二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.1(後半)の続きです。
長くお待たせしてしまい、すみません。
最終話はかなり長くなる予定のため、複数Partに分ける予定です。
今回はPart.2(約5万字)を投稿します。

また、今回調教師の数が多く、ややこしいため、10人をペニスサイズの小さい順に並べたものを貼っておきます。よければ参考にしてみてください。

1.Marquis(マーキス)
2.Darnell(ダーナル)
3.Dominique(ドミニク)
4.Jamal(ジャマール)
5.Andre(アンドレ)
6.Reginald(レジャナルド)
7.Trevon(トラバン)
8.Maurice(モーリス)
9.Darryl(ダリー)
10.Tyrone(タイロン)




 十番勝負から、一夜明けた朝。
 沙綾香はベッドの上で、再び百合からの性感開発を受けていた。背後から抱きすくめるような愛撫。乳房を揉みしだき、陰核を撫で……たったそれだけで、ガスを吸わされた沙綾香はピクピクと身を震わせる。
「どう、クリトリスを刺激されるのは。可愛がれば可愛がるほど、感度が増していくでしょう。性感帯は全部そうだけれど、クリトリスは神経が多くて敏感なぶん、感度の上昇を自覚しやすいはずよ」
 沙綾香に囁きかける白衣姿の百合は、氷のようなクールさを取り戻していた。つい今朝方まで、鉄格子の中で獣のように狂乱していたというのに。
「はい。でも、あんまり敏感になりすぎると……」
 沙綾香は不安を口にした。当然の反応だ。学友が快楽に堕ちたのを目にしている上、昨日は自分自身が絶頂の中で悶え狂ったんだから。しかし、百合は諭すように続ける。
「ここのお客様に、最高のマゾヒストと認めていただくんでしょう。だったら、女の悦びを熟知しておく必要があるわ。蕎麦を食べたことのない人間に、美味しい蕎麦を啜る演技はできないものよ」
 百合の言葉には力があった。圧倒的なオーラでもって、強引に相手を納得させる力だ。沙綾香は、そのオーラに呑まれたのか。あるいは、顔見知りの上級生相手に、それ以上の反論を諦めたのか。
「……わかりました」
 そう言って、素直に身体の力を抜く。それを見つめる百合の表情は柔らかいが、目は笑っていないようだ。

 百合の手つきはけっして激しいものじゃない。掌で覆うように乳房を揉みしだき、たまに頂点の蕾を摘む。二本指の腹で、スリスリと優しく陰核を撫でる。それを繰り返しているだけだ。それでも、沙綾香は着実に昂っていく。口を閉じてじっと我慢していたのは、最初のうちだけのこと。わずか数分で口が薄く開き、荒い呼吸が始まる。さらに数分が経てば、立てた膝がピクピクと反応しはじめる。
「んっ……ん゛ん゛っ、んはぁ……あ、っく、ぅう……ん~~~ッッ!!」
「いい声が出るようになってきたわね」
 沙綾香の反応を見て、百合が嬉しそうにする。さらには、その光景を遠目に眺めるロドニーも。
「いいじゃねぇか。ご褒美だ、もっと興奮材料をやる」
 ロドニーはそう言って、リモコンのボタンを押し込んだ。巨大モニターが光り、映像が流れはじめる。黒人に背後から犯される、白い肌の少女。十番勝負だ。沙綾香から漏れるのが悲鳴ではないから、2回目の方らしい。
「っ!!」
 沙綾香が目を見開く。その強張った肉体を、百合が改めて包み込んだ。逃がさない、と言わんばかりに。
「すごいわ。私達の手首とほとんど変わらない太さの物が、あんなに奥まで……。あ、ほら見て、太腿の筋肉がぶるぶる震えだしたわ。あれって、ポルチオ周りの痙攣と連動しての不随運動だから、深い絶頂を自覚させられて怖いのよね。でも、同時に興奮もしちゃう。でしょう?」
 百合は映像を眺めながら、事細かに解説していく。百合自身も快楽で堕とされた経験者だけに、言葉がいちいち生々しい。
 沙綾香は、それに返事をしなかった。ただ、身体は雄弁だ。百合の二本指がクリトリスから離され、膣に差し込まれれば、ぐちゅっ、ぐちゅっ、という音が響く。溶けかけたゼリーでも掻き混ぜるような音だ。
「すごい濡れ方ね」
 百合はそう囁きながら、潮噴きに適した手の形でさらに刺激する。沙綾香からは甘い声が漏れた。
「気持ちよさそうね。ああ、でも映像も見て。凄いわ……」
 快楽に喘ぐ沙綾香の顎を掴み、モニターを向かせる百合。その見上げる先では、画面一杯に沙綾香の痴態が映し出されている。

『やああ゛っ、イクッ、イグゥウウッ!! だめぇっ、今イっでる、イっでるがらぁっ!! ああああっまたいぐ、イグイグイグっううううっーーー!!!』

 屈曲位で犯されながら、濁りきった悲鳴を上げて絶頂する。自分のそんな姿を目の当たりにする心境とは、どんなものだろう。
 沙綾香の膣に指を入れたまま、百合がくすっと笑う。ひどく不安になる笑いだ。百合は、指に蜜をたっぷりと絡ませては、それをクリトリスに塗り込める。映像を前にして、何度でも。
「あ……あっあ、はぁあ……あ、あっ!!」
 沙綾香の吐息が甘さを増す。逆に足指は、M字に開いたままシーツに深く突き刺さる。
「そろそろイクのかしら。その時は言いなさい、気持ちよくイカせてあげるから」
 百合は冷ややかな目のまま、手首の角度を変えた。
「あ、ありがとうございます……っふ、ん、んんっ!!」
 沙綾香の反応が大きくなっていく。絶頂に近づいているのは確実だが、ここぞという場面で責めを変えられ、絶頂しきることができない……そんな風だ。女の性感をよく知る百合のこと、その生殺しは意図してのものだろう。
 性感は尿意に似ている。焦らされれば焦らされるほど、欲求は身の内に溜まっていく。多く欲求が溜まれば、そのぶん開放時の快楽も強くなる。
「せ、先輩っ! あたし、もう……っ!!」
 じっくりと快感を溜め込まされ、とうとう沙綾香が限界を迎えたらしい。立膝が強張る。その反応を見て、百合はトドメを刺しに行った。クリトリスを刺激する二本指のうち、中指だけを三角に立てて掻くように刺激する。下から上へ。下から上へ。下から上へ。
「あっあ、いっいくっ、イックぅううーーーーっ!!」
 沙綾香が天を仰いだ。ベッドについた両手と、投げ出された足指がシーツを掴む。全身がぶるるっと震え、直後、割れ目の情報から飛沫が噴き上がる。二股に分かれた飛沫が、1メートル以上も飛ぶ……それを肉眼で確認できたんだから、生半可な量じゃない。
「っはあ……あーっはぁ、っはぁあ…………っは、ああ…………っ!!」
 沙綾香は、百合の肩に頭を預けて脱力していた。相当深い絶頂だったんだろう。催淫ガスの効果があったにせよ、指責めされただけでこれとは。
 その責めを施した相手は、喘ぐ後背を静かに見下ろしていた。瞳の色はやはり冷たい。
「こんなにベッドを汚して、仕様のない子ね。絶頂しながら潮を噴くのは勧めたけれど、緩すぎるのも問題だわ」
 そう言って沙綾香の割れ目に手を伸ばし、左右に割り開く。その上で、ある場所をトントンと叩いた。割れ目よりもやや上に空いた、小さな穴。尿道の入口だ。
「ここも少し、鍛える必要がありそうね」
 百合の言葉には力があった。圧倒的なオーラでもって、強引に相手を納得させる力が。沙綾香は不安そうな表情を浮かべるが、結局は受け入れるしかない。


                 ※


 尿道責めの下準備は、バスルームで行われた。壁が透明なせいで、その様子は外のカメラにしっかりと映される。沙綾香が直立したまま、足を肩幅に開くところも。その足元に、ぬるま湯で満たされた洗面器が置かれるのも。百合の持ち込んだカテーテルの先が、尿道口に入り込んでいく瞬間も。
 カテーテルに繋がれたバルーンを握り込まれるたび、洗面器の中から音が立つ。それを何度も繰り返されるうち、沙綾香の長い脚がぶるぶると震えはじめた。
「我慢なさい」
 百合がさらにバルーンを握り込む。ぼこっ、ぼここっ、と洗面器の中が泡立ち、沙綾香が脚を踏み変える。
「も、もう、無理です!!」
 ある時ついに、沙綾香が限界を口にした。百合がカテーテルが引き抜くと、溢れ出した尿が洗面器に音を立てる。
「ふぅう……んっ……!!」
 失禁の最中、沙綾香が恥ずかしそうにしながら漏らした声は、甘かった。
「限界まで我慢してからの放尿は、気持ちがいいでしょう。その感覚をよく覚えておきなさい。貴女が演じようとするマゾ奴隷にとって、基本となる快楽よ」
 百合はそう言い含め、再びカテーテルを尿道に差し込んでいく。
 膀胱に入れられるだけぬるま湯を入れ、排泄させる。それは何度も繰り返された。目的はおそらく、尿道を弛緩させることだろう。

 事実、その後に行われたのは尿道拡張だった。
 ベッドへ戻った百合は、沙綾香に足を広げさせ、持参した鞄からマドラーに似た細い棒を取り出す。
「な……なんですか、それ?」
「尿道用のディルドーよ。これで貴方の尿道を開発するわ」
「尿道、って……おしっこの!? や、嫌ですっ!!」
 衝撃的な事実を告げられ、沙綾香は青ざめて首を振る。だが百合は、あくまで冷ややかな表情を崩さない。
「お客様に、生粋のマゾ奴隷だと認めていただくんでしょう。そのためには、貴女自身が女の悦びに習熟していないと。ここのお客様は目の肥えた方ばかりよ。上辺だけの演技なんて、すぐに見透かされてしまうわ」
 淡々とそう諭されると、沙綾香の首振りが止まる。
 確かに、そうだ。ここの連中にマゾヒストとして認められるには、迫真の……文字通り『真に迫った』演技が要る。
「安心して、痛くはしないから」
 百合が沙綾香の髪を撫でる後方で、ロドニーがリモコンを操作した。
 モニターが光る。映し出されたのは、ベッドで足を広げる沙綾香と、それに向き合う百合の姿。フロア内に設置された監視カメラの映像を、4分割されたモニター画面に映し出しているらしい。映すモニターが巨大なだけに、細部まではっきり見える。たとえば乳房の合間を伝う汗や、唾を嚥下する喉の動きさえ。

 緊張しきりの沙綾香を前に、百合はディルドーの先を小瓶へと浸し、ほぼ無色の粘液を纏いつかせる。そしてそれを、ゆっくりと尿道に近づけた。
 十番勝負から半日以上経っているからか、陰唇の腫れは引いたようだ。その割れ目の、一番上……紛れもなく尿道に、マドラー状の棒が入り込んでいく。
「んっ……!!」
 沙綾香から呻きが上がった。解釈に迷う反応だ。全身はこれでもかというほど強張っているし、顔は恐怖に引き攣っている。だが、声にそれほどの悲痛さはない。
「どう、痛くないでしょう? さっきお風呂場で尿道をほぐしたし、痛み止めのゼリーも塗ってあるもの」
「い、痛くはないんですけど……違和感が」
「慣れない場所だものね。ガスの効果で全身が敏感になっているから、余計に感じやすいのかしら。でも、その感覚を拒絶しては駄目。角砂糖を舐めるように、よく味わうのよ」
 百合はそう言いながら、沙綾香の割れ目を指で開き、ディルドーを緩やかに前後させていた。
「気持ちがいいでしょう」
 百合が、ふとそんな質問を投げかける。
 有り得ないことだ。尿道を弄られて、感じるなど。当然沙綾香も「そんなわけがない」と一蹴するだろうと思えた。
 しかし、彼女は即答しない。鼻から息を吐きながらしばし押し黙り、静かに首を振る。妙な間だ。
「嘘ばっかり。クリトリスが勃ってきているわ」
 百合は、陰唇を開く指を少し後退させ、クリトリスを摘み上げる。
「あっ!!」
 沙綾香から声が漏れた。大きい声だ。痛いほどに勃起した男が、亀頭を握られた時に出すような。まさか、本当にクリトリスが張っているのか。尿道を弄られただけで。
「おしっこの穴で感じちゃったのね、中々のマゾっぷりだわ。丸裸で、恥じらいの場所を晒しながら、尿道を開発されて。そんな酷い状況で、クリトリスを勃てているなんて」
「ち、違いますっ!!」
 百合の指摘を、慌てて否定する沙綾香。その目線は俺の方を向いている。自分を変態だと思わないで、と訴えるように。
「あら、そう? それなら、少し刺激を強めようかしら」
 百合はそう言うと、マドラー状のディルドーを置き、鞄からまた別の一本を探り当てる。太さはさっきの棒と大差ない。ただし今度は、持ち手以外の部分がゆるやかな蛇腹になっている。当然、刺激はより強いはずだ。百合はそれをまた小瓶に浸し、ゼリーを纏わせてから挿入していく。
「あっ!? なにこれ、ザラザラ……!!」
「さっきのディルドーより、粘膜に強く擦れるでしょう。今の貴女には、相当な刺激のはずよ」
 百合はそう言いながら、蛇腹のディルドーを前後させる。
「あ、あ……あ゛っ!!」
 手足を強張らせる沙綾香。それを見つつ、百合は手を動かし続ける。けっして激しくはない。しかし、狙い澄ました動きだ。
「あ、はっ……あぁっ、あ、はああっ!! いや、なんで……なんで、クリが勃ってきちゃうのっ!? こんなの絶対ヘン……内側から、芯でも入れられてるみたい……!」
 沙綾香は動揺していた。目を見開いたまま恥部を見下ろし、うわ言のように疑問を口にする。
「それはね沙綾香、貴女がマゾだからよ」
「わ、私は、マゾじゃありません!」
「普通の子なら、こんな状況で感じたりはしないわ。女にとって、昂ぶるために一番大切なのはムードだもの。でも、貴女はこうしてクリトリスを勃起させてる。これがマゾヒストでなくて何なの?」
「こ、これは、あのガスの効果で……」
「ガスはあくまで、性欲を増幅させるだけよ。認めなさい沙綾香、貴方はこんな状況でも発情してしまう、マゾなの。でも安心して、私も同じだから。貴女ひとりが変わっているわけではないのよ。これは、女の『本当の幸せ』に続く道なの」
 沙綾香がどう言い繕おうと、百合は有無を言わせぬ口調で説き伏せる。これも洗脳の一環か。

「八金 沙綾香は、戸惑っているようですね。尿道を刺激されて陰核が勃起するのは、ごく自然な反応なのですが」
 洗脳を取り仕切る端塚も、百合の責めにご満悦だ。
「どういう理屈なんだ。小便の穴にまで性感帯があるのか?」
 俺が疑問を口にすると、端塚は待っていたとばかりに俺の方を向いた。
「尿道の奥と薄皮一枚を隔てた場所に、“陰核脚”……つまりは陰核の根幹があるのです。普段我々が目にしているクリトリスとは、陰核の表面部でしかありません。根幹からじっくりと陰核を目覚めさせれば、その結果生じる快感は、表面部のみの刺激とは比較になりません。男でも、亀頭だけを舐められた場合と、睾丸から丹念に舐めしゃぶられた場合とでは、快感も勃起度合いも全く違うでしょう。それに近いものです」
「陰核の、根幹を目覚めさせる……」
 端塚の言葉を反芻し、その意味を噛み締める。妙にしっくり来てしまうのは、以前の俺もその認識を持っていたせいか。
 だが俺と違い、沙綾香は自然な反応だとは知らない。あの子は今も、白い蛇のような百合に追い込まれ続けている。

 端塚と会話している間に、百合の責め方は変わっていた。右手で尿道にディルドーを送り込みながら、左手の指を割れ目の中に入れている。手首の向きからして、Gスポットを刺激しているらしい。
 それを受ける沙綾香は、天を仰いでいた。開いた足の先でシーツを掴み、左右に投げ出した手でもシーツを握りしめたまま。
「あ、ん……ほっ、おっ……。お、おっ……あーっ、あ、おっ…………」
 口から洩れる喘ぎは、『お』行が多い。聞き耳を立てなければ拾えない程度の音だが、明らかに心地よさそうだ。
 どこかで聞いた覚えがある。そう思って記憶を探ると、思い当たるものがあった。夜通し尻穴を舐られる藤花が、意識を失った後に漏らしていた呻き……あれにそっくりなんだ。本来性器ではない場所を開発されれば、ああいう声が出てしまうものなんだろうか。
 百合は、そうした沙綾香の反応を見つめながら、淡々と責めを繰り返していた。静かに、しかし慎重に。芯を外さないその責めを受け続け、沙綾香のクリトリスは相当に勃起していた。正面からのカメラ映像には、包皮が完全に向け、充血したクリトリスが円錐形にそそり勃っている様子がはっきりと映っている。
「凄い、まるでルビーね」
 百合が陰核を指先で叩けば、沙綾香はそれだけで身を震わせた。百合はくすりと笑いながら、尿道のディルドーはそのままに次の準備へ入る。鞄から取り出したラテックスの手袋を装着し、ポンプ式の容器をワンプッシュして、透明な液を指に纏いつかせ──オイルマッサージの時に似た光景だ。
「ピカピカに磨いてあげる」
 百合は一言呟くと、勃起した沙綾香のクリトリスを摘み上げた。
「うああっ!!」
 クリトリスを挟みつぶされる。それだけで沙綾香は絶叫し、足の裏を浮かせる。
「ふふ、良い反応ね。あれだけ尿道とGスポットを虐めたんだもの、爆発しそうなぐらいの快感が溜まっているでしょう。それをこの突起から、全て放電してしまいなさい」
 百合はそう言って、さらにクリトリスを刺激する。二本指で摘むだけでなく、時には捻り上げ、五本の指先すべてで覆い尽くし。指の腹で圧し潰し、磨き上げるように扱き。それまでの淡々とした責めとはまるで違う、硬軟織り交ぜた積極的な嬲りだ。
「んあ゛っ、あ、あはあ゛っ!!? くああっ、あっだめ、駄っ目えええぇっ!!」
 沙綾香の反応も激しかった。余裕のなさそうな声を漏らしながら、両足を激しくばたつかせる。片膝を立てたかと思えば、次の瞬間には横ざまにシーツへ叩きつける狂乱ぶりだ。
「沙綾香。イク時はイクと言いなさいと教えたでしょう」
 百合はあくまで冷淡だ。手足を使って巧みに沙綾香の抵抗を制しつつ、指先での嬲りも休めない。沙綾香にしてみれば地獄だろう。
「ああっ、はあぁっ、あはあああぁっ!! だって、い、い、イキっぱなしなんですっ! 言うタイミング、わからなくて……!!」
「だったら、言い続けなさい。叫ぶことで絶頂を自覚して、マゾの快楽に身を委ねるの」
 痙攣と絶頂を続ける沙綾香に、残酷な命令を下す百合。その指の第二関節が曲がり、クリトリスが左右から潰された瞬間。沙綾香の腰が浮いた。
「あああ、だめっ!! お゛、お゛……おおおおお゛お゛っ!!!」
 濃厚な快感の声を漏らしながら、沙綾香は痙攣を始めた。ブリッジをするような格好だ。2、3秒はそのままだっただろうか。極度の緊張が終われば、次は弛緩の時が来る。沙綾香の尻がベッドに落ちるより、ほんの僅か早く、尿道バイブが抜け出ていく。あらあら、と百合が驚く真似をした。
「すごい声が出ましたね」
 息を呑む俺に、端塚が語り掛けてくる。沙綾香が決定的な反応を示した時──つまり、奴の思惑通りに事が進んでいる時は、いつもそうだ。
「あれは、ただ快感が強いという話には留まりません。もっと深刻です」
「……どういうことだ」
「快感の蓄積ですよ。性感開発を受け、昂ぶった末の絶頂。それが積もりに積もった結果が、あの声なのです。我々の目論見通り、快感が彼女の『芯』に根を張った。そしてその根は、悦楽という栄養を糧に、どんどん成長します。彼女の脳を、完全に支配するまで」
 そう語る端塚は、計画の順調さを噛み締めているかのようだった。
 芯に根を張った快楽……ろくでもないにも程がある。そんなものが愛しい相手を侵食しているだなんて、こっちの頭までどうにかなりそうだ。
 俺は恨みをこめて端塚を睨み、下のフロアに視線を戻す。

 百合は、勃起しきったクリトリスに狙いを定め、徹底した快楽責めを仕掛けていた。
「あっ、だめ、ぇ……! そ、それっ、いま、クリが敏感すぎて……!!」
 沙綾香から片言に近い非難が漏れる。
 モニター画面には、クリトリスが赤いキャップで覆われ、上下左右に根こそぎ倒される映像が映っていた。指先での嬲りよりもきついのは想像に難くない。事実、投げ出された沙綾香の脚は、吸引キャップが動くたびに膝を跳ねさせる。脚だけが感電でもしているように。
「ひいっ、いっ、いくっ……! ッはァいくっ、い、くっ…………!!」
 沙綾香は、小さな絶頂宣言を絶え間なく続けていた。ガスを交えて散々に昂らされた今は、どんな責め方でも絶頂してしまうんだろう。モニターの大画面越しに、激しく動く吸引キャップの下で、割れ目はおろか肛門までが喘ぐように開閉している様が丸見えだ。当然その光景は、ギャラリー全員の物笑いの種となる。
「ううっ……!!」
 沙綾香は笑いの発生源を睨む。だがそれは、責めに対して隙を作る行為だ。そして百合は、その隙を逃さない。
 キャップを摘んだ手が、ぴたりと動きを止める。巨大モニターを通して観ても、何をしているのか解らない。だが、やられる側の沙綾香は、はっとした表情で陰核を見つめた。その表情を見てから、改めてモニターを見直し、俺も気付く。
 クリトリスが、盛り上がっている。引っ張っているんだ。あれだけ強く吸着したキャップを。
「ダメッ、今──」
 沙綾香が首を振って制止した、直後。ぎゅぽっという音を立てて、吸引キャップが外れる。
「……んんんくッッ!!!!」
 沙綾香の反応は激しかった。歯を食いしばったまま、喉をぼこりと蠢かせて呻きを漏らす。両の踵が深くベッドに沈み込み、膝がカクカクと上下する。
「すごい。深く逝けたようね」
 痙攣する沙綾香を見下ろし、百合が呟く。彼女はそそり勃ったクリトリスに顔を近づけ、その流れのまま口に含んだ。
「あっ!? 何を……ん、んくうぅぅっ!!」
 沙綾香は一瞬だけ戸惑いを見せたが、すぐに百合の舌使いに翻弄されはじめた。
 カメラを通しても、百合がどういう責めをしているのかは見えない。両手を沙綾香の太腿に宛がったまま、ほんの少し頭を上下させているばかり。
 だが、音は凄い。じゅるっ、じゅばっ、と唾液を絡めたフェラチオのような音を響かせる。
「あ、はぁっ、はぁっ……ああぁぁぁぁっ、かっ、かんじちゃ……う…………っ!!」
 顎を揺らして喘ぎ、足指を強張らせる沙綾香の反応も、口の奉仕で絶頂間際の男にそっくりだ。八頭身のモデル体型の黒髪少女が、同じく抜群のスタイルを誇るロシア風の美少女からフェラチオをされている……その光景は、ひどく妖しい。
「ん……んんっふ。ふぅ……うううっん! んんん゛っく、ふうううっ…………!!!」
 沙綾香は鼻から苦しそうな息を吐きつつも、口を手で覆っていた。道具ならまだしも、百合の直々の責めとなれば、声を出すのが恥ずかしいんだろう。彼女の中では、百合はあくまで『かつて憧れた相手』なのかもしれない。俺へ想いを寄せ続けてくれていることといい、律儀なものだ。ますます、彼女が愛おしくなる。

 百合が口を離した時、クリトリスは唾液で艶光りながら、さらにサイズを増したように見えた。何の刺激がなくともヒクヒクと蠢く内股は、百合や端塚が言うところの『快感が溜まっている』状態なんだろう。
「貴女、とても健康なのね。愛液に嫌な味が少しもしなかったわ」
 百合にそう囁かれれば、沙綾香の頬はみるみる赤らんだ。モニター内で百合の頬が緩む。
「さぁ、続けましょう」
 百合はまた赤いキャップを拾い上げ、濡れ光る沙綾香のクリトリスへと嵌めていく。
「はぁ……あ、やっぱり、これは……んっ、く、あぁあああッ!!」
 キャップが根元まで嵌まり、上下に動かされると、それだけで沙綾香は悲鳴に近い声を上げる。百合は薄笑みを湛えたまま、さらに手を動かしつづける。
 やっている事自体は前と同じだ。だが、違うことが二つある。一つは、舌での舐りを挟んだことで、ハードプレイに慣れた感覚がリセットされていること。そしてもう一つは、唾液という潤滑剤のせいで、キャップの滑りが良くなっていることだ。事実、前はキャップを取り外すのに数秒掛かったというのに、今は百合が軽く引っ張るだけでポンポンと抜ける。そして、そのキャップが抜ける時にこそ、最大の快楽が生まれるらしい。
「んっくぅっ……くはぁっ、あ、あっ!! あ゛いくっ、いくっ……あ゛ぁっ、あーっ、あああぁぁーーっ!!! あああうはぁっ、まったいくっ!! くっ、クリで、ずっとイクの、苦し……ぃひぐっ! あ!あ! ああああ゛あ゛っ!!!」
 沙綾香は、絶え間なく叫び、絶え間なく絶頂を宣言していた。もう膝が跳ねるだけでは済まず、腰自体が完全にシーツから浮き上がり、濃い影の中に愛液がぽたぽたと滴っていく。呼吸もままならないのか、涙と鼻水に塗れた顔は壮絶だ。モニターに大写しになった惨めな表情に、また大笑いが起きる。だが沙綾香には、それに構う余裕もない。
 キャップでの責めは、どれぐらい続いただろう。百合が壁の時計に目をやり、ようやく手を止める。
「うはっ……はっ、あぁ……あ、あ……ぁ…………」
 久々にシーツに腰を落とした沙綾香は、泣き腫らした後のようにぐったりしていた。だが百合は、そんな沙綾香をまだ休ませない。
「ガスの時間は忘れねぇか。さすがは元生徒会長、キチッとしてやがんなぁ」
 手越はほくそ笑みながら、百合に吸引機を投げ渡す。百合はそれを受け取ると、沙綾香を引き起こして口を覆った。シューッ、とガスの噴き出す音がして、沙綾香が目を見開く。今回はモニターで映されているから、瞳孔が開くところも、顔中に汗が噴き出るところも、全身が凍えるように震えだすところも、すべてが事細かに見て取れた。
 背筋が凍る。あのガスを吸うたびに、沙綾香が沙綾香でなくなっていくようだ。
「ぁ……ぁ」
 くぐもった声を発しながら、沙綾香の眼球が上向く。鎖骨から上の部分が、ガクッ、ガクッ、と大きく痙攣する。その段階になって、百合は吸引器を押さえつける力を緩めた。そして代わりに、鞄からさらに新しい道具を取り出す。
 今度はかなり大きさのある道具だ。メーターとグリップのついた銃のような本体から、黒いチューブが伸びている。百合はそのチューブの先に、透明な筒状のアタッチメントを取り付けた。アタッチメントのもう片方を沙綾香のクリトリスに嵌め込まれ、その状態でグリップが握り込まれれば、筒の中でクリトリスが引き延ばされる。吸引されてるんだ、掃除機並みの出力で。
「んむううううっ!?」
 ガスで意識を朦朧としていた沙綾香も、これには悲鳴を上げる。百合はその悲鳴を間近で聴きながら、さらにグリップを握り込んだ。メーターの針を確認しながら、強弱をつけて。
「んぐうう、ぶはっ!! い、いやっ、クリが吸われて……こんなの、お、おかしくなっちゃいますっ!!!」
 沙綾香は顔を振ってガス吸引用のマスクを払いのけ、必死に訴える。だが百合は、冷酷にもマスクを装着させ直し、ガスを吸わせながらクリトリスを吸引する。
 その効果は、絶大だ。
「んぐうううっ、ふうううっ……!! う、ンぐ……むっぐううッ!!!」
 沙綾香がガスの吸引具を付けたまま、天を仰いで痙攣をはじめた。クリトリスが透明な筒の中で、円柱状に伸びていく。膝立ちした太腿に深い筋が浮く。
「ギャハハハッ! まるで野郎がザーメン絞られてるみてぇだな!」
「ああ。見ろよ、ケツ穴がヒクヒクしてやがる」
 檻の中では、暇を持て余す黒人共がまた罵声を浴びせていた。連中の逸物はすでに勃起し、常人離れしたサイズを誇っている。バットさながらの凶器。夜になれば、あれが我先にと沙綾香に捻じ込まれるのか……そう思うだけで気が滅入る。
 たっぷりとガスを吸わせてからも、百合はクリトリスの吸引をやめなかった。
「ひぃいいっ、す、吸われる……!! 先輩っ、もうやめてください! 腰が、抜けちゃ……くぁああううっ!!」
 叫び、震える沙綾香。その痛々しい姿を前にしても、百合は吸引器のグリップから手を離さない。それどころか、何かを囁きながら乳房を揉みしだき、乳首を捏ねてすらいる。結果、沙綾香は絶頂状態に留め置かれた。太腿の間から小雨のように滴る愛液が、その象徴だ。

                 ※

 吸引器の先がようやく取り外されたころ、クリトリスは真っ赤に充血し、4、5センチほどにまで引き延ばされていた。そうなるまでに、沙綾香は何度絶頂させられたことだろう。百合の柔らかな拘束から逃れた彼女は、膝立ちを保てずに倒れ込む。
 百合は時計を確認し、沙綾香に向き直る。次に彼女がしたのは、鞄から取り出したベルトで、沙綾香の脚を拘束することだった。Mの字に開いた足の脛と太腿を、一纏めに縛り上げる形だ。
「はぁ、はぁ……せ、先輩、まだ何か、する気なんですか……!?」
 沙綾香は抵抗の気配を見せるが、足に力が入らないらしい。下半身の自由を完全に奪われるまでには、1分と掛からなかった。
「御免なさい。手荒な事はしたくないのだけれど、こうでもしないと貴女は、きっと暴れるもの」
 百合はそう言って、さらに鞄を探る。
 取り出されたものは、ハンディタイプのマッサージ器。先ほどまでのマニアックな器具とは違い、アレには見覚えがある。だからこそ、その威力も知っている。桜織が、アレで散々に絶頂させられ、悲鳴を上げながらのたうち回る映像……それを見せられたから。
「そ、それ……や、今、そんなの使われたら!」
「絶頂が止まらなくなるでしょうね。全て受け入れるのよ、沙綾香」
 百合は念を押し、マッサージ器のスイッチを入れる。重苦しい羽音が轟き、沙綾香の顔が強張る。
「あ、う……ん、んあああ゛っ!!」
 マッサージ器の先がクリトリスに触れた瞬間。沙綾香は目を見開き、足裏を暴れさせた。嬌声もかなり大きい。
「イク時はイクと言いなさい」
 何度となく耳にしたフレーズで叱りつけながら、百合がマッサージ器を揺らす。モニターで確認すると、マッサージ器は少し浮いていた。強く押し付けるのではなく、触れるか触れないかという距離を保っているようだ。
「はあぁっ、い、イキましたっ!! い、今もいッ、イってますっ!!!」
 沙綾香の反応は激しい。ソフトな責めなのに……いや、だからこそだ。敏感な状態で激しい責めを受ければ、すぐに感覚が麻痺してしまう。ある意味で楽になる。そうした逃げ道のない緩い責めこそ、今の沙綾香にとって最悪だ。
 百合は、もう何人もの女を快楽で堕としてきたんだろうか。マッサージ器での追い込み方にしても、悪魔じみた狡猾ぶりだ。
 例えば今、百合はマッサージ器の先端を掌で覆い、その掌を通してクリトリスに振動を与えている。刺激を和らげるためだろう。
「あっ、あ、あ……はぁぁ、ぁっ…………」
 沙綾香は眉を下げた不安そうな表情でマッサージ器を見つめていた。足に力が入っている様子はない。だが、彼女の内に何かが溜まっている気がする。静かだが、不穏だ。
 百合が指を開き、陰唇を左右に割った。そのまま、さらに数秒。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………」
 沙綾香が一定のリズムで息を吐きながら、静かに目を閉じて俯く。眠るような安らかさ。だが、クリトリスに刺激を受けていて眠れるはずはない。嵐の前の静けさだ。俺がそう考えたまさにその瞬間、沙綾香の腰がいきなりガクガクと揺れる。
「ぁ、ぁ……ぁぁあああああイクッ!!!!!」
 ごく小さかった喘ぎは、一瞬にして大音量に変わった。太腿の痙攣も半端じゃない。ぶるるっ、ぶるるっ、ぶるるっ、と、何度も繰り返し震えている。十番勝負の2回目で、沙綾香が堪らず許しを乞いはじめた辺りの反応にそっくりだ。
 深く根を張った快感──端塚のその言葉が脳裏を過ぎり、ゾクッとする。俺は一体何度、その発言に納得させられるんだ。
「深く逝けたようね、貴女とても筋がいいわ。もっとお逝きなさい」
 百合はさらに責めを継続する。指を動かして責めに変化を付けるのみならず、指の間からマッサージ器を直に押し当てる事もある。
「ああぁっ、か、感じちゃう……ぃ、ぃくっ……ッ、んっはあああッ!?」
 弱い振動で緩やかに逝く中、不意打ちの強い刺激にあえなく震え上がる沙綾香。
「ああ、いい声。乳首も、こんなにしこり勃たせて」
 百合は、とうとうマッサージ器の先端から手を離した。そしてその先端部を直にクリトリスに押し当てつつ、沙綾香の横に回り込んで胸を愛撫しはじめる。
「ひいぃっ、いいいくっ……くあぁっ、いくっ!! ッ……はぁっ、はぁっ……だめええっっ!!! ああぁあっ、ふぁああああ゛! あああ゛だめっ、だめダメ……ぐ……うううう゛っっあああ゛あ゛あ゛っ!!!」
 沙綾香の反応は凄まじかった。縛られた脚を跳ねさせ、愛液を撒き散らし、歯を食いしばり、大口を開け、喘ぎ、叫び。僅かな間もなく絶頂し続けているようだ。
「沙綾香。さっきからイクと言っていないわよ」
「あ゛っう゛あっああ゛っ!! だ、だって……い、イキすぎてっ! イッでる最中にまたイってるがらっ、全部なんて言えません゛っ!!!」
 百合の酷な指摘に対する沙綾香の叫びは、泣き声に近い。よほど余裕がないらしい。
「ふぅん、そう。だったら、言葉にしなくてもいいわ。イク時には、私のこの手を握りなさい。握りながら、自分の絶頂を意識するの」
 狂乱状態の沙綾香に対し、百合はスローペースで諭しながら手を差し伸べる。沙綾香は一瞬戸惑いを見せたが、その瞬間にまた大きく絶頂し、縋るように百合の手を握る。
 繋がれた手は、ベッドを上から撮影するカメラ映像にはっきりと映った。

「あはう゛っ! ァ゛、ああぁ……ッ、ぅふっ、うんん゛ああああ゛っ!! はぁっ、はぁっ、はぁっ……うううぐぅっああああ゛あ゛あ゛っ!!!」
 マッサージ器は無慈悲に猛威を振るい続け、沙綾香の反応がいよいよ泣きじゃくるようなものになる。モニターの中では、百合の白い手が何度も握りしめられていた。まるで一心不乱のマッサージだ。その一握りが絶頂一回を表すなら、沙綾香の下半身の暴れようにも納得がいく。
 脛と太腿をぐるりと巻かれてしまえば、普通はもう身動きが叶わない。立ち上がる事はおろか、横に転がることすら不可能なんだから。だが沙綾香は、足全体をこれでもかというほど強張らせ、激しく尻を浮かせては落下させて、愛液溜まりに大きな飛沫を上げていた。類稀な美貌は涙や鼻水や汗に塗れ、すでに原型を留めていない。
 そんな酷すぎる状況を前にしても、百合は責めの手を緩めない。4センチほどにも勃起したクリトリスは、もはや小さなペニスだ。そのペニスの裏スジに当たる部分を、丁寧にマッサージ器でなぞり上げる。
 下から上へ。下から上へ。下から上へ。
 まだ大和男子の気概を持っていた頃の藤花でさえ、あえなく達した責めだ。その彼女より遥かに敏感な今の沙綾香に、耐え凌げる道理はない。
「あぁ、あ、あ゛あ゛! ああぁぁあ、ああぁ…………!!」
 もはや大口を開けて叫ぶしかない沙綾香。その腰がヒクヒクと動く。嵐の前の静けさ……それも、超特大の嵐の先触れだ。
「んんんッグぅううう、いッ、いぎますっ先輩、いっ、イグぅううううああああ゛あ゛っっっ!!!」
 沙綾香は震え、力み、震えて、百合に許可を求めながら崩壊した。蛙が大きく飛び跳ねる瞬間のように、足首から先が反り、太腿に力が篭もる。もう何も出ないと思われた割れ目から、驚くほどの量の飛沫が、ホースの先を窄めた時の勢いで噴き出していく。
 蓄積した快感が爆発した瞬間だ。これ以上ないほど腹圧が強まっていたに違いない。だから、ある意味では当然なんだ。
 びゅるっ、という音と共に、沙綾香の肛門から有色の液が飛び出たのは。
「……あら、あら」
 モニターを見上げた百合が目を細める。
 沙綾香は、絶頂後の気怠さに包まれているようだった。幼子のように百合の手を握りしめたまま、ひどく無邪気な表情でぼうっとしている。
 それでも彼女は、意識の隅で今起きている事を認識しているんだろう。不自由な足を内に閉じようとしている。もし彼女の足が拘束されていなければ、汚れたシーツの上で太腿を閉じ合わせ、俺の視界から隠すことができたはずだ。
 そんな彼女の心中を、知ってか知らずか。
「はははははっ、あいつクソ漏らしやがった!!」
「いひひひっ、すげぇすげぇ! 俺らにファックされた時も屁ぶっこいてやがったが、今度はクソかよ!? 随分と緩ぃアスホールだな!!」
 黒人共は鬼の首でも取ったかのように笑い転げ、ロドニーと手越もにやけている。そして、百合も。
「沙綾香。いくら追い込まれたとはいえ、蒼蘭の生徒ともあろう者が粗相をしてはいけないわ。これは、後ろの穴の躾も必要そうね」
 女学院の名を出して咎められれば、沙綾香も反論は難しい。ただ悲痛な表情で、覚悟を決める以外にない。

                 ※

「せ、先輩、トイレ行かせて! もう無理ですっ!!」
 沙綾香が顔を歪ませて叫ぶ。せわしなく足を踏み変えるところを見ると、実際に限界は近そうだ。
 彼女の足元には、潰されたイチジク型の容器が3つ転がっている。個包装されていたのだから、本来は一つ注入すれば事が足りる薬だろう。それを3つ入れられ、現在3分ほど経っている。すでに沙綾香の腹部からは、グルルル、キュルルル、という不穏な音が鳴りはじめていた。
「駄目よ。便意が来てすぐ出しても、薬液しか排泄されないわ。もっと我慢なさい」
 百合はベッド脇に立ち、沙綾香の手を握ってバスルームへの移動を封じている。
 百合の身長は160台半ばというところか。女性にしては背が高いが、超長身を誇る沙綾香と並べば華奢に見える。だがあの二人を見て、百合を格下と感じる人間はいないだろう。見上げつつも、絶対的。大型犬に芸を仕込む主人さながらだ。あのオーラこそ、名門女子高の生徒会長に選ばれる所以だろう。そしてそんな彼女でも、この倶楽部の調教には耐えきれなかったんだ。なら、それに圧倒されている沙綾香は……。
「せ、先輩、無理っ、もう本当に無理ですっ!!!」
 沙綾香の足の踏み変えがさらに激しくなる。尻肉とそれに連なる大腿部がぶるぶると震えているんだから、相当だ。
「なんだ、もう我慢できねぇのか? お友達の藤花はもっと耐えてたぜ」
 苦しむ沙綾香を見て、ソファに腰掛けるロドニーが鼻で笑う。
「と、藤花は特別凄いんだよ。ずっと剣道やってるから足腰丈夫だし、ガマン強いし……」
「んな気楽に褒めてていいのか? この先お前は、そのすげぇ藤花と勝負して勝たなきゃならねぇんだ。今のお前にとって、あいつらは最強のライバルなんだぜ。ま、勝ちを諦めるってんならそれでもいいがな。自分可愛さに下々のモンへ苦労を押し付けるなんざ、上流階級のお嬢様らしいじゃねえか」
 支配者層に恨みでもあるのか、ことさら意地悪く詰るロドニー。それを受けて、沙綾香が眉を吊り上げる。
「あんたの価値観で話さないで! 友情って、そんな安っぽいもんじゃないよ!」
「はっ、友情ときたか。女の友情ほど怪しいもんはねぇだろ。なあ百合」
 ロドニーはあくまで沙綾香の言葉を嘲り、百合に話を振る。百合は何も答えない。肯定も否定もしない。
「先輩……そんなこと、ないですよね?」
 沙綾香は、百合の心を探ろうとしてか、じっと瞳を見つめていた。だが、その視線は次第に揺れはじめる。また便意の波が襲ってきたらしい。腹がまた鳴る。ぐぉるるるる、ぎゅるるるる、と、さっき以上に異様な音で。
「んぐっ、ぐ、ううう……! はあああ、はあっぁぁ、だめっだめ、でちゃう、でちゃうでちゃうでちゃうっ!!」
 荒い息に、異常な汗。ひたすら繰り返される単語。人間が本当に余裕をなくした時の反応だ。
「へッ、結局6分でギブアップか。おい、もういいぞ。こんなトコで出されちゃたまんねぇ」
 ロドニーが追い打ちとばかりに冷笑し、百合に許可を出した。百合は無表情のまま頷き、沙綾香の手を離す。
「あああ出ちゃう、あああぁぁっ!!!」
 沙綾香は自由になってすぐ、弾けるようにバスルームへと駆けた。だが、また猛烈に腹が鳴り、その足が止まる。
「んぐううウ゛っ!!!」
 歯を食いしばったまま顎を上げ、尻を押さえて内股になる。そうして便意の波を凌ぐと、彼女はまた歩き出した。精一杯急いではいるんだろうが、左足を引きずるような歪な歩き方のせいで、進みは遅い。そしてその歩いた跡には、点々と液が滴っている。
「ハハハッ、なんだその歩き方!」
「おうおうお嬢様よ、可愛いアナルからクソ汁が漏れてんぜ!?」
 あられもない姿を散々に嘲笑われながら、沙綾香はかろうじてバスルームに辿り着く。便座に腰掛けた瞬間、凄まじい排泄音が轟いたんだから、まさに間一髪というところだ。その音も当然、野次の的になる。
 俯いて膝の上で手を握りしめる沙綾香の姿は、妙に小さく見えた。

 出すものを出した後は、また別の恥辱が沙綾香を襲った。百合によるアナルセックスだ。ペニスバンドという道具を使い、這う格好で犯される。黒人やロドニー達が見守る前で。
「うっ、う……うくっ、あ、あっ!!」
 沙綾香は組んだ腕の中に顔を伏せ、苦しそうな声を漏らしていた。俺と何度もアナルセックスの経験を積んだはずだが、しばらく挿入がない間に締まりが戻ったんだろうか。
「まだまだ固いわね。こんな具合じゃ、調教師様のペニスを迎えられないわ」
 百合は沙綾香の腰を掴んだまま、滑らかな動きでピストンを繰り返す。指責めの時と同じく、激しさはない。パンパンという肉のぶつかる音は、耳を澄ませば聴こえる程度に過ぎない。にもかかわらず、沙綾香は気持ちよさそうだった。ああ、ああ、と漏れる甘い喘ぎは、人が心地いい時に出すものだ。肘をついたまま背を丸め、腹筋を上下させながら痙攣……カメラに映し出される動作のすべても、快感によるものとしか思えない。
「感じているのね、沙綾香」
 挙句の果てには、犯している百合自身がそう告げる。遠くでゲラゲラと笑いが起きた。上流階級の令嬢が、女に尻を犯されて昂ぶる姿……育ちの悪い連中にとってそれは、さぞかし愉快な見世物だろう。
「……はぁ、はぁ……か、感じてなんか、いません…………」
「そう言うと思ったわ。でもね、女の嘘は、同じ女には通じないのよ」
 百合はそう言って、沙綾香の足の間に指を差し込む。
「うあっ……!」
 ぐちゅりと粘ついた音が響き、沙綾香が口を開いた。そして抜き出された指には、たっぷりと粘液が纏いついている。巨大モニターを通せば、指の間に引く糸まではっきり見えた。
 もっとも、あれだけクリトリスで絶頂させられていたんだ。蜜が溢れているからと言って、それ自体が決定的な証拠になるわけじゃない。
 最も決定的なのは、沙綾香の反応。シーツに肘をついたまま、騙しきれない、と観念しているその顔だ。
「隠す必要はないわ、沙綾香。直腸側から子宮を刺激されれば、感じて当然なの。貴女のポルチオ性感は、もう“出来上がって”いるんだもの」
 百合は沙綾香の腰を掴み直し、奥をさらに押し込む。
「ふああぁんっ、んああ!!」
 沙綾香がまた背を丸め、ビクビクと腰を上下させる。百合が一切動きを見せない中、子供のような泣き声を漏らしながら。
「お前もなかなか惨いな。そんな状態と解っていながら、ケツでしかイカせねぇなんざ、生殺しも同然だぜ。見ろよ、そいつの物欲しそうなツラを」
 手越が指摘する通り、沙綾香は絶頂こそしているが、すっきり逝ききれていない印象を受ける。勃起しきった逸物を扱いているうちに、意図しないタイミングで半端に射精してしまう、あの感じだろうか。
「私の役目は、あくまで調教の補佐と伺っておりますので。本格的に中逝きを覚え込ませるのは、あの雄々しい調教師の方々にお任せいたします」
 百合は腰を使いながら、鉄格子の先に視線を向ける。能面のような無表情が多い彼女も、その瞬間だけは、調教師に愛焦がれる態度を隠さない。沙綾香もモニター越しにその顔を目にしたらしく、密かに息を呑んでいた。
「正直に言うとね、沙綾香。私は貴女が羨ましい。あの檻の中で、これから毎晩可愛がっていただけるなんて」
 鉄格子から視線を戻し、百合は語る。淡々と、しかし熱を秘めた口調で。
「あの方達に抱いていただくのは、強い炭酸を飲んだ時と似ているの。最初こそ刺激の強さに抵抗があるけれど、一度喉元を過ぎてしまえば、今度はその刺激に病みつきになるわ。世界が一変するの。心臓が早鐘を打って、ずっと最高の恋をしているみたいで。……本当は、今夜も私があの快感を頂きたいけれど、貴女に譲るわ。それが倶楽部の方針だし、悔しいけれど貴女、本当に可愛いもの。こうして偽物のペニスでしか犯せないのが、勿体ないくらい」
 この言葉に嘘はない。俺はそう直感した。愛憎入り混じっているからこそ、百合は時として沙綾香に寄り添い、時として冷酷になる。いずれにせよ、沙綾香にとって付き合いづらい相手には違いないが。
「私は、そんな快感、いりません。友達さえ、助けられれば……」
 沙綾香は喘ぎながら、はっきりとそう返す。
「…………そう」
 短く一言告げ、また腰を使いはじめる百合。口元に浮かぶ笑みの理由は、愛か、憎悪か、果たしてどちらだろう。


                 ※


 そして、夜が来る。
 沙綾香はベッドの上で、百合にガスを吸わされていた。
「ふうっ、ふうーーっ……ああ、、あ、あ」
 目を見開いたまま痙攣する姿は、何度見ても不安になる。
 彼女の左右には、ピンク色のローターと電気マッサージ器が転がっていた。百合が沙綾香の尻穴を犯しながら、追い詰めるために使ったものだ。
 壁の時計が22時を回ったところで、ガスの吸引器が外される。
「時間だ。檻に入れ」
 ロドニーがそう命じながら、リモコンを拾い上げる。ピッと短い音がして、巨大モニターに10人の黒人の姿が映り込む。
 連中は全員、ソファやベッドに腰を下ろし、あるいは直立したまま、鉄格子の向こう……沙綾香の方に視線を向けている。ギラついた眼。血に飢えた猛獣さながらだ。
「…………っ!!」
 檻の前に立った沙綾香は、顔を引き攣らせていた。前から押し寄せる性欲の波に圧されているようだ。だが、彼女は拳を握りしめ、表情を引き締める。そして細い身体いっぱいに力を篭めて歩み出し、鉄格子の前に立つ。
「良いツラ構えだ。碌に調教もしてねぇ女がテメェから入るなんざ、初めて見る光景かもな」
 手越が口を開く。奴はモニターを見上げやすい位置に陣取り、ガラステーブルに酒瓶を並べていた。沙綾香の被虐を肴に飲むつもりか、つくづく外道だ。
 沙綾香は手越を一瞥するが、何も言わない。覚悟こそ決めたものの、言葉を発する余裕はないのかもしれない。
「この一夜、無駄にするなよ」
 沙綾香が鉄格子の扉に手をかけた瞬間、手越がまた言葉を掛けた。沙綾香の手が止まる。
「…………無駄にしないで、何しろっていうの?」
「決まってんだろ、マゾ奴隷の心得を学ぶんだよ。お前の相手は、4人ともすでに女の悦びを教え込まれてる。そういう意味じゃ、そもそものスタート地点がお前より先だ。だがお前にだって、黒人とのセックスを経験済みってアドバンテージがある。こいつはでけえぞ。審査でお前らが奉仕する相手は、あの黒人共だからな。お前だけが本番に向けて、たっぷりと予習できるわけだ。フェアな条件だろ?」
 手越はそう言って杯を呷った。
 あの黒人共は、オスとして規格外だ。あんな連中に奉仕するとなれば、どれだけ日本人相手のセックスで慣れていても、まずは戸惑う。沙綾香にはその戸惑いがないから、そこは確かに有利だ。
 だが、予習など出来るだろうか。百合という先例からも明らかだが、黒人共の輪姦は半端じゃない。朝まで正気を保てるかも怪しいほどに。そんな中、マゾ奴隷としての演技にまで考えを巡らせるのは至難の業だろう。
 沙綾香は押し黙っている。彼女は俺より近くで百合の輪姦を見ていたんだから、その恐ろしさもよく分かっているはずだ。
「怖ぇんなら、オトモダチと代わってもいいんだぜ。4人とも喜んで入るだろう。なんつってもそこは、変態マゾにとってのVIPルームだからな」
「……いらない」
 手越の誘いを振り切るように、沙綾香は顔を上げた。
「こんな所に、皆は入れさせない!」
 モニターに映る瞳は形がいい。甘える瞳も、誘う瞳も魅力的だが、意思を秘めた瞳も息を呑むほどに魅力的だ。神に愛された造形、とでも言うべきか。その目を見て、黒人共は歓声を上げる。そしてその獲物が鉄格子の扉を開き、自分達のテリトリーに踏み入った瞬間……10人は、獣と成り果てた。
 沙綾香の手首を掴んで“檻”の中へ引きずり込むと、手足を持って神輿のように担ぎ上げる。
「ッはぁ、たまんねぇ!!」
 沙綾香の真正面にいたドミニクが屈みこみ、割れ目に口づけをする。
「あっ、テメェ!!」
「やあっ!!」
 別の調教師が抜け駆けに怒り、沙綾香が悲鳴を漏らす。そんな中、ドミニクは沙綾香の割れ目に舌を這わせながら、愛液を啜り上げた。
「ヘヘヘヘッ。あの百合って女のおかげで、もう濡れまくりじゃねぇか!」
 ドミニクはいったん口を離すと、今度は割れ目に指を突っ込み、ぐちゅぐちゅと音を立てて掻きまわしはじめた。洋画で見かけるような激しい『手マン』だ。見た目こそ派手だが、あんなやり方では快感も何もない……はずだ。本来なら。
 だが沙綾香は、その力任せの雑な責めで身を震わせる。意図的に膣への刺激を避けて焦らされたせいで、すでに臨界点だったんだろう。
「ふんんんあ゛っ!!」
 沙綾香の食いしばった歯が離れ、叫びが漏れる。同時に、ぶしゃっと飛沫上がった。ほんの一瞬だが、カメラにしっかり映る水量だ。
「ハハハハッ、潮噴きやがった!」
「さすがはビッチだ、いきなり興奮させてくれるじゃねぇか!!」
 目を血走らせたまま大騒ぎする黒人共。その後方……鉄格子を挟んだ場所では、百合が薄笑みを浮かべている。
「……くうっ!」
 沙綾香は悪意に囲まれながら、改めて目を見開いて黒人共を見上げる。このぐらい何だ、と言わんばかりに。そうした気丈さは、サディスト共にとっての蜜だ。
「へへへ……オイ、もう嵌めようぜ。コックが張って痛ぇんだ!」
 そう叫んだのは誰だろう。10人のうちの誰であってもおかしくないぐらい、どいつの怒張も勃起して反りかえっている。
 挿入順は運の勝負となった。沙綾香の身体が床に降ろされた直後、ちょうど背後にいたトラバンが腰を抱え込んで挿入を果たす。
「んああああっ!!!」
 挿入の瞬間、沙綾香から漏れた声はすごかった。例えば脛をどこかに強打しただとか、そういう時にしか発されない声だ。肩や首がぶるぶるっと震えたのを見ても、快感は相当らしい。
「いい声だなあジャパニーズ! お淑やかなのも結構だが、そうやって思いっきり喘いでくれっと犯し甲斐があるぜ!!」
 トラバンは上機嫌で腰を打ちつける。パァンパァンと響き渡る音は、百合のアナルセックスの音とは別物だ。
「んッぐ、あッ、あ!!」
 沙綾香は呻きながらも、背後を睨み上げようとしていた。その気配を察してなのか、トラバンは沙綾香の太腿を抱え上げる。幼児に小便をさせるポーズだ。極太が割れ目に出入りする様子が丸見えになる。だが沙綾香にとってはその羞恥よりも、自重でさらに挿入が深まったことの方が問題らしい。
「くあああっ、ふ、深いっ……!」
「くくっ、いいツラしやがる。ちっと休んでる間に感覚がリセットされたか? それともマッサージ師の姉ちゃんのおかげで、昨日より敏感になったのか?」
 沙綾香の前方にいる連中が、嬉しそうにからかう。その感情も理解はできる。深く突き込まれる瞬間には大口を開け、引き抜かれる時には歯を食いしばり。そうして美貌が刻一刻と変化する様は、ひどく感情を揺さぶるから。
「んッ、ああっ!! んん゛ッ、あッ、ぁあ……!!」
 じゅぶっじゅぶっという水音と沙綾香の喘ぎが、交互に繰り返される。沙綾香は決して筋肉質ではないが、今はうっすらと腹筋が透けて見えた。腹に力を篭め、何かを必死に堪えているらしい。何をかは、考えるまでもない。彼女は、トラバンの雄々しい剛直に突き上げられながら、着実に“それ”に近づいていく。
 そして、数秒後。
「はぁあううううう゛っっ!!!」
 一際ハッキリとした声色で、沙綾香が叫ぶ。決定的な瞬間を知らせるアラートだ。笑い声を漏らしながら、黒人共が沙綾香の下半身に注目する。
『これが女の絶頂だ』
 そう教本に載せられるぐらい、反応は分かりやすかった。
 沙綾香の眉が下がり、口が開き、気の抜けた顔になる。
 抱え上げられた両足の先が跳ね上がり、極太が深く突き刺さった中心……割れ目とその直上の腹筋が、ぶるぶるぶるっと痙攣する。
「はッ、思いっきりイってやがる」
 極めつけは、挿入しているトラバン自身の言葉だ。それを聞いた他の黒人共が、白い歯を覗かせる。その賞賛を一身に浴びながら、トラバンは射精に至った。あるいは、その瞬間での射精を『選択した』。
「あっ、あああ……は、入って、くるうっ!!」
 沙綾香が下腹に視線を落とし、表情を引き攣らせた。その2秒後、割れ目から精液が溢れ出す。相変わらず馬鹿げた射精量だ。ガタイや怒張のサイズも相まって、大型の家畜を思わせる。そんな相手に犯されれば、どれだけ体力を消耗することだろう。
「はぁっ、はぁっ、はぁあっ……!!」
 沙綾香は、顔中で不満を表しながら、荒い息を吐いていた。跳ね上げた足がゆっくりと降りていく。トラバンも怒張を引き抜き、一区切りという空気が流れた。
 だが、終わりじゃない。床から部屋内を撮影するカメラは、引き抜かれた怒張の先が、沙綾香の尻穴に宛がわれる瞬間を捉えている。
「えっ? そ、そこは!」
「ああ、ケツだ。覚悟はできてたろ?」
 トラバンはサディスティックな笑みを浮かべ、肛門へ怒張を押し込みはじめる。ペニスバンドで多少は慣らされた肛門だが、10人中4番目のサイズを誇るトラバンの怒張は、多少なんて大きさじゃない。肛門に亀頭が埋もれ、中へと入り込んでいく……そのすべてに、メリメリと音がしそうな不自然さが見て取れる。
「ああああ゛あ゛っ!!」
 沙綾香から悲鳴が上がり、割れ目から精液が溢れ出した。それが、一回では済まない。怒張がミチミチと入り込むほどに、沙綾香はより悲痛な声を漏らし、割れ目はより大量の精液を吐き零していく。
「オーウ、よく締まるいいアナルだ。プッシーより名器かもな!」
 身の竦むような光景だ。だがそれは俺に限った話らしい。黒人共はその光景を興味深そうに眺めていた。その中の一人、レジャナルドに至っては、怒張を扱き上げながら沙綾香に歩み寄る。奴が凝視するのは、今なお精液の零れる女性器だ。
「や、なにっ!? ま、まさかっ!!」
 相手の狙いを察した沙綾香が、割れ目を手で覆う。だがその手は、右にいるダーナルにあっさりと掴み上げられた。アナルを犯しているトラバンも、抱えた足を手前に引きつけ、割れ目を前に突き出させる。
「やめて、お願いやめてっ! まだお尻の痛みにも慣れてないの! 骨盤が砕けそうで、お尻の周りがブルブルしてる! 今、前にまで挿れられたら……!!」
 命乞いにも等しい叫び。それを聞きながら、レジャナルドは伸びやかな脚の間に体を割り込ませる。そして、沙綾香の顔を凝視しながら腰を沈めた。
「あ……うっっぐうう゛ぅ゛う゛っっ!!!」
 沙綾香が歯を食いしばる。挿入が深まるほど食いしばり方も強まり、巨根の半分近くが隠れた頃には、赤い歯茎すら覗いていた。
「ひひっ、すげぇツラだ。キュートなのに勿体ねえぜ?」
「やっぱ二穴はすげぇな。ケツが締まりまくって、食い千切られそうだ! 穴の周りもブルブル震えてやがるし、痩せっぽちのジャパニーズにゃあ無理ありすぎたか? ま、無理でもやめねぇけどな。股関節脱臼ファックってのも面白え!」
 トラバンとレジャナルドは、前後から沙綾香を犯しながらゲラゲラと笑う。
「くはっ、ああ、んああ゛あ゛っ! き、きついっ……引き攣ってる、お尻もあそこも、引き攣ってるっ!! 抜いて、お願い抜いてえっ!!!」
 悲痛な叫びが響きわたる中、たっぷり数十回はピストンを繰り返す二人。その果てに、まず膣側のレジャナルドが、そして尻側のトラバンが腰を震わせる。
「ああああっ! やだ、やだ、気持ち悪いっ!!」
 前と後ろへ同時に精を流し込まれ、沙綾香が顔を歪めた。

「ずいぶん嫌そうだな。だが、客の前じゃ気をつけろよ。んな顔見せたら最後、マゾじゃねぇって一発で見破られんぜ?」
「ッ……!!」
 手越の指摘に、沙綾香がはっとした表情になる。好きでもない男の射精を嫌がるのは、女の本能に近い。だがマゾ奴隷を演じるなら、その本能を抑え、喜んでみせなければならないんだ。
 表情を曇らせる沙綾香だが、沈んでばかりもいられない。
「っしゃあ、次ァ俺だ!!」
 二穴から怒張が抜かれた直後、ジャマールが沙綾香の腕を掴み、バックスタイルで挿入する。
「かはぅうっ!!」
「イイ声出んじゃねえか! 二穴責めは征服感あるが、深くは突っ込めねぇからな。こうやって奥まで突かれる方が気持ちいいだろ!?」
 ナチュラルに強姦体位を好むのか、沙綾香の手首を掴み、拘束しつつ腰を振るジャマール。
「くううあ゛っ、あ、はあ、激しっ…………!!」
 受ける側の沙綾香は、目と口を開いた必死の形相だ。突かれるたび、肩幅以上に開いた脚の間から精液が零れ、床に白い華を咲かせていく。その華が4つ重なったところで、細い腰がぶるっと震えあがった。
「うひいっっ!!」
 沙綾香の眼がさらに開き、顔を覗き込む連中が笑う。沙綾香はその視線を睨む形で受け止めながら、背後に立つジャマールの脛を蹴った。弁慶の泣き所だ。だが、ジャマールは揺るぎもしない。
「んだよ。相っ変わらず、往生際の悪ィガキだな!」
 そう笑いながら、あっさりと沙綾香の太腿を掴み上げる。
「あっ!?」
 沙綾香が、まずい、という表情になった。足が大きく開かれたことで、すべてのカメラに挿入シーンが映し出される。
 赤黒い極太が出入りするところ。
 精液が溢れ、軸足を伝うところ。
 その軸足が、ぶるっと震えるところ。
「ーーーーッ!!!」
 沙綾香が顔を伏せた。せめて逝き顔を見られないようにだろう。だがジャマールは、そんな沙綾香の髪を掴み、強引に顔を上げさせる。
「ぅやああああっ!!」
 沙綾香が妙な声を上げ、さらに身を震わせた。唇のひしゃげた顔を、何人もに晒しながら。

                 ※

 百合の時と同じく、『ラッシュ』は強烈だった。休む間もなく、煮えたぎるようなオスの性欲を叩きつけられる。背後から腰を、左右からは両腕を掴まれた沙綾香に逃げられない。深く謝罪する格好のまま、背後から犯され続けるしかない。
「プッシーを休ませんな、イカせまくってやれ!!」
「おお、解ってらぁ!」
 怒声が響きわたり、モーリスが割れ目に挿入する。
「はぁ……んは、ぐっ…………!!」
 モーリスは、別格のサイズを誇る3人のうちの一人だ。当然、沙綾香の反応も大きい。しかもモーリスは、挿入するなり全力で腰を振る。
「ひゃはははっ、キモチいいぜ! あのユリとかいうマッサージ師もなかなかだったが、やっぱこのガキの方がよく締まりやがる!」
 歓喜の声と共に大きく腰が振られ、甲高いピストン音が響き渡る。ぶつかるエネルギーの大きさを、嫌でも想像させるボリュームで。
 ピストン20回目で、沙綾香のアゴが上がった。30回目で、口が開いた。
「いっ、くッ!!!」
 吐息交じりの喘ぎとは根本から違う、明確な絶頂宣言。それを聞いてもモーリスは責めを緩めない。力強いグラインドのまま、二度、三度、四度と、激しく腰を打ちつける。
「っ! んっ、くく、くっ……!!!」
 沙綾香は、また絶頂に追い込まれているようだ。目を瞑り、眉根を寄せ、眠るような表情をしながら一切の動きを止める。身体全体がピクピクと痙攣するという、反射の反応だけを残して。
「おおお、イイ締まりだ。おらッ、中に出すぞ!」
 モーリスは下卑た笑みを浮かべ、下腹を抱え込みながら射精に入る。
「ドクドク注ぎ込まれてんのがわかんだろ。こんだけ奥に押し付けてんだ、子宮の中にまで入っちまうかもなあ!?」
 モーリスに耳元で囁かれ、沙綾香の目尻が吊り上がる。
「あんた……本当に殺すから!」
「おーおー、怖ぇ。財閥のお嬢様だもんなぁ、その気になりゃヒト一人消すぐらい簡単だろ。だがよ、そういう相手だから……犯し甲斐があるんだよなあ!!」
 モーリスは大袈裟に肩を竦めてみせながら、前方に目配せする。
「生意気なツラだ。マゾ奴隷って身分を、じっくり教え込む必要があるらしいな」
 沙綾香の前に立ったダーナルが、そう言って怒張を咥えさせる。十番勝負の時のような『フェラチオ』じゃない。後頭部を押さえ込み、喉奥まで咥え込ませる『ディープスロート』だ。
「お゛っ、おごっ……おえ゛っ!!お゛え゛え゛っ!!! お゛……んぐっ、ごおお、ぉ゛っ!!」
 沙綾香から、本格的なえずき声が漏れる。苦悶の声じゃなく、えずき声だ。
「うはははははっ! すげえ、気持ちいいぜえ!!」
 ダーナルは歓喜していた。腰を落としたまま、沙綾香の後頭部を抱え込んで激しく前後させる。百パーセント性欲を処理させるための動きなのが、見た目でわかる。
「んんお゛お゛っ、ごほっ、ごぼっ!! ほぉおお゛おえええ゛っ!!!」
 沙綾香からはますますひどい声が漏れ、胃液が滴り落ちていく。

 もちろん、地獄が続くのは前ばかりじゃない。沙綾香の下半身側では、しっかりと射精しきったモーリスが、マーカーで沙綾香の尻に横線を引いていた。縦線4本と横線1本を1セットとする、英語圏での『正の字』だ。連中が“ファックペイント”と呼ぶその記録は、今の横線でついに6つめが完成した。実に30回の連続射精。だが、まだまだ終わる気配はない。
「興奮するぜ、あの『八金』のお嬢様を犯せるなんてよ。この感覚ばかりは、日本で暮らしたことのねぇ奴にゃあ解らんだろうな」
 元力士のダリーが、満面の笑みを浮かべながら挿入する。
「う゛む゛ぉえ゛っ!!」
 沙綾香からえずきが漏れた。
 やはりダリーは重量感が違う。沙綾香の尻肉が波打ち、細い身体が前後に流れる。前で咥えさせているダーナルはかろうじて踏みとどまっているが、それは逆に、沙綾香にとっての壁に等しい。背後から突き込まれ、前方の壁にめり込む。それが齎すのは、絶望的に深いディープスロートだ。
「うえ゛お゛、お゛えあ……ぉおお゛お゛エ゛ッ、え゛……んオ゛っ!!!」
 沙綾香がまたえずき声を漏らす。その直後、ダーナルがいきなり腰を引いた。両腕を左右から引かれたまま、沙綾香が頭を垂れる。口から黄褐色の吐瀉物が溢れ、床にびちゃびちゃと音を立てる。ダーナルは首を振り、腕を引き絞る連中もゲラゲラと笑う。
「オラ、休んでんじゃねぇよ。吐いたって終わんねぇぞ」
 嘔吐という極限の反応を前にしても、ダーナルは責めをやめない。沙綾香の髪を掴み上げ、胃液に塗れていきり勃つ剛直を、また口内に押し込んでいく。
「なんだ、吐いちまったのか。俺のファックが強烈すぎたか? 悪いなぁ。相手が財閥令嬢だと思うと、同じレイプでもついつい力が入っちまうんでよ」
 ダリーも反省などしない。沙綾香が怒張を咥えさせられるや否や、また強烈に腰を打ちつけはじめる。
「おえ゛っ、ううう゛え゛っ!! おう゛、やああ゛っ!!!」
 モニターに映る沙綾香の顔には、一切の余裕がない、ダーナルの陰毛を凝視したまま、必死に相手の太腿を掴んでいる。
 逆にダーナルは余裕そのものだ。もう沙綾香の後頭部を押さえもしない。腰に手を当て、壁として立ち尽くしている。ダリーに押し出される沙綾香にとっては、最悪の行動だ。屈強な壁にぶち当たり、沙綾香の顔面が変形する。一瞬元に戻ったかと思えば、また変形する。まるで、自動車の衝突実験を何度も繰り返しているように。
「お゛え゛っ、おおおぉ゛う゛え゛っ!」
 沙綾香のえずき声が何度も繰り返される。その最中、ダーナルがふいに腰を震わせた。
「っといけねぇ、催しちまった」
 奴はヘラヘラと笑いながら、とんでもない事を口にする。すると、ダリーもまた笑みを浮かべた。
「だったらよ、そのままションベン飲ましちまえ。おぼこいお嬢様だ、飲尿はさすがに心折れんだろ」
 まさに、外道の考え。沙綾香はくぐもった悲鳴を上げるが、前後左右から自由を奪われていて動けない。
「そうだな、出しちまうか。いいか、一滴も零すんじゃねーぞ」
 ダーナルはそう言って沙綾香の頭を両手で抱え込み、膝を曲げて中腰になる。
「んぐっ、うう゛っ!! うううむ゛っ、むごおおおおお゛お゛ーーーっ!!」
 沙綾香は当然嫌がり、出来うる限りで身を揺らしながら声を漏らし続けていた。だがおそらく、その途中にはすでに口内への放尿が始まっていたんだろう。どのタイミングかはわからない。沙綾香の呻き声は、ずっと悲痛だったから。放尿を確信したのは、床からのカメラに、黄色い液の滴る様が映ってからだ。
「ふうー……。ったく、零すなっつったろうが」
 数秒後、ダーナルが大きく息を吐きながら沙綾香の頭を離した。沙綾香の顔をきちんと捉えているカメラはない。だが、ダーナルの反応で、どんな顔をしているのかが判る。
「へへ。心が折れるどころか、さっきよりスゲェ眼で睨んでやがる。こいつは、まだまだ楽しめそうだ!」
 奴はにやけながら、また怒張をしゃぶらせはじめた。

                 ※

 『ラッシュ』は一時間が過ぎても終わらない。沙綾香の感情など一切汲まず、休みなく口と肛門を蹂躙する。
 似通った映像が続けば、観ている側は感覚が麻痺してしまう。だが、それは傍から見ている者の気楽さだ。沙綾香にとっては、延々と続く一分一秒の全てがリアル。自分の腕と大差ないレベルの逸物を膣で受け入れるのも、休みなく咥えさせられるのも、恐ろしくキツいはずなんだ。映像内の沙綾香が荒い息を吐きながら気絶したようになり、黒人が怒声と共にその頬を叩くのを見るたび、俺はその事実を思い出す。

 沙綾香は色々な反応を見せていた。
 極太を喉まで咥え込まされるんだから、えずき声はゴエゴエと凄まじい。口からは唾液どころか、とろみのある胃液らしきものが滴り落ちていく。手が少しでも自由になるたび、咥えさせている男の太腿を押しのけようとするのも印象的だ。
「んぉオオエエエ゛エ゛ッ!!!」
 根元近くまで怒張を突っ込まれた沙綾香が、またえずき上げる。口の端から泡立つ液が溢れ、喉を流れていく。だが、問題なのは嘔吐だけじゃない。口内に注ぎ込まれる精液の量も問題だ。
「お、ぶぉっ……んも゛えええええ゛っ!!!」
 何度目かの喉奥射精を受け、沙綾香が精液を吐き戻す。
「あーあー、吐くなよ勿体ねぇな!」
「そんなんじゃマゾ奴隷を名乗れねぇぞ!」
 調教師共が笑いながら叱る中、沙綾香の口からは大量の白濁が零れていく。口からそれだけ逆流するなら、当然膣にも同じぐらいの精液が注がれているはずだ。それを裏付けるように、沙綾香は激しく抵抗していた。
「やめて、ホントにやめてよっ! 中に出さないでって言ってんじゃん!!」
 大声で泣き喚きながら、手足を振り回して暴れる。だが調教師共は、頭数と腕力で強引にそれをねじ伏せ、当然の権利の如く膣内に射精しつづけていた。まさに『数の暴力』だ。
「やめてえええっ!! 妊娠しちゃう、ホントに妊娠しちゃううっ!! 妊娠はイヤあーーっ! センセ、助けて、助けてえええーーーっ!!!!」
 やがて沙綾香は、顔を歪めて俺を呼びはじめた。
「沙綾香あっ!!」
 俺も叫び返すが、あまりに空しい。テレビに向かって騒いでいるも同然だ。沙綾香に干渉できるのは、ガラスの向こうにいる人間だけ。そしてそいつらは、泣き喚く沙綾香に同情なんてしない。むしろ、それまで以上に膣内射精を徹底するようになった。

 人の密度が高すぎる。モニターの4画面のうち、3つには男の尻しか映らない。俯瞰視点のカメラだけはかろうじて状況を捉えているが、黒い肌の隙間に映る沙綾香の状況は悲惨だった。
 女の子に対する配慮というものが、まるでない。
 這う格好の沙綾香を、一人が後背位で犯し、一人が前から咥えさせる。それだけならまだいいが、床についた沙綾香の手を、また別の二人が踏みつけて封じているのが本当に腹立たしい。
 後ろから犯す奴のピストンは半端じゃない。前から咥えさせる奴にしても、沙綾香の顔を両手で掴み、絶対に逃げられないようにしつつ根元近くまで咥えさせている。挙句には沙綾香の横にいる連中も、乳房を乱暴に揉みしだいたり、遊び半分に背中へ平手打ちを浴びせている。なんといっても筋肉隆々の黒人だ。たとえ連中にとっては戯れでも、平手で打ち据えればハッキリと紅葉痕が残るし、肉を掴めば指の間に肉が盛り上がる。
 そんな暴力を受ける沙綾香は、どんな気分だろう。推し量りたいが、あまりにも情報がなかった。顔も、手も、腰も、動かす余地はない。声すら自由には出せず、ムグッ、ゴエッ、とえずくか、怒張が抜かれている僅かな合間に、激しく空気を求めるのがせいぜいだ。
「すごい……」
 悲鳴と肉のぶつかる音に混じって、そんな声が漏れ聞こえる。百合のものだ。彼女は鉄格子の前に立ち、犯される沙綾香を見ながら自慰に耽っていた。白衣を開けたまま、乳首を捏ねまわし、秘部に指を入れて。
 百合が熱い視線で見守る中、沙綾香の状況はまた酷いものになる。嗜虐の快楽に浸る黒人共は、いつの間にか仰向けになっていた沙綾香に対し、二本挿しを試みていた。
「い、ひぐっ……!? む、無理、もう一本なんて無理いいっ! 裂けるっ、裂けちゃううっ!!!」
 沙綾香が悲鳴を上げても、配慮はされない。騎乗位で極太を咥え込んでいる割れ目へ、前からもう一本が捻じ込まれていく。
「はははっ、中で擦れてるぜ!!」
「ひょおお、締まる締まる! 真ん中あたりで千切れちまいそうだ!!」
 犯す方は随分と楽しそうだが、沙綾香の苦しみぶりは激しい。力んだ脚の痙攣ぶりも、背中の仰け反り方も、普通じゃない。だが、調教師はそんな沙綾香にも躊躇なく逸物をしゃぶらせにかかる。
「おっ、マゾの心が解ってきたじゃねぇか。自分からコックに顔擦りつけてくるなんてよ!」
 そう言いながら顎を押さえつけ、かなり深く咥えさせる。
 地獄のような光景だ。しかもそれがしばらく続けば、2本挿しされた膣内から精液が溢れてくる。膣の中に流し込まれたんだ、あんなにたっぷりと。
「へへへ、すげえ! 膣内出しされすぎて、腹パンパンになってきてんぜ!?」
 沙綾香の下腹に触れたドミニクが、可笑しそうに笑う。
「ま、こんだけ中出しされてりゃあな!」
「もっと入れてやれ、お嬢様が孕むまでよぉ!」
 他の連中も便乗し、沙綾香の顔を歪ませる。
「やめてえええぇっ、いやあ、もう嫌ああッ!!! ホントにっ、ホントに妊娠しちゃうーーーっ!!!」
 沙綾香の嫌がり具合は相当だ。マイクが音割れするような絶叫を響かせながら、手足を激しく振り回す。だがそうして抵抗すればするほど、黒人共の笑みは深まっていく。
「活きのいいジャパニーズだな。もう一時間以上喚きっぱなしだぜ?」
「ああ。俺ら相手にここまでやられてまだ叫べるなんてよ、遊び甲斐があるぜ!」
 連中はゲラゲラと笑いながら、沙綾香を仰向けにひっくり返した。そして睨み上げる表情を面白そうに眺めながら、強引に足首を掴み上げる。
 作られるのは、『マングリ返し』の格好。屈辱的なポーズだが、それだけじゃない。そのポーズで膣内射精を受ければ、注がれた精液が外に流れ出さず、すべて子宮の方に流れ込むことになる。
「やっ、イヤっ!! 放してよ、放してって! ふざけないでよっ!!」
 沙綾香も状況の不味さを理解したんだろう、鬼気迫る表情で怒鳴り散らす。だが、黒人共は拘束を緩めない。両手首を沙綾香の頭上で掴み上げ、両足首を頭の横にまで押し下げ、わざわざ指で割れ目を押し開きながら、『これでもか』とばかりにレイプと中出しを繰り返す。
 沙綾香は、叫んでいた。ずっと、声が枯れるまで。

 黒人10人のレイプが二巡し、全員が煮え滾るような欲望を叩きつければ、とりあえず“ラッシュ”は終わる。時計の針は90分程度しか進んでいないが、観ている俺には何日にも感じられた。
「ふーっ。まだまだヤり足りねぇが、とりあえずここらで区切るか」
「ああ。本格的にベッドで犯るにしても、ザーメンでドロドロだしよ。いっぺん洗った方がいいな」
 仰向けのまま痙攣する沙綾香の腹を、レジャナルドが踏みつぶす。
「う゛っ!!」
 くぐもった呻きが漏れ、沙綾香の足が跳ね上がる。その足の間からは、膣内に出された精液がどろりと垂れていた。
「おっ、出てきた出てきた!」
 レジャナルドがさらにグリグリと腹を圧迫すれば、沙綾香全身がびくんびくんと痙攣しはじめる。
「ほごっ……おおお゛、お゛お゛っ!!」
 呻きは濁りきったものに変わり、口とアソコからは、恐ろしい量の白濁液が噴き出していく。黒人共はそれを見て、これでもかというぐらいに大笑いしていた。
「はっはっはっ、すげえすげえ!」
「こいつ、どんだけ腹ん中にザーメン入ってんだよ!?」
 その笑いを受けて、苦しみの中にいる沙綾香が目を開いた。
「あ、あんた…らが、入れ……たんでしょ…………!」
 瞳孔には、はっきりとした敵意が宿っている。
「ほお。あのラッシュの後で、まだそんな顔ができるとは大したもんだ」
「ああ、まだまだ楽しませてもらえそうだな」
 沙綾香の気丈さに、嬉しそうな笑みを浮かべる黒人共。その股間にぶら下がる10本の凶器には、まだまだ“張り”が感じられた。

                 ※

 沙綾香がシャワールームへと連れ込まれると、巨大モニターの映像も切り替わる。ご丁寧なことに、浴室内にもカメラとマイクが設置されているらしい。
 バスタブつきのシャワールームは、そこそこ広い。ただし、それは日本人カップルが使うならの話だ。アメフト体型の黒人が入れば、たちまち手狭な印象に変わる。
 他の黒人に先んじて、沙綾香をシャワールームに連れ込んだのはジャマールだ。
「この野郎、上手いことやりやがって!」
「ヤることヤッたら替われよ、いつまでも独占すんじゃねーぞ!」
 他の9人は、ガラス張りのバスルームに張りついて野次を飛ばしはじめる。そんな中ジャマールは、妙な形の椅子に腰かけた。背後にシャワーヘッドを隠す形で、だ。
「ちょっと、邪魔なんだけど! シャワー浴びらんないじゃん!」
 沙綾香が不満を漏らすと、ジャマールは偉そうに腰かけたまま、傍にあるボトルを指で叩く。
「ノーノー、ジャパニーズ。奴隷ならまずは、抱いてくれた相手を綺麗にするもんだぜ。貴重な精子をお恵みくださって、有難うございましたって感謝しながらよ」
「…………ほんと、ウッザい!」
 沙綾香は眉を吊り上げる。彼女は今も、足を踏み変えるたびに精液が滴るような状態だ。妊娠の恐怖から、一刻も早く膣内の精子を洗い流したいに違いない。だがそのためには、調教師の要求に従うしかない。腕ずくでジャマールを押しのけ、シャワーを奪取することが不可能な以上は。

 沙綾香は溜息まじりに跪き、ボディソープを塗り伸ばした手で怒張を覆う。
 改めて見ても、凄まじいペニスだ。沙綾香の両掌で握り込んでも、なお亀頭部分が丸々余る。それは、手で刺激される中で大きさを増し、いよいよ馬か何かの物に思えてくる。間違っても人間の口や性器に挿れるには適さないサイズだ。
「アジアンの手は柔っこくて最高だぜ。その調子で、ケツも刺激しろ。そのためのイスなんだからよ」
 ジャマールはほくそ笑みながら椅子を叩く。椅子は座る部分が凹んでいるため、直接股に触れられる造りだ。
「はあっ!? 冗談じゃないし!」
 沙綾香は怒る。当然だ。獣じみた男の尻に触れるなんて、女の子が好むはずもない。
『……ほう、嫌か?』
 そう言ったのは、ジャマールじゃない。マイクを通したロドニーの声だ。沙綾香が虚を突かれてモニターの方を振り向く。
『お前が次に対戦する相手は、そういう奉仕が上手いんだぜ。こんな風によ』
 太い指がリモコンを操作すると、モニターにある映像が流れはじめた。
 場所は広い浴室。椅子に腰かけた男と、その足元に跪く女がいる。今の沙綾香の状況にそっくりだ。
「祐希!?」
 沙綾香のその叫びを聞くまでもなく、女が誰かはすぐにわかった。煎餅布団の上で、客に観られながら犯されていた『王子様』だ。彼女が奉仕している男にも見覚えがある。女と見紛うばかりの白く細い身体。女から黄色い歓声を浴びていた、颯汰とかいう奴だ。
『気持ちいいですか、颯汰さま』
 這いつくばって逸物を舐めながら、祐希が問いかける。
『まあね』
 颯汰がニヒルな笑みで答えると、祐希は満面の笑みを浮かべながら体勢を変えた。仰向けになり、頭を椅子の下に滑り込ませる。そしてカメラは、彼女が舌を伸ばし、颯汰の尻を舐めるところをしっかりと捉えていた。
「え、う、嘘っ!!」
 沙綾香が狼狽えるのも無理はない。祐希という少女をほとんど知らない俺でも、クールな彼女のイメージとかけ離れた行為だと解る。長い付き合いの沙綾香なら、余計に信じがたいだろう。
 モニター内では、祐希が熱心に肛門を舐め続けている。
『はは、気持ちいー。お前アナル舐めんの、マジ上手くなったよ』
 颯汰が褒めると、祐希の顔は判りやすいほどに蕩けた。
『……有難うございます、颯汰さま!』
 目尻を垂れ下げたメスの表情を最後に、映像は途切れる。
『見ての通り、お友達は男に奉仕すんのが嬉しくて仕方ねえらしい。お前はこれを敵に回して、“真のマゾ”だと客に認めさせなきゃならんわけだ。いちいち奉仕を嫌がってて、それが出来るか? よーく考えろ、時間はこの一晩しかねぇぞ』
 ロドニーはゆっくりと言葉を重ね、沙綾香に現状を認識させていく。
 不愉快だ。不愉快だが、今の沙綾香は、奴の言う道を進む以外にない。
「っつー訳だ。ほれ」
 したり顔でジャマールが催促すると、沙綾香の表情が凍りつく。彼女は大きく息を吸い、吐き、覚悟を決めてジャマールの肛門に触れる。
「さっきの見てたろ。本物のマゾなら、指じゃなく舌で綺麗にするもんだぜ」
 ジャマールがさらに煽ると、沙綾香の表情がさらに強張った。それでも、彼女はまた覚悟を決める。祐希がやっていたように、椅子の下に滑り込み、ジャマールの肛門へと恐る恐る舌を伸ばす。
「オオウ……ひひ、くすぐってぇぜ!!」
 ジャマールの嬉しそうな声は、沙綾香の舌が奴の醜悪な肛門に届いた証拠だ。バスルームの外で、黒人共がどっと笑う。ワイン片手に眺めるロドニーや手越もだ。
「…………ッ!!」
 沙綾香の表情が、ますます悲痛に歪んだ。

「んぐ、おえ゛っ……!」
 肛門に舌を這わせながら、沙綾香がえずくのはもう何度目だろう。本来ごく小さいはずのそれも、風呂場では反響してよく聞き取れ、サディスト共の笑いの種になる。
 ──もしセックスの喘ぎ声なら、どんなことになるだろう?
 俺がつい思い浮かべたその疑問には、数分後に答えが出た。見事に反りを取り戻した剛直でもって、ジャマールが沙綾香を犯しはじめたからだ。
「やッ、今は犯さないで! せめて、あそこ洗っ……あ、くあああ゛っ!!!」
 挿入の瞬間、沙綾香はつらそうに眉根を寄せた。
 バスルームでの後背位。桜織の映像でも目にした光景だが、このレイプは迫力が別物だ。絵面も、肉の打ち据えられる音も、出入りする逸物のサイズも。
「はははははっ、気持ちいいなあオイ! 太ぇハリガネみてぇにビンビンに勃起してっからよお、締まりがすげぇ感じられんだ。案外溜まりまくってる時より、イッパツ抜いてから勃起し直した時のがイイのかもな!!」
「あっあ、あ゛っ! あああ、はっ、あ……あああ、ああ゛っ!!」
 満面の笑みを浮かべるジャマールとは対照的に、沙綾香の顔は歪んでいる。なら当然、その口から漏れているのは悲鳴に違いない。俺はそう信じたかった。
 だが。
「くくっ。お前、本当にビッチだな。プッシーも洗えずに無理矢理突っ込まれてるってこの状況で、もうノッてきてんじゃねぇか」
 ジャマールが、沙綾香の腹を抱えて深く突きながら、嬉しそうに笑った。沙綾香が、感じている。奴はそう確信しているようだった。
 俺にはわからない。立位で犯される沙綾香の割れ目からは、屈曲位で注ぎこまれた精液が次々と溢れていく。そのせいで、沙綾香が濡れているのかが判別できない。判るとすれば、膣奥のうねりを直に感じられるジャマールだけだ。
 俺は、沙綾香に感じないでほしかった。痛みと屈辱で叫んでいるだけ──そうあってほしかった。それでも、一度疑いを抱けば、彼女の反応すべてが艶めいて見えてくる。
「あああ、あ、っはああ…………!!」
 浴室内に反響する、喉を開ききっての叫びも。壁のタイルを掻く爪も。軽く折れ曲がったまま、細かに震えている脚も。
 百合の前戯、発情ガス、十番勝負の2回目。色々なワードが脳裏を巡り、嫌な方の想像に説得力を持たせていく。逆に楽観的な考えの方には、なんの根拠も浮かばない。薄っぺらで、ただ都合がいいだけの考えだ。

 ジャマールは思うままに欲望を満たし、膣内にたっぷりと射精してから怒張を引き抜く。だが、半勃ちの怒張にはまだ張りが残っているようだ。
「はぁっ、はあ……はあ、はあ……」
 荒い息を吐きながら崩れ落ちる沙綾香。ジャマールはそんな彼女の肩を掴み、強引に自分の方へと向き直らせると、鼻先に怒張を突きつける。
「しゃぶれ、“マゾ女”」
 沙綾香は心底嫌な顔を見せた。だが、『マゾ奴隷』なら拒否はできない。自らを穢したものを、自らで清める……そういう、理性のタガの外れた行為でも。
 沙綾香はジャマールの怒張を掴み、亀頭部分を口に含む。不満を言葉にしない代わりに、見開いた眼で相手を睨み上げながら。
「散々逝かされたコックの味はどうだ? 改めてじっくりと味わうと、美味くてたまんねぇだろ。こびりついた滓も全部綺麗に舐め取れよ。テメェとのファックでできたモンだからな」
 ジャマールが茶化すたび、沙綾香の眉間に皺が寄る。痛々しい。しかも、咥えて終わりじゃないはずだ。口での奉仕で硬さを取り戻せば、ジャマールはまた沙綾香を犯す。奴の血走った眼を見れば、それは明らかだった。

「……くっ!」
 沙綾香が悔しそうに壁を殴りつけ、シャワーヘッドを掴んで割れ目の中に湯を入れはじめる。
 結局ジャマールは、沙綾香を二度犯した。一度目はバックで、二度目は壁に背中をつけさせ、あえて真正面から睨まれながら。そのせいで沙綾香の膣内には、2回分の精液が追加で注がれたことになる。彼女はそれを洗い流そうと必死だ。
 ところが、またシャワールームのドアが開く。押し入って来たのはマーキス。ジャマールのプレイを見て昂ぶったのか、もう完全に勃起している。
「またなの……シャワーぐらい、ゆっくり浴びさせてよっ!!」
 沙綾香の叫びは泣き声に近い。だが生粋の強姦魔に、女性への配慮などある筈もない。
「好きに浴びてていいぜ、コッチも好きにやらせて貰うだけだ!」
 マーキスはそう言って沙綾香を壁に押し付け、対面で挿入を果たす。
「んぐううっ……!!」
「チッ、ジャマールの後だと緩く感じるぜ。ま、ダリーやらタイロンよりマシだがよ。オラ、『使って』やってんだからプッシー締めろ。力抜いてっと、いつまでもハメっぱなしだぞ!」
 マーキスは恨み言を吐きつつ、沙綾香の腿を平手で打ち据える。
「痛い、って!」
 沙綾香は背後を睨みながらも、されるがままになるしかない。

                 ※

 黒人共は、交代でシャワールームに押し入っては沙綾香を犯す。最初こそ洗い場での後背位ばかりだったが、ダリーがバスタブに湯を張ってからは、流れが大きく変わった。

「これが日本式の風呂だ。混浴っつってよう」
 ダリーはたっぷりと張った湯の中に、沙綾香を抱きしめながら身を沈める。体積のやばい奴だから、湯のほとんどが外に流れ出てしまうが、逆にそれが絶妙な演出になった。少なくなった湯の中で『手マン』を仕掛ければ、上半身は丸見え、下半身だけが湯の中で揺らめく状態になる。これが一種の局部モザイクとなって、ギャラリーの興味を惹いた。沙綾香にとっては最悪の、ダリーにとっては最高の展開だ。
「んぐううぐっ……ひいっ、いひっ……ぁああっく、イっイクッ…いっく!!!」
 沙綾香は身体をうねらせながら、何度も絶頂を叫んでいた。呟いただけなのかもしれないが、風呂場ではその全てに大仰なエコーがかかる。
「ひひ、すげぇなこりゃ。次から次からザーメンが溢れて、指に絡みついてきやがる」
 ダリーの言葉通り、割れ目からは次々に精液が溢れ出し、湯の中で固まってはクラゲのように水面を漂いはじめる。
「やああっ!! なにこれ、気持ち悪……んッ、んんっイっちゃ……っ!!」
 沙綾香は、湯で固まった精液を見るのは初めてなんだろう。肌につくのを嫌がっていたが、その隙に指責めであえなく絶頂させられてしまう。結果として粘液は、湯面に浮かぶ乳房にびっしりとこびりつくことになった。
 そして、当然ながら指責めだけでは終わらない。ダリーの肩に後頭部を預け、沙綾香がぐったりとした頃。奴は沙綾香の身体を持ち上げて、湯の中での挿入を始めた。
「あ、や……お、お湯が、入ってきちゃうっ!!」
 沙綾香は一瞬にして頭を下げた。局部を凝視するのは、それだけ刺激が強い証拠だ。
「ああ、それが醍醐味ってもんだ。湯をションベンみたいに撒き散らしながら犯されっと、興奮すんぜ?」
 ダリーはそう言いながら、上下に腰を動かす。荒れた海のように水面に波が立つ。
「あーっ、あああーーっ!! ちょっ……ほんとに、待って……! 動かな、でっ…………!!」
 そのうち、沙綾香がまた天井を仰ぎ、ダリーに背を預けはじめた。その脱力ぶりにダリーは笑い、沙綾香を抱えたまま浴槽の中で立ち上がる。その状態で沙綾香を解放すれば、力の入らない彼女は浴槽の縁に捕まるしかない。ダリーの方に尻を突き出したまま。
 ダリーの分厚い掌が、白い尻を掴む。
「いやっ、だめ!!」
 必死の叫びが上がる中、ダリーは思いっきり腰を打ちつける。ビチッという音が響き渡り、沙綾香が背を反らす。
「お゛っ!!!」
 挿入直後の沙綾香の声は、濁っていた。ギャラリー共が揃って爆笑するほどに。しかもそれは、ダリーが腰を打ち込むたびに繰り返される。
「んお゛っ、お゛、おおお゛っ……!! おおお゛っ、お゛っ、おああ゛……アアアア゛ッ!!!!」
 凄まじい声だ。ダリーは体重がある分、突き込みも重い。それを受ければ内臓が圧迫され、『お』行の呻きが漏れる理屈はわかる。だが、それを踏まえても過激に過ぎる。まだ挿入から、何分も経っていないのに。
「へへへ、イイ声が出んじゃねえか。お前のカラダにゃあ、何度も吸わされたガスの効果が回ってる。それこそ毛細血管の一本一本にまでだ。その状態で風呂に入れて、血行を良くしてやりゃあ、感度がハネ上がんのよ。風呂をシャワーだけで済ましちまう連中にゃ、気付きようもねぇだろうがな!」
 ダリーは誇らしげに語りながら、力士然とした巨体を前後に揺らす。バァンッ、バァンッ、と反響込みの音が轟き、割れ目から湯が噴き出していく。その中で沙綾香は、ひたすらに叫び続けていた。
「おお゛ッお゛ん、あ゛あああああ゛っ!! はっ、はげっ、激しすぎるぅうう゛う゛っ!!」
 沙綾香の喉から漏れているのは、明らかに本気の叫びだ。俺とのセックスでもああいう声は出たが、あんなに持続していたことはない。イキまくってるんだ。それこそ、浴槽に叩きつけられる波と同じぐらいの頻度で。
「あああああだめだめだめっ、あああああ゛ア゛ア゛ア゛っ!!!」
 そのうち沙綾香は、下の歯並びを完全に覗かせるほど口を開き、全力で叫びはじめた。マイクを通しての声は完全に音割れしていて、頻繁に音飛びしているような状態だ。ギャラリーの連中にも笑いながら耳を塞いでいる奴がいるから、実際凄まじいんだろう。
 そして、沙綾香は腰砕けになる。膝を折って湯船に沈みながら、かろうじて浴槽の縁にしがみつく。
「おいおい、良いトコだったのにヘバんじゃねぇよ」
 ダリーは舌打ちしながら沙綾香の肩を掴み、喘ぐ口の中に怒張を突っ込んだ。なにしろバットの先ほどの太さだ、そう簡単には咥えられない。
「もがあっ……!!」
 沙綾香も片目を瞑り、ダリーの太腿を掴んで苦しんでいた。だが、ダリーの方に容赦がない。大きな手で沙綾香の頭をすっぽりと包み込み、強引に引き付ける。
「ンぐぅおおえあお゛え゛っ!!!!」
 いつになく凄まじい声が響き、ダリーの規格外すぎるペニスが、半ばほどまで沙綾香の口内に隠れてしまう。
「おっ、ズルーッといったな。ぎゃあぎゃあ騒いでたせいで、ノドの開きがよくなったかよ?」
 ダリーは上機嫌で沙綾香の頭を前後させ、猛烈なディープスロートを強いる。
「ううう゛っ、お゛え゛ええ゛っ!!」
 沙綾香は何度もえずき、口の端から透明な雫をこぼしていた。途中本気で苦しくなったらしく、横を向いて俯いた時には、浴槽の縁に凄まじい量の唾液が零れ落ちていた。
 一方でダリーは悠々としたものだ。好きなように沙綾香の口を使い続け、気持ちよさそうに鼻息を漏らす。唾液を吐き零す沙綾香に3回咥え直させ、最終的にはゴム棒のようなペニスが2割ほども膨れていた。
「立て。グチャグチャに犯してやる」
 ダリーはそう宣言しながら、ペニスを沙綾香の頬に打ち付ける。ベチン、ベチン、と音を立てるその逸物を横目に見る沙綾香の表情は、怯えていた。

                 ※

 ダリーに続く連中も、入浴しつつのセックスを気に入ったらしい。風呂でじっくり温まれば、沙綾香の感度が上がるだけでなく、自分達も勃起しやすくなると判ったからだ。
 まずはボディソープと尻舐めで身を清めさせ、勃起すればまず洗い場で犯す。その後は湯船で悪戯しつつ温まり、火照ったところで壁に手をつかせて犯す。射精するか沙綾香が崩れ落ちれば、喉奥まで咥えさせて勃起させ直し、また全力で犯す。このループだ。
 桜織がやらされていた風呂場セックスが、お遊びに思える激しさ。一人がやる事を終えれば、精液と愛液で浴槽内に油膜が張ったようになり、都度湯を入れ替えなければならない。
 そして、なんといっても聞こえてくる音が凄まじかった。
「あああ゛あ゛あ゛ッだめっ、もうだめもうだめッ、んくぅあああ゛あ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーッッ!!!!」
 沙綾香の悲鳴は、息を吸う一瞬以外はほぼ常に音割れしている。反響しているせいもあるだろうが、沙綾香自身の反応を見る限り、それだけじゃない。
 彼女に余裕は一切なかった。大口を開けて叫びながら、狂ったように顔を左右に振り、涙と涎を撒き散らす。すらりとした脚は内股のままぶるぶると震え続け、何度も腰砕けになっては、長身の黒人から都度抱え直されている。腕の忙しさも相当で、必死に浴槽の縁にしがみついていたかと思えば、「もうだめ」と叫びと共に、腰を抱え込む黒人の腕を掴みもする。だがすでにバランスを保てなくなり、また縁にしがみつく。それを数秒単位で繰り返している有様だ。
 ディープスロートも激しかった。黒人共は精液や愛液、泡に塗れた怒張を荒々しく咥えさせる。今の沙綾香は、それをある程度受け入れられていた。逸物のサイズ順で後半にあたる、レジャナルド以降はさすがに無理としても、5番目のアンドレまでなら根元まで咥えこめているようだった。ダリーの言う通り、叫び続けでノドが開いているせいだろうか。
 とはいえ、えずき声はつらそうだ。
「うう、んんんォえ゛っ!!!」
 怒張を深く咥え込まされるたび、そうした嘔吐を予感させる声がしていた。
 こういった声や音があまりにも特徴的で、もはや光景を見なくとも状況がわかる。実際、ドミニクが入っている時に冗談で電気が消されたことがあった。
「オイ、何しやがる!!」
 一瞬、その怒声と沙綾香の悲鳴が聞こえたが、数秒すると肉のぶつかる音が聴こえてくる。
「いや、こんな状況で……!」
「別にいいだろ。ナイトプールみたいで興奮するじゃねぇか」
 そんな会話の中でも、激しく腰を打ちつけているのが解る。パンパンという肉の音、ザブザブという水面の荒れる音。それに混じって、沙綾香の喘ぎ声が響いてくる。もう駄目、やめて、という囁きもしっかりと拾われている。
 ザブンッという音がした少し後には、おえ゛っ、うええ゛っ、というえずき声が聴こえはじめ、喉奥まで咥えさせられている光景が目に映るかのようだった。
「あっ! や、やだ、こんな格好……!」
 ディープスロートの後、沙綾香が悲鳴を上げる。それまでと違うピストン音も聴こえ始める。
 再び照明が点けられれば、そこにはMの字に足を抱え上げる、ドミニクが得意な恰好で犯される沙綾香の姿があった。割れ目に黒いペニスが出入りする様も、そこから絶え間なく湯が噴き出していく様も、煌々と照るライトの元ですべて丸見えだ。
「はっはっはっ、スゲー潮噴きだな!!」
 黒人共はその姿を大いに笑い、羞恥に顔を覆う沙綾香の姿でまた笑う。
 
 サディスティックな責めはこれに限らない。どいつもこいつも生粋のサディストだから、個室の中で一対一となれば、それはもう好き放題にやる。
 例えばレジャナルドは、洗い場でフェラをさせながら催し、沙綾香の顔に目がけて尿を浴びせかけた。
「ぷあっ!! ちょ、何、くさいっ! なんなのっ!!?」
 当然、沙綾香は怒り、レジャナルドを突き飛ばす。だが、レジャナルドはそれが気にくわなかったらしい。
「この野郎、せっかく顔洗ってやったのによ!」
 そう叫ぶと、沙綾香の髪を掴み、強引に浴槽へ顔を沈めさせる。
「がはっ、あぼっ……ごぼっ、ごぼぼっ…………!!」
 湯面に気泡が浮き、沙綾香の手足が暴れはじめる。そんな中、レジャナルドは怒張を扱き上げ、背後から悪意たっぷりに犯しはじめる。
「すげえ、よく締まるぜ!」
 レジャナルドは満足げだが、沙綾香にしてみれば地獄だ。激しく暴れながら水泡を吐き出し、顔が水面から上がるたびに英語でレジャナルドを罵った。
「ったく元気なガキだな。婦警でも泣き入れたってのによ!」
 奴はゲラゲラと笑いながら、また沙綾香の顔を湯に沈め、挿入先を変える。膣から、肛門に。
 沙綾香の反応は、地味ながら切実だった。ボコボコッ、と水面に大きな水泡がいくつも上がり、がに股になった脚がガクガクと震える。
  ──そこはやめて!
 その訴えが聴こえるかのようだ。
「うっひょおおッ、窒息アナル最高! 食い千切られそうだぜ!!」
 レジャナルドは満面の笑みで肛門を犯し続け、呻きながら射精に至る。最後の最後、開いた肛門からどろりと溢れ出した精液の量が、その快感の大きさをよく表していた。

 犯され続ける沙綾香は、ろくに休む暇もない。湯を入れたまま掻き回されることで、ある意味膣の洗浄はできているのかもしれないが、体力は削られる一方だ。
 最後の一人であるタイロンに犯される場面ともなれば、本当に壮絶だった。

「ああああ゛っだめっだめッ!! 壊れっ……ああ゛ぁああううぅんあああーーっっ!!!」
 後背位で激しく突かれながら、沙綾香は常に絶叫しつづけていた。叫びすぎて声は枯れかけているし、頻繁に金切り声も混じるせいで、聞いていて不安になる絶叫だ。
 とはいえ、歯を食いしばって耐えられるラインなどとうに過ぎている。浴槽の中で2回絶頂に追い込まれ、洗い場に移されてから舌での奉仕を強いられた末の3回戦なんだから。
 他の連中と違って、タイロンの後背位はパンパンという肉のぶつかる音がしない。逸物がデカすぎるせいで、深く突っ込んでも沙綾香の尻とタイロンの腰との間にかなりの距離が開くからだ。それでも沙綾香の反応を見れば、奥の奥まで届いているのがよくわかる。
 タイロンは沙綾香の反応を面白がり、その下腹に手を宛がった。
「おーっ、すげぇ……」
 奴が呟いたのは、感嘆の一言。悪意は感じられないが、それだけに嫌な想像をさせる反応だ。
「くはああっ、ああはっああっ……お、おなか、さわん…ない……で…………!!」
 沙綾香は激しく喘ぎながら、必死にタイロンの手を外そうとする。
「お、なんだ。これが弱いのか?」
 タイロンはサディスティックな笑みを浮かべ、手の放すどころか、両手でしっかりとクラッチしてみせた。その状態で中腰になりつつ腰を突き込めば、それまで10センチ近く離れていた二人の距離が半ばほども縮まる。
「ひいいいっ!!!!」
 沙綾香が仰け反りながら響かせた絶頂の声は、凛々しいとは言い難い。当然、ギャラリーの物笑いの種になった。だが、当の沙綾香はそれどころじゃない。今の一連の責めが致命打となったのか、腰砕けのまま、救いを求めるように壁に手をつく。だが、そこはカメラの真正面。
 モニターに、沙綾香のあられもない姿が大写しになる。カメラへ向かって覆いかぶさるような格好だ。全身は常に細かく震えていて、水滴が次々と流れ落ちていく。水滴が完全な形を保っているのは、それだけ彼女の肌がきめ細かく、若々しい証拠だろう。
 その若い身体は、だが、すっかり“女”にされていた。
 一番インパクトがあるのは胸だ。焼き立てのパンのように膨らんだ乳房──その頂点の乳首は、痛々しいまでに尖りきっている。指で摘まみやすそうだし、もし指の腹で挟みつぶせば、母乳が噴き出しても何ら不思議はない。そういう、授乳器官の見た目になっている。
 女の部分も、十分に出来上がっているようだった。タイロンが腰を打ち込むたび、ぐじゅうっという熟した果実を潰すような音がする。その音に連動して、沙綾香の綺麗すぎる脚が内股でぶるぶると震え、脚の間に雫が滴る。カメラ越しにもはっきり見て取れるほどの、粘ついた糸を残しながら。
「そら、もっと締めてみろ!」
 タイロンが激しく突き込みながら、俯いた沙綾香の髪を掴む。
「はぁ……ッぁああ!!」
 晒された沙綾香の顔は、凄い。目はカメラの方を向いてこそいるが、明らかに焦点が合っていない。閉じない口からは常に喘ぎが漏れ、涎が垂れている。疑う余地もない絶頂顔だ。
「ダリーが言ってた通り、風呂上りは感度が良くなるらしいな。もう随分ガスを吸ってねぇってのに、イキまくりやがって」
 タイロンはそう冷やかしながら、沙綾香の腹を抱えつつ奥を突きまわす。本当に声が枯れたのか、沙綾香から金切り声は上がらない。代わりに、ハァー、ハァー、という恐ろしく重苦しい息が繰り返される。
「……アアあぁっ!!!」
 そして、ある瞬間。ついにはっきりとした声が漏れた。そして、内股のまま痙攣する足の合間から、ぶしゅっと飛沫が上がる。失禁か、潮噴きか。
「あああ……でちゃった……。出、ちゃった…………」
 のぼせたような顔で、沙綾香は呟く。俺はそれを見ながら、思わず祈っていた。どうかそれが、何かを失った象徴ではありませんように、と。

                 ※

 風呂場でのセックスが1巡した後、沙綾香はタイロンに連れられてシャワールームを後にした。同時にカメラも、室内のものに切り替わる。
「おーおー、ぐったりしてやがる」
 そう野次が飛ぶ通り、沙綾香は完全に湯あたりの状態だった。それを見て、黒人共もさすがに少し休ませるべきという結論になり、沙綾香をソファに腰掛けさせた。
「そういや、しばらくガス吸わせてねぇな。二時間に一回って言われてんのによ」
「ああ、そういやそうだな。だが、こんな状態で吸わせて大丈夫か?」
「はッ、何言ってやがる。大丈夫じゃなかったら何だってんだ? ガスが効きすぎてトんじまっても、何も困るこたぁねえ」
「確かにな。死んじまわねえようにだけ気ィつけりゃいい話だ」
 黒人共はそんな会話を交わし、ソファに腰かけた沙綾香にガスを吸わせはじめる。
「んっ、んんんっ!?」
 吸引が始まってすぐ、沙綾香は目を見開いた。吸引器を外して逃げようともするが、すぐに何人かがそれを押さえ込む。ソファに身を沈めたまま手首足首を掴み上げられれば、出来上がるのは『マングリ返し』の格好だ。女にとって最も屈辱的であり、それだけに男のサディズムをくすぐる格好の一つ。
「クッソ、我慢できねぇ!!」
 マーキスがそう叫び、沙綾香の太腿を掴みながら挿入する。
「んううう゛っ!!?」
 沙綾香がガスを吸いながら呻くが、性欲の滾った獣は構いもしない。性に芽生え始めた少年のような熱中ぶりで、女性器への出し入れを繰り返す。
「おおあああ、いいぜ、いいぜえっ!!!」
「ううっ、うううっ!! うむううう゛っ!!!」
 心地よさそうなマーキスとは対照的に、沙綾香は必死だ。額に汗を滲ませながら、マーキスを睨み上げる。掴まれた手足を動かし、なんとか逃れようとする。
 だが。マーキスが十回二十回と抜き差しを繰り返すうちに、沙綾香の反応が変わりはじめた。マーキスを睨む眼は、時々瞳孔が開いたようになる。足も、藻掻くというより、深く突き込まれたタイミングでぶるっと震え上がる動きになっていく。
「ははは。こいつ、感じてきやがったぜ!」
 そう指摘が飛ぶほど、判りやすい変化だ。
「ああ、感じてやがる。ナカがうねって堪んねぇぜ!」
 マーキスが軽快に腰を振りたくる中で、一段と深く腰を突き入れた。
「る゛っ!?」
 沙綾香がまた目を見開き、ぶるっと震え上がる。マーキスはその反応を見て笑いながら、すでに奥まで突き込まれているはずの腰を、さらにぐりぐりと押し付けるようにする。それが、効いた。
「ん゛っ、んんん゛ん゛っ!!!!」
 沙綾香の目がさらに見開かれ、膝裏が深く窪む。その上で、腹筋までがぶるぶると痙攣をはじめた。
「はッはぁ!!」
 マーキスが憎らしいまでの満足顔で腰を引けば、沙綾香の割れ目からは勢いよく潮が噴き出した。
「はははっ!! こいつ、まーた潮噴きやがった!!」
「あの小せぇブツでここまで感じるなんてな、ガスはすげぇぜ!」
 たちまち手を叩きながらの歓声が上がるが、黒人共の目は一点に集まっていた。
 沙綾香の、割れ目。
 しっかりとマーキスに中出しされたらしく、精液があふれ出ている。だが、問題はそれじゃない。異常なのは、すでに怒張を抜かれている割れ目が、激しい開閉を繰り返していることだ。まるで、甘い言葉でも囁くかのように。さらに言えば、愛液の量も普通じゃない。湯上りのたった一回のセックスで、すでにソファ下まで滴るほどの愛液が溢れている。
 当然、ガスの効果だ。久々ということで長めにガスを吸引させられながら、犯された、その結果に過ぎない。だが原因が何であれ、ここで黒人共に火が点いたのは間違いない。

 ガス吸引を終えた沙綾香は、ペットボトルのコーラで水分を補給した後、ソファに横たわる形で犯されはじめた。
 黒人共はそれぞれ4回以上射精しているから、最初のように全員が群がっての『ラッシュ』じゃない。誰か一人が沙綾香を犯している間、他の人間はそれぞれに寛いでいる。
 鉄格子の向こう側は、ならず者の溜まり場という感じだ。ソファやベッド、冷蔵庫などはもちろん、ダーツボードやビリヤード台まで備わっている。連中は、カードゲームを含めた勝負で次に犯す順番を決めたり、バドワイザーを煽ったり、大鍋一杯に作られた煮込み料理を貪りながら、犯される沙綾香を観察していた。
 沙綾香の様子は、明らかにおかしい。最初の二人に対しては、犯されながらも睨んで不服を表していたが、だんだんとそれが無くなってきた。代わりに彼女は、両手で頭を覆う。まるで、頭の形に変化がないかを確かめるように。
「なんだよ、快感で脳がふやけてんのか?」
 そう茶化されれば手を離すが、不安そうな表情は変わらない。しかも肉体の反応を見る限り、かなり気持ちいいようだ。
 さらに数十分が経ち、5人目のダーナルに犯される頃には、沙綾香の反応もより解りやすいものになっていた。
「ひゃはははっ、ガスの効果はすげぇなあ! プッシーの中がこう、ムチムチしてやがるぜ! コックにみっちり絡みついてきやがってよ、腰振ってっと、“コッチの脳まで”溶けちまいそうだ!」
 ソファに寝そべりつつ、片脚を上げた沙綾香を犯すダーナル。唾液を垂らしながら夢中で腰を振る様は、まさしく獣そのものだ。そのダーナルに犯される沙綾香もまた、澄まし顔ではいられない。
「ああ゛っ、い、いや、いやあ……あっ、ああ、あはぁああっ……!!」
 『嫌』という言葉をひたすらに繰り返す中で、とうとう蕩けた表情を浮かべはじめた。そして黒人共が、そんな反応を見逃すはずもない。
「良い顔になってきたな、ビッチ。犯されんのがそんなに気持ちいいか?」
「大好きな『先生』が上から観てるってのを、忘れたワケじゃねえんだろ?」
 そう嘲笑われると、沙綾香がはっとした様子で表情を引き締める。
「ち、ちがっ……!!」
「違わねぇよ。お前は、レイプされて感じる変態女だ。先輩と同じでな」
「違う!! 違ううっ!!!」
 さらに追い詰められ、沙綾香は声を震わせて叫ぶ。黒人共は、沙綾香のその必死さを面白がり、ソファから引きずり降ろした。そして数人がかりで手を押さえ、大きく足を開かせる。
「だったら、ビッチじゃねえってことを証明してみろ。何分絶頂せずに耐えられるか、見といてやる」
 黒人共は腕を組んだまま、ダーナルに目で合図を送る。突然の流れに呆然としていたダーナルも、事情を察し、愉快そうに挿入を果たす。
「ぐ…ぅっ!!」
 沙綾香は呻いた。10人の中では小さい方でも、日本人の膣を埋め尽くすには十分な巨根だ。それで膣のスポットを抉られれば、どうしたって感じるに決まっている。
「はぁ、はぁっ……! んっく、くぅ、んうううっ…………!」
「へーぇ、頑張るじゃねぇか」
 ダーナルは前傾姿勢を取り、上半身を密着させながら、激しく腰を使う。沙綾香の腰がびくんと跳ねた。
「うあっ! ふ、深っ……!!」
「ああ、思いっきり奥まで入るなぁ。すべすべの足が気持ちいいぜ」
 ダーナルは白い歯を覗かせながら、引き締まった尻を上下させる。パァンパァンと音を響かせながら。
「あああぁっ、いやあああ゛あ゛っ! こんなあっ、だめ、ダメええっ! いまっ奥グリグリされたら、きちゃうっ、一気に来ちゃうううっ!!!」
 沙綾香の余裕が剝がれた。目を閉じ、頭を振っての絶叫。そうでもしなければ発散できないほど、受ける快感が大きいらしい。よく見れば、つま先で踏ん張って腰を浮かせてもいるようだ。そうして少しでも衝撃を逃がそうというんだろう。
 だが、体格の勝る相手に圧し掛かられて、長く堪えられるはずもない。沙綾香の腰は刻一刻と沈み、ついには床に追い込まれて逃げ場をなくす。そうなってからの決壊は早かった。肉の打ち付けられる音が10回ほど繰り返されたところで、内腿に筋が浮く。
「く、ん…………ふぐうううう゛ん゛ん゛っ!!!」
 沙綾香が、目を瞑った。唇から漏れるのは、とてつもなく甘い声。誰の目にも明らかな絶頂だ。
「へっ、逝きやがった。まだ2分ちょっとしか経ってねぇぞ?」
「早えなあ。なーにがビッチじゃねぇだ!」
「変に意地張るせいで、余計惨めなザマになってんじゃねぇか。いい加減オトコにも見放されちまうぜ?」
 黒人共から口々に煽られ、沙綾香の顔が歪む。そんな沙綾香を見下ろしながら、ダーナルはさらに腰を振る。
「ああっ!! ちょっ、ホントにやめてっ! いま、イッたばっかで……!」
「敏感になってんだろ? いいぜ、もっとイけよ。マンコでイクことだけ考えてろ!」
 ダーナルに容赦はない。膝を床に擦り付けるような勢いで、深々と膣奥を突きまわす。ガスで発情させられた上、絶頂直後の状態でそんな責めを受ければ、当然もたない。
「どうした、抵抗しろよマゾ女。そいつを押しのけてみろ!」
「ヨガりすぎて腰ぃ抜けちまってんのか、ああ!?」
 黒人が無理を承知で煽る。そんな中、沙綾香は着実に追い込まれていく。床からのカメラは、肛門がヒクヒクと蠢く絶頂の先触れを捉えていた。
「あああぁっダメ、ダメっ…………ッくううっ!!!」
 数秒後、沙綾香はまた絶叫を響かせる。ダーナルに圧迫されて腰こそ動かないが、左右に投げ出した脚の痙攣具合は相当だ。
「おいおいおい。勝手にイくなよ、緩くなんだろうがビッチが。俺が逝くまで我慢しとけ!」
 ダーナルは嬉しそうに煽りながら、さらにピストンを継続する。
「はあ、あああああっ、や、やめ……ひゃあああ゛あ゛ぐッ!!!」
 沙綾香に、もう余裕はない。後頭部を床につけ、背を仰け反らせて快感に震える。
「ああああ、すげ……っ!!」
 ダーナルも呻きを上げ、セックスに没頭していく。
 そう、没頭だ。ダーナルはこの時点から、茶化すことをやめた。床に手をついて、ひたすらに腰を上下させる。パンッ、パンッ、パンッ、と切れのいい音を立てながら。
「おおお……おほっ、おほおおっ…………!!」
 少しして、快感の呻きが漏れた。声の主はダーナルだと思う。奴は腰を振りながら、犬のように舌を出し、唾液を垂らしていた。その理性を感じさせない様は、さっきの声と印象が被る。
 ただ、沙綾香の可能性もあった。彼女はマーキスの顔を見上げて涙をこぼし、口を半開きにして喘いでいる。唇の形は『あ』と『お』の中間だ。
「あ゛っ、あああ゛っ、あ゛、ほおっ!!」
 また声がしたが、やはりどっちの声かわからない。あるいは、両方の声が混じり合っているのか。
「やぁぁっ、もおだめっ……ふあ、あああ……らえっ!!!」
 先に達したのは、沙綾香だった。縋るように床を掴みながら、仰け反り、痙攣する。見るからに深い絶頂だ。そしてその絶頂が、犯すダーナルをも快楽の海に引きずり込んだ。
「くうっ、うおおおおっ!?」
 ダーナルは焦って腰を引こうとするが、沙綾香の脚が半端に絡んでいて動けない。結果、成すすべなく絶頂を強いられる。
「な、なんだこりゃ!? くううっヤベエ、搾り、取られる…………ッ!!」
 床に両手をつき、歯を食いしばるダーナル。その顔は、快感というより、苦痛に耐えるかのようだ。
「…………ぷはあっ、はっ……はっ、はっ……!!」
 たっぷり数秒が経った後、沙綾香が深い絶頂から戻った。ダーナルの腰に絡んでいた脚も床に落ち、ようやく束縛が解ける。それでもダーナルは、すぐには動かなかった。
「ゼッ……ㇵッ、ハッ、ハッ…………」
 這う格好のまま、荒い呼吸を繰り返す。そして数秒後、ようやく片膝を立てて抜き出した逸物は、半勃ちにまで戻っていた。
「おっ。小せぇコックがまた一段と貧相になってるじゃねぇか。搾り取られちまったか!?」
 仲間にそう茶化されるが、ダーナルは呆然とした様子でソファの方へ歩き去る。
「…………ああ。しばらく、俺の番は飛ばしていいぜ」
 奴はそう言ってソファに身を沈める。精根尽き果てた、という様子で。その満足しきった様子に、他の仲間が目を丸くする。そしてその驚きは、すぐに期待感に変わった。
「おいおいおい……なんだなんだ、そんなに良かったのかオメェ!?」
「はっはっは、羨ましいこった! こりゃ、試してみるしかねぇなあ!!」
 上ずった声で騒ぐ調教師共。奴らは多分、常に満足を求めてるんだ。強すぎる性欲は、いくら水を飲んでも癒えない渇きのようなもの。それが一時的にでも癒えた仲間を見れば、自分も、となるのは理解できなくはない。
 だが、その期待を受け止める方からすれば地獄だ。
「や……やすま……せて…………!!」
 ベッドに担ぎ上げられながら、沙綾香は弱弱しく呻いた。だが、獣共は止まらない。欲望のままに沙綾香の手足を掴み、性器を扱いて準備を整える。

 こうして、二回目のラッシュが始まった。
 

                 ※


「オラどうした、もっと締めろよ。ダーナルを搾り取った時みてぇによ!」
 後背位で犯すトラバンが、沙綾香の尻肉を叩く。
「クチも休めんじゃねーぞ。テメェのプッシー汁で汚れたんだ、隅から隅まで綺麗にしねぇとな!」
 前からも、怒張を口に捻じ込みながらドミニクが叫んでいる。
 ラッシュが始まった途端、場の空気は変わった。怒声や罵声、野次が飛び交い、肉のぶつかる音が響く。まるでスラム街の喧嘩さながらだ。
 実際、沙綾香はリンチを受けているに等しい。
「んむぐっ、お゛っ、おごおっ!! ん゛ぉお゛ぉエ゛っ、ごお゛、お゛ッ!!!」
 極太を喉まで突っ込まれるせいで、酷いえずき声が絶えない。背後からも容赦なく腰を打ちつけられるため、太腿は常に盛り上がっている。
「よーし、よし、よし、よし……出すぞ、中にッ!!」
 トラバンが叫び、奥まで突っ込んだまま腰を止める。そして気持ちよさそうに腰を震わせ、ゆっくりと逸物を抜き出した。開いた割れ目から精液が溢れ出す。今夜5回目とは思えないほど、しっかりと白く、量も多い。
「うーしっ、こっちもだ!」
 そう叫んでドミニクも射精し、沙綾香はゲホゲホと噎せかえる。だが沙綾香は、噎せながらも膣に指を突っ込み、中を弄りはじめた。
「あっ! こいつ、ザーメン掻き出そうとしてやがる!」
「なんだよ、せっかく恵んでやったってのによ!!」
 黒人共はすぐに沙綾香の意図を察し、手首を掴んでやめさせる。そしてその流れで、正面からアンドレが挿入を果たした。
「んんうっ!!」
 沙綾香は唇を噛み締める。その恥じらいぶりに触発されたのか。今度はレジャナルドが沙綾香の顎を掴み、覆い被さるようにキスを迫る。
「っ!!」
 沙綾香は目を見開き、顔を背けた。レジャナルドが追いかければ、また逆側に顔を倒して逃れようとする。
「お、お願い、キスだけはやめて!!」
 沙綾香の訴えは、いつになく真剣だ。膣内射精を拒んだ時以上かもしれない。
 キスは多分、彼女にとって最後の砦なんだ。だからこそ、それは無惨に奪われるだろうと思えた。沙綾香がいくら膣内射精を拒んでも、これでもかと注ぎ込む連中だから。
 だが、レジャナルドはあっさりを顔を引く。
「キスは好きな相手としかしたくねぇってか。いいねえ、そういう貞淑さは好きだぜ。日本人の美徳ってやつだ。なら代わりに、たっぷりとしゃぶって貰うぜ!」
 レジャナルドはそう言って、ベッドの端から沙綾香の頭を垂れさせた。その上で首を掴み、喉奥へと逸物を送り込んでいく。しかも、その責めに合わせてアンドレも、沙綾香の右足を肩に担ぎ上げて本格的に犯しはじめる。
「おっご、ォお゛っ!! おぅうグ、ふうっ……おお、オ゛ッ!!」
 沙綾香の苦しみぶりは相当だ。特に手は、握りしめられたり、レジャナルドを押しやろうとしたり、アンドレの方に伸ばされたりと忙しい。
「くははっ、すげぇな。キスの方が良けりゃ、いつでも言えよ。ねっとり舌を絡める、大人の口づけを経験させてやるからよぉ!」
 レジャナルドは大笑いしたまま、膣を犯すような勢いで喉奥を蹂躙する。沙綾香がどれだけえずき上げても、泡立つ唾液を垂らしても。

 ベッドで。
 床で。
 壁際で。
 ソファで。
 あらゆる場所で、沙綾香は犯され続けた。
 黒人共の性欲には限りがない。性器から溢れるほど射精しても、5分もすれば勃起状態に戻っている。その性欲をぶつけられ続け、実に4時間……時計の針が12時を回った頃には、沙綾香は明らかに気を失いかけていた。
「どうしたホラ、嬉しいんだろ? 笑えよジャパニーズ!!」
 倒れ伏した沙綾香をトラバンが引き起こし、口の端を指で吊り上げる。
「れぁ……」
 沙綾香は強引に笑顔を作らされながら、ほとんど反応できていなかった。精液に覆われた瞼が、ほんの少し動いただけだ。
「ハハハッ、こいつ寝ちまってんぜ!」
「いけねえなあ。平和ボケしたジャパニーズに、戦場のド真ん中で寝ることの怖さを教えてやろうぜ!?」
 虚ろな沙綾香とは対照的に、黒人共は精力的だ。次順のモーリスが沙綾香に脚を開かせ、一際巨大な逸物を捩り込む。
「っ……」
 俯いた沙綾香から、小さく呻き声が漏れた。
「意識ねぇまんま黒人チンポ突っ込まれる気分はどうだ、ジャパニーズ? まるでダッチワイフだぜ」
 モーリスは嬉々として腰を振る。気絶にまで追い込まれている少女を相手に、配慮などはない。ただ自分が満たされるために、ストロークを大きく取って腰を打ち込んでいく。
 それを受け続けるうち、少しずつ、少しずつ、沙綾香にも変化が起きはじめた。
「……ふーーっ、ふーーっ……ふーーっ、んふーーーっ…………」
 まずは、鼻から荒い息が漏れはじめる。続いて、手が背を預けるベッドを掴み、ついには足指も、突き込みに合わせて内に折れ始める。多分それは、すべて反射だ。だが調教師の中には、意識がないフリと判断した奴もいたらしい。
「こいつ、しっかり反応してやがるぜ。本当に意識ねぇのか?」
「ふーん……怪しいな」
「なら、一発キツいのかましてハッキリさせるか!」
 連中はそう結論付け、膣に挿入したままのモーリスが沙綾香を抱え上げる。さらに奴は、指で沙綾香の尻肉を割り広げ、タイロンに合図を送った。
「オメーの馬並みのを、“後ろ”に突っ込んでやれ」
「ああ」
 タイロンが悪意に満ちた笑みを浮かべ、沙綾香の背後に立つ。そして怒張の先を肛門へと宛がうと、一気に押し込んだ。巨根揃いの中でも、一番と三番目に大きいペニスによる二穴責めだ。
「う゛っ!? あは、かはっ!」
 沙綾香は、足指がピンと反り返らせ、噎せながら意識を取り戻す。
「グッモーニン、ジャパニーズ」
 タイロンが耳元で囁きかけ、モーリスが目を細める。
「…………あ、ああ…………」
 一瞬にして状況を思い出し、顔を青ざめさせる沙綾香の姿は、本当に哀れだった。


                 ※


 2時になっても、3時になっても、黒人共の性欲が萎えることはない。さすがに挿入の頻度こそ減ったものの、代わりに変態じみた行為が増えた。
 射精直後の粘液が滴る怒張を、わざと顔に擦りつけたり。
 首筋を両側から、ベロンベロンと舐めまわしたり。
 乳房を荒々しく揉みしだきながら、何十分にも渡って乳輪を口に含んだり。
 誰かが膣を犯している間、クリトリスを指で捏ねまわしたり。
 その末に沙綾香が尿意を訴えれば、便器の前で抱え上げて犯し、失禁させる形でさせたり。
 潮噴きをさせることも多かった。少しでも間が空けば、様々な格好……たとえば椅子に片足を乗せ、床に片足をつかせた状態で割れ目を掻き回す。
「やああっ、だめええっ!! でちゃうでちゃううっ!!」
 沙綾香が狼狽えながら潮を噴けば、それに興奮した奴が勃起した物をねじり込む。突っ込みたがる奴は大抵一人じゃないから、場合によっては尻穴、あるいは膣に二本挿し、なんてことになる。
 それを何時間も続けられれば、沙綾香はどんどん追い詰められていく。恥辱という意味でも、快感という意味でも。
 そう。沙綾香は、感じている。嫌だ嫌だと叫びながらも、何度となく絶頂しているのが見て取れる。
 特に、ガスを吸わされた直後は露骨だった。

「あああ゛あ゛っ、やめて、やめてえっ!! 前と後ろ……ホントに、おかしくなっちゃうからあ゛っ!!」
 沙綾香の悲鳴が木霊する。彼女はガスを吸わされた直後、ソファに腰かけたダリーから尻穴を、正面に立つドミニクから膣を犯されていた。
 反応は激しい。二本の怒張が抜き差しされるたびに、歯を食いしばりながら俯いたり、大口を開けて天井を仰ぐ動きを繰り返している。
「ひひひ、すげぇな。アメリカ女みてぇなリアクションだ」
「ああ。ぎゃんぎゃん喚きやがって、鼓膜がイカれちまいそうだぜ」
 ドミニクは横のジャマールと笑い合いながら、沙綾香の脚を掴み上げる。正常位から、屈曲位へ。腹圧が思いきり高まるように。
「ふぁあああっ!?」
 沙綾香の声が、さらに悲痛なものになった。太腿の震え方も普通じゃない。
「いいねぇ、イイ反応だ!」
「締まり具合も最高だぜ。興奮させてくれるじゃねぇかジャパニーズ!」
 ドミニクもダリーも白い歯を覗かせ、上機嫌で怒張を叩き込んでいく。
「はあああああっ!! うわっ、うえわああアア゛ア゛ッ!!!」
 眼球が飛び出るのではというほど目を見開き、絶叫する沙綾香。その体は、とうとう肩までが痙攣しはじめている。
「くひゅうーっ、たまんねぇ! 出るぞっ!」
「コッチもだ。同時にブチ撒けちまおうぜ、兄弟!!」
 ドミニクとダリーが頷き合い、歯を食いしばりながら足に力を込める。
「あああ…………」
 沙綾香の口が半開きに戻った。だがその虚ろな表情は、絞殺された人間を彷彿させる。
 二匹の獣が思うまま精を注ぎ込み、解放された沙綾香は横ざまに倒れ込む。
「ふーっ、出た出た。ようダーナル、俺も経験したぜ。搾り取られちまう感覚」
 ドミニクが大きく息を吐く。
「だろ。元々結構な名器だが、たまに輪をかけて具合が良くなんだよ、このガキ」
 ダーナルもしみじみと語る。
 その晴れ晴れしい空気とは打って変わって、ソファに横たわる沙綾香は悲惨なものだ。目を半開きにしたまま、全身を細かに痙攣させる。レイプという行為の恐ろしさが身に染みる光景だ。
 しかも、まだ終わりじゃない。沙綾香はそのあとベッドに移され、寝そべるジャマールに口で奉仕させられた。それも、尻を高く掲げながらだ。今の彼女がそんな格好をすれば、ぐっぱりと開いたまま精液を滴らせる二穴が、カメラに大写しになってしまう。それを嘲笑されるのは、多感な少女にとってどれほど辛いことだろう。
「しっかりしゃぶれよ。上手くできたら、石みてぇに硬いコックでガンガンに突きまくってやる。想像しただけで濡れるだろ?」
 しゃぶらせているジャマールも、無慈悲に沙綾香の心を揺さぶる。しかも奴の場合は、ただの言葉責めじゃない。怒張が大きさを増せば、血管が浮き立つそれで実際に沙綾香を悶え狂わせる。まずはベッドの上で。沙綾香があまりの快感に逃げ出し、ベッドの下に転げ落ちれば、それを捕まえて組み伏せ、わざわざ下腹をベッドの角で圧迫しながら犯しぬく。
「あああ゛う゛……ぇ……だめっ、いく、いくいくいくうう゛う゛っ!!!」
 沙綾香はベッドの上で歯を食いしばり、涙を流しながら絶頂を訴え続ける。ジャマールはそれを後ろから犯しつつ、面白半分に沙綾香の肩を圧迫し、呻き声を封じて遊んでいた。沙綾香が何度痙攣し、許しを乞い、失禁に近い状態になっても。

「ああっ……はあ、はあ、はあ…………」
 ジャマールから解放され、床にへたり込む沙綾香。そんな彼女に、今度はマーキスとアンドレが歩み寄る。
「しゃぶれ」
 マーキスから高圧的に命じられ、沙綾香は眉を顰めながら睨み上げる。だが渋ったところで、結局は怒張を口に突っ込まれる。
 10人中最小とはいえ、それでもデカい。亀頭がすでに沙綾香の指の輪より太く、しかも根元にいくほど太さを増すため、深く咥え込むと顎と頬のラインが浮き出てしまう。
「うう゛え゛っ!!」
 深く喉に入れられた沙綾香は、酷くえずき、無意識にかマーキスの腰にしがみついた。するとアンドレが、そんな沙綾香の腰を持ち上げて宙吊りにする。
「んもっ!? うえぶっ……っぶぇ、もごお゛ぉっ!」
 くぐもった呻きを漏らす沙綾香。その膣を、アンドレの巨根が割りひらく。2メートル級の巨体を橋渡しするようなセックスだ。
「おっ、おも゛っ、おおごお゛っ……!」
 沙綾香がマーキスの腰から手を離し、『掴まないで』とばかりにアンドレの手を握った。だがアンドレは、むしろ力を強めて腰を送り込む。腰を前後2つ分ほど動かしながらの、豪快なピストン。
「んっ!! むぐうっ、むぐうううっ…………っああ゛あ゛っ!!!」
 沙綾香は、あえなく絶頂に追い込まれた。太腿の筋肉を張り詰めさせたまま。逸物を吐き出して前の男の臍を凝視する姿には、余裕のなさが窺えた。
 しかも、その状態でなおマーキスが口内の凌辱をやめない。となれば、相方であるアンドレも責めを続ける。

 ぐえっ、おえっ、という呻きと共に、肉の吊り橋が揺れる。宙吊りで脚を踏ん張れなければ、膣の衝撃を逃がせない。当然、絶頂のスピードは上がる。
「ごおおおおっ……!!」
 何分が経った頃か。低い呻きと共に、マーキスの腰を掴んでいた沙綾香の手がぶらりと垂れ下がった。
「お、トんだか?」
 誰かが問いを投げたが、答えは明らかだ。
 沙綾香は動かない。手をぶら下げ、白目を剥き、精液と小便を滴らせたまま。
「すげぇな、メスの干物の完成だぜ!」
 黒人共がゲラゲラ笑う中、マーキスが鼻息を荒げつつ天を仰ぐ。射精だ。
「んぐっ、ぶごっ……!?」
 沙綾香の喉から妙な声が漏れ、ぶら下がった両手の指が戦慄く。大量の精液を直に飲まされ、無理矢理に覚醒させられたんだろう。
 痛々しい。特に、目尻から零れ落ちる涙が。

 こうした光景が、延々と続く。4時になっても、5時を回っても。
 結局、最後の最後……時計の針が8時を指し、ロドニーが終了を告げるその瞬間まで、ついに沙綾香が休めることはなかった。
「ああ、もう終わりかよ!?」
「んだよ。まだヤリ足りねぇなあ」
 沙綾香を取り囲む黒人共が、ロドニーを見やりながら『fuck』や『shit』を繰り返す。
 つい一秒前まで、その性欲の捌け口となっていた沙綾香は、凄まじい有様だった。
 髪の毛を含めた体中が、黒人の精液に塗れている。しかも、液体のものはごく一部しかない。ほとんどは乾き、伝い落ちる形のまま白い結晶となっていた。
 肩と乳房にはいくつもの噛み跡が残り、頬や尻には赤い手形が無数についている。
 5本1セットの“ファックペイント”は、白い臀部を覆いつくし、背中にまで広がっていた。汗や精液、シャワーなどで滲んだ部分もあるため、もはや回数を数えるのは至難の業だ。
 そして、やはり一番痛々しいのは性器だろう。黒い大蛇のようなタイロンの怒張が、ずるりと抜け落ちる。その抜けた穴と、その下に息づく肛門は、中の朱色がそのまま見えるほどにまで開ききっていた。ほんの少し力をこめれば、俺の手首がそのまま入り込みそうな気がする。もちろん、そうなるのも当然だ。夜の8時から始まって今まで、実に12時間、ぶっ通しで黒人共に犯され続けたんだから。とはいえ、あんなに拡がるのか、と戦慄せざるを得ない。黒人ペニスの恐ろしさというものを、改めて思い知らされた気分だ。
 黒人共が手足を離すと、沙綾香はそのまま床に倒れ込む。一番力のいらない恰好……カエルのように手足を投げ出す格好で。
 沙綾香はほとんど白目を剥いたまま、全身を痙攣させていた。
「あ゛っ……あああ゛っ、あ゛はっ……はっ、あ、あ゛っ」
 口からうわ言のように漏れる声は、絶頂を感じさせるものだ。
「ひひ、ひ……」
「ククッ……」
 その様を見下ろし、黒人共が逸物を扱き出す。沙綾香ににじり寄っている奴もいる。放っておけば、そのまままた輪姦を仕掛けるに違いない。
「やめだぞ!!」
 ロドニーが釘を刺すと、それでようやく黒人共が動きを止めた。丸一晩女を犯し、まだ盛るとは。本当に、呆れるばかりの性欲だ。
「やれやれ、揃って目ぇギラつかせやがって。下手すりゃ俺まで犯されちまいそうだな」
 手越が冗談を交えつつ、バケツ片手に鉄格子の部屋へ踏み入る。
「よう、気張ったじゃねえか嬢ちゃん。この檻から出してやるぜ」
 手越が声を掛けても、沙綾香は反応しない。
「おい。気ィ失ってんのか? いつまでも寝こけてっと、ココに放ってくぞ」
 手越はそう言いながら沙綾香の頬を叩く。後ろでは黒人共が、置いていけと騒ぎ立てる。そんな中、沙綾香の眼球の位置が戻った。
「はっ……はぁ、はぁ…………」
「よーう、お早うさん。黒人共にマワされんのが、トんじまうぐらい善かったらしいな。どうだ。『先生』のチンポなんぞ、もう感触も思い出せねぇんじゃねえのか?」
 手越の言葉に、胸が痛む。実際、ありそうだ。十番勝負といい、これといい、記憶を上書きするのに十分すぎる刺激に思える。ところが、沙綾香は首を振った。
「……馬鹿言わないで。センセとのセックスを、忘れるわけないじゃん。身体じゃなくて、心が覚えてるよ」
 沙綾香は、手越を見据えてはっきりと告げる。手越は満足げな顔を見せた。
「大したもんだ。ここで一晩もマワされりゃ、たいがいの女が狂っちまうもんだが。素質あるぜお前さんは」
 手越は沙綾香の腕を取り、檻の出口へ向けて歩き出す。だがそこで、ふと何かに気付いて立ち止まった。
「っと、いけねぇ」
 手越はそう言って、持参したバケツを床に置く。
「部屋出る前に、ここでマンコとケツのザーメン出してけ。あっちの部屋まで汚されちゃかなわねぇ」
 気遣いのない物言いに、沙綾香の顔が曇る。だが、彼女としても精液は一刻も早く排泄したいものだ。そのため彼女は、やや恥じらいつつもバケツを跨ぐ。
「ふうう……んっ!」
 彼女が息むと、すぐに精液が溢れ出した。粘度の高い液が、塊でバケツの底へ落ちては、ガゴンッと音を立てていく。
「おーっ、すげぇ量だな。糞でもここまで出ることはそうそうねぇぞ? しかも、明らかに先輩より多いときた。ケダモノ共に大人気だなあ、財閥令嬢サマよう」
 手越に茶化され、ようやく落ち着き始めていた沙綾香の顔色が、また赤らむ。しかも、さらに悪い状況が続いた。ある程度精液を出したところで、排泄が止まったんだ。沙綾香はまだ腹部に手を当てていて、明らかに出しきっていない様子だというのに。
「どうした。まだ中に残ってる感じがすんのか? なら遠慮はいらねぇ、指で掻き出しちまえよ」
 手越がそう声を掛けるが、沙綾香は視線を惑わせる。
「どうした? 早く掻き出さねぇと、孕んじまっても知らねぇぞ」
 さらに煽りの言葉が飛び、黒人共がゲラゲラと笑う。
「…………ッ!」
 沙綾香は唇を噛み締め、意を決して恥じらいの部分に指を近づける。だが、指で掻き出す対象は前後の穴。バケツを跨いだままその二穴の中を弄ろうとすれば、どうしてもガニ股の格好にならざるを得ない。
「ぎゃあははははっ、いい格好だなあオイ!!」
「令嬢の名が泣くぜ。それともジャパニーズのお姫さんは、そういう格好をよくすんのか?」
「腰うねらせて、ポールダンサーみてぇだな! お前はスタイルいいからよ、ソッチの道でも食っていけるかもなあ!」
「オヒネリくれてやろうか、娼婦! 喉とプッシーとアナルによお!!」
 黒人共は興奮のままに声を張り上げ、沙綾香を詰る。
「く、うううっ…………!!!」
 沙綾香は眉根を寄せ、羞恥に顔を歪めながら二穴を指で掻きまわす。必死に、一生懸命に。だがそれが、最悪な結果を招いた。
「んっ、あ!?」
 ある瞬間、沙綾香が妙な声を上げる。艶めかしい、快感の声。その一声で、それまで騒いでいた黒人共が静まり返る。
 一瞬の、間。
 そして直後、怒涛のような笑い声が場を支配した。
「はっはっはっはっは!! おいおい、まさか! まさかだぜ!?」
「いや、間違いねぇよ! あいつ、感じてやがる!!」
 沸き起こるのは、『ビッチ』の唱和。沙綾香の顔がさらに歪み、耳まで赤く染まっていく。それでも、彼女は手を止められない。体内に精液が残っているのを、彼女自身が自覚している限り。
「ふ、んっ、ふんんっ……んっ、くっ……あ゛」
 甘い声を漏らしながら、沙綾香は指を動かし続ける。そして、ついに。
「…………ッんん゛ん゛あ゛!!!」
 かなり奥を刺激しながら、彼女は絶頂に至る。13人の視線に見守られる中、がに股に開いた脚がガクガクと震え、割れ目から精液とは違う雫が滴っていく。
 調教師共は、もう大笑いだ。大口を開け、手を叩き、腹を抱えて笑い転げている。そんな中、沙綾香は泣きそうな目になり……
「う゛っ!?」
 いきなり目を見開くと、口元を押さえ、便器に向かって走り出す。
「おい、何処へ……」
 手越が声を掛ける中、彼女は便器に縋りつき、頬を膨らませながら下を向く。
「オオ゛エエエッ!! ふう゛う゛っ、う゛エエエ゛ッ!! ハッ、ハァッ……カッ、コお!! ほオ゛オ゛ウ゛えええ゛ッッ!」
 胃腸のすべてを震わせるような、凄まじい嘔吐。沙綾香が頭を上下させるたび、便器の中からビチャビチャという音が響く。
「おいおいおい、マスターベーションの後はゲロかよ? とんでもねぇ変態だな!」
 黒人共はさらに笑いの種を見つけたようだが、奴らこそが恥の元凶だ。

 俺は、彼女を笑う気にはならない。むしろ、胸が痛んで仕方ない。
 何度もえずき上げながらの嘔吐を見ていると、彼女がこの一夜に受けた苦しみを、嫌でも想像させられてしまうから。



                           続く