1.

いつしか悠里は座敷牢のような寝室で、ほとんどストレッチをしなくなった。
いや、正確には『出来なくなった』。
楓の手で秘部に塗り込められた膏は、一夜が明けてもその効果が消える事はない。
楓の恥辱と、紗江の嬲り。
その繰り返しで悠里は女の快楽を徐々に身体に刷り込まれた。
もはや悠里にとって、寝室で横臥している事さえ休息にはならない。
秘部は疼き、胸は膨らみ、息は荒ぶり。
そんな状態で一夜を過ごすのだ。ストレッチに使う体力など残らない。

悠里の肉体に変化が起きている事は、当然クミ達にも見破られた。
裸に剥かれたとき、その桜色の秘部が必ず潤んでいるようになったからだ。
「うーわ、変態。嬲られること期待して、もう濡らしてるよこいつ!」
そう笑い物にされ、仕置きも肉体を嬲るものから、性的に辱めるものへと変化していく。



道場が休みの日には、悠里はレディースの根城である廃工場へと連れ込まれた。

「うわこいつ、身体柔らか……ここまでいけるんだ?」
悠里を見下ろしながら門下生達が驚愕する。
悠里は仰向けのまま両脚を上げ、脛が頭を通り越して床につくまで折り曲げられていた。
門下生は嗜虐心の赴くままに脚を倒したが、いくらやっても悠里が表情を変えないため、
とうとうそれ以上いけない所に至ったのだ。
悠里は腰から半分に折れ、秘部が二時の方向を、肛門が真上を向く姿勢を取らされる。
さらにその頭上に一人の女子高生が座り込み、両脚で悠里の脚を押さえつけた。

「どう、折檻の一つ『マングリ』は?正確には戸川固めって言うらしいけど。
 それね、何気に羞恥系の中で一番キッツイやつなんだ。
 敵チームの頭とか生け捕りにした時に、それやって侘びを入れさせるの。
 どんなに生意気なヤツでも、それで泣かなかった女はあたし見た事ないよ」
クミが悠里を見下ろして告げる。悠里はそれを強気な瞳で睨み返した。
クミはおかしそうに笑い、悠里の傍に屈みこむ。

「そうそう。レディースの頭も、最初は皆そういう眼してるの。
 でも、これは本当に恥ずかしいんだから。例えば、こうして……」
クミが悠里の剥き出しの秘部へ指を潜りこませる。
指は水音を立てて悠里の膣内を捏ねくり回し、愛液を溢れさせた。
溢れた愛液は下に垂れ落ちて悠里の顔に飛沫を上げる。
「っ!」
悠里が目を細めた。
「ね?自分のおツユが顔に掛かって、恥ずかしいっしょ。
 普通はバイブで散々アソコを弄くり回してようやくそうなるんだけど、
 あんたはいやらしいから楽でいいよ」
クミは秘部を弄りながら嘲った。
悔しいが、潤みきった狭まりを弄られては感じるしかない。
勃ち上がった陰核を撫でられると、数瞬後、愛液の塊がどろりと下腹を垂れ落ちる。
信じられないほど気持ちが良かった。
息を荒げる悠里を見下ろし、円陣を組んだクミ達が嘲笑う。



「あーあ、純真なオマンコなら弄くって楽しめるんだけど、あんたは駄目だね。
 たぶん紗江辺りにされたんだろうけど、もう牝の性器になりかけてる。
 ま、でも大丈夫。この『マングリ』の真骨頂は、膣なんてありきたりな所じゃないから」
クミはそう言って膣から指を抜き、その指を後ろに滑らせた。
狙いは桜色の窄まり。クミはそこへ唾液を足し、中指を押し付けはじめる。
指先が括約筋の抵抗を押し破り、中へと沈み込んでいく。
「おしりっ!?」
さすがに悠里が驚きを露わにした。
まともに生活していれば、そこを排泄以外に使う事などない。

「ふふ、やっぱこっちは処女?武闘派の女って大体はそうだよね。
 リングの女帝さまが尻穴経験済みなんて、それこそ幻滅だもん。
 ……まぁ、今からそれどころじゃない幻滅が待ってるんだけど。
 あたしがケツをほぐしてる間に、覚悟を決めといてねぇ。
 誇り高い女王様に屈辱のあまりショック死されたら、寝覚めが悪いしさ」
クミはそう言いながら、中指を執拗に悠里の肛門へ出し入れする。
やがてそこに薬指までが加わり、二本指に。
「うんうん、いいアナルだねぇ。締め良し、伸び良し、ヌメり良し。
 紗江も言ってたけど、あんた全身の筋肉とか粘膜が恵まれすぎてるよ」
クミは抜き差しを続けながら語る。
「すごい、本当におしりに入ってる……!!」
女子高生達は手で顔を覆いながら、指の間から嬉々としてそれを見つめた。
携帯のフラッシュが悠里の秘部に浴びせられる。

悠里は恥辱に唇を噛み締めた。
敵対するレディースの頭がそれを受けたというが、彼女らもそうだったのだろうか。
悠里はそんな事を考え、しかしアマチュアと自分を比べる愚かしさに頭を振ってかき消した。
自分は自分だ。世界中の人間が屈しようと、自分だけは話が違う。
数百戦無敗の相手も、単に自分と戦う機会がなかっただけだ。
そう信じてここまで登り詰めたのではないか。
こんなレディースの、遊び半分の嬲りに屈する訳がない。
悠里は自分に暗示をかける。

しかし、彼女はまた心のどこかで理解していた。
追い詰められている。
莉緒との戦いのショックも癒えぬうちに楓に叩きのめされ、
門下生に辱められ、恥部の火照りに苛まれ、性感を教え込まれてきた。
『カーペントレス』の岩の如き自尊心が今、腐食するように剥がれ落ちている。
快楽を求める只の女にされつつある、と。



「ずいぶん美味しそうに咥えるようになったねぇ、悠里ちゃんのお尻の穴」
尻穴に延々と2本指を抜き差ししていたクミが言う。
実際、彼女の細い指が引き抜かれる度、悠里の菊輪は名残惜しそうに捲り返った。
もう大丈夫かな、と呟いてクミは指を抜き、鞄から何かを取り出す。
「そろそろ太いのが欲しくなったでしょ。次はこれを入れてあげる」
クミが手に持ったのは、各所に不思議な仕掛けのある黒い棒だった。

「何だと思う、これ?マイクなんだ、実は。結構高かったんだよぉ。
 先っぽが水中マイク、根元が普通のマイクになってて、ケツの中の音を拾ってくれんの。
 元々はカラオケで使うようなマイクをケツにぶッ刺してたんだけど、
 すぐに壊れたりクソが詰まったりで、ろくに音を拾ってくれなかったの。
 だからオヤジ狩りとかで金集めてこれを買ったわけ」
クミがマイクを振り回しながら言う。
すると、コードでつながれたスピーカーから空気の揺れる音が響いた。
まるで電車の通過する音だ。
この音量で腸の音を拾われたら、と思うと、どれほど気丈な女でも不安の影が差すだろう。

「聴こえたよね?こんな調子で、ケツの中に出し入れしてあげる。
 当然ケツなんだから、皆その内にうんちを漏らしちゃうの。
 我慢しようったって無理。だってうんちを“漏らすまで”やるんだもん。
 チームの頭張ってたような女でも、これは嫌がるよぉ?
 ケツへ抜き差しされる時に出る下痢みたいな音を工場の外まで響かせて、
 ビチャビチャのうんち漏らし続けてるうちに、どんな強情な女でも泣いちゃうの。
 もう絶対に逆らわねぇから、傘下に入るよ入らせてくれ、ッつってね。
 美人な女ほど嫌がるんだ。悠里ちゃんも怖いよね?」
クミは悠里の菊輪を撫ぜて言う。

「ただ、これは最初に誠意みせれば止めたげる事にしてんだ。キツいからね。
 悠里ちゃんは一回あたしを蹴っ飛ばして肩脱臼させたから、
 そうだね、あたしのオシッコを一滴残らず飲み干せたら許したげるよ。どう?」
クミはサディストの笑みを浮かべて提案した。
しかし悠里が首を縦に振る筈もない。
「あら、残念。私、貴女がいつも相手にしてるような援交おじ様とは違うの。
 ファーストフードで濁りきったガキのなんて、到底口に含めないわ」
悠里は同じく嗜虐心に満ち溢れた瞳で見つめ返す。
崩壊の予兆を感じた女王の、最後の意地だ。
クミの額に筋が浮く。
「へぇーえ、そういう事言っちゃうわけ。いけないなぁ、いま良心がぶっ飛んだよ」
クミは傍らの少女らに何かの指示を出す。

1人が悠里の窄まりに指を差込み、無理矢理に左右へ引き開いた。
そうして楕円形に拡がった悠里の腸内へ、別の少女がボトルを逆向けに翳す。
パッケージからして中身はローションだ。
「いいよ、全部入れちゃいなよ」
クミの声で、ローションのボトルが握りつぶされる。
半ばほど残っていたローションが悠里の腸内へと流れ込み、纏いつき始めた。
「……!!」
腸内がぬめりに満たされる感覚に、悠里の表情が強張る。
「アーア、いい度胸だねお前」
頭上から囁きが聴こえた。悠里の脚を腿で押さえつける少女だ。
「クミを切れさせちゃってさ。あれじゃクソ漏らすぐらいじゃ終わんねーよ?」
その言葉を裏付けるように、マイクを窄まりに宛がうクミは冷えきった眼をしていた。
彼女らもまた、弱者を喰らう獣なのだ。



にちゃっ、にちゃっという音が工場内に反響していた。
ローション塗れてマイクが抜き差しされる音だ。
女子高生達は腰に巻いたセーターの袖で拍手しながら、それに聞き耳を立てる。
「エっロい音ー。エッチがいっちゃん気持ちいい時に鳴る音だよ、これ」
「ああ、お互い一度逝った後の2回戦で、抱き合いながらぬちゃぬちゃしてる時のだよね。
 あいつも気持ちいいんじゃない?おまんこからお汁垂れまくってるしさ」
女子高生達の視線が悠里の秘部に集まる。
確かに後孔への抜き差しの度に悠里の腰が揺れ、潤みきった秘部から雫が垂れていた。
それは悠里の鼻先に滴り、隙のない美貌を穢していく。

「……っ……!…………ッ…………!!」
悠里は口を結んで尻穴を見つめていた。
黒い棒が引き抜かれるたび、腸一杯に注がれたローションが溢れている。
同時にその引き抜かれる感触は、菊輪に妙な感じをもたらした。

 (おしりに……おしりに、抜き差しされているの?あんな物を、本当に……!?)

悠里の頭が未知の恥辱に掻き乱される。
未使用の尻穴にマイクの抜き差しはきつい。
しかし柔軟性に富む悠里の筋肉は、早くもその奥底に何かを見つけ始めていた。
快便の感覚だ。
膣で感じるようなはっきりとした気持ちよさではない。
だが原初的なそれは、抗いようもないほど深い部分から徐々に湧き上がってくる。
悠里はその感覚に危機感を覚えた。
悠里の体を蕩かそうとしている紗江などならともかく、クミが快感を与える為に肛門への抜き差しをする筈はない。
彼女は淡々と尻穴への抜き差しを続けながら、快便の感覚の先に訪れるものを待っているのだ。
悠里がそう考えたとき、彼女の腸の奥のほうが疼いた。
ぐぉろろろ、ろろう。腸奥のマイクが悠里の腹の鳴りを響かせる。
女子高生達が顔を見合わせて笑った。

 (だ、だめ……っ!腸の奥が刺激されて、中身が出そう……!!)

悠里は目を細めた。
かつてこの責めを受けた族の頭もそうだったのだろうか。
一度は捨てた甘い考えがまた脳を横切る。悠里は己を恥じた。
その裏にあるのは、ならば仕方がないという甘えだ。
腐っても王者だ、そんな安いプライドを提げてなどいない。
悠里は唇を噛み締めて便意の波を押しとどめる。
クミの顔にかすかな驚きが浮かんだ。


しかし、いくら耐えようとも状況は改善しない。
防戦一方の試合と同じ、いつかは限界が来て打ち崩される。
「はあー、もう疲れた。ほい交替」
クミは天を仰いで汗を飛ばし、傍らの少女にマイクを手渡した。
「おっけ!」
少女は待っていたとばかりにマイクを掴み、悠里の尻穴深くへ叩き込んでいく。
「んっ!!」
悠里から声が漏れ、尾骨付近が引き締まった。
「あ、これ楽しいね、餅つきみたい。突いたらぶにょんって感じで抵抗あるんだ。
 音もぬちゃぬちゃ言ってるし、お尻の肉はほっかほかだしさ。たーのしい!」
少女は悠里の尻肉を撫でながら抜き差しを繰り返す。
クミが鼻で笑った。
「何いいとこのガキみたいな事言ってんのよ。大体それ、餅つきじゃなくて糞つきだから。
 ま、そのうち出てくるもんは餅米みたいだけどさ」
「えーやだ、ばっちい!」
クミの言葉に少女は手を引っ込め、代わりに革靴の底でマイクを押し込み始めた。
レディース達の迫力ある大笑いが起きる。
その轟音に包まれながら、悠里は腸の奥へ延々と抜き差しを受け続けた。
悠里の表情は刻一刻と苦しげになっていく。汗の量が半端ではない。

やがてスピーカーから、放屁のような音が響いた。
排泄感が限界を迎えたのだ。
「やっ!?ぬ、抜いて、早く抜きなさいっ!!」
悠里は汗まみれの顔でマイクを踏む少女に命じた。
少女は一瞬虚を突かれた表情をしたが、すぐに意地悪そうに笑う。
「抜きなさい?ははっ、えっらそう。いつまで女王気分なんだろうね」
クミが嘲笑った。
「チコ、いいよ。スパートかけてやんなよ」
クミの指示の元、少女がマイクを踏みつけて大きく抜き差しし始める。
「ああ、あッッッ!」
悠里の脚が内股に締まり、背に骨が浮き上がる。
腹筋が層を為し、首に筋が浮く。
一流格闘家の全身へ力みが駆け巡った直後、弛緩の時は訪れた。

 ――ぶりいいぃいっっ!!!

下劣なその音はスピーカーに拡大され、廃工場の天井に反響する。
間違いなく外へ漏れてもいるだろう。
さほど人通りの多くない通りだが、それでも何人もに排便の音は届いたに違いない。
「うわっ、出た出た!!」
数人がさも大変な事のように叫んだ。

ぶ、ぶぶっ、ぶりいぃっ、びち、びちいっ。

穢れた音は続く。
黄色く濁ったローションの奔流に塗れ、蕩かされた軟便が流れ落ちる。
内臓の熱さが背を撫でる。えもいわれぬ匂いが立ち昇る。
女子高生は腹を抱え、悠里を指差して笑い転げていた。
手でメガホンを作って罵っている姿も見えた。
しかし悠里には、それらの音は届かない。自らの排便の音に掻き消されて。

「は……っ……はひゅっ、ひゅ……っ!」
悠里の胸が上下し、過呼吸のような妙な息が漏れた。
人前で排便を晒したのは初めてだ。アルマの時も、それが嫌で耐え続けたのに。
女王としての尊厳?プライド?
そんなもの、自分が持つ資格があるのか。
素人同然の女子高生の靴底で尻穴に棒を蹴り込まれ、下痢便を漏らす女が。
これほどに臭く、惨めな女に、女王が名乗れるのか……?
「……あっ、ねぇクミ、クミ!!」
脚を踏みつけていた女が、悠里の顔を覗きこんでクミを呼ぶ。
鼻を摘みながら談笑していたクミは、悠里の方を振り返って眼を丸くする。
「ん、あれぇえ?ははっ、悠里ちゃあん」
そして今度は意地悪そうに眼を細め、悠里の傍に屈み込んだ。
顔には満面の笑みを湛えている。

「 泣いちゃったんだ? 」

クミの視線の先で、悠里は目から大粒の雫を流してしゃくりあげていた。
工場に来た時の女王然とした様子からはかけ離れた泣き顔。
垂れ下がった瞳は、クミの視線を避けるように俯く。

これが悠里の転機だった。





それからも、悠里への調教は昼夜を問わず続いた。
ただ一日の休息さえ与えられず、気高い精神は同性の手で磨り減らされていく。
責めが終わって眠りに落ちるまでの間さえ、安息の時ではなかった。
ただ疼き続ける秘部を持て余し、次の調教を待ち侘びるように心を導くだけだ。


「あら、またお粗相?流石の貴女も膀胱ばかりは、普通の方とお変わりないのね」
紗江がにこやかに悠里の腿を撫でる。
悠里は右腕と右脚、左腕と左脚をそれぞれ結び合わせた格好で股を広げていた。
腰には赤い褌を巻いていた跡が見えるが、それは緩み、恥じらいの部分を人目に晒してしまっている。
その部分は濡れ光り、桃色の粘膜を覗かせていた。
そして驚いた事には、小陰唇の上、尿道の部分が細く口を開いている。
綿棒と同じ大きさに開いたまま閉じない所を見ると、かなりの時間調教され続けているようだ。

失禁し、たまらず腰を退く、という動きが繰り返されているのだろうか。
悠里の足元には透明な失禁の跡があり、その跡は蛇行しながら部屋の中央へ続く。
当然、室内には強いアンモニアの匂いが立ち込めていた。
悠里はその臭いがするたびに柳眉をひそめて恥じ入っている。

紗江は尿道に再び綿棒を近づけた。球状の先が尿道口をつつき、中へ潜り込む。
「ん、あああああ゛あ゛!!」
悠里が目を見開いて絶叫する。
「痛い、悠里さん?違いますよね。ここも、こんなにされて」
紗江は尿道に綿棒を刺し入れながら、悠里の陰核を撫でた。
充血して小豆のように膨らんだ陰核は、その動きで包皮から顔を覗かせる。
「あ、はあ……っ」
悠里の瞳が快感に染まった。
裸のまま脚を開き、きちんと衣服を纏った小娘に尿道を責められる。
その屈辱的な状況に、悠里は肩で息をしながら耐えていた。

「じっくり、じっくり、この孔を気持ちよくして差し上げます。
 花園は楓さんに、お尻の穴はクミ達に可愛がられてるみたいだから、羨ましくて。
 この孔だけは私のもの。ふふ、期待してらっしゃるみたいですね」
紗江は悠里の瞳を覗き込みながら囁いた。
悠里は疲れきったような瞳でそれを受け止める。
「ああ、あああ、あ……!」
うわ言のように呟き、尿道の開発を受ける悠里。
やがてその薄い唇が開き、これ以上なく気持ち良さそうに涎が垂れた。



2.

「躾けられたもんやなぁ」
楓は布団に横になった悠里を見下ろして言った。
悠里は入浴を終えたばかりで身体を桜色に上気させている。
だが顔色はひどく悪かった。満足に寝ていないため、虚ろな目をしている。
「ここも、ようほぐれて」
楓は悠里の後孔に指を差し込んだ。
そこは指三本が楽に入るほどにふやけ、息めば奥から腸液が溢れ出る。
寝る間もなく拡げられ、嬲られた。
ペニスバンドで貫かれて深い絶頂を迎えたとき、尻穴も立派な性器だと教えられた。
尿道口もすっかり開発されている。
やや覚悟は要るが、少女の小指を飲み込める程だ。
抜き差しされるとたちまち陰核が勃ち上がり、愛液が溢れて、やがて潮を噴きこぼす。

だがもっとも深刻に作り変えられたのは膣だ。
マグマのように滾る空洞。
繰り返し例の膏を塗りこまれ、女の悦びを叩き込まれた。
もうその火照りが骨の髄まで染み渡ってしまっている。

楓はその全てを知っているらしかった。
肩、脇腹、腰。整体でもするように悠里の身体中を撫で、最後に秘部に触れる。
「声ぇ、出してもええんよ」
くちゅりと指を差し込み、蠢かす。

  (――くそぅ、上手い…!…頭が、あ、とろけちゃう…。 )

悠里の顔は快感に歪んだ。
「あんたはメスとしては可愛い女や。それでええ。それが皆にとっての幸せや」
楓が膝立ちになり、何かを股座に着けていた。
それは本物の男根と見紛うほどリアルなペニスバンド。
いや、刺激に飢えた今の悠里にはそれも本物と変わりない。
ぐちぃっ。
股を開いて楓が押し入ってくる。
悠里は恐怖した。蕩けきった秘裂への浸入はあまりに心地よかった。
無意識に予見したのだ。心の奥底まで犯され、支配される事を。


楓は悠里の疲れた身体を恋人のように抱いた。
悠里はそれに抵抗できなかった。
心地が良いだけではない。心が、抗おうとしない。
正常位でしばらく腰を打ち付けあったあと、楓は悠里の伸びやかな脚を肩に乗せた。
楓の掌が足首をしっかりと掴んでいる。

  (――折られる!! )

悠里は身体を硬直させるが、楓はそのまま悠里の脚をまとめ、横に倒した。
そしてより深く入り込んでくる。
思い過ごしだ。楓の一挙手一投足に臆するあまりの。

  (――怖がる…?この、私が…?そんな、馬鹿な。)

腰を捻っての性交に喘ぎながら、悠里は浮かんだ考えを否定する。
だが、ならばなぜ、自分の身体は抵抗する事ができないのか。
答えは明らかだ。
彼女の心がもう、楓という壁に立ち向かう気力をなくしているからに他ならない。

「あ、あ、あ、ああ、あっ…あ!」
悠里は、いつしか自分が唄うような喘ぎを発している事に気がついた。
ぐちゅっぐちゅっと楓が突きこむたび、背筋を凄まじい電流が走る。
踊らされていた。
「ふ、ああ、ふああ、んは…うっ!!」
快感に足が宙を蹴る。
もっとしっかりしたものが欲しくて、楓の腰へと脚を巻きつけてしまう。
楓がふっと笑った。
膣の奥までを強く貫いたあと、楓は快感に打ち震える悠里の腰を掴み、自らは動きを止めた。
「あぇ……?」
悠里はいきなり快感の満ち干きが途絶えて狼狽する。
そして数秒後、はっと気がついた。

「……いかせて欲しいん?」
楓が訊く。悠里は答えない。
「…いかせて、ほしいんやろ?」
ぐぐっと楓が腰を押し付けた。悠里の腰が震える。
楓の瞳が悠里を映しこみ、悠里は凍ったようにそれに捉えられていた。
そして、楓の手が悠里を撫で下ろす。首元から、胸へ。胸から、下腹部へ。
肋骨に楓の指が触れる。
敗北の時が思い出され、悠里の身体を戦慄が突き抜けた。

それは、圧倒的な力の恐怖。
かつてカーペントレスと呼ばれた女性が、数多の相手に刻み込んできたもの。
それが自分に降り注いでいる。
「ううっ!」
頭が焼けつくように感じた瞬間、彼女の腰を痺れが巡った。
犯されて極まっている。身体が楓に服従している。
調教をされる前はいつか倒し返すと奮起していたのに、今は敵う気がしない。
もう正面から向かっていく事さえ出来そうにない。
包まれている現状に安心してしまっている。

  (……こ、こんな。こんな、ことって…… !!)

楓が数度腰を使った。
暖かい肉の感触が太股を撫で、身体の底が貫かれる。
脳が快感に蕩ける。


「 ……………お、おねがい、です……。
  ………い、いかせてくだ……さい……… 」


悠里は涙ながらに懇願した。 もう、そうするしかなかった。
「それでええ」
楓は満足そうに笑みを浮かべ、華奢な身体を抱え上げる。
はっ、はぁっ。
吐息が部屋に木霊する。
小さな影が大きな影に喰われている。
悠里の脚は、楓に絡みつき、緩まって、

「んんっ…!!」

やがて、力なく投げ出された。






この日を境に、悠里は一切の抵抗をやめ、楓の元で茶や華の稽古に励むようになる。
ただ一人の女として、楓に抱きしめられて日々を過ごす悠里。
日の差す廊下を歩むその顔に、かつての女王の面影は、なかった。