※3歳差の姉弟の背徳的イチャラブ物。
近親相姦要素があるため、ご注意ください。
「久しぶり、姉ちゃん!」
高校から野球部に入ったという弟の陽斗(はると)は、野球少年らしく日に焼けていた。
「へー、ここが姉ちゃんのアパートかぁ。意外と狭いんやな」
「実家(うち)と比べたらやろ。トイレ・風呂別でキッチンついてるだけでも上等なんやで」
3つ下の弟はまだ実家暮らしで、学生アパートの勝手を知らない。とはいえ私も一年前まではそうだった。大学入学を期に一人暮らしを始めてから、ずいぶんと世界が広がったものだ。
「ってか姉ちゃんそれ、ウチでよく着てた芋ジャージやん。まだそんなん着てんの?」
「そや。なに? 弟が来るってだけで色気づいた格好するとでも思ったん?」
「でも、姉ちゃんももう女子大生やろ?」
「だから何なんよ。カレシでもあるまいし」
不満たらたらな陽斗をあしらいつつ、昼食の準備を整える。メニューは明太子パスタと、昨日のうちに作っておいたハンバーグ。どっちも弟の好物だ。
「うはー、美味そう! いっただきまーす!!」
陽斗は目を輝かせたままフォークを手に取ると、一心不乱に食事を貪りはじめる。こうなったら言葉すら届かない。昔から好きな物にはのめり込むタイプだ。
「あー美味かったぁ! 母さんのメシも美味いけど、やっぱ姉ちゃんの作ったもんが一番オフクロの味って感じするわ!」
「それ、お母さんに失礼やで?」
そう嗜めはするものの、内心で頬が緩む。うちは父親が単身赴任でほぼ家におらず、母親もパートで忙しいから、ずっと私が料理を作っていた。弟にとって私の料理がお袋の味になるのも無理はない。
傍から見れば、私達はごく普通の姉弟に見えるだろう。姉の所へ遊びにきた無邪気な弟……そうとしか見えないはずだ。
でも、私達には秘密がある。
肉体関係があるんだ。それも一度や二度じゃない、何十回も。
忙しい両親に代わり、幼い陽斗をお風呂に入れるのも私の仕事だった。陽斗は目が離せない子供で、何か考え事をしていると上せているのにも気付かずにお湯に浸かり続けるから、小学校に上がっても一緒に入浴していた。
私にとっての陽斗は手のかかるチビ助だ。でも、そんな弟にだって思春期は来る。
「ねえちゃん。俺、ねえちゃんとしたい」
ある日陽斗は、後ろから私に抱きついてそう言った。お尻には勃起した熱い物が当たっていて、どういう状況かはすぐに察せた。
「……なに言うてんの? 冗談やめぇ」
私はもちろん諌めたけど、陽斗はゴネる。聞き分けが悪いわけじゃないけど、興味を惹かれたものには執着する性格だ。何十分か押し問答して、洗い場に立っているのが寒くなってきた頃、私はしぶしぶ折れた。もう少し倫理観を強く持つべきだったけど、あの時はとにかく面倒だった。お風呂から出たら宿題もやらなきゃいけないし、明日の朝ごはんの準備だってしなきゃいけない。そういう中で陽斗と口論を続けるよりは、一度やらせてしまえばいい……そんな風に思ったんだ。
「さっさと済ませなよ」
そう言ってお風呂場の壁に手をついた時は、さすがに緊張した。初体験は痛いと聞いていたからだ。でも実際その時を迎えると、なぜか全然痛くなかった。陽斗のアレは10歳にしては大きかったし、挿れるのだって石鹸を塗りたくってやっとだった。だけど石鹸の刺激を感じるぐらいで、抜き差しされても痛くない。別に気持ちよくもなかったけど、あっさりと陽斗を射精まで導けた。
今思えば、それも良くなかったのかもしれない。セックスの気持ちよさを知った陽斗は、それから毎日のように私としたがるようになり、私もやらせた方が楽だからと安易に受けた。
私と陽斗は身体の相性が良いんだろう。お風呂でバックから突かれるのは、3日目には快感になった。そうなればセックスという娯楽の虜だ。学校終わりの5時から母親が帰ってくる10時過ぎまでは2人だけの時間だったから、その間にやりまくった。お風呂場だけじゃなく、リビングのソファやトイレ、2階のベッドでもした。もちろん行為の痕跡は丁寧に拭いたし、消臭もした。姉弟でしていることが近所にバレないように、声も抑えた。『バレたら終わり』という背徳感がスパイスになって、ますますセックスが燃えたものだ。
ただ、後ろめたい気持ちはずっとあった。だから私は、自分から陽斗を求めることはせず、常にされるがままな態度を貫いた。セックスの最中に笑ったことなんて一度もないはずだし、陽斗が恋人みたいにキスを求めてきても応じなかった。弟の我儘につきあって、仕方なくしているという演技……そこが最後の一線だ。
大学入学と同時に実家を出たのも、もう1年ちょっと帰省していないのも、弟と距離を取りたかったという理由が大きい。陽斗の義務教育も終わったことだし、できれば爛れた関係をすっぱり切りたかった。
ただ、そう簡単にはいかないみたいだ。陽斗はしつこいぐらい私にLINEをしてくるし、今だってお預けを喰らった犬のよう。
「…………で、どうなん? ヤりたいん?」
そう聞いてみると、わかりやすいほど目を輝かせる。尻尾があればブンブン振っているに違いない。わざわざ芋ジャージなんて色気のない格好をしているのに、この弟には何の効果もないらしい。
「はあっ」
溜め息をつく。渋々セックスに応じてやるというアピールだ。ただ実際、うんざりしてはいる。対象は私自身。弟にせがまれれば大体何でも聞いてしまう甘さも、内心でセックスを楽しみにしている淫乱さも、心の底から嫌になる。
※
「あんたも歯ぁ磨き。歯ブラシそこにあるから」
陽斗に洗面台を使わせながら、私の方はトイレに入り、ビデであそこを洗う。丁寧に性器を洗浄していると、これからセックスをするんだという実感が湧いてくる。
弟相手に乱れた姿なんて見せたくないけど、不安しかない。弟を忘れるために作った彼氏と破局してから、もう2ヶ月ご無沙汰だ。しかも生理前だから、性欲も高まっている。
「……なんで今来んねん」
小さくぼやきながら、ぶんぶんと顔を振ってトイレを流す。
弱気はダメだ。年長者が弱いところなんて見せられない。
食卓を端に寄せ、布団周りに充分なスペースを確保してから、お互いに服を脱ぐ。
「うひょー、相変わらずグラドル顔負けのエロボディやなあ!」
陽斗は私の身体を見て鼻を膨らませた。
「何それ、嫌味?」
「いや、ちゃうて。自己評価低いのも変わらんなぁ!」
陽斗は否定したものの、何がそんなに興奮するのか本気でわからない。物心つく前からお風呂で見慣れている裸なのに。それに、初めて見るんだとしても惹かれるとは思えない。今日に備えて少しは絞ったけど、まだ腰はくびれてもいないし、下腹は便秘気味で膨らんでいるし、そもそもが胴長短足の野暮ったい体型だ。強いてアピールポイントを挙げるなら、安産型と言われるお尻と、胸が大きいことぐらい。偏差値で表すなら良くて40台というところか。
逆に陽斗は野球部だけあっていい体だ。背はまだ私より小さいけど、肩幅はちゃんと広く、手足には筋肉がつき、腹筋もうっすらと割れている。もう力では敵いそうもない。昔はあんなにチビだったのに。
しかも、股間にぶらさがっている物はもう半勃ちだ。
「勃っとるやろ、朝からずっとやねん。コイツもはよ姉ちゃんとヤリたいらしいわ」
「呆れた、ほとんど猿やん。私かて忙しいんやから、さっさと済まして帰ってや」
「大学生って暇ちゃうん?」
「アホ、レポートとか色々あんねん。悪いけど、あんたとしてる時もレポート用の資料見てるからな」
「ええで別に。俺もこの一年で色々テク仕込んできたから、すぐに見てられんようになると思うけどな」
「なにその自信、キショいで」
軽口を叩きながらベッドに寝転び、顔の前にスマホを翳した。
陽斗はまず、私の腰の下にクッションを入れて浮かせ、大きく脚を開かせてくる。
「最近ネットで無修正の動画とかめっちゃ見てんねんけど、姉ちゃんのマンコが一番綺麗やわ」
「あっそ。あんた仮にも未成年なんやから、ほどほどにしぃや」
会話はそこで途切れた。陽斗は私の太腿を掴み、あそこをベロベロと舐めはじめる。一度こうなると、食事と同じで一心不乱だ。いつ息継ぎしてるのかわからないレベルで顔を離さない。
鼻息荒く割れ目を舐め上げ。クリトリスを舌で舐め、吸い、つつき回し。かと思えば舌を思いっきり入れて、膣の粘膜を舐め回し。こういうことを延々と繰り返す。
そしてこれが有り得ないほど気持ちいい。クンニは舌でくすぐる程度のソフトな刺激から始めるのがいいそうで、実際前の彼氏はそうしてくれた。でも、物足りなかった。つくづくこの身は、弟の犬のような舐りに慣らされてるんだと思い知らされたものだ。
それに、贔屓目を抜きにしても弟のクンニはレベルが高いと思う。毎日のようにしてたから経験値がすごいし、私の弱い所なんて全部把握されてる。今だからこそ声を我慢してるけど、もしこれを本当の恋人にされたら、砂糖よりも甘ったるい喘ぎを漏らしているに違いない。
「っ!!」
また舌が深く入った。思わず目が開くし、太腿もぶるぶる震える。気持ちよくて気持ちよくてたまらない。
スマホから視線を外して盗み見ると、陽斗の股間はすでに勃起状態で脈打っていた。興奮してるんだ、私のあそこを舐めて。
「……あはははは、めーっちゃ濡れてきた!」
ようやく顔を離した陽斗が、鼻から下を濡れ光らせたまま笑う。
「あんたのツバちゃうん」
「ちゃうって。ほら!」
陽斗はまた割れ目に口をつけ、ずずずーっと音を立てて愛液を啜った。
「ちょっ! どんな音で吸ってんねん!!」
思わず反応してしまう。実家でしていた頃はとにかく音を立てないようにしてたから、愛液を啜られたのなんて初めてだ。
「なんで? このアパート、今日誰もいーひんのちゃうん?」
「そ、そういう問題ちゃうわ! こっちが恥ずかしい言うてんねん!」
「はははは、でもこれでスマホ見てる場合やなくなるやろ?」
「……っ!」
これも成長だろうか。少し会わない間に口が達者になっている。
数十分かけてクンニを続けたあと、陽斗は愛撫の仕方を変えてきた。膨らみかけのクリトリスを皮ごと左手親指で圧迫しつつ、右手の4本指でビラビラを刺激してくる。初めて受ける前戯。陰唇に血が通って厚みが増すのを感じる。挿入された後の快感も増しそうだ。
「なに、その擦んの?」
「気持ちええやろ」
「……別に。でもそんなんどこで覚えるん。彼女?」
陽斗は父親似で顔がいいし、スタイルも悪くない。しかも本人曰く野球部のエースだ。彼女の1人や2人簡単にできたって不思議じゃない。
「SEXレクチャー系の動画や。彼女なんておらんよ。何回か告られたけど、姉ちゃんよりムラムラする娘なんていーひんし」
「何それ。アンタおかしいでホンマ」
私は顔がそこまでいいとは思えないし、スタイルだってイマイチだ。弟の同級生……つまり現役の女子高生よりも魅力的とはとても思えない。でも、弟はどうやら本気らしい。
陰唇が充血しきり、言い訳もできないぐらい愛液に塗れたころ、陽斗はとうとう割れ目の中に指を入れてきた。人差し指と小指をお尻に食い込ませ、中指と薬指の二本を挿入するやり方。こいつ、潮を噴かせる気だ。
「潮噴かせてええ?」
やる気満々なくせに、白々しく訊いてくる。
「好きにしぃ。ただ言うとくけど、潮噴きって別に気持ち良くもなんともないで? オシッコと一緒やもん」
「らしいな。動画でもそう言うてたわ。でも俺、姉ちゃんに噴かせたいねん」
「なんなんそれ。意味わからん」
指が動きはじめた。明らかに慣れていない感じで、手探りだ。でも私の弱点は心得ているから、指の腹はすぐにスポットの芯を捉えてくる。
「ああ、そうや。ココやココ」
嬉しそうな声がする。でも反論の言葉は浮かばないし、そんな余裕もない。指先でクリトリスの真裏あたりを押し上げられると、勝手に腰が浮いてしまう。
「んっ、ふっ……」
スマホを置き、万歳の格好で顔を横向けて声を殺す。でも性感までは殺しきれない。強い尿意が湧き上がってきて、腰がぴくぴくと痙攣する。そしてその直後、ぷしゃっと潮が飛び散った。下手に我慢したせいか勢いは強く、陽斗の肩の辺りまで飛沫がかかる。
「あはははは、凄い出るやん!」
「こんなん、尿道刺激されたから出てるだけや!」
恥ずかしい。弟に潮を噴かされるなんて。でもこの背徳感がたまらない。一度この禁忌の味を覚えてしまうと、彼氏を作ってセックスしたところで、オナニーと同じぐらい虚しく思えてしまう。
「今度は俺のしゃぶって」
陽斗が先走りの汁に濡れたペニスを突き出してくる。
改めて目の当たりにすると、本当に大きい。子供の頃から歳に見合わないサイズ感だったけど、体の成長に併せてますます凶悪になっている。完全に勃起した物を定規で計ると18センチあった、という謎の自慢メッセージが来ていたのを思い出す。しかも、長いだけじゃない。太さもかなりあって、特に亀頭部分の膨らみときたら、それこそ野球のボールよりほんの少し小さい程度だ。
「ちょっと待ち。あんた、ココお風呂でちゃんと洗ってんの? なんか匂うで」
そう言って皮を剥くと、亀頭には恥垢がびっしりとこびりついていた。子供は新陳代謝がすごいから仕方ないけど、それにしても量が多い。
「バッチぃなあ。なんなんこの垢の量? どうせ昨夜オナニーして、そのままほったらかしてたんやろ?」
手繰り寄せたウェットティッシュで、弟の性器をごしごしと拭く。こうやって世話を焼いていると小さい頃を思い出す。
「ちゃう、今朝や! 久しぶりに姉ちゃんとできる思たら、我慢できんくて……あっ、そこあんま弄らんといて! 出そうんなる!!」
「何言うてんの、こんな垢まみれにして。大体しゃぶれとか言うてるけど、コレもう口でする必要ないやん」
ウェットティッシュを離すと、陽斗の物は反り返るほど勃起しきっていた。
「あー、まあな。俺、朝勃ちもエグいねんけど、ここまでなったんは久しぶりや。なんでなんやろなあ、姉ちゃんのアソコ舐めてたらめっちゃ勃つねん」
「アホ」
一言で切って捨てるものの、密かに鼓動が早まる。彼氏に言われたら嬉しい言葉だ。そう、これが普通のカップルだったら、どんなに……。
でも、本当はわかってる。私も弟も、しちゃいけない行為だからこそこんなに興奮してるんだ。いけないクスリでも使ったようなこの刺激を知ってしまったから、もう、戻れない。
「んー、ムズいなぁ」
陽斗はゴムを着けるのに苦戦していた。子供の頃はゴムなんて家に無かったから、出そうになったら外に出させ、お風呂でよく洗うぐらいで済ませていた。今考えると、アレでよく妊娠せずに済んだものだ。
「い、挿れるで」
陽斗の声は上ずっていた。まるで今日初めて“する”みたいに。そんなに緊張されるとこっちまで改まってしまう。もちろん表面上はいつも通り、されるがままな無表情を装うけれども。
ボールのような亀頭が割れ目に押し当てられ、メリメリと中に入り込んでくる。大きい。前の彼氏より2割増しで太く、長く、しかも硬い。陽斗の気持ちの全てがこの熱い塊に宿っているような気がする。
「ああ……久しぶりやなあ、この感じ。あったかくて気持ちええ」
陽斗はうっとりとした様子で呟きながら、私の左右に手をついた。野球をやっているだけあって、胸板も二の腕も男らしくなっている。あのチビに逞しさを感じてしまうのがなんだか悔しい。
奥まで挿入した後、陽斗は腰の動きを止めた。一年前ならいきなり腰を振っていたのに、これも知らない姿だ。
無理矢理こじ開けられた膣が元に戻り、熱い塊に吸い付いていく。そうして充分に馴染んでから、陽斗はゆっくりと腰を遣いはじめた。
最初に馴染ませたのは大きい。以前ならある程度ピストンされてからようやく湧いてきた快感が、いきなり襲ってくる。
「気持ちええやろ」
弟の言葉は、心を見透かしたかのようだった。
「別に」
「ウソや、姉ちゃんのナカ動いとるで。もしかしてセックス久しぶりなんか?」
「アンタ、よう自意識過剰って言われるやろ」
「言われたことないで」
「周りの子が言うてへんだけで、陰ではそう思われてるんちゃう?」
「そんなら姉ちゃんかて、周りに意地っ張りや思われてるで」
「うっさい、アホ!」
いつも通りの口論に比べて、セックスの方はいつもと違う。愛液の滲むペースが早く、ぬちゃぬちゃという水音がもう漏れている。無表情はキープできるものの、太腿がどうしても強張ってしまう。どうやら本気で感じているらしい。まだ挿入されたばかりだというのに。
「あー、気持ちよすぎる……」
陽斗は大きく息を吐きながら身を起こした。下手をするとあのまま正常位でイカされそうだったから、この体位変更はいい息継ぎになった。でも、陽斗が私を休ませるつもりなんてないのは眼でわかる。
「こうしたら、奥のポルチオってとこに響くらしいで」
陽斗は私のお尻を掴み、腰を浮かせたまま挿入してくる。
「っ!!」
最初の一突きで顎が浮いた。頭のてっぺんまでを串刺しにされたみたいな快感が来た。
「ううわ、すっごい締まる! 姉ちゃんも気持ちええん?」
陽斗は上機嫌だ。弟を調子づかせるのは、姉としての沽券に関わる。
「あんたの観てたレクチャー動画で言ってへんかったん? セックスしてたら、膣の壁は充血して膨らむんや。気持ちいいとか悪いとか関係なしに、誰でもこうなんねん」
「いや、それにしてもこの締まりはヤバいって。レクチャー動画の『鬼マラ師匠』にも味おうてもろて、名器のお墨付きもらいたいわ」
「あんたなあ、その発想普通にキショいで」
「ははは、冗談やって。俺が姉ちゃんを他の男に抱かせるわけないやん」
「いや、その発言の方がもっとキショいわ!」
舌戦を交わす間も、陽斗はクイクイと腰を動かしつづける。腰が浮いた状態だと踏ん張りが利かず、突かれたいように突かれてしまう。
この体位は陽斗の言葉通り、突き当たりの子宮入口によく響く。でもそれだけじゃない。奥をつくまでの経由地点を亀頭が擦り上げていくのもつらい。
「ふんんっ……!!」
強く亀頭が擦れた瞬間、思わず声が漏れた。遥か上空で陽斗がにやりと笑う。
「姉ちゃんの元カレって、ココ見つけた?」
陽斗はそう言いながら、私の弱点に雁首を擦り付けた。最近調べた本によれば、Gスポットより少し奥のアダムGスポットと呼ばれる場所らしい。
「いちいちカレシの話題出さんといて。どういうつもりなん?」
「その様子やと、見つけられへんかったみたいやね」
陽斗はニヤニヤと笑っている。私とした他の男に嫉妬心を燃やし、優越感に浸っているらしい。
陽斗はますます調子づき、膣のスポットを経由しながらズンズンと奥をついてくる。これは初めての体験で、しかもとんでもなかった。一突きごとに杭を打たれるような刺激が脳を貫く。そのうち視界が一瞬ブラックアウトして、目の前でチカチカと火花が瞬く。余裕のない顔をしている自覚はあったから、首を反らせて弟に顔が見えないようにした。でもそうすると脳天がシーツに沈み込んで、目の前のチカチカが余計に酷くなる。
音を上げたい。でも姉としてのプライドで上げられない。だから我慢した。頭上のシーツをぎゅっと掴み、拠り所のない快感の濁流に抗った。気を抜けばくいくいと媚びるように上下しそうな腰を、足指でシーツを噛むことで押しとどめた。
「あー、気持ちいいー!!」
やりたい放題に腰を振り、言いたいままに快感を叫ぶ弟が恨めしくなってくる。まるで姉弟の縮図のよう。下の子はいつでも我儘で、上の子はいつでも我慢我慢だ。
宙吊りに近い格好のまま、何回イカされたんだろう。
「あ、イクっ!!」
陽斗が逸物を引き抜き、ゴムの中で射精する。外出しするのは長年の癖だろう。
「あ、ゴムやから抜かんで良かったんや。なんや、あのまま出したかった」
陽斗はそうぼやきながら私の腰を離す。お尻に当たるシーツは、一面がグショグショに濡れていた。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
息が荒い。
「バテバテやん、姉ちゃん」
陽斗は先の膨らんだゴムを外し、口を結んで私のお腹の上に置く。私はぐったりとしたまま、かろうじてそれを払いのけた。舐められるわけにはいかない。
※
スポーツドリンクで水分を補い、ティッシュであそこを拭ってから、すぐに二回戦が始まる。
「えーっと、この後どうやったかな」
新しいゴムを着けた陽斗は、スマホで動画を再生していた。関西訛りの男の声と、若そうな女の人の喘ぎ声が聞こえてくる。
「あ、これや!」
目当ての動画を見つけたらしい。陽斗はスマホを傍に置き、私の足首を掴んでぐいっと開く。ほとんど180度近い大開脚だ。
「きゃっ!? ちょ、ちょっと!」
あまりの格好に非難の声を上げるけど、陽斗は動画ばかり見ていて聞きもしない。かといって拘束を振りほどく力もなかった。さっきの行為が強烈すぎて、下半身に力が入らないせいだ。
「いくで」
陽斗が腰を突き入れる。さんざん挿入された後なのに、亀頭が粘膜を割り開く感触は無視できない。性器周りの筋肉がきゅうっと収縮するのを感じる。まさか挿れられただけでイッたわけじゃないだろうけど。まさか。
『もっと締めて。下っ腹に力こめて、ギューッと。そしたらメチャメチャ気持ちようなるから』
動画から男優らしき人間の声がする。
「姉ちゃん、もっと締めて」
陽斗が同じ言葉を繰り返す。
「アンタ、私のことAVの実験台にしてるわけ? そんなん彼女にやったら一発で嫌われんで!」
「だから彼女なんておらんて。それに、いてもせーへんよ。姉ちゃんを気持ちようしたいから色々調べたんや。ホラ観て、めっちゃ気持ち良さそうやん」
陽斗はそう言ってスマホを拾い上げ、私の方に画面を向ける。
画面に映っているのは、私達と同じ体位で繋がる男女。ポーズは同じだけど、女優の華は段違いだ。
『ああああ気持ちいいわあ、師匠っ!!』
そう歓びの声を上げている金髪の女優は、薄いモザイク越しにもはっきり判る美人だった。スタイルも抜群で、とくに脚がスラッと長い。八頭身ぐらいあるんじゃないだろうか。胴長短足な私とは全然違う。
「こんなん、女優さんのスタイルがええから見映え良いだけやん」
「や、そんなこと無いって。だって姉ちゃんも今、めちゃめちゃエロいし」
陽斗は私を見下ろしたまま真顔で言う。その顔と言葉に、一瞬でもドキリとしてしまうのが嫌だ。
「……そんなん弟に言われても、なんも嬉しないわ」
拒絶の言葉も歯切れが悪い。まるで照れているような響きになって、陽斗の嬉しそうな顔を引き出してしまう。
陽斗はたんたんと腰を打ち付けながら、スマホの映像を私に見せ続ける。
自信満々に見せてくるだけあって、すごい映像ではあった。男の方は冴えない中年親父風だけど、陽斗が霞むレベルの巨根の持ち主だ。そのペットボトルのような物を突っ込まれる女性の方は、頭をシーツにめり込ませるレベルで仰け反っていた。男がニヤニヤ笑いながら動きを止めても、女性の動きは止まらない。自分から腰を叩きつけるようにして快楽を貪っている。
そんな姿を見せられたら、こっちまで変な気分になってしまう。
「うわ姉ちゃん、もう俺が言わんでもめっちゃ締めてくれるやん。トロけそうやわ」
陽斗がまた嬉しそうに笑った。またやってしまったようだ。
「あ、アホか! こんなに脚開かされたら、勝手に力入んねん!」
「ふーん、そうなん。まあええわ、俺めっちゃ気持ちいし!」
陽斗はスマホを投げ捨て、私の足首を掴み直して上に持ち上げる。
「うぐっ!?」
脚をコントロールされる──その厄介さは想像以上だった。膣の刺激に耐えかねて腰を逃がそうとしても、脚を掴み上げられているから逃げられない。その結果、身体が反射で逃れようとするほどの快楽をまともに喰らってしまう。
「……ッ、……ッ!!」
歯を食いしばり、声だけはなんとか殺した。でもその裏では、何回も、何回も、何回もイカされている。ブルブル震える太腿や脹脛は力みすぎて変形しているし、足指ときたら10本全部が反り返っている。顔のすぐ近くでそんな異常事態が起きているんだから、気がつけと弟に叫びたい。でも、気付かれたくないという思いもある。頭がグチャグチャだ。思考力が奪われている。弟とは何百回とセックスしてきたけど、ここまでになるのは初めてだ。
「ああああイク、イク! 姉ちゃん、俺もういきそう! イッてもええ!?」
「はっ、はっ……き、訊かんでええやろ。さっさとイキぃな!」
弟の絶頂宣言は、私にとっての救いだった。やっと終わる、やっと休める……それしか考えられない。
「おぉっ、あ、あ゛ーーっ…………」
弟が射精に入った瞬間、そんな声が鼓膜を震わせた。弟の声に違いない。私の口も開いていて、喉が震えている感じもするけど、気のせいに決まっている。
※
「自分で脚抱えて。離したら負けな」
3回戦では、陽斗が妙な条件をつけてきた。正常位のままVの字に脚を開き、その膝裏を自分で抱えておけという要求だ。
「なんなん負けって。なんの勝負や」
思わず苦笑するものの、勝負を挑まれたからには姉として逃げるわけにはいかない。
「絶対離したらアカンで」
しつこく念押ししつつ、陽斗は腰を遣いはじめた。腰を揺らし、ぐちゅぐちゅと音をさせながらリズミカルに奥を突いてくる。
子宮を揺さぶられるのは正直つらい。口がだらしなく開きそうになるし、脳も放置したバターみたいに溶けてくる。ギリギリ喘いではいないものの、目は虚ろで、鼻水も少し垂れてくる。
そんな私を前に、陽斗は責め方を変えた。ぐうっと奥の奥まで突き込んだまま、その位置をキープする。視線はスマホを追っているから、例の動画に倣っているんだろう。
『ァ待っで、待っで待っで待っでッ!!!』
あの美しい人が出しているとは思えないほど、濁りきった哀願が響き渡る。同じ目に遭っている私には、その気持ちが痛いほど理解できた。脚のVの字なんて保てない。膝からMの字に折り曲げたまま、ブルブルッ、ブルブルッ、と下半身全部を痙攣させるしかない。脳のバターがまた溶ける。目の前が数秒間暗くなって、チカチカと火花が散る。甘ったるいのに、つらい、怖い。待ってと叫ぶのも当然だ。
「すごいな姉ちゃん、これ我慢できるんや」
そう陽斗の声がして、また動きが変わる。私の下腹をぎゅっと押さえつけながらの前後運動。竿の半分ぐらいを抜き差ししてのピストンらしいけど、異常なほど深く思える。
『がはぁっ!! だめ、奥ぅうッ……!!』
『全然奥なんて入ってへんで?』
『ちっ、違、大きいからッ……子宮が、奥にいっ……!!』
動画の切ない声が、また私とシンクロする。子宮がお臍側に押し込まれてる気がするんだ。
『それな、子宮が完全に降りてるからやで。精子が子宮の中まで届きやすいように、身体が孕む準備しとるんや』
女性の悲鳴に割り込む男の声は、洗脳するかのようだった。そしてその声をさらに上書きする勢いで、パンパンパンパンと肉のぶつかる音が響く。そしてそれは、すぐに現実である私の周りでも起きはじめた。
『おお゛お゛イグゥッ、イッでるう゛っ!! いぐ、イグふうっ、いんグぅう゛う゛ーーッッ!!!』
相手に気を許しているのか、あるいは調教された結果なのか。動画の中の彼女は、モデルみたいな見た目からは想像もつかない喘ぎを漏らしていた。
私はそこまでの声は上げられない。でも、澄まし顔でもいられない。
パンパンという音の合間合間に、絶頂の高波が襲ってくる。一度その波に呑まれれば、快感という深い海で溺れるしかない。
「お゛っ、お゛っ! ン゛っ、おほォっ……お゛!!」
苦しさと快感の交ざった声が漏れる。膝を掴む握力がなくなりかけ、急いで掴み直す。
苦しい。気持ちいい。苦しい。気持ちいい。
楽になりたい。力が入らない。意識が……保てない。
「あ、手離してる!」
耳元でそう叫ばれてやっと、自分が膝を離していることを認識できた。
勝負に負けたんだ。姉としての矜持が傷ついたんだ。なのに、それがどうでもよくなるぐらい、快感に浸っているのが心地いい。
『「お仕置きや』」
動画の中と外で、男の声が重なる。その直後、私の足が持ち上げられ、マングリ返しの格好を取らされた。
「え、なにすんの!? こんなん嫌やっ!!」
その訴えも空しく、上からのしかかるように挿入される。
「んあああっっ!!」
さすがに大きい声が出た。体重をかけた真上からの杭打ちは、気のせいじゃなく子宮を潰される。普通だったら痛くてたまらない。でも膣が蕩けきった今は、別の意味でたまらない。挿入だけでいきなりイかされてしまった。
『どうや女王様、これがいわゆる“種付けプレス”や』
動画の中から声がする。種付けプレス……なんて下品で、的確な呼び名だろう。
「あんた、これっ……いくらなんでも……!」
苦しさを押して陽斗に呼びかけるものの、すぐに腰の動きが始まってしまう。
『ああ゛あぁ゛あ゛ぎもぢいいっ! お゛かじぐなっちゃう゛、お゛がじぐな゛っぢゃう゛う゛っ!!』
スマホからの鬼気迫る声が聞こえているのは、私だけじゃない。
「おかしくなりそうなんやて。そうなん姉ちゃん?」
そう訊かれるけど、答えない。答えられない。真上から体重を乗せて子宮を潰されると、一突きごとに深くイってしまう。
「ッああ゛、あ゛ァア゛っああ、あ゛ッッ!!」
潰れたカエルのような悲鳴が漏れ、指先の開いた脚が痙攣する。
「姉ちゃん、ほんっまエロすぎやわ」
陽斗はそんな私を見て笑い、どさくさに紛れてキスを迫った。でもそれだけは、顔を横向けて全て拒否する。そこは本当に最後の一線だと思うから。
強すぎる刺激に、何度も意識を失いかける。おかしくなる、という言葉がいよいよ深刻に頭を過ぎる。そんな私の窮地をギリギリで救ったのは、陽斗自身の限界だった。
「あーヤバい、イクっ……イク!!」
陽斗は呻きながら体を震わせ、ゴムの中に精子を吐き出す。スマホからは本当に狂っていそうな、人とは思えない絶叫が続いてるけど、私の方はかろうじて助かった。
とはいえ、ダメージは大きい。アレを引き抜かれても、弟の存在感が体の中から消えない。
「ヤバ、めっちゃ開いてる。俺のチンコ、またデカなったんやなあ」
私の割れ目を見ながら、陽斗がぼやいた。その惚けた態度が妙に腹立たしい。
「はーっ、はーっ……なんそれ、すっごいムカつくんやけど。その自覚もなしに、上からガンガン突っ込んできたん!?」
「ご、ごめんて姉ちゃん! 調子乗ったんは謝るから、そんな怒らんといてよ……」
私に睨まれると、陽斗は怯えたように肩を竦める。体はすっかりオトナになったくせして、こういう所はチビな頃とちっとも変わってない。
「……ふっ」
つい噴きだしてしまう。私はやっぱり、どこかネジが外れてるんだろう。あれだけ好き勝手された後で、しかもこんな大型犬相手なのに、撫でたり頬ずりをしたくなるなんて。
※
大型犬は、汗を流すために入ったお風呂場でも纏わりついてきた。
「姉ちゃん、またオッパイでかなったやん」
背後から私の胸を揉みつつ、陽斗が囁く。
「いや、久しぶりやのになんでわかんの……キモ」
「当たり前やん。この揉み心地忘れたことなんて一日もないもん」
「いやそれ、キモい通り越して怖いから」
そんな軽口を叩く中、陽斗の左手が私の股に潜り込む。
「ん!」
指を入れられると声が出た。やりすぎて粘膜が擦り切れているから、少し痛い。でも、それ以上に興奮している。少し指を動かされただけで、クチュクチュと水音がしはじめる。
「乳首また勃ってきたやん。アソコもグチョグチョやし。姉ちゃんって昔から、こうやって後ろから弄くる方が感じやすいよなー。顔見られんぶん集中できるとか、そういうん?」
陽斗は私の身体を好き放題に弄りながら、同じく好き勝手なことを言う。
「あんた、ホンマなんなん? やってることも含めて、痴漢してるオヤジみたいやで」
そう言い返しながらも、鼓動が早まるのを感じていた。確かに、後ろから愛撫される方が感じるのはそう。でもそれとは別に、変な気分になってしまう理由がある。
私達が初めて“した”のもお風呂だった。お風呂場は、私たち姉弟の間違いが始まった場所。
……いや、責任を問われるなら私だ。早い内から、弟が一人で入浴できるように躾けるべきだった。思春期を迎えた弟を前に、無防備に裸を晒していた事こそが問題だ。
弟の人生を狂わせたのは私。だから、私にセックスに浸る資格なんてない。言っても聞かないなら、やりたいだけやらせて飽きるのを待つだけだ。
きっとそう遠い話じゃない。女といえば私しかいなかった子供の頃ならともかく、今や可愛い女子に囲まれている弟が、私みたいな冴えない女にいつまでも執着している筈がないんだから。
お尻に当たる硬い物が、どんどんサイズを増していく。また勃起してきたらしい。
「ああもう我慢できひん。入れるで!」
「ちょい待ち、あんたゴムは!?」
「今ない。でもごめん、ホンマにもう我慢できひん!」
「ああもう……外に出しや!」
「わ、わかっとるよ。わかっとるけど、そんなギュウギュウ締めんといて。暴発しそうや!」
「アホ、締めてへんわ! あんたのが無駄にでかいだけや!」
「はあ、はあ……へへへ、ホンマに? 俺のってそんなデカいん? 姉ちゃんの元カレより?」
「はっ、はあっ……あんた、ホンマにキショいわ……」
「だって気になるやん。俺、姉ちゃんが絶対忘れられへんオトコになりたいねん!」
暴発しそうというのは本当なんだろう。陽斗は挿入したまま、ほとんど動かなかった。ゆっくり押し込むぐらいで、ピストンと呼べるほどの動きはしない。ただ、代わりに手は貪欲だった。右手は乳房と乳輪・乳首を弄び、左手は愛液を塗り伸ばすようにクリトリスを撫でてくる。
( 私に、セックスに浸る資格なんてない )
心の中でそう繰り返し、壁に手をついたまま堪える。でも、さんざん絶頂して敏感になっている身だ。無反応でいられる訳もない。
「んっ、んっ……」
どうしても声が漏れた。とろりとした液体が膝まで垂れていくし、脚は内股に閉じようとする。
「くあっ!」
乳首とクリトリスを同時に摘み上げられた瞬間には、眼球がぐるっと上を向いた。絶頂だ。膣の襞が弟の分身を包み込み、甘やかすように舐めしゃぶっている。
「あ、あ、姉ちゃん、そんな締めたらっ……!!」
震える声でそう囁きかけられた直後、膣の中の熱さが跳ねた。どくっ、どくっ、と何かを吐き出しているのもわかる。
「ご、ごめん姉ちゃん、中に出してもうた!」
「あ、あんたなあ! まあ、一応ピル飲んでるけど……」
私がそういうと、陽斗は安心したように息を吐き出した。
「よかった。あ、あともう一個ええ?」
「なに?」
「今出したばっかやねんけど、姉ちゃんのナカ気持ち良すぎて、腰が止まらへんねん。このままバックで続けてええ?」
「はあ……勝手にしたらええやん。さっきかて滅茶苦茶やっといて、今更何言うてんの?」
私が訝しむと、陽斗は照れたように目を逸らす。
「せやけど、バックって簡単に奥まで入るから、ガンガン突きまくったら女の子がお腹痛なるって動画で言うててん。さっきもハイになってやり過ぎた気ィするし、心配なって……」
ぼそぼそと弁解しながら、機嫌を窺うように私の眼を覗き込んでくる。昔から変わらない、幼稚な、そして卑怯な仕草だ。弟にこんな目をされて絆されない姉なんて、この世にいるだろうか。
「……アホ。あんたに心配されるほどヤワちゃうわ。そんなん気にするぐらいなら、ヤりたいだけヤッてさっさと終わらせて。長引く方がしんどいねん」
私がそう言うと、陽斗の顔は太陽のように明るくなった。
※
「姉ちゃん!! 姉ちゃんっ!!」
陽斗はそう叫びながら、猿のように腰を打ち付けてくる。ただでさえ音が反響するバスルームでは、パンパンという音が煩いぐらいだ。
「あ゛っ、あ゛んっ!! ん゛っ、ん゛ん゛っ……あ!!!」
思春期の男子の全力をぶつけられて、声を殺しきるのは無理があった。壁に手をついて直立を保つだけで精一杯。いや、それすら十分には出来ていない。何度も絶頂し、愛液をまき散らした結果、膝は完全に笑っている。私がそんなだから、陽斗もやりづらかったに違いない。
「気持ちいいね、姉ちゃん……!」
陽斗はそう囁きながら私の両腕を掴み、後ろに引き絞りながら突きはじめる。
「う゛っ!!?」
身体を反らされての立ちバックは、強烈に私を追い詰めた。
「んあ゛っ、あ゛っ、イクっ!! あぁ゛、おぉ゛……んお゛、お゛っ!!」
スマホの映像で耳にした、あの声……女の出しちゃいけない声が、お腹の底から絞り出される。恥ずかしくて唇を噛んでも、荒い息が止められないように、本音の喘ぎが止まらない。
「は、はるとっ、陽斗待ってっ! お姉ちゃんね、今ダメなの! い、いまイッてる、イッてるのお゛っ!!」
必死に叫んでみるけど、聞き入れられないのは分かっていた。弟の性格は誰よりよく知っている。一度夢中になったら、周りなんて目に入らないことも。
「ンお゛おっ、あふう゛うう゛!! イグよ、おねえちゃんまだイグよおっ!!」
泣き言か、報告か。よく解らない叫びを漏らしながら、股間から飛沫を噴き散らす。ハメ潮というものだろうか。潮を噴くのは気持ちよくないなんて、どこの誰が言ったんだろう。潮まで噴いたという事実は、何より正気を狂わせる。男にとっての射精と同じ。自分の身体が快感に屈服したという明白な印だ。
「お゛っ、おう゛っ、おう゛っ!!」
親にはとても聞かせられない声を上げながら、また絶頂に押し上げられる。快感が強すぎて無意識に爪先立ちになるけど、陽斗は下から突き上げる形で私の一番深い所に寄り添ってくれる。
「姉ちゃん、顔見せて」
弟の声がして、私は俯いていた顔を上げた。目の前にはちょうど鏡があって、狂ったように暴れる乳房と、その上の顔が映り込んでいる。
締まりのない顔。頬は赤く、開いた口からは涎を垂らし、目からは涙を伝わせている。
「な、俺がいっつも言ってる通りやろ。世界一可愛くて、エロい顔やん」
弟の囁きが耳から入り込んでくる。大好きなその声色は、脳まで自然に運ばれて…………張りつめた何かをぷつんと切った。
「ほんまやぁ。わたし、エッチやねぇ……♡」
どこかからその言葉がして、鏡の中の顔が笑みに変わる。
片腕が放された。その手は幸せそうな顔に優しく添えられ、横を向かせる。
「んちゅっ、はむっ……」
唇を合わせ、舌を絡ませる。家族には普通しない、大人のキス。
一瞬、頭の靄が晴れる。『一線を超えた』事実を認識して、目尻から涙が零れていく。
お父さん、お母さん、ごめん。
姉弟揃って倫理観が欠けていてごめん。でも代わりに、2人で幸せになるから。
頭の中でそう約束し、また湯気のような世界に意識を溶かす。
ああ。
あたたかだ。
終
セックスレクチャー動画に出てきた男女は、『オス喰い女王の愛しき我儘』の2人です。
近親相姦要素があるため、ご注意ください。
「久しぶり、姉ちゃん!」
高校から野球部に入ったという弟の陽斗(はると)は、野球少年らしく日に焼けていた。
「へー、ここが姉ちゃんのアパートかぁ。意外と狭いんやな」
「実家(うち)と比べたらやろ。トイレ・風呂別でキッチンついてるだけでも上等なんやで」
3つ下の弟はまだ実家暮らしで、学生アパートの勝手を知らない。とはいえ私も一年前まではそうだった。大学入学を期に一人暮らしを始めてから、ずいぶんと世界が広がったものだ。
「ってか姉ちゃんそれ、ウチでよく着てた芋ジャージやん。まだそんなん着てんの?」
「そや。なに? 弟が来るってだけで色気づいた格好するとでも思ったん?」
「でも、姉ちゃんももう女子大生やろ?」
「だから何なんよ。カレシでもあるまいし」
不満たらたらな陽斗をあしらいつつ、昼食の準備を整える。メニューは明太子パスタと、昨日のうちに作っておいたハンバーグ。どっちも弟の好物だ。
「うはー、美味そう! いっただきまーす!!」
陽斗は目を輝かせたままフォークを手に取ると、一心不乱に食事を貪りはじめる。こうなったら言葉すら届かない。昔から好きな物にはのめり込むタイプだ。
「あー美味かったぁ! 母さんのメシも美味いけど、やっぱ姉ちゃんの作ったもんが一番オフクロの味って感じするわ!」
「それ、お母さんに失礼やで?」
そう嗜めはするものの、内心で頬が緩む。うちは父親が単身赴任でほぼ家におらず、母親もパートで忙しいから、ずっと私が料理を作っていた。弟にとって私の料理がお袋の味になるのも無理はない。
傍から見れば、私達はごく普通の姉弟に見えるだろう。姉の所へ遊びにきた無邪気な弟……そうとしか見えないはずだ。
でも、私達には秘密がある。
肉体関係があるんだ。それも一度や二度じゃない、何十回も。
忙しい両親に代わり、幼い陽斗をお風呂に入れるのも私の仕事だった。陽斗は目が離せない子供で、何か考え事をしていると上せているのにも気付かずにお湯に浸かり続けるから、小学校に上がっても一緒に入浴していた。
私にとっての陽斗は手のかかるチビ助だ。でも、そんな弟にだって思春期は来る。
「ねえちゃん。俺、ねえちゃんとしたい」
ある日陽斗は、後ろから私に抱きついてそう言った。お尻には勃起した熱い物が当たっていて、どういう状況かはすぐに察せた。
「……なに言うてんの? 冗談やめぇ」
私はもちろん諌めたけど、陽斗はゴネる。聞き分けが悪いわけじゃないけど、興味を惹かれたものには執着する性格だ。何十分か押し問答して、洗い場に立っているのが寒くなってきた頃、私はしぶしぶ折れた。もう少し倫理観を強く持つべきだったけど、あの時はとにかく面倒だった。お風呂から出たら宿題もやらなきゃいけないし、明日の朝ごはんの準備だってしなきゃいけない。そういう中で陽斗と口論を続けるよりは、一度やらせてしまえばいい……そんな風に思ったんだ。
「さっさと済ませなよ」
そう言ってお風呂場の壁に手をついた時は、さすがに緊張した。初体験は痛いと聞いていたからだ。でも実際その時を迎えると、なぜか全然痛くなかった。陽斗のアレは10歳にしては大きかったし、挿れるのだって石鹸を塗りたくってやっとだった。だけど石鹸の刺激を感じるぐらいで、抜き差しされても痛くない。別に気持ちよくもなかったけど、あっさりと陽斗を射精まで導けた。
今思えば、それも良くなかったのかもしれない。セックスの気持ちよさを知った陽斗は、それから毎日のように私としたがるようになり、私もやらせた方が楽だからと安易に受けた。
私と陽斗は身体の相性が良いんだろう。お風呂でバックから突かれるのは、3日目には快感になった。そうなればセックスという娯楽の虜だ。学校終わりの5時から母親が帰ってくる10時過ぎまでは2人だけの時間だったから、その間にやりまくった。お風呂場だけじゃなく、リビングのソファやトイレ、2階のベッドでもした。もちろん行為の痕跡は丁寧に拭いたし、消臭もした。姉弟でしていることが近所にバレないように、声も抑えた。『バレたら終わり』という背徳感がスパイスになって、ますますセックスが燃えたものだ。
ただ、後ろめたい気持ちはずっとあった。だから私は、自分から陽斗を求めることはせず、常にされるがままな態度を貫いた。セックスの最中に笑ったことなんて一度もないはずだし、陽斗が恋人みたいにキスを求めてきても応じなかった。弟の我儘につきあって、仕方なくしているという演技……そこが最後の一線だ。
大学入学と同時に実家を出たのも、もう1年ちょっと帰省していないのも、弟と距離を取りたかったという理由が大きい。陽斗の義務教育も終わったことだし、できれば爛れた関係をすっぱり切りたかった。
ただ、そう簡単にはいかないみたいだ。陽斗はしつこいぐらい私にLINEをしてくるし、今だってお預けを喰らった犬のよう。
「…………で、どうなん? ヤりたいん?」
そう聞いてみると、わかりやすいほど目を輝かせる。尻尾があればブンブン振っているに違いない。わざわざ芋ジャージなんて色気のない格好をしているのに、この弟には何の効果もないらしい。
「はあっ」
溜め息をつく。渋々セックスに応じてやるというアピールだ。ただ実際、うんざりしてはいる。対象は私自身。弟にせがまれれば大体何でも聞いてしまう甘さも、内心でセックスを楽しみにしている淫乱さも、心の底から嫌になる。
※
「あんたも歯ぁ磨き。歯ブラシそこにあるから」
陽斗に洗面台を使わせながら、私の方はトイレに入り、ビデであそこを洗う。丁寧に性器を洗浄していると、これからセックスをするんだという実感が湧いてくる。
弟相手に乱れた姿なんて見せたくないけど、不安しかない。弟を忘れるために作った彼氏と破局してから、もう2ヶ月ご無沙汰だ。しかも生理前だから、性欲も高まっている。
「……なんで今来んねん」
小さくぼやきながら、ぶんぶんと顔を振ってトイレを流す。
弱気はダメだ。年長者が弱いところなんて見せられない。
食卓を端に寄せ、布団周りに充分なスペースを確保してから、お互いに服を脱ぐ。
「うひょー、相変わらずグラドル顔負けのエロボディやなあ!」
陽斗は私の身体を見て鼻を膨らませた。
「何それ、嫌味?」
「いや、ちゃうて。自己評価低いのも変わらんなぁ!」
陽斗は否定したものの、何がそんなに興奮するのか本気でわからない。物心つく前からお風呂で見慣れている裸なのに。それに、初めて見るんだとしても惹かれるとは思えない。今日に備えて少しは絞ったけど、まだ腰はくびれてもいないし、下腹は便秘気味で膨らんでいるし、そもそもが胴長短足の野暮ったい体型だ。強いてアピールポイントを挙げるなら、安産型と言われるお尻と、胸が大きいことぐらい。偏差値で表すなら良くて40台というところか。
逆に陽斗は野球部だけあっていい体だ。背はまだ私より小さいけど、肩幅はちゃんと広く、手足には筋肉がつき、腹筋もうっすらと割れている。もう力では敵いそうもない。昔はあんなにチビだったのに。
しかも、股間にぶらさがっている物はもう半勃ちだ。
「勃っとるやろ、朝からずっとやねん。コイツもはよ姉ちゃんとヤリたいらしいわ」
「呆れた、ほとんど猿やん。私かて忙しいんやから、さっさと済まして帰ってや」
「大学生って暇ちゃうん?」
「アホ、レポートとか色々あんねん。悪いけど、あんたとしてる時もレポート用の資料見てるからな」
「ええで別に。俺もこの一年で色々テク仕込んできたから、すぐに見てられんようになると思うけどな」
「なにその自信、キショいで」
軽口を叩きながらベッドに寝転び、顔の前にスマホを翳した。
陽斗はまず、私の腰の下にクッションを入れて浮かせ、大きく脚を開かせてくる。
「最近ネットで無修正の動画とかめっちゃ見てんねんけど、姉ちゃんのマンコが一番綺麗やわ」
「あっそ。あんた仮にも未成年なんやから、ほどほどにしぃや」
会話はそこで途切れた。陽斗は私の太腿を掴み、あそこをベロベロと舐めはじめる。一度こうなると、食事と同じで一心不乱だ。いつ息継ぎしてるのかわからないレベルで顔を離さない。
鼻息荒く割れ目を舐め上げ。クリトリスを舌で舐め、吸い、つつき回し。かと思えば舌を思いっきり入れて、膣の粘膜を舐め回し。こういうことを延々と繰り返す。
そしてこれが有り得ないほど気持ちいい。クンニは舌でくすぐる程度のソフトな刺激から始めるのがいいそうで、実際前の彼氏はそうしてくれた。でも、物足りなかった。つくづくこの身は、弟の犬のような舐りに慣らされてるんだと思い知らされたものだ。
それに、贔屓目を抜きにしても弟のクンニはレベルが高いと思う。毎日のようにしてたから経験値がすごいし、私の弱い所なんて全部把握されてる。今だからこそ声を我慢してるけど、もしこれを本当の恋人にされたら、砂糖よりも甘ったるい喘ぎを漏らしているに違いない。
「っ!!」
また舌が深く入った。思わず目が開くし、太腿もぶるぶる震える。気持ちよくて気持ちよくてたまらない。
スマホから視線を外して盗み見ると、陽斗の股間はすでに勃起状態で脈打っていた。興奮してるんだ、私のあそこを舐めて。
「……あはははは、めーっちゃ濡れてきた!」
ようやく顔を離した陽斗が、鼻から下を濡れ光らせたまま笑う。
「あんたのツバちゃうん」
「ちゃうって。ほら!」
陽斗はまた割れ目に口をつけ、ずずずーっと音を立てて愛液を啜った。
「ちょっ! どんな音で吸ってんねん!!」
思わず反応してしまう。実家でしていた頃はとにかく音を立てないようにしてたから、愛液を啜られたのなんて初めてだ。
「なんで? このアパート、今日誰もいーひんのちゃうん?」
「そ、そういう問題ちゃうわ! こっちが恥ずかしい言うてんねん!」
「はははは、でもこれでスマホ見てる場合やなくなるやろ?」
「……っ!」
これも成長だろうか。少し会わない間に口が達者になっている。
数十分かけてクンニを続けたあと、陽斗は愛撫の仕方を変えてきた。膨らみかけのクリトリスを皮ごと左手親指で圧迫しつつ、右手の4本指でビラビラを刺激してくる。初めて受ける前戯。陰唇に血が通って厚みが増すのを感じる。挿入された後の快感も増しそうだ。
「なに、その擦んの?」
「気持ちええやろ」
「……別に。でもそんなんどこで覚えるん。彼女?」
陽斗は父親似で顔がいいし、スタイルも悪くない。しかも本人曰く野球部のエースだ。彼女の1人や2人簡単にできたって不思議じゃない。
「SEXレクチャー系の動画や。彼女なんておらんよ。何回か告られたけど、姉ちゃんよりムラムラする娘なんていーひんし」
「何それ。アンタおかしいでホンマ」
私は顔がそこまでいいとは思えないし、スタイルだってイマイチだ。弟の同級生……つまり現役の女子高生よりも魅力的とはとても思えない。でも、弟はどうやら本気らしい。
陰唇が充血しきり、言い訳もできないぐらい愛液に塗れたころ、陽斗はとうとう割れ目の中に指を入れてきた。人差し指と小指をお尻に食い込ませ、中指と薬指の二本を挿入するやり方。こいつ、潮を噴かせる気だ。
「潮噴かせてええ?」
やる気満々なくせに、白々しく訊いてくる。
「好きにしぃ。ただ言うとくけど、潮噴きって別に気持ち良くもなんともないで? オシッコと一緒やもん」
「らしいな。動画でもそう言うてたわ。でも俺、姉ちゃんに噴かせたいねん」
「なんなんそれ。意味わからん」
指が動きはじめた。明らかに慣れていない感じで、手探りだ。でも私の弱点は心得ているから、指の腹はすぐにスポットの芯を捉えてくる。
「ああ、そうや。ココやココ」
嬉しそうな声がする。でも反論の言葉は浮かばないし、そんな余裕もない。指先でクリトリスの真裏あたりを押し上げられると、勝手に腰が浮いてしまう。
「んっ、ふっ……」
スマホを置き、万歳の格好で顔を横向けて声を殺す。でも性感までは殺しきれない。強い尿意が湧き上がってきて、腰がぴくぴくと痙攣する。そしてその直後、ぷしゃっと潮が飛び散った。下手に我慢したせいか勢いは強く、陽斗の肩の辺りまで飛沫がかかる。
「あはははは、凄い出るやん!」
「こんなん、尿道刺激されたから出てるだけや!」
恥ずかしい。弟に潮を噴かされるなんて。でもこの背徳感がたまらない。一度この禁忌の味を覚えてしまうと、彼氏を作ってセックスしたところで、オナニーと同じぐらい虚しく思えてしまう。
「今度は俺のしゃぶって」
陽斗が先走りの汁に濡れたペニスを突き出してくる。
改めて目の当たりにすると、本当に大きい。子供の頃から歳に見合わないサイズ感だったけど、体の成長に併せてますます凶悪になっている。完全に勃起した物を定規で計ると18センチあった、という謎の自慢メッセージが来ていたのを思い出す。しかも、長いだけじゃない。太さもかなりあって、特に亀頭部分の膨らみときたら、それこそ野球のボールよりほんの少し小さい程度だ。
「ちょっと待ち。あんた、ココお風呂でちゃんと洗ってんの? なんか匂うで」
そう言って皮を剥くと、亀頭には恥垢がびっしりとこびりついていた。子供は新陳代謝がすごいから仕方ないけど、それにしても量が多い。
「バッチぃなあ。なんなんこの垢の量? どうせ昨夜オナニーして、そのままほったらかしてたんやろ?」
手繰り寄せたウェットティッシュで、弟の性器をごしごしと拭く。こうやって世話を焼いていると小さい頃を思い出す。
「ちゃう、今朝や! 久しぶりに姉ちゃんとできる思たら、我慢できんくて……あっ、そこあんま弄らんといて! 出そうんなる!!」
「何言うてんの、こんな垢まみれにして。大体しゃぶれとか言うてるけど、コレもう口でする必要ないやん」
ウェットティッシュを離すと、陽斗の物は反り返るほど勃起しきっていた。
「あー、まあな。俺、朝勃ちもエグいねんけど、ここまでなったんは久しぶりや。なんでなんやろなあ、姉ちゃんのアソコ舐めてたらめっちゃ勃つねん」
「アホ」
一言で切って捨てるものの、密かに鼓動が早まる。彼氏に言われたら嬉しい言葉だ。そう、これが普通のカップルだったら、どんなに……。
でも、本当はわかってる。私も弟も、しちゃいけない行為だからこそこんなに興奮してるんだ。いけないクスリでも使ったようなこの刺激を知ってしまったから、もう、戻れない。
「んー、ムズいなぁ」
陽斗はゴムを着けるのに苦戦していた。子供の頃はゴムなんて家に無かったから、出そうになったら外に出させ、お風呂でよく洗うぐらいで済ませていた。今考えると、アレでよく妊娠せずに済んだものだ。
「い、挿れるで」
陽斗の声は上ずっていた。まるで今日初めて“する”みたいに。そんなに緊張されるとこっちまで改まってしまう。もちろん表面上はいつも通り、されるがままな無表情を装うけれども。
ボールのような亀頭が割れ目に押し当てられ、メリメリと中に入り込んでくる。大きい。前の彼氏より2割増しで太く、長く、しかも硬い。陽斗の気持ちの全てがこの熱い塊に宿っているような気がする。
「ああ……久しぶりやなあ、この感じ。あったかくて気持ちええ」
陽斗はうっとりとした様子で呟きながら、私の左右に手をついた。野球をやっているだけあって、胸板も二の腕も男らしくなっている。あのチビに逞しさを感じてしまうのがなんだか悔しい。
奥まで挿入した後、陽斗は腰の動きを止めた。一年前ならいきなり腰を振っていたのに、これも知らない姿だ。
無理矢理こじ開けられた膣が元に戻り、熱い塊に吸い付いていく。そうして充分に馴染んでから、陽斗はゆっくりと腰を遣いはじめた。
最初に馴染ませたのは大きい。以前ならある程度ピストンされてからようやく湧いてきた快感が、いきなり襲ってくる。
「気持ちええやろ」
弟の言葉は、心を見透かしたかのようだった。
「別に」
「ウソや、姉ちゃんのナカ動いとるで。もしかしてセックス久しぶりなんか?」
「アンタ、よう自意識過剰って言われるやろ」
「言われたことないで」
「周りの子が言うてへんだけで、陰ではそう思われてるんちゃう?」
「そんなら姉ちゃんかて、周りに意地っ張りや思われてるで」
「うっさい、アホ!」
いつも通りの口論に比べて、セックスの方はいつもと違う。愛液の滲むペースが早く、ぬちゃぬちゃという水音がもう漏れている。無表情はキープできるものの、太腿がどうしても強張ってしまう。どうやら本気で感じているらしい。まだ挿入されたばかりだというのに。
「あー、気持ちよすぎる……」
陽斗は大きく息を吐きながら身を起こした。下手をするとあのまま正常位でイカされそうだったから、この体位変更はいい息継ぎになった。でも、陽斗が私を休ませるつもりなんてないのは眼でわかる。
「こうしたら、奥のポルチオってとこに響くらしいで」
陽斗は私のお尻を掴み、腰を浮かせたまま挿入してくる。
「っ!!」
最初の一突きで顎が浮いた。頭のてっぺんまでを串刺しにされたみたいな快感が来た。
「ううわ、すっごい締まる! 姉ちゃんも気持ちええん?」
陽斗は上機嫌だ。弟を調子づかせるのは、姉としての沽券に関わる。
「あんたの観てたレクチャー動画で言ってへんかったん? セックスしてたら、膣の壁は充血して膨らむんや。気持ちいいとか悪いとか関係なしに、誰でもこうなんねん」
「いや、それにしてもこの締まりはヤバいって。レクチャー動画の『鬼マラ師匠』にも味おうてもろて、名器のお墨付きもらいたいわ」
「あんたなあ、その発想普通にキショいで」
「ははは、冗談やって。俺が姉ちゃんを他の男に抱かせるわけないやん」
「いや、その発言の方がもっとキショいわ!」
舌戦を交わす間も、陽斗はクイクイと腰を動かしつづける。腰が浮いた状態だと踏ん張りが利かず、突かれたいように突かれてしまう。
この体位は陽斗の言葉通り、突き当たりの子宮入口によく響く。でもそれだけじゃない。奥をつくまでの経由地点を亀頭が擦り上げていくのもつらい。
「ふんんっ……!!」
強く亀頭が擦れた瞬間、思わず声が漏れた。遥か上空で陽斗がにやりと笑う。
「姉ちゃんの元カレって、ココ見つけた?」
陽斗はそう言いながら、私の弱点に雁首を擦り付けた。最近調べた本によれば、Gスポットより少し奥のアダムGスポットと呼ばれる場所らしい。
「いちいちカレシの話題出さんといて。どういうつもりなん?」
「その様子やと、見つけられへんかったみたいやね」
陽斗はニヤニヤと笑っている。私とした他の男に嫉妬心を燃やし、優越感に浸っているらしい。
陽斗はますます調子づき、膣のスポットを経由しながらズンズンと奥をついてくる。これは初めての体験で、しかもとんでもなかった。一突きごとに杭を打たれるような刺激が脳を貫く。そのうち視界が一瞬ブラックアウトして、目の前でチカチカと火花が瞬く。余裕のない顔をしている自覚はあったから、首を反らせて弟に顔が見えないようにした。でもそうすると脳天がシーツに沈み込んで、目の前のチカチカが余計に酷くなる。
音を上げたい。でも姉としてのプライドで上げられない。だから我慢した。頭上のシーツをぎゅっと掴み、拠り所のない快感の濁流に抗った。気を抜けばくいくいと媚びるように上下しそうな腰を、足指でシーツを噛むことで押しとどめた。
「あー、気持ちいいー!!」
やりたい放題に腰を振り、言いたいままに快感を叫ぶ弟が恨めしくなってくる。まるで姉弟の縮図のよう。下の子はいつでも我儘で、上の子はいつでも我慢我慢だ。
宙吊りに近い格好のまま、何回イカされたんだろう。
「あ、イクっ!!」
陽斗が逸物を引き抜き、ゴムの中で射精する。外出しするのは長年の癖だろう。
「あ、ゴムやから抜かんで良かったんや。なんや、あのまま出したかった」
陽斗はそうぼやきながら私の腰を離す。お尻に当たるシーツは、一面がグショグショに濡れていた。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
息が荒い。
「バテバテやん、姉ちゃん」
陽斗は先の膨らんだゴムを外し、口を結んで私のお腹の上に置く。私はぐったりとしたまま、かろうじてそれを払いのけた。舐められるわけにはいかない。
※
スポーツドリンクで水分を補い、ティッシュであそこを拭ってから、すぐに二回戦が始まる。
「えーっと、この後どうやったかな」
新しいゴムを着けた陽斗は、スマホで動画を再生していた。関西訛りの男の声と、若そうな女の人の喘ぎ声が聞こえてくる。
「あ、これや!」
目当ての動画を見つけたらしい。陽斗はスマホを傍に置き、私の足首を掴んでぐいっと開く。ほとんど180度近い大開脚だ。
「きゃっ!? ちょ、ちょっと!」
あまりの格好に非難の声を上げるけど、陽斗は動画ばかり見ていて聞きもしない。かといって拘束を振りほどく力もなかった。さっきの行為が強烈すぎて、下半身に力が入らないせいだ。
「いくで」
陽斗が腰を突き入れる。さんざん挿入された後なのに、亀頭が粘膜を割り開く感触は無視できない。性器周りの筋肉がきゅうっと収縮するのを感じる。まさか挿れられただけでイッたわけじゃないだろうけど。まさか。
『もっと締めて。下っ腹に力こめて、ギューッと。そしたらメチャメチャ気持ちようなるから』
動画から男優らしき人間の声がする。
「姉ちゃん、もっと締めて」
陽斗が同じ言葉を繰り返す。
「アンタ、私のことAVの実験台にしてるわけ? そんなん彼女にやったら一発で嫌われんで!」
「だから彼女なんておらんて。それに、いてもせーへんよ。姉ちゃんを気持ちようしたいから色々調べたんや。ホラ観て、めっちゃ気持ち良さそうやん」
陽斗はそう言ってスマホを拾い上げ、私の方に画面を向ける。
画面に映っているのは、私達と同じ体位で繋がる男女。ポーズは同じだけど、女優の華は段違いだ。
『ああああ気持ちいいわあ、師匠っ!!』
そう歓びの声を上げている金髪の女優は、薄いモザイク越しにもはっきり判る美人だった。スタイルも抜群で、とくに脚がスラッと長い。八頭身ぐらいあるんじゃないだろうか。胴長短足な私とは全然違う。
「こんなん、女優さんのスタイルがええから見映え良いだけやん」
「や、そんなこと無いって。だって姉ちゃんも今、めちゃめちゃエロいし」
陽斗は私を見下ろしたまま真顔で言う。その顔と言葉に、一瞬でもドキリとしてしまうのが嫌だ。
「……そんなん弟に言われても、なんも嬉しないわ」
拒絶の言葉も歯切れが悪い。まるで照れているような響きになって、陽斗の嬉しそうな顔を引き出してしまう。
陽斗はたんたんと腰を打ち付けながら、スマホの映像を私に見せ続ける。
自信満々に見せてくるだけあって、すごい映像ではあった。男の方は冴えない中年親父風だけど、陽斗が霞むレベルの巨根の持ち主だ。そのペットボトルのような物を突っ込まれる女性の方は、頭をシーツにめり込ませるレベルで仰け反っていた。男がニヤニヤ笑いながら動きを止めても、女性の動きは止まらない。自分から腰を叩きつけるようにして快楽を貪っている。
そんな姿を見せられたら、こっちまで変な気分になってしまう。
「うわ姉ちゃん、もう俺が言わんでもめっちゃ締めてくれるやん。トロけそうやわ」
陽斗がまた嬉しそうに笑った。またやってしまったようだ。
「あ、アホか! こんなに脚開かされたら、勝手に力入んねん!」
「ふーん、そうなん。まあええわ、俺めっちゃ気持ちいし!」
陽斗はスマホを投げ捨て、私の足首を掴み直して上に持ち上げる。
「うぐっ!?」
脚をコントロールされる──その厄介さは想像以上だった。膣の刺激に耐えかねて腰を逃がそうとしても、脚を掴み上げられているから逃げられない。その結果、身体が反射で逃れようとするほどの快楽をまともに喰らってしまう。
「……ッ、……ッ!!」
歯を食いしばり、声だけはなんとか殺した。でもその裏では、何回も、何回も、何回もイカされている。ブルブル震える太腿や脹脛は力みすぎて変形しているし、足指ときたら10本全部が反り返っている。顔のすぐ近くでそんな異常事態が起きているんだから、気がつけと弟に叫びたい。でも、気付かれたくないという思いもある。頭がグチャグチャだ。思考力が奪われている。弟とは何百回とセックスしてきたけど、ここまでになるのは初めてだ。
「ああああイク、イク! 姉ちゃん、俺もういきそう! イッてもええ!?」
「はっ、はっ……き、訊かんでええやろ。さっさとイキぃな!」
弟の絶頂宣言は、私にとっての救いだった。やっと終わる、やっと休める……それしか考えられない。
「おぉっ、あ、あ゛ーーっ…………」
弟が射精に入った瞬間、そんな声が鼓膜を震わせた。弟の声に違いない。私の口も開いていて、喉が震えている感じもするけど、気のせいに決まっている。
※
「自分で脚抱えて。離したら負けな」
3回戦では、陽斗が妙な条件をつけてきた。正常位のままVの字に脚を開き、その膝裏を自分で抱えておけという要求だ。
「なんなん負けって。なんの勝負や」
思わず苦笑するものの、勝負を挑まれたからには姉として逃げるわけにはいかない。
「絶対離したらアカンで」
しつこく念押ししつつ、陽斗は腰を遣いはじめた。腰を揺らし、ぐちゅぐちゅと音をさせながらリズミカルに奥を突いてくる。
子宮を揺さぶられるのは正直つらい。口がだらしなく開きそうになるし、脳も放置したバターみたいに溶けてくる。ギリギリ喘いではいないものの、目は虚ろで、鼻水も少し垂れてくる。
そんな私を前に、陽斗は責め方を変えた。ぐうっと奥の奥まで突き込んだまま、その位置をキープする。視線はスマホを追っているから、例の動画に倣っているんだろう。
『ァ待っで、待っで待っで待っでッ!!!』
あの美しい人が出しているとは思えないほど、濁りきった哀願が響き渡る。同じ目に遭っている私には、その気持ちが痛いほど理解できた。脚のVの字なんて保てない。膝からMの字に折り曲げたまま、ブルブルッ、ブルブルッ、と下半身全部を痙攣させるしかない。脳のバターがまた溶ける。目の前が数秒間暗くなって、チカチカと火花が散る。甘ったるいのに、つらい、怖い。待ってと叫ぶのも当然だ。
「すごいな姉ちゃん、これ我慢できるんや」
そう陽斗の声がして、また動きが変わる。私の下腹をぎゅっと押さえつけながらの前後運動。竿の半分ぐらいを抜き差ししてのピストンらしいけど、異常なほど深く思える。
『がはぁっ!! だめ、奥ぅうッ……!!』
『全然奥なんて入ってへんで?』
『ちっ、違、大きいからッ……子宮が、奥にいっ……!!』
動画の切ない声が、また私とシンクロする。子宮がお臍側に押し込まれてる気がするんだ。
『それな、子宮が完全に降りてるからやで。精子が子宮の中まで届きやすいように、身体が孕む準備しとるんや』
女性の悲鳴に割り込む男の声は、洗脳するかのようだった。そしてその声をさらに上書きする勢いで、パンパンパンパンと肉のぶつかる音が響く。そしてそれは、すぐに現実である私の周りでも起きはじめた。
『おお゛お゛イグゥッ、イッでるう゛っ!! いぐ、イグふうっ、いんグぅう゛う゛ーーッッ!!!』
相手に気を許しているのか、あるいは調教された結果なのか。動画の中の彼女は、モデルみたいな見た目からは想像もつかない喘ぎを漏らしていた。
私はそこまでの声は上げられない。でも、澄まし顔でもいられない。
パンパンという音の合間合間に、絶頂の高波が襲ってくる。一度その波に呑まれれば、快感という深い海で溺れるしかない。
「お゛っ、お゛っ! ン゛っ、おほォっ……お゛!!」
苦しさと快感の交ざった声が漏れる。膝を掴む握力がなくなりかけ、急いで掴み直す。
苦しい。気持ちいい。苦しい。気持ちいい。
楽になりたい。力が入らない。意識が……保てない。
「あ、手離してる!」
耳元でそう叫ばれてやっと、自分が膝を離していることを認識できた。
勝負に負けたんだ。姉としての矜持が傷ついたんだ。なのに、それがどうでもよくなるぐらい、快感に浸っているのが心地いい。
『「お仕置きや』」
動画の中と外で、男の声が重なる。その直後、私の足が持ち上げられ、マングリ返しの格好を取らされた。
「え、なにすんの!? こんなん嫌やっ!!」
その訴えも空しく、上からのしかかるように挿入される。
「んあああっっ!!」
さすがに大きい声が出た。体重をかけた真上からの杭打ちは、気のせいじゃなく子宮を潰される。普通だったら痛くてたまらない。でも膣が蕩けきった今は、別の意味でたまらない。挿入だけでいきなりイかされてしまった。
『どうや女王様、これがいわゆる“種付けプレス”や』
動画の中から声がする。種付けプレス……なんて下品で、的確な呼び名だろう。
「あんた、これっ……いくらなんでも……!」
苦しさを押して陽斗に呼びかけるものの、すぐに腰の動きが始まってしまう。
『ああ゛あぁ゛あ゛ぎもぢいいっ! お゛かじぐなっちゃう゛、お゛がじぐな゛っぢゃう゛う゛っ!!』
スマホからの鬼気迫る声が聞こえているのは、私だけじゃない。
「おかしくなりそうなんやて。そうなん姉ちゃん?」
そう訊かれるけど、答えない。答えられない。真上から体重を乗せて子宮を潰されると、一突きごとに深くイってしまう。
「ッああ゛、あ゛ァア゛っああ、あ゛ッッ!!」
潰れたカエルのような悲鳴が漏れ、指先の開いた脚が痙攣する。
「姉ちゃん、ほんっまエロすぎやわ」
陽斗はそんな私を見て笑い、どさくさに紛れてキスを迫った。でもそれだけは、顔を横向けて全て拒否する。そこは本当に最後の一線だと思うから。
強すぎる刺激に、何度も意識を失いかける。おかしくなる、という言葉がいよいよ深刻に頭を過ぎる。そんな私の窮地をギリギリで救ったのは、陽斗自身の限界だった。
「あーヤバい、イクっ……イク!!」
陽斗は呻きながら体を震わせ、ゴムの中に精子を吐き出す。スマホからは本当に狂っていそうな、人とは思えない絶叫が続いてるけど、私の方はかろうじて助かった。
とはいえ、ダメージは大きい。アレを引き抜かれても、弟の存在感が体の中から消えない。
「ヤバ、めっちゃ開いてる。俺のチンコ、またデカなったんやなあ」
私の割れ目を見ながら、陽斗がぼやいた。その惚けた態度が妙に腹立たしい。
「はーっ、はーっ……なんそれ、すっごいムカつくんやけど。その自覚もなしに、上からガンガン突っ込んできたん!?」
「ご、ごめんて姉ちゃん! 調子乗ったんは謝るから、そんな怒らんといてよ……」
私に睨まれると、陽斗は怯えたように肩を竦める。体はすっかりオトナになったくせして、こういう所はチビな頃とちっとも変わってない。
「……ふっ」
つい噴きだしてしまう。私はやっぱり、どこかネジが外れてるんだろう。あれだけ好き勝手された後で、しかもこんな大型犬相手なのに、撫でたり頬ずりをしたくなるなんて。
※
大型犬は、汗を流すために入ったお風呂場でも纏わりついてきた。
「姉ちゃん、またオッパイでかなったやん」
背後から私の胸を揉みつつ、陽斗が囁く。
「いや、久しぶりやのになんでわかんの……キモ」
「当たり前やん。この揉み心地忘れたことなんて一日もないもん」
「いやそれ、キモい通り越して怖いから」
そんな軽口を叩く中、陽斗の左手が私の股に潜り込む。
「ん!」
指を入れられると声が出た。やりすぎて粘膜が擦り切れているから、少し痛い。でも、それ以上に興奮している。少し指を動かされただけで、クチュクチュと水音がしはじめる。
「乳首また勃ってきたやん。アソコもグチョグチョやし。姉ちゃんって昔から、こうやって後ろから弄くる方が感じやすいよなー。顔見られんぶん集中できるとか、そういうん?」
陽斗は私の身体を好き放題に弄りながら、同じく好き勝手なことを言う。
「あんた、ホンマなんなん? やってることも含めて、痴漢してるオヤジみたいやで」
そう言い返しながらも、鼓動が早まるのを感じていた。確かに、後ろから愛撫される方が感じるのはそう。でもそれとは別に、変な気分になってしまう理由がある。
私達が初めて“した”のもお風呂だった。お風呂場は、私たち姉弟の間違いが始まった場所。
……いや、責任を問われるなら私だ。早い内から、弟が一人で入浴できるように躾けるべきだった。思春期を迎えた弟を前に、無防備に裸を晒していた事こそが問題だ。
弟の人生を狂わせたのは私。だから、私にセックスに浸る資格なんてない。言っても聞かないなら、やりたいだけやらせて飽きるのを待つだけだ。
きっとそう遠い話じゃない。女といえば私しかいなかった子供の頃ならともかく、今や可愛い女子に囲まれている弟が、私みたいな冴えない女にいつまでも執着している筈がないんだから。
お尻に当たる硬い物が、どんどんサイズを増していく。また勃起してきたらしい。
「ああもう我慢できひん。入れるで!」
「ちょい待ち、あんたゴムは!?」
「今ない。でもごめん、ホンマにもう我慢できひん!」
「ああもう……外に出しや!」
「わ、わかっとるよ。わかっとるけど、そんなギュウギュウ締めんといて。暴発しそうや!」
「アホ、締めてへんわ! あんたのが無駄にでかいだけや!」
「はあ、はあ……へへへ、ホンマに? 俺のってそんなデカいん? 姉ちゃんの元カレより?」
「はっ、はあっ……あんた、ホンマにキショいわ……」
「だって気になるやん。俺、姉ちゃんが絶対忘れられへんオトコになりたいねん!」
暴発しそうというのは本当なんだろう。陽斗は挿入したまま、ほとんど動かなかった。ゆっくり押し込むぐらいで、ピストンと呼べるほどの動きはしない。ただ、代わりに手は貪欲だった。右手は乳房と乳輪・乳首を弄び、左手は愛液を塗り伸ばすようにクリトリスを撫でてくる。
( 私に、セックスに浸る資格なんてない )
心の中でそう繰り返し、壁に手をついたまま堪える。でも、さんざん絶頂して敏感になっている身だ。無反応でいられる訳もない。
「んっ、んっ……」
どうしても声が漏れた。とろりとした液体が膝まで垂れていくし、脚は内股に閉じようとする。
「くあっ!」
乳首とクリトリスを同時に摘み上げられた瞬間には、眼球がぐるっと上を向いた。絶頂だ。膣の襞が弟の分身を包み込み、甘やかすように舐めしゃぶっている。
「あ、あ、姉ちゃん、そんな締めたらっ……!!」
震える声でそう囁きかけられた直後、膣の中の熱さが跳ねた。どくっ、どくっ、と何かを吐き出しているのもわかる。
「ご、ごめん姉ちゃん、中に出してもうた!」
「あ、あんたなあ! まあ、一応ピル飲んでるけど……」
私がそういうと、陽斗は安心したように息を吐き出した。
「よかった。あ、あともう一個ええ?」
「なに?」
「今出したばっかやねんけど、姉ちゃんのナカ気持ち良すぎて、腰が止まらへんねん。このままバックで続けてええ?」
「はあ……勝手にしたらええやん。さっきかて滅茶苦茶やっといて、今更何言うてんの?」
私が訝しむと、陽斗は照れたように目を逸らす。
「せやけど、バックって簡単に奥まで入るから、ガンガン突きまくったら女の子がお腹痛なるって動画で言うててん。さっきもハイになってやり過ぎた気ィするし、心配なって……」
ぼそぼそと弁解しながら、機嫌を窺うように私の眼を覗き込んでくる。昔から変わらない、幼稚な、そして卑怯な仕草だ。弟にこんな目をされて絆されない姉なんて、この世にいるだろうか。
「……アホ。あんたに心配されるほどヤワちゃうわ。そんなん気にするぐらいなら、ヤりたいだけヤッてさっさと終わらせて。長引く方がしんどいねん」
私がそう言うと、陽斗の顔は太陽のように明るくなった。
※
「姉ちゃん!! 姉ちゃんっ!!」
陽斗はそう叫びながら、猿のように腰を打ち付けてくる。ただでさえ音が反響するバスルームでは、パンパンという音が煩いぐらいだ。
「あ゛っ、あ゛んっ!! ん゛っ、ん゛ん゛っ……あ!!!」
思春期の男子の全力をぶつけられて、声を殺しきるのは無理があった。壁に手をついて直立を保つだけで精一杯。いや、それすら十分には出来ていない。何度も絶頂し、愛液をまき散らした結果、膝は完全に笑っている。私がそんなだから、陽斗もやりづらかったに違いない。
「気持ちいいね、姉ちゃん……!」
陽斗はそう囁きながら私の両腕を掴み、後ろに引き絞りながら突きはじめる。
「う゛っ!!?」
身体を反らされての立ちバックは、強烈に私を追い詰めた。
「んあ゛っ、あ゛っ、イクっ!! あぁ゛、おぉ゛……んお゛、お゛っ!!」
スマホの映像で耳にした、あの声……女の出しちゃいけない声が、お腹の底から絞り出される。恥ずかしくて唇を噛んでも、荒い息が止められないように、本音の喘ぎが止まらない。
「は、はるとっ、陽斗待ってっ! お姉ちゃんね、今ダメなの! い、いまイッてる、イッてるのお゛っ!!」
必死に叫んでみるけど、聞き入れられないのは分かっていた。弟の性格は誰よりよく知っている。一度夢中になったら、周りなんて目に入らないことも。
「ンお゛おっ、あふう゛うう゛!! イグよ、おねえちゃんまだイグよおっ!!」
泣き言か、報告か。よく解らない叫びを漏らしながら、股間から飛沫を噴き散らす。ハメ潮というものだろうか。潮を噴くのは気持ちよくないなんて、どこの誰が言ったんだろう。潮まで噴いたという事実は、何より正気を狂わせる。男にとっての射精と同じ。自分の身体が快感に屈服したという明白な印だ。
「お゛っ、おう゛っ、おう゛っ!!」
親にはとても聞かせられない声を上げながら、また絶頂に押し上げられる。快感が強すぎて無意識に爪先立ちになるけど、陽斗は下から突き上げる形で私の一番深い所に寄り添ってくれる。
「姉ちゃん、顔見せて」
弟の声がして、私は俯いていた顔を上げた。目の前にはちょうど鏡があって、狂ったように暴れる乳房と、その上の顔が映り込んでいる。
締まりのない顔。頬は赤く、開いた口からは涎を垂らし、目からは涙を伝わせている。
「な、俺がいっつも言ってる通りやろ。世界一可愛くて、エロい顔やん」
弟の囁きが耳から入り込んでくる。大好きなその声色は、脳まで自然に運ばれて…………張りつめた何かをぷつんと切った。
「ほんまやぁ。わたし、エッチやねぇ……♡」
どこかからその言葉がして、鏡の中の顔が笑みに変わる。
片腕が放された。その手は幸せそうな顔に優しく添えられ、横を向かせる。
「んちゅっ、はむっ……」
唇を合わせ、舌を絡ませる。家族には普通しない、大人のキス。
一瞬、頭の靄が晴れる。『一線を超えた』事実を認識して、目尻から涙が零れていく。
お父さん、お母さん、ごめん。
姉弟揃って倫理観が欠けていてごめん。でも代わりに、2人で幸せになるから。
頭の中でそう約束し、また湯気のような世界に意識を溶かす。
ああ。
あたたかだ。
終
セックスレクチャー動画に出てきた男女は、『オス喰い女王の愛しき我儘』の2人です。