1.

「げほ、げほげほ…ひゅうッ…ごほっ!」
結花の咳は昨夜から止まらなかった。
昨日濡れた服を着たまま外気に晒され続けたせいで、当然のごとく風邪を引いてしまったのだ。
目覚ましが鳴りはじめる。人目を避けて登校する為に起きるべき5時になったということだ。
起きなければならないと結花は思った。
しかしどういう訳か、そう思った途端に彼女に強烈な睡魔が襲ってきた。
ひどい咳を繰り返していたせいで、結花は一睡もしていないのだ。

次に結花が目を覚ました時、時計はすでに八時前を指していた。
学院が始まるのは八時半、かなりギリギリの時間だ。
結花はふらつきながらも慌てて起き上がり、支度を始めた。
 そもそもひどい風邪を引いている時点で、普通なら出かけるのはやめるだろう。
しかし結花は、妙なところで頑固だった。
彼女は今まで、学校へ通い、その後店を開くという生活をどんな事があっても崩す事は
なかった。
だから、ひどい頭痛と立てないほどの腰の痺れでどうしようも無かったとはいえ、
前日店を休業した事は結花にとってかなりのショックだったのだ。
いじめなどのせいで、これ以上自分の日常を狂わされるのは我慢ならない。
そういった密かな意地が、彼女の儚い雰囲気から弱さ、頼りなさを消し、
独特の魅力を作るのかもしれない。

顔を洗い、すぐに着替えにかかる。
最悪な事に、今日着るのはあの小学生用の体操服だ。
昨日の放課後、教室の中を探しても結花の制服と下着はどこにも見つからなかった。
恐らくクラスメイトかリカ達が回収したのだろう。
仕方なく、結花はパジャマを脱いで体操着を手に取る。
昨日の執拗な責めのせいで、体操着は上下ともたっぷり汗を吸ったまま生乾きになっている。
昨晩の結花は着替えられたのが奇跡と思えるほど疲れきっていたため、
当然洗濯などできなかった。
ガンガンと鳴る頭の中で、結花はリカの言葉を思い出す。
『明日登校する時はノーブラで……』
結花はさらに憂鬱な気分になったが、下手に逆らう訳にもいかず、
そのまま濡れた体操服のシャツに袖を通し始めた。
風邪のせいかふらつき、体の節々が痛むのに閉口しながらも、どうにか服に体を収めた。
そのまま鞄を持ち、髪を梳かすのも忘れて玄関へ走る。
その時になってやっと、今日も母の姿がないのに気付いた。
 (どこに行ってるのかな…)
結花は少し心配になったが、とにかく急いで家を出た。

2.

なおも節々が痛む体に鞭打って、結花はバス停へと走った。
その間、人の目が気にならなかったのは幸運だといえるだろう。
なんとかバス停が見えた時には、すでにバスが来ていた。
息を切らしながらも結花は全力で走り、なんとかバスに乗り込む。
バスの中は超満員で、体を押し込む結花を何人かの男が忌々しそうに睨んだ。
しかしその男達は結花の顔を見ると、わずかに瞳を柔らげる。
変な話だ。髪を梳き忘れて見向きもされないならともかく、普段のように髪を整えない事で、
逆に彼女の本来持つ魅力が人に知れてしまっている。
 しかし結花はそんな事は思いもよらなかった。
額を出せば明るく見えるという事は店の客達の反応で知っていたが、
それが『可愛い』などとは考えた事もない。
今見られているのは、単純に髪を整えていないことや、妙な格好のせいだと思っている。
だから、ドアが閉まってバスが発車すると、男達に背を向けて窓の外を眺める事にした。

「ゲホッ…はぁ、はっ…ぐ、ゲホゲホッ……」
走ったためか、また咳がひどくなりはじめた。
大きく息を吸い込むと、結花の鼻につん、とした臭いが入ってくる。
 (あ、や、やだ、これ、私の着てる体操服の臭いだ!!)
少女の甘酸っぱい汗と体臭が入り混じり、生乾きでなんともいえないものになっている。
結花は後ろからの視線を感じた。
とにかくバスが学校に着くまでじっとしていよう、結花はそう決める。
その時、結花のお尻に何かが当たる感触がした。
とはいってもこの混雑だ、特にそれはおかしい事ではない。
だがその「何か」は、ブルマに押し付けられたままぐにぐにと尻肉を揉み始めた。
 (な、なに、これ…?まさか、痴漢!?)
結花は痴漢に遭うのは初めてだった。
なにしろ、いつもは人に見向きもされないのだから。
結花は戸惑ったが、自分が狙われるのは当然だとも思った。
こう込み合っていては少々不審な事をしても人には分からないし、
サイズ違いの体操着を着て白い太腿や腹部を晒し、おまけにその服から強烈に女の匂いを
漂わせているとなれば、客観的に見て自ら誘っているとしか思えない。

痴漢の手は次第に遠慮がなくなっていき、双丘から股へと割り込んできた。
結花はその手を後ろ手に払いのけようとしたが、すぐにその手を掴まれ、
体をドアに押しつけられてしまう。
それに合わせて人の波が動き、数人分の体重が結花の動きを封じる。
もう振り返ることもできず、ブラジャーを着けていない乳房が自分とドアの間で形を変えた。
ブルマ越しに敏感な場所を擦る動きに、結花は内股になって抵抗する。
「はあっ、や、やめ…ングッ!!」
少し遅い気がしながらも叫び声を上げようとした途端、その口が厚い手で塞がれた。
そしてその直後、生暖かい息が耳元に吹きかけられる。
「こんな格好して何言ってんだ…うっすら乳首見えてたぜ、生乳娘。
 素直になれよ、触って欲しいんだろ?大声出したら、恥ずかしい姿皆に見られるぜ?」
低い声で脅しつつ、シャツの上から結花の乳房をゆっくりと揉みしだく。相手は男のようだ。
結花はドアのガラスに映る相手の姿を見ようとしたが、熱に浮かされて霞んだ目では
はっきりとは見えなかった。

男の指がブルマの股部分を何度も往復し、布地を通して結花の割れ目をなぞった。
秘部から生まれた熱いものが、結花の体をじわじわと這い上がっていく。
男は二本の指を揃えて擦っていたかと思えば、その指を分けて時間差で這い回す。
熱で感覚がおかしくなっているのだろうか、結花はその刺激を気持ち悪いとは感じず、
ただ快感のみを受けていた。
口を手で押さえられているため声は出せないが、出せたとしても甘い吐息になるだろう。
「感じてきたな?もう太腿がひくついてるぜ」
尿道の辺りをぐりぐりと押し込んでいた手が、ブルマにくびり出された白い太腿を滑った。
きつく閉じていた脚が少しずつ開いていくが、少女にそれは止められない。

そして突然男の手は腿をさするのをやめ、腰の辺りからブルマの内側へと入り込んだ。
薄い水色のショーツが地肌から剥がすように押しのけられ、岩のようにごつごつした手が
結花の熱のこもった秘所に密着する。
指の腹が慎ましい割れ目を直に擦った。
「まだそれほど濡れてねえな。まあ期待してな、これからグチョグチョにしてやっからよ」
結花の耳元で笑い混じりの声がする。
 (グチョグチョって…まさか、リカ達と同じような事するの!?)
子供が産めなくなる病気。リカにそう騙されている結花は嫌がって身をよじったが、
体は男達とドアに挟まれてほとんど動かせない。

そうしている内に、ついに男の指が結花の大事な場所を割り開いた。
男は始めは軽く、指の頭だけを潜り込ませる。
しかし僅かでも敏感な粘膜を擦られ、むず痒い快感に結花の腰がぴくんと跳ねる。
その反応を楽しむように、男の無骨な指は何度も浅い侵入を繰り返した。
結花は次第に秘所が湿り気を帯びてくるのを感じる。
 頭では全力で抗おうとしているのに、それがまるで体に反映されないのが不思議だった。
歩こうと思えば歩ける、そんな自分の体では無くなった気がして不安にもなった。

やがて挿入は回数を重ねるたび深くなり、ついに第二関節までが割れ目に沈み込む。
男は探るように中指を曲げたり伸ばしたりし、初々しい膣の内壁に様々な模様を描いた。
「いい締まりしてるな。こりゃ結構な名器かもしれんぜ、嬢ちゃん。
 もう一本挿れるから、力抜いて待ってな」
そう声が掛けられたが、結花は頭がぼうっとしていてその言葉が理解できず、
無意識に体を強張らせる。
男は小さく舌打ちし、一層強く中指を包み込む膣に人差し指をねじ込んだ。
押さえられた結花の口から呻き声が漏れる。
 (痛い…そんな所に、指二本なんて入らない!ずきずきする…どこか切れたのかな?)
今までに少女が迎え入れたのはボールペン一本のみ。二本指は彼女にとってありえない太さだ。
顔を真っ赤にしながら、彼女は吐き気を覚えた。
いや、その吐き気は昨晩から常にしていたが、ここへ来て極度の緊張に晒され、
今一度実感できるまでに高まったのだった。
周りから微かに荒い息がしている。気付いている乗客もいるようだが、止める者はいない。

男は二本の指を曲げて膣口の裏側を引っ掻きつつ、残りの指で大陰唇を挟み込んで擦る。
入り口近くの二つの性感帯を同時に刺激され、結花の腰が小さく震え始めた。
十分に入り口がほぐれた頃、指が伸ばされて膣の粘膜を丁寧になぞりだす。
潤んだ粘膜から蕩ける快感が腰に染み渡り、曲げ伸ばしを繰り返す指が膣を掻き回すたび、
波となって結花を呑み込んだ。
その波を具現化するように、脚ががくがく揺れ始める。
「もっと気持ち良くなりたけりゃ、声は出すなよ」
男はそう囁き、結花の口を押さえていた手を離した。
結花の頭はその支えを失ってドアのガラスにもたれ掛かり、とろんとした瞳や半開きの唇を
外の通行人に晒す事になった。
すでにバスは学院の近くにさしかかっており、外には学院の生徒が何人も歩いている。
だが快感に体を奪われた結花にはもうどうすることもできず、ただ声を殺して泣くだけだ。
「ヒクついてきたな。限界か?なら、そろそろイカせてやる」
その声と共に指の動きがさらに激しくなり、ちゃぴちゃぴと湿った音がしはじめた。
空いた手が体操服のシャツに潜り込み、すでに固く尖っているしこりをぎっと摘む。
「んん…はぐっ…ふああ…っ!」
潰れた乳首から迸る痛みが首筋を這い上がり、脳に響いて秘裂の感覚を研ぎ澄ます。
嬌声をなんとか人に聞かれない程度に押さえてはいるが、もう言葉を操る理性は
消し飛びかけており、いつ叫びだすか結花自身にもわからなかった。
 いよいよ男の親指が、なおも少し腫れ、しかし快感を求めて隆起しだした陰核に触れる。
何度も何度も神経そのもののような肉芽をさすられ、弾かれて、結花は視界が歪みだした。
 (こんなの初めて…もう、もう我慢したくないよ!私、この感じだけはだめだ…!!)
歯を食いしばり、背中に筋を立てながら腰を浮かせる結花。
快感に慣れていない割にずいぶん耐える彼女も、執拗に襲い来る波の一つに足を掬われ、
また快楽の海へ投げ出されようとしていた。

しかしその時、急に男の手が止まった。外には学園の校舎が見える。
男は割れ目から指を抜き取り、結花の服を元通りに直した。
「残念だったな嬢ちゃん。ま、学校行ってから一人で愉しめや」
男は嬉しそうにそう言い残し、バスを降りていった。
「はぁ、はぁ…そ、そんな、あと少しだったのに…。ひどい、こんなのないよ!」
ドアにもたれ掛かったまま放心状態になっていた結花は、生殺しの苦痛にうめいた。

3.

バスの中の痴態で一層熱く火照り、動きの鈍った体を引きずって、結花は教室へ向かった。
普通に廊下を歩いているのに、時折足を踏み外したようにがくっと体が崩れる。
教室までの短い廊下が、結花には何kmに思えただろう。
やっと教室の前へたどり着いた時、貴子が教室から出てくるのに鉢遭った。
ちょうど朝の学活が終わった所らしい。
「鼓さん、風邪なの!?ふらふらじゃない、どうして学校に来たの!!」
一目で結花の状態を知り、貴子が心配そうに結花に駆け寄る。
額に手を当てると、驚くほど熱かった。瞳もまるで焦点が合っていない。
「とにかく、保健室へ行きましょう。あと少しだけ、頑張って歩いて。」
結花に肩を貸しながら、貴子は歩きだした。
その様子を廊下側の窓からクラスメイト達が覗いている。

「灯ぃー、聞いた?結花の奴、保健室だってさ。出てきたトコ拉致って、またヤッちゃう?」
昨日結花を投げ飛ばした生徒が、一人だけ席を立たずに足を組んでいる少女に呼びかけた。
しかしその少女は、つまらなそうに髪を掻きあげて言った。
「駄目よ。保健室は職員室の近く、騒ぎを起こして見つかりでもしたら厄介だわ。
 それに、病気なのに無茶させると壊れるわよ。
 一日甘い思いをさせて、次にどん底に突き落とすの」
片手でペンをくるくる回しながら語る少女に、クラスメイトが黄色い声を浴びせる。
灯はその声に満足げに笑っていたが、得意のペン回しにいつものキレはなかった。

保健医の椿は、はじめ結花を見たとき貴子と同じ反応をした。
「はぁ…はっ…すみ、ません……」
結花はベッドに横たわりながら、息も絶え絶えといった様子で謝る。
その結花の様子を見て、椿は少しの間何か考えを巡らせていた。
「その熱では、もう座薬を使うしかありませんね。」
座薬。結花には馴染みの無い言葉だった。
「あの…座薬、って、なんですか?」
不思議そうに聞くと、椿は少し驚いたあと、ほんの一瞬何かを悟ったような顔をし、
優しく笑いながら説明した。
「座薬というのは、肛門から差し込んで使う薬の事です。直腸から直接吸収されるので、
 効くのは早いですよ」
椿の言葉は丁寧だが、内容は結花にとってとんでもなかった。
結花は絶対に嫌だったが、ここが保健室であり、相手が病気を良く知る保健医であるならば、
病人の自分が従わないわけにはいかなかった。
「すみませんが、ベッドの上で四つん這いになって下着を下ろして、お尻を出してください」
妙に腰の低い態度で結花に命じ、自分も準備をはじめた。
ただ座薬を出すにしては大袈裟な準備を。

 実はこの椿、リカの父親が院長を務める病院の関係者だ。
普段は誠実で優しい保険医だが、結花に対してだけは容赦しないようリカから言われていた。
そんな事とは知る由も無い結花は、しぶしぶ言われた通りに四つん這いになり、
恥じらいながらブルマとショーツをわずかにずり下げた。
「それでは座薬が入れられませんよ。もっとさげて下さい」
椿は呆れたような口調で言い、結花が顔をさらに赤らめながら太腿までずらすのを見つめる。
そしてゴム手袋を嵌め、結花の後ろに回った。
「ではこれから、肛門の簡単な検査をします。つらくても、じっとしていて下さいね」
結花は椿に下半身を晒したまま、小さく返事をした。

四つん這いになった結花の股を覗き込む椿は、ある事に気付いた。
「鼓さん。これは一体何です?」
ゴム手袋を嵌めた手で、結花の秘裂を押し開く。
少し前に悦びを極めさせられる寸前で放置され、そこはすでにとろとろに蕩けている。
椿はその事をネタに結花を辱めるつもりでいた。
しかし少女の反応は、彼女の予想とは全く違ったものだった。
「せ、先生…。実は私のそこ、何かの病気みたいなんです。
 あの、なんとか…ならないでしょうか?」
四つん這いのまま振り返り、すがるように椿に問いかける。
椿はそこで、リカが言っていた話を思い出した。
 (ああ、そういうシナリオね。いいわ、乗ってやろうじゃない)
椿は急に黙り込み、眉間にしわを寄せる。
「鼓さん、これが病気だと、誰から聞いたんですか?」
「え、あ、あの、A組の如月さんから…」
結花は戸惑いながら答えた。
すると、椿が意味ありげに呟く。
「ああ、あの子ですか…医者志望にしては、“軽率”ですね」
結花の顔色がぱっと明るくなるのを、しっかりと椿は見ていた。
「……え、軽率?それじゃ、もしかして…!」

軽率、という言葉を選んだのは意図的にだ。
うっすらと『誤診』を連想させる事で、少女に僅かな希望を与えるための。
結花が思いを巡らせるのに十分な間を取った後、椿は言葉を続けた。
「ええ、軽率です。…この病気は、決して本人に知らせてはいけなかった」
結花の表情が固まる。
「最近ごく稀に見つかる症例で、正式な学名はありませんが、
 私達は便宜上『ハイ・オーガズム症候群』と呼んでいます。
 残念ながら、現在のところ有効な治療法は見つかっていません。
 少なくとも、日本では…」
結花の顔に、一瞬にして絶望の色が広がる。
少女はリカ達の芝居を見抜いていた訳ではないが、自分を担いで遊んでいるのかもしれないと
心のどこかで思っていた。
しかしたった今、正真正銘の医者(と結花は思っている)から宣告されたのだ。
希望は完全に絶たれた。
椿は申し訳なさそうな顔の裏で、勝ち誇ったように笑う。
「すみません…。とにかく、今は風邪の治療を済ませましょう。
 それで少しは免疫も回復しますから」
結花は目を閉じたまま、肩の震えと同じようにかぼそい声で呟いた。
「………お願いします……」

「ではまず、座薬を入れる前に直腸をほぐしておきましょう」
そういうやいなや、椿は両手の両手の親指の腹で菊門の皺を伸ばすようにほぐし始めた。
以外にすべすべしたゴム手袋の感触が排泄の穴を開いては閉じ、閉じては開く。
腸の中に少しずつ空気が溜まっていく感じがして気持ち悪かったが、結花は声を殺している。
しかし時折椿が中に指を入れるかのように力を入れて押し込むと、結花の体に力が入り、
息が震えるように乱れた。
「もう少し足を開いてくれますか」
少女は椿の指示に従い、シーツの上で膝をずらし、体を少し沈み込ませる。
「少しほぐれたようなので、次は中を拡げましょうね。」
椿はそう言うと、少し結花の様子を窺い、少女が息を吐くと同時に人差し指をめり込ませた。
「っくぅ…!」
結花の口から、たまらずに小さなうめきが漏れる。
「固いですね。括約筋が指を締め付けていますよ」
その言葉を受け、菊輪の締め付けが一層強まる。
それを振り切るかのように、片手の親指ですぼまりを押し広げたまま、
ぬぬぬっと一気に第二関節までを埋め、指を曲げて腸壁を円を描くように擦った。
 (やだ…この動き、今朝のバスの人と同じだ…!)
少女はこの日、何の因果か、初物の膣と直腸を同じように開発されることになった。

「次は中指を入れます。力を抜いて下さい」
人差し指をぐにぐにと動かし、中の感触をしばらく確かめていた椿が告げた。
言うや否や、また細く固い感触が体の端から中心へとその存在を主張してくる。
「はあぁ、はぁ、…うう、ふっ…!」
結花は口を大きく開いて酸素を求めながら、喉を震わせて喘ぐ。
そして二本の指は、全く何の前触れもなく、突然に根元まで突き入れられた。
「ひいっ!あぁ、あっ…い、痛いです!!」
「こうしなければ拡がりません。少し激しくします、声は出しても構いませんので、
 我慢して下さい」
細いかわりに椿の指は長く、その爪は直腸のかなり奥を引っ掻いた。
わずかに抜いてはまた突きこむ。
はじめはぎこちなかったその動きは、次第に滑らかになり、やがて全く遠慮の無い
リズミカルな攪拌になった。
「はああ…、っく…うう、ひぃ…あっ、あ…、ん…」
結花の口から漏れる喘ぎも、本人は気付かないが艶のあるものに変わっている。
眉をしかめた顔からは滝のような汗が流れ、顎に伝ってシーツに大きな染みを作っていた。

 (尻穴で感じてるわけ?このガキ。私の腕も捨てたもんじゃないね…。
 もっといじめてやろうかしら)
椿は昔、かなり名の知れたレディースだった。
今は極端にそのなりを潜めているが、根本的な性質は変わっていない。
こと、華奢な少女をいたぶる事には貪欲だ。
結花が酷い風邪に苦しんでいる事など、とうに失念していた。
二本の指で直腸をかき回していた動きを、その中の一点に絞る。
子宮と肉壁で隔てられた奥深く…直腸のGスポットとでも言うべき場所を、
鉤状に曲げた指の力の全て込めて抉る。
「く、ああああーッ!!うあっ…ああ!いや、そこだめ、へ、変になっちゃうぅ!!」
結花はたまらず叫びだした。
体を支えていた両腕ががくんと折れてベッドに胸を預け、太腿を激しく痙攣させる。
電気あんまや今朝のような外側からの刺激ではない。
子宮の奥から滲み出し、膀胱を破裂させるかのように激しく泡立てる底知れぬむず痒さ。
限界はすぐに訪れた。
「だ、だめええーー!!ま、また…あっ…あっ……いっ… …く… !!!」
足首を張って膝を浮かせ、結花の腰が激しく上下する。
しかし、椿はそれを見て手を止めた。
「はい、もう十分ほぐれました。よく頑張りましたね」
そう言いながら指を抜き取ってしまう。
「ああ!い、いやああーッ!!」
二度目の極めて酷な寸止めに、結花は半狂乱になって、右手を自らの蜜壷へと導いた。
しかしその直後――
「何してるのっ!!」
パンッと乾いた音がし、結花の耳の奥で何かが破れそうに震え、頬がじんと熱くなった。
いつの間にか横に来ていた椿が、思いっきり頬を張ったのだ。
「あなたの女性器が病気だと知っているでしょう!?
 自分から指を入れて悪化させようなんて、何を考えているの!!」
先ほどまでとはうって変わって鬼のような形相になった椿に、結花の心臓は縮みあがった。
「あ…だ、だって、お尻を弄られてたら、たまらなくなって……つらかったんです。
 …ごめんなさい」
なんとか秘裂に指を入れることを強い意志で抑えているが、
結花の頭はただ自分の体内をかき回したいとしか考えられない。
「いえ…こちらこそ、暴力を振るってすみませんでした。
 でもお願いですから、もう二度とそこには触れないで下さいね」
椿の柔らかな笑顔が、結花にはこの上なく残酷だった。

「さて、括約筋もほぐれたところで、今度は中を綺麗にしましょう。
 便が残っていては、座薬が十分な効果を発揮しない事がありますから」
椿は机の引き出しから巨大な注射器のようなものを取り出しながら言った。
その先端についているのは針ではなく、ガラスのパイプだ。
「仰向けに寝転んで下さい。足を持ち上げて…」
結花の足を持って自ら位置を決めてから、浣腸液作りに取りかかる。
バケツのような容器に水を汲み、そこにグリセリンを混ぜて何かの液体を数滴垂らした。
その溶液に浣腸器を浸し、200mlを吸い上げる。
「さあ、少し気持ち悪いかもしれませんが、すぐに出さないで下さいね。
 少しは我慢しないと、意味がありませんから」
冷たいガラス管がすぼまりに当てられ、結花は唇を噛みしめた。
少し口の開いているその穴に、ガラス管が突き刺さる。
中の液体が少しずつ、確実に結花の腸内を満たしていく。
「あああ…は、入ってくる…!やだ、気持ち悪い…!!」
その他の言葉が頭の中から消える。
初めての浣腸は、少女にとってあまりにもおぞましいものだった。
一度浣腸器が空になると、椿はすぐにまた液を吸い上げ、結花の腸へと移した。
計400ml、初めての浣腸としては少ない量ではない。
「では…これから10分、なんとか我慢して下さい。そうすれば出していいですよ」

 五分後、額にじっとりと脂汗を浮かせ、肩を震わせて何とか耐えているが、
すでに結花の限界は近かった。
下腹部から漏れる音は初めと比べて濁りきり、腸内がどれほど荒れているかが分かる。
「んん…ぁ…う…はぁっ、あ、あと何分ですか?もう、で、出ちゃう…!」
シーツを掴み、足を踏ん張ってかろうじて排泄感を乗り切るが、すぐに次の波が湧き起こる。
波は前と同じかそれ以上になっているのに対し、少女の抵抗力は刻一刻と削がれていく。
そしてさらに今、便意だけだった苦しみに新たな違和感が加わろうとしている。
「な、何これ…?あ、お、お尻がびくびくするっ!いやぁ、か、痒いよお!お尻が痒い!!」
結花がそう叫ぶと同時に、すでに愛液が溢れかえっている秘唇から、どろっと蜜が垂れた。
陰核が包皮を捲って尖り始めた。

 (よしよし5分…計算通り。さって、こっからどうなるかね?辛いんだろうな、かわいそ)
椿が浣腸液に数滴垂らしたもの…それは、リカの病院に付属する医療施設で開発された、
インポテンツ治療の特効薬だった。
まだ副作用などが不明のため実用が見送られている代物だが、媚薬としての効果は
アメリカでも髄一と目されている。
結花は、その効果の発現時間と程度を測る実験体にされたのだった。
「ぐう…あああ、くぉ…ッ、あ、ひぃ…い…ぁが…!!」
後孔から抑えきれない細い筋が流れ出しているが、筋肉が弛緩しはじめ、もうそれ以上
括約筋を締める事はできなくなっている。
腸の中が溶けた鉄を流し込まれたような熱さに埋め尽くされる。
 イキたい。
もうそれしか考えられず、呼吸もろくにできない。
渇ききった喉からかすれた悲鳴と涎を垂らし、目の奥に火花のようなものが散るのを見て、
理不尽なまでに圧倒的な感覚に溶けていく自分を知った。
後頭部を殴られたようにその首がびくっと前に跳ね、続いて体が大きく弓反りに仰け反った。
それを認め、椿がベッドの下から取り出した金だらいを素早く結花の腰の下に滑らせる。
「もぉだめえええええーーーーーーッ!!!」
窓ガラスが震えるような断末魔の叫び声と共に、汚液が勢い良くたらいに当たる音が続いた。
その快感は相当なもので、一瞬にして結花の意識を飛ばした。
しかしその瞬間、ようやく彼女はかつてない熱さに体を貫かれて何度も絶頂を迎えた。

絶頂と共に気を失った結花を見て、椿はこれ以上責めるのは体力的に危険だと判断した。
 (意外に耐えてたから忘れてたけど、この娘普通に病人だったわよね…。少しやり過ぎたな)
さすがに心配になった椿は、そっと結花の脚を持ち上げて座薬を差し込むと、
苦しげに眉をひくつかせる少女の汗を拭い、そのまま静かに寝かせておいた。
 そして数時間後、十分に深い睡眠を取った事と座薬が効いたおかげで、結花はかなり
元気を取り戻した。
「色々と、お世話になりました」
申し訳なさそうな顔で深々とお辞儀する結花に、椿は顔にこそ出さないが密かに
引け目を感じていた。
「ええ、また体調が悪くなった時はいつでもいらして下さい。
 …膣の病気、良くなるといいですね…」
椿は少し鬱な気分になった。

4.

保健室から直接帰宅し、結局結花が家に着いたのは普段帰る時間とそう変わらなかった。
着替えて軽く食事をし、すぐ店の支度にかかるが、そのとき彼女は妙な感覚に襲われた。
 (あれ…な、なんだろ、また少しお尻がかゆい…)
小さい針でちくちくと刺されるような、微妙な痒み。
少し気になるが、たまらないというほどでもない。
だから結花は特に気にも留めず、いつも通りに店をはじめた。

「はい、820円ちょうど頂きます。いつもありがとうございます、またおいで下さい!」
結花の柔らかい、この上なく清楚で可憐な笑顔が覗く。
鼓コロッケ店は大賑わいだった。理由は昨日店が休みだった事と、もう一つ。
「あの~、コロッケ下さい」
客の一人が呼びかけると、少しぼうっとしていた結花は慌てて対応する。
「…え?あ、は、はい!すみません、どうぞ!」
コロッケを受け取った客は、何気ない風に喋り始める。
「ありがとう。いやー、ここのコロッケは他とは全然違うからさ。
 薄いパリパリの衣に包まれた熱々のジャガイモがほくほくしてて
 …もう、今すぐむしゃぶりつきたいくらいだよ。」
熱々、などの言葉に、結花がぴくっと肩を震わせて反応し、頬を染めた。
盛況のもう一つの理由がこれだ。
快活な看板娘が、今日に限っては特定の言葉に純情な反応を示す。
 (やだ…どんどん体が火照ってきてる。やっぱりあの病気のせいかな…)
当然、浣腸液に含まれていた薬の副作用だ。
一度絶頂を迎えてからしばらくは収まっていたものの、店で仕事をこなしているうちに
体が温まり、再び効果が出始めた。
すぐに乳首が固くしこりはじめ、動くたびにブラジャーに擦れて痛みと快感を生む。
秘裂からはじわっと分泌液がしみだしてショーツを濡らす。
客の話はまだ続いている。
「家のやつはお宅のメンチカツが大好物でね。噛むとじゅわっと肉汁が滲み出て…」
結花は内股に脚をすりつけはじめた。
「え、えと、あ、そうです。それが売り、ですから…えへへ」
慌てながらいつもはしない軽薄な愛想笑いをする自分に、結花は腹が立った。
なんとかして疼きを収めたくてたまらなかったが、椿に叱られた事を思い出すと
割れ目に刺激を与えることがはばかられ、結局結花はその日、一日熱い体を持て余した。


         ―――学園祭まで、あと28日―――