※『母の指』の続きです。
その場所で吸う煙草は美味かった。
街が一望できる、小高い丘。葉子はそこに腰を下ろし、煙を空へと吐き出す。
「ごきげんよう」
その葉子に、優雅な挨拶がなされた。
「あん?」
葉子は不機嫌そうに振り向く。
ごきげんよう、などと気取った挨拶をするのは、『白梅女学院』の生徒ぐらいのものだ。
基本姿勢として他者を見下し、綺麗事を並べる……そうした白梅の令嬢達を、葉子は嫌っていた。
しかし、声のした方を一瞥した途端、葉子の表情は変わる。
「なんだ、アンタか」
明らかに警戒心を解いた様子で、煙草をもみ消す葉子。
「……アンタも懲りねぇな」
「ご迷惑、でしたでしょうか?」
心配そうに尋ねる相手を、葉子は改めて観察する。
宮嵯千里(みやさせんり)。
雅楽の名家に生まれ育ち、その家格は令嬢が集う『白梅女学院』でも群を抜く。
彼女がしゃなりと歩けば、あらゆる生徒が黙って道を譲り、高貴さは皇族に次ぐとさえ言われていた。
千里との馴れ初めを、葉子は今でも覚えている。
千里は初対面の葉子に対し、自慰の助けを乞うた。
自分は母に性欲を管理されており、母離れしようにも、どうしても母の指が忘れられない。
だから葉子に代わりをして欲しい。
葉子の、他者を隔絶するような雰囲気は母にとても似ており、適役だ。
表現自体は柔らかなものだったが、千里の求めはおおよそそうしたものだった。
初めは頭のおかしい女かと思った葉子も、話を聞くうちに千里の真剣さを理解した。
「……来なよ。もう我慢できないんだろ」
葉子がそう言って立ち上がると、千里の顔に精気が宿る。
そして千里は、背後を振り向いた。
「では、森岡さん。申し訳ありませんが、少しお時間を下さい」
千里の視線の先には、執事風の男が控えている。
「は、行ってらっしゃいませ。18時からのレッスンだけは、お忘れなきよう」
森岡と呼ばれた男は、恭しく頭を下げた。
※
山中にあるプレハブ小屋。
窓からの光だけが光源のその小屋から、かすかに甘い吐息が漏れている。
千里のものだ。
葉子の指責めによって、壁際に立つ千里は震えていた。
指責めを始めてから、まだ5分と経っていない。
にもかかわらず、すでに千里の陰核は硬く屹立しつつある。
母によって陰核での絶頂を覚え込まされた千里は、葉子の指でもやはり昂ぶった。
趣味でギターをする葉子は、その指の皮の硬さが、琴の名手である母によく似ている。
かつて千里はそのように評していた。
千里の陰核を包皮ごと指先で転がしながら、葉子は千里を観察する。
両目を閉じ、軽く唇を結んで声を殺す姿。
高貴や清楚といった言葉を毛嫌いする葉子も、この千里だけは別だった。
心の底まで高貴さに満ちた人間が存在することを、千里に出会って初めて知った。
陰核がいよいよ固さを増していく。
葉子はそこで指をずらし、千里の秘裂を指先でなぞった。
まさに秘密の花園というべきそこは、すでに愛液でしっとりと潤んでいる。
その愛液を指で掬い取り、再び陰核へ。
愛液の助けを得ながら、僅かずつ僅かずつ、陰核の包皮を剥き上げていく。
千里の張りのある太腿がふるりと震えた。
包皮が完全に捲れる。
葉子はそれを認め、指の腹で柔らかく千里の陰核を潰した。
柔らかくとはいえど、包皮越しでない直に、だ。
「っっっ!!!」
千里は押し殺した嬌声を漏らしながら、とうとう背中を壁に預ける。
今の今まで、服を汚すまいと壁際で踏みとどまっていたが、腰が砕けたらしい。
こうなれば、後は堕ちるだけだ。
葉子は口の端に笑みを浮かべながら、いよいよ陰核を指の肉で包み込んだ。
「……っ! …………っっ!!」
宮嵯の娘として、あくまで声を上げぬよう調教されてきたのだろう。
腰が震えるほどに感じても、千里は声を出さない。
しかしその必死になって耐える姿がまた、責める方としては堪らない。
「……おい」
熱に浮かされたような千里に向け、葉子が呼びかける。
「はい」
千里は薄目を開けて答えた。目頭をつたう汗が艶かしい。
葉子はごくりと喉を鳴らした。
「……キス、させろよ」
真剣な面持ちで葉子が告げる。
千里は一拍の間を置いて、再び静かに目を閉じた。
「どうぞ」
清楚そのものの表情で告げる。葉子は背徳感を禁じえなかった。
自分のような存在が、先ほどまで煙草を吸っていた口でキスを迫る。
美しいものを汚すその背徳感。
しかし、千里みずからが葉子に近づき、汚される事を望んでいるのだ。
葉子は千里の唇を奪う。
舌をねじ込み、奥の方で震えている千里の舌を絡め取る。
同時に指遣いも強めた。
親指の腹でぐりぐりと押し潰す。
二本指で挟みこんだまま、煙草を箱から一本取り出す要領でトントンと叩く。
あるいは、舐めるようにやさしく。
緩急の付いた責めに応じ、千里は熱い息を吐いた。
葉子は自らの口内にもその呼吸を感じながら、さらに陰核を愛で続ける。
自らの指の動きと、口に感じる吐息が連動しているようで小気味良かった。
「ぷはっ!」
葉子が限界を迎えて口を離す。
一方の千里は、楽器の心得があるせいか、それとも煙草を吸わないせいか、呼吸が殆ど乱れていない。
しかし、性感には弱かった。
「…………た、達します…………っ!!」
千里がまた絶頂に至ったようだ。
正確には口づけの最中にも幾度か小さく達していたようだが、
背筋を伸ばしたまま綺麗に絶頂するので分かりづらい。
いつしか小屋の中には、夕焼けの黄金色が溶け込んでいた。
夢中になって千里を責め立てるうち、かなりの時間が経っていたようだ。
別れの時は近い。
千里と葉子は、どちらからともなく視線を交錯させた。
「…………もう」
そう言いかけ、葉子は言葉を途切れさせる。
もう来るんじゃねぇぞ、と照れ隠しに言い捨てるつもりだった。
しかしそれを口にしたが最後、生真面目な千里は散々に心を痛めた挙句、二度と葉子の前に姿を現さないだろう。
それは、葉子の望みとは違っていた。
「もう……何ですか?」
千里が澄んだ瞳で葉子の顔を覗き込む。
葉子はひとつ、ため息を吐いた。
「……もう一度、会ってやるよ。またしたくなったら、あの場所に来な」
葉子の言葉で、千里の頬が嬉しそうに赤らむ。
その笑顔をもっと見たい。
天涯孤独だったはずの葉子は、いつの頃からか、強くそう思うようになっていた。
終わり
その場所で吸う煙草は美味かった。
街が一望できる、小高い丘。葉子はそこに腰を下ろし、煙を空へと吐き出す。
「ごきげんよう」
その葉子に、優雅な挨拶がなされた。
「あん?」
葉子は不機嫌そうに振り向く。
ごきげんよう、などと気取った挨拶をするのは、『白梅女学院』の生徒ぐらいのものだ。
基本姿勢として他者を見下し、綺麗事を並べる……そうした白梅の令嬢達を、葉子は嫌っていた。
しかし、声のした方を一瞥した途端、葉子の表情は変わる。
「なんだ、アンタか」
明らかに警戒心を解いた様子で、煙草をもみ消す葉子。
「……アンタも懲りねぇな」
「ご迷惑、でしたでしょうか?」
心配そうに尋ねる相手を、葉子は改めて観察する。
宮嵯千里(みやさせんり)。
雅楽の名家に生まれ育ち、その家格は令嬢が集う『白梅女学院』でも群を抜く。
彼女がしゃなりと歩けば、あらゆる生徒が黙って道を譲り、高貴さは皇族に次ぐとさえ言われていた。
千里との馴れ初めを、葉子は今でも覚えている。
千里は初対面の葉子に対し、自慰の助けを乞うた。
自分は母に性欲を管理されており、母離れしようにも、どうしても母の指が忘れられない。
だから葉子に代わりをして欲しい。
葉子の、他者を隔絶するような雰囲気は母にとても似ており、適役だ。
表現自体は柔らかなものだったが、千里の求めはおおよそそうしたものだった。
初めは頭のおかしい女かと思った葉子も、話を聞くうちに千里の真剣さを理解した。
「……来なよ。もう我慢できないんだろ」
葉子がそう言って立ち上がると、千里の顔に精気が宿る。
そして千里は、背後を振り向いた。
「では、森岡さん。申し訳ありませんが、少しお時間を下さい」
千里の視線の先には、執事風の男が控えている。
「は、行ってらっしゃいませ。18時からのレッスンだけは、お忘れなきよう」
森岡と呼ばれた男は、恭しく頭を下げた。
※
山中にあるプレハブ小屋。
窓からの光だけが光源のその小屋から、かすかに甘い吐息が漏れている。
千里のものだ。
葉子の指責めによって、壁際に立つ千里は震えていた。
指責めを始めてから、まだ5分と経っていない。
にもかかわらず、すでに千里の陰核は硬く屹立しつつある。
母によって陰核での絶頂を覚え込まされた千里は、葉子の指でもやはり昂ぶった。
趣味でギターをする葉子は、その指の皮の硬さが、琴の名手である母によく似ている。
かつて千里はそのように評していた。
千里の陰核を包皮ごと指先で転がしながら、葉子は千里を観察する。
両目を閉じ、軽く唇を結んで声を殺す姿。
高貴や清楚といった言葉を毛嫌いする葉子も、この千里だけは別だった。
心の底まで高貴さに満ちた人間が存在することを、千里に出会って初めて知った。
陰核がいよいよ固さを増していく。
葉子はそこで指をずらし、千里の秘裂を指先でなぞった。
まさに秘密の花園というべきそこは、すでに愛液でしっとりと潤んでいる。
その愛液を指で掬い取り、再び陰核へ。
愛液の助けを得ながら、僅かずつ僅かずつ、陰核の包皮を剥き上げていく。
千里の張りのある太腿がふるりと震えた。
包皮が完全に捲れる。
葉子はそれを認め、指の腹で柔らかく千里の陰核を潰した。
柔らかくとはいえど、包皮越しでない直に、だ。
「っっっ!!!」
千里は押し殺した嬌声を漏らしながら、とうとう背中を壁に預ける。
今の今まで、服を汚すまいと壁際で踏みとどまっていたが、腰が砕けたらしい。
こうなれば、後は堕ちるだけだ。
葉子は口の端に笑みを浮かべながら、いよいよ陰核を指の肉で包み込んだ。
「……っ! …………っっ!!」
宮嵯の娘として、あくまで声を上げぬよう調教されてきたのだろう。
腰が震えるほどに感じても、千里は声を出さない。
しかしその必死になって耐える姿がまた、責める方としては堪らない。
「……おい」
熱に浮かされたような千里に向け、葉子が呼びかける。
「はい」
千里は薄目を開けて答えた。目頭をつたう汗が艶かしい。
葉子はごくりと喉を鳴らした。
「……キス、させろよ」
真剣な面持ちで葉子が告げる。
千里は一拍の間を置いて、再び静かに目を閉じた。
「どうぞ」
清楚そのものの表情で告げる。葉子は背徳感を禁じえなかった。
自分のような存在が、先ほどまで煙草を吸っていた口でキスを迫る。
美しいものを汚すその背徳感。
しかし、千里みずからが葉子に近づき、汚される事を望んでいるのだ。
葉子は千里の唇を奪う。
舌をねじ込み、奥の方で震えている千里の舌を絡め取る。
同時に指遣いも強めた。
親指の腹でぐりぐりと押し潰す。
二本指で挟みこんだまま、煙草を箱から一本取り出す要領でトントンと叩く。
あるいは、舐めるようにやさしく。
緩急の付いた責めに応じ、千里は熱い息を吐いた。
葉子は自らの口内にもその呼吸を感じながら、さらに陰核を愛で続ける。
自らの指の動きと、口に感じる吐息が連動しているようで小気味良かった。
「ぷはっ!」
葉子が限界を迎えて口を離す。
一方の千里は、楽器の心得があるせいか、それとも煙草を吸わないせいか、呼吸が殆ど乱れていない。
しかし、性感には弱かった。
「…………た、達します…………っ!!」
千里がまた絶頂に至ったようだ。
正確には口づけの最中にも幾度か小さく達していたようだが、
背筋を伸ばしたまま綺麗に絶頂するので分かりづらい。
いつしか小屋の中には、夕焼けの黄金色が溶け込んでいた。
夢中になって千里を責め立てるうち、かなりの時間が経っていたようだ。
別れの時は近い。
千里と葉子は、どちらからともなく視線を交錯させた。
「…………もう」
そう言いかけ、葉子は言葉を途切れさせる。
もう来るんじゃねぇぞ、と照れ隠しに言い捨てるつもりだった。
しかしそれを口にしたが最後、生真面目な千里は散々に心を痛めた挙句、二度と葉子の前に姿を現さないだろう。
それは、葉子の望みとは違っていた。
「もう……何ですか?」
千里が澄んだ瞳で葉子の顔を覗き込む。
葉子はひとつ、ため息を吐いた。
「……もう一度、会ってやるよ。またしたくなったら、あの場所に来な」
葉子の言葉で、千里の頬が嬉しそうに赤らむ。
その笑顔をもっと見たい。
天涯孤独だったはずの葉子は、いつの頃からか、強くそう思うようになっていた。
終わり
<初出:『クリトリス責めメインのSS~その8~』スレ>
肉芽以外の性感帯を責めることも無く、相手に快感を与えることも無く、一方的に享受し続けなければならない…こういうシチュエーションは大好物なのですが意外と少ないのですよね。やっぱり普通は他にも面白そうな突起などがあれば弄ってみたくなるのでしょう(笑
この後で密会しているのが、近所の厚化粧のおばさんにばれてしまい脅迫されて連れ込まれてしまう千里の姿なんか妄想してしまいたくなります。
「あたしが仕上げしてやるよ」なんて言われて、筆で綺麗に磨いてもらったり、蜂蜜などかけてむず痒くなったところを綺麗に舐めてもらったり、もちろん仕上げは指でじっくりと……う~ん、なに馬鹿なこと書いているんでしょうね(苦笑
機会があれば、またこういった話も読んでみたいものです。次作も期待しております