大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

M男

五千円の至福

息子が、妻の財布から金を盗んだ。
それを知ったのは、得意先との接待で深酒をした帰りだ。
息子は塞ぎ込んでいた。
普段私よりも妻によく懐いている息子だが、今度ばかりは、
妻がいくら聞き出そうとしても頑として口を割らないという。
おそらく、息子を非行に走らせた原因は『男の生理』だろう。
それが、同じ男である私にはすぐにピンときた。
普段は息子と話す事も少ない私だが、この時は酒の力もあり、
嫁を遠ざけて息子と2人、男の悩み相談を請け負った。

予感はズバリと的中していた。

息子が語るところによれば、今彼の学校では、密かに『ヘルスごっこ』が流行っているという。
そこそこ綺麗どころの女子が、親が不在である誰かしらのマンションで性的な遊びをする。
そうしたませた遊びが、どこの学校でも密かに行われているのだそうだ。
そしてその中に、ひときわ図抜けた美少女がいるらしい。
定番の『学年で誰が一番可愛いか』談義でも、まず除外されて議論が始まるほど別格に可愛い娘。
その娘も奇跡的にそのヘルスごっこに加わっているという。
料金は1人1回5000円。
もはや立派なヘルスそのものだ。

私は息子のその話を頷きながら聞きつつ、心の中で失笑していた。
おそらく息子は、故意でないにしろ大袈裟に語っているのだろうと。
学生時分などというものは、とかく視野が狭いものだ。
学年一の美少女といえど、それは所詮地域レベル。本物のアイドルの中に入れば一瞬で霞む。
その程度の美少女が、思春期特有の沸きあがるような性欲で美化されているだけの話だ。
ここは1つ、人生経験豊かな私がビシリと言ってやろう。
客の振りをしてその少女に会い、大人として責任をもって説教を垂れてやる。
酒で強気になった私は、息子相手にそう言い放った。

かくして一週間の後。
私は息子を通してその少女を『予約』し、対面を果たす事になる。
そこで、私は自らの視野の狭さを思い知らされた。
リビングのドアを開けて現れたその少女は……正真正銘、息を呑むほどの美少女だったからだ。

読者モデルというのだろうか、そうした物に十分なりえるスレンダーな体型。
膝上数センチのミニスカートから、白い脚が伸びている。
女子校生の脚……まるで我々中年男を誘惑するためにあるのではという、魅惑のカタチ。
胸の膨らみは控えめだが、それはそれでモデル体型に似つかわしい。
前髪は均等に切り揃えられ、残る癖のない長髪は自然に後ろに流している。
いつの時代にも王道的な人気を誇る、清楚系の黒髪ロングだ。
そして、顔。
とにかく目力が凄い。
一流の女優やアイドルが必ずそうであるように、一度目があっただけで頭に衝撃が走るほどだ。
顎の輪郭や鼻、唇、眉などどこをとっても完璧に近いが、とにかくその瞳から目を逸らせない。
どれだけ長く生きたか、などという問題ではない。
この少女は、人を服従させる側の人間だ。それを私は、一目で悟ってしまった。

「お金。」
少女はずいと私に歩み寄り、白く柔らかそうな掌を差し出した。
まさしく子供そのものの澄んだ声だ。
敬語を使わない。敬意を払う様子すらない。
それでも私は気分を害することなく、催眠を掛けられたように財布から五千円札を抜き出していた。
少女はその五千円を受け取り、慣れた様子でポケットにねじ込む。
「じゃ、服脱いで」
じろりと睨みあげるようにしながらそう命じられると、私の胸は高打った。
彼女からじかに言葉を掛けられていること自体が、はやくも夢のように思えていた。



頭の奥に、極度の興奮による疼きが生まれている。
まだ始まったばかりなのに。
私は着ているものを全て脱いだまま、万歳の格好でベッドに横たわっていた。
それを、私を跨ぐようにした少女が見下ろしている。
ただ、見下ろしているだけだ。
それが堪らない。40を越えて、だらしなくたるんだ腹を、毛の生え放題の肌を、
すべらかな脚を持つ少女に見下ろされている。
彼女はほとんど無表情と言っていい様子で私を見下ろしていた。
私はその影の掛かった顔を何とか見上げようとしている。
柳眉がほんの少し動いたり、唇の端が蠢いたり、そこに何らかの意味を見出そうとしていた。
傍から見れば、なんと滑稽な絵面だろう。
けれども私は、その過程の中でも確実に、じわりじわりと興奮を増していた。

やがて、予兆もなく少女は片脚を持ち上げた。
汚れるからとハイソックスを脱ぎ去った、桜色の健康的な足。
その足裏で、半ば勃ち上がった私の逸物を踏みつける。
「む゛んっ!!」
情けない声が出た。
玉袋と陰茎の根元のちょうど繋ぎ目。そこを、しっとりとした足指で踏みつけられている。
少女は私の苦悶など意に介さずといった様子で、さらに足を持ち上げ、下ろす。
丈の短いスカートからショーツが覗くか、などという不埒な考えが、局部の痛みで寸断される。
「あ゛あ!」
慣れない痛みゆえか、その声は聞きなれた私の声とは違っていた。
まるで洋画の中で外人俳優が発する叫び……それに違う異質さがあった。
玉袋の周辺が踏みつけられるたび、その声がいくども私自身の喉から迸る。
「う゛あ!」
「お゛ああ゛っ!!」
袋の中で、張り詰めた睾丸が転げまわっていた。
叫ばずにはおれないほど痛い。けれども、その直後に興奮が襲ってくる。
ひと踏みされるたび、幹の部分が硬くなっていくのが自分でも判った。
シーツに触れる背中部分に酷い汗を掻いている。同じく、体全体に。
自分自身の汗のにおいと、スカートの翻る少女の股座が交互に記憶に刷り込まれていく。
そのうちに、まるで少女の股自体が匂ってくるような幻想に囚われ、勃起は加速する。
どれだけ踏みつけられた頃か。やがて、決定的な屹立が起きた。
ここ十年余りで一度もなかったほどの芯の通った硬さで逸物が勃ち上がり、少女の足裏を押し上げるのが解った。
少女は、むっと表情を曇らせた。
「あっ……すまない!」
私は恥知らずにも謝罪を口にする。
もとはこの少女に説教を垂れるために来たというのに。
それでも……謝罪せざるを得なかった。この夢のような時間が、ここで終わるよりはずっと良い。
私の謝罪を耳にし、少女は見下しきったような表情を浮かべる。
そしてそのまま屈みこみ、バッグの中を漁り始めた。
とりあえず続きをしてもらえるのだと知り、私は妙に安堵した。



少女が取り出したのは、妻もよく使っている保湿クリームだった。
あんな絹のような手をしていながら、保湿クリームが必要なのか。
ぼんやりとそんな事を考えていると、そのクリームを塗りこめた手は、急に私の逸物を握り締めた。
硬く硬くなった幹の、根元付近を。
「っ!!」
私はきっと、肩まで震えていただろう。
今まで足で踏まれるという大雑把な刺激ばかり受けていた所に、思わぬヤワな刺激が来たからだ。
少女が屈みこんでいるお陰で、その顔が間近で見られるという事も大きい。
強く息を吹きかければ前髪が揺れるだろうという距離。
そこに、やはり見間違えなどではなく、息を呑むような美しさの顔がある。
俺は43年の人生で初めて、アイドルの熱狂的なファンの気持ちを理解した。
まるきり『違う』人間がいるのだ、この世には。
画伯の絵に圧倒されたり、名曲に心の芯から震わされたりするのと同じく、ただその顔を見ただけで心躍る美少女がいる。
それほどの美少女が自分の傍に屈みこみ、奇跡のように白く柔らかい手で逸物を握ってくれている。
これに興奮しない道理などない。

山奥の湖のように、澄みながらも深い瞳。それが私を観察していた。
そして変化を求めるように、ゆっくりと指の輪を逸物に沿って滑らせはじめる。
ゆるり、ゆるりと。
ゆるぅり、ゆるぅりと。
真綿に締められるが如くの緩やかな刺激。
私は人生の中で、それによく似た感覚を知っていた。
まだ興奮しておらず、『ゆるい』女性の膣だ。
私はギクリとした。少女はまさか、本当にそれを再現しているのか。
この、セックスをしている様子さえ想像できない、まさしくアイドルさながらの美少女が。
そんな私の混乱をよそに、少女の指の輪は私自身をくるんでいく。
「う、うぅううぅうっ…………!!」
私は知らず、歯を食い縛っていた。
本当に真綿に包まれて扱かれているようだ。
いや……より正確に言うなら、逸物そのものが真綿となり、包まれた分だけ2周りほど太さを増しているようでもある。
血管だけがどぐどぐと脈打ち、肉茎の感覚は朧だ。
ただただ輪郭なく脈打ちながら、とうとう学生時代さながらに真上に向かって反り立っていく。
イメージではなく、視界の中で実際に。
その事実自体が、この40を過ぎた身にとっては奇跡のようだ。

少女は私の顔を覗き込んでいた。
軽蔑したようにも、ただ冷静に観察しているようにも見える不思議な表情で。
と、その唇が動いた。
空気を咥えるように縦に薄く開き、間から紅色の舌が覗く。
やがてその舌の先へ向かって唾液が伝っていく。
ここで、私はその意図に気付いた。急いで私も口を開き、まさに滴ってきた唾液を迎え入れる。
少女の唾液を。
ごくん、と喉を鳴らした。甘い……ようにしか感じられない。
「よく できました。」
少女が初めて、ふっと笑みを見せた。
小馬鹿にしたような笑み。それでも今の私にとっては、愉悦以外の感情が湧かない。
服従させられてここまで嬉しい女など、私の人生には今まで居なかった。



私の昂ぶりは、もはや尋常でない域にまで達していた。
先端は先走りで濡れ、ヤワな刺激を受けながら幾度も痙攣したように蠢く。
強い刺激があれば、即座に射精できそうなほど。

それを察知してなのか、少女の責めは次の段階へと移った。
やや腰を持ち上げ、手で握ったままの逸物をスカートの中へと隠す。
そして握りを強める。
「くうっ!!」
私は叫ぶ。その刺激たるや、私の欲情を射精域へ至らしめるに十分なものであったからだ。
改めて握り締められた少女の指は、その親指の先が上下に裏筋をなぞっていた。
その他の指も強く幹に押し付けられ、上下運動の中でカリ首を弾いている。
それを基本としながら、絶妙に角度や位置を変えて刺激してくる。
一言でいうなら、それは絶世の名器のそれだった。
43年の人生で風俗経験もそれなりにある私は、名器を持つ女に出会った事が三度ある。
しかし今得ている快感は、そのどれをも凌駕した。
指の輪が織りなす、肉体的な心地よさもある。
だが何より、少女のスカートの下で膣の心地よさが得られるこの状況は、実際のセックスを想起させる。
絶世の美少女とセックスしている。
この精神的な充足が、只事ではない快感のスパイスとなっていた。

「ああおっ、あぅおっ、はおっ!!はぉおおっ、おおうっああおおおうぅうっ!!!!!」

ふと気づけば、散々に叫び回っている自分がいた。
万歳をした手でシーツを掴み、脚に筋を立てて踏ん張り、内股にして。
まるで犯されている女のようだ、と思った。
私の下半身という土台から、少女の体内へと井戸の水のように汲み上げられていくイメージも起きた。
そして、それら全ての思考を塗り潰すほど熱い射精感も。
しかし、私はそれを必死に堪えていた。
男としての、大人としての矜持……ではない。ただ単に、その夢のような時間をいつまでも味わっていたいがためだ。
少女の指がいよいよ吸い上げるように強く『襞を蠢かせて』も、私は耐えた。
耐えて、耐えて、それでもいつかは限界が来る。
快感が器一杯に満ちて溢れる時が来る。
「いくううっ!!!」
今まで耐えてきたものを歯の間から搾り出すように、私は呻いた。
ほぼ同時に、腰が痙攣を始める。
その一秒後、私は少女のスカートの奥、やわらかな女子高生の指の中で射精していた。
自分でも信じられないほど勢いよく、また大量の射精。
逸物全てがポンプになったかのように、玉袋からの熱さをどぐんどぐんと吐き出していく。
気だるい痺れが、性器全体に走る。

ようやくに逸物の痙攣が治まった所で、少女はゆっくりと私の上から脚をどけた。
私の視界に映るのは、やはり尋常でない量の白濁に塗れた、逸物と痴毛、そして太腿。
後処理が億劫になる有様だが、私の心は晴れ渡っていた。
よもやこの歳で、これだけ見事な射精ができるとは思ってもみなかった。

「あ、ありがとう」
私は、濡れタオルで太腿を拭う少女にそう声を掛けた。
少女がじろりとこちらを見やる。どこまでもクールで、神秘的な瞳だ。
「息子さんより、イキがいいんじゃない?」
ほんの少し笑いを含んだ調子で告げ、少女はさっさと鞄を拾って踵を返した。
惨状を晒したままの私を気にかける様子もない。
その冷たさがまた堪らなかった。

五千円。
けっして安くはないけれど、この快感には変えがたい。
妻に内緒で溜めているへそくりを、崩すことも検討するか。
私は愉悦に浸りながら、ぼんやりとそう考えていた。



                        終わり

サンキュークレープ

『恵瀬(えのせ)クレープ店 アルバイト募集。』
求人雑誌の片隅にその広告を見つけたとき、俺は胸がときめいた。

恵瀬クレープ店は小さな店だ。
市の中心街からひと駅離れ、いい具合に落ち着いた街にひっそりと店舗を構えている。
会社の近くにあったので俺も時たま買いに行ったものだ。
そこは家族三人で経営されていた。
夫であり、厳格そうなフランス人のアルバン・リゴ氏。
いかにも令嬢然として大らかな恵瀬八重子夫人。
そしてその娘の恵瀬都(えのせみやこ)ちゃん。

当時8歳ぐらいだった都ちゃんもよく店に出て働いていた。
俺は父であるリゴ氏が苦手だったため、八重子夫人と都ちゃんが居る時だけ買いにいっていた。
その狙いはクレープよりも都ちゃんだ。
都ちゃんはフランス人とのハーフだけあって、見たこともないほど愛らしかった。
雰囲気は母親に似て和風だ。つやつやの黒髪は今どき見事に大和撫子している。
しかしすらりとしたスタイルと透けるような白肌は、その辺りの日本人少女とはモノが違う。
あまりに縁遠すぎてファンタジーにさえ思える美しさだ。

その彼女と一緒に働けるかもしれない。
会社を首になり再就職もままならなかった俺は、そこの求人広告に飛びついた。


八重子夫人はイメージ通りの優しい方で、意外にも俺を歓迎してくれた。
「まぁ、29で首切りに…大変でしたね。
 でも今日、こちらへいらして下さって本当に良かったですわ。
 求人を出したところで誰も知らないだろう、と思っていましたもの。」
夫人はゆったりした喋り方で話し続けた。

聞けば、主人であるリゴ氏が少し前に亡くなったのだそうだ。
新たに店の長となった八重子夫人はそれまでリゴ氏に頼りきりで業務に詳しくないし、
原料の仕入れや売り上げ管理で手一杯のため店に手が回らない。
都ちゃんはしっかりしているが、現在12歳の少女に1人店を任せるのは不安がある。
だから俺のようなバイトが必要になったらしい。
「それじゃ、しばらくの間は都が学校から帰ってくる夕方から夜にかけての勤務ね。
 主に都からお仕事を教えてもらう事になるけれど、よろしくお願いします」
八重子夫人はそう頭を下げる。

このようにして、若干12歳の少女が俺の上司になったのだった。





間近で見る都ちゃんは、店の外で見るよりずっと愛らしかった。
俺は妖精のような姿に見惚れる。
「よろしくお願いします、斉藤さん。」
そう礼儀正しく挨拶する姿は、もう立派な社会人に見えた。
「よ、よろしく。僕、何度かここに買いに来た事があるんだけど、憶えてる!?」
俺は舞い上がってそう切り出した。
俺が彼女を覚えているからといって、彼女が客の1人でしかない俺を覚えている筈が無いのに。
「え、ええと……う~ん……」
当然、都ちゃんは少し困った笑顔で首をかしげた。
やってしまった。都ちゃんはいきなり俺を変な奴だと思っただろう。

それでも都ちゃんは、俺に丁寧に仕事を教えてくれた。
レジの打ち方、商品の説明、渡し方…。俺が失敗しても、彼女は笑ってフォローしてくれる。
和やかに話もした。
彼女の話によれば、八重子夫人は実は病気を煩っているらしい。
もともと身体の丈夫な方ではなかったが、夫を喪った嘆きでさらに病状が悪化したのだそうだ。
そのため最近では頻繁に病院通いをしているらしい。
八重子夫人自身はもう店を畳んで都ちゃんを実家に帰したほうが…と思っているそうだが、
夫人がどれほどこの店を愛しているかを知っている都ちゃんは、たとえ1人ででも続けようと思ったらしい。
いじらしい話だ。俺はぜひ力になりたいと思った。

しかし、俺の要領の悪さはひどいものだった。
何しろ会社をクビになるような男だ、当然のように何度もミスを繰り返した。
それは3日経っても、1週間経っても変わらない。
何かとフォローしてくれた都ちゃんもさすがに堪忍袋の緒が切れたのか、その態度は次第に冷めていった。



「ちょっと、釣り銭足りないんだけど。」
金髪のギャルが俺を睨みつけて言った。千円札が足りなかったらしい。昨日もやったミスだ。
都ちゃんがこちらを振り向く。唖然としたような顔は、明らかにまたやったのか、と言っていた。
「も、申し訳ございません!!」
都ちゃんは大慌てでこちらへ駆け寄り、俺の横に立つと、ドンッ!と思いっきり俺の足を踏みつけた。
「ぐ!」
俺は思わず叫びそうになるが、客の手前堪える。
都ちゃんは客に平謝りしている。ギャルはその頭越しに様々な罵声を浴びせていた。
俺は申し訳なくて頭を下げたまま縮こまる。

ギャルがようやく帰った後、都ちゃんはこちらにゆっくりと向き直った。
その顔は疲れ切っている。俺は息を呑んだ。
「どういう…つもりですか」
都ちゃんは静かに言った。
「このお店、潰そうってつもりなんですか」
俺はぶるぶると首を振る。
「…だって、ひどいじゃない。もう何回目のミスよ!!あんた何歳なの、30前じゃないの!?
 一体そんな歳まで何を学んできたのよ!!!」
都ちゃんはその令嬢然とした顔を憤怒に歪めてこちらを睨みつけてきた。
可愛いなどという感情は起きない。その美しい顔が、今はただ怖い。
「クビにしちゃいたいわ。こんな状況じゃなきゃ、絶対あんたなんかと仕事しないのに」
都ちゃんは最後に吐き捨てるように言って業務に戻った。
そこにはあの礼儀正しかった都ちゃんなどいない。
だがそうさせたのは俺だ。



都ちゃんだって、本当は俺を頼りたいだろう、仲良くしたいだろう。
29歳がバイトに入ると聞いて、最初は心強かったに違いない。だが実際はこんなクズだ。
今さら俺を首にして新しい奴を雇うのは大変だ。
第一そんな事を進言すれば、俺を雇った八重子夫人の心に様々な負担を掛けることになる。
だから俺をクビにするわけにはいかない。
明らかに都さんの足を引っ張ってしかいないのに。
俺は情けなくて涙が出そうだった、だがそうして心を乱れさせていると、また失敗が起きる。
「何だこの渡し方は、汚らしい! チッ……少し見ぬ間に最低な店になったな!!」
スーツ姿の男性が俺に罵声を浴びせる。
最悪な事をしてしまった。
相手は店の常連らしい。俺はクレープを渡す時、その常連客の手に誤ってチョコをつけてしまったのだ。
あわてて都ちゃんの方をみると、顔から完全に血の気を引かせていた。
「すす、済みません岸江様!うちの者がとんだ無礼を……」
すぐにタオルをもって駆け寄り、男性の手を拭う。
男性はこちらを指差して何かを言っていた。何をいっているのかショックで聞こえない。
都ちゃんは涙ながらに許しを請うていた。まだ小さな小6の少女が。俺のせいで。

結局男性はどれほど謝罪しても聞き入れず、二度と来ないと叫んで立ち去った。
都ちゃんは呆然と立ち尽くしていた。立ち尽くし、がくりと腰を抜かすようにショーケースに寄りかかると、拳を握り締める。
俺の背中に冷や汗が伝った。
「裏へ来て」
俺に背を向けたまま、都ちゃんが呟いた。店先に「準備中」の札をかけている。

都ちゃんに続いて店奥の座敷に入ると、いきなり彼女が俺の股を蹴り上げた。
ぐちゃっと音のするような感触と共に足の甲が触れ、太い電流が腹を突き刺す。
「がああああああああアアアアアア!!!!!!!!」
俺は絶叫してその場に倒れこんだ。やばい痛みに涎と汗が噴き出す。
痛みに喘ぐ俺の顔に、さらに都ちゃんの踏み付けが見舞われた。
鼻の骨がへこむ感触の中、むうっと臭気がする。一日中仕事をしていた都ちゃんの靴下の匂いだ。
その白い靴下の裏が執拗に俺の顔を踏みつける。微塵の容赦もない。
「死ね、死ね、しんじゃえこの能無し!グズ!!疫病神ッッッ!!!!」
都ちゃんはミニスカートから白いパンツを覗かせ、口汚く罵りながら俺を踏みまくる。
ハーフ少女の蒸れた汗の匂い。澄んだ声で叫ばれる罵声。
俺はあまりの出来事に頭がおかしくなったのか、その状況にゾクゾクと感じていた。
腰が淫らに蠢いてしまう。
「ははっ!何よこの反応、あんた嬉しいの、こういうのが?
 もしかしてこういうコトされたくてあんな事してたってたわけ!?」
都ちゃんの細い脚から繰り出される蹴りが俺の竿を穿つ。はっきりいって相当痛い。
だが刺激的なのは否定しがたい事実だ。
たまらず四つん這いになった時、都ちゃんの足先が背後から強かに玉袋を捉えた。
「うぐふあああっ!!!」
俺は情けない叫び声で腰を抜かす。信じたくないことに、下着の中に熱い物を感じた。

鋭い都ちゃんは突っ伏した俺を転がすと、ズボンと下着を一気にずり下げる。
まだ先端をビクつかせたまま、トランクスの前に白いとろみをぶちまける逸物が曝け出された。
栗の花とも形容される生臭さが立ち昇る。
「くさっ……本当に射精してたんだ、あれが嬉しかったんだ…。考えてた以上のキチガイね。
 じゃあいいよ。明日から、お望みどおり失敗した分だけお仕置きしたげる。」
俺の小さな上司は、冷たく見下ろしたままそう言った。



その言葉は事実だった。
その次の日から、俺は大きな失敗をした回数だけ辱められる事になったのだ。
次の日は土曜日だった。かきいれ時で忙しく、俺は6回ひどい失敗をやらかした。
その夜は八重子さんが出かけていたため、俺は都ちゃんに連れられて部屋に上げられた。
ぬいぐるみのある女の子な部屋だ。
俺はそこで服を脱がされ、紐で手を後ろに縛られた。
その上で全身鏡の前に正座させられる。
都ちゃんはその俺の後ろで膝立ちになり、俺に買ってこさせたコンドームを開封した。
そして箱の説明文を一瞥してするりと逸物に嵌める。器用だ。

「今日は6回やらかしてくれたよね。じゃ、6回悪いのだそうね」
都ちゃんは俺の耳元で囁き、コンドーム越しに逸物を握り締める。俺は体が震えた。
「ねぇほら変態、鏡見て?男なのに女の子に縛られて、射精させられてるのよ?情けない」
都ちゃんが乳首を弄ってくる。くすぐったい。
俺はそのくすぐったさと状況への興奮から、すぐに一度目を射精する。
握り締める都ちゃんの小さな手から生ぬるい液が溢れ、コンドームを伝って陰毛を濡らす。
さらには透明な液部分が尻穴にまで垂れていって気持ちが悪い。
しかし今はそれより快感が勝っていた。
「1回目。あそこがビクビクしてる。あんたの腐った遺伝子が無駄に殺されてるのよ。お似合いだよね」
都ちゃんは意地悪く囁くと、間髪入れずにまた扱きはじめる。
生暖かい精液が潤滑油になり、ゴム越しの小さな手がすばやく逸物を擦り上げる。
たまらない快感で、俺は2分とせずに2回目を放出した。
「あああああ」
声が出てしまう。気持ちいい。尿道の中を熱さが迸っている。

だが、気持ちが良かったのはそこまでだった。
2回連続で達しては玉袋が萎んでしまい、後は扱かれても逸物の芯が鈍く痛むだけ。
「どうしたの?さっさとぶちまけようよ」
都ちゃんが鏡の中の俺を覗き込みながら言う。俺の顔は歯を食いしばり、つらいのが見え見えだった。
「ほらさっさと出そう、さっさと出そう。」
都ちゃんは傷口を抉るが如く、逸物をより大きく扱くと共に片手で俺の乳首を弄り回した。身体が跳ねてしまう。
小さな手は乳首から、脇腹、腹を少しつまみ、太腿へ。
そして吸い込まれるような動きで肛門へ至った。
指先が肛門付近の白濁駅を集めると、それを潤滑油に穴の中に捻りこまれる。
「うああ!!」
声が出た。
「何それ、まるでおまんこ触られた女の子だね。でも気持ち悪い声で喘いでも可愛くないよ、29歳のダメおじさん。」
くすくすと都ちゃんに笑われる。
「やっぱここ弱いの?少女マンガで見たんだ。……ま、あのマンガの受け手はジャニ系のイケメンだったけど。
 あーあ、私なんでこんなダメオヤジのお尻掘ってんだろ。
 そのヒゲ面で、この黒いお尻の穴からくっさいうんちこいてるんでしょ?うあーやだやだ。」
都ちゃんは尻の穴をかき回しながら、俺の心まで切り裂いていく。
だがその傷口からじんわりとした悦びが這い出てきて、鏡のなかのハーフ少女と重なった瞬間、
俺の逸物は3度目の射精を経験していた。
精管から先ほどより熱い精がじわりじわりと湧き上がり、カリの辺りで収束した後に尿道口から気持ち悪く溢れる。
1度目2度目がどろり、なら、今度はちょろりだ。湧き出た熱さに対して出た量が情けなさすぎる。
その差分が暴れるように、俺の逸物の根元がぎりぎりと傷んだ。

「ああ゛…でだ……いま゛でだぁ……。」
俺は汚い声で都ちゃんに訴えかけた。
なぜなら彼女は、3度目を搾り出したばかりの逸物をなお同じように扱きあげているからだ。
なんと残酷な。女ゆえの残酷さ。男ならどれだけ冷血を売りにしている奴でもできまい。
「まだ3回目でしょ。6回出させるって言ったじゃない」
都ちゃんは、この残酷で愛くるしい悪魔は、俺をゴミのように見て告げた。
じょぐじょぐじょぐじょ
コンドームに包まれたザーメンが逸物に擦れて音を立てる。
俺は絶望に声が出なくなり、2回無意味に口を開いた。
「ひはっ、ひは」
情けない息の後、ようやく声の出し方を思い出す。しかし強気な声が出ない。
「らすけて……痛いんだ、もう出ないんだ、わかって、もう痛いんだ、もう無理ッ…なんだ……!!」
俺はまさしくレイプされる女のように涙ながらに哀願した。
しかし俺に死ねといった都ちゃんは、それを聞き入れる事などしなかった。

そこから本当に6回射精できたのかは覚えていないが、朝まではやっていただろう。
次の日は出勤が休みだったが、俺は縛り上げられたまま、都ちゃんの布団の中に隠されていた。
都ちゃんが休憩時間に帰ってくるまで、俺は少女の甘酸っぱい寝汗を吸ったシーツを嗅ぎ続け、でも勃起できずに苦悶した。





それからも八重子さんの目の無い日を狙って辱めが続いた。
都ちゃんは俺を心の無い肉玩具とでも思っているのか、聞きかじった事を何でも試した。
俺の尻穴を弄り回して開発し、風呂場で小便を飲ませ、尿道に綿棒を突っ込んできた事もあった。
屈辱だったのは尻穴オナニーを強要された時だ。

新聞紙を敷き並べた部屋で買ったディルドーを尻に入れさせられる。
しかもただのアナルオナニーではない、射精するのに手を使ってはいけないという。
前立腺のみを刺激しての射精、いわゆるトコロテンという奴だ。
都ちゃんは俺にそれをさせながら、ベッドに座ってデジカメで俺を撮り続けていた。
惨め、この上なかった。
ローションをたっぷりと垂らし、地面に固定したディルドーを一気に飲み込む。
湧き上がる感覚に喘ぎ声が出る。
「うわー、ヒゲ面の喘ぎ顔。最悪にきもちわるーい!」
都ちゃんは端正な顔を歪めて俺を撮っていた。ベッドの淵にニーソックスを履いた足が垂れている。
美しい脚だ、おれはそれをオカズに腰を上下させる。
「う!う!う!!」
ディルドーの亀頭部に前立腺が擦られて声が出てしまう。

「ねぇ、いまどんな気分か聞かせて?」
時には都ちゃんが蔑んだ目で問いかけてくる。
「は、恥ずかしいです、あと苦しくて、手、手を、手を使ってだしたいです」
「ダメ。豚は前足つかって扱かないでしょ」
俺の訴えなど聞き入れられず筈もない。
手を後ろに置き、無我夢中で腰を上下させる。
だが動きが苛烈になると、固定していないディルドーが尻穴から抜けた瞬間に弾け跳んでしまう。
せっかく性感の頂が見えたのに、そうなるとまたディルドーを置いてやり直しだ。
都ちゃんはディルドーが飛ぶたび、あははと無邪気に笑っていた。
それを聞きながら俺は腰を使い、ディルドーを強烈に叩き込んで何とか射精に持ち込んだ。
尿道口からとろっと流れ出る白濁を確認した瞬間、足が震えて倒れこむ。汗だくだ。

都ちゃんに顔を撮られながら、俺は乙女のように恥じて身をかき抱いた。





そんな壮絶な体験をしながらも、俺はそこのバイトをやめることはしなかった。
なぜか? 何度も己に問いかけ、そのたび苦笑する。
都ちゃんに惚れているからだ。いや惚れているのではない、憧れているのか。
都ちゃんが横でスマイルを振り撒いているのを見るのが楽しい。
都ちゃんの吐く息を吸えているのが、腋の間を通った空気を感じていられるのが有り難い。
始め屈辱的でしかなかった罰も、今では都ちゃんに見つめられるだけで射精しそうになってしまった。
完全な恋だ。

だから、俺はその後何年もバイトとして居続けた。その間に環境は変わっていった。
都ちゃんは中学校を卒業する頃、新しいバイトを雇った。
クラスメイトだというその少年は、いかにも現代風のいけている少年だった。
仕事もでき、俺が3年かけて積み上げたノウハウを2週間で会得しきった。
彼は都ちゃんの俺に対する態度と俺の動きから無能さを察したらしく、すぐに態度を悪化させた。
資材を運ぶ時など、わざとらしくぶつかっていく。
「邪魔だよ、オッサン」
彼がそう吐き捨てると、都ちゃんもこっちを睨んできて今度は何したの、と詰め寄る。

彼が入ったおかげで仕事が円滑に進むようになり、八重子さんは安心して実家で養生をはじめた。
保護者がいなくなった事で、都ちゃんと少年の行動にますます遠慮が無くなる。

2人はやがて恋仲になった。
時期はちょうどクリスマスで、3人で店じまいを終えた後、俺はさっさと帰れと追い出された。
何をするかが解っていた俺は、そっと裏口に回って中を覗く。そこからは都ちゃんの部屋が見える。
「み、ミチヒロ、ミチヒロぉ!!きもち…いいよぉ!!」
「へぇ、処女なのに痛くねーのか?」
「い、痛いよ。痛い、けど、ミチヒロに抱かれて感じる痛みなら…わたしうれしいよ」
「お前、マジ可愛いな。やっぱ一生の女にするわ」
甘ったれた声の会話。水音。ベッドの軋む音。
俺はそれを聞きながら、暗く寒い路地の中で逸物を取り出して扱き出した。
かつてこれを握ってくれた小さな手を思い出す。

涙が出た。



12月25日、都ちゃんはミニスカートのサンタ姿で売り子をしていた。
ミチヒロはそれに手を振りながら店番をしていた。
俺は裏で大掃除の蜘蛛の巣取りをしながら、そんな2人を眺める。
「オッサン、サボってんじゃねーよ。首にすっぞ」
ミチヒロが気付き、俺の首元を掴んだ。
「……あと、俺の女なにジロジロ見てんだよ。きめぇよ」
そう囁いて乱暴に手を離す。そして都ちゃんに駆け寄った後、何かを囁いていた。
都ちゃんは目を丸くし、こちらを睨むとミニスカートの後ろを隠した。


それから4ヶ月後の4月1日。都ちゃんとミチヒロは結婚式を挙げた。
純白のドレスとタキシードに包まれた2人は実によく似合っていた。

そしてその日が、俺の最後の出勤日だった。
夜には式を終えて帰ってくるだろう都ちゃんの為に、俺は一つ余計にクレープを作っておく。
生クリームをたっぷりとつかって文字を書く。



THANK YOU・・・




                    おわり
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遥か遠き少女

※ ハートフルボッコ注意

俺は今年で23になる。
ガキの頃、ハタチ過ぎといえばオヤジで、嫁を作って安定した生活を送っているものと思っていた。
だが現実は違う。
中学高校と部活をせず、ただ喰った結果が若年にしての中年体型。
就活には失敗し、当然彼女など居ない。
バイトの女子などからは積極的に嫌われてすらいる。

誤った人生。
俺がそれを最も痛切に感じるのは、従姉妹の遥(はるか)に会った時だ。

遥はまだ14、中学2年でありながら相当に垢抜けていた。
彼女の事は幼稚園に入る前から知っている。
ちいさな頃から可愛らしかったが、当時はまだ純真な少女に過ぎなかった。
しかし小学校の高学年頃から周りの影響でお洒落を覚え、以来、盆や正月に帰省するたび妖しい魅力を増していた。


「久しぶり、慶兄ちゃん。」
俺が帰省した時、先に来ていた遥はそう言った。
『慶兄ちゃん』という呼び名こそ変わらないものの、遥の目線は心なしか冷ややかだ。
彼女の中の俺は、もうその同級生や部活の先輩より下位に位置づけられたのが解る。
犬が飼い主を格付けするかのごとく。

……いや、犬というのは俺のほうかもしれない。
「ひ、久しぶり、遥…」
遥の視線を真っ直ぐに受けられず、もごもごと喋る俺は、なるほど上等な雄ではなかった。
遥の溜め息が聞こえる。
それは、彼女が俺を無価値と決定付けた瞬間に違いなかった。


「遥ちゃんは、ほんとに綺麗になったわねぇ」
俺の母親の言葉に、爺ちゃん婆ちゃんを始めとした一堂の目が遥に向く。
「えー、普通だよ。」
遥は少し照れたように胸元を手で庇うような仕草をした。
自然だ。恐ろしいほどに自然な『可愛い娘の反応』。

遥は今風だが、ちゃらちゃらはしていない。
マニキュアであったりラメであったり、そういったことはしない。
清純さを保ちながらも、男の目を惹く術を心得ていた。

例えば今も、炬燵に入る遥の格好は制服だ。
制服という奴はまさしく清純さの象徴であり、また着こなし方によって裸よりも女を色めいてみせる。
胸元を少し覗かせるブラウスに、驚くほど細く締められたベルト、膝上10cmの青チェックスカート。
白く美しい肌を持つ遥がそれを着れば、思わず振り向くような可憐さが備わる。
遥はそれを承知で、このリラックスした場でも制服でいるのだろう。

俺を誘っているのかもしれない、とも思えた。
遥は俺の隣に座り、炬燵布団とスカートの間から少しだけ生脚を覗かせるようにしていた。
俺の視線はいけないと思いながらもそこへ落ちる。
すると、その視線に回り込むような形で遥が見上げてくるのだ。
目元には隣の俺にしか解らない嘲笑が浮かんでいる。

「でね、この子凄いモテるのよ。ファンクラブなんて作られたりね。しかも他校によ?
 バレンタインなんて、義理とはいえ何十個もあげないといけないからもう大変なの」
遥の母さんは延々と遥の自慢を続けていた。
自慢したくもなるだろう。
遥は成績も上位で、テニス部でも活躍し、友達は非常に多く、スタイルも抜群にいい。
俺などとは正反対の充実した学生生活だ。

「へぇ、凄いわねぇ…。」
俺の母親が呟く。
俺の母親と遥の母さんは実姉妹で、昔から仲が悪かったそうだ。
本来なら俺の自慢で返したい所だろうが、俺には自慢すべき経歴など無い。
勝ち誇った遥の母を相手に、うちの母がどんな顔をしているか、俺には見る勇気がなかった。




その夜、広い実家の屋敷には俺と遥だけが残された。
親戚一堂は帰省した最初の晩は本家に集まる、と決まっているのだ。
とはいえやる事は宴会なので、遥のような子供は参加しなくてもいい事になっている。
俺はもうハタチ過ぎなので本来は参加すべきだが、下戸なのとあまり人付き合いが得意でない事から、
特別に参加を免除されていた。

俺は内心ほっとしたが、しかし要するに大人として期待されていない、という事だ。
20過ぎの男が14歳の少女と2人きりで夜を過ごす。普通ならば危惧すべき事態だろう。
だが俺に関しては誰も心配しない。
『あいつに何かやらかす勇気などない』と皆が思っているからだ。
俺自身、事など起こせないだろうと思っていた。

しかし性欲というものは恐ろしい。

夜になり、俺が風呂に入った後で次に遥が入ることになった。
「じゃあ、入るから」
それまでヘッドフォンの中の世界に居た遥が、初めて口を利く。
「あ、ああ」
俺はそっけなくそう答えながら、内心で動揺した。携帯を持つ手が震える。

俺はもう何時間も、携帯を弄るふりをしながら横目に彼女を視姦していた。
靴下を脱いだ足先が何かを掴むように蠢く様、前髪を払いのける仕草、手鏡を覗きこみリップを塗り直す姿。
生々しくも新鮮だった。
彼女のいる人間なら見飽きているのかもしれないが、俺はそうではない。
しかも遥の横顔は綺麗だ。耳も、髪も、肩も、俺にもあるパーツなのにあまりに違いすぎ、俺の視線は釘付けになった。
凝視し、遥が気付いて振り向く瞬間に目を逸らす、という事を愚かしいほどに繰り返す。

その遥が今まさに入浴している、という事実は、俺の理性を呆気なく狂わせた。



俺は浴室まで忍び足で近づいた。実家は木造であるため、音が響きやすいのだ。
暖簾をそっとよけ、脱衣場に忍び込む。狙いは遥の下着だ。
一目見て、あるいは匂いでも嗅いで後にオカズにし、この衝動を抑えよう。そう考えていた。
中学生の、それも従姉妹の下着を狙う。
自分でも最低だという意識はあったが、もはや抑えようが無かった。

実家の脱衣場は広く、銭湯のように脱衣籠やタオルを並べる棚があるため死角が多い。
うまく動けば浴室に居る人間に気付かれる事なく事を済ますことができる筈だ。

そっと浴室内を窺う。遥の背がガラス戸に透けて見える。身体を洗っているようだ。
ならばまだまだ大丈夫。
俺は遥がまだ小さい頃、一緒に風呂に入っていた。だから遥の入り方はよく知っている。
入浴・排泄といった生活習慣は歳を取っても変わらないものだ。
あいつは身体を洗うのが長い。あと10分はこちらに背を向けたままだろう…俺はそう踏んで一息ついた。
しかし。

「なにしてるの?」

突如、浴室から声が響いた。俺は息を詰まらせる。
馬鹿な。解るはずがない。角度的に見えないはずだし、音も立てていないはずだ。
頭が混乱する。しかしともかく、まずい。逃げなければ。
そう思ったが膝が笑っている。早く逃げなければと焦るのに、老人のようにしか動けない。
汗が噴き出す。
鋭い音で浴室の戸が開いた。裸のままの遥が姿を現し、浴室の熱気と石鹸の香りが吹き付けてくる。

「…犯罪だよね」

遥はこちらを睨みつけ、濡れた身体のまま歩み寄ると、バンと音を立てて壁に手をついた。
俺は壁を背に追い詰められる。
冷や汗が背を濡らす一方で、目は彼女の揺れる胸に釘付けになった。
大きい。俺の掌でもぎりぎり掴めないほどだ。
乳輪は小さく桃色、ネットで目の肥えた俺にも感動的なほどに綺麗だった。
そんな色々な事が一瞬にして頭を巡る。

「ねぇ。これって犯罪だよね」

遥は俺を睨み据える。俺は謝ろうと思ったが、言葉が出ない。
「ぉ、こ………」
何を言おうとしているのか。ごめん?お願いだから許して? ――許されるわけがない。
俺の人生はもうお終いだ。

「警察」

遥の言葉に、俺の体がびくんと跳ねる。吐きそうだ。
だが遥は、そんな俺の反応に満足したかのように目を細めた。

「……は、まぁ勘弁してあげる。覗かれるのも初めてじゃないしね。
 テニス部でも部室にカメラ仕掛けられちゃったりしたし。
 …でもまさか、従兄弟にまで見られるとは思わなかったけど」
俺は何も言えず俯く。
すると、遥はそんな俺にバスタオルを寄越した。
「?」
俺が顔を上げると、遥は腕を腰に当てたまま顎をしゃくる。
「拭いてよ。湯冷めしちゃうじゃない」
胸も秘部も隠さない格好だ。俺はなぜか自分の方が恥ずかしくなり、急いで彼女をタオルで覆った。

「…………何で、わかったんだ」
彼女の身体にタオルを押し当てながら訊く。
角度的に見えなかったはずだし、音も立てていないはずなのに、何故。
遥は、蔑んだようにこちらを見上げた。
「…鼻息」
「え?」
「足音には気をつけてたんだろうけど、息でわかったの。
 後は、勘。私みたいに可愛い子は、男が思うよりずっと視線に敏感なんだよ。
 さっき部屋にいた時もずっと見てたでしょ。ああ何かしてくるな、って思ってたもん」

俺はさらに言葉が無かった。
全て見透かされていたのだ。この、自分より10年近くも経験の浅い少女に。

遥は表情を失った俺を見上げ、今一度蔑むように笑った。




遥は裸のまま寝室に向かうと、俺の方に振り向いた。
「ねぇ、慶兄ちゃんも脱いでよ」
俺は一瞬、意味が解らなかった。しかし再び催促され、仕方なくシャツに手を掛ける。
人を呼ばれでもしたら俺は終わりだ。

シャツを脱ぎ去ると、下腹の出た毛深い腹が露わになる。
「うーわ……。」
遥がゴミでも見るような目をした。俺はそれに耐えながらズボンを脱いでいく。
トランクスまで脱ぎ終えると、俺の体を隠すものは何も無くなった。
そこへ来て、遥は寝室の鏡を指す。
「見て、“全部”映ってるよ」

鏡には一人の男と女が並んで立っていた。しかし、まるで違う。
片や胸の膨らみも腰のくびれも、すらりと長い脚も、芸術といっていいほどに洗練された少女。
片や腹はだらしなく垂れ、腕も足も贅肉でたるんだ冴えない男。
雄と牝、などという違いではない。まるで種族そのものが違うようだ。
俺はそれを直視する事ができなかった。

「ねぇ、私たちってひょっとしてお似合いじゃない?」
遥が俺の腕を取って組んだ。やわらかく暖かい感触が肘に触れる。俺は思わずまごついた。
鏡の中で男女が手を組んでいる。ポーズだけならカップルだ。
だが遥自身もわかって言っているのだろう。まるで似つかわしくない。むしろ痛々しい。
「似合ってない」
俺は腕を奪い返すようにして距離を取る。
「へぇ、それはわかってるんだ。」
遥は俺の肘が触れた辺りを大仰に払いながら言った。

幼稚園児だった頃の彼女は、俺のお嫁さんになると真剣に言ってくれていたのに。


「でもさ、すっごいよね」
遥は尚も鏡を覗き込みながら言う。
「何がだよ」
「身体の品質の差、っていうの?もしオークションしたら、私達どれくらい差がつくんだろうね。
 十分の一?千分の一?それともそっちはゼロかな」
遥は俺の下腹を眺めながら嘲笑った。俺は奥歯を噛み締める。
「悔しいの?だって本当でしょ、私の脚なんていっつもオヤジに嘗め回すように見られてるもん。
 クラスにも私をオカズにしてる子いっぱい居るらしいしさ。
 あんたは?女子に抱かれたいとか言われた事ある?言われると思う?」
「うっせぇ!に、人間身体だけじゃねぇだろが!」
俺は息を切らして遥をにらみ付ける。図星を突かれて頭に来た。
たかが中学生に、なぜ価値を低く値踏みされなければいけないのか。
遥はひとつ溜息をついた。

「確かにね。じゃあ他の事で比べる? 友達は何人いる?私はもう数え切れない。
 何か実績残した? 私は去年、テニスで県大会に出ました。慶兄ちゃんは? 
 私の聞いた限りじゃ、何にもしてないよね。叔母さんが嘆いてたよ。
 成績は? 慶兄ちゃんは……ああ隆北大、あの底辺大学だよね。
 私はだいたい学年で十番以内だし、これからどうなるかは解んないけど、隆北なんかには行かない。
 次は…性格かな。 私は、自分はそんな良い性格じゃないって知ってるよ。
 お兄ちゃん見たいな大人見てると、死ねばいいのにって本気で思っちゃうし。
 でもさ、それはまだ未熟なのもあるし、23にもなって中学生のお風呂に忍び込む人間よりはずっと……」
「るせぇっ!!もういいっ!!!」
俺は遥の襟首を掴もうとし、しかし相手が真裸であるので勢いでその肩を鷲掴みにした。
遥が言葉を途切らせ、俺も息を詰まらせる。気まずい沈黙が下りた。
「今度はレイプでもするの?ああそっか、いくらなんでも力は私より上だもんね」
遥は蔑んだ目のまま言った。微塵も臆していない。
まるで3歳児が殺すと騒いでいるのを冷ややかに見つめる親のようだ。

癪に障った。引っ込みがつかず、本当に押し倒してやろうかと思った。
だがそれで踏ん切りがつくような男なら、まだここまで言われないのだろう。
俺はその間にも、もしそれをしたらどうなるのか、いや、そもそも今の状況はどうなのかと些細な計算をしている。
鏡の中で、たるんだ身体の男が、美しい肢体の美少女に掴みかかっていた。
この上なく情けない光景だった。
「……く……!!!」
俺はまっすぐ14歳の視線を受け止める事さえできずに唸る。
23年生きてきて、何もかもが彼女に及ばない気がした。

「まだ怒ってるの?…んー、じゃあさ、何か勝負でもしよっか。
 スクワットとかどう?私部の男子とよく勝負するんだけど、やっぱ勝てないのよね。
 特に先輩になると、皆めちゃくちゃ凄くて。」
遥は俺を見上げながらなおも言う。
だからなんだ、俺はもっと出来るべきだと言いたいのかこのガキは。
俺がそう思って睨みつけると、遥も冷たい目で返した。
「何その目。前から思ってたんだけど、なんか慶兄ちゃんの目って負け犬っぽいよね。
 結果残してない人間の目って言うかさ」
「なんだと…!」
俺が言い返すと、遥は大きく溜息をついた。
「あーわかったわかった、出来ないならいいよ。デブは膝壊れちゃうもんね。
 …たださ、私小さい頃は慶兄ちゃん凄いなーって思った事一杯あったんだよ?
 それが今これじゃ…もうちょっと意地見せてよっていうか」
遥は俺を睨むようにして言う。
狡賢い奴だ。そこまで言われれば受けないわけにはいかない。
本当は俺を蔑み嘲笑うだけが目的だと解っていても、だ。
「解った、やってやるよ。もしお前が負けたら、今までの発言取り消せよ!!」
俺はそう怒鳴っていた。


しかし、結果など解り切っている。
「よんじゅ……ななッ………!!!」
47回目、俺の足は限界に来て笑っていた。生まれてこの方鍛えた事のない足だ。
無駄に重さの乗った上半身を何度も持ち上げられるわけがない。
鏡では嫌な脂汗を流した豚のような男が、醜い下腹を震えさせてひどい顔をしていた。
その隣では美少女が胸を揺らしながら、実に清清しく腰を上下させている。

同じ動作をしても、なぜこれほどに醜悪なのか。
男に産んでもらったのに、筋量に劣る女にさえ勝てないのか。
なぜ、俺は生きているのか。
酸欠の頭にそんな考えが浮かんだ。
「う……うう……ううぅ!ふぐ……っく、ぅう、ふぁああああっぐ……!!」
俺は何もかもが嫌になり、泣き崩れる。 それがまた情けない。
「あっ…」
遥の声がした。やってしまった、という響きだった。


「あ、あー……慶兄ちゃん、さぁ」
遥の声が降りてくる。心なしか優しい。しかし、それは改善ではない。
事態が一段階崩れ落ちたのだ。
あくまで年上、あるいは同等の人間の中で情けない奴、の扱いだったのが、
扱いを間違えるとすぐに壊れる、どうしようもない人間のランクになったのだ。
「えーっとほら、せっかくどっちも裸…なんだしさ、その、何か……したげるよ」
遥はひどくやりづらそうに喋っていた。
幼児相手に言葉を選んでいるようなものだ。今の俺はその程度。
「なにか、って…なんだよ」
俺は言葉を交わすのが正しいのか迷いながらも、その提案に興味を惹かれた。

欲情しないわけが無かった。若々しい裸が目の前にあるのだ。
水分を含んで肩に貼りつく黒髪は美しく、
胸は椀のように膨らみ、腰は細く締まり、腿はむちりとして膝下は長い。
肌にくすみはなく、湯上りのため実に「おいしそう」な桃色をしている。
ファンクラブが出来て当然の、極上といっていい容姿だった。
その少女が何かをしてくれるというのだ。

「えぇっと……ふぇ、フェラ…チオ…?」
遥は俺の逸物に目をやりながら、たじろぐように答えた。
理由はわかる。俺の逸物は皮かむりの上、自慰のしすぎで黒ずんでいる。
彼女の目にはナメクジのように映っただろう。
だが俺には魅惑的な提案だった。
俺にも風俗の経験はあり、フェラチオも何度かして貰った。
しかしそれはあくまで大金を払っての事である上、遥ほどの美形ではない。
ファンクラブが出来るほどの少女に口戯をしてもらえる。
人生で二度味わえる事とは思えなかった。
「た…頼む」
もはや矜持などどうでもいい。俺はその提案に飛びついた。
遥の評価がまた下がったのが解る。


遥は俺の足元に跪き、俺の逸物を小さな手で持ち上げ、剥いた。
そして眉を顰める。
「……くさっ……」
小声で呟かれたその一言は、嫌味のない分ストレートに効く。
遥はさらに剥いた後の亀頭を汚そうに見つめ、指で小さな滓を取り始める。
興奮のあまり先走りが出て、それが滓になってしまったようだ。
遥はそれをうざったそうにつまみ出す。時おり薄皮に爪が当って痛い。
おそらく、好きな相手にはそこまでせずぱくりと咥えるのだろう。
これは俺を嫌う遥の躊躇だ。或いは、俺にもういいと言わせる為の時間稼ぎだ。
だから俺は待つ。ここまできて諦めはつかない。

ややあって、遥は観念したように亀頭に舌を這わせる。
ちろり、ちろりと舌が這いずり、先ほどまでの滓取りで刺激された亀頭から電気が走った。
「ふぁ…」
思わず腰が仰け反る。遥は動じず、カリ周りに舌を這わせると、一息に亀頭を口に含む。
「う!」
凄まじい快感だ。外気から一変、暖かくぬめる口腔へと飲まれ、幹を唇が包む。
そうしてやわらかく圧迫したまま、舌がぬるりと亀頭部分をくるむ。
思った以上に上手い。元から興奮していた分を差し引いてもヘルス嬢より上かもしれない。
何より眺めが良かった。
俺を睨むような上目遣いは、まるで屈服させているように思える。
俺が身悶えるたびにやりづらそうに眉をしかめるのも可愛い。
口を離したとき見える舌は綺麗なピンクだ。
目を横に向ければ、鏡には太った男に奉仕する少女、という背徳的な図がある。
俺は兼ねてからの興奮もあり、その状況への欲情もあって、忽ち上り詰めた。
「い、いんぐううっ!!!」
歯を食いしばりながら叫び、無意識に遥の頭を掴んで腰に打ち付けた。
「むうぅー!!」
遥の抗議で喉が締まる。それを最後の刺激に尿道口が開く。
精嚢が縮み、熱さが精管を駆け上り、びゅ、びゅびゅっと数度に渡って熱い口内に迸る。
自分でも驚くほど大量の射精だ。
俺は遥の湿った髪を押さえつけながら、その腰が抜けそうな余韻に浸った。


「ん、ん!」
逸物から口を離した後、遥は口元を押さえていた。嘔吐かと思いきやそうでもないらしい。
片手でばんばんと布団を叩く。座れと言っているようだ。
俺が座ると、遥は俺の後頭部を掴み、圧し掛かるようにして唇を合わせてきた。
キス…ではない。俺がその真意に気付くと同時に、生暖かく臭いものが口に流れ込んでくる。
「う、うむえぇっ!!」
その生臭さに俺はたまらず吐き出した。
「不味いでしょ」
遥がこちらを睨みながら言う。
「フェラチオがどんなに嫌な事かわかった?しかも、それを嫌いな奴にしたんだよ」
遥はそれまでとは打って変わって低いトーンで言った。
どうやら、また逆鱗に触れてしまったらしい。
「わ、悪い…」
俺が頭を下げると、急に遥が立ち上がった。
そして手を秘唇に添え、その赤い肉を掻き分ける。
「今度は慶兄ちゃんの番。私の臭いところ、舐めてよね。ご褒美になっちゃうかもしれないけど」
遥は秘部を突き出すようにして俺の鼻頭に押し付ける。
中腰の俺は体勢を崩し、そのまま布団に組み敷かれるような格好になった。

口の上に遥の割れ目がある。舌に比べればいくぶん赤い、それでも綺麗な粘膜。
そこは驚いた事に、僅かにぬめりを帯びていた。
「濡れてるでしょ、あそこ」
鼻先に腰を下ろしたまま遥が言った。
「それ、慶兄ちゃんのしゃぶっててなの。凄くいやだった。強姦されてるみたいな感じだった。
 でも、意外に興奮しちゃってたみたい」
遥は恥らうように顔に手をやり、指の隙間からこちらを見下ろす。
「今もね、すっごくドキドキしてる。嫌なのに。カバや猿にあそこ舐められてるみたい。
 屈辱的で、たまらないよ!!」
遥は一旦腰を上げると、逆向きに跨り直した。顔に跨り、俺の腹部側を向く形だ。

「ねぇ慶兄ちゃん、舐めて?気持ち悪い鼻息かけながらあそこ舐めてよ。
 こんなの、慶兄ちゃんみたいなグズにはもう一生できないよ!」
俺はその言葉に激昂し、強く遥の腰を掴むとその秘部に口をつけた。
臭くない。
愛液と生々しい肉の香りが鼻腔を満たすが、少しも不快にならない。
不公平だ。俺のは異臭がして、こいつのは見目がいい上に匂いさえいい。
俺はその不満を舌の動きに変えて遥の中に突き入れる。舌よりも弾力のある粘膜が蜜を垂らし込んでくる。
「ひゃん!き、気持ち悪いよぉ」
遥は嬉々として嫌がりながら、俺の逸物を掴んで咥えた。
シックスナインだ。俺は今、人が振り返るほど美しい少女と、腹部をつけ折り重なっているのだ。

彼女ではない。今後彼女になる見込みもない。
浮かれている自分が、少し情けなくもあるが。



それから10分ほどが過ぎた頃だろうか。

「……ねぇ……慶兄ちゃん。」
秘部を俺に擦り付けながら、不意に遥が言った。
彼女はこう続ける。

「嬉しい?」

そう言って俺の下腹を撫でた。
「…慶兄ちゃんのお腹、毛でザラザラだね。腹筋なくてブヨブヨだし、本当に気持ち悪い。
 でもね、私、今ふと気付いたの。なんか可哀想だなって。」
俺は動きを止めた。

「…え?」

「もし朝目が覚めて、こんなトドみたいな身体になってたら、きっと私自殺しちゃう。
 私は私のこの身体でよかった。けど、慶兄ちゃんはもうずっとそんな身体なんだもんね。
 明日目が覚めても、その次に目が覚めても…」


同情?
何を言いだしたんだ、こいつ。
そりゃ、お前が俺より上等なのは認めるよ。現状も、素質も、将来性も全てだ。
でも、何だよその言い方。


 かわい・・そう・・・・・?


「そりゃ私の身体に憧れるよね。細くて綺麗な身体、ホントは欲しいんだもんね。
 だから、私の下着を狙ったあの事は忘れるよ。誰にも言わない」
「おい、待てよ遥。何言ってんだ」
心が痛む。
違うんだ。俺はダメな奴だ、そんな事はわかってる。
酷いんだ、今は。学生時代何も頑張らず、勉強もせず、鍛えず、就活も死ぬ気ではしなかった。
でも、でも、何でだ。
本当に俺は、こいつとそんなにも違うのか。
14歳の少女に同情されなくちゃいけないのか。



「ね、慶兄ちゃん。 私 の 身 体 、 触 れ て 嬉 し い ?」






「慶太…お前、どうかしたの?」

母親の声だ。
別にどうもしていない。

「何だか、昨日までよりもっと呆けてるみたいねぇ」

そんな事はない。俺は今までどおりだ。
今まで通りの底辺だ。

「慶兄ちゃん、たぶん疲れてるんだよ。昨日、私が遅くまで遊びにつき合わせちゃって」
遥が言う。
「まぁ、そうなの。相変わらず仲良かったのね、あんた達」
遥の母親の声だ。
「うん。慶兄ちゃんはね、私のお婿さんになるの」

遥の手が炬燵の下から伸びてきている。
小さく柔らかなその手は、俺の裏筋を撫で、鈴口に指を引っ掛けたりしながら弄び続けている。
不自然にならないほどの小さな動きだ。
だが炬燵のぬくさとその優しい弄びを受け続け、俺の物からは小便を漏らしたかのような先走りがあふれ出していた。
いい子いい子、とするかのごとく、遥の掌が亀頭をくるむ。

有難い、価値のある手だ。



                           END
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淫魔の仔

氷を投げ入れると、ウォッカは蜂蜜色の渦を巻いた。
俺はそのウォッカを一息に飲み干す。
喉が焼けつくように痛み、肺は熱気に膨らむ。
 ――あと 何発できるだろう?
蕩けそうな倦怠感に包まれながら、ぼんやりとそう考えた。



事の始まりは14年前、俺がまだ学生で一人暮らしをしていた頃だ。
その蒸し暑い夜、コンパで誰も連れ帰ることが出来なかった俺は、目当ての娘を想いながら悶々としていた。
その枕元へ突如、若い女の姿が浮かび上がったのだ。
始めは金縛りかと思った。だが女がベッドへと覆いかぶさってきたとき、俺は違うと気付いた。
それは幽霊と呼ぶにはあまりに肉感的で、芳しく、そしてあまりに美しすぎたからだ。

女は一糸纏わぬ丸裸で、肌は西洋人のようにうす白かった。
胸は掌から余るほどに大きく、腿は細く引き締まっているが腰は丸みを帯びている。
いい女だ。陳腐な表現だがそうとしか言いようがない。
女神像がそのまま具現化したような、男に本能的に抱きたいと思わせるカラダだ。
淫魔。
脳裏にそんな言葉がよぎる。
その瞬間、やつは俺の心を読んだかのようにうすく微笑んだ。

『こんばんわ。新鮮な精をたっぷり溜めこんでいるのは、あなた?』
女は俺の上へ覆い被さったまま手を触れてきた。
豊かな胸が震え、青白く光るような腕が俺の体に伸び、その表皮の全てからは
石鹸のようなえもいわれぬ安らぎの香りが立ち上っている。
俺の頭は緩慢にその情報を捉えていた。
女が触れると、俺の着ていたシャツの繊維は手品のようにはらりと解ける。
『…わぁ……』
脇にシャツがめくられた後、女はどこかあどけなさを感じさせる瞳でそう言った。
俺は高校時代には陸上でそれなりに鍛えていた。
女はその俺の胸や腹筋を撫ぜながら、じっと俺の目を覗き込んでくるのだ。
人に見つめられるということがどれほど緊張するか、この時俺は思い知った。


「はッ……、あ……は、ぁ…………っ!!」
胸を撫ぜられる、それだけで俺は疾走したように息を切らしていた。
女はそんな俺を母親のように優しく見つめ、今度は手を腹筋より下に差し入れてきた。
また服の繊維がほどけ、隠すべき部分が外気に晒される。
むうっと男の匂いが立ち上るのが俺自身にも解り、ひどく恥ずかしかった。
だが女は匂いに動じるそぶりもなく、ゆったりとした動作で逸物の根元をつまんだ。
奴がしなびたそこを扱きあげた瞬間、
「うっ!」
俺は物の中にひどい痛みを覚え、声を上げてしまった。
『お若いですね』
女がそう囁き、さらに扱く。俺の逸物にはその動きに合わせて熱い血が通い、
たちまちにそそり立ってしまう。
『ふふ、脈打ってる』
女の嗤いのあと、逸物はその白い手にくるみ込まれた。
『力は抜いておいて下さい。今、“通じさせて”あげますから』
女はそう言った。その不可解な言葉の意味を、俺はすぐに思い知る。

「ああっ!!い、いぃいイクッッ!!!」
数分後、俺は女のような声を上げてベッドでのたうち回っていた。
女の、人間であれば手コキと呼ぶべき責めは絶妙だった。
女の手の中はどんな女性器とも比較にならないほど心地いい。
逸物の真ん中にある硬い芯をすり潰され、その周りの海綿体をふやかされるような、 そんな感覚が脊髄を巡り続ける。
背中は汗にまみれ、足は力をなくして投げ出しながら、腰だけが深くベッドを沈ませた。
『すごい、まだ出てくるんだ』
やわらかく握られた逸物からは、コップに注げるほどの精が溢れ出ている事だろう。
女はその精の全てを桜色の唇で受け止めているようだった。
その飲み干す顔の、なんと幸せそうな事だろう。
やはり彼女は淫魔だ、とその時俺は確信した。


何時間が経ったのか、ひょっとしたら数十分しか経っていないのか、
女はようやくに俺の逸物から手を離した。
『お疲れさまでした。ちょっと、搾り過ぎたかしら』
女が俺の前髪をかき上げる。視界が汗で滲んでいる。
『うっとりしちゃって…おいしそう』
女はそう言って俺の上に跨りなおし、そっと秘部を覗かせた。
俺は思わず息を呑む。
滲んだ視界に映る、鮮やかな桜色をした薔薇の花。
極上の霜降り肉でもこんなに美味しそうに見えたためしはない。
『いただきます。』
女は俺の逸物に手を添え、目を閉じて味わうようにゆっくりと腰を落とす。

女の胎内は至高の世界だった。
熱いか冷たいかさえ感じられず、ただただポンプのように精液を吸い上げられた。
いくら若いとはいえ、一度果てればそれまでと思っていた射精が何度でも訪れるのは、全く未知の体験だった。
『ああっ、凄っ、凄い!もっと、もっと奥へ、もっと沢山下さいっ!!』
女の方も良いのだろうか、髪を振り乱して笑みを見せた。

 ――俺は、この娘に犯されている。

蕩ける思考の中、その考えだけが浮かぶ。
この淫魔を前にして、俺は今、生物学上オスとされた乙女でしかない…と。
そしてそれが心地いい。


その夜以来、彼女は毎日俺の夢枕に立つようになった。
彼女はリリスと名乗った。
だがそれは『日本人』というようなレベルでの種別であり、彼女固有の名は無いらしい。
ともかくも、俺とリリスは毎晩のように身体を重ねた。
俺は数年間女に飢えていたし、リリスは俺の精が気に入ったと言う。
お互い性にまつわる利害が一致したわけだ。

だが、俺とリリスの性欲はまるで桁が違った。
俺が若さにまかせて抜かずの4・5発をしても、リリスには前戯にすらならない。
枯れ果てて限界が来るのは俺ばかり。
そうなれば、自然と2人の時間は俺からリリスへの奉仕が多くなる。
たとえばベッドで脚を開いた彼女を後ろから抱きかかえ、首筋に舌を這わせながら秘部をくじる。
そうやって気分を高めながら回復を待つのだ。
『ああそこ、凄くいい…』
リリスは脚を開いてうっとりとした声で言う。
淫魔の性感許容量はやはり人間とは違うらしく、彼女はいくらGスポットを責めても、淫核を撫で回しても涼しい顔をしていた。

 ……始めのうちは。

人間は、暫く食事を減らしていると胃が小さくなる。
それと同じなのかは解らないが、彼女も次第に俺の愛撫に反応を示すようになっていった。

『あらあら、今日は頑張るんですね』
出会って一年になる頃、クンニを続ける俺にリリスがかけた言葉だ。
俺はこの言葉に違和感を覚え、それは彼女の汗を見て深まった。
リリスには淫魔としての矜持がある、性に関して生半可なことでは動じない。
その彼女が俺のいつもの愛撫に対して、明らかな昂ぶりを見せているのだ。
「感じてるのか?」
『そんな、まさか………っあ、……っ………ぃ……!!』
返す言葉の最後、彼女はイく、という言葉を飲み込んだように見えた。
それにその事実に関わらず、彼女の恥じらいの場所は滴るほどに潤みきっている。
まるで人間の娘のように。

思えばリリスはこの時、俺という人間と親しくしすぎたのかもしれない。
精を貪るという本能を二の次に、人じみた愛撫に興じた。それが一年だ。
そうすれば淫魔も人間に近づくのではないか。
俺がその結論に至ったのは、リリスが『身篭っている』と知らされた後だった。

『淫魔に子供は、いらないの』

リリスは困ったような顔で腹を撫でた。
『仲間内からも色々と非難が出ていて……
 もう、ここには通っちゃいけないみたいです』
「…そう、か……」
答えようがなかった。
子種を生みつけたのも俺なら、彼女を人間に近づけたのも俺だ。
こういう場合は、男の責任の方がきっと重い。
『ごめんね』
今にも全てを背負い込んで消えようとする彼女を呼び止め、俺は一つ提案をした。
「君の産んだ子を預からせてくれないか。
 …きっと、幸せにしてみせる」
と。

それから幾月か後。
朝日の差し込む部屋の隅に、毛布に包まれた泣き声が飛び込んできた。
俺は彼女を亜理紗(アリサ)と名づけた。
それが、リリスを思い出させる響きだったから。


亜理紗は母親に似て見目良く、歳の割に発育も良くすくすくと育った。
性格にも素行にも全くの問題が見られず、淫魔の娘ということで気負いしていた俺が肩透かしを食らうほどだった。
…………彼女が初経を迎える日までは。

『ねぇもっとよ、もっと出るんでしょう?』
亜理紗に赤飯を炊いてやった日の翌日、俺は仕事帰りの路地で偶然に彼女を目にした。
彼女は路地裏で一人の少年を壁に押し付けていた。
相手はいつも仲良く遊んでいる同級生だ、喧嘩でもしているのだろうか。
そう思ってよく見ると、それは喧嘩などではなかった。
亜理紗は少年のズボンをずり下げ、手と口でもって精を搾り出していたのだ。
少年は泡を噴いて立ち尽くしている。幼い男根は痛々しいほどに屹立し、冗談の様な量の精液を足に垂らしていた。
亜理紗はその彼からなおも精を搾り出し、手にした昆虫採集用の瓶に白濁を溜めていた。
よく見れば犠牲者は少年一人ではない。地面にはさらに3人が下半身を露出させ、ぴくりとも動かずにいる。

俺は即座に踵を返し、その現場を後にした。そして公園で顔を洗い、頬を叩いた。
寝ぼけているのだ、そうに違いない、と思う為に。

しかし、現実は変わらない。
帰宅して亜理紗の部屋を覗くと、彼女は服を全て脱ぎ捨て、椅子に座りながら何かに耽っていた。
覗けばその左手には昼間の精液を溜めた瓶があり、右手は股座に差し込まれている。
もう随分長いこと自慰に耽っていたのだろう、椅子の座部は濡れて変色し、淫核は固くしこり立っている。
「亜理紗、何してるんだ!!」
俺は夢中でその右手を取った。指の先から飛沫が跳ね、メスの強烈な香りが部屋に漂う。
「あ、おとうさん…。おとうさん、おと……おと、こ。
 …おとーさんの、みせてぇ……!」
俺は思わず右手を離す。俺たちの愛娘は、心の底からぞっとする目をしていた。

『淫魔に子供は、いらないの』
そうか、…そういうことか。

「れぇ。 お とうさん…?」
亜理紗は椅子から崩れ落ち、這うようにして俺の元へ近づいてくる。
西洋人形を思わせるぱっちりとした瞳、うすく朱の線を引く唇、
齢13にして既に只事ではない青い色香を纏わせたカラダ。
俺が作ったのだ。
俺が、作ってしまったのだ。
このまま俺が逃げても、彼女はどこぞの男どもを喰らい続けるだけだ。
自分がなぜそんな事をするのかもわからないままに。

なら……俺が、せめて犯される理由のある俺が、彼女の相手をするしかない。



ようやくウォッカが効いてきた。精力剤と喧嘩をして最悪な気分だが、身体は十分に熱い。
俺は意を決してリビングの扉を開けた。
そこには胡坐縛りに縛められ、二穴に轟音でうねるバイブレーターを捻じ込まれた愛娘がいる。
「おとぉうひゃん、ひんぽ、おひんぽ…くらひゃい……」
アイマスクと猿轡を外せば、途端に彼女は潤んだ瞳で懇願してくる。
まだ13の小娘ながら反則的なほど男心をくすぐる哀願。
俺は彼女の秘部から剛直を引きずり出し、代わりに痛いほどいきり立った逸物をその愛らしい割れ目に突き入れる。
熱くうねる胎内にたちまち射精感を覚えながら、俺はまた歯を喰いしばる。


 ――あと 何発できるだろう?



                               THE END 
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白い敗北

雪を踏む足音に、たむろしていた男達が顔を上げ、そのまま硬まる。
その前をミニスカートの少女が横切った。
清楚。その言葉が男達の頭に浮かぶ。

背中まで届く黒髪は光沢を湛え、くっきりした瞳は燦爛と輝き、肌はほんのりと桜色。
腰は片腕で抱けるほどに細いが、歩くたびかすかに波打つ腿を見るかぎり、
“あの時”の具合はずいぶんと良さそうだ。

10人とすれ違えば8人は振り返るルックス。
その少女は当然のごとく一人ではない。
眼鏡をかけた穏やかそうな男に連れ添っていた。

「いいよなぁあいつ…あんな可愛い子連れてさぁ」
「ホント、密着してら。クリスマスってああいう奴のためのイベントだよな」
男達からそんな言葉が漏れる。

実際、その男女は随分と仲睦まじかった。
だがその実態は、彼らの想像をやや外れることだろう。

少女――奈緒はSM嬢だ。
あどけない顔立ちながられっきとしたS嬢、特に暴力プレイを得意とする。
染みひとつない桃色の脚で蹴りつけられる。
そのむず痒さに病み付きになる客はそれは多かった。
しかしまさか、その奈緒自身が客に惚れ込むとは誰も思わなかったろう。
奈緒は圭介という常連客をいたく気に入っていた。

圭介は格別に男前というわけではないが、穏やかな表情は確かに好感が持てる。

圭介と奈緒。
2人は、遠からず本当の恋人になるだろうと噂されていた。

クリスマス一色の街を抜け、小路に逸れてから数分後。
圭介は壁に背を預け、奈緒に見つめられたままズボンに指を這わされていた。

「ふふ、膨らんでますね。まだなぁんにもしてないのに」
奈緒はズボンから手を離し、壁に対して馬乗りになるように秘部を擦りつける。
ミニスカートの捲れあがるはしたない格好。
しかし彼女の見事なくびれは、その格好ですら倒錯的に感じさせた。
「圭介さん足硬いんですねぇ、真ん中も凄いけど」
筋肉を褒めて男の気分を良くさせつつ、腰をうねらせて生地越しに肉幹をくじる。
「あ、ああ」
圭介は奈緒の動きに合わせて腰を揺するしかなかった。

奈緒はそんな圭介を見つめ、少し伸び上がる。
女にしては背の高い彼女が伸び上がれば、その唇は男の鼻の位置に来る。
奈緒は男の鼻腔にふぅっと息を吹き込んだ。
桃のような唇からまさにそのものの匂いが流れ込み、男の鼓動を速める。
「キス、してもいいですよ」
奈緒は圭介の顔を覗き込みながら言った。

キスしてもいい。
普通なら、これだけ顔が近ければ口づけをするのは当然だ。
だが奈緒の人形のような顔となれば、確かに許可が要る。
ディープキス ――\1000.
それだけの価値があるような気がする。

「…ん」
2人は瞼を閉じた。
甘い吐息を掻き分けて少女の唇を割れば、小さな舌が滑り込んでくる。
そして呑めといわんばかりに唾液を絡める。
息を交わす事さえ現実離れして思える美少女の唾液。
それははっきりと感触を残して臓腑を流れ、鈴口から噴出しそうな熱さになる。

誰もがそうなるように、圭介が官能的な口づけに酔ったとき、

「おい、そこのてめぇ!」

突如、無粋な声がその甘い時間を打ち砕いた。

「てめぇ…女に躾けられて喜んでやがんのか!」
怒声に振り向き、2人は表情を強張らせる。
冷徹な目、鍛えた者特有の肉付き。
剣呑な雰囲気の男が圭介を睨みつけていた。

「男の恥がッ!」
男は荒々しく近づいて圭介の胸倉を掴み上げ、顔面をいきなり殴りつける。
「ぐあっ!!」
圭介は雪の上に倒れこんだ。
「ちょっと、お客様に何するんですかっ!」
奈緒が男にしがみつくが、振り払われる。
同時に蹴りを入れられて圭介が呻く。
「気に入らねぇ!てめぇみてえなのが居っから女が調子づくんだろうが!!」
男は圭介をゴミのように蹴りつける。路地に悲痛なうめきが響く。

奈緒は慌てて携帯を取り出した。店へ緊急の電話をかけるためだ。
しかしふと硬直した。
電話をかけている場合だろうか?
店に電話をすればそのうち助けが来るだろう、しかし事は一刻を争う。
圭介は今殴られているのだ。
地面に丸まり、髪を乱して泥まみれで。
平気か?そんな筈がない。口の端から血が出ているのだから。
「うあっ!!」
圭介が叫んでいる。

奈緒は静かに携帯を閉じた。そして男に歩み寄り、いかつい肩に手を置く。
「あ?」
男が不機嫌そうに振り返る、その瞬間。

乾いた音が響いた。

男は何が起こったのかとしばし呆け、そして怒りに目を見開く。
奈緒が頬を張ったのだ。
その事実がプライドを傷つけたらしい。
「て…めぇ、男の面に手ぇ上げやがったな!!」
男は圭介を投げ捨てて奈緒に飛び掛る。
「奈緒…!!」
圭介が声を上げる。
少女は彼にちらりと視線をやりつつ、素早く後ろへ跳んだ。

掴みを跳んでかわされ、男はたたらを踏んで少女を睨む。
彼はそこで初めて奈緒の美貌に気がついたらしい。
視線が輪郭線を辿っていく。
片腕で抱けるほどの腰つき、すらりと細いが腿には柔らかく肉の乗った脚。
男の目つきが変わる。

「へっ…ガキみてぇな顔の癖にカラダだけはエロくしやがって。
 いいぜ、野郎は用済みだ、代わりにお前で遊んでやらぁ。
 気ィつけろよ?たまってっから挿れたら最後、孕むまで抜かねぇぜ」
下劣な視線。
奈緒はそれを忌々しげに睨み返す。
「あら、ご予約ですか?私結構高いんですよ、あなたに払えます?」
奈緒の挑発に、男は笑みを深めた。
「ああ、釣りは結構だぜ」
すぐにでも押し倒せる。そう確信している目だ。

実際喧嘩慣れしているのだろう、男は軽快に体を揺らし始める。
だが彼は気付いたろうか。
少女の構えもまた、実戦を知るものであることに。


「おらあっ!!」
男がフックを振り回す。
奈緒はそれをかわし、スカートを翻して長い脚を振るった。
それは鞭のようにしなって男の頑強な大腿に吸い込まれる。
ばちっと静電気のような音がした。
「へっ、所詮は女だな。てんで威力が――」
男がそう呟いた直後、その太股を針が刺すような痛みが襲う。
「ぐうっ!?」
男はわずかにぐらついた。

「あれ、どうかしたんですか?」
奈緒はとんとんと軽く跳びながらわざとらしく問うた。
男はそれに明らかな苛立ちを見せた。
「ッのクソアマがァ!!」
男は今度は蹴りを放つ。丸太のような脚から放たれる重い蹴り。

だが奈緒はそれを読みきっていた。
膝蹴りで相手の蹴り足の腿を弾き、身体が離れたところで膝を引き付ける。
その引き付けを解けば、しなやかな脚は鎌のように、相手の軸足を内から刈った。

男は空中でもがいて腰から墜落する。
「がああああッ!あ、っああ゛!!」
倒れると共に、彼は火傷をした時のように内腿を払い始めた。

ざくっ。

もがく男の頭上に脚が踏み下ろされる。
見上げれば、そこにはすらりとした美脚が天高く男を跨いでいた。
「効いちゃいました?一応手加減はしたはずですけど。」

睨み上げる男を奈緒が見下す。
「そんなに怒ることですか?私のこの脚で蹴られたがるお客様は多いけど、
 皆さん笑って下さいますよ」
それなのにお前は。
奈緒の目は明らかにそう言っていた。

「な…めやがってっ!」
男は奈緒の脚を掴もうとするが、それも当然読まれている。
「あら、ノーチップのお触りは厳禁ですよ」
奈緒は鹿のように跳ねながら横たわった男の脚を蹴り上げる。
その痛みで男は飛び起きた。



何分が経ったろう。いや、何分しか経っていないだろう。
男はまだ立っていた。しかしその足は瘧にかかったように震えている。
おそらくズボンの内側は真っ赤に腫れ上がっているのだろう。
「ぐ…うう…」
歯を喰いしばっている事からも限界が窺えた。
奈緒は跳びながらその周りを廻る。

と、男がふいに構えを解いて腕を下げた。
疲労が構えを許さなくなったのだろう。奈緒はそう踏み、決着に向かう。

しかし男の脱力は罠だ。
奈緒が射程圏内に入った瞬間、でたらめな軌道で手を伸ばす。
それが奈緒の襟元を掴んだのは偶然か、執念か。
奈緒がしまったという顔になる。

「貰った!!」
そしてついに渾身の右ストレートが、奈緒の顔をまともに捉えた。
鍛えに鍛えた腕力の結実。手応えは凄まじい。
鮮血が噴き出す。

「はははは、ざまあ見やがれえぇ!!」
男は仰け反る少女の白い喉に歓喜を浴びせた。
牛を打ち倒したかのような裏声での歓喜を。

しかし、直後に凍りつく。

「痛…ぁい」
奈緒は頷くように首を戻した。小さな鼻が潰れている。
鼻血を切って少女は続けた。
「…私だって、ただの女なんですよ。殴られたら痛いし、血だって出る。
 女の子なんですよ?
 ……なのに、ひどい。鼻がこんな……」
燦爛と輝く瞳が男を飲み込む。

男は凍りついていた。
あどけない少女の瞳、その筈なのに、なぜ氷よりも冷たく見えるのか。

「………っくも、よくも、 よ く も 圭介さんの前でっ!!!」

直後、奈緒の脚がチアガールのように跳ね上がる。
蹴りは男の股座へ綺麗に叩き込まれた。
これはさすがの男もたまらない。

「うおおおおっっ!!!!」

耳をつんざく絶叫と共に股間を押さえる。
だが奈緒は逃げることを許さなかった。
単純な腕力。
それでもって男の手をこじ開け、震える股をふたたび蹴り上げる。
柔らかい睾丸の感触が解るほどに、強く。

「ぐあああああううおおおおおおッッ!!!!」

男は片足を上げて叫び悶えた。


睾丸を蹴られる。その背筋を凍らせたまま引き裂かれるような恐怖が男を変えた。
他の場所なら耐えられる。
だがその一点だけは絶対に虚勢を張れない。
どんな雄でも絶望に塗りつぶされる。

それを誰よりも知りながら、奈緒はさらに玉袋を狙う。
三度目の玉蹴り。

「ひ、ひぃ、いい!この、あ、あ悪魔め!!」
男は滝のような汗をかきながら阻止しようと踏ん張る。
少女の首を捉え、膝を閉じ合わせて。
だが少女はそれらを力づくでこじ開けはじめた。
男は恐怖した。
力こぶも盛り上がらない細い腕なのに、観賞用のような脚なのに、まるでヒグマとの力比べだ。

「……ぃ、ひやめろぉ…!!」
男は先ほどまでとは打って変わって脚を奮わせる。
顔などもう捨て犬だ。
「あら、ご自分で止めてみせたらどうです?本気を出して」
とうに本気であることを知っていて奈緒が囁く。
彼女はじわじわと男の足を開いていく。

開ききれば絶望。
そんな危機的状況ながら、男はその脚に見惚れた。
肉付きのいい桜色の綺麗な脚。
同じ後肢という部位ながら、男のそれとは質も値打ちもまるで比にならない脚。
なるほど金を出してでも嘗めたりしゃぶったりしたくなるわけだ。

「ふふっ」
奈緒が笑うのを聞き、男ははっとした。
勃起している。
少女と力比べをしているだけで。
力が緩まった瞬間、するっと少女の足が男の脛を滑りあがり、玉袋へ捻りこまれる。

「あ、あ゛ぁああああ゛っっーー!!」
男の腰は力なく落ちかけた。
しかし、まだ終わらない。奈緒がその腰を抱え上げる。
「ねぇ、いいコト教えてあげます」
奈緒は満面の笑みで言った。
「あなたが男の恥って罵った圭介さんはね、今この金蹴りを16発耐えますよ。
 あなたそれ以上なんですから、20発くらいは大丈夫ですよね 」

男は真っ青になって縮み上がった。


「いだあ゛ああ゛あ゛あ゛あ゛いぃっ!!」

男は幼子のような情けない口調で叫びまわった。
本当の恐怖を感じた人間とはそうなる物なのだろう。
「ははっ、きたない声。せめて圭介さんみたいに可愛く鳴いてくださいよ」
少女がまた蹴り上げながら言う。

男も少女も滝のような汗をかいていた。雪景色の中にそこだけ湯気が立ち上っていた。
それほどの激しい動き。だが状況は一方的だった。

少女が足の甲で男の急所を蹴り上げる。
男は痛みにのたうち回り、涙ながらに足をばたつかせる。
少女がその足を巧みに払いながらまた膝で玉を抉る。
男が自重と反射で倒れ込もうとするが、それさえ少女に引き起こされる。
それが延々と続いていた。

何度も蹴りが入るうちに男のズボンのボタンは取れ、トランクスから勃起しきった逸物がはみ出ていた。
そのむき出しになった部分を少女の蹴りが襲う。
男からまさしく断末魔というべき低い叫びが迸る。

「ねぇ、ぬるぬるしたのが膝に当たって気持ち悪いですよ? おフロぐらいちゃんと入ってください」
少女は亀頭を膝で潰しながら言う。
亀頭は興奮で真っ赤になり、その先端からは先走りの汁が粘液となって糸を引いていた。
無理もない。
目の前で美少女がスカートを翻し、瑞々しい脚を惜しげもなく晒して急所を蹴り上げる。
体中に汗をかき、甘くも酸い少女の香をこれでもかと立ち昇らせてだ。
それで勃起しない人間が何人いるだろう。

「20!あん、タマ外しちゃった。こんな腐ったシイタケ、触りたくもないのに」
少女の膝が精線をしごき上げ、すぐに20数回目の蹴り上げが男の玉袋へ叩き込まれた。

尿意。便意。頭痛。それらの一年分を一刻に凝縮した極感が迸る。

男は白目を剥いた。
同時に亀頭がくっくっと2回震え、鈴口が開いた後、 突如噴水のように白濁が噴き上がる。
熱いそれは少女のあどけない顔へと降りかかった。

「うっ…。…もう、最後までほんとに最低ですね!」
少女は気絶した男を突き飛ばし、痙攣しながら萎んでいく剛直をさも汚そうに踏みつけた。


「へぇ…。孕ませるだとかお釣りだとか、嘘ばっかりだったけど、
 溜まってるっていうのだけは本当だったんですね」
奈緒は失神した男の下半身を剥き、中央にそそり立つ逸物を素足で弄くりながら呟いた。
裸の男を踏みつける少女。
これ以上なく明確な征服の図だ。

少女の足技はよほど巧みらしく、男は失神しながらも何度も精を飛沫いては腹にぶちまけていた。

「足コキは4000円なので、それも合わせて頂いておきますね」
少女は男を踏みつつ彼の革財布から万札を抜き取る。
と、その動作を止める手があった。

「もういいよ」

圭介だ。彼は首を振って財布を投げ捨てる。
奈緒は目を丸くした。
「え…だ、だって、圭介さんにあんな事したひとですよ!?」
「うん、でももう十分だ。ありがとう」
圭介は奈緒を見つめて言う。
すると奈緒は慌てて顔を逸らした。
「……鼻のこと?」
少女は頷く。
「大丈夫だよ、すぐに直る」
「い、いや、直るとか、そういうことじゃなくて、ですね……」
奈緒は恥ずかしそうに鼻を隠した。
「ふっ…あはは」
その時、圭介が突然笑いだす。奈緒は怪訝そうに首を傾げる。
「…あのね、考えすぎだよ。僕なんかしょっちゅう君にボコボコにされてるじゃないか。
 奈緒はそんなボロボロの顔を見て、僕を軽蔑する?」
少女は目を丸くした。
「…あ……!」
そして様々な事に安堵したのか、圭介の肩にとんと頭を預ける。
圭介は汗に濡れたその髪を優しく撫でた。


ひとしきり甘い時を過ごした後、2人はまた寄り添って歩き始める。


「ねぇ圭介さん。本当のところ…どうして殴られっぱなしだったんですか?」
「え、何のこと?」
「ごまかさないで下さいよ。圭介さんが経験者だってこと、ちゃんと解りますよぉ。
 …まぁ、殴るより殴られる方がましだー、とか、そういう事でしょうけど」
「あはは。そういうことにしといてよ」
「…ふぅ。ま、そういうことにしておいてあげますよ。
 ……これからも、ずっと、ずーっと……。」

幸せそうに笑いながら聖夜の街中へ消えていく。


後にはただ、自らの白濁を浴びたまま泡を噴いて気絶する男が残るのみだった。
せめてもの情けに、ハートの刺繍がされたセーターを掛けられて。


                      終
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