大樹のほとり

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アナル

二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.5(後編)

Part.5(中編)の続きです。
文字数が多すぎるため、Part.5は前・中・後編に分割します。
こちらはアナル調教パートの後編となります。





 およそ1時間ぶりに足の結束を解かれた時、藤花も沙綾香も自力では立てなかった。特に酷かったのは沙綾香だ。藤花は膝立ちで済んだが、沙綾香は完全にへたりこんでしまう。
「どうした、ちゃんと立てよ!」
「ケツが良すぎて腰抜かしてんのか? 変態が!」
 客からそんな罵倒が飛べば、震える脚を叱咤して立ち上がろうとするが、結局は尻餅をついてしまう。それがまた客の大笑いを誘うんだから、残酷なものだ。

 腰を抜かした状態でも、『審査会』は続く。
 まずはロドニーの指示で、黒人共が沙綾香達の腋を抱え、強引に立ちあがらせた。その上で、迷彩ズボンと剃り込み男が藤花と沙綾香にそれぞれ近づき、指で割れ目を押しひらく。
「すっげー、グチョグチョ」
 連中は、後ろで見ている客にわざと聞かせるようにそう言いながら、手にしたピンクローターを割れ目に埋め込んだ。
「なるほど、そのローターを落とした方が負けだな? 会の趣向からして、黒人にアナルを犯されながらキープしろ、というところか」
 客の一人が指摘すると、ロドニーが頷く。
「鋭いねぇ旦那、その通りだ。真っ当な女なら、あのデカマラでケツをファックされりゃ、自然とアソコ周りに力が入っちまう。ローターが抜けることなんざ有り得ねぇ。落としちまうような女は、よっぽどの変態ってことだ」
 ロドニーはそう煽りながら、黒人共に目で合図を送った。それを受けて、藤花の背後にダリーが、沙綾香の背後にトラバンが近づく。
「よう、サムライガール。元力士の俺の“突っ張り”に、どこまで耐えられるか見せてもらおう」
 ダリーは藤花の顎を大きな掌で包み、日本語で語り掛ける。
「元、力士だと……?」
「そうだ。俺の体重乗っけた突きは強烈だからな。さっきの態勢じゃ、オメェのこの細い腰がヘシ折れるだろうと思って、我慢してやったんだぜ」
 驚愕する藤花の反応を楽しみながら、ダリーはテニスボールより巨大な亀頭を肛門に押し当て、一気に腰を押し込んだ。
「っく、ああああ゛……ッ!?」
 藤花は目を見開き、背後を振り返る。ダリーの逸物は、さっき藤花に挿入したモーリスより長さこそ劣るが、太さでは勝る。それを挿入される刺激は、彼女の常識を遥かに超えているんだろう。
「ひひひ。良い声出すなあ、お前のお友達はよ!」
 隣の痴態を眺めながら、トラバンが沙綾香の胸を揉みしだく。乳房の形を完全に変形させるような荒々しい愛撫だが、沙綾香はそれだけで肩を震わせて反応してしまう。トラバンはその反応の良さを面白がりつつ、亀頭で割れ目をなぞり、愛液を纏いつかせてから肛門へと押し込む。
 トラバンの逸物はタイロンより細く、挿入はスムーズだ。
「すげぇな。あの硬ぇ輪っかだったアナルが、プッシーみてぇにねっとり締め付けるようになってやがる。何されたらこうなるんだよ、ええ?」
 トラバンは、沙綾香の肛門の熟しぶりを喜びながら、さらに腰を進める。怒張がすっかり腸内に隠れるまで。
「ふぅぎぃ……ッ!?」
 トラバンの腰が、尻肉と密着した瞬間。沙綾香から妙な声が漏れた。トラバンが笑みを深める。
「オーウ、嵌まった嵌まった。ここが結腸ってやつか。前にケツ犯した時にゃ、こっちは固く閉じてて入らなかったが、こなれたもんだぜ」
 トラバンは舐めるような口調で言いながら、少し腰を引く。そして角度を調節しながら、くいくいと腰を前後させた。その瞬間、沙綾香が目を見開く。
「っひ、イ゛イ゛ッッッー!!!」
 嚙み合わされた歯の間から、かろうじて声らしきものが漏れる。普通の声じゃない。身体の反応も異常だ。腰をヒクヒクと上下させたかと思えば、膝から崩れ落ちそうになる。トラバンが咄嗟に手首を掴まなければ、そのままへたり込んでいただろう。
「うお、っと。へへへ、ここはマジで感じるらしいな。俺のコックで、ちょうどこの穴のギリギリ一杯ってとこか。タイロンの野郎はなまじ物がデカすぎて、入口を突っつくぐらいしかできなかっただろ? 俺は違うぜ。この奥の穴に亀頭を丸ごとハメ込んで、キッチリ犯してやる」
 トラバンはそう宣言し、浅いピストンで肛門内を犯しはじめる。

 モニター前、横並びになってのアナルセックス。その様子はだいぶ違った。

 ダリーと藤花のペアは、とにかく激しい。ダリーは藤花の腰を掴み、後背位で腰を叩きつけている。沙綾香よりさらに脂肪の少ない、筋肉質な藤花の下半身でも、この突き込みを受ければしっかりと皮膚が波打った。小ぶりなスイカを思わせる乳房は、その激しい突き込みを受けて前後に揺れ、肋骨の辺りにぶつかっては母乳を垂らす。
「おお゛お゛っ、お゛ーっォ゛っ!! くほっ、おおお゛っ、おーお゛っ!!!」
 舌を突き出した口からは、『お』行の呻きが漏れつづけていた。ただしこれは、ダリーの超重量ピストンを受けた人間全てに共通することだ。百合も、沙綾香も、あの惨めな反応を抑えることはできなかった。藤花にとっての不幸は、それを客に見られ、散々に嗤われてしまうことだ。
 ただ、彼女は、嘲笑を気にする余裕などないのかもしれない。なんといってもダリーの突き込みが強烈すぎる。彼女は両脚を肩幅以上に開き、足指で床を掴むようにして、かろうじて姿勢を保っている状態だった。前方からのカメラには、大腿部外側の筋肉の盛り上がりが、後方からのカメラには、脹脛の強張りが、しっかりと映し出されている。

 一方で沙綾香とトラバンのペアは静かだ。トラバンは沙綾香の脇腹を掴み、ごく浅く腰を出し入れしている。ピストンというより、腸の奥の奥を『練る』ような動き。それを受ける沙綾香は、やはり静かに、しかし確実に昂らされていた。
 一番解りやすいのは、やはり脚だ。藤花が短足に見えるほどのすらりと長い脚は、ちょうど肩幅ぐらいに開いたまま、やや内股気味でアナルセックスに耐えている。だが、トラバンの指が脇腹に食い込み、ぐりぐりと『練る』ように腰を押し込めば、そのたび足の裏が浮く。2、3秒も爪先立ちの状態を保ち、トラバンが腰を引いたタイミングで、ぶるぶると痙攣しながらまた床につく。その繰り返しだ。
「ぃきっ……いぃいひっ、ひ、ひ……ぐっ……ぉ、っく!!」
 爪先立ちになっている間、沙綾香の食いしばった歯の間からは、なんとも切ない声が漏れた。その状態では鼻でしか呼吸ができないが、そのせいでやがて鼻水が滴りはじめ、客からしっかりと笑いものにされる。
 だが沙綾香も、嘲笑を気にする余裕はなさそうだ。彼女はまず間違いなく、結腸で達している。結腸逝きは静かだが、深い。脚の動きや呼吸を見てもそれは判るし、あの沙綾香がたびたびトラバンの首に手を回し、「しがみつきたい」という想いを露わにするのは、余程のことだ。

「おら、気合入れろ奴隷共! マンコのローター落とすんじゃねーぞ」
 客の野次が飛ぶ。その視線に晒される2人は、どちらも余裕がない。だが、沙綾香の方が若干不利だ。理由は単純。藤花の割れ目は未開の花だが、沙綾香の方は調教されすぎている。異物を挟み込む力の強さで、差がつくのは当然だ。
 何度目かのつま先立ちが終わり、足裏が床についた瞬間。弛緩した沙綾香の割れ目から、ローターが頭を覗かせる。
「あっ!!」
 沙綾香はすぐに気づき、下腹に力を込めた。だがその力みのせいで、腰がぶるっと震え上がる。そしてそんな反応を、トラバンが見逃すはずもない。
「なんだ、締めつけやがって。おねだりか!?」
 そう叫びつつ、深々と腰を突き込む。それまで10回以上繰り返された抜き差しのリズムと、ワンテンポ外れた挿入。しかも、8の字筋を緊張させた状態だ。
「………………はッ!!!!」
 ここで沙綾香の口から漏れたのは、声じゃなかった。息を呑む音。それは状況次第で、絶叫よりも見る人間を不安にする。
 急所に針を打てば、人はあっさりと自由を奪われるらしい。この時の沙綾香も、そんな風だった。見えない糸に引かれるように、左足が持ち上がる。これまでは左右同時につま先立ちになっていたが、今度は左だけだ。
 右足が床を踏みしめる中、土踏まずを完全に晒した左足がガクガクと震える。
「……ぁ、……ぁ、…………あ」
 沙綾香は、3回掠れた声を漏らし、ふうっと全身を弛緩させた。
 全てがスローモーションに見える世界で、抜け落ちたローターが床に弾かれる動きだけが、やけに早く見えた。
「あーあ、やりやがった」
 主犯であるトラバンが鼻で笑いながら、沙綾香の腰を離す。支えのなくなった沙綾香は、成すすべなく床に崩れ落ちた。横ざまに倒れてもまだ、その左足は痙攣していた。
 客から、どっと笑いが起きる。黒人共やロドニーも、手を叩いて喜ぶ。
「……沙綾香……」
 ただ一人、藤花だけが笑わず、眉を垂れ下げた瞳で親友を見下ろしていた。

                 ※

 審査会は続く。ルールは変わらず、膣の異物を落とした方の負けだ。今度はピンポン玉5個を膣に入れての勝負。ただし、前の戦いで負けた沙綾香には、罰ゲームという名の嫌がらせが与えられた。
 フックで鼻を吊り上げられたまま、アナルを犯される──それが、沙綾香という極上の美少女に与えられた罰だ。
「ふふふ、良い顔だ!」
「よく似合ってんぜ、マゾ豚!」
 透明な壁越しに、客が罵声を浴びせる。その眼の前では、沙綾香が壁に手をつき、レジャナルドにアナルを犯されていた。しかも、ただの後背位じゃない。彼女はがに股の姿勢を強要されてもいる。
「へへへ、よく熟れてやがる。食べ頃ってやつだ。未熟な果実って感じの固さも悪かぁなかったが、こっちのがエロいぜ!」
 レジャナルドが上機嫌に語りながら、横向きに怒張を叩き込む。深く入るたびに割れ目がひくつき、透明な雫を垂らす。
「マン汁の量すげーな。あんなデカチン尻に突っ込まれて、よくもまぁ濡れるもんだぜ。信じらんねぇ」
「理解する必要もないだろ、マゾ奴隷の心情なんて」
「だな。ああいう奴ってのは、異常なんだ。どんだけ顔とスタイルがよくっても、絶対彼女にはしたくねーわ」
 客はカクテルグラスを片手に、安全圏から野次を飛ばす。
「く、ううっ……!」
 容赦のない悪態に、沙綾香は唇を噛み締めた。彼女は、凛としていたいことだろう。だが、そうはできない。
「おら、腰落とせ!」
 アナルファックの辛さか、格好の惨めさか、沙綾香の腰はたびたび浮くが、そのたびにレジャナルドが腰を押し下げる。
「ぁっ、ぁっ……んぁっ、あっ! くはっく、ぁはっ…………!」
 沙綾香は、壁に手をついて犯されながら、ただ喘ぎ続けるしかない。がに股の脚がつま先立ちで震え、肛門はぶじゅぶじゅと水音を立てて剛直を受け入れる。
「あっ、あ!」
 ある瞬間、沙綾香の叫びが大きさを増した。同時に彼女は上体を起こし、壁の高い位置にしがみつく。凍り付いたような顔を見れば、何らかの『まずさ』を察知しての回避行動だと判る。それを知ってか、知らずか。
「伏せ、だ。バカ犬」
 レジャナルドは沙綾香の肩を掴み、ぐうっと押し下げる。水面から必死に顔を出した人間を、無理矢理引き戻すような行為。引き戻された人間は、当然、“溺れる”しかない。
「ひぎゅううぃいっ!!」
 がに股に戻った直後、沙綾香の肛門からぶりいっと破裂音がした。直後、床に雫が滴り落ちる。
「おおっ、何か出たぞ!?」
「ドナンの残りでは? さっきもブシュブシュと飛沫いていたようだが」
「それにしちゃ透明すぎねぇか? 俺は腸液だと思うがな。さっきの顔といい、またケツアクメしたんだろ」
「ふふ、あの量の腸液か。だとすれば、すっかり肛門が第二の性器になってしまっているな!」
 客が目敏く雫を見つけ、笑い合う。その目の前で、沙綾香の腕から力が抜けた。頬と乳房が、透明な壁に密着して潰れる。
「はっ、良すぎてヘバったか。前より根性なくなっちまったなあ」
 レジャナルドはほくそ笑みながら、沙綾香の腰を両手で掴み、それまで以上に丁寧に腰を使う。肉のぶつかる音が小さくなり、代わりにぐちゅか、ぬじゅう、という、やけに湿り気のある音が聴こえてくる。トラバンと同じように、結腸付近を『練って』いるのか。
「くッ、は……ぁ!! はぁっ、ああッ……やめ…そこ、嵌めこま、な……っで……く、うううくッ………!!」
 沙綾香は大きく口を開き、眉を垂れ下げてレジャナルドを見上げる。だが、超長期刑のレイプ魔が、そんな懇願で動きを止めるはずもない。むしろ、より丁寧に、ぐじゅぐじゅと腸の奥を掻き回しにかかる。
「あッ! あッ!! んやあぁああっ、んふぅううう゛、うう゛……かはッ、おおぉほ…………っ!!」
 沙綾香は、悲鳴を上げ、歯を食いしばって耐えようとし、また悲鳴を上げた。顔は熱に浮かされたようになり、睫毛の長い眼が閉じる。
「すーげぇ。ケツのディープスロートだぜ、こりゃ」
 レジャナルドの言葉が、やけによく聴こえた。
 そして、苦難はそこで終わりじゃない。離れた場所で藤花を犯していたアンドレが、沙綾香の脱力を見て笑みを浮かべた。寡黙でありながら、同時に陰湿な男だ。奴は、わざわざ沙綾香の真正面に藤花を連れ出し、壁に手をつかせる。
「はぁ、はぁ……」
 力なく喘ぐばかりだった沙綾香は、薄目を開けて状況を確認し、息を呑む。親友と呼べる相手に、だらしなく喘ぐ様を至近距離で見られているんだ。動揺しないわけがない。
「……ッ!」
 沙綾香は壁から身を引き剥がし、藤花を正面から見つめる。
「……しゃ、しゃあか…………」
 藤花は、沙綾香の名前を呼んだ。だが、その表情は壮絶だ。舌を突き出し、涎を垂らし。三白眼のような瞳は、果たして沙綾香の顔に焦点を結んでいるだろうか。黒人相手のアナルセックスに、酔っている。そうとしか見えない。
「と、藤花、藤花っ! しっかりしてよ!!」
 変わり果てた親友を前に、沙綾香は泣き叫ぶような声を上げた。だが、彼女もまた他人に構っている余裕はない。背後では、レイプ魔が腰を掴み直し、怒張で貫き通すルートを見定めている。
 パン、パン、パン、パン、と小気味良い音が響いた。張りのある肉がぶつかる音だ。そのやや内側からは、妙にはっきりと水音も立っている。
「んほっ、お゛、ふ……っ!!」
 力強いピストンは、明瞭な快感の声を引きずり出した。口を尖らせた、『お』行の呻き。客が待っていたとばかりに拍手する。歓声に気を良くしながら、レジャナルドはさらに腰を遣った。バチン、バチン、バチン、と腰がぶつかる。
「お゛おっ!!」
 沙綾香は、海老のように背を反らせて絶頂した。上を向く黒目、尖った口。深い絶頂なのは疑うべくもない。
「はははっ、イったぞ! よりにもよって、友人の前で絶頂とは!」
「よりにもよってっつーか、ダチにイクとこ見られて興奮したんじゃねーの? ド変態だし」
 客はここぞとばかりに沙綾香の反応を笑い飛ばす。不愉快な流れだ。だが、ここで沙綾香に起こっていた変化は、俺の想像以上に深刻だったらしい。
「もうやめて……お尻の穴、ヘンになるっ!!」
 沙綾香は後ろを振り返り、レジャナルドの手を握って叫ぶ。だが、日本語では通じるはずもなく、仮に英語で話せていたとしても、聞き入れられるはずがない。レジャナルドはただ笑みを浮かべ、ピストンを続行する。
「やだ、やだ、またくるっ……! うんちする時の、おっきい波……これ、もう嫌なのっ!! もうこれでイキたくない、バカになっちゃうっ!!!」
 沙綾香が顔を引き攣らせて叫んでも、状況は何ら変わらない。力強いピストンで、怒張が叩き込まれていく。駄々洩れの蛇口の水が、コップを満たす。
「だめ、だめだめ、きちゃうっ!! いぎいぃいっいっイグッ、いいぐウウーーーッ!!!」
 沙綾香は、歯を食いしばりながら叫んだ。その直後、内股になった足の合間から飛沫が上がり、ピンポン玉が飛び出していく。
「あーあ、まーた負けた!」
「ふはははっ! へっぴり腰で、情けなく絶頂してますよ!」
 客の気楽な声は、涙を伝わせる沙綾香の姿と、あまりにも不釣り合いだった。

                 ※

 3戦目は趣向が変わり、肛門に玉蒟蒻を詰め込んでのアナルセックスとなった。アジア人より数周り大きい黒人ペニスに加え、10個の玉蒟蒻。その圧迫感は想像に余りある。2人の反応が激しくなっても、納得しかない。

「はっ、ん、んんっ……!! あ゛っ、あ゛ん、はーっ……あ゛! すごい、すごい、すごいいっっ!! こんな、快感が、あ、あったとは……!!」
「くああああっ!! くう、んぐううっ!! お腹が、詰まって……く、苦しいっ……!!」
 藤花と沙綾香は、膝裏を抱え上げられ、背面立位で犯されながら悲鳴を上げる。その表情は対照的だ。笑みを堪えきれないという様子の藤花に対し、沙綾香の顔は苦痛に歪んでいる。
 ただし、2人に共通することもあった。瑞々しい肉体が、強い快感を訴えている点だ。
「そーら、どうだ! 『フロリダの暴れ馬』の異名を取る、ドミニク様のファックは!」
「腹ン中がパンパンに詰まってよお、気持ちいいだろ!」
 ドミニクとジャマールが、幼児に小便をさせるポーズのまま、剛直を肛門へと叩き込む。何度もアナル絶頂に追い込まれている沙綾香達は、その刺激に耐え切れない。全身をガクガクと震わせ、足で空を蹴るばかりだ。
「感じまくってるな、どっちも。乳首が摘まれたみたいにピンピンだ」
「マン汁もダダ漏れだしな。青くせぇガキの身体で、ここまでアナルアクメキメれるとはよ。ここの調教師ってすげーわ」
 客は興奮しながらも、2人の変わりように圧倒されているようだ。
「あああ、ドミニク、ドミニクっ……!!」
 藤花が甘い声を出しながら、背後を振り返ってキスをねだる。
「ああっ、いく、後ろでイクううっ!!!」
 沙綾香は左右に首を振りながら、激しく足をばたつかせる。
 どっちも異常だ。元々のあの子達のイメージと、あまりにも遠すぎる。
「よーし。そろそろ、出させてやれ!」
 ロドニーが手を叩いて命じると、ドミニクとジャマールは笑みを浮かべ、足の抱え方を変えた。膝裏から、脹脛へ。相手の脚がVの字を作るように。腹圧を強めて、玉蒟蒻を強引に排泄させようというんだろう。
「うあああっ! あああ゛だめっ、でちゃっ……あ゛、あ゛ーーーっ!!」
 沙綾香も、藤花も悲鳴を上げる。その直後、肛門から灰色の粒が弾け飛んだ。一粒が出てしまえば、それをきっかけとしたように、また一つ、また一つとペニスの脇から飛び出していく。
「ふぐううう゛っっ!!!」
 排泄の瞬間、沙綾香と藤花の表情は完全に一致した。瞳を上向け、唇をへし曲げる。究極的な快便の表情。
「うっはははははっ、すんげー締め付けだ!!」
「かあああっ、たまんねえぜっ!!」
 ドミニクとジャマールは、肛門の締まりを喜び、それぞれのタイミングで射精に入る。
「やあああっ、入ってくる、入ってくるうっ!!!」
 玉蒟蒻の排泄に逆らう腸内射精。それを味わって、藤花達は高らかに叫ぶ。悲鳴にも悦びの声にも聴こえるが、白濁と共に玉蒟蒻を弾き飛ばした瞬間、2人の足指が見せた動きは、いかにも気持ちよさそうなものだ。
 十秒にもおよぶ射精。その末に白濁液をこぼしながら怒張が引き抜かれれば、そこには弛緩した空気だけがあった。
「フーッ、フーッ、フーッ、フーッ…………」
「はーっ、はーっ、はーっ、はーっ…………」
 射精の余韻に浸る黒人2人。絶頂の余韻に浸る少女2人。それぞれが下半身を痙攣させながら、幸せそうにしている。
「…………すげえ…………」
 客から漏れた、嘲笑でも罵声でもない一言が、やけに俺の心を抉った。

                 ※

 『審査会』という名の勝負は続いている。だが実際のところ、場の誰もが、そんな事情などどうでもよくなっていることだろう。沙綾香と藤花が、アナルセックスで示す反応。それこそが、客の一番の関心事だ。

 5戦目は、ベッドの上で始まった。
「はぁ、はぁ……今度の相手は、お前か。お前の名前は、何というんだ」
 右側のベッドに組み敷かれた藤花が、潤んだ瞳で問いかける。
「マーキスだ」
「そうか……なあマーキス。俺を、気持ちよくしてくれ。昂っているんだ。今、思いっきり腸を突いてくれれば、すごく良い気分になれそうなんだ……」
 藤花はそう囁きかけ、マーキスの顔を抱き寄せる。
「……オーライ」
 マーキスは嬉しそうな笑みを浮かべ、藤花の唇を奪う。
「へへへ、お熱いこったな。俺らもやるか?」
 口づけを交わす藤花達を見て、左のベッドでダーナルが笑う。その正面に横たわる沙綾香は、返事もしない。甘える藤花とは対照的に、目尻を吊り上げてダーナルを見つめている。
「やれやれ、懐きの悪いイヌだぜ」
 ダーナルは首を振りながら、沙綾香の足を大きく開かせる。5戦目ともなれば、緩みきっていた括約筋も締まりを取り戻している。ついさっきまでジャマールに犯されていたため、完全に閉じてはいないが、指3本が入ろうかという程度の隙間だ。
「いい具合に穴のサイズが戻ってんな。これなら、俺の“ポークビッツ”でも、楽しませてやれそうだぜ」
 ダーナルは逸物を握りしめながら囁く。10人の中で2番目に小さい事への自虐だろう。すでに事を終えた8人の黒人共は、それを聞いてゲラゲラと笑う。それに比べて、客は随分と控えめな笑い方だ。
 それはそうだろう。10人中最も小ぶりなマーキスのペニスでさえ、長さ20センチ、直径5センチは下らない。ダーナルの物となれば、それよりさらに一回り上だ。黒人特有の、節くれだった木の根のような剛直……それを粗末と笑い飛ばせる日本人など、どれだけいることか。
 ダーナルは逸物に唾液を塗り込め、怒張の先を沙綾香の肛門へと宛がう。そして、ゆっくりと腰を進めた。
「ん……っ!!」
 沙綾香が眉を顰める。小さく声も漏れた。
「なるほど。アナルファック用の、エロい肛門になってやがる。天使にキスされてる気分だぜ」
 亀頭が菊輪を押し開いた時点で、ダーナルは笑みを浮かべた。そして奴は、ベッドを軋ませながら腰を引く。
「……?」
 沙綾香は、怪訝な顔をした。血管も浮き立つほど怒張を勃起させた、性欲滾る野獣。それがあの連中のイメージだ。実際、他の奴らは、獣のように沙綾香達の肛門を貪った。右のベッドでは今まさに、マーキスが藤花と濃厚なキスを交わしながら、圧し潰すような体位でアナルを犯し抜いている。
 だが、ダーナルはそうしない。一度完全に亀頭を抜いた後、再び口を開いた肛門に嵌め込み、また抜く。そのごく浅い挿入だけを、ゆっくりと繰り返す。
「……最後の奴は、随分と紳士的だな」
「おいおいおい……マジかよ。さっきまで、あんだけハードに結腸アクメさせてたのによ。あれじゃせっかくの熱が冷めちまうぜ」
 客の反応は悪い。ある客は戸惑いを口にし、ある人間は不満を露わにする。だが、そんな客の後ろに控えるロドニーだけは、ダーナルの責めに興味深そうな視線を向けていた。

 ベッドの軋み方が、左右でまったく違う。藤花のいる右側は、ギシギシギシギシと壊れそうに軋み続けている。一方で沙綾香のいる左側は、ほとんど軋む音が聴こえない。明白な動と静だ。
 客は見応えのある方を好むため、次第に藤花の方へ意識を向けはじめる。5分もすれば、沙綾香を見ている客は2人だけになった。
 だから、気付く人間は少なかったろう。
「あっ、あ、あっ……」
 肛門の入口を拡げられるだけの沙綾香が、声を出しはじめた事実に。
 声だけじゃない。大股開きで横たわる全身が、ピクピクと反応している。モニターに大きく映る桜色に肌には、今も汗が流れていた。それは、沙綾香が『冷めて』などいない証拠だ。
「どうだ、想像以上に感じちまうだろ? 浣腸で緩んで、真っ赤になるまで使い回されたアヌスを、こうやってじっくりと愛してやる……そうすりゃ、パン屋のジェニーも、従妹のサラも、シーツの替えがいるぐらい蜜を吐いたもんだ」
 ダーナルは昔を懐かしむように語りながら、腰を動かし続ける。今度は亀頭のやや下、カリ首までが通り抜けるまで挿入し、一気に引き抜く。モニター画面には、引き抜かれる瞬間、沙綾香の肛門が火山のように盛り上がる様子が映っていた。
「すげぇな。抜く時には盛り上がって……エッロ!」
「あれは挿入する方も気持ちいいでしょうなあ。肛門で搾り取るように扱かれるわけですから」
 モニターを見て、客がざわつく。ほとんど藤花にしか向いていなかった興味が、沙綾香に向きはじめる。非常にまずい展開だ。ダーナルの責めが一段階進んだ、このタイミングでとは。
「くっ……は、はぁ……っ。はっ、ああっ、あ!」
 カリ首までを嵌め込まれ、引き抜かれる。嵌め込まれ、引き抜かれる。その責めを受けながら、沙綾香は声を殺しきれずにいた。
「あれは……まさか、感じているのか?」
「いや、俺もそうかなと思ったけど……ありえるか? あんな浅い挿入で」
「さっきまでと比べると、刺激が弱すぎると思うが、あれは……」
 客も、すぐに沙綾香の反応に気付く。沙綾香はそれを耳にしたのか、すぐに口を閉じた。だがダーナルはそれを見て、挿入をやや深める。そして4割ほど挿入したところで、一気に引き抜いた。
「くひぃいっ!?」
 沙綾香の目が開き、声が漏れる。注意を向けなくとも耳に入る音量。客の視線が、次々と左のベッドへ向く。
「もっと深く挿れてほしいか?」
 ダーナルは余裕の笑みを浮かべながら、沙綾香に問いかける。
「……い、挿れられること自体、嫌だってば……」
 沙綾香は憂鬱そうにダーナルを見上げ、なるべく平静を装おうとする。だが、ダーナルが同じ責めを繰り返せば、澄まし顔ではいられない。
「ひっ、ああっ、は……はっ! んひっ、ぐ…………!!!」
 大股を開いた足が震え、腰が浮く。顎が持ち上がり、唾液の糸を引きながら口が開く。
「いや、やはり感じているぞ、あれは……!」
 さっきは懐疑的だった客さえ、沙綾香の昂ぶりを確信していく。
 そんな空気を感じ取ったのか、それとも下準備が整ったのか。ダーナルは、ここから本腰を入れて責めはじめた。沙綾香の腿を抱え込み、ベッドを軋ませて、大きく腰を進める。今度はいきなり、竿の7割ほどが入り込んだ。
「んひぃいっ!!!」
 沙綾香が仰け反り、シーツを掴む。
「ぃ、いっ!! ふぃいっ、んぐっ、んぐううっ!!!」
 歯が強く噛み合わされ、仰け反りのせいで乳房が左右に零れる。今のこの反応で『感じていない』と判断する人間はいないだろう。
「どうだ。浅い部分でじっくり焦らされてから、深ぇトコまで一気に満たされた気分は。クソと浣腸を同時に味わってる感じだろ? 入口の快感が目覚めてなきゃ、そのエクスタシーはねぇんだぜ。ついでに言やぁ、コックがデカすぎてもダメだ。苦しくって快感どころじゃねぇからな。お前にこの快感を教え込めるのは、このタイミングの、この俺だけだ」
 ダーナルは、さっきの自虐とは打って変わり、誇らしげに胸を張る。黒人英語のその語りは、調教師仲間とロドニーから苦笑と拍手を引き出した。その反応を見て、客達もダーナルが何かを成し遂げた事実に気付いたようだ。

 半端者から一転、英雄のような扱いを受けるダーナルは、さらに勢いづいて沙綾香を責めたてる。ギシッ、ギシッ、とベッドが軋み、節くれだった木の根のような剛直が、ふっくらとした赤い輪の中を前後する。
「んぐううっ、くああっ……!! やだ、やだやだぁっ!! 入ってくる、奥まで入ってくるぅぅっ!!」
 沙綾香は頭上のシーツを掴んだまま、幼子のように首を振った。
「何を今さら……と言いてぇとこだが、そんな反応にもなるわなぁ。さっきまでハードに犯られてたっつっても、アヌスの感覚はドナンでボヤけてたんだ。ハンバーガーを口に頬張りながらコーラを流し込んだようなもんよ。それじゃ、コーラの味は判らねぇ。その点今は、俺がしっかりマウスウォッシュしてやったからな。コーラってのがどんだけ美味ェもんか、しみじみ理解できんだろ。別の言い方すりゃあよ、テメェはアナルのセカンドバージンを、この俺に捧げてるわけだ。嬉しいだろ? なあッ!?」
 ダーナルは、野獣の本性を露わにし、沙綾香の太腿を外から抱え込んだ。そしてその太腿を引き付けつつ、深々と腰を突き入れる。
「んぐううっ!!?」
 肉のぶつかる音がした瞬間、沙綾香は呻きを上げた。膝立ちになったダーナルが、黒人のバネを活かして滑らかに腰を前後させれば、沙綾香の反応もそれに引っ張られる。
「んぐっ! んぐっ! んぐっ! んぐっ!!」
 沙綾香の上げる声は単調だ。だが、セックスにおける単調さは、時として最適解にもなり得る。コップを快感という水で満たす時、蛇口を揺らす必要などない。ただただ単調に、水を注ぎ続けるのが一番早い。
「んぐっ!」
 7度目に同じ呻きを発した直後、沙綾香は背中を浮かせた。
「…………い、い…くっ…………!!」
 はっきりとマイクに拾われたその声に、客が息を呑み、顔を見合わせる。
「……今あいつ、イク、つった……?」
「おお、聞こえたな。イッた……んだな」
 はっきりと耳にしたはずの言葉を、改めて確認し合う客達。それは今の絶頂が、これまでとは別物と捉えられた証だ。
「日本のお仲間が注目してるぜ。お前のエクスタシーによ」
 脱力した沙綾香に、ダーナルが囁きかける。沙綾香はそれを耳にすると、白目を剥きかけていた目を瞬かせ、歯を食いしばってダーナルに向き合った。
「健気なやつだな。犯し甲斐があるぜ」
 ダーナルは嬉しそうに笑いながら、ぐいっと太腿を引きつけ、沙綾香の内腿にくっきりとした溝を刻ませる。
「んんぐっ、ぐひぃっ!! ア゛、ああっ……ひ、ひっ……!」
 ピストンが再開した後、沙綾香が目を見開いていられたのは、ほんの数秒だった。そのうち目は細まり、閉じ合わされ、顔全体で我慢できないという表情を作る。手も足も、何かにしがみつくので精一杯という風だ。
 それを見て、ダーナルがまた体位を変えた。太腿から手を離し、膝裏を一気に抱え上げる。そうしてマングリ返しの恰好を作り上げてから、圧し掛かるように挿入していく。
「んあああ゛あ゛あ゛っ! だ、だめ、お尻が、拡がっちゃう!!」
 沙綾香の反応は大きい。足全体がぶるぶると震え、切ない声が上がる。
「はははははっ! こうやると、腸の壁がキュウキュウ吸いついてきて最高だぜ!」
 ダーナルはほくそ笑み、沙綾香の膝裏を押さえつけながら腰を振る。
「くはっ、あ、あがっ!! し、子宮っ……子宮が、ああ……っ!」
 沙綾香は余裕のない様子で、子宮という言葉を繰り返していた。ほぼ真上から挿入されると、横向きに挿入されるより、子宮を強く刺激するんだろう。
 ベッドが軋む。沙綾香の反応が、さらに大きくなっていく。掴まれた両脚が暴れ、両手は強くシーツを握りしめる。
「んぐっ、う゛っ、ぐひいいっ!! んぐうう、はぐぃんゆううっ!!!」
 白い歯が噛み合わされ、全身が震えた、次の瞬間。割れ目から、勢いよく飛沫が上がる。潮噴きだ。体勢が体勢だけに、飛沫は容赦なく沙綾香の顔に浴びせかかる。だが、沙綾香はそれをよけようともしない。後頭部をベッドにめり込ませ、顎を浮かせたまま、ガクガクと痙攣している。
「あいつ、どんどんイキ方酷くなってんな……」
 客の一人が、ぽつりと呟いた。悪意ある野次ではなく、客観的な分析なだけに性質が悪い。確かに、沙綾香の絶頂は回数を経るごとに深くなっている気がする。今も彼女は、シーツを掴み、胸をせり出したような格好のまま、全身をピクピクと震わせて余韻に浸っている。
「おいおい、ヘバんのは早いぜ。まだ始まったばっかだろうが」
 ダーナルはそう言いながら前傾を深め、沙綾香の唇を奪いにかかる。
「んや、あっ!!」
 沙綾香は顎をうねらせるようにして口づけを避けるが、そこに注意を向けたぶん、足の震えが余計に酷くなった。
「んあっ、あああが、はあ…っぉ! ほぉっ、ほおっ……これだめ、だめ、っんひいいっ!! おねがい、だめ、もうダメ……っ!!」
 沙綾香は必死だ。圧し掛かるダーナルと視線を合わせ、必死の形相で訴えかける。だがダーナルは、それを見ても笑みを深めるだけだ。
 ギシッ、ギシッ、とベッドが軋む。
「あかはっ……!? あがっあ、あ゛……ハッ、ハッ、んむれぁあっっ!!」
 沙綾香は、ダーナルの鎖骨を掴んだまま、あえなく身を震わせる。そして最後の最後には潮を噴き散らし、脱力した隙に唇を奪われる。
 おーっ、という声が、客から起きた。笑っている人間もいるが、驚いている声の方が多いようだ。それは、沙綾香への調教が着実に進んでいる証のようで、気味が悪い。
「ふひゃははははっ!! 唾が美味えなぁ、屈服させた女だとよお!」
 ダーナルは望むままに沙綾香の唇を貪り、腸内を蹂躙し続けた。そして、たっぷり40回以上もピストンを繰り返した果てに、腰を震わせながら精液を注ぎ込む。その量と濃さは凄まじく、沙綾香の背中の筋に沿って、くっきりと白い雫が滴り落ちるほどだった。

                 ※

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……っ!!」
 沙綾香の呼吸はまだ荒い。彼女はベッドの上で横向きに倒れたまま、シーツにしがみつくようにして震えていた。重ね合わされた脚の間では、白い精液が割れ目を覆い尽くし、前と後ろのどっちを使われたのか判別できないほどだ。
「あああマーキス、マーキスっ!! もっとだ、もっと奥まで突いてくれっ!! 頭が真っ白になって、ビリビリする感覚をもっとくれっ!!」
 右側のベッドでは、藤花がマーキスと正面から抱き合いながら、自ら刺激を欲していた。
「参ったなこりゃ。タマの中身、根こそぎ搾り取るつもりかよ? おーいお前ら、そろそろ加勢してくれや。もう一巡したこったし、いいだろ? このままだと乾涸びちまうぜ!」
 マーキスは顎の汗を拭いながら苦笑し、仲間とロドニーに視線を向ける。
「完全に一巡したらと思ってたが、まあいいぜ。早ェモン勝ち、どっちを犯しても良し。好きにしろ。ただ、前は使うんじゃねーぞ」
 ロドニーが許可を出すと、黒人共の顔に笑みが拡がった。
「っしゃあ、待ってたぜ!」」
「どっちを味わったもんかな。サムライガールはあの下半身の筋肉だ、ケツの締まりも良さそうだが……サヤカの方も、昨日抱いてねぇからな。昨夜一晩、あのガキのヨガり顔が頭に浮かんで悶々としててよ、今日は目いっぱい犯し抜くって決めてんだ。だが、タイロンの野郎にでも先越されちゃ、せっかくのサムライガールの穴がガバガバになっちまうし……くうーっ、悩むぜ!」
「ヘッヘ、解るぜ兄弟。スパイシーとスウィート、どっちも美味そうだ!」
 連中は唇を舐め回し、臨戦態勢の逸物を扱きながら沙綾香と藤花を見比べる。最初に動き出したのはダリーとドミニクで、どちらも沙綾香のベッドを選択した。
「きゃ、やめっ……! 今はダメっ!!」
 絶頂の余韻から抜け出せていない沙綾香は、這って逃げようとする。だがダリーは素早くその足首を捉え、自分の方へと引き寄せた。
「そう身構えんなよ。なにも泡姫をやれってんじゃねぇ。ケツの穴だけ引き締めて、付属品みてぇにじっとしてりゃ済むハナシだ」
 ダリーは沙綾香の腰を掴むと、肛門から漏れるザーメンを亀頭に塗りつけ、狙い定めて挿し貫く。
「は、んお……っ!!!」
 沙綾香は、凄まじい表情をした。顎が浮き、足の十本指がシーツを掻く。タイロンに次いで二番目に太い怒張だ、刺激も生半可じゃないんだろう。
「おおっ、すっかり締まりが戻ってやがんな。絶妙の吸いつきとトロトロ加減がたまらんぜ!」
 ダリーは嬉々として腰を掴み直し、本格的なピストンを開始する。這いつくばる沙綾香の、尻だけを高く掲げさせる格好だ。
「んんっ、ふーっ、ふーっ……あっぐ、う゛!!」
 沙綾香は、シーツに口を押し付けて声を殺す。ダーナル相手の時よりずいぶんと苦しげだ。だが、犯すダリーはそんな事を気にもしない。
「へへへ、腰が気持ちよさそうにうねってるじゃねぇか」
「ふッ、ふッ……ち、違、う……!」
「何が違うんだ。お前、ダーナルにアナルセックスの良さを教え込まれたんだろ? アイツの“ポークビッツ”でヨガるような女が、俺の極太で感じねぇはずねえだろうが!」
 沙綾香が否定しようと聞き入れず、あばらの辺りを腕で掬い上げ、四つん這いの体勢を取らせる。そこから始まるのは、奴が得意とする、横方向の突き込みだ。
「んおお゛っ!!」
 4段腹が叩きつけられた直後、沙綾香から濁った声が漏れた。涙は水平に飛び、舌は前に突き出る。
「おこほ゛っ、んお゛っ! おお゛っ、お、ほおお゛っ!!!」
 ピストンを受けて漏れる声は、すべてが濁った『お』行だ。壊れそうなベッドの軋みは、沙綾香から余裕が剥ぎ取られる音に思える。
「お゛おお゛っ、ほおお゛お゛っ!! んあ゛お゛っ、おお゛っお゛お゛ーっ!!!」
 肉を波打たせ、悲痛な声を上げる沙綾香。彼女は、汗でダリーの手が滑った一瞬の隙をついて、かろうじて拘束から抜け出した。だが、希望が見えたのもほんの一瞬だ。
「くくくっ。待ってたぜぇ、子猫ちゃんよお!」
 這って逃げる沙綾香を、今度はドミニクが捕まえる。奴はダリーの失敗を踏まえてか、しっかりと沙綾香の下腹部を抱え込んで挿入を果たした。
「んああッ!!」
 怒張が入り込んだ瞬間、沙綾香の上げた切ない声は、凌辱者の心をさぞ満たしたことだろう。ドミニクは笑みを浮かべ、沙綾香の腰を引きつけはじめる。ギシッ、ギシッ、とベッドが軋む。
「んッ……んくっ、ぐ……んんんっ! んんっ、くうんんんっ!」
 ダーナルの肛門開発は、想像以上に沙綾香を毒したらしい。彼女はドミニクの突き込みに、快感を隠せない。手がシーツを掴み、顎が寝台に沈み込む。
「おら、おら! ケツが吸いついてくるぜ、気持ちいいんだろ!?」
 ドミニクが叫んだ、ちょうどその直後、沙綾香の腰がぶるっと震えあがった。
「んむううぅうんんん゛っ!!!」
 口と喉を閉じたまま、快楽を叫ぶような声。それも異様だったが、同時に足の間から噴き出した潮の量も、見過ごせるレベルじゃない。
「うっわ、すっげぇ噴いたな……」
「もうほとんど小便だな。マンコでイカせたって、あそこまで噴くのってそうそうねぇぞ」
「女とは、肛門でああも感じられるものなのか……」
 客は、唖然とした様子で沙綾香を観ていた。あれだけ事あるごとに野次を飛ばしていた客が、茶化さない。茶化せるほど身近な存在だった沙綾香が、刻一刻と変わっていく……その事実に、笑いを引っ込めた感じだ。
 胸がざわつく。いっそ馬鹿騒ぎでもしてくれていた方が、まだ救いがある。

 藤花のいる右のベッドは、まさに馬鹿騒ぎだ。
「あっ、はぁっ、はぁっ……あ、あ、んっ……!!」
 藤花は、胡坐を掻いたレジャナルドに抱えられる形で肛門を犯されていた。太い怒張が出入りするたび、艶めかしい吐息が漏れる。指が荒々しく乳房を揉みしだけば、ドクドクと母乳があふれ出る。気持ちが良さそうだ。そしてそれは、犯しているレジャナルドも同じだった。
「へへへ、括約筋の強ぇガキだな。食い千切られそうだぜ。入口はギュウギュウ締まって、中もねっとり纏わりついてきて……。お前のお友達もだがよ、日本人のアナルってのは名器揃いか?」
 レジャナルドが上機嫌に語りながら、リズミカルに肛門を突き上げる。
「んッ、あ…あ、あッ……! いい、いい……もう、い、イキそうだ……!!」
「ほぉ。なら、スパートかけるか!」
 藤花の言葉で、レジャナルドはさらにペースを上げた。ベッドが騒々しく軋み、左右についた藤花の脚が強張る。
「あ、あああ……あああっ来たぁっ!! んいっ、ひっぎ……あォぉお゛っ!!!」
 藤花は、歯を食いしばりながら笑みを浮かべた。そして次の瞬間、大きく背を仰け反らせる。
「ぬうううっ!!!」
 後ろのレジャナルドが顔を顰めたのは、肛門の締まりが強くなりすぎたせいか。
「あ゛アッ、んあ゛っ……はあ、はあ……はあっ……」
「ククッ、気持ちよくイキやがって。俺もそろそろだ、しっかり受け止めてくれよ!」
 ぐったりとした藤花を支えつつ、レジャナルドが追い込みを掛けた。藤花の頭と乳房が揺れる。
「オラッ、いくぞおっ!!」
「っひ、あがっ! くああああ゛あッ!!!」
 レジャナルドと藤花が身を震わせ、同時に絶頂する。だが、その後の反応は全く違った。満足げに息を吐くレジャナルドに対し、藤花はなおも物欲しげだ。
「はっ、はっ、はっ、はっ……す、凄い……黒人のペニスが、こんなに気持ちいいとは! なあ、もっとだ、もっと突いてくれ! その硬くて熱い物で、腹の奥から子宮を刺激してくれ! もっと痺れたいんだ! 刺激が欲しいんだ!!」
 レジャナルドの首を抱え込み、口を吸いながらねだる藤花。
「オイオイオイ、マジかよ。マーキスだけじゃ飽き足らず、俺まで搾り尽くす気か? ったく、ハングリーな女だな。いいぜ、なら死ぬほど食わせてやるよ。泣いて後悔すんじゃねぇぞ!」
 レジャナルドは苦笑するが、奴としても吝かではないらしい。胡坐を崩し、両足でしっかりとベッドを踏みしめると、腰ごと叩きつけるようにして藤花を突き上げる。
「んがっ、おごぉぉっ!? んごっ、ほおおっ!!! ふ、深い! いい、良いっ! ほっ、ほおっ……もっと、もっとだ、もっと刺激してくれっ!!」
 藤花は満面の笑みを浮かべながら、自ら腰を上下させ、レジャナルドの剛直を深々と受け入れる。
「くーっすげえ、コックがヒリヒリすらぁ! ホントにジャパニーズかよお前? ギリシャ女みてぇな貪欲さだな!」
 レジャナルドは驚きつつも、負けじと腰を突き上げる。筋肉質な男女が争うように腰を叩きつける様は、スポーツの試合でも観ているようだ。だが、それがセックスであることは紛れもない事実。鍛え抜かれた男と女の肉体が、刻一刻と快感の反応を大きくしていく。
「そうだ、そこがいいっ!! そこ……ん、あ、あああイグッ、イグうッ!! ふううっ、はお、ほおおぉぉっ!! し、痺れるッ……頭から、つま先まで……っ!!!」
 藤花は生き生きとしていた。かつての剣道の稽古を想像させるほど、一心不乱にセックスに打ち込み、快感を追及している。アナルセックスが正式なスポーツと認められる世界なら、彼女はその道でも栄光を掴むことだろう。
 一度価値観が反転してしまえば、被虐の道に猛進してしまう……それがあの藤花という子のようだ。
「オメーらもやるじゃねぇか。あの剣姫が、すっかり立派なマゾ奴隷だ」
 ロドニーが感心した様子で、迷彩ズボン達を褒め称える。確かに今の藤花は、疑う余地なく倶楽部好みの『マゾ奴隷』だ。となれば当然、場の意識は、その競争相手に向く。

 沙綾香は今、ドミニクとトラバンの相手を同時にさせられていた。ドミニクは大きく開かせた脚の間に腰を打ちつけ、トラバンは顔に覆いかぶさったまま、腕立ての体勢でペニスを咥え込ませている。
「おお゛ゥエ゛ッ! オオえ゛え゛っ! お゛ううぇ゛え゛エ゛エ゛ッ!!!」
 沙綾香の口からは、濁りきった呻き声が漏れていた。巨根を喉奥まで突っ込まれた時特有のものだ。見慣れた俺はすぐにそう理解できるが、黒人相手のディープスロートを初めて見る客達は、しきりに沙綾香の喉元を覗き込んでいる。モニターを振り返り、より詳細な情報を求める客もいた。
「すっげぇ……喉を完全にマンコ扱いしてんぜ、あの黒人野郎」
 一人がようやく状況を呑み込み、信じがたいという様子で呟く。
「あの、喉がボコーって盛り上がってんの、チンコの形だよな。全部入ってんだな、あのデカチンが」
「ああ。アレ根元まで咥え込まされて、挙句尻まで犯されるとか、どんな気分なんだろうな」
「あたし、あそこまで太いのは経験ないけど、3Pやったことあるからなんとなく解るよ。怖くって苦しくって、心折れるよ、あんなの……」
 他の客も、時間差で目の前の現実を受け入れはじめる。
 連中が目を疑うのも、仕方ないといえば仕方ない。沙綾香の顔の半分はあろうかという巨根が、割れ目や肛門ならともかく、喉へ入り込むなんて。何度もそれを現実として目にしていなければ、俺だって『有り得ない』と切り捨てるだろう。

 今や客の中で、椅子に座って寛いでいる人間はいない。皆が皆、左右のベッドのどちらかに近づき、異人種間のアナルセックスに見入っている。ロドニーはそれを眺め、頃合いや良しとばかりに手を叩いた。肉厚な掌は響きのよい音を立て、20人の客を一斉に振り返らせる。
「さて、審査員のダンナ方。そろそろ決まったか? どっちが本当の『マゾ奴隷』と呼ぶに相応しいか」
 その言葉を聞き、客が表情を曇らせる。
「んー。どっちが、っつってもなあ……」
「ううむ……本当のマゾ、か……」
 茶化す時の饒舌ぶりとは打って変わって、歯切れが悪い。
「はっ、はぁっ……。もっとだ。もっと、この刺激をくれ……!」
 藤花から熱い囁きが漏れれば、客の視線は右のベッドに集まる。
「へへへ。トローンとした目ェしやがって。喉奥と尻を同時に犯されて、脳味噌がピンク色になっちまったか?」
 トラバンがえずき汁を滴らせながら怒張を引き抜けば、客は羞恥と陶酔がない交ぜになった沙綾香の表情に見入る。
 どちらがマゾ奴隷らしいか。シンプルに考えるなら藤花一択だ。そうならないのは、『審査会』が始まる前にロドニーが放った、この言葉のせいだろう。

 ──マゾ奴隷ってのは何も、従順ならいいってもんじゃねえ。口でいくら拒もうが、アソコが濡れてりゃあ、そいつは紛うことなきマゾ奴隷だ。肉体的に屈服してるわけだからな。違うかい?

 ロドニーにしてみれば、これは苦し紛れの詭弁だったに違いない。だがその詭弁は、客を納得させてしまった。だからこそ、客は迷う。
 従順なマゾ奴隷として完成されている藤花か。
 反骨心を保ちながらも、肉体が快楽に屈しつつある沙綾香か。
 連中にとっては、そのどちらもがマゾ奴隷として魅力的なんだろう。
「サクッとは決まらねぇか。いい勝負じゃねぇか」
 ロドニーはふてぶてしく葉巻をふかす。自分のせいで客が迷っているというのに、その状況を楽しんでいる様子だ。そして奴は、指を曲げて迷彩ズボンと剃り込み男を呼びつけ、小声で何か指示を出す。
「はっは。面白ェっすね、それ!」
 指示の内容は聞き取れないが、剃り込み男が愉快そうに笑っている時点で、碌な内容でないことだけは理解できた。

                 ※

 ロドニーは、黒人共に一旦プレイをやめさせ、沙綾香と藤花を壁際に並ばせる。
「今度は何させる気?」
 沙綾香が問うと、それに応えるように、迷彩ズボンと剃り込み男が背後につく。連中はバケツとモップを手にしていた。バケツには、とろみのある液体が入っているようだ。
「何だ、そのバケツの中身は……?」
 今度は、藤花が問いかける。
「お前らの大好きなドナンだよ。つっても、さっきの浣腸とは違うがな。塩化マグネシウムと強壮剤、アレな薬もちょいと混ぜ合わせて、ゼリー状にしたもんだ。こいつをケツに塗り込められると、最大級の便意と快楽が味わえるらしいぜ」
 迷彩ズボンの男がそう答え、少女2人の顔を引き攣らせる。一方、遠巻きに見守る客は、期待感のある顔になった。 
「おら、ケツの穴開け!」
 剃り込み男が藤花の尻を叩くと、藤花は素直に脚を開き、肛門に自らの手を添える。
「ほら、お前もだ。それとも何だ、お友達にだけ恥掻かせる気かよ」
 沙綾香はやや躊躇っていたが、結局は同じポーズを取らされる。
 肛門が横向きに割りひらかれた瞬間、真っ白な精液がボトボトと滴り落ちた。
「すげぇ濃さだ……」
「量もやべえよ。俺なんか、1回の発射がスプーン一杯分ぐらいだぞ。100発出しても、あんな量にならねぇわ」
 薬で増強された黒人共の精液に、客が唸る。オスとしての劣等感を感じたのか、その表情は曇りがちだ。
「うっは、どんどん垂れてくんな。気持ち悪りーだろ、掃除してやるよ」
 剃り込み男と迷彩ズボンは笑いながら、モップをバケツに浸す。モップと言っても、床を掃除するための、横長のヘッドから繊維が垂れ下がるタイプじゃない。縦長のヘッドを、放射状に繊維が覆っているタイプ……つまり、大型のハンディモップという風だ。それがバケツに浸されれば、たっぷりとゼリーが絡みつく。
「さて、いくぜ」
 調教師2人が、眼を見開いて振り返る少女2人の肛門へ、ゼリーの滴るモップをねじり込む。腸のかなり奥まで入り込んでいるようだ。
「……ん、くううああっ!! ず、随分と、深くまで塗るな……!」
「あ、あ……やだ、またジンジンして……っ!!」
 効果はすぐに表れた。藤花は半笑いを、沙綾香は苦悶の表情を浮かべ、腰を揺らす。
「どうだ、2回目のドナンは。1回目より蕩けちまうだろ? おまけに今は、出すモン出しきった後だからな。便意が少ねぇ分、ドナンの味が存分に味わえるぜ」
 剃り込み男がそう言い聞かせつつ、藤花の肛門からモップを引き抜く。そして精液まみれのモップをまたバケツに浸し、ゼリーを纏わせると、もう一度肛門へと押し込んでいく。迷彩ズボンの奴も当然、沙綾香に同じことをする。
「くはっ……! た、確かにこれは、純粋なドナンとは違うな……。熱くて、痺れるようだ……!!」
 藤花は壁に手をつきながら、ぶるっと震えて笑みを浮かべた。
「こ、こんなの、もう一度なんてダメっ! 2回も、堪えきれない……!!」
 沙綾香の方は、恐怖一色だ。汗の滲む顔を歪ませ、不安を顔に表している。

 結局、藤花と沙綾香は、4回に渡ってゼリーを腸内に塗り込められた。モップが引き抜かれれば、外側へ捲れた肛門が露わになる。
「何度見ても、凄いな……俺の腕突っ込んでも、まだまだ余裕がありそうだ」
「ああなっちゃ、もう排泄器官じゃねえ。ただのトンネルだ」
 ドナンの効果に客がざわつく中、ロドニーが沙綾香達に歩み寄った。
「確かに、こりゃトンネルみてぇなもんだな。これをペニスで埋めるとなりゃ、出来る奴は限られる。タイロンか……俺ぐらいのもんだ」
 ロドニーはそう言いながら、クロップド丈のテーパードパンツを脱ぎ去った。露わになるのは、あのローストターキーを思わせるペニスだ。根元のサイズはタイロンと大差ないが、真ん中がその太い根元よりもさらに膨らんでいる。
「きゃっ!?」
 客の女が悲鳴を上げた。黒人のペニスを一通り見届けてきた男連中も、口をあんぐりと開けている。
「むううう……! ビデオで目にしてはいたが、生で目にすると……」
「ご、拷問の道具だな、まるで……!」
 絶句する客と同じく、沙綾香と藤花も視線を剛直に縫い付けられている。
「懐かしいだろ、サムライガール。水責めん時にハメてやって以来だ。あの感覚……忘れられねぇんじゃねえか?」
 ロドニーは、黒光りする凶器を藤花の鼻先に近づけた。藤花がごくりと喉を鳴らす。過去の記憶が蘇ったんだろう。小便入りの水へ顔を漬けられる苦痛を二の次にしてでも、抜いてくれと哀願した、あの記憶が。
「あの時は心を折るのが目的だったが、今度は違うぜ。熟しきったそのアナルに釣り合った刺激をくれてやる」
 亀頭で鼻を突き上げながらロドニーがそう語れば、藤花の口の端が緩んだ。ただ、隣で顔面を蒼白にしている沙綾香に気付くと、急いで表情を戻す。
「わかった、相手をしよう。今度は俺がお前に、音を上げさせる番だ」
 キリリとした瞳でロドニーを見据え、啖呵を切る藤花。かつての雰囲気を感じさせるその姿に、沙綾香の表情がかすかに明るくなる。だが、ロドニーはその沙綾香に顔を向けた。
「おっと、気ィ緩めてんじゃねえぞ。お前も一緒に犯されるんだ……コイツでな」
 ロドニーはそう言って、剃り込み男の方に手を翳す。するとその手に、ある物が手渡された。双頭ディルドーのついた、黒いゴム製の下着……ペニスバンドだ。

「さあ、来い」
 20人の客と12人の調教師が見守る前で、椅子へ深く腰掛けたロドニーが藤花を呼ぶ。
「ああ」
 藤花は、それを受けてロドニーの前に立った。そして、ゆっくりとロドニーの上に腰を下ろしていく。下着は肛門部分に穴が開いているため、挿入を妨げない。ドナンの効果で緩みきった肛門が、拷問器具のようなペニスを迎え入れていく。
「ぐっ……!」
 3割ほど飲み込んだ時点で、藤花が小さく呻いた。他の黒人共を相手にした時のような表情の緩みはない。調教前に巻き戻ったかのような、精悍な顔つきだ。
「へへへ、ドナンはすげぇよな。俺のがズルズル入っていくんだからよ」
 ロドニーがそう呟く間にも、さらに腰が沈み、怒張の中ほど……瘤のように膨らんだ部分が肛門に入り込む。その瞬間、藤花の腰が止まった。
「ッ!? うあ、うわあああああああっっ!!!」
 藤花は急に叫ぶと、腰を浮かせた。半ばまで入り込んでいた怒張が抜け、ロドニーの腰を跨ぐ形で開かれた筋肉質な脚がガクガクと痙攣する。
「おいおい、どうした?」
「なにビビってんだ、アナルビッチ!」
 客と調教師から野次が飛ぶが、藤花は虚空を見つめたまま震えるばかり。
「と、藤花、どうしたの!?」
 沙綾香が藤花に駆け寄ると、凍り付いたような視線が横を向く。
「わ、わから、ない……。頭の、天辺まで……痺れが、突き抜けた……」
 藤花の吐く言葉は途切れがちだった。便意や快感で余裕のない時の反応だ。
「だろうな。俺のペニスの刺激は、他の連中の比じゃねえ。アナル性感が目覚めた状態で受け入れりゃあ、脳天まで痺れて当然だ」
 ロドニーは浮いた藤花の腰を捕まえ、強引に押し下げる。
「んああああ゛っ!! や、やめろっ、沙綾香の前だぞ……ん、くっ、ふぐううう゛っ!!」
 藤花の背中が仰け反り、両脚で腰を浮かそうとしても、ロドニーは押し下げる力を緩めない。
「おーお、いい具合だ。ドナンで蕩けた腸壁が纏わりついてきて、最高にエロいぜ!」
 嬉しそうに語りながら、あらゆる限界反応を無視して、8割ほどを強引に押し込んでしまう。根元まで挿入しないのは、すでに腸の奥にまで届いてしまっているせいだろう。
「あ、かはっ…あ、オあっ………ア゛ッ」
 藤花の脚は、力んだまま宙に浮いていた。代わりに両手がロドニーの腰を押し下げ、少しでも腰を離そうとしているが、強靭な脚の力で無理なことが腕で成し得るはずもない。
「ここまで入るとは大したもんだ。どうだ、極太を丸ごと飲み込まされた気分は。ああ、言わなくてもいいぜ。括約筋の動きで本音は解るからな」
 ロドニーは藤花の太腿を押さえつつ、激しく腰を突き上げる。挿入箇所が肛門なんだから、当然直腸を突いているはずだ。だというのに、ロドニーの規格外の巨根は、藤花の下腹をぼこりと膨らませた。肛門壁と膣を丸ごと貫通して。
「くほっ、ほおおお゛お゛っ!!」
 あまりの刺激に耐え切れず、高く腰を跳ね上げる藤花。その反応を確認して、ロドニーが沙綾香に視線を向けた。
「今度はお前だ、藤花の上に乗って、だらしなく開いたケツにオモチャを嵌め込め」
 有無を言わせぬ口調でそう命じられたところで、抵抗なく従えるはずもない。沙綾香は胸を掻き抱くような仕草で立ち尽くす。
「早くしろ。従わねぇってんなら、コイツをどうするかわかんねぇぞ?」
 ロドニーは語気を強め、藤花の下腹に手を宛がった。そして、まずいという顔をする藤花の腰を、また突き上げる。今度は、さっきより性質が悪い。直腸からの突き上げでぼこりと膨らんだ下腹を、腹の上から巨大な手で握りしめる。子宮を上下から挟みつぶすような行為だ。
「……ぉっ、ぉ……っ……!?」
 可哀想に。藤花は、声さえ出せなかった。反射的に両の太腿を跳ね上げたまま、顎を浮かせ、唇を尖らせ、視線を上空に泳がせる。沙綾香が『十番勝負』でドミニクに犯された時の、目の前に火花が散るという反応にそっくりだ。だが、似ているだけで違う。あの時の沙綾香は一瞬意識を飛ばすだけだったが、今の藤花は、蕩けるような笑みを顔中に広げていく。まともじゃない──そう直感する表情だ。
「やめて! わかった、言われた通りやるから!!」
 沙綾香も危険を察したんだろう。慌てた様子で叫ぶと、ロドニーの前で背を向ける。
「さや、か……」
 掠れたような声で呻く藤花を、一瞬振り返ってから、沙綾香は藤花の上に乗る。
「はぁ、はぁ、はぁ……っぐ、んん……んあぁっ、あ…………」
 腰を沈めるにつれ、沙綾香の息が詰まっていく。藤花に装着されたペニスバンドは、藤花の割れ目の部分はさほどでもないが、外に出ている部分はかなり太く、表面には凹凸も多い。それがドナンゼリーを塗り込められた肛門を抉るとなれば、その刺激はかなりのものだろう。
「ハハハハッ! モデルみてぇな娘っ子っつっても、2人分だとなかなか重いな。だが、重量感のある女は嫌いじゃねぇぜ!」
 ロドニーは笑いながら藤花の肩を掴み、下へと引き込んだ。挿入の速度が増し、ペニスバンドが一気に根元まで入り込む。
「っぎぐううううっ!!?」
 沙綾香の顔が歪む。口の右半分は閉じ合わせ、左半分は歯を食いしばるような非対称。瞬間的に激痛か、それに近い刺激を受けた証拠だ。そして、反応したのは沙綾香だけじゃない。
「ああああ゛あ゛っ!! 入る、入るううう゛う゛っ!!!!」
 沙綾香の下にいる藤花もまた、壮絶な顔を晒し、床についた両脚をぶるぶると震わせる。沙綾香が力んだことで上から圧が掛かり、ロドニーの物が深く腸内に入り込んだらしい。
「あっ!? ご、ごめん、藤花!」
「フーッ、フーッ……き、気にするな、沙綾香……。俺は、大丈夫だ……」
 すぐに振り返って謝る沙綾香と、そんな沙綾香を安心させようとする藤花。その涙ぐましい友情を、ロドニーが鼻で笑う。
「ほぉ、大丈夫なのか。なら、遠慮はいらねえな!」
 奴はそう言うと、激しく腰を突き上げはじめた。
「こっ、ほ!? おほっ、んおおお゛っ!!!」
 藤花が唇を尖らせ、『お』行の呻きを漏らしながら仰け反る。そうすると今度は、彼女の腰の疑似ペニスが沙綾香の腸内を抉ることになる。
「くはっ、あ゛っ!! んん、んくうお゛……っ!!」
 沙綾香は切なそうに身を捩り、腰を震わせた。
「ハッハッハ、これは面白い。まるでドミノ倒しだな!」
「ふふ、確かに。2人纏めてあの黒人に貫かれている感じで、興奮するよ!」
 ロドニーが腰を動かす度に恥辱の連鎖が起き、客はそれを見て満足そうに笑う。
「まだまだ、こっからだぜ!」
 ロドニーは客の方へ向けて叫ぶと、さらに腰の振りを激しくした。
「っがぁ、ん゛あ゛あああお゛っ!! ハッハッハッ……んひっい゛、お゛ごっ、ううぐう゛あ゛ッ!!」
 藤花は口を尖らせて悲鳴を上げる。完全に快楽で蕩けた顔だ。肛門からぶじゅっぶじゅっと水音がするたび、かろうじて床に接している脚の筋肉が浮き彫りになった。
 しかも彼女は、ただ受動的に犯されているだけじゃない。意識的にか無意識にか、自ら腰を沈め、足の裏をべったりと床につける。そして一秒後、ぶるっと全身を震わせながら息を吐き出すんだ。
「あの藤花って子、自分から腰押し付けてるよな、アレ」
「ああ。あんな、岩の塊のような物をよくもまあ……」
「完璧にアナルアクメに溺れてるんだろうな。いかにもマゾ奴隷って感じだ」
 客は藤花を見て囁き合う。どうやら『藤花こそがマゾ奴隷』という確信を固めつつあるらしい。とはいえ、まだ決めてはいないようだ。その証拠に奴らは、沙綾香にも注意を向けていた。
「ひい゛っ、はううう゛っ!! ぃいああぐっ、んはううう゛っ!!!」
 沙綾香にも、やはり余裕というものはない。無機質な黒い疑似ペニスで肛門を抉られながら、歯を食いしばって声を絞り出す。藤花に比べて、こっちは羞恥の割合が多いようだ。
 実際、苦しい状況だろう。ロドニーの突き上げの余波だけでなく、藤花自分も不定期に腰を跳ねさせるため、肛門を犯されるのにリズムも何もない。結果、不意打ちに近い形で腸奥を貫かれ、狂ったように腰を上下させることになる。
「うははははっ、凄い腰つきだ! ストリップでもあそこまで露骨に下品な動きはしないぞ!」
「なまじスタイルが良いせいで、余計惨めたらしく見えるな。うまく生きられれば、一生周りから持て囃されて、こんな恥を晒さずにいられただろうに」
「どうかな。結局はこの美貌のせいで、倶楽部に目をつけられたんだろう? これがこの娘の運命だよ。天は二物を与えずと言うだろう。女の誰もが羨む器量を与えられながら、女の誰からも軽蔑されるマゾ奴隷に貶められる。それでこそ、均衡が取れるというものだ」
「ほう、面白い考え方だ。そうだな……確かにこの娘は、ギフトに恵まれすぎている。帳尻合わせが必要かもしれんな」
 客は沙綾香を眺めつつ、勝手なことを口走る。『貶められる沙綾香が観たい』──その想いが滲み出ている。藤花をマゾ奴隷と認めた時と同じか、それ以上に強く。

                 ※

 肉のぶつかる音が響き、汗が飛び散る。
 3人の動きは変わらない。ロドニーが藤花を力強く犯し、藤花はそれを能動的に受け入れ、沙綾香が叫びながら腰を上下させる。その動きは刻一刻と激しさを増し、ある時ついにロドニーが笑い声を上げた。
「おいおい沙綾香、そんなに腰振んなよ。お前がそうやってケツ叩きつけてっと、藤花のマンコのディルドーが奥に入り込むだろ。せっかく処女膜には届かない大きさのを選んでやったのによ、今の調子だと玩具でバージン失っちまうぞ?」
 ロドニーのその言葉で、沙綾香が表情を変えた。悪趣味なことだ。藤花の純潔を脅迫材料に、沙綾香の行動を縛るとは。
「……!」
 沙綾香は顔を傾け、横目に藤花の顔を伺う。逆に藤花は、自分が観られていることに気づき、だらしなく開いた口を閉じ合わせる。
「さ、沙綾香、気にするな。勝手に腰が動いてしまうんだろう? 無理に抑えることはない、無理をすると気が触れるぞ。お前に処女を捧げるというなら、それもいい……」
 そう囁く藤花の口には、薄笑みすら浮かんでいた。幼い弟達から慕われる彼女らしい、思いやりに溢れる言葉だ。だが、ただでさえ藤花に負い目を感じている彼女が、そんな言葉に甘えることはない。
「んぐぐ、ぐ……っ!!」
 沙綾香は手足に力を篭め、藤花に密着したまま動きを止めた。ロドニーは遠慮なく突き込み、それを受けて藤花も腰を揺らすが、沙綾香はじっと踏ん張る。藤花の方へ体重をかけないように。だがそれは、ペニスバンドの刺激を余さず受け止めることを意味する。沙綾香の肛門はドナンゼリーで火照りきった状態だ。そんな場所で凶悪な責め具を迎え入れれば、平静ではいられない。
「ッあは、あおッ、あああおッ、うあ……っく、はあっ……!!」
 乳房を跳ね上げながら、沙綾香の上半身が弓なりに仰け反る。内腿が三角に窪み、足指が反る。開いた口から唾液が零れ、濡れ光る割れ目からも液が滴り落ちる。
「おら、おら! どうだ!!」
 ロドニーが沙綾香の反応をモニターで確かめつつ、入念に腰を遣う。今度は突き上げるのではなく、藤花の太腿を押さえ込んだまま、グリグリと横方向に腰を捻るやり方だ。ロドニーほど太さのある巨根でそうされれば、腸をこじ開けられる感覚は洒落にならないことだろう。
「っこほおお゛お゛っ!? やえろっ、やめてくれええ゛っ!! 拡がる、拡がる拡がる゛う゛ーーーーッッ!!!!!!」
 案の定、藤花は全身を震わせて絶叫する。そしてロドニーが太腿から手を離すや否や、解放されたバネのように腰を跳ね上げた。その結果、沙綾香の肛門に浅く嵌まっていた巨大ディルドーが、根元まで沙綾香に突き刺さる。
「うくお゛ほっ……!?」
 急所を突かれた。沙綾香の反応は、そういう風だった。見開かれた眼の中で、瞳孔が開く。両手は力なく空を掴む。そして、反射で180度開いた足の合間から、ぶしゅっと潮が噴き出した。透明な液は、何にも阻害されず、まっすぐ客の足元にまで浴びせかかる。

「…………エッロ…………。」

 客の一人が、感情を篭めて呟いた。手を握りしめ、前傾姿勢で沙綾香に見入る他の客も、無言で賛同しているようなものだ。
 そして、沙綾香の極限の反応に魅せられた人間は他にもいる。
「あああもう我慢できねぇ! おいロドニーさんよ、俺らも混ぜてくれや。クチなら使ってもいいだろ?」
「頼むぜ。まだ全員1回しか射精してねぇのに、こんなモン見せつけられちゃ生殺しだ。コックが破裂しちまうぜ!」
 やや離れて様子を伺っていた黒人共が、沙綾香達を取り囲んで騒ぎ立てる。
「へッ、そういやそうか。わかった、いいぜ。喉でも気持ちよくしてやれ!」
 ロドニーからはあっさりと許可が下り、黒人共が喜び勇む。何本もの剛直が準備を整えるが、黒人共の腰の高さや、折り重なった体勢の関係から、藤花の口に咥えさせるのは難しい。そこで必然的に、沙綾香がターゲットになった。
「しゃぶれ!」
 いつになく荒々しい口調でジャマールががなり立て、沙綾香の口に横から怒張を捻じ込んだ。
「んぐっ……!!」
 日本人平均の倍は太さのあるペニスだ。口に押し込まれた瞬間、沙綾香の顔が歪む。だが、性欲の滾った獣は配慮などしない。沙綾香の頭を抱え込み、思うがままに口内を蹂躙する。
「んぶっ、ぼうっ!! んぶうっ!!」
 紅潮した頬は、何度も亀頭の形に盛り上がった。
「ん゛お゛っ、ん゛ぉ゛う゛っ! おぉ゛う゛え゛っ!」
 たまに挿入方向がずれ、喉元が盛り上がると、短い嘔吐のようなえずきが漏れる。
「ああああダメだ、もたねえっ!!!」
 ジャマールは唸りながら腰を震わせた。沙綾香が呻きを漏らし、2秒後、口に収まりきらない精液がどろりと垂れる。本来ならこの射精をもって一区切りだが、今は相手が1人じゃない。
「よし、今度はオレだ!!」
 2人目にはレジャナルドが名乗りを上げる。奴は沙綾香の額と顎を掴み、顔を完全に自分の方に向けさせてから、深々と怒張を咥え込ませた。
「っふぅ゛ううう゛う゛おお゛オ゛オエ゛エ゛エ゛エ゛ッッ!!!」
 ただでさえ息の切れた状態で、ジャマール以上の太さを咥えさせられては堪らない。一瞬にして沙綾香の頬が膨らみ、見開かれた目から涙が伝う。それを見ても、レジャナルドはやはり同情などしない。脚を後方に踏ん張り、腰をやや押し出し気味にしながら、掴んだ沙綾香の口を『使う』。
「ん゛ごぉ゛うっ、オエ゛ッ!! ぉほも゛ろ゛ぉうええ゛ッ!!!」
 腰がぶつかるたび潰れる鼻の横を、次々に新しい涙が零れ落ちる。口からは普段以上に唾液や胃液が滲み、さっきの精液と混ざり合って、牛乳のような白さの泡を剛直の周りにびっちりと生み出していく。
 そして当然ながら、苦しいのは口だけじゃない。今の沙綾香にとっては、その地獄の苦しみですら副次的なものだろう。刺激のメインは言うまでもなく、腸を深々と抉る異物だ。
 彼女の脚はもう、180度の開脚から戻らない。大股を開いた藤花の脚が邪魔なのもあるだろうが、自らその角度を保っているように見えた。
 見事なスタイルだ。細く引き締まった腰から、思い切ったようにむちりと肉感的な太腿が広がっていく。だが、内腿の窪み具合は、その麗しいイメージとは正反対だ。彼女の中を巡る快感がどれほどのものか、考えずにはいられない。
「あはっ、ああははアおお゛っ!! さ、ささ、沙綾っ香、大丈夫、か……っ!!」
 藤花は沙綾香を案じて声を掛けるが、彼女にも余裕はない。ロドニーは藤花の責め方を見抜いたらしく、横に縦にと緩急をつけて腰を蠢かしていた。そのせいで、藤花の足先は床から離れている。肛門を貫くロドニーの剛直だけを支点にして、腰が完全に浮いてしまっている状態だ。
 その串刺し刑にも等しい状況に、藤花は余裕を残せない。黒目はほとんど上瞼に隠れ、口は涎を垂らしながら、笑みを完成させている。意味のある言葉を発せているのが、奇跡としか思えないレベルだ。
「そうーらサムライガール、またいくぜ。大好きな大好きな、この角度だ!」
 ロドニーがそう言いながら、奥まで入り込んだ怒張をグッグッと突き上げる。
「っあおオオオ゛ーーっ!!!!」
 藤花の微笑む口が縦に歪み、奥歯までを覗かせた。同時に腰も跳ね上がり、沙綾香の細身を宙へ浮かせる。
「うも゛ごっ、けェエ゛…………っ!!!」
 沙綾香は、えずき損ねたような呻きを漏らし、下半身を震えさせる。そして直後、肛門からぶちっと破裂音が響いた。続いて尻肉がヒクヒクと痙攣し、透明な液が細い奔流となって、藤花の腿を流れ落ちていく。
「おいおい、友達の上でクソすんじゃねぇよ。いくらアナル性感がバカになってるからってよぉ!」
 モニターを見上げたロドニーが大いに嘲笑い、その嘲笑をもって、凍り付いていたフロアの空気が動き出す。

「……すんげぇな」
 客から最初に漏れた一言は、やはりシンプルなものだった。それは、言語化できないほどの感情を抱えた証でもある。
「ああ。どちらも凄まじい……これは、決められんぞ」
「さっきは藤花の方に一票と思ってたが、あの沙綾香の反応はヤバイって」
「俺、逆だ。さっき沙綾香にしようと思ってたけど、藤花にド肝抜かれたわ」
 客がざわつく。最後の判断材料として催されたこの見世物が、かえって客の迷いを深くしたようだ。
 俺が客の立場だったとしても、今の一連の流れを観た上で、どちらかを切り捨てるのは難しい。少し思い返すだけでも、網膜に焼き付くレベルの衝撃的な場面が、まざまざと浮かぶ。沙綾香のものも、藤花のものも。
「おい、やっぱり決まらねぇじゃねぇか」
 ソファで一人煙草をふかしていた手越が、ロドニーに苛立ちの声を上げる。何か案でもあるのかと好きにさせたが、結局は遊びたかっただけか──そういう非難を孕んだ声色だ。
「カッハッハッ! 2発目のドナンかましてハメりゃ、どっちかヘバると思ってたが、結局見せ場を作っちまったぜ。女の友情ってのは紙切れみてぇなもんだと思ってたが、案外強ェな。ま、こうなっちゃしょうがねぇ。どっちをマゾ奴隷らしいと思ったか、インスピレーションで答えてくれ」
 ロドニーは可笑しそうに笑い、並み居る客の顔を見回した。腐っても元軍人。いかに態度が軽くとも、そうしてギョロリと一瞥するだけで、客に不満を呑み込ませる眼力がある。
「ま、強いて言うとな。マゾ奴隷と認められた女は、この後ここにいる黒人共に、朝まで可愛がられることになる。アンタらはそれを好きに見学したらいい」
 ロドニーはそこで言葉を切り、客を焦らす。
「ええっと、つまり……?」
 1人の客が待ちきれずに問うと、ロドニーは唇を吊り上げた。
「つまり、こういう考え方もアリってことだ。『延々とヤられまくる姿を見たいのは、どっちか』。完熟した実が、果汁を噴き出しながら貪られるのを観たいか? 熟れかけの実が、甘ーく熟していくのが観たいか? それで決めりゃあいい」
 ロドニーは諭すようにそう語り、藤花と沙綾香の脚を叩く。
「んっ……!!」
「くあっ、はああっ……!!」
 沙綾香と藤花は、その刺激だけで震えた。苦痛と快楽が混ざり合った、やや青い呻き。快楽が前面に出た、完熟の喘ぎ。それを耳にして、客が生唾を呑む。

 そこからは、喧々諤々の議論が繰り広げられた。沙綾香に魅力を感じる人間、藤花に魅力を感じる人間。それぞれにかなりの数がいた。だが最終的には、すでに完成されているものより、変わっていく姿が見たいという声が大勢を占める。
「俺達が選ぶのは……サヤカだ」
 20人の代表として、初老の男がロドニーにそう告げた。それを以って、3度目の『審査会』も沙綾香の勝ちで幕を閉じる。だがそれは、いつにも増して苦い勝利だった。
「アハハハハッ!! だってよ沙綾香、良かったなあ!? 尻穴専用の奴隷として、2週間以上も調教されまくったこの剣姫様より、お前の方がもっとマゾで変態らしいって認められたんだぜ? ったく、天才的だよなあ、“お嬢ちゃん”よう!」
 ロドニーはゲラゲラと笑いながら、沙綾香の耳元に悪意を噴き込む。明らかに最後の一言は、明らかに財閥令嬢としての出自を茶化すものだ。
「…………ッ!」
 沙綾香の顔が歪む。
「…………くそっ! 俺が、身代わりになれていれば…………!!」
 藤花もまた、悔しげに唇を噛み締めていた。

 恥辱と後悔に彩られた幕引き。しかも、それで終わりじゃない。
「さあ、楽しもうぜぇ。“いつもみたいに”よぉ!」
 黒人共が沙綾香の腕を掴み、体液を滴らせながら立ち上がらせる。
 夜が更けた今から始まるのは、血だらけの身に塩を塗り込む、悪夢の宴だ。


                 ※


「くはっ、ああああ゛ッぐ!! はぁあっ、ひ、いひぎいいい゛っっ!!」
 ベッドにうつ伏せになった沙綾香が、悲痛な声を響かせる。そんな声が出るのに、何の不思議もない。
 『審査会』よりも盛り上げろ。ロドニーがそう命じたことで、黒人共は使えそうな道具や薬液をすべてかき集め、遠慮のないハードプレイを繰り広げた。
 モップで都合3度目になるドナン液を塗り込んでから、肛門に玉蒟蒻を10個詰め込み、ペニスサックを装着した状態で犯す。それが今のプレイだ。
 表面に凹凸や突起があり、長さも太さも増強するペニスサックは、日本人のペニスをも凶器に変える。それを黒人共がつければ、それはもう完全な拷問具だ。
「うははっ、すんげぇうねりだな。ちょっと落ち着けよ」
 背後から犯すマーキスが、沙綾香の反応を嘲笑う。奴は肉厚のペニスサックを選んだため、肛門から覗く逸物は、モーリスのそれをも上回る直径を備えている。
「ち、違うの! 私じゃない! もう自分じゃどうしようもないの、お願い、突かないでっ!!」
 沙綾香は喘ぐような口調でマーキスに乞う。だが、マーキスに哀願は通じない。
「馬っ鹿だなオメー。それ聞いて、俺がやめると思うか?」
 マーキスは沙綾香の肩を押さえ込み、顔面をシーツに押し付けながら腰を遣う。巨木のような太腿が沙綾香の上で踊り、バンバンと凄まじい音を立てる。
「うぎゅうぃいい゛い゛っ!!!! いいいイグッ、イグっいぐッッ!! し、子宮とお尻の奥で、どっちもイってるのぉ゛っ!!」
 沙綾香は無理矢理顔を持ち上げ、絶叫する。膝から下は狂ったように暴れ、何度も足の甲をシーツに叩きつけて、寝台そのものを弾ませる。それでも、マーキスは責めを緩めない。むしろ嗜虐の笑みを顔中に広げ、沙綾香の上腕を握りこみながら腰を落とし込む。今の沙綾香がもっとも嫌がるだろう、全体重を掛けて肛門を杭打ちするやり方だ。
「ふわぁわあああああ゛あ゛っっ!!!!」
 レイプ魔が確信をもって打ち込んだ毒は、細い身体へすぐに回った。普段ならまず出ない、幾重にも重なったような絶叫が絞り出される。
「あだま゛、真っ白になっちゃう゛っ!! お願いやめて、お願いお願いお願いいい゛っ!!!」
 沙綾香は泣き声を漏らしながら、せめてもの抵抗か、踵でマーキスの尻を蹴りつける。
「おーいおい、痛ぇなあ!」
 マーキスはどこか嬉しそうな声色を出しながら、制裁とばかりに前傾姿勢を深めた。膝を深々とシーツに沈み込ませ、グリグリと腰を回転させて、沙綾香の下腹部をベッドに圧し埋める。
「ッーーーーー!!!!!」
 沙綾香から、声にならない声が漏れた。マーキスに掴まれた腕の先がびくんっと強張る。抵抗を続けていた足も力を失くし、シーツへと落ちた左足だけが、病的なつま先立ちで脹脛を盛り上げる。
「おおおおおおっ、締まる、締まる! すっげえええっ!!!!」
 マーキスが驚きの声を上げながら、太腿を筋張らせた。どうやら射精に入るようだ。オーウ、オーウとマーキスが喘ぐ中、ふっと沙綾香の全身が弛緩する。女子高生らしい、むちむちとした肉感を取り戻した足の間から、水音が漏れた。カメラの角度的に直接は確認できないが、次々に変色していくシーツを見れば、何が起きたかは明白だ。

「ははは、また潮を噴いたぞ」
「いや、流石に今度のはションベンしょ。量すげぇし」
「潮もおしっこも大差ないって。にしてもあの子、ホントよく噴くよね。お尻の奥刺激されると、尿道も刺激されるからかな。膣挟んでるだけで、近いといえば近いし」
 客はワイン片手に、黒人と沙綾香のセックスを堪能している。空いた手で自ら慰める人間もいれば、百合で溜まりきった性欲を処理している奴もいる。20人近い男から順番に犯されるとなれば、彼女もだいぶ参っているようだ。とはいえ、沙綾香に比べればマシだろう。
「ふーっ、良かったぜぇ最後の締まりは。スーパーウーマンのバキュームフェラかと思ったぜ」
 マーキスは満足げに息を吐きながら、肛門の異物を引きずり出す。緩んだ肛門からは、コロコロと玉蒟蒻が転げ出た。マーキスはそれを笑いながらペニスサックを外し、沙綾香の口を開かせる。
「ほら、エクササイズ後のタンパク質と水分補給だ。いつもみてぇにちゃんと飲み込めよ」
 ペニスサックからこぼれ出た精液は、沙綾香の舌を覆い尽くす。ヨーグルトのような濃さがある上、普段に輪を掛けて凄まじい量だ。それを飲み込まされるというだけで、並の女子高生ならトラウマものだ。だが今の沙綾香にとっては、ささやかな不幸でしかないだろう。彼女には、感傷に浸っていられる時間などない。

 次番を勝ち取ったアンドレが、のっそりとベッドに上がる。奴はうつ伏せのまま放心する沙綾香の傍に膝をつくと、転げ出た玉蒟蒻をもう一度肛門へと詰め直す。そして沙綾香を仰向けにひっくり返すと、その両脚を掴み上げた。屈曲位だ。
 アンドレは寡黙だが陰湿だ。奴が装着するペニスサックは、先端がテニスボール大のシリコン球で補強されていた。奴はそれを、いきなり奥の奥まで潜り込ませる。
「おっぐぅううぅ!!」
 沙綾香の反応は大きい。つま先までが震え上がり、さっきの出し残しらしき液体が割れ目から流れ出る。顎を浮かせた顔は、その表情をしっかりと客に観られてしまい、局所的な大笑いを巻き起こした。
「いーい顔をしますなぁ、この子は……!」
「ええ。やはり“こっち”を選んで正解でしたね。凛々しい娘が惨めな顔になるのも面白いですが、トップアイドル級の美少女がこんな顔を晒すとなれば、もう一種の奇跡ですよ」
「うううむ……いかん、疼いてきた。おい、その給仕の穴はまだ空かんのか!? 緩いなら手なり口なり使って、さっさと済ませたまえ!」
 客が沙綾香の表情に鼻息を荒くする中、アンドレも獣じみた息遣いで腰を上下させる。膝裏を押さえ込みつつ、ぐうっぐうっと一突きずつ入念に押し込む責めだ。
「ォォ゛っ……ォ゛ッ!!! ォっお、ほおォ゛っ……ォ゛、おおっ……!!」
 声の出しづらい体勢だけに、沙綾香の呻きが小さく、低い。だが、彼女が感じているという情報は無数にあった。痙攣する太腿もそう。外側に反り返る十本の足指もそうだ。
 中でも、斜め上からのカメラに捉えられた表情は印象的だった。アンドレの肩を通して虚空を見つめるその顔は、田舎娘が初めて恋を知った時のように純粋だった。たまたま、呆然とした顔がそう見えるんだと信じたい。意味があってほしくない。特に、快感に骨抜きにされた顔というのは──。
「凄いな、お前。一人でイキっぱなしだ」
 ぼそりと、呟きが聞こえる。アンドレのものらしい。寡黙な男に言葉を漏らさせるほど、沙綾香は奴の望み通りの状態にあるらしい。
 アンドレは笑みを浮かべながら、ゆっくりと腰を沈めては浮かす。ぎしっ、ぎしっ、とベッドが軋み、初恋の少女の顔が、感動で笑うような顔に変わる。
「っ!?」
 沙綾香はすぐに意識を取り戻し、アンドレの肩を押し返す抵抗を見せた。だが、アンドレは止まらない。淡々と、しかし力強く腰を遣い、刻一刻と脆くなっていく沙綾香に同量の無理を強い続ける。
 木板に圧を掛け続ければ、ある瞬間にいきなり砕けるように、沙綾香はある瞬間、許容量を超えた。
「…………だめ……だめ、だめ…………っ!!」
 囁くような声が前兆となり、沙綾香の肛門からぶりゅっと音が鳴る。根元の太さは補強されていないペニスサックの脇から、玉蒟蒻が4個顔を出し、ボトボトと濡れたシーツに零れていく。静かな決壊だったが、だからといってショックが小さいとは限らない。
 アンドレが思うさま腰を遣い、射精し終えて足を解放した後、沙綾香は仰向けのまま伸びていた。
「ぉ……っふ、ぉぉお……。っうふ、ぉ……ッ……ほーーーっ…………」
 手足を大の字に開き、腰をヒクつかせて気絶したように喘ぐその様は、彼女がどれだけ深く達したのかを生々しく物語る。そしてもちろん、その休息すら十分には行えない。すぐに次のドミニクが沙綾香を抱え上げ、大得意の背面立位を客に見せつける。


                 ※


 床に崩れ落ちた沙綾香の髪を、モーリスが掴んで引き起こす。
「…………おら、シャンとしろ。寝てる暇なんかねぇぞ?」
 奴はそう言って、ザーメンまみれの怒張を咥えさせる。半勃ちとはいえ十分な張りを持った、ゴム管のような逸物。それを口で清めさせられる沙綾香は、今にも気絶しそうな有り様だった。顔は青ざめて汗に塗れ、眼にも口にも力がない。それはそうだ。つい今しがたのモーリスで、連続37回目のアナルセックス。フロアの至る所に、彼女から汗と涙を奪ったプレイの痕跡が残っている。
 そして、夜はまだ終わらない。
 口移しで水分を補給させられた後、沙綾香は強引に立たされ、背後からタイロンに挿入される。
「はっ、はがっ……あ、あ゛っ……っ!!!」
 ペニスサックも異物挿入もない、ナチュラルなアナルへの挿入。だが今の沙綾香は、それだけで顔に恐怖を浮かべて腹部を見下ろす。
「ははははっ、解りやすい反応だ。子宮が疼いて堪らんのだろうなあ」
「いや。それどころか、挿入されただけで子宮イキしたんでしょう。ほら見てください、膝に来ていますよ」
 客は沙綾香の反応を見て、すぐに絶頂を指摘する。多分、それは当たっているだろう。そして、ギャラリーにすら即座に看破できる状態が、挿入しているタイロンに判らないはずもない。
「おうおう、締まる締まる。吸いつく感じが戻ってきたじゃねぇか」
 タイロンは嬉しそうに囁きながら、沙綾香の割れ目に指をくぐらせる。
「あ、やあっ!! やめてよ、前はっ……!!」
「何がやめてだ、ケツに入れられてる間じゅうヒクヒクさせっぱなしのくせによ。ようお前ら、お嬢ちゃんが口寂しいってよ。前にオモチャでも当ててやれ!」
 タイロンが沙綾香を羽交い絞めにしながらそう言うと、他の黒人共も笑みを浮かべた。ドミニクが近くのマッサージ器を拾い上げ、スイッチを入れて、身動きの叶わない沙綾香の下腹へと宛がう。
「あ゛っ、あ゛ーーっ!! や゛っ、だめっ……んっ、んぐうっ!! はぁ、はぁ゛……っ!!」
 沙綾香は焦りを隠せない。ドミニクの顔を睨みながら、脚を内股に閉じる。
「どうした、隠すなよ。皆に見てもらえ!」
 ドミニクは沙綾香の脚を手で押し開き、強引に開脚させながらマッサージ器を宛がい続ける。
「んぐっう! おっ、おぉ゛っ、ぉお゛っ、ぉおお゛っ…………あ゛、ああ゛ーっ、あ゛ーーっ……」
 沙綾香の喘ぎが変わった。はっきりとした音を発しながら、足を菱形に開いて腰を前後させる。
「おーっ、イッてるイッてる。めっちゃ腹筋ヒクヒクすんのな」
「すげーっ。こんな可愛い子が、ケツハメ電マであっさり子宮イキとか!」
「それもガニ股でな。すげー絵面だわ、ホント」
 客が面白がる間にも、ドミニクはマッサージ器をグリグリと押し付け、沙綾香を追い込んでいく。雑な責めではあるが、今日一日で数えきれないほど達している沙綾香には、力押しの刺激でも十分に効くようだ。
「アアア゛っもう無理、もう無理ぃっ!! 見ないで、見ないでよぉっ!!」
 快感より、羞恥心の限界が先に来たんだろう。沙綾香は涙ながらに叫びながら、必死に脚を閉じ合わせる。だが、タイロンがそれを許すはずもない。
「そら、暴れんなって!!」
 タイロンは肛門に挿入したまま、沙綾香の太腿に手を掛ける。だが沙綾香が必死に抵抗するのを見て取ると、一旦下腹を抱え込み、グリグリと腰を押し込んだ。
「ひっぐ!?」
 沙綾香が顎を浮かせ、膝を震えさせる。
「くっくっ、便利だなここは。『開けゴマ(オープン・セサミ)』ならぬ、『開け結腸(オープン・コロン)』ってとこか」
 タイロンは笑いながら、力の抜けた沙綾香の膝を簡単に割りひらいた。すかさずその隙間へ、ドミニクのマッサージ器が入り込む。
「やああああっ!! お願いやめてっ! もうイキたくないっ!! お尻と子宮でイくのも、笑われるのも、もお嫌なのおっ!!」
 沙綾香はほとんど半狂乱になり、膝を上げて激しく暴れる。だが肛門を拡げられて力も入らないまま、黒人2人に抗いきるなど無理な話だ。
「やあっ、また……ふ、深いい゛っ!! ァあいく、イックうぅんッ!!」
 愛液を散らしながら狂ったように腰を振った挙句、強引に脚を開かされた体勢で公開絶頂を晒すしかない。
「はっはっは、また無様なイキ方だなぁオイ! 名付けてガマガエルアクメってとこか?」
「面白ェけど、ちょっと怖くもなるわ。人間って、こうやって壊れてくんだなーって」
「そうだな。つい2、3時間前までは、強気に睨みつけていたというのに」
「やー、でもしょうがないんじゃない? 俺らがあの立場でも、頑張りきるの無理っしょ。あのガタイの黒人とか、背後取られて腰掴まれた時点で心折れるわ」
 客は沙綾香の変化を可笑しがり、あるいは冷ややかに見ながら、それぞれに時間を楽しむ。わずか数十センチほどしか離れていないのに、沙綾香とは別世界の気楽さだ。

 その後も沙綾香は、客の目の前に晒されたまま、立ちバックの姿勢で犯され続ける。黒人とは精を放っては次々に入れ替わるが、沙綾香だけは休めない。
 自分の親と変わらない歳をした、20人の客……その眼前で、延々と恥を晒し、延々と肛門を犯し抜かれる。それは、どんな気分になることだろう。

「ぉっ、ぉおっ……おッ! ほッ、ッ、ォ、ォおっ……!」

 ある時点から、沙綾香の喘ぎが明らかに変わった。はっ、はっ、という喘ぎに混じって、『お』行の喘ぎが漏れはじめる。それまでにも突発的に発されることはあったが、出続けるのは初めてだ。
「どうしたんだろ、あれ」
「今まではなんとか我慢してたけど、諦めたんじゃない?」
「アッハ、女捨てたってこと? 笑えるー」
 客は当然変化に気付いて茶化すが、沙綾香は声を殺さない。顎を浮かせ、背中を弓なりに反らせたまま、肛門からの刺激に打ち震える。

 どうやらこれは、なんとかアナルセックス地獄へ耐え抜くための、苦肉の策だったらしい。次に沙綾香に表れた変化で、それが明らかになった。
「いや、もうお尻いやっ!! へ、ヘンになっちゃう! これなら、アソコ犯されてた方がマシ!」
 両手を背後に引き絞られたまま犯されていた沙綾香が、我慢の限界とばかりに涙を零す。客と黒人共は、この発言を予想していたのか、待ちわびたという顔で身を起こす。
「アソコってなんだよ、オマンコの事か?」
「そ、そうっ! オマンコなら犯していいから、お尻はもうやめて!」
 ロドニーが問うと、沙綾香はそれに引きずられて下卑た表現を口にする。それを聞いた客はどっと噴き出し、沙綾香も失態に気付いて顔を歪めた。だがそれも一瞬だけで、すぐに肛門の快感に吞まれていく。
「なるほど、よーくわかったぜ。だが、日本語で言ってもそいつらにゃ通じねえよなあ」
 ロドニーの言葉で、沙綾香がハッとした表情になる。彼女は声を震わせながら、黒人共相手に恥辱の哀願を繰り返す羽目になった。
「くっははは! そうかそうか、プッシーが恋しいってか。そりゃ奇遇だな、俺のコックもそう言ってんぜ。たっぷり前を可愛がってやるよ」
 黒人共は嬉々として提案を呑み、沙綾香をベッドへと連れ上げる。
 珍しくスムーズに要求が通った理由は、決まっている。調教師側にとって、都合のいい展開だからだ。

 ベッドに上げられた沙綾香は、トラバンに抱え上げられ、アナルに挿入される。
「あっ!? なんで、お尻はやめてって……!」
「後ろではやらないなんて言ってねぇぜ。前を可愛がるって言っただけだ。こんな風にな!」
 戸惑う沙綾香の股に割り入ったダーナルが、逸物の先を割れ目に宛がう。そして、嫌という叫びを聞きながら突き入れた。
「ひぃああああっ!! こ、こんな、こんな…………!!」
「おいおい、なんてツラしてやがる。二穴が初めてって訳じゃねぇだろ。毎晩やってんじゃねぇか」
 ダーナルは沙綾香の反応を笑い飛ばすが、肛門開発後の二穴責めが、前と同じであるはずがない。
「ああ、あああっ!! ひいっ、だめっ……あっ、あっ、あ、あああっ……!!」
 前後の穴に挿入され、腰を遣われて間もなく、沙綾香は喘ぎはじめた。数日前とは違う。肛門が未開発だった頃は、膣で大きな快感を得ても、それを肛門の異物感が阻害していたはずだ。ところが今は、後ろだけで悶絶するレベルにまで開発が進んでいる。となれば二穴責めの快感は、2倍どころでは済まない。
 上下から黒人二人に挟み込まれ、沙綾香の足裏が浮き上がる。足指が握り込まれ、快感で細かに震えだす。
「へへへ、プルプル震えてやがる。まるでバージンみてぇだ」
 ダーナルがそう茶化すが、沙綾香に取り合う余裕はない。
「こ、こんなの覚えたら……癖に、なる……。もう普通のセックスできなくなるっ……!!」
 沙綾香は、確かにそう言った。普通のセックスができなくなる、と。
 普通のセックスとは、俺との行為のことか?
 俺との思い出では、物足りなくなりそうだ……そう感じているということか?
「しなくていい。俺らのペットになれ。お前はいい女だ、一生可愛がってやる」
 トラバンがそう答え、下から肛門を突き上げる。
「あぐっ!!」
「そーら。ヨダレ垂らした、プッシーにもご馳走してやるぜ。熱々のフランクフルトをよ!」
 ダーナルも浮いた沙綾香の腰を掴み、パンパンと音を立てて膣を犯す。
「あ゛ッ、おひっ……んぐっ、んぐっ!!」
 上からも下からも逃れるように横を向いた沙綾香の顔が、モニターに映る。前髪が乱れ、汗と鼻水、涎に塗れたその顔は、とても未成年のそれには見えない。ベテランの娼婦……そういう艶を備えている。
「いいぜ、いいぜえ! アナルの壁がうねって、吸いついてきやがる!!」
「プッシーも最高だぜ。ヌルヌルトロトロで、柔らかくほぐれてよぉ。名器が、もっと極上の穴になっちまったぜ!!」
 トラバンとダーナルが歓喜の声を上げながら、沙綾香の二穴を蹂躙する。沙綾香は大股を開いてベッドを踏みしめ、快感に身を震わせ……最後には、トラバンに乳首を掴まれながら絶頂する。
「ん゛あああぁあああっ!!!!」
 全身を震わせての絶叫。それは今までのどんな声より、通りがいいように聴こえ、マイク越しに俺の鼓膜を痺れさせた。
 前後の穴から怒張が引き抜かれれば、どろりと白い液が流れ出し、穴周りがひくつく。今までは痛々しく思えたそれが、今は違って見える。
「はっ、はぁっ……はぁっ……はあっ…………」
 頬を上気させ、潤んだ瞳を見せる沙綾香は果たして、あの体内射精を嫌がっているんだろうか?
 ──なにを、馬鹿な。嫌がっているはずだ。俺はそう信じる。

 そう、信じたい。


                 ※


 2人一組で、五組。計10人全員がベッドで沙綾香を悶絶させた後、場所が変わる。客が寛ぐソファの前で、直立したまま挟み込む形での二穴責め。
「ほっお……! ごっ、おごっ、ごおお゛……っお゛……!!」
 今や沙綾香の喘ぎは、『お』の音ばかりだ。我慢を諦めたのか、それとも声など気にしている余裕がすでにないのか。
 少なくとも、余裕があるようには見えない。彼女の全身が、とてつもなく深い快楽を訴えている。前にいるモーリスの肩を掴む手も、抱え上げられた脚も、丸まった背中も、浮きっぱなしの顎も。
 延々と抜き差しの音が繰り返される中、沙綾香の痙攣の間隔が短くなっていく。コップが満ち、溢れるイメージが脳裏に浮かぶ。
「おほっぉ、お、お゛っ……お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛っ!!!!」
 俺のイメージ通り、沙綾香は絶頂した。とはいえ、俺の予想など何も凄くない。
「はははっ、イッたイッた!!」
「この子の反応も、だいぶ解ってきましたな。意地が剥がれれば、存外に素直といいますか」
 俺に限らず、客も皆、沙綾香の絶頂のタイミングを読み切っている。
 抱え上げられた沙綾香の秘部から、びちゃっと音を立てて何かが落ちた。
「なんか出たぞオイ。腸液?」
「いや、腸液ってもっとサラサラしたやつだろ」
「じゃあ透明なクソか?」
「腸の本気汁なんじゃねーの」
「そんなんあるのか?」
「さあな、本人に訊けば?」
「いやいや。答え返ってくる感じじゃねーだろ、アレ」
 客としても、もはや食い入るように見てはいない。何度も見返した映画を観るように、リラックスした様子で眺めているだけだ。
 答えが返ってくる感じじゃない。その言葉通り、沙綾香の瞳にはすでに光がなかった。腕もぶらりと垂れ下がり、意識を失っているのが明らかだ。
「おいおい、ヘバんじゃねぇよ」
「俺らがまだ楽しんでる最中だろうが!」
 沙綾香の失神に気付き、モーリスとジャマールが前後から腰を入れる。
「ぉほっ!! お゛お゛お゛ぉ゛!!!」
 奥への挿入効果は覿面で、沙綾香はすぐに覚醒し、両脚を跳ね上げる。だがそれは、せっかく夢の世界に逃げられた彼女が、地獄へ舞い戻っただけのことだ。
「……ぉ、おねがい、ぁすませ……て…………。あたま、チカチカ、する…………お、おかひくなっちゃう…………」
 唾液を垂らしながら、か弱い声で哀願する沙綾香。だがもちろん、調教側に利のない願いなど聞き届けられない。
「そーら、そら!」
「どんどんイケ、どんどん狂っちまえー」
 モーリスとジャマールは疲れを感じさせない軽快さで腰を遣う。軽快だが、体格が体格だけに突き込み自体は重い。前と後ろから衝突を受け、沙綾香の下半身の肉が出鱈目に波打つ。
 あらゆる体液で汚れた足の裏が、黒人の脚に掴まろうとしては、うっすらと白い液を塗り付けながら滑り落ちていく。あの子が何らかの意思を見せ、それがあえなく剥がれ落ちる時……俺は、何とも言えない気持ちになる。

「ぉ…っほ、ぉおお゛……っ!! ほお、お、お゛ーっ、お゛ーー……っ!!」

 前と後ろから犯され続け、唇を奪われ、全身を震わせて呻く沙綾香。それを見守る客は、見届けるものを見届けたという面持ちだ。
「ほほ、凄い凄い……理性は残っているのですかね、あれは?」
「なんというか、下半身が丸ごと性感帯になっている感じだな」
「下半身で済みますか? あそこまでいくと、もう全身でしょう。子宮を裏と表から突つかれて、脳天からつま先まで感電してる感じだと思いますよ」
「あー、感電。確かにそんな感じだな。触るとヤバそう、色んな意味で」
 思いやりのない言葉がフロアを飛び交う。どいつもこいつも眼は冷たい。ただ一人違うのは、部屋の隅で首輪をつけ、深く腰を落としている藤花だけだ。
「よかったなぁお前。もし勝負に勝ってたら、お前が“ああ”なってたんだぜ?」
 迷彩ズボンの男が、藤花の胸を揉みしだきながら笑う。
「どうかな。実は、アレ見て羨ましいと思ってんじゃねぇか? 緩くケツ弄ってるだけなのに、マンコがヨダレ垂らしまくりじゃねぇか。お前も、ああしてほしいのか? どうなんだ、ええ?」
 剃り込み男が肛門のアナルプラグを抜き差しすれば、藤花の身体が震え上がった。だが、彼女は答えない。
「沙綾香……!」
 悲痛な声と共に、級友の姿を見守るばかりだ。

 そしてそれは、俺も同じ。変わっていく最愛の女性の姿を、歯噛みして見ていることしかできない。
 刻一刻と増していく不安に、心臓を凍り付かせながら……。



                         続く


 

二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.5(中編)

Part.5(前編)の続きです。
また間が空いてしまい、すみません。
文字数が多すぎるため、Part.5は前・中・後編に分割します。
こちらはアナル調教パートの中編となります。

なお今回、藤花の回想シーンにあたる、
*********************************
で区切られた部分に、食糞を含めたかなりハードなスカトロプレイが存在します。
また、それ以外にも浣腸や排泄の要素が存在します。
苦手な方はご注意ください。




 前2回の審査会は、百合による昼の性感マッサージに始まり、夜の黒人輪姦を経て、翌日に実施という流れだった。ところが今回は、一夜明けても沙綾香が地下17階から戻ってこない。2日目の昼、精液まみれの百合がようやくVIP客達から返却された時も、モニターには“1号”達の小便を漏斗で飲まされ、狂ったように暴れる沙綾香の姿が映っていた。
 ギリギリまで追い詰めるつもりなんだろう。汚物責めを絡めたアナル開発は、相手が高潔であればあるほど効果的だ。藤花の調教記録を見れば、それが嫌でも理解できる。

 時計の針が14時を回った頃、下のフロアに客が集まりはじめた。モニターの映像内でしきりに特別扱いされている、『VIP』の連中だ。1人また1人とソファで寛ぎはじめるその頭数は、計20人。スウィートルームを思わせる下のフロアでも、許容上限に近い数だ。しかもその中には、ドレス姿の女の姿まであった。藤花の過去映像を見ていた時にも女がいたが、よくもまあ同性が汚辱に塗れる姿を見に来るものだ。
「今日はまた随分と集めたな。アナル趣味の変態共を」
 苛々を募らせて端塚に毒づいても、澄まし顔で微笑むばかり。
「当倶楽部の会員は、通常のセックスではもはや満たされない方ばかり。アナルを始めとしたアブノーマルな催しは、需要が高いのですよ」
 無意味な問答を交わしている間に、また下でセンサーが反応した。扉を開けて入ってくるのは、ガラの悪い男2人と、それに引き連れられた四つん這いの女。その顔立ちにも、ポニーテールにも、鍛え込まれた背中の筋肉にも見覚えがある。藤花だ。
「おおっ、これは……!」
「ハハハッ、首輪着けて裸で散歩とは。完全に犬だな!」
「見て、尻尾まで付いてるわ!」
 ソファで寛ぐ客達が入口に視線を向け、嬉しそうに騒ぎはじめた。
「ほら、チャッチャと進め犬ッコロ!」
 客へのアピールか。先頭に立つ迷彩ズボンの男が、藤花の赤い首輪に繋がるリードを引く。
「足止まってんぞ、オラッ!」
 金髪に剃り込みを入れた調教師も、背後から竹刀で太腿を打ち据える。
 屈辱的だ。過去映像の藤花なら、射殺さんばかりの眼光で調教師を睨み上げていただろう。あるいは、一度そうしてみせたように、竹刀を奪い取って完膚なきまでに叩きのめしたかもしれない。ところが、今は違う。そんな素振りは微塵もない。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……す、すまない…………」
 乱暴にリードを引かれる中、藤花の顔に浮かんだのは悦びの色。瞳は潤み、頬は紅潮している。尻を竹刀で打ち据えられるたび、下半身がぶるっと震えるが、それも興奮で震えているようにしか見えない。
 何度となく竹刀の音を響かせた末に、藤花達はフロアの中央まで辿り着く。ソファから腰を浮かせた客達が、ゴクリと喉を鳴らした。
「なあ、調教師の兄さん。この娘はあれだろう? アナル調教エリアで大暴れして、倶楽部のセキュリティを何人も倒したという……」
 客の1人が尋ねると、迷彩ズボンの男はヘラヘラと笑う。
「そっス。やっぱ知られちゃってますよねー。でも、もう大丈夫。コイツは反抗どころか、俺らの命令には何でも従う奴隷ッス。その証拠に……ちょっと、この空ジョッキいっすか?」
 迷彩ズボンの男はそう言って、客が飲み干したビアジョッキを取り、藤花の足元に置く。その意味を図りかねて客が眉を顰める中、男は藤花を見下ろして口を開いた。
「藤花。そこにションベンしろ」
 衝撃的な言葉だ。犬扱いのみならず、そのもの犬の行為をさせるなど。だが、藤花は嫌な顔ひとつしない。
「わかった」
 薄笑みを浮かべてそう答えると、這ったままの恰好で右足を高く掲げる。そして全身に力を込められれば、数秒後、黄色い液体が性器のやや上から溢れ出す。
「うおおおおっ、やりおった!」
「ほおおお、これは! あの、倶楽部始まって以来のじゃじゃ馬娘が……!」
 客は驚き半分、興奮半分という様子で騒ぎ立てる。そういう反応になるのも当然だ。過去の藤花しか知らない人間なら、こんな真似をしているのが藤花本人と聞いても信じないだろう。瓜二つの別人と思うに決まっている。
「おら、零れてんじゃねえか。床のはちゃんと舐めとれよ」
 金髪剃り込みが、床に竹刀を叩きつけた。パイプ状の性器を持つ男ならともかく、女がビアジョッキの中だけに尿を収めるのは至難の業だ。当然ジョッキの周りには、かなりの量が飛び散っている。
「ああ」
 藤花は、やはり逆らわない。放尿を終えると足を閉じ、這い蹲って床を舐めはじめる。客からまた驚きの声が漏れた。

 藤花の劇的な変化に場が沸く中、ふいにモニターが消えた。そして代わりに、音が聴こえてくる。タァンッ、タァンッ、という音だ。階段を上がる音に似ているが、それにしてはやけに大袈裟だ。あの粗野な黒人共でさえ、そこまでの音を立てはしなかった。なら、あの音はなんだ。
 その疑問の答えは、入り口の扉が開くと同時に明らかになる。
 そこにいたのは、ロドニーと沙綾香だ。黄色いアロハにクロップド丈のテーパードパンツという、フォーマルから掛け離れた格好のロドニーは、赤い首輪をした沙綾香をリードで引き連れている。ただし、沙綾香は藤花のように這ってはいない。腰を深く落としたまま、左右の手首と足首を枷で繋がれている。その状態で移動するとなれば、足首の曲げ伸ばしで跳躍する『ウサギ跳び』しかない。さっきから聴こえてきていたのは、階段でウサギ跳びをする音だったわけだ。
「ふう、ふうう……ふう……っ」
 沙綾香は全身汗に塗れ、口に嵌め込まれたボールギャグからも大量の唾液を零していた。ウサギ跳びで2フロア分も移動すれば、そうなるのも当然だ。ただ、それ以外の要因もあるらしい。
「ははは。こっちも、か」
「こちらは前と後ろ、二穴とも埋まっているようですな」
「相当感じてるみたいねぇ。あのポタポタ垂れてるのは、汗か愛液か、どっちかしら?」
 客の視線は、沙綾香の下半身に集中している。モニターが普段通りの4画面に戻り、床からのカメラ映像が映し出されたことで、俺にも状況が理解できた。客の言葉通り、沙綾香の膣と肛門でバイブが唸りを上げていた。すでにかなり昂っているらしく、ウサギ跳びで移動するその経路に、点々と雫が滴っているのも確かだ。
「ゴール、っと」
 フロア中央に辿り着くと、ロドニーは葉巻を咥えたまま沙綾香の顎を掴み上げる。
「フーッ、フーッ……」
 沙綾香の反応は薄い。視線は虚空に投げ出されたまま、焦点を結んでいない。
「まるで、エクスタシーの最中だな」
 1人の客がそう呟くと、ロドニーは指を鳴らした。
「流石はVIPのダンナ、鋭いねェ。お察しの通り、コイツはここまでに何度もイってるぜ。ド変態だからよ、こうやってバランス崩しただけで……」
 ロドニーはそう言いながら、沙綾香の肩を突き飛ばす。ひと息入れている最中だった沙綾香は、踏ん張れるはずもなく、あえなく尻餅をついてしまう。
「むううう゛お゛っ!?」
 映像で散々耳にした呻きも、生で聴くと余計に哀れだ。そして、それは彼女の反応も同じ。腰を抜かしたまま太腿を痙攣させ、十本の足指を開いている様は、絶頂以外では有り得ない。客はその無様さを大いに笑い、イッたイッたと騒ぎ立てる。
「とまぁ、こんな具合だ」
 ロドニーは客の反応に気分を良くしながら、沙綾香のボールギャグを取り外す。
「ぷはっ……はぁっ、はぁっ…………」
 沙綾香は、唾液を零しながら周囲を見回し、俯いた。普段なら悪態の一つでも吐くところだが、審査会中と察して飲み込んだんだろう。察しの良い子だ。
 そんな沙綾香の様子を、藤花がじっと見つめていた。その視線に気付いたのか、沙綾香もやや視線を上向ける。極めて屈辱的な格好での再会。俺が初めて見た時の彼女達なら、どんな会話が交わされたことだろう。「見ないで」と恥じらいあうか、あるいは藤花が沙綾香に向けて、「矜持を保て」と叱咤したかもしれない。
 だが今、実際に藤花の口から発された言葉は、意外なものだった。
「かなりバストが育ったな、沙綾香。それでも俺には敵わないが……俺も毎日、愛情を込めて可愛がって頂いているからな」
 藤花は、沙綾香の胸の膨らみに視線を落とし、そんな事を囁きかける。
「バスト……?」
 沙綾香にとっても予想外の言葉らしく、オウム返しに繰り返すばかりだ。そんな沙綾香の前で、藤花は首輪を引かれて立ち上がる。
「おおっ……!」
 客から驚きの声が漏れた。衝撃を受けたのは俺も同じだ。
 藤花の裸体を生で目にするのは、これで二度目。だがその印象は、前とは全く違った。
 剣道一筋に鍛え上げ、筋肉質に引き締まっていた鋼の身体が、曲線的なラインに縁どられている。太っているわけではないが、匂い立つほどに女性的だ。それは、藤花が心まで女になったことを象徴しているかのようだった。
 そして、彼女自身が語る通り、その乳房の変貌ぶりは圧巻だった。元々『俺』という1人称にそぐわない豊かさだったが、それでもせいぜいFカップ程度だったろう。それが今や、皮袋に小ぶりなスイカを入れ、鎖骨からぶら下げているような有り様だ。
「おっほほ、またスゴい胸だな。何カップあるんだね?」
「えーっと……すんません、カップとか正味わかんねッス。色々注入して肥大化させてるんで、IとかJぐらいスかね。あ、あと最近、興奮してる時は母乳出るようになったんスよ」
 客からの質問に、剃り込みの男が頭を掻きながらケラケラと笑い、藤花の乳房を揉みしだく。
「ふああっ、あっ……」
 ただ乳房揉まれるだけで、藤花からは甘い声が漏れた。そしてその乳頭からは、剃り込み男の言葉通り、白いものが噴きだす。
「おっ。んだよテメェ、いつになく敏感じゃねえか。今日のために、丸一日お預け食らってるもんな。ケツハメが好きで仕方ねぇテメェのこった、焦れて仕方ねぇんだよなあ?」
「あ、ああ……そうだ。5号ビーズじゃ刺激が足りない。調教師様の男らしいペニスで、俺のだらしない尻の穴を、壊れるぐらい犯してくれ!」
 剃り込み男の問いに答えるハスキーボイスは、紛れもなく映像で耳にした藤花のそれだ。だが、内容は耳を疑うものでしかない。
「と、藤花……!」
 沙綾香が愕然とした表情になる。逆に調教師2人は、脇腹を抱えてゲラゲラと笑っていた。
「はははははっ! そうしてぇのは山々だがよ。今日はそれ俺らの役目じゃねンだ。俺らバイトじゃなく、ここの正調教師様にたっぷり可愛がってもらいな。だがまぁ、餞別代わりに刺激をやるよ。そこに手ェついて、尻向けろ」
 剃り込みの男が命じると、藤花は嬉しそうに頬を緩め、近くのガラステーブルに手をついた。
 突き出た尻の少し下に、掠れたラクガキの跡が見える。モニター越しになら、その文字まで判別できた。
『剣姫様、中年ペニスの突きでまたまた失神一本負け!』
『ドナン足首アクメ記念』
『剣道って、こんなにケツ緩くてもできるんだね』
 客が面白半分に書き殴ったものだろう、悪意に満ちた言葉ばかりだ。
「なっ……!!」
 親友への侮辱を見過ごせず、沙綾香が怒りを露わにする。剃り込み男は、そんな沙綾香の反応を可笑しがりつつ、藤花の“尻尾”を握りしめた。
「そーらいくぜ、深呼吸して落ち着けよ。テメェは興奮すっと、すーぐケツアクメで気絶すっからなぁ」
 そう一声掛けてから、一気に“尻尾”部分を引き抜いていく。
「う、くはっ……んんんぉおおお゛お゛ッッ!!!」
 藤花の迸らせた声も凄いが、肛門を捲りながら抜け出ていく物もまた凄まじい。直径5センチはあろうかという玉が、いくつも連結されたものだ。普通の女子高生なら、一つめの玉を押し込んだだけで悲鳴を上げることだろう。
「うおおお、これは凄いアナルパールだな……。球のひとつが、まるで握り飯だ」
「これを埋め込まれておきながら、刺激が足りないと言っていたわけか。底なしの性欲だな」
 客がざわつく中、藤花は額から汗を垂らしつつ振り返る。精悍という表現が相応しいその顔立ちは、いつかの『大和男児』そのものだ。だからこそ余計に、肛門周りの異様さが増すわけだが。
「はっは、大したパフォーマンスじゃねぇか。なら、こっちもお披露目といくか!」
 ロドニーがそう言って、沙綾香の背後に屈みこんだ。
「ケツ上げろ」
 そう短く命じ、沙綾香の尻が浮くと、肛門から突き出たバイブのグリップを握りしめる。
「ん、くっ……んはああぁっ!!!」
 沙綾香から漏れた声は、藤花よりもだいぶ澄んでいた。十分に愛らしいと感じられる範疇だ。一方で肛門からは、醜悪なバイブが抜け出ていく。そこそこの太さに、無数のイボ。
「ほお、これは……まるでゴーヤだな。出し入れすると刺激が強そうだ」
「確かに。まあ、さっきに比べれば可愛らしいものだが」
 沙綾香の肛門から引きずりだされたバイブを見て、客が笑う。ざわついていた藤花の時に比べて、幾分平和的だ。確かにバイブの大きさはさっきより小さめだから、そんな空気感になるのも解る。
 ところが、本番はその後だった。バイブがようやく全て抜け出たその瞬間、ゴトン、と別の音が響く。
「ん?」
 客が訝しがる中、さらにゴトン、ゴトン、と音がする。それに続いて、やや腰を浮かせた沙綾香の足元から、金属の塊が転げ出した。形も大きさも、ちょうど鶏卵程度。それが3つも4つも転がっていく。
「え……あれって、肛門から……?」
「うむ、入っていたらしいな……」
呆然と見守る客の前で、鶏卵状の金属がさらに産み落とされていく。今で、とうとう7個目。さっきのバイブと同時に詰め込まれていたことを考えると、生半可な質量じゃない。平和的に笑っていた客も、さすがに顔が引きつりはじめた。
「7個、か。あと3つ足りねぇな。土産として詰め込まれたのは10個だったろ。全部出せ」
 ロドニーが転がり出た金属球を数えて首を振り、沙綾香の尻を叩く。
「んふーっ、ふーっ、ふーっ…………!!」
 沙綾香は必死に眉根を寄せて息んでいた。ぶりゅっ、という音が肛門から鳴り、続けてゴトンと音がする。その流れに、客が噴き出した。
「ふっ、くははははっ!! 今の音、まるで排便だな!」
「いや、タマゴ生んだんだから出産だろ。そら、ニワトリみてぇに鳴いてみろよ。コーッコッコッコッってよお!!」
 喚き立てる客に囲まれながら、沙綾香は頬を真っ赤にして息みつづける。最後の2個が中々出ていかないらしい。
「ん、んんんっぐ、ふ、う……くっ!!」
 何度も苦しそうな声を出し、その末に腰が浮く。
「ふ、んっ……! うんんんンンンーーーー~~~っ!!!」
 ようやく残りを排出した瞬間、沙綾香から漏れた声は、おそろしく気持ちよさそうなそれだった。何度か耳にした、声にもならない『たまらない』という呻き。
「わははははっ、なんという声を!!」
「尻からタマゴをひり出しながらこの声とは。流石はこのフロアの奴隷、大した変態ぶりだ!」
「最後は2つ纏めて出たのか。こんな物を2つ一気に産めば、確かに刺激は凄そうだな」
「卵が10個に、あのバイブ……どうやら、さっきの娘以上の量が詰まっていたらしいな。この細い腹の中に」
「しかも、それで感じてたらしいな。卵にもバイブにも、ヌルヌルの腸液が纏わりついてやがる。エッロいなあ、ったくよぉ!」
 ある客は手を叩いて笑い、ある客は生み出された金属球を見ながら感想を漏らす。そのどちらも、沙綾香にとっては地獄だろう。しかも、恥辱はさらに続く。
「これで両方、無事にアナル栓が抜けたわけだ。今のケツの状態を、お客に見てもらえ。そこに並んでよ」
 ロドニーは、さっき藤花が手をついたガラステーブルを指差して命じた。
「っ!!」
 沙綾香が息を呑む。冗談じゃない、という心持ちだろう。とはいえ、審査会の最中では逆らいようもない。手首足首の拘束を解かれた沙綾香は、千鳥足でガラステーブルへ歩み寄り、藤花の横で手をついた。
「よーし。ケツを突き出して、自分で開いてみろ!」
 ロドニーがさらに命じると、左の藤花は堂々と足を開き、両手の指を使って全力で肛門を開いてみせる。一方で右の沙綾香は、内股気味にしか足を開けず、肛門に添えられた指も震えていた。
「おうおう、まるで男と女だな。性格の違いってやつか?」
「だが、穴自体はどちらもよく拡がっているな」
「あんな物を飲み込んでたんだもん、当然でしょ」
「菊輪が充血して、ぽってりと盛り上がっているな。完全に中級者以上のアナルだ」
「ああ。肛門というより、濡れた人妻の唇という感じだな」
「確かに。よーしお前ら、ケツで挨拶してみろ。クパクパ開いたり閉じたりしてよ!」
 客は、2人の肛門を大声で品評するに飽き足らず、下劣な芸をも強要する。極めて屈辱的な状況だが、藤花はもはやそれを何とも思わないらしい。後ろの客に媚びたような目線を送りながら、躊躇いなく肛門を開閉してみせる。その行為に気付き、沙綾香が目を丸くした。
「はっはっは、楽しませてくれるじゃないか!」
「ほら、右のオンナ。おめーもだよ、早くやれ!」
 藤花の媚が賞賛される中、沙綾香にも命令が飛ぶ。
「…ッ!」
 沙綾香の羞恥心は健在だ。羞恥を押し殺そうとしても、完全には殺せず、一瞬だけ下唇を噛み締める。それを経て披露される財閥令嬢のパフォーマンスの価値を、あの客達はどれだけ理解していることだろう。
「くはははッ、いいぜいいぜ! そーら、もっと早口言葉でやってみな!」
「ふふふふ。女子高生2人の尻芸か、堪らんな。この倶楽部に入って正解だった」
「あの右のガキ、なんつう脚の長さだよ。胴体2つ分あるぜ。脚眺めてるだけで、十分オカズになっちまう」
「ああ。マンコはだいぶ使用感あるが、それはそれで悪くねぇ。完璧すぎるってのも面白味ねぇしな」
「私は左の娘だな。腿と脹脛の張り具合といい、膝裏の窪みの深さといい、実に機能的で美しい。まるで競走馬のようだ」
「あああ……ぷっくりしたケツ穴にぶち込みてぇ!」
 客には一切の遠慮がない。自分の欲望をそのままに口にしている。聴いているだけで気分が悪い。自分の娘や姪っ子に、目の前で精液を浴びせかけられている気分だ。


                 ※


「ほう……これはまた、ひどく屈辱的なポーズだ。アナルプレイは、羞恥が肝……流石にロドニーは、その辺りがよく解っているようです」
 フロア下の様子を眺め、端塚が笑いを零す。その視線を追うまでもなく、モニターにも恥辱の映像が大きく映し出されていた。

 藤花と沙綾香は、2人して『マングリ返し』の恰好を取らされている。女性にとって最も屈辱的なポーズの一つだけに、調教で多用される体位だ。ただし今回のそれは、普段とは少し違った。
 背中を床につけ、膝が鎖骨の真上まで引き上げられている点は、通常のマングリ返しと変わらない。違うのは、2人が向かい合う形で並んでいることだ。大股を開いたまま、ほぼ真上に持ち上げた脚……その足首と脹脛の半ばほどが、拘束帯で連結されている。沙綾香の右脚と藤花の右脚、沙綾香の左脚と藤花の左脚をそれぞれ繋ぐ形だ。そのせいで2人は今、すり合わせた膝と股間とで菱形を作りながら、恥じらいの場所を晒すがままになっている。
「ははは、これはまた凄い格好だ。容赦がないですな、調教師さん」
 客の1人が歓喜し、ロドニーに呼びかける。ロドニーは葉巻をくゆらせながら客を見下ろした。
「だろ? 軍にいた頃は、ゲリラの尋問ばかりやってたからな。気の強ェ少年兵(ボーイ)をどうすれば素直にさせられるか、色々と試したもんだ」
 ロドニーはそこで煙を吐き出し、少女2人に視線を戻す。
「あのやり方は合理的でよ。ロープさえありゃ、ジャングルの真っ只中だろうがキャンプだろうが、どこででも出来ちまう。その割に効果は抜群だ。ズボンひん剝いて、あの縛り方で放置しときゃ、気の弱ぇガキなら3日ともたず音を上げる。ジャングルの近辺にはとにかく虫が多いが、そいつらが体を這い上ってくるのも防げねえし、ションベンやクソを漏らしたら最後、全部テメェやテメェの仲間の顔面にぶっかかるってわけだ」
 ロドニーの言葉に、客が苦笑する。それを愉快そうに眺めながら、ロドニーはさらに続けた。
「それで折れねぇガキは、もう一押ししてやりゃあいい。たっぷりとクソが溜まった頃合いで浣腸をぶち込んで、アヌスがヒクヒクしてきたら、黒人のペニスでグチャグチャに犯してやるんだ。そうするとよ、スゲェぜ。カラカラの喉から絶叫絞り出して、狂ったように脚を痙攣させるんだ。だがいくら暴れたところで、逃げようもねぇ。結局はテメェのクソで全身を泥色に染めながら、射精するんだ。そん時のザーメンの量と勢いがまたすごくってよ、相方の顔へ満遍なく浴びせかかって、ドロッドロにしちまう。そのまんま俺と部下でケツ使い回して、キンタマが空っぽになるまで犯し抜いてやりゃあ、メス猫みてえな眼ェした男娼2人組の出来上がりってわけだ」
 唖然とする内容だ。ドレス姿は口に手を当てて笑っているが、男となると表情筋をもじつかせるばかり。
「……なんというか、股間がムズ痒くなる話だ。だが、それをこれからやるわけだな? あの2人に」
 客の一人がそう切り出すと、他の客も表情を変える。確かに、ロドニーの昔話に惑わされている場合じゃない。問題は、その苛烈な責めが、これから沙綾香達に施されるという現実だ。

 20人の客が期待の面持ちで見守る中、責めの準備は着々と進められた。まずは百合が、濡れタオルで藤花と沙綾香の股間周りを丁寧に拭う。その上でロドニーから指示を受け、調教道具を収納ラックから取り出してくる。金盥、ガラス製の浣腸器、極太のアナルプラグ、拘束ベルト……完全にアブノーマルプレイ用だ。
「始めるか」
 迷彩ズボンと剃り込み男が頷き合い、湯の張られた金盥を藤花達の腰に近づける。続いてその中に、白い粉を溶かし込み、さらに瓶入りの透明な薬液を少し垂らす。その様子はモニターに映し出されているから、拘束されて上しか向けない沙綾香達にも確認できる。
「何の溶液を作っているか、解るか?」
 ガラステーブルに腰掛けたロドニーが、沙綾香達に問いかけた。沙綾香は不安そうな表情のまま、口を閉じている。一方で藤花は、微かに目を輝かせた。
「まさか……ドナン、か?」
 その一言で、沙綾香が目を見開いた。反応するに決まっている。藤花の鋼の心をへし折った、最凶の浣腸液。俺と沙綾香は映像を通して、その恐怖をまざまざと味わったんだ。
「ああそうだ。ぬるま湯に塩化マグネシウムを溶かして、ほんの少しグリセリンを混ぜりゃあ、最強に効く」
 迷彩ズボンの男が藤花に語りかけながら、ガラス浣腸器を拾い上げた。剃り込み男も同じく浣腸器を構え、金盥へと浸していく。シリンダーの空気が追い出され、次に薬液が吸い上げられる。
「そら、いくぜ」
 調教師2人は、親指で肛門を押し開きつつ、浣腸器の嘴管を突き込んだ。そして一切の躊躇なく、ピストンを押し込んでいく。
「あっ……!」
「んっく……!」
 二つの声が重なって聴こえた。一つは悦びの声、一つは苦悶の声。どちらかの発したものかは、考えるまでもない。
 シリンダー一本分の薬液がきっちりと流し込まれ、嘴管が引き抜かれる。そのタイミングで、二度目の声が上がった。
「んんん、ふくうっ……!!」
「うあああっ、あ、熱ッ!? や、やだっ、お尻、がっ……!!」
 今度は、藤花が嬉しそうに唇を噛み、沙綾香が声を上げる形だ。
「おーお、正反対のツラしてやがる。ドナンの良さを知ってるヤツと、初めて味わうヤツの差だな。そこのエロいガキ、どうだ。ドナンは凄ェだろ? 藤花も浸ってねぇで、どんな具合かお客様に解説してみな」
 迷彩ズボンの男が、沙綾香と藤花の顔を眺めながら茶化す。
「はっ、はっ、はっ……ああ、ドナンは凄い……。入れられた瞬間に、腸の中が煮え滾ったようになるんだ。次の瞬間には、尻の穴が痺れて、まるで制御が利かなくなる。便意とは全く違う作用で緩んで、開いて、外に捲れかえってしまうんだ。そうなったら、もう、我慢などできない……便が、垂れ流しに、なる……っ!!」
 藤花がかろうじて発した言葉は、彼女の肛門の動きで証明された。道具でこじ開けた場合とは違い、内から外へと自ら花開いていく。花弁はヒクヒクと痙攣し、涎が垂れるように黄色い筋が垂れ落ちる。
「おおっ、あれは……!」
「色は薄いけど、クソ汁ッスね。お客様にあんまり汚ぇモン見せるのもどうかと思って、藤花にはここ3日ばかり、ゼリーと俺らのザーメンしか食わせてないんス。透明になるかと思ったけど、さすがにちっとだけ胆汁の色が混じっちまってますね。んで、あっちのモデルみてーな嬢ちゃんは……」
 迷彩ズボンの男は、言葉を切って沙綾香の方を向く。沙綾香は、すでに何人もの客から顔を覗き込まれていた。その理由は、考えるまでもない。窮地に追い込まれた彼女の顔は、本当に男の心を揺さぶるからだ。
「だめっ、お尻、ひらいちゃう……で、でちゃっ、でちゃってるうっ!!」
 目を見開き、口を薄く開けながら、決壊を訴える沙綾香。その肛門は、やはり藤花と同じく外へと捲れ上がり、薄黄色の汚液を背中側へと滴らせている。
「ひひひっ、こっちもクソ汁がダラダラ垂れてやがる!」
「顔もスタイルも極上なのに、ケツとマンコだけがグチャグチャとはな。いい塩梅じゃねぇか!」
 心無い言葉が浴びせかけられ、沙綾香の眉が困ったように下がる。
 調教師の2人は、そんなやり取りを笑いながら、またガラス浣腸器を手に取った。
「さて。御覧の通り、ドナンは強烈で、あっという間に漏らしちまいます。でも、すぐ出すだけじゃあ面白くないっスよね。っつーわけで追加浣腸キメて、今度はもっと、思いっきり我慢させます。よろしくー」
 剃り込み男がおどけた口調でそう告げると、客は一気に色めき立った。逆に、被虐側の2人は息を呑む。
「さて藤花。経験者として聞くが、あと何本入れたらいい?」
 迷彩ズボンが藤花の傍に屈みこみ、そう問いかける。藤花は若干目を泳がせた。
「ええと、そう……だな。俺は4本はいけるが、浣腸に慣れていない沙綾香は無理だろう。あの子は、もう1本だけにしてやってくれ」
「なーるほど……んじゃ、両方4本だな」
 この倶楽部の調教師は、どいつもとことん意地が悪い。わざわざ問いかけ、その答えにかかわらず無理を強いる。
「ま、待て、なぜそうなる!?」
「そりゃお前、どっちかだけ少ないってことになりゃ不公平だろーが。じゃあどっちに合わせるっつー話だが、キツイ方に決まってるよな。だから、4本だ」
 迷彩ズボンは嬉々としてそう答え、浣腸器で薬液を吸い上げる。その逆側では、剃り込み男も同じく浣腸の準備を整えていた。
「おら、いくぜ!」
 浣腸器の先が、開ききった肛門に近づいていく。すでに肛門は開ききっているため、ピンクの粘膜へ直接浴びせかける形でドナン液が注がれていく。
「あっ、あっ、あっ!!」
「んくううっ、あっく、はあ、ぁっ……!!」
 藤花と沙綾香が悲鳴を上げる中、空になった浣腸器がまた薬液で満たされ、腸内へと注ぎ込まれていく。宣言通り、きっちり4本分。それが全て注がれ終わる頃には、早くも2人の肛門は開閉を繰り返し、汚液を垂らしはじめていた。
「よし、と。んじゃ、蓋すっか!」
「おう。コイツで、きっちりな」
 迷彩ズボンと剃り込みの男は頷き合い、浣腸器を置くと、代わりに妙な物を拾い上げた。アナルプラグの一種らしいが、プラグの台座部分から4本のゴムチューブが伸びている。おまけに、プラグ部分のサイズが半端じゃない。キッチンエリアに並ぶタンブラーグラス以上だ。
「はははっ、またデケエ栓だな!? ケツに入れていいサイズじゃねえぜ!」
「確かに、ありえないデカさッすけど……ま、見ててくださいよ」
 噴き出す客を横目に、調教師2人が特大のプラグを肛門へと押し込んでいく。挿入はスムーズだ。おそろしく巨大な栓だというのに、腸内のどこにも引っ掛からない。
「ほら、入るっしょ? ドナン使うと尻の穴がガバガバになるんで、栓としちゃあこのサイズでも小さいんスよ。だから、こうして……」
 アナルプラグを根元まで押し込んだ調教師は、続いてそれを固定にかかった。沙綾香達の腰に黒い拘束ベルトを巻きつけ、そのベルトのフックに、引き絞った4本のゴムチューブを先端の金具で引っ掛ける。その結果出来上がるのは、プラグの台座を中心とした、黒いX字だ。
「これで、もう自力じゃ絶対抜けねぇッス」
 迷彩ズボンの男が、張り詰めたチューブを指で弾いて笑う。
「うへ、キツそー。確かにこりゃ、どんだけ息んでも抜けねぇヤツだわ!」
「ゴムが引っ張られすぎて、肉に食い込んじまってるもんなあ。おまけにそれで、いい具合にマンコが盛り上がって……ひひ、エッロいなあ!」
 客は沙綾香達の頭上から、チューブで絞り出された割れ目を無遠慮に眺めまわす。年頃の少女には耐え難い恥辱だろう。だが、沙綾香達にはそんな視線に構う余裕すらなかった。なにしろ4本分のドナン浣腸を注がれたんだ。すでに便意は最高潮に達していることだろう。事実、彼女達の腹からは唸るような音が漏れ、額にも目視できるレベルの脂汗が浮いている。
「うっ、く……!! うはあ、はっ……あああ、あ……!!」
「はぁっ、はぁっ……沙綾香、無理はするな! 堪えきれなくなったら、調教師の方に排便をお願いするんだ。ドナン浣腸は、他の浣腸とは訳が違う。我慢しすぎると心が壊れる。俺はそれを、身に染みて知っているんだ!」
 苦しがる親友を案じる、藤花の言葉。それを聞いて、調教師2人が腹を抱えて笑いはじめた。
「ハハハハハッ! 身に染みて、か。だろうなあ、お前はよぉ!」
「ああ。一回目のドナン浣腸でギャンギャン泣き喚いた挙句、二回目じゃ『あんな宣言』までしたんだからよ!!」
 生粋のサディスト2人の馬鹿笑いは、当然ながら客の興味を引く。
「ほう、それは気になるな。もしやそれは、17階の記録でカットされていた部分かね?」
「あ、あれ見たんスか。そッス。乱闘騒ぎとかあったんで知ってる人多いでしょうけど、この藤花ってガキ、最初はすげえ反抗的でしたからね。ガチに心折んぞってことで、結構エグい汚物責めもやったんスよ。でも、ハードなスカって、あっこのモニターじゃ流せないんス。耐性ないお客さんが、うっかり見て吐いたりするんで」
「はははっ、確かにありそうだ。私はそういう類が好きで、むしろ観たいがね」
「俺も見てぇな」
「アタシも、気になるわ」
 1人がそう言うと、他の客も同調する。その中には女もいた。煌びやかなドレスを纏い、小綺麗にしていても、腹の中は随分とドス黒いようだ。
「へへ。さすがVIPの人らともなると、ガチの変態っすね。じゃ、藤花の心完全に折った時の映像流しましょっか。普通にクソ食わせたりしてるんで、そういうの大丈夫な人だけモニター見といてください」
 調教師は嬉しそうにそう言うと、壁際で寛ぐロドニーに何かを頼む。
「お前らが“エグい”っつーんだ、相当だろうな。くわばらくわばら」
 ロドニーも嬉々としてリモコンを操作し、モニターに映像を流しはじめた。拘束された藤花と沙綾香にとっては、悪夢に等しい過去記録だ。

                 ※

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 巨大なモニターに、拘束された藤花の姿が映り込む。汚れのひどい壁や床、天井に取り付けられた滑車とフック……拷問室を思わせる物々しい風景は、地下17階特有のものだ。
 藤花は、すでにボロボロだった。明らかに顔がやつれ、覇気がない。大和男児としての心が、すでに折れかけている状態に思えた。多分それは、彼女の周りに散乱する道具と無関係じゃないだろう。おそろしく巨大な球がいくつも連なったアナルパール、棘付きの棍棒を思わせるディルドー……そういった凶器は、どれもこれも妙な粘液に塗れている。
『さて。そろそろ、エサが消化された頃だよな』
 瞼や鼻、唇にびっしりとピアスを着けた男が、そう言いながら藤花の背後に洗面器を置いた。洗面器には、すでに薬液が張られている。ピアス男はそこに浣腸器を浸し、キュゥゥッという音と共に薬液を吸い上げた。
『お待ちかねの、ドナンだ。今度は3本くれてやる。尻を上げろ』
『………………ッ!!!』
 ピアス男が耳元で囁きかけると、藤花の身が強張る。すでにドナン浣腸の恐ろしさを知っているらしい。ピアス男はその反応を楽しみながら、藤花の剥き卵のような尻を上げさせ、浣腸器の先を肛門へと挿入する。
『……くっ……!!』
 ピストンが押し込まれたその瞬間、藤花の顔が歪んだ。だが、彼女は抵抗できない。乳房を上下から絞り出すような形で、上腕部の二ヶ所を胴に結わえ付けられ、手首も厳重に縛られているんだ。そんな状態では、膝立ち以外に取れる姿勢がない。
 この倶楽部で色々な調教を目にしてきたが、腕を徹底的に封じられているのは藤花ぐらいのものだ。それだけ、彼女の戦力が脅威とされているということだろう。とはいえ、その恐れもだいぶ和らぎつつあるようだ。
『うーし、3本入ったぜ。はっ、もうケツがヒクヒクしてやがる』
 宣言通り3ピストン分の薬液を入れきった後、ピアス男は藤花の尻を見ながら嘲笑う。ちょうどその瞬間、藤花の腹からぎゅごるるる、という凄まじい音が鳴った。
『くっ……当たり前だ。ドナンは、そういう浣腸だろう!』
『ああ、そうだな。んで、そのキツーいドナンを、たっぷり我慢してもらうぜ』
 顔を歪めつつも語気の強い藤花に対し、ピアス男は余裕の笑みを消さない。浣腸器を床に置くと、代わってアナルバルーンの先を肛門に押し込み、勢いよく膨らませていく。空気の漏れる音が響くたび、藤花の顔が苦々しさを増す。
『こんだけ膨らましゃ、抜けねぇだろ。7号プラグをぶっ飛ばしちまったお前でもよ』
 ピアス男は嫌味たらしく囁きながら、立ち上がって藤花の元を離れる。カメラの向きが変わると、ピアス男の向かう先に、また何人もの男が映り込んだ。タンクトップで上半身の筋肉と肩のドクロタトゥーを誇示する男。唇にピアスを開け、アゴ髭を蓄え、ダボダボの迷彩ズボンで下半身を大きく見せている男。ドレッドヘアが特徴的な色黒の男。金髪に深い剃り込みを入れている男……。嫌というほど見覚えのある顔ぶれだ。連中は蝋燭が照らす薄暗い空間で、椅子や木箱に腰掛け、缶ビールを開けて寛いでいた。
『今度は、何分もつと思う?』
『んー……さっきは何分ほったらかしたっけ? 40分ぐらい?』
『もうちっとじゃね? しかもあん時ゃ、半日クソさせてねぇ状態だったしな。参考になんねーよ』
『しかもよ、あん時は2本だったが、今度は3本ぶち込んだぜ』
『はっ、大丈夫かそれ? まあ大丈夫じゃなくても、アイツが音ェ上げるだけだけどな。おいオトコ女、クソしたくなったらちゃんとオネダリしろよ。可愛く媚びりゃ、楽にしてやる』
 地下17階の調教師共は、軽口を叩きながらゲラゲラと笑う。その緩みきった空気は、極度の緊張を強いられる藤花にとって、どれほど憎らしいことだろう。
『く、ふっ……フーッ、フーーッ…………!!』
 注入から3分もすれば、藤花の呼吸はすっかり荒くなっていた。顔中に脂汗が滲み、眼も見開き気味になっている。だが彼女は、あくまで背筋を伸ばし、凛としたまま悪意の視線を受け止めていた。
『くくっ、怖ぇ怖ぇ』
 調教師達は缶ビールを傾けながら、相手の地獄を余裕たっぷりに面白がっていた。

 ここで、画面が暗転する。再びモニターに映った光景は、いくらか時間が進んだ後のようだ。
 床にビール缶が散乱する中、調教師共が膝立ちの藤花に群がり、嫌がらせを続けている。ドレッドヘアの男は乳房を鷲掴みにし、ドクロタトゥーの男は震える膝を撫でまわし、ピアス男に至っては、狂ったように鳴り続ける腹を、背後から荒々しく揉みしだいている。
 そんな事をされては、藤花も堪ったものじゃない。
『……はぁーっ、はあーっ……はあーっ、はあーっ…………』
 藤花は、開いた口から唾液を垂らし、荒い息を吐き続けていた。青ざめた顔には汗が滝のように流れ、震える膝へと滴り落ちていく。
『どうしたオトコ女、今にも気ィ失いそうなツラだぜ? 剣道やるにゃ、根性はいらねぇのかよ』
 乳房を握り込みながら、ドレッドヘアの男が茶化す。
『……ッ!!』
 藤花は、その侮辱を聞き逃さない。汗の珠が絡む睫毛を一度閉じてから、くっきりとした瞳で睨み据える。かなりの迫力だ。だが、この倶楽部の調教師共がそれで気後れするはずもない。
『また睨んでやがる。っとにクソ生意気なアマだな。もっとお仕置きしてほしいンか? ションベンの穴拡げられんのと、クリにピアス嵌められんの、どっちがいいんだ、アア!?』
 ピアス男が脅し文句を並べながら、藤花の顔に逸物を近づける。18か19センチはあるだろうか、肉食系の気性に見合う巨根だ。
『やめろ!!』
 藤花は露骨に嫌がり、顔を横向ける。だがピアス男はその頬を突き、唇に擦りつけて、執拗に口での奉仕を求め続ける。
『大人しくしゃぶれよ。言葉で媚びんのがイヤそうだから、フェラで勘弁してやろうってんだ。俺ら4人をクチで満足させるまでは、絶対に栓は外さねぇ。絶対に、だ。なあ?』
 ピアス男がそう言って視線を向けると、他3人もやはりニヤつきながら頷く。
『くっ……!!』
 藤花は、苦い顔で迷っていた。普段なら頑として撥ねつける要求だろうが、ドナン浣腸を施されてはそうもいかない。この映像の少し前に、その苦しみを嫌というほど味わったばかりだろうから、尚更だ。
 沈黙の中、ぎゅごぉるるるるる、という凄まじい音が鳴る。単に腹を下しただけでは、あんな音は鳴らない。その異様さはそのまま『耐えられない』、あるいは『耐えてはいけない』理由となる。
 藤花の顔が止まった。食いしばられていた歯も開き、ピアス男の怒張を強くは拒まなくなる。
『へへへ、そうだ。一生懸命咥えるしかねぇんだよ、テメェは!』
 ピアス男は歪んだ笑みを湛えたまま、藤花の口に怒張を捻じ込んだ。
『んぶっ……ん゛、ン゛ッ!?』
 怒張が奥へ奥へと入り込むたび、藤花の目が見開かれる。喉奥責めに慣れていないらしく、18センチの巨根がかなり苦しいようだ。そんな藤花に対し、ピアス男は一切容赦をしない。藤花のポニーテールの根元を掴み、自分の腰に押し付ける形で深々と咥えさせる。
『うごっ、お゛エ゛っ! おおぇええエ゛っ!!』
『へへへ。ドナン我慢してるうちに、相当ツバが出たらしいな。口ン中がヌルヌルで気持ちいいぜ。そのまま、もっと舌を絡めてみろ。間違っても歯は立てんじゃねぇぞ? 歯ァ立てやがったら、乳首ライターで焼き切るからな』
 藤花が苦しそうに呻いても、ピアス男は腰の振りを緩めない。物騒な言葉を発しながら、足を肩幅に開き、背中を弓なりに反らせて根元まで咥え込ませる。
『おいおい、吐いちまうぞ?』
 ドレッドヘアの男は苦笑しながらも、止めはしない。ピアス男の足元へ洗面器を移動させ、いずれ起きる嘔吐に備えただけだ。その悪意に晒されながらも、藤花は必死に堪えていた。目を細め、縛られた手を握り合わせて。
『なにガンバッてんだ。俺のデカチン咥えさせられて、苦しいんだろ? 吐いちまえよ、オラッ!!』
 耐え切れずに嘔吐する姿がよほど見たいのか、ピアス男はここでさらに責めの手を強めた。左手で藤花の後頭部を引きつけ、本当の奥の奥まで咥え込ませる。それにも耐えられれば、今度は右手を使い、鉄槌を振り下ろす要領で左手越しに後頭部を打ち据える。
『ひゃはははっ、出た出た“杭打ちイラマ”!』
『ショーゴの19センチでアレやられっと、外人女でもゲロるんだよな!』
 頚椎を痛めかねない危険行為を前にしても、鬼畜共はゲラゲラと笑うばかりだ。やっているピアス男当人にしても、片時も笑い顔を崩さない。
『お、おっ! 来たぜ来たぜ、あったけぇー!』
 そう言いながら手を止め、藤花の口から怒張を引き抜く。
『うぶぇっ!!!』
 藤花は頬を膨らませたまま俯き、口を開いた。ピアス男の足元に置かれた洗面器から、びちゃ、びちゃっと音が立つ。
『すげー吐いたな。おおくせぇくせぇ!!』
『ああ、鼻が曲がりそうだ。人ンこと性格が腐ってるとか、偉そうなことほざいてたがよ、テメェの胃の中の方がよっぽど腐ってるじゃねぇか!』
『まったくだな。おら、続きだ。男をイカせたきゃ、喉の奥でしっかり扱けよ。いっぱしの武道家気取ってんだ、筋肉の使い方ぐらいお手のモンだろ?』
 ドクロタトゥー達が鬼の首を取ったように騒ぐ中、ピアス男は藤花の前髪を掴み上げ、吐瀉物の纏いついた怒張を口に押し付ける。
『はぁっ、はぁっ……!』
 藤花は荒い息を吐きつつ、凌辱者を壮絶に睨み上げる。だが怒張が口に押し込まれれば、それを拒むことはできない。

 そしてここから、調教師4人のサドぶりが露骨になっていく。
『お、おっ!? へへっ。コイツ、とうとう舌絡めだしたぜ。やべえ気持ちいい、イキそう……トモ、交代すっぞ!』
『あいよ。オウ剣道女、今度はこっちだ。オメーの大好きな竹刀より硬ぇぜ、たっぷりしゃぶれよ』
 絶頂が近くなれば凌辱役を交代し、全員を射精させるという目的を達成させない。
『おーらおら、もっと深くイケんだろうが!!』
 1人が咥えさせている間、別の人間が後頭部を押さえつけ、時には足裏で押し込んで更に追い込む。
 極めつけは、横から咥えさせることだ。身体を正面に向けたまま、顔だけを横向けてのディープスロートを強い、嘔吐の兆しが見られれば逸物を引き抜きながら正面を向かせる。そうされれば藤花は、歪んだ顔から吐瀉物が溢れだし、それが人並以上に豊かな乳房へと滴れ落ちていく様を、余さずカメラに捉えられることになる。
『んごっ、おお゛エ゛ッ!! んもおお゛え、うおおお゛ええ゛っ!!』
 ドナン浣腸の苦しさからか、無茶なディープスロートを強制されているからか、藤花の嘔吐のペースは早い。そして吐いてしまえば、その度に調教師4人から罵詈雑言が浴びせかけられる。
 そんな地獄のような状況下で、彼女は随分と頑張った。両目から涙を零し、鼻と口から体液と吐瀉物の混じったものを垂れ流しながらも、音を上げる事はなかった。
 だが、それにも限界はある。

『…………たのむ…………出させて、くれ…………』

 3回の暗転を挟み、洗面器も藤花の身体の全面も、すっかり吐瀉物で覆われ尽くした頃。藤花は、とうとう哀願を口にした。涙、汗、痙攣、鳥肌、腹の音……動画内のあらゆる情報が、限界をとうに超えている事を物語っている。だが、鬼畜共はそうと知りながらも、駄目押しで藤花を追い詰めていく。
『俺ら4人を満足させたら、つってんだろーが。いいから咥えろやオラ!』
 ドスの利いた声で恫喝しながら、怒張を咥え込ませる剃り込み男。ひたすら顔を前後させ、高速で咥えさせるシンプルな責めだが、限界の来た藤花にはそれが一番つらいはずだ。
『ん、んんーンン゛っ!! むう゛う゛っ、おえ゛っ…おえ゛おえ゛っ!! ぷはっ、た、頼む、頼むからッ!! もう、限界なんだ、もう耐えられない!! 出させてくれ、今すぐさせてくれえええぇっ!!』
 咥えさせられてすぐに嘔吐を繰り返し、ようやく怒張を引き抜かれると、酸素を求めるより優先して排便を乞う。その惨めな様を、調教師4人は散々に笑い、ようやく包囲の輪を解いた。だが果たしてそれを、『勘弁した』と言っていいものか。
 確かに連中は、ディープスロートの奉仕をやめさせ、膨らみきったアナルバルーンを萎ませる態勢を整えた。ただし、それと並行して、極めつけの嫌がらせも用意した。真新しい金盥を用意し、一枚の写真をそこに入れる。その上で、痙攣する藤花の足下に滑り込ませたんだ。
『なんだ、この写真…………は…………』
 金盥を見下ろした藤花が、その途端に表情を凍りつかせる。
 写真には、7人の人間が3列に並んで映っていた。後列には、羆を思わせる大柄な男性と、同じく肩幅の広い青年。前列には、まだ少年、あるいは幼児というべき年頃の子供が3人。そしてその子供3人の肩を抱くようにして、凛とした雰囲気の少女と、優しげな面影の女性が笑みを浮かべている。
 女性は目元が藤花に似ていた。そして少女は、今よりかなり幼いが、藤花そのものだ。となるとあれは、藤花が愛する家族の記念写真か。
『あ…………ふ……ふざけるなああっ!!!!』
 藤花は目を見開き、激怒した。だが同時に彼女は、極限の便意にも苛まれている。便意は、怒りにも勝る根源的な欲求だ。人はどれだけ憤ろうと、便意を無視することはできない。
『なにキレてんだよ、お待ちかねの便所だぜ。グルグル鳴りっぱなしの腹の中身を、たっぷり出せよ。今、ケツの栓抜いてやっからよ』
 迷彩ズボンの男がそう言いながら、アナルバルーンの解放ボタンに指をかける。その指が押し込まれた時、何が起きるのかは明白だ。栓で留められ続けていた藤花の排泄欲が解放され、金盥の中に怒涛のごとく浴びせかかる。その中にある大切な思い出を、無残に穢しながら。
『うわああああぁッ!! やめてくれ、勘弁してくれ!! それはっ、その写真は、母さんが映っている大切なものなんだ!!』
『ああ、そうらしいな。お前の学生証入れに、大事そうに仕舞われてたもんなあ。でもよ。俺らにとっちゃそんなもん、チリ紙と同じなんだわ』
 藤花の必死の哀願にも、鬼畜共は心を動かさない。悪魔のような笑みで、悪魔のような言葉を吐くだけだ。
 人間でないものに、駆け引きは通じない。
『……………………なんでも、する……………………』
 藤花は、壮絶に顔を歪めながら、その言葉を絞り出した。排泄欲が限界に来ている彼女には、迷う猶予さえない。
『へぇ、なんでも?』
 ピアス男が言質を取ると、藤花は涙ながらに頷く。手を縛られたまま項垂れるその姿は、切腹の命を受け入れる侍のようだ。
『ったく、仕方ねぇな。吐いたツバ飲むんじゃねえぞ』
 ピアス男が念を押しつつ、金盥から写真を拾い上げる。同時に迷彩ズボンの男が、アナルバルーンのスイッチを押し込んだ。シューッという空気の抜ける音がした、一秒後。

『ああああああ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーーっ!!!!!』

 凄まじい絶叫と共に、汚液が叩きつけられていく。金盥を円転させるほどの、凄まじい勢いだ。その瞬間を迎えるために、彼女はどれだけ苦悶し、どれだけ心を擦り減らしたんだろう。少女が涙するシーンは何度となく見てきたが、この時彼女の頬を伝った二筋は、ひときわ強く胸に刺さった。

                 ※

 家族の写真を穢す代償は、藤花自身が恥辱に塗れることだった。
『ケツを舐めろ。丁寧にな』
 藤花の傍で仁王立ちしたまま、ピアス男が命じる。
『くっ……!』
 藤花は露骨に顔を顰めた。人一倍プライドの高い娘だ。好きでもない男の不浄の穴を舐めるなど、看過できるはずもない。だが、彼女に抗う術はなかった。腕は頭上で鎖に繋がれ、両脚もしっかりと押さえ込まれている。それに加えて家族写真という弱みまである以上、いくら不本意であっても言うなりになるしかない。
 ピアス男が色黒な足を曲げ、藤花の顔面に跨る。対する藤花は、鎖骨を浮かせて緊張を露わにしていた。
 最初の数秒、藤花は奉仕を躊躇っていたようだ。
『どうした、早く舐めろよ』
 ピアス男が苛立った口調で命じると、そこで初めて音がしはじめる。にちゃ、にちゃっ、という、粘ついた音。
『うははっ、キモチいいー!! クソ生意気なオトコ女に舐められてると思うと、余計に興奮すんぜ。悔しいせいか、舌先がブルッブル震えてやがるしよぉ!!』
 ピアス男は上機嫌だ。直前のディープスロートで七分勃ちになっていた逸物が、斜めに屹立したまま上下に揺れる。よほどの快感がないと、ああはならない。
『ああああ、スゲェ……うーっし、出してやる、 舌ァ突き出せ!』
 絶頂までは早かった。ピアス男が腰を浮かせたかと思うと、勃起しきった逸物を自ら扱き、舌を出した藤花の口内へと勢いよく射精する。射精量はかなりのもので、舌を覆い尽くさんばかりだ。ピアス男はその量を確認した後、藤花の顎を閉じさせる。飲め、というサインだ。
『ッ!』
 藤花は目を見開くが、顎が開かない以上、口の中のものを飲み下すしかない。ゴクンという嚥下の音が、しっかりとマイクに拾われた。
『へへへ。どうだ、ケツ穴とザーメンのミックスジュースは?』
 笑いながら問いかけるドクロタトゥーの男に、藤花は鋭い視線を向ける。相当な迫力だが、それだけに哀れだ。いくら凛々しい顔をしたところで、彼女は抗える立場にはない。睨まれたドクロタトゥーの男が顔面へと腰を下ろせば、不満そうな眼をしたまま、その尻穴に舌を這わせるしかなくなる。
『くはははっ、確かに興奮すんな! クソ生意気な女にケツ舐めさせんのはよぉ!!』
 ドクロタトゥーの反応も、さっきのピアス男とそっくりだ。ゲラゲラと笑いながら快感を訴え、いきり勃った逸物を震えさせる。その果てに、また口の中へ射精をするんだろう。そう考えただけで、胸糞悪くなってくる。
 だが、その想像は甘すぎた。あの鬼畜連中の要求が、こんなものだけで済むはずがない。
『いいぜ、いいぜ……そろそろ、“出す”ぜぇ!?』
 数分経った頃、ドクロタトゥーはそう呟いた。さっき射精したピアス男と同じ文句だ。当然、藤花は同じことをされると考えただろう。傍から見ていれば、ドクロタトゥーが他の連中と視線を交わし、意地悪く笑った事実に気付けるが、藤花にはそんなヒントさえない。
『口開けろ!!』
 ドクロタトゥーがそう要求すると、藤花は大人しく口を開け、舌を突き出した。だが、その次の瞬間。ドクロタトゥーは腰の位置を前にずらし、藤花の口に尻を宛がう。
『おら、喰らえッ!!』
 そう叫び声が響くと同時に、嫌な音が聴こえてくる。みちみちみち、という、何かがひり出される音。
『れああ゛あ゛っ!?』
 藤花が悲鳴を上げながら、両脚を激しくばたつかせる。普通の反応じゃない。そして調教師共は、その行動を見越していたように、一斉に藤花を押さえに掛かった。
『ははははははッ、よーっく出たぜぇ!!』
 顔に皺を寄せて笑いながら、ドクロタトゥーが立ちあがる。その股の間から覗く藤花の顔は、茶色い物で汚れていた。何か、とは考えるまでもない。ドクロタトゥーの大便だ。
『き、きひゃま、あ……ッ!!』
 藤花が、口を閉じないようにしつつ、恨み言を吐く。そんな彼女の顔を迷彩ズボンの男が押さえ込み、剃り込み男が舌を引っ張り出す。
『ほらほら。よーく味わえよ!』
 剃り込み男は、そう言って藤花の口内の便を指で掬っては、藤花の舌へと塗り込めはじめた。その行為が始まって1秒にも満たず、藤花の全身が震え上がる。舌を摘まれているせいで明瞭ではないが、悲痛な叫び声も上げているようだ。
『いひひひっ、すげぇ反応! クソは苦ェしエグいだろ。今晩で完璧に心折って、従順なイヌにしてやんよ!』
 剃り込み男は嬉々として叫びながら、藤花の舌へと汚物を塗り込んでいく。薄く延ばすように、あるいは味蕾へ塗り込めるように。それをされる側の藤花は、いよいよ狂ったように暴れはじめた。
『おえ゛っ、おおおえ゛え゛え゛え゛っ!!! やえ゛っ、やえお゛おお゛お゛ーーーっ!! うあれうあ゛ッ、こおう、ほうろおに、こうお゛ッ!!!』
 不自由な口で必死に何かを叫びながら、射殺さんばかりの眼光で男共を睨み上げ、足で床を蹴る。だが、それでサディスト共が怯むことはない。
『何言ってっかわかんねーよ、クソ女!』
『ひゃははっ! 違えねぇ、まさにクソまみれの“クソ女”だな!』
『なんかコイツ、殺すーっつってるっぽいぜ』
『へーえ。この状況でやれんなら、やってみろっつーの!』
 藤花の反応を嘲笑いながら、力づくで抵抗を押さえ込む。
 いつかの大立ち回りで証明してみせた通り、藤花は強い。得物を持っての戦いなら、あの場にいる全員を叩きのめすことも十分に可能だろう。だが、拘束された状態での純粋な腕力勝負、おまけに多勢に無勢となれば、流石に勝ち目がない。渾身の抵抗も空しく、されるがままになってしまう。
『あはっ、カッハ!! はぁっ、はぁッあ、ううう゛え゛っ、んむうえお゛ッ!! ぃがい、くひゃえっ…………ええおっあはぁ、はぁ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!』
 藤花はえずき、息を乱し、震え、ついには涙を溢しはじめた。それでも不屈の心を失わず、周りの男を睨み上げる。流石と言う他ないが、そうした反骨心こそ、加虐者にとってのいい餌だ。
『おうおう、まだ睨みやがるぜコイツ。仕置きが足んねぇらしいな!』
 迷彩ズボンの男がそう言って、すぐ近くの金盥を拾い上げる。ついさっき藤花が排泄した盥だ。
『!!』
 相手の意図を察し、藤花が目を見開く。迷彩ズボンはその反応を嬉しがりつつ、盥から茶色い塊を掬い取ると、開かれた口内へと放り込んだ。
『いうォエエえ゛え゛え゛ッッ!!!』
 当然、藤花はえずき上げ、口に入り込んだ異物を舌で押し出そうとする。だが、鬼畜共がそれを許すはずもない。
『出すんじゃねぇよ、口開けろオラァッ!!』
 ピアス男が藤花の鼻と下唇に指を掛け、強引に大口を開かせる。それと息を合わせて、剃り込み男が二本指で口の奥へと汚物を押し込んでいく。さらにはその押し込んだ指で、粘膜に汚物を塗り付けてもいるようだ。
『ふおっ、もおおおああがあああっ!! えおッ、もおおえええ゛ッッ!!! はっ、はっ、ハッハッハッハッハッハッ…………ッ!!』
 藤花のあらゆる状態が悪化する。発汗も、えずき声の酷さも、呼吸の速さも、痙攣も。頭上で縛り上げられた手は壁を引っ掻き、掴まれた足の裏は狂ったように床を打つ。鍛え上げられた全身が、最大級の危機を訴えている。
 真っ当な神経の持ち主なら、そんな反応を前にすれば青ざめるだろう。自分は何という事をしでかしたのかと震えながら、口内の汚物を大慌てで取り除き、清潔な水でうがいをさせるに違いない。
 だが、映像内の男共は違った。藤花が暴れるほど、苦しむほど笑みを深め、上腕筋を盛り上げて押さえ込む。
『うう゛えっ、うもおお゛えっ! けっ、お、ォ……おおぉええおおろろ゛っ!!』
 藤花が、吐いた。

 鎖が、うるさく鳴り続けている。藤花はどれだけ暴れ、えずき、叫んだことだろう。
『おら、噛めよ。ウンコの味をたっぷり味わえ』
 ピアス男が藤花の顎を掴み、上下に動かす。藤花は声にならない声を上げながら、顎を痙攣させる。白目を剥いてもいるようだ。
『はっ。なんだこいつ、気絶しようとしてやがんのか?』
『クソなんて異物中の異物だからな。ひとかけ口に入っただけでも、脳がパニック起こすもんだ。それを突っ込まれまくりゃあ、意識を強制シャットダウンさせんのは真っ当な判断だろ。ま、出来ればの話だけどよ!』
『苦ェってだけじゃ、そうそうオチねぇだろ。骨折やらの痛みがねーと』
『そういう意味じゃ、クソ責めよか物理的なリンチのが百倍マシだな』
 調教師共は軽口を叩きながら、藤花の口へ次々と汚物を詰めていく。大口いっぱいに汚物が詰め込まれるまでに、5分と掛からない。
『ハハハハッ、いいツラになったじゃねぇか!!』
 ピアス男が、藤花の前に手鏡を翳す。藤花は鏡を見上げるが、大きな反応はしない。上下に離れた唇を微かに動かし、涙まじりの眼を細めただけだ。それは、反応する余力さえない証に見えた。
 死に体。そんな言葉が相応しい藤花を前にしても、男共は責めの手を緩めない。
『さて。クチにゃたっぷりとご馳走してやったことだし、今度はこっちを可愛がってやるか』
 ドクロタトゥーの男がそう言って、藤花の足を大きく開かせる。カメラも足元に寄り、藤花の股座を大写しにした。彼女の割れ目は、未使用であることが明らかな朱色の筋だ。だが肛門となると、その真逆。ドナン浣腸の効果で毒々しい花のように開ききり、腸液を垂らしながら開閉を繰り返している。
『へへへ、相変わらずすげぇなあ。ヨダレまみれだぜ、ええ? チンポが欲しくって仕方ねぇってか』
 ドクロタトゥーが野次りつつ、いきり勃った逸物に注射を打ち込む。その上で更に、迷彩ズボンの男が投げ寄越したペニスサックを装着した。その結果出来上がるのは、緩みきった肛門にも十分な刺激を与えるだろう『凶器』だ。注射の効果か、長さは20センチ近くにまで伸び、太さも例の黒人共に匹敵する。加えてペニスサックには無数の棘を思わせる凸部分が無数にあり、人造物ならではの極悪さを備えている。
『さーて、くれてやるか!』
 ドクロタトゥーは笑みを深め、藤花に大股を開かせた上で挿入する。緩みきった肛門の中に、ペニスサックの凸部分が次々と隠れていく。藤花の目が見開かれた。
『どうだ。ドナンで敏感になった肛門によお、ゾリゾリ擦れて気持ちいいだろ?』
 ドクロタトゥーは相手の反応を間近で確認しつつ、あえて浅い挿入を繰り返す。ペニスサックの突起が、何度も何度も菊輪を擦るように。
『っ!! っっ!!!』
 感じてしまうのか、藤花の肩は何度も跳ねた。目をますます見開かれていく。まずい、という意思がはっきり感じられる、緊迫感した目元だ。
『ひゃははっ、感じてやがる!』
『ああ。強情なくせに、わかりやすいガキだぜ』
 藤花の些細な変化も、調教師共は見逃さない。しっかりと声に出して嘲り、相手の心を追い詰める。そんな流れの中、ドクロタトゥーも動きを見せた。藤花の左脚を肩に担ぎ上げてから、腰を叩きつける。いきなり、根元まで。
『ふぉもおおおッ!!!?』
 藤花から漏れた声は大きい。それに比例するように、身体も大きく反応する。肩が跳ねるどころか、腰から上すべてがぶるりと震え上がった。もちろん、下半身も無反応でいられるわけがなく、内腿には透明な三角錐を埋め込まれたような溝が刻まれた。絶頂したのか、ただの一突きで。
『はっ、奥まで突っ込まれただけでイッたか? ドナンでトロトロに蕩けたケツ犯されんのが、好きでたまんねーらしいな。けど、ほどほどにしろよ。あんまケツで感じてっと、口に溜まったクソ飲み込んじまうぜ?』
 ドクロタトゥーは藤花の反応を嘲笑いながら、本格的に腰を使いはじめた。藤花の左脚を担ぎ上げたまま、右太腿を手で引きつけ、パァンパァンという肉のぶつかる音を響かせる。それを受ける藤花は、異様だった。肉体は電流が走るかのような反応を見せ続ける一方で、首から上は凍りついている。
『あお、お、おが……あ゛っ、あ゛……あ゛!!』
 呻き声は抑え気味で、表情筋も動かない。それでも口の端からは、唾液交じりの茶色い汚液が滴り落ちていく。
『くくくっ。クソを飲み込まねぇように、必死だな』
『そりゃそうだろ。クソなんて食っちまったら、どんな病気になるかわかんねーからな。せいぜい頑張れやオトコ女、剣道で鍛えたご自慢の根性でよお!!』
 地獄のアナルセックスを見守る3人は、藤花の必死さを軽薄に嘲笑う。しかも、それだけじゃない。奴らは注射器を手に取ると、藤花の乳輪に針を刺した。
『ごがああっ!?』
 藤花が目を見開いて横を見やる。注射した迷彩ズボンはその視線を受け止めながら、乳首を指先で刺激しはじめる。
 注入された薬は、局部的に感度を上げる薬なんだろう。刺激された藤花の乳首が、みるみる屹立していく。
『もが、おがっ……!!』
 藤花が目を見開いて横を見やった。他ならぬ彼女自身が、誰よりも状況の悪さを察しているはずだ。そんな彼女の眼前に、また一本の注射器が翳され、逆側の乳房へと打ち込まれていく。その上で両サイドから乳首を嬲られれば、藤花の頭上で狂ったように鎖が鳴った。
 幼い頃から鍛えてきた藤花は、極めて健康で、そのぶん感度もいいはずだ。乳房に投薬された状態で嬲られれば、相当に昂ってしまうことだろう。
 だが彼女は、ここで意地を見せた。胸を弄る男共を、鋭く睨み据えた。
 男共は口笛を吹き、より陰湿に獲物を追い込んでいく。

 アナルセックスの体位は何度も変わった。中でも、藤花の脚を真上に揃えて股を閉じさせたまま、最大級の摩擦で肛門内を蹂躙する……このやり方は、特に藤花を苦しめた。感じすぎてしまうのか、汚物を飲み込むまいとする顔は苦悶に満ちていた。
 そして、更にその後。太腿を抱え上げ、ほぼ真横から突き込む体位になれば、藤花の余裕は完全に消える。
『ほごっ、ほごおおおお゛っ!!! おもお゛っ、ほっ、ほおお゛っ!! るぉおお゛お゛ーーーっ!!!』
 顔面を蒼白にしながら、何事かを喚き続ける。身体の反応も相当だ。尻が完全に床から浮き、脚はほぼ直角を保ったまま、つま先立ちになっている。日々鍛え上げた肉体だけに、力を籠めた時の筋肉の盛り上がりも半端じゃない。特に大腿四頭筋は、上等な木材に鉋で深く溝を刻んだような有り様だ。
『こいつ、脚の筋肉ハンパねーな。陸上部の女よりヤベエ』
『こんだけ力むってこたぁ、アナルファックがよっぽど良いんだろ』
 ピアス男と迷彩ズボンが、藤花の脚を見て笑う。ドクロタトゥーの男も同じく鼻で笑った。
『ケツだけじゃねーぞ。さっきから、腸奥経由でポルチオ突きまくってんだ。こいつもすっかり浣腸で感じる体になってるからな。ドナンを目一杯我慢した後じゃ、ポルチオもトロトロだろうぜ』
 その言葉で、調教師の顔に納得の色が浮かぶ。
『ほー、そりゃキツいこった』
 1人がそう言いながら藤花に近づき、乳首を思いきり捻り上げた。
『おがああああ゛ア゛ッ!!!!』
 藤花から悲鳴が上がり、弓なりの身体がガクガクと痙攣する。口端から垂れる茶色い筋はさらに太さを増し、口内でも汚物が煮立ったチョコレートのようになっている。
『ハハハハハハッ!!! 口一杯にクソ食わされてる状況で、のほほんとケツで感じまくって、ブクブクブクブクくっせぇ泡噴いてよぉ! 人として終わってんなあ、オメエ!!!』
 ドクロタトゥー達は口汚く詰りながら、最後の追い込みを掛けた。容赦なく肛門を犯し、藤花の尻から腸液を滴らせる。乳首を徹底的に指で刺激し、病的なほどにしこり勃たせていく。
 この間、藤花がどんな気持ちだったのか。そんなものは、映像だけでは到底読み取れない。それでも、壮絶に歪んだ表情がヒントにはなる。
 彼女は汚辱と快楽がない交ぜになった極限状態の中、死に物狂いで耐えたはずだ。だが、それにも限界が来る。いや……限界になるまで、解放されない。

『もお゛やえてくれええ゛え゛え゛っ!!!』

 最後の最後、藤花が轟かせた叫びは悲痛だった。口内の汚物を盛り上げながらの、必死の哀願。調教師共はそれを耳にし、待っていたとばかりに目を細める。
『へへへ、とうとう音ェ上げやがった。そろそろ、クソを口に溜めとくのも限界ってか。なら、正直に答えろ。ドナンが好きなんだろ? ドナンでトロけたケツを犯されて、嬉しいんだろ?』
 悪意たっぷりにそう問われると、藤花は言葉に詰まる。だが、彼女はすでに余裕など微塵もない。
『…………ふぉ、ふぉうら…………』
 屈辱を飲み込み、凌辱者の望む答えを絞り出すしかない。
 当然、調教師共は大いに笑う。
『ぎゃっははははっ!! とうとう認めやがったぜ、こいつ!!』
『はっはっはっは、傑作だ!! そうだ、それでいい。もう俺らにナメた態度取んじゃねーぞ。俺らイラつかせたら、またコレやらせるからな。そん時ゃ、一切勘弁しねぇ。調教師全員のクソ詰め込んだ状態でイラマかまして、クソを喉の奥まで突っ込んでやる。ハラが風船みてぇに膨れ上がるまでだ。いいな!!』
 悪魔じみた笑みでそう恫喝されれば、藤花は青ざめた顔で、何度も頷くしかない。
 傍から見ているだけでも、心が痛くなる光景。大和男児の首が斬って落とされた瞬間を、また目にした気分だ。

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                 ※

 悪夢のような映像が終わり、モニター画面が切り替わる。足首を結び合わされた藤花と沙綾香の姿が、俯瞰で映し出された。
「……っく、……っ!! ひ、っく……う…………っ!!」
 大写しになった画面の中では、沙綾香がしゃくり上げていた。その眼はモニターの方を向いている。親友が『壊された』瞬間を目の当たりにして、堪えられなくなったんだろう。その反応に、藤花が狼狽える。
「どうして泣くんだ、沙綾香。あれは、俺が意地を張った結果だ。沙綾香が気に病む必要は──」
「違う、私が悪いの!」
「……なに?」
「藤花がこんな目に遭ってるの、私のとばっちりなの! ここの奴らは、私を攫うのが目的で、藤花達は巻き添え。沙綾香と仲が良かったって理由だけで、選ばれたんだよ……」
 しゃくり上げながら、誘拐の真実を語る沙綾香。それを聞いて、藤花は顔を強張らせる。だが、それは一瞬のことだった。
「なるほどな。やっぱり、か」
 表情を少し緩め、藤花が呟く。今度は沙綾香が驚く番だった。
「やっぱり、って……藤花、気付いてたの?」
「ああ。他の4人はともかく、貧乏道場で剣の修行に打ち込んでいるだけの俺を、リスク覚悟で攫うのはおかしいと思っていた。だが他人の巻き添えというなら、納得がいく」
 藤花のその言葉を聞き、沙綾香はいよいよ泣きそうな顔になる。
「…………ごめん」
「謝る必要はないだろう。巻き添えだろうと、沙綾香が悪いことにはならない。それに、な」
 藤花は諭すようにそう言い、ふっと笑った。何かに酔いしれたような、妖しい笑みだ。
「俺は、むしろ感謝したい。俺はここで、新しい生き方を見つけた。兄や父に後れを取るまい、弟達に抜かされるまいと気張っているばかりの人生だったが、ここで被虐の悦びを教えていただいたんだ。俺は、その新しい道を全うしたい。一匹のメスとして主に仕え、悦んでいただければ──」
「やめて藤花っ!」
 藤花のうっとりとした語りを、沙綾香が遮る。
「なっ……ど、どうしたんだ、沙綾香!?」
「どうしたって、そんな考え方、おかしいよ! ここの連中に毒されてる!」
 沙綾香は声高に訴える。誇り高い“大和男児”の口から発される、碌でもない言葉。それを聴くに堪えなかったんだろう。当然の反応ではあるが、手越達にしてみれば爆弾発言だ。
「おいおい嬢ちゃん……えれぇこと口走りやがって。今は、仮にも審査会の真っ最中だぜ?」
 手越の呆れた声を聴き、沙綾香がハッとした顔になる。だが、もう遅い。

「やっぱあの、妙にムラっとくる方が目玉か」
「確かにあれは、倶楽部も目をつけるわけだ。魔性の女だからな」
「でもよ、だったらとんだ出来レースだよな。どっちが最高の奴隷か決めるなんて題目だったが、もう決まってんじゃねえか」

 裏事情を知った20人の客達は、顔を見合わせながら囁き合う。倶楽部的にはまずい状況だけに、手越は頭を抱え、端塚も静かにグラスを置く。一方でロドニーだけは、逆境を楽しむようにゲラゲラと笑いはじめた。
「ハハハハハッ、傑作だ! あんだけ気負っといて、テメェから勝負を放棄するとはよお!」
 ロドニーの嘲笑を受け、沙綾香が俯く。ロドニーはそれを見つつ続けた。
「バレちゃしょうがねぇ、暴露しちまおう。『最高のマゾ奴隷』なんて触れ好みの、この沙綾香ってガキだがな、実はまだまだ調教途中だ。服従するどころか、未だに俺らのことを敵と見做してやがる」
 ロドニーの言葉に、客の動揺ぶりが増す。倶楽部側が堂々と虚偽を認めたんだから当然だ。その不穏な空気を感じ取りながら、ロドニーは指を鳴らした。
「だがよ、旦那方。マゾ奴隷ってのは何も、従順ならいいってもんじゃねえ。口でいくら拒もうが、アソコが濡れてりゃあ、そいつは紛うことなきマゾ奴隷だ。肉体的に屈服してるわけだからな。違うかい?」
 天を衝く巨躯から発せれる豪放な語りは、場の空気を変えた。
「……なるほど。カラダは正直、というやつか。一理あるな。よし、いいだろう。私はこの勝負、認めるぞ!」
「私も、続行でいいわ」
「俺もだ。面白えじゃねぇか!」
 客の1人が頷けば、他の客もそれに続く。いかにもロドニーの説得に応じた風だが、本心は別だろう。あいつらは、ただ単に沙綾香の被虐が見たいんだ。この場で勝負が決まり、審査会が行われない事態を避けるため、調子を合わせているに違いない。
「…………ふう。まったく…………」
 俺の前で、端塚が大きな溜め息を吐く。奴も能面のような顔の裏で、この事態に肝を冷やしていたらしい。

 こうして、審査会は予定通り行われることになった。ただし、これまでの3回とは違う。沙綾香に反骨心が残っていると明らかになった以上、もう演技は必要ない。ありのままを客に晒すしかない。これは残酷だ。もしそれで審査会に勝ったなら、それはさっきロドニーが口にした、『肉体が屈服』していることの証明となる。かといって、負けるわけにもいかない。すでに精神の危うい藤花が黒人共の玩具になれば、今度こそ自我崩壊は決定的となるだろう。
 勝っても、負けても生き地獄。それが、今回の審査会だ。

                 ※

 客のざわつきが収まるにつれ、腹の音が聴こえるようになった。ごぉおおるるる、ぎゅごるるるる、という、それは凄まじいものだ。
「さすがにドナンは、凄まじい音になるな。グリセリンではこの音は聴けんだろう」
「おまけに、入れてからもうだいぶ経ってるだろ。20分ちょいってとこか?」
「今でジャスト25分だ。注入の時に時計を見たから間違いない」
 客達は言葉を交わしながら、嬉々として少女2人を見下ろす。壁の巨大モニターに目をやれば、その視界は俺にも共有される。
「はっ、はっ、はあっ、はあっ、はあああっ…………!!」
「フーッ、シーッ、フーッ、フーッ、シーッ…………!!」
 沙綾香と藤花は、眼を見開き、早いペースで息を吐いていた。完全に息を乱している沙綾香に対し、藤花の呼吸は鋭く、規則正しい。日々の稽古の中で体に叩き込んだ、スタミナの消費を抑える呼吸法だろう。
 だがそれをもってしても、限界は近いようだ。汗に濡れ光る藤花の身体は、細かな痙攣を続けていた。縛り合わされた膝から下は動かないが、それ以外の部分はピクピクと細かに動き、栓を嵌め込まれた臀部も艶めかしく円を描く。もちろんそれは、沙綾香も同じ。
「ひひひ、苦しそうだな」
「うむ。人間いくら鍛えようと、便意には敵わんらしい」
 苦しむ2人を眺め、頬を緩める客の顔。それもしっかりモニターに映り込んでいる。醜悪だ。その視線に晒され、沙綾香が口を閉じた。虚空を彷徨っていた瞳もしっかりと客の顔に焦点を結ぶ。
「おっ。あの沙綾香とかいうガキ、こっち睨んでやがるぜ」
「顔真っ青にして、震えまで来てるってのに大したもんだ。調教途中ってのはマジらしいな」
「楽しみねぇ。あの生意気な顔が、どんなふうに崩れるのか……早く見たいわ」
 客は沙綾香の気丈さを喜び、口々に囃し立てる。そんな中、ロドニーが客に近づき、2つのリモコンを手渡した。
「……これは?」
 圧倒的なロドニーの巨躯に威圧されながら、渡された客が訊ねる。
「あのアナルプラグは電動式でな、そのリモコンだ。ま、押してみな」
 ロドニーはふてぶてしく葉巻を咥えたまま、沙綾香達の方に目を向ける。リモコンを手にした2人の客は、顔を見合わせて頷き、リモコンのスイッチを入れた。その途端、重苦しい駆動音が響きはじめる。
「あぐうううっ!?」
「ふああああっ!!!」
 沙綾香と藤花は、腰を震わせながら叫んだ。
「おっ、効いてる効いてる!」
「結構でかい音してるもんな。バイブっつーか、乗馬マシンみたいな」
 客は手を叩いて嬉しがり、ロドニーも誇らしげに煙を吐き出す。
「パワーは10段階だ。ま、好きに遊んでくれ」
 ロドニーがそう許可を出せば、客達はここぞとばかりにリモコンのスイッチを弄り、沙綾香達を追い詰めに掛かる。
 ただでさえ極限の便意に苛まれているところへ、振動を加えられては堪らない。
「うああ、あ、あ……ああああだめえっ!!」
「くあっ、ふんんっぐううぅううっっ!!!!」
 アナルプラグが唸りを上げるたび、沙綾香と藤花から悲鳴が漏れる。
「そーら、8段階目いくぜ!」
 客の1人がそう言ってスイッチのツマミを押し上げれば、また藤花の腰が震え上がった。
「くあああああぁっ!!!!」
 藤花は絶叫を迸らせながら、足首を尻側に引き付ける。沙綾香の脚と拘束帯で連結された脚を。沙綾香の方は当然、足首を頭より上に掲げるハメになる。
「ひいいっ!?」
 今度は、無茶な体勢を強いられた沙綾香が叫ぶ番だった。
「あっ!? す、済まない、沙綾香っ!!」
 友人の異変に気付いたんだろう、藤花が慌てて謝罪する。沙綾香もそれを受けて「大丈夫」と囁こうとしていた。だがそれよりも、客がツマミを弄るタイミングが一瞬早い。
「「んぐううううっ!!!!」」
 今度は、2人が同時に唸り声を上げた。せっかく中央に戻ろうとしていた四本の脚が、またしても藤花の方へと引き付けられる。
「おっ、またすげぇ反応!」
「はははっ! あの沙綾香ってガキ、思いっきりマングリ返しのポーズしてやがる!  ドナン我慢しながらのあれは、キッツいぞー」
「今度はどっちも足に力入ってたみたいだけどな。綱引きは藤花の勝ちか?」
「そりゃそうだろ、全国レベルの剣道家だ。脚の力もハンパねぇだろうぜ」
「確かにこうして見ると、だいぶ下半身の造りが違うな。藤花は機能美、沙綾香は官能美というところか」
 客達は気楽な会話を交わしながら、リモコンを順に回して弄りつづける。どいつも鼻息は荒い。今や、バスローブ型の館内着越しにも、逸物の膨らみが見て取れるほどだ。
「やめて、もうやめてっ!! もれちゃう、でちゃうううっ!!」
「漏れるっ、限界だ!! 出したい、出したいっ!!!」
 嬲る方は楽しくとも、嬲られる方は地獄だ。沙綾香と藤花は涙を浮かべ、何度も顔を振る。いつの間にか絡み合わされた足指も、お互いの指を欝血するほどに握りしめている。腹の鳴りはより性質が悪くなり、肛門からは極太のアナルプラグでも制しきれない、薄黄色の液が滴り落ちていく。
「そろそろ限界か。よーし、出させてやるか」
 ロドニーがそう宣言すると、客が野次を飛ばすのをやめ、ロドニーの方を見上げる。もっと楽しみたいが、その不満を言い出せない、そんな顔だ。逆に沙綾香達は、助かったとばかりに虚ろな目に光を宿す。
 だが。ロドニーが続けて言い放った言葉で、どちらの態度も変わる。
「ただし……楽にすんのは、先に『出させてください』と言った方だけだ。言わなかった方は、その後30分放置する」
 この発言で、沙綾香と藤花が息を呑んだ。逆に客達は、そういう趣向かとばかりに手を叩く。
「なるほど、そりゃあいい!」
「助かりたきゃ、相手を谷底に蹴り落とせってか! はははっ、残酷なゲームだな!」
 客が大いに盛り上がる中、沙綾香と藤花の顔はさらに青ざめたように見えた。菱形を作る足の中で、互いに目を見合わせる。そのタイミングでまた腹が切なく鳴ると、どちらともなく視線を切った。

 そして、2人は耐えはじめる。唇を噛み、眉を顰めながら。
「どうした、早く言えよ。出させてくださいってよ!」
「限界なんだろ? 出ちゃう出ちゃうーって、さっきから騒いでたじゃねぇか。言えよ、ホラ!」
「しんどいんだろ? 早く楽になりゃいいじゃねぇか!」
 客は悪意を篭めて、口々に野次を飛ばす。リモコンの操作も止むことはない。
 2人は、苦しんでいた。何度も腰を浮かせ、太腿を震わせる。気丈に唇を噛んでいたのも最初の数秒だけで、すぐに大口を開け、音程の不安定な叫びを漏らしはじめる。それでも、「出させて」の言葉だけは発さない。互いを思いやるその友情は、この世で本当に美しいといえるものだ。
 だが、客共はそんな美しさに感動したりはしない。濁った瞳で、薄ら笑いを浮かべながら2人を眺めているだけだ。そんな中、1人がふと何かに気付いた。
「なあ、あいつ……この状況で、感じてんじゃねぇか?」
 奴はそう言って藤花を指す。すると、沙綾香とで2分されていた視線が、一気に藤花に集まった。
「おいおいおい……マジだ。マンコ濡れてんじゃねぇか!」
「おお、確かに! よく見つけたなー。マンコがヒクヒクしてるとは思ったが、まさか濡れてるとはよ!」
「乳首も勃っているな。完全に発情しているようだ」
「ふふふ、排泄我慢の苦しさで濡らすとは。流石はマゾ奴隷だ!」
 別の客も藤花の変化をあげつらい、ゲラゲラと笑いだす。
 藤花が便意に苦しんでいるのは確かだ。だがよくよく見れば、確かに彼女の割れ目はかすかに開閉し、愛液を滲ませている。
「っ……!!」
 指摘を受けた藤花は、明らかに狼狽しはじめた。それこそ、彼女が感じた証拠であり、客の笑いが大きくなる。それがまた、藤花の顔を歪ませる……その悪循環だ。
「笑わないでよっ!!」
 悪循環を断ち切ったのは、沙綾香の一喝だった。場が一瞬、しんと静まりかえる。
「藤花の何が悪いわけ!? 藤花をこんなにしたの、あんたらじゃない! 自分でやっといて、全部自分らが悪いくせに、なんで他人事みたいに笑えんの!? あんたらには、人の心ないわけっ!?」
 沙綾香は憤っていた。汗の滲む顔を歪め、声を張り上げて。
「沙綾香……」
 自分に代わって怒りを爆発させる親友を前に、藤花が泣きそうな顔をする。
「はっは、これは手厳しい」
「まさか、VIPルームまで来て奴隷に怒鳴られるとはな。大したじゃじゃ馬娘もいたもんだぜ」
 客は苦笑しながらも、沙綾香の気丈さを楽しんでいるようだった。
「よし、決めたぜ。調教師さん、こっちの藤花って子を解放してくれよ。ドナンで苦しむどころか、悦んでるようじゃ興ざめだ」
「異議なし。そっちのカッコイイお嬢ちゃんは、もう30分頑張ってな。ドナンを都合1時間も我慢するとなりゃ、どうなるかわかんねーけどな!」
 1人の客が藤花の解放を提案すれば、他の客も次々とそれに乗る。藤花と沙綾香、両方が表情を強張らせた。
「なっ……ま、待て! 先に解放するのは、沙綾香にしてやってくれ! 俺は浣腸慣れしているから、もう30分でも耐えられる。だが、沙綾香は無理だ! 初めてのドナンをもう30分なんて、耐えられるはずがない!!」
 藤花は血相を変えて訴える。長時間のドナン浣腸で心が折れた経験があるせいで、余計に必死なんだろう。だが、そんな訴えを客共が呑むはずもない。むしろそうして騒げば、奴らの選択が正しいと証明するようなものだ。
「外してくれ」
 客の要請を受け、迷彩ズボンの男が、藤花の黒い拘束ベルトに手をかけた。
「よせっ、やめろ!」
 藤花が必死に叫ぶ中、引き絞られたゴムチューブの金具が、一つずつ外されていく。そして、四つすべてが外れた瞬間。
「わあああああアアーーーーーっ!!!!」
 藤花が、絶叫した。同時に、アナルプラグが肛門から盛り上がり、ぶじゅるうっと音を立てて抜け出たかと思えば、円転しながら弾け飛ぶ。壮絶な有り様だが、そちらに注意を向ける間もなく、肛門の決壊が始まった。ぶびゅっ、ぶぢいっと耳障りな音を立てながら、汚液があふれ出す。固形物を食べさせていないらしいから、色は濃くはない。それでも、胆汁の色にしっかり染まった黄色い半固形物が、真上に噴き出していく。何度も、何度も。
「うはははっ、すごいな。これがドナンの効果か!」
「まるで噴水だな。下手すりゃ天井まで届きそうだぜ」
「ケツがヒクヒクして、キモチよさそうなクソだな。顔もトロけてっしよ」
 客が指摘する通り、ドナンを長く耐えた後の排便は凄まじい。そしてその排泄の最中、藤花が絶頂を思わせる反応を示しているのも事実だ。だが、悪いのは彼女じゃない。さっき藤花が訴えたように、そう作り変えたこの倶楽部こそが悪だ。

                 ※

 出すものを出した後、藤花の肛門は開ききっていた。朱色の粘膜が外へ捲れかえった様は、モニターで目の当たりにすると背筋が凍る。
「ほお……ドナン浣腸した後の肛門は初めて拝むが、いや、こりゃすげぇや」
「ダリアの花、だな。まさしく」
 客も流石に息を呑んでいるようだ。だがその強張った顔も、段々と卑しい笑みに戻っていく。そんな中、ロドニーが鉄格子の扉を開け放った。
「ったく、待たせやがって!」
「こっちは昨夜もヤッてねぇんだぜ!? いい加減、コックが破けて血が噴き出しそうだ!」
 黒人共が悪態を吐きながら、次々と姿を表す。規格外の肉棒をそそり勃たせた、圧倒的な巨躯を誇る10人の超雄。それを目の当たりにした客は、誰からともなく後退していく。誰が主役で誰が傍観者か、その格付けが一瞬で決まった形だ。
「かーっ。近くで見ると、本当にデケェ穴だな!」
「まるで洞穴だぜ。突っつきゃコウモリでも飛び出してくるんじゃねぇか?」
 黒人共は、藤花のアナルを見下ろして肩を竦める。日本人の倍は太い『コック』でも、ドナンで弛緩しきった肛門を埋めるには不十分だ。刺激を与えうるとすれば、10人中でも別格のペニスサイズを誇る3人……モーリス、ダリー、タイロンぐらいか。
「こいつは、俺が可愛がってやる」
 そう言って一歩踏み出したのは、モーリスだ。奴はバットの先端を思わせるペニスを悠々と扱き上げ、客を絶句させる。そして、同じく顔を強張らせている藤花の背後につくと、その開ききった肛門へとペニスを突っ込んだ。
 本来なら、メリメリと音でもしそうな挿入となるところだが、今回は違う。肛門が緩みきっているせいで、いきなり深くまで入り込んでいく。となれば当然、藤花の反応も早かった。
「ぁ……あ、ああっ!? なっ、ふ、深ぃいッ!? 腸の、奥の奥まで……ッ!」
 ものの2秒とかからず、藤花の目が見開かれた。悠に25センチを超えるだろうペニスに驚愕しているようだ。
「くくくっ、イイ反応しやがる。そのデカチンだ、直腸のどん詰まりなんざ軽く通り過ぎてよ、結腸まで入り込んでんじゃねぇか?」
「ペニスサックで無理矢理盛った俺らのと違って、黒人の生チンポは“存在感”が違ぇだろ。お客さんに、どんな感じか解説してみろ!」
 さっきまで責めの主体だった迷彩ズボンと剃り込み男は、やや距離を取って腰を下ろし、傍観する側に回っていた。それでも、藤花にとって絶対的な主であることは変わりないらしい。
「はぁ、はぉあ、はああ……。そうだ、存在感が、ち、違うう゛っ……! 熱いものが、粘膜に吸いついて……ドックンドックン、脈打って、存在を主張してくるんだ……。こ、興奮してしまう……またっ、女にされる…………!!」
 激しく喘ぎながら、アナルセックスの快感を訴える藤花。その訴えは、言語の壁を越えてモーリスに伝わったらしい。
「オーケイ、ジャパニーズッ!!」
 モーリスはそう叫ぶと、さらに深く腰を突き込む。陰毛すら尻の間に隠れる、奥の奥まで。その瞬間、藤花の両脚が震え上がった。
「んんおおおお゛っ!! おお、お、おおおっ! ん、ぐっ……ふぐううっん、ぅんん…………ああんンンン゛ン゛ン゛っ!!!」
 もはや言葉にすらなっていない。だが、その絞り出すような呻きは、どんな言葉よりも雄弁だ。モーリスの亀頭が、直腸を越え、結腸にまで入り込んだ。ドナンの余韻で蕩けている藤花は、それによる絶頂を回避できなかった。そんな想像が、容易にできてしまう。
「ひゃはっはっは、脚がブルッブル震えてんぜ!」
「くくっ、凄い凄い。子宮イキとそっくりの反応だな。まあ実際、子宮を薄皮越しに突かれて感じているのかもしれんが」
「ありえるな。膣からの挿入だと子宮口を叩く形になるが、腸側からだと子宮の側面を擦る形だ。女によっちゃ、直腸経由のがイキやすいらしいぜ?」
「なんにせよ、ケツで感じてんのは確定だな。処女のまんま、直腸セックスで子宮イキするサムライ女子高生とかよぉ、エロすぎんだろ!」
 客は蘊蓄を垂れながら頬を緩める。
「と、藤花……。」
 一方で沙綾香は、間近で歪む親友の顔を見つめていた。信じられないんだろう。藤花と日頃から接していた沙綾香は、その鋼のような心の強さを、俺以上に知っているはずだ。
「なんだよ、友達の顔ばっか見て。デカチン突っ込まれてヨガってんのが、そんなに羨ましいのか?」
 客の一人が、沙綾香の反応に気づいて茶化す。
「はぁっ!?」
 沙綾香は客に視線を向けた。胸に渦巻く感情を乗せた、強い瞳で。
「おっ、凄いな。まだ睨む気力があるとは」
「ホントにな。クソ我慢しすぎて、真っ青なツラしてるくせによぉ!」
 客共は沙綾香に注意を抱き、視線を集中させはじめる。
 ドナン浣腸を施されてから、約35分。沙綾香の様子は、前以上に悪くなっていた。
 カメラに映るほどの鳥肌が立ち、細かに震えつづける様は、雪山に丸裸でいるかのようだ。だが一方でその全身には、真夏のジャングルにいるかのような、じっとりとした脂汗が滲みだしている。普通の環境ではありえない、出鱈目な反応だ。その元凶である腹の音も、依然として凄まじい。ぐぐぐおるるるる、きゅるる、ごろろ……と、無数の動物が鳴き続けているような規則性の無さだ。
 それに加えて、彼女を追い詰める要因はあと2つある。
「あおおっ、あおお゛お゛お゛っ!! ひいッ、イクッイク!イ゛イ゛ッてしまう゛う゛っ! 沙綾香、すまない、すまないいっ!!」
 一つは、モーリスにアナルを犯される藤花だ。言葉通りに絶頂しているらしく、何度も膝を内に曲げている。そのたび、沙綾香が無理な体勢を強いられると理解してはいるようだが、どうしようもないらしい。
 そしてもう一つは、不可抗力でもなんでもない、純粋な悪意だ。
「そら、またいくぜぇ!」
 客の1人が、そういってリモコンに指を掛ける。次の瞬間、アナルプラグから漏れる音が、また激しさを増した。
「んぐううっ!!!」
 沙綾香は目を細め、尻を揺らす。
「くひひっ。気合の入った眼ェしてても、身体は正直だな。便意が荒れ狂ってる腸を揺さぶられちゃ、堪んねぇってか?」
 また別の客が、そう言って沙綾香の尻をはたく。その痛みにも、今の沙綾香はわかりやすく反応した。
「痛っ! ちょっと、やめてよっ!」
 沙綾香は、間違いなく本気で嫌がっている。だが変態客にしてみれば、それこそが興奮するようだ。
「おっほ、いいねぇその視線! 俺にもくれよ!!」
「俺も睨んでくれや、サヤカちゃぁん!」
 客達は、あえて沙綾香の逆鱗に触れる行為を繰り返す。尻を叩き、揉みしだき、両側から圧迫し。ただでさえ便意が限界の中、そんな事をされれば冗談では済まない。
「いや、やめてっ! やめてったら、ホントやめて!! キモいって!!!」
 沙綾香は本気で怒り、顔を歪め、客の顔を睨みつける。だがそれは、火を扇いで消そうとするようなもの。必死にやればやるほど、火の勢いは増していく。

 まずい感じがした。今の状況は、疲労困憊の人間が、さらに殴られているようなもの。どうにかならないはずがない……そんな予感があった。
 そしてその予感は、すぐに現実になる。最悪の展開として。

「おい、こいつ……!?」
 ある客がそう言って、沙綾香の割れ目に注意を向けた。それにつられて、別の客も視線をずらし、ほくそ笑む。
 モニターには、奴らの喜んだ理由が大々的に映し出されていた。藤花と違い、しっかりとした使用感のある沙綾香の割れ目周りが、濡れている。そう、“濡れた”んだ。浣腸を我慢し、電動のアナルプラグで責められた、それだけで。
 もっとも、理屈としてありえないことはない。昨日一晩掛けて、あれだけ入念にアナル性感を開発されたんだ。その熱も冷めやらぬ今、極限状態で濡れてしまうことは、仕方ないといえば仕方ない。
 だがその事実は、間違いなく恰好の笑いの種になる。俺は、ただそれが辛かった。
「おいおいおいおい、お前もかよ!?」
「くくくっ。嫌だ嫌だと言っておきながら、しっかり濡れているじゃないか!」
「テカテカじゃねーかマンコが! 何に興奮したんだよオイ? お友達がクソ食わされてる映像か? クソ我慢してるとこ見られんのがそんなに好きか? どっちにしても終わってんなあ!」
 鬼の首を取ったような──そう形容するしかない、怒涛の罵詈雑言が浴びせられる。
「あ、あ……っ!!?」
 沙綾香自身、自分の変化には気付けていなかったんだろう。モニターを見て事実を目の当たりにし、客の言葉に打ちのめされて、表情が歪む。そうして沙綾香が退いた分だけ、客は嬉々として踏み込んでいく。
「わかんねーもんだな。顔は正統派の美少女って感じなのに、ここまでのマゾとは」
「しかも、並のマゾじゃねーしな、クソ我慢しながら濡らすとか。こいつ、女子高生だろ? 学校でもトイレ我慢しながら、パンツグチョグチョにしてんのかな」
「こんだけエロ可愛かったら、ファンもいそうだよな。そいつらに教えてやりてーわ、こいつの本性!」
 客は沙綾香の割れ目に視線を集中させ、無遠慮に詰りつづける。今の沙綾香に、それはかなり効くようだ。
「すげー、どんどん濡れてきた。やっぱこいつ、言葉責めで興奮するタイプだわ」
 そんな指摘があった通り、ここから沙綾香は、緩やかに壊れはじめた。
 客から野次られるたび、いちいち反応を示す。アナルプラグが唸りを上げるたび、切なそうに腰を揺らし、愛液を吐き零す。
「うあああっ!?」
 客の1人が割れ目に指を差し込めば、かなり大きい声も出た。
「前は使わんでくださいよ」
 手越が釘を刺しても、客のにやけ面は消えない。
「なに、心配いらんよ。これだけの上玉だからな、アソコを弄っているだけでも楽しめるというものだ」
 奴はそう言って指を蠢かし、ヌチヌチと音を立ててから、指を引き抜いた。そして愛液のたっぷりと纏いついた二本指を、沙綾香の見ている前で舐めしゃぶる。
「ッ!!」
 沙綾香は当然顔を顰めるが、それこそが奴の望みなんだろう。
 こうして一人が一線を超えれば、それに続く連中も次々と出てくる。
「すげぇ、もうグチョグチョだ!」
「Gスポットはどこだ……この辺りか?」
 一人また一人と沙綾香の割れ目に指を差し入れ、無遠慮に刺激する。
「やめて、ホントにやめてってばっ!! 漏れちゃうっ!!!」
 沙綾香は嫌がるが、拒絶する術はない。
「なにが漏れるんだ。小便か?」
 客は嬉々として指を蠢かし、沙綾香を追い詰める。
「やめて、もう我慢できないっ!!! 出させて、お願い、お願いいいーーーっ!!!」
「いいぞ、思いきり出させてやる!」
 1人がそう言って、二本指を激しく動かしはじめた。VIPと呼ばれるだけあって、慣れを感じさせる指責めだ。
「そぅら、噴けっ!!」
 その言葉と共に指先が動きを止めると、割れ目から飛沫が上がる。そして同時に、アナルプラグで栓をされた肛門からも、ぶじゅうっという音と共に汚液が漏れた。今回に限った話じゃない。すでに沙綾香の尻の下には、汚液溜まりができている。彼女が強いられてきた無理の象徴だ。
「もお駄目っ!! もう無理、もう無理もう無理もう無理っいいいい!! ぬいて、栓ぬいてえええええっ!!!」
 何人もの男に割れ目の中を弄られながら、顔を左右に振って叫び続ける沙綾香。だが客共は、そんな沙綾香にわずかの同情もしない。
「はははっ、知能ゼロって感じの喋り。クソが限界の時ってこうなるよな」
「まだまだ時間は残っているぞ。頑張りたまえ」
 緊張感の欠片もなくそう言い放ち、沙綾香の顔を引き攣らせる。

「…………あ、ぁ…………ぁああ、あ……あっ、ア゛…………!!」
 
 そこから10分が過ぎた頃には、沙綾香は本当の限界に陥っていた。全身がガクガクと痙攣し、涙の零れる瞳は虚空を見つめるばかりとなり、口からは泡まで噴いている。
「そろそろ限界だな、あいつ。カニみてーにアワ噴いてるし」
「確かに。ロドニーさん、そろそろ……」
 近くで様子を伺っていた迷彩ズボンと剃り込みの男が、ロドニーに声を掛ける。藤花の排泄から30分放置というルール通りなら、あと5分ほど残っている。だが、沙綾香は明らかにもう限界だ。
「させてやれ」
 ロドニーが満足げに頷くと、剃り込み男は頷き、客を下がらせる。そして藤花を解放した時のように、黒い拘束ベルトからゴムチューブの金具を外していく。
「あ、ああ、あ……でる、でちゃうううう゛う゛ーーーーっっっ!!!!」
 4つの金具がすべて外れた瞬間、沙綾香は息を吹き返したように叫ぶ。プラグが弾け飛び、薄い色の汚液が噴き上がり、肛門が火山口のように膨らむ。
「くははははっ、すげぇすげぇ! アイドル顔負けの上玉が、この大人数の前でクソ撒き散らしてやがる!」
「ああ、凄い。調教師さん、後でこの映像をくれないか。一生の宝になりそうだ!」
 美少女の排泄。それを前にして、客は大喜びだ。汚液が降りかかる事すら気にせず、至近距離で沙綾香の恥辱を見届ける。
「……く、ぅ、ううう…………ッ!!!」
 モニターの中で、沙綾香が歯を食いしばり、視線を横に向けた。まるで、強姦された後のように。

                 ※

 恥辱の極みのような経験をした後も、沙綾香に休息は与えられない。
「くくくっ、こっちもすげぇな。開ききってやがる」
「うむ、二輪目のダリアの花だ」
 客は、ドナンの効果で開ききった沙綾香のアナルを眺め、盛り上がった淵を指でなぞる。
「んくうっ!!」
 沙綾香の反応は大きい。それを見て客はまた笑い、黒人共も白い歯を覗かせる。
「こっちは、俺が埋めてやるか」
 そう言って一歩踏み出したのは、タイロンだ。10人の黒人調教師の中でも、最大のペニスサイズを誇る男。その股間にぶら下がる物は、周りの日本人客と同じ生殖器とは到底思えない。
「な、なんと……比喩でもなんでもなく、馬並みだ」
「黒人のペニスは立派だと聞いてはいたが、これは……」
「チンポっつーより、もう子供の脚じゃねーか……」
 タイロンの怒張を見て、客が一人残らず絶句する。飽きるほど見てきた俺でさえ、久々に目の当たりにすると、違和感を覚えるほどの出鱈目なサイズだ。
 タイロンは、他の雄の視線を気持ちよさそうに浴びながら、手のひらに唾を吐きかけた。そしてその手で逸物を撫で、唾液を塗り伸ばしていく。あのサイズともなると、重量がありすぎて『扱き上げる』ことすら難しいんだろう。
「さーて、いくぜ」
 タイロンはそう呟きながら、沙綾香の肛門に向けて腰を進める。
「す、すげえ……馬みてぇにデカイのが、普通に飲み込まれていきやがる」
 客の一人が、溜息でも吐くように呟いた。確かに、黙って見ているのが難しいほど、衝撃的な光景だ。
 タイロンのペニスは、根元に近づくほど太さを増す。幹の半ばを越えれば、ドナンの効果で開ききったアナルですら、完全にスムーズな挿入とはいかなくなる。そしてそれは、沙綾香により大きな刺激が与えられる、ということだ。
 6割ほど挿入が終わったところで、タイロンが動きを止めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
 沙綾香は荒い息を吐いたまま、上目遣いにタイロンを見上げる。
「解るな? 一番奥だ」
 タイロンが短くそう呟くと、沙綾香の喉が鳴る。
「いくぜ」
 さらに一言が呟かれた、直後。タイロンの腰が一気に沈み込んだ。
「おうう゛う゛っ!?」
 沙綾香の口から、濁った呻きが漏れる。彼女は深い挿入への覚悟を決めていたはずだ。だが結局、漏れたのは予想外の声だったらしい。見開いた眼の中、左右に惑う黒目がそれを物語っている。だが、彼女には反省の時間さえ与えられない。
「あっひ、ひいっ!! ぉっご、ふんぐううっ!! ひっ、はうっ……あ…あ゛、ああ゛あ゛あ゛っっ!!!」
 タイロンが斜め上から腰を打ち下ろすたびに、あられもない声が上がる。聴き慣れない声色だ。膣での絶頂と、アナルでの絶頂の違いだろうか。
「おーおー、すんげえ声出しやがって! こっちも結腸でイカされてるらしいな」
「中途半端に我慢しようとしてるせいで、余計みっともない感じになってんな。藤花みたいに思いっきり喘いでる方が、まだ恰好つくぜ」
 何人もの客が、沙綾香の上げた声を詰る。沙綾香はその声を聴き、必死に歯を食いしばりはじめた。

 パンッ、パンッ、と肉のぶつかる音が響き渡る。
「んあっ、グ、イグっ! ぐ、ぉぉああ゛っーーーあ゛っ!! し、尻の穴が、壊れるッ! 結腸まで、道を通されて……作り、変えられる……ッ!!!」
「くっ、う……んぎっ、いいい、ぐ……んっぉ、お……ぐっ!!」
 自分の状況を興奮気味に訴える藤花。歯を食いしばって耐える沙綾香。そんな対照的な2人を、何人もの客が見下ろしていた。
「見ろよ、藤花のあのツラ。完全にケツ犯される快楽に酔ってやがんぜ? マジで感じてんだな、あんなペットボトルみてえの突っ込まれてよ」
「サヤカという娘も、そそる顔をしている。美しい自分が尻で達するなど認めないが、我慢もできんというところか」
 客が口々に言葉を交わす中、モーリスとタイロンが顔を見合わせる。
「いい頃合いだ。そろそろイクか!」
「おう!」
 連中は調子を合わせ、腰の振りを早めた。極太の怒張が激しく肛門に出入りし、まだ残っていたらしい汚液を掻き出していく。
「あ、ああ、あああああっ!!」
 沙綾香と藤花が叫び、2人の肩がガツガツとぶつかる。その末に、モーリスとタイロンが腰を震わせた。一秒、二秒……相も変わらず、長い射精だ。
「な……こ、これは、射精、なのか……!?」
 未知の射精量に、藤花は困惑を隠せない。さらに十数秒が経ち、ようやく怒張が引き抜かれれば、その困惑は客にまで拡がった。
「ううおおおお、すっげぇ……!」
「どんな射精量だよ。ワイングラス半分ぐらいねーか、あれ……」
「マジで馬並みだな……」
 肛門から溢れ出す精液を見て、客が口元を引き攣らせる。だが一方で、連中のギラつく瞳は、こう訴えてもいた。
 この圧倒的な雄のアナルセックスを、もっと見たい──と。




 

二度と出られぬ部屋 最終章 オーバードーズ Part.5(前編)

Part.4の続きです。
 前回から間が空きすぎ&前半だけで5万字近くになったため、一旦投稿します
 (藤花が登場する後半については、もう少々お時間を下さい……)。
 また、アナル開発回のため、浣腸及びスカトロ大が多めとなっております。
 苦手な方はご注意ください。




 千代里との『審査会』の翌朝、百合の姿はフロアになかった。前の晩、客がもう少し借りていたいと言い出し、連れ出していったきりだ。
「VIPルームで、足腰が立たなくなるまで可愛がってやる」
 フロアを後にする時、連中はそう言い残した。黒人に犯され続ける沙綾香を凝視し、怒張をいきり立たせながら。本当は沙綾香としたいが、そうもいかないので百合で我慢する──その思いがありありと感じ取れる態度だ。
 気持ちは解る。俺も沙綾香を初めて見て以来、毎日のように自慰に耽ったものだ。エレベーターの壁を足蹴にする素晴らしい脚線と、寒気が走るほど妖艶な笑み。それが網膜にこびりつき、猿のように逸物を扱きまくった。癒えない渇きに、恐怖と陶酔感を覚えながら。
 沙綾香を目にすれば、大半の男がそうなるに違いない。俺も、客達も、そして黒人連中も。その衝動を抑えて調教師として振る舞えるなら、まさにプロだ。そしてここには少なくとも3人、そういう人間がいる。俺の前で愉快そうにカップを傾ける端塚と、客を沸かせる手越。そして葉巻を吸いながら、終始余裕の態度を崩さないロドニーだ。
 ロドニーの印象は最初から変わらない。初めてその姿を見たのは、藤花を調教している映像だ。ギャング連中を束ねる、マフィアのボス……そう感じさせるだけの威圧感を持っている。
「そろそろマッサージの時間だが、白髪の姉ちゃんが帰ってこねぇな」
 ロドニーは煙を盛大に吐きながら、部屋の中を見回した。
「お、そういや言ってなかったか。昨日の客から延長したいって申し出があってよ、今日いっぱい貸しとくことにした。呂律が怪しかったとこ見ると、ドラッグパーティーでもやってんだろうな。百合のだと思うが、女の悲鳴もしてたぜ。オマンコに打つのはもうやめてーっつってな」
 ソファで寛ぐ手越がそう答えると、ロドニーは鼻で笑う。
「はっ、いい歳してお盛んなこった。だがあの女がいねぇとなると、昼の調教は誰にやらせるかな」
 ロドニーはそこで言葉を切り、しばし考え込む。だがすぐに妙案を思いついたらしく、色黒な頬を緩めた。
「……そういや、次の『審査会』はあの藤花ってサムライガールが相手だよな。となりゃ、やるべきはアナル開発ってわけだ。ちょうどいい、“あの連中”に任せるか」
 ロドニーは一人頷くと、テーブルにあったガスの吸引具を拾い上げ、沙綾香のいるベッドに近づいていく。
「……ッ!」
 沙綾香は、乳房を手で覆いながらロドニーを睨み上げた。
「腐っても財閥令嬢だな、まだ羞恥心が残ってるとは。それでこそ穢し甲斐があるってもんだぜ」
 ロドニーは嬉しそうな声色で囁きつつ、吸引具を沙綾香に近づけた。


                 ※


「んじゃ、行ってくらぁ」
 ロドニーが手越に一声掛け、たっぷりとガスを吸わせた沙綾香を連れ出した。直後、壁のモニターに映像が映し出される。左右に開くエレベーターの扉と、沙綾香の頭頂部。ロドニー自身が構えたハンディカメラの映像だろう。
『ヘンなとこ触んないでよ!』
『なんだ、今ので感じたのか? 随分と敏感だな』
 そんな会話が交わされる中、エレベーターの到着音が鳴り響いた。地下17階……藤花が調教されていたフロアだ。
 エレベーターの扉が開き、大きな扉と、『SM』という文字の刻まれた銀プレートが映り込む。見覚えのある光景だ。だがその扉の先は、過去の記憶とは違う。それはそうだ。俺が前にあそこへ行ったのは、この施設に来て9日目のこと。今はそれから何日も経っているんだから。
『9日目』
『10日目』
『11日目』
 資料館のような展示エリアには、見覚えのない日付のプレートと写真が貼られている。コースがAとBに分けられているのも相変わらずだ。
『おっ。Aコースのガキ共も、結構きついプレイやらされてんじゃねぇか』
 ロドニーがそう言いながら、11日目の写真にカメラを向ける。被写体は、どれも沙綾香と変わらない年頃の子だった。彼女達は悲痛に顔を歪め、涙を流している。鞭で叩かれ、汚水に顔を漬けられ、直腸に異物を詰められ。俺が前に見た8日目までとは比較にならないハードさだ。それまで過激な責めを一身に受け止めていた藤花が9日目に折れ、その矛先がこの子達に向かったんだろう。下衆な客を楽しませる、それだけの目的で。
 ギリリ、と音がする。カメラが横を向くと、写真を見ながら奥歯を噛み締める沙綾香が映った。
『どうした、おっかねぇツラしやがって。こいつらの泣き顔が気になんのか? こんなもん、煙草の吸いはじめに噎せるのと同じだ。ある程度慣れてくりゃ、むしろヤミツキになる』
 ロドニーは茶化すように訊ねながら、カメラを左に振ってBコースの写真を映す。
 そこには、Aコースとは対照的な笑顔が並んでいた。後背位や屈曲位でアナルを犯されながら、筋肉質な少女が笑みを浮かべている。とはいえ、そこに朗らかさはない。酩酊して前後不覚になっている時の表情に近い。
『あれが、“後ろ”の良さを知った人間のツラだ。アナルイキする時ゃ、どんな奴も反応は同じなんだぜ。俺も軍にいた頃は、捕虜を尋問するって任務が多くてよ。捕まえた少年兵(ボーイ)を向かい合わせに立たせちゃ、部下に尻を犯させた。そうすると、どいつも最初は嫌がって喚くんだが、そのうち体中をガクガク震えさせて、未知の快感にヒィヒィ鳴きながら絶頂するんだ。全くの新米だろうが、リーダー気取りで胸張ってた野郎だろうが……』
『やめて。そんな話、聞きたくない!』
 ロドニーの気持ちよさそうな語りを、沙綾香の一言が遮った。
『へッ、そうかよ。なら自分で体感してみるこったな』
 ロドニーは肩を揺らしながら沙綾香の睨み顔を映し、どこからか取り出したアイマスクで彼女の目元を覆いにかかる。
『や、何、何っ!?』
 沙綾香は腕を振って抵抗するが、ロドニーはそれを難なく捌き、額の半ばから鼻上までを覆い隠した。
『なーに、ビビるこたぁねえ。身バレを防ぎながら、気分も出せる優れモノだ。人間ってなあ視界を奪われると、それ以外の五感が研ぎ澄まされるからな。自分に今、何が起こってるのか。誰から、どんな姿を見られ、どういう風に嗤われてるのか。そいつを感じてみな。審査会にゃ影響がねぇようにしてやるからよ、素直に楽しみゃいい』
 ロドニーはアイマスクを固定しながら、沙綾香の肩を抱いて展示エリアの先に進む。
『お疲れ様です、調教師さま』
 二人の受付嬢から頭を下げられつつ、Aコースと書かれた扉の向こうへ。

 プレイルームの扉が開いてすぐに、見覚えのある調教師共の姿が見えた。肩にドクロのタトゥーを入れ、タンクトップで上半身の筋肉とタトゥーをアピールしている男。唇にピアスを開け、アゴ髭を蓄え、ダボダボの迷彩ズボンを履いた男……。
『あれ、ロドニーさん? 何でここに──……っ!』
 連中はまずボスの来訪に驚き、その隣に視線を向けて息を呑む。沙綾香のスタイルに驚愕しているらしい。
『よう。オメェらに、ちっと頼みがあってよ』
 ロドニーはそう言って調教師に近づくと、小声で何か耳打ちする。
『はい、……はい。…………え、マジすか!?』
 調教師共はロドニーの言葉に耳を傾けるうち、愉快そうに眼をギラつかせはじめる。連中は生粋のサディストだ。そういった手合いが眼を光らせれば、ろくでもない事が起きるに決まっている。そう思うのは俺ばかりではないらしく、這いつくばる格好で白濁した餌を食わされている少女4人も、それを取り囲む客達も、カメラの方に意識を向けていた。
『ちょ、調教師さん、その子……何? もしかして、新しい奴隷とか?』
 客の一人が、鼻息荒く歩み寄る。横目で沙綾香を伺う様子からは、あわよくば抱きたいという下心が透けて見えた。
『ああ、説明が遅れてスンマセン』
 ロドニーから耳打ちされていたドクロタトゥーの男が、客の方に向き直る。
『この子は、“VIP用の”奴隷だそうです』
 続くその言葉で、歩み寄っていた客が動きを止める。
『び、VIP……!?』
 心なしか上目遣いのまま、震えた声で訊き返す。町でナンパした相手が、暴力団組長の娘だと判った──そんな反応だ。このフロアの連中にとって、VIP客は雲の上の存在らしい。
『ええ。ただこの子、結構生意気らしくって、このフロアでお仕置きして欲しいそうです。浣腸ぶっ込まれてクソひり出したり、尻の穴犯されたりすりゃ、ちょっとは大人しくなるだろってコトで』
『はぁ!? 何言って……ん、グッ!!』
 あらぬ事を並べ立てるタトゥー男に、沙綾香が抗議する。だがその言葉は、すぐにロドニーの太い腕で封じられた。
『ほ、ほうほう……! それで、俺達が調教してもいいの?』
『したいなあ、ぜひ! とんでもない上玉じゃない!』
 客の何人かが身を乗り出して訊ねると、ロドニーはまたタトゥー男に何かを囁く。タトゥー男は何度か頷き、面白そうに眼を丸めた。
『えー……残念すけど、それはムリらしいっす。この子、VIPの人らのお気に入りなんで、他の男には触れて欲しくないらしくて』
『そ、そう。まあVIP会員がそう言うなら諦めるけど、だったらどう調教するの? 他の男がNGってことは、調教師さん達もダメなんでしょ? でも、今日は女性客いないよ?』
『それなんですけど、こういうのはどうっすかね。今そこで、ザーメン入りの飯を食っている奴隷。そいつらに調教させるんス』
『っ!?』
 タトゥー男の提案を聞いて、伏し目がちだった少女4人が一斉に顔を上げる。口の端に、白濁塗れの肉片をこびり付かせたまま。
『え、こいつらに?』
『レズSMってわけか。へぇ、結構面白そうじゃん』
『だな。よーし、“1号”から“4号”、立て! あの新入りに、アナルプレイの良さを教えてやれ!』
 客達は頷き合い、足元の少女達に命令を下す。彼女達には首輪が嵌められていて、そこに1から4の数字が刻まれていた。さっきの“1号”といった呼び名は、その数字と対応してるんだろう。
『……しょ、承知しました』
 4人の少女は戸惑いながらも、言われるがままに立ち上がった。薄汚れた肌に、痩せた身体。直立すれば、どれだけ粗雑な扱いを受けているかがよく解る。一応はまともな食事が用意され、毎日シャワーも浴びられる沙綾香の方が、衛生面ではマシかもしれない。


                 ※


『それにしても、凄えスタイルだな……』
『藤花っつったっけ。あのデカチチの剣道娘もエロかったが、こっちはそれ以上だ!』
『肌も綺麗だな。おそらくティーンだろうが、それだけじゃない。小さい内から良い物を食べて、良い化粧水を使わなければこうはならんよ』
『なんだなんだ。このルックスで、家柄にまで恵まれたお嬢様ってことか!?』
 10人あまりの客は、想定外のゲストを改めて視姦する。その欲望を一身に浴び、沙綾香は身を掻き抱いた。
『いや、誰っ!? どこに、何人いるのっ!?』
 その様は、初心でありながら煽情的。妖艶でありながら無垢。女として花開きつつも、清純さを失いきってはいない令嬢──居並ぶ客は、そういう印象を受けたに違いない。そして、沙綾香を取り囲む4人の奴隷も。
『…………』
 彼女達は、一言も発さずに沙綾香を見つめていた。歓喜に沸く客とは違い、その表情は暗い。命令通りに立ったはいいが、加虐には気が進まないようだ。彼女達にしてみれば、沙綾香は自分達と似た立場なんだから、当然の反応ではある。だが、客は焦れていた。奴隷が奴隷を虐げるという最低なショーを、一刻も早く見たいという様子だ。その空気を察してか、迷彩ズボンの男が手を打ち鳴らす。
『オラ何やってる、早く始めろ! 言っとくが手ェ抜くんじゃねぇぞ。ぬるい責めしてみろ、ケツに7番のプラグぶち込むからな!』
『ひっ!!』
 調教師の怒声に、奴隷少女達は肩を竦めた。7番プラグというものがどんな代物かは知らないが、奴隷を怯えさせるのに十分な効果があるようだ。
『………………』
 互いに目を見合わせた後、一人が意を決して沙綾香の腕を掴む。首輪に1と刻まれた少女──“1号”だ。
『ひゃっ!? こ、この手……女の、子? 女の子、だよね?』
 沙綾香は一瞬悲鳴を上げたが、掴んだ手のサイズで同性と察したらしく、安堵の息を吐く。だが、少女の顔は依然として厳しい。
『……ごめんなさい』
 彼女は一言そう呟くと、沙綾香の腕を思いきり下に引く。
『え、きゃあっ!?』
 沙綾香が姿勢を崩す中、他の子達も協力し、沙綾香を押さえ込んだ。
『まずは“マングリ返し”だ。そいつのマンコと尻を、よーくお客に見せてやれ!』
 迷彩ズボンの調教師が叫ぶと、“1号”達は力を合わせて沙綾香を逆さ吊りの状態にする。
『や、いやああっ!!』
 沙綾香は当然暴れるが、4対1では敵わない。されるがままに天井へ尻を向け、男達に恥部を晒してしまう。
『うおおおっ、丸見えだ! オマンコも、アナルも! VIP御用達の女だと思うと、余計に興奮すんぜ!』
『他の奴隷にも散々やらせた格好だが、このスタイルだと見応えが違うな!』
『おお。あの長ぇ脚見ろよ、胴体2つ分あんじゃねぇか!?』
 客達の興奮ぶりは相当なものだ。8頭身の身体が取る屈辱のポーズを、食い入るように凝視している。その視線は、舐め回すように脚線を這った後、とうとう恥じらいの部分に注がれた。
『ヴァギナがあんなに拡がって……VIP連中に随分と可愛がられてるらしいな。どんなサイズのバイブを使われてるのやら』
『後ろも多少は使われてんな。ちっちゃく口開いてんぜ!』
『ああ。オイ、もっと拡げてみろ奴隷共!』
 客から命じられ、少女たちは沙綾香の尻肉を割りひらく。逆に沙綾香は必死に閉じようとし、その鬩ぎ合いで肛門が開閉を繰り返しはじめる。
『ははは、ケツがヒクヒクしてんな! ミテクレテアリガトウーっつってよ!!』
『VIP御用達のお嬢様が、ケツの穴で挨拶かよ!? ひーっひ、腹イテェ!!』
 口汚い言葉だ。例の黒人共の謗りなら聞き流せる可能性もあるが、今は初見の相手だ。耳慣れない声で、かつ日本語で発される罵詈雑言を、繊細な沙綾香が無視できるとは思えない。実際、彼女のすらりとした両脚は、屈辱に震えている。
『せっかくだ、道具使ってもっと拡げてやれ!』
『おお、そうだな!』
『いいねえ。お嬢様のハラん中、俺らに見せてくれよ!』
 ある客の提案に、別の人間も同調していく。それを見て、ドクロタトゥーの男が近くのバッグから道具を取り出した。先端の丸い、大きめのフック。男はそれを、“1号”達に1本ずつ投げ渡していく。
『これって……!』
『見覚えあんだろ? 今度はお前らが、後輩に使う番だ』
 タトゥー男が命じると、少女達は困ったように顔を見合わせる。
『どうした、早くしろ。使い方が思い出せねぇんなら、この場で再教育してやってもいいんだぜ!?』
 調教師の怒号に、少女達はびくりと肩を震わせ、渋々ながら動きはじめた。
 “2号”が瓶を手に取り、オイルのようなものを沙綾香の肛門へと塗りこめる。
『ひゃっ、何それ!? そんなとこに何する気!?』
 沙綾香が悲鳴を上げる中、4人の少女はそれぞれフックを手に持ち、一本ずつ肛門に差し込んでいく。
『んぐっ!!』
 小さな呻きは漏れるものの、塗られた潤滑油のおかげで挿入はスムーズだ。あっという間に4つのフックが肛門内に収まってしまう。
 客が前のめりで見守る中、奴隷4人はフックの付け根から伸びるベルトを握り、別方向に引きはじめた。上下左右……肛門が菱形に拡がる形で。
『ひぎいいぃっ!?』
 沙綾香の悲鳴が響き渡る。黒人相手の経験もある肛門とはいえ、ここ数日は集中的に犯されることもなく、窄まりに戻りつつあったはずだ。それを4方向へ無理矢理割りひらかれれば、悲鳴が漏れないはずがない。
『はっはっは、良い声だな!』
『ああ、まったくだ。しかも見ろよ。ばっちり拝めるぜぇ、最上級奴隷のハラん中がよお!!』
『ホントだな。この子は脚が長えから、ケツん中見んのに屈む必要もねぇや!』
 客は大喜びで手を叩きつつ、開かれた肛門の中を覗き込む。カメラもそれに追従した。
 4つのフックでぐっぱりと開かれた、ピンク色の粘膜。その最奥に、茶色い物体がいくつも見える。
『ひひひ、随分溜まってんじゃねぇか! いつからクソしてねぇんだ、ええ?』
『現実って残酷だよなあ。こんなに顔とスタイルのいい娘でも、腸に詰まってるもんは、きっちり汚ぇんだからよお!』
『まったくだ。一皮剥いちまえば、あの3流所のブス共と何も変わらねぇ!』
 客は沙綾香の腸内を覗き込み、散々に嘲笑う。
『だめえ、見ないでっ! お尻の中なんて見ないでえーーーっ!!!』
 沙綾香は、年頃の少女として当然の反応を示す。足を強張らせ、腰を上下させて絶叫する様は痛々しい。
 そして、客の言葉に惑わされるのは、沙綾香だけじゃない。3流所などと蔑まれた少女達もまた、全力でフックを引きながら、枯れた表情筋を歪ませていた。


                 ※


『ったくよ。肴がいいと、酒が旨えな!』
『全くだ。底辺女が底辺女をイジメるショーほど面白えもんはねえや!』
 客達が嬉しそうに囁き合う。その視線の先では、沙綾香がなおもマングリ返しの恰好を取らされていた。しかも、それだけじゃない。彼女は何分か前に、イチジク浣腸3つを注入されている。
 今また、沙綾香の下腹部からギュルギュルと音が鳴った。
『あ、あ……だめっ、お、お腹が……!!』
『ああ、鳴ってんなぁ。ケツの穴もヒクヒクしてきてるぜ?』
『もう限界かよ? 甘ったれてやがんなぁ。お前ら、指でお仕置きしてやれ!』
 客が面白半分に命じると、首輪付きの少女達は大人しく従った。“4号”が指にサックを嵌め、沙綾香の背中側に回ると、便意で開閉する肛門へと二本指を沈めていく。
『あっ! なに、指っ!? い、今はダメっ!!』
 沙綾香が叫んでも、“2号”は指の動きを止めない。根元まで沈み込ませ、グリグリと捻り、抜き出し。沈み込ませ、捻り、抜き出し。
『やめてってば! 出ちゃうっ、そんなの、ホント出ちゃうう゛っ!!!』
 沙綾香はさらに余裕のない叫びを上げ、長い脚を暴れさせる。だが両脇の二人は、そんな沙綾香の足首を無慈悲に押さえ込んだ。
『ひひひ、暴れてやがる。だいぶ便意が強まってきたらしいな』
『だな。よう“2号”。そうしてっと、その責めのキツさを思い出すだろ? お前らも散々泣き喚いてたもんなあ!?』
 客は沙綾香の反応を笑いつつ、指責めを続ける少女に呼びかけた。
『はい。これは、キツいです。排泄感と、息苦しさと、恥ずかしさとで……じっとなんてしていられません』
 “2号”は、苦しむ沙綾香を見下ろしながら、ぼそぼそと呟く。相手に同情してはいるものの、客や調教師に逆らってまで助ける勇気はない。そんな風だ。

 ぐぉるるるる、という音が響く。沙綾香の腹の鳴りだ。
『ひひひ、すげぇ音だな! 完璧に腹下した時のだぜ!』
『そろそろ3分か。浣腸慣れしてねぇ女なら、そろそろ我慢の限界って頃合いだな』
『限界なのは間違いねえよ。アヌスが盛り上がって、ヒクヒクしてやがるからなあ!』
 客が嬉々として囁き合った、その直後。沙綾香が大口を開けた。
『ぐうう、う……ううう、うう、む……っ! あああっ、ダメ、ダメええっ!!!』
 悲鳴と共に、びすっ、という破裂音が響き、肛門から汚液が垂れ落ちる。下腹へ、腿へ、背中側へ、色のついた液が滴っていく。
『いや、いやあああっ、気持ち悪いいぃっ!!』
 何が起きたかは、沙綾香自身にも解ったようだ。彼女は叫び、悲痛な表情で歯を打ち鳴らしはじめる。
『はははっ、コイツとうとう漏らしやがった!』
『ああ、誤魔化しようもねぇぐらい濃いクソ汁だな!』
 客はゲラゲラと笑い、沙綾香の顔をさらに引き攣らせた。一方、沙綾香を押さえ込む少女達は顔を顰めている。同情からか、嫌悪感からか。
『お、お願い、離して! もう、ホントに我慢できない……っ!!』
 泣くような沙綾香の声に、また耳障りな笑いが起きた。
『くくっ、我慢できねぇとよ。あのまま全身汚液まみれになるのを拝むのもいいが、どうする?』
『いや、俺は反対だね。そこの貧相なブス共なら糞化粧させてもいいが、この娘は上玉だ。しばらくは白い肌を愉しもうぜ』
『同感だ。せっかくスタイル抜群なんだしよ、クソの塊にするにゃ勿体ねぇ!』
 客は、たぶん故意にだろう、奴隷少女達を貶めつつ方針を語る。そんな物言いをされて、貶められる側が愉快であるはずもない。
『…………ッ!』
 首輪をつけた少女4人は、ここでようやく、瞳に明確な意思を宿らせた。4人が4人とも、目元を引き攣らせて沙綾香を睨み下ろしている。筋違いな恨みではあるが、彼女達が負の感情を向けられるのは、自分達より立場の弱い人間だけなんだろう。
『よーしお前ら、次だ。犬みたいに這いつくばらせたまま、しっかりと“栓”をしてやれ!』
『……承知しました』
 客が命じると、少女4人は静かに頷く。その暗い瞳は、欲望にギラつく男共のそれより、よほど質が悪く見えた。

                 ※

 沙綾香は一旦足首を解放され、這う格好を取らされる。
『もう出そうなの! 早く、早くトイレ行かせてっ!!』
 彼女は必死に叫び、這ったまま逃れようとする。だが脚に震えが来ているせいで、その歩みは遅い。結果、簡単に肩と手首を押さえられてしまう。
『いや、いやあっ! お願い、わかるでしょ!? おなかが苦しいのっ!!』
『わかるよ。でも、命令だから』
 沙綾香の哀願を“2号”が切り捨て、沙綾香の尻肉を掴む。唇を窄めたような形の肛門からは、すぐにでも中身が噴き出しそうだ。そんな肛門の真後ろで、“1号”がペニスバンドを手に取った。股間部分に双頭のディルドーが取り付けられたもの。“1号”はディルドーの短い方を自分の割れ目に挿入し、長い方を沙綾香の肛門に押し当てる。
『いくわよ。お尻に力入れて』
『ひゃっ! な、何、この硬いの!?』
 沙綾香が驚いて振り返る中、“1号”は腰を押し出した。便意に戦慄く肛門が、無機質なペニスに割り開かれる。
『あああ゛あ゛っ!!!』
 沙綾香の悲鳴は泣き声に近い。ディルドーの直径は黒人共のそれより細いのに、漏れた声の悲痛さはずっと上だ。その悲鳴を聴いて、少女4人の唇がかすかに持ち上がる。
『奥までいくから、お尻を締めておきなさい』
 “1号”は沙綾香の背を押さえつけ、尻の高さを自分に合わせると、さらに腰を押し出した。ディルドーは難なく沈み込み、“1号”の腰と沙綾香の尻肉が近づいていく。
『ぃ、ひいいいっ!!!』
 か細い声を上げながら顎を上げる沙綾香。“1号”はその悲鳴に目を細めながら、腰を前後させはじめた。申し訳程度に敷かれた透明なシートが、4つの膝の下でニチニチと音を立てる。
『いやああっ、出し入れしないでっ!! でちゃう、ホントに出ちゃうっ!!!』
 沙綾香の悲鳴が響き、そこに混じる形で、ぶびっ、ぶちっ、という音が聴こえる。
『お尻締めなさい。漏れてるわよ!』
 “1号”は沙綾香の尻を叩いて叱責しつつも、腰を緩めない。むしろその動きはリズミカルになっている。脂の乗ったアナルセックスそのものだ。便意に荒れ狂う腸内でそんなことをされれば、受ける方は地獄だろう。
『やああ゛あ゛っ、あああ゛あ゛あ゛う゛っ!!!』
『ひひひ、イイ声出てんなあ! よっぽど腹がヤベェんだろうな』
『ああ。グルグル鳴ってよ、ありゃマジで腹具合がやべえ時のだぜ?』
『やっぱ素材がいいと、しんどいのを我慢してるだけでも画になるな!』
『乳がでかいのもポイント高いぜ、身悶えるたんびにブルンブルン揺れて。ま、藤花のウシチチにゃあ負けるがよ!』
 客は少し離れた場所に並び、女同士の痴態を楽しんでいた。その言葉はしっかりと沙綾香に届いているらしく、薄い唇を噛み締めさせる。だが、それも僅か数分のこと。彼女はすぐにそれどころではなくなってしまう。
『はあ、あっあ……! んくっ、んんんん゛っく!!』
 震えながら歯を食いしばり、這ったままつま先を立てる沙綾香。
『おーお、頑張ってんなー。死に物狂いってやつか?』
『太腿にあんなに力入れて、よっぽど人前で漏らしたくねぇらしいな。さすがはVIP御用達のお嬢様ってか。だがそうなると、意地でも恥掻かせたくなるよなあ?』
『ああ、お上品に便所なんか使わせるかよ。おら“1号”、もっと腰使え! 思いっきり突っ込んで、引き抜いて、お嬢様のクソを掻き出してやれ!』
 沙綾香の抵抗を面白がる客から、口々に野次が飛ぶ。その声を受け、“1号”はさらにピストンの速度を上げた。結合部付近から、グチョグチョという音がする。水気が多いというより、明らかに粘ついた音だ。
『あーあ、また出てきたわ。うんちを漏らしながら犯される気分はどう?』
『んぐっ、ん゛ん゛ん゛っ……!! ど、どうって、最悪に決まってんでしょ!? さっきから、やめてって言ってんじゃん!!』
 最低な行為に恥じ入っている中での、わかりきった問い。当然、沙綾香は憤りを隠せない。その真っ当な反応は、ギャラリーをさらに沸かせ、首輪少女達の頬をも緩ませる。
『そう……ふふふっ、そうよね。恥ずかしくって悔しくって、頭の中がグチャグチャになるわよね。よかった。VIPの人に可愛がられるような奴隷でも、私達と同じなんだ。私達と同じように調教されたら、私達と同じ、イヌに堕ちるってことよね!?』
 “1号”達のリミッターが外れていく。あの子達は、今日まで散々に辱められ、尊厳を踏みにじられてきたに違いない。だからこそ、沙綾香が同じように取り乱していると安心するんだろう。そう考えれば、“1号”の激しい腰遣いは、どこか救いを求めるようでもある。もっと、沙綾香が穢れるように。自分達が穢れてしまったのも、仕方ないことなんだと思えるように。
 薄汚れて瘦せこけた脚が、白く肉感的な太腿に打ちつけられる。肉のぶつかる音と、ぎゅぶぎゅぶという音が交互に響く。沙綾香の脚が強張り、震え、痙攣する。
『ああ……ああああぁ゛っ!!! もお゛無理っ、もお無理いい゛っ!! 漏れちゃう、漏れちゃうううう゛ーーーーっ!!!』
 とうとう沙綾香は、食いしばっていた口を開き、膝を交互に上げながら叫びはじめる。
『ちょっと、暴れないでよ!』
 “1号”達が押さえに掛かるが、半狂乱状態の沙綾香は止まらない。
『ははは、暴れてる暴れてる!』
『ついに限界か! ま、よく我慢したぜ。アナル初心者としちゃあよ!』
 客が大笑いする中、沙綾香の脚の痙攣はいよいよ酷くなっていく。そして。
『ああああでるっ、出ちゃううう゛う゛う゛ーーーっ!!!!』
 決壊の時は、泣きわめく声と共に訪れた。ディルドーが突き刺さったままの肛門が激しく蠢き、茶色い液があふれ出す。雪のように白い肌が、あっという間に黄褐色に汚れていく。
『ひゃっひゃっひゃ、出しやがった!! こんないい女が、ギャンギャン泣きながらクソ垂らすとかよお、眼福だぜ!』
『匂いは最悪だがな。おお臭ぇ臭ぇ、鼻が曲がりそうだ!』
『おいおいおい。お客に失礼な匂い嗅がすんじゃねぇよ。大概にしねぇと、ケツの穴に芳香剤詰めんぞ!』
 客や調教師はわざとらしく鼻を摘み、ここぞとばかりに謗りの言葉を投げかける。そしてそれは、首輪付きの少女達もだ。
『ふふ……あははは。あーあ、漏ーらしたぁ』
『ホント、汚くてくっさい豚。VIP御用達なんて言っても、あたしらと何も変わんないんだね』
『あはっ。コイツもしかして泣いてる?』
 汚物に塗れた高貴な存在を前に、彼女達は目を爛々と輝かせている。これまでのストレスを、弱い人間への加虐で発散するつもりだろう。
『はぁ、はぁ……っく、う、ふうぃう゛……ッ!!』
 蔑みの言葉と視線を一身に浴びながら、沙綾香はぶるぶると震えていた。羞恥からか、怒りからか、固く歯を食いしばって。


                 ※


 “1号”達の沙綾香に対する扱いは、目に見えて雑になった。汚物に塗れてへたり込む沙綾香に対し、ホースで水を浴びせかける。
『ぶふっ、あぶっ、げほえほっ! ちょっ、やめっ……!』
『何言ってんの、汚い豚は洗わないと。外がキレイになったら、次は内側もいくから』
 “3号”はそう言って、他の3人に目配せする。3人は頷き、水浸しの沙綾香を担ぎ上げると、壁際に設置された台へと運んでいく。体育倉庫にある跳び箱を思わせる代物だ。
『お、次は“エネマホース”か!』
『ひひひっ、あいつらも意地が悪ィなあ。自分らがやられて嫌だったこと、フルコースでやる気だぜ?』
『女のイジメは陰湿っつぅからなあ。ま、見応えがあって結構だがよ!』
 客の笑い声が聴こえる。あの台は三角木馬というらしい。確かにその名通りの責め具だ。ただし、木馬の背の部分は幅広の弧を描き、そこにイボのような突起が無数に敷き詰められている。3人の首輪少女は息を合わせ、そこに沙綾香を跨らせた。
『ひゃっ、何これ!? やだやだ、キモいっ!!』
 突起が股座に触れるなり、飛び跳ねる沙綾香。3人の少女はその姿を面白がりながら、沙綾香を拘束しはじめる。
『ほら、暴れない。木馬から落ちるわよ』
 そう言いながら“1号”が、沙綾香の両手首を腰後ろで重ね、拘束帯で固定した。続いて“3号”がホースを肛門に捻じ込み、残る“2号”と“4号”が、そのホースに乗せる形で両足首に錠をかける。そうなれば、もはや沙綾香に自由はない。海老反りの恰好で木馬に跨ったまま、前後にも左右にも動けない。
『い、いやああっ! 何この格好、苦し……ムグッ!?』
 沙綾香にできるのは、必死に非難の声を上げる事のみ。だがその声さえ、ボールギャグで無慈悲に封じられてしまう。沙綾香の目元が引き攣った。
『ふふ、完成。木馬の座り心地はどう? 怖いでしょ、動けないもんねぇ。でも、本当に震えるのはこっから。腸にどんどん水が入ってくるのが解るでしょ? これが、地獄の“エネマホース”だよ』
 “2号”が沙綾香に囁きかけながら、沙綾香の下腹に指を這わせる。沙綾香はそれほど筋肉質という訳じゃないが、無駄な肉がないから、海老反りの恰好をすると腹直筋や腹斜筋が浮いて見える。それだけに、水膨れの変化が解りやすかった。刻一刻と、腹の凹凸がなくなっていく。まずは平坦に。そしてさらに数秒が経てば、下腹がかすかに膨れてくる。
『ンッグ、グゥ……ッ!』
 ボールギャグから呻きが漏れた。苦しそうだ。その声を聴いて、4人の少女とギャラリーの口元が吊り上がる。
『ふふふ、つらいよねぇ。食べ過ぎてお腹張ってるみたいな苦しさもあるし、まず水が入ってくる違和感もすごいんだよね。お尻ってやっぱり出す場所なんだって実感するよねえ?』
 “2号”は平らな沙綾香の腹筋を指で押し込み、さらに呻きを漏れさせる。いや、呻きだけじゃない。腹そのものからも、ぐるるるる、という凄まじい音が鳴った。
『ククッ、えげつねぇ音だな。ありゃ苦しいんだろ、これで楽にさせてやれ』
 迷彩ズボンの調教師が、そう言って“4号”に何かのスイッチを手渡す。
『! ……はい、承知しました』
 “4号”は、その意味するところをすぐに察したらしく、格別に歪んだ笑みを浮かべながらスイッチを押す。すると、ヴウウウーンという羽音のような振動音がしはじめる。音の出所は木馬の背の部分だ。
『ングッ、んンン゛ッ!!?』
『甘い声出して。そんなに感じるの? そういえば、オマンコは随分と可愛がられてるっぽかったもんね』
 木馬を軋ませて反応する沙綾香を、面白そうに茶化す少女達。

 (自分達が畜生扱いされている裏で、のうのうとVIPの相手なんて)
 (ちょっとばかりルックスがいいからって、不公平だ)
 (お前も味わえ、地獄を)

 歪んだ笑みからは、そんな感情が溢れるかのようだ。その悪意に晒されながら、沙綾香は地獄へと引きずり込まれていく。
『んっぐう、グウウ゛……ムウウ゛、ウウ゛ーッ!!』
 木馬が振動を始めてから、沙綾香の反応が明らかに激しさを増した。細い身体が何度も強張り、反り返る。特に太腿は、不自然な拘束で力が入ってしまうのを踏まえても、異様と言えるほどの力みぶりだ。この部屋へ来る前にたっぷりとガスを吸わされているから、特に感じてしまうんだろう。
『すごい。もうクリ勃ってる』
『ホントだ。オマンコもヒクヒクして、気持ちよさそー』
 首輪少女達は沙綾香の秘部を覗き込みながら、本人に聴こえるように囁きかけた。
『ウ゛うむ、むうう゛っ!!!』
 よほど恥ずかしいんだろう。沙綾香は顔を左右に振りながら呻き、ギャグの端から唾液を伝わせる。まさにその瞬間、沙綾香の我慢の糸は切れたんだろう。ホースの入り込んだ肛門から、ぶぢっ、という破裂音がする。
『ぎゃはははっ、逆流させてやがる!!』
『おいおい、まだまだこっからだぜ? 我慢しねーと!』
 客が大いに喜ぶ中、首輪少女達も沙綾香の股を見下ろして笑った。
『あはっ、汁垂れてる!』
 “4号”が木馬の側面を指し示す。カメラが近づくと、確かに透明な雫が伝い落ちる様子が見えた。状況からして、沙綾香の秘裂から漏れたものに違いない。
『もう濡れたんだ? 感じやすいんだね。じゃ、もっと良くしてあげるよ!』
 4人の少女は目を細め、弱った沙綾香をさらに追い詰める。2人がかりで腰を掴んで前後に揺らしたり。くの字に折れた膝を押し下げて、木馬の凹凸と割れ目を密着させたり。その残酷なやり口に、沙綾香の身体が狂ったように暴れはじめる。
『ふっ、ぐ、ぐう゛!! ふむ、う゛っ、う゛……むうう゛う゛ーーーーっ!!!』
『あはっ、イってるイってる。わかるよー、これヤバいよね。やわらかいシリコンのブツブツがクリ擦るのも堪んないし、密着してオマンコ全体を震わされるのもすっごい効くんだ』
『うんうん。一回イクと敏感になるから、またすぐイって、そのうち秒でイクようになっちゃうよね。しかも、イって身体に力入ってるうちはまだいいけど、そのあと力抜ける時がまたキツいし』
『だね。腸まで緩むから、一気に便意が来てさ。でもホースで蓋されてるし、こうやって高い位置で足首縛られてると、勝手にお尻の穴が窄まっちゃうから出せないんだよね。気持ちいいし苦しいし恥ずかしいし、気が狂っちゃいそうだったよ』
 首輪少女達は顔を見合わせて語り合う。砕けた口調は、心からの言葉である証拠だ。
『くくくっ、あいつらもやるなあ! 自分らがやられて音ェ上げた責めを、あんなに嬉しそうによお!』
『目下の人間が出来たってことで、今までの鬱憤を晴らしてんだろ。面白いショーだと思ったが、ガス抜きとしても良いかもな、こりゃ!』
『へっ。底辺が底辺をイジメるなんざ、救えねぇな。ま、俺はそういうの大好きだがよ!』
 客達が盛り上がる中、奴隷少女達はまた責め方を変えた。沙綾香の脚から一旦手を離し、太腿の外側を撫でていく。指先を使ったフェザータッチだ。刺激はごく僅かだろう。にもかかわらず、沙綾香の反応は大きかった。
『ふ、ふうう! ふ、ううう゛あ、あらあア゛!!』
 指を嫌がるように足を閉じ、結果として木馬の背に密着してしまい、震え上がる。その一連の動きを、客は大いに笑い飛ばす。
『ひひひひっ、テメェからアソコを擦りつけてやがる。大した好きモンだぜ!』
『撫でられただけであの反応ってなると、相当敏感になってるらしいな。何遍もマンコイキするとああなんのか?』
 そうした嘲笑に紛れ、“1号”達もクスクスと笑う。笑いながら、沙綾香の腿を撫で、乳首を摘んでさらに追い詰めていく。
『うぐううお、お、おおっ…………もおあえっ、あええぇえ゛っ!!!』
 沙綾香は、ボールギャグの穴から唾液を垂らし、激しく身を震わせていた。その原因は、たぶん快感だけじゃない。水を注がれ続け、胃の辺りまで膨らみつつある腹が苦しいんだろう。ギュルギュルという腹の音も、さっき以上にひどい。
『だいぶ腹ァ膨れてきたな。ガキ孕んでるみてぇだ』
『ああ。妊婦腹になっちまうと、抜群のスタイルも形無しだな!』
 客も腹の膨らみに言及し、意地の悪い笑みが広がっていく。首輪少女達も似たような笑みを浮かべながら、なおも沙綾香を嬲っていた。
『ふぉ、おごっ、おごおおおっ!!!』
『あ、今なんて言ってるかわかっちゃった。いく、いくうーって言ってるよ』
『さっきからずっとでしょ。イヤとかダメとかイクばっかだよ、コイツ』
『実際イキっぱなしだもんね。汁垂れまくりだし』
 “1号”達は笑いながら責め続ける。スイッチを弄って木馬の振動に変化をつけつつ、沙綾香の腰を前後させ、あるいは密着させ。そうして沙綾香が愛液を垂らせば、それを木馬の側面から掬い、沙綾香自身の身体へと塗り込めていく。仰け反る首も、先の尖った乳房も、膨れ上がった腹も、すべてが妖しく濡れ光る。
『ハハハッ、マン汁コーティングとは最高だな!』
『ああ、お肌スベスベだぜ!』
 客が腹を抱えて笑い、最悪な空気になった頃。ぶびゅうっ、と凄まじい音が響いた。沙綾香の肛門から水が噴き出したらしい。
『限界だな。ホース抜いて栓しろ』
 ドクロタトゥーの男がそう言って、“1号”にアナルプラグを投げ渡す。かなり大きめのプラグだ。“1号”はそれを受け取ると、ホースが抜かれて水飛沫が噴き出る肛門へと、思いきり捻じ込んでいく。
『もっごぉおああ゛っ!!』
 沙綾香の呻きは、苦しみに満ちたものだ。その声を聴いても、奴隷少女達の表情は変わらない。意地の悪い薄ら笑みを浮かべたまま、沙綾香の足首の拘束を解き、木馬から引きずり下ろした。
『んふっ、ふーっ、ふーっ……ふーっ』
 沙綾香の息は荒い。へたり込んだ沙綾香の腹は、スイカでも入っているかのようだ。普段の彼女とはあまりに違う。そんな沙綾香を見下ろし、“2号”がボールギャグの留め具を外した。ギャグは弾けるように押し出され、大量の唾液を纏いながら床に落ちる。
『気分はどう?』
『はぁ、はぁ、はぁ……く、苦しい……お願い、おしりの栓、抜いてっ!』
 判りきった問いに対し、余裕のない様子で叫ぶ沙綾香。その必死さを、また客が笑う。
『お願いされてんぞ。どうすんだ奴隷共?』
『タダで出させちゃあ面白くねーぞ。なんかしら芸でもやらせろや!』
 下劣な野次に対し、“1号”達は勿論だとばかりに頷き、沙綾香の方に向き直った。
『限界なんだ。楽にしてほしい?』
『はぁ、はぁ……だからっ、そう、言ってんじゃん……!』
『ああ、そう。だったら、私達を口で気持ちよくさせなさい!』
 “1号”はそう言うなり、喘ぐ沙綾香の顔に股を押し付ける。
『うぶあっ!? んっ、んぶン゛ーーっ!!』
 沙綾香は驚きながら顔を背けた。“1号”はそれを追いかけて秘部を押し付けるが、沙綾香は顔を左右に振る。
『はっはっは、嫌がってらあ!』
『女のマンコ舐めんのは、チンコしゃぶる以上にキツいかもな。屈辱的でよ!』
 客は沙綾香の反応を可笑しがり、大いに笑った。
 そんな状況が何十秒続いただろう。だが、それにも終わりが来る。ぎゅぐるるるる、という凄まじい腹の音で。
『あーあ、すごい音。もう限界なんでしょ。でも、アソコ舐めない限り出させないよ?』
 “3号”が、つま先でアナルプラグを押し込みながら告げる。そうなると、沙綾香にもう選択肢はない。
『ぐ……っ!』
 迷った後、渋々ながら割れ目に舌を這わせる沙綾香。
『そうよ、ちゃんと舐めなさい。ビラビラを舐めたり、中に舌入れたり、必死に工夫するの。口で私を満足させるまで、お尻のプラグは抜かないから!』
 “1号”は勝ち誇った顔で、さらに腰を押しつけた。後ろ手に拘束された沙綾香は、それを拒めない。上体を後ろに傾がせ、ついには床へと倒れ込んでしまう。それを見ても“1号”は加虐の手を緩めない。沙綾香の顔の上に跨り、腰を前後に揺らしはじめる。
『あははははっ、気持ちいいわ! 舌もいいし、鼻も擦れて最高! お前は鼻筋が通ってるから、余計に刺激強いのかしら。あああいいわ、もうすぐでイケそう。あ、そう、そう……んっ、あんっ……。あはは、イッちゃった! 興奮してるから、すぐだったわ』
 “1号”は上機嫌で腰を振り、身を震わせて絶頂に至る。
『ぶはっ、はぁ、はぁっ……も、もういいでしょ!? トイレに……!』
 沙綾香は激しく喘ぎながら、必死に解放を求めた。だが“1号”は無慈悲にも首を振る。
『まさか。私一人で終わりなわけないでしょ。4人全員、イカせてからよ!』
 “1号”はそう告げるやいなや、“2号”と入れ替わる。
『そういうこと。さ、頑張れー』
 “2号”は用でも足すような気軽さで、沙綾香の顔へ腰を落としていく。ギャラリーによく見えるよう、大股を開きながら。いや、という沙綾香の声は、すぐにくぐもって声ではなくなり、代わりにすらりとした脚が暴れる。
『ふふ、苦しそう。ま、お腹こんなんだからねぇ』
 “3号”が膨れ上がった腹を押し込みながら囁いた。それだけでも、今の沙綾香を追い詰めるには十分だ。だが、“3号”の悪意はそんなものでは済まない。彼女はあろうことか、床に転がっていたバイブを拾い上げ、それをおもむろに沙綾香の割れ目へと捻じ込みはじめた。
『れぇ゛あ゛っ!?』
 “2号”の秘裂を舐めていた沙綾香が悲鳴を上げる。
『あはは、いい声。こんなお腹ポンポンの状態でバイブ入れられたら苦しいよね?』
 “3号”は相手の状況を理解しながらも、バイブを容赦なく抜き差しする。バイブはけして細くない。刺激の強さでいえば、平均的な日本人相手のセックスと同等だろう。沙綾香は苦しみ、下半身を暴れさせる。だがその足を、“1号”と“4号”が巧みに押さえ込んでいた。
『あっはっは、すっごい暴れ方! 苦しそ~』
『顔もすごいよぉ。ほら、ブス顔してないで舐めなってば。そんなんじゃイカないよアタシ』
 4対1のリンチ。本当に醜悪な画だ。そんな地獄を、沙綾香は呻き、のたうちながら耐える。だが数分後、本当の限界が訪れた。
『もおだめっ、でるっ、でるでるでるうう゛っ!!』
 沙綾香が暴れ出す。火事場の馬鹿力というやつか、4人の少女を跳ねのけ、這う格好になる。
『あ、やばい!』
 “2号”がそう叫び、近くにあった金盥を引き寄せた。それとほぼ同時に、びじゅうっという音と共にアナルプラグが弾け飛ぶ。
 そして、排泄が始まった。
『いやああああああーーーーーッ!!!!!』
 絶叫が響き渡る中、“2号”が構える金盥へ、凄まじい勢いで水が噴き出していく。
『うわ、すご……!』
『はははっ、すげえ勢いだ!!』
 見守る人間の感想は似通っていた。瑞々しい少女の尻から、決壊したダムのように水が溢れ、刻一刻と膨らみきった腹のサイズが縮んでいく。そんな光景を前にすれば、すごいとしか言い表しようがないようだ。
『んぐ、ぐっ、ううう……う……!!』
 沙綾香は歯を食いしばっていた。公衆の面前で排泄を晒しながら、涼しい顔ができる子じゃない。その心中はズタズタに傷ついていることだろう。
 入れられた量が量だけに、排泄は長い。勢いは数秒で弱まったとはいえ、その後もチョロチョロと漏れ続けている。
『ほーらぁ、きっちり出し切っちゃいなって!』
 “3号”がそう言って、沙綾香のクリトリスを指先で転がしはじめた。
『んはっ!?』
 食いしばられた沙綾香の口が開き、肛門からの噴出が勢いを取り戻す。
『あははっ。気持ちよくて漏らしてるわ、こいつ』
 “3号”の口は悪い。沙綾香に対する同情など、すっかり消え失せているらしい。それは他の3人も同じで、嗜虐の笑みを浮かべながら性器を弄りにかかる。そうなれば沙綾香は、身を捩りながら、成すすべなく排泄を続けるしかない。
『や、やあ、やめっ……っく、ふぐうう! っく、はあっ……あ、ア゛……みないで、みないでぇ…………っ!』
 唾液と縮れ毛に塗れた口から、苦しげな呻きが漏れる。アイマスクに覆われた目から、また大粒の涙が零れていく。
『ひひひっ、また泣いてやがる!』
『そりゃ泣けるよなぁ。女の手でマンコ弄られて、糞をブリブリひり出すしかねぇんだからよお!』
『見ろよ、マンコがまたヒクヒクしてきたぜ。じきに潮噴くんじゃねぇか?』
『そりゃあいい! 前と後ろ、両方から体液を撒き散らすってわけだ!』
『ああ惨め惨め。こうなっちゃあもう、奴隷の等級なんざなんの意味もねぇなあ!?』
 客は大盛り上がりだ。沙綾香の惨状を嘲笑い、心底旨そうに酒を酌み交わす。

 俺も、あんな風に正気を失えたなら、どれだけ楽になれることだろう。


                 ※


 排泄欲を煽り、羞恥と苦痛とで芯を腐食させる。藤花を散々苦しめたこの路線が、今は沙綾香に牙を剥いていた。

『ほら、もっと動きなって。オマンコで媚び売るの、得意でしょ?』
 床に寝そべった“3号”が、意地悪く詰る。沙綾香はその上に跨ったまま、ペニスバンドで前の穴を犯されていた。
『やあっ……やめ、てっ!!』
 沙綾香は腰を振って逃れようとする。表情こそ苦しそうだが、身体の反応は快感を得ている時のものだ。そしてそれは、“3号”も見抜いているらしい。
『何がイヤなわけ? もうオツユ出まくりじゃん』
 そう言いながら沙綾香の尻と太腿を掴み、逃げ道を塞ぐ。
 一方で他の3人は、沙綾香の背後から揺れる尻を観察していた。
『うん。お尻の穴、良い感じ』
 “1号”がそう言いながら、手にしたガラス瓶の蓋を開ける。そして瓶に二本指を突っ込むと、ゼリー状の中身を掬い取った。
『おっ? オイ、あれって……』
『ああ、例のヤツだな。ありゃキッツいぜえ』
 客が何かを察する中、“1号”の指が沙綾香の肛門へと捻じ込まれる。
『んあ゛っ!?』
 沙綾香は悲鳴を上げた。不意打ちに近い形だから、それ自体は何の不自然さもない。だが、その次の反応は不可解だった。
『え、えっ!? お、お尻が、ムズムズするっ! 何塗ったのっ!?』
『何って、浣腸液をゼリーにしたものよ。さっきのイチジクより強めの、ね』
 “1号”のその言葉が終わるよりも早く、沙綾香の腰が蠢きはじめる。
『や、ああっ!?』
『あははっ、さっそく効いてきた。やっぱ浣腸慣れしてないと早いわね』
『あー、もう何か漏れてるじゃん。我慢できないの? しょうがないなあ、気を紛らわせてあげるよ。オマンコの方でさ!』
 “1号”が嘲笑う中、“3号”も目を細め、より激しい騎乗位を強いる。
『うああっ!? い、今だめっ……あ、ああああっ! あ、んっ、ああ、んんっ!!』
『へッ、気持ちよさそうな声出しやがって! ありゃあ本気で感じてる声だぜ?』
『おお。マンコはよくこなれてるらしい』
『しっかしエロいガキだなー。女の裸なんて見慣れてんのに、勃起が収まんねぇや!』
『俺もだ。腰があんな細ぇのに乳はデケェなんて、反則だぜまったく!』
 客達は前傾姿勢で沙綾香に見入っている。調教師の目さえなければ、ふらふらと近寄っていきかねない雰囲気だ。だが、そうして新参者が持て囃される状況は、古くからいる人間にしてみれば面白くない。
『なによ、気持ちよさそうに腰振って。やっぱ見た目通りのビッチじゃん』
 “2号”が沙綾香の顎を掴み上げ、意地悪く言い放つ。公然でのビッチ発言に、客が明らかに反応する。そうなれば、沙綾香は“2号”の言葉を無視できない。
『あっ、はっ、はっ、はっ……び、ビッチじゃ、ない……っ!!』
 激しく喘ぎながらも、必死になって首を振る。
『嘘、思いっきり感じてるじゃない。さっきから足にマン汁が零れまくって、気持ち悪いんだけど?』
 “3号”は言葉で詰りつつ、沙綾香を膣を責めたてる。
 同性というものは恐ろしい。彼女達は、女を追い詰める『コツ』を本能的に掴んでいるようだ。“3号”は沙綾香の太腿を引きつけ、効果的な膣奥責めを実現する。他の3人も、巧みに沙綾香を押さえ込む。上半身を左右に揺らして逃げようとすれば、両サイドからそれを封じ。前傾したまま腰を浮かそうとすれば、肩を押し込んで阻み。まるで先読みでもしているようなドンピシャリのタイミングで、沙綾香の逃げ道を塞ぐ。そうなれば、沙綾香はただ昂っていくしかない。
『あっふ、ん、あんっ! ああっあ、んっ、ん……!!』
『はっ、なにそのヨガリ声。アタシ相手に発情してんの? やめてよね』
 沙綾香から漏れはじめた声を、“3号”が鼻で笑う。ヨガリ声──その通りだ。黒人共のレイプで上がる嬌声を血反吐の赤だとするなら、今の声はさながら桃色の溜息。俺とのセックスでよく耳にした類のものだ。
 ぎゅぶっ、ぎゅぶっ、という水気の多いピストン音と、柔な肉のぶつかる音、壮絶な腹の音が混ざり合っている。その音を聴くだけで、沙綾香の苦しみぶりが伝わってくるようだった。
『んっ、んぐっ、くっ……んんんっ…………!!』
 沙綾香は、耐えていた。何度も顔を振り、歯を食いしばって。それでも、いつかは限界が来る。
『あはっ、すごい!』
 沙綾香の太腿を掴む“3号”が眼を見開く。太腿が痙攣を始めたらしい。その、直後。
『あぁあああっ!!』
 沙綾香の顎が上がり、叫び声が響き渡った。喘ぐような口の動きが、深い絶頂を訴えている。
『はははっ、イキやがった!』
『こんだけコケにされてる状況で、よくまあ呑気にイケるもんだ。オツムの弱ぇガキだぜ!』
 客は沙綾香の絶頂を大いに嘲り、奴隷少女達もクスクスと笑う。そういった情報は、沙綾香にも届いているだろう。だが、彼女はそれどころではないらしい。絶頂して筋肉が強張った後には、弛緩の時が来る。それは防ぎようがない。昂った末の絶頂を、どうやっても止められないように。
『あ……だ、だめっ、だっめえええぇっ!!!』
 嘲笑の中心で沙綾香が叫び、同時に尻肉が蠢く。カメラが後方へ回り込むと、大きく開いた肛門から、透明な粘液がとろとろと溢れているところだった。それを目にし、“3号”が満面の笑みを浮かべる。
『あー、やった。』
 ただの一言。だがその短い言葉は、沙綾香の心を抉るのに十分だ。
『う、ううう……!!』
 沙綾香は俯き、歯を噛み鳴らす。大勢の前で、疑似ペニスで犯されながら、また排便を晒してしまった。真っ当な羞恥心を持つ彼女にとって、それはどれほど耐え難いことだろう。そしてやはりというべきか、奴隷少女達はそんな沙綾香の心情を汲みはしない。
『先輩の上でひり出すなんて、いい度胸してんじゃない。これは、もっともっと躾ける必要があるみたいね』
 “4号”が沙綾香の前に立ちはだかり、割れ目を顔に押し付ける。
『んぶっ、あっ!!』
『ほら、逃げないの。お仕置きなんだから』
 嫌がる沙綾香の頭を抱え込む“4号”。一方で“3号”も、浣腸で開いた肛門へ両親指を引っ掛け、強引に左右へ割り拡げる。
『あはっ。お尻の穴開くと、オマンコが締まるんだあ。面白ぉい』
 完全に遊び口調で、肛門を開閉しつつペニスバンドの抜き差しを繰り返す。
『ああ゛っ、あ゛、あああ゛……っ!!』
 沙綾香は呻く。今の彼女には、それしかできることがない。
『ふふふ、惨めねぇ。これで私らより上等なんて、ありえない』
『だね。きっちり躾けて、自分の立場を弁えさせないと』
 手の空いた“1号”“2号”が、腕組みをしたまま沙綾香を見下ろす。ふてぶてしいその態度は、まさしく調教師そのものだった。


                 ※


 沙綾香への加虐は、夜を徹して行われた。ぬるい責めなど一つもない。いずれも強い羞恥と苦痛・快楽を伴う、苛烈なものだ。

 例えば今も、沙綾香はラバースーツで全身を拘束され、天井近くのフックから吊るされている。
 至るところに悪意が満ちていた。
 ラバースーツは頭頂部からつま先までを包み込むタイプだが、鼻から顎にかけてと、乳首周辺、秘部周りだけは穴が開いていて、丸裸以上に煽情的だ。
 吊るし方にしても意地が悪い。両肩と鼻のフックだけで吊る方式だから、沙綾香は顔を上向けたまま、三角に拡げられた豚鼻を晒すしかない。吊る高さも絶妙で、常に両脚を揃えてのつま先立ちを強いられる。
 ここまででも拷問に近いきつさだが、一番の問題は、前もって下剤を飲まされていることだ。その効果が、拘束から何分か経った今、ついに表れはじめたらしい。ラバーに覆われた沙綾香の腹から、ギュルギュルと音が鳴る。
『う……ぐうう!!!』
 沙綾香は呻くが、声にはならない。噛まされたバイトギャグが、彼女の言葉を阻んでいる。
『あ、始まったみたい。下剤って、浣腸とはまた違うしんどさがあるのよねえ。脂汗がドッと出てきて、寒気がして、気持ち悪くて……』
 “1号”がそう囁きながら、沙綾香の尻を鷲掴みにした。
『あたし、クリいくよ』
『おけ。じゃ、私らはおっぱいね』
 “2号”達も囁き合い、指にオイルをつけた上で、剥き出しの乳首とクリトリスを弄びはじめる。百合と同じく、けして激しくはない、だが芯を捉えた指遣いで。
『んふふ、勃ってきた勃ってきた。オマンコだけじゃなくて、こっちも調教済みみたいね』
 “2号”はそう言って、床のバッグからリングを取り出した。そして屹立したクリトリスの根元にそのリングを嵌め、包皮が捲れ上がった状態にさせた上で、さらに磨き込む。
『っむうう゛、んんふうう゛っ!! うう゛あ、あ゛、おぉんんんう゛っ!!!』
 沙綾香は不自由な体制のまま、身をくの字に折っていた。腹の鳴りも気にしない必死さだ。それでも、“2号”達の魔の手からは逃れられない。
『カーッ、酒がうめぇ酒がうめぇ! 8頭身のイモムシダンスは傑作だぜ! 今すぐラバー剥いで、あのエロい腰をブチ犯してやりてぇ!』
『ああ。でもよ、たしか前に連中がやられた時ぁ、クリをローターでくすぐるぐらいだったよな? あそこまでやってなくねぇか?』
『だよな。俺もそう思ってたとこだ』
『はーん、ってこたぁよお。テメェの経験を踏まえて、こうされたらもっとヤバかったってアレンジ加えてるわけか。怖ェ先輩もいたもんだぜ!』
 奴隷少女達の悪辣ぶりに、客は大喜びだ。逆に沙綾香は地獄でしかない。
『ウう゛、う、うう゛ッ!! ふぅむううう゛ーーーッ!!!』
 バイトギャグを噛みしめ、涎を垂らしながら、顔を激しく左右に振る。腹を下しているその最中、乳首とクリトリスの3所責めで絶頂しているんだろう。
『あは、すーごい力入ってる』
 尻を撫でていた“1号”が太腿に手を伸ばし、けらけらと笑う。そんな中、沙綾香は限界を迎えた。ぶりゅ、ぶちちっという下痢の音が響き、沙綾香の顎が上がる。
『う゛あ゛ーーーっっ!!!』
 ギャグを噛まされたままで出しうる、最大級に悲痛な声。吊るされた身が揺れる。脚の拘束帯が軋み、頭上の鎖が騒々しく音を立てる。
『ふふふ、出ちゃったかあ。その状態で出すと、生あったかいのが脚伝って、つま先の方に溜まって、最悪な気分になるよね。あたし、思わず泣いちゃったもん』
 “2号”は懐かしそうに語りながらも、クリトリスへの指責めをやめない。乳首を責める“3号”“4号”も同じくだ。
『ウグッ!? ウウウ゛、ウウ゛っ……!?』
『なに騒いでんの? うんち出したら終わりって誰が言った? 甘ったれんじゃないよ』
『そうそう。この責めは、やる側が飽きるまで終わらないんだから』
『下剤の効果だってまだまだ続くしね。死ぬほど我慢して、3回目に水下痢が出たぐらいからが辛いんだよ。足ガクガクになるもん』
『あー、だね。そこに絶頂まで加わったら、マジでもたないよ。こんなペースでクリイキしてて大丈夫? ま、大丈夫じゃなくてギャンギャン泣いたって、やめないけどさ』
 4つの歪んだ笑顔が、呻く沙綾香を取り囲む。そして実際に、その後も沙綾香は嬲られつづけた。ゲラゲラと笑う客の声、悲痛な呻き声、鎖の音、下痢便の破裂音……それらが騒々しく鳴り響く。
『むう゛ーーっ、ウ゛ーッ、ウムうぅッううヴウ゛ッッ!!!!』
 沙綾香は不自由な身体を反らし、揺らし、つま先を宙に浮かせるほどの苦しみぶりを見せた。ようやく少女達が飽きて手を離した頃には、意識があるのかさえ怪しい有様だった。鼻フックの外れた顔をだらりと垂らし、濃厚な鼻水と涎を滴らせるばかり。カメラに映る両の乳首は痛々しいまでに尖っているし、クリトリスの方も、覗き込んだ“2号”曰く「なんかの木の実みたい」な状態らしかった。

 しかも、そこで一休みというわけじゃない。あくまで、吊り下げる形での責めに飽きたというだけだ。
 加虐の楽しみを知った少女達は、目を爛々と輝かせたまま沙綾香の拘束を解き、場所をソファに移して次の責めに入った。
 まずはガラス浣腸器で何かの液体を吸い上げ、3回分注入する。その上でかなり太さのあるアナルプラグを捻じ込み、なおかつソファに座らせることで、簡単に排泄できない状態を作り上げる。そうした一連の行為を受けながら、沙綾香は抵抗らしい抵抗をしていなかった。いや、できなかった、というべきか。
『や、やめて……。今度は、何なの……おねがい、休ませ、て…………』
 バイトギャグを取り去られた瞬間、沙綾香の掠れ声がした。前の責めで疲弊しきっているようだ。だが、首輪をつけた少女達は気にも留めない。
『冗談。こっからが本番だよ、お嬢様!』
 画面外から“2号”が現れ、沙綾香の横に腰を下ろす。その手には、電動マッサージ器が握られていた。
『っ!!』
 マッサージ器が唸りを上げた瞬間、沙綾香はびくりと肩を竦ませ、ソファから立ち上がろうとする。だが、他3人がそれを阻んだ。同時にマッサージ器の先が股座に押し当てられ、重低音の質が変わる。
『っんぐううう!!!』
 口枷に遮られない、はっきりとした悲鳴。それは、普段以上に痛々しく聴こえた。
『んふふ、痙攣しそうなぐらい気持ちいいでしょ。こんなにクリが勃起してたらさぁ!』
 “2号”は沙綾香の声を面白がりながら、クリトリスに押し当てたマッサージ器を静止させる。沙綾香の太腿がピクピクと反応する。
『だ、だめ……い、いくっ、いっくうううっ!!!』
 掠れ声から一転、童女のように澄み切った声で、絶頂が宣言された。太腿が一瞬引き締まり、どろりと溶ける。その落差こそ、絶頂の深さのバロメーターだ。
『へーえ、どこでイったの?』
 “2号”は薄ら笑いを浮かべたまま、ほんの少しマッサージ器の先端を浮かせる。刺激も弱まるはずだが、絶頂へ追い込むには十分らしい。
『いひっ、ひっ……! く、クリでっ、クリでイった! もうイッたから、やめてえっ!!』
『はあ? やめるわけないじゃん。もっともっと、どんどんイかせたげる。イク時は言いなよ、ここのルールだからさぁ!』
 “2号”がマッサージ器を縦にし、刺激の種類も変えながら囁く。沙綾香の腹筋が波打ち、ぐぎゅるるるる、という渋り腹特有の音が鳴る。
『んひいいっ!! い、いくいくっ……いくっ!! い、い、イってる、クリでイってるうっ! おねがいやめてっ、刺激、強すぎて……が、我慢が……っ!!』
『我慢ってなんの我慢? あ、もしかしてぇ、またうんちが漏れそうなの?』
 事情を察したらしい“2号”の問いに、沙綾香は何度も頷いた。
『ふーん、そおっかぁ』
 “2号”は冷たい笑みを浮かべ、マッサージ器の位置を下げていく。クリトリスから、大きく開かれた股の合間へ。
『ふぁああっ!? や、やだやだあっ、ダメぇそれダメっ!!!』
『アハハハッ、ダメだよねー、知ってるよ。クリイキもきっついけど、うんち我慢してる時の方って、コッチのがヤバいんだ。オマンコ全体が痺れちゃって、お尻の穴に力入んなくなるからさあ!』
 “2号”はそう言って割れ目を震わせ、他2人も膝を掴んで開脚状態を強いる。
『ホラ、楽になっちゃいなさいよ。どうせもう漏らすしかないんだから』
 そう言う“1号”は両手で沙綾香の顎を浮かせているが、あれは顎を引いて耐えるのを防いでいるのか。
 四対一の壮絶な追い込み。助けに来ないその状況下で、沙綾香は歯を食いしばって踏ん張っていた。それでも、いつか限界は来る。
 痙攣を続けていた太腿が、ぶるりと大きく震えた。
『んぐ、ぐ……んひゅゆ……っ!!!』
 沙綾香は、最後の最後まで耐えようとしたんだろう。妙な声はその証だ。だがそんな健気さとは裏腹に、排泄の音は格別に酷い。ばぶうっ、という破裂音。放屁に似ているが、すぐにそうでないと判る。ソファの座部に、薄黄色の液体が広がりはじめたからだ。
『あっはっはっはっは、すっごい勢い。せっかく太めの栓したげたのに、よくそんなに出せるね』
『VIPのお偉いさんにも、こんな感じの芸で取り入ったんでしょ。潮噴きまくったりして』
『いやあ案外コイツ、こういうのが好きなんじゃないの? さっきからオマンコイキしまくってるもん。乳首だってビン勃ちだしさ。普通こうはなんないって、同じ女にイジメられる状況でさあ!』
 奴隷少女達はそう言いながら、また沙綾香を追い込みはじめる。両膝を開かせ、マッサージ器でクリトリスに宛がい、背もたれ側から手を伸ばして乳首を捏ねまわし。
『やあああっ、いゃっやめてええっ! 気持ち悪いっ!!!』
 沙綾香はただ顔を振り、涙を流す。嗜虐心の強い人間にとって、その表情はさぞ魅力的なことだろう。


                 ※


『しっかし、あいつらもやるもんだな。つい今朝方までは、客の言うなりのイヌだったくせによ』
『ああ。ケツ蹴り回してでもイジメさせようと思ったが、想像以上だ。むしろ、やりすぎねぇように監視しねえと』
 部屋の中央に視線を向けたまま、調教師が囁き合う。
 確かに、奴隷少女の豹変ぶりはそら恐ろしいほどだ。彼女達は今も、座椅子に沙綾香を拘束し、嬉々として嬲りつづけていた。

『はっ……は、はっ……。も、もう、それ塗るの……やめて…………!』
 沙綾香が息を荒げながら懇願する。汗の量も普通じゃない。一方、その沙綾香を囲む4人の少女は涼しい顔だ。
『やっとギブ? ずいぶん頑張ったじゃん。ウンコはすぐ漏らすくせにさ』
 “2号”が意地悪く告げ、周りの笑いを誘う。沙綾香が悔しそうに唇を噛めば、笑い声はさらに大きくなる。
『ま、大したもんだよ。このゼリーって、山芋の5倍痒いらしいから』
 “3号”はそう言って、手にした筆を宙に翳す。彼女は、小さな容器からとろみのある何かを掬い取っては、筆先で沙綾香の肛門へと塗り込んでいた。最初の一塗りから、すでに20分は経っているだろうか。
『すっかり緩くなってるもんね、こいつのケツ』
『ほんと。浣腸で綺麗にしといてよかったわね。じゃないと、中身ボタボタ垂れるでしょこれ』
 “1号”達が指摘する通り、沙綾香の後ろの穴は変わり果てていた。指二本が入りそうなほど開いた菊輪は、紅く腫れ、腸液でぬらぬらと光っている。そしてそれは、沙綾香も自覚しているらしい。
『いや、見ないでっ!』
『今さら何言ってんのよ、ずっと丸見えなんだけど。ホントは見られて喜んでるくせに。この変態!』
『へ、変態じゃ、ない……!』
『ふん、よく言うわ』
 “1号”が沙綾香の恥じらいぶりを可笑しがり、肛門のすぐ内側を指で掻く。今の沙綾香は、それだけで尻を跳ねさせた。
『ひぐっ……!』
『あはは、すごい反応。お尻引っ掻かれてそんな声出すとか、やっぱり変態じゃない。でも、わかるわ。お尻が痒くて痒くて、堪らないんでしょう? だったら、いい物をご馳走してあげる!』
 そう言いながら“1号”は、近くの鞄から指サックを取り出した。棘のような凹凸が無数についたものだ。それが人差し指と中指に被せられ、肛門へとねじり込まれる。
 目隠しをした沙綾香に、心の準備などできない。不意打ちの激しい刺激は、彼女のなまの反応を引き出す。
『んぎぃいいいっ!?』
 食いしばられる白い歯。内に折れる十本の足指。引き締まる太腿。見ていて苦しくなる反応だが、あの場では嘲笑の種にしかならない。
『ほーらほら。気持ちいいでしょ、凸凹が擦れて!』
『……っ、ふ、ン……んっ、ん!!』
 “1号”はますます調子づき、二本指で肛門の入口付近を掻き回す。対する沙綾香は声こそ出さないものの、表情は絶頂時さながらだ。あるいは実際に、ごく軽い絶頂を繰り返しているのかもしれない。
『あは、お尻が窄まってきたわ、刺激を下さい下さいって、池の鯉みたいねえ! オマンコもヒクヒクしてる。全部丸見えなのよ。こうやってお尻の穴をほじくられるのが、気持ちいいんでしょう?』
 サック付きの指が踊るたび、伸びやかな下半身が跳ねる。割れ目が開閉しているのも事実だ。それを周囲に知らしめた後、“1号”はゆっくりと指を引き抜いた。
『こうも物欲しそうにされたら、もう指なんかじゃ駄目ね。太い物で、たっぷりと犯してあげるわ』
 “1号”の目は、爛々と光っていた。下のフロアで、食い入るようにモニターを眺めている黒人共とそっくりだ。

 拘束を解かれた沙綾香は、床に這う格好を取らされる。“1号”はその背後で、また鞄を漁っていた。
『うはっ、それいっちゃうの?』
 鞄を覗き込む“2号”が、にやけ顔で訊ねる。
『あんなに欲しがってるんだし、刺激が強い方がいいでしょ』
 そう答えながら“1号”が取り出したのは、イボ状の凹凸があしらわれたペニスサックだ。ゴーヤを思わせるそれでペニスバンドを包み込んでから、“1号”は沙綾香の背後に膝をつく。そのまま挿入の態勢に入ろうとするが、高さが合わない。モデル級のスタイルを誇る沙綾香は、這い蹲っていても腰の位置が高い。
『ホント、長い脚ね』
 “1号”は吐き捨てるように呟いた。複雑な表情だ。目元と眉は吊り上がっているが、口は薄笑みを湛えている。嫉妬と征服欲の入り混じった、歪な顔。
『奴隷のくせに生意気だよね』
『うん。頭が高いよ!』
 “3号”と“4号”が沙綾香の脚を開かせ、“1号”の腰の高さに合わせる。
『なにがよ、アンタらがチビなだけ……んふわ゛っ!?』
 気力を振り絞って言い返そうとする沙綾香だが、それが裏目に出た。“1号”の挿入と同時に、情けない声が漏れ、ギャラリーを一斉に噴き出させる。
『はははははっ、ンだよ今の声!』
『んふわっ、だってよ! ひっひひっ、どっから出た声だよ!?』
 女による女へのアナルレイプ。それはどのみち笑いものになっただろうが、嘲笑われる対象が具体的だとなお辛い。沙綾香の顔が屈辱に歪む。
『良かったわねぇ。あんたの声、お客さんに喜んでいただけてるわよ。もっと聴かせて差し上げたら?』
 “1号”は品のある口調で焚きつけながら、腰を前後に揺り動かす。ペニスバンド半ほどまでの、ごく浅い抜き差し。ペニスサックの凹凸で、敏感な菊輪を刺激することに注力しているらしい。
『……っ、んっ。……ッ、ッ、…………ん、ンッ…………!!』
 陰になっていて見えづらいが、沙綾香は、下唇に歯を立てているようだった。ついさっき声で失敗したため、意地でも声を出すまいとしているのか。
 だが多分、それは悪手だ。山芋の5倍痒いゼリーを塗りたくられ、指で引っ掻かれるだけでも腰が跳ねる状態の今、凹凸だらけのペニスバンドで犯される心地よさは壮絶に違いない。声が出て当たり前の状態だろう。その状態で声を殺すとなれば、ガスが噴き出すペットボトルの口を強引に閉じるようなもの。当然、逃げ道を失ったエネルギーは、容器の中を駆け巡る。
 カメラに映る範囲で、最初に変化が表れたのは太腿だ。這う格好である以上、もともと沙綾香の脚にはある程度力が入っている。だが、“1号”の腰が前後するたび、太腿の太さが驚くほど変化した。引き締まり、弛緩する、その振れ幅が異常だ。黒人相手のセックスで、2、3回ほど絶頂に追い込まれた段階で、ようやく見られるような蠢き方。
 あれは、もたない。俺はそう確信した。そして俺の予想は、ネガティブな事に限ってよく当たる。
『…………ぉ、ほっぉ、ぉ……ッく、んは、ぁっ、あは、ふっ……ん、んふっ…………!』
 硬く噛み締められていた下唇が開き、『お』の音を漏らしはじめる。足指が床に対して爪先立ちの形になり、手の指も握り込まれる。
 そうした微かな変化を、責め手の“1号”は見逃さなかった。
『ふふ、気持ちいいでしょ。気の狂いそうな痒みが和らいで、ジーンって痺れるような感覚が頭まで這い上ってくる感じよね。それがアナルセックスの気持ちよさなの』
 “1号”は妙に優しい声色で囁きながら、大きく腰を引いた。サックのぶん太さを増したペニスバンドが、ゆっくりと抜き出されていく。ゴーヤのような凹凸……それが朱色の蕾を通り抜けるたび、白い太腿が筋肉の形を浮き立たせる。
『どう、うんちしてるみたいな気持ちよさでしょ。腰が抜けちゃいそうよねぇ』
 砂糖水のような甘い声。ペニスバンドは亀頭部分まで覗く位置にまで抜き出され、そこで一瞬静止した。
『今度は、奥まで犯してあげる』
 “1号”の口は、沙綾香の耳を舐められる位置でそう告げ、ゆっくりと腰を押し進める。
 抜き差しなら、もう何度も目にしていた。だが、今のこの挿入には、格別の重量感を感じてしまう。
 凹凸が、菊輪を歯車のように変形させ、次々に呑み込まれていく。これまではペニスバンドの中ほどで止まっていたが、ついにそのラインを超え、ぐっぽりと尻の穴深くに嵌め込まれていく。
『…………ンんんんっ………!!』
 沙綾香から漏れる声は、咽び泣きとも取れる。だが実際には、快感の呻きだろう。
『ほら、ここが奥。あんたみたいなデカ女でも、直腸の深さはあたしらと変わんないんのね。腸の中が満たされてるのがわかる? 慣れないうちは苦しいし、違和感もすごいよねえ。そのうち、それが良くなってくるんだから』
 “1号”は沙綾香の腰を掴み直し、また腰を引いた。カリ首付近まで抜き出し、根元まで押し込む。そうした最大級のストロークで、じっくりと回数をこなしていく。目を爛々と光らせながら。
『ったく、女はウソが上手ぇな。“1号”のやつ、テメェがやられる時ゃ悲劇のヒロインぶってたくせに、しっかりケツで感じてたわけか』
『言うなよ、おかげで大した竿師ぶりだ。女にしとくにゃ勿体ねえ』
『そりゃどうかな。見ろよあの動き、ぺニバンを最大限活用してやがる。男があんな真似すりゃ、三擦り半でイッちまうぜ? 女だからこその責めだと思うね』
『確かにありゃ、モノホンのチンポだと堪らねぇな。ケツ穴に嵌まり込むギリギリのサイズだしよ、締めつけが半端ねぇだろ。ま、そんなギリギリサイズで犯されるVIP嬢ちゃんも、同じく感じまくってんだろうがな』
 画面外に、下卑た声が飛び交う。客も調教師も、女同士のアナルセックスを随分と楽しんでいるようだ。逆に俺は、動悸が止まらない。なまじ犯される沙綾香を見続けてきたせいで、彼女の良くない兆候にすぐ気が付いてしまう。
 最初は、いつも音だ。にち、にち、にち、と音がする。ペニスバンドに擦られる肛門が、腸液で潤いだしているせいか。こういう粘ついた音は、沙綾香の限界の先触れだ。
『んっ、んぐっ……んぅーー~~っ……!!』
 沙綾香の呻きにますます余裕がなくなった頃、まず手が形を変えた。床に両肘をつく形から、片手を床につく形に。そしてその後、つま先が持ち上がり、続いて膝が床から離れる。
『なに、気持ちよくなっちゃった? お尻を上げて、はしたないおねだりねぇ』
 沙綾香が体勢を変えても、“1号”に焦りはなかった。沙綾香のくびれた腰を掴み直し、大振りのストロークを続行する。焦らず、じっくりと。
 沙綾香はさっき、このままではまずいと感じたんだろう。もう数秒かでどうにかなってしまう。そう直感したから、腰を上げて状況を変えようとした。だが、それも失敗に終わる。“1号”は慌てず、淡々と、沙綾香の感じたレッドラインを踏み越えた。
『ん゛あっ、はっ、はっ…………!!』
 止まっていた沙綾香の息が吐きだされ、膝が落ちる。屈服。誰がどう見ても、それだ。
『ふふ、震えちゃって。後ろの良さが解ってきたみたいね』
 “1号”が唇を舐め、思いきり腰を沈める。これまで以上の深さだ。
『お゛っ!?』
 沙綾香の全身がぶるっと震え、同時に『お』の音が絞り出される。今回ばかりは、聞き間違えではありえない。場の全員の耳に届いた。どっと沸く笑い声が、その何よりの証拠だ。
『んん、いい声。“こっちの穴”だと、そういう声が出ちゃうわよね。いいわ、もっと出しなさい。お前のケツイキ声で、お客様に楽しんでいただくの!』
 “1号”は調教師らしい口調で命じつつ、沙綾香の腰から手を離した。そしてその手を沙綾香の両肩に置くと、中腰になり、本格的にピストンを開始する。
 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、という音が響きはじめた。尻肉と腰がぶつかる音。セックスの時に必ず鳴る音。
『ふふ、ふふふあははっ。楽しいわぁ、すっごく楽しい。お前を見てると、ヘンな気分になるの。犯したくて仕方なくなるのよ。だからこれは、お前が悪いの。わかる?』
『い、イミ、わかんない、イミわかんないっ! んんん゛っ……はぉお゛っ!? はぁ、はぁっ……おねがい、やめて。おしりはホント嫌なのっ……ん、あぁお゛っ! ぃんんん゛っ、う゛お、おっ、う゛、ぉぉ……ほぉおおお゛っ!』
 沙綾香は中断を求めつつ、必死に声を殺そうとしていた。だが、叶わない。深く突き入れられるたびに、惨めな喘ぎが漏れてしまう。
 衝撃的な光景だ。体格なら、やせ細った“1号”より、身長も肉付きも沙綾香が勝っている。だというのに、沙綾香は完全に征服されていた。両肩を掴まれ、背を弓なりに反らせたまま、成すすべなく喘ぐばかり。逆に“1号”は、掴んだ肩を支えにして、意のままに腰を叩き込んでいく。
 アナルレイプ──それ以外に、これを言い表せる言葉がない。
『おほっ、お゛……ぉっく、あはっ、はぁ、はぁっ……はーっ、はっお、っく…………!!』
 沙綾香の呼吸が荒くなっていく。口が片時も閉じなくなり、細い涎の糸が滴り落ちる。ちょうどそのぐらいの頃から、“1号”の動きに変化があった。思いきり腰を打ちつけるスタンスが変わらない。だが、中腰がやや浅くなり、挿入角度が変わったようだ。横向きに腸奥を抉る動きから、斜め下へ突き込む動きに。
『どう、お嬢様? こうすると、子宮に当たって気持ちいいでしょ。ほとんど処女のあたしでも、こうされるとお腹の奥が疼くもの。普段からオマンコで可愛がられてるお前なら、どうなっちゃうんだろうね?』
 “1号”はそう囁きかけながら、意味深にカメラの方へ視線を寄越す。するとカメラもそれに応え、沙綾香達の背後に回った。映り込むのは、前後に揺れる痩せた尻と、その内側で波打つ肉感的な太腿。そのままズームの倍率が上がれば、より詳細な部分までが露わになる。
 沙綾香の割れ目は、ぱっくりと開いていた。熟れた桃へ切れ目を入れたように、透明な雫がポタポタと滴り落ちてもいた。男の身ながら、その快感の度合いに想像がつく。腰が抜ける。腰が溶ける。そういう類のものに違いない。
 そう予想を立てていたから、数分後、沙綾香の腰がぐらぐらと揺れ始めた時にも、不思議には思わなかった。
 腰に力が入らなくなってからも、沙綾香は踏ん張ろうとした。だが結局、床に広がる自分の愛液で膝が滑り、寝そべるような格好になる。そして一度そうなった以上、這う格好に戻ることはできなかった。
『あっはは。自分のマン汁で水浴びとか、ほんと呆れたマゾね』
 “2号”達がゲラゲラと笑う中、“1号”は沙綾香に覆いかぶさり、ほぼ真上から紅色の蕾を貫く。
『きひゃああっ!?』
 沙綾香の叫び声が変わった。久々の『あ』行、明瞭に響き渡る声だ。それは“1号”が腰を上下するたび、ああ、あああ、と繰り返される。その新鮮な反応に、客達が一人また一人と立ちあがりはじめた。
『なんだ、すげぇ反応だな。息も絶え絶えって感じになりかけてたのによ』
『ああ。しかもよ……なんかアレ、マンコ犯されてるみてぇだな』
 客達の言う通り、沙綾香の上げる声は、黒人共に膣を犯されている時によく似ている。
『ふふふ……ほら、注目されてるわよ』
 “1号”は客の反応を横目に、さらに腰を蠢かした。上下に突くだけでなく、円を描くように腰を動かし、奥の奥へとペニスバンドをねじり込む。沙綾香が寝そべっている今、それは腸側から子宮を押し込み、硬い床とで挟みつぶしているに等しい。
 沙綾香は、その刺激に耐えられなかった。Vの字に伸び切った両脚が、感電でもしたように震える。
『ぁかはっ……!!』
 大口を開けたまま舌を突き出す表情は、まさしく膣奥で絶頂した時のそれだ。
『すごい、足がブルブルしてる。どうしちゃったの?』
『ど、ど、って……おねがっ、抜いて……。おしりぃ、ひらく……ひろがっちゃう、からっ…………!!』
 “1号”の問いかけに、必死で答える沙綾香。だがその様子に、また笑いが巻き起こる。
『別にいいじゃない、拡がったって。お前、アナル奴隷なんだから。それに、そんなの建前だよねえ? 本当は今、お尻でイッたんでしょ、このマゾがッ!』
 “1号”は笑いながら沙綾香の髪を掴み上げ、その耳元で問い質す。大層な迫力だ。彼女自身、ここの調教師から同じ事をされてきたんだろう。
『い、イって、ない……。私、お尻、なんかで……イかない…………』
 沙綾香は首を振る。だが、激しく喘ぎ、涎を垂らしながら何を言おうと、外道からの嘲笑は免れない。
『ふーっ。お前、見た目以上の馬鹿ね。じゃあいいわ、そうやって意地張ってれば』
 “1号”はわざとらしく溜息を吐くと、アナルレイプを再開する。円を描くように腰を動かし、腸の奥を抉りながら子宮口を杭打ちする。
『んくっ……あ、お゛っ、んお゛っ!! はっ、はッ……かはっ、はぁっはぁっ……ぉあ゛っあ゛、ぁおお゛っ!!!』
 沙綾香は喘ぎ、呻き、絶叫する。せめてもの抵抗か、膝下をバタバタと床に叩きつけて暴れもする。だが、“1号”はそんな必死の抵抗を見て笑みを深め、より念入りに絶頂へと追い込むばかり。
 馬乗りで殴られ続けるに等しい状況で、沙綾香は随分と頑張った。すらりと長い脚が、何十回強張ったかわからない。
『ぃゆうお゛、ぁお゛お゛ああッ!!!』
 尻肉が断続的に痙攣しはじめた数分後、さらにぐりぐりと腸奥を抉られ続け、耳を疑うような声で失禁を晒しても、沙綾香は音を上げなかった。
 だが、いつか必ず終わりは来る。
『…………はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…………。お、おねがい…………。認める、から…………お尻で、イッたの、みとめる、から…………やめ、て…………』
 床に突っ伏したまま、沙綾香は頭上の主に哀願する。陥落を今か今かと待ちわびていた客から、おおっ、と歓声が上がった。
『フーン、やっと認めるの。随分頑張ったわねぇ。でも、そんな小声じゃダメ。参りましたは、部屋の皆に聴こえるように、大声で言わないと!』
 “1号”は沙綾香の状態を知りつつも、駄目押しとばかりに腰で円を描く。沙綾香のすらりと長い脚が、陸に打ち上げられた魚のようにのたうつ。
『はううぁああっ!! あのっ、ほぉっ、ほしりでっ、お尻でへっ、い、いヒました……。お尻で、イっひ、ましたっ!!』
 沙綾香は必死に叫ぶ。呼吸もままならない状態で声を張る様は、実に健気だ。だが、それを憐れむほど、この倶楽部の客は優しくない。
『はぁ? 何言ってっかわかんねーよ。人間の言葉しゃべれ、豚が!』
 明らかに聞き取れているだろうに、そんな野次を飛ばす奴が必ず出る。“1号”はそれを見越していたようで、沙綾香の上からどこうともしていない。
『ほら、よく聴こえないって。皆に届くように、お腹から声出しなさい!』
 そう叱りつけ、痙攣の収まらない沙綾香の肛門を抉り回す。
『んはっ、あぎゅううっ!!! い、イきましたあっ!! お、おほっ、お尻で……お"ッ! いま、お尻で、んぉほっ、おっ……んぃひイ゛ってますぅっ!!』
『だから、言葉になってねぇんだっつーの。やり直し!』
『そ、そんな……ひってる、イッてる、イッてるのお゛ーっ!!! お尻でっ……おしりで、お尻でイってますっ!! お尻でイってますうっっ!!!』
 沙綾香は涙を流し、半狂乱になりながら肛門での絶頂をアピールし続ける。十数人のギャラリーは、その最悪な状況を散々に嗤い、詰る。ようやく野次が止んだのは、何分後のことか。
『よく大声で言えるわね、あんなこと。私は怒られたって無理だなぁ。ま、いいわ。その必死さに免じて許してあげる』
 “1号”は最後にそう毒づき、腰を引いた。久々にカメラに収められた肛門は、すっかり開き、ぬらぬらと光る粘膜の一部が外に捲れている有様だった。それを見て、また客が嗤い、沙綾香が顔を伏せる。だがその顔は、すぐにハッとした様子で持ち上がった。
 一旦離れた“1号”の代わりに、今度は“2号”が沙綾香の肛門を指で嬲りはじめたからだ。
『や、なに……!? 終わったんじゃ……』
『ハァ、何勘違いしてんの? それは、一人目の話。こっからは、あたしの番だから』
 トンボを捕まえた子供のような顔で、“2号”が告げる。その顔は、言葉を失う沙綾香を前にして、より歪な笑みへと変わった。


                 ※


 責める側に回った女は、つくづく恐ろしい。男なら射精すると手が緩むが、女にはそれがない。複数人で交代しあえば体力が尽きることもなく、腹の底から湧き上がる感情のままに、夜を徹して全力で責め抜くことができる。挙句、責め方そのものも、硬軟織り交ぜた巧みなものだ。

 深夜22時から、たっぷり2時間、肛門性感の開発が行われた。
 沙綾香はマットの上で、マングリ返しに近い恰好を取らされ、背後の“1号”・“2号”に足首を掴まれる。そうして丸見えになった尻穴を、“4号”にじっくりと嬲られるんだ。
 最初に、例の痒みを催すゼリーが塗り込められた。その効果で沙綾香が唇を噛みしめ、肛門付近が激しくひくつきはじめた頃、道具が使われはじめる。
 大ぶりな珠がいくつも繋がったディルドー。
 法螺貝に似た形状のバイブ。
 サザエの殻を縦に4つ重ねたようなディルドー。
 そういう、いかにも刺激の強そうな責め具が、ゆっくりと抜き差しされる。行為自体は少し前の責めと似ているが、今度はとにかく静かだ。バイブの駆動音を除けば、ぐちゅり、ぬちゅり、という粘ついた音しかしない。それでも、沙綾香の足指と尻肉の蠢きを見れば、どれだけ気持ち良いのかの想像がついた。口から滴る唾液や、引き抜かれた責め具に纏いつく腸液の量も大変なものだ。
 痒みに疼く粘膜を刺激されれば、気持ちがいいのは当然だ。それに、沙綾香を追い詰める要因はもう一つある。沙綾香の横に陣取り、クリトリスを指で刺激しつづける“3号”の存在だ。彼女は“4号”の手元を見ながら、クリトリスを人差し指の腹で叩く。トン、トン、トン、トン、と同じリズムで叩いていたかと思えば、トトン、トン、トン、と変化をつけもする。あるいは、単に指の腹で圧迫しているだけのこともある。いずれにせよ、激しく擦ったりはしていない。にもかかわらず、沙綾香にとって無視できないものらしい。
『はぁ、はぁ、はぁ…………クリ、叩くの、やめて…………』
 まもなく20分が経とうとする頃、沙綾香は“3号”の方に顔を向けて乞う。目隠しをしていても、弱った瞳をしているのが伺い知れる。
『え、なんでぇ?』
 “3号”は問い返しながらも、指の動きを止めない。
『なんでって……っ、き、キモいから……』
『嘘つき』
 歯切れの悪い沙綾香の答えを、“3号”が切って捨てる。沙綾香は息を呑んだ。
『お前、ホント頭悪いね。まだあたしら騙せると思ってんの? こっち経験者だよ、全部わかってるっつーの』
 “3号”は調教師さながらの口調で詰めながら、またクリトリスを指の腹で叩いた。同時に“4号”も、凹凸だらけのディルドーをずるりと引く。
『ッ!!』
 沙綾香が息を詰まらせ、かすかに顎を浮かせた。
『アハッ、また感じたわけ? もう解ってるだろうけど、あたしら呼吸合わせてんだよ。お尻に出し入れするタイミングと、クリ叩くタイミングを同じにしてんの。こうすると、お尻弄られる違和感とか嫌悪感が、クリの気持ちよさで誤魔化されて、一気に感じやすくなんだよね。お前ももう、クリで感じてるのかお尻で感じてるのか、わかんなくなってきたんでしょ?』
 “3号”は種を明かしつつ、“4号”と息を合わせて責めはじめる。沙綾香が口を閉じて耐えられていたのも、ほんの数秒。しばらくすれば、また口を開き、あ、あ、と喘ぎはじめる。苦しそうだ。今にも達しそうなのに、それができない……そんな風に見える。
『そうそう、そうやって大人しく感じときな。もうちょっと辛抱したら、今度は死ぬほどイカせてあげるからさ』
 “4号”はそう言って他3人と視線を交わし、陰湿に笑う。

 その宣言通り、24時を回ってからの責めは一転して苛烈だった。
 沙綾香に這う格好を取らせ、、一人が圧し掛かる形で肛門を犯し、一人が割れ目で刺激し、残る二人が乳房を弄ぶ。
 あの陰湿な焦らし責めの直後に、菊輪と腸奥、乳首やGスポットといった性感帯を一挙に責められれば、耐えきれるはずもない。
『んぎぃいいいっいいクっ、イクイクイクッ!! ぃぐう……きいいっ、いィグウうっいぐううっ、あイクうううう゛っっ!!!』
 全身を震わせ、狂ったように絶頂を訴える沙綾香。そこまでの様子を前にしても、首輪をつけた4人の少女は責めの手を緩めない。時おり役割を入れ替わりながら、延々と沙綾香を嬲りつづける。
 彼女達が気にかけることは、ただ一つ。酒を片手に見守る客や調教師から、より多くの拍手を得ること、それだけだ。


                 ※


 たった一晩で、いくつの道具が使われただろう。ディルドー、バイブ、ローター、マッサージ器……それらは半透明の粘液に塗れたまま、部屋の至る所に転がっている。それらのどれ一つとして、無意味に使い捨てられた物はない。それぞれの性能をフルに使い、沙綾香の肛門性感を目覚めさせた。
 今行われている責めは、その集大成というところか。

『すごっ、まだ入るよ』
 “3号”の驚く声が聴こえる。彼女は、宙吊りになった沙綾香の肛門にバイブを押し込んでいるところだった。バイブといっても、鰻を思わせる、相当な長さの代物だ。
『でも、流石にそろそろ限界みたいね』
 “1号”の指摘通り、沙綾香の肛門は、すでに限界まで拡げられている。ひしめき合う責め具は、太さも形状もそれぞれ違うが、一つだけ共通点があった。腸の奥まで届くほどに長い、ということだ。そこへ今また、一本のバイブが深々と差し込まれていく。
『よーし、入った入った。じゃ、もう一回いこっか!』
 “3号”の掛け声で、4人の少女は頷き合い、手にしたバイブのスイッチを入れた。
『ひぐ、う゛っ……!!』
『あはははっ、イイ声。お尻がまた拡がって、堪んなくなっちゃった?』
『いつもの癖でカマトトぶってんのかもよ。ケツにバイブ詰め込まれてぶら下がってるとか、なんも可愛くないけどさ!』
 少女達は沙綾香の反応を嘲笑いつつ、スイッチを持ち替えた。新しいスイッチが指で操作されれば、当然別のバイブが振動しはじめる。
『あはっ、あ、あ……ぅ、うあっ…………!!』
 身を揺らし、苦しげな声を漏らす沙綾香。滴る汗の量が半端じゃなく、垂れ下がった足指の強張り具合も痛々しい。だがそんな反応ですら、責め手の少女達にとっては物足りないようだ。
『なにカワイ子ぶってんのよ。散々恥さらしといて、今更さあ!』
『そうそう、もう遅いから。逆にダサいよ、それ?』
 口汚く罵りながら、バイブの強弱を出鱈目に変える。
『ひっぐ!』
『お、反応してる反応してる』
『どれだろ、これかな? ……アハハッ、当たりっぽい、これだこれだあー!』
 たまに沙綾香が大きな反応を見せれば、その反応を引き出したバイブの出力を一気に上げる。
 首輪少女達は、そうして徹底的に沙綾香を辱め、見世物にしつづけた。哀れなのは沙綾香だ。
『んぐっ、は、んぐっ……!! っ、ぐはぁ、ぉ゛……お゛……っ!!!』
 無数のバイブで肛門を拡げられ、奥を掻き回されるうちに、とうとう呻き声が変わりはじめた。当然、少女達もギャラリーも、その声を聞き逃さない。というより、それを待ち侘びていたんだろう。
『ひひひっ、出たぜ出たぜ、あの声!』
『今度はずいぶん我慢してたじゃねぇか。ま、ムダだったけどな!』
 客がゲラゲラと笑う中、“1号”達もいよいよ歪んだ笑みを浮かべながら、さらに手元のスイッチを弄り回す。より、沙綾香が切ない声を漏らすように。より、足指が握り込まれるように。
 カメラマンも沙綾香の敵だ。沙綾香がひとり放置されているのを良いことに、その至近にまで歩み寄り、肛門周りを接写する。
 いつにもまして酷い映像だ。大小無数のバイブがうねり、羽音を立てる様は、洞窟で蟲が蠢いているよう。皺が無くなるほど拡がりきった肛門は、刺激を受けるたびにひくつき、その下に息づく割れ目もまた、しきりに開閉しながら雫を滴らせている。そうした変化は、余さずギャラリーに看破され、罵倒のネタになった。

『…………あれ、気絶しちゃった?』
『まさか。アナルイキに浸ってるだけだって』
 沙綾香の反応が薄くなった頃、“2号”と“3号”が顔を見合わせる。それを受けて、“1号”が沙綾香の髪を掴み上げた。
『はっ、はっ、はっ…………』
 沙綾香の顔はボロボロだ。鼻水を垂らし、涎を垂らし。もう何度も目にしてきた変化だが、今はなぜか、格別に品がなく見えてしまう。
『アッハ。やっぱ、ケツでイってたんじゃん!』
 “4号”のトドメの言葉で笑いを起こしながら、沙綾香の後ろに回った。そして、今もなお肛門で唸るバイブを、一本ずつ引き抜いていく。
『……っ!』
 バイブが抜かれるたび、沙綾香は小さく呻いた。
『ちょっと。気持ちいいからって、いちいち反応しないでよ』
 “4号”は言葉で詰り、抜いたばかりの粘液に塗れたバイブを衆目に晒して、ますます場を沸かしていく。その辱めが何度も繰り返され、ついに最後の一本が抜き去られた。
 カメラがまた肛門を映す。一本の異物も入り込んでいないというのに、真紅の穴はぽっかりと口を開けたまま戻らない。
『はははははっ、よく拡がってやがる!』
『綺麗なアナルローズじゃねぇか。こいつはVIPのダンナ方も、目ン玉剥いて驚くだろうぜ!』
 美少女の排泄器官を台無しにしたことが、ここの連中には嬉しくて仕方ないらしい。開いたアナルを眺めながら、ワインで祝杯を挙げている。魔女狩りを思わせる悪趣味な宴だ。だが、宴にはまだ続きがあった。
 吊るされた沙綾香が床に降され、マットレスの上で這う格好を取らされる。その後ろで、“1号”が薄いゴムの手袋を嵌めていた。ぎゅびっ、という音でゴムが延ばされ、細い手首に密着する。さらにその手袋に、たっぷりとローションが垂らしかけられ、沙綾香の肛門へと近づいていく。
『力抜いときなさい。って言っても……今は締められないだろうけど』
 その言葉が言い切られた直後、“1号”の指が肛門へと入り込んだ。すでに充分拡がっている肛門は、3本指をスムーズに受け入れた。さらに4本目、5本目も難なく入り込み、そしてついには、手の甲の部分までもが飲み込まれてしまう。
『あがああっ!?』
 当然ながら、沙綾香の反応は大きかった。今の今まで呆然としていた顔が、一気に強張る。よっぽどの怪我をした時の反応だ。その異常を目の当たりにしても、“1号”の薄ら笑みは消えない。
『ほーら、どんどん入ってくわよ』
 沙綾香の傍に膝をつき、より深く手を押し込んでいく。手の甲が通り抜けてしまえば、後は流れだ。1分と経たないうちに、手首までが隠れてしまう。
『ひひっ、入った入った! 骸骨みてぇな腕とはいえ、もうフィストができるとはなあ!』
『ああ。ケツに手が入るようになっちゃあ、もう普通の女にゃ戻れねぇぜ、お嬢ちゃんよお!』
 行為のハードさに便乗する形で、客の罵声も酷さを増す。沙綾香は一瞬その言葉に反応したが、“1号”の手がさらに奥深くへ入り込めば、耐えることを優先せざるを得なくなる。手指足指でマットを掴み、必死で耐える。そんな沙綾香を見下ろしながら、“1号”が微笑む顔のまま口を閉じた。その、直後。
『ぃひゃあああっ!?』
 沙綾香が急に悲鳴を上げた。彼女の変化を楽しんでいた人間さえ、虚をつかれるような大声だ。
『やっ、そ、そこダメ、何に触ってるの!? そこ触んないで、ホントにだめっ!!』
 目隠しをしたまま“1号”の方を振り返り、必死に叫ぶ沙綾香。これまでの反応の中でも、格別に大きい動揺だ。
『暴れないでよ。ちょっとS字結腸をくすぐっただけじゃない』
 “1号”は慌てふためく沙綾香を煽るように、ゆっくりと言って聞かせた。S字結腸と、確かに。
『S字、結腸……!?』
『そう。うんちが直腸へいく時のセンサー部分よ。敏感だから、こうやって指で弄られると……ほうら、気持ちいいでしょう』
 “1号”の手の甲が蠢く。中指と人差し指を鉤状に曲げる動きだ。
『やめてやめてっ、やめてってばっ!! それホントに駄目なのっ、ヘンになるっ!!!』
 沙綾香は腰を振り、這いずって、必死に逃れようとする。だが、それを他3人が許すはずもない。
『ヘンになるって? いいじゃん、なんなよ早く。お客さんもアタシらもみーんな、お前のおかしくなるトコが見たいんだからさあ!』
 足首と肩を押さえ込みながら、“2号”達が叫び返す。そこからは力比べだ。よほど危険と感じているのか、沙綾香は多勢に無勢の状況でも抵抗をやめない。腕にも足にも筋肉を浮き立たせ、逃げ出すきっかけを作ろうとしていた。
『くくくっ、すげぇ暴れっぷりだ。結腸を指で弄られんのが、よっぽど堪えるらしい』
『ああ。まるでレイプされてるみてーな反応だな。興奮すんぜ』
 女が醜い争いを繰り広げる一方で、男は気楽なものだ。ワイン片手に地獄を見下ろし、下卑た発言を繰り返す。レイプ……その単語が出た瞬間、沙綾香と“1号”が反応した。
『ねえ聴いた? 今お客様が、すごくいい表現をなさったわ。レイプですって、本当にそんな感じよね。ほら、言ってみなさいよ。結腸を指でレイプされて、感じてますって』
 “1号”が嘲りつつ、また手首に筋を立てる。骨と皮ばかりのその手の先が、肛門の中でどう動いているのかは判らない。だが想像するのは容易だ。マットレスの上で、つま先を立たせる沙綾香の足……それが全てを物語っている。
『あーら、腸液が出てきたじゃない。指に絡んでくるわよ』
 淡々とした指摘は、下手な野次よりも性質が悪い。事実として映像の中には、クチュクチュという音がしはじめていた。
『ん、ふううんんっ……!』
 沙綾香はマットを握りしめ、顔を左右に振って耐えるが、我慢もそろそろ限界だ。クチュクチュと音が鳴るたび、腰が跳ねる。
『ぅは、はっ……あ、はっ、ぉ……んはっ! ぉ、ぉ゛……くっ!』
 喘ぐ合間合間に口が尖り、『お』の声を出しかけては、必死に呑み込む。だが、見守る面子はそれを見逃さない。
『あはっ、まただぁ!』
『また、だねえ。ねえ豚、意地張んないで、思いっきり声出しなよ。んおおおおって叫びながら、うんちするみたいに気張ってさあ。腰ガクガクになるぐらい気持ちいいよ、お前みたいなヘンタイなら!』
 奴隷少女達による、悪意に満ちた茶化し。それを耳にして、とうとう沙綾香の堪忍袋の緒が切れた。
『……いい加減にしてよっ!』
 沙綾香は大声で叫び、横の“3号”に顔を向ける。
『人が大人しくしてれば、調子に乗って! あんた達だって、昨日まではイジめられてたんでしょ? なのに、なんでこんな事できんの!? 自分がされて嫌な事は他人にするなって、親に教わんなかったわけ!? そこにいる、客のオッサンらも! いい年して、若い子イジめて喜んでるとか、ホント終わってるよ!』
 よほど鬱憤を溜め込んでいたんだろう、凄まじい剣幕だ。だがどれほど迫力があろうと、檻の中のライオンを怖がる人間はいない。
『好き勝手言っちゃって。よく恰好つけられるよね。結腸アクメするマゾのくせに』
『か、感じてないってば! 結腸だかなんだか知んないけど、そんなとこ、弄られてもキモいだけだし!』
『うーわ、まだ言うの。バレバレなのに寒いよー?』
 あくまで意地を張る沙綾香に、“3号”が呆れ声を漏らす。沙綾香自身も表情は硬い。白々しい自覚はあるが、感じさせられた場所が場所だけに、受け入れるわけにはいかないんだろう。
 そんな中、責めを主導する“1号”が手を止めた。不思議がる仲間や客の前で、彼女は頬を緩める。
『こんなに強情なら、もう皆の前で証明するしかないよね』
 “1号”はそう言いつつ、肛門から手を引き抜いた。途端に、おおっ、と驚きの声が上がる。衆目に晒されたゴム手袋は、何かの液体に塗れていた。考えたくはないが、流れからいえば腸液の可能性が高い。少なくとも“1号”はそう確信している。だからこそ彼女は、沙綾香の公開処刑に踏み切ったんだろう。

                 ※

 沙綾香は、恥部周りを一旦拭き清められた後、さっきとは逆の格好を取らされた。寝転がったまま、足だけを持ち上げる形だ。その状態で、秘部にシールのような布が貼り付けられる。
『これは前貼りっていうの。薄いやつだから、マン汁とか染みるとすぐ判るよ。ま、感じないって言い張るぐらいだから、関係ないかもだけど』
 “4号”が秘部をなぞりながら囁きかけ、沙綾香の表情を引き攣らせる。一方で“1号”も、着々と準備を進めていた。新しいゴム手袋に付け替えた上で、瓶入りのゼリーを掬い取る。
『それじゃあ、いくわよ』
 “1号”はそう宣言し、ぽっかりと口を開いたままの肛門へと手を捻じ込んでいく。挿入はスムーズで、数秒とかからず手首までが入り込んでしまう。
 そして、“1号”が手首を曲げた直後……沙綾香が顎を浮かせた。
『ひあっ!? ちょっ……こ、これって!?』
 慌てた様子で、“1号”に問いかける。妙な反応だ。その理由は、すぐに明らかになった。
『そう。ちょっと前にも使ってあげた、浣腸ゼリーよ。グリセリンより効きが強い中級者向けの溶液だから、今のお前にはきついでしょうねぇ。強い便意に苛まれたまま、結腸をほじられ続けたらどうなるか……味わってみなさい!』
 その言葉と同時に、手首の動きが早まった。
『んぐっ! んは、はっ……く、んぐうっ……う゛!』
 沙綾香の歯が食いしばられる。無様を晒すまいとしているんだろう。
『くくくっ、頑張ってらぁ。アナル性感ってなぁ、ああして力めば力むほど深みにハマっちまうのによ。学ばねぇガキだぜ!』
『ま、藤花みてぇにプライドが一番って女もいるからな。こいつもこのルックスだ、さぞやチヤホヤされてきたんだろ。それが結腸で感じるマゾだったなんて、認められる訳もねぇよなあ!』
 沙綾香の健気さを、何人もの客が笑い飛ばす。そんな最悪な空気の中、くるるる、ぎゅるる、という音が響いた。沙綾香の腹の音だ。大量浣腸された時ほど深刻な音じゃない。とはいえ、まずい状況なのは確かだ。
『そーらそら、浣腸が効いてきたぜ。だろ、奴隷1号?』
 客の一人がそう問いかけると、“1号”は恭しく頷いた。
『はい。結腸がヒクヒクと蠢いて、指に吸い付いてきます。どうやら私の指先を、下ってきた大便だと勘違いしているようです。ねえ、そうでしょうお前。私の指をうんちだと思っているのよねぇ。本当、失礼しちゃうわ。意識を集中させなさい。ほら、うんちがこんな鉤爪みたいな動き、できないでしょう?』
 下劣な物言いで場を盛り上げながら、“1号”が手首の角度を変える。その直後、沙綾香の太腿が引き締まり、肛門からぶぢいっと放屁が起きる。
『んーー~~ッ!!!』
 とどめに口から漏れたのは、声にならない悲鳴。何かを我慢しきれない時に出るものだ。これは、格別に大きな笑いを呼んだ。客も調教師も、腹を抱えて笑い転げる。いっそ野次でも飛んだ方がマシな状況だ。
 そして、悪い事はもう一つ。
 これ以降、沙綾香は口を閉じられなくなった。

『……はっ、はぁっ……あッ、あ、あ! くあっ! あ、あ、ひあ!!』
 常に激しく喘ぎ、“1号”の手首が動くたびに声が出る。激しい反応だ。そこまでの反応が起きるようになれば、当然、別の変化も起きてしまう。
『あーあ。もう濡れてんじゃん』
 沙綾香の右足を掴む“4号”が笑い、指で前貼りをなぞった。彼女の言葉通り、ごく薄い前貼りは、その中心辺りがうっすらと透けかけている。沙綾香はそれに一瞬反応するが、すでに構っていられる状況にはないようだ。
『あッあッあッあッ、あっ…ダメ、ダメっ……!!』
 鋭い呼気を繰り返しながら、首を左右に振りたくる。どうやら絶頂が近いらしい。
『イク時は言うのよ。皆に聴こえるようにね』
 “1号”も同じことを察したらしく、そんなことを囁きかける。
『…………ッ!!!!』
 沙綾香は、かろうじて声を噛み殺した。だがそれは、あくまで第一波を凌いだだけのこと。“1号”の手は止まらない。当然、第二波、第三波が沙綾香を襲う。
『ぉっ、ほおっ…おお……ん、おっ、ほおお……っ!!!』
 沙綾香の唇が尖り、とうとう『お』行の呻きが漏れはじめた。客が沸き立つ中、“4号”達が沙綾香の両脚を拡げさせ、堪えづらい体勢を作り上げる。その上で“1号”が、骨ばった腕に筋を浮かせれば、それが決定打となった。
『ィひっ!? っひ、っ……ぉ、ぉ…………おお゛お゛っ!!』
 低い呻きと共に、沙綾香の腰が痙攣する。足指も空中で握り込まれる。さらに一秒遅れて、前貼りにじわりと染みが広がった。絶頂だ。疑う余地もなく。
『はははははっ、とうとうイキやがった!』
『だな。おまけに今のは、相当な深イキだぜ!』
 客は勝ち誇ったように叫び、沙綾香の心を抉りにかかる。
『あーあ、結腸で感じてるのバレちゃったあ!』
『つーかさあ、イク時は言えっつってんじゃん。ルールなんだから守んなよ。次黙ってイッたら、漏斗で小便飲ますからね』
 奴隷少女達も便乗して沙綾香を追い詰める。
『はっ、はっ、はっ、はっ…………』
 沙綾香は、荒い呼吸を繰り返しながら罵声に耐える。ただし、その目隠しの下からは、真新しい涙が伝っていた。

 一度絶頂してしまえば、勝負は決したも同然だ。沙綾香は、敏感さを増した結腸を弄られ続け、立て続けに絶頂へと追い込まれていく。
『あはぁお゛、お゛、んンンおおお゛っ!!! い、いくっイクッ、お尻のおくでっ、イクぅうう゛っっ!!』
 沙綾香に許されるのは、切ない声で絶頂を訴えながら、足をばたつかせることだけだ。マットレスを掴んでいた手が、今は側頭部の辺りを押さえているが、あれは何故だろう。狂いそうな頭を覆っているのか。あるいは万が一にでも目隠しが外れ、顔を見られるのを必死に防いでいるのか。解らない。傍からでは理解が及ばないほど、沙綾香の状況は悲惨だ。
『ふーん、またイったんだあ。もう何回目だっけ? あとさ。前貼り、剥がれちゃってんだけど』
 “2号”が嘲りながら、沙綾香の割れ目に指を沈めた。可溶性の素材なのか、すでに前貼りはほとんど破れていて、指の侵入を阻めない。“2号”は膣の中でぐちゅぐちゅと音を立ててから指を引き抜き、纏いついた愛液を沙綾香の鼻の下に塗りつける。
『ん゛!』
 沙綾香は嫌がって顔を逸らせるが、そのせいでまた絶頂に耐え切れなくなる。
『んふゅう゛、こっほ、お゛……っ!! ……はっ、はーっ、はぁっ、はぁっ……あダメっ、また、またくる、またくるううぅっ!? 』
 妙な吐息と共に絶頂に達し、それが終わらないうちにまた震え上がる。
『ほっお、おおっ、んんんんおおおお゛っっ!! んふっく、んはぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……もう、いや、もうやめて……。ず、ずっと、来てるの……来る感じがっ、ずっと繋がってるのおっ!! お願いわかって、もう無理なの、こんなの、ほんとにヘンになるから゛あ゛っ!!』
 沙綾香の言葉は、呂律のみならず内容まで怪しい。論理的に話す余裕がないんだろう。便意の限界を迎えた時、藤花が単語でしか話せなくなっていたように。
『おいおい、人間の言葉話せって。来るのが繋がってるってなんだよ』
『見てる感じだと、イってる最中にまたイっちまってんだろうな。止まんねぇ下痢便みてえによ』
『ひゃははははっ、なーるほど! じゃあなんだ、ありゃあ結腸アクメの下痢便ってか!!』
『ぶふっ!! お前、人がワイン飲んでる時に笑わせんじゃねーよ! 結腸アクメの下痢便とか、どんだけヒデー言葉作ってんだよ。相手は仮にも、VIP御用達の上級奴隷だぜ?』
 客達は沙綾香の言葉尻を捉え、容赦のない罵倒を投げかける。当然奴隷少女達も同情などせず、むしろ今が仕掛け所とばかりに、思いつく限りの嫌がらせを始めた。
 大股を開かせたり、足首を高く掲げさせて我慢が利かないようにするぐらいなら可愛いものだ。ある時には、そうして持ち上げた足を揃え、ぴっちりと股を閉じさせた。言うまでもなく、肛門に腕が入ったままで、だ。その刺激の強さは想像に難くない。実際に沙綾香はこの責めの間、やめてやめてと狂ったように叫び続けていた。
 地味に凶悪だったのは、“3号”の乳首責めだった。結腸の刺激と乳首への加虐のタイミングが合えば、沙綾香は切ない声で泣きながら、ガクガクと腰を震わせる。それは喚き立てる以上に支配欲を満たす反応で、客から拍手喝采を引き出すほどだった。

                 ※


『ななじゅう、さん……っ! な、ななっ、じゅうう…………よんんっ……!!』

 沙綾香のカウントが、静かな空間に響きわたる。彼女はスクワットの要領で、巨大なバイブに跨ることを要求されていた。
 バイブは極悪だ。太さはスチール缶に近く、長さはヒトのペニスの3倍以上──40センチはあるだろう。幹の部分は凹凸が多く、さらにペニスでいう雁首の部分にも、横一列にびっしりと真珠のような突起がついている。スムーズな挿入を阻むギミックだらけで、ただ肛門へ挿入するだけでも難儀する。
 しかも、沙綾香に課せられているのは根元近くまでの挿入だ。バイブの底から数センチのところにマジックで線が引いてあり、その線が肛門に隠れなければ、挿入とは見做されない。少なく見積もっても35センチ以上は飲み込む必要があり、直腸には収まりきらない。ではどうするかといえば、今まさに、沙綾香が75回目を披露しているところだ。
 肉感的な太腿が沈み込み、バイブと同じ大きさに開いた肛門が、凶悪な責め具を包み隠す。そのまま難なく6割ほどを飲み込み、そこで一旦動きを止める。長さから言って、ちょうど直腸奥へ達したところだろう。
『すーっ……』
 沙綾香は大きく息を吐き、大腿部に力を込めた。そして意を決し、さらに腰を沈めていく。
『なあっ、じゅう…………ご、おおお゛っ……!!』
 数をカウントする声は震え、美脚が痙攣する。今まさに、バイブが直腸奥で折れ曲がり、真珠の並んだ雁首で結腸の壁をこそいでいるんだろう。
 バイブの最後の特徴は、その柔らかさだ。痩せ細った奴隷少女でも、両手で力を込めれば曲げられるほどに。とはいえ、自然と曲がっていくほど柔らかくもない。固めのスライムのようなもので、直腸奥へ押し付けて体重を掛ければ、ようやく横へ弾けるという具合だ。経験者である“2号”は、満面の笑みで沙綾香にそう言い含めていた。
 沙綾香に課せられた挿入ノルマは100回。挿入のたび、バイブの雁首で結腸を虐め抜かれるわけだから、達成は容易じゃない。“2号”の説明中に調教師が噴き出したのを見る限り、彼女もまた成し遂げられてはいないようだ。
 それでも“2号”は、沙綾香に無理を強いる。バラ鞭を構え、沙綾香の腰が止まるたび、腹や太腿を打ち据えながら。
『ななっ、じうう…………なゃあ、ああ゛……っ!!』
 唾液交じりの口でカウントしながら、沙綾香がまた腰を下ろした。回を重ねるごとに、太腿の痙攣がひどくなっていく。今や雪山で凍えるかのような有り様だ。
『ふ、くっ……!』
 直腸で一旦腰を止め、気合を入れてさらに腰を沈める。その、直後。
『んんおおおお゛お゛っっ!!!!』
 沙綾香は口を尖らせ、低い呻きを漏らした。もう何回にも渡って我慢していたが、とうとう抑えきれなくなったんだろう。当然その生々しい悲鳴は、周囲の笑いを呼ぶ。だがやはり、沙綾香はそれどころじゃない。
『ハッ、ハッ……ハァ、ハァ…………!!』
 開いた口から舌を突き出し、犬のように荒い息を繰り返している。目隠しで覆われた目も、余裕なく瞳孔を開いているに違いない。
『はっ、まーたイキやがった』
 そう茶化す客の目は、沙綾香の股間に注がれていた。深く沈み込んだ腰……そこに花開く割れ目からは、失禁と見紛うような愛液があふれている。このスクワット責めだけで、何度達していることか。いい加減、体力も限界近いだろう。だから、体力のあるうちに少しでも回数を稼ごうと、すぐに腰を上げたのも頷ける。
 だが、“2号”はそれを見逃さなかった。
『ちょっと待ちなよ!』
 バラ鞭で沙綾香の乳房を横薙ぎにし、怒声を張る。
『え……?』
『え、じゃない! バイブのラインまで入ってないじゃん。77回目、やり直し!』
 叱りどころを見つけた姑のように、ヒステリックに喚き立てる“2号”。実に醜いことだが、今の沙綾香には、それに食って掛かる気力など残っていない。
『く、ふん、んんんっ…………!!』
 鼻声を漏らし、必死に腰を沈めようとする。だが、すでに充分沈んでいた状態の腰をさらに押し下げるのは、普通にスクワットをこなす以上に負荷がかかる。結果、すでに虐め抜かれていた沙綾香の足は、ここで限界を迎えた。
『あ、あっ!?』
 焦る声を上げながら、沙綾香は尻餅をつく。バイブを腸へ飲み込んだまま。
『ひゅぎいいいいっ!?』
 悲劇的な出来事が起これば、悲劇的な声が上がる。沙綾香は、長いバイブを根元まで飲み込んだまま、震え上がった。比喩ではなく、腰から肩へ身震いが駆け上がるのが視認できた。下から雷に貫かれたような反応だ。雷は、人体を焦がす。その人間の芯がどれだけ強固であろうと、いともあっさりと炭化させる。
『かはっ……あ、はっ、はっはっはっはっはっはっ……』
 沙綾香は尻餅をついたまま、狂ったように喘いでいた。その頬から太い涙の筋が流れ、続いて割れ目から飛沫が噴き上がる。
『うおっ……潮噴き、か?』
『いやあ、ションベン漏らしてんのかもしんねぇぜ……』
 客は会話を交わしながらも、呆然とした様子だった。呆然としながら、口元だけをニヤつかせている。奴らは、血の匂いを嗅ぎつけたんだ。散々嬲ってきた獲物が、今まさに致命傷を負い、血達磨で転がっている。それを察し、今は倒れた獲物の周りをグルグルと回っている状態に違いない。群れのボスが傍観する中、獲物にトドメを刺すのは、狩り方を覚えたての小さな捕食者だ。
『あーあ、腰抜かしちゃって。こりゃ失敗だね、どうする?』
 “2号”が溜息交じりに肩を竦めると、“4号”がバイブのスイッチを拾い上げた。
『決まってんでしょ、100回はやらせないと。でも、もう自力じゃ無理だろうから、こうしない? バイブ動かして、5分我慢したら1回分ってことにすんの。今77回目失敗してて、ノルマまであと24回だから、×5で120分。2時間たっぷり遊んだげよ!』
 “4号”はそう言ってスイッチを押し込み、バイブを駆動させる。
『え、あっ……いゃあああっ! な、なにこれっ!?』
 沙綾香は悲鳴を上げながら覚醒し、左右に顔を振り向ける。足をばたつかせてもいるが、立ちあがる余力はないらしい。その反応を前に、ギャラリーが口元を緩ませた。
『バイブのスイッチ入れただけ。リング回転と、ヘッドスイングってのがあるらしいよ。コレと、コレ。どっちがキツい?』
 “4号”は薄ら笑いを浮かべながらスイッチを操作する。
『あ、い、いやいやっ!! こ、擦れるっ、んあああっ、か、形変わっちゃううっ!!』
 沙綾香は震えながら、半狂乱で叫んでいた。血飛沫を上げるに等しいその姿を見下ろしながら、“2号”と“3号”が膝をつき、沙綾香の足首を掬い上げた。そのまま両脚がVの字に持ち上げられれば、沙綾香はどう頑張ってもバイブから腰を浮かせることが叶わなくなる。
『うあ、か、かはっ……ああ、ふ、ふかい! いや、いやいやっ!! やめて、おねがいやめてっ! これ、怖いいっ!』
 沙綾香の反骨心は、完全に失せた。不自由な身を震わせ、加虐者に哀願する……それしかできることがない。その願いが、けっして聞き入れられないと解っていても。
 バイブの唸りが増した。“4号”がまたスイッチを弄ったようだ。重低音が響く中、沙綾香の痙攣が激しさを増す。
『んわああああっ、ああうアア゛っ!! あアッ、かはっ、ほおお゛お゛お゛……っ!! やめて、やめてえっ! またくるっ、またあれが来るうっ!! お願い許して、なんれもするから!! もう、ホントに無理……本当に、ヘンになるからあ゛っ!!』
 沙綾香は身も世もなく泣き叫び、哀願を繰り返す。そんな沙綾香に、今度は“1号”が近づいた。
『だから、言ってるでしょう。変になればいいじゃない。男の人はね、ちょっと頭がユルいぐらいの女の子が好きなのよ。鼻っ柱の強さだとか、プライドの高さなんていらないの。そういう邪魔なものは、ここで捨てちゃいなさい。お前得意でしょう、ブリブリとひり出すのが』
 そう語り掛ける“1号”の右手指には、無数の突起のついた指サックが嵌められていた。“1号”のその4本指を割れ目に宛がい、上下に動かしはじめる。表面をぬるぬると擦る責めだ。百合もしていたから解る。その責めに激しさはないが、すでに何度も達している今、効果は絶望的に高い。
『あ、は、はああ゛っ!! あ、アソコまで……んきっ、ひい、いっぐ、う……っ!! はぁ、はぁ……むりっ、無理無理、無理いいイイイ゛ーーッ!!!』
 沙綾香は、割れ目から愛液を飛ばし、絶叫する。そしてここから沙綾香は、ほとんど常に叫んでいるようになった。普通の状況ではないから、叫ぶ内容も理路整然となどしていない。
『ふぁああ拡がるっ、おひりの奥が拡がるうっ!! うんちでちゃうっ、出ちゃうよっ、そんなのしたら出ちゃうっ!! もう漏れてるのっ、わかんないいいっ!! お願いっ、これ本当に無理なのっ!!』
 例えば、こんな具合だ。そしてこの必死の叫びを、“1号”達はあくまで楽しむ。
『ふうん。どう無理なの? 納得させられたら休ませてあげてもいいけど』
 あえてそう囁き、微かな希望を持たせもする。勿論、端から守る気などない約束だ。
『ほ、ホントっ!? あの、あのあの、う、うんち、ずっとうんちしてる感じなのっ!! ずっと、漏れてるかんじで、漏らしてるのに、それで感じて、い、い……いっちゃう、の……』
『あら、それでイクの。それは、オマンコで?』
『お、おまんこもっ、ヒクヒクするけど……お尻の奥っ、け、結腸?が疼いて、イク時には背中に快感が走るの。そしたら、腰が抜けそうなぐらい気持ちよくて……』
『へえ、そりゃ良かったじゃん』
『よ、よくないのっ!! 気持ち良すぎて、こ、怖い……底なし沼に沈んでるみたいっ…………あ、あ、またきた……ふんッ、ぐ、ぐう……っああ来る、来る、来る来るくるうううっ!!』
 その絶叫と同時に、沙綾香の両脚に震えが走った。電流が迸ったようだ。その出所へ目を向ければ、脚の震えに納得できてしまう。さっきまでぴったりと床についていた沙綾香の尻が、浮いている。轟音で唸る極太のバイブが、その出力でもって沙綾香の腸内を押し上げているせいだ。
 床と隙間のできた肛門からは、くっちゃりくっちゃりという耳に馴染みのない音が漏れ続けている。壷に入った水飴を角材で掻き混ぜるような音。実際、カメラに映らない内部では、腸液を潤滑油にバイブが柔肉を練っているに違いない。その状況が休まず続けば、脚だって震える。普段は出さない声も出る。
『ほっ、ほおっ、おおお゛おお゛っ!! い、いく、またイグっっ!!』
『ふうん。どこでイクの?』
『ほおっ、ほおおっ……お、おひりっ、お尻でイクっ!! おひりで、イグ、ぁ、あイグ……んぐうう゛っ!! うう゛んん゛おおお゛お゛お゛っ!!!』
 唾液が絡んで不明瞭な声。絶頂続きで満足に息もできず、鼻水と涎を垂れ流しながらグシャグシャに歪んだ顔。凍えるように震え続けるモデル級の肉体。その全てが笑いものになった。元が良いだけに、余計におかしい。そんな言葉が何度も聴こえていた。
『おい、そろそろ水飲ませてやれ。口移しでもいいぜ』
 壁にもたれて様子を見ていたドクロタトゥーの調教師が、近くの“4号”に指示を出す。最初の頃の、恫喝するような口調とはずいぶん違う。まるで後輩に接しているようだ。指示を受けた“4号”も、見違えるように落ち着いていた。
『承知しました』
 そう言ってコップに水を注ぎ、沙綾香の背後に回る。そしてコップの水を口に含むと、喘ぐ沙綾香の口を奪った。
『ん、んむ゛っ!? んむ゛っ、ぃえれ゛っ!!』
 沙綾香は嫌がり、顔を振る。だが“4号”はその顎を掴み、強引に口づけを受け入れさせた。ただ唇を重ねるのみならず、舌まで入れる濃厚なキスだ。沙綾香が嫌がったのもわかる。それはまるで、征服の儀式のようだった。
『あら、オマンコがヒクヒクしてきたわ。ディープキスで感じてるみたい』
『うわ、マジ? こいつレズなのかな。今のこの調教も、喜ばせちゃうだけかもね』
『なんかムカつくねー、それ。だったらさ、呑気に喜んでらんないレベルで追い込もうよ。ウンコするだけでイク身体にしちゃお』
 心根の歪んだ奴隷少女達の笑い声は、鈴を転がすように澄みきっていた。舌を突き出し、涎を垂らしながら、女らしからぬ声で呻く沙綾香とは正反対だ。
 正直者が、馬鹿を見る。
 俺は、悶え狂う沙綾香を観ながら、そんな言葉を思い出していた。


 

二度と出られぬ部屋 第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)

肛虐に堕ちる剣姫(前編)の続きです。
 長くなったため分割しています。
 前回同様、アナル・浣腸・スカトロ回につき、ご注意ください。




■第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)


 自販機で渇いた喉を潤し、部屋中央のソファで休憩を挟んでから、俺は部屋の右側へと踏み込んだ。
 後半にあたる5~8日目のエリア。ここも4日目までと展示方法は変わらない。いくつもの写真と、通し番号が振られたモニター、そして横長のショーケース。ただし前半部分と比べ、こっちには人が多い。それぞれのモニター前に何人もが群がり、映像に齧りついている。
「見ろよアレ、愛液垂れまくり。キモチいいんだろなー」
「ああぁエロいよ、トウカちゃぁん!!」
 そんな気色悪い声を出す奴もいれば、ズボン越しに股間を弄る輩までいる始末だ。

 『5日目』エリアには、ショーケースに妙なものが飾られていた。
 洗面器に山盛りになった、灰褐色の物体。白い粉状のものが表面に付着しているが、どうやら玉蒟蒻らしい。
 ──何故、こんなものがここに。
 ──決まっている。これが使用された『道具』だからだ。
 自問自答の中、視線が横のモニターに引っ張られていく。俺は惹かれているのか。食材を使った、背徳的な責めに。


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 映像の中では、宙吊りにされた藤花がドレッドヘアの男に犯されていた。
 藤花を吊る紅い縄は三本。高手後手に縛り上げる一本と、左右の膝に回された二本だ。膝裏には摩擦防止の当て布がしてあるが、不自由な格好をさせた上でのそんな配慮は、かえって白々しく思えてしまう。
 ドレッド男は、身動きの取れない藤花の尻を抱え上げ、自由勝手に腰を打ち込んでいた。たんっ、たんっ、たんっ、と肉のぶつかる音がし、膝で吊られた藤花の足が揺れる。横からの撮影だから判りにくいが、挿入部分は尾骨に近い。使われているのはアナルだ。
『……あ、はっ……あ、ぁ……あ……っく、は、ぁ……っ』
 結合はかなりの時間続いているんだろう。藤花の顔は下を向き、荒い呼吸を繰り返していた。
『いい声が出るようになってきたじゃねぇか』
 犯しているドレッド男が、嬉しそうに藤花の腿を撫で回す。
『はぁ、はぁっ……冗談は、その頭だけにしろ……』
 藤花は顔を上げ、男を睨み上げた。疲れが見えるが、その眼光はまだまだ鋭い。
『ふん、口の減らねぇガキだな。“8個もぶち込みゃあ”、ちっとはしおらしくなるかと思ったのによ』
 男は意味深な言葉を吐きながら腰を引く。ずるりと逸物が引き抜かれ、肛門との間に銀色の糸を伸ばす。
『はぁ、はぁ……っ』
 激しく喘ぐ藤花を前に、ドレッド男が片膝をつく。藤花の肛門を間近に臨む位置だ。奴には今、凛とした女剣士の恥じらいの場所が、余すところなく見えていることだろう。
『へへへ、おいおい。俺ので奥まで押し込んでやったってのに、もう入口近くまでひり出されて来てんじゃねぇか。ええ? 我慢のできねぇケツだな』
 肛門を覗きこんだドレッド男が、膝を叩いて笑う。そうして相手が愉快そうにするほど、藤花の表情は硬くなっていく。
『当たり前だろう……そこは、出すための穴だ』
『違うな、そりゃフツーの人間の話だ。ケツ穴奴隷のテメェの場合、ここは第二の性器。つまり、突っ込まれるための穴なんだよ』
 男は嘲るように言いながら、左方向に手を伸ばす。その方向にあるのは、ローションボトルと玉蒟蒻入りの洗面器だ。
『なっ……やめろ、もう入れるな!』
『だからよぉ、違ェだろ? 「もう入れないでください、お願いします」だ』
 血相を変えて叫ぶ藤花に対し、男が要求するのは恥辱の哀願だ。しかし、武人気質の藤花がそれを受け入れる筈もない。
『く……!!』
 ドレッド男を睨み据えたまま、ただ口惜しげに歯噛みするばかり。“苦みばしった”と形容したくなる表情は、時おり美青年の顔にも見える。肉体の方は、主張しすぎるほど女の特徴を備えているというのに。
『ったく、強情な女だぜ。ま、その方がイジメ甲斐があるがよ』
 男は呆れた様子で笑いつつ、ローションボトルを拾い上げた。そして哺乳瓶のような先端部を藤花の肛門へと押し込みつつ、ボトルを握り潰す。
『うっ!』
 藤花が小さく呻いた。
 男は、二度、三度とボトルを握りこんでから引き抜くと、ローションの残りを玉蒟蒻の山にふりかける。もはや疑う余地もない。奴はあの玉蒟蒻を、藤花の尻へ入れるつもりだ。
 ──“8個もぶち込みゃあ”、ちっとはしおらしくなるかと思ったのによ
 ──俺ので奥まで押し込んでやったってのに、もう入口近くまでひり出されて来てんじゃねぇか
 こうした言葉の意味も、はっきりと理解できてしまう。
 藤花は、さっきアナルを犯されていた時点で、あの大粒の玉蒟蒻を8つも入れられていたんだ。

『さっきみたく、ケツ締めとけよ』
 ドレッド男はそう言って、玉蒟蒻の一つを摘み上げる。カメラが斜めに移動し、藤花の肛門周りを捉えた。男の指で肛門へと押し付けられた玉蒟蒻は、わずかな抵抗のあと、ずぶずぶと紅い輪の内側へ沈みこんでいく。
『…………っ!!』
 藤花の身体が強張った。太股も、腹筋も。男はその反応を目で追いつつ、一つまた一つと玉蒟蒻を摘み上げては、尻肉の合間へと押し込んでいく。
 それが何度繰り返されただろう。洗面器の中身が、半分ほどに減った頃。
『本当に、やめろ……もう無理だ!』
 藤花が、呻くようにそう告げた。男はまた鼻で笑う。
『けっ、なにが無理だ。テメェのケツはどんどん飲み込んでくじゃねぇか。大体テメェ、ロドニーさんのデカマラを咥え込んだんだろ? アレの方がこんな蒟蒻なんぞより、よっぽど嵩あんだろうが』
 そう言って、部屋のゴミを捨てるぐらいの気安さで、次々と異物を挿入していく。
『く、ぅっ……は、くっ…………!!』
 藤花は耐えるしかない。白い歯を食いしばり、悔しそうに目を細めて。
 洗面器の中身は着実に減っていく。それはつまり、スレンダーな藤花の腸内に、減った分の体積が移ったということだ。となれば当然、肛門の抵抗も強まり、玉蒟蒻を挿入する男の動きも変わっていく。初めこそ軽快に押し込んでは次の一個を摘み上げ、というペースだったのが、ぐっぐっと何度も押し込むようになる。
『おら、ケツ開けって。クソ我慢するみてぇに腸は閉じながら、穴ンとこだけ緩めんだよ!』
 ドレッド男は、苛立ち気味に無茶な注文をつけていた。玉蒟蒻が肛門から弾き出された時などは、舌打ちもする。品もなく、慈悲もない男。そんな輩が指の力任せに無理を押し通していく様は、見ていて背筋が寒くなる。

『……おら、全部入ったじゃねぇか。無理だのなんだのほざきやがってよ』
 何分が経ったのか。あれだけあった洗面器の中身が、すっかり藤花の中へと収められてしまう。
『くっ……この野郎!』
『そう睨むな。ケツってなぁ、苦しいのがキモチイイんだ。お前だって、とっくに承知してるようによ』
 ドレッド男は藤花の怒気を受けてもなお、余裕の笑みを崩さない。それどころか、悠々と逸物を扱きたて、藤花の尻に押し当てる。あれだけ無茶な異物挿入をした上で、また犯そうというのか。
『や、やめっ……!』
 当然、藤花も信じがたいという様子で目を剥いていた。
『女のイヤよは、待ちきれないの合図──ってな!』
 男はあくまで相手の主張を聞き入れず、尻肉を鷲掴みにして腰を突き入れる。男の腰も、藤花の腰も細かに震えていた。ミリミリ、メリメリと音がしそうなほどに。
『ぐううっ!!』
『うへぇ、キッチィなこりゃ!粘土板にでも突っ込んでる気分だぜ。勃起力の弱ぇオッサンやモヤシ野郎じゃ出来ねぇな、このプレイは』
『はっ、ぐ……もうやめろ!尻の穴が、裂ける……!!』
『だから裂けねぇっつーの。テメェの括約筋がよく伸びる逸品だってのは、とうに判ってんだ。それによ、テメェだって実はイイんだろ? 直腸に圧かけられて、子宮圧迫されて、結腸にまで玉蒟蒻が詰まってる。アクメの条件は十二分に揃ってんだよ!』
 男はそう言って、藤花の尻に腰が密着するまで挿入しきった。そして、ゆっくりと抜き差しを開始する。
『う、ぐあ……あ!!』
 藤花の苦しそうな声と共に、パン、パン、とスローペースで肉のぶつかる音がしはじめた。そしてその音は、少しずつ、少しずつ、速さを増していく。
『くっは、まじでキッツイぜ。だが悪くねぇ。四方八方から生ぬるい弾力が包み込んできやがらぁ!!』
『んあ、あ……あっ、あ…っく、うくああ゛っ!!』
 何十個もの玉蒟蒻を腸に詰め込んでのアナルセックス。それが刺激的でない筈もなく、犯す側も犯される側も顔を歪めている。ただし、対照的な理由で。あの藤花が絶え間なく声を上げるんだから、相当だ。
 たっぷりとローションを注ぎ込まれているせいか、抜き差しの度に漏れる音もひどい。
 にちゅ、にちゅ、と人が口で言っているような音。
 ぶちゅっ、ぶぼっ、という水気のある屁のような音。
 S気の強い調教師が、それを聞き逃すはずもない。
『すげぇ音させてんじゃねぇか、ケツからよ。恥ずかしくねぇのかよお前?』
 異音と同じぐらい粘ついた悪意を込めて、囁きかける。藤花の眉が吊り上がった。
『恥だと? 何の恥だ……その音をさせているのは、貴様だろう!』
 気丈に反論するものの、その顔は堂々とはしていない。肛門を犯されて放屁のような音をさせ続けるなど、耐えがたい恥だろう。たとえそれが、強いられたものであっても。
 異物を大量に押し込まれた状況といい、漏れる音といい、苛烈な責めであることに疑う余地はない。さらには男もいやらしいもので、刺激が一層強まるような行為を繰り返す。例えば、揃えた4本指で臍の下……ちょうど異物がひしめいているだろう場所を圧迫したり。尻肉が変形するぐらい深く突きこんでから、腰を据えてグリグリと円を描くように動かしたり。
 そんな苦難を受けながら、藤花はじっと耐えていた。男の突き込みで前後に揺れはするが、それ以上の反応は見せない。悪童にじゃれつかれる育児疲れの母親よろしく、じっと時が過ぎるのを待っているように見えた。
 だが、それは外観だけの話。今までもずっとそうだったように、見た感じで変化がなくても、内では着実に何かが蓄積しているんだ。ボーイッシュな祐希は、その果てに自我が崩壊した。天使のようだった千代里は、我慢の末に嘔吐した。そして、藤花にも変化が起きる。
 ぶちゅ、ぶりいいっ、ぶちゅっ……そんな音と共に、代わり映えのしない抜き差しが続いていた、ある瞬間。男の腰が引かれると同時に、結合部で小さな破裂音がした。
『うあ……っ!!』
 同時に藤花の口が開き、声が漏れる。ハスキーではあるが、今までよりずっと女の子らしさのある声。それがはっきりとマイクに拾われてしまう。
 何が起きたのか。その疑問の答えを示すように、一つの玉蒟蒻が床を転がっていく。排泄されたんだ。男の逸物を挿入されたままで、無理矢理に。それは、どれだけ刺激が強いことだろう。女の子の声が出てもおかしくない。
『ぎゃはははっ! お前出すんじゃねぇよ、ハメてる最中によぉ!!』
 ドレッド男は鬼の首を取ったように笑いつつ、藤花の尻を打ち据える。
『っ! く、ぅっ……!!』
 藤花の表情がまた歪んだ。あまりに唇を曲げているせいで、笑っているようにすら見える顔だ。
『んなに良かったのかよ、ええ? 嵌められながらデカイのひり出して感じちまったのか、この変態が!!』
 男の言葉責めは止まらない。腰の動きも再開する。そしてここから、不動だった藤花の様子が変わりはじめた。太股が強張り、足指が折り曲げられる。まるで空気を噛むように。
『うおっ、すげぇ締まってきた。脚に力入れて、ケツ穴引き締めてんのか? 相変わらずクソみてーな根性だな。ならせいぜい、頑張ってみろや!!』
 男はそう言って、激しく抜き差しを繰り返した。パンパンと肉のぶつかる音がし、結合部の異音もいよいよ粘ついたものに変わっていく。
『うぁ、ううあ…っ!!』
 藤花の口からも、堪らずという感じで声が漏れている。
 そして。
『あ!! ぁぁ゛あ゛っ!!!!』
 藤花からまた悲鳴が上がり、その直後、床に数個の玉蒟蒻が垂れ落ちた。ぬらりとした粘液に塗れたまま。
『おーおー、また出やがった。見てみろよ、腸液まみれだぜ? こんだけイジめられて腸液出すとか、誤魔化しきかねぇマゾッぷりだなぁ、剣術小町ちゃんよお!!』
『ふざけるな、ただの防衛本能だ! 無茶をさせられているせいでな!!』
 下卑た口調で茶化されれば、藤花も黙っていない。即座に反論を浴びせる。本当にプライドの高い娘だ。
 だがそんな彼女にも、忍耐の限界はある。この映像では、その『底』が垣間見えるようだった。
『おらっ、ケツに出すぞ変態女!!!』
 数十回のピストンの末、男が射精に至る。腰を密着させたままたっぷり数秒かけて精を送り込み、身体を離す。その解放をもって、ようやく藤花の肛門は排泄を許された。びゅぶっ、ぶちいっ、と凄まじい音を立てながら、次々と灰褐色の珠が飛び出ていく。その最中、藤花は下唇を噛みしめていた。普通なら、声など漏れないはずだ。それでも、映像にはしっかりと記録されている。
『んんーー~~~っ!!!!!』
 鼻を甘い声が通り抜ける。快便の心地良さに呑まれているのは明らかだ。
『ぎゃっはっはっはっは!!』
 男は腹を抱えて大笑いしていた。映像が暗転する瞬間まで。

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 俺は暗転したモニターから視線を外し、改めてショーケースを見やった。
 表面に粉状のものが付着した、玉蒟蒻。映像を観た今ならわかる。あの粉は、腸液が乾燥したものだ。つまりあれは、間違いなく映像にあった実物。そう思うと、静かにケースに収められている無機物から、宿主の嘆きが聴こえてくるようだ。
 俺はその嘆きから逃れるように、次のエリアへと歩を進める。
 
 『浣腸した上でアナルを責める』。
 6日目は、それだけがひたすら繰り返されたらしい。モニター7には、その様子がダイジェストで纏められているようだ。


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 一つ目の映像では、藤花はバスルームで拘束されたままで嬲られていた。両肘の少し上と、折り曲げた脚の半ばを縄で巻かれた達磨状態。その藤花に対し、調教師数人が好き勝手をやっている。
 藤花の顔側に座り込む男は、整った顔を弄くりまわしていた。鼻の穴に指を引っ掛けて、縦に引き伸ばしたり。同じく口に指を引っ掛けて、横にへし曲げたり。そうして、相手の不快そうな表情を楽しんでいる。
 肛門側にも一人が片膝をつき、延々と浣腸を施していた。浴槽に溜めた液体を浣腸器で吸い上げては、藤花の腸へと注ぎ込んでいく。一体どれだけ入れたのか、すでに藤花の腹部は膨れ上がっている。
『やえろっ、おうむいだ……!!』
 口と鼻をへし曲げられながら、無理を訴える藤花。だが男共は聞き入れない。
『まだまだ。お前より細ぇ女でも、3リットルは入るもんだ』
 そう言いながら注入を続け、臨月かというレベルにまで腹を膨れさせる。終わるタイミングにしても、容赦した訳じゃない。浣腸液を注ぎ込もうとしてもすぐに噴き出す、限界の限界を迎えたからだ。
 それだけの浣腸を施すだけでも、充分に外道の仕打ちといえる。だが男2人の悪意が発露するのは、むしろここからだった。
 何しろ連中は、妊婦のように腹が膨れた藤花をひっくり返し、這う格好にして肛門を犯しはじめたんだ。
 けして細くない、むしろ平均以上の逸物が、限界まで詰まった腸内を蹂躙する。抜き差しのたびに、肛門からブビブビとみっともない音が発され、後方に水が噴き出していく。場所が浴室だけに、音がいちいち反響するのがまた悪趣味だ。
『いいねぇ、生あったけぇのがどんどん溢れてくんぜ。女と温泉でハメた時みてぇだ。ケツの締まりも悪くねぇしよ。つっても、こんだけビシャビシャ出しまくっといて、締めるイミあんのかって話だがな』
 後ろの男は上機嫌で、ますます膝に力を込める。
 さらに彼女の前方では、床タイルに寝そべった男が逸物を咥えさせてもいた。
『おい、歯ァ当たってんだよヘタクソが! ったく、上達しねぇ奴だな。オマエ次歯当ててみろ、また漏斗でションベン飲ませんぞ。髪とアゴ掴まれて、泣きながら白目剥きたかねぇだろ?』
 男は奉仕を強いながら、不機嫌そうに愚痴りつづけている。
 藤花は、その地獄のような状況にじっと耐えていた。手足を曲げて拘束された彼女に、抵抗の術はない。肘と膝のみを支えとして這い、悪意を受け止めるしかない。
 この状況でも取り乱さないのは流石だ。しかし、苦しいのは間違いない。腹を下したような音が酷いし、尻穴からは下痢便を噴き出す音が続いている。逸物を深々と咥えこまされる喉元からも、ゴエエッとえずきが上がっている。
 そして何より、彼女の引き締まった尻が、激しく暴れていた。黒人にターキーのような逸物を挿入されていた時ぐらいに。
『はっ。さすがのお前でも、ハメられながらひり出し続けんのはキツイらしいな。だが、だいぶ楽になってきたろ? カエル腹がようやっと凹んできたぜ』
 後ろの男は激しく腰を打ちつけつつ、藤花の下腹を鷲掴みにする。
『むぐう゛っ!!』
 藤花から呻きが上がり、下半身の暴れ方が酷くなる。その反応が後ろの男を焚きつけ、さらに激しく下腹を揉みしだく。その果てに、藤花の口の方から妙な音がした。呻きとも攪拌音とも判別のつかない音。
『うぅわ! お前きったねぇな、ゲロを吐くなよゲロを。オレはテメェと違って、汚物にまみれる趣味はねンだよ』
 どうやら異音の瞬間、藤花は嘔吐したらしい。散々喉奥まで咥えさせておきながら、前の男が顔を顰める。
『何だよ、前からも噴いてんのか? ほどほどにしとけよ。今日は一日中浣腸責めだ、いちいちゲロってっと体力もたねーぞ』
 そう嘲りながらも、後ろの男は下腹から手を離さない。前の男も、舌打ちしながらまた逸物を咥えさせる。その悪意に挟まれて、藤花の手足はひどく強張っていた。

 一日中浣腸ファックされる。この男の言葉は、脅しでも何でもない。これ以降の映像でも、藤花はバスルームで浣腸を施されたまま、直腸を蹂躙され続ける。

 浴槽内の湯をポンプで直に汲み上げて注入し、藤花を悶絶させている映像もあった。この注入の後には、一人が肛門が上を向くように抱えたまま、もう一人が極太のバイブでアナル責めを施す。藤花は、自分の肛門から噴き出す液をすべて身に浴び、顔を左右に振って苦しむしかない。
 さらに別の映像でも、床にへたり込むように緊縛され、イチジク浣腸の散乱する中で延々とバイブ責めを受け。
 また別の映像では、血のように赤い液体を吹き散らしながら騎乗位を強いられ。
 緑色をした液を右脚に伝わせながら、Y字バランスで犯し抜かれ。
 そしてこれら全ての映像には、ギャラリーの姿があった。いつか見たように、ガラス張りのバスルームをぐるりと囲み、好色そうな眼で中を覗いている。何らかの罵声を浴びせていることもしょっちゅうだ。

 そんな苦境でもなお、藤花は調教師と客を睨みつけていた。汚液やシャワーが顔に掛かる時はさすがに目を閉じるが、すぐに顔を振って鋭い眼を取り戻す。
 そういう態度がますます相手を増長させると、気付いてはいる筈だ。それでも武芸家としてのプライドが、舐められ放しでいることを許さないんだろう。常に和を尊ぶ千代里とは、見事に真逆の性質。藤花と千代里がエレベーターで談笑していたのが、もう遥か昔のことのようだ。


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 映像が終わる。
 6日目エリアのショーケースには、動画内で浣腸に用いたものが展示されていた。
 『グリセリン』とカナ表記のされたボトル。『酢酸』と書かれたビン。イチジクの形をした容器。ペットボトル入りのトマトジュース。青汁の粉……。
 俺はSMに詳しいわけではないから、そういう物を腸に入れた際のメリット・デメリットは判らない。ただ1つ確実に言えるのは、それらが悪意をもって選ばれているということだけだ。
 そして、その悪意はエスカレートし続けている。『7日目』エリアへ進めば、それが肌で感じ取れた。何しろ、7日目と8日目はとにかくギャラリーが多い。そして黒山の人だかりが出来ているモニターからは、時々悲鳴のような叫びが漏れ聴こえている。

 7日目エリアのモニターには、画面上側の縁にテプラが貼ってあった。
『絶叫が続く動画につき、他のモニターよりも音量を下げております』
 テプラにはそう印字されている。音量を下げてなお、離れた場所で悲鳴が聴こえるのか。その事実を前に、嫌な予感が膨らんでいく。


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 モニターでは、藤花が4人の男から嬲られていた。かなり徹底的な責めだ。
 大股を開いたまま、左右の手首と足首を一纏めにベルトで拘束された藤花。そのアナルにはかなり太さのあるディルドウが押し込まれ、肛門から飛び出た部分には大型のマッサージ器が宛がわれている。
 秘裂の上側……尿道からはチューブのようなものが延びていて、空のパックに繋がっている。導尿用の処置かと思いきや、どうやら逆だ。チューブは尿道に近い部分がクリップで挟み潰されていて、尿道側からあふれ出す黄色い液を押し止めている。
 そして、そのすぐ上に位置するクリトリスには、やはりマッサージ器が宛がわれて唸りを上げていた。
 挙句、両の乳房には搾乳機のようなものが取り付けられ、先端が円錐形に変形するほど吸引しているし、恥骨の辺りや内腿には電極パッドが取り付けられ、ボックスからの電気供給を受けている。

 それだけの事をやられて、肉体が反応しないはずがない。
 搾乳機の中の乳首はしこり勃ち、マッサージ器が離された時に覗くクリトリスは小豆のように膨らんでいる。三角形に溝の刻まれた内腿や、一纏めにされた手足の指の強張り具合は、相当な快感を受けていることを物語っている。
 そもそも藤花が拘束されている辺りには水色の吸水マットが敷かれているが、そのマットはかなり広い範囲が変色していた。1メートル以上も離れた場所が飛沫状に青くなっているのを見るに、何度も潮を噴き散らしているようだ。
 それでも、藤花の顔は崩れていない。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、口の端からは涎を垂らしてもいるが、瞳はくっきりとした輪郭を保っている。
『すげぇなお前、まだ睨めんのか。結腸までディルドー突っ込まれて、膀胱パンパンにされて、さんざっぱらクリ逝きまでさせられてんのによ』
 藤花を囲む調教師の一人が、呆れた様子で呟いた。
『はあっ、はぁ……こんなもので、どうにか出来る気でいたのか? こっちは三つの頃から、激しい稽古に耐え抜いてきたんだ。お前らがクズ同士馴れ合って、人生を浪費している間にな!』
 藤花は息を荒げつつも、背筋を伸ばして反論する。自分は今なお清廉潔白だ、お前達とは違う──そう全身で訴えるように。
 そういう態度は、さぞ調教師の逆鱗に触れることだろう。次の場面では、藤花の横っ面が叩かれるかもしれない。俺はそう覚悟したが、モニター内の男達は、怒るどころかむしろ嬉しげだ。
『よく言った。わざわざBコースでもてなしてんだ。こんなヌルい責めで泣き入れられたら、肩透かしってもんだぜ』
 一人がそう言って肛門のディルドを握りしめ、ズルズルと引き抜いた。抜け出ても抜け出ても、なかなか先端が覗かない。恐ろしく長いバイブだ。3号と呼ばれていたバイブが20センチ弱だとすれば、こっちは悠に30センチはありそうだ。これだけの長さがあれば、直腸の突き当たりのさらに奥、S字結腸まで入り込むのも容易だろう。
 デュポッという音を立てながら、ディルドーが完全に抜ける。男はそのディルドーを見つめ、ほくそ笑んだ。
『見ろよ。“お釣り”つきだ』
 そう言って隣の調教師にディルドーを見せる。大蛇のようなディルドーは、先端部分がかすかに汚れているようだ。
『ははっ。昨日の晩からさせてねぇからな。食物繊維たっぷりの餌が消化されて、ようやっと結腸まで下りてきたってことか。いい頃合いだ』
 男はそう言い、一旦画面の外に消えた。他の連中もそれぞれに動き出す。藤花の乳房から吸引機を外し、尿道からチューブを抜き、下腹や内腿のパッドを外し。
『んっ! ふうっ!!」
 藤花はその一つ一つに性的な反応を示しつつ、訝しそうに眉を顰める。
『なんだ、今日はもう終わりか? それとも、飽きたから他の遊びにするのか?』
 不安だからこそ、あえて憎まれ口を叩く。それが藤花のスタンスらしい。今までは調教師がそれに呼応し、ある意味で上手く噛み合っていた。だが、今は何かが妙だ。調教師が余所余所しい。死刑執行前の刑務官のように、黙々と作業をこなしている。

 藤花は一旦縄を解かれ、手首足首を軽くマッサージでほぐされた。そこへ、さっき画面外に出た男が戻ってくる。手にしているのは洗面器。中には透明な液体が張られ、針のない巨大な注射器が立てかけてある。
『またそれか。つくづく芸がないな』
 見飽きたとばかりに目を細め、嫌味を刺す藤花。だが、男は余裕の態度だ。
『いいや。コイツばっかりは、これまでのとは別モンだぜ』
『……なんだと?』
 自信に満ちた男の言葉に、藤花が眉を顰めた。
『“ドナン浣腸”っつってな。昔は病院で便秘患者に使われてたんだが、あんまりにも効果が強すぎるってんで使用禁止になったシロモノだ。浣腸慣れしてねぇ奴に使った日にゃ、アワ噴いてもおかしくねぇキツさなんだが……お前なら、この程度の“お遊び”は余裕だよな?』
 男の一人が浣腸器を拾い上げ、藤花の顎を叩きながら挑発する。
『く……ッ!』
 藤花の目元が引き攣った。明らかな危機を感じ取りながらも、直前に啖呵を切っている以上は拒めない。さぞ歯痒いことだろう。
 調教師達はそんな藤花の表情を楽しみながら、浣腸器を薬液に浸した。一度シリンダー内の空気が追い出され、慣れた手つきで薬液が吸い上げられる。
『ケツ向けろ。それともブルッちまったか、オトコ女?』
『……ふん。相手を見て物を言え』
 浣腸器片手に挑発されると、藤花は不本意ながらも従うしかない。鍛えこまれた背筋がカメラに晒され、引き締まった尻肉が突き出される。
『よーし、いくぜ』
 浣腸器の先端が、つるりと藤花の肛門を通り抜けた。初めの頃は指一本の挿入も厳しい蕾だったのに、拡がりやすくなったものだ。
 男の手がシリンダーを押し込む。キュウウッと音がして、薬液が肛門内へと入り込んでいく。きつい浣腸だそうだが、我慢強い藤花のことだ、しばらくはじっと耐えるだろう。俺は無意識にそう思っていた。ところが、その予想は外れる。
『ぐあっ!?』
 浣腸液を送り込まれた、まさにその瞬間。藤花は悲鳴を上げ、目を見開いて振り返った。
『おいっ、ちょっと待て! これは、アルコールじゃないのか!?』
 新鮮なその反応に、男共が笑う。
『いいや、間違いなくドナン液だ。粘膜に触れた瞬間、ウォッカをストレートで煽ったようになんのが、こいつの特徴よ。しかも、即効性があるだけじゃねぇ。意思とは無関係にケツがめくれて、ダラダラ糞が漏れちまうんだ。しかもお前は今、結腸までクソが降りてきてっからよ、格別にキツイはずだぜ』
 男はそう言いながら、また浣腸器に薬液を吸い上げた。同時に他の調教師は、暴れる藤花の腰を押さえにかかる。
『なっ!? 貴様、そんなものをまだ……ッ!!』
『ああ入れるぜ。普通なら一本で勘弁してやるが、俺はお前が嫌いなんでよ』
 2本目の薬液が注入される。その後の反応は、グリセリンとは全く違った。
『ぐああぁっ、はぐっ!!うあ、か、勝手に、ぃ……っ!!?』
『へっ、効いてきたな。もうぐっぱり開いてやがる』
 悶え苦しむ藤花の肛門に、男の指が挿入される。拳ダコのある男の4本指が、抵抗なくぬるりと入り込んでいく。ウソのような光景だ。
『おーおー、ユルッユルだぜ。何もひっかかんねぇ。おいオトコ女、当ててみな。指は何本入ってる?』
『し、知るか……それどころじゃない事ぐらい、見て判れ……!!』
 藤花は歯を食いしばりながら言葉を搾り出す。そのすらりとした脚は、早くもガクガクと膝が笑っている。だが、当然だ。彼女の菊の輪は、ゴムを抜いたズボンのように、歪な形に開いているんだから。その惨めな様は、陰湿なサディストにとってさぞ面白いものだろう。

『あんま早く出させても、面白くねぇからな』
 そう言って、調教師の一人が肛門近くの人間にある物を渡す。ラグビーボールに近い形をしたアナルプラグ。ただし、サイズが普通じゃない。男の掌でようやく底を掴めるかという大きさだ。
『……ッ!!?』
 それを視界に収め、藤花が眼を見開いた。
『うお、7号プラグはやっぱ重てーな。ダンベルみてぇ』
 肛門傍の男は、両手でプラグを抱え直すと、藤花の肛門へと捻じ込んでいく。
『かはっ!!』
『おーすげ、やっぱ直径10センチとなると絵面がやべーな。大砲の弾でも詰め込んでんかよ!』
『ああ。こんなのが余裕で入る……っつか、こんなんでなきゃ栓にならねーとか、ヤベーよなドナンって』
『サツの女ん時ゃ、テニスボール嵌めこんでもダダ漏れだったもんな。ヤメテーヤメテーとか喚きながら、ボールごとブリブリひり出しやがってよ』
『いたなー、あの説教大好き女! ドナン漬けにしたら、説教どころか「んおお」とかしか言わなくなったけどよ』
『終いにゃ馬とやってアヘッてたらしいぜ、あの女。そういや、あれも剣道やってたよな。4段だっけか。おう嬢ちゃん、お前は何段だ? ……って、答える余裕ねぇか』
 武勇伝で賑わう調教師達の足元では、藤花が苦しそうに呻いていた。
『ふ……ふぐっ、う……あ、あく……!!』
 眼を見開き、顔中に汗を噴き出させ、歯を食いしばり。浣腸を我慢する顔は嫌というほど記録されていたが、ここまで苦しそうな顔はなかった。
 だが、無理もない。彼女の腹部からはすでに、グリセリン浣腸を10分耐えた時よりも酷い音がしはじめているんだから。
『苦しそうだなぁ、オトコ女。楽になりてぇだろ?』
 調教師の一人がしゃがみ込み、藤花の顎を持ち上げる。その背後では、別の一人がアナルプラグを膝で押さえ込んでいる。
『……はぁ、はあ、はあ…………』
 藤花は、酷い風邪でも引いたような顔のまま、荒い呼吸を繰り返す。この状況で悪態を吐かないのは意外だが、その余裕すらないんだろう。
『なら、こう言え。「ウンチを出すところを見てください」ってな。それが言えりゃあ、オマルでさせてやるよ』
『な…ッ!!』
 男の要求に、藤花が表情を強張らせた。人一倍プライドの高い彼女が、そんな要求を呑む筈がない。普通なら。
 だが今は、痛烈な排泄欲に身を焦がされている最中だ。人間は生理的欲求には抗えない。大半の人間は、プライドと生理的欲求を秤にかけた時、欲求の方に流れるだろう。
 だが、藤花は違った。
『……はぁ、はあ…っく! あは……ぅ、くうううっ!!』
 腹部から凄まじい音がするたび、藤花の目が見開かれる。だが彼女はすぐにその眼を細め、調教師を睨み据えた。驚異的な精神力だ。
『まだまだ折れねぇってか。こりゃ時間かかんな』
『ああ。待ってんのも面倒だ、素直になるまで放っとこうぜ』
 調教師達は薄ら笑みを浮かべ、床の縄を拾い上げる。動画の最初で、藤花の手足を縛っていたものだ。
 普段の言動こそ軽薄だが、腐っても調教師だ。連中は鮮やかな手つきで、藤花を高手後手に縛り上げてしまう。さらには足首と膝にも縄を通し、縄頭を天井のフックに引っ掛ける。
 結果として藤花は、尻を床に密着させたまま、伸ばした両脚を吊られた格好となる。
『う……!!!』
 股の方に視線を落とし、顔を青ざめさせる藤花。そんな藤花を見下ろしながら、調教師達が口元を吊り上げる。
『いいカッコになったなあ、俺女。俺らはレストランで、うんめぇメシ食ってくっからよ。しばらくそのまま過ごしとけや。ま、つってもドナンはキツイだろうからな。どうしても俺らに何か伝えたいって気になったら、コレ押せや』
 一人が嫌味たらしく言いながら、細長いスイッチを取り出した。
『ナースコールみてぇなもんでよ。この端っこにあるボタンを押し込みゃ、俺らんとこに合図が来んだ。命綱だと思って、しっかり握っとけよ?』
 男はそう言って、縛られた藤花の右手にスイッチを握らせる。
『おーい、行くぞー』
『待てって! じゃあな、せいぜい頑張れや』
 調教師達が扉を開けて去り、薄暗い部屋には藤花だけが取り残された。

 カメラは床に置かれているらしく、孤独な藤花の様子を定点で撮影しつづけている。

『……く、ううっ!! はぁっ、ああ、あ゛……ぐっ!!』

 藤花から呻きが漏れた。
 実際、地獄だろう。
 足を吊られていると、下半身に力を込めるのが難しい。つまり、中途半端にしか排泄を我慢できない。では出して楽になれるかといえば、それも無理だ。何しろ彼女は、尻餅をついた状態。常に全体重でアナルプラグに圧し掛かっている形だから、排泄どころか、もがくほどにグリグリと深く栓をされてしまう。
『……ぐ、む……んん、んぐううっ!! お、おい、誰か、見ているんだろう!? こ、こんな事をして、タダで済むと、思う、なよ…………!!』
 薄暗い部屋の中、藤花の声が空しく響く。
 返事はない。ただ藤花自身の荒い呼吸と、遠雷のような腹の音だけが繰り返される。
『い、いい加減にしろ……このままでは、腸が、爛れるぞ……!』
 数十秒後、藤花はまた訴えかける。だが結果は同じだ。
 無駄と悟ったのか、それとも言葉を話す余裕すらなくなったのか。これを最後に、藤花が何かを話すことはなくなった。

 そして、強い便意に襲われた人間の、生々しい反応が始まる。

 荒い呼吸と腹の音にまず割って入ったのは、縄の軋む音だった。ぎしぎしという、根源的な恐怖を煽るような響きが、暗闇の中で繰り返される。
 その次は、アナルプラグが床に擦れる音。かなり硬い材質なんだろう。藤花の尻肉が左右に揺れるたびに、ゴリッゴリッと硬い音がしている。
『……う、う…ふんぐゥう゛う゛っ!!』
 藤花が、ここで悲痛な呻きを上げる。今までも相当な便意に苛まれていたはずだが、ここで特大の波が襲ってきたんだろう。
『ああ……あぐ、ぐうう゛っ、ふむうううう゛っ!!!』
 藤花は、脚の親指だけを立て、他の4本指を曲げて、なんとか大波を凌ぐ。だが、かろうじてだ。第一波を過ぎた後、彼女の引き締まった肉体は震えはじめた。縄の軋む音、アナルプラグの擦れる音が激しくなる。呼吸や腹の音の酷いものになっていく。
『あああっア゛っ……ぐ!!!』
 また悲鳴が上がり、下腹からグロロロゥという不気味な音が響く。これが、第二波だろう。

 生々しい映像ほど、心に訴えてくるものはない。ほんの数分が数時間にも思えるような彼女の気持ちが、俺にまで伝わってくるようだ。
『滝行を思い出せ……腑抜けるな、廣上 藤花ッ!!』
 孤独な部屋の中、藤花は便意に抗いつづける。全身に汗を垂らし、歯を食いしばりながら。
 だがそんな努力を嘲笑うように、便意の波は何度となく彼女の足を攫う。死に物狂いでいくら凌いでも、回を追うごとに波は大きくなり、間隔も短くなっていく。
『……ぁああ゛あ゛ッ!!!』
 俯き気味に耐えていた藤花が、ついに顎を跳ね上げた。その直後、肛門付近から破裂音が響く。ぶぢいっという音。下痢に耐え切れなかった時のみ耳にするその音は、彼女の我慢の限界を示していた。
 そして、彼女は右手に握ったボタンを押し込む。彼女の鋼のプライドが、終わりのない地獄についに屈した瞬間だ。
 
 だが、映像内に変化はなかった。
 調教師達がレストランで食事をしているとすれば、フロア移動に多少の時間が掛かってもおかしくないが、それもせいぜい数分のことだろう。
 ところが、藤花が両脚をもじつかせていくら待っても、扉が開くことはない。足音さえしない。
『まだ、か……?』
 藤花は歯を食いしばりながら、またボタンを押し込んだ。だが、やはり何の変化もない。助けを求めると決めて何かの糸が切れたのか、藤花の腹の音はいよいよ悲惨なことになっていた。ぐぉるるる、きゅるるる、ごおうう……そんな、何匹もの動物が唸っているような音色だ。
『一体何をしてる!? 早く……早く、はやくっ!!』
 カチカチカチカチと耳障りな音が繰り返される。剣道で握力を鍛えた藤花の指が、何度もスイッチを押し込んでいる音だ。それでも、変化はない。
『どういうことだ……これは命綱だと、そう言っただろう!! 命綱なんだろう、これは、俺のッ!!!』
 藤花はスイッチを連打する。入口の方を見ながら、何度も、何度も。

 人間の心が一番脆くなるのは、闇の中にいる時じゃない。闇の中で、なお拠り所としていた光が、幻だったと気付いた瞬間だ。

『なんで ……なんで、だれ、も゛…………』
 藤花はそう呟き、目尻から涙を流す。
 ここから彼女は、緩やかに壊れはじめた。
『……ぅあっ、あがああ゛っ!!ひいぎぃああ゛うう゛ああっ!!!』
 見えない壁を蹴るように、膝を曲げて両足を暴れさせ。見えない敵に齧りつくように、頭を前後に振りながら歯を噛み合わせ。その果てに、とうとう全身が病的な痙攣をはじめる。脚の縄が断続的に軋み、煩いほどだ。
『も゛う無理だ!!出したい出したい出したいっ、出したくてたまらない! 誰でもいいから来てくれえ゛っ!!!』
 かろうじて言葉の体は為しているものの、短い単語を何度も繰り返すばかり。もはや言葉を選ぶ余裕すらないらしい。
 ぶびっ、ぶぶぶっ、という破裂音がまた響く。
『あああ゛、ああ゛……く、っうはあア゛ああ゛!!!』
 藤花は絶叫し、天を仰ぎ──そのまま、しばらく動きを止めた。カメラの角度的に見えづらいが、よくよく見れば、白目を剥いていることがわかる。防衛本能が働き、苦痛で脳が壊れないように失神させたんだろう。だがその休息すら、極限の便意によって妨げられる。
『ごぼっ!はっはあっ……うう゛っ、んぐうう゛う゛あっ!!!』
 噎せながら意識を取り戻し、悶え苦しむ藤花。その顔は、苦痛でか恐怖でか、壮絶に引き攣っている。
 ここで彼女は、武芸家としての最後の意地を見せた。
『ぃあアッ、せぇああっ!!イぃヤァアア゛ア゛ッ!!!!』
 剣道の試合さながらの掛け声を発しながら、両足を振り下ろす。日々の鍛錬で育まれた脚力は、足首の縄を激しく軋ませ、細く引き伸ばす。だが、膝の縄がどうにもならない。
 藤花は目的を達せないままに力を使い果たし、原始的な欲求に呑まれていく。
『はっ、はっ、は……っ!! だ、誰か助けてくれっ!! 出したいんだ、頼むから!!頼むからッ!!!』
 心も身体も消耗しきった藤花に出来るのは、恥も外聞も捨てて助けを求めることだけだ。その姿は、もはや一般の少女と変わりない。
 誇り高い少女が、その誇りをかなぐり捨てて希う。そこまでしてもなお、救いは与えられない。

『はあっ、はあーっ…ぐっ、んむうッ、ひぐっ!! んああ゛あ゛っ!!』
 藤花は、喘いだ。呻いたし、叫んだ。激しい痙攣の果てに白目を剥いて失神しては、苦痛で意識を取り戻す。
『ひいっ、ひっ……も、もう゛、ほんろ゛に゛、らめら゛……い、いしきが……たもて……ない…………』
 最後の方では口の端から泡まで噴き、ほぼ常に白目を剥いている状態になっていた。そんな中で藤花は、ついに限界を迎える。

『 うわぁぁあ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ーーーーっ!!!! 』

 モニターの音量が下げられているとは、到底信じがたいボリュームの絶叫。それが天を仰いだ藤花の喉から迸ると同時に、細い身体が跳ねるように浮いた。肛門が床から離れ、アナル栓が吹き飛んで、横に回転しながら壁にぶつかる。
 栓さえ抜ければ、もはや排泄を阻むものはない。
 ぶばっ、ぶばばっ。びちゃびちゃ、ぶばばっ、ぶびいいいっ。
 思わず耳を塞ぎたくなる音が、長々と響き渡る。その品のなさと長さこそ、藤花がよく耐えていた証だと思うと、やるせない気分になる。人間の死に物狂いの努力は、こんな形で虚仮にされるべきじゃない。
 だが、俺がいくらそう思おうと、映像内の価値観は変わらない。

『おーっす、どうだ調子は……って、くっせぇ!』
『うーわ、こいつ漏らしやがったな!!』
 決壊からさらに十数分遅れて、調教師達が戻ってくる。悪意に満ちた表情で。
 連中はわざとらしく鼻をつまみながら藤花に近づき、右手に握りしめられたスイッチを取り上げる。
『ったく。こうなる前に押せっつったろ、バカが』
 そう言って、半笑いのままスイッチの裏をスライドさせる。電池を入れる場所……そこには、あるべきはずのものがない。
『あ、悪い。コレ、電池入ってねぇわ!』
 男はそう言いながら笑みを浮かべた。項垂れたままの藤花が、ぴくりと動く。
『ははははっ、ひっでぇなお前!!』
 他の調教師達が笑い、スイッチを手にした男が頭を掻く。白々しい。わざと電池を入れなかったに決まっている。藤花を極限まで苦しめ、絶望させるために。
『まあ許せって、な?』
 男がそう言って、藤花の髪を掴み上げた。
『ぎゃはははっ、ひっでぇ顔!!』
 藤花の正面にいる男達が笑い転げる。
 確かに、彼女の顔は崩れていた。鼻水と涎が垂れ、口の端からは泡を噴いている。そして虚ろな二つの瞳からは、涙が零れつづけていた。
『あーあー、泣いちまいやがったか。ま、こんな状況なら泣けるわな』
 調教師達は嘲笑しながら、藤花の縄を解きにかかる。
『うおっ。おい見ろよ、この足首の縄。ほとんど千切れかかってんぜ?』
『マジだ……どんな力だよ』
『良かったなー、念のために膝も吊っといて』
 そんな会話の中、藤花の身体が床に下ろされる。
『さて、ケツはどんな具合かね』
 男達は藤花の片足を掴むと、大股を開かせて肛門を覗きこんだ。
 ここでカメラが拾い上げられ、藤花へと近づいていく。
 映像の中央に収められた藤花の肛門は、ダリアの花のように開ききっていた。
『うへへ、すげぇ……』
『ドナン浣腸の後のアナルってなぁ、何度見ても面白ぇよな』
『おう。このガバガバの穴が、つい一週間前までは桜色の蕾だったんだぜ? 信じらんねーよな』
『まったくだ。まぁそりゃともかく、色々と綺麗にしねえとな。おら、立てよ“クソッたれ”』
 同情の欠片もない言葉と共に、藤花は腕を掴まれ、強引に立ち上がらされる。
 縄痕の残る手首に、改めて手枷が嵌められた。手枷はさらに、天井の滑車の一つと鎖で結ばれる。つまり藤花は、両の手を頭上に掲げた格好を強制されたわけだ。

『さてと。こっちはこっちで、バキバキに硬くしとかねーとな』
 一人がそう言って、小さな箱を開いた。箱の中身は注射器だ。男はそれを手に取ると、ズボンを下ろし、躊躇なく逸物に針を突き刺した。奴の顔面には、瞼にも鼻にも唇にも、やたらとピアスが取り付けられている。あるいは刺す感覚の中毒なのかもしれない。
『うあー……キクわぁ』
 薬液を打ち込むほどに、ピアス男の表情は緩んでいく。そしてそれとは逆に、逸物は硬く屹立していた。奴の逸物は元々でかいが、それが一回り以上も膨れたようだ。
『コイツの出番も久々だな。ここんとこ、ドナンまで使う事なかったしよ』
 別の調教師が、役目を終えた注射器と交換で筒状のものを手渡す。筒の材質はシリコンらしく、表面には複雑な凹凸が見て取れる。
 ピアス男は、受け取ったそれを勃起した逸物へと嵌め込んだ。幹の部分がすっぽりと筒で覆われるように。なるほど、あれは逸物のサイズを補強するぺニスサックらしい。
『あいよ、もう一丁』
 また別の男が、もう一つのサックを手渡す。さっきよりも一回り大きいサイズだ。それもまた、そそり立つ逸物の外側へと嵌め込まれる。
 結果として造り上げられたのは、空き缶サイズの直径を誇る極太だ。最大径こそロドニーという黒人に劣るものの、こっちは根元から先端までが満遍なく太い。長さも以前の動画に出てきた3号バイブを上回っていて、直腸奥まで届くのは確実だ。しかもその表面は、二つのカバーの突起が合わさって、ゴーヤのような複雑な凹凸を形成している。
『う……っ!!!』
 禍々しい巨根を目の当たりにし、藤花の顔が凍りつく。
『スゲェだろ。ドナンで緩みきったケツに、普通のもん突っ込んでも話になんねーがよ、この特製チンポブラシなら大丈夫だ。穴の奥の奥まで、キッチリ掃除してやるぜ』
 ピアス男は、規格外の逸物を揺らしながら、ゆっくりと藤花の後ろに回る。
『や、やめろ……』
 藤花は背後を取られまいと身を捩るが、周りの調教師がそれを良しとするはずもない。
『おら、じっとしてろ』
 そう言って腕を掴まれるだけで、藤花の自由は奪われる。
『そう怖がんなって。天国へ逝かせてやっからよ』
 ピアス男がついに藤花の背後につき、腰を掴む。空き缶サイズの極太が尻肉に宛がわれ、押し込まれていく。普通なら絶対に入らないだろう。だがドナンで開ききった藤花の肛門は、その無茶なサイズをも受け入れてしまう。
『んん……くっ!!』
 藤花は眉根を寄せるが、痛みというより屈辱の表情という感じだ。
『いつ見てもすげぇな。あんなサイズが入っちまうなんてよ』
『全くだ。AVでもそうは拝めねぇぜ』
 他の調教師達は、腕を組んでハードな挿入を見届けている。
 そして、二重のサックに覆われた極太はすっかり腸内に入り込んだ。
『よーし、入ったな。じゃ、動くぜ?』
 ピアス男が笑みを浮かべ、ゆっくりと動きはじめる。ドナン浣腸でドロドロに蕩けた、直腸の中を。

 たしか、立ちバックと言ったか。互いに直立したままの後背位で、肉がぶつかりあっている。カメラは、それを真横からのアングルで撮影していた。正直、この撮影者はよくわかっていると思う。藤花のように無駄なく引き締まった身体は、横からの見栄えが抜群にいいんだ。
 ほぼ垂直に床を踏みしめる美脚。結合部である腰と手首の鎖を支えに、弓なりになった上半身。その柔軟に反った鋭利な姿は、日本刀そのものを思わせる。
 ただし、いやらしさがないわけじゃない。刀身のような上半身の中ほどでは、豊かな乳房が派手に揺れている。その揺れ具合こそ、突き込みの激しさの指標だ。
 ピアス男に遠慮というものはなかった。後ろから両手を回して、藤花の恥骨辺りをがっしりと掴んだまま、ゴーヤのような怒張を抜いては突き込む。どぱんっ、どぱんっ、という肉のぶつかる音といい、無駄肉のない藤花の尻が波打っている事といい、相当な強さで腰をぶつけているのは明らかだ。
 藤花は、両足を肩幅に開いて踏みとどまり、じっとそれに耐えているようだった。ただ、最初の頃の、触れれば切れるような覇気は感じられない。
『はぁっ、はぁっ……。はぁっ……はぁーっ…………』
 息は荒く、顔は項垂れたまま。だいぶ参っている様子だ。
 ピアス男は、そんな藤花の肛門を激しく犯しながら、恥骨に宛がった手を上に滑らせる。つまり、下腹を押さえる形だ。
『なんだよ、全部出てねぇのか? 腹ァ膨れてんじゃねぇか』
 奴はそう言った。映像で見る限り、藤花の腰回りはダンサーと見紛うほどにくびれていて、腹が膨れている様子など微塵もない。だが、真相がわかるのは藤花本人と、肌で触れ合っているピアス男のみ。そして藤花は、今もグルグルと不穏な音をさせている下腹を見ながら、思うところがあるようだった。
『しっかりケツ締めとけよ。アナルファック中にダラダラ漏らしやがったら、タダじゃおかねぇぞ』
 ピアス男はそう言って藤花の尻を叩き、腰を振りたくる。その勢いで前後に揺られながら、藤花も体勢を変えた。肩幅に開いていた脚をさらに広げ、膝を曲げて腰を落とす。さらには両の足親指で床を噛む。いかにも古武術的な、『耐える』構え。
 綺麗だ。筋肉のカットに思わず見惚れてしまう。日々鍛錬を積み重ねてきたゆえの筋肉美と、彫刻のような機能美、そして女体としての純粋な魅力。それらが渾然一体となって、究極とも思える美を形作っている。そう感じるのは俺だけじゃないらしく、隣でモニターに見入っている連中も、腰を落とした藤花の脚を凝視している。
 だが、価値観は千差万別。少なくとも映像の中のピアス男は、藤花の美に目もくれない。奴の狙いはただ、アナルレイプの中で藤花に恥を掻かせることだけだ。
『おい。クソ漏らすなっつってんだろうが』
 ピアス男は、ドスを利かせた声で藤花に囁きかける。藤花の頭がピクリと反応した。
『も、漏らしてなど、いない……』
『嘘つけよ。さっきから俺の太股に、ヌルヌル流れてきてんじゃねぇか。これがクソじゃなきゃなんだ? 腸液か? もし腸液ならお前、それこそケツで感じてるって証拠じゃねぇか』
『ち、違う! 不浄の穴でなど感じるかっ!!』
『ほう、そうかい。じゃ、もう一度チャンスをやるよ。ケツの穴グウッと引き締めて、この生ぬりぃクソ汁を止めてみろや』
 パンパンという小気味いい音を背景に、そんな会話が交わされる。

『……はっ。ピアス君もいい性格してんぜ。一度ドナン浣腸でぐっぱり開いちまったケツを、そうすぐに締められっかよ』
『どんだけ筋肉ある女でも、垂れ流しになっちまうからな。だが、ケツを締めようとさせんのはいい作戦だぜ。実際にゃ締まらねぇにしても、ケツに意識向けて、まだ痺れてねぇ子宮周りの筋肉緊張させりゃあ、アナル性感がグングン高まっちまう』
『そういや、アナル狂いになった女共も言ってたな。ドナンで直腸やら結腸溶かされる感覚はヤベエって。そのアクメの味知ったら最後、普通のセックスなんぞじゃ刺激が足んねぇんだと』
『ああ、そりゃ俺も聞いたな。特にああいう、クソ真面目で融通の利かねぇ女ほど、アブノーマルから抜け出せなくなるんだ』

 かろうじてマイクに拾われる声量で、調教師達が囁き合っている。アナルセックスの音に邪魔され、藤花には届かない会話。生真面目な藤花は、乗せられたレールの行方も知らぬままに走り続ける。
 腰を落としても肛門を閉じられないからか、藤花の脚はまた閉じあわされた。ただし、今度は両脚を伸ばしているわけじゃない。左足が爪先立ちになり、かすかに膝を曲げている。クリトリスで絶頂する時も、藤花はああして爪先立ちになっていた。絶頂を堪えようとして、床を噛んでいるのか。それとも絶頂に耐え切れないから足裏が浮くのか。その因果関係は定かでないが、行きつく先は同じだ。
『はぁっはぁーっ、はぁっ……あ、あ…ああ! はあ、あっ…あっ……!!』
 最初は、途切れがちな呼吸なのかと思った。だが時が経つごとにはっきりしていく。
 藤花は、喘いでいた。あっ、あっ、と。激しく肛門を犯されながら、艶かしく爪先立ちの脚を蠢かしながら。
『だいぶ、良くなってきたらしいな』
『ッ!?』
 ピアス男の囁きに、藤花がはっとした様子で顔を上げる。遅まきながら、自分が浸っていた事実に気がついたんだろう。
『ふざ、けるな……!』
『何もふざけちゃいねぇよ。俺がどんだけ女のケツ犯してきたと思う。わかんだよ。こうやって腸の奥まで、グリグリやってりゃ。それによぉ』
 ピアス男はそう言って、藤花の足の合間に指を差し入れる。
『んっ!?』
 ぐちゅりと音がした瞬間、藤花が発したのは、女の声だった。いつものハスキーボイスと同じ喉から出た声とは思えない。
『ほら見ろ、マンコがグチョグチョじゃねぇか』
 ピアス男の指が割れ目から抜かれ、藤花の目の前で開く。指の合間には、ねっとりとした糸が引いた。
『この状況で、どう屁理屈を捏ねるんだ? こんなネバネバの本気汁出しといて、まさか防衛本能とか抜かすつもりじゃねぇよな。なにせ、テメェのマンコにゃ何も入ったことがねぇ。昨日も今日も、後ろしか使われてねぇんだからよ!!』
 耳元で叫ばれる理論に、藤花の目が泳ぐ。初めて見る反応だ。相手を睨めない時はあっても、藤花の視線は常にどこか一点を見つめていた。まっすぐ前だけを見ている感じだった。それが今は、揺れている。自分を見失っているかのように。
 そして、そんな弱った気配を、サディストが見逃す筈もない。
『乳首も、コリコリに固くしやがって。よくこれで誤魔化せると思ったもんだぜ』
 愛液を塗りつけるように、ピアス男の手が乳房を包む。
『ふんん……っ!!』
 二つの指の腹で先端部分を扱かれれば、藤花からは本当に気持ちの良さそうな声が漏れた。ピアス男の口元が吊り上がる。
『チンポに響くいい声だ。好きだぜそういうの』
『くっ!黙れ……黙れえっ!!!』
『いいや、まだまだ言い足りねぇな。ここまで来て感じてねぇとか、白々しいウソ抜かすバカにゃよ。だいたいテメェ、もうドナン浣腸の効果なんざとうに切れてんのに、ケツがぐっぱり開きっぱなしじゃねえか』
『そ、それは……お前が後ろでしてるからだろうっ!』
『にしてもだ。普通はいい加減狭まってくるもんだぜ。お前みたいに武道やってる奴は、8の字筋が鍛えられてっから、余計に戻りは早ぇもんだ。実はケツでされんのがきんもちよくてよぉ、テメェの意思で括約筋トロかしてんだろ?』
 ここが決め時だとばかりに、畳み掛ける。言葉の真偽は判らない。ドナンの効果がどれだけ持続するかなど、普通に生活を送っていれば知る機会はない。だからこそ、その言葉を否定しきるのは難しかった。特に心が揺らいでいる人間は、自分を疑いがちだ。ありえない理論でも、自信満々に言い切られれば、それが真実だと思えてしまう。

『違うっ!! 俺は、俺はおかしくなんか、ないっ!!!』

 藤花は目を泳がせながら、不安定な声色で叫ぶ。そして曲げた左足で右足の甲を踏みつけはじめた。まるで幻惑の中、ナイフで身を傷つけて正気を保とうとするように。
『くひひっ。どうした、刺激が足んねぇか変態女? なら協力すんぜ!!』
 ピアス男はそう言って、弄くりまわしていた乳首を捻り上げる。乳房全体が変形するほどの強さで。
『んぐうううっ!!!』
 藤花は天を仰いで呻いた。彼女の過去映像を見た人間なら誰でも、それが彼女の限界を示す仕草なんだとわかる。クリトリスとアナルの同時責めで深く絶頂した時も、ドナン浣腸で決壊した時も、そうだった。
 右足への踏み付けが止まる。左足の裏が床につき、身体全体が芯を失ったように傾ぐ。その結果、彼女の震える脚が選択したのは、内股だった。いつもどっしりと地を踏みしめる彼女らしくもない、女の子の立ち方。
 『大和男児』の首が、切り落とされた瞬間だ。
「ひひひっ、可愛くなっちまって。ケツん中も締まってきたなあ。俺のチンポブラシに、粘膜が甘えてきてんぜ?』
 ピアス男は上機嫌で藤花の恥骨を抱え直し、腰の振りを再開する。しかも今度は、自分が腰を打ちつけるだけじゃない。地に根ざすことのなくなった下半身を、自分の方へ引き寄せもしつつの双方向ピストンだ。となれば当然、腸奥を貫く衝撃も倍になる。今の藤花に、それを撥ね退ける気力はない。
『ああっ、あはぁああ……あっ、あっ、あっ……!!』
 はっきりとした喘ぎを漏らしながら、されるがままに腰を揺らす藤花。
 もはや日本刀どころか、風にそよぐ柳も同然だ。その変わり果てた姿をしばらく捉えてから、モニター画面は黒に染まった。


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 暗転したモニター画面を前に、立ち尽くす。
『絶叫が続く動画につき、他のモニターよりも音量を下げております』
 そのテプラが目に入った。
 なるほど、調整は必要だ。クリトリスで絶頂していた動画でも叫びは凄かったが、この動画には及ばない。声の大きさも、その悲惨さも。出来ることなら、いっそ音声などなくして欲しかった。憧れすら抱いた『男児』の崩壊を、生々しく知ってしまうぐらいなら。

 だが果たして、本当に彼女はもう駄目なんだろうか。
 3つの頃から稽古に明け暮れてきたという彼女は、芯が強いに違いない。雨が降ろうが風が吹こうが、そう易々と心が折れたりはしないはずだ。
 俺はそう願いながら、最後のエリア……『8日目』へと足を踏み入れる。黒山の人だかりと、その連中の顔に浮かぶ薄笑いに、嫌な感じを受けながら。


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 映像は、女の肛門のアップから始まった。
 慎ましかった桜色の蕾は、もうその面影もない。プレイ前らしき今も、指の2本ぐらいなら難なく入りそうな隙間が空いている。菊の輪のひとつひとつも紅色に膨らみ、若干とはいえ外にめくれている。
『すげぇな。もうアナルマニアの貫禄だぜ』
 前の動画で散々耳にした声が茶化す。
 カメラが少し引かれ、撮影場所の背景が映り込んだ。もはや半ば藤花の専用室と化している、ガラス張りのバスルームだ。周囲にはいつも通り、客の姿もある。
 ただ、いつもと違う事がひとつ。藤花が、拘束されていない。
 これまでは藤花がどれだけフラフラになっていても、しつこいぐらいに縄や手枷足枷が取り付けられていた。前の動画では2回も縛り直された。
 とはいえ、それ自体は仕方のないことだ。怒りに任せて暴れ、フロア中を混乱の渦に巻き込んだ前科がある以上、行動を制限するのは当然。だからこそ、そんな猛獣にも等しい藤花が拘束されていないのは異常だ。映像を見る限り、バスルームの中には彼女とピアス男の2人しかいないのに。
 ではなぜ、拘束されないのか。決まっている。その必要がないと判断されたからだ。もはや藤花は脅威ではない。大立ち回りを演じる気概はない。その烙印を押されたということだ。
 俺には、それがまたショックだった。

『んじゃ、始めっか。テメェの大好きなドナンをよ』
 ピアス男がそう宣言し、洗面器を引き寄せる。ガラスの外で客が沸き立った。
『大好きな訳……ないだろう』
 ぼそりと、そう呟く声がする。俺は最初、それが藤花のものだと思えなかった。ギャラリーの誰かの声が入っているんだと思った。いつも堂々と己の信念を訴えていた彼女のイメージとは、あまりに違いすぎたから。
『ほう。テメェ昨夜の問答を、また蒸し返す気かよ? かーっ、恩を仇で返された気分だぜ。二回目のドナンファックでガチ泣きしてっから、特別にアナル舐めで勘弁してやったってのによぉ!』
『…………ッ!!!』
 冷ややかな声で発された一言に、藤花の体が強張る。
 どうやら昨日の映像には、非公開の続きがあったようだ。これまでの映像でカットされていた場面を考えると、ピアス男の言うように“アナル舐め”だけで済んだのかは疑わしい。男の肛門に舌を這わせ、その先があったんじゃないか。そしてその結果、藤花に『もはや脅威足りえない』という烙印が押されたんじゃないか。つい、そんな風に考えてしまう。
『まあいい。なら、今日で中毒にしてやるよ。改めてな』
 ピアス男は、ガラスの浣腸器でドナン液を吸い上げ、無遠慮に藤花の腸内へと注ぎ込む。今回もそれが2回繰り返された。さすがに3回目はない。昨日の映像を見る限り、そんな事をしたら多分、藤花の肛門は使い物にならなくなるだろう。今彼女に注がれたのは、それほどの劇薬だ。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……』
 藤花は這う格好のまま、深めの呼吸を繰り返していた。緊張した感じではあるが、まだまだ規則正しい息遣い。だが、それも今だけだ。
『さ、栓するぞ』
 ピアス男は浣腸器を戻し、また別の道具を手に取った。小さな風船にチューブと握りのついたもの。
『こいつはアナルバルーンっつってな、腸の中で膨らむんだ。シンプルだが使い勝手のいいストッパーだぜ。これから何度も使われるだろうから、よく慣れとけ』
 ピアス男の手が、風船部分を肛門の中へ押し込んだ。そしてポンプ部分を何度も握り込む。
『うあ……っ!?』
『すげぇだろ。身体の内側から粘膜を圧迫されると、脳が全力で危険信号を鳴らすんだよな。ま、気にすんな。ひり出せないレベルまでは膨らませるがよ』
 ピアス男は笑いながら、何度も何度もポンプを握り込む。シュッ、シュッ、と音がし、藤花の尻が震える。あるいはその震えは、すでにドナンの効果が出ているせいかもしれない。なにしろ彼女の肛門からは、バルーンによる栓が間に合わなかった汚液が、早くもあふれ出しているんだから。
 
 この日も藤花は、たっぷりとドナンを我慢させられた。
 昨日とは趣向が違うが、陰湿さでは大差がない。
『はーっ、はーっ、はーーっ、はぁーーっ……!!』
 重苦しい呼吸を繰り返す藤花に対し、ピアス男は嫌がらせを繰り返す。例えば、バルーンをさらに膨らませたり。あるいは逆に少しだけ空気を抜き、中途半端に汚液を噴き出させたり。
 さらには極細かつ凹凸のあるステンレス棒を、尿道に出し入れさえする。客が興奮気味に尿道ブジーと呼んでいたこの責め具は、かなり刺激が強いらしい。
『や、やめろ……垂れ流しに、なる…………』
 尿道にブジーが挿入されはじめたとき、藤花はぜぇぜぇと肩で息をしながら、初めて後ろを振り返った。だがピアス男の指は止まらない。
『ああそうかよ。これも昨日の問答の繰り返しになるが、ションベンの穴拡げられんのとクリにピアス嵌められんの、どっちがいいんだ? 俺は横に貫通させるピアスがオススメなんだがよ』
 そう問われれば、藤花は悔しそうに尿道と答えるしかない。どっちも不可逆な責めには違いないが、ピアスという証を刻まれるのは流石に避けたいんだろう。

 ピアス男は、ゆっくりと尿道ブジーを前後させながら、そのうちクリトリスにも手を出しはじめた。奴によると、尿道の奥は薄皮一枚を隔ててクリトリスの根元と接している。だから尿道を開発する事で、自然とクリトリスの感度も上がっていく……らしい。
 事実、尿道にブジーを抜き差しされながら、オイルを塗されたクリを扱かれる中で、藤花は何度も絶頂していたようだ。
 最初こそ必死に耐えていたが、そのうち自分の左腕を噛んで声を殺しながら、いぐいぐいぐ、と呻くようになった。元々隠しごとが得意なタイプには見えない。それで意地さえ張り通せなくなれば、自然と解りやすい反応になるんだろう。

 問題は、これらの嫌がらせが、ドナン浣腸と平行で行われていることだ。
 あまりに強すぎる便意で、痙攣し、失神し、白目を剥き、泡を噴く、最強最悪の浣腸。それに悶絶しているところに、尿道やクリトリスからも無視できない苦しさや快楽が発せられる。苦痛と快感の板挟みになり、狂いそうになることだろう。
 実際、藤花も苦しみ抜いていた。
 犬の交尾と揶揄されるほど、下痢の音を響かせる腹部を上下させたり。
 歯を食いしばって天を仰いだかと思えば、俯いて何かの液体をタイルに垂らしたり。
 藤花の後方に位置するカメラには、その表情は映らない。だがガラス越しに見物している客の表情から、悲惨な状況らしいという推測はできる。
『昨日の映像よりひどい』
『若い女のする顔じゃない』
『目隠ししてやった福笑いのようだ』
 そんな言葉も聞き取れる。あの凛とした美貌が、どれだけ崩れれば福笑いなどと形容されるんだろう。初日の時点では、調教対象の6人の中で、最もそれから遠い存在だったはずなのに。

『もう……許してくれ。ほんとうに、意識が、保てない……』
 腹から異音を轟かせつつ、藤花がとうとう音を上げた。するとピアス男は、その言葉を待っていたとばかりにクリトリスから手を離す。腕にかかった黄色い液を振り落としながら。
『そうか。ま、俺ァいいけどよ。問題は、お客が許してくれるかだな』
 ピアス男は藤花の腕を取って立ち上がらせ、痙攣で足元のおぼつかない彼女を、バスルームの壁……つまりガラスの前に立たせる。
『お、何だ何だ?』
『おほほっ、そんな近くで見せてくれんのかよ!?』
 客達はそれを見て、一斉に藤花の対面へと集まりはじめた。
『……いや……普通にさせてくれれば、いいんだが……』
 藤花は凍えるように震えながら、手で胸とあそこを覆う。これも意外な反応だった。ほんの2日前までの彼女なら、手で隠すのではなく、「見ると殺す」という眼光で客の目を逸らさせていたはずだ。
 その彼女らしくない仕草を、ピアス男が荒々しく払いのける。
『したけりゃ、お客さんにお願いするんだ。「私の汚いウンチを見てください」ってよ』
 ピアス男がそう言うと、藤花の眉が動いた。怒りとも困惑ともつかない角度だ。逆に客の方からは拍手と歓声が起きる。
『そ、そんなこと……』
『言わねぇってんなら、栓は外さねぇ。昨日みてぇに栓をぶっ飛ばすまで我慢しろ。ただ、気ぃつけろよ? 昨日は滑りのいいアナルプラグだったから上手く抜けたが、今日は摩擦の強ぇゴム風船、しかも限界まで膨らませたやつだ。んなもん無理矢理ひり出したら、ケツが裂けてもおかしかねぇぜ』
 渋る藤花に対し、ピアス男は淡々と答える。威圧的でないだけに、その言葉には妙な真実味があった。だからこそ、藤花は迷う。何分も葛藤する。
 だが結局、生理的な欲求に抗いつづけるのは無理だ。下腹から凄まじい音がなり、肛門から破裂音がし、バルーン栓を越えた汚液が太股を伝いだした頃。
『…………しの……ない……を、……てくだ……ぃ…………』
 藤花は俯いたまま、何かを呟いた。宣誓の言葉らしいが、いかんせん声が小さすぎる。
『ああ? 聴こえねーよ。もっとデケェ声出せや、俺らに啖呵切ってた時みてぇによ!』
 ピアス男が苛立ちを見せ、客も口々に再宣誓を求める。
 藤花は、唇を噛み、手を握りしめた。そして腹の音に急かされたように、再び口を空ける。

『 わたしの汚いウンチを、見てくださいっ!!!! 』

 涙を零しながら、藤花は叫ぶ。剣道の気合の声より、もっと大きいかもしれない。それは映像内で音割れを起こすほどで、ピアス男も客達も、全員が耳を押さえている。
『うおっ……お前、バカか!? デケェ声っつったけど、限度ってモンがあんだろうが! どんだけ融通利かねぇんだよ』
 ピアス男は呆れた様子で、アナルバルーンの解放ボタンを押す。ブシュウッと空気の抜ける音がし、直後。
『あ……くあああああ゛ぁ゛ぁ゛!!!』
 藤花の悲痛な叫びと共に、決壊が始まった。ガラス盤に薬液を叩きつける形だから、外にいる客には開ききった肛門から太股の痙攣具合まで、すべてが見えていることだろう。


 そして、責めはこれで終わりじゃない。
 この日の藤花は、排泄の直後、客に肛門を晒すことを強いられた。
 まだ太股が痙攣したままの状態で、客の方へ尻を突き出し、自らの両手で尻肉を割りひらく。その屈辱は相当なものだろう。
 散々見世物になり、口汚い言葉を浴びせられても、まだ終わりじゃない。
『よし。今日ここに来てるダンナ方には、特別サービスだ。上のディープスロートフロア解禁って誘惑にも負けねぇ、生粋のアナルマニアだしな』
 ピアス男はそう言って、巨大なディルドーを取り出した。ただし、一般的のディルドーとは2つ違うことがある。
 一つは、そのディルドーがスケルトン……つまり透明な素材でできていること。
 そしてもう一つは、底に巨大な吸盤がついていることだ。
 奴はその吸盤を、バスルームのガラスに吸着させた。吸盤はかなり強いのか、ディルドーの自重にも負ける気配がない。吸盤も含めてすべての素材が透明だから、バイブ越しにも向こうの景色が見える。そしてその高さは、藤花の腰丈よりやや下だ。
『さて、準備完了だ。この後どうするか判るよな?』
 ピアス男に問われ、藤花は奥歯を軋ませた。

 こうして藤花は、より一層の恥辱を味わうことになった。
 中腰の姿勢のまま、ガラスに尻を押し付ける形でディルドーを迎え入れる。ガラス向こうの客に、腸の奥までを晒しながら。
 客はもう大騒ぎだった。ガラスに張り付けるポジションを醜く奪い合いながら、興奮気味に何かを叫んでいる。俺はそこに混じりたいとは思わないが、興奮の理由はよくわかった。
 まず何といっても藤花はスタイルがいい。ダンサーやスポーツインストラクター系の健康美人だが、同時に胸も大きいとなれば、男の視線を集めるのも当然だ。あるいは俺のように、凛とした雰囲気に魅力を感じる人間もいるだろう。猛獣が牙を抜かれていくのを面白がる人間もいるだろうし、その猛獣に逆鱗に触れて怪我を負い、逆恨みしている人間もいるようだ。
 ともかく、少なくない人間が、藤花に興味を抱いているのは事実だ。
『んっ、く……ふん、んん……ん゛っ!!』
 藤花はディルドーに腰を打ちつけながら、つらそうに呻いていた。

『気持ち良さそうな呻きだ。やはりドナン浣腸の後だと、腸が敏感になっているらしい』
『羞恥もあるでしょうね。何しろ、腸の奥まで覗かれてるんですから』
『しかも自分で腰を振る、公然アナニーだぜ。俺なら途中で、何やってるんだろうって情けなくなるわ』
『まだドナンの残り汁が噴き出してますしね。この大人数の前で下痢便を噴き出しながらディルドー遊びだなんて、私にはちょっと……』

 客は口々に感想を漏らし、悪意ある笑みを浮かべる。そしてその悪意が、藤花への恥辱責めをさらにエスカレートさせていった。
『ほら、新品だぜ』
 ピアス男が、藤花に竹刀を手渡す。藤花は、この時ばかりはさすがに眼光の鋭さを取り戻した。だがピアス男がじっと眼を覗き込むと、眼を見開いて視線をそらす。どうやら、調教師との上下関係は完全に刷り込まれてしまっているようだ。
 今までどおり中腰でディルドーを咥え込んだまま、竹刀でビーチボールを割ること。それが藤花の新しい課題だ。
 中腰でアナルを抉られる状態では、充分な力は発揮できない。結果、いかに藤花といえど、なかなかビーチボールを割ることはできなかった。
 ぱすっ、と情けない音で竹刀が振り下ろされるたび、客からは野次が飛ぶ。
 肛門でよがってるからそのザマなんだ。
 剣術道場の娘として恥ずかしくないのか。
 剣道の全国大会優勝など疑わしい、その歳で色仕掛けでもやったのか。
 そんな、プライドを踏みにじるような野次だ。
『く、く……っふ、くうう゛っ……うああァッ!きぃええエッ!!』
 藤花は、顔を真っ赤にし、悔し涙を流しながら竹刀を振るいつづける。だがそうして感情を乱せば、ドナンに荒らされた肛門にも余計な力が入ってしまう。結果、彼女は必死になればなるほどに恥を晒すことになった。
 ディルドーの出入りする肛門から、みっともない音で放屁を繰り返したり。凄まじいがに股を晒したり。
 そして、最悪なのは終盤だ。何度叩いてもビーチボールを割れない藤花は、腰を据えての一打を放とうと思ったんだろう。あえてディルドーを根元まで咥えこみ、尻肉をガラスに宛がった状態のまま、ぐっと重心を定めた。するとまさにその瞬間、ディルドーが結腸の入口を抉ったらしい。
 ──ドナンで直腸やら結腸溶かされる感覚はヤベエ
 前の動画で、調教師が言っていた言葉を思い出す。
 ほんの一瞬の偶然で、藤花は深い絶頂に呑まれてしまった。

『んあ゛お゛っ!?』

 虚を突かれたような声がし、藤花の背中が仰け反った。そして割れ目の辺りから飛沫が吹き、手から竹刀が滑り落ちていく。
『おお、なんだなんだ!?』
『潮噴いたのか!?』
『アナル……つか、結腸アクメ!?』
『うわ、すげぇ足ケイレンしてるよ。がに股で……』
 客がそう騒ぎ立てる中、藤花はなおも結腸の入口を串刺しにされたまま、絶頂の余韻に浸るしかなかった。背後のガラスに後頭部を預け、頬に沿って涙を零しながら。
 

 そうして散々に恥を晒した後は、公衆の面前でのアナルファックが始まる。昨日と同じくピアス男が2重にペニスサックを着け、ゴーヤのような怒張を作っての肛門凌辱だ。
 直前に結腸で達しているからか、それとも心が弱っているからか。雑にタオルを敷かれたタイル床に這う格好を取らされた時点で、すでに藤花は弱々しく見えた。体を支える手足に力は感じられず、切れ長な瞳は水平にまで下がっている。
 それでも、完全に矜持を無くした訳でもないらしい。カメラが顔をアップで撮れば、口元を引き締めてレンズを見据える。背後でピアス男が巨根で尻肉に『挨拶』すれば、肘を狭めて顎を引く。まるで竹刀を構えるように。
『……っ!!!』
 極太が狙いを定め、尻肉に割り入った時でさえ、一瞬口を開いただけで声は上がらなかった。

 ただ、気持ちがいいのは確からしい。カメラが藤花の頭側から結合部を映す中、ゴーヤのような逸物が出入りするたびに、映像下部で背中と尻肉が引き締まる。
『……んひぃっ……ぐ、ぐひぃっ……!! ……う、んっあ、あ……っ!!!』
 そんな小さな呻きも録音されている。
『バカみてーに我慢強いお前でも、さすがに声が抑えらんねぇか。ドナンは肛門から結腸まで、満遍なくトロかすからな。しかも刺激が強ぇだけに、やればやるほどハマっちまう。言ってみりゃケツでのキメセクよ』
 ピアス男はそう囁きつつ、藤花の脚の付け根をがっしり掴んで腰を打ち込んでいく。藤花の肛門は、ドナンのせいで開ききっているんだろう、極太が滑らかに出入りする。カメラはその結合部を中央に捉えたまま、男の胸板と藤花の肩甲骨までが入る程度の俯瞰で撮影を続けていた。
 派手さはない。でも、それだけに生々しい。
 パンパンという肉のぶつかる音よりも、呼吸音の方が大きく聴こえた。男はさすがプロという感じで、全く同じリズムでの呼気と吸気を繰り返す。逆に藤花の息は明らかに乱れていた。マラソンで息が上がった時のような息だ。
『体力自慢の剣道娘も、さすがに息が上がってきたな』
『ええ。泣いているようにも聴こえますな』
『無理もないでしょう。何しろ、あんなデカいものを出し入れされてるんですからね。苦しくてキモチよくて、堪らないはずですよ』
『単純に肺が潰されているというのもあるかもしれませんね。体格がいいとは言っても、まだ身体の出来上がっていない娘っ子ですから』
 バスルームを囲む観客のものだろう、色々な声色が映像に入り込んでいる。その中でピアス男は、淡々とした力強いアナルセックスを繰り返す。アナル性感を徹底的に目覚めさせようとでも言うように。
 ぐちゅぐちゅと音が鳴るたびに腰が浮き、荒い息が漏れる。それが何十度も続く。
『そら、また深ぁくいくぜ?』
 脚の付け根に掌をめり込ませながら、ピアス男がぐうっと腰を突き入れた。
『んぐうう゛っ……!!』
 藤花から呻きが上がり、画面端で太股が引き締まる。
『へっ、直腸の奥がにゅるにゅる動きやがる。それともこりゃ、ドナンで蕩けた子宮の動きか? サックを二枚も被せてっと幹の感覚はねーが、そのぶん先っちょは敏感になるんだよな。せっかくのドナンファックだ、お前もたっぷり粘膜の快感に浸れよ? つっても、言うまでもなく感じてるみてぇだがな』
 ピアス男はそう囁きながら、円を描くように腰を回す。たぶん直腸奥の粘膜ごしに子宮を押し上げているんだろう。
『んん、あ、あ゛!! や、やめッ……!!』
 藤花の肩甲骨が狭まり、背中の中心に深い溝が浮く。アナル舐めの時、無意識に示していた反応とそっくりだ。ただし、今の藤花には意識がある。にもかかわらず、反応を止められない。
 ピアス男の顔はカメラに収まっていないが、それでも笑っているのがわかった。奴は一番の奥まで挿入したまま、グリグリと腰を押しつけはじめた。妙な動きだ。それが何をしているのかは、すぐにわかる。
『くあ゛!? そこは……っ!!!』
 藤花が悲鳴を上げ、腰を左右に捩りはじめる。だが、男の腕力から逃げるのは不可能だ。
『ああ、結腸だよ。チンポじゃ入口くすぐる位が限界だが、ドナンで敏感になってる今は効くだろ? さっきもディルドーがここ入って、すげぇ声でイってやがったからな』
 ピアス男は駄目押しとばかりに腰を押し付けてから、またピストンを再開する。パンパンと肉のぶつかる音と、ぐちゅぐちゅという水気の多い攪拌音がバスルームに響き渡る。
『…………ふッ!!! …………んんん゛ッッ!!!!!』
 藤花は、声を押し殺してそれに耐えているようだった。
『頑張んなって。こっちは昨日、散々ケツでやってんだぜ。お前の弱ぇトコぐらい、全部わかってんだよ』
 その言葉通り、ピアス男の腰遣いに澱みはない。確実に何らかの狙いを持って、力強く腰を打ちつけていく。そして、その狙いは確実に成果を出していった。
『ああ……あっ、あ!! んん゛……うんん゛……っ!!!』
 艶かしい声が漏れては途切れ、また漏れる。カメラが少し引くと、這う格好で歯を食いしばる藤花の姿が映り込んだ。まさに必死だ。
 男が腰を打ち込むたび、よく鍛えられた肉体が縮こまる。首から肩にかけての筋肉の凹凸は凄まじいが、床のタオルを握りしめる腕は女の子そのものだ。皺の寄る眉根は、限界まで緊張する中で、ある瞬間ふっとリラックスする。だがすぐにそれを拒絶するように、また眉を顰める。その繰り返しだ。
 外から見える部分だけでも、藤花の限界が近いのは明らかだった。
 そして何度も映像で見た通り、セックスでの内的な変化は、外から見える部分よりもずっと激しい。ピアス男が一旦逸物を引き抜くと、それをまた実感させられた。
『つか、マン汁多すぎだろ。俺のシモの毛が全部濡れちまった』
 その言葉で、カメラが斜めに位置を変える。雫の滴る男の股間と、藤花の脚の間が映り込むように。
『マンコがどうなってるか、撮っといてやるよ。後で自分でも見られるようにな』
 ピアス男が背後のスマホを拾い上げ、動画モードの起動音が響く。

 一瞬の暗転を挟んで、映像が切り替わった。

 アングルは、結合部を真下から捉えたものになっている。スマホを藤花の腰の下に置いてるんだろう。
 アップで映し出されるのは、尻肉に出入りする空き缶並みの逸物。凄まじい大きさだ。それが難なく抜き差しされるなど、異常としか言いようがない。そしてその“異常”が何十分も繰り返されれば、何かが軋んで当たり前だ。
『……っと、位置が悪ぃな』
 ピアス男の声がし、カメラの位置が移動する。抜き差しされている部分の少し下、割れ目が大写しになるように。
 まさに、藤花が壊れつつあることを象徴するような光景だった。肛門に逸物が出入りするたび、割れ目から雫が滴り落ちてくるんだから。
『あ、あ……あぁぁ゛、ぁあぁ……ああ゛っ!!!』
 藤花は、もう喘ぎ声を抑えきれていない。歯を食いしばる余裕すら失くしたらしく、腰の揺れに合わせて艶かしい喘ぎを漏らしつづけている。
『イイ声が出てんなオイ、可愛いぜ“オトコ女”。……っと、この呼び方ももう違ぇか。お前はもう、オトコ女ですらねぇ。ケツだけで濡れちまう、ただのメスだ』
 ピアス男が、洗脳するように囁く。
 メス。極限下で耳にしたその言葉が、誇り高い藤花の支えをへし折ったのか。
『くかっ、あ、ああああぁ……!! ゆ、ゆるして、くれ……陸兄ぃ……篤志、勇、聡太、俊春…………父さん…………!!!』
 藤花は切ない呻きの後、家族らしき相手への謝罪を始めた。そうして懺悔を済ませた後、彼女はいよいよ深みに嵌まりはじめる。

『あっ、あっ、ひっ、あああぁっ……!! はぁっ、はぁっ……んああああっ、ひっあああっ、はああ、はあっ、ひっ、ああっ!!!』

 はっきりとした喘ぎ声が、絶え間なく発される。場所がバスルームだけに、その声はよく反響した。カメラに接写される割れ目からは、何かの栓が抜けたように愛液があふれ続けてもいた。
『はっはっは、スゲェ声だ! でもしゃーねぇよな、ケツでイッちまってんだもんな?マンコにゃまだ指すら突っ込まれた事がねぇってのに、何遍も子宮イキしやがって。剣道屋だけに一直線だなぁ、このド変態女が!!』
 ピアス男はそう言いながら、極太を力強く叩き込む。割れ目を接写するアングルで、伝わってくる情報は多くない。それでも、充分だ。
 逸物が深く叩き込まれる瞬間には、ひいっという声がし、肛門周りと割れ目が収縮する。ビラビラも閉じるから、雫の滴りは一旦途切れる。凍りついたように。
 だが逸物が引き抜かれれば、凍った時間が動き出す。ああああ、と本当に堪らなさそうな声が響き渡り、肛門と膣の筋肉が弛緩していく。ピンク色の縦筋が口を開き、ぽたぽたとカメラへ雫を垂らす。
『いい具合だ。こなれて、締まって。普通なら2ヶ月はかかるってのに、8日でここまで仕上がるとは恐れ入ったぜ。これならお客にも出せるな。ま、その前に……俺もそろそろ限界だ!!』
 ピアス男は荒々しい口調で叫ぶと、突き込みのペースを上げる。
『うあっ!! はっ、はぁっ、あっ!!!』
 藤花の喘ぎも早まり、そして数秒後。
『出るぞ! 結腸の中に流し込んでやっからよ、よく味わって消化しろや!!』
 ピアス男はそう叫ぶと、一番の奥まで挿入しきってからグリグリと腰を押し付け、そのまま射精体勢に入る。
『あ、やめろ、やめっ…………あ、あ……ああああっ!!』
 藤花は絶叫した。おそらく、腸奥に熱い精液を浴びると同時に。
『くくっ、見たまえよ。あれほどに仰け反って……』
『表情も凄まじいですな。下の奥歯まで丸見えだ』
『うんうん。気の強い女が“壊れる”瞬間は、何度見ても感動しますね』
 ギャラリーの言葉から、藤花の様子が嫌でも想像できてしまう。
 映像の中で、ピアス男の睾丸は激しく収縮していた。かなり大量に射精しているらしい。
『はああ、最ッ高だぜ。ケツ粘膜と子宮側からの圧迫で、たっぷりイジめられちまったからな。出る量がハンパねぇ』
『あああ……く、うっ……』
 愉悦に浸るピアス男と、悔しげな藤花。声色は対照的だ。

 やがて逸物が抜き出されると、ぽっかりと拡がった肛門から白濁があふれ出す。それは、藤花の決壊とあふれる涙を象徴しているかのようだった。
『ふーっ、出た出た。はっ、何だよお前、ライオンが吼える真似か?』
 ピアス男は満足げな息を吐きながら、藤花を嘲笑う。そして、さらに言葉を続けた。
『だが、これで終わりじゃねぇぞ。水分補給しつつシャワ浣して、再開だ。今はまだドナンのおかげでケツが緩んでっから、出し入れもスムーズだったが、こっからは時間が経つごとにドナンの効果が薄まっていく。このイミが解るか? つまり……このデカマラを、シラフに近ぇ状態で受け入れるってこった』
『な……っ!!!』
 ピアス男の言葉に、藤花の身が強張った。
『そうそう、イイ顔だ。睨みきれねぇって感じのその顔が、一番見てて楽しいぜ。腰が立たなくなるまでヤッてやるから、まぁ堪能しろや』
 悪意に満ちたその一言を最後に、カメラが拾い上げられ、悪魔じみたピアス男の顔を大写しにして暗転する。


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 ついに、見てしまった。あの藤花の心が、ポキリと折れる瞬間を。
 左を見ても、もう次のエリアはない。何もないスペースと、入口横に設置された自販機が見えるばかり。
 いや……違う。次はある。部屋の中央奥、厚い扉に隔てられた先に、現在の藤花の姿があるはずだ。
 正直、もう充分だ。あまりにハードなものを見させられつづけて、胸焼けを起こしている。
 だが同時に、俺の内にはこの先を見たいという気持ちもあった。水っ腹でなお、激しい喉の渇きを覚えるように。
 死にゆく愛犬の最期を、せめて看取りたいといった感情なのか。
 それともこの情動こそ、本来の俺の性質なのか。
 今朝の夢を思い出す。
 あの育ちの良さそうな女は、俺の手の届く場所で壊れていった。あれこそ、俺の願望なんじゃないのか。もしそうなら、俺は立派にこの施設にいる資格がある。紛うことなき外道なんだから。

 一度その疑念を抱いた以上、俺にはもう帰るという選択肢はなかった。
 確かめなければならない。俺がどういう人間なのか。この先に待つ光景を見て、どう感じるのかを。


              ※


 扉を開けて中に入ると、ホテルのフロントを思わせる場所に出た。フロントの左右にはやはり分厚いドアがあり、『A』と『B』の文字が刻まれている。さらに、順番待ちが発生した場合に備えてなのか、左右の壁際には長ソファと雑誌棚が備え付けられてもいた。
「いらっしゃいませ。プレイルームへようこそ」
 カウンターに立つ2人の女が、恭しく俺に頭を下げる。どちらもアナウンサーを思わせる極上の美人だが、ほぼ丸裸だ。乳房とあそこを囲むように細いボンデージベルトを装着しているが、藤花の着けていたものと同じく、かえって性的な印象を強めている。しかし、彼女達に恥じている様子はない。まるで精巧なロボットのように、ぴんと背筋を伸ばしている。
「AコースとBコース、どちらをご覧になりますか? 現在、Aコースの調教対象はこちらの4人、Bコースの調教対象はこちらの1人のみとなっております』
 右の受付嬢が、そう言って5人分の顔写真を並べる。さらりと流されたが、おかしい。初日の情報と食い違っている。
「4人? 初日の映像だと、Aコースには5人いたように思うが」
「確かに、当初は5人おりましたが……6日目に1人が調子を崩し、以降はお客様への公開を控えさせていただいております」
 左の受付嬢が、能面のような表情でそう告げた。日本語とは便利なものだ。婉曲的な表現をすれば、いくらでもショッキングな事実を伏せることができる。たとえその意図するところが、『精神崩壊』あるいは『肉体の欠損』などであっても。

 6人の顔写真の上には、AとBという記号が印字され、右側には今までに施された調教内容が列記されていた。
・アナル舐め
・アナル異物挿入(指、ガラス玉、スーパーボール、ミニトマト等)
・浣腸(湯/グリセリン/酢酸)
・アナル拡張:直径4cm迄(アナルプラグ2号を10分キープ)
・アナル挿入:深さ16cm迄(ディルドー2号クリア、3号挑戦中)
・バラ鞭、パドル
・ニップルピアス
・水責め
・公然排泄(大、小)
・ディープスロート
 Aコースの4人はそんな具合だ。何の変哲もない女学生が一週間で受けた調教としては、この内容でも充分に地獄だったことだろう。だがBコースとなれば、文面のハードさが違う。
・アナル舐め
・アナル異物挿入(フィスト、玉蒟蒻、ボーリングピン、ゼリー 他多数)
・浣腸(湯/グリセリン/酢酸/トマトジュース/青汁/塩化マグネシウム溶液 等)
・アナル拡張:直径12cm迄(アナルプラグ6号を8時間キープ)
・アナル挿入:深さ25cm迄(ディルドー8号クリア)
・バラ鞭、一本鞭、乗馬鞭
・水責め/汚水責め/汚物漬け
・飲尿
・食糞
・公然排泄(大、小)
・ディープスロート(嘔吐経験有)
 そんな内容が無機質に列挙されている。字面を追うだけでも眩暈がしそうだが、これも一種の婉曲表現だ。たとえば『水責め』というたった3文字の責めにしても、実際のプレイ映像は鳥肌が立つほどに壮絶だった。
「……Bコースは、凄いんだな」
 ぼそりと俺が呟くと、それを賛辞と受け取ったのか、左右の受付嬢が頭を下げる。
「はい。皆様からご好評を頂いております」
「連日、入場規制が掛かるほどの盛況ぶりでございます」
 機械音声のように抑揚のない口調、互いに言葉を被せ合う配慮の無さ、光を宿さない虹彩。態度こそ恭しいが、この受付嬢2人もマトモではなさそうだ。俺がそう思った時。

「くーっ、もう辛抱たまらんぜ!!」

 ガラの悪い声と共に、Bコースの扉が開いた。カジュアルな格好の中年男が姿を現し、受付に近づいてくる。ただし、カウンターの内側へ入り込む形で。
「お客様。現在は、別のお客様の対応中でございますので……」
「んないいんだよいいんだよ、2人居んだから。悪いな兄さん、コッチ借りるぜ」
 男はそう言って、右側のフロント嬢の腕を引き、カウンターの外へと連れ出した。そして長ソファに荒々しく押し倒すと、大股を開かせて肛門に逸物を押し付ける。
「お……おいおい。いきなり何やってんだ、あんた!?」
 俺は面食らいながらも叫ぶ。さすがに目の前でレイプ現場を目にしていて、スルーという訳にはいかない。すると男は俺の方を向き、怪訝な顔をする。
「何、って……ははあ、なるほど。アンタ新顔かい」
 そう言って1人頷くと、どこか見下したような眼で続けた。
「いいかい新顔さん、よく覚えときな。このクラブにいる女は全員、いつでも気が向いた時に『使って』いい奴隷なんだよ。エレベーターガールだろうが清掃係だろうが、受付嬢だろうがな。っつーか、こういう説明は会員登録ん時に聞かされるハズだがな。それとも何かい、アンタも裏ルートから抜け道通って来たクチかい。えらく若いモンなあ」
 男は1人で、気持ちよく論を展開していく。
「く……!」
 反論しようにも、言葉に詰まる。こういう状況は毎度きつい。ここがどこか、自分は何者か、どうやってここに来たか。それらが何一つ判らない状態では、答えようもなかった。
「フン、図星かよ。社会的なステイタスがなくても、カネとコネさえありゃ潜り込めるなんてな。アングラ中のアングラと呼ばれたココも、緩くなったもんだ」
 男は鼻で笑う。奴自身も下町の工場で働いていそうな風体であり、社会的なステイタスがあるようには見えない。だが案外、こうして一方的に主張を通す強引さで、辣腕経営者と呼ばれているのかもしれない。
 奴は俺に見せつけるように、フロント嬢の胸を揉みしだいていた。それを受けるフロント嬢は、一切抵抗する素振りを見せない。それどころか、
「お客様。私共を『お使いになる』場合には、避妊具の着用を推奨いたします」
 そう言って、雑誌棚の上からコンドームを取り出しさえする。
「おっと、いけねぇ。そうだよなぁ。公衆便所なんざ、どんなビョーキ貰ってっか分かったもんじゃねぇからな」
 奴は侮蔑的な言葉を吐きながら、コンドームの包みを摘む。その指は震えていた。
「ああクソ、焦っちまうな、あんなエロいもん見せられちゃあよぉ。珍しくギャラリー参加型だっつうから昨夜シコらずに来たが、辛抱堪んねぇや」
 コンドームの包みが荒々しく破られ、上向きに勃起した逸物へと被せられる。そして奴はフロント嬢に脚を広げさせると、まず割れ目に亀頭を宛がってから、思い直したようにその下へと挿入する。つまり、アナルセックスだ。
「あーあー、緩いなぁオメェ。ゴムの抜けたジャージ穿いてる気分だぜ。あの剣道女の代わりにと思ったが、これじゃ妄想のオカズにもなんねえよ」
「……申し訳ございません」
「ったくよぉ。謝るぐらいなら、部屋に人数制限でも掛けてくれや、5人までとかよぉ。どいつもこいつも、若ぇJKに蟻みてぇに群がりやがって。おかげでこの俺が、こんな賞味期限の切れたアバズレ相手に性欲処理かよ、クソッ!!」
 男は悪態を吐きながら、フロント嬢相手に腰を振りたくる。
 蟻とは、なかなか的確な自己紹介だ。砂糖という価値の高いものが、何の理由か数粒ばかり地面に零れ、そこに黒蟻が群がっている。ここで起きている悲劇は、まさにそういう印象だ。
 果たして俺の望みとは、その蟻に混じって甘美に酔うことなのか。あるいは、その宴を遠くから眺める人間でいることなのか。その答えは、扉の先でしか解らない。

「Bコースを見せてくれ」
 俺はソファの痴態から目を離し、左のフロント嬢に話しかける。
「承知いたしました。せ……」
 彼女はそう言いかけ、そこで口を噤む。感情の乏しい子だが、今はかすかな焦りの雰囲気があった。
 せ──それに続く言葉は何だ。
「おい、どうした」
「……いえ」
 俺が問いかけると、フロント嬢は顔を左右に振る。ロボットのようだった彼女の動きと、明らかに違う。急にどうした。何を隠している。俺の記憶に関する事なのか。
「どうしたと、聞いているだろう!!」
 焦りからか、不安からか。気付くと俺は、つい嬢の肩を掴んでいた。その瞬間、フロント嬢の全身がびくりと震える。
「ひいいっ!!!」
 光を宿さない瞳に、明らかな怯えの色が浮かぶ。
「な……!?」
 俺はその反応に驚き、手を離した。すると、フロント嬢も肩を竦める。
「はっ、はっ、はっ、はっ……!!」
 全力で走った後のような荒い息。なんだ、この異様な反応は。
「おいおい兄さん、乱暴はいかんぜ」
 ソファの男が茶化してくる。奴に押し倒された時、右のフロント嬢は怯えてなどいなかった。乱暴の程度なら、肩を掴んだ俺よりも、レイプ同然に『暴行』している奴の方が上のはずなのに。
 この左のフロント嬢が、特別に臆病なのか。それとも、俺があの下卑た蟻より恐ろしいとでも言うのか。
「……と、取り乱して、しまい、たんヘンな失礼をいたっし、ました。Bコースは、ああ、あちら、右手奥に、なります……」
 左のフロント嬢は、そう言ってBコースの扉を示す。ただし、身体は依然として震えていて、俺と目を合わせてくれることもない。まるで、羆にでも案内をするように。
「ありがとう。…………怖がらせてしまって、すまん」
 俺は感謝の言葉と共に頭を下げ、フロントを後にする。何か言いたげな視線を、扉が閉まるまで感じながら。


              ※


 Bと刻まれた扉を開けると、また通路が延びている。通路は薄暗く、まるでホラー映画に出てくる閉鎖病棟だ。
 通路の右側にはいくつもの扉があり、格子状の窓が取り付けられている。しかし部屋の中は薄暗く、中を覗いても闇が広がっているだけだ。Bコースは藤花1人しか調教対象がいないから、空き部屋ばかりなんだろう。
 ただ一つ、突き当たりの扉からは光が漏れていた。まるで、俺を呼んでいるように。

 扉を開けて中に入る。
 部屋に一歩を踏み入れた瞬間、俺は理解した。ここか、と。
 肛門に竹刀を挿された藤花が激昂し、暴れ狂った部屋も。
 前後から穴を使い回されていた時の部屋も。
 リンチのような水責めを受けていた部屋も。
 ドナン浣腸を施され、放置された時の部屋も。
 すべて、この部屋だったらしい。壁や床の汚れ、シミ。天井に取り付けられた滑車やフック。ガラス張りのバスルーム。どれもこれも、モニターの中で目にしたものばかりだ。
 そして、見慣れたものは他にもあった。
 刺青や迷彩ズボン、ドレッド頭に、ピアス男。動画内で目にした調教師達が首を揃え、縛られた少女を見下ろしている。

 ポニーテールが印象的な少女──藤花。ついに見えることができた。俺にしてみれば、テレビで見続けてきたアイドルを生で拝んでいる気分だ。
 彼女は部屋の壁際で、胡坐縛りを施されていた。上半身は後手縛り、下半身は胡坐を強制する形で足首を縛り上げ、胸元の縄と足首の縄を連結させる縛り方だ。
 彼女の緊縛姿はモニター越しに何度も目にしたが、今は大きく違う点が3つあった。
 1つ目は、彼女が上半身に制服を身につけ、ハイソックスを履かされたままであること。鍛え上げられた裸体も見応えがあったが、“お堅い”女学校の制服を着込んでいると、また印象が変わる。女子グループの中に1人はいる、頼りになる姉御肌……そういう感じだ。またブレザーやハイソックスを着用していることで、調教対象が現役の女子高生である事実を改めて実感させられる。ここの客は女子高生というブランドが好きだから、さぞや気分が盛り上がることだろう。
 2つ目は、目隠しがされていること。視界を奪われれば、人間の感覚は嫌でも研ぎ澄まされる。胡坐縛りの窮屈さも、周囲からの視線も、その他の刺激も、すべてを普通以上に感じてしまうことになる。
 そして3つ目は、彼女が尻を押し付けている場所に、極太の黒いバイブが設置されていることだ。尻餅をつく格好で極太の栓とくれば、例のドナン浣腸を思い出す。さすがにあの砲弾のようなアナルプラグには程遠いが、藤花の肛門から覗く部分は、ビール瓶ほどの太さは悠にあった。ドナンで緩んだわけでもない素面状態で咥え込むのは、相当にきついはずだ。
 しかも、太いだけじゃない。腸奥に届くぐらいの長さもある。なぜ藤花の腸に埋まっているバイブの長さが判るかといえば、そのバイブと同じ物が、藤花の左右で唸りを上げているからだ。たぶん3人を横並びで調教するためのスペースなんだろう。藤花の左右を見る限り、3つのバイブの動きは完全に連動しているようだ。
 そして左側のバイブには、ご丁寧に女の腰から太腿半ばまでを模した置物が嵌めこんであった。
 『特殊シリコン製 重さ20kg』
 バイブの根元には、そう記された紙が留めてある。
 置物には、女らしい肉付きのみならず、膣や子宮、膀胱、直腸に至るまでが空洞で再現されていた。つまり、その中に透けて見える黒バイブの動きを観察すれば、藤花の腸内の様子も判る。どういう角度で、どういう深さで、どこを責められているのか……そういう情報が筒抜けになるということだ。
 この悪趣味ぶりは尋常じゃない。

「んぐぅうっ!!!」
 目隠しされた藤花が白い歯を食いしばり、顎を浮かせる。その左側では、バイブが尾骨の辺りを舐めるように撫ぜていた。最初に見た時より丈が縮んでいる。どうやら、太い根元に収納する形で自在に長さを変え、ピストン運動まで再現しているらしい。
 そしてバイブは、のたうつ蛇のようにゆっくりと長さを伸ばしながら、シリコン内の直腸を臍方向に抉った。それはつまり、子宮頸部を直腸側から圧迫するということだ。
「ッかは…!?」
 閉じあわされた藤花の歯が開き、息が漏れる。太腿が強張って身体が少し浮き、縛られた足首が痙攣する。
「おや、これはイキましたかな?」
「どうでしょうな。しかし、ドナン責めで蕩けることを知った子宮を潰されるんだ。相当な快感には違いないでしょう」
 客達の囁きが聴こえた。奴らは調教師よりもさらに内側、特等席で藤花の痴態を見下ろしている。そしてその言葉は、確実に藤花に届いているようだ。
「…………っ!!」
 口惜しそうに藤花の唇が噛みしめられる。だが、重苦しい羽音を立ててバイブが腸を抉り回せば、どうしても反応せざるを得ない。
「う、くっ……くうぅっ、はぐっ…う、あ゛…………!!」
 藤花は、時に歯を食いしばり、時に喘ぎながら責めに耐えていた。
 彼女からすれば地獄だろう。ビール瓶に近い直径のバイブがみっしりと直腸に詰まり、のたうち回るんだ。その威力の程は、藤花の左側を見ればわかる。
 左のバイブに被さったスイカ大の物体は、メモによれば20kg。それだけの重量がありながら、置物はバイブの威力に振り回されていた。バイブが力強くうねるたび、置物も空中で渦を巻く。時々腰の部分が壁にぶつかっては、ドッ、ドッ、と鈍い音を立ててもいる。
 さすがに藤花の身体は、バイブに振り回されたりはしない。しかし動かないということは、バイブの運動エネルギーを固定された腸内で余さず受け止めるという意味でもある。その凄まじい感覚は、目隠しのせいで上増しして感じられることだろう。耐え切れずに足をバタつかせようにも、胡坐縛りをされた状態ではエネルギーの発散させようがない。結果、
「くぁぁああ゛っ!! いひっ、は……ぐッ、んいいいぃ゛っ!!!」
 こうした生々しい声を漏らして、嘲笑の的になるしかない。
「っはは、また凄い声だ」
「また『はぐっ』が出たな、これで何度目だ?」
「『はぐっ』は直腸を横向きに刺激されると出やすい呻きのようですな。一方で腸奥を背骨側に押し込まれると、『い』の音が出るようです。ほら、今も『んいい』と鳴いてるでしょう?」
「ははは、本当ですな。ではいっそ、バイブの刺激で喘ぎ声を調節して、歌でも歌わせてみては如何です?」
「ほう、面白いですなぁ! 調教師の皆さん、やって貰えますか?」
「……ったく、ダンナ方の発想にゃ参りますよ。さすが、変態としての年季が違う。オッケーっす、やれるだけやってみます!」
 客の要望に応え、ドレッドヘアがリモコンを握り直す。あれでバイブの動きを制御しているようだ。
「まずは、カエルの歌あたりでいきますか」
 その言葉と共に指が素早く動き、直後、藤花の背中が仰け反った。
「んがっ!!」
 連中の狙い通り、『か』と聴こえる悲鳴が響く。そして、それだけでは終わらない。
「かはっ、えあっ、う゛っ! ん…おっ、おお゛っ……ふグ……ぐうう゛っ!!!」
「おう、惜しい。“カエルの”までは聴こえてきましたな」
「流石に、上手く歌わせるにはノウハウの蓄積が足りませんか」
「ふむ。私には、歌を成立させまいとして強引に歯を食いしばったように見えたが」
「なるほど、この女ならやりかねませんな。では、どうするか」
「なーに。何度も歌わせれば、茶々を入れる余裕もなくなっていくでしょう」
「それもそうですな」
「おっし、また最初からいくぞ。お客の前で、何度もハジ掻かすんじゃねーぞ」
「があっ、あ! ぅあっ、んぐっ……ぇあ゛っ!!」
「おいおい、一回目より原曲から遠いじゃないかね」
「しかし、これはこれで面白いですよ。さっきより惨めな声だ」
「確かに。さながら、カエルというよりガマの歌ですな!!」
「ははははっ、上手いことを言う!」
 藤花は、10を超える人間から玩具にされ、嘲笑されていた。嘲笑されれば自尊心が傷つき、余裕がなくなっていく。余裕がなくなれば、ますますバイブの齎す快感に抗えなくなる。その悪循環だ。
 
「でもホント、凄い声出てるよね。アレ、そんなに凄いのかなぁ」
 祭りのような騒ぎの中、ぽつりとそう漏らしたのは若い女だ。茶色い髪を肩の辺りでふんわりとカールさせた、割と可愛い感じの女。
「ほう。興味があるのですか、奈緒子」
 女の横にいる着流しの老人が、興味深そうに目を開く。確かこの二人は、資料館で見かけた歳の差夫婦だ。あの時も女の方は、ターキーのような黒人ペニスに興味を示していた。どうやら、かなりのマゾらしい。
「なら、ちょっと遊んでみなさい。ちょうど右側が空いているんだ、構いませんね?」
 老人の方がそう言うと、迷彩ズボンの男が頷く。
「いっスよ別に。ただこのバイブ、8センチありますからね。いきなしはキツいんじゃないっスか?」
「いえ、ご心配なく。この奈緒子は、こう見えてアナル上級者でしてね。ダブルフィストまで出来るんです」
 控えめな口調ながら、自信に満ちた老人の言葉。それに周囲から感嘆のため息が漏れる。
「そ。あれ位のサイズなら、ちょっとほぐせば普通に入るよ」
 奈緒子と呼ばれた女も、余裕の表情で指にローションを塗し、露出させた肛門を指で開いていく。よく開くその穴は、確かによく使い込まれている様子だ。
「じゃ、ちょっと味見……」
 奈緒子は右側のバイブの上で腰を下ろす。一時的に動きの止まったバイブが、紅色の肛門へと呑み込まれていく。
「ん……。思ったより硬いんだ、このゴム……」
 そんな呟きを漏らしながら、奈緒子は順調に腰を沈めていく。
「おーっ、凄いな。簡単に」
「流石はマニアですな」
 客や調教師達も、その熟練振りに感心している様子だ。だが、それも最初の内だけ。
「じゃ、再開しますよ」
 ドレッドヘアがそう言って、バイブのスイッチを入れる。
「くっ……!!」
「うひゃっ!!」
 藤花と奈緒子は、同時に反応を示した。そして一旦口を噤み、耐える姿勢に入る。ウィンウィンという駆動音が響く中、彼女達はじっと耐えていた。その左側では、これまでと同じようにバイブが蛇のようにのたうっている。
 そのまま、3分ほど過ぎた頃。
「く、ぁっ……き、きひぃっ……うあああっ、むりっ、もう無理ぃっ!!!」
 それまでじっと耐えていた奈緒子が、絶叫しながら足を震わせはじめた。
「いや、いやっ!!これやだあ゛っ!!!」
 足をハの字に開いたまま立ち上がろうとし、バランスを崩して後頭部を壁に打ち付ける。
「奈緒子!!」
 着流しの老人と他数人が助けに入り、奈緒子はなんとかバイブから解放される。足取りのおぼつかない奈緒子が必死に押さえているのは、後頭部ではなく肛門だ。前屈みで内股の姿勢を作るその様は、いかにも辛さに耐えているという風だった。
「なんだよ、バージン失った直後みたいな格好して。そんなにキツいのか?」
 客の一人が不思議そうに問うと、奈緒子は涙目でそいつの方を向く。
「ッたり前だし。ヤバいって、これ! お腹の中ムリヤリこじ開けられるし、すっごいウンチしたい気分になるし、どうにかなっちゃいそう! 今もお尻の奥に、杭みたいなの刺さってる感じだよ。あーーもう、やめときゃ良かったよぉ!!」
 そう恨み事を吐き、最後に藤花を睨みつけた。負けた悔しさか、あるいは自分の失態を藤花のせいとでも思っているのか。
 いずれにしても、アナルマニアを自負する女がものの数分で音を上げる責めなのは確実だ。となれば当然、場の視線は今もそれを耐える藤花へと集中する。
「しかしそうなると、すげぇなコイツって。まだ歯ァ食いしばって頑張ってやがる」
「まったく。何度言ったかわからんが、見上げた根性だよ」
「しかも、さっきの子はM字開脚だったが、こっちは胡坐縛りだろう? 腹圧は掛かるわ、エネルギーは逃がせないわで、余計にキツかろうに」
「そういえばそうですなぁ。やあ、大したものだ」
 どこからともなく、藤花を誉めそやす声が上がりはじめた。だが、加虐趣味の連中に興味を持たれるのは、決して幸せなことじゃない。

「なあ、調教師君。もう少し激しくは出来んか? そろそろ、この女の泣くところも見たいのでな」
 藤花があくまで耐えるとなれば、当然そういう意見も出てくる。そして調教師連中は、その言葉を待っていたかのように笑みを浮かべた。
「モチロン、まだ先がありますよ。実はこのバイブ、こっからがスゲェんす」
 ドレッドヘアは陰湿な笑みを浮かべたまま、リモコンを両手の指で操作する。何かのボタンを長押ししつつ、ツマミを押し上げるような動きだ。その操作がなされた数秒後、藤花が呻きを漏らした。
「うあっ、な、なんだ!? ふ、深いっ……やめっ、どこに、入って、え……!!!」
 太腿を強張らせながら、明らかに動揺している。
 彼女の左へ目を向ければ、『深い』という言葉の意味がわかった。黒いバイブの先端が、シリコンで出来た直腸の最奥よりも、さらに奥……S字結腸の方に入り込んでいる。
「ほほお、結腸に……!」
「あれは流石にキツいでしょうなあ。あの太さでゴリゴリやられるんですから」
 藤花の傍に立つ客達が、口々に歓喜の声を上げた。確かに、ビール瓶大のディルドーが意思を持つように蠢き、シリコンを変形させていく様は壮絶の一言に尽きる。嗜虐的な人間にとっては最高の興奮材料だろう。だが、やられる方となれば堪ったものじゃない。
「やめろっ、やめろおぉっ!! 無理だっ、これは無理だっ!! 腸の形が、無理矢理変えられて……ッ!」
 藤花は悲鳴を上げながら、縛られた足首を上下させる。本当に余裕がなさそうだ。だが、その藤花を囲む連中に同情の気配はない。特にドレッドヘアの男は、スイッチのボタンを力強く押している。
 シリコンでできた結腸の入口で、バイブが激しく唸りを上げ、そしてある瞬間。バイブの亀頭部分そのものが、ぬるりと結腸の門をくぐり抜けた。劇的な一瞬。アクセルを踏み続けた車が、ついにスタックから抜け出したかのような。
 状況は一変する。
 細かに震えていた藤花の腰の動きが、ぴたりと止まった。
 藤花の口が開ききり、口の端に皺が寄った。

「 んわあああああ゛あ゛あ゛ぁ゛ーーーっっ!!!! 」

 まさに、絶叫。鼓膜を震わせるほどの叫びを上げながら、藤花の身体は弓なりに仰け反った。ハイソックスに包まれた足指がぎゅうっと握りこまれ、公然に晒された割れ目がヒクヒクと痙攣する。誰の目にも明らかな絶頂。
「お……」
「へへ…………」
 2人ほど、声を上げようとした人間がいた。絶頂を嘲ろうとしたんだろう。だがその2人共が、言葉を呑み込む。
 藤花の目隠しの下から、雫が零れていたからだ。気丈な人間の涙は、ありふれた嘲り以上の意味を持つ。
 はっ、はっ、はっ、と荒い呼吸音が繰り返される。後頭部を壁につけ、天を仰いだ藤花の呼吸だ。その頬にまた、はらはらと涙が零れた。
「…………俺は…………強くないと、いけないのに。男より強くないと、いけないのに……。なんで、尻の穴で、こんな……ッ……!!!」
 食いしばった歯の間から、悔恨の言葉が吐き出されていく。
 剣術道場に生まれ、周りは皆が男という状況で、彼女は女である事を呪ったに違いない。男と女の筋力差は絶対的だ。父や兄には追いつけず、年下の弟にすら基礎体力では敵わなくなっていく。そんな彼女が縋れるものといえば、精神力しかない。どんな苦難にも屈しない、鋼の精神。それを得るために、血の滲むような努力を重ねてきたことだろう。抜き身の刃のような彼女の雰囲気は、それを如実に物語っていた。そんな彼女にとって、結腸で果てるなど、あってはならない事に違いない。
「どうして? んなもん決まってんだろ。お前が、ド変態だからだよ」
 刺青男が、冷ややかに告げた。荒々しさのない静かな口調は、弱った心によく染みる。
「変態……この俺がか……!?」
「ああ。お前は、ケツマンコで逝きまくる正真正銘の変態だ」
 念を押すようなその言葉に、藤花の表情が引き攣った。
「ち、違う!!お、おれは、俺は……っぁ゛、あ゛……おぉお゛っ!!」
 相手の言葉を否定しきるより前に、また結腸逝きを余儀なくされる。
「はっ。んな野郎みてぇな声でケツイキしといて、違うわきゃねーだろ。サムライ気取ってんなら、潔く認めろや!」
 容赦のない罵声と共に、またリモコンが操作される。今度押し込まれたのは、今まで触れられていなかった小さなボタンだ。調教師達がにやける中、俺と客の視線が左のバイブに集まる。
 
 ピストン、うねり、結腸責めと来て、今度の仕掛けは擬似射精だ。半透明の
シリコンの中に何度か液体が噴射され、直腸を模した凹凸の底へと溜まっていく。
「あああっ!!」
 藤花からも悲鳴が漏れた。泣きそうな声だ。
「おや、凄い反応だ。一体、何を噴射してるんです?」
 客の一人が尋ねると、ピアス男が得意げに笑った。
「“ドナン”です」
 その一言で、客達が色めき立つ。俺の胸もざわつく。あのモニター映像を観た人間なら、誰だってそうなるだろう。
「ほんの2パーセントほどに薄めてますが、ああして時々噴き出させて、量を入れますからね。段々と腸の奥から入口までが、煮え滾ったようになってきますよ」
 ピアス男の言葉に、客の姿勢が前のめりになっていく。そして中には、別の事実に気付く奴もいた。
「おや……なにやら、いい匂いもしますな」
「おおー、さすが良い鼻っスねえ。実はあの噴出液には、石鹸水も混ぜてあるんです。何しろこの後、皆さんに使っていただく訳ですから、匂いも汚れもスッキリ洗い流そうってわけで」
「ははは、石鹸水か。そんなものを噴出されては、ますますあの極太が動きやすくなってしまいそうだ」
「ええ。ヌルヌルとした滑らかな動きで、子宮裏や結腸を抉り回されるとなると……さぞかし気持ちいいでしょうなぁ」
 外道が和やかに語らう足元で、藤花の顔が歪んでいく。

「お、おォっ、ほ…………んおぉおお゛お゛お゛っ!!!!!」

 まるで下卑た会話を掻き消すように、藤花の嬌声が響き渡る。剣道における気合の雄叫びさながらの、凄まじい声量。マイク越しに聞けば音割れを起こしているだろう。
「ほぅ、凄い声だ」
「アナルで逝く時は、やはりああいう声になるんですな。女子高生らしさはないが、妙に下半身に響きますよ」
 客達は満足げだ。その反応を見ながら、迷彩ズボンの男が歩み出る。
「今の声もまあアリっすけど……こうすると、もっと楽しいッスよ!」
 奴はそう言って藤花の横に屈み込むと、掌で左腿を押さえ込む。
「うあっ!? や、やめっ……はうっ、ぐ、ぐあ……」
 押さえ込まれた藤花の脚が暴れ、尻肉が収縮する。肛門から、びすっと何かの破裂音が響く。
「おおお゛お゛うん゛っ!!!」
 その果てに、藤花の喉からはますます惨めな声が漏れた。
「ははははっ、なんだ今の!」
「長いこと気張って、ようやく排便できた時の声だぞ。気持ち良さそうだ」
「なるほど。やりようによっては、あんな声も絞り出せるのか。面白い!!」
 調教師によって伝えられた新しい遊び方は、瞬く間に客を虜にする。奴らは欲望のままに、あるいは藤花の太腿を押し込み、あるいはブラウス越しに乳首を捻りつぶす。玩具の耐久性など省みもせずに。
「はぁっ、はぁっ……やめろっ、きさまら! ふざ、け……くう゛、ん……ん゛う゛っ!ふう゛、う゛……ん゛あああ゛あ゛っ!!!」
 藤花は眉根に皺を寄せ、身を捩って悪意ある掌から逃れようとする。だがそれも、四方を敵に囲まれた状態では虚しい足掻きだ。むしろ、もがけばもがくほど息は上がり、全身の脂汗もひどくなっていく。
 バイブの動きも、いよいよ激しさを増しているようだ。左側のバイブに被せられたシリコンが、幾度となく壁に叩きつけられて鈍い音をさせている。その威力で結腸に出入りしつつ抉り回されるんだから、藤花の脚が痙攣するのも無理はない。
「そらっ、イけよ!!」
 藤花の両脇に立つ客が、左右の太腿を強く押し下げる。同時にバイブの先もぐるりと結腸入口に円を描く。この3重の追い込みは、藤花の快感のキャパシティを軽々と上回った。
「あああ゛、ああ……うあ゛、あ……はぁあぁおお゛……っ!!!」
 藤花は眉を下げ、情けない声を漏らす。その直後、彼女の割れ目から透明な液体が噴き出した。
「おおっ、潮吹きか!?」
「小便を漏らしただけかもしれませんよ。あまりに快感が強いと、恐怖で失禁するといいますから」
 両腿を押さえる2人は焦る様子もなく、アーチを描く水流を眺めていた。

「たのむ、もうやめてくれ。ドナンが効いてきて、腹の奥が煮えたぎったようになってるんだ。このまま責めつづけられたら……ほ、本当に、気が狂ってしまう…………!!!」
 藤花は汗みずくになり、全身を痙攣させながら、何度もそう頼み込んでいた。同じ言葉を繰り返すのは、余裕のない証拠だろう。
 だが誰一人として、その懇願に耳を貸す人間はいなかった。むしろ嬉々として、あらゆる方法で藤花を追い詰める。ブラウスの上から乳房を揉みしだいたり。脇腹をくすぐったり。鼻の穴に指をかけて引っ張り上げたり。あるいは縛られた足首を持ち上げ、腹圧を極限まで高めたり。
 その悪意あるイジメの中で、藤花は何度も崩壊を迎えた。モニターで散々目にした通り、ドナン浣腸の圧倒的な便意の前には、抗う術などない。蕩けた結腸をかき回されれば、感じずにいられるはずがない。

「んああああ゛っ、はあァああ゛あ゛ーーーっ!! アクメが、まら゛っ……かはァっ、はっ……みひぎひい゛っ!! いぐいぐっ……あつい、ああああついっ、イイ゛っぐウウ゛うっ!!!!」

 汗、涙、鼻水、涎を顔中から垂れ流し、口の端から泡まで噴いて、藤花は絶頂し続ける。口から漏れる言葉は、極限の状況下で耳にした客からの罵倒が色濃く反映されていた。
「ほら、またイクんだろう変態女!? ケツだけで浅ましくなぁ!!」
「おーお、またブリブリひどい音を漏らして。もう腸液しか出るものがないっていうのに、何でこんなに酷い音がするんだ?」
「ひっでぇ顔だな、このケツアクメ女が! それでも女子高生かよ!?」
 客達は思いつく端から嫌がらせをし、思いつく端から罵倒を浴びせる。
 最初の頃の藤花になら、そんな嫌がらせや罵倒など何の効果もなかっただろう。蹲踞の姿勢で排便を晒しつつも、射殺すような眼光を浴びせていた彼女になら。
 だが、もうあの頃とは違う。
 何度も全身を暴れさせた末に、とうとう外れた目隠しの下からは、鋭い眼光など放たれてはいなかった。瞼に黒目が半ば隠れた、力のない眼が二つあるだけだ。

「はっ、気絶したか」
 ピアス男が藤花を見下ろして鼻で笑う。そして、他の調教師と協力しつつ緊縛を解きはじめた。
「おや。この責めはもう終わりかね?」
「ええ、そろそろ良い頃合いでしょ。こっからは、お客さん自身がコイツを可愛がってやってください」
 刺青男と迷彩ズボンの男が、藤花の両腋を抱えて立ち上がらせる。ジュポンッという音で粘液まみれのバイブが肛門から抜けると、藤花の身体はそのまま、部屋の隅に敷かれた煎餅布団へと投げ捨てられる。
 高く掲げられた尻肉。その肛門部分は、毒々しいほどの朱色に染まり、外側へ捲れ返っていた。
「ほぉう、見事なアナルローズだね」
「しかし、これから犯そうという肛門がここまで緩んでいてはな。私のモノでは、碌な刺激にならんのではないか?」
 腫れあがった藤花の肛門を見て、客の一人が感動を口にし、別の一人は疑問を呈する。ちょうどそこへ、ピアス男が銀色のワゴンを運んできた。ワゴンの中には、カラフルなペニスサックが山のように用意されている。
「ご心配なく。この状態の肛門でも楽しめるよう、サイズアップ用の道具を用意しました。太さ補強、長さ増強、真珠入りの名器変身セット。選り取り見取りです」
 いくつかのサックを手に取りながら、ピアス男は陰湿な笑みを浮かべる。その笑みは、瞬く間に客の間にも広がっていく。
「なるほど。ドナンで蕩けた腸内を、擬似巨根で蹂躙する……か。面白そうだ」
 客達がワゴンに群がり、自分好みのサックを選びはじめる。
「よし、私はこれだ」
 早くも一人がサックを装着し、早いもの勝ちとばかりに藤花の背後につく。
「たのむ、休ませてくれ……腸の中が、ヘンなんだ……」
 藤花は眉根を下げて男を振り返った。だが、男は聞き入れない。
「尻を上げろ」
 そう命じると、這う格好の藤花に背後から覆い被さる。サックで凶悪なほど太さを増強させたペニスが、メリメリと肛門に入り込んでいく。
「ふ、太い……っ!!」
 藤花は両手で布団を握りしめながら、苦しそうに顔を顰めた。
 パンパンと肉のぶつかる音が始まる。
 目の前で行われる、“なま”のアナルセックス。それはモニター越し見るものとは、まるで違うものだった。
 汗の匂いがする。内臓の匂いがする。腸液の匂いがする。
 ブレザーと布団の擦れる衣擦れの音も、尻肉の弾ける音も、結合部の水音も、すべてが細部まで聴こえる。
 そして何より、視界が自由だ。カメラの映像とは違い、自分で位置を移動して、見たい場所を見ることができる。
 とはいえ、俺は最初の場所をしばらく動けなかった。藤花と1人目の結合を、ほぼ真横から眺める位置。そこからは、サックのついた逸物が肛門に出入りするところがよく見えた。そして、その周辺も。
「どんどん溢れてきますな」
「ええ。本気で感じていると見える」
 俺のすぐ傍に立つ2人組が、興奮気味に囁き合っている。その感想は俺と同じ。この位置からは、藤花の内腿を流れていく愛液がよく見える。
「いいぞ……お前をひと目見た時から、この時を待ってたんだ」
 藤花を犯す男は、リズミカルに腰を打ち付ける。
「あっ……ああぁぁ……っあ、はぁぁ……あ、あっ!!」
 藤花は、その突き込みのたびに荒い息を吐いていた。本当に気持ちがよさそうに。

 藤花はアナルセックスで感じていた。
 1人目の男が精を放ち、2人目、3人目の相手に擬似巨根を打ち込まれる段階になれば、それはいよいよハッキリする。
「はっ、あ……あッ。ああ、あつい……溶け………」
 藤花の口からは、うわ言のようにそうした言葉が漏れていた。腕はやがてシーツを使う事すらやめ、力なく投げ出される。その一方で尻肉は高く持ち上げられ、相手の挿入をスムーズにする。その様は、まさしく布団に溶けるかのようだ。
 この3人目の相手は、奈緒子だった。彼女は嗜虐心に煽られるまま、極太のペニスバンドに凹凸の激しいサックを嵌めこんで藤花を犯している。
「ほら、どうしたの? 脳ミソまでトロかしてないでさぁ、しゃんと……しなよッ!!」
 奈緒子はそう言って、右手で藤花のポニーテールを鷲掴みにする。そしてそれを引き絞り、強引に藤花の背中を弓反りにさせながら、激しく腰を打ち込んでいく。
「う゛あっ!! い、いたい……」
「そう、痛いね。でも痛いのがキモチいいんだよね、お前マゾだもんね。あんだけアナルバイブで滅茶苦茶されて、平気な顔してんだからさぁ」
 妬み嫉みの感情を剥き出しにしながら、奈緒子は藤花の髪を引き絞り続けた。藤花の身体の反りが深まり、斜め下から突き上げられる格好となる。

 見た目には、多少風変わりな体位というだけだ。だが奈緒子は、同性でありアナルマニアでもあるという深い知見に基づいて、この体位を選んだらしい。
「あ、あ! ああ、ぁぁあ……はぐっ、んん゛っ!!く、いっぐ…………!!」
 膝立ちになった藤花の脚が震える。顎は浮き、口の端から涎を垂らす。そして、うわ言のような絶頂宣言。何かに陶酔しているという感じだ。
「なに、またイってんの? どうしてそんなに簡単にイッちゃうの?あたし同じ女だけど、ちょっとそれはわかんないかなー」
 奈緒子は軽蔑の色を込めてそう囁き、左手を藤花の割れ目へと潜らせた。
「は……っぁ!!」
「ほーら、ドロドロ。恥ずかしくないのかなぁ。同じ女におシリ犯されて、こーんなに濡らしちゃうなんて……まるでブタだよ?」
 これ以上ないほど意地の悪い囁きに、藤花が眼を見開いた。だがその目は、すぐにとろりと蕩けてしまう。
「んあ……あはっ、あ、ああぁっ…………」
 藤花は、しばし呆然とした様子でさらに突き込みを受け続け、ある瞬間に首を振って顔を歪める。

「もぉやめろおおおお゛お゛お゛っ!!!」

 藤花は大口を開けて叫ぶと、強引に上体を前に倒した。
「おっ…と」
 小さく呟く奈緒子。その瞬間。彼女の右手の中で、藤花のトレードマークが弾けた。常に後ろで纏められていた髪が解け、ウェーブした長い黒髪となって背中に垂れ落ちる。それはまるで、藤花の一本芯の通った部分が抜き取られたかのようだ。

 半狂乱になった藤花は、奈緒子の手中から逃れるように前へ走る。だが、足元が覚束ない。わずか数歩すら直進できず、そのまま右手の壁に手をついてしまう。
「へへ、なんだよ。今度は俺にハメてほしいってか?」
 ちょうど藤花の近くにいた男が、役得とばかりに藤花の腰を掴んだ。
「ち、ちが……っ!!」
「あー違くてもいいんだ。もう辛抱たまんねぇからよ!!」
 男はそう言って、サックで長さを増強したペニスを突き入れる。
「くああっ!! ふ、ふかいっ………!!」
 藤花は壁に寄りかかったまま、悲鳴のような声を漏らした。そして男に抜き差しを始められると、あっという間に腰砕けになってしまう。
「おーいいぜ。あの強気娘を犯してるってのがたまんねぇ。なあ覚えてっか? 俺よ、ちっと前に竹刀持ったお前にボコられたんだぜ。その復讐が出来てると思うと、胸がスカッとすんぜ! おら、どうだ。テメェの大好きな結腸ファックだぜ。ゴリゴリ届いてんのがわかんだろうが!!」
 男はそう言いながら、大きなストロークで藤花の肛門を犯す。ペニスサックで長さを増強していたのは、結腸を犯すためか。
 藤花の結腸は、すでに極太のバイブで開発されきっている。だが、だからといって一般的なペニスサイズでの刺激を感じなくなるわけでもないらしい。むしろ、効果は絶大だ。
「ぜっ、はっ、はっ、はっ、はあっ……や、やめろ……やめてくれ……。竹刀で叩いたことは、あ、あやまる、から………今そこは、か、堪忍してくれ……ッ!!!」
 弱々しい声色で音を上げながら、藤花は脱力していく。もはや壁に寄りかかる力さえなくし、壁に涎を擦りつけながらズルズルと崩れ落ちていく。
 そんな藤花の顎を、また別の男が掴み上げた。
「おい、シャンとしろよ。許してほしいんなら、まず奉仕。それが奴隷の鉄則だ」
 そう言って、鼻先に逸物を突きつける。
「ハア……ハア、ハア…………。」
 藤花は、男を見上げていた。以前なら鋭く睨みあげているところだろう。だが今は、困ったように眉を下げ、上目遣いになっている。
「早くしゃぶれ」
 再び命じられれば、彼女は疲れ切った顔のまま、男の物を口に含む。その背後で、不浄の穴を『使われ』ながら。


 俺は、ここで集団に背を向けた。
 これ以上を観る必要はない。いや、もう観たくない。


 閉鎖病棟を思わせる薄暗い通路を抜け、フロントに戻る。
「お帰りなさいませ」
 部屋に入るなり、2人のフロント嬢が頭を下げた。ただし左のフロント嬢は、相変わらず俺の方を見ようとしない。
 だがそんなこと、今はどうでもよかった。
 『大和男児』の死を目の当たりにした疲れがひどい。
 ただ1つの収穫といえば、この陰鬱な気分を通して、改めての確認ができたことだ。


 俺は、『蟻』じゃない。少なくとも、今はまだ。



 

二度と出られぬ部屋 第三章 肛虐に堕ちる剣姫(前編)

第二章 喉奥凌辱の続きです。
 長くなったため前後編に分割します。
 アナル・浣腸・スカトロ回につき、ご注意ください。




■第三章 肛虐に堕ちる剣姫(前編)


 気がつくと、目の前には一人の女がいた。
 髪を丁寧に結い上げ、着物に身を包み、いかにも育ちが良さそうだ。見目もよく、ぜひお近づきになりたいものだが、残念ながら知らない顔だ。
 一体誰だろう。あんな所で蹲って、どうしたんだろう。俺はそう思いつつ、一歩近づいてみる。すると。
「近寄らないで!」
 目の前の女の顔が歪み、大声が発された。
「な……!?」
 俺が面食らい、目を瞬かせた次の瞬間。
 女の姿は変わっていた。髪はそのままだが、着物がはだけ、大事な部分が丸見えになっている。そしてさっきは俺と少し距離があったのに、今はすぐ目の前だ。
「あ、貴方なんかに……!」
 彼女は、恨めしげな眼をこちらに向けている。親の仇を見る目、とはこれのことだろう。
「おい、なんだよ一体!!」
 いきなりの敵意に動揺し、俺はまた目を瞬かせる。
 目を開けると、また目の前の光景は変わっていた。俺の手が届く場所に、女のあられもない姿があるのは同じ。だが今度は、女の表情がすっかり変わっていた。目は涙を浮かべながら陶然とし、半開きの口からは涎があふれている。きっちりと結われていた髪は、乱れて女の白い肌に張り付いている。明らかに、何か起きた後の姿だ。
「あは、あははっ……し、してぇっ……もっとしてぇ……!!」
 女は正気を失った表情のまま、うわ言のようにそう繰り返す。
「おい、しっかりしろ! おい!!」
「無駄だ。すでに堕ちてる」
 思わず駆け寄ろうとした俺を、背後からの声が呼び止めた。
「そいつはもう、ヒトじゃない。豚だよ」
 異様な姿を前にしておきながら、ひどく淡々とした声。その落ち着き具合が、妙に腹立たしい。
「誰だ!」
 俺は苛立ちながら振り向く。

 そこには、光があった。目の眩むような眩い光。そしてその中に、一つのシルエットが浮かび上がっている。

 あれは────



「…………はっ!?」
 
 そこで、目が覚めた。
 紫陽花柄のシーツが視界に入る。すっかり見慣れた、自室のベッドだ。
 少しずつ記憶が甦ってくる。祐希と千代里の被虐を立て続けに目にした俺は、ひどい倦怠感に襲われ、倒れこむようにベッドに入ったんだ。風呂へも入らず、飯も食わずに。

 それにしても、嫌な夢を見たものだ。
 女が壊れていく夢。
 女が壊される場面に耐え切れず、逃げ込んだ先の夢でもあれとは。本当にいい迷惑だ。

 目覚めが悪いと、全てのリズムが狂う。レストランの食事すら味気ない。昨晩は何も食べていないんだから、腹は減っているはずなのに、胃が詰まっている感じがする。
 前々から噛み合わせのおかしい奥歯も鬱陶しい。軽快に食事が進んでいる内ならいざしらず、こういう調子の悪い時だと、煩わしさも弥増すというものだ。
「クソッ」
 毒づく俺の元に、固い足音が近づいてくる。
「あまり、お食事が進んでおられないようですね」
 汚れひとつないタキシードに身を包み、両手に白手袋を嵌めた眼帯男。俺のコンシェルジュである端塚だ。
「ああ。食欲がないんだ」
「それはいけません」
 すでに察しはついていたんだろう。端塚は俺の言葉を聞くなり、パキッと指を鳴らし、近づいてきたウェイターに何か耳打ちする。
 そのウェイターがレストランの奥に引っ込んでから、僅か数分後、クロッシュ付きの皿が運ばれてきた。
 端塚が恭しくクロッシュを持ち上げ、中身を晒す。
「お疲れのようでしたら、こちらなど如何です?」
 現れたのは、ぬらりと艶光る赤黒いもの。縦に細く切ってあり、横に青ジソとすりおろした生姜が添えられている辺りは、魚の刺身を思わせる。
「これは?」
「豚の生レバーでございます。当レストランでは通常提供いたしませんが、特別に御用意させていただきました」
 豚の生レバーときたか。またクセの強いものを出してきたものだ。だが、レバーはとにかく精がつくと聞く。沈んだ気を持ち直すには、これぐらい食っておくべきなのかもしれない。俺だって、好きで沈んでいるわけじゃないんだ。
「じゃあ……」
 箸で1枚摘み上げ、口へ放り込んで咀嚼する。

 美味い。

 ワインよりも、チーズよりも。舌というより、俺の肉体そのものが喜んでいるのがわかる。
 単に鉄分が足りてなかったんだろうか。そういえばこの一週間、昨夜を除いて自慰に耽りまくっていた。それこそ一日5、6回というペースでだ。それだけ射精していれば、鉄分が不足していても不思議はない。 
「なかなか味わい深いでしょう? 豚の臓物は」
 思わず笑みをこぼす俺に、端塚が問いかけた。随分と嫌な言い方をするものだ。

『そいつはもう、ヒトじゃない。豚だよ』

 最悪なタイミングで、今朝の夢の言葉が甦る。こういう記憶こそ、さっさと消え去ってほしいものだ。

「ところで、ご記憶の方は如何です? 御自身の事に関して、何か思い出されましたか?」
 端塚は、レバーを食べ進める俺に対して質問を重ねた。
「いや」
「……左様ですか」
 俺が否定すると、端塚は残念そうに視線を落とす。
 気になる反応だ。俺の記憶とは、こいつらにとっても特別な物なのか? だからこそ、こうも手厚いサービスをしてくるのか?
「承知いたしました」
 端塚はすぐに顔を上げ、俺の方に笑顔を向ける。
「お食事が済み次第、昨日同様、各フロアの展示を心ゆくまでご堪能ください。地下15、16階はすでにご覧になられたようですから……本日は、地下17階など如何です?」
 映画鑑賞でも勧める気軽さで、端塚は言った。実際こいつらにとっては、あれも興味深い映画同然なのかもしれない。だが俺には、目の前で壊されていく子を役者として見るのは難しそうだ。
「それなんだが……俺は、見たくない」
 はっきりと否定の意思を示す。俺を厚遇するこいつらのこと、当然この意思も尊重されるだろう。そう俺は思っていた。
「いえ。こればかりは、是が非にもご覧になっていただきたい。」
 まさに予想外。端塚の口から発せられたのは、有無を言わせぬ強制の言葉だった。
「なに……?」
「お気を悪くされぬよう。必ずや、あなた御自身の為になることです。他に時間を潰せるものも、ここには御座いませんので」
 端塚は、落ち着き払った口調でそう言い含める。
 確かにこの一週間は、生ぬるい地獄のようだった。リラックスできる時間とは、日々忙しくしていればこそ尊いもの。記憶がなく、ただ時間を浪費するばかりの身にとって、休息はむしろ苦痛だ。何かしら動いた方が楽なのは間違いない。

 しかし、『あなた御自身の為になること』とは、どういう意味だろう。



                     ※



 地下17階。凛としたポニーテール少女が、エレベーターから下りていった場所だ。
 地下15階、16階と、エレベーターで見かけた少女の被虐が続いている。『最悪な偶然』が三日続くなんてありえない。俺はそう希望を抱きつつ、部屋の扉に近づいた。
 部屋の入口には、地下16階の時と同じく銀プレートが掛かっている。
『SM』
 たった二文字の言葉。意味は知っているが、現時点での理解などに意味はない。扉の先にある光景はきっと、俺の価値観を塗り替えるだろうから。


 扉を開けた時、最初に受けた印象は『資料館』だった。
 白い壁に四方を囲まれた、だだっ広い空間。壁には無数の写真が飾られ、その壁に沿うように、ガラス製のショーケースも設置されている。さらにいくつかの場所では、展示映像も流れているようだ。
 それら展示物の前には、黒山の人だかりが出来ていた。どいつもこいつも目をギラつかせ、口元を緩めて、食い入るように展示物に見入っている。その中に混じるのは抵抗があるが、端塚の言葉を信じるなら、俺自身の為にもそうするしかないようだ。
 順路と書かれたパネルに沿って、入口左手に進んだ俺は、三日続けての『最悪な偶然』に出くわすことになる。
<現在の調教対象>
 その表記と共に、何人かの少女の写真が壁に貼られていた。全部で6人。全員が一糸纏わぬ丸裸に剥かれ、怯えや戸惑いの表情をカメラに収められている。そしてその中に、例のポニーテールの少女もいた。彼女だけは他の5人と違い、床に正座したまま堂々とカメラを見据えている。目尻のくっきりとした吊り目からは、相当な意思の固さが窺えた。
 彼女の強さは、展示にもはっきりと残されている。

『1日目』
 さらに左に進むと、そんなプレートが目に入った。視線を巡らせれば、少し離れた場所に2日目、3日目のプレートも見える。どうやらこの部屋では、調教初日からの少女の様子を記録し、それを順に展示しているらしい。
 展示を見る限り、調教対象の子が初っ端にやられたのは、浣腸のようだ。6つの瑞々しい裸体が横並びになり、尻を突き出している様。その初々しい肛門が指で拡げられ、つぶさに観察される様。そして、針のない巨大な注射器のようなものが、その肛門へと突き立てられている様。それがすべて写真に収められ、展示されている。
 前から写した写真も1枚あり、そこでは5つの口が大きく開かれ、何かを叫んでいる様子が見て取れた。ただ、左から二番目……ポニーテールのあの子だけは、心頭滅却とばかりに平然としている。ショーケース横で垂れ流されているモニターの映像では、その違いが更に顕著だ。


*********************************
 

『い、いやあ……っ!!』
『お願いっ、見ないでくださいっ!』
 映像内に哀願が響き渡る。
 哀れな6人の娘は、蹲踞の格好のまま、首と両の手首が一直線に並ぶように木枷で拘束されていた。膝下が縄で結ばれているせいで、立ち上がることすらままならない。当然、胸やアソコを隠すような配慮があるわけもなく、丸裸を晒すがままになっている。
 年頃の娘にとっては、これだけでも耐えがたい苦痛だろう。だが、彼女達の表情を歪ませる直接の原因はそれじゃない。
 最大のストレス要因は2つ。1つは、浣腸のせいで極限まで高まった便意。そしてもう1つは、それを必死で耐える顔を、真上から客に覗き込まれている状況だ。
『ひひひ、堪りませんな。化粧を覚えたてのうら若い娘が、必死に生理的欲求に抗う顔は』
『ええ。この紅潮した頬と、荒い息がまた。最愛の恋人とのセックスに耽っているかのようだ』
 初日にこの部屋を訪れた客だろうか。冴えない中年男十数人が、6つの顔を覗きこんでいる。両手で顔を挟み、逆向きのキスを迫るように顔を寄せる男。ぐるぐると鳴る腹に耳をつけながら、逸物を扱きたてる男。変態共の行動は色々だ。そしてそのすべてが、少女達の顔を引き攣らせていた。
 ただ1人、ポニーテールの娘を除いて。
 彼女だけは、客達が何をしようと動じず、鋭い眼光で前を見据えている。凄まじい目力だ。祐希が体育会系だとするなら、こっちはまさに武人。画面越しでも、触れれば切れるような雰囲気を纏っているのが伝わってくる。エレベーターで見た時は気さくな印象だったが、あれは気の置けない友人に向けた態度なんだろう。

『この状況でまだ睨めるとは、大した反骨心だな』
『廣上 藤花(ひろがみ とうか)、満17歳。兄一人、弟四人の父子家庭で育ち、実家は剣術道場……か。なるほど、勇ましくもなろうというものだ』
『ほう。剣術をやるとは聞いていましたが……廣上流でしたか』
『ご存知なんですか?』
『ええ。廣上流といえば、スポーツ剣道とは一線を画す“撃剣”の流派として、一部で有名なんですよ。組んで良し、蹴って良しの超実戦派としてね。しかもそこの一人娘といえば、去年、女子剣道の全国大会で優勝しているはずですよ』
『なるほど、それで。こうして視線を浴びていると、首後ろがヒリつくわけです。パンフレットによれば、末の弟曰く「お弁当がおいしい、優しいおねえちゃん」だそうですが……』
『身内には甘いんでしょうなあ。その甘さを異性にも向けられれば、さぞ生きやすかろうに』
『まったくです。凛とした美人で、スタイルも極上なのにねぇ』
 客達はパンフレットを手に、ポニーテールの少女を品評する。確かに、藤花と呼ばれたその少女は見目がいい。キリリと整った顔、弛みなく引き締まった身体。まさに女剣士という佇まいだ。
 6人の中で彼女だけは、蹲踞の姿勢のまま腰がぶれていない。彼女とて、他の5人同様に浣腸を施されているんだ。その影響は、当然ながら表れている。額や胸にはじっとりとした汗が浮き、悪意をもって揉みしだかれる下腹部からは、ゴロゴロ、ギュルルル、という、人間として当たり前の『便意の音』が響いている。他の娘はその苦痛と恥辱に耐えきれず、顔を左右に振ったり、不自由な身を前後に揺らしたりと大変な暴れようだ。その中で、膝を床と平行に保ちつづける藤花の姿は異彩を放っていた。根性もすごいが、足腰の強さも尋常じゃない。

『ああああっ!もうだめ、もうだめえぇぇっ!!』
『と、トイレに、トイレに行かせてください!もう、本当に漏れちゃう!!』

 さらに数分が経った頃、映像内は阿鼻叫喚の地獄と化していた。年端もいかぬ少女達が涙を流して哀願し、それを中年男が笑い、そして決壊が始まる。ブリブリと音を立てて、足元に置かれた盥の中に軟便が排出されていく。
『ははははっ、出たぞ出たぞ!』
『おお臭ぇ臭ぇ! 華の女子高生っつっても、クソの匂いはそこいらのババアと変わんねぇな!?』
 客達は大仰に鼻をつまんで謗り、加虐対象から涙を搾り取る。
 その中でもなお、藤花だけが胸を張り、眼に光を宿し続けていた。その光は、客の節ばった指がぐりぐりと尻肉の合間に捻じ込まれてからも、その果てにとうとう限界を迎えて排便が始まってからも、揺らぐことはない。
『はっ。コイツ、ぶっ太ぇ一本糞ひり出しながら、まだ格好つけてんぞ』
『恥じらいってもんはねぇのか? 仮にも年頃の女だろおめぇ!』
 そう嘲る客達は、からかい半分、悔しさ半分という様子だ。なおも目尻の下がらない藤花の瞳が、その連中を睨み据える。
『こんな事で傷つくほど、俺の矜持は柔じゃない』
 藤花は堂々とそう言い放った。一人称は“俺”だが、耳慣れたそれとは印象が違う。“お”と“れ”の両方にアクセントがつくそれは、『己(おのれ)』を縮めた感じだ。少女には本来似つかわしくない自称。だが、風変わりな口調共々、不思議と違和感はない。そもそもが抜き身の刃という雰囲気で、女の子らしいイメージとはかけ離れているせいだろうか。
『ふ……。いかにも古流の剣術道場で育ちました、という感じだな』
『ええ。この気概、今時の若い男にも見習ってほしいものです』
 客もそんな藤花の態度を面白がっている様子だ。
 ただ、皆が皆そうってわけじゃない。

『さっきから、客になんて眼ェ向けてやがんだ。このオトコ女!!』
 一人が怒声を上げ、藤花の髪を掴み上げる。藤花達の後ろで腕組みして様子を見ていた金髪男だ。
『ぐっ!?』
 藤花の口から、初めて苦悶の呻きが漏れる。髪の生え際が変形する程なんだから、無理もないが。
『いいかオトコ女。お前ェはよ、お客様にイジメて楽しんでいただくための奴隷なんだよ……ガン飛ばしてんじゃねぇッ!』
 男は掴み上げた手を左右に振り、藤花の苦痛を煽ると、荒々しく手を離す。これにはさすがの藤花もぐらつき、ついに右膝を床についた。
『貴様……ッ!』
 いよいよ眉を吊り上げ、紙を翳せば火が点きそうな勢いで男を睨む藤花。
『だぁら、睨むなっつってんだろうがよ!』
 男は忌々しげに舌打ちしつつ、煙草の煙を吐きだした。
『あくまで上等コクってんなら、こっちにも考えがあんぜ』
 そう言って、別の男に目配せする。その男は頷き、床にバッグを置くと、中から道具を取り出しはじめた。
 千代里が喉奥調教される際に見た、凹凸のある細い棒。真ん中が膨らんだ、様々なサイズの栓のようなもの。やたらに長さのある、男性器を模したディルドー。蛇腹のバイブ。無数のビー玉に、スーパーボール。
『……っ!』
 床に置かれていく多種多様な責め具を見て、藤花の表情が強張る。その目の前で、チンピラ男が道具の一つを拾い上げた。
『今晩からは、テメェだけ特別調教──通称<Bコース>だ。フロアの調教師総がかりで、そのプライドへし折ってやんよ』


*********************************
 

 ここで一旦映像が途切れ、暗転の後、最初の浣腸我慢のシーンが再生されはじめる。このモニターで見られる映像はこれだけらしい。

 左へ目を映すと、映像の続きと思しき写真が展示されていた。
 少女が、客から色々な変態プレイを受けている。
 ある写真では、客を前にして、がに股での指入れオナニーをさせられ。
 ある写真では、生クリームとチョコで彩られた女体にむしゃぶりつかれ。
 ある写真では、両手を吊り下げられた状態で鞭を打たれ。
 ある写真では、乳房と割れ目を中心に蝋を垂らされて絶叫していた。
 しかし、そこには5人の少女しか映っていない。俺が一番関心を持っている、藤花の姿がない。
 と、ここで俺は、今見た写真の上に<Aコース>と書かれた紙が貼られている事に気がついた。そしてそこから少し左下に、<Bコース>という紙があり、その下に1枚だけメモがピン留めしてある。
『1日目 後半のダイジェスト映像を作成しました。モニター2をご覧ください』
 その文章と合わせて、左下を示す矢印が書かれている。果たしてその矢印の先では、また一台のモニターがある映像をリピートしているようだ。


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 他の5人が客相手にSMプレイを繰り返している間、藤花だけは、何人もの調教師から入念なアナル開発をされていたようだ。

 俺がモニター2で観た最初の映像は、バスルームに這う格好で拘束された藤花が、シャワー浣腸を受けているシーンだった。
 シャワーの勢いは強いらしく、シャアアアという水の流れる音がし、肛門からは次々に水があふれ出てもいた。
『どうだ、感じるか?』
 ぼそりと、映像に声が入る。
『こうやってぬるま湯を流し込めば、腸内の洗浄と拡張が同時にできる。そして、排泄の感覚をずっと味わわせる事もできる。腸壁に水が当たる感覚を、しっかりと意識しろ。排便の快楽に酔え』
 口を開けずに喋っているのか、言葉が聞き取りづらい。だがどうやら、腸内感覚に意識を向けるよう促しているようだ。
 俺が観た限り、藤花に大きな動きはなかった。引き締まった張りのある尻肉をカメラ側に向けたまま、ただじっと四つん這いの姿勢を保っている。
 だが、数分してようやくシャワーホースが抜かれ、男が指で尻穴をほじくり回す段階になれば、少しずつ変化が表れはじめる。腸内にかなり水が残っているんだろう。男の指が穴に出入りするたび、ぶびっ、ぶびびっ、と何かを漏らすような音がバスルームに響く。するとその音に反応するように、理想的な流線型の太股がぴくぴくと蠢くんだ。ほんの僅かな筋肉の隆起だが、そこには藤花という誇り高い女の恥じらいが見て取れる。
 俺でさえ視認できるんだから、間近で尻を眺めている男が気付かないわけもない。それでも男は、あくまで淡々と作業をこなしていた。歯科医が嵌めるような手袋を嵌め、最初は中指で、さらにはそこに薬指も添えた二本指で、じっくりと肛門をくつろげていく。時々わざと二本指に隙間を作って腸内に空気を入れ、ぶりっ、ぶりっ、と放屁のような音をさせるのが嫌らしい。
 多分それは、客を喜ばすためのパフォーマンスだ。バスルームの壁は四方がガラス張りになっていて、中の様子が外から覗ける。そして映像内では、バスルームを囲む形で十数人のギャラリーが張りついていた。外の声は映像にほとんど入ってはいないが、それでも藤花の名前を叫んだり、侮蔑的な言葉を投げかけていることがわかる。だからこそ藤花は、両肘の合間に顔を埋めるようにして、バスルームのタイルだけを見据えていなければならなかった。たとえ、自らの肛門からブリブリとあられもない音が響こうと。四方からどんな謗りを受けようと。


 ここで一度画面が暗転し、すぐに別の場面が映し出される。
 藤花は、頭を床につけ、尻を高く上げる格好で手足を拘束されていた。両膝の裏にバーを通され、そのバーに手枷へ繋がる鎖を固定した、厳重な拘束。さっきのバスルームにしてもそうだが、よほど藤花に暴れられるのが怖いとみえる。
 その藤花を、2人の男が見下ろしていた。
 最初の映像に映っていたチンピラ同様、ガラの悪い2人だ。
 1人は肩にドクロのタトゥーを入れていて、タンクトップで上半身の筋肉とタトゥーをアピールしている。もう1人は唇にピアスを開け、アゴ髭を蓄え、ダボダボの迷彩ズボンで下半身を大きく見せている。その見た目は、威圧的の一言に尽きた。
 まずは刺青男が屈み込み、藤花の尻肉を親指で割る。
『お、シャワ浣でちっと拡がってんな。ヒロキもやるじゃん』
 刺青男が笑みを浮かべる中、迷彩ズボンの男がガラストレーから氷をつまみ上げた。かなり大粒の氷だ。
『なっ! ま、まさか……それを入れる気か……!?』
 藤花が目を見開く。どう見ても無理のある氷のサイズに、動揺を隠せない様子だ。
『オウ。なに、やっちまえば簡単よ』
 迷彩ズボンの男はそう言いつつ、指の中で氷を転がす。
『こうして指の熱で表面を溶かしゃあ、粘膜に張りつく心配もねぇ。解けかけた氷面の水は、この世で最高の潤滑剤だ』
 節ばった指が氷を弾き、刺青男の手中にパスを通した。刺青男は手首を振って水気を切り、氷を指に挟みなおす。
『おら、ケツ穴にグッと力入れろ。の方が入りやすいからよ』
 刺青男の親指が、氷を菊の輪に押し込んでいく。
『ぐっ! や、やめろ、無茶だ! 入…らない……っ!!』
 藤花から苦しそうな声が漏れた。口調こそ男のそれだが、声はやはり女の子だ。恐怖で震えているぶん、余計に。
『バーカ、もう8割方が入ってんだよ。後はお前ェがケツ穴締めて、腸ン中に収めりゃ終いだ』
 刺青男はそう言って、親指の腹を肛門内に押し込む。
『ぐううっ!!』
 ここでカメラが側方に回り、藤花の横顔を捉えた。目を瞑り、歯を食いしばり、かなり苦しそうだ。だが、それはほんの数秒のこと。
『……あ……?』
 次第にその表情筋は弛み、戸惑いがちに背後を窺う。
『どうだ、大したことなかったろ? 氷ってなぁ、ケツ穴拡げんのにえれぇ便利でよ。滑りがいいぶん、未拡張でもスルッと入っちまうが、硬ぇから圧迫感が半端ねぇ。でもって最高なのが、腸のあったかさで溶けて液体になる事よ。なんせ、ケツに一番負担のかかる“固形物をひり出す”って動作がいらねぇんだからな』
 男はそう解説しつつ、2つ目の氷を肛門に押し当てる。
『ぐっ……う゛!!』
『いい声出んなオイ。後は楽っつっても、入れる時ゃあ苦しいもんなぁ? ケツ穴が裂けるだとか、括約筋が切れるだとか、大袈裟な奴だと骨盤が軋むなんて戯言抜かすガキもいるぐれぇだ。お前はなんて音を上げるんだ、ええ剣道女。 竹刀でアナニーした時よりイタイですぅ~ってか!?』
『ギャハハハッ、いいねぇ竹刀アナニー! そりゃ、オトコ女の思春期にあんな棒がありゃ、ケツにも入れてみようってもんだわなぁ。それか、親父に折檻でぶっ込まれたとかよ!!』
 刺青男が茶化し、迷彩ズボンが手を叩いて笑う。
『……言葉を慎め、下衆が!』
 竹刀と父を引き合いに出されたのが、逆鱗に触れたのか。藤花は右頬を地面につけたまま、凄まじい眼光で迷彩ズボンを睨み上げる。
『お前超睨まれてんじゃん。つか、こっちにも殺気向けてる?こいつ』
 刺青男が鼻で笑い、迷彩ズボンの男に手招きのような動作をする。
『ああ、生意気な眼ェしてやがんぜ。よっぽどイジメてほしいみてぇだ』
 迷彩ズボンの男は、そう言って氷入りのガラストレーを蹴飛ばした。刺青男がそのトレーを受け取り、氷を掴み上げる。一気に、3個ほどを。
『うーし、んじゃ望み通りヤキ入れてやんよ。つっても、冷てぇヤキだけどなあ!』
 刺青男の声は、恫喝する声色そのものだ。そして奴の殴りダコのある手は、氷を次々に藤花の肛門へと押し込みはじめた。桜色の蕾が小さく盛り上がり、開いては閉じる。
『う゛、あ゛! ……く、うう゛!!』
『もっと声出せよ。出せねぇってんなら、出るようにしてやろうか? おらズッポンズッポン……どんどん入ってくぜえ!!』
 刺青男に遠慮はない。指の力に任せて、立て続けに氷を押し込んでいく。
『う、うう゛っく、ぁ、あ゛あ゛……!!』
 藤花は、必死に耐えていた。手枷で拘束された手を床につき、肘をぶるぶると震わせて。


 調教師達によるアナル開発は、悪意に満ちていた。少しでも藤花の羞恥心を煽り、無様な反応を引き出そうと計算し尽くしているように。
 例えば次の映像では、藤花は『マングリ返し』の格好で拘束されたまま、延々と尻穴を弄られていた。それも、ローションボトルの中身を直腸内に流し込んだ上で、時に激しく、時にゆったりと、円を描くように二本指でかき混ぜるやり口だ。こんな事をやられれば、当然腸内を経たローションが顔や乳房に浴びせかかる。普通の人間なら、激しく顔を振って半狂乱になるような状況。
 その次の映像では、藤花は肘掛けと背もたれのある椅子に大股開きで拘束されたまま、やはり尻穴を弄りまわされていた。用いられているのは、指とアナル用のディルドー。そして途中からは、何らかの薬液を肛門内に注ぎ込み、その上で指や道具の出し入れを続けて、藤花に恥を掻かせようともしていた。
 ところが。
 藤花は、このどちらの責めに対しても、大きく取り乱すことなく耐えていた。もちろん生理的な反応はある。指責めが続いたり、薬液の効果で腸の蠕動が始まると、手足の指が握り込まれる。息は次第に荒くなり、汗も全身に浮き出てくる。それでも彼女は声を漏らさず、じっと調教師の顔を睨みつけていた。大股開きのまま排便という生き恥を晒し、調教師と客から心無い罵声を浴びた時でさえ。
 まさに鋼の心。俺は映像を見ながら感服した。映像内で繰り返される『オトコ女』とはまったく違う意味で、彼女は大和男児の魂を持っていると感じた。

 だが、そんな鋼の心が発揮できるのも、あくまで意識があるうちだけだ。彼女は夜通し嬲られているようだった。いかに剣術で鍛えていようと、いずれは体力の限界がやってくる。恥辱責めで疲弊していれば尚更だ。
 モニター2の最後の映像は、藤花が緩く湾曲した台の上にうつ伏せで寝かされ、四肢を台の根元に括りつけられるシーンから始まった。
 そうして身動きを封じられた彼女のアナルを、一人の調教師が割りひらく。
『へへへ……たまんねぇな。クールJKのケツマンコか』
 そいつは身の毛がよだつような笑みを浮かべながら、指で露出させた蕾に吸い付いた。
『!!』
 藤花はその一瞬だけ身を強張らせたが、その後は持ち前の精神力でもって耐える。ただし、最初の内だけだった。
 ここで、左上に<早送り>というメッセージが表示され、右上で経過時間がカウントされはじめた。3分、4分、5分……と時間が進み、12分を超えた頃。映像内の藤花の後頭部が、がくっと下がった。かろうじて背中に乗っていたポニーテールも、その衝撃で肩を滑り、耳を覆うように垂れ落ちる。眠ったんだとはっきり判る脱力ぶりだ。
 藤花が“落ちて”からも、肛門を舐る男は動きを止めない。様子を伺うために顔を上げることさえせず、肛門を舐ることだけに専心している。
 よくよく注視してみると、そいつの舌使いは恐ろしく巧みだった。窄まりに存在する皺の一本一本、およびその合間に至るまでを掃除するがごとく、尖った舌先を丹念に往復させる。あるいは舌を平らにし、輪全体をべろりと舐め回す。時には尖らせた舌で浅く肛門入口をくすぐったり、時には驚くほど深くまで捻じ込むこともする。肛門に唾液が溜まってくれば、蕎麦でも啜るように、ずずーっと吸い尽くす。これを、一秒も休まずにずっと続けているんだ。
 俺にアナルを舐められた経験はない。それでも、あの舌使いがとんでもなく気持ちがいいのは容易に想像できてしまう。あれを受けて射精せずにいられる自信は、正直ない。
 そして気持ちがいいのは、藤花であっても同じようだ。

『……うあ…!』
 『…う゛あっ……』

 本当に、本当に小さな呻きが、藤花の口の辺りから漏れ聞こえる。彼女のうなじは依然として斜め下を向いているから、意識が戻ってはいないようだ。つまり、あれは無意識の喘ぎ。
『くふふっ……!』
 ここでついに、アナルを舐めしゃぶっていた男が笑みを浮かべる。しかし、それだけだ。ほんの一瞬嬉しそうにしただけで、また尻穴責めに没頭しはじめる。まさに狂気。そして、その生暖かく弾力のある狂気に晒されつづける藤花には、着実に快感が堪っていく。
 ぐちゅぐちゅ、ぴちゃぴちゃという水音と、藤花の喘ぎだけが繰り返される空間。それを見守るギャラリーは、少ないとはいえ何人かはいるようだ。しかし意地の悪い事に、誰も野次を飛ばさない。面白そうに状況を見守るばかり。騒がしくなって藤花が目を覚ませば、また肛門の快楽に抗えるだろうに。そうはならなかった。

『……あ、うあ…… ぅうう…あぁぁ……!
  はぁ、っう、は…く、ぅあ……あふゅっ……ううあ……っ!!』

 藤花の上げる声は、ますます艶めいてきている。女が──いや人間が、本当に気持ちいい時に出す声という感じだ。それこそ男が心ならずも射精してしまう時のような、か細く、情けなく、心地良い響きがそこにはあった。
 そしてこの段階になって、とうとう藤花の肉体までもが主を裏切りはじめた。まずは、びくっびくっと腰が跳ね、腰と肩に震えとなって伝播する。背筋には深々と溝が刻まれ、肩甲骨まわりに複雑な隆起ができ、剣道で鍛え上げられた背中の表情をいよいよ彫りの深いものにしていく。
『ほぉう……!』
『……すごいカラダですな、改めて』
『いやぁ、エロい……!』
 静まり返っていたギャラリーさえ、その肉体美を目の当たりにして溜め息を漏らすほどだった。
 一体どんな種類の、どんな深さの快感を得れば、ああも身体が反応するのか。それを知る術はない。モニター2はこの直後、継続する世界を淡々と映しながら、いきなり暗転してしまう。


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 そう。メモにあった通り、この映像はあくまでダイジェストなんだ。起きた事のすべてが、余すところなく記録されているわけじゃない。
 俺は、食い入るように見つめていたモニターから顔を離しつつ、そんな当たり前の事実を思い出していた。
 そして、映像と写真はまだまだ存在する。俺がいま目を通したのは、あくまで『1日目』の記録なんだから。



                     ※



 会員に限り無料の自販機で喉を潤し、部屋中央のソファで気持ちを鎮めてから、『2日目』エリアへと足を運ぶ。
 若干の人だかりに紛れて身を乗り出すと、ちょうどモニター3で映像が再生されている最中だった。


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 モニター3の映像は、重苦しい羽音と共に始まった。
 電気マッサージ器の駆動音だ。
 映像では、まず秘部にマッサージ器を押し当てられる藤花の様子が大写しになっていた。ボンデージスーツというんだろうか、前面が編み上げになった黒いレオタードのようなものを着せられている。両足も膝上までストッキング状のもので覆われているから、露出度はこれまでの動画より格段に低い。だが、肝心の乳房と股の部分に大きな穴が開いているせいで、むしろ全裸よりも性的な印象が強まっていた。
『……くっ、はっ、はっ……。ああ、はっ、は、ぁ……お゛』
 もうかなりの時間、責めを受け続けているんだろう。がに股の格好をとる藤花の内腿には、とろとろと愛液があふれていた。太股から下もプルプルと震えているし、引き締まった腹筋もうっすらと浮き出ている。
 そんな状態でも、やはり藤花に逃げる術はない。意外に細い彼女の両腕は、頭後ろに回されたまま、おそらく縛り上げられている。不完全な菱形を作る脚は、その両足首を鎖でどこかに繋がれている。ゆえに彼女は、どれほど脚が震えようとも、衆目の中で直立を続けるしかない。
 女の部分に押し当てられるマッサージ器も、いやらしいテクニックで藤花を追い込んでいた。やや浮いた形でソフトにクリトリスへ触れていたかと思えば、大雑把な感じで割れ目全体に押し付けられる事もある。あるいは、すっかり紅く充血した肉ビラを左右に押しのけるようにして、割れ目へ沈み込むことも。特に致命的な快感をもたらすのは、割れ目をなぞりつつ下からクリトリスを押し上げる形のようで、これをやられた時には藤花の反応がすごい。
『んぐうぅっ!!!』
 それまで必死に声を殺していた藤花も、この時ばかりははっきりとした呻きを上げた。太股の筋肉が絞り込まれるように変形し、上下に震える。足首の鎖が音を立てる。割れ目から愛液が垂れ落ち、足元に広がる液溜まりに弾けていく。イッたんだ──子供でもそう解るぐらい、明白な反応。

 しかもこの責めには、もう一つ意地の悪い点がある。
『はっ、またかよ。これで何度目だ? オトコ女の分際で、メス気取ってマンコ逝きしてんじゃねーよ!』
 調教師がそう野次を飛ばし、項垂れ気味だった藤花の顔を上げさせる。キリリとした口の端からは、透明な涎が垂れていた。
『おーお、また睨みやがる。結構なこったが、その力はケツに向けた方がいいんじゃねーか? ちっと抜けてきてんぞ、マンコで逝くたびによ。散々言ってるが、落としたらお仕置きだぜ』
 その言葉で目を凝らせば、秘部を覆うマッサージ器の奥には、確かにバイブのグリップ部分が見える。マッサージ器の重低音が大きすぎて、駆動音は聴こえない。しかしグリップ部分が円を描くように蠢いている以上、先端部は藤花の腸内をかき回しているんだろう。
 舌での舐りであられもない声を発する藤花のこと、肛門の感度は人並み以上にある。腸のバイブだけでも息を荒げさせるに充分なはずだ。その上で秘部にもマッサージ器責めとは、どれだけの速度で余裕が剥がれてしまうことか。
『貴様ら……俺の尻穴を拡げたいのか、締めさせたいのか、どっちなんだ』
 藤花が調教師を睨みながら問う。喋ると、息が上がっているのがよくわかる。
『どっちもだ。拡げて、締めさせて、その繰り返しでケツ穴をほぐすんだよ。ついでにアナル性感も目覚めさせてやる。ケツだけでイけるようにな。嬉しいだろ、俺女?』
 調教師はそう煽りながら、マッサージ器の角度を変え、睨む藤花の顔を歪ませる。
 そして、責めはこれだけじゃない。

『うし、10分だ。スクワット始め!』
 ストップウォッチを手にした一人が、タイマーを止めつつ叫ぶ。藤花の瞳が大きさを増した。
『おー、もうそんな時間か。かぁっ、腕が乳酸でパンパンだぜ』
 マッサージ器を押し当てていた男も、一旦機械のスイッチを切り、下げた腕を揉みはじめる。リラックスする男の前で、いよいよ強張った雰囲気になるのが藤花だ。ぽたっ、ぽたっ、と割れ目から雫を垂らしつつ、唇を噛みしめている。
『さっさとやれや!!』
 巻き舌の怒声が飛ぶと、藤花はさらに唇に深く歯を立ててから、ゆっくりと腰を下ろす。
『ハイいーち、にーい! おっせぇなオイ、剣術道場で鍛えてんじゃねぇのかよ。それでそのザマか?』
『はっ。女とハメてるばっかの俺のが、まだ足腰強ぇんじゃね?』
 チンピラ連中は野次を飛ばし、客の笑い声が続く。好き勝手言うもんだ。何度も絶頂させ、下半身の力を奪ったのは連中だというのに。
『……はっ、はっ!……ぐ、くっ…は、はあっ……!!』
 藤花は必死にスクワットを繰り返す。時おり身体が前後に揺れるが、その時は歯をがっちりと噛み合わせ、強引に上下運動を続行する。眉を顰め、肌の露出した部分から大粒の汗を垂らし、荒い息を吐きながら。

『大した体幹だよ。あれだけイカされた直後に、ここまで綺麗なスクワットをやるかね』
『しかも、膝が直角になるまで腰を深く落としてね。生真面目なんでしょうなあ。スクワットといえばこう、という信念が見て取れますよ』
『所詮、見世物のショーなのにねぇ。ご覧なさいよ、見事な乳房が上下に揺れて……』
『ボンデージはやはりいいな。隠れている部分があればこそ、乳房の印象が際立つ。もっとも、あの娘なら全裸でも見応えがあるがね』
『すごいボリューム感ですねぇ、Fカップもありえそうな。まったく、神様もいい趣味をお持ちですよ。男を気取る身に、街ゆく女の大多数より優れたスタイルを与えるんですから』
『や、まったく。身体も垂涎モノですが、顔つきもまた良いですなあ。体力のない子にこの責めをやらせれば、ゼエゼエとみっともなく喘ぎ、涙や鼻水まみれのブザイク面を晒すものです。ところがあの娘は、汗こそ凄いが、まだまだキリリとした表情を保っている。まさに珠玉の逸品だ』
『たしかに。“蒼蘭の剣姫”と持て囃されるだけのことはありますな』

 客は、藤花の肉体に無遠慮な視線を注ぎつつ、欲望まみれの言葉を口にする。藤花は前を向いて黙々とスクワットをこなしていたが、その皺の寄った眉根からは、下卑た人間に対する嫌悪感がありありと見てとれた。

 がに股でのマッサージ器責めと強制スクワットの映像は、編集で早送りされつつ、さらに2回繰り返された。映像右上に表示されている経過時間は、実に42分強。それだけの時間、絶頂と屈伸運動を交えて責め抜かれれば、どんなフィジカルエリートにも限界が来る。
 俺が観た限りでも、4巡目の『がに股電マ責め』。それを受ける藤花の姿は、見るも無惨だった。
『はっ、はひっ、んはあ、は……お、おぉ゛っ、はっ、お゛……!!』
 武道家らしからぬ、完全に乱れた息。そこに時おり、「お」行の喘ぎが混じる。本当に余裕がないときにヒトが発する息と声だ。
 映像の最初では、足で菱形を作りながら、重心をかろうじて身の中心に置いていた藤花の肉体。それももうガタガタだった。
 脚の菱形は崩れ、左右バラバラに曲げられたまま、病的に痙攣しつづける。
 『電マ』を押し当てられる割れ目からは、水道の蛇口を押さえた時のように水飛沫が飛び散り、ぴしゃぴしゃと液溜まりに音を立てる。
 そして腰は、間断なく与えられる快感から逃れようとするかのように、前後に揺れつづけていた。
『はっ、腰がカクカク動きまくってんぜぇ剣姫サマよ。あんまり俺らの責めがタルいんで、素振りでも始めちまったか?』
 マッサージ器を握る男がそう茶化して、場の笑いを誘う。剣術に絡めた揶揄は、藤花がもっとも嫌うところだ。
『…………!!』
 藤花の口がパクパクと開閉する。あるいはこの極限下でもなお、彼女は何かしらの反論を試みていたのかもしれない。しかし、その動きを悟ったのか、ただの偶然か。マッサージ器の軌跡はこの時、藤花の弱点ルートをなぞっていた。割れ目をなぞりつつ、下からクリトリスを押し上げる、あれだ。


『 んンおお゛ぉ゛ぉ゛っ!!! 』


 すごい声が、映像内に響き渡った。俺の視界の端で、隣のエリアの連中がこっちを向いたぐらいに。
 藤花は誇り高き『大和男児』だ。他人から嘲笑われることを良しとせず、声だって限界まで我慢する。その藤花の喉からそんな声が漏れたというのは、大変なことだ。
 奇声からわずか一瞬の後、藤花は、内で何かが爆発したような有様を晒していた。
 伸びやかな脚は、奇跡的にまた菱形を作り……ただし、異常なほどの爪先立ちになっている。指の先だけがかろうじて床に接している状態でも直立を保てるあたりは、さすが足で地を噛む古流武術の手練れというところか。
 しかしその手練れの顔は、救いを求めるように天を仰ぎ、白い喉を蠢かしながら涎を伝わせるばかり。
 そして、彼女の女の象徴からは、ついに透明な奔流があふれ出す。愛液が飛沫きとはまるで量が違う、明らかな失禁だ。
『はははっ、とうとう漏らしおったわ!!』
『あーあ、あんなヒドイ声だして、オシッコまで漏らして。あれのどこが“天才女子高生剣客”よ』
 悪意ある謗りの中、事態はさらに悪くなる。
 絶望的なまでに深い絶頂は、うら若い天才剣士に極度の緊張を与え、その後に究極の弛緩をもたらした。
 藤花の足の合間で、バイブの取っ手が長さを増す。それは重力に引かれ、ずるりと抜け……液溜まりの中に存在感を示した。ばしゃあっ、という音。蟲のようにのたくるピンク色の本体。外へ出たことで、ようやくマイクに拾われるようになった、ウィンウィンという駆動音。これだけの条件が揃っていて、気付かれないということはありえない。
『おいおいおい、バイブが抜けちゃったじゃねぇかよ!』
『ケツの穴締めてろっつったよなぁ。ったく……んなにお仕置きしてほしいのかよ、このドマゾ野郎が!』
 調教師が大声を張り上げ、客が多いに笑う。
『………殺して、やる……。貴様ら、全、員……』
 首を戻した藤花は、目頭から涙を伝わせつつ、呪詛のように呟いた。だがそれすら、絶対的優位にいる男共は笑いのネタにしてしまう。
『へぇ。そんだけ足ガクガクで、俺らが殺れるわけ? 面白ぇじゃん。んじゃ、ちっと拘束解いてやっからよ、殺れそうなら殺れや。あ、お客さんらはケガしちゃコトなんで、悪いっスけど端に避難しといてもらえます?』
 チンピラ風の男がそう言って、藤花の足枷を外しにかかる。同時に別の調教師も、藤花の頭後ろで手枷を外しはじめた。どっちも喧嘩上等な雰囲気で、岩のような上腕筋はベンチプレスの80キロを軽々と上げそうだ。荒事に自信があるからこそ、いざ藤花が暴れても対処できると考えているんだろう。

 藤花は、腰丈の台に肘をつき、尻を突き出す格好を取らされる。手足の枷こそなくなったが、脚は痙攣が続いていて、台に体重を預けているのが精一杯という様子だ。
『おー、結構拡がってんな』
『わりかしデケェからな、あの3号バイブ』
 藤花の肛門を覗きこみながら、男2人が笑う。床でのたくっているピンクのバイブは、確かに前の動画で使われていたアナル用ディルドーよりサイズが上だ。男の逸物よりは細そうだが、少なくとも直径3センチ。長さとくれば、20センチ弱はありそうだ。直腸の長さは15~20cm程度だというから、ほぼ奥まで届いていたに違いない。それで腸内をかき回されるのは、けして無視できないものだったはずだ。
『さて。んじゃ、ダメ押しで拡げてやんよ』
 調教師はそう言って、藤花の寄りかかっている台の下を観音開きにする。中から取り出されたのは、フルーツ盛りを思わせる皿。たしかにバナナやミニトマトなども見えるが、盛られているのはフルーツばかりじゃない。カラフルなスーパーボールや、棒状のゼリーなども見て取れる。共通点は、『丸い』か『棒状であること』。この時点で、俺は男連中のやることに察しがついてしまう。そしてそれは、おそらく藤花も同じだろう。
『キレイだろ。たっぷりと食わせてやんぜ。てめぇのケツになあ!』
 案の定、調教師2人はそう宣言し、並びの悪い歯を覗かせた。

 そして、異物挿入が始まった。
 男共の性格は本当に悪く、いちいち挿入するものを藤花の顔の横まで持っていき、視認させてから肛門へ押し当てる。
『次はこいつだ。美味そうだろ?』
『……ふざけるな。食い物を粗末にするなと、親から学ばなかったのか?』
『ん?ああ、習ってねぇよ。俺がオフクロから教わったのはよぉ、この世は弱肉強食だって現実だけだ。ちょうど今、テメェに教え込んでるみてぇによ!』
 調教師はそう言って、ミニトマトを肛門へと押し込んでいく。アップで映される肛門の少し下には、なおもガクガクと揺れる膝が映りこんでいた。
『ぐっ……!』
 挿入を受け、藤花から呻きが漏れる。
『ほら、もう一丁。まだ食えんだろ』
 男に容赦はなく、次々と紅い実を詰め込んでいく。そして限界と見れば、肛門下に差し出した洗面器へと『排泄』させる。その繰り返しだ。入れるものがスーパーボールになっても、この流れは一切変わらない。
 丸いものはひたすらに押し込む一方で、棒状のものとなれば少し違う。
『おら、ケツで千切ってみろよ』
 調教師が尻肉を叩きながら命じる。その目が捉える藤花の肛門には、深々とバナナが突き刺さっていた。
『……ぐ、ううっ……!!』
 藤花は口惜しそうな声を出すが、結局は調教師の言葉に従うしかない。引き締まった尻の輪郭がさらにはっきりし、肛門が内に閉じる。白いバナナの果肉がひしゃげ、細まり、ついに千切れて洗面器へと落下していく。
『すげぇすげぇ、切りやがった! さすが剣道やってる女はよく締まるな』
『おお。これ案外、上手くできる女って少ねぇんだよな。千切れそうってトコまではいっても、〆きれねぇ。いっつも最後にゃ、俺らで千切ってやってるもんな』
『そうそう。セルフで切れる女って、オレ初めて見たかも』
『しかし、こいつの括約筋ハンパねぇな。締まんのもそうだが、伸びもいいだろ。普通なら、3号バイブ突っ込むのに二週間はかかんのに、昨日の今日でいきなりいけたしよ』
 珍しく誉めそやす2人だが、その表情に爽やかさはない。
『ああ。こりゃ、ご褒美やんねーとな!』
 明らかな悪意を孕んだ言葉が、一人から発される。
『……だな』
 相方も、何かを察した様子で同調する。
『今度は、なにを……』
 嫌な予感がしたのか、藤花が後ろを見ようとするが、調教師の片方がその顔を掴んだ。
『まあ待てよ。お楽しみだ』
 言い聞かせるようにそう言い、視界を前に戻させる。一方、俯瞰で見る俺には、全てが見えた。もう一人が、一旦映像の外に姿を消し、数秒後、何かを手にして戻ってくる。
 根元だけが白く、それ以外が畳の色をした棒状のもの──竹刀だ。剣術道場で生まれ育った藤花にとって、格別の思い入れがあるに違いないそれを、調教師は満面の笑みで肛門へと近づける。
『さーて、いくぜ。安心しな、太さはねぇ。たしか規格じゃ、直径3センチぐらいだったか。だが、この先っちょの革がよ……ちっと、引っ掛かるかもなあ』
『お、おい、本当に何を入れるつもりだ!! 規格だとか、革だとか……!』
 調教師の言葉に、藤花の戸惑いが増す。その様子を存分に楽しんでから、調教師は竹刀を推し進めた。もう一人が手で拡げた肛門へと。ピンク色をした肛門が内に凹み、革に包まれた竹刀の先が入り込んでいく。相当な抵抗と共に。
『あぐああっ、い、痛いいたいっ!! なんだ、一体これは何だっ!?』
 上半身を反らせて叫ぶ藤花。その耳元に、調教師がにやけ顔を近づける。
『判らねぇのか? こいつに関しちゃお前の方が、俺らよりよっぽど詳しいはずだぜ。なんせ、ランドセル背負うより前から、毎日毎日握ってた相棒なんだからよ』
 その一言で、藤花の身体がぴたりと止まった。
『…………な、に…………?』
 まさに、呆然とした感じの声。調教師2人の笑みが深まる。竹刀は、藤花にとって大切なもの。それを用いた責めは、彼女の心に決定的な打撃を与えることだろう。そう確信しているかのようだった。
 だが結論を言えば、奴らの狙いは的外れだった。
 ごく一般的な女子高生なら、大事なイヤリングを穢されて泣き崩れることもあるだろう。恐らくこの調教師共も、それを期待していたに違いない。だが、藤花はそんなタマじゃない。誇り高い彼女にとって、大切なものを侮辱される事は、絶望ではなく怒りのスイッチなんだ。竹刀を責め具として使ったのは、最大の悪手。藤花を押さえもせず余裕をかます男2人は、この直後、甘い読みのツケを払うことになる。

『ぐおっ!?』
 いきなり、呻き声が上がった。映像の中では、竹刀を握っていた調教師の身体がくの字に曲がっている。その屈強な身体が左によろけると、黒ストッキングを履いた藤花の足裏が現れる。どうやら後ろ蹴りを放ったらしい。
 責め手が吹き飛び、竹刀は藤花の肛門に突き刺さったまま上下に揺れる。その揺れを、藤花の手が止めた。そして一気に引き抜くと、宙に放って、今度は柄を手中に収める。
『うっ、こいつ!』
 煙草を咥えるところだった左側の男が、慌てて藤花を押さえ込もうとする。その動きは、剣術の達人にとって、どれほど遅く感じられただろう。
『っしぇえいッ!!』
 鋭い掛け声と共に、竹刀が突き出される。先革が男の腹筋にめり込み、鍛え上げられた身体がよろめく。
『がッ!……げぼっ、ごぼっ』
 悲鳴は短かった。だがダメージは相当なものらしく、男は数歩後退した後、膝から崩れ落ちて嘔吐する。
 それを見届けるや、藤花は竹刀を正眼に構え直した。切っ先で征伐を宣言するのは、最初に蹴り飛ばした男だ。奴は虚をつかれたのか、相方がやられるのを静観してしまっていた。
『……なめてんじゃねぇぞ、このアマッ!!』
 一対一の状況となり、男は吼えた。そして苦し紛れに、手近なバイブを拾って投げる。藤花はそれを冷静にかわすと、踏み込んだ。
 調教部屋の床は、木じゃない。コンクリートか、タイルか、リノリウムか、いずれにせよ硬質のものだ。おまけに藤花は靴を履いておらず、黒ストッキングのようなもので素足を覆っているのみ。それなのに、音がした。ドンッという、大地震でも起きたような音。
『この…………クズがああぁっ!!!』
 その雄叫びと共に、竹刀が振るわれる。俺はその姿に見入っていた。瞬きもせずに、竹刀を振る藤花を見ていた。でも結局、『打つ』瞬間は見えなかった。竹刀が上段に振り上げられ、ほんの少し前に倒れ、次の瞬間にはまた上段に戻っていた。まるでビデオの巻き戻しだ。それでも、打ったのは間違いない。
『ぐあっ!!』
 ビシイッという音と共に悲鳴が上がり、喧嘩自慢の男が後ろに倒れこむ。完全に白目を剥いたまま。
 そして藤花は、次にカメラに向き直った。ここで急に手ブレがひどくなり、ぐるりと壁を映しながら、180度後ろを向く。どうやら撮影役が逃げはじめたらしい。それでも逃げきれなかったのか、バシッと音がし、映像が横向き……つまり床を左側に映したまま動かなくなる。
『おい、何があった!?』
 映像の最奥で扉が開き、数人が飛び込んできた。ほとんど半裸に近い調教師や客とは違い、スーツに身を包んだ大柄な男達だ。奴らは多少腕が立ち、だからこそ状況を正確に把握できたんだろう。カメラの後方……おそらく竹刀を手にした藤花の姿を見て、呆然と立ち尽くす。客達がそんな彼らに縋りつき、それまでの横柄な態度が嘘のように頭を下げている。
『今さら命乞いか、恥を知れ下衆共っ!!』
 部屋にその怒声が響きわたり、物音が一気に騒がしくなり……ここで映像が暗転する。

『以後、30分以上に及ぶ乱闘。
 負傷者:客4名、調教係2名、セキュリティ17名。
 プレイと無関係なため、記録省略』

 白文字のテロップでそう表示され、数秒後、映像が再開する。
 そこに映っていたのは、ボロボロになった藤花の姿だった。
 ボンデージ衣装とストッキングは破れ、見るも無惨に成り果てている。さらに彼女は、右手と右足首を一纏めにして吊られてもいた。Y字バランスを強要される格好、といえば伝わりやすいか。
 その不自然な体勢で、また秘部へのマッサージ器責めが施されているようだった。しかも今度は、肛門に入っているのが、バイブじゃない。竹刀が、中ほどまで深々と突っ込まれ、客の手でグリグリと捻られている。
『はぐうっ、う゛っ…んんん゛お゛、ふうっ、はぁあおおおお゛っ!!』
 藤花から漏れる呻きは、ますます余裕のないものになっていた。
『これで何十回連続のマンコイキだ、クソ女?』
『ほら、ケツもキモチイイだろ。大好きな竹刀だぜ!!』
 責めているのは、調教師と客の両方だ。どちらも体のどこかに手当ての跡がある。怒り狂った藤花から逆襲を受けた証だ。
『おいおい、また漏らしてんのかよお前。ユッルい尿道だなオイ!!』
 ガクガクと震える藤花の割れ目から、失禁が起きたようだ。また、という言葉を聞く限り、何度も繰り返しているらしい。
 失禁を避けて男が身を引くと、藤花の割れ目が丸写しになる。うっすらと生えた陰毛はマッサージ器に押し潰され、割れ目の形は崩れ、厚ぼったい唇のように充血しきっている。そこに、いきなり一人の客が吸い付いた。
『へへっ、すげぇマン汁の量だ。しかもうめぇ。電マのせいで焦げたような味がちと邪魔だが、まろみがあって最高だぜ。ハネッ返りのクソガキのくせに、なんでこんなにマン汁が美味ぇんだよ、ええ!?』
 おぞましい言葉を発しながら、ずずーっと音を立てて藤花の愛液を啜る変態親父。藤花は全身を細かに震わせながら、それを睨み下ろしていた。もし口が利けたなら、どれほどの罵声が飛び出したことだろう。もし彼女の口が、ビットギャグによって封じられていなければ。
『客にまで手ェ出したんだ。たっぷりと反省させてやるぜ』
 調教師はそう言って、がま口のような鞄を開く。その中には、様々な道具がぎっしりと詰め込まれていた。
『う゛うぅぅ……ッ!!!』
 藤花はそれを見て呻いた。その胸を支配するのは、怒りか、恐怖か。気にはなるが、答えは得られない。モニター3の映像はここで暗転し、最初に戻ってしまったから。


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 モニター3の映像が終わり、目線を左に移す。そこにはショーケースがあった。ショーケースには、その日の調教に関係する道具や資料などが展示されているようだ。この展示物もAコース、Bコースで分かれているが、2日目の時点でその差は歴然だった。
 Aコースの方に並ぶ道具は、数本の綿棒や、真ん中あたりに赤いマーカーが塗られ、『←2日目 ここまで』と添え書きされた極細のアナルディルドー。
 Bコースの方に並ぶ道具は、直径約4センチ、長さ20センチ強の蛇のようなバイブと、剣道で使われる本格的な竹刀だ。そして竹刀の方は、先端から三分の一ほどの場所が汚れている。伝い落ちる形で固まった黄褐色と、先端にこびりつくほんの少しの赤。俺としては、これが映像内の『実物』ではない事を祈るばかりだ。
 竹刀が発する声なきメッセージから逃れるように、俺はショーケースの左に逃れた。
『3日目』のプレートが目に入る。ここでもやはりAコースとBコースの区別があり、俺の視線はBコース側の写真に吸い寄せられた。

 周りに人さえいなければ、きっと俺は、頭を抱えて蹲っていただろう。

 そこに貼られた写真は、あくまで静的なものだ。音楽で脅かすわけでもなく、おどろおどろしい電子ドラッグの類という訳でもない。それでも、事実をただ淡々と記録した物は、時として何より残酷だ。
 この日の写真は、6枚あった。6つの事実が、葉書サイズの写真に写しこまれていた。
 1枚目、左列最上段。藤花が仰向けに拘束され、両脚を真上に持ち上げる体勢を取らされたまま、男と腰を密着させている写真。
 2枚目、右列最上段。アップで撮られた尻肉の合間に、男の怒張が深々と入り込んでいる写真。
 3枚目、左列中央。鷲掴みにされた尻肉と、白濁を滴らせる半勃起状態の逸物の写真。
 4枚目、右列中央。肛門に毛深い中指が挿入され、背中が弓なりに反っている写真。
 5枚目、左列最下段。男に跨った藤花が、乳房を揺らしながら歯を食いしばっている写真。
 6枚目、右列最下段。鼻フックで吊られ、口に漏斗を嵌め込まれた巨乳女が、口内に男の尿を注がれている写真。

 楽観的に考えれば、なんということはない。1枚目~4枚目は被写体の顔が映っておらず、つまり藤花の写真である確証はない。5枚目は顔こそ映っているが、肝心の結合部は入っておらず、ただのスキンシップかもしれない。6枚目に至っては、鼻の穴が三方向から引き絞られているせいで、もはや誰なのかの判別すら不可能だ。よって、ショックを受ける必要などない。
 ……そんな考えができるなら、生きるのがどれほど楽だろう。
 本当は、気付いている。写っているのは藤花だ。色白な肌、無駄なく引き締まった筋肉、安産型の腰、豊かな胸。3つの映像で散々目にしたそれを、今さら見紛うはずもない。

 どうやら彼女は、3日目にして早くも肛門を犯されたらしい。2枚目の写真はまさに後孔への挿入シーンを捉えたものだが、写真には複数人の足が映りこんでいる。まず輪姦されたと見て間違いない。
 Aコースの5人は、まだソフトSM程度のプレイしかしていないようだ。藤花だけが、ひたすらにハードな調教を繰り返されている。優秀な括約筋を持っているそうだが、こんなペースじゃ外人でも音を上げるだろう。
 あるいは、それが狙いなのか。反骨心の強すぎる彼女に負担をかけて、参らせるための。

 この『3日目』のエリアにも、4と番号の振られたモニターが置かれている。ビデオを自分で再生するのと違い、垂れ流しのモニターは心の準備ができないから辛い。俺は深呼吸でもしようとしたが、結局は怖いもの見たさの心が勝り、モニターを覗き込んでしまう。


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 藤花は、四つ足で這う格好を取らされたまま、前後から犯されていた。
 AVでよく見かける前後からの3Pだが、よく見れば普通でないことがわかる。
 まず、床についた藤花の手。その両手首は、きつめに縄で縛られている。絶対にほどけないように。そして、手をついて這う以外の姿勢ができないように。
 床にも異常が見つかった。
 後ろから犯される藤花の足元には、中身を搾り出されたイチジクの実のような容器が3つ転がっている。これまでの責めと転がっている場所を鑑みるに、浣腸液の容れ物だろう。どうやらそれを注入したまま、アナルを犯されているらしい。
 さらに注意を向ければ、その推理の正しさが証明された。
 這う格好の藤花の腹の辺りから、ぐるる、ぐぉるるる、と下痢の時にしか聞かない音がしている。
 ペニスが抜き差しされる結合部分から、ぶちゅっ、ぶりいっ、と水気たっぷりの音がしている。
 そして極めつけは、それこそAVのように極端ながに股で後孔を犯す男の睾丸下あたりから、茶色い液体がポタポタと垂れつづけてもいる。
『クソを我慢する女のケツってなぁ最高だな。出したくねぇもんだから、死に物狂いで締め付けやがる。特に剣道だか剣術だかで鍛えられたこのケツ筋は極上だぜ、チンポが噛み千切られそうだ。だがよ、お前も堪んねぇだろオトコ女? ケツがヒクヒクしっぱなしだもんなぁ。クソしたくてもできねぇ苦しさやら、屈辱感やら、変な快感やら……そういうのの板挟みで、狂っちまいそうなんだろ?』
 後ろの男は激しく腰を使いながら、挑発的な言葉を吐きつづけていた。
 極限まで便意が高まった腸を、お構いなしに犯され、謗りの言葉まで浴びせられる。まさに地獄。だが、きついのは後ろばかりでもなさそうだ。
 前は前で仁王立ちした男の逸物を咥えさせられているが、その口元は、黒いラバー製のマスクで覆われている。大暴れした前科がある藤花だけに、噛まれることを危惧して口枷を嵌めているんだろう。
 その担保を得て、前の男は容赦なく根元まで逸物を咥え込ませる。武道一本という感じの藤花が口淫に慣れているとは思えないし、千代里の時のように最低限の慣らしがあったわけでもない。つまり、ほぼ免疫がゼロの喉奥奉仕を、一番きついパターンで強いられているということだ。
 まさか、そんな酷いことをするわけがない。普通ならそう思うだろう。だが前の男は、両手で藤花の後頭部を鷲掴みにし、完全に自分の腰に顔面を密着させている。あそこまで引きつければ、たとえ成人男性の平均サイズのペニスでも、口の中だけでは収まらない。そのさらに奥、食道にまで入り込んでしまうだろう。
 そして、この想像にもまた、疑う余地のない裏づけが存在する。
 声、だ。

『ゴエ゛エ゛エえッ、んおおぉォエ゛エえ゛え゛ッ!!』

 ヒトの声かどうか疑わしいレベルの汚いえずきが、ほとんど止むことなく繰り返されている。恥を捨てたような『ギャル』ならいざ知らず、発しているのがあの藤花なんだから、余程に余程の事情がなければ有り得ない。
『ケツの穴がヒクヒクしてきたぜ。そろそろ限界みてぇだな。いいぜ、そろそろ約束の10分だ。ひり出せよ、おらっ!!』
 後ろの男がそう言って腰を引き、平手で藤花の尻を打ち据える。
『うう゛お゛っ!!』
 苦しそうな悲鳴が響きわたり、直後。制汗スプレーと同じぐらいの直径にまで開いた菊の花から、勢いよく汚液があふれ出した。容赦なく、茶色い。直視がつらいほどに。
『へっ。昨日の晩食わせた餌がようやっと消化されたらしいな。キッチィ色と匂いだぜ。それでも女の端くれかよ!』
 後ろの男は、噴き出す汚液を間近に見ながら、悪意に満ちた言葉を発する。まともな神経をしていれば、まず選択しないような声量で。
 現場にすら立ち会っていない傍観者の立場ながら、その大声には思わず周りを意識してしまう。
 だが、動揺しているのは俺一人。他の連中は、薄笑いを浮かべながら前傾姿勢でモニターに見入っている。鬼畜だ。そして鬼畜は、画面の中にも2人いる。
『こっちも限界っぽいな。ノドの奥が痙攣して、吐く間際って感じだ。おら、介錯してやんよ剣道娘ッ!!』
 前の男はそう怒声を散らし、密着させた腰をさらにグリグリと押し付ける。ネジでも締めるように、鷲掴みにした藤花の顔を左右に揺らしながら。
 その鬼畜ぶりをスッパ抜こうというのか、カメラが藤花の前方に回りこむ。
 タイミングは完璧だった。カメラのブレが止まった瞬間、前の男が腰を引く。俺の想像していたサイズよりかなりでかい……長さのあるペニスが、ずるりと糸を纏ながら抜け出てくる。
 藤花の口には、予想通り浴槽の栓のような口枷が嵌まっていた。その口枷ごと、キリリとした顔つきが下を向き……

『ふお゛…っも゛ろ゛ろ゛ぉええ゛お゛っ!!!』

 悲惨な声と共に、吐瀉物が穴から噴き出していく。色は茶褐色。量はかなり多い。相当の我慢を重ねたのが見てとれる嘔吐だ。
『はっ。前からも後ろからも、品のねぇ女だな』
 男2人は、当然藤花の努力を評価などしない。自分達が追い込んだ結果だけを、声高に批難する。どういう神経をしていれば、露悪的にすらならずにあんな言動ができるんだろう。生まれついての悪。奴らは、多分それだ。
『女っつってもなあ。一人称“俺”だぜ?』
『あー、オトコ女だったな、そういや。……どうだ? 男勝り気取って、実質心は男のくせして、野郎のチンポを咥えさせられる気分は? 俺ならもう自殺モンっつか、少なくとも世間様に顔向けできねぇがよ』
 前の男にそう嘲られ、藤花が顔を上げる。相手の顔面に穴でも空けられそうな眼光で。俺なら身が竦みそうなその視線を真正面から受け止めても、鬼畜の顔から笑みは消えない。
『おっ、イイ眼だ。イジメ甲斐があるぜ』
『ああ。最近はしょっぱいガキの相手ばっかだったしな。久々に、プライド折るのが楽しみだ』
 2人は、そう言って責めの準備を再開する。後ろの奴は、ようやく排泄の終わった肛門にイチジク容器──それもさっきを超える4個分の中身を注ぎ込む。前の奴は、藤花のポニーテールを掴んで顎を上げさせ、薄ら笑みを浮かべながら口内に挿入していく。

 再開された責めは、明らかに一度目より容赦がなかった。
 前の奴はポニーテールを鷲掴みにしながら、セックスの時ですらそこまではやらないだろうというストロークで喉奥を突きまくる。空気が含まれるせいか、カコッカコッカコッ、と、やたらに響きのいい音がする。
 だが音が軽くなっても、苦痛が減るとは限らない。ましてや藤花の喉は、ついさっき限界を超えて瓦解したばかりなんだ。そのデリケートすぎる場所を、膣よりも雑に『使われ』れば、どうなるかは明らかだ。
『お゛ごっ、ほごお゛っ!! ごおっ、おお゛お゛ぇろ゛っっ!!!』
 藤花は、吐きつづけていた。吐瀉物がペニスとリングギャグの隙間から次々にあふれ、白い首を伝い、前後に揺れる乳房に添って四散していく。
 後ろの奴もブレーキを踏む気はない。
『どうした、もう限界かよ。ゲロ吐かされまくって、ケツに意識いかねぇか? いいぜ。耐えられねえなら、このままぶちまけろ。カマ野郎にゃお似合いだ!』
 さっきより浣腸液の量を増やしておきながら、我慢のなさを詰る。挙句に、限界を迎えても肛門から逸物を抜こうとしない。直腸を犯されながら漏らすしかない状態。これはいかに気丈な藤花といえども受け入れがたいらしく、細い腰はかなり左右に暴れた。何度も踏みかえられる膝は、イヤだ、イヤだと叫んでいるようだった。しかし。その悲痛な叫びが、人の心を持たない畜生に届くはずもない。

 ぶりっ、びちびちっ。びちゃ、ぶびゅるるっ。

 音にすればそんな風な、実際にはもっと複雑で情けない音が響きわたり、激しく抜き差しされる穴から汚液があふれ出す。まるで茶色い血糊袋を、棒で突いて破っているようだ。
 こんな嫌がらせ、肉体的にも精神的にもきついに決まってる。それでも藤花についてさすがだと思うのは、あまり大きな反応を示さないことだ。普通ここまでやられれば、いくら自由が利かないとはいえ、横に倒れるのを覚悟で身を左右に揺らしたり、膝で地団太を踏んだりするはずだ。
 だが藤花は、堪らず震えることはあっても、しっかりと重心を固定させている。ぶらさない。ハイエナに臓物を食われてなお、凛と直立する草食動物のように。
 ただ、きついのはきついに違いないんだ。カメラが彼女の顔を接写すれば、汗がすごいのがわかる。どこが汗腺なのかが見て取れるぐらい、大粒の汗が浮いている。
 そして、これは俺の気のせいだろうか。流れる汗に混じって、鋭く敵を睨み上げる瞳の端からも、綺麗な雫が伝っていったのは。

 ここで映像が暗転する。ただし、ほんの数瞬だけ。

 再開した映像でも、映っている面子は同じだった。ただ、逸物をしゃぶらせる役と肛門を嬲る役は入れ替わったようだ。
『テメェのケツで汚れたんだ、隅から隅まで舐ってキレイにしろ』
 大股を広げて仁王立ちする男が、品のない口調で命じる。前の動画でアナルに挿入していた奴だ。
 藤花はその足元に這い蹲る格好で、逸物を咥えさせられていた。両手は脚の間についているようだが、背中からのアングルだから、手首を拘束されているのかはわからない。
『お゛、うぇ゛ッ!オえ゛っ、ほおお゛ぉええ゛!』
 藤花のえずきは酷かった。延々と嘔吐を続けているような響きだ。前の映像と同じく、喉奥まで咥えこまされているのかもしれない。そうでなかったとしても、男の言葉が事実なら、彼女は肛門で“汚れた”怒張を口に含んでいることになる。
『うう゛ぉエ゛っ!!』
 藤花の背中が狭まり、ひときわ余裕のないえずきが漏れた。
『ハッ、またかよ』
 男は鼻で笑い、数歩後ろに退がる。同時に藤花の頭が真下を向いた。
『ぅ゛お、お゛えぼ……っ』
 女の喉が出しうる限界──そう思えるぐらいに低いえずき声。びちゃびちゃという音がそれに続く。前に立つ男は、腕を組んでそれを見下ろしていた。ご満悦な笑みが何とも憎らしい。
『涙と鼻水でドロドロの、イイ面だ。だいぶ参ってきたらしいな』
 男はそう言いながら元の位置に戻る。そして肩幅の倍ほどに股を開き、藤花の髪を掴んで、喉奥責めの体勢を整えた。
『もぉやえお゛! ほんろおに……こおふろ、ひひゃまッ!!』
 藤花は頭を左右に振り、不自由な口で何かを叫ぶ。だが男は冷静だった。両の掌で藤花の頭を固定し、その掌ごと自分の腰へと引き寄せる。
『ゃえおお゛お゛っ!!』
 藤花は本気で嫌がっているようだが、首の力だけで男の両腕の筋力に対抗するのは無理がある。結果、彼女の顔は男の黒々とした茂みに密着していく。
『ほおお゛、おお゛っ……むっごオ゛ぉ゛っっ!!!』
 拒絶の叫びは呻きに変わり、その呻きすら、喉奥を攪拌するカコカコという音に掻き消されていく。主導権が男に移った事を象徴するように。
『休む間があると思うなよ、クソ女。俺ら二人で、朝までケツと口を使い回してやる』
 そう声を発したのは、後ろから藤花のアナルを犯す男だ。こっちにも容赦はなく、ツッパンツッパンという感じの小気味いい音をさせながら腰を振りたくっている。無駄な肉なんて一切ない藤花の太股が波打つんだから、どれほどの圧なのかは推して知れようというものだ。

 前後からの責めが続く。藤花はもう大きな反応は見せず、ただ口と肛門を使われるがままになっていた。けれども彼女は、その静かな絵面の中で、少しずつ削れているに違いない。角張った石が、川の中で丸くなっていくように。


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 モニター4の映像が終わり、左に歩けば、『4日目』のプレートが目に入る。プレートの下には、やはり写真が並んでいた。

 この日、藤花は、かなり入念なアナル開発を受けたようだ。
 ある一枚の写真では、這う格好を取らされた藤花が正面から映され、その尻肉の合間からバイブのグリップ部分が覗いている。
 また別の一枚では、さらに低く這い蹲る藤花が男の物をしゃぶらされつつ、やはり肛門を道具で弄ばれていた。六角形の独特なグリップ部分を見る限り、前の写真と同じ道具だ。ただし今度は、道具がちょうど抜き出される瞬間で、道具の全容がはっきり見てとれる。
 真珠のような珠が連なった責め具。珠の直径は根元に行くほど大きくなり、先端こそビー玉大だが、一番根元ともなればラムネの瓶ぐらいの太さがある。アナル開発が始まってからわずか数日の人間にとって、その根元部分はかなりの負担になることだろう。
 だが、写真の中の現実に容赦はない。次の一枚は、二つに増えたその責め具が、肛門を変形させているシーンのアップだ。さらに次の写真でも、左右の手が操る二つの道具は、圧倒的な存在感で肛門を拡げていた。今度は、振り返ったまま何かを叫ぶ藤花の口元も写っている。相当な痛みか刺激があるのは間違いない。
 だがおそらく、刺激ならその次のシーンの方が上だろう。
 薄いゴムのような手袋を嵌めた男の指が、藤花の肛門に捻じ込まれている。手の甲の半ばまでが肛門に埋もれているというアングルだから、何本の指が入っているのか、正確には判らない。3本か、4本か……何しろ男の節ばった指だ、楽に受け入れられるものではないはずだ。
 そして次の写真では、その手が2つに増える。つまりは左右の両サイドから、男の4本指が入り込み、肛門を拡げているということだ。斜め上からのアングルだから、肛門の中が直接見えるわけじゃない。それでも、暗い穴がぐっぱりと口を開けているらしいことははっきりと見て取れた。
 五枚目の写真では、男の人差し指が肛門を縦に割り開き、その合間にディルドーが送り込まれている。ディルドーの大きさは中々だ。男の握り方から見て、バイクのグリップよりも太いだろう。男の手とディルドーが激しくブレて映っていることから、かなりの速度で抜き差しが繰り返されていることもわかる。それがかなりの威力を持つのは、藤花の上半身を見れば明らかだ。藤花の顎の下には枕のようなものが敷かれているが、彼女はそれに全力で抱きつくような格好を取っていた。特にカメラ側の右腕は、その肩の盛り上がりや枕を握りしめる有様がはっきりと映されている。
 痛ましいものだが、その次の六枚目も相当だ。両の太股と腕の付け根に帯状のベルトを巻かれ、天井から吊り下げられた藤花。桜色の肌は蝋に覆われ、乳首とクリトリスには電極が取りつけられていて、周囲に立つ調教師の手には鞭が握られている。どうやら、かなりハードなSMが繰り返されたらしい。だが一番目を引くのは、やはり肛門だ。ベルトに吊るされた白い脚の合間には、なんとボウリングのピンが押し込まれている。さすがに上の細まった方だが、それでも男の逸物よりかなり太い。そんなものを肛門に入れられる藤花の顔は、歪んでいた。眉を吊り上げ、眉間に皺を寄せ、閉じた口をへし曲げ。素直に見れば怒りの形相だが、恥じ入っているようにも見えるのは、状況の苛烈さのせいだろうか。
 最後になる七枚目の写真も、衝撃的だ。大股を開いた脚の間、肛門からストッキングのようなものが引きずりだされる瞬間を捉えている。掴む指が透けて見えるような薄い生地の中には、凄まじい数のビー玉が詰め込まれている。外へ転げ出た分だけでも十個ほど、肛門にみっしりと収まった部分となれば数え切れない。それだけの数のビー玉となれば、どんな質量だろう。それを腸に押し込まれるのは、どれほど苦しいだろう。嫌でも、そう考えてしまう。

 写真の貼られたボードの下……ショーケースには、いま目にした道具の実物が、歴史を物語るような存在感で鎮座している。
 六角形の柄を持つ、根元がガラス瓶ほどに太い凹凸棒。バイクのグリップよりも太さがあるディルドー。低温蝋燭に、鰐口クリップやパッドの繋がった電源ボックス。真ん中から上がうっすらと黄色に変色したボウリングのピン。伸びきった上に皺の寄ったストッキングと、40個はありそうなビー玉。薄ガラス越しに見るそれらは、写真よりも遥かに凶悪だ。特に身近なボーリングのピンが、責め具として見た途端、こうも恐ろしい代物に変貌するとは思わなかった。

「ふふふ、これはまた凄まじいですな。まるでギャングのリンチだ」
「何よあのサイズ……いくら黒人のディックっていっても、限度があるでしょ」

 ふと、隣からそんな声が聴こえてくる。着流しの老人と、その嫁らしき若い女の会話だ。彼らは言葉を交わしながらも、食い入るようにモニター画面を凝視している。
 ここの連中が興味を示す以上、壮絶な映像に違いない。たぶん、写真の内容すら霞むぐらいに。俺は背中に冷たい汗を感じながら、モニター5を覗き込む。


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 映像には、床に突っ伏すような藤花の姿が映し出されていた。
 両手首は腰のあたりで交差する形のまま、ガムテープでぐるぐる巻きにされている。そして顔は、水の張られた大きめのフードボウルに漬けられていた。
 水責めだ。それも正式な拷問じゃなく、憂さ晴らしのリンチという感じの。そういえば着流しの老人も、これを“ギャングのリンチ”と形容していた。
 ギャングというイメージが浮かんだのは、藤花の頭を囲む男達のせいだろう。
 肩にドクロのタトゥーを入れ、タンクトップで上半身の筋肉とタトゥーをアピールする一人。唇にピアスを開け、アゴ髭を蓄え、ダボダボの迷彩ズボンで下半身を大きく見せる一人。威圧的なその外見には見覚えがある。1日目の映像で、藤花の肛門に氷を突っ込んでいた2人だ。
 この施設の調教師は全員ホストかチンピラ崩れという感じだが、この2人はその中でも格別にガラが悪い。なにしろ水責めのやり方も、『ハンドポケットのまま、ブーツの底で頭を踏みつける』なんだ。それも女の子に対して。非道にも程がある。

 ただ、そんな威圧的なチンピラ達でさえ、藤花の背後にいる人間と比べれば悪童程度の印象になってしまう。
 背後にいるのは、黒人だ。膝立ちだから身長はわからないが、2メートルを超えていそうな威圧感がある。そしてその上半身は、マッチョなんて次元じゃない。上腕と大胸筋は岩肌の風船を思わせる盛り上がり方で、腹が出ているのに腹筋は割れている。艶光る漆黒の肌も相まって、毛のないゴリラそのものだ。
 そこまでの風貌となると、もはや女の子の背後にいるだけで暴力的に見える。しかも奴は、思いっきり藤花のアナルを犯していた。前からのカメラアングルのアナルファックは、普通判りづらいものだ。一見、膣を使う普通のセックスと判別がつかないから。
 だが、この映像の場合はダイレクトに理解できた。巨漢の黒人は、スイカを鷲掴みできそうな巨大な手でもって、藤花の尻肉を握り潰している。親指と人差し指の間にぷっくりと肉が盛り上がっているんだから、握りの強さの程も想像できるというもの。そうして粘土でも捏ねるように自分好みの形に変えた尻肉の中心に、腰を送り込んでいるんだ。それで、膣を使っているなんてことは有り得ない。紛うことなき肛門姦だと、ひと目で確信させられる。
 巨漢の黒人は、突っ伏した藤花の背後につき、腰を押し出すようにして抜き差しを繰り返していた。しかし、妙だ。普通アナルファックなら、尻肉のせいで一部が隠れていても、棒状の物が出入りしているのはわかる。だがこの映像では、ペニスの端が見えない。つまり、尻肉の合間よりもペニスの幅の方がでかいということだ。
 信じられない。直径何センチなら、そんなことになるんだろう。しかも、前後するペニスの幹には血管が浮き立っていた。あれだけ張っていれば、堅さも相当にありそうだ。

 と、ここで前にいる刺青男が、藤花の頭を踏む足を持ち上げた。藤花はそれを待ち望んでいたんだろう、弾けるように頭を上げる。
『ぶあっ!! がっ、げほっ、げほっ!!!』
 前髪から水滴を滴らせつつ、何度も激しく咳き込む藤花。そのすぐ横に、刺青男が膝をつく。
『気分はどうだ、オトコ女? ビッグコックでケツ掘られながら、腹ァ一杯に水飲まされてよ。たまんねぇだろ』
 藤花の髪を掴み上げ、冷たい声で問いかける刺青男。藤花は激しく肩を上下させていたが、剣道の呼吸だろうか、ふうっと鋭く深い息を吐いて平静を取り戻す。
『なんだ、声をかけるのか。あまり静かだったから、このまま眠らせてくれるのかと思ったぞ』
 薄笑いを浮かべつつ煽る藤花に、男3人の目元が険しくなる。
『ったく、口の減らねぇアマだ!』
『そんじょそこらの野郎より気合入ってんな、お前。今やってるこれは、シマん内で女にオイタしたチンピラによくやる折檻でよ。イカツイ黒人にアナルレイプされながら窒息させられりゃ、どんな生意気なガキも素直になるもんだぜ?』
『っつっても、連中の心が折れる一番の理由はよ、意思とは無関係にビュービュー射精しちまって、体がてめぇのザーメンまみれになるせいで、オスとしての矜持が保てなくなるから──らしいじゃねぇか。そういう意味じゃ、男を気取りながらチンポのねぇハンパ野郎は、この責めと相性いいのかもな。生存本能で勃っちまうことも、極太で前立腺ゴリゴリ抉られて射精感煽られることもねぇんだからよ』
『確かにな。ま、何にせよこんなもんはまだ第一段階だ。こっからもっとキツくなるぜ』
 好き勝手に藤花を謗りつつ、2人はズボンのチャックを下ろす。そして今まさに水責めをしていたフードボウルへ、息を合わせたように小便を始めた。無色透明だった水は、あっという間に黄色く色づく。藤花の表情が強張った。
『オマケだ』
 迷彩ズボンの男は、逸物を振って小便を切ると、咥えていた紙巻煙草をフードボウルに吐き捨てる。灰とタールが、小便水をさらに濁らせる。
『フッ。えげつないねぇ、日本の悪ガキも』
 後ろから犯す黒人は、流暢な日本語でそう呟くと、肛門から逸物を引き抜いた。
 いざ外に晒された黒人のブツは、真ん中部分が太い根元よりもさらに膨らんでいて、さながら拷問具のようだった。形状としてはローストターキーに近く、間違っても人間の性器に入れてはいけない類に思える。あれで肛門を犯されれば、まず大方の人間が喉も裂けんばかりに絶叫し、恥も外聞もなく泣き叫ぶだろう。
 藤花だって人の子である以上、何でもない風を演じてみせながら、その実は相当にきつかったようだ。犯されていたさっきまでと今とでは、太股の形が別人のものかと思うぐらい違うんだから。
『Next stageだ。サムライガール』
 黒人がそう呟きつつ、両手で藤花の尻肉を鷲掴みにする。そして、腕力で強引に細い腰を浮かせた。位置が高くなったことで、肛門の様子が映像内に映り込む。
 あんなに慎ましかった藤花の肛門は充血しきり、ぐっぱりと開いていた。あの狂ったサイズのペニスが、ジョークでも合成映像でもなく、実際に人の肛門を拡げていたという事実が、そこにはっきりと示されている。
 黒人は、相変わらず生殖器に思えない形状のデカブツを、拡がった穴に擦り付けるようにしていた。

  ──入れるぞ、また入れるぞ? この規格外のペニスで、お前の内臓の形を変えてやるぞ?

 外人のジェスチャーに疎い俺でも、はっきりとその意図が読み取れる。ましてや同じ空間にいて、粘膜で触れ合っている藤花が気付かないはずもない。
『クソが……!』
 藤花の口から、怨嗟の言葉が漏れた。
『クソ? ああ、ウンコ汁ならこの二段階先だ。俺らも一人にしかやったことねぇが、地獄だったぜ。臭ぇわ汚ぇわ、やられたスケバン気取りはゲロ吐きながら発狂するわでよ。あんなのは二度とやりたくねぇから、お前も“ヤニションベン”で済んでるうちに、詫びの入れ方考えとけや』
 そう言って、刺青男が藤花の頭を掴む。同じく迷彩ズボンの男も、ヤンキー座りで藤花の首を押さえ、肩を掴む。さっきまでの雑に踏みつけるやり方と違い、念入りに沈めるつもりだ。よりにもよって、出したての小便溜まりに。
 男達の太い腕に力が入り、藤花の頭が下がる。
『くっ、うう……!!』
 当然ながら、藤花は抵抗を見せた。フードボウルに満ちる黄色い水を凝視しながら、歯を食いしばって顔を上げようとする。だが。
『おら、大人しく沈めや! 散々イキがっといて、今さらジタバタすんじゃねぇ!!』
『力で俺らに勝てると思ってんの? 剣術道場の娘だかなんだか知らねぇが、思い上がってんじゃねぇぞゴラッ!!』
 2人がかりで強引に頭を押さえ込み、黄色い水の中へと顔を沈めていく。フードボウルは二秒ほど激しく震えていたが、やがて床へ固着したように動かなくなる。
 水責めは淡々と進められた。アナルセックスのせいで波打つ水面に、大小の気泡が浮かび上がっては弾ける。やがてその気泡が一切出なくなり、さらに2秒ほど経過し、藤花の白い肩がぶるぶると痙攣しはじめたところで、ようやく男2人が力を緩めた。
『んぶはっ!! げほげほ、えほっ!!!』
 当然、藤花に余裕などない。咳き込みつつ、必死に空気を求めていた。だがそうすると、アンモニアの匂いをも吸ってしまうことになる。
『う゛っ!! うえ、おえ゛っ!!』
 顔を顰めながらえずく藤花。実に痛々しいが、刺青男達に同情する様子はない。
『ははは、ひっでぇ顔。そーら、もう一丁!』
『はい、イッキ、イッキ!!』
 ふざけながら、また藤花の頭を押し下げる。がぼっがぼっと音が立つ。
 今回もやる事は同じだ。浮かんでは弾ける気泡が出なくなり、上半身が痙攣を始めてからの解放。
『ばはっ!! うう゛えっ、ぺっ、ぺっ!!』
 今度は、汚水を飲んでしまったんだろうか。顔を引き上げられた藤花は、空気を求めるより前に口の中のものを何度も吐き出す。
『どうだ、ションベンの味は。せっかく濃いーの出してやったんだ、堪能しろよ』
『この責めで音ェ上げた連中に、毎回何かどうキツかったか聞くんだけどよ。クソやらションベンってなぁ、えれぇ苦いんだってな。おまけに生温けぇから、アンモニアのエグみやら臭さやらが、舌と鼻にMAXで来るんだと。そうなのか?』
  刺青男は、藤花の様子を見て笑っていた。迷彩ズボンの男も、問いを投げながらやはり笑う。嘘のように朗らかに、歯まで見せて。その笑顔には、良心の呵責なんて微塵も見当たらない。奴らは、本当の畜生だ。
 映像の中で、藤花の顔が持ち上がった。
『味……か。そうだな、舌が痺れそうだ。前に風呂場で飲まされた時もそうだったが、性根の腐ったクズの小便ほどエグみが強いらしい』
 壮絶に睨み上げつつ、呪詛のように言葉を紡ぐ藤花。相当な怒りが見てとれる。だが良心の存在しない人間は、その気迫を前にしても涼しい顔だ。
『性根の腐ったクズか。ま、良い子ちゃんから見りゃあそうなんだろうな。別にそれでもいいぜ?』
『ああ。俺らはよ、オメーみてぇなクソ女の鼻っ柱ヘシ折んのが、好きで好きで堪んねぇんだ。こーやって、なあっ!!』
 2人のチンピラは、そう言ってまた藤花の頭を汚水へと沈めていく。
 息が限界になれば引き上げ、少し空気を吸わせては沈め。相手が嫌がるとなれば、本当に容赦がない。まさしく鬼畜共だ。そしてそれは、藤花の後ろにいる奴も同じ。

 藤花に腰を上げさせた黒人は、自分も膝立ちから中腰に変わり、一層の気合を入れて尻穴を犯していた。タアンッ、タアンッ、と肉のぶつかる音がするほど。だが、そうして強く突っ込まれているうちは、受ける方としてはまだマシな方だろう。
『さーて……』
 ひとしきりハードファックを繰り返した後、黒人は汗まみれの藤花の腰を掴み直す。そして、一旦極太の逸物を完全に引き抜き、すかさず捻じ込んだ。あの滅茶苦茶に太い真ん中部分すらノンストップで。そんな事をされれば、受ける側は堪ったもんじゃない。藤花の腰が浮き、汚水に漬けられている顔からボコボコと大きな泡が立つ。
 そんな藤花の反応を見て、黒人はほくそ笑んだ。そしてそこからは、ストロークを極端に長くし、亀頭が覗くまで引き抜いて叩き込む、という動きを繰り返すようになる。真ん中が極端に太い形状は、抜かれる瞬間と捻じ込まれる瞬間が一番きついと容易に想像がつく。入れたまま前後されるほうがよっぽど楽なはずだ。
 しかも、この黒人はとことんサディストだ。抜き差しするにしても、いつも真っ直ぐに挿れるわけじゃない。わざわざ身体を左右にずらし、斜め方向から捻じ込みもする。さらには、腰を揺らして挿入途中にグリグリと抉ることすらあった。
 ただでさえ直腸の限界サイズを超えていそうな凶器で、そんな不自然な挿入をされたら冗談では済まない。さすがの藤花も、これは我慢ができなかったらしい。動画の前半で黒人に犯されていた時、藤花は太股に力こそ込めていたが、膝を動かさずにじっと耐えていた。それが今は、腰を左右に振ったり膝を踏み変えたりして、明らかに黒人のアナルファックから逃れようとしている。
 そうして藤花が反応を見せれば見せるほど、黒人の笑みは深まった。そして太い腕で藤花の腰を掴み、逃げ道を殺した上で、角度をつけて後孔を抉る。ガムテープで手首を縛られた藤花の手が、ぎゅううっと握りしめられた。汚水責めを受けている中で、一番はっきりとした意思表示。どれだけつらいんだろう。どれだけ堪らないんだろう。
『ぶはっ、はああっ、はあ、はあっ!!』
 ここでまた、藤花の顔が汚水から引き上げられる。すると彼女は、汚水を吐き出すよりも、息を整えるよりも前に、刺青男達に向かって叫んだ。
『はっ、はっ……う、後ろの奴を止めろッ! 尻の穴が、裂ける……!!』
 多分、これが初日から通して、彼女が初めて漏らした弱音だ。男達のしてやったりという表情から、それがわかる。
『んなにキツいかよ。だが無理だな。俺らはリンチの腕を買われて雇われたバイトみてぇなモンだが、あのロドニーさんはココの正調教師だ。この責めにゃデカチンが欠かせねぇんで、特別に来てもらってんだよ』
『そうそう。本来、こんなフロアにゃ来ないヒトなんだぜ。せいぜい堪能しろや』
『はっ、そう畏まんなって。俺の仕事はまだ先だしよ、ヒマ潰しとしちゃ上等だ。日本人のガキは最高、気の強ぇ女も最高。最高と最高の掛け合わせだ』
 態度のでかいチンピラ2人も、黒人には頭が上がらないようだ。その力関係は、街のチンピラとマフィアの構成員を思わせる。
 こうして、藤花の必死の訴えは一蹴された。サディスト3人に慈悲はなく、ゴリゴリと腸内をえぐり回しながら、執拗に汚水へと顔を沈め続ける。どれだけ藤花が暴れても、苦しんでも。

『 やめろおおおおっっ!!!!!! 』

 汚水に沈められる最中、藤花は顔を横向けて絶叫する。それは、心臓が締めつけられるぐらい切実な響きだった。

 ここで、突然テロップが表示される。

 『※ この後、ショッキングすぎる映像が続くため自主規制 ※』

 藤花が竹刀を手に暴れた時と同じく、しばらくその表示が出続け、別の映像に切り替わる。

 まず映し出されたのは、刺青男の上半身だ。
『うーいオトコ女、無視かよ?』
 刺青男はそう言って、小さく身体を揺らす。たぶん足元の何かに蹴りを入れたんだろう。
『……チッ。今度こそ完全にヘバりやがったか』
『脇腹(サイド)につま先入れても、ピクリともしねーしな。ま、頑張った方じゃね?』
『だな。オチてもオチても、気つけするたびに悪態吐きやがって。たぶん死ぬまで突っ張るタイプだろ。正味、初めて見たわこういうの』
『オレも。まさか“4段階目”で音ェ上げねえガキがいるとはな』
 刺青男の言葉に、迷彩ズボンの声が応じる。喫煙所で駄弁っているように、まるで緊張感というものが感じられない空間だ。だが、緩い空気だからといって安心してはいけない。そもそも常識が通じない人間は、異常な行動にも眉一つ動かさないものだ。
『つーか、どうすっべコレ? やるだけやっといてなんだが、今から片付けんのダリィな。くっせぇし、汚ぇしよ』
 その台詞を受けてか、カメラが180度後ろを向く。刺青男の真逆……床が映し出される。
 途端に、モザイクが映像のほとんどを覆った。ひどく荒いモザイクだ。かろうじて人型の何かが横たわっている事実と、色だけが判別できる。
 そして、その『色』は妙だった。髪の黒や肌色も見えるが、それ以上にやたらと土のような色が多い。おまけにモザイク処理は雑で、たびたび床の一部がノーモザイクで映るんだが、その床が……一面、溶かしたチョコレートを塗り伸ばしたようになっているんだ。
 嫌な想像が頭を過ぎる。
 あれが本当にチョコレートなら、刺青男が汚いと言うだろうか。臭いと言うだろうか。
『ったく……全部こいつが意地張るせいなのによ。なんで俺らが後始末だよ?』
 低いトーンで呟かれるぼやきを背景に、カメラは淡々と人型の何かを映しつづける。
 両足首をロープで縛られたまま、ピクリとも動かないそれは、ただただ不気味に思えた。


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 映像の最後、あれは何だったんだろう。俺はぼんやりとそう考える。頭を回転させれば、答えに辿り着けそうだ。だが同時に、心のどこかが知ることを拒否してもいる。
 いつの間にか、モニター前の歳の差夫婦は姿を消していた。俺一人がいつまでもモニターに齧りついて一喜一憂していたと思うと、妙に恥ずかしくなってくる。

 モニター5からさらに左に進むと、大きな扉が視界を覆い尽くした。いつの間にか、入口の正面……つまり部屋の中央奥に来ていたらしい。
 『 使用中【現在 9 日目】 』
 扉にはそう記された札が掛かっている。その向こうに広がる空間では、リアルタイムで藤花の調教が行われているに違いない。
 喉が鳴った。
 もはや俺は、藤花を他人だとは思えなくなっている。彼女の安否は気がかりだ。
 それでも俺は、あえて扉の前を通り過ぎた。アナルセックスが十分な下準備を必要とするように、いきなりハードな現実を目の当たりにしても、脳が理解を拒絶するだろう。彼女の現在をしっかりと受け止めるには、まず過去を知るべきだ。そう自分を納得させる。

 本当は、心の準備が出来ていないだけなのに。

 
 

                        肛虐に堕ちる剣姫(後編)に続く)



 
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