※オーガズム・クライマックス(中編)の続きです。
4章最終部分です。
■第四章 オーガズム・クライマックス(後編)
12人目の男が持参したディルドーの特徴は、何といってもその柔らかさにあった。男が持ち手を左右に揺さぶるだけで、中央部分が鞭のようにしなる。となれば当然、先端部は膣奥を錐揉み状に刺激するはずだ。
実際、桜織の反応は大きかった。
『うぅくっ! はっあ……ああっ!! ああぁぁ……あぁんっ、ああぁっ!!』
艶のある声を上げながら、上下左右に腰を揺らす。明らかに、ディルドーによる抉り回しから逃れようとする動きだ。
『ふふふ、暴れてる暴れてる。性経験の少ない子っての奥刺激されると痛いらしいけどさ。イキまくって脳内麻薬出まくりのキミなら、そんな痛みも全部快感になっちゃうでしょ? 僕が観たAVでも、イキすぎた女優が止めて止めてって叫んでたんだよね。それに比べたら、やっぱり君は品がいいよ、必死に声殺そうとしてるもん。女の子は清楚が一番だよね』
男は頬を緩めると、手首を大きく使い、ディルドーのグリップ部分を激しく回しはじめた。連動してディルドー本体も円を描く。もはや大縄跳びの動きだ。
『ああいやあっ、深いいぃ゛っ!!!』
圧に耐え切れなくなったのか、桜織の白い歯が噛み合わされる。腰がぐうっと持ち上がり、シーツとの間に枕ひとつ分ほどの隙間が空く。
男として客観的に見れば、快感に耐える桜織の顔は“そそる”。この上ない清楚さが崩れる瞬間に、カタルシスを感じてしまう。だから男が、余裕をなくした桜織の唇を奪ったのも、一概に批難はできない。ただし、それはあくまで俺の感想。極限状態で呼吸を遮られ、軽蔑する相手とのキスを強いられる桜織本人からすれば、地獄以外の何物でもない。
『んぶっ!? ぷはっ! や、やめて、くださ……んむっ、むうう゛っ!!』
頭を振って口づけから逃れようとする桜織。だが上から密着する男を拒むのは容易じゃない。
おまけに彼女は、首から上の抵抗に専念できる状態でもなかった。唇を奪おうとする中でも、ディルドーを操る男の手は止まらない。体勢が体勢だけに、責め方自体も変わっていた。正面からディルドーを突き込む動きから、桜織に覆い被さったまま、ディルドーを引き寄せる動きに。あの“引き寄せる”やり方は、より強く、よりピンポイントに奥のスポットを刺激することだろう。
『えくっ、えくぅうう゛っ!!!』
男に舌を奪われながら、桜織が叫ぶ。リン、と響く機械音はいつも通りだが、今回の絶頂は一際深いに違いない。
ディープキスの音に混じって、何度も鈴の音が鳴り響く。やがて男が、引き寄せる動きのままでディルドーに円運動をさせはじめると、桜織の下半身の反応も極まった。腰を浮かせ、足指でシーツを掴み、果てにはぷしゅっと潮を噴く。
『はぁっ、はぁっ……へへへ。桜織ちゃん、唾の量が凄いよ。見て、俺の顎まで垂れてきてる。イクと唾が出るからかな。それとも下品モードに入っちゃった? 俺的には、それでも全然いいんだけど』
男は桜織から顔を離し、嬉々として謗りの言葉を投げかける。桜織は唇を結んだ。彼女がよく見せるこの表情は、実に清楚だ。Mの字に開脚したまま、割れ目をひくつかせる下半身とは対照的に。
男はここで、愛液で濡れ光るディルドーを投げ捨てた。そして代わりに、同じくベッド上に放置されていた電気マッサージ器を拾い上げ、先端にアタッチメントを取り付ける。
『……っ!!』
凶器に近い形状となったマッサージ器を前に、桜織の目が見開かれる。彼女はマッサージ器の暴力的な威力を知っている。アタッチメントは、その威力をさらに増すために取り付けられたに違いない。となれば、恐怖して当然だ。
『お、お願いします! そんなもの使わないでください……。それなら、挿入された方がましですっ!』
桜織は細い身を掻き抱いて叫ぶ。相当な怯えぶりだ。貞操観念の強い彼女がレイプを許容するなんて、並大抵のことじゃない。
『そう焦んないでよ。ハメんのも後でたっぷりしてあげるからさ。その前に、もっと奥をほぐして感度を上げよう?』
『い、嫌! これ以上なんて、今でも感じすぎてます!』
『ダーメ。そうやって普通に喋れてるってことは、まだ余裕あるってコトじゃん。片言でしか喋れなくなるまで、思いっきり追い込むから』
男の指がマッサージ器のスイッチを入れた。重い羽音を伴うアタッチメントが、充血した割れ目へと潜り込み、桜織が腰を跳ね上げる。
『くあっ! こ、これ、刺激が強すぎますっ!!』
『知ってるよ、だから良いんじゃん。どうせイキまくるしかないんだからさ。そんなお股に力入れないで、リラックスしてな』
男は鬼気迫る表情で、マッサージ器を奥に固定しつづけていた。相手には弛緩を求めながら、自分の手首には血管を浮かせて。
『いっ、いくーーううっ!!』
さすがに機械の威力は半端じゃなかった。桜織が歯を食いしばって絶頂するまでに、10秒もかからない。男はその反応を眺めながら、マッサージ器を上下に揺らして責めを強める。
『っくぅ……だめ、だめいくっ、またいく!!!』
桜織の腰が持ち上がり、リンリンと鈴の音が響く。桜織は何度も絶頂を訴えていたが、その回数が増すほど、声のトーンは低くなっていった。聴くだけで痛さが伝わる悲鳴があるように、その低い呻きは絶頂の深刻さを生々しく伝える。
脚の反応も正直だった。指先でシーツを掴むだけでは飽き足らず、シーツに足裏を叩きつけて暴れはじめる。苦しみの源を遮断するように、内股に閉じようとする動きも見えた。
『閉じるな閉じるな。脚開くことだけに専念してろ!』
男はやや口調を荒げ、左の腕と膝を使って桜織の股をこじ開けながら、右手で掴んだマッサージ器を揺らしつづける。ぶるぶると細かに痙攣する様から、2人のどちらもが全力で力を篭めていることがわかった。優勢なのは、当然ながら男の方だ。
『うう゛っく、くはぁあっ!! ああ、あ、いっくう……っ!』
桜織の喉からはいよいよ切ない声が漏れ、腰が大きく反ってはドスンとベッドを揺らした。何かに憑かれているような動きだ。それでも、男はマッサージ器での圧迫を緩めない。
『そろそろホントの限界か? よーし、じゃあこっから30回連続だ。30回連続でイッたら一度休ませてやる! ほーら1回! 2回!』
そう叫んで桜織の脚を大きく広げさせ、鳴り響く鈴の音をカウントしはじめる。
『もう無理ぃっ!! あっく、はっくっ!んんあああっ!! ご、ごめんなさい、ごめ……んんん゛っ!! はっはっは…………っくいっくう゛う゛っ!!!』
桜織の反応は、折檻を受けて親に謝罪を繰り返す子供そっくりだった。涙を流し、喘ぎ、震えながら謝る。しかし親役は、そんな少女の反応を愉しむばかりだ。
『18回、19回、20回! もっともっともっと、イけるだけイけっ!!』
桜織の腰が頭より高く持ち上がっても、左右に激しく振られても、マッサージ器は執念じみた動きで追随する。地獄のチェイスだ。
『いっくいく、いきゅううう゛っ!! も゛れるぅっ、もれぢゃううう゛っ!!!!』
『いいぞ漏らしても、全部出せ! あと3回! 28、29……ラストォ、30ッ!!!』
男はラストスパートとばかりにマッサージ器を小刻みに動かし、30回目の鈴の音と同時に一気に抜き去る。
『ひいいぐううう゛ーーーーっ!!!』
金切り声を上げながら、腰をベッドに叩きつけた桜織。その割れ目から、透明な飛沫が勢いよく噴き出す。
『はーっ、はーーっ。あっはっはっは、すごい。完全に中イキと小便がセットになっちゃってんね。俺としちゃエロくていいけど、スゲエ下品だよー委員長?』
男はどこまでも性根が腐っているらしく、放心した桜織に追い討ちの言葉を投げかける。
桜織の頬をまた一筋、涙が伝い落ちた。
桜織の苦しみは続く。
次の場面では、桜織は床に立ち、ベッドに手をつく格好でディルドー責めを受けていた。さっきの映像でも使われていた、非常に柔らかいディルドーだ。
『さっきより感じてるね。立ってる状態って、下半身に一番力入るからね』
男の言葉通り、桜織の反応は激しい。深々と入り込んだ黒いディルドーが蛇のようにのたうつたび、太腿が引き締まっては緩む。愛液の量も相当で、内腿に垂れるのはもちろん、ディルドーが抜かれるたび、カメラに映るほどの水滴が飛び散ってもいる。桜織が足を踏み替えるたび、みちゅりと音が鳴るほどだ。
『うわ、見てよ桜織ちゃん、下びちゃびちゃ。これ全部、桜織ちゃんの本気汁でしょ? すっごいね』
男は笑いながらペットボトルの水を煽り、その飲みかけを桜織の口に宛がう。桜織が一瞬顔を顰めたところを見ると、匂うようだ。だが、彼女は脱水症状を避ける為にもそれを飲み下すしかない。汗に涙、愛液……体液は失われる一方なんだから。
12人目の男はここで休憩を挟んだ。ただし、休むのは自分だけだ。
『次は、オナニーしてみせてよ。これ使ってさ』
奴はベッドで寛いだまま、桜織にバイブを投げ渡す。
『なっ……!』
桜織は息を呑んだ。それまでのような受身の態度が許されず、自ら快感を貪らなければならない。そんなことは、彼女の倫理観にそぐわないだろう。
それでも、彼女は従うしかない。羞恥で眉を潜め、唇を噛みしめ、耳までを赤く染めて、自ら割れ目にバイブを差し込む。
『ほら、脚開いて! バイブが出入りするところを俺に見せてよ』
男の要求を受けて足の幅を広げつづけた結果、桜織の格好は足を外向けに開いたがに股となってしまう。
『あっはっはっはっ、いいねいいねぇ! 清楚娘のガニ股バイブオナニーとか、お宝級の映像だよこれ!! しかもさぁ、なにこれ、お汁の量が凄いじゃん! まさか興奮してるの、そんな浅ましい状況で!? ホントかよ、ムッツリのド変態じゃん!!』
男は桜織の自慰を眺めながら、好き放題に野次を浴びせまくる。言葉が重なるたびに、桜織の表情は歪み、頬を涙が伝う。
だが、小さな手がバイブのグリップを前後させるたび、愛液が溢れているのは事実だ。どうやらかなり感じてしまっているらしい。
『はぁっ、はぁっ……! はぁっ、はあっ! うっ、く……あ、はぁっ!!』
荒い呼吸の中、足が細かに震えはじめる。リン、と無慈悲な鈴の音が鳴る。
『あ、イッた! イク時はイクって言わないと。オトナの前でオナニーする時のマナーだよ?』
『あ、あ……はぁ、ぁっ!! い、イキますっ! イキます、イ……ぃいっ!!』
絶頂を宣言させられるようになってから、さらに鈴の音の間隔が狭まった。脚の震えも病的になっている。かなり深く絶頂しているようだ。
痛々しい。だがそれだけに、サディストにとってはこれ以上ない興奮材料だろう。
『ほんとエロいなぁ、桜織ちゃん。勃ってきちゃったよ』
男は勃起した逸物を誇示しながら桜織の背後に回り、手でバイブを払いのけると、齧りつくように挿入する。
『ん゛っ!』
『んー、イイ声。バイブで慣らされてても、生のチンポだとまた違うんだ? バイブのツルッとした表面と違って、人の肌って結構摩擦強いもんね。俺の方も、結構擦れて……ああああすっごい、襞が絡み付いてくるぅ! イキまくりで、すっかりオマンコが敏感になってるみたいだね』
男は桜織の反応を楽しみながら、荒々しく腰を打ちつける。一方的に欲望をぶつけるセックスだが、最初の頃ならいざ知らず、“出来上がった”今の桜織はそれでも感じてしまうらしい。
『んっ、んんっ!! ふっく、んんっ……ん、ふう゛っ!!』
左手で膝を掴み、右手で口を押さえる桜織。余裕のない中でも清楚さを保とうとする仕草が健気だが、背後から犯す男はその健気さすら許さない。
『今さら声抑えなくてもいいじゃない』
激しく腰を前後させながら、桜織の両手首を掴んで後ろに引き絞る。桜織の顔が引き攣った。声を抑えきれない確信があるんだろう。
『ふッ……く、く……んふっ、ふんんん! あ、ああっ!! うぁあ、あ……っ!!』
手の平という覆いを失った桜色の唇は、男が腰を打ち込むたびに開き、艶のある声を漏らす。
『どう、がに股で犯されると興奮するでしょ? キミこういう下品なの好きだもんね? ほら、どんどん逝っちゃえ!!』
『はぁっ、はぁっ……こ、こんな格好、好きな、わけじゃ……! はああっ、うあっ、あ……あいぐ、いっぐうっ!!』
男の謗りを否定してみせても、絶頂が止められない。あらゆる自由を奪われた桜織は、浅ましい格好のまま、愛液を散らして喘ぎつづけるしかなかった。
割れ目に溢れるほどの精液を流し込んだ後も、男の欲望は萎えない。むしろ逸る気持ちがなくなった分、より陰湿なものになった。
『おーっ、イってるイってる!!』
桜織の両足首を纏めて肩に担ぎ上げ、アタッチメントつきのマッサージ器で執拗に膣奥を刺激し。顔を両手で覆いながら絶頂していた桜織が反応を見せなくなると、バイブに持ち替えて気付けする。だらしなく開かれた脚の間に深々とバイブを押し込んだまま、下腹を手で圧迫するやり口だ。
『あ゛っ、かはっ……あ゛、ああ゛!! だめ゛、またイク、だめ゛っ!!』
意識を取り戻した桜織は、男の手を払いのけようとしていた。だが何度も絶頂させられるうち、両手でシーツを掴みながら、脚を激しく暴れさせる抵抗に変わっていく。男はそんな桜織の膝裏を抱え込み、あられもない姿で開脚させながら責め立てた。
『あははっ、凄い凄い。必死じゃん!』
『いや゛っ、い゛や゛ぁいや゛ああ゛ーーーっ! いぐっ、イグイグううッ!!』
男の愉快そうな笑い声とは対照的に、桜織の叫びは悲痛だ。
歯を食いしばり、大きく開き。瞳孔を開いたかと思えば、涙ながらに白目を剥きかけ。
そうした激しい反応の果てに、状況はいよいよ極まっていく。
絶頂の現在カウントが130を超えた頃、とうとう桜織は最大の恥辱を晒した。
ぶううっ──という音。
放屁だ。それは激しい水音と鈴の音にも掻き消されることなく、残酷なまでの明瞭さで響きわたる。
『お?』
『ぁ……!!』
男は固まり、バイブを操る手を止めた。桜織自身も眼を見開いて硬直する。
そして、鬼の首でも取ったような大笑いが始まった。
『ふはっ、あは、あはははっ! ひいっ、ひいいっ!! お前、気持ちいいからって、屁、屁をこくなよ、委員長!!』
バシバシと膝を叩く小太りの体の下で、桜織の顔が歪む。死を望むかのような痛切さで。
『はーっ、笑った笑った。さて、んじゃ屁コキ委員長にお仕置きといくか!!』
男はそう言って逸物を扱き上げ、横たわった桜織の右腿を掴み上げて挿入を果たす。挿入部分からは泡が膨らみ、ぶじゅうっ、という水音が漏れた。
『ふぁうぐっ!!』
桜織が目を見開く。
『おーっ、また中のうねりが凄いね。挿入しただけでイッちゃった?』
男は笑いながら腰を振る。斜め上から体重をかけて圧し掛かり、奥を押し込む突き方だ。それを受ける桜織の表情は、辛そうだった。眼を閉じて眉間に皺を寄せ、薄く開いた唇の間で歯を噛み合わせている。男の腰が股座に密着するたびに、う、う、と呻きを漏れてもいた。さらに、男がにやけながら下腹を擦りはじめれば、歯を噛み合せることすらできなくなる。
『どう桜織ちゃん、イってる?』
鈴の音が鳴り響く中で、男はあえて問いかけた。征服者として、言葉で聞きたいということか。
『いっ、いひいいっ!! い、イッてます、イッてますっ!!』
桜織からすれば、正直に答える以外にない。自分の絶頂は、脳の機械によって余さず暴かれているんだから。
『そうか、よーし。もっとイこう、2人でもっと気持ちよくなっちゃおう!!』
男は前屈みになり、抱えた桜織の右腿に腹を乗せる。小太りの体の下敷きになれば、桜織も横ざまの体勢を保てない。背中をシーツに押し付け、大きく脚を広げる。それは、男にとって深く挿入しやすい格好だ。抜き差しが目に見えてスムーズになる。
『あああいやっ、いくうっ!! いくううぅっ!!!!』
桜織の脚が筋張り、すらりと細い手足がバタバタと暴れた。
『ふーっふーっ、へへ、えへへへっ!!』
男は汗みずくで笑い、桜織の手を掴んで背を仰け反らせる。そのまま何度か力強く挿入されれば、桜織の腹筋に縦線が走った。
『いやあああっ、やめてっ! やめてくださいっ!!!』
桜織が大口を開けて叫んでも、男の腰は止まらない。肩に担ぎ上げられた桜織の足先が強張り、男の肩口で爪先立ちをする。男がそれを痛がって右脚を放り出せば、横向きに脚を重ねたまま、やはり艶かしく蠢かす。
それらはすべて、桜織の意思ではないだろう。恥じらいのある彼女の行動らしくないし、何より、彼女には見るからにそんな余裕がない。
『あっ、はっ!! はっ、はっ!! ああんっ、あ……んああ!!』
目を見開いたまま虚空を見上げ、短い呼吸を繰り返す。そんな、茫然自失の状態だ。
『すっごい、キマってきたね。そろそろ時間なのが惜しいよ。次の奴らは、この状態から君をイジメ抜けるんだよねぇ、あー羨ましいなあ!!』
男はそう言って逸物を引き抜き、手で扱きながら白濁を桜織に浴びせかける。自分という存在をアピールでもするように、たっぷりと。白濁は腹、胸と飛び散り、一部は桜織の顔にも浴びせかかる。
それでも、桜織は反応をしない。シーツに頭頂部をめり込ませ、顎を天井に向けたまま、気を失っているようだった。
12人目が部屋を退出した後は、3度目の食事の時間だ。
失神から引き戻された桜織は、膝にスープの皿を置かれただけでぶるりと震えた。それを見て手越が噴き出す。
『すっかりポルチオ性感が目覚めたって感じだな。もう全身がクリトリス状態ってか? その状態でソレ食ってみな、もっと新しい世界に行けるぜ』
手越はスープを指し示しながら告げる。
『新しい、世界……?』
『ああ。“オーガズム・クライマックス”──逝き続けた果てにある、究極の快感だ。そのスープ飲んで発情したまま逝きまくりゃ、じきにその境地に辿り着く。もっとも、99%の女は、その前に脳が焼き切れて狂っちまうがな』
物騒な言葉を口にしながらも、手越に悪びれる様子はない。あくまで真実を述べているという風だ。それは逆に、どんな脅しよりも心に突き刺さる。
『…………私は、耐え抜いてみせます』
桜織は表情を引き締め、濁りのない瞳で手越の顔を見つめる。手越の唇の端が持ち上がった。
『イイ眼だ、そうこなくっちゃな。まだたったの12人目。ようやっとスタートラインから一歩踏み出したとこなんだからよ!』
※
手越の言葉通り、ここからが本格的な地獄の始まりだった。
執拗に開発され、剥きだしの急所と化したポルチオ。それを男共が見逃すはずもない。単に快楽を貪る上でも、清楚な桜織の顔を歪ませる上でも、借金の棒引き額を稼ぐ上でも、最適なポイントなんだから。
圧倒的に多いのは、マングリ返しの桜織に対し、膝立ちをした男が斜め上から挿入する体位だ。マングリ返しというあられもない格好を取らされると、桜織は耳まで赤らめて恥じ入る。その顔を正面から拝む事ができ、なおかつ奥まで突きやすい。それが人気の秘密だろう。
『はっは、スゲー顔。俺も結構ハメてきたけど、そんなツラしてる女見んの初めてだわ。子宮イキの快感って、そんなスゲーの? マンコの奥も太腿もピクピクしっぱなしだしさぁ。電気流れてるみてぇ』
男共は腰を振りながら、嬉々として言葉責めを浴びせつづける。
対する桜織は、恥を晒さないように必死だった。目を瞑り、口を結び、シーツを鷲掴みにして快感に耐える。だが、そうして我慢を続けられるのも、ほんの僅かな間だけだ。しかもその間隔は、映像が進めば進むほど、確実に短くなっていく。
『はぁっ、はぁっ……! お、お願いしますっ、休ませてください! 奥は、奥は、もうっ……!!!』
息を切らしながらのこんな哀願を、何度耳にしたことだろう。犯す男は交替制でも、犯される桜織に休みはない。シャトルランを何千回も繰り返しているようなものだ。音を上げるなというには無理がある。
『ほう、休みてぇか。じゃあ今どんな感じが、自分の口で説明してくれや』
『ハッ、はっ、はっ……ど、どんなって……。お、奥に、あそこの奥を硬い物で突かれて、潰されて……深い所が、ジンと疼いて! そっ、その疼きが、足の、指先にまで……ふっぐ!?ううんっううんんイクっ!!!』
男が促すままに、快感の流れを語る最中。変に意識したのがまずかったのか、桜織は足先を強張らせながら絶頂に至る。別方向を向いた親指と人差し指の間に膜が張り、太腿が横に膨らみ、腹筋が浮き出るほどの反応。リン、と響く機械音こそそれまでと同じだが、どう見ても格別に深い絶頂だ。
『ははっ、また顎の皺がすんげぇな! んで? ジーンとした痺れが広がって、そっからどうなる?』
『ぜっ、はーっはーっ……!! そ、その後は……か、快感が……いえ、快感なんて言葉じゃ表せないぐらいの感覚が、ずっと続いて……はっ、はっ……頭に、霧がかかっていくんです! 真っ白になって、何も解らなくなって……ある瞬間に、足を踏み外したみたいに深い快感に沈んで……っ!!』
『ふーん、スゲーな。で、一回イッても終わりじゃないっしょ? マンコん中、ずーっとヒクヒクしてんじゃん』
『はい、イッても、収まりません!! イッた直後は、少し波が収まりますが……んん゛っ、すぐに、ぶり返してきます! 前のよりずっと大きくて、お、溺れそうなぐらい……っ!』
そう語る桜織は、まさに快感の大波に足を掬われている最中らしい。短い呼吸と共に、上半身が仰け反って痙攣し、見開かれた瞳がトロリと蕩ける。男はその反応を前に目を細め、更に腰の振りを早める。
『うあっ!! どうして……や、休ませて、くれるんじゃ……!?』
『いやぁ? ンな約束はしてねぇし、してたとしても守れねぇなあ! こっちは一ヶ月以上も女抱いてねぇもんで、金玉がパンパンなんだよ! 一発二発出したぐらいじゃ収まんねぇ、ガンッガンいかせてもらうぜぇっ!!』
『あがっ、ふ、深いぃっ!! は、激しくしないで……あぐうっ!! い、ああああぁっ!!!』
容赦ないピストンを受け、桜織が悲鳴を上げる。しかもそれが延々と続いた。30分もすれば、男は膝が擦れて痛いとぼやきだすが、だからといって止めはしない。桜織の股間を跨ぐように足を開き、改めて力強い抜き差しを始める。薄汚い尻穴の下には膨らんだ睾丸があり、そのさらに下に覗く逸物は、未だに硬さを保っているのがはっきりと見てとれた。
『おおっ、この体位気持ちいいわー、すっげぇ射精しやすい! 今度から女抱く時ゃこれにすっか。お前のおかげで、意外に早くタコ部屋から出れそうだしよ!!』
男はカウントの増えるモニターを眺め、上機嫌で叫ぶ。膝裏に溝を刻み、確かな腰遣いで奥を突きながらだ。
対する桜織は、悲惨だった。
『ふぐううっ!! んうっ、ふううっ!! や、やめっ……んんん゛、いくっ! い゛……ッ!!!』
押し潰される姿勢で膣奥を突かれる中、時々荒い呼吸が途切れる。そういう時、桜織は決まって顎を浮かせ、頭頂部をシーツに埋めていた。そうしないと耐え切れないほどの快感なんだろう。
『うは、締まるぅーっ!!』
男は嬉しそうな声を漏らし、奥まで挿入したままで腰を止めた。
『はあっ、はあっ、また……! な、何度出せば気が済むんですか!』
男は繰り返し膣内射精しているらしく、桜織が非難の声を上げる。その最中、割れ目からドロリと精液があふれ出すのは、いやらしいと同時に悲劇的だ。
圧し掛かる体位には、もう一つのパターンもあった。男が挿入したまま、足をシーツに密着させるやり方だ。その状態で円を描くように腰を動かされれば、膣奥を最大限圧迫された状態で擦られることになる。
『んぐうっ! また、奥の奥まで……んぐっ、んぐぅうあああっ!!』
桜織の楚々とした顔が歪み、やがて膝下が跳ねる。男共は、いつもその頃合いでピストンを仕掛けた。
『あ、あ!! はっ、はっっはっ……ああ、はぁあ! あっ! あっ! あっ!!』
『おーっ、すげぇ反応。犯されて感じてんだな、お嬢ちゃんよ!!』
『はぁっ、あ! か、感じて、なんか……!!』
『ウソつけ。お前が感じてんのもイッてんのも、全部わかんだよ。おら見ろよ、これで700回目だ!!』
男がモニターを見上げながら腰を突き入れる。リン、と音がし、累計絶頂カウントが700を示す。
『くふっ、んん……!!』
『へへへ、キリのいい数字だぜ……ん、おっ!?』
男が奥まで腰を沈めたまま、ひと息ついている最中。また鈴の音が鳴り響き、モニターの数字が701に変わる。
『おいおい、絶頂の余韻でイクのかよ。どこまで変態だオメー!?』
そう嘲笑われても、一番ショックを受けているのは桜織自身だ。小さく開閉する口で、嘘、嘘、と繰り返す様を見ると、精神面が不安になってしまう。
有り余る欲望と野心で少女を犯す畜生共。その体格や性的嗜好は色々だが、東南アジア系の人間は特に異様だった。燃費がいいのか、細身からは想像もつかないほどの耐久力がある。日本人や中国人が愛撫やフェラチオを挟んで体力を回復しつつ犯すのに対し、連中は2時間フルで桜織を犯しぬく。バックスタイルから始まり、側位、正常位……様々に体位を変えながら。
桜織の苦しみぶりは相当だ。タイ語なのかインドネシア語なのか、俺にとって馴染みのない言葉で何かを訴えながら悶え続ける。犯す男が囁き返すのも同じ発音だが、こっちの言葉はひどく耳障りだった。理解できない言語でも、悪意というものは通じるらしい。その悪意で、桜織は刻一刻と狂わされていく。見開いた目から涙を零し、食いしばった口から涎を垂らし、海老のように背を反らせて痙攣しながら。
そして、50人の相手が終わる。一人につき2時間としても、100時間。実に丸4日以上に渡り、中年男の脂ぎった欲望をぶつけられたわけだ。
ベッドに横たわる桜織の見た目は、変わり果てていた。
キリリとしていた顔は、鼻水や涙、涎に塗れ、だらしなく白目を剥いている。
お椀半分ほどの大きさにまで膨らんだ乳房、木の実のように赤く尖った乳首。そのどちらにも、初めの頃の面影はない。
そして一番悲惨なのが、下の性器だ。陰唇は腫れ上がったまま外に開き、内から白濁を溢れさせている。
『ヘッ。あの小便臭ぇガキが、一端の女になってやがる』
扉を開けて姿を現した手越は、桜織を一瞥して嘲笑った。本来は4人周期で食事の機会を与えるはずだが、50人が一巡し終えるタイミングにずらしたらしい。
その手越の声を耳にした桜織は、ベッド上でゆっくりと身を起こす。瞬きで涙を切ると同時に、呆けた目にも力を取り戻す。凌辱側の元締めである手越にだけは、弱みを見せない──そう言わんばかりに。
ただし、その見た目は依然として性的だ。
『は、あ……はぁっ……』
熱に浮かされたような赤い顔といい、屹立した乳首といい、汗まみれの肌といい。落ち着いた雰囲気も相まって、凌辱を受けた人妻にしか見えない。
『メシだ。もうそろそろ、コイツなしじゃいられなくなってきたろ?』
手越はそう言って、スープ皿の載った盆を桜織の膝に置いた。桜織は唇を噛みしめる。不本意の極みという風だが、食事を拒むという選択肢はない。セックスはカロリーを消費するため、栄養の補給は必須だ。そして、避妊薬もこのスープを通してのみ与えられる。望まぬ妊娠を避けるためには、どんな副作用にも目をつむって飲み下すしかない。
桜織は銀食器を掴み、中身を口内に注ぎ込んでいく。だが、初めの頃のようにスムーズに飲み下すことはできなかった。すぐに激しく噎せ、口にしたものを吐き戻してしまう。
『ぐぶっ!! げほっ、えはあっ!!』
『どうした、しゃんとしろ。別のフロアでご学友も頑張ってんだからよ。特にあの、蒼蘭の剣姫とか持て囃されてたガキな』
手越は扉に寄りかかったまま、桜織に意味深な言葉を投げかけた。桜織が顔を上げる。
『……藤花の、ことですか?』
『ああ、そんな名前だったか。奴はお前と同じように、一番きつい責めを引き受けるって豪語してな。一番はすでにお前が選んでたから、二番目にきついのの担当になったんだがよ。結果あいつは、汚辱責めを味わうハメになった』
『汚辱責め?』
『おう、ウンコやションベンを絡めた責めだ。ゾッとすんだろ? 実際きついぜ。あそこの調教師は、オンナ嬲るのが生き甲斐っつうサディスト揃いだ。昨夜なんぞは、風呂桶サイズの肥溜めに、頭から膝まで漬けたってよ。完璧に失神するまで、何遍もな』
さらりと発される、おぞましい言葉。昨日の映像でカットされていた責めだろう。確かにえげつなかった。自我が崩壊してもおかしくないほどに。
桜織もその異常性を察したらしく、青ざめた顔で絶句する。手越はその反応に満足げな笑みを浮かべ、さらに言葉を続けた。
『ああいう芯の強ぇ奴ほど、一度折れれば脆いからな。お前は、是が非でもこの快楽地獄を耐え抜いて、あいつらのアフターケアに回るべきだと思うぜ。なぁ、委員長さんよ?』
悪魔の囁き。奴はさっき、この絶頂耐久プレイが一番きつい責めだと口にした。つまり、このプレイが最上の地獄と知りながら挑発してるんだ。
1巡しただけの今でもすでに、桜織は普通でなくなりつつある。その上でさらに続ければ、より狂っていくのは確実だ。ともすれば、二度と真っ当には戻れないかもしれない。
当事者である桜織自身も、それは充分に承知しているはずだ。だが、彼女は退かなかった。大きく息を吸ってから食器を掴み直し、再びスープの中身を口に流し込む。今度もまた噎せそうになるが、眉根に皺を寄せて強引に飲み下す。盆に食器が戻された時には、その中身は綺麗に空になっていた。
『私たち女は……あなた方が考えているほど、弱くはありません!』
澄んだ瞳で言い放つ桜織。その気迫を前に、手越が口笛を吹く。
『そりゃ結構。食事でも勝負でも、多少の歯ごたえはあった方がいいからな。んじゃ、2周目だ。せいぜい楽しめや』
手越はそう言って部屋の外に姿を消し、入れ替わりで1人目の男が部屋に踏み入ってくる。
『よう、100時間ぶりだな。また死ぬほどハメまくってやるぜ』
相も変わらず品のない口調に、桜織の表情が強張った。
※
2巡目のプレイは、単なる1巡目の再現にはならなかった。
前よりも格段に酷い。
1人目の男は、1巡目と同じく正常位を要求した。
『足を開け』
その言葉を受け、桜織は明らかに渋る。だが男は、膝を掴んで強引に股を開かせた。そして、隠されていた部分を見て大いに笑う。
『かははははっ!! ナマで拝むとすげーな。最初と全然違ぇじゃねぇか! あの思わず舐めたくなるような、キレーなピンクの筋はどこいった? まさかこの、ルージュ塗りたくったババアの唇みてぇなのか!? ったく変わりゃ変わるモンだよな、流石は50人のチンポを咥え込んだヤリマンのマンコだ!!』
そう罵声を浴びせて、桜織の恨みを買う。当然、生真面目な桜織はそれを受け流せない。
『そうしたのは、あなた達です。休まず擦られ続ければ、誰の性器でもこうなります』
顔の筋肉を引き締め、人形のような美貌を取り繕う。それを見下ろす男は、満足げに逸物を扱き上げた。
『そうかよ。こっからまた2巡して、最後にゃどこまで変わるか楽しみだな。ま、ともかく挿れるぜ』
男は逸物の先を割れ目に擦り付け、そのまま挿入を果たした。割れ目から溢れる愛液が潤滑油になって、挿入は実にスムーズだ。その勢いのまま、逸物は7割ほど入り込み、一旦そこで止まる。
『おーっ、もう奥か。マジで子宮が下りてきてんな。中も随分とこなれてるじゃねぇか。ヌルヌルの襞がチンポに纏わりついてくんぜ? 前んときの固くて狭ぇ穴も新鮮だったが、こっちのが断然気持ちいいぜ!』
驚きの声を上げた男は、ゆっくりと腰を引き、再び突き込む。引いて、突き込む。それを4度繰り返しただけで、桜織の背中が小さく仰け反った。
『ん、ああっ!!』
熱い吐息とほぼ同時に、鈴の音が鳴り響く。桜織の視線が揺らぐ。
『はっ、これでイクのかよ? ポルチオ開発されるってなぁスゲーんだな。しかもイッたら締まりが増しやがった。歓迎してくれてありがとよ!!』
嫌味を交えながら、軽快に腰を振る男。その下で、桜織はじっと耐えていた。されるがままだ。だが、それも前とは違う。人形のように無反応でいられた1巡目に比べて、足先の反応が激しい。指を開き、反ったかと思えば内向けに折れ。そうした反応は、鳴り響く鈴の音と連動していた。望まぬ凌辱を受けながら、何度も絶頂させられているのは明らかだ。
『こりゃ面白ぇわ! あの音が鳴ってるって事ぁ、演技じゃなくマジでイッてるってことだもんな。電マや指マンならともかく、チンポでこんだけマジイキさせるなんざ初めてだぜ!!』
男はいよいよ興奮し、激しくベッドを軋ませながらピストンを早めていく。じゅぱっ、じゅぱっ、という水音が立ち、交換されたばかりのシーツが瞬く間に変色していく。
一方で桜織も、確実に『押し上げられて』いた。
『あっ、はぁっ……はあっ、あ、あ!!』
荒い呼吸を繰り返しながら、何度も腰を浮かせ、腹部を激しく力ませる。
『おーおー。見るからに文化系のくせして、一丁前に腹筋浮いてんじゃねぇか。ここでイッてんのか? ここが子宮の入口なんだろ!?』
男は面白がって、桜織の臍の下を指で押し込んだ。
『くはああっ!? や、やめっ、くだ、さいっ!!』
桜織は大きい。悲鳴に近い声を上げながら、必死に男の手を除けようとする。だがその最中にも絶頂し、ついには顎を浮かせたまま、いくいく、と呻くようになる。
『かあーっ、最高だぜ! 膣でジュボジュボフェラされてるみてぇだ!!』
男は上機嫌で腰を振り、その果てに腰を止める。射精、当然ながら生中出しだ。
『はーっ、はーっ……』
軋みも鈴の音も消えた映像内で、桜織の荒い呼吸が繰り返される。1巡目の彼女は、中出しされた部分を困ったように見下ろしていた。だが今の彼女には、その余力もない。顎を天に向け、喉を蠢かして痙攣している。
壁のモニターに光る数字は32。華奢な少女を無力化するには、充分すぎる絶頂回数だった。
『おら、ノビてんじゃねーぞ』
男は一度の射精では満足しない。なにしろ1巡目に7発射精した奴だ。ぐったりとした桜織の手首を取って強引に引き起こすと、ベッド上で別の体位を強いる。膝立ちになった男に女が跨り、抱き合う形でのセックス。
『あああっ!!!』
挿入の瞬間、桜織は顔を歪めた。逸物の先が子宮口を突くだけでなく、自重でより深く食い込ませる形になったからだろう。そしてそれは、今の彼女にとって快感になるらしい。鈴の音が鳴り響いたのがその証拠だ。
『はっ! 挿れただけでイッたのかよ、スケベ女め!』
男は罵りながら、桜織の尻を掴んで上下に揺らす。深々と挿入されている今は、それだけで膣の奥を抉られることだろう。
『ふぐ、うっ!! んん、んっあ! あ、あ!』
桜織は目を瞑って喘ぐ。そのまま何度も絶頂すると、男の肩を掴むだけでは上半身のバランスを保てず、男の首にしがみつくようになる。まるで恋人のように。
『オイオイ、耳元にエロい声吹き込むなよ。興奮すんじゃねぇか』
男が笑い声を上げ、桜織の尻を掴みなおす。これまでは下から支える形だったが、鷲掴みにして下へ押しつけているようだ。同時に腰を突き上げる動きも見せている。つまりそれは、上下からの圧力で子宮口を刺激するということ。散々絶頂させられ、蕩けきった場所でその刺激を受けるとなれば、堪ったものじゃない。
『いぐふぅ゛っ!!!』
すごい声が出た。切実で低い呻き声。直後、結合部から小さく飛沫が上がる。ごく僅かではあるものの、潮を噴いたらしい。
それ以外の反応も激しかった。特に目立つのは脚だ。ベッドに対して水平な太腿が、信じられないほど太く筋肉を隆起させている。膝下もやはりふくらはぎが盛り上がり、足指が深々とシーツにめり込んでいる。まるで拳法家が必殺の一撃でも放とうかというほどの力み具合。その力みはすべて、絶頂を耐えるために生み出されたものなんだ。
リン、と鈴の音が鳴る。いつもと同じ調子で。
『ううおおお、すっげぇ締まってる……お前、運動音痴そうなのに8の字筋やべーな。それともアレか? 火事場の馬鹿力ってやつか?』
『あっ、かはっ……!! はあっ、はあっ、は、あっ!!』
嬉しがる男とは対照的に、桜織は止めていた息を吐き出して激しく喘ぐ。
そんな桜織と触れ合いながら、男はしばらくセックスの快楽に浸っていた。だが人形のように愛らしい顔が傍にあると、妙な気分になってしまうのか。そのうち、喘ぐ桜織の唇を奪おうとしはじめる。
当然、桜織はそれを拒絶した。
『あ、やっ……キスは、嫌ですっ!!』
彼女にとって、口づけは第二の貞操なんだろう。頭を左右に振り、ついには両手で男の胸を突き放しながら、背を大きく仰け反らせて拒む。
『今更カマトトぶんなよ。人の足にマン汁垂らしてやがるくせに』
男は呆れたように笑い、またセックスに専念しはじめた。
危機は去った……ように見えた。この時は。
だが、この選択はまずかったのかもしれない。顎を浮かせ、背中を仰け反らせる体勢。それは桜織が、特に深く絶頂する時の反応そのものだ。それをなぞることは、かえって彼女は自分自身を追い込むんじゃないだろうか。
実際、ここから桜織は乱れはじめた。
『あっ、ああっ!! はぁあっ、あ、あっあ!! ぎぃっ、い……いくーっいく!!』
仰け反ったまま、喘ぎ、歯を食いしばり、足を強張らせる。その間にも、鈴の音は狂ったように蓄積しつづける。
明らかにつらい状態だ。そんな状態を10分以上も続ければ、桜織は男の肩を掴んだまま、俯くばかりになってしまう。髪の間から覗く顔は、到底具合が良さそうには見えない。
相手がそんな状態になったのを見て、男は膝立ちでゆっくりと移動し、ベッドを降りる。結果として出来上がったのは、抱き合う格好をそのままに、男が桜織の膝裏を抱える体位だ。ベッド上にいた時より体格差が判りやすい。父親が幼い娘を持ち上げ、あやしているように見える。
『あ、なに!?』
呆然としていた桜織が意識を取り戻す。そして地に足がつかない事を悟ると、表情を凍りつかせた。
『こんなの、力の篭めようが……!!』
『篭めなくていいじゃねぇか、大人しく俺のチンポサックになっとけ。アタマ真っ白にしてよ!!』
『あ、あっ!! こんな、深すぎる! 怖い、こわいっ!!!』
半狂乱の桜織を尻目に、男は腰を振りたくる。パンパンという肉を打つ音と共に、桜織の腿が波打つ。かなりの力強さだ。
『っく、いくっ、ああ!! ふああっ!! は、離して! 下ろして、くださいっ! これは、む、無理ですっ! くぅ、あ……んんあああぁっ!!』
身体の揺れにあわせ、喘ぎ声までも揺れている。桜織は何の抵抗もできないまま、ただ絶頂に追い込まれ続けた。何度も小さく潮を噴き、全身を痙攣させて。絶頂カウントが60を超える頃には、明らかに意識が朦朧としていた。
男は、そんな状態の桜織に改めてキスを迫る。そして、今度は桜織も拒絶しきれない。
『う、うむ…っ!? ううううむ、むう、う゛っ…………!!』
目を見開き、愕然としたままキスを強要される少女。やがてその目からは、大粒の涙が流れていく。
胸を抉る、光景だった。
※
2番目は、中国語を話す巨漢。奴もまた桜織を追い込み続けた。
1巡目は正常位を保てずに圧し掛かっていたが、今度は違う。桜織にマングリ返しの格好を取らせ、その股に屈み込むように犯す。1人目のセックスが突き上げる形での“串刺し”だとすれば、こっちは真上からの“杭打ち”だ。
相手の体重が体重だけに、桜織からは瞬く間に余裕が奪い去られた。中国語で何かを絶叫しながら、唯一自由になる足先をばたつかせる。聴きなれない言語だからか、叫び声は悲痛に感じられた。だが、男の心には響かない。奴はやはり中国語で叫びながら、肥大した下半身で押し潰すように犯しまくる。
そして桜織は、そんな状態でも絶頂に追い込まれていた。痛みか、恐怖か、屈辱か……いずれにしろ、彼女にとって望ましくない感情と共に。
こうした獣じみたセックスを強いる奴もいれば、フェチを反映した変態プレイに興じる奴もいる。ノーマルなセックスを1巡目で堪能した分、その頻度も高くなった。
3番目の男は、その典型だった。1巡目では、猫撫で声を発しながら『駅弁』の体位で桜織を犯し、視覚、音、言葉、感覚の4重責めを仕掛けた変質者。奴は2巡目で、桜織相手にソーププレイを堪能した。
プレイ開始後にいきなり浴槽へ向かい、桜織の股に石鹸を塗りたくる。そして、その部分で自分の体を洗わせるんだ。
『不潔です。こんな場所を、擦り付けるなんて!』
『いやいや。女子高生のお股が汚いなんてこと、あるはずないって。スベスベで最高だよ。強いて言えば、毛が薄いせいであんまり泡立たないことぐらいかな』
渋る桜織にそんな言葉を返し、相手の引き攣った表情を愉しんだりもする。そうして身体を隅々まで清めさせれば、次は入浴だ。
『うひひ、幸せだなぁ。オジサンねぇ、若い娘と一緒に温泉行くのが夢だったんだよ。狭いお風呂だけど、なんだかそれが叶ったみたいだなあ』
気色悪い声で桜織を抱き竦め、その細い身体を弄る。
『う、ふうっ……』
水面を見つめ、小さく息を吐く桜織。まるで凍えているようだ。男のあまりの気色悪さに、悪寒がするんだろう。
それでも、湯の中で性感帯を刺激されていれば、意思とは裏腹に反応が表れる。
『乳首がピンピンだ。こんな小さな胸でも、ちゃんと感じるんだねぇ』
桜織のしこり勃った乳首を指で転がしつつ、囁く。そうして少女の瑞々しい肌を堪能した後、男は湯船に浸かったままで挿入を果たした。
『あっ! お湯が、入って……!!』
『うーん、いいねぇ。ぬるくて気持ちいいよ』
桜織が迷惑そうに眉を下げるが、男は夢見心地とばかりに顔を緩ませる。そのまま水面に波を立てて行為を続け、射精まで至ってからも、奴は湯船から出ようとしない。
『舐めて』
浴槽に横たわったままそう命じ、湯から逸物の先を覗かせた。桜織は渋々ながら、それに従うしかない。
『ひひ、慣れてない感じがまた新鮮だなぁ。知ってる? これねぇ、ソープじゃ“潜望鏡”っていうプレイなんだよ』
そんな事を誇らしげに語りながら、また逸物を硬くし、やがて二度目の性交に移る。今度は、1巡目と同じ駅弁、鏡のある洗面台の前でだ。
『見てみなよ桜織ちゃん、前とは全然違うよ? おっぱいの先っちょも、クリも、ビラビラも、まるで別人みたいだ。恥ずかしいでしょ、こんなになった自分の身体見るの』
男から猫撫で声で囁かれ、桜織は頷く。
『……はい』
そう答えはするものの、腹圧のかかる体位で犯される中で、彼女は絶頂に至ってしまう。冷たい鈴の音がその証だ。
『あれえ、機械の故障かな? 変だよねぇ。こんな恥ずかしいセックスで、真面目な委員長ちゃんが感じるわけないもんねぇ?』
してやったりという笑顔で囁かれ、桜織の赤ら顔が悲痛に歪む。
奴は持ち時間の大半を、こうしたプレイに費やしていた。
4番目の男は、桜織を中学時代の片思い相手に見立てていた。わざわざピンク色の服を持ち込んで桜織に着させ、ベッドに手を突かせたまま後背位で犯す。
『どうだ椿、大嫌いな俺に犯される気分は? ええっ!?』
そんな言葉を吐きながら。しかも、それだけじゃない。奴は相手が泣く事を望んでいるらしく、桜織の尻を叩き、太腿をつねりまわす。
『い、痛い、痛いっ!!』
『痛ぇか。だがそれが興奮するんだろう、この変態女! 学校じゃお高く留まっといてよ? ははっ、またイッたな変態!!』
桜織が涙目で訴えるのを笑顔で眺め、絶頂しようものなら鬼の首を取ったように罵倒する。実に時間一杯、それを繰り返していた。
6番目のホスト崩れは、レイプの真似事を望んだ。仰向けになった桜織の口を手で塞ぎ、荒々しく犯す。
『いいか、声を出すんじゃねぇぞ? テメェの妹にバレたら、あっちも犯らなきゃならねぇからよ』
そう静かに脅す口調は、やたらと真に迫っていた。真似事と言っているが怪しいものだ。以前にやった強姦を再現してるんじゃないか……そう思えるほどに。
犯される桜織も、同じくそう感じたんだろう。最初こそ怯え交じりで見開かれていた彼女の目は、男の迫真の演技を前に、段々と鋭くなる。そして男が果て、口から手を離された瞬間、彼女はすぐに問いを発した。
『……これは、演技ですよね? 本当にやった事じゃ、ないんですよね?』
控えめな彼女には珍しい、毅然とした問いかけ。まるで不良息子を諭す母親のようだ。
『どうかな』
男は歯を覗かせながらはぐらかす。その堂に入った悪党ぶりを見れば、かえって疑いが強くなろうというものだ。
『……そうですか』
桜織はそう答えたが、その後も男に対して警戒を解くことはない。明らかに毛嫌いしている様子だ。それでも彼女は、絶頂を止められない。歯を食いしばって相手を睨みつけても、リン、リン、と達した証が鳴り響いていては台無しだ。
『はっはっ!! おいおいイクなよ、レイプごっこって言ってんだろ。こうもイキまくってっと、和姦みてぇじゃねえか! それともなんだ。女ってやつは、こうやって荒っぽく犯されっと感じんのかよ!?』
『はあっ、はぁっ……! ち、違います、馬鹿にしないでください! 女性は、レイプされると怖いんです、嫌なんですっ!! 犯されて……んっ、か、感じたりなんか、しません……っ!!』
『んな事言ってもオメー、さっきからイキまくってんじゃねぇか。シーツもマン汁でビショビショにしてっしよぉ? じゃあなんだ、オメーが特別淫乱なだけかよ、ええ!?』
刻一刻と余裕をなくしていく桜織に対し、男は槍で刺すように侮蔑の言葉を投げかける。桜織はいよいよ顔を歪ませながら、足指の先まで痺れさせて絶頂に至っていた。
9人目に至っては、桜織を犯しながら、電話で誰かに自慢していた。
『今ねぇ、女子高生を犯してるんですよ』
正常位で突き込みながら、携帯を桜織の口元へと近づける。相手に声を聞かせようというんだろう。
『…………ッ』
桜織は頬を染めながら、必死に口を噤む。
『おやおや、無駄なことを』
男は苦笑しながら、親指でクリトリスを刺激しはじめた。
『ふ、んっ!!』
桜織の身体が小さく跳ねる。すぐに手の甲が口に宛がわれ、必死に声を殺そうとするが、殺しきれない。
『くぅっん、んん……ん!!!』
桜織の細長い脚に筋が浮く。
『ほらほら、どうです。もう気持ちよさの限界でしょ?』
男が皮を剥く要領でクリトリスを刺激しつづけると、ついに鈴の音が鳴った。敏感な部位だけに、リン、リン、と連続で。
『ん……っく、ふぁ! あ、あ!!』
『聴きましたか? かわいい声でしょう。この子は顔もいいんですよ。いかにも清楚な感じで、でもエロエロでねぇ。小さな身体ピクピク震わせて感じてるんです。私ももう興奮してしまって、抜かずの4発目ですよ』
男は電話相手に自慢を続けながら、激しく腰を打ちつける。そんな極限状態が、我慢を難しくさせるのか。桜織の喘ぎは、刻一刻と大きくなっていく。
『あぁ! んんっ、あ、ああっ!! うっ、くあああぁぁっ!!!』
『ははは。ええ、清楚だったんですよ、本当に。今はもう変わってしまったというだけで』
受話器を片手に腰を打ちつけながら、男は桜織の右乳首を捻り上げる。桜織の背中が浮く。
『ん、くああぁぁっ!! ひっ、ひいいっ……! こ、声、聴かないでえっ!! こんなの、わ、普段の、私じゃ……!!』
『いいや、これが今の君ですよ。クリトリス、Gスポットから始まって、ポルチオまで開発されて! 全身が性感帯みたいになってるから、こんな酷い事をされても感じてしまうんでしょう!?』
男の指は、桜織の体中至るところに伸びた。時にはつねり、時には叩き、時には擦り。そうした刺激を受けるたびに、桜織はのたうち回った。
『はぁ、はぁっ!! いっいぐっ、いっくううう゛っ!!』
激しく叫びながら、絶頂に至る桜織。その様は、全身が性感帯という男の言葉を見事に裏付けていた。
※
『少し、本当に少しで構いませんから、休ませてくださいっ!!』
繰り返し男に抱かれながら、桜織は何度そう叫んだだろう。涙、鼻水、涎で顔を濡らし、震える全身にじっとりと脂汗が滲ませながら。
そういう時、相手が取る行動は2つだ。黙殺してさらに悶え狂わせるか、口での奉仕を強いるか。口で奉仕する方が楽に思えるが、そうとも言い切れない。
『う、ぐっ、う……!!』
桜織は、自ら逸物をしゃぶる時、舌を噛んで死にかねないほどに顔を歪める。おまけに、技術も拙いようだ。躊躇いがあるせいか、それとも体力が限界だからか。男を勃起させることはできても、射精には導けない。必死に口を窄めて顔を前後させ、いよいよ限界となれば、口を離して手で扱く。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……! お、お願い。イってください!』
だが男は、そうした手の奉仕を嫌った。あくまで口での奉仕を強い、大抵は手で頭を押さえつけて喉奥まで咥えこませる。そうして散々に追い込んだ後、咽び泣く桜織を改めて犯すんだ。
それは、11人目の男も同じだった。11人目といえば、後背位に絶対の自信を持っていた男だ。絶え間なくポルチオ絶頂を迎え続け、さらに感度が上がった桜織にとっては、絶望的な相手と言える。
実際、セックスの映像はひどかった。
『んむ゛ぉおお゛え゛っ、ほごお゛っ!! ごも゛っ、ほんんおお゛えろえ゛っっ!!!』
凄まじいえずき声が響き渡る。ディープスロートを強いられた桜織のものだ。他の人間のそれよりも声が酷いのは、逸物が独特の反り方をしているせいか。
咥えるにはいかにも不向きな、上反りの“曲刀”。それを根元まで出し入れされる桜織の顔は、苦悶に満ちていた。逸物を吐き出して息継ぎをする時には、口の端から胃液が垂れていくのも映っていた。苦しいはずなんだ、間違いなく。
だが、その地獄のようなディープスロートの最中、無情にも鈴の音が鳴り響く。咥えさせる男も、咥える桜織も、その音に反応を示した。
『ふむうごお、ぉ゛……っ!!!』
半ば白目を剥きながら、不自由に何かを訴えようとする桜織。
『ははははっ、イキやがった! おいおいマジか委員長? 食道までチンポ突っ込まれて胃液吐かされて、それで気持ちいいんかよ!? ンな女子高生、ありえねぇだろ!!』
大笑いしながら、清楚な少女の精神を引き裂く男。
目も耳も塞ぎたくなる光景だ。桜織の心中を思うと、こっちまで胸が痛む。
ねっとりと糸を引きながら逸物が抜き去られると、男は桜織に後ろを向かせた。また後背位だ。桜織も当然それを悟ったらしく、悲痛な表情で壁に手をつく。
『んふう……ン゛んーっ…………!!!』
挿入を果たされただけで、桜織からは鼻を抜ける嬌声が上がった。そう、嬌声。そう表現せざるを得ないほどの甘い声だ。
『相変わらずのイイ声だな。さ、動くぜ』
男は腰を引き、ゆっくりと腰を動かしはじめる。あれだけ歪に反った逸物なら、膣内のスポットをこれでもかと擦りながら最奥を叩くはずだ。そうなれば、今の桜織に耐え凌げるはずがない。
『……あ、駄目、駄目えぇっ!!』
男が腰を使いはじめてからものの数十秒で、桜織は音を上げた。絶頂を示す音が響き、内股に閉じた脚がカクカクと震える。
『なにが駄目だ、まだまだこっからだぜ?』
男はしゃんと立てと言わんばかりに、両手で桜織の下腹を抱え込む。
『あ、はぁう゛っ!?』
鈴の音が鳴り、桜織が歯を食いしばる。もはや子宮付近を圧迫されただけで達してしまうらしい。さらに男が腰を打ち込み、パンパンという音が響きはじめると、噛み合わされた歯が上下に離れていく。歯を食いしばるのは耐える動作。大口を開けるのは放心の動作だ。
『どうだ、気持ちいいだろ!? バックからハメられて、もう堪んねぇんだろ!?』
『ふぐううっ!! た、堪りません……だから、だからやめてっ! 膨らんだ部分が、敏感なところに、擦れて……ふんぐうう゛っ!!』
『だろうな。イキまくって敏感になったスポットをたっぷり刺激してやれるぜ、俺のブツならよ! おらイケ、イケえッ!!』
笑みを浮かべながら腰を打ちつける男。腹部を抱える手を必死に外そうとしながら、全身を震わせる桜織。完全に食う側と食われる側だ。
『はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!!』
肉のぶつかる音、湿った何かが掻き回される音。そこに混じる桜織の呼吸は荒い。まるで出産寸前のように。そして彼女は、思い切り背中を退けぞらせて天を仰いだ。
『あ、ふあ…………ああ゛っグウウゥウッッ!!!!』
歯茎までも見えるほど歯を食いしばっている。どう贔屓目に見ても清楚な感じじゃない。だが、そう考える事自体が失礼に思えた。今の彼女に“らしさ”を保つ余裕がないことぐらい、子供だってわかるだろう。
『すっげぇ、子宮自体が動いてねぇかこれ? それともマンコイキの痙攣がココまで届いてんのかよ?』
男は桜織の下腹を左右に撫で擦りながら、顔を横に向ける。桜織の唇が奪われたのは、その直後だ。
『あも゛ぅっ!? れあっ、あえ! ぃすあいやっ!!』
舌を絡まされながら抗議する間にも、彼女は絶頂に追い込まれつづける。ようやく口を解放されれば、彼女は身体をくの字に折った。キスから逃れたい気持ちもあるだろう。だがそれ以前に、そういう動きをしないと耐えられない──そういう状態だったんだと思う。
『ひぃいいっぐいぐっ!!! イッでるい゛っでる゛!!!』
総身を強張らせながらの絶頂。言わばそれは、悲鳴の嘔吐だ。それをするためには、人間は前屈みになるしかない。そしてそこから、大人びた雰囲気を持つ可憐な少女は、生き恥を晒しつづける。
救いを求めるように壁についた右手、血管を浮かせて相手の腕を掴む左手。内向きに膨らんだまま痙攣する太腿に、水気の飛び散る股ぐら。どれもこれも悲惨といえば悲惨だが、一番心に来るのは声だ。
『はああっ!! くるし、苦しいっ!! ふうっ、ふうっ、はーっはーっ、はーっ……ッぐいくいくっ、ひぎいっ、いっでるううっ!!!』
緊迫した呼吸音や悲鳴は、溺死寸前の記録かと思うほどだった。
浴槽で溺死に近い姿を見せた桜織は、ベッドに移されて更に地獄を味わわされた。
尻だけを高く掲げ、這い蹲る姿勢でのセックス。祈りでも捧げるようにシーツを掴む手を触れ合わせている様は、本当に育ちのいい少女という感じがする。だが下半身はそうじゃない。パンパンと肉のぶつかる音がするたびに腰が跳ね、腿の肉が膨らむ。その様は清楚どころかむしろ、セックス好きの娼婦という風だ。
『へへへ、身体は正直だな委員長。腰がびっくんびっくん動いてんぜ? 膣内(なか)も俺のチンコをぎゅうぎゅう締め付けてくるしよ。チンポの反りを、マンコにフィットするように矯正しようってのか? ったく呆れるな。突っ込まれるだけじゃ満足できずに、テメェ専用の肉バイブこさえようとするなんてよ、それでよく清楚ぶれたもんだぜ!!』
男は桜織の腰を掴んで軽快に腰を打ちつけながら、上ずった声で謗る。慎ましい少女を狂わせている現状が、楽しくて仕方ないという感じだ。
果たしてその悪意ある言葉は、桜織本人に届いているのか。
『あっ、駄目、駄目えっ!んあっ!あっ!あっ!あっ!!』
腰を打ち込まれるたびに、どこか掠れた声で叫ぶ。時々はシーツを離し、顎から伝う涎を掌で掬って、どうしたものかと迷う仕草も見られた。だが、そのまま何度か絶頂させられれば、迷う余裕すらなくなる。せっかく上品に掬った涎をシーツに塗りつけ、這ったまま犯される獣に戻る。
『んんんっ、はぐぅううっっ!!!』
ベッドでの絶頂回数約40回……トータル1804回目の絶頂を迎え、桜織はとうとうベッドに顔を伏せた。
『む゛う゛っ、ふむう゛う゛う゛ーーーっ!! ふむうう゛う゛ぅ゛う゛っ!!!』
シーツに顔を密着させているらしく、呻きは押し潰された感じだ。その異様な呻きを発しながら、全力で頭上のシーツを掴み、全身を震わせる……その姿は、ひどく感情に訴えてくるものがある。悲痛だが、同時にひどく性的だ。
『おいおい、隠すこたぁねえだろ。皆大好物なんだぜ、オメーのアヘ顔とヨガり声が!』
男はそう言って、桜織の三つ編みを引っ張る。シーツと太い唾液の糸で繋がれたまま、桜織の顔が持ち上がっていく。
その顔を見て、俺はゾッとした。柔和な雰囲気を持つ大和撫子──そのイメージと、あまりにかけ離れていたからだ。柔和どころか、おどろおどろしい。青ざめた顔のまま上方を睨み上げるその面持ちは、幽鬼の類に見えてしまう。
『おねがい・・・もうイカさないで、ください・・・。イってると、息ができなぃ・・・しっ、死んでしまいます・・・・』
声も普段とはまるで違う。テープに残された死者の声、という風だ。彼女は、本当に死と生の境目にいるのかもしれない。
だが11人目の男は、そんな命乞いに耳を貸そうともしなかった。
『俺にバックでやられまくると、ウチの嫁もよく言ってたわ。死んじゃう死んじゃう~ってよ。だがアイツ曰く、そこ超えたら一気に天国が来るらしいからよ、まあ辛抱しとけや』
あくまで落ち着いたままそう給うと、桜織の両手を掴み上げ、馬の手綱のように引き絞る。
奴はとぼけているんだろうか。何度となく発情料理を食わされ、膣内外の性感帯を嫌というほど開発された上で、50人に休まず犯される。その快感を、単なる夫婦間のセックスと比較できるわけがない。あの慎ましい桜織が死ぬと騒ぐなんていうのは、紛れもなく一大事だ。
『ああ゛、あ゛!!はあ゛あ゛っ!! すっ、すごい波が……! こ、こんなの私……いく、いく……ひいいっぐいぐ!!!』
血走った目で虚空を睨み上げ、涙を零しながら悶え狂う桜織。異様には違いないが、その瞳には妙な光が生まれはじめていた。不健全な顔色に、ギラついた瞳……まるで薬中だ。立て続けの絶頂で脳内麻薬が出すぎているんだろうか。
“オーガズム・クライマックス”──逝き続けた果てにある、究極の快感。手越のその言葉が頭に浮かぶ。
『あぐううっ、んぉおっ!! はああぁーーーあアアッ!!!』
桜織から、また“らしからぬ”声が上がる。両腕を引き絞られて前を向かされる彼女は、10秒以上にも渡って白目を剥いていた。あまりに膨大な快感で脳が焼ききれないよう、自ら気絶しようとしているんだろうか。
『おぉい、シャンとしろよ嬢ちゃん!!』
男が怒鳴りつける中、桜織は顎をベッドに沈み込ませる。失神したように見えるが、どうやら気を失いきれていない。カクカクと全身を震わせて過呼吸に陥った末に、とうとう頬を膨らませる。
『はっはっはっ!はーっ、はーっ……っぐ、ごほっ…ええお゛っ!!』
『お、オメー吐いてんのか!? はっは、どんだけだよ! 走りすぎてゲロった奴なら見たことあるが、イキすぎて吐く女は初めて見るわ!』
男は、桜織の嘔吐を重くは捉えない。ゲラゲラと笑いながら、汗みずくで腰を振りたくる。
『ま、イキっぱってのはキツいだろうがよぉ。俺らも借金の棒引きが掛かってんだ。ガンガン逝ってもらわねぇと……なあっ!!』
『ふん、はぐう……っ!!!』
男は今一度奥を突いて桜織を絶頂させると、逸物を引き抜いて精液を撒き散らした。何度も射精しているせいで、色はない。透明な飛沫が、肉付きのあまい尻に浴びせかかる。
『ふーっ。どれどれ、カウントはっと……お、100超えてんじゃん! 50万ちょいの減額ってとこか。はははっ、いいねいいねぇ。ご馳走さーん!!』
モニターを見てほくそ笑む男と、虚ろな瞳で横たわる桜織。それは、肉食獣と草食動物が居合わせた結末さながらだった。
※
次は12人目。1巡目では特殊なディルドーを持ち込み、ひたすら道具責めを仕掛けていた男だ。こいつは2巡目でも、やはり道具責めに拘った。
ベッドに突っ伏す桜織の背後に回り、その割れ目へとディルドーを沈み込ませる。その状態でさらに、ディルドーの底の部分へとマッサージ器を宛がう。それはつまり、マッサージ器の圧迫でディルドーを固定しつつ、その強烈な振動を敏感な部分に浴びせる事を意味する。
桜織の表情が、恐怖で凍りついた。
『あア゛ーーっ!! あぐ、ぐひいいっ! 奥がっ、奥が痺れるうっ! いっぎぃい゛い゛っ!!イグゥーーッいぐっ、駄目ええ゛え゛っ!!!』
『あはははっ、すごい反応! あの清楚で物静かな子が、こんなにギャンギャン騒ぐようになるなんてね。所詮、高潔だの何だの言ったって、快楽に勝てる人間なんていないんだろうね。ほーら、どんどんイっちゃえ! 女のコとしての価値は下がっちゃったけど、キミがイクたびに俺らの借金が減ってくんだよ、金の卵ちゃん!』
男はクリトリスを撫でたり太腿に触れる嫌がらせを交えながら、マッサージ器でディルドーの至る所を刺激しつづける。そしてそれは、桜織を絶え間ない絶頂へと導いた。鈴の音はリンリンリンリンと立て続けに鳴りっぱなしだ。もはや音というより警報に近い。ある意味、桜織という少女が壊れる予告か。
かなり前から余裕を失っていた桜織は、ここでまた正常から遠ざかる。
『イグイグイグイグッ!!! だめ、駄目駄目ええっ!!!』
『ふーん、何がどうダメなの? キモチよすぎちゃう?』
『はっ、はっ、はっ、はっ……い、イってる最中、まだイッてる最中なんです! イッてる最中にイッたら、息、できないって……言ったじゃないですか!!』
『いや、それ言ってたのさっきの奴じゃん。なに、相手が変わったのも気付いてないの? なんかショックだなあ、存在否定されてる感じ。ムカついたから、ちょい休憩させてあげようかと思ったけどナシね!』
『そ、そんな! お願いです、休ませてください!! 本当に息が苦しくて、頭真っ白で……おかしくなりそうなんです!』
『別になってもいいじゃん、エロそうだし。ほーらほら、ここでしょ? 不良になっちゃえよ、委員長!!』
男には一片の情けもない。桜織の腰の動きを観察し、巧みにマッサージ器を宛がう角度を変える。それは見るからに効果的だ。ボロボロに腐食した桜織の『芯』を突き崩すには、充分すぎるほどに。
『はお、おおお゛っ!! いぐっいぐ……んひいいい゛い゛ぃ゛ッ!!!!』
馬の嘶きのような声がした後、桜織が暴れだした。
『ちょっ!!』
男が手で抑えようとするが、死に物狂いの脚力にあっさりと弾き返される。細長い足は、宙を掻き、ベッドを蹴りこんで凹ませ、反発の勢いで身体そのものをベッドから転落させてしまう。尻から床に落ちた後には、綺麗な放物線を描いて失禁が始まった。カメラの死角でよくは見えないが、放心したまま鼻水を垂らす、ひどい表情をしているようだ。
『スゲー! ションベンが洗面台にホールインワンだ!』
12人目の男は手を叩いて笑い、桜織を引き起こすために右腕を掴む。その瞬間だ。
『いぃいひっ!!』
桜織が妙な声を出し、同時に鈴の音が鳴り響く。桜織が絶頂したんだ。腕を掴まれただけで。
『……え、今イッた!? イッたよね、腕掴まれて! ははははっ、そんな敏感になってんの? やらしすぎでしょ委員長ぉ!!』
男の口元に笑みが広がった。奴は桜織をベッドに引き上げると、背後から抱きつく形で身体中を弄りだす。尖った乳首を指で挟み、太ももを擦り、脇腹を指先でなぞり。
『ふあ、はっく! へ、変な所を触らないでください!!』
桜織の反応は大きかった。身体中のどこを触られても、艶かしく身体をくねらせ、眉根を寄せる。性的に昂ぶっていることは疑う余地もない。
『嘘ばっかり。嬉しいくせに!』
男がそう言って片手を掴み上げ、晒された腋に口をつけた。さらにそのまま、ちゅうちゅうと音を立てて吸い付けば、
『んゅいいっ!!』
初めて耳にする喘ぎ声と共に、リンと鈴の音が鳴る。
『ほーら、イッた。気持ちいいんじゃん、腋マンコ!』
『ち、違いますっ!!』
『違わないって。だってイッたじゃん、汗まみれで本物のマンコ並にくっさい腋舐められてさぁ!』
『い、嫌ああああっ! 違う、私……違うっ!!』
桜織は顔を覆って泣き出した。最初の頃の彼女では考えられない反応だ。小柄でおっとりしているが、芯の強い大和撫子。だがその芯が、もう支えの役割を果たせていない。カメラの向こうで肩を上下させて涙しているのは、見た目相応の幼い少女だ。
嘆く少女を前にしても、やはり男に同情の色はない。それどころか、震える華奢な身体を見て、生唾を呑む。
『あー、ダメダメ。涙は女の武器とかいうけどさぁ。俺みたいなのは、カワイイ子が泣いてると……興奮しちゃうんだよね』
奴はそう言って桜織を突き倒すと、洗面台の下から布巾を取り出した。さらにその布巾で桜織の股を覆い、マッサージ器のスイッチを入れる。
『うあっ!!』
布巾越しにマッサージ器を宛がわれた瞬間、桜織が悲鳴を上げた。
『ひひ、凄いでしょ。こういう風にやると、振動がアソコ全体に伝わるんだってさ』
男は笑みを浮かべたまま、マッサージ器で割れ目をなぞっていく。菱形を作る桜織の足が、ピクピクと強張る。
『はああっ、ダメ!これ、全部痺れて……い、いい゛っちゃう゛……!!』
『おーっすごい、もう布巾が濡れてきたよ』
男の言葉通り、布巾はほんの数十秒で鼠色に変色していく。布巾が乾いているうちは、マッサージ器の音もかなり殺されていたが、濡れてくるとビジジジジという妙な音が響き渡る。その音がさらに酷くなる頃、布巾の下から急にせせらぎのような音がしはじめた。
『うーわ、また漏らしてんじゃん!!』
事実に真っ先に気付いたのは、責めている男だ。割れ目から布巾が取り去られれば、黄色く染まった布から無数の雫が滴り落ちた。
『はぁっ、はぁっ……も、漏らして、ません……。』
桜織にはもう、愛液があふれる感覚と失禁との区別もつかないらしい。赤らんだ顔で大真面目に否定してみせる。
『いやいや、ジョバジョバ出てんじゃん。これマン汁っていうのは無理だよ? 広範囲が痺れてフワーッとなっちゃうのは解るけどさ、ちょっと緩すぎじゃないの』
そう言いながら奴は、濡れた布巾を改めて割れ目に宛がい、マッサージ器でなぞりはじめた。途端に飛沫が上がり、ぶじゅるるぶぶじゅうっ、という酷い音が立つ。
『うくうっ!! び、敏感になってるのに……っ! はぁあっ、だめ! また、出てしまいそう!!』
『おっ、また腰がビックンビックン跳ねだした。足がスラッと細長くて小学生っぽいから、背徳感がヤバイなこれ』
男は上機嫌でマッサージ器を動かしつづける。
『いくうっ、いぐいぐいぐっ!! はーっ、はーっ……イッてるっ、またすごいイッでる゛う゛っっ!!!』
桜織は、早くも余裕をなくしていた。何度もダウンしたボクサーが打たれ弱くなるように、何度も限界に追い込まれた桜織は、今やほんの数秒で顔を歪ませる。身体の反応も惨めなもので、潰れたカエルのように広がったまま痙攣する脚は、直視が憚られるほどだった。そんな桜織に、男が囁きかける。
『どう、気持ちいい? 口に出して言ってみなよ、気持ちいいんでしょ? クリも、ビラビラも……オマンコ全部でイッちゃうんでしょ!?』
桜織は前後不覚に近い状態だ。判断力はほとんどない。だから彼女が口を開いたのは、ほとんど反射に近い行動だったはずだ。
『んぎいっ、ひいいぃっ!! は、はい、オマンコでイキます!!』
その言葉が叫ばれた瞬間、男の顔には満面の笑みが浮かんだ。桜織はしばらく喘ぎ、数秒ほどしてから、はっと目を見開く。自分の行動にようやく気付いたという風だ。
『あっはははっ!! そっかそっか、“オマンコ”でかぁ! やー、まさかキミからそんな言葉が聴けるなんてなあ!!』
『ち、違うんですっ! 私は、あそこと言いたくて……!』
『いいや、確かにオマンコって言った。隠さなくていいじゃん、オマンコでしょ? オマンコでイキます、ホラもう一度言ってみな!』
男はしてやったりという笑みを浮かべながら、桜織を追い込んでいく。
『…………いぃいぎ、ひぎい……いいっ!!』
桜織は歯を食いしばるが、絶頂を止められない。
『ほらほら、言うまでやめないよ! オマンコでイキます、って言ってみな!!』
『はぉおおんっ、わ、わかりました、わかりましたっ! お、オマンコでイキます、ずっとオマンコでイってますっっ!!』
鈴の音、水しぶきの音、バイブの羽音。もはや環境音と化したそれらに混じって、恥辱の宣言がはっきりとマイクに捉えられる。
『そっかそっか、オマンコでか、あははははっ!!! よーし、じゃあそろそろナマのチンポもやるよ。結局セックスってのは、性器同士の触れ合いだからね。オマンコイキするには、チンポが一番でしょ!』
男はマッサージ器の電源を切り、雫の滴る布巾と共に放り捨てて、桜織の足首を掴み上げた。そして刺激の余韻で開閉する割れ目へと、反り勃った逸物を沈み込ませていく。
『ひいっ、お、奥っ……!!!』
桜織は歯を食いしばり、挿入部分を見上げる。引き攣った表情ばかりの中で、久々に愛らしいと思える表情だ。だがそれは、間違っても状況が改善したということじゃない。女性器の表面を嬲る責めから一点、子宮口を突く責めに変わり、表情が凍りついただけだ。
入口付近への嬲りが一種の“焦らし”となったのか。奥を突かれはじめてからの桜織の反応は、それまでにも増して激しかった。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ! へぇっ、へぇっ、へええっ……!! えへえぇっ、えく、いきそ、いきそう、イくっ! いいいイグウうう゛ーーーっ!!!』
荒い息を吐くだけに留まらず、犬のように舌を突き出し、ぼうっとした顔で絶頂を宣言する。ほとんど思考が働いていない様子だ。
『はっは、いい顔だ! よーし、どんどんイけ。イってイってイきまくって、俺の借金減らしてくれよ!!』
『へぇぇっ、へえぇぇっ……! お、犯してもいいから……少しだけ、寝かせてください。あ、頭が、ぼやけて、ガンガンして……ほ、本当に……おかしくなる……』
『だからぁ、なっていいんだってば。そこ頑張んなくていいから。オマンコで絶頂する事だけに集中しときなー。それ以外の事なんて、考えなくていいの。ほーら、オマンコでイクって言ってみな。オマンコでイク、はい!!』
男は桜織の哀願に耳を貸さず、ひたすらに自分の都合を押し付ける。ずっとそうやって自分本位に生きてきたんだろう。だから借金を背負って底辺にいるんだ。その点、桜織は違う。優秀で、真面目で、誠実で。間違いなく上流のレールに乗れる、宝石のような子供だ。いや、子供“だった”。
だがその彼女も、とうとう壊れはじめている。
『へぇっ、へぇっ、へぇっ……お、おまんこで……オマンコで、イキますっ!! オマンコでイってますっ!!』
舌を突き出し、眉を下げ、媚びるような表情で上目遣いになりながら、相手の要求に粛々と従う。
『いいねぇ、メス犬って感じ。お勉強ができる優等生だけあって、よく似合ってるよ? ほーら犬、“待て”だ。勝手にイクんじゃないぞ?』
男はいよいよ調子付き、奥まで挿入したまま腰で円を描きはじめる。
『ひぐっ、う゛ん゛っ! や、襞が、捩れて……!』
『気持ちいいんでしょ? さっき気付いたんだ。マッサージ器でディルドーの底押し込むより、ディルドーの横っ腹に宛がってる時のが反応良かったからね。こりゃ、チンポでねっとり掻き回したら相当効くなって。ほぉらイクなよ? イっていい時はイっていいって言うから。勝手にイったらお仕置きだぞ!?』
そう釘を刺されても、桜織の引き攣った顔が限界を物語っている。結合部から粘ついた音が立つ中、硬く閉じあわされた口が開く。
『ひいい、いい……も、もうだめ!! いく……お、お……ぉほお゛お゛お゛っ!!!』
清楚さとも愛らしさとも程遠い、「おお」という声。快感の凝縮した、これ以上なく正直な喘ぎ声だ。
ここしばらく無音だったモニターから、リン、と冷たい音が響く。
『あーあ。“待て”って言ったのに、勝手にイっちゃって』
男はわざとらしく舌打ちして桜織を睨む。
『はぁ、はあ……すみません、我慢、できなくて……』
桜織は鼻の横に珠の汗を伝わせ、申し訳なさそうに弁明する。
『ダメだ、お仕置きいくぞ。ハンバーグみたいに捏ね回してやる!』
男はそう言って桜織の足首を離し、両脚を自分の左右に下ろさせる。その状態で腰を掴んで、改めて腰をうねらせはじめた。音が変わる。みちゅう、むちゅう、という、まさしく挽肉を捏ねている時の音が立ちはじめる。粘膜が密着しあう膣奥の状況を、生々しく伝える音だ。
『おーっ、すごい。改めてじっくり触ると、子宮口が開発されまくってぶよぶよだなあ。これさぁ、ちょっと子宮の口開いてない? さっきから、先っちょが穴みたいなのに嵌まるんだけど。子宮口の横に嵌まってるだけかな』
男はのんびりとしたもので、ひたすらに感想を呟きながら腰を蠢かす。逆に桜織の方は息つく暇もない。
『おほおおぉっ、お、おく、おくうッ!! んぐっ、い、イクッイクーッ!!』
口を尖らせたまま目を見開き、腰をカクカクと上下させる。細い手足はしっかりと曲線に膨らみ、蜘蛛の足のようにシーツを掴んでいる。そうしないと激流に流されるとでも言わんばかりだ。
『うわああ気持ちいいーっ、襞がめっちゃ絡み付いてくる! 逃がさないって感じ? 嬉しいけどさぁ、間違えて消化しないでよ、俺のチンポ』
男は歓喜の声を上げながら腰を揺らす。責めというより、あまりの快感に腰が震えたという風だ。それがトドメになったのか、男は桜織の腰を掴んだまま、目を瞑って天を仰ぐ。
『あ、中にっ! 子宮の中に、入ってくるぅ……っ!!!』
桜織の言葉から察するに、子宮入口に亀頭を宛がったまま射精しているようだ。
『あー、ホント? やっぱここ子宮口なんだ、俺のションベンの穴くらいは開いてるよやっぱ。ああーー、すうっげぇ気持ちいい。出し入れしなくてもこんな気持ちいいんだな、襞が絡み付くと……』
男はうっとりとした口調と顔で、射精の快感に浸っている。奴にとっては極楽だろうが、桜織にとっては地獄そのものだ。
そしてその地獄は、まだ終わらない。未だ2巡目の12人目。折り返し地点すら、遥かに遠いんだから。
※
12人目の男を迎えた後は、5分の食事の時間が挟まれる。そこでの桜織は、“かろうじて”時間内にスープを飲み干せた感じだった。
『はぁ、はぁ、はぁ……げほっ、ごほっ!!』
常に息が荒く、何度も噎せる。そもそも全身が凍えるように痙攣していて、銀食器を掴むことすらままならない。しかもその痙攣は、スープを飲み干した直後から更に酷くなる。
そんな桜織を相手に、男共は一切容赦をしなかった。正常位、騎乗位、後背位、側位、駅弁……各々がやりたい体位で桜織を犯し抜く。桜織が過呼吸に陥っても、意識を失っても腰は止めない。
『悪いねぇお嬢ちゃん。オジサンもこんな事したくないんだけどさ。お嬢ちゃんをイカせまくらないと、借金が減らないんだよ!』
そう嘯く奴もいたが、その表情を見れば、桜織とのセックス自体を愉しんでいるのが丸解りだった。
一方で、受ける桜織も必死だ。
『口でしますから! 気持ちよくなるように、頑張りますから!』
そう哀願して、自ら逸物をしゃぶる場面も多く見られた。ポルチオばかり責められてはもたないため、口を使うことで少しでも負担を減らそうというんだろう。だがそれも大した効果はない。散々喉奥を使われて呼吸を乱された上、相手が完全な勃起状態を取り戻し、もっとも硬く大きい状態で膣を犯されるだけだ。
しかも男共は待機中に酒盛りをしているらしく、動画が進むにつれ、酔いの回った赤ら顔が多くなっていく。女日照りの連中が酔って理性を無くすということは、ますますセックスに容赦がなくなるということだ。
『ほぉらあ、この角度で責められるのがイイんだろぉ? 腰逃がすんじゃねーぞ、突き込みは全弾子宮の入口で受け止めるんだぞぉ!!』
20番目の男は大声で叫びながら、桜織の両脚を抱え上げた。背面騎乗位でそれをやられれば、結合部しか接点がなくなる。1人目の男の時と同じく、膣奥への圧力に自重がプラスされてしまう。
『あぐうっ!! ふ、深いっ!!』
『はははははっ、すんげぇ締まりだ! 気持ちいいんだろ、ええ? 自由が利かねぇまんまハメられて、感じちまってんだろ!? いいぜ、好きなだけ感じろよ! 良い子ちゃんのレールに乗ってるより、コッチのがよっぽど刺激的だぜ!?』
泥酔時特有の大声で喚きながら、桜織の腰を上下させる男。その腰の上で桜織は、また断続的な絶頂へと追い込まれていく。
『ひっ、ひっ……! いぎっ、ぎいぃぃっ……あああああっ!!!』
恐怖に顔を歪ませていたのは、最初の数十秒だけ。そこを越えれば、桜織の顔は弛緩していく。
『ひいっ、ひいぃっ!! お、奥が、潰れてっ! いくイクっ、ふぐうぅっ!!!』
『くひひひっ、いいぞおっ、どんどんイケ! 自分を解放させてみろ! ほら、ばんざーい、ばんじゃーい!!』
男は呂律も回らないほど酔いながら、桜織の両手を掴んで上へ持ち上げた。それによって、前屈みだった桜織の背筋が伸びきる。直後、桜織はぐるりと白目を剥いた。
『ひいいっ! あ、頭が、また……白んで……!!』
うわ言のようにそう呟きながら痙攣する様は、本当に見ていて不安になる。脊髄をスムーズに駆け上った電流が、彼女の尊い脳を焼き焦がしている。そんなイメージが浮かんだ。
『いいぞ、そのまんま狂っちまえ!!』
男は天を仰ぐ桜織の顔を横向かせ、唇を奪う。桜織にはもうそれを拒む元気がない。ちゅっ、ちゅるっ、という音が新たに加わり、桜織の全身が痙攣した。
『あっ、はっ、はぁっ、あっ!! かっ、感じすぎちゃう! もう本当に、休ませて、寝かせて、くださいっ!』
絶え間なく男に抱かれ、休む間もなく絶頂し続ける桜織。その顔は、ある瞬間には安らかだが、また別の瞬間には恐怖に歪む。
『もう無理もう無理もう無理いい゛い゛っ、いいいやああ゛あ゛あ゛っ!!!!』
桜織の背中が仰け反った。彼女の顔はこの瞬間、決定的に崩れる。見開かれた瞳が上瞼に隠れ、ヒューヒューと細い息の漏れる口が縦に開く。挙句に全身の痙攣もベッドを軋ませるほど激しくなるんだから、どう見ても普通じゃない。
『そうか無理かよ! ここが弱点か、ポルチオが気持ちいいのか、ええ!?』
男は激しく腰を突きあげながら、桜織の下腹に手を宛がってグリグリと押し込んだ。桜織の細い腰が揺れ、白い歯が噛み合わされる。
『んぎぃいっ、ひきいいいいぃぃーーーーっ!!!』
部屋に響き渡る絶叫は、もう人間の悲鳴と思えない。古い木のドアが軋む音のようだ。
そうして壊れつつある桜織を前にしても、男共がブレーキを踏むことはない。
次の番の奴は、カメラに見せつける体位を選んだ。2人して床へ立ったままでの開脚セックスだ。この体位なら股が180度近く開くから、結合部が丸見えだ。赤黒い逸物が真っ赤な割れ目に出入りする様、愛液が桜織の軸足を伝う様。どちらにも息を呑むような生々しさがある。
桜織にしてみれば、片足首を担ぎ上げられてY字バランスを強いられる形だ。どう考えてもキツいに決まっている。だが彼女の反応を見る限り、股裂きの苦しみは二の次のようだった。
『あああっ、そこ、奥!奥ぅっ!!だめ、感じちゃう……くはあぁっ!! ほっ、ほっ、ほっ、ほっ……おおおっ!おほっ!ほぉおおおうっ!!!』
瞳孔が開き、短く速い呼吸を繰り返しながら喘ぐ桜織。口の端から垂れる涎も凄い。明らかに普通じゃない。桜織に近しい友人にこの場面を見せても、彼女だと気付けるかが怪しいほどに。
飲精の時にも、そう感じたことはあった。だがあの時は、力任せに顔を変形させられたり、顔中が精子塗れだったから彼女と判らなかったんだ。今とは意味が違う。今の桜織は、誰かに顔を掴まれているわけでも、顔が何かに覆われているわけでもない。彼女の表情筋そのものが、不自然に変形しきっているんだ。
と、ここで、入口のドアが開く。姿を現したのは手越だ。
『え、もう時間っすか!?』
男が目を丸くするが、手越は笑いながら首を振る。
『いいや。いい頃合いだったんでな、直で見たかっただけだ』
手越はそう言って、洗面台にしがみつく桜織に視線を移す。
『すげえツラしてやがる。芯の強ぇガキでも、この歳で快楽漬けにされりゃこうなるか』
その言葉に、桜織が反応した。眼球を横に動かし、鏡越しに猿山のボスを見つめる。だがよく見ればその視線は、正確に手越を捉えてはいなかった。見つめる先は、その後ろ……開け放たれたドアだ。
『別に、逃げても構わんぞ』
手越は鏡の中の桜織を見つめながら、そう告げた。
『え……?』
『な、ちょっと!』
桜織と男が目を見開く。だが男の方は、手越の顔を見て何かを悟ったようだ。
『ああ、確かにそうだな。トンズラこくのもいいんじゃねえか? こうやってハメられんのが、そんなに嫌だってんならよ!!』
そう言いながら、繋がったままで床を移動する。向かう先は出入口の間際だ。
『ほら、手越の旦那からも許可出てんだ。逃げてもいいんだぜ?』
『くぅあっ!!』
男が腰を打ち込むと、桜織は悲鳴を上げながらドア枠にしがみついた。その足は床を踏みしめ、出入口の境界線を越えようとはしない。いや、できない。耐え抜いてみせる──彼女はそう宣言し、級友の身代わりになる道を自ら選んだんだから。
『なんだ、逃げねぇのか? ってこたぁ、もっともっとハメられてぇって意味だよなあ!!』
桜織を犯す男は叫びながら、後背位で激しく腰を使う。
『はぐうっ、んぐうっ! かはっ、アッ……ぁがあああっ!!』
悲痛な呻きが漏れた。密室ではなくなった以上、反響してはいないのに、はっきりとマイクに拾われている。
その声量も、彼女の足元を見れば納得できた。男との体格差か、異常なまでの突き込みのせいか。伸びきった桜織のつま先は、完全に床から浮いてしまっている。
『すげぇ、カラダ浮いちまってんじゃねぇか。そこまでになっても逃げねぇなんて、よっぽど気持ちいいんだな』
手越はドアの外から痴態を眺めつつ、さらに煽る。鈴の音が鳴り響く。
『きおちよくなんれ、ありまぁせん……。ら゛ってわらひは、きもちよくなってひるばあいれあ、ないんれす…………!! みんなを、たすけ、ないと……きもちおくらんか…………おく、らんか…………』
桜織の反論は聴き取りづらい。口から絶えず零れる唾液のせいならいいが、脳が焼き切れつつあるのかもしれない。なにしろ、決死の覚悟を口にする彼女の顔は、どう見ても引き攣った笑みを浮かべているんだから。
『ほおっ、おっほおおおっ…………!!』
その次の映像では、桜織の声はさらに清楚さからかけ離れていく。彼女が強いられているのは、開いた入口の間際での立位。挿入したままアソコを擦りつけあうようなセックスだ。
不自然な体勢だけに、挿入は浅い。男の逸物がだいぶ外に露出しているのがその証拠だ。いくら子宮が下りているとはいえ、ポルチオまで届いているとは考えづらい。にもかかわらず、桜織は狂うのを止められていなかった。
『いひいっ、ひいっ!! その角度ぉっ……だめえっ!! あぐうっイク、またいくうっ、いっくぅうっ!!!』
ぐじゅっ、ぐじゅうっという音を立てながら腰を擦り付けられるたび、桜織の腰もうねる。うねりの幅は大きい。反射で腰を引くというレベルを超え、自分から快感を貪るような、ゆったりとした円を描いている。そうとしか見えない。
『はははっ、こりゃスゲェな、10コぐらいの舌でチンポ全体を嘗め回されてる感じだ! 高ぇソープでもこんなの経験ねぇや。どうやったらここまでヤラシーまんこ使いができんだよ? そんなに気持ちいいのか、オイ!!』
男は興奮気味に叫びながら腰を蠢かす。むしろこっちの方が快感に対する反射反応に近い。
『はぁっ、はぁっ……き……気持ちいい、気持ちいいですっ!! こ、こんないやらしいセックスで、嫌なのに……ダメなのに!こ、こんなに良いなんて……!ふぁあああ、あーーーっ!!』
桜織は、見開いた瞳からボロボロと大粒の涙を零していた。快感を訴えているが、内容的に言わされたものとは思えない。鈴の音の狂ったような鳴り方からも、実際に絶頂し続けているのは確実だ。言葉も身体も、抵抗を諦めた。襲い来る快感の大波に、流されることを受け入れた。そう見える。
ただしその小さな手はドアを掴み、外に出ることだけは防いでいた。
他人を巻き込まないこと。
責任感の強い少女が、自分よりも優先させたのは、その矜持だったらしい。
※
彼女は狂っていく。
部屋の外にぞろぞろと集まる男達に、快感の声を届けながら。
『はっ、お……おオオ゛ッ、あああおお゛オ゛オ゛っ!!!』
これは、正常位で男と交わっている時の声だ。男と向き合いながら、声を殺し、澄んだ瞳で相手を見据えていた少女はもういない。
声楽の、それも低音部を担当するような声を響かせ、全身を痙攣させるばかりだ。多分この時の彼女は、また全部を諦めきってはいなかったんだろう。そうやって喉も裂けんばかりの大声を出すことで、蓄積した何かを発散させようとしていたんだと思う。
『あーっもう、うるせーよ!!』
犯す男は顔を顰めながら、右手で桜織の口を塞ぐ。それは大量に噴き出す炭酸ガスを、強引に閉じ込めるに等しい行為だ。その結果行き場を失ったエネルギーは、桜織の肉体を駆け巡る。
『んもぅうう゛、うむ゛っ!! うむ゛ぅうう゛おおあ゛お゛ーーーっ!!!!』
桜織は暴れた。大股開きの腰を跳ねさせ、シーツを鷲掴みにし、脳天を深々とベッドに擦り付けて。窪んだような眼光の中、ギラギラと光る黒い眼差しは、脳内麻薬で深くトリップしていることを窺わせる。
モニターの数字に目をやって、俺は目を疑った。
現在カウント116、トータルカウント5403。
それがすべて正確にカウントされているなら、人間の脳が焼ききれたとしても、何の不思議もない。
口を覆う手が離された時、桜織の顔には微笑が浮かんでいた。和やかな顔に見えた。だがそれは、痩せた土地にいきなり一輪の花が芽生えたようなもの。事情を知る人間から見れば、不気味でしかない。
『なんだ、笑ってんのか? 俺のがそんなにいいのかよ? ま、気持ちよくて気持ちよくて、今までにねぇぐらいバキバキに勃起してっからな、ヤリマンにゃ堪らねぇかもな!! ほら。俺のデケェのが、今どこまで入ってんだ?』
桜織を食い物にする男は、軽薄な笑みを浮かべながら腰を使いつづける。
『あっ、はっ、はっ……こ、ここ!! ここまで、入っれるぅ……!!』
桜織も笑みを浮かべたまま、臍より上を人差し指で押さえた。ありえない。そこは子宮口どころか、子宮そのものの位置よりも上だ。男の逸物のサイズから考えても、そんな場所まで到達するはずがない。頭の良い彼女らしからぬ答えだが、彼女は本気でそう感じているようだった。
『ああっ、イク……おまんこでイクッ!! あはぁっ、はああっ!! また、またきたあっ!! おくっ、奥でいくう゛う゛っ!!!』
『へへ、すんげええ! こんな嬉しそうにマンコ舌で舐りまわされちゃ、俺も限界だ。6発目、また中に出すぞっ!!』
『はっ、はっ、来て! どろっとしたの、流し込んで!! 奥にどろどろ来ると、膣が勝手に動いてすごいの! 頭ビリビリして、まっしろになっちゃうぐらい、気持ちいいからぁっ!!』
顔中に汗をかき、目だけを爛々と輝かせながら、2人の動物が快感を貪りあう。そして桜織は、笑顔のままで受精した。
『きた、きらあぁっ!! はぁ、はぁ……はああぁああっ!!』
歯を食いしばって白目を剥く。脳髄までを白く染め上げられる喜びに、彼女は涙を流しながらうち震えていた。そしてその頭上では、無機質なモニターが絶頂数をカウントしつづける。4桁におよぶトータルカウントの先頭は、とうとう8に変わっていた。
その後も映像は続いているが、もはや観る価値もない。すでに点と点はすべて繋がっている。過去記録の下段、『LIVE』と銘打たれた映像は、今の流れの延長線上でしかない。
『おほっ、お……おおぉっ!! おっほぉっ、んおおお゛お゛おお゛っ!!!』
這う格好で犯されながら、桜織は凄まじい雄叫びを上げつづける。格好も、声も、舌を突き出した顔つきも、どれもが人間よりケダモノに近い。
いっそケダモノだと断じられれば楽だが、そうもいかなかった。産まれてからずっと丹念に磨かれてきた珠の肌は、くすんだとはいえ綺麗だ。
おまけになんだか、ボディラインまで官能的になっている。最初の動画では、よく言っても華奢、悪く言えば貧相という感想しか抱けなかった身体。だが今、ベッドに這う彼女の肢体は、少女趣味ならずとも勃起させる妖しさがある。手足が細長いのは変わらない。胸が劇的に膨らんだわけでもない。だが、そこにあるのは紛れもなく“肉”。すごく柔らかそうで、掴んで貪りたくなる“肉体”だ。
それを実際に貪る男もまた、理性は溶けているようだった。半開きの口から涎を垂らしながら、言葉とも喘ぎともつかない声を発し、ひたすらに腰を打ち込んでいる。まるで女に飢えきっていた1巡目への逆戻りだ。
ディスプレイの世界から現実に戻り、耳からイヤホンを外すと、映像内の声がそのまま聴こえるようになった。
『もっと犯してっ、もっと突いてっ!疼いて疼いて、堪らないの!犯されてる時だけが幸せなのっ!!あっ、あ、また……イクッ!!くんんっ、いくいくいく!!イグーーーッ!!おまんこでイっちゃう゛う゛うう゛う゛ーーっ!!!』
下劣な言葉を叫び散らしながら、擦りガラスの向こうで影が動く。犯している男のシルエットは変わっているが、這い蹲る女に変わりはない。男のそれよりも遥かに華奢で、小柄で、艶かしい動きをする影だ。
俺がこの施設に来てから、今日で10日目と少し。今は250時間強というところか。336時間耐え切るには、あと80時間……丸三日以上もあのままでいなければならない。
そして彼女は、それをやりきるだろう。部屋から引きずりだそうとしても、全力で抵抗するに違いない。彼女の願いはきっと果たされるはずだ。
その根底にあるものは、責任感とも、悲痛な覚悟とも違うだろうが。
4章最終部分です。
■第四章 オーガズム・クライマックス(後編)
12人目の男が持参したディルドーの特徴は、何といってもその柔らかさにあった。男が持ち手を左右に揺さぶるだけで、中央部分が鞭のようにしなる。となれば当然、先端部は膣奥を錐揉み状に刺激するはずだ。
実際、桜織の反応は大きかった。
『うぅくっ! はっあ……ああっ!! ああぁぁ……あぁんっ、ああぁっ!!』
艶のある声を上げながら、上下左右に腰を揺らす。明らかに、ディルドーによる抉り回しから逃れようとする動きだ。
『ふふふ、暴れてる暴れてる。性経験の少ない子っての奥刺激されると痛いらしいけどさ。イキまくって脳内麻薬出まくりのキミなら、そんな痛みも全部快感になっちゃうでしょ? 僕が観たAVでも、イキすぎた女優が止めて止めてって叫んでたんだよね。それに比べたら、やっぱり君は品がいいよ、必死に声殺そうとしてるもん。女の子は清楚が一番だよね』
男は頬を緩めると、手首を大きく使い、ディルドーのグリップ部分を激しく回しはじめた。連動してディルドー本体も円を描く。もはや大縄跳びの動きだ。
『ああいやあっ、深いいぃ゛っ!!!』
圧に耐え切れなくなったのか、桜織の白い歯が噛み合わされる。腰がぐうっと持ち上がり、シーツとの間に枕ひとつ分ほどの隙間が空く。
男として客観的に見れば、快感に耐える桜織の顔は“そそる”。この上ない清楚さが崩れる瞬間に、カタルシスを感じてしまう。だから男が、余裕をなくした桜織の唇を奪ったのも、一概に批難はできない。ただし、それはあくまで俺の感想。極限状態で呼吸を遮られ、軽蔑する相手とのキスを強いられる桜織本人からすれば、地獄以外の何物でもない。
『んぶっ!? ぷはっ! や、やめて、くださ……んむっ、むうう゛っ!!』
頭を振って口づけから逃れようとする桜織。だが上から密着する男を拒むのは容易じゃない。
おまけに彼女は、首から上の抵抗に専念できる状態でもなかった。唇を奪おうとする中でも、ディルドーを操る男の手は止まらない。体勢が体勢だけに、責め方自体も変わっていた。正面からディルドーを突き込む動きから、桜織に覆い被さったまま、ディルドーを引き寄せる動きに。あの“引き寄せる”やり方は、より強く、よりピンポイントに奥のスポットを刺激することだろう。
『えくっ、えくぅうう゛っ!!!』
男に舌を奪われながら、桜織が叫ぶ。リン、と響く機械音はいつも通りだが、今回の絶頂は一際深いに違いない。
ディープキスの音に混じって、何度も鈴の音が鳴り響く。やがて男が、引き寄せる動きのままでディルドーに円運動をさせはじめると、桜織の下半身の反応も極まった。腰を浮かせ、足指でシーツを掴み、果てにはぷしゅっと潮を噴く。
『はぁっ、はぁっ……へへへ。桜織ちゃん、唾の量が凄いよ。見て、俺の顎まで垂れてきてる。イクと唾が出るからかな。それとも下品モードに入っちゃった? 俺的には、それでも全然いいんだけど』
男は桜織から顔を離し、嬉々として謗りの言葉を投げかける。桜織は唇を結んだ。彼女がよく見せるこの表情は、実に清楚だ。Mの字に開脚したまま、割れ目をひくつかせる下半身とは対照的に。
男はここで、愛液で濡れ光るディルドーを投げ捨てた。そして代わりに、同じくベッド上に放置されていた電気マッサージ器を拾い上げ、先端にアタッチメントを取り付ける。
『……っ!!』
凶器に近い形状となったマッサージ器を前に、桜織の目が見開かれる。彼女はマッサージ器の暴力的な威力を知っている。アタッチメントは、その威力をさらに増すために取り付けられたに違いない。となれば、恐怖して当然だ。
『お、お願いします! そんなもの使わないでください……。それなら、挿入された方がましですっ!』
桜織は細い身を掻き抱いて叫ぶ。相当な怯えぶりだ。貞操観念の強い彼女がレイプを許容するなんて、並大抵のことじゃない。
『そう焦んないでよ。ハメんのも後でたっぷりしてあげるからさ。その前に、もっと奥をほぐして感度を上げよう?』
『い、嫌! これ以上なんて、今でも感じすぎてます!』
『ダーメ。そうやって普通に喋れてるってことは、まだ余裕あるってコトじゃん。片言でしか喋れなくなるまで、思いっきり追い込むから』
男の指がマッサージ器のスイッチを入れた。重い羽音を伴うアタッチメントが、充血した割れ目へと潜り込み、桜織が腰を跳ね上げる。
『くあっ! こ、これ、刺激が強すぎますっ!!』
『知ってるよ、だから良いんじゃん。どうせイキまくるしかないんだからさ。そんなお股に力入れないで、リラックスしてな』
男は鬼気迫る表情で、マッサージ器を奥に固定しつづけていた。相手には弛緩を求めながら、自分の手首には血管を浮かせて。
『いっ、いくーーううっ!!』
さすがに機械の威力は半端じゃなかった。桜織が歯を食いしばって絶頂するまでに、10秒もかからない。男はその反応を眺めながら、マッサージ器を上下に揺らして責めを強める。
『っくぅ……だめ、だめいくっ、またいく!!!』
桜織の腰が持ち上がり、リンリンと鈴の音が響く。桜織は何度も絶頂を訴えていたが、その回数が増すほど、声のトーンは低くなっていった。聴くだけで痛さが伝わる悲鳴があるように、その低い呻きは絶頂の深刻さを生々しく伝える。
脚の反応も正直だった。指先でシーツを掴むだけでは飽き足らず、シーツに足裏を叩きつけて暴れはじめる。苦しみの源を遮断するように、内股に閉じようとする動きも見えた。
『閉じるな閉じるな。脚開くことだけに専念してろ!』
男はやや口調を荒げ、左の腕と膝を使って桜織の股をこじ開けながら、右手で掴んだマッサージ器を揺らしつづける。ぶるぶると細かに痙攣する様から、2人のどちらもが全力で力を篭めていることがわかった。優勢なのは、当然ながら男の方だ。
『うう゛っく、くはぁあっ!! ああ、あ、いっくう……っ!』
桜織の喉からはいよいよ切ない声が漏れ、腰が大きく反ってはドスンとベッドを揺らした。何かに憑かれているような動きだ。それでも、男はマッサージ器での圧迫を緩めない。
『そろそろホントの限界か? よーし、じゃあこっから30回連続だ。30回連続でイッたら一度休ませてやる! ほーら1回! 2回!』
そう叫んで桜織の脚を大きく広げさせ、鳴り響く鈴の音をカウントしはじめる。
『もう無理ぃっ!! あっく、はっくっ!んんあああっ!! ご、ごめんなさい、ごめ……んんん゛っ!! はっはっは…………っくいっくう゛う゛っ!!!』
桜織の反応は、折檻を受けて親に謝罪を繰り返す子供そっくりだった。涙を流し、喘ぎ、震えながら謝る。しかし親役は、そんな少女の反応を愉しむばかりだ。
『18回、19回、20回! もっともっともっと、イけるだけイけっ!!』
桜織の腰が頭より高く持ち上がっても、左右に激しく振られても、マッサージ器は執念じみた動きで追随する。地獄のチェイスだ。
『いっくいく、いきゅううう゛っ!! も゛れるぅっ、もれぢゃううう゛っ!!!!』
『いいぞ漏らしても、全部出せ! あと3回! 28、29……ラストォ、30ッ!!!』
男はラストスパートとばかりにマッサージ器を小刻みに動かし、30回目の鈴の音と同時に一気に抜き去る。
『ひいいぐううう゛ーーーーっ!!!』
金切り声を上げながら、腰をベッドに叩きつけた桜織。その割れ目から、透明な飛沫が勢いよく噴き出す。
『はーっ、はーーっ。あっはっはっは、すごい。完全に中イキと小便がセットになっちゃってんね。俺としちゃエロくていいけど、スゲエ下品だよー委員長?』
男はどこまでも性根が腐っているらしく、放心した桜織に追い討ちの言葉を投げかける。
桜織の頬をまた一筋、涙が伝い落ちた。
桜織の苦しみは続く。
次の場面では、桜織は床に立ち、ベッドに手をつく格好でディルドー責めを受けていた。さっきの映像でも使われていた、非常に柔らかいディルドーだ。
『さっきより感じてるね。立ってる状態って、下半身に一番力入るからね』
男の言葉通り、桜織の反応は激しい。深々と入り込んだ黒いディルドーが蛇のようにのたうつたび、太腿が引き締まっては緩む。愛液の量も相当で、内腿に垂れるのはもちろん、ディルドーが抜かれるたび、カメラに映るほどの水滴が飛び散ってもいる。桜織が足を踏み替えるたび、みちゅりと音が鳴るほどだ。
『うわ、見てよ桜織ちゃん、下びちゃびちゃ。これ全部、桜織ちゃんの本気汁でしょ? すっごいね』
男は笑いながらペットボトルの水を煽り、その飲みかけを桜織の口に宛がう。桜織が一瞬顔を顰めたところを見ると、匂うようだ。だが、彼女は脱水症状を避ける為にもそれを飲み下すしかない。汗に涙、愛液……体液は失われる一方なんだから。
12人目の男はここで休憩を挟んだ。ただし、休むのは自分だけだ。
『次は、オナニーしてみせてよ。これ使ってさ』
奴はベッドで寛いだまま、桜織にバイブを投げ渡す。
『なっ……!』
桜織は息を呑んだ。それまでのような受身の態度が許されず、自ら快感を貪らなければならない。そんなことは、彼女の倫理観にそぐわないだろう。
それでも、彼女は従うしかない。羞恥で眉を潜め、唇を噛みしめ、耳までを赤く染めて、自ら割れ目にバイブを差し込む。
『ほら、脚開いて! バイブが出入りするところを俺に見せてよ』
男の要求を受けて足の幅を広げつづけた結果、桜織の格好は足を外向けに開いたがに股となってしまう。
『あっはっはっはっ、いいねいいねぇ! 清楚娘のガニ股バイブオナニーとか、お宝級の映像だよこれ!! しかもさぁ、なにこれ、お汁の量が凄いじゃん! まさか興奮してるの、そんな浅ましい状況で!? ホントかよ、ムッツリのド変態じゃん!!』
男は桜織の自慰を眺めながら、好き放題に野次を浴びせまくる。言葉が重なるたびに、桜織の表情は歪み、頬を涙が伝う。
だが、小さな手がバイブのグリップを前後させるたび、愛液が溢れているのは事実だ。どうやらかなり感じてしまっているらしい。
『はぁっ、はぁっ……! はぁっ、はあっ! うっ、く……あ、はぁっ!!』
荒い呼吸の中、足が細かに震えはじめる。リン、と無慈悲な鈴の音が鳴る。
『あ、イッた! イク時はイクって言わないと。オトナの前でオナニーする時のマナーだよ?』
『あ、あ……はぁ、ぁっ!! い、イキますっ! イキます、イ……ぃいっ!!』
絶頂を宣言させられるようになってから、さらに鈴の音の間隔が狭まった。脚の震えも病的になっている。かなり深く絶頂しているようだ。
痛々しい。だがそれだけに、サディストにとってはこれ以上ない興奮材料だろう。
『ほんとエロいなぁ、桜織ちゃん。勃ってきちゃったよ』
男は勃起した逸物を誇示しながら桜織の背後に回り、手でバイブを払いのけると、齧りつくように挿入する。
『ん゛っ!』
『んー、イイ声。バイブで慣らされてても、生のチンポだとまた違うんだ? バイブのツルッとした表面と違って、人の肌って結構摩擦強いもんね。俺の方も、結構擦れて……ああああすっごい、襞が絡み付いてくるぅ! イキまくりで、すっかりオマンコが敏感になってるみたいだね』
男は桜織の反応を楽しみながら、荒々しく腰を打ちつける。一方的に欲望をぶつけるセックスだが、最初の頃ならいざ知らず、“出来上がった”今の桜織はそれでも感じてしまうらしい。
『んっ、んんっ!! ふっく、んんっ……ん、ふう゛っ!!』
左手で膝を掴み、右手で口を押さえる桜織。余裕のない中でも清楚さを保とうとする仕草が健気だが、背後から犯す男はその健気さすら許さない。
『今さら声抑えなくてもいいじゃない』
激しく腰を前後させながら、桜織の両手首を掴んで後ろに引き絞る。桜織の顔が引き攣った。声を抑えきれない確信があるんだろう。
『ふッ……く、く……んふっ、ふんんん! あ、ああっ!! うぁあ、あ……っ!!』
手の平という覆いを失った桜色の唇は、男が腰を打ち込むたびに開き、艶のある声を漏らす。
『どう、がに股で犯されると興奮するでしょ? キミこういう下品なの好きだもんね? ほら、どんどん逝っちゃえ!!』
『はぁっ、はぁっ……こ、こんな格好、好きな、わけじゃ……! はああっ、うあっ、あ……あいぐ、いっぐうっ!!』
男の謗りを否定してみせても、絶頂が止められない。あらゆる自由を奪われた桜織は、浅ましい格好のまま、愛液を散らして喘ぎつづけるしかなかった。
割れ目に溢れるほどの精液を流し込んだ後も、男の欲望は萎えない。むしろ逸る気持ちがなくなった分、より陰湿なものになった。
『おーっ、イってるイってる!!』
桜織の両足首を纏めて肩に担ぎ上げ、アタッチメントつきのマッサージ器で執拗に膣奥を刺激し。顔を両手で覆いながら絶頂していた桜織が反応を見せなくなると、バイブに持ち替えて気付けする。だらしなく開かれた脚の間に深々とバイブを押し込んだまま、下腹を手で圧迫するやり口だ。
『あ゛っ、かはっ……あ゛、ああ゛!! だめ゛、またイク、だめ゛っ!!』
意識を取り戻した桜織は、男の手を払いのけようとしていた。だが何度も絶頂させられるうち、両手でシーツを掴みながら、脚を激しく暴れさせる抵抗に変わっていく。男はそんな桜織の膝裏を抱え込み、あられもない姿で開脚させながら責め立てた。
『あははっ、凄い凄い。必死じゃん!』
『いや゛っ、い゛や゛ぁいや゛ああ゛ーーーっ! いぐっ、イグイグううッ!!』
男の愉快そうな笑い声とは対照的に、桜織の叫びは悲痛だ。
歯を食いしばり、大きく開き。瞳孔を開いたかと思えば、涙ながらに白目を剥きかけ。
そうした激しい反応の果てに、状況はいよいよ極まっていく。
絶頂の現在カウントが130を超えた頃、とうとう桜織は最大の恥辱を晒した。
ぶううっ──という音。
放屁だ。それは激しい水音と鈴の音にも掻き消されることなく、残酷なまでの明瞭さで響きわたる。
『お?』
『ぁ……!!』
男は固まり、バイブを操る手を止めた。桜織自身も眼を見開いて硬直する。
そして、鬼の首でも取ったような大笑いが始まった。
『ふはっ、あは、あはははっ! ひいっ、ひいいっ!! お前、気持ちいいからって、屁、屁をこくなよ、委員長!!』
バシバシと膝を叩く小太りの体の下で、桜織の顔が歪む。死を望むかのような痛切さで。
『はーっ、笑った笑った。さて、んじゃ屁コキ委員長にお仕置きといくか!!』
男はそう言って逸物を扱き上げ、横たわった桜織の右腿を掴み上げて挿入を果たす。挿入部分からは泡が膨らみ、ぶじゅうっ、という水音が漏れた。
『ふぁうぐっ!!』
桜織が目を見開く。
『おーっ、また中のうねりが凄いね。挿入しただけでイッちゃった?』
男は笑いながら腰を振る。斜め上から体重をかけて圧し掛かり、奥を押し込む突き方だ。それを受ける桜織の表情は、辛そうだった。眼を閉じて眉間に皺を寄せ、薄く開いた唇の間で歯を噛み合わせている。男の腰が股座に密着するたびに、う、う、と呻きを漏れてもいた。さらに、男がにやけながら下腹を擦りはじめれば、歯を噛み合せることすらできなくなる。
『どう桜織ちゃん、イってる?』
鈴の音が鳴り響く中で、男はあえて問いかけた。征服者として、言葉で聞きたいということか。
『いっ、いひいいっ!! い、イッてます、イッてますっ!!』
桜織からすれば、正直に答える以外にない。自分の絶頂は、脳の機械によって余さず暴かれているんだから。
『そうか、よーし。もっとイこう、2人でもっと気持ちよくなっちゃおう!!』
男は前屈みになり、抱えた桜織の右腿に腹を乗せる。小太りの体の下敷きになれば、桜織も横ざまの体勢を保てない。背中をシーツに押し付け、大きく脚を広げる。それは、男にとって深く挿入しやすい格好だ。抜き差しが目に見えてスムーズになる。
『あああいやっ、いくうっ!! いくううぅっ!!!!』
桜織の脚が筋張り、すらりと細い手足がバタバタと暴れた。
『ふーっふーっ、へへ、えへへへっ!!』
男は汗みずくで笑い、桜織の手を掴んで背を仰け反らせる。そのまま何度か力強く挿入されれば、桜織の腹筋に縦線が走った。
『いやあああっ、やめてっ! やめてくださいっ!!!』
桜織が大口を開けて叫んでも、男の腰は止まらない。肩に担ぎ上げられた桜織の足先が強張り、男の肩口で爪先立ちをする。男がそれを痛がって右脚を放り出せば、横向きに脚を重ねたまま、やはり艶かしく蠢かす。
それらはすべて、桜織の意思ではないだろう。恥じらいのある彼女の行動らしくないし、何より、彼女には見るからにそんな余裕がない。
『あっ、はっ!! はっ、はっ!! ああんっ、あ……んああ!!』
目を見開いたまま虚空を見上げ、短い呼吸を繰り返す。そんな、茫然自失の状態だ。
『すっごい、キマってきたね。そろそろ時間なのが惜しいよ。次の奴らは、この状態から君をイジメ抜けるんだよねぇ、あー羨ましいなあ!!』
男はそう言って逸物を引き抜き、手で扱きながら白濁を桜織に浴びせかける。自分という存在をアピールでもするように、たっぷりと。白濁は腹、胸と飛び散り、一部は桜織の顔にも浴びせかかる。
それでも、桜織は反応をしない。シーツに頭頂部をめり込ませ、顎を天井に向けたまま、気を失っているようだった。
12人目が部屋を退出した後は、3度目の食事の時間だ。
失神から引き戻された桜織は、膝にスープの皿を置かれただけでぶるりと震えた。それを見て手越が噴き出す。
『すっかりポルチオ性感が目覚めたって感じだな。もう全身がクリトリス状態ってか? その状態でソレ食ってみな、もっと新しい世界に行けるぜ』
手越はスープを指し示しながら告げる。
『新しい、世界……?』
『ああ。“オーガズム・クライマックス”──逝き続けた果てにある、究極の快感だ。そのスープ飲んで発情したまま逝きまくりゃ、じきにその境地に辿り着く。もっとも、99%の女は、その前に脳が焼き切れて狂っちまうがな』
物騒な言葉を口にしながらも、手越に悪びれる様子はない。あくまで真実を述べているという風だ。それは逆に、どんな脅しよりも心に突き刺さる。
『…………私は、耐え抜いてみせます』
桜織は表情を引き締め、濁りのない瞳で手越の顔を見つめる。手越の唇の端が持ち上がった。
『イイ眼だ、そうこなくっちゃな。まだたったの12人目。ようやっとスタートラインから一歩踏み出したとこなんだからよ!』
※
手越の言葉通り、ここからが本格的な地獄の始まりだった。
執拗に開発され、剥きだしの急所と化したポルチオ。それを男共が見逃すはずもない。単に快楽を貪る上でも、清楚な桜織の顔を歪ませる上でも、借金の棒引き額を稼ぐ上でも、最適なポイントなんだから。
圧倒的に多いのは、マングリ返しの桜織に対し、膝立ちをした男が斜め上から挿入する体位だ。マングリ返しというあられもない格好を取らされると、桜織は耳まで赤らめて恥じ入る。その顔を正面から拝む事ができ、なおかつ奥まで突きやすい。それが人気の秘密だろう。
『はっは、スゲー顔。俺も結構ハメてきたけど、そんなツラしてる女見んの初めてだわ。子宮イキの快感って、そんなスゲーの? マンコの奥も太腿もピクピクしっぱなしだしさぁ。電気流れてるみてぇ』
男共は腰を振りながら、嬉々として言葉責めを浴びせつづける。
対する桜織は、恥を晒さないように必死だった。目を瞑り、口を結び、シーツを鷲掴みにして快感に耐える。だが、そうして我慢を続けられるのも、ほんの僅かな間だけだ。しかもその間隔は、映像が進めば進むほど、確実に短くなっていく。
『はぁっ、はぁっ……! お、お願いしますっ、休ませてください! 奥は、奥は、もうっ……!!!』
息を切らしながらのこんな哀願を、何度耳にしたことだろう。犯す男は交替制でも、犯される桜織に休みはない。シャトルランを何千回も繰り返しているようなものだ。音を上げるなというには無理がある。
『ほう、休みてぇか。じゃあ今どんな感じが、自分の口で説明してくれや』
『ハッ、はっ、はっ……ど、どんなって……。お、奥に、あそこの奥を硬い物で突かれて、潰されて……深い所が、ジンと疼いて! そっ、その疼きが、足の、指先にまで……ふっぐ!?ううんっううんんイクっ!!!』
男が促すままに、快感の流れを語る最中。変に意識したのがまずかったのか、桜織は足先を強張らせながら絶頂に至る。別方向を向いた親指と人差し指の間に膜が張り、太腿が横に膨らみ、腹筋が浮き出るほどの反応。リン、と響く機械音こそそれまでと同じだが、どう見ても格別に深い絶頂だ。
『ははっ、また顎の皺がすんげぇな! んで? ジーンとした痺れが広がって、そっからどうなる?』
『ぜっ、はーっはーっ……!! そ、その後は……か、快感が……いえ、快感なんて言葉じゃ表せないぐらいの感覚が、ずっと続いて……はっ、はっ……頭に、霧がかかっていくんです! 真っ白になって、何も解らなくなって……ある瞬間に、足を踏み外したみたいに深い快感に沈んで……っ!!』
『ふーん、スゲーな。で、一回イッても終わりじゃないっしょ? マンコん中、ずーっとヒクヒクしてんじゃん』
『はい、イッても、収まりません!! イッた直後は、少し波が収まりますが……んん゛っ、すぐに、ぶり返してきます! 前のよりずっと大きくて、お、溺れそうなぐらい……っ!』
そう語る桜織は、まさに快感の大波に足を掬われている最中らしい。短い呼吸と共に、上半身が仰け反って痙攣し、見開かれた瞳がトロリと蕩ける。男はその反応を前に目を細め、更に腰の振りを早める。
『うあっ!! どうして……や、休ませて、くれるんじゃ……!?』
『いやぁ? ンな約束はしてねぇし、してたとしても守れねぇなあ! こっちは一ヶ月以上も女抱いてねぇもんで、金玉がパンパンなんだよ! 一発二発出したぐらいじゃ収まんねぇ、ガンッガンいかせてもらうぜぇっ!!』
『あがっ、ふ、深いぃっ!! は、激しくしないで……あぐうっ!! い、ああああぁっ!!!』
容赦ないピストンを受け、桜織が悲鳴を上げる。しかもそれが延々と続いた。30分もすれば、男は膝が擦れて痛いとぼやきだすが、だからといって止めはしない。桜織の股間を跨ぐように足を開き、改めて力強い抜き差しを始める。薄汚い尻穴の下には膨らんだ睾丸があり、そのさらに下に覗く逸物は、未だに硬さを保っているのがはっきりと見てとれた。
『おおっ、この体位気持ちいいわー、すっげぇ射精しやすい! 今度から女抱く時ゃこれにすっか。お前のおかげで、意外に早くタコ部屋から出れそうだしよ!!』
男はカウントの増えるモニターを眺め、上機嫌で叫ぶ。膝裏に溝を刻み、確かな腰遣いで奥を突きながらだ。
対する桜織は、悲惨だった。
『ふぐううっ!! んうっ、ふううっ!! や、やめっ……んんん゛、いくっ! い゛……ッ!!!』
押し潰される姿勢で膣奥を突かれる中、時々荒い呼吸が途切れる。そういう時、桜織は決まって顎を浮かせ、頭頂部をシーツに埋めていた。そうしないと耐え切れないほどの快感なんだろう。
『うは、締まるぅーっ!!』
男は嬉しそうな声を漏らし、奥まで挿入したままで腰を止めた。
『はあっ、はあっ、また……! な、何度出せば気が済むんですか!』
男は繰り返し膣内射精しているらしく、桜織が非難の声を上げる。その最中、割れ目からドロリと精液があふれ出すのは、いやらしいと同時に悲劇的だ。
圧し掛かる体位には、もう一つのパターンもあった。男が挿入したまま、足をシーツに密着させるやり方だ。その状態で円を描くように腰を動かされれば、膣奥を最大限圧迫された状態で擦られることになる。
『んぐうっ! また、奥の奥まで……んぐっ、んぐぅうあああっ!!』
桜織の楚々とした顔が歪み、やがて膝下が跳ねる。男共は、いつもその頃合いでピストンを仕掛けた。
『あ、あ!! はっ、はっっはっ……ああ、はぁあ! あっ! あっ! あっ!!』
『おーっ、すげぇ反応。犯されて感じてんだな、お嬢ちゃんよ!!』
『はぁっ、あ! か、感じて、なんか……!!』
『ウソつけ。お前が感じてんのもイッてんのも、全部わかんだよ。おら見ろよ、これで700回目だ!!』
男がモニターを見上げながら腰を突き入れる。リン、と音がし、累計絶頂カウントが700を示す。
『くふっ、んん……!!』
『へへへ、キリのいい数字だぜ……ん、おっ!?』
男が奥まで腰を沈めたまま、ひと息ついている最中。また鈴の音が鳴り響き、モニターの数字が701に変わる。
『おいおい、絶頂の余韻でイクのかよ。どこまで変態だオメー!?』
そう嘲笑われても、一番ショックを受けているのは桜織自身だ。小さく開閉する口で、嘘、嘘、と繰り返す様を見ると、精神面が不安になってしまう。
有り余る欲望と野心で少女を犯す畜生共。その体格や性的嗜好は色々だが、東南アジア系の人間は特に異様だった。燃費がいいのか、細身からは想像もつかないほどの耐久力がある。日本人や中国人が愛撫やフェラチオを挟んで体力を回復しつつ犯すのに対し、連中は2時間フルで桜織を犯しぬく。バックスタイルから始まり、側位、正常位……様々に体位を変えながら。
桜織の苦しみぶりは相当だ。タイ語なのかインドネシア語なのか、俺にとって馴染みのない言葉で何かを訴えながら悶え続ける。犯す男が囁き返すのも同じ発音だが、こっちの言葉はひどく耳障りだった。理解できない言語でも、悪意というものは通じるらしい。その悪意で、桜織は刻一刻と狂わされていく。見開いた目から涙を零し、食いしばった口から涎を垂らし、海老のように背を反らせて痙攣しながら。
そして、50人の相手が終わる。一人につき2時間としても、100時間。実に丸4日以上に渡り、中年男の脂ぎった欲望をぶつけられたわけだ。
ベッドに横たわる桜織の見た目は、変わり果てていた。
キリリとしていた顔は、鼻水や涙、涎に塗れ、だらしなく白目を剥いている。
お椀半分ほどの大きさにまで膨らんだ乳房、木の実のように赤く尖った乳首。そのどちらにも、初めの頃の面影はない。
そして一番悲惨なのが、下の性器だ。陰唇は腫れ上がったまま外に開き、内から白濁を溢れさせている。
『ヘッ。あの小便臭ぇガキが、一端の女になってやがる』
扉を開けて姿を現した手越は、桜織を一瞥して嘲笑った。本来は4人周期で食事の機会を与えるはずだが、50人が一巡し終えるタイミングにずらしたらしい。
その手越の声を耳にした桜織は、ベッド上でゆっくりと身を起こす。瞬きで涙を切ると同時に、呆けた目にも力を取り戻す。凌辱側の元締めである手越にだけは、弱みを見せない──そう言わんばかりに。
ただし、その見た目は依然として性的だ。
『は、あ……はぁっ……』
熱に浮かされたような赤い顔といい、屹立した乳首といい、汗まみれの肌といい。落ち着いた雰囲気も相まって、凌辱を受けた人妻にしか見えない。
『メシだ。もうそろそろ、コイツなしじゃいられなくなってきたろ?』
手越はそう言って、スープ皿の載った盆を桜織の膝に置いた。桜織は唇を噛みしめる。不本意の極みという風だが、食事を拒むという選択肢はない。セックスはカロリーを消費するため、栄養の補給は必須だ。そして、避妊薬もこのスープを通してのみ与えられる。望まぬ妊娠を避けるためには、どんな副作用にも目をつむって飲み下すしかない。
桜織は銀食器を掴み、中身を口内に注ぎ込んでいく。だが、初めの頃のようにスムーズに飲み下すことはできなかった。すぐに激しく噎せ、口にしたものを吐き戻してしまう。
『ぐぶっ!! げほっ、えはあっ!!』
『どうした、しゃんとしろ。別のフロアでご学友も頑張ってんだからよ。特にあの、蒼蘭の剣姫とか持て囃されてたガキな』
手越は扉に寄りかかったまま、桜織に意味深な言葉を投げかけた。桜織が顔を上げる。
『……藤花の、ことですか?』
『ああ、そんな名前だったか。奴はお前と同じように、一番きつい責めを引き受けるって豪語してな。一番はすでにお前が選んでたから、二番目にきついのの担当になったんだがよ。結果あいつは、汚辱責めを味わうハメになった』
『汚辱責め?』
『おう、ウンコやションベンを絡めた責めだ。ゾッとすんだろ? 実際きついぜ。あそこの調教師は、オンナ嬲るのが生き甲斐っつうサディスト揃いだ。昨夜なんぞは、風呂桶サイズの肥溜めに、頭から膝まで漬けたってよ。完璧に失神するまで、何遍もな』
さらりと発される、おぞましい言葉。昨日の映像でカットされていた責めだろう。確かにえげつなかった。自我が崩壊してもおかしくないほどに。
桜織もその異常性を察したらしく、青ざめた顔で絶句する。手越はその反応に満足げな笑みを浮かべ、さらに言葉を続けた。
『ああいう芯の強ぇ奴ほど、一度折れれば脆いからな。お前は、是が非でもこの快楽地獄を耐え抜いて、あいつらのアフターケアに回るべきだと思うぜ。なぁ、委員長さんよ?』
悪魔の囁き。奴はさっき、この絶頂耐久プレイが一番きつい責めだと口にした。つまり、このプレイが最上の地獄と知りながら挑発してるんだ。
1巡しただけの今でもすでに、桜織は普通でなくなりつつある。その上でさらに続ければ、より狂っていくのは確実だ。ともすれば、二度と真っ当には戻れないかもしれない。
当事者である桜織自身も、それは充分に承知しているはずだ。だが、彼女は退かなかった。大きく息を吸ってから食器を掴み直し、再びスープの中身を口に流し込む。今度もまた噎せそうになるが、眉根に皺を寄せて強引に飲み下す。盆に食器が戻された時には、その中身は綺麗に空になっていた。
『私たち女は……あなた方が考えているほど、弱くはありません!』
澄んだ瞳で言い放つ桜織。その気迫を前に、手越が口笛を吹く。
『そりゃ結構。食事でも勝負でも、多少の歯ごたえはあった方がいいからな。んじゃ、2周目だ。せいぜい楽しめや』
手越はそう言って部屋の外に姿を消し、入れ替わりで1人目の男が部屋に踏み入ってくる。
『よう、100時間ぶりだな。また死ぬほどハメまくってやるぜ』
相も変わらず品のない口調に、桜織の表情が強張った。
※
2巡目のプレイは、単なる1巡目の再現にはならなかった。
前よりも格段に酷い。
1人目の男は、1巡目と同じく正常位を要求した。
『足を開け』
その言葉を受け、桜織は明らかに渋る。だが男は、膝を掴んで強引に股を開かせた。そして、隠されていた部分を見て大いに笑う。
『かははははっ!! ナマで拝むとすげーな。最初と全然違ぇじゃねぇか! あの思わず舐めたくなるような、キレーなピンクの筋はどこいった? まさかこの、ルージュ塗りたくったババアの唇みてぇなのか!? ったく変わりゃ変わるモンだよな、流石は50人のチンポを咥え込んだヤリマンのマンコだ!!』
そう罵声を浴びせて、桜織の恨みを買う。当然、生真面目な桜織はそれを受け流せない。
『そうしたのは、あなた達です。休まず擦られ続ければ、誰の性器でもこうなります』
顔の筋肉を引き締め、人形のような美貌を取り繕う。それを見下ろす男は、満足げに逸物を扱き上げた。
『そうかよ。こっからまた2巡して、最後にゃどこまで変わるか楽しみだな。ま、ともかく挿れるぜ』
男は逸物の先を割れ目に擦り付け、そのまま挿入を果たした。割れ目から溢れる愛液が潤滑油になって、挿入は実にスムーズだ。その勢いのまま、逸物は7割ほど入り込み、一旦そこで止まる。
『おーっ、もう奥か。マジで子宮が下りてきてんな。中も随分とこなれてるじゃねぇか。ヌルヌルの襞がチンポに纏わりついてくんぜ? 前んときの固くて狭ぇ穴も新鮮だったが、こっちのが断然気持ちいいぜ!』
驚きの声を上げた男は、ゆっくりと腰を引き、再び突き込む。引いて、突き込む。それを4度繰り返しただけで、桜織の背中が小さく仰け反った。
『ん、ああっ!!』
熱い吐息とほぼ同時に、鈴の音が鳴り響く。桜織の視線が揺らぐ。
『はっ、これでイクのかよ? ポルチオ開発されるってなぁスゲーんだな。しかもイッたら締まりが増しやがった。歓迎してくれてありがとよ!!』
嫌味を交えながら、軽快に腰を振る男。その下で、桜織はじっと耐えていた。されるがままだ。だが、それも前とは違う。人形のように無反応でいられた1巡目に比べて、足先の反応が激しい。指を開き、反ったかと思えば内向けに折れ。そうした反応は、鳴り響く鈴の音と連動していた。望まぬ凌辱を受けながら、何度も絶頂させられているのは明らかだ。
『こりゃ面白ぇわ! あの音が鳴ってるって事ぁ、演技じゃなくマジでイッてるってことだもんな。電マや指マンならともかく、チンポでこんだけマジイキさせるなんざ初めてだぜ!!』
男はいよいよ興奮し、激しくベッドを軋ませながらピストンを早めていく。じゅぱっ、じゅぱっ、という水音が立ち、交換されたばかりのシーツが瞬く間に変色していく。
一方で桜織も、確実に『押し上げられて』いた。
『あっ、はぁっ……はあっ、あ、あ!!』
荒い呼吸を繰り返しながら、何度も腰を浮かせ、腹部を激しく力ませる。
『おーおー。見るからに文化系のくせして、一丁前に腹筋浮いてんじゃねぇか。ここでイッてんのか? ここが子宮の入口なんだろ!?』
男は面白がって、桜織の臍の下を指で押し込んだ。
『くはああっ!? や、やめっ、くだ、さいっ!!』
桜織は大きい。悲鳴に近い声を上げながら、必死に男の手を除けようとする。だがその最中にも絶頂し、ついには顎を浮かせたまま、いくいく、と呻くようになる。
『かあーっ、最高だぜ! 膣でジュボジュボフェラされてるみてぇだ!!』
男は上機嫌で腰を振り、その果てに腰を止める。射精、当然ながら生中出しだ。
『はーっ、はーっ……』
軋みも鈴の音も消えた映像内で、桜織の荒い呼吸が繰り返される。1巡目の彼女は、中出しされた部分を困ったように見下ろしていた。だが今の彼女には、その余力もない。顎を天に向け、喉を蠢かして痙攣している。
壁のモニターに光る数字は32。華奢な少女を無力化するには、充分すぎる絶頂回数だった。
『おら、ノビてんじゃねーぞ』
男は一度の射精では満足しない。なにしろ1巡目に7発射精した奴だ。ぐったりとした桜織の手首を取って強引に引き起こすと、ベッド上で別の体位を強いる。膝立ちになった男に女が跨り、抱き合う形でのセックス。
『あああっ!!!』
挿入の瞬間、桜織は顔を歪めた。逸物の先が子宮口を突くだけでなく、自重でより深く食い込ませる形になったからだろう。そしてそれは、今の彼女にとって快感になるらしい。鈴の音が鳴り響いたのがその証拠だ。
『はっ! 挿れただけでイッたのかよ、スケベ女め!』
男は罵りながら、桜織の尻を掴んで上下に揺らす。深々と挿入されている今は、それだけで膣の奥を抉られることだろう。
『ふぐ、うっ!! んん、んっあ! あ、あ!』
桜織は目を瞑って喘ぐ。そのまま何度も絶頂すると、男の肩を掴むだけでは上半身のバランスを保てず、男の首にしがみつくようになる。まるで恋人のように。
『オイオイ、耳元にエロい声吹き込むなよ。興奮すんじゃねぇか』
男が笑い声を上げ、桜織の尻を掴みなおす。これまでは下から支える形だったが、鷲掴みにして下へ押しつけているようだ。同時に腰を突き上げる動きも見せている。つまりそれは、上下からの圧力で子宮口を刺激するということ。散々絶頂させられ、蕩けきった場所でその刺激を受けるとなれば、堪ったものじゃない。
『いぐふぅ゛っ!!!』
すごい声が出た。切実で低い呻き声。直後、結合部から小さく飛沫が上がる。ごく僅かではあるものの、潮を噴いたらしい。
それ以外の反応も激しかった。特に目立つのは脚だ。ベッドに対して水平な太腿が、信じられないほど太く筋肉を隆起させている。膝下もやはりふくらはぎが盛り上がり、足指が深々とシーツにめり込んでいる。まるで拳法家が必殺の一撃でも放とうかというほどの力み具合。その力みはすべて、絶頂を耐えるために生み出されたものなんだ。
リン、と鈴の音が鳴る。いつもと同じ調子で。
『ううおおお、すっげぇ締まってる……お前、運動音痴そうなのに8の字筋やべーな。それともアレか? 火事場の馬鹿力ってやつか?』
『あっ、かはっ……!! はあっ、はあっ、は、あっ!!』
嬉しがる男とは対照的に、桜織は止めていた息を吐き出して激しく喘ぐ。
そんな桜織と触れ合いながら、男はしばらくセックスの快楽に浸っていた。だが人形のように愛らしい顔が傍にあると、妙な気分になってしまうのか。そのうち、喘ぐ桜織の唇を奪おうとしはじめる。
当然、桜織はそれを拒絶した。
『あ、やっ……キスは、嫌ですっ!!』
彼女にとって、口づけは第二の貞操なんだろう。頭を左右に振り、ついには両手で男の胸を突き放しながら、背を大きく仰け反らせて拒む。
『今更カマトトぶんなよ。人の足にマン汁垂らしてやがるくせに』
男は呆れたように笑い、またセックスに専念しはじめた。
危機は去った……ように見えた。この時は。
だが、この選択はまずかったのかもしれない。顎を浮かせ、背中を仰け反らせる体勢。それは桜織が、特に深く絶頂する時の反応そのものだ。それをなぞることは、かえって彼女は自分自身を追い込むんじゃないだろうか。
実際、ここから桜織は乱れはじめた。
『あっ、ああっ!! はぁあっ、あ、あっあ!! ぎぃっ、い……いくーっいく!!』
仰け反ったまま、喘ぎ、歯を食いしばり、足を強張らせる。その間にも、鈴の音は狂ったように蓄積しつづける。
明らかにつらい状態だ。そんな状態を10分以上も続ければ、桜織は男の肩を掴んだまま、俯くばかりになってしまう。髪の間から覗く顔は、到底具合が良さそうには見えない。
相手がそんな状態になったのを見て、男は膝立ちでゆっくりと移動し、ベッドを降りる。結果として出来上がったのは、抱き合う格好をそのままに、男が桜織の膝裏を抱える体位だ。ベッド上にいた時より体格差が判りやすい。父親が幼い娘を持ち上げ、あやしているように見える。
『あ、なに!?』
呆然としていた桜織が意識を取り戻す。そして地に足がつかない事を悟ると、表情を凍りつかせた。
『こんなの、力の篭めようが……!!』
『篭めなくていいじゃねぇか、大人しく俺のチンポサックになっとけ。アタマ真っ白にしてよ!!』
『あ、あっ!! こんな、深すぎる! 怖い、こわいっ!!!』
半狂乱の桜織を尻目に、男は腰を振りたくる。パンパンという肉を打つ音と共に、桜織の腿が波打つ。かなりの力強さだ。
『っく、いくっ、ああ!! ふああっ!! は、離して! 下ろして、くださいっ! これは、む、無理ですっ! くぅ、あ……んんあああぁっ!!』
身体の揺れにあわせ、喘ぎ声までも揺れている。桜織は何の抵抗もできないまま、ただ絶頂に追い込まれ続けた。何度も小さく潮を噴き、全身を痙攣させて。絶頂カウントが60を超える頃には、明らかに意識が朦朧としていた。
男は、そんな状態の桜織に改めてキスを迫る。そして、今度は桜織も拒絶しきれない。
『う、うむ…っ!? ううううむ、むう、う゛っ…………!!』
目を見開き、愕然としたままキスを強要される少女。やがてその目からは、大粒の涙が流れていく。
胸を抉る、光景だった。
※
2番目は、中国語を話す巨漢。奴もまた桜織を追い込み続けた。
1巡目は正常位を保てずに圧し掛かっていたが、今度は違う。桜織にマングリ返しの格好を取らせ、その股に屈み込むように犯す。1人目のセックスが突き上げる形での“串刺し”だとすれば、こっちは真上からの“杭打ち”だ。
相手の体重が体重だけに、桜織からは瞬く間に余裕が奪い去られた。中国語で何かを絶叫しながら、唯一自由になる足先をばたつかせる。聴きなれない言語だからか、叫び声は悲痛に感じられた。だが、男の心には響かない。奴はやはり中国語で叫びながら、肥大した下半身で押し潰すように犯しまくる。
そして桜織は、そんな状態でも絶頂に追い込まれていた。痛みか、恐怖か、屈辱か……いずれにしろ、彼女にとって望ましくない感情と共に。
こうした獣じみたセックスを強いる奴もいれば、フェチを反映した変態プレイに興じる奴もいる。ノーマルなセックスを1巡目で堪能した分、その頻度も高くなった。
3番目の男は、その典型だった。1巡目では、猫撫で声を発しながら『駅弁』の体位で桜織を犯し、視覚、音、言葉、感覚の4重責めを仕掛けた変質者。奴は2巡目で、桜織相手にソーププレイを堪能した。
プレイ開始後にいきなり浴槽へ向かい、桜織の股に石鹸を塗りたくる。そして、その部分で自分の体を洗わせるんだ。
『不潔です。こんな場所を、擦り付けるなんて!』
『いやいや。女子高生のお股が汚いなんてこと、あるはずないって。スベスベで最高だよ。強いて言えば、毛が薄いせいであんまり泡立たないことぐらいかな』
渋る桜織にそんな言葉を返し、相手の引き攣った表情を愉しんだりもする。そうして身体を隅々まで清めさせれば、次は入浴だ。
『うひひ、幸せだなぁ。オジサンねぇ、若い娘と一緒に温泉行くのが夢だったんだよ。狭いお風呂だけど、なんだかそれが叶ったみたいだなあ』
気色悪い声で桜織を抱き竦め、その細い身体を弄る。
『う、ふうっ……』
水面を見つめ、小さく息を吐く桜織。まるで凍えているようだ。男のあまりの気色悪さに、悪寒がするんだろう。
それでも、湯の中で性感帯を刺激されていれば、意思とは裏腹に反応が表れる。
『乳首がピンピンだ。こんな小さな胸でも、ちゃんと感じるんだねぇ』
桜織のしこり勃った乳首を指で転がしつつ、囁く。そうして少女の瑞々しい肌を堪能した後、男は湯船に浸かったままで挿入を果たした。
『あっ! お湯が、入って……!!』
『うーん、いいねぇ。ぬるくて気持ちいいよ』
桜織が迷惑そうに眉を下げるが、男は夢見心地とばかりに顔を緩ませる。そのまま水面に波を立てて行為を続け、射精まで至ってからも、奴は湯船から出ようとしない。
『舐めて』
浴槽に横たわったままそう命じ、湯から逸物の先を覗かせた。桜織は渋々ながら、それに従うしかない。
『ひひ、慣れてない感じがまた新鮮だなぁ。知ってる? これねぇ、ソープじゃ“潜望鏡”っていうプレイなんだよ』
そんな事を誇らしげに語りながら、また逸物を硬くし、やがて二度目の性交に移る。今度は、1巡目と同じ駅弁、鏡のある洗面台の前でだ。
『見てみなよ桜織ちゃん、前とは全然違うよ? おっぱいの先っちょも、クリも、ビラビラも、まるで別人みたいだ。恥ずかしいでしょ、こんなになった自分の身体見るの』
男から猫撫で声で囁かれ、桜織は頷く。
『……はい』
そう答えはするものの、腹圧のかかる体位で犯される中で、彼女は絶頂に至ってしまう。冷たい鈴の音がその証だ。
『あれえ、機械の故障かな? 変だよねぇ。こんな恥ずかしいセックスで、真面目な委員長ちゃんが感じるわけないもんねぇ?』
してやったりという笑顔で囁かれ、桜織の赤ら顔が悲痛に歪む。
奴は持ち時間の大半を、こうしたプレイに費やしていた。
4番目の男は、桜織を中学時代の片思い相手に見立てていた。わざわざピンク色の服を持ち込んで桜織に着させ、ベッドに手を突かせたまま後背位で犯す。
『どうだ椿、大嫌いな俺に犯される気分は? ええっ!?』
そんな言葉を吐きながら。しかも、それだけじゃない。奴は相手が泣く事を望んでいるらしく、桜織の尻を叩き、太腿をつねりまわす。
『い、痛い、痛いっ!!』
『痛ぇか。だがそれが興奮するんだろう、この変態女! 学校じゃお高く留まっといてよ? ははっ、またイッたな変態!!』
桜織が涙目で訴えるのを笑顔で眺め、絶頂しようものなら鬼の首を取ったように罵倒する。実に時間一杯、それを繰り返していた。
6番目のホスト崩れは、レイプの真似事を望んだ。仰向けになった桜織の口を手で塞ぎ、荒々しく犯す。
『いいか、声を出すんじゃねぇぞ? テメェの妹にバレたら、あっちも犯らなきゃならねぇからよ』
そう静かに脅す口調は、やたらと真に迫っていた。真似事と言っているが怪しいものだ。以前にやった強姦を再現してるんじゃないか……そう思えるほどに。
犯される桜織も、同じくそう感じたんだろう。最初こそ怯え交じりで見開かれていた彼女の目は、男の迫真の演技を前に、段々と鋭くなる。そして男が果て、口から手を離された瞬間、彼女はすぐに問いを発した。
『……これは、演技ですよね? 本当にやった事じゃ、ないんですよね?』
控えめな彼女には珍しい、毅然とした問いかけ。まるで不良息子を諭す母親のようだ。
『どうかな』
男は歯を覗かせながらはぐらかす。その堂に入った悪党ぶりを見れば、かえって疑いが強くなろうというものだ。
『……そうですか』
桜織はそう答えたが、その後も男に対して警戒を解くことはない。明らかに毛嫌いしている様子だ。それでも彼女は、絶頂を止められない。歯を食いしばって相手を睨みつけても、リン、リン、と達した証が鳴り響いていては台無しだ。
『はっはっ!! おいおいイクなよ、レイプごっこって言ってんだろ。こうもイキまくってっと、和姦みてぇじゃねえか! それともなんだ。女ってやつは、こうやって荒っぽく犯されっと感じんのかよ!?』
『はあっ、はぁっ……! ち、違います、馬鹿にしないでください! 女性は、レイプされると怖いんです、嫌なんですっ!! 犯されて……んっ、か、感じたりなんか、しません……っ!!』
『んな事言ってもオメー、さっきからイキまくってんじゃねぇか。シーツもマン汁でビショビショにしてっしよぉ? じゃあなんだ、オメーが特別淫乱なだけかよ、ええ!?』
刻一刻と余裕をなくしていく桜織に対し、男は槍で刺すように侮蔑の言葉を投げかける。桜織はいよいよ顔を歪ませながら、足指の先まで痺れさせて絶頂に至っていた。
9人目に至っては、桜織を犯しながら、電話で誰かに自慢していた。
『今ねぇ、女子高生を犯してるんですよ』
正常位で突き込みながら、携帯を桜織の口元へと近づける。相手に声を聞かせようというんだろう。
『…………ッ』
桜織は頬を染めながら、必死に口を噤む。
『おやおや、無駄なことを』
男は苦笑しながら、親指でクリトリスを刺激しはじめた。
『ふ、んっ!!』
桜織の身体が小さく跳ねる。すぐに手の甲が口に宛がわれ、必死に声を殺そうとするが、殺しきれない。
『くぅっん、んん……ん!!!』
桜織の細長い脚に筋が浮く。
『ほらほら、どうです。もう気持ちよさの限界でしょ?』
男が皮を剥く要領でクリトリスを刺激しつづけると、ついに鈴の音が鳴った。敏感な部位だけに、リン、リン、と連続で。
『ん……っく、ふぁ! あ、あ!!』
『聴きましたか? かわいい声でしょう。この子は顔もいいんですよ。いかにも清楚な感じで、でもエロエロでねぇ。小さな身体ピクピク震わせて感じてるんです。私ももう興奮してしまって、抜かずの4発目ですよ』
男は電話相手に自慢を続けながら、激しく腰を打ちつける。そんな極限状態が、我慢を難しくさせるのか。桜織の喘ぎは、刻一刻と大きくなっていく。
『あぁ! んんっ、あ、ああっ!! うっ、くあああぁぁっ!!!』
『ははは。ええ、清楚だったんですよ、本当に。今はもう変わってしまったというだけで』
受話器を片手に腰を打ちつけながら、男は桜織の右乳首を捻り上げる。桜織の背中が浮く。
『ん、くああぁぁっ!! ひっ、ひいいっ……! こ、声、聴かないでえっ!! こんなの、わ、普段の、私じゃ……!!』
『いいや、これが今の君ですよ。クリトリス、Gスポットから始まって、ポルチオまで開発されて! 全身が性感帯みたいになってるから、こんな酷い事をされても感じてしまうんでしょう!?』
男の指は、桜織の体中至るところに伸びた。時にはつねり、時には叩き、時には擦り。そうした刺激を受けるたびに、桜織はのたうち回った。
『はぁ、はぁっ!! いっいぐっ、いっくううう゛っ!!』
激しく叫びながら、絶頂に至る桜織。その様は、全身が性感帯という男の言葉を見事に裏付けていた。
※
『少し、本当に少しで構いませんから、休ませてくださいっ!!』
繰り返し男に抱かれながら、桜織は何度そう叫んだだろう。涙、鼻水、涎で顔を濡らし、震える全身にじっとりと脂汗が滲ませながら。
そういう時、相手が取る行動は2つだ。黙殺してさらに悶え狂わせるか、口での奉仕を強いるか。口で奉仕する方が楽に思えるが、そうとも言い切れない。
『う、ぐっ、う……!!』
桜織は、自ら逸物をしゃぶる時、舌を噛んで死にかねないほどに顔を歪める。おまけに、技術も拙いようだ。躊躇いがあるせいか、それとも体力が限界だからか。男を勃起させることはできても、射精には導けない。必死に口を窄めて顔を前後させ、いよいよ限界となれば、口を離して手で扱く。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……! お、お願い。イってください!』
だが男は、そうした手の奉仕を嫌った。あくまで口での奉仕を強い、大抵は手で頭を押さえつけて喉奥まで咥えこませる。そうして散々に追い込んだ後、咽び泣く桜織を改めて犯すんだ。
それは、11人目の男も同じだった。11人目といえば、後背位に絶対の自信を持っていた男だ。絶え間なくポルチオ絶頂を迎え続け、さらに感度が上がった桜織にとっては、絶望的な相手と言える。
実際、セックスの映像はひどかった。
『んむ゛ぉおお゛え゛っ、ほごお゛っ!! ごも゛っ、ほんんおお゛えろえ゛っっ!!!』
凄まじいえずき声が響き渡る。ディープスロートを強いられた桜織のものだ。他の人間のそれよりも声が酷いのは、逸物が独特の反り方をしているせいか。
咥えるにはいかにも不向きな、上反りの“曲刀”。それを根元まで出し入れされる桜織の顔は、苦悶に満ちていた。逸物を吐き出して息継ぎをする時には、口の端から胃液が垂れていくのも映っていた。苦しいはずなんだ、間違いなく。
だが、その地獄のようなディープスロートの最中、無情にも鈴の音が鳴り響く。咥えさせる男も、咥える桜織も、その音に反応を示した。
『ふむうごお、ぉ゛……っ!!!』
半ば白目を剥きながら、不自由に何かを訴えようとする桜織。
『ははははっ、イキやがった! おいおいマジか委員長? 食道までチンポ突っ込まれて胃液吐かされて、それで気持ちいいんかよ!? ンな女子高生、ありえねぇだろ!!』
大笑いしながら、清楚な少女の精神を引き裂く男。
目も耳も塞ぎたくなる光景だ。桜織の心中を思うと、こっちまで胸が痛む。
ねっとりと糸を引きながら逸物が抜き去られると、男は桜織に後ろを向かせた。また後背位だ。桜織も当然それを悟ったらしく、悲痛な表情で壁に手をつく。
『んふう……ン゛んーっ…………!!!』
挿入を果たされただけで、桜織からは鼻を抜ける嬌声が上がった。そう、嬌声。そう表現せざるを得ないほどの甘い声だ。
『相変わらずのイイ声だな。さ、動くぜ』
男は腰を引き、ゆっくりと腰を動かしはじめる。あれだけ歪に反った逸物なら、膣内のスポットをこれでもかと擦りながら最奥を叩くはずだ。そうなれば、今の桜織に耐え凌げるはずがない。
『……あ、駄目、駄目えぇっ!!』
男が腰を使いはじめてからものの数十秒で、桜織は音を上げた。絶頂を示す音が響き、内股に閉じた脚がカクカクと震える。
『なにが駄目だ、まだまだこっからだぜ?』
男はしゃんと立てと言わんばかりに、両手で桜織の下腹を抱え込む。
『あ、はぁう゛っ!?』
鈴の音が鳴り、桜織が歯を食いしばる。もはや子宮付近を圧迫されただけで達してしまうらしい。さらに男が腰を打ち込み、パンパンという音が響きはじめると、噛み合わされた歯が上下に離れていく。歯を食いしばるのは耐える動作。大口を開けるのは放心の動作だ。
『どうだ、気持ちいいだろ!? バックからハメられて、もう堪んねぇんだろ!?』
『ふぐううっ!! た、堪りません……だから、だからやめてっ! 膨らんだ部分が、敏感なところに、擦れて……ふんぐうう゛っ!!』
『だろうな。イキまくって敏感になったスポットをたっぷり刺激してやれるぜ、俺のブツならよ! おらイケ、イケえッ!!』
笑みを浮かべながら腰を打ちつける男。腹部を抱える手を必死に外そうとしながら、全身を震わせる桜織。完全に食う側と食われる側だ。
『はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!!』
肉のぶつかる音、湿った何かが掻き回される音。そこに混じる桜織の呼吸は荒い。まるで出産寸前のように。そして彼女は、思い切り背中を退けぞらせて天を仰いだ。
『あ、ふあ…………ああ゛っグウウゥウッッ!!!!』
歯茎までも見えるほど歯を食いしばっている。どう贔屓目に見ても清楚な感じじゃない。だが、そう考える事自体が失礼に思えた。今の彼女に“らしさ”を保つ余裕がないことぐらい、子供だってわかるだろう。
『すっげぇ、子宮自体が動いてねぇかこれ? それともマンコイキの痙攣がココまで届いてんのかよ?』
男は桜織の下腹を左右に撫で擦りながら、顔を横に向ける。桜織の唇が奪われたのは、その直後だ。
『あも゛ぅっ!? れあっ、あえ! ぃすあいやっ!!』
舌を絡まされながら抗議する間にも、彼女は絶頂に追い込まれつづける。ようやく口を解放されれば、彼女は身体をくの字に折った。キスから逃れたい気持ちもあるだろう。だがそれ以前に、そういう動きをしないと耐えられない──そういう状態だったんだと思う。
『ひぃいいっぐいぐっ!!! イッでるい゛っでる゛!!!』
総身を強張らせながらの絶頂。言わばそれは、悲鳴の嘔吐だ。それをするためには、人間は前屈みになるしかない。そしてそこから、大人びた雰囲気を持つ可憐な少女は、生き恥を晒しつづける。
救いを求めるように壁についた右手、血管を浮かせて相手の腕を掴む左手。内向きに膨らんだまま痙攣する太腿に、水気の飛び散る股ぐら。どれもこれも悲惨といえば悲惨だが、一番心に来るのは声だ。
『はああっ!! くるし、苦しいっ!! ふうっ、ふうっ、はーっはーっ、はーっ……ッぐいくいくっ、ひぎいっ、いっでるううっ!!!』
緊迫した呼吸音や悲鳴は、溺死寸前の記録かと思うほどだった。
浴槽で溺死に近い姿を見せた桜織は、ベッドに移されて更に地獄を味わわされた。
尻だけを高く掲げ、這い蹲る姿勢でのセックス。祈りでも捧げるようにシーツを掴む手を触れ合わせている様は、本当に育ちのいい少女という感じがする。だが下半身はそうじゃない。パンパンと肉のぶつかる音がするたびに腰が跳ね、腿の肉が膨らむ。その様は清楚どころかむしろ、セックス好きの娼婦という風だ。
『へへへ、身体は正直だな委員長。腰がびっくんびっくん動いてんぜ? 膣内(なか)も俺のチンコをぎゅうぎゅう締め付けてくるしよ。チンポの反りを、マンコにフィットするように矯正しようってのか? ったく呆れるな。突っ込まれるだけじゃ満足できずに、テメェ専用の肉バイブこさえようとするなんてよ、それでよく清楚ぶれたもんだぜ!!』
男は桜織の腰を掴んで軽快に腰を打ちつけながら、上ずった声で謗る。慎ましい少女を狂わせている現状が、楽しくて仕方ないという感じだ。
果たしてその悪意ある言葉は、桜織本人に届いているのか。
『あっ、駄目、駄目えっ!んあっ!あっ!あっ!あっ!!』
腰を打ち込まれるたびに、どこか掠れた声で叫ぶ。時々はシーツを離し、顎から伝う涎を掌で掬って、どうしたものかと迷う仕草も見られた。だが、そのまま何度か絶頂させられれば、迷う余裕すらなくなる。せっかく上品に掬った涎をシーツに塗りつけ、這ったまま犯される獣に戻る。
『んんんっ、はぐぅううっっ!!!』
ベッドでの絶頂回数約40回……トータル1804回目の絶頂を迎え、桜織はとうとうベッドに顔を伏せた。
『む゛う゛っ、ふむう゛う゛う゛ーーーっ!! ふむうう゛う゛ぅ゛う゛っ!!!』
シーツに顔を密着させているらしく、呻きは押し潰された感じだ。その異様な呻きを発しながら、全力で頭上のシーツを掴み、全身を震わせる……その姿は、ひどく感情に訴えてくるものがある。悲痛だが、同時にひどく性的だ。
『おいおい、隠すこたぁねえだろ。皆大好物なんだぜ、オメーのアヘ顔とヨガり声が!』
男はそう言って、桜織の三つ編みを引っ張る。シーツと太い唾液の糸で繋がれたまま、桜織の顔が持ち上がっていく。
その顔を見て、俺はゾッとした。柔和な雰囲気を持つ大和撫子──そのイメージと、あまりにかけ離れていたからだ。柔和どころか、おどろおどろしい。青ざめた顔のまま上方を睨み上げるその面持ちは、幽鬼の類に見えてしまう。
『おねがい・・・もうイカさないで、ください・・・。イってると、息ができなぃ・・・しっ、死んでしまいます・・・・』
声も普段とはまるで違う。テープに残された死者の声、という風だ。彼女は、本当に死と生の境目にいるのかもしれない。
だが11人目の男は、そんな命乞いに耳を貸そうともしなかった。
『俺にバックでやられまくると、ウチの嫁もよく言ってたわ。死んじゃう死んじゃう~ってよ。だがアイツ曰く、そこ超えたら一気に天国が来るらしいからよ、まあ辛抱しとけや』
あくまで落ち着いたままそう給うと、桜織の両手を掴み上げ、馬の手綱のように引き絞る。
奴はとぼけているんだろうか。何度となく発情料理を食わされ、膣内外の性感帯を嫌というほど開発された上で、50人に休まず犯される。その快感を、単なる夫婦間のセックスと比較できるわけがない。あの慎ましい桜織が死ぬと騒ぐなんていうのは、紛れもなく一大事だ。
『ああ゛、あ゛!!はあ゛あ゛っ!! すっ、すごい波が……! こ、こんなの私……いく、いく……ひいいっぐいぐ!!!』
血走った目で虚空を睨み上げ、涙を零しながら悶え狂う桜織。異様には違いないが、その瞳には妙な光が生まれはじめていた。不健全な顔色に、ギラついた瞳……まるで薬中だ。立て続けの絶頂で脳内麻薬が出すぎているんだろうか。
“オーガズム・クライマックス”──逝き続けた果てにある、究極の快感。手越のその言葉が頭に浮かぶ。
『あぐううっ、んぉおっ!! はああぁーーーあアアッ!!!』
桜織から、また“らしからぬ”声が上がる。両腕を引き絞られて前を向かされる彼女は、10秒以上にも渡って白目を剥いていた。あまりに膨大な快感で脳が焼ききれないよう、自ら気絶しようとしているんだろうか。
『おぉい、シャンとしろよ嬢ちゃん!!』
男が怒鳴りつける中、桜織は顎をベッドに沈み込ませる。失神したように見えるが、どうやら気を失いきれていない。カクカクと全身を震わせて過呼吸に陥った末に、とうとう頬を膨らませる。
『はっはっはっ!はーっ、はーっ……っぐ、ごほっ…ええお゛っ!!』
『お、オメー吐いてんのか!? はっは、どんだけだよ! 走りすぎてゲロった奴なら見たことあるが、イキすぎて吐く女は初めて見るわ!』
男は、桜織の嘔吐を重くは捉えない。ゲラゲラと笑いながら、汗みずくで腰を振りたくる。
『ま、イキっぱってのはキツいだろうがよぉ。俺らも借金の棒引きが掛かってんだ。ガンガン逝ってもらわねぇと……なあっ!!』
『ふん、はぐう……っ!!!』
男は今一度奥を突いて桜織を絶頂させると、逸物を引き抜いて精液を撒き散らした。何度も射精しているせいで、色はない。透明な飛沫が、肉付きのあまい尻に浴びせかかる。
『ふーっ。どれどれ、カウントはっと……お、100超えてんじゃん! 50万ちょいの減額ってとこか。はははっ、いいねいいねぇ。ご馳走さーん!!』
モニターを見てほくそ笑む男と、虚ろな瞳で横たわる桜織。それは、肉食獣と草食動物が居合わせた結末さながらだった。
※
次は12人目。1巡目では特殊なディルドーを持ち込み、ひたすら道具責めを仕掛けていた男だ。こいつは2巡目でも、やはり道具責めに拘った。
ベッドに突っ伏す桜織の背後に回り、その割れ目へとディルドーを沈み込ませる。その状態でさらに、ディルドーの底の部分へとマッサージ器を宛がう。それはつまり、マッサージ器の圧迫でディルドーを固定しつつ、その強烈な振動を敏感な部分に浴びせる事を意味する。
桜織の表情が、恐怖で凍りついた。
『あア゛ーーっ!! あぐ、ぐひいいっ! 奥がっ、奥が痺れるうっ! いっぎぃい゛い゛っ!!イグゥーーッいぐっ、駄目ええ゛え゛っ!!!』
『あはははっ、すごい反応! あの清楚で物静かな子が、こんなにギャンギャン騒ぐようになるなんてね。所詮、高潔だの何だの言ったって、快楽に勝てる人間なんていないんだろうね。ほーら、どんどんイっちゃえ! 女のコとしての価値は下がっちゃったけど、キミがイクたびに俺らの借金が減ってくんだよ、金の卵ちゃん!』
男はクリトリスを撫でたり太腿に触れる嫌がらせを交えながら、マッサージ器でディルドーの至る所を刺激しつづける。そしてそれは、桜織を絶え間ない絶頂へと導いた。鈴の音はリンリンリンリンと立て続けに鳴りっぱなしだ。もはや音というより警報に近い。ある意味、桜織という少女が壊れる予告か。
かなり前から余裕を失っていた桜織は、ここでまた正常から遠ざかる。
『イグイグイグイグッ!!! だめ、駄目駄目ええっ!!!』
『ふーん、何がどうダメなの? キモチよすぎちゃう?』
『はっ、はっ、はっ、はっ……い、イってる最中、まだイッてる最中なんです! イッてる最中にイッたら、息、できないって……言ったじゃないですか!!』
『いや、それ言ってたのさっきの奴じゃん。なに、相手が変わったのも気付いてないの? なんかショックだなあ、存在否定されてる感じ。ムカついたから、ちょい休憩させてあげようかと思ったけどナシね!』
『そ、そんな! お願いです、休ませてください!! 本当に息が苦しくて、頭真っ白で……おかしくなりそうなんです!』
『別になってもいいじゃん、エロそうだし。ほーらほら、ここでしょ? 不良になっちゃえよ、委員長!!』
男には一片の情けもない。桜織の腰の動きを観察し、巧みにマッサージ器を宛がう角度を変える。それは見るからに効果的だ。ボロボロに腐食した桜織の『芯』を突き崩すには、充分すぎるほどに。
『はお、おおお゛っ!! いぐっいぐ……んひいいい゛い゛ぃ゛ッ!!!!』
馬の嘶きのような声がした後、桜織が暴れだした。
『ちょっ!!』
男が手で抑えようとするが、死に物狂いの脚力にあっさりと弾き返される。細長い足は、宙を掻き、ベッドを蹴りこんで凹ませ、反発の勢いで身体そのものをベッドから転落させてしまう。尻から床に落ちた後には、綺麗な放物線を描いて失禁が始まった。カメラの死角でよくは見えないが、放心したまま鼻水を垂らす、ひどい表情をしているようだ。
『スゲー! ションベンが洗面台にホールインワンだ!』
12人目の男は手を叩いて笑い、桜織を引き起こすために右腕を掴む。その瞬間だ。
『いぃいひっ!!』
桜織が妙な声を出し、同時に鈴の音が鳴り響く。桜織が絶頂したんだ。腕を掴まれただけで。
『……え、今イッた!? イッたよね、腕掴まれて! ははははっ、そんな敏感になってんの? やらしすぎでしょ委員長ぉ!!』
男の口元に笑みが広がった。奴は桜織をベッドに引き上げると、背後から抱きつく形で身体中を弄りだす。尖った乳首を指で挟み、太ももを擦り、脇腹を指先でなぞり。
『ふあ、はっく! へ、変な所を触らないでください!!』
桜織の反応は大きかった。身体中のどこを触られても、艶かしく身体をくねらせ、眉根を寄せる。性的に昂ぶっていることは疑う余地もない。
『嘘ばっかり。嬉しいくせに!』
男がそう言って片手を掴み上げ、晒された腋に口をつけた。さらにそのまま、ちゅうちゅうと音を立てて吸い付けば、
『んゅいいっ!!』
初めて耳にする喘ぎ声と共に、リンと鈴の音が鳴る。
『ほーら、イッた。気持ちいいんじゃん、腋マンコ!』
『ち、違いますっ!!』
『違わないって。だってイッたじゃん、汗まみれで本物のマンコ並にくっさい腋舐められてさぁ!』
『い、嫌ああああっ! 違う、私……違うっ!!』
桜織は顔を覆って泣き出した。最初の頃の彼女では考えられない反応だ。小柄でおっとりしているが、芯の強い大和撫子。だがその芯が、もう支えの役割を果たせていない。カメラの向こうで肩を上下させて涙しているのは、見た目相応の幼い少女だ。
嘆く少女を前にしても、やはり男に同情の色はない。それどころか、震える華奢な身体を見て、生唾を呑む。
『あー、ダメダメ。涙は女の武器とかいうけどさぁ。俺みたいなのは、カワイイ子が泣いてると……興奮しちゃうんだよね』
奴はそう言って桜織を突き倒すと、洗面台の下から布巾を取り出した。さらにその布巾で桜織の股を覆い、マッサージ器のスイッチを入れる。
『うあっ!!』
布巾越しにマッサージ器を宛がわれた瞬間、桜織が悲鳴を上げた。
『ひひ、凄いでしょ。こういう風にやると、振動がアソコ全体に伝わるんだってさ』
男は笑みを浮かべたまま、マッサージ器で割れ目をなぞっていく。菱形を作る桜織の足が、ピクピクと強張る。
『はああっ、ダメ!これ、全部痺れて……い、いい゛っちゃう゛……!!』
『おーっすごい、もう布巾が濡れてきたよ』
男の言葉通り、布巾はほんの数十秒で鼠色に変色していく。布巾が乾いているうちは、マッサージ器の音もかなり殺されていたが、濡れてくるとビジジジジという妙な音が響き渡る。その音がさらに酷くなる頃、布巾の下から急にせせらぎのような音がしはじめた。
『うーわ、また漏らしてんじゃん!!』
事実に真っ先に気付いたのは、責めている男だ。割れ目から布巾が取り去られれば、黄色く染まった布から無数の雫が滴り落ちた。
『はぁっ、はぁっ……も、漏らして、ません……。』
桜織にはもう、愛液があふれる感覚と失禁との区別もつかないらしい。赤らんだ顔で大真面目に否定してみせる。
『いやいや、ジョバジョバ出てんじゃん。これマン汁っていうのは無理だよ? 広範囲が痺れてフワーッとなっちゃうのは解るけどさ、ちょっと緩すぎじゃないの』
そう言いながら奴は、濡れた布巾を改めて割れ目に宛がい、マッサージ器でなぞりはじめた。途端に飛沫が上がり、ぶじゅるるぶぶじゅうっ、という酷い音が立つ。
『うくうっ!! び、敏感になってるのに……っ! はぁあっ、だめ! また、出てしまいそう!!』
『おっ、また腰がビックンビックン跳ねだした。足がスラッと細長くて小学生っぽいから、背徳感がヤバイなこれ』
男は上機嫌でマッサージ器を動かしつづける。
『いくうっ、いぐいぐいぐっ!! はーっ、はーっ……イッてるっ、またすごいイッでる゛う゛っっ!!!』
桜織は、早くも余裕をなくしていた。何度もダウンしたボクサーが打たれ弱くなるように、何度も限界に追い込まれた桜織は、今やほんの数秒で顔を歪ませる。身体の反応も惨めなもので、潰れたカエルのように広がったまま痙攣する脚は、直視が憚られるほどだった。そんな桜織に、男が囁きかける。
『どう、気持ちいい? 口に出して言ってみなよ、気持ちいいんでしょ? クリも、ビラビラも……オマンコ全部でイッちゃうんでしょ!?』
桜織は前後不覚に近い状態だ。判断力はほとんどない。だから彼女が口を開いたのは、ほとんど反射に近い行動だったはずだ。
『んぎいっ、ひいいぃっ!! は、はい、オマンコでイキます!!』
その言葉が叫ばれた瞬間、男の顔には満面の笑みが浮かんだ。桜織はしばらく喘ぎ、数秒ほどしてから、はっと目を見開く。自分の行動にようやく気付いたという風だ。
『あっはははっ!! そっかそっか、“オマンコ”でかぁ! やー、まさかキミからそんな言葉が聴けるなんてなあ!!』
『ち、違うんですっ! 私は、あそこと言いたくて……!』
『いいや、確かにオマンコって言った。隠さなくていいじゃん、オマンコでしょ? オマンコでイキます、ホラもう一度言ってみな!』
男はしてやったりという笑みを浮かべながら、桜織を追い込んでいく。
『…………いぃいぎ、ひぎい……いいっ!!』
桜織は歯を食いしばるが、絶頂を止められない。
『ほらほら、言うまでやめないよ! オマンコでイキます、って言ってみな!!』
『はぉおおんっ、わ、わかりました、わかりましたっ! お、オマンコでイキます、ずっとオマンコでイってますっっ!!』
鈴の音、水しぶきの音、バイブの羽音。もはや環境音と化したそれらに混じって、恥辱の宣言がはっきりとマイクに捉えられる。
『そっかそっか、オマンコでか、あははははっ!!! よーし、じゃあそろそろナマのチンポもやるよ。結局セックスってのは、性器同士の触れ合いだからね。オマンコイキするには、チンポが一番でしょ!』
男はマッサージ器の電源を切り、雫の滴る布巾と共に放り捨てて、桜織の足首を掴み上げた。そして刺激の余韻で開閉する割れ目へと、反り勃った逸物を沈み込ませていく。
『ひいっ、お、奥っ……!!!』
桜織は歯を食いしばり、挿入部分を見上げる。引き攣った表情ばかりの中で、久々に愛らしいと思える表情だ。だがそれは、間違っても状況が改善したということじゃない。女性器の表面を嬲る責めから一点、子宮口を突く責めに変わり、表情が凍りついただけだ。
入口付近への嬲りが一種の“焦らし”となったのか。奥を突かれはじめてからの桜織の反応は、それまでにも増して激しかった。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ! へぇっ、へぇっ、へええっ……!! えへえぇっ、えく、いきそ、いきそう、イくっ! いいいイグウうう゛ーーーっ!!!』
荒い息を吐くだけに留まらず、犬のように舌を突き出し、ぼうっとした顔で絶頂を宣言する。ほとんど思考が働いていない様子だ。
『はっは、いい顔だ! よーし、どんどんイけ。イってイってイきまくって、俺の借金減らしてくれよ!!』
『へぇぇっ、へえぇぇっ……! お、犯してもいいから……少しだけ、寝かせてください。あ、頭が、ぼやけて、ガンガンして……ほ、本当に……おかしくなる……』
『だからぁ、なっていいんだってば。そこ頑張んなくていいから。オマンコで絶頂する事だけに集中しときなー。それ以外の事なんて、考えなくていいの。ほーら、オマンコでイクって言ってみな。オマンコでイク、はい!!』
男は桜織の哀願に耳を貸さず、ひたすらに自分の都合を押し付ける。ずっとそうやって自分本位に生きてきたんだろう。だから借金を背負って底辺にいるんだ。その点、桜織は違う。優秀で、真面目で、誠実で。間違いなく上流のレールに乗れる、宝石のような子供だ。いや、子供“だった”。
だがその彼女も、とうとう壊れはじめている。
『へぇっ、へぇっ、へぇっ……お、おまんこで……オマンコで、イキますっ!! オマンコでイってますっ!!』
舌を突き出し、眉を下げ、媚びるような表情で上目遣いになりながら、相手の要求に粛々と従う。
『いいねぇ、メス犬って感じ。お勉強ができる優等生だけあって、よく似合ってるよ? ほーら犬、“待て”だ。勝手にイクんじゃないぞ?』
男はいよいよ調子付き、奥まで挿入したまま腰で円を描きはじめる。
『ひぐっ、う゛ん゛っ! や、襞が、捩れて……!』
『気持ちいいんでしょ? さっき気付いたんだ。マッサージ器でディルドーの底押し込むより、ディルドーの横っ腹に宛がってる時のが反応良かったからね。こりゃ、チンポでねっとり掻き回したら相当効くなって。ほぉらイクなよ? イっていい時はイっていいって言うから。勝手にイったらお仕置きだぞ!?』
そう釘を刺されても、桜織の引き攣った顔が限界を物語っている。結合部から粘ついた音が立つ中、硬く閉じあわされた口が開く。
『ひいい、いい……も、もうだめ!! いく……お、お……ぉほお゛お゛お゛っ!!!』
清楚さとも愛らしさとも程遠い、「おお」という声。快感の凝縮した、これ以上なく正直な喘ぎ声だ。
ここしばらく無音だったモニターから、リン、と冷たい音が響く。
『あーあ。“待て”って言ったのに、勝手にイっちゃって』
男はわざとらしく舌打ちして桜織を睨む。
『はぁ、はあ……すみません、我慢、できなくて……』
桜織は鼻の横に珠の汗を伝わせ、申し訳なさそうに弁明する。
『ダメだ、お仕置きいくぞ。ハンバーグみたいに捏ね回してやる!』
男はそう言って桜織の足首を離し、両脚を自分の左右に下ろさせる。その状態で腰を掴んで、改めて腰をうねらせはじめた。音が変わる。みちゅう、むちゅう、という、まさしく挽肉を捏ねている時の音が立ちはじめる。粘膜が密着しあう膣奥の状況を、生々しく伝える音だ。
『おーっ、すごい。改めてじっくり触ると、子宮口が開発されまくってぶよぶよだなあ。これさぁ、ちょっと子宮の口開いてない? さっきから、先っちょが穴みたいなのに嵌まるんだけど。子宮口の横に嵌まってるだけかな』
男はのんびりとしたもので、ひたすらに感想を呟きながら腰を蠢かす。逆に桜織の方は息つく暇もない。
『おほおおぉっ、お、おく、おくうッ!! んぐっ、い、イクッイクーッ!!』
口を尖らせたまま目を見開き、腰をカクカクと上下させる。細い手足はしっかりと曲線に膨らみ、蜘蛛の足のようにシーツを掴んでいる。そうしないと激流に流されるとでも言わんばかりだ。
『うわああ気持ちいいーっ、襞がめっちゃ絡み付いてくる! 逃がさないって感じ? 嬉しいけどさぁ、間違えて消化しないでよ、俺のチンポ』
男は歓喜の声を上げながら腰を揺らす。責めというより、あまりの快感に腰が震えたという風だ。それがトドメになったのか、男は桜織の腰を掴んだまま、目を瞑って天を仰ぐ。
『あ、中にっ! 子宮の中に、入ってくるぅ……っ!!!』
桜織の言葉から察するに、子宮入口に亀頭を宛がったまま射精しているようだ。
『あー、ホント? やっぱここ子宮口なんだ、俺のションベンの穴くらいは開いてるよやっぱ。ああーー、すうっげぇ気持ちいい。出し入れしなくてもこんな気持ちいいんだな、襞が絡み付くと……』
男はうっとりとした口調と顔で、射精の快感に浸っている。奴にとっては極楽だろうが、桜織にとっては地獄そのものだ。
そしてその地獄は、まだ終わらない。未だ2巡目の12人目。折り返し地点すら、遥かに遠いんだから。
※
12人目の男を迎えた後は、5分の食事の時間が挟まれる。そこでの桜織は、“かろうじて”時間内にスープを飲み干せた感じだった。
『はぁ、はぁ、はぁ……げほっ、ごほっ!!』
常に息が荒く、何度も噎せる。そもそも全身が凍えるように痙攣していて、銀食器を掴むことすらままならない。しかもその痙攣は、スープを飲み干した直後から更に酷くなる。
そんな桜織を相手に、男共は一切容赦をしなかった。正常位、騎乗位、後背位、側位、駅弁……各々がやりたい体位で桜織を犯し抜く。桜織が過呼吸に陥っても、意識を失っても腰は止めない。
『悪いねぇお嬢ちゃん。オジサンもこんな事したくないんだけどさ。お嬢ちゃんをイカせまくらないと、借金が減らないんだよ!』
そう嘯く奴もいたが、その表情を見れば、桜織とのセックス自体を愉しんでいるのが丸解りだった。
一方で、受ける桜織も必死だ。
『口でしますから! 気持ちよくなるように、頑張りますから!』
そう哀願して、自ら逸物をしゃぶる場面も多く見られた。ポルチオばかり責められてはもたないため、口を使うことで少しでも負担を減らそうというんだろう。だがそれも大した効果はない。散々喉奥を使われて呼吸を乱された上、相手が完全な勃起状態を取り戻し、もっとも硬く大きい状態で膣を犯されるだけだ。
しかも男共は待機中に酒盛りをしているらしく、動画が進むにつれ、酔いの回った赤ら顔が多くなっていく。女日照りの連中が酔って理性を無くすということは、ますますセックスに容赦がなくなるということだ。
『ほぉらあ、この角度で責められるのがイイんだろぉ? 腰逃がすんじゃねーぞ、突き込みは全弾子宮の入口で受け止めるんだぞぉ!!』
20番目の男は大声で叫びながら、桜織の両脚を抱え上げた。背面騎乗位でそれをやられれば、結合部しか接点がなくなる。1人目の男の時と同じく、膣奥への圧力に自重がプラスされてしまう。
『あぐうっ!! ふ、深いっ!!』
『はははははっ、すんげぇ締まりだ! 気持ちいいんだろ、ええ? 自由が利かねぇまんまハメられて、感じちまってんだろ!? いいぜ、好きなだけ感じろよ! 良い子ちゃんのレールに乗ってるより、コッチのがよっぽど刺激的だぜ!?』
泥酔時特有の大声で喚きながら、桜織の腰を上下させる男。その腰の上で桜織は、また断続的な絶頂へと追い込まれていく。
『ひっ、ひっ……! いぎっ、ぎいぃぃっ……あああああっ!!!』
恐怖に顔を歪ませていたのは、最初の数十秒だけ。そこを越えれば、桜織の顔は弛緩していく。
『ひいっ、ひいぃっ!! お、奥が、潰れてっ! いくイクっ、ふぐうぅっ!!!』
『くひひひっ、いいぞおっ、どんどんイケ! 自分を解放させてみろ! ほら、ばんざーい、ばんじゃーい!!』
男は呂律も回らないほど酔いながら、桜織の両手を掴んで上へ持ち上げた。それによって、前屈みだった桜織の背筋が伸びきる。直後、桜織はぐるりと白目を剥いた。
『ひいいっ! あ、頭が、また……白んで……!!』
うわ言のようにそう呟きながら痙攣する様は、本当に見ていて不安になる。脊髄をスムーズに駆け上った電流が、彼女の尊い脳を焼き焦がしている。そんなイメージが浮かんだ。
『いいぞ、そのまんま狂っちまえ!!』
男は天を仰ぐ桜織の顔を横向かせ、唇を奪う。桜織にはもうそれを拒む元気がない。ちゅっ、ちゅるっ、という音が新たに加わり、桜織の全身が痙攣した。
『あっ、はっ、はぁっ、あっ!! かっ、感じすぎちゃう! もう本当に、休ませて、寝かせて、くださいっ!』
絶え間なく男に抱かれ、休む間もなく絶頂し続ける桜織。その顔は、ある瞬間には安らかだが、また別の瞬間には恐怖に歪む。
『もう無理もう無理もう無理いい゛い゛っ、いいいやああ゛あ゛あ゛っ!!!!』
桜織の背中が仰け反った。彼女の顔はこの瞬間、決定的に崩れる。見開かれた瞳が上瞼に隠れ、ヒューヒューと細い息の漏れる口が縦に開く。挙句に全身の痙攣もベッドを軋ませるほど激しくなるんだから、どう見ても普通じゃない。
『そうか無理かよ! ここが弱点か、ポルチオが気持ちいいのか、ええ!?』
男は激しく腰を突きあげながら、桜織の下腹に手を宛がってグリグリと押し込んだ。桜織の細い腰が揺れ、白い歯が噛み合わされる。
『んぎぃいっ、ひきいいいいぃぃーーーーっ!!!』
部屋に響き渡る絶叫は、もう人間の悲鳴と思えない。古い木のドアが軋む音のようだ。
そうして壊れつつある桜織を前にしても、男共がブレーキを踏むことはない。
次の番の奴は、カメラに見せつける体位を選んだ。2人して床へ立ったままでの開脚セックスだ。この体位なら股が180度近く開くから、結合部が丸見えだ。赤黒い逸物が真っ赤な割れ目に出入りする様、愛液が桜織の軸足を伝う様。どちらにも息を呑むような生々しさがある。
桜織にしてみれば、片足首を担ぎ上げられてY字バランスを強いられる形だ。どう考えてもキツいに決まっている。だが彼女の反応を見る限り、股裂きの苦しみは二の次のようだった。
『あああっ、そこ、奥!奥ぅっ!!だめ、感じちゃう……くはあぁっ!! ほっ、ほっ、ほっ、ほっ……おおおっ!おほっ!ほぉおおおうっ!!!』
瞳孔が開き、短く速い呼吸を繰り返しながら喘ぐ桜織。口の端から垂れる涎も凄い。明らかに普通じゃない。桜織に近しい友人にこの場面を見せても、彼女だと気付けるかが怪しいほどに。
飲精の時にも、そう感じたことはあった。だがあの時は、力任せに顔を変形させられたり、顔中が精子塗れだったから彼女と判らなかったんだ。今とは意味が違う。今の桜織は、誰かに顔を掴まれているわけでも、顔が何かに覆われているわけでもない。彼女の表情筋そのものが、不自然に変形しきっているんだ。
と、ここで、入口のドアが開く。姿を現したのは手越だ。
『え、もう時間っすか!?』
男が目を丸くするが、手越は笑いながら首を振る。
『いいや。いい頃合いだったんでな、直で見たかっただけだ』
手越はそう言って、洗面台にしがみつく桜織に視線を移す。
『すげえツラしてやがる。芯の強ぇガキでも、この歳で快楽漬けにされりゃこうなるか』
その言葉に、桜織が反応した。眼球を横に動かし、鏡越しに猿山のボスを見つめる。だがよく見ればその視線は、正確に手越を捉えてはいなかった。見つめる先は、その後ろ……開け放たれたドアだ。
『別に、逃げても構わんぞ』
手越は鏡の中の桜織を見つめながら、そう告げた。
『え……?』
『な、ちょっと!』
桜織と男が目を見開く。だが男の方は、手越の顔を見て何かを悟ったようだ。
『ああ、確かにそうだな。トンズラこくのもいいんじゃねえか? こうやってハメられんのが、そんなに嫌だってんならよ!!』
そう言いながら、繋がったままで床を移動する。向かう先は出入口の間際だ。
『ほら、手越の旦那からも許可出てんだ。逃げてもいいんだぜ?』
『くぅあっ!!』
男が腰を打ち込むと、桜織は悲鳴を上げながらドア枠にしがみついた。その足は床を踏みしめ、出入口の境界線を越えようとはしない。いや、できない。耐え抜いてみせる──彼女はそう宣言し、級友の身代わりになる道を自ら選んだんだから。
『なんだ、逃げねぇのか? ってこたぁ、もっともっとハメられてぇって意味だよなあ!!』
桜織を犯す男は叫びながら、後背位で激しく腰を使う。
『はぐうっ、んぐうっ! かはっ、アッ……ぁがあああっ!!』
悲痛な呻きが漏れた。密室ではなくなった以上、反響してはいないのに、はっきりとマイクに拾われている。
その声量も、彼女の足元を見れば納得できた。男との体格差か、異常なまでの突き込みのせいか。伸びきった桜織のつま先は、完全に床から浮いてしまっている。
『すげぇ、カラダ浮いちまってんじゃねぇか。そこまでになっても逃げねぇなんて、よっぽど気持ちいいんだな』
手越はドアの外から痴態を眺めつつ、さらに煽る。鈴の音が鳴り響く。
『きおちよくなんれ、ありまぁせん……。ら゛ってわらひは、きもちよくなってひるばあいれあ、ないんれす…………!! みんなを、たすけ、ないと……きもちおくらんか…………おく、らんか…………』
桜織の反論は聴き取りづらい。口から絶えず零れる唾液のせいならいいが、脳が焼き切れつつあるのかもしれない。なにしろ、決死の覚悟を口にする彼女の顔は、どう見ても引き攣った笑みを浮かべているんだから。
『ほおっ、おっほおおおっ…………!!』
その次の映像では、桜織の声はさらに清楚さからかけ離れていく。彼女が強いられているのは、開いた入口の間際での立位。挿入したままアソコを擦りつけあうようなセックスだ。
不自然な体勢だけに、挿入は浅い。男の逸物がだいぶ外に露出しているのがその証拠だ。いくら子宮が下りているとはいえ、ポルチオまで届いているとは考えづらい。にもかかわらず、桜織は狂うのを止められていなかった。
『いひいっ、ひいっ!! その角度ぉっ……だめえっ!! あぐうっイク、またいくうっ、いっくぅうっ!!!』
ぐじゅっ、ぐじゅうっという音を立てながら腰を擦り付けられるたび、桜織の腰もうねる。うねりの幅は大きい。反射で腰を引くというレベルを超え、自分から快感を貪るような、ゆったりとした円を描いている。そうとしか見えない。
『はははっ、こりゃスゲェな、10コぐらいの舌でチンポ全体を嘗め回されてる感じだ! 高ぇソープでもこんなの経験ねぇや。どうやったらここまでヤラシーまんこ使いができんだよ? そんなに気持ちいいのか、オイ!!』
男は興奮気味に叫びながら腰を蠢かす。むしろこっちの方が快感に対する反射反応に近い。
『はぁっ、はぁっ……き……気持ちいい、気持ちいいですっ!! こ、こんないやらしいセックスで、嫌なのに……ダメなのに!こ、こんなに良いなんて……!ふぁあああ、あーーーっ!!』
桜織は、見開いた瞳からボロボロと大粒の涙を零していた。快感を訴えているが、内容的に言わされたものとは思えない。鈴の音の狂ったような鳴り方からも、実際に絶頂し続けているのは確実だ。言葉も身体も、抵抗を諦めた。襲い来る快感の大波に、流されることを受け入れた。そう見える。
ただしその小さな手はドアを掴み、外に出ることだけは防いでいた。
他人を巻き込まないこと。
責任感の強い少女が、自分よりも優先させたのは、その矜持だったらしい。
※
彼女は狂っていく。
部屋の外にぞろぞろと集まる男達に、快感の声を届けながら。
『はっ、お……おオオ゛ッ、あああおお゛オ゛オ゛っ!!!』
これは、正常位で男と交わっている時の声だ。男と向き合いながら、声を殺し、澄んだ瞳で相手を見据えていた少女はもういない。
声楽の、それも低音部を担当するような声を響かせ、全身を痙攣させるばかりだ。多分この時の彼女は、また全部を諦めきってはいなかったんだろう。そうやって喉も裂けんばかりの大声を出すことで、蓄積した何かを発散させようとしていたんだと思う。
『あーっもう、うるせーよ!!』
犯す男は顔を顰めながら、右手で桜織の口を塞ぐ。それは大量に噴き出す炭酸ガスを、強引に閉じ込めるに等しい行為だ。その結果行き場を失ったエネルギーは、桜織の肉体を駆け巡る。
『んもぅうう゛、うむ゛っ!! うむ゛ぅうう゛おおあ゛お゛ーーーっ!!!!』
桜織は暴れた。大股開きの腰を跳ねさせ、シーツを鷲掴みにし、脳天を深々とベッドに擦り付けて。窪んだような眼光の中、ギラギラと光る黒い眼差しは、脳内麻薬で深くトリップしていることを窺わせる。
モニターの数字に目をやって、俺は目を疑った。
現在カウント116、トータルカウント5403。
それがすべて正確にカウントされているなら、人間の脳が焼ききれたとしても、何の不思議もない。
口を覆う手が離された時、桜織の顔には微笑が浮かんでいた。和やかな顔に見えた。だがそれは、痩せた土地にいきなり一輪の花が芽生えたようなもの。事情を知る人間から見れば、不気味でしかない。
『なんだ、笑ってんのか? 俺のがそんなにいいのかよ? ま、気持ちよくて気持ちよくて、今までにねぇぐらいバキバキに勃起してっからな、ヤリマンにゃ堪らねぇかもな!! ほら。俺のデケェのが、今どこまで入ってんだ?』
桜織を食い物にする男は、軽薄な笑みを浮かべながら腰を使いつづける。
『あっ、はっ、はっ……こ、ここ!! ここまで、入っれるぅ……!!』
桜織も笑みを浮かべたまま、臍より上を人差し指で押さえた。ありえない。そこは子宮口どころか、子宮そのものの位置よりも上だ。男の逸物のサイズから考えても、そんな場所まで到達するはずがない。頭の良い彼女らしからぬ答えだが、彼女は本気でそう感じているようだった。
『ああっ、イク……おまんこでイクッ!! あはぁっ、はああっ!! また、またきたあっ!! おくっ、奥でいくう゛う゛っ!!!』
『へへ、すんげええ! こんな嬉しそうにマンコ舌で舐りまわされちゃ、俺も限界だ。6発目、また中に出すぞっ!!』
『はっ、はっ、来て! どろっとしたの、流し込んで!! 奥にどろどろ来ると、膣が勝手に動いてすごいの! 頭ビリビリして、まっしろになっちゃうぐらい、気持ちいいからぁっ!!』
顔中に汗をかき、目だけを爛々と輝かせながら、2人の動物が快感を貪りあう。そして桜織は、笑顔のままで受精した。
『きた、きらあぁっ!! はぁ、はぁ……はああぁああっ!!』
歯を食いしばって白目を剥く。脳髄までを白く染め上げられる喜びに、彼女は涙を流しながらうち震えていた。そしてその頭上では、無機質なモニターが絶頂数をカウントしつづける。4桁におよぶトータルカウントの先頭は、とうとう8に変わっていた。
その後も映像は続いているが、もはや観る価値もない。すでに点と点はすべて繋がっている。過去記録の下段、『LIVE』と銘打たれた映像は、今の流れの延長線上でしかない。
『おほっ、お……おおぉっ!! おっほぉっ、んおおお゛お゛おお゛っ!!!』
這う格好で犯されながら、桜織は凄まじい雄叫びを上げつづける。格好も、声も、舌を突き出した顔つきも、どれもが人間よりケダモノに近い。
いっそケダモノだと断じられれば楽だが、そうもいかなかった。産まれてからずっと丹念に磨かれてきた珠の肌は、くすんだとはいえ綺麗だ。
おまけになんだか、ボディラインまで官能的になっている。最初の動画では、よく言っても華奢、悪く言えば貧相という感想しか抱けなかった身体。だが今、ベッドに這う彼女の肢体は、少女趣味ならずとも勃起させる妖しさがある。手足が細長いのは変わらない。胸が劇的に膨らんだわけでもない。だが、そこにあるのは紛れもなく“肉”。すごく柔らかそうで、掴んで貪りたくなる“肉体”だ。
それを実際に貪る男もまた、理性は溶けているようだった。半開きの口から涎を垂らしながら、言葉とも喘ぎともつかない声を発し、ひたすらに腰を打ち込んでいる。まるで女に飢えきっていた1巡目への逆戻りだ。
ディスプレイの世界から現実に戻り、耳からイヤホンを外すと、映像内の声がそのまま聴こえるようになった。
『もっと犯してっ、もっと突いてっ!疼いて疼いて、堪らないの!犯されてる時だけが幸せなのっ!!あっ、あ、また……イクッ!!くんんっ、いくいくいく!!イグーーーッ!!おまんこでイっちゃう゛う゛うう゛う゛ーーっ!!!』
下劣な言葉を叫び散らしながら、擦りガラスの向こうで影が動く。犯している男のシルエットは変わっているが、這い蹲る女に変わりはない。男のそれよりも遥かに華奢で、小柄で、艶かしい動きをする影だ。
俺がこの施設に来てから、今日で10日目と少し。今は250時間強というところか。336時間耐え切るには、あと80時間……丸三日以上もあのままでいなければならない。
そして彼女は、それをやりきるだろう。部屋から引きずりだそうとしても、全力で抵抗するに違いない。彼女の願いはきっと果たされるはずだ。
その根底にあるものは、責任感とも、悲痛な覚悟とも違うだろうが。