「こいつは、Cの……お、4じゃねぇか。
 やるねぇ兄ちゃん、ドンピシャだ」

柄シャツを着た男が告げる。
腕には刺青を彫りこみ、眉を剃り、明らかに堅気には見えない出で立ちだ。
その瞳が見下ろす先には、一人のうら若い女がいた。
見下ろす男とは対照的な、真面目そのものといった風貌だ。

つむじで丁寧に分けられ、耳後ろを通って乳房の上にかかる黒髪。
筆を滑らせたような容のいい眉に、輪郭のはっきりした意思の強そうな瞳。
鼻は典型的な東洋系だが、鼻筋はすっと通っている。
唇はごく薄く、血色が良い。
人混みの中でも目を引く……という程ではないが、身近にいれば思わずどきりとするほど整った容姿だ。

その清楚な彼女は、しかしほぼ真裸と言っていい状況だった。
くすみ一つない色白な肌を、スレンダーなボディラインを、小ぶりな桜色の乳輪をも晒している。
明らかな見世物だ。
彼女を見下ろすのは、下卑た笑みを湛える柄の悪い男達。
しかしその彼らに挟まれるようにして、ただ一人だけ悲痛な面持ちの男がいる。
名は健太。
男、というよりは少年といった方が相応しいかもしれない。
19歳、まだ世間の荒波に揉まれてもいないのだから。
彼が詐欺師の口車に乗せられて莫大な借金を負ったのも、ひとえにその未熟さに拠る。
借金は闇の中で転がり続け、彼自身のみならず、その唯一の肉親である姉をも不幸の底へと引きずり込んだ。

……いや、姉は……晴美は、自ら望んで暗い海に飛び込んだのだ。
溺れゆく弟を見捨てる事ができずに。
両親を事故で亡くして以来、晴美は5つしか違わない健太の母親代わりだった。
中学を卒業して以来はパートに専念し、せめて弟は大学まで通わせようと必死に働いた。
健太は生来思っている事を口に出さず、感情を押し殺すタイプだ。
彼は晴美に良い顔だけを見せ続けた。
しかし、心の中では晴美への申し訳ない気持ちで満ちていたのだろう。
明らかに怪しい儲け話を鵜呑みにし、莫大な借金を抱えるに至ったのは、結局そこに原因がある。

山のような督促状の中、呆然と座り込む健太を見た時、晴美はすべてを悟った。
見捨てられる訳が、なかった。



不幸な姉弟に突きつけられたのは、借金の棒引きを賭けたギャンブル。
とはいえ丁半や麻雀のような有り触れたものではない。
女に性的な刺激を与え、その反応を当てる遊びだ。
通称は『ボイス・パネル・ゲーム』。
具体的には、女の『声の周波数』と『足の置き場所』の組み合わせが賭けの対象となる。

日常会話で平均200Hzと言われる女性の声は、セックスで喘ぐ場合にはさらに700Hzほど高まるという。
ゆえに、100Hz~900Hzの音域を、100刻みでアルファベットA~Iに割り振る。
100Hz以下、900Hz以上はそれぞれA、Iに属する。
これが条件一つ目。
続いてツイスター・ゲームの要領で、足の置き場所を指定する。
1~12に区分けされたシートの上で女が片足を上げ、性感刺激を受けてから指定場所に足が下ろされれば勝ちだ。
これが条件二つ目。
これら双方を組み合わせ、例えば300Hzの声が出て、7の場所に足の裏がつけば、『C-7』に賭けた者が勝つ。
参加者全員が外した場合はノーゲーム、いたずらに対象の女が昂ぶるだけの結果となる。

『言っとくがこいつァ、お前らの方に分のある賭けなんだぜ。
 何しろ女の意思次第で、好きな相手を勝たせられるんだからな』

ギャンブルの開始前、男達は姉弟にそう告げた。
確かに理屈では、晴美が声のトーンを調節し、かつ特定の場所へ足を下ろせば健太の常勝たりえる。
しかし現実はそう甘くはない。
男の前戯程度ならともかく、クリトリスやGスポットを機械で責められては演技にも限界がある。

例えば今、晴美のクリトリスは内側に無数の吸盤が内蔵されたゴムキャップで包まれている。
吸盤はそれぞれ微弱な電流の流れる端子に繋がっており、陰核内部のあらゆる部分を自在に痺れさせる。
陰核亀頭だけではない、その根元に当たる部分にさえ、吸盤が張り付いて皮膚の上から刺激を加える。
根元から丁寧に活性化されていくクリトリスの刺激。
それはついぞ経験がないほどに強烈だった。
全体の六割程度の吸盤が同時に作動した時には、晴美は自らのクリトリスがびぃん、と勃起する感覚をはっきりと感じた。

「くひぃいっ!?」

晴美は無意識に細い声を上げていた。
肉体構造上、当然の快感。
呻き声に意思を介在させる余地などない。ただ喉奥から迸るままに、発してしまった。
腰が砕け、足を下ろす動作さえも意識の下になかった。
結果、その勝負では健太は負ける。
ゲームに慣れ親しんだ男達の方が、より的確に予想を立てていたからだ。

そう。このギャンブルにおいて、晴美と健太が有利などという事は有り得ない。
まずゲームに参加する人間が4人という事実が不利だ。
実質的に3対1。男達は3人誰が勝っても同じなのだから、答えを一つに絞れないならば勘で総当りすればいい。
逆に健太は外せない。このプレッシャーは大きい。
さらに、経験の差もある。
以前にもこの遊びをしているであろう男達は、女がエクスタシーの最中に見せる声や動作を知り尽くしている。
『晴美自身の』性感反応も。

ゲームが始まる数日前、晴美はオフィスで男達に輪姦された。
借金棒引きのチャンスを得る見返りにだ。
散々に酒を飲まされ、意識の朦朧とした状態で犯され続けた。
初めは反応を示すものかと気丈に堪えていた晴美も、次第に疲弊していく。

「あっ、ああ、あっ、っはぁああっ……!!!」

半日を過ぎた頃には、なまの反応を晒してしまっている事が自覚できた。
思考力を失った頭の中、快感を訴えたり絶頂を宣言すると男達に褒めて貰える。
その仮初めの優しさに導かれ、晴美は快感を貪り続けた。
どのような快感を受ければ、どう声を上げるのか。どう足の筋肉が動くのか。
その値千金の情報を垂れ流してしまった。
男達はその情報と過去の経験を元に、かなりの精度で答えを導き出せるはずだ。
初心者で、一からゲームに慣れていかなければならない健太とは全く違う。

それでも、初めのうち健太は勝った。
予想を当てたのではなく、晴美が健太の予想に沿って声を上げ、足を動かしたからだ。
音域を意識して声を出すのはやや苦労したが、幾度か繰り返せばコツを掴めた。
このまま借金を帳消しにできれば。そう甘い観測さえ生まれた。

しかし、時間が経つほどに晴美の余裕はなくなっていく。
性感が強まりすぎ、素の反応が先に出るようになる。
健太の予想が解っていても、それに外れた甲高い声が漏れる。違う場所に足が下りる。
そうして、徐々に、徐々に、健太は予想を外していった。
ゲームを繰り返すほどに掛け金の額は上がり、大勝負になっていく。
晴美と健太はそこで思い知った。
男達は、最初はあくまで遊びでやっていたのだと。
掛け金が高額になるまで泳がせていただけなのだと。



晴美はグラビア撮影のように、様々なポーズを強要された。
現在は半身を起こしたような格好で腰を捻り、恥じらいの部分を男達に向けている。
裸身はオイルを塗り込めたような汗に塗れていた。
髪の毛の先は海草のように萎び、乳房へと垂れかかっている。
しかし女体で最も敏感とされる陰核へ延々と電気刺激を受けていては、その夥しい発汗も仕方がなかった。
汗だけでなく、愛液の量も相当だ。
片膝を立て、菱形を作るように開かれた両脚。
その下側にあたる左脚には、秘裂から溢れた愛蜜がそのほぼ全体を覆っている。

「『F-2』、『G-7』『G-8』『G-9』っと。うし、予想は揃ったぜ、足上げろ」
男の1人が音頭を取り、晴美に向けて告げる。
晴美はそれを受けて、ゆっくりと片膝を立てていた右脚を持ち上げる。
大きく股が開き、見知らぬ男達と弟に秘部を晒す事になる。
母子家庭では子供が性に無節操になりがちだという記事を読んで以来、
弟には性教育を厳しめにしてきた彼女だ。
目に見える範囲に卑猥な本を置く事は許さなかったし、そのような話題も控えさせてきた。
その自分が、よもやこのような格好を晒そうとは。

何十度目かの開脚に、なお恥ずかしげな表情を見せる晴美。
それを存分に堪能した所で、男が合図を出す。
次の瞬間、晴美のクリトリスを微弱な電気の膜が覆った。

「あぁあああぅふうっ!!!!」

意識とはまったく別の部分から声が上がる。
絶頂。
その単語が晴美の頭を染め上げた。また簡単に、達してしまった。
絶頂の感覚は甘美で心地良いが、後には必ず後悔している。

なぜ……? 
なぜ後悔するの……?

そう考え、意識を取り戻した晴美は顔を青ざめさせる。
知らぬ内に掲げた右脚が下りていた。
今の体勢から最も自然に着地できる位置、『8』に。
慌てて壁に設置されたパネルへ目を向ける。
周波数を表すそれは、720と表示されている。賭けの条件ではGだ。
「ああああああっ!!!」
晴美は叫ぶ。『G-8』、それは……。

「おっとぉ、また俺様の勝ちだな。えーと今は、100万の勝負だっけかぁ。
 おら、とっとと100万出しな……ん、どうした坊主、顔色悪ぃぜ」
勝った男がほくそ笑みながら、対面に座る健太を見る。
健太は顔中に汗を掻いたまま俯いていた。
膝に置いた手が小刻みに震えている。
「……あ、ありま……せん…………」
怯えを押し殺したように、彼は呟いた。
「あ?」
「…………た、足りないんです」
健太はそう告げ、現在の手持ちである12万を机の上に置いた。
男達が笑う。
朗らかな笑みではない。獲物を囲んでの嘲笑だ。
「まぁいい、ここはツケにしといてやる。次に勝ったら返せば良いさ。
 …………ただ、ツケなんだ。もう逃げらんねぇぞ」
男達は健太の肩を掴みながら言う。
健太はただ俯いて震え、晴美はその様を悲痛な表情で見守るしかない。


「さてと、いい加減そのポーズにも飽きたな。趣向変えだお姉ちゃん」
男の1人が立ち上がり、晴美に近づく。
そしてクリトリスからゴムキャップを引き抜いた。
「う、ひっ!!」
晴美が背を震わせながら呻く。
ゴムキャップの下には、およそ日常生活では目にする事もないほど肥大化したクリトリスがあった。
何かの果実かのように赤く充血し、屹立しきっている。
そんなものから勢いよくキャップが引き抜かれれば、先の悲鳴も仕方のない事といえるだろう。
「へへへ、ビンビンに勃起してやがる。しかもこの匂い、完全にメスだな」
男はクリトリスを見やり、秘裂から立ち上る匂いを揶揄する。
そして恥らう晴美の腕を掴むと、無理矢理に立たせて部屋の隅に向けて歩き出した。

その先には、大きな椅子がある。
まるで処刑用の電気椅子を思わせる重厚なつくりだ。
周囲には数字を割り振られたパネルがあり、先ほどのゲームと同じだと解る。
そして何より異様なのは、その座部から生えたバイブレーターだ。
男根を模してこそいるが、本物にはありえないほど極太のカリ首と、残酷な反り、そして真珠のような無数の突起がある。
晴美は女の本能で、その凶悪さを理解した。
極太のカリ首は、どの角度でも容赦なく女のGスポットを擦り上げるだろう。
反り返った幹は、膣のあらゆる部分を抉り回すだろう。
真珠のような突起は、ヤクザの情婦が病みつきになるというほどの刺激をもたらすだろう。
あれは……女を壊す凶器だ。

恐れおののく晴美を抱え上げ、男達は椅子に乗せる。
濡れそぼった秘裂へ、無理矢理に巨大なバイブレーターを咥え込ませる。
晴美は呻いた。
しかし、拒否できる立場にはない。健太がなおも負債を背負っている以上は。
「よし、じゃあ再開といこうぜ。俺は……『H-7』だ」
男の1人が席について言う。
地獄の賭けは終わらない。晴美は、膣内を埋め尽くす責め具の威容を感じながら、喉を鳴らした。





「あっ、あ……あ、ああ、あああうっ……はあ、ああっ…………!!!」

部屋には艶かしい声が響き続けていた。
椅子に備え付けられた責め具は、けして単調にならない調子で晴美の膣内を責め立てている。
想像通り、カリの太いそのフォルムは、彼女のGスポットを存分に責め上げた。
様々にリズムを変えて上下に動き、円運動をも絡めて。
性感帯であるGスポットをそうして嬲られる行為は、それだけで十分なほど絶頂に足る。

しかし、それだけではすまない。
賭けが成立した後には、責め具は深々と彼女の膣を貫いてその子宮口に触れる。
女性にとって最大の性感帯とされる子宮口……ポルチオ。
妊娠経験のない女性にとっては敏感すぎる場所であり、通常は突かれても痛みしか感じない。
しかし、散々に昂ぶらされた今の晴美はその快感を受け入れてしまっている。
突かれるたび、身体中を電流のように駆け巡る快感。
クリトリスで得る快感とは桁が違う。半ば自失する感覚が断続的に襲うほど強烈だ。

それでも、その快感の海の中でも、晴美は弟を救わなければならない。
弟が選んだのは『I-4』。
もはや絶叫と言っていい今において、周波数の選択肢Iは揺るがない。
つまり、勝負の鍵は足の位置に収束される。
それが、4。妥当な部分をすべて他の3人に奪われたのだろう、かなり不自然な位置だ。
責め具がせり上がり、膨らみきったGスポットを擦りながら最奥を抉る。
柔らかくほぐれたそこを潰すように一突き。
そして潰したまま、グリグリと優しくすり潰すような円運動。
これが、もう、たまらない。

「んわああああぁっぁぁあああああっっ!!!!」

絶叫。
人らしさを殆ど感じさせない、金属を掻くような声だ。
その叫びを耳元で聞きながら、晴美は脳内がスパークするのを感じていた。
頭が、視界が、真っ白だ。膣の奥の奥から生じた甘い電流が、足の先、脊髄にまで広がっていく。
心地よすぎる感電。

しかし……彼女は気を持ち直す。
弟の為に、自然と居りかけていた足を留める。
『4』のパネル……遠い。足をがに股に広げ、脚を伸ばさなければ踏めない。

「う、ぐぐ、ぐ……うッ…………!!」

未だ酩酊するような意識の中、晴美は必死に足を伸ばす。4のパネルに足先を乗せる。
しかし、その瞬間。
不自然な動きをした膣内を、さらなる快感が襲う。
責め具の先端はより深くポルチオを抉り、ねじれた膣奥が妙な締め付けを見せる。
柔肉の圧迫を無視し、無慈悲に、マイペースに責め立てる淫具。
それは許容量の縁を漂っていた晴海の意識を、軽々と染め上げた。

「かっ……あ、あああああ゛いぐうううう゛う゛っ!!!!!
 いぐいぐっ、これっ、だめ゛……え゛!!いぐうう、また、ああ、まだいぐううう゛う゛っ!!!
 どめでっ、こどきがい、もお゛どめでぐださひいいいいぃ゛っっ!!!!!」

弟の為の無理が、彼女の性感を決壊させる。
幾度も幾度も太腿を跳ねさせ、潮を噴き上げ、涎を垂らして痙攣を始める晴美。
健太はそれを、震えながら見つめていた。
一転して男達は愉しげだ。賭けにかこつけ、限界まで性感に呑まれる女を面白がっている。
果たして最後まで、姉の自我がもつのだろうか。2人で手を繋いで帰れるのだろうか。
健太には、それが不安で堪らなかった。
今の正解で、健太の借金は僅かに減った。しかし、先は長い。帳消しには遥かに届かない。

地獄は続く。
おそらくは獲物のいずれかが、終焉を迎えるまで……。




                       終わり
<初出:2chエロパロ板 『淫具・淫薬で女を弄ぶエロSS』 スレ>