大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

和姦

あたたかな浴室

※3歳差の姉弟の背徳的イチャラブ物。
 近親相姦要素があるため、ご注意ください。




「久しぶり、姉ちゃん!」
 高校から野球部に入ったという弟の陽斗(はると)は、野球少年らしく日に焼けていた。
「へー、ここが姉ちゃんのアパートかぁ。意外と狭いんやな」
「実家(うち)と比べたらやろ。トイレ・風呂別でキッチンついてるだけでも上等なんやで」
 3つ下の弟はまだ実家暮らしで、学生アパートの勝手を知らない。とはいえ私も一年前まではそうだった。大学入学を期に一人暮らしを始めてから、ずいぶんと世界が広がったものだ。
「ってか姉ちゃんそれ、ウチでよく着てた芋ジャージやん。まだそんなん着てんの?」
「そや。なに? 弟が来るってだけで色気づいた格好するとでも思ったん?」
「でも、姉ちゃんももう女子大生やろ?」
「だから何なんよ。カレシでもあるまいし」
 不満たらたらな陽斗をあしらいつつ、昼食の準備を整える。メニューは明太子パスタと、昨日のうちに作っておいたハンバーグ。どっちも弟の好物だ。
「うはー、美味そう! いっただきまーす!!」
 陽斗は目を輝かせたままフォークを手に取ると、一心不乱に食事を貪りはじめる。こうなったら言葉すら届かない。昔から好きな物にはのめり込むタイプだ。
「あー美味かったぁ! 母さんのメシも美味いけど、やっぱ姉ちゃんの作ったもんが一番オフクロの味って感じするわ!」
「それ、お母さんに失礼やで?」
 そう嗜めはするものの、内心で頬が緩む。うちは父親が単身赴任でほぼ家におらず、母親もパートで忙しいから、ずっと私が料理を作っていた。弟にとって私の料理がお袋の味になるのも無理はない。

 傍から見れば、私達はごく普通の姉弟に見えるだろう。姉の所へ遊びにきた無邪気な弟……そうとしか見えないはずだ。
 でも、私達には秘密がある。
 肉体関係があるんだ。それも一度や二度じゃない、何十回も。

 忙しい両親に代わり、幼い陽斗をお風呂に入れるのも私の仕事だった。陽斗は目が離せない子供で、何か考え事をしていると上せているのにも気付かずにお湯に浸かり続けるから、小学校に上がっても一緒に入浴していた。
 私にとっての陽斗は手のかかるチビ助だ。でも、そんな弟にだって思春期は来る。
「ねえちゃん。俺、ねえちゃんとしたい」
 ある日陽斗は、後ろから私に抱きついてそう言った。お尻には勃起した熱い物が当たっていて、どういう状況かはすぐに察せた。
「……なに言うてんの? 冗談やめぇ」
 私はもちろん諌めたけど、陽斗はゴネる。聞き分けが悪いわけじゃないけど、興味を惹かれたものには執着する性格だ。何十分か押し問答して、洗い場に立っているのが寒くなってきた頃、私はしぶしぶ折れた。もう少し倫理観を強く持つべきだったけど、あの時はとにかく面倒だった。お風呂から出たら宿題もやらなきゃいけないし、明日の朝ごはんの準備だってしなきゃいけない。そういう中で陽斗と口論を続けるよりは、一度やらせてしまえばいい……そんな風に思ったんだ。
「さっさと済ませなよ」
 そう言ってお風呂場の壁に手をついた時は、さすがに緊張した。初体験は痛いと聞いていたからだ。でも実際その時を迎えると、なぜか全然痛くなかった。陽斗のアレは10歳にしては大きかったし、挿れるのだって石鹸を塗りたくってやっとだった。だけど石鹸の刺激を感じるぐらいで、抜き差しされても痛くない。別に気持ちよくもなかったけど、あっさりと陽斗を射精まで導けた。
 今思えば、それも良くなかったのかもしれない。セックスの気持ちよさを知った陽斗は、それから毎日のように私としたがるようになり、私もやらせた方が楽だからと安易に受けた。
 私と陽斗は身体の相性が良いんだろう。お風呂でバックから突かれるのは、3日目には快感になった。そうなればセックスという娯楽の虜だ。学校終わりの5時から母親が帰ってくる10時過ぎまでは2人だけの時間だったから、その間にやりまくった。お風呂場だけじゃなく、リビングのソファやトイレ、2階のベッドでもした。もちろん行為の痕跡は丁寧に拭いたし、消臭もした。姉弟でしていることが近所にバレないように、声も抑えた。『バレたら終わり』という背徳感がスパイスになって、ますますセックスが燃えたものだ。

 ただ、後ろめたい気持ちはずっとあった。だから私は、自分から陽斗を求めることはせず、常にされるがままな態度を貫いた。セックスの最中に笑ったことなんて一度もないはずだし、陽斗が恋人みたいにキスを求めてきても応じなかった。弟の我儘につきあって、仕方なくしているという演技……そこが最後の一線だ。
 大学入学と同時に実家を出たのも、もう1年ちょっと帰省していないのも、弟と距離を取りたかったという理由が大きい。陽斗の義務教育も終わったことだし、できれば爛れた関係をすっぱり切りたかった。
 ただ、そう簡単にはいかないみたいだ。陽斗はしつこいぐらい私にLINEをしてくるし、今だってお預けを喰らった犬のよう。
「…………で、どうなん? ヤりたいん?」
 そう聞いてみると、わかりやすいほど目を輝かせる。尻尾があればブンブン振っているに違いない。わざわざ芋ジャージなんて色気のない格好をしているのに、この弟には何の効果もないらしい。
「はあっ」
 溜め息をつく。渋々セックスに応じてやるというアピールだ。ただ実際、うんざりしてはいる。対象は私自身。弟にせがまれれば大体何でも聞いてしまう甘さも、内心でセックスを楽しみにしている淫乱さも、心の底から嫌になる。


                ※


「あんたも歯ぁ磨き。歯ブラシそこにあるから」
 陽斗に洗面台を使わせながら、私の方はトイレに入り、ビデであそこを洗う。丁寧に性器を洗浄していると、これからセックスをするんだという実感が湧いてくる。
 弟相手に乱れた姿なんて見せたくないけど、不安しかない。弟を忘れるために作った彼氏と破局してから、もう2ヶ月ご無沙汰だ。しかも生理前だから、性欲も高まっている。
「……なんで今来んねん」
 小さくぼやきながら、ぶんぶんと顔を振ってトイレを流す。
 弱気はダメだ。年長者が弱いところなんて見せられない。

 食卓を端に寄せ、布団周りに充分なスペースを確保してから、お互いに服を脱ぐ。
「うひょー、相変わらずグラドル顔負けのエロボディやなあ!」
 陽斗は私の身体を見て鼻を膨らませた。
「何それ、嫌味?」
「いや、ちゃうて。自己評価低いのも変わらんなぁ!」
 陽斗は否定したものの、何がそんなに興奮するのか本気でわからない。物心つく前からお風呂で見慣れている裸なのに。それに、初めて見るんだとしても惹かれるとは思えない。今日に備えて少しは絞ったけど、まだ腰はくびれてもいないし、下腹は便秘気味で膨らんでいるし、そもそもが胴長短足の野暮ったい体型だ。強いてアピールポイントを挙げるなら、安産型と言われるお尻と、胸が大きいことぐらい。偏差値で表すなら良くて40台というところか。
 逆に陽斗は野球部だけあっていい体だ。背はまだ私より小さいけど、肩幅はちゃんと広く、手足には筋肉がつき、腹筋もうっすらと割れている。もう力では敵いそうもない。昔はあんなにチビだったのに。
 しかも、股間にぶらさがっている物はもう半勃ちだ。
「勃っとるやろ、朝からずっとやねん。コイツもはよ姉ちゃんとヤリたいらしいわ」
「呆れた、ほとんど猿やん。私かて忙しいんやから、さっさと済まして帰ってや」
「大学生って暇ちゃうん?」
「アホ、レポートとか色々あんねん。悪いけど、あんたとしてる時もレポート用の資料見てるからな」
「ええで別に。俺もこの一年で色々テク仕込んできたから、すぐに見てられんようになると思うけどな」
「なにその自信、キショいで」
 軽口を叩きながらベッドに寝転び、顔の前にスマホを翳した。

 陽斗はまず、私の腰の下にクッションを入れて浮かせ、大きく脚を開かせてくる。
「最近ネットで無修正の動画とかめっちゃ見てんねんけど、姉ちゃんのマンコが一番綺麗やわ」
「あっそ。あんた仮にも未成年なんやから、ほどほどにしぃや」
 会話はそこで途切れた。陽斗は私の太腿を掴み、あそこをベロベロと舐めはじめる。一度こうなると、食事と同じで一心不乱だ。いつ息継ぎしてるのかわからないレベルで顔を離さない。
 鼻息荒く割れ目を舐め上げ。クリトリスを舌で舐め、吸い、つつき回し。かと思えば舌を思いっきり入れて、膣の粘膜を舐め回し。こういうことを延々と繰り返す。
 そしてこれが有り得ないほど気持ちいい。クンニは舌でくすぐる程度のソフトな刺激から始めるのがいいそうで、実際前の彼氏はそうしてくれた。でも、物足りなかった。つくづくこの身は、弟の犬のような舐りに慣らされてるんだと思い知らされたものだ。
 それに、贔屓目を抜きにしても弟のクンニはレベルが高いと思う。毎日のようにしてたから経験値がすごいし、私の弱い所なんて全部把握されてる。今だからこそ声を我慢してるけど、もしこれを本当の恋人にされたら、砂糖よりも甘ったるい喘ぎを漏らしているに違いない。
「っ!!」
 また舌が深く入った。思わず目が開くし、太腿もぶるぶる震える。気持ちよくて気持ちよくてたまらない。
 スマホから視線を外して盗み見ると、陽斗の股間はすでに勃起状態で脈打っていた。興奮してるんだ、私のあそこを舐めて。
「……あはははは、めーっちゃ濡れてきた!」
 ようやく顔を離した陽斗が、鼻から下を濡れ光らせたまま笑う。
「あんたのツバちゃうん」
「ちゃうって。ほら!」
 陽斗はまた割れ目に口をつけ、ずずずーっと音を立てて愛液を啜った。
「ちょっ! どんな音で吸ってんねん!!」
 思わず反応してしまう。実家でしていた頃はとにかく音を立てないようにしてたから、愛液を啜られたのなんて初めてだ。
「なんで? このアパート、今日誰もいーひんのちゃうん?」
「そ、そういう問題ちゃうわ! こっちが恥ずかしい言うてんねん!」
「はははは、でもこれでスマホ見てる場合やなくなるやろ?」
「……っ!」
 これも成長だろうか。少し会わない間に口が達者になっている。

 数十分かけてクンニを続けたあと、陽斗は愛撫の仕方を変えてきた。膨らみかけのクリトリスを皮ごと左手親指で圧迫しつつ、右手の4本指でビラビラを刺激してくる。初めて受ける前戯。陰唇に血が通って厚みが増すのを感じる。挿入された後の快感も増しそうだ。
「なに、その擦んの?」
「気持ちええやろ」
「……別に。でもそんなんどこで覚えるん。彼女?」
 陽斗は父親似で顔がいいし、スタイルも悪くない。しかも本人曰く野球部のエースだ。彼女の1人や2人簡単にできたって不思議じゃない。
「SEXレクチャー系の動画や。彼女なんておらんよ。何回か告られたけど、姉ちゃんよりムラムラする娘なんていーひんし」
「何それ。アンタおかしいでホンマ」
 私は顔がそこまでいいとは思えないし、スタイルだってイマイチだ。弟の同級生……つまり現役の女子高生よりも魅力的とはとても思えない。でも、弟はどうやら本気らしい。

 陰唇が充血しきり、言い訳もできないぐらい愛液に塗れたころ、陽斗はとうとう割れ目の中に指を入れてきた。人差し指と小指をお尻に食い込ませ、中指と薬指の二本を挿入するやり方。こいつ、潮を噴かせる気だ。
「潮噴かせてええ?」
 やる気満々なくせに、白々しく訊いてくる。
「好きにしぃ。ただ言うとくけど、潮噴きって別に気持ち良くもなんともないで? オシッコと一緒やもん」
「らしいな。動画でもそう言うてたわ。でも俺、姉ちゃんに噴かせたいねん」
「なんなんそれ。意味わからん」
 指が動きはじめた。明らかに慣れていない感じで、手探りだ。でも私の弱点は心得ているから、指の腹はすぐにスポットの芯を捉えてくる。
「ああ、そうや。ココやココ」
 嬉しそうな声がする。でも反論の言葉は浮かばないし、そんな余裕もない。指先でクリトリスの真裏あたりを押し上げられると、勝手に腰が浮いてしまう。
「んっ、ふっ……」
 スマホを置き、万歳の格好で顔を横向けて声を殺す。でも性感までは殺しきれない。強い尿意が湧き上がってきて、腰がぴくぴくと痙攣する。そしてその直後、ぷしゃっと潮が飛び散った。下手に我慢したせいか勢いは強く、陽斗の肩の辺りまで飛沫がかかる。
「あはははは、凄い出るやん!」
「こんなん、尿道刺激されたから出てるだけや!」
 恥ずかしい。弟に潮を噴かされるなんて。でもこの背徳感がたまらない。一度この禁忌の味を覚えてしまうと、彼氏を作ってセックスしたところで、オナニーと同じぐらい虚しく思えてしまう。

「今度は俺のしゃぶって」
 陽斗が先走りの汁に濡れたペニスを突き出してくる。
 改めて目の当たりにすると、本当に大きい。子供の頃から歳に見合わないサイズ感だったけど、体の成長に併せてますます凶悪になっている。完全に勃起した物を定規で計ると18センチあった、という謎の自慢メッセージが来ていたのを思い出す。しかも、長いだけじゃない。太さもかなりあって、特に亀頭部分の膨らみときたら、それこそ野球のボールよりほんの少し小さい程度だ。
「ちょっと待ち。あんた、ココお風呂でちゃんと洗ってんの? なんか匂うで」
 そう言って皮を剥くと、亀頭には恥垢がびっしりとこびりついていた。子供は新陳代謝がすごいから仕方ないけど、それにしても量が多い。
「バッチぃなあ。なんなんこの垢の量? どうせ昨夜オナニーして、そのままほったらかしてたんやろ?」
 手繰り寄せたウェットティッシュで、弟の性器をごしごしと拭く。こうやって世話を焼いていると小さい頃を思い出す。
「ちゃう、今朝や! 久しぶりに姉ちゃんとできる思たら、我慢できんくて……あっ、そこあんま弄らんといて! 出そうんなる!!」
「何言うてんの、こんな垢まみれにして。大体しゃぶれとか言うてるけど、コレもう口でする必要ないやん」
 ウェットティッシュを離すと、陽斗の物は反り返るほど勃起しきっていた。
「あー、まあな。俺、朝勃ちもエグいねんけど、ここまでなったんは久しぶりや。なんでなんやろなあ、姉ちゃんのアソコ舐めてたらめっちゃ勃つねん」
「アホ」
 一言で切って捨てるものの、密かに鼓動が早まる。彼氏に言われたら嬉しい言葉だ。そう、これが普通のカップルだったら、どんなに……。
 でも、本当はわかってる。私も弟も、しちゃいけない行為だからこそこんなに興奮してるんだ。いけないクスリでも使ったようなこの刺激を知ってしまったから、もう、戻れない。

「んー、ムズいなぁ」
 陽斗はゴムを着けるのに苦戦していた。子供の頃はゴムなんて家に無かったから、出そうになったら外に出させ、お風呂でよく洗うぐらいで済ませていた。今考えると、アレでよく妊娠せずに済んだものだ。
「い、挿れるで」
 陽斗の声は上ずっていた。まるで今日初めて“する”みたいに。そんなに緊張されるとこっちまで改まってしまう。もちろん表面上はいつも通り、されるがままな無表情を装うけれども。
 ボールのような亀頭が割れ目に押し当てられ、メリメリと中に入り込んでくる。大きい。前の彼氏より2割増しで太く、長く、しかも硬い。陽斗の気持ちの全てがこの熱い塊に宿っているような気がする。
「ああ……久しぶりやなあ、この感じ。あったかくて気持ちええ」
 陽斗はうっとりとした様子で呟きながら、私の左右に手をついた。野球をやっているだけあって、胸板も二の腕も男らしくなっている。あのチビに逞しさを感じてしまうのがなんだか悔しい。
 奥まで挿入した後、陽斗は腰の動きを止めた。一年前ならいきなり腰を振っていたのに、これも知らない姿だ。
 無理矢理こじ開けられた膣が元に戻り、熱い塊に吸い付いていく。そうして充分に馴染んでから、陽斗はゆっくりと腰を遣いはじめた。
 最初に馴染ませたのは大きい。以前ならある程度ピストンされてからようやく湧いてきた快感が、いきなり襲ってくる。
「気持ちええやろ」
 弟の言葉は、心を見透かしたかのようだった。
「別に」
「ウソや、姉ちゃんのナカ動いとるで。もしかしてセックス久しぶりなんか?」
「アンタ、よう自意識過剰って言われるやろ」
「言われたことないで」
「周りの子が言うてへんだけで、陰ではそう思われてるんちゃう?」
「そんなら姉ちゃんかて、周りに意地っ張りや思われてるで」
「うっさい、アホ!」
 いつも通りの口論に比べて、セックスの方はいつもと違う。愛液の滲むペースが早く、ぬちゃぬちゃという水音がもう漏れている。無表情はキープできるものの、太腿がどうしても強張ってしまう。どうやら本気で感じているらしい。まだ挿入されたばかりだというのに。

「あー、気持ちよすぎる……」
 陽斗は大きく息を吐きながら身を起こした。下手をするとあのまま正常位でイカされそうだったから、この体位変更はいい息継ぎになった。でも、陽斗が私を休ませるつもりなんてないのは眼でわかる。
「こうしたら、奥のポルチオってとこに響くらしいで」
 陽斗は私のお尻を掴み、腰を浮かせたまま挿入してくる。
「っ!!」
 最初の一突きで顎が浮いた。頭のてっぺんまでを串刺しにされたみたいな快感が来た。
「ううわ、すっごい締まる! 姉ちゃんも気持ちええん?」
 陽斗は上機嫌だ。弟を調子づかせるのは、姉としての沽券に関わる。
「あんたの観てたレクチャー動画で言ってへんかったん? セックスしてたら、膣の壁は充血して膨らむんや。気持ちいいとか悪いとか関係なしに、誰でもこうなんねん」
「いや、それにしてもこの締まりはヤバいって。レクチャー動画の『鬼マラ師匠』にも味おうてもろて、名器のお墨付きもらいたいわ」
「あんたなあ、その発想普通にキショいで」
「ははは、冗談やって。俺が姉ちゃんを他の男に抱かせるわけないやん」
「いや、その発言の方がもっとキショいわ!」
 舌戦を交わす間も、陽斗はクイクイと腰を動かしつづける。腰が浮いた状態だと踏ん張りが利かず、突かれたいように突かれてしまう。
 この体位は陽斗の言葉通り、突き当たりの子宮入口によく響く。でもそれだけじゃない。奥をつくまでの経由地点を亀頭が擦り上げていくのもつらい。
「ふんんっ……!!」
 強く亀頭が擦れた瞬間、思わず声が漏れた。遥か上空で陽斗がにやりと笑う。
「姉ちゃんの元カレって、ココ見つけた?」
 陽斗はそう言いながら、私の弱点に雁首を擦り付けた。最近調べた本によれば、Gスポットより少し奥のアダムGスポットと呼ばれる場所らしい。
「いちいちカレシの話題出さんといて。どういうつもりなん?」
「その様子やと、見つけられへんかったみたいやね」
 陽斗はニヤニヤと笑っている。私とした他の男に嫉妬心を燃やし、優越感に浸っているらしい。
 陽斗はますます調子づき、膣のスポットを経由しながらズンズンと奥をついてくる。これは初めての体験で、しかもとんでもなかった。一突きごとに杭を打たれるような刺激が脳を貫く。そのうち視界が一瞬ブラックアウトして、目の前でチカチカと火花が瞬く。余裕のない顔をしている自覚はあったから、首を反らせて弟に顔が見えないようにした。でもそうすると脳天がシーツに沈み込んで、目の前のチカチカが余計に酷くなる。
 音を上げたい。でも姉としてのプライドで上げられない。だから我慢した。頭上のシーツをぎゅっと掴み、拠り所のない快感の濁流に抗った。気を抜けばくいくいと媚びるように上下しそうな腰を、足指でシーツを噛むことで押しとどめた。
「あー、気持ちいいー!!」
 やりたい放題に腰を振り、言いたいままに快感を叫ぶ弟が恨めしくなってくる。まるで姉弟の縮図のよう。下の子はいつでも我儘で、上の子はいつでも我慢我慢だ。

 宙吊りに近い格好のまま、何回イカされたんだろう。
「あ、イクっ!!」
 陽斗が逸物を引き抜き、ゴムの中で射精する。外出しするのは長年の癖だろう。
「あ、ゴムやから抜かんで良かったんや。なんや、あのまま出したかった」
 陽斗はそうぼやきながら私の腰を離す。お尻に当たるシーツは、一面がグショグショに濡れていた。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
 息が荒い。
「バテバテやん、姉ちゃん」
 陽斗は先の膨らんだゴムを外し、口を結んで私のお腹の上に置く。私はぐったりとしたまま、かろうじてそれを払いのけた。舐められるわけにはいかない。


                ※


 スポーツドリンクで水分を補い、ティッシュであそこを拭ってから、すぐに二回戦が始まる。
「えーっと、この後どうやったかな」
 新しいゴムを着けた陽斗は、スマホで動画を再生していた。関西訛りの男の声と、若そうな女の人の喘ぎ声が聞こえてくる。
「あ、これや!」
 目当ての動画を見つけたらしい。陽斗はスマホを傍に置き、私の足首を掴んでぐいっと開く。ほとんど180度近い大開脚だ。
「きゃっ!? ちょ、ちょっと!」
 あまりの格好に非難の声を上げるけど、陽斗は動画ばかり見ていて聞きもしない。かといって拘束を振りほどく力もなかった。さっきの行為が強烈すぎて、下半身に力が入らないせいだ。
「いくで」
 陽斗が腰を突き入れる。さんざん挿入された後なのに、亀頭が粘膜を割り開く感触は無視できない。性器周りの筋肉がきゅうっと収縮するのを感じる。まさか挿れられただけでイッたわけじゃないだろうけど。まさか。
『もっと締めて。下っ腹に力こめて、ギューッと。そしたらメチャメチャ気持ちようなるから』
 動画から男優らしき人間の声がする。
「姉ちゃん、もっと締めて」
 陽斗が同じ言葉を繰り返す。
「アンタ、私のことAVの実験台にしてるわけ? そんなん彼女にやったら一発で嫌われんで!」
「だから彼女なんておらんて。それに、いてもせーへんよ。姉ちゃんを気持ちようしたいから色々調べたんや。ホラ観て、めっちゃ気持ち良さそうやん」
 陽斗はそう言ってスマホを拾い上げ、私の方に画面を向ける。
 画面に映っているのは、私達と同じ体位で繋がる男女。ポーズは同じだけど、女優の華は段違いだ。
『ああああ気持ちいいわあ、師匠っ!!』
 そう歓びの声を上げている金髪の女優は、薄いモザイク越しにもはっきり判る美人だった。スタイルも抜群で、とくに脚がスラッと長い。八頭身ぐらいあるんじゃないだろうか。胴長短足な私とは全然違う。
「こんなん、女優さんのスタイルがええから見映え良いだけやん」
「や、そんなこと無いって。だって姉ちゃんも今、めちゃめちゃエロいし」
 陽斗は私を見下ろしたまま真顔で言う。その顔と言葉に、一瞬でもドキリとしてしまうのが嫌だ。
「……そんなん弟に言われても、なんも嬉しないわ」
 拒絶の言葉も歯切れが悪い。まるで照れているような響きになって、陽斗の嬉しそうな顔を引き出してしまう。

 陽斗はたんたんと腰を打ち付けながら、スマホの映像を私に見せ続ける。
 自信満々に見せてくるだけあって、すごい映像ではあった。男の方は冴えない中年親父風だけど、陽斗が霞むレベルの巨根の持ち主だ。そのペットボトルのような物を突っ込まれる女性の方は、頭をシーツにめり込ませるレベルで仰け反っていた。男がニヤニヤ笑いながら動きを止めても、女性の動きは止まらない。自分から腰を叩きつけるようにして快楽を貪っている。
 そんな姿を見せられたら、こっちまで変な気分になってしまう。
「うわ姉ちゃん、もう俺が言わんでもめっちゃ締めてくれるやん。トロけそうやわ」
 陽斗がまた嬉しそうに笑った。またやってしまったようだ。
「あ、アホか! こんなに脚開かされたら、勝手に力入んねん!」
「ふーん、そうなん。まあええわ、俺めっちゃ気持ちいし!」
 陽斗はスマホを投げ捨て、私の足首を掴み直して上に持ち上げる。
「うぐっ!?」
 脚をコントロールされる──その厄介さは想像以上だった。膣の刺激に耐えかねて腰を逃がそうとしても、脚を掴み上げられているから逃げられない。その結果、身体が反射で逃れようとするほどの快楽をまともに喰らってしまう。
「……ッ、……ッ!!」
 歯を食いしばり、声だけはなんとか殺した。でもその裏では、何回も、何回も、何回もイカされている。ブルブル震える太腿や脹脛は力みすぎて変形しているし、足指ときたら10本全部が反り返っている。顔のすぐ近くでそんな異常事態が起きているんだから、気がつけと弟に叫びたい。でも、気付かれたくないという思いもある。頭がグチャグチャだ。思考力が奪われている。弟とは何百回とセックスしてきたけど、ここまでになるのは初めてだ。
「ああああイク、イク! 姉ちゃん、俺もういきそう! イッてもええ!?」
「はっ、はっ……き、訊かんでええやろ。さっさとイキぃな!」
 弟の絶頂宣言は、私にとっての救いだった。やっと終わる、やっと休める……それしか考えられない。
「おぉっ、あ、あ゛ーーっ…………」
 弟が射精に入った瞬間、そんな声が鼓膜を震わせた。弟の声に違いない。私の口も開いていて、喉が震えている感じもするけど、気のせいに決まっている。


                ※


「自分で脚抱えて。離したら負けな」
 3回戦では、陽斗が妙な条件をつけてきた。正常位のままVの字に脚を開き、その膝裏を自分で抱えておけという要求だ。
「なんなん負けって。なんの勝負や」
 思わず苦笑するものの、勝負を挑まれたからには姉として逃げるわけにはいかない。
「絶対離したらアカンで」
 しつこく念押ししつつ、陽斗は腰を遣いはじめた。腰を揺らし、ぐちゅぐちゅと音をさせながらリズミカルに奥を突いてくる。
 子宮を揺さぶられるのは正直つらい。口がだらしなく開きそうになるし、脳も放置したバターみたいに溶けてくる。ギリギリ喘いではいないものの、目は虚ろで、鼻水も少し垂れてくる。
 そんな私を前に、陽斗は責め方を変えた。ぐうっと奥の奥まで突き込んだまま、その位置をキープする。視線はスマホを追っているから、例の動画に倣っているんだろう。
『ァ待っで、待っで待っで待っでッ!!!』
 あの美しい人が出しているとは思えないほど、濁りきった哀願が響き渡る。同じ目に遭っている私には、その気持ちが痛いほど理解できた。脚のVの字なんて保てない。膝からMの字に折り曲げたまま、ブルブルッ、ブルブルッ、と下半身全部を痙攣させるしかない。脳のバターがまた溶ける。目の前が数秒間暗くなって、チカチカと火花が散る。甘ったるいのに、つらい、怖い。待ってと叫ぶのも当然だ。
「すごいな姉ちゃん、これ我慢できるんや」
 そう陽斗の声がして、また動きが変わる。私の下腹をぎゅっと押さえつけながらの前後運動。竿の半分ぐらいを抜き差ししてのピストンらしいけど、異常なほど深く思える。
『がはぁっ!! だめ、奥ぅうッ……!!』
『全然奥なんて入ってへんで?』
『ちっ、違、大きいからッ……子宮が、奥にいっ……!!』
 動画の切ない声が、また私とシンクロする。子宮がお臍側に押し込まれてる気がするんだ。
『それな、子宮が完全に降りてるからやで。精子が子宮の中まで届きやすいように、身体が孕む準備しとるんや』
 女性の悲鳴に割り込む男の声は、洗脳するかのようだった。そしてその声をさらに上書きする勢いで、パンパンパンパンと肉のぶつかる音が響く。そしてそれは、すぐに現実である私の周りでも起きはじめた。
『おお゛お゛イグゥッ、イッでるう゛っ!! いぐ、イグふうっ、いんグぅう゛う゛ーーッッ!!!』
 相手に気を許しているのか、あるいは調教された結果なのか。動画の中の彼女は、モデルみたいな見た目からは想像もつかない喘ぎを漏らしていた。
 私はそこまでの声は上げられない。でも、澄まし顔でもいられない。
 パンパンという音の合間合間に、絶頂の高波が襲ってくる。一度その波に呑まれれば、快感という深い海で溺れるしかない。
「お゛っ、お゛っ! ン゛っ、おほォっ……お゛!!」
 苦しさと快感の交ざった声が漏れる。膝を掴む握力がなくなりかけ、急いで掴み直す。
 苦しい。気持ちいい。苦しい。気持ちいい。
 楽になりたい。力が入らない。意識が……保てない。
「あ、手離してる!」
 耳元でそう叫ばれてやっと、自分が膝を離していることを認識できた。
 勝負に負けたんだ。姉としての矜持が傷ついたんだ。なのに、それがどうでもよくなるぐらい、快感に浸っているのが心地いい。

『「お仕置きや』」
 動画の中と外で、男の声が重なる。その直後、私の足が持ち上げられ、マングリ返しの格好を取らされた。
「え、なにすんの!? こんなん嫌やっ!!」
 その訴えも空しく、上からのしかかるように挿入される。
「んあああっっ!!」
 さすがに大きい声が出た。体重をかけた真上からの杭打ちは、気のせいじゃなく子宮を潰される。普通だったら痛くてたまらない。でも膣が蕩けきった今は、別の意味でたまらない。挿入だけでいきなりイかされてしまった。
『どうや女王様、これがいわゆる“種付けプレス”や』
 動画の中から声がする。種付けプレス……なんて下品で、的確な呼び名だろう。
「あんた、これっ……いくらなんでも……!」
 苦しさを押して陽斗に呼びかけるものの、すぐに腰の動きが始まってしまう。
『ああ゛あぁ゛あ゛ぎもぢいいっ! お゛かじぐなっちゃう゛、お゛がじぐな゛っぢゃう゛う゛っ!!』
 スマホからの鬼気迫る声が聞こえているのは、私だけじゃない。
「おかしくなりそうなんやて。そうなん姉ちゃん?」
 そう訊かれるけど、答えない。答えられない。真上から体重を乗せて子宮を潰されると、一突きごとに深くイってしまう。
「ッああ゛、あ゛ァア゛っああ、あ゛ッッ!!」
 潰れたカエルのような悲鳴が漏れ、指先の開いた脚が痙攣する。
「姉ちゃん、ほんっまエロすぎやわ」
 陽斗はそんな私を見て笑い、どさくさに紛れてキスを迫った。でもそれだけは、顔を横向けて全て拒否する。そこは本当に最後の一線だと思うから。
 強すぎる刺激に、何度も意識を失いかける。おかしくなる、という言葉がいよいよ深刻に頭を過ぎる。そんな私の窮地をギリギリで救ったのは、陽斗自身の限界だった。
「あーヤバい、イクっ……イク!!」
 陽斗は呻きながら体を震わせ、ゴムの中に精子を吐き出す。スマホからは本当に狂っていそうな、人とは思えない絶叫が続いてるけど、私の方はかろうじて助かった。
 とはいえ、ダメージは大きい。アレを引き抜かれても、弟の存在感が体の中から消えない。
「ヤバ、めっちゃ開いてる。俺のチンコ、またデカなったんやなあ」
 私の割れ目を見ながら、陽斗がぼやいた。その惚けた態度が妙に腹立たしい。
「はーっ、はーっ……なんそれ、すっごいムカつくんやけど。その自覚もなしに、上からガンガン突っ込んできたん!?」
「ご、ごめんて姉ちゃん! 調子乗ったんは謝るから、そんな怒らんといてよ……」
 私に睨まれると、陽斗は怯えたように肩を竦める。体はすっかりオトナになったくせして、こういう所はチビな頃とちっとも変わってない。
「……ふっ」
 つい噴きだしてしまう。私はやっぱり、どこかネジが外れてるんだろう。あれだけ好き勝手された後で、しかもこんな大型犬相手なのに、撫でたり頬ずりをしたくなるなんて。


                ※


 大型犬は、汗を流すために入ったお風呂場でも纏わりついてきた。
「姉ちゃん、またオッパイでかなったやん」
 背後から私の胸を揉みつつ、陽斗が囁く。
「いや、久しぶりやのになんでわかんの……キモ」
「当たり前やん。この揉み心地忘れたことなんて一日もないもん」
「いやそれ、キモい通り越して怖いから」
 そんな軽口を叩く中、陽斗の左手が私の股に潜り込む。
「ん!」
 指を入れられると声が出た。やりすぎて粘膜が擦り切れているから、少し痛い。でも、それ以上に興奮している。少し指を動かされただけで、クチュクチュと水音がしはじめる。
「乳首また勃ってきたやん。アソコもグチョグチョやし。姉ちゃんって昔から、こうやって後ろから弄くる方が感じやすいよなー。顔見られんぶん集中できるとか、そういうん?」
 陽斗は私の身体を好き放題に弄りながら、同じく好き勝手なことを言う。
「あんた、ホンマなんなん? やってることも含めて、痴漢してるオヤジみたいやで」
 そう言い返しながらも、鼓動が早まるのを感じていた。確かに、後ろから愛撫される方が感じるのはそう。でもそれとは別に、変な気分になってしまう理由がある。

 私達が初めて“した”のもお風呂だった。お風呂場は、私たち姉弟の間違いが始まった場所。
 ……いや、責任を問われるなら私だ。早い内から、弟が一人で入浴できるように躾けるべきだった。思春期を迎えた弟を前に、無防備に裸を晒していた事こそが問題だ。
 弟の人生を狂わせたのは私。だから、私にセックスに浸る資格なんてない。言っても聞かないなら、やりたいだけやらせて飽きるのを待つだけだ。
 きっとそう遠い話じゃない。女といえば私しかいなかった子供の頃ならともかく、今や可愛い女子に囲まれている弟が、私みたいな冴えない女にいつまでも執着している筈がないんだから。

 お尻に当たる硬い物が、どんどんサイズを増していく。また勃起してきたらしい。
「ああもう我慢できひん。入れるで!」
「ちょい待ち、あんたゴムは!?」
「今ない。でもごめん、ホンマにもう我慢できひん!」
「ああもう……外に出しや!」
「わ、わかっとるよ。わかっとるけど、そんなギュウギュウ締めんといて。暴発しそうや!」
「アホ、締めてへんわ! あんたのが無駄にでかいだけや!」
「はあ、はあ……へへへ、ホンマに? 俺のってそんなデカいん? 姉ちゃんの元カレより?」
「はっ、はあっ……あんた、ホンマにキショいわ……」
「だって気になるやん。俺、姉ちゃんが絶対忘れられへんオトコになりたいねん!」
 暴発しそうというのは本当なんだろう。陽斗は挿入したまま、ほとんど動かなかった。ゆっくり押し込むぐらいで、ピストンと呼べるほどの動きはしない。ただ、代わりに手は貪欲だった。右手は乳房と乳輪・乳首を弄び、左手は愛液を塗り伸ばすようにクリトリスを撫でてくる。

 ( 私に、セックスに浸る資格なんてない )

 心の中でそう繰り返し、壁に手をついたまま堪える。でも、さんざん絶頂して敏感になっている身だ。無反応でいられる訳もない。
「んっ、んっ……」
 どうしても声が漏れた。とろりとした液体が膝まで垂れていくし、脚は内股に閉じようとする。
「くあっ!」
 乳首とクリトリスを同時に摘み上げられた瞬間には、眼球がぐるっと上を向いた。絶頂だ。膣の襞が弟の分身を包み込み、甘やかすように舐めしゃぶっている。
「あ、あ、姉ちゃん、そんな締めたらっ……!!」
 震える声でそう囁きかけられた直後、膣の中の熱さが跳ねた。どくっ、どくっ、と何かを吐き出しているのもわかる。
「ご、ごめん姉ちゃん、中に出してもうた!」
「あ、あんたなあ! まあ、一応ピル飲んでるけど……」
 私がそういうと、陽斗は安心したように息を吐き出した。
「よかった。あ、あともう一個ええ?」
「なに?」
「今出したばっかやねんけど、姉ちゃんのナカ気持ち良すぎて、腰が止まらへんねん。このままバックで続けてええ?」
「はあ……勝手にしたらええやん。さっきかて滅茶苦茶やっといて、今更何言うてんの?」
 私が訝しむと、陽斗は照れたように目を逸らす。
「せやけど、バックって簡単に奥まで入るから、ガンガン突きまくったら女の子がお腹痛なるって動画で言うててん。さっきもハイになってやり過ぎた気ィするし、心配なって……」
 ぼそぼそと弁解しながら、機嫌を窺うように私の眼を覗き込んでくる。昔から変わらない、幼稚な、そして卑怯な仕草だ。弟にこんな目をされて絆されない姉なんて、この世にいるだろうか。
「……アホ。あんたに心配されるほどヤワちゃうわ。そんなん気にするぐらいなら、ヤりたいだけヤッてさっさと終わらせて。長引く方がしんどいねん」
 私がそう言うと、陽斗の顔は太陽のように明るくなった。

                ※

「姉ちゃん!! 姉ちゃんっ!!」
 陽斗はそう叫びながら、猿のように腰を打ち付けてくる。ただでさえ音が反響するバスルームでは、パンパンという音が煩いぐらいだ。
「あ゛っ、あ゛んっ!! ん゛っ、ん゛ん゛っ……あ!!!」
 思春期の男子の全力をぶつけられて、声を殺しきるのは無理があった。壁に手をついて直立を保つだけで精一杯。いや、それすら十分には出来ていない。何度も絶頂し、愛液をまき散らした結果、膝は完全に笑っている。私がそんなだから、陽斗もやりづらかったに違いない。
「気持ちいいね、姉ちゃん……!」
 陽斗はそう囁きながら私の両腕を掴み、後ろに引き絞りながら突きはじめる。
「う゛っ!!?」
 身体を反らされての立ちバックは、強烈に私を追い詰めた。
「んあ゛っ、あ゛っ、イクっ!! あぁ゛、おぉ゛……んお゛、お゛っ!!」
 スマホの映像で耳にした、あの声……女の出しちゃいけない声が、お腹の底から絞り出される。恥ずかしくて唇を噛んでも、荒い息が止められないように、本音の喘ぎが止まらない。
「は、はるとっ、陽斗待ってっ! お姉ちゃんね、今ダメなの! い、いまイッてる、イッてるのお゛っ!!」
 必死に叫んでみるけど、聞き入れられないのは分かっていた。弟の性格は誰よりよく知っている。一度夢中になったら、周りなんて目に入らないことも。
「ンお゛おっ、あふう゛うう゛!! イグよ、おねえちゃんまだイグよおっ!!」
 泣き言か、報告か。よく解らない叫びを漏らしながら、股間から飛沫を噴き散らす。ハメ潮というものだろうか。潮を噴くのは気持ちよくないなんて、どこの誰が言ったんだろう。潮まで噴いたという事実は、何より正気を狂わせる。男にとっての射精と同じ。自分の身体が快感に屈服したという明白な印だ。
「お゛っ、おう゛っ、おう゛っ!!」
 親にはとても聞かせられない声を上げながら、また絶頂に押し上げられる。快感が強すぎて無意識に爪先立ちになるけど、陽斗は下から突き上げる形で私の一番深い所に寄り添ってくれる。
「姉ちゃん、顔見せて」
 弟の声がして、私は俯いていた顔を上げた。目の前にはちょうど鏡があって、狂ったように暴れる乳房と、その上の顔が映り込んでいる。
 締まりのない顔。頬は赤く、開いた口からは涎を垂らし、目からは涙を伝わせている。
「な、俺がいっつも言ってる通りやろ。世界一可愛くて、エロい顔やん」
 弟の囁きが耳から入り込んでくる。大好きなその声色は、脳まで自然に運ばれて…………張りつめた何かをぷつんと切った。
「ほんまやぁ。わたし、エッチやねぇ……♡」
 どこかからその言葉がして、鏡の中の顔が笑みに変わる。
 片腕が放された。その手は幸せそうな顔に優しく添えられ、横を向かせる。
「んちゅっ、はむっ……」
 唇を合わせ、舌を絡ませる。家族には普通しない、大人のキス。
 一瞬、頭の靄が晴れる。『一線を超えた』事実を認識して、目尻から涙が零れていく。


 お父さん、お母さん、ごめん。
 姉弟揃って倫理観が欠けていてごめん。でも代わりに、2人で幸せになるから。


 頭の中でそう約束し、また湯気のような世界に意識を溶かす。



 ああ。



 あたたかだ。



                            終


 


セックスレクチャー動画に出てきた男女は、『オス喰い女王の愛しき我儘』の2人です。

二度と出られぬ部屋 第五章 “先生”

第四章 オーガズム・クライマックス(後編)の続きです。
 今回は処女ビッチとのイチャラブ回中心。




■第五章 “先生”


 レストランでの食事は、相変わらず味がしなかった。あの日エレベーターで居合わせた5人娘のうち、4人の崩壊を目の当たりにした。その後味の悪さが、味覚を邪魔している。
 ボーイッシュな祐希。天使のような千代里。大和男児の魂を持つ藤花。大和撫子そのものの桜織。どの娘も気高く、眩かった。ケダモノ共に掴まりさえしなければ、どれだけ輝かしい未来が待っていたことだろう。
 後はあの、小悪魔じみた雰囲気を持つ少女のみ。彼女もどこかで凌辱を受けているんだろうか。いや、間違いなくそうだろう。類稀な美少女5人の中でも、一際目を引く容姿だ。ケダモノ共に放っておかれる筈がない。
 と、ここで俺は、逸物が頭をもたげている事に気がついた。
「……嘘だろ」
 思わず一人ごちる。
 興奮しているのか? あの少女の陵辱シーンを想像して? ……有り得ない。4人の少女が犯されるところを見て、あれだけ胸が痛んだんだ。その俺がなぜ、畜生の行為を夢想して興奮するんだ。だが、現に俺は勃起している。血の巡った亀頭部分が石のように硬くなり、ズボンのチャックを押し上げている。
 異常だ。だが思えば、初日からそうだった。エレベーターであの子を見た日から1週間近く、猿のように自慰に耽ったのを覚えている。あの小悪魔じみた少女には、尋常でなく心を揺り動かされるらしい。
 確かに格別の美少女ではあった。極上のスタイルで、“そそる”のは間違いない。だがそうだとしても、まだ熟してもいない未成年の小娘一人に、ここまで執着するなんて。
 彼女は今、どこでどうしているんだろう。
 俺はベッドに横たわってからも、次の日に目覚めて朝食を摂る間も、ずっとその思いに囚われていた。

「お早うございます」

 俺の思考を途切れさせたのは、端塚の声だ。奴はいつも通り、白髪混じりの頭を深々と下げる。最初こそ面食らったものの、今や疎ましい日課でしかない。その礼を見た後には決まって、見知った顔が泣き叫ぶ場面に出くわすんだから。
「昨日は、地下18階に居られましたな。あそこの調教は見応えがあったでしょう。女という生物は、ああして繰り返し絶頂させられ、オルガスムスの波に溺れれば、たちまち一匹の豚に変わるのです。蝶よ花よと大事に育てられた娘ほど堕ちやすい。元が白い布ほど、泥へ浸せば汚れやすいように」
 端塚は得意げに語る。罪も無い少女を不幸のどん底に突き落とし、なお恍惚の表情を浮かべる神経は、俺には到底理解できない。
「実に悪趣味だったよ、反吐が出るぐらいにな。大体、快楽に溺れるというなら、男の方はどうなんだ。あれこそまさに、堕落した豚だろう」
 俺がありったけの敵意を含ませて言い放つと、端塚の表情が強張った。雰囲気も変わったようだ。
「……本気で、仰っておられるのですか?」
「本気だ。俺に、ああいうもので喜ぶ趣味はない!」
 不穏さを感じながらも、はっきりと拒絶の意思を示す。答えをはぐらかし、奴らのペースに流されてはいけない。俺の中の何かがそう訴えていた。
 端塚の表情は複雑だ。敵意や憤りよりも、落胆の色が濃いように見える。だとするなら、奴は俺なんかに何を期待していたんだ。
「変わってしまわれましたな」
 皺を波打たせながら口が動き、そんな言葉が吐き出された。変わってしまった……過去の俺を知らなければ出てこない言葉だ。やはり、俺とこいつには過去に接点があるのか。
「致し方ありません。こうなったからには、極限状況下での覚醒に賭けるとしましょう」
 端塚はそう言って、パチンと指を鳴らす。すると壁際に控えていた数人のセキュリティーが一斉に動き出し、瞬く間に俺を包囲する。明らかに俺を捕らえようとする動きだ。
「なっ……どういうつもりだ!?」
 端塚に問うも、返答はない。代わりに眼帯で覆われていない右目が、レストランの入口を指し示す。
「くそ……っ!」
 逃げ場を塞がれた今、選択肢などない。セキュリティーに包囲されたまま、エレベーターでフロアを移動させられる。
 行き先は、一つ上のフロアだ。

              ※

 地下19階……そこは、異様だった。他のフロアであれば、エレベーターから出た場所にはまず高級ホテルさながらの煌びやかなエントランスが広がり、その奥は壁で仕切られている。その壁にたった一つ設けられた扉を開けば、ようやく阿鼻叫喚の地獄に辿り着く。そういう構造だった。
 だが、ここは違う。エレベーター前は停電でもしているように暗い。そしてその闇の向こうには、逆に煌々と照らされた空間が広がっていた。ライトアップされた生活感のない部屋にベッドやテーブルが並んでいる様は、ショールームを思わせる。眩い部屋とこちらは、透明なガラスで仕切られているらしい。
「お召し物をここへ。時計なども全てお預かりいたします」
 端塚がバスケットを床に置く。服を脱げというのか。承服しかねる横暴だが、やはり拒否権はない。
 生まれたままの姿になった俺の前で、明暗を隔てるガラスの一部が開かれる。
「では、ごゆっくり……」
 端塚の言葉と共に、俺の体はガラスの向こうへと放り込まれた。
 背後で入口が閉じられる。慌てて振り返ると、そこには巨大なミラーが広がっていた。一糸纏わぬ男が、膝立ちになって映り込んでいる。外からは中が透けて見えたんだから、マジックミラーというやつか。
 背後だけじゃない。四方の壁もすべて鏡張りだ。天井の過剰な照明がミラーに反射していて、ダイアモンドにでも閉じ込められている気分になる。上を向いていると頭がクラクラしそうだ。

 部屋そのものは、少々広さのある独房という感じがする。中央にベッドが鎮座し、その近くにテーブル1つと椅子2つ。東の壁際に木製の棚。西の壁際には簡素な洗面台と洋式便器が設けられ、北西の隅にはシャワーと排水溝。あるものといえばそれぐらいだ。
 調度品はほとんどが簡素だが、ベッドだけは立派だった。大人2人が余裕をもって寝られるクイーンサイズ。ボードは赤で、シーツはピンクだ。掛け布団は見当たらない上に、シーツはマットレスに固定されている。休息用の寝具ではなく、セックスを前提とした舞台装置ということか。であれば、ど真ん中に鎮座しているのも頷ける。
「ふざけやがって……」
 俺がぼやきながらベッドに近づいた、その瞬間。ベッドの向こう側……俺からも外からも死角になる場所で、何かが動いた。あれは、人の素足か。
「誰かいるのか!?」
 そう呼びかけると、足の指がピクリと反応する。俺はその相手とコンタクトを取るべく、また一歩ベッドに近寄った。だが。
「来ないでっ!!」
 響き渡ったのは、拒絶の言葉。声の感じからすると女だ。それも相当若い、ティーンだろうか。そんなことを考えている間に、ベッドの陰から顔が覗く。
「あっ!?」
 思わず声が出た。
 あの子だ。
 エレベーターでの一瞥で俺の心を惑わした、淫魔を思わせる少女。涼やかな目元、形のいい鼻、薄く血色のいい唇、すっきりとした顎のライン……どれもが脳に焼きついた情報と合致する。
「あんた、あの時の!」
 向こうも俺の顔に覚えがあるらしい。互いに見知った仲というわけだ。だが小悪魔じみた吊り気味の瞳は、安堵するどころかむしろ警戒の色を強めた。
「あんたもココの連中の仲間だったの!? 私をこんな所に閉じ込めて、何するつもり!?」
 敵意を込めて叫びがぶつけられる。どうやら誤解を受けているらしい。
「違う! 俺もいきなりここに閉じ込められたんだ。施設側の人間じゃない!!」
 必死に弁明するが、相手の警戒は解けない。年頃の少女がいる部屋に、丸裸で侵入した男──それが不審者めいているのはわかる。だが、俺に責があるわけでもない。
 互いに沈黙したまま睨み合い、一分も過ぎようかという頃だ。天井近くに設けられたスピーカーから、ザザッというノイズが漏れた。

『御機嫌よう、お二方。居心地は如何ですかな?』

 端塚の声が聴こえてくる。いきなり裸で放り込んでおいて、居心地も何もあるか。
「良いわけないでしょ! ってか、この部屋なんなの!?」
 例のあの子も声を荒げる。するとその問いに答えるかのように、またマイクのノイズが走った。

『そこは……“セックスをしたら最後、二度と出られぬ部屋”です』

 予想外の答えに、俺達は固まった。
「え……?」
 今、何て言った。セックスをしたら最後、二度と出られぬ部屋……?

『お二方には、そこでしばし共同生活を送っていただきます。その間一度も性交渉がなければ、解放して差し上げましょう。逆に一度でも性行為が認められれば、二度と外に出る事は叶いません。オスとメスに成り果てるも良し、苦境を耐え凌ぐも良し。選択はご自由に……』

 その宣言の後、ブツッという音を最後にマイクのノイズが消える。
「ま、待て! いつまでここに閉じ込める気だ! おい!!」
 外に向けて叫ぶが、返事はない。こっちの声が届いていないのか、あるいは聴こえているのに答えを寄越さないのか。

 密閉された空間に、静寂が満ちる。
 …………いや、違う。音は微かにしている。シューッという、ガスの漏れるような音が。静まり返った状況でないと聴こえない音量な上に、抑揚やリズムがないから判りづらかっただけだ。
 音の出所は、スピーカーと同じく天井近くらしい。細いパイプからドライアイスのような気体が噴き出しては、空気中へ拡散していく。その光景には見覚えがあった。桜織がプレイルームへ連れ込まれる前、50人の肉体労働者の逸物をしゃぶらされている時に見たものだ。

『煙っつうか、ガスだな。ま、媚薬の類と思えばいい。シャブみてぇに即効性はねぇが、このガスを吸い続けりゃ、どんな人間でも確実に色狂いになる。神経をやられて、男なら女を抱くこと、女なら男のイチモツにしゃぶりつくことしか考えられなくなる』

 手越の言葉を思い出す。そして同時に、その後の光景も。
 嘘じゃなかった。あの清楚な桜織が、恥垢まみれの逸物を舐めしゃぶるだけで愛液を滴らせ、純潔を失ったばかりのセックスで何度も達していた。あんな事は、薬か何かで理性を狂わされない限り起こりえない。
 悪趣味なことだ。あのガスをたっぷりと吸わせて、閉じ込めた人間を発情させる。その上で“セックスをしたら最後、二度と出られない”という制約をつけ、実験体が理性と衝動の板挟みで苦しむ姿を愉しもうというわけか。
 これまでのパターンからすれば、じきにマジックミラーの向こうに変態客が招き入れられ、こっちを観察しはじめるんだろう。その中には、ここ数日で顔を合わせた人間がいる可能性も高い。
 堕ちる祐希を眺めていた時、周りでニヤけていた連中。
 苦しむ千代里を見ていられず、一悶着起こした相手。
 藤花の被虐シーンに動揺する俺を目撃した客達。
 桜織の崩壊をモニタ越しに眺める部屋の同席者……。
 あんな外道共に、苦悶する姿を観察されるのか。そう思うと腸が煮えくり返りそうだ。
 だが、煮えくり返りそうなのは腸ばかりじゃない。そこよりやや下……男の象徴もまた、熱と共に硬さを増してきている。この部屋に入ってから僅か数分で、早くもガスが効いてきたらしい。桜織という前例を見て、頭では理解していたつもりだったが、いざ自分で体験すると恐ろしいものだ。

 果たして俺は、この出口の見えない地獄に耐えられるんだろうか。


              ※


 閉じ込められてから、どれぐらい経ったんだろう。この密室に時計はないし、腕時計も取り上げられているから、正確な時間を知る術はない。ただ、1秒1秒ははっきりと感じられる。どくん、どくん、と秒刻みで鼓動が響き渡るからだ。
 天井から噴き出すガスは、着実に俺に効いていた。刻一刻と動悸が早まり、汗が滲む。睾丸がむず痒くなり、射精管が疼く。逸物は何の刺激もなしに勃ち上がり、石のように硬くなっている。オスとしての機能が目覚めているのは、今更疑う余地もない。
 俺を狂わせる材料は、ガスの他にも存在する。壁際の俺から数メートル離れた豪奢なベッド……その陰に隠れる形で座り込む娘の存在だ。
 彼女はベッドに背を預ける形で膝を抱え、俯くかこっちを睨むかを繰り返している。俺のことをかなり警戒しているようだ。
「……ちょっと」
 その彼女が、ベッドの端から憮然とした表情を覗かせた。俺はその表情を見てハッと息を呑む。老若男女誰であれ、敵意を露わにした表情は醜く見えるものだ。だが、彼女はキツい表情でも不快感がない。まるで一流の彫刻のような、信じがたいほどの美貌だ。
「なんだ」
「トイレ行くから、下向いといてよ」
 なるほど。見た目は芸術品のようでも、やはり生理現象はあるらしい。普通なら後ろを向けと言うところだが、四方を鏡で覆われたこの部屋では、結局鏡越しに見えてしまう。だから床を見ていろというわけだ。
「顔上げたら殺すから」
 そう念押ししてから、彼女はゆっくりと立ち上がる。その瞬間、“みちゅり”という微かな音が聴こえた。水気のある音。汗で床に張り付いた尻肉が離れる時のものか。そう理解した途端、逸物が大きく脈打つ。睾丸が収縮し、硬い棒が上下する。まるで思春期の中学生だ。
 その中学生さながらの欲望に抗いきれず、少し目線を上向ける。
 俺に背を向ける形で歩く彼女の、太腿から下が視界に入った。まさにモデル級の脚線美。この数日で裸体はいくつも目にしたが、その記憶が消し飛ぶほどのインパクトがそこにはあった。やっぱり、彼女は別格だ。男の情欲を問答無用に掻き立てる淫魔だ。
「ふう……んっ」
 その淫魔が洋式の便器に跨り、小さく息む声が聴こえてくる。そしてその直後、じょぼぼぼ、という音が響いた。所詮はただの排尿だ。だがそれが、俺の性欲を刺激する。背筋にぞわりとした興奮が這い上る。

 ( ──子供相手に何を考えてる。落ち着け、自我を保て! )

 そう自分に言い聞かせるが、興奮は収まりそうにもない。
 用を足し終わったあの子が立ち上がり、ベッドの方へ戻っていく。とてもティーンエイジャーとは思えないスタイルを覆い隠すのは、彼女自身の両手のみ。固定されたベッドシーツを始めとして、この部屋では体を隠せる類のものは徹底して排除してある。あくまで互いの肉体を意識させ、セックスに誘導しようということか。悪趣味なことだ。

 それから、さらに経ったころ。東側の壁で物音がした。見ると、ミラーの中央部分が小窓のように開いている。そしてその僅かな隙間から人の腕が覗き、食器を載せたトレーが棚に置かれた。
「お食事です。食器とトレーは、棚の上にご返却ください」
 トレーを差し入れた人間は、そう言い残して小窓を閉じた。
 献立は、グリーンピースが乗ったオムライスに、付け合せのポテトサラダとコーン、そして大きめの器に入ったオニオンスープ。桜織が食わされていた物よりは随分と真っ当だ。
 腹も減っているし、早くありつきたいところだが、その前に問題がある。部屋にテーブルが一つしかないことだ。
「言っとくけど、一緒に食べるとかありえないから」
 小悪魔じみた少女は、冷ややかな目でそう告げた。まあ確かに、狭いテーブルで向かい合って食事ができるほど親密でもない。
「俺は床でいい。テーブルを使え」
「へっ!?」
 俺がトレーを手に胡坐をかくと、切れ長の目が縦に開く。多分、テーブルの取り合いになることを覚悟していたんだろう。
「ふ、ふーん、そ。じゃ、遠慮なく」
 そう言って足早にテーブルへ向かう彼女の声は、ほんの少し柔らかいように思えた。

 気前良く譲ったのはいいが、やはりスープつきの食事を膝に乗せての食事は不自由だ。床に座り込んだ俺の食事は、さぞ不恰好なことだろう。それを見かねてなのか。
「え、……っと、さ」
 上空から、戸惑いがちな声がする。顔を上げれば、小悪魔娘が開いた口の手前でスプーンを止め、俺を見下ろしていた。
「その、やっぱ、一緒でいいよ」
 そう言って皿を引き、テーブルの片側にスペースを作る。有り難いことだ。

 正面に座ってそれとなく観察してみると、彼女は見た目こそ今時の女子高生という感じだが、食事マナーはちゃんとしていた。スプーンで物を掬い、口に運び、咀嚼し、飲み込む。その一連の所作は令嬢のそれだ。
 ただ、全てが完璧なわけじゃない。オムライスの頂点に乗っていたグリーンピース3つが、さりげなく皿の端によけてある。なんでも残さず食べる、という流儀ではないらしい。
 ……あまり見るものでもないか。彼女に不審がられるのもあるが、俺自身が妙な気分になる事の方がまずい。今の俺は、性欲が芽生えたての中学生も同然だ。顔立ちの整った少女が、物を口に運び、咀嚼する……その様子を見ているだけで、逸物がいきり勃ってしまう。硬くなった物の先は斜め上方向に反り返り、常にテーブルを押し上げている始末だ。いよいよ、やばい。
 その発情ぶりは、食事が済んでも収まらなかった。風船のように膨らんだ性器の内で、沸騰した血が氾濫している。桜織のケースと同じく、食事に何かが盛られているのかもしれない。
 俺はこのザマだが、彼女はどうなんだろう。彼女もこの密室の中でガスを吸い、俺と同じ食事を摂ってるんだ。何らかの変化があってもおかしくない。そう思って意識を向けると、彼女にも異変が起きていることがわかる。息が荒い。汗の量が尋常じゃない。胸の先がかすかに尖っている。それらの特徴は、あの4人の少女達が昂ぶった時のそれと同じだ。
 そして、二回目の食事を受け取りに行く最中、俺はさらに決定的な異変を目にした。愛液だ。すらりとした脚の内側を、透明な雫がいくつも伝い落ちている。彼女の歩いた後に点々と残っているんだから、見間違えということはありえない。
「ジロジロ見ないでってば!」
 彼女は俺を睨みながら叫んだ。その目尻には涙が滲んでいる。彼女もつらいんだろう。意思とは無関係に発情し、おまけにそれを見知らぬ男に見られてしまう。年頃の少女にとっては、耐えがたい恥辱に違いない。
「すまん」
 俺は相手から視線を外し、テーブルでの食事に専念する。最悪、という小さな呟きを耳にしながら。
 ああ、最悪だ。良識ある大人であれば、未成年の裸を興味本位で眺めたりはしない。上のフロアでひしめいている外道共を笑えない。俺は自分にそう言い聞かせ、できうる限りの自制を試みた。
 だが、興奮は収まらない。鉄の棒のように硬くなった逸物の先からは、とうとう先走りの汁まで溢れはじめている。
 
 (なんだ、この反応は。そうまでしてあの子を抱きたいのか。孕ませるつもりなのか。この畜生め!)

 俺は自分が恨めしくなり、膝を抱える手の甲に噛みついた。強烈な痛みが走り、ほんの少し気が紛れる。だが、あくまで少しだけだ。2秒もすれば、また鼓動が俺を支配する。原始的な欲求が、下半身の先端で力強く脈打つ。

 暑い。

 熱い。

 汗が止まらない。
 雄の匂いが身体中から立ち上っている。

 痛い。逸物の表面が痛い。
 射精管が灼ける。睾丸がはち切れる。

 狂いそうだ。

 密室の中、足元から徐々に水位を上げてきた“苦痛”は、今や顎の上に差し掛かっている。気を緩めればすぐにでも溺れかねない量だ。
 俺は、随分とそれに抗ったと思う。正確な時間などは知る由もないが、食事が7回差し入れられるまでは耐え抜いた。だが、8回目。音をきっかけに、高熱にうなされるような状態で配膳場所へ向かった直後、それは起きた。
 普通であれば何でもないこと。トレーを掴もうと差し出した俺と彼女の手の甲が一瞬触れただけの、ごく小さな接触。その瞬間、痺れるような感覚に襲われた。皮膚の内側にビリビリと電流を流される感じだ。そしてその感覚は、ダイレクトに俺の脊髄と下半身までを貫いた。
「な、何……?」
 不審がる声に、俺は横を見やった。そこにあるのは、俺と同じく、熱に浮かされた顔。汗が浮き、頬が上気して……いやらしい。

 気付けば俺は、彼女を床に押し倒していた。
 実は、あまりこの瞬間の記憶がない。いつの間にか床に這う格好を取り、彼女を組み敷いていた。
「ハア、ハア、ハアッ……!!」
 自分の呼吸音が煩い。両腕の下から甘酸っぱい香りが立ち上ってきて、硬くなった逸物に血管が浮き立つ。若々しい肌も、腕を掴み上げる事でとうとう拝めたピンクの乳輪も、堪らなく興奮を煽る。気が強そうな顔だって、こうなってしまえば追い込まれた兎も同然だ。俺は妙な充足感に酔いしれながら、両腕に力をこめた。
「いや、ぁ……!!」
 少女の表情が恐怖に凍りつき、涙を湛えた目尻から、一筋の雫が伝い落ちる。
「!!」
 それを見た瞬間。さっ、と血の気が引いた。一瞬遅れて、自分のしている事に気がつく。
 何をしてるんだ、俺は。欲望のままに女を押し倒し、犯すつもりか? 獣のように?

『ヒトとしての心は、無くすなよ。絶対にな』

 いつだったか、電話越しに聞いた言葉を思い出す。
「があ゛ぁっ!!」
 俺は喚きながら、自分で自分の頬を殴りつけた。その衝撃は思った以上に大きく、体勢を崩して床を転げ回る。這う格好で動きを止めた時には、口一杯に鉄の味がしていた。だがその甲斐あって、少し冷静さを取り戻せたようだ。唖然とした表情で見下ろす全裸の少女を前にしても、本能のままに貪ろうとは思わない。
「す、すばん……」
 口から血を滴らせながら一言詫びを入れ、深く頭を下げる。
 あの子は何も言わず、俺が頭を下げる動きに反応して、怯えるように足を閉じた。彼女からすれば今の俺は、狂人以外の何者でもないだろう。


              ※


 また、退屈な時間が過ぎていく。
 以前との違いは2つ。1つは、自分で殴った右頬がジンジンと痛むこと。そしてもう1つは、例の彼女との物理的な距離だ。
 彼女は今、ベッドに背を預け、俺の方を向いている。
 あんな事があった後だから、俺は彼女の方を向かないようにしていた。だが彼女の方は、時々俺の顔を盗み見ているようだった。怪我の心配でもしてくれてるんだろうか。
 いや、それは都合良く考えすぎだ。ガスで発情させられたとはいえ、自分をレイプしようとした相手の身を案じる道理はない。奇行を重ねた俺を警戒しているからこそ、俺を正面から監視しているんだろう。
 俺にできるのは、耐え忍ぶことだけだ。己の中の本能を抑えつける。何日でも、何週間でも……。

「ねぇ。あんたさ」
 そう声を掛けられたのは、唐突だった。
「え?」
 想定外の事に、間の抜けた声が出る。すると彼女の口元が、ほんの少し斜めに歪んだ。だがそれもほんの一瞬で、すぐにまた表情が引き締められる。
「あんた、名前なんていうの?」
 尋ねられたのは俺の名前。興味を持ってくれたことは嬉しいが、残念ながら答えようのない質問だ。
「わからない。地下に来るまでの記憶がないんだ」
 正直にそう答えると、彼女は目を見開いた。
「……マジ?」
「ああ。自分が誰なのか、何の為にここに来たのか。何もかもサッパリだ」
「そう、なんだ……」
 彼女はそう言って、何か考え込む素振りを見せた。俺の言葉を疑っているのか、それとも何か思うところがあるのか。
 いずれにせよ、この会話の流れは貴重だ。俺の方としても、彼女の名前ぐらいは知っておきたい。
「名乗りもせずにあれなんだが……そっちの名前も、聞いていいか?」
「ん? 別にいいけど、たぶん聞かないほうがいいと思うよ」
「え、なんでだ?」
「聞いたら、皆ドン引きするから」
 そう答える彼女は、不思議な表情をしていた。どこか投げやりな目つきだ。
「ま、でもいっか。私の名前は、沙綾香。で、苗字は……」
 彼女──沙綾香は、そこで一旦言葉を切り、意味深に溜めてからこう続けた。
「『八金(やつがね)』」
 満を持して明かされた苗字は、不思議な響きだった。記憶が朧な俺でも、それがありふれた姓でないことは解る。
「ヤツガネ……? 変わった苗字だな」
 俺が思ったままを口にすると、沙綾香が目を丸くした。
「反応うすっ!」
 素っ頓狂な顔から、それに見合った声が発される。どうやら彼女は、もっと大きなリアクションを想定していたらしい。
「な、なんだよ……そんなに有名なのか? その苗字」
「いやいや、有名とかってレベルじゃないから。戦前から続く財閥だよ? おっきい銀行とか証券会社とか外食チェーンとか、みーんなウチの系列なんだから!」
 沙綾香は、腕を目一杯に広げて企業の規模を示してみせた。目を見開き、両手を上げて威嚇するその様子は、直立する猫を見ているようで癒される。
 ただ、そこには癒しだけじゃなく、いやらしさもあった。興奮のあまり、それまで頑なに胸をガードしていた腕が外れてしまっている。結果、想像以上のボリュームのある二つの膨らみが、モロに俺の視界に入ることになった。
「おい、胸……」
 俺が指摘すると、沙綾香は威嚇するような格好のまま固まり、見開いた目で下を見る。
「えっ……きゃーーっ!!」
 沙綾香の顔が、みるみる赤くなる。人間の顔色っていうのは、あんなに判りやすく変わるのか。遊び慣れていそうな見た目に反して、相当な初心らしい。
「み、見た!?」
 涙まで滲ませて睨んでくる沙綾香。
「お……おぉ」
 あれだけ露骨な状況だと否定もできず、ただ事実を認めるしかない。
「うーーっ」
 沙綾香は立てた膝を抱え、完全なガードを抱えながら俺を睨む。
「なんか、悪いな」
「ぐうううう…………っ」
沙綾香はまた呻いてから、ふうっと息を吐いて肩を竦めた。
「でもさ。八金って苗字聞いてもその反応なあたり、記憶喪失ってのはホントみたいだね。フツー顔が引き攣るもん」
「すごい財閥なんだったよな。……あれ、ってことは、ひょっとしてお嬢様?」
 今さらながらに気付いて、沙綾香を指差す。
「そ。超が5コつくぐらいのね」
 沙綾香は、目を細めて頷いてみせる。噂に聞くドヤ顔というやつか。
 しかし、そこまでのお嬢様とは。なるほど、食事作法も綺麗なわけだ。エレベーターで感じた妙な品のよさは、育ちのせいだったか。
 ただ、
「それにしては…………」
 俺は、目を細めて相手を見つめる。
「ちょっ、なに、なに!?」
 俺の視線を受けて、沙綾香は身を縮こめた。その細い腕では隠しきれない乳房を見て、改めて実感する。

( ってことは俺、さっき財閥のお嬢様のナマ乳を拝んだんだよな )

 そう思うと、ただでさえ発情している身体にいよいよ血が巡る。常時勃起状態の逸物が、ずぐりと脈打ちながら上向く。その勃起は、どうやら沙綾香にも悟られたらしい。目を細めて俺を睨んでから、彼女は肩を竦めた。
「ふーっ。記憶喪失っての、ホント納得だよ。あんたって、見た感じと中身がチグハグだもん」
「え? チグハグって、どういうことだ?」
「私ら、エレベーターで会ったでしょ。ここ来る途中」
 確かに、俺と沙綾香はエレベーターで初めて顔を合わせた。マイクロミニのスカートと黒ニーソックスで壁を足蹴にする姿に、視線を奪われたのを思いだす。あれから衝撃的なものを見すぎたせいで、遠い昔のことに思えるが。
「その時のあんたの印象ってさ、『意識高い系のナルシー男』だったんだよね。スーツも靴も時計も、いかにもな高級品で、金持ちアピールしたいんだろうなって感じだった」
 ああ。だからあの時、ふっと鼻で笑ったのか。逆に俺は、あの冷ややかな嘲笑のせいで、沙綾香という存在が頭を離れなくなったんだが。
「確かに、大層なもんばっかり身につけてたな」
「でしょー?」
 沙綾香はそう言って肩を竦める。
「私、財閥の一人娘だからさ。小さい頃から色んなパーティーに顔出させられて、エライ人と話させられてたんだ。特に、結婚相手になりそうな若手社長とか、実業家とかとね。でもそういう若い内に成功した人って、プライド高くてナルシーなのが多いんだよ。こっちに興味あるように見せといて、結局は自分が一番!みたいな。そういうのの相手をほとんど毎週末させられたらさ、ウンザリするよ。全寮制の高校入ってからは、ようやく逃げられたけど」
 なるほど。今“ビッチ”に見えるほど奔放に振舞っているのは、そうして窮屈に育てられた反動か。
「で、さ。あんたも最初はそういう系に見えたわけ。でも今のあんた、全然そんな感じしないじゃん? 自信満々どころか、常にキョドってる感じだし。仕事バリバリこなしてますって雰囲気でもないし。見た目と中身がチグハグってのはそーいう意味。それで記憶喪失って聞いたら、あー、ってなるでしょ?」
「うーん……そう言われると複雑だな。どうせなら、デキる男に見られたいもんだが」
「そう? 今のあんたの方が、いいと思うけど」
 俺の目を覗きこんで語る沙綾香の表情は、柔らかい。これだけの美少女に褒められて、悪い気はしないものだ。
「……そうか?」
 俺の表情も、自然と和らいでしまう。

 この会話をきっかけに、俺達は少しずつ打ち解けていった。会話の数も増えた。ただ、そこで問題になるのが俺の呼び方だ。本名が判らないなら判らないなりに、何かしら呼び名を決める必要がある。
「やっぱネーミングの基本は、見た目の印象だよね……ふぅむ」
 沙綾香はそう言って、顎に手を当てながら俺を観察する。
「……『社長』?」
 シャチョー。その響きに、なぜか全身の毛がざわついた。若い女の子にそう呼ばれると、なぜか罪悪感が凄い。
「い、いや。他のにしてくれ」
「ダメ? じゃあ、えーっと……『勃起おじさん』」
「もう少し愛情のある名前で頼む」
「えーっ!? ワガママだな~……」
 俺を見つめたまま眉を顰め、首を傾げる沙綾香。かなり難儀しているようだ。

 ( よっぽどアレじゃなきゃ、次のを受け入れるか )

 俺はそう考えつつ、沙綾香の結論を待つ。そして、数秒後。沙綾香が目を輝かせて手を叩いた。
「そだ! 『先生』とかどう?」
 沙綾香の口からでた呼び名は、覚悟していたよりずっとマシだった。先生──これなら、この年頃の女の子に言われても違和感は少ない。
「ああ、いいけど……なんで『先生』なんだ?」
「ん? 見た目がそれっぽいのと、先に生まれた……から?」
 先に生まれたから先生、か。なるほど、間違いじゃない。
「じゃ、それで頼む」
 俺がそう言って笑うと、沙綾香も笑顔を見せた。
「あいよーっ、セーンセ!」
 白い歯を覗かせて叫ばれるその言葉は、微妙にさっきと違っていたが、なんだか嬉しい。あんなに遠かった沙綾香との距離が、ぐっと縮まった気がした。

 距離が縮まったのは好ましい事だが、それには弊害もあった。警戒心が解けるにつれ、お互い無意識にガードを緩めてしまう。つまり、裸体を隠さなくなっていく。
 例えば、食事を取りにいく時。少し前の沙綾香なら、俺の方を睨みながら身を縮こまらせ、両手で頑なに乳房とあそこを覆っていたものだった。それが今では、割と普通に歩いている。俺の方へ正対しないように気をつけてはいるらしいが、食事のトレーを取る瞬間やテーブルに着く瞬間などに、見えてはいけない部分が視界に入ってしまう。
 俺自身もそうだ。『勃起を見せまい』とする意識が薄れ、気がつけば、屹立した部分を横目に覗かれている、という場面が何度もあった。

 いや。
 ガードが甘くなっているのは、心の距離のせいではないかもしれない。
 俺達は今、着実に理性を削られている。もう随分と長い間、セックスドラッグ同然のガスを吸い、強い照明を浴び続けているんだ。その状況はいわば、高熱にうなされたままサウナに閉じ込められているに等しかった。
 汗がひどい。心臓が破裂しそうに脈打つ。斜め上に反り返った逸物の先からは、先走り汁が溢れつづけ、玉袋どころか内腿にまでヌルヌルと絡み付いてくる。当然、沙綾香も同じような状態だ。
「はっ、はっ、はっ…………」
「はぁ、はぁ、はぁっ…………」
 荒い息を吐きながら、相手の性器を凝視し、ゴクリと喉を鳴らす。何度も、何度も。

「…………ね、手でしよ。お互い限界でしょ、正直」
 ある時、沙綾香がそう提案してきた。確かに限界は近い。性欲の発散を目的とするなら、いい案だと思った。
 ベッドの脇に立ち、初めて真正面から向かい合う。
 落ち着いてじっくり見ると、沙綾香のスタイルの良さに改めて驚かされる。
 まず、背が高い。175センチある俺とほぼ目線が変わらないんだから、170以上は確実だろう。
 身体の各パーツも極上だった。
 重力を無視して前を向く、お椀型の乳房。
 見えない帯で締め付けたような、驚くほど細い腰周り。
 それとは裏腹に肉感的な尻と太腿。
 そして何より印象的なのが、ウエストラインの高さだ。肩から腰、腰から踵までの比率は3:7……あるいはそれ以上か。
 祐希も、千代里も、桜織も、それぞれ咲き始めの花として魅力的だった。だが、沙綾香の肉体はその記憶を暴力的なまでに上書きしてくる。日本人離れしているのは確実だが、果たして世界にも、ここまで視線を釘付けにする裸体が存在するものだろうか。
 初めて会ったとき、サキュバスの類だと思った感覚は正しかった。彼女は人ではなく、男を誑かす淫魔だ。そう思った方がよほど納得できる。
 ただその淫魔も、今やすっかり興奮状態にあった。
 鎖骨から胸元にかけてがうっすらと赤らんで、大粒の汗が伝っている。頻繁に膝をすり合わせる両脚の合間は、相も変わらず愛液で濡れていた。もはや軽い失禁を疑うレベルだ。
「センセ、目つきやらしいよ?」
 沙綾香はそう言って目尻を緩め、伸びやかな脚を前後させて俺に歩み寄る。そして、ちらりと俺の下半身に視線を落とした。
「近くで見ても、やっぱりデカ……」
 呟くようにそう言うと、手の平でいきなり逸物を握りしめてくる。
「おまけに、カタっ。もう骨じゃん。すっごい脈打ってるし……」
 自覚はある。ガスに晒され続けた今、俺の勃起度合いは通常ありえないレベルに達している。太さは普段の勃起より2割増し、硬さときたら薄皮の中に石柱を詰め込まれているようだ。
 それを扱かれれば、思わず声が出る。
「うあっ!!」
 そしてそんな俺の反応は、随分と沙綾香を面白がらせてしまったらしい。
「あははっ、なぁにその声? まさかセンセ、ドーテーなの?」
 意地悪そうに目を細めながら、親指と人差し指・中指で狭い輪を作って扱きたててくる。その所作はまさしく淫魔そのものだ。
「し、知るか……。記憶がないって、言ってん、だろ……」
 あまりの気持ちよさに、ただでさえ荒い息がますます乱れていく。このまま一方的にイカされるというのも情けない。だから俺の方からも手を伸ばす。すでに愛液があふれている沙綾香の割れ目へ。
 小陰唇は柔らかく、蜜のおかげでぬるぬるとしていた。指を沈めることも難しくはなかった。ただ、指先がごく浅く内部へ入り込んだ瞬間、感触が一変する。狭い。握り拳の隙間に、無理矢理中指を捻じ込んでいるようだ。
「いっ!!」
 沙綾香が片目を閉じ、小さく叫ぶ。この膣のきつさに、その反応。まさか……いや、まさか。
「お前、処女か!?」
 制服姿であれだけ妖艶なオーラを発する娘が、未経験であろうはずがない。相当遊び慣れているはずだ。暗にその気持ちをこめて尋ねるが、沙綾香の顔が横に振られることはない。
「……し、しょうがないじゃん。中学までは箱入りだったし、高校だって女子校だよ? “する”機会なんて、ないって」
 赤ら顔のまま、眉を下げて呟く沙綾香。どうやら本当に無垢らしい。
「なに? ビッチだとでも思った?」
 俺が何も言わずにいると、彼女は拗ねたような表情を見せる。何だろう、さっきまでよりもっと愛らしく思える。どこか幻想的に思える少女の、人間臭い部分を知ったせいだろうか。
 俺はそんな彼女の頬を撫でる代わりに、割れ目の中で指を動かした。なるべく痛くないように。だがポイントは押さえるように心がけて。
 挿入した中指に、みっしりと粘膜が纏わりついてくる。その中で指の関節を曲げながら、慎重にスポットを探っていく。
「ん、あ!!」
 膣のごく浅い部分、やや膨らみのある箇所に触れた瞬間、明らかに沙綾香の反応が変わった。もしや、ここがGスポットというやつか。そう思い、指の腹を擦り付けるように左右に動かす。
「ああ、あっ! はぁっ……あ! な、なにこれ…っ!!」
 どうやら当たりらしい。すらりとした脚が痙攣し、愛液が溢れてくる。
「気持ちいいか?」
 念押しで囁きかけると、沙綾香は目を閉じたまま頷いた。なるほど、黙って真剣な表情をしていれば、疑う余地もなく令嬢の顔だ。
「せ、センセ、もうだめ。私、立って、らんない……」
 沙綾香が熱い吐息と共に囁き返してくる。その表情も、声色も、俺を狂わせるのに充分だ。横ざまにベッドへ倒れこむ沙綾香を、無意識に押し倒す格好になってしまう。腕の下には、上気した顔で喘ぐ沙綾香。まただ。また欲望に呑まれそうになっている。俺は頭を振って煩悩を払い、身を起こそうとする。
 ところが、その俺の手を沙綾香が掴んだ。
「行かないで。しよ、このまま……」
 潤んだ瞳が俺を見つめ、誘いの言葉を投げかける。この誘いを拒めるオスは少ないだろう──そう確信できるほど、魅惑的だ。
「だ、駄目だ。一度でもセックスしたら最後、二度と出られないんだぞ!?」
「そんな約束、本気で信じてるの? ここの奴らが、言葉通りガマンしてるだけで出してくれるわけないじゃん。沙綾香達が『する』まで、いつまででもこのまんまだよ」
 俺がかろうじて搾り出した理性の言葉を、沙綾香はバッサリと切り捨てる。その言葉に、俺は目が覚める思いがした。言われてみればその通り。他の4人をああも無慈悲に壊した連中だ。律儀に約束を守るとは思えない。初めから解放するつもりなどなく、俺達が限界を迎える瞬間を、ガラスの外で今か今かと待ち構えているに違いない。
 ここでセックスするのは、奴らの術中に嵌まる事を意味する。だがこのまま無意味に耐え続け、完全に理性をなくして沙綾香を襲うよりは、自分達の意思で求め合った方がずっとマシだ。
「初めての相手が、俺でいいのか?」
 小悪魔じみた美貌を見つめながら、改めて問う。すると、沙綾香はむくれ顔になった。
「む。他に選択肢がないこの状況で、そういうこと聞く?」
「いや、でもな……」
「しつこいなあ! じゃ、本音を言ったげる!!」
 睨みながら詰め寄られ、俺は生唾を飲み込む。沙綾香は、そんな俺の顔を凝視しつつ、ふっと口元を緩めた。
「いいよ、センセなら」
 その言葉の後、目尻が下がる。芯の強そうな吊り目が見せる慈愛の笑みは、なんともいえず魅力的だ。
「センセ、この部屋に入ってから、ずっと沙綾香のこと気にかけてくれてたでしょ? 裸、なるべく見ないようにしたり、食事の時にテーブルも譲ってくれたし。ガスで理性が飛びそうになっても、それ跳ね除けてまで襲わずにいてくれた。そういう気遣い……すごい、嬉しかったんだよ」
 沙綾香はそう言って微笑み、
 俺の呼吸を遮った。

              ※

 舌を絡ませる熱いキス。爽やかで好ましい香りが鼻腔を通り抜けていく。
「ふはっ」
 呼吸の限界を迎えたところで口を離せば、すぐ目の前には、沙綾香の顔。こうして間近で見ても、本当にアイドルと見紛うばかりの美貌だ。
「センセの眼、キラキラしてる」
 沙綾香が、笑みを湛えたまま囁きかけてくる。その言葉が妙に嬉しい。彼女を組み敷く時に、血走った眼をしていたくはなかったから。
 ただ、紳士的でいるのも限界だ。流石にガスを吸いすぎた。俺の理性は薄皮のように剥がれ、性的な欲求が剥きだしになっている。そこへ来て、極上の裸がすぐ傍にあるんだ。
 全体がピンクに染まった、色白な肌。乳首が勃っているし、乳房そのものも膨らんでいるようだ。俺は、吸い寄せられるようにその胸に触れた。
「んっ!」
 沙綾香の肩が跳ね、声が漏れる。彼女も相当感じやすくなっているらしい。もっと反応を引き出したくて、乳房を揉みしだく。外から、内へ。瑞々しい少女の皮膚は、尋常でなく肌触りがいい。
「あ、あっ!!」
 桃色の唇が開き、熱い吐息が漏れはじめた。
「気持ちいいか?」
「う、うん……。胸触られるのって、こんなにいいんだ……」
 うっとりとした表情でそんな事を言われれば、ますます昂ぶってしまう。
 俺は右の乳首を放し、くっきりと浮き立った蕾を口に含んだ。弾力のあるそれを舌で刺激しつつ、指も沙綾香の下腹を経由させて、割れ目へと沈み込ませる。
「あああっ! は、あ……すご……っ!!」
 身を強張らせて喘ぐ沙綾香。指の腹で膣のざらついた場所を押し込めば、今度は背中が反り返る。
「くんんんっ!! はっ、はっ……な、なんで弱いとこ……一発で、わかんの……!?」
 どうやらGスポットを探り当てたらしい。運がいいのか、それとも体がコツを覚えているのか。いずれにしろ、沙綾香には喜んでもらえているようだ。あふれる愛液も、筋肉の強張りも、押し殺すような喘ぎも、全てが気持ち良さを訴えていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。せ、センセ……も、だめ……我慢できない。い、挿れて……」
 沙綾香が俺の耳元で囁きかける。艶やかで愛らしい、小悪魔の誘い。今更拒む理由もない。真剣な瞳を覗きこみながら、俺は小さく頷いた。
 膝立ちになり、沙綾香の太腿の合間に腰を割り入れる。張り詰めた逸物を掴み、濡れ光る粘膜に亀頭を宛がえば、それだけで痺れが走った。さらに腰を押し込み、肉の合わさりに入り込めば、いよいよ快感は増していく。
 膣内は熱い。愛液のおかげで挿入こそスムーズだが、四方からみっしりと絡み付いてくる粘膜の圧迫感は、いかにも“こなれていない”感じだ。
「はっ、はぁっ、はぁっ……」
 沙綾香の息は荒い。湯気が立ちそうなほど暖かい太腿が、俺の腰に密着し、やわらかな肉の感触を伝えてくる。
 そして、逸物が半ばほど入り込んだ頃だ。
「っ!!」
 沙綾香が急に息を詰まらせ、俺の手首を掴んだ。柔らかかった太腿も一気に強張り、俺の腰を圧迫してくる。相当な痛がりようだ。その反応には見覚えがあった。桜織が純潔を失った時の反応にそっくりだ。
「一度抜くか?」
 左手を沙綾香に掴ませたまま、右手で汗に濡れた前髪を払う。すると沙綾香は、固く瞑っていた目の片方を開き、つうっと涙を伝わせながら笑った。
「……続けて。痛いけど、嫌じゃない。センセと、もっと深く繋がりたい」
 そう囁く沙綾香の健気さは愛らしく、ありがたい。性欲が限界の今、腰を引くのは相当な精神力が必要だから。
「じゃあ、いくぞ」
 沙綾香の言葉に甘えて、さらに腰を押し進める。ぬるりとした襞が根元の方にまで絡み付いてくる。気持ちいい。その気になれば、すぐにでも射精できそうだ。ただ、それでは勿体ない。ある程度奥まで押し込んだところで、少し腰を引き、また押し込む。なるべく沙綾香に負担をかけないように。
「は、はっ……はっ……」
 沙綾香は荒い息を吐きながら、結合部を凝視していた。『あんなに太い物が入るなんて信じられない』とでも言いたげだ。その初々しさは、堪らなく可愛い。興奮で射精感が一気に分水嶺を越える。
「ううっ!!」
 俺は呻き、熱い粘膜の中で欲望を解き放った。どくどくと脈打ちながら溢れ出る精液の量は、自慰の時の比じゃない。腰が抜けそうな気持ちよさだ。これが、セックスの快感か。

 ゆっくりと逸物を抜き出すと、かすかに開いた割れ目から白濁があふれ出した。一部がうっすらとピンク色なのは、目の前で喘いでいる少女が純潔を失った証。
 俺が、奪ったんだ。大財閥の令嬢にして、奇跡的な美少女の初めてを。
「んー。抜けた、んだよね……。まだ何か、挟まってる感じする」
 沙綾香は熱に浮かされた顔で半身を起こし、自分の脚の間を覗き込んだ。俺はその動作を見ながら、はっと気がつく。コンドームを使っていない。雰囲気に流されるままに身体を重ね、直に中出ししてしまった。
「す、すまん。勢いで中に出しちまった!」
 俺がそう言って頭を下げると、ふふっと笑い声がする。
「ん、なーに? そんなに沙綾香のナカが気持ちよかった?」
「ああ……」
「ぷっ。そんな深刻な顔しないでよ。どうせ桜織ん時みたいに、食事にピル混ぜてあるって」
 俺がよほどしょぼくれた顔をしていたのか、沙綾香はそうフォローを入れてきた。なるほど、確かにその可能性はある。そう納得しかけ、俺は耳を疑った。
 “桜織の時みたいに”?
「って、お前、あの子の状況知ってるのか!?」
 そう訊ねると、沙綾香の顔が曇る。
「知ってるよ。この一週間、ずーっとどこかの部屋に監禁されて、友達が『調教』されてる映像見せられてたから。祐希に、千代里、藤花、桜織。4人が滅茶苦茶にされて、気が狂ったみたいになって──」
「……えぐいな」
「でしょ? たぶん、苦手意識を植え付けたかったんだと思う。セックスって怖い、嫌だ、って思わせた上で閉じ込めてさ、男に犯されて泣き叫ぶトコが見たかったんじゃない? ほんと、相手がセンセでよかったよ。一歩間違えたら、あいつらの思い通りだったかもだけど……嫌じゃないもん、センセとエッチするの」
 そう囁きながら、俺の頬に触れる沙綾香。濡れた瞳で甘い言葉を吐かれると、中身を出したばかりの息子がまた硬くなる。
「そりゃ嬉しいこった。なら、たっぷり見せつけてやるか。連中の想定外のセックスを」
 俺は甘く囁き返しながら、沙綾香の黒髪を撫でた。


              ※


 一度目の挿入時、沙綾香は抜き差しのたびに全身の筋肉を強張らせていた。心では俺とのセックスを受け入れていても、身体はまだ緊張しているようだ。
 だから2回戦目は、まず彼女をリラックスさせる。ベッドの上で後ろから抱きすくめ、髪を撫で、乳房を揉みしだき。
「あひゃんっ! もーっ、くすぐったいよぉ!!」
 沙綾香は身を捩りながらも、上機嫌に笑った。さらに耳や腋、太腿に舌を這わせてやれば、次第に息が甘くなり、筋肉の強張りも解けていく。その状態で改めて割れ目に触れれば、すでにかなりの蜜が伝い落ちていた。緩く開いた蛇口のようだ。実際、割れ目に口をつけて啜れば、ごくごくと愛液を飲めてしまう。
「や。センセ、飲まないでよお……」
 その声に顔を上げれば、上気した顔を手で覆う沙綾香がいた。その仕草は何とも微笑ましく、俺はついその細腕を払いのけて、唇を奪ってしまう。
「んんんっ!!」
 ほのかに甘酸っぱいような匂いが鼻腔を満たす。同じ生物なのに、俺からは絶対にしない匂い。新鮮な果実のようなフェロモン。それに焚きつけられて、俺は沙綾香を押し倒す。
 桃色のシーツの上で折り重なったまま、激しく舌を絡め、熱い吐息を交換しあう。さらに左手で乳房を包み、右手を女の部分に沈み込ませる。
「んっ、ふんっ! んんっ、んっ!!」
 指で性感帯を弄るたび、沙綾香の息が弾んだ。形のいい太腿もピクピクと反応している。かなり気持ちよさそうだ。
 そんな中、沙綾香の手が俺の体を撫でた。肌が敏感になっているせいか、妙にくすぐったい。
「ぷはっ……」
 一旦口を離し、息を荒げたまま見つめあう。
「ふふ。感じるっしょ?」
「ああ。すっかり敏感になってる」
 俺はそう言って、下半身の物を奮い立たせた。今度はちゃんと、寝台のヘッドボードにあったコンドームを装着済みだ。
 俺の意図を汲んだのか、沙綾香がじっと俺の目を見つめる。俺はそんな彼女の右脚を肩に担ぎ上げ、ピンクの割れ目に逸物を沈み込ませた。熱さが四方から押し寄せる。生挿入よりやや刺激は弱いが、敏感すぎる今はむしろ好都合だ。
「んっ、はあ……」
 呼吸の荒い沙綾香に気を配りつつ、ゆっくりと腰を使う。
 勃起しきった逸物は、少し勢いよく突けば簡単に膣奥まで届いた。だがセックスに慣れていない沙綾香は、奥を突かれると痛いらしい。となれば、狙うべきはGスポットだ。沙綾香の右足を抱え上げて腰に角度をつけつつ、亀頭で丹念にGスポットを突き上げる。
「あ、あっ! んああっ……!!」
 沙綾香の唇が開き、声が漏れる。気持ち良さそうだ。だったら、もっと良くしてやろう。
 俺は一旦沙綾香の右足を解放し、代わりに両手で腰を抱え上げる。俺の腰を沙綾香の太腿が挟み込む形。この体勢の方が腰を振りやすい。となれば当然、Gスポットをより集中的に責められるわけだ。
 膝立ちのまま腰を使う。やはり格段にスムーズだ。ギシッギシッというリズミカルなベッドの軋みが、それをはっきりと裏付けている。
「はあっ、あ、あ!! や、ヤバ……これ、ヤバいっ……!!」
 沙綾香が目を見開き、腰をひくつかせはじめた。いちいち素直な反応をしてくれるから、責める側としては大助かりだ。

 ピストンを繰り返していると、色々な事がわかってくる。
 俺が逸物を引けば、沙綾香は顎を浮かせ、何かを我慢する顔を見せる。
 逆に逸物を突き込めば、大きなよがり声を出す。
 グッグッグッと素早くGスポットを突き上げれば、喘ぎも小刻みなものになる。
 俺の腰遣いで反応が変わるのは、楽しいし嬉しい。ピストンを続けながら覆い被さるようにキスを求めたのは、ほとんど無意識だ。
 そして沙綾香は、俺の口づけを拒まない。それどころか、熱心にキスに応じながら、俺の背後で足首を交差させてくる。真正面からしがみつく格好だ。
 そんな事をされれば、自然と挿入は深まってしまう。奥まで当たる頻度が高くなる。だが、そろそろ沙綾香も膣がほぐれてきたようだ。奥を突いても痛がらなくなってきた。俺は一旦キスをやめ、沙綾香の耳元に口を寄せる。
「だいぶ良くなってきたみたいだな。俺の硬いのが、出たり入ったりしてんのがわかるか?」
「はぁ、はぁ……わかるよ。センセの、おっきいもん。沙綾香のあそこ、センセの形に、作りかえられちゃいそう」
 囁き返される声色は、掠れながらも澄んでいる。ゾクゾクする声だ。俺はますます気分が昂ぶって、何度も沙綾香の耳に言葉を吹き込んだ。
 愛液があふれてくるぞ。
 締まりが良くなってきた。
 あそこの奥がヒクヒクしてる。
 そういう言葉に、沙綾香は一々反応する。戸惑い、恥じらい、うっとりと快感にうち震えながら。
 それを眺める俺自身もまた、快感に酔いしれていた。みっしりと絡み付いてくる襞の中で腰を振るのが、気持ちよくて仕方ない。なるべく優しくしなければと思うものの、下半身が勝手に前後する。
「あああっ、いいっ!! いいよぉっ!!」
 沙綾香も激しい突きに快感の叫びを上げるものだから、ますます枷が外れていく。
 射精感を堪えながらがむしゃらに腰を打ちつけていると、ある瞬間、ふっと膣の締まりが緩まった。急激に冷めたように。だが、沙綾香の顔は快感で呆けたままだ。どうやら絶頂の間際らしい。となれば、後はスパートをかけるのみだ。
 腰を抱え直し、一心不乱に股間を打ちつける。パンッ、パンッ、パンッ、と、肉のぶつかる小気味いい音が響き渡る。
「あああ、はぁ!! あ……んんーー……っ!!!!」
 沙綾香の鼻から、堪らないという感じの息が漏れた。割れ目の入り口がヒクヒクと蠢き、太腿から背中にまで震えが走っている。
「せ、センセ、せんせ……っ!! くるっ! なんか、きちゃうううっっ!!!」
 最後の瞬間。沙綾香は絶叫しながら、俺の首にしがみついた。上半身から腰までがぴったりと触れ合い、素肌を通じて沙綾香の痙攣が伝わってくる。機械で脳波など測るまでもない、明らかな絶頂。それを感じながら、俺もようやく、膨れに膨れ上がった射精感を解放した。射精管が痺れ、薄いゴムの先へと中身が吐き出されていく。相当な量だ。
 はぁーっ、はぁーっ、という荒い呼吸が耳元で反響する。
「……イッたみたいだな」
「うん……。これが、“イク”って感覚なんだ。クリいじって気持ちよくなるのとは、全然違うんだね」
 何気ない答えが妙に生々しくて、俺の逸物が反応する。たった今二度目の射精を終えたばかりだというのに、まだまだ鎮まる様子がない。
「あっ!? もー、センセのヘンタイ!」
 あそこの中で『そそり立った』のが判ったらしく、沙綾香が吹き出す。

 そして、彼女は小悪魔だ。やられたままで黙ってはいない。腰を浮かせて逸物を割れ目から抜くと、萎びたゴムを取り去り、脈打つモノを直に掴む。
「今度は、手で搾り出したげる」
 そう囁き、逸物を掴んで擦りはじめた。さっき出した精液を指に絡めての扱きはなかなか刺激が強いが、単調なだけに射精と結びつくものでもない。
「どう、センセ? イッちゃいそうなんじゃないの?」
「そんなんじゃイケないな」
 俺が余裕の笑みでそう言うと、沙綾香は──笑みを浮かべた。
「ふーん、やっぱそうなんだ? じゃ、凄いことしたげる」
 そう言うと、直立した逸物を両の掌で挟み込んだ。
「おっ……!?」
 思わず声が出る。片手で扱かれるのとは全然違う感覚だ。暖かな肉が四方からブツに密着するこの感じは、挿入にすごく近い。そのまま、先走り汁を絡めてヌルヌルと上下されれば、ついつい腿に力が入る。
「う、ぐっ……!!」
「あはっ、センセ余裕なくなってる! じゃ、これはー?」
 沙綾香は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、逸物の包み方を変えた。左手で幹を握りしめながら、右手で亀頭部分を上から包み込む形。その感覚は、まさしく膣奥への挿入そのものだ。オスの本能が呼び覚まされる。
「く、ぁ……で、出るっ……!!!」
 我慢できなかった。逸物が何度も硬く跳ね上がり、少女のきめ細かな手の中に作られた空間へ、あえなく遺伝子を注ぎ込んでしまう。
「おっ、すご……めっちゃ出てる! やだ、沙綾香の手、妊娠させる気?」
 息を荒げる俺を前に、沙綾香は白い歯を見せて笑った。その下方……俺の視界の下ギリギリでは、まだ手が動いている。射精で感覚の鈍った中でも、確かな刺激を感じる。
「お、おい、やめろ! イッたばっかだぞ!?」
「さっき沙綾香がそう言った時、やめてくんなかったのは誰だっけ? ジゴージトクだよ」
 沙綾香はいよいよ小悪魔じみた笑みを深め、俺の逸物を嬲り回した。玉袋を揉みしだき、中指でカリ首の境目をなぞり、人差し指で鈴口を弄り……。
「お、おまえ、処女だろ。どこでそんなテクニック覚えたんだよ……!?」
「んふー。今ドキ、雑誌に乗ってるよ? 手コキとフェラのテクぐらい」
 沙綾香と会話を交わすうちにも、またどうしようもない射精感がやってくる。膣内射精とは全然違う。屈辱的で……でも、身悶えするぐらい気持ちいい。
「んうううっ!!!」
 俺は唇を噛んで呻きながら、あえなく射精した。飛沫になった精液が、シーツに鈍い音を立てる。
「んふふふ、気持ちよさそーな声。女の子みたい」
 沙綾香はそう言いながら、俺の顔を覗きこむ。そしてしばらく俺の目を見つめてから、ゆっくりと頭を下げてきた。
 唇がこじ開けられ、舌を絡め取られる。唾液を交換するディープキス。甘い香りが鼻腔を抜け、荒い呼吸が顔をくすぐる。
「ぷはっ……」
 顔を離した沙綾香の顔は、紅潮していた。そして、本当に愛しそうに俺を見つめていた。その表情を見ていると、また下半身が硬くなる。
「あっは、復活した」
 沙綾香は視線を俺の股間に落とし、片目を閉じて可笑しそうに笑った。そして、また虐め抜く。左手で輪を作って根元を扱き、右手で亀頭部分を握りしめてゆるゆると扱き。そんな事をされると、心が腰砕けになる。
「うあああっ、だめだ、ダメっ……び、敏感に、なってるから……っ!!」
 かろうじて絞り出した俺の声は、情けなく震えていた。
「こんな短い時間で2回もイって、まだ勃起したまんまとか、エロすぎだよセンセ。沙綾香の手にレイプされるのが、そーんなに嬉しいの?」
 乳房を揺らしながら、白い歯を覗かせて笑う沙綾香。それを見ながら俺は、されるがままになるしかなかった。ぼんやりとした恍惚感に、全身を腐食されながら。
 それから何度、搾り取られたことだろう。少なくとも7回か8回。腰砕けでベッドに横たわる俺に圧し掛かるようにして、沙綾香は淫魔の手戯を披露し続ける。
「うがあああっっ!!あがぁっ!!むむ、無理だっ、もお無理いい゛っ!!!」
 歯を食いしばって絶叫する俺の反応を、沙綾香は明らかに愉しんでいる。決して悪い子ではないんだが、子供ゆえの無邪気さは時として残酷だ。
 負けを認めるようで癪だが、これ以上責められるのは辛すぎる。俺はその結論に至り、脱力して気を失ったフリをする。
「センセ、センセー? ……カンペキにノビちゃったか」
 沙綾香が俺に呼びかける声がする。俺があくまで気絶した演技を続けると、勝ち誇ったような鼻息とともに、ようやく逸物が解放された。完全に小休止に入る雰囲気だ。心の底からほっとする。
「あーあ、手がドロドロ。キモチ悪ぅ。さっさと洗わないと」
 沙綾香は俺を見下ろしてそう言い、くるりと背を向ける。薄く開いた瞼の間から確認すると、彼女は……すぐには洗面台に向かわず、少し前屈みになっていた。手を覗き込んでいるような格好だ。
 そして、直後。ずずっ、という音が聞こえた。粘り気のある何かを啜る音。まさか、俺の精液を?
「る゛っ!?」
 沙綾香は、一瞬妙な声を発した後、咳き込むように首を上下させる。どうやら口にしたものを吐き出しているらしい。「にが」という小さな声も聞こえる。俺は思わず噴き出しそうになったが、沙綾香が急に振り向いてこっちを確認してきたので、大慌てで気絶の芝居を続けた。
 沙綾香の事を、いよいよ愛おしく思いながら。


              ※


 水分補給と休息を挟み、4戦目。
 お互いセックスに慣れてきたため、今度は正常位で深く繋がりつつ、より気持ちのいい体位を探る。足を開かせたまま、両の膝頭を掴んで抜き差ししたり。逆に足を閉じさせたまま突いたり。
 体位を変えるたびに、沙綾香の反応も変わった。どちらかといえば、足を閉じたりして膣圧を上げた方が、快感も強まるようだ。
「んんっ、んっ、んっ……!! んああぁああっ、あっ……ん!!」
 甘い声で喘ぐ沙綾香が、俺の腕を掴む。昂ぶると相手にしがみつく癖があるらしい。なら、もっと密着するとしよう。俺はほくそ笑み、沙綾香の腕を引きつつ、背中を引き起こす。
「なにー、また? めっちゃ体位変えるじゃん」
 沙綾香は苦笑しながらも俺の首に縋りつき、太腿の上に乗ってくる。よいしょ、と掛け声を発しながら。
「オッサンみたいだな」
「う、うるさいな! しながら膝に乗んのって、結構気合いいるんだよ?」
「へぇ。腰砕けだからか?」
「う、うっさいし! 勝ち誇った顔すんなぁ!!」
 そんな軽口を叩きあいながらも、腰の動きは止めない。いや、止められない。硬く反った逸物が、熱く蕩けた肉に包まれ、柔らかに咀嚼される。その快感は何にも勝った。猿のように腰を上下させ、ひたすらに快感を貪る。ギシギシとベッドが軋み、粘ついた水音が繰り返される。
「あ、あっ、す、すごっ! なにこれ、なにこれっ!!」
 気持ち良さそうに腰を上下させていた沙綾香が、急に声色を変えた。
「どうした?」
「せ、センセ、沙綾香の事、振り落とさないで! ちゃんと、支えといてねっ!」
「落ちるかよ、ベッドの上だぞ?」
「そ、そうだけど、そうだけどおっ!!」
 沙綾香は不安そうな声を漏らしつつ、両手両足で俺にしがみつく。遠巻きに見るとスレンダーな身体も、こうして密着するとその肉感は圧倒的だ。十分に膨らんだバストに、むちりと弾力のある太腿、柔らかい腹筋。熱い汗と共に押し付けられるそれらは、否応なく男の理性を狂わせる。
 俺は沙綾香の身体を強く抱き返しながら、腰の動きを止め、また唇を奪った。舌を絡ませあうディープキス。腰を振りたくる時とは違う、ゾクゾクするような甘い快感が背筋を走り抜ける。精液こそ先走り程度にしか出ていないが、俺は、精神的に射精していた。
 結果、今度は俺が腰砕けになる。後ろに身体が傾ぎ、抱きついたままの沙綾香に押し倒される格好になる。
 上から覆い被さられると、相手の温かさがますます良く感じとれた。胸の圧も凄い。大きい上に張りがあるから、俺の胸板の上で巨大なグミのように存在を主張してくる。
「んんんっふん、んーんんんっ! あああ……っは……!」
 沙綾香は俺に覆い被さりながら、前後左右に腰を揺らしていた。その動きで、ぎゅうっと締め付けられたままの逸物が揺さぶられ、射精しそうになる。というより、しているのか。股間の感覚がハッキリしない。温泉にでも浸っているように、漠然とした暖かい快感だけがある状態なんだ。そして、それが心地いい。ずっとでも浸っていたい。
 そんな俺の陶酔は、遠くから響いた硬い音で遮られた。音の出所は東側の壁。食事が運ばれてきたらしい。
「んっ、ふうんんっ!! せ、センセ……ご飯きちゃったよ」
「ああ」
「取りに、行かないと……」
「……ああ」
「ね、冷めちゃうって!」
 食事がきた事を認識しながらも、お互いセックスをやめない。ぬるま湯の中でのたうつように、緩く結合し続ける。ようやく腰を離したのは、食事が運ばれてから数十分後だったかもしれない。
 にちゅり、という粘り気のある音と共に、皺だらけのゴムが外気に晒される。
「はぁ、はぁ……。あ、そういえばゴムしてたんだっけ。なんか、ずっとしてたらわかんなくなってくるね」
 逸物からゴムを引き抜いて笑う沙綾香。重みで垂れ下がるゴムの先は、大量の精子でピンポン玉のように膨らんでいる。それは、俺の得た快感の大きさをよく表していて、なんだか気恥ずかしかった。


              ※


 沙綾香は、本当にいちいちエロい。
「セーンセ、食べさせたげよっか?」
 切り分けたハンバークをフォークでつつき、俺に目配せする。その仕草だけで、理性が吹き飛びそうになるほどに。
「いらん」
「いいからいいから。ほら、目ぇ閉じて。あーん」
 しつこく誘ってくるから、仕方なく言われるままに目を閉じる。
 口の中に、パサついた感触が触れた。ソースの味がしない。そもそも肉の食感じゃない。これは……
「ブロッコリーじゃねぇか!」
「あはははっ、引っ掛かった! 誰もお肉あげるとは言ってないよ~」
 真相に気付いた俺を見て、けらけらと笑う沙綾香。どうやらこの小悪魔に、体よく嫌いなものを押し付けられたらしい。
「超が5つつくぐらいのお嬢様が、食いモンを選り好みするなよ」
「今はお嬢様じゃなくて、ただのJKだし。それに昔から、青臭いのは嫌いなんだよねー」
 そういえばこいつ、オムライスのグリーンピースもよけていたな。
 それと……
「ああ、だからザーメンも無理だったわけか」
「そーそー。興味本位で挑戦してみたけど、あれはホーント無理!」
「なるほどなぁ」
 何気ない会話を交わしつつ、食事を進める。カチャカチャという音が響く。
「え……ってか、ちょっと待ってセンセ」
 ふと、沙綾香の手が止まる。
「ん?」
「なんで、沙綾香が精液飲もうとしたこと、知ってんの……?」
 ……。
 …………。
 ………………。
 しまった。
 あの時は、気絶しているフリをしていたんだった。
「~~~~…………!! センセのバカ!!」
 沙綾香が目尻を吊り上げ、フォークで刺したブロッコリーを投げつけてくる。
 理不尽だ。なぜ怒られないといけないんだ。

 食事の後は、交替で歯磨きをする。
 洗面所の鏡を覗き込みながら、すらりとした美脚をクロスさせる沙綾香の後姿は、じっと見ていると鳥肌が立ってくるほど綺麗だ。肉体を構成するパーツ全てが、奇跡的に整っている。世界に冠たる天才芸術家が完璧な裸婦像を作ろうとしても、ここまでの完成度には到達出来まい。
 太腿の肉付きといい、膝裏の形といい、足首に至るまでの下腿部のカーブといい。ああ、これが男を欲情させる女体の“答え”なのか。ついつい、そう思わされてしまう。
「なーにセンセ、沙綾香のことじろじろ見て。洗面所(ここ)使いたいの? それとも……またシたいの?」
 鏡越しに俺の姿を見つけた沙綾香が、振り返って口元を吊り上げる。世のオスというオスを誑かす、魔性の笑み。
 およそ男である限り、その魔力に抗うことはできない。心臓が早鐘を打つ。逸物周りの血管が熱さを増す。汗が噴き出す。まるで思春期の性欲だ。
「ああ……シたいな」
 俺は吸い寄せられるように沙綾香に近づき、背後から抱きしめた。彼女は本当に足が長い。身長は俺の方が高いはずなのに、腰の高さがほぼ同じだ。背後から密着すると、勃起した逸物がちょうど股の間に入り込んだ。
「うぅわ! もうちょっと、デカイよぉ」
 白い歯を見せて苦笑する沙綾香。アナウンサー並みに綺麗なその表情に、また股間が持ち上がる。亀頭が愛液まみれの柔肉に触れ、堪らなく心地いい。
 歯止めは利かなかった。両親指で沙綾香の尻肉を割り広げ、合間から覗く割れ目へと、いきり立った逸物をこじ入れる。
「あっ、ちょっと待っ……あ、んああっ……!!」
 歯ブラシを咥えたままの沙綾香が、非難の声を上げる。だが彼女の身体は、すぐにセックスに適応したらしい。熱い粘膜が俺の分身に絡みつき、無数の舌で舐ってくる。
 パンッ、パンッ、パンッ、という肉のぶつかる音が耳に心地いい。視界も最高だ。
 視線を下げれば、沙綾香の背中が見える。強い照明を受けて艶めく、若々しい肌。うっすらと浮いた肩甲骨に、背中の中心を走る一本筋。本当に内臓が詰まっているのかと不思議になるほど細い腰と、それとは裏腹に安産型の尻。まさにモデル級の、世界最高クラスの背中だ。その末端に俺の赤黒い逸物が出入りしている光景は、都合のいい夢にすら思える。
 一方で視線を前に向ければ、こっちも眼福と言う他ない。歯ブラシを咥えたまま喘ぐ前傾姿勢の美少女を、筋肉質な男が背後から犯している。前後に揺れる乳房が素晴らしい。俺は俺自身の裸体を見慣れていないから、まるで他人のハメ撮りでも見ている気分だが、それはそれで興奮するというものだ。
「ふんっ、んっ……んっ」
 鼻を抜けるような喘ぎ声。口に咥えた歯ブラシの横から、泡だった唾液が伝っていく。
「き、気持ちいい……いくっ、ダメいくっ!!」
 眉間に皺を寄せながら、沙綾香が絶頂を口走る。アソコの痙攣具合からして、本気の絶頂なんだろう。
 彼女は目を見開いていた。口もぱっくりと空いていた。ずっと咥えていた歯ブラシが、硬い音を立てて洗面台を転がる。沙綾香の視線がそれを追い、そのまま恥じ入るように目を閉じた。
「目ぇ開けてみろ。自分が犯されてるところ見とけ」
 つい意地悪心が出て、そう囁きかける。沙綾香の目がうっすらと開かれ、鏡の方を向く。
「あん、きもち……ぃっ……。あっ、あんっ!! んー、ん、んんっ!!」
 絶頂直後で敏感になっているのか、沙綾香はますます艶かしい反応を示しはじめた。何度も快感を訴えながら、目元をひくつかせ、唇をきゅっと引き結ぶ。真剣な表情をしていると本当にお嬢様そのものだ。
 俺はそのお嬢様を、一心不乱に突き回した。相手の弱い場所は何となくわかる。深く挿入したとき、沙綾香の腰が逃げる場所。そこがポイントだ。そのポイントをいくつか見つけておき、時にはフェイントを織り交ぜて虚をつき、時にはただひたすらリズミカルに追い込んでいく。
「はっ、はっ、はっ……!! だ、ダメ、それだめぇっ!! せ、センセ、上手すぎる……よぉ……!!」
 所詮は素人技術に過ぎないはずなのに、沙綾香はひどく喜んでくれる。俺は、セックスの才能があるのか。思わずそう有頂天になってしまうぐらいに。
 自信というものは素晴らしい。自信があれば、行動に迷いがなくなる。記憶をなくして彷徨う俺でも、セックスでならこの美少女を満足させられるんだ──そう思えば、ますます堂々と腰を使うことができる。
「ああ、あああ! あぁあ、あ……いっ、く……また、いくぅっ…………!!」
 沙綾香の膣が喘ぐようにひくつき、逆に喉からの息が止まる。桜織の映像でもさんざん目にした、深い絶頂時の反応だ。洗面台に手を突いていた沙綾香が、がくっと崩れ落ちた。腕を枕にして突っ伏すような形だ。
 膝も崩れかけているが、へたり込むのは許さない。左腿を前から押さえつける形で、挿入を継続する。
「やぁあ、いや、いやっ!! いまイッてるから、イッたばっかだからぁっ!!」
 沙綾香の声は悲鳴に近いが、腰は止めない。太腿に愛液が流れるのを感じながら、グチュグチュと水音をさせていると、そのうち沙綾香がまた顔を上げる。完全な泣き顔で、髪を振り乱しながら顔を左右に振っている。だが、目元が笑っていた。堪らなく幸せだという風に。
「センセ、センセ……ま、待って! ちょっ、ホントに……あ、あ、ああぁっ!! 自分がどんだけすごいか、わかってないでしょ……!!」
 鏡越しに俺を見ながら、沙綾香が必死に訴えてくる。だが俺は、すっかりハイだ。
「イク顔見ててみな、ほら凄いぞ。あんな顔してイってる」
 ガクガクと痙攣する沙綾香の膝裏を持ち上げ、大股を開かせた状態で激しく突き上げる。
「あ、ああ、あっ……やあああっ!!!」
 自分のイキ顔を直視したことで、沙綾香の中の何かが切れたんだろう。彼女は全身を震わせ、絶叫しながら潮を噴いた。鏡にもハッキリ映るほどの量だ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」
 全身を細かに震わせながら、洗面台周りに飛び散った潮を呆然と見つめる沙綾香は、堪らなく可愛かった。


              ※


 ベッドに戻ってからは、さらに徹底的な性感開発を進めることにした。
 まずは丁寧なクンニ。半勃ちのクリトリスを皮ごと舌で転がし、硬さを増してきたところで、ブドウの実を吸うように皮を剥き上げる。その上で乳首へと指を伸ばし、同時に刺激する。
「んっ、あ……はっあ! あんっは……ぁ、んんっ……!!」
 沙綾香から切ない呻きが漏れる。クリトリスと乳首の同時責めが効いているようだ。特に2箇所の責めを連動させてやると、反応も大きい。クリトリスを縦に舐めながら、乳首を縦に弾き。クリトリスを吸いながら、乳首を摘み上げる。こうしてやれば、沙綾香の細身は面白いように仰け反った。さらに空いた手でGスポットも刺激してやれば、喘ぎ声が一気に大きくなる。
「やああぁっ、い、イッ、いーーっ!!」
 首を振りながら、何度も絶頂を訴える沙綾香。その果てに、とうとう割れ目から飛沫が上がった。
「ふっ、盛大に噴いたな」
 俺はそう指摘しながら、手の形を変えて本格的に潮を噴かせにかかる。Gスポットを指の腹で弄ってやれば、ぷしゅっ、ぷしゅっ、と面白いように噴き出てくる。
「はぁ、はぁ……すごい、どんだけ出るの……!? ちょっとタンマ、脱水症状になっちゃう……っ!!」
 やめてと言っても、止めてはやらない。シーツが水浸しになり、沙綾香が腰を抜かすまで。

 沙綾香がぐったりとしてからも、俺の責めは終わらない。入念な前戯をしているうちに、俺の分身はまた臨戦態勢に入ってしまった。猛りを鎮めるには、セックスしかない。ベッドに寝そべったまま、沙綾香を腰の上に乗せる。
「や……ちょっと! まさか、まだ……!?」
 焦りが伝わってくるが、容赦はしない。強引に安産型の尻を持ち上げ、突き立った逸物の上に跨らせる。
「あ、かはっ……は、入って、くる、ぅっ……!!」
 掠れ声が漏れた。黒髪が背中を覆ったところから見て、天井を仰いでいるらしい。
「ああ、まだまだこっからだぜ!」
 俺がそう言って腰を突き上げると、沙綾香の顔はさらに上向いてから、がくりと項垂れる。脱力、とは違う。前屈みになりつつ俺の膝付近を掴み、腰を浮かそうとしているらしい。実際、沙綾香の脚は細かに震えながら、何度も浮上を試みていた。ただ、完全に腰を浮かすことはできない。その前に絶頂し、脱力して尻餅をつくからだ。
「いっ、いっく……ぃ、いっちゃう、う…………っ!!」
 沙綾香は小さい声で、何度もそう繰り返していた。いく、という呟きの直後、重みのある尻肉が圧し掛かってくる。少し浮いたかと思えば、また落ちてくる。この繰り返しだ。それは結果として、騎乗位で力強く腰を振るのと同じだ。俺はそれに射精感を煽られながらも、沙綾香の腰の動きに合わせて突き上げる。
「あぐうっ!! ふ、深いいっ!!!」
 沙綾香から悲痛な声が漏れ、腰がぐらぐらと揺れ、体勢が斜めに崩れても、構わずに下から突きつづけた。
「うんんんんっ、んやぁあ……あっ、っくいく、ひぐ……っぅ…………!!」
 沙綾香の声がか細くなり、全身が震える。完全に俺優位で追い詰めている──はずだった。ある瞬間、沙綾香の背が仰け反るまでは。
 身体全体を弓なりに反らせたまま、円を描くように腰を使い、体内の逸物を絞り上げる。その刺激はあまりにも強い。
「くあっ、締まる……うねるっ!!」
 思わずそう叫んでしまうほどに。そして直後、状況はさらに変わる。支えを求めるように、沙綾香の手の掴む位置を変えたんだ。脛から、膝へ。
「うあっ!?」
 瞬間、俺のうなじに電気が走った。
「えっ、なにセンセ、いきなり?」
 よほど俺の反応が激しかったのか、余裕がないはずの沙綾香にも勘付かれてしまう。
「いや、なんか、膝掴まれるとヤバい」
「…………ふーん?」
 俺の答えに、沙綾香が口元を吊り上げる。しまった、弱みを握られた。そう思う間もなく、小悪魔の手がまた俺の膝を押し込む。シーツに埋まる形で両足がビンと伸びきり、快感が足指の先まで走り抜ける。まるで射精する回路が繋がったような感覚だ。
「あはっ、すごいどうしたの? 中でビクンビクン暴れまくりじゃん。なんか、センセのことレイプしてる感じ」
 沙綾香が俺の方を振り返り、勝ち誇ったように笑う。確かに犯されている気分だ。だが、いつまでもいいようにされているのは癪に障る。
「調子に乗ったな!」
 俺は、反撃に出た。両手を伸ばして沙綾香の腰を掴み、動きをコントロールする。逃げられないように。
「あっ、腰……!?」
 沙綾香の瞳に焦りの色が浮かんだ。予想通りだ。沙綾香が腰をくねらせるのは、俺を追い込む事だけが目的じゃない。膣のウィークポイントを突かれた時、左右に腰を振ることで絶頂の波を乗り切っているようだ。それを封じれば、余裕は消える。
「ひぃいうううっ!!!」
 Gスポットをなぞって奥を突くと、甲高い悲鳴が上がった。喜びの色が混じった悲鳴だから、耳に心地いい。それをもっと聴きたくて、俺はさらに腰を使う。
「うあっ、ヤバッ……どんどんイっちゃううっ!!」
 沙綾香はまた天井を見上げた。安産型の尻の向こうに、たるみなく張った、それでいて柔らかそうな太腿が見えている。もう何度思ったかわからないが、素晴らしい下半身だ。俺はそれを堪能しつつ、沙綾香の腰を自分の腰に打ちつける。そうしてたっぷりと快感を貪ってから、満を持して溶岩のような精を吐き出した。
「はっはっはっはっ……!! し、死ぬかと思った……。息、できなくて……」
 俺の上から解放された途端、沙綾香は横様に倒れこんで喘ぐ。全身をピクピクと痙攣させ、半ば白目を剥いた姿は中々に壮観だ。俺も疲労困憊の状態ではある。だが、勃起は収まらない。また少しすれば、俺達は互いの体を求め合うんだろう。


              ※


 ガスで発情させられてのセックスは“底”がない。
 手を繋ぎ合わせながらの正常位。
 熱いキスを交わしながら、胸板と乳房を押し付けあう体面座位。
 獣のような格好で、一心不乱に深く突く後背位。
 この辺りのオーソドックスなプレイは、それこそ何十回と繰り返した。灼熱の砂漠で水を欲するように、どれだけ求め合っても、何度絶頂しても満たされない。むしろ、肌を合わせるほどに体の内外の熱が増していくようだ。
 思春期入りたての子供のような、制御不能の性欲。俺はそれに駆られ、アブノーマルなプレイにも手を出しはじめた。
 最初のきっかけは、シックスナインで求め合っていた時だ。
 沙綾香の学習能力は高く、スポンジが水を吸うように、俺を悦ばせるテクニックを身につけていく。指で睾丸を刺激しながらのねっとりとしたフェラは、今や超一流の娼婦を思わせるレベルだ。それを、血管まで浮いたペニスにやられるんだから堪らない。ぼーっと浸っていれば10秒もかからず射精してしまう。ただ、そうなってしまえば、あの小悪魔に勝ち誇った笑みを向けられることだろう。だから俺は、太腿に力を入れて必死に射精を堪えつつ、逆に沙綾香の割れ目を刺激していた。
 だが、その状況もまた股間に悪い。ヴィーナスさながらの理想的な脚線と、それに挟まれた桃色の性器。そこから漂うフェロモンの香り。そのどれもが魅力的で、つい生唾を呑みながら見入ってしまう。そこで俺の目が捉えていたのは、割れ目だけじゃない。その上に息づく、菊の輪のような窄まり……そこにも惹かれていた。藤花の調教を目にしたのが悪かったんだろう。あの一連の映像のせいで、俺はそこを『使える』ものと知ってしまっている。
 あの気丈な“大和男子”をよがり狂わせるほどの、第二の性器。そこに挿入すれば、どんな感じがするんだろう。そこを開発すれば、あの小悪魔じみた沙綾香がどんな反応を見せるだろう。一度そう思ってしまうと、もう戻れない。気がつけば俺は、両の親指で沙綾香の尻穴を押し拡げ、楕円形に伸びた蕾に舌を近づけていた。
「ひゃんっ!?」
 ひと舐めした瞬間、沙綾香が奇声を上げる。唾液を散らしながら逸物を吐き出し、こっちを振り返る顔は、困惑に満ちていた。
「せ、センセ……そこ、お尻だよ……?」
「ああ。こっちも使ってみようぜ」
 俺がそう言うと、沙綾香の表情がさらに複雑なものになる。眉の角度がさらに下がり、そこだけを見るなら嫌そうだ。だが一方で、口元は僅かに緩んでいた。年頃の少女として、排泄の穴を性器扱いされるのは抵抗がある。しかし、藤花の例を見ているだけに、まったく興味がないわけでもない。そんなところか。
 俺は、そんな沙綾香をリードすることにした。彼女が嫌そうに腰を振っても、尻穴を舐めるのはやめない。菊の花びらの一枚一枚を舌先で捉え、丹念に舐めあげていく。
 沙綾香はかなり反応していた。視界の両端で、理想的な太腿がピクピクと強張っているのが見えた。
「うあっ……せ、センセ、アナル舐めるの上手過ぎ。なんか、ヘンな気分になってきちゃう……」
 ついには頬を赤らめたまま、そんな告白までされた。女子高生の尻穴を舐る才能があるというのも、素直に喜びにくいことだが。

 これ以降、俺は事あるごとにアナルを刺激するようになった。『駅弁』の体位で抱き抱えながら、指先で入口付近を弄ったり。後背位で突きながら、中指を浅く挿入したり。
 一番効果的だったのは、クリトリスを責めながら肛門を弄るやり方だ。沙綾香曰く「クリで感じてるのかお尻で感じてるのか、わかんなくなる」らしく、クンニを始めてから僅か数分ほどで甘い声が漏れはじめる。ガスで発情しきっているから、余計に感度が高いんだろう。その事が関係しているのか、アナルがほぐれるのも早い。指3本の挿入がスムーズになり、アナルセックスが出来るようになるまでに、それほど時間は掛からなかった。
「あ、は、入ってる! お尻に……入って、くるっ……!!」
 正常位でアナルに挿入する最中、沙綾香は全身を強張らせながら声を震わせた。その緊張ぶりは処女を失った時以上だ。そして、俺の分身が感じる抵抗感も、膣とは比べ物にならない。膣への挿入がみっしりと合わさった肉襞に分け入る感覚だとすれば、肛門への挿入は、ごく僅かな凹みのある粘土板に逸物を押し付けているに等しい。抵抗が半端じゃなく、本当にここは挿入できる場所なのかと不安になる。それでも、渾身の力を込めて沈み込ませれば、根元までがすっぽりと腸内に包み込まれた。そこまで入りきっても、亀頭が奥に当たる感触はない。膣とは違う場所に入っているんだということを、嫌でも理解させられる。
「痛いか?」
 そう訊いてみるが、沙綾香の反応は薄い。
「なんか、ヘンな感じ……」
 視線を左右に揺らしながら、それだけ呟いて押し黙る。かなり緊張しているようだ。アナルセックスがストレスなのかとも思ったが、腰を使いながら観察してみた限り、どうもそうではないようだ。
「うっ、あ……あっ! あいっ、い……いぃあ、っは!!」
 吐息を噛み殺し、時々嗚咽のような声を漏らす沙綾香。俺がその顔をじっと覗きこんでいると、彼女は泣き笑いのような表情を浮かべて顔を覆い隠す。
「やっぱ、は、恥ずかしいよ。センセ、沙綾香がおしりで感じてても、キライになんないでね……」
 小さな声でそう囁くにも聴こえる。その反応は、正直、理性が飛びそうなぐらい愛らしかった。
「なるわけないだろ」
 俺は自然と笑みを零しながらそう答え、アブノーマルな快感に身を任せる。
 沙綾香が言うところでは、直腸の奥を突くと、膣の突き当たり──ポルチオに衝撃が伝わって、相当気持ちいいらしい。実際、沙綾香の下腹を手で抑えながら何度も腸奥を突きこめば、痙攣しながら絶頂していた。
「せ、センセ……ほんと、前も後ろも、上手過ぎるよぉ! な、なんで、沙綾香の弱いとこ、わかんの……っ!?」
 アナル経由で何度もポルチオ逝きさせると、沙綾香が過呼吸になりながら恨み事を吐いてくる。不思議な感覚だ。俺にしてみればこれがセックスの初体験なんだから、やり方を必死に模索しているに過ぎない。

 ただ、その一方で、俺は自分の『肉体の記憶』に戸惑うこともあった。クンニの時の舌遣いや、潮を吹かせる時の指の形は、意識するまでもなく体が覚えていた。沙綾香の反応を見る限り、クリティカルなやり方を。
 腰遣いにしても、俺の思考とはまた別の本能が働いているらしい。抜き差ししながら沙綾香の反応を窺い、弱点を見つけたと思った時にはすでに、腰がその弱点を責めるように動いている。そんな事が何度もあった。
 気味の悪い話だ。俺の肉体を、俺の意識でない『何か』が動かしているなんて。だが、だからといって止めようもない。なにしろ無意識の行動だ。俺が何を考えようが、肉体は勝手に手練手管を披露し、沙綾香を悶え狂わせる。そして、そんな彼女の反応は、とてつもない快感となって俺をも狂わせるんだ。その快感の連鎖から逃れる術はない。動物の究極の目的が、生殖である限り。


              ※


 この部屋に閉じ込められてから、何日が経ったんだろう。
 媚薬ガスを吸い続け、欲望のままセックスを繰り返す俺達は、快感というプールの底にいるようだった。身体は湯気が出そうなほど熱いし、実際汗が滝のように流れているのに、ふとした瞬間に肌を見れば、お互い鳥肌が立っている。凍えるように痙攣してもいるが、それが寒さによるものか、快感によるものかすら判らない。
 ここまでの状態になれば、もはや腰を振る必要さえなかった。挿入したまま一切腰を動かさず、口づけを交わしたり愛撫しあったりするだけで、じんわりと暖かいものが体の中を這い登ってくる。そしてそれが脊髄を経由して脳に届くころ、逸物が勝手に強張って射精してしまうんだ。しかも、その射精量がまた凄まじい。壊れたポンプのようにドクドクと流れ出ていく。
 沙綾香も似たようなものだ。
「ああイってる……あそこが勝手にヒクヒクしちゃう……!!」
 沙綾香がこの台詞を漏らした時、俺は一切動いてはいなかった。背面座位で挿入したまま、じっと膣襞の感触に浸っていただけだ。それなのに、彼女の膣内は独りでに蠢き、かなりはっきりとした絶頂の反応を示す。まるで逸物に甘え、頬ずりでもするように。その愛おしさが、解るだろうか。
 当然、腰を動かし始めれば、お互いの反応はさらに激しくなる。
「ふううう゛っ、ううう゛っ!!! ふむ゛ぅうう゛うう゛っ!!!!」
 一番腰を動かしやすいバックスタイルでスムーズに突きこんでやれば、沙綾香はシーツに顔を埋めたまま、嗚咽するような声を上げた。事情を知らない人間が見れば、スタイル抜群の少女がレイプされ、泣きじゃくっているようにしか思えないだろう。だが粘膜で繋がっている俺には、彼女が昂ぶりきっているのがよくわかった。女性はつらくても泣くが、気持ち良すぎても泣くんだ。
 沙綾香は俺の責めで何度も何度も絶頂する。その度に左右の手がシーツを握りしめ、ついには腕立てをするようにぐうっと上半身を持ち上げてしまう。
「んああああぁぁんんっっ!!!!!!」
 沙綾香の背中が弓なりに仰け反った直後、咆哮が響き渡った。ライオンや狼が吠えるように。その野性味あふれる行動に、一切の嘘はない。本気で感じているとき、人間の仕草は動物と変わらなくなるらしい。
「へへへっ。凄い声だな、今の」
 俺はそう茶化しながらも、さらに壮絶な声を上げさせるべく体位を変えた。もう俺は、沙綾香のウィークポイントを把握しきっている。どんな体勢で、どれだけ脚を開かせ、どの角度で挿入すれば、どういう反応を引き出せるのか。それがはっきりと頭に思い描けるし、何十何百の試行を経た今、そのイメージと現実に乖離はない。もし一切の容赦なく『一番きついやり方』だけを繰り返せば、快感で沙綾香の脳を焼き切ることさえ可能な気がする。何よりも愛しい彼女相手に、間違ってもそんな事をしはしないが。
 俺の望みは、ただ彼女を満足させることだけ。無理をしきらない範囲で、できるだけの至福を与えることだけだ。
 側位のまま左脚を上げさせ、その腿を掴んで支えにしつつ、100度ほど開いた股座に力強く腰を打ち込む。沙綾香が最も感じるやり方の一つだ。ポルチオへの刺激が半端ではないらしく、奥まで突く度に抱えた左脚が強張り、う、う、という泣きそうな本気声が漏れる。さらに、左脚を引きつけて強引に密着し、グリグリと奥を虐めてやれば……彼女は即座、100パーセント絶頂する。
「ああああ……お、奥、潰れるっ……! いく、いくーいっぢゃふううう゛っ!!」
 案の定、沙綾香が悲鳴に近い声を上げた。首でも絞められたように顔が赤く、汗がひどく、瞳孔は開いている。挙句には鼻提灯まで膨らんでいる始末だ。
 素面で見れば恐怖すら感じる反応かもしれない。だが今の俺には、その反応はむしろ好ましかった。感じてくれている。俺の責めで達してくれている。それが嬉しくて仕方ない。そんな沙綾香が、愛おしくて仕方ない。もはや俺の意識に存在するものは、沙綾香だけ。延々と粘膜で触れ合っているこの少女だけが、俺のすべてだ。

 俺は、そんな彼女をさらに満たす。
 潰れたカエルのように大股を開かせ、正常位で突きこみつつ、子宮の辺りを両親指で指圧するようにグッグッと押し込む。沙綾香を絶頂させるマニュアルを作るとすれば、赤文字で記述したいほどに効果的な手段だ。
「いっく、いっくっ!いっく!いっくぅっ!!!」
 俺の突き込みと完全に同じペースで、息を詰まらせ気味の悲鳴が上がる。こっちのやり方だと、沙綾香の太腿はそこまで硬くならない。クラゲのように柔らかなまま、俺の鼠径部に貼りついている。だが逆に、上半身の強張りが尋常でなくなる。万歳をするように両手を上げて頭上のシーツを掴んでいるが、腕の筋肉はパワーリフトでも上げるように盛り上がっているし、腋の窪み具合も肉が抉れたかのようだ。肩甲骨の辺りは呼吸と共にベッドへめり込んでいくが、その際のギミイイイッという音は、とてもスレンダーな少女が響かせるものとは思えない。完全に力のリミッターが外れている。
 それだけの力も、俺の責め方ひとつで簡単に性質を変えられるのが面白い。俺は下腹から一旦両の親指を離し、代わりに右掌の付け根辺りで、ぐうっと子宮を押し上げる。
「かはあああっ!? しっ、し、子宮が、ぁ……っ!!?」
 大きく開いた口から息を吐き出し、沙綾香は弓なりに仰け反った。あれだけシーツを鷲掴みにしていた手もぱっと開き、女の子らしい細腕に戻りつつ、顔の横で空気を握る。
 こうして腰が浮いてしまえば、いよいよ俺の独壇場だ。膝立ちになり、両手で腰をがっしりと掴んだまま、空中で力強く腰を送り込む。接地面に力を逃がせないぶん、こういう時の反応は凄まじい。
「んおおおお゛っ、おおお゛っ!! んおおお゛お゛お゛っ!!!!」
 腹の底からの声で呻きながら、腰を左右に振りたくリ、両足で爪先立ちになる沙綾香。ビッチめいた雰囲気を持つ今風女子だが、根っこの部分では乙女らしい恥じらいをちゃんと備えている子だ。その彼女でも、この責めの前では恥も外聞もなく狂わざるを得ない。清楚さの結晶のような桜織でさえ、そうであったように。
 ぐちゃあっ、ぐちゃあっと音をさせながら抜き差しを繰り返せば、沙綾香は感電したかのように激しく反応しつづける。爪先立ちになった両足指は深々とベッドにめり込み。細腕は胸を張るように大きく広がったかと思えば、顔の前で肘を打ちつけるほどに閉じあわされる。口の開閉も恐ろしくハイペースだ。
 そうした狂乱を散々繰り返した果てに、とうとう結合部から何かが飛び散りはじめる。逸物を引き抜けば、遮られることのなくなった液体は勢い良く俺の腹に浴びせかかった。潮吹きだ。それも、相当勢いのいい。
「あああ、で、でてるっ……いってる……!!」
 視線を惑わせながら、呆然とした様子でうわ言を呟く沙綾香。
「ははは……はは」
 俺は愉快になり、意味もなく笑いながら、また沙綾香の中に入り込む。蕩けるような感覚の中、痙攣し、絶頂し、何度も体勢を変えながら求め合う。
「せ、センセ……センセ……いく、いくううう゛っ!! きもちいい、きもちいいよおおおっっ!」
 沙綾香が俺の上に跨り、気持ち良さそうに腰を振っている。俺はそんな彼女の手を取って、両手でも絡み合った。
 幸せだった。何も考えられなくなるぐらい。何も考える必要などないと思えるぐらい。
 だが。その至福の時間は、唐突に終わりを迎えた。天井のスピーカーからの、聞き覚えのある声によって。

『とうとう、仕上がったようですねぇ』

 快感に蕩けた頭でも、その嗄れた声の主はすぐに判った。端塚だ。
「何のことだ!」
 俺は憤りつつも、頭のどこかで理解していた。仕上がった、という言葉の意味。それは多分、今も俺の上で一心不乱に腰を降り続ける沙綾香のことだろう。予想以上に快楽の虜になっているらしく、スピーカーからの声にも気付いていない様子だ。彼女にとっても端塚は、度し難い親友の仇だろうに。
 俺が、そこまでにしてしまったのか。調子付いて開発するあまりに。

『いい加減、お気づきなのではありませんか? ご自分が何者なのか』

 俺の心を見透かしたように、端塚はそう続けた。
 自分が何者なのか……そんなもの、解らない。この部屋に来て、ますます解らなくなった。ここまで女を意のままに感じさせ、狂わせるなんて、普通じゃない。
「知ってるなら、いい加減教えろ! 俺は、何なんだ!?」
 俺は、端塚に向かって不安を爆発させる。すると奴は、スピーカーを鳴らしながら、驚くべき言葉を寄越した。

『──我が倶楽部の創設者にして、皆から“先生”と慕われる最高の調教師。
 それが、貴方です』

 告げられたその言葉を、俺の脳はしばらく理解しなかった。
 今、奴はなんと言った?
 ──俺が、この悪趣味な倶楽部を作った?
 ──調教師の“先生”と呼ばれていた?
 バカな。有り得ない。有り得るわけがない。そう拒絶してみるが、一方で腑に落ちる部分もあった。

 肉体に染み付いた、女を悶え狂わせる手腕。

 夢に見た、俺の目の前で狂っていく見知らぬ女。

 俺を見て「せ……」という言葉を発し、病的に怯えはじめた受付嬢。

 この施設における、不自然なまでの厚遇ぶり。

 心に引っ掛かっていた幾つものピースが、今の端塚の情報に合致する。

『その娘が“先生”という呼び名をつけた時には、心底驚きましたよ。やはり貴方には、その名こそが相応しいようですねぇ。突然私共の前から姿を消され、記憶喪失の状態で発見された時は肝を冷やしましたが……杞憂でしたな。やはり、貴方は一流の調教師だ。ご記憶がなくとも、しっかりと調教を成し遂げてくださる!』

 端塚はそう続け、さも可笑しそうに笑った。その言葉を聞いて、俺は改めて沙綾香を見る。彼女はまだ快楽に囚われたままだ。蕩けたような表情のまま、腰を上下に振り続けている。

『さあ、もう一歩です先生。その娘に駄目押しで快楽を刷り込み、意のままに従う人形に作り変えてください!!』

 端塚は笑いながら俺に要求を突きつける。
 なるほど……朧げながら、奴の目的が理解できた。俺に沙綾香を抱かせることで、俺の中に眠る調教師としての血を目覚めさせる腹積もりだったわけだ。そして同時に、沙綾香を俺の虜にさせようとした。世に名だたる八金財閥の令嬢を、だ。最終的な目的は、それを交渉材料に八金財閥を支配する事か。
 
 だとしたら、残念なことだ。
 俺の中には、確かに調教師としての本能が眠っているのかもしれない。だが今は、女が泣いている姿を見ると心が痛む。前はどんな男だったか知らないが、今の俺は、ケダモノじゃない。
「沙綾香、沙綾香! しっかりしろ!!」
 俺は騎乗位で腰を振る沙綾香を押し倒し、その頬を張った。一度では目覚めないようだったから、何度も、何度も。

『な……何をしておられるのです、先生!?』

 端塚が慌てている。いい気味だ。俺はそうほくそ笑みながら、沙綾香の頬を叩きつづけた。すると、そのうち彼女の目に光が戻る。
「…………ふぁれ、センセ…………?」
 寝惚けたような口調で、沙綾香は目を覚ます。
「おはよう、沙綾香」
 俺はそう言って、彼女に笑いかけてみせた。
 端塚は、押し黙っている。かなり長く。取った行動に後悔はないが、冷や汗が背中を伝う。

『………………残念です』

 端塚が沈黙を破った、その直後。部屋の四方の壁が開き、そこからセキュリティが雪崩れ込んでくる。
「えっ! な、なに!? いやあっ!! やめて、触んないでよぉ!!」
 沙綾香が本気の悲鳴を上げながら、セキュリティに手足を掴まれた。
「沙綾香ッ!!」
 彼女の事は心配だ。だが、セキュリティ連中の手は俺をも捕らえようとしている。俺は右から迫りくる男の腕を取り、無意識に投げ飛ばしていた。まただ。セックスの時と同じく、『何か』が体を勝手に動かしている。だが、今はそれが心強い。
「く、クソ! コイツ強ぇぞ!!」
 セキュリティの焦る声を聞きながら、敵の耳を引っ掴み、肩を押さえ込む。記憶を失くす前の俺は、荒事にも通じていたのか。相手は俺以上に体格のいい連中だったが、面白いぐらい容易く制圧できた。
 押し寄せる相手を捌きながら、沙綾香の方へにじり寄る。一人、そしてもう一人。男の急所を打って怯ませ、沙綾香を拘束から抜け出させる。ちょうど今は入り口が開いていて、逃げ出すには絶好のチャンスだ。
「沙綾香、俺が食い止めてる間に逃げろ!」
「そ……そんな! センセを置いてけないよ!!」
「いいから、早く!!」
 お互いがお互いを案じるあまり、俺達には隙が生まれた。そして敵は、その隙を見逃してはくれない。背後に気配を感じた直後、全身に激痛が襲った。
「ぐあ!!」
 思わず叫び、ベッドから転げ落ちるた。眼球を上に動かすと、セキュリティの連中が警棒を握っているのが見えた。さっきの衝撃を考えると、スタンガン内蔵か。
「センセ!!」
 何人ものセキュリティに抑え込まれる最中、遠くで俺を呼ぶ声がする。

『おっと、貴女はこちらです』

 またスピーカーが鳴り、端塚の声がした。その直後、床の一部が落とし穴のように開く。さらにセキュリティの一人が、そこに向けて沙綾香を突き飛ばすのが見えた。
「きゃっ!!」
 短い悲鳴と共に、沙綾香は為す術なく床の穴へと落ちていく。
「沙綾香ぁっ!!」
 俺は愛する少女の名を叫んだ。だが、俺を呼ぶ声は返ってこない。代わりに、穴の遥か下で、ひっ、という叫び声がする。胸がざわついた。
「どうした、沙綾香、沙綾香っっ!!」
 さらに叫んだ、その直後。俺のすぐ目の前で、床の様子が変わっていく。
 間近で見て初めて気付いたが、この部屋の床は3層に分かれているらしい。1層目と3層目は透明なガラス張りで、2層目に色つきの層が挟み込まれていたために、普通の床のように見えていたんだ。
 そして今、その色つきの2層目が、シャッターでも開くように収納されていく。ガラスの床を通して、階下の様子が透けて見えるようになる。

 下には、こことはまた別の部屋があった。真ん中には、先ほど突き落とされた沙綾香が蹲っている。そして、その彼女を10人の男が囲んでいた。全員が2メートルはあろうかという巨漢の黒人で、ボクサーパンツだけを身につけて鍛え込まれた肉体を誇示している。
 そして、その輪から少し離れた壁際に、見覚えのある2人が寄りかかっていた。
 上半身を和彫りで覆い、突起だらけの逸物をぶら下げた奴は、桜織の純潔を奪った手越。その横にいる、ローストターキーを思わせるペニスを持つ大柄な黒人は、あの藤花から一切の余裕を奪い去ったロドニーだ。

『どうです、先生。見事な肉体ばかりでしょう。そこに集まっているのは、我が倶楽部の擁する、超一流の調教師達です。いずれも、貴方の元教え子ですがねぇ』

 端塚の声だ。
 調教師。連中の異様な雰囲気に、その言葉はしっくりくる。あんな奴らを俺が育てたなどとは、認めたくもないが。

「な、何……よ、あんた達…………」
 調教師に囲まれた沙綾香は、凍りついたまま動く事もできずにいた。怖くて堪らないんだろう。

『始めなさい!』

 端塚の号令を受け、10人の調教師が沙綾香ににじり寄る。
「い、いや! センセ、た、助けてっ!!」
 沙綾香は怯えきり、俺を見上げて助けを求めた。
「さ、沙綾香! 沙綾香ぁああっ!!!」
 俺は必死に叫び返すが、どうすることもできない。スタンガンで痺れたまま、セキュリティに組み伏せられたこの状況では。

 

夜の遊園地

※甘めの風俗嬢モノです。


夜だけ開く遊園地。
会社帰りにふらっと立ち寄り、イルミネーションも眩い絶叫マシンでリフレッシュできる。
1人が寂しい人は、キャバクラのアフターよろしく女の子をレンタルしてのデート気分まで味わえる。
そんな場所があるのを、どれだけの人が知っているだろうか。

実際これは、優れた商売だと思う。
独身男性にとって都合がいいのは勿論、『嬢』にとってもキャバクラで延々と男の話に合わせるより、
仕事中に公然と絶叫マシンを堪能できるこっちの方が良いに決まってる。
それで“お水”なみのお給料が貰えるんだから、文句なんて出るわけもない。

もっとも、同じ嬢とはいえやる事は様々だ。
本当にただデートをするだけの子、デート後にさらに大人のサービスもしてしまう子。
私は後者だ。
別に今さら気取るつもりもないし、誰かに強制されている訳でもない。
ただそれを望んで、続けてる。

お客からの指名が来るまでは、基本的に私たちは控え室で待機だ。
女性が働く職場ならどこでも同じ、ガールズトークの繰り広げられる溜まり場。
お客が見たら一発で幻滅しそうな風景だ。
いかにも童貞受けしそうな真面目風の子が多いけれども、それがそこら中にいろんなものを投げ捨ててる。
今日は妙に蒸すせいか、みんな色々ともろ出しだ。
豪快にスッポンポンになってるあの人が、ナンバーワン嬢だなんてとても信じられない。
「おっとぉ、これは下着祭りですなーーっ!?」
明るい声を張り上げて出勤してきたのは、私の親友の美紀。
職場のムードメーカーであり、私のかつてのクラスメイトであり、風俗嬢としての先輩でもある。
ある事情で借金まみれになっていた私に、安心して働ける風俗店を紹介してくれたのも彼女だ。
それ以来私は彼女に頭が上がらず、半ば信仰にも近い親愛の情を持っている。

「花蓮(カレン)ちゃーん、さっそく御指名だよー!」
美紀に続くようにして、ボーイが控え室を覗き込んで私を呼ぶ。
さすが慣れているだけあって、控え室の惨状を前にしても涼しい顔だ。
「はぁい!」
私は揚々と立ち上がる。そろそろ待つのに退屈してきた頃だったので、丁度いい。
「うひー、また花蓮ノスケが第一号かぁ」
「やっぱ顔が天然モノで可愛いとねー。あーあ、もうナンバーワン取られちゃうー」
すぐに周りから茶々が入った。
「……あはは」
私は苦笑しつつ、鏡で前髪を整える。
鏡に映るのは、見慣れた顔。べつに可愛いとは思わないし、思いたくもない。
私が過去に付き合った4人の男は、みんな口を揃えて私を可愛いと褒めたけれども、最後には捨てていった。
彼らの言う『可愛い女』=『利用しやすい、チョロい女』という図式が私の中に出来上がってしまい、
そのせいで可愛いという表現にマイナスイメージを感じているのが実情だ。

「頑張れよぅ、花蓮。しつこくされたら、すぐアタシに言うんだぞ」
美紀が私の肩に手を置いて笑った。
彼女はいつだって私を護ってくれる。私のつらい過去を、全部知った上で。
「ありがと。行ってくるよ」
私は笑顔を作りながら控え室を出た。
最近はずいぶん自然に笑えるようになったものだと、我ながら思う。

 
「あ……」
待合室へ出た瞬間、彼の姿が見えた。今日の私のお客。
深山さん、というらしい。勝手ながら、入社二年目かそこらだと見当をつける。
少なくとも、私の“本当の年齢”よりは下だろう。
「花蓮です。よろしく」
私はなるべく柔らかい笑みを浮かべながら告げる。
「あ、は、はい……」
深山さんは一瞬私の顔を覗き込んだ、けれども……ああ、目を逸らしちゃったよ。
何とも内気で、頼りがいがない。
顔も、悪いとまでは言わないけれど、少なくとも整っている方じゃない。
女の子が付きたいと思うタイプかといえば、残念ながらノーだろう。
ただ、私にとっての第一印象は悪くなかった。

高校一年の先輩から始まり、この人こそはと思った彼氏から4連続で痛い目に遭わされた私だ。
自分の『だめんず』ぶりを身に染みて感じると同時に、少々イケメンというものに辟易している。
その点、今目の前にいる深山さんのように、頼りなげな男の人というのは変に安心する。
利用されなさそうというか、ついリードしてあげたくなるというか。
お客に対して失礼ではあるけれども、ウーパールーパーを見ているような妙な癒しの感覚がある。
「今日は楽しみましょう、深山さん!」
彼の腕を取って言ったその言葉は、あながちリップサービスという訳でもない。
「あ、はい……よ、よろしくお願いします」
おどおどとそう答える様子に、つい蕩けそうな笑みが出てしまい、彼を赤面させる。
いけない、妙な空気になってしまった。

「と、とりあえず、あれ乗りましょう!!」
私は誤魔化すように彼の手を引き、すぐ目の前にあるジェットコースターを指差した。
そこまでハードという訳でもなく、スタートダッシュに迫力があるだけのオーソドックスなコースター。
まずはこれに乗り、お客が絶叫系を『イケる口』なのかを確かめる。
嬢によっては可愛くメリーゴーラウンドから始めたりするらしいけれど、私はわざとらしくて嫌いだ。
たまに言われるように、少し、肉食系女子なのかもしれない。


  
意外というべきか、深山さんは絶叫系が強かった。
怖がりはするけれども、叫ぶというよりは恐怖を緊張して静かに堪えるタイプ。
回転ブランコ、フリーフォールと色々連れ回してみたけれども、そのスタイルは崩れない。
私もまったく同じタイプなので、これは嬉しかった。
サービスだから表には出さないけれど、絶叫マシンで連れ合いに煩くされると少し醒めてしまうのが私だ。
その点深山さんとは、自然体で擬似デートを楽しめる。

『イケる口』の深山さんと連れ立って、五番目に並んだのが園内最凶のコースター。
これに挑戦できる人はけして多くない。
乗る前から、その恐ろしさが嫌というほどに伝わってくる。
目が眩むほどに高い最高到達地点、コースターが地表近くを走り抜ける際の爆風に轟音、
そして今まさに乗っている人達のあられもない絶叫、絶叫、また絶叫……。
これで怖さが想像できない人なんているわけない。
大抵のお客はこれに尻込みするし、逆にお客から催促された嬢もほとんどが半泣きで嫌がる。
まさに規格外のモンスターマシンだ。
私は以前に一度だけ、完成直後のこれにスタッフ特権で乗った事がある。
結果、絶叫系にかなりの自信があった私が……大抵のコースターなら両手離しも余裕の私が……失神しかけた。
身体中の血が冷え切って、座席に座ったまま氷漬けになったみたいだった。
ただそのドキドキはどうにも忘れがたいもので、機会があればもう一度と思っていたところだ。

「それは……す、凄そうですね」
私の熱い体験談に聞き入った後、深山さんは目を輝かせて言った。
最初の頃すぐに目を逸らしていた人とは思えないほど、爛々と輝く瞳で見つめてくる。
これは、心の底から絶叫マシンが好きな人だ。スリル中毒だ。
「じゃあ、行ってみますかっ!?」
私は眼力を強め、挑むように尋ねた。
「は、はい!」
深山さんは、それでも全く逃げずに私を見つめ、強く頷く。
なんだろう。この子、可愛すぎる。

 
「ひぃいい、いい…………!!!」

私は、思わず細い悲鳴を上げていた。
コースターがゆっくり、ゆっくりと最高地点に向けて登っていく。
山が遥か下に見えるほどのめちゃくちゃな高度。
ライトアップされた園内が豆粒のように小さくなり、深海を見下ろしている気分になる。
高高度独特の冷たく、乾いた風。
カテタン、カテタンと音を立てながらコースターが上がり、時々不具合が起きたかのように軋む。
山なりになった頂点が少しずつ近づいてくる。
なんともゆったりとした時間。でも私の心は、すぐに訪れる恐怖の瞬間にはち切れそうになっている。
それら全てのスケールが、一般的なコースターの数倍……いや、比べ物にすらならない。

ちらりと隣に視線をやると、さすがの深山さんも表情を凍りつかせていた。
それは、そうだ。こんなにはっきりと死を意識するような場面、そう何度も経験する訳ない。
その悲壮な顔を見ているうち、まるで本当に彼と2人で死地へ向かっている気分になる。
危機的状況で恋に落ちやすくなる、『吊橋効果』だろうか。
と、深山さんの手が動いた。
座席を越えて、私の方に伸び……空を掴む。
たぶん、私の手を握りたがっているんだ。でもそうしていいか解らずに、宙にぶら下がってる。
私は溜め息をついた。
そして同じく手を伸ばして、絡みつくように彼の手を取る。
深山さんの顔が弾かれたようにこっちを向いた。
汗まみれだ。きっと私も、同じような顔で彼を見つめ返している。
「い、いよいよ…………ですよ」
私は言葉を搾り出した。強風の中という事を別にしても、変に震えていた。
深山さんは情けない顔で頷き……私の手を握り返す。
2人とも、もう悟っていた。ここが頂点、今からがクライマックスだと。

一秒。

二秒。




そして…………世界が凍る。



 


コースターから降りた時、私も、深山さんも千鳥足だった。
他の乗客だって皆そうだ。
あまりの恐怖で、誰もが腰を抜かしてしまう。
しばし休憩用の柵に身を預け、弾んだ息を整え……1人また1人と、心が屈強な順に出口へ向かい始める。
だいたい、グループの先頭は女だ。
私も深山さんを助けて出口を通り、売店に向かう。
このコースターは、最も恐ろしいポイントを通過する時に遠赤外線カメラで撮影が行われる。
昼に撮る写真よりもさらに悲壮な顔になっている事が多く、これはもう傑作だ。

「っぷふはは、こっこれっ、あはははっ、へ、ヘンな顔!!!」
深山さんが受け取った写真を目にした瞬間、私は思わず噴き出してしまう。
そこにはあられもなく顔を歪め、顔中の肉という肉を波打たせた私達がいたからだ。
しかし第一の笑いの波を乗り切った時、私はしまったと思った。
仮にもお客に向けて、ヘンな顔とは何事か。
恐る恐る深山さんの顔を窺うと、しかし彼も写真を見て大笑いしている。
「ははは、これは凄いや!!」
実に朗らかな笑いだ。
助かった。深山さん、懐の大きい人だ。
「……楽しかったですね。外でちょっと休憩したら、次あっち行きませんか?」
私は嬉々として、お化け屋敷を指差す。
深山さんは笑ってくれる。

正直に言うと、私はこの時点で、かなり深山さんを気に入っていた。
サービスを抜きにして、自然と深山さんと腕を組んでいた。
粋な支配人の計らいで、お化け屋敷は入るたびに仕掛けが変わり、私達スタッフでも新鮮な怖さを味わえる。
その中で叫び、深山さんにしがみついたのは、断じて計算ではない。
とても楽しいデートになった。
……そして、大人のデートにはまだ続きがある。
絶叫マシンとお化け屋敷で存分に気分を高めた所で、園内からほど近いホテルに移る。

「……あ、あ、あの、ほ、ほ。本番も……き、希望してるんだけど…………」
部屋に入った瞬間、深山さんは臆病さを復活させて呟いた。
私は返事をしなかった。
服を着たまま、靴も半分しか脱がないまま、硬直した彼の首に腕を回す。唇を奪う。
熱く、深く、熱いキス。
本気が多分に混じっているから、相手もきっと、蕩けてくれる。

  
もどかしささえ感じながらシャワーを浴びて、ベッド脇で深山さんに奉仕する。
態度は小心者ながら、しっかりと成人した男の人らしい大きさがあった。むしろ、少し大きめかもしれない。
「あ、あ、ああ」
私が先のほうを舐めるたび、深山さんはかぼそい声を上げた。
そういう声を出されると、私はさらに責めるというか、奥まで咥え込みたくなってくる。
「ひうあ、あ!!」
深山さんは腰を震わせながら、私の髪に手を置いた。
見上げるまでもなく、彼の熱い視線がディープスロートをしている私の顔に注がれているのが解る。
手は控えめに控えめに、私の頭を押さえつける。
それを感じて私は、あえて自分から深く咥え込んだ。
昔の風俗店で仕込まれた、喉奥を開いてアレの先を飲み込むディープスロート。
こちらの苦しさは尋常ではないけれども、相手の受ける刺激も半端ではないらしい。
「うわあ、ああ!!な、なにこれ、すごい、凄いっ!!!!」
深山さんは腰を震わせて、1オクターブは高い声で快感を表していた。
私が喉で先端を締め付けつつ扱くと、さらに堪らなそうな声になる。
ただ、私はある程度で彼のものを吐き出した。
そのまま続ければ、射精してしまうのが解るからだ。
20も過ぎた男は、一回の射精がとても重要だと私は知っている。
だからこそ、深山さんにこんな所で果てさせるのは忍びない。

「ふふ、おっきくなったね」
私は自分の唾液で濡れ光るものを手で扱きながら、彼をベッドの上に誘導した。
シックスナインの格好で彼の上に被さり、ゆるく口での奉仕を続けながら秘部を晒す。
少し、勇気が要った。
今の私は、正直に言って本気で発情しかけている。
元々目のない絶叫マシンに、死ぬほど乗った高揚感。それを相性の良いパートナーと堪能した満足感。
私なんて女は単純なもので、それだけをオカズに濡れてしまうわけだ。
『だめんず』ここに極まれり、と仕事仲間に笑われるのも仕方ない。
深山さんには、指を入れればローション無しでも水音のする秘部を見られてしまう事になる。
お客を相手に本気で濡れるなんて、嬢としては結構プライドが痛むものだ。
それでも、晒してしまう。
たどたどしい手つきで、舌遣いで責められ……私は2分か3分かの後に、物理的なものとはまったく別の絶頂を得た。
「うわ、すごいっ……」
何を指していたんだろう。
深山さんのその小さな声が、私には死にそうなほど恥ずかしく、けれども嬉しかった。

 
キスしたまま彼のものにコンドームを被せ、正常位で繋がる。
「あ、熱い……そ、それに凄く、締まる」
深山さんが驚いたように呟いた。
私はべつに頑張って締め付けているわけじゃない。
ただ、割と本気で感じているだけだ。膣の中がふっくら膨らんで、彼自身を圧迫しているだけだ。
大股を開いて繋がる。
何もかもが彼から丸見えになっていて、もうどうしようもない。

深山さんは真剣な表情で腰を打ちつけてくる。
その正中線を真っ直ぐ下ろした場所の熱く硬いものが私の中に通じ、奥まりを突く。
それと同じリズムで快感が足の先にまで流れ、弾ける。
ジェットコースターで氷のように冷え切った身体が、温まって痒みすら感じているかのように。
「可愛いよ、花蓮さん……」
駄目押しのように、深山さんはそんな事を真顔で告げてくる。
私は……一秒だけ彼の瞳を覗き返したけれども、たまらず顔を背けてしまった。
頬がちりちりするほど赤くなっているのを感じる。
本当になんなんだろう。この、コースターが急降下するような惚れっぽさ。

突かれるたびに揺れる私の下半身のせいで、結合の姿勢は少しずつずれていく。
そしてついに反転し、バックスタイルになってしまう。
シーツに顎と胸をつけ、お尻だけを高く掲げるような格好だ。
深山さんはそんな私の腰をしっかりと掴み、さらに突き込みを開始した。
バックは正常位よりも簡単に奥まで届いてしまう。
より激しい快感が、私を貫く事になる。
「あ、あ……あ、ひっ……ひぃいいいいいっ!!!!」
私は数分と経たずに、その声を上げた。
なさけない喘ぎ声。
初めての時から一貫して、私はバックである程度以上気持ちが良くなるとこの声が出てしまう。

きっと、何かが怖いから。
きっと、何かが私の許容量を越えてしまったのが解るから。

その声が出た後の結果はいつでも同じ。
私は背後の人間に従属し、依存し、望んで良いようにされてしまう。
深山さんですら……そんな変化に気付いてしまったみたいだ。
両手で腰を掴んでいた彼は、その片手を離して私の背中を撫でてくる。
本当に、勘弁して欲しい。
そういうことをされると、私はシーツを掴み、腰をさらに高く上げ、膣を絞って……
『可愛い名器』に成り果ててしまう事が、もう身に染みて解っている。

「ううう、うう、ああああっ!!!!」
やがて深山さんが叫び、私の中で熱さを震えさせる。
薄いゴムが膣内でふよふよと漂うような感覚。でもすぐに張りをもって……かなり出ているとわかる。
「……はぁ、はっ、はっ……はぁ、あっ…………あ」
私はすぐに言葉も出せなかったけれど、膝を曲げて腰をずらし、態度で彼に抜くよう懇願した。
深山さんはすぐにそれを悟り、ずるりと物を抜いてくれる。

私は彼から用を終えたゴムを抜き、新たな一枚を被せた。
彼のものは少しお辞儀をしていたけれども、十分な硬さが見て取れたから。


  

もう一度、正面から抱き合う。
今度はもっと近く。深山さんの首を抱え込み、膝の上に乗るようにして繋がる。
言葉を交わす余裕がない。
はっ、はっ、という息と、あっ、あっ、という喘ぎ声だけが響いていて、それがまた興奮を煽る。
自分から浅ましく腰を振っているのに気付いてはいるが、止める気にならない。
もっと、浅ましく。もっと、露骨に。もっと、気付いてもらえるように。
彼の首を抱きしめ、色んな場所に口づけをする。乳房を押し付ける。膣を締める。
深山さんは、そんな私の努力を流さなかった。
すべてに反応をくれ、慣れない風ながらに返してくれた。

泥沼。
反復

飽和。


カーテンから黄色く光が漏れるまで、私達は繋がっていた。
さっと血の気が引く。
「あ……あ、うそ、ごめんなさい…………か、会社が!」
まだ平日。
深山さんには、今日も朝から出勤の義務がある筈だった。
けれども彼は晴れ晴れとした顔で、私の髪を撫でる。
「たまには、徹夜もいいよ」
そう笑う顔は、とても逞しい。私はどれだけ、人を見る目がないんだろう。


「…………また、指名してくださいね」
彼に後ろからシャツを着せつつ、私は言った。
営業文句ではけっして無く、本心から彼とまた遊びたいと思っていた。
勿論、私は風俗嬢だ。
彼に限った話ではなく、他の誰かにも似た感情を持つことはある。
でも、二個でも三個でも、本物の好意には違いない。
「ええ。また必ず」
深山さんはそう言って、軽やかな足取りでホテルを出る。

私も、それから数分の間を置いて。


「お、まーたツヤツヤの顔して戻ってきやがった。全く参るねぇカリスマさんにゃ」
「その調子じゃ、結構ヒットだったみたいね」
控え室に戻ると、中に残っていた娘達が私の顔を見て言う。


私は、照れて笑ってしまった。




                       終わり
続きを読む

令嬢の蕾

※ロリアナル物



ネットの世界には、真偽の定かでない情報が常に漂っています。
その情報も、普通であれば下らないと見過ごすようなものでした。
名門として知られる『幸華大学付属小学校』の女生徒が、肛門を用いた売春をしているというのです。

いかにも“初心者を釣りやすい”ネタでした。
ネットの海の底といえるアンダーグラウンドな掲示板とはいえ、
これだけ未成年への犯罪が強く取り締まられている中、本当の事が書かれているとは思えません。
私も最初は一笑に付すつもりでいました。
しかし、なぜなのでしょう。
本当に気まぐれながら、私はそこに併記された連絡先へとコンタクトを取ってみる事にしたのです。

返信メールには、より詳細な内容が記載されていました。
件の小学校の正門から道なりに西へ。大通りに出るので、南へ。
三つ目の交差点を左折し、古いパチンコ屋の裏手で待つ。
目印として、手に赤いハンカチを持っているように。
内容としてはそのようなものでした。
実際の文体は砕けた口語体であり、ら抜き言葉や若者表現が多用されている事から、
返信主はかなり若いことが窺えます。
憶測ですが、売春をしているという女生徒本人か、あるいはその級友なのではないかと思われました。

しかし、そのような事はどうでもいいのです。
具体的な場所まで示された事で、話の信憑性は一気に増しました。
無論、『美人局』である可能性はあります。
甘い言葉で誘いをかけ、引っかかった男を数人でカモにする、というあれです。
しかし、私はそれでもあえて釣られてみようと考えました。
最近は仕事も人間関係も上手くいっておらず、若干の自暴自棄に陥っていたのです。
不良の数人に襲われたなら、それを口実に暴れるのも良し。
その挙句に金品一切を奪われても、それはそれで良し。
そうした気持ちで、しかし一筋の希望は捨てずに、私は示された現場へと足を運びました。


古びたパチンコ屋の裏の通りは、程よく寂れていました。
人通りが全く無いわけではなく、しかし通りすがるのはパチンコ屋を目当てにした無気力な人間ばかり。
こちらをちらりと見る事はあっても、積極的に関心を示す様子はありません。
後ろ暗い待ち合わせの場所としては打ってつけです。

指示にあった赤いハンカチを弄びつつ、私はしばし表通りの人の流れを眺めていました。
時間は土曜の夕方であり、通りを行く人々も様々です。
スーツ姿のサラリーマンに、買い物袋を提げた主婦、制服を着た女学生の集団。
そうした人だかりの中で、ふと私の目を射止めたものがあります。
令嬢然とした少女でした。
それも、かなりテンプレート的な。
高給取りの父親と品の良い母親とで連れ立ち、百貨店を歩いているタイプに見えます。

ハーフアップに結われた胸までの黒髪は艶やかで、遠目にも光の輪がなびくのが見て取れました。
上には白一色のファージャケットを羽織っており、やや大人びた印象を加えています。
下は黒いミニスカート。
しかし何よりも私の視線を釘付けにしたのは、その幼い脚を覆う黒ストッキングです。
少女は確かに今時の少女らしく大人びてはいましたが、すらりと伸びた両脚は、まだ肉付きのあまい子供特有のものです。
それをストッキングという特有の色気を有したものが覆っている。
さらには彼女の履いているものは、逆に子供が普段通学に用いるような白いスニーカーなのです。

その絶妙なミスマッチが、特殊性癖を持つ私の心を鷲掴みにしました。
何と魅力的なことか。
幼いその姿は、今私が待ち合わせている相手といやが上にも比較されます。
おそらく私の相手は、春をひさぐ事を気にも留めないすれた少女である事でしょう。
その相手が、彼女であれば良いのに。
私は交差点を渡り始めた少女を眺めながら思いました。
黒ストッキングに包まれた細い脚は、歩く動作に合わせて肉を隆起させながら、独特の妖艶さを醸し出します。
それはまさに、視線を吸い込む魔性の脚です。
来るかどうかも解らない相手をここで待つよりは、彼女の後を追って、あの美脚を少しでも視界に留めたい。
そうした、今さらではあるにせよ、犯罪的な思考が脳を支配しかけました。

しかし、結局私はそれをしませんでした。
諦めた訳ではありません。
その令嬢然とした少女が、まさに私が待つ方へと歩みを進めていたからです。
私は、視界の中に刻一刻と大きさを増していく少女を正面に見ながら、呆然と立っていました。
始めはただの偶然に思えました。
横断歩道を渡るのは言うまでもなく、その後大通りからこちらの路地へ入ってくるのも、
小学校への近道をしているのだろうと納得できます。
より間近で彼女を見られる事を嬉しく思いつつも、私は彼女の後ろ姿を見送る覚悟を決めていました。
しかし。
彼女は路地の一つで足を止め、くるりとこちらへ顔を向けたのです。

思考するより先に、私の中の第六感が歓喜していました。
自分に都合の良いことだからでしょう。私の脳は、いつになく聡明に結論をはじき出しました。
私が立つこの待ち合わせの場所は、路地の袋小路です。
ビルの隙間から大通りの様子を伺うことはできても、わざわざこの路地に入る必要性は通常ありません。
そこに一人立つ私の前に歩み寄る。
その理由は、私に用があるからに他ならないでしょう。

少女は凛とした瞳で私を見上げていました。
丁寧な編み込み入りのハーフアップは、まさしくお嬢様そのもの。
シャンプーの良い香りが鼻を抜けます。
近くで見ると、いよいよ彼女の小柄さが解りました。
小学生にしては発育がよく、上背もありますが、女子高生にしては小さすぎる。
目つきは意外にもキツいものです。
その瞳に直視された時、私は考えを一転させ、じろじろと見ていた事を非難しに来たのかと疑りました。
少女はそんな私を上から眺め回し、手の中の赤いハンカチで目を止めます。
そして視線を顔に戻してから、ようやく桜色の唇を開きました。

「……Takuroさん、ですよね?」

一瞬、私にはそれが誰なのか解りませんでした。
しかしすぐに、それが件のメールで適当に名乗ったハンドルネームだと気がつきます。
「あ、はい!」
私はなぜか改まった口調で答えつつ、彼女こそが私の待ち合わせの相手だった現実を知りました。
喜ばしい事であると脳では理解しつつも、受け入れるのに時間がかかりそうです。
それは、志望大学で受験番号を見つけた時にも似た気分でした。
少女は私の返答を聞き、素早く周囲を見回した後で私の腕を掴みます。
「行きましょう」
柔らかな手の肉の感触に戸惑う私へ、少女は小さく囁きました。





ラブホテルのカウンターに腰掛ける中年男性は、老眼鏡を上にずらして私達を一瞥しました。
しかし一言を発するでもなく、部屋の鍵だけを差し出します。

「やっぱり、変に思われちゃったかな」
入室後に私が言うと、少女は澄まし顔で首を振りました。
「大丈夫だと思いますよ。このホテル、未成年の利用客は珍しくないそうですから」
そう告げる彼女の髪からは、なおもシャンプーの香りが漂っています。
鼻がつくような間近にいるだけに、余計にその香りは私の胸を沸き立たせました。

良い香りに相応しく、彼女は顔立ちもとても整っています。
欠点のない顔と言っていいでしょう。
意志の固そうな瞳に、小ぶりな鼻、桜色の薄い唇、ややまろみを残す顎。
品があり、かつ聡明な顔に見えました。
その彼女が白いスニーカーを脱ぐのが見えた時、私の理性が一つ外れます。
これほどの美少女が、ストッキングを着用したまま履き通したスニーカーです。
いったいそれはどれほどに蒸れ、どのような匂いを醸すのでしょう。

気がつけば、私は彼女が脱いだばかりのスニーカーを拾い上げ、そこに鼻をつけていました。
「!!」
隣で少女が息を呑む気配がします。可愛い表情です。
それと同時に私の鼻腔には、彼女自身のスニーカーの匂いがなだれ込んできました。
凄まじい匂いです。
足の裏の汗がたっぷりと発酵した匂い。それは主がどれほど美しかろうと区別なく、悪臭と化しています。
しかしその鼻の捻じ曲がりそうな強い匂いこそが、私の血肉を踊らせるのでした。
下品ながら、己の半身がみるみる勃起していくのが解ります。
蒸れに蒸れた美少女のスニーカーを嗅ぎながら、勃起しているのです。
何と罪深いことでしょう。

ひとしきり少女の芳香を肺に収めた後、私はスニーカーを離しました。
そして、物言いたげに見上げる少女へ顔を向けます。
「ごめんね、いきなり」
今さらながらに謝罪すると、少女は私の視線を避けるように俯きました。
臍よりやや下で指を組んでいます。

「…………ほんとに、好きな人いるんだ…………。」

聴き取れるのがやっとという小声で、彼女は呟きます。
その頬は、心なしか赤らんでいるように見えました。



少女は、史織と名乗りました。
本名かは定かではありませんが、私にとってはどちらでも同じことです。

「好きにして良いですよ」
ベッドに腰掛けた史織は、足を伸ばしたまま私に告げます。
妙に度胸が据わっているのは、素の性格か、あるいはこうした場に慣れているからでしょうか。
私は有り難くベッドの上に乗り、史織の脚に手を伸ばします。
柔らかく、とても暖かい感触。
それが『少女の脚に触れている』という実感を私に与えました。
少し前、路地で彼女の姿を目で追っていた時には想像さえできなかった事です。

私は震えるほどの興奮を覚えながら、黒ストッキングに包まれた右脚を抱え上げました。
脹脛を腋に挟み、太腿を裏から撫でます。
その瞬間、抱えた右脚がびくりと強張りました。
あまり男に触られることに慣れているとも思えない反応です。
私はその初々しさに嬉しくなり、少女特有の細長い脚を堪能しにかかりました。
柔肉をさすり上げ、その逆をし、揉み解す。
あるいはストッキングの足指の部分を、スニーカーと同様に嗅ぐ。
「っ!……、………っっ!!」
少女はその度によい反応を示しました。
ややキツめな瞳でこちらを見つめながら、時おり唇を小さく噛みしめる様はじつに愛らしいものです。
片脚を大きく掲げると、スカートが捲れて黒ストッキング越しに下着が見える事もありました。
ショーツは期待通りの純白で、ますます私の情欲をそそります。

右脚を堪能すると、次は左脚です。
同じく付け根から足指に至るまでを愛し、ストッキングの所々を唾液に塗れさせます。
しかしそうするうちに、ストッキングは大きく伝線してしまいました。
「あっ!」
私は思わず声を上げますが、史織に焦りはありません。
「大丈夫です、替えの用意がありますから」
そう呟きます。
私はその言葉で強気になり、ならばと伝線した一箇所からストッキングを破きに掛かりました。

ストッキングの裂け目から、眩いばかりに白い脚線が露わになっていきます。
それは羽化を思わせる神秘的なものでした。
太腿から脹脛へと伝線を拡げ、ついに足先までがさらけ出されました。
足の甲は雪のように白く、しかしふっくりとした指の付け根やかかとは紅色に色づいている。
その足裏は、私のような人間にとって堪らないものでした。
当然、しゃぶりつきます。
踵から土踏まずへ至り、その側面を舐め上げ、足指の一本一本をしゃぶり尽くす。

「あ、あっ!!」
ここでついに、史織から声が漏れました。
足の薬指を舐める私を、驚愕するような瞳で見上げつつ、その頬はかすかに緩んでいます。
私は気付きました。
彼女がこの場にいるのは、間違いでもなんでもない。
彼女自身もこの状況に興奮する、変態の一人なのです。

片手で足裏を捉えて舐めつつ、もう片手で完全にストッキングを脱がせる。
蛍光灯の下で完全に露わとなった幼い生足に、私は今日幾度目かの生唾を飲み込みました。
勃起はいよいよ強まり、スラックスの中で折れるかのように滾っています。
私はスラックスと下着を一纏めに脱ぎ捨てました。
この一年で最大ではというほどの隆起が、斜め上に反り立っています。
先端の皮は七分ばかり剥け、先端はうっすらと雫に濡れてもいます。
「わっ……」
怒張を目の当たりにした史織は、口に手を当てて驚愕を表していました。
仕草の一つ一つが本当に令嬢らしい少女です。
もしそれらを計算でやっているなら、幼いながらに天才的な女優といえるでしょう。

私ははじめ、少女に怒張をしゃぶらせたいと考えました。
普段喚いたりしないのだろうその小さな唇は、逸物を収めるのにとても具合が良さそうです。
しかし彼女の身体を眺め回すと、どうしてもその脚線に目が奪われてしまいます。
すらりと伸びた、大人びながらも未熟な足。
私は、その足に自らの分身を踏みつけて貰いたいと願うようになりました。

ベッドに仰向けに寝た私を、史織が遥か高くそびえるように跨いでいます。
この角度からなら、細長い生足も、その上にある白い下着も丸見えです。
足を踏ん張って立つおさない身体は、とてもいじましいものでした。
「で……では、行きますよ」
史織はやや緊張した面持ちで口を開きました。
そしてゆっくりと左脚を持ち上げ、ややバランス取りに苦労しつつもその足を私の下半身に乗せます。
「痛みを感じたら、すぐに言ってください」
足を半ば浮かせたままで、再度確認するように史織が言います。
見た目はキツいですが、その性格は傲慢どころか、とても気遣いのできる娘のようです。
私は笑みを湛えて頷きました。

史織は最初はやや控えめに、しかし私自身の求めに応じて次第に強く、逸物を踏みにじります。
亀頭を指の付け根で圧迫し、幹を足裏で潰し、睾丸を指先で転がす。
器用なのか、それは初めてとは思えないほどの上手さでした。
見上げる光景も素晴らしいものです。何しろ未熟な脚の少女が、私を見下ろしているのですから。
「あ、ああっ!!」
私は堪えようもなく声を出していました。
あまり耳にしていて心地いいものではないはずですが、史織はその声をよく聴いている気配がありました。
「……いたいですか?」
「い、いや、気持ちいいんだよ。すごく」
私の声が快楽からのものと知れると、史織は私がより声を出せるように、逸物の潰し方を変えてきます。
「あ、ああ、くうっ!!!」
私は足を強張らせながら、強烈な快感が背を駆け上るのを感じていました。
心身がともに満たされれば、決壊は容易いものです。
史織の白い足指が扱くように幹を駆け上がったとき、私は身を仰け反らせました。
「うう!!」
呻くと同時に、幾度も噴出寸前までいった射精がついに始まります。
それは勢いよく私の腹にかかり、史織の白い脚をも汚していきました。

射精後の妙な高揚の中で、私はその汚れた足を眺めます。
そして自分でも知らぬうちに、その足首を取って舐め始めていました。
自らの精液のついた美脚を、です。全くもって底無しの変態です。
「……あ、そんな……あ、……っ…………!」
史織は小さく呟きながら、胸を庇うように細腕を交えさせてこちらを見下ろしています。
その表情は、しかし興奮しているようにも見えました。



私達はそれから、半端に残った服をすべて脱ぎ去ります。
史織の裸体は着衣時のイメージ通りに華奢で、くすみ一つない桜色の肌は天使のようでした。
胸の膨らみはほとんどなく、スポーツブラで充分といった大きさです。
恥毛もまだまだ生え揃えてはおらず、その茂みの薄さは彼女の幼さを決定付けるものでした。
秘裂には前貼りがしてあり、色合いを知る事はできません。
「今日使うのは、お尻だけという約束ですから」
前貼りを凝視する私に、史織が言います。
確かにその通りで、『肛門を用いた売春』を目当てに私は来ているのです。
膣よりも背徳感の強い肛門に興味のある私は、史織が守る純潔を無理に奪うつもりもありません。
そう言うと、史織は安堵の表情を見せました。
しかしその表情も、私が自然な動きで彼女をベッドに横たえるうちに、緊張したものに変わっていきます。

「……ん、んっ…………」

数分後、史織は声を漏らしていました。
彼女は丸裸のまま仰向けになり、私に秘部を向ける格好でいます。
私はそんな彼女の脚を持ち上げて開かせ、桜色の蕾を舐めしゃぶっているのです。
彼女の肛門は初々しいものでした。
開き具合からして全くの未経験ではないでしょうが、おそらく本格的な調教はなされていません。
しかし感度は抜群にいいらしく、私が肛門へ舌を這わせるたびに、二本の細い脚が反応を示します。
私は手の平の下にその腿の蠢きを感じながら、夢中になって少女の肛門を味わいます。

肛門は若干のしょっぱさが感じられるだけで、別段美味しい訳でもありません。
しかしながら、それは間違いなくこの美少女の肛門なのです。
ああ、うう、と彼女の声を上げさせているのは、他ならぬ私なのです。
そう考えれば、舌は離れませんでした。
史織がむずがる動きで身体を円転させ、四足で這うような格好になっても、私は肛門を舐め続けました。
おさない脚が必死に強張るさまを視界の端に捉えながら、延々と。
ふいに舌をねじ込むと、腰がぞくりと跳ね上がるのはとても楽しいものです。
「ああ、ああっ!!うう、あっ、あっあ……すごい…ぃっ………!!」
史織は枕で声を押し殺してはいましたが、空気を求める際にそのような声を漏らします。
どうやら、かなり感じてきたようです。
私がようやく舌を離した頃には、未熟な尻穴にぽっかりと穴が空いていたのですから、仕方ないかもしれませんが。





「……どうしたの、もう限界?」
私は史織を見下ろしたまま告げました。
彼女は幼い身体を後ろ手に縛められ、風呂場のタイルに這う格好を取っていました。
肩幅に開いたその脚の傍らには、薬液を湛えた洗面器と、立てかけられたガラス浣腸器があります。
私はその浣腸器を手に取り、薬液を吸い上げます。
史織は可愛らしい瞳を見開いて、その様を見守っていました。
薬液を満たした浣腸器を、そんな史織の蕾へと近づけます。
肉付きもあまい子供尻の間に、冷たいガラスの浣腸器が刺さる。なんとも犯罪的な絵です。
「ん!」
小さな声が上がりました。
透明なガラス腰に、桜色の蕾が小さく口を開いているのが見えます。
私は浣腸器の末端を押し込んで、少女の細いお腹に薬液を注ぎ込んでいきます。
浣腸器は200ml入りで、これが5本目。
都合一リットルほどが、天使のような少女に入っていった事になるのです。
その背徳感に、私は身震いする思いでした。

浣腸器の中身を半分ほど入れたところで、史織の肢体がぶるぶると痙攣を始めます。
我慢強い彼女も、そろそろ限界のようです。
私は最後に力を込めて、浣腸器の中身全てを注ぎ込みます。
そして浣腸器を抜くと同時に、素早く指で栓をしました。
「お……お願い、トイレを使わせてください……もう、噴き出してしまいそう…………!!」
震える声で懇願する史織ですが、私はそれを許しませんでした。
これほどに愛らしい少女の排泄姿を、洋式便器などに隠されるのは度し難いことです。

「駄目。ここで、するんだ」
私は浣腸器を床に置き、洗面器を少女の脚の間に掲げました。
そして、肛門を押さえる指を穴の中に沈み込ませて刺激を与えます。
「い、うぅ、うっ、ああ、おお、お願いですっ……!!」
史織はいよいよ余裕をなくした声色で乞いますが、もはや後の祭り。
痩せた背中がぶるりと震え、腰が落ちます。
ついに決壊の時がきたのです。
私は肛門の指を離しました。まるでそれを追うように、少女の若尻から液体が迸ります。
「見ないで、見ないで!こんなところ見ないで下さいっ!へ、変態!!」
史織は叫びながら、恥辱の排便を続けました。
私は手にした洗面器でそれを受けとめ、見届けます。
おさない彼女の中に隠されていた、すべてを。

這った状態での出が悪くなれば、史織の肩を掴んで洗面器を跨がせました。
腹圧が増した事で、腸奥に残っていたものが洗面器の中に叩きつけられていきます。
「うん、良い顔だ」
私は、あえて史織の瞳をまっすぐに覗き込みました。
「あ、あああ、ふぁあああ…っっ………!!」
史織もまた、凝視する私の視線から逃れられないかのように目を見開いています。
嫌、嫌、とその瞳が訴え、怯えを見せ、やがて服従という名の平穏を得る。
その移ろいを目にするうち、私は彼女の中に強いMの気を見出していました。





浣腸を終えた後は、ついに肛門のほぐしに入ります。
史織は私の指示で、ベッドの上に四つ足で這う格好をとり、尻をこちらに向けていました。

背後から俯瞰で見ると、本当に初々しい肉体です。
まだ肉付きのあまい尻肉から伸びる、すらりと細長いばかりの脚。
腰から肩、腕へと伸びるラインは一見するとモデル風ですが、個々のサイズは小さなものです。
そこには人形のような矮小さと、生々しい肉の艶色が不可思議に同居していました。
髪もひどく扇情的です。
丁寧に結われたハーフアップ……いわゆる“お嬢様結び”の黒髪が、後頭部に気品を与えています。
そしてその艶やかな毛先は彼女の白い背中に流れ、鮮やかなコントラストを成しているのです。
令嬢。
否応なくその言葉が思い起こされます。
いま私の前で、犬のように四つ足で這っているのは、紛れもない令嬢なのだと。
それは私の中の獣を駆り立てました。
順序のさまざまを蹴飛ばして、このまま荒々しく挿し貫きたいと思うほどに。
しかし。凝視する私を訝しがって振り向いた瞳に、私はかろうじて理性を取り戻します。

「じゃあ、始めるよ」
私は真新しいローションのボトルを開封し、指に垂らしながら声をかけました。
「はい」
史織は振り向く顔を前方に戻し、頭を下げて身構えます。
私は彼女の尻肉を掴みました。
どこまでも柔らかく、暖かな体温の感じられるそれを横へ押しやり、桜色の菊門を露出させます。
とても排泄器官とは思えないほどの慎ましさです。
私はその愛らしい排泄孔へ、ローションに塗れた中指を近づけました。
浣腸の効果で、ほんの少し開いた菊門。
その隙間へ指先を押し付け、力を込めて中へねじ込みます。
「あっ!」
鈴を鳴らすような声が聞こえました。
その瞬間、異物の存在を感じた菊輪が即座に窄まり、私の中指は粘土に埋没したような抵抗に見舞われます。
「力を抜いて」
そう声をかけると、一瞬圧迫が弱まりますが、数センチ進めるとまた強く締め付けてきます。
指を前後に動かす事すら叶わない抵抗で、いったいこの青い尻のどこにそんな筋力が、と驚くばかりです。
しかし私は、辛抱強くその抵抗に付き合いました。
焦れる心よりも、彼女の初々しい部分を開拓していく喜びの方が勝ったのです。


「……っぁ、……っぁ、はぁっ…………」
史織は細く息を吐き出すようにして喘いでいました。
彼女がそのように喘ぐのだと知る人間も、そう多くはないでしょう。
私は微かな優越感を感じながら、ゆっくりと中指を回転させます。
あるいは深く入れた指先で、腸内の壁を掻く事もありました。
その度に少女の腰が震え、細い喘ぎが漏れるのです。
「どう、どんな感じ?」
私は反応を確かめるべく問いました。
史織は一瞬戸惑うように息を吸い、吐き出して答えます。
「……変な気分です」
「変な?」
「はい……強い違和感があって、指を出したいけど……でも、もっと深く知りたいような」
「気持ち良いの?」
史織はそこで一拍の間を置き、囁くように言いました。
「そう、なんでしょうか」
どうやら、彼女はアナルに素質があるようです。
感度にしても、アナル性感を受け入れる変態性にしても、文句なしです。

私は一旦指を引き抜き、ローションを追加しました。
そして今度は人差し指も加えた二本指でもって、再び桜色の肛門に宛がいます。
「んんっ!!」
挿入の瞬間、史織は喉を鳴らすように呻きました。
中指一本だけの時とは、感じる異物感の桁が違うのでしょう。
しかし、私は彼女ならそれを受け入れられると確信していました。
そして事実、数度出し入れしただけで、彼女の柔軟な括約筋は指二本の太さに慣れていったのです。
「どう?今まで出すばっかりだったお尻に、指が二本も入ってるよ」
私は随時そのように言葉にし、少女の反応を楽しみました。
あまい少女の体臭が漂う中、柔らかな尻肉を揉みしだきつつ、指先で初々しい肛門を嬲る。
それぞれの指先に暖かさを感じながらも、まるで夢のように思える時間です。



たっぷり10分は指責めを堪能したでしょうか。
私が指を引き抜いたとき、その先端のローションは白く濁り、変質しているように見えました。
令嬢の肛門に入っていた指。そう考えると、私の中の変態性欲がざわめきます。
本能のままに、私はその指に鼻を近づけていました。
私の大好きな腸の匂いがします。
人間も所詮は獣、つい嗅いでしまいたくなる妙な匂いというものがありますが、これもそうです。
一目でお嬢様とわかるような少女でも、腸の匂いは嗅ぎ慣れたそれなのです。
その事実に、私は異常な興奮を感じていました。そして胸を高打たせたまま次の責めに移ります。

四つ足で這う格好の史織を、一旦ベッドに腰掛けさせます。
身体の前面が私に向くようにです。
華奢な背筋は見えなくなりましたが、代わりに小ぶりな乳房とすっきりした腹部が表れました。
まずは大きく脚を開かせ、前貼りを貼りつかせた秘所とその下の肛門を晒させます。
勿論、狙いは肛門の方です。
「ちょっとだけ開いちゃったね」
私は持参したリュックを漁り、手鏡を取り出して史織の方へ翳しました。
鏡面には、彼女自身の肛門が映し出されているはずです。
少女の二つの瞳は見開かれ、鏡の中を瞬きさえ忘れて覗き込みます。
息を呑んでいる様子です。
私はそんな彼女を観察しつつ、リュックから別の道具を取り出しました。
アナルパール。
真珠大の玉がいくつも連なった責め具で、肛門開発においてはポピュラーなものです。
史織が気付き、見開いた目を私の手元に向けました。
澄んだ瞳の中にパールが映り込みます。そこへ、ローションが垂らされていく様も。
「いくよ」
私は片手に手鏡を、片手にローション塗れのアナルパールを握りながら告げました。
アナルパールの先端は、すでに桜色の窄まりを捉えています。
史織自身にも、手鏡を通してその状況が見えているはずです。
ずぐり、と肛門の中へ異物が入っていくさまも。
「あ、あっ……!!」
期待通り、一見令嬢風の少女は小さく喘ぎました。
指責めとは違い、自ら肛門への侵入を視認しながらというのは堪らないのでしょう。

パールが三個ほど菊の輪を通り抜けた時です。
史織の小さな手が、突如私の腕を掴んでパールの侵入を留めました。
「す、少しだけ、待ってください」
史織は私の目を縋るように見てそう言い、目を閉じました。
そのまま長い睫毛を数度ひくつかせ、その後に小さく声が漏れます。
 ―――ごめんなさい。
誰に向けた謝罪かは不明ですが、恐らくは親に対してだったのではないでしょうか。
史織はごく短い懺悔を終えた後、目を開いて私の手を放しました。
「すみませんでした。続けてください」
彼女はそう囁き、目を細めて手鏡の中の世界に浸りはじめます。
そこからは、彼女は抵抗しませんでした。アナルパールがどれだけの回数、彼女の後孔を通り過ぎようとも。


私の持参したアナルパールは直径の太さ・長さ別に四種類。
それらはいずれも使い尽くし、シーツの上にローションに塗れて転がっていました。
現在、史織の肛門には、やや太さのあるアナルバイブが刺さっています。
柄の部分を鷲掴みにして深く抜き差しすると、私の手の甲を明らかに腸液と思しきものが伝っていきます。
それも自然なことでした。
彼女は、大股に開いた脚を自ら抱えるというあられもない格好で、延々と後孔を嬲られているのです。
より性感を得やすいよう、私は陰核にローターを宛がいつつ、丹念に尻穴を穿ち続けました。
「あ、あっ」
桜色の唇からは幾度の喘ぎ声が漏れ、甘い吐息が私の鼻先を何十回くすぐったことでしょう。
少女の未熟な肛門が腸液を滲ませはじめても、何ら不思議はありませんでした。

私は頃合いを見てアナルバイブのスイッチを切り、引き抜きました。
名残を惜しむように菊輪の縁と糸を引くさまが、なんともいやらしいものです。
令嬢然とした少女の肛門は、しっかりと一つの性器になりはじめていました。
私はリュックから更なる道具を引きずり出します。
アナルバルーン。
肛門内部に風船を挿し込み、膨らませる事で拡張を行う道具です。
内部からの圧迫は、未経験の者に激しい恐慌をもたらす事を、私は過去の経験から知っていました。
それだけに、眼前の少女の反応が今から楽しみで仕方ありません。
何しろ、このような年端もいかぬ少女に用いたことなど無いのですから。

「何ですか、それは?」
史織は見慣れない道具に、当然の疑問を発しました。
私がそれに答えると、あどけなさを残す顔がわずかに強張ります。
しかし抵抗はしません。私に肛門の開発を委ねてくれているようです。
私は、彼女の赤みを増した肛門にローションを塗りこめ、バルーンにも垂らしかけます。
そしてバルーンへ一回だけ空気を入れて張りを持たせてから、ゆっくりと挿入を始めました。
すでに複数の道具で拡げられた腸内、難しいことはありません。
浅い部分で一旦挿入を止め、私はバルーンのポンプを握り締めます。
ここからが楽しいところです。
「さぁ、何回膨らんだか数えてみて」
私は、おそらく満面にサディストの笑みを浮かべながら言った事でしょう。
史織は一瞬ぞっとしたような表情を私に向けながらも、大人しく従ってくれました。

一回、二回、三回、四回、五回、六回、七回、八回、……九回。
年端も行かぬ少女のソプラノが、一つずつカウントを増やしていきます。
湯船に浸かった秒数を数えているのではありません。
宝物のようなピンクの腸壁を、無慈悲なバルーンがどれだけ圧迫したかの数です。
それは九回で一旦止まりました。

「……あ、あの……と、トイレに行きたいです…………」
史織は視線を泳がせながら、強い便意を訴えました。
想定通りです。私は笑みを浮かべたまま、さらにもう一回ポンプを握ります。
シュッと空気の送り込まれる音がしました。
「あ、あの!ほ、本当にトイレに、トイレに行きたいんです、すぐにっ!!」
「へぇ。トイレに行って、何するの?」
相手の真意を知りつつも、私はあえて惚けました。
その上品そうな顔から、品のない発言を聞きたかったのです。
聡い史織はすぐ私の意図を汲み、頬を赤らめながら続けました。
「トイレで……う、うんちを出したいんです。
 こ、こんなに便意が強くなったのは、は初めてで……我慢したくても、もう無理なんです!!」
言葉通り、彼女の脚は細かに震えていました。
風呂場で浣腸したときよりも、切迫した雰囲気が強いようです。

私はとりあえず満足し、ポンプの根元にあるスイッチを押し込みました。
それを押せば、たちどころにバルーン内の空気が逃げる仕組みです。
史織の緊迫した表情が、まるで排便を終えたように緩んでいくのが見えます。
しかし、せっかくのバルーン。これで終わらせるつもりはありません。
使用の目的はあくまで、史織の肛門性感を目覚めさせる事なのですから。


私はそれから幾度か、同じように10回だけ膨らませて我慢させ、を繰り返しました。
史織はその度に息を詰まらせて腰を捩ってはいましたが、六度目辺りではかなり慣れたようです。
そこで、私は次の段階に進むことにしました。
バルーンを押し込む深さを変え、直腸の最奥、S字結腸へ繋がる辺りにまで押し込んだのです。
「はぁっ!?」
慣れない部位への刺激に、ぞくり、と史織の腰が跳ねました。
しかし本番はこれからです。
バルーンを挿入すれば、次は当然膨らませる工程が待っています。
私は強くポンプを握りこみ、少女の直腸深くの風船へ空気を送りました。
一度、二度、三度、四度、五度、六度。
次々と風船が膨らんでいくはずです。そう、“風船”が。
「あ、ああっ!?」
拡張にある程度耐性を付けたはずの史織が、再び新鮮な反応を示します。
そして、それは当然のことでした。

膨らんでいるのが分厚いゴムならば、ただ腸の奥を圧迫するだけでしょう。
しかし薄い風船は違います。
腸奥の圧に耐え切れなくなった柔な風船は、膨らみながらもその形を変えます。
ぶにょりと横へ膨らむように……S字結腸の中へ入り込むように。
この感覚たるや、強い便意を感じる直腸でのものとはまるで別種のものです。

「あ、熱いッ!!ちょ、腸のすごく奥が、熱くなって……なにこれ、凄、いっ…………!!」

史織が、これ以上ないほどに悩ましく腰をうねらせて告げました。
すらりと細長い脚が爪先立ちのようになり、シーツに深い皺を刻みます。
若い尻肉はより引き締まり、幼児性愛の気のある私にとっては写真に撮り溜めたいような絵面です。
彼女は今、腸の奥底からじわりと炙られるような快感を得ている最中なのでしょう。
男であれば、前立腺を強烈に圧迫されて数秒ともたずに射精……ドライ・オーガズムに至る状況だといいます。
女性には前立腺こそありませんが、しかし性感を強く刺突する状態である事には変わりありません。


私は、全身で強い快感を表す史織をもっと苛めたくなりました。
バルーンの膨らみ具合を微細に調整しつつ、直腸奥とS字結腸を行き来させる。

「あ、ああ、あはぁあああおっ!!はあ、あっぐ、ああああっああぉ!!!!」

史織は期待通り、とてもいい反応を見せてくれました。
未熟な細長い手足をベッドに突っ張らせるのもそう。
ハーフアップの黒髪を背中に擦れさせ、何かを振り切るように顔を振るのもそう。
眉を顰め、唇を噛みしめる薄幸そうな表情もそう。
しかし最大の戦果は、その嬌声でした。
慎ましく喘ぐばかりでは無くなり、随所に「あ」とも「お」ともつかない、
快感濃度の高い呻きが混じりはじめています。
私はそうした快楽の声をより凝縮しようと努めました。
そして気付いたのです。
最大に膨らませるのではなく、やや余裕を持たせた膨らみで、引きずりだす時に声が変わると。

試しに六回だけ空気を入れ、S字結腸に入っている状態から引いてみます。
あくまで柔らかな風船なのですから、それで腸壁が切れることもないでしょう。
結果は、予想通りでした。
「んいィっ!!?」
史織は歯を噛み合わせ、それでも殺しきれない情けない悲鳴を漏らします。
しかしその瞳は恥じるどころか、視界の中心よりやや上を彷徨っており、緩く達しかけた事が明らかです。
私はトドメに入りました。
再度S字結腸にバルーンを送り込み、五回分膨らませる。
そしてバルーンを繋ぐチューブを握り締めて、強く引いたのです。
その瞬間、史織の首が大きく後ろへ仰け反りました。

「うあっ!?…ッ、っあ…………んんぁああああんぉおおおおおっ!!!!!」

私の予想を上回る、濃い快感のあふれ出る叫び。
それが天を仰いだ美少女の口から発せられたのです。
同時に彼女の肛門が火山口のように捲れ上がり、膨らんだバルーンが腸液を散らしながら飛び出しました。
史織はさすがに自分の叫びに気付いたのか、すぐに両手で口を押さえます。
「い、今のっ!?……お、お願いします、今のは、どうか聴かなかった事にしてください……」
喘ぎながら私にそう懇願してきますが、聴いてしまった以上はもう遅いでしょう。

私は改めて、場の惨状に目をやります。
私の手元には、腸液に塗れ光るバルーンが転がっていました。
テニスボールよりやや小さい程度に膨らんだものです。
そんな大きさが直腸の奥で蠢いていたことが、驚きに感じられるほどでした。
史織の細長い脚は、限界以上の運動をしたかのように細かに震えています。
脚だけでなく、彼女の身体全体がしとどな汗に塗れつつ、小さな痙攣をしているようです。
私はそんな少女を見て、さらに嗜虐心の燃え上がる自分に気付きました。
「ずいぶん良かったんだね、凄い声でたし。もう一回やろっか」
満面の笑みを湛えた私の提案に、汗まみれの史織は顔を強張らせます。
しかしその唇からは、ついに否定の言葉は出ませんでした。





アナルバルーンでの拡張を終えた頃、史織はダブルベッドにぐったりと身を投げ出していました。
頬は赤らみ、汗でほつれた前髪が貼りつき、何ともそそる表情です。
肛門はもうすっかり解れている筈でした。
そこへ来て私は、ついに営みの最終段階へと移る事にします。
アナルセックス。
年端もいかぬ少女の初々しい蕾に、自らの肉棒を打ち込む最大の禁忌です。

「わ……」
眼前に晒された逸物を目にし、史織が目を見開きます。
私の分身は、この時すでにはち切れんばかりの屹立を見せていました。
先走り液が射精後のように溢れ、幹に沿って掬い取れるほどになっています。
史織の艶姿を見て脳に快楽を覚えた回数は、十や二十ではありません。
それら一つ一つが極上の愛撫に等しいとすれば、延々とスローセックスを続けてきたようなもの。
先走りの奔流も当然でしょう。

私が膝を進めてにじり寄ると、史織も『その時』が来たと把握してくれたようです。
仰向けに横たわったまま、両脚を大きく開く史織。
その秘所に貼りついた前貼りは、すでにローションと愛液に塗れて半ば剥がれています。
いかにも未使用といった風なピンクの花園は魅力的ですが、今はあくまで後孔がメインです。
私は開かれた史織の両腿に手を置きました。
もう何度も触れている箇所ではありますが、その度に驚かされます。
柔らかく、暖かく、手に吸い付くようなしっとりとした肌。
目を閉じていても、皮膚から伝わる感触だけで極上の美少女だと知れるようです。
私はその両腿を押さえ込んだまま、史織に覆い被さりました。

強張った怒張の先で、愛らしい蕾を探し当てます。
丹念に拡張を施したそこは、しかしもう亀頭の先に軽くキスをする程度の直径にまで窄まっていました。
とはいえ亀頭で撫でれば、それら菊輪の縁はやわらかく解れていると解ります。
私は膝立ちになった足に力を込め、少しずつ腰を落とし始めました。
固い逸物の先端部が菊輪を通り抜け、侵入を開始します。
「う、っく……!おしりに、は、入って、くる…………!」
史織の整った顔に緊張が走りました。
やはり締め付けは相当です。健気な括約筋が、幾重にも束ねたゴムのように怒張を下っていきます。
放出しかけた尿さえ留めるほどの圧迫でした。
しかしその締め付けの強さが、幼い少女の肛門を貫いているという自覚を呼び起こします。
それにより、私は挿入のその最中にまた、一回り勃起を強めていくのでした。


私は史織の太腿を逆手で鷲掴みにし、小指では半ば尻肉を潰すようにしながら腰を使います。
そのようにすると、より肛門が締まって密着性が増すからです。
それは私自身の快感を強める効果もあり、突かれる史織にも効果を発揮するはずでした。
「あ、あああっ!!すごい、太い!大きいです……っ!!」
史織は上ずったようなソプラノで訴えます。
太さならば最大に膨らんだアナルバルーンに遥か及ばない筈ですが、やはり硬さがモノを言うのでしょうか。
私の限界近くまで勃起した逸物は、深々と彼女の腸深くを抉り込んでいました。
史織と向かい合うこの体勢でなら、怒張が肛門深くを抉るたび、桜色の秘所がひくつく所が丸見えです。
「あ、あ、ああ、はぁうあああっ……!!」
華奢な身体が快感に震える様。
それを眼前に見下ろすうち、私はますます嗜虐の心がむき出しになっていくのを感じていました。

私は両の手で掴む場所を、太腿付け根から少しずつ上げていきます。
腰を突きこむたび、徐々に。
そして手が脹脛にまで達したところで、一息に脚を掴み上げると、少女の脚は大きく開いたまま伸びきるのです。
私はすかさずその両足首を掴みました。
史織の足首は大変細く、掴んだ手の中指と親指が触れ合いそうなほどです。
そんな細い足首から連なる華奢な脚が、私の身体の下で二本の直線を描いている。
今まででも最大に犯罪的な光景です。
尻の孔を穿ちながら、掴んだ二本の足首を押し込めば、まるで無理矢理に犯している感覚に陥ります。
私にレイプ願望はありませんが、『レイプごっこ』ならば純粋に興奮できるというものです。

「どう、無理矢理犯されてるみたいでしょ」
私はつい言葉にもしてみたくなり、被害者である史織に問いを投げかけます。
史織は両足首を肩の近くにまで押し込まれる窮屈さに呻いていましたが、私の問いにはっとした視線を向けます。
そしてどんぐり眼で今の自分の状況と、圧し掛かる私を交互に見やり、ぞくりと腰を波打たせました。
「お、犯されて……る…………私が…………?」
口の中でそう反芻し、潤んだ目を細めます。
それは嘆きにも、あるいは極限の笑みのようにも見えました。
私はそんな史織を眼下に眺めつつ、足首を掴む腕を支えに腰を打ち込み続けます。



両脚を強く押しやると、少女の肛門はほとんど真上を向く格好になりました。
私はまるで井戸を掘る掘削機になった気分で、その狭い穴を穿ち続けます。
「うあ、ああっ!!はああ、あ、あ、あああんんぁあああっ!!!」
史織はとても良い声を上げていました。
その声に艶が混じるのと比例して、結合部である肛門の深くからくちゅくちゅと水っぽい音もします。
ローションの残りか、腸液か、先走りの液か、あるいはそれら全ての攪拌の音でしょうか。
その音は私達二人の耳をくすぐります。
言葉にこそしませんでしたが、どちらも明らかにその音を意識していました。

私などは意地が悪いですから、その心地良さそうな音がすれば余計に強く腰を打ちおろすものです。
そうすれば少女の華奢な腰が跳ね、人形のような美顔に堪らなそうな歪みが走るのですから。
無論、強い快感は彼女にばかり降りかかるものではありません。
私自身、史織の『足コキ』で一度射精していなければ、とうの昔に射精しているでしょう。
一度精を放ったお陰で、かろうじてギリギリの縁に踏みとどまれているわけです。
しかし、史織にはそうしたガス抜きはありませんでした。
私の手で徐々に肛門性感を目覚めさせられ、絶え間なく興奮し、今ここにスパートをかけられているのです。

「う、う、うぁあああっ!!!」
私が深く腰を打ち込む中で、彼女の素晴らしい脚は幾度も跳ね上がりました。
それなりの体重をかけて足首を押さえ込んでいる私が、軽く浮き上がるほどに。
そうした事を幾度も繰り返した果てに、史織は喘ぎを深めていきます。
顔は完全に発情した女のそれでした。
「あ、ああっ……く、くるっ!!!なにか、くるぅっっっ!!!」
美脚全体を震わせながら、史織はそう叫ぶ事がありました。
肛門は私の怒張を食いちぎらんばかりに収縮し、秘裂はいよいよ艶に塗れて。
あどけない少女がついにアナルアクメに達した事は、もはや疑う余地もないでしょう。
この辺りで私も、どうにも堪らなくなって精を放っています。
しかし我慢に我慢を続けた弊害か、はっきりこの時点での射精、というものはありません。
延々と尻穴を穿ちながら、少しずつ精を溢れさせていく。
そのまま休憩を挟むことも無く、むしろより熱く滾っていく灼棒を叩き込み続ける。
そうした異常なセックスを続けていたのです。

「……あああう、ぉっ、あう、ふあ、ああうっ!」
お嬢様らしく胸の前で組まれていた細腕は、いつしか頭上へ力なく投げ出されるようになりました。
白い腋を晒しながら、ほんのわずかな胸の膨らみを波打たせ、私の腰使いに合わせて揺れる矮躯。
ハーフアップに結われた髪も、シーツと擦れる間にほどけ、ただ艶やかな黒い奔流としてシーツを流れるばかり。
それはまるで、令嬢が理性を失った女に堕落したことを象徴するかのようでした。




正常位で散々に交わった後、私達の身体は燃えるように熱くなっていました。
身体中がねっとりとした汗に塗れ、お互いの体臭が色濃く匂い、まるでサウナにいるようです。
私は堪らなくなってベッドを降り、部屋の窓を開け放ちました。
外気は多少冷ややかですが、火照った体には心地良いばかりです。
四階なので見晴らしもよく、山脈を遠くに臨む街の夜景が見事なほどに広がっています。
私はベッドに戻りました。
先ほどまで放心しているようだった史織も、いつの間にか身を起こしています。
私はそんな彼女に背後から覆い被さりました。
後背位です。

「あ、深いっ、すご、いっ……!!」
体勢が変わった事で挿入の角度も変わり、驚くほど深くまで逸物が入り込んでいきます。
私は史織の細い腰を掴み、二回戦に掛かりました。
正常位も素晴らしいものでしたが、後背位もいいものです。
艶やかな黒髪が白い背中に流れ、清楚さを視界に印象付けます。
背中の中心のくぼんだ線や、まだ年若い尻肉、シーツの上で揺れるすらっと細長い手足。
それらも的確に性欲を増幅してくれるようです。
腰を打ちつけるたび、お互いの腿が当たってパンパンと音が弾けるのも小気味良い。
セックスをしていると解りやすい音で、いやが上にも興奮を煽るのです。
窓を開け放って夜景を眺めながら、極上の美少女の尻を穿つ。
ここはもしや夢の世界なのではと思うほどです。
しかし現実でした。華奢な腰を掴んだ手の平は、間違いなく人の体温を伝えてきます。
怒張をくるむ熱さと窮屈さは、夢の中ではけっして味わえません。

私はいつしか声を上げる事さえ忘れ、夢中で腰を打ちつけていました。
史織はその間に幾度も背を仰け反らせ、甲高い声を上げていたので、中々に無慈悲だったと思います。
そのうちに彼女は頭を垂れ、黒髪を揺らすばかりになりました。
そこへ至って、私は視線を横へ向けます。
このベッドルームは東側の一面がガラス張りになっており、そこに二人の交わる姿が映し出されているのです。
毛深い成人男性が、まだ未熟さの残る美少女を組み敷き、項垂れさせている。
その犯罪的な姿がありありと映っていました。
男が腰を打ちつけると、少女の高い喘ぎがし、鏡の中の少女が反応する。
腰を引き気味にして突くと、後孔に入っているという事がよりはっきり解るようになります。
そして、結合部である肛門よりやや下から、何か煌めくものが滴っている様も。
私は鏡から視線を放し、自らの腰の辺りを覗き込みました。
そこでは少女の前貼りがもう殆ど用をなさなくなっており、溢れた愛液が雫となって零れています。
「アナルセックス、気持ちいい?」
私は解りきった事を聞きました。
史織はシーツに突いた両肘の間でしばし喘いでいましたが、やがて小さく呟きます。
「…………すごく」
その答えは、何より私を満たすものでした。

私はされるがままになった史織を抱え、膝の上に乗せます。
背面座位と呼ばれる体位です。
雪のように白い裸体を、当然鏡張りの壁に向けて。
「あ、いやっ、恥ずかしい……!」
史織はそう呻きました。
しかし発情しきったような顔では、説得力もありません。
私は彼女の華奢な身体を抱えながら、力強く腰を打ち込みました。
もはや完全に前貼りの剥がれ落ちた秘裂から、しとどな愛液が溢れているのが丸見えです。

「ほら、見えるでしょ。お尻の穴犯されて、あそこがドロドロに蕩けちゃってる。
 エッチになっちゃったね、せっかくのお嬢様なのにね」

私は史織の耳元で悪魔のように囁きかけます。
史織は小さな手で顔を覆いました。

「いや、言わないでくださいっ!
 ……ああ、でも、もうほんとうに気持ちいい……!!
 お腹の深い所から、じわっと熱いものが溢れてきて、たまらないんです。
 くひぅっ!!そ、その角度が……すき…………。
 ……お尻の、穴なのに。ほんとは使っちゃいけない、ところなのに……
 あ、あっぐっ!?ひぎぁ、あふぅっ!ッだ、だめ、も、そごだめぇえっっ!!
 ぃは、あ、はあぁあうッ!!くううぅんああぁああおお゛お゛っっっ!!」

慎ましく恥じらいを口にしながら、身の内からの深い快感に悶え狂う美少女。
それは最高にそそるものでした。
鏡にはすべてが映っています。
手足のすらりと長い、一見大人びていながらも未熟な令嬢の乱れようが。
すっかり紅い華と化した菊輪が捲れ上がり、見た事もない太さになった私の怒張を咥えこむところが。
私は夢中になってこの至高の時間を貪ります。
たとえ夜明けまでに幾度の射精を経ても、この滾る気持ちが萎えることはなさそうです。

こんな令嬢の肛門を愛せる事など、人生で二度あるか解らないのですから……。




                              終
続きを読む

目覚めのキス

窓から射し込む光で目が覚める。
寝ぼけ眼のまま、私はベッドの隣で寝ている彼の様子を伺った。
まだ、起きていない。
彼に勘付かれないようにそっとベッドを降りて、洗面台に向かう。
もう自分の家のように慣れきった彼の家。

目覚め一番に私がするのは、トイレではなく歯磨きだ。
彼が起き抜けに、必ずキスを求めてくるから。
朝の口なんて雑菌だらけ。
彼は匂いなんて気にしないよと言うけれど、女の私としては恥ずかしい。
彼を起こさないよう、静かに静かに、歯並びと舌に沿って歯ブラシを当てていく。
さらに口臭予防の薬液で口を濯ぎ、さっぱりとした所で寝室に戻る。

元寝ていた場所にそっと潜り込み、無防備に横を向く彼の背後へ抱きつき……は、出来なかった。
いつの間にか起きていた彼が振り返り、私を抱きしめてきたからだ。
「俺の背後に立つな」
半笑いのまま、低い声で囁く彼。
「どこの殺し屋だっちゅうの」
私も笑いながら、出来るだけ彼の声色に近づけて低く囁き返す。
ぎゅう、と強く抱き寄せられた。
私は彼の背中の感触が好きで、本当は朝一番にそれを堪能したかったんだけれど、
こうして胸板で抱きしめられるのも悪くない。
圧迫される胸の先の感触で、一晩明けてもまだ乳首が勃っているのが解った。



彼はしばらく私を抱きしめた後、少し顔を離し、私の髪を前から後ろへ撫で付ける。
生え際から、髪に指を絡ませるようにして撫でられる幸福感は尋常じゃない。
上目遣いのあざとい視線が、自然と出てしまうのだから困った限りだ。
彼は半ば私が期待していた通りの、蕩けるように優しい笑顔を見せて、唇を奪った。

うなじに手を添えたまま、互いの顔をやや傾けての深いキス。
舌がまったく無遠慮に絡まり合い、とろとろといやらしい唾液を帯びていく。
私はこのために舌や口の粘膜へ含んでおいた薬液を彼に注ぎこんで消毒する。
粘膜の匂いの中でことさらに際立つ、シトラスミントの香り。
「今日はミントか。そういえば、水曜だったね」
彼は一旦口を離して言った。
二ヶ月経ってようやく、私が曜日ごとに匂いを変えている事に気付いてくれたらしい。

彼の身体が迫るように圧し掛かってきて、私の身体はシーツに弾む。
顔よりも、繋ぎ合わせたまま深くシーツを抉る右手の方が束縛感がすごい。
彼の身体の重さと暖かさが、上から私の身体に染み透っていく。
キスはさらに深まった。
貪るようにお互いの唇の奥を嘗めまわしていく。
身を捩るたび、背中のシーツがごわついているのが感じられた。
昨日の夜は、後ろから口を奪われながら抱かれて、相当に乱れてしまったから。
彼には絶対聞かせたくないような声が何度も出そうになって、
それを誤魔化すように私からキスをねだったっけ。
でもそれが余計に彼を燃え上がらせたみたいで、寝付いた記憶がないということは、
私はきっとそのまま気を失ってしまったんだろう。



私は昔から、異常なほど男の人に言い寄られた。
学校や街中、そして従兄弟からのものを合わせて実に99人。
でも明らかに外見だけを目当てに告白しているのが見え透いて、それらを全て断った。
友達はそんな私を女弁慶だとからかったものだ。
それもあって、私はキリのいい100人目はどんな男だろうと告白を受ける事にする。
本物の弁慶も、99人の刀を奪った末に、100人目の牛若丸に敗れた。
私も同じ。例えその100人目に蹂躙されても、そんなものだと諦めるつもりでいた。

今になっては、私が99人を断ったのは、今の彼に巡り合う為だったのではないかとさえ思う。
彼も私の外見は好きなんだろう。
やたらとキスを好むのも、私の顔を見ながら征服したいという気持ちはきっとある。
けれどそれ以上に、彼は私を本気で愛してくれる。
どこをどう、なんて今さら数え上げられもしないけれども、私の幸福感は本物だ。
10時間だって20時間だって、彼と裸で抱き合っていられるほどに。

濃い口づけを返しながら、彼の指が私の太腿に触れた。
そしてそこから、朝露が伝うように指が滑り、湿った場所に吸い込まれていく。
彼がしたり顔で立てる水音を聴くまでもなく、誰よりも私自身がよく解っている。
私はこんなにも彼に濃厚なキスを浴びせられて、濡れているんだと。
男の人なら、ひょっとしたら射精しているかもしれないぐらいに感じてる。

彼の指が、濡れた中で蠢きまわる。
悪戯っぽい瞳がまっすぐに私の視界を覗き込んでくる。
きっと、堪らなくなった私が挿れて下さいって懇願するのを待っているんだろう。
けれども私は屈しない。今日の私には目標がある。
今日は彼の方を、キスだけで射精に導くこと。
昨日も、その前も、私だけがキスで昇りつめている事が本当に悔しいから。

彼が一旦顔を離し、酸素を求めながら私の顔を眺めてくる。
スポーツをした後のような、爽やかな汗の流れる顔。
「はは、かっわいいなぁ」
大好きな声が心に響いてきた。息が荒ぶり、目がとろんと垂れてくる。
私は彼に負けてはいけないはずなのに、心はもう半ば以上、彼に甘えているようだった。


おしまい
続きを読む
アクセスカウンター

    ありがたいコメント
    さくさく検索
    月別アーカイブ
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    プロフィール

    kunsecat

    • ライブドアブログ