大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2020年10月

二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.1(後半)

オーバードーズ Part.1(前半)の続きです。
 前編が少々長くなりすぎたため、こちらに分割します。





「始める前に、またコイツを吸って貰おうか。3分は吸い続けろよ」
 手越はそう言って、ガスの吸入器を沙綾香に投げ渡す。沙綾香は露骨に顔を顰めながらも、吸入器で鼻と口を覆い、手探りでスイッチを入れる。数秒でガスの漏れる音がしはじめ……沙綾香は、目を見開いた。
「げほっ、ええほっ!!」
「馬鹿野郎、外すんじゃねぇ! ガスが勿体ねぇだろうが!」
 吸入器を外して激しく噎せる沙綾香に、手越が怒鳴りつける。
「ま、待って! なんかヘンなの、身体が、すごい熱い……! これ、さっきと全然濃さが違う!!」
「それがどうした。ガスの濃さは、スイッチを入れるたびにランダムで変わるぜ。ちなみに一番濃いパターンだと、ヘロインを上回る“ラッシュ”の快楽が来るらしい。ヘロインっつうと、『オーガズムの数万倍の快感』とか『ヒトが一生で体感しうる快感を一瞬で得る』なんてのが常套句だが、それ以上だ。まあ快楽中毒まっしぐらだろうな。どうだ、スリル満点のルーレットだろ?」
「はあっ!? どこまで陰湿なの、あんたら……!!」
 悪意しかない仕掛けに、沙綾香は怒りと呆れの混じった表情を見せる。だが手越はその反応を気にも留めず、ガラステーブルからストップウォッチを拾い上げた。
「こっちはテメェの理性を吹っ飛ばしてぇんだ。わざわざ同じ濃さのガスばっかり吸わせて、慣れさせるわけねぇだろ。それより、早く口に戻せ。今から3分だ」
 沙綾香はやはり不服そうだが、勝負を呑んだ以上は従うしかない。
「げほっ、えほっ……んん、ふうっ、ふうーーっ…………!!」
 何度も噎せながら、必死にガスを吸引する沙綾香。瞳孔は開ききり、身体は凍えるように痙攣している。まるで毒ガスでも吸っているような苦しみようだ。いや、実際に毒ガスそのものか。
「よし、3分!」
 手越がストップウォッチを止めると、沙綾香もすぐに吸入器を外す。
「っぶあ! フウッ、ハァー、ハァー……っハアーー…………!!!」
 沙綾香の息はひどく荒い。白目を剥き、嫌な汗で顔中を濡れ光らせているのは一度目の吸引後と同じだが、呼吸の乱れ具合はあの時以上だ。
 そして、その様子は数秒後にまた一変する。眼球が元の位置に戻ったかと思うと、沙綾香はいきなり腕を抱え込んだ。
「や……こ、これ、本当にヤバいって! 体が、燃えてるみたいに熱い……!!」
「マジで濃いのに当たったらしいな。これから十番勝負の一発目って時に、運のねえガキだ」
 手越はそう言いつつ、黒人の一人……マーキスに合図を送る。
「ハハハハハ、やっとか! 待ちくたびれたぜ!!」

 マーキスは白い歯を覗かせながら沙綾香に近づき、ボクサーパンツを脱ぎ捨てる。覆いの下から現れたのは、黒人特有の、節くれだった木の根のような剛直。しかし、目の錯覚だろうか。その大きさは……
「な、なんで……さっきより、大き、い……?」
 目の当たりにした沙綾香が言うんだから、どうやら気のせいではないらしい。マーキスの『巨根』は、明らかに前回よりも太く、勃起力も強い。今度は斜め上どころか、6つに割れた腹筋に先が触れそうなほどの反り具合だ。
「ああ、1割増しでデカいぜ。スッポンと牛のペニスのスープを飲んできたからな。俺らの勝負メシでよ、すげぇ精力がつくんだぜ」
「ふ、ふーん。じゃあその分、すぐ射精するってことでしょ。勝ち目薄くなっちゃうけど、大丈夫なわけ?」
「心配すんな。4人の女を同時に相手して、朝まで喜ばせたこともある。たったの2時間ぽっちなんざ、最初っからフルスロットルでも余裕だぜ」
 沙綾香が精一杯挑発してみせても、マーキスの余裕は剥がれない。ハッタリであってほしいものだが、奴の生命力に満ち満ちた肉体を見ていると、絶倫という言葉しか浮かんでこない。
「さて、ジャパニーズ。まずはしゃぶってもらおうか」
 マーキスは沙綾香の前に立ち、怒張を脈打たせる。
「はっ!? こんなの、誰が……!」
「嫌なら別にいいんだぜ、このまま突っ込んでも。ただし今度は、ローションは使わねぇ。摩擦を和らげられんのは、せいぜいプッシーから分泌される保護液だけだ。日本人サイズならそれで足りるかもしれねぇが、俺相手だとキツいぜ? 唾で濡らしとく方が、お前自身のためだと思うがな」
 マーキスは薄ら笑いを湛えていた。ジョークを言っている類の笑みじゃない、もっと攻撃的なそれだ。レイプ魔である奴にしてみれば、痛みに顔を歪める相手を犯すのも好みなんだろう。
 その悪意を感じ取ったのか、沙綾香はしばらくマーキスを睨みつけた後、観念したように剛直へと手を伸ばす。

 沙綾香がペニスの根元を握りしめると、その馬鹿げたサイズが改めて実感できた。女の手で本当にかろうじて握れる太さで、かつ両手が重ならないように握っても、なお亀頭が丸々余る長さだ。沙綾香はその大きさに数秒凍り付いていたが、やがて意を決したように亀頭に舌を触れさせる。
「おっほ、すげぇ。気持ち良すぎてビリビリくんぜ!」
 喜ぶマーキスとは対照的に、沙綾香は心底辛そうだ。先端部分を口に含んだ瞬間、ぶるりと身震いしながら吐き出してしまう。
「う゛っ! ちょっと、シャワー浴びてよ! この臭い、耐えらんない!!」
 悲鳴を上げながらマーキスを睨むが、当のマーキスは意にも介さない。
「早くしゃぶれ。それとも、即ブチ込まれてぇのか?」
 意思の疎通を放棄した答えに、沙綾香はますます苛立ちを露わにしたが、仕方なく怒張を咥え直す。
 怒張を扱きながら、頭を上下させる奉仕。沙綾香は何度も噎せていた。匂いがよほどきついんだろう。だがマーキスは心地よさそうだ。
「おおお、いいぜ……クチん中がすげぇあったけえ。風邪引いてる女に咥えさせた時みてぇだ。クスリで発情してるせいか? 最高だな、ドラッグセックスは!」
 うっとりと快楽に酔いながら、さらなる刺激を求めて沙綾香の頭を押さえつける。
「う゛ぉえっ!!」
 嘔吐を予感させる声が漏れ、黒人共が歓声を上げた。
「おい、ここで吐かすんじゃねーぞ!」
「解ってるって。半分も咥えてねぇのに大袈裟なんだよ、こいつ」
 ロドニーに釘を刺されても、マーキスは後頭部から手をどけない。確かに口内に隠れているのは怒張の半分ほどだが、それでも10センチ以上は入っているだろう。それに、太さの問題もある。片手で掴みきれないような物を咥えるとなれば、相当な大口を開けざるを得ない。ハンバーグを丸ごと口へ押し込むようにだ。そんなことをすれば、戻しそうになるのも無理はない。
「うっ、んっぐ、うう゛……えう、おえあ゛っ…………!!」
「良いぜ、良いぜぇ……!!」
 苦しそうに呻く沙綾香と、心地よさそうに天を仰ぐマーキス。そんな光景がもう2分も続いている。マーキスの腰はカクカクと前後していて、今にも射精しそうだ。だが、しない。何度も足を踏みかえ、細く息を吐いて耐えている。
 じゅぶじゅぶという水気のある音。それが象徴するように、怒張はもうすっかり唾液に塗れていた。しかも刺激を受けたことで、サイズも増しているようだ。一人目にしてすでに、沙綾香の頬の筋肉には余裕がない。
「あああ、たまんねぇ……もういいぞ!」
 マーキスはとうとう沙綾香の頭を押しのける。唾液の膜と共に引き抜かれた怒張は、やはりでかい。奉仕前は巨大な亀頭が目立っていたが、今や幹部分も膨らんだせいで、全体的に寸胴なイメージになっている。その凶悪なフォルムを前に、沙綾香の顔が暗さを増した。
「準備OKだな。始めて構わねぇが、その前に……」
 腕を組んで奉仕を眺めていたロドニーが、黒いリモコンを拾い上げる。そのスイッチが巨大モニターに向けて押されると、ある映像が映し出された。

『そんなに怯えるなよ、ジャパニーズ。よく見てみな、ダックスフンドみてぇで可愛いだろ?』

 聞き覚えのある悪趣味なジョークが、フロアに響く。
 映像に映っているのは、壁際に追い込まれた丸裸の沙綾香と、その下腹に逸物の先を押し当てているマーキスの姿。この光景を忘れることはない。十番勝負の一回目、その初戦だ。流れているのはどうやら、監視カメラの映像らしい。
「ほおう、前んのときの映像をバックにやれってか。面白え」
 マーキスは興味深そうな声を上げ、沙綾香を立ち上がらせると、そのままモニター前に引きずり出した。壁一面のモニターに映し出された、巨大な沙綾香……その脚の間に現在の沙綾香がいる。不可思議な光景だ。
 ほんの数時間前の映像だけに、沙綾香自身の変化はないに等しい。大きさが4倍程度違うだけだ。ただ、その下腹に押し当てられた怒張のサイズは明らかに違った。映像内のそれは、逸物の先が臍に当たる程度だが、今はそこからさらに上……臍と両乳房の中間地点にまで達している。
「ざっくり2割増しってとこか。ま、ガスで発情してる今なら大丈夫だろ。今度こそ全力で、たっぷりと楽しませてやるぜ」
 マーキスはそう言って沙綾香の頬を舐めた。
「「やっ……!」」
 上下の沙綾香の、密着を嫌がる素振りがシンクロする。しかし、それは一瞬のこと。
『ヘンなもの押し付けないでよ、このゴリラ!!』
 上の映像では、沙綾香がマーキスの分厚い胸板を突き飛ばし、必死の抵抗を試みていた。
 だが下の──今の時間軸の沙綾香は、マーキスに膝裏を抱えあげられたまま、悔しそうに横を向いている。今の彼女には、拒否権などないからだ。
 一方のマーキスは、上の映像では沙綾香の抵抗を笑って受けながら、挿入のタイミングを計っているところだった。だが下の現実では、一足先に怒張を割れ目へとねじ込んでいた。
「あっ……あ、あっ……!!」
「うおおおっ、キツいな……ギュウギュウ締めやがる! おまけに、こっちも熱いしよお。マグマん中にでも突っ込んでる気分だぜ!!」
 マーキスの興奮ぶりは相当なものだ。具合がいいのは事実だろう。奴はあっという間に怒張の半分ほどを挿入しきり、腰を使いだす。パン、パン、という肉のぶつかる音が響きはじめる。
「うあっ、あ、あああっ! ふうう……うん、んっ!」
 沙綾香は目を閉じていた。抜き差しの中で目を開くこともあるが、少しの間だけだ。
 辛そうだった。純粋に苦しんでいる上画面の彼女とも、反応はよく似ていた。だが、実際には違ったようだ。
「へへへ、ナカがうねってるぜジャパニーズ。気持ちいいんだろ?」
 マーキスは、舌なめずりでもしそうな口調でそう囁きかける。
「か、感じて、ない……。こんなので、感じるわけ、ないじゃん……っ!!」
「へっ。恋人以外で感じたら、浮気になるってか? 義理堅ぇこった。だがその割にゃ、ずいぶん蜜が垂れてくるじゃねぇか」
 マーキスが笑いながら、沙綾香の太腿に触れる。
「あ、やっ!!」
 嫌がる沙綾香を無視して何かをなぞり、高く掲げると……その指先は濡れ光っていた。
「見ろよ、ドロドロだ。俺の極太がスムーズに動くわけだぜ」
「ち、違……あのガスのせいで、変になってるだけ! あんた相手に、感じてる、わけじゃ……!!」
 マーキスの言葉を、沙綾香は強く否定する。だがマーキスは、よほど自信があるんだろう。
「ほお、感じてねぇってか?」
 目を細めながら念を押し、沙綾香が頷いたのを確認すると、いきなり彼女の尻肉を鷲掴みにする。そして自分の腰へと押し付けながら、力強いピストンを再開した。双方向から力が掛かるそれは、単純に考えてもさっきの倍の刺激だ。
「あああっ! やだ、そんな奥……っ!!」
 沙綾香は顔を顰めて呻いていた。嫌がっているようにしか見えないが、パンパンと肉のぶつかる音が繰り返されるうちに、様子が変わってくる。
「んん、んっく、くはっ……はぁ、はあっ…………ああ、ん、あっ! あ、らえ…………ああああ゛あ゛っ!!」
 激しく喘ぎながら、身もだえ。そしてついに彼女は、悲鳴を上げながら身を震わせた。
「へへへ、イキやがった。なまじ我慢したもんで、思いっきりトんじまったなあ?」
 マーキスが下卑た笑みを浮かべて囁く。沙綾香には、それに反論する余裕がない。モニターに後頭部を預け、完全に顎を浮かせたまま、ハッハッと短い呼吸をするばかり。快楽という海で溺れ、水面から顔を出そうとするように。
「お前は気持ちよくイッたみてえだが、こっちはまだこれからだ。続けるぜ」
 マーキスは、ぐったりとした沙綾香の太腿を抱え上げた。足という支えを奪えば、挿入は嫌でも深まることになる。
「あああああっ!!!!」
 沙綾香は悲鳴を上げた。だがその悲鳴にすら、快楽の響きが含まれているように思えてならない。

「感じているようですね、彼女は。黒人のペニスで対面座位を強いられる形なのですから、無理もありませんが」
 まるで俺の心を見透かしたように、端塚が語り掛けてくる。奴から見ても、あれは嬌声に思えるらしい。
「……大きいというのは、そんなにいいのか」
「あえて肯定しましょう。世の中には巨根を好む女性も一定数いますが、それらの女性の多くは最終的には黒人とのSEXに耽溺し、そこから離れようとしません。規格外のペニスサイズを誇る黒人とのSEXは、一般的な男性とのSEXとは別次元だからです」
「何が違うんだ。膣はそこまで奥行きがあるわけじゃない。黒人のペニスでなくても、奥までは届くだろう」
「奥に届く、というだけでは不十分なのです。女性の膣に性感スポットは多々ありますが、中でも特筆すべきは子宮口周りの膣壁です。ここは非常に大きな快感を与えるのですが、大抵のペニスでは亀頭の先で突くのがせいぜいで、じっくりと刺激するには長さが足りません。しかし、彼らほどの大きさであれば、そのスポットを起伏に富んだ雁首周りで刺激することができます。抜き差しする度に、延々と。そしてこの快感が、多くの女性を骨抜きにするようです」
 端塚は、黒人のペニスの優位性を淡々と説く。その間も下のフロアでは、沙綾香がマーキスの肩にしがみつきながら揺れていた。
「んっん、はぁっ……あああ、はっ…あ! あっ、あっん、んんー……っ!!!」
 天井のスピーカーからは、艶めかしい声。それに意識を向けるのがつらい。端塚の話を踏まえて聞けば、思い当たる節がある。
 対面座位で沙綾香を抱いている時、欲を出して奥の奥まで突いたことが何度かある。そういう時、たまに深く入り込んだ感覚と共に、沙綾香がいい反応を返してくれることがあった。十数回突き込んで一回、という程度だったが、俺はそんな時の沙綾香の反応が好きだった。
 その声が今、毎秒のように聴こえてきている。俺にとっての『奇跡の突き込み』を、マーキスは当然のごとく、ピストンのたびに起こしているらしい。
「っあああああーーっ!!!」
 沙綾香がまた悲鳴を上げ、足指を強張らせた。また絶頂したらしい。
「オイオイ、またイッちまったのかよ。ま、俺もそろそろだがな」
 マーキスは嬉しそうに笑いながら、腰の振りを早める。
「は、はっ……!!」
 絶頂後の余韻の中、沙綾香がはっとした様子で顔を上げた。そして、足の筋肉を筋張らせる。
「おっ……すげえな、一気に締まってきやがった。アメリカ女に握りつぶされてるみてぇだ、こりゃ堪んねぇぜ!」
 マーキスは大喜びで腰を振りたくる。抜き差しの音も変わった。水気を含むブジュブジュという音と、何かに空気を入れるような、ハキスッ、ハキスッ、と聴こえる音が交じりあう。空気と水を含んだ空洞の中、強烈な膣圧に負けないピストンが生み出す音だ。それほどの音を立てるセックスが、生半可であろうはずもない。絶倫な強姦魔といえど、その中では何分も持たない。
「ぬああああ…………っ!!!」
 やがて、マーキスは咆哮を轟かせた。ケダモノの断末魔だ。奴らはいつもその声と共に、すさまじい量の精液を流し込む。
「うううううっ!!!」
 膣奥に精を受けていんだろう、沙綾香が汚辱に塗れた顔をする。だが、表情の中には晴れやかさもあった。
「何笑ってんだよ。まさか、もう中出しで感じてんのか?」
 手越に茶化されても、沙綾香の少しむっとするだけだ。
「そんなわけないでしょ! こいつ、今イッてるの。つまりこの勝負って、沙綾香の勝ちだよね!?」
 なおも射精を受けながら、目を輝かせる沙綾香。その姿に、手越も、ロドニーも、黒人共もマーキスも、一様に固まる。そして、互いに顔を見合わせ…………笑った。
「ハッハッハッハッハッハッ!!! おいおい、笑わせんじゃねぇよ!!!」
「ひひひひひっ、あの、あの得意顔!! 大したユーモアセンスだぜ、ジャパニーズ!!」
 顔に手を当て、腹を抱えてゲラゲラと笑う鬼畜共。その中心で、沙綾香だけが呆然としていた。
「え……な、何? イッてるのはホントだって。ねえっ、あんた今イッてるでしょ!? 沙綾香の中に、思いっきり出してるじゃん!!」
「ああ、イッてるぜ。気持ちよーくな」
「じゃ、じゃあ!!」
 沙綾香はあくまで真剣だ。周りがなぜ笑うのか、理解できていない。そんな彼女に冷や水を浴びせたのは、手越だった。
「よう。お前さんまさか、一遍イカせりゃ終わり──なぁんて思ってるワケじゃねぇよな?」
 その言葉で、沙綾香が固まる。完全に図星という様子だ。その反応を見て、また黒人連中が耳障りな笑い声を撒き散らした。
 沙綾香は、俺とのセックスを基準に考えてるんだ。俺は一度射精するたびに沙綾香を開放し、休憩を挟んだ。射精直後は気怠いというのもそうだが、時間ならいくらでもあったし、沙綾香に負担を掛けすぎないためでもある。つまり、あえて加減していたんだ。
「『2時間以内に調教師が精根尽き果てて、もうヤレねえってことになりゃお前の勝ち』……そう言ったはずだぜ。つまり、射精がゴールじゃねぇ。もちろん、一発出してもう弾切れってんなら話は別だがな」
 手越はそう言ってマーキスの方を見る。マーキスは鼻で笑った。
「冗談じゃねえ、やっと体があったまってきたとこだぜ。一発目の射精なんざ、ストレッチみてぇなもんだ。今のコンディションなら、7発か8発……いや、10発はイケるな」
 マーキスの口調は自信に満ちている。大見得を切ったわけではなく、本気で言っているんだろう。俺自身、そういう気はしていた。連中はスポーツでも滾りを抑えきれず、性犯罪に手を染めた性欲の権化。一度や二度達した程度で鎮まるはずもない。
「う……嘘、ばっか。だって、本で読んだもん……。男は、何度も連続でイケるようにはできてないって……」
 沙綾香は震えながら呟いた。弱弱しい声色だ。他人に対して主張するというより、自分自身に言い聞かせているような。
「俺らは特別に絶倫なんだよ。疑うんなら、そのエロい身体でたっぷり味わってみな!」
 マーキスは沙綾香の太腿を抱えなおし、セックスを再開する。今度は沙綾香の身体を斜め上に揺さぶり、角度をつけて挿入するやり方だ。その勢いで、膣内に出された精子が四方八方に飛び散っていく。
「あ、い、いやああっ!! ま、また、すごい奥……う、うっ、ふぅぅううう゛っっ!!」
 余裕のない沙綾香の声が響く。

『バカぁっ!!』

 モニターの映像でも、同じく大声が張り上げられていた。膣内射精されたことに憤慨した沙綾香が、マーキスの股間を蹴り上げたシーンだ。
「おお、そういやタマ蹴られたんだったなあ。あの礼は、しねぇとな!!」
 映像を見て苦い記憶を思い出したらしい。マーキスは両手で沙綾香の尻を鷲掴みにすると、自分の腰に叩きつけはじめた。丸太のような腕だ、腕力も相当だろう。肉のぶつかる音がバチンバチンと激しさを増し、沙綾香の尻の形は一秒ごとに変わる。
「はああっ、あ、あ! ああっ、いやぁ、あああ……っく、くあああ……!! んあ、あああ……あはっあああっ!!」
 沙綾香は、何度も何度も甲高い嬌声を上げながら絶頂へと追い込まれた。
「何遍も連続で絶頂する感覚はどうだ? ただでさえガスの効果で昂ってる上に、逝けば逝くほど敏感になって、ますます絶頂しやすくなっちまうんだよな」
 ぐったりとうなだれた沙綾香に、手越が呼びかける。
「だがな、それに浸ってちゃ勝ち目はねえぞ。お前が勝つにゃ、マーキスのザーメンを残らず搾り取るしかねえ。必死でマンコ締めて、10発でも20発でも射精させてよ」
 その言葉で、沙綾香の表情が引き締まった。
「おっ……!? へへへ、急に具合がよくなってきやがった。やる気だな?」
 マーキスは嬉しそうに笑いながら、激しく腰を前後させる。沙綾香は厳しい表情を保っているが、足の動きがわかりやすく快感を訴えている。4度目の絶頂は近そうだ。

「性欲も御せないケダモノのくせに、随分なテクニシャンじゃないか」
 俺は視線を上げ、端塚に向かって吐き捨てる。言うまでもなく嫌味だ。
「彼らはセックスの場数を踏んでいますから、どう責めれば女が参るのかを経験で知っているのでしょう。あるいは八金 沙綾香が、黒人に犯されて喜ぶ特殊性癖なのかもしれませんが」
 端塚は憎らしいほど落ち着いたまま、ティーカップを傾ける。
 下のフロアで、巨大モニターの映像が暗転したようだ。一人目の映像が終わったらしい。だが、2回目の勝負はまだ続いている。沙綾香がマーキスに突き上げられ、一方的に追い込まれる形で。

 2時間。それは、とてつもなく長い。
 望まぬ光景を眺めながらだと、終わりのない地獄にすら思えてくる。
 
「はぁっ……はぁ、はぁっ……はぁっ……ちょ、ちょっと、休ませ、て…………」
 マーキスの肩に頭を預けた沙綾香が、荒い息を吐きながら哀願する。彼女はもう、何度絶頂させられたことだろう。
「ぜぇ、はあ……クチでするってんならいいぜ」
 マーキスも流石に疲れたらしく、沙綾香を床に降ろして一息つく。割れ目から抜き出された怒張は半勃ちになっていた。とはいえ、まだまだ剛性を保った半勃ちだ。沙綾香はそんなマーキスの足元に跪き、口と手を怒張に触れさせる。
 熱心な奉仕だった。目を見開いてマーキスを見上げながら、舐めしゃぶり、咥え、唾液を絡めて猛烈に扱き上げる。

  ──お願い、早くイって! 一回でも二回でもいいから絶頂して!

 そんな心の叫びが聴こえるようだ。
 だがマーキスは絶頂しない。快感を得ている様子はあるが、膣以外で射精するかとばかりに堪えている。
 沙綾香の必死の奉仕は、結局、マーキスの怒張を完全な勃起状態に戻しただけだった。
「……もういいぜ」
 再び目を血走らせはじめたマーキスが、沙綾香の頭を押しのける。沙綾香は態勢を崩し、ベッドに両手をついた。そんな彼女の股ぐらに勃起しきった怒張が宛がわれる。
「や、やだ! 今、そんな硬いのっ……!!」
 沙綾香は挿入を嫌がっていた。自分の事は自分が一番よくわかる。硬さと張りを取り戻した巨根を挿入されたら、絶頂を堪えきれない。それを理解していたんだろう。
 そして、それは正しかった。
「…………ッはああああああ!!!!」
 後背位で深々と挿入された瞬間、沙綾香は大声を張り上げた。彼女自身が慌てて口を塞ぐほどの声量だ。その一声は、彼女の状態を推し量るのに十分すぎる。
「へへへ、イイ声が出んじゃねぇか!! そうだよなぁ。こんだけラブジュースが溢れてるトロットロのプッシーに、硬いモンぶっこまれりゃ声も出るよなぁ!? おら、声殺すんじゃねぇよ。もっともっと鳴き声を聴かせろ、ジャパニーズ!!」
 マーキスは大喜びで腰を打ち込む。
「や、や、ぁ……こ、これっ……ヤバい、ヤバいヤバいっ……!!」
 沙綾香は項垂れながら、独り言のように呟いていた。体全体が縮こまり、特に脚は固く内股に閉じている。相手が犯しづらいようにか、それとも単なる自衛か。いずれにせよ、マーキスはその格好を許さない。
「もっと開けよ!」
 怒鳴るように叫びながら、沙綾香の股に手をねじ込み、強引に足を開かせる。肩幅より広く。その状態でさらに腰を打ち付けられると、沙綾香の反応が変わった。
「ひああああっ!! だめぇだめええああああっ!! あそこっ、あそこ壊れちゃうう゛う゛う゛ッ!!!」
 俯くのをやめて顔を上げ、大口を開けて叫びはじめる。笑う時は思いっきりの笑顔を見せる子だが、あそこまで下品な顔をするタイプじゃない。つまり、“よっぽど”なんだ。
「俺のコックはドギースタイル向きだからな。こうやってバックでやられっと、たまんねぇだろ!!」
 相手の変化を見て、マーキスが調子づく。奴は激しく腰を打ち付けながら、沙綾香の両肩を掴み、強引に背を反らせた。それがどれだけ有害なのかは、沙綾香の反応でわかる。
「うわあああっ!! やめて、やめてやめでええ゛え゛ぇぇっ!!!!」
 沙綾香はしばらく背を反らせて痙攣していたが、やがてシーツの上に崩れ落ちる。するとマーキスは笑みを深め、首元を押さえつける体勢に移行した。その絵面は、今までのどれよりレイプらしい。愛する女性が、黒人にベッドに組み敷かれて犯される。そのインパクトは半端じゃない。心臓が痛むほどのショックだ。
 しかも、その体勢になってから、沙綾香の反応はさらに激化した。
「ああああっ、ああぁぁ……く、ぅああ……あ…………ああ!!!」
 沙綾香は、軋むベッドと同化しているようだ。だが、それは胴と腰に限った話。手と顎には恐ろしいほどの力が篭もっている。その力は蓄積に蓄積した末、ある瞬間とうとう爆発する。マーキスの巨体を跳ね上げながら、彼女はまた大口を開いた。
「いっ、くッッ!!!!」
 絶頂の宣言は、この上なくストレートだ。それは俺の胸に鋭く突き刺さると共に、他の連中の爆笑を誘う。
 しかも、悪い状況はさらに続いた。
「イク、ひぐぅっ!! んんんん゛ック…………あはあああああっっ!!」
 何度も絶頂を宣言する沙綾香。何度も下唇を噛んで声を殺そうとするが、すぐにまた大口が開いてしまう。
「随分なヨガり具合じゃねぇか、ええ? 黒人のデカマラでイキまくるなんざ、立派な阿婆擦れだな」
 手越が茶化すと、沙綾香は瞬きで汗を切りながら横を向く。
「はぁ、はぁー、はあーっ……こ、こんなの、おかしい……。無理な、サイズなのに……痛い、はずなのに、なん、で…………!」
「それがドラッグセックスってもんだ。クスリでトぶと、大概のことが快感になっちまう。極太をぶち込まれる苦痛も、それと同じだけの快感になるわけだ。だがお前さんは、それに浸ってる場合じゃねぇはずだぜ。必死でマンコ締めて、相手のザーメンを搾りつくさねぇと負けだ。残りあと40分。かなりヤベェと思うがな
 手越の言葉に、沙綾香の表情が強張る。
「ん、ううう、んっ…………!!」
「おおっ!? はっ、いいねぇ、締まりが増しやがった!」
 沙綾香が目元を引き締めた直後、マーキスが喜びの声を上げる。
「すげぇすげぇ! ただでさえジャパニーズのガキは締まりがいいってのに、こうギュウギュウやられちゃもたねぇよ!!」
 腰を打ち付けながら快感に震えるマーキス。ただ、膣が狭まることで刺激が増すのは奴だけじゃない。沙綾香自身も、より強くスポットを擦られる事になる。
「んあ、あああ……あ、あっ!!」
「オオウ、オッ、ウウオオオオオッッ!!!」
 我慢比べはしばらく続いた。ベッドを軋ませ、細かな汗を散らしながら。
 マーキスは、天を仰ぎながら咆哮することが何度かあった。追い詰められているのは間違いない。
 だが…………限界は、沙綾香の方が早かった。
「…………あ゛、はっ…………お゛っ…………ぉ、い、っく……い、……ってる………………っ!!」
 何分が経った頃からか。沙綾香は叫ぶことをやめ、熱い息を吐きだしながらうわ言を呟くようになっていた。それも異常だが、もっと衝撃的なのは顔だ。
 舌を、突き出していた。
 長湯でのぼせたような、汗まみれのボーッとした顔。とても勝負事で勝ちを拾える人間のそれじゃない。
「おっ……なんだ、ヘバっちまったか? あのままギュウギュウ締めっぱなしだったら、結構ヤバかったんだがな」
 マーキスは汗を拭いながら激しく腰を前後させ、沙綾香から呻き声を引き出す。

「よーし、2時間経過だ」
 手越が終わりを告げた瞬間にも、マーキスは激しく沙綾香を犯していた。その時点でマーキスの勝ちは確定したわけだが、奴はダメ押しとばかりに沙綾香の腰を掴み、激しく腰を打ち付ける。
「おら、おらっ!!」
「あああ、いや、あ……あっ!! イックイクううっっ!!!」
 沙綾香はぶるりと身を震わせながら絶頂する。そして極めつけに、気持ちよく射精したマーキスが怒張を引き抜いた瞬間、かなりの勢いで潮を噴いた。
「ははははっ! こりゃまた、清々しいぐらいの負けっぷりだな!!」
 ロドニーやその周りの人間が手を叩いて笑う。そんな中、マーキスはベッドに突っ伏した沙綾香の尻肉を割り広げる。
「見ろよお前ら、こんなに出ちまった。気持ちいいぜぇ、このプッシーは。ただの狭い穴だった一回目と違って、発情してるからヒクヒクしっぱなしでよ。最高に上手いフェラされまくってる気分になれるぜ」
 その言葉で、沙綾香に浴びせられる嘲笑が大きさを増す。沙綾香はその渦中で、悔しそうに手を握りしめていた。

 十番勝負1戦目は、彼女の負けだ。


               ※


 1戦目が終わると、沙綾香には水分補給とシャワーの時間が与えられた。シャワーの時間はかなり長かったが、バスルームから出た沙綾香の顔は引き締まっていた。まだまだ気持ちでは負けていないようだ。
 だが、その後には2時間に一度のガス吸入がある。ここでもまた濃いものを引いたのか、沙綾香はかなり激しく咳き込んでいた。
 そうして迎える二人目は、ダーナル。奴の怒張も一周目よりサイズが増している。
「おーっ、すげぇ。痺れる感じだ!」
 口での奉仕を受けるダーナルは愉快そうだが、咥える沙綾香に余裕はない。その関係は、ダーナルがバックから犯し始めてからも変わらなかった。

 マーキスと同じく、ダーナルもまた最初の体位は一周目を踏襲した。沙綾香の両手首を掴んだまま、背後から突き込むやり方だ。
「う……うあ、あはっ……あぐ、う、んっ……!!」
 目を閉じたまま俯き、小さく声を漏らす。沙綾香の反応は、頭上に映る一周目とそっくりだ。だがよくよく目を凝らせば、その股の間から雫が滴っているのが見える。
 ダーナルの腰遣いも違っていた。モニターの映像は、あくまで自分が射精に至るための突き込み。対して今は、沙綾香を感じさせるために、色々と突き方を変えている。沙綾香の乳房の揺れ方を見れば、その違いはよく分かった。過去の映像では乳房は前後にしか揺れていないが、 今は前後だけでなく左右にも揺れ、時にぶつかり合っている。
 そうした些細な違いが、瓜二つなセックスの行く末を決定的に分ける。

「っああああ゛っ!!!」

 セックスが始まってから、わずか数分後。沙綾香は一際悲痛な声を漏らし、腰をカクカクと揺らし始めた。
「ハハハッ、もうイってやがる!」
 ダーナルがわざと腰振りを止めても、沙綾香の下半身は震えたままだ。
「もう突いてもいねぇのに、勝手にヒクつかせやがって、いやらしいビッチめ」
 ダーナルは口汚く罵りながら、また腰を動かしはじめる。ただし今度は、沙綾香の手首を下に引き、強引に上体を起こさせた上でだ。
 沙綾香の体が起きれば、挿入の角度は横方向から斜め上に変わる。そしてどうやらその変化は、沙綾香にとって望ましくないものらしい。
「ううあああっ、だ、ダメッ、この角度はだめっ!!!」
「ああ、だろうなぁ。さっきもヘソの方を擦ってやった時が、一番反応が良かったからな」
 ダーナルは沙綾香のうなじを舐め上げながら、慣れた様子で腰を突き上げる。
「いや、いやあいやっ!!」
 沙綾香のすらりとした太腿が、何度も膨らんでいた。足に力を入れて逃げようとしているのか、それとも勝手に力が入っているだけか。いずれにせよ沙綾香は、その姿勢のままでもう一度絶頂に追い込まれる。
「っふりゅうんっ!!!」
 絶頂の時の声は、妙なものだった。我慢をし損ねて達したという風だ。その声は当然笑いの種となった。見守る黒人共も、ダーナルもゲラゲラと笑っていた。沙綾香は一瞬、恥ずかしそうに顔を顰めたが、すぐに顔を上げる。そして、その直後。
「うおっ!?」
 ダーナルが急に大声を上げた。何事かと黒人共が笑いを引っ込める間にも、奴は、うお、うおおっ、と驚きの声を上げ続ける。
「こ、こいつ……絞り出す気でいやがる! この体勢だと、プッシーに力が籠めやすいもんな……あああクソッ、我慢ができねえっ!!!」
 ダーナルは睾丸でも握り潰されるかのような焦りを見せ、やがて荒い息と共に痙攣する。
「ん」
 沙綾香が小さな声を漏らした後、股の間から白い物が流れ出した。
「ほう、やるじゃねぇか。相当搾り取られちまったなあダーナル」
 ロドニーが感心しつつ茶化すと、ダーナルは品なく舌打ちする。
「ざけんな、こっからだ。マーキスの野郎が10発いけるってんなら、俺は20発は出せるぜ」
 ライバル心を剥き出しにしてそう唸ると、奴は前傾を深め、沙綾香に這う格好を強制させる。バックから突くのはさっきと同じだが、今度は沙綾香の手を手綱のように引く代わりに、腰を掴んでの全力のセックスだ。
 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、と凄まじい音がしはじめる。音のキレも凄まじいが、早さも相当だ。沙綾香に主導権を与えないためだろう。そして、それは効果的だった。
「はぁ、あ、あ、はあっ……あ、あっ…………!!」
 ガスで発情させられた上、すでに2回絶頂している沙綾香に、何分も絶頂を堪えるのは不可能だ。俯きながら熱い吐息を吐き続けた末に、とうとう背中をぶるぶると震わせる。
「そうだ、大人しくイッてろ。俺はアジアンを犯し慣れてんだ、キッチリ気持ちよくしてやるからよ」
 下衆な発言をしながら、ダーナルは腰を使い続ける。沙綾香は必死に声を殺していたが、乳房を握り潰された瞬間に切ない声が漏れはじめる。
 後背位でのセックスは、執拗だった。ダーナル自身も中腰や膝立ちなど姿勢を変えながら、ひたすらに腰を打ちつける。
「顔上げろ!!」
 沙綾香が快感のあまり突っ伏すたび、後ろ髪を掴んで引き起こすせいで、綺麗なストレートヘアがパーマでもかけたかのように乱れていく。
「い、いたいっ! 髪、掴まないでってば!」
 沙綾香が何度そう訴えても、ダーナルが聞き届けることはない。むしろ荒々しく掴んだまま、頭を左右に揺さぶる始末だ。奴にしてみれば、相手の女にノーと言わせる事そのものが目的なんだろう。
 そんな酷い状況下でも、やはり沙綾香は達してしまう。何度も、何度も。
「もう、いやあああーーっ!!」
 ある時とうとう、沙綾香は悲鳴を上げながら逃げようとする。だがダーナルは、素早くその足を押さえつけた。逃げることを常に想定していないと出来ない動きだ。過去のレイプで、似たシチュエーションを経験しているのか。
「ハハハハハッ!! 必死に逃げるってこたぁ、そろそろマジでヤバイってことだよなあ!? 勝負の時間は残ってんだ、キッチリ白黒つけようぜ!!」
 ダーナルは満面を笑みを浮かべながら、沙綾香の尻掴む。指の合間から肉が盛り上がるほどの握力だ。
 そして、ダーナルはスパートをかける。時には手のひらで打ち据えながら、激しく、乱暴に。
「おほっ、お、あ、お、おっ……!! きあはっ、あ、ははっ、は…あぁあ……い、いっくっ!!」
 沙綾香は、刻一刻と追い詰められていく。つらそうに瞑った目から涙を流し、大口を開け。
 特に最後の15分……ダーナルに右手を押さえつけられ、覆いかぶさる形で犯されている間は、今にも嘔吐するんじゃないかという顔色だった。結果として吐瀉物は出なかったが、それ以外の体液はすべて出たと言っていい。汗に涙に鼻水、涎に唾液。
「2時間だ!」
 手越のタイムアップの合図とともに、ダーナルは激しく腰を打ち込み、沙綾香の後ろ髪を引き絞りながら射精に至った。哀れにも沙綾香は、汁まみれの顔を衆目に晒し、笑われながら膣内射精を受ける羽目になる。
「ふっ、ぐうぅううっ…………!!」
 彼女の2敗目は、なんとも無残な泣き顔で締めくくられた。


               ※


『『フロリダの暴れ馬』ことドミニク様だ。楽しもうぜえお嬢ちゃん!』
 巨大モニターの中では、3人目のドミニクが沙綾香を軽々と持ち上げ、自分の股間へ下ろす形で挿入を果たしていた。そのモニターの下では、現在のドミニクが沙綾香の顔に怒張を擦りつけている。太さもさることながら、沙綾香の顔とほぼ変わらない長さが特徴的だ。
「しゃぶれ。舐められるより、ソッチのが好みなんだ」
 ドミニクは沙綾香の手を払いのけ、亀頭を沙綾香の唇に押し付ける。沙綾香が仕方なく口を開くと、躊躇なく口内へと怒張を送り込んでいく。
「おが……も、お゛」
 顔の縦の長さと変わらない怒張だ。当然口の中だけでは収まらず、すぐに奥につっかえてしまう。だがドミニクは沙綾香の髪を掴み、無理矢理頭を前後させた。
「うう゛…う゛、むえっ、おお゛え゛おっ…………げええ゛っ!!」
 沙綾香は苦しみながら奉仕を続けた末に、ほとんど嘔吐そのものの声を漏らしながら怒張を吐き出す。
 ぬらぬらとした唾液で濡れ光る怒張は、うんざりするほどの長さを誇った。さっきより更に長い。沙綾香が小顔であることを差し引いても、その口からうなじまでの距離を悠に超えているというのは異常すぎる。
 しかも奴は、前の二人の例に倣ってか、一周目の行動を踏襲した。つまり、沙綾香を抱え上げ、自分の股間へ下ろす形での挿入だ。
「あ、あ……こ、これって……っ!!」
 抱えられたまま、沙綾香が震える。後ろを振り返る彼女が見たのは、ドミニクの顔か、それともその向こうにある過去の自分か。

 ドミニクは、割れ目に亀頭を宛がったまま、ゆっくりと沙綾香の身体を降下させる。
「うあ゛、あ゛……や、あ……っ!!」
 沙綾香が首を振る中、怒張は少しずつ割れ目の中に隠れていく。だが、モニター内の映像ですら6割しか入っていない凶器だ。それより一回り大きさを増した今は、半分ほどを残して挿入が止まる。
「うううっ、ふ、深……いっ…………!!」
「あんだよ、全然入らねぇな。これじゃあ、ムスコが風邪引いちまう……ぜ!!」
 ドミニクは沙綾香の脚を高く掲げ、一気に落とす。怒張が割れ目に食い込むように。
「はっ……ぐ、うっ!!」
 沙綾香の両足が跳ね上がる。相当な衝撃だったらしい。だがその反応に比べて、表情は乏しい。目を見開いたまま凍り付いている。その温度差は、ただただ不気味だった。
「くくくっ、見慣れたツラだな。黒人のチンポを思いっきり突っ込まれると、どの女もその顔になりやがる。目の前がチカチカする感覚なんだってな。だが、呆けてる暇はねぇぜ。テメェは勝負の真っ最中なんだからよ」
 沙綾香の顔を覗き込み、手越が笑う。ドミニクも同じく笑みを浮かべながら、また沙綾香を持ち上げて、落とす。持ち上げて、落とす。
「ふぎいっ!! んふぐっ、んっあああーーーっ!!! い、いたいっ……むりっ、そんなの全部入れるの無理ぃっ!! せめて、抱えないで普通にしてぇっ!!」
「これだって普通だぜ? 俺の育った町のショーパブじゃ、娼婦はいつもこうやって犯されてたもんだ。俺の母親もな。でもよ、太いのでムリヤリ突き上げられて、母乳とションベン撒き散らしてんのに、すげぇ幸せそうだったんだぜ。お前もそれ味わって、どんな感じか教えてくれよ、ジャパニーズッ!!」
 沙綾香はどれほど足をばたつかせても、ドミニクは容赦しない。ベッドルームの中を歩き回りながら、ゴリゴリと沙綾香の中を突き上げる。
「ああ、あああっ!! 無理、無理おっきいいっ!! おなかのっ、奥、やぶれちゃううううっ!!」
 沙綾香の声は悲鳴に近い。歯を食いしばっていたかと思えば、ドミニクの胸板に黒髪を擦りつけながら天を仰ぐこともある。
 それは必死の抵抗だったんだろう。そして抵抗する力を失った時、彼女は為すすべもなく快楽に引き込まれる。
「あいっイク、イクッ!! ああぁ、んゃああああっ!!!」
 激しく突き上げられながら、立て続けに絶頂を宣言する沙綾香。その様は、ここまで見てきた中でも一番胸に刺さった。なぜなら、全部が見えるから。開ききったまま涎を垂らす口も。ピンクの陰唇を捲り返しながら抜き差しされる極太も。飛び散る愛液も、精液も。
「ああああイクッ!!!」
 沙綾香がそう宣言するたび、Mの字に開いた脚がぶるぶるぶるっと激しく痙攣する。俺の距離から見て取れる以上、震えはかなり大きいはずだ。
「ご覧になりましたか、今の骨盤周りの痙攣を。あれは、ポルチオでの深い絶頂に伴う筋収縮です。もうあれほどの“中逝き”が可能とは……流石は、貴方の手ほどきを受けただけのことはある」
 沙綾香を見下ろし、端塚が解説を挟む。俺のせいだというのか。今のあの有様が。
 しかし、否定はしきれない。彼女が受け入れてくれるのを良いことに、性感開発を繰り返したのは事実だ。俺がやり過ぎなければ、彼女はあれほどに達しやすくなっていないかもしれない。意図せず絶頂するたびに、悲しい眼をせずに済んだかもしれない。

 ドミニクは、よほど女を抱え上げる体位に拘りがあるらしく、持ち時間の全てをそれに費やした。手越が終わりを告げると、8分勃ちの怒張がずるりと割れ目から抜け落ちた。途端にあふれ出し、垂れ下がった怒張を真っ白に染め上げるザーメンも圧巻だが、それ以上に衝撃的なのは沙綾香の有様だ。
「あっ……はあぁ、ああ…………ああ、あ……っあ、はぁ、はっ…………!!」
 彼女は、激しい呼吸を繰り返しながら呆けていた。ドミニクの首に回された左手も、逞しい腕を掴む右手も、Mの字に投げ出された脚も、すべてが痙攣を続けている。
「スゲーなあれ。まだ余韻に浸ってやがんぜ」
「らしいな。最初は痛いだのなんだの騒いでやがったくせに、途中からはイクイクしか言ってなかったもんな。相当イキまくってたんだろうぜ」
「顔見てみろ顔。思考力ゼロのバカ面してんぜ」
 セキュリティ連中が沙綾香を見下ろし、面白そうに品評する。奴らの言葉は間近から肉声で聴こえる分、黒人連中の笑い声よりも不快だった。


               ※


 早くも3連敗を喫した沙綾香が次に迎えるのは、4人目のジャマールだ。

『ひひひひっ、ひっでぇプッシーだなジャパニーズ!! 黒人3人にレイプされて、グチャグチャになってんじゃねぇか。穴もガッポリ開いてよ、スプレー缶ぐらいならそのままぶち込めそうだぜ!!』

 巨大なモニターから、一周目に奴が口にした言葉が流れている。この侮辱がきっかけで沙綾香は憤慨し、セックスの間じゅうジャマールを無視した。結果、奴は仲間から嘲笑される結果になったんだ。
 ジャマールは、その苦い記憶を横目に見つつ、沙綾香の奉仕を受けていた。仁王立ちで腕を組む、オーソドックスなスタイル。奴自身はまだ一言も発していないが、怒張は雄弁だった。
 弓なりに屹立している。長さも太さも凄まじいが、見た目だけで相当な硬さが伝わってくる。もう少し近くで見れば、血管が浮き立っているのも見えるだろう。その異様さは、3人の黒人に奉仕した経験を持つ沙綾香が、舌で舐め上げながら不安そうに目を泳がせるほどだった。
 だが、彼女も怯えているばかりじゃない。
「そろそろ始めるか。俺のなんぞ、『入ってんのかもよくわからねぇ』から、退屈だろうがよ」
 一周目の言葉を皮肉って宣戦布告されれば、それに強い眼で応える。二人してベッドに上がり、這う格好を取る時も、冷ややかな無表情は続いていた。

 しかし。
 ジャマールが深々と挿入し、縊り殺さんばかりの表情で腰を使いだしてから数分後。沙綾香の反応が、少しずつ変わりはじめる。
「……はぁ、はぁ……はあ、はあ。はあ…………」
 まずは、荒い呼吸。そしてそれは、ほんの数分のうちに喘ぎに変わる。
「んっ、あァ……い、あ……は、ぁはっ……は、ぁぁ……んっ……!!」
 沙綾香の姿勢が崩れていく。這う格好から、這いつくばる格好へと。すると、そんな沙綾香の尻にジャマールが張り手を食らわせた。
「もっと尻上げろオラ!」
 因縁のある相手からそう要求されれば、沙綾香は両膝の感覚を狭め、腰を突き上げるしかない。だがそれは、ジャマールの突き込みをよりダイレクトに受け止める結果を呼ぶ。
「あっ、あ、あっ!! あはっ、はああ、あ、あ゛っ!!」
 沙綾香の漏らす喘ぎが大きくなっていく。変化は彼女の肉体にも表れていた。激しい抜き差しを受ける下半身が、左右に揺れている。
「腰逃がすな!!」
 ジャマールがまた尻を打ち据える。乾いた音が響きわたり、沙綾香が目を見開いた。
「い、痛いッ!! に、逃げてなんか、ないって……!!」
「逃げてんだろさっきから、尻振ってよぉ! なんだ、そんなに快感のスポット捉えられんのが怖ぇのかよ。てめぇ1回目ン時に言ってたよな? 俺とのセックスなんぞ、思わず寝ちまうような休憩タイムだってよ!? なら寝とけよ、そのまんまベッドにツラ埋めて、じっとよ!!」
 ジャマールはそう言って姿勢を変えた。沙綾香の両肘の外に手をつき、腕立てでもするような格好を取る。沙綾香に尻を上げさせている今、怒張の挿入角度はほとんど真上からだ。
 これが、効いた。
「あ!!! あ、ああ!!!! あああ、あ、ああああぁっ!!!!」
 這いつくばった沙綾香の口から、相当な大声が発される。さっきまでの喘ぎなら、まだ荒い呼吸の延長として誤魔化すこともできた。だが、もう無理だ。沙綾香から今漏れているのは、どう聞いても快感の声なんだから。
 それだけの声が出るとなれば、当然ながら肉体もじっとしてはいない。さっきジャマールが『逃げる』と表現していた時より、腰が揺れがひどい。タバコの火を何度も尻に押し当てられれば、ちょうどあんな動きになるだろうか。
「逃げんなっつってんだろうが!!」
 この段階になってもまだ、ジャマールの表情は縊り殺す時のそれだった。奴はベッドに膝をつき、沙綾香の太腿の内に入り込みつつ、腕で下腹を抱え込む。そうなれば、沙綾香はもう腰を触れない。衝撃を逃がす術もなく、復讐の一念で叩き込まれる暴力的な突き込みを、まともに受け止めるしかない。
 結合部から漏れる音が凄まじい。ぶじゅんっ、ぶじゅじゅうっ、という汁気に満ちた音が猛スピードで繰り返されている。
「ああ……あはアアァあっ、あ、あ゛っ!! んぎぃあ……あぅあっ、アッあ、ぐああは…………っ!!」
 沙綾香の呻き声も同じくひどい。もう動かせない下半身の代わりに、上半身をシーツに沈め、あるいは大きく反らしながら、快感を訴え続ける。
「おらイケッ、イッちまえクソガキがっ!!!」
 ジャマールは、沙綾香が激しく反応するほど突き込みを激化させる。
「~~~~~っっ、~~~~っ、~~~~~っっ!!!」
 そのうち沙綾香の嬌声は、声にすらならなくなった。喉からガスが漏れるような音が出るばかり。調教師すらざわつく異様さの果てに待つ未来は、一つしかない。
「う゛ーーーーーー………………っ!!!!!」
 喉が潰れたような声。それを漏らしながら、沙綾香はまた仰け反った。ジャマールの胸板に頭を預けるほどの反り具合だ。そして、そのまま彼女は痙攣を始める。
「まだ仰け反ってやがる。すげぇアクメだな……」
 すでに勝負を終え、傍観に入っているマーキスがぼそりと呟いた。奴の言う通り、見るからに凄まじい絶頂だ。

『ああ、終わったの? なんか後ろで必死に腰振ってるのは知ってたけど、入ってんのかよくわかんなくてさ。ちょっと寝ちゃってたよ』

 モニターの中では、涼しい顔をした沙綾香が嫌味を吐いている。ジャマールに寄りかかって痙攣する今とは、見事なまでに正反対の光景だ。

 そこまでの光景を作り出しても、ジャマールの怒りは鎮まらない。奴は脱力した沙綾香を仰向けに寝かせ、両腕を掴んで、残り時間一杯犯し抜いた。
「ああああ駄目っ、いくいくいくいくっ!!!」
 あれほどの絶頂の後だ。敏感になりすぎている沙綾香は、当然嫌がった。だがジャマールは腰を止めない。
「まだまだ休ませねぇぞ!!」
 そう言って激しく腰を打ち付ける。沙綾香の背が何度仰け反り、後頭部をシーツに沈めても。
「ごめんなさいは!?」
 明らかな限界を見せる沙綾香に、ジャマールはやがて謝罪を求めはじめた。沙綾香は一瞬表情が硬くなったが、その直後に絶頂させられ、涙を流しながら口を開く。
「ご……ごめん、なざい……」
「もっとだ!」
「ご、ごめんなざいいいっ!!」
「もっとだっ!!」
 まるで、地獄のような光景。それは、手越が2時間の経過を告げてもまだ続いていた。
「おい、ルール違反だぞ!」
 俺はボスである端塚に抗議したが、奴は気に留めていないようだ。
「彼女はジャマールの矜持を傷つけたのですから、その罰です。奴隷調教には躾も大事ですから。あまりに超過しすぎるようであれば止めますが……その必要もなさそうですね」
 端塚の言葉を聞いて、俺は沙綾香の悲鳴が途絶えたことに気付く。下を見ると、彼女はとうとう気絶してしまっていた。ぐったりとして動かない、完全失神。それを認めてジャマールは怒張を引き抜き、自ら扱き上げると、気絶した沙綾香の顔に精液を浴びせかける。その量はやはり凄まじく、彼女の鼻と唇はほぼすべて白濁で覆われてしまう。
「どうだ? この勝負、俺は負けか? あん?」
 ジャマールは最後に、仲間の調教師に向かって問いかける。一周目の嘲笑に対する意趣返しだろう。黒人共は、苦笑しながらジャマールの勝ちを称えていた。

 これで沙綾香は、4敗目だ。


               ※


 4戦目が終わった後のシャワーも長かった。そのシャワーがようやく終わり、5人目のアンドレに奉仕する段階になってもまだ、沙綾香の目からは涙が伝っていた。
 アンドレは寡黙な男だ。他の男のように野次りはしない。しかし、レイプ魔としての嗜虐心と旺盛な性欲を持ち合わせている。
 奴は、沙綾香を仰向きで寝かせ、足を開かせた状態で犯していた。膝立ちのまま前傾姿勢でのし掛かり、自重と寝台で沙綾香の骨盤を挟み込むようなセックスだ。当然、挿入は深いらしく、沙綾香の反応は激しかった。
「あ、あああ゛ーーっ!! やあ゛、重い……くう、うああ、あっあーーっ!!」
 万歳をするようなポーズでシーツを掴み、目を閉じて呻く沙綾香。アンドレは真顔でそれを見つめながら、彼女の脹脛を掴むと、大きく前方に倒していく。『まんぐり返し』の恰好だ。
「あお゛っ!?」
 新しい姿勢で一度突き込まれた瞬間、沙綾香の呻き声が変わる。『お』行の呻き。相当に腹圧が高まった時に出る、本当に気持ちいい時の声だ。アンドレは数度突き込んでその声を出させた後、膝立ちをやめた。両足の裏でしっかりとベッドを踏みしめたまま、深く腰を落とした、相撲でいう蹲踞の姿勢。それに変えた理由は、すぐにハッキリする。膝立ちのままではできない、暴力的なまでのストロークで突き込むためだ。
 沙綾香の胴より太い大腿部が前後に動き、繰り返し腰を叩きつける。バチンッバチンッという肉のぶつかる音は、それまでの比じゃない。
「お゛、あ゛っ!! あ゛あっ、んあ、お゛っ!!」
 沙綾香の悲鳴も質が違う。今思えばさっきまでの声は、どこか甘く、尾を引く感じだった。今はそれが、肺から絞り出した息を一瞬だけ吐くものに変わっている。アンドレの腰遣いと連動するように。
 そんな沙綾香を見て、手越がひどく歪んだ笑みを浮かべる。
「はっ、すげぇ声だな。だがよ、解ってっか? お前にとっちゃ、これがラストチャンスなんだぜ。お前の勝利条件は『勝ち越し』……つまり、10人相手に6勝しないと負けだ。この5戦目を落としゃあ、自動的に負けが決まるんだぜ?」
「……っ!!」
 その言葉に、沙綾香が目を見開いた。そうだ、彼女はここまで4連敗。もう、後がない。
「あは、はあ……はあっ…………!!」
 沙綾香は深い呼吸を繰り返しつつ、表情を締め直した。そして彼女は、思いがけない行動に出る。
「おっ……? オイオイ、あいつ自分でクリトリス弄ってんぜ!?」
 一人が指摘した通り。沙綾香は唯一自由になる手を陰核に伸ばし、自ら慰めはじめていた。黒人共は、それをビッチだの自棄を起こしただのと散々に詰る。だが、俺には彼女の目的が伝わった。ああして刺激を増すことで、膣圧を強めているんだ。それまでの経験から、ただ下半身に力を篭めるだけでは勝てないと判断したんだろう。
「ぐうっ……!!」
 アンドレが小さく呻き、腰を震わせる。
「……ふはっ。はあ、はあっ……はあっ……!!」
 沙綾香は一旦息を吐き出してから、また陰核を弄りはじめた。アンドレの目が細まる。どうやら今この瞬間は、沙綾香が優勢らしい。
 だが、アンドレもやられたままではいない。陰核をいじる沙綾香の手を払いのけると、彼女の両足首を掴んで高く掲げる。
「あっ、はっ……はああっ!!」
 沙綾香から喘ぎが漏れた。まずい、という表情だ。
 両脚をぴたりと揃えるあの体勢なら、膣は究極的に狭まる。つまり、アンドレのエラの張った雁首が膣壁をこそぐ快感を、余すところなく受け止めざるを得ない。もちろん、アンドレ自身も射精感を煽られる諸刃の剣だ。だが、奴は勝算があってその姿勢を作ったんだろう。
 勝利を賭けた最後の攻防。それはベッドを激しく軋ませ、肉の弾ける音をさせ、透明な汁を散らしながら延々と続いた。途中までは、本当にいい勝負だったと思う。アンドレが呻きながら腰を止め、ぶるぶると下半身を痙攣させる場面は何度もあった。だが、終盤に近づくにつれて戦況が逆転していく。
 アンドレの巨躯に圧迫されながら、狭まった肉の合間に極太の杭を捻じ込まれる。そんなひどい状況の中、沙綾香は純粋な快感の声を上げはじめた。
「お゛っ、おお゛お゛!! んおお゛、お゛ォ…………!! っ、い、イくっ!! イっちゃう、イっちゃう゛う゛っ!!!」
 涙を流しながら、何度も絶頂に上り詰めていく。足を暴れさせてもいるようだが、アンドレが足裏を掴み、上腕の筋肉を盛り上げて強引に制止するせいで、最悪の態勢を崩せない。
「ラスト10分だ」
 ここで手越が、初めて終了目前を告げた。今まではタイムオーバーの宣言だけだったというのに。
 奴の狙いは、沙綾香を焦らせることだ。焦らせて、惨めな敗北を味わわせたいんだ。
「やあああっ!!! イって、イって、お願いい゛っイってよお゛っ!!!」
 沙綾香は壮絶に顔を引き攣らせ、太腿を外から押さえつける。あるいは、割れ目の外に指の輪を作り、出入りするアンドレの強直を指でも扱こうとする。だが、そうした不自然な行動は、彼女自身を追い詰めることにしかならない。
 しかもここで、アンドレの方も腰使いを変えた。黒人特有のしなやかな筋肉をフルに活用し、横方向に円を描く動きで突き入れるやり方だ。遠心力で勢いがつく上、毎回違う角度で斜め方向から挿入することになるため、膣内への刺激が強く、変則的になる。極限まで膣が狭まっている今、それは最大の効果を発揮することだろう。
「ぁああああっ、イク、イクぅうウウ゛ッッ!!!」
 最後に沙綾香の腕は、すべてを放棄した。頭上に投げ出され、シーツを掴み、ただ快感に流されないように強張るばかり。
 だが、それは仕方のないことに思えた。憎むべきは、感覚を狂わせる催淫ガス。そしてそのハンデを負わせつつ、好き放題に罪のない少女を嬲る外道共だ。

「そこまで。これで5敗目だ。結局、『先生』は救えなかったな」

 壁の時計に目をやりながら、手越が終わりを告げる。それを聞いて、アンドレが怒張を引き抜いた。剛直がズルズルと引き抜かれる間にも、沙綾香の上半身はビクビクと痙攣していた。さらに足裏が開放されると、両脚は大股を開いたままベッドに落ちる。まるで潰れたカエルのそれだ、間違ってもモデル体型の美少女がしていい格好じゃない。だが、今の彼女にはそれしかないんだ。力の一滴までを振り絞り、脱力しきった脚が取れるポーズは、あれ以外にない。
 その脚の合間は、蹂躙の痕跡も著しかった。終盤の無茶な突き込みのせいか、これまでのどのラストシーンよりもひどい割れ目の拡がり方をしている。割れ目から溢れ出す精液の量も、ガラスコップで受ければたちまち半分以上が満たされるのではと思うほどだ。それは、何度もアンドレを射精に導いた証でもある。実際アンドレは、片膝をつく格好で座り込んだまま、荒い呼吸を繰り返すばかり。あと一歩で勝てていた勝負だということが、その様子でわかる。
 だが、負けは負け。沙綾香は呆然としたままベッドの端まで這い、床に転げ落ち、千鳥足でバスルームに向かう。
 彼女は、頭から激しくシャワーを浴びながら、壁に額を宛がった。

「センセ……ごめん、ね…………。沙綾香、頑張ったんだけど……全然、ダメだった。一勝もできないで……レイプされてるのに、何度もイって……こんなの、ホントに、“ビッチ”じゃん…………!!」

 沙綾香の独白が聴こえてくる。バスルームにもマイクがセットしてあるらしい。俺はそれを聞きながら、もう何度目かの息苦しさを感じた。
 彼女は悪くない。何ひとつ。せめてその事を伝えたいが、フロアを隔てるガラス板は厚かった。


               ※


 沙綾香の敗北が確定しても、十番勝負は続く。
 6人目のレジャナルドは、相も変わらずノリが軽い。壁に手をつかせた沙綾香に後ろから挿入し、クリトリスや乳房を刺激しながら何かを囁く。傷心の沙綾香にとっては、鬱陶しくて堪らない相手だろう。
「触んないでって、前も言ったじゃん!!」
 沙綾香はレジャナルドの手を払いのけ、鋭い眼で睨みつける。だがレジャナルドは懲りない。モニターに映る前回の映像では、レジャナルドが射精するまでそのやり取りが繰り返されていた。だが今は、やや展開が違う。
「あっ……はああ、あ!! あっ、あはあぁっ…………!!」
 口からは熱い吐息が吐かれ、瞳が力を失い始めた。クリトリスを弄られるたびに上体が起き上がり、壁についた手も少しずつ位置が下がってくる。
 そして、なんといっても気持ち良さそうなのが腰だ。レジャナルドがクリトリスの弄りをやめ、両手で抱きすくめながら犯せば、内股に閉じた長い脚がブルブルと震える。太腿を引きつけながら深く突けば、全身を痙攣させながら視線を上向かせる。
「気持ち良すぎて、腰が抜けそうだろ?」
「はぁ、はぁ……んなわけ、ないじゃん…………」
 沙綾香はレジャナルドの問いを否定するが、本当に感じていないモニター内の映像と見比べれば、上半身も下半身も快感でのたうっているのがよく分かる。
「そうか? だったら、シャンと立ってみろ」
 レジャナルドはとことん性格が悪い。沙綾香がかろうじて壁に寄りかかっているのを承知で、その両腕を絡めとり、強引に直立させる。
「あ、やあっ!! ……く、はああ゛、あはああぁぁっ!!!」
「どうしたどうした。腰が踊ってるぜぇ、気持ちよさそうによお!!」
 レジャナルドの言う通り、沙綾香の腰は前後左右に揺れていた。
「ハハハッ、まるでストリップだな!!」
「ああ、色白でスタイル抜群のストリップ嬢だ。たまんねぇぜ!!」
 黒人連中が手を叩いて笑い、沙綾香の顔が羞恥に染まる。そんな環境の中、彼女はまた絶頂へと追い込まれた。
「あ、……はっ!はァっ……!!」
 歯を食いしばっての絶頂。膝を擦り合わせるような脚の形といい、くっくっと持ち上がる尻肉といい、相当に気持ちよさそうだ。
 グチャグチャと水音を響かせながら、沙綾香は立ったまま絶頂させられつづけた。1時間近くはそのままだっただろう。だが、レジャナルドが深い溜息と共に怒張を引き抜いても、それは終わりを意味するわけじゃない。
 腰砕けでへたり込んだ沙綾香の前に、半勃ちのものが突き出される。しゃぶれ、ということだ。沙綾香は不服そうにしつつも求めに応じた。
「う゛っ、う゛えっ……!!」
 苦しそうな声を上げながらの奉仕。レジャナルドが後頭部を押さえ、深く咥えさせているせいだ。
「おーっ、カタくなってきた。自分の絶倫ぶりが恐ろしくなるぜ!」
 えずき汁と共に吐き出された怒張は、奴の言葉通り、若々しい漲りを取り戻している。二回戦どころか、三回戦でも四回戦でもやれそうだ。
「ちょっと、休ませて……。もう、勝負する意味なんてないでしょ!? い、イキすぎて、敏感になってるからっ……!!」
 正常位で犯されながら、沙綾香は何度も音を上げた。それでもレジャナルドは腰を止めない。常に軽薄な笑いを浮かべ、時には沙綾香の頬を張りながら、自分本位の強姦を時間の限り繰り返す。

 こうした意地の悪さは、7人目のトラバンも同じだ。
 一周目は沙綾香の羞恥心を煽るべく、左腿を上げさせ、結合部が鏡に映り込むように犯していた男だ。巨大モニターの映像には、その時のあられのない姿が大写しになった。
「う゛っ!? や、やだっ、あんなの映さないで!!」
 モニターの映像を見て、奉仕中の沙綾香が悲鳴を上げる。だが数分後、彼女は頭上に映る恥辱を再現させられた。
 壁に寄りかかったまま、足を180度近く開かされ、真横から突き込まれる。その光景は過去のものと同じだ。ただし、今回は違うことがある。以前はただ極太を出し入れされているだけの被虐映像だったが、今回は、それに伴って大量の愛液が溢れている。体位が体位だけに、内腿の濡れ光っている様子は丸見えだ。
「いや、いやあ見ないで、見ないでええええっ!!!」
 沙綾香の絶叫も必死さが違う。トラバンは、そんな彼女をさらに追い詰めた。髪の毛を引っ張って顔を上げさせ。犯しながら首を絞め。そうして散々に嬲ったうえで、膣内射精までを公開する。
「やめてええええーーーーっ!!!」
 響き渡る哀願は、痛々しかった。
 一方のトラバンは、射精しても一呼吸しか休まない。嘆く沙綾香を跪かせ、口での奉仕を強いる。仁王立ちのまま後頭部を押さえこみ、深く咥えさせるやり方だ。
「ごえっ、おえ゛っ……」
 当然沙綾香は、ひどい声を漏らすしかない。嘲笑が巻き起こり、その中でトラバンのペニスは暴力的な反りと張りを取り戻していく。すると今度は、それで思いっきり膣を犯されるんだ。望まぬ強姦でも、ガスで発情した身体はいずれ絶頂する。いくいく、と涙ながらに叫ぶ沙綾香を、また嘲笑が包み込む。そしてその後は、また泣きながらのフェラ────そんな光景がうんざりするほど繰り返された。
 地上で普通に暮らしている女子高生なら、この体験ひとつで自殺を考えてもおかしくない恥辱。だが、これですら『最悪』じゃない。次は、とうとう8人目。ここからの3人のペニスは、トラバンまでの7人が可愛く思えるレベルなんだ。


               ※


「こ、こんなの……無理……」
 沙綾香は力なく首を振る。その視線の先にあるモーリスの怒張は、本気で人間のペニスには思えない。
「だったら、このままブチ込んでやろうか? 潤滑剤ナシでよ」
 モーリスにそう言われると、沙綾香は渋々ながらに口を開く。絶叫する時の開き方だが、それでも亀頭を口に含むことすら叶わない。
「あ゛! ……もが、あ゛っ!!」
 何度かの試行錯誤の末、顎が引き攣るほど大口を開けて、ようやく亀頭を口に含むことに成功する。とはいえ、そこがせいぜいだ。数秒後、彼女は慌てた様子で顔を引いた。
「あ゛っ! だ、だめ、アゴが外れちゃう!!」
 泣きそうな顔で訴える沙綾香。だがモーリスは首を振る。結局沙綾香は、壮絶な表情を晒しながら何度も亀頭を咥え込むしかない。
 深く咥えているわけじゃないが、無理をしているだけに唾液の量は相当だ。ついでに言うなら、音もひどい。
「が、ごがぁっ……ごあ゛ぁ、ごお゛ッ!!」
 えずき声は、前半の連中に奥まで咥えさせられていた時よりよほど濁っている。しかも喉奥からは、妙な音がずっと続いている。
「ははは、テメェの唾でうがいしてるみてぇだな。声も凄えし、顔も凄え」
 モーリスの方はひどく満足げだ。実際気持ちがよかったらしい。しばらく後、驚くほどのえずき汁に塗れながら抜き出された怒張は、更に太さが増していた。もはや作り物としか思えないサイズだが、それは断じてハリボテじゃない。圧倒的な張りと硬度を備えた、女殺しの肉棒だ。

 ロドニーがリモコンを操作する。一周目の光景がモニターに映し出された。

『いたいいたいいたいいたいっ!!!!』

 モニターから悲鳴が響き渡る。涙まで流して、本当に辛そうだ。その下で犯される現在の沙綾香も、一見すると同じく辛そうに見える。壁に額を擦りつけ、目を固く瞑り、足などはつま先立ちになり……どれを見ても苦痛のサインとしか思えない。
 だが声を聴けば、その印象は180度変わる。

「んあああッ! お゛ッ、おかしくなるっ、おかしくなるううう゛っ!!」

 こちらもやはり、血反吐を吐かんばかりの絶叫だ。ただし、痛みがそのまま快感に入れ替わったような。
「クククッ、すげぇな。バットの先みてぇなチンポ突っ込まれて、ヨガってやがんぜ」
「しかも、マン汁まで垂らしてな!」
「やっぱ、あれってマン汁か? だとしたら量やべえな、ずっと垂れっぱじゃねえか」
「デカけりゃデカいほど感じちまうんだろ。キメセクって怖ェわ」
 俺の後ろで、セキュリティ連中がざわつく。その落ち着きのなさは、セックスのインパクトが強い証拠だ。
 あれほどスレンダーな子が、“バットの先”を捻じ込まれて快感で叫ぶなど、普通では考えられない。悪い夢だと思いたい。だが、夢にしてはあまりにも生々しすぎる。

 沙綾香は、叫び疲れ、声が枯れてからも犯され続けた。壁にしがみつき、弓反りになった背中をガクガクと上下させる様は、異常としか言いようがない。
 一時間が過ぎた頃、沙綾香はもう壁にしがみついてすらいなかった。高級ホテルを思わせる床に、腹這いになる格好だ。それでもモーリスはセックスをやめない。這いつくばる沙綾香の尻を掴み、開いた足の間に腰を打ち付ける。
「あああああ゛っ、イグゥッ、イッッグウウゥウッ!!!!」
 沙綾香から悲鳴に近い声が上がった。声も凄まじいが、顔も普通じゃない。歯肉まで覗くほど歯を食いしばり、上空を睨みつけるような表情。おそらく彼女は、何も睨んではいない。いつか見た、快感の海で溺れまいと顔を上げる様……あれに近い。

「ああして臍の下辺りを地面に密着させながら膣を犯すと、衝撃の逃げ場がないんですよ。それはつまり、快感を余さず膣内のスポットで受け止める事を意味します。ただでさえ、クスリで感じやすくなっているところでそんなことをされれば……」
 端塚はそう解説しつつ、面白そうに眼を細める。
「んぎぃいいいっ!!!」
 また、すごい声がした。見ると、沙綾香が這いつくばったまま、脹脛を隆起させている。足指の力の入り具合も相当だ。
「達しましたね。それも、相当深く」
 端塚が淡々と呟く。その最中、沙綾香の頬を涙が伝った。
「あーあー、泣いちまって!」
「ま、あのレベルの深さで絶頂しちゃあなあ。ビックリしちまったんだろ。脳もプッシーも!!」
 黒人共がそれを目敏く見つけて騒ぎ立てる。モーリスなどはまるで英雄扱いだ。奴は嬉々として沙綾香を犯しまくる。沙綾香を這いつくばらせたまま、さらに20分。片足を肩に担ぎ上げ、開いた脚の間に挿入するやり方で30分。
「2時間、そこまでだ!」
 ようやく、手越が終わりを告げる。その頃にはもう、沙綾香の反応はかなり薄くなっていた。声は枯れてヒューヒューという呼吸音ばかりになり、身体の反応も担ぎ上げられた足指が蠢く程度。だが彼女は、最後の最後まで快楽を味わっていたようだ。
「あ゛! …あ゛、あ゛っ!!」
 モーリスが怒張を引きずり出す間に、引き抜かれ始め、半ばほど、抜け出た瞬間と3度にも渡って、枯れた声で喘いでいたんだから。
 やるだけをやったモーリスの怒張は、完全な勃起状態ではないはずだ。実際、最初は斜めに反り立っていたものが、今や股の間にぶら下がっているだけだった。それなのに、サイズは依然として凶悪だ。“バットの先”と形容されるに足る太さを備えている。
 それを女性器に叩き込まれるというのは、どんな感覚なんだろう。そう思って沙綾香の顔を見ると、彼女は大股開きのまま痙攣する下半身を、呆然とした様子で見つめていた。その表情でハッキリとわかる。モーリスとのドラッグセックスが、信じられないほど気持ちよかったんだと。


               ※


 9番目の相手は、元力士のダリーだ。
 ダリーの剛直は、長さこそモーリスより短いが、あまりの太さにカリ首が埋没している。奴はそれを、沙綾香に無理矢理咥えさせようとした。
「無理っ、無理だって! さっきのだって入んなかったのに!!」
 沙綾香は顔を振って嫌がるが、ダリーはそんな彼女の顔に怒張を擦りつけ、隙あらば口に入れようとする。怒張のサイズは沙綾香の顔半分を覆うほどだ。普通なら入るはずがない……が、結局はダリーの力づくで、それが成し遂げられる。
「うぶっ、もごえ゛ええ゛え゛……っ!!」
 真上から怒張を押し込まれ、沙綾香の喉がボコリと膨れ上がる。その苦しさは相当なものらしく、沙綾香の両脚はベッドの上で激しく暴れた。だが、ダリーは口への抜き差しを何度も繰り返す。沙綾香がどれだけ暴れても、ひどいえずき声を漏らしても。
「おい、その辺にしとけ。そのまま吐いたら、ゲロで窒息しちまうぞ!!」
 さすがに危険と見たロドニーが止めると、ダリーは薄ら笑みを浮かべながら腰を浮かせる。
「ごろろ゛あ゛っ!!!」
 怒張が引き抜かれる時の声も、またひどい。
 口内から垂直に抜けた剛直は、見たこともないほど濃い粘液に塗れていた。まるで納豆を延々とかき混ぜた時に引く糸のようだ。千代里のディープスロート特訓でも、あそこまで粘ついたえずき汁はなかった。
 喉奥に押し込まれたことで、極太の怖さを実感したんだろうか。
「やだ、待ってっ!!」
 まさにこれから後背位で挿入されるという段階になって、沙綾香は嫌がりはじめた。

『いや、いやいやっ!! 本当にやめて、せめて休ませて!! あそこがヒリヒリして痛いの!!!』

 モニターの中でも、沙綾香がにじり寄るダリーを拒絶していた。
「ったく、嫌嫌ばっかりだなぁオメーは!」
 ダリーはそう言って、逃げようとする沙綾香の尻肉を掴み、尻を高く上げさせて挿入を試みる。メリメリと音もしそうな、壮絶な挿入。一周目と同じ展開だ。
「あああああっ!!!!」
 沙綾香は顔を歪ませて悲鳴を上げる。さっきまでの8戦と比べても、挿入時の太腿の痙攣が一際ひどい。もっとも、太さが最大である以上は当然のことだ。バットの周りに、さらに本革を巻き付けたような直径の怒張。そんなものを性器に捻じ込まれて、足が震えない人間なんていないだろう。
「相も変わらずイイ締まりだぜ。俺ァ、ガキを犯ってパクられたんだがよ。そん時より具合がいいってなあ大したもんだ!」
「なっ……! そんな事、よく平気で言えるね、このクズ!!」
「ほう、俺はクズか。ならそのクズに犯されて喜んでるオメーは、いったい何様なんだろうなあ!?」
 ダリーはそう言って、激しく腰を打ち付ける。這う格好の沙綾香から、苦しそうな声が漏れた。
 ダリーが力士然とした巨体をぶつけるたび、沙綾香の尻肉が波打つ。彼女に無駄な肉などほとんどない。それが波打つ衝撃となると、どれほどのものだろう。
「あっ!あ゛、あ゛っ!あ゛っ!あ゛っ!!」
 沙綾香からは、突かれるたびに悲鳴が上がった。涙か唾液かが前方に飛び散り、さらには舌まで突き出される。まるで巨大なハンマーで横殴りにされているようだ。
 そんな状況、辛いに決まっている。苦しいに決まっている。普通であれば。
 だが、今の沙綾香は普通じゃない。ガスで発情しきっている。よほどの苦痛でも快楽にすり替わるのは、モーリスとのセックスで実証済みだ。
「お゛っ、あ゛、あ゛、あ゛!! お゛っ、お゛……あ゛、あ゛、あ゛っ!!」
 沙綾香の喘ぎ声は単調だった。そして、一音の例外もなく濁っていた。太さがありすぎる上に突き込みの圧が凄まじいから、満足に喘ぐこともできないんだろう。圧倒的な質量が骨盤に叩きつけられ、その反射として濁った声が腹の底から漏れている……多分そんなところだ。
「汁がドバドバ溢れてくるじゃねえか。お気に召したらしいなあ、俺みてぇな“クズ”に犯されんのがよ!!」
 モーリスはゲラゲラと笑いつつ、突き上げのペースを速めていく。
 モーリスは肥満体の割にスタミナがあった。呼吸の乱れや汗はひどいが、とにかく腰が止まらない。さすがは元力士というべきか、それとも欲望の成せる業か。
「うあ゛ッ、がはっ! あはっ……お゛!」
 沙綾香がまた、骨盤からぶるっと震え上がった。表情の変化が目まぐるしい。口を半ば開いて、理性を感じさせない表情をしていることもある。あるいは熱いスープでも冷ますように、口を細めて息を吐き出していることもある。
「気持ちが良さそうですねぇ。高波のような快楽に、翻弄されている顔だ」
 端塚が呟いた一言に、ぎくりとする。俺もまさに今、同じことを考えていたから。

 結局ダリーは、時間いっぱい沙綾香を責め抜いた。
 膝立ちにさせたまま。
 両手首を引き絞っての後背位で。
 沙綾香の上体が完全に崩れてもなお。

「くあーっ、ノドが乾いてしょうがねぇぜ!!」
 2時間経過後、旨そうにコーラを煽るダリーの横で、沙綾香は身じろぎひとつしない。顔を横向けて倒れ伏したまま、全身を痙攣させるばかりだった。

               ※

 十番勝負も、いよいよ最後。十戦目を乗り切れば終わりだが、当の沙綾香には、そんな楽観的な考えなど浮かばないだろう。これまでの中でも最大のサイズを誇る、タイロンの逸物を咥えさせられているんだから。
「もお゛っえ゛!!!」
 沙綾香の口は、明らかに限界以上に開いていた。鼻頭がほぼ真上を向くほどの開口なんて、日常生活ではありえない。
 と、紗耶香が大慌てで怒張を吐き出し、下を向いた。直後、びちゃっと音がする。
「あーバカ、吐きやがった」
 ロドニーが顔を手で覆い、大仰に嘆く。
「く、咥えるのは無理! ホントに顎、外れちゃう……!!」
「ったく、しょうがねぇな。なら舐めて濡らせ」
 顎を押さえて叫ぶ沙綾香に対し、タイロンは意外にも寛容だ。サイズがサイズだけに、口に含むことなど期待していないのかもしれない。
 沙綾香は嫌嫌ながらも、怒張に舌を這わせはじめる。舐めるという行為ひとつとっても、腕のような逸物相手となれば大変な作業だ。根元から亀頭を舐め上げるために、首を180度回さなければならない。
「裏スジも舐めろ」
 そう命じられ、怒張を持ち上げる動きの中にも重量感がある。
 

 やがて、怒張が隅々まで唾液に塗れると、過去映像を背景にしてセックスが始まる。

『いやあああっ、やめてっ! 無理、無理ぃっ!! 裂けるっ!!』

 映像の中では、両手首を鷲掴みにされた沙綾香が、身も世もなく泣き喚いていた。タイロンはその映像を背にしつつ、沙綾香の膝裏を掴み、中腰の体勢でメリメリと挿入していく。怒張のサイズがサイズだけに、ショッキングすぎる画だ。
「ああああ無理っ、無理いいっ!!!」
「おー、暴れる暴れる。すげーな、俺をグラつかせるとか。ま、完全には崩れないけどよ。デッドリフト450上げる俺を倒したきゃ、もっと本気で抵抗しろ」
 明らかに無理のある挿入。その無理を通すために、タイロンは相当な力を篭めているらしい。その証拠に、奴の足裏と沙綾香の背中は、深々と寝台に沈み込んでいる。
「あがああぁっ、深いっ!! あそこが、潰れっ……!!」
 沙綾香の声も悲痛そのものだ。
 だが、もう俺にも解っている。今の彼女にとっては、苦痛も快楽なんだと。
 タイロンの腰振りと同じペースで、ぶちゅっ、ぶちゅっ、という音が聴こえはじめた。斜めになった沙綾香の下腹部を、透明な何かが流れていく。
「こいつ、もうプッシーがヒクついてやがる。膣の奥もカリにむしゃぶりついてきやがるし」
 タイロンが嬉しそうに呟く。対する沙綾香は、必死に声を殺していた。両手でシーツを掴み、顎を引いて。だが、その我慢も長くはもたない。そのうち呼吸が早まり、あ゛っ、あ゛っ、という喘ぎも漏れはじめる。本当に苦しそうな──つまり、本当に気持ちよさそうな喘ぎ。
「あっ、ひいっ! ああああっ……くいくっ!! あ゛あ゛、あっあ゛ッ!! い、イッ………グぅううっ!!」
 やがて沙綾香は、顔を歪ませながら絶叫した。足指の強張り具合といい、腹部や太腿の痙攣といい、演技ではないと断言できる絶頂だ。
「もうイッたのか。子宮ガンガン突かれて感じちまったか? だがな、こんなもんはまだステージ1だぜ!」
 タイロンは膝裏を離し、代わりに足首を掴んで前へと押し倒す。沙綾香の顔の横に来るまで。
「っは、うっ!? ぃ、きぃいいいーーーーっ!!」
 金属板を引っ搔くような悲鳴が上がった。タイロンの怒張を『まんぐり返し』の恰好で受け入れるのが辛いようだ。だが、タイロンは容赦しない。
「プレス体位の完成だ。こうされんのがヤバイって本能的に察したのか、必死で逃げようとしてたけどよ。何が何でも、さっきの時点で抜け出しとくべきだったな。この体位んなったら、全弾ポルチオ直撃だから。腰抜けて、もう抵抗なんてできねーぜ」
 奴はそう言って、深々と腰を打ちつける。
「あああああ痺れるっ痺れるっ!! んあああだめっ、腰が重いっ深いっ、深いいいっ!!! ひいいいい なにこれなにこれなにこれっ!!沙綾香のカラダ、どうなってるのっ!!!」

 そこからしばらくタイロンは、責めに専念した。ぶちゅっぶちゅっという音を響かせながら、愛液で満ちた割れ目を蹂躙し続けた。
「ひいいっ、ひいッぐ……!! いっ、ぁ゛、あ゛……かはっ、うん゛ーーっ……ああああ゛っ、っひぃグっ、イグ、イグっ……いっちゃああうっっ!!」
 沙綾香の喘ぎは雄弁だ。圧迫に苦しみ、激しく喘ぎながら、秒刻みで絶頂を宣言している。タイロンはそんな沙綾香を見下ろしながら、射精の態勢に入る。
「おおおお、行くぞ……っ!!」
 男の絶頂はわかりやすい。沙綾香を組み敷いたまま、タイロンが首を反らす。
「んう゛っ!!」
 沙綾香の悲鳴が、中出しのタイミングを周囲に教える。そしてこのタイロンもやはり、一度の射精では止まらない。まだ膣内に射精している最中に、腰をカクカクと動かしはじめる。その動きは刻一刻と早まり、精液を溢れさせながらの猛烈なピストンに変わる。
「はあ、あっ、あああ、あああっ!! は、あぁっあ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、ひあ゛あああああーーっ!!!」
 沙綾香の喘ぎも、列車が走り出すようなペースで激しさを増していく。今やその性感は、完全にタイロンの操縦下だ。
「相変わらずスゲェ声だな。この体位だと、膣のスポットを全部いっぺんに刺激されるから堪んねぇだろ? もっとも、俺ぐらいのサイズがなきゃ無理な芸当だがな!!」
「ああああ゛っ!! ヤバっ、きもちいっ、きもちいダメええ゛え゛っ!! え゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!! ダメこれっ、ヘンになる、ヘンになっちゃうううっ!!!」
「ああ、変になっちまえ!」
 途中からのタイロンは、前傾姿勢をさらに深め、ほぼ完全に沙綾香に圧し掛かっていた。そうして体重を篭めたまま、最奥をグリグリと刺激されれば、沙綾香の反応はいよいよ劇化する。
「はあ゛あ゛あ゛っ!! イってる゛、ずっとイってる゛っ!! お尻もあそこも、ヒクヒクしてとまんないっ、イキすぎてこわい!!」
 顔を歪め、足の十本指すべてを強張らせながら悶え狂った果てに、彼女の愛らしい尻からぶうっと音が鳴った。
「あっ!!」
 沙綾香が目を見開き、一秒後、怒涛のような大笑いが場を埋め尽くす。
「ぎゃっはっはっはっはっ!! おいおい勘弁しろよ、笑い死にさせる気か!?」
「いくら気持ちいいっつっても、おま、屁をっ、屁をこくんじゃねぇよ!!」
「はははははっ!! 恥知らずなジャパニーズもいたもんだぜ!」
 鬼の首でも取ったような騒ぎだ。桜織が放屁した後の光景を思い出させる。
 あまりにも立て続けに膣で絶頂させられ続けると、肛門が緩んでしまうのかもしれない。
 そしてこの出来事が、決定的に彼女の気力を削いだらしい。
「だめええッ、もうイキたくないっ、もうイケないい゛っ! センセ、センセぇっ! お願いっ、助けてえええええーーっ!!」
 沙綾香はとうとう泣き出し、俺に助けを求めはじめた。
「沙綾香、沙綾香あっ!!」
 俺も必死に叫び返すが、状況は何も変わらない。
「先生は上にいるから無理だぜ。で、お前が今からいくのも上だ。天国ってとこでなあ、最ッッ高だぜえ!?」
 タイロンはそう言ってシーツに両膝を埋め、総力で膣奥を潰しにかかる。
「やあああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!
 沙綾香は絶頂しながら痙攣する。タイロンが怒張を抜き出してからも、その痙攣は続いていた。
「あお゛っ、ああお゛っ、あ、あはぉおう゛っ……ああああア゛ッ!!」
 もう何の刺激もないはずなのに、M字に開いた足でベッドを踏みしめ、腰を上下させながら潮を噴く。
「はっ、こりゃ筋金入りのビッチだな。イッた余韻でイキやがった」
 タイロンはそう言って怒張を扱き、沙綾香の顔に精を浴びせかける。沙綾香は、それに反応しない。完全に白目を剥き、口を半開きにして失神しているからだ。
「はっ、アワ吹いてやがる。10連敗目に相応しい最後だな!」
 手越の言葉に続き、下卑た笑い声が木霊する。

 吐き気を催すような、光景だった。



               ※



 沙綾香は、ベッドの上でしばらく放置された。その傍らに百合が腰掛け、軟膏やオイルの瓶を並べていく。沙綾香が意識を取り戻し次第、膣粘膜のケアをするつもりなんだろう。その物静かな佇まいは気品に満ちている。だが、そんな彼女にはどす黒い視線が向けられていた。
「ひゅう、ミステリアスな女じゃねえか。そそるぜ!」
「よお姉ちゃん、こっち来いよ! 気持ちいいことしてやんぜ!」
「オウ、朝までタップリ可愛がってやるぜ!」
「“中途半端に”しかイッてねえせいで、ムラムラしてたまんねーんだ!!」
 例の黒人共だ。
 十番勝負が終わった後、連中は部屋の右側……鉄格子の嵌め込まれたエリアへと入っていった。そこが奴らの待機場所なんだろう。だが、そこで自由に過ごしながらも、連中には落ち着きがなかった。ハードセックスの後で気分が高揚しているせいかと思ったが、どうやら逆だったらしい。
 呆れる絶倫ぶりだ。連中は全員、ガラスのコップがいっぱいになるほどの精子を沙綾香の膣に注ぎ込んでいた。普通そんなに出せば、普通なら精も根も尽き果て、しばらくはセックスの事など考えたくもないはずだ。だが、奴らはまだ飢えている。2、3日断食した人間がステーキを見るような目で、白衣姿の百合を視姦している。
「ったく、マジで獣だな。たかだか数時間の禁欲で目ェ血走らせやがって」
 手越は大きく溜息をつき、百合に視線を向けた。
「お前が相手をしろ」
 百合は驚いた様子で顔を上げる。
「私が……ですか?」
「そうだ。お前の後輩が不甲斐ないせいで、あいつらは誰一人満足できてねぇ。後輩の尻を拭うのは、先輩の役目だぜ」
 手越にそう迫られると、百合は一瞬黙りこむ。
「……承知しました」
 結局は受け入れるものの、その一瞬の沈黙は躊躇いの証だ。もっとも、あれほどの激しいレイプを20時間も見せつけられて、臆さない方がどうかしているが。

 手越が鉄格子の扉を開き、百合を中に進ませる。
「じゃあな、朝まで楽しめ」
 その言葉と共に、再び鍵が掛けられた、その直後。
「っしゃああああッ!!! 女、オンナあっ!!!!」
「はッはッはッはッはッは、こりゃあご馳走だぜ!!!」
 10人が、まさしく獣のように百合に飛び掛かる。
「っきゃ!」
 小さな悲鳴が上がった直後、厚い布を引き裂く音がする。さらに怒声と悲鳴が聞こえ、何か揉みあいが始まったようだが、鉄格子が邪魔でいまいち何が起こっているのか解りづらい。
「おっと、見えねぇんじゃ面白くねぇな」
 ロドニーがそう言ってリモコンを操作すると、モニターに映像が映し出された。
 4つに分けられた監視カメラの映像だ。百合と調教師連中の姿が、それぞれ別の角度から映し出されている。
 百合は、早くもボロボロだ。ズボンとショーツをすでに取り去られ、雑に床へ捨てられている。上着も左右から引っ張られて肩部分の縫い目がほつれ、ブラジャーが露出している。そしてまさに今、そのブラジャーさえも千切り取られ、形のいい乳房が零れ出した。奴隷調教の名残だろうか、乳房の先端にはピアスが光っている。
「はっはっは! こいつ、ニップルピアスなんて着けてやがる!」
「おおっ。クールな振りして、イイ趣味してんじゃねぇか!!」
 野次と共にピアスを引っ張られ、百合が片目を閉じる。とはいえ、彼女は落ち着いていた。さすがに調教を受けただけはあり、屈強な黒人に囲まれても取り乱す様子はない。
 この時点では。
「おーし、ヤるか!!」
 ジャマールが声を張り上げると、10人の表情に笑みが満ちる。陰湿で冷酷な、犯罪者の顔だ。

「ゴオオオエエエ゛ッッ!!!!」

 フロア中に、凄まじいえずき声が反響した。いきなり二本の怒張を口に突っ込まれた百合の声だ。
「えっ!? な、なにっ!?」
 沙綾香が目を覚ます。彼女はまず音の出所である鉄格子の部屋に目をやり、眉を顰めた。彼女の位置からでは、大柄な黒人が円陣を組んでいるようにしか見えないだろう。
「モニターを見てみな」
 ロドニーがそう声を掛けると、沙綾香はゆっくりと左を向き、目を見開いた。
 4画面のモニターには、百合の身に降りかかる悲劇が大々的に映し出されている。
 右上の画面では、二本の剛直に喉奥を突かれる口元が。
 左上の画面では、膣と肛門を極太で貫かれる下半身が。
 右下の画面では、床から視点で白い身体の揺れる様が。
 左下の画面では、俯瞰視点で部屋の全景が。

「せ、先輩……!?」
「ああ。オメェがあの連中を満足させられなかったばっかりに、尻拭いの真っ最中だ」
「そ、そんなっ!!」
 手越の言葉で、沙綾香の顔が青ざめる。そしてそんなやり取りの最中にも、百合の受難は続いている。
「ゴエエエッ、ゴエッ、むゴォおう゛ッ!! ウオォッ、ごヴぇあオ゛ッ!!」
 常人の倍ほどもあるペニスを代わる代わる口に突っ込まれ、百合の顔は早くも変貌していた。細く開いた目からは涙が伝い、開いた鼻の穴からは鼻水が垂れ、その下にある口からは常に何かの液が滴っている。下半身にしても、上下から剛直を叩き込まれ、引き締まった尻肉が全力で痛みを訴えている。下から視点や全景の映像では、むちりとした大人の魅力溢れる脚が、駄々をこねる子供のように激しく踏みかえられているのも見て取れる。

「ひひひっ。いつ見てもあの開幕のラッシュはやべえな。まるで性欲の津波だ」
「ああ。黒人のデカマラであんな真似されりゃ、どんな女でもアワ食うよな」
「しっかし、発情した猿みてぇな群がりようだな。しかも全員、バカの一つ覚えでゴリ押しだ」
「案外、ああいうシンプルなのが一番きついかもしんねーぞ。輪姦ってのは、相手を羽交い絞めにしてボコるようなもんだからな。そういう時ゃ、下手に小細工するより、殺意剥き出しでブン殴る方が効くんだ」
「ま、どのみち地獄だろ。なんつっても、あのレイプ魔共のオモチャにされるんだ。どいつもこいつも馬鹿でけぇチンポの上に、女の泣き顔が好きなサディスト揃いときてやがる。そんな連中と朝まで過ごして、正気でいられるとは思えねぇ」
 セキュリティ連中が、モニターを眺めながら嬉々として語り合っている。悪趣味な会話だが、地獄という表現はその通りだ。
「……ああいった光景を観ていると、つくづく思います。純粋な暴力の前では、育ちも、品格も、知性すらも、何の価値もないのだと。女の身でああなれば最後、碌な抵抗もできず、ただ壊れゆく他はない」
 セキュリティ共の会話を受けてか、端塚もそんな言葉を漏らす。
 女に限った話か。男でも、あんな状況には耐えきれない。むしろ大半の男が、彼女達より早く音を上げるだろう。

 モニターの中では、ジャマールが百合の髪の毛を鷲掴みにし、単独で怒張を咥え込ませていた。
「あっ、んんんんっ……!」
 女学院の生徒に愛されたクールな美貌は、口が開くにつれて崩れていく。
「んごぉっ……ご、おっ!! おむ゛っ、んんっ……んぼっ、ごぶっ!!」
 ジャマールは深く怒張を咥え込ませ、髪を掴んで強引に頭を前後させる。その後方ではドミニクが射精に至り、入れ替わりでモーリスが肛門へと怒張を宛がう。
 ただの責め役交代……じゃない。ペニスのサイズ順で言えば、ドミニクは下から3番目、モーリスは上から3番目。バットで例えるなら、中ほどと先端部ほどに太さが違う。
「う゛っ、お!? ん゛っん゛、んお゛、お゛……っ!!」
 モーリスのペニスが挿入されはじめた瞬間、百合の様子が一変する。無理、やめて、と叫ぶように。だがモーリスは挿入をやめない。腰をしっかりと掴んで、入るところまで沈めきる。
「おおっ、薄皮越しにカリの感触が伝わってくんぜ。さすがに太ぇな!」
 仰向けに寝そべって膣を犯すマーキスが、驚きの声を上げる。
「ケツもいい具合だ。二穴は正直やりづれぇが、征服感が半端ねぇ」
 モーリスはそう言って、腰を動かしはじめる。抜く時には肛門が完全に捲れ上がり、挿入と共に押し込まれていく。そんな動きを伴うピストンを、黙って耐え凌げるはずもない。
「うむうう゛っ!! おぶっ、んぶぅうう゛う゛う゛っ!!」
 百合が呻きながら目を細める。すぐに目を見開く沙綾香に比べれば、幾分大人びた仕草だ。とはいえ、余裕はない。3穴を激しく蹂躙されるうちに、どんどんと眉が垂れていく。
 逆に、蹂躙する側は楽しげだ。
「へへへ、そろそろイッちまいそうだぜ……」
「俺もだ。こうなりゃ、3人で同時に射精してやっか!」
「そりゃ俺もってことか? ま、その気んなりゃあいつでも出せっけどよ!!」
 そう示し合わせ、それぞれが射精に向けて腰の振りを速めていく。
「お゛っく、んぉおッお゛ッ、ほお゛お゛っ……!!」
 百合の苦悶など歯牙にもかけず、ついに3人は息を合わせて絶頂する。
「んお、お゛っ!? く、ぅうおっ、んんぉおお゛お゛お゛お゛ッ!!!」
 喉を絞められ、尻肉を掴まれ、太腿を抱え込まれての三穴射精。百合は濁った声を漏らして苦しむ。調教師共はそんな百合を見下ろしながら、『してやったり』という笑みを浮かべていた。
「うーし、次は俺が口だ!」
「なら、俺はプッシーを使わせてもらうか!」
 先の3人が場所を譲り、次の黒人が百合を抱く。今度は下がアンドレだ。
「んんんっ……!」
 寡黙なアンドレが膣への挿入を果たすと、ダーナルが逸物を扱き上げながら百合の背後についた。そして腰を屈め、怒張の先で狙いを定める。膣が埋まっている以上、狙う先は肛門…………じゃ、ない。奴が亀頭を押し付けるのは、すでにアンドレが挿入している割れ目だ。
「く、あっ!?」
 ダーナルが腰を押し進めると、さすがの百合も目を見開いて振り返る。
「ひいいいっ、痛い、痛いいいいっ! そんなに太い物を、2本は無理ですっ!!」
「嘘つけ、気持ちいいんだろうが。こんな太ぇので二本挿しなんて、贅沢だぜオメーも!」
 百合が懇願しても、ダーナルは容赦なく腰を前後させる。アンドレもそうだ。限界まで拡がった膣の中、二匹の黒い蛇がのたうち、絡み合う。ぎゅぷっ、ぎゅぽっ、と凄まじい音を立てて。
「どうか、どうかどうか、ペースを落としてください……お願いします、お願いですからっ!」
 さすがは名門校の生徒会長なだけはあり、狂乱状態の中にあっても流暢な英語を使う。わずか一言の中で『please』を6回も繰り返す、切な哀願だ。だが、調教師連中は聞き届けない。それどころか、『黙れ』と言わんばかりに口を剛直で塞いでしまう。しかも相手は、最大のペニスサイズを誇るタイロンだ。
「もがっ……!!」
 大口を開けても亀頭すら入らない、圧倒的なサイズ。百合の額を汗が流れていく。
「お前の後輩には拒絶されちまったからな。先輩であるお前に責任を取ってもらうぜ」
 タイロンはそう言って百合の後頭部を引き付ける。
「そ、そんな!!」
 沙綾香が悲鳴を上げる中、有無を言わせぬディープスロートが始まった。
「も、ごぉっ……。う゛えっ、ううう゛お゛えっ!!」
 百合の口からは、何度も嘔吐を思わせるえずきが漏れた。しかし彼女は、着実にタイロンの怒張を飲み込んでいく。現時点ですでに、沙綾香が吐き出した位置よりずっと先だ。
「ほー、調教済みってのは伊達じゃねぇな。黒髪の方より、よっぽどノドが開くじゃねぇか」
 タイロンも百合の喉奥耐性に驚いているようだ。
 だが、そうはいっても限界はある。ある程度の深さまで飲み込んだところで、百合の動きが止まった。目を見開いたまま硬直している様子は、普通じゃない。だがタイロンは、あえてその状態で腰を前後させる。まるで膣でも犯すように。
 いくら特訓を受けていようと、タイロンのサイズでそんな事をされては耐えきれない。それまで従順だった百合が、ここで初めて相手の膝を手で押しのける。それを見てタイロンは逸物を引き抜き、百合の顔を横向けさせた。直後、百合の口から吐瀉物が吐き零される。
「うお゛ろえ゛っ…………!!」
「やっぱり吐く寸前だったか。ギリギリまで我慢するとは、見上げた奴隷だな」
 タイロンはそう評価しつつも、百合の頭を掴んでまた咥えさせる。
「オオエ゛ッ、オオォオ゛エエ゛エ゛ッ!!」
 百合の喉からえずき声が漏れ始めた。しかも、さっきよりひどい。
「いいぞ。吐いてノドがよく開くようになったし、えずき汁もいい潤滑油になってやがる。このまま俺を満足させてみろ。言っとくが、くれぐれもアンドレの顔にゃゲロ引っ掻けんなよ。奴は陰湿だからな」
 タイロンはそう言いながら、自分本位に喉奥を凌辱する。膣に二本挿しする二人も同じくだ。そして最後には、3人纏めて百合の顔面へ精を浴びせかけた。胃液まみれの顔中が、乳液の瓶を逆さに振ったように白く染まっていく。連中はそれを、さもおかしそうに笑い続けた。

 連中は、つくづくサディスト揃いだ。
 次はトラバンが百合を仰向けに転がし、上から乗る形で咥えさせる。ドミニクも百合の脚を開かせ、正常位で犯しはじめる。このセックスが、また酷い。
「んごっ、おぶふうっ、ごぉおおえ゛っ!!」
 喉に逸物の形を浮かせつつ、大股を開かされての二穴レイプ。名門女子高の元生徒会長が晒していい姿じゃない。
「いやあっ! せ、先輩になんてカッコ……!」
 実際沙綾香も、そのあられもない姿に目を覆う。だがそうした真っ当な反応は、相手の思う壺だ。
「よーく見な、ご機嫌なレイプパーティーってやつだ!!」
 トラバンが腰を振り、百合の喉からカコカコという音をさせる。ドミニクもまた、パァンパァンと音の出る凄まじい『ファック』へと移行する。
「げほっ、お゛ぉおええ゛っ!! い、息、が、でき……ない……!!」
 連続で犯され、口を使いまわされて、百合はそのうちに反応を失う。
「ふん、気絶しやがった。起きろ、まだまだ休ませねぇぞ!」
 ドミニクはドスの利いた声で叫び、深々と挿入したまま百合の身体を持ち上げた。沙綾香には及ばないとはいえ、百合もなかなかの長身で脚も長い。だが、地に足がつかない。全体重を膣にかけながら、射精を受け止めるしかない。
「ふぐ、ぅっ……!?」
 百合は意識を取り戻し、直後、目を瞬かせながら硬直する。あまりの快感で、目の前に火花が散っているのかもしれない。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………の、ノー…………ッ!!」
 目じりから涙を零しつつ、弱弱しく首を振る百合。だが、調教師共は容赦しない。
「再調教はこれからだ。俺達のコックなしじゃ生きてられねぇようにしてやる」
 そう言って、百合の周りで白い歯を覗かせた。


               ※


「お願いですっ! 少し、少し休ませて……ェ゛っ!!!」
「休ませねぇ。醒める暇も与えずにアクメさせまくんのがオレらの流儀よ」
 百合の必死の懇願が、また一蹴される。
 悲惨な状況だ。取り囲む逸物からはポタポタと垂れ、精液が足指で塗り広げられたような白い液が床の至るところに飛び散っている。それは、彼女が延々と輪姦されている証だ。

 10人の黒人共は、百合を相手にやりたい放題をやっていた。集団で口と膣、肛門を使いまわしながら、面白半分に頬を張り、尻を叩く。顔や手足を踏みつける。本当にケダモノじみた、野蛮なレイプだ。
 だが百合は、それで変わっていった。最初はかなり本気で嫌がり、痛がっていたはずだが、だんだんと暴力を伴うレイプで甘い声を漏らすようになっていく。
 今もそうだ。彼女はレジャナルドに背後から抱きすくめられ、極太の怒張で膣を突き上げられている。そんな中、レジャナルドがまたクリトリスを捻り上げた。百合は、それで絶頂に至る。
「はっ、あ゛ああぁぁっ!! いく、またイグゥ……っ!!」
 首を仰け反らせながらの絶頂は、これでもう何度目だろう。
「くあっ、締まりやがるっ!!」
 レジャナルドも百合の絶頂につられたように果てる。それを見て、瓶ビールをラッパ飲みしていたダリーが立ち上がった。
「よーし、今度は俺が可愛がってやる」
 ダリーは絶頂直後の百合を立たせ、ソファに両手をつかせると、割れ目に怒張の先を押し当てる。
 ダリーの怒張は2番目にでかい。力士級の巨躯に埋もれない、圧倒的な巨根だ。そのダリーを受け入れるとなると、百合も声を上げずにはいられない。
「ふっ……ぐうううああっ!!!」
 挿入しただけで、百合の膝はガクガクと震えていた。だが、ダリーのセックスはここからだ。並外れた怒張はいわば杭。奴の一番恐ろしいのは、その杭を打ち込むハンマーの威力だ。
 パァンッ、パァンッ、と凄まじい音を立てて、ダリーが腰を打ちつける。200キロはあってもおかしくない巨体がぶつかるたび、百合の肉が波打つ。沙綾香より少し腹回りの肉が乗っているのか、伝播していく波が大きい。
「あはぁっ、お゛、お゛!! お゛、お゛っ、お゛ん、お゛ぉっ……! ひう゛っ、お゛ひっ、お゛ひいい゛っ!!」
 百合から漏れる喘ぎは、お行だ。ダリーというハンマーで打ち据えられている以上、それは当然のこと。あ、などという愛らしい喘ぎを漏らす余地などない。
 どれほどの痛みなんだろう。あるいは、どれほどの快感なんだろう。
 背後から犯される百合の踵は、完全に浮いていた。代わりに『く』の字に折れた両脚が、これでもかというほど強張っている。腰を叩きつけられるたび、スクワットで限界が来た時のように、ガグガグガグッ、ガグガグガグッ、と痙攣する様は普通じゃない。
 そしてダリーは、そんな百合に追い打ちをかける。激しく腰を打ち込みながら、平手で百合の尻肉を叩く。なにしろ元力士の張り手だ。音もそれは凄まじく、天井のマイクが音割れしたほどだった。
 それを受けた百合は、大口を開けた。
「あああああああ゛あ゛あ゛っ!!!!!」
 同じく、音割れしかねない声が響きわたる。彼女は、ボロ布と化した白衣ごと全身を震わせ、ぐるりと白目を剥く。しかし、逆の尻に浴びせられた二度目の張り手が気付けとなった。
 バチンバチンと肉の音を響かせながら、超重量のピストンが叩き込まれる。
「ぎぃいっ、う、う゛……おお゛っ、お゛っ、イッグぅっ!! いぐっ、イグゥウウッ!!!」
 どこで百合が壊れたかといえば、多分、ここだと思う。
 酒焼けした不良娘さながらの濁音を撒き散らしながら、乱れに乱れる。ソファにしがみついていたかと思えば、獅子が吼えるように身を反らすこともある。あの藤花が崩壊した時とそっくりの挙動だ。
 それを見て、とうとう沙綾香が鉄格子に駆け寄った。
「先輩、先輩っ! しっかりしてくださいっ!!」
 必死に叫ぶ沙綾香に、ダリーが気付いたらしい。奴は歪んだ笑みを浮かべると、百合と繋がったまま沙綾香に近づいていく。そして百合に鉄格子を掴ませ、沙綾香の目の鼻の先で犯しはじめた。
「おおおおおイクッ!!イクッううううんっ!!! お願い、助けて、助けてえええっ! もう限界……これ以上は、戻ってこれなく、なる……っ!!」
 百合は絶叫しながら、格子の向こうの沙綾香に助けを求める。その異様さに、沙綾香の顔が青ざめた。
「先輩、あたし、代わります!! 代わるから、開けて! ねぇ、ここ開けてよっ!!」
 沙綾香は鉄格子の鍵を揺らしながら、手越に訴える。
「ダメだ。一度そこに入った女は、朝まで外には出さねぇ」
 手越があっさりと訴えを却下する。その間も鉄格子は揺れ続け、ピストンの音と百合の叫び声が繰り返されている。
 やがて、彼女は潮を噴きはじめた。そして同時に、ひどく緩んだ笑みを浮かべる。笑みは一瞬だけのものだが、紛れもなく狂気の片鱗だった。

 そしてここから、百合は決定的に狂っていく。
「へへへ。腰が踊ってるぜ、感じてんのか変態女!?」
「ち、違いま……おおォッ!!」
 前後から挟み込まれるように犯され、百合は甘い声を上げる。口に手を当てても、嬌声がまるで殺しきれていない。
「わ、わたくし……わたくし、もうっ……! あ、あふっ……ふわあああーーーっ!!!」
 限界を訴える言葉に続くのは、あの狂気の笑顔だ。そして以降は、その笑顔が彼女の表情筋に貼りつく。正常位でも、後背位でも。
「見ろよこのツラ、すっかりファック中毒だな」
 ダーナルの言葉通り、百合の表情は蕩けていた。彼女は今、這う格好のまま前後から犯されている。最初のころなら悲鳴を上げていそうなハードファックだが、意にも介さない。むしろ積極的に目の前の怒張を掴み、口に含む有様だ。ただ、その口での奉仕も長くは続かない。
「あはぁあ゛っ!!」
 背後からの突き込みが激しくなると、すぐに怒張を吐き出して喘ぐからだ。

「……俺から見てもすげぇ光景だがよ。あいつらの凄さを肌で知ったお前なら、また見え方が違ぇだろ」
 手越が煙草をふかしながら、隣の沙綾香に話しかける。沙綾香は、虚ろな瞳で鉄格子の向こうを眺めていた。
「よく目に焼き付けとけよ。今日の夜からは、お前があそこに入るんだ」
 その言葉で、沙綾香の肩がびくりと跳ねる。手が震えてもいるようだ。手越は、そんな沙綾香の様子をじっと観察し、煙を吐き出した。
「イヤなら、免除してやってもいいぜ」
「……え?」
 あまりにも意外な言葉に、沙綾香が手越を見上げる。
「あの連中は、ちっと女を抱かせねぇだけで騒ぎ出しやがるからな。毎晩誰かしら宛がって、性欲を鎮めなきゃならねぇ。それをお前さんにやってもらうつもりだったが、どうしても嫌ってんなら……代わりに、上の階のお友達でもひっぱってくるか」
 手越のその言葉で、沙綾香が息を呑む。
「はあっ!?」
「当然だろ。こっちはお前があいつらの相手するって当て込んでんだ。そのお前がやらねぇっつうんなら、手頃な奴隷にやらせるしかねぇ。なぁに、心配すんな。あいつらはもう調教がほぼ済んでんだ、喜んでチンポを咥え込むようになってんぜ」
 手越はあくまで軽い調子で語る。だが、沙綾香にとっては重い話題だ。
 自分のせいで、友人がここに連れてこられた。その事実を知った時、彼女は愕然としていた。その上でさらに苦労を肩代わりさせるなど、彼女にできるはずもない。
「…………あたしが、する」
 沙綾香がそう答えるのは、当然の流れだ。手越は狙い通りとばかりに目を細める。
「よぅし。なら、まずはお披露目だな。客の前で、お前が最高の“マゾ奴隷”だってことを証明してみろ」
「ま、マゾ奴隷?」
 沙綾香が聞き返すのも無理はない。倶楽部で何度も耳にした蔑称だ。証明も何も、沙綾香がマゾ奴隷などであるわけがない。
「自分はマゾでも、奴隷でもない。そう言いたそうだな」
 手越は、沙綾香に向かってそう告げる。図星らしく、沙綾香は何も返せない。
「ま、実際そうだ。処女でこそねぇが、今この倶楽部にいる女で、一番清純に近いのはお前だろうぜ。だが実態がどうであれ、お前は自分が最高のマゾ奴隷だと証明しなきゃならねぇ」
 手越はそう言って、コツコツと壁を叩く。
「この倶楽部は、下のフロアほどえげつねぇ調教を見せるのがウリだ。そしてここは、調教フロアの最下層。つまりここの奴隷は、一番ハードな調教をされる目玉商品ってことになる」
「それが、『最高のマゾ奴隷』?」
「ああ。お前はルックスが抜群だし、生まれも育ちもいいからここに置いてるが、あくまで暫定でしかねぇ。客に認められなきゃ、資格は剥奪される」
「え……。それってまさか、上の4人と資格を奪い合え、ってこと……?」
「察しがいいじゃねぇか。そういうこった」
 手越の肯定を受けて、沙綾香は呆然としていた。

 この部屋で凌辱されたくないなら、友人を身代わりにするしかない。
 友人を守るためには、その友人と戦い、一番のマゾ奴隷の座を勝ち取らなければならない。
 どっちを選んでも救いがない2択だ。沙綾香も考え込んでいる。
「言っとくがな。お前の友達は、4人とも全力で勝ちに来るぜ。調教師が『最高のマゾ奴隷』のステータスを勝ち取れと命じるってのもある。だが何より、あいつら自身が資格を欲しがるはずだ。セックスに溺れた女にとって、黒人に輪姦される環境なんてのは、最高に魅力的だからな」
 悩む沙綾香の前で、手越はモニターを指した。そこには黒人共に犯されながら、蕩けるような笑みを浮かべた百合がいる。もはや入る前とは別人だ。
『これ以上は……戻ってこれなく、なる……』
 百合自身がそう語った通り、あの檻の中に居続ければ、確実に壊れるだろう。祐希も。千代里も。藤花も。桜織も。

「お披露目……だっけ。上等だよ、やってやろうじゃん」

 沙綾香の顔つきが、変わった。
 友達を犠牲にはできないという、消極的な理由じゃない。自分が友達を守るという、前向きな意思を秘めた表情だ。
 だが。
 快楽に沈むと戻ってこれないのは、沙綾香自身も例外じゃない。
「いい眼だ。楽しみになってきたぜ」
 手越のその呟きが、俺にはひどく不穏に思えた。



                        (続く)


 

二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.1(前半)

第五章 “先生”の続きです。
 長くお待たせしてしまい、すみません。
 最終話はかなり長くなる予定のため、複数Partに分ける予定です。
 今回はPart.1(前半・後半合わせて約9万字)を投稿します。





■最終章 オーバードーズ


 沙綾香が突き落とされた下の空間は、高級ホテルのスイートルームのような印象を受けた。部屋のほぼ中央にキングサイズのベッドが横並びで2つ存在し、それを囲むように、計20人掛けほどのソファ類やガラステーブルが置かれている。部屋の右上スペースには冷蔵庫と簡易キッチン付きのダイニングがあり、左下はトイレが併設されたバスルームに繋がっている。同じく倶楽部内にあるリフレッシュルームなどと同様、過ごしやすそうな空間だ。
 ただし、奇妙な点もいくつかあった。
 1つめは、フロア内の仕切りがすべて透明な素材でできていること。そのため、例えばシャワーを浴びていても、その姿は外から丸見えになってしまう。
 2つめは、俺がいる場所からちょうど正面にあたる場所に、壁一面を覆うような超大型モニターが設置してあること。
 そして、3つめ。これは俺から見て、部屋の左右にある壁の問題だ。
 まず左側は、一面鏡張りになっている。つまり部屋内で行われるあらゆる動作は、全てこの鏡に映り込むこととなる。
 そして、右側。ここには、鉄格子が嵌め込まれていた。スイートルームさながらの一画に、牢屋を思わせる空間があるんだ。この違和感は只事じゃない。和室の一角に、無数のお札が貼られた襖がある……そのぐらいの異常性だ。しかも、その鉄格子の奥は妙に薄暗かった。下のフロアは、俺が今いる部屋のライトがそのまま降り注いでいるから、全体が白く染まるほどに明るい。ところが鉄格子で区切られた左側エリアだけは、わざわざ壁と床が設けられて光が遮断されている。闇の中にかろうじてベッドの存在だけは視認できるが、わかるのはそれだけだ。
 つまりあの部屋で生活すると、謎の巨大モニター、あらゆる姿が映り込む一面の鏡、異様な雰囲気を漂わせる『檻』と、3重苦を味わうことになる。俺が今いる総鏡張りの密室ですら、長く居続ければ発狂するという確信があるが……下の部屋で暮らすストレスは、それをさらに上回りそうだ。

 沙綾香が落とされたのは、2つのベッドと巨大モニターに囲まれた空間だった。その周りにだけはソファもテーブルもなく、多くの人間が集まれる造りだ。彼女はそこで、10人の黒人に囲まれていた。
 居並ぶ10人は、揃いも揃ってデカい。170センチの超長身を誇る沙綾香の頭が、黒人の肩の高さなんだから、全員が軽く2m超えというところか。おまけに筋肉量も尋常じゃない。大胸筋は膨れ上がり、腹筋は深く割れ、二の腕や大腿部のボリューム感となると、一般的な日本人男性のウエストと比較しうるレベルだ。
 そして、もう1つ。連中はボクサーパンツだけを身につけているが、その股間部分はテントを張るように膨らんでいる。同じ男として、その膨らみ具合には焦りを隠せない。

『どうです、先生。見事な肉体ばかりでしょう。そこに集まっているのは、我が倶楽部の擁する、超一流の調教師達です。いずれも、貴方の元教え子ですがねぇ』

 つい今しがた、端塚はスピーカー越しにそう語った。
 超一流の調教師。祐希、千代里、藤花、桜織……上のフロアで少女達を完全に壊したあの連中よりも、さらにタチが悪いというのか。考えたくもない。考えたくもないが、奴らの肉体には説得力があった。奴らは、優れたオスだ。少なくともパワフルさという点では、この地球上で上位数パーセントに入るのは間違いない。
「ち、近づかないでっ!!!」
 10人の黒人調教師の輪がさらに狭まり、もう一歩で身体に触れられる位置まで近づいた瞬間、沙綾香が叫んだ。相当な恐怖なんだろう。目を見開き、腕を掴んで身を縮こまらせている。一方で調教師共は、怯える沙綾香に遠慮のない視線を注いでいた。
「近くで見ると、またすげぇな。とてもアジアンとは思えねぇ」
「8頭身はあるか? 顔はガキくせぇのにこのカラダとは、堪んねぇぜ!」
「ああ、見てるだけで勃ってきちまう。藤花ってガキの方が乳の発育はよかったが、こっちは奇跡のバランスって感じだな!」
 黒人共は、白い歯を覗かせて口々に下卑た言葉を吐く。話し言葉は英語……それも独特の癖がある『黒人英語』だが、記憶を無くす以前の賜物か、俺には難なく理解できた。
 ギラついた20の瞳が、怯える獲物を凝視する。今まさに飛びかかろうとする黒豹のようだ。俺がそう感じた、次の瞬間。連中の一人が、とうとう沙綾香の手首を掴み上げた。
「いやっ、痛い!!」
 沙綾香から悲鳴が上がる。表情からして本当に痛そうだ。
「やめろっ!!」
 俺は必死に下のフロアに呼びかける。
「待て!」
 俺の叫びとほぼ同時に、ロドニーも黒人男の肩を掴んだ。奴から見ても目に余る行動らしい。
「ああ!?」
 肩を掴まれた黒人男は、うるさそうにロドニーの手を払いのけながら、背後を睨みつける。双方共に身長は2mを超し、風貌は毛のないゴリラそのものだ。その2人が至近距離で火花を散らす迫力は、場の空気を凍りつかせるのに十分だ。
「……チッ、解ったよ」
 しばらく睨み合いを続けた後、引いたのは黒人調教師だった。肩を竦めて歩き去る彼を見送り、ロドニーがやれやれとばかりに首を振る。

「一触即発、ですな。あらかじめ女を与え、自制させる意味も込めて下着を履かせましたが……獣の欲望は抑えきれませんか」
 ふと、そんな言葉が上空から振ってくる。顔を上げれば、そこには見覚えのある姿があった。
 汚れひとつないタキシードに身を包み、白手袋を嵌め、白髪の交じりの髪をオールバックに固めた眼帯男。見間違えるはずもない。端塚だ。ティーセットや菓子の乗ったトレイを手にしている様は、まるで執事を思わせる。
「貴様ッ…………!」
 俺が恨みを込めて睨みつけても、端塚から敵意が返ってくる様子はない。それどころか、フロア下から俺へと移される視線には、柔らかささえ感じとれた。
「思想が裏返っても、その眼はお変わりありませんな」
「なんだと?」
 即座に問い返すものの、俺は勢いを失くしていた。暖簾に腕押ししているような肩透かしの感もあるが、それ以上にコイツの事が不気味でならない。
「私はまだ、貴方を諦めてはおりません。異端者たる我々にも、太陽は必要なのです。貴方という、地の底を照らす太陽が」
 端塚は手にしたトレイをテーブルに置き、改めて俺を見据える。
「初めて貴方に出会った日のことは、今でも忘れられません。私は貴方のその瞳に、乱世の覇王の色を見た。この窮屈で、小賢しく成り果てた世の中を、貴方とならば変えられる気がした。その想いは、今も変わってはおりません」
 ゾッとする。誰かに慕われるのは、本来嬉しいことのはずなのに、こんな外道共に祀り上げられるのは不名誉でしかなかった。
「ともあれ、ティータイムに致しましょう。喉がお渇きでしょうから」
 端塚はそう言って片手を上げる。すると俺を組み敷いていたセキュリティ連中が力を緩め、俺を引き起こして椅子に座らせた。スタンガン内蔵の警棒を構えたままである以上、完全に解放するつもりもないようだが。
 少し離れた場所では、沙綾香が落とされた穴が再び閉じていく。これで俺と沙綾香は、完全に隔絶されたことになる。


               ※


「どうぞ」
 端塚がティーカップに湯気の立つ紅茶を注いで、俺に差し出す。こいつの事だ、この紅茶にも何か混ぜているのかもしれない。ただ、今すぐに俺を始末しようという様子でもなさそうだ。それに緊張のせいで、喉の渇きにも耐えがたい。
 俺が渋々ながら紅茶に手を伸ばした、まさにその瞬間。天井のスピーカーにノイズが走る。
「あんた達、本当に何がしたいわけ!? もういい加減、あたしとセンセを解放してよ!」
 天井のスピーカーから音声が聞こえてきた。沙綾香の声だ。どうやら下のフロアの声を拾っているらしい。マイクの性能差か、端塚の時よりも明瞭な音声だ。
「解放か、いずれはするぜ。その邪魔くせぇ自我が消し飛びゃあな。やりてぇことについても、答えはシンプルだ。繰り返し犯し、辱めて、思想を根本から変える──いわゆる『洗脳』だな」
 手越の返答に、沙綾香の目つきが鋭くなる。
「はぁっ、バカなの? それって、『今から家にドロボウに入ります』って言ってるのと同じじゃん! 盗まれるわけないでしょ、そんな宣言されて!」
 沙綾香はきっぱりと言いきる。すると、手越は肩を揺らした。ククク、と笑い声を漏らしながら。
「何がおかしいわけ!?」
「いや、聞き覚えのある言葉だと思ってよ。お前の先輩も、そんな言葉を吐いてたもんでな」
「せ、先輩、って……ウチの学校で、他にもこんな目に遭った人がいるの!?」
「おう、いるぜ。両手の指より多くな」
 手越は煙草を咥え、上を見上げた。濁った瞳は端塚を捉えている。端塚が小さく頷くと、奴は煙を吐き出した。
「この施設は、会員制の秘密倶楽部でよ。クソ厳しい審査をクリアして、バカ高ェ年会費を払う見返りに、ゴールドライセンスが手に入るんだ。極上の女が奴隷として調教される様を鑑賞したり、場合によっちゃ調教そのものに参加できる権利よ。アナウンサーやアイドル崩れ、一流キャバ嬢に婦警、女弁護士……調教対象は色々だが、一番人気は何つっても現役の女子高生だな。それも名門校に通うお嬢様なんてことになりゃ、客の食いつきがまるで違う」
 手越はそう言って、煙草の先で沙綾香を指し示す。屈指の名門校・蒼蘭女学院に通う、財閥令嬢を。
「それって、つまりウチってこと……?」
「ああ。しかも名門って呼ばれる女子校にゃあ、日本全国から金の卵が集まってくる。お前ら5人がいい例だ。お前を中心に、仲良しグループをざっと掻っ攫っただけでも、大したツブ揃いじゃねぇか。『白鳥 祐希』は、強豪として名高いソフトボール部のエース。『福田 千代里』は、伸びやかなソプラノで合唱コンクールの会場を騒然とさせた天才児。『廣上 藤花』には剣道全国大会での優勝経験があり、『瀬戸口 桜織』は学科試験で常に全国トップ5に入りつづけている」
 つい先ほど脳裏に過ぎった4人の名前が、次々に挙げられる。輝かしい未来の約束された、才媛達。その夢が潰されたんだ。こんな、いかがかわしい倶楽部に連れ込まれたせいで。
「ちょ……ちょっと、待ってよ」
 ここで、沙綾香が声を震わせた。目が泳いでいる。まるで、恐ろしい事実に気がついたかのように。
「“お前を中心に、仲良し5人組を掻っ攫った”……?」
「ああ」
「じゃ、じゃあ……皆があんな風になったのって、あたしの、とばっちりってこと…………?」
「当然、そうなるな。」
 さらりと吐かれた肯定の言葉で、沙綾香が凍りつく。自分の巻き添えで、仲の良い友人達が壊された──そんな物言いをされて、平然としていられるわけがない。
「おーい、大丈夫か?」
 沙綾香を追い込んだ元凶が、白々しく問いかける。ただし、心配しているわけじゃなさそうだ。手越の口元は、上向きに歪んでいるんだから。
「いいか、嬢ちゃん。お前さんには、“もうひとつ”気がつかなきゃならねぇ事実があるんだぜ?」
 手越はその一言で、揺らぐ沙綾香の意識を引き寄せた。そして、ワン・ツーの二打目とばかりに、追い討ちの言葉を囁きかける。
「お前さん……そもそも誰に言われて、この倶楽部に来た? お前がここに来るよう手引きしたのは、どこの誰だ?」
 手越の言葉を耳にして、沙綾香は少し考える素振りを見せ……
「あっ!!」
 驚愕の表情に変わった。
 どういうことだろう。俺も彼女の思考を追うべく、古い記憶を探る。
 俺にとっての最も古い記憶は、彼女達5人とエレベーターで一緒になった時だ。

『これから何すんだろうねー、あたしら。どうせなら座学じゃなくて、身体使う系がいいな』
『なんかさ。こう地下深くだと、裏カジノとかありそうじゃない?』
『ははっ、いいなカジノ! ベガス的な?』
『もうっ、馬鹿言わないの。授業の一環って聞いたでしょ』

 壁に寄りかかる沙綾香の傍らで、他の4人はそんな話をしていた。彼女達は、『授業の一環』と言い含められてこの施設に来たんだ。
 待て。
 だとするなら、彼女達をこの場所に誘導した、そもそもの元凶は……
「そうさ。お前ら5人を見繕ったのも、ここへ来るよう仕向けたのも……蒼蘭女学院の理事長だ。俺達の“お得意様”のな!!」
 手越はそう言って、煙草片手に大笑いする。その正面で、沙綾香の顔から血の気が失せた。
 彼女とその級友にとって、蒼蘭女学院は『戻るべき日常』の象徴であったはずだ。よもやその学校こそが、この地獄への入口であったとは。
「もしかして……毎年、先輩が何人か『課外学習』に行ってたのって……」
「ああ、調教されてたわけだな。薬を投与しつつ、セックス漬けにしてよ。しぶといガキでも、1週間もありゃチンポの事しか考えられねぇケダモノに成り果てる。ただ、お前のツレはなかなか粘ったな。藤花の心が折れたのが7日目の夜、桜織の脳ミソが焼き切れたのは210時間を過ぎたあたりだったか」
 その言葉で、沙綾香の顔が引き攣った。俺も心臓を掴まれた気分になる。
 忘れられない。
 地下15階で、祐希が自我を崩壊させられた事を。
 地下16階で、千代里が喉奥を蹂躙され、哀れに泣き叫んでいた事を。
 地下17階で、藤花が散々に辱められ、大和男子として死んだ事を。
 地下18階で、桜織が繰り返し絶頂させられ、獣と成り果てた事を。
 あんな調子で追い込まれれば、それは大抵の女子高生が1週間ともたないだろう。
「く、ぅっ……!!」
 まざまざとあの光景を思い出したんだろう。沙綾香は拳を握りしめ、真っ直ぐに手越を睨み据える。愛を囁く時には本当に優しい目つきをする彼女だが、元々の吊り目の角度をさらに上げた時の凄みは相当なものだ。だが手越は、マイペースに煙草をふかす。
「そう睨むなよ。別に、ずっとここに閉じ込めとこうってんじゃねえ。一通り調教が済みゃあ、記憶だけを消して学校に戻してやる。さすがに金の卵をいつまでも監禁してちゃ、怪しまれちまうからな」
「記憶を、消す……?」
「ああ。さっきも言った通り、俺ら調教師がやってんのは実質的に洗脳なんだがよ。それとは別に、催眠に特化したチームもいるわけだ。出番は一番最後、洗脳済みの奴隷を外に送り返す直前でよ。ここでの記憶を消去して、代わりに適当な記憶を植えつけんだ。『出来心で酒に手を出した結果、悪酔いして行きずりの男とヤりまくってた』とかな。ストーリーは奴隷の性格に応じて変えるらしいが、本人に明らかな非がある流れにするそうだ。清廉潔白そうな人間でも、密かに自覚してる負い目ってのはあるもんで、そこを突くらしい。だから解放された『奴隷』は、たとえ調教された身体に違和感を覚えても、泣き寝入りするしかねぇ」
「ひ、ひどい!」
「そうか? 人前でクソしたり、腹の出たオッサン共とヤリまくったなんて記憶は、上書きされちまった方がマシだと思うがな。ま、いずれにせよだ。地上に戻った奴隷は、一見、前と変わらねぇ生活を送りはじめる。そしていずれは金の卵としての才能を開花させて、特定の分野で強い影響力を持つようになる。俺らはそこでまたガラを攫って、思い出させてやるわけだ。自分が何者なのか、誰が“ご主人様”なのかをな」
「え? でもここの記憶って、外に出る時に消されるんじゃ……」
「ヒトの記憶には、『脳の記憶』と『体の記憶』の2種類があってよ。『脳の記憶』が消えても、『体の記憶』は残ったままなんだ。どんだけ忘れっぽい奴でも、箸の持ち方は忘れねぇだろ。それと同じで、一度奴隷に堕ちた女は、体が調教師とのセックスの味を覚えてる。言ってみりゃ種を植え付けられた状態だな。そこで改めてセックス漬けにしてやりゃ、種が発芽して花が開く。こうなりゃあ心強いぜ。培った名声やら人脈やらを、テメェの心底からの望みとして、倶楽部のためにフル活用してくれるんだからな」
 淡々と語られる悪事の全貌に、沙綾香の顔が青ざめていく。
 悪夢じみてはいるが、今語られたことは夢じゃない。
 過去、この倶楽部で起きた現実。
 現在、上のフロアで級友達を苦しめている現実。
 そしてこれから、いよいよ沙綾香に降りかかろうとしている現実なんだ。


               ※


「……よう旦那、話はまだ続くのか? 流石にもう我慢の限界なんだが」
 手越の言葉が途切れたところで、黒人の1人が呼びかける。目を血走らせ、鼻息は荒い。我慢の限界、という言葉に偽りはなさそうだ。
「ああ、悪ィ。歳食うとハナシが長くなっていけねぇや。いいぜ、犯しな」
 手越のその言葉に、10人の調教師共が歓声を上げた。するとそれを遮るように、手越が『ただし』と付け加える。
「一人ずつだ。俺が名前を呼んだ順に、一対一(サシ)で抱け」
「お……オイオイ、マジかよ!?」
「こんだけ待たせといて、そりゃねぇだろ!!」
 焦らされた上での更なる制限に、黒人共が不満を露わにする。するとその後方で、ロドニーが頭を振りながら舌を鳴らした。
「落ち着けよ兄弟。要するにだ、テメェら一人一人の存在をアピールしろってこった。この太ぇのが俺のコック、この反り返ったのが俺のコック、ってな。初対面なんだ、まずは挨拶から始めようぜ」
 その補足で、調教師連中の雰囲気が和らぐ。一対一というシチュエーションに興味を持ったらしい。
「挨拶か……なるほどな」
「考えてみりゃ、滅多に食えねぇレベルの上玉なんだ。サシでじっくり味わうってのも悪くねぇ」
 とりあえず暴動の恐れはなくなったと見てか、手越が溜め息交じりに沙綾香の方を振り返る。
「さぁお嬢様、“十番勝負”といこうじゃねぇか」
 手越はそう告げると、10人の黒人調教師の中から一人を見定め、その肩を叩いた。
「まずはお前からだ、マーキス!」
 マーキスと呼ばれた男は目を見開きながら口笛を吹き、ボクサーパンツを脱ぎ捨てる。覆いの下から現れたのは、まさしく『巨根』。黒人特有の、節くれだった木の根のような剛直だ。
「ひっ!!」
 沙綾香が顔を引き攣らせる。無理もない。彼女は男慣れしていそうな雰囲気とは裏腹に、かなり奥手だ。俺の逸物を覗き見ていた時も、興味半分、恐れ半分という様子だった。その俺の物より数周り大きい、しかも異人種のペニスとなれば、恐怖の対象でしかないだろう。
 マーキスはゆっくりと歩を進め、沙綾香を壁際に追い込んでから、逸物を相手の下腹に押し当てた。斜め上に反り勃った先端部分が沙綾香の臍を撫でるとなれば、長さは20センチを下らないだろう。
「やぁ……っ!!」
「そんなに怯えるなよ、ジャパニーズ。よく見てみな、ダックスフンドみてぇで可愛いだろ?」
 マーキスはそう囁きながら、逸物で沙綾香の下腹を擦る。
 沙綾香には、マーキスの言葉が理解できただろうか。訛りの強い黒人英語だ。多少英会話ができたとしても、いきなり聴き取るのは難しいかもしれない。ただ、一つだけ確かな事があった。彼女がマーキスに心を許していないという事だ。
「ヘンなもの押し付けないでよ、このゴリラ!!」
 そう叫びながらマーキスを睨み上げ、胸板を押し戻す。身長差約30センチ、肉体の体積でいえば実に3倍ほどの差がありそうな巨漢の黒人相手に、よくも反抗できるものだ。
「ほお。温室育ちの令嬢にしちゃ、大した根性だ。だが、本物の『恐怖』を味わっても、その強情を張り続けられるか?」
 沙綾香の気丈さを目の当たりにし、手越が笑う。その笑い声の中で、マーキスが自分の手にツバを吐きかけた。そしてその手の平で逸物を扱き、粘液を纏いつかせてから、沙綾香の右太腿を持ち上げる。
「Get off me(離して)!」
 沙綾香は叫び声を上げ、マーキスの腕を叩く。英語だ。名門校に通う生徒であり、財閥令嬢として英才教育を受けてきたんだから、英語を話せても何の不思議もない。だが俺は心のどこかで、そうでない事を祈っていたようだ。英語が理解できるということは、あの調教師共が発するスラムの汚物のような言葉で、いちいち心が傷つくということだから。
「うひょー、痛ぇ!」
 マーキスはおどけてみせるが、沙綾香の必死の抵抗を受けても身体の軸がぶれない。それどころか、一瞬の隙をついて沙綾香の右足を抱え上げ、開いた股の間に亀頭を宛がう。立ち鼎の体位だ。
「いやあっ!!」
 沙綾香の絶叫と、亀頭が沈む込むのは同時だった。
 マーキスのペニスは、直径5センチはあるだろうか。数日前にセックスを覚えたばかりの膣には、明らかに無理があるサイズだ。当然、挿入はスムーズにはいかない。何もない場所を掘削するかのごとく、少しずつ、少しずつ、黒い極太がピンクの肉の中へと隠れていく。
「う、くっ……!!!」
 沙綾香は、呻いた。食いしばった歯や、引き攣る頬が、相当な痛みと恐怖を物語ってもいた。それでもなお、彼女は相手を睨み上げる。睫毛の長い目を、アーモンド型に見開いて。
「ヘヘヘへ、いい目だな。俺のを突っ込んでも睨んでくるアジアンは久しぶりだぜ。嬉しくなっちまうなあ!!」
 マーキスはそう言いながら、丸太のような腕に血管を浮き立たせ、本格的な挿入を試みはじめた。
「ひっ、ぐ……!!」
 苦しいんだろう。沙綾香の表情は、破瓜の瞬間より壮絶だ。内腿の強張り具合も、遠目に見て取れるんだから相当なものだ。どう見ても無理のある挿入。だがその挿入は、黒人の剛力で成し遂げられる。あらゆる無理を押し潰して。
「んだよ、もう奥に届いちまったのか。まだまだ残ってんのに」
 挿入開始から二分ほど経ったところで、マーキスが舌を鳴らした。奴の黒い剛直は、半分近くが露出したままだ。だが、たとえ欧米人女性でも、あんな馬鹿げたサイズを丸ごと飲み込むのは無理だろう。
「フトモモの肉が硬ぇぞ。もうちっとリラックスしろよ」
「だ、だったら抜いてよっ!! 大きすぎて、骨盤が軋んでるの……あそこの周りの筋肉も引き攣ってる。いやだ、いやだよ……こんなの、開きっぱなしになっちゃう!!」
「そんなに心配すんなって。オレの昔の女は、拳が入るぐらいまで拡張したがよ、次の年にゃあ郵便屋のチェリーボーイとしっぽり楽しんでやがったぜ。ま、それに腹が立ったから、ダブルフィストで女として終わらせてやったがよ」
 マーキスは鬼畜めいた逸話を披露しながら、強く腰を打ち付けた。
「ぐうっ、う゛、うあ゛っ! やめて、ホント痛いってばっ……!!」
 沙綾香が悲鳴を上げる中、抜き差しが繰り返される。陰唇が限界まで横に拡がり、怒張が引かれるたびに桃色の粘膜が捲れる、恐るべきピストン。沙綾香と黒人とのセックスが、ついに始まったんだ。


               ※


「んぐっ、あ゛っ! ぐうう゛っ、ん゛!! い゛た……んんぐうう゛っ!!!」
 
 天井のスピーカーから響きわたる沙綾香の声は、ところどころ掠れ、濁っている。普段の彼女の声は、艶がありながらも溌剌として若々しい、声だけで妖艶な美少女と判るようなものだというのに。
 とはいえ、顎に皺を寄せてまで必死に歯を食いしばり、その合間から漏れる声なんだ。普段の声とかけ離れているのも当然だ。俺はそう思う。だが、沙綾香に同情的でない連中の感想は違っていた。
「ひひひ、ひでぇな。あれが財閥令嬢の出す声かよ?」
「泣けてくるよな。いくら育ちがいいっつっても、黒人にブチ犯されりゃ、そこらのガキとなんも変わらねぇんだから」
「これからもっと酷くなってくだろうぜ。なんせ、黒人10人に連続で犯されんだ」
 俺の周囲に控えるセキュリティ連中は、岩のような不細工面を歪め、下卑た言葉を交わしあう。どいつもヤクザや裏カジノの用心棒(バウンサー)らしいが、なるほど品はなさそうだ。
 吐き気がする。この連中の言動にも、それを御する素振りを見せない『ボス』にも。

「……端塚」
 俺が名を呼ぶと、眼帯に覆われていない方の眼がこちらを向いた。本来口など利きたくない相手だが、それでも訊かなければならない事がある。
「なぜ、あの子を犯す。なぜ無闇に苦しめるんだ。さっき手越が、催眠専門のチームがあると言っていたな。倶楽部の意のままに操るのが目的なら、催眠だけで済む話だろう」
 俺がそう言うと、端塚は一瞬間を置き、首を振る。
 重苦しい一瞬だった。『今更、そんな次元の話をさせるのか』──そう言わんばかりの空気があった。
「催眠は、本人にそれを望む意思がないと掛けることができないのです。我々に対する警戒心が強い状態では、上手くいきません。逆に我々に気を許した状態ならば、潜在意識すら書き換えうる。それができれば、どんなカウンセリングを受けようと、どんな治療を施そうと、二度と洗脳が解けることはございません」
「潜在意識すら、書き換える……」
 俺は、無意識に端塚の言葉を繰り返していた。その言葉を耳にすると、妙な気分になる。どうやら俺にとって重要なキーワードらしい。記憶を失う前の俺にとって、かもしれないが。
「そのためにはまず、物理的・精神的に圧迫しつづけ、対象をネガティブな状態に追い込む必要がございます。そして同時に、肉体的な接触を伴う快楽を刷り込み、客や調教師に対して心を開かせます。極度のストレスに晒された人間は往々にして、長く時間を共にした加虐者に対し、好意を抱くようになるのです」
「ストックホルム症候群、か?」
「左様です。最終目的はあくまで、奴隷を倶楽部関係者に依存させること。八金 沙綾香の場合、今は貴方を心の拠り所としているようですが……その貴方が我々の側に戻らないと仰るならば、依存の対象を我々に変えさせていただきます」
 誰かに縋らせる──確かに効果的だ。自我を喪失した人間は、何かに依存せずにはいられない。記憶を失くし、過去の自分に縋ろうとした俺のように。
 ただ、沙綾香が俺に縋っているというのはどうだろう。彼女は何も、俺と2人きりで生きてきたわけじゃない。俺と彼女が出会ったのは、せいぜい数十時間前だ。
「俺が拠り所とは限らないだろう。あの子には家族もいるはずだ」
「いいえ、貴方です」
 端塚は、清清しいほどに迷いなくそう告げた。
「なぜ、そう言いきれる?」
「八金 沙綾香は、家族……特に家長である父親と折り合いが悪いのです。彼女の父親の教育方針は、少々スパルタが過ぎたようでして。彼女は一時期、ストレスで自室から出られない状態にまで追い込まれたそうです。高校の3年間に限り、護衛も世話係もつけずに全寮制の女学院で過ごさせることにしたのは、追い詰められた末の自殺を危惧してのことでしょう」
 端塚は訥々と語る。信用のおけない男だが、今の話に、彼女自身が話していた内容との矛盾はない。
 父親からのプレッシャーに耐えかねて家を飛び出し、厳格な教育への反発で今風の女子高生になりきっている。それでも髪を染めたりしていないのは、いずれは家に……つまりは、令嬢に戻ろうと思っているからか。
 沙綾香は根が真面目だ。短い触れ合いではあったが、それははっきりと感じ取れた。俺をからかう時は小悪魔のようだが、セックスの最中に俺を見つめる瞳は、まさしく乙女のそれだった。部屋から出られないほど塞ぎこむ破目になったのも、不自由な生活を重圧に感じながら、それでも父親の期待に応えようと、限界まで頑張った結果なんだろう。
 そんな彼女が、愛おしくてたまらない。そして彼女の被虐を前に、為す術のない自分がもどかしい。
「話が逸れましたな。ともかく、彼女にとって家族とは、自らを守ってくれる存在ではない。彼女が今縋れるのは、裸で触れ合い、愛し合った貴方しかいないのです」
 端塚はそこで言葉を切り、改めて俺を見据えた。瞳の表情は、愛憎入り混じるといった風だ。
「しかし、貴方が彼女を篭絡してくださって助かりました。一から感情を植えつけるより、依存する対象を変えるやり方のほうが、ずっと根の深い洗脳になるのです。“獲物の細胞そのものを変質させる”……かつての貴方は、そう表現しておられました」
 そう言って、端塚はクツクツと笑う。俺はそれが不気味で堪らず、下向きに目線を逸らした。


               ※


 階下では、未だにマーキスが沙綾香を犯していた。沙綾香の右足首を肩に担ぎ上げ、ほとんど180度近くまで足を開かせて、正面から腰を突き込んでいる。
 体勢が安定した分、腰遣いはスムーズだ。ドラム缶を思わせる太腿を滑らかに前後させ、たんったんったんったんっと音を響き渡らせている。全力で拍手するようなその音は、張りのある肉が痛烈に打ち合わされている証拠だ。視覚と聴覚の両方から、ピストンの速度が証明されている。
 出入りがスムーズになったとはいえ、マーキスのペニスが細くなったわけじゃない。むしろ男の逸物というものは、快感を得ると太さを増すものだ。つまり沙綾香は、ともすれば最初よりサイズを増した剛直を、リズミカルに捻じ込まれつづけていることになる。
 当然、彼女は苦しそうだった。
「ぜぇっ、は、あ゛……あ、うあ゛!! ぁあはっ! はあっ、は……あ゛ッ!!」
 眉根を寄せてきつく目を閉じ、半開きの口からは荒い息を吐き出す。
「どうだ、黒人のペニスの味は。デカくて硬くて、屈服しちまいそうだろ?」
 明らかに弱ってきている沙綾香に対して、手越が問う。すると、沙綾香は瞼を開けた。かなり疲れているのか、射殺すほどの眼光ではないものの、『屈するものか』という意思は十二分に伝わる強い眼だ。
「こ……こんなこと、されたって……レイプなんかで、言いなりになんて……なんない!!」
 腕を組んでレイプを見守る黒人共は、その気丈さに何かを耳打ちしあい、あるいは待ちきれないとばかりにボクサーパンツの膨らみを撫で回す。犯しているマーキスも、明らかに口元を緩めていた。
「最高だぜ嬢ちゃん。トップモデルみてぇなスタイルに、ちとガキくせぇが可愛いツラ、具合のいいプッシー、おまけに気が強ェときた。今までに50人は女を犯してきたが、お前ほどの上物は初めてだぜ。あああ、口に出すと余計に興奮してきちまった!」
 マーキスの息が荒くなり、腰使いが早まる。射精の時が近いようだ。
「そろそろ出そうだ……いくぞ、いいよなジャパニーズ!!」
「や、やだっ! 中には絶対出さないで、出すなら外に! 中出ししたら、ホントに許さないから!!」
 相手の絶頂が近いことを察したんだろう、沙綾香が英語で捲し立てる。だが、マーキスに逸物を抜く素振りはない。むしろ担ぎ上げた脚を引きつけつつ、腰の圧迫でもって沙綾香の逃げ場を封じる。
「やだ、やだ、やだあっ!!!」
 沙綾香の血相が変わった。ほとんど爪先立ちになっていた左足で相手の足の甲を踏みつけ、脛を蹴り、上半身を左右に捻って必死に暴れる。だがマーキスは動じない。ゴリラと見紛う体躯を誇るあいつにとって、スレンダーな女子高生の抵抗など、赤子に叩かれるようなものなんだろう。
「うううう、う…………ウウウオオオオォッッ!!」
 マーキスが咆哮を上げながら動きを止めた。沙綾香が目を見開く。
「いやあああっ!!! 入ってくるっ、入ってくるうぅっ!!!」
 悲痛な絶叫。
 俺もつい中出ししてしまった事があるが、沙綾香は笑って許してくれた。だがあの時、俺はその有難みを十分に理解してはいなかった。漠然と嬉しいとは思っていたが、それだけだ。
 無力な傍観者になった今、ようやく理解できた。女性にとって、好きでもない男の精液を注がれるのは、受け入れがたい事なんだ。沙綾香が俺の膣内射精を許してくれたのは、それだけ俺に心を開いてくれた証拠だったんだ。
 響きわたる悲鳴が、心を揺さぶる。内臓がゆるやかに腐っていくようだ。

 沙綾香の悲鳴が長く続いたのは、それだけマーキスの射精が長かったことを意味している。
「ふー。タップリ出たぜ」
 奴が気持ち良さそうに逸物を抜き去ると、ピンクの割れ目からどろりと精液があふれ出した。比喩でもなんでもなく『膣から溢れるほどの』その量は、とても人間のものとは思えない。まるで牛や馬といった大型動物のそれだ。しかも、色はペンキのように濃い。あふれた液の一部が沙綾香の左脚を伝い落ちていくが、膝頭を越えてもなお、数メートル離れた俺から視認できてしまうほどに。
 そうした量の多さは、膣内に精を受けた沙綾香自身が一番よくわかるんだろう。彼女は下を向いて、しばし呆然としていた。
「ククク。ジャパニーズ同士の“セックスごっこ”じゃ、こんな射精は経験したことねぇだろ。絶対妊娠しちまうなぁ、ええ?」
 マーキスは勝ち誇ったような表情で、沙綾香の顎を上げさせる。斜め上を向いた沙綾香の瞳は……怒りに、燃えていた。
「バカぁっ!!」
 そう叫ぶと、一瞬の隙をついてマーキスの股間を蹴り上げる。足の足の間。そこを遡った先にあるのは睾丸だ。
「ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛アアッ!!???」
 いかに屈強といえど、剥きだしの臓器である睾丸を蹴り上げられては堪らない。マーキスは股間を押さえながらへたり込み、地面を転げ回る。
「ハッハッハッハ、アイツ玉ァ蹴られてやがる!!」
「これでアイツも女の仲間入りだな。次からはレズセックスか?」
「オイオイ元軍人、無用心が過ぎるぜ!」
 他の黒人連中は、苦悶するマーキスを見て大いに笑っている。嫌い合っているのか、それとも仲が良いからこそか。

「おやおや、勇ましいことだ。多少憤ったとしても、2メートルを超える体格の黒人相手に、なかなか手は出せないものですが」
 俺の対面で下の様子を見ていた端塚が、興味深そうに呟く。沙綾香の悲鳴を聞くと悲しくなってくるように、こいつの声を聞くと無性に腹が立つ。
「中出しを容認しているようだが、いいのか? 沙綾香はいずれ地上に戻すんだろう。その時に黒人の子供を孕んでいるなんてことになれば、さすがに大事になるぞ」
 俺が恨みを込めてそう問うと、端塚は静かにこっちを振り向いた。
「確かにそうなると問題です。ただ、その心配はございません。彼らは特殊な薬物を投与して、“無精子症”の状態にしておりますから」
「無精子症?」
「精液中に活きた精子がいない、という状況です。受精というものは、活きた精子が卵子に到達してはじめて起こりえるもの。放たれた精子が活性状態でないならば、どれだけの量を膣内に注ぎ込もうと、妊娠は有り得ません」
「……あの馬鹿げた射精量は、薬の副作用か?」
「はい。彼らに投与している薬には、精子の生産量を増すと共に、睾丸のサイズアップに伴う貯蓄量向上の効果がございます。一回あたりの射精量は10倍から20倍、回復力は8倍近くにまで増強されるようです」
「まるで動物実験だな」
「酔狂で行っているわけではございません。『複数人から繰り返し大量に膣内射精され、いつ妊娠してもおかしくない』……こうした状況が女性に与えるストレスは甚大なのです。痛みや誘惑に辛抱強く耐える女が、妊娠の恐怖で狂う例は少なくありません」
 端塚の自信ありげな話しぶりからして、前例は多そうだ。何人もの女性で実験してきたんだろう。その集大成が、沙綾香に対するこの調教というわけか。
「だが、無精子症になるような薬の服用を、よくあの連中が承諾したな。ああいう手合いは、女を孕ませることにも執着しそうなもんだが」
「手越とロドニーは、孕ませる危険性のない方が調教上都合が良いと納得してくれています。その他の10人については、そもそも選択の自由がありません。薬の服用を断った場合、彼らは刑務所に“逆戻り”ですから」
「“逆戻り”? 塀の中にいた連中なのか?」
「彼ら10人は全員、強姦を繰り返して刑務所に収監された、超長期刑の囚人です。皆、異常なまでに精力が旺盛でして……。本人達にも自覚があったのか、スポーツやトレーニングで発散させようとはしたようです。ある者は軍役に就き、ある者は格闘技を学び、ある者はパワーリフティングの大会で記録を残し、ある者はフットボーラーとして大成した」
「それでも、性欲を抑えきれなかったのか」
「はい。彼らは人類最高クラスのフィジカルエリートにして、無尽蔵の性欲を御しきれないケダモノ。『竿役』としては大変に優秀です。一般的な調教師の中に1人を紛れさせるだけでも、覿面に効果があるのですが、今回はそれを10人用意しました。ジョーカーを10枚揃えてのトランプゲームなど、いささか勝負の面白みに欠けますが……なにしろ、ターゲットがあの八金財閥の御令嬢ですから」
 そう語る端塚の顔は、ひどく楽しげだ。こっちの心情と見事に真逆であることに、そろそろ呆れる気力もなくなってきた。トランプゲーム? 勝負の面白み? ふざけている。こんな連中に肩入れするなど、冗談でも有り得ない。
 だが、いくら意地を張って敵対したところで、俺達の側に勝ち目がないのも事実だ。
 いっそのこと、協力すると申し出て沙綾香に近づき、隙を見て一緒に逃げるか?
 しかし、端塚はいかにも疑り深そうだ。俺の申し出を心からは信用せず、しばらくは密かに動向をチェックするだろう。そして不審な動きがバレれば、状況は今以上に悪くなるに違いない。
 色々な感情と思考が、頭の中を巡る。そしてその最中にも、階下では沙綾香の受難が続いていた。


               ※


 沙綾香は今、右側のベッドで這う格好になり、背後から突き込まれていた。
「くう、う……かはっ……あぐ、うんっ……!!」
 薄く開かれた口から漏れる声は、相も変わらず苦しそうだ。犯している男のペニスは角度的に見えないが、沙綾香の反応からして、マーキスと同等以上のサイズなんだろう。
「どうしたジャパニーズ、ダーナルのコックがそんなにいいのか!?」
「さっきから全然動かねぇもんなあ。ホラ声上げてみろ、アンアン最高~ってよ!!」
「お、女の子を、舐め……ないで……!」
 沙綾香はベッドに突っ伏しながら、それでも野次に反論していた。しかし、まるでその反論を待っていたかのように、ダーナルが深く貫きながら動きを緩める。
「あああっ!?」
 沙綾香の悲痛な悲鳴で、射精されているのがわかった。二回連続の膣内射精だ。調教師が無精子症であることなど知る由もない沙綾香にとって、それはどれほど絶望的だろう。
「よ……よくもっ!!!」
 沙綾香はベッドから顔を上げ、犯していた男を睨み上げる。だが、その先にいるのはもうダーナルじゃない。胸板こそ前の2人よりやや薄いが、代わりに上腕の筋肉が輪をかけて凄まじい、また別の男だ。
「『フロリダの暴れ馬』ことドミニク様だ。楽しもうぜえお嬢ちゃん!」
 ドミニクはそう言って、沙綾香の腕を引いた。腰を浮かせた沙綾香の割れ目から、ドロリと精液が溢れ出る。たった2回の射精だというのに、すでにヨーグルトの箱を逆向けたような状態だ。
「い、痛いって! 乱暴にしないでよっ!!」
 沙綾香がきつい口調で不満を告げても、ドミニクは意に介さない。沙綾香を無理矢理ベッドから引きずりおろすと、両腿を軽々と持ち上げる。
 細身とはいえ170センチの沙綾香は、体重も60キロ程度はあるだろう。そうなると結構重い。実際、対面座位で抱く時などは、太腿に相当な圧迫感があったものだ。だがドミニクは今、そんな沙綾香を気合も入れずに抱え上げた。大層な化け物ぶりだ。
 そして奴は、抱え上げた沙綾香を自分の股間へ下ろす形で挿入を果たす。
「あ゛う゛、くはっ……!?」
 抵抗のできない沙綾香は、自重と落下速度で深々と剛直を受け入れるしかない。ドミニクのペニスは前2人よりもさらに大きいように見えるが、それが一気に半分以上隠れてしまっている。
「いぎっ……お、おっき、すぎる……っ!!」
「ヘッ。何言ってやがる、まだ6割ぐれぇしか飲み込んでねぇじゃねえか。ちゃあんと根元まで包み込んでくれよ!!」
 ドミニクはそう言いながら、また沙綾香の身体を浮かせ、勃起した怒張の上に着地させる。ぶじゅうっという音が響き、膣の中の白濁が噴き出す。かなり衝撃的な光景ではあるが、沙綾香の反応がもっと気がかりだ。
「はうううう゛っ!!!!」
 表情が凄まじい。歯を食いしばり、目元に皺を作って、悲痛な声で呻く。抱え上げられてMの字を描く脚の先は、10本の指すべてが反っている。親指だけならともかく、あれほどの数の指が反応するのは、相当な痛みを感じた時だけだ。たとえば、内臓を串刺しにされるだとか──いや、それでは比喩にならない。宙吊りのまま、黒人の黒々とした槍で性器を貫かれる様は、紛れもなく串刺しだ。
「おら、おら、おら!! へへへ、3発目だっつうのによく締まるじゃねぇか。他の奴のザーメンでヌルヌルしてんのも、案外悪くねぇしな。まるでナマあったけぇローションだぜ!」
 ドミニクはそう言いながら沙綾香の身体を上下させ、豪快な結合を繰り返す。
「んぐっ、んんん゛っ……そんなに、ガンガン、落とさないで、よぉ……。痛いって、ホントにっ……!!」
 呻きながら、恨み事を吐く沙綾香。激しい上下のピストンは、華奢な彼女には相当つらいだろう。
 だが、今の彼女にはおそらく、別のプレッシャーも掛かっている。

「ひひひ、『マン屁』がすげぇな」
「ああ。あいつも良い趣味してるぜ。あんな可愛い顔の女のマンコを、ブビブビ鳴らしやがってよ」
 俺の隣で、セキュリティ共が肩を揺らして笑う。
 連中の言う『マン屁』とは、ドミニクが怒張を抜き差しするたびに鳴る、放屁のような音のことだろう。ドミニクはパフォーマンスのつもりか、抜き差しのストロークを大きく取っていた。沙綾香の身体を高く掲げる時には、長大なペニスの亀頭が半分ほども覗く。そのせいで膣内に空気が抱きこまれるらしく、ぶりっ、ぶびっ、という音が抜き差しのたびに起きていた。それに加え、突き込みの度に精液が噴き出すのも一向に止まらない。その2重の悲惨さで、下のフロアには大笑いが起きている。
 その渦中にいる沙綾香の顔は、哀れなほど紅潮していた。
「ん、くっ……くはぁ、はぁっ、はぁっ…………」
 苦しそうに呻き、喘ぎながらも、視線は脚の合間から離れない。
「見ろよ。あのジャパニーズ、すっかり下向いちまってんぜ。ちっと前までは、犯してる奴のツラ睨んでたってのによ」
「プッシーが気になって仕方ねぇらしいな。ま、あんだけブリブリ鳴ってる上に、ザーメンまで飛び散ってんだ。無理もねぇがな!」
「しっかしひでぇ音だな。実質、プッシーから白いクソ漏らしてんのと同じだぜありゃ!」
 黒人連中は随分と賑やかだ。そしてそうした喧騒は、ドミニクを更に調子づかせる。
「どうした、俯いてちゃ勿体ねぇぜ。せっかくスゲェことになってんだ、自分でも拝んでみろよ!!」
 奴はそう叫ぶと、左の壁際に近づいていく。一面に広がるミラーに、あられもない姿を映し出すためだ。
「あ……いやあーーっ!!!」
 一瞬とはいえ、自分の姿を直視した沙綾香は、悲鳴を上げる。可愛い悲鳴だ。こんな時に適切な表現ではないかもしれないが、それでも、思わず『可愛い』と思ってしまう類の声だった。そんな声を、他の奴らに聴かせたくはない。性欲に滾る獣にとって、可憐な悲鳴は血の匂いと同じだろうから。
「いひひひっ、イーイ声だなあ!! ジャパニーズの悲鳴ってのは可愛すぎていけねぇ……もう限界だ、イクぞ! ものすげぇ量が出るだろうがよ、プッシー締めて、一滴も零すんじゃねぇぞっ!!!」
 ドミニクは前の2人と同じく咆哮を上げながら、沙綾香の下半身を腰の上に落とす。
「い、ひやあああっ!!!」
 沙綾香はまた悲鳴を上げた。膣内に精を受ける時の、恐怖に震える悲鳴だ。
 マーキスの立ち鼎、ダーナルの後背位に比べ、ドミニクの体位は射精の瞬間がわかりやすい。なにしろ結合部が丸ごと晒されているんだ。黒々とした蛇のようなペニスが、まるで生きているように脈打つ様もよく見える。
「いやああ!! どれだけ出すのっ、やめてよっ!!!」
 沙綾香が悲痛な声を上げるのも当然だ。
 その壮絶な膣内射精を、黒人連中は面白そうに見守っている。だがそんな中、ロドニーが壁際で煙草をふかすマーキスに耳打ちするのが見えた。
「へへ、そりゃいい」
 マーキスは悪戯っぽい笑みを浮かべてキッチンに向かい、カクテルグラスを手にして沙綾香達の方に近づいていく。
 その時にも、ドミニクの射精は続いていた。『ものすげぇ量が出る』……その宣言通り、ポンプで精液を送り込むかのようだ。どくっ、どくっ、と脈打つ動きが、7回、8回を超えて、まだ続いている。しかも、出きっていなかった前2人の精液と合わせて、とうとう膣容量を超えたらしい。
「いやあ、溢れちゃう!!」
 沙綾香が再び悲鳴をあげ、足をばたつかせた直後。怒張が入り込んだままの膣内から、とうとう精液が漏れ出した。
「ほおおお、すげぇなこりゃ。新感覚だぜ」
 小便を出しきった時のように細く息を吐き、ようやく割れ目から怒張を引き抜くドミニク。極太の栓を失った膣内からは、当然ながら精液が溢れだす。すると、マーキスがその下にカクテルグラスを差し出した。
「えっ? な、何!?」
 沙綾香が驚く間にも溢れつづける白濁は、小ぶりなカクテルグラスをあっという間に満たしてしまう。
「絶倫なオスにしか作れねぇ特濃ドリンクだ。未成年が飲んでも問題ねぇからよ、まあグーッといけや」
 ロドニーがそう言って、沙綾香の鼻を摘みあげる。
「んん……んんん、ん゛ーーーっ!!!」
 沙綾香は口を閉じ合わせて抵抗するが、ハードなセックス直後で完全に息が上がっている状態では、そう何秒も息を止めてはいられない。
「んぷっ、はあっ!!」
 沙綾香がついに大口を開け、酸素を求める。マーキスは、その口内に容赦なくグラスの中身を注ぎいれた。中身が完全に舌の上へ注がれた直後、ロドニーが手の平で沙綾香の口を覆う。
「んん゛っ!? うむう゛っ、う゛、うう゛っ!!!」
 沙綾香は目を見開き、眼球をぐりぐりと動かしてロドニーに訴えかける。それでも奴は加虐をやめない。
「濃厚なオスのザーメンだ。その味と匂いを脳に刻み込め!」
 そう怒鳴りながら、しっかりと口を塞いで吐き出す動作を封じ込める。
「んむ゛ぅううや゛っ!!!」
 沙綾香がまたくぐもった悲鳴を上げ、強く眉根を寄せた。

『そーそー。興味本位で挑戦してみたけど、あれはホーント無理!』

 いつだったか、彼女の発した言葉が脳裏に浮かぶ。あの子は青臭いものが苦手なんだ。ましてやそれが、好きでもない男の精子となれば、どれだけ受け入れ難いことだろう。
 さらに何秒かして、とうとう沙綾香の抵抗が弱まった。そして、ごくんという音が鳴る。白い喉が上から下に蠢いてもいる。飲んだんだ。カクテルグラス一杯の精液を。
「ようやく飲みやがったぜ。えらく抵抗してやがったな」
「だがこれで、本物のオスの匂いと味を覚えただろ。まだまだ3人分だがな!」
 黒人連中が沸き立つ中、ようやくロドニーが手をどける。
「どうだ、黒人のザーメンの味は。ドロドロに濃くて美味かったろ」
「うううえ……おえ、げえっ! はぁ、はぁ……まさか。これだったら、センセの方が、ずっとマシだったよ」
 沙綾香は眉を顰めながら、ロドニーの言葉をきっぱりと否定する。その健気な姿は正直嬉しいが、同時に不安も増す。
「やれやれ、本物の味がわかっちゃいねぇな。ま、その分躾け甲斐があるってもんか。ジャマール、次はお前だ。たっぷりとオスの味を覚えこませてやれ!」
 ロドニーは首を振りながら、4人目を指名する。
「おっしゃあ、待ちかねたぜ!!」
 ジャマールは薄ら笑みを浮かべながら沙綾香に近づくと、その腕を掴んで左側のベッドに放り投げる。こいつも、やはり獣。相手がか弱い少女だろうと、容赦なく欲望を叩きつける畜生だ。


               ※


 4人目のジャマールと沙綾香の関係性は、最悪だった。前の3人にも沙綾香が心を許している様子はなかったが、それに輪をかけてひどい。
 理由は、ベッドに沙綾香を這い蹲らせたジャマールが、その性器を詰ったことだ。
「ひひひひっ、ひっでぇプッシーだなジャパニーズ!! 黒人3人にレイプされて、グチャグチャになってんじゃねぇか。穴もガッポリ開いてよ、スプレー缶ぐらいならそのままぶち込めそうだぜ!!」
 沙綾香の白い尻をつま先で蹴りながら、大声で野次を飛ばす。それが他の黒人共の笑いを呼び、沙綾香の表情が引き攣る。
「はぁ!? ふざけないでよ、あんた達のせいでそうなったんでしょ!!」
 背後に向かってかなりの剣幕で叫ぶが、ジャマールはむしろ愉快そうだ。
「その割にゃ、プッシーがヒクヒクしっぱなしじゃねぇか。白いヨダレ垂らしながらよぉ!!」
 その二言目で、また爆笑が巻き起こる。地獄だ。
「………………!!」
 もはや何を言っても茶化されると悟ったのか、沙綾香は憮然とした表情で前を向く。
「どうした、犯される準備はオーケーってか?」
 ジャマールがさらに煽っても、答えない。
「オウ、拗ねちまった。ガキくせぇのはツラだけじゃないらしいな!」
 ジャマールは肩を竦めて今一度周りの嘲笑を誘い、悠々とボクサーパンツを脱ぎ捨てる。厚い布地から弾けるように飛び出した逸物は、少し離れた場所にいるマーキスよりも明らかに大きい。マーキスはすでに一度射精してはいるが、回復力が増強されているという端塚の言葉通り、すでに斜め上を向くレベルの完全勃起に戻っている。それと比べても、ジャマールの逸物は一回り大きかった。
 改めて見比べてみれば、1人目のマーキスから始まり、2人目のダーナル、3人目のドミニク、そして4人目のジャマールと、後になるほど逸物のサイズが増しているようだ。だとすると、この後もさらに……。
 悪寒がする。だが、その悪寒に向き合っている暇もない。ガラス板に隔てられた下のフロアでは、今まさに、沙綾香がジャマールの剛直を捻じ込まれているところだ。
「ん、くっ……!!」
 これまでで最大のサイズの挿入。当然、沙綾香は苦しそうだ。だが、その反応は薄かった。鼻から荒い息を吐き、シーツを掴みながらも、必死に声を殺している。
「どうした? アンアン鳴いてみろよ。泣き叫ぶのでもいいけどよぉ!」
 ジャマールがそう催促しても、やはり声は漏れない。
 異様な光景だった。桜色の肌をしたスレンダーな少女が、その3倍ほどの体躯を誇る巨漢の黒人に後ろから犯されている。ギシィッギシィッとベッドが軋む音は、今にも壊れるのではないかと心配になるほどだ。シーツの擦れる音もひどく耳障りだし、這う格好で激しく突かれる沙綾香の乳房も、形が視認できないレベルで前後に激しく揺れている。ジャマールが腰を打ち込むスピードがあまりに速いので、逸物の大きさは確認しづらいが、時おり覗く黒い塊は、日本人のペニスの倍は横幅がある。
 この条件なら本来、絶叫が伴うのが自然だ。洋画の中でも最もハードな部類に、何かの間違いで華奢な日本人少女が入り込んでいるような状況なんだから。
 それでも、沙綾香は一切声を漏らさない。前から覗き込む連中を警戒してか、口を開いてすらいないようだ。鼻息ぐらいは漏れているはずだが、それすらジャマールの獣のような息遣いに掻き消されて聴こえてこない。無音だ。まるで、彼女には何の衝撃も伝わっていないかのような。
「ヘイ、いつまでヘソ曲げてんだクソビッチ! 喘げよ! 俺のは太くて最高だろうが、よおッ!?」
 ジャマールは明らかに焦っていた。いくら激しく犯したところで、相手が無反応であれば一人相撲だ。そうなれば、嘲笑の対象は奴に変わる。
「どうしたジャマール。そのお嬢ちゃん、マグロじゃねぇはずだが? 俺とのファックでギャンギャン喚いてんの見てたろ?」
「お前ぇん時だけ、なーんで静かなんだろうなぁ? そのコックにゃ綿でも詰まってんのか!?」
 ここぞとばかりに、罵詈雑言がジャマールに浴びせられる。
「黙れ!」
 奴は躍起になり、沙綾香の下腹を両手で抱え込みながら、激しく腰を打ちつけはじめた。バイソンが人を襲っているかのようだ。沙綾香の膝が何度もシーツから離れ、深い窪みが覗く。そんな状態下でも、やはり沙綾香は声を上げない。
「……っ!!」
 何度か頬を膨らませ、嘔吐の兆しを見せてはいたが、その次の瞬間には引き締まった無表情に戻る。
「いつまでやってるつもりだ? まだ全員回ってねぇんだ、とっとと出しちまえよ!!」
 腰を振り続けるジャマールに対して、とうとう苛立ちの声が上がりはじめた。その声は瞬く間に波及し、何人もがジャマールを糾弾する。ライバルを蹴落とそうという感情からか、それとも単にリンチが好きなだけか。
「クソがッ!!」
 ジャマールは叫び、激しく腰を打ちつける。そしてほんの少し腰の動きを緩めた後、荒い息を吐きながら腰を引いた。
 薄桃色の尻肉と黒い逸物とを、白い糸が繋いでいる。しっかりと射精を終えたらしい。沙綾香は射精されている最中すら、声を上げずに耐えきったようだ。
「ハァッ……ハァッ、ハァッ……どうだ、声も出ないほど良かったか?」
 ジャマールが汗を滴らせながら呼びかけると、沙綾香はゆっくりと身を起こす。彼女もかなり汗を掻いているが、表情はあくまで涼しげだ。
「ああ、終わったの? なんか後ろで必死に腰振ってるのは知ってたけど、入ってんのかよくわかんなくてさ。ちょっと寝ちゃってたよ」
 ふっ、と笑みを浮かべながら、そう答える沙綾香。あそこが開いていると詰られた事の意趣返しか。動向を見守っていた連中が一気に噴き出す。沙綾香に視線を向けられているジャマールだけが苦い顔だ。
「この、ガキッ……!!」
 ジャマールが目を剥いて拳を握りしめた瞬間、その肩を別の一人が叩く。
「ああ!? 離せアンドレ!!」
「駄目だ。お前は時間を使いすぎた」
 5人目のアンドレは、すでに下穿きを脱ぎ捨てている。雄雄しく反り勃った男根は、待ちきれないという明確な意思表示だ。荒々しく睨み上げるジャマールに対し、あくまで静かな瞳で見下ろしているのも、有無を言わせない独特の風格がある。
「早く引っ込め、チェリーボーイ!」
「凄んでも無駄だ、テメェの負けだよ!!」
 さらに野次まで飛べば、ジャマールはバツが悪そうに拳を下ろし、戦場を去るしかない。


               ※


 意地でも声を殺し、ジャマールの面子を潰したのは見事だった。だがその偉業が、かえって沙綾香の首を絞める。一度耐えた以上は、次も耐えるしかない。ジャマール相手には声を殺しきったが、その直後にまた悲鳴……では格好がつかない。

 悪いことに、アンドレの怒張はジャマールよりさらに大きそうだ。
 アンドレはジャマールとは対照的に口数が少ないようで、黙々と事を進めた。
 沙綾香をベッドの上に仰向きで寝かせ、大きく足を開かせる。そしてその性器の上に、勃起しきった自らの怒張を置く。『今からこれを挿入する』……そう宣言するように。
 そのサイズが、また恐ろしくでかい。印象は、黒く巨大なフランクフルト。ただし雁首が張っているし、根元にいくほど太い。そして、玉袋が肛門に触れる位置に置かれたその亀頭の先は、完全に沙綾香の臍の位置を超えていた。

『あっ、はっ、はっ……こ、ここ!! ここまで、入っれるぅ……!!』

 桜織の言葉を思い出す。
 過去記録の終盤、彼女はちょうど今の沙綾香と同じ格好で突かれながら、臍より上を人差し指で押さえていた。あのケースでは桜織の勘違いとも思えたが、今は違う。全て収めきれば、臍より上まで届く。その事実を明確に突きつけられている。
「う……っ!!」
 沙綾香は顔を歪めていた。アンドレはそんな彼女をじっと見ていたが、やがて小さく腰を引き、逸物の先を割れ目に宛がう。そして一拍置いてから、一気に突きこんだ。
「っっ!!!」
 入れるぞ、という合図があったにもかかわらず、沙綾香の反応は大きい。結果的に声を殺せはしたものの、かろうじてだ。
 ジャマールほど嫌な性格ではないようだが、このアンドレも加減をするつもりはないらしい。沙綾香の太腿に手を添え、パンパンと鼓膜の震えるような音を響かせながら、猛烈なピストンを繰り返す。怒張が引かれるたびにピンクの陰唇が捲れる様は、インパクトが凄まじい。
 沙綾香はじっと耐えていた。だが、口をきゅっと引き結べていたのは最初の数分だけだ。そのうち、口を開閉して荒い呼吸を繰り返すようになる。そしてさらに時間が経てば、頭上に投げ出された手がシーツを掴みはじめた。その頃には顔もかなり余裕がなくなっていて、子供でも産むかのような雰囲気だ。
 それを見て、アンドレは笑った。そして沙綾香の太腿から手を離すと、必死にシーツを掴む彼女の両手首を握りしめ、上半身を前に傾がせる。紛うことなき『レイプ』の形だ。寡黙な男だが、ああして手首を押さえて、何人もの女性を犯してきたに違いない。逸物を沙綾香の腹に乗せたのも、相手に覚悟を決めさせるためではなく、恐怖に引き攣る顔を楽しむためだったんだろう。
「う……っ!!」
 沙綾香が睨み上げる中、アンドレは薄笑みを浮かべながら逸物を打ち込みつづけ、絶頂する。獣じみた咆哮を上げる前4人とは違い、声を出さない大量射精。それは、非常に不気味だ。


 6人目のレジャナルドは、アンドレとは真逆でノリの軽い男だった。壁に手をつかせた沙綾香に後ろから挿入し、常にクリトリスや乳房を刺激しながら、耳元に何か囁きかけている。どうやら、相当下劣な言葉を囁いているようだ。
「っ……そんな事したら、本気で殺すから!」
 沙綾香は何度もその手を払いのけ、怒り心頭な様子で背後を睨みつける。それでもレジャナルドは懲りず、何度も同じ事を繰り返しながら、気持ち良さそうに射精に至る。
「触んないでよっ!!」
 最後に髪を撫でられそうになった時、沙綾香は本気で嫌がってその手を跳ね除ける。
「気の強ぇ嬢ちゃんだな。“これから”が楽しみだぜ」
 レジャナルドは含みのある言葉を残し、白濁を滴らせながら次の男に場所を譲る。


 7人目のトラバンは、沙綾香の羞恥心を煽るやり方を好んだ。壁に手を突いた沙綾香を犯すやり方はレジャナルドと同じだが、トラバンは沙綾香の左腿に腕を回し、強引に高く上げさせる。結合部が鏡に映り込むように。
「ちょっと、やだ……いい加減にしてよ!!」
 沙綾香は手で恥じらいの部分を隠そうとするが、トラバンはその手を払いつつ、髪を掴んで沙綾香に鏡を見させる。意地の悪い男だ。

 嘲笑され、茶化され、羞恥心を煽られながら、決して細くはないペニスを延々と挿入される。それは着実に沙綾香の気力と体力を削っていった。だが、それでも7人目まではまだマシだ。
 彼女にとっての本当の試練は、8人目以降。最後の3人を相手する沙綾香は、本当に痛々しかった。


               ※


「いたいいたいいたいいたいっ!!!!」

 沙綾香の悲鳴が響き渡る。
 8人目のモーリスは、何も特別な犯し方をしているわけじゃない。壁に寄りかかった沙綾香へ、ただ背後から挿入しているだけだ。にもかかわらず、沙綾香は挿入直後に悲鳴を上げた。2分が過ぎようとしている今ではもう、完全に泣いてしまっている。
「いいぜぇ……いいプッシーを持ってやがる」
 モーリスは上機嫌で沙綾香の肩を舐めながら、腹に手を回して一層激しく腰を打ちつける。
「さけるっ、ほんとに裂けちゃうっ!!」
 沙綾香の悲鳴は止まない。そのひどい状況がさらに数分続き、ようやくモーリスが動きを止めた。
「いくぞ、出るぞおおおっ!!!!」
 そう言いながら腰を震わせ、当然の権利の如く膣内に精を注ぎ込んでいく。
「はぁっ、はっ、はっ、はっ、はっ…………」
 沙綾香は壁に縋りつくような格好のまま、ただ荒い呼吸を繰り返すばかりだ。最初の頃にはあれほど中出しに憤っていたというのに、もうその余裕もないんだろう。それどころか今の彼女からは、『ようやく終わった』という安堵感さえ滲み出ている。
 たっぷり数秒をかけて射精を終え、モーリスが逸物を引き抜いた。白濁を滴らせながらぶらりと垂れ下がるそれは、ペットボトルでもぶら下げているようだ。人間離れしているにもほどがある。
 しかも、もはや確実だが、セックスの順番はペニスのサイズの小さい順だ。つまり9人目と10人目は、そのモーリスのサイズすら超えていることになる。

「お前の番だぜ、ダリー」
 ロドニーがゴーサインを出すと、胸板が厚く、腹の出た男がパンツを脱ぎ捨てる。
「やーーっと俺の番か。ったく、何時間待ったんだ?」
 怒張は、力士を思わせる恰幅に見合ったサイズだった。長さはモーリスより少し短いが、太さはこちらが上だ。亀頭や雁首も人並み以上のサイズだが、あまりにもペニスの胴部分が太いせいで先細りに見える。
「や、やだ……!! なにそれ……さっきより、太い……!!」
 ダリーのペニスを目の当たりにした沙綾香は、壁際から離れて距離を取ろうとする。だが、モーリスとのセックスですでに足腰が立たない状態なんだろう。千鳥足で彷徨った末、左側のベッドに退路を阻まれてしまう。
「どうした。ここは土俵の上じゃねぇんだ、もっと自由に逃げ回ってもいいんだぜ」
 ダリーは、元力士なんだろうか。はっきりとした日本語を話しながら、じりじりと距離を詰めていく。
「いや、いやいやっ!! 本当にやめて、せめて休ませて!! あそこがヒリヒリして痛いの!!!」
 沙綾香はとうとう寝台に尻餅をつき、両の掌をダリーに向けて突き出す。それを受けてダリーは歩を止め、ロドニーの方を振り向いた。どうする、と目で問うダリーに対し、ロドニーは笑みを浮かべながら、親指を下に向ける。沙綾香の表情が凍りついた。
「やあああっ!!!」
 目の前まで迫ったダリーに対し、沙綾香は必死の抵抗を見せた。膝を曲げて、ダリーの分厚い肉体を蹴った。鎖骨を、肩を、胸板を、腹を、鳩尾を。だがその必死の蹴りは、足裏にこびりついた精液をダリーの身体に塗りつける結果にしかならなかった。
「あ……ああ…………!!」
 決死の抵抗が一切通じない巨漢を前に、沙綾香が震え上がる。対してダリーはにこやかだ。
「マッサージとは気が利いてんじゃねぇか。そうだよなぁ、日本人なら『おもてなし』の心は大事にしねぇと」
 奴はそう言って、なおも逃げようとする沙綾香の尻肉を掴み、無理矢理に尻を高く上げさせてから挿入を試みる。メリメリと音もしそうな、壮絶な挿入。
「あああああっ!!!!」
 沙綾香の顔は一瞬で歪んだ。
「おおおおっ、すげぇ締まるな!? 他の奴等にやられた後でこれって、えれぇ名器じゃねえかよ! オイお前ら、もっとアピールしろよこういうのはよ!!」
 ダリーは興奮気味に叫びながら、激しく腰を打ち込み続ける。
 今までにも増して絵がひどい。他の連中も暴力的なまでのマッシブさだったが、ダリーの力士体型は圧が違う。下手をすれば、奴の膨れ上がった太腿に、沙綾香の胴が丸ごと入ってしまいかねない。
 羆が、少女に覆い被さって暴れている……まるでそんな光景。だから、斜め上から見守る俺には、ほとんど状況がわからない。ダリーの巨体がすっぽりと沙綾香を覆い隠しているせいで、得られる情報と言えば、沙綾香がベッドに頭を擦り付けていることと、その手が必死にベッドシーツを掴んでいることだけだ。
「よく見えませんね。しかし、これも一興」
 俺の正面で、端塚が面白そうに呟く。
「あれは、元力士か」
「はい。私生活で問題行動を起こして十両で引退しましたが、三役入りは間違いないと噂されていたそうです」
「問題行動、というと……」
「性的なトラブルです。派手な女遊びをする力士は多いと聞きますが、その中でも目に余ったのでしょう。角界を追放になってからは、ハワイに渡ったそうですが、そこでも手癖の悪さは治らなかったようです」
 その逸話を聞いて、俺はまた後悔した。連中について知れば知るほど、醜悪なケダモノに思えてくる。どこかの犯罪者名鑑に載っている、俺に無関係なエピソードなら、気楽に聴くこともできるだろう。だがそのクズの中のクズは、今この瞬間も沙綾香を犯してるんだ。
「おらいくぞ、いくぞっ!!!!」
 ダリーは叫び、尻を高く掲げる格好の沙綾香の中へと精を注ぎ込む。沙綾香は反応しない。意地を張っているのか、それとも抵抗する元気もないのか。
 ともかくこれで、9人に順番が回った。残るはあと1人。
「……うお、なんだありゃ……!?」
「マジで人間のチンポかよ、あれ……」
 10人目が持ち物を晒した瞬間、俺の周りで薄笑いを浮かべていたセキュリティ連中の顔が凍りついた。そしておそらく、俺の顔も。
 形容するなら、それは『腕』。股の間から腕が伸びているようなものだ。というか本当に、すぐ傍にある沙綾香の細腕よりも明らかに太い。すでにロドニーの、ローストターキーのように中央が膨らんだ生殖器を見ているが、それでも戦慄が走る。

「いやあああっ、やめてっ! 無理、無理ぃっ!! 裂けるっ!!」
 沙綾香の悲鳴だ。彼女はベッドの上で男に覆い被さられ、馬並みのペニスを上から捻じ込まれているところだった。
「お前、さっきもそう言ってたな。んで大丈夫だったじゃねぇか。何度も嘘つくと嫌われんぜ」
 激しい抵抗を見越してか、10人目の男はすでに沙綾香の両手首を鷲掴みにして封じている。つまり、沙綾香はもう逃げられない。
「何度見ても、タイロンのコックは半端ねぇな。まさに馬並みだぜ」
「馬でも、あそこまで太ぇのぶら下げてるのは滅多にいねぇぞ。長さはともかくな」
「ほー、テキサス野郎が言うと説得力あんな。バーベキューと馬に関してだけは信用してやるよ」
 他の黒人連中も、10番目の男のペニスを別格と見ているらしい。だが、奴ら自身も巨根の持ち主だからか、セキュリティ共とは違って笑い話にする余裕がある。
 だが、いくら連中が和やかな空気を作ろうと、その視線の先で地獄が続いている事実は変わらない。
「はっはっはっ……そんなに奥、ガンガン突かないでっ!! 子宮が潰れちゃうっ、お願いいいっ!!!」
 沙綾香の息は、常に切れていた。酸素が吸えた僅かな機会は、すべて哀願で使い果たす。相手を睨みつける反骨心も、無反応を貫く気概も、すでにない。無くて当然だ。
 上下に激しく抜き差しされる逸物は、何度見ても目を疑う。太すぎる。長すぎる。距離があるから細部まで見えるわけじゃないが、それでも、割れ目の開き方が9人目までと違う気がしてならない。女性器をアワビだと形容するなら、あのアワビは、男2人が横から引っ張って引き裂いたような形をしている。そこへ来て沙綾香の身も世もない絶叫が響き渡るんだから、俺の心臓は早鐘のように鳴りっぱなしだ。
「ったく、うるっせぇな! チャイニーズでもそんなに喚かねぇぞ?」
 沙綾香の声がいよいよ悲痛さを増したところで、タイロンが溜め息を吐きながら手首を離す。そして一旦逸物を引き抜くと、キングサイズのベッド中央に寝転がる。手首を枕にし、完全に待つ姿勢だ。
「だったら、自分で入れろ」
 その命令に、足を内股に閉じながら苦しんでいた沙綾香が反応する。
「え……」
「早くしろ、ブツが乾いちまうじゃねーか!」
 怒号を浴びせられ、沙綾香は渋々ながらにタイロンの腰を跨いで、ゆっくりと腰を下ろしていく。
 太腿の震えがひどい。表情からして、羞恥心や恐怖もあるだろうが、何よりさっきのダメージが大きいんだろう。
 スレンダーな美少女が、凍えるように震えながら、腕のようなペニスを自ら受け入れていく。それは、さっきより酷い光景に思える。野次を飛ばす連中がさっき以上に勢いづいているから、たぶん俺の感覚は間違っていないんだろう。
 俺は疲れていた。見ているだけなのに。
 だったら、犯され、犯され、意地を張って、泣き喚いてきた沙綾香は、一体どれだけつらいことだろう。彼女の足の痙攣が、その答えなんだろうか。
「うぐう、いたい、いたい、い゛っ……!!!」
 歯を食いしばる沙綾香の顔が、東側のミラーに映っていた。
 彼女は涙を流している。泡だらけの唾を垂らしている。滝のような汗を流している。
 可哀想に思わないのか。勘弁してやろうとは思わないのか。
「よし、そのまま動け。プッシーを締めて、俺をイカせてみろ」
「早く動けよ、ジャパニーズ! いつまで経っても終わんねーぞ!」
 命令と、野次が聞こえる。どうやら俺とは、本当に感受性が違うらしい。
 沙綾香は上下に揺れていた。土台が黒で、跨っているのが白いから、モザイクのような視界でもよく見分けがつく。
「腰使いは素人丸出しだが、なかなか絶景じゃねえか。スタイルいいなお前、ダンサーみてぇだぜ」
 タイロンは唸るように笑いながら、手を伸ばして沙綾香の乳房を揉みしだく。
「やっ……!!」
 沙綾香は身を捩って嫌がりつつも、腰を上下させつづける。そして数分後、ようやく、本当にようやく、決死の努力が身を結んだ。
「いいぞ、いい、そろそろだ……ふーっ、出すぞ、受け止めろよ!!」
 大きく息を吐き出しながら、タイロンが太腿の筋肉を膨れ上がらせる。
「う!!」
 沙綾香が小さく呻き、背筋を伸ばした。まさに、膣の中にタイロンの精を浴びているんだろう。
「く……はぁ、はああぁ…………っ!!!」
 彼女はしばらく、きつく目を閉じていたが、最後には薄目を開けてタイロンを睨み下ろした。それを受けたタイロンの口笛は、賞賛の意味なのか、それとも煽りなのか。
「美しいですねぇ。苛烈な凌辱を受けて、身も心もボロボロに追い詰められているというのに、凛とした光がある」
 端塚も感嘆の溜め息を吐く。こいつにも美しいと思う心はあるのか。
 もっとも、奴の見ている光景は、俺とはまったく違う色かもしれないが。


               ※


 『十番勝負』は、ようやく終わった。タイロンの上から退いた沙綾香は、そのまま貧血でも起こしたように倒れこむ。限界だ。あるいは限界など、とっくに越えていたのかもしれないが。
「へへへ、すげぇ……マンコがグチャグチャになってやがる」
「ああ。まるで100人以上に犯されまくったみてぇだ。やっぱ黒人はすげぇぜ」
 セキュリティ連中が、倒れ込んだ沙綾香の股座を見て笑う。
 確かに、離れていても見てとれる拡がり具合だ。なまじ最初の形が綺麗だっただけに、なおさら変化がわかりやすい。どれだけのダメージを受ければ、あれほどに形が崩れるんだろう。何度も手を突っ込み、悪意をもって掻き回し続けても、あそこまでになるものだろうか……。

「だいぶ参ってるらしいな」
 息も絶え絶えな沙綾香に、手越が声をかけた。沙綾香は仰向けに転がったまま、首だけを横向けて手越の方を向く。
 手越の手には、食器を載せた盆があった。桜織の映像を思い出す光景だ。あの時の料理は、女を強制的に発情させるものだった。桜織は悪意に満ちたそれを嫌がったが、手越に避妊薬入りだと言い含められ、不本意ながらに平らげたんだったか。
「スタミナチャーハンとホルモンスープだ。シェフが作ってるから、それなりに美味ぇぞ」
 手越はそう言って、ベッド近くのガラステーブルに盆を置く。
 奴の言う『シェフ』とは、地下20階にあるレストランの調理係だろうか。だとすれば腕は確かだろう。気楽に料理を味わえた最初の数日間、俺はあのレストランで供される、あらゆる料理に舌鼓を打ったものだ。もう、遥か昔のことに思えるが。
「食欲なんか、あるわけないでしょ……」
 そう告げて顔を背ける沙綾香に対し、手越は顔の皺を深める。
「食わねぇとこの後、ますます悲惨なことになるぜ。テメェの身体だ、今どうなってんのかは解ってんだろ。黒人共の馬鹿でけぇチンポを代わる代わる突っ込まれて、マンコはもうズタズタのはずだ」
 その一言で、沙綾香は目を見開いた。
「だが当然、これでお開きってワケじゃねぇ。お前にはこれからもあの連中の相手をさせ続ける。となりゃ、少しでも筋肉や粘膜を回復させなきゃあな」
 手越はそこで言葉を切り、食器を指で弾く。響くのは、どこまでも冷たい音。嫌でも意識がそちらに向いてしまう。
「スープの具は、豚の胃と大腸、根菜にマメ。チャーハンのコメは玄米で、肉は血でできたソーセージをオーブンでカリカリに焼いたもんだ。コラーゲンと鉄分・ミネラルがタンマリ入ってっから、傷の治りが早まるぜ。今のお前にゃ、絶対に必要だと思うがな」
 沙綾香の顔が、手越の方に向き直った。それは、彼女自身がそれを必要と判断した証拠だ。手越はそれを見て目を細める。
「迷ってる暇はねぇぞ。ダメージを負った時のケアは、早ぇに越したことはねぇ。マンコが使い物にならなくなってもいいのか?」
「!!」
 沙綾香は、とうとう完全に身を起こす。その視線は上を向いた。俺のいる方だ。
「沙綾香……!」
 思わず言葉が漏れる。
 まだ俺を意識してくれるのは嬉しい。だが、それ以上に彼女自身の体が心配だ。手越の言葉を鵜呑みにするわけじゃないが、今の彼女が栄養を取るべきなのは間違いない。
 食ってくれ、沙綾香。俺は視線で沙綾香にそう訴える。すると彼女は、ベッド端に両脚を揃え、ついに床に下りた。
「……やはり彼女は、貴方に依存しているようですね」
 端塚がほくそ笑む。奴の思惑通りというのは不愉快だが、沙綾香と繋がりがある事実は嬉しい。複雑な気分だ。

「どうだ、イケるだろ。ホルモンってなぁ適切に処理すりゃ、コクがあってひたすらに美味ぇんだ。脂っこすぎねぇ分、歳がいっても食えるしな」
「手越のダンナよう、アンタたまにジジくせぇぞ」
「バカヤロウ、年季が入ってると言え若造が!」
「ほぉ、そりゃ『面倒臭い』の同義語か? 日本語は奥が深ぇな」
 手越とロドニーが馬鹿げた口論を繰り広げる傍らで、沙綾香は黙々とスプーンを口に運ぶ。
 愉快ではなさそうだ。俺の前でハンバーグを頬張っていた時には、鼻歌まじりだったというのに。それでも、彼女は食べつづける。すべては体を回復させるため。小さなグリーンピースさえ脇によけていた彼女が、意を決してインゲンを口に運び、顔を顰めながら必死に咀嚼する様は、見ているこっちまで泣けてきそうだ。

 ────頑張れ、沙綾香。頑張れ!!

 俺は心の中で、精一杯のエールを送る。
 それが彼女に、少しでも良い効果を齎すと信じて。


               ※


 食事の後、沙綾香には自由時間が与えられた。とはいえ、すでに疲労困憊の彼女に出来ることは多くない。シャワーを浴びながら歯を磨いた後は、ベッドに倒れこんで寝息を立てはじめる。
「へへへ。ただ寝てるだけだってのにそそりやがる」
「ああ、何でなんだろうな。俺はガリガリな女よりはムッチリしてた方がいいし、肌も小麦色に焼けたのが好みなんだが……あのガキから目が離せねぇ」
「まるでエルフ……いや、淫魔(サキュバス)だなありゃあ。人間が醸し出すエロさじゃねぇよ」
 マーキス達は眠り込んだ沙綾香を眺めながら、怒張を扱き上げる。今にもまた襲い掛かりそうだ。
「テメェら、手出すんじゃねぇぞ。マスターベーションも禁止だ。一旦外出て大人しくしてろ!」
 ロドニーが唸るように告げると、黒人共は未練がましく沙綾香を振り返りつつ、部屋の一角にある自動ドアの前に立つ。
「これ、面倒くせぇよな。いちいち3、4秒待たされてよ」
「たしか、データ登録されてるヤツしか通れねぇんだよな。セキュリティが厳重なのは結構だが、そのせいで不便になっちゃいい迷惑だぜ」
 黒人共は、口々に愚痴を垂れる。ドアの前のセンサーが赤から緑に変わり、扉が開いてからも、悪態は止まらない。
「随分と不満が多いみたいだな、お前の手駒は」
 俺はこれまでの意趣返しで、目の前の端塚に語りかけた。
「…………お恥ずかしいところをお見せしました」
 端塚は眼帯のない右目を伏せ、ティーカップを傾ける。この男にしては珍しく、苛立ちの感情を露わにしながら。

 そこから、何時間が経っただろう。
 俺の方も食事を済まし、端塚のチェスの誘いを断り、眠る沙綾香を見守りながら、どうにか逃げ出せないかと考えを巡らせていた時。例のセンサーが反応し、誰かが下の部屋に入ってくる。
 調教師連中が戻ってきたのかとも思ったが、違った。白衣に身を包んだ若い女だ。ロシア辺りとのハーフなんだろうか、顔立ちはアジア寄りだが、腰まである髪は白い。そしてその色に相応しい、クールな雰囲気を纏う美人だった。正直にいえば沙綾香の方が魅力的だが、そもそもにして沙綾香ほど男を惹きつける女性など滅多にいない。
「よう、来たか百合」
「ご無沙汰しております」
 振り返った手越に対し、百合と呼ばれた女性は深々と頭を下げる。この施設の女性従業員にはよく見られる態度だ。エレベーターガールも、受付嬢も、ウェイトレスも、男に対して従順だった。彼女もまた、倶楽部の調教を受けた奴隷なんだろうか。
「ヘイ! 起きろ、お姫様!!」
 ロドニーが新聞を折り畳み、分厚い掌を打ち合わせる。
「ふあっ!?」
 風船でも破裂したようなその音に、沙綾香の身体が反応する。
「…………ぁれ、センセ…………?」
 沙綾香はうわ言を呟きながら目を開く。俺の腕の中で眠る夢でも見ていたのか。つい今朝まで、それは俺達にとっての現実だった。だが今となっては、まさに“夢”だ。それを思い出したらしく、沙綾香の表情が暗く沈む。
「先生がいなくて残念だったな。だが代わりに、別の顔馴染みを呼んどいたぜ」
 手越はそう言って、自分の隣を指差した。沙綾香はその指の先に視線を向け、息を呑む。
「えっ……せ、生徒会長!?」
「御機嫌よう」
 驚く沙綾香に対し、百合は落ち着いたものだ。クールというより、どこか人形めいて思える。

「あの子も、蒼蘭女学院の出身なのか?」
 俺が問うと、端塚は静かに頷いた。
「はい。八金 沙綾香よりも2学年上で、彼女が入学した時に生徒会長を務めていた生徒です。名は高津 百合(たかつ ゆり)。女学院の歴史の中でも、指折り数えられるほど優秀な生徒だったと記録されております」
「蒼蘭の理事長は、そんな生徒にまで『課外学習』を命じたのか」
「ええ。『課外学習』の対象には、見目がよく、将来有望な生徒が優先的に選ばれます。その基準に照らした場合、生徒会長が選出される可能性は高いのです」
 生徒会長は、女学院の『金の卵』を統率するに足ると認められた存在。当然、価値が高いというわけか。その箔を凌駕する家柄とルックスを持つ沙綾香がいた今年は、かなりイレギュラーな年なのかもしれない。

「なんで、生徒会長が……お父さんみたいな政治家を目指して、国立の大学で勉強してたんじゃないんですか!?」
「大学には通っているし、政治家になる夢も捨ててはいないわ。けれどそれはあくまで、この倶楽部に貢献するための手段なの。この倶楽部が活動しやすいように、法律を変えるのが私の使命よ」
「この倶楽部が、活動しやすいように……? ここがどんな場所か、わかってて言ってるんですか!」
「勿論よ」
「そんなのおかしい! そ、それに、その髪……どうして真っ白なんですか? 一体ここで、何をされたんですか!?」
 あくまでクールな百合に対し、沙綾香の取り乱し方は相当だ。彼女の記憶にある百合は、よほど常識的な人間だったんだろう。そしてどうやら、髪も元から白かったわけではないらしい。
「そう喚くな。これから見せてやる」
 手越はそう言って右手を上げた。視線の先は、俺のいるフロアの更に上。おそらく、このエリアを監視している人間へのサインだ。
 すると、数秒後。下のフロアに設置された大型モニターが起動し、何かの映像を映し出す。壁一面を覆うサイズだけに、まるで映画館さながらだ。


               ※


 映し出されたのは、腰まである艶やかな黒髪を風に靡かせ、颯爽と歩く一人の少女だった。
 沙綾香と同じ制服だが、襟についているバッジの模様は違う。隙のない佇まいは一瞬藤花を思わせるが、剣呑な気を放つ彼女と違い、映像内の女性に近づき難さはない。達観したオーラという意味では、むしろ桜織に近い。名門女子校の生徒会長と言われれば、なるほどと納得するしかない存在感だ。
「懐かしいだろ。テメェが現役の女子高生だった頃の映像だぜ」
「はい。懐かしゅう御座います」
 手越の呼びかけを、百合が肯定する。ということはやはり、あの艶やかな黒髪の少女が百合なのか。

 映像が切り替わった。
 石牢を思わせる場所に、一糸纏わぬ姿の百合がいる。そしてその百合を、黒いラバーマスクを被った調教師風の男が取り囲んでいた。和やかな空気には見えない。百合の静電気でも発するかのような気配は、周りの男が敵であることを如実に物語っている。
『お前には、奴隷になる上で邪魔な要素が2つある。その小賢しい頭と、クソの役にも立たんプライドだ。よって今から、お前の自我を崩壊させる。繰り返し犯し、辱めて、お前の思想を根本から変えてやる』
 百合の右側に立つ一人がそう宣告する。沙綾香が下に落とされて間もない頃、手越がした宣言とほぼ同じだ。あの言葉を聞かせることが、奴らのいう『洗脳』の第一歩なのか。
『軽率ね。洗脳が目的と判った以上、そう弁えて自衛をさせてもらうわ。今あなたが口を滑らせたことで、私を篭絡できる見込みはなくなったのよ!』
 百合は右の男を睨み据え、毅然とした態度で言い放つ。既視感のある光景だ。手越が沙綾香に言った、先輩もそんな言葉を吐いていた、というのはこれのことか。

 また、映像が切り替わる。
 場所はさっきと同じ、石牢を思わせる空間だ。ただし今度は、百合が床に這いつくばり、大口を開けて泣き叫んでいた。その背後では、例の黒マスクを被った男が激しく腰を使っている。
「さっきはあんだけ格好つけてやがったくせに、えれぇ騒ぎようじゃねぇか。こん時はどういう気持ちだったんだ、百合?」
「私はこの時に、一人前の大人にしていただきました。しかし、当時の私は愚かにもそれを嘆き、耳障りな悲鳴を上げてしまっております。誠に申し訳ございません」
 手越に問われ、淡々と答える百合。その内容に、ベッドの上の沙綾香が顔を引き攣らせる。あの空間で唯一、俺と同調する反応だ。
 さほど広さがあるようでもなく、窓もない閉塞的な空間。そこで百合は、数人の調教師に犯され続けたようだ。後背位で、正常位で、騎乗位で。口枷を嵌めた状態で逸物を咥えさせられたり、浣腸されて粗末な桶に排泄している映像もあったが、圧倒的に多いシーンは輪姦だ。
 数人がかりで代わる代わる膣を犯しては、膣内に射精していく。
『時間はいくらでもあるんだ、確実に孕ませてやる』
 そんな、悪意に満ちた言葉を吹き込みながら。
 複数人から繰り返し大量に膣内射精され、いつ妊娠してもおかしくない、という状況が女性に与えるストレスは甚大だ。痛みや誘惑に辛抱強く耐える女が、妊娠の恐怖で狂う例は少なくない。
 この端塚の言葉は、百合にも当てはまった。
『いやああああっ、妊娠はいやっ!! 妊娠したくないいいっっ!!!』
 破瓜の時以来、犯され続けてもじっと耐えていた百合は、妊娠の恐怖によって心の均衡を失ったようだ。だがそうして晒された弱点を、調教師共が抉らないはずがない。連中は百合の膣に漏斗を刺しこんだ上で精液を浴びせ、精液がすべて膣内に注がれる状況を何度も作った。時にはわざわざビール用のジョッキ一杯に精液を溜め、それを膣に流し込んでいる映像もあった。
「ひ……ひどすぎる、何あれっ!!!」
 沙綾香が悲鳴を上げるのも無理はない。映像に映っているのは、純然たる悪意だ。そしてその悪意に晒されつづけた百合は、緩やかに狂っていった。目が虚ろになり、意味のない言葉を発しはじめ、頭髪は白く変色していく。
 そうして自我崩壊が決定的になったところで、今度は徹底的に快楽を刷り込まれたらしい。
 乳首に何かの注射が打たれ、百合の全身が痙攣をはじめたところで、ひたすらセックスを繰り返す。レイプを目的としていた最初とは違い、まるで恋人同士がするようなねっとりとしたセックスだ。
 それを受けて、恐慌状態にあった百合の顔は緩んでいく。最初の映像と同じ人物であるとは思えないほどに。
「ずいぶんと気持ち良さそうじゃねぇか。この時の事を実況してみな」
 手越にそう命じられ、百合が無表情のまま口を開く。
「この時は……記憶が定かではありません。身体中を駆け巡る快楽に溺れるばかりで、自分が何を口走っているのかすら気に留めてはいませんでした。今、映像を目の当たりにして、少し驚いています。まさか、これほどの淫語を口にし、こんな表情を晒していたとは…………」
 確かに、この映像は“酷い”としか言いようがなかった。
 大画面に映る表情は、どう贔屓目に見ても気が触れている。唾液を散らしながら発される言葉は、およそ日本の女子高生が発するものとは思えない下劣さだ。いい歳をした男である俺でさえ、聞くに堪えない。根が純情な沙綾香ともなれば、縮こまったまま耳を覆って震えている。しかし、当の百合は涼しい顔だ。少し驚いていると語っていたが、果たして本当なのか。

 映像が途切れる。
「ここまでが『洗脳』部分だ。この後は記憶を消して、地上に解放してやった。だよな?」
「はい。その通りです」
 手越の言葉を、淡々と肯定する百合。しかし沙綾香は、その流れを受け入れられないようだ。
「嘘……。生徒会長、『課外学習』から帰ってきてからも、全然変わったとこなんてなかったじゃん。相変わらず格好よくて、みんなの憧れで。それが、あんな……」
 頭を抱えながらうわ言のようにそう呟き、そして顔を上げる。
「そ、そうだ、髪の色! 生徒会長、卒業までずっと黒髪でしたよね!? もしあの映像が本当なら、白い髪になってる筈でしょう? だからあんな映像、全部ウ────」
「ああ。髪はね、ウィッグを付けていたの。課外学習から戻って以来、私はずっと白髪よ」
「え、え……だ、だって、そんな……。いくら何でも、髪が真っ白になってるなんて、明らかに変じゃないですか! 一体、どんな理由で納得してたんですか!?」
「確かに、気にはなるわね。でも、どういう理屈で納得してたのかは思い出せないわ。だって私は、女学院を卒業してからすぐに……」
 百合がそう語り始めた、ちょうどその時。モニターにまた映像が映し出される。
 
 映像内では、百合が上から覆い被さられる形で黒マスクの調教師に犯されていた。その光景自体は、さっきまでの映像で散々目にしたものと大差ない。ただ、場の空気は大きく違う。
「はぁ、はぁっ……いやあああっ、誰かっ! 誰か助けてえええっ!!!」
 男に圧し掛かられながら、百合は顔を歪めて絶叫していた。前の映像の最後で見た、快感に蕩ける顔じゃない。犯している側も、相手の猛烈な抵抗を予想してか、左右に2人がついて手首足首を押さえこんでいる。まるで、初めて犯す時の雰囲気だ。
「先輩、元に戻ってる……?」
「ああ。女学院を主席で卒業して、輝かしい未来に邁進してる最中だからな。本来は相応の肩書きやら人脈を掴ませてから再調教するんだが、こいつは目指す先が政界だからよ。大成してからじゃ手が出しづれぇってことで、早めに“弁えさせた”わけだ」
 沙綾香の問いに答える手越は、誇らしげだ。政界入りするような女を奴隷にしている、という事実が随分と嬉しいらしい。
『思い出せ。お前はレイプで感じる変態女だ』
 百合に覆いかぶさる調教師は、激しく腰を打ちつけながら、そんな言葉を何度も繰り返していた。そしてその言葉は、映像が進んでも繰り返され続けた。
 ペニスを根元まで咥えさせ、背後から犯している時も。
 首筋を舐りながら膣を突き回している時も。
 騎乗位で腰を振らせている時も。
『違う! レイプなんかで感じないわ!!』
 百合は何度もそう主張し、抗い続けていた。だがその頻度は、映像が先へ進むほどに下がっていく。それは、彼女の意思が弱いからじゃない。この『再調教』が、一度目の『洗脳』に輪をかけて凶悪だからだ。
 映像の中の百合は、まさに穴という穴を穢されていた。膣や肛門、口は勿論、耳の穴や鼻の穴にさえ白濁を浴びせかけられる。汚物を絡めた恥辱責めも頻繁に行われていた。
 犯し、辱め、犯し、辱め、犯し、辱め、犯し、辱め……。ダイジェスト映像を見ているだけで胸焼けするほど、徹底的な調教。
「う゛っ!!」
 沙綾香は途中で口を押さえてバスルームに駆け込み、便器に胃の中のものを吐いていた。俺も吐きこそしないものの、嘔吐の感覚が常に喉元まで迫っている状態だった。
 そして、ダイジェスト映像が始まってから数十分後。百合への再調教は、ついに完成の時を迎えたようだ。
 最後の映像は、背筋が凍るものだった。
 醜く肥え太った数人の調教師が、四方八方から巨体を密着させ、百合の身動きを封じている。連中はその上で、百合を弄んでいた。
 執拗に逸物を咥えさせ、手で扱かせ、腋で扱き、乳房に亀頭を擦りつけ、閉じあわされた股へ割りいるように挿入し。ほんの少しでもスペースが空けば、そこに精液まみれの逸物を擦りつけるという状態だ。
 普通の少女なら、そんな状況には耐えられない。顔を歪めて絶叫するに違いない。だが、映像内の百合は達観したような表情を見せるばかり。
『ありがとうございます』
 彼女は時おり、感謝の言葉を口にしていた。その言葉が発されるたび、彼女の足が開かれ、その合間から男が離れていく。どうやら膣内射精されるたびに感謝しているらしい。

『ありがとうございます』
『ありがとうございます』
『ありがとうございます』
『ありがとうございます』
『ありがとうございます』

 裸の男女が芋虫のように蠢く中、抑揚のない百合の言葉だけが繰り返される。その異様過ぎる光景を最後に、映像は暗転した。

「また一人、倶楽部に服従を誓う奴隷の出来上がりってわけだ。今やコイツは、政治家を目指して勉学に勤しみながら、エロマッサージのバイトに精を出す女子大生よ。なあ百合。今日は何人“相手”したんだ?」
 手越はそう言いながら、隣にいる百合の肩を抱き寄せる。やや乱暴な動作だが、百合は嫌がる素振りを見せない。
「本日は、マッサージ4件を行いました」
「ほう。それ以外は?」
「施術後に、おまんこを6回、アナルを5回ご使用いただきました」
「はははっ! 相変わらず人気だなぁお前ェは。ま、見た目がいいからな。結構噂になってんぜ。白い髪の女はオイルマッサージがうまい上に、クールな美人だから犯し甲斐があるってよ。お前が出勤してねぇ日は、常連客からクレームが来るそうだ。まったく、バイトにしとくにゃ勿体ねぇよ」
 下卑た会話が繰り広げられる。性器を『おまんこ』と表現するのは、いかにも彼女らしくない。奴隷の使うべき言葉として、調教師に強要された結果だろう。

「さて、奴隷堕ちの前例は見せた。後はお前が、同じレールを進むだけだぜ」
 手越はそう言って、沙綾香の方へ向き直る。
「イヤ!!」
「まだ解ってねぇらしいな。奴隷に拒否権なんぞねえんだよ。しゃぶれと言ったらしゃぶれ、喰えといったら喰え」
 ロドニーがダイニングテーブルに置かれた器具を掴む。手の平に収まる大きさの、鼻と口を覆うフルフェイスタイプの吸入器。器具の上部には小さな薬液ボトルがついている。ボトルの中の薬をガスにして吸わせる仕組みだろうか。
「来ないで!」
 沙綾香は逃げようとするが、恐怖に竦む足で黒人のバネに敵うはずもない。あっという間に追いつかれ、身体を羽交い絞めにされてしまう。
「は、離してぇっ!!」
 ロドニーは沙綾香の抵抗などものともせず、丸太のような腕で頸部を固定しつつ、吸引器で口を覆う。さらに人差し指で側面のスイッチを押せば、数秒でガスの漏れる音がしはじめた。沙綾香は必死に身を捩るが、裸締め同然の拘束から抜け出すことは不可能だ。
「ん゛っ、んん゛っぐっ!! う、う……んん゛、ん゛ー……っ!!」
 沙綾香が苦し紛れに天井を仰いだ時、すでにその瞳孔は開いていた。そして直後、細い身体が凍えるように痙攣を始める。劇的な反応だ。明らかに、この部屋のガスを吸った時のそれじゃない。
「おお、いいツラだ。女に初めてシャブ打った日を思い出すぜ。シャブってなぁ打つと疲れが吹っ飛んで、猛烈に性欲が湧き上がってくるんだよな。その状態でやるセックスは、シラフん時の比じゃねぇ。だから一度でもシャブ打ってセックスした女は、病みつきになってシャブセックスから離れられなくなる」
 手越がそう言うと、沙綾香の視線が揺らいだ。
「へッ、ビビったな。お前は調教の目玉だからよ、容赦はしねぇ。お前にはそれを、2時間おきにたらふく吸わせてやる。その上で、休まず寝かさず快楽漬けだ」
 手越が言葉を重ねるたびに、沙綾香の怯えが加速していく。

 さらに数秒ガスを吸わされ、ようやく吸引器が取り去られた頃、沙綾香の様子は目に見えておかしくなっていた。
「ふっ、ふひゅっ……ふひゅっ……」
 首でも絞められたように目を見開いたまま、不自然な呼吸を繰り返す。寒さに凍えるような痙攣もますます酷くなり、少し離れた俺の位置からでも、顔中が汗で光っているのが見て取れる。ロドニーは、そんな沙綾香を無造作にベッドへ放った。ベッドにはすでに百合の手で、大判の青いタオルが敷き詰められている。
「さて。出番だぜマッサージ師」
 手越が声を掛けると、百合は自らもベッドに上がり、肌が透けるほど薄い白手袋を両手に嵌めた。そして何かのボトルを拾い上げ、中身を手の平に受けると、半身を起こした沙綾香の乳房を背後から掴む。
「ひいっ!?」
 乳房を覆われただけで、沙綾香からは悲鳴が上がった。乳首でも捻り上げられたような反応だ。ガスの効果で、かなり敏感になっているらしい。
 その反応を前にしても、百合の表情に変化はない。あくまでも淡々とボトルの中身を塗り伸ばす。白い乳液のようなものが、桜色の沙綾香の身体を覆っていく。
「せ、先輩。何ですか、これ!?」
「特製のマッサージオイルよ。こうやって肌に馴染ませると、身体の奥からじんわりと温まってきて、感度が上がるの」
「え、い、嫌ですっ!! ただでさえ敏感になってるのに、これ以上なんて……う、あっ!!」
「あら、もう感じてきたの? 感度がいいのね」
 百合は巧みな手つきでオイルを塗りこめていく。いくら敏感になっているとはいえ、脇腹や下腹、太腿を撫でられただけで身体が左右に揺れるというのは、明らかに普通じゃない。
 百合の手は沙綾香の身体中を弄るが、性器にだけは触れない。代わりにその周辺……特に乳輪や内腿は、入念過ぎるほど執拗に刺激していた。それは、沙綾香の性感を確実に昂ぶらせているようだ。
 もう十数度目にもなるだろうか。百合の10本指が内腿に集まり、触れるか触れないかというソフトタッチで、上から下に撫で上げた。すると、その直後。
「ひうんんんっ!!!」
 沙綾香が固く目を瞑りながら悲鳴を上げる。下半身の動きも凄い。足裏が完全にシーツから離れ、宙に浮いた足指はすべて丸まっている。内腿の溝もかなりくっきりと刻まれている。まるで……
「達したのね?」
 間近でその変化を見ていた百合が、沙綾香に確認する。沙綾香は首を振って否定するが、うっすらと開いた瞳に力はない。
「嘘は言わないで。女を騙せるわけがないでしょう」
 百合は内腿の指を滑らせ、割れ目の縁に指をかけて左右に押し開いていく。
「いやあっ!!!」
 沙綾香のその叫びは、割れ目の中に変化があると認めたのも同じだ。
「ほら。こんなに濡れ光って、息をするように動いているわ。貴女は勘違いしているようだけれど、これは望ましい傾向なの。もっと快感に酔いしれなさい。心配しなくても大丈夫。他の子より少しだけ早く、大人の味を知るだけよ」
 百合は諭すように語りかけながら、割れ目から指を離す。そしてその指を上に滑らせ、前に突き出た丘を越えると、その先端の蕾を摘み上げる。
「んい゛い゛っっ!!!!」
 沙綾香は歯を食いしばりながら首を仰け反らせる。歯を食いしばっていたのは、覚悟していた証だ。百合の指が乳房に触れた時点で、耐える決意を固めたに違いない。しかし、声は殺せなかった。覚悟ではどうにもならない、圧倒的な快感だったんだ。


               ※


「どう、気持ちがいいでしょう」
 うつ伏せになった沙綾香に対し、その背中から太腿にかけてをほぐしながら、百合が囁きかける。
 百合のマッサージは巧みだ。羽毛の先で撫でるようなソフトタッチをしていたかと思えば、無駄肉などない沙綾香の肉を強引に搾り出すほど力を込める。その緩急つけた刺激は、臀部さえも性感帯に変えてしまうようだ。
 今も沙綾香は、白い尻肉を捏ね回されながら、切ない声を上げつづけている。
「あああ、ああ……あっあ、あああああ…………!!」
 思わず、という感じで甘い声を上げながら、太腿を強張らせ、下腹をタオルに擦り付けるようにして身悶える。あれを快感でないと見るのは無理がある。
 百合は最後の仕上げとばかりに沙綾香の足首を掴み、脹脛を押し潰し、その圧のままに腿から尻肉にかけてを手の平の付け根で擦りあげる。
「くああああああぁっ!!!」
 沙綾香の喉から、格別に大きな声が上がった。つい数週間前までの彼女なら、カラオケぐらいでしか出さなかっただろう声量。今ではそれを、臀部の刺激で発してしまっている。だが、責められない。膝から下が哀れなほど力み、足のつま先がシーツに食い込んでいるのを見ると、声ぐらい上げても仕方ないと思えてしまう。
「はぁーっ、はぁーっ、はーーぁっ…………!!」
 荒い息を吐く沙綾香の身体を、百合が反転させる。目の錯覚かもしれないが、沙綾香の股座とタオルが離れる瞬間、光る筋が見えた気がした。
「あら、こんなに? お尻のマッサージだけで何度達したの?」
 タオルの一部を見つめながら、百合が問いかける。問われた沙綾香は、両手を目の上に重ねながら、まだ荒い息を吐き続けていた。
「せ、先輩……きつい、です……。少し、休ませて、ください…………」
「何を言っているの、まだまだこれからよ」
 クールダウンの要求を拒み、百合はとうとうクリトリスに狙いを定めた。中指と人差し指で挟み、根元から上へ優しくなぞる。同時に割れ目にも、ごく浅く指先を沈めていく。
「うっあ……はあっ!!」
 沙綾香から漏れる声は甘い。百合の指先が“摘む”動きをしている時点で、クリトリスは勃起しているようだ。浅くくじられる割れ目からも、すでに水音が漏れている。
「足を閉じなさい」
 百合はそう囁き、沙綾香のすらりと長い両脚を揃えさせる。それから、また改めてクリトリスを扱きはじめた。
 ソフトな動きだ。俺の位置からでは、クリトリスの上にただ指先を置き、じっとしているようにしか見えない。だが、間違いなく刺激を与えているらしい。
「……ふっ、ふっ…うぅ……。んふ、ふうっ…ん、んっ…………!」
 下唇を噛んだ沙綾香の口からは、鼻を抜けるような声が漏れつづけている。太腿も、ふくらはぎも、足指も、けして派手ではないが、電気で痺れるような動きを見せ続けている。
「どう、気持ちいいでしょう。クリトリスは敏感だから、こうやって時間をかけて、優しく丁寧に刺激してあげるのが一番なの。ガラスのコップに、一滴一滴、快感が溜まっていくのをイメージしなさい。そのコップが一杯になってあふれた時には、今までにないくらい気持ちよくなれるわ」
「そ、そんな……先輩、怖いです……。このまま気持ちよくなりすぎると、自分がなくなりそうで……」
「リラックスなさい。難しいことなんて、何も考えなくていいの」
 若い女性同士の、素肌での触れ合い。絵面こそ美しいが、やっていることは洗脳だ。ガスの効果で心を乱しているところへ、愛撫と共に安心感を与え、快楽中毒にするつもりか。
 『コップの水』は、着実に溜まっていく。最初の兆しは、沙耶香の左手が頭の横に置かれ、控えめにシーツを掴みはじめたことだ。そこからさらに数分後には、明らかに息が荒くなり、下腹がヒクヒクと上下しはじめる。
「……い、いく……い、いきそういきそう……っ!!」
 ついに、絶頂の訴えが声になった。すると、クリトリスへの指の宛がわれ方が変わる。鉤状に曲げた中指を引っ掛ける形だ。
「頃合いね、後は絶頂するだけよ。変に我慢せず、開放感に身を委ねなさい!」
 そう言って百合はクリトリスを一気に責め立てる。中指の腹を使い、クリトリスの根元から先端にかけて……男の亀頭でいうところの『裏筋』の部分だけを力強く擦り上げていく。
「うあっ! あ、お……ほっ、おっ、おっ、おおっ…………!!!」
 沙綾香から漏れるのは、格別に濃い快感の声。愛らしさはない代わりに、真実味に満ちている。
 そして、その次の瞬間。とうとうコップの水があふれだした。
「っくぁあああああ゛あ゛ーーーーっっっ!!!!」
 沙綾香は悲鳴を上げながら、盛大に潮を噴く。顎を浮かせ、持ち上がった足先をピンと伸ばし、百合の指先で寝台にピン留めされたような格好だ。
 どすっ、と重い音を立てて、沙綾香の頭と踵がベッドに降りる。聴こえてくる呼吸は、遠泳でも終えた直後のように荒い。
「はあ、はあ、はあ、はあっ……こ、こんなイキ方、初めて……おしっこ、全部漏れちゃったみたい…………」
「大丈夫。これは潮よ、アンモニア臭がしないもの」
 百合は潮の浴びせかかった沙綾香の脚を撫で下ろす。今の沙綾香は、それだけで膝を揺らした。
「絶頂する時に潮を噴くのは、とてもいい傾向よ。潮噴きは男を楽しませるためのパフォーマンスなんて声もあるけれど、私はそうは思わない。潮が出るとショックでしょう、感覚的には失禁と変わらないもの。だから潮噴きを伴う絶頂は、そうでないものより、ずっと深く記憶に刻まれるの。それは、女の本当の喜びを知るための近道よ。私は、絶頂するたびに潮を噴くようになってから、はっきりとした多幸感を味わえるようになったわ」
 百合が多幸感を味わっていたのは事実だろう。映像内のある場面で、彼女は幸せに満ちた表情を浮かべていた。だがそれは、何を口走っているのかも認識できない、自我を失った段階においてだ。
「だから貴女も、潮を噴きやすい体質にしてあげる。それが先輩としての役目だもの」
 百合はここで初めての笑みを見せる。卑劣な笑みだ。優しさの仮面を被った知人を、沙綾香のような良い子が拒めるはずもない。
 せめてもの救いは、俺と視線が繋がった沙綾香の眼に、まだ力があることだ。
 みすみす快楽に溺れたりしない。ベッドに横たわったまま俺を見るアーモンド型の瞳は、確かにそう訴えていた。


               ※


「次は、膣のスポットを開発するわ」
 百合はそう言って、沙綾香に這う格好を取らせた。そして足を肩幅に開かせてから、割れ目に2本指を挿し入れる。
「ん!!」
 指が第二関節まで入った辺りで、沙綾香が顔を顰めながら呻いた。針でも刺さったような反応だ。
「膣粘膜が痛んでいるのね。可哀想に」
 百合は一旦指を引き抜き、近くにあった小瓶を手に取った。瓶の蓋を開けると、薄桃色のクリームのような中身が覗く。百合はそれを指で掬い取ると、改めて沙綾香の膣へと指を沈めていく。
「ふん…………っん、あれ……?」
「今度はどう、痛い?」
「い、いえ……急に痛みが和らぎました」
「そうでしょう。粘膜の傷によく効く軟膏なの。ハードプレイの後でも、これさえ塗っておけば大丈夫よ」
 百合はそう言って指の関節を曲げる。今までは膣壁をなぞっていただけだが、今度は特定のスポットに狙いを定めたらしい。
「あっ!!」
 沙綾香がまた声を漏らした。快感の声だ。
「いい声ね。もっと聴かせてちょうだい」
 百合はそう囁きながら、指の動きを早めていく。ピアニストが鍵盤を叩くような指使いだ。
「ん、あ、あ……あはっ、は、はっ……! んくっ、あああ……っ!!」
 沙綾香から漏れる声が甘くなっていく。百合の巧みな技を受けている以上、何の不思議もない。
 くちゅくちゅくちゅくちゅ、という水音が繰り返される。そんな中、沙綾香の上体が崩れた。枕に顔を突っ伏し、腰だけを上げる格好だ。
「それでいいわ、リラックスできる姿勢で浸りなさい」
 百合はそう言って目を細め、左手で軟膏を掬い取ると、今まさに右手で刺激している割れ目へと沈めていく。手の甲が半ば隠れるほどの深さまで。
「あっ!?」
「きついかしら? 両手の指が、合わせて6本も入っているものね。でも、もっともっと拡がるはずよ。貴女、とても良い筋肉を持っているもの」
 百合はさらに指入れを続ける。指圧をする整体師のように、肩を高く張りながら。
「あっ、あ、あ……ふあ、あっくっ……んん、あっ……!!」
 沙綾香の声はさっき以上に甘い。沙綾香自身もそれを自覚しているらしく、やがて彼女は抱きかかえた枕に顔を埋めた。それでも、まだ声が殺しきれない。
「う゛、うう゛っ! うむうう゛、ふ、うんうう゛っ!!!」
 百合の両手が膣の中で蠢くたび、腰が上下に揺れ、くぐもった声が漏れる。
「ここも感じるでしょう?」
「力加減はどう? もう少し強くした方がいいかしら」
 百合は巧みに指を動かしつつ、何度も沙綾香に問いかけていた。
「はっ、はっ……い、良いです……」
「つ、強くしないでください……。今でも、十分……んんんっ!!」
 沙綾香は問いに答えるため、何度も枕から顔を浮かせなければならない。そのたびに彼女の腕はぶるぶると震え、喘ぎも酷くなっていく。百合はそうした反応を見下ろしながら、あくまで冷静に責め続けていた。その果てに、とうとう沙綾香の腰が高く浮く。
 そして。
「んっ、ふううう、う゛……あ、かっ、んんあ゛ああ゛ッ!!」
 沙綾香は嬌声を上げながら、盛大に潮を噴いた。水風船を針で突いて破裂させたような勢いだ。潮は敷き詰められたタオルの上に降り注ぎ、かなり広い範囲を変色させていく。
「あらあら、すごいわね。膣の中を刺激されて絶頂できるってことは、もう粘膜の痛みはなくなったのかしら」
 百合は雫まみれの指を引き抜きながら、沙綾香に問う。
「はあ、はあ、はあ…………はい、お陰様で…………」
 沙綾香は息も絶え絶えだ。あれだけの潮噴きをした直後となれば、かなり体力を消耗しているに違いない。
 だが、百合には沙綾香を休ませるつもりなどないようだ。
「それは良かったわ。じゃあ、次に行きましょう」
 百合はそう言って沙綾香を抱き起こしつつ、背後から腕を伸ばす。右手が狙うのは割れ目、左手が狙うのはクリトリス。マッサージの総決算ともいうべき2ヶ所責めだ。
「あ……あ! あっは、はぁァ……っあ!!」
 百合の左手がクリトリスを扱くたび、右手がスポットを押し上げるたび、沙綾香の声量が大きくなる。十分に目覚めた性感帯……それを2つ同時に責められれば、昂るのはあっという間だ。
「あぁあ!……あ、あっ!!」
 切羽詰まったような声と共に、沙綾香の両脚がぶるりと震えた。絶頂だ。
「“イッた”のね、沙綾香?」
 百合の確認に、沙綾香が頷く。かなり深い絶頂だったのか、声を出す余裕もないらしい。その様子を見て、百合の口元が吊り上がった。
「そう、良い子ね。でも次からは、イク時はイクと宣言なさい。自分の絶頂宣言を耳で聴くことで、『絶頂している』という認識を強めるの」
 そう囁きながら、両手の指を蠢かす百合。相も変わらず巧みで繊細な指使いだ。
「ううっ! せ、先輩! い、今イッたばっかりで、まだ敏感……あ、はあっ!? あっ、あぁあっ、あっ!!!」
 沙綾香は、最初こそ抗議していたが、すぐに喘ぐばかりになる。そして数秒後、大口を開けて叫びながら、また足を震えさせた。
「駄目よ沙綾香、イク時はイクと言いなさい」
 百合は叱りながらも指の動きを緩めない。けして激しい動きではないが、悪寒に震えるような沙綾香の反応を見る限り、完全にツボを押さえた責め方のようだ。
「あ、はっ、はっ……い、イキますっ、イキ、ますうっ……!!」
 事実沙綾香は、2度目の絶頂からわずか4秒で、次の絶頂へと押し上げられてしまう。百合の唇の角度はますます上がった。狙い通りと言わんばかりだ。
「どう沙綾香、気持ちがいいでしょう。こんな愛撫ができるのは、同じ女だけよ。『先生』とか言ったかしら。あの人よりも、私の愛撫の方が感じるんじゃない?」
 百合はそう言って、不意にこっちを見上げてくる。
「いくら慣れていたとしても、男は女の反応を窺いながら責め方を覚えていくしかないもの。自分自身で女の感じ方を実感できない以上、女を本当に満たすことはできないわ」
 明らかな挑発だ。確かにあの女の指使いは巧みだし、沙綾香の反応を見ても、俺よりテクニックが上というのは真実味がある。だが、だからといって認められるわけがない。沙綾香が、俺以外の人間の手で、俺の時以上に感じているなんて。
「クソッ!!」
 悔しさのあまり歯噛みする俺を見て、百合はいよいよ愉快そうな顔になる。
 沙綾香の唇が静かに開いたのは、そんな時だった。
「……先輩」
「ん?」
「あの人を、悪く言わないでください。」
 汗にまみれた顔を上げ、強い口調で告げる沙綾香。俺と百合は、同時に目を見開いた。
「どうして庇うの? あなたまさか、本当に……」
「…………好き、なんです」
「!」
 迷いなく言い切られた答えに、百合が息を呑む。
「ヘンに思われるかもしれないけど……本当に好きなんです。初めて好きになった人なんです」
 沙綾香は百合の方を振り返りながら、さらに続ける。
「そんな。それはセックスを通した錯覚で──」
「違います!」
 百合は珍しく焦りを浮かべ、必死に諭そうとする。だが、沙綾香はそれを切って捨てた。ついさっきまでの委縮した態度が嘘のようだ。
「センセは……変わってるんです。見た目はいかにも出来る人って感じで、ナルシストっぽい感じもするのに、実はどこか抜けてて、変なぐらい優しくて。そういう一面を見てるうちに、どんどん興味が湧いちゃって……気がついたら、同じ部屋にいるあの人の事を、ずっと考えるようになってました。最初は、ガスで発情してるせいかなとも思ったんですけど、抱かれてみてわかったんです。私は本当に、あの人のことが好きになってたんだって」
 沙綾香はそう言って、何度か瞬きを繰り返す。まるで、涙を閉じ込めるように。
「可愛い、好きだ、って囁かれるたびに、あったかい気持ちになれました。センセと肌で触れ合ってるうちに、初めて自分のことが好きになったんです。……ずっと、自分が嫌いだった。お父さんの言いなりになってる自分も。期待に応えなきゃって無理してる自分も。家を出てから今風な子を目指してみたけど、そうなりきれない中途半端な自分も。だけど、センセに可愛いって言ってもらえる自分だけは好きになれた」
「………………」
 沙綾香の語る言葉を、百合は黙って聞いていた。表情はない。だが、言葉そのものには興味を示しているようだ。
「あたし……センセのことが好き。センセのためなら、死んだっていい。センセ、今でも上の部屋に閉じ込められてるから、どうにか助けたいんです。あたしはどうなったっていいから。センセだけは…………!!」
 沙綾香は震える声でそう言うと、ついに目を覆って泣きはじめてしまう。そんな姿を見るのは、俺だってつらい。胸が引き裂かれそうだ。
 百合は、どうなんだろう。同じ女として、同じ奴隷として扱われた身として、思うところはないんだろうか。
「…………だったら、耐え抜きなさい。どんな快感の波にも呑まれずに。どこまで深い闇に堕ちても、自分を見失わずに機会を待つの。ここに囚われた女にできるのは、それだけよ」
 百合はそう言って、沙綾香の細身を抱きしめた。判断に迷う言葉だ。沙綾香を応援する意味でのエールとも取れるし、逃げ道を塞ぐ悪魔の囁きにも聴こえる。

「惚れた男のために、か。泣かせるじゃねえか」
 手越がそう言って、沙綾香達のいるベッドに近づいていく。沙綾香は慌てて足を閉じようとするが、百合が膝を押さえてそれを阻んだ。
「だが純情ぶる割にゃ、ずいぶんと気持ちよく濡らしてるじゃねぇか。マンコがヒクヒクしてるぜ、男の物を欲しがってよ!」
「ち、違う! クリとGスポット刺激されて、まだ痙攣してるだけだって!!」
 手越の指摘を、沙綾香は必死になって否定する。ちらっと視線が上向いたのは、俺の存在を意識しているからか。
「ほー。んじゃお前は、淫乱じゃねぇってことだな?」
「あ、当たり前じゃん!!」
 続く言葉も、沙綾香は否定するしかない。それが手越の狙いだとわかっていても。
「だったら、証明してみせろ。十番勝負の2回目だ」
 手越はそう言って、ロドニーに合図を送る。するとロドニーは、部屋の端でセンサーを作動させた。扉が開いた先にいたのは、例の10人の黒人。どいつも目をギラつかせ、待ちきれないとばかりに股間を膨らませている。
「やる事は一回目と同じ、あの連中とのセックスだ。だが、今度は一人あたり2時間相手をしてもらう。制限時間内に調教師側が精根尽き果てて、もうヤレねえってことになりゃお前の勝ち。2時間が経ってもまだヤラれてりゃ、お前の負け。この条件で勝ち越したなら、『先生』を地上に戻してやるよ」
「えっ……!?」
 手越の出した条件に、沙綾香が表情を変える。
「なにっ!!」
 俺は顔を上げて端塚を見るが、奴は涼しい顔で手越達の方を眺めているばかり。こいつの俺に対する執着心は異常だ、おそらく俺を開放する気などないだろう。だが、沙綾香にその判断はつかない。自分を開放するという条件なら嘘だと見抜けるだろうが、俺を開放する条件となれば、信じる余地がある。
「沙綾香、騙されるなっ! そんな約束は守られない!!」
 そう叫んではみるものの、向こうに声が届いた様子はない。
 沙綾香は、手越を見据えたまま押し黙っていた。
「やろうぜジャパニーズ、もう待ちきれねぇよ!!」
「ああ、コックが茹でたソーセージみてぇに破裂しちまいそうだ!!」
 黒人達が野次を飛ばす中、延々と悩み、考えた末に、顔を上げる。
「…………わかった。受けるよ、その勝負。その代わり約束して。沙綾香が勝ったら、先生のことは自由にするって」
「ああ、いいぜ。倶楽部に協力する気のねぇ元ボスなんざ、居ても邪魔なだけだからな。ここでの記憶だけ綺麗に消して、日の当たる世界に帰してやるよ」
 手越の返事を聞いて、沙綾香は安心したように息を吐く。そして目元を引き締め、決意を秘めた表情に変わった。
 
 勝負など受けてほしくはなかった。だが俺は、彼女を強く非難することはできない。
 もし、立場が逆だったら。
 俺が試練を与えられ、その代償として沙綾香を開放すると迫られたら。
 俺もやはり、悩みに悩んだ挙句、一縷の望みに賭けただろうから。



                           Part.1(後半)に続く)


 
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