第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)の続きです。
 長くなるため、前・中・後編に分けます。
 前半部分のメインは飲ザー・ごっくん・破瓜シーンです。




■第四章 オーガズム・クライマックス(前編)


 剣術少女の瓦解を見届けた後の食事は、ひどく味気ないものだった。

「ほう……15階の娘には、もう少し早く目をつけておくべきでしたな。同性から人気を集める『王子様』の陥落は、見ごたえがあったろうに」
「もはや見る影もありませんからなぁ。ハグされて髪を撫でられれば、猫が鳴くような声を出して……完全にメスですよ」
「メスといえば、例の剣術娘ももうダメらしいですな。連れ合いが言うには、トラウマを植えつけられたそうで。胡坐を掻くように足を交差させながら犯すと、わんわん泣くそうです。おかしくなる、堪忍してくれと哀願し、潮を噴き散らしながらね」
「へえ……あの子がねえ。聞いた話じゃ、折檻用の竹刀を奪って暴れたそうじゃない。あの噂が怖くて、ここ何日か17階行けてないのよねぇ」
「あったなぁ! 火事でも起きたのかと思ったぜ、あの時は。セキュリティの連中が、エレベーター前にゾロゾロ集まっててさ」
「そのセキュリティも結局、歯が立たなかったそうですよ。なにしろ“撃剣”ですから、喧嘩となれば滅法強いようで。最後はテーザー銃というんでしたっけ、射出するタイプのスタンガンでようやく動きを止められたようです。とはいえ、そこからさらに2人が負傷したようですが……」
「ここのセキュリティって、本職のヤクザとか裏カジノの用心棒(バウンサー)とかでしょう? そんな連中が手も足も出ないって……凄いのね」
「ま、過去の話だ。反骨心を剥き出しにしてたのも、ケツをグッと引き締めてられたのも」
「なまじ反骨心があるせいで、徹底して心をヘシ折られるんですよね。その点、16階の娘などは存外に強かですよ。反抗せず、素直に服従しながら、裏ではこっそり他の娘と励ましあっているんです。ディープスロートにもだいぶ慣れてきたようですし、あれはまだ結構もちますよ」
「反抗せず素直といえば、18階の三つ編みの子もですな。もっともあっちは、励まし合える仲間もおらず、四六時中イカされっぱなしという状況で、とても凌げる状況にはないようですが」
「あれは……ねぇ。精神的にはともかく、肉体的なキツさでいえば、剣術娘以上でしょう」
「しかも、あの中学生と見紛う体躯でね。今回“選ばれた”生徒の中でも、一番小柄じゃないですか、あの子?」
「でしょうね。ま、だからこそ見応えがあるとも言えますが」
「確かに、インパクトが凄い。……っといけない、勃ってしまいました」
「はは、お盛んですなぁ! ズボンがはち切れそうですよ、あそこのウェイトレスで『処理』なさったらどうです?」
「そうしますか。このままでは寝られそうにもない」

 隣の円卓では、男女8名のグループがワイン片手に談笑している。話を聞く限り、俺と同じような加虐シーンを見て回っているようだが、その顔は晴れやかだ。
 その中の一人は席を離れ、別のテーブルを片しているウェイトレスに覆い被さった。一切の遠慮なくスカートとエプロンを捲り上げ、ショーツを横にずらして挿入を果たす。
「うんっ!!」
 挿入の瞬間だけ、ウェイトレスから生々しい声が漏れた。だがそれ以降は、ただ性器を『使われる』だけの道具と成り果てる。
「どうだ、ワシのマラは気持ちいいか!?」
「はい……心地よう、ございます」
 がなり立てる男に対し、淡々と返事をしながら、突き込みに合わせて身体を前後させるウェイトレス。その姿は、一見すると精巧な人形のようだ。だが、人形はテーブルクロスを握りしめない。太腿を強張らせもしない。
「ははは。いや、成田さんもご立派なモノをお持ちですなぁ!」
「ええ。奴隷なんかには勿体ないわ」
 犯す男と同席していた連中は、赤ら顔で大笑いだ。
 胃がムカムカする。俺は皿の上の料理を搔き込むと、足早にレストランを後にした。

 狂っている。ここにいる連中も、施設そのものも。
 そもそも、ここは何なんだ。名門校に通う現役の女子高生を、犯し、辱め、狂わせる……まさに悪夢のような場所。客の何人かが『クラブ』と呼んでいたが、凌辱倶楽部だとでもいうのか。
 ベッドに腰掛け、そんな事を考えていた時。リリリン、と部屋の電話が鳴った。腕時計が示す時刻は夜の10時。ルームサービスには遅すぎる。俺は訝しみながらも、受話器を耳に当てる。

『よう、大将。』
 第一声は、馴れ馴れしい呼びかけだった。声質は男のものだ。だが、聞き覚えがない。
「誰だ、お前は?」
 当然、俺はそう尋ねる。すると相手は、一拍置いた。
『そいつは、まだ答えかねるな。俺がアンタの敵になるか、味方になるか……そりゃ、そこでのアンタの選択次第だ』
「……選択?」
『ああ』
 どうやら相手は、俺を知っているらしい。俺が今いる場所も。記憶喪失前の知り合いらしいが、そうなると実に厄介だ。
「お前の思惑は知らんが、それは無理だ。今、俺には記憶がなくてな。今いる場所がどこかも判らんし、そもそも客の一人でしかない。誰かに期待されるような決断をできる状態じゃ──
『いいや』
「──っ!?」
 俺の言葉を、電話口の相手が遮る。俺は思わず息を呑んだ。
『アンタはこの先絶対に、決断を迫られる。何百……あるいは何千って人間の運命を左右するような決断だ』
「な、何で記憶もない俺が、そんな……そもそも、俺は何者なんだ!?」
 不可解な言葉に、思わず声を荒げてしまう。すると、まるでその荒ぶりが電波に干渉したように、通信に雑音が入りはじめた。
『……おっと、そろそろ限界だな。これ以上は“そっち”の連中に勘付かれるからやめとこう。だが、最後に一つだけ。アンタは獣じゃねぇ、ヒトだ。そう思ったからこそ、俺はアンタと手を組んだ』
 男はそう言って、言葉を溜める。思いの丈を篭めるように。
『ヒトとしての心は、無くすなよ。絶対にな』
 その言葉を最後に、電話が切れる。後に残るのは、ツー、ツー、という不通の音だけだ。
「……何なんだ、一体……」
 俺は電話を戻し、乱れた髪を掻き上げた。傍の鏡に映るのは、どこか気取った姿の男。顔立ちは整っているし、眼力も強い。女受けが良さそうで、カリスマ性もありそうだが、同時に独善的な印象も受ける。己の流儀を絶対と信じ、他者を従わせるワンマン経営者という感じだ。
 口の筋肉を動かせば、鏡の中の男が笑う。眼を吊り上げれば、奴は怒る。それほど自在に操れる相手だが、なぜか自分とは思えない。じっと眼を覗き込んでいると、存在を食われてしまいそうな感じがする。
「……お前は、誰だ」
 俺は、鏡に正対してそう呟いた。当然、答えはない。鏡の向こうの人間が、同じ口の形をしているだけだ。
 俺はそのまま後ろに倒れ、ベッドの上で大の字になる。そのまま眠りに落ちるのに、長い時間は掛からなかった。


「んん……ん……」
 目が覚める。布団を被らずに眠ったせいで、若干肌寒い。
 アラームがなくとも8時頃に起きてしまうのは、習慣というやつだろうか。
 ひとっ風呂浴びてからレストランで食事を済ませ、思案する。
  ──今日も、あの地獄のような光景を拝みにいくのか?
  ──本当にその必要があるのか?
  ──あれを観ることで齎される変化とは、歓迎すべき事なのか?
 心に浮かぶ三つの問い。俺の希望としては、答えは全て「NO」だ。

 それでも俺は、気がつけばエレベーターに乗っていた。
 地獄を観たいわけじゃない。ただ、部屋へ戻って横になり、今もどこかで起きている悲劇を悶々と思い描くよりは、いっそ“真実”を目にした方がマシに思えたからだ。

「どのFloorをご希望ですか?」
 ネイティブな発音の英語を交えて、エレベーターガールが尋ねてくる。ギリシャあたりの血が混じっていそうな、彫りの深い美人だ。外の世界でなら、そのルックスでさぞや良い扱いを受けるだろう。だがここでは、客が求めるタイミングで身体を差し出す奴隷。一体なぜ、彼女ほどの美人がそんな目に。あるいはこれが、今調教されている女生徒達の末路なのか。
「……お客様?」
 その問いかけで、俺は現実に引き戻される。どうやら、エレベーターガールの顔を凝視していたらしい。
「わたくしをご所望であれば、お相手いたしますが……」
 涼やかな表情で、そんな言葉まで吐いてくる。
「いや、結構だ。18階を押してくれ」
 俺はそう言って腕を組み、彼女と距離を取った。
「…………失礼を致しました」
 エレベーターガールが恭しく頭を下げる。おかしな話だ。女の尊厳を無視し、無礼を働いているのはこのクラブだろうに。
 
 現実味がないほど広いエレベーターが、ゆっくりと動き出す。

 地下18階。初日にそこで降りたのは三つ編みの子だ。グループ内で一番小柄であるにもかかわらず、保護者のような雰囲気を持つ娘。

『反抗せず素直といえば、18階の三つ編みの子もですな。もっともあっちは、励まし合える仲間もおらず、四六時中イカされっぱなしという状況で、とても凌げる状況にはないようですが』
『しかも、あの中学生と見紛う体躯でね。今回“選ばれた”生徒の中でも、一番小柄じゃないですか、あの子?』

 昨夜、レストランで耳にしだ情報とも一致する。18階で嬲られているのは、あの子で間違いない。
 ここまで来るともはや呪いだ。あの日エレベーターで乗り合わせた少女達が、次々に壊されていく。あるいは、すでに壊された後かもしれない。俺がこの施設に来てから、すでに10日目の朝なんだから。


              ※


 『336時間耐久 連続絶頂』
 18階の扉には、そう記されたプレートが掛かっていた。336時間は、24時間で割ると14日……つまり丸二週間だ。それだけの時間、絶頂し続けろというのか。無茶だ、出来るわけがない。だがこのクラブなら、無茶でもやらせかねない。たとえ、途中で脳が壊れようとも。

 扉を開いた先は、これまでに訪れた3部屋のどれとも違っていた。
 物置のような狭い空間で、いきなり祐希が犯されていた地下15階。
 キャバクラのような内装だった地下16階。
 まず資料館のような部屋があり、その奥に調教部屋への通路が伸びていた地下17階。
 それに対してこの地下18階は、健康ランドやスーパー銭湯の休憩エリアを思わせる場所だった。広い部屋に30台ほどのリクライニングチェアが並び、そのチェアの一つ一つに、小さなデスクと薄型のディスプレイが備え付けてある。
 ドリンクや性奉仕のサービスもあるようで、すでに埋まっている20あまりの席では、それぞれの客がイヤホンをつけて画面に見入りつつ、酒を飲んだり奴隷に奉仕させていた。
「あっ、あっ、はぁ……ん」
「れろっ、えろ……あむっ、ちゅっ……」
 艶かしい声や音が、部屋内の至る所から発されている。部屋着を肌蹴た毛深い男に女が跨り、あるいは足元に跪いて逸物を舐めしゃぶる様は、乱交現場さながらだ。
 そしてもう一つ、この部屋には大きな特徴があった。部屋の奥の壁に、一箇所だけ張られた擦りガラス……その向こうで、二つの人影が揺れている。どうやら這う格好の女が、後背位で犯されているようだ。
 男の方は、横に分厚い肉体を無心に前後させている。対して女は、華奢な上体を反らせて天を仰いでいるらしい。そして。

「おっほぉぉぉっ、んんおお゛おお゛っ!!! んほぉぉおおっ、おおおお゛お゛お゛っっ!!!!」

 そんな、獣の咆哮にも似た叫びが響き渡っていた。これに近い声を、昨日も耳にした覚えがある。藤花が結腸で達した時の声だ。あの時も藤花は、「おお゛」と呻いていた。ただし今俺の耳に入ってくる声は、それの何倍も切実で、しかも絶え間なく続いている。
 一体どんな感覚に苛まれれば、女からあんな声が出るんだ。早くも腕に鳥肌が立つ。このフロアはやばい。

 俺はとりあえず空いているチェアに腰掛け、目の前のディスプレイに触れる。するとスリープ状態が解除され、メニュー画面が表示された。
 画面には、『プロフィール』と書かれたボタンと、いくつかの動画、手枷をつけた女のアイコン、コップとハンバーガーのアイコン等が配置してある。
 周りの状況から考えて、女のアイコンからは奴隷の奉仕を、コップとハンバーガーのアイコンからは飲食物を発注できるんだろう。随分といい待遇だが、今の俺には必要のないものだ。
 最初のトップ画面に戻って『プロフィール』ボタンに触れると、ポップアップウィンドウが表示される。ウィンドウには、ある女の写真と詳細な情報が記載されていた。
 前髪を眉辺りで切り揃え、横髪を顎の辺りまで伸ばした上で、長い後ろ髪を一本に編み込んだ髪型。見覚えのあるブレザーにリボン。
 間違いない。初日にエレベーターで見かけた、あの三つ編みの子だ。

『氏名:瀬戸口 桜織(せとぐち さおり) 年齢:満17歳
 身長:155.2cm 体重:47kg(計測時点)
 スリーサイズ:B77(Bカップ)・W57・H81
 ・所属:蒼蘭女学院2年A組
 ・全国模試1位の実績あり
 ・全国高等学校英語スピーチコンテスト優勝経験あり
 ・日・英・中・韓・独・仏など、11ヶ国語での日常会話が可能
 備考:中流家庭。A組学級委員長。球技はやや不得手の模様。品行方正かつ他人思いで、人望が厚い』

 情報欄には、華の女子高生のデータが仔細に暴露されていた。他フロアで客が見ていたパンフレットと同じ記述形式だ。
 彼女は桜織というのか。なるほど、清楚な見た目によく合っている。
『もうっ、馬鹿言わないの。授業の一環って聞いたでしょ』
 エレベーター内で、はしゃぐ千代里と藤花をそう諭していたのも、委員長としての責任感からか。

 ポップアップを消し、トップ画面の動画欄に目をやる。
 動画には3つのカテゴリがあった。【ノーカット版】【ダイジェスト版】【ライブ映像】だ。
 【ノーカット版】は、先頭にまず『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失』というタイトルの動画がある。そしてその次から、『0:00~8:00』『8:01~16:00』という具合に、8時間区切りのタイトルが並んでいた。動画の再生時間も、ずばり『8:00:00』。どうやら336時間分の映像記録が、丸ごとアップロードされる場所のようだ。
 これだけ長時間の記録となれば、全て追うのは並大抵の事じゃない。警察官かよほどの暇人ならともかく、大半の客は変化のある部分だけを観たいはずだ。【ダイジェスト版】は、その要望に応えたものらしい。こっちは『0:00~8:00(編集済)』といったタイトルが並んでいて、再生時間は10分から20分弱。ただし、編集に時間がかかるからか、ノーカット版の最後の一つに対応する動画はまだ存在しない。
 そして、【ライブ映像】。ここでは粗いモザイク越しに、肌色が激しく動いていた。まるで粗悪なアダルト広告のようだが、肌色の揺れるペースは擦りガラス向こうのそれと一致していて、紛れもなく“あっち側”の生映像なんだと判る。
 俺は正直、ライブ映像が気になって仕方がなかった。今も部屋内には、獣の咆哮が響き渡っている。擦りガラス越しでは角度的に見えないが、ライブ映像のモザイクの中では、三つ編みと思しき黒い線が肌色の中で揺れている。エレベーターで会ったあの娘が犯され、あられもない声を上げているんだ。その事実を前にして、興味を持つなというのも無理な話だろう。
 だが俺は、あえて過程を追う。俺は地獄を見たいんじゃない。彼女達の身に起こった“真実”を知ること……それこそ、俺がここに来た目的なんだから。


              ※


 両耳にイヤホンを嵌め込むと、獣の咆哮もさほど気にならなくなった。俺はその上で、【ダイジェスト版】最初の動画をタッチする。
 動画タイトルは、『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失(編集済)』。媚薬ガスに、地獄と形容されるレベルでの飲精。字面だけで、嫌な予感が背筋を這い登ってくる。

 動画は、桜織の全身を映すシーンから始まった。
 艶やかな黒髪に、校則遵守という感じの制服姿、背筋を伸ばしたままスカートに手を添える『気をつけ』の姿勢。まさに優等生の鑑だ。
 そして同時に、その雰囲気はひどく大人びていた。既婚女性を思わせる落ち着きがあり、くっきりと見開かれた瞳は強い意思を感じさせる。控えめでありながらも、確たる意思を秘めた女性。藤花が『大和男子』の魂を持つとすれば、この桜織は『大和撫子』の典型というところか。

『相変わらず堅ぇな。もうちっと楽にしててもいいんだぜ?』
 映像内に、低い声が入り込む。カメラで撮影している男の声か。桜織のピリリとした雰囲気を見る限り、友好的な相手ではなさそうだ。
『あの煙は、なんですか?』
 桜織が、コンクリート壁上部の通風孔を見ながら尋ねる。その孔からは、気化したドライアイスのようなものが細々と流れ出していた。
『煙っつうか、ガスだな。ま、媚薬の類と思えばいい。シャブみてぇに即効性はねぇが、このガスを吸い続けりゃ、どんな人間でも確実に色狂いになる。神経をやられて、男なら女を抱くこと、女なら男のイチモツにしゃぶりつくことしか考えられなくなる』
『……っ!?』
 撮影者の答えに、桜織の表情が引き攣った。生真面目な学生からすれば、腐敗と堕落を象徴するような薬物など、もっとも忌み嫌うところだろう。ましてや、それが自分に用いられ、性的な作用を齎すとなれば尚更だ。
 撮影者は、そんな桜織の反応を可笑しがっているようだった。
『くくっ、いーいカオだ。オメェにゃ、あのガスをたらふく吸ってもらうぜ。とはいえ、こんな殺風景な部屋でじっとしてんのも退屈だろうからな、特別な遊び相手を用意してやった。……オイ、入っていいぞ!』
 奴がそう叫んだ、直後。画面左奥のドアが開き、全裸の男達がぞろぞろと姿を現した。
 凄い人数だ。おまけに5人に1人ほどの割合で、東南アジア系の顔をした男もいる。それ以外は一見日本人に似た顔だが、叫んでいる言葉を聞く限り、中国や韓国系の人間も混じっているようだった。筋肉質、力士のような肥満体、骨と皮だけの痩せぎすと、体型も個人差が大きい。
 見た目も人種も色々だが、共通点はいくつかあった。
 どいつもおおよそ30代か40代の、働き盛りの年齢であること。
 全員が負のオーラを纏っていること。
 髪も髭も伸び放題で汚らしく、肌は日焼けとはまた違う感じで浅黒いこと。
『う……っ!?』
 当然匂いもきついらしく、桜織は鼻を押さえながら眉を顰めた。
『はっ。揃いも揃って、ゲロ拭いた雑巾みてぇな匂いさせてやがんな』
 声の感じからして、撮影者も鼻を摘んでいるようだ。
『こ、この人達は……?』
『こいつらは、タコ部屋で肉体労働させてる連中でよ。少なくとも一ヶ月はオンナを抱いてねぇ。おかげでギトギトに濃い精液を、金玉が腫れあがるぐらい溜め込んでやがる。そんじょそこらの野郎の比じゃねぇオス度ってぇわけだ』
 桜織の問いに答える撮影者の口調は、どこか誇らしげに聞こえた。
 タコ部屋労働者というが、本当だろうか。確かに肉体労働者風の男も多いが、中には運動しているのか怪しい肥満体や、そもそも日本語が通じなさそうな連中もいる。浮浪者や不法滞在者を手当たり次第にかき集めた、という方がまだ信じられそうだ。
 ただ、極度の女日照りというのは事実だろう。
『おおおお、オンナ……女だっ!!』
『オンナ、オンナ、オンナぁああッ!!!』
『いひひ、じょ、女子高生だぜ、現役の。しかもあの制服、蒼蘭だ……』
『蒼蘭って、あのお嬢様学校かよ!? くく、はははっ!人生って面白ぇな。あんな所のお嬢様とは、一生接点なんぞないと思ってたぜ!』
『ああああ可愛いなぁ、いい匂いしそうだなぁ。堪んねぇ!!!』
 死んだ目の奥に欲望の光をギラつかせ、赤黒い逸物を斜め上に反り立てて、メスである桜織に向かって叫ぶ。その有様は普通じゃない。
 今にも飛び掛かりそうな雰囲気だが、奴らは何かを警戒して踏みとどまっている。濁った眼が桜織と交互に見やるのは、カメラの後ろ。
『どうした。ハメてぇってんなら、ヤってもいいぞ?』
 カメラ後方からドスを利かせた声がする。が、その提案に乗る人間はいない。ガラの悪い口調といい、これだけの頭数を抑止する影響力といい、撮影者が“裏の人間”であるのは確実だ。タコ部屋と繋がりがある以上、まずヤクザ関係だろう。
『待てが出来るたぁ、よく躾けられたオス犬共だ。だが、見てみな嬢ちゃん。一ヶ月お預け喰らってバキバキで、可哀想だよなぁ。あの50人を、クチと手だけで満足させてやれ。暇潰しにゃちょうどいいだろ?』
 ヤクザ男はそう言って、桜織の顔を凍りつかせる。そして今度は、男共にカメラを振った。
『よう、お前らも気張れよ。これはただの余興じゃねぇ、借金棒引きを賭けたギャンブルだぜ。この女の胃に収まったザーメン量に応じて減額してやる。全員一律でだ』
『……へ? ま、マジっすか!?』
『そ、相場は!?』
『んー……そうだな、リットルあたり100万にすっか。テメーらの数百数千って借金にゃ届かねぇが、大盤振る舞いだろ?』
 この言葉で、欲望一色だった男共の顔つきが変わる。髭面の顔が、次々と緩んでいく。
『う、うおおお……!!』
『マジかよ……こんな可愛い子にゴックンさせて、借金まで減ってよ。最高じゃねーか!!』
『おお。今の俺らなら、ナンボでも出せそうだしな!』
『だが、問題はあの子の胃の容量だ。あのちまさでリットル入んのかよ!?』
 顔を見合わせ、興奮気味に叫びあう男達。その前方では、桜織が厳しい表情を浮かべていた。そしてヤクザ男の笑い声が、カメラの傍で繰り返される。
『ちなみに胃の大きさは、大人の女で1300mlぐらいらしいぜ。ただ、本当の限界はその倍とも言われてる。このガキはガタイが貧相だから、限界2.4リットルってとこかもな』
 ゲラゲラと笑いながら、男は新たな燃料を投下した。
『2.4リットルなら、240万棒引きか!? へへ、こいつァ腕が鳴るぜ!』
『おうっ。俺らの未来がかかってんだ。嬢ちゃんにゃ悪ぃが、無理でも何でもしてもらわねぇとよ!!』
 男共は発奮し、桜織を包囲する輪を狭めていく。
 無茶だ。胃の限界というのは、大食いに慣れたプロ選手が決壊ギリギリまで食い物を詰め込んだような状態を言うんだろう。素人にそんな拡張ができるはずがない。だがあの男共は、やらせるつもりなんだ。自分達の借金のために。

『じゃ、始めろ。制限時間は今から2時間だ』
 撮影者の男の声が響く。
『オレからいくぜ。おい、膝ついてしゃぶれ!』
 一人が逸物を握りながら、桜織にいち早く歩み寄った。赤銅色の肌をした、押しが強そうな男だ。
 この男と並ぶと、桜織の華奢さが際立つ。桜織の頭頂部など、男の顎までしか届かず、肉体の厚みにもかなりの差がある。中学生どころか、もはや子役。プロフィールに載っていたB77・W57・H81というのは、こんなに細いのか。
『……!!』
 桜織は、躊躇っていた。というより、男の逸物に視線を釘付けにされていた。現役の女学生でありながら、昭和の女の匂いを漂わせる彼女のことだ。男の逸物をまじまじと目にするのは、これが初めてなんだろう。
 その淑女ぶりに、画面内の男すべてが生唾を呑む。それは俺も同じだ。清純な娘に惹かれるのは、オスの本能なのか。
『早くしろ。コッチは一ヶ月オンナ抱いてねぇからよ、溜まってんだ』
 再度そう命じられると、桜織はようやく呪縛から説かれたように目を瞬かせ、男の足元に跪いた。
 カメラが下を向く。桜織と男のいる辺りには、切り開いたダンボールが敷かれていた。粗末な敷物だが、コンクリートへ直に膝をつくよりはマシというところか。
 カメラ右上に映る亀頭部分には、白い恥垢がびっしりとこびり付いていた。
『はは。しばらくフロ入ってねぇもんだからよ。せっかくだ、舐めてキレイにしてくれや』
 男はそう言って、汚らしいそれを桜織の唇に押し付ける。
『う!!』
 濃厚な男の匂いを間近で嗅がされ、桜織の顔がいよいよ強張る。女子高生といえば、父親の着衣の匂いすら嫌う年頃だ。垢まみれの逸物など、視界に入れることすら耐えがたいに違いない。
 だが桜織は、きゅっと唇を引き結ぶと、凛とした瞳で男を見上げる。
『……わかりました』
 静かな口調でそう言うと、品の良い唇を開いて男の物を咥える。
『おほっ』
 逸物の先が唇に挟み込まれると、男が喜びの声を上げた。気色悪いが、同じ男として理解はできる。一ヶ月女を抱いていない極限状態では、柔な唇が亀頭に触れるだけでも想像を絶する快感だろう。
『いひひっ、くすぐってぇ。おいテメェら、こんだけ溜まってる状態でチンコ舐められっとヤベエぞ。ベロが先っぽなぞるたびに、痺れる感覚が背中の方まで回ってきやがる。こりゃ数分ももたねーぞ』
 男は赤銅色の筋肉を蠢かしながら、上ずった声を出す。本当に気持ちが良さそうだ。その様子に、周りの男が生唾を呑む。
『おら、もっとベロンベロン舐め回せよ。んな遠慮してねーでよ』
『遠慮っつか、単にオメーが嫌われてるだけじゃねぇのか。んなバッチくて臭ぇチンポなんざ、恥知らずなギャルでも嫌がんぜ』
『ギャルっておめぇ、いつの言葉だよ。今はJK(ジェーケー)ってんだぜ、JK』
『ほーぉ、さすが援交マニアは詳しいな!』
『ああ!? 偉そうに言うんじゃねぇよ、このレイプ魔が!!』
『おいおい、喧嘩すんな。ここにいるのはみーんな、セックス絡みで借金こさえたバカばっかだろ。同じ穴のムジナってやつだ。ちなみにこれから、穴兄弟にもなる仲だぜ?』
『はっ、つまんねーよ。しかし、ひでえよなぁ、人一倍オンナ好きな俺らに、一ヶ月も抱かせねぇなんてよぉ!! ああ、早くやりてぇよお!! オウ杉さん、チャチャッと出して次に回してくれや!』
 浮浪者のような連中は、ひたすらに醜い罵りあいを繰り返していた。中年と呼んでいい歳にもかかわらず、その言動は未熟だ。欲望を抑えず無計画に生き、タコ部屋という地獄の底に堕ちてなお反省しない……そんな人となりが透けて見える。17年しか生きていないにもかかわらず、成熟した雰囲気を纏う桜織とは対照的だ。
『そろそろ出そうだ。そのまま先っちょを舌で舐めてろ』
 “劣”のオスが“優”のメスの頭を掴み、奉仕に注文をつける。かすかに水音のような音が漏れ聞こえはじめた。
『……うひひっ、いいぞ。よし、そろそろ口窄めて前後にしごけ…………ううう、あああ……っしゃ、いくぞ、いくぞオラッ!!』
 吼えるようなその叫びの後、男の尻肉が引き締まる。
『うぶっ!』
 桜織が眉を顰めた。どうやら精子を口の中に出されているらしい。
『おーーすげぇ、出てる、すげえ出てるっ!!』
 男は上ずった声を漏らしながら、どくんどくんと腿の筋肉を蠢かす。
 この射精が、また長い。数秒経っても、腿の蠢きが続いている。
『オイオイ、どんだけ出してんだよ!?』
『そら出るぜ、こんだけ久しぶりだとよぉ! チンポがびくんびくん跳ねて、ションベンの管が焼けるみてぇに熱くて、こんなん初めてだ!!』
 その言葉で、また男達の喉が鳴った。否定的に見ている俺ですら、奴の快感の度合いを想像してしまう。
 たっぷり10秒ほどしてから、ようやく1人目の男が腰を離した。鈴口と桜織の唇との間に、真っ白な筋を伸ばしながら。
『うぶ、ぐっ……!!』
 桜織が噎せる。当然だ。初めての口での奉仕で、あれだけたっぷり出されて平然としていられるわけがない。だが男は、俯きかけた桜織の顎を無情にも掴み上げる。
『おい。どんだけ出たか、他の連中にも見せてやれ』
 男は静かな声で命じた。射精直後だけあって声色こそ落ち着いているが、有無を言わせずという響きだ。
『……えあっ』
 桜織は一瞬躊躇ったものの、命じられた通りに口を開く。ピンク色の口内に、白濁混じりの舌が覗いた。
『もっとだ。舌ァ出せ』
 重ねてそう命令を受け、舌は外へ押し出される。
『はははっ、すげぇな! ベロが見えねぇじゃねえか!』
『ああ。ばっちりザーメンでコーティングされてやがる!』
 労働者連中が盛り上がる通り、桜織の赤い舌は白濁で覆われていた。
 俺もつい数日前までは、欲情に駆られて自慰に耽り、手の平一杯に射精していた。我ながらよく出した、という充足感があったものだ。だが今映像に映っている射精量は、その倍はあるだろう。まさに驚異的という他ない。
『くくっ……』
 存分に歓声を浴びた1人目の男は、笑顔のまま桜織の頭に手を置いた。
『よーし、そろそろ飲んでいいぞ』
 飲んでいい──そう言われたところで、年頃の少女には微塵の有難味もないだろう。あれほど濃くて精液など、即座に吐き出したいはずだ。
 それでも桜織は、迷いなく“飲み下す”準備を整えた。口を閉じ、喉を動かして。うっすらと開かれた瞳は、何かを悟った僧侶のようだ。昨日までの3人は、調教師の圧に屈したり、心を折られて渋々従わされている形だった。だが、桜織は違う。覚悟や責任感を胸に抱いて、自分の意思で従う事を決めている……そんな風に見える。
『ん、ぐっ……!!』
 桜織の喉が鳴る。相当に苦しいらしく、薄く開いた瞼が震えている。それでも彼女は、気合いであの量を飲み下した。
『へへ、マジで“ゴックン”しやがった!』
『ヤベェ、そそるぜ。こんな真面目そうな娘がよぉ!!』
 清楚な女子生徒の精飲を前に、男達が目を細める。そしてその中の一人が、堪らないという様子で歩み出た。
『今度は俺だ。休んでる暇ァねぇぞ!』
 そう叫びながら、桜織の口をこじ開けて怒張を咥えさせる。
『んぐっ、ん……』
 桜織は目頭を歪めながらも、大きな抵抗はせずに逸物を迎え入れていた。

 二人目は、さっきの男とは対照的だ。日焼けとは縁遠い男。肌が白いだけに、足に生えた毛や体の汚れ具合がよく目立つ。そんな男が、髪の毛一本の乱れすらないキッチリとした女学生に奉仕させる様は、いかにも犯罪的だった。
 しかも奴は、滾る欲望を抑えきれないという風で、根元まで逸物を咥えこませる。
『おお゛え゛っ! ゥん……ぶふっ、ごぶっ!!』
 喉へ強引に突っ込まれれば、さすがの桜織もえずき、噎せる。膝をパタパタと上下させているところを見ると、かなり苦しそうだ。
『おい、あんまムチャして吐かすんじゃねぇぞ!』
『おお。飲ませたザーメンの量で棒引き額が変わるんだ。そいつが吐いたらオジャンだぜ?』
『解ってる、でもコイツ下手でよぉ。ちっとはノドでも扱かねえと』
『んだよ。射精力が弱ぇんじゃねぇか、オッサン』
『バカヤロー、長く溜めすぎただけだ!』
 他の連中と言い争った末に、色白男は責め方を変えた。喉奥まで入れない代わりに、手で桜織の頬を掴み、凹ませた口で扱くようなやり方だ。
『んぐっ、んんんっ!!』
 桜織が苦しそうに呻いても、色白男は腰の動きを止めない。
『はあっ、はあっ、はあっ…………』
 長いストロークで快感を貪りながら、激しく喘ぐ。射精間近な時の呼吸だ。さっきの男もそうだが、女日照りというだけあって、射精までの時間は短い。
『ううう……よし、よぉし来た!!いくぞおぉっ!!』
 男はそう言って、逸物を深々と咥えさせたまま腰を止めた。
『んんっ!!』
 桜織からまた呻きが上がる。色白男に掴まれた頬が蠢くのは、苦痛のせいか。
 この2人目の男も、射精は長い。尻と太腿が引き締まっては緩み、また引き締まる。口内にどくどくと精を流し込んでいるのが見えるようだ。
『あああすげぇ。マジでどんどん出るな、一ヶ月ぶりのザーメン!! マジで、ションベンの管に焼けた針金入れられてるみてぇだ。気持ちいいの通り越して、しんどいレベルだぜ』
『だろ。やべぇほど出んだって!』
 男はやはり上ずった声で、1人目の男と感想を共有する。
『よし、そのまま鈴口を吸え。管に残ったザーメンを残らず吸い上げろ』
 ひと息ついた男から発せられるのは、新しい命令だ。頬から手を離したのは、口を自由に使えるようにするためらしい。そして桜織は、その命令に大人しく従っていた。
『ううっ、いいぞ。思いっきり射精した後の“掃除”は堪んねえな』
 色白男は満足げな笑みを浮かべ、桜織の口から逸物を抜く。奴の雰囲気は弛緩しきっているが、その周りを囲む男共は鼻息が荒い。
『っしゃあ、今度は俺だ!!』
 すぐに3人目が、桜織の口に逸物を押し付ける。
『こっちもだ、手でいいからよ!!』
 別の男も、桜織の手を取って自分の物を握らせる。小柄な桜織は手も小さく、平凡なサイズの逸物でも握るのがやっとだ。そんな彼女の手が必死に逸物を扱く様は、妙に背徳的だった。
『んぐうっ!!』
『おっほ、たまんねぇ!!』
『ほら。しゃぶるばっかじゃなくて、こっちも扱けや!』
『手も口も休ませんな。さっさと抜いて、俺らの相手もしてくれよ!』
 桜織の左右で男2人が喚く。その背後でも、別の何人かが逸物を自分で扱いている。まさに多対一の状況。そしてここからは、常にその状況が続くことになる。

 映像を見ているだけの俺でも、しんどくなってくる。それほどの画が続いた。
 桜織には、本当に休む間がない。
 ある時は、右を向いたまま男の逸物を握りしめ、窄めた口で亀頭を刺激しつづける。もちろん、左手で別の男の逸物を扱きながら。
『くあああ、出るぞっ!!』
 不慣れな奉仕でも、元々限界近い相手はすぐに果てる。そこまではいい。だが一度射精が始まれば、そこから10秒近くは口の中に出されつづける。どくどくと、信じられないような量を。飲みきれずに口の端から零れる分だけでも、普通の男の射精量と変わらない。
 奉仕からそのまま続く長い射精と、相当な気合いが必要な精飲。
『ぷはっ、はっ、はあっ、はぁっ……』
 逸物から口を離した時点で、桜織の息は上がっている。だが、休めない。
『今度はこっち頼むぜぇ、お嬢ちゃん!』
 そう言って今度は左を向かされ、同じ行為を強いられる。今度はさっきより太さのある逸物だ。男共は気が逸るあまり、最初は深く咥えこませる事が多い。
『んぐぅおえ゛っ!!』
 桜織はえずき上げながら、端整な顔を歪ませる。口を縦に開かされるせいで、頬のラインがひどい。そのまま何度も口内を凌辱され、ようやく男が我に返って桜織の頭から手を離す。奉仕の始めは、常にそんな具合だ。そこからはまたさっきのように、指と口で絶頂に導きながら、もう片手で逆サイドの男に奉仕する……という流れになる。
 右の男が射精すれば、次は左。それが終われば右に戻り、また左。それが繰り返される。これはきつい。ろくに息継ぎをせず運動を続けているわけだから、桜織の顔はどんどん赤くなっていく。深く咥えさせられる時、射精されている時の眉根の寄り具合も相当だ。
 でも、これはまだ“マシ”な部類だったんだ。

『あー、もう辛抱堪んねぇよ!俺にも早くやらせてくれ!!』
『そんなペースじゃこの人数回んねぇって。一気に3本やれ、3本!!』
 奉仕開始から小一時間が経った頃。後ろで順番待ちをしている連中が、とうとう不満を噴出させる。そしてその直後から、桜織は両手を掴み上げられ、左右の手で一本ずつ逸物を扱くよう強いられる。当然、正面の一人に口で奉仕しつつだ。
 この変化は大きい。両サイドを手で扱きながらとなれば、当然口での奉仕は疎かになる。そうなれば、男は焦れて自分本位に桜織の口を使う。
『もっと気ィいれてしゃぶれよ!!』
 そんな事を喚きながら、強引に。これだけでも充分に苦しいのは、桜織の“顔”を見れば解る。極太を咥えこまされる時には、頬の横に線が浮く。長さがある物の場合は、喉奥へ入れられない関係から頬を突かれる形になるが、そういう時の顔の崩れ具合は悲惨だった。
 だがそれ以上に問題なのが、射精のタイミングだ。さっきまでは左右どちらかの一本を射精させ、それが終われば逆サイド……と、射精するのはあくまで一本ずつだった。だが、男共が遠慮しなくなった今は違う。正面と左右の男、3人全員が射精を待ち焦がれている。となれば当然、口内発射の機会は奪い合いだ。
『うおおおっ、すげぇ、出るわ出るわ……!!』
『くっ、こっちもだ。出すぞっ!!』
 一人が口内に射精している最中、手で扱かせていた奴が叫び、桜織の三つ編みを掴む。
『あ、おい待て馬鹿っ!まだ俺が射精してる最中だろうが!!』
 射精中の男が怒鳴り、桜織の口からこぼれた精液が、制服のスカートに白抜きを作る。そんな場面が何度もあった。桜織からすれば、立て続けに精液を飲まされまくるわけだから、いよいよ堪らない。
 だが、この時点でもようやく50人のうち約半分の処理が終わっただけだ。残りの20人あまりは相変わらず眼を血走らせ、勃起した逸物を握りしめている。そしてそんな連中が、順番を譲り合うはずもない。
『どけよ。俺が先だ!』
『ふざけんな、次ぁ俺だ!!』
 次に奉仕させる順番を巡って、桜織の前で諍いを始める奴も出てくる。
『おいおい、モメてる場合かよ。制限時間があるって言ったろ? 借金がいくら減るかは、オメェらクズのチームワーク次第だぜ』
 ここで撮影者が、煽り交じりに声を掛けた。
『あ!?』
 睨み合う2人の視線が、鋭いままカメラの方を向き、一秒後、慌てて逸らされる。どうやらカメラを構える男は、相当な強面らしい。
『そうだ、そうやって大人しくしてりゃあいい。どっちが先か決まらねぇなら、ジャンケンでもしろや。まあオメェら程度の粗チンなら、二本纏めて咥えさせてちょうどいいかもしれねぇがな!』
 奴が続けて吐いた言葉は、とんでもないものだった。さっきと同じく挑発を交えつつ、ハードな責めを提示する。頭と下半身に血が集まっている男なら、乗らないわけがない……そう考えてのことだろう。
 そして男2人は、まんまとその策に嵌まる。
『2本挿し……か。なるほどねぇ』
『悪くねぇなあ、それも』
 連中は2人して顔を見合わせ、表情を変えた。口角が上がるだけで怒りの表情が笑顔になるんだから、不思議なものだ。
『ってなわけでよ、クチ開けや嬢ちゃん』
 その言葉を聞き、桜織は大人しく従う。しかし昭和の女というイメージ通り、大口を開くことに慣れていない様子だ。
『ヘッ、お上品なこったぜ』
『ああ、だがそこが堪んねぇ。貞淑ってやつかね。華奢なガキだが、未亡人犯してる気がすんぜ』
 男2人は口元を吊り上げながら、開いた桜織の口に逸物を捻じ込んでいく。
『んん゛、えあ゛……!!』
 桜織の口が一瞬にして大きく開き、頬の肉が歪む。ヤクザ男は“粗チン”と蔑んでいたが、連中の逸物は充分に人並みのサイズだ。それを二本咥え込めば、顔の形だって変わる。たとえアイドルか人形かという美貌の持ち主でも。
『おーっ、圧迫感がすげえな』
『野郎のチンコと触れ合ってんのは気色悪いが、征服感がハンパねぇ。嬢ちゃんの顔も見物だしな、こりゃなかなか興奮すんぜ!』
 男2人はそんな事を言いながら、尻を前後させる。
『え゛あっ、あ゛…はごっお゛っ!!』
 眉をハの字に下げながら、濁った声を漏らす桜織。彼女の声は本来綺麗なんだが、さすがに異物で口を満たされ、蹂躙される状態では美声にはならない。そんな桜織を前に、男共は嗜虐心を煽られたらしい。
『よう、手がお留守だぜ。口だけじゃ追っつかねぇだろ』
 そう言って、苦戦する桜織の両手を奉仕に回させる。
『んん゛……!!』
 桜織の眉がますます下がり、内心の困惑ぶりを露わにする。口も歪にへし曲がっていて、清楚とは縁遠い顔のはずだ。
 それでも、彼女の瞳は静かだった。憂いを帯びた様子で下を向いてはいるものの、狂乱している風じゃない。その目の綺麗さだけで、彼女の清楚さは十分に保たれている。穢されてもなお鋭さを保っていた、藤花の眼のように。

 ただ、この時点で桜織の胃は、かなりの精液で満たされてたんだろう。
『おらっ、出すぞ!』
『こっちもだ、零すんじゃねぇぞ!!』
 口に捻じ込んでいる2人が叫び、開いた口内に精液を浴びせかける。
『ぶあっ、あはっ!!』
 喉の奥に精液を浴び、咳き込む桜織。彼女は苦しさで逸物を握りしめたらしく、手で奉仕させていた二人も限界を迎える。
『うあっ、堪んねえ……もう出るぞ!!』
『こっちもだ、ぎゅーっとやられるとガマンできねぇ!!』
 震える声でそう言いながら、二本の逸物を引き抜かれたばかりの口内に逸物を捻じ込む。射精は、亀頭が唇の内へ入り込むのとほぼ同時だ。桜織からすれば、ほぼ同時に4回口内射精されたに等しい。真面目で誠実な彼女は、それでも飲み下そうとしていた。かなりの量を下唇から零しつつも、ゴクゴクと喉を鳴らして嚥下していく。だが、その最中に限界が訪れた。
『う、うぶっ……ん゛!!』
 桜織の瞳が見開かれ、顎が浮く。誰が見ても明らかな、嘔吐の前兆だ。
『おい、吐くなっ!!』
『吐くんじゃねぇぞ、オイッ!!』
 事情を察した何人かが怒声を上げるが、すでに遅い。震える桜織の手が、口から二本の逸物を引き抜く。整った顔が下を向く。
『うえ゛っ……おえ゛ええ゛え゛ぇ゛っ!!!』
 凄まじい声が響き渡った。口からあふれる精液の量も凄い。そして極めつけに、それがダンボールへ落ちていく音もひどい。バダバダという、トタン板に水を掛けた時のような音。
『て、テメェッ! せっかく俺らが飲ませたザーメンを!!』
 当然、男共は眉を吊り上げる。
『す、すみません……』
『すみませんで済むかよ、勿体ねぇ!』
『そうだ、床に吐いたモン啜れ!』
 桜織が謝っても、男共は許さない。三つ編みを引っ張って桜織の頭を下げ、ダンボールに口を付けさせる。桜織は、それでも言うままに従っていた。ずっ、ずずっ、と音をさせ、ダンボールの上の精液を啜っていく。最終的には従うしかない状況でも、普通はもっと躊躇するはずだ。だが、桜織の決断は早い。何が彼女をそこまでさせるんだろう。
『くくっ、お前らも鬼畜だな。秀才女子高生にここまでさせるなんてよ』
 ヤクザ男の笑い声が聴こえる。奴の構えるカメラは、ダンボールを舐める桜織の姿を無慈悲に映し出していた。痛ましい姿だ。だが外道にとっては、さぞ扇情的な光景だろう。カメラの端に映る男達の足が、落ち着きなく動く。
『なあ、そろそろいいんじゃねぇか?』
『そうだぜ。もう半分は啜らせたんだしよ。後はこっから、吐いた分以上に呑ませりゃいい』
『だな。どうせまだまだ出るんだ、早く続きやろうぜ!!』
 そんな声が沸き起こり、また桜織の三つ編みが引っ張られる。
『うう゛!!』
 桜織から呻き声が漏れた。
 この動画で、桜織の艶やかな黒髪が掴まれたのは何度目だろう。最初は毛の一本の乱れすらなかったというのに、今は至る所の毛が跳ね、寝癖のようになっている。改めて見れば、顔の汚れもひどい。目元といい鼻といい口周りといい、かなりの部分が精液塗れだ。元が清楚なだけに、そういう乱れや汚れが余計に惨たらしく見えた。
『へへ、イイ顔んなってやがる。じゃ、ラウンド2と行くか』
『ああ。上手い具合に、さっきのでちょうど1巡したとこだしよ』
 醜い桜織の姿を見て、男共が笑う。どうやら全員が一度は射精したようだが、奴らの下半身にぶら下がる逸物は、まだまだ張りを残していた。一ヶ月の禁欲のせいか、それとも部屋に充満するガスのせいか。

 2巡目に入っても、男共の獣ぶりは相変わらずだった。最初のように順番を巡って衝突することはない。とはいえ、快楽を貪ろうという姿勢は相変わらずだ。桜織は、その50人分の性欲を、口と手で処理しつづけるしかない。
『んぶっ、ん゛っ!!ふううんぐっ……!!』
 苦しげな呻きを漏らしつづけた果てに、大量の精をどくどくと口内に流し込まれる。それが何人分続いただろう。
『ん……おぐっ!! んぶっ、ぶふっ!!』
 桜織が激しく咳き込んだ。背中ごと前後に揺らすような咳だ。
『ははっ! 見ろよコイツ、鼻からザーメン出してるぜ!!』
 一人が嘲笑う通り、桜織の小さな鼻からは、白い液が垂れている。それは、彼女の余裕のなさをよく表していた。
『はぁっ、はぁっ……!!』
 なんとか咳が収まってからも、桜織の呼吸は荒い。思わず吐き戻すほどの状態から、さらに大量の精液を呑まされつづけてるんだ。普通なら「もう精液は飲めない」と音を上げてもおかしくない。そう口にしないだけでも、芯の強さが判るというものだ。
 ただ……それでも人間である以上、抑え切れない反応はある。頭を殴られた時に手で押さえたり、膝を蹴られて蹲ったり。そういう、身体が反射的に起こす行動を、意思の力で抑えきるのは難しい。
 映像開始から1時間が経とうという頃、桜織が示すようになった拒絶反応は、多分そういう類のものだろう。
『ぶぐっ、ぶはっ!! はぁっ、はぁっ……ごはっ!!』
 口の中に射精されるたび、桜織は激しく咳き込む。もはや上半身を前傾させるだけでなく、身体全体を仰け反らせている。おそらくは彼女の本能が、無意識に逃げるよう指示してるんだろう。だが、それを男共が良しとするはずもない。
『おら、フラフラすんなよ!!』
『誰か首押さえとけッ!!』
 怒号が飛び交い、その末に桜織は拘束される。この拘束の仕方というのが、また酷い。曲げた腕で桜織の首を挟みこみ、チョークスリーパーのように固定する。その状態で咥え込ませるんだ。
 反射行動を強引に抑え込まれれば、桜織もじっとはしていられない。
『かはっ、あはっ!!げはっ、がああっ!!』
 掠れたような呻きを漏らしながら、首にかかった手を掴む。膝立ちから崩れた体育座りになり、足をばたつかせる。
『へへ、暴れてる暴れてる。まるで拷問だな』
『おーっ、白パンとは流石だねぇ! シャバにいた頃は毎日JKのパンツ覗いてたもんだが、都会で白を穿く子はほとんどいないんだよな』
 桜織の前に並ぶ男共は、下卑た笑いを浮かべながら、容赦なくしゃぶらせつづける。極太で縦に大口を開かせたり、長い物で頬肉を犯したり、二本同時に咥えさせたり。そして全員が全員、きっちりと口内に精を放った。
『う゛っ、ううう゛え゛っ!!げほっ、おお゛え゛っ!!!』
 桜織は激しく咳き込み、何度も吐きかける。だが今度は、男共がそれを許さない。
『おい、吐くんじゃねぇ! お前の胃に溜まったザーメンで、俺らの借金が減るんだ。何遍もゲロったら承知しねぇぞ!!』
 そう恫喝しながら、日焼けした手で桜織の口を覆う。そのまま天井を仰ぐように顔を上げさせられれば、桜織は震えながら嘔吐の波を乗り切り、喉を鳴らして精液を飲み下すしかない。
『おーっし、飲んだな。んじゃ今度はアッチやってやれ』
 桜織が精液を飲んだことを確認すると、すぐに責めが再開される。こんな状態がずっと続いていた。

 俺は、ここでディスプレイに触れ、早送りを選択した。丸ごと責めを見るのが、精神的に辛くなってきたからだ。だが、ある映像が気になって停止ボタンを押す。
 3段腹の巨漢相手に、肉へ顔を埋めるようにして奉仕する桜織。その後ろに一人の男が屈み込み、腹の辺りを撫でている。あれは、何をしているんだ。俺はそう気になり、再生ボタンをタッチする。
『ん、んぐゥ……んぐっ、ぐっ…………!!』
 巨漢の毛むくじゃらの太腿に手を宛がったまま、桜織が呻いている。どうやら精液を飲まされている最中らしい。巨漢はそんな桜織の頭に掌を乗せ、ぼーっと突っ立ったまま、小便でもするように喉奥射精を続けているようだった。
 ただそれだけなら、見飽きるほど見てきた光景だ。問題は、桜織の背後から抱きつくようにして、胃の辺りを押さえている男だった。
『おーっ、張ってる張ってる。だいぶ溜まってきたな』
 奴は、そう口にした。内容自体は解りきったことだ。これだけ長い時間、50人が精液を飲ませ続けているんだから。だが、改めて胃に触れた上でそう言葉に出されると、胸にくるものがある。当事者の桜織となれば尚更だろう。
『へへ、もうどんぐらい溜まってんだろうな。リットルは超えてんべ?』
『さすがに余裕だろ。こんだけ飲ませまくってんだから』
『どうかね。1リットルって結構多いぜ?』
『まぁどっちにしろ、1滴でも多く飲ませようぜ!!』
 小汚い男共は、自分達の成果に満足しつつ気合を入れなおす。

 そこから、さらに数十分。
『お、ごおっ……ほおぉっ、お゛ーっ…………!!』
 桜織の呻きには、常に嘔吐を思わせる重苦しさが混じるようになっていた。その声は長く続く。そろそろ3巡目、どいつもこいつもそうそう射精しなくなってきているからだ。ただしガスの影響か、勃起力だけは衰えている様子がない。つまり桜織は、硬いままの逸物をずっと咥えさせられていることになる。その結果、どうなるか。決まっている。
『おいおい、やる気出してしゃぶれや嬢ちゃん。顎に力入ってねーぞ』
 口を使っている一人が不満を漏らす。奴は舌打ちしながら、桜織の口から逸物を引き抜いた。そして、桜織の後頭部へと手を伸ばす。狙いは、三つ編みだ。
『あっ!』
 小さな悲鳴が上がる。それもそのはずだ。男は三つ編みを引っ張りながら、逸物に巻きつけるようにして扱いていた。
『お、髪コキか?』
『ああ、さすが名門校に通うお嬢様の髪だ。ちっと汗で湿ってるが、サラサラしてやがる。極上のタオルでシコってる感じでよ、悪くねぇぜこりゃ……!!』
 奴はそう言って、“女の命”に精液と唾液を塗りこめてから、逸物を解放する。今度は桜織の髪ではなく、口の中を穢すために。
『げふっ、ぇは……ヵはっ……はっ、はっ、はっ……!』
 桜織は喉奥で精液を受け止めた。精液の絡む舌を口外に晒し、犬のような呼吸を繰り返しながら。
 顔は赤く、汗もひどい。風邪でも引いているようだ。だがその顔は、妙に色っぽくもあった。目元がしっかりと意思を残しているせいだろうか。
『ソソる面だな。ガキのくせして、いっちょ前に発情してやがんのか?』
『こんだけのオス臭に当てられて、特濃のザーメンも味わってんだ。そりゃヘンな気分にもなるよなぁ』
『ありえるな。今ドキの女子高生は、どいつもこいつも援交しまくるぐらいスケベだからよう』
 男共は不愉快な声色で、不愉快な内容を口走る。仮に桜織が発情しているにしても、それは部屋に充満しつつあるガスのせいだろう。あるいは連中もそれを承知の上で、桜織を煽っているのかもしれないが。
『さて。次の奴と行きてぇところだが、そろそろこいつもバテてきてっからな。しゃぶらせてっと回転率が悪すぎんぜ?』
『確かに。今のなんて3分ぐらい掛かってたしな。こうなりゃ、テメェで扱いてクチん中に射精してく方がよさそうだ』
『おう、異議なし!』
 日本語を話せる連中がジェスチャーを交えて話し合い、中国人らしい連中や東南アジア顔も頷く。
『うっし、決まり! んじゃ飲ませてくか!!』
 その掛け声を合図に、男共が一斉に逸物を扱きはじめる。
『おおっ、まだまだ出るもんだな……。いくぞ、いくぞおっ!!』
『たっぷり出してやっからな。舌ァ出して全部飲めよ!!』
 そんな言葉と共に、精液が桜織の舌へと浴びせかけられる。最初に比べれば薄く、水分も多いが、しっかりと白い精液だ。勢いもかなりのもので、口だけでなく鼻や頬、額にまで粘液が飛び散っている。
『ぇあ゛、あ゛……ん゛っぶ! れぉお……ほあっ、お……』
 桜織は舌を出したまま小刻みに震えていた。その舌はたちまち白濁に覆われて見えなくなる。
『よし、第一弾はこんなもんだな。飲んでいいぞ』
 射精し終えた男の一人が、ひと息つきながら許可を出す。有難味の欠片もない許可……というより、もはや命令だ。それを受けて桜織は、覚悟を決めたように口を閉じる。
 そして、白い喉が蠢いた。ぐごり、という音がする。状況からして飲み下す音なんだろうが、とてもそうとは信じられない。
『はっ、すげぇ音だな。一発目より粘りが少ねぇから、喉越しがいいだろ? まだまだ弾はあるんだ、ガンガン飲ませてやっからな』
 どこからか聴こえたその言葉通り、男共が入れ替わる。第一陣の5人が離れ、今度は6人が桜織を囲む。

 荒い呼吸と、呻き声。「吐くな」という怒声と、手足のばたつく音。それが延々と続く。
 桜織が限界を迎えて身を捩るたびに、拘束が増えていった。両腕を万歳の格好で掴み上げ、顎を手で包み込むように固定し、舌先を指で引っ張り出す。そうしてスペースの空いた口内に、連続で精液が浴びせかけられる。
 右から左から、顎の方から、鼻の上から。顔と制服を白く汚しながら、精液が流し込まれる。刻一刻と薄まる精液が、小さな口を満たしていく。
『おーすげぇ、口ン中が完全に精液のプールだよ』
 誰かが漏らしたこの言葉通り。まるでドロドロとした白い沼の中に、舌の先だけが浮いている感じだ。
 それらの苦痛で、桜織の顔には溝や皺が生まれていた。そうなると、和人形を思わせる桜織でも、彫りの深い西洋人顔に見えてくる。顔中に白いパックをしているような状態でもあるため、桜織に近しい友人にこの場面を見せても、彼女だと気付けるかは怪しいところだ。
『残り10分だ。早く自由の身になりたきゃ、タマぁ空っぽにするつもりで出し尽くせよ!!』
 ヤクザ男が声を響かせる。
『くそ、もう時間がねぇっ!』
『こうなりゃラストスパートだ! まだ出せる奴は最前列来い、3人でやんぞ!!』
 男共は、とうとう3本の逸物を桜織の口へと突っ込みはじめる。
『んごっ、がっ!? あごっ、ごも゛お゛っ!!もぉい゛えあ゛っ!!』
 当然、桜織の反応は激しい。だが男共は動きを止めない。
『3人同時だと、さすがに腰動かしづれーな!』
『ま、こんだけ勃起してりゃ唇に擦れるだけでイケんだろ』
『だな。俺らと他の奴らじゃ精力が違ぇ。やっぱ男らしさ保つにゃ、嫁やフーゾクよりレイプだぜ!』
 物騒な台詞を吐きながら、3人は桜織を蹂躙し続ける。
『ごぶっ、ごぼっ……ごお゛う゛ええ゛っ!!もごおおお゛お゛っっ!!!』
 凄まじい声が漏れているが、まさか3人同時に射精されているんだろうか。男共の尻に隠れて、口元は全く見えない。だがスカートがめくれることも気にせずに暴れ回る足は、普通ではない苦しみを訴えている。
 白い内腿は濡れていた。あれは精液か、唾液か、それとも……。

『そこまでだ!』
 カメラ近くから大声が響く。虎が吼えるようなその雄叫びに、桜織を取り囲んでいた連中が肩を竦める。
『そのままじっとしてろ』
 その言葉の後、カメラの映す先が変わった。少し離れた場所の白バケツを捉え、次の瞬間、画面左側から刺青の入った腕が映り込む。おそらく撮影者のものだろう。多少タトゥーの入ったチンピラなら今までにもいたが、こっちはカメラに映る部分……肘の上から手首までが、びっしりと和彫りで覆われている。どう見ても堅気の腕じゃない。
『さて。お楽しみの計測タイムだぜ』
 撮影者はそう言って、桜織のすぐ前にバケツを置く。白くコーティングされたバケツの内側には、赤線で目盛りが刻んであるようだ。最大2リットルまで測れ、真ん中の1リットルラインにはやや長めの赤線が、それ以外は100ミリリットル刻みで短い赤線が引かれている。
『ノドに指突っ込んで、胃の中のモンここに吐け』
 太い指がバケツの縁をゴンゴンと叩き、次にカメラは桜織の方を向く。桜織の周りから、潮が引くようにさっと男達が離れる。
『……わかり、ました』
 桜織はここでも逆らわず、熱っぽい顔でバケツを覗き込む。そして命じられたまま、開いた口の中に指を突っ込んだ。
『う、うお゛……ふんん゛うむ゛ぉおお゛ええ゛え゛え゛っっ!!!!』
 女の出すものとは思えないような、えずき声。俺は今さら驚かない。天使のような千代里も、凛とした雰囲気の藤花も、吐くときにはこんな声になっていたから。どれほど気高い存在でも、追い込まれる時にはこういう声も出ると知っているから。
 だが、画面内の男共は爆笑する。口々に何かを呟きながら、腹を抱えて。とはいえ、連中の視線はしっかりとバケツの中に注がれていた。桜織の喉から次々とあふれ出す白濁が、バケツへと溜まっていく。
『うへ、すげぇ量だな。改めて見ると』
『あれ全部、俺らのザーメンなんだよな……』
『くっせぇ! チーズみてぇだ』
 色々な反応がある中で、桜織の口からの逆流がとうとう止まる。波打つ液面が静まったラインは……600ミリリットル。
『は、はぁっ!? たったの600ミリ!?』
『おいおいおいウソだろ、1リットルもいかねえのかよ!?』
『ざけんな!! もっと出せや、胃の中のモン全部よぉ!!』
 まさに、阿鼻叫喚。何人もの男が眼を剥き、桜織の腹や胃を圧迫しはじめる。
『んぐっ、お゛……お゛え、え゛ぁお゛っ!!』
 桜織の喉元が蠢き、逆流が再開する。だが、それはほんの数秒のこと。いくらか追加で白濁が注がれたとはいえ、せいぜい650ミリリットルというところだ。
『ほう、なかなかのモンじゃねぇか。男の射精量ってなぁ、平均3.5ミリリットルっつうからな。その180倍以上……一人頭で軽く3倍は行ってるわけだ』
 撮影者の男が白々しく賞賛する。奴は知ってたんだろう。いかに1ヶ月溜め込んだ男が50人いるとはいえ、大した量にならないことを。だからこそリットル100万なんて気前のいい約束をしたんだ。
『マジかよ……あんだけ必死こいて、60万ぽっちか?』
『クソッ、雀の涙もいいとこだぜ!』
 タコ部屋の連中は当てが外れたらしく、床を叩きながら嘆く。60万で雀の涙ということは、奴の借金は一千万ぐらいはあるということか。
 カメラは、その絶望ぶりをゆっくりと回し映していた。そうしてしばらく絶望を愉しんでから、撮影者が立ち上がる。

『なんだオメェら、借金背負った時みてぇにしょぼくれやがって。思ったより少ねぇとはいえ、減額されるんだぜ?』
 そう声を掛けても、顔を上げる男共の目は死んだままだ。それを前に、撮影者は芝居がかった溜め息を吐く。
『……ったく、しょうがねぇな。なら、次のチャンスをやるよ』
 その一言で、男達の目が大きさを増した。逆に桜織の顔は強張る。彼女だけは、この後に起きることを知っているようだ。
『ちゃ、チャンスって……?』
『一体、何すりゃいいんです!?』
 前のめりになって尋ねる男達に、撮影者が苦笑する。
『なに、簡単だ。媚薬ガスをたらふく吸って発情してるそこのガキを、ただイカせまくりゃあいい。一回イカせるごとに5,000円やる。そんなら覇気も出んだろうが』
 その言葉に、男達が一瞬凍りついた。そして、その次の瞬間、歓喜に沸く。
『い、一回5千円!?』
『ま、待てよ。んじゃ10回で5万、20回で……えーっと、10万!?』
『す、すげぇ……!! あ、あの、電マとかも使ってもいいんスか!?』
『オウ。電マだろうがコスプレ衣装だろうが、希望がありゃ用意してやる』
『おおおっしゃ、だったらガンガン減らせっぞ、借金!!』
 男共は興奮を隠せない様子だった。確かに1回イカせれば5千円というのは破格だ。そんな割のいいバイトはどこを探したって有り得ない。借金漬けで悩んでいる人間が、そのチャンスに飛びつかないわけもない。
『そ、それ、いつからっスか!? 今!?』
 一人が逸物を揉みながら尋ねる。セックスでイカせるつもりなんだろう。
『いいや、明日スタートだ。だが、軽く予行演習といくか。試してぇモンもあるしな』
 撮影者がそう言って、一旦カメラを床に置く。一分ほどゴソゴソと物音がし、再びカメラが抱え上げられた時、映像には何かの道具が映り込んでいた。幅広のカチューシャという感じの代物。
『何スか、それ?』
 訝しむ声の中、撮影者は桜織に歩み寄り、その頭にカチューシャ状の道具を嵌めはじめた。慎重に位置を調整し、両端のクリップ部分で耳輪を挟んで固定する。
『こいつは脳波を計る機械でよ。女の絶頂時に記録されやすい脳波と、着けた人間の脳波が一致した時……平たく言やぁ、“この女がイクたびに”音が鳴るようになってんだ』
 そう説明されても、労働者連中の大半は呆けた顔だ。その様子に、撮影者が苦笑する。
『ま、口で説明するより実演した方がいいだろ。お前ら、いっぺんこの女イカせてみろ』
 その言葉で、男共に笑みが戻った。待っていたと言わんばかりだ。
『へへへ……んじゃ、遠慮なく』
 桜織の傍にいた数人が、さっそく桜織に触れる。ブレザーのボタンを外して前をはだけさせ、白ブラウス越しに胸を掴み。スカートをたくし上げ。
『おおお……』
『へへへ、すげぇ……』
 内腿が露出した瞬間、何人かが溜め息を漏らした。幼児体系でありながら、思ったよりも肉感的な内腿……そこが、うっすらと濡れていたからだ。男の一人がその水分を指で掬い、嗅いでみせる。
『ふむ……匂わねぇってことは、ションベンじゃねぇな。マン汁だぜこりゃ!』
『くくっ。ガキみてぇな身体して、しっかり濡れてやがるってか!?』
『俺らのオス臭をたっぷり嗅がされて興奮したのかよ、やらしいなぁ嬢ちゃん!』
 男共は下卑た笑いと共に、桜織を淫乱と謗る。単純な言葉責めだが、清廉潔白な少女には充分に効果的だ。
『…………っ!』
 桜織は、唇を噛みしめていた。視線を斜め下の床に落とし、頬を赤らめ。その表情は妙に色っぽい。映像開始から2時間あまり。部屋に充満するガスは彼女の肺を満たし、存分に効果を発揮しているようだ。
 そんな桜織を取り囲む男共は、息を荒げながらブラウスのボタンを外していく。細い胴を包む布がはらりと左右に別れ、桜色の肌が露わになる。その肌を覆うのは、上下とも白で揃えられたシルクの下着。お嬢様学校に通う生徒の規範、という感じだ。その規範を、すぐさま浅黒い手が覆い尽くす。
 女に飢えた男共に、遠慮などなかった。
『ち、乳だ、女の乳だっ!!』
『うへへへ、尻も柔らけえ!!!』
『おいおいおい、もうグチョグチョじゃねぇかよ、ええ!?』
 小ぶりなブラジャーを押し上げ、なまの乳房を掌に収める。ショーツにも二本の手が入り込んで、後ろからは尻肉を鷲掴みにし、前からは割れ目へと指を差し入れる。
『あっ……!!』
 桜織は眼を見開くが、抵抗はできない。彼女の小さな手は、頭の上で掴み上げられたからだ。
 浅黒い手が蠢き、白い下着に皺が寄る。
『はっ、はっ、はっ、はっ……』
 桜織の口から喘ぎが漏れる。ぐちゅぐちゅという水音が響き渡る。
『は、んん……ん、んっ!!』
 切ない呻きと共に、桜織が眉根を寄せた、その直後。

  ────リン

 鈴の音が響く。正確には、鈴の音を模した電子音だろう。
『よし、鳴ったな。頭がボヤけてても聴こえそうだろ? お前が一度イクたびに、この音が鳴るんだ』
 撮影している男が、達したばかりの桜織に告げる。
『……!』
 桜織の顔に、かすかな険しさが混じった。
『ちなみにイッた回数は、モニターに表示される仕掛けだ。フロア中にあっから、当然この部屋にも……っと、こっち向きじゃ映らねえな』
 その言葉の後、カメラが移動する。責められる桜織を捉えたまま、90度回転する動きだ。おかげで、今までとは違う壁面が映像内に映り込む。
 壁面には、確かにモニターが嵌め込まれていた。液晶画面には『1』の数字が2つ表示されている。1つは画面中央、1つは画面右側……Totalという表示の下だ。どうやらモニター内で、現在のカウントと総カウント数が管理されているらしい。
『なるほど。今このガキが一遍イったから、カウント1って訳ですかい』
『そういうこった。カウントが1000や2000の大台に乗ったのを見た女が、トロけ顔から現実に引き戻される瞬間は笑えるぜ?』
『はははっ、そりゃぜひ見てみてぇな!』
『ああ。このお嬢ちゃんは潔癖っぽいから、特にいい反応してくれそうだ!』
 撮影者の面白そうな声色に、労働者連中もつられて笑う。だが同時に奴らは、野望に満ちた視線をモニターに向けてもいた。奴らにとってあのカウントは、桜織を絶頂させた実績であると同時に、借金がいくら棒引きされるかの指標でもある。しかもその額、1カウントあたり5000円。多額の借金で地に繋がれている人間なら、眼を血走らせて当然だ。

 実際、あくまで予行演習と言われている今ですら、連中には熱が入りはじめていた。
『ほら、マンコ拝もうぜ!』
『いひひ、だな!!』
 下卑た笑みと共に、純白のショーツが太腿の半ばまでずり下げられる。
『くっ……!!』
 唇を噛む桜織。その顔と同じく、下から舐めるように撮影された性器も清楚そのものだ。ピンク色の一本筋。毛はほとんど生えていない。
『いいねえいいねえ、初物って感じだぜ!!』
『あああ堪んねぇなあ! こんな上品なオマンコが、明日っから俺ら共有の肉便器になんのかよ!?』
『くっそぉ……また勃ってきやがった。すぐにでもハメてぇぜ』
『ああ、だがそうもいかねぇ。せめて手マンでイカせまくってやろうぜ』
 気品に溢れる桜織とは対照的に、男共には品性の欠片もない。連中はショーツが横に伸びるまで桜織の足を開かせると、改めて割れ目の中に指を入れ、蠢かす。
『あ、ん……ん、んん……っ!!』
 桜織は口を噤み、喘ぎ声を漏らすまいとしていた。だが、リン、リン、と音が鳴り響き、モニターの数字が増えると、次第に息が荒くなっていく。
『へへへっ。思ったよりいいなぁこの音。イッたのが解って、責めるモチベーションが上がるぜ!』
『だよな。女ってなぁすぐイク演技するもんだが、機械が測ってくれるってんなら間違いねぇしよ!』
『もっともっとイカせてやろうぜ。せっかく丸解りなんだからよ!』
 男共は大喜びで乳房を揉み、割れ目の中で指を蠢かす。がっついている感はあるものの、どいつもそれなりに齢を重ねているだけあって、責め方は手馴れていた。迷いのない、ねっとりとした指遣いで、あらゆる性感帯を責めつづける。それを受けては、いかに初心な少女でも感じずにいられないんだろう。リン、リンと、また涼やかな音が響く。
『ん、くっ……!! はっ、はぁっ……はぁっ……!!』
 桜織が止めていた息を吐き出す。荒い息だ。額の汗もひどい。
『どうだ、立て続けにイクのはしんどいだろ。その責めが丸二週間、休みなく続くんだぜ?』
 撮影者の男が、桜織にそう呼びかけた。すると桜織は、表情を引き締めた。
『心配ありません』
 はっきりと言い切る言葉に、見開いた瞳。淑やかそうでいて、芯が強い。まさに大和撫子だ。
『なるほど、いい眼してやがる。ま、愚問だったか』
 撮影者はそう言って、嬉しそうにひと息挟んだ
『お前、呼び出されてどの責めを受けるか訊かれた時に、一番つらい責めを自分に割り当てろって言ったんだってな。クラスメイトを守るために、進んでぶっ壊されにいくってか。泣ける話じゃねぇか、ええ? 名門・蒼蘭女学院の委員長サマよ』
 この言葉を聴いて、ようやく桜織の我慢強さの理由が解った。責任感だ。委員長として級友を守る──その一念で、彼女は踏ん張っているんだ。まだ成人すらしていない少女だというのに、なんという気高さだろう。
 その気高さを前に、撮影者は言葉を重ねる。
『だがよ、本当に大丈夫か? 二週間休まずってなぁ、言葉で聞く以上にキツイみてぇでよ。もう10人近くがこの責めを受けてるが、ほぼ全員、途中で半狂乱になって逃げ出そうとしやがった。ちなみに逃げ出さなかった唯一の例外は、早々にイカレて逃げ出す判断すらできなかったってオチだ。毎度毎度ひっ捕まえて引きずり戻すのも面倒だからよ。テメェは手間かけさせんじゃねぇぞ?』
 そう語る声は淡々としていた。変に脅すでもなく、ただ事実を語っている感じだ。脅しにも色々あるが、こういう類の言葉が一番怖い。だが、桜織の顔色は変わらなかった。
『私は……壊れたりしません』
『はっ、最初は大体の奴がそう言うんだよ。お綺麗な澄まし顔でな。さっき言った、逃げ出す間もなく壊れた奴だってそうだった。あいつの場合、澄ましてるどころか、「自分がこの責めを耐えたら、その時は覚えてろ」なんて啖呵まで切りやがってな。あの態度にゃ、ちぃとムカついたんでよ。ガスを吸わせつつ、若くてガツガツした連中を10人ばかし宛がったら、二日後の朝にゃ狂ってた。ちなみにそん時の絶頂カウントは、たったの670回程度だったぜ。カウントなんざアテにならねぇもんだろ?』
 男はそう言って桜織の目元を引き攣らせた後、何かのジェスチャーで他のオス共を煽った。それを合図に、男共は呪縛が解けたように動き出す。
『……おおっし、続けっか!』
『おう。ついでに提案なんだが、もっと見えやすいように“ションベンスタイル”でやんのはどうよ?』
『はははっ、いいねぇ。こいつなら、持ち上げんのも簡単だしな!』
 男共は叫びあった末に、桜織の足を抱え上げる。膝裏を掴んで宙に浮かせ、アソコを正面に晒す格好……ちょうど、小さい子供にトイレをさせるポーズだ。
『きゃっ!!』
 流石の桜織も、これには悲鳴を上げる。だが、それこそ男共の狙い。連中は桜織の恥じらいぶりが見たくて、あえて屈辱的なポーズをさせているに違いない。
『ひひひ……』
 黄色い歯を見せて笑いながら、男共はさらに割れ目を刺激する。今度は指入れじゃなく、表面のビラビラを4本指で擦る動きだ。
『あっ、い、いやっ! やめてくださいっ!!』
 桜織の声は悲鳴に近い。この状況でも保たれる丁寧な言葉遣いは、彼女が真っ当な教育を受け、それを吸収した事の表れだ。どれほど下劣な相手であろうと、年上には敬語を使うべし──それを律儀に守るいじましさは、この悲惨な状況にあってむしろ痛々しい。
『へへへ、もうグチョグチョだな。汁が飛び散りまくってやがる』
『すげぇよな。たかが5分やそこら弄っただけでこれかよ?』 
 男共の指摘通り、桜織の女の部分からは透明な液体が溢れ続けていた。もう何時間も指責めを受けている、という感じの反応。ピンクの割れ目がまだ清楚さを保っているだけに、違和感は強い。
 矛盾の原因は、部屋に充満したガスだ。通風孔からは、今もドライアイスの煙のようなものが部屋内に流れ込みつづけている。煙は、床へ届くあたりで見えなくなるが、空気中を漂っているのは間違いない。それをたっぷりと吸い込んだ結果が、あの桜織の反応なんだ。
 いや、桜織だけじゃない。それを囲む50本の逸物も、すっかり回復して横や斜め上を向いている。いくら女に飢えているとはいえ、少なくとも3回以上射精した後でその勃起力は普通じゃない。

 そして、そのガスを吸い続けている人間はもう一人いる。そいつは今の今まで、一度も射精していない。
 モニターの絶頂カウントが20を超えた頃、奴はのっそりと動き出した。夢中になって桜織を嬲っていた連中も、その動きを瞬時に察知して手を止める。
『持ってろ』
 その言葉の後、画面が揺れた。カメラが別の人間に手渡されたらしい。
 別の撮影者がカメラを構えることで、これまでの撮影者の姿も映像に映り込む。どいつだ……と、探すまでもない。奴は見るからに別格だった。眼光の鋭さもそうだが、何より特徴的なのが、上半身を覆いつくす和彫りだ。なるほど、ひと睨みされただけで50人の男が萎縮するのも無理はない。
『ど、どうぞ……手越さん』
 一人また一人と桜織から男が離れ、手越と呼ばれた男が桜織の前に立つ頃には、全員が距離を置いて見守る体勢を作っていた。まるで虎の人食いショーにでも立ち会っているように。
『んなに離れなくても、取って食やしねぇよ』
 手越はゲラゲラと笑いながら、ズボンとボクサーパンツを脱ぎ捨てる。案の定、太腿と脚、尻も刺青で覆われている。もはや肌に墨が入っているというより、柄物を全身に着込んでいるという風だ。だが映像の中の視線は、どれ一つとしてその威圧的な肌を見ていない。51の瞳が釘付けになっているのは、奴の股間にそそり立つ剛直だ。
 とにかく、でかい。居並ぶ男共の誰よりも。おまけにその表面には、出来物のような不自然な突起がいくつもあった。
『一日で50人のチンポの形を覚えこまされたお前でも、こんなのを見るのは初めてだろ? 真珠を10コ埋め込んだ、自慢の逸物だ。中古で外車が買えるぐらいのカネ注ぎ込んだが、その甲斐あって中々の女殺しでよ。竿師として脂の乗ってた20、30の頃なんざ、何十って数の女をコレで虜にしたもんよ』
 奴は自慢げに語りながら、桜織の足に手をかけ、ゆっくりと足を開かせる。桜織は、菱形の瞳で手越を見据えていた。大股を開かされても。愛液まみれの割れ目に、凶器のような剛直を擦りつけられても。本当に芯の強い子だ。
『ほー。破瓜の間際でもその顔ってのはポイント高ぇな。だが、そのぶん楽しみだぜ。その綺麗な顔が、どう歪むのかがな!』
 手越は醜い笑みを浮かべ、腰を進めはじめた。太くて長い逸物が、割れ目を押し開いてメリメリと入り込んでいく。
『う……あ! はぅっ……!!』
 桜織の眉が下がり、口が開く。それはそうだ。どう考えても初めてにはきついサイズの逸物を、強引に押し込まれているんだから。
『苦しいか? 苦しいよなぁ、デカマラはよ』
 手越はにやけながら、半ばほど挿入した辺りで腰を止める。そして、ゆっくりと前後に腰を揺らしはじめた。
『う……あ、うぐうっ……!!』
『しかし、よく濡れてんな。シャブ打った女の股にソックリだぜ』
 顔を歪ませる桜織とは対照的に、手越は上機嫌だ。左手で桜織の右足首を掴んだまま、繰り返し腰を打ちつける。そのたびに、太い逸物が少しずつ深い所まで入り込んでいるようだった。20回もピストンする頃には、パンパンという肉のぶつかる音までしはじめる。
『う、ううう゛……っ!!』
 桜織は歯を食いしばっていた。痛いのか、それとも別の理由か。
『すげぇな、濡れたヒダが絡み付いてきやがる。普通処女をヤる時にゃ、縮こまった膣を無理矢理こじ開けて開発してくもんだがよ、その必要がねぇときた! オウ、お前ら喜べ。このガキ、お前らのチンポしゃぶりながら、一丁前に発情してやがったぜ!?』
 手越の悪意を込めた嘲りに、桜織が眉根を寄せた。
『そ、そんなこと……!!』
『そんなことねぇってのか? じゃあこの音はなんだよ。グチョグチョいってる、この音はよぉ!』
 手越が桜織の視線を受け止めながら、腰を激しく前後させる。すると、確かに湿った音が聴こえてきた。
『へへへ、すげぇ音してやがる!』
『ここまで聴こえるなんて相当だぜ。いやらしいなあ、委員長さんよ!!』
 遠巻きに見ている男共も、ここぞとばかりに嘲りに加わる。実に51対1。処女を失う痛みの中、そんな数の人間に罵られれば、精神的なストレスは計り知れない。

 だが、桜織の表情は覇気を失ってはいなかった。
『はぁ、はあっ、はぁっ……!!』
 荒い息を吐きながら、凌辱者である手越を見上げている。その澄んだ瞳は雄弁だった。自分に負い目などない。いくら謗られようと、自分の心は折れない。そう訴えている。そしてその訴えは、犯す手越にも伝わったようだ。
『ったく、大人しい顔して腹の据わったガキだ』
 手越はそう言って笑った。なぜか嬉しそうに。その反応は予想外だったんだろう、桜織が怪訝な表情になる。
『俺ぁ、芯の強ぇ女は好きだぜ。快楽漬けにしてぶっ壊すのが、格別に楽しいからよぉ!』
 そう叫び、手越が本格的に腰を使いはじめる。何十という女を虜にしたと豪語するだけあって、その腰使いはスムーズかつメリハリの利いたものだ。ディスプレイ越しに傍観している俺でも、受け側が気持ちいいだろうと想像がつくようなテクニック。それを続けられるうち、桜織の息遣いが変わりはじめた。
『あ、あっ……は、はっ……あ、はっ…………!!』
 どこか苦しそうだった息が、艶を帯びてくる。最初こそ勘違いかと思えるレベルだったが、そこから3分もすれば、はっきり甘い吐息と判るものになる。Mの字に開かされた足は、強張って細かに痙攣している。
『はっ、はっ……ん、んんっ!!』
 桜織の喉から、切ない呻きが漏れた。その、直後。

 ────リン────

 残酷なほどの明瞭さで、鈴の音が響いた。
『!!』
 まず息を呑んだのは、桜織。そこから一瞬遅れて、粘膜で繋がり合っている手越が笑みを浮かべ、最後に取り巻きのギャラリーが爆笑する。
『ははははっ、イキやがった!! あんな極太咥えこんでイクとか、とんでもねーヴァージンもいたもんだ!』
『残酷だねぇ。あんなに酷いことされてもイク“変態”だってことが、ハッキリ暴露されちゃうんだから』
『……うっ……!!』
 浴びせられた罵りに、とうとう桜織の顔が崩れる。愛液が溢れた事は、ガスのせいだと割り切れた。だが手越の腰遣いで達したのは、紛れもなく桜織自身の行為だ。責任の所在を他に求められない以上、謗りは直に胸を抉る。そうして顔を歪めた桜織を見下ろしながら、手越は犬歯を覗かせた。
『まずは一回目だな。まだまだ終わらせねぇぞ?』
 そう言って桜織の腰を抱え直し、リズミカルな腰使いを再開する。パンパンという小気味いい音と、水音がしはじめる。
『あっ、うあっ! あはっ、はあっ……!!』
 桜織の眉が顰められた。そしてその意味は、これまでとは違う。
『どうした委員長サマ、苦しそうじゃねぇか!』
『バーカ、ありゃ善がってんだよ。見てろ、すぐまたあの音が鳴るぜ?』
『ヤクザに犯されて逝っちまうなんてよ。優等生ほどアウトローに惹かれやすいってのはマジらしいな』
『へへ。って事ぁ、俺らにもチャンスあるってワケか。冴えない親父として一生終えるかと思ってたが、こりゃ運が向いてきたかな!』
 絶頂した以上、彼女の中にある最大の要素は、痛みでも屈辱でもない。快楽だ。少なくとも場の男共はそう見る。そう謗る。後ろ暗い部分を持たず、光の差す場所だけで生きてきた桜織にしてみれば、その恥辱もひとしおだろう。
 そんな状況の中、手越は巧みな技術で桜織を追い詰めていた。
『んっ、んんっ……んあ、あ、あっ…………!!』
 桜織は唇を引き結んで耐えようとするが、すぐに“喘がされて”しまう。完全に踊らされている形だ。そして。

 リン──

 鈴の音がまた、冷たく響く。それから一拍置いて、どっと笑いが起きる。桜織にとっての地獄だ。
『お前ら、感謝しろよ。お前らの粗末なモンでもこいつが逝きまくれるように、逝きグセをつけといてやる』
 手越が周囲を見回し、恩着せがましく語る。それを囲む雄共は、初めの頃の緊張ぶりが嘘のようににやけ、口々に手越への感謝の言葉を返していた。

 このダンボール上での絡みシーンを最後に、『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失』の映像は終わる。終わる間際でも、桜織は犯され続けていた。リン、リン、と、冷たい鈴の音を響かせながら……。



                   オーガズム・クライマックス(中編)に続く)