※長いため、前・中・後編に分割します。こちらは中編です。



■第四章 オーガズム・クライマックス(中編)


 最初の動画を見終えた俺は、ひどく喉が渇いていた。緊張かストレスのせいだ。モニターのコップアイコンからドリンクメニューを開き、コーラを頼むと、わずか一分ほどでグラスが運ばれてくる。
「お待たせしました」
 マイクを介さない肉声など、ずいぶん久々な感じだ。コーラを煽ると、刺激的な冷たさが喉に染みるが、その感覚すら懐かしい。たかだか2時間あまりの映像を見ただけだというのに、もう何日もここに座り続けている気がする。
 加虐映像を娯楽と捉えられない俺に、【ノーカット版】は毒だ。俺はひと息つくと、【ダイジェスト版】の2番目の動画をタッチする。動画タイトルは『0:00~8:00』。336時間に及ぶ絶頂耐久動画の一本目だ。


              ※


 動画の最初に映ったのは、何十人もの男に囲まれた桜織だ。休憩用のスペースらしく、背景には精力ドリンクの自販機や椅子、ソファが無数に見える。だが男共は椅子に腰掛けもせず、立ったまま桜織を包囲していた。
『どうした、早く脱げよ!』
 一人が痺れを切らしたように叫ぶ。どうやらこれから行われるのは、公開ストリップのようだ。
『わかり、ました……』
 桜織は唇を歪め、震える指で制服を脱ぎはじめた。皺やヨレのない、新品同然の制服。細やかな手入れぶりが窺えようというものだ。
 そして丁寧に扱われているのは、服だけじゃないらしい。次第に露わになっていく彼女の素肌は、桜織という名前に相応しく、艶やかな桜色をしている。花ざかりの女子高生でも、ここまで瑞々しい肌の子は滅多にいないだろう。
 ただし、女としての成熟度はまだまだだ。胸は控えめで、下から掴めばかろうじて隆起が作れるかというレベル。脚はすらっと伸びやかだが、曲線に乏しい。『華奢』や『可憐』というイメージが先行する、未熟な蕾。
 だがどうやら、50人の男共はそれこそが好みらしい。
『へへッ、キレーな肌だなオイ! こんなの見たことねーぞ!?』
『おお。人形みてぇだな!!』
『浴衣とか着たら似合いそうだよな。小学生用の、だけどよ!』
 それぞれに言葉を投げかけながら、桜織の裸体を凝視する雄共。その視線を、桜織は黙って受け止めていた。澄んだ瞳で、真っ直ぐに前を見据えたまま。

 そうして桜織の裸がひとしきり堪能された後、誰かが手を叩いて場の注意を引く。カメラが左に振られると、ホワイトボードを背にした手越が映り込んだ。
『スッパダカ堪能すんのは後にしろ。テメェらはこれから、順番にあのガキとハメるわけだがよ、その上でのルールだ。よーく聞けよ。あんま自分勝手な事やってっと、寒ィ夜にドライブするハメになんぞ?』
 奴はそう言って場を引き締め、ホワイトボードに文字を書き始める。
 内容をざっくり纏めるとこうだ。

・桜織を一回絶頂させるたびに、五千円の借金が棒引きされる。
・絶頂の定義は、プレイルーム内に設置されたモニターのカウントが1増えること。
・常にカウント0から始められるよう、プレイルームから退出する時は、必ずモニターのリセットボタンを押すように。
・責め方や使う道具は自由。ただし、桜織に傷の残る行為はするな。
・一回のプレイ時間は2時間強、チャイムが鳴れば交代となる。
・4人がプレイを終えるたびに、食事とシーツ交換の時間を挟む。ただしそれ以外でも、必要に応じて桜織に水分を摂らせること。
・セックスの機会は全員3回ずつ。それを踏まえてプレイに臨め。

 そうした説明が日本語と英語の2パターンで行われた後は、いよいよプレイの準備に入る。まずは当然、順番決めだ。
『言っとくが、早くヤりゃあ良いってもんでもねぇぞ。なんせ時間が経てば経つほど、あのガキの性感は開発されてくんだ。さんざっぱらイカされてな。絶頂カウントを稼ぎやすいのは、断然後ろの方だぜ?』
 手越のその言葉で、男達は揺れる。
『なるほど。言われてみりゃ、確かにそうだな……』
『だがよ、俺ァ早くやりてぇぜ。もうすでに勃起してんだ、何時間も我慢できねぇよ!』
『ああ。他の野郎に抱かれまくった後より、ちっとでも新品に近い方がいいしな!』
『くっそー、悩むぜ!!』
 早く犯したいという、雄としての本能。一円でも多く借金を減らしたいという、債務者としての打算。その板挟みで、50人の男が苦悶する。
 路線を決めたら決めたで、次は“椅子”の取り合いだ。
『俺が初っ端だ、いいな!』
『ざけんな、最初にやんのは俺だ!テメェは俺の後でやれ!』
『あ!? 舐めてんじゃねぇぞ!!』
 こんな具合で、自分がこれと決めた順番を巡って争う。おまけに場にいるのは、日本人ばかりじゃない。中国や韓国、東南アジア系の奴もいる。そいつらは日本語が上手くないらしく、ジェスチャーや暴力で主張を通そうとしていた。
 そんな阿鼻叫喚の有様を前に、焚きつけた手越は膝を叩いて笑う。
『はははっ、えれぇ騒ぎになってやがる! テメェも罪作りな女だよなあ、お姫さんよ。あいつら、テメェを抱く順番で喧嘩してやがんだぜ。どんな気分だ、50人のオスに奪い合われるってのは?』
 手越はそう言って、部屋の端に視線を送った。そこには丸裸のまま、直立不動を保つ桜織がいる。軍隊でもそのまま通用しそうな、理想的な『気をつけ』だ。
 彼女は口を噤み、複雑な表情を浮かべていた。ひどく居心地が悪そうだ。それはそうだろう。彼女は騒ぎの原因であると同時に、ケダモノ共の欲望を一身に受ける立場なんだから。
『けっ、ダンマリか。まあせいぜい、期待して股ァ濡らしとけや。あいつらは全員、スケベ心で身を滅ぼした連中だ。ソープ狂いに援交マニア、強姦魔……まさに性欲の塊よ。おまけに奴ら、女子高生ってやつが大の好物でな。そりゃあもう、ねちっこく愛してくれるだろうぜ』
 手越の言葉に、桜織の表情が硬くなる。腰の左右で握られた手が痛々しい。それでも、彼女は逃げようとはしない。くっきりとした菱形の瞳で、襲い来る悪夢に備えている。

 そして、直後。数秒の暗転を挟んで、とうとう悪夢の記録が始まった。


              ※


 プレイルームは、まさに『セックスをするための場所』だった。
 壁際にベッドがあり、その脇に棚つきの洗面台。さらにその奥に、大人二人が優に入れる大きさの丸い浴槽が設けられ…………それだけだ。ドアを開けて入室すると、いきなりベッド・洗面台・浴槽に3方を囲まれる。狭い部屋というより、バスルームに粗末なベッドを置いたという方が近い。
 桜織はその空間で、飢えた男に犯され続けた。
 順番争いを制した先頭集団は、まさにケダモノだ。ローションや唾を逸物に塗りたくり、ひたすらに性欲を発散する。カメラはその様子を、ベッド右側から定点で映しつづけていた。

『へへへ、あったけぇ! やっぱハメんのはマンコに限るよな!』
 1人目の男は、まさに下品の極みだ。桜織の脚を開かせて挿入するなり、興奮気味に喚く。
『おまけによく締まりやがる、ったくJKマンコは最高だぜ。お前も興奮すんだろ、親父とヤッてる気分でよ?』
 侮辱しつつ腰を振りたくる男に対し、桜織は冷静そのものだ。乱れた姿を見せるのは女の恥とばかりに、仰向けでされるがままになっている。
『へへへ、ツンと澄ましてんのが余計ソソるぜ。マジで人形みてぇだな。……つってる間に、もう限界来ちまった。おら、出すぞ嬢ちゃん! 優等生マンコに、俺の子種をタップリくれてやっからな!!』
 奴はそう言いながら、腰を震わせながら射精に至った。部屋に入るなり挿入したんだから、当然、生中出しだ。
『はーっ、はーっ……』
 男が白濁まみれの逸物を抜くと、桜織は困り顔を見せた。仰向けで控えめな胸を上下させながら、股ぐらを見下ろす。本当に中に出すなんて……と、声なき非難をしている感じだ。男はそんな反応を見て、唇を吊り上げる。
『くくっ、スゲー出たぜ。どうだ、俺みてぇなクズの精子を、大事な所に注がれた気分は?』
 桜織に不快感を与えるためなら、自分を貶めることも厭わない。というより、自分が底辺だと自覚した上で、純粋無垢な桜織を犯す背徳に酔っている様子だ。
 だからなのか。奴は精液まみれの割れ目に、勃起したままの逸物をまた突き入れる。
『えっ!?』
 桜織が驚きを露わにした。男が果てた以上、状況がリセットされるはずだと思っていたんだろう。普通ならそうだ。男女が行う普通のセックスなら。だが、これは違う。これは、盛りのついた獣による蹂躙だ。
『くくくっ。ザーメンってのは優秀な潤滑剤だよな。マンコん中がヌルヌルになってんぜ。こんだけスムーズに抜き差しされんだ、お前も気持ちいいよなあ?』
 軽快に腰を振りながら、下劣な台詞が囁かれた。すると、桜織の視線が上を向く。
『……いいえ。不快です』
 どこまでも澄んだ瞳で相手を見据えながら、ハッキリと否定する桜織。そんな桜織を前に、男はますます陰湿な笑みを深めていく。

 その後も男は、ほとんど休む間もなく性欲を満たし続けた。性欲旺盛な奴で、発射回数は実に7回。そうして2時間を少し過ぎた頃、チャイムが鳴り響く。現役高校生である桜織を意識してか、学校でよく耳にするものだ。
『チッ、もうかよ! ヤリ足りねぇな。次は何時間後だ!?』
 終了の合図を耳にした男は、舌打ちしながらモニターのリセットボタンを押し込み、乱暴に股間を拭って部屋から出て行く。
 入れ替わりに部屋へ押し入って来た2人目は、ドアを通るのがやっとという巨漢だった。
『我等不及了!!』
 奴は中国語で叫びながら、ベッドに桜織を押し倒す。体位としては正常位だ。だが奴の場合、体重が重すぎるために前傾の姿勢を保てない。すぐに両肘を曲げ、桜織に体重を預けはじめる。自分の3~4倍はありそうな重みに押し潰されては、桜織も堪らない。
『痛苦! 承受不了……、多的痛苦与圧力……っ!!』
 桜織の口から流暢な中国語が発される。プロフィール通り、外国語には堪能らしい。そしてそれは、きっちりと相手にも通じたようだ。男は何か謝罪めいた囁きをしながら、ゆっくりと上半身を起こす。だが、それも僅かな間だけだ。奴はすぐにまた上体を沈ませ、楽をしたまま性欲を満たしはじめる。桜織が何度嫌がり、叫び、暴れても。言葉に不自由しながらも力で2番を勝ち取っただけあって、かなり傍若無人な性格らしい。
 奴は気付いただろうか。普段は垂れ気味な桜織の目尻が、この時ばかりは吊り上がっていた事に。

 3人目は、小柄で軽い桜織を抱え上げて犯していた。それも、わざわざ鏡のある洗面台の前でだ。
『い、いやっ!!』
 鏡を見た瞬間、桜織は悲鳴を上げながら顔を覆った。ともすれば芝居がかって見える初心さだが、桜織に限っては違和感がない。昭和じみた雰囲気を持つ少女に、貞淑な仕草はよく似合う。
『くふふっ、そんなに恥ずかしがるコトないじゃない。ほら、顔隠してないで鏡見て。綺麗なピンクのビラビラが開いて、エッロいよー?』
 男は気色悪い猫撫で声を出しながら、抱えた桜織に腰を打ち込む。桜織の脚が強張った。
『あは、すーごい締まるねぇ。この格好だと腹圧がかかるから、そのせいかな?』
 男はそう囁きながら、抜き差しを繰り返す。膣の中には前2人の精液が残っているようで、ぎゅぷっ、ぎゅぷっという音もしていた。つまりは、視覚、音、言葉、感覚の4重責めというわけだ。
『知ってる桜織ちゃん? これ、“駅弁”っていうんだよ。駅弁売る姿に似てるから、そう呼ばれるんだって。興奮するでしょ。それとも、ちょっと刺激が強すぎるかな? 君みたいに純粋な子にはさぁ』
 切り揃えられた前髪の下で、桜織の目が揺れる。涼しい顔をしていたいが、どうしても視線が鏡に向いてしまうようだ。
『まだ、出そうにありませんか……?』
『んー、まだだよ。どうしたの、気持ちよくなってきちゃった?』
『……そんな事、ありません』
 男の嘲りを受けて、桜織は表情を引き締め直す。口を噤み、澄み切った目を菱形に戻して。
 本当に芯が強い。そして、だからこそ悪い虫を集めてしまう。夜に光る誘蛾灯のように。

 男共はこんな具合に、それぞれの欲望を満たしていった。ズボラなのか、それとも後の人間に向けてのアピールなのか。連中は、セックスの痕跡をそのままに残していくことが多い。4人がやりたい放題にやった後……『8:01~16:00』の中盤では、早くも絵面が酷いことになっていた。
『はぁー……っ、はぁーっ……』
 荒い呼吸を繰り返す桜織は、髪から太腿まで精液まみれだ。染みだらけのシーツの上には、丸めたティッシュや濡れ光るローターが散乱している。ただし、コンドームだけは別だ。たっぷりと精子を包んだまま口を結んだそれは、桜織の頭の横に11個、勲章のように並べられていた。それはまるで、砂場で遊んだ子供が、自分達の作った砂の城やトンネルを誇示するかのように。
『ったく、いい歳してガキみてぇな連中だな』
 部屋に入るなり、手越が呆れた声を出す。奴は食器の乗った盆を手にしていた。
『メシだ。座れ』
 手越が命じると、桜織はゆっくりと身を起こす。開いた脚の間から、膣に収まりきらない白濁がどろりとあふれ出した。
 食事メニューは一皿、銀食器に入った灰褐色のスープのみ。何か具も浮いているが、こちらも色味に乏しく、とても美味そうには見えない。
 桜織は浮かない表情のままスプーンを手に取り、スープを掬って口に運ぶ。食事作法の教本にでも載せられそうな、理想的な所作だ。だがスープを口に含んだ瞬間、桜織の動きが止まる。
『ハハッ、不味いだろ。クスリみてぇなもんだからな』
『……どういう、意味ですか?』
『言葉通りよ。そいつは、発情したメス牛の脳と子宮を、じっくり煮込んだシロモノだ。そういうモンを口にすると、食った人間にも発情の効果が表れる。スープを飲み干す頃にゃ、子宮がじんわり熱くなって、男とヤりたくて堪らなくなるらしい』
 手越はそこで言葉を切り、モニターに目を向けた。モニターのカウントは、現在・累計共に0のままだ。男から一方的に欲望をぶつけられる状況では、感じる余地などなかったんだろう。
『お前にゃ、うんとガンバってもらわねぇといけねぇからよ。4人相手するたびに、そいつを食ってもらうぜ』
 その言葉で、匙を持つ桜織の手が震えはじめた。当然の反応だ。彼女にしてみれば、唯一の食事が毒入りだと宣言されたに等しいんだから。
『おら、手ェ止まってんぞ。まだまだ後はつかえてんだ、5分で平らげろ』
 腕組みしたまま扉に寄りかかった手越が、冷徹に命じる。桜織は表情を曇らせつつも、スプーンで掬っては口に運ぶ。だが、やはりスムーズには飲めない。
『う゛っ!げほっ、えほっ!!』
『噎せてていいのか、時間ねぇぞ?』
 手越は時計を見てそう呟き、陰湿な笑みを浮かべた。
『そうそう。言い忘れたが、それにゃ避妊薬も混ぜてあるんだ。スープに溶けた分まできっちり摂取して、ギリギリ次の投与までもつって量がな。定期的に完食しねぇと、ガキが出来ちまうかもしんねぇぞ?』
『えっ!』
 手越の言葉に、桜織が目を見開く。それを面白そうに観察する手越の表情は、悪魔じみている。いや、まさに悪魔そのものだ。
『……こんな事ばかりしていると、いつか罰が当たりますよ』
 桜織が手越を見上げる。珍しく眉を吊り上げて。対して手越は、その視線を遮るように腕時計を見せつけた。
『残り2分だ、時間が来たら没収すんぞ。クズ共のガキを孕みてぇんなら、そうやって格好つけてろ』
 淡々とそう告げられれば、桜織もそれ以上恨み事は吐けない。
『……く、う゛……っ!!!』
 鼻頭に皺を寄せ、悔しそうに呻く桜織。だが、その後の決断は早かった。意を決して息を吸うと、両手で食器を掴み、中身を口に流し込んでいく。
『おーおー、豪快なこった。あのタコ部屋連中と食い方が変わんねぇぜ』
 当然、手越はここぞとばかりに煽った。それでも桜織は、頬を膨らませたまま喉を蠢かし、無理矢理に嚥下していく。飲めば発情し、飲まなければ妊娠する、悪夢の汁を。


              ※


 食事を終えた後、桜織の様子は明らかに変わった。熱に浮かされたような顔で、息も荒い。
 その変化を感じ取ってだろうか。5人目の男は、それまでの4人のように桜織を押し倒すのではなく、まず前戯から入った。桜織の背後から抱きしめるように腕を回し、割れ目に指を入れるやり方だ。
『懐かしいよ。私も十年近く前までは、嫁をこうして可愛がっていたものだ』
 そう嘯くだけあって、手つきは手馴れていた。元々興奮状態だった桜織の割れ目からは、数分と立たずに濡れた音がしはじめる。
 そして、リン、と鈴の音が響いた。モニターのカウントが、とうとう0から1に変わる。
『嬉しいよ。気持ちいいんだね』
 男は甘い声で囁く。若い色男ならいざ知らず、髭面の親父がそんな声を出しても気色悪いだけだろう。事実、彼女は俯いたまま何も答えない。
 男は溜め息をつき、また指を動かしはじめる。しかも今度は、空いている左手の指を、桜織の首に這わせながらだ。
『嫁は、こうして首を撫でられながら手マンされるのが好きでね。ソフトタッチがゾクゾクするんだとか』
 また、甘い囁き。
『…………っ!!』
 桜織の顎が浮きはじめた。それだけじゃない。脚の開き具合が増し、内腿がヒクヒクと動いてもいる。感じているのは明らかだ。
『ふふふ。どうやら、君もそうみたいだね』
 男が耳元にそう吹き込んだ、まさに直後。リン、という鈴の音がまた響いた。桜織の顔が歪む。
 現実は残酷だ。いくら心で拒んでも、巧みな指遣いで刺激され続ければ、やがては絶頂に追い込まれる。しかもそれが、いちいち鈴の音という形で示されるんだから、尚のこと屈辱的だ。
 リン、リン、と冷たい音が響く。それが4回を超えた頃だ。
『ん、あっ……は、あっ……』
 ずっと閉じあわされていた桜織の口から、とうとう甘い吐息が漏れはじめた。背後の男が嬉しそうに頬を緩める。
『イイ声だ、アソコもぐちゅぐちゅになってきたしねえ。若い子をここまでイカせられるなら、私もまだまだ現役かな』
 奴はそう言って、ますます調子づきながら指を蠢かす。
 ここからは見た目に変化が乏しいらしく、編集で大幅にカットされていた。だが、施された指責めはかなり入念だったようだ。最後の最後に男が挿入し、果てた時の絶頂カウンターは『14』だったんだから。
『減額は7万か。ま、満足できたから良しとしよう。まだチャンスは2回あるらしいしね』
 男はティッシュで股間を拭いながら、指についた愛液を舐める。品のある桜織とは真逆の、おぞましい所作だ。
『次に、君がどれだけ淫乱になってるか……楽しみだよ』
 奴はそう言い残して部屋を去る。他の人間が、きっと桜織を色狂いにする──そう信じている様子だ。

 実際、奴に続く人間も、性感開発に積極的だった。
『観てたぜ、さっきの。指マンで感じまくってたじゃん』
 6人目の男は、桜織と向き合うなりそう切り出す。
『えっ!?』
『なに、知らないの? ここの映像って、オレらの待機スペースに垂れ流されてんだぜ。他にやることもないから、みんな釘付けになってる。キミはどこが弱いのか、どうされたらヨガんのか……そーいうのが全部共有されてんだよ』
 奴はそう言って、桜織の脚を開かせる。
『あ……!!』
 桜織は困ったような顔で脚を閉じようとする。だがそれは、弱点だと自白しているに等しい。
『無駄な抵抗すんなって』
 男は強引に脚を割りひらき、割れ目へと指を沈み込ませる。後ろから手を回していた5人目とは逆で、前から指責めを施す形だ。
 男は、指を臍側に曲げて何かを探っているようだった。そして、探し物はすぐに見つかったらしい。
『お、ここだ。解りやすいぐらい膨れてんな。解るっしょ、ココ性感帯なの』
『う、あっ!?』
 男が指を動かすと、桜織の腰が跳ねる。男が笑った。
『あはは、ウブい反応。“Gスポット”ってんだ。まずは、ここでイク感覚を覚えこませてやるよ。病みつきになるぜ?』
 陰湿な笑みと共に、手首に筋が浮く。
『んんんっ……!』
 桜織からまた声が漏れた。ちょうどカメラから見切れているから、顔は見えない。だが、愉快な表情をしていないのは確かだ。

 そしてまた、指責めが始まる。
 ベッドを横から撮る映像だと、太腿に邪魔されて指の動きが判らない。だが、その太腿の蠢きを見ているだけでも気持ちいいのがわかる。
『結構締まんなー、指動かしづらい。アソコが小さいだけか? まぁ何にせよ、突っ込むのが楽しみだ』
 男は手首を筋張らせながら、下卑た言葉を囁き続ける。勿論その間も、指は休めない。奴の指責めに激しさはなかった。ねっとりと、という表現がぴったりだ。
『ん、んん……っ!!』
 3分と経たないうちに、桜織から鼻を抜けるような声が響く。男の笑みが深まった。
『どう? 同じ指責めでも、さっきのとは違うっしょ。あのオジサンのも慣れてる感じはしたけど、身内ウケ止まりの雑な責めだったからね。Gスポ責めって、こうやってスポット一点集中でグッグッと押し込むのがイチバン効くんだよ。でしょ? さっきのとコレと、どっちが良い?』
 前の順番の奴を貶め、自分を称えさせようとする男。どちらかを選ぶということは、その相手を賞賛するということだ。となれば当然、桜織は答えない。
『ほら、言ってみなって。オレのがいいっしょ?』
 男はニヤけながら、さらに手首に力を込める。奴自身の言葉にもあった通り、Gスポットを指先で押し上げているんだろう。その結果、また桜織の太腿が強張る。

 リン──

 鈴の音が響き渡ったのは、その時だった。一瞬にして無音と化す空間の中、モニターの数字が0から1に変わる。そして、男が噴き出した。
『ぎゃはははっ! んだよ、シャレの利いた返事じゃん!!』
 男のヒイヒイという笑い声が響く。カメラに見切れるギリギリの場所で、桜織の白い喉が動いた。顎を引き締める動きだ。彼女は、その真面目そうな顔を強張らせ、困ったように眉を下げているに違いない。
 男は一通り大笑いした後、桜織の左膝に手を置いた。
『よーし、じゃステージ2だ。こっちの脚、伸ばしてみな』
 膝を押し込みながらそう命じられると、桜織は躊躇いながらも従うしかない。それでも怖いのか、膝がある程度伸びた辺りで、桜織は動きを止めた。
『どうしたの、早く。今より、もっと感じられるようになるんだよ?』
 男は促すが、逆効果だ。桜織は感じてしまうことを恐れているんだから。それでも、男の手がさらに膝を押し込めば、左脚は伸びきってしまう。
『そのまま伸ばしときな。痛くしないから』
 男は念を押しつつ、指責めを再開する。
 今度はカメラ側の脚が下がっているから、指の動きがよくわかった。中指と薬指を割れ目の中に埋もれ、第二関節がゆっくりと曲げ伸ばしされている。ぐうっ、ぐうっ、と押し込む動きをしているようだ。かなり力強く。
『ふ、ん……っ!!』
 桜織がまた反応する。しかも今度は、さっきより判りやすい。
 伸ばされた左脚の腿がピクピクと蠢く。垂直に立てた右膝が前後に揺れる。
 腹筋も動いていた。無駄肉のないスレンダーな腹が波打つ様子は、妙に印象的だ。
『感じるっしょ。片足とはいえ、こうやって足をピーンと伸ばしてっと、筋肉がいいカンジに緊張して感度が増すんだよ。50人ちょいの女イカせまくった経験則。オレ、これでも元ホストだから』
 男は指を動かしながらそう語った。元ホストといえば、そういう感じもする。髪色はプリンのようだが、それは元々明るい色に染めていて、長いタコ部屋暮らしで染め直せなかった証拠だろう。無精髭を剃れば、見られる顔にもなりそうだ。ただし、それは『たられば』の話。今の奴は、他の大多数の男と同じく、浮浪者同然。女性に触れれば、それだけで通報されそうな見た目だ。
 改めて考えても、狂っている。そんな奴が、とびきり清純な女子高生を、指責めで悶えさせているなんて。
 動画内では、リン、リン、と音が鳴り響いていた。モニタのカウントは5。少し意識を逸らしている間に、桜織は追加で4回もイカされたらしい。しかも、男の責めは緩まる様子がない。
『知ってる? 膣のスポットって、何個もあんだぜ。例えば、ここが“裏Gスポット”ね』
 奴はそう言って、掌を反転させた。臍側を押し込んでいた動きが一転、尾骨の方を押し下げる動きに変わる。
『ふあっ!?』
 完全に不意を突かれたんだろう。我慢強い桜織から、素っ頓狂な声が漏れる。
『はははっ!! ホント、いちいちリアクション可愛いわ。ウブっつーか。いるとこにはいるんだな、清純派って!』
 男は大喜びで、裏Gスポットを責めつづける。桜織の反応は大きい。左腿の強張りも、右膝の揺れ方もさっき以上だ。
『ん、んっ!!んっ!!』
『どう、新鮮でしょ。オナる時でも、自分の指じゃこんなトコまで刺激できないしね。どの女も、コッチのが反応でかいんだ。ま、キミの場合は指入れしてたのかすら怪しいけど。ね、教えてよ。オナった経験ぐらいはあんの?』
 ホスト男が興奮気味に投げかけた問いは、桜織に通じていないようだ。
『お、おなる……の意味が、わかりません……』
 ある意味、生活圏のギャップか。男の慣れ親しむ下劣な言葉が、清く正しい世界で生きてきた桜織には通じない。
『は?』
 男は一瞬、呆気に取られる。そして状況を理解して、また大いに笑った。
『くっ、はははっ!! 悪い悪い! そうだよね、ウブなキミに“オナる”なんて言っても通じないよねぇ!! よし、教えてやるよ。オナるってのは、オナニー……つまり“自慰”するってこと。これなら知ってるっしょ? 国語辞典引けば出てくる、真っ当な言葉なんだからさあ!』
 そう叫ぶ男は、心から愉快そうだ。新雪に初めて足跡をつける気分なんだろう。
『…ッ!』
 自慰という言葉なら、桜織にも通じたらしい。息を呑む音がはっきりとマイクに拾われていた。
『で、どう? “オナった”経験はあんの?』
 男は刺激を続けながら、さらに問う。わざわざ自分寄りの下卑た言葉に戻している辺りに、底意地の悪さが窺える。
『…………』
 桜織は、答えない。下卑た問いに軽々しく答えるほど、恥知らずな子じゃない。それでも、男は諦めなかった。
『言えよ』
 脅すような声色でそう呟き、責め方を変える。割れ目の中でグリグリと手を回転させ、上と下のスポットを交互に刺激していく。その効果は顕著だった。にちにちと粘ついた音がしはじめ、桜織の下半身の反応すべてが激しくなる。リン、リン、と鈴の音が鳴り、ついには喘ぎ声が漏れはじめる。
『あ、あっ……い、いや、ぁっ…………!!』
 伸ばした左膝が何度も浮き上がるようになった頃、とうとう桜織が音を上げた。それでも、男は手を止めない。
『言えって。言うまでやめねーぞ!?』
 そう宣言され、さらに数分ばかり追い込まれた果てに、とうとう桜織の顎が浮く。
『くはっ! はぁっ、はぁっ、はぁっ……! あ、あり、ます…………っ!!』
 荒い息と共に発されたその言葉で、男が目を細めた。
『へーぇ、マジ? 真面目そうな優等生でも、やる事はやるんだな。で、どうやるんだ。マンコに指突っ込んでか?』
『い、いえ……く、クリトリスを、指で擦って……』
『ウソつくなって、ガキの性欲がそんなんで解消できっかっての! 本当はどうやったんだ、ええ!?』
『ん、くうっ……ほ、本当です! 本当、ですが……その……』
 桜織は弁明してから、何かを言い淀む。そんな弱った雰囲気を、男が見逃すはずもない。
『その、なんだよ?』
『んくっっ!! その、ゆ、指だけじゃなくて、時々は、筆箱や……下敷きの、端も、使って……!!』
 桜織が躊躇いがちに自白すると、男が大仰に目を見開く。
『はあぁっ、マジ!? 勉強道具をンな事に使ったって、大人しい顔して立派なワルじゃん!!』
『う、うううっ……!!』
 桜織の声が震えはじめた。生真面目な彼女だけに、後ろ暗い部分があったんだろう。その僅かな傷口を切り開かれて、涼しい顔などできるはずもない。
『はははっ、涙目になんなって! いいじゃんか、エロに興味あったってよ。俺もお前も、父ちゃんと母ちゃんがケダモノみてぇにサカりあって出来たんだ。俺らみーんな、エロい事から生まれたんだよ。こんな感じのな!』
 男は上機嫌で手首を回す。
『んぁああっ!! や、やめっ……や、あ……あ!!』
 桜織は、翻弄されていた。水音、喘ぎ、鈴の音……あらゆる音の間隔が狭まり、やがて太腿が強張りに強張った挙句、腰そのものが浮きはじめる。
『んんんんーーーっ!!!!』
『おおおっ、いいねいいね、だいぶ出来上がってきたじゃん。ついでだ、もう一個言葉覚えな。キミが今経験してんのは、“イク”って感覚だ。言ってみ?』
 男は桜織を追い込みながら、また下卑た知識を教え込む。その言葉が上品でないことぐらい、桜織も解っているだろう。だが言わないと苦しみから逃れられない以上、彼女に選択肢はない。
『い、いっ…………く…………!!』
 背中を弓なりに逸らしながら、掠れた声が発された。その言葉尻を、リンという鈴の音が引き継ぐ。何度となく耳にしたその音色が、今は妙に物悲しく聴こえた。


 ここからしばらくは大きな変化がなかったのか、編集でばっさりとカットが入る。再開した時には、部屋内の時計の針が30分以上も進んでいた。
『すげー、ビショビショだ』
 再開後間もなく、男が指を引き抜く。指先からは水滴が滴っていた。その滴る先では、シーツが広い範囲で変色してもいる。直前にシーツを替えたばかりだというのに、早くも寝小便をしたような有様だ。
『はっ、はっ、はっ…………!!』
 桜織は短い呼吸を繰り返していた。半端に膝を立てた両脚は痙攣し、ほとんどない筈の胸が膨らんで見える。そしてその頂点では、2つの蕾が尖ってもいる。性的に昂ぶっていることは疑う余地もない。
 壁のモニターには、23という数字が光っている。累計カウントとなると37だ。9時間程度の間にそれだけイカされるのは、どれほどきついだろう。
 しかも、まだ終わりじゃない。男は桜織の変わりぶりを満足げに眺めつつ、一旦ベッドを降りる。奴の狙いは、洗面台下の棚に置かれたピンクバイブだ。
『今度は、コレでイカせてやる』
 奴はそう言って、桜織にバイブを見せつけた。桜織の顔はギリギリ映らない。だが男の見せた楽しげな表情で、おおよその察しはつく。
『それは……?』
『バイブだよ。細かく振動するから気持ちいいぜ。さ、脚開いて、自分で足持って。そう、いいぞ』
 男は笑いながら、桜織の脚をMの字に開かせ、さらにその膝裏を桜織自身に抱えさせる。
『いくぞ』
 バイブのスイッチが入れられ、重苦しい羽音がしはじめる。男はまずそれを割れ目に近づけ、大陰唇をなぞった。
『ひっ!!』
 悲鳴が上がり、桜織の腰が跳ねる。未亡人のように落ち着いた雰囲気を持つ彼女だが、未知の感覚に触れた時の反応は、やはり少女そのものだ。
 男はバイブでゆっくりと性器周りを刺激してから、割れ目の中に先端を沈めていく。桜織の太腿が強張る中、ピンク色の異物は半ばほどまで飲み込まれた。ここで、バイブに角度がつけられる。先が臍側のGスポットへと触れるように。
『あ、あっ!! し、痺れる……!!』
 桜織から切ない声が漏れた。
『すげぇだろ。こればっかりは、指じゃ真似できねー』
 男は自嘲気味に笑いつつ、バイブの角度を保ちつづける。絵面でいえば、指責め以上に変化がない。だが編集でカットされないのは、桜織自身に変化があるからだ。腰がうねり、両膝を立てた足が揺れ。指責めの時とはまた違って、堪らない感じが強い。

 リン───

 鈴の音が鳴るのも、不思議と予測できた。そういう身体の反応だった。
『はは、また早いな。ま、イっちまうよなーバイブだと』
 男は笑いつつ、ここでバイブを動かしはじめた。前後左右に揺らめかしながら、Gスポット周辺をなぞっているようだ。そしてそれは、確実に桜織を追い詰めていく。
『あ、あ、ああ駄目っ、来るっ!!!』
 悲鳴に近い声がした直後、またリンと鈴の音が鳴った。バイブ責めが始まってから、まだ3分も経っていない。それで2回の絶頂だ。
『来るじゃない、“イク”だろ。ちゃんと覚えなよ、お勉強得意なんだろ?』
 男は罵りながら、同じ調子で責めつづける。逸物は硬く勃起しているというのに、がっつく様子がない。この辺りは、さすが女慣れしているホストというところか。
 桜織にしてみれば、相手の落ち着きぶりは厄介だ。男が下手を打ってくれれば、冷める事ができる。だが腰を据えて責められればそうはいかない。コップに一滴ずつ水が溜まるように、着実に快感が蓄積していく。
 さらに2回、鈴の音が鳴ったころ。桜織に変化が起きはじめる。腰が上下に動きはじめたんだ。
『お、腰ヒクヒクしてきた。メチャクチャ気持ちいいんだろ、今?』
 男はそう言って、またバイブに角度をつける。最初と同じく、Gスポットを狙い打ちにするために。僅か20度ばかりのその角度変更が、桜織にとっての分水嶺だった。
『い……っく、い、い、い……ッ!!!』
 針でも刺されたような短い悲鳴のあと、呻きが続く。ここで桜織の身体が大きく揺れ、口元が映像に映り込む。
 彼女は、上の歯で下唇を噛んでいた。他の今風娘ならいざ知らず、清楚という言葉を体現するような彼女がするそれは、明らかに異様だ。
 そして、異様な事はもうひとつ。ここへ来て、鈴の音の鳴るペースが急に上がった。リン、という音の余韻が消えるより早く、次の音が鳴る。モニターの数字も次々に形を変えていく。
『おー、イってるイってる!』
 男は半笑いのまま、他人事のように呟いた。その足元で桜織の細い腰が上下し、ベッドをギシギシと軋ませる。
『と、とめてっ……ください!!』
 桜織の左手が膝から離され、男の腕を掴んだ。だが男は動じない。
『あー、やっぱそうくる? だよね、大体そうだ。まぁガサツな女だと腕に爪立ててくるんだけど、さすがに上品だな。好きだぜ、そういうトコ』
 甘い言葉を掛けながら、あくまでバイブの先端を押し付ける。密かに圧を強めてもいるのが、バイブから漏れる音が鈍さを増した。そうされ続けて、受け側が平気でいられる筈もない。
『ん……んーんっ! はあっはあ、あ……あああ、ああ゛っ……!!!』
 とうとう桜織の口が開き、舌を覗かせた。腰はガクガクと上下に揺れ、足指がシーツに食い込む。ギシギシとベッドが軋む。そんな中でも、鈴の音ははっきり聴こえた。そこから、さらに数分後。
『あ、だめっ……出るっ!!』
 悲鳴のような叫び声がした後、割れ目から何かが噴き出した。
『うおっ!?』
 男は咄嗟に横へかわし、太い奔流がそのままシーツへと浴びせかかる。バタタタ、という重い音を立てながら。一瞬呆けていた男の口元が、また吊り上がる。
『おーい、ションベン漏らすんじゃないよ。Gスポ刺激されまくって、尿道が敏感になったからってさぁ!!』
 男は大笑いしながら清楚な少女の失禁を見守る。そして流れが止まったあと、駄目押しとばかりにバイブで割れ目の中を掻き回してから、勢いよく引き抜いた。瞬間、リンと音が鳴る。また男が噴き出した。
『あっはっはっはっ、お前、オレのこと笑い死にさせてぇの!? バイブ抜いただけでイクとか、さすがに予想できんかったわ!!』
 男が膝を叩いて笑う傍らで、桜織は呆然としていた。その目尻から涙が零れると、小さな手で拭う。それでも涙がまた溢れた。
 そんな傷心の桜織を、男はさらに追い詰める。
『ほら立って。2時間しかないんだから、寝てる暇ないよ』
 奴は桜織を無理矢理引き起こすと、ベッドの上で深く腰を落とした姿勢を取らせる。相撲でいうところの蹲踞だ。
『バイブだと刺激強すぎたみたいだし、また指で可愛がってやるよ』
 その言葉と同時に、指が割れ目の中へと入り込む。
『ん……っ』
 ただ指を挿れられただけで、桜織の口から吐息が漏れた。

 ねちっこい指責めが再開される。
 男は指を蠢かしながら、面白そうに桜織の顔を覗きこんでいた。一方の桜織も、喘ぎながらその視線を受け止める。
 本当に生真面目な子だ。彼女はいつも、真っ直ぐに相手の言動を受け止めようとする。それは本来尊い行為だが、悪意の渦巻くここでは褒められない。深淵を覗く者が深淵に覗かれるように、悪を受け止める者は悪に染まるんだ。
 ぐちゅぐちゅという水音に混じって、何度も鈴の音が鳴る。
『ふうあ、あっ……!!』
 桜織から、また吐息が漏れた。彼女の太腿は何度も強張った末に、早くも痙攣を始めている。そしてついには、身体全体がグラグラと前後に揺れだした。
『なに、イキすぎて重心保てない? しょうがねぇな、オレの肩掴まれよ』
 男は薄笑みを浮かべながら、桜織に肩を突き出した。
『……すみません。失礼します』
 桜織は済まなそうな顔をして、男の肩に手を置いた。ただし、右手だけ。左手は口に宛がわれる。つい漏れてしまう甘い声を、少しでも抑えたいんだろう。どこまでも誠実で、どこまでも淑やか。そんな彼女に、男の目がますますギラついていく。
 奴は絶え間なく指を動かしながら、桜織の乳首を舐めはじめた。びくんと桜織の身が強張る。膣の締まりも増したのか、ぐちゅぐちゅという水の音も少しだけ変わったようだ。
 リン、と鈴の音が鳴る。桜織の反応を見ていれば、充分に予想できた音色。むしろ遅いぐらいだ。
『しっかし、すげぇマン汁の量だな。手首までドロドロだ』
 鈴の音をきっかけにか、男がそう詰る。その言葉が、さらに桜織を追い詰めたのか。
『ふんんん……っ!!!』
 桜織はつらそうな声を漏らし、左手の指を噛む。完全にお嬢様の仕草だ。それを生で拝んだ男は、もはや満面の笑みと化していた。
『へへへ……ホンット可愛いなキミ。ホスト時代に会ってたら、意地でもモノにしてたわ』
 そんな事を嘯きながら、奴は指責めの速度を上げていく。グチュグチュという水音も、鈴の音のペースも早くなる。
『ふくっ、う、うあ、んんあ、あ……っ!!!』
 桜織は必死に指を咥えているが、半ば声が漏れている。男はそんな桜織の手を掴み、口から引き剥がした。
『我慢してないで、思いっきり声出してみな。気持ちイイから!』
『そ、そんな……あ、あああーーっっ!!』
 桜織には、すでに耐え凌ぐだけの余裕がない。自由になった口からはっきりとした喘ぎを漏らしながら、全身を震わせていた。
『そうだ、もっと出せ!!』
『ふあ、はうぁっ!! はああ……ぁ……っ!!!』
 桜織の唇の端から、とうとう涎が垂れはじめた。
『いいぞ、そのまま浸ってろ。思いっきりイカせてやるっ!』
 男はそう宣言しつつ、桜織の乳首に噛み付いた。その、次の瞬間だ。
『んあああぁーーーーっ!!!!』
 絶叫と共に、割れ目からぷしゃっと飛沫が上がる。裏で鈴の音を響かせながら。
『はぁっ、はぁっ……おいおい、またか。誰が漏らせっつったよ?』
 男はやりきった様子で喘ぎながら、時計に目をやる。男が入室してから、そろそろ1時間半。残りは30分程度だ。
『うーしっ、そろそろハメっか!』
 奴はそう言って、ベッドに横たわる。桜織はそんな男を訝しげに眺めていた。
『どうした? 早く跨んなよ。自分でチンポ飲み込むんだよ』
『えっ!』
 男の言葉で、桜織が目を見開く。彼女にとっては初の経験だ。これまでの男は、自分から積極的に桜織を襲っていた。顔の見える正常位、獣のような後背位、片足を担ぎ上げられての側位……桜織からすれば、どれも屈辱的ではあるものの、されるがままでいられる体位だった。だがこの男は、あくまで桜織自身に奉仕させようとしている。元ホストとしての余裕を見せているつもりだろうか。逸物は固く勃起しきり、先走りまで滲んでいる状態だというのに。
『……わかりました』
 桜織は表情を引き締め、ゆっくりと男の上で脚を開く。性器を男に見られるのを、ひどく恥じ入りながら。
 スレンダーという表現がぴったりな、細い腹部、太腿、膝下が、横からカメラに接写される。ゆっくりと腰が沈んでいけば、程なくして男が息を吐き出した。
『おおおすっげぇ、マジで締まんな。あったけぇし、ヌルヌルグチョグチョで気持ちいいし……やっぱ女のマンコは堪んねぇ!』
 男はひどく嬉しそうだが、桜織の表情は硬くなる一方だ。
『へへ、すげえじゃん。んな小さいカラダで根元まで飲み込んで。オレの、バキバキに勃起して、すげぇデカくなってんのにさ』
 桜織の腰が降りきったところで、男が茶化すように囁く。そうして桜織の表情をさらに固くさせてから、奴は続けた。
『じゃ、動いて。オレを気持ちよくさせてよ』
『……はい』
 短い返事に続いて、ゆっくりと桜織の腰がうねり始める。その瞬間、彼女の太腿がピクリと強張った。
『んっ!』
 短い悲鳴も上がる。散々開発された膣内のスポットに、逸物が擦れたんだろう。
『どうした、もっと動けって。そんなんじゃ気持ちよくねぇぞ?』
 男は笑いながら続きを促した。性感帯を開発した張本人であり、粘膜で触れ合ってもいる奴には、桜織が動きを鈍らせる理由など手に取るように判るはずだ。
『んっ、んっ……!』
 桜織は小さく呻きながら腰をうねらせる。腰を密着させたまま円を描く、控えめな動き。それでも今の彼女には快感らしく、リンと鈴の音が鳴る。
『っ!』
 桜織の目元が引き攣った。自分で腰を動かして達する──そのはしたなさを、絶頂の音で自覚させられたせいだろう。
『ははは、イッちまったか。いいぜ、どんどんイケよ!』
 男は可笑しそうに笑いながら、桜織の手を取り、踵を掴ませる。
『次は、上下に動いてみろよ。スクワットするみてーに』
『…………わかりました』
 桜織は命令を拒否しない。覚悟を秘めた瞳で両の踵を握り、ゆっくりと腰を上下させる。にちっ、にちっ、という粘ついた音が響きはじめた。
『おぉーっすげぇ、出入りしてるとこが丸見えだ! 濡れ濡れの粘膜が捲れ上がってて、超エロい。毛が薄いから、余計よく見えるわー』
 男はどこまでも底意地が悪い。明らかに桜織が隠したがっている結合部を凝視しながら、大声で煽り続ける。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!』
 桜織の呼吸が荒くなってきた。
『いいぞ、いい具合だ。キミ才能あるよ、淫乱の才能が!』
『わ、私は……淫乱なんかじゃ……っ!!』
 男の煽りを聞き咎め、桜織が反論しようとした瞬間。変に力が入ったからか、下半身がびくっと震えた。
 リン──と、鈴の音が鳴る。
『あっはっはっは、ほら見なよ! 罵られてイクとか、完璧に淫乱じゃん!!』
 男が勝ち誇ったように笑う中、桜織は唇を噛みしめた。

 この後も、状況は変わらない。桜織が腰を動かし、男が喜ぶ。
 桜織は終始恥らっていた。彼女の貞操観念では、女が男に跨って快楽を貪るなど、あってはならない事なんだろう。だが同時に、彼女は何度も達してもいた。
『ん、んふっ……ん、んんんっ……!!』
 左手で口を覆っても、甘い声を抑えきれない。汗で濡れ光る身体が上下に揺れる中で、何度も鈴の音が鳴り響く。
『へへへ、イキまくりだ。やっちゃ駄目な事だって解ってると、余計興奮するよな。ほら、もっと声出してみな。指マンの時、声出すとすげー気持ちよかっただろ?』
 男はそう言って桜織の左手を掴み、強引に口から引き剥がす。右手をバランス保持に使っているから、桜織にはもう声を抑える手段がない。
『ふあ、あっ……あ!!』
 桜織の口から、とうとうはっきりとした声が漏れはじめた。右手が男の太腿をぎゅうっと握り、直後、桜織自身の太腿も震えはじめる。
『あっ、ああっ!!はぁっ、はぁっ……あああっ!!!』
『いいぞ、エロい声出てる! もっとだ、我慢すんな。思いっきり喘いでみろ!!』
『あああっ、あっ、あっ……あはっ、あっはあぁぁっ!!!!』
 男に洗脳同然に焚きつけられ、桜織から漏れる声がどんどん大きくなっていく。その声の大きさは、性的な反応の激しさと比例していた。腹筋の動きに、太腿から下の強張り具合。男の膝辺りを掴む手の力強さ。
 そのまま何分が経っただろう。結合部から漏れる音が、ぎゅぽぎゅぽという得体のしれない音色になった頃、とうとう男の表情が変わった。眉を顰め、歯を食いしばり。明らかに射精を堪えている顔だ。
『うあ、すっげぇ! ヒダが動いて、搾り取られ……あ、ああああっ!!!』
 その言葉の最中、男の両膝が浮いた。両足が強張り、シーツに押し付けられた尻肉が引き締まる。男なら誰でも本能で理解できる、射精の動きだ。
『はぁっ、はぁっ……あっ、で、出てるんですか……!?』
『ああ、スゲー出てる。だって、絞り取られてんだもん』
 性器で繋がりあった男女2人が、肩で息をしながら言葉を交わす。その光景は、まるでカップルのそれに思える。
『ほら、休むな。溜まってるんだ、もっと気持ちよくしてくれ』
 男は射精してからも、桜織に引き続きの奉仕を求めた。桜織は生真面目にそれに応え、そして“崩れていく”。前後にぐらぐらと身体を揺らした挙句、ついには深く前傾してしまう。男に寄りかかるように。
『へへ、なんだよ。甘えてんのか?』
 男は笑いながら、桜織の背中から尻にかけてをいやらしく撫で回す。かなり敏感になっているらしく、桜織の身体はビクビクと反応していた。男はその反応を楽しんだ後、両手で桜織の尻肉を掴む。
『さて。そろそろ、俺も愉しむか!!』
 奴はそう言うなり、大きく腰を浮かせる。
『あっ!?』
 桜織から悲鳴に近い声が上がる中、男の腰はシーツに沈んだ。そしてまた押し上げられる。沈んでは浮き、沈んでは浮く。ベッドをギシギシと揺らしながら、何度も、何度も。
 女を堕としまくったと豪語するホストのセックスは、実に手馴れていた。突き上げのスムーズさも驚異だが、もっと酷いのは尻を掴む両手だ。
『ああっ、いや! そこは、あっ……!!!』
 桜織があまりの快感に腰を逃がそうとしても、男の手はそれを許さない。
『ああ、キミの弱点ってここ? 教えてくれてありがとー!』
 男は嫌味を交えながら、両手で桜織の尻をコントロールする。膣内のスポットに対し、一番致命的な角度で逸物が擦れるように。
『んああああっ!!!』
 桜織の背中が弓なりに反る。同時に鈴の音が鳴り響く。あまりにも判りやすい絶頂だ。
『あはははっ! 気持ちイイんだねぇー、俺も超いいよ。な、また言葉にしてみろよ、イク時。もっと良くなるぜ』
 男は笑いながら桜織に囁きかける。桜織の眉根が寄る。
『ほら、言ってみなって!』
『ん……っっ!!!』
 男の手がぐうっと尻を押し下げると、桜織から声にならない声が漏れた。喉を閉じたまま搾り出された、快感の呻き。よっぽど余裕のない時でないと、そんな声は出ない。これは男の脅しだろう。自分の言う通りにしないと、何度でも余裕を失くさせるという。
『あっ、あ!!ああっ……はっ、はっ…い、イキ、ます……!!!』
 桜織が、切なそうな声で男に囁きかける。その直後、また鈴の音が鳴った。
『もっとだ。外の連中にも聴こえるぐらい、思いっきり声出してみろ!』
 男は桜織の尻肉を掴み直し、角度をつけながら腰を叩き込む。
『んんぐううっ!!!』
 桜織の歯が食いしばられ、目が閉じられる。
『いっ、イキます……! イキ……い、イキますっっ!!!』
 男に顔を覗きこまれながら、桜織は何度も声を張る。その宣言で彼女自身の快感も増すのか、鈴の音の鳴る感覚は狭まっていった。リン、リンという音が煩いほどだ。
『ははははは、いいぞいいぞ、アソコん中がすげーうねってる!!』
 男は愉快そうに笑いながら、ベッドを軋ませ続ける。
 チャイムが鳴り響き、男が持ち時間を使いきった時のカウントは実に56、累計では70にまで伸びていた。
『あはっ、すっげぇグショグショ。俺の番が来る前に替えたばっかなのに』
 ベッドから降りる時、男はシーツに触れながら笑う。その横では、桜織が脚をくの字に折り曲げたまま、横様に倒れこんでいる。紅潮した頬、唾液の伝う顎、細かに痙攣するすらりとした脚。その全てがいやらしい。


              ※


 5番目の妻帯者と、6番目のホスト崩れ。この2人による徹底した性感開発は、後に続く連中にも大きな影響を与えた。奴らは発情した桜織に血走った眼を向けながらも、まずは前戯を繰り返す。

 7番目の男は、まだ脚の震えている桜織に這う格好を取らせ、洗面台の下からマッサージ器を取り出した。
『今度はコイツで可愛がってやる。バイブより凄いぜ、これは』
 奴はそう言ってマッサージ器のスイッチを入れ、重苦しい羽音で桜織の表情を強張らせてから、脚の間をなぞりはじめる。あの我慢強い藤花も苦しんでいたように、マッサージ器の刺激は強烈だ。
『んんん……っ! ん、はぅっ……ん、んっ……!!』
 マッサージ器が割れ目を往復するたび、桜織からつらそうな声が漏れる。這う格好のまま背中を仰け反らせ、また俯き。絶頂の最中、彼女はそれを延々と繰り返していた。
 そんな調子で昂ぶっていれば、すぐに限界が訪れる。絶頂カウントが10回を超える頃には、桜織の呼吸はゼヒューッ、ゼヒューッという妙な音になり、全身が震えるようになっていた。
『も、もうやめてください! が、我慢が、何かが我慢できなくなってしまいます!!』
 やがて桜織は、男の方を振り返りながらそう訴える。
『へへ、限界ってか? いいぜ、じゃ止めてやる』
 奴はそう言って、マッサージ器のスイッチを切った。耳障りな羽音が消え去り、桜織は大きく息を吐き出す。だが、安心するにはまだ早い。
『そら、足開け!!』
 男は桜織の細い身体をひっくり返すと、その股座に逸物を押し付けた。
『えっ!? は、話が違……!!』
『話って、何の話だ? 俺はマッサージ器を止めてやるっつっただけだぜ。玩具で遊べねぇ間は、物をハメさせてもらうまでよ!!』
 男はそう言って、荒々しく桜織を貫いた。
『く、うっ!!』
『へへへ、前の連中の言ってた通りだ。何人かにやられた後だってのに、まだまだよく締まりやがる。おまけにヌルヌルで、気持ちいいぜ!!』
 眉を顰める桜織とは対照的に、男の顔は緩みきっていた。
 奴もまたケダモノだ。ひたすらに腰を振りたくり、快楽を貪る。それを受ける側の桜織は、しばらくは必死で快楽に耐えていたようだ。だが、立て続けに何十度と絶頂させられた彼女は、敏感になりすぎている。
『んっ、ああ……あはっ、あ…………あっ!!』
 血色のいい唇が開いて喘ぎが漏れるまでに、長くは掛からなかった。
『気持ち良さそうな声が出まくってんなぁ、お嬢ちゃんよぉ!』
 男はますます機嫌を良くして、腰を打ちつける。二発、三発と精を流し込み、桜織の内側を穢しながら。


 続く8人目も、ベッドに放り出された愛液まみれのマッサージ器を拾い上げる。
 コイツの場合、責め方がさらに悪質だった。まず桜織を仰向きに寝かせ、ベッドの左端から頭を垂れさせる。その状態で開いた脚の間にマッサージ器を宛がいつつ、逸物を咥えさせるんだ。
 顔を上向けた状態でのイラマチオは、千代里もが本気で嫌がっていたぐらい苦しいものだ。その上でマッサージ器責めまで受けては堪らない。
『んぐっ、ぐお゛っ……ごほっ、お゛っ……!!』
 勃起した物を奥まで咥えながら、桜織は何度も噎せていた。最初こそ祈るように胸の前で組まれていた手は、そのうち男の太腿を押し返すようになる。だが、男は悪意の塊だ。そんな桜織の抵抗を嘲るように、ストロークを大きく取って喉奥を蹂躙する。
『うっは、キモチいいー! イクたびに喉の奥がグニグニ動いて、マンコよりいいかも! お前もイイんだろ、イキまくってんもんな!!』
 奴はそう叫びながら、得意顔でモニターを見やった。カウント数は着実に増えていく。マッサージ器で敏感な部分を刺激されてるんだから当然だ。
『こんなヒデー事されてイクなんて、立派な変態だなぁ委員長さんよ!』
 その言葉と共に、マッサージ器が下からクリトリスを撫で上げる。
『むぉ゛お゛う゛おっっ!!!』
 恐ろしく低い呻きが上がり、膝を立てた桜織の足がバタバタと暴れる。両手は相手の太腿を激しく叩いてもいる。奥ゆかしい淑女らしからぬ動作。本気で余裕がないんだろう。
 ここで、男が腰を引いた。これでもかというほど唾液に塗れた逸物が抜き出される。最初から勃起してはいたが、今はかなり太さが増している。今の行為がよほど気持ち良かったんだろう。だが逆に、桜織は相当苦しかったはずだ。
『ぶはぁっ!! はぁーっ、はっ、はっ……!!』
 桜織は激しく酸素を求め、先端の尖った胸板を上下させる。男はそんな彼女の顔に、唾液塗れの逸物を叩きつけているようだ。
『どうだ、気持ちいいだろ。もう10遍ぐらいイッてるもんな、オマエ』
 モニターを顎で指しながら、男が笑う。桜織の呼吸が一瞬静まった。
『き、気持ちよさ、なんて……。性感帯を刺激されて、機械的に達しているだけです……!!』
 桜織の話し方は怒気を孕んでいる。こうも無茶をやられれば、苛立ちもしようというものだ。男はそんな桜織を、緩んだ笑顔で見下ろしていた。
『ああそう。なら感じられるようになるまで、タップリとほぐしてやるよ! 口も、マンコもな!!』
 そう叫ぶと、また逸物を桜織の口へと捻じ込んでいく。
 一度状況がリセットされると、喉奥の耐性も戻るのか。それとも男が責め方を変えたのか。ここから桜織の反応が、また一段と激しくなる。
『う゛ぇお゛っ、お゛え゛っ!! ぶふっ、ごぼふっ……んお゛も゛ぇ゛おえ゛っ!!!』
 えずきや咳き込みが酷い。喉の蠢きも。カメラは桜織の足側から状況を映しているから、白い喉へ芋虫が入り込んだような有様はことさら印象的だ。
『うわ、すげぇすげぇ! ツンツンしてるくせに、どんだけサービスしてくれんだよ委員長さんよ!!』
 男は大笑いしながら桜織の口内に腰を打ちつける。腰の動きは完全にセックスのそれだ。そして女に飢えた男がその動きをすれば、数分ともたずに限界が来る。
『あああそろそろ出そうだ、そろそろイッちまいそうだ!!!』
 男は興奮気味にぼやきながら、徐々にスパートを掛けはじめた。桜織の顎が陰毛に埋まるほど、深く腰を打ち込んでいく。男の股座が、おそらくは桜織の顔面とぶつかって、パンパンという音を立てる。
『ぃごぇお゛え゛っ!! うお゛ごえ゛いお゛お゛え゛っっ!!』
 桜織のえずきが酷くなり、足裏がシーツを叩きはじめた。まさに苦しみの極地というところだ。だがそんな中でも、鈴の音は鳴っている。モニターのカウントも増えていく。
『ああああイクッ、イクぞおおおぉっ!!!』
 男がそう言って腰を止め、荒い息を吐きながら下半身を緊張させる。その緊張のリズムと桜織の喉の蠢きは連動していた。食道に精液を流し込まれている様子が、そのまま目に見えるようだ。
『他の奴も言ってたが、スゲェ量出んな。キモチよかった分、昨日より出てるかもしんねー』
 男は満足そうに息を吐きながら、細かに腰を震わせる。その最中、また鈴の音が鳴った。桜織の太腿がびくんと震え、男が吹きだす。
『ぶはっ! お前、胃に直接ザーメン流し込まれながらイったんかよ!? いくらなんでも変態すぎんだろ!!』
 容赦なく言葉で追い討ちを掛けながら、マッサージ器でグリグリと割れ目を刺激する男。奴は桜織の脚がどれだけ暴れても気にかけず、むしろ片膝を掴んで、不自然な体勢にしたまま責めを継続した。もちろん、しつこいぐらいに逸物をしゃぶらせながらだ。
 それがどれほど辛いのかは、見ているだけの人間に解ろうはずもない。だが、ヒントは無数にあった。上下に跳ね、ベッドを軋ませる腰。あられもなく開脚したまま、激しくシーツに叩きつけられる右脚。膝を掴み上げられ、空中で足指を強張らせる左足。何度も浮く顎。
 そして残り時間が僅かとなった頃だ。
『ふわぁああっ、えぐっ、えぐぅーえぐうっ!!!』
 逸物を咥えながら、桜織が叫んだ。その直後、桜織の割れ目から黄色い液があふれ出す。失禁だ。
『うは、ションベンかよ。ったく、お上品なツラしてやりたい放題だな!』
 男が嘲る中、汚液は桜織の内腿を濡らしていく。水分補給が足りていないのか、汚水の色は濃い。その事実は、失禁という惨めな光景を、より印象的なものにした。
 チャイムが鳴ったのは、そんな中だ。
『おいおい泣くなよ。俺がイジメたみてーじゃねぇか』
 男が逸物を引き抜きながら、桜織の顔を見下ろして嘲る。桜織の顔はカメラに映らないが、鼻を啜り、しゃくり上げるような音が聴こえるのは事実だ。
『うひっ、射精したばっかのカリに触るとくすぐってぇな。そういや、クリ責めされてるお前も同じ状況か。今さらだが同情すんぜ。お前のクリ、さんざんマッサージ器でイジめられまくって、チンポの先そっくりの色になってんもんな!!』
 男はティッシュで亀頭を拭きながら身震いし、桜織への言葉責めに繋げる。桜織の反応は薄いが、細長い足が少し内股に閉じたのは、恥じらいのためか。


 8人目が退出し、そしてここで2度目の食事休憩が挟まれる。
『かーッ、ションベン臭ぇなオイ!』
 盆を手にした手越が、ドアを開けて現れた。全身にびっしりと墨を入れたコイツは、他の連中と比べても異様だ。カメラに姿が映った瞬間にそれと判る。まさに群れのボスという感じだ。
『……すみません』
 桜織は半身を起こし、手越に向かって頭を下げる。理不尽と感じながらも、己の僅かな非を認めて謝罪する──それは、心の豊かな人間だけができることだ。実に尊いが、この地の底でそれが賛美されることはない。
『いい歳して漏らすんじゃねぇよ。貧相な身体の上に、中身までガキのまんまか? ったく。これでも食って、ちったぁ女らしくなれや!』
 手越は嫌味を交えながら、桜織の膝に盆を置く。盆には食器が乗っていて、中身は前と同じ物。ぶつ切りの内臓が浮いた、灰褐色のスープだ。
『う…!』
 桜織の口元が引き締まる。それはそうだろう。彼女は最初にこのスープを飲んでから、明らかに感度が高まった。あの時0だったモニターのカウントは、今や3桁の大台に乗っている。その上でまたスープを口にすれば、結果は明らかだ。
『どうした、随分と余裕じゃねぇか。前と同じく5分で下げるぜ。それとも何だ、あの連中に愛着でも沸いたか? ガキが欲しくなるぐらいによ!!』
 動きの鈍い桜織に対し、手越が煽り言葉を浴びせかけた。流石ヤクザというべきか、言われると嫌な事をよく知っている。見ず知らずの相手、それも下衆と呼んで差し支えない相手の子供など、欲しいはずがない。結局桜織は、また浅ましく犬食いするしかない。その選択でまた一歩、正常から遠のくとしても。


              ※


 9人目を迎えても、性感開発の流れが途切れることはない。
 小太りで縮れた髪の毛の、冴えない中年男。奴は桜織に『マングリ返し』の格好を取らせたまま、マッサージ器で割れ目を刺激していた。
『どう? 気持ち良いでしょ』
 桜織の顔を覗きこみながら、何度もそう尋ねる。一方の桜織は、いかにも余裕がなさそうだ。
『ふうっ……ん、ん……んっ!!』
 口を手で覆っても、甘い声が殺せない。頭の横で高く掲げられた両足は、空を掴むようにピクピクと反応する。割れ目からは愛液があふれ、桜織自身の腹部へと伝い落ちていく。
『おっとと、勿体ない勿体ない!』
 愛液が伝うのを見ると、男はマッサージ器を退けて割れ目に口をつけた。
『ひあっ!?』
 桜織から悲鳴が上がる。それまでとは全く違う種類の刺激に、反応しきれなかったんだろう。あるいは、気色の悪さから出た声かもしれない。
 男は割れ目に吸い付き、ずずーっと音を立てて愛液を啜り上げる。見た目が不快・不衛生の極みなだけに、犯罪的な画だ。
『ふはっ、飲みきれないよ。凄い量だ!』
 口元を濡れ光らせながら叫び、また吸いつく。
『いやらしい匂いだ。それにすっごい美味しいよ、やっぱり女子高生の蜜は最高だあ。ずーっと欲求不満だったんだ、これが舐めたくって舐めたくってさぁ!!』
 割れ目に何度も舌を這わせ、唾液塗れになる頃にまたマッサージ器を宛がって愛液をあふれさせる。奴は飽きもせずこれを繰り返した。その顔は実に幸せそうだ。
 だが、受ける桜織はといえば、常に顔が引き攣っている。どれほど心の清い人間にも、生理的に受け付けない人間というものは存在する。桜織にとっては、この男がそうなんだろう。男に悪意がない事を悟ってか、睨んだりはしていない。ただひたすらに困惑し、怖気だっているだけだ。
 彼女にとって最悪なのは、それだけじゃない。マッサージ器で散々に絶頂させられ、彼女の性器は敏感になっている。そこを舌で丹念に舐められれば、どれほど気持ちが嫌がっていても、意思に反して絶頂してしまうしかない。
 男が3回目に口づけし、舌先で割れ目をなぞった瞬間。冷たい鈴の音が鳴り響いた。男は驚いたように顔を上げ、満面の笑みを浮かべる。
『えっ!! あはっ、あははははっ!! イッた、ねぇ今イッたよね!? そっかぁ、僕の舌がそんなに良かったんだぁ。嬉しいなあ、これで相思相愛だねぇ、桜織ちゃぁん!!』
 その言葉で、桜織の表情が凍りつく。
『い…………いやああああぁーーーーっ!!!』
 桜織の絶叫が響き渡る。両手で目を覆い、歯並びまで見えるほどに口を開いて。大人びた雰囲気を持つ彼女だけに、その歳相応の行動が痛々しい。
『あははははっ、すごい! そんな大声出せるんだね桜織ちゃん。新しい一面引き出しちゃったかな』
 男は笑みを浮かべ、ベッドの上で立ち上がった。そして桜織の尻を掴むと、勃起した赤黒い逸物を割れ目へと宛がう。割れ目は執拗な責めですっかり口を開いているため、挿入はスムーズだ。
『ああっ!? やめてくださいっ、こ、こんな格好でっ……!!』
 当然、桜織は焦りを見せた。清楚な彼女からすれば、マングリ返しという体勢だけでも頭が茹るほどの恥だろう。その上でセックスまで強要されて、受け入れられるはずもない。
『あああ、気持ちいい。これ一度やってみたかったんだ、キミみたいに小っちゃい子相手にさぁ。膣も小っちゃいから、簡単に奥に当たるねぇ。それとも、クリでイカされまくって、すっかり子宮が下りてきてるのかな?』
 男は甘い声で囁きながら、不自然な体勢で抜き差しを始める。
『いいねぇ。コリコリした子宮口が先っちょに当たって、スゲー射精感煽られるよ。ほーらわかるでしょ、コリッコリッて俺のが当たってんの?』
『う゛、う゛っうう゛!!』
 マングリ返しの格好だと喉が圧迫されるから、喘ぎはくぐもった感じで聴こえづらい。その代わり、宙に投げ出された二本足が雄弁だった。足指がぎゅっと縮こまったり、足の甲が反ったり……刻一刻と表情を変える。恥辱や不満を常に訴えている感じだ。
 だが何より屈辱的なのは、望まない行為でも昂ぶってしまう事実だろう。
『うひひ、アナルがヒクヒクしてきたよ。中もすごい動いてるし……やっぱり感じてるんだねぇ桜織ちゃん!』
 アナルを凝視しながら男が囁く。その言葉が耳に届いたのか、桜織の尻周りが強張った。それから、ほんの数秒後。リンと鈴の音が響く。
『あははははっ、イッたイッた! こーんな体勢でイッちゃうなんてさ、真面目そうな顔して変態だなぁ桜織ちゃんも!! いいよ、2人でどんどんイッちゃおう!!』
 有頂天になって快楽を貪る変態男。その下でシーツを握りしめる少女。まさに天国と地獄という言葉が相応しい。鳴り響く冷たい鈴の音が、余計に悲劇性を際立たせている。

 9人目が退出した時の累計絶頂カウントは、実に132。それだけの絶頂となれば、肉体への負担は半端じゃない。
「はーあっ、はああーっ、はぁぁあっ……』
 『マングリ返し』から解放され、ぐったりと横たわる桜織の息は不規則だ。それでも恥じらいは失くしていないらしく、10人目が部屋へ入ってくると、さりげなく両足を揃えていた。
『今さらカマトトぶんな。マングリ返しでヨガってた変態のくせしてよ』
 10人目は嘲りながら桜織の隣に腰を下ろすと、いきなり割れ目に指を入れる。『んっ!』
『おー、確かに子宮が下りてきてんな。“発情スープ”のせいか、結構弾力ある感じになってっし』
 男は一人で納得しながら指を引き抜き、ベッドに転がっていたローションボトルを拾い上げた。そして中身をたっぷりと桜織の恥部に垂らすと、手で丁寧に塗り伸ばしていく。
 そうして下準備を整えたあと、奴は洗面台の下からディルドーを取り出した。「とりあえず用意はした」という感じの、平凡な責め具だ。強いてペニスとの違いを挙げれば、作り物だけに反りがなく、根元から先まで真っ直ぐな事ぐらいか。だがそれを誇示する男の顔は、妙な自信に満ちていた。
『今からコレで、じっくりポルチオを刺激してやるよ。期待してろ、スゲー気持ちよくなるから』
 男はそう言って、ディルドーを桜織の割れ目に沈み込ませた。まずはGスポット狙いらしく、ディルドーを浅く挿入したまま、上下に揺らしはじめる。
『ふ、んんっ……!』
 今の桜織にはそれだけで気持ちいいのか、鼻を抜ける声が漏れた。さらに男の指がクリトリスを刺激すると、あ、という喘ぎも混じる。
『昨日まで処女だったくせして、すっかり出来上がってんな』
 男は楽しそうに言いながら、バイブを一気に奥深くまで押し進める。
『んふっ!!』
 桜織の腰が小さく跳ねた。その反応を見ながら、男はディルドーの尻に指をかけ、ぐうっ、ぐうっ、と何度も押し込む。
『はっ、ん……んんっ!!!』
『へへ。なんだ、口閉じて声出さないつもりか? 無理に決まってんだろ』
 男は笑みを浮かべながら、バイブを小刻みに動かしはじめた。
『んん、んっ……っは、はっあっ、あはああぁっ!!』
 頬に皺を寄せて声を我慢しようとする桜織だが、耐え切れない。一分もすれば、白い歯を覗かせて喘ぐようになる。あの桜織が喘ぐほどなんだから、身体の方も無反応ではいられない。細い腰は跳ね、太腿の肉は盛り上がる。
 リン、と音が鳴った。
『イッたか。こうやって奥を刺激されると、つま先から頭まで感電したみたいになるだろ。それがポルチオの快感だ、よぅく覚えろよ』
 男はそう諭しながら、ゆっくりと顔を桜織に近づける。どうやらキスを迫っているようだ。
『あっ!? ん、んっ!!』
 桜織は顔を逸らして男のキスから逃れる。貞淑な彼女のことだ、口づけも認めた相手としかしたくないんだろう。
『はっ、ガード固ぇな』
 拒絶された男はむしろ嬉しそうだ。キスは諦め、代わりに桜織の肩を抱くと、その流れで乳首を摘みあげる。
『くんんんっ!!!』
『へへへ。こんだけピンピンになってんだ、痺れる気持ちよさだろ。乳首とポルチオをたっぷり可愛がってやるからよ、せいぜい頑張ってみせろや。ヘバッたらキスすんぜ、舌まで入れてよ』
 男はそう宣言して、ディルドーのグリップを掴み直した。

 そこからの男の責めに、派手さはない。ディルドーでトントントントンとリズミカルに膣奥を叩きながら、桜織の膝裏を持ち上げたり、乳首を責めるばかり。だがそれは、決して責めがぬるいわけじゃない。桜織の反応を見ればそれが解る。
 ぎゅぷっ、ぎゅじゅっ、という水気たっぷりにディルドーを締めつける音。栓を越えてあふれる愛液。挙句に内腿の筋肉や足裏の落ち着きのなさと来たら、プロレス技でも掛けられているかのようだ。
 落ち着きがないといえば顔もそうで、顎を引いたり浮かせたり、唇を引き結んだり喘いだりと実に忙しない。
 そして、極め付けが鈴の音だ。リン、リン、リン、と一拍置く程度の間隔で音が響き渡る。長く動画を見続け、鈴の音に慣れた耳にも異常と思えるペースだ。
 そうやって絶頂を重ねるほどに、桜織の反応は激しくなっていく。
『ひうぃい゛っ!!!』
 決定的な変化の先触れは、口が三角にへし曲がったことだ。慎ましい彼女らしからぬ表情。多分それは、必死に歯を食いしばった結果だったんだろう。だがそうまでしても、沸き起こる反応を抑え切れない。
 腰がガクガクと上下に揺れ、力みのあまり太腿の上辺が角張る。腹筋も内から押し上げられるように何度も盛り上がる。
『イク時はちゃんと言えよ!』
 男のこの恫喝に誘導されたんだろうか。
『あっ、あい……い、いく…ぅ゛………ッ!!!!』
 首元に皺を刻みながら、一言が搾り出され、また鈴の音が鳴り響く。何度となく耳にした音。だがこの時の絶頂は、それまでと比べても格段に深いものだったんだろう。実際そのあと桜織は、ぐったりと脱力してしまった。それまでの力みが嘘のように、顔も首も太腿も弛緩させ、穏やかな表情を浮かべる。
 そして男は、その隙を見逃さない。すかさず桜織の肩を抱き寄せると、斜めに唇を重ね合わせる。
『んっ!? んも゛うっう゛っ、う゛うう゛ーーーっ、んぐっ!!!』
 桜織はすぐに状況に気付いて叫ぶが、もう遅い。宣言通りに舌まで入れるディープキスを強いられ、ついには悲鳴さえ上げられなくなる。
 ぐちゅぐちゅと音をさせるキスを強いつつも、男の手は止まらない。それどころか、いよいよコンパクトかつ徹底的に膣の奥を苛め抜く。
『あえ゛ーーっ、あえ゛っ、えぐう、えぐううっ!!!』
 桜織は、舌を絡め取られながら絶頂の訴えていた。そしてそれを証明するように、リン、と鈴の音が鳴る。鳴ったと思えば、また鳴る。モニターのカウントアップもいつになく激しく、心霊現象のようで怖いほどだ。
『んぶっらァ゛っ!!』
 ようやく口が離された時の汚い声は、男と桜織、どちらのものだろう。下品だから男だと思いたいが、涎を垂らしながらゼエゼエと荒い息を吐く少女もまた、気品溢れるとは言いがたい。
 そんな状態の桜織を、男はさらに責め立てる。それまで真っ直ぐ突っ込んでいたディルドーに角度をつけ、上から下からズルズルと出し入れするやり方だ。これはかなり効果的らしく、桜織の小さな尻が何度も跳ね上がった。
『あ……っは、ぁいく、いくっ……!!』
 泣きそうな声がして、桜色の唇が三角にへし曲がる。何かを振り払うように何度も頭が振られ、最後には天井を仰いだままで動きが止まる。
『へへへ、グッタリしやがって。いただき~』
 男は満面の笑みを湛えて前傾し、桜織の唇を奪った。これで二度目になるが、インパクトはさっきに劣らない。
『んっ、んんっ……あぁっ、んんん……ふっ、んっ…………』
 濃厚に口づけを交わしては、熱っぽい吐息を吐き出し、また舌を絡ませあう。それはまるで、恋人のするキスのようだ。そしてその中で、また桜織は鈴の音と共に身体を震わせる。確実に何かを喪失しながら。

『へへへ、すんげぇ締めつけだ。すっかり奥でイク癖がついちまったな。さすが優等生、飲み込みが早ぇぜ!』
 持ち時間の最後、男は成果確認とばかりに桜織の膣を堪能した。枕を敷いて腰を浮かせ、両足を肩に抱え上げた上で、奥までの挿入を繰り返す。それ自体は前にも散々目にしたプレイだ。だが、桜織の反応は一段階変わっていた。
『ああっ、あっ……んあああっ!! おっ奥、奥は、ぁっ……!!!』
 シーツを掴みながら顔を歪める桜織。その様はまるで、二度目の処女を失っているかのようだ。抱えられた脚の強張り具合も異常で、陸上で鍛え上げられたとしか思えないほどの筋肉の盛り上がりを見せている。
 そして、鈴の音。ペースこそ不安定だが、男が腰を2回振れば1度は鳴った。
 結局この10人目を相手に、桜織が達した回数は実に56回。しかもその一回一回が、クリトリス逝きよりもずっと深い絶頂だ。
 結果として、桜織の性感のステージはまた一段階上がってしまった。この後に続く映像を見れば、嫌というほどそれが実感できてしまう。


              ※


『どうだ、俺のバックは良いだろ? 俺のチンポの反りはバック向きらしくてな。前のオンナ抱いた時も、正常位じゃ全然なのに、バックでやると途端にヒイヒイよがるんだ』
 そう豪語するだけあって、11人目は何度も桜織を絶頂させていた。「主導権は自分にある」と言わんばかりに、桜織の両手首を後ろへ引き絞ってのバックスタイル。やられる側の桜織は、膝立ちになったまま、ベッドに頬を預ける格好で喘ぐしかない。
『うあ……うう゛あ゛っ! うあ……あ゛っ!!』
 桜織から漏れる喘ぎは、聴いているだけで妙な気分になった。我慢しようとしても、どうしようもなく漏れてしまう、という風だ。
 それほどの喘ぎが漏れる状況なら、肉体の反応も生々しい。腰が打ちつけられるたびに、桜織の尻肉が震え、太腿が強張る。シーツに深々と沈み込む膝とつま先が、全身にどれだけの力が入っているのかを物語る。
 鈴の音も鳴り続けで、モニターのカウントはとうとう200の大台に乗った。
『しっかし、俺の前に10人ヤッてるとは思えねぇ締まり具合だな。最初はどんだけキツかったんだ? 子宮口もほぐれてブニブニしてっし、奥突くたびにヒダが吸い付いてくるし……いやらしいマンコになっちまってんなぁ、委員長さんよぉ!!』
 男は激しく犯しながら、隙あらば罵声を浴びせていた。そうすることで桜織が恥じ入り、反応が良くなると知っているからか。
『うううう゛んっ!!!』
 くぐもった悲鳴が上がり、掴み上げられた桜織の手が、相手の手首をぎゅっと握りしめる。直後、リンと鈴の音が鳴った。
『ぐうっ!! すんげぇ締め付けだ、たまんねぇ……出るぞっ!!』
 男は歯を見せて笑いながら、ラストスパートとばかりに強く腰を打ちつけ、一番の奥で精を放つ。
『う゛ああっ、はぁっ、はぁっ……! やめて、ください……こんな、奥……し、子宮に、入っちゃう……!!』
 桜織から、掠れたような声が漏れた。
『ふうっ、ふうっ……なに言ってんだ。マンコの奥ヒクつかせて精子を吸い上げてんのはオメーだろ。この変態が!』
 男はそう言って、数十分ぶりに桜織の手首を開放した。相当な力で握られていたのか、赤い手形のついた細い手首は力なくシーツに落ちる。その脱力ぶりは、まさにレイプ後という感じがした。
 男がゆっくりと腰を引くと、太腿の合わさった部分から“みちゃっ”という音がした。お互いにどれだけの汗を掻けば、そんな音が出るんだろう。
『はぁーっ、はぁーーーっ、はぁーーーっ…………』
 桜織はベッドの上に突っ伏し、荒い呼吸を繰り返していた。男はそれを見下ろして、意地の悪い笑みを浮かべる。
『おら、いつまでもヘバってんじゃねぇ。延々と善がってられるオメーと違って、こっちにゃ2時間しかねーんだ。水飲んだら再開すっぞ』
 奴はそう言ってベッドを降りた。

 ここで一旦カットが入り、暗転を挟んで映像が再開される。
 プレイはやはり後背位だが、今度は体位が違った。ベッドを降り、シーツに手をついた桜織を背後から犯す形だ。桜織の顔がカメラの方を向いているから、さっきとは打って変わって表情がよく見えた。
『ふっ、く……んん、んん゛んん゛っ! くはっ、はあっ、ああああっ!!』
 下唇を歯で噛んで声を殺そうとし、絶頂で息を吐き出す。また声を抑えようとするが、抑えきれずに喘ぐ。その繰り返しだ。そのまま何度もイカされれば、肩幅に開いた脚が細かに震えはじめる。それを目敏く見つけた男が、嬉しそうに笑った。
『くくっ、脚がガクガクんなってきたな。ま、そうだろうな。ベッドで散々イカせてから立ちバックすりゃ、どのオンナも音を上げたもんだ』
 男はそう言って桜織の腰を掴み直し、いよいよ力強く腰を打ちつける。肉のぶつかるパンパンという音が小気味良いほどだ。
『ああああっ!!』
 桜織の腰がぶるりと震え上がり、口が大きく開く。追従するように鈴の音が鳴り響く。
 ここへ来て、とうとう桜織は開脚状態を保てなくなったらしい。膝頭をすり合わせるように、すらりと長細い脚が閉じられる。男が鼻で笑った。
『今さら内股とか、無駄な抵抗すんなよ。それとも何だ、こうやってマタ広げてハメられんのが怖ぇのか? すげぇ深くイッちまう確信があるとか?』
 そう言って脚の間に掌を割り込ませ、強引に脚を開かせていく。我慢ができないから足を閉じたというのに、それを開かれては堪らない。
『や、やめて、ください……。せめて、少し休ませて……!!』
『休みてぇんなら、次の奴にオネダリしろ。こっちは随分お預け喰らってんだからよ、気ィ済むまで愉しませてもらうぜ!!』
 奴はそう言って、また激しく腰を打ちつけはじめた。
『ああああ゛っ、はああっ!! い、いや、いやああぁっ……!!』
 細い腰が震え、鈴の音が響く。桜織の声が、段々とか細くなっていく。俯きがちで表情はよく見えないが、鼻を啜る音もしているようだ。
『んだよ、泣いてんのか? オンナ嬉し泣きさせるとか、俺もまだまだ現役だな』
 桜織の異変に気付いても、男は責めの手を緩めるどころか、ますますリズミカルに腰を打ち込みつづける。
『う゛ぅーう゛っ、う゛っあイク、ううう゛っっ!!!!』
 桜織の細い手が強張り、シーツを掴んで皺だらけにする。太腿にも、円錐状の異物を捻じ込まれたように肉が盛り上がっている。死を前にしてベッドに縋りつく少女……そんな感じで、恐怖さえ感じてしまう。
『だいぶ腰砕けになってきたな』
 男はそう言って、ずるりと逸物を抜き出した。いつのまにか射精もしていたらしく、半勃ちでぶらさがる逸物からは、白い糸が垂れ落ちている。
 ここで、桜織の身体が前に崩れた。尻を高く掲げ、シーツに突っ伏して。モニターのカウントは230回。いよいよ体力も限界なんだろう。だが、それを見ても男に同情の念は沸かないらしい。
『うへぇ、マン汁でヌルヌルんなっちまった。おい、フロ入んぞ!』
 足を見下ろしながらぼやき、桜織の腕を掴んで浴槽へ向かう。力なく引っ張られていく桜織の顔は、涙と鼻水で濡れていた。

 男は、浴槽内でも散々に桜織を嬲っていた。泡まみれの手で割れ目を擦ったり、クリトリスにシャワーを当てたり。特に湯を張っている待ち時間での『手マン』は、今の桜織にとっては地獄だろう。
『脚ガクガクんなってもへたり込むなよ。意識飛ぶまで続けてやる』
 男はそんなことを囁き、大きく開かせた脚の間で指を動かしつづける。
『ひいっ、くっんんんーん……くうぅっ!!』
 桜織の声はか細い。左手で浴槽の縁を掴みつつ、右手の指を噛んで声を殺しているからだ。だが、そうして声を殺していられるのも最初の内だけだった。何度も指で絶頂させられれば、そのうち両手で縁を掴まなければ姿勢を保てなくなる。そうなれば声を抑えきれない。
『っくいくっ、あああぁっ、ああっ、んああああっ……!!!!』
 こういう艶かしい声が出続けになる。
 男が桜織の余裕のなさを面白がり、浴槽の縁に片足を乗せるよう命じてからは、特に悲惨だった。上げた左脚が病的なほどに強張り、腹筋が凹んでは戻る。愛液のあふれ方も普通じゃなく、少し切れが悪い小水といった風だ。
『こんな……こんなの、いやあああぁぁっっ!!!』
 桜織の顔も引き攣り、とうとう悲鳴さえ上がりはじめる。
『すげー、どんどん出てくる』
 一方の男は呑気なもので、その温度差はホラーじみてすらいた。

 散々に桜織を追い詰め、浴槽に湯が満ちた頃、男は悠々と風呂場の縁に腰掛けた。とはいえ、足湯をするわけじゃない。湯船の中で桜織に這う格好を取らせ、逸物をしゃぶらせるためだ。
『相変わらず下手だなオメー。思い切りが悪ィんだよ思い切りが。今さらお上品ぶってもしゃあねぇだろ、あんだけマン汁撒き散らしといてよ。見ろよ、湯がすっかりオメーのマン汁で濁ってやがる。脚にもヌルヌル絡みついてきやがるしよ。ホント汁の多い女だぜ!!』
 隠語を繰り返し、羞恥を煽ることも欠かさない。徹底した性格の悪さだ。そうした悪意を、桜織はもう何度も受け止めている。そろそろ受け流せてもいい頃だが、彼女はやはり羞恥に耳まで赤らめて恥じ入っている。
 それが、桜織という女性なんだろう。生真面目すぎるがゆえに、何でも正面から受け止めてしまう。心が壊れるほどの恥辱でも、気が狂うほどの快楽でも。

 逸物が上反りするまでに回復したところで、男はセックスを再開した。浴槽の縁に桜織の手をつかせてのバックスタイル。
『駄目押しの風呂場ハメってな。俺のチンポは、身体が温まってっと余計に気持ちいいぜ?』
 男はそう語り、水面に波を立てながら腰を振る。
 都合3度目の後背位だが、これが一番強烈だった。男の言う通り、身体が温まっていることが仇となったのか。
『あ…だめっ!!!』
 挿入からほんの数十秒で、桜織が顎を跳ね上げた。余裕なく視線を惑わせながら、腰に添えられた男の手を掴む桜織。だが男は構わず、激しく腰を打ち込みつづける。入浴で肌がふやけたせいか、パンパンという肉のぶつかる音は重厚感を増していて、そのぶん迫力もすごい。
『やだめ、だめ……いっちゃうっ!! だめ、いぎ……っ!!!』
 背中が弓反りになり、歯が食いしばられる中で、また鈴の音が鳴る。今回でちょうど250回目の絶頂だ。
 そこからは、順調に絶頂回数が積み重なっていく。桜織は手の甲に筋を浮かせて男の拘束を外そうとしていたが、力比べで敵うはずもない。結局は腰砕けになり、浴槽の縁に両手で掴まるしかなくなる。
 一方の男は落ち着いたものだ。あああ、あああ、と心地良さそうに喘ぎながら、堂々とした姿勢で相手を責め抜いている。よほど後背位に自信があり、かつ経験も豊富らしい。
 そこからさらにセックスが続き、絶頂回数が260回を越えた頃だ。
『あっ、で、出ちゃうっ!!』
 急に桜織が叫び、激しく身を捩った。火事場の馬鹿力というやつか、これでとうとう男の手が外れる。
『おい、暴れんな!』
 男が怒声を浴びせる中、桜織の腰が震える。そして直後、じょぼじょぼと風呂の水面に向けて液体の注がれる音がしはじめる。
『なっ……』
 男は目を丸くし、怒りの表情から一点、してやったりという笑みを広げた。
『はははっ!! んだよお前、良すぎてションベンか!? ったく、下品なガキだな。よくもまぁそれで品行方正ぶれたもんだぜ!!』
 男はそう言って、桜織の尻を叩く。
『ぐっ……す、すみません、でも!』
『でももクソもねぇんだよ。オラ続けっぞションベン垂れ!』
 男は桜織の弁明を無視し、腰を掴んでプレイを再開する。パン、パン、パン、パン、と一回一回着実に奥までを貫く突き込みだ。
『かはあっ!! も、もう、無理です……っ!!』
 桜織は身体中を強張らせながら、がくりと項垂れた。それをきっかけとしたように、突き込みのペースが上がる。機関車が速度を上げるように、徐々に、徐々に。
『だめ、駄目ダメっ!!いきますっ、いってます!!!』
 桜織の手が、また男の手に重なった。腰を掴まれているのがそれほど致命的なのか、あるいは錯乱状態で同じ行動を反復してしまっているのか。
『ああああぁぁっ、はああっ!! はぁっはぁっ……うああ、ああああぅあ゛ーーーっ!!!』
桜織の反応が悲惨さを増していく。浴槽の縁に両手でしがみついたまま、叫び、泣き、身悶え。まるで下半身を貪り食われているかのようだ。強烈な快感は痛みと同じというから、実際似たようなものかもしれない。
『すげぇなお前、ここまで意識保てた女はそういねぇよ。案外、快感の耐性強ぇのかもな。ま、それならそれで愉しませてもらうまでだ。これが終わったらまたベッドだぜ。持ち時間ギリギリまで、バックを堪能させてやるよ!!』
 男はそう囁きかけ、恐怖に引き攣る相手の表情を愉しんでいた。



『ぜぇっは、ぜはっ……はーっ、はひっ、はっ……!!』
 11人目が部屋を出ていった後、桜織はベッドの上でひどい呼吸を繰り返していた。溺死からかろうじて生還したばかり、という風だ。小学校高学年かと見紛う小柄さだけに、余計痛々しい。
 そして、やはり彼女に充分な休息は与えられない。ドアが開き、逆光の中で12人目のシルエットが浮かび上がる。線は細く、ケダモノのように犯すタイプには見えない。ただし、眼鏡奥の細い瞳からは、ひどくマニアックな印象を受ける。事実として奴は、これまでの12人のうちで唯一、外から責め具を持ち込んでいた。
『お願いします。10分でいいから、休ませてください……』
 桜織はベッド上で半身を起こし、12人目の男に乞う。だが男は、爬虫類を思わせる瞳で少女の裸体を舐め回すばかりだ。
『まるで人形みたいだね、綺麗だ。さっきまであんなにギャンギャン泣いてた子とは思えないよ。ま、だからこそ興奮するんだけどね。あんな反応見せられたら、もっともっと開発したくなるじゃないか』
 奴はそう言ってベッドに腰掛け、持参した道具を桜織に見せ付ける。
 長さがあり、かつ柔らかそうな黒いディルドー。手でちょうど握れるサイズの、ピンク色のキャップ。
 桜織が怪訝な表情を浮かべる。見慣れない道具を前に、その用途を必死に考えているようだ。
『さっきのセックスで、だいぶポルチオの開発が進んだみたいだからさ。次はこれで、もう一段階感度を上げてあげるよ。もう身に染みて解ってるかもしれないけど、ポルチオの快感って、クリやGスポの比じゃないからね。身体の端まで響く深ーい快感が、ずっと続くらしいよ。ま、ネットの聞きかじりだけどさ。それがホントなのか、そのカワイイ身体で実験させてよ』
 12人目の男はそう言って、ディルドーを指で弾く。一方で、桜織はシーツを握りしめていた。その心境はよく解る。
 もはや対話など不可能。そう、悟ったんだろう。