大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

2021年07月

二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.6(後編)

Part.6(中編)の続きで、『審査会後のドラッグセックス』シーンです。


 
 フロア中から、男女の行為の音が響いてくる。興奮した客が、百合・祐希・千代里・藤花と桜織を相手に、性欲を発散しているせいだ。
 連中の熱意は凄まじい。黒人共の『ラッシュ』さながらに、5人の少女に群がり、犯し抜く。100人を超える数がいるだけに、百合達は休む暇もない。

 そして沙綾香は、ステージからその光景を見下ろしていた。『審査会』が終わった時点で制服は脱がされ、頭の装置も取り去られ、生まれたままの姿で黒人共に囲まれている。
「そら、もう一錠くれてやるよ」
 口に錠剤を放り込んだダーナルが、沙綾香の唇を奪う。
「う……っぐ」
 沙綾香は嫌そうに眉を顰めるが、唇を奪われている以上、最後には薬を飲み下すしかない。その効果は、すぐに表れた。
「……あ、はっ……はっ……! あ、へぁあ…………っ!!」
 沙綾香の目が開き、天井のライトを見つめる。額からは汗が吹き出し、口はパクパクと開閉する。
「なんだそりゃ、エサ欲しがる鯉のマネか?」
「しゃあねえ、刺激をくれてやるか。ちっとだけな!」
 沙綾香の左右を固めるダリーとジャマールが、笑いながら沙綾香の乳首に吸いついた。
「んはあああっ!!!」
 沙綾香は肩を跳ね上げ、目を泳がせる。
「おっ、可愛い反応しやがって。よーしご褒美だ、こっちも舐めてやる」
 正面のトラバンも、沙綾香の脚を押し開いて秘部に口をつけた。
「あヤッ……やっあ、んんっ、くふんんんっ!!!!」
 沙綾香の脚は、最初こそ暴れたが、すぐに大股開きで静止する。腿の肉が弾む形。両脚の付け根を起点に、快感が走りつづけてるんだろう。
 じゅぱじゅぱと品のない音をさせて、三つの口が性感帯をしゃぶり回す。荒々しくはあっても、特に激しい責めでもない。けれどもそれは、着実に沙綾香の反応を変えていった。
「…………あふっ、ふあ、ぃふっ……ひっは、はっ……はっ…………」
 沙綾香の表情が、緩んでいく。眼球は虚ろなまま上を向き、半開きの口からは涎が垂れていく。
「段々と、トリップまでの時間が短くなってきましたな」 
 俺の横で、端塚が呟く。奴が口を開くのは、決まって目論見通りに事が進んでいる時だ。
 確かに、あの表情になるまでの時間は短くなっている。常に絶頂近くをキープさせられているのか、あるいは快感の耐性が下がっているのか。いずれにしても、まずい傾向だ。
「見てみろよ、お友達がガンガン犯されてんぜ。気持ちよさそうだなあ?」
 ダーナルが沙綾香の頭を掴み、強引に祐希達の方を向かせる。
 ステージ下のプレイは、タガが外れたように激しさを増していた。
 前後左右から手足を掴み、物のように扱いながら犯したり。
 マングリ返しの恰好をさせ、膣に挿入したバイブを踏みつけたり。
 2人の膣を双頭バイブで連結させたまま、イラマチオを仕掛けて腰を振らせたり。
 こうした責めに、5人はそれぞれ違う反応を見せた。百合は粛々と道具を演じ、千代里は羞恥に泣き、藤花と祐希は戸惑いながらも快感に狂う。そして桜織は、逆に客を涸れさせるような勢いで逸物にむしゃぶりつく。
 欲望と感情が渦巻く、酒池肉林とでも呼ぶべきその空間を、沙綾香は蕩けた瞳で見下ろしていた。呼吸が荒くなり、白い身体がぶるっと震え上がる。
「あ、ああ、あ…………んっふ、ぁあああああっ!!!」
 そして、沙綾香は潮を噴いた。割れ目に口をつけていたトラバンが笑いながら仰け反ると、噴き出した潮はステージ下にまで飛び散っていく。
「はっ、はっ…ほっ、ほおっ……お、はほっ…………!!」
 潮噴きの勢いも相当だが、その後の反応も普通じゃない。割れ目を痙攣させ、腰を上下に揺らし、呆然とした表情で腹部を見つめる。その様子に、黒人共と客が一斉に噴き出した。
「アハハハハ!! なんだよ、腰ヘコヘコさせて! 舌でベロベロ舐められたのが、そんなに気持ちよかったか!? ほんとにスケベなんだな!」
「クリの勃起もやばいね。吸引器しまくった後みたいになってんじゃん!」
 羞恥心を煽る言葉が次々に浴びせられるが、沙綾香はその言葉も、視線もかわせない。
「いい具合に出来上がってんな。二本挿しでユルくなった穴も、そろそろ締まりが戻っるだろうしよ、そろそろ二回戦始めようぜ!」
 トラバンが焦れた様子でロドニーの方を見る。ロドニーもまた手越と顔を見合わせ、頷いてみせた。
「よし、いくか!」
「ああ、思いっきりやるぜ。休憩挟んだおかげで、ミルクもたっぷり溜まったからよお!」
 黒人共は歓声を上げ、客も宴の始まりを察して歓喜する。そんな中、沙綾香の表情だけが暗い。今犯されたらどうなるか。彼女はそれを、一番切実に感じていることだろう。



「へへへ、一番手ってのは久しぶりだ。中途半端にモノがでけぇと、大抵後回しになっちまうからなあ」
 トラバンは沙綾香の股を開かせると、腹の上に逸物を置いた。連中がここぞという挿入前に好んでやる、サイズのアピールだ。モーリス・ダリー・タイロンのトップ3に次ぐ剛直、その先端は悠に臍を超える。
「ふーっ、ふーっ……!」
 沙綾香には緊張が見えた。息は乱れ気味で、視線は恐ろしそうに下腹部を彷徨う。だがトラバンが笑い声を漏らせば、不服そうにその顔を睨み上げた。その強気な姿勢が、また黒人共の笑みを深める。
「ほお、まだ睨む気力が残ってんのか。今こいつを咥え込めばどんなにヤバイか、自分でも解ってるだろうによお」
 トラバンは沙綾香の視線を受け止めたまま、怒張をひくつく割れ目へと宛がった。そして、一気に腰を沈める。
「ふっ……あああっっ!!」
 挿入されたその瞬間、沙綾香は大きな反応を示した。顎が浮き、視線が情報に投げ出され、舌が突き出る。腹を思いっきり殴られでもしたような、激しい反応だ。
「ひひひひっ、こりゃすげぇ!! 締まりが戻ってるどころか、いつも以上にギュウーッと吸いついてくるぜ!?」
 トラバンは大喜びで腰を振る。奴が深く突きこむたびに、沙綾香からは悲鳴のような声が漏れた。両脚は挿入を嫌って内に閉じようとするが、トラバンは膝を掴んで180度近い開脚を強制し、これでもかと腰を突きこむ。
「んぎぃいいっ!!!」
 開脚時の絶頂の声はすごかった。俺からは見えない位置の内股が、思いっきり強張っているのが目に浮かぶようだ。
「沙綾香っ!!」
 祐希と藤花が、ほぼ同時に声を上げた。あの子達も意思に反した深い絶頂経験があるだけに、見ていられなくなったんだろう。友情という、純粋な想いからの行動。だが今の沙綾香にとって、それは逆効果だったようだ。
「はっ、はあっ、はあっ……み、見ないで……っ!!」
 沙綾香は消え入るような声でそう言うと、両腕で顔を覆う。
「おいおい、お友達相手になに顔隠してんだ!? 見せてやろうぜ、全部よお!」
 トラバンはますます調子に乗り、挿入したまま沙綾香の腰を持ち上げた。奴の言葉通り、ステージ下から“全部”が見えるようになる。出入りする黒い剛直も、痙攣しながら上下に揺れる腰も。
「んんっ、や、いやっ! あっ、はあっ……んくっ、お、ほおっ……!!」
 沙綾香は、かなり感じているようだった。奥を突かれるたびに絶頂しているのかと思えるほど、腰がカクカクと動いていた。
「ハハハハッ、気持ちよさそうに腰うねらせやがって!」
 トラバンは沙綾香を嘲笑いながら、さらに腰の振りを激しくする。腰を思いっきり引き、カリ首が覗くほど怒張を引き抜いてから、一気に奥まで挿入する。それを繰り返し始めたんだ。パァンパァンという凄まじい音が響き渡り、沙綾香の声もトーンを増す。
「んほおおおっ、お、奥……奥いやあっ!! あああ゛い゛や゛っ、い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
 沙綾香の示す反応は、どれもが異常だった。後頭部をステージ端ギリギリに擦り付け、首に筋を浮かせながら大口を開ける頭部も。顔から離れ、腰を掴むトラバンの腕を握りしめる手も。ブリッジの体勢のまま、筋肉の形をそのまま浮き立たせて痙攣する脚も。
「んふっ、すっごいイってる。羨ましー」
 桜織が半笑いで呟いた通り、半端ではない絶頂が見てとれる。
「いいぜ、いいぜぇ!! プッシーが、先走り汁飲み干す勢いでヒクつきっぱなしだ。つい何日か前までヴァージン同然だったガキが、エロくなったもんだなあ、ったくよお!!」
 トラバンは具合の良さを叫び、激しく腰を打ちつけ続ける。その度に少しずつ沙綾香の身体がずれ、ある時ついに頭がステージからはみ出した。汗に濡れた髪を海藻のように垂らしたその顔は、やはり普通のものじゃない。
 見開いた眼は客席の方を向いているが、焦点が定まっていないのは明らかだ。口も開いたまま、酸素を求めるようにパクパクと開閉している。トラバンが腰を打ち込むほどに、痙攣も激しく、細かになっているようだ。
「うあっ、ああはああぁっ!! いやっ、どうにかなっちゃう……なにも、考えられない……あ、あイクッ、いくっ……うあああああっ、あああああああっ!!!!!」
 沙綾香は痙攣しながら異変を訴え、更には狂ったように叫びはじめた。どう楽観的に見ても、異常な反応だ。
「さ……!」
 思わず声を掛けたくなるが、さっきの祐希達の行動が脳裏を過ぎり、声が途切れる。
「おーすげぇすげぇ、プッシーがヒクヒクして止まんねぇな。奥のこの、コリコリした子宮を刺激されるのが良くてたまんねぇか!? いいぜ、たっぷり刺激してやるよ。ジャパニーズなんぞじゃ及びもつかねぇ、俺のこのディックでよ!!」
 追い詰められる沙綾香を見て、トラバンはいよいよ調子に乗りはじめた。持ち上げていた腰を下ろすと、沙綾香に上から覆いかぶさる。より体が密着するように。より深くを犯しやすいように。今の沙綾香にとっては最悪の体位だ。
「かはっ、あ゛……!! ッううう、うう……っは、っは、っは……イクッ、イクッ、ッあああーーー!!!」
 彼女は、顔を左右に振りながら絶叫し、手足をトラバンに絡みつかせる。
「くひひっ、必死にしがみついて……まるで恋人じゃねぇか!」
「ああ。身体は正直だな、ホントによ!」
 客は茶化すが、あれはトラバンが愛おしくて抱きついているわけじゃない。相手の動きを鈍らせるためだ。そしてそれを、他の黒人共も見抜いたらしい。
「こうすると、もっと気持ちいいぜ?」
 口元を吊り上げたダーナルが、沙綾香の右足首を掴み上げる。同じくアンドレも左足首を掴み上げ、マーキスの背中より高く掲げさせた。ただ、脚の形を変えさせただけ。しかしそれが、今の状況での決定打となった。
「くぁあああああっ!!!」
 沙綾香の口から悲鳴が上がる。Vの字に持ち上げられた脚は激しく震え、5本の足指をそれぞれ別方向に開いたまま、付け根にくっきりと骨を浮かせる。よほどの痛みか快楽がなければ起きない反応だ。
「ひはははははっ、ますます締まりがよくなったぜ! ジムでインストラクターの女を犯した時以来だ! よし、いい機会だ。あのギャンギャン煩ぇ女に泣き入れさせたヤり方してみっか!」
 トラバンは碌でもないことを口走りながら、腰の動かし方を変えた。上下に打ちつけるのをやめ、腰を密着させたままグリグリと円を描きはじめる。ポルチオ刺激を目的とするなら、おそらく最も効率のいい責め方だ。日本人のペニスでやっても相当に響くだろうが、25センチはあろうかというトラバンの逸物でそんなことをやられれば、『刺激的』などではすまない。
「っぉ、ほおおおおっ!! やあっ、奥、奥ゥうう゛ッッ!? だめ、だめこれ……いきっ、イキすぎる!!! お、お願いやめて、許……ん゛お゛っ!! あああ、おしっこ出るっ、おしっこでちゃうっ!!!」
 沙綾香は叫び、暴れ、脚を震わせながら失禁する。
「おーおー、いい狂いっぷりだ。マジであの女思い出して興奮してきたぜ。ご褒美だ、濃いのをたっぷりくれてやるよ!!」
 トラバンはゲラゲラと笑いながら腰をうねらせ、密着状態で射精に入る。
「あ、あああっ!?」
「へへへへ、解るか? 子宮口グリグリこじ開けて、子宮ン中に直で精子を送り込んでんだ。惚れた男の前で受精すんのは気持ちいいだろ、ファッキンビッチ!」
 犯し方も意地が悪ければ、吐く言葉も最低だ。目を瞑って射精に耐えていた沙綾香は、その一言で目を見開き、泣きそうな顔になる。俺はそれを見て、我慢ならなくなった。
「心配するな沙綾香、そいつらに妊娠させる能力はない!!」
 俺がそう叫んだ瞬間、視線が俺に集まった。沙綾香も、客も、調教師連中も。
「…………勝手は困りますな、先生」
 端塚が露骨に迷惑そうな顔を見せるが、それは俺の狙い通りだ。
「え、そうなのか……?」
「あんなに濃いのを、大量に出してんのに?」
 客も戸惑いを見せている。場は少し盛り下がったのがわかる。
 だが、肝心の黒人共の表情は変わらなかった。相も変わらず目を血走らせ、沙綾香を犯すことだけを考えている。
「へへへ、バレちまったか。ああそうだ、俺らのザーメンにゃガキを孕ませる力はねぇ。だがな、俺らが膣内に出すのは、そもそも妊娠させてぇからじゃねぇ。俺らのコックの味を覚え込ませるのが目的よ。プッシーを思いっきり突きまくって、奥に射精してな。実際アンタの彼女は、もう俺らとのセックスにメロメロだぜ?」
 トラバンは相も変わらず笑みを湛えたまま、精液まみれの逸物を引き抜いた。そしてそのトラバンと入れ替わる形で、アンドレが沙綾香の前に立つ。
「ああ、やだ……まだ、痺れが……!!」
 両脚を痙攣させたままの沙綾香が首を振るが、アンドレは聞き入れない。

 そこからは、立て続けだった。10人の黒人共が順に入れ替わり、覆いかぶさる格好で沙綾香を犯す。前の奴の精液を掻き出す勢いでピストンを繰り返してから、腰を密着させて円を描く。確実に効くと判っているからか、あるいは嫌がらせなのか、全員がそのセックススタイルだ。
 その中で沙綾香は、着実に追い詰められていった。
「いっ、イグっ、イグイグううっ!! もお無理っ、もお無理いいっ!! イキすぎて、頭溶けちゃう……お願い、抜いてえっ!! あああ゛っまたイグッ、ぃグッ!!……まだイギすぎてっ、あそこっ、バカになるうう゛っ!!!」
 知性を感じさせない、けれども危機感だけは生々しく伝わってくる絶叫。それが延々と続いていた。客や黒人共は、それを大いに笑い飛ばす。俺は何度も沙綾香の名前を呼んだが、彼女に反応する余裕はないようだった。


                 ※


 10人全員が射精し終えた頃、沙綾香はもうボロボロだった。Vの字に掴み上げられた両脚は、いつまで経っても痙攣が収まらない。顔は高熱に浮かされながら長距離を走らされたような有様で、汗はもちろん、涙と唾液の量が凄まじい。粘液でパックでもしているような有様だ。
「いいツラになったなぁ、サヤカ。俺らとのセックスは病みつきになんだろ。他の奴とのじゃれ合いなんざ、思い出せねぇぐらいによ?」
 黒人共は、濡れ光る怒張を誇示して俺を見下ろす。俺を狙い撃ちにした挑発。腸が煮えくり返りそうだ。
「もう、やだよ……。審査会、全部やったよ。あたし、疲れた……センセの所に、帰りたいよぉ……!」
 沙綾香が身を掻き抱いてしゃくり上げる。その姿に、その言葉に、ますます胸が苦しくなる。
 俺もそうだ。沙綾香と幸せに暮らしたい。時にはふざけながら愛し合い、一緒に年を取っていきたい。だが、そんなささやかな願いは叶わない。
「イカせ続けろ。徹底的にメスの悦びを教えてやれ」
 手越は、薄ら笑いを消さずにそう命じる。その命令がなくとも、黒人共に獲物を解放する気などなさそうだ。奴らは同情するどころか、縮こまって泣く沙綾香を見て、ますます怒張をいきり勃たせているんだから。
「あ、いやっ、いやあっ!!」
 必死に逃げようとする沙綾香が捕らえられ、這う格好を取らされる。そしてそのまま、背後からジャマールが腰を突き入れた。
「んあああ゛っ!!!」
「へへへ。俺のはちっと下反りだから、正常位よりバックの方が気持ちいいだろ。このままズルーッと、子宮口の方まで満たしてやるぜ」
 奴は沙綾香の太腿を掴み、さらに腰を押し進めていく。そして根元まで挿入しきると、そこで腰を止めた。
「おーお、きたきた。コックにフィットするどころか、もうグニグニ蠢いて咀嚼してやがる。もっと刺激してくれって催促か? 可愛いプッシーになったもんだな」
 ジャマールは心底嬉しそうに笑う。沙綾香は首を振って否定しようとするが、腰が使われはじめれば、その余裕すらなくなってしまう。
 ジャマールの挿入は真横ではなく、やや斜め下……臍側を狙うものだ。蕩けた子宮口を狙い撃ちにしているんだろう。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!!」
 短く重苦しい沙綾香の呼吸、その手足の張り具合からしても、急所を叩かれ続けているのは間違いない。
「はっは、気持ちよさそうですなあ!」
「ええ。ドラッグで発情させられたまま、黒人のペニスを後ろから嵌められるんですからね。あんな快楽を味わったことのある日本人の女は、ほんの一握りでしょう。ましてやそれを十代で覚えてしまったら、もう真っ当な道には戻れませんよ!」
 客は鼻息荒く語り合う。そんな中、ステージではダーナルが沙綾香の前に立った。いや、ダーナルだけじゃない。アンドレも、ドミニクも同じく仁王立ちしている。
「上の口が寂しいだろ? くれてやるよ!」
 ダーナルは、沙綾香の髪を掴んで強引に顔を上げさせ、水平にいきり勃った怒張を咥え込ませる。
「んごぉおっ!? おごっ、あがっ!!」
 沙綾香は当然パニックを起こす。今あの子は、肉体的にも精神的にも余裕がない。背後から犯されるだけでも、全身を強張らせて耐えるのがやっとだろう。だが、ダーナルはそんな事情を酌みはしない。性欲を優先してか、あるいはトドメを刺すつもりなのか。大きな手で後ろ髪と顎を鷲掴みにして、口一杯に頬張らせる。
「ううわ、容赦なーい!」
「あんなペットボトルみたいなのを、前からも後ろからも……地獄だね。あたしなら気絶しそう!」
 甲高い声で笑うのは、女性客のグループだ。煌びやかなドレスに身を包んでいるが、同性の悲劇を嘲笑うその性格は極めてどす黒い。
「そら。舌も喉も使って、たっぷり味わえよ。大好きな“フランクフルト”だぜ!」
 ダーナルはますます腰の振りを早めていく。完全に膣を犯す時のスピードだ。早いが、だからといって浅い抜き差しじゃない。沙綾香の白い喉は、秒単位で膨れては凹んでいるんだから。それを受ける沙綾香に、余裕はなかった。
「んぼっ、ふぶっ!! んぼおおっ、お゛っ、お゛ッろエおお゛えおッ!!!」
 眉を垂れ下げ、鼻の穴を膨らませ、涙と涎を垂れ流しながら、壮絶にえずき続ける。いつになく苛烈なその反応に、ステージ下からは笑い声が途絶えない。
「うははははっ、こりゃいい! 喉がよく狭まって、奥まで突っ込むたびにカリ首がコリコリ扱かれるぜ! 舌の動きもすげぇな。出鱈目に暴れながら、竿をベロンベロン舐め回してきやがる!!」
 口を犯すダーナルは大喜びだ。それを聞いて、後ろから膣を犯すジャマールも笑みを浮かべた。
「ほお、前もか。プッシーもだいぶ様子が変わってるぜ。ヌルヌルの襞が愛おしそうに絡みついたまんま、奥に奥にって呑み込んできやがる。掃除機の先っぽで吸われてるみてぇだ!」
 奴もまた歓喜の声を上げながら、激しく腰を打ちつける。

 俺には、奴らの言葉が恐ろしくて堪らない。口も、膣も、反応が変わっているという。それが誇張でもハッタリでもないのは、満面の笑みで猿のように腰を振っている姿からも明らかだ。
 そして俺自身、沙綾香に異常が起きているのは見て取れた。犯されて苦しんだり、嫌がっている姿は散々見てきたが、今の反応はそのどれとも違う。

『悦び』

 そんな単語が、真っ先に思い浮かんだ。
 彼女は黒人共に犯されながら、それを悦んでいるように見える。
 例えば、喉奥まで突っ込まれている時、彼女の顔は苦悶一辺倒だ。だがそのペニスが引き抜かれ、口内にまで戻った途端、沙綾香の舌はその亀頭を舐め回しているようだった。最初は見間違いかとも思ったが、毎度のように口から舌が覗き、頬が蠢くんだから間違いない。
 膣の方も同じくだ。ヒクヒクと上下に蠢き、うねる腰つきは、どう見たって甘い。奥へ奥へと呑み込んでいるというジャマールの言葉が、はっきり信じられてしまうほどに。
 そしてそれらは、ダーナルやジャマール相手に限らなかった。口や膣を埋める相手が変わっても、沙綾香は同じ動作をする。
「おいおいおい、マジかよ。こいつ、本当にベロベロ舐めてくるじゃねぇか!!」
「はははははっ!! 確かにこりゃ、たいしたバキュームプッシーだな。娼婦も顔負けだぜ!」
 黒人共からは、次々に驚きの声が漏れた。それこそ、誰に対しても沙綾香が『悦んで』いる証拠だ。
 当然というべきか、沙綾香はそうした反応を止めようと足掻いてもいた。口を犯す相手の太腿を押しのけたり、背後から犯す相手の手を握りしめたり。そしてほんの少しでも口が自由になる時があれば、頭を激しく振って、必死に何かを振り払おうとしていた。
「あーあ、あんなに頭振っちゃって」
「気持ちはわかるけど、あんなことしたって無駄だよねー。だって、脳味噌自体が溶けてるんだから」
 客の女が、経験を交えて嘲笑する。そして黒人共もまた、沙綾香の必死ぶりに笑みを深めながら、ダメ押しとばかりに怒張を舐めさせる。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!!」
 鼻先に怒張を押し付けられ、沙綾香は激しく息を乱していた。怒張を見下ろす眼も、開いた鼻孔も、開いたまま涎を垂らす口も……そのどれもが、愛らしい彼女のイメージと決定的に違う。
「見たまえ、あの顔を。完全にトリップしているようだ」
「もうエロいっつーより、怖いぐらいだな……」
 客の指摘通り、異常としか思えない顔。
 駄目だ。
 俺は、その顔を見て直感した。あれは、本当に駄目だ。ここでどうにかしないと、本当に取り返しのつかないことになる。

「さ、沙綾香あああああああっ!!!!!!」

 俺は、無意識に椅子を蹴って飛び出していた。全力疾走でステージに駆け寄り、沙綾香の方に手を伸ばす。
「せん、せ……? センセ、センセ!!」
 沙綾香も一瞬虚ろな視線を向けた後、わずかに眼力を取り戻して手を伸ばしてくる。
 だが、その手が触れ合うことはなかった。
 あと数センチで沙綾香に触れられるという、その瞬間。強烈な痺れが全身に走った。
「あがああっ!!!」
 悲鳴を漏らしながら、あえなくその場に崩れ落ちる。
 痛い。とんでもなく痛い。あまりの痛みで、体のどこにも力が入らない。
「いやあっ、センセ!!」
 沙綾香の叫び声が聞こえるが、顔を上げることすら不可能だ。
「はっ、はっ、はっ……!!」
 閉じない口から唾液が垂れていく。手足が痙攣して、言う事を聞かない。
 ああ、そうか。沙綾香も、こんな風なのか。肉体が自分の意思とは無関係に反応するというのは、こんなに心細く、恐ろしいものなのか。
「なに、アイツ?」
「“先生”とか呼ばれてたな。もしかして、学校の教師か?」
「はは、すげえ痙攣してる。よかったな先生、生徒と同じ気分味わえてよお!!」
 客も俺に注目し、一斉に罵声を浴びせはじめた。これもまた屈辱的だ。沙綾香の苦しみが、本当の意味で実感できた。こんな、最後の最後で。
「……貴方にこんな物を使うなど、心苦しい限りですよ」
 硬い足音を響かせながら、端塚が声を掛けてくる。かろうじて視線を上げると、警棒式のスタンガンを握る白手袋が見えた。そして直後、俺はスーツ姿のセキュリティに肩を掴まれ、椅子に引きずり戻される。

「お触りはなしだぜ、先生。アンタはそこで寛ぎながら、ただ眺めてりゃあいい。このお嬢ちゃんが俺らの物になるのをな」
 ダリーが俺を見下ろして笑いながら、沙綾香の割れ目に怒張の先を宛がった。
「ふっぎいい、いいい……っ!!」
 最大級の太さを挿入され、沙綾香は声を上げる。掠れた悲鳴のようなそれは、苦しみの呻きにも、快感の喘ぎにも感じられた。
「ほら、言ってやれサヤカ。俺らのコックが、好きで仕方ねぇんだろ? もう離れられなくなっちまってんだろ?」
 ダリーはそう言いながら、背後から沙綾香の胸を揉みしだく。半分以上が入り込み、確実に膣奥まで届いているだろう剛直をゆっくりと前後させてもいる。
「あああ……いや、いやああ……っ!! み、見ないでぇっ、センセ……!!」
 沙綾香は顔を背け、ステージ下の俺から表情を隠す。
「沙綾香っ!!」
 俺が叫んでも、聴こえているのかいないのか、沙綾香の様子に変化はない。
 そして俺のこの叫びは、沙綾香以外の人間の興味を惹いたようだ。
「……ねえ。あんた、“先生”だっけ。ずいぶん必死じゃない。そんなに大事なの? あの子のこと」
 群青色のドレスに身を包んだショートヘアの女が、俺に近づいてくる。俺は返事をしない。まだ全身が痺れていて、うまく舌が回らないのもある。だがそれ以上に、沙綾香が心配で目を離せない。
「ふーん、そんなに気になるんだ? でも、諦めた方がいいよ。もうあの子、黒人にメロメロだもん。っていうか、そのアソコにかな。もう、アソコの匂い嗅がされただけで女の顔になってる」
 女はそう言って俺の近くに膝をつき、ステージの沙綾香を見上げた。やっぱり、この女の目にもそう映るのか。
「可哀想だから、あの女の代わりにアタシが慰めてあげる。お兄さん、結構イケてるし」
 女はそう言って俺の館内着をはだけさせる。
「やめろ!!」
 反射的に叫ぶが、手足がうまく動かない。おまけにすぐ後ろの席のセキュリティが、背中にスタンガンを宛がってくる。抵抗できる状況にはなさそうだ。
「うわ、おっきい。あの黒人さん達に比べたら、子供みたいだけど」
 女は俺の下着をずり降ろし、露出した逸物を見て笑う。俺のそれは、恐ろしいほどに勃起していた。先走り汁も溢れているようだ。
「へっへ。ビンビンじゃねぇかよ、“先生”!」
「いやいや、解るぞ。あんなステージを観て、勃たん男などおらんよ」
「確かに、エロいもんなあ。それに、恋人が穢される場面に興奮する奴もいるらしいしな!」
 客から嘲笑が起きるが、それ自体の恥ずかしさより、沙綾香に嫌われることの方が遥かに怖い。視線は自然とステージを向く。
 沙綾香と、目が合った。あの目は……どういう感情だろう。俺の窮状を悲しんでいるのか。他の女のいいようにされている姿を怒っているのか。あるいは、無力さを軽蔑しているのか。どれも有り得そうに思える。あるいは、その全てが正解にも思える。
 今考えれば、俺が沙綾香の事をじっと見ていたのは、この上なく残酷だったかもしれない。俺はずっと、沙綾香にこんな不安を抱かせていたのかもしれない。だとしたら、俺は最低だ。
「随分とご無沙汰みたいねぇ。たっぷり楽しみましょ。私のおまんこで、あの子の記憶を上書きしてあげる」
 女はそう言いながら逸物を掴み、ルージュの光る口で咥え込んだ。
「よせ……っ!!」
 言葉で拒絶してみせるが、一方で俺は、異様なほどの快感を味わってもいた。性的な刺激は久しぶりで、舌がねっとりと絡みつく感触が気持ちよくて仕方ない。腰が意思とは無関係に浮いてしまう。
「んふっ。硬いのが口の中で暴れてる。私のフェラ、気持ちいいでしょ?」
 女は唾液の糸を引きながら口を離し、妖しい笑みを浮かべた。逆光で顔に影がかかっているが、よくよく見ればいい女だ。フェラチオの技術も申し分ない。俺の中の『男』が満たされてしまう。公然での逆レイプ──こんな状況で感じては恥だと、頭では理解しているのに。
「んぐううっ!!」
 歯を食いしばり、かろうじて絶頂を堪える。危ないところだった。射精管が痺れている。精子はおそらく、管の途中まで上がっていることだろう。
「へーえ、頑張っちゃうんだ? 可愛い。でも、いつまでもつかな」
 女はほくそ笑み、上目遣いでジュボジュボと音を立てる。意地の悪いことだ。目の前で恋人の心を奪われ、さらには行きずりの女に屈服させられた男。そんな哀れなピエロを作り上げる魂胆か。
 冗談じゃない。そこまでコケにされて堪るものか。他ならぬ沙綾香の見ている前で。
 俺は顎を引き、唇を噛む。沙綾香が何度となくしていたこれは、なるほどよく堪えられそうだ。そうして覚悟を決めた上で、改めてステージを見上げる。

「見ろよ、先生もお楽しみだぜ。だったらこっちも、見せつけてやろうじゃねぇか。とびっきりハードで刺激的なファックをよ!!」
 ダリーがまっすぐ俺を見下ろしながら宣言し、ドラム缶のような腕で沙綾香の身体を持ち上げた。そうして四つ足をつく格好を取らせてから、ダリーは沙綾香の腰を掴む。
「お、思いっきりは突かないで……!」
 沙綾香は明らかに怯えた様子で、背後のダリーを振り返った。
「へっへ。俺の“突っ張り”は腹の底に響くから、今のコンディションで受けるのは怖いってか? そりゃ聞けねぇな!」
 ダリーに容赦はない。しっかりと沙綾香の腰を掴んだまま、激しく腰を打ちつけはじめる。もう何度となく目にした、超重量のピストン。バンッ、バンッ、という鈍い音が響き、沙綾香の尻肉が波打つ。
「ほおお……聞いたこともない音だ!」
「完全に関取体型だしな、アイツ。180キロぐらいあるんじゃねぇか? しんどいぞー、あんなのにガン突きされたら」
 客がざわつきはじめた。実際あの光景は、何度も目にしている俺でさえ息を呑む。おまけに沙綾香の反応は、過去のどれよりも激しかった。
「お゛っ、お゛……お゛ん゛っ!! うぎいいっ、おお゛っ、お゛イグッ、おおイグッ、お、お゛う゛っ、お"んんん゛っおお゛!!! だ、だめっ、声……とえらんない゛っ!! ぎがな…っで、ごえ、聴かないで……おおお゛お゛っ!!!」
 沙綾香は、見開いた眼から水平に涙を飛ばし、舌を前に突き出し、『お』行の喘ぎを上げ続けていた。歯を食いしばって声を殺そうともしているらしいが、ダリーが腰を打ちつければ、その努力はすべて消し飛ぶ。
「いひひひっ、すんげぇ声だな! おーおー言ってんぞ!?」
「完全に女捨ててんな。あんだけ恵まれたルックスしといてよ!」
「聴かないでっつっても、聴こえちまうよ。そんだけ喚き散らしてりゃあな!」
 叩きがいのあるネタを得て、客は一斉に下卑た言葉を投げかける。
「あはは、男ってバカだよね。可愛い子が何か言うと、すぐ自分が言われたって思い込むんだから。聴かないでっていうのは、アンタ向けの言葉に決まってるのに。ね、“センセ”?」
 ドレス女は、そう言いながら唾液塗れの逸物を扱き上げた。今にも暴発しそうという状況で、その責めはあまりにきつい。
「ふぎきうう゛う゛っ!!」
 歯を食いしばらなければ、到底射精を堪えきれない。そして必死に堪えようとすれば、どうしたってひどい声が出る。
「おっと、彼氏の方も妙な声で鳴いてやがるぜ?」
「ある意味、似合いのカップルだな。動物同士でよ!」
 余裕などない状況なのに、客の罵倒はよく聞き取れた。苦しさと情けなさが胸の辺りで混ざり合い、揮発性の吐き気になって口から出ていく。人の目さえなければ、なりふり構わず泣き喚きたい。それぐらいの状況だ。
 沙綾香もきっと、そうだったんだろう。一週間以上にも渡る恥辱の中、何度となくこういう気持ちになったに違いない。そして、それを発散できる機会などなかった。いつでも人の目とカメラに晒されていた沙綾香は、意地を張り続けるしかなかった。それで彼女の心は、どれほど磨り減ったことだろう。
「あ゛ーーっ、あ゛っあ゛!! あう゛っ、お゛っ、お゛ん゛ぉおお゛っ!! あ゛あ゛あ゛だめっ、しきゅっ、子宮が、痙攣して、る……っ!!」
 沙綾香の様子が、また変わった。口から涎を垂らしたまま、ほとんど白目を剥きかけている。這う格好を維持できなくなり、力なく床に突っ伏す。
「どうした、ツラぐらい拝ませてやれ。お前の女の部分を余さず味わえる俺と違って、奴はイキ顔を見て楽しむしかねぇんだからよ!」
 ダリーは俺を見下ろして挑発しながら、沙綾香の頭を掴んで顔を上げさせる。床から離れた沙綾香の顔は、壮絶だった。両目の眼球は内に寄り、頬は膨らんでいる。まるでそのまま嘔吐でもしそうな顔だ。とはいえ、吐瀉物は出ない。代わりに、濁った重苦しい喘ぎが漏れている。ダリーは、そんな沙綾香を容赦なく責めた。這い蹲る沙綾香に、その巨体で覆い被さり、ひたすらに腰を打ちつける。
「っん、ぐうっ!? ぁああ゛、あ゛っ!! ひいいっ、いぐ、いくっ……ぃああ゛っ!!」
 沙綾香の寄り目が上を向いた。目尻の形も口の形も完全に崩れた、壮絶な顔だ。
「あっは、すごい。ねぇ先生、女の子があんな顔になる時って、どんな時か解る? 女ってね、顔が命だから、男よりずっと表情を崩さないように頑張るの。それでもあんな顔になっちゃうのは、もう頭が真っ白になって、自分が何をしてるのかも、誰を好きだったかも、何もわかんなくなっちゃう時なのよ」
 ドレス女が俺に向き直り、囁きかける。こういう時は、性別の壁が厄介だ。異性が言う事は、何でも本当らしく思えてしまう。それに、今に限って言えば、ドレス女の言葉はおそらく真実だ。
「あかはっ、あ゛、あ゛っ……ほおあ゛っ……あ゛」
 沙綾香は、顔こそこっちを向いているが、俺を見てはいなかった。上空に視線を向けたまま、口を縦に開いて放心している。
「はっはっは、すげぇすげぇ、どうなってんだこりゃあ! アソコがうねって吸い上げて、渦潮みてぇになってんぜ!」
 ダリーはゲラゲラ笑いながら腰を打ちつけ、ダメ押しに腰を震わせてたっぷりと射精する。そうして奴がようやく腰を引いた直後、ビシャビシャと水音がしはじめた。目を凝らせば、開いた沙綾香の股の間に一筋の輝きが見える。
「おいおい、漏らすんじゃねーよ。犬じゃあるめぇし!」
 ダリーが日本語で茶化して客の笑いを誘うが、沙綾香に反応はない。脱力した顔のまま、小さく呻きを漏らし、完全に床へ突っ伏してしまう。哀れすぎる姿だ。それでも黒人共は、そんな沙綾香を休ませようとはしない。ダリーが退いた場所に、今度はタイロンが入り、馬並みのペニスを沙綾香の股座へと押し込んでいく。その無理のありすぎる挿入は、十分に気付けの効果があったようだ。
「あっ…ぐ、はああっ!?」
 沙綾香の黒目が戻り、形を失くした口から悲鳴が上がる。
「ヘバッたら休ませてもらえるとでも思ったか? まだまだ、こっからだぜ!」
 目を細めたタイロンが、沙綾香の胸に手を伸ばし、強引に上半身を起こさせる。膣を極太で杭打ちしたまま、背中を弓なりに反らせる形だ。
「あはあああっ!!?」
 沙綾香は、目を見開きながら顔を歪める。未知の、かつ圧倒的な感覚を怖がっているらしい。
「ううわあ、えっぐい。あんなおっきいの、普通に寝バックで挿入されるだけでもキツイのに、あんな不自然なカッコまでさせられたら堪んないって。彼女さんの子宮、ペチャンコになってるよ、きっと。ま、クスリでラリッてる状態なら、そういう苦しさも全部快感になっちゃうかもだけど」
 ドレス女が、鈴口を指で弄りながら囁いてくる。言われなくても、あれがやばいのは察しがつく。
「俺のコックを、たっぷりと感じさせてやる」
 タイロンは沙綾香の上半身を反らせたまま、少し腰を引いた。さらに、自分の膝で沙綾香の脚を挟み込んで閉じさせると、改めて腰を沈めていく。
 沙綾香は、反射的に顎を跳ね上げた。
「ーーーーーっっ!!!」
 声は、音にならない。だが、目を剥き、口を開いた顔を見れば、それが我慢の結果ではないことがわかる。あまりにも刺激が強すぎて、声にならなかった……それが正解だろう。
「うは、すげぇ。足ブルブルしてる!」
「いや、ああなるよ。だってあの黒人の、足首ぐらいの太さじゃん。そんなのメリメリ突っ込まれて、無反応は無理だって」
「ふふ、足首か。確かにそんな感じだな。じゃああれは、自分の脚を大事な場所に突っ込まれているも同然というわけか。ははは、可哀想なことだ!!」
 客は目をギラつかせてステージを凝視し、興奮気味に意見を交わし合う。タイロンは、そんな客を自慢げに見下ろし、見せつけるように腰を上下させる。
 沙綾香は、それに必死で抵抗していた。タイロンを揺り落とそうとしてか、腰を左右に振る。汗に濡れたステージ床と太腿が擦れ、キュッ、キュッ、と音を立てる。それでも相手が落ちないとなれば、伸ばした脚の踵を振り上げ、タイロンの尻を叩いてもいるらしい。だが、タイロンはそれを笑うばかりだ。
「いいねぇ。犯してるって感じがするぜ!!」
 タイロンはそう言って、それまでの倍ほど腰を引いた。そうしてたっぷりと溜めを作ってから、一気に腰を沈める。鞭を入れるようなこの突きが、沙綾香の抵抗を消し飛ばした。
「ろぉおおおお゛お゛っ!?」
 濁りきった喘ぎが漏れる。意思ではコントロールできない、不意をつかれた時の奇声だ。可愛そうに、上半身はさらに反り、後頭部がタイロンの鎖骨を叩く。ドン、という音がしたのは、踵を上げていた脚が床に落ちたからか。
「どうした、もっと抵抗してもいいんだぜ。じゃじゃ馬の方が犯し甲斐があるからな。まあ、強いオスに甘えたくなったってんなら、歓迎するがよ」
 タイロンは、すぐ傍に来た沙綾香の顔を舐めながら囁く。随分と沙綾香を気に入っているようだ。
 そして奴は、また腰を使いはじめた。奴自身も動きづらい体位だろうに、それを感じさせない力強い抜き差しだ。しかも、腰遣いだけに専念しているわけじゃない。奴は、沙綾香に上半身の反りをキープさせながら、しっかりと胸を刺激していた。円錐状に尖った乳首を、指で転がし、挟み、捻り潰す。それだけで絶頂を迎えてもおかしくないほど、苛烈で入念な乳首責め。
 それを受ける沙綾香は、余裕など全くなかった。右手で口を押さえ、目に涙を溜めて必死に声を堪えている。それでも、殺しきれない。指の間からははっきりと、「おおお」という声が漏れている。挙句、さらに時間が進めば、そうして口を押さえることさえできなくなった。
「おっほ、おぉほっ!! んんんおお゛お゛お゛っっ!!!」
 際立って酷い声が漏れた直後、沙綾香の手はだらんと垂れた。そしてその後は、床にべったりとついたまま、上半身の安定に専念するようになる。そうなってしまえば、漏れる声を遮るものはない。
「おっほぉっ、んほっ、んほおおおっ!! んっぐ、んぐ、いんぐんんぐううっ!! ほお、お゛っ、おほお゛おお゛っいぐっう゛っっ!!!」
 苦しそうな、そして、心底気持ちよさそうな声が響き渡る。眼の焦点も合っていないようだ。目の前に火花が散る、というあれか。
「へへへへ、またイッたのか。何回目だ?」
 タイロンが心から嬉しそうに問いかけると、沙綾香の瞳孔が中央に戻った。
「わ、わ……わかん、ないっ……んあ゛っっ!! しゃべってるときに、動かないで……い゛ああ゛ぁ゛ッ!! んぐ、んぐっ、ふぐううっ!! あああいぐっ、いっぢゃうううう゛っ!!!」
 沙綾香は、タイロンの問いに答えることすらままならない。むしろ、答えようと意識を向けたことで、膣の我慢が利かなくなったらしい。
 そして直後、沙綾香の身体の下から、ぶじゅうっという音が漏れる。俺の位置からは状況が判らないが、ステージに張りついている客にはよく見えたようだ。
「はははっ!! 良すぎて、とうとうションベン漏らしちまったか!!」
「まあ、当然だろ。あの杭みてぇな極太で、ポルチオ突かれまくっちゃあな!」
 客は沙綾香の失禁を散々に笑う。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!!!」
 沙綾香は涙を流しながら、舌を突き出して喘いでいた。まだ絶頂の余韻が続いてゐる感じだ。するとその顎を、横に立つレジャナルドが掴んだ。
「派手に漏らしやがって。おら、水分補給だ。口開けろサヤカ」
 奴は勃起した怒張を扱きながらそう命じた。沙綾香が息を呑んで口を閉じようとすれば、指の力で強引に顎をこじ開け、開いた口に向けて精を浴びせる。
「んあ゛っ、あああ゛っ!!!」
 呻き声が上がる中、白濁は沙綾香の顔を汚しながら、その口内へと注がれていく。相も変わらず驚くほどの量で、しかも匂いが凄まじい。圧倒的なまでの雄臭だ。
 沙綾香はあの鉄格子の部屋で、毎晩のようにそれを嗅いできた。そして今、薬に感覚を狂わされた状態で、さらに嗅がされている。となれば、脳がその匂いに支配されてもおかしくない。というより、そうなるのが自然だ。
「あ゛っ、あ゛……」
 短く声が漏れ、段々と握られた指が力を失っていく。
「沙綾香っ!!!」
 俺は、叫んだ。声掛けの良し悪しを考える前に、肺から叫びが飛び出した。多分、俺は直感したんだ。今ここで沙綾香の意識を戻さなければ、取り返しのつかないことになると。
 果たして沙綾香は、俺の方を見た。目に涙を浮かべ、白濁に満たされた口をパクパクと開閉しながら。

 ────おねがい、みないで────

 彼女の目は、そして口は、間違いなくそう言っていた。
 見ないで? 何故だ。恥ずかしいのか、それとも辛くなってしまうからか。それならまだいい。でも俺は、もっと最悪な予感がしてしまっている。
 もう、耐えられない。
 彼女は最後に、そう伝えてきたんじゃないか。

「んあああああっ!! あっ、いい、いいッ!」
 沙綾香は俺から視線を離し、口内射精したレジャナルドの方を見上げる。レジャナルドにとっても、その反応は予想外だったらしい。奴は一瞬固まり、それから顔中に笑みを拡げた。いつもの獣じみた笑みとは少し違う。達成感に満ちた顔だ。
「へへへ、なんだよ甘えたツラみせやがって。俺のザーメンでトリップしちまったか?」
 奴はそう言葉をかけても、沙綾香は否定しない。上体を反らせたまま、細かな痙攣を続けるばかりだ。
「ぁいくっ、イクッ……あらま、とけ、ちゃう……!!」
 白濁を絡ませた口から声が漏れ、同時にタイロンが小さく呻く。
「グウッ……こいつまた、締まりが良くなりやがった。俺のがヘシ折られそうだ。よーし、そんなに欲しがるんならくれてやる。こっちも気持ちよさが溜まってんだ。思いっきり濃いのを注いでやるからよ、好きなだけ子宮で味わえや!!」
 タイロンはそう叫び、素早く腰を前後させる。そして、根元3割ほどを残して奥の奥まで挿入しきると、尻の筋肉を引き締めた。
「おおお……おおお、すげぇ出るぜ。射精感が焼ききれちまいそうだ!!」
 奴自身が驚いた様子でそう実況するんだから、射精の量も勢いも普段以上だろう。以前の沙綾香なら、それを嫌がったはずだ。首を振り、嫌だ嫌だと絶叫していたはずだ。
 それが、今は。
「あああ……きてる、きてる……! あああ、これイク……また、イクっ!! ヌルヌルで、イッてるうっ!!」
 幸せそうに囁きながら、緩んだ目元から涙を伝わせ、全身を震わせる。タイロンがようやく射精を終え、三本目の足のような怒張を引き抜いた直後には、それに追いすがるように精液交じりの潮を噴き上げた。俺の位置からでも見えるほど、盛大に。
「ひゃっひゃっ!! こいつ、膣内出しでイってやがる!!」
「ああ。最初はあんなにギャアギャア喚いて嫌がってたのにな。コックの味もザーメンの味も、しっかり身体が覚えちまったってわけか」
 黒人共は沙綾香を見下ろし、驚きながらも笑っていた。
 全ては、倶楽部の目論見通りに進んでいるわけだ。度重なる薬物投与で感覚を狂わせ、極限の羞恥と快楽責めで自我を削り取る。その上で、調教師共の虜にさせる。俺に代わる依存対象となるように。

「おいおい、どうしたんだこいつ。いつになく積極的じゃねぇか!」
 仁王立ちでフェラチオを求めるマーキスが、驚きの声を上げた。それもそのはず、沙綾香は命じられる前に逸物に吸いつき、上目遣いで強く吸引しはじめたからだ。
「ひひひっ、たまんねぇ! ようサヤカ、コツを掴んできたじゃねえかお前」
 マーキスは大喜びだ。
 沙綾香は覚えが早い。俺もどんどん上達していくあの子の奉仕に、腰砕けになった覚えがある。もし沙綾香が、その技巧をマーキス相手に使っているなら、それを躊躇していないなら、それは気持ちがいいことだろう。
 というより、もはやそんなレベルではないらしい。
「ん、んおっ……!? お、オイオイ、そんな強くしゃぶったら……うあっ!!」
 快楽に浸っていたマーキスが、急に焦りを見せはじめた。
「おおい、ちょっ、やめ……ぐっ……ぬぐおおおっ!!!!」
 奴は沙綾香の頭を掴むが、それでもフェラチオが止まらない。じゅばっ、じゅぼっ、と水気のある音がさらに繰り返され、とうとうマーキスは天を仰ぐ。
「オオオゥ、シィット!! シィィイイット!!!!」
 恨み言を吐きながら腰を震えさせるのは、主導権を奪われていた証だ。そしてそのマーキスの射精を、沙綾香はゴクゴクと喉を鳴らして飲み下す。窄めた口で強く吸ってもいるようで、結果この時のマーキスの射精は、わずか5秒で終わりを迎えた。
「くあああっ!!」
 沙綾香の口が離れた瞬間、マーキスが後ろに倒れて尻餅をつく。
 端塚の言っていた通り、奴らはフィジカルエリートだ。樹齢数十年の樹を思わせる太腿は強靭で、数時間に及ぶ『駅弁』セックスすら可能にしてしまう。そんなマーキスが、たった一回のフェラチオで腰を抜かすとは。
「おいおい、何すっ転んでんだマヌケ!」
「汗とザーメンで滑ったか!?」
 他の黒人共が笑いながら茶化すが、マーキスだけは『信じられない』という顔で痙攣する太腿を見つめていた。
「…………俺は、転んでねぇ」
 ぽつりと呟かれたその一言で、黒人共の嘲笑が止まる。
「ねぇ、もっとちょうだい」
 そのわずかな静寂に、沙綾香の声が割り込んだ。
「心臓が、ドキドキして止まらないの……身体が熱い。ねえ、早く……太いのちょうだい」
 白濁の絡む口が開閉し、淫らな言葉が紡がれる。さらに沙綾香は、自ら床に寝そべり、黒人共に向かって股を開いた。『マングリ返し』の恰好だ。毎度毎度、やられる度に羞恥で顔を歪めていた、最も屈辱的な体位の一つ。それを、彼女自身の意思でやっている。まるで、犬が腹を見せて降伏するように。
 それを前にして、黒人共が反応しないはずがない。
「ああ、そうかよ……ようし、ヤッてやるぜ。後悔すんなよ、俺らを誘惑なんぞしやがってよお!!」
 サディストとしてのプライドか、あるいは純粋な性欲からか。まずはレジャナルドが沙綾香に覆い被さる。
 つい1時間ほど前と同じ、正常位でのセックス。ただし、その実態はまるで違う。あの時は耐えるばかりだった沙綾香が、今では積極的に黒人共を迎えている。同じ大股開きでも、今は沙綾香が膣を締め付けているのが感じ取れた。
「うおおおっ、なんだこりゃ……締まるなんてもんじゃねぇ! 搾り、取られる……っ!?」
 レジャナルドは目を見開き、腰を引こうとする。だが、沙綾香がそれを許さない。恋人相手にそうするように、背中に足を絡めてしまう。
「ほら、もっと味わってレジャナルド。沙綾香のあそこ、気持ちいいでしょ……?」
「おいバカ、やめ……んくあっ、あ、あっ……駄目だ、もたねぇっ!!」
 相手の名前を呼び、微笑みながら腰を蠢かす沙綾香。顔を引き攣らせ、必死に逃れようとするレジャナルド。その優劣は誰の目にも明らかだ。
「くああああっ!!」
 沙綾香が足を絡めてからわずか数十秒後、レジャナルドが顎を浮かせた。奴の少年時代を思わせる面影が、なすすべなく震え、脱力する。
「へ、へへへ……この、ファッキンビッチが……っ!!」
 レジャナルドは捨て台詞を吐きながら、精液の滴る逸物をぶら下げて後退していく。
 マーキス、そしてレジャナルド。性欲も、嗜虐心も強い2人が、あっという間に『搾り尽くされた』。その事実を前に、フロアの空気が一変する。
 客は、まったく野次など飛ばさなかった。まだ何が起きているか把握しきれていない様子で、黒人共と沙綾香を交互に眺めている。ドレス女も、俺への奉仕をすっかり忘れ、逸物を握りしめたままステージを振り返っている。
「はは、すげぇなこりゃ。マジでサキュバスみてぇだ。今10番勝負やったら、お嬢ちゃんの総勝ちだろうぜ」
「ああ。腰振るしか能のねぇケダモノ連中にゃ荷が重いか?」
 ロドニーと手越だけは流石に余裕があり、軽口を叩き合っている。わざわざステージ横で、かつ英語で話しているのは、黒人共に奮起を促すためか。
「荷が重いだと? 舐めてもらっちゃあ困るぜボス。俺らは、百戦錬磨の売女だってぶっ壊してきたんだ。このコックでな!!」
 黒人共は怒張を誇示しながら、凶悪な笑みを浮かべてみせる。そして、我先にと沙綾香に襲い掛かりはじめた。

 黒人共は、全力で沙綾香を犯す。
 ドミニクは、十八番である背面立位でステージを歩き周り。
 ジャマールは、沙綾香の頬を叩き、あるいは首を絞めながら犯し。
 サイズに自信を持つモーリスは、腹を抱え込んでの後背位と、それに続く凶悪な寝バックを繰り返す。
 そのどれもが、沙綾香を数えきれないほどの絶頂に導いた。潮噴きや失禁も何度も起きた。だが、先に音を上げるのはいつも黒人共だ。何度でも絶頂できる女と、いかに絶倫とはいえ数度の射精が限界の男……その差が出てしまう。

 そのハードなプレイに、呆然としていた客も熱狂しはじめた。黒人と沙綾香の両方に声援を送りながら、百合達5人を相手に性欲を満たす。客の数は100人に迫る勢いで、百合達には休む暇もない。最も体力のなさそうな千代里は、閉じなくなった口から精液を吐き零し、へたり込む格好で気を失っている。逆に一番体力のありそうな藤花ですら、数限りなく肛門絶頂を極めさせられ、ここ一時間は「堪忍してくれ」という哀願しか発していない。
 だが、そのどれもが、沙綾香に比べれば平和的だ。

 沙綾香は今、ステージの上で二穴を犯されていた。寝そべったアンドレに尻穴を、正面のトラバンに膣を犯される形だ。愛液と空気の入り混じった、グチュ、グポッ、という音は、一瞬も途切れない。
「あっ、あ゛っ!! すごいっ、奥……硬いのが、ゴンゴン当たってる……あはああっ!!」
 沙綾香の口から漏れるのは、歓喜の声ばかり。表情は泣いているようにも見えるが、口角は常に上がったままだ。そんな沙綾香の傍に、ダーナルが膝をついた。そして奴は、ステージ下の俺に笑みを向けながら、沙綾香の唇を奪う。
「んむっ、むれあっ……えろっ、ああ……れあっ」
 舌を絡ませあう、恋人のようなディープキス。それを受けても、沙綾香は嫌がらない。口角を下げもしない。そして、興奮してもいるようだ。
 キスの最中、沙綾香が何かを呻きはじめる。ダーナルが唇を解放すると、すぐに沙綾香は激しい反応を見せた。
「んぐっ、んんも、もお゛ッ! んはっ、ああおお゛お゛っ!! んお゛お゛っ、いぐうう゛っ!!」
 身体をガクガクと揺らし、歯を食いしばる。かと思えばその口を開き、意思を感じさせない顔で絶頂を叫ぶ。
「へっへ。キスでトんじまったか」
 ダーナルが満足そうに笑い、二穴を抉るアンドレとトラバンも笑みを浮かべた。結合部からの音が、バチュッ、ドチュッ、というものに変わり、割れ目から飛沫が飛び散る。
「おおお゛ぉおお゛っ、イ゛ぐう゛うう゛っ!! おっ、お゛ほっ、お゛お゛おお゛お゛、お゛お゛おっ!! んお゛お゛お゛おお゛お゛っっ!!!!」
 白目を剥き、口を尖らせて、濃厚な快感の声を上げる沙綾香。それは、これ以上ないほどに幸せそうで、同時にひどく遠い存在に思える。

 ────おねがい、みないで────

 あの言葉は、自分がこうなってしまう事を悟ってのものか。
「仕上がりましたな。八金 沙綾香はもう、調教師とのセックスから離れられない。こちらの言う事ならなんでも聞く、マゾ奴隷の完成です」
 端塚が淡々と告げ、俺に微笑みかける。
「あーあ、彼女さん壊れちゃった。可哀想。あたしが慰めてあげる」
 俺は、再び始まったドレス女の奉仕に呑み込まれた。痺れが射精管を通り抜け、直後、快楽の塊を迸らせる。
 なるほど、この快楽には抗えない。呑まれたら終わりだ。
 蕩けた頭でそう考え、どうしようもない虚無感に浸りながら……。




                            続く



 

二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.6(中編)

Part.6(前編)の続きで、桜織との審査会のシーンです。


 
 審査会は、制服を着た状態での愛撫から始まった。10人の黒人はちょうど半々に分かれ、桜織と沙綾香の身を弄る。
 その愛撫に対し、桜織はなんら抵抗を見せない。ブレザーを脱がされ、ブラウスのボタンを外されて乳房を露出させられても。ショーツをずり下げられ、割れ目を舐められても。
「あはっ、気持ちいい……。もっと激しくしてぇ、いいよお……?」
 うっとりとした様子でそう呟きつつ、黒人共のゴムパンツを撫でまわす。自ら快感を欲しているのは明らかだ。
 一方、沙綾香は対照的だった。抵抗こそしないものの、黒人共に媚びる素振りは見せない。完全にされるがままの状態だ。
「へへへ、客の前だからって澄ましてやがる!」
「下手な演技はやめろって。知ってんだぜ? 散々焦らされて、欲求不満だってのはよお!」
 サドの気が強いジャマールとレジャナルドは、沙綾香の仮面を嬉々として剥がしに掛かった。マイクロミニのスカートを捲り上げつつ、ショーツの上部を引き絞って、股布を股間に密着させる。すでに濡れきっているんだろう。薄い布地は一瞬にして透け、赤い割れ目を覗かせる。
「おおっ……!!」
「はっはっは、肉厚のヴァギナが丸見えだ!!」
「いいねいいねぇ。顔もスタイルも二重丸な女子高生のオマンコが、いきなり拝めるなんてな!」
 客は大いに喜び、投票ボタンを押し込む。だが、それを見つめる沙綾香の表情は険しい。それは、彼女がまだ羞恥心を失っていない証拠だ。
「どうした、笑えよサヤカ。ジャパニーズのお仲間があんなに喜んでんだぜ。お前だって嬉しいだろ?」
 ジャマールが沙綾香の耳元で囁きつつ、ショーツに手を差し入れた。岩のような手の甲がショーツを盛り上げ、割れ目を包み込む。
「んあ゛!」
 沙綾香の小さな声が、指の挿入タイミングをはっきりと伝えてくる。
 ジャマールに遠慮はなかった。ショーツを変形させながら、中指と薬指を蠢かす。数秒と経たないうちに、『グチョグチョ』とも『ヌチョヌチョ』ともつかない音がし、ショーツの端から愛液が垂れはじめる。
「おいおいおい、すげぇ汁の量だな! 入口から奥の方まで、トロトロに蕩けきってやがるしよぉ、とんでもねぇ淫乱プッシーだ!」
 下劣な言葉を吐きながら、指を蠢かしつづけるジャマール。
「ううう゛……あ゛!!」
 沙綾香が足を強張らせながら呻くと同時に、リン、と鈴の音が鳴った。
「おっ、イッたぜあの子!」
 絶頂モニターのカウントが増え、客からまた歓声が上がる。
 絶頂が記録され、不特定多数に公開されるなど恥辱の極みだ。
「……っ!」
 沙綾香は眉を顰め、股を閉じ合わせて抵抗を示す。だが、黒人共がそれを許すはずもない。
「今さら恥ずかしがる事もねぇだろ、なあ!」
 右手に控えるレジャナルドが膝を掴み、一気に足を開かせる。それに合わせてジャマールもブレザーに腕を突っ込み、ブラウス越しに胸を揉みしだきはじめる。もちろん、腰を抱え込むような指責めも続けつつ、だ。
 繰り返し性感開発を施され、焦らし責めまで受けた沙綾香には、それに抗う術などない。
「うう……あ、あ、あっ!」
 ジャマールの節ばった指が蠢くたび、沙綾香の太腿が強張る。鈴の音が鳴り、ステージの床にポタポタと雫が落ちていく。それに耐え切れず、また沙綾香の脚が内へ閉じた、その直後。
「無駄だ、つってんだろ?」
 ジャマールの手がショーツの奥側へ進み、ぎゅじゅっ、ぎゅじゅっ、という音をさせはじめる。そこが、ターニングポイントだった。
「あ゛っ、あ゛んっ、あ、ああ゛っ!!」
 半開きだった口が大きく開き、はっきりとした喘ぎを漏らしはじめる。上半身は前に傾き、ニーソックス上部の肉が盛り上がり、腰が痙攣する。鈴の音も煩いほどに鳴り響く。
 そして、匂い。これまでと一番違うのはここだ。依然として漂う黒人共の獣臭に混じり、汗と、愛液の匂いがする。懐かしい、懐かしい、沙綾香の匂いだ。
「うはは、イってるイってる!」
「エッロい腰つきしとんのぉ。ストリップ嬢にでもなったらどうや? そのスタイルなら、ようけオヒネリ貰えんで!」
 ようやくの激しい反応に、客は沸き立つ。そしてその反響は、責め手をますます滾らせた。レジャナルドは両膝を割りひらき、沙綾香の脚に菱形を作らせる。ジャマールはますます指の動きを早め、ショーツから愛液を四散させる。
「ああ、あっあ゛! くうっ、あぁ、あ……っ!!」
 哀れなのは沙綾香だ。彼女は全身で拒絶の意を示しているが、大股を開かされたまま前傾する状態では、抵抗も逃亡も叶わない。
 だから彼女は、唯一できることとして、方々に腹立たしげな視線を向けていた。
 何かを囁きかけるジャマールに。
 両膝を押さえるレジャナルドに。
 得票数の光るモニターに。
 絶頂回数が表示されるモニターに。
 舞台近くに群がる立ち見客に。
 そして最後に沙綾香の目は、ふっと客席を眺めた。遠くへ目をやるついでの、流し見という感じだった。
 だがその結果、彼女は、居並ぶ立ち見客の間に俺を見つける。
「えっ……!?」
 驚きの声が、表情が、俺に向く。その異常さに、客が俺の方を振り返り、ジャマール達もこっちを向く。
「……へッ、これはこれは!」
 ジャマールは、満面の笑みを浮かべながら仲間たちに合図を送った。すると、10人の黒人共が俺の方を向く。
「え、何?」
「なんだ……?」
 ステージ前の人垣も、不審がりながら左右へと分かれていく。
「おや。期せずして特等席になりましたな」
 俺の端塚が呑気に呟くが、そんなものに構っている余裕はない。

 目の前だ。
 すぐ目の前に、沙綾香がいる。
 ガラスの床にも、無機質なモニターにも遮られていない、生の沙綾香だ。
 顔は上せたように赤く、汗もひどいが、俺の愛してやまない面立ちはそのままに残っている。
 叶うなら、今すぐ立ち上がり、彼女の元に走り寄りたい。邪魔するものは全て殴り倒し、彼女を連れてこの地獄から逃げたい。
 だが、それは叶わぬ夢だ。俺へ釘を刺すように、後ろのセキュリティが警棒の先を背中に宛がってくる。壁際の用心棒共も得物を握り直した。第一、この部屋には祐希も、千代里も、藤花も、桜織もいる。彼女達は舞台の見届け人であると同時に、人質でもあるわけだ。なるほど、よく考えられている。
 ギリッ、と音がした。舞台の上で、沙綾香が歯ぎしりした音だ。
「…………ッ!!!」
 彼女は、本気で怒っていた。燃えるような瞳が、俺の背後のセキュリティと、隣に座る端塚を睨み据える。その迫力に、客の何人かが落ち着きを失くす。
 だが、彼女にできるのはそこまでだ。
「何してる、続けろ!」
 ステージ下に控える手越が、黒人共に檄を飛ばした。その一言で、停滞していた空気が一変する。
「オーライ、ボス。」
 ジャマールはおどけた様子で答え、ショーツから手を引き抜いた。そして愛液塗れの手をこれ見よがしに振って水気を切ると、今度はショーツを脱がしにかかる。
「あ、やっ……!!」
 沙綾香は目を丸くし、俺の方を覗き見ながら抵抗する。だがその手はあっさりとレジャナルドに掴まれ、あっという間に足首までショーツがずり下ろされてしまう。
「そら、とびっきりのプレゼントだ!」
 ジャマールが足首から引き抜いたショーツを翳し、ステージ左手の空中に放り投げる。
「うおおおっ!!」
「どけ、寄越せっ!!」
「ひひひ、こりゃすげぇ! 一晩水に漬けといたみてぇにグショグショだぜ!? これが全部、S級美少女のマン汁なんてよお、贅沢なオカズじゃねえか!!」
 ショーツが落ちた周囲で、醜い争いと興奮気味の声が上がる。それを横目に楽しみながら、ジャマールは沙綾香の右膝を抱え上げた。
「いやあっ!!」
 悲鳴が上がる。右足を90度以上に持ち上げられた沙綾香の声だ。
「今更イヤもねぇだろう。あいつだって、モニター越しにお前のやってきたことを全部観てたんだぜ。なあ“先生”、そうだろ? 俺らのコックでグチャグチャにされたプッシーなんざ、見慣れたもんだよなあ!?」
 ジャマールはゲラゲラと笑いながら、沙綾香の恥じらいの部分を見せつけてくる。
 改めて目の当たりにするそこは、俺の過去の記憶とは別物だった。ピンクの割れ目の名残もない。黒ずみ、赤く腫れ、上下左右すべて非対称に歪んでいる。だが、別に俺は、それに幻滅することもない。そうなるに至った事情も、変えられていく最中の苦悩も、すべてを見てきたんだから。
「ああ。肉厚で、よく熟した女性器だ。いい女になったじゃないか」
 俺はふてぶてしい笑みを意識しながら、そう言い放ってやる。外道共への当てつけと、沙綾香への慰撫。その両方を意識してのことだ。
「っ!」
 沙綾香が顔を上げた。今にも泣きそうな目尻から、本当に涙が零れていく。
「……ハッ、相変わらずのキザ野郎だな。どういたしまして、だ!」
 ジャマールは不愉快そうに鼻で笑い、傍のレジャナルドとモーリスに目配せする。そして、3人ががりで沙綾香を抱え上げた。両の膝裏に腕を通して持ち上げ、腕を掴み、背中と尻を支える形だ。その状態で、今度はモーリスが秘部に指を挿し入れる。濡れきった割れ目は、太い指3本を簡単に呑み込んだ。
「くっ……あはっ!! あああ゛、あ゛! や゛ああ゛あ゛っ!!」
 割れ目から水音がしはじめると、沙綾香は顔を左右に振って叫ぶ。そんな顔は何度も見たが、この間近で、肉声で聴く泣き声は、鼓膜を通り抜けて心臓を突き刺すかのようだ。
「この、クソ野郎ッ!!!」
 俺は、思わず叫んでいた。存在がバレた以上、もう我慢している必要もない。千代里や藤花が同情的な視線を向けてくるのが、視界の端に見えた。
「ああそうさ、俺はクソ野郎だ。散々そう言われてきたぜ。レイプした女、その親兄弟、そして情けねぇツラで喚き散らす恋人からよお!!」
 モーリスはますます激しく指を動かす。
「やあ、やああっ!!!」
 沙綾香がそう叫んだ直後、抱え上げられた脚がぶるっと震え、鈴の音が響き渡る。どんな喧騒の中でもよく通るその音は、沙綾香自身に絶望的な表情をさせ、それ以外の全員に歪んだ笑みを浮かべさせる。
「そら、俺の指で逝っちまいやがったぜ。きっと、細めのペニスだと思ってんだろうな。懐かしいアンタのサイズでも思い出してるんじゃねえか?」
 モーリスは悪意に満ちた台詞を吐きながら、白い歯を覗かせる。その隣で首を振りながら、嘆きの言葉を連呼するジャマールも実に憎らしい。だが、それ以上に気がかりなのが沙綾香だ。彼女は、どう見てももう限界近い。
「そら、イけ、イッちまえサヤカ!!」
 モーリスがさらに指の動きを早める。沙綾香の痙攣もみるみる激しくなり、首が狂ったように左右に振られる。
「いや、いやあ! んんンっ……くう、う…………あああああっ!!」
 呻きと、叫び。それが何度も繰り返された果てに、絶叫になる。それと同時に、沙綾香の下半身すべてが震え上がり、割れ目からぶしゅっと飛沫が上がった。それは真っ直ぐに前へ飛び、人垣の合間を抜けて、俺の顔に浴びせかかる。
 どっ、と笑いが起きた。客のものか、黒人共のものか。
 前髪から雫が滴る。さっきまで以上に濃い沙綾香の匂いがする。好意的な相手のものだからか、不快感は全くない。こんなひどい状況なのに、下半身に血が巡る。
「はぁ、はぁ、はぁっ……。ああ、やだ…………センセ………………!!」
 沙綾香は激しく喘ぎながら、俺を見て目を細める。俺は、ただその視線を受け止めるしかなかった。この僅かな意思の疎通が、あの子の力となることを祈りながら。


                 ※


 公然で潮を噴かされ、ぐったりとした沙綾香の向こうでは、桜織が5人の黒人共に取り囲まれていた。
 2メートル級の巨躯を前にしても、桜織に尻込みする様子はない。むしろ、露わになった巨根を見て目を輝かせるほどだ。
「んむっ、んちゅうっ……ちゅうっ……れあ、あえっ……はっ、はっ、はっ…………」
 自分の腕と大差ないトラバンの怒張を手のひらで支えつつ、丁寧に竿に舌を這わせ、裏筋を舐め上げていく。モーリス・ダリー・タイロンのトップ3には及ばないものの、顔半分を覆おうかという質量だ。そのインパクトは壮絶だった。
「ははは、あのビッグサイズを大事そうに舐めしゃぶるものだ。可愛い顔をして、中々の変態ぶりじゃないか」
「ええ、全く。すでに息が荒いですからな、よっぽど興奮してるんでしょう」
 客はそんな桜織の様子を見てほくそ笑み、次々に投票ボタンを押し込んでいく。
「えへっ……」
 桜織はマゾという評価を素直に喜び、客の方に目線を向けつつ、ペニスを握り直した。見ていろ、と言わんばかりのその仕草に、何人もの客がステージ上を凝視する。その視線の中心で、桜織はトラバンのペニスを口に含んだ。
「えあっ、あ……あはっ、顎外れちゃう」
 かなり口を開けても咥えきれず、一旦は笑いながら吐き出すが、諦めない。2回目は、肉に食らいつく虎のような大口を開き、巨大な亀頭を一気に咥え込む。挙句そのまま頭を前後させ、本格的にしゃぶりにかかる。
「おおお、すげえ……あのデカブツを一気かよ。しかし、音えっぐいな」
 客が指摘する通り、じゅばっ、じゅばっ、という音がここまで聴こえてくる。下品な音だ。初日のエレベーターに乗り合わせた5人の中で、桜織は最もそのイメージから遠かったというのに。
「ううおおおっ、吸いつきがやべえ……ダメだ出ちまうっ!!!」
 トラバンは、桜織の奉仕に3分と耐えられなかった。呻きながら桜織の額を突き放すと、その鼻先で逸物を扱きだす。それを見て桜織は、舌を突き出して受精に備えた。
「うおおお出るぞっ、出るぞっ!!!」
 トラバンが腰を震わせ、勢いよく精を放つ。相も変わらず凄まじい射精だ。真っ白い粘液が、桜織の舌を一瞬にして覆い尽くす。一般的な人間の10倍、いや20倍は量がありそうだ。
「あんっ、ふふ」
 桜織は笑いながらそれをすべて受け止め、頬を膨らませながら口を閉じる。そして、ごっくん、と音を立てて飲み下した。
「おおお、すげぇ……!」
「あの量を一気かよ……よっぽど飲ザーに慣れてんだな」
 その凄まじいパフォーマンスに、客から感嘆の声が上がる。そんな中、さらに桜織は、射精したばかりのトラバンの鈴口周りへ舌を這わせはじめた。
「おっ!? おいおい、自分からお掃除フェラかよ。できた奴隷だな、ったく」
 トラバンは嬉しそうに笑いながら、腰に手を当てて奉仕を堪能する。
 桜織の後処理は、実に丁寧だ。鈴口に始まり、カリ首、裏筋を、時には舌先でくすぐり、時には舌全体で舐め回すようにして清めていく。見ているだけで下半身が反応する類の奉仕。
「あああ、やべええ……また出る、また出ちまうっ!!」
 性欲の権化のようなトラバンは、たちまち二度目の射精へと導かれた。桜織の小さな手で根元を握られた怒張が、ピクピクと跳ねる。そこをひと舐めされれば、暴発するように精液が噴き出した。直線的だった一回目とは違い、今度はホースの先を握り潰したように四散し、桜織の目元や鼻先、顎へと浴びせかかる。
「ひゃんっ、すごい……」
 桜織は顔中に精液を浴びながらも、嫌がる素振りを見せない。むしろ相手の元気の良さを喜び、顔に掛かった精液を指で掬い取っては、舌先でその味を堪能する。普通の女子高生が、蜂蜜を舐めるような表情で。
「へへへ、そんなにザーメンが好きか。なら、もっとくれてやるぜ。今日一発目の、濃厚なやつをよ!!」
 満足げなトラバンを押しのけ、今度はマーキスが勃起しきった逸物を突きつける。すると、桜織は何の躊躇もなくしゃぶりついた。
「ひひ、夢中だな。どうだ美味ぇか?」
「んぶっ……んぐっ。あはっ、おいひい……おいひぃい……」
 マーキスの問いかけに答えつつ、むしゃぶりつく。剛直を両手で大事そうに握りしめる仕草に、かつての品の良さの名残が感じられて、かえって痛々しい。


                 ※


「へへへ、あっちはずいぶん盛り上がってんじゃねぇか。こっちも始めようぜ」
 モーリスは桜織達のプレイを見て笑い、ゴムパンツをずり下げた。
「おお、お……!」
「うわっ……!?」
 その途端、客から驚きとも悲鳴ともつかない声が上がる。そのはずだ。丸一晩女を抱いていない奴の逸物は、ほぼ真上にいきり勃っている。亀頭が臍を越え、割れた腹筋に届くほどの長さを間近に見れば、誰でも目を疑うだろう。映像越しに何度も見ている俺でさえ、その凶悪さに戦慄しているんだから。
 モーリスはギャラリーの反応に気分を良くしながら、沙綾香の顔に逸物を近づける。
「…………ッ!!」
 沙綾香は、表情を強張らせた。かすかに横へ動き、俺の視線とぶつかる寸前で引き返した眼球が、躊躇の理由を物語っている。
 愛した女性が、他の男……それも、ケダモノのような服役囚の逸物を舐めしゃぶる様など、俺だって見たくはない。とはいえ、俺達に選択権などないのも事実だ。
「早くしろ」
 モーリスと客が、行為を促す。右側モニターの数字も刻一刻と変わり、桜織がポイントを積み上げているのが解る。まごついている暇はない。
 沙綾香が諦めて跪くと、モーリスは腕を組んで仁王立ちになった。いつもなら、沙綾香の頭を掴んでディープスロートを強いるのに、それをしない。
『お友達みたいに、自分で咥えろ』
 その宣言だろう。沙綾香もそれを察したのか、眉の角度を吊り上げる。だが、今さら抵抗しても仕方がない。彼女は大きく息を吐き、逸物を掴んで口を開く。
「んあ、がっ……」
 『あ』と絶叫する口の形。それでも、モーリスの亀頭の直径にはわずかに届かない。そこからさらに口を開き、頬肉が目元を押し上げる角度になったところで、ようやく亀頭を呑み込めるようになる。
「くくくっ、よく顎が外れないものだ」
「本当に、凄い角度だ。あー、ああーっ……うはっ、これはきつい。マネするだけで、吐き気を覚えましたよ」
 客の言う通り、常識外の開口。それですら、沙綾香が味わってきた地獄の片鱗でしかないんだから、気が遠くなる。

 真横アングルでのフェラチオ。飽きるほど目にした光景だ。なのに、2メートル強しか離れていない場所でのそれは、格別に胸に刺さった。
 沙綾香の口や頬が蠢くたび、実に色々な音が鳴る。普段は大半の音がマイクに拾われていなかったらしい。聴き慣れた音に関しても、音質が段違いだ。頬を窄めて顔を前後させるときの、じゅばっ、ちゅばっ、という音は恐ろしくクリアで、鼓膜に粘りつくようだった。
「もっといやらしい音立てろよ、ビッチ!」
「ツバも思いっきり出せ。口ン中に溜めて、チンポに絡めんだよ!」
 必死に奉仕する沙綾香を前に、客が野次を飛ばす。沙綾香は、一瞬相手を睨むものの、その言葉に従った。完全に顔の形が変わるほど頬を狭めると、モーリスの太腿を掴み直し、頭ひとつ分のストロークで顔を前後させる。途端に、音の下品さが増した。じゅばじゅばというフェラチオ音の水気が増し、ぐちゅぐちゅという、口を水でゆすぐような音もしている。
「いひひひっ、すげぇな! とびっきりの美少女のひょっとこフェラはよお!」
「ふふふ、この惨めな顔がたまらんね。街一番、県一番というレベルの女子高生が、こんな……!」
 客は、自分達がさせたパフォーマンスに大喜びだ。何人もがステージ端に張りつき、沙綾香の顔を覗き込みながら逸物を扱きはじめる。沙綾香が眉を顰めても、客は喜ぶばかり。
 激しいストロークに加え、口を目一杯開いているため、時々口の端から唾液が垂れるが、沙綾香はそれをすぐ右手で拭い、その手ごと身体の脇に隠した。手の位置は俺の逆側。俺にだけは惨めなところを見せたくない、という気持ちの顕れだろう。客もそれを察したらしく、俺の意味深な視線を寄越しながら、さらに過激な要求を投げる。
「ほら沙綾香ちゃんよ、お上品に足閉じてんじゃねえぞ。性奴隷がフェラするときはおっぴろげだ」
 その一言で、沙綾香の肩がぴくりと跳ねた。今度は、すぐには反応しない。
「どうした、早くしろ。足開かねぇと、ポイントやらねぇぞ」
 客は沙綾香の羞恥心を愉しみながら、投票ボタンを翳してさらに命じる。卑劣な脅し方だ。だが、沙綾香はそれに従うしかない。この倶楽部の外道共は、義理も人情もない連中だ。もし沙綾香が審査会で勝てなければ、目の前で桜織を責め殺すことだって十分に考えられる。
 沙綾香が足を開けば、すぐに何人もの客が姿勢を低くする。マイクロミニのスカートと黒いハイソックスに囲まれた空間に、生々しい性器が覗く。
「おーっ、見えた見えた。いひひひっ、まったく堪らんのぉ。こんな別嬪が、ワシらのために、“自分から”オメコを見せつけてくるんやから!」
 下劣な行為を求める客の野次は、やはり最低だ。俺ですら腸の煮えくり返るその言葉は、どれだけ沙綾香の心を抉る事だろう。
 それでも沙綾香は、奉仕をやめない。仁王立ちで見下ろすモーリスを睨み上げながら、激しく顔を前後させる。唾液は拭っても拭いきれないほどに滴り、白いブラウスを透けさせていく。


                 ※


 ハードプレイの甲斐あって、沙綾香の周囲はそれなりに盛り上がりはじめた。それでも、モニターの得票数にはかなりの開きがある。沙綾香の27票に比べ、桜織は54……いや、55。刻一刻と数字が変化し、ポイント差が広がっていく。
 差がつく理由として、『空気』の違いもあるだろう。羞恥心や反抗心を保っている沙綾香に対し、客はサディスティックに楽しんでいる。客の要求に従えばある程度のポイントが入るが、そうでない場合は誰もボタンを押そうとしない。一方で桜織の方は、桜織自身がプレイに積極的なせいで、良いと思えばポイントを与える流れができている。だから、桜織の方がポイントが入りやすい。
 ただ、もしポイントの付与ルールが同じでも、やはり桜織の方が抜きんでることになるだろう。理由は単純。桜織のプレイの方が、沙綾香のそれより煽情的だからだ。
 彼女は2人目のマーキスをも果てさせたらしく、今はアンドレを相手にしていた。10人中真ん中のサイズを誇るアンドレの逸物は、けっして小さくない。それでも、桜織は奉仕を苦にするどころか、余裕綽々で様々な技巧を使いこなしていた。
 亀頭周りを舌で舐め回したり、カリ首を舌先で刺激したり。
 奥まで一気に咥え込みながら、顔を左右に傾けたり。
 幹に唇を纏わりつかせ、口を窄めて強烈に吸い上げたり。
 見ているだけで、快感が確信できるテクニックの数々。実際奉仕を受けるアンドレも、目を閉じて天を仰ぎ、体中で心地よさをアピールしている。ただ、本当に衝撃的なのはテクニックの高さじゃない。間違いなく、そこに真心があること──桜織が心の底から、男への奉仕を望んでいること。それが伝わってくるから、余計につらい。
 だが客にしてみれば、それらすべてが興奮材料となるようだ。
「くくくっ。『プロペラ』に『ローリングフェラ』、そして『バキュームフェラ』ときたか。いやあ、気持ちよさそうだねぇ!」
「このサイズの逸物相手に、このスムーズさとは。完全にベテラン娼婦の貫禄ですな!」
「くうっ、見てるだけで射精しそうだ! おい奴隷、アレを真似ろ。この俺を、思いっきり気持ちよく抜いてみせろ!」
 食い入るように桜織の行為を見つめながら、館内着の前をはだけて逸物を扱く。あるいは祐希達を足元に侍らせ、桜織と同じプレイを強要している奴もいた。いずれにせよ、その熱気は相当なものだ。
「すげぇな、あっち……」
「ああ。ひょっとこフェラは結構エロかったけど、あれと比べると見劣りするよなあ」
 沙綾香を囲む客は、桜織の方を見ながら首を振った。モーリスもまた、桜織から視線を戻し、沙綾香に挑むような視線を投げる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」
 沙綾香は一旦怒張を口から出し、モーリスを見上げた。そしてそのまま、ほんの僅かに顔の角度を俺の方に向け、喉を鳴らす。
「どうした、早く」
 客に急かされ、沙綾香は舌を出して鈴口周りを舐めはじめる。さらには亀頭全体を舌全体で上下に舐め、雁首を舌先でなぞる。
「オオウ……!」
 モーリスの口から溜息が漏れた。沙綾香の技巧は、決して低くはない。だが。
「……んー。なんか、違うんだよなぁ」
「下手というわけではないんだがなあ。今ひとつ、迫ってくるものがないな」
 客は微妙な感想だ。そして俺自身、沙綾香の奉仕に桜織ほどのインパクトを感じられない。
 桜織と沙綾香の違いは、熱意だ。桜織は、黒人共への奉仕を心から望んでいるように見える。だが逆に沙綾香は、強いられてやっているだけだ。その積極性の差は、見ている人間にはすぐに解る。同じように舌を動かしていても、伝わってくるものが違う。
「ダメだな。これでは、ポイントはやれんよ」
 客の1人が、首を振りながら投票ボタンを押した。桜織に一票を投じたようだ。
「!!」
 沙綾香がモニターを見上げる。ポイント差はとうとう30を超えた。まだ開始から10分ほどしか経っていないというのに。
「舌が使えないんなら、もうディープスロートでも見せてもらうしかねぇな」
「お、そりゃいいな! あのデカチンを自力で喉奥まで咥えこむとなりゃ、見ものだぜ!」
 客は沙綾香を見下ろし、実質的な命令を下す。モーリスも逸物を口から引き抜き、先端で頬を叩いて挑発する。横顔の一部しか見えない俺にも、沙綾香の表情が曇ったのがわかった。だがその間にも、モニターの得票数は開いていく。悠長に迷っている時間はない。
 沙綾香はまた大口を開け、モーリスの亀頭を咥え込んだ。そして今度は、そこからさらに顎を開く。鼻がほとんど真上を向き、頬に縦線が走る、異常なまでの開口。さっきの沙綾香の迷いは、俺にその顔を見せるのを渋っていたんだと、直感的に理解した。
 俺は、その顔を嫌ったりはしない。苦境に必死で抗う姿が、どんなに惨めだろうが、軽蔑するわけがない。俺はそんな想いを篭めて、沙綾香を見守る。
「おごっ、ご……お゛っ! んごぉ、ほご、ご……おオ゛エ゛ッ!!」
 顔が数センチ前に進むたび、えずき声が漏れた。おおよそ半分ほどを飲み込んだところで、一際ひどい声が漏れ、沙綾香の眼球が俺の方を向く。

 ──幻滅しないで。嫌わないで。

 そんな声が聴こえるようだ。その視線を受け止め、俺は反応に困った。顔を顰めるなど論外だが、笑うのもおかしい。だから、黙って見つめ返すしかない。
「どうした。毎晩咥え込んでるモンだろ、もっと思いきりよくいけよ」
 モーリスは腕を組んだまま俺を見下ろす。勝ち誇った、憎らしい顔だ。
 沙綾香は俺から視線を離すと、震える手でモーリスの腰を掴み、引き付けるようにして顔を進めていく。
「お、おごっ……えおええおえ゛っ!! オ゛う゛っ、もおおええ゛え゛っ!!!」
 抵抗感が強いせいで、喉が開きづらいんだろうか。無理矢理咥えさせられている時より苦しそうだ。
「凄いな。あの小さな口で、黒人の物をあんな深くまで……」
「ディープスロートも仕込み済みだそうですからね。だとしても、衝撃的な画であることには変わりありませんが」
 客の言葉通りだ。制服に身を包んだ美少女が、2メートル級の黒人の足元に跪き、バットの先のような怒張を自ら咥え込む。異常そのものの光景だ。俺は眩暈がしてくるが、客共は随分と楽しんでいるらしい。
「そら、もっと深く咥えろ。お友達がしているようにな!」
 舞台下では、4人の客が仁王立ちで並び、百合・祐希・千代里・藤花の4人に逸物を咥えさせていた。
「う゛っ、お゛え゛っ……!!」
「おエエ゛っ、もぐぉおお゛っ!!」
 4人からはえずきが漏れている。客のペニスサイズはごく常識的なレベルだが、根元まで咥えさせられれば、さすがに苦しいようだ。あるいは、知り合いと横並びで凌辱される羞恥のせいかもしれないが。
「ごおっ、んぼぇっ!! ウ゛ォエ゛っ、お゛っ、おぶぇえ゛っ!!」
 それでもやはり、沙綾香の反応は一際大きい。えずき上げる瞬間には、百合達4人の声が完全に掻き消される。
「ひひひっ、苦しそうだな。今にも吐きそうじゃねえか!」
「まあ、なんつってもあのサイズだからな。飲み込むたんびに、喉がボッコリ膨らんでっしよ。普通なら吐く吐かねぇ以前に、気絶してるかアゴ外れてんぜ。よく調教されてるもんだよ、まったく」
「いや、まだまだ。VIPエリアの奴隷なら、もっと楽しませてもらわんと。そら奴隷、もっとえずけ。いい声を聞かせたらポイントをやるぞ!」
 客は沙綾香の苦しみぶりを茶化しつつ、よりハードな奉仕を求めていた。沙綾香はそんな客を嫌そうに見下ろしつつも、その言葉に従うしかない。モーリスの太腿付け根を腕で抱え込み、抱きつくようにして顔を前後させる。
「おう゛っ、オオ゛っ、んもおおえっ!! ごぼっ、んぼぉお゛えっ!!」
 声が、より酷さを増した。喉が詰まって息ができないせいか、鼻水も噴き出しはじめた。やがて、深く腰を落とした足がプルプルと震え、堪らずといった様子で逸物が吐き出される。
「おえ゛ぅあ゛っ!! んォおぼっ、ごほっ……こぽっ!!」
 悲痛な声と共に、粘液の塊が吐き出される。嘔吐と見紛うような量だ。
「はっはっはっは、あのツラ! 最高だな!!」
「いやまったく。あの上等そうな娘が、こうも惨めになるとは!」
 客は、そうした沙綾香の反応すべてをあげつらい、物笑いの種にした。
「…………ッ!!」
 ひとしきり粘液を吐き出した沙綾香は、野次を飛ばした客に鋭い眼を向ける。だが、桜織側のポイントが次々と積み上がっていく中では、すぐに行為に戻るしかない。
 剛直を呑み込む過程で美貌が歪み、えずき声が漏れはじめる。客共は、睨まれた報復か、そんな沙綾香へ容赦なく野次を飛ばした。それは容赦なく沙綾香の心を抉っただろうが、中でも厄介なのは、同性の女から発された、この一言だ。
「ねえ。この子、イラマチオで感じてない? 腰ヒクヒクしてるけど」
 男性客が沙綾香の歪んだ美貌に執着している中、その女は中腰になり、沙綾香のスカートの中を凝視していた。
「え、まさか……」
 別の客が目を凝らす。その反応を見て取ったモーリスは、沙綾香の奉仕を受けながら立ち位置を変える。沙綾香の尻が、ステージの端ぎりぎり……客の目の前へ来るように。ハードプレイのため、蹲踞に近い格好を取っている今、マイクロミニのスカートの中身が良く見える。
「もお゛ぐっ!?」
 沙綾香が目を剥きながら後ろを見やる。一方で、客は嬉々として食いついた。
「おおお、本当だ! ヴァギナが物欲しそうに蠢いているぞ!」
「ははははっ、やらしい動きだな! チンポが欲しくって仕方ないらしいぜ!」
 恥じらいの場所に、脂ぎった視線が集中し、悪意に満ちた言葉が浴びせられる。その状況は、多感な時期の少女にとって、どれほど辛いことだろう。無反応ではいられない。怒張を呑み込む動きを続けつつも、踵が浮き上がり、割れ目がより激しくひくつく。
 そして、数秒後。

 ────リン────

 通りの良い鈴の音が、鳴り響く。桜織の方からは何度となく聴こえている音だが、今の発信源はあっちじゃない。
「あはっ……」
 桜織が音に気付き、面白そうに沙綾香を見たのが、何よりの証拠だ。
「うははははっ!! この娘、イキおった!!」
「おいおいおい、マジかよ!? あんな、喉が膨れ上がるぐらいのデカマラ咥え込んで感じるとか、信じらんねぇ!!」
「えげつねぇ変態っぷりだ! もし俺の彼女がこんなになっちまったら、自殺モンだぜ!!」
 客は、ここぞとばかりに悪意を爆発させた。腹の底から嘲笑し、嘲り、俺の方にまで侮蔑の言葉を投げかける。こういう連中の嗅覚には恐れ入る。獣が血の匂いを嗅ぎつけるように、俺と沙綾香の心を一番抉るやり口を、直感的に理解している。
 俺の心も痛むが、それより沙綾香が心配でならない。俺の位置からは背中側しか見えないが、それでも彼女の手が、脚が、嘆いているように思えてならない。
「へへへ、セルフイラマで絶頂とはな。オイ、お前も口マンコ調教されたんだろ? 喉奥だけでイクなんてこと、あると思うか?」
 客の1人が千代里に問いかける。口調こそ疑問形だが、すでに答えを確信しているに違いない。
「ぶはっ、んはぁ、はぁ……あ、あると、思います。私も、沙綾香も、喉で感じるように調教されましたから……」
 逸物を引き抜かれた千代里は、息を荒げたままそう答える。赤らんだ頬、潤んだ瞳。明らかに発情している表情だ。
「そうかそうか。カワイイ顔して、喉マンコで感じるのか、この変態が!」
 色気のある童顔にあてられたのか、男の1人が千代里の腰を掴み、ショーツをずらして挿入を果たす。声楽家らしい千代里の喉から、ソプラノの悲鳴が上がる。
 その少し上では、依然として沙綾香の被虐が続いていた。
「おーおー。鼻水も涎も、すげぇ量になってきたな」
「マンコがクパクパ開いてんぜ。上が詰まってるもんで、下のお口から酸素補給してるってかあ!?」
 ごえっ、おえっ、というえずきと、鼻水を噴き出す音。それと呼応するような割れ目のひくつき。それらは全て近くの客に指摘され、嘲笑される。
 そうした悪意は、沙綾香に対して有効だ。あの子は、性に奔放そうな見た目とは裏腹に、どこまでも純真で、繊細だから。
「うぐっ、ぶふっ!! んっぐ、んべえっ……ふごおおお゛っ!!!」
 沙綾香は、息を乱れさせ、何度も噎せ返った末に、太腿を病的に強張らせた。そして直後、割れ目からぷしゃっと飛沫が散る。同時に、リン、と鈴の音も鳴った。
「ぎゃっはっはっ!! こいつ、とうとう潮噴きやがった!!」
「しかも、イキながらな。俺らの言葉責めで興奮しちまったか、このドマゾが!!」
 客はゲラゲラと笑いながら、ステージに手を伸ばして沙綾香の尻を叩く。ステージの内外に存在する一線を越える行為。それを見ても、立会人である手越とロドニーは口を挟まない。となれば、客が図に乗るのは明白だった。
「うひひ、凄いな……愛液がトロトロ出っぱなしだ」
「陰唇は黒ずんでいるが、中は綺麗なピンクだな。フフフ、悪くないじゃないか」
 客の指が、沙綾香の秘所を割りひらく。嘲笑を伴う視線が、その奥を覗き込む。
「もごっ、えあ゛っ……!!」
 沙綾香は怒張を半ば吐き出しつつ抗議するが、モーリスはそれを許さない。大きな掌で沙綾香の後頭部を抱え込み、ディープスロートを続行させる。
 3人の客が、沙綾香の割れ目に指を差し込んだ。奴ら自身の体が邪魔で、指の動かし方は見えない。だが、ああいった手合いのやる事は決まっている。割れ目の中を押し開きながら、膣内のスポットを刺激しているに違いない。
「んぐっ、もごおお゛っ!!」
 沙綾香の口から呻きが漏れ、腰が左右に揺れる。リン、リン、と鈴の音が鳴る。そんな状態でさらに、指入れしている3人のうちで一番年長の男が、他2人を下がらせた。そして押し開いた割れ目へと口をつけ、全体を舐め回す。
「おほほ、旨い旨い! さすが極上美少女のツユだ、格別に下半身に響くぞ!!」
 奴の興奮ぶりは相当だ。禿げ上がった頭にミニスカートの一部を被せ、腿の肉を鷲掴みにしたまま、無我夢中で割れ目を舐め回す。とはいえ、その心情自体は理解できる。ニーソックスに引き締められた美脚は、あまりにも妖艶だ。俺が奴の立場でも、理性を保てるかはわからない。
「くそ、いいなあSさん……!」
「会員番号振りかざされちゃ譲るしかねぇが、俺も舐めたいぜ!」
「気持ちよさそうに腰揺らしやがって。父親みたいな歳の親父に、マンコ舐められて興奮すんのかよ!?」
 他の客は、男の行為を羨みつつ、せめてもの憂さ晴らしに沙綾香を野次る。男の舐りで鈴の音が鳴り響けば、大いに笑い飛ばす。

「……あはっ。あっち、盛り上がってる」
 沙綾香の状況に気づき、桜織が笑みを浮かべた。彼女は、翻弄されるばかりの沙綾香とは違い、明らかに場を支配している。今はダーナル相手に口で奉仕しているが、当のダーナルは床に腰を下ろし、両脚を投げ出して身を委ねきっている状態だ。
「ヘイ、プリティガール。やめないでくれよ、もう少しで気持ちよくなれるんだ」
 顔中から汗を垂らしつつ、ダーナルが囁く。すると桜織はダーナルに向き直り、スカートをたくし上げながらその上に跨った。
「いいよ。そろそろ、こっちにちょうだい」
 頬を紅潮させてそう囁き返す姿に、清楚さなど影もない。
 桜織の小さな手が剛直を支え、未熟な尻が沈んでいく。桜織は、沙綾香以上に小柄だ。マーキスとの体格差となれば、成人と小学校低学年のそれに近い。普通に考えるなら、性器の挿入など無謀だ。だが、それは果たされる。桜織自身の意思と、その数十キロの自重でもって。
「おおお゛お゛お゛お゛っ!!!!!」
 怒張が半ばほど入り込んだ時点で、桜織は凄まじい声を漏らした。咆哮、と表現した方が近いかもしれない。俺に背を向ける格好だから顔は見えないが、どういう表情をしているのかは想像がついた。
「ひいっ、すごい、すごいっ!! 太くて、おっきくて、こんなに硬い! もう、一番奥まで届いちゃった!!」
 桜織は興奮気味に訴えながら、腰を上下に打ちつける。黒い極太が白い尻肉の中へと、より深く入り込んでいく。
「あはっ、あんっ、あんっ!! エラの張ったカリ首が、奥の襞をゾリゾリ擦るのっ!! こんなの、日本人じゃ味わえない……気持ちいいよおっ!! だめだめイキそうっ、あ゛ァあ゛イグぅううっ!!!!」
 桜織の興奮は止まらない。汁を飛ばしながら腰を上下させ、絶頂を訴える。その言葉を裏付けるかのように、リン、リン、リン、リン、と鈴の音が鳴り響く。
「がはははっ、こりゃあ堪らんぜ! プッシーは小ぶりだが、よく濡れてやがる!」
 マーキスも大笑いだ。何度も膝が浮いているところからも、相当な快感が伝わってくる。
「そりゃいいな。お前でそれなら、俺らのコックだとさらにキツく思えるわけだ!」
「いいねえ、早く替わってくれよ!」
 他の黒人共も、桜織のセックスを前に興奮を隠せない。そして、その願いはすぐに果たされることになった。
「んあ゛ァっ、あん、あ゛んっ!! また、中で大きく……ほぁああ゛っ!!! おっ、奥に当たるっ、あ゛っ、あああ゛っ、い゛いいっ!!」
 桜織は、自らの意思で膣奥を虐め抜く。マーキスの肩に両手をつき、腰を上下に振る様子は、完全に逆レイプの有り様だ。
「ぬぐうううっ……おいおいおい、マジかよ!! この俺が、こんなガキに……ファアックッ!!!!」
 マーキスは、さっきの喜びぶりから一転、屈辱に顔を歪めていた。連中は強姦魔だ。女性に主導権を握られ、絶頂させられるのを屈辱と感じるんだろう。だが、そんな抵抗も長くは続かない。歯を食いしばって上半身を起こしたところへ抱きつかれ、そのまま強烈な腰遣いで絶頂へと導かれる。
「あ、あ、きた、きたあっ!! すごい、ああ、すごい量!! なにこれえっ!?」
 桜織の言葉を聞けば、射精が始まったことがすぐに判った。
「ぬぐうう、ぐうあああっ……!!」
 マーキスの反応は珍しいものだ。いつもケダモノじみた笑みと共に精を注ぎ込むあの男が、床の上で拳を握りしめている。
 そのまま数十秒が経過したところで、ようやく桜織が腰を浮かせた。開ききった割れ目から、次々に精液があふれ出し、マーキスの脚を白く染めていく。
「すっげぇ……!!」
「いや、本当にこれは……!!」
 客はその一連のプレイを前に、言葉を失くし、操られたように投票ボタンを叩くばかりだ。

「大したもんだな、お前のお友達は。俺もイキたくなっちまった。そろそろ、ラストスパートといこうぜ!」
 モーリスが沙綾香の頭を掴み、前後に動かす。
「んぶオ゛っ!? ヴォエ゛ッ、うお゛、んぐっ、うぉお゛ええエ゛ッ!!」
 沙綾香は目を見開き、苦しそうな声を漏らす。奉仕を突然強要される事への困惑。公然で大股を開かされたまま、秘部を舐められる恥辱。その両方が原因だろう。だがその反応が、結果としてモーリスを満足させる。
「おおおいいぞ! 喉がいつもより窄まって、カリ首にコリコリ擦れやがる! いいぞ、イクぞ! 全部呑み込めよっ!!」
 モーリスは吼えるように叫ぶと、沙綾香の頭を引き付けたまま射精に入る。至近距離で見れば、どくっ、どくっ、と精液が送り込まれているのが感覚でわかった。それが数十秒たっぷり続くんだから、人間離れも甚だしい。
「ぶはっ!!」
 ようやく怒張が引き抜かれた時、沙綾香の口内は白濁で満たされていた。栗の花とも形容される独特の精液臭が、猛烈に臭ってくる。それを口一杯に注がれば、精液以外の情報を脳が処理してくれないだろう。
 しかし、周囲はいつもそんな沙綾香に、新たな情報を与えていく。
「ふふふ。口にザーメンを注がれた途端、また愛液があふれてきたぞ。もうチンポが欲しくて仕方ないんだろう?」
 沙綾香の割れ目に舌を這わせていた男が、醜悪な笑みを浮かべた。
「マンコがヒクヒクしてるもんな、ヤリてぇんだろ? だったら、お願いしてみろよ。犯してください、お願いしますってよ!!」
 他の客も便乗し、沙綾香に恥辱の仕草を迫る。
「そ、そんな……の……っ!」
 沙綾香は、露骨に戸惑いを見せた。また、瞳が揺れている。決断の枷になっているのは、俺の存在らしい。
 だが、彼女が欲求不満なのは事実だ。彼女はここへ来るまで、何時間にも渡って焦らされつづけている。思いきり快感を得たいという気持ちが、ないはずがない。
「どうした、早くしろよ!」
 客の指が勃起したクリトリスを圧し潰し、割れ目に沈み込むだけで、沙綾香の喉から悲痛な声が漏れる。
 さらに、沙綾香が視線を逃がした先には、投票ボタンの結果を反映するモニターがあった。沙綾香は現在36票、対する桜織は100の大台に乗っている。トリプルスコア……もはや、迷っている暇はない。
「ぷ……プリーズ、ファッ、ク……ミー……」
 沙綾香は顔を赤らめながら、黒人共に向けて懇願する。黒人共は笑った。だから、聞こえてはいるはずなんだ。それでも奴らは、頷かない。
「ああん? なんだ、よく聴こえねぇぞ」
 レジャナルドがわざとらしく耳に手を当て、沙綾香の方に身を傾ける。
「それじゃ聴こえんだろう。もっと大きい声で言いなさい!」
「姿勢もなってねえなあ。奴隷の懇願っつったら、土下座だろ!?」
 サディズムに国境はない。ステージを見上げる客の笑みもまた、黒人共に瓜二つだ。
 ギリッ、と奥歯を鳴らす音がする。ミニスカートの横で、二つの拳が握りしめられる。
 そして沙綾香は、床に膝をついたまま頭を下げ、すうっと息を吸い込む。
「…………プリーズ、ファック、ミーッ!!」
 強いられた渾身の叫び。それは、フロア内に響き渡った。桜織に夢中だった連中すら振り返ったほどだ。
 そして、笑いが沸き起こる。ゲラゲラと、心底楽しげに。一生で何度出遭えるかという美少女に、生まれたままの姿で土下座させ、セックスを懇願させるんだ。性癖の歪んだ人間にとっては、さぞや愉快なショーだろう。
「おーおー、あんな大声で! まったく、今どきの女子は恥じらいというものがないな!」
「ですなあ。ウチの娘があんなことをしたら、情けなくて泣けてきますよ!」
「まあまあ。色狂いの“ビッチ”なんですから、仕方ないでしょう。我々はせいぜい、愛する人間がこの倶楽部の標的にならないよう、うまく立ち回っていきましょう」
 飛び交う野次にも、いつも以上の悪意が篭もっている。微かに震える沙綾香の背中や、握り込まれる足指も、連中にしてみれば興奮を煽る材料だろう。
 もちろん、嬉しそうにしているのは黒人共も同じだ。見開いた目を血走らせ、鼻息を荒げ、そり勃った怒張を震わせている。数時間で禁断症状が出るほどの絶倫連中が、丸一日お預けを喰らってるんだ。すでに性欲は限界だろう。それでも沙綾香に飛び掛からないのは、性欲をも上回る嗜虐心からか。
「オーケイ」
 レジャナルドが沙綾香に近づき、腕を取って立ち上がらせる。わざとだろうが、俺の方に顔が向く形でだ。
「…………っ!」
 沙綾香は、一瞬俺と合いそうになる視線を逸らした。その眼元から続く、涙の線が痛々しい。レジャナルドはそんな沙綾香に中腰の姿勢を取らせ、背後に回った。
「へへへ、すげぇな。プッシーが充血しきって、膨らんでやがる」
 奴は、掴んだ逸物を割れ目に押し付けているようだが、なかなか挿入しない。腰を進めるフリはするが、逸物は尻や股の方に逸れていく。
 とはいえ、それが見所になってしまうのが巨根の恐ろしいところだ。尻側に逸れる時、怒張の先端は尻肉の膨らみを越え、背筋にまで達する。股座から黒い棒が覗く様は、沙綾香から逸物が生えているかのようだ。客はそのジョーク行動を笑いながらも、これから挿入されるペニスの大きさを、改めて思い知ったに違いない。
「……早くしてよ……」
 沙綾香は、両手を膝に置いて姿勢を安定させながら、苛立たしげに後ろを振り返る。するとレジャナルドは、それを待っていたと言わんばかりに動きを変えた。片手で逸物を掴み、片手で沙綾香の腰を掴んだまま、ゆっくりと腰を進める。
 今度こそは、間違いなく挿入されているらしい。それは、沙綾香の顔を見れば明らかだ。
「あ……っあ」
 開いた口から声を漏らし、斜め上を凝視する。初めて黒人のペニスを味わうかのような反応だ。レジャナルドはその反応に笑みを浮かべつつ、両手を腰に添えた。そしてその手を引きつけつつ、一気に腰を送り込む。
「はアアァッッ!?」
 沙綾香の反応は、激しかった。目と口を大きく開き、腰を震わせる。リン、と鳴り響く鈴の音に、何の違和感も抱けない。
「ひひひっ! あいつ、挿れられただけでイキやがった! まだ二十歳にもなってねぇガキのくせに、ポルチオが開発されきってるらしいな?」
「ああ。音が無くても判るイキっぷりだな。気持ちよさそうな顔しやがって!」
 客の言葉は腹立たしいが、納得してしまう。確かに、沙綾香は気持ちがよさそうだ。眉を垂れ下げて「本意ではない」と訴えているのが、せめてもの救いか。
 挿入を果たしたレジャナルドは、意外にもすぐには動かない。腰から手を離し、沙綾香の胸をブレザー越しに揉みしだきながら、密着状態を保っている。俺も沙綾香とセックスした時、よくやった。挿入後にああしてじっとしていると、膣がペニスに纏わりついてくるんだ。
「クククッ、締まってきた、締まってきた! ヒクヒクしながら吸いついてくるこの感じ、最高だぜ!」
 数秒経って、レジャナルドが嬉しそうな声を上げた。俺でさえ、あのフィット感には歓喜したものだ。奴ほどのサイズとなれば、なおさら気持ち良いだろう。
 
 レジャナルドは、本格的に腰を使いはじめた。沙綾香の下腹を抱え込み、腰を思いきり打ちつける。パァンパァンという音が響き渡る。
「や……そこ掴むの、やめっ……んぐうう゛っ!!」
 沙綾香はレジャナルドの手を掴んで抵抗するが、それも数秒のこと。
「ぃッ、うぐぅうーーッ!!!」
 レジャナルドがグッグッと腰を押し込む中で、歯を食いしばりながら痙攣する。鈴の音で絶頂を明かされながら。
 俺は、思わず生唾を呑んだ。他人の手による沙綾香の絶頂は、これまで嫌と言うほど見てきた。ただしそれは、常にモニターや、分厚いガラス越しでのことだ。匂いも、熱気すら伝わってくるこの距離で目の当たりにすると、本当に胸が締め付けられる。動悸が激しく、心臓が爆発しそうだ。
 その緊張が伝わったのか。沙綾香が一瞬、俺を見る。恥辱に歪んではいるが、俺のよく知る彼女の顔だ。愛おしい。今すぐ彼女を抱きすくめたい。だが、それは叶わぬ夢。
 そんな俺に向け、レジャナルドは舌を出した。
「ひっひっ、きたきた。この、イった時の締め付けがまた堪んねぇや。だがようサヤカ、お前だってもう俺のコックから離れらんねえだろ? ジャパニーズの短小じゃ、“ここ”をカリで抉るのは無理だろうからな!」
 当てつけがましくそう言いながら、より激しく沙綾香を犯す。肉のぶつかる音と、攪拌される水音が秒以下の速さで繰り返される。
「んう゛ぃっ!! はっ、はぁっぐ、うっ……っふうっ、ひっ! ぅうう゛、うう゛う゛っ!!」
 沙綾香は必死に声を殺そうとするが、絶頂直後の敏感な状態では耐えきれない。太腿は痙攣し、腰は激しくうねる。突き込みを嫌がっているのか、あるいは無意識に迎える動きをしているのか。
 リン、リン、と鈴の音が鳴り、とうとう沙綾香の上体が崩れかかった。だが、レジャナルドはその下腕を掴んで突き続ける。無理を押し通してのセックス。当然、変化が起きないはずがない。
「ああぁダメ、無理……無理ぃい…………っ!!」
 沙綾香は俯き、長い髪の中に顔を隠した。
「んだよ、おい。顔が見えねぇぞ!」
「まあまあ、そのうち頭を上げるでしょう。それより今は、カラダの方を堪能しましょう。乳房が揺れて、肋骨が浮いて……絶品ですよ?」
「確かに、これは凄い。こういう安易な表現は嫌いですが、完璧なスタイルとしか言いようがないですなあ!」
「同感だ。めちゃくちゃ細ぇのに柔らかそうで、出るトコは出てよ。男を発情させるためのカラダって感じだぜ!」
 客は今にも涎を垂らしそうだ。その視線に晒される沙綾香の喘ぎは、刻一刻と激しくなっていく。よく聴けば、ピストン音も変わっているようだ。さっきまではブチュブチュ、という感じだったものが、グプグプという響きに変わっている。その意味はわからないが、沙綾香を追い詰める結果に繋がっているのは間違いない。
「はぁ、はぁっ……あ、あっあ……ぐっ、んぐっ……ああああっ!!」
 沙綾香の我慢も限界のようだ。中腰が深まり、脚の震えが酷くなる。腕を引き絞られていなければ、そのまま崩れ落ちているに違いない。
「いつも以上に感じまくってんな。大好きな先生と、同郷のサルに観られながらよ!!」
 レジャナルドはそう茶化しながら、ここで最後の追い込みに掛かった。掴む場所を上腕に変え、強引に沙綾香の背を反らせた上で、思いきり腰を叩き込む。一時的に聞こえづらくなっていたパンパンという音が、再び大音量で響きはじめる。
「はああぁっ!? やめ、激し……っ!!」
 沙綾香は目を見開き、レジャナルドの下腹を手で押しやるが、ピストンは一切緩まらない。
「くあっ、ああっ!! あーっ、あーーーっ!!!」
 喘ぎ声が、泣き声に変わる。華奢な腰からつま先にかけてが、絶頂へ向けて一直線に進んでいくのがわかる。
「…………みな……ぃ、で…………」
 最後の最後、かろうじて聴きとれる声でそう囁いた直後、沙綾香は震え上がった。
「はァ……んっ!!!」
 顔が天井を向くほどに背を反らし、全身で大きな弧を描きながら、ブルブルと痙攣しつづける。股間から流れ出る体液の量から見て、潮も噴いたのか。リン、という澄んだ鈴の音が白々しく聴こえるほど、深い絶頂だ。
「はははははっ! すんげぇイキ方してんな、キメセクの最後の方みてぇだ!」
「立ちバックでハメ潮とか、よっぽど気持ちよかったんだな!」
 客は投票ボタンを押し込みながら、沙綾香の絶頂を口々に揶揄する。
「深く絶頂したものですね。溜まりに溜まった肉欲を一気に解放した時の快感は、他に並ぶものがございません」
 俺の横でも、端塚がワイングラス片手に笑みを浮かべていた。すべては計画通り、と言わんばかりだ。
「どうだ、俺のコックは格別だろ? 昨日お預けされてた分、余計に感じちまうんだよな? いいぜ、たっぷり味わわせてやる。好きなだけイけ!!」
 レジャナルドはそう叫びながら沙綾香の肩を掴み、激しいピストンを再開する。
「あああぁ……まぁ……待って、ぇ……い、いまっ……イッたばっか……んはっ、ああああっ!! あッ、あッ、あッ、あッ!!!」
 沙綾香は明らかに嫌がっていたが、太い腕で両肩を掴まれては逃げられない。歯並びが見えるほど口を開き、視線を上空に投げたまま汗を垂らす。リン、リン、と鈴の音も鳴っていた。さっきは白々しく思えたのに、今はその音が恐ろしい。その音が鳴るたび、沙綾香の絶頂を理解してしまう。
 レジャナルドは、気持ちよさそうにセックスをこなしていた。長大な逸物をたっぷりと引き抜き、叩き込む。ブジュウッ、ブジュウッ、と凄まじい音をさせながら。
「いいぜ、いいぜ……そろそろだ。フーッ、フーッ……おおぉし来たぁっ!! たっぷり注ぎ込んでやるからなッ!!」
 奴は喚きながら腰を打ちつけ、腰を密着させて射精に入った。黒い肌の中、よく目立つ白い眼が俺を見て笑う。
「ううう゛……!!」
 沙綾香は俯きがちになり、歯を食いしばっていた。
 サイズ違いの剛直を奥まで突っ込まれ、おそらく子宮口に密着した状態で、好きでもない男の子種を注がれる。しかもそれを、ほんの数メートルという距離で俺に見られるんだ。どんな気分になることだろう。

「おいおい……まだ出してんのか、アレ?」
「ウシか何かみたいだな……」
「よく見りゃ、チンポだけじゃなくて、タマもエグイほどでけぇからな。そりゃ量出るわ」
 5秒経っても射精しつづけるレジャナルドを見て、客がどよめきだす。そんな中、たっぷり10秒以上が経ったところで、ようやく腰が引かれた。同時に肩も解放され、沙綾香はその場にへたり込む。
「おい。ザーメンどんだけ出されたか、見せてみろよ!」
 客は、僅かな休息さえ許さない。想像を超える射精量を見たい一心で、疲労困憊の沙綾香に無理を強いる。
「…………っ。」
 沙綾香は震えながら中腰に戻り、スカートをたくし上げた。すぐに人垣ができ、肝心な部分は俺の視界から隠れるが、沙綾香にとってはむしろ救いだろう。
「うおおお、すげぇ!!」
「量もやべえけど、濃さも半端ねぇな。ヨーグルトみてぇだ」
「うほほ、これは! 一度で妊娠確実だな」
 客から驚きの声が上がる。その好奇の視線を受けながら目を閉じる沙綾香は、ひどく令嬢らしい。元々が上品な顔の作りだし、汗の滴る様子が奥ゆかしさを増している。そんな令嬢を前に……いや、だからこそか、客はより一層の無様さを求めた。
「よお、コッチよく見えねぇぞ!」
「もっと良く見えるように、ケツ向けて穴拡げろ!」
 沙綾香の正面から離れた場所にいる客が、不満を口にする。沙綾香は迷惑そうに眼を開くが、便乗して大勢の客が騒ぎ出すと、その要求に従わざるを得なくなる。
 膝立ちになり、尻を向け。
「もっとケツ上げろ!」
「もっと指で、グバーッと拡げんだよ!!」
 客の命令通りに、あられもない姿を晒す。
「ぎゃはははっ! すげぇなこの絵面よ!!」
「脚の形はサイコーなのに、マンコはグチャグチャ、ケツはガバガバ。調教ってこえー」
「おっ、見ろよ。また奥から垂れてきたぜ!」
「うっへえ、また結構出るな。グラス半分ぐらいねーか、この量……」
 客は、野次を自重しない。思いついたままに感想をぶつけ、沙綾香の心を抉っていく。
 ひどい状況だ。ピンクの粘膜からぽたりぽたりと滴る粘液が、俺には沙綾香の涙に思えた。


                 ※


 恥辱に震える沙綾香の背後で、モニターの数字が変わっていく。沙綾香側の投票数も増えてはいるが、桜織の伸びには届かない。
 桜織は、黒人とのセックスを堪能していた。どう見ても無理のあるサイズのペニスに跨り、笑顔で腰を振っている。
「あはっ、すごぉい……子宮、ジンジンする……っ!」
 桜織が自ら下腹を刺激しながら、さらに腰の上下運動を早めた。パンパンパンパンという音が響き、乗られる側のジャマールが顔を顰める。
「ぐうううっ!! すっげぇ、搾り取られる……!!」
 その悲鳴に近い声を聴き、桜織は笑みを深めた。そして、さらに激しく責めたてる。暴れるジャマールの足首を抱え上げ、完全優位の格好で腰を振る。
「ジーザスッ!!」
 ジャマールはまた呻いた。歪んだ顔は、悲壮とも歓喜とも取れるものだ。
「へへへ、ビッチここに極まれりってか」
「よう。まるで逆レイプされてるみてぇだぜ、兄弟!」
 ダーナルやダリーからそう茶化されても、ジャマールに反論する余裕はない。桜織が、目を見開き、舌を突き出し、いよいよ無我夢中という表情で『犯し』にかかったからだ。
「お゛っ、お゛、お゛っ!! ほおおおっ、ふおおお゛っ……!!」
 声にも、顔にも、腰の振り方にも、正気が感じられない。その小さなモンスターの性器に捉えられたまま、ジャマールが白い歯を食いしばる。
「アアアアオウッ、出る、出るぞっ!! このリトルプッシーの中に、思いっきりぶちまけるぞ、いいんだな!?」
 最後の矜持か、恫喝に近い口調でそう叫ぶが、貪欲な桜織が今さら嫌がるはずもない。
「いいよ、来て……私もイクから、一緒にイこっ!! んっ、ふ……あっ、ビクビクしてる……出して、出して!! 中に、濃いの全部注いでえっ!!! ……あはっ、出てるっ! ドクドク、こんなに……あ、あ゛、あ゛っ、すごおいいっ!!!」
 桜織は中出しを望み、いざ射精の時が来れば、腰を落として深い結合をキープしてみせる。小柄な子だけに、ジャマールの怒張すべては呑み込めない。3割ほどは外に余っている。それでも、膣奥まで届いているのは疑いようもなかった。正真正銘の膣奥射精だ。
 桜織は、ジャマールが息を吐ききってからも1分以上余韻を楽しんでから、ようやく腰を浮かせはじめる。肉付きのあまい尻の間からは、すぐに白い物が零れ落ちた。
「おおっ……!」
 背徳的な光景に、客から溜息が漏れる。すると桜織は、そんな客の方を振り返りつつ、尻だけを高く浮かせてみせた。より割れ目が客の目に入りやすいように。僅かに強まった腹圧で、膣を満たす精液があふれ出すように。
「エロいな……」
「ああ、身体つきはまるっきりガキなのに。なんでこんなにエロいんだ!」
 客は桜織を見ながら、前傾姿勢になっていた。今にも飛び掛かりそうな勢いだ。そしてその空気は、沙綾香を囲む客にも伝播していく。
「せっかくだしよ、横並びにして比べようぜ!」
 誰からともなく、そういう意見が出た。恥じ入る沙綾香と、奔放な桜織。タイプの違う少女が2人いれば、当然の流れではあるが。

 沙綾香と桜織が、ステージ外周……客の方を向いて這う格好を取らされる。
「ああして並んでるとよ、姉妹みてぇだな」
 客の1人が、ステージを見上げてそんな感想を漏らした。確かに、そういう感じがする。高給取りの親を持つ、仲良し姉妹。妹の方は気楽に笑みを振りまき、姉の方は唇を引き結んで涙を堪えている、というところか。
 そんな2人の背後に、山のような巨躯が迫る。“妹”の背後についたのはアンドレ。“姉”の背後についたのはドミニクだ。連中は怒張を扱き上げてアピールしてから、目の前の腰を掴み、尻を掲げさせる。そして、一気に突き込んだ。
「ほおおお゛っああ゛ッ!!!」
 桜織から、凄まじい声が上がった。表情も普通じゃない。目を細め、縦に開いた口から舌を飛び出させる。周りの視線など一切気にせず、ただ黒人のペニスを受け入れた快感をそのままに表している風だ。
 一方、沙綾香は露骨に周りの目を気にしていた。極太が挿入されるその瞬間も、結んだ唇を開かない。眉間に皺を寄せたまま、床だけを睨みつけている。
 まさに、対照的。そんな2人が横並びで犯される様に、客は大喜びだ。
「おいおい“妹ちゃん”、すげぇツラしてんな! ちょっとは“お姉ちゃん”を見習えよ!」
「いやいや。“お姉ちゃん”こそ、“妹ちゃん”みてぇに楽しめって。黒人のぶっといの突っ込まれて、気持ちよくって仕方ねぇんだろ?」
 2人の関係を姉妹と見立てて野次を飛ばす。それを聞いて桜織が笑い、沙綾香を見た。逆に沙綾香は、俯いて床だけを見つめている。ただ、それで視線は隠せても、絶頂までは隠せない。ドミニクが7度目に腰を打ちつけた直後、リン、と鈴の音が鳴る。そしてちょうどその辺りから、彼女の反応が変わりはじめた。
「フーッ、フーッ……んんっ、ふっ、んっ……!!」
 口を閉じたまま視線を揺らし、歯を食いしばったまま顔を振り……そうして、少しずつ追い込まれていく。
「ひひひっ、そろそろ我慢の限界か?」
 反応の変化に気付いてか、ドミニクはより激しく腰を打ちつけはじめた。
「んぐ、あ、あ゛っ!!」
 沙綾香が顎を浮かせたと同時に、鈴の音が絶頂を知らしめる。
「へへへ、出来上がってきたな!!」
 ドミニクは、待っていたとばかりに腰を掴み直し、膝立ちから中腰へ体勢を変える。当然、沙綾香も腰を浮かせる格好となる。何度も絶頂させられている状態で、それは辛い。
「やっ、やめ、て……!!」
 沙綾香は消え入るような声で呻きながら、震える脚を閉じ合わせた。女の子らしいその仕草には、彼女の羞恥がよく表れている。そして、ドミニクがそれを茶化さないはずもない。
「おら、もっと足開けよ。いつもハメてるみてぇによ!」
 口汚く叫びながら、沙綾香の腿をがに股になるまで割りひらく。
「ははははっ、いい格好だぜ!」
「どれだけスタイルのいい美少女でも、ああなっては形無しだな!」
「ああ、スラムのストリップ嬢以下だ!」
 客の野次に、沙綾香は歯を食いしばる。だがそれも、やはり数分ともたない。当然だろう。ドミニクが膝立ちから直立に変わり、腰を使いやすくなったせいで、セックスのハードさが増しているんだから。
「あ、はっ、あっ……あああっ、ああああいや、いやあっ!!」
 沙綾香は脚をバタつかせはじめた。片足の踵で空を蹴り上げる形だ。その激しい抵抗を受けても、ドミニクは動きを止めない。勝利を確信したような顔のまま、沙綾香の細い腰を犯し続ける。
「んっ、んぐっ……んんん゛ん゛ん゛っ!!!」
 沙綾香の喉から悲鳴が上がり、床についた両脚がビンと伸びる。そして同時に、鈴の音が鳴り響いた。誰の目にも明らかな、深い絶頂だ。
 客から嘲笑が沸き起こり、ドミニクも鼻で笑い飛ばす。
「気持ちよさそうにイキやがって、そんなに俺のコックがお気に入りかよ? いいぜ、なら大好きなザーメンをくれてやらあ!!」
 奴がそう宣言してスパートを掛けると、アンドレもまた責めを強めた。肉のぶつかる音が鳴り響き、沙綾香の目元が激しく引き攣る。桜織の声も狂気じみてくる。
「おら、いくぞ! プッシー締めて、最後の一滴まで搾り取れよ!」
 そして、黒人2人は射精に入った。大木の幹のような腰が震え、ドクドクと精液を注ぎ込んでいくのがわかる。
「あ、あ、あああ……っ!」
 桜織と沙綾香の発した声は、よく似ていた。そして、表情も。
「はっはっは、いい顔してやがんなあ!」
「ああ。特に右の女よ、あれ、中出しされながらイってんじゃねぇか?」
「やっぱそうだよな。あんなに渋るポーズしてたくせに、実は気持ちよくて仕方なかったってか!」
 喜びを露わにする桜織と、脱力したような沙綾香。客はそのどちらにも興味を示すが、野次は沙綾香にばかり飛ぶ。そうすれば沙綾香が顔を歪めると解っているからだろう。
 そして、沙綾香を追い詰めようとするのは黒人共も同じだ。ドミニク・アンドレと交代したジャマールとトラバンは、背後から挿入しつつ互いに横を向く。沙綾香と桜織が向かい合うように。
「……ッ!!」
 沙綾香の顔が強張った。彼女にしてみれば、たとえ野次を受けたとしても、客に顔を見られていた方がマシだろう。
「ふーっ、ふーっ……お、う゛っ! んふっ、あ、ああ……ッ!!!」
 最初こそ耐えていた沙綾香も、ジャマールがサディスティックな表情で腰を打ちつける中で、次第に表情を崩していく。何度も絶頂して、敏感さが増しているせいだろう。
「やあっ、あ、あ……んっくううう゛っ!!」
 沙綾香の歯が食いしばられた直後、鈴の音が鳴り、客からまた笑いが起きる。
「今のは本気でイッたな。さ、今度はお前の番だ。お友達以上のイキ顔を見せてみろ!」
 トラバンもほくそ笑み、桜織の腕を掴みながら腰を打ちつける。沙綾香と違い、桜織には感情を隠す気もない。
「おお゛っ、深いィ゛っ!! お゛っ、おおお゛っ、ほお……おっおお゛おぅ゛っ、そこ、そこおぉっ!! んほぉっ、ほおおおおっ!!!」
 大口を開け、満面の笑みで快感を訴える桜織。彼女は小柄なため、犯すトラバンと全く体格が合っていない。今はローファーでかろうじてつま先立ちしている状態だが、その伸びた脚を震わせながら、全身で快感を貪っている。それを目の当たりにして、沙綾香の表情が強張った。
「エロい面ァしやがって。だが、ああなるよなあ。どんな女でも、最後にゃ俺らのコックから離れられなくなるんだ。なあ? お前だって、もう中毒なんだろ?」
 ジャマールが沙綾香の耳元でそう囁きながら、一歩前に出る。それを見てトラバンも前へ歩を進め、沙綾香と桜織の距離が縮まっていく。女性らしい沙綾香の胸の膨らみを、平坦な桜織の胸板が圧し潰す。
「あんっ……!」
「ふう、あ……っ!?」
 甘い声が上がり、鈴の音がフロアに響いた。
「ははははっ、乳首が擦れただけでイっちまってやがる!」
「ああ、とんだ変態ぶりだぜ!」
 客からすかさず野次が飛ぶ。
「ふふふ、変態だって。でも、しょうがないよね。気持ちいいんだもん」
 桜織はその野次を気にも留めず、沙綾香に囁きかける。さらに彼女は、突かれた拍子に開いた沙綾香を唇を奪ってみせた。
「ん、れあっ……あ、あえ、えああ……っ!!」
 沙綾香は驚いて口を離そうとするが、密着した状態では逃げ場がない。一方の桜織は、積極的に舌を絡ませ、ディープキスを強いる。
「おっ、今度はレズかよ!」
「ほほ、極上美少女の絡みは見栄えがいいな!」
「しかも、ゴリラみてぇな黒人に挟みつぶされながらだぜ。画のインパクトがすげぇや!」
 客は大いに盛り上がり、沙綾香と桜織の両方にポイントを加算していく。
 リン、と鈴の音が鳴った。沙綾香と桜織の頭は密着しているため、どっちの機械から鳴った音なのか判別はつかない。だが、目を見開く沙綾香と、そんな沙綾香を前に目を細める桜織の反応を見れば、答えは明示されているようなものだ。
「へへへ。こいつ、レズプレイで感じてやがる」
「そっちもか? このガキもだぜ、膣のうねり具合が一段とエロくなりやがった」
 犯し役のジャマールとトラバンが顔を見合わせて笑い、沙綾香達の腰を掴み直す。すると桜織は、自由になった左手を沙綾香の股座へと伸ばした。場所的にクリトリスを弄っているのか。
「れあっ!!?」
 沙綾香は不自由な悲鳴とと共に腰を震わせ、鈴の音を鳴り響かせる。明らかに桜織を上回る絶頂ペースだ。
「ふはっ、はぁっ、はあ……い、委員長、やめて。こんな、足引っ張るようなこと……。2人で4000回以上イッたら、罰ゲームなんだよ……?」
 唇が離された瞬間、沙綾香が桜織に哀願する。だが、桜織は薄笑みを湛えたまま、沙綾香のクリトリスから手を離さない。
「別にいいじゃない。罰ゲームが何かは知らないけど、きっと興奮できる事でしょ。思いっきり犯されるのか、モノ扱いされるのか……どっちにしても興奮するわ。沙綾香だってそうでしょ?」
「ち、違っ……!」
「うそ」
 沙綾香の否定を、桜織が切って捨てる。
「沙綾香。前から思っていたけれど、貴女って嘘が下手よ。本当の気持ちがすぐ顔に出る。もっと犯されたい、もっと辱められたい、もっと快楽に溺れたい──そう、顔に書いてあるじゃない」
 諭すように語る桜織の顔は、エレベーターで初めて見た時のイメージに近い。
「ちっ、違う、犯されるのは嫌! こんなトコ、今すぐ出たいよ!!」
 沙綾香は目を剥き、必死になって否定する。だが皮肉なことに、まさにその瞬間、ジャマールの逸物がひときわ力強く捻じ込まれた。
「……くんんッ!!!」
 沙綾香の背中が弓なりに反り、ぶるっと震え上がる。そして、当然の事のように、鈴の音が鳴り響く。桜織が、ギャラリーが、『それ見たことか』という笑みを漏らす。
「ち、違う、違うっ!!」
 沙綾香は叫び、顔を振る。痛々しい姿だ。心がいくら踏みとどまろうと、肉体に裏切られてはどうしようもない。それを身を以って知っているからか、祐希、千代里、藤花の3人も、苦い顔で舞台を見上げている。
「素直になればいいのに。こんな幸せ、他にないわよ?」
 桜織は続けてそう囁き、自ら腰を振りはじめる。より深く、より強く、黒人の剛直を膣で呑み込めるように。
「ふ、あ、あっ……あああ゛あ゛きたああ゛っ!! おっおっ、奥っ、ゴリゴリ……きひいいい゛っ!!!」
 桜織の品ある顔はみるみる歪み、快楽の叫びを迸らせる。リン、リン、と鈴の音が断続的に鳴り、立て続けの絶頂を証明する。それを間近で見せつけられる沙綾香は、凍りついていた。唖然とする気持ちもあるだろう。だが同時に、羨む気持ちもあるように思えてしまう。少なくとも彼女の肉体は、快感を求める動きをはじめていた。少しずつ、少しずつ蠢き、絶頂へと近づいていく。鈴の音が桜織のそれと重なるのに、長くはかからない。
「あ、あ、あ……だめっ、いっちゃ……!!」
「あはあっ、ああおおお゛っ!! いいくっ、いくっ、あああああ゛っ!!!」
 2人の美少女が、不似合いなほど大口を開け、快感を訴える。鏡写しのように指を絡ませ、腰をうねらせながら。


                 ※


 親友2人を向かい合わせで犯す。その悪質なやり口が気に入ったのか、黒人共は犯し役が交代しても、体位を変えようとはしなかった。一人が射精すれば、また別の1人が背後から挿入し、沙綾香と桜織を密着させる。
 3人目のレジャナルドは、特に悪質だった。奴は思うさま沙綾香の膣を堪能しながら、血走った眼で尻の穴を凝視していた。
「へへへ。俺のを突っ込まれるたびに、ケツがヒクヒクしてるじゃねぇか」
 奴はそう言うが早いか、沙綾香の尻穴に指を突っ込んだ。中指と人差し指の二本だ。
「ふぁああっ!?」
 完全に不意打ちだったんだろう。沙綾香は目を見開き、背後を振り返る。その初々しさの残る反応は、客にとって格好の笑いの種だ。たちまち投票ボタンが押し込まれ、沙綾香の得票数が伸びていく。だがそれは、沙綾香の顔を屈辱に歪ませるだけだ。
「おうおう、美味そうに指を締め付けやがって。いいぜ、アヌスにもくれてやるよ!」
 レジャナルドは大声でそう宣言し、割れ目から逸物を引き抜いた。そして滴るほどの粘液に塗れたそれを、躊躇なく肛門にねじり込む。
「ふッ、ぐううんんんっ……!!」
 後ろに挿れられた瞬間、沙綾香は伸びあがった。漏れた声も妙だった。嫌がってみせようとするも、甘い声を隠しきれなかった……そんな感じだ。
「あはっ、気持ちよさそう。お尻に入ってるんでしょう?」
 薄い胸で沙綾香の乳房を潰しながら、桜織が囁く。子供が親相手に去勢を張るような構図だが、圧されているのは明らかに沙綾香だ。
「後ろって、そんなにいいの?」
 続けて桜織が囁くと、沙綾香は大きく首を振る。年頃の女の子が、それも友人に向かって、『肛門で感じる』などと告白できるはずもない。だが、レジャナルドはその想いを嘲笑うように挿入を深めた。20センチを悠に超える怒張が、根元まで肛門に入り込む。直腸奥のさらに先まで入り込んでいるのは間違いない。
「ひひひっ、えらくスムーズだ。すっかり結腸に嵌まり込むルートが出来ちまってらあ」
 レジャナルドの発言で、場がざわついた。
「結腸……まさか、直腸から繋がるS字結腸か!?」
「うっへえ。そんなとこ、よく生のチンポで届くな。ま、あのデカチンなら有り得るか」
「いやいや。届くのも驚きですが、問題はあの太さですよ。あの調教師、亀頭なんかテニスボース大じゃないですか。そんな物を結腸に嵌め込まれるなんて……」
「た、確かに!」
 客が興奮気味に言葉を交わす中、レジャナルドは入念に結腸を犯す。沙綾香の肩を鷲掴みにして固定し、中腰の姿勢で数センチ尻を引き、斜め下からぐうっと押し込んでいく。
「……ッ、…………ッッ!!」
 沙綾香は最初、声を完全に殺して耐えていた。目の前……桜織の前髪辺りに睨むような視線を向けたまま、じっとしていた。だが、それも数十秒が限界だ。
 しっかりと床を踏みしめていたローファーが、つま先立ちになっていく。そして、先端が完全に踏みつぶされた瞬間。リン、と鈴の音が鳴った。誰もが固唾を呑んで見守る中、それは嫌になるほどよく通る。桜織を抱くダーナルも、今はわざと腰を止めているため、絶頂したのは沙綾香以外には有り得ない。
「いひひひっ! あいつ、ケツでイキやがった!」
 客の1人が声を上げ、それをきっかけに笑いが起こる。沙綾香は顔を歪めるが、その表情はすぐに絶頂の色に染まった。
「っぉ、おほっ……お、お…………っ!!」
 沙綾香の口が開き、呻き声が漏れる。ニーソックスに包まれていない生足部分に、くっきりと筋肉の筋が浮く。
「ははは、凄い力みぶりだな! アナルレイプらしくなってきたじゃないか」
「アナルどころか、厳密には結腸レイプですからね。結腸って便意を知らせるセンサーが山ほどあるそうですよ。そんな場所をこじ開けられたら、あんな反応にもなるでしょう」
 客が囁き合う中、沙綾香の反応はより激しくなっていく。息は乱れ、全身が震え、そして沙綾香は顔を伏せた。だがその顔を、目の前にいる桜織が両手で持ち上げる。
「うっ!?」
 強引に顎を浮かされて戸惑う沙綾香に、桜織は笑みを向けた。
「顔を見せて、沙綾香。私、知りたいの。結腸で絶頂させられる時、女の子がどんな顔になるのか」
 笑みこそ浮かんでいるが、桜織の目は真剣だ。彼女は学業優秀な生徒らしい。当然、知識欲も旺盛だろう。それが、最悪な形で顕れているらしい。
「い、委員長……や、やめ、て……っ!!」
 桜織に顔を掴まれた沙綾香は、苦しそうに顔を振る。そんな中、レジャナルドが体位を変えた。桜織が沙綾香の顔を掴んでいるのをいいことに、完全な後背位の形で尻を犯す。“突き上げ”よりも遥かにスムーズに動かせる、“突き込み”。膣を使ったセックスと何ら変わらない速度で、剛直が根元まで入り込んでいく。
「ぃあ゛あ゛っ!?」
 沙綾香が悲鳴を上げ、目だけで背後を振り返る。鈴の音が鳴るペースが上がる。
 そして、彼女は震える手でスカートを掴んだ。どんな気持ちでそうしたのか、はっきりとはわからない。だが多分、彼女は拠り所が欲しかったんだ。事実、彼女の表情は、その直後に正気を失った。瞳が焦点を結ばなくなり、熱に浮かされたように上空を見上げる。口から漏れる「おおお」という声も、芯がなくなったようだ。
「うわぁ……」
 桜織は、そんな沙綾香の顔を両側から掴み、見入っていた。口元に湛えた笑みは、嘲笑か、あるいはもっと純粋なものか。
「へへへへ、この窄まりは格別だな。筋かなにか知んねーが、コリコリした輪っかが裏筋を刺激して最高だぜ。喉奥ともまた違う感触だ。もう……出るぞッ!!!」
 好き放題にアナルを犯すレジャナルドは、そう言って射精に入る。腰を密着させた、結腸内部への直射精だ。
「最高だぜサヤカ、お前のアヌスは」
 数十秒後、心地よさそうな溜息と共に射精を終えたレジャナルドが、ようやく腰を引く。極太の栓が外れた肛門からは、すぐに精液があふれ出す。
「すげぇ、まるで白いクソだ!」
「へへへへ、すげぇな。おい、こっち来てよ、自分でケツ開いて見せてみろ!」
 すかさず客から浴びせられる罵声に、沙綾香の眉が吊り上がる。だが、逆らったところで仕方がない。彼女は憮然とした表情のまま、ステージ端まで移動すると、客に尻を向けた。震える指が尻肉に食い込み、左右へと割りひらく。黒人ペニスで拡げられた肛門が、より鮮やかな華を咲かせる。白い蜜を零す紅い華。
「はははっ! 中からどんどんザーメンが溢れてきやがる!」
「っていうか、開きっぱなしね。戻りおっそー。あの巨根にこじ開けられて、括約筋がバカになってるのかしら」
「いや案外、見られたくてわざと開きっぱなしにしてるのかもしんねーぞ?」
「ありえるありえる、ケツでイキまくる変態だもんな! 今のアナルハメで、何回イッたんだ!?」
 客の罵りは止まらない。沙綾香がどれほど顔を歪めようと……いや、その恥じらいがあればこそ、か。


                 ※


 沙綾香はその後も、俺達の目の前で後ろの穴を犯された。沙綾香の長い脚をがに股に開いたまま、立ちバックでのアナルセックス。ステージの外周をその状態で歩き回り、ランダムな位置で立ち止まっては、客のすぐ目の前でセックスを見せつける。
「ほっほ、いやらしい。犯されているのはあくまで尻だというのに、陰唇のヒクつきが止まらんじゃないか!」
「ザーメンに混じって、マン汁が垂れてやがる。マジで感じてやがんだな、ケツでよ!」
 客は沙綾香の恥じらいの部分を凝視し、無遠慮に詰りつづけていた。
「み、見ないで、よ……っ!!!」
 沙綾香は割れ目を手で隠そうとするが、黒人共がそれを許すはずもない。手はすぐに横の誰かに掴み上げられてしまう。さらに犯しているトラバンも、沙綾香の右腿を掴み上げ、大きく股を開かせに掛かった。間違いなくアナルを犯している、と客へ見せつけるように。
「何度拝んでもすげぇな。あんなデカマラが、よくもまぁケツに入るもんだ!」
「ああ。便秘の時のクソ以上だ!」
「いいぜいいぜぇ、もっと浅ましく善がれ! 俺達を愉しませりゃ、ポイントをくれてやるよ!」
 客は手を叩いて笑い、極上の美少女を貶める。悪夢のような状況だが、皮肉なことにポイントの伸びは悪くない。最初の頃の停滞具合が嘘のようだ。

 だが、桜織のハードさはもっと上だった。彼女は今、吊り橋のように担ぎ上げられて犯されている。華奢な身体が、大柄な黒人に前後から犯される──露骨に危機的な状態だ。だが、彼女はそのハードさを喜んでいた。
「んぶはっ……きゃん、はあうんっ、んんっ!! すごっ……そこ、そこおおっ!! こ、これすごい……頭もカラダも、フワフワして……わ、私、どうなっちゃうの……っ!?」
 口が自由になるたび、桜織はそんな言葉を叫ぶ。状況を愉しんでいるとしか思えない言葉だ。
「何叫んでっかわかんねぇが、スゲェだろ。たっぷり咥えろよ、前も後ろもよぉ!」
 マーキスが桜織の顔を掴み直し、逸物を小さな口に押し込んでいく。
「んぶうっ、ん゛ぐっ!! も゛え゛、ほも゛ぉお゛お゛え゛……る゛ぉ゛お゛え゛っ!!」
 身体が未成熟だからか、単に喉がこなれていないからか。桜織がディープスロートで発する声は、沙綾香や千代里のそれ以上に異質だった。口から内臓でも吐き出しているかのような響きだ。実際、彼女の目頭からは反射で涙が零れているし、限界まで開いた口からも、泡に塗れた唾液が滴っている。額にびっしりと浮く汗の量も普通じゃない。
 それでも彼女は、明らかにその地獄を望んでいた。前にいるドミニクの腰に手を当てているが、押しのける様子はない。むしろ腰を掴むことで、宙吊りの姿勢を安定させている。えずき声と共に白目を剥き、手がダラリと垂れ下がることもあるが、客が反応を求めればすぐに手を振ってみせる。
「はあ、はあ……はあ、はあっ……お、犯して!! もっと、もっと!!!」
 床へ下ろされてからも、桜織は更なる刺激を求めた。自ら大股を拡げ、病的に瞳を開かせて。
「ククッ、呆れるぜ。底なしの性欲だな!」
「ああ。俺らにこんだけ犯されて、まだ欲しがるなんてよ。上等だぜ、ぶっ壊れるまで可愛がってやる!!」
 黒人共にも意地があるらしく、顎の汗を拭って桜織に襲い掛かる。正常位で壊れそうなほど腰を打ちつけ、目を疑うほどの剛直を根元まで咥えさせ。それでも、桜織は性に貪欲な姿勢を崩さない。自ら頭を前後させ、唾液を泡立てながら、グジュグジュと凄まじい音を立ててのディープスロートを繰り返す。手は近くにいる黒人の逸物を扱いていたかと思えば、脹脛を抱えて自ら『マングリ返し』の恰好を作り上げ、犯される刺激を強める。
「ひゃははははっ!! すげえ、すんげえ!!」
「見ろよあれ、自分から……!」
「ふむう、なんという変態ぶりだ……!!」
 桜織側のギャラリーは、もはや茶化してすらいない。自分達が求める以上の変態行為を、桜織自身がやってしまうものだから、ただただ堪能するばかりだ。当然、その指は投票ボタンを押し込み続ける。調子のいい沙綾香を遥かに凌駕するペースで、モニターの数字が伸びていく。
 今、沙綾香は62票、桜織は実に170票超。
「あーあー、ここで100票差がついちまったか。こりゃあもう、結果は見えたな!」
「ああ、こっから巻き返すのは無理だ。よほどの事が起きなきゃあな!」
 ステージ下に控える手越とロドニーが、時計を見ながら思わせぶりに語る。明らかに聞かせることが目的の声量だ。それは当然、沙綾香の耳にも届く。
「っ……!!」
 沙綾香は唇を噛んだ。このままではまずい、とは彼女も思っているんだろう。
 桜織は最強のライバルだ。彼女の言動は、変態客の需要と合致しすぎている。そんな相手と渡り合うには、羞恥心を完全に捨て去るしかないが、それには俺の存在が邪魔だ。
 今日の沙綾香は、調教初日に戻ったかのように初々しい。膣内射精をされれば眉を顰める。股を拡げられれば秘部を隠そうとする。俺という足枷があるせいで。
「とうとう負けちまうなあ、お嬢ちゃんよう」
 手越はステージの際まで歩み寄り、沙綾香に呼びかけた。
「う、くっ……!!」
 沙綾香の顔がますます歪む。そんな沙綾香を面白そうに見つめ返してから、手越は俺の方を振り返った。いや、俺じゃない。奴が目線を送っているのは、俺の隣にいる端塚だ。
 端塚は、ゆっくりと頷いた。それを受けて手越が笑みを浮かべ、胸元に手を入れる。そうして取り出したのは、袋入りの錠剤だ。
「な、なに、それ……?」
 目の前に袋を翳され、沙綾香が呻く。
「倶楽部特製のクスリだ。これ単体でもどんなシャブよりキマるが、お前がいつも吸ってるガスとの相互作用も当然ある。これを使ったセックスを一度覚えちまうと、もうコレなしじゃ居られなくなるぜ」
 手越の答えは、説得力があった。沙綾香が規格外の黒人ペニスを受け入れ、狂わされたのは、偏に媚薬ガスの効果だ。それを生み出した技術力でなら、どんな凶悪なドラッグを作れても不思議はない。
「最悪……!」
 沙綾香は呻くように声を絞り出し、錠剤を見つめる。焦りと躊躇が鬩ぎ合っているのが見て取れる。
「怖いか? まあ、そうだろうな。お前は、ガスの効果を身をもって知ってる。興奮状態で黒人共にマワされた時の“ブッ飛ぶ”感覚を、何度も味わっちまってる。コイツを使えば、それ以上になるのも理解してるだろ。お前に多少の根性があろうが、コレを使っちまえば終いだ」
 手越は手にした袋を振り、沙綾香を煽った。その言葉は沙綾香の眉を引き攣らせ、客に嗜虐的な笑みを浮かべさせる。
「ま、使わないってんならそれでもいいぜ。どうせこの審査会でお前が負けても、桜織がセックス地獄に堕ちるだけだ。アイツはむしろ、それを望むだろうぜ」
 続く手越の言葉に、沙綾香は目元と口元を引き締めた。覚悟を決めたらしい。
 桜織は今でも壊れかけに見えるが、あの黒人共に毎日輪姦されるようになれば、それこそ確実に終わる。たとえ助け出されたとしても、二度と元の彼女には戻れなくなる。悲劇に巻き込んだ身として、それだけは絶対に許せないんだろう。
「…………ちょうだい」
 沙綾香は手越を見下ろし、はっきりとそう告げた。客が歓声を上げ、その言葉を待っていたらしい手越も、錠剤を乗せた手を沙綾香に差し出す。
「…………はあ、はあ…………」
 錠剤を受け取った沙綾香は、息を荒げはじめた。
「おいおい、呑んでもねぇのにもう興奮してんのか!?」
「すっかりクスリの中毒だな、お嬢ちゃんよぉ!!」
 客は的外れな野次を飛ばすが、俺には判る。沙綾香の不安が、恐怖が、そして覚悟が。
 と、ここで沙綾香は、俺の方を向いた。これまで不自然なほどに俺から顔を背けていたというのに、真っ直ぐに俺を見つめる。
『私の顔を忘れないで』
 そう訴えるような、強い光を宿す眼で。
「沙綾香……!!」
 俺は、思わず声を漏らす。身体も勝手に前のめりになるが、同時に背後からスタンガンを押し当てられた。
 ステージまでおよそ4メートル。走り出せばものの数秒で抱きしめられる距離。だが、その距離を詰めることは許されない。こんなに近いのに、生々しい匂いさえ嗅げる距離なのに、今までで一番沙綾香が遠く思える。

 そして沙綾香は、薬を呑み込んだ。喉が動き、錠剤が通り抜けたのがわかる。
 嫌な予感が止まらない。ここまで温存されてきた薬物ということは、ヘロイン以上の催淫効果がある例のガスより、さらに強力なんだろう。
「…………はぁ、はぁ……は、はっ、はっ……あっ、あ、は、はあっ……!!!」
 もともと乱れがちだった呼吸が、さらに荒くなっていく。瞳孔が開き、汗が噴き出す。
「ヒューッ、キマってんなあ!」
「クスリって怖ぇな。さっきまであんな気ィ強そうな目してたのに、一瞬でボーッとした感じになって……」
「確かにな。熱出してぶっ倒れる寸前って感じだ」
 客は、薬に侵される沙綾香を見て笑みを浮かべる。そして、沙綾香を取り囲む黒人共も同じくだ。
「ひひひっ、この顔この顔! 昨夜はこの顔が頭に浮かんでよ、ウズウズして寝られなかったぜ!!」
「俺もだ。睨み顔もいいが、このエロい表情が堪んねぇ! 見慣れねぇジャップだから可愛く見えるのかと思ってたが、違うな。ジャップの中でもこいつは別格だ!」
 黒人共は白い歯を剥き出して笑い、沙綾香との距離を詰めた。背後に回ったレジャナルドは、耳元に息を吹きかけもする。
「んひいっ!?」
 沙綾香の反応は露骨だった。肩を跳ねさせ、目を見開いて叫ぶ。空気の流れだけで感じてしまうほど、感度が上がってるらしい。
「可愛いぜぇサヤカ。お前は良いペットだよ」
 レジャナルドはそう囁きながら、今度は沙綾香の胸を揉みしだく。ブレザーとブラウス腰の愛撫だが、今の沙綾香には強すぎる刺激だ。
「ハッ、ハッ……やめ、て……!!」
 嫌がる中でも声が震え、やがて鈴の音が鳴り響く。
「いひひ、敏感になってやがんぜ! スクールガールコスもそそるんだが、ファックにゃ邪魔だな。そろそろ上脱がしちまうか」
 レジャナルドは笑みを深めつつ、沙綾香のブレザーを脱がしに掛かった。
「ちょっ、そんな乱暴に……!!」
 沙綾香は抵抗するが、それによって前が無防備になる。その隙をついて、今度はトラバンがブラウスに手を掛けた。
「そぅーら、御開帳だ!」
 岩肌のような前腕がさらに盛り上がれば、バツンッと音を立ててブラウスのボタンが弾け飛ぶ。そして、乳房が零れ出した。十分に実った果実と、桜色の乳輪、勃起しきった乳首が衆目に晒される。
「おおっ、ノーブラかよ!? お嬢様学校の制服きっちり着といて下着は無しとか、すげえ変態プレイだな!」
「別に、イメージ通りでしょ。学校でもやってたんじゃないの? 女子高だとさぁ、ブラウス越しに勃起乳首見せつけて、男の教師に媚び売るコってたまにいるんだよね。アンタもそうやってたんでしょ、エロガキ!」
「しかし、良い乳だな。乳首は淡いピンクで、あのサイズで垂れていないとは。ティーンの裸はやはり最高だ!」
 客から一斉に罵声を浴びせられ、沙綾香は俯く。悔しそうに唇を噛み締めるのは、薬で朦朧としながらも羞恥心を失っていない証拠だ。そしてその気高さを、また黒人が弄ぶ。トラバンの指先が割れ目に沈み込めば、沙綾香の顎はあっさりと浮いた。
「はああぁうっ!!」
 口が大きく開き、虚ろな瞳が宙を漂う。その結果、彼女の視線は、桜織の方を向いた。
「ひ、ひいっ、気持ちいいっ!! いっ、イクイクっ! し、死ぬううーっ!!」
 桜織のプレイは、さらにハードさを増していた。床に寝そべるアンドレに跨り、なおかつ背後からダーナルに圧し掛かられる形だ。肉が密集していて挿入部分は良く見えないが、前後の穴に入っているのは間違いない。
 桜織にアナルの経験がどれだけあるのかは知らないが、黒人相手のアナルセックスは初めてのはずだ。にもかかわらず、彼女は喜んでいた。舌を突き出し、涎を垂らして。誰がどう見ようと、心地良さしか感じられない顔。
「委員長……」
 沙綾香は、桜織の表情を見て眉を顰める。しかし同時に、その顔つきに見入ってもいるようだった。
「気持ちよさそうだなあ、お前のお友達はよ。お前もああされてえんだろ?」
 トラバンはそう言って、割れ目の中で指を蠢かす。沙綾香を囲む他の連中もそれに倣った。口の中に二本指を捻じ込み、両の乳首を摘んで引き絞り、尻穴にまで指を沈め。
 黒人共の指は太いが、ペニスの代わりには程遠い。それでも沙綾香は、その指責めに翻弄されていた。
「あ、れあっ、あえっ! ああえあっ、えくっ……!!」
 不自由な悲鳴を上げつつ、腰をガクガクと前後させる。乳首を弾き絞られるたび、前後の穴で指が曲がるたび、鈴の音が鳴る。とはいえ、それが聴こえるのも時々だ。桜織の頭部からは、さらにハイペースで音が鳴っているんだから。
「おおお゛お゛お゛っおかしくなる゛う゛う゛っ!!! おっおひりもっ、おまんこもっ、こあれちゃう゛う゛う゛っ!」
 喉へ極度の負担が掛かりそうな絶叫と共に、背を仰け反らせる桜織。沙綾香は、その姿から視線を外せない。親友の姿を視界に捉えたまま、指の刺激に悶えつづける。唾液も愛液の量も尋常じゃなく、鈴の音の間隔も短くなってきた。
「はははっ! あいつ、絶対自分が犯されてる妄想してんぜ!」
「完全に指をチンポだと思ってんな、ありゃあ!」
 客にまで見透かされた、その瞬間。
「れえああああっ!!」
沙綾香は呻きながら震え上がる。あまりにも解りやすい絶頂だ。
「ひひっ、思いっきりイキやがって」
 黒人共が満足そうに笑いながら指を抜けば、その指には光る糸が絡みついていた。
「ハーッ、ハーッ、ハッ、ハッ……だ、だめ、頭、しびぇるっ……ないも、考えらえない…………」
 沙綾香の顔は、異様だった。見開いた眼から涙を零し、開いた口から涎を零す。呂律も回っていないため、まるで失禁した泥酔者のそれだ。
「だいぶクスリが回ってきたな。俺らの指はそんなに美味かったか? なら、次はもっとトべるぜ」
 黒人共は沙綾香の反応を喜びながら、完全に回復した逸物を扱き上げる。
 ドラッグセックスの本番は、ここからだ。


                 ※


「自分で腰を下ろしてみろ」
 床に寝転がったトラバンからそう命じられ、沙綾香が固まる。トラバンの逸物は、『剛直』と呼ぶべき圧倒的なサイズだ。幹には恐ろしいほど血管が浮き立っていて、相当な硬さも見て取れる。クスリの効いている今、そんなものを受け入れるリスクは、沙綾香自身が一番理解しているだろう。
 とはいえ、迷っている時間はない。今この瞬間にも、桜織は身を削るようなハードプレイで点数を稼いでいる。沙綾香とのポイント差は開く一方だ。
 沙綾香は唇を引き結び、トラバンを跨ぐ形で中腰になる。上はブラウス、下はミニスカート姿の女子高生がそんな格好をすること自体、禁忌というべきだ。だが客は、“さらに下”を求め続ける。
「もっと尻突き上げろ、変態らしくよ!」
「スカートも邪魔だな。挿入するところが良く見えるように、上げておきなさい」
 百合や藤花を犯しながらの、高圧的な命令。沙綾香は一瞬それに不快そうな顔を見せるが、結局は命じられた通りに尻を浮かせ、スカートをたくし上げる。
 そして、膝が曲げられた。腰が沈むたびに、太腿の形が変わり、ハイソックスが肉に食い込んでいく。
 鉄球を思わせる亀頭が割れ目に触れた瞬間、沙綾香は一瞬動きを止めた。そして、周りに聴こえるほど大きく喉を鳴らしてから、さらに深く腰を落とす。割れ目が圧縮されたゴムのように左右に広がり、『剛直』を呑み込んでいく。いやというほど見慣れた、日常の光景だ。
 だが。
「はあああっううう!!?」
 逸物が半分ほど入ったところで、沙綾香はいきなり悲鳴を上げた。火に触れたような勢いで腰を浮かせるが、亀頭が抜けた瞬間に響く鈴の音は、動かぬ絶頂の証だ。
「おいおい、どうした? 気持ち良すぎたか?」
「ばっちりイッたもんな、痛いってことはねえよな!」
 客からすかさず罵声が浴びせられる。そんな中、沙綾香は腰を浮かせたまま膝を擦り合わせ、下腹部を見下ろしていた。処女を失ったばかりの時に、股の違和感を探っていた時の反応とそっくりだ。
「よお、どうした。俺の息子が寂しがってるぜ?」
 トラバンは沙綾香を見上げて煽りながら、いきり勃った逸物を振ってみせる。
「はあ、はあっ、はあっ…………!」
 沙綾香は荒い呼吸のままモニターを睨み、姿勢を変えた。今まではトラバンと向き合い、客に尻を向ける格好だったが、今度はその逆……トラバンに尻を向け、客の方を向く形で腰を下ろしていく。なるべく顔を見られない方法を取りたかったが、さっきのやり方では感じすぎてしまうんだろう。
 腰はゆっくりと沈み、また怒張を半分咥え込んだところで止まった。膣奥に達したのかもしれない。昂ったことで子宮が下りているなら、トラバンの巨根を半分も咥え込めば、充分に奥まで届いてしまう。だとすれば、そこから先は地獄だ。肉体的な意味でも感覚的な意味でも、限界の先に行かなければならない。それも、自分の意思で。
「は……はっ、はっ……はっ…………」
 沙綾香は汗まみれのまま俯き、両手を床についた。そしてその手を支えに、大股開きの腰を沈めはじめる。白い下腹と黒い腰を繋ぐ支柱が、僅かずつ短くなっていく。
「んぐっ……はぅウっ……!!!」
 艶やかな黒髪に隠れた顔からは、呻き声も聴こえてくる。
「すげぇ気張ってんな。和式の便所で一週間分のクソひり出してるように見えてきたぜ!」
「確かに。飲み込んでんのも、チンポっつーより、極太のクソって方が近いサイズだしな!」
 客の野次にも、反応する余裕などないだろう。
「うひゃひゃっ、こりゃすげぇ。肉がみっしり詰まって、バージンのプッシーみてぇだ! まあ本物のバージンと違って、中はドロドロに蕩けてるがな!」
 ミリ単位での挿入が続く中、トラバンが喜びの声を上げた。薬の効果で、膣の締まりが一変しているらしい。そしてそれは、沙綾香自身の快感が増しているという意味でもある。
 長く感じる挿入の果てに、とうとうペニスの8割方が挿入された頃。
「──っあああああッッ!!!」
 沙綾香が悲鳴に近い声と共に、顎を跳ね上げた。眉根を寄せ、目を固く瞑っての絶叫。それこそ性経験のない処女が、黒人ペニスを挿入されて泣き叫ぶ姿を思わせる。だが、彼女が味わっているのは苦痛じゃない。糖蜜のような甘さだ。激しく左右に振られる頭からは、リン、リン、と何度も鈴の音が鳴っている。
「オゥ、シィット……なんて締まりだ!!」
 一方のトラバンは顔を歪めながら笑い、ちょうど宙を彷徨っていた沙綾香の手首を引き絞る。
「あああっだめ、だめやめていくううっ!!!」
 背中を反らしたことで、沙綾香の顔は完全に天井を向いた。そしてその姿勢のまま、彼女は痙攣と共に絶頂する。鈴の音はいつもと変わらない響きだが、今度の絶頂は相当深いに違いない。
「ぬうっ……ぐおおおお、搾り…取られるっ!!」
 トラバンも歯を食いしばって呻き、あえなく射精に入った。それを受けて、沙綾香が背後を振り返る。
「え、いやっ、出さないでっ!! 妊娠しちゃう……今、子供出来ちゃうからあっ!!」
 沙綾香は、トラバンが無精子症にされていることを知らない。もし精子が活きているなら、妊娠が確信できてしまう状態、ということか。
 沙綾香のこの発言は、当然ながら客を沸かせた。
「ははははっ、今更何言ってんだ。妊娠なんざ確実だろ、あんなコップ一杯の量をドバドバ注がれてんだから!!」
「まあでも、気持ちはわかるよ。女って中出しされた時に、『あ、これ妊娠するな』ってタイミングあるんだよ。子宮が相手の子供欲しがって疼いて、卵子吐き出しまくるの。まあそういうのって、普通は彼氏以外には起きないんだけどね。あんなゴリラみたいな黒人にレイプされながらとか、ちょっと考えらんない!」
 同性異性を問わず蔑みの言葉が投げ込まれ、沙綾香の心を抉る。
「ふう、う……う、くっ…………!!」
 沙綾香は、頬に涙を伝わせながら膝をついた。そして、根元まで入り込んだ剛直をゆっくりと引き抜いていく。太腿だけが張った華奢な身体はぶるぶると震え、鈴の音も鳴る。そうしてようやく怒張が抜け切っても、悲劇は終わらない。
「くんんんっ!!!」
 テニスボール大の亀頭が外へ弾け飛んだその瞬間、また甘い声が漏れた。そして同時に、開ききった割れ目から飛沫が上がる。精液と愛液の混じった液だ。噴き方はやや不自然だった。勢いよく噴くわけじゃなく、出の悪い小便のように、ぷしゅっ、ぷしゅっ、と小さな飛沫が何度も上がる。その原因は、沙綾香を見ればなんとなく見当がついた。
「あっ、あっ、ああああっ……!!」
 沙綾香は、怒張が完全に抜けた今も、腰を痙攣させつづけている。鈴の音こそしないが、小さく絶頂しているのは明らかだ。その絶頂のせいで膣周りの筋肉が収縮し、潮の出を邪魔しているんだろう。
「はははっ! あのガキ、まーだイってやがる。余韻長ぇな!!」
「ザーメンマンコを見せつけやがって、そうまでしてポイントが欲しいか? いいぜ、ならくれてやるよ。その代わり、もっと楽しませろよ!」
 客は口々に沙綾香を辱め、投票ボタンを押しこむ。一気にポイントが加算されたが、まだまだ桜織との差は大きい。今の沙綾香には、未知の感覚を消化する暇さえなかった。


                 ※


 自分から腰を振る。いかにも変態めいたこの行為を、客は大いに喜んだ。そしてその方向で、次のプレイが指定される。
 あくまで沙綾香が主体となり、騎乗位で奉仕する。黒人を一人射精に導くごとに30票を得る。
 これが、客の提示した条件だ。ロドニー経由で条件を伝えられた黒人共は、面白そうだと快諾した。そして沙綾香もまた、この条件を呑んだ。射精一回で30票は破格の条件だ。残り時間は1時間あまり。それぐらいでなければ、桜織に追い付くことなどできそうにない。

 桜織に掛かりきりの3人を除いた、7人がステージ外周に足を向けて寝転がる。歪な黒い丸太が並ぶような光景は、相当なインパクトだ。
「さあ、とっとと始めろ。時間ねーんだろ?」
 客がそう声を掛けると、沙綾香は7人の左端に歩み寄る。一番左に寝ているのは、タイロン。よりにもよって、10人の中でも最大のペニスサイズを誇る奴だ。
「カモ―ン」
 タイロンは薄ら笑みと共に手招きするが、その馬を思わせるペニスは半勃ちというところだ。タイロンに限らず、他の連中も。ここまでハイペースにセックスを繰り返し、全員が5、6発は射精している。いかに絶倫とはいえ、回復までに時間が掛かようだ。だからこそ、黒人共はこのプレイを歓迎したのか。
「あーら、竿役が元気ないわねえ。こういう時は、女が口で勃たせるのよ?」
「たっぷりしゃぶってやれ。ケツこっちに向けてな!」
「股もちゃんと開いとけよ。ザーメン壷みてぇになってるJKマンコを、たっぷり拝んでやるからよ!」
 客から下劣な命令が飛ぶ。そうでなくても、今のままでは挿入ができないんだから、沙綾香に選択肢はない。
「肝心な時に……!」
 沙綾香は恨めしそうにタイロンを睨みながら、その腰の両側に手をついた。客の命令通り、蹲踞を思わせる大股開きでだ。その状態で頭を下げて剛直を咥え込めば、直視も憚られるほど無様な格好ができあがる。ギリギリ肛門を隠せていないマイクロミニのスカートが、かえって惨めさを強調している。
「ぶっ、あっははははっ!! 見て、すっごい格好!」
「うそー、あそこまでやるんだ。しかも、丸見えとかってレベルじゃないし。尻穴もオマンコも開きっぱなしで、ザーメンが零れてるじゃない」
「終わってるねー。この人数の前であんなカッコするぐらいなら、死んだ方がマシだわ!」
 客はこぞって罵詈雑言を浴びせるが、同性からの言葉は特に辛辣だった。沙綾香もやはり堪えるのか、詰られるたびに前後の穴をひくつかせ、そのことでまた笑いの的となってしまう。
「う、くううっ……!!」
 沙綾香は恥じ入りながらも、大蛇のような怒張へ舌を這わせる。裏筋、カリ首へと、丹念に。その甲斐あって、怒張に張りが戻りはじめた。
「なかなかいいぜ……よーし、そのまま咥えこめ」
 タイロンが命じると、沙綾香は限界まで大口を開け、傘の開いたキノコのような亀頭を口に収める。
「んごっ、はごごっ……うぉも゛あっ、もっがおああ゛っ!!!」
「いひひひっ、こりゃあいい。200ドルで買った娼婦より気持ちいいぜ!」
 サイズがサイズだけに、えずき声が凄まじい。タイロンの逸物は刻一刻と大きさを増し、沙綾香の顔をさらに歪ませる。
「ぷはっ!!」
 沙綾香は怒張を吐き出した。張りを取り戻したペニスは、彼女の顎から額にかけての長さを超えている。それを目の当たりにして、沙綾香は息を呑んだ。自分がこれから、薬に侵された身で受け入れる凶器……しかもそれが頭部以上の長さとなれば、どれだけ恐ろしいことか。それでも、彼女には恐れている時間すらない。モニターを見上げ、強い瞬きで涙を切ると、客の方へと向き直った。
「へっへ、よく解ってるじゃねぇか!」
「いいぜぇ。テメェで腰振りながらイキまくる面ァ、たっぷり拝ませてくれよ!」
 客から好奇の視線を浴びつつ、腰を沈める。亀頭が触れると一瞬動きが止まるが、大きく息を吐いて呑み込んでいく。
「うおお、確かにネットリ絡みついてくるな。こりゃ堪らんぜ」
 タイロンは余裕そのものだ。寝転がったまま口笛を吹きながら、沙綾香の尻を眺めている。勃起こそしたが、まだまだ射精感は薄いらしい。それを絶頂へ導くとなれば、並大抵のことじゃない。
「んっ、ぐ……くあっ、は、あ……うくっ…………あはっ……!!」
 沙綾香の顔は様々に変わった。剛直を呑み込む時には歯を食いしばり、抜く時には大きく口を開く。いかにも辛そうに見えるが、たまに鈴の音が鳴るところからして、実際には気持ちいいんだろう。この倶楽部のドラッグは、拷問のような苦痛をそっくり快楽に変えてしまうらしい。
「やっ、また大きく……だめ、あ………おお゛……ぐうううっ!!」
 沙綾香はまた絶頂した。しかも今度は、格別に深いようだ。顎を浮かせ、薄笑みを浮かべたまま静止する。腰を深く下ろし、膝を掴んだまま震えるその姿は、快便の心地よさに酔いしれているかのようだ。
「おおお、良い顔だ。快感でトロけとるわ!」
「うへぇ。あんな、鉄杭みたいなの自分から咥え込んでアへるとか、頭オカシイ変態ぶりだな。100年の恋も冷めんだろこれ」
 客から待っていたとばかりに罵声を浴びせられ、沙綾香が意識を取り戻す。
「くうっ……!」
 悲痛に顔を歪め、表情筋を引き締める沙綾香。だが、腰を上下させはじめれば、すぐに口が開いてしまう。
「おお゛っ、あぐっ……はああうぐっ!! んあっ、はっぐ、あ、やあ゛っ!!!」
「ひっひ。まるで強姦でもされてるみてぇな声だな」
「なあ。自分から跨って、逆レイプしてるくせによお!」
 規格外の怒張を咥え込む苦しさ。早く絶頂へ導かなければという焦り。そして客からの、容赦のない謗り。それらは確実に、沙綾香の心を抉ることだろう。
「うっへっへ、いいぜいいぜ! ここらが出し時だな。腰を振れサヤカ。思いっきり中に出してやる!!」
 タイロンが足を震わせ、ようやく絶頂を宣言する。それを受けて、沙綾香も腰の動きを早めた。ぐぽっ、ぐぽっ、という音が響き、鈴の音が鳴る。
 そして、射精が始まった。剛直が根元から蠢く大量射精を、沙綾香は腰を深く沈めたまま受ける。射精後に腰が浮けば、割れ目から土砂降りのように白濁が滴り落ちた。
「くくっ。なかなか見応えのある逆レイプだったぜ!」
 客は30回分ボタンを押しながらも嘲り、沙綾香の顔を曇らせる。
 観ていてつらい。だがともかく、これで最大のペニスサイズを誇るタイロンを果てさせた。後はサイズに劣る調教師ばかりだから、刺激は少なくて済むだろう。俺はそう考えた。だが、それは大きな間違いだった。

 二人目の相手はマーキス。タイロンとは逆で、10人中最もペニスの小さい男だ。この男の相手で、沙綾香は大苦戦することになる。
「おーおー、ユルユルじゃねぇか。これじゃ何時間擦られても、イケそうにねぇなあ!」
 沙綾香が腰を下ろした瞬間、マーキスは勝ち誇ったように笑う。
 そう。誇張でなく馬並みのサイズを誇るタイロンのペニスを受け入れれば、膣の筋肉は伸び切ってしまう。そうなったらもう、マーキスの逸物を締めつけることなど不可能だ。多分それを見越して、タイロンが一番手を、マーキスが二番手を選んだんだろう。女を辱めることにかけては、本当によく頭の回る連中だ。
 膣を締められないとなれば、膣奥を擦りつけて絶頂させるしかない。沙綾香は大きく尻を振り上げては落とし、パァンパァンと音を響かせる。それは、子宮口という最大の弱点を自らいじめ抜く行為だ。
「んぐっう、んあァっ、あ゛っ、お、おく奥ぅ゛ッ!! んんん深いっ……お尻に、響いて……あふうっ、あ゛っあ゛! んううう゛う゛っ!!」
 文字通りの肉弾戦を挑む沙綾香は、刻一刻と追い詰められていく。床につく両手と弾む脚は、岩でも支えるかのような力みぶりだ。目は天井を向き、快感で泳いでいる。それだけでも恥ずかしい行為ではあるが、少し時が経てば、状況はさらに悪くなかった。腰を上下させるたび、結合部から放屁のような音がしはじめたんだ。
「ぎゃはははっ、すげぇ“マン屁”だ! 本物のオナラよりひでー音だな」
「ホント、ブリブリ音させて。笑えるー!」
「さっきのでマンコが広がって、空気が入りまくってるわけか!」
 格好の口撃材料を、客が見逃すはずもない。嘲笑と罵声はさらに酷くなり、沙綾香の心をかき乱す。
「ふ、ぐっ……んぐっ、ふうんんっ!! は、早くイって……早く、イってよお……っ!!」
 沙綾香は、羞恥と快感で涙しながら腰を振る。それでも、マーキスは達しそうな気配すらない。笑みを浮かべ、沙綾香の尻穴を指で弄るほどの余裕ぶりだ。
 そんなマーキスをなんとか絶頂させようと、沙綾香は懸命に腰を振り続けた。黒人共の中で最小とはいえ、20センチを超えようという逸物を根元まで咥え込む。それが生半可な刺激であろうはずもない。
「あ゛アぁっあ、イクッいくっ、いッ!! ひっ、ん゛あ……っお、おーーっ……ん゛あっ、あ!!」
 奮闘の中、沙綾香は何度も喘ぎ、絶頂していた。鈴の音が鳴り響き、目はとろんとし、口は開いたまま閉じなくなる。腰は狂ったようなハイペースで上下するが、上半身は前傾したままガクガクと痙攣するばかり。ステージ上のその顔が、ちょうど客の目の高さにあるのが最悪だ。
「おー、すげー……」
「イッてるなあ、これ……」
 客は沙綾香の顔に見入り、ただただ純粋な感嘆の声を漏らしていた。


                 ※


 マーキスが射精に至っても、まだ終わらない。3人目のトラバン、4人目のドミニク……それら全員を射精に導かなければならない。自分から腰を振り、何度も絶頂しながら射精に導く。肉体的にも精神的にも消耗するこの行為を続ける中で、沙綾香は疲れ果てていった。7人目……最後の1人であるダリーとのセックスともなれば、正直見ていられない。
「あ゛、あ! オ、お……オ゛っ!! あっあ……あ゛あんっオオ゛っ、ほおお……っ!!」
 涎の滴る口から、絶え間なく喘ぎが吐き出される。音が濁っている理由はいくつも思い当たった。
 体力的に限界であること。
 力士体型のダリーには普通に跨ることができず、過剰な開脚を強いられること。
 怒張自体の太さが、タイロンと並んで規格外であること。
 その理由全てが沙綾香を蝕み、秒単位で追い込んでいく。
「あはっ、あ、あっ……き、キちゃうっ……だめっ、イク、イクーーーっ!!!」
 沙綾香は天井を仰ぎ、背中を弓なりに反らしながら痙攣する。鈴の音がリンと鳴り響くが、それが白々しく感じられるほど、絶頂の度合いは深い。下腹は意思を持つかのように痙攣し、かろうじてつま先立ちしている脚の震え方も半端じゃない。肉に圧迫されたハイソックスは、今にもはち切れそうだ。
「んおおおおっ……!! へへへ、思いっきりイキやがって。お前はアレだな。イカそうと全力で頑張ってる時より、自分がイッてからの方が具合がいいな。マンコ全体が蠢いてよ、極太のストロー啜るみてぇに、ギュウギュウ搾り上げてきやがる。いいぜ、こいつはとんでもねぇ名器だよ。その甘えっぷりに免じて、濃いのをたっぷりくれてやるぜ!!」
 ダリーはあえて日本語で実況してみせ、客を沸かせながら射精に至る。
「あ、ああ゛……あああ゛ア゛ァァーーっっ!!!」
 沙綾香は、されるがままだった。ダリーの肩に頭を預け、腹部に背を預けたまま、射精を受け入れている。また鈴の音が鳴っているのは、さっきの絶頂の余韻だと信じたい。子宮口に勢いよく精液を浴びせられ、その刺激で新たに絶頂してしまっているなどとは、考えたくもない。
 だがどうやら、その悪い予想が正解のようだ。
 7人を騎乗位で射精させた後、沙綾香は再び輪姦されはじめた。一人が下から挿入し、他の人間が左右から逸物を舐めしゃぶらせるやり方だ。その状況下でも沙綾香は、明らかに膣内射精に反応していた。

「すげー、ずっと“ハメ潮”してる。音エッロ!」
 客の1人が、結合部を凝視して呟く。今はレジャナルドが下になり、沙綾香を突き上げているところだ。客の指摘通り、密着した性器からはずっと水音がしている。逸物が上下に動くたび、あるいは奥深く挿入された状態で円を描くたび、潮を噴いていそうな感じだ。そしてそれを誰より喜んでいるのは、言うまでもなくレジャナルドだった。
「くっは、気持ちいいぜぇ! とろけたプッシーが、舌の塊みてぇに絡みついてきやがる!」
 レジャナルドは上機嫌で笑いながら、沙綾香の太腿を押さえつけて密着させる。亀頭がより深く入り込むようにだ。今の沙綾香にとって、それはクリティカルな行動すぎた。
「うあああっ!! だめ、だめ、だめ……! し、子宮が、痙攣してるの……痙攣、とまんないぃ……!!」
 泣くような声を漏らし、脚を内股に閉じる沙綾香。だが、筋金入りの強姦魔共がそれを許すはずがない。
「おら、しっかり股ァ開いとけ!」
「なに無駄な抵抗してんだよ。こうやって突き上げられんのが、好きでたまんねぇんだろうが!?」
 左右から伸びた手が沙綾香の膝を掴み、力ずくでこじ開ける。
「やあ、いやああっ!!」
「ハッハッハッ、そう喜ぶなって。こっちも、ちゃんとしゃぶってろよ!」
 本気で嫌がる沙綾香の口に、トラバンが逸物を捻じ込んだ。並みのフェラチオじゃない。口を限界まで開かせ、顔の肉をへし曲げ、喉を盛り上げるディープスロートだ。
「あぐっ、おぶっ!! おごぉうっ、ほもごおおお゛お゛っ!!!」
 沙綾香は呻き、激しく身を捩る。だが黒人共は、そんな沙綾香を逃さない。逃げ出そうという本能を強引に抑えつづければ、その末路は内部での爆発しかない。
「んはああああっ!!!」
 沙綾香は、痙攣しながら後ろに仰け反った。これまでにも見せた動きではあるが、今のそれは特に危険そうだ。
「沙綾香っ!!!」
 俺は、不安になって叫ぶ。だがその声は彼女に届かない。
「いやあ、あ……目の前、チカチカって…………あ、頭、があ…………!!」
 沙綾香は痙攣を続けながら、うわ言のように呟く。
「へへへ、また一段とイイ顔になりやがった。オーガズム持続中ってか。いいぜ、もっと浸らせてやれ。醒めるのが早ェと、脳ミソが充分快感を吸わねぇぞ」
 手越がステージ下から指示を飛ばすが、そもそも黒人共に手を緩めるつもりなどなさそうだ。仰け反ったままの沙綾香を抱きすくめるようにしながら、念入りに膣奥を犯し抜く。
「んあああっ、まっ、また奥っ……!! い゛っ、ぐううっ……んんぉおおお゛っ!! おっ、おっ、ほおおっ! いいいくイク、ックイクイクイクイク!!!」
 沙綾香は、ますます正気から遠ざかった。目を見開いた壮絶な顔のまま、卑猥な言葉を叫び散らす。そしてついには、両手で左右の床を叩きはじめた。ピストン音や鈴の音を掻き消す勢いで、バーン、バーン、という音が響きわたる。なぜそんな事をするのか、正確な所は彼女自身にしかわからない。だがおそらくは、そうでもしないと自我が保てないと直感したんだろう。
 そんな壊れかけのサインを前に、さすがの客達も静まり返った。逆に黒人共はゲラゲラと笑い、数人がかりで沙綾香を抱え上げる。
「そんなに奥が好きなら、もっと感じるやり方で可愛がってやるよ!」
 ドミニクがそう言って、背後から挿入を果たした。女児に小便をさせる時の体位……奴が最も好む『逆駅弁』だ。足が宙に浮くあの体位では、踏ん張りが利かない。太い杭のような黒人ペニスを、緩衝なしで受け止めることになる。
「んがっ、あ゛……ッ!!!」
 挿入された瞬間、沙綾香の瞳孔が開いた。正体を失くした顔。『目の前がチカチカする』時のそれだ。
「そーら、たっぷり味わえ。俺様のウルトラコックをよ!!」
 ドミニクは声高に叫びながら、ステージの外周に近づいた。客の前に立ち、結合部を見せつける形でピストンを披露する。
「うひぃっ、あがああっ!! あああ゛、ア……あ、あああああ゛っ!!!」
 沙綾香は、されるがままだった。脚を抱えるドミニクの手を握ってはいるが、振り払うような力はない。相手の意思の通りに膣奥を突き上げられ、透明な雫を飛ばすばかりだ。
 ドミニクは一歩ずつ横に移動しながら披露を続け、とうとう俺の近くに立つ。
「どうだ先生、アンタはこのファックしたことあるか?」
 ステージ上の勝ち誇ったような顔が、憎らしくて仕方ない。
「さぁな、覚えてない」
「そうかい。ま、仮にあったとしても同じだがな。アンタの貧相な息子と、俺達のコックじゃモノが違う。サヤカは、俺らとこの姿勢でするのが好きなんだよ」
 ドミニクは、沙綾香の首筋を舐め上げながら宣言する。沙綾香は上を向き、決して俺と目を合わさないようにしていた。それでも、身体の方は雄弁だ。狂ったようにひくつく陰唇、強張る脚の筋肉、滴る愛液……そのどれもが、女の性感反応の典型だった。
 腹が立つ。俺が握りこぶしを作れば、ドミニクの笑いが深くなる。ピストンの速度も上がっていく。
「あっは……はああ、あ、あがっ……!!」
 激しい突き込みの果てに、沙綾香は激しく痙攣した。鈴の音が鳴り、汗まみれの身体が脱力する。
 腸が煮えくり返りそうだ。自分の愛した女の絶頂を見せつけられるのが、こんなに苦しいとは。
「ひひひ。あんたも災難だねぇ。相手があんな雄の中の雄じゃ、セックスでは勝ち目がないぜ。ま、殴り合いでも勝てっこねぇだろうけどよ」
「気にすんなって、女なんざ星の数ほどいるんだからよ。せめてもの慰みに、めいっぱいポイント入れといてやるから!」
 近くにいる客が、表面上の憐れみと共に投票ボタンを押し込んだ。それを聞いて、はっと気づく。勝負は今、どうなっているのか。
 モニターを見れば、票差はかなり縮まっていた。桜織が527票、沙綾香が515票。さんざん恥を晒した甲斐あって、もう一息で並べそうな勢いだ。それについては嬉しいことだが、もう一つのモニターに視線を移せば、一気に動悸が早まった。
 絶頂回数モニターは、現在カウント3858。4000回まであと142回の猶予しかない。残り20分で140回以上の絶頂など普通はありえないが、今の沙綾香と桜織なら安心はできない。そして当然、それは黒人共も承知していることだ。
「時間も残り少ねぇし、ラストスパートといこうじゃねぇか。ポイントも絶頂回数も、まとめてぶっちぎらせてやるぜ!」
 モーリスが逸物を扱きながら沙綾香に近づく。
「ああ、思いっきり喜ばせてやろうぜ!」
 ドミニクも横へ向き、モーリスの挿入を助ける。すでに背後から膣へ挿入している以上、二穴責めはありえない。とすれば残る可能性は、膣への二本挿ししかない。
「あ゛あ゛っ……やあ、今二本なんて……あ、がっ、んああああ゛あ゛っ!!!!」
 沙綾香は顔を歪ませ、モーリスの肩を掴んで静止を求める。だが、モーリスが止まるはずもない。
「うーっし、カリ首通過だッ! へへへ、コックがゴリゴリ擦れてたまんねーな!!」
「い、ひぎいいっ!! あああ゛さけるっ、裂けるうっ!」
 獣じみた笑みと共に腰が進み、沙綾香の手が強張る。
「ほおお、あの巨根で二本挿しか! 洋物のAVではたまに見かけるが、日本人の子相手となると新鮮だな!」
「こりゃすげぇ。マジでぶっ壊れちまうかもな!」
 客は目をギラつかせて沙綾香を凝視し、次々に投票ボタンを押し込む。
「凄い……気持ちよさそう」
 やや離れた場所で犯されている桜織も、沙綾香を見て興味を示した。
「ああ、アイツはあの二本挿しが大好きだからな。お前もやってみるか? とんでもなくハードだがよ」
「あはっ、したい!!」
 より刺激の強い行為と聞いて、桜織が断るはずもない。
「あああああっ!! あはっ、こっ、壊れちゃう!! くはっ、あ、あああ゛凄いいいいっ!!!」
 ジャマールとアンドレから二本挿しを受け、桜織が歓喜の声を上げる。顔は痛みで引き攣っているのに、口から漏れる声はひたすら甘い。それは、彼女の異常性を嫌でも認識させるものだ。

 そこから桜織と沙綾香は、横並びで犯され続けた。
「そら、気持ちいいだろ!? イケっ、イッちまえ!!」
「くくくっ、すげえ締めつけだ! はち切れる寸前の輪ゴムみてぇだぜ!」
 2人一組になった黒人共に、一切の容赦はない。鍛え込んだ分厚いガタイで獲物を挟み込み、黒い凶器を突き立てる。小柄な桜織などは、身体のほとんどが黒人共に隠され、手のひらと膝下だけしか見えない。
「ああがあああっ、はああうっう゛っ!! おっ、おちんぽでっ、おちんちんで浮かされてるううっ!! んはあうううぐっ、はあああおおお゛あう゛っ!!!」
 彼女は悲鳴を上げ、手足を暴れさせていた。痛みで泣き叫んでいるようにしか見えないが、頭のカチューシャからは音が鳴り続けている。むしろ絶頂のペースが速すぎて、モニターの表示が追いついていない有り様だ。
 そして、余裕がないのは沙綾香も同じ。彼女の場合は太腿まで見えているが、それだけに脚の強張りが一層判りやすい。
 何度も経験があるせいか、ドミニクとモーリスは二本挿しに慣れていた。たとえばある時は、呼吸を合わせ、交互に膣の深い部分を突き上げる。
「はあう、いぎいいっ!! んぐ、ぃいいっ!! い、あ、あああうぐうっ!!」
 サイズ違いの逸物を交互に突っ込まれるせいで、挿入感に慣れることができないのか。沙綾香の反応は、どちらか単体を相手にするより明らかに激しい。脹脛の肉は横に張りっぱなしで、ローファーを履いた足はずっと垂直の位置を保っている。
 だが、沙綾香が一番追い込まれるのは、交互に突きこまれる時じゃない。
「よーし、だいぶこなれてきたな。そろそろ“アレ”いくぜ?」
 モーリスが周りに聴こえる声で囁きながら、ドミニクとアイコンタクトを交わし合う。そして奴らは、円を描くように腰を動かしはじめた。黒人特有のしなやかなバネを存分に生かした、横方向の突き。それを2人同時にやれば、巨大なペニスが膣内を蹂躙し、出鱈目にこじ開ける結果となる。そして沙綾香は、これに一番弱かった。
「はあああっ!? や、やめ、これだめえ゛っ!! あそこが、あそこが開いちゃ……はああう゛う゛っ!! だ、だめイクっ、いくいくイクイクッ!!!」
 大口を開き、ローファーをモーリスの肩より高く掲げたまま痙攣させる。二本の剛直にこじ開けられた割れ目からは、白く濁った雫が雨垂れのように滴っていく。壮絶な逝きぶりだ。
 それでも、沙綾香は踏ん張っていた。同じような責めを受けている桜織より、明らかに絶頂のペースが緩い。気を抜けば絶頂し続けてしまうところを、必死で堪えているに違いない。
「へっへ、頑張りやがって。耐えきれると思ってんのか!?」
 モーリス達は沙綾香を嘲笑い、より激しく腰を使いはじめた。射精すればすぐに別の人間に入れ替わり、徹底して追い込んでいく。
「ああああ゛っ、あはあああ゛っ!! あ゛、あ゛お゛っ、ひいく、イ……ックぅ……う゛っ!!!」
 沙綾香は絶頂に追い込まれながらも、モニターを睨み上げながら死に物狂いで耐えた。
「すげぇな、意地のぶつかり合いだ!」
「根性あんな、あのお嬢ちゃん!」
 クライマックスの攻防を、客は興奮気味に見守る。

 そして、終了のブザーが鳴り響いた。
 最後の最後まで票が投げられていたその結果は、桜織が654票、沙綾香が662票。終盤のハードプレイがだいぶ票を伸ばしたらしく、僅差で沙綾香の勝ちだ。そして、絶頂カウントも3996で止まっている。デッドラインの4000回まで、ほんの4回分。死に物狂いで耐えていた沙綾香の頑張りが、見事に効いた形だ。
「すげー。あのエロいガキ、勝ちやがった!」
「途中までリードされてたが、最後で一気に捲ったな。根性勝ちってやつか」
「しかし、あの桜織という娘も大したものだよ。あの体格差の相手に輪姦されて、最後まで失神しないとは。大したマゾ奴隷ぶりだ」
「いやー、見応えのあるショーだったぜ!」
 客は興奮冷めやらぬ様子で感想を語り合う。そんな中、怒張を引き抜いた黒人共が、改めて沙綾香達を抱え上げた。親指で割れ目を、その他の指で肛門を割りひらき、輪姦の結果を見せつける。
「うっは、すげぇ! 粘膜が捲れかえって……アナルローズにマンコローズってか!?」
「前の穴が特にひでぇな。まあ、あの極太を二本も突っ込まれりゃ当然か」
 客は沙綾香達の性器を見上げ、下卑た笑みを浮かべる。
「えへっ、めくれちゃったぁ……」
 桜織にも、似た笑みが浮かんでいた。視線に晒される状況に興奮しているようだ。
 一方の沙綾香は、顔を横に向けてぐったりとしていた。呼吸は荒く、汗もひどい。指の一本も動かせないほど疲れきっているようだ。審査会で勝つために、力という力を振り絞ったんだろう。
 そして彼女は、見事にやってのけた。彼女の意地を通しきってみせた。

 ただ、その代償は大きい。俺はこの後、それを思い知らされることになる。審査会後の恒例である、夜通しの輪姦の中で……。


 

二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.6(前編)

毎度ながら、更新遅くてすみません……。
文字数が非常に多いため、前編・中編・後編に分割して投稿します。
前編は『焦らし責め・マジックミラー声我慢セックス』、
中編は『桜織との審査会』
後編は『審査会後のドラッグセックス』シーンとなります。
残りは最終話とエピローグのみとなります。長すぎる話ですが、何卒、お付き合いください。




 藤花との審査会で勝ち残った沙綾香は、朝の6時まで黒人共に犯され続けた。前日の晩にセックスの機会を得られず、性欲が溜まっていたのもあるだろうが、それだけではなさそうだ。
 あの黒人共は、沙綾香に惹かれはじめている。セックスの内容を見ればそれは明らかだ。性欲ありきのセックスなら、興味は性器だけに向く。事実、最初の頃のあいつらはそうだった。集団で沙綾香の手足を掴み、口と膣と肛門を荒々しく犯し、射精する。それを何度か繰り返して性欲を発散しきれば、ボロ雑巾のような獲物を放り出してビールを煽り、ピザを食い、カードゲームやダーツに興じる。そうして精子が溜まってきたところで、また襲い掛かる。その繰り返しだった。
 だが、今は違う。貪るように性器を犯すのは同じだが、ひとしきり性欲を発散した後も、沙綾香を離さない。両手で顔を掴んでキスを強要したり、手で怒張を扱くように求めたり、内腿の汗を舐めたり……そうやって、休憩しながらも沙綾香と関係を持ちたがる。
 沙綾香からすれば地獄だろう。挿入されていない間も、何らかの形で刺激を与えられる。朝が来て引き剥がされるその瞬間まで、休んでいられる時間など1秒もない。
「んっ……んんふっ、ふっ…………ん…………」
 桃色のネグリジェを着せられ、ベッドで眠りはじめてからも、沙綾香の顔からは悩ましい表情が消えなかった。見えない何かに愛撫されるかのように、身悶えつづける。ここのところ、意識のない間はずっとそうだ。

「オーガズム中毒に陥っているのは、もはや確実ですね。肉体が快楽に依存し、自ら絶頂を求める……あれで、よく狂わずにいられるものです。公安のネズミ以来のしぶとさだ」
 腰に手を当てた端塚が、下のフロアを見下ろしながら呟く。
「公安? そんなものに潜り込まれたのか」
「以前、私の秘書を務めていた女ですよ。有能でしたが、そつが無さすぎるのが逆に怪しく、別の者に命じて密かに動向を監視させていたのです。結果、ある日とうとうボロを出した」
 端塚はそこで言葉を切り、苦い記憶だとばかりに首を振る。公安のスパイに潜り込まれたとなれば、喉元に刃を突きつけられたも同然。この鉄面皮の男も、さぞや肝を冷やしたことだろう。厳重なセキュリティや、従業員の女すべてを奴隷に貶めているのも、そのせいか。
「そいつは、その後どうしたんだ」
「もちろん、倶楽部の奴隷にしました。薬物や拷問に耐性があったため、少々手こずりましたが、結果としてそれが技術の進歩に繋がったのですから、皮肉なものです。特に、この部屋に充満させていたガスと、八金沙綾香に吸わせているガスのかけ合わせは、あの女の強情さがなければ生まれなかったでしょう。今でも鮮明に思い出せますよ。それまで余裕を残していたあの女が、二種類のガスを立て続けに吸引した直後、絶望的な表情に変わった瞬間を。あの女ですら耐えられなかった薬と責めを、財閥令嬢ごときが耐えきれるはずもない」
 端塚は肩を揺らして笑い、俺の方を振り返る。
「先生が、未だにあの娘に同情的である事は察しております。しかし、八金沙綾香の崩壊、これはもう避けられません。審査会もこの4回目で最後です、今夜ですべてを終わらせましょう」
 皺だらけの顔に、より深く溝が刻まれる。悪意のある笑みは散々目にしてきたが、この男ほどおぞましい表情は他にない。セキュリティに肩を掴まれているのを抜きにしても、窒息しそうな圧を感じる。
 以前の俺は、本当にこの男を従えていたんだろうか。この、狂気そのもののような男を……。


                 ※


 昼になれば、また百合のマッサージが始まる。最初は勿論、催淫ガスの吸引からだ。
「……っ! …っ、…………ッ!!!」
 吸引器を口に押し当てられながら、沙綾香は痙攣し、何度も百合に視線を送る。だが百合は首を振り、沙綾香の口を覆い続けた。沙綾香の眼が力を失い、泥酔したようになるのに、そこから1分と掛からない。
 5分間の吸引が終わる頃には、沙綾香は座る姿勢すら保てなかった。タオルの敷き詰められた寝台へと、力なく倒れ伏す。
「はっ、はっ、はっ……。せ、先輩……熱い。熱い、です…………」
 息を乱し、珠の汗を流しながら、百合に訴えかける沙綾香。その体は震え続け、熱湯に浸かりながら凍えるような有様だ。
「…………沙綾香」
 変わっていく後輩を見て、百合はどう感じているんだろう。憐れんでいるのか、それとも予定通りとほくそ笑んでいるのか。能面のような顔からは、感情が読み取れない。
 ただ、ひとつ確かな事がある。彼女は、倶楽部の方針には逆らえないということだ。
「まずは、たっぷりとマッサージしてやれ」
 手越がそう言って、オイルのボトルを投げ渡す。百合はそれを受け取ると、たっぷりと手に出して塗り伸ばし、沙綾香の身体に触れはじめた。ただし、ネグリジェの上からだ。
「あ、あああ……っ!!」
 間接的なオイルマッサージだというのに、沙綾香は甘い喘ぎを殺せない。
「感覚が研ぎ澄まされていると、素肌に触れられるより、薄布越しの方が感じやすいでしょう」
 百合はそう囁きながら、丹念に沙綾香の全身を揉みほぐしていく。胸、腕、腰、太腿……そう言った場所を百合の白い指が撫でるたび、沙綾香はゾクゾクと震え上がる。
「いい反応だな。もうどう足掻いても、快感が抑えきれねぇか」
「ああ、悦楽の虜ってやつだ。おい百合、道具も使ってやれ」
 ソファから眺めていたロドニーが笑い、手越が指示を飛ばす。百合はその言葉に従い、バッグからマッサージ器を取り出した。
「や……今、そんなの……!」
 沙綾香は引き攣った顔で首を振るが、百合の手は無慈悲にもスイッチを入れる。ごめんね、と唇を動かしながら。
「ふぁああああっ!!」
 マッサージ器が股間に触れたその瞬間から、沙綾香は悲鳴を上げた。背後に手をつき、股を広げたまま、びくびくと身体を痙攣させる。5秒と経たず刺激に耐え切れなくなり、身を捩って逃げようとする。だが、百合はそれを許さない。
「大人しくなさい」
 やや語気を強めて叱責しながら、沙綾香の膝をこじ開けて刺激を与え続ける。
「んんんんっ、んああああっ!! い、いくっ、イクぅっ!! イクのっ、止まんないいっ!!!」
 沙綾香の反応は激しい。首筋を晒し、腰を浮き上がらせて痙攣する。ほんの一瞬ではあるものの、白目を剥いてもいるようだ。
「凄ぇな、まるでポルチオ逝きの反応だ」
「中イキが癖になりすぎて、クリやヴァギナ刺激されるだけでキマっちまうのかもな。あそこまでになって、まだ自我保ってるオンナも珍しいぜ。普通、とうに頭が焼き切れてるだろ」
「ああ。次の審査会で相手する、桜織みてぇにな。ありゃあもう駄目だ。昨夜、一週間ぶりに様子を見に行ったんだがよ、コッチの話なんぞ聞きゃあしねぇ。俺がヤリ部屋に入った途端、ズボン脱がしてしゃぶりに来やがった」
「ハハハッ、まるで動物だな! 特にアンタの真珠入りのブツは、快楽中毒の女にとっちゃ最高の馳走だからよ。バージン奪われた時の刺激が忘れられなくて、むしゃぶりついたんだろうぜ。だが、そんなザマで『審査会』がやれんのか?」
「ああ。それについちゃ、考えがあってよ」
「ほう……ほう……はっ、なるほどな。そりゃ面白そうだ! あの嬢ちゃんにとっちゃ、その路線が一番キツイだろうしな」
 沙綾香の反応を眺めながら、手越とロドニーが会話を交わす。その最中にも、沙綾香は機械の無機質な振動で、絶頂に追い込まれていた。
「あ、あ、あっ……もうだめ、もうだめ! 出ちゃう、出ちゃううっ!!」
 沙綾香がシーツを掴みながら声を震わせた直後、割れ目から飛沫が上がる。
「すっかり、潮噴きしやすい体質になったのね」
 百合はまた囁きかけながら、マッサージ器を宛がう角度を変え、さらに沙綾香を身悶えさせる。
「ぃ、くううっ……!! んぐっ、いく、いく、うううっ!!!」
 沙綾香の左手はシーツを握りしめ、右手は必死に百合の腕を掴んでいた。歯を食いしばって堪えているが、絶頂を止めることができないらしい。
「おいおい、そんなに景気よくイキまくってて大丈夫か? 次の審査会は、んな調子じゃ乗り切れねぇぜ」
 びくびくと震える沙綾香に、手越が語り掛ける。沙綾香の視線が右を向いた。
「最後の『審査会』は、ちと趣向を変える。お前と桜織で4時間客の相手して、合計4,000回以上イッたら、2人まとめて失格だ」
「はぁっ、はぁっ……なにそれ、それのどこが審査なの!?」
「立派な審査だろ。これまでは、お前と相手のどっちがマゾ奴隷らしいかの勝負だったが、桜織のザマを見てるとそれすら疑問に思えてな。果たしてこいつは、奴隷うんぬん以前に、ヒトと呼んでいいものか……ってよ」
「……っ!!」
 手越の言葉に、沙綾香が声を詰まらせる。俺があの問答をしても、やはり言葉を失っただろう。俺も、沙綾香も、桜織が壊された記録を観ている。記録の最後、快楽の叫びを上げ続ける桜織は、確かにケダモノそのものだった。
「そして今となっちゃ、お前も“そっち”に片足突っ込んでる状態だ。だから、審査すんだよ。お前らが人間なのか、そうでないのか」
 沙綾香の顔が歪む。彼女自身、自分の変化は嫌というほど感じているだろう。まさに今、絶頂を止められずに叫んでいたところなんだから。
「ペアで4,000回って条件は、せめてもの温情なんだぜ。各自2,000回なんてすりゃ、今の桜織は軽々と超えちまうだろうからな。お前がグッと我慢すりゃ、お友達を救い上げられるってわけだ。だったら、アソコに電マ当てられたぐらいで、呑気に絶頂してる場合じゃねえだろ?」
 手越の口にする悪魔じみた理屈が、沙綾香を追い詰める。
 4時間で2000回。普通なら狙っても越えられないような回数だが、執拗に逝き癖をつけられた人間なら、越えてしまいそうな気がする。桜織は勿論、沙綾香でさえ。
「……ッ!! …………ッ!!」
 彼女は手足に力を篭め、口を引き結んで絶頂を堪えようとしはじめた。そんな健気さを前にして、百合は目を細め、手越はほくそ笑む。
「そう、その調子だ。お前さえ頑張れるってんなら、イクのを我慢する特訓にも協力するぜ」
 悪意に満ちた提案だ。絶頂に抗おうとすればずるほど、快楽の沼に深く沈み込む……そう確信しているからこその誘導だろう。そして沙綾香は、その提案に乗るしかない。たとえその先に、地獄の苦しみが待っているとしても。


                 ※


「そう難しいお顔をなさらず。ハーブティーのお替わりはいかかですか」
 ティーポットを手にした橋塚が、そう声を掛けてくる。その呑気さが腹立たしい。愛した女が今夜にも狂うかという状況で、リラックスができるものか。

 沙綾香がこの地下19階のフロアから連れ出されてから、もう小一時間が経つ。
『桜織に会わせてやる』
 手越がそう言ったことを踏まえれば、向かった先は地下18階だろうが、一体何をされているのか。
 不安ばかりが募る中、モニターの映像が切り替わった。いつもの4画面とは違い、左右に分割された2画面だ。映しているのは、左右で違う場所。そして、それぞれ違う意味でインパクトが強い。
 画面左側は、どこかの休憩エリアだろうか。自販機やテーブル、観葉植物が映り込んでいる。ごく普通に見かける光景ではあるが、一つだけ異質なものがあった。画面中央に設置された、2メートル四方ほどの巨大な箱だ。
 箱の正面には大きい穴が一つ、その左右に小さい穴が二つ空いていて、そこから若い女の顔と両手首が、横並びになって突き出ていた。女の顔には栓付きの開口マスクが取り付けられ、顔の下半分と鼻の周りがラバーに覆われているが、涼やかな目元だけで沙綾香だと判る。本物の美少女は、どれだけパーツが隠れていようと、やはり可愛い。
 だが、繋がれた女の質とは裏腹に、箱そのものは粗末極まりなかった。さすがに段ボール製ということはないだろうが、それに近い、薄汚れた厚紙のような表面をしている。そして、粗悪な印象を際立たせるのが、その表面に書きなぐられたラクガキ跡だ。
『オールフリー口マン便器』
『ディープスロートOK』
『オレのお下がりです。ご自由にお使いください(笑)』
『ゲロらせて放置したやつ 死ね!!!』
 そんな、繁華街の路地裏で見かけるような下卑た文句が、マジックか何かでびっしりと書き込まれている。その中には人名らしきものもあり、大半は二重線で上から消されていた。おそらく、過去に何人もの女性がこの箱に繋がれ、性欲処理の道具として使用されてきたんだろう。そう思ってよく見れば、沙綾香の顔が嵌まっている穴の直下には、何かが伝い落ちた跡が染みになっているのがわかる。
 その異様な光景に比べれば、モニターの右画面はまだ普通だ。こっちは、箱の内側を、床に近い場所から映しているものらしい。映り込んでいるのは、頭と首を除く沙綾香の裸体。中腰に近い格好だが、スタイルが抜群なだけに、彫刻のような見栄えの良さがある。その少し後ろには百合が、耳にイヤホンをつけたまま正座で待機していた。

 しばらく、その状態が続く。モニターの中では、左画面の沙綾香の目だけが動いていた。何か気がかりな事でもあるのか、フロアの様子を必死に探っているようだ。
 そんな状態のまま数分が過ぎたころ、俄かに画面内が騒がしくなる。
『さーて、今日もヤルか!』
『元気だねぇお前。俺ァもういい加減飽きてきたぜ。締まりもあんま良くねえし、もう何やっても嫌がらねぇしよ』
『嫌がらねぇのは結構なことじゃねえか。まあ確かに最初ん頃の、清楚そうなツラが引き攣るのは興奮したがな』
『今じゃ顔が引き攣るどころか、部屋入った時点で腕掴んできて離さねぇもんな。正直、ちょっと怖ェ時もあるわ。ま、ハメだしたら気になんねーけど』
『お前ら贅沢すぎだろ。現役の女子高生で、しかも相当可愛い方のと好きなだけヤレてんだぜ?』
『その通り。オレなんか、ここ来るまで42年間童貞だったのによ、今じゃ経験回数数百回の大ベテランだ。ありがてーありがてー!』
『そう考えるとすげーよな。俺もあんま経験ある方じゃなかったけど、もう目ェつぶってても絶頂にもってけるぜ。あー、早ぇとこシャバに戻って、別の女をヒィヒィ言わせてぇもんだ!』
 何人もの男の声で、下世話な会話が交わされる。人数はかなり多く、日本語以外の言葉も混じっているようだ。その情報と会話の内容を照らし合わせれば、誰なのかはすぐに解る。桜織を犯しぬいて壊した、50人のタコ部屋労働者達だ。

『…………あれ。何だあの箱?』
 1人が異変に気づいたらしく、疑問を口にした。すると、他の連中も何だ何だとざわつきはじめる。声はどんどんマイクに近づき、画面端にいくつもの人影が映り込んでいく。
『女が繋がれてんぜ。ほんと、何だこれ?』
『こういうプレイだろ。ここって、変態向けの倶楽部らしいし』
『口使ってヌクとか、そういう公衆便器みたいなやつってことか?』
『多分な。口マン便器とか、ご自由にお使いくださいとか書いてあるし』
 男共がさらに輪を狭め、画面に毛深い脚が映り込む。一方で沙綾香の瞳も、斜め上を向いたまま、右から左へと動いた。男共の顔を眺めまわしているようだ。
『結構若いな。桜織と同じぐらい?』
『ああ、この肌ツヤはティーンだろ。しかもよ、こいつ結構可愛くねぇか?』
『バーカ。お前、風俗のパネルマジックに引っかかるタイプだろ? 女なんてもんはな、口元隠しゃあ、大概の奴が可愛く見えんだよ。大体、若くてルックスもいいなら、こんな雑な扱いされねえだろ』
『それ言ったら、桜織だって俺らのオモチャにしちゃ上等すぎたぜ。あのルックスで、お嬢様学校通ってて、全国模試1位の優等生ってんだから』
『こいつも訳アリかな。ハードプレイでマンコぶっ壊れて、フェラ専用に払い下げられたとか。まあ仮にそうでも、オレ余裕でいけるわ、コイツ』
『つーか、仮にこれが“そういうの”だとしてさぁ、俺らが使っていいわけ?』
『んー、どうだろうな……』
『ここに置いてあるってことは、使っていいんじゃね? このフロアって、俺らしか出入りしねーじゃん』
『いや、あの手越とかいうヤーさんが使うのかもしんねーぞ』
『だとしたら、それこそこんな、俺らが使いそうな場所に置かねぇだろ。大体あの人、もうほとんど顔出さねぇじゃん。昨日は久しぶりに来てたけど』
『もういいや、ヤッちまおうぜ! 俺らの休憩所に置いてあんだ、大丈夫だって!』
 騒々しく議論が交わされる中、男の1人が箱に近づき、沙綾香の口枷に嵌まっている栓を外した。その途端、沙綾香の口から唾液が垂れる。
『おっ、なんだよ。俺らのチンポ見て、ヨダレ出ちまったか?』
『キラキラした眼ェしてるくせに、いやらしいこった。まぁこんな扱いされてんだ、だいぶ仕込まれてんだろうな』
 また別の男が、逸物を扱き上げた。皮が剥けきり、赤い亀頭が露わになったそれは、相当に使い込まれていることが伺える。サイズも日本人にしては大きめだ。
『へへへ、デケェだろ。前はそうでもなかったんだが、毎日毎日ハメてるうちに、勃起力が増してきやがった。2センチは増したんじゃねぇかな』
 男はそう言って、自慢げに竿を見せつける。毎日毎日ハメてる──その相手が誰なのかは、考えるまでもない。
『…………!』
 沙綾香の目尻が吊り上がる。級友をセックス漬けにした憎い相手が、すぐ目の前にいるんだ。友人想いな沙綾香が激情を押さえられるはずもない。
『おっ。なんかコイツ、睨んでねぇか?』
『はっ。ブスな上にマンコも使いモンになんねー無価値オンナの分際で、一丁前にプライド持ってるタイプか? 救えねーな』
『ゴミだな。身の程弁えさせてやっか。桜織をヒンヒン言わせる、俺らのデカマラでよ』
 沙綾香の目つきに一瞬動揺が走るが、身動きの取れない少女が恐れられるはずもない。さっきの男がさらに2歩踏み出し、開口具の中に亀頭を押し込んだ。
『うう、ウグウウ゛ッ……!!』
 沙綾香が全力で睨み上げても、男の笑みは消えない。
『うっへへ。ツバの量がすげぇな、ヌルヌルだ。お前、すげえ睨んでるけど、実は咥えさせられんの期待してんじゃねぇの? なんかマゾっぽいぜ、それ。ほら、どうした。舌使ってみろよ。ほら』
 男は詰りながら、半勃ちの逸物を送り込んでいく。舌使いを促しているところを見ると、沙綾香は口の中を一切動かしていないようだ。せめてもの抵抗か、男が何度催促しようと、頬も顎も動かない。

「ハッハッハ、頑張ってるな。お友達をぶっ壊した相手に、奉仕なんぞするかってか!?」
 モニターを見上げて、ロドニーが笑う。逆に手越は苦々しい表情だ。
「ンなとこで頑張られちゃ困るんだよ。……百合、始めろ」
 吐き捨てるように呟いてから、インカム越しに指示を出す。それを受けて、モニターの右画面で百合が動きを見せた。両手に薄いゴム手袋を嵌めて立ち上がり、沙綾香の下半身に近づくと、剥き出しの割れ目に触れる。
『!?』
 右画面で腰が跳ね、左画面では眼球が横を向いた。そんな中、百合はさらに割れ目へと指を沈め、クリトリスとGスポットを刺激していく。
『おっ……へへへ、舌が動き出したぜ。ようやっと観念したらしいな。そうだ、そうやって舐め回せ。こびり付いたカスも丁寧に舐めとれよ』
 一人目の男が、嬉しそうに声を上げた。
『うア゛、アア゛ウ゛……ッ!』
 沙綾香の目尻は吊り上がったままだ。親友の仇の汚いペニスを咥えさせられ、性器への刺激で強制的に舐めさせられる。その屈辱は想像を絶するものだろう。逆に利用している側は、目元も口元も緩みっぱなしだ。
『いいねぇ、この拙い感じ。桜織に初めてしゃぶらせた時を思い出すぜ』
『ああ、あの腹タプタプになるまでザーメン飲ました時か。懐かしいな、もう何年も前って気がすんぜ。……ああヤベ、なんか思い出したら勃ってきちまった。あん時のこと思い出して、新鮮な気分で可愛がってやるか!』
『だな。アイツも待ち焦がれてることだろうしよ!』
 一人目の男の言葉をきっかけに、他の男も鼻息を荒くする。カメラにこそ映らないが、音を聞けば、何人かが移動を始め、どこかの扉を開けたのがわかる。
『あはっ、いらっしゃあい!!』
『クククッ、嬉しそうな顔しやがる。今日は久々にヤル気満々だからよ、たっぷり可愛がってやるぜ!』
 甘えるような女の声と、興奮気味な男の声。女の声は桜織のものだろう。エレベーターで級友にぴしゃりと注意していたそれとは、まるっきり別物だが。


                 ※


『ああああいく、イクッ!! イクぅうううんんっ!!!!』
 男が別の部屋に入ってから、わずか3分後。音割れしそうなほどの絶叫が響き渡った。大怪我でもしないと発さないほどの声量だ。
『相変わらず、バカでけぇイキ声だな』
『正直、やめて欲しいよなアレ。手と足でぎゅーってしがみつきながら、耳元で喚くじゃん。耳おかしくなりそうなんだよなー』
『正常位で犯るからだろ。俺は常にバックでハメてよ、喚きだしたらシーツに顔押し付けてんぜ。声出せねえと、その分腰がビックンビックン動くからおもしれーんだ』
 男共が苦笑しながら、桜織の叫びについて語り合う。それを耳にする沙綾香は、内心穏やかではないだろう。だが彼女は、遠くへ意識を向けてばかりもいられない。
『……なあ。なんかよ、中から音しねーか?』
『ああ、俺も気になってた。バイブみたいな音してんな』
『もしかして、ファッキングマシーンでも動いてんのかな。こいつの姿勢的に、中で腰突き出す感じだし』
 箱を取り囲む何人かが、眉を顰めて言葉を交わす。その指摘通り、箱の内部……モニター右画面では、百合がマッサージ器を沙綾香の割れ目へと宛がっていた。
 刺激は与えるが、絶頂はさせない。がに股に開いた沙綾香の太腿が強張り、膝が揺れ、腰が上下に揺れた辺りで、すっと器具の先端が外される。そして、名残惜しそうにひくつく割れ目を数秒放置し、またマッサージ器を押し当てる。その繰り返しだ。
 その生殺しは、沙綾香にしてみれば当然つらい。おまけに今や、逸物を咥えさせる一人目の男も、沙綾香の頭を抱え込んでの挿入に移っている。
『うおおおお、ズルーッと奥まで入るぜ! おまけにエグつかねぇ。相当調教されてんな、こりゃあ』
 男は嬉しそうに言いながら、毛深い腹を前後させた。動きはひどくスムーズだが、玉袋が開口具の輪に触れる、根元までの挿入だ。喉奥が攪拌されている時特有の、カコッカコッという音も聴こえている。
『ああああ、気持ちええ……歯ァ立てられる心配がねぇから、思いっきり奥まで突っ込めるぜ』
 男はうっとりと息を吐きながら、腰の振りをさらに早める。
『ゥウ゛ウ゛……ウウ゛』
 沙綾香は呻きを漏らし、男を睨み上げた。同時にモニター右画面でも、太腿がぶるるっと震える。
『あああ、出る……出るぞおっ!!!』
 男が叫んだのは、その直後だった。腰を突き出す姿勢で下半身を震わせ、気持ちよさそうに射精する。黒人共には遠く及ばないものの、数秒に及ぶ射精は特筆に値する。
『ふうう……』
 男が腰を引くと、逸物が久々にリングから抜け出した。最初より明らかにサイズの増したそれは、男の得た快感をよく物語っている。そんな物を咥え込まされたせいか、それとも開口マスクでの奉仕のせいか、唾液の量はいつになく多い。男のペニス全体が粘液に塗れているのはもちろん、開口具のリングと亀頭も太い糸で結ばれている。
『へへへ、こんなに出たのは久々だ。使い古したマンコより、モゴモゴ動く喉の方がよっぽどイイぜ』
 男はそう言いながら、沙綾香の顎を持ち上げた。開口具のリングの中に、白いものがちらりと見える。上方のカメラにすら映るんだから、正面からなら、舌を覆い尽くす精液が丸見えだろう。
『れあっ……はっ、はっ、はっ……』
 沙綾香は、上気したような顔で喘ぎながら、精を注ぎ込んだ相手に鋭い眼を向けていた。男はそれを見て、歪んだ笑みを浮かべる。
『よーし、飲め』
 残酷な要求だ。だが、性欲に滾るケダモノが頻繁に求める行為でもある。
『えあ、ああえ、あ……!!』
『こら、出すんじゃない』
 沙綾香が舌で精液を追い出そうとするのを見て、男は唾液に塗れた開口具の蓋を拾い上げ、リングに嵌め込んでしまう。ちょうどその瞬間、モニター右側のマッサージ器が割れ目へと押し当てられた。
『ムぐウウッ!!!』 
 最悪なタイミングだ。沙綾香は目を見開き、首を反らし、足を内股に閉じる。だが、彼女にできることはそこまでだ。百合がぐいっと膝を押し開き、なぞり上げるように割れ目を刺激すれば、ごくんっと喉が鳴る。
『はははっ、飲みやがった!!』
『よーしよし、それでいい。よく味わえよ、男のザーメンの味を!』
 男共は手を叩いて笑いながら、怒張を指で弄ぶ。
 過去の映像通りなら、タコ部屋労働者の数は50人。恥辱の奉仕は、ここからが本番だ。


                 ※


『あっ、ああああっ!! きてえ、赤ちゃんの種、奥に注いでえっ!!!』
 舌ったらずにも思える声が響き渡る。声量は相変わらず大きい。映像内の音に優先順位をつけるなら、その叫びが1番で、パンパンという性行為特有の音が2番といったところだろう。それに比べれば、他の音など些細なノイズに過ぎない。だが俺は、そのノイズこそが気がかりだ。

『う゛っ、ぶぐっ……んんう゛っ、んええ゛っ!』
 中年男の逸物を代わる代わる口に突っ込まれながら、沙綾香はえずき続けていた。ディープスロートの最中にサイズが増していくとはいえ、射精直後に抜き出されるペニスのサイズは、せいぜい16か17センチといったところ。20センチ台半ばの黒人ペニスを何度も咥え込まされている沙綾香にとっては、余裕のあるサイズだろう。にもかかわらずえずくのは、下半身の疼きのせいだろう。
 百合による責めは、徹底していた。彼女は、沙綾香が絶頂するタイミングを読みきっているらしい。ある時は斜め方向から、ある時は真下から上に向かって、毎回違う角度でマッサージ器を押し当てる。愛液が次々に溢れ、機械の振動で四方八方に飛び散っていく。
 そうして十分に昂らせたところで、百合はすっとマッサージ器を離す。激しく開閉を繰り返す割れ目は、「あと数秒で気持ちよくなれたのに、どうして」と泣き叫ぶかのようだ。時にはマッサージ器が離された瞬間、追いすがるように腰が下がり、手越達の大笑いを誘うことすらあった。

 そんなことを30分あまりも繰り返し、がに股に開かれた脚が病的に震えだした頃、百合はなぜかマッサージ器のスイッチを切った。そして泣き叫ぶような割れ目を、両手の親指でぐうっと押しひらく。赤い粘膜が開けば、とろとろと肉汁が滴り落ち、子宮口までが丸見えになった。何も刺激を受けていないのに、割れ目は喘ぐように開閉し、愛液を垂らす。それをじっくりと観察してから、百合は再びマッサージ器のスイッチを入れた。条件反射というものは恐ろしい。重苦しい重低音が響きはじめれば、それだけで割れ目のひくつきが早くなる。愛液もどろっ、どろっ、と溢れ出す。その状況で、百合はまたマッサージ器を触れさせた。ただし、割れ目にじゃない。下腹部……子宮付近にだ。これは完全に予想外だったらしく、沙綾香の腹筋が激しく動く。もごっ、というくぐもった呻き声も漏れる。

 こうした一連の責めは、当然ながら画面左側にも変化を及ぼした。
『んむっ、むっ、むぐっ……ぉ゛え゛っ!! もぼっ、おも゛っ、ごもおっ……ん、ぐっ……んぉ゛お゛ええ゛っ!! ぶふっ、おえ゛っ!!』
 タコ部屋男達の逸物を根元まで押し込まれても、沙綾香にはなお睨む余裕がある。だが、百合の手で絶頂に際に追い込まれている間は、その余裕が消え失せた。瞳孔が開くと同時に、激しくえずき、噎せる。
『お、また苦しい感じになってきやがった!』
 男共は沙綾香の反応を面白がり、さらに追い詰めようとする。後頭部を抱え込んだまま、グリグリと腰を押し付けたり。鼻を指で摘まみ、呼吸を遮ったり。その果てに射精する際にも、喉奥へ突っ込んだまま直接胃に流し込む奴もいれば、顔に勢いよく掛ける奴や、わざわざ鼻の中に注ぎ込もうとする奴もいる。そうして嫌がらせをし、沙綾香が睨んでくるのを楽しむわけだ。

 そして、ある程度時間が経てば、状況はさらに悪くなる。
『おーい、ちょっと使わせてくれ』
 遠くからそう声がし、一人の男が画面内に姿を表す。沙綾香を取り囲む輪に加わろうとするそいつの逸物は、何かの粘液に塗れていた。
『おいおい。桜織相手に楽しんどいて、この便器まで堪能しようってか? 贅沢な野郎だな』
『んなこと言ってもよぉ、マン汁でベタベタに汚れてんだぜ。せっかく洗える設備があるんだ、有効活用しねぇとだろ。ほら、どいてくれ。乾いちまう』
 男は仲間に非難されながらも、濡れ光る逸物を沙綾香の口元に近づける。
『もごっ!? も゛ーーっ、お゛ーーっ!!』
 繰り返しの奉仕で朦朧としていた沙綾香が、眼を剥いて喚きはじめた。つい今の今まで親友の性器に入っていた物を咥えさせられるなど、強い抵抗があって当然だ。だが、開口具で口を開かされた沙綾香に拒む術はない。
『桜織は可愛いからな。爪の垢ならぬマンコの汁を飲みゃあ、オメーはちっとは見れる顔になるかもなあ』
 男がさらに腰を押し出せば、目元を引き攣らせた顔に、妖しく濡れ光る逸物が入り込んでいく。
 逸物を押し込まれてからも、沙綾香の抵抗は激しかった。
『もごっ、ごおっ!! もごっお、おごも゛、おおお゛っ!!!』
 喉を突かれながら、えずきとはまた違う、何かの言葉を発し続けている。
『へへへっ、すげぇ嫌がりようだ』
『ずーっとなんか不満垂れてるな。まあ女同士って、表面上仲良くしてても、裏じゃすげえ嫌い合ってるらしいからよ。他の女のマン汁舐めるのが嫌でしょうがねえんだろ』
 男共は沙綾香の思惑など知らず、勝手な解釈で笑い合う。そんな中、沙綾香は顔を歪め続ける。
『ぶ、ぶふっ!!!』
 愛液まみれの怒張を突っ込まれてから、1分あまり。沙綾香はとうとう噎せ返り、鼻から精液を溢れさせる。
『はははっ、なんか噴いたぞおい!!』
『これまでに飲まされたザーメンが逆流してんのか? もう結構飲んでるもんな』
 男共はそれをも嘲笑い、さらに口の蹂躙を続ける。
 桜織とのセックス後に咥えさせる男は、もちろんこの一人だけじゃない。
『おい、そろそろ射精さねぇか? 後が詰まってんぜ』
『こっちも頼むわ!』
 一人また一人と、桜織相手に射精した男共が列を作る。こういう桜織の相手を終えた連中は、一度射精しているため、達するのに時間が掛かるというデメリットもあった。初めて射精する奴が平均十数ピストンで達するのに対し、30回も40回も喉奥を凌辱しつづける。沙綾香にとっては、最悪な相手だろう。

 前では50人の男の薄汚いペニスを順番に咥えさせられ、後ろでは百合による過酷な寸止めが続く。
 沙綾香の目からは、とうとう涙が零れはじめていた。顔の左右に突き出た両手は固く握りしめられ、足はがに股のまま、激しく踏み変えられる。
『えぐっ、えぐっ!! えきあい、えきあいっ!!』
 男が射精し、ほんの僅かに口が自由になれば、開口具から呻きが漏れる。
『あ? 何言ってんだ、こいつ』
『もしかして、「イキたい」つってんじゃねえのか?』
『はぁ? 俺らのチンポしゃぶりながらか? 気持ち悪りー女だな』
 その呻きは男共に気味悪いがられ、嘲笑の的になる。肉体的にも精神的にも、ヤスリがけされるような状況だ。
「クククッ。地獄だな、ありゃ」
 ソファに腰掛けたロドニーが、葉巻をふかしながら呟いた。
「ああ、生殺しの極致ってやつだ。思いっきりの一突きが欲しくって欲しくって、砂漠で水を求めるような心境だろうぜ。……百合、そろそろケツも弄ってやれ。軽くなら、イカせてもいいぜ」
 手越も真新しい煙草に火を点けつつ、百合に指示を飛ばす。百合はそれを受け、肛門に2本指を差し入れた。そしてマッサージ器の先端を下腹部に押し当てつつ、指先を腹側に曲げる。
『んも゛おおええ゛エ゛エ゛ッ!!!』
 直後、沙綾香の口から凄まじいえずき声が漏れ、両脚の踵が浮いた。百合がマッサージ器を引き、恥骨の辺りをうっすらと撫でるようにすれば、下半身は完全なつま先立ちで震えたあと、ぷしゅっと潮を噴く。
「クククッ。すっかりアナルアクメが癖になってんな」
「どの穴も、開発は充分。あとは中毒にするだけだ。焦らしに焦らした上で、極上の快楽を与えまくってよ」
「その割にゃあ、潮噴かせてんじゃねぇか。ささやかとはいえ、あれも解放だろ?」
「いいや。ああやって潮を噴いたところで、ちいとも楽にゃならねぇよ。むしろ、乾ききった喉に一滴だけの水は、何も与えられねぇ以上に酷だ。もっとくれもっとくれって、身体が訴えやがるからな」
 手越が語る通り、沙綾香の下半身は、さっきよりも余裕を失っていた。肛門は百合の指を締め付け、割れ目は狂ったように痙攣しながら雫を垂らし、足先は指の腹しか床と接していない。そしてそれは、またしても上半身に影響を及ぼした。
『うっひょおっ、すーげぇコイツの口! ツバと、えずき汁か胃液かわかんねーもんが混ざり合ってよ、トロットロになってやがる! このヌメり、たまんねぇや。マンコより気持ちいいぜ!』
 沙綾香の口を『使って』いる男が、興奮した様子で叫んだ。その心地よさそうな声と表情に、他の男も鼻息を荒くする。
『マジかよそれ……気になんじゃねえか。早く替われよ!』
『俺も、2周目やらせてくれ。最初の方だったからよ、そこまでトロトロじゃなかったんだ!』
 50人もの男が色めき立ち、一つしかない穴を奪い合う。それも、一人一回では済まない。2回も3回も、嗜虐心と肉欲を満たそうとする。

 全員が人心地つき、誰も開口具に挿入しなくなったのは、実に5時間後のことだった。
『ふーっ、やったやった! 何回出したんだ? このブスの口に』
『知らね。100回ちょいじゃねーか?』
『かーっ、幸せな女だな。デカチンの雄にハーレム状態で可愛がられて、精子までハラ一杯ご馳走してもらえんだからよ』
『ああ、奴隷冥利に尽きるってもんだ。箱ン中じゃ、マンコがトロトロになってるに違いねぇ』
 男共は、唾液の滴る逸物をぶらつかせながら、沙綾香を取り囲む。
 沙綾香は、気を失っていた。顔は力なく俯き、開口具の蓋に繋がる鎖には、泡立つ粘液が絡みついている。
『……すげぇことになってんな、しかし』
 一人が顎を持ち上げると、精液で覆われた顔が露わになった。
『うっへ。ぶっかけまくったザーメンが固まって、顔中パキパキじゃねーか』
『公衆便器だな、完全に』
『いや。公園の便器でも、ここまで汚くねーだろ』
 何人かが呟き、また別の人間が、沙綾香の口に指を突っ込む。喉奥にまで指先を突っ込めば、沙綾香の首がぼこりと波打った。
『ごぼっ、ごほっ!!』
 苦しそうな咳と共に、白濁があふれ出していく。50人分の精液となれば、さすがに量が凄まじい。蛇口を開け放った時のように、びしゃびしゃと床に音が立つ。
『うおー、ヤッベエ!』
『ほんと、桜織にやったアレ思い出すな。いくらか飲ませたら、全員の借金帳消しとかいうやつ』
『俺もそれ思い出してた。すげー懐かしいわ』
『桜織がまだ可愛かった頃だよなあ。大和撫子って感じでよ』
『言うなって、虚しくなるだけだから』
『そうそう。それによ、そんなのを俺らでブッ壊したんだぜ、すげえじゃん。俺、シャバで自慢しまくるわ』
『俺も俺も。さって、帰るか』
『ああ。じゃあな便器。明日もそこにいりゃあ、使ってやんよ。今度は小便飲ましてやる』
 男共は下劣な会話を交わしながら、カメラの外へ消えていく。やるだけやって満足し、どこかへ帰っていくようだ。

 広い部屋の中、精液に塗れた沙綾香だけが取り残される。

『ひゃ………………お……ぃ…………』

 沙綾香は力を振り絞って顔を上げ、不自由な口で反対側に声を掛ける。だが、返事はない。少なくとも、“人間の言葉”では。

 沙綾香の頬を涙が伝い、白濁の広がる床に弾けた。



                 ※



 タコ部屋労働者が部屋を去った後、ようやく沙綾香の拘束が解かれる。
『えあ、あ゛……!』
 開口マスクを外された瞬間、沙綾香は顎を押さえて呻いた。顎が外れそうに痛むんだろうが、それだけじゃない。
『せ、先輩……お願いします、イカせてください! もう、我慢できないっ!!』
 百合の手を掴み、必死に乞う沙綾香。その必死さに、百合はカメラの方を見上げる。だが、手越が同情などするはずもない。
「駄目だ。例の部屋に連れていけ」
 それを受けて百合は、沙綾香の顔を濡れ布巾で拭い、ふらつく彼女を立ち上がらせる。
『……ごめんなさい』
 一言、小さく謝罪しながら。


 モニターから2人の姿が消えてから、少し後。下のフロアのセンサーが反応した。沙綾香達が帰ってきたのかと思ったが、開いた扉から姿を現したのは、意外な人間だった。
「あ? どうしたよ、颯汰(そうた)」
 入口を振り返った手越が、意外そうに声を掛ける。
 入ってきたのは、颯汰。ボーイッシュな少女だった祐希を女に変え、沙綾香に快楽責めで泣きを入れさせた若い調教師だ。
「やー別に、大した用はないんすけど。手越さんでしょ? ウチの祐希連れ出させたの」
「ウチの、か。随分と入れ込んでるじゃねえか」
「そっすよ。あいつ、強豪ソフト部のエースってだけあって、めっちゃ締まりいいし、体力もあるんです。8時間ヤリまくってもヘバんねぇんすよ、凄くないっすか? オレ、一人の娘とずーっと抱き合ってんの好きなんで、フェイバリットなセフレです。それだけに、沙綾香とかいうビッチに『審査会』で負けたのはショックでしたけど」
「なるほどな。お気に入りのオンナを盗られちまったんで、暇つぶしがてら文句垂れに来たってか」
 鼻息荒く捲し立てる颯汰に、手越が煙草を咥えさせ、ダンヒルライターで火を点ける。理想的な上下関係だ。あの二人が、女を壊す外道でさえなければ。
「しかし、妙な因果だな。その憎き沙綾香だがよ。ちょうど今、お前に縁のある人間と合流してる頃だろうぜ」
 手越はそう言ってロドニーの方を見る。ロドニーは口笛を吹きながらリモコンを拾い上げ、モニターの画面を切り替えた。

 今度は、分割されていない一画面だ。奥の壁一杯に、ある風景が俯瞰視点で映し出される。
 映っているのは、ガラスを隔てた2つの部屋。いや……手前側は、果たして部屋と言っていいものか。
 人ひとりがかろうじて寝転がれる程度のスペースに、縦長の寝台が設けられている。端にいくつかタオルが重ねられている他は、粗末な枕が一つと、コンドームの袋、ローションのボトルしかない。
「うわ、狭ぇ! これアレでしょ。あんまし金ない客用の、最低ランクの『ヤリ部屋』っしょ」
 颯汰の指摘通り、かろうじてセックスができるだけの個室だ。その狭さときたら、カプセルホテルの寝床か、あるいは和室の押し入れ程度しかない。
「まあな。だが、需要はあるんだぜ。覗き部屋としてよ」
 手越は、颯汰に視線を向けて答える。
「覗き部屋?」
「ああ。部屋の間がガラスで仕切られてんだろ、ありゃあマジックミラーだ。照明が暗めのヤリ部屋からは、蛍光灯で照らされた奥の部屋が丸見えだが、奥っ側からヤリ部屋を見ても、壁の一面が鏡張りになってるようにしか見えねえ。そのシチュエーションを利用して楽しむわけだ。奥っ側もヤリ部屋だから、そこで誰かがヤッてんのを覗きつつ、堂々とセンズリこくも良し。あるいはスワッピングの一環として、奥の部屋で旦那が呆けてんのを一方的に見ながら、手前側で嫁をハメるもよし……ってな」
 手越がモニターを指し示しながら、自慢げに語る。
 俺がさっき『和室の押し入れ』という印象を受けたのは、ガラスで仕切られた向こうの部屋にも、布団が敷かれているからだ。縦に二つ、横に一つ。広さにして六畳間というところか。
 秘密の覗き部屋……何とも変態じみたギミックだが、いかにもこの倶楽部らしい。実際、俺が監禁されているこの地下19階も、外から覗き放題のマジックミラールームだ。俺からは認識できないが、きっと今この瞬間も、苦悶する俺の反応を誰かが楽しんでいるに違いない。
「へぇー、面白いっすねそれ! そういうシチュなら、あの狭さも納得っす。こっそりハメるんなら、狭いとこの方が興奮しますもんね。あ、じゃあもしかして、あの沙綾香って子にもそういう感じのプレイさせるんすか?」
 颯汰がケラケラと笑いながら手越に問いかける。気安く発されたその一言が、他人事でない俺にとってはひどく重い。
「ああ、そうだ。おっと、ちょうど来たらしいな」
 手越がそう言った直後、モニターに動きがあった。狭い方の部屋に設けられたドアが開き、誰かが入ってくる。それを見て、颯汰が驚きの声を上げた。
「あれ、健二?」
 画面に映る男は、颯汰の知り合いらしい。その反応を見て手越も、だから言ったろ、と笑う。
 俺も、その男の姿には見覚えがあった。どこかで目にした顔だ。
 桜織を犯していたタコ部屋連中の1人……じゃない。
 藤花を弄んでいた客の1人……でもない。
 そんな具合に記憶を遡りつつ、手越と颯汰の言葉を踏まえてよくよく思い返せば、ふっと記憶が蘇る。
 俺が最初に観た、祐希の調教。そこで颯汰と組んでいた、もう一人だ。
 いかにも今風の若者である颯汰に比べ、あの健二という男は髪も染めておらず、どちらかと言えば真面目寄りの大学生に見える。だが、祐希の調教で見せた言動は、遊び人そのもの。外見に反して、中身は颯汰と同じ人種だろう。

『ほら、何つっ立ってんの。早く入んなよ』
 健二が開いたままのドアに向けて手招きすると、もう一人が姿を現した。顔を見なくても、並外れたスタイルだけで沙綾香だと判る。
「やっぱ背ぇ高いなーあの子。健二のやつ、タッパ負けてんじゃねぇの」
 颯汰が茶化す通り、沙綾香の背丈は健二とほぼ変わらない。
 シャワーを浴びた後なのか、2人は体にバスタオルを巻いていた。健二は腰に、沙綾香は全身に。その恰好を見ていると、今から起こることを嫌でも想像してしまい、落ち着かない気分になる。いっそ、丸裸でいてくれた方がマシだ。
 健二と沙綾香は寝台に上がり、距離を空けて座る。ちょうどそこで、映像内がまた騒がしくなりはじめた。
「“向こう”のメンツも、ご到着らしいな」
 手越がそう呟いた直後、沙綾香達とガラスを隔てた、奥の部屋の扉が開く。
『ここ……だよね?』
『たぶん。ていうか、狭っ! ここに5人で待機すんの?』
 そんな会話を交わしながら入ってきたのは、5人の女だ。いや、少女と呼ぶべき年齢か。先頭の2人は高校生ぐらいに見える。そして後ろの3人は、間違いなく高校生と断言できる。なぜならその3人は、俺のよく知っている子……祐希と、千代里と、藤花だからだ。
『!!』
 級友の姿を目の当たりにして、沙綾香が目を見開く。逆に祐希達は、沙綾香の方に視線を向けても特に反応しない。マジックミラーというのは本当らしい。
 5人は、薄桃色のネグリジェを身に着け、それぞれ違う色の首輪を嵌められていた。首輪にはプレートが提げられ、それぞれ違う文字が刻まれている。祐希は『口』『膣』『肛門』、千代里は『口』、藤花は『口』『肛門』と書かれているところを見ると、表記はセックス時の使用可能部位か。まさしく性交用の奴隷という扱い。たぶんこれから、あの部屋で客を取らされるんだろう。
 5人とも客を取るのは初めてではないのか、落ち着いた様子で布団に腰を下ろし、持参したバッグから櫛やリップクリームを取り出しはじめる。一方で沙綾香は、拳を握りしめていた。友人に負い目に感じている彼女にとって、性奴隷の成れの果てともいえるこの光景は、見るに堪えないものだろう。
 そんな沙綾香の様子を眺めながら、健二が密かに距離を詰めはじめた。そして沙綾香のすぐ横までくると、彼女が胸に巻いたバスタオルをいきなり引き下げる。
『あっ!!』
 乳房が露出し、沙綾香から声が漏れた。年頃の少女として、それは当然の反応だ。だが。
『え? 誰か、なんか言った?』
 奥の部屋にいる5人は、不思議そうに顔を見合わせる。叫びは聴こえるものの、ミラー向こうが見えないからこその疑問だ。
『何も言ってないけど?』
『んー、気のせいかな。……ゴメン、やっぱ何でもない』
 やや腑に落ちない雰囲気ながらも、疑惑は流される。だがそれは、最初の一回だからこそだ。同じような事が何度も続けば、彼女達は不審がり、本格的な原因究明に入るだろう。そうすれば、マジックミラーの仕掛けに気付かないとも限らない。
 外に出て廊下を回り、沙綾香達が入った方のドアを開ければ。あるいはもっと単純に、六畳間側の電気を消して、手前の部屋よりも暗くしてしまえば、沙綾香の姿は丸見えになってしまう。どう見てもセックスをするためだけの部屋に、若い男と2人きり。その、あられもない状況がだ。
『…っ!』
 沙綾香は、口を手で覆い、みるみる顔を青ざめさせる。片や健二は、唇に人差し指を宛がって念を押しつつ、ゆっくりと乳房に手を触れた。


                 ※


 颯汰の相方を務めていただけあって、健二の愛撫は手慣れていた。乳房と腋の下の境目部分に手を宛がい、寄せて上げるように揉みしだく。乳腺をじっくりと刺激するやり方だ。
『…………。』
 沙綾香は愛撫を嫌がり、健二の手を払い落とそうとしていた。だが音を立てられないということは、大っぴらな抵抗もできないということだ。抵抗というより、乳房を揉みしだく腕に手を添える程度のことしかできない。加えて、彼女は抵抗ばかりに集中できる状況でもない。その視線は頻繁に、マジックミラーの方を向いた。
 沙綾香から見れば透明なガラスでも、向こうからすれば巨大な鏡。唇にリップを塗ったり、アイメイクをする間、彼女達はマジックミラーをじっと見つめている。まるで、沙綾香を真正面から観察するように。そんな露骨な視線を、意識せずにいられるはずもない。
 恥じ入る沙綾香を面白がりつつ、健二は胸の先端に触れはじめた。とはいえ、いきなり乳首にはいかない。ほんのりと膨らんだ乳輪を指で挟み、何度も前に絞り出す。
『……っ! ……っっ!!』
 沙綾香は、それだけで感じてしまうらしい。唇を噛んだまま、胸をせり出し、背中をピクピクと前後させる。さらに親指や中指で乳首を弄りまわされれば、シーツを握りしめて必死に堪える。
 健二は、そんな沙綾香の耳元に口を寄せ、何かを囁きかけた。その結果、沙綾香に睨みつけられても、動じる様子はない。むしろ、行動はますます大胆になった。
 右乳首を指で転がしつつ、左手でバスタオルの裾をまくり上げ、クリトリスを指で捉える。さらには、首筋に舌まで這わせていく。
「お、首舐め。あれ、可愛いと思った女にしかやんないんすよ。だいぶ気に入られてますね、あの沙綾香って子」
 モニターを見て颯汰が笑う。調教師に気に入られるなど、不都合しかない。

『なんか、肌ガサガサになってきた。化粧水合わないのかなぁ』
『食事のせいじゃない? ここって、精力つける系のばっかじゃん。アザラシのステーキとか、ホルモンスープとか。ビタミンが足りてないんだよ』
 2人の少女がマジックミラーに顔を近づけ、頬や首を観察する。見ようによっては、隣の部屋を覗き込もうとするような動きだ。それとわずか数十センチしか離れていない位置で、沙綾香は、少しずつ足を開かされていた。首筋と乳首、クリトリスの同時責めで、どんどん力が抜けているようだ。そして健二は、その脱力を見逃さない。沙綾香の脚が十分に開けば、自分の脚を絡ませて閉じないようにしつつ、割れ目に指を差し入れる。
 沙綾香の口が、「あ」の形に開いた。指が中で曲げられ、グッグッとどこかを刺激しはじめれば、その度に声を伴わない「あ」の叫びが漏れる。
 六畳間側でも布団が敷かれた上で5人が動いているため、シーツが擦れる音は不審がられない。だが、誤魔化せる音はそれぐらいだ。5人が化粧直しに集中し、押し黙っている今、鏡の向こうから声がすれば確実に察知される。そのため沙綾香は、両手で口を押さえ、必死に声を殺すしかなかった。
 健二にも無音という制約がある以上、激しく責めることはできない。乳首を刺激しつつ、割れ目に沈み込ませた二本指でスポットを押し込み、同時に親指でクリトリスを擦る。できるのはその辺りが限度だ。だが奴には、それで充分らしい。
『っ!! ッッ!!!』
 両手で口を押さえる沙綾香の目が、事故でも目にした時のように見開かれている。大きく開かされた足の指も握り込まれ、リラックスできていないのは確実だ。
「やるな、あいつ。若ェのに、じっくり腰据えた前戯をしやがる」
 モニターを見上げる手越が、感心した様子で呟いた。それを聞いて、颯汰はどこか誇らしげな顔になる。
「アイツは前戯上手いっすよ。中イキさせるテクはオレのが上っすけど、前戯だとアイツには敵わないっす。オレ、ゆーて飽きっぽいんで」
 颯汰はたぶん、かなりの自信家だ。師匠筋の手越ならともかく、年の近い人間を自分より上と認めることは滅多にないだろう。その颯汰をして敵わないと言わしめるテクニックは、その後も存分に披露された。
 例えば、顎を持ち上げるやり方だ。健二は割れ目への刺激を続けながら、乳房から手を離し、沙綾香の顎を手の平で押し上げはじめる。人間は耐えようとする時に自然と顎を引くが、それを阻害しているんだろう。必死で耐えたい沙綾香は、それを嫌がった。顎を浮かされたまま割れ目を刺激されれば、そのうち沙綾香の身体がガクガクと痙攣しはじめる。そうなれば、もう余裕など一切ない。口から手を離し、健二の腕を掴んで、悲痛な顔を何度も横に振る。
 ( だめ、だめっ!! )
 そんな心の叫びが聴こえるようだ。だが、健二は取り合わない。効くとわかれば、余計に顎を浮かせ、沙綾香の身体そのものを後ろへ倒す。沙綾香は、それに抗いきれなかった。健二の太腿へ背を預け、絡めとられた右足を真横に投げ出す格好になってしまう。
「すーげぇ。友達にマンコ見せつける形じゃん」
 颯汰の言葉通り、恥じらいの部分をそのままに晒す格好だ。もし今、何らかの形でマジックミラーの効果がなくなれば、一巻の終わりと言っても過言じゃない。
『…………!!』
 沙綾香の頬がみるみる紅潮し、必死に秘部を手で隠そうとする。乙女そのものの顔、乙女そのものの行動。だが、健二はそれを許さない。すぐに沙綾香の手首を掴んで膝上に戻させ、人畜無害そうな微笑みを見せる。
 俺は正直、沙綾香にまだあれほどの羞恥心が残っていることが嬉しかった。だが、同時に不安も増した。あの状況は、羞恥心が強ければ強いほど、心に深刻なダメージを受けるだろうから。


                 ※


 指で散々に昂らせた後は、とうとう完全にバスタオルを取り去り、口での責めが始まった。羞恥心を煽るためか、寝台に手足をつかせ、腰を高く掲げさせてのクンニリングスだ。
 たかが舌……それも大きな音が立てられず、そっと舐めるか、舌を中に入れる程度しかできない責め。にもかかわらず、沙綾香を襲う快感は生半可なものではないようだ。それは、彼女の反応を見ていればはっきり解る。
『っ……ッッ、…、……っ!!!』
 沙綾香は、必死に歯を食いしばっていた。ベッドについた両手は、何度もシーツを握りしめた。肩幅以上に開いた脚はガクガクと震え、絶え間なく愛液を滴らせる。
 六畳間の方で何か物音がするたび、沙綾香の顔はそっちを振り向いた。そして大抵は、その直後にぶるっと腰が震え上がる。
 健二は、淡々としたものだ。沙綾香の左右の太腿をそれぞれ抱え込み、尻肉の合間に顔を埋めて離さない。一点、人間らしい所を挙げるとすれば、腰に巻いたバスタオルの股間部分が、テントを張ったように盛り上がっていることだけだ。
 音もなく、動きも乏しい責め。だが、静止画とは違う。沙綾香の女の子らしい、柔らかそうな肉体は、鼓動と同じリズムで筋肉を浮き出させている。やがて、寝台へのつま先のめり込みが深まり、腰がくっくっと浮いたところで、急に健二が顔を離した。その直後、割れ目から潮が噴き出る。
『…………ん、ぅうう…………っ!!!』
 沙綾香の眼球がぐるっと上を向き、食いしばった歯の間から呻きが漏れた。愛液が両脚と、傾斜のついた腹部を伝って滴り落ちる。
 六畳間の方を見る限り、今の呻きが声と認識されることはなかったようだ。だが、傷痕は大きい。
『ふーーーっ…………ふーーーーっ…………』
 おおっぴらに喘げない沙綾香は、唇を閉じたまま、鼻だけで乱れた呼吸を整えなければならなかった。そしてそのせいで、膝が笑うのを止められなくなる。当然、ガクッと腰が落ちた。
 だが、奴隷が弱ったと見れば、さらに追い込むのがここの調教師だ。健二も例外じゃない。美味そうに口周りの愛液を舐め取りながら、崩れ落ちる沙綾香を立たせに掛かる。しかも、さっきまでの四つ足じゃない。まずは右手を、続いて左手をガラスにつかせ、マジックミラーに寄りかかる形で立ち上がらせる。
『…………っ!!』
 沙綾香の唇が縦に開いた。読唇術の心得がなくても、「いや」という言葉が読み取れる。だが、健二はあくまで譲らない。沙綾香が激しく抵抗できないのをいいことに、両脚を掴んで少しずつ股を開かせ、胡坐を掻くような格好でクンニリングスを再開する。
 沙綾香の口が引き攣った。今にも泣きそうだ。だが、彼女に抵抗する術はない。ガラスに手をついたまま、せめて向こうに気取られないように、じっと耐え凌ぐしかない。

 ガラスはかなり厚みがあるのか、沙綾香が寄りかかっても軋んだりはしない。映像内に、しばし無音の状態が訪れる。だが、それも僅かな間だけだった。
『…………ねえ、アンタらさあ』
 六畳間で黙りこくっていた5人のうち、赤いリボンをつけた1人が、祐希達に向かって話しかけた。正確には、祐希……千代里……藤花を順に見ながらだ。
『ずっと気になってたんだけど、アンタら、なんでこんなとこで客取ってんの? 3人とも、このフロアに来そうな感じじゃないじゃん。顔もスタイルもいいし、そこの2人なんてまだバージンでしょ? どう考えても、VIPエリアに行ってないとおかしいんだけど』
 彼女は、千代里と藤花の首輪から提げられたプレートを指して眉を顰める。
『それ、あたしも思った。なんでVIPエリアじゃないんだろーって』
 隣の、後ろ髪をシュシュで纏めている子も同意を示した。
 この2人は、こう言っては可哀想だが、ごく平凡な見た目だ。現在彼女達がいるフロアには、そういう“上玉”とされていない奴隷が集められているんだろう。そこへアイドル級のルックスを誇る人間が混ざれば、変に感じて当然だ。
『それは……『審査会』で負けたから、だろうね』
 訝しむ2人の視線を受け、祐希がやや寂しげに答えた。
『審査会って、奴隷のランク付けするイベントとか?』
『そうだ。最下層エリアで、VIP客相手にショーをして、どっちがマゾ奴隷として上等かを競うんだよ。勝てばVIPエリアに残留、負ければ格下げになる』
 祐希はそこで言葉を切り、押し黙る。するとそれを引き継ぐように、藤花が口を開いた。
『俺は……勝つべきだった。俺が、あそこに残るべきだった!!』
 藤花は絞り出すようにそう言うと、壁に拳を叩きつける。
『ちょっ、落ち着きなって。別にVIPエリアなら良いって訳じゃないよ? ここのVIPって、脂ぎったオッサンばっかじゃん。変態っぽいのも多いしさぁ。だったら、ここでイケメンに逢えるのを祈った方が……』
『そうじゃない、沙綾香をあそこに残しておくのがまずいんだ! あそこは、他のフロアとは次元が違う。筋骨逞しい黒人が10人もいるんだ。そいつらは全員、日本人の二倍も三倍も大きいペニスを持っている。俺は、ほんの数時間その相手をしただけだったが、心底震えたよ。身体の中が丸ごと作り変えられて、有無を言わさず雌にされる感じがした。すでにだいぶ狂わされている身だが、そこからさらにもう一段、壊される感じがした。沙綾香は、毎日そんな相手に輪姦されているんだ。そんなもの、いつまでも耐えられるわけがない!』
 藤花は叫び、呻き、髪を掻きむしった。祐希と千代里も浮かない顔だ。
 彼女達は全員、あの黒人共に犯される刺激の強さを体感している。あの黒人共に夜通し犯され、快楽に泣き叫ぶ沙綾香の姿を見ている。その上で、沙綾香を案じてくれているらしい。
『……そっか。その沙綾香って子が、アンタらの友達なんだね。確かに可哀想だけど、誰かがそのフロアにいなきゃなんでしょ? だったら、諦めるしかないじゃん。審査会ってのの結果を受け入れてさ』
 赤リボンの子が、いくぶん同情的な声色で藤花を宥める。だが、藤花は首を振った。
『沙綾香は、幸せになるべきだ。高校へ入学したばかりの頃のあいつは、今にも死にそうな顔をしていた。あいつが中学を卒業するまでの15年間は、文字通りの地獄だったんだ。俺も、家庭の事情で娯楽などとは無縁だったが、それすらマシに思えるぐらいにな。そんなあいつを見かねて、そこの千代里が声をかけて、委員長が親身に接して、そこに俺や祐希が混ざった。そうして何か月かして、ようやくあいつは笑えるようになったんだ……』
 藤花の声は、震えていた。最後の方は、もはや消え入りそうな声色だ。
『そだったね。最初は、ほんとに見てらんなかった。そこから、せっかく笑えるようになったのに、またこんな目になんて……酷すぎるよ』
『うん。あの子は、もっと幸せになるべきだ。今まで笑えなかった分も。そういう意味じゃ、やっぱり私たちは、審査会で勝つべきだったね……』
 千代里と祐希も声を震わせ、涙を滲ませる。沙綾香への慈しみが、ひしひしと感じられる涙だ。
『………………。』
 沙綾香も、ガラスに隔てられた向かい側で、やはり涙ぐんでいた。友人達の熱い想いを聞いて、こみ上げるものがあったんだろう。
 互いを犠牲にしても助けたいと想い合う、掛け値なしの友情。この上なく美しい光景だが、見方を変えれば、それだけ穢し甲斐もあるということだ。

 沙綾香の現状は、惨めなものだった。がに股のまま腰を深く落とす格好を強要され、秘部を休まず舐め回されている。万が一にでもミラー越しにそんな姿を見られれば、沙綾香に非があるか否かにかかわらず、印象は極めて悪い。ゆえに沙綾香は、罷り間違っても声を出すわけにはいかなかった。
 とはいえ、健二の愛撫は執拗で丹念だ。舌先で包皮からほじくり出すようにクリトリスを刺激し、割れ目がひくついたところで、平らにした舌全体を使ってべろりと舐め上げる。会陰部までをしっかりとなぞりきるあの動きは、女性器周りに密集する性感スポットを嫌というほど刺激することだろう。度重なるガスと調教で感度を研ぎ澄まされ、直前に数時間もの焦らし責めを受けた身なら、なおさらだ。
『…………っっ、ッッ、…………っっ!!!』
 沙綾香の反応は、大きかった。健二の舌が秘部を舐め上げるたび、顎が浮く。唇をへし曲げて堪えることもあれば、開いた口から舌先を覗かせ、『おおお』と声もなく呻くこともあった。といっても、それぐらいの反応は当然だろう。身体の反応となればもっと顕著だ。腹筋の浮き方、大腿部の張り、滴り落ちる愛液の頻度。それらは、ごく一般的なセックスにおける女の絶頂反応を、遥かに凌駕している。
 その様子を見て、手越が煙草を揉み消した。そして新しい煙草に火をつけながら、インカム越しに指示を出す。
「そろそろいいぜ、ハメても」
 健二はイヤホンでその指示を受け取ったらしい。沙綾香の割れ目へ舌を這わせつつ、右手で逸物を扱きながら腰を上げる。手に握られた逸物は、石のように硬く勃起していた。少し離れたカメラからさえ、血管が浮いているのが見てとれる。
「うっは、でけー! アイツ、あんなでかいんだ。祐希とやってた時より、一回り以上膨らんでますよ。相手がよっぽど好みなのか、シチュで興奮してんのか……どっちもありそうだな、面食いで変態だし」
 見慣れているはずの颯汰さえ、驚きの声を上げるほどの勃起具合。健二はそれをぶら下げながら身を屈め、ベッド脇に散乱するコンドームの袋を拾い上げた。そして袋を破ると、淀みない動きで勃起した逸物に被せる。沙綾香は、腋の下からそれを見ていた。視線を悟られたくない、でも気にせずにはいられない──そんな仕草だ。健二はそれに気づくと、笑みを湛えながら立ちあがった。そして沙綾香に背後から密着しつつ、耳元へ何かを囁きかける。沙綾香は何も答えない。いや、答えられない。唇を噛み締めたまま、ガラスに触れる手を握りしめるだけだ。健二は、そんな沙綾香の手首を掴んだ。そうして緩く姿勢を制御しつつ、逸物を割れ目に擦りつける。これが欲しいんだろ、と無言で語るように、何度も。
 沙綾香の目つきが鋭くなり、背後を睨みつける。だがそれは、健二の笑みを深めるだけだ。奴はまた耳元に口を寄せ、一言を囁くと、腰の角度を変えた。それまでより少し上の場所に、腰が密着する。ずるりと逸物が入り込んだのがわかる。

『………………~ッッッ!!!!!』

 声など一切発されていないのに、絶叫が聴こえた。挿入の瞬間、沙綾香の喉から漏れたモスキート音だ。その声といい、背中を反らせてぶるぶると震える様といい、凄まじい快感が見て取れる。
「クククッ。挿れられただけでイキやがった」
 手越のしてやったりという笑いが、不愉快で仕方ない。モニターに大きく写し出されている光景は、そのぐらい象徴的だ。
「そのまま動くなよ。イキたい、突いて欲しいってフラストレーションを溜め込ませろ」
 手越がそう指示を飛ばすと、健二は頷き、動きを止めた。とはいえ、肩幅に開いた太腿の動きを見れば、グッグッと膣内で逸物に力を入れているのが解る。
『……ぁっ、……っ!!』
 今の沙綾香には、そんな刺激ですら無視できないものらしい。激しく喘がないことを第一に心がけつつ、口を開いて舌を突き出し、“顔で喘ぐ”。そしてその顔は、ガラスの反射で健二にも見えているらしい。健二はガラス面を凝視しながら、ゆっくりと腰を引いた。そして、ゆっくりと挿入する。ほんの僅かに寝台が軋む程度の、無音の挿入。それでまた、沙綾香の頬肉が泣きそうに引き攣る。
「スゲーっすね、あの顔。どんな調教したら、あんなヌルい挿入であの顔になんすか?」
「どんなって、他人事みてぇに。あのガキを中イキ開発したのは、お前さんとあの連中だぜ」
 呆れた様子の颯汰に、手越が苦笑しながら黒人共を指で示す。颯汰自身にも自覚はあったのか、ゲラゲラと笑い転げた。


                 ※


 無音のセックスは粛々と続く。
 健二は、腰を使えない代わりに、様々な方法で沙綾香を追い詰めていた。乳房を揉みしだいたり、下腹を揉み込んだり、鼠径部をマッサージしたり。そしてその全てが、かなり効いているようだ。
『…ッ!!!』
 沙綾香は、左手をガラスについたまま、右手の指を噛んでいた。だが、胸や下腹部を刺激されるうち、両手をガラスへつくようになる。そのままさらに数秒経てば、後ろへ突き出した尻がぶるっと震え、多めの水分が滴り落ちていく。
「お、ハメ潮。動かずに噴かせるとか、やるなーあいつ」
 颯汰が呟いたように、どうやら潮を噴かされたらしい。健二もそれを察したようで、責め方を変えはじめた。股間を密着させたまま、沙綾香の腰を掴み、グリグリと捻りながら、自分の方に引き付ける。颯汰がやっていた、膣の一番奥を『練る』やり方だ。その効果は、絶大だった。
『っ!!』
 沙綾香の肩と腰がビクンと跳ね、背中を反らせたまま痙攣する。その波をかろうじて乗り切ったところで、沙綾香は後ろを振り向いた。
 ( 何てことするの!? )
 吊り上がった目尻を見れば、そう言いたいのは明らかだ。だが健二は、すでに沙綾香を落とした気でいるのか、上体を傾けてキスを迫ろうとする。沙綾香は今一度目を見開き、顔を横に振ってキスから逃れる。健二は残念、とばかりに肩を竦め、奥への刺激を再開する。グリグリと、丹念に。
 声こそ殺しているが、沙綾香の反応は刻一刻と激しくなっていく。ぶるっ、ぶるっ、と腰が震え、右手がガラスから離れて、「もうやめて」とばかりに健二の腕を掴む。その状態でさらに刺激を続けられれば、口が大きく開きはじめた。喘ぐよりもっと大きく、縦に開いたり閉じたりする。声を殺すのが限界に近いのかと思ったが、手越と颯汰は別の見方をしているらしい。
「イってんなあ」
「リップスマッキングでしたっけ、ああやって口パクパクさせんの。猿がイク時にやるやつっすよね。あいつも余裕が剥げて、動物化してるってことですかねえ。見た目だけなら、どんな女より女らしいのに」
 手越と颯汰の言葉に、悪意は感じられない。見たまま、感じたままを呟いている風だ。だからこそ、余計に恐ろしかった。あいつらが順調だとほくそ笑むたび、沙綾香が決定的に壊れていく気がする。

 口の開閉が始まっても、健二は容赦などしない。むしろ、その行為は余計に大胆になった。沙綾香の両手を壁につかせたまま、右脚を思いきり抱え上げる。そして、ほとんど上下に180度近くまで開脚させたまま、腰を密着させはじめた。
『っ!?』
 沙綾香からすれば、とんでもないことだ。立ちバックでも腰砕けになりかけているところへ、一本足で立たされて、姿勢が安定するはずがない。
『…………っ! …………っ!!』
 軸足の左脚を震わせ、健二の目を見つめながら、何度も首を振る。だが、健二は考えを改めない。子供が母親にしがみつくように右脚を抱え込み、最奥への圧迫を継続する。
 動きはない。動きはないのに、沙綾香は激しく反応した。左脚は何度も膝から崩れかけ、内腿に溝が刻まれる。ガラスにつく両手は、何度も場所を変える。
 やがて、沙綾香は今一度健二の顔を覗き込んだ。声はまったく聴こえないから、その時彼女が目で何を語ったかは、想像するしかない。だが、その後の展開を踏まえれば、彼女はこう訴えたんだろう。

 ( やめて……なんでもするから )

 条件付きの哀願。目尻を垂らして見つめれば、その意思はすぐに通じたことだろう。なぜならそれは、健二自身がしきりに求めていた事でもあるからだ。
 その次の流れは、スムーズだった。健二は、沙綾香の右脚を抱えたまま、彼女の背中をガラスにつけさせる。そうして姿勢を安定させてから、唇を奪った。
 沙綾香は、その口づけを拒まない。性器で繋がり合ったまま、静かに舌を絡ませる。握りしめた手が、心からの合意ではないと語っているのが、せめてもの救いか。「望みが叶った」と言わんばかりの健二の横顔を見ると、泥を呑まされる気分になるが。


                 ※


 沙綾香の唾液と屈辱感をひとしきり味わった後、健二は沙綾香の腕を後ろに引き絞り、狭い個室の中を歩かせはじめた。音を立てられない状況下で、信じがたい蛮行だ。
 だが考えてみれば、奴は行為が露見してもいいんだろう。沙綾香ほどの美少女を良いように扱っている姿など、調教師としてむしろ誇らしいに違いない。逆に沙綾香は、絶対に知られたくない行為だ。そのため彼女は、抜き足差し足で寝台を移動しつつ、怯えるようにガラスの外を見下ろしつづけていた。
 ちょうど、そんな中だ。六畳間側の廊下に、いくつもの足音が響きはじめたのは。
『……客、来たっぽい』
 髪をシュシュで纏めた子が呟き、赤リボンの子が溜息をつく。祐希、千代里、藤花の3人も、表情を強張らせる。直後、ギイッと音を立てて、錆びついた扉が開いた。
『お、マジでここだぜ?』
『ホンマか、リネン室か思うたわ!』
『つうか、狭ぇな! ここで10人がヤルんだろ?』
 口々に疑問や不満を漏らしながら、何人もの男が入ってくる。合計5人。年の頃は40前後というところだが、年相応の落ち着きは感じられない。来ている館内着も『審査会』の客が来ている物よりグレードが低く、まるで安宿の浴衣だ。
「うわ、ダセェ親父ばっか。レベル低そうな客っすね」
 颯汰が吐き捨てるように言う。
「客は客だ。年会費をギリギリ払えてる程度の“小金持ち”でもな」
 手越もフォローしてこそいるが、見下す態度を隠さない。
 そんな5人の客は部屋に入るなり、祐希達の顔を舐めるように観察する。そして、一様に驚きの表情を浮かべた。
『オイオイオイ……マジで良いのがいるじゃねぇか。3人もよお!』
『この倶楽部は騙しが少ねぇと聞いてたが、ここまでとはな! 芸能人レベルじゃねえか』
『ハハハハハッ、ようけカネ払ろとる甲斐があるってもんやな!』
 連中は品のない笑みを浮かべ、祐希達を褒め称える。見た目の冴えない⒉人には完全に背を向け、視線を向けもしないデリカシーの無さだ。無視された2人は眉を顰め、千代里も一瞬表情を曇らせた。
 だが、続けて発された一言で、また空気が一変する。
『しかし、信じられねぇなあ。こんな上玉のバージンを、俺らが貰えるなんてよお!』
 その言葉で、少女5人が全員目を見開いた。そして、もう一人。ガラスの向こうにいる沙綾香もだ。
『え……?』
『なっ……!!』
 千代里と藤花が、それぞれ声を詰まらせる。その様子からして、彼女達自身も聞かされていないらしい。
『え、じゃねえよ。ビンゴ大会の景品だよ。処女2人を含む、美少女JK5人との乱交パーティーってな。ま、美少女5人ってのはちと盛ってるが』
 客の1人が、ちらりと後ろの2人を振り返りながら笑う。
『お前らだろ? 首輪の調教済み項目に、“膣”って無ぇもんな』
 また別の1人は、少女5人の首輪に提げられたプレートを眺めながら舌なめずりする。
「え、ちょっ……マジっすか手越さん! あんなのに処女やるとか……あの子ら、Sランクの奴隷でしょ!?」
 颯汰でさえ動揺を隠せず、手越に食って掛かる。だが、手越は涼しい顔だ。
「どこぞでVIP客相手にくれてやってもよかったんだがよ、これはこれで面白くねぇか? 沙綾香の立場になってみな。大事な友達が、あんな雑魚みてぇな連中に膜を破られるんだぜ。それも、テメェのすぐ目の前でだ」
 手越のこの言葉に、颯汰が固まり、一拍置いて面白そうに笑みを浮かべる。
「……なーーるほど。うわぁ、えげつねぇ!」
 颯汰でも理解するのに時間のかかる、悪魔の筋書き。沙綾香達がそれを容易く呑み込めるはずもなく、呆然としている。そんな中、男共は手に持ったクジの色と、少女5人の首輪の色を見比べていた。クジと同じ色の首輪をつけた相手をだろう。
『青、ああああっ、畜生ッ!!』
『黄色は……おおーっしゃ! 日頃の行いだな、こりゃあ!』
 5人の男は、それぞれに一喜一憂しながら、粗末な館内着を脱ぎ捨てる。シミだらけで、毛むくじゃらの体。年頃の少女が生理的に嫌悪する類のものだ。
『さて、楽しませてもらおうか』
 手早くコンドームを装着すると、5人それぞれが決められた相手の前に陣取る。
『やっ、ま、待ってください!』
 最初に布団へ組み敷かれたのは、千代里だ。中学生と言ってもおかしくない顔つきと体格の彼女は、子ウサギのような眼で客を見つめる。だがそれは、相手の嗜虐心を煽る行為でしかない。
 男は荒々しく千代里の脚を押し開き、鼻息荒く舌を這わせる。
『ウヒヒヒ、甘露、甘露ってなあ!』
 嬉しそうに笑いながらひとしきり舐め回すと、前戯もそこそこに太った身体を沈み込ませた。手越と颯汰が揃って舌打ちするほどの、雑な挿入だ。
『いいいっ!!!』
 老若男女、誰にでも愛されそうな童顔が、一瞬にして歪む。
『千代ぉっ!!』
 藤花が横を向いて叫ぶが、彼女もまた処女として、獣欲の的にされていた。剣道で鍛え上げた彼女は、男相手でもそうそう力負けはしない。強引に膝を割ろうとしても、びくともしていないようだ。だが。
『ええい。抵抗すな、“犬”ッ!!』
 客が激昂してそう叫んだ瞬間、藤花は条件反射か、びくっと身を竦めた。そしてその後は、噓のようにあっさりと足を開く。
『まったく、手こずらせよって……罰としてお前は、前戯なしや!!』
 客は苛立ちもそのままに藤花の肩を押さえつけ、一気に腰を突き入れる。
『くぅううああっ!!!』
 精悍な藤花の美貌が、やはり一瞬にして歪む。客はその反応を見て意地の悪い笑みを浮かべ、腰を遣いはじめた。
『千代里っ! 藤花っ!』
 今まさに純潔を奪われている友人2人を見て、祐希が叫ぶ。だがそんな祐希の前にも、また別の男が立ちはだかった。
『他所は気にすんなって。お前は、俺が可愛がってやるよ』
 勃起した逸物を近づけられ、祐希は一瞬戸惑いを見せるものの、結局は自ら口を開く。残る2人もすでに奉仕を始めているため、これで5人全員が客を取らされたことになる。
『…………ッ!!』
 沙綾香は、その様子を苦々しい顔で見つめていた。諸々のしがらみがなければ、友人を犯す男共に掴みかかっていきそうな眼だ。だが、今の彼女にそれはできない。
『う、うああ……あう、うう゛っ……!!』
『はぁ、はぁっ……く、う゛っ……!!』
 純潔を失ったばかりの千代里と藤花は、当然ながら辛そうだ。男共が腰を突き入れるたび、きつく目を閉じて呻きを漏らす。
 だが、その状態は長くは続かなかった。
『おいおい……お前、ホントに処女か?』
『お、そっちもか? この女もや、もうアソコが濡れてきよった』
 千代里と藤花を犯す男が、驚きの声を上げる。まだ挿入から数分と経っていない。にもかかわらず、2人の膣からは愛液が溢れているらしい。
『うううう……』
『くっ……!』
 千代里も藤花も恥ずかしそうにするが、濡れるのは当然のことだろう。この倶楽部に連れてこられてから、彼女達はずっと調教を受けてきた。千代里は喉奥を、藤花は肛門を。そのどちらにも性感帯は存在するため、刺激され続ければ感じてしまう。あの2人は、処女でありながら、“女”としては十分に熟しているに違いない。
『ケッ、拍子抜けだぜ!』
『せやなぁ。バージンっちゅうから初々しさを期待しとったのに、奴隷は奴隷っちゅうわけか!』
 男2人は毒づくが、その口元は緩んでいた。言葉責めは、相手の羞恥心を煽るため。極上の美少女とセックスができる時点で、本当は不満などないんだろう。


                 ※


『はっ、はっ、はっ、はっ……』
『あ、ああ……あああ、ああ、あ…………』
 六畳間に、荒い呼吸と喘ぎが満ちている。最初こそ相手選びに一喜一憂したり、処女喪失絡みで騒いでいたが、今や5組すべてがセックスに没頭している状態だ。
『へっへ……初物のくせに、濡れがよくていい具合だぜ。こりゃ、俺のが一番の当たりかもな』
『そりゃどうだか。こいつのこそヌルピタで、最高だぜ?』
 男共のうち2人が、汗まみれで喘ぎつつ、自分の相手こそ極上だと主張しあう。そんな会話へ、さらにもう一人が割り込んだ。
『バカ言ってんじゃねぇよ、お前ら。こいつの脚の筋肉見てからモノ言えってんだ!』
 奴の相手は祐希だ。背面騎乗位で腰を遣わせているから、下半身の筋肉がよく見える。ソフトボール部エースの脚は、確かに機能的で美しい。
『なんや、脚の筋肉言うたか? せやったら、こっちも負けとれんのぉ。どっちが凄いか、横に並べて白黒つけよか』
 藤花を抱いていた男も興味を示し、わざわざ祐希達の横へ移動すると、同じく背面騎乗位へ移行する。剣道で鍛え上げた藤花の脚も、やはり引き締まっていて美しい。
 男に跨ったまま、Mの字に足を開く祐希と藤花。その姿は、マジックミラーにしっかりと反射していることだろう。
『どうや、見比べてみて。そっちの体育会系の姉ちゃんもエエ大腿四頭筋しとるが、この子は太腿裏のハムストリングス筋の発達がえげつないやろ。これはスポーツやない。足の裏全体でギュウーッと床を掴む、武術をやっとる人間の肉や。こんな筋肉した子ぉのアソコに突っ込んでみぃ、締まりが良ぅて脳天まで痺れるで』
 関西弁の男が藤花の尻を撫でながら語れば、祐希を抱く男の喉がゴクリと鳴った。
『へ、へへ、そりゃなんだか痛そうだな、ご愁傷様。アソコってなぁ、締まりゃいいってモンでもねぇだろ。その点こっちは、ちょうどいい塩梅だぜ。入口から奥の方まで、みっちり吸いついてきやがる』
 祐希を抱く男が反論すれば、今度は関西弁の男が露骨な視線を隣に向ける。
 つまらないプライドを賭けた自慢合戦だ。そのネタにされている祐希と藤花は、恥じ入るような表情で下を向いていた。だが、その状態も長くは続かない。
『あ、あ……ああ!』
『ふぁあ、ああ……んあ、ああ……っ!!』
 騎乗位で腰を振らされるうち、2人の口から甘い声が漏れはじめる。顎も持ち上がり、快感に酔う表情を周囲に晒すようになる。刻一刻と絶頂へ近づいているのは明らかだ。ミラーに正対する形で披露されるその反応は、沙綾香達にも丸見えだろう。その証拠に、健二は沙綾香に対して、祐希達とよく似た体位を求めていた。騎乗位。ただし、脚を横に開いて跨る形じゃない。足を投げ出した健二の上に、中腰の姿勢で乗る形だ。膣への挿入だけを目的とする体位、と言い換えてもいい。
『…………っ、…………っ、…………っ!』
 口を開き、荒い息を逃がす沙綾香。その身体は六畳間の方を向いていた。横並びで犯される祐希や藤花と、ミラーを挟んで向かい合う形だ。その視線は、友人2人をじっと見つめていた。健二が薄笑いを浮かべながら沙綾香の腰を押し下げれば、視線は一瞬横に向くが、すぐにまた前へと戻る。
「クククッ。羨ましそうにしやがって」
 モニターに映る沙綾香を見て、手越が笑った。
「っすね。目の前の友達みたいに、思いっきり突かれたいって気持ちが丸出し」
 颯汰も同じく笑い飛ばす。
 不愉快だ。だが俺から見ても、祐希達を羨む気持ちは有るように思えた。なぜなら、沙綾香の視線が捉えているのは、祐希達の顔じゃない。激しくピストンを繰り返し、愛液を散らす結合部だ。
 健二もそれに気づいているようで、沙綾香が結合部に見入っているその最中、腰を掴んで押し下げる。逸物が根元まで入り込むように。
『っっ!!!!』
 沙綾香の顎が、また浮いた。中腰の姿勢を保つ脚が強張り、寝台についた両手も痙攣する。快感に震えているのは間違いない。だが、絶頂までは達せていないようだ。
『………………。』
 沙綾香の視線がまた横を向くが、それも止めろという意思表示というよりは、別の感情を伺わせる。

 ( どうせなら、思いっきりして。すっきりイカせてよ! )

 そう、眼で訴えているようだ。
 だが、健二はそれに応じない。沙綾香の腰を掴んだまま、あくまで中途半端な刺激に終始する。それを何十分も続けられるとなれば、生殺しもいいところだ。
『……ッ!』
 沙綾香の唇が噛み締められ、泣きそうな顔になるのも無理はなかった。


                 ※


 5人の中年男は、娘と変わらない年頃の少女相手に、脂ぎった欲望を満たし続ける。何度となくキスを迫り、女性器を舐め、男性器を咥えさせながら、色々な体位で犯しぬく。
 そして健二は、5ヶ所で繰り広げられるセックスのうち、最も印象的なものを模倣し続けていた。
 例えば今は、マジックミラーのすぐ前で、赤リボンの子が犯されている。
『ああああっ、だめ、ダメいきそうっ!』
 彼女も奴隷として、かなりセックスに慣らされているんだろう。ベッドに這いつくばるような後背位で突かれながら、快感の声を響かせる。スレた感じのする子だが、演技には到底思えない。
 そのセックスを、わずか数十センチ横で健二が真似る。這いつくばる沙綾香に、後ろから覆いかぶさる形での挿入。ただし、こちらは腰がほとんど動かない。寝台へ突き立てた両拳を支えに、腰をグリグリと押し付けるばかりだ。
『……~ッッッ!!!』
 かなりの刺激があるんだろう。沙綾香は震えながらシーツを握りしめ、歯を食いしばっている。それでも、十分な満足には程遠いらしい。
『あああ奥、ゴリゴリ来てるうっ! い、いくっ、イクううっ!!』
 赤リボンの子が幸せそうに絶頂へ追い込まれると、沙綾香の顔は横を向き、苦しそうな表情を浮かべる。だが、健二はそんな沙綾香を楽にはしない。物欲しそうな顔を前に、じっと腰を留めている。沙綾香が恨めしそうに視線を上げても、一切腰は動かさない。
 かといって、完全にクールダウンさせるわけでもなかった。沙綾香が諦めたように俯けば、一度浅く抜いてから改めて奥まで挿入し、上下に腰を揺らす。ポルチオをぐりぐりと虐めるやり口だ。ギリギリまで昂らされた沙綾香が、それに無反応を貫けるわけもない。
『…………ッ!!!』
 目を見開き、拳が入りそうなほど大口を開けた後、慌てて右手で口を覆う。直後にブルブルと痙攣したところを見ると、本当にすんでのところで喘ぎを押さえ込んだんだとわかる。
 そこまでの必死さを目の当たりにしても、健二に同情心などないようだ。ヘラヘラと笑いながら、必死に口を押さえる沙綾香の右手をどけようとする。沙綾香が左手でそれに抗えば、その左手までもを押さえつけ、力づくで右手を引き剥がしていく。もちろん、腰は沙綾香に密着させたままでだ。
『ッッー、ッッッ!!!』
 覆いが無くなった沙綾香の唇には、血が出そうなほど歯が食い込んでいた。いつにも増して悲壮なその顔は、見ていて本当に辛い。
「うははっ、スゲー顔。ああやって奥をコツコツ小刻みに揺らしつづけんのって、快楽漬けにする近道っすよね」
「ポルチオの開発具合にもよるがな。とはいえ、今のアイツの場合なら、いっそガンガン突かれた方がよっぽどマシだろ。ハードなプレイほど、すぐに感覚が麻痺するからな」
 漏れ聞こえてくる調教師師弟の言葉も、俺の不安を増大させる。
 胸が、息が苦しい。陸に居ながらにして溺れている気分だ。

 六畳間のセックスは、2時間以上が過ぎても終わらない。それどころか、ますます熱を帯びていく。
 正常位、側位、屈曲位……色々と体位を変えて交わるうち、5人の客は相手が一番喜ぶ行為を見つけ出し、それに専念しはじめる。
 赤リボンの子は、犬のように這いつくばっての後背位。
 後ろ髪をシュシュで纏めた子は屈曲位。
 祐希は、濃厚に舌を絡めつつの対面座位。
 ここまでは通常のセックスの範疇だが、千代里と藤花の2人はかなりマニアックだ。
『んぶっ……んごっ、んぶ、ぶっ……ぶはぁっ! はぁ、はっ……ングッう゛!!』
 千代里は壁際に追い込まれ、怒張を喉奥まで咥え込まされている。低いえずき声といい、逸物を抜かれた際の唾液の量といい、なんとも苦しげだ。だが、そんな目に遭いながらも、彼女の腰は艶めかしく踊りながら潮を噴き散らしていた。すっかり喉奥蹂躙で絶頂する癖がついているようだ。
 そしてそれは、藤花も似たようなものだった。
『ああっ! こ、この体位は……っ!!』
 足首を重ね合わせた、胡坐を掻く体勢。偶然その体位を取らされた瞬間、藤花は情けない笑みを浮かべた。
『なんや。お前、これが好きなんか』
 客はその反応を見て弱点と見抜き、足首を掴んだまま肛門に挿入する。
『ぁあああああっ!!!』
 藤花の反応は、いつになく大きかった。その体位が彼女の弱点だと、誰が見ても判るほどに。ドナンを限界まで我慢させられた時か、あるいは客の前で晒し者になっていた時か。その辺りがトラウマとなって、あの体位で犯されるだけで異常に感じてしまうんだろう。
『ッがあああああっ! あああお゛、アアお゛っ、おおお゛お゛っ!!』
 肛門にペニスを送り込まれるたび、藤花は痙攣しながらあられもない声を張り上げる。
 その壮絶な声が響き渡る中、健二は“松葉崩し”に移った。沙綾香と求め合っていた時に、俺も好んで選んだ体位だ。やや腰を遣いづらいものの、密着感は抜群で、逸物がGスポットに触れやすいという特徴もある。
『……っ!!』
 体位が変わった瞬間、沙綾香は目を見開いた。胸をやや反らし、カクカクと揺れているのは、軽い絶頂の兆しか。
 快楽の水面を漂う沙綾香に対して、藤花は深みへ嵌まりきっている。自ら膝を押さえ込んで胡坐の姿勢を保ち、肛門を抉られるたびに満面の笑みを浮かべる様は、まさしく快楽中毒者のそれだ。
『んんおおお゛お゛お゛っ!!!!』
 緩んだ口から発される嬌声も悦び一色で、だからこそ、今の沙綾香にとっては毒でしかない。
 さながら、減量中の人間の前で菓子とジュースを貪るような所業。耐えている方としては堪らない。どれだけの自制心をもってしても、涎が出るのを止められない。
 健二の逸物ではなく、藤花の悦びの声が、沙綾香を蝕む。
『……~~~~~っ!!!』
 沙綾香は、後頭部をシーツに押し付けながら、激しく頭を揺り動かしはじめた。その動きを見た瞬間、颯汰が手を叩いて笑う。
「あれ、ガチで限界ん時の首の動きっすね。お願いだからイカせてーっつって、涙目で訴えてくる直前のやつだ。ま、焦らされまくって限界ってところに、あんなヨガリ声聞かされちゃな。カワイソー」
 本音か嫌味か、憐れんでみせる颯汰。その相方である健二も、同じように薄笑いを浮かべながら沙綾香を追い詰める。抱え上げた左脚を横へ倒し、さらに股の密着度を上げれば、沙綾香の背中がまた反った。
『っっっ!!!』
 上せたような沙綾香の顔が、ぐらぐらと揺れる。後頭部がシーツに着いてからも、表情に平穏は戻らない。とろんとした目から涙を流し、ハッハッと短く喘ぐ様は、限界をありありと感じさせる。
 それでも、健二は休ませようとはしない。震え続ける沙綾香の脚を改めて肩に担ぎ上げ、太腿を引き付けて焦らしを継続する。
 今、沙綾香がどれだけ辛いのか。それは沙綾香本人にしか解り得ない。それでも、あらゆる情報から推測ができてしまう。沙綾香の表情。割れ目の痙攣。太腿の動き。腹筋の動き。どこを見ても、“限界”というワードが頭にちらつく。
 そんな中、健二はさらに体位を変えた。今度は屈曲位。沙綾香の両足首を肩に担ぎ上げたまま、斜め上からの挿入。腰を沈めながら、上体も沈めていく健二は、明らかにキスを求めていた。本当に沙綾香を気に入っているらしい。
『っ!』
 沙綾香は顔を横向け、せめてもの抵抗を試みる。だが、健二にしつこく迫られると拒みきれない。
 音もなく、唇が合わさった。密室の中、2度目のディープキス。
 心臓が痛くなる。思わず視線を外すが、他のどこを見たところで救いはない。健二の肩に添えられた手。健二の手が添えられた尻。真上に伸びた足指。どれも苦しそうに、そして心地よさそうに震えている。
『ああああっ! い、いくっ、いくううっ!! ほおお゛お゛イグウウううぅ゛ッ!!!』
 六畳間から絶頂の声が響けば、健二と抱き合う沙綾香も身を震わせた。だがそれは、おそらく絶頂には達していない。ギリギリで届いていない。
 一方、口を貪りながら密着する健二は、その中でついに満たされたらしい。奴は気持ちよさそうに尻を震わせてから、ゆっくりと逸物を抜き去った。そして、その瞬間。

『あああああ…………っ!!!!』

 声が漏れた。六畳間からじゃない。その声を発したのは、ゴム付きの逸物を引き抜かれた沙綾香だ。
『え……?』
 マジックミラーに最も近い千代里が、不思議そうに横を向く。今度こそは完全に聞こえたらしい。だが今の沙綾香には、ショックを受ける余裕すらない。
『はっ、はあっ、はっ…………』
 彼女は腹部に手を当て、顎をピクピクと動かしていた。
 絶頂したのか。だが、そうだとしても、相当浅い絶頂に違いない。男が自慰の最中、我慢しきれず暴発してしまった時のように。
 その沙綾香を見下ろして、健二が笑う。そして奴は、先の膨らんだゴムを外して口を閉じると、また新しい袋を拾い上げる。まだまだ焦らしセックスを終えるつもりはないらしい。
『ほら、ぼーっとすんな』
 横を向いていた千代里も、すぐにまた逸物をしゃぶらされはじめた。

 片や、絶叫の絶えない、快楽漬けのセックス。
 片や、自由に声さえ出せない、焦らしのセックス。
 歪なこの2つの行為は、マジックミラーを間に挟み、延々と続けられた。すっかり夜が更け、最後の『審査会』が幕を開ける、その直前まで。



                 ※



「とうとう最後ですね。よもや、温室育ちの令嬢に『審査会』がやり遂せるとは」
 モニターを眺める俺に、端塚が語り掛けてくる。いつにも増して落ち着き払った、苛立たしい声色だ。
「『審査会』とやらが終わった後は、何をさせるつもりだ?」
「快楽に溺れさせてしまえば、後は“仕上げる”だけです。セックス漬けにして、倶楽部への服従を心の底から望ませます」
 端塚の言葉で、百合の映像が脳裏を過ぎる。あれほど自我が強そうな少女でも、倶楽部の調教には耐えられなかった。連中の目論見通りに狂わされた。その事実を受け止めてはいるが、同時に、認めたくない自分もいる。
「快楽に溺れる、となぜ決めつける。沙綾香は今日まで、ずっと責めに耐えてきた。なら今日だって、耐えきるかもしれないだろう!?」
 俺の訴えは、祈りに近い。そして端塚は、そんな俺の祈りを一笑に付した。
「先生ともあろうお方が、異なことを仰る。八金沙綾香は、すでに堕ちる寸前。ボクシングで言えば、ロープにしがみついているのがやっとという状態です。対してこちらの駒は、世界チャンプクラスの10人。凌ぎ切れる筈がありません」
 嫌味たらしい言い方だ。だが、その言葉はたぶん正しい。今日までの沙綾香を見てきて、それでも乗り切れると考えるのは、よほどの楽観主義者か、奇跡を信じる人間だけだ。
 返事に詰まる俺を、端塚はじっと観察していた。そして、髭を撫でながら口を開く。
「……先生。八金沙綾香の最期を、近くで見ますか?」
 その一言に、俺は虚を突かれた。
「近くで?」
「はい。貴方の記憶を呼び戻すには、ショックを受けていただくのが一番と思っております。しかし、この部屋では遠すぎる。モニター越しではなく、すぐ傍で、想い人の最期を見届けるのです。如何ですか」
 想い人の、最期──つまり、沙綾香がヒトでなくなる瞬間。それを目の当たりにする。怖気が走るシチュエーションだ。
 だが、この部屋に閉じこもっていたところで、何が解決するわけでもない。沙綾香の傍に行くことで、何かが変わるかもしれない。何も変わらなかったとしても、ここで無機質なモニター越しに見るよりは、傍で見届けた方がマシだ。

 俺は、端塚の提案を受け入れた。黒々と伸びた髭を剃り、VIP用の館内着を身に纏って、久しぶりに鏡張りの部屋から外へ出る。
 薄暗い部屋の外には、ギャラリーの痕跡が残っていた。折り畳み式のロッキングチェアに腰掛け、苦悩する俺や沙綾香を優雅に眺めていたらしい。すでに全員が撤収済みで、空の食器やカクテルグラスが残されているだけだが。
 セキュリティの連中に警棒式スタンガンを突きつけられたまま、エレベーターで地下10階に向かう。
 地下10階は、ストリップ劇場のようだった。フロア全体がやや薄暗く、流れているBGMもムーディーなものだ。中央には円形のステージがあり、カーテンで仕切られた奥の空間に通路が伸びている。
「入りましょう」
 端塚が俺の先に立って歩き出す。同時に、俺に張りついているセキュリティの男が、背中に尖った物を押し当ててきた。警棒式のスタンガンだろう。
「妙な真似はせんでくださいよ、先生。“急病人の手当て”は面倒ですから」
 奴はご丁寧に念を押してくるが、言われずとも抵抗できる状況にはない。タキシードの下は完全武装であろうコイツをどうにかできたとしても、出入口付近は何人もの用心棒が固めている。口惜しいが、大人しくギャラリーの1人になる他なさそうだ。
「さあ、先生」
 端塚に促され、お立ち台を囲むパイプ椅子のひとつに腰を下ろす。高級倶楽部の備品にしては粗末なものだが、基本的にここは座ることを想定していないんだろう。実際、集まっている客のほとんどは席につかず、落ち着きなく何かを待ちわびている。
 客層は色々だ。いかにも裕福そうな高齢層、野心に満ちた若手実業家風の男、スポーツ選手と思しき男……。
「まだ始まらねぇのか? ったく、待ちきれねえよ。おい、そこの女!」
 俺の右にいる客が、痺れを切らして従業員を呼びつけ、館内着の前をはだける。その意図するところは一つだ。
「承知いたしました」
 恭しく傅くバニーガール姿の女性には、見覚えがあった。モデルがやれそうなほどのスタイルに、北欧系の血が混じっていそうな涼やかな顔立ち、そして特徴的な白い髪……百合だ。
「こっちもだ、奉仕しろ!」
「私にも頼むよ、君!」
 他の場所でも、同じく女を呼びつける声と、それに応じる声がする。そして俺は、その返事の声すべてに聞き覚えがあった。
 祐希。千代里。藤花。沙綾香の親友である3人が、客の足元に這いつくばって奉仕している。わざわざ蒼蘭女学院の制服に身を包んだままで、だ。
「……悪趣味だな」
 思わず、隣の端塚を睨みつける。沙綾香にとっての大一番となるこの催しに、彼女と親しい4人をわざわざ集める。これが悪意でなくてなんだ。
「そうでしょうか。今日が、八金沙綾香という少女の“命日”なのです。せめて知己に看取らせてやろうという、温情のつもりなのですが」
 端塚は、やはり悪びれる様子もない。碌でもない言葉を吐いて笑う様は、不快を通り越して不気味だ。


 祐希達が奉仕を始めてから、数分が経った頃。シャッと音を立てて通路奥のカーテンが開いた。それぞれに騒いでいた客が言葉を途切れさせ、一斉にお立ち台の向こうを見る。
 姿を現したのは、手越と桜織だ。桜織は、きっちりと制服を身に着けていた。首元の赤いネクタイに、校章の入ったワインレッドのブレザー、チャコールグレーのチェックスカート、紺のハイソックス。その装いは、小顔で三つ編みの桜織に一番よく似う。清楚そうだ。あるいはセックス地獄から解放され、正気を取り戻せたのでは──そう思えるほどに。
 だが。
「あは…………おとこのひと、いっぱぁい…………」
 開口一番の言葉で、俺の淡い希望は打ち砕かれた。理性を感じさせない言葉、虚ろな目、緩んだ口元。そのどれもが、絶望的なまでに“まともさ”と乖離している。
「なっ……!」
「……委員、長……?」
「一体、何が……」
 祐希、千代里、藤花の3人は、桜織の変わりように絶句していた。彼女達にとって、桜織は口煩くも頼りになる存在だったことだろう。今の桜織のイメージから、最も遠い存在だったに違いない。
「ほっほっほ、凄い顔をして! あれが元、学科試験全国トップの秀才とはな」
「無理もないでしょう。四六時中ドラッグセックスをさせられていたそうですから。脳が快感で焼き切れたんですよ。よく言うじゃないですか、精密機器ほど壊れやすいって!」
「ちっちゃくてカワイイなあ。雰囲気は、なんか若妻感あるけど!」
 客共は、楽しげに桜織を品評する。
 そうして場が沸いたところで、また北の扉が開いた。続いて入ってきたのは、沙綾香とロドニーだ。
「おっ、来た来た来たぁ! 噂の8頭身!」
「すっげぇ……なんて脚の長さだ!」
「エロいよお、サヤちゃあん!」
 客が歓声を浴びせても、沙綾香は反応しない。まっすぐ前を見つめて歩いていく。だが、そのトップモデルを思わせる颯爽とした歩きが、また変態共の鼻息を荒くさせた。
「ウヒヒ、見えた見えた! こいつ、白パンだ!」
 客の何人かは、通路の左右で身を屈め、沙綾香の下着を覗き込んでいる。ただでさえ脚が抜群に長い上、スカートをマイクロミニにしている沙綾香相手なら、覗くのは簡単だろう。沙綾香はそうした連中に冷ややかな視線を向けるが、変態共はそのツンとした態度を喜ぶばかりだ。
 ステージ中央で、2組の男女が顔を合わせる。手越とロドニー、そして沙綾香と桜織が。
 桜織は本当に小柄だ。ロドニーはもちろん、沙綾香と比べても相当な身長差があって、正直同い年には思えない。もっとも、長い脚をニーソックスで際立たせた沙綾香より大人びている女子高生など、そうそう居はしないだろうが。
「久々の再会だな。どうだ、お互いのツラぁ拝んだ感想は?」
 手越が問うと、沙綾香は桜織の方を向いた。
「……委員長?」
 控えめにそう声をかける。以前の桜織なら、それに対して常識的な反応を返したことだろう。級友の失敗を落ち着いてフォローするような、母親のような雰囲気を持っていたのが桜織という子だ。
 だが、今の桜織を見て、常識的と思う人間はいないだろう。彼女は、沙綾香の方を向かない。返事もしない。ぼんやりとした視線を彷徨わせ、すぐ近くにいる『雄』……手越とロドニーを見つけると、薄ら笑みを浮かべながら近づいていく。特にロドニーがお気に入りらしく、胸板に身を擦りつけながら甘えた声を漏らす。
「おいおい、俺は立会人だぜ。そういう事は、この後に来る“主役”の連中にやってやんな」
 ロドニーは可笑しそうに笑いながら桜織を引き剥がす。桜織はそれを嫌がり、手を伸ばしてズボン越しにロドニーの逸物を撫でる。それを目にした瞬間、沙綾香が桜織の肩を掴んだ。
「やめて、委員長っ!!」
 その叫びに、ようやく桜織の目が沙綾香の方を向く。
「……あー。いたんだあ、沙綾香」
 緩んだ笑みを浮かべ、桜織が呟く。沙綾香を認識できたのは、喜ばしいことだ。だがそれは、同時に残酷でもある。あれは、桜織によく似た別人じゃない。沙綾香の事を知っている、桜織本人の成れの果てだ。いやでも、そう理解してしまうから。
「そう、沙綾香だよ。ねえ、委員長、そんな顔しないで、シャンとして! みんなで、一緒に帰ろうよっ!!」
 沙綾香は桜織の肩を掴み、悲痛な声で叫ぶ。ボロボロと涙が零しながら。3人の級友も、舞台下から涙まじりの声を上げる。だが、その4つの想いは届かない。
「いいよぉ、ここで。ここにいると、気持ちいいもん。おまんこを奥まで突かれるとね、頭がまっしろになって、フワフワして、ビリビリして、幸せなの。沙綾香もそうでしょ?」
 知性の感じられない言葉を発しながら、ただ幸せそうに笑う桜織。その姿に、沙綾香を含む同級生4人が言葉を失う。
「へへへ。見た目通り、完全に理性がフッ飛んでやがんな!」
「もうチンポの事しか考えられねえってか? いいねえ、奴隷らしいぜ!」
 逆に客は、変わり果てた桜織を見て騒ぎ立てる。今にも舞台へ上がり、襲い掛からんばかりの勢いだ。実際、ステージは膝丈の高さしかなく、客席との間にロープの仕切りさえないため、その気になれば容易に襲い掛かれるだろう。
 だが、その流れを断ち切るかのように、また通路奥でカーテンが開く。騒々しい足音を立てながら姿を現すのは、10人の黒人共だ。
「うおっ!?」
「で、でけぇ……!!」
 2メートルを超す身長、プロレスラーかラガーマンかという筋肉量。そして身に着けたゴムパンツ越しにも、はっきりと見て取れる規格外の剛直。それが群を為して歩み寄れば、どんな客も凍りつく。俺は、その理由が今ようやく実感できた。遠くから見下ろすのではなく、近くで目の当たりにするそれは、迫力が凄まじい。複雑に隆起した鋼鉄の壁が迫ってくるようだ。首を70度ほど上に向けなければ、黒人共の表情を確認することさえできない。
 そして、匂いのインパクトも強かった。巨体が近づくほどに、体臭が鼻を突く。連中の雄度を象徴するようなそれは、容易に脳を侵食する。ほんの数呼吸しただけで、連中の存在を無視できなくなる。
 そこまで考えて、俺はゾッとした。
 呼吸だけでこのザマなら、そんな連中とセックスをしたらどうなる?
 一晩中犯され、逸物を咥え込まされ、精液を浴びせかけられたら?
 決まっている。連中という存在が、深く脳髄に刻み付けられるはずだ。普通の倍はあるペニスで性器をこじ開けられ、絶頂させられるという体験も合わされば、その記憶はより強固に根付く。一晩眠った程度では払拭しきれないほどに。ましてや、それを毎晩続けられれば……。
 気付かなかった。檻の中の輪姦を遠くから眺め、そのハードさを解ったつもりでいたが、現実にはその何倍も性質が悪いものだったんだ。

「今日のはまた小せぇなあ。ミドルスクールのガキか?」
「サヤカと同じ制服だからそりゃねぇだろ。それに、ジャパニーズのガキなんざこんなもんだぜ。サヤカが例外なんだよ」
「あいつ、俺らのコックを凝視してやがんぜ。早くヤリたくて仕方ねぇらしいな」
 ステージに辿り着いた黒人共は、獲物を取り囲みながら騒ぎ立てる。
「あはっ、すごい匂い……濡れてきちゃう」
 桜織は、強烈な体臭にうっとりとした表情を浮かべつつ、ゴムパンツを盛り上げる巨根を眺め回す。一方の沙綾香は動じない。モデルのように腰に手を当てたまま、不機嫌そうにそっぽを向いている。だが、よく見れば鼻がひくついているのが見てとれた。胸の上下するペースも、微かに早まったように思える。黒人共の匂いを捉え、無意識に反応しているらしい。そうなるのも当然のことだ。そう理解はしている。なのに、胸がしめつけられるように苦しい。
「なあ、もうヤッていいか?」
 ドミニクが桜織の頬を舐めながら問いかける。鼻息は荒く、ゴムパンツには幅広の亀頭の形がくっきりと浮き出ている。すでに我慢の限界という様子だ。桜織もすっかり乗り気で、その浮き出た部分を手のひらで撫でるものだから、ドミニクは獣のような雄叫びを上げた。
「待て、もうちっとだ!」
 ロドニーが制止しつつ、手越に視線を向ける。すると手越は、苦笑しながらマイクを手に取った。
「お集りの皆様、お待たせしました。これより、『審査会』を開始します」
 そのアナウンスが流れた瞬間、フロア中から歓声が上がる。客の数は多い。前の審査会の倍、40人はいるだろうか。手越はその盛況ぶりに頬を緩めつつ、壁際に控えるセキュリティへ合図を送る。するとセキュリティの連中は、傍の紙袋を拾い上げ、その中身を客に配りはじめた。赤と青の押しボタンがついた、小さな箱。祐希との審査会でも配られた、投票ボタンだ。
「お客様にしていただきたいのは、ただ一つ。この2人のプレイを見て、いいと思った方のボタンを押してください。ちっこい方の女にそそられたなら青ボタン。でかい方の女なら赤ボタンです」
 手越がそう言うと同時に、フロア右手側から音が響く。今まではシャットダウン状態で気付かなかったが、床から2メートルほどの位置にモニターが設置されているようだ。モニターは青と赤で色分けされ、どちらにも『0』と表示されている。これも、祐希の時と同じ方式らしい。
「皆様のボタン投票は、全てあのモニターに記録されます。その得票数で最終的に上回った方が、審査会の勝者となるわけです。ただし、今回はもう一つ。この審査会そのもののクリア条件を設けます」
 手越はそこで言葉を切り、セキュリティの1人から何かを受け取る。カチューシャのような二つの器具だ。奴はそれを桜織と沙綾香の頭に嵌め込み、両端のクリップ部分で耳輪を挟んで固定する。
「おっ、何だそれ? どっちもお嬢様っぽいから似合っちゃいるが、ただの飾りってわけじゃねぇだろ」
 見慣れない器具に興味を惹かれ、客が問いかける。だが俺は、その機械に見覚えがあった。桜織の調教で、絶頂回数をカウントしていたものだ。
「ええ、もちろん。これは脳波を計る機械でしてね。着けた女が絶頂するたびに音が鳴るようになってるんです」
 手越は客向けに解説しつつ、ドミニクに何かを囁く。ドミニクは頷いて桜織に近づき、ワインレッドのブレザー越しに胸を揉みしだいた。身長差50センチの愛撫は、いつにも増して犯罪的だ。
「ひゃぁん!!」
 桜織が叫ぶと同時に、リン、と聞き覚えのある音が鳴った。直後、今度はフロアの左手側が光る。やはり2メートルほどの高さに掲げられたモニターに、『1』の文字が光っている。
「ご覧の通り、絶頂回数はあちらのモニターに表示されます。審査会が終わるまでの4時間で、1人あたり2,000回、合計4,000以上絶頂しないこと……これが、当審査会のクリア条件です」
 手越がそう告げると、多くの客が怪訝な顔を見せた。
「2,000回? ずいぶんとまた、余裕のある条件じゃないか」
「4時間で2,000回ってことは、1時間あたり500回だろう。分刻みなら、ええと……8回強だ。7秒に1回未満のペースで絶頂する計算だぞ?」
「ははっ、いくらなんでも無理だろう。20年調教しているウチの奴隷でも、そんなペースでは逝かれんよ。こんな青臭い子供らが、熟しきった奴隷よりも達しやすいとは思えんがね」
 それぞれに計算し、手越の目標設定を笑い飛ばす。だが、手越もまた薄ら笑みを浮かべつつ、ドミニクに何かを囁く。すると、ドミニクの愛撫が激しさを増した。唇を奪い、胸を揉みしだき、スカートとハイソックスに挟まれた太腿を撫でまわす。
「ふあ、あっ、あふぁぁっ……!!」
 桜織から鼻にかかったような声が漏れた。そして華奢な身体が震え上がり、リン、リン、と2回音が鳴る。モニターの数字も3に変わり、客がどよめきだす。
「なっ!?」
「馬鹿な。もう、3回達したのか!? 制服の上から弄られただけだぞ!」
「うううむ……これは確かに、大した淫乱ぶりだ」
 一方で観客は、桜織の達しやすさに驚きを隠せない様子だ。手越はその反応にほくそ笑みつつ、マイクを握り直す。
「皆様の仰る通りです。4時間で4,000回の絶頂は有り得ない。無いに等しいリミットラインです。だが、もし。万が一、そのラインを越えてしまうようなら、そんな女をヒトと認めていいものでしょうか?」
 手越の視線は、桜織を向いていた。視線も虚ろに笑みを浮かべる姿は、人とは違う何かに見える。桜織に好意的な俺ですらそう思うんだから、客の判断はもっとシビアだろう。
「確かにそれは、もう人間ではないかもしれんな」
「ああ。性欲に溺れた、ただのケダモノだ」
 客の何人かが呟いた言葉に、手越が頷いた。
「その通り、ケダモノです。そして、ケダモノに当倶楽部の奴隷は務まりません。もしそうと判った場合、審査会は双方失格とした上、相応に『処分』します」
 処分。その言葉に、一瞬場が静まり返る。この倶楽部で発されるその言葉が、軽いはずもない。誰もがそれを理解しているから、深くは訊かない。客は目を爛々と輝かせ、沙綾香は喉を鳴らす。ただ一人、本来なら誰よりも心を律するべき桜織だけが、呑気にドミニクとキスを交わしている。
「……では、皆様。お楽しみください」
 手越は一礼し、ロドニーと共に舞台から降りる。

 最後の審査会の、始まりだ。

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