複雑な隆起ができ、剣道で鍛え上げられた背中の表情をいよいよ彫りの深いものにしていく。
『ほぉう……!』
『……すごいカラダですな、改めて』
『いやぁ、エロい……!』
 静まり返っていたギャラリーさえ、その肉体美を目の当たりにして溜め息を漏らすほどだった。
 一体どんな種類の、どんな深さの快感を得れば、ああも身体が反応するのか。それを知る術はない。モニター2はこの直後、継続する世界を淡々と映しながら、いきなり暗転してしまう。


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 そう。メモにあった通り、この映像はあくまでダイジェストなんだ。起きた事のすべてが、余すところなく記録されているわけじゃない。
 俺は、食い入るように見つめていたモニターから顔を離しつつ、そんな当たり前の事実を思い出していた。
 そして、映像と写真はまだまだ存在する。俺がいま目を通したのは、あくまで『1日目』の記録なんだから。



                     ※



 会員に限り無料の自販機で喉を潤し、部屋中央のソファで気持ちを鎮めてから、『2日目』エリアへと足を運ぶ。
 若干の人だかりに紛れて身を乗り出すと、ちょうどモニター3で映像が再生されている最中だった。


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 モニター3の映像は、重苦しい羽音と共に始まった。
 電気マッサージ器の駆動音だ。
 映像では、まず秘部にマッサージ器を押し当てられる藤花の様子が大写しになっていた。ボンデージスーツというんだろうか、前面が編み上げになった黒いレオタードのようなものを着せられている。両足も膝上までストッキング状のもので覆われているから、露出度はこれまでの動画より格段に低い。だが、肝心の乳房と股の部分に大きな穴が開いているせいで、むしろ全裸よりも性的な印象が強まっていた。
『……くっ、はっ、はっ……。ああ、はっ、は、ぁ……お゛』
 もうかなりの時間、責めを受け続けているんだろう。がに股の格好をとる藤花の内腿には、とろとろと愛液があふれていた。太股から下もプルプルと震えているし、引き締まった腹筋もうっすらと浮き出ている。
 そんな状態でも、やはり藤花に逃げる術はない。意外に細い彼女の両腕は、頭後ろに回されたまま、おそらく縛り上げられている。不完全な菱形を作る脚は、その両足首を鎖でどこかに繋がれている。ゆえに彼女は、どれほど脚が震えようとも、衆目の中で直立を続けるしかない。
 女の部分に押し当てられるマッサージ器も、いやらしいテクニックで藤花を追い込んでいた。やや浮いた形でソフトにクリトリスへ触れていたかと思えば、大雑把な感じで割れ目全体に押し付けられる事もある。あるいは、すっかり紅く充血した肉ビラを左右に押しのけるようにして、割れ目へ沈み込むことも。特に致命的な快感をもたらすのは、割れ目をなぞりつつ下からクリトリスを押し上げる形のようで、これをやられた時には藤花の反応がすごい。
『んぐうぅっ!!!』
 それまで必死に声を殺していた藤花も、この時ばかりははっきりとした呻きを上げた。太股の筋肉が絞り込まれるように変形し、上下に震える。足首の鎖が音を立てる。割れ目から愛液が垂れ落ち、足元に広がる液溜まりに弾けていく。イッたんだ──子供でもそう解るぐらい、明白な反応。

 しかもこの責めには、もう一つ意地の悪い点がある。
『はっ、またかよ。これで何度目だ? オトコ女の分際で、メス気取ってマンコ逝きしてんじゃねーよ!』
 調教師がそう野次を飛ばし、項垂れ気味だった藤花の顔を上げさせる。キリリとした口の端からは、透明な涎が垂れていた。
『おーお、また睨みやがる。結構なこったが、その力はケツに向けた方がいいんじゃねーか? ちっと抜けてきてんぞ、マンコで逝くたびによ。散々言ってるが、落としたらお仕置きだぜ』
 その言葉で目を凝らせば、秘部を覆うマッサージ器の奥には、確かにバイブのグリップ部分が見える。マッサージ器の重低音が大きすぎて、駆動音は聴こえない。しかしグリップ部分が円を描くように蠢いている以上、先端部は藤花の腸内をかき回しているんだろう。
 舌での舐りであられもない声を発する藤花のこと、肛門の感度は人並み以上にある。腸のバイブだけでも息を荒げさせるに充分なはずだ。その上で秘部にもマッサージ器責めとは、どれだけの速度で余裕が剥がれてしまうことか。
『貴様ら……俺の尻穴を拡げたいのか、締めさせたいのか、どっちなんだ』
 藤花が調教師を睨みながら問う。喋ると、息が上がっているのがよくわかる。
『どっちもだ。拡げて、締めさせて、その繰り返しでケツ穴をほぐすんだよ。ついでにアナル性感も目覚めさせてやる。ケツだけでイけるようにな。嬉しいだろ、俺女?』
 調教師はそう煽りながら、マッサージ器の角度を変え、睨む藤花の顔を歪ませる。
 そして、責めはこれだけじゃない。

『うし、10分だ。スクワット始め!』
 ストップウォッチを手にした一人が、タイマーを止めつつ叫ぶ。藤花の瞳が大きさを増した。
『おー、もうそんな時間か。かぁっ、腕が乳酸でパンパンだぜ』
 マッサージ器を押し当てていた男も、一旦機械のスイッチを切り、下げた腕を揉みはじめる。リラックスする男の前で、いよいよ強張った雰囲気になるのが藤花だ。ぽたっ、ぽたっ、と割れ目から雫を垂らしつつ、唇を噛みしめている。
『さっさとやれや!!』
 巻き舌の怒声が飛ぶと、藤花はさらに唇に深く歯を立ててから、ゆっくりと腰を下ろす。
『ハイいーち、にーい! おっせぇなオイ、剣術道場で鍛えてんじゃねぇのかよ。それでそのザマか?』
『はっ。女とハメてるばっかの俺のが、まだ足腰強ぇんじゃね?』
 チンピラ連中は野次を飛ばし、客の笑い声が続く。好き勝手言うもんだ。何度も絶頂させ、下半身の力を奪ったのは連中だというのに。
『……はっ、はっ!……ぐ、くっ…は、はあっ……!!』
 藤花は必死にスクワットを繰り返す。時おり身体が前後に揺れるが、その時は歯をがっちりと噛み合わせ、強引に上下運動を続行する。眉を顰め、肌の露出した部分から大粒の汗を垂らし、荒い息を吐きながら。

『大した体幹だよ。あれだけイカされた直後に、ここまで綺麗なスクワットをやるかね』
『しかも、膝が直角になるまで腰を深く落としてね。生真面目なんでしょうなあ。スクワットといえばこう、という信念が見て取れますよ』
『所詮、見世物のショーなのにねぇ。ご覧なさいよ、見事な乳房が上下に揺れて……』
『ボンデージはやはりいいな。隠れている部分があればこそ、乳房の印象が際立つ。もっとも、あの娘なら全裸でも見応えがあるがね』
『すごいボリューム感ですねぇ、Fカップもありえそうな。まったく、神様もいい趣味をお持ちですよ。男を気取る身に、街ゆく女の大多数より優れたスタイルを与えるんですから』
『や、まったく。身体も垂涎モノですが、顔つきもまた良いですなあ。体力のない子にこの責めをやらせれば、ゼエゼエとみっともなく喘ぎ、涙や鼻水まみれのブザイク面を晒すものです。ところがあの娘は、汗こそ凄いが、まだまだキリリとした表情を保っている。まさに珠玉の逸品だ』
『たしかに。“蒼蘭の剣姫”と持て囃されるだけのことはありますな』

 客は、藤花の肉体に無遠慮な視線を注ぎつつ、欲望まみれの言葉を口にする。藤花は前を向いて黙々とスクワットをこなしていたが、その皺の寄った眉根からは、下卑た人間に対する嫌悪感がありありと見てとれた。

 がに股でのマッサージ器責めと強制スクワットの映像は、編集で早送りされつつ、さらに2回繰り返された。映像右上に表示されている経過時間は、実に42分強。それだけの時間、絶頂と屈伸運動を交えて責め抜かれれば、どんなフィジカルエリートにも限界が来る。
 俺が観た限りでも、4巡目の『がに股電マ責め』。それを受ける藤花の姿は、見るも無惨だった。
『はっ、はひっ、んはあ、は……お、おぉ゛っ、はっ、お゛……!!』
 武道家らしからぬ、完全に乱れた息。そこに時おり、「お」行の喘ぎが混じる。本当に余裕がないときにヒトが発する息と声だ。
 映像の最初では、足で菱形を作りながら、重心をかろうじて身の中心に置いていた藤花の肉体。それももうガタガタだった。
 脚の菱形は崩れ、左右バラバラに曲げられたまま、病的に痙攣しつづける。
 『電マ』を押し当てられる割れ目からは、水道の蛇口を押さえた時のように水飛沫が飛び散り、ぴしゃぴしゃと液溜まりに音を立てる。
 そして腰は、間断なく与えられる快感から逃れようとするかのように、前後に揺れつづけていた。
『はっ、腰がカクカク動きまくってんぜぇ剣姫サマよ。あんまり俺らの責めがタルいんで、素振りでも始めちまったか?』
 マッサージ器を握る男がそう茶化して、場の笑いを誘う。剣術に絡めた揶揄は、藤花がもっとも嫌うところだ。
『…………!!』
 藤花の口がパクパクと開閉する。あるいはこの極限下でもなお、彼女は何かしらの反論を試みていたのかもしれない。しかし、その動きを悟ったのか、ただの偶然か。マッサージ器の軌跡はこの時、藤花の弱点ルートをなぞっていた。割れ目をなぞりつつ、下からクリトリスを押し上げる、あれだ。


『 んンおお゛ぉ゛ぉ゛っ!!! 』


 すごい声が、映像内に響き渡った。俺の視界の端で、隣のエリアの連中がこっちを向いたぐらいに。
 藤花は誇り高き『大和男児』だ。他人から嘲笑われることを良しとせず、声だって限界まで我慢する。その藤花の喉からそんな声が漏れたというのは、大変なことだ。
 奇声からわずか一瞬の後、藤花は、内で何かが爆発したような有様を晒していた。
 伸びやかな脚は、奇跡的にまた菱形を作り……ただし、異常なほどの爪先立ちになっている。指の先だけがかろうじて床に接している状態でも直立を保てるあたりは、さすが足で地を噛む古流武術の手練れというところか。
 しかしその手練れの顔は、救いを求めるように天を仰ぎ、白い喉を蠢かしながら涎を伝わせるばかり。
 そして、彼女の女の象徴からは、ついに透明な奔流があふれ出す。愛液が飛沫きとはまるで量が違う、明らかな失禁だ。
『はははっ、とうとう漏らしおったわ!!』
『あーあ、あんなヒドイ声だして、オシッコまで漏らして。あれのどこが“天才女子高生剣客”よ』
 悪意ある謗りの中、事態はさらに悪くなる。
 絶望的なまでに深い絶頂は、うら若い天才剣士に極度の緊張を与え、その後に究極の弛緩をもたらした。
 藤花の足の合間で、バイブの取っ手が長さを増す。それは重力に引かれ、ずるりと抜け……液溜まりの中に存在感を示した。ばしゃあっ、という音。蟲のようにのたくるピンク色の本体。外へ出たことで、ようやくマイクに拾われるようになった、ウィンウィンという駆動音。これだけの条件が揃っていて、気付かれないということはありえない。
『おいおいおい、バイブが抜けちゃったじゃねぇかよ!』
『ケツの穴締めてろっつったよなぁ。ったく……んなにお仕置きしてほしいのかよ、このドマゾ野郎が!』
 調教師が大声を張り上げ、客が多いに笑う。
『………殺して、やる……。貴様ら、全、員……』
 首を戻した藤花は、目頭から涙を伝わせつつ、呪詛のように呟いた。だがそれすら、絶対的優位にいる男共は笑いのネタにしてしまう。
『へぇ。そんだけ足ガクガクで、俺らが殺れるわけ? 面白ぇじゃん。んじゃ、ちっと拘束解いてやっからよ、殺れそうなら殺れや。あ、お客さんらはケガしちゃコトなんで、悪いっスけど端に避難しといてもらえます?』
 チンピラ風の男がそう言って、藤花の足枷を外しにかかる。同時に別の調教師も、藤花の頭後ろで手枷を外しはじめた。どっちも喧嘩上等な雰囲気で、岩のような上腕筋はベンチプレスの80キロを軽々と上げそうだ。荒事に自信があるからこそ、いざ藤花が暴れても対処できると考えているんだろう。

 藤花は、腰丈の台に肘をつき、尻を突き出す格好を取らされる。手足の枷こそなくなったが、脚は痙攣が続いていて、台に体重を預けているのが精一杯という様子だ。
『おー、結構拡がってんな』
『わりかしデケェからな、あの3号バイブ』
 藤花の肛門を覗きこみながら、男2人が笑う。床でのたくっているピンクのバイブは、確かに前の動画で使われていたアナル用ディルドーよりサイズが上だ。男の逸物よりは細そうだが、少なくとも直径3センチ。長さとくれば、20センチ弱はありそうだ。直腸の長さは15~20cm程度だというから、ほぼ奥まで届いていたに違いない。それで腸内をかき回されるのは、けして無視できないものだったはずだ。
『さて。んじゃ、ダメ押しで拡げてやんよ』
 調教師はそう言って、藤花の寄りかかっている台の下を観音開きにする。中から取り出されたのは、フルーツ盛りを思わせる皿。たしかにバナナやミニトマトなども見えるが、盛られているのはフルーツばかりじゃない。カラフルなスーパーボールや、棒状のゼリーなども見て取れる。共通点は、『丸い』か『棒状であること』。この時点で、俺は男連中のやることに察しがついてしまう。そしてそれは、おそらく藤花も同じだろう。
『キレイだろ。たっぷりと食わせてやんぜ。てめぇのケツになあ!』
 案の定、調教師2人はそう宣言し、並びの悪い歯を覗かせた。

 そして、異物挿入が始まった。
 男共の性格は本当に悪く、いちいち挿入するものを藤花の顔の横まで持っていき、視認させてから肛門へ押し当てる。
『次はこいつだ。美味そうだろ?』
『……ふざけるな。食い物を粗末にするなと、親から学ばなかったのか?』
『ん?ああ、習ってねぇよ。俺がオフクロから教わったのはよぉ、この世は弱肉強食だって現実だけだ。ちょうど今、テメェに教え込んでるみてぇによ!』
 調教師はそう言って、ミニトマトを肛門へと押し込んでいく。アップで映される肛門の少し下には、なおもガクガクと揺れる膝が映りこんでいた。
『ぐっ……!』
 挿入を受け、藤花から呻きが漏れる。
『ほら、もう一丁。まだ食えんだろ』
 男に容赦はなく、次々と紅い実を詰め込んでいく。そして限界と見れば、肛門下に差し出した洗面器へと『排泄』させる。その繰り返しだ。入れるものがスーパーボールになっても、この流れは一切変わらない。
 丸いものはひたすらに押し込む一方で、棒状のものとなれば少し違う。
『おら、ケツで千切ってみろよ』
 調教師が尻肉を叩きながら命じる。その目が捉える藤花の肛門には、深々とバナナが突き刺さっていた。
『……ぐ、ううっ……!!』
 藤花は口惜しそうな声を出すが、結局は調教師の言葉に従うしかない。引き締まった尻の輪郭がさらにはっきりし、肛門が内に閉じる。白いバナナの果肉がひしゃげ、細まり、ついに千切れて洗面器へと落下していく。
『すげぇすげぇ、切りやがった! さすが剣道やってる女はよく締まるな』
『おお。これ案外、上手くできる女って少ねぇんだよな。千切れそうってトコまではいっても、〆きれねぇ。いっつも最後にゃ、俺らで千切ってやってるもんな』
『そうそう。セルフで切れる女って、オレ初めて見たかも』
『しかし、こいつの括約筋ハンパねぇな。締まんのもそうだが、伸びもいいだろ。普通なら、3号バイブ突っ込むのに二週間はかかんのに、昨日の今日でいきなりいけたしよ』
 珍しく誉めそやす2人だが、その表情に爽やかさはない。
『ああ。こりゃ、ご褒美やんねーとな!』
 明らかな悪意を孕んだ言葉が、一人から発される。
『……だな』
 相方も、何かを察した様子で同調する。
『今度は、なにを……』
 嫌な予感がしたのか、藤花が後ろを見ようとするが、調教師の片方がその顔を掴んだ。
『まあ待てよ。お楽しみだ』
 言い聞かせるようにそう言い、視界を前に戻させる。一方、俯瞰で見る俺には、全てが見えた。もう一人が、一旦映像の外に姿を消し、数秒後、何かを手にして戻ってくる。
 根元だけが白く、それ以外が畳の色をした棒状のもの──竹刀だ。剣術道場で生まれ育った藤花にとって、格別の思い入れがあるに違いないそれを、調教師は満面の笑みで肛門へと近づける。
『さーて、いくぜ。安心しな、太さはねぇ。たしか規格じゃ、直径3センチぐらいだったか。だが、この先っちょの革がよ……ちっと、引っ掛かるかもなあ』
『お、おい、本当に何を入れるつもりだ!! 規格だとか、革だとか……!』
 調教師の言葉に、藤花の戸惑いが増す。その様子を存分に楽しんでから、調教師は竹刀を推し進めた。もう一人が手で拡げた肛門へと。ピンク色をした肛門が内に凹み、革に包まれた竹刀の先が入り込んでいく。相当な抵抗と共に。
『あぐああっ、い、痛いいたいっ!! なんだ、一体これは何だっ!?』
 上半身を反らせて叫ぶ藤花。その耳元に、調教師がにやけ顔を近づける。
『判らねぇのか? こいつに関しちゃお前の方が、俺らよりよっぽど詳しいはずだぜ。なんせ、ランドセル背負うより前から、毎日毎日握ってた相棒なんだからよ』
 その一言で、藤花の身体がぴたりと止まった。
『…………な、に…………?』
 まさに、呆然とした感じの声。調教師2人の笑みが深まる。竹刀は、藤花にとって大切なもの。それを用いた責めは、彼女の心に決定的な打撃を与えることだろう。そう確信しているかのようだった。
 だが結論を言えば、奴らの狙いは的外れだった。
 ごく一般的な女子高生なら、大事なイヤリングを穢されて泣き崩れることもあるだろう。恐らくこの調教師共も、それを期待していたに違いない。だが、藤花はそんなタマじゃない。誇り高い彼女にとって、大切なものを侮辱される事は、絶望ではなく怒りのスイッチなんだ。竹刀を責め具として使ったのは、最大の悪手。藤花を押さえもせず余裕をかます男2人は、この直後、甘い読みのツケを払うことになる。

『ぐおっ!?』
 いきなり、呻き声が上がった。映像の中では、竹刀を握っていた調教師の身体がくの字に曲がっている。その屈強な身体が左によろけると、黒ストッキングを履いた藤花の足裏が現れる。どうやら後ろ蹴りを放ったらしい。
 責め手が吹き飛び、竹刀は藤花の肛門に突き刺さったまま上下に揺れる。その揺れを、藤花の手が止めた。そして一気に引き抜くと、宙に放って、今度は柄を手中に収める。
『うっ、こいつ!』
 煙草を咥えるところだった左側の男が、慌てて藤花を押さえ込もうとする。その動きは、剣術の達人にとって、どれほど遅く感じられただろう。
『っしぇえいッ!!』
 鋭い掛け声と共に、竹刀が突き出される。先革が男の腹筋にめり込み、鍛え上げられた身体がよろめく。
『がッ!……げぼっ、ごぼっ』
 悲鳴は短かった。だがダメージは相当なものらしく、男は数歩後退した後、膝から崩れ落ちて嘔吐する。
 それを見届けるや、藤花は竹刀を正眼に構え直した。切っ先で征伐を宣言するのは、最初に蹴り飛ばした男だ。奴は虚をつかれたのか、相方がやられるのを静観してしまっていた。
『……なめてんじゃねぇぞ、このアマッ!!』
 一対一の状況となり、男は吼えた。そして苦し紛れに、手近なバイブを拾って投げる。藤花はそれを冷静にかわすと、踏み込んだ。
 調教部屋の床は、木じゃない。コンクリートか、タイルか、リノリウムか、いずれにせよ硬質のものだ。おまけに藤花は靴を履いておらず、黒ストッキングのようなもので素足を覆っているのみ。それなのに、音がした。ドンッという、大地震でも起きたような音。
『この…………クズがああぁっ!!!』
 その雄叫びと共に、竹刀が振るわれる。俺はその姿に見入っていた。瞬きもせずに、竹刀を振る藤花を見ていた。でも結局、『打つ』瞬間は見えなかった。竹刀が上段に振り上げられ、ほんの少し前に倒れ、次の瞬間にはまた上段に戻っていた。まるでビデオの巻き戻しだ。それでも、打ったのは間違いない。
『ぐあっ!!』
 ビシイッという音と共に悲鳴が上がり、喧嘩自慢の男が後ろに倒れこむ。完全に白目を剥いたまま。
 そして藤花は、次にカメラに向き直った。ここで急に手ブレがひどくなり、ぐるりと壁を映しながら、180度後ろを向く。どうやら撮影役が逃げはじめたらしい。それでも逃げきれなかったのか、バシッと音がし、映像が横向き……つまり床を左側に映したまま動かなくなる。
『おい、何があった!?』
 映像の最奥で扉が開き、数人が飛び込んできた。ほとんど半裸に近い調教師や客とは違い、スーツに身を包んだ大柄な男達だ。奴らは多少腕が立ち、だからこそ状況を正確に把握できたんだろう。カメラの後方……おそらく竹刀を手にした藤花の姿を見て、呆然と立ち尽くす。客達がそんな彼らに縋りつき、それまでの横柄な態度が嘘のように頭を下げている。
『今さら命乞いか、恥を知れ下衆共っ!!』
 部屋にその怒声が響きわたり、物音が一気に騒がしくなり……ここで映像が暗転する。

『以後、30分以上に及ぶ乱闘。
 負傷者:客4名、調教係2名、セキュリティ17名。
 プレイと無関係なため、記録省略』

 白文字のテロップでそう表示され、数秒後、映像が再開する。
 そこに映っていたのは、ボロボロになった藤花の姿だった。
 ボンデージ衣装とストッキングは破れ、見るも無惨に成り果てている。さらに彼女は、右手と右足首を一纏めにして吊られてもいた。Y字バランスを強要される格好、といえば伝わりやすいか。
 その不自然な体勢で、また秘部へのマッサージ器責めが施されているようだった。しかも今度は、肛門に入っているのが、バイブじゃない。竹刀が、中ほどまで深々と突っ込まれ、客の手でグリグリと捻られている。
『はぐうっ、う゛っ…んんん゛お゛、ふうっ、はぁあおおおお゛っ!!』
 藤花から漏れる呻きは、ますます余裕のないものになっていた。
『これで何十回連続のマンコイキだ、クソ女?』
『ほら、ケツもキモチイイだろ。大好きな竹刀だぜ!!』
 責めているのは、調教師と客の両方だ。どちらも体のどこかに手当ての跡がある。怒り狂った藤花から逆襲を受けた証だ。
『おいおい、また漏らしてんのかよお前。ユッルい尿道だなオイ!!』
 ガクガクと震える藤花の割れ目から、失禁が起きたようだ。また、という言葉を聞く限り、何度も繰り返しているらしい。
 失禁を避けて男が身を引くと、藤花の割れ目が丸写しになる。うっすらと生えた陰毛はマッサージ器に押し潰され、割れ目の形は崩れ、厚ぼったい唇のように充血しきっている。そこに、いきなり一人の客が吸い付いた。
『へへっ、すげぇマン汁の量だ。しかもうめぇ。電マのせいで焦げたような味がちと邪魔だが、まろみがあって最高だぜ。ハネッ返りのクソガキのくせに、なんでこんなにマン汁が美味ぇんだよ、ええ!?』
 おぞましい言葉を発しながら、ずずーっと音を立てて藤花の愛液を啜る変態親父。藤花は全身を細かに震わせながら、それを睨み下ろしていた。もし口が利けたなら、どれほどの罵声が飛び出したことだろう。もし彼女の口が、ビットギャグによって封じられていなければ。
『客にまで手ェ出したんだ。たっぷりと反省させてやるぜ』
 調教師はそう言って、がま口のような鞄を開く。その中には、様々な道具がぎっしりと詰め込まれていた。
『う゛うぅぅ……ッ!!!』
 藤花はそれを見て呻いた。その胸を支配するのは、怒りか、恐怖か。気にはなるが、答えは得られない。モニター3の映像はここで暗転し、最初に戻ってしまったから。


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 モニター3の映像が終わり、目線を左に移す。そこにはショーケースがあった。ショーケースには、その日の調教に関係する道具や資料などが展示されているようだ。この展示物もAコース、Bコースで分かれているが、2日目の時点でその差は歴然だった。
 Aコースの方に並ぶ道具は、数本の綿棒や、真ん中あたりに赤いマーカーが塗られ、『←2日目 ここまで』と添え書きされた極細のアナルディルドー。
 Bコースの方に並ぶ道具は、直径約4センチ、長さ20センチ強の蛇のようなバイブと、剣道で使われる本格的な竹刀だ。そして竹刀の方は、先端から三分の一ほどの場所が汚れている。伝い落ちる形で固まった黄褐色と、先端にこびりつくほんの少しの赤。俺としては、これが映像内の『実物』ではない事を祈るばかりだ。
 竹刀が発する声なきメッセージから逃れるように、俺はショーケースの左に逃れた。
『3日目』のプレートが目に入る。ここでもやはりAコースとBコースの区別があり、俺の視線はBコース側の写真に吸い寄せられた。

 周りに人さえいなければ、きっと俺は、頭を抱えて蹲っていただろう。

 そこに貼られた写真は、あくまで静的なものだ。音楽で脅かすわけでもなく、おどろおどろしい電子ドラッグの類という訳でもない。それでも、事実をただ淡々と記録した物は、時として何より残酷だ。
 この日の写真は、6枚あった。6つの事実が、葉書サイズの写真に写しこまれていた。
 1枚目、左列最上段。藤花が仰向けに拘束され、両脚を真上に持ち上げる体勢を取らされたまま、男と腰を密着させている写真。
 2枚目、右列最上段。アップで撮られた尻肉の合間に、男の怒張が深々と入り込んでいる写真。
 3枚目、左列中央。鷲掴みにされた尻肉と、白濁を滴らせる半勃起状態の逸物の写真。
 4枚目、右列中央。肛門に毛深い中指が挿入され、背中が弓なりに反っている写真。
 5枚目、左列最下段。男に跨った藤花が、乳房を揺らしながら歯を食いしばっている写真。
 6枚目、右列最下段。鼻フックで吊られ、口に漏斗を嵌め込まれた巨乳女が、口内に男の尿を注がれている写真。

 楽観的に考えれば、なんということはない。1枚目~4枚目は被写体の顔が映っておらず、つまり藤花の写真である確証はない。5枚目は顔こそ映っているが、肝心の結合部は入っておらず、ただのスキンシップかもしれない。6枚目に至っては、鼻の穴が三方向から引き絞られているせいで、もはや誰なのかの判別すら不可能だ。よって、ショックを受ける必要などない。
 ……そんな考えができるなら、生きるのがどれほど楽だろう。
 本当は、気付いている。写っているのは藤花だ。色白な肌、無駄なく引き締まった筋肉、安産型の腰、豊かな胸。3つの映像で散々目にしたそれを、今さら見紛うはずもない。

 どうやら彼女は、3日目にして早くも肛門を犯されたらしい。2枚目の写真はまさに後孔への挿入シーンを捉えたものだが、写真には複数人の足が映りこんでいる。まず輪姦されたと見て間違いない。
 Aコースの5人は、まだソフトSM程度のプレイしかしていないようだ。藤花だけが、ひたすらにハードな調教を繰り返されている。優秀な括約筋を持っているそうだが、こんなペースじゃ外人でも音を上げるだろう。
 あるいは、それが狙いなのか。反骨心の強すぎる彼女に負担をかけて、参らせるための。

 この『3日目』のエリアにも、4と番号の振られたモニターが置かれている。ビデオを自分で再生するのと違い、垂れ流しのモニターは心の準備ができないから辛い。俺は深呼吸でもしようとしたが、結局は怖いもの見たさの心が勝り、モニターを覗き込んでしまう。


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 藤花は、四つ足で這う格好を取らされたまま、前後から犯されていた。
 AVでよく見かける前後からの3Pだが、よく見れば普通でないことがわかる。
 まず、床についた藤花の手。その両手首は、きつめに縄で縛られている。絶対にほどけないように。そして、手をついて這う以外の姿勢ができないように。
 床にも異常が見つかった。
 後ろから犯される藤花の足元には、中身を搾り出されたイチジクの実のような容器が3つ転がっている。これまでの責めと転がっている場所を鑑みるに、浣腸液の容れ物だろう。どうやらそれを注入したまま、アナルを犯されているらしい。
 さらに注意を向ければ、その推理の正しさが証明された。
 這う格好の藤花の腹の辺りから、ぐるる、ぐぉるるる、と下痢の時にしか聞かない音がしている。
 ペニスが抜き差しされる結合部分から、ぶちゅっ、ぶりいっ、と水気たっぷりの音がしている。
 そして極めつけは、それこそAVのように極端ながに股で後孔を犯す男の睾丸下あたりから、茶色い液体がポタポタと垂れつづけてもいる。
『クソを我慢する女のケツってなぁ最高だな。出したくねぇもんだから、死に物狂いで締め付けやがる。特に剣道だか剣術だかで鍛えられたこのケツ筋は極上だぜ、チンポが噛み千切られそうだ。だがよ、お前も堪んねぇだろオトコ女? ケツがヒクヒクしっぱなしだもんなぁ。クソしたくてもできねぇ苦しさやら、屈辱感やら、変な快感やら……そういうのの板挟みで、狂っちまいそうなんだろ?』
 後ろの男は激しく腰を使いながら、挑発的な言葉を吐きつづけていた。
 極限まで便意が高まった腸を、お構いなしに犯され、謗りの言葉まで浴びせられる。まさに地獄。だが、きついのは後ろばかりでもなさそうだ。
 前は前で仁王立ちした男の逸物を咥えさせられているが、その口元は、黒いラバー製のマスクで覆われている。大暴れした前科がある藤花だけに、噛まれることを危惧して口枷を嵌めているんだろう。
 その担保を得て、前の男は容赦なく根元まで逸物を咥え込ませる。武道一本という感じの藤花が口淫に慣れているとは思えないし、千代里の時のように最低限の慣らしがあったわけでもない。つまり、ほぼ免疫がゼロの喉奥奉仕を、一番きついパターンで強いられているということだ。
 まさか、そんな酷いことをするわけがない。普通ならそう思うだろう。だが前の男は、両手で藤花の後頭部を鷲掴みにし、完全に自分の腰に顔面を密着させている。あそこまで引きつければ、たとえ成人男性の平均サイズのペニスでも、口の中だけでは収まらない。そのさらに奥、食道にまで入り込んでしまうだろう。
 そして、この想像にもまた、疑う余地のない裏づけが存在する。
 声、だ。

『ゴエ゛エ゛エえッ、んおおぉォエ゛エえ゛え゛ッ!!』

 ヒトの声かどうか疑わしいレベルの汚いえずきが、ほとんど止むことなく繰り返されている。恥を捨てたような『ギャル』ならいざ知らず、発しているのがあの藤花なんだから、余程に余程の事情がなければ有り得ない。
『ケツの穴がヒクヒクしてきたぜ。そろそろ限界みてぇだな。いいぜ、そろそろ約束の10分だ。ひり出せよ、おらっ!!』
 後ろの男がそう言って腰を引き、平手で藤花の尻を打ち据える。
『うう゛お゛っ!!』
 苦しそうな悲鳴が響きわたり、直後。性感スプレーと同じぐらいの直径にまで開いた菊の花から、勢いよく汚液があふれ出した。容赦なく、茶色い。直視がつらいほどに。
『へっ。昨日の晩食わせた餌がようやっと消化されたらしいな。キッチィ色と匂いだぜ。それでも女の端くれかよ!』
 後ろの男は、噴き出す汚液を間近に見ながら、悪意に満ちた言葉を発する。まともな神経をしていれば、まず選択しないような声量で。
 現場にすら立ち会っていない傍観者の立場ながら、その大声には思わず周りを意識してしまう。
 だが、動揺しているのは俺一人。他の連中は、薄笑いを浮かべながら前傾姿勢でモニターに見入っている。鬼畜だ。そして鬼畜は、画面の中にも2人いる。
『こっちも限界っぽいな。ノドの奥が痙攣して、吐く間際って感じだ。おら、介錯してやんよ剣道娘ッ!!』
 前の男はそう怒声を散らし、密着させた腰をさらにグリグリと押し付ける。ネジでも締めるように、鷲掴みにした藤花の顔を左右に揺らしながら。
 その鬼畜ぶりをスッパ抜こうというのか、カメラが藤花の前方に回りこむ。
 タイミングは完璧だった。カメラのブレが止まった瞬間、前の男が腰を引く。俺の想像していたサイズよりかなりでかい……長さのあるペニスが、ずるりと糸を纏ながら抜け出てくる。
 藤花の口には、予想通り浴槽の栓のような口枷が嵌まっていた。その口枷ごと、キリリとした顔つきが下を向き……

『ふお゛…っも゛ろ゛ろ゛ぉええ゛お゛っ!!!』

 悲惨な声と共に、吐瀉物が穴から噴き出していく。色は茶褐色。量はかなり多い。相当の我慢を重ねたのが見てとれる嘔吐だ。
『はっ。前からも後ろからも、品のねぇ女だな』
 男2人は、当然藤花の努力を評価などしない。自分達が追い込んだ結果だけを、声高に批難する。どういう神経をしていれば、露悪的にすらならずにあんな言動ができるんだろう。生まれついての悪。奴らは、多分それだ。
『女っつってもなあ。一人称“俺”だぜ?』
『あー、オトコ女だったな、そういや。……どうだ? 男勝り気取って、実質心は男のくせして、野郎のチンポを咥えさせられる気分は? 俺ならもう自殺モンっつか、少なくとも世間様に顔向けできねぇがよ』
 前の男にそう嘲られ、藤花が顔を上げる。相手の顔面に穴でも空けられそうな眼光で。俺なら身が竦みそうなその視線を真正面から受け止めても、鬼畜の顔から笑みは消えない。
『おっ、イイ眼だ。イジメ甲斐があるぜ』
『ああ。最近はしょっぱいガキの相手ばっかだったしな。久々に、プライド折るのが楽しみだ』
 2人は、そう言って責めの準備を再開する。後ろの奴は、ようやく排泄の終わった肛門にイチジク容器──それもさっきを超える4個分の中身を注ぎ込む。前の奴は、藤花のポニーテールを掴んで顎を上げさせ、薄ら笑みを浮かべながら口内に挿入していく。

 再開された責めは、明らかに一度目より容赦がなかった。
 前の奴はポニーテールを鷲掴みにしながら、セックスの時ですらそこまではやらないだろうというストロークで喉奥を突きまくる。空気が含まれるせいか、カコッカコッカコッ、と、やたらに響きのいい音がする。
 だが音が軽くなっても、苦痛が減るとは限らない。ましてや藤花の喉は、ついさっき限界を超えて瓦解したばかりなんだ。そのデリケートすぎる場所を、膣よりも雑に『使われ』れば、どうなるかは明らかだ。
『お゛ごっ、ほごお゛っ!! ごおっ、おお゛お゛ぇろ゛っっ!!!』
 藤花は、吐きつづけていた。吐瀉物がペニスとリングギャグの隙間から次々にあふれ、白い首を伝い、前後に揺れる乳房に添って四散していく。
 後ろの奴もブレーキを踏む気はない。
『どうした、もう限界かよ。ゲロ吐かされまくって、ケツに意識いかねぇか? いいぜ。耐えられねえなら、このままぶちまけろ。カマ野郎にゃお似合いだ!』
 さっきより浣腸液の量を増やしておきながら、我慢のなさを詰る。挙句に、限界を迎えても肛門から逸物を抜こうとしない。直腸を犯されながら漏らすしかない状態。これはいかに気丈な藤花といえども受け入れがたいらしく、細い腰はかなり左右に暴れた。何度も踏みかえられる膝は、イヤだ、イヤだと叫んでいるようだった。しかし。その悲痛な叫びが、人の心を持たない畜生に届くはずもない。

 ぶりっ、びちびちっ。びちゃ、ぶびゅるるっ。

 音にすればそんな風な、実際にはもっと複雑で情けない音が響きわたり、激しく抜き差しされる穴から汚液があふれ出す。まるで茶色い血糊袋を、棒で突いて破っているようだ。
 こんな嫌がらせ、肉体的にも精神的にもきついに決まってる。それでも藤花についてさすがだと思うのは、あまり大きな反応を示さないことだ。普通ここまでやられれば、いくら自由が利かないとはいえ、横に倒れるのを覚悟で身を左右に揺らしたり、膝で地団太を踏んだりするはずだ。
 だが藤花は、堪らず震えることはあっても、しっかりと重心を固定させている。ぶらさない。ハイエナに臓物を食われてなお、凛と直立する草食動物のように。
 ただ、きついのはきついに違いないんだ。カメラが彼女の顔を接写すれば、汗がすごいのがわかる。どこが汗腺なのかが見て取れるぐらい、大粒の汗が浮いている。
 そして、これは俺の気のせいだろうか。流れる汗に混じって、鋭く敵を睨み上げる瞳の端からも、綺麗な雫が伝っていったのは。

 ここで映像が暗転する。ただし、ほんの数瞬だけ。

 再開した映像でも、映っている面子は同じだった。ただ、逸物をしゃぶらせる役と肛門を嬲る役は入れ替わったようだ。
『テメェのケツで汚れたんだ、隅から隅まで舐ってキレイにしろ』
 大股を広げて仁王立ちする男が、品のない口調で命じる。前の動画でアナルに挿入していた奴だ。
 藤花はその足元に這い蹲る格好で、逸物を咥えさせられていた。両手は脚の間についているようだが、背中からのアングルだから、手首を拘束されているのかはわからない。
『お゛、うぇ゛ッ!オえ゛っ、ほおお゛ぉええ゛!』
 藤花のえずきは酷かった。延々と嘔吐を続けているような響きだ。前の映像と同じく、喉奥まで咥えこまされているのかもしれない。そうでなかったとしても、男の言葉が事実なら、彼女は肛門で“汚れた”怒張を口に含んでいることになる。
『うう゛ぉエ゛っ!!』
 藤花の背中が狭まり、ひときわ余裕のないえずきが漏れた。
『ハッ、またかよ』
 男は鼻で笑い、数歩後ろに退がる。同時に藤花の頭が真下を向いた。
『ぅ゛お、お゛えぼ……っ』
 女の喉が出しうる限界──そう思えるぐらいに低いえずき声。びちゃびちゃという音がそれに続く。前に立つ男は、腕を組んでそれを見下ろしていた。ご満悦な笑みが何とも憎らしい。
『涙と鼻水でドロドロの、イイ面だ。だいぶ参ってきたらしいな』
 男はそう言いながら元の位置に戻る。そして肩幅の倍ほどに股を開き、藤花の髪を掴んで、喉奥責めの体勢を整えた。
『もぉやえお゛! ほんろおに……こおふろ、ひひゃまッ!!』
 藤花は頭を左右に振り、不自由な口で何かを叫ぶ。だが男は冷静だった。両の掌で藤花の頭を固定し、その掌ごと自分の腰へと引き寄せる。
『ゃえおお゛お゛っ!!』
 藤花は本気で嫌がっているようだが、首の力だけで男の両腕の筋力に対抗するのは無理がある。結果、彼女の顔は男の黒々とした茂みに密着していく。
『ほおお゛、おお゛っ……むっごオ゛ぉ゛っっ!!!』
 拒絶の叫びは呻きに変わり、その呻きすら、喉奥を攪拌するカコカコという音に掻き消されていく。主導権が男に移った事を象徴するように。
『休む間があると思うなよ、クソ女。俺ら二人で、朝までケツと口を使い回してやる』
 そう声を発したのは、後ろから藤花のアナルを犯す男だ。こっちにも容赦はなく、ツッパンツッパンという感じの小気味いい音をさせながら腰を振りたくっている。無駄な肉なんて一切ない藤花の太股が波打つんだから、どれほどの圧なのかは推して知れようというものだ。

 前後からの責めが続く。藤花はもう大きな反応は見せず、ただ口と肛門を使われるがままになっていた。けれども彼女は、その静かな絵面の中で、少しずつ削れているに違いない。角張った石が、川の中で丸くなっていくように。


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 モニター4の映像が終わり、左に歩けば、『4日目』のプレートが目に入る。プレートの下には、やはり写真が並んでいた。

 この日、藤花は、かなり入念なアナル開発を受けたようだ。
 ある一枚の写真では、這う格好を取らされた藤花が正面から映され、その尻肉の合間からバイブのグリップ部分が覗いている。
 また別の一枚では、さらに低く這い蹲る藤花が男の物をしゃぶらされつつ、やはり肛門を道具で弄ばれていた。六角形の独特なグリップ部分を見る限り、前の写真と同じ道具だ。ただし今度は、道具がちょうど抜き出される瞬間で、道具の全容がはっきり見てとれる。
 真珠のような珠が連なった責め具。珠の直径は根元に行くほど大きくなり、先端こそビー玉大だが、一番根元ともなればラムネの瓶ぐらいの太さがある。アナル開発が始まってからわずか数日の人間にとって、その根元部分はかなりの負担になることだろう。
 だが、写真の中の現実に容赦はない。次の一枚は、二つに増えたその責め具が、肛門を変形させているシーンのアップだ。さらに次の写真でも、左右の手が操る二つの道具は、圧倒的な存在感で肛門を拡げていた。今度は、振り返ったまま何かを叫ぶ藤花の口元も写っている。相当な痛みか刺激があるのは間違いない。
 だがおそらく、刺激ならその次のシーンの方が上だろう。
 薄いゴムのような手袋を嵌めた男の指が、藤花の肛門に捻じ込まれている。手の甲の半ばまでが肛門に埋もれているというアングルだから、何本の指が入っているのか、正確には判らない。3本か、4本か……何しろ男の節ばった指だ、楽に受け入れられるものではないはずだ。
 そして次の写真では、その手が2つに増える。つまりは左右の両サイドから、男の4本指が入り込み、肛門を拡げているということだ。斜め上からのアングルだから、肛門の中が直接見えるわけじゃない。それでも、暗い穴がぐっぱりと口を開けているらしいことははっきりと見て取れた。
 五枚目の写真では、男の人差し指が肛門を縦に割り開き、その合間にディルドーが送り込まれている。ディルドーの大きさは中々だ。男の握り方から見て、バイクのグリップよりも太いだろう。男の手とディルドーが激しくブレて映っていることから、かなりの速度で抜き差しが繰り返されていることもわかる。それがかなりの威力を持つのは、藤花の上半身を見れば明らかだ。藤花の顎の下には枕のようなものが敷かれているが、彼女はそれに全力で抱きつくような格好を取っていた。特にカメラ側の右腕は、その肩の盛り上がりや枕を握りしめる有様がはっきりと映されている。
 痛ましいものだが、その次の六枚目も相当だ。両の太股と腕の付け根に帯状のベルトを巻かれ、天井から吊り下げられた藤花。桜色の肌は蝋に覆われ、乳首とクリトリスには電極が取りつけられていて、周囲に立つ調教師の手には鞭が握られている。どうやら、かなりハードなSMが繰り返されたらしい。だが一番目を引くのは、やはり肛門だ。ベルトに吊るされた白い脚の合間には、なんとボウリングのピンが押し込まれている。さすがに上の細まった方だが、それでも男の逸物よりかなり太い。そんなものを肛門に入れられる藤花の顔は、歪んでいた。眉を吊り上げ、眉間に皺を寄せ、閉じた口をへし曲げ。素直に見れば怒りの形相だが、恥じ入っているようにも見えるのは、状況の苛烈さのせいだろうか。
 最後になる七枚目の写真も、衝撃的だ。大股を開いた脚の間、肛門からストッキングのようなものが引きずりだされる瞬間を捉えている。掴む指が透けて見えるような薄い生地の中には、凄まじい数のビー玉が詰め込まれている。外へ転げ出た分だけでも十個ほど、肛門にみっしりと収まった部分となれば数え切れない。それだけの数のビー玉となれば、どんな質量だろう。それを腸に押し込まれるのは、どれほど苦しいだろう。嫌でも、そう考えてしまう。

 写真の貼られたボードの下……ショーケースには、いま目にした道具の実物が、歴史を物語るような存在感で鎮座している。
 六角形の柄を持つ、根元がガラス瓶ほどに太い凹凸棒。バイクのグリップよりも太さがあるディルドー。低温蝋燭に、鰐口クリップやパッドの繋がった電源ボックス。真ん中から上がうっすらと黄色に変色したボウリングのピン。伸びきった上に皺の寄ったストッキングと、40個はありそうなビー玉。薄ガラス越しに見るそれらは、写真よりも遥かに凶悪だ。特に身近なボーリングのピンが、責め具として見た途端、こうも恐ろしい代物に変貌するとは思わなかった。

「ふふふ、これはまた凄まじいですな。まるでギャングのリンチだ」
「何よあのサイズ……いくら黒人のディックっていっても、限度があるでしょ」

 ふと、隣からそんな声が聴こえてくる。着流しの老人と、その嫁らしき若い女の会話だ。彼らは言葉を交わしながらも、食い入るようにモニター画面を凝視している。
 ここの連中が興味を示す以上、壮絶な映像に違いない。たぶん、写真の内容すら霞むぐらいに。俺は背中に冷たい汗を感じながら、モニター5を覗き込む。


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 映像には、床に突っ伏すような藤花の姿が映し出されていた。
 両手首は腰のあたりで交差する形のまま、ガムテープでぐるぐる巻きにされている。そして顔は、水の張られた大きめのフードボウルに漬けられていた。
 水責めだ。それも正式な拷問じゃなく、憂さ晴らしのリンチという感じの。そういえば着流しの老人も、これを“ギャングのリンチ”と形容していた。
 ギャングというイメージが浮かんだのは、藤花の頭を囲む男達のせいだろう。
 肩にドクロのタトゥーを入れ、タンクトップで上半身の筋肉とタトゥーをアピールする一人。唇にピアスを開け、アゴ髭を蓄え、ダボダボの迷彩ズボンで下半身を大きく見せる一人。威圧的なその外見には見覚えがある。1日目の映像で、藤花の肛門に氷を突っ込んでいた2人だ。
 この施設の調教師は全員ホストかチンピラ崩れという感じだが、この2人はその中でも格別にガラが悪い。なにしろ水責めのやり方も、『ハンドポケットのまま、ブーツの底で頭を踏みつける』なんだ。それも女の子に対して。非道にも程がある。

 ただ、そんな威圧的なチンピラ達でさえ、藤花の背後にいる人間と比べれば悪童程度の印象になってしまう。
 背後にいるのは、黒人だ。膝立ちだから身長はわからないが、2メートルを超えていそうな威圧感がある。そしてその上半身は、マッチョなんて次元じゃない。上腕と大胸筋は岩肌の風船を思わせる盛り上がり方で、腹が出ているのに腹筋は割れている。艶光る漆黒の肌も相まって、毛のないゴリラそのものだ。
 そこまでの風貌となると、もはや女の子の背後にいるだけで暴力的に見える。しかも奴は、思いっきり藤花のアナルを犯していた。前からのカメラアングルのアナルファックは、普通判りづらいものだ。一見、膣を使う普通のセックスと判別がつかないから。
 だが、この映像の場合はダイレクトに理解できた。巨漢の黒人は、スイカを鷲掴みできそうな巨大な手でもって、藤花の尻肉を握り潰している。親指と人差し指の間にぷっくりと肉が盛り上がっているんだから、握りの強さの程も想像できるというもの。そうして粘土でも捏ねるように自分好みの形に変えた尻肉の中心に、腰を送り込んでいるんだ。それで、膣を使っているなんてことは有り得ない。紛うことなき肛門姦だと、ひと目で確信させられる。
 巨漢の黒人は、突っ伏した藤花の背後につき、腰を押し出すようにして抜き差しを繰り返していた。しかし、妙だ。普通アナルファックなら、尻肉のせいで一部が隠れていても、棒状の物が出入りしているのはわかる。だがこの映像では、ペニスの端が見えない。つまり、尻肉の合間よりもペニスの幅の方がでかいということだ。
 信じられない。直径何センチなら、そんなことになるんだろう。しかも、前後するペニスの幹には血管が浮き立っていた。あれだけ張っていれば、堅さも相当にありそうだ。

 と、ここで前にいる刺青男が、藤花の頭を踏む足を持ち上げた。藤花はそれを待ち望んでいたんだろう、弾けるように頭を上げる。
『ぶあっ!! がっ、げほっ、げほっ!!!』
 前髪から水滴を滴らせつつ、何度も激しく咳き込む藤花。そのすぐ横に、刺青男が膝をつく。
『気分はどうだ、オトコ女? ビッグコックでケツ掘られながら、腹ァ一杯に水飲まされてよ。たまんねぇだろ』
 藤花の髪を掴み上げ、冷たい声で問いかける刺青男。藤花は激しく肩を上下させていたが、剣道の呼吸だろうか、ふうっと鋭く深い息を吐いて平静を取り戻す。
『なんだ、声をかけるのか。あまり静かだったから、このまま眠らせてくれるのかと思ったぞ』
 薄笑いを浮かべつつ煽る藤花に、男3人の目元が険しくなる。
『ったく、口の減らねぇアマだ!』
『そんじょそこらの野郎より気合入ってんな、お前。今やってるこれは、シマん内で女にオイタしたチンピラによくやる折檻でよ。イカツイ黒人にアナルレイプされながら窒息させられりゃ、どんな生意気なガキも素直になるもんだぜ?』
『っつっても、連中の心が折れる一番の理由はよ、意思とは無関係にビュービュー射精しちまって、体がてめぇのザーメンまみれになるせいで、オスとしての矜持が保てなくなるから──らしいじゃねぇか。そういう意味じゃ、男を気取りながらチンポのねぇハンパ野郎は、この責めと相性いいのかもな。生存本能で勃っちまうことも、極太で前立腺ゴリゴリ抉られて射精感煽られることもねぇんだからよ』
『確かにな。ま、何にせよこんなもんはまだ第一段階だ。こっからもっとキツくなるぜ』
 好き勝手に藤花を謗りつつ、2人はズボンのチャックを下ろす。そして今まさに水責めをしていたフードボウルへ、息を合わせたように小便を始めた。無色透明だった水は、あっという間に黄色く色づく。藤花の表情が強張った。
『オマケだ』
 迷彩ズボンの男は、逸物を振って小便を切ると、咥えていた紙巻煙草をフードボウルに吐き捨てる。灰とタールが、小便水をさらに濁らせる。
『フッ。えげつないねぇ、日本の悪ガキも』
 後ろから犯す黒人は、流暢な日本語でそう呟くと、肛門から逸物を引き抜いた。
 いざ外に晒された黒人のブツは、真ん中部分が太い根元よりもさらに膨らんでいて、さながら拷問具のようだった。形状としてはローストターキーに近く、間違っても人間の性器に入れてはいけない類に思える。あれで肛門を犯されれば、まず大方の人間が喉も裂けんばかりに絶叫し、恥も外聞もなく泣き叫ぶだろう。
 藤花だって人の子である以上、何でもない風を演じてみせながら、その実は相当にきつかったようだ。犯されていたさっきまでと今とでは、太股の形が別人のものかと思うぐらい違うんだから。
『Next stageだ。サムライガール』
 黒人がそう呟きつつ、両手で藤花の尻肉を鷲掴みにする。そして、腕力で強引に細い腰を浮かせた。位置が高くなったことで、肛門の様子が映像内に映り込む。
 あんなに慎ましかった藤花の肛門は充血しきり、ぐっぱりと開いていた。あの狂ったサイズのペニスが、ジョークでも合成映像でもなく、実際に人の肛門を拡げていたという事実が、そこにはっきりと示されている。
 黒人は、相変わらず生殖器に思えない形状のデカブツを、拡がった穴に擦り付けるようにしていた。

  ──入れるぞ、また入れるぞ? この規格外のペニスで、お前の内臓の形を変えてやるぞ?

 外人のジェスチャーに疎い俺でも、はっきりとその意図が読み取れる。ましてや同じ空間にいて、粘膜で触れ合っている藤花が気付かないはずもない。
『クソが……!』
 藤花の口から、怨嗟の言葉が漏れた。
『クソ? ああ、ウンコ汁ならこの二段階先だ。俺らも一人にしかやったことねぇが、地獄だったぜ。臭ぇわ汚ぇわ、やられたスケバン気取りはゲロ吐きながら発狂するわでよ。あんなのは二度とやりたくねぇから、お前も“ヤニションベン”で済んでるうちに、詫びの入れ方考えとけや』
 そう言って、刺青男が藤花の頭を掴む。同じく迷彩ズボンの男も、ヤンキー座りで藤花の首を押さえ、肩を掴む。さっきまでの雑に踏みつけるやり方と違い、念入りに沈めるつもりだ。よりにもよって、出したての小便溜まりに。
 男達の太い腕に力が入り、藤花の頭が下がる。
『くっ、うう……!!』
 当然ながら、藤花は抵抗を見せた。フードボウルに満ちる黄色い水を凝視しながら、歯を食いしばって顔を上げようとする。だが。
『おら、大人しく沈めや! 散々イキがっといて、今さらジタバタすんじゃねぇ!!』
『力で俺らに勝てると思ってんの? 剣術道場の娘だかなんだか知らねぇが、思い上がってんじゃねぇぞゴラッ!!』
 2人がかりで強引に頭を押さえ込み、黄色い水の中へと顔を沈めていく。フードボウルは二秒ほど激しく震えていたが、やがて床へ固着したように動かなくなる。
 水責めは淡々と進められた。アナルセックスのせいで波打つ水面に、大小の気泡が浮かび上がっては弾ける。やがてその気泡が一切出なくなり、さらに2秒ほど経過し、藤花の白い肩がぶるぶると痙攣しはじめたところで、ようやく男2人が力を緩めた。
『んぶはっ!! げほげほ、えほっ!!!』
 当然、藤花に余裕などない。咳き込みつつ、必死に空気を求めていた。だがそうすると、アンモニアの匂いをも吸ってしまうことになる。
『う゛っ!! うえ、おえ゛っ!!』
 顔を顰めながらえずく藤花。実に痛々しいが、刺青男達に同情する様子はない。
『ははは、ひっでぇ顔。そーら、もう一丁!』
『はい、イッキ、イッキ!!』
 ふざけながら、また藤花の頭を押し下げる。がぼっがぼっと音が立つ。
 今回もやる事は同じだ。浮かんでは弾ける気泡が出なくなり、上半身が痙攣を始めてからの解放。
『ばはっ!! うう゛えっ、ぺっ、ぺっ!!』
 今度は、汚水を飲んでしまったんだろうか。顔を引き上げられた藤花は、空気を求めるより前に口の中のものを何度も吐き出す。
『どうだ、ションベンの味は。せっかく濃いーの出してやったんだ、堪能しろよ』
『この責めで音ェ上げた連中に、毎回何かどうキツかったか聞くんだけどよ。クソやらションベンってなぁ、えれぇ苦いんだってな。おまけに生温けぇから、アンモニアのエグみやら臭さやらが、舌と鼻にMAXで来るんだと。そうなのか?』
  刺青男は、藤花の様子を見て笑っていた。迷彩ズボンの男も、問いを投げながらやはり笑う。嘘のように朗らかに、歯まで見せて。その笑顔には、良心の呵責なんて微塵も見当たらない。奴らは、本当の畜生だ。
 映像の中で、藤花の顔が持ち上がった。
『味……か。そうだな、舌が痺れそうだ。前に風呂場で飲まされた時もそうだったが、性根の腐ったクズの小便ほどエグみが強いらしい』
 壮絶に睨み上げつつ、呪詛のように言葉を紡ぐ藤花。相当な怒りが見てとれる。だが良心の存在しない人間は、その気迫を前にしても涼しい顔だ。
『性根の腐ったクズか。ま、良い子ちゃんから見りゃあそうなんだろうな。別にそれでもいいぜ?』
『ああ。俺らはよ、オメーみてぇなクソ女の鼻っ柱ヘシ折んのが、好きで好きで堪んねぇんだ。こーやって、なあっ!!』
 2人のチンピラは、そう言ってまた藤花の頭を汚水へと沈めていく。
 息が限界になれば引き上げ、少し空気を吸わせては沈め。相手が嫌がるとなれば、本当に容赦がない。まさしく鬼畜共だ。そしてそれは、藤花の後ろにいる奴も同じ。

 藤花に腰を上げさせた黒人は、自分も膝立ちから中腰に変わり、一層の気合を入れて尻穴を犯していた。タアンッ、タアンッ、と肉のぶつかる音がするほど。だが、そうして強く突っ込まれているうちは、受ける方としてはまだマシな方だろう。
『さーて……』
 ひとしきりハードファックを繰り返した後、黒人は汗まみれの藤花の腰を掴み直す。そして、一旦極太の逸物を完全に引き抜き、すかさず捻じ込んだ。あの滅茶苦茶に太い真ん中部分すらノンストップで。そんな事をされれば、受ける側は堪ったもんじゃない。藤花の腰が浮き、汚水に漬けられている顔からボコボコと大きな泡が立つ。
 そんな藤花の反応を見て、黒人はほくそ笑んだ。そしてそこからは、ストロークを極端に長くし、亀頭が覗くまで引き抜いて叩き込む、という動きを繰り返すようになる。真ん中が極端に太い形状は、抜かれる瞬間と捻じ込まれる瞬間が一番きついと容易に想像がつく。入れたまま前後されるほうがよっぽど楽なはずだ。
 しかも、この黒人はとことんサディストだ。抜き差しするにしても、いつも真っ直ぐに挿れるわけじゃない。わざわざ身体を左右にずらし、斜め方向から捻じ込みもする。さらには、腰を揺らして挿入途中にグリグリと抉ることすらあった。
 ただでさえ直腸の限界サイズを超えていそうな凶器で、そんな不自然な挿入をされたら冗談では済まない。さすがの藤花も、これは我慢ができなかったらしい。動画の前半で黒人に犯されていた時、藤花は太股に力こそ込めていたが、膝を動かさずにじっと耐えていた。それが今は、腰を左右に振ったり膝を踏み変えたりして、明らかに黒人のアナルファックから逃れようとしている。
 そうして藤花が反応を見せれば見せるほど、黒人の笑みは深まった。そして太い腕で藤花の腰を掴み、逃げ道を殺した上で、角度をつけて後孔を抉る。ガムテープで手首を縛られた藤花の手が、ぎゅううっと握りしめられた。汚水責めを受けている中で、一番はっきりとした意思表示。どれだけつらいんだろう。どれだけ堪らないんだろう。
『ぶはっ、はああっ、はあ、はあっ!!』
 ここでまた、藤花の顔が汚水から引き上げられる。すると彼女は、汚水を吐き出すよりも、息を整えるよりも前に、刺青男達に向かって叫んだ。
『はっ、はっ……う、後ろの奴を止めろッ! 尻の穴が、裂ける……!!』
 多分、これが初日から通して、彼女が初めて漏らした弱音だ。男達のしてやったりという表情から、それがわかる。
『んなにキツいかよ。だが無理だな。俺らはリンチの腕を買われて雇われたバイトみてぇなモンだが、あのロドニーさんはココの正調教師だ。この責めにゃデカチンが欠かせねぇんで、特別に来てもらってんだよ』
『そうそう。本来、こんなフロアにゃ来ないヒトなんだぜ。せいぜい堪能しろや』
『はっ、そう畏まんなって。俺の仕事はまだ先だしよ、ヒマ潰しとしちゃ上等だ。日本人のガキは最高、気の強ぇ女も最高。最高と最高の掛け合わせだ』
 態度のでかいチンピラ2人も、黒人には頭が上がらないようだ。その力関係は、街のチンピラとマフィアの構成員を思わせる。
 こうして、藤花の必死の訴えは一蹴された。サディスト3人に慈悲はなく、ゴリゴリと腸内をえぐり回しながら、執拗に汚水へと顔を沈め続ける。どれだけ藤花が暴れても、苦しんでも。

『 やめろおおおおっっ!!!!!! 』

 汚水に沈められる最中、藤花は顔を横向けて絶叫する。それは、心臓が締めつけられるぐらい切実な響きだった。

 ここで、突然テロップが表示される。

 『※ この後、ショッキングすぎる映像が続くため自主規制 ※』

 藤花が竹刀を手に暴れた時と同じく、しばらくその表示が出続け、別の映像に切り替わる。

 まず映し出されたのは、刺青男の上半身だ。
『うーいオトコ女、無視かよ?』
 刺青男はそう言って、小さく身体を揺らす。たぶん足元の何かに蹴りを入れたんだろう。
『……チッ。今度こそ完全にヘバりやがったか』
『脇腹(サイド)につま先入れても、ピクリともしねーしな。ま、頑張った方じゃね?』
『だな。オチてもオチても、気つけするたびに悪態吐きやがって。たぶん死ぬまで突っ張るタイプだろ。正味、初めて見たわこういうの』
『オレも。まさか“4段階目”で音ェ上げねえガキがいるとはな』
 刺青男の言葉に、迷彩ズボンの声が応じる。喫煙所で駄弁っているように、まるで緊張感というものが感じられない空間だ。だが、緩い空気だからといって安心してはいけない。そもそも常識が通じない人間は、異常な行動にも眉一つ動かさないものだ。
『つーか、どうすっべコレ? やるだけやっといてなんだが、今から片付けんのダリィな。くっせぇし、汚ぇしよ』
 その台詞を受けてか、カメラが180度後ろを向く。刺青男の真逆……床が映し出される。
 途端に、モザイクが映像のほとんどを覆った。ひどく荒いモザイクだ。かろうじて人型の何かが横たわっている事実と、色だけが判別できる。
 そして、その『色』は妙だった。髪の黒や肌色も見えるが、それ以上にやたらと土のような色が多い。おまけにモザイク処理は雑で、たびたび床の一部がノーモザイクで映るんだが、その床が……一面、溶かしたチョコレートを塗り伸ばしたようになっているんだ。
 嫌な想像が頭を過ぎる。
 あれが本当にチョコレートなら、刺青男が汚いと言うだろうか。臭いと言うだろうか。
『ったく……全部こいつが意地張るせいなのによ。なんで俺らが後始末だよ?』
 低いトーンで呟かれるぼやきを背景に、カメラは淡々と人型の何かを映しつづける。
 両足首をロープで縛られたまま、ピクリとも動かないそれは、ただただ不気味に思えた。


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 映像の最後、あれは何だったんだろう。俺はぼんやりとそう考える。頭を回転させれば、答えに辿り着けそうだ。だが同時に、心のどこかが知ることを拒否してもいる。
 いつの間にか、モニター前の歳の差夫婦は姿を消していた。俺一人がいつまでもモニターに齧りついて一喜一憂していたと思うと、妙に恥ずかしくなってくる。

 モニター5からさらに左に進むと、大きな扉が視界を覆い尽くした。いつの間にか、入口の正面……つまり部屋の中央奥に来ていたらしい。
 『 使用中【現在 9 日目】 』
 扉にはそう記された札が掛かっている。その向こうに広がる空間では、リアルタイムで藤花の調教が行われているに違いない。
 喉が鳴った。
 もはや俺は、藤花を他人だとは思えなくなっている。彼女の安否は気がかりだ。
 それでも俺は、あえて扉の前を通り過ぎた。アナルセックスが十分な下準備を必要とするように、いきなりハードな現実を目の当たりにしても、脳が理解を拒絶するだろう。彼女の現在をしっかりと受け止めるには、まず過去を知るべきだ。そう自分を納得させる。

 本当は、心の準備が出来ていないだけなのに。

 
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