大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

調教

二度と出られぬ部屋 第五章 “先生”

※実に4ヶ月ぶり……遅くなってすみません。本当にすみません。ようやっと復活しました。
 今回は処女ビッチとのイチャラブ回中心。残りはあと1話+エピローグです。




■第五章 “先生”


 レストランでの食事は、相変わらず味がしなかった。あの日エレベーターで居合わせた5人娘のうち、4人の崩壊を目の当たりにした。その後味の悪さが、味覚を邪魔している。
 ボーイッシュな祐希。天使のような千代里。大和男児の魂を持つ藤花。大和撫子そのものの桜織。どの娘も気高く、眩かった。ケダモノ共に掴まりさえしなければ、どれだけ輝かしい未来が待っていたことだろう。
 後はあの、小悪魔じみた雰囲気を持つ少女のみ。彼女もどこかで凌辱を受けているんだろうか。いや、間違いなくそうだろう。類稀な美少女5人の中でも、一際目を引く容姿だ。ケダモノ共に放っておかれる筈がない。
 と、ここで俺は、逸物が頭をもたげている事に気がついた。
「……嘘だろ」
 思わず一人ごちる。
 興奮しているのか? あの少女の陵辱シーンを想像して? ……有り得ない。4人の少女が犯されるところを見て、あれだけ胸が痛んだんだ。その俺がなぜ、畜生の行為を夢想して興奮するんだ。だが、現に俺は勃起している。血の巡った亀頭部分が石のように硬くなり、ズボンのチャックを押し上げている。
 異常だ。だが思えば、初日からそうだった。エレベーターであの子を見た日から1週間近く、猿のように自慰に耽ったのを覚えている。あの小悪魔じみた少女には、尋常でなく心を揺り動かされるらしい。
 確かに格別の美少女ではあった。極上のスタイルで、“そそる”のは間違いない。だがそうだとしても、まだ熟してもいない未成年の小娘一人に、ここまで執着するなんて。
 彼女は今、どこでどうしているんだろう。
 俺はベッドに横たわってからも、次の日に目覚めて朝食を摂る間も、ずっとその思いに囚われていた。

「お早うございます」

 俺の思考を途切れさせたのは、端塚の声だ。奴はいつも通り、白髪混じりの頭を深々と下げる。最初こそ面食らったものの、今や疎ましい日課でしかない。その礼を見た後には決まって、見知った顔が泣き叫ぶ場面に出くわすんだから。
「昨日は、地下18階に居られましたな。あそこの調教は見応えがあったでしょう。女という生物は、ああして繰り返し絶頂させられ、オルガスムスの波に溺れれば、たちまち一匹の豚に変わるのです。蝶よ花よと大事に育てられた娘ほど堕ちやすい。元が白い布ほど、泥へ浸せば汚れやすいように」
 端塚は得意げに語る。罪も無い少女を不幸のどん底に突き落とし、なお恍惚の表情を浮かべる神経は、俺には到底理解できない。
「実に悪趣味だったよ、反吐が出るぐらいにな。大体、快楽に溺れるというなら、男の方はどうなんだ。あれこそまさに、堕落した豚だろう」
 俺がありったけの敵意を含ませて言い放つと、端塚の表情が強張った。雰囲気も変わったようだ。
「……本気で、仰っておられるのですか?」
「本気だ。俺に、ああいうもので喜ぶ趣味はない!」
 不穏さを感じながらも、はっきりと拒絶の意思を示す。答えをはぐらかし、奴らのペースに流されてはいけない。俺の中の何かがそう訴えていた。
 端塚の表情は複雑だ。敵意や憤りよりも、落胆の色が濃いように見える。だとするなら、奴は俺なんかに何を期待していたんだ。
「変わってしまわれましたな」
 皺を波打たせながら口が動き、そんな言葉が吐き出された。変わってしまった……過去の俺を知らなければ出てこない言葉だ。やはり、俺とこいつには過去に接点があるのか。
「致し方ありません。こうなったからには、極限状況下での覚醒に賭けるとしましょう」
 端塚はそう言って、パチンと指を鳴らす。すると壁際に控えていた数人のセキュリティーが一斉に動き出し、瞬く間に俺を包囲する。明らかに俺を捕らえようとする動きだ。
「なっ……どういうつもりだ!?」
 端塚に問うも、返答はない。代わりに眼帯で覆われていない右目が、レストランの入口を指し示す。
「くそ……っ!」
 逃げ場を塞がれた今、選択肢などない。セキュリティーに包囲されたまま、エレベーターでフロアを移動させられる。
 行き先は、一つ上のフロアだ。

              ※

 地下19階……そこは、異様だった。他のフロアであれば、エレベーターから出た場所にはまず高級ホテルさながらの煌びやかなエントランスが広がり、その奥は壁で仕切られている。その壁にたった一つ設けられた扉を開けば、ようやく阿鼻叫喚の地獄に辿り着く。そういう構造だった。
 だが、ここは違う。エレベーター前は停電でもしているように暗い。そしてその闇の向こうには、逆に煌々と照らされた空間が広がっていた。ライトアップされた生活感のない部屋にベッドやテーブルが並んでいる様は、ショールームを思わせる。眩い部屋とこちらは、透明なガラスで仕切られているらしい。
「お召し物をここへ。時計なども全てお預かりいたします」
 端塚がバスケットを床に置く。服を脱げというのか。承服しかねる横暴だが、やはり拒否権はない。
 生まれたままの姿になった俺の前で、明暗を隔てるガラスの一部が開かれる。
「では、ごゆっくり……」
 端塚の言葉と共に、俺の体はガラスの向こうへと放り込まれた。
 背後で入口が閉じられる。慌てて振り返ると、そこには巨大なミラーが広がっていた。一糸纏わぬ男が、膝立ちになって映り込んでいる。外からは中が透けて見えたんだから、マジックミラーというやつか。
 背後だけじゃない。四方の壁もすべて鏡張りだ。天井の過剰な照明がミラーに反射していて、ダイアモンドにでも閉じ込められている気分になる。上を向いていると頭がクラクラしそうだ。

 部屋そのものは、少々広さのある独房という感じがする。中央にベッドが鎮座し、その近くにテーブル1つと椅子2つ。東の壁際に木製の棚。西の壁際には簡素な洗面台と洋式便器が設けられ、北西の隅にはシャワーと排水溝。あるものといえばそれぐらいだ。
 調度品はほとんどが簡素だが、ベッドだけは立派だった。大人2人が余裕をもって寝られるクイーンサイズ。ボードは赤で、シーツはピンクだ。掛け布団は見当たらない上に、シーツはマットレスに固定されている。休息用の寝具ではなく、セックスを前提とした舞台装置ということか。であれば、ど真ん中に鎮座しているのも頷ける。
「ふざけやがって……」
 俺がぼやきながらベッドに近づいた、その瞬間。ベッドの向こう側……俺からも外からも死角になる場所で、何かが動いた。あれは、人の素足か。
「誰かいるのか!?」
 そう呼びかけると、足の指がピクリと反応する。俺はその相手とコンタクトを取るべく、また一歩ベッドに近寄った。だが。
「来ないでっ!!」
 響き渡ったのは、拒絶の言葉。声の感じからすると女だ。それも相当若い、ティーンだろうか。そんなことを考えている間に、ベッドの陰から顔が覗く。
「あっ!?」
 思わず声が出た。
 あの子だ。
 エレベーターでの一瞥で俺の心を惑わした、淫魔を思わせる少女。涼やかな目元、形のいい鼻、薄く血色のいい唇、すっきりとした顎のライン……どれもが脳に焼きついた情報と合致する。
「あんた、あの時の!」
 向こうも俺の顔に覚えがあるらしい。互いに見知った仲というわけだ。だが小悪魔じみた吊り気味の瞳は、安堵するどころかむしろ警戒の色を強めた。
「あんたもココの連中の仲間だったの!? 私をこんな所に閉じ込めて、何するつもり!?」
 敵意を込めて叫びがぶつけられる。どうやら誤解を受けているらしい。
「違う! 俺もいきなりここに閉じ込められたんだ。施設側の人間じゃない!!」
 必死に弁明するが、相手の警戒は解けない。年頃の少女がいる部屋に、丸裸で侵入した男──それが不審者めいているのはわかる。だが、俺に責があるわけでもない。
 互いに沈黙したまま睨み合い、一分も過ぎようかという頃だ。天井近くに設けられたスピーカーから、ザザッというノイズが漏れた。

『御機嫌よう、お二方。居心地は如何ですかな?』

 端塚の声が聴こえてくる。いきなり裸で放り込んでおいて、居心地も何もあるか。
「良いわけないでしょ! ってか、この部屋なんなの!?」
 例のあの子も声を荒げる。するとその問いに答えるかのように、またマイクのノイズが走った。

『そこは……“セックスをしたら最後、二度と出られぬ部屋”です』

 予想外の答えに、俺達は固まった。
「え……?」
 今、何て言った。セックスをしたら最後、二度と出られぬ部屋……?

『お二方には、そこでしばし共同生活を送っていただきます。その間一度も性交渉がなければ、解放して差し上げましょう。逆に一度でも性行為が認められれば、二度と外に出る事は叶いません。オスとメスに成り果てるも良し、苦境を耐え凌ぐも良し。選択はご自由に……』

 その宣言の後、ブツッという音を最後にマイクのノイズが消える。
「ま、待て! いつまでここに閉じ込める気だ! おい!!」
 外に向けて叫ぶが、返事はない。こっちの声が届いていないのか、あるいは聴こえているのに答えを寄越さないのか。

 密閉された空間に、静寂が満ちる。
 …………いや、違う。音は微かにしている。シューッという、ガスの漏れるような音が。静まり返った状況でないと聴こえない音量な上に、抑揚やリズムがないから判りづらかっただけだ。
 音の出所は、スピーカーと同じく天井近くらしい。細いパイプからドライアイスのような気体が噴き出しては、空気中へ拡散していく。その光景には見覚えがあった。桜織がプレイルームへ連れ込まれる前、50人の肉体労働者の逸物をしゃぶらされている時に見たものだ。

『煙っつうか、ガスだな。ま、媚薬の類と思えばいい。シャブみてぇに即効性はねぇが、このガスを吸い続けりゃ、どんな人間でも確実に色狂いになる。神経をやられて、男なら女を抱くこと、女なら男のイチモツにしゃぶりつくことしか考えられなくなる』

 手越の言葉を思い出す。そして同時に、その後の光景も。
 嘘じゃなかった。あの清楚な桜織が、恥垢まみれの逸物を舐めしゃぶるだけで愛液を滴らせ、純潔を失ったばかりのセックスで何度も達していた。あんな事は、薬か何かで理性を狂わされない限り起こりえない。
 悪趣味なことだ。あのガスをたっぷりと吸わせて、閉じ込めた人間を発情させる。その上で“セックスをしたら最後、二度と出られない”という制約をつけ、実験体が理性と衝動の板挟みで苦しむ姿を愉しもうというわけか。
 これまでのパターンからすれば、じきにマジックミラーの向こうに変態客が招き入れられ、こっちを観察しはじめるんだろう。その中には、ここ数日で顔を合わせた人間がいる可能性も高い。
 堕ちる祐希を眺めていた時、周りでニヤけていた連中。
 苦しむ千代里を見ていられず、一悶着起こした相手。
 藤花の被虐シーンに動揺する俺を目撃した客達。
 桜織の崩壊をモニタ越しに眺める部屋の同席者……。
 あんな外道共に、苦悶する姿を観察されるのか。そう思うと腸が煮えくり返りそうだ。
 だが、煮えくり返りそうなのは腸ばかりじゃない。そこよりやや下……男の象徴もまた、熱と共に硬さを増してきている。この部屋に入ってから僅か数分で、早くもガスが効いてきたらしい。桜織という前例を見て、頭では理解していたつもりだったが、いざ自分で体験すると恐ろしいものだ。

 果たして俺は、この出口の見えない地獄に耐えられるんだろうか。


              ※


 閉じ込められてから、どれぐらい経ったんだろう。この密室に時計はないし、腕時計も取り上げられているから、正確な時間を知る術はない。ただ、1秒1秒ははっきりと感じられる。どくん、どくん、と秒刻みで鼓動が響き渡るからだ。
 天井から噴き出すガスは、着実に俺に効いていた。刻一刻と動悸が早まり、汗が滲む。睾丸がむず痒くなり、射精管が疼く。逸物は何の刺激もなしに勃ち上がり、石のように硬くなっている。オスとしての機能が目覚めているのは、今更疑う余地もない。
 俺を狂わせる材料は、ガスの他にも存在する。壁際の俺から数メートル離れた豪奢なベッド……その陰に隠れる形で座り込む娘の存在だ。
 彼女はベッドに背を預ける形で膝を抱え、俯くかこっちを睨むかを繰り返している。俺のことをかなり警戒しているようだ。
「……ちょっと」
 その彼女が、ベッドの端から憮然とした表情を覗かせた。俺はその表情を見てハッと息を呑む。老若男女誰であれ、敵意を露わにした表情は醜く見えるものだ。だが、彼女はキツい表情でも不快感がない。まるで一流の彫刻のような、信じがたいほどの美貌だ。
「なんだ」
「トイレ行くから、下向いといてよ」
 なるほど。見た目は芸術品のようでも、やはり生理現象はあるらしい。普通なら後ろを向けと言うところだが、四方を鏡で覆われたこの部屋では、結局鏡越しに見えてしまう。だから床を見ていろというわけだ。
「顔上げたら殺すから」
 そう念押ししてから、彼女はゆっくりと立ち上がる。その瞬間、“みちゅり”という微かな音が聴こえた。水気のある音。汗で床に張り付いた尻肉が離れる時のものか。そう理解した途端、逸物が大きく脈打つ。睾丸が収縮し、硬い棒が上下する。まるで思春期の中学生だ。
 その中学生さながらの欲望に抗いきれず、少し目線を上向ける。
 俺に背を向ける形で歩く彼女の、太腿から下が視界に入った。まさにモデル級の脚線美。この数日で裸体はいくつも目にしたが、その記憶が消し飛ぶほどのインパクトがそこにはあった。やっぱり、彼女は別格だ。男の情欲を問答無用に掻き立てる淫魔だ。
「ふう……んっ」
 その淫魔が洋式の便器に跨り、小さく息む声が聴こえてくる。そしてその直後、じょぼぼぼ、という音が響いた。所詮はただの排尿だ。だがそれが、俺の性欲を刺激する。背筋にぞわりとした興奮が這い上る。

 ( ──子供相手に何を考えてる。落ち着け、自我を保て! )

 そう自分に言い聞かせるが、興奮は収まりそうにもない。
 用を足し終わったあの子が立ち上がり、ベッドの方へ戻っていく。とてもティーンエイジャーとは思えないスタイルを覆い隠すのは、彼女自身の両手のみ。固定されたベッドシーツを始めとして、この部屋では体を隠せる類のものは徹底して排除してある。あくまで互いの肉体を意識させ、セックスに誘導しようということか。悪趣味なことだ。

 それから、さらに経ったころ。東側の壁で物音がした。見ると、ミラーの中央部分が小窓のように開いている。そしてその僅かな隙間から人の腕が覗き、食器を載せたトレーが棚に置かれた。
「お食事です。食器とトレーは、棚の上にご返却ください」
 トレーを差し入れた人間は、そう言い残して小窓を閉じた。
 献立は、グリーンピースが乗ったオムライスに、付け合せのポテトサラダとコーン、そして大きめの器に入ったオニオンスープ。桜織が食わされていた物よりは随分と真っ当だ。
 腹も減っているし、早くありつきたいところだが、その前に問題がある。部屋にテーブルが一つしかないことだ。
「言っとくけど、一緒に食べるとかありえないから」
 小悪魔じみた少女は、冷ややかな目でそう告げた。まあ確かに、狭いテーブルで向かい合って食事ができるほど親密でもない。
「俺は床でいい。テーブルを使え」
「へっ!?」
 俺がトレーを手に胡坐をかくと、切れ長の目が縦に開く。多分、テーブルの取り合いになることを覚悟していたんだろう。
「ふ、ふーん、そ。じゃ、遠慮なく」
 そう言って足早にテーブルへ向かう彼女の声は、ほんの少し柔らかいように思えた。

 気前良く譲ったのはいいが、やはりスープつきの食事を膝に乗せての食事は不自由だ。床に座り込んだ俺の食事は、さぞ不恰好なことだろう。それを見かねてなのか。
「え、……っと、さ」
 上空から、戸惑いがちな声がする。顔を上げれば、小悪魔娘が開いた口の手前でスプーンを止め、俺を見下ろしていた。
「その、やっぱ、一緒でいいよ」
 そう言って皿を引き、テーブルの片側にスペースを作る。有り難いことだ。

 正面に座ってそれとなく観察してみると、彼女は見た目こそ今時の女子高生という感じだが、食事マナーはちゃんとしていた。スプーンで物を掬い、口に運び、咀嚼し、飲み込む。その一連の所作は令嬢のそれだ。
 ただ、全てが完璧なわけじゃない。オムライスの頂点に乗っていたグリーンピース3つが、さりげなく皿の端によけてある。なんでも残さず食べる、という流儀ではないらしい。
 ……あまり見るものでもないか。彼女に不審がられるのもあるが、俺自身が妙な気分になる事の方がまずい。今の俺は、性欲が芽生えたての中学生も同然だ。顔立ちの整った少女が、物を口に運び、咀嚼する……その様子を見ているだけで、逸物がいきり勃ってしまう。硬くなった物の先は斜め上方向に反り返り、常にテーブルを押し上げている始末だ。いよいよ、やばい。
 その発情ぶりは、食事が済んでも収まらなかった。風船のように膨らんだ性器の内で、沸騰した血が氾濫している。桜織のケースと同じく、食事に何かが盛られているのかもしれない。
 俺はこのザマだが、彼女はどうなんだろう。彼女もこの密室の中でガスを吸い、俺と同じ食事を摂ってるんだ。何らかの変化があってもおかしくない。そう思って意識を向けると、彼女にも異変が起きていることがわかる。息が荒い。汗の量が尋常じゃない。胸の先がかすかに尖っている。それらの特徴は、あの4人の少女達が昂ぶった時のそれと同じだ。
 そして、二回目の食事を受け取りに行く最中、俺はさらに決定的な異変を目にした。愛液だ。すらりとした脚の内側を、透明な雫がいくつも伝い落ちている。彼女の歩いた後に点々と残っているんだから、見間違えということはありえない。
「ジロジロ見ないでってば!」
 彼女は俺を睨みながら叫んだ。その目尻には涙が滲んでいる。彼女もつらいんだろう。意思とは無関係に発情し、おまけにそれを見知らぬ男に見られてしまう。年頃の少女にとっては、耐えがたい恥辱に違いない。
「すまん」
 俺は相手から視線を外し、テーブルでの食事に専念する。最悪、という小さな呟きを耳にしながら。
 ああ、最悪だ。良識ある大人であれば、未成年の裸を興味本位で眺めたりはしない。上のフロアでひしめいている外道共を笑えない。俺は自分にそう言い聞かせ、できうる限りの自制を試みた。
 だが、興奮は収まらない。鉄の棒のように硬くなった逸物の先からは、とうとう先走りの汁まで溢れはじめている。
 
 (なんだ、この反応は。そうまでしてあの子を抱きたいのか。孕ませるつもりなのか。この畜生め!)

 俺は自分が恨めしくなり、膝を抱える手の甲に噛みついた。強烈な痛みが走り、ほんの少し気が紛れる。だが、あくまで少しだけだ。2秒もすれば、また鼓動が俺を支配する。原始的な欲求が、下半身の先端で力強く脈打つ。

 暑い。

 熱い。

 汗が止まらない。
 雄の匂いが身体中から立ち上っている。

 痛い。逸物の表面が痛い。
 射精管が灼ける。睾丸がはち切れる。

 狂いそうだ。

 密室の中、足元から徐々に水位を上げてきた“苦痛”は、今や顎の上に差し掛かっている。気を緩めればすぐにでも溺れかねない量だ。
 俺は、随分とそれに抗ったと思う。正確な時間などは知る由もないが、食事が7回差し入れられるまでは耐え抜いた。だが、8回目。音をきっかけに、高熱にうなされるような状態で配膳場所へ向かった直後、それは起きた。
 普通であれば何でもないこと。トレーを掴もうと差し出した俺と彼女の手の甲が一瞬触れただけの、ごく小さな接触。その瞬間、痺れるような感覚に襲われた。皮膚の内側にビリビリと電流を流される感じだ。そしてその感覚は、ダイレクトに俺の脊髄と下半身までを貫いた。
「な、何……?」
 不審がる声に、俺は横を見やった。そこにあるのは、俺と同じく、熱に浮かされた顔。汗が浮き、頬が上気して……いやらしい。

 気付けば俺は、彼女を床に押し倒していた。
 実は、あまりこの瞬間の記憶がない。いつの間にか床に這う格好を取り、彼女を組み敷いていた。
「ハア、ハア、ハアッ……!!」
 自分の呼吸音が煩い。両腕の下から甘酸っぱい香りが立ち上ってきて、硬くなった逸物に血管が浮き立つ。若々しい肌も、腕を掴み上げる事でとうとう拝めたピンクの乳輪も、堪らなく興奮を煽る。気が強そうな顔だって、こうなってしまえば追い込まれた兎も同然だ。俺は妙な充足感に酔いしれながら、両腕に力をこめた。
「いや、ぁ……!!」
 少女の表情が恐怖に凍りつき、涙を湛えた目尻から、一筋の雫が伝い落ちる。
「!!」
 それを見た瞬間。さっ、と血の気が引いた。一瞬遅れて、自分のしている事に気がつく。
 何をしてるんだ、俺は。欲望のままに女を押し倒し、犯すつもりか? 獣のように?

『ヒトとしての心は、無くすなよ。絶対にな』

 いつだったか、電話越しに聞いた言葉を思い出す。
「があ゛ぁっ!!」
 俺は喚きながら、自分で自分の頬を殴りつけた。その衝撃は思った以上に大きく、体勢を崩して床を転げ回る。這う格好で動きを止めた時には、口一杯に鉄の味がしていた。だがその甲斐あって、少し冷静さを取り戻せたようだ。唖然とした表情で見下ろす全裸の少女を前にしても、本能のままに貪ろうとは思わない。
「す、すばん……」
 口から血を滴らせながら一言詫びを入れ、深く頭を下げる。
 あの子は何も言わず、俺が頭を下げる動きに反応して、怯えるように足を閉じた。彼女からすれば今の俺は、狂人以外の何者でもないだろう。


              ※


 また、退屈な時間が過ぎていく。
 以前との違いは2つ。1つは、自分で殴った右頬がジンジンと痛むこと。そしてもう1つは、例の彼女との物理的な距離だ。
 彼女は今、ベッドに背を預け、俺の方を向いている。
 あんな事があった後だから、俺は彼女の方を向かないようにしていた。だが彼女の方は、時々俺の顔を盗み見ているようだった。怪我の心配でもしてくれてるんだろうか。
 いや、それは都合良く考えすぎだ。ガスで発情させられたとはいえ、自分をレイプしようとした相手の身を案じる道理はない。奇行を重ねた俺を警戒しているからこそ、俺を正面から監視しているんだろう。
 俺にできるのは、耐え忍ぶことだけだ。己の中の本能を抑えつける。何日でも、何週間でも……。

「ねぇ。あんたさ」
 そう声を掛けられたのは、唐突だった。
「え?」
 想定外の事に、間の抜けた声が出る。すると彼女の口元が、ほんの少し斜めに歪んだ。だがそれもほんの一瞬で、すぐにまた表情が引き締められる。
「あんた、名前なんていうの?」
 尋ねられたのは俺の名前。興味を持ってくれたことは嬉しいが、残念ながら答えようのない質問だ。
「わからない。地下に来るまでの記憶がないんだ」
 正直にそう答えると、彼女は目を見開いた。
「……マジ?」
「ああ。自分が誰なのか、何の為にここに来たのか。何もかもサッパリだ」
「そう、なんだ……」
 彼女はそう言って、何か考え込む素振りを見せた。俺の言葉を疑っているのか、それとも何か思うところがあるのか。
 いずれにせよ、この会話の流れは貴重だ。俺の方としても、彼女の名前ぐらいは知っておきたい。
「名乗りもせずにあれなんだが……そっちの名前も、聞いていいか?」
「ん? 別にいいけど、たぶん聞かないほうがいいと思うよ」
「え、なんでだ?」
「聞いたら、皆ドン引きするから」
 そう答える彼女は、不思議な表情をしていた。どこか投げやりな目つきだ。
「ま、でもいっか。私の名前は、沙綾香。で、苗字は……」
 彼女──沙綾香は、そこで一旦言葉を切り、意味深に溜めてからこう続けた。
「『八金(やつがね)』」
 満を持して明かされた苗字は、不思議な響きだった。記憶が朧な俺でも、それがありふれた姓でないことは解る。
「ヤツガネ……? 変わった苗字だな」
 俺が思ったままを口にすると、沙綾香が目を丸くした。
「反応うすっ!」
 素っ頓狂な顔から、それに見合った声が発される。どうやら彼女は、もっと大きなリアクションを想定していたらしい。
「な、なんだよ……そんなに有名なのか? その苗字」
「いやいや、有名とかってレベルじゃないから。戦前から続く財閥だよ? おっきい銀行とか証券会社とか外食チェーンとか、みーんなウチの系列なんだから!」
 沙綾香は、腕を目一杯に広げて企業の規模を示してみせた。目を見開き、両手を上げて威嚇するその様子は、直立する猫を見ているようで癒される。
 ただ、そこには癒しだけじゃなく、いやらしさもあった。興奮のあまり、それまで頑なに胸をガードしていた腕が外れてしまっている。結果、想像以上のボリュームのある二つの膨らみが、モロに俺の視界に入ることになった。
「おい、胸……」
 俺が指摘すると、沙綾香は威嚇するような格好のまま固まり、見開いた目で下を見る。
「えっ……きゃーーっ!!」
 沙綾香の顔が、みるみる赤くなる。人間の顔色っていうのは、あんなに判りやすく変わるのか。遊び慣れていそうな見た目に反して、相当な初心らしい。
「み、見た!?」
 涙まで滲ませて睨んでくる沙綾香。
「お……おぉ」
 あれだけ露骨な状況だと否定もできず、ただ事実を認めるしかない。
「うーーっ」
 沙綾香は立てた膝を抱え、完全なガードを抱えながら俺を睨む。
「なんか、悪いな」
「ぐうううう…………っ」
沙綾香はまた呻いてから、ふうっと息を吐いて肩を竦めた。
「でもさ。八金って苗字聞いてもその反応なあたり、記憶喪失ってのはホントみたいだね。フツー顔が引き攣るもん」
「すごい財閥なんだったよな。……あれ、ってことは、ひょっとしてお嬢様?」
 今さらながらに気付いて、沙綾香を指差す。
「そ。超が5コつくぐらいのね」
 沙綾香は、目を細めて頷いてみせる。噂に聞くドヤ顔というやつか。
 しかし、そこまでのお嬢様とは。なるほど、食事作法も綺麗なわけだ。エレベーターで感じた妙な品のよさは、育ちのせいだったか。
 ただ、
「それにしては…………」
 俺は、目を細めて相手を見つめる。
「ちょっ、なに、なに!?」
 俺の視線を受けて、沙綾香は身を縮こめた。その細い腕では隠しきれない乳房を見て、改めて実感する。

( ってことは俺、さっき財閥のお嬢様のナマ乳を拝んだんだよな )

 そう思うと、ただでさえ発情している身体にいよいよ血が巡る。常時勃起状態の逸物が、ずぐりと脈打ちながら上向く。その勃起は、どうやら沙綾香にも悟られたらしい。目を細めて俺を睨んでから、彼女は肩を竦めた。
「ふーっ。記憶喪失っての、ホント納得だよ。あんたって、見た感じと中身がチグハグだもん」
「え? チグハグって、どういうことだ?」
「私ら、エレベーターで会ったでしょ。ここ来る途中」
 確かに、俺と沙綾香はエレベーターで初めて顔を合わせた。マイクロミニのスカートと黒ニーソックスで壁を足蹴にする姿に、視線を奪われたのを思いだす。あれから衝撃的なものを見すぎたせいで、遠い昔のことに思えるが。
「その時のあんたの印象ってさ、『意識高い系のナルシー男』だったんだよね。スーツも靴も時計も、いかにもな高級品で、金持ちアピールしたいんだろうなって感じだった」
 ああ。だからあの時、ふっと鼻で笑ったのか。逆に俺は、あの冷ややかな嘲笑のせいで、沙綾香という存在が頭を離れなくなったんだが。
「確かに、大層なもんばっかり身につけてたな」
「でしょー?」
 沙綾香はそう言って肩を竦める。
「私、財閥の一人娘だからさ。小さい頃から色んなパーティーに顔出させられて、エライ人と話させられてたんだ。特に、結婚相手になりそうな若手社長とか、実業家とかとね。でもそういう若い内に成功した人って、プライド高くてナルシーなのが多いんだよ。こっちに興味あるように見せといて、結局は自分が一番!みたいな。そういうのの相手をほとんど毎週末させられたらさ、ウンザリするよ。全寮制の高校入ってからは、ようやく逃げられたけど」
 なるほど。今“ビッチ”に見えるほど奔放に振舞っているのは、そうして窮屈に育てられた反動か。
「で、さ。あんたも最初はそういう系に見えたわけ。でも今のあんた、全然そんな感じしないじゃん? 自信満々どころか、常にキョドってる感じだし。仕事バリバリこなしてますって雰囲気でもないし。見た目と中身がチグハグってのはそーいう意味。それで記憶喪失って聞いたら、あー、ってなるでしょ?」
「うーん……そう言われると複雑だな。どうせなら、デキる男に見られたいもんだが」
「そう? 今のあんたの方が、いいと思うけど」
 俺の目を覗きこんで語る沙綾香の表情は、柔らかい。これだけの美少女に褒められて、悪い気はしないものだ。
「……そうか?」
 俺の表情も、自然と和らいでしまう。

 この会話をきっかけに、俺達は少しずつ打ち解けていった。会話の数も増えた。ただ、そこで問題になるのが俺の呼び方だ。本名が判らないなら判らないなりに、何かしら呼び名を決める必要がある。
「やっぱネーミングの基本は、見た目の印象だよね……ふぅむ」
 沙綾香はそう言って、顎に手を当てながら俺を観察する。
「……『社長』?」
 シャチョー。その響きに、なぜか全身の毛がざわついた。若い女の子にそう呼ばれると、なぜか罪悪感が凄い。
「い、いや。他のにしてくれ」
「ダメ? じゃあ、えーっと……『勃起おじさん』」
「もう少し愛情のある名前で頼む」
「えーっ!? ワガママだな~……」
 俺を見つめたまま眉を顰め、首を傾げる沙綾香。かなり難儀しているようだ。

 ( よっぽどアレじゃなきゃ、次のを受け入れるか )

 俺はそう考えつつ、沙綾香の結論を待つ。そして、数秒後。沙綾香が目を輝かせて手を叩いた。
「そだ! 『先生』とかどう?」
 沙綾香の口からでた呼び名は、覚悟していたよりずっとマシだった。先生──これなら、この年頃の女の子に言われても違和感は少ない。
「ああ、いいけど……なんで『先生』なんだ?」
「ん? 見た目がそれっぽいのと、先に生まれた……から?」
 先に生まれたから先生、か。なるほど、間違いじゃない。
「じゃ、それで頼む」
 俺がそう言って笑うと、沙綾香も笑顔を見せた。
「あいよーっ、セーンセ!」
 白い歯を覗かせて叫ばれるその言葉は、微妙にさっきと違っていたが、なんだか嬉しい。あんなに遠かった沙綾香との距離が、ぐっと縮まった気がした。

 距離が縮まったのは好ましい事だが、それには弊害もあった。警戒心が解けるにつれ、お互い無意識にガードを緩めてしまう。つまり、裸体を隠さなくなっていく。
 例えば、食事を取りにいく時。少し前の沙綾香なら、俺の方を睨みながら身を縮こまらせ、両手で頑なに乳房とあそこを覆っていたものだった。それが今では、割と普通に歩いている。俺の方へ正対しないように気をつけてはいるらしいが、食事のトレーを取る瞬間やテーブルに着く瞬間などに、見えてはいけない部分が視界に入ってしまう。
 俺自身もそうだ。『勃起を見せまい』とする意識が薄れ、気がつけば、屹立した部分を横目に覗かれている、という場面が何度もあった。

 いや。
 ガードが甘くなっているのは、心の距離のせいではないかもしれない。
 俺達は今、着実に理性を削られている。もう随分と長い間、セックスドラッグ同然のガスを吸い、強い照明を浴び続けているんだ。その状況はいわば、高熱にうなされたままサウナに閉じ込められているに等しかった。
 汗がひどい。心臓が破裂しそうに脈打つ。斜め上に反り返った逸物の先からは、先走り汁が溢れつづけ、玉袋どころか内腿にまでヌルヌルと絡み付いてくる。当然、沙綾香も同じような状態だ。
「はっ、はっ、はっ…………」
「はぁ、はぁ、はぁっ…………」
 荒い息を吐きながら、相手の性器を凝視し、ゴクリと喉を鳴らす。何度も、何度も。

「…………ね、手でしよ。お互い限界でしょ、正直」
 ある時、沙綾香がそう提案してきた。確かに限界は近い。性欲の発散を目的とするなら、いい案だと思った。
 ベッドの脇に立ち、初めて真正面から向かい合う。
 落ち着いてじっくり見ると、沙綾香のスタイルの良さに改めて驚かされる。
 まず、背が高い。175センチある俺とほぼ目線が変わらないんだから、170以上は確実だろう。
 身体の各パーツも極上だった。
 重力を無視して前を向く、お椀型の乳房。
 見えない帯で締め付けたような、驚くほど細い腰周り。
 それとは裏腹に肉感的な尻と太腿。
 そして何より印象的なのが、ウエストラインの高さだ。肩から腰、腰から踵までの比率は3:7……あるいはそれ以上か。
 祐希も、千代里も、桜織も、それぞれ咲き始めの花として魅力的だった。だが、沙綾香の肉体はその記憶を暴力的なまでに上書きしてくる。日本人離れしているのは確実だが、果たして世界にも、ここまで視線を釘付けにする裸体が存在するものだろうか。
 初めて会ったとき、サキュバスの類だと思った感覚は正しかった。彼女は人ではなく、男を誑かす淫魔だ。そう思った方がよほど納得できる。
 ただその淫魔も、今やすっかり興奮状態にあった。
 鎖骨から胸元にかけてがうっすらと赤らんで、大粒の汗が伝っている。頻繁に膝をすり合わせる両脚の合間は、相も変わらず愛液で濡れていた。もはや軽い失禁を疑うレベルだ。
「センセ、目つきやらしいよ?」
 沙綾香はそう言って目尻を緩め、伸びやかな脚を前後させて俺に歩み寄る。そして、ちらりと俺の下半身に視線を落とした。
「近くで見ても、やっぱりデカ……」
 呟くようにそう言うと、手の平でいきなり逸物を握りしめてくる。
「おまけに、カタっ。もう骨じゃん。すっごい脈打ってるし……」
 自覚はある。ガスに晒され続けた今、俺の勃起度合いは通常ありえないレベルに達している。太さは普段の勃起より2割増し、硬さときたら薄皮の中に石柱を詰め込まれているようだ。
 それを扱かれれば、思わず声が出る。
「うあっ!!」
 そしてそんな俺の反応は、随分と沙綾香を面白がらせてしまったらしい。
「あははっ、なぁにその声? まさかセンセ、ドーテーなの?」
 意地悪そうに目を細めながら、親指と人差し指・中指で狭い輪を作って扱きたててくる。その所作はまさしく淫魔そのものだ。
「し、知るか……。記憶がないって、言ってん、だろ……」
 あまりの気持ちよさに、ただでさえ荒い息がますます乱れていく。このまま一方的にイカされるというのも情けない。だから俺の方からも手を伸ばす。すでに愛液があふれている沙綾香の割れ目へ。
 小陰唇は柔らかく、蜜のおかげでぬるぬるとしていた。指を沈めることも難しくはなかった。ただ、指先がごく浅く内部へ入り込んだ瞬間、感触が一変する。狭い。握り拳の隙間に、無理矢理中指を捻じ込んでいるようだ。
「いっ!!」
 沙綾香が片目を閉じ、小さく叫ぶ。この膣のきつさに、その反応。まさか……いや、まさか。
「お前、処女か!?」
 制服姿であれだけ妖艶なオーラを発する娘が、未経験であろうはずがない。相当遊び慣れているはずだ。暗にその気持ちをこめて尋ねるが、沙綾香の顔が横に振られることはない。
「……し、しょうがないじゃん。中学までは箱入りだったし、高校だって女子校だよ? “する”機会なんて、ないって」
 赤ら顔のまま、眉を下げて呟く沙綾香。どうやら本当に無垢らしい。
「なに? ビッチだとでも思った?」
 俺が何も言わずにいると、彼女は拗ねたような表情を見せる。何だろう、さっきまでよりもっと愛らしく思える。どこか幻想的に思える少女の、人間臭い部分を知ったせいだろうか。
 俺はそんな彼女の頬を撫でる代わりに、割れ目の中で指を動かした。なるべく痛くないように。だがポイントは押さえるように心がけて。
 挿入した中指に、みっしりと粘膜が纏わりついてくる。その中で指の関節を曲げながら、慎重にスポットを探っていく。
「ん、あ!!」
 膣のごく浅い部分、やや膨らみのある箇所に触れた瞬間、明らかに沙綾香の反応が変わった。もしや、ここがGスポットというやつか。そう思い、指の腹を擦り付けるように左右に動かす。
「ああ、あっ! はぁっ……あ! な、なにこれ…っ!!」
 どうやら当たりらしい。すらりとした脚が痙攣し、愛液が溢れてくる。
「気持ちいいか?」
 念押しで囁きかけると、沙綾香は目を閉じたまま頷いた。なるほど、黙って真剣な表情をしていれば、疑う余地もなく令嬢の顔だ。
「せ、センセ、もうだめ。私、立って、らんない……」
 沙綾香が熱い吐息と共に囁き返してくる。その表情も、声色も、俺を狂わせるのに充分だ。横ざまにベッドへ倒れこむ沙綾香を、無意識に押し倒す格好になってしまう。腕の下には、上気した顔で喘ぐ沙綾香。まただ。また欲望に呑まれそうになっている。俺は頭を振って煩悩を払い、身を起こそうとする。
 ところが、その俺の手を沙綾香が掴んだ。
「行かないで。しよ、このまま……」
 潤んだ瞳が俺を見つめ、誘いの言葉を投げかける。この誘いを拒めるオスは少ないだろう──そう確信できるほど、魅惑的だ。
「だ、駄目だ。一度でもセックスしたら最後、二度と出られないんだぞ!?」
「そんな約束、本気で信じてるの? ここの奴らが、言葉通りガマンしてるだけで出してくれるわけないじゃん。私らが『する』まで、いつまででもこのまんまだよ」
 俺がかろうじて搾り出した理性の言葉を、沙綾香はバッサリと切り捨てる。その言葉に、俺は目が覚める思いがした。言われてみればその通り。他の4人をああも無慈悲に壊した連中だ。律儀に約束を守るとは思えない。初めから解放するつもりなどなく、俺達が限界を迎える瞬間を、ガラスの外で今か今かと待ち構えているに違いない。
 ここでセックスするのは、奴らの術中に嵌まる事を意味する。だがこのまま無意味に耐え続け、完全に理性をなくして沙綾香を襲うよりは、自分達の意思で求め合った方がずっとマシだ。
「初めての相手が、俺でいいのか?」
 小悪魔じみた美貌を見つめながら、改めて問う。すると、沙綾香はむくれ顔になった。
「む。他に選択肢がないこの状況で、そういうこと聞く?」
「いや、でもな……」
「しつこいなあ! じゃ、本音を言ったげる!!」
 睨みながら詰め寄られ、俺は生唾を飲み込む。沙綾香は、そんな俺の顔を凝視しつつ、ふっと口元を緩めた。
「いいよ、センセなら」
 その言葉の後、目尻が下がる。芯の強そうな吊り目が見せる慈愛の笑みは、なんともいえず魅力的だ。
「センセ、この部屋に入ってから、ずっと沙綾香のこと気にかけてくれてたでしょ? 裸、なるべく見ないようにしたり、食事の時にテーブルも譲ってくれたし。ガスで理性が飛びそうになっても、それ跳ね除けてまで襲わずにいてくれた。そういう気遣い……すごい、嬉しかったんだよ」
 沙綾香はそう言って微笑み、
 俺の呼吸を遮った。

              ※

 舌を絡ませる熱いキス。爽やかで好ましい香りが鼻腔を通り抜けていく。
「ふはっ」
 呼吸の限界を迎えたところで口を離せば、すぐ目の前には、沙綾香の顔。こうして間近で見ても、本当にアイドルと見紛うばかりの美貌だ。
「センセの眼、キラキラしてる」
 沙綾香が、笑みを湛えたまま囁きかけてくる。その言葉が妙に嬉しい。彼女を組み敷く時に、血走った眼をしていたくはなかったから。
 ただ、紳士的でいるのも限界だ。流石にガスを吸いすぎた。俺の理性は薄皮のように剥がれ、性的な欲求が剥きだしになっている。そこへ来て、極上の裸がすぐ傍にあるんだ。
 全体がピンクに染まった、色白な肌。乳首が勃っているし、乳房そのものも膨らんでいるようだ。俺は、吸い寄せられるようにその胸に触れた。
「んっ!」
 沙綾香の肩が跳ね、声が漏れる。彼女も相当感じやすくなっているらしい。もっと反応を引き出したくて、乳房を揉みしだく。外から、内へ。瑞々しい少女の皮膚は、尋常でなく肌触りがいい。
「あ、あっ!!」
 桃色の唇が開き、熱い吐息が漏れはじめた。
「気持ちいいか?」
「う、うん……。胸触られるのって、こんなにいいんだ……」
 うっとりとした表情でそんな事を言われれば、ますます昂ぶってしまう。
 俺は右の乳首を放し、くっきりと浮き立った蕾を口に含んだ。弾力のあるそれを舌で刺激しつつ、指も沙綾香の下腹を経由させて、割れ目へと沈み込ませる。
「あああっ! は、あ……すご……っ!!」
 身を強張らせて喘ぐ沙綾香。指の腹で膣のざらついた場所を押し込めば、今度は背中が反り返る。
「くんんんっ!! はっ、はっ……な、なんで弱いとこ……一発で、わかんの……!?」
 どうやらGスポットを探り当てたらしい。運がいいのか、それとも体がコツを覚えているのか。いずれにしろ、沙綾香には喜んでもらえているようだ。あふれる愛液も、筋肉の強張りも、押し殺すような喘ぎも、全てが気持ち良さを訴えていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。せ、センセ……も、だめ……我慢できない。い、挿れて……」
 沙綾香が俺の耳元で囁きかける。艶やかで愛らしい、小悪魔の誘い。今更拒む理由もない。真剣な瞳を覗きこみながら、俺は小さく頷いた。
 膝立ちになり、沙綾香の太腿の合間に腰を割り入れる。張り詰めた逸物を掴み、濡れ光る粘膜に亀頭を宛がえば、それだけで痺れが走った。さらに腰を押し込み、肉の合わさりに入り込めば、いよいよ快感は増していく。
 膣内は熱い。愛液のおかげで挿入こそスムーズだが、四方からみっしりと絡み付いてくる粘膜の圧迫感は、いかにも“こなれていない”感じだ。
「はっ、はぁっ、はぁっ……」
 沙綾香の息は荒い。湯気が立ちそうなほど暖かい太腿が、俺の腰に密着し、やわらかな肉の感触を伝えてくる。
 そして、逸物が半ばほど入り込んだ頃だ。
「っ!!」
 沙綾香が急に息を詰まらせ、俺の手首を掴んだ。柔らかかった太腿も一気に強張り、俺の腰を圧迫してくる。相当な痛がりようだ。その反応には見覚えがあった。桜織が純潔を失った時の反応にそっくりだ。
「一度抜くか?」
 左手を沙綾香に掴ませたまま、右手で汗に濡れた前髪を払う。すると沙綾香は、固く瞑っていた目の片方を開き、つうっと涙を伝わせながら笑った。
「……続けて。痛いけど、嫌じゃない。センセと、もっと深く繋がりたい」
 そう囁く沙綾香の健気さは愛らしく、ありがたい。性欲が限界の今、腰を引くのは相当な精神力が必要だから。
「じゃあ、いくぞ」
 沙綾香の言葉に甘えて、さらに腰を押し進める。ぬるりとした襞が根元の方にまで絡み付いてくる。気持ちいい。その気になれば、すぐにでも射精できそうだ。ただ、それでは勿体ない。ある程度奥まで押し込んだところで、少し腰を引き、また押し込む。なるべく沙綾香に負担をかけないように。
「は、はっ……はっ……」
 沙綾香は荒い息を吐きながら、結合部を凝視していた。『あんなに太い物が入るなんて信じられない』とでも言いたげだ。その初々しさは、堪らなく可愛い。興奮で射精感が一気に分水嶺を越える。
「ううっ!!」
 俺は呻き、熱い粘膜の中で欲望を解き放った。どくどくと脈打ちながら溢れ出る精液の量は、自慰の時の比じゃない。腰が抜けそうな気持ちよさだ。これが、セックスの快感か。

 ゆっくりと逸物を抜き出すと、かすかに開いた割れ目から白濁があふれ出した。一部がうっすらとピンク色なのは、目の前で喘いでいる少女が純潔を失った証。
 俺が、奪ったんだ。大財閥の令嬢にして、奇跡的な美少女の初めてを。
「んー。抜けた、んだよね……。まだ何か、挟まってる感じする」
 沙綾香は熱に浮かされた顔で半身を起こし、自分の脚の間を覗き込んだ。俺はその動作を見ながら、はっと気がつく。コンドームを使っていない。雰囲気に流されるままに身体を重ね、直に中出ししてしまった。
「す、すまん。勢いで中に出しちまった!」
 俺がそう言って頭を下げると、ふふっと笑い声がする。
「ん、なーに? そんなに沙綾香のナカが気持ちよかった?」
「ああ……」
「ぷっ。そんな深刻な顔しないでよ。どうせ桜織ん時みたいに、食事にピル混ぜてあるって」
 俺がよほどしょぼくれた顔をしていたのか、沙綾香はそうフォローを入れてきた。なるほど、確かにその可能性はある。そう納得しかけ、俺は耳を疑った。
 “桜織の時みたいに”?
「って、お前、あの子の状況知ってるのか!?」
 そう訊ねると、沙綾香の顔が曇る。
「知ってるよ。この一週間、ずーっとどこかの部屋に監禁されて、友達が『調教』されてる映像見せられてたから。祐希に、千代里、藤花、桜織。4人が滅茶苦茶にされて、気が狂ったみたいになって──」
「……えぐいな」
「でしょ? たぶん、苦手意識を植え付けたかったんだと思う。セックスって怖い、嫌だ、って思わせた上で閉じ込めてさ、男に犯されて泣き叫ぶトコが見たかったんじゃない? ほんと、相手がセンセでよかったよ。一歩間違えたら、あいつらの思い通りだったかもだけど……嫌じゃないもん、センセとエッチするの」
 そう囁きながら、俺の頬に触れる沙綾香。濡れた瞳で甘い言葉を吐かれると、中身を出したばかりの息子がまた硬くなる。
「そりゃ嬉しいこった。なら、たっぷり見せつけてやるか。連中の想定外のセックスを」
 俺は甘く囁き返しながら、沙綾香の黒髪を撫でた。


              ※


 一度目の挿入時、沙綾香は抜き差しのたびに全身の筋肉を強張らせていた。心では俺とのセックスを受け入れていても、身体はまだ緊張しているようだ。
 だから2回戦目は、まず彼女をリラックスさせる。ベッドの上で後ろから抱きすくめ、髪を撫で、乳房を揉みしだき。
「あひゃんっ! もーっ、くすぐったいよぉ!!」
 沙綾香は身を捩りながらも、上機嫌に笑った。さらに耳や腋、太腿に舌を這わせてやれば、次第に息が甘くなり、筋肉の強張りも解けていく。その状態で改めて割れ目に触れれば、すでにかなりの蜜が伝い落ちていた。緩く開いた蛇口のようだ。実際、割れ目に口をつけて啜れば、ごくごくと愛液を飲めてしまう。
「や。センセ、飲まないでよお……」
 その声に顔を上げれば、上気した顔を手で覆う沙綾香がいた。その仕草は何とも微笑ましく、俺はついその細腕を払いのけて、唇を奪ってしまう。
「んんんっ!!」
 ほのかに甘酸っぱいような匂いが鼻腔を満たす。同じ生物なのに、俺からは絶対にしない匂い。新鮮な果実のようなフェロモン。それに焚きつけられて、俺は沙綾香を押し倒す。
 桃色のシーツの上で折り重なったまま、激しく舌を絡め、熱い吐息を交換しあう。さらに左手で乳房を包み、右手を女の部分に沈み込ませる。
「んっ、ふんっ! んんっ、んっ!!」
 指で性感帯を弄るたび、沙綾香の息が弾んだ。形のいい太腿もピクピクと反応している。かなり気持ちよさそうだ。
 そんな中、沙綾香の手が俺の体を撫でた。肌が敏感になっているせいか、妙にくすぐったい。
「ぷはっ……」
 一旦口を離し、息を荒げたまま見つめあう。
「ふふ。感じるっしょ?」
「ああ。すっかり敏感になってる」
 俺はそう言って、下半身の物を奮い立たせた。今度はちゃんと、寝台のヘッドボードにあったコンドームを装着済みだ。
 俺の意図を汲んだのか、沙綾香がじっと俺の目を見つめる。俺はそんな彼女の右脚を肩に担ぎ上げ、ピンクの割れ目に逸物を沈み込ませた。熱さが四方から押し寄せる。生挿入よりやや刺激は弱いが、敏感すぎる今はむしろ好都合だ。
「んっ、はあ……」
 呼吸の荒い沙綾香に気を配りつつ、ゆっくりと腰を使う。
 勃起しきった逸物は、少し勢いよく突けば簡単に膣奥まで届いた。だがセックスに慣れていない沙綾香は、奥を突かれると痛いらしい。となれば、狙うべきはGスポットだ。沙綾香の右足を抱え上げて腰に角度をつけつつ、亀頭で丹念にGスポットを突き上げる。
「あ、あっ! んああっ……!!」
 沙綾香の唇が開き、声が漏れる。気持ち良さそうだ。だったら、もっと良くしてやろう。
 俺は一旦沙綾香の右足を解放し、代わりに両手で腰を抱え上げる。俺の腰を沙綾香の太腿が挟み込む形。この体勢の方が腰を振りやすい。となれば当然、Gスポットをより集中的に責められるわけだ。
 膝立ちのまま腰を使う。やはり格段にスムーズだ。ギシッギシッというリズミカルなベッドの軋みが、それをはっきりと裏付けている。
「はあっ、あ、あ!! や、ヤバ……これ、ヤバいっ……!!」
 沙綾香が目を見開き、腰をひくつかせはじめた。いちいち素直な反応をしてくれるから、責める側としては大助かりだ。

 ピストンを繰り返していると、色々な事がわかってくる。
 俺が逸物を引けば、沙綾香は顎を浮かせ、何かを我慢する顔を見せる。
 逆に逸物を突き込めば、大きなよがり声を出す。
 グッグッグッと素早くGスポットを突き上げれば、喘ぎも小刻みなものになる。
 俺の腰遣いで反応が変わるのは、楽しいし嬉しい。ピストンを続けながら覆い被さるようにキスを求めたのは、ほとんど無意識だ。
 そして沙綾香は、俺の口づけを拒まない。それどころか、熱心にキスに応じながら、俺の背後で足首を交差させてくる。真正面からしがみつく格好だ。
 そんな事をされれば、自然と挿入は深まってしまう。奥まで当たる頻度が高くなる。だが、そろそろ沙綾香も膣がほぐれてきたようだ。奥を突いても痛がらなくなってきた。俺は一旦キスをやめ、沙綾香の耳元に口を寄せる。
「だいぶ良くなってきたみたいだな。俺の硬いのが、出たり入ったりしてんのがわかるか?」
「はぁ、はぁ……わかるよ。センセの、おっきいもん。沙綾香のあそこ、センセの形に、作りかえられちゃいそう」
 囁き返される声色は、掠れながらも澄んでいる。ゾクゾクする声だ。俺はますます気分が昂ぶって、何度も沙綾香の耳に言葉を吹き込んだ。
 愛液があふれてくるぞ。
 締まりが良くなってきた。
 あそこの奥がヒクヒクしてる。
 そういう言葉に、沙綾香は一々反応する。戸惑い、恥じらい、うっとりと快感にうち震えながら。
 それを眺める俺自身もまた、快感に酔いしれていた。みっしりと絡み付いてくる襞の中で腰を振るのが、気持ちよくて仕方ない。なるべく優しくしなければと思うものの、下半身が勝手に前後する。
「あああっ、いいっ!! いいよぉっ!!」
 沙綾香も激しい突きに快感の叫びを上げるものだから、ますます枷が外れていく。
 射精感を堪えながらがむしゃらに腰を打ちつけていると、ある瞬間、ふっと膣の締まりが緩まった。急激に冷めたように。だが、沙綾香の顔は快感で呆けたままだ。どうやら絶頂の間際らしい。となれば、後はスパートをかけるのみだ。
 腰を抱え直し、一心不乱に股間を打ちつける。パンッ、パンッ、パンッ、と、肉のぶつかる小気味いい音が響き渡る。
「あああ、はぁ!! あ……んんーー……っ!!!!」
 沙綾香の鼻から、堪らないという感じの息が漏れた。割れ目の入り口がヒクヒクと蠢き、太腿から背中にまで震えが走っている。
「せ、センセ、せんせ……っ!! くるっ! なんか、きちゃうううっっ!!!」
 最後の瞬間。沙綾香は絶叫しながら、俺の首にしがみついた。上半身から腰までがぴったりと触れ合い、素肌を通じて沙綾香の痙攣が伝わってくる。機械で脳波など測るまでもない、明らかな絶頂。それを感じながら、俺もようやく、膨れに膨れ上がった射精感を解放した。射精管が痺れ、薄いゴムの先へと中身が吐き出されていく。相当な量だ。
 はぁーっ、はぁーっ、という荒い呼吸が耳元で反響する。
「……イッたみたいだな」
「うん……。これが、“イク”って感覚なんだ。クリいじって気持ちよくなるのとは、全然違うんだね」
 何気ない答えが妙に生々しくて、俺の逸物が反応する。たった今二度目の射精を終えたばかりだというのに、まだまだ鎮まる様子がない。
「あっ!? もー、センセのヘンタイ!」
 あそこの中で『そそり立った』のが判ったらしく、沙綾香が吹き出す。

 そして、彼女は小悪魔だ。やられたままで黙ってはいない。腰を浮かせて逸物を割れ目から抜くと、萎びたゴムを取り去り、脈打つモノを直に掴む。
「今度は、手で搾り出したげる」
 そう囁き、逸物を掴んで擦りはじめた。さっき出した精液を指に絡めての扱きはなかなか刺激が強いが、単調なだけに射精と結びつくものでもない。
「どう、センセ? イッちゃいそうなんじゃないの?」
「そんなんじゃイケないな」
 俺が余裕の笑みでそう言うと、沙綾香は──笑みを浮かべた。
「ふーん、やっぱそうなんだ? じゃ、凄いことしたげる」
 そう言うと、直立した逸物を両の掌で挟み込んだ。
「おっ……!?」
 思わず声が出る。片手で扱かれるのとは全然違う感覚だ。暖かな肉が四方からブツに密着するこの感じは、挿入にすごく近い。そのまま、先走り汁を絡めてヌルヌルと上下されれば、ついつい腿に力が入る。
「う、ぐっ……!!」
「あはっ、センセ余裕なくなってる! じゃ、これはー?」
 沙綾香は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、逸物の包み方を変えた。左手で幹を握りしめながら、右手で亀頭部分を上から包み込む形。その感覚は、まさしく膣奥への挿入そのものだ。オスの本能が呼び覚まされる。
「く、ぁ……で、出るっ……!!!」
 我慢できなかった。逸物が何度も硬く跳ね上がり、少女のきめ細かな手の中に作られた空間へ、あえなく遺伝子を注ぎ込んでしまう。
「おっ、すご……めっちゃ出てる! やだ、沙綾香の手、妊娠させる気?」
 息を荒げる俺を前に、沙綾香は白い歯を見せて笑った。その下方……俺の視界の下ギリギリでは、まだ手が動いている。射精で感覚の鈍った中でも、確かな刺激を感じる。
「お、おい、やめろ! イッたばっかだぞ!?」
「さっき沙綾香がそう言った時、やめてくんなかったのは誰だっけ? ジゴージトクだよ」
 沙綾香はいよいよ小悪魔じみた笑みを深め、俺の逸物を嬲り回した。玉袋を揉みしだき、中指でカリ首の境目をなぞり、人差し指で鈴口を弄り……。
「お、おまえ、処女だろ。どこでそんなテクニック覚えたんだよ……!?」
「んふー。今ドキ、雑誌に乗ってるよ? 手コキとフェラのテクぐらい」
 沙綾香と会話を交わすうちにも、またどうしようもない射精感がやってくる。膣内射精とは全然違う。屈辱的で……でも、身悶えするぐらい気持ちいい。
「んうううっ!!!」
 俺は唇を噛んで呻きながら、あえなく射精した。飛沫になった精液が、シーツに鈍い音を立てる。
「んふふふ、気持ちよさそーな声。女の子みたい」
 沙綾香はそう言いながら、俺の顔を覗きこむ。そしてしばらく俺の目を見つめてから、ゆっくりと頭を下げてきた。
 唇がこじ開けられ、舌を絡め取られる。唾液を交換するディープキス。甘い香りが鼻腔を抜け、荒い呼吸が顔をくすぐる。
「ぷはっ……」
 顔を離した沙綾香の顔は、紅潮していた。そして、本当に愛しそうに俺を見つめていた。その表情を見ていると、また下半身が硬くなる。
「あっは、復活した」
 沙綾香は視線を俺の股間に落とし、片目を閉じて可笑しそうに笑った。そして、また虐め抜く。左手で輪を作って根元を扱き、右手で亀頭部分を握りしめてゆるゆると扱き。そんな事をされると、心が腰砕けになる。
「うあああっ、だめだ、ダメっ……び、敏感に、なってるから……っ!!」
 かろうじて絞り出した俺の声は、情けなく震えていた。
「こんな短い時間で2回もイって、まだ勃起したまんまとか、エロすぎだよセンセ。沙綾香の手にレイプされるのが、そーんなに嬉しいの?」
 乳房を揺らしながら、白い歯を覗かせて笑う沙綾香。それを見ながら俺は、されるがままになるしかなかった。ぼんやりとした恍惚感に、全身を腐食されながら。
 それから何度、搾り取られたことだろう。少なくとも7回か8回。腰砕けでベッドに横たわる俺に圧し掛かるようにして、沙綾香は淫魔の手戯を披露し続ける。
「うがあああっっ!!あがぁっ!!むむ、無理だっ、もお無理いい゛っ!!!」
 歯を食いしばって絶叫する俺の反応を、沙綾香は明らかに愉しんでいる。決して悪い子ではないんだが、子供ゆえの無邪気さは時として残酷だ。
 負けを認めるようで癪だが、これ以上責められるのは辛すぎる。俺はその結論に至り、脱力して気を失ったフリをする。
「センセ、センセー? ……カンペキにノビちゃったか」
 沙綾香が俺に呼びかける声がする。俺があくまで気絶した演技を続けると、勝ち誇ったような鼻息とともに、ようやく逸物が解放された。完全に小休止に入る雰囲気だ。心の底からほっとする。
「あーあ、手がドロドロ。キモチ悪ぅ。さっさと洗わないと」
 沙綾香は俺を見下ろしてそう言い、くるりと背を向ける。薄く開いた瞼の間から確認すると、彼女は……すぐには洗面台に向かわず、少し前屈みになっていた。手を覗き込んでいるような格好だ。
 そして、直後。ずずっ、という音が聞こえた。粘り気のある何かを啜る音。まさか、俺の精液を?
「る゛っ!?」
 沙綾香は、一瞬妙な声を発した後、咳き込むように首を上下させる。どうやら口にしたものを吐き出しているらしい。「にが」という小さな声も聞こえる。俺は思わず噴き出しそうになったが、沙綾香が急に振り向いてこっちを確認してきたので、大慌てで気絶の芝居を続けた。
 沙綾香の事を、いよいよ愛おしく思いながら。


              ※


 水分補給と休息を挟み、4戦目。
 お互いセックスに慣れてきたため、今度は正常位で深く繋がりつつ、より気持ちのいい体位を探る。足を開かせたまま、両の膝頭を掴んで抜き差ししたり。逆に足を閉じさせたまま突いたり。
 体位を変えるたびに、沙綾香の反応も変わった。どちらかといえば、足を閉じたりして膣圧を上げた方が、快感も強まるようだ。
「んんっ、んっ、んっ……!! んああぁああっ、あっ……ん!!」
 甘い声で喘ぐ沙綾香が、俺の腕を掴む。昂ぶると相手にしがみつく癖があるらしい。なら、もっと密着するとしよう。俺はほくそ笑み、沙綾香の腕を引きつつ、背中を引き起こす。
「なにー、また? めっちゃ体位変えるじゃん」
 沙綾香は苦笑しながらも俺の首に縋りつき、太腿の上に乗ってくる。よいしょ、と掛け声を発しながら。
「オッサンみたいだな」
「う、うるさいな! しながら膝に乗んのって、結構気合いいるんだよ?」
「へぇ。腰砕けだからか?」
「う、うっさいし! 勝ち誇った顔すんなぁ!!」
 そんな軽口を叩きあいながらも、腰の動きは止めない。いや、止められない。硬く反った逸物が、熱く蕩けた肉に包まれ、柔らかに咀嚼される。その快感は何にも勝った。猿のように腰を上下させ、ひたすらに快感を貪る。ギシギシとベッドが軋み、粘ついた水音が繰り返される。
「あ、あっ、す、すごっ! なにこれ、なにこれっ!!」
 気持ち良さそうに腰を上下させていた沙綾香が、急に声色を変えた。
「どうした?」
「せ、センセ、沙綾香の事、振り落とさないで! ちゃんと、支えといてねっ!」
「落ちるかよ、ベッドの上だぞ?」
「そ、そうだけど、そうだけどおっ!!」
 沙綾香は不安そうな声を漏らしつつ、両手両足で俺にしがみつく。遠巻きに見るとスレンダーな身体も、こうして密着するとその肉感は圧倒的だ。十分に膨らんだバストに、むちりと弾力のある太腿、柔らかい腹筋。熱い汗と共に押し付けられるそれらは、否応なく男の理性を狂わせる。
 俺は沙綾香の身体を強く抱き返しながら、腰の動きを止め、また唇を奪った。舌を絡ませあうディープキス。腰を振りたくる時とは違う、ゾクゾクするような甘い快感が背筋を走り抜ける。精液こそ先走り程度にしか出ていないが、俺は、精神的に射精していた。
 結果、今度は俺が腰砕けになる。後ろに身体が傾ぎ、抱きついたままの沙綾香に押し倒される格好になる。
 上から覆い被さられると、相手の温かさがますます良く感じとれた。胸の圧も凄い。大きい上に張りがあるから、俺の胸板の上で巨大なグミのように存在を主張してくる。
「んんんっふん、んーんんんっ! あああ……っは……!」
 沙綾香は俺に覆い被さりながら、前後左右に腰を揺らしていた。その動きで、ぎゅうっと締め付けられたままの逸物が揺さぶられ、射精しそうになる。というより、しているのか。股間の感覚がハッキリしない。温泉にでも浸っているように、漠然とした暖かい快感だけがある状態なんだ。そして、それが心地いい。ずっとでも浸っていたい。
 そんな俺の陶酔は、遠くから響いた硬い音で遮られた。音の出所は東側の壁。食事が運ばれてきたらしい。
「んっ、ふうんんっ!! せ、センセ……ご飯きちゃったよ」
「ああ」
「取りに、行かないと……」
「……ああ」
「ね、冷めちゃうって!」
 食事がきた事を認識しながらも、お互いセックスをやめない。ぬるま湯の中でのたうつように、緩く結合し続ける。ようやく腰を離したのは、食事が運ばれてから数十分後だったかもしれない。
 にちゅり、という粘り気のある音と共に、皺だらけのゴムが外気に晒される。
「はぁ、はぁ……。あ、そういえばゴムしてたんだっけ。なんか、ずっとしてたらわかんなくなってくるね」
 逸物からゴムを引き抜いて笑う沙綾香。重みで垂れ下がるゴムの先は、大量の精子でピンポン玉のように膨らんでいる。それは、俺の得た快感の大きさをよく表していて、なんだか気恥ずかしかった。


              ※


 沙綾香は、本当にいちいちエロい。
「セーンセ、食べさせたげよっか?」
 切り分けたハンバークをフォークでつつき、俺に目配せする。その仕草だけで、理性が吹き飛びそうになるほどに。
「いらん」
「いいからいいから。ほら、目ぇ閉じて。あーん」
 しつこく誘ってくるから、仕方なく言われるままに目を閉じる。
 口の中に、パサついた感触が触れた。ソースの味がしない。そもそも肉の食感じゃない。これは……
「ブロッコリーじゃねぇか!」
「あはははっ、引っ掛かった! 誰もお肉あげるとは言ってないよ~」
 真相に気付いた俺を見て、けらけらと笑う沙綾香。どうやらこの小悪魔に、体よく嫌いなものを押し付けられたらしい。
「超が5つつくぐらいのお嬢様が、食いモンを選り好みするなよ」
「今はお嬢様じゃなくて、ただのJKだし。それに昔から、青臭いのは嫌いなんだよねー」
 そういえばこいつ、オムライスのグリーンピースもよけていたな。
 それと……
「ああ、だからザーメンも無理だったわけか」
「そーそー。興味本位で挑戦してみたけど、あれはホーント無理!」
「なるほどなぁ」
 何気ない会話を交わしつつ、食事を進める。カチャカチャという音が響く。
「え……ってか、ちょっと待ってセンセ」
 ふと、沙綾香の手が止まる。
「ん?」
「なんで、沙綾香が精液飲もうとしたこと、知ってんの……?」
 ……。
 …………。
 ………………。
 しまった。
 あの時は、気絶しているフリをしていたんだった。
「~~~~…………!! センセのバカ!!」
 沙綾香が目尻を吊り上げ、フォークで刺したブロッコリーを投げつけてくる。
 理不尽だ。なぜ怒られないといけないんだ。

 食事の後は、交替で歯磨きをする。
 洗面所の鏡を覗き込みながら、すらりとした美脚をクロスさせる沙綾香の後姿は、じっと見ていると鳥肌が立ってくるほど綺麗だ。肉体を構成するパーツ全てが、奇跡的に整っている。世界に冠たる天才芸術家が完璧な裸婦像を作ろうとしても、ここまでの完成度には到達出来まい。
 太腿の肉付きといい、膝裏の形といい、足首に至るまでの下腿部のカーブといい。ああ、これが男を欲情させる女体の“答え”なのか。ついつい、そう思わされてしまう。
「なーにセンセ、沙綾香のことじろじろ見て。洗面所(ここ)使いたいの? それとも……またシたいの?」
 鏡越しに俺の姿を見つけた沙綾香が、振り返って口元を吊り上げる。世のオスというオスを誑かす、魔性の笑み。
 およそ男である限り、その魔力に抗うことはできない。心臓が早鐘を打つ。逸物周りの血管が熱さを増す。汗が噴き出す。まるで思春期の性欲だ。
「ああ……シたいな」
 俺は吸い寄せられるように沙綾香に近づき、背後から抱きしめた。彼女は本当に足が長い。身長は俺の方が高いはずなのに、腰の高さがほぼ同じだ。背後から密着すると、勃起した逸物がちょうど股の間に入り込んだ。
「うぅわ! もうちょっと、デカイよぉ」
 白い歯を見せて苦笑する沙綾香。アナウンサー並みに綺麗なその表情に、また股間が持ち上がる。亀頭が愛液まみれの柔肉に触れ、堪らなく心地いい。
 歯止めは利かなかった。両親指で沙綾香の尻肉を割り広げ、合間から覗く割れ目へと、いきり立った逸物をこじ入れる。
「あっ、ちょっと待っ……あ、んああっ……!!」
 歯ブラシを咥えたままの沙綾香が、非難の声を上げる。だが彼女の身体は、すぐにセックスに適応したらしい。熱い粘膜が俺の分身に絡みつき、無数の舌で舐ってくる。
 パンッ、パンッ、パンッ、という肉のぶつかる音が耳に心地いい。視界も最高だ。
 視線を下げれば、沙綾香の背中が見える。強い照明を受けて艶めく、若々しい肌。うっすらと浮いた肩甲骨に、背中の中心を走る一本筋。本当に内臓が詰まっているのかと不思議になるほど細い腰と、それとは裏腹に安産型の尻。まさにモデル級の、世界最高クラスの背中だ。その末端に俺の赤黒い逸物が出入りしている光景は、都合のいい夢にすら思える。
 一方で視線を前に向ければ、こっちも眼福と言う他ない。歯ブラシを咥えたまま喘ぐ前傾姿勢の美少女を、筋肉質な男が背後から犯している。前後に揺れる乳房が素晴らしい。俺は俺自身の裸体を見慣れていないから、まるで他人のハメ撮りでも見ている気分だが、それはそれで興奮するというものだ。
「ふんっ、んっ……んっ」
 鼻を抜けるような喘ぎ声。口に咥えた歯ブラシの横から、泡だった唾液が伝っていく。
「き、気持ちいい……いくっ、ダメいくっ!!」
 眉間に皺を寄せながら、沙綾香が絶頂を口走る。アソコの痙攣具合からして、本気の絶頂なんだろう。
 彼女は目を見開いていた。口もぱっくりと空いていた。ずっと咥えていた歯ブラシが、硬い音を立てて洗面台を転がる。沙綾香の視線がそれを追い、そのまま恥じ入るように目を閉じた。
「目ぇ開けてみろ。自分が犯されてるところ見とけ」
 つい意地悪心が出て、そう囁きかける。沙綾香の目がうっすらと開かれ、鏡の方を向く。
「あん、きもち……ぃっ……。あっ、あんっ!! んー、ん、んんっ!!」
 絶頂直後で敏感になっているのか、沙綾香はますます艶かしい反応を示しはじめた。何度も快感を訴えながら、目元をひくつかせ、唇をきゅっと引き結ぶ。真剣な表情をしていると本当にお嬢様そのものだ。
 俺はそのお嬢様を、一心不乱に突き回した。相手の弱い場所は何となくわかる。深く挿入したとき、沙綾香の腰が逃げる場所。そこがポイントだ。そのポイントをいくつか見つけておき、時にはフェイントを織り交ぜて虚をつき、時にはただひたすらリズミカルに追い込んでいく。
「はっ、はっ、はっ……!! だ、ダメ、それだめぇっ!! せ、センセ、上手すぎる……よぉ……!!」
 所詮は素人技術に過ぎないはずなのに、沙綾香はひどく喜んでくれる。俺は、セックスの才能があるのか。思わずそう有頂天になってしまうぐらいに。
 自信というものは素晴らしい。自信があれば、行動に迷いがなくなる。記憶をなくして彷徨う俺でも、セックスでならこの美少女を満足させられるんだ──そう思えば、ますます堂々と腰を使うことができる。
「ああ、あああ! あぁあ、あ……いっ、く……また、いくぅっ…………!!」
 沙綾香の膣が喘ぐようにひくつき、逆に喉からの息が止まる。桜織の映像でもさんざん目にした、深い絶頂時の反応だ。洗面台に手を突いていた沙綾香が、がくっと崩れ落ちた。腕を枕にして突っ伏すような形だ。
 膝も崩れかけているが、へたり込むのは許さない。左腿を前から押さえつける形で、挿入を継続する。
「やぁあ、いや、いやっ!! いまイッてるから、イッたばっかだからぁっ!!」
 沙綾香の声は悲鳴に近いが、腰は止めない。太腿に愛液が流れるのを感じながら、グチュグチュと水音をさせていると、そのうち沙綾香がまた顔を上げる。完全な泣き顔で、髪を振り乱しながら顔を左右に振っている。だが、目元が笑っていた。堪らなく幸せだという風に。
「センセ、センセ……ま、待って! ちょっ、ホントに……あ、あ、ああぁっ!! 自分がどんだけすごいか、わかってないでしょ……!!」
 鏡越しに俺を見ながら、沙綾香が必死に訴えてくる。だが俺は、すっかりハイだ。
「イク顔見ててみな、ほら凄いぞ。あんな顔してイってる」
 ガクガクと痙攣する沙綾香の膝裏を持ち上げ、大股を開かせた状態で激しく突き上げる。
「あ、ああ、あっ……やあああっ!!!」
 自分のイキ顔を直視したことで、沙綾香の中の何かが切れたんだろう。彼女は全身を震わせ、絶叫しながら潮を噴いた。鏡にもハッキリ映るほどの量だ。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」
 全身を細かに震わせながら、洗面台周りに飛び散った潮を呆然と見つめる沙綾香は、堪らなく可愛かった。


              ※


 ベッドに戻ってからは、さらに徹底的な性感開発を進めることにした。
 まずは丁寧なクンニ。半勃ちのクリトリスを皮ごと舌で転がし、硬さを増してきたところで、ブドウの実を吸うように皮を剥き上げる。その上で乳首へと指を伸ばし、同時に刺激する。
「んっ、あ……はっあ! あんっは……ぁ、んんっ……!!」
 沙綾香から切ない呻きが漏れる。クリトリスと乳首の同時責めが効いているようだ。特に2箇所の責めを連動させてやると、反応も大きい。クリトリスを縦に舐めながら、乳首を縦に弾き。クリトリスを吸いながら、乳首を摘み上げる。こうしてやれば、沙綾香の細身は面白いように仰け反った。さらに空いた手でGスポットも刺激してやれば、喘ぎ声が一気に大きくなる。
「やああぁっ、い、イッ、いーーっ!!」
 首を振りながら、何度も絶頂を訴える沙綾香。その果てに、とうとう割れ目から飛沫が上がった。
「ふっ、盛大に噴いたな」
 俺はそう指摘しながら、手の形を変えて本格的に潮を噴かせにかかる。Gスポットを指の腹で弄ってやれば、ぷしゅっ、ぷしゅっ、と面白いように噴き出てくる。
「はぁ、はぁ……すごい、どんだけ出るの……!? ちょっとタンマ、脱水症状になっちゃう……っ!!」
 やめてと言っても、止めてはやらない。シーツが水浸しになり、沙綾香が腰を抜かすまで。

 沙綾香がぐったりとしてからも、俺の責めは終わらない。入念な前戯をしているうちに、俺の分身はまた臨戦態勢に入ってしまった。猛りを鎮めるには、セックスしかない。ベッドに寝そべったまま、沙綾香を腰の上に乗せる。
「や……ちょっと! まさか、まだ……!?」
 焦りが伝わってくるが、容赦はしない。強引に安産型の尻を持ち上げ、突き立った逸物の上に跨らせる。
「あ、かはっ……は、入って、くる、ぅっ……!!」
 掠れ声が漏れた。黒髪が背中を覆ったところから見て、天井を仰いでいるらしい。
「ああ、まだまだこっからだぜ!」
 俺がそう言って腰を突き上げると、沙綾香の顔はさらに上向いてから、がくりと項垂れる。脱力、とは違う。前屈みになりつつ俺の膝付近を掴み、腰を浮かそうとしているらしい。実際、沙綾香の脚は細かに震えながら、何度も浮上を試みていた。ただ、完全に腰を浮かすことはできない。その前に絶頂し、脱力して尻餅をつくからだ。
「いっ、いっく……ぃ、いっちゃう、う…………っ!!」
 沙綾香は小さい声で、何度もそう繰り返していた。いく、という呟きの直後、重みのある尻肉が圧し掛かってくる。少し浮いたかと思えば、また落ちてくる。この繰り返しだ。それは結果として、騎乗位で力強く腰を振るのと同じだ。俺はそれに射精感を煽られながらも、沙綾香の腰の動きに合わせて突き上げる。
「あぐうっ!! ふ、深いいっ!!!」
 沙綾香から悲痛な声が漏れ、腰がぐらぐらと揺れ、体勢が斜めに崩れても、構わずに下から突きつづけた。
「うんんんんっ、んやぁあ……あっ、っくいく、ひぐ……っぅ…………!!」
 沙綾香の声がか細くなり、全身が震える。完全に俺優位で追い詰めている──はずだった。ある瞬間、沙綾香の背が仰け反るまでは。
 身体全体を弓なりに反らせたまま、円を描くように腰を使い、体内の逸物を絞り上げる。その刺激はあまりにも強い。
「くあっ、締まる……うねるっ!!」
 思わずそう叫んでしまうほどに。そして直後、状況はさらに変わる。支えを求めるように、沙綾香の手の掴む位置を変えたんだ。脛から、膝へ。
「うあっ!?」
 瞬間、俺のうなじに電気が走った。
「えっ、なにセンセ、いきなり?」
 よほど俺の反応が激しかったのか、余裕がないはずの沙綾香にも勘付かれてしまう。
「いや、なんか、膝掴まれるとヤバい」
「…………ふーん?」
 俺の答えに、沙綾香が口元を吊り上げる。しまった、弱みを握られた。そう思う間もなく、小悪魔の手がまた俺の膝を押し込む。シーツに埋まる形で両足がビンと伸びきり、快感が足指の先まで走り抜ける。まるで射精する回路が繋がったような感覚だ。
「あはっ、すごいどうしたの? 中でビクンビクン暴れまくりじゃん。なんか、センセのことレイプしてる感じ」
 沙綾香が俺の方を振り返り、勝ち誇ったように笑う。確かに犯されている気分だ。だが、いつまでもいいようにされているのは癪に障る。
「調子に乗ったな!」
 俺は、反撃に出た。両手を伸ばして沙綾香の腰を掴み、動きをコントロールする。逃げられないように。
「あっ、腰……!?」
 沙綾香の瞳に焦りの色が浮かんだ。予想通りだ。沙綾香が腰をくねらせるのは、俺を追い込む事だけが目的じゃない。膣のウィークポイントを突かれた時、左右に腰を振ることで絶頂の波を乗り切っているようだ。それを封じれば、余裕は消える。
「ひぃいうううっ!!!」
 Gスポットをなぞって奥を突くと、甲高い悲鳴が上がった。喜びの色が混じった悲鳴だから、耳に心地いい。それをもっと聴きたくて、俺はさらに腰を使う。
「うあっ、ヤバッ……どんどんイっちゃううっ!!」
 沙綾香はまた天井を見上げた。安産型の尻の向こうに、たるみなく張った、それでいて柔らかそうな太腿が見えている。もう何度思ったかわからないが、素晴らしい下半身だ。俺はそれを堪能しつつ、沙綾香の腰を自分の腰に打ちつける。そうしてたっぷりと快感を貪ってから、満を持して溶岩のような精を吐き出した。
「はっはっはっはっ……!! し、死ぬかと思った……。息、できなくて……」
 俺の上から解放された途端、沙綾香は横様に倒れこんで喘ぐ。全身をピクピクと痙攣させ、半ば白目を剥いた姿は中々に壮観だ。俺も疲労困憊の状態ではある。だが、勃起は収まらない。また少しすれば、俺達は互いの体を求め合うんだろう。


              ※


 ガスで発情させられてのセックスは“底”がない。
 手を繋ぎ合わせながらの正常位。
 熱いキスを交わしながら、胸板と乳房を押し付けあう体面座位。
 獣のような格好で、一心不乱に深く突く後背位。
 この辺りのオーソドックスなプレイは、それこそ何十回と繰り返した。灼熱の砂漠で水を欲するように、どれだけ求め合っても、何度絶頂しても満たされない。むしろ、肌を合わせるほどに体の内外の熱が増していくようだ。
 思春期入りたての子供のような、制御不能の性欲。俺はそれに駆られ、アブノーマルなプレイにも手を出しはじめた。
 最初のきっかけは、シックスナインで求め合っていた時だ。
 沙綾香の学習能力は高く、スポンジが水を吸うように、俺を悦ばせるテクニックを身につけていく。指で睾丸を刺激しながらのねっとりとしたフェラは、今や超一流の娼婦を思わせるレベルだ。それを、血管まで浮いたペニスにやられるんだから堪らない。ぼーっと浸っていれば10秒もかからず射精してしまう。ただ、そうなってしまえば、あの小悪魔に勝ち誇った笑みを向けられることだろう。だから俺は、太腿に力を入れて必死に射精を堪えつつ、逆に沙綾香の割れ目を刺激していた。
 だが、その状況もまた股間に悪い。ヴィーナスさながらの理想的な脚線と、それに挟まれた桃色の性器。そこから漂うフェロモンの香り。そのどれもが魅力的で、つい生唾を呑みながら見入ってしまう。そこで俺の目が捉えていたのは、割れ目だけじゃない。その上に息づく、菊の輪のような窄まり……そこにも惹かれていた。藤花の調教を目にしたのが悪かったんだろう。あの一連の映像のせいで、俺はそこを『使える』ものと知ってしまっている。
 あの気丈な“大和男子”をよがり狂わせるほどの、第二の性器。そこに挿入すれば、どんな感じがするんだろう。そこを開発すれば、あの小悪魔じみた沙綾香がどんな反応を見せるだろう。一度そう思ってしまうと、もう戻れない。気がつけば俺は、両の親指で沙綾香の尻穴を押し拡げ、楕円形に伸びた蕾に舌を近づけていた。
「ひゃんっ!?」
 ひと舐めした瞬間、沙綾香が奇声を上げる。唾液を散らしながら逸物を吐き出し、こっちを振り返る顔は、困惑に満ちていた。
「せ、センセ……そこ、お尻だよ……?」
「ああ。こっちも使ってみようぜ」
 俺がそう言うと、沙綾香の表情がさらに複雑なものになる。眉の角度がさらに下がり、そこだけを見るなら嫌そうだ。だが一方で、口元は僅かに緩んでいた。年頃の少女として、排泄の穴を性器扱いされるのは抵抗がある。しかし、藤花の例を見ているだけに、まったく興味がないわけでもない。そんなところか。
 俺は、そんな沙綾香をリードすることにした。彼女が嫌そうに腰を振っても、尻穴を舐めるのはやめない。菊の花びらの一枚一枚を舌先で捉え、丹念に舐めあげていく。
 沙綾香はかなり反応していた。視界の両端で、理想的な太腿がピクピクと強張っているのが見えた。
「うあっ……せ、センセ、アナル舐めるの上手過ぎ。なんか、ヘンな気分になってきちゃう……」
 ついには頬を赤らめたまま、そんな告白までされた。女子高生の尻穴を舐る才能があるというのも、素直に喜びにくいことだが。

 これ以降、俺は事あるごとにアナルを刺激するようになった。『駅弁』の体位で抱き抱えながら、指先で入口付近を弄ったり。後背位で突きながら、中指を浅く挿入したり。
 一番効果的だったのは、クリトリスを責めながら肛門を弄るやり方だ。沙綾香曰く「クリで感じてるのかお尻で感じてるのか、わかんなくなる」らしく、クンニを始めてから僅か数分ほどで甘い声が漏れはじめる。ガスで発情しきっているから、余計に感度が高いんだろう。その事が関係しているのか、アナルがほぐれるのも早い。指3本の挿入がスムーズになり、アナルセックスが出来るようになるまでに、それほど時間は掛からなかった。
「あ、は、入ってる! お尻に……入って、くるっ……!!」
 正常位でアナルに挿入する最中、沙綾香は全身を強張らせながら声を震わせた。その緊張ぶりは処女を失った時以上だ。そして、俺の分身が感じる抵抗感も、膣とは比べ物にならない。膣への挿入がみっしりと合わさった肉襞に分け入る感覚だとすれば、肛門への挿入は、ごく僅かな凹みのある粘土板に逸物を押し付けているに等しい。抵抗が半端じゃなく、本当にここは挿入できる場所なのかと不安になる。それでも、渾身の力を込めて沈み込ませれば、根元までがすっぽりと腸内に包み込まれた。そこまで入りきっても、亀頭が奥に当たる感触はない。膣とは違う場所に入っているんだということを、嫌でも理解させられる。
「痛いか?」
 そう訊いてみるが、沙綾香の反応は薄い。
「なんか、ヘンな感じ……」
 視線を左右に揺らしながら、それだけ呟いて押し黙る。かなり緊張しているようだ。アナルセックスがストレスなのかとも思ったが、腰を使いながら観察してみた限り、どうもそうではないようだ。
「うっ、あ……あっ! あいっ、い……いぃあ、っは!!」
 吐息を噛み殺し、時々嗚咽のような声を漏らす沙綾香。俺がその顔をじっと覗きこんでいると、彼女は泣き笑いのような表情を浮かべて顔を覆い隠す。
「やっぱ、は、恥ずかしいよ。センセ、沙綾香がおしりで感じてても、キライになんないでね……」
 小さな声でそう囁くにも聴こえる。その反応は、正直、理性が飛びそうなぐらい愛らしかった。
「なるわけないだろ」
 俺は自然と笑みを零しながらそう答え、アブノーマルな快感に身を任せる。
 沙綾香が言うところでは、直腸の奥を突くと、膣の突き当たり──ポルチオに衝撃が伝わって、相当気持ちいいらしい。実際、沙綾香の下腹を手で抑えながら何度も腸奥を突きこめば、痙攣しながら絶頂していた。
「せ、センセ……ほんと、前も後ろも、上手過ぎるよぉ! な、なんで、沙綾香の弱いとこ、わかんの……っ!?」
 アナル経由で何度もポルチオ逝きさせると、沙綾香が過呼吸になりながら恨み事を吐いてくる。不思議な感覚だ。俺にしてみればこれがセックスの初体験なんだから、やり方を必死に模索しているに過ぎない。

 ただ、その一方で、俺は自分の『肉体の記憶』に戸惑うこともあった。クンニの時の舌遣いや、潮を吹かせる時の指の形は、意識するまでもなく体が覚えていた。沙綾香の反応を見る限り、クリティカルなやり方を。
 腰遣いにしても、俺の思考とはまた別の本能が働いているらしい。抜き差ししながら沙綾香の反応を窺い、弱点を見つけたと思った時にはすでに、腰がその弱点を責めるように動いている。そんな事が何度もあった。
 気味の悪い話だ。俺の肉体を、俺の意識でない『何か』が動かしているなんて。だが、だからといって止めようもない。なにしろ無意識の行動だ。俺が何を考えようが、肉体は勝手に手練手管を披露し、沙綾香を悶え狂わせる。そして、そんな彼女の反応は、とてつもない快感となって俺をも狂わせるんだ。その快感の連鎖から逃れる術はない。動物の究極の目的が、生殖である限り。


              ※


 この部屋に閉じ込められてから、何日が経ったんだろう。
 媚薬ガスを吸い続け、欲望のままセックスを繰り返す俺達は、快感というプールの底にいるようだった。身体は湯気が出そうなほど熱いし、実際汗が滝のように流れているのに、ふとした瞬間に肌を見れば、お互い鳥肌が立っている。凍えるように痙攣してもいるが、それが寒さによるものか、快感によるものかすら判らない。
 ここまでの状態になれば、もはや腰を振る必要さえなかった。挿入したまま一切腰を動かさず、口づけを交わしたり愛撫しあったりするだけで、じんわりと暖かいものが体の中を這い登ってくる。そしてそれが脊髄を経由して脳に届くころ、逸物が勝手に強張って射精してしまうんだ。しかも、その射精量がまた凄まじい。壊れたポンプのようにドクドクと流れ出ていく。
 沙綾香も似たようなものだ。
「ああイってる……あそこが勝手にヒクヒクしちゃう……!!」
 沙綾香がこの台詞を漏らした時、俺は一切動いてはいなかった。背面座位で挿入したまま、じっと膣襞の感触に浸っていただけだ。それなのに、彼女の膣内は独りでに蠢き、かなりはっきりとした絶頂の反応を示す。まるで逸物に甘え、頬ずりでもするように。その愛おしさが、解るだろうか。
 当然、腰を動かし始めれば、お互いの反応はさらに激しくなる。
「ふううう゛っ、ううう゛っ!!! ふむ゛ぅうう゛うう゛っ!!!!」
 一番腰を動かしやすいバックスタイルでスムーズに突きこんでやれば、沙綾香はシーツに顔を埋めたまま、嗚咽するような声を上げた。事情を知らない人間が見れば、スタイル抜群の少女がレイプされ、泣きじゃくっているようにしか思えないだろう。だが粘膜で繋がっている俺には、彼女が昂ぶりきっているのがよくわかった。女性はつらくても泣くが、気持ち良すぎても泣くんだ。
 沙綾香は俺の責めで何度も何度も絶頂する。その度に左右の手がシーツを握りしめ、ついには腕立てをするようにぐうっと上半身を持ち上げてしまう。
「んああああぁぁんんっっ!!!!!!」
 沙綾香の背中が弓なりに仰け反った直後、咆哮が響き渡った。ライオンや狼が吠えるように。その野性味あふれる行動に、一切の嘘はない。本気で感じているとき、人間の仕草は動物と変わらなくなるらしい。
「へへへっ。凄い声だな、今の」
 俺はそう茶化しながらも、さらに壮絶な声を上げさせるべく体位を変えた。もう俺は、沙綾香のウィークポイントを把握しきっている。どんな体勢で、どれだけ脚を開かせ、どの角度で挿入すれば、どういう反応を引き出せるのか。それがはっきりと頭に思い描けるし、何十何百の試行を経た今、そのイメージと現実に乖離はない。もし一切の容赦なく『一番きついやり方』だけを繰り返せば、快感で沙綾香の脳を焼き切ることさえ可能な気がする。何よりも愛しい彼女相手に、間違ってもそんな事をしはしないが。
 俺の望みは、ただ彼女を満足させることだけ。無理をしきらない範囲で、できるだけの至福を与えることだけだ。
 側位のまま左脚を上げさせ、その腿を掴んで支えにしつつ、100度ほど開いた股座に力強く腰を打ち込む。沙綾香が最も感じるやり方の一つだ。ポルチオへの刺激が半端ではないらしく、奥まで突く度に抱えた左脚が強張り、う、う、という泣きそうな本気声が漏れる。さらに、左脚を引きつけて強引に密着し、グリグリと奥を虐めてやれば……彼女は即座、100パーセント絶頂する。
「ああああ……お、奥、潰れるっ……! いく、いくーいっぢゃふううう゛っ!!」
 案の定、沙綾香が悲鳴に近い声を上げた。首でも絞められたように顔が赤く、汗がひどく、瞳孔は開いている。挙句には鼻提灯まで膨らんでいる始末だ。
 素面で見れば恐怖すら感じる反応かもしれない。だが今の俺には、その反応はむしろ好ましかった。感じてくれている。俺の責めで達してくれている。それが嬉しくて仕方ない。そんな沙綾香が、愛おしくて仕方ない。もはや俺の意識に存在するものは、沙綾香だけ。延々と粘膜で触れ合っているこの少女だけが、俺のすべてだ。

 俺は、そんな彼女をさらに満たす。
 潰れたカエルのように大股を開かせ、正常位で突きこみつつ、子宮の辺りを両親指で指圧するようにグッグッと押し込む。沙綾香を絶頂させるマニュアルを作るとすれば、赤文字で記述したいほどに効果的な手段だ。
「いっく、いっくっ!いっく!いっくぅっ!!!」
 俺の突き込みと完全に同じペースで、息を詰まらせ気味の悲鳴が上がる。こっちのやり方だと、沙綾香の太腿はそこまで硬くならない。クラゲのように柔らかなまま、俺の鼠径部に貼りついている。だが逆に、上半身の強張りが尋常でなくなる。万歳をするように両手を上げて頭上のシーツを掴んでいるが、腕の筋肉はパワーリフトでも上げるように盛り上がっているし、腋の窪み具合も肉が抉れたかのようだ。肩甲骨の辺りは呼吸と共にベッドへめり込んでいくが、その際のギミイイイッという音は、とてもスレンダーな少女が響かせるものとは思えない。完全に力のリミッターが外れている。
 それだけの力も、俺の責め方ひとつで簡単に性質を変えられるのが面白い。俺は下腹から一旦両の親指を離し、代わりに右掌の付け根辺りで、ぐうっと子宮を押し上げる。
「かはあああっ!? しっ、し、子宮が、ぁ……っ!!?」
 大きく開いた口から息を吐き出し、沙綾香は弓なりに仰け反った。あれだけシーツを鷲掴みにしていた手もぱっと開き、女の子らしい細腕に戻りつつ、顔の横で空気を握る。
 こうして腰が浮いてしまえば、いよいよ俺の独壇場だ。膝立ちになり、両手で腰をがっしりと掴んだまま、空中で力強く腰を送り込む。接地面に力を逃がせないぶん、こういう時の反応は凄まじい。
「んおおおお゛っ、おおお゛っ!! んおおお゛お゛お゛っ!!!!」
 腹の底からの声で呻きながら、腰を左右に振りたくリ、両足で爪先立ちになる沙綾香。ビッチめいた雰囲気を持つ今風女子だが、根っこの部分では乙女らしい恥じらいをちゃんと備えている子だ。その彼女でも、この責めの前では恥も外聞もなく狂わざるを得ない。清楚さの結晶のような桜織でさえ、そうであったように。
 ぐちゃあっ、ぐちゃあっと音をさせながら抜き差しを繰り返せば、沙綾香は感電したかのように激しく反応しつづける。爪先立ちになった両足指は深々とベッドにめり込み。細腕は胸を張るように大きく広がったかと思えば、顔の前で肘を打ちつけるほどに閉じあわされる。口の開閉も恐ろしくハイペースだ。
 そうした狂乱を散々繰り返した果てに、とうとう結合部から何かが飛び散りはじめる。逸物を引き抜けば、遮られることのなくなった液体は勢い良く俺の腹に浴びせかかった。潮吹きだ。それも、相当勢いのいい。
「あああ、で、でてるっ……いってる……!!」
 視線を惑わせながら、呆然とした様子でうわ言を呟く沙綾香。
「ははは……はは」
 俺は愉快になり、意味もなく笑いながら、また沙綾香の中に入り込む。蕩けるような感覚の中、痙攣し、絶頂し、何度も体勢を変えながら求め合う。
「せ、センセ……センセ……いく、いくううう゛っ!! きもちいい、きもちいいよおおおっっ!」
 沙綾香が俺の上に跨り、気持ち良さそうに腰を振っている。俺はそんな彼女の手を取って、両手でも絡み合った。
 幸せだった。何も考えられなくなるぐらい。何も考える必要などないと思えるぐらい。
 だが。その至福の時間は、唐突に終わりを迎えた。天井のスピーカーからの、聞き覚えのある声によって。

『とうとう、仕上がったようですねぇ』

 快感に蕩けた頭でも、その嗄れた声の主はすぐに判った。端塚だ。
「何のことだ!」
 俺は憤りつつも、頭のどこかで理解していた。仕上がった、という言葉の意味。それは多分、今も俺の上で一心不乱に腰を降り続ける沙綾香のことだろう。予想以上に快楽の虜になっているらしく、スピーカーからの声にも気付いていない様子だ。彼女にとっても端塚は、度し難い親友の仇だろうに。
 俺が、そこまでにしてしまったのか。調子付いて開発するあまりに。

『いい加減、お気づきなのではありませんか? ご自分が何者なのか』

 俺の心を見透かしたように、端塚はそう続けた。
 自分が何者なのか……そんなもの、解らない。この部屋に来て、ますます解らなくなった。ここまで女を意のままに感じさせ、狂わせるなんて、普通じゃない。
「知ってるなら、いい加減教えろ! 俺は、何なんだ!?」
 俺は、端塚に向かって不安を爆発させる。すると奴は、スピーカーを鳴らしながら、驚くべき言葉を寄越した。

『──我が倶楽部の創設者にして、皆から“先生”と慕われる最高の調教師。
 それが、貴方です』

 告げられたその言葉を、俺の脳はしばらく理解しなかった。
 今、奴はなんと言った?
 ──俺が、この悪趣味な倶楽部を作った?
 ──調教師の“先生”と呼ばれていた?
 バカな。有り得ない。有り得るわけがない。そう拒絶してみるが、一方で腑に落ちる部分もあった。

 肉体に染み付いた、女を悶え狂わせる手腕。

 夢に見た、俺の目の前で狂っていく見知らぬ女。

 俺を見て「せ……」という言葉を発し、病的に怯えはじめた受付嬢。

 この施設における、不自然なまでの厚遇ぶり。

 心に引っ掛かっていた幾つものピースが、今の端塚の情報に合致する。

『その娘が“先生”という呼び名をつけた時には、心底驚きましたよ。やはり貴方には、その名こそが相応しいようですねぇ。突然私共の前から姿を消され、記憶喪失の状態で発見された時は肝を冷やしましたが……杞憂でしたな。やはり、貴方は一流の調教師だ。ご記憶がなくとも、しっかりと調教を成し遂げてくださる!』

 端塚はそう続け、さも可笑しそうに笑った。その言葉を聞いて、俺は改めて沙綾香を見る。彼女はまだ快楽に囚われたままだ。蕩けたような表情のまま、腰を上下に振り続けている。

『さあ、もう一歩です先生。その娘に駄目押しで快楽を刷り込み、意のままに従う人形に作り変えてください!!』

 端塚は笑いながら俺に要求を突きつける。
 なるほど……朧げながら、奴の目的が理解できた。俺に沙綾香を抱かせることで、俺の中に眠る調教師としての血を目覚めさせる腹積もりだったわけだ。そして同時に、沙綾香を俺の虜にさせようとした。世に名だたる八金財閥の令嬢を、だ。最終的な目的は、それを交渉材料に八金財閥を支配する事か。
 
 だとしたら、残念なことだ。
 俺の中には、確かに調教師としての本能が眠っているのかもしれない。だが今は、女が泣いている姿を見ると心が痛む。前はどんな男だったか知らないが、今の俺は、ケダモノじゃない。
「沙綾香、沙綾香! しっかりしろ!!」
 俺は騎乗位で腰を振る沙綾香を押し倒し、その頬を張った。一度では目覚めないようだったから、何度も、何度も。

『な……何をしておられるのです、先生!?』

 端塚が慌てている。いい気味だ。俺はそうほくそ笑みながら、沙綾香の頬を叩きつづけた。すると、そのうち彼女の目に光が戻る。
「…………ふぁれ、センセ…………?」
 寝惚けたような口調で、沙綾香は目を覚ます。
「おはよう、沙綾香」
 俺はそう言って、彼女に笑いかけてみせた。
 端塚は、押し黙っている。かなり長く。取った行動に後悔はないが、冷や汗が背中を伝う。

『………………残念です』

 端塚が沈黙を破った、その直後。部屋の四方の壁が開き、そこからセキュリティが雪崩れ込んでくる。
「えっ! な、なに!? いやあっ!! やめて、触んないでよぉ!!」
 沙綾香が本気の悲鳴を上げながら、セキュリティに手足を掴まれた。
「沙綾香ッ!!」
 彼女の事は心配だ。だが、セキュリティ連中の手は俺をも捕らえようとしている。俺は右から迫りくる男の腕を取り、無意識に投げ飛ばしていた。まただ。セックスの時と同じく、『何か』が体を勝手に動かしている。だが、今はそれが心強い。
「く、クソ! コイツ強ぇぞ!!」
 セキュリティの焦る声を聞きながら、敵の耳を引っ掴み、肩を押さえ込む。記憶を失くす前の俺は、荒事にも通じていたのか。相手は俺以上に体格のいい連中だったが、面白いぐらい容易く制圧できた。
 押し寄せる相手を捌きながら、沙綾香の方へにじり寄る。一人、そしてもう一人。男の急所を打って怯ませ、沙綾香を拘束から抜け出させる。ちょうど今は入り口が開いていて、逃げ出すには絶好のチャンスだ。
「沙綾香、俺が食い止めてる間に逃げろ!」
「そ……そんな! センセを置いてけないよ!!」
「いいから、早く!!」
 お互いがお互いを案じるあまり、俺達には隙が生まれた。そして敵は、その隙を見逃してはくれない。背後に気配を感じた直後、全身に激痛が襲った。
「ぐあ!!」
 思わず叫び、ベッドから転げ落ちるた。眼球を上に動かすと、セキュリティの連中が警棒を握っているのが見えた。さっきの衝撃を考えると、スタンガン内蔵か。
「センセ!!」
 何人ものセキュリティに抑え込まれる最中、遠くで俺を呼ぶ声がする。

『おっと、貴女はこちらです』

 またスピーカーが鳴り、端塚の声がした。その直後、床の一部が落とし穴のように開く。さらにセキュリティの一人が、そこに向けて沙綾香を突き飛ばすのが見えた。
「きゃっ!!」
 短い悲鳴と共に、沙綾香は為す術なく床の穴へと落ちていく。
「沙綾香ぁっ!!」
 俺は愛する少女の名を叫んだ。だが、俺を呼ぶ声は返ってこない。代わりに、穴の遥か下で、ひっ、という叫び声がする。胸がざわついた。
「どうした、沙綾香、沙綾香っっ!!」
 さらに叫んだ、その直後。俺のすぐ目の前で、床の様子が変わっていく。
 間近で見て初めて気付いたが、この部屋の床は3層に分かれているらしい。1層目と3層目は透明なガラス張りで、2層目に色つきの層が挟み込まれていたために、普通の床のように見えていたんだ。
 そして今、その色つきの2層目が、シャッターでも開くように収納されていく。ガラスの床を通して、階下の様子が透けて見えるようになる。

 下には、こことはまた別の部屋があった。その真ん中には、先ほど突き落とされた沙綾香が蹲っている。そして、その彼女を遠巻きに囲むようにして、別の人間が立っていた。
 そのうちの何人かには見覚えがある。
 上半身が和彫りで覆われ、突起だらけの逸物をぶら下げた奴は、桜織の純潔を奪った手越に間違いない。その横にいるのは、ローストターキーを思わせる異形のペニスを持つ、大柄な黒人……あの藤花から一切の余裕を奪い去ったロドニーだ。さらにその右にいる、いかにも女受けが良さそうな細マッチョは、ボーイッシュな祐希の精神を崩壊させた颯汰(そうた)。少し離れた場所には、千代里にディープスロートの特訓をさせて何度も吐かせていたホスト風の男の姿も見える。
 思い出すだけでも寒気がするような、生粋のサディストの揃い踏みだ。そいつらに囲まれた沙綾香は、凍りついたまま動く事もできずにいた。怖くて堪らないんだろう。沙綾香もまた、そいつらの所業を嫌というほど見せられていたんだから。
「…………っ!!!」
 俺は言葉を失い、ただ床に這いつくばって階下の様子を見つめていた。すると、不意にロドニーが顔を上げる。
「よう、久しぶりだな。つっても、今のアンタにゃ記憶がねぇんだったか。寂しいもんだ」
 奴は俺の顔を見上げながら、そんな事を口走った。まるで古い知り合いかのような口ぶりだ。
「寂しい、だと?」
「ああそうさ。なにしろ俺ァ、アンタから調教の手解きを受けたんだぜ、“先生”。」
 その言葉に、俺は何度目かの衝撃を受けた。
 俺が……俺が育てたっていうのか。この悪魔じみた外道を。
「恩返しといっちゃなんだが、今の俺らのテクを見せてやるよ。アンタが情を移したこのガキを徹底的に調教して、俺らの言葉にゃ絶対服従の人形に作り変えてやる。アンタはせいぜい、そこで見てな。テメェの教え子の勇姿をよぉ!!」
 ロドニーはそう言って笑い、他の数人と共に沙綾香に近づいていく。
「い、いや……! センセ、た、助けて!!」
 沙綾香は怯えきり、俺を見上げながら助けを求めた。だが、俺にはどうすることもできない。スタンガンで痺れたまま、セキュリティに組み伏せられたこの状況では。
「さ、沙綾香! 沙綾香ぁああっ!!!」
 声の限りに叫ぶ俺の前で、沙綾香の姿は、調教師の影に隠れた。


 

二度と出られぬ部屋 第四章 オーガズム・クライマックス(後編)

※更新が遅くなってすみません……。4章最終部分です。



■第四章 オーガズム・クライマックス(後編)

 12人目の男が持参したディルドーの特徴は、何といってもその柔らかさにあった。男が持ち手を左右に揺さぶるだけで、中央部分が鞭のようにしなる。となれば当然、先端部は膣奥を錐揉み状に刺激するはずだ。
 実際、桜織の反応は大きかった。
『うぅくっ! はっあ……ああっ!! ああぁぁ……あぁんっ、ああぁっ!!』
 艶のある声を上げながら、上下左右に腰を揺らす。明らかに、ディルドーによる抉り回しから逃れようとする動きだ。
 性経験の少ない子にとって、膣奥を刺激されるのは痛いらしい。だが性感帯を絶え間なく刺激され、脳内麻薬が出続けている桜織は、その痛みすら快感になってしまうようだ。リンリンと鳴る鈴の音が、それを証明している。
『ふふふ、暴れてる暴れてる。性経験の少ない子っての奥刺激されると痛いらしいけどさ。イキまくって脳内麻薬出まくりのキミなら、そんな痛みも全部快感になっちゃうでしょ? 僕が観たAVでも、イキすぎた女優が止めて止めてって叫んでたんだよね。それに比べたら、やっぱり君は品がいいよ、必死に声殺そうとしてるもん。女の子は清楚が一番だよね』
 男は頬を緩めると、手首を大きく使い、ディルドーのグリップ部分を激しく回しはじめた。連動してディルドー本体も円を描く。もはや大縄跳びの動きだ。
『ああいやあっ、深いいぃ゛っ!!!』
 圧に耐え切れなくなったのか、桜織の白い歯が噛み合わされる。腰がぐうっと持ち上がり、シーツとの間に枕ひとつ分ほどの隙間が空く。
 男として客観的に見れば、快感に耐える桜織の顔は“そそる”。この上ない清楚さが崩れる瞬間に、カタルシスを感じてしまう。だから男が、余裕をなくした桜織の唇を奪ったのも、一概に批難はできない。ただし、それはあくまで俺の感想。極限状態で呼吸を遮られ、軽蔑する相手とのキスを強いられる桜織本人からすれば、地獄以外の何物でもない。
『んぶっ!? ぷはっ! や、やめて、くださ……んむっ、むうう゛っ!!』
 頭を振って口づけから逃れようとする桜織。だが上から密着する男を拒むのは容易じゃない。
 おまけに彼女は、首から上の抵抗に専念できる状態でもなかった。唇を奪おうとする中でも、ディルドーを操る男の手は止まらない。体勢が体勢だけに、責め方自体も変わっていた。正面からディルドーを突き込む動きから、桜織に覆い被さったまま、ディルドーを引き寄せる動きに。あの“引き寄せる”やり方は、より強く、よりピンポイントに奥のスポットを刺激することだろう。
『えくっ、えくぅうう゛っ!!!』
 男に舌を奪われながら、桜織が叫ぶ。リン、と響く機械音はいつも通りだが、今回の絶頂は一際深いに違いない。
 ディープキスの音に混じって、何度も鈴の音が鳴り響く。やがて男が、引き寄せる動きのままでディルドーに円運動をさせはじめると、桜織の下半身の反応も極まった。腰を浮かせ、足指でシーツを掴み、果てにはぷしゅっと潮を噴く。
『はぁっ、はぁっ……へへへ。桜織ちゃん、唾の量が凄いよ。見て、俺の顎まで垂れてきてる。イクと唾が出るからかな。それとも下品モードに入っちゃった? 俺的には、それでも全然いいんだけど』
 男は桜織から顔を離し、嬉々として謗りの言葉を投げかける。桜織は唇を結んだ。彼女がよく見せるこの表情は、実に清楚だ。Mの字に開脚したまま、割れ目をひくつかせる下半身とは対照的に。

 男はここで、愛液で濡れ光るディルドーを投げ捨てた。そして代わりに、同じくベッド上に放置されていた電気マッサージ器を拾い上げ、先端にアタッチメントを取り付ける。
『……っ!!』
 凶器に近い形状となったマッサージ器を前に、桜織の目が見開かれる。彼女はマッサージ器の暴力的な威力を知っている。アタッチメントは、その威力をさらに増すために取り付けられたに違いない。となれば、恐怖して当然だ。
『お、お願いします! そんなもの使わないでください……。それなら、挿入された方がましですっ!』
 桜織は細い身を掻き抱いて叫ぶ。相当な怯えぶりだ。貞操観念の強い彼女がレイプを許容するなんて、並大抵のことじゃない。
『そう焦んないでよ。ハメんのも後でたっぷりしてあげるからさ。その前に、もっと奥をほぐして感度を上げよう?』
『い、嫌! これ以上なんて、今でも感じすぎてます!』
『ダーメ。そうやって普通に喋れてるってことは、まだ余裕あるってコトじゃん。片言でしか喋れなくなるまで、思いっきり追い込むから』
 男の指がマッサージ器のスイッチを入れた。重い羽音を伴うアタッチメントが、充血した割れ目へと潜り込み、桜織が腰を跳ね上げる。
『くあっ! こ、これ、刺激が強すぎますっ!!』
『知ってるよ、だから良いんじゃん。どうせイキまくるしかないんだからさ。そんなお股に力入れないで、リラックスしてな』
 男は鬼気迫る表情で、マッサージ器を奥に固定しつづけていた。相手には弛緩を求めながら、自分の手首には血管を浮かせて。
『いっ、いくーーううっ!!』
 さすがに機械の威力は半端じゃなかった。桜織が歯を食いしばって絶頂するまでに、10秒もかからない。男はその反応を眺めながら、マッサージ器を上下に揺らして責めを強める。
『っくぅ……だめ、だめいくっ、またいく!!!』
 桜織の腰が持ち上がり、リンリンと鈴の音が響く。桜織は何度も絶頂を訴えていたが、その回数が増すほど、声のトーンは低くなっていった。聴くだけで痛さが伝わる悲鳴があるように、その低い呻きは絶頂の深刻さを生々しく伝える。
 脚の反応も正直だった。指先でシーツを掴むだけでは飽き足らず、シーツに足裏を叩きつけて暴れはじめる。苦しみの源を遮断するように、内股に閉じようとする動きも見えた。
『閉じるな閉じるな。脚開くことだけに専念してろ!』
 男はやや口調を荒げ、左の腕と膝を使って桜織の股をこじ開けながら、右手で掴んだマッサージ器を揺らしつづける。ぶるぶると細かに痙攣する様から、2人のどちらもが全力で力を篭めていることがわかった。優勢なのは、当然ながら男の方だ。
『うう゛っく、くはぁあっ!! ああ、あ、いっくう……っ!』
 桜織の喉からはいよいよ切ない声が漏れ、腰が大きく反ってはドスンとベッドを揺らした。何かに憑かれているような動きだ。それでも、男はマッサージ器での圧迫を緩めない。
『そろそろホントの限界か? よーし、じゃあこっから30回連続だ。30回連続でイッたら一度休ませてやる! ほーら1回! 2回!』
 そう叫んで桜織の脚を大きく広げさせ、鳴り響く鈴の音をカウントしはじめる。
『もう無理ぃっ!! あっく、はっくっ!んんあああっ!! ご、ごめんなさい、ごめ……んんん゛っ!! はっはっは…………っくいっくう゛う゛っ!!!』
 桜織の反応は、折檻を受けて親に謝罪を繰り返す子供そっくりだった。涙を流し、喘ぎ、震えながら謝る。しかし親役は、そんな少女の反応を愉しむばかりだ。
『18回、19回、20回! もっともっともっと、イけるだけイけっ!!』
 桜織の腰が頭より高く持ち上がっても、左右に激しく振られても、マッサージ器は執念じみた動きで追随する。地獄のチェイスだ。
『いっくいく、いきゅううう゛っ!! も゛れるぅっ、もれぢゃううう゛っ!!!!』
『いいぞ漏らしても、全部出せ! あと3回! 28、29……ラストォ、30ッ!!!』
 男はラストスパートとばかりにマッサージ器を小刻みに動かし、30回目の鈴の音と同時に一気に抜き去る。
『ひいいぐううう゛ーーーーっ!!!』
 金切り声を上げながら、腰をベッドに叩きつけた桜織。その割れ目から、透明な飛沫が勢いよく噴き出す。
『はーっ、はーーっ。あっはっはっは、すごい。完全に中イキと小便がセットになっちゃってんね。俺としちゃエロくていいけど、スゲエ下品だよー委員長?』
 男はどこまでも性根が腐っているらしく、放心した桜織に追い討ちの言葉を投げかける。
 桜織の頬をまた一筋、涙が伝い落ちた。


 桜織の苦しみは続く。
 次の場面では、桜織は床に立ち、ベッドに手をつく格好でディルドー責めを受けていた。さっきの映像でも使われていた、非常に柔らかいディルドーだ。
『さっきより感じてるね。立ってる状態って、下半身に一番力入るからね』
 男の言葉通り、桜織の反応は激しい。深々と入り込んだ黒いディルドーが蛇のようにのたうつたび、太腿が引き締まっては緩む。愛液の量も相当で、内腿に垂れるのはもちろん、ディルドーが抜かれるたび、カメラに映るほどの水滴が飛び散ってもいる。桜織が足を踏み替えるたび、みちゅりと音が鳴るほどだ。
『うわ、見てよ桜織ちゃん、下びちゃびちゃ。これ全部、桜織ちゃんの本気汁でしょ? すっごいね』
 男は笑いながらペットボトルの水を煽り、その飲みかけを桜織の口に宛がう。桜織が一瞬顔を顰めたところを見ると、匂うようだ。だが、彼女は脱水症状を避ける為にもそれを飲み下すしかない。汗に涙、愛液……体液は失われる一方なんだから。

 12人目の男はここで休憩を挟んだ。ただし、休むのは自分だけだ。
『次は、オナニーしてみせてよ。これ使ってさ』
 奴はベッドで寛いだまま、桜織にバイブを投げ渡す。
『なっ……!』
 桜織は息を呑んだ。それまでのような受身の態度が許されず、自ら快感を貪らなければならない。そんなことは、彼女の倫理観にそぐわないだろう。
 それでも、彼女は従うしかない。羞恥で眉を潜め、唇を噛みしめ、耳までを赤く染めて、自ら割れ目にバイブを差し込む。
『ほら、脚開いて! バイブが出入りするところを俺に見せてよ』
 男の要求を受けて足の幅を広げつづけた結果、桜織の格好は足を外向けに開いたがに股となってしまう。
『あっはっはっはっ、いいねいいねぇ! 清楚娘のガニ股バイブオナニーとか、お宝級の映像だよこれ!! しかもさぁ、なにこれ、お汁の量が凄いじゃん! まさか興奮してるの、そんな浅ましい状況で!? ホントかよ、ムッツリのド変態じゃん!!』
 男は桜織の自慰を眺めながら、好き放題に野次を浴びせまくる。言葉が重なるたびに、桜織の表情は歪み、頬を涙が伝う。
 だが、小さな手がバイブのグリップを前後させるたび、愛液が溢れているのは事実だ。どうやらかなり感じてしまっているらしい。
『はぁっ、はぁっ……! はぁっ、はあっ! うっ、く……あ、はぁっ!!』
 荒い呼吸の中、足が細かに震えはじめる。リン、と無慈悲な鈴の音が鳴る。
『あ、イッた! イク時はイクって言わないと。オトナの前でオナニーする時のマナーだよ?』
『あ、あ……はぁ、ぁっ!! い、イキますっ! イキます、イ……ぃいっ!!』
 絶頂を宣言させられるようになってから、さらに鈴の音の間隔が狭まった。脚の震えも病的になっている。かなり深く絶頂しているようだ。
 痛々しい。だがそれだけに、サディストにとってはこれ以上ない興奮材料だろう。
『ほんとエロいなぁ、桜織ちゃん。勃ってきちゃったよ』
 男は勃起した逸物を誇示しながら桜織の背後に回り、手でバイブを払いのけると、齧りつくように挿入する。
『ん゛っ!』
『んー、イイ声。バイブで慣らされてても、生のチンポだとまた違うんだ? バイブのツルッとした表面と違って、人の肌って結構摩擦強いもんね。俺の方も、結構擦れて……ああああすっごい、襞が絡み付いてくるぅ! イキまくりで、すっかりオマンコが敏感になってるみたいだね』
 男は桜織の反応を楽しみながら、荒々しく腰を打ちつける。一方的に欲望をぶつけるセックスだが、最初の頃ならいざ知らず、“出来上がった”今の桜織はそれでも感じてしまうらしい。
『んっ、んんっ!! ふっく、んんっ……ん、ふう゛っ!!』
 左手で膝を掴み、右手で口を押さえる桜織。余裕のない中でも清楚さを保とうとする仕草が健気だが、背後から犯す男はその健気さすら許さない。
『今さら声抑えなくてもいいじゃない』
 激しく腰を前後させながら、桜織の両手首を掴んで後ろに引き絞る。桜織の顔が引き攣った。声を抑えきれない確信があるんだろう。
『ふッ……く、く……んふっ、ふんんん! あ、ああっ!! うぁあ、あ……っ!!』
 手の平という覆いを失った桜色の唇は、男が腰を打ち込むたびに開き、艶のある声を漏らす。
『どう、がに股で犯されると興奮するでしょ? キミこういう下品なの好きだもんね? ほら、どんどん逝っちゃえ!!』
『はぁっ、はぁっ……こ、こんな格好、好きな、わけじゃ……! はああっ、うあっ、あ……あいぐ、いっぐうっ!!』
 男の謗りを否定してみせても、絶頂が止められない。あらゆる自由を奪われた桜織は、浅ましい格好のまま、愛液を散らして喘ぎつづけるしかなかった。

 割れ目に溢れるほどの精液を流し込んだ後も、男の欲望は萎えない。むしろ逸る気持ちがなくなった分、より陰湿なものになった。
『おーっ、イってるイってる!!』
 桜織の両足首を纏めて肩に担ぎ上げ、アタッチメントつきのマッサージ器で執拗に膣奥を刺激し。顔を両手で覆いながら絶頂していた桜織が反応を見せなくなると、バイブに持ち替えて気付けする。だらしなく開かれた脚の間に深々とバイブを押し込んだまま、下腹を手で圧迫するやり口だ。
『あ゛っ、かはっ……あ゛、ああ゛!! だめ゛、またイク、だめ゛っ!!』
 意識を取り戻した桜織は、男の手を払いのけようとしていた。だが何度も絶頂させられるうち、両手でシーツを掴みながら、脚を激しく暴れさせる抵抗に変わっていく。男はそんな桜織の膝裏を抱え込み、あられもない姿で開脚させながら責め立てた。
『あははっ、凄い凄い。必死じゃん!』
『いや゛っ、い゛や゛ぁいや゛ああ゛ーーーっ! いぐっ、イグイグううッ!!』
 男の愉快そうな笑い声とは対照的に、桜織の叫びは悲痛だ。
 歯を食いしばり、大きく開き。瞳孔を開いたかと思えば、涙ながらに白目を剥きかけ。
 そうした激しい反応の果てに、状況はいよいよ極まっていく。
 絶頂の現在カウントが130を超えた頃、とうとう桜織は最大の恥辱を晒した。
 ぶううっ──という音。
 放屁だ。それは激しい水音と鈴の音にも掻き消されることなく、残酷なまでの明瞭さで響きわたる。
『お?』
『ぁ……!!』
 男は固まり、バイブを操る手を止めた。桜織自身も眼を見開いて硬直する。
 そして、鬼の首でも取ったような大笑いが始まった。
『ふはっ、あは、あはははっ! ひいっ、ひいいっ!! お前、気持ちいいからって、屁、屁をこくなよ、委員長!!』
 バシバシと膝を叩く小太りの体の下で、桜織の顔が歪む。死を望むかのような痛切さで。

『はーっ、笑った笑った。さて、んじゃ屁コキ委員長にお仕置きといくか!!』
 男はそう言って逸物を扱き上げ、横たわった桜織の右腿を掴み上げて挿入を果たす。挿入部分からは泡が膨らみ、ぶじゅうっ、という水音が漏れた。
『ふぁうぐっ!!』
 桜織が目を見開く。
『おーっ、また中のうねりが凄いね。挿入しただけでイッちゃった?』
 男は笑いながら腰を振る。斜め上から体重をかけて圧し掛かり、奥を押し込む突き方だ。それを受ける桜織の表情は、辛そうだった。眼を閉じて眉間に皺を寄せ、薄く開いた唇の間で歯を噛み合わせている。男の腰が股座に密着するたびに、う、う、と呻きを漏れてもいた。さらに、男がにやけながら下腹を擦りはじめれば、歯を噛み合せることすらできなくなる。
『どう桜織ちゃん、イってる?』
 鈴の音が鳴り響く中で、男はあえて問いかけた。征服者として、言葉で聞きたいということか。
『いっ、いひいいっ!! い、イッてます、イッてますっ!!』
 桜織からすれば、正直に答える以外にない。自分の絶頂は、脳の機械によって余さず暴かれているんだから。
『そうか、よーし。もっとイこう、2人でもっと気持ちよくなっちゃおう!!』
 男は前屈みになり、抱えた桜織の右腿に腹を乗せる。小太りの体の下敷きになれば、桜織も横ざまの体勢を保てない。背中をシーツに押し付け、大きく脚を広げる。それは、男にとって深く挿入しやすい格好だ。抜き差しが目に見えてスムーズになる。
『あああいやっ、いくうっ!! いくううぅっ!!!!』
 桜織の脚が筋張り、すらりと細い手足がバタバタと暴れた。
『ふーっふーっ、へへ、えへへへっ!!』
 男は汗みずくで笑い、桜織の手を掴んで背を仰け反らせる。そのまま何度か力強く挿入されれば、桜織の腹筋に縦線が走った。
『いやあああっ、やめてっ! やめてくださいっ!!!』
 桜織が大口を開けて叫んでも、男の腰は止まらない。肩に担ぎ上げられた桜織の足先が強張り、男の肩口で爪先立ちをする。男がそれを痛がって右脚を放り出せば、横向きに脚を重ねたまま、やはり艶かしく蠢かす。
 それらはすべて、桜織の意思ではないだろう。恥じらいのある彼女の行動らしくないし、何より、彼女には見るからにそんな余裕がない。
『あっ、はっ!! はっ、はっ!! ああんっ、あ……んああ!!』
 目を見開いたまま虚空を見上げ、短い呼吸を繰り返す。そんな、茫然自失の状態だ。
『すっごい、キマってきたね。そろそろ時間なのが惜しいよ。次の奴らは、この状態から君をイジメ抜けるんだよねぇ、あー羨ましいなあ!!』
 男はそう言って逸物を引き抜き、手で扱きながら白濁を桜織に浴びせかける。自分という存在をアピールでもするように、たっぷりと。白濁は腹、胸と飛び散り、一部は桜織の顔にも浴びせかかる。
 それでも、桜織は反応をしない。シーツに頭頂部をめり込ませ、顎を天井に向けたまま、気を失っているようだった。


 12人目が部屋を退出した後は、3度目の食事の時間だ。
 失神から引き戻された桜織は、膝にスープの皿を置かれただけでぶるりと震えた。それを見て手越が噴き出す。
『すっかりポルチオ性感が目覚めたって感じだな。もう全身がクリトリス状態ってか? その状態でソレ食ってみな、もっと新しい世界に行けるぜ』
 手越はスープを指し示しながら告げる。
『新しい、世界……?』
『ああ。“オーガズム・クライマックス”──逝き続けた果てにある、究極の快感だ。そのスープ飲んで発情したまま逝きまくりゃ、じきにその境地に辿り着く。もっとも、99%の女は、その前に脳が焼き切れて狂っちまうがな』
 物騒な言葉を口にしながらも、手越に悪びれる様子はない。あくまで真実を述べているという風だ。それは逆に、どんな脅しよりも心に突き刺さる。
『…………私は、耐え抜いてみせます』
 桜織は表情を引き締め、濁りのない瞳で手越の顔を見つめる。手越の唇の端が持ち上がった。
『イイ眼だ、そうこなくっちゃな。まだたったの12人目。ようやっとスタートラインから一歩踏み出したとこなんだからよ!』


              ※


 手越の言葉通り、ここからが本格的な地獄の始まりだった。
 執拗に開発され、剥きだしの急所と化したポルチオ。それを男共が見逃すはずもない。単に快楽を貪る上でも、清楚な桜織の顔を歪ませる上でも、借金の棒引き額を稼ぐ上でも、最適なポイントなんだから。

 圧倒的に多いのは、マングリ返しの桜織に対し、膝立ちをした男が斜め上から挿入する体位だ。マングリ返しというあられもない格好を取らされると、桜織は耳まで赤らめて恥じ入る。その顔を正面から拝む事ができ、なおかつ奥まで突きやすい。それが人気の秘密だろう。
『はっは、スゲー顔。俺も結構ハメてきたけど、そんなツラしてる女見んの初めてだわ。子宮イキの快感って、そんなスゲーの? マンコの奥も太腿もピクピクしっぱなしだしさぁ。電気流れてるみてぇ』
 男共は腰を振りながら、嬉々として言葉責めを浴びせつづける。
 対する桜織は、恥を晒さないように必死だった。目を瞑り、口を結び、シーツを鷲掴みにして快感に耐える。だが、そうして我慢を続けられるのも、ほんの僅かな間だけだ。しかもその間隔は、映像が進めば進むほど、確実に短くなっていく。
『はぁっ、はぁっ……! お、お願いしますっ、休ませてください! 奥は、奥は、もうっ……!!!』
 息を切らしながらのこんな哀願を、何度耳にしたことだろう。犯す男は交替制でも、犯される桜織に休みはない。シャトルランを何千回も繰り返しているようなものだ。音を上げるなというには無理がある。
『ほう、休みてぇか。じゃあ今どんな感じが、自分の口で説明してくれや』
『ハッ、はっ、はっ……ど、どんなって……。お、奥に、あそこの奥を硬い物で突かれて、潰されて……深い所が、ジンと疼いて! そっ、その疼きが、足の、指先にまで……ふっぐ!?ううんっううんんイクっ!!!』
 男が促すままに、快感の流れを語る最中。変に意識したのがまずかったのか、桜織は足先を強張らせながら絶頂に至る。別方向を向いた親指と人差し指の間に膜が張り、太腿が横に膨らみ、腹筋が浮き出るほどの反応。リン、と響く機械音こそそれまでと同じだが、どう見ても格別に深い絶頂だ。
『ははっ、また顎の皺がすんげぇな! んで? ジーンとした痺れが広がって、そっからどうなる?』
『ぜっ、はーっはーっ……!! そ、その後は……か、快感が……いえ、快感なんて言葉じゃ表せないぐらいの感覚が、ずっと続いて……はっ、はっ……頭に、霧がかかっていくんです! 真っ白になって、何も解らなくなって……ある瞬間に、足を踏み外したみたいに深い快感に沈んで……っ!!』
『ふーん、スゲーな。で、一回イッても終わりじゃないっしょ? マンコん中、ずーっとヒクヒクしてんじゃん』
『はい、イッても、収まりません!! イッた直後は、少し波が収まりますが……んん゛っ、すぐに、ぶり返してきます! 前のよりずっと大きくて、お、溺れそうなぐらい……っ!』
 そう語る桜織は、まさに快感の大波に足を掬われている最中らしい。短い呼吸と共に、上半身が仰け反って痙攣し、見開かれた瞳がトロリと蕩ける。男はその反応を前に目を細め、更に腰の振りを早める。
『うあっ!! どうして……や、休ませて、くれるんじゃ……!?』
『いやぁ? ンな約束はしてねぇし、してたとしても守れねぇなあ! こっちは一ヶ月以上も女抱いてねぇもんで、金玉がパンパンなんだよ! 一発二発出したぐらいじゃ収まんねぇ、ガンッガンいかせてもらうぜぇっ!!』
『あがっ、ふ、深いぃっ!! は、激しくしないで……あぐうっ!! い、ああああぁっ!!!』
 容赦ないピストンを受け、桜織が悲鳴を上げる。しかもそれが延々と続いた。30分もすれば、男は膝が擦れて痛いとぼやきだすが、だからといって止めはしない。桜織の股間を跨ぐように足を開き、改めて力強い抜き差しを始める。薄汚い尻穴の下には膨らんだ睾丸があり、そのさらに下に覗く逸物は、未だに硬さを保っているのがはっきりと見てとれた。
『おおっ、この体位気持ちいいわー、すっげぇ射精しやすい! 今度から女抱く時ゃこれにすっか。お前のおかげで、意外に早くタコ部屋から出れそうだしよ!!』
 男はカウントの増えるモニターを眺め、上機嫌で叫ぶ。膝裏に溝を刻み、確かな腰遣いで奥を突きながらだ。
 対する桜織は、悲惨だった。
『ふぐううっ!! んうっ、ふううっ!! や、やめっ……んんん゛、いくっ! い゛……ッ!!!』
 押し潰される姿勢で膣奥を突かれる中、時々荒い呼吸が途切れる。そういう時、桜織は決まって顎を浮かせ、頭頂部をシーツに埋めていた。そうしないと耐え切れないほどの快感なんだろう。
『うは、締まるぅーっ!!』
 男は嬉しそうな声を漏らし、奥まで挿入したままで腰を止めた。
『はあっ、はあっ、また……! な、何度出せば気が済むんですか!』
 男は繰り返し膣内射精しているらしく、桜織が非難の声を上げる。その最中、割れ目からドロリと精液があふれ出すのは、いやらしいと同時に悲劇的だ。

 圧し掛かる体位には、もう一つのパターンもあった。男が挿入したまま、足をシーツに密着させるやり方だ。その状態で円を描くように腰を動かされれば、膣奥を最大限圧迫された状態で擦られることになる。
『んぐうっ! また、奥の奥まで……んぐっ、んぐぅうあああっ!!』
 桜織の楚々とした顔が歪み、やがて膝下が跳ねる。男共は、いつもその頃合いでピストンを仕掛けた。
『あ、あ!! はっ、はっっはっ……ああ、はぁあ! あっ! あっ! あっ!!』
『おーっ、すげぇ反応。犯されて感じてんだな、お嬢ちゃんよ!!』
『はぁっ、あ! か、感じて、なんか……!!』
『ウソつけ。お前が感じてんのもイッてんのも、全部わかんだよ。おら見ろよ、これで700回目だ!!』
 男がモニターを見上げながら腰を突き入れる。リン、と音がし、累計絶頂カウントが700を示す。
『くふっ、んん……!!』
『へへへ、キリのいい数字だぜ……ん、おっ!?』
 男が奥まで腰を沈めたまま、ひと息ついている最中。また鈴の音が鳴り響き、モニターの数字が701に変わる。
『おいおい、絶頂の余韻でイクのかよ。どこまで変態だオメー!?』
 そう嘲笑われても、一番ショックを受けているのは桜織自身だ。小さく開閉する口で、嘘、嘘、と繰り返す様を見ると、精神面が不安になってしまう。

 有り余る欲望と野心で少女を犯す畜生共。その体格や性的嗜好は色々だが、東南アジア系の人間は特に異様だった。燃費がいいのか、細身からは想像もつかないほどの耐久力がある。日本人や中国人が愛撫やフェラチオを挟んで体力を回復しつつ犯すのに対し、連中は2時間フルで桜織を犯しぬく。バックスタイルから始まり、側位、正常位……様々に体位を変えながら。
 桜織の苦しみぶりは相当だ。タイ語なのかインドネシア語なのか、俺にとって馴染みのない言葉で何かを訴えながら悶え続ける。犯す男が囁き返すのも同じ発音だが、こっちの言葉はひどく耳障りだった。理解できない言語でも、悪意というものは通じるらしい。その悪意で、桜織は刻一刻と狂わされていく。見開いた目から涙を零し、食いしばった口から涎を垂らし、海老のように背を反らせて痙攣しながら。

 そして、50人の相手が終わる。一人につき2時間としても、100時間。実に丸4日以上に渡り、中年男の脂ぎった欲望をぶつけられたわけだ。
 ベッドに横たわる桜織の見た目は、変わり果てていた。
 キリリとしていた顔は、鼻水や涙、涎に塗れ、だらしなく白目を剥いている。
 お椀半分ほどの大きさにまで膨らんだ乳房、木の実のように赤く尖った乳首。そのどちらにも、初めの頃の面影はない。
 そして一番悲惨なのが、下の性器だ。陰唇は腫れ上がったまま外に開き、内から白濁を溢れさせている。
『ヘッ。あの小便臭ぇガキが、一端の女になってやがる』
 扉を開けて姿を現した手越は、桜織を一瞥して嘲笑った。本来は4人周期で食事の機会を与えるはずだが、50人が一巡し終えるタイミングにずらしたらしい。
 その手越の声を耳にした桜織は、ベッド上でゆっくりと身を起こす。瞬きで涙を切ると同時に、呆けた目にも力を取り戻す。凌辱側の元締めである手越にだけは、弱みを見せない──そう言わんばかりに。
 ただし、その見た目は依然として性的だ。
『は、あ……はぁっ……』
 熱に浮かされたような赤い顔といい、屹立した乳首といい、汗まみれの肌といい。落ち着いた雰囲気も相まって、凌辱を受けた人妻にしか見えない。
『メシだ。もうそろそろ、コイツなしじゃいられなくなってきたろ?』
 手越はそう言って、スープ皿の載った盆を桜織の膝に置いた。桜織は唇を噛みしめる。不本意の極みという風だが、食事を拒むという選択肢はない。セックスはカロリーを消費するため、栄養の補給は必須だ。そして、避妊薬もこのスープを通してのみ与えられる。望まぬ妊娠を避けるためには、どんな副作用にも目をつむって飲み下すしかない。
 桜織は銀食器を掴み、中身を口内に注ぎ込んでいく。だが、初めの頃のようにスムーズに飲み下すことはできなかった。すぐに激しく噎せ、口にしたものを吐き戻してしまう。
『ぐぶっ!! げほっ、えはあっ!!』
『どうした、しゃんとしろ。別のフロアでご学友も頑張ってんだからよ。特にあの、蒼蘭の剣姫とか持て囃されてたガキな』
 手越は扉に寄りかかったまま、桜織に意味深な言葉を投げかけた。桜織が顔を上げる。
『……藤花の、ことですか?』
『ああ、そんな名前だったか。奴はお前と同じように、一番きつい責めを引き受けるって豪語してな。一番きついコレはすでにお前が選んでたから、二番目にきつい責めの担当になったんだがよ。結果あいつは、汚辱責めを味わうことになった』
『汚辱責め?』
『おう、ウンコやションベンを絡めた責めだ。ゾッとすんだろ? 実際きついぜ。あそこの調教師は、オンナ嬲るのが生き甲斐っつうサディスト揃いだ。昨夜なんぞは、風呂桶サイズの肥溜めに、頭から膝まで漬けたってよ。完璧に失神するまで、何遍もな』
 さらりと発される、おぞましい言葉。昨日の映像でカットされていた責めだろう。確かにえげつなかった。自我が崩壊してもおかしくないほどに。
 桜織もその異常性を察したらしく、青ざめた顔で絶句する。手越はその反応に満足げな笑みを浮かべ、さらに言葉を続けた。
『ああいう芯の強ぇ奴ほど、一度折れれば脆いからな。お前は、是が非でもこの快楽地獄を耐え抜いて、あいつらのアフターケアに回るべきだと思うぜ。なぁ、委員長さんよ?』
 悪魔の囁き。奴はさっき、この絶頂耐久プレイが一番きつい責めだと口にした。つまり、このプレイが最上の地獄と知りながら挑発してるんだ。
 1巡しただけの今でもすでに、桜織は普通でなくなりつつある。その上でさらに続ければ、より狂っていくのは確実だ。ともすれば、二度と真っ当には戻れないかもしれない。
 当事者である桜織自身も、それは充分に承知しているはずだ。だが、彼女は退かなかった。大きく息を吸ってから食器を掴み直し、再びスープの中身を口に流し込む。今度もまた噎せそうになるが、眉根に皺を寄せて強引に飲み下す。盆に食器が戻された時には、その中身は綺麗に空になっていた。
『私たち女は……あなた方が考えているほど、弱くはありません!』
 澄んだ瞳で言い放つ桜織。その気迫を前に、手越が口笛を吹く。
『そりゃ結構。食事でも勝負でも、多少の歯ごたえはあった方がいいからな。んじゃ、2周目だ。せいぜい楽しめや』
 手越はそう言って部屋の外に姿を消し、入れ替わりで1人目の男が部屋に踏み入ってくる。
『よう、100時間ぶりだな。また死ぬほどハメまくってやるぜ』
 相も変わらず品のない口調に、桜織の表情が強張った。


              ※


 2巡目のプレイは、単なる1巡目の再現にはならなかった。
 前よりも格段に酷い。

 1人目の男は、1巡目と同じく正常位を要求した。
『足を開け』
 その言葉を受け、桜織は明らかに渋る。だが男は、膝を掴んで強引に股を開かせた。そして、隠されていた部分を見て大いに笑う。
『かははははっ!! ナマで拝むとすげーな。最初と全然違ぇじゃねぇか! あの思わず舐めたくなるような、キレーなピンクの筋はどこいった? まさかこの、ルージュ塗りたくったババアの唇みてぇなのか!? ったく変わりゃ変わるモンだよな、流石は50人のチンポを咥え込んだヤリマンのマンコだ!!』
 そう罵声を浴びせて、桜織の恨みを買う。当然、生真面目な桜織はそれを受け流せない。
『そうしたのは、あなた達です。休まず擦られ続ければ、誰の性器でもこうなります』
 顔の筋肉を引き締め、人形のような美貌を取り繕う。それを見下ろす男は、満足げに逸物を扱き上げた。
『そうかよ。こっからまた2巡して、最後にゃどこまで変わるか楽しみだな。ま、ともかく挿れるぜ』
 男は逸物の先を割れ目に擦り付け、そのまま挿入を果たした。割れ目から溢れる愛液が潤滑油になって、挿入は実にスムーズだ。その勢いのまま、逸物は7割ほど入り込み、一旦そこで止まる。
『おーっ、もう奥か。マジで子宮が下りてきてんな。中も随分とこなれてるじゃねぇか。ヌルヌルの襞がチンポに纏わりついてくんぜ? 前んときの固くて狭ぇ穴も新鮮だったが、こっちのが断然気持ちいいぜ!』
 驚きの声を上げた男は、ゆっくりと腰を引き、再び突き込む。引いて、突き込む。それを4度繰り返しただけで、桜織の背中が小さく仰け反った。
『ん、ああっ!!』
 熱い吐息とほぼ同時に、鈴の音が鳴り響く。桜織の視線が揺らぐ。
『はっ、これでイクのかよ? ポルチオ開発されるってなぁスゲーんだな。しかもイッたら締まりが増しやがった。歓迎してくれてありがとよ!!』
 嫌味を交えながら、軽快に腰を振る男。その下で、桜織はじっと耐えていた。されるがままだ。だが、それも前とは違う。人形のように無反応でいられた1巡目に比べて、足先の反応が激しい。指を開き、反ったかと思えば内向けに折れ。そうした反応は、鳴り響く鈴の音と連動していた。望まぬ凌辱を受けながら、何度も絶頂させられているのは明らかだ。
『こりゃ面白ぇわ! あの音が鳴ってるって事ぁ、演技じゃなくマジでイッてるってことだもんな。電マや指マンならともかく、チンポでこんだけマジイキさせるなんざ初めてだぜ!!』
 男はいよいよ興奮し、激しくベッドを軋ませながらピストンを早めていく。じゅぱっ、じゅぱっ、という水音が立ち、交換されたばかりのシーツが瞬く間に変色していく。
 一方で桜織も、確実に『押し上げられて』いた。
『あっ、はぁっ……はあっ、あ、あ!!』
 荒い呼吸を繰り返しながら、何度も腰を浮かせ、腹部を激しく力ませる。
『おーおー。見るからに文化系のくせして、一丁前に腹筋浮いてんじゃねぇか。ここでイッてんのか? ここが子宮の入口なんだろ!?』
 男は面白がって、桜織の臍の下を指で押し込んだ。
『くはああっ!? や、やめっ、くだ、さいっ!!』
 桜織は大きい。悲鳴に近い声を上げながら、必死に男の手を除けようとする。だがその最中にも絶頂し、ついには顎を浮かせたまま、いくいく、と呻くようになる。
『かあーっ、最高だぜ! 膣でジュボジュボフェラされてるみてぇだ!!』
 男は上機嫌で腰を振り、その果てに腰を止める。射精、当然ながら生中出しだ。
『はーっ、はーっ……』
 軋みも鈴の音も消えた映像内で、桜織の荒い呼吸が繰り返される。1巡目の彼女は、中出しされた部分を困ったように見下ろしていた。だが今の彼女には、その余力もない。顎を天に向け、喉を蠢かして痙攣している。
 壁のモニターに光る数字は32。華奢な少女を無力化するには、充分すぎる絶頂回数だった。
『おら、ノビてんじゃねーぞ』
 男は一度の射精では満足しない。なにしろ1巡目に7発射精した奴だ。ぐったりとした桜織の手首を取って強引に引き起こすと、ベッド上で別の体位を強いる。膝立ちになった男に女が跨り、抱き合う形でのセックス。
『あああっ!!!』
 挿入の瞬間、桜織は顔を歪めた。逸物の先が子宮口を突くだけでなく、自重でより深く食い込ませる形になったからだろう。そしてそれは、今の彼女にとって快感になるらしい。鈴の音が鳴り響いたのがその証拠だ。
『はっ! 挿れただけでイッたのかよ、スケベ女め!』
 男は罵りながら、桜織の尻を掴んで上下に揺らす。深々と挿入されている今は、それだけで膣の奥を抉られることだろう。
『ふぐ、うっ!! んん、んっあ! あ、あ!』
 桜織は目を瞑って喘ぐ。そのまま何度も絶頂すると、男の肩を掴むだけでは上半身のバランスを保てず、男の首にしがみつくようになる。まるで恋人のように。
『オイオイ、耳元にエロい声吹き込むなよ。興奮すんじゃねぇか』
 男が笑い声を上げ、桜織の尻を掴みなおす。これまでは下から支える形だったが、鷲掴みにして下へ押しつけているようだ。同時に腰を突き上げる動きも見せている。つまりそれは、上下からの圧力で子宮口を刺激するということ。散々絶頂させられ、蕩けきった場所でその刺激を受けるとなれば、堪ったものじゃない。
『いぐふぅ゛っ!!!』
 すごい声が出た。切実で低い呻き声。直後、結合部から小さく飛沫が上がる。ごく僅かではあるものの、潮を噴いたらしい。
 それ以外の反応も激しかった。特に目立つのは脚だ。ベッドに対して水平な太腿が、信じられないほど太く筋肉を隆起させている。膝下もやはりふくらはぎが盛り上がり、足指が深々とシーツにめり込んでいる。まるで拳法家が必殺の一撃でも放とうかというほどの力み具合。その力みはすべて、絶頂を耐えるために生み出されたものなんだ。
 リン、と鈴の音が鳴る。いつもと同じ調子で。
『ううおおお、すっげぇ締まってる……お前、運動音痴そうなのに8の字筋やべーな。それともアレか? 火事場の馬鹿力ってやつか?』
『あっ、かはっ……!! はあっ、はあっ、は、あっ!!』
 嬉しがる男とは対照的に、桜織は止めていた息を吐き出して激しく喘ぐ。
 そんな桜織と触れ合いながら、男はしばらくセックスの快楽に浸っていた。だが人形のように愛らしい顔が傍にあると、妙な気分になってしまうのか。そのうち、喘ぐ桜織の唇を奪おうとしはじめる。
 当然、桜織はそれを拒絶した。
『あ、やっ……キスは、嫌ですっ!!』
 彼女にとって、口づけは第二の貞操なんだろう。頭を左右に振り、ついには両手で男の胸を突き放しながら、背を大きく仰け反らせて拒む。
『今更カマトトぶんなよ。人の足にマン汁垂らしてやがるくせに』
 男は呆れたように笑い、またセックスに専念しはじめた。
 危機は去った……ように見えた。この時は。
 だが、この選択はまずかったのかもしれない。顎を浮かせ、背中を仰け反らせる体勢。それは桜織が、特に深く絶頂する時の反応そのものだ。それをなぞることは、かえって彼女は自分自身を追い込むんじゃないだろうか。
 実際、ここから桜織は乱れはじめた。
『あっ、ああっ!! はぁあっ、あ、あっあ!! ぎぃっ、い……いくーっいく!!』
 仰け反ったまま、喘ぎ、歯を食いしばり、足を強張らせる。その間にも、鈴の音は狂ったように蓄積しつづける。
 明らかにつらい状態だ。そんな状態を10分以上も続ければ、桜織は男の肩を掴んだまま、俯くばかりになってしまう。髪の間から覗く顔は、到底具合が良さそうには見えない。
 相手がそんな状態になったのを見て、男は膝立ちでゆっくりと移動し、ベッドを降りる。結果として出来上がったのは、抱き合う格好をそのままに、男が桜織の膝裏を抱える体位だ。ベッド上にいた時より体格差が判りやすい。父親が幼い娘を持ち上げ、あやしているように見える。
『あ、なに!?』
 呆然としていた桜織が意識を取り戻す。そして地に足がつかない事を悟ると、表情を凍りつかせた。
『こんなの、力の篭めようが……!!』
『篭めなくていいじゃねぇか、大人しく俺のチンポサックになっとけ。アタマ真っ白にしてよ!!』
『あ、あっ!! こんな、深すぎる! 怖い、こわいっ!!!』
 半狂乱の桜織を尻目に、男は腰を振りたくる。パンパンという肉を打つ音と共に、桜織の腿が波打つ。かなりの力強さだ。
『っく、いくっ、ああ!! ふああっ!! は、離して! 下ろして、くださいっ! これは、む、無理ですっ! くぅ、あ……んんあああぁっ!!』
 身体の揺れにあわせ、喘ぎ声までも揺れている。桜織は何の抵抗もできないまま、ただ絶頂に追い込まれ続けた。何度も小さく潮を噴き、全身を痙攣させて。絶頂カウントが60を超える頃には、明らかに意識が朦朧としていた。
 男は、そんな状態の桜織に改めてキスを迫る。そして、今度は桜織も拒絶しきれない。
『う、うむ…っ!? ううううむ、むう、う゛っ…………!!』
 目を見開き、愕然としたままキスを強要される少女。やがてその目からは、大粒の涙が流れていく。

 胸を抉る、光景だった。


              ※


 2番目は、中国語を話す巨漢。奴もまた桜織を追い込み続けた。
 1巡目は正常位を保てずに圧し掛かっていたが、今度は違う。桜織にマングリ返しの格好を取らせ、その股に屈み込むように犯す。1人目のセックスが突き上げる形での“串刺し”だとすれば、こっちは真上からの“杭打ち”だ。
 相手の体重が体重だけに、桜織からは瞬く間に余裕が奪い去られた。中国語で何かを絶叫しながら、唯一自由になる足先をばたつかせる。聴きなれない言語だからか、叫び声は悲痛に感じられた。だが、男の心には響かない。奴はやはり中国語で叫びながら、肥大した下半身で押し潰すように犯しまくる。
 そして桜織は、そんな状態でも絶頂に追い込まれていた。痛みか、恐怖か、屈辱か……いずれにしろ、彼女にとって望ましくない感情と共に。

 こうした獣じみたセックスを強いる奴もいれば、フェチを反映した変態プレイに興じる奴もいる。ノーマルなセックスを1巡目で堪能した分、その頻度も高くなった。

 3番目の男は、その典型だった。1巡目では、猫撫で声を発しながら『駅弁』の体位で桜織を犯し、視覚、音、言葉、感覚の4重責めを仕掛けた変質者。奴は2巡目で、桜織相手にソーププレイを堪能した。
 プレイ開始後にいきなり浴槽へ向かい、桜織の股に石鹸を塗りたくる。そして、その部分で自分の体を洗わせるんだ。
『不潔です。こんな場所を、擦り付けるなんて!』
『いやいや。女子高生のお股が汚いなんてこと、あるはずないって。スベスベで最高だよ。強いて言えば、毛が薄いせいであんまり泡立たないことぐらいかな』
 渋る桜織にそんな言葉を返し、相手の引き攣った表情を愉しんだりもする。そうして身体を隅々まで清めさせれば、次は入浴だ。
『うひひ、幸せだなぁ。オジサンねぇ、若い娘と一緒に温泉行くのが夢だったんだよ。狭いお風呂だけど、なんだかそれが叶ったみたいだなあ』
 気色悪い声で桜織を抱き竦め、その細い身体を弄る。
『う、ふうっ……』
 水面を見つめ、小さく息を吐く桜織。まるで凍えているようだ。男のあまりの気色悪さに、悪寒がするんだろう。
 それでも、湯の中で性感帯を刺激されていれば、意思とは裏腹に反応が表れる。
『乳首がピンピンだ。こんな小さな胸でも、ちゃんと感じるんだねぇ』
 桜織のしこり勃った乳首を指で転がしつつ、囁く。そうして少女の瑞々しい肌を堪能した後、男は湯船に浸かったままで挿入を果たした。
『あっ! お湯が、入って……!!』
『うーん、いいねぇ。ぬるくて気持ちいいよ』
 桜織が迷惑そうに眉を下げるが、男は夢見心地とばかりに顔を緩ませる。そのまま水面に波を立てて行為を続け、射精まで至ってからも、奴は湯船から出ようとしない。
『舐めて』
 浴槽に横たわったままそう命じ、湯から逸物の先を覗かせた。桜織は渋々ながら、それに従うしかない。
『ひひ、慣れてない感じがまた新鮮だなぁ。知ってる? これねぇ、ソープじゃ“潜望鏡”っていうプレイなんだよ』
 そんな事を誇らしげに語りながら、また逸物を硬くし、やがて二度目の性交に移る。今度は、1巡目と同じ駅弁、鏡のある洗面台の前でだ。
『見てみなよ桜織ちゃん、前とは全然違うよ? おっぱいの先っちょも、クリも、ビラビラも、まるで別人みたいだ。恥ずかしいでしょ、こんなになった自分の身体見るの』
 男から猫撫で声で囁かれ、桜織は頷く。
『……はい』
 そう答えはするものの、腹圧のかかる体位で犯される中で、彼女は絶頂に至ってしまう。冷たい鈴の音がその証だ。
『あれえ、機械の故障かな? 変だよねぇ。こんな恥ずかしいセックスで、真面目な委員長ちゃんが感じるわけないもんねぇ?』
 してやったりという笑顔で囁かれ、桜織の赤ら顔が悲痛に歪む。
 奴は持ち時間の大半を、こうしたプレイに費やしていた。

 4番目の男は、桜織を中学時代の片思い相手に見立てていた。わざわざピンク色の服を持ち込んで桜織に着させ、ベッドに手を突かせたまま後背位で犯す。
『どうだ椿、大嫌いな俺に犯される気分は? ええっ!?』
 そんな言葉を吐きながら。しかも、それだけじゃない。奴は相手が泣く事を望んでいるらしく、桜織の尻を叩き、太腿をつねりまわす。
『い、痛い、痛いっ!!』
『痛ぇか。だがそれが興奮するんだろう、この変態女! 学校じゃお高く留まっといてよ? ははっ、またイッたな変態!!』
 桜織が涙目で訴えるのを笑顔で眺め、絶頂しようものなら鬼の首を取ったように罵倒する。実に時間一杯、それを繰り返していた。

 6番目のホスト崩れは、レイプの真似事を望んだ。仰向けになった桜織の口を手で塞ぎ、荒々しく犯す。
『いいか、声を出すんじゃねぇぞ? テメェの妹にバレたら、あっちも犯らなきゃならねぇからよ』
 そう静かに脅す口調は、やたらと真に迫っていた。真似事と言っているが怪しいものだ。以前にやった強姦を再現してるんじゃないか……そう思えるほどに。
 犯される桜織も、同じくそう感じたんだろう。最初こそ怯え交じりで見開かれていた彼女の目は、男の迫真の演技を前に、段々と鋭くなる。そして男が果て、口から手を離された瞬間、彼女はすぐに問いを発した。
『……これは、演技ですよね? 本当にやった事じゃ、ないんですよね?』
 控えめな彼女には珍しい、毅然とした問いかけ。まるで不良息子を諭す母親のようだ。
『どうかな』
 男は歯を覗かせながらはぐらかす。その堂に入った悪党ぶりを見れば、かえって疑いが強くなろうというものだ。
『……そうですか』
 桜織はそう答えたが、その後も男に対して警戒を解くことはない。明らかに毛嫌いしている様子だ。それでも彼女は、絶頂を止められない。歯を食いしばって相手を睨みつけても、リン、リン、と達した証が鳴り響いていては台無しだ。
『はっはっ!! おいおいイクなよ、レイプごっこって言ってんだろ。こうもイキまくってっと、和姦みてぇじゃねえか! それともなんだ。女ってやつは、こうやって荒っぽく犯されっと感じんのかよ!?』
『はあっ、はぁっ……! ち、違います、馬鹿にしないでください! 女性は、レイプされると怖いんです、嫌なんですっ!! 犯されて……んっ、か、感じたりなんか、しません……っ!!』
『んな事言ってもオメー、さっきからイキまくってんじゃねぇか。シーツもマン汁でビショビショにしてっしよぉ? じゃあなんだ、オメーが特別淫乱なだけかよ、ええ!?』
 刻一刻と余裕をなくしていく桜織に対し、男は槍で刺すように侮蔑の言葉を投げかける。桜織はいよいよ顔を歪ませながら、足指の先まで痺れさせて絶頂に至っていた。

 9人目に至っては、桜織を犯しながら、電話で誰かに自慢していた。
『今ねぇ、女子高生を犯してるんですよ』
 正常位で突き込みながら、携帯を桜織の口元へと近づける。相手に声を聞かせようというんだろう。
『…………ッ』
 桜織は頬を染めながら、必死に口を噤む。
『おやおや、無駄なことを』
 男は苦笑しながら、親指でクリトリスを刺激しはじめた。
『ふ、んっ!!』
 桜織の身体が小さく跳ねる。すぐに手の甲が口に宛がわれ、必死に声を殺そうとするが、殺しきれない。
『くぅっん、んん……ん!!!』
 桜織の細長い脚に筋が浮く。
『ほらほら、どうです。もう気持ちよさの限界でしょ?』
 男が皮を剥く要領でクリトリスを刺激しつづけると、ついに鈴の音が鳴った。敏感な部位だけに、リン、リン、と連続で。
『ん……っく、ふぁ! あ、あ!!』
『聴きましたか? かわいい声でしょう。この子は顔もいいんですよ。いかにも清楚な感じで、でもエロエロでねぇ。小さな身体ピクピク震わせて感じてるんです。私ももう興奮してしまって、抜かずの4発目ですよ』
 男は電話相手に自慢を続けながら、激しく腰を打ちつける。そんな極限状態が、我慢を難しくさせるのか。桜織の喘ぎは、刻一刻と大きくなっていく。
『あぁ! んんっ、あ、ああっ!! うっ、くあああぁぁっ!!!』
『ははは。ええ、清楚だったんですよ、本当に。今はもう変わってしまったというだけで』
 受話器を片手に腰を打ちつけながら、男は桜織の右乳首を捻り上げる。桜織の背中が浮く。
『ん、くああぁぁっ!! ひっ、ひいいっ……! こ、声、聴かないでえっ!! こんなの、わ、普段の、私じゃ……!!』
『いいや、これが今の君ですよ。クリトリス、Gスポットから始まって、ポルチオまで開発されて! 全身が性感帯みたいになってるから、こんな酷い事をされても感じてしまうんでしょう!?』
 男の指は、桜織の体中至るところに伸びた。時にはつねり、時には叩き、時には擦り。そうした刺激を受けるたびに、桜織はのたうち回った。
『はぁ、はぁっ!! いっいぐっ、いっくううう゛っ!!』
 激しく叫びながら、絶頂に至る桜織。その様は、全身が性感帯という男の言葉を見事に裏付けていた。


              ※


『少し、本当に少しで構いませんから、休ませてくださいっ!!』
 繰り返し男に抱かれながら、桜織は何度そう叫んだだろう。涙、鼻水、涎で顔を濡らし、震える全身にじっとりと脂汗が滲ませながら。
 そういう時、相手が取る行動は2つだ。黙殺してさらに悶え狂わせるか、口での奉仕を強いるか。口で奉仕する方が楽に思えるが、そうとも言い切れない。
『う、ぐっ、う……!!』
 桜織は、自ら逸物をしゃぶる時、舌を噛んで死にかねないほどに顔を歪める。おまけに、技術も拙いようだ。躊躇いがあるせいか、それとも体力が限界だからか。男を勃起させることはできても、射精には導けない。必死に口を窄めて顔を前後させ、いよいよ限界となれば、口を離して手で扱く。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……! お、お願い。イってください!』
 だが男は、そうした手の奉仕を嫌った。あくまで口での奉仕を強い、大抵は手で頭を押さえつけて喉奥まで咥えこませる。そうして散々に追い込んだ後、咽び泣く桜織を改めて犯すんだ。

 それは、11人目の男も同じだった。11人目といえば、後背位に絶対の自信を持っていた男だ。絶え間なくポルチオ絶頂を迎え続け、さらに感度が上がった桜織にとっては、絶望的な相手と言える。
 実際、セックスの映像はひどかった。
『んむ゛ぉおお゛え゛っ、ほごお゛っ!! ごも゛っ、ほんんおお゛えろえ゛っっ!!!』
 凄まじいえずき声が響き渡る。ディープスロートを強いられた桜織のものだ。他の人間のそれよりも声が酷いのは、逸物が独特の反り方をしているせいか。
 咥えるにはいかにも不向きな、上反りの“曲刀”。それを根元まで出し入れされる桜織の顔は、苦悶に満ちていた。逸物を吐き出して息継ぎをする時には、口の端から胃液が垂れていくのも映っていた。苦しいはずなんだ、間違いなく。
 だが、その地獄のようなディープスロートの最中、無情にも鈴の音が鳴り響く。咥えさせる男も、咥える桜織も、その音に反応を示した。
『ふむうごお、ぉ゛……っ!!!』
 半ば白目を剥きながら、不自由に何かを訴えようとする桜織。
『ははははっ、イキやがった! おいおいマジか委員長? 食道までチンポ突っ込まれて胃液吐かされて、それで気持ちいいんかよ!? ンな女子高生、ありえねぇだろ!!』
 大笑いしながら、清楚な少女の精神を引き裂く男。
 目も耳も塞ぎたくなる光景だ。桜織の心中を思うと、こっちまで胸が痛む。

 ねっとりと糸を引きながら逸物が抜き去られると、男は桜織に後ろを向かせた。また後背位だ。桜織も当然それを悟ったらしく、悲痛な表情で壁に手をつく。
『んふう……ン゛んーっ…………!!!』
 挿入を果たされただけで、桜織からは鼻を抜ける嬌声が上がった。そう、嬌声。そう表現せざるを得ないほどの甘い声だ。
『相変わらずのイイ声だな。さ、動くぜ』
 男は腰を引き、ゆっくりと腰を動かしはじめる。あれだけ歪に反った逸物なら、膣内のスポットをこれでもかと擦りながら最奥を叩くはずだ。そうなれば、今の桜織に耐え凌げるはずがない。
『……あ、駄目、駄目えぇっ!!』
 男が腰を使いはじめてからものの数十秒で、桜織は音を上げた。絶頂を示す音が響き、内股に閉じた脚がカクカクと震える。
『なにが駄目だ、まだまだこっからだぜ?』
 男はしゃんと立てと言わんばかりに、両手で桜織の下腹を抱え込む。
『あ、はぁう゛っ!?』
 鈴の音が鳴り、桜織が歯を食いしばる。もはや子宮付近を圧迫されただけで達してしまうらしい。さらに男が腰を打ち込み、パンパンという音が響きはじめると、噛み合わされた歯が上下に離れていく。歯を食いしばるのは耐える動作。大口を開けるのは放心の動作だ。
『どうだ、気持ちいいだろ!? バックからハメられて、もう堪んねぇんだろ!?』
『ふぐううっ!! た、堪りません……だから、だからやめてっ! 膨らんだ部分が、敏感なところに、擦れて……ふんぐうう゛っ!!』
『だろうな。イキまくって敏感になったスポットをたっぷり刺激してやれるぜ、俺のブツならよ! おらイケ、イケえッ!!』
 笑みを浮かべながら腰を打ちつける男。腹部を抱える手を必死に外そうとしながら、全身を震わせる桜織。完全に食う側と食われる側だ。
『はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!!』
 肉のぶつかる音、湿った何かが掻き回される音。そこに混じる桜織の呼吸は荒い。まるで出産寸前のように。そして彼女は、思い切り背中を退けぞらせて天を仰いだ。
『あ、ふあ…………ああ゛っグウウゥウッッ!!!!』
 歯茎までも見えるほど歯を食いしばっている。どう贔屓目に見ても清楚な感じじゃない。だが、そう考える事自体が失礼に思えた。今の彼女に“らしさ”を保つ余裕がないことぐらい、子供だってわかるだろう。
『すっげぇ、子宮自体が動いてねぇかこれ? それともマンコイキの痙攣がココまで届いてんのかよ?』
 男は桜織の下腹を左右に撫で擦りながら、顔を横に向ける。桜織の唇が奪われたのは、その直後だ。
『あも゛ぅっ!? れあっ、あえ! ぃすあいやっ!!』
 舌を絡まされながら抗議する間にも、彼女は絶頂に追い込まれつづける。ようやく口を解放されれば、彼女は身体をくの字に折った。キスから逃れたい気持ちもあるだろう。だがそれ以前に、そういう動きをしないと耐えられない──そういう状態だったんだと思う。
『ひぃいいっぐいぐっ!!! イッでるい゛っでる゛!!!』
 総身を強張らせながらの絶頂。言わばそれは、悲鳴の嘔吐だ。それをするためには、人間は前屈みになるしかない。そしてそこから、大人びた雰囲気を持つ可憐な少女は、生き恥を晒しつづける。
 救いを求めるように壁についた右手、血管を浮かせて相手の腕を掴む左手。内向きに膨らんだまま痙攣する太腿に、水気の飛び散る股ぐら。どれもこれも悲惨といえば悲惨だが、一番心に来るのは声だ。
『はああっ!! くるし、苦しいっ!! ふうっ、ふうっ、はーっはーっ、はーっ……ッぐいくいくっ、ひぎいっ、いっでるううっ!!!』
 緊迫した呼吸音や悲鳴は、溺死寸前の記録かと思うほどだった。

 浴槽で溺死に近い姿を見せた桜織は、ベッドに移されて更に地獄を味わわされた。
 尻だけを高く掲げ、這い蹲る姿勢でのセックス。祈りでも捧げるようにシーツを掴む手を触れ合わせている様は、本当に育ちのいい少女という感じがする。だが下半身はそうじゃない。パンパンと肉のぶつかる音がするたびに腰が跳ね、腿の肉が膨らむ。その様は清楚どころかむしろ、セックス好きの娼婦という風だ。
『へへへ、身体は正直だな委員長。腰がびっくんびっくん動いてんぜ? 膣内(なか)も俺のチンコをぎゅうぎゅう締め付けてくるしよ。チンポの反りを、マンコにフィットするように矯正しようってのか? ったく呆れるな。突っ込まれるだけじゃ満足できずに、テメェ専用の肉バイブこさえようとするなんてよ、それでよく清楚ぶれたもんだぜ!!』
 男は桜織の腰を掴んで軽快に腰を打ちつけながら、上ずった声で謗る。慎ましい少女を狂わせている現状が、楽しくて仕方ないという感じだ。
 果たしてその悪意ある言葉は、桜織本人に届いているのか。
『あっ、駄目、駄目えっ!んあっ!あっ!あっ!あっ!!』
 腰を打ち込まれるたびに、どこか掠れた声で叫ぶ。時々はシーツを離し、顎から伝う涎を掌で掬って、どうしたものかと迷う仕草も見られた。だが、そのまま何度か絶頂させられれば、迷う余裕すらなくなる。せっかく上品に掬った涎をシーツに塗りつけ、這ったまま犯される獣に戻る。
『んんんっ、はぐぅううっっ!!!』
 ベッドでの絶頂回数約40回……トータル1804回目の絶頂を迎え、桜織はとうとうベッドに顔を伏せた。
『む゛う゛っ、ふむう゛う゛う゛ーーーっ!! ふむうう゛う゛ぅ゛う゛っ!!!』
 シーツに顔を密着させているらしく、呻きは押し潰された感じだ。その異様な呻きを発しながら、全力で頭上のシーツを掴み、全身を震わせる……その姿は、ひどく感情に訴えてくるものがある。悲痛だが、同時にひどく性的だ。
『おいおい、隠すこたぁねえだろ。皆大好物なんだぜ、オメーのアヘ顔とヨガり声が!』
 男はそう言って、桜織の三つ編みを引っ張る。シーツと太い唾液の糸で繋がれたまま、桜織の顔が持ち上がっていく。
 その顔を見て、俺はゾッとした。柔和な雰囲気を持つ大和撫子──そのイメージと、あまりにかけ離れていたからだ。柔和どころか、おどろおどろしい。青ざめた顔のまま上方を睨み上げるその面持ちは、幽鬼の類に見えてしまう。
『おねがい・・・もうイカさないで、ください・・・。イってると、息ができなぃ・・・しっ、死んでしまいます・・・・』
 声も普段とはまるで違う。テープに残された死者の声、という風だ。彼女は、本当に死と生の境目にいるのかもしれない。
 だが11人目の男は、そんな命乞いに耳を貸そうともしなかった。
『俺にバックでやられまくると、ウチの嫁もよく言ってたわ。死んじゃう死んじゃう~ってよ。だがアイツ曰く、そこ超えたら一気に天国が来るらしいからよ、まあ辛抱しとけや』
 あくまで落ち着いたままそう給うと、桜織の両手を掴み上げ、馬の手綱のように引き絞る。
 奴はとぼけているんだろうか。何度となく発情料理を食わされ、膣内外の性感帯を嫌というほど開発された上で、50人に休まず犯される。その快感を、単なる夫婦間のセックスと比較できるわけがない。あの慎ましい桜織が死ぬと騒ぐなんていうのは、紛れもなく一大事だ。
『ああ゛、あ゛!!はあ゛あ゛っ!! すっ、すごい波が……! こ、こんなの私……いく、いく……ひいいっぐいぐ!!!』
 血走った目で虚空を睨み上げ、涙を零しながら悶え狂う桜織。異様には違いないが、その瞳には妙な光が生まれはじめていた。不健全な顔色に、ギラついた瞳……まるで薬中だ。立て続けの絶頂で脳内麻薬が出すぎているんだろうか。
 “オーガズム・クライマックス”──逝き続けた果てにある、究極の快感。手越のその言葉が頭に浮かぶ。
『あぐううっ、んぉおっ!! はああぁーーーあアアッ!!!』
 桜織から、また“らしからぬ”声が上がる。両腕を引き絞られて前を向かされる彼女は、10秒以上にも渡って白目を剥いていた。あまりに膨大な快感で脳が焼ききれないよう、自ら気絶しようとしているんだろうか。
『おぉい、シャンとしろよ嬢ちゃん!!』
 男が怒鳴りつける中、桜織は顎をベッドに沈み込ませる。失神したように見えるが、どうやら気を失いきれていない。カクカクと全身を震わせて過呼吸に陥った末に、とうとう頬を膨らませる。
『はっはっはっ!はーっ、はーっ……っぐ、ごほっ…ええお゛っ!!』
『お、オメー吐いてんのか!? はっは、どんだけだよ! 走りすぎてゲロった奴なら見たことあるが、イキすぎて吐く女は初めて見るわ!』
 男は、桜織の嘔吐を重くは捉えない。ゲラゲラと笑いながら、汗みずくで腰を振りたくる。
『ま、イキっぱってのはキツいだろうがよぉ。俺らも借金の棒引きが掛かってんだ。ガンガン逝ってもらわねぇと……なあっ!!』
『ふん、はぐう……っ!!!』
 男は今一度奥を突いて桜織を絶頂させると、逸物を引き抜いて精液を撒き散らした。何度も射精しているせいで、色はない。透明な飛沫が、肉付きのあまい尻に浴びせかかる。
『ふーっ。どれどれ、カウントはっと……お、100超えてんじゃん! 50万ちょいの減額ってとこか。はははっ、いいねいいねぇ。ご馳走さーん!!』
 モニターを見てほくそ笑む男と、虚ろな瞳で横たわる桜織。それは、肉食獣と草食動物が居合わせた結末さながらだった。


              ※


 次は12人目。1巡目では特殊なディルドーを持ち込み、ひたすら道具責めを仕掛けていた男だ。こいつは2巡目でも、やはり道具責めに拘った。
 ベッドに突っ伏す桜織の背後に回り、その割れ目へとディルドーを沈み込ませる。その状態でさらに、ディルドーの底の部分へとマッサージ器を宛がう。それはつまり、マッサージ器の圧迫でディルドーを固定しつつ、その強烈な振動を敏感な部分に浴びせる事を意味する。
 桜織の表情が、恐怖で凍りついた。
『あア゛ーーっ!! あぐ、ぐひいいっ! 奥がっ、奥が痺れるうっ! いっぎぃい゛い゛っ!!イグゥーーッいぐっ、駄目ええ゛え゛っ!!!』
『あはははっ、すごい反応! あの清楚で物静かな子が、こんなにギャンギャン騒ぐようになるなんてね。所詮、高潔だの何だの言ったって、快楽に勝てる人間なんていないんだろうね。ほーら、どんどんイっちゃえ! 女のコとしての価値は下がっちゃったけど、キミがイクたびに俺らの借金が減ってくんだよ、金の卵ちゃん!』
 男はクリトリスを撫でたり太腿に触れる嫌がらせを交えながら、マッサージ器でディルドーの至る所を刺激しつづける。そしてそれは、桜織を絶え間ない絶頂へと導いた。鈴の音はリンリンリンリンと立て続けに鳴りっぱなしだ。もはや音というより警報に近い。ある意味、桜織という少女が壊れる予告か。
 かなり前から余裕を失っていた桜織は、ここでまた正常から遠ざかる。
『イグイグイグイグッ!!! だめ、駄目駄目ええっ!!!』
『ふーん、何がどうダメなの? キモチよすぎちゃう?』
『はっ、はっ、はっ、はっ……い、イってる最中、まだイッてる最中なんです! イッてる最中にイッたら、息、できないって……言ったじゃないですか!!』
『いや、それ言ってたのさっきの奴じゃん。なに、相手が変わったのも気付いてないの? なんかショックだなあ、存在否定されてる感じ。ムカついたから、ちょい休憩させてあげようかと思ったけどナシね!』
『そ、そんな! お願いです、休ませてください!! 本当に息が苦しくて、頭真っ白で……おかしくなりそうなんです!』
『別になってもいいじゃん、エロそうだし。ほーらほら、ここでしょ? 不良になっちゃえよ、委員長!!』
 男には一片の情けもない。桜織の腰の動きを観察し、巧みにマッサージ器を宛がう角度を変える。それは見るからに効果的だ。ボロボロに腐食した桜織の『芯』を突き崩すには、充分すぎるほどに。
『はお、おおお゛っ!! いぐっいぐ……んひいいい゛い゛ぃ゛ッ!!!!』
 馬の嘶きのような声がした後、桜織が暴れだした。
『ちょっ!!』
 男が手で抑えようとするが、死に物狂いの脚力にあっさりと弾き返される。細長い足は、宙を掻き、ベッドを蹴りこんで凹ませ、反発の勢いで身体そのものをベッドから転落させてしまう。尻から床に落ちた後には、綺麗な放物線を描いて失禁が始まった。カメラの死角でよくは見えないが、放心したまま鼻水を垂らす、ひどい表情をしているようだ。
『スゲー! ションベンが洗面台にホールインワンだ!』
 12人目の男は手を叩いて笑い、桜織を引き起こすために右腕を掴む。その瞬間だ。
『いぃいひっ!!』
 桜織が妙な声を出し、同時に鈴の音が鳴り響く。桜織が絶頂したんだ。腕を掴まれただけで。
『……え、今イッた!? イッたよね、腕掴まれて! ははははっ、そんな敏感になってんの? やらしすぎでしょ委員長ぉ!!』
 男の口元に笑みが広がった。奴は桜織をベッドに引き上げると、背後から抱きつく形で身体中を弄りだす。尖った乳首を指で挟み、太ももを擦り、脇腹を指先でなぞり。
『ふあ、はっく! へ、変な所を触らないでください!!』
 桜織の反応は大きかった。身体中のどこを触られても、艶かしく身体をくねらせ、眉根を寄せる。性的に昂ぶっていることは疑う余地もない。
『嘘ばっかり。嬉しいくせに!』
 男がそう言って片手を掴み上げ、晒された腋に口をつけた。さらにそのまま、ちゅうちゅうと音を立てて吸い付けば、
『んゅいいっ!!』
 初めて耳にする喘ぎ声と共に、リンと鈴の音が鳴る。
『ほーら、イッた。気持ちいいんじゃん、腋マンコ!』
『ち、違いますっ!!』
『違わないって。だってイッたじゃん、汗まみれで本物のマンコ並にくっさい腋舐められてさぁ!』
『い、嫌ああああっ! 違う、私……違うっ!!』
 桜織は顔を覆って泣き出した。最初の頃の彼女では考えられない反応だ。小柄でおっとりしているが、芯の強い大和撫子。だがその芯が、もう支えの役割を果たせていない。カメラの向こうで肩を上下させて涙しているのは、見た目相応の幼い少女だ。
 嘆く少女を前にしても、やはり男に同情の色はない。それどころか、震える華奢な身体を見て、生唾を呑む。
『あー、ダメダメ。涙は女の武器とかいうけどさぁ。俺みたいなのは、カワイイ子が泣いてると……興奮しちゃうんだよね』
 奴はそう言って桜織を突き倒すと、洗面台の下から布巾を取り出した。さらにその布巾で桜織の股を覆い、マッサージ器のスイッチを入れる。
『うあっ!!』
 布巾越しにマッサージ器を宛がわれた瞬間、桜織が悲鳴を上げた。
『ひひ、凄いでしょ。こういう風にやると、振動がアソコ全体に伝わるんだってさ』
 男は笑みを浮かべたまま、マッサージ器で割れ目をなぞっていく。菱形を作る桜織の足が、ピクピクと強張る。
『はああっ、ダメ!これ、全部痺れて……い、いい゛っちゃう゛……!!』
『おーっすごい、もう布巾が濡れてきたよ』
 男の言葉通り、布巾はほんの数十秒で鼠色に変色していく。布巾が乾いているうちは、マッサージ器の音もかなり殺されていたが、濡れてくるとビジジジジという妙な音が響き渡る。その音がさらに酷くなる頃、布巾の下から急にせせらぎのような音がしはじめた。
『うーわ、また漏らしてんじゃん!!』
 事実に真っ先に気付いたのは、責めている男だ。割れ目から布巾が取り去られれば、黄色く染まった布から無数の雫が滴り落ちた。
『はぁっ、はぁっ……も、漏らして、ません……。』
 桜織にはもう、愛液があふれる感覚と失禁との区別もつかないらしい。赤らんだ顔で大真面目に否定してみせる。
『いやいや、ジョバジョバ出てんじゃん。これマン汁っていうのは無理だよ? 広範囲が痺れてフワーッとなっちゃうのは解るけどさ、ちょっと緩すぎじゃないの』
 そう言いながら奴は、濡れた布巾を改めて割れ目に宛がい、マッサージ器でなぞりはじめた。途端に飛沫が上がり、ぶじゅるるぶぶじゅうっ、という酷い音が立つ。
『うくうっ!! び、敏感になってるのに……っ! はぁあっ、だめ! また、出てしまいそう!!』
『おっ、また腰がビックンビックン跳ねだした。足がスラッと細長くて小学生っぽいから、背徳感がヤバイなこれ』
 男は上機嫌でマッサージ器を動かしつづける。
『いくうっ、いぐいぐいぐっ!! はーっ、はーっ……イッてるっ、またすごいイッでる゛う゛っっ!!!』
 桜織は、早くも余裕をなくしていた。何度もダウンしたボクサーが打たれ弱くなるように、何度も限界に追い込まれた桜織は、今やほんの数秒で顔を歪ませる。身体の反応も惨めなもので、潰れたカエルのように広がったまま痙攣する脚は、直視が憚られるほどだった。そんな桜織に、男が囁きかける。
『どう、気持ちいい? 口に出して言ってみなよ、気持ちいいんでしょ? クリも、ビラビラも……オマンコ全部でイッちゃうんでしょ!?』
 桜織は前後不覚に近い状態だ。判断力はほとんどない。だから彼女が口を開いたのは、ほとんど反射に近い行動だったはずだ。
『んぎいっ、ひいいぃっ!! は、はい、オマンコでイキます!!』
 その言葉が叫ばれた瞬間、男の顔には満面の笑みが浮かんだ。桜織はしばらく喘ぎ、数秒ほどしてから、はっと目を見開く。自分の行動にようやく気付いたという風だ。
『あっはははっ!! そっかそっか、“オマンコ”でかぁ! やー、まさかキミからそんな言葉が聴けるなんてなあ!!』
『ち、違うんですっ! 私は、あそこと言いたくて……!』
『いいや、確かにオマンコって言った。隠さなくていいじゃん、オマンコでしょ? オマンコでイキます、ホラもう一度言ってみな!』
 男はしてやったりという笑みを浮かべながら、桜織を追い込んでいく。
『…………いぃいぎ、ひぎい……いいっ!!』
 桜織は歯を食いしばるが、絶頂を止められない。
『ほらほら、言うまでやめないよ! オマンコでイキます、って言ってみな!!』
『はぉおおんっ、わ、わかりました、わかりましたっ! お、オマンコでイキます、ずっとオマンコでイってますっっ!!』
 鈴の音、水しぶきの音、バイブの羽音。もはや環境音と化したそれらに混じって、恥辱の宣言がはっきりとマイクに捉えられる。
『そっかそっか、オマンコでか、あははははっ!!! よーし、じゃあそろそろナマのチンポもやるよ。結局セックスってのは、性器同士の触れ合いだからね。オマンコイキするには、チンポが一番でしょ!』
 男はマッサージ器の電源を切り、雫の滴る布巾と共に放り捨てて、桜織の足首を掴み上げた。そして刺激の余韻で開閉する割れ目へと、反り勃った逸物を沈み込ませていく。
『ひいっ、お、奥っ……!!!』
 桜織は歯を食いしばり、挿入部分を見上げる。引き攣った表情ばかりの中で、久々に愛らしいと思える表情だ。だがそれは、間違っても状況が改善したということじゃない。女性器の表面を嬲る責めから一点、子宮口を突く責めに変わり、表情が凍りついただけだ。
 入口付近への嬲りが一種の“焦らし”となったのか。奥を突かれはじめてからの桜織の反応は、それまでにも増して激しかった。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ! へぇっ、へぇっ、へええっ……!! えへえぇっ、えく、いきそ、いきそう、イくっ! いいいイグウうう゛ーーーっ!!!』
 荒い息を吐くだけに留まらず、犬のように舌を突き出し、ぼうっとした顔で絶頂を宣言する。ほとんど思考が働いていない様子だ。
『はっは、いい顔だ! よーし、どんどんイけ。イってイってイきまくって、俺の借金減らしてくれよ!!』
『へぇぇっ、へえぇぇっ……! お、犯してもいいから……少しだけ、寝かせてください。あ、頭が、ぼやけて、ガンガンして……ほ、本当に……おかしくなる……』
『だからぁ、なっていいんだってば。そこ頑張んなくていいから。オマンコで絶頂する事だけに集中しときなー。それ以外の事なんて、考えなくていいの。ほーら、オマンコでイクって言ってみな。オマンコでイク、はい!!』
 男は桜織の哀願に耳を貸さず、ひたすらに自分の都合を押し付ける。ずっとそうやって自分本位に生きてきたんだろう。だから借金を背負って底辺にいるんだ。その点、桜織は違う。優秀で、真面目で、誠実で。間違いなく上流のレールに乗れる、宝石のような子供だ。いや、子供“だった”。
 だがその彼女も、とうとう壊れはじめている。
『へぇっ、へぇっ、へぇっ……お、おまんこで……オマンコで、イキますっ!! オマンコでイってますっ!!』
 舌を突き出し、眉を下げ、媚びるような表情で上目遣いになりながら、相手の要求に粛々と従う。
『いいねぇ、メス犬って感じ。お勉強ができる優等生だけあって、よく似合ってるよ? ほーら犬、“待て”だ。勝手にイクんじゃないぞ?』
 男はいよいよ調子付き、奥まで挿入したまま腰で円を描きはじめる。
『ひぐっ、う゛ん゛っ! や、襞が、捩れて……!』
『気持ちいいんでしょ? さっき気付いたんだ。マッサージ器でディルドーの底押し込むより、ディルドーの横っ腹に宛がってる時のが反応良かったからね。こりゃ、チンポでねっとり掻き回したら相当効くなって。ほぉらイクなよ? イっていい時はイっていいって言うから。勝手にイったらお仕置きだぞ!?』
 そう釘を刺されても、桜織の引き攣った顔が限界を物語っている。結合部から粘ついた音が立つ中、硬く閉じあわされた口が開く。
『ひいい、いい……も、もうだめ!! いく……お、お……ぉほお゛お゛お゛っ!!!』
 清楚さとも愛らしさとも程遠い、「おお」という声。快感の凝縮した、これ以上なく正直な喘ぎ声だ。
 ここしばらく無音だったモニターから、リン、と冷たい音が響く。
『あーあ。“待て”って言ったのに、勝手にイっちゃって』
 男はわざとらしく舌打ちして桜織を睨む。
『はぁ、はあ……すみません、我慢、できなくて……』
 桜織は鼻の横に珠の汗を伝わせ、申し訳なさそうに弁明する。
『ダメだ、お仕置きいくぞ。ハンバーグみたいに捏ね回してやる!』
 男はそう言って桜織の足首を離し、両脚を自分の左右に下ろさせる。その状態で腰を掴んで、改めて腰をうねらせはじめた。音が変わる。みちゅう、むちゅう、という、まさしく挽肉を捏ねている時の音が立ちはじめる。粘膜が密着しあう膣奥の状況を、生々しく伝える音だ。
『おーっ、すごい。改めてじっくり触ると、子宮口が開発されまくってぶよぶよだなあ。これさぁ、ちょっと子宮の口開いてない? さっきから、先っちょが穴みたいなのに嵌まるんだけど。子宮口の横に嵌まってるだけかな』
 男はのんびりとしたもので、ひたすらに感想を呟きながら腰を蠢かす。逆に桜織の方は息つく暇もない。
『おほおおぉっ、お、おく、おくうッ!! んぐっ、い、イクッイクーッ!!』
 口を尖らせたまま目を見開き、腰をカクカクと上下させる。細い手足はしっかりと曲線に膨らみ、蜘蛛の足のようにシーツを掴んでいる。そうしないと激流に流されるとでも言わんばかりだ。
『うわああ気持ちいいーっ、襞がめっちゃ絡み付いてくる! 逃がさないって感じ? 嬉しいけどさぁ、間違えて消化しないでよ、俺のチンポ』
 男は歓喜の声を上げながら腰を揺らす。責めというより、あまりの快感に腰が震えたという風だ。それがトドメになったのか、男は桜織の腰を掴んだまま、目を瞑って天を仰ぐ。
『あ、中にっ! 子宮の中に、入ってくるぅ……っ!!!』
 桜織の言葉から察するに、子宮入口に亀頭を宛がったまま射精しているようだ。
『あー、ホント? やっぱここ子宮口なんだ、俺のションベンの穴くらいは開いてるよやっぱ。ああーー、すうっげぇ気持ちいい。出し入れしなくてもこんな気持ちいいんだな、襞が絡み付くと……』
 男はうっとりとした口調と顔で、射精の快感に浸っている。奴にとっては極楽だろうが、桜織にとっては地獄そのものだ。
 そしてその地獄は、まだ終わらない。未だ2巡目の12人目。折り返し地点すら、遥かに遠いんだから。


              ※


 12人目の男を迎えた後は、5分の食事の時間が挟まれる。そこでの桜織は、“かろうじて”時間内にスープを飲み干せた感じだった。
『はぁ、はぁ、はぁ……げほっ、ごほっ!!』
 常に息が荒く、何度も噎せる。そもそも全身が凍えるように痙攣していて、銀食器を掴むことすらままならない。しかもその痙攣は、スープを飲み干した直後から更に酷くなる。
 そんな桜織を相手に、男共は一切容赦をしなかった。正常位、騎乗位、後背位、側位、駅弁……各々がやりたい体位で桜織を犯し抜く。桜織が過呼吸に陥っても、意識を失っても腰は止めない。
『悪いねぇお嬢ちゃん。オジサンもこんな事したくないんだけどさ。お嬢ちゃんをイカせまくらないと、借金が減らないんだよ!』
 そう嘯く奴もいたが、その表情を見れば、桜織とのセックス自体を愉しんでいるのが丸解りだった。
 一方で、受ける桜織も必死だ。
『口でしますから! 気持ちよくなるように、頑張りますから!』
 そう哀願して、自ら逸物をしゃぶる場面も多く見られた。ポルチオばかり責められてはもたないため、口を使うことで少しでも負担を減らそうというんだろう。だがそれも大した効果はない。散々喉奥を使われて呼吸を乱された上、相手が完全な勃起状態を取り戻し、もっとも硬く大きい状態で膣を犯されるだけだ。
 しかも男共は待機中に酒盛りをしているらしく、動画が進むにつれ、酔いの回った赤ら顔が多くなっていく。女日照りの連中が酔って理性を無くすということは、ますますセックスに容赦がなくなるということだ。

『ほぉらあ、この角度で責められるのがイイんだろぉ? 腰逃がすんじゃねーぞ、突き込みは全弾子宮の入口で受け止めるんだぞぉ!!』
20番目の男は大声で叫びながら、桜織の両脚を抱え上げた。背面騎乗位でそれをやられれば、結合部しか接点がなくなる。1人目の男の時と同じく、膣奥への圧力に自重がプラスされてしまう。
『あぐうっ!! ふ、深いっ!!』
『はははははっ、すんげぇ締まりだ! 気持ちいいんだろ、ええ? 自由が利かねぇまんまハメられて、感じちまってんだろ!? いいぜ、好きなだけ感じろよ! 良い子ちゃんのレールに乗ってるより、コッチのがよっぽど刺激的だぜ!?』
 泥酔時特有の大声で喚きながら、桜織の腰を上下させる男。その腰の上で桜織は、また断続的な絶頂へと追い込まれていく。
『ひっ、ひっ……! いぎっ、ぎいぃぃっ……あああああっ!!!』
 恐怖に顔を歪ませていたのは、最初の数十秒だけ。そこを越えれば、桜織の顔は弛緩していく。
『ひいっ、ひいぃっ!! お、奥が、潰れてっ! いくイクっ、ふぐうぅっ!!!』
『くひひひっ、いいぞおっ、どんどんイケ! 自分を解放させてみろ! ほら、ばんざーい、ばんじゃーい!!』
 男は呂律も回らないほど酔いながら、桜織の両手を掴んで上へ持ち上げた。それによって、前屈みだった桜織の背筋が伸びきる。直後、桜織はぐるりと白目を剥いた。
『ひいいっ! あ、頭が、また……白んで……!!』
 うわ言のようにそう呟きながら痙攣する様は、本当に見ていて不安になる。脊髄をスムーズに駆け上った電流が、彼女の尊い脳を焼き焦がしている。そんなイメージが浮かんだ。
『いいぞ、そのまんま狂っちまえ!!』
 男は天を仰ぐ桜織の顔を横向かせ、唇を奪う。桜織にはもうそれを拒む元気がない。ちゅっ、ちゅるっ、という音が新たに加わり、桜織の全身が痙攣した。
『あっ、はっ、はぁっ、あっ!! かっ、感じすぎちゃう! もう本当に、休ませて、寝かせて、くださいっ!』
 絶え間なく男に抱かれ、休む間もなく絶頂し続ける桜織。その顔は、ある瞬間には安らかだが、また別の瞬間には恐怖に歪む。
『もう無理もう無理もう無理いい゛い゛っ、いいいやああ゛あ゛あ゛っ!!!!』
 桜織の背中が仰け反った。彼女の顔はこの瞬間、決定的に崩れる。見開かれた瞳が上瞼に隠れ、ヒューヒューと細い息の漏れる口が縦に開く。挙句に全身の痙攣もベッドを軋ませるほど激しくなるんだから、どう見ても普通じゃない。 
『そうか無理かよ! ここが弱点か、ポルチオが気持ちいいのか、ええ!?』
 男は激しく腰を突きあげながら、桜織の下腹に手を宛がってグリグリと押し込んだ。桜織の細い腰が揺れ、白い歯が噛み合わされる。
『んぎぃいっ、ひきいいいいぃぃーーーーっ!!!』
 部屋に響き渡る絶叫は、もう人間の悲鳴と思えない。古い木のドアが軋む音のようだ。
 そうして壊れつつある桜織を前にしても、男共がブレーキを踏むことはない。


 次の番の奴は、カメラに見せつける体位を選んだ。2人して床へ立ったままでの開脚セックスだ。この体位なら股が180度近く開くから、結合部が丸見えだ。赤黒い逸物が真っ赤な割れ目に出入りする様、愛液が桜織の軸足を伝う様。どちらにも息を呑むような生々しさがある。
 桜織にしてみれば、片足首を担ぎ上げられてY字バランスを強いられる形だ。どう考えてもキツいに決まっている。だが彼女の反応を見る限り、股裂きの苦しみは二の次のようだった。
『あああっ、そこ、奥!奥ぅっ!!だめ、感じちゃう……くはあぁっ!! ほっ、ほっ、ほっ、ほっ……おおおっ!おほっ!ほぉおおおうっ!!!』
 瞳孔が開き、短く速い呼吸を繰り返しながら喘ぐ桜織。口の端から垂れる涎も凄い。明らかに普通じゃない。桜織に近しい友人にこの場面を見せても、彼女だと気付けるかが怪しいほどに。
 飲精の時にも、そう感じたことはあった。だがあの時は、力任せに顔を変形させられたり、顔中が精子塗れだったから彼女と判らなかったんだ。今とは意味が違う。今の桜織は、誰かに顔を掴まれているわけでも、顔が何かに覆われているわけでもない。彼女の表情筋そのものが、不自然に変形しきっているんだ。
 と、ここで、入口のドアが開く。姿を現したのは手越だ。
『え、もう時間っすか!?』
 男が目を丸くするが、手越は笑いながら首を振る。
『いいや。いい頃合いだったんでな、直で見たかっただけだ』
 手越はそう言って、洗面台にしがみつく桜織に視線を移す。
『すげえツラしてやがる。芯の強ぇガキでも、この歳で快楽漬けにされりゃこうなるか』
 その言葉に、桜織が反応した。眼球を横に動かし、鏡越しに猿山のボスを見つめる。だがよく見ればその視線は、正確に手越を捉えてはいなかった。見つめる先は、その後ろ……開け放たれたドアだ。
『別に、逃げても構わんぞ』
 手越は鏡の中の桜織を見つめながら、そう告げた。
『え……?』
『な、ちょっと!』
 桜織と男が目を見開く。だが男の方は、手越の顔を見て何かを悟ったようだ。
『ああ、確かにそうだな。トンズラこくのもいいんじゃねえか? こうやってハメられんのが、そんなに嫌だってんならよ!!』
 そう言いながら、繋がったままで床を移動する。向かう先は出入口の間際だ。
『ほら、手越の旦那からも許可出てんだ。逃げてもいいんだぜ?』
『くぅあっ!!』
 男が腰を打ち込むと、桜織は悲鳴を上げながらドア枠にしがみついた。その足は床を踏みしめ、出入口の境界線を越えようとはしない。いや、できない。耐え抜いてみせる──彼女はそう宣言し、級友の身代わりになる道を自ら選んだんだから。
『なんだ、逃げねぇのか? ってこたぁ、もっともっとハメられてぇって意味だよなあ!!』
 桜織を犯す男は叫びながら、後背位で激しく腰を使う。
『はぐうっ、んぐうっ! かはっ、アッ……ぁがあああっ!!』
 悲痛な呻きが漏れた。密室ではなくなった以上、反響してはいないのに、はっきりとマイクに拾われている。
 その声量も、彼女の足元を見れば納得できた。男との体格差か、異常なまでの突き込みのせいか。伸びきった桜織のつま先は、完全に床から浮いてしまっている。
『すげぇ、カラダ浮いちまってんじゃねぇか。そこまでになっても逃げねぇなんて、よっぽど気持ちいいんだな』
 手越はドアの外から痴態を眺めつつ、さらに煽る。鈴の音が鳴り響く。
『きおちよくなんれ、ありまぁせん……。ら゛ってわらひは、きもちよくなってひるばあいれあ、ないんれす…………!! みんなを、たすけ、ないと……きもちおくらんか…………おく、らんか…………』
 桜織の反論は聴き取りづらい。口から絶えず零れる唾液のせいならいいが、脳が焼き切れつつあるのかもしれない。なにしろ、決死の覚悟を口にする彼女の顔は、どう見ても引き攣った笑みを浮かべているんだから。

『ほおっ、おっほおおおっ…………!!』
 その次の映像では、桜織の声はさらに清楚さからかけ離れていく。彼女が強いられているのは、開いた入口の間際での立位。挿入したままアソコを擦りつけあうようなセックスだ。
 不自然な体勢だけに、挿入は浅い。男の逸物がだいぶ外に露出しているのがその証拠だ。いくら子宮が下りているとはいえ、ポルチオまで届いているとは考えづらい。にもかかわらず、桜織は狂うのを止められていなかった。
『いひいっ、ひいっ!! その角度ぉっ……だめえっ!! あぐうっイク、またいくうっ、いっくぅうっ!!!』
 ぐじゅっ、ぐじゅうっという音を立てながら腰を擦り付けられるたび、桜織の腰もうねる。うねりの幅は大きい。反射で腰を引くというレベルを超え、自分から快感を貪るような、ゆったりとした円を描いている。そうとしか見えない。
『はははっ、こりゃスゲェな、10コぐらいの舌でチンポ全体を嘗め回されてる感じだ! 高ぇソープでもこんなの経験ねぇや。どうやったらここまでヤラシーまんこ使いができんだよ? そんなに気持ちいいのか、オイ!!』
 男は興奮気味に叫びながら腰を蠢かす。むしろこっちの方が快感に対する反射反応に近い。
『はぁっ、はぁっ……き……気持ちいい、気持ちいいですっ!! こ、こんないやらしいセックスで、嫌なのに……ダメなのに!こ、こんなに良いなんて……!ふぁあああ、あーーーっ!!』
 桜織は、見開いた瞳からボロボロと大粒の涙を零していた。快感を訴えているが、内容的に言わされたものとは思えない。鈴の音の狂ったような鳴り方からも、実際に絶頂し続けているのは確実だ。言葉も身体も、抵抗を諦めた。襲い来る快感の大波に、流されることを受け入れた。そう見える。
 ただしその小さな手はドアを掴み、外に出ることだけは防いでいた。
 他人を巻き込まないこと。
 責任感の強い少女が、自分よりも優先させたのは、その矜持だったらしい。


              ※


 彼女は狂っていく。
 部屋の外にぞろぞろと集まる男達に、快感の声を届けながら。
『はっ、お……おオオ゛ッ、あああおお゛オ゛オ゛っ!!!』
 これは、正常位で男と交わっている時の声だ。男と向き合いながら、声を殺し、澄んだ瞳で相手を見据えていた少女はもういない。
 声楽の、それも低音部を担当するような声を響かせ、全身を痙攣させるばかりだ。多分この時の彼女は、また全部を諦めきってはいなかったんだろう。そうやって喉も裂けんばかりの大声を出すことで、蓄積した何かを発散させようとしていたんだと思う。
『あーっもう、うるせーよ!!』
 犯す男は顔を顰めながら、右手で桜織の口を塞ぐ。それは大量に噴き出す炭酸ガスを、強引に閉じ込めるに等しい行為だ。その結果行き場を失ったエネルギーは、桜織の肉体を駆け巡る。
『んもぅうう゛、うむ゛っ!! うむ゛ぅうう゛おおあ゛お゛ーーーっ!!!!』
 桜織は暴れた。大股開きの腰を跳ねさせ、シーツを鷲掴みにし、脳天を深々とベッドに擦り付けて。窪んだような眼光の中、ギラギラと光る黒い眼差しは、脳内麻薬で深くトリップしていることを窺わせる。
 モニターの数字に目をやって、俺は目を疑った。
 現在カウント116、トータルカウント5403。
 それがすべて正確にカウントされているなら、人間の脳が焼ききれたとしても、何の不思議もない。

 口を覆う手が離された時、桜織の顔には微笑が浮かんでいた。和やかな顔に見えた。だがそれは、痩せた土地にいきなり一輪の花が芽生えたようなもの。事情を知る人間から見れば、不気味でしかない。
『なんだ、笑ってんのか? 俺のがそんなにいいのかよ? ま、気持ちよくて気持ちよくて、今までにねぇぐらいバキバキに勃起してっからな、ヤリマンにゃ堪らねぇかもな!! ほら。俺のデケェのが、今どこまで入ってんだ?』
 桜織を食い物にする男は、軽薄な笑みを浮かべながら腰を使いつづける。
『あっ、はっ、はっ……こ、ここ!! ここまで、入っれるぅ……!!』
 桜織も笑みを浮かべたまま、臍より上を人差し指で押さえた。ありえない。そこは子宮口どころか、子宮そのものの位置よりも上だ。男の逸物のサイズから考えても、そんな場所まで到達するはずがない。頭の良い彼女らしからぬ答えだが、彼女は本気でそう感じているようだった。
『ああっ、イク……おまんこでイクッ!! あはぁっ、はああっ!! また、またきたあっ!! おくっ、奥でいくう゛う゛っ!!!』
『へへ、すんげええ! こんな嬉しそうにマンコ舌で舐りまわされちゃ、俺も限界だ。6発目、また中に出すぞっ!!』
『はっ、はっ、来て! どろっとしたの、流し込んで!! 奥にどろどろ来ると、膣が勝手に動いてすごいの! 頭ビリビリして、まっしろになっちゃうぐらい、気持ちいいからぁっ!!』
 顔中に汗をかき、目だけを爛々と輝かせながら、2人の動物が快感を貪りあう。そして桜織は、笑顔のままで受精した。
『きた、きらあぁっ!! はぁ、はぁ……はああぁああっ!!』
 歯を食いしばって白目を剥く。脳髄までを白く染め上げられる喜びに、彼女は涙を流しながらうち震えていた。そしてその頭上では、無機質なモニターが絶頂数をカウントしつづける。4桁におよぶトータルカウントの先頭は、とうとう8に変わっていた。

 その後も映像は続いているが、もはや観る価値もない。すでに点と点はすべて繋がっている。過去記録の下段、『LIVE』と銘打たれた映像は、今の流れの延長上でしかない。

『おほっ、お……おおぉっ!! おっほぉっ、んおおお゛お゛おお゛っ!!!』

 這う格好で犯されながら、桜織は凄まじい雄叫びを上げつづける。格好も、声も、舌を突き出した顔つきも、どれもが人間よりケダモノに近い。
 いっそケダモノだと断じられれば楽だが、そうもいかなかった。産まれてからずっと丹念に磨かれてきた珠の肌は、くすんだとはいえ綺麗だ。
 おまけになんだか、ボディラインまで官能的になっている。最初の動画では、よく言っても華奢、悪く言えば貧相という感想しか抱けなかった身体。だが今、ベッドに這う彼女の肢体は、少女趣味ならずとも勃起させる妖しさがある。手足が細長いのは変わらない。胸が劇的に膨らんだわけでもない。だが、そこにあるのは紛れもなく“肉”。すごく柔らかそうで、掴んで貪りたくなる“肉体”だ。
 それを実際に貪る男もまた、理性は溶けているようだった。半開きの口から涎を垂らしながら、言葉とも喘ぎともつかない声を発し、ひたすらに腰を打ち込んでいる。まるで女に飢えきっていた1巡目への逆戻りだ。



 ディスプレイの世界から現実に戻り、耳からイヤホンを外すと、映像内の声がそのまま聴こえるようになった。

『もっと犯してっ、もっと突いてっ!疼いて疼いて、堪らないの!犯されてる時だけが幸せなのっ!!あっ、あ、また……イクッ!!くんんっ、いくいくいく!!イグーーーッ!!おまんこでイっちゃう゛う゛うう゛う゛ーーっ!!!』

 下劣な言葉を叫び散らしながら、擦りガラスの向こうで影が動く。犯している男のシルエットは変わっているが、這い蹲る女に変わりはない。男のそれよりも遥かに華奢で、小柄で、艶かしい動きをする影だ。
 俺がこの施設に来てから、今日で10日目と少し。今は250時間強というところか。336時間耐え切るには、あと80時間……丸三日以上もあのままでいなければならない。
 そして彼女は、それをやりきるだろう。部屋から引きずりだそうとしても、全力で抵抗するに違いない。彼女の願いはきっと果たされるはずだ。


 その根底にあるものは、責任感とも、悲痛な覚悟とも違うだろうが。
 
 
 

二度と出られぬ部屋 第四章 オーガズム・クライマックス(中編)

※長いため、前・中・後編に分割します。こちらは中編です。



■第四章 オーガズム・クライマックス(中編)


 最初の動画を見終えた俺は、ひどく喉が渇いていた。緊張かストレスのせいだ。モニターのコップアイコンからドリンクメニューを開き、コーラを頼むと、わずか一分ほどでグラスが運ばれてくる。
「お待たせしました」
 マイクを介さない肉声など、ずいぶん久々な感じだ。コーラを煽ると、刺激的な冷たさが喉に染みるが、その感覚すら懐かしい。たかだか2時間あまりの映像を見ただけだというのに、もう何日もここに座り続けている気がする。
 加虐映像を娯楽と捉えられない俺に、【ノーカット版】は毒だ。俺はひと息つくと、【ダイジェスト版】の2番目の動画をタッチする。動画タイトルは『0:00~8:00』。336時間に及ぶ絶頂耐久動画の一本目だ。


              ※


 動画の最初に映ったのは、何十人もの男に囲まれた桜織だ。休憩用のスペースらしく、背景には精力ドリンクの自販機や椅子、ソファが無数に見える。だが男共は椅子に腰掛けもせず、立ったまま桜織を包囲していた。
『どうした、早く脱げよ!』
 一人が痺れを切らしたように叫ぶ。どうやらこれから行われるのは、公開ストリップのようだ。
『わかり、ました……』
 桜織は唇を歪め、震える指で制服を脱ぎはじめた。皺やヨレのない、新品同然の制服。細やかな手入れぶりが窺えようというものだ。
 そして丁寧に扱われているのは、服だけじゃないらしい。次第に露わになっていく彼女の素肌は、桜織という名前に相応しく、艶やかな桜色をしている。花ざかりの女子高生でも、ここまで瑞々しい肌の子は滅多にいないだろう。
 ただし、女としての成熟度はまだまだだ。胸は控えめで、下から掴めばかろうじて隆起が作れるかというレベル。脚はすらっと伸びやかだが、曲線に乏しい。『華奢』や『可憐』というイメージが先行する、未熟な蕾。
 だがどうやら、50人の男共はそれこそが好みらしい。
『へへッ、キレーな肌だなオイ! こんなの見たことねーぞ!?』
『おお。人形みてぇだな!!』
『浴衣とか着たら似合いそうだよな。小学生用の、だけどよ!』
 それぞれに言葉を投げかけながら、桜織の裸体を凝視する雄共。その視線を、桜織は黙って受け止めていた。澄んだ瞳で、真っ直ぐに前を見据えたまま。

 そうして桜織の裸がひとしきり堪能された後、誰かが手を叩いて場の注意を引く。カメラが左に振られると、ホワイトボードを背にした手越が映り込んだ。
『スッパダカ堪能すんのは後にしろ。テメェらはこれから、順番にあのガキとハメるわけだがよ、その上でのルールだ。よーく聞けよ。あんま自分勝手な事やってっと、寒ィ夜にドライブするハメになんぞ?』
 奴はそう言って場を引き締め、ホワイトボードに文字を書き始める。
 内容をざっくり纏めるとこうだ。

・桜織を一回絶頂させるたびに、五千円の借金が棒引きされる。
・絶頂の定義は、プレイルーム内に設置されたモニターのカウントが1増えること。
・常にカウント0から始められるよう、プレイルームから退出する時は、必ずモニターのリセットボタンを押すように。
・責め方や使う道具は自由。ただし、桜織に傷の残る行為はするな。
・一回のプレイ時間は2時間強、チャイムが鳴れば交代となる。
・4人がプレイを終えるたびに、食事とシーツ交換の時間を挟む。ただしそれ以外でも、必要に応じて桜織に水分を摂らせること。
・セックスの機会は全員3回ずつ。それを踏まえてプレイに臨め。

 そうした説明が日本語と英語の2パターンで行われた後は、いよいよプレイの準備に入る。まずは当然、順番決めだ。
『言っとくが、早くヤりゃあ良いってもんでもねぇぞ。なんせ時間が経てば経つほど、あのガキの性感は開発されてくんだ。さんざっぱらイカされてな。絶頂カウントを稼ぎやすいのは、断然後ろの方だぜ?』
 手越のその言葉で、男達は揺れる。
『なるほど。言われてみりゃ、確かにそうだな……』
『だがよ、俺ァ早くやりてぇぜ。もうすでに勃起してんだ、何時間も我慢できねぇよ!』
『ああ。他の野郎に抱かれまくった後より、ちっとでも新品に近い方がいいしな!』
『くっそー、悩むぜ!!』
 早く犯したいという、雄としての本能。一円でも多く借金を減らしたいという、債務者としての打算。その板挟みで、50人の男が苦悶する。
 路線を決めたら決めたで、次は“椅子”の取り合いだ。
『俺が初っ端だ、いいな!』
『ざけんな、最初にやんのは俺だ!テメェは俺の後でやれ!』
『あ!? 舐めてんじゃねぇぞ!!』
 こんな具合で、自分がこれと決めた順番を巡って争う。おまけに場にいるのは、日本人ばかりじゃない。中国や韓国、東南アジア系の奴もいる。そいつらは日本語が上手くないらしく、ジェスチャーや暴力で主張を通そうとしていた。
 そんな阿鼻叫喚の有様を前に、焚きつけた手越は膝を叩いて笑う。
『はははっ、えれぇ騒ぎになってやがる! テメェも罪作りな女だよなあ、お姫さんよ。あいつら、テメェを抱く順番で喧嘩してやがんだぜ。どんな気分だ、50人のオスに奪い合われるってのは?』
 手越はそう言って、部屋の端に視線を送った。そこには丸裸のまま、直立不動を保つ桜織がいる。軍隊でもそのまま通用しそうな、理想的な『気をつけ』だ。
 彼女は口を噤み、複雑な表情を浮かべていた。ひどく居心地が悪そうだ。それはそうだろう。彼女は騒ぎの原因であると同時に、ケダモノ共の欲望を一身に受ける立場なんだから。
『けっ、ダンマリか。まあせいぜい、期待して股ァ濡らしとけや。あいつらは全員、スケベ心で身を滅ぼした連中だ。ソープ狂いに援交マニア、強姦魔……まさに性欲の塊よ。おまけに奴ら、女子高生ってやつが大の好物でな。そりゃあもう、ねちっこく愛してくれるだろうぜ』
 手越の言葉に、桜織の表情が硬くなる。腰の左右で握られた手が痛々しい。それでも、彼女は逃げようとはしない。くっきりとした菱形の瞳で、襲い来る悪夢に備えている。

 そして、直後。数秒の暗転を挟んで、とうとう悪夢の記録が始まった。


              ※


 プレイルームは、まさに『セックスをするための場所』だった。
 壁際にベッドがあり、その脇に棚つきの洗面台。さらにその奥に、大人二人が優に入れる大きさの丸い浴槽が設けられ…………それだけだ。ドアを開けて入室すると、いきなりベッド・洗面台・浴槽に3方を囲まれる。狭い部屋というより、バスルームに粗末なベッドを置いたという方が近い。
 桜織はその空間で、飢えた男に犯され続けた。
 順番争いを制した先頭集団は、まさにケダモノだ。ローションや唾を逸物に塗りたくり、ひたすらに性欲を発散する。カメラはその様子を、ベッド右側から定点で映しつづけていた。

『へへへ、あったけぇ! やっぱハメんのはマンコに限るよな!』
 1人目の男は、まさに下品の極みだ。桜織の脚を開かせて挿入するなり、興奮気味に喚く。
『おまけによく締まりやがる、ったくJKマンコは最高だぜ。お前も興奮すんだろ、親父とヤッてる気分でよ?』
 侮辱しつつ腰を振りたくる男に対し、桜織は冷静そのものだ。乱れた姿を見せるのは女の恥とばかりに、仰向けでされるがままになっている。
『へへへ、ツンと澄ましてんのが余計ソソるぜ。マジで人形みてぇだな。……つってる間に、もう限界来ちまった。おら、出すぞ嬢ちゃん! 優等生マンコに、俺の子種をタップリくれてやっからな!!』
 奴はそう言いながら、腰を震わせながら射精に至った。部屋に入るなり挿入したんだから、当然、生中出しだ。
『はーっ、はーっ……』
 男が白濁まみれの逸物を抜くと、桜織は困り顔を見せた。仰向けで控えめな胸を上下させながら、股ぐらを見下ろす。本当に中に出すなんて……と、声なき非難をしている感じだ。男はそんな反応を見て、唇を吊り上げる。
『くくっ、スゲー出たぜ。どうだ、俺みてぇなクズの精子を、大事な所に注がれた気分は?』
 桜織に不快感を与えるためなら、自分を貶めることも厭わない。というより、自分が底辺だと自覚した上で、純粋無垢な桜織を犯す背徳に酔っている様子だ。
 だからなのか。奴は精液まみれの割れ目に、勃起したままの逸物をまた突き入れる。
『えっ!?』
 桜織が驚きを露わにした。男が果てた以上、状況がリセットされるはずだと思っていたんだろう。普通ならそうだ。男女が行う普通のセックスなら。だが、これは違う。これは、盛りのついた獣による蹂躙だ。
『くくくっ。ザーメンってのは優秀な潤滑剤だよな。マンコん中がヌルヌルになってんぜ。こんだけスムーズに抜き差しされんだ、お前も気持ちいいよなあ?』
 軽快に腰を振りながら、下劣な台詞が囁かれた。すると、桜織の視線が上を向く。
『……いいえ。不快です』
 どこまでも澄んだ瞳で相手を見据えながら、ハッキリと否定する桜織。そんな桜織を前に、男はますます陰湿な笑みを深めていく。

 その後も男は、ほとんど休む間もなく性欲を満たし続けた。性欲旺盛な奴で、発射回数は実に7回。そうして2時間を少し過ぎた頃、チャイムが鳴り響く。現役高校生である桜織を意識してか、学校でよく耳にするものだ。
『チッ、もうかよ! ヤリ足りねぇな。次は何時間後だ!?』
 終了の合図を耳にした男は、舌打ちしながらモニターのリセットボタンを押し込み、乱暴に股間を拭って部屋から出て行く。
 入れ替わりに部屋へ押し入って来た2人目は、ドアを通るのがやっとという巨漢だった。
『我等不及了!!』
 奴は中国語で叫びながら、ベッドに桜織を押し倒す。体位としては正常位だ。だが奴の場合、体重が重すぎるために前傾の姿勢を保てない。すぐに両肘を曲げ、桜織に体重を預けはじめる。自分の3~4倍はありそうな重みに押し潰されては、桜織も堪らない。
『痛苦! 承受不了……、多的痛苦与圧力……っ!!』
 桜織の口から流暢な中国語が発される。プロフィール通り、外国語には堪能らしい。そしてそれは、きっちりと相手にも通じたようだ。男は何か謝罪めいた囁きをしながら、ゆっくりと上半身を起こす。だが、それも僅かな間だけだ。奴はすぐにまた上体を沈ませ、楽をしたまま性欲を満たしはじめる。桜織が何度嫌がり、叫び、暴れても。言葉に不自由しながらも力で2番を勝ち取っただけあって、かなり傍若無人な性格らしい。
 奴は気付いただろうか。普段は垂れ気味な桜織の目尻が、この時ばかりは吊り上がっていた事に。

 3人目は、小柄で軽い桜織を抱え上げて犯していた。それも、わざわざ鏡のある洗面台の前でだ。
『い、いやっ!!』
 鏡を見た瞬間、桜織は悲鳴を上げながら顔を覆った。ともすれば芝居がかって見える初心さだが、桜織に限っては違和感がない。昭和じみた雰囲気を持つ少女に、貞淑な仕草はよく似合う。
『くふふっ、そんなに恥ずかしがるコトないじゃない。ほら、顔隠してないで鏡見て。綺麗なピンクのビラビラが開いて、エッロいよー?』
 男は気色悪い猫撫で声を出しながら、抱えた桜織に腰を打ち込む。桜織の脚が強張った。
『あは、すーごい締まるねぇ。この格好だと腹圧がかかるから、そのせいかな?』
 男はそう囁きながら、抜き差しを繰り返す。膣の中には前2人の精液が残っているようで、ぎゅぷっ、ぎゅぷっという音もしていた。つまりは、視覚、音、言葉、感覚の4重責めというわけだ。
『知ってる桜織ちゃん? これ、“駅弁”っていうんだよ。駅弁売る姿に似てるから、そう呼ばれるんだって。興奮するでしょ。それとも、ちょっと刺激が強すぎるかな? 君みたいに純粋な子にはさぁ』
 切り揃えられた前髪の下で、桜織の目が揺れる。涼しい顔をしていたいが、どうしても視線が鏡に向いてしまうようだ。
『まだ、出そうにありませんか……?』
『んー、まだだよ。どうしたの、気持ちよくなってきちゃった?』
『……そんな事、ありません』
 男の嘲りを受けて、桜織は表情を引き締め直す。口を噤み、澄み切った目を菱形に戻して。
 本当に芯が強い。そして、だからこそ悪い虫を集めてしまう。夜に光る誘蛾灯のように。

 男共はこんな具合に、それぞれの欲望を満たしていった。ズボラなのか、それとも後の人間に向けてのアピールなのか。連中は、セックスの痕跡をそのままに残していくことが多い。4人がやりたい放題にやった後……『8:01~16:00』の中盤では、早くも絵面が酷いことになっていた。
『はぁー……っ、はぁーっ……』
 荒い呼吸を繰り返す桜織は、髪から太腿まで精液まみれだ。染みだらけのシーツの上には、丸めたティッシュや濡れ光るローターが散乱している。ただし、コンドームだけは別だ。たっぷりと精子を包んだまま口を結んだそれは、桜織の頭の横に11個、勲章のように並べられていた。それはまるで、砂場で遊んだ子供が、自分達の作った砂の城やトンネルを誇示するかのように。
『ったく、いい歳してガキみてぇな連中だな』
 部屋に入るなり、手越が呆れた声を出す。奴は食器の乗った盆を手にしていた。
『メシだ。座れ』
 手越が命じると、桜織はゆっくりと身を起こす。開いた脚の間から、膣に収まりきらない白濁がどろりとあふれ出した。
 食事メニューは一皿、銀食器に入った灰褐色のスープのみ。何か具も浮いているが、こちらも色味に乏しく、とても美味そうには見えない。
 桜織は浮かない表情のままスプーンを手に取り、スープを掬って口に運ぶ。食事作法の教本にでも載せられそうな、理想的な所作だ。だがスープを口に含んだ瞬間、桜織の動きが止まる。
『ハハッ、不味いだろ。クスリみてぇなもんだからな』
『……どういう、意味ですか?』
『言葉通りよ。そいつは、発情したメス牛の脳と子宮を、じっくり煮込んだシロモノだ。そういうモンを口にすると、食った人間にも発情の効果が表れる。スープを飲み干す頃にゃ、子宮がじんわり熱くなって、男とヤりたくて堪らなくなるらしい』
 手越はそこで言葉を切り、モニターに目を向けた。モニターのカウントは、現在・累計共に0のままだ。男から一方的に欲望をぶつけられる状況では、感じる余地などなかったんだろう。
『お前にゃ、うんとガンバってもらわねぇといけねぇからよ。4人相手するたびに、そいつを食ってもらうぜ』
 その言葉で、匙を持つ桜織の手が震えはじめた。当然の反応だ。彼女にしてみれば、唯一の食事が毒入りだと宣言されたに等しいんだから。
『おら、手ェ止まってんぞ。まだまだ後はつかえてんだ、5分で平らげろ』
 腕組みしたまま扉に寄りかかった手越が、冷徹に命じる。桜織は表情を曇らせつつも、スプーンで掬っては口に運ぶ。だが、やはりスムーズには飲めない。
『う゛っ!げほっ、えほっ!!』
『噎せてていいのか、時間ねぇぞ?』
 手越は時計を見てそう呟き、陰湿な笑みを浮かべた。
『そうそう。言い忘れたが、それにゃ避妊薬も混ぜてあるんだ。スープに溶けた分まできっちり摂取して、ギリギリ次の投与までもつって量がな。定期的に完食しねぇと、ガキが出来ちまうかもしんねぇぞ?』
『えっ!』
 手越の言葉に、桜織が目を見開く。それを面白そうに観察する手越の表情は、悪魔じみている。いや、まさに悪魔そのものだ。
『……こんな事ばかりしていると、いつか罰が当たりますよ』
 桜織が手越を見上げる。珍しく眉を吊り上げて。対して手越は、その視線を遮るように腕時計を見せつけた。
『残り2分だ、時間が来たら没収すんぞ。クズ共のガキを孕みてぇんなら、そうやって格好つけてろ』
 淡々とそう告げられれば、桜織もそれ以上恨み事は吐けない。
『……く、う゛……っ!!!』
 鼻頭に皺を寄せ、悔しそうに呻く桜織。だが、その後の決断は早かった。意を決して息を吸うと、両手で食器を掴み、中身を口に流し込んでいく。
『おーおー、豪快なこった。あのタコ部屋連中と食い方が変わんねぇぜ』
 当然、手越はここぞとばかりに煽った。それでも桜織は、頬を膨らませたまま喉を蠢かし、無理矢理に嚥下していく。飲めば発情し、飲まなければ妊娠する、悪夢の汁を。


              ※


 食事を終えた後、桜織の様子は明らかに変わった。熱に浮かされたような顔で、息も荒い。
 その変化を感じ取ってだろうか。5人目の男は、それまでの4人のように桜織を押し倒すのではなく、まず前戯から入った。桜織の背後から抱きしめるように腕を回し、割れ目に指を入れるやり方だ。
『懐かしいよ。私も十年近く前までは、嫁をこうして可愛がっていたものだ』
 そう嘯くだけあって、手つきは手馴れていた。元々興奮状態だった桜織の割れ目からは、数分と立たずに濡れた音がしはじめる。
 そして、リン、と鈴の音が響いた。モニターのカウントが、とうとう0から1に変わる。
『嬉しいよ。気持ちいいんだね』
 男は甘い声で囁く。若い色男ならいざ知らず、髭面の親父がそんな声を出しても気色悪いだけだろう。事実、彼女は俯いたまま何も答えない。
 男は溜め息をつき、また指を動かしはじめる。しかも今度は、空いている左手の指を、桜織の首に這わせながらだ。
『嫁は、こうして首を撫でられながら手マンされるのが好きでね。ソフトタッチがゾクゾクするんだとか』
 また、甘い囁き。
『…………っ!!』
 桜織の顎が浮きはじめた。それだけじゃない。脚の開き具合が増し、内腿がヒクヒクと動いてもいる。感じているのは明らかだ。
『ふふふ。どうやら、君もそうみたいだね』
 男が耳元にそう吹き込んだ、まさに直後。リン、という鈴の音がまた響いた。桜織の顔が歪む。
 現実は残酷だ。いくら心で拒んでも、巧みな指遣いで刺激され続ければ、やがては絶頂に追い込まれる。しかもそれが、いちいち鈴の音という形で示されるんだから、尚のこと屈辱的だ。
 リン、リン、と冷たい音が響く。それが4回を超えた頃だ。
『ん、あっ……は、あっ……』
 ずっと閉じあわされていた桜織の口から、とうとう甘い吐息が漏れはじめた。背後の男が嬉しそうに頬を緩める。
『イイ声だ、アソコもぐちゅぐちゅになってきたしねえ。若い子をここまでイカせられるなら、私もまだまだ現役かな』
 奴はそう言って、ますます調子づきながら指を蠢かす。
 ここからは見た目に変化が乏しいらしく、編集で大幅にカットされていた。だが、施された指責めはかなり入念だったようだ。最後の最後に男が挿入し、果てた時の絶頂カウンターは『14』だったんだから。
『減額は7万か。ま、満足できたから良しとしよう。まだチャンスは2回あるらしいしね』
 男はティッシュで股間を拭いながら、指についた愛液を舐める。品のある桜織とは真逆の、おぞましい所作だ。
『次に、君がどれだけ淫乱になってるか……楽しみだよ』
 奴はそう言い残して部屋を去る。他の人間が、きっと桜織を色狂いにする──そう信じている様子だ。

 実際、奴に続く人間も、性感開発に積極的だった。
『観てたぜ、さっきの。指マンで感じまくってたじゃん』
 6人目の男は、桜織と向き合うなりそう切り出す。
『えっ!?』
『なに、知らないの? ここの映像って、オレらの待機スペースに垂れ流されてんだぜ。他にやることもないから、みんな釘付けになってる。キミはどこが弱いのか、どうされたらヨガんのか……そーいうのが全部共有されてんだよ』
 奴はそう言って、桜織の脚を開かせる。
『あ……!!』
 桜織は困ったような顔で脚を閉じようとする。だがそれは、弱点だと自白しているに等しい。
『無駄な抵抗すんなって』
 男は強引に脚を割りひらき、割れ目へと指を沈み込ませる。後ろから手を回していた5人目とは逆で、前から指責めを施す形だ。
 男は、指を臍側に曲げて何かを探っているようだった。そして、探し物はすぐに見つかったらしい。
『お、ここだ。解りやすいぐらい膨れてんな。解るっしょ、ココ性感帯なの』
『う、あっ!?』
 男が指を動かすと、桜織の腰が跳ねる。男が笑った。
『あはは、ウブい反応。“Gスポット”ってんだ。まずは、ここでイク感覚を覚えこませてやるよ。病みつきになるぜ?』
 陰湿な笑みと共に、手首に筋が浮く。
『んんんっ……!』
 桜織からまた声が漏れた。ちょうどカメラから見切れているから、顔は見えない。だが、愉快な表情をしていないのは確かだ。

 そしてまた、指責めが始まる。
 ベッドを横から撮る映像だと、太腿に邪魔されて指の動きが判らない。だが、その太腿の蠢きを見ているだけでも気持ちいいのがわかる。
『結構締まんなー、指動かしづらい。アソコが小さいだけか? まぁ何にせよ、突っ込むのが楽しみだ』
 男は手首を筋張らせながら、下卑た言葉を囁き続ける。勿論その間も、指は休めない。奴の指責めに激しさはなかった。ねっとりと、という表現がぴったりだ。
『ん、んん……っ!!』
 3分と経たないうちに、桜織から鼻を抜けるような声が響く。男の笑みが深まった。
『どう? 同じ指責めでも、さっきのとは違うっしょ。あのオジサンのも慣れてる感じはしたけど、身内ウケ止まりの雑な責めだったからね。Gスポ責めって、こうやってスポット一点集中でグッグッと押し込むのがイチバン効くんだよ。でしょ? さっきのとコレと、どっちが良い?』
 前の順番の奴を貶め、自分を称えさせようとする男。どちらかを選ぶということは、その相手を賞賛するということだ。となれば当然、桜織は答えない。
『ほら、言ってみなって。オレのがいいっしょ?』
 男はニヤけながら、さらに手首に力を込める。奴自身の言葉にもあった通り、Gスポットを指先で押し上げているんだろう。その結果、また桜織の太腿が強張る。

 リン──

 鈴の音が響き渡ったのは、その時だった。一瞬にして無音と化す空間の中、モニターの数字が0から1に変わる。そして、男が噴き出した。
『ぎゃはははっ! んだよ、シャレの利いた返事じゃん!!』
 男のヒイヒイという笑い声が響く。カメラに見切れるギリギリの場所で、桜織の白い喉が動いた。顎を引き締める動きだ。彼女は、その真面目そうな顔を強張らせ、困ったように眉を下げているに違いない。
 男は一通り大笑いした後、桜織の左膝に手を置いた。
『よーし、じゃステージ2だ。こっちの脚、伸ばしてみな』
 膝を押し込みながらそう命じられると、桜織は躊躇いながらも従うしかない。それでも怖いのか、膝がある程度伸びた辺りで、桜織は動きを止めた。
『どうしたの、早く。今より、もっと感じられるようになるんだよ?』
 男は促すが、逆効果だ。桜織は感じてしまうことを恐れているんだから。それでも、男の手がさらに膝を押し込めば、左脚は伸びきってしまう。
『そのまま伸ばしときな。痛くしないから』
 男は念を押しつつ、指責めを再開する。
 今度はカメラ側の脚が下がっているから、指の動きがよくわかった。中指と薬指を割れ目の中に埋もれ、第二関節がゆっくりと曲げ伸ばしされている。ぐうっ、ぐうっ、と押し込む動きをしているようだ。かなり力強く。
『ふ、ん……っ!!』
 桜織がまた反応する。しかも今度は、さっきより判りやすい。
 伸ばされた左脚の腿がピクピクと蠢く。垂直に立てた右膝が前後に揺れる。
 腹筋も動いていた。無駄肉のないスレンダーな腹が波打つ様子は、妙に印象的だ。
『感じるっしょ。片足とはいえ、こうやって足をピーンと伸ばしてっと、筋肉がいいカンジに緊張して感度が増すんだよ。50人ちょいの女イカせまくった経験則。オレ、これでも元ホストだから』
 男は指を動かしながらそう語った。元ホストといえば、そういう感じもする。髪色はプリンのようだが、それは元々明るい色に染めていて、長いタコ部屋暮らしで染め直せなかった証拠だろう。無精髭を剃れば、見られる顔にもなりそうだ。ただし、それは『たられば』の話。今の奴は、他の大多数の男と同じく、浮浪者同然。女性に触れれば、それだけで通報されそうな見た目だ。
 改めて考えても、狂っている。そんな奴が、とびきり清純な女子高生を、指責めで悶えさせているなんて。
 動画内では、リン、リン、と音が鳴り響いていた。モニタのカウントは5。少し意識を逸らしている間に、桜織は追加で4回もイカされたらしい。しかも、男の責めは緩まる様子がない。
『知ってる? 膣のスポットって、何個もあんだぜ。例えば、ここが“裏Gスポット”ね』
 奴はそう言って、掌を反転させた。臍側を押し込んでいた動きが一転、尾骨の方を押し下げる動きに変わる。
『ふあっ!?』
 完全に不意を突かれたんだろう。我慢強い桜織から、素っ頓狂な声が漏れる。
『はははっ!! ホント、いちいちリアクション可愛いわ。ウブっつーか。いるとこにはいるんだな、清純派って!』
 男は大喜びで、裏Gスポットを責めつづける。桜織の反応は大きい。左腿の強張りも、右膝の揺れ方もさっき以上だ。
『ん、んっ!!んっ!!』
『どう、新鮮でしょ。オナる時でも、自分の指じゃこんなトコまで刺激できないしね。どの女も、コッチのが反応でかいんだ。ま、キミの場合は指入れしてたのかすら怪しいけど。ね、教えてよ。オナった経験ぐらいはあんの?』
 ホスト男が興奮気味に投げかけた問いは、桜織に通じていないようだ。
『お、おなる……の意味が、わかりません……』
 ある意味、生活圏のギャップか。男の慣れ親しむ下劣な言葉が、清く正しい世界で生きてきた桜織には通じない。
『は?』
 男は一瞬、呆気に取られる。そして状況を理解して、また大いに笑った。
『くっ、はははっ!! 悪い悪い! そうだよね、ウブなキミに“オナる”なんて言っても通じないよねぇ!! よし、教えてやるよ。オナるってのは、オナニー……つまり“自慰”するってこと。これなら知ってるっしょ? 国語辞典引けば出てくる、真っ当な言葉なんだからさあ!』
 そう叫ぶ男は、心から愉快そうだ。新雪に初めて足跡をつける気分なんだろう。
『…ッ!』
 自慰という言葉なら、桜織にも通じたらしい。息を呑む音がはっきりとマイクに拾われていた。
『で、どう? “オナった”経験はあんの?』
 男は刺激を続けながら、さらに問う。わざわざ自分寄りの下卑た言葉に戻している辺りに、底意地の悪さが窺える。
『…………』
 桜織は、答えない。下卑た問いに軽々しく答えるほど、恥知らずな子じゃない。それでも、男は諦めなかった。
『言えよ』
 脅すような声色でそう呟き、責め方を変える。割れ目の中でグリグリと手を回転させ、上と下のスポットを交互に刺激していく。その効果は顕著だった。にちにちと粘ついた音がしはじめ、桜織の下半身の反応すべてが激しくなる。リン、リン、と鈴の音が鳴り、ついには喘ぎ声が漏れはじめる。
『あ、あっ……い、いや、ぁっ…………!!』
 伸ばした左膝が何度も浮き上がるようになった頃、とうとう桜織が音を上げた。それでも、男は手を止めない。
『言えって。言うまでやめねーぞ!?』
 そう宣言され、さらに数分ばかり追い込まれた果てに、とうとう桜織の顎が浮く。
『くはっ! はぁっ、はぁっ、はぁっ……! あ、あり、ます…………っ!!』
 荒い息と共に発されたその言葉で、男が目を細めた。
『へーぇ、マジ? 真面目そうな優等生でも、やる事はやるんだな。で、どうやるんだ。マンコに指突っ込んでか?』
『い、いえ……く、クリトリスを、指で擦って……』
『ウソつくなって、ガキの性欲がそんなんで解消できっかっての! 本当はどうやったんだ、ええ!?』
『ん、くうっ……ほ、本当です! 本当、ですが……その……』
 桜織は弁明してから、何かを言い淀む。そんな弱った雰囲気を、男が見逃すはずもない。
『その、なんだよ?』
『んくっっ!! その、ゆ、指だけじゃなくて、時々は、筆箱や……下敷きの、端も、使って……!!』
 桜織が躊躇いがちに自白すると、男が大仰に目を見開く。
『はあぁっ、マジ!? 勉強道具をンな事に使ったって、大人しい顔して立派なワルじゃん!!』
『う、うううっ……!!』
 桜織の声が震えはじめた。生真面目な彼女だけに、後ろ暗い部分があったんだろう。その僅かな傷口を切り開かれて、涼しい顔などできるはずもない。
『はははっ、涙目になんなって! いいじゃんか、エロに興味あったってよ。俺もお前も、父ちゃんと母ちゃんがケダモノみてぇにサカりあって出来たんだ。俺らみーんな、エロい事から生まれたんだよ。こんな感じのな!』
 男は上機嫌で手首を回す。
『んぁああっ!! や、やめっ……や、あ……あ!!』
 桜織は、翻弄されていた。水音、喘ぎ、鈴の音……あらゆる音の間隔が狭まり、やがて太腿が強張りに強張った挙句、腰そのものが浮きはじめる。
『んんんんーーーっ!!!!』
『おおおっ、いいねいいね、だいぶ出来上がってきたじゃん。ついでだ、もう一個言葉覚えな。キミが今経験してんのは、“イク”って感覚だ。言ってみ?』
 男は桜織を追い込みながら、また下卑た知識を教え込む。その言葉が上品でないことぐらい、桜織も解っているだろう。だが言わないと苦しみから逃れられない以上、彼女に選択肢はない。
『い、いっ…………く…………!!』
 背中を弓なりに逸らしながら、掠れた声が発された。その言葉尻を、リンという鈴の音が引き継ぐ。何度となく耳にしたその音色が、今は妙に物悲しく聴こえた。


 ここからしばらくは大きな変化がなかったのか、編集でばっさりとカットが入る。再開した時には、部屋内の時計の針が30分以上も進んでいた。
『すげー、ビショビショだ』
 再開後間もなく、男が指を引き抜く。指先からは水滴が滴っていた。その滴る先では、シーツが広い範囲で変色してもいる。直前にシーツを替えたばかりだというのに、早くも寝小便をしたような有様だ。
『はっ、はっ、はっ…………!!』
 桜織は短い呼吸を繰り返していた。半端に膝を立てた両脚は痙攣し、ほとんどない筈の胸が膨らんで見える。そしてその頂点では、2つの蕾が尖ってもいる。性的に昂ぶっていることは疑う余地もない。
 壁のモニターには、23という数字が光っている。累計カウントとなると37だ。9時間程度の間にそれだけイカされるのは、どれほどきついだろう。
 しかも、まだ終わりじゃない。男は桜織の変わりぶりを満足げに眺めつつ、一旦ベッドを降りる。奴の狙いは、洗面台下の棚に置かれたピンクバイブだ。
『今度は、コレでイカせてやる』
 奴はそう言って、桜織にバイブを見せつけた。桜織の顔はギリギリ映らない。だが男の見せた楽しげな表情で、おおよその察しはつく。
『それは……?』
『バイブだよ。細かく振動するから気持ちいいぜ。さ、脚開いて、自分で足持って。そう、いいぞ』
 男は笑いながら、桜織の脚をMの字に開かせ、さらにその膝裏を桜織自身に抱えさせる。
『いくぞ』
 バイブのスイッチが入れられ、重苦しい羽音がしはじめる。男はまずそれを割れ目に近づけ、大陰唇をなぞった。
『ひっ!!』
 悲鳴が上がり、桜織の腰が跳ねる。未亡人のように落ち着いた雰囲気を持つ彼女だが、未知の感覚に触れた時の反応は、やはり少女そのものだ。
 男はバイブでゆっくりと性器周りを刺激してから、割れ目の中に先端を沈めていく。桜織の太腿が強張る中、ピンク色の異物は半ばほどまで飲み込まれた。ここで、バイブに角度がつけられる。先が臍側のGスポットへと触れるように。
『あ、あっ!! し、痺れる……!!』
 桜織から切ない声が漏れた。
『すげぇだろ。こればっかりは、指じゃ真似できねー』
 男は自嘲気味に笑いつつ、バイブの角度を保ちつづける。絵面でいえば、指責め以上に変化がない。だが編集でカットされないのは、桜織自身に変化があるからだ。腰がうねり、両膝を立てた足が揺れ。指責めの時とはまた違って、堪らない感じが強い。

 リン───

 鈴の音が鳴るのも、不思議と予測できた。そういう身体の反応だった。
『はは、また早いな。ま、イっちまうよなーバイブだと』
 男は笑いつつ、ここでバイブを動かしはじめた。前後左右に揺らめかしながら、Gスポット周辺をなぞっているようだ。そしてそれは、確実に桜織を追い詰めていく。
『あ、あ、ああ駄目っ、来るっ!!!』
 悲鳴に近い声がした直後、またリンと鈴の音が鳴った。バイブ責めが始まってから、まだ3分も経っていない。それで2回の絶頂だ。
『来るじゃない、“イク”だろ。ちゃんと覚えなよ、お勉強得意なんだろ?』
 男は罵りながら、同じ調子で責めつづける。逸物は硬く勃起しているというのに、がっつく様子がない。この辺りは、さすが女慣れしているホストというところか。
 桜織にしてみれば、相手の落ち着きぶりは厄介だ。男が下手を打ってくれれば、冷める事ができる。だが腰を据えて責められればそうはいかない。コップに一滴ずつ水が溜まるように、着実に快感が蓄積していく。
 さらに2回、鈴の音が鳴ったころ。桜織に変化が起きはじめる。腰が上下に動きはじめたんだ。
『お、腰ヒクヒクしてきた。メチャクチャ気持ちいいんだろ、今?』
 男はそう言って、またバイブに角度をつける。最初と同じく、Gスポットを狙い打ちにするために。僅か20度ばかりのその角度変更が、桜織にとっての分水嶺だった。
『い……っく、い、い、い……ッ!!!』
 針でも刺されたような短い悲鳴のあと、呻きが続く。ここで桜織の身体が大きく揺れ、口元が映像に映り込む。
 彼女は、上の歯で下唇を噛んでいた。他の今風娘ならいざ知らず、清楚という言葉を体現するような彼女がするそれは、明らかに異様だ。
 そして、異様な事はもうひとつ。ここへ来て、鈴の音の鳴るペースが急に上がった。リン、という音の余韻が消えるより早く、次の音が鳴る。モニターの数字も次々に形を変えていく。
『おー、イってるイってる!』
 男は半笑いのまま、他人事のように呟いた。その足元で桜織の細い腰が上下し、ベッドをギシギシと軋ませる。
『と、とめてっ……ください!!』
 桜織の左手が膝から離され、男の腕を掴んだ。だが男は動じない。
『あー、やっぱそうくる? だよね、大体そうだ。まぁガサツな女だと腕に爪立ててくるんだけど、さすがに上品だな。好きだぜ、そういうトコ』
 甘い言葉を掛けながら、あくまでバイブの先端を押し付ける。密かに圧を強めてもいるのが、バイブから漏れる音が鈍さを増した。そうされ続けて、受け側が平気でいられる筈もない。
『ん……んーんっ! はあっはあ、あ……あああ、ああ゛っ……!!!』
 とうとう桜織の口が開き、舌を覗かせた。腰はガクガクと上下に揺れ、足指がシーツに食い込む。ギシギシとベッドが軋む。そんな中でも、鈴の音ははっきり聴こえた。そこから、さらに数分後。
『あ、だめっ……出るっ!!』
 悲鳴のような叫び声がした後、割れ目から何かが噴き出した。
『うおっ!?』
 男は咄嗟に横へかわし、太い奔流がそのままシーツへと浴びせかかる。バタタタ、という重い音を立てながら。一瞬呆けていた男の口元が、また吊り上がる。
『おーい、ションベン漏らすんじゃないよ。Gスポ刺激されまくって、尿道が敏感になったからってさぁ!!』
 男は大笑いしながら清楚な少女の失禁を見守る。そして流れが止まったあと、駄目押しとばかりにバイブで割れ目の中を掻き回してから、勢いよく引き抜いた。瞬間、リンと音が鳴る。また男が噴き出した。
『あっはっはっはっ、お前、オレのこと笑い死にさせてぇの!? バイブ抜いただけでイクとか、さすがに予想できんかったわ!!』
 男が膝を叩いて笑う傍らで、桜織は呆然としていた。その目尻から涙が零れると、小さな手で拭う。それでも涙がまた溢れた。
 そんな傷心の桜織を、男はさらに追い詰める。
『ほら立って。2時間しかないんだから、寝てる暇ないよ』
 奴は桜織を無理矢理引き起こすと、ベッドの上で深く腰を落とした姿勢を取らせる。相撲でいうところの蹲踞だ。
『バイブだと刺激強すぎたみたいだし、また指で可愛がってやるよ』
 その言葉と同時に、指が割れ目の中へと入り込む。
『ん……っ』
 ただ指を挿れられただけで、桜織の口から吐息が漏れた。

 ねちっこい指責めが再開される。
 男は指を蠢かしながら、面白そうに桜織の顔を覗きこんでいた。一方の桜織も、喘ぎながらその視線を受け止める。
 本当に生真面目な子だ。彼女はいつも、真っ直ぐに相手の言動を受け止めようとする。それは本来尊い行為だが、悪意の渦巻くここでは褒められない。深淵を覗く者が深淵に覗かれるように、悪を受け止める者は悪に染まるんだ。
 ぐちゅぐちゅという水音に混じって、何度も鈴の音が鳴る。
『ふうあ、あっ……!!』
 桜織から、また吐息が漏れた。彼女の太腿は何度も強張った末に、早くも痙攣を始めている。そしてついには、身体全体がグラグラと前後に揺れだした。
『なに、イキすぎて重心保てない? しょうがねぇな、オレの肩掴まれよ』
 男は薄笑みを浮かべながら、桜織に肩を突き出した。
『……すみません。失礼します』
 桜織は済まなそうな顔をして、男の肩に手を置いた。ただし、右手だけ。左手は口に宛がわれる。つい漏れてしまう甘い声を、少しでも抑えたいんだろう。どこまでも誠実で、どこまでも淑やか。そんな彼女に、男の目がますますギラついていく。
 奴は絶え間なく指を動かしながら、桜織の乳首を舐めはじめた。びくんと桜織の身が強張る。膣の締まりも増したのか、ぐちゅぐちゅという水の音も少しだけ変わったようだ。
 リン、と鈴の音が鳴る。桜織の反応を見ていれば、充分に予想できた音色。むしろ遅いぐらいだ。
『しっかし、すげぇマン汁の量だな。手首までドロドロだ』
 鈴の音をきっかけにか、男がそう詰る。その言葉が、さらに桜織を追い詰めたのか。
『ふんんん……っ!!!』
 桜織はつらそうな声を漏らし、左手の指を噛む。完全にお嬢様の仕草だ。それを生で拝んだ男は、もはや満面の笑みと化していた。
『へへへ……ホンット可愛いなキミ。ホスト時代に会ってたら、意地でもモノにしてたわ』
 そんな事を嘯きながら、奴は指責めの速度を上げていく。グチュグチュという水音も、鈴の音のペースも早くなる。
『ふくっ、う、うあ、んんあ、あ……っ!!!』
 桜織は必死に指を咥えているが、半ば声が漏れている。男はそんな桜織の手を掴み、口から引き剥がした。
『我慢してないで、思いっきり声出してみな。気持ちイイから!』
『そ、そんな……あ、あああーーっっ!!』
 桜織には、すでに耐え凌ぐだけの余裕がない。自由になった口からはっきりとした喘ぎを漏らしながら、全身を震わせていた。
『そうだ、もっと出せ!!』
『ふあ、はうぁっ!! はああ……ぁ……っ!!!』
 桜織の唇の端から、とうとう涎が垂れはじめた。
『いいぞ、そのまま浸ってろ。思いっきりイカせてやるっ!』
 男はそう宣言しつつ、桜織の乳首に噛み付いた。その、次の瞬間だ。
『んあああぁーーーーっ!!!!』
 絶叫と共に、割れ目からぷしゃっと飛沫が上がる。裏で鈴の音を響かせながら。
『はぁっ、はぁっ……おいおい、またか。誰が漏らせっつったよ?』
 男はやりきった様子で喘ぎながら、時計に目をやる。男が入室してから、そろそろ1時間半。残りは30分程度だ。
『うーしっ、そろそろハメっか!』
 奴はそう言って、ベッドに横たわる。桜織はそんな男を訝しげに眺めていた。
『どうした? 早く跨んなよ。自分でチンポ飲み込むんだよ』
『えっ!』
 男の言葉で、桜織が目を見開く。彼女にとっては初の経験だ。これまでの男は、自分から積極的に桜織を襲っていた。顔の見える正常位、獣のような後背位、片足を担ぎ上げられての側位……桜織からすれば、どれも屈辱的ではあるものの、されるがままでいられる体位だった。だがこの男は、あくまで桜織自身に奉仕させようとしている。元ホストとしての余裕を見せているつもりだろうか。逸物は固く勃起しきり、先走りまで滲んでいる状態だというのに。
『……わかりました』
 桜織は表情を引き締め、ゆっくりと男の上で脚を開く。性器を男に見られるのを、ひどく恥じ入りながら。
 スレンダーという表現がぴったりな、細い腹部、太腿、膝下が、横からカメラに接写される。ゆっくりと腰が沈んでいけば、程なくして男が息を吐き出した。
『おおおすっげぇ、マジで締まんな。あったけぇし、ヌルヌルグチョグチョで気持ちいいし……やっぱ女のマンコは堪んねぇ!』
 男はひどく嬉しそうだが、桜織の表情は硬くなる一方だ。
『へへ、すげえじゃん。んな小さいカラダで根元まで飲み込んで。オレの、バキバキに勃起して、すげぇデカくなってんのにさ』
 桜織の腰が降りきったところで、男が茶化すように囁く。そうして桜織の表情をさらに固くさせてから、奴は続けた。
『じゃ、動いて。オレを気持ちよくさせてよ』
『……はい』
 短い返事に続いて、ゆっくりと桜織の腰がうねり始める。その瞬間、彼女の太腿がピクリと強張った。
『んっ!』
 短い悲鳴も上がる。散々開発された膣内のスポットに、逸物が擦れたんだろう。
『どうした、もっと動けって。そんなんじゃ気持ちよくねぇぞ?』
 男は笑いながら続きを促した。性感帯を開発した張本人であり、粘膜で触れ合ってもいる奴には、桜織が動きを鈍らせる理由など手に取るように判るはずだ。
『んっ、んっ……!』
 桜織は小さく呻きながら腰をうねらせる。腰を密着させたまま円を描く、控えめな動き。それでも今の彼女には快感らしく、リンと鈴の音が鳴る。
『っ!』
 桜織の目元が引き攣った。自分で腰を動かして達する──そのはしたなさを、絶頂の音で自覚させられたせいだろう。
『ははは、イッちまったか。いいぜ、どんどんイケよ!』
 男は可笑しそうに笑いながら、桜織の手を取り、踵を掴ませる。
『次は、上下に動いてみろよ。スクワットするみてーに』
『…………わかりました』
 桜織は命令を拒否しない。覚悟を秘めた瞳で両の踵を握り、ゆっくりと腰を上下させる。にちっ、にちっ、という粘ついた音が響きはじめた。
『おぉーっすげぇ、出入りしてるとこが丸見えだ! 濡れ濡れの粘膜が捲れ上がってて、超エロい。毛が薄いから、余計よく見えるわー』
 男はどこまでも底意地が悪い。明らかに桜織が隠したがっている結合部を凝視しながら、大声で煽り続ける。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……!!』
 桜織の呼吸が荒くなってきた。
『いいぞ、いい具合だ。キミ才能あるよ、淫乱の才能が!』
『わ、私は……淫乱なんかじゃ……っ!!』
 男の煽りを聞き咎め、桜織が反論しようとした瞬間。変に力が入ったからか、下半身がびくっと震えた。
 リン──と、鈴の音が鳴る。
『あっはっはっは、ほら見なよ! 罵られてイクとか、完璧に淫乱じゃん!!』
 男が勝ち誇ったように笑う中、桜織は唇を噛みしめた。

 この後も、状況は変わらない。桜織が腰を動かし、男が喜ぶ。
 桜織は終始恥らっていた。彼女の貞操観念では、女が男に跨って快楽を貪るなど、あってはならない事なんだろう。だが同時に、彼女は何度も達してもいた。
『ん、んふっ……ん、んんんっ……!!』
 左手で口を覆っても、甘い声を抑えきれない。汗で濡れ光る身体が上下に揺れる中で、何度も鈴の音が鳴り響く。
『へへへ、イキまくりだ。やっちゃ駄目な事だって解ってると、余計興奮するよな。ほら、もっと声出してみな。指マンの時、声出すとすげー気持ちよかっただろ?』
 男はそう言って桜織の左手を掴み、強引に口から引き剥がす。右手をバランス保持に使っているから、桜織にはもう声を抑える手段がない。
『ふあ、あっ……あ!!』
 桜織の口から、とうとうはっきりとした声が漏れはじめた。右手が男の太腿をぎゅうっと握り、直後、桜織自身の太腿も震えはじめる。
『あっ、ああっ!!はぁっ、はぁっ……あああっ!!!』
『いいぞ、エロい声出てる! もっとだ、我慢すんな。思いっきり喘いでみろ!!』
『あああっ、あっ、あっ……あはっ、あっはあぁぁっ!!!!』
 男に洗脳同然に焚きつけられ、桜織から漏れる声がどんどん大きくなっていく。その声の大きさは、性的な反応の激しさと比例していた。腹筋の動きに、太腿から下の強張り具合。男の膝辺りを掴む手の力強さ。
 そのまま何分が経っただろう。結合部から漏れる音が、ぎゅぽぎゅぽという得体のしれない音色になった頃、とうとう男の表情が変わった。眉を顰め、歯を食いしばり。明らかに射精を堪えている顔だ。
『うあ、すっげぇ! ヒダが動いて、搾り取られ……あ、ああああっ!!!』
 その言葉の最中、男の両膝が浮いた。両足が強張り、シーツに押し付けられた尻肉が引き締まる。男なら誰でも本能で理解できる、射精の動きだ。
『はぁっ、はぁっ……あっ、で、出てるんですか……!?』
『ああ、スゲー出てる。だって、絞り取られてんだもん』
 性器で繋がりあった男女2人が、肩で息をしながら言葉を交わす。その光景は、まるでカップルのそれに思える。
『ほら、休むな。溜まってるんだ、もっと気持ちよくしてくれ』
 男は射精してからも、桜織に引き続きの奉仕を求めた。桜織は生真面目にそれに応え、そして“崩れていく”。前後にぐらぐらと身体を揺らした挙句、ついには深く前傾してしまう。男に寄りかかるように。
『へへ、なんだよ。甘えてんのか?』
 男は笑いながら、桜織の背中から尻にかけてをいやらしく撫で回す。かなり敏感になっているらしく、桜織の身体はビクビクと反応していた。男はその反応を楽しんだ後、両手で桜織の尻肉を掴む。
『さて。そろそろ、俺も愉しむか!!』
 奴はそう言うなり、大きく腰を浮かせる。
『あっ!?』
 桜織から悲鳴に近い声が上がる中、男の腰はシーツに沈んだ。そしてまた押し上げられる。沈んでは浮き、沈んでは浮く。ベッドをギシギシと揺らしながら、何度も、何度も。
 女を堕としまくったと豪語するホストのセックスは、実に手馴れていた。突き上げのスムーズさも驚異だが、もっと酷いのは尻を掴む両手だ。
『ああっ、いや! そこは、あっ……!!!』
 桜織があまりの快感に腰を逃がそうとしても、男の手はそれを許さない。
『ああ、キミの弱点ってここ? 教えてくれてありがとー!』
 男は嫌味を交えながら、両手で桜織の尻をコントロールする。膣内のスポットに対し、一番致命的な角度で逸物が擦れるように。
『んああああっ!!!』
 桜織の背中が弓なりに反る。同時に鈴の音が鳴り響く。あまりにも判りやすい絶頂だ。
『あはははっ! 気持ちイイんだねぇー、俺も超いいよ。な、また言葉にしてみろよ、イク時。もっと良くなるぜ』
 男は笑いながら桜織に囁きかける。桜織の眉根が寄る。
『ほら、言ってみなって!』
『ん……っっ!!!』
 男の手がぐうっと尻を押し下げると、桜織から声にならない声が漏れた。喉を閉じたまま搾り出された、快感の呻き。よっぽど余裕のない時でないと、そんな声は出ない。これは男の脅しだろう。自分の言う通りにしないと、何度でも余裕を失くさせるという。
『あっ、あ!!ああっ……はっ、はっ…い、イキ、ます……!!!』
 桜織が、切なそうな声で男に囁きかける。その直後、また鈴の音が鳴った。
『もっとだ。外の連中にも聴こえるぐらい、思いっきり声出してみろ!』
 男は桜織の尻肉を掴み直し、角度をつけながら腰を叩き込む。
『んんぐううっ!!!』
 桜織の歯が食いしばられ、目が閉じられる。
『いっ、イキます……! イキ……い、イキますっっ!!!』
 男に顔を覗きこまれながら、桜織は何度も声を張る。その宣言で彼女自身の快感も増すのか、鈴の音の鳴る感覚は狭まっていった。リン、リンという音が煩いほどだ。
『ははははは、いいぞいいぞ、アソコん中がすげーうねってる!!』
 男は愉快そうに笑いながら、ベッドを軋ませ続ける。
 チャイムが鳴り響き、男が持ち時間を使いきった時のカウントは実に56、累計では70にまで伸びていた。
『あはっ、すっげぇグショグショ。俺の番が来る前に替えたばっかなのに』
 ベッドから降りる時、男はシーツに触れながら笑う。その横では、桜織が脚をくの字に折り曲げたまま、横様に倒れこんでいる。紅潮した頬、唾液の伝う顎、細かに痙攣するすらりとした脚。その全てがいやらしい。


              ※


 5番目の妻帯者と、6番目のホスト崩れ。この2人による徹底した性感開発は、後に続く連中にも大きな影響を与えた。奴らは発情した桜織に血走った眼を向けながらも、まずは前戯を繰り返す。

 7番目の男は、まだ脚の震えている桜織に這う格好を取らせ、洗面台の下からマッサージ器を取り出した。
『今度はコイツで可愛がってやる。バイブより凄いぜ、これは』
 奴はそう言ってマッサージ器のスイッチを入れ、重苦しい羽音で桜織の表情を強張らせてから、脚の間をなぞりはじめる。あの我慢強い藤花も苦しんでいたように、マッサージ器の刺激は強烈だ。
『んんん……っ! ん、はぅっ……ん、んっ……!!』
 マッサージ器が割れ目を往復するたび、桜織からつらそうな声が漏れる。這う格好のまま背中を仰け反らせ、また俯き。絶頂の最中、彼女はそれを延々と繰り返していた。
 そんな調子で昂ぶっていれば、すぐに限界が訪れる。絶頂カウントが10回を超える頃には、桜織の呼吸はゼヒューッ、ゼヒューッという妙な音になり、全身が震えるようになっていた。
『も、もうやめてください! が、我慢が、何かが我慢できなくなってしまいます!!』
 やがて桜織は、男の方を振り返りながらそう訴える。
『へへ、限界ってか? いいぜ、じゃ止めてやる』
 奴はそう言って、マッサージ器のスイッチを切った。耳障りな羽音が消え去り、桜織は大きく息を吐き出す。だが、安心するにはまだ早い。
『そら、足開け!!』
 男は桜織の細い身体をひっくり返すと、その股座に逸物を押し付けた。
『えっ!? は、話が違……!!』
『話って、何の話だ? 俺はマッサージ器を止めてやるっつっただけだぜ。玩具で遊べねぇ間は、物をハメさせてもらうまでよ!!』
 男はそう言って、荒々しく桜織を貫いた。
『く、うっ!!』
『へへへ、前の連中の言ってた通りだ。何人かにやられた後だってのに、まだまだよく締まりやがる。おまけにヌルヌルで、気持ちいいぜ!!』
 眉を顰める桜織とは対照的に、男の顔は緩みきっていた。
 奴もまたケダモノだ。ひたすらに腰を振りたくり、快楽を貪る。それを受ける側の桜織は、しばらくは必死で快楽に耐えていたようだ。だが、立て続けに何十度と絶頂させられた彼女は、敏感になりすぎている。
『んっ、ああ……あはっ、あ…………あっ!!』
 血色のいい唇が開いて喘ぎが漏れるまでに、長くは掛からなかった。
『気持ち良さそうな声が出まくってんなぁ、お嬢ちゃんよぉ!』
 男はますます機嫌を良くして、腰を打ちつける。二発、三発と精を流し込み、桜織の内側を穢しながら。


 続く8人目も、ベッドに放り出された愛液まみれのマッサージ器を拾い上げる。
 コイツの場合、責め方がさらに悪質だった。まず桜織を仰向きに寝かせ、ベッドの左端から頭を垂れさせる。その状態で開いた脚の間にマッサージ器を宛がいつつ、逸物を咥えさせるんだ。
 顔を上向けた状態でのイラマチオは、千代里もが本気で嫌がっていたぐらい苦しいものだ。その上でマッサージ器責めまで受けては堪らない。
『んぐっ、ぐお゛っ……ごほっ、お゛っ……!!』
 勃起した物を奥まで咥えながら、桜織は何度も噎せていた。最初こそ祈るように胸の前で組まれていた手は、そのうち男の太腿を押し返すようになる。だが、男は悪意の塊だ。そんな桜織の抵抗を嘲るように、ストロークを大きく取って喉奥を蹂躙する。
『うっは、キモチいいー! イクたびに喉の奥がグニグニ動いて、マンコよりいいかも! お前もイイんだろ、イキまくってんもんな!!』
 奴はそう叫びながら、得意顔でモニターを見やった。カウント数は着実に増えていく。マッサージ器で敏感な部分を刺激されてるんだから当然だ。
『こんなヒデー事されてイクなんて、立派な変態だなぁ委員長さんよ!』
 その言葉と共に、マッサージ器が下からクリトリスを撫で上げる。
『むぉ゛お゛う゛おっっ!!!』
 恐ろしく低い呻きが上がり、膝を立てた桜織の足がバタバタと暴れる。両手は相手の太腿を激しく叩いてもいる。奥ゆかしい淑女らしからぬ動作。本気で余裕がないんだろう。
 ここで、男が腰を引いた。これでもかというほど唾液に塗れた逸物が抜き出される。最初から勃起してはいたが、今はかなり太さが増している。今の行為がよほど気持ち良かったんだろう。だが逆に、桜織は相当苦しかったはずだ。
『ぶはぁっ!! はぁーっ、はっ、はっ……!!』
 桜織は激しく酸素を求め、先端の尖った胸板を上下させる。男はそんな彼女の顔に、唾液塗れの逸物を叩きつけているようだ。
『どうだ、気持ちいいだろ。もう10遍ぐらいイッてるもんな、オマエ』
 モニターを顎で指しながら、男が笑う。桜織の呼吸が一瞬静まった。
『き、気持ちよさ、なんて……。性感帯を刺激されて、機械的に達しているだけです……!!』
 桜織の話し方は怒気を孕んでいる。こうも無茶をやられれば、苛立ちもしようというものだ。男はそんな桜織を、緩んだ笑顔で見下ろしていた。
『ああそう。なら感じられるようになるまで、タップリとほぐしてやるよ! 口も、マンコもな!!』
 そう叫ぶと、また逸物を桜織の口へと捻じ込んでいく。
 一度状況がリセットされると、喉奥の耐性も戻るのか。それとも男が責め方を変えたのか。ここから桜織の反応が、また一段と激しくなる。
『う゛ぇお゛っ、お゛え゛っ!! ぶふっ、ごぼふっ……んお゛も゛ぇ゛おえ゛っ!!!』
 えずきや咳き込みが酷い。喉の蠢きも。カメラは桜織の足側から状況を映しているから、白い喉へ芋虫が入り込んだような有様はことさら印象的だ。
『うわ、すげぇすげぇ! ツンツンしてるくせに、どんだけサービスしてくれんだよ委員長さんよ!!』
 男は大笑いしながら桜織の口内に腰を打ちつける。腰の動きは完全にセックスのそれだ。そして女に飢えた男がその動きをすれば、数分ともたずに限界が来る。
『あああそろそろ出そうだ、そろそろイッちまいそうだ!!!』
 男は興奮気味にぼやきながら、徐々にスパートを掛けはじめた。桜織の顎が陰毛に埋まるほど、深く腰を打ち込んでいく。男の股座が、おそらくは桜織の顔面とぶつかって、パンパンという音を立てる。
『ぃごぇお゛え゛っ!! うお゛ごえ゛いお゛お゛え゛っっ!!』
 桜織のえずきが酷くなり、足裏がシーツを叩きはじめた。まさに苦しみの極地というところだ。だがそんな中でも、鈴の音は鳴っている。モニターのカウントも増えていく。
『ああああイクッ、イクぞおおおぉっ!!!』
 男がそう言って腰を止め、荒い息を吐きながら下半身を緊張させる。その緊張のリズムと桜織の喉の蠢きは連動していた。食道に精液を流し込まれている様子が、そのまま目に見えるようだ。
『他の奴も言ってたが、スゲェ量出んな。キモチよかった分、昨日より出てるかもしんねー』
 男は満足そうに息を吐きながら、細かに腰を震わせる。その最中、また鈴の音が鳴った。桜織の太腿がびくんと震え、男が吹きだす。
『ぶはっ! お前、胃に直接ザーメン流し込まれながらイったんかよ!? いくらなんでも変態すぎんだろ!!』
 容赦なく言葉で追い討ちを掛けながら、マッサージ器でグリグリと割れ目を刺激する男。奴は桜織の脚がどれだけ暴れても気にかけず、むしろ片膝を掴んで、不自然な体勢にしたまま責めを継続した。もちろん、しつこいぐらいに逸物をしゃぶらせながらだ。
 それがどれほど辛いのかは、見ているだけの人間に解ろうはずもない。だが、ヒントは無数にあった。上下に跳ね、ベッドを軋ませる腰。あられもなく開脚したまま、激しくシーツに叩きつけられる右脚。膝を掴み上げられ、空中で足指を強張らせる左足。何度も浮く顎。
 そして残り時間が僅かとなった頃だ。
『ふわぁああっ、えぐっ、えぐぅーえぐうっ!!!』
 逸物を咥えながら、桜織が叫んだ。その直後、桜織の割れ目から黄色い液があふれ出す。失禁だ。
『うは、ションベンかよ。ったく、お上品なツラしてやりたい放題だな!』
 男が嘲る中、汚液は桜織の内腿を濡らしていく。水分補給が足りていないのか、汚水の色は濃い。その事実は、失禁という惨めな光景を、より印象的なものにした。
 チャイムが鳴ったのは、そんな中だ。
『おいおい泣くなよ。俺がイジメたみてーじゃねぇか』
 男が逸物を引き抜きながら、桜織の顔を見下ろして嘲る。桜織の顔はカメラに映らないが、鼻を啜り、しゃくり上げるような音が聴こえるのは事実だ。
『うひっ、射精したばっかのカリに触るとくすぐってぇな。そういや、クリ責めされてるお前も同じ状況か。今さらだが同情すんぜ。お前のクリ、さんざんマッサージ器でイジめられまくって、チンポの先そっくりの色になってんもんな!!』
 男はティッシュで亀頭を拭きながら身震いし、桜織への言葉責めに繋げる。桜織の反応は薄いが、細長い足が少し内股に閉じたのは、恥じらいのためか。


 8人目が退出し、そしてここで2度目の食事休憩が挟まれる。
『かーッ、ションベン臭ぇなオイ!』
 盆を手にした手越が、ドアを開けて現れた。全身にびっしりと墨を入れたコイツは、他の連中と比べても異様だ。カメラに姿が映った瞬間にそれと判る。まさに群れのボスという感じだ。
『……すみません』
 桜織は半身を起こし、手越に向かって頭を下げる。理不尽と感じながらも、己の僅かな非を認めて謝罪する──それは、心の豊かな人間だけができることだ。実に尊いが、この地の底でそれが賛美されることはない。
『いい歳して漏らすんじゃねぇよ。貧相な身体の上に、中身までガキのまんまか? ったく。これでも食って、ちったぁ女らしくなれや!』
 手越は嫌味を交えながら、桜織の膝に盆を置く。盆には食器が乗っていて、中身は前と同じ物。ぶつ切りの内臓が浮いた、灰褐色のスープだ。
『う…!』
 桜織の口元が引き締まる。それはそうだろう。彼女は最初にこのスープを飲んでから、明らかに感度が高まった。あの時0だったモニターのカウントは、今や3桁の大台に乗っている。その上でまたスープを口にすれば、結果は明らかだ。
『どうした、随分と余裕じゃねぇか。前と同じく5分で下げるぜ。それとも何だ、あの連中に愛着でも沸いたか? ガキが欲しくなるぐらいによ!!』
 動きの鈍い桜織に対し、手越が煽り言葉を浴びせかけた。流石ヤクザというべきか、言われると嫌な事をよく知っている。見ず知らずの相手、それも下衆と呼んで差し支えない相手の子供など、欲しいはずがない。結局桜織は、また浅ましく犬食いするしかない。その選択でまた一歩、正常から遠のくとしても。


              ※


 9人目を迎えても、性感開発の流れが途切れることはない。
 小太りで縮れた髪の毛の、冴えない中年男。奴は桜織に『マングリ返し』の格好を取らせたまま、マッサージ器で割れ目を刺激していた。
『どう? 気持ち良いでしょ』
 桜織の顔を覗きこみながら、何度もそう尋ねる。一方の桜織は、いかにも余裕がなさそうだ。
『ふうっ……ん、ん……んっ!!』
 口を手で覆っても、甘い声が殺せない。頭の横で高く掲げられた両足は、空を掴むようにピクピクと反応する。割れ目からは愛液があふれ、桜織自身の腹部へと伝い落ちていく。
『おっとと、勿体ない勿体ない!』
 愛液が伝うのを見ると、男はマッサージ器を退けて割れ目に口をつけた。
『ひあっ!?』
 桜織から悲鳴が上がる。それまでとは全く違う種類の刺激に、反応しきれなかったんだろう。あるいは、気色の悪さから出た声かもしれない。
 男は割れ目に吸い付き、ずずーっと音を立てて愛液を啜り上げる。見た目が不快・不衛生の極みなだけに、犯罪的な画だ。
『ふはっ、飲みきれないよ。凄い量だ!』
 口元を濡れ光らせながら叫び、また吸いつく。
『いやらしい匂いだ。それにすっごい美味しいよ、やっぱり女子高生の蜜は最高だあ。ずーっと欲求不満だったんだ、これが舐めたくって舐めたくってさぁ!!』
 割れ目に何度も舌を這わせ、唾液塗れになる頃にまたマッサージ器を宛がって愛液をあふれさせる。奴は飽きもせずこれを繰り返した。その顔は実に幸せそうだ。
 だが、受ける桜織はといえば、常に顔が引き攣っている。どれほど心の清い人間にも、生理的に受け付けない人間というものは存在する。桜織にとっては、この男がそうなんだろう。男に悪意がない事を悟ってか、睨んだりはしていない。ただひたすらに困惑し、怖気だっているだけだ。
 彼女にとって最悪なのは、それだけじゃない。マッサージ器で散々に絶頂させられ、彼女の性器は敏感になっている。そこを舌で丹念に舐められれば、どれほど気持ちが嫌がっていても、意思に反して絶頂してしまうしかない。
 男が3回目に口づけし、舌先で割れ目をなぞった瞬間。冷たい鈴の音が鳴り響いた。男は驚いたように顔を上げ、満面の笑みを浮かべる。
『えっ!! あはっ、あははははっ!! イッた、ねぇ今イッたよね!? そっかぁ、僕の舌がそんなに良かったんだぁ。嬉しいなあ、これで相思相愛だねぇ、桜織ちゃぁん!!』
 その言葉で、桜織の表情が凍りつく。
『い…………いやああああぁーーーーっ!!!』
 桜織の絶叫が響き渡る。両手で目を覆い、歯並びまで見えるほどに口を開いて。大人びた雰囲気を持つ彼女だけに、その歳相応の行動が痛々しい。
『あははははっ、すごい! そんな大声出せるんだね桜織ちゃん。新しい一面引き出しちゃったかな』
 男は笑みを浮かべ、ベッドの上で立ち上がった。そして桜織の尻を掴むと、勃起した赤黒い逸物を割れ目へと宛がう。割れ目は執拗な責めですっかり口を開いているため、挿入はスムーズだ。
『ああっ!? やめてくださいっ、こ、こんな格好でっ……!!』
 当然、桜織は焦りを見せた。清楚な彼女からすれば、マングリ返しという体勢だけでも頭が茹るほどの恥だろう。その上でセックスまで強要されて、受け入れられるはずもない。
『あああ、気持ちいい。これ一度やってみたかったんだ、キミみたいに小っちゃい子相手にさぁ。膣も小っちゃいから、簡単に奥に当たるねぇ。それとも、クリでイカされまくって、すっかり子宮が下りてきてるのかな?』
 男は甘い声で囁きながら、不自然な体勢で抜き差しを始める。
『いいねぇ。コリコリした子宮口が先っちょに当たって、スゲー射精感煽られるよ。ほーらわかるでしょ、コリッコリッて俺のが当たってんの?』
『う゛、う゛っうう゛!!』
 マングリ返しの格好だと喉が圧迫されるから、喘ぎはくぐもった感じで聴こえづらい。その代わり、宙に投げ出された二本足が雄弁だった。足指がぎゅっと縮こまったり、足の甲が反ったり……刻一刻と表情を変える。恥辱や不満を常に訴えている感じだ。
 だが何より屈辱的なのは、望まない行為でも昂ぶってしまう事実だろう。
『うひひ、アナルがヒクヒクしてきたよ。中もすごい動いてるし……やっぱり感じてるんだねぇ桜織ちゃん!』
 アナルを凝視しながら男が囁く。その言葉が耳に届いたのか、桜織の尻周りが強張った。それから、ほんの数秒後。リンと鈴の音が響く。
『あははははっ、イッたイッた! こーんな体勢でイッちゃうなんてさ、真面目そうな顔して変態だなぁ桜織ちゃんも!! いいよ、2人でどんどんイッちゃおう!!』
 有頂天になって快楽を貪る変態男。その下でシーツを握りしめる少女。まさに天国と地獄という言葉が相応しい。鳴り響く冷たい鈴の音が、余計に悲劇性を際立たせている。

 9人目が退出した時の累計絶頂カウントは、実に132。それだけの絶頂となれば、肉体への負担は半端じゃない。
「はーあっ、はああーっ、はぁぁあっ……』
 『マングリ返し』から解放され、ぐったりと横たわる桜織の息は不規則だ。それでも恥じらいは失くしていないらしく、10人目が部屋へ入ってくると、さりげなく両足を揃えていた。
『今さらカマトトぶんな。マングリ返しでヨガってた変態のくせしてよ』
 10人目は嘲りながら桜織の隣に腰を下ろすと、いきなり割れ目に指を入れる。『んっ!』
『おー、確かに子宮が下りてきてんな。“発情スープ”のせいか、結構弾力ある感じになってっし』
 男は一人で納得しながら指を引き抜き、ベッドに転がっていたローションボトルを拾い上げた。そして中身をたっぷりと桜織の恥部に垂らすと、手で丁寧に塗り伸ばしていく。
 そうして下準備を整えたあと、奴は洗面台の下からディルドーを取り出した。「とりあえず用意はした」という感じの、平凡な責め具だ。強いてペニスとの違いを挙げれば、作り物だけに反りがなく、根元から先まで真っ直ぐな事ぐらいか。だがそれを誇示する男の顔は、妙な自信に満ちていた。
『今からコレで、じっくりポルチオを刺激してやるよ。期待してろ、スゲー気持ちよくなるから』
 男はそう言って、ディルドーを桜織の割れ目に沈み込ませた。まずはGスポット狙いらしく、ディルドーを浅く挿入したまま、上下に揺らしはじめる。
『ふ、んんっ……!』
 今の桜織にはそれだけで気持ちいいのか、鼻を抜ける声が漏れた。さらに男の指がクリトリスを刺激すると、あ、という喘ぎも混じる。
『昨日まで処女だったくせして、すっかり出来上がってんな』
 男は楽しそうに言いながら、バイブを一気に奥深くまで押し進める。
『んふっ!!』
 桜織の腰が小さく跳ねた。その反応を見ながら、男はディルドーの尻に指をかけ、ぐうっ、ぐうっ、と何度も押し込む。
『はっ、ん……んんっ!!!』
『へへ。なんだ、口閉じて声出さないつもりか? 無理に決まってんだろ』
 男は笑みを浮かべながら、バイブを小刻みに動かしはじめた。
『んん、んっ……っは、はっあっ、あはああぁっ!!』
 頬に皺を寄せて声を我慢しようとする桜織だが、耐え切れない。一分もすれば、白い歯を覗かせて喘ぐようになる。あの桜織が喘ぐほどなんだから、身体の方も無反応ではいられない。細い腰は跳ね、太腿の肉は盛り上がる。
 リン、と音が鳴った。
『イッたか。こうやって奥を刺激されると、つま先から頭まで感電したみたいになるだろ。それがポルチオの快感だ、よぅく覚えろよ』
 男はそう諭しながら、ゆっくりと顔を桜織に近づける。どうやらキスを迫っているようだ。
『あっ!? ん、んっ!!』
 桜織は顔を逸らして男のキスから逃れる。貞淑な彼女のことだ、口づけも認めた相手としかしたくないんだろう。
『はっ、ガード固ぇな』
 拒絶された男はむしろ嬉しそうだ。キスは諦め、代わりに桜織の肩を抱くと、その流れで乳首を摘みあげる。
『くんんんっ!!!』
『へへへ。こんだけピンピンになってんだ、痺れる気持ちよさだろ。乳首とポルチオをたっぷり可愛がってやるからよ、せいぜい頑張ってみせろや。ヘバッたらキスすんぜ、舌まで入れてよ』
 男はそう宣言して、ディルドーのグリップを掴み直した。

 そこからの男の責めに、派手さはない。ディルドーでトントントントンとリズミカルに膣奥を叩きながら、桜織の膝裏を持ち上げたり、乳首を責めるばかり。だがそれは、決して責めがぬるいわけじゃない。桜織の反応を見ればそれが解る。
 ぎゅぷっ、ぎゅじゅっ、という水気たっぷりにディルドーを締めつける音。栓を越えてあふれる愛液。挙句に内腿の筋肉や足裏の落ち着きのなさと来たら、プロレス技でも掛けられているかのようだ。
 落ち着きがないといえば顔もそうで、顎を引いたり浮かせたり、唇を引き結んだり喘いだりと実に忙しない。
 そして、極め付けが鈴の音だ。リン、リン、リン、と一拍置く程度の間隔で音が響き渡る。長く動画を見続け、鈴の音に慣れた耳にも異常と思えるペースだ。
 そうやって絶頂を重ねるほどに、桜織の反応は激しくなっていく。
『ひうぃい゛っ!!!』
 決定的な変化の先触れは、口が三角にへし曲がったことだ。慎ましい彼女らしからぬ表情。多分それは、必死に歯を食いしばった結果だったんだろう。だがそうまでしても、沸き起こる反応を抑え切れない。
 腰がガクガクと上下に揺れ、力みのあまり太腿の上辺が角張る。腹筋も内から押し上げられるように何度も盛り上がる。
『イク時はちゃんと言えよ!』
 男のこの恫喝に誘導されたんだろうか。
『あっ、あい……い、いく…ぅ゛………ッ!!!!』
 首元に皺を刻みながら、一言が搾り出され、また鈴の音が鳴り響く。何度となく耳にした音。だがこの時の絶頂は、それまでと比べても格段に深いものだったんだろう。実際そのあと桜織は、ぐったりと脱力してしまった。それまでの力みが嘘のように、顔も首も太腿も弛緩させ、穏やかな表情を浮かべる。
 そして男は、その隙を見逃さない。すかさず桜織の肩を抱き寄せると、斜めに唇を重ね合わせる。
『んっ!? んも゛うっう゛っ、う゛うう゛ーーーっ、んぐっ!!!』
 桜織はすぐに状況に気付いて叫ぶが、もう遅い。宣言通りに舌まで入れるディープキスを強いられ、ついには悲鳴さえ上げられなくなる。
 ぐちゅぐちゅと音をさせるキスを強いつつも、男の手は止まらない。それどころか、いよいよコンパクトかつ徹底的に膣の奥を苛め抜く。
『あえ゛ーーっ、あえ゛っ、えぐう、えぐううっ!!!』
 桜織は、舌を絡め取られながら絶頂の訴えていた。そしてそれを証明するように、リン、と鈴の音が鳴る。鳴ったと思えば、また鳴る。モニターのカウントアップもいつになく激しく、心霊現象のようで怖いほどだ。
『んぶっらァ゛っ!!』
 ようやく口が離された時の汚い声は、男と桜織、どちらのものだろう。下品だから男だと思いたいが、涎を垂らしながらゼエゼエと荒い息を吐く少女もまた、気品溢れるとは言いがたい。
 そんな状態の桜織を、男はさらに責め立てる。それまで真っ直ぐ突っ込んでいたディルドーに角度をつけ、上から下からズルズルと出し入れするやり方だ。これはかなり効果的らしく、桜織の小さな尻が何度も跳ね上がった。
『あ……っは、ぁいく、いくっ……!!』
 泣きそうな声がして、桜色の唇が三角にへし曲がる。何かを振り払うように何度も頭が振られ、最後には天井を仰いだままで動きが止まる。
『へへへ、グッタリしやがって。いただき~』
 男は満面の笑みを湛えて前傾し、桜織の唇を奪った。これで二度目になるが、インパクトはさっきに劣らない。
『んっ、んんっ……あぁっ、んんん……ふっ、んっ…………』
 濃厚に口づけを交わしては、熱っぽい吐息を吐き出し、また舌を絡ませあう。それはまるで、恋人のするキスのようだ。そしてその中で、また桜織は鈴の音と共に身体を震わせる。確実に何かを喪失しながら。

『へへへ、すんげぇ締めつけだ。すっかり奥でイク癖がついちまったな。さすが優等生、飲み込みが早ぇぜ!』
 持ち時間の最後、男は成果確認とばかりに桜織の膣を堪能した。枕を敷いて腰を浮かせ、両足を肩に抱え上げた上で、奥までの挿入を繰り返す。それ自体は前にも散々目にしたプレイだ。だが、桜織の反応は一段階変わっていた。
『ああっ、あっ……んあああっ!! おっ奥、奥は、ぁっ……!!!』
 シーツを掴みながら顔を歪める桜織。その様はまるで、二度目の処女を失っているかのようだ。抱えられた脚の強張り具合も異常で、陸上で鍛え上げられたとしか思えないほどの筋肉の盛り上がりを見せている。
 そして、鈴の音。ペースこそ不安定だが、男が腰を2回振れば1度は鳴った。
 結局この10人目を相手に、桜織が達した回数は実に56回。しかもその一回一回が、クリトリス逝きよりもずっと深い絶頂だ。
 結果として、桜織の性感のステージはまた一段階上がってしまった。この後に続く映像を見れば、嫌というほどそれが実感できてしまう。


              ※


『どうだ、俺のバックは良いだろ? 俺のチンポの反りはバック向きらしくてな。前のオンナ抱いた時も、正常位じゃ全然なのに、バックでやると途端にヒイヒイよがるんだ』
 そう豪語するだけあって、11人目は何度も桜織を絶頂させていた。「主導権は自分にある」と言わんばかりに、桜織の両手首を後ろへ引き絞ってのバックスタイル。やられる側の桜織は、膝立ちになったまま、ベッドに頬を預ける格好で喘ぐしかない。
『うあ……うう゛あ゛っ! うあ……あ゛っ!!』
 桜織から漏れる喘ぎは、聴いているだけで妙な気分になった。我慢しようとしても、どうしようもなく漏れてしまう、という風だ。
 それほどの喘ぎが漏れる状況なら、肉体の反応も生々しい。腰が打ちつけられるたびに、桜織の尻肉が震え、太腿が強張る。シーツに深々と沈み込む膝とつま先が、全身にどれだけの力が入っているのかを物語る。
 鈴の音も鳴り続けで、モニターのカウントはとうとう200の大台に乗った。
『しっかし、俺の前に10人ヤッてるとは思えねぇ締まり具合だな。最初はどんだけキツかったんだ? 子宮口もほぐれてブニブニしてっし、奥突くたびにヒダが吸い付いてくるし……いやらしいマンコになっちまってんなぁ、委員長さんよぉ!!』
 男は激しく犯しながら、隙あらば罵声を浴びせていた。そうすることで桜織が恥じ入り、反応が良くなると知っているからか。
『うううう゛んっ!!!』
 くぐもった悲鳴が上がり、掴み上げられた桜織の手が、相手の手首をぎゅっと握りしめる。直後、リンと鈴の音が鳴った。
『ぐうっ!! すんげぇ締め付けだ、たまんねぇ……出るぞっ!!』
 男は歯を見せて笑いながら、ラストスパートとばかりに強く腰を打ちつけ、一番の奥で精を放つ。
『う゛ああっ、はぁっ、はぁっ……! やめて、ください……こんな、奥……し、子宮に、入っちゃう……!!』
 桜織から、掠れたような声が漏れた。
『ふうっ、ふうっ……なに言ってんだ。マンコの奥ヒクつかせて精子を吸い上げてんのはオメーだろ。この変態が!』
 男はそう言って、数十分ぶりに桜織の手首を開放した。相当な力で握られていたのか、赤い手形のついた細い手首は力なくシーツに落ちる。その脱力ぶりは、まさにレイプ後という感じがした。
 男がゆっくりと腰を引くと、太腿の合わさった部分から“みちゃっ”という音がした。お互いにどれだけの汗を掻けば、そんな音が出るんだろう。
『はぁーっ、はぁーーーっ、はぁーーーっ…………』
 桜織はベッドの上に突っ伏し、荒い呼吸を繰り返していた。男はそれを見下ろして、意地の悪い笑みを浮かべる。
『おら、いつまでもヘバってんじゃねぇ。延々と善がってられるオメーと違って、こっちにゃ2時間しかねーんだ。水飲んだら再開すっぞ』
 奴はそう言ってベッドを降りた。

 ここで一旦カットが入り、暗転を挟んで映像が再開される。
 プレイはやはり後背位だが、今度は体位が違った。ベッドを降り、シーツに手をついた桜織を背後から犯す形だ。桜織の顔がカメラの方を向いているから、さっきとは打って変わって表情がよく見えた。
『ふっ、く……んん、んん゛んん゛っ! くはっ、はあっ、ああああっ!!』
 下唇を歯で噛んで声を殺そうとし、絶頂で息を吐き出す。また声を抑えようとするが、抑えきれずに喘ぐ。その繰り返しだ。そのまま何度もイカされれば、肩幅に開いた脚が細かに震えはじめる。それを目敏く見つけた男が、嬉しそうに笑った。
『くくっ、脚がガクガクんなってきたな。ま、そうだろうな。ベッドで散々イカせてから立ちバックすりゃ、どのオンナも音を上げたもんだ』
 男はそう言って桜織の腰を掴み直し、いよいよ力強く腰を打ちつける。肉のぶつかるパンパンという音が小気味良いほどだ。
『ああああっ!!』
 桜織の腰がぶるりと震え上がり、口が大きく開く。追従するように鈴の音が鳴り響く。
 ここへ来て、とうとう桜織は開脚状態を保てなくなったらしい。膝頭をすり合わせるように、すらりと長細い脚が閉じられる。男が鼻で笑った。
『今さら内股とか、無駄な抵抗すんなよ。それとも何だ、こうやってマタ広げてハメられんのが怖ぇのか? すげぇ深くイッちまう確信があるとか?』
 そう言って脚の間に掌を割り込ませ、強引に脚を開かせていく。我慢ができないから足を閉じたというのに、それを開かれては堪らない。
『や、やめて、ください……。せめて、少し休ませて……!!』
『休みてぇんなら、次の奴にオネダリしろ。こっちは随分お預け喰らってんだからよ、気ィ済むまで愉しませてもらうぜ!!』
 奴はそう言って、また激しく腰を打ちつけはじめた。
『ああああ゛っ、はああっ!! い、いや、いやああぁっ……!!』
 細い腰が震え、鈴の音が響く。桜織の声が、段々とか細くなっていく。俯きがちで表情はよく見えないが、鼻を啜る音もしているようだ。
『んだよ、泣いてんのか? オンナ嬉し泣きさせるとか、俺もまだまだ現役だな』
 桜織の異変に気付いても、男は責めの手を緩めるどころか、ますますリズミカルに腰を打ち込みつづける。
『う゛ぅーう゛っ、う゛っあイク、ううう゛っっ!!!!』
 桜織の細い手が強張り、シーツを掴んで皺だらけにする。太腿にも、円錐状の異物を捻じ込まれたように肉が盛り上がっている。死を前にしてベッドに縋りつく少女……そんな感じで、恐怖さえ感じてしまう。
『だいぶ腰砕けになってきたな』
 男はそう言って、ずるりと逸物を抜き出した。いつのまにか射精もしていたらしく、半勃ちでぶらさがる逸物からは、白い糸が垂れ落ちている。
 ここで、桜織の身体が前に崩れた。尻を高く掲げ、シーツに突っ伏して。モニターのカウントは230回。いよいよ体力も限界なんだろう。だが、それを見ても男に同情の念は沸かないらしい。
『うへぇ、マン汁でヌルヌルんなっちまった。おい、フロ入んぞ!』
 足を見下ろしながらぼやき、桜織の腕を掴んで浴槽へ向かう。力なく引っ張られていく桜織の顔は、涙と鼻水で濡れていた。

 男は、浴槽内でも散々に桜織を嬲っていた。泡まみれの手で割れ目を擦ったり、クリトリスにシャワーを当てたり。特に湯を張っている待ち時間での『手マン』は、今の桜織にとっては地獄だろう。
『脚ガクガクんなってもへたり込むなよ。意識飛ぶまで続けてやる』
 男はそんなことを囁き、大きく開かせた脚の間で指を動かしつづける。
『ひいっ、くっんんんーん……くうぅっ!!』
 桜織の声はか細い。左手で浴槽の縁を掴みつつ、右手の指を噛んで声を殺しているからだ。だが、そうして声を殺していられるのも最初の内だけだった。何度も指で絶頂させられれば、そのうち両手で縁を掴まなければ姿勢を保てなくなる。そうなれば声を抑えきれない。
『っくいくっ、あああぁっ、ああっ、んああああっ……!!!!』
 こういう艶かしい声が出続けになる。
 男が桜織の余裕のなさを面白がり、浴槽の縁に片足を乗せるよう命じてからは、特に悲惨だった。上げた左脚が病的なほどに強張り、腹筋が凹んでは戻る。愛液のあふれ方も普通じゃなく、少し切れが悪い小水といった風だ。
『こんな……こんなの、いやあああぁぁっっ!!!』
 桜織の顔も引き攣り、とうとう悲鳴さえ上がりはじめる。
『すげー、どんどん出てくる』
 一方の男は呑気なもので、その温度差はホラーじみてすらいた。

 散々に桜織を追い詰め、浴槽に湯が満ちた頃、男は悠々と風呂場の縁に腰掛けた。とはいえ、足湯をするわけじゃない。湯船の中で桜織に這う格好を取らせ、逸物をしゃぶらせるためだ。
『相変わらず下手だなオメー。思い切りが悪ィんだよ思い切りが。今さらお上品ぶってもしゃあねぇだろ、あんだけマン汁撒き散らしといてよ。見ろよ、湯がすっかりオメーのマン汁で濁ってやがる。脚にもヌルヌル絡みついてきやがるしよ。ホント汁の多い女だぜ!!』
 隠語を繰り返し、羞恥を煽ることも欠かさない。徹底した性格の悪さだ。そうした悪意を、桜織はもう何度も受け止めている。そろそろ受け流せてもいい頃だが、彼女はやはり羞恥に耳まで赤らめて恥じ入っている。
 それが、桜織という女性なんだろう。生真面目すぎるがゆえに、何でも正面から受け止めてしまう。心が壊れるほどの恥辱でも、気が狂うほどの快楽でも。

 逸物が上反りするまでに回復したところで、男はセックスを再開した。浴槽の縁に桜織の手をつかせてのバックスタイル。
『駄目押しの風呂場ハメってな。俺のチンポは、身体が温まってっと余計に気持ちいいぜ?』
 男はそう語り、水面に波を立てながら腰を振る。
 都合3度目の後背位だが、これが一番強烈だった。男の言う通り、身体が温まっていることが仇となったのか。
『あ…だめっ!!!』
 挿入からほんの数十秒で、桜織が顎を跳ね上げた。余裕なく視線を惑わせながら、腰に添えられた男の手を掴む桜織。だが男は構わず、激しく腰を打ち込みつづける。入浴で肌がふやけたせいか、パンパンという肉のぶつかる音は重厚感を増していて、そのぶん迫力もすごい。
『やだめ、だめ……いっちゃうっ!! だめ、いぎ……っ!!!』
 背中が弓反りになり、歯が食いしばられる中で、また鈴の音が鳴る。今回でちょうど250回目の絶頂だ。
 そこからは、順調に絶頂回数が積み重なっていく。桜織は手の甲に筋を浮かせて男の拘束を外そうとしていたが、力比べで敵うはずもない。結局は腰砕けになり、浴槽の縁に両手で掴まるしかなくなる。
 一方の男は落ち着いたものだ。あああ、あああ、と心地良さそうに喘ぎながら、堂々とした姿勢で相手を責め抜いている。よほど後背位に自信があり、かつ経験も豊富らしい。
 そこからさらにセックスが続き、絶頂回数が260回を越えた頃だ。
『あっ、で、出ちゃうっ!!』
 急に桜織が叫び、激しく身を捩った。火事場の馬鹿力というやつか、これでとうとう男の手が外れる。
『おい、暴れんな!』
 男が怒声を浴びせる中、桜織の腰が震える。そして直後、じょぼじょぼと風呂の水面に向けて液体の注がれる音がしはじめる。
『なっ……』
 男は目を丸くし、怒りの表情から一点、してやったりという笑みを広げた。
『はははっ!! んだよお前、良すぎてションベンか!? ったく、下品なガキだな。よくもまぁそれで品行方正ぶれたもんだぜ!!』
 男はそう言って、桜織の尻を叩く。
『ぐっ……す、すみません、でも!』
『でももクソもねぇんだよ。オラ続けっぞションベン垂れ!』
 男は桜織の弁明を無視し、腰を掴んでプレイを再開する。パン、パン、パン、パン、と一回一回着実に奥までを貫く突き込みだ。
『かはあっ!! も、もう、無理です……っ!!』
 桜織は身体中を強張らせながら、がくりと項垂れた。それをきっかけとしたように、突き込みのペースが上がる。機関車が速度を上げるように、徐々に、徐々に。
『だめ、駄目ダメっ!!いきますっ、いってます!!!』
 桜織の手が、また男の手に重なった。腰を掴まれているのがそれほど致命的なのか、あるいは錯乱状態で同じ行動を反復してしまっているのか。
『ああああぁぁっ、はああっ!! はぁっはぁっ……うああ、ああああぅあ゛ーーーっ!!!』
桜織の反応が悲惨さを増していく。浴槽の縁に両手でしがみついたまま、叫び、泣き、身悶え。まるで下半身を貪り食われているかのようだ。強烈な快感は痛みと同じというから、実際似たようなものかもしれない。
『すげぇなお前、ここまで意識保てた女はそういねぇよ。案外、快感の耐性強ぇのかもな。ま、それならそれで愉しませてもらうまでだ。これが終わったらまたベッドだぜ。持ち時間ギリギリまで、バックを堪能させてやるよ!!』
 男はそう囁きかけ、恐怖に引き攣る相手の表情を愉しんでいた。



『ぜぇっは、ぜはっ……はーっ、はひっ、はっ……!!』
 11人目が部屋を出ていった後、桜織はベッドの上でひどい呼吸を繰り返していた。溺死からかろうじて生還したばかり、という風だ。小学校高学年かと見紛う小柄さだけに、余計痛々しい。
 そして、やはり彼女に充分な休息は与えられない。ドアが開き、逆光の中で12人目のシルエットが浮かび上がる。線は細く、ケダモノのように犯すタイプには見えない。ただし、眼鏡奥の細い瞳からは、ひどくマニアックな印象を受ける。事実として奴は、これまでの12人のうちで唯一、外から責め具を持ち込んでいた。
『お願いします。10分でいいから、休ませてください……』
 桜織はベッド上で半身を起こし、12人目の男に乞う。だが男は、爬虫類を思わせる瞳で少女の裸体を舐め回すばかりだ。
『まるで人形みたいだね、綺麗だ。さっきまであんなにギャンギャン泣いてた子とは思えないよ。ま、だからこそ興奮するんだけどね。あんな反応見せられたら、もっともっと開発したくなるじゃないか』
 奴はそう言ってベッドに腰掛け、持参した道具を桜織に見せ付ける。
 長さがあり、かつ柔らかそうな黒いディルドー。手でちょうど握れるサイズの、ピンク色のキャップ。
 桜織が怪訝な表情を浮かべる。見慣れない道具を前に、その用途を必死に考えているようだ。
『さっきのセックスで、だいぶポルチオの開発が進んだみたいだからさ。次はこれで、もう一段階感度を上げてあげるよ。もう身に染みて解ってるかもしれないけど、ポルチオの快感って、クリやGスポの比じゃないからね。身体の端まで響く深ーい快感が、ずっと続くらしいよ。ま、ネットの聞きかじりだけどさ。それがホントなのか、そのカワイイ身体で実験させてよ』
 12人目の男はそう言って、ディルドーを指で弾く。一方で、桜織はシーツを握りしめていた。その心境はよく解る。
 もはや対話など不可能。そう、悟ったんだろう。


 

二度と出られぬ部屋 第四章 オーガズム・クライマックス(前編)

※長くなりそうなため、前後編に分けます。
 前半部分のメインは飲ザー・ごっくん・破瓜シーンです。




■第四章 オーガズム・クライマックス(前編)


 剣術少女の瓦解を見届けた後の食事は、ひどく味気ないものだった。

「ほう……15階の娘には、もう少し早く目をつけておくべきでしたな。同性から人気を集める『王子様』の陥落は、見ごたえがあったろうに」
「もはや見る影もありませんからなぁ。ハグされて髪を撫でられれば、猫が鳴くような声を出して……完全にメスですよ」
「メスといえば、例の剣術娘ももうダメらしいですな。連れ合いが言うには、トラウマを植えつけられたそうで。胡坐を掻くように足を交差させながら犯すと、わんわん泣くそうです。おかしくなる、堪忍してくれと哀願し、潮を噴き散らしながらね」
「へえ……あの子がねえ。聞いた話じゃ、折檻用の竹刀を奪って暴れたそうじゃない。あの噂が怖くて、ここ何日か17階行けてないのよねぇ」
「あったなぁ! 火事でも起きたのかと思ったぜ、あの時は。セキュリティの連中が、エレベーター前にゾロゾロ集まっててさ」
「そのセキュリティも結局、歯が立たなかったそうですよ。なにしろ“撃剣”ですから、喧嘩となれば滅法強いようで。最後はテーザー銃というんでしたっけ、射出するタイプのスタンガンでようやく動きを止められたようです。とはいえ、そこからさらに2人が負傷したようですが……」
「ここのセキュリティって、本職のヤクザとか裏カジノの用心棒(バウンサー)とかでしょう? そんな連中が手も足も出ないって……凄いのね」
「ま、過去の話だ。反骨心を剥き出しにしてたのも、ケツをグッと引き締めてられたのも」
「なまじ反骨心があるせいで、徹底して心をヘシ折られるんですよね。その点、16階の娘などは存外に強かですよ。反抗せず、素直に服従しながら、裏ではこっそり他の娘と励ましあっているんです。ディープスロートにもだいぶ慣れてきたようですし、あれはまだ結構もちますよ」
「反抗せず素直といえば、18階の三つ編みの子もですな。もっともあっちは、励まし合える仲間もおらず、四六時中イカされっぱなしという状況で、とても凌げる状況にはないようですが」
「あれは……ねぇ。精神的にはともかく、肉体的なキツさでいえば、剣術娘以上でしょう」
「しかも、あの中学生と見紛う体躯でね。今回“選ばれた”生徒の中でも、一番小柄じゃないですか、あの子?」
「でしょうね。ま、だからこそ見応えがあるとも言えますが」
「確かに、インパクトが凄い。……っといけない、勃ってしまいました」
「はは、お盛んですなぁ! ズボンがはち切れそうですよ、あそこのウェイトレスで『処理』なさったらどうです?」
「そうしますか。このままでは寝られそうにもない」

 隣の円卓では、男女8名のグループがワイン片手に談笑している。話を聞く限り、俺と同じような加虐シーンを見て回っているようだが、その顔は晴れやかだ。
 その中の一人は席を離れ、別のテーブルを片しているウェイトレスに覆い被さった。一切の遠慮なくスカートとエプロンを捲り上げ、ショーツを横にずらして挿入を果たす。
「うんっ!!」
 挿入の瞬間だけ、ウェイトレスから生々しい声が漏れた。だがそれ以降は、ただ性器を『使われる』だけの道具と成り果てる。
「どうだ、ワシのマラは気持ちいいか!?」
「はい……心地よう、ございます」
 がなり立てる男に対し、淡々と返事をしながら、突き込みに合わせて身体を前後させるウェイトレス。その姿は、一見すると精巧な人形のようだ。だが、人形はテーブルクロスを握りしめない。太腿を強張らせもしない。
「ははは。いや、成田さんもご立派なモノをお持ちですなぁ!」
「ええ。奴隷なんかには勿体ないわ」
 犯す男と同席していた連中は、赤ら顔で大笑いだ。
 胃がムカムカする。俺は皿の上の料理を搔き込むと、足早にレストランを後にした。

 狂っている。ここにいる連中も、施設そのものも。
 そもそも、ここは何なんだ。名門校に通う現役の女子高生を、犯し、辱め、狂わせる……まさに悪夢のような場所。客の何人かが『クラブ』と呼んでいたが、凌辱倶楽部だとでもいうのか。
 ベッドに腰掛け、そんな事を考えていた時。リリリン、と部屋の電話が鳴った。腕時計が示す時刻は夜の10時。ルームサービスには遅すぎる。俺は訝しみながらも、受話器を耳に当てる。

『よう、大将。』
 第一声は、馴れ馴れしい呼びかけだった。声質は男のものだ。だが、聞き覚えがない。
「誰だ、お前は?」
 当然、俺はそう尋ねる。すると相手は、一拍置いた。
『そいつは、まだ答えかねるな。俺がアンタの敵になるか、味方になるか……そりゃ、そこでのアンタの選択次第だ』
「……選択?」
『ああ』
 どうやら相手は、俺を知っているらしい。俺が今いる場所も。記憶喪失前の知り合いらしいが、そうなると実に厄介だ。
「お前の思惑は知らんが、それは無理だ。今、俺には記憶がなくてな。今いる場所がどこかも判らんし、そもそも客の一人でしかない。誰かに期待されるような決断をできる状態じゃ──
『いいや』
「──っ!?」
 俺の言葉を、電話口の相手が遮る。俺は思わず息を呑んだ。
『アンタはこの先絶対に、決断を迫られる。何百……あるいは何千って人間の運命を左右するような決断だ』
「な、何で記憶もない俺が、そんな……そもそも、俺は何者なんだ!?」
 不可解な言葉に、思わず声を荒げてしまう。すると、まるでその荒ぶりが電波に干渉したように、通信に雑音が入りはじめた。
『……おっと、そろそろ限界だな。これ以上は“そっち”の連中に勘付かれるからやめとこう。だが、最後に一つだけ。アンタは獣じゃねぇ、ヒトだ。そう思ったからこそ、俺はアンタと手を組んだ』
 男はそう言って、言葉を溜める。思いの丈を篭めるように。
『ヒトとしての心は、無くすなよ。絶対にな』
 その言葉を最後に、電話が切れる。後に残るのは、ツー、ツー、という不通の音だけだ。
「……何なんだ、一体……」
 俺は電話を戻し、乱れた髪を掻き上げた。傍の鏡に映るのは、どこか気取った姿の男。顔立ちは整っているし、眼力も強い。女受けが良さそうで、カリスマ性もありそうだが、同時に独善的な印象も受ける。己の流儀を絶対と信じ、他者を従わせるワンマン経営者という感じだ。
 口の筋肉を動かせば、鏡の中の男が笑う。眼を吊り上げれば、奴は怒る。それほど自在に操れる相手だが、なぜか自分とは思えない。じっと眼を覗き込んでいると、存在を食われてしまいそうな感じがする。
「……お前は、誰だ」
 俺は、鏡に正対してそう呟いた。当然、答えはない。鏡の向こうの人間が、同じ口の形をしているだけだ。
 俺はそのまま後ろに倒れ、ベッドの上で大の字になる。そのまま眠りに落ちるのに、長い時間は掛からなかった。


「んん……ん……」
 目が覚める。布団を被らずに眠ったせいで、若干肌寒い。
 アラームがなくとも8時頃に起きてしまうのは、習慣というやつだろうか。
 ひとっ風呂浴びてからレストランで食事を済ませ、思案する。
  ──今日も、あの地獄のような光景を拝みにいくのか?
  ──本当にその必要があるのか?
  ──あれを観ることで齎される変化とは、歓迎すべき事なのか?
 心に浮かぶ三つの問い。俺の希望としては、答えは全て「NO」だ。

 それでも俺は、気がつけばエレベーターに乗っていた。
 地獄を観たいわけじゃない。ただ、部屋へ戻って横になり、今もどこかで起きている悲劇を悶々と思い描くよりは、いっそ“真実”を目にした方がマシに思えたからだ。

「どのFloorをご希望ですか?」
 ネイティブな発音の英語を交えて、エレベーターガールが尋ねてくる。ギリシャあたりの血が混じっていそうな、彫りの深い美人だ。外の世界でなら、そのルックスでさぞや良い扱いを受けるだろう。だがここでは、客が求めるタイミングで身体を差し出す奴隷。一体なぜ、彼女ほどの美人がそんな目に。あるいはこれが、今調教されている女生徒達の末路なのか。
「……お客様?」
 その問いかけで、俺は現実に引き戻される。どうやら、エレベーターガールの顔を凝視していたらしい。
「わたくしをご所望であれば、お相手いたしますが……」
 涼やかな表情で、そんな言葉まで吐いてくる。
「いや、結構だ。18階を押してくれ」
 俺はそう言って腕を組み、彼女と距離を取った。
「…………失礼を致しました」
 エレベーターガールが恭しく頭を下げる。おかしな話だ。女の尊厳を無視し、無礼を働いているのはこのクラブだろうに。
 
 現実味がないほど広いエレベーターが、ゆっくりと動き出す。

 地下18階。初日にそこで降りたのは三つ編みの子だ。グループ内で一番小柄であるにもかかわらず、保護者のような雰囲気を持つ娘。

『反抗せず素直といえば、18階の三つ編みの子もですな。もっともあっちは、励まし合える仲間もおらず、四六時中イカされっぱなしという状況で、とても凌げる状況にはないようですが』
『しかも、あの中学生と見紛う体躯でね。今回“選ばれた”生徒の中でも、一番小柄じゃないですか、あの子?』

 昨夜、レストランで耳にしだ情報とも一致する。18階で嬲られているのは、あの子で間違いない。
 ここまで来るともはや呪いだ。あの日エレベーターで乗り合わせた少女達が、次々に壊されていく。あるいは、すでに壊された後かもしれない。俺がこの施設に来てから、すでに10日目の朝なんだから。


              ※


 『336時間耐久 連続絶頂』
 18階の扉には、そう記されたプレートが掛かっていた。336時間は、24時間で割ると14日……つまり丸二週間だ。それだけの時間、絶頂し続けろというのか。無茶だ、出来るわけがない。だがこのクラブなら、無茶でもやらせかねない。たとえ、途中で脳が壊れようとも。

 扉を開いた先は、これまでに訪れた3部屋のどれとも違っていた。
 物置のような狭い空間で、いきなり祐希が犯されていた地下15階。
 キャバクラのような内装だった地下16階。
 まず資料館のような部屋があり、その奥に調教部屋への通路が伸びていた地下17階。
 それに対してこの地下18階は、健康ランドやスーパー銭湯の休憩エリアを思わせる場所だった。広い部屋に30台ほどのリクライニングチェアが並び、そのチェアの一つ一つに、小さなデスクと薄型のディスプレイが備え付けてある。
 ドリンクや性奉仕のサービスもあるようで、すでに埋まっている20あまりの席では、それぞれの客がイヤホンをつけて画面に見入りつつ、酒を飲んだり奴隷に奉仕させていた。
「あっ、あっ、はぁ……ん」
「れろっ、えろ……あむっ、ちゅっ……」
 艶かしい声や音が、部屋内の至る所から発されている。部屋着を肌蹴た毛深い男に女が跨り、あるいは足元に跪いて逸物を舐めしゃぶる様は、乱交現場さながらだ。
 そしてもう一つ、この部屋には大きな特徴があった。部屋の奥の壁に、一箇所だけ張られた擦りガラス……その向こうで、二つの人影が揺れている。どうやら這う格好の女が、後背位で犯されているようだ。
 男の方は、横に分厚い肉体を無心に前後させている。対して女は、華奢な上体を反らせて天を仰いでいるらしい。そして。

「おっほぉぉぉっ、んんおお゛おお゛っ!!! んほぉぉおおっ、おおおお゛お゛お゛っっ!!!!」

 そんな、獣の咆哮にも似た叫びが響き渡っていた。これに近い声を、昨日も耳にした覚えがある。藤花が結腸で達した時の声だ。あの時も藤花は、「おお゛」と呻いていた。ただし今俺の耳に入ってくる声は、それの何倍も切実で、しかも絶え間なく続いている。
 一体どんな感覚に苛まれれば、女からあんな声が出るんだ。早くも腕に鳥肌が立つ。このフロアはやばい。

 俺はとりあえず空いているチェアに腰掛け、目の前のディスプレイに触れる。するとスリープ状態が解除され、メニュー画面が表示された。
 画面には、『プロフィール』と書かれたボタンと、いくつかの動画、手枷をつけた女のアイコン、コップとハンバーガーのアイコン等が配置してある。
 周りの状況から考えて、女のアイコンからは奴隷の奉仕を、コップとハンバーガーのアイコンからは飲食物を発注できるんだろう。随分といい待遇だが、今の俺には必要のないものだ。
 最初のトップ画面に戻って『プロフィール』ボタンに触れると、ポップアップウィンドウが表示される。ウィンドウには、ある女の写真と詳細な情報が記載されていた。
 前髪を眉辺りで切り揃え、横髪を顎の辺りまで伸ばした上で、長い後ろ髪を一本に編み込んだ髪型。見覚えのあるブレザーにリボン。
 間違いない。初日にエレベーターで見かけた、あの三つ編みの子だ。

『氏名:瀬戸口 桜織(せとぐち さおり) 年齢:満17歳
 身長:155.2cm 体重:47kg(計測時点)
 スリーサイズ:B77(Bカップ)・W57・H81
 ・所属:蒼蘭女学院2年A組
 ・全国模試1位の実績あり
 ・全国高等学校英語スピーチコンテスト優勝経験あり
 ・日・英・中・韓・独・仏など、11ヶ国語での日常会話が可能
 備考:中流家庭。A組学級委員長。球技はやや不得手の模様。品行方正かつ他人思いで、人望が厚い』

 情報欄には、華の女子高生のデータが仔細に暴露されていた。他フロアで客が見ていたパンフレットと同じ記述形式だ。
 彼女は桜織というのか。なるほど、清楚な見た目によく合っている。
『もうっ、馬鹿言わないの。授業の一環って聞いたでしょ』
 エレベーター内で、はしゃぐ千代里と藤花をそう諭していたのも、委員長としての責任感からか。

 ポップアップを消し、トップ画面の動画欄に目をやる。
 動画には3つのカテゴリがあった。【ノーカット版】【ダイジェスト版】【ライブ映像】だ。
 【ノーカット版】は、先頭にまず『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失』というタイトルの動画がある。そしてその次から、『0:00~8:00』『8:01~16:00』という具合に、8時間区切りのタイトルが並んでいた。動画の再生時間も、ずばり『8:00:00』。どうやら336時間分の映像記録が、丸ごとアップロードされる場所のようだ。
 これだけ長時間の記録となれば、全て追うのは並大抵の事じゃない。警察官かよほどの暇人ならともかく、大半の客は変化のある部分だけを観たいはずだ。【ダイジェスト版】は、その要望に応えたものらしい。こっちは『0:00~8:00(編集済)』といったタイトルが並んでいて、再生時間は10分から20分弱。ただし、編集に時間がかかるからか、ノーカット版の最後の一つに対応する動画はまだ存在しない。
 そして、【ライブ映像】。ここでは粗いモザイク越しに、肌色が激しく動いていた。まるで粗悪なアダルト広告のようだが、肌色の揺れるペースは擦りガラス向こうのそれと一致していて、紛れもなく“あっち側”の生映像なんだと判る。
 俺は正直、ライブ映像が気になって仕方がなかった。今も部屋内には、獣の咆哮が響き渡っている。擦りガラス越しでは角度的に見えないが、ライブ映像のモザイクの中では、三つ編みと思しき黒い線が肌色の中で揺れている。エレベーターで会ったあの娘が犯され、あられもない声を上げているんだ。その事実を前にして、興味を持つなというのも無理な話だろう。
 だが俺は、あえて過程を追う。俺は地獄を見たいんじゃない。彼女達の身に起こった“真実”を知ること……それこそ、俺がここに来た目的なんだから。


              ※


 両耳にイヤホンを嵌め込むと、獣の咆哮もさほど気にならなくなった。俺はその上で、【ダイジェスト版】最初の動画をタッチする。
 動画タイトルは、『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失(編集済)』。媚薬ガスに、地獄と形容されるレベルでの飲精。字面だけで、嫌な予感が背筋を這い登ってくる。

 動画は、桜織の全身を映すシーンから始まった。
 艶やかな黒髪に、校則遵守という感じの制服姿、背筋を伸ばしたままスカートに手を添える『気をつけ』の姿勢。まさに優等生の鑑だ。
 そして同時に、その雰囲気はひどく大人びていた。既婚女性を思わせる落ち着きがあり、くっきりと見開かれた瞳は強い意思を感じさせる。控えめでありながらも、確たる意思を秘めた女性。藤花が『大和男子』の魂を持つとすれば、この桜織は『大和撫子』の典型というところか。

『相変わらず堅ぇな。もうちっと楽にしててもいいんだぜ?』
 映像内に、低い声が入り込む。カメラで撮影している男の声か。桜織のピリリとした雰囲気を見る限り、友好的な相手ではなさそうだ。
『あの煙は、なんですか?』
 桜織が、コンクリート壁上部の通風孔を見ながら尋ねる。その孔からは、気化したドライアイスのようなものが細々と流れ出していた。
『煙っつうか、ガスだな。ま、媚薬の類と思えばいい。シャブみてぇに即効性はねぇが、このガスを吸い続けりゃ、どんな人間でも確実に色狂いになる。神経をやられて、男なら女を抱くこと、女なら男のイチモツにしゃぶりつくことしか考えられなくなる』
『……っ!?』
 撮影者の答えに、桜織の表情が引き攣った。生真面目な学生からすれば、腐敗と堕落を象徴するような薬物など、もっとも忌み嫌うところだろう。ましてや、それが自分に用いられ、性的な作用を齎すとなれば尚更だ。
 撮影者は、そんな桜織の反応を可笑しがっているようだった。
『くくっ、いーいカオだ。オメェにゃ、あのガスをたらふく吸ってもらうぜ。とはいえ、こんな殺風景な部屋でじっとしてんのも退屈だろうからな、特別な遊び相手を用意してやった。……オイ、入っていいぞ!』
 奴がそう叫んだ、直後。画面左奥のドアが開き、全裸の男達がぞろぞろと姿を現した。
 凄い人数だ。おまけに5人に1人ほどの割合で、東南アジア系の顔をした男もいる。それ以外は一見日本人に似た顔だが、叫んでいる言葉を聞く限り、中国や韓国系の人間も混じっているようだった。筋肉質、力士のような肥満体、骨と皮だけの痩せぎすと、体型も個人差が大きい。
 見た目も人種も色々だが、共通点はいくつかあった。
 どいつもおおよそ30代か40代の、働き盛りの年齢であること。
 全員が負のオーラを纏っていること。
 髪も髭も伸び放題で汚らしく、肌は日焼けとはまた違う感じで浅黒いこと。
『う……っ!?』
 当然匂いもきついらしく、桜織は鼻を押さえながら眉を顰めた。
『はっ。揃いも揃って、ゲロ拭いた雑巾みてぇな匂いさせてやがんな』
 声の感じからして、撮影者も鼻を摘んでいるようだ。
『こ、この人達は……?』
『こいつらは、タコ部屋で肉体労働させてる連中でよ。少なくとも一ヶ月はオンナを抱いてねぇ。おかげでギトギトに濃い精液を、金玉が腫れあがるぐらい溜め込んでやがる。そんじょそこらの野郎の比じゃねぇオス度ってぇわけだ』
 桜織の問いに答える撮影者の口調は、どこか誇らしげに聞こえた。
 タコ部屋労働者というが、本当だろうか。確かに肉体労働者風の男も多いが、中には運動しているのか怪しい肥満体や、そもそも日本語が通じなさそうな連中もいる。浮浪者や不法滞在者を手当たり次第にかき集めた、という方がまだ信じられそうだ。
 ただ、極度の女日照りというのは事実だろう。
『おおおお、オンナ……女だっ!!』
『オンナ、オンナ、オンナぁああッ!!!』
『いひひ、じょ、女子高生だぜ、現役の。しかもあの制服、蒼蘭だ……』
『蒼蘭って、あのお嬢様学校かよ!? くく、はははっ!人生って面白ぇな。あんな所のお嬢様とは、一生接点なんぞないと思ってたぜ!』
『ああああ可愛いなぁ、いい匂いしそうだなぁ。堪んねぇ!!!』
 死んだ目の奥に欲望の光をギラつかせ、赤黒い逸物を斜め上に反り立てて、メスである桜織に向かって叫ぶ。その有様は普通じゃない。
 今にも飛び掛かりそうな雰囲気だが、奴らは何かを警戒して踏みとどまっている。濁った眼が桜織と交互に見やるのは、カメラの後ろ。
『どうした。ハメてぇってんなら、ヤってもいいぞ?』
 カメラ後方からドスを利かせた声がする。が、その提案に乗る人間はいない。ガラの悪い口調といい、これだけの頭数を抑止する影響力といい、撮影者が“裏の人間”であるのは確実だ。タコ部屋と繋がりがある以上、まずヤクザ関係だろう。
『待てが出来るたぁ、よく躾けられたオス犬共だ。だが、見てみな嬢ちゃん。一ヶ月お預け喰らってバキバキで、可哀想だよなぁ。あの50人を、クチと手だけで満足させてやれ。暇潰しにゃちょうどいいだろ?』
 ヤクザ男はそう言って、桜織の顔を凍りつかせる。そして今度は、男共にカメラを振った。
『よう、お前らも気張れよ。これはただの余興じゃねぇ、借金棒引きを賭けたギャンブルだぜ。この女の胃に収まったザーメン量に応じて減額してやる。全員一律でだ』
『……へ? ま、マジっすか!?』
『そ、相場は!?』
『んー……そうだな、リットルあたり100万にすっか。テメーらの数百数千って借金にゃ届かねぇが、大盤振る舞いだろ?』
 この言葉で、欲望一色だった男共の顔つきが変わる。髭面の顔が、次々と緩んでいく。
『う、うおおお……!!』
『マジかよ……こんな可愛い子にゴックンさせて、借金まで減ってよ。最高じゃねーか!!』
『おお。今の俺らなら、ナンボでも出せそうだしな!』
『だが、問題はあの子の胃の容量だ。あのちまさでリットル入んのかよ!?』
 顔を見合わせ、興奮気味に叫びあう男達。その前方では、桜織が厳しい表情を浮かべていた。そしてヤクザ男の笑い声が、カメラの傍で繰り返される。
『ちなみに胃の大きさは、大人の女で1300mlぐらいらしいぜ。ただ、本当の限界はその倍とも言われてる。このガキはガタイが貧相だから、限界2.4リットルってとこかもな』
 ゲラゲラと笑いながら、男は新たな燃料を投下した。
『2.4リットルなら、240万棒引きか!? へへ、こいつァ腕が鳴るぜ!』
『おうっ。俺らの未来がかかってんだ。嬢ちゃんにゃ悪ぃが、無理でも何でもしてもらわねぇとよ!!』
 男共は発奮し、桜織を包囲する輪を狭めていく。
 無茶だ。胃の限界というのは、大食いに慣れたプロ選手が決壊ギリギリまで食い物を詰め込んだような状態を言うんだろう。素人にそんな拡張ができるはずがない。だがあの男共は、やらせるつもりなんだ。自分達の借金のために。

『じゃ、始めろ。制限時間は今から2時間だ』
 撮影者の男の声が響く。
『オレからいくぜ。おい、膝ついてしゃぶれ!』
 一人が逸物を握りながら、桜織にいち早く歩み寄った。赤銅色の肌をした、押しが強そうな男だ。
 この男と並ぶと、桜織の華奢さが際立つ。桜織の頭頂部など、男の顎までしか届かず、肉体の厚みにもかなりの差がある。中学生どころか、もはや子役。プロフィールに載っていたB77・W57・H81というのは、こんなに細いのか。
『……!!』
 桜織は、躊躇っていた。というより、男の逸物に視線を釘付けにされていた。現役の女学生でありながら、昭和の女の匂いを漂わせる彼女のことだ。男の逸物をまじまじと目にするのは、これが初めてなんだろう。
 その淑女ぶりに、画面内の男すべてが生唾を呑む。それは俺も同じだ。清純な娘に惹かれるのは、オスの本能なのか。
『早くしろ。コッチは一ヶ月オンナ抱いてねぇからよ、溜まってんだ』
 再度そう命じられると、桜織はようやく呪縛から説かれたように目を瞬かせ、男の足元に跪いた。
 カメラが下を向く。桜織と男のいる辺りには、切り開いたダンボールが敷かれていた。粗末な敷物だが、コンクリートへ直に膝をつくよりはマシというところか。
 カメラ右上に映る亀頭部分には、白い恥垢がびっしりとこびり付いていた。
『はは。しばらくフロ入ってねぇもんだからよ。せっかくだ、舐めてキレイにしてくれや』
 男はそう言って、汚らしいそれを桜織の唇に押し付ける。
『う!!』
 濃厚な男の匂いを間近で嗅がされ、桜織の顔がいよいよ強張る。女子高生といえば、父親の着衣の匂いすら嫌う年頃だ。垢まみれの逸物など、視界に入れることすら耐えがたいに違いない。
 だが桜織は、きゅっと唇を引き結ぶと、凛とした瞳で男を見上げる。
『……わかりました』
 静かな口調でそう言うと、品の良い唇を開いて男の物を咥える。
『おほっ』
 逸物の先が唇に挟み込まれると、男が喜びの声を上げた。気色悪いが、同じ男として理解はできる。一ヶ月女を抱いていない極限状態では、柔な唇が亀頭に触れるだけでも想像を絶する快感だろう。
『いひひっ、くすぐってぇ。おいテメェら、こんだけ溜まってる状態でチンコ舐められっとヤベエぞ。ベロが先っぽなぞるたびに、痺れる感覚が背中の方まで回ってきやがる。こりゃ数分ももたねーぞ』
 男は赤銅色の筋肉を蠢かしながら、上ずった声を出す。本当に気持ちが良さそうだ。その様子に、周りの男が生唾を呑む。
『おら、もっとベロンベロン舐め回せよ。んな遠慮してねーでよ』
『遠慮っつか、単にオメーが嫌われてるだけじゃねぇのか。んなバッチくて臭ぇチンポなんざ、恥知らずなギャルでも嫌がんぜ』
『ギャルっておめぇ、いつの言葉だよ。今はJK(ジェーケー)ってんだぜ、JK』
『ほーぉ、さすが援交マニアは詳しいな!』
『ああ!? 偉そうに言うんじゃねぇよ、このレイプ魔が!!』
『おいおい、喧嘩すんな。ここにいるのはみーんな、セックス絡みで借金こさえたバカばっかだろ。同じ穴のムジナってやつだ。ちなみにこれから、穴兄弟にもなる仲だぜ?』
『はっ、つまんねーよ。しかし、ひでえよなぁ、人一倍オンナ好きな俺らに、一ヶ月も抱かせねぇなんてよぉ!! ああ、早くやりてぇよお!! オウ杉さん、チャチャッと出して次に回してくれや!』
 浮浪者のような連中は、ひたすらに醜い罵りあいを繰り返していた。中年と呼んでいい歳にもかかわらず、その言動は未熟だ。欲望を抑えず無計画に生き、タコ部屋という地獄の底に堕ちてなお反省しない……そんな人となりが透けて見える。17年しか生きていないにもかかわらず、成熟した雰囲気を纏う桜織とは対照的だ。
『そろそろ出そうだ。そのまま先っちょを舌で舐めてろ』
 “劣”のオスが“優”のメスの頭を掴み、奉仕に注文をつける。かすかに水音のような音が漏れ聞こえはじめた。
『……うひひっ、いいぞ。よし、そろそろ口窄めて前後にしごけ…………ううう、あああ……っしゃ、いくぞ、いくぞオラッ!!』
 吼えるようなその叫びの後、男の尻肉が引き締まる。
『うぶっ!』
 桜織が眉を顰めた。どうやら精子を口の中に出されているらしい。
『おーーすげぇ、出てる、すげえ出てるっ!!』
 男は上ずった声を漏らしながら、どくんどくんと腿の筋肉を蠢かす。
 この射精が、また長い。数秒経っても、腿の蠢きが続いている。
『オイオイ、どんだけ出してんだよ!?』
『そら出るぜ、こんだけ久しぶりだとよぉ! チンポがびくんびくん跳ねて、ションベンの管が焼けるみてぇに熱くて、こんなん初めてだ!!』
 その言葉で、また男達の喉が鳴った。否定的に見ている俺ですら、奴の快感の度合いを想像してしまう。
 たっぷり10秒ほどしてから、ようやく1人目の男が腰を離した。鈴口と桜織の唇との間に、真っ白な筋を伸ばしながら。
『うぶ、ぐっ……!!』
 桜織が噎せる。当然だ。初めての口での奉仕で、あれだけたっぷり出されて平然としていられるわけがない。だが男は、俯きかけた桜織の顎を無情にも掴み上げる。
『おい。どんだけ出たか、他の連中にも見せてやれ』
 男は静かな声で命じた。射精直後だけあって声色こそ落ち着いているが、有無を言わせずという響きだ。
『……えあっ』
 桜織は一瞬躊躇ったものの、命じられた通りに口を開く。ピンク色の口内に、白濁混じりの舌が覗いた。
『もっとだ。舌ァ出せ』
 重ねてそう命令を受け、舌は外へ押し出される。
『はははっ、すげぇな! ベロが見えねぇじゃねえか!』
『ああ。ばっちりザーメンでコーティングされてやがる!』
 労働者連中が盛り上がる通り、桜織の赤い舌は白濁で覆われていた。
 俺もつい数日前までは、欲情に駆られて自慰に耽り、手の平一杯に射精していた。我ながらよく出した、という充足感があったものだ。だが今映像に映っている射精量は、その倍はあるだろう。まさに驚異的という他ない。
『くくっ……』
 存分に歓声を浴びた1人目の男は、笑顔のまま桜織の頭に手を置いた。
『よーし、そろそろ飲んでいいぞ』
 飲んでいい──そう言われたところで、年頃の少女には微塵の有難味もないだろう。あれほど濃くて精液など、即座に吐き出したいはずだ。
 それでも桜織は、迷いなく“飲み下す”準備を整えた。口を閉じ、喉を動かして。うっすらと開かれた瞳は、何かを悟った僧侶のようだ。昨日までの3人は、調教師の圧に屈したり、心を折られて渋々従わされている形だった。だが、桜織は違う。覚悟や責任感を胸に抱いて、自分の意思で従う事を決めている……そんな風に見える。
『ん、ぐっ……!!』
 桜織の喉が鳴る。相当に苦しいらしく、薄く開いた瞼が震えている。それでも彼女は、気合いであの量を飲み下した。
『へへ、マジで“ゴックン”しやがった!』
『ヤベェ、そそるぜ。こんな真面目そうな娘がよぉ!!』
 清楚な女子生徒の精飲を前に、男達が目を細める。そしてその中の一人が、堪らないという様子で歩み出た。
『今度は俺だ。休んでる暇ァねぇぞ!』
 そう叫びながら、桜織の口をこじ開けて怒張を咥えさせる。
『んぐっ、ん……』
 桜織は目頭を歪めながらも、大きな抵抗はせずに逸物を迎え入れていた。

 二人目は、さっきの男とは対照的だ。日焼けとは縁遠い男。肌が白いだけに、足に生えた毛や体の汚れ具合がよく目立つ。そんな男が、髪の毛一本の乱れすらないキッチリとした女学生に奉仕させる様は、いかにも犯罪的だった。
 しかも奴は、滾る欲望を抑えきれないという風で、根元まで逸物を咥えこませる。
『おお゛え゛っ! ゥん……ぶふっ、ごぶっ!!』
 喉へ強引に突っ込まれれば、さすがの桜織もえずき、噎せる。膝をパタパタと上下させているところを見ると、かなり苦しそうだ。
『おい、あんまムチャして吐かすんじゃねぇぞ!』
『おお。飲ませたザーメンの量で棒引き額が変わるんだ。そいつが吐いたらオジャンだぜ?』
『解ってる、でもコイツ下手でよぉ。ちっとはノドでも扱かねえと』
『んだよ。射精力が弱ぇんじゃねぇか、オッサン』
『バカヤロー、長く溜めすぎただけだ!』
 他の連中と言い争った末に、色白男は責め方を変えた。喉奥まで入れない代わりに、手で桜織の頬を掴み、凹ませた口で扱くようなやり方だ。
『んぐっ、んんんっ!!』
 桜織が苦しそうに呻いても、色白男は腰の動きを止めない。
『はあっ、はあっ、はあっ…………』
 長いストロークで快感を貪りながら、激しく喘ぐ。射精間近な時の呼吸だ。さっきの男もそうだが、女日照りというだけあって、射精までの時間は短い。
『ううう……よし、よぉし来た!!いくぞおぉっ!!』
 男はそう言って、逸物を深々と咥えさせたまま腰を止めた。
『んんっ!!』
 桜織からまた呻きが上がる。色白男に掴まれた頬が蠢くのは、苦痛のせいか。
 この2人目の男も、射精は長い。尻と太腿が引き締まっては緩み、また引き締まる。口内にどくどくと精を流し込んでいるのが見えるようだ。
『あああすげぇ。マジでどんどん出るな、一ヶ月ぶりのザーメン!! マジで、ションベンの管に焼けた針金入れられてるみてぇだ。気持ちいいの通り越して、しんどいレベルだぜ』
『だろ。やべぇほど出んだって!』
 男はやはり上ずった声で、1人目の男と感想を共有する。
『よし、そのまま鈴口を吸え。管に残ったザーメンを残らず吸い上げろ』
 ひと息ついた男から発せられるのは、新しい命令だ。頬から手を離したのは、口を自由に使えるようにするためらしい。そして桜織は、その命令に大人しく従っていた。
『ううっ、いいぞ。思いっきり射精した後の“掃除”は堪んねえな』
 色白男は満足げな笑みを浮かべ、桜織の口から逸物を抜く。奴の雰囲気は弛緩しきっているが、その周りを囲む男共は鼻息が荒い。
『っしゃあ、今度は俺だ!!』
 すぐに3人目が、桜織の口に逸物を押し付ける。
『こっちもだ、手でいいからよ!!』
 別の男も、桜織の手を取って自分の物を握らせる。小柄な桜織は手も小さく、平凡なサイズの逸物でも握るのがやっとだ。そんな彼女の手が必死に逸物を扱く様は、妙に背徳的だった。
『んぐうっ!!』
『おっほ、たまんねぇ!!』
『ほら。しゃぶるばっかじゃなくて、こっちも扱けや!』
『手も口も休ませんな。さっさと抜いて、俺らの相手もしてくれよ!』
 桜織の左右で男2人が喚く。その背後でも、別の何人かが逸物を自分で扱いている。まさに多対一の状況。そしてここからは、常にその状況が続くことになる。

 映像を見ているだけの俺でも、しんどくなってくる。それほどの画が続いた。
 桜織には、本当に休む間がない。
 ある時は、右を向いたまま男の逸物を握りしめ、窄めた口で亀頭を刺激しつづける。もちろん、左手で別の男の逸物を扱きながら。
『くあああ、出るぞっ!!』
 不慣れな奉仕でも、元々限界近い相手はすぐに果てる。そこまではいい。だが一度射精が始まれば、そこから10秒近くは口の中に出されつづける。どくどくと、信じられないような量を。飲みきれずに口の端から零れる分だけでも、普通の男の射精量と変わらない。
 奉仕からそのまま続く長い射精と、相当な気合いが必要な精飲。
『ぷはっ、はっ、はあっ、はぁっ……』
 逸物から口を離した時点で、桜織の息は上がっている。だが、休めない。
『今度はこっち頼むぜぇ、お嬢ちゃん!』
 そう言って今度は左を向かされ、同じ行為を強いられる。今度はさっきより太さのある逸物だ。男共は気が逸るあまり、最初は深く咥えこませる事が多い。
『んぐぅおえ゛っ!!』
 桜織はえずき上げながら、端整な顔を歪ませる。口を縦に開かされるせいで、頬のラインがひどい。そのまま何度も口内を凌辱され、ようやく男が我に返って桜織の頭から手を離す。奉仕の始めは、常にそんな具合だ。そこからはまたさっきのように、指と口で絶頂に導きながら、もう片手で逆サイドの男に奉仕する……という流れになる。
 右の男が射精すれば、次は左。それが終われば右に戻り、また左。それが繰り返される。これはきつい。ろくに息継ぎをせず運動を続けているわけだから、桜織の顔はどんどん赤くなっていく。深く咥えさせられる時、射精されている時の眉根の寄り具合も相当だ。
 でも、これはまだ“マシ”な部類だったんだ。

『あー、もう辛抱堪んねぇよ!俺にも早くやらせてくれ!!』
『そんなペースじゃこの人数回んねぇって。一気に3本やれ、3本!!』
 奉仕開始から小一時間が経った頃。後ろで順番待ちをしている連中が、とうとう不満を噴出させる。そしてその直後から、桜織は両手を掴み上げられ、左右の手で一本ずつ逸物を扱くよう強いられる。当然、正面の一人に口で奉仕しつつだ。
 この変化は大きい。両サイドを手で扱きながらとなれば、当然口での奉仕は疎かになる。そうなれば、男は焦れて自分本位に桜織の口を使う。
『もっと気ィいれてしゃぶれよ!!』
 そんな事を喚きながら、強引に。これだけでも充分に苦しいのは、桜織の“顔”を見れば解る。極太を咥えこまされる時には、頬の横に線が浮く。長さがある物の場合は、喉奥へ入れられない関係から頬を突かれる形になるが、そういう時の顔の崩れ具合は悲惨だった。
 だがそれ以上に問題なのが、射精のタイミングだ。さっきまでは左右どちらかの一本を射精させ、それが終われば逆サイド……と、射精するのはあくまで一本ずつだった。だが、男共が遠慮しなくなった今は違う。正面と左右の男、3人全員が射精を待ち焦がれている。となれば当然、口内発射の機会は奪い合いだ。
『うおおおっ、すげぇ、出るわ出るわ……!!』
『くっ、こっちもだ。出すぞっ!!』
 一人が口内に射精している最中、手で扱かせていた奴が叫び、桜織の三つ編みを掴む。
『あ、おい待て馬鹿っ!まだ俺が射精してる最中だろうが!!』
 射精中の男が怒鳴り、桜織の口からこぼれた精液が、制服のスカートに白抜きを作る。そんな場面が何度もあった。桜織からすれば、立て続けに精液を飲まされまくるわけだから、いよいよ堪らない。
 だが、この時点でもようやく50人のうち約半分の処理が終わっただけだ。残りの20人あまりは相変わらず眼を血走らせ、勃起した逸物を握りしめている。そしてそんな連中が、順番を譲り合うはずもない。
『どけよ。俺が先だ!』
『ふざけんな、次ぁ俺だ!!』
 次に奉仕させる順番を巡って、桜織の前で諍いを始める奴も出てくる。
『おいおい、モメてる場合かよ。制限時間があるって言ったろ? 借金がいくら減るかは、オメェらクズのチームワーク次第だぜ』
 ここで撮影者が、煽り交じりに声を掛けた。
『あ!?』
 睨み合う2人の視線が、鋭いままカメラの方を向き、一秒後、慌てて逸らされる。どうやらカメラを構える男は、相当な強面らしい。
『そうだ、そうやって大人しくしてりゃあいい。どっちが先か決まらねぇなら、ジャンケンでもしろや。まあオメェら程度の粗チンなら、二本纏めて咥えさせてちょうどいいかもしれねぇがな!』
 奴が続けて吐いた言葉は、とんでもないものだった。さっきと同じく挑発を交えつつ、ハードな責めを提示する。頭と下半身に血が集まっている男なら、乗らないわけがない……そう考えてのことだろう。
 そして男2人は、まんまとその策に嵌まる。
『2本挿し……か。なるほどねぇ』
『悪くねぇなあ、それも』
 連中は2人して顔を見合わせ、表情を変えた。口角が上がるだけで怒りの表情が笑顔になるんだから、不思議なものだ。
『ってなわけでよ、クチ開けや嬢ちゃん』
 その言葉を聞き、桜織は大人しく従う。しかし昭和の女というイメージ通り、大口を開くことに慣れていない様子だ。
『ヘッ、お上品なこったぜ』
『ああ、だがそこが堪んねぇ。貞淑ってやつかね。華奢なガキだが、未亡人犯してる気がすんぜ』
 男2人は口元を吊り上げながら、開いた桜織の口に逸物を捻じ込んでいく。
『んん゛、えあ゛……!!』
 桜織の口が一瞬にして大きく開き、頬の肉が歪む。ヤクザ男は“粗チン”と蔑んでいたが、連中の逸物は充分に人並みのサイズだ。それを二本咥え込めば、顔の形だって変わる。たとえアイドルか人形かという美貌の持ち主でも。
『おーっ、圧迫感がすげえな』
『野郎のチンコと触れ合ってんのは気色悪いが、征服感がハンパねぇ。嬢ちゃんの顔も見物だしな、こりゃなかなか興奮すんぜ!』
 男2人はそんな事を言いながら、尻を前後させる。
『え゛あっ、あ゛…はごっお゛っ!!』
 眉をハの字に下げながら、濁った声を漏らす桜織。彼女の声は本来綺麗なんだが、さすがに異物で口を満たされ、蹂躙される状態では美声にはならない。そんな桜織を前に、男共は嗜虐心を煽られたらしい。
『よう、手がお留守だぜ。口だけじゃ追っつかねぇだろ』
 そう言って、苦戦する桜織の両手を奉仕に回させる。
『んん゛……!!』
 桜織の眉がますます下がり、内心の困惑ぶりを露わにする。口も歪にへし曲がっていて、清楚とは縁遠い顔のはずだ。
 それでも、彼女の瞳は静かだった。憂いを帯びた様子で下を向いてはいるものの、狂乱している風じゃない。その目の綺麗さだけで、彼女の清楚さは十分に保たれている。穢されてもなお鋭さを保っていた、藤花の眼のように。

 ただ、この時点で桜織の胃は、かなりの精液で満たされてたんだろう。
『おらっ、出すぞ!』
『こっちもだ、零すんじゃねぇぞ!!』
 口に捻じ込んでいる2人が叫び、開いた口内に精液を浴びせかける。
『ぶあっ、あはっ!!』
 喉の奥に精液を浴び、咳き込む桜織。彼女は苦しさで逸物を握りしめたらしく、手で奉仕させていた二人も限界を迎える。
『うあっ、堪んねえ……もう出るぞ!!』
『こっちもだ、ぎゅーっとやられるとガマンできねぇ!!』
 震える声でそう言いながら、二本の逸物を引き抜かれたばかりの口内に逸物を捻じ込む。射精は、亀頭が唇の内へ入り込むのとほぼ同時だ。桜織からすれば、ほぼ同時に4回口内射精されたに等しい。真面目で誠実な彼女は、それでも飲み下そうとしていた。かなりの量を下唇から零しつつも、ゴクゴクと喉を鳴らして嚥下していく。だが、その最中に限界が訪れた。
『う、うぶっ……ん゛!!』
 桜織の瞳が見開かれ、顎が浮く。誰が見ても明らかな、嘔吐の前兆だ。
『おい、吐くなっ!!』
『吐くんじゃねぇぞ、オイッ!!』
 事情を察した何人かが怒声を上げるが、すでに遅い。震える桜織の手が、口から二本の逸物を引き抜く。整った顔が下を向く。
『うえ゛っ……おえ゛ええ゛え゛ぇ゛っ!!!』
 凄まじい声が響き渡った。口からあふれる精液の量も凄い。そして極めつけに、それがダンボールへ落ちていく音もひどい。バダバダという、トタン板に水を掛けた時のような音。
『て、テメェッ! せっかく俺らが飲ませたザーメンを!!』
 当然、男共は眉を吊り上げる。
『す、すみません……』
『すみませんで済むかよ、勿体ねぇ!』
『そうだ、床に吐いたモン啜れ!』
 桜織が謝っても、男共は許さない。三つ編みを引っ張って桜織の頭を下げ、ダンボールに口を付けさせる。桜織は、それでも言うままに従っていた。ずっ、ずずっ、と音をさせ、ダンボールの上の精液を啜っていく。最終的には従うしかない状況でも、普通はもっと躊躇するはずだ。だが、桜織の決断は早い。何が彼女をそこまでさせるんだろう。
『くくっ、お前らも鬼畜だな。秀才女子高生にここまでさせるなんてよ』
 ヤクザ男の笑い声が聴こえる。奴の構えるカメラは、ダンボールを舐める桜織の姿を無慈悲に映し出していた。痛ましい姿だ。だが外道にとっては、さぞ扇情的な光景だろう。カメラの端に映る男達の足が、落ち着きなく動く。
『なあ、そろそろいいんじゃねぇか?』
『そうだぜ。もう半分は啜らせたんだしよ。後はこっから、吐いた分以上に呑ませりゃいい』
『だな。どうせまだまだ出るんだ、早く続きやろうぜ!!』
 そんな声が沸き起こり、また桜織の三つ編みが引っ張られる。
『うう゛!!』
 桜織から呻き声が漏れた。
 この動画で、桜織の艶やかな黒髪が掴まれたのは何度目だろう。最初は毛の一本の乱れすらなかったというのに、今は至る所の毛が跳ね、寝癖のようになっている。改めて見れば、顔の汚れもひどい。目元といい鼻といい口周りといい、かなりの部分が精液塗れだ。元が清楚なだけに、そういう乱れや汚れが余計に惨たらしく見えた。
『へへ、イイ顔んなってやがる。じゃ、ラウンド2と行くか』
『ああ。上手い具合に、さっきのでちょうど1巡したとこだしよ』
 醜い桜織の姿を見て、男共が笑う。どうやら全員が一度は射精したようだが、奴らの下半身にぶら下がる逸物は、まだまだ張りを残していた。一ヶ月の禁欲のせいか、それとも部屋に充満するガスのせいか。

 2巡目に入っても、男共の獣ぶりは相変わらずだった。最初のように順番を巡って衝突することはない。とはいえ、快楽を貪ろうという姿勢は相変わらずだ。桜織は、その50人分の性欲を、口と手で処理しつづけるしかない。
『んぶっ、ん゛っ!!ふううんぐっ……!!』
 苦しげな呻きを漏らしつづけた果てに、大量の精をどくどくと口内に流し込まれる。それが何人分続いただろう。
『ん……おぐっ!! んぶっ、ぶふっ!!』
 桜織が激しく咳き込んだ。背中ごと前後に揺らすような咳だ。
『ははっ! 見ろよコイツ、鼻からザーメン出してるぜ!!』
 一人が嘲笑う通り、桜織の小さな鼻からは、白い液が垂れている。それは、彼女の余裕のなさをよく表していた。
『はぁっ、はぁっ……!!』
 なんとか咳が収まってからも、桜織の呼吸は荒い。思わず吐き戻すほどの状態から、さらに大量の精液を呑まされつづけてるんだ。普通なら「もう精液は飲めない」と音を上げてもおかしくない。そう口にしないだけでも、芯の強さが判るというものだ。
 ただ……それでも人間である以上、抑え切れない反応はある。頭を殴られた時に手で押さえたり、膝を蹴られて蹲ったり。そういう、身体が反射的に起こす行動を、意思の力で抑えきるのは難しい。
 映像開始から1時間が経とうという頃、桜織が示すようになった拒絶反応は、多分そういう類のものだろう。
『ぶぐっ、ぶはっ!! はぁっ、はぁっ……ごはっ!!』
 口の中に射精されるたび、桜織は激しく咳き込む。もはや上半身を前傾させるだけでなく、身体全体を仰け反らせている。おそらくは彼女の本能が、無意識に逃げるよう指示してるんだろう。だが、それを男共が良しとするはずもない。
『おら、フラフラすんなよ!!』
『誰か首押さえとけッ!!』
 怒号が飛び交い、その末に桜織は拘束される。この拘束の仕方というのが、また酷い。曲げた腕で桜織の首を挟みこみ、チョークスリーパーのように固定する。その状態で咥え込ませるんだ。
 反射行動を強引に抑え込まれれば、桜織もじっとはしていられない。
『かはっ、あはっ!!げはっ、がああっ!!』
 掠れたような呻きを漏らしながら、首にかかった手を掴む。膝立ちから崩れた体育座りになり、足をばたつかせる。
『へへ、暴れてる暴れてる。まるで拷問だな』
『おーっ、白パンとは流石だねぇ! シャバにいた頃は毎日JKのパンツ覗いてたもんだが、都会で白を穿く子はほとんどいないんだよな』
 桜織の前に並ぶ男共は、下卑た笑いを浮かべながら、容赦なくしゃぶらせつづける。極太で縦に大口を開かせたり、長い物で頬肉を犯したり、二本同時に咥えさせたり。そして全員が全員、きっちりと口内に精を放った。
『う゛っ、ううう゛え゛っ!!げほっ、おお゛え゛っ!!!』
 桜織は激しく咳き込み、何度も吐きかける。だが今度は、男共がそれを許さない。
『おい、吐くんじゃねぇ! お前の胃に溜まったザーメンで、俺らの借金が減るんだ。何遍もゲロったら承知しねぇぞ!!』
 そう恫喝しながら、日焼けした手で桜織の口を覆う。そのまま天井を仰ぐように顔を上げさせられれば、桜織は震えながら嘔吐の波を乗り切り、喉を鳴らして精液を飲み下すしかない。
『おーっし、飲んだな。んじゃ今度はアッチやってやれ』
 桜織が精液を飲んだことを確認すると、すぐに責めが再開される。こんな状態がずっと続いていた。

 俺は、ここでディスプレイに触れ、早送りを選択した。丸ごと責めを見るのが、精神的に辛くなってきたからだ。だが、ある映像が気になって停止ボタンを押す。
 3段腹の巨漢相手に、肉へ顔を埋めるようにして奉仕する桜織。その後ろに一人の男が屈み込み、腹の辺りを撫でている。あれは、何をしているんだ。俺はそう気になり、再生ボタンをタッチする。
『ん、んぐゥ……んぐっ、ぐっ…………!!』
 巨漢の毛むくじゃらの太腿に手を宛がったまま、桜織が呻いている。どうやら精液を飲まされている最中らしい。巨漢はそんな桜織の頭に掌を乗せ、ぼーっと突っ立ったまま、小便でもするように喉奥射精を続けているようだった。
 ただそれだけなら、見飽きるほど見てきた光景だ。問題は、桜織の背後から抱きつくようにして、胃の辺りを押さえている男だった。
『おーっ、張ってる張ってる。だいぶ溜まってきたな』
 奴は、そう口にした。内容自体は解りきったことだ。これだけ長い時間、50人が精液を飲ませ続けているんだから。だが、改めて胃に触れた上でそう言葉に出されると、胸にくるものがある。当事者の桜織となれば尚更だろう。
『へへ、もうどんぐらい溜まってんだろうな。リットルは超えてんべ?』
『さすがに余裕だろ。こんだけ飲ませまくってんだから』
『どうかね。1リットルって結構多いぜ?』
『まぁどっちにしろ、1滴でも多く飲ませようぜ!!』
 小汚い男共は、自分達の成果に満足しつつ気合を入れなおす。

 そこから、さらに数十分。
『お、ごおっ……ほおぉっ、お゛ーっ…………!!』
 桜織の呻きには、常に嘔吐を思わせる重苦しさが混じるようになっていた。その声は長く続く。そろそろ3巡目、どいつもこいつもそうそう射精しなくなってきているからだ。ただしガスの影響か、勃起力だけは衰えている様子がない。つまり桜織は、硬いままの逸物をずっと咥えさせられていることになる。その結果、どうなるか。決まっている。
『おいおい、やる気出してしゃぶれや嬢ちゃん。顎に力入ってねーぞ』
 口を使っている一人が不満を漏らす。奴は舌打ちしながら、桜織の口から逸物を引き抜いた。そして、桜織の後頭部へと手を伸ばす。狙いは、三つ編みだ。
『あっ!』
 小さな悲鳴が上がる。それもそのはずだ。男は三つ編みを引っ張りながら、逸物に巻きつけるようにして扱いていた。
『お、髪コキか?』
『ああ、さすが名門校に通うお嬢様の髪だ。ちっと汗で湿ってるが、サラサラしてやがる。極上のタオルでシコってる感じでよ、悪くねぇぜこりゃ……!!』
 奴はそう言って、“女の命”に精液と唾液を塗りこめてから、逸物を解放する。今度は桜織の髪ではなく、口の中を穢すために。
『げふっ、ぇは……ヵはっ……はっ、はっ、はっ……!』
 桜織は喉奥で精液を受け止めた。精液の絡む舌を口外に晒し、犬のような呼吸を繰り返しながら。
 顔は赤く、汗もひどい。風邪でも引いているようだ。だがその顔は、妙に色っぽくもあった。目元がしっかりと意思を残しているせいだろうか。
『ソソる面だな。ガキのくせして、いっちょ前に発情してやがんのか?』
『こんだけのオス臭に当てられて、特濃のザーメンも味わってんだ。そりゃヘンな気分にもなるよなぁ』
『ありえるな。今ドキの女子高生は、どいつもこいつも援交しまくるぐらいスケベだからよう』
 男共は不愉快な声色で、不愉快な内容を口走る。仮に桜織が発情しているにしても、それは部屋に充満しつつあるガスのせいだろう。あるいは連中もそれを承知の上で、桜織を煽っているのかもしれないが。
『さて。次の奴と行きてぇところだが、そろそろこいつもバテてきてっからな。しゃぶらせてっと回転率が悪すぎんぜ?』
『確かに。今のなんて3分ぐらい掛かってたしな。こうなりゃ、テメェで扱いてクチん中に射精してく方がよさそうだ』
『おう、異議なし!』
 日本語を話せる連中がジェスチャーを交えて話し合い、中国人らしい連中や東南アジア顔も頷く。
『うっし、決まり! んじゃ飲ませてくか!!』
 その掛け声を合図に、男共が一斉に逸物を扱きはじめる。
『おおっ、まだまだ出るもんだな……。いくぞ、いくぞおっ!!』
『たっぷり出してやっからな。舌ァ出して全部飲めよ!!』
 そんな言葉と共に、精液が桜織の舌へと浴びせかけられる。最初に比べれば薄く、水分も多いが、しっかりと白い精液だ。勢いもかなりのもので、口だけでなく鼻や頬、額にまで粘液が飛び散っている。
『ぇあ゛、あ゛……ん゛っぶ! れぉお……ほあっ、お……』
 桜織は舌を出したまま小刻みに震えていた。その舌はたちまち白濁に覆われて見えなくなる。
『よし、第一弾はこんなもんだな。飲んでいいぞ』
 射精し終えた男の一人が、ひと息つきながら許可を出す。有難味の欠片もない許可……というより、もはや命令だ。それを受けて桜織は、覚悟を決めたように口を閉じる。
 そして、白い喉が蠢いた。ぐごり、という音がする。状況からして飲み下す音なんだろうが、とてもそうとは信じられない。
『はっ、すげぇ音だな。一発目より粘りが少ねぇから、喉越しがいいだろ? まだまだ弾はあるんだ、ガンガン飲ませてやっからな』
 どこからか聴こえたその言葉通り、男共が入れ替わる。第一陣の5人が離れ、今度は6人が桜織を囲む。

 荒い呼吸と、呻き声。「吐くな」という怒声と、手足のばたつく音。それが延々と続く。
 桜織が限界を迎えて身を捩るたびに、拘束が増えていった。両腕を万歳の格好で掴み上げ、顎を手で包み込むように固定し、舌先を指で引っ張り出す。そうしてスペースの空いた口内に、連続で精液が浴びせかけられる。
 右から左から、顎の方から、鼻の上から。顔と制服を白く汚しながら、精液が流し込まれる。刻一刻と薄まる精液が、小さな口を満たしていく。
『おーすげぇ、口ン中が完全に精液のプールだよ』
 誰かが漏らしたこの言葉通り。まるでドロドロとした白い沼の中に、舌の先だけが浮いている感じだ。
 それらの苦痛で、桜織の顔には溝や皺が生まれていた。そうなると、和人形を思わせる桜織でも、彫りの深い西洋人顔に見えてくる。顔中に白いパックをしているような状態でもあるため、桜織に近しい友人にこの場面を見せても、彼女だと気付けるかは怪しいところだ。
『残り10分だ。早く自由の身になりたきゃ、タマぁ空っぽにするつもりで出し尽くせよ!!』
 ヤクザ男が声を響かせる。
『くそ、もう時間がねぇっ!』
『こうなりゃラストスパートだ! まだ出せる奴は最前列来い、3人でやんぞ!!』
 男共は、とうとう3本の逸物を桜織の口へと突っ込みはじめる。
『んごっ、がっ!? あごっ、ごも゛お゛っ!!もぉい゛えあ゛っ!!』
 当然、桜織の反応は激しい。だが男共は動きを止めない。
『3人同時だと、さすがに腰動かしづれーな!』
『ま、こんだけ勃起してりゃ唇に擦れるだけでイケんだろ』
『だな。俺らと他の奴らじゃ精力が違ぇ。やっぱ男らしさ保つにゃ、嫁やフーゾクよりレイプだぜ!』
 物騒な台詞を吐きながら、3人は桜織を蹂躙し続ける。
『ごぶっ、ごぼっ……ごお゛う゛ええ゛っ!!もごおおお゛お゛っっ!!!』
 凄まじい声が漏れているが、まさか3人同時に射精されているんだろうか。男共の尻に隠れて、口元は全く見えない。だがスカートがめくれることも気にせずに暴れ回る足は、普通ではない苦しみを訴えている。
 白い内腿は濡れていた。あれは精液か、唾液か、それとも……。

『そこまでだ!』
 カメラ近くから大声が響く。虎が吼えるようなその雄叫びに、桜織を取り囲んでいた連中が肩を竦める。
『そのままじっとしてろ』
 その言葉の後、カメラの映す先が変わった。少し離れた場所の白バケツを捉え、次の瞬間、画面左側から刺青の入った腕が映り込む。おそらく撮影者のものだろう。多少タトゥーの入ったチンピラなら今までにもいたが、こっちはカメラに映る部分……肘の上から手首までが、びっしりと和彫りで覆われている。どう見ても堅気の腕じゃない。
『さて。お楽しみの計測タイムだぜ』
 撮影者はそう言って、桜織のすぐ前にバケツを置く。白くコーティングされたバケツの内側には、赤線で目盛りが刻んであるようだ。最大2リットルまで測れ、真ん中の1リットルラインにはやや長めの赤線が、それ以外は100ミリリットル刻みで短い赤線が引かれている。
『ノドに指突っ込んで、胃の中のモンここに吐け』
 太い指がバケツの縁をゴンゴンと叩き、次にカメラは桜織の方を向く。桜織の周りから、潮が引くようにさっと男達が離れる。
『……わかり、ました』
 桜織はここでも逆らわず、熱っぽい顔でバケツを覗き込む。そして命じられたまま、開いた口の中に指を突っ込んだ。
『う、うお゛……ふんん゛うむ゛ぉおお゛ええ゛え゛え゛っっ!!!!』
 女の出すものとは思えないような、えずき声。俺は今さら驚かない。天使のような千代里も、凛とした雰囲気の藤花も、吐くときにはこんな声になっていたから。どれほど気高い存在でも、追い込まれる時にはこういう声も出ると知っているから。
 だが、画面内の男共は爆笑する。口々に何かを呟きながら、腹を抱えて。とはいえ、連中の視線はしっかりとバケツの中に注がれていた。桜織の喉から次々とあふれ出す白濁が、バケツへと溜まっていく。
『うへ、すげぇ量だな。改めて見ると』
『あれ全部、俺らのザーメンなんだよな……』
『くっせぇ! チーズみてぇだ』
 色々な反応がある中で、桜織の口からの逆流がとうとう止まる。波打つ液面が静まったラインは……600ミリリットル。
『は、はぁっ!? たったの600ミリ!?』
『おいおいおいウソだろ、1リットルもいかねえのかよ!?』
『ざけんな!! もっと出せや、胃の中のモン全部よぉ!!』
 まさに、阿鼻叫喚。何人もの男が眼を剥き、桜織の腹や胃を圧迫しはじめる。
『んぐっ、お゛……お゛え、え゛ぁお゛っ!!』
 桜織の喉元が蠢き、逆流が再開する。だが、それはほんの数秒のこと。いくらか追加で白濁が注がれたとはいえ、せいぜい650ミリリットルというところだ。
『ほう、なかなかのモンじゃねぇか。男の射精量ってなぁ、平均3.5ミリリットルっつうからな。その180倍以上……一人頭で軽く3倍は行ってるわけだ』
 撮影者の男が白々しく賞賛する。奴は知ってたんだろう。いかに1ヶ月溜め込んだ男が50人いるとはいえ、大した量にならないことを。だからこそリットル100万なんて気前のいい約束をしたんだ。
『マジかよ……あんだけ必死こいて、60万ぽっちか?』
『クソッ、雀の涙もいいとこだぜ!』
 タコ部屋の連中は当てが外れたらしく、床を叩きながら嘆く。60万で雀の涙ということは、奴の借金は一千万ぐらいはあるということか。
 カメラは、その絶望ぶりをゆっくりと回し映していた。そうしてしばらく絶望を愉しんでから、撮影者が立ち上がる。

『なんだオメェら、借金背負った時みてぇにしょぼくれやがって。思ったより少ねぇとはいえ、減額されるんだぜ?』
 そう声を掛けても、顔を上げる男共の目は死んだままだ。それを前に、撮影者は芝居がかった溜め息を吐く。
『……ったく、しょうがねぇな。なら、次のチャンスをやるよ』
 その一言で、男達の目が大きさを増した。逆に桜織の顔は強張る。彼女だけは、この後に起きることを知っているようだ。
『ちゃ、チャンスって……?』
『一体、何すりゃいいんです!?』
 前のめりになって尋ねる男達に、撮影者が苦笑する。
『なに、簡単だ。媚薬ガスをたらふく吸って発情してるそこのガキを、ただイカせまくりゃあいい。一回イカせるごとに5,000円やる。そんなら覇気も出んだろうが』
 その言葉に、男達が一瞬凍りついた。そして、その次の瞬間、歓喜に沸く。
『い、一回5千円!?』
『ま、待てよ。んじゃ10回で5万、20回で……えーっと、10万!?』
『す、すげぇ……!! あ、あの、電マとかも使ってもいいんスか!?』
『オウ。電マだろうがコスプレ衣装だろうが、希望がありゃ用意してやる』
『おおおっしゃ、だったらガンガン減らせっぞ、借金!!』
 男共は興奮を隠せない様子だった。確かに1回イカせれば5千円というのは破格だ。そんな割のいいバイトはどこを探したって有り得ない。借金漬けで悩んでいる人間が、そのチャンスに飛びつかないわけもない。
『そ、それ、いつからっスか!? 今!?』
 一人が逸物を揉みながら尋ねる。セックスでイカせるつもりなんだろう。
『いいや、明日スタートだ。だが、軽く予行演習といくか。試してぇモンもあるしな』
 撮影者がそう言って、一旦カメラを床に置く。一分ほどゴソゴソと物音がし、再びカメラが抱え上げられた時、映像には何かの道具が映り込んでいた。幅広のカチューシャという感じの代物。
『何スか、それ?』
 訝しむ声の中、撮影者は桜織に歩み寄り、その頭にカチューシャ状の道具を嵌めはじめた。慎重に位置を調整し、両端のクリップ部分で耳輪を挟んで固定する。
『こいつは脳波を計る機械でよ。女の絶頂時に記録されやすい脳波と、着けた人間の脳波が一致した時……平たく言やぁ、“この女がイクたびに”音が鳴るようになってんだ』
 そう説明されても、労働者連中の大半は呆けた顔だ。その様子に、撮影者が苦笑する。
『ま、口で説明するより実演した方がいいだろ。お前ら、いっぺんこの女イカせてみろ』
 その言葉で、男共に笑みが戻った。待っていたと言わんばかりだ。
『へへへ……んじゃ、遠慮なく』
 桜織の傍にいた数人が、さっそく桜織に触れる。ブレザーのボタンを外して前をはだけさせ、白ブラウス越しに胸を掴み。スカートをたくし上げ。
『おおお……』
『へへへ、すげぇ……』
 内腿が露出した瞬間、何人かが溜め息を漏らした。幼児体系でありながら、思ったよりも肉感的な内腿……そこが、うっすらと濡れていたからだ。男の一人がその水分を指で掬い、嗅いでみせる。
『ふむ……匂わねぇってことは、ションベンじゃねぇな。マン汁だぜこりゃ!』
『くくっ。ガキみてぇな身体して、しっかり濡れてやがるってか!?』
『俺らのオス臭をたっぷり嗅がされて興奮したのかよ、やらしいなぁ嬢ちゃん!』
 男共は下卑た笑いと共に、桜織を淫乱と謗る。単純な言葉責めだが、清廉潔白な少女には充分に効果的だ。
『…………っ!』
 桜織は、唇を噛みしめていた。視線を斜め下の床に落とし、頬を赤らめ。その表情は妙に色っぽい。映像開始から2時間あまり。部屋に充満するガスは彼女の肺を満たし、存分に効果を発揮しているようだ。
 そんな桜織を取り囲む男共は、息を荒げながらブラウスのボタンを外していく。細い胴を包む布がはらりと左右に別れ、桜色の肌が露わになる。その肌を覆うのは、上下とも白で揃えられたシルクの下着。お嬢様学校に通う生徒の規範、という感じだ。その規範を、すぐさま浅黒い手が覆い尽くす。
 女に飢えた男共に、遠慮などなかった。
『ち、乳だ、女の乳だっ!!』
『うへへへ、尻も柔らけえ!!!』
『おいおいおい、もうグチョグチョじゃねぇかよ、ええ!?』
 小ぶりなブラジャーを押し上げ、なまの乳房を掌に収める。ショーツにも二本の手が入り込んで、後ろからは尻肉を鷲掴みにし、前からは割れ目へと指を差し入れる。
『あっ……!!』
 桜織は眼を見開くが、抵抗はできない。彼女の小さな手は、頭の上で掴み上げられたからだ。
 浅黒い手が蠢き、白い下着に皺が寄る。
『はっ、はっ、はっ、はっ……』
 桜織の口から喘ぎが漏れる。ぐちゅぐちゅという水音が響き渡る。
『は、んん……ん、んっ!!』
 切ない呻きと共に、桜織が眉根を寄せた、その直後。

  ────リン

 鈴の音が響く。正確には、鈴の音を模した電子音だろう。
『よし、鳴ったな。頭がボヤけてても聴こえそうだろ? お前が一度イクたびに、この音が鳴るんだ』
 撮影している男が、達したばかりの桜織に告げる。
『……!』
 桜織の顔に、かすかな険しさが混じった。
『ちなみにイッた回数は、モニターに表示される仕掛けだ。フロア中にあっから、当然この部屋にも……っと、こっち向きじゃ映らねえな』
 その言葉の後、カメラが移動する。責められる桜織を捉えたまま、90度回転する動きだ。おかげで、今までとは違う壁面が映像内に映り込む。
 壁面には、確かにモニターが嵌め込まれていた。液晶画面には『1』の数字が2つ表示されている。1つは画面中央、1つは画面右側……Totalという表示の下だ。どうやらモニター内で、現在のカウントと総カウント数が管理されているらしい。
『なるほど。今このガキが一遍イったから、カウント1って訳ですかい』
『そういうこった。カウントが1000や2000の大台に乗ったのを見た女が、トロけ顔から現実に引き戻される瞬間は笑えるぜ?』
『はははっ、そりゃぜひ見てみてぇな!』
『ああ。このお嬢ちゃんは潔癖っぽいから、特にいい反応してくれそうだ!』
 撮影者の面白そうな声色に、労働者連中もつられて笑う。だが同時に奴らは、野望に満ちた視線をモニターに向けてもいた。奴らにとってあのカウントは、桜織を絶頂させた実績であると同時に、借金がいくら棒引きされるかの指標でもある。しかもその額、1カウントあたり5000円。多額の借金で地に繋がれている人間なら、眼を血走らせて当然だ。

 実際、あくまで予行演習と言われている今ですら、連中には熱が入りはじめていた。
『ほら、マンコ拝もうぜ!』
『いひひ、だな!!』
 下卑た笑みと共に、純白のショーツが太腿の半ばまでずり下げられる。
『くっ……!!』
 唇を噛む桜織。その顔と同じく、下から舐めるように撮影された性器も清楚そのものだ。ピンク色の一本筋。毛はほとんど生えていない。
『いいねえいいねえ、初物って感じだぜ!!』
『あああ堪んねぇなあ! こんな上品なオマンコが、明日っから俺ら共有の肉便器になんのかよ!?』
『くっそぉ……また勃ってきやがった。すぐにでもハメてぇぜ』
『ああ、だがそうもいかねぇ。せめて手マンでイカせまくってやろうぜ』
 気品に溢れる桜織とは対照的に、男共には品性の欠片もない。連中はショーツが横に伸びるまで桜織の足を開かせると、改めて割れ目の中に指を入れ、蠢かす。
『あ、ん……ん、んん……っ!!』
 桜織は口を噤み、喘ぎ声を漏らすまいとしていた。だが、リン、リン、と音が鳴り響き、モニターの数字が増えると、次第に息が荒くなっていく。
『へへへっ。思ったよりいいなぁこの音。イッたのが解って、責めるモチベーションが上がるぜ!』
『だよな。女ってなぁすぐイク演技するもんだが、機械が測ってくれるってんなら間違いねぇしよ!』
『もっともっとイカせてやろうぜ。せっかく丸解りなんだからよ!』
 男共は大喜びで乳房を揉み、割れ目の中で指を蠢かす。がっついている感はあるものの、どいつもそれなりに齢を重ねているだけあって、責め方は手馴れていた。迷いのない、ねっとりとした指遣いで、あらゆる性感帯を責めつづける。それを受けては、いかに初心な少女でも感じずにいられないんだろう。リン、リンと、また涼やかな音が響く。
『ん、くっ……!! はっ、はぁっ……はぁっ……!!』
 桜織が止めていた息を吐き出す。荒い息だ。額の汗もひどい。
『どうだ、立て続けにイクのはしんどいだろ。その責めが丸二週間、休みなく続くんだぜ?』
 撮影者の男が、桜織にそう呼びかけた。すると桜織は、表情を引き締めた。
『心配ありません』
 はっきりと言い切る言葉に、見開いた瞳。淑やかそうでいて、芯が強い。まさに大和撫子だ。
『なるほど、いい眼してやがる。ま、愚問だったか』
 撮影者はそう言って、嬉しそうにひと息挟んだ
『お前、呼び出されてどの責めを受けるか訊かれた時に、一番つらい責めを自分に割り当てろって言ったんだってな。クラスメイトを守るために、進んでぶっ壊されにいくってか。泣ける話じゃねぇか、ええ? 名門・蒼蘭女学院の委員長サマよ』
 この言葉を聴いて、ようやく桜織の我慢強さの理由が解った。責任感だ。委員長として級友を守る──その一念で、彼女は踏ん張っているんだ。まだ成人すらしていない少女だというのに、なんという気高さだろう。
 その気高さを前に、撮影者は言葉を重ねる。
『だがよ、本当に大丈夫か? 二週間休まずってなぁ、言葉で聞く以上にキツイみてぇでよ。もう10人近くがこの責めを受けてるが、ほぼ全員、途中で半狂乱になって逃げ出そうとしやがった。ちなみに逃げ出さなかった唯一の例外は、早々にイカレて逃げ出す判断すらできなかったってオチだ。毎度毎度ひっ捕まえて引きずり戻すのも面倒だからよ。テメェは手間かけさせんじゃねぇぞ?』
 そう語る声は淡々としていた。変に脅すでもなく、ただ事実を語っている感じだ。脅しにも色々あるが、こういう類の言葉が一番怖い。だが、桜織の顔色は変わらなかった。
『私は……壊れたりしません』
『はっ、最初は大体の奴がそう言うんだよ。お綺麗な澄まし顔でな。さっき言った、逃げ出す間もなく壊れた奴だってそうだった。あいつの場合、澄ましてるどころか、「自分がこの責めを耐えたら、その時は覚えてろ」なんて啖呵まで切りやがってな。あの態度にゃ、ちぃとムカついたんでよ。ガスを吸わせつつ、若くてガツガツした連中を10人ばかし宛がったら、二日後の朝にゃ狂ってた。ちなみにそん時の絶頂カウントは、たったの670回程度だったぜ。カウントなんざアテにならねぇもんだろ?』
 男はそう言って桜織の目元を引き攣らせた後、何かのジェスチャーで他のオス共を煽った。それを合図に、男共は呪縛が解けたように動き出す。
『……おおっし、続けっか!』
『おう。ついでに提案なんだが、もっと見えやすいように“ションベンスタイル”でやんのはどうよ?』
『はははっ、いいねぇ。こいつなら、持ち上げんのも簡単だしな!』
 男共は叫びあった末に、桜織の足を抱え上げる。膝裏を掴んで宙に浮かせ、アソコを正面に晒す格好……ちょうど、小さい子供にトイレをさせるポーズだ。
『きゃっ!!』
 流石の桜織も、これには悲鳴を上げる。だが、それこそ男共の狙い。連中は桜織の恥じらいぶりが見たくて、あえて屈辱的なポーズをさせているに違いない。
『ひひひ……』
 黄色い歯を見せて笑いながら、男共はさらに割れ目を刺激する。今度は指入れじゃなく、表面のビラビラを4本指で擦る動きだ。
『あっ、い、いやっ! やめてくださいっ!!』
 桜織の声は悲鳴に近い。この状況でも保たれる丁寧な言葉遣いは、彼女が真っ当な教育を受け、それを吸収した事の表れだ。どれほど下劣な相手であろうと、年上には敬語を使うべし──それを律儀に守るいじましさは、この悲惨な状況にあってむしろ痛々しい。
『へへへ、もうグチョグチョだな。汁が飛び散りまくってやがる』
『すげぇよな。たかが5分やそこら弄っただけでこれかよ?』 
 男共の指摘通り、桜織の女の部分からは透明な液体が溢れ続けていた。もう何時間も指責めを受けている、という感じの反応。ピンクの割れ目がまだ清楚さを保っているだけに、違和感は強い。
 矛盾の原因は、部屋に充満したガスだ。通風孔からは、今もドライアイスの煙のようなものが部屋内に流れ込みつづけている。煙は、床へ届くあたりで見えなくなるが、空気中を漂っているのは間違いない。それをたっぷりと吸い込んだ結果が、あの桜織の反応なんだ。
 いや、桜織だけじゃない。それを囲む50本の逸物も、すっかり回復して横や斜め上を向いている。いくら女に飢えているとはいえ、少なくとも3回以上射精した後でその勃起力は普通じゃない。

 そして、そのガスを吸い続けている人間はもう一人いる。そいつは今の今まで、一度も射精していない。
 モニターの絶頂カウントが20を超えた頃、奴はのっそりと動き出した。夢中になって桜織を嬲っていた連中も、その動きを瞬時に察知して手を止める。
『持ってろ』
 その言葉の後、画面が揺れた。カメラが別の人間に手渡されたらしい。
 別の撮影者がカメラを構えることで、これまでの撮影者の姿も映像に映り込む。どいつだ……と、探すまでもない。奴は見るからに別格だった。眼光の鋭さもそうだが、何より特徴的なのが、上半身を覆いつくす和彫りだ。なるほど、ひと睨みされただけで50人の男が萎縮するのも無理はない。
『ど、どうぞ……手越さん』
 一人また一人と桜織から男が離れ、手越と呼ばれた男が桜織の前に立つ頃には、全員が距離を置いて見守る体勢を作っていた。まるで虎の人食いショーにでも立ち会っているように。
『んなに離れなくても、取って食やしねぇよ』
 手越はゲラゲラと笑いながら、ズボンとボクサーパンツを脱ぎ捨てる。案の定、太腿と脚、尻も刺青で覆われている。もはや肌に墨が入っているというより、柄物を全身に着込んでいるという風だ。だが映像の中の視線は、どれ一つとしてその威圧的な肌を見ていない。51の瞳が釘付けになっているのは、奴の股間にそそり立つ剛直だ。
 とにかく、でかい。居並ぶ男共の誰よりも。おまけにその表面には、出来物のような不自然な突起がいくつもあった。
『一日で50人のチンポの形を覚えこまされたお前でも、こんなのを見るのは初めてだろ? 真珠を10コ埋め込んだ、自慢の逸物だ。中古で外車が買えるぐらいのカネ注ぎ込んだが、その甲斐あって中々の女殺しでよ。竿師として脂の乗ってた20、30の頃なんざ、何十って数の女をコレで虜にしたもんよ』
 奴は自慢げに語りながら、桜織の足に手をかけ、ゆっくりと足を開かせる。桜織は、菱形の瞳で手越を見据えていた。大股を開かされても。愛液まみれの割れ目に、凶器のような剛直を擦りつけられても。本当に芯の強い子だ。
『ほー。破瓜の間際でもその顔ってのはポイント高ぇな。だが、そのぶん楽しみだぜ。その綺麗な顔が、どう歪むのかがな!』
 手越は醜い笑みを浮かべ、腰を進めはじめた。太くて長い逸物が、割れ目を押し開いてメリメリと入り込んでいく。
『う……あ! はぅっ……!!』
 桜織の眉が下がり、口が開く。それはそうだ。どう考えても初めてにはきついサイズの逸物を、強引に押し込まれているんだから。
『苦しいか? 苦しいよなぁ、デカマラはよ』
 手越はにやけながら、半ばほど挿入した辺りで腰を止める。そして、ゆっくりと前後に腰を揺らしはじめた。
『う……あ、うぐうっ……!!』
『しかし、よく濡れてんな。シャブ打った女の股にソックリだぜ』
 顔を歪ませる桜織とは対照的に、手越は上機嫌だ。左手で桜織の右足首を掴んだまま、繰り返し腰を打ちつける。そのたびに、太い逸物が少しずつ深い所まで入り込んでいるようだった。20回もピストンする頃には、パンパンという肉のぶつかる音までしはじめる。
『う、ううう゛……っ!!』
 桜織は歯を食いしばっていた。痛いのか、それとも別の理由か。
『すげぇな、濡れたヒダが絡み付いてきやがる。普通処女をヤる時にゃ、縮こまった膣を無理矢理こじ開けて開発してくもんだがよ、その必要がねぇときた! オウ、お前ら喜べ。このガキ、お前らのチンポしゃぶりながら、一丁前に発情してやがったぜ!?』
 手越の悪意を込めた嘲りに、桜織が眉根を寄せた。
『そ、そんなこと……!!』
『そんなことねぇってのか? じゃあこの音はなんだよ。グチョグチョいってる、この音はよぉ!』
 手越が桜織の視線を受け止めながら、腰を激しく前後させる。すると、確かに湿った音が聴こえてきた。
『へへへ、すげぇ音してやがる!』
『ここまで聴こえるなんて相当だぜ。いやらしいなあ、委員長さんよ!!』
 遠巻きに見ている男共も、ここぞとばかりに嘲りに加わる。実に51対1。処女を失う痛みの中、そんな数の人間に罵られれば、精神的なストレスは計り知れない。

 だが、桜織の表情は覇気を失ってはいなかった。
『はぁ、はあっ、はぁっ……!!』
 荒い息を吐きながら、凌辱者である手越を見上げている。その澄んだ瞳は雄弁だった。自分に負い目などない。いくら謗られようと、自分の心は折れない。そう訴えている。そしてその訴えは、犯す手越にも伝わったようだ。
『ったく、大人しい顔して腹の据わったガキだ』
 手越はそう言って笑った。なぜか嬉しそうに。その反応は予想外だったんだろう、桜織が怪訝な表情になる。
『俺ぁ、芯の強ぇ女は好きだぜ。快楽漬けにしてぶっ壊すのが、格別に楽しいからよぉ!』
 そう叫び、手越が本格的に腰を使いはじめる。何十という女を虜にしたと豪語するだけあって、その腰使いはスムーズかつメリハリの利いたものだ。ディスプレイ越しに傍観している俺でも、受け側が気持ちいいだろうと想像がつくようなテクニック。それを続けられるうち、桜織の息遣いが変わりはじめた。
『あ、あっ……は、はっ……あ、はっ…………!!』
 どこか苦しそうだった息が、艶を帯びてくる。最初こそ勘違いかと思えるレベルだったが、そこから3分もすれば、はっきり甘い吐息と判るものになる。Mの字に開かされた足は、強張って細かに痙攣している。
『はっ、はっ……ん、んんっ!!』
 桜織の喉から、切ない呻きが漏れた。その、直後。

 ────リン────

 残酷なほどの明瞭さで、鈴の音が響いた。
『!!』
 まず息を呑んだのは、桜織。そこから一瞬遅れて、粘膜で繋がり合っている手越が笑みを浮かべ、最後に取り巻きのギャラリーが爆笑する。
『ははははっ、イキやがった!! あんな極太咥えこんでイクとか、とんでもねーヴァージンもいたもんだ!』
『残酷だねぇ。あんなに酷いことされてもイク“変態”だってことが、ハッキリ暴露されちゃうんだから』
『……うっ……!!』
 浴びせられた罵りに、とうとう桜織の顔が崩れる。愛液が溢れた事は、ガスのせいだと割り切れた。だが手越の腰遣いで達したのは、紛れもなく桜織自身の行為だ。責任の所在を他に求められない以上、謗りは直に胸を抉る。そうして顔を歪めた桜織を見下ろしながら、手越は犬歯を覗かせた。
『まずは一回目だな。まだまだ終わらせねぇぞ?』
 そう言って桜織の腰を抱え直し、リズミカルな腰使いを再開する。パンパンという小気味いい音と、水音がしはじめる。
『あっ、うあっ! あはっ、はあっ……!!』
 桜織の眉が顰められた。そしてその意味は、これまでとは違う。
『どうした委員長サマ、苦しそうじゃねぇか!』
『バーカ、ありゃ善がってんだよ。見てろ、すぐまたあの音が鳴るぜ?』
『ヤクザに犯されて逝っちまうなんてよ。優等生ほどアウトローに惹かれやすいってのはマジらしいな』
『へへ。って事ぁ、俺らにもチャンスあるってワケか。冴えない親父として一生終えるかと思ってたが、こりゃ運が向いてきたかな!』
 絶頂した以上、彼女の中にある最大の要素は、痛みでも屈辱でもない。快楽だ。少なくとも場の男共はそう見る。そう謗る。後ろ暗い部分を持たず、光の差す場所だけで生きてきた桜織にしてみれば、その恥辱もひとしおだろう。
 そんな状況の中、手越は巧みな技術で桜織を追い詰めていた。
『んっ、んんっ……んあ、あ、あっ…………!!』
 桜織は唇を引き結んで耐えようとするが、すぐに“喘がされて”しまう。完全に踊らされている形だ。そして。

 リン──

 鈴の音がまた、冷たく響く。それから一拍置いて、どっと笑いが起きる。桜織にとっての地獄だ。
『お前ら、感謝しろよ。お前らの粗末なモンでもこいつが逝きまくれるように、逝きグセをつけといてやる』
 手越が周囲を見回し、恩着せがましく語る。それを囲む雄共は、初めの頃の緊張ぶりが嘘のようににやけ、口々に手越への感謝の言葉を返していた。

 このダンボール上での絡みシーンを最後に、『媚薬ガス室 飲ザー地獄/処女喪失』の映像は終わる。終わる間際でも、桜織は犯され続けていた。リン、リン、と、冷たい鈴の音を響かせながら……。

 

二度と出られぬ部屋 第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)

※長くなったため分割しています。
 前回同様、アナル・浣腸・スカトロ回につき、ご注意ください。




■第三章 肛虐に堕ちる剣姫(後編)


 自販機で渇いた喉を潤し、部屋中央のソファで休憩を挟んでから、俺は部屋の右側へと踏み込んだ。
 後半にあたる5~8日目のエリア。ここも4日目までと展示方法は変わらない。いくつもの写真と、通し番号が振られたモニター、そして横長のショーケース。ただし前半部分と比べ、こっちには人が多い。それぞれのモニター前に何人もが群がり、映像に齧りついている。
「見ろよアレ、愛液垂れまくり。キモチいいんだろなー」
「ああぁエロいよ、トウカちゃぁん!!」
 そんな気色悪い声を出す奴もいれば、ズボン越しに股間を弄る輩までいる始末だ。

 『5日目』エリアには、ショーケースに妙なものが飾られていた。
 洗面器に山盛りになった、灰褐色の物体。白い粉状のものが表面に付着しているが、どうやら玉蒟蒻らしい。
 ──何故、こんなものがここに。
 ──決まっている。これが使用された『道具』だからだ。
 自問自答の中、視線が横のモニターに引っ張られていく。俺は惹かれているのか。食材を使った、背徳的な責めに。


*********************************


 映像の中では、宙吊りにされた藤花がドレッドヘアの男に犯されていた。
 藤花を吊る紅い縄は三本。高手後手に縛り上げる一本と、左右の膝に回された二本だ。膝裏には摩擦防止の当て布がしてあるが、不自由な格好をさせた上でのそんな配慮は、かえって白々しく思えてしまう。
 ドレッド男は、身動きの取れない藤花の尻を抱え上げ、自由勝手に腰を打ち込んでいた。たんっ、たんっ、たんっ、と肉のぶつかる音がし、膝で吊られた藤花の足が揺れる。横からの撮影だから判りにくいが、挿入部分は尾骨に近い。使われているのはアナルだ。
『……あ、はっ……あ、ぁ……あ……っく、は、ぁ……っ』
 結合はかなりの時間続いているんだろう。藤花の顔は下を向き、荒い呼吸を繰り返していた。
『いい声が出るようになってきたじゃねぇか』
 犯しているドレッド男が、嬉しそうに藤花の腿を撫で回す。
『はぁ、はぁっ……冗談は、その頭だけにしろ……』
 藤花は顔を横に持ち上げ、男を睨み上げた。疲れが見えるが、その眼光はまだまだ鋭い。
『ふん、口の減らねぇガキだな。“8個もぶち込みゃあ”、ちっとはしおらしくなるかと思ったのによ』
 男は意味深な言葉を吐きながら腰を引く。ずるりと逸物が引き抜かれ、肛門との間に銀色の糸を伸ばす。
『はぁ、はぁ……っ』
 激しく喘ぐ藤花を前に、ドレッド男が片膝をつく。藤花の肛門を間近に望む位置だ。奴には今、凛とした女剣士の恥じらいの場所が、余すところなく見えていることだろう。
『へへへ、おいおい。俺ので奥まで押し込んでやったってのに、もう入口近くまでひり出されて来てんじゃねぇか。ええ? 我慢のできねぇケツだな』
 肛門を覗きこんだドレッド男が、膝を叩いて笑う。そうして相手が愉快そうにするほど、藤花の表情は硬くなっていく。
『当たり前だろう……そこは、出すための穴だ』
『違うな、そりゃフツーの人間の話だ。ケツ穴奴隷のテメェの場合、ここは第二の性器。つまり、突っ込まれるための穴なんだよ』
 男は嘲るように言いながら、左方向に手を伸ばす。その方向にあるのは、ローションボトルと玉蒟蒻入りの洗面器だ。
『なっ……やめろ、もう入れるな!』
『だからよぉ、違ェだろ? 「もう入れないでください、お願いします」だ』
 血相を変えて叫ぶ藤花に対し、男が要求するのは恥辱の哀願だ。しかし、武人気質の藤花がそれを受け入れる筈もない。
『く……!!』
 ドレッド男を睨み据えたまま、ただ口惜しげに歯噛みするばかり。“苦みばしった”と形容したくなる表情は、時おり美青年の顔にも見える。肉体の方は、主張しすぎるほど女の特徴を備えているというのに。
『ったく、強情な女だぜ。ま、その方がイジメ甲斐があるがよ』
 男は呆れた様子で笑いつつ、ローションボトルを拾い上げた。そして哺乳瓶のような先端部を藤花の肛門へと押し込みつつ、ボトルを握り潰す。
『うっ!』
 藤花が小さく呻いた。
 男は、二度、三度とボトルを握りこんでから引き抜くと、ローションの残りを玉蒟蒻の山にふりかける。もはや疑う余地もない。奴はあの玉蒟蒻を、藤花の尻へ入れるつもりだ。
 ──“8個もぶち込みゃあ”、ちっとはしおらしくなるかと思ったのによ
 ──俺ので奥まで押し込んでやったってのに、もう入口近くまでひり出されて来てんじゃねぇか
 こうした言葉の意味も、はっきりと理解できてしまう。
 藤花は、さっきアナルを犯されていた時点で、あの大粒の玉蒟蒻を8つも入れられていたんだ。

『さっきみたく、ケツ締めとけよ』
 ドレッド男はそう言って、玉蒟蒻の一つを摘み上げる。カメラが斜めに移動し、藤花の肛門周りを捉えた。男の指で肛門へと押し付けられた玉蒟蒻は、わずかな抵抗のあと、ずぶずぶと紅い輪の内側へ沈みこんでいく。
『…………っ!!』
 藤花の身体が強張った。太股も、腹筋も。男はその反応を目で追いつつ、一つまた一つと玉蒟蒻を摘み上げては、尻肉の合間へと押し込んでいく。
 それが何度繰り返されただろう。洗面器の中身が、半分ほどに減った頃。
『本当に、やめろ……もう無理だ!』
 藤花が、呻くようにそう告げた。男はまた鼻で笑う。
『けっ、なにが無理だ。テメェのケツはどんどん飲み込んでくじゃねぇか。大体テメェ、ロドニーさんのデカマラを咥え込んだんだろ? アレの方がこんな蒟蒻なんぞより、よっぽど嵩あんだろうが』
 そう言って、部屋のゴミを捨てるぐらいの気安さで、次々と異物を挿入していく。
『く、ぅっ……は、くっ…………!!』
 藤花は耐えるしかない。白い歯を食いしばり、悔しそうに目を細めて。
 洗面器の中身は着実に減っていく。それはつまり、スレンダーな藤花の腸内に、減った分の体積が移ったということだ。となれば当然、肛門の抵抗も強まり、玉蒟蒻を挿入する男の動きも変わっていく。初めこそ軽快に押し込んでは次の一個を摘み上げ、というペースだったのが、ぐっぐっと何度も押し込むようになる。
『おら、ケツ開けって。クソ我慢するみてぇに腸は閉じながら、穴ンとこだけ緩めんだよ!』
 ドレッド男は、苛立ち気味に無茶な注文をつけていた。玉蒟蒻が肛門から弾き出された時などは、舌打ちもする。品もなく、慈悲もない男。そんな輩が指の力任せに無理を押し通していく様は、見ていて背筋が寒くなる。

『……おら、全部入ったじゃねぇか。無理だのなんだのほざきやがってよ』
 何分が経ったのか。あれだけあった洗面器の中身が、すっかり藤花の中へと収められてしまう。
『くっ……この野郎!』
『そう睨むな。ケツってなぁ、苦しいのがキモチイイんだ。お前だって、とっくに承知してるようによ』
 ドレッド男は藤花の怒気を受けてもなお、余裕の笑みを崩さない。それどころか、悠々と逸物を扱きたて、藤花の尻に押し当てる。あれだけ無茶な異物挿入をした上で、また犯そうというのか。
『や、やめっ……!』
 当然、藤花も信じがたいという様子で目を剥いていた。
『女のイヤよは、待ちきれないの合図──ってな!』
 男はあくまで相手の主張を聞き入れず、尻肉を鷲掴みにして腰を突き入れる。男の腰も、藤花の腰も細かに震えていた。ミリミリ、メリメリと音がしそうなほどに。
『ぐううっ!!』
『うへぇ、キッチィなこりゃ!粘土板にでも突っ込んでる気分だぜ。勃起力の弱ぇオッサンやモヤシ野郎じゃ出来ねぇな、このプレイは』
『はっ、ぐ……もうやめろ!尻の穴が、裂ける……!!』
『だから裂けねぇっつーの。テメェの括約筋がよく伸びる逸品だってのは、とうに判ってんだ。それによ、テメェだって実はイイんだろ? 直腸に圧かけられて、子宮圧迫されて、結腸にまで玉蒟蒻が詰まってる。アクメの条件は十二分に揃ってんだよ!』
 男はそう言って、藤花の尻に腰が密着するまで挿入しきった。そして、ゆっくりと抜き差しを開始する。
『う、ぐあ……あ!!』
 藤花の苦しそうな声と共に、パン、パン、とスローペースで肉のぶつかる音がしはじめた。そしてその音は、少しずつ、少しずつ、速さを増していく。
『くっは、まじでキッツイぜ。だが悪くねぇ。四方八方から生ぬるい弾力が包み込んできやがらぁ!!』
『んあ、あ……あっ、あ…っく、うくああ゛っ!!』
 何十個もの玉蒟蒻を腸に詰め込んでのアナルセックス。それが刺激的でない筈もなく、犯す側も犯される側も顔を歪めている。ただし、対照的な理由で。あの藤花が絶え間なく声を上げるんだから、相当だ。
 たっぷりとローションを注ぎ込まれているせいか、抜き差しの度に漏れる音もひどい。
 にちゅ、にちゅ、と人が口で言っているような音。
 ぶちゅっ、ぶぼっ、という水気のある屁のような音。
 S気の強い調教師が、それを聞き逃すはずもない。
『すげぇ音させてんじゃねぇか、ケツからよ。恥ずかしくねぇのかよお前?』
 異音と同じぐらい粘ついた悪意を込めて、囁きかける。藤花の眉が吊り上がった。
『恥だと? 何の恥だ……その音をさせているのは、貴様だろう!』
 気丈に反論するものの、その顔は堂々とはしていない。肛門を犯されて放屁のような音をさせ続けるなど、耐えがたい恥だろう。たとえそれが、強いられたものであっても。
 異物を大量に押し込まれた状況といい、漏れる音といい、苛烈な責めであることに疑う余地はない。さらには男もいやらしいもので、刺激が一層強まるような行為を繰り返す。例えば、揃えた4本指で臍の下……ちょうど異物がひしめいているだろう場所を圧迫したり。尻肉が変形するぐらい深く突きこんでから、腰を据えてグリグリと円を描くように動かしたり。
 そんな苦難を受けながら、藤花はじっと耐えていた。男の突き込みで前後に揺れはするが、それ以上の反応は見せない。悪童にじゃれつかれる育児疲れの母親よろしく、じっと時が過ぎるのを待っているように見えた。
 だが、それは外観だけの話。今までもずっとそうだったように、見た感じで変化がなくても、内では着実に何かが蓄積しているんだ。ボーイッシュな祐希は、その果てに自我が崩壊した。天使のようだった千代里は、我慢の末に嘔吐した。そして、藤花にも変化が起きる。
 ぶちゅ、ぶりいいっ、ぶちゅっ……そんな音と共に、代わり映えのしない抜き差しが続いていた、ある瞬間。男の腰が引かれると同時に、結合部で小さな破裂音がした。
『うあ……っ!!』
 同時に藤花の口が開き、声が漏れる。ハスキーではあるが、今までよりずっと女の子らしさのある声。それがはっきりとマイクに拾われてしまう。
 何が起きたのか。その疑問の答えを示すように、一つの玉蒟蒻が床を転がっていく。排泄されたんだ。男の逸物を挿入されたままで、無理矢理に。それは、どれだけ刺激が強いことだろう。女の子の声が出てもおかしくない。
『ぎゃはははっ! お前出すんじゃねぇよ、ハメてる最中によぉ!!』
 ドレッド男は鬼の首を取ったように笑いつつ、藤花の尻を打ち据える。
『っ! く、ぅっ……!!』
 藤花の表情がまた歪んだ。あまりに唇を曲げているせいで、笑っているようにすら見える顔だ。
『んなに良かったのかよ、ええ? 嵌められながらデカイのひり出して感じちまったのか、この変態が!!』
 男の言葉責めは止まらない。腰の動きも再開する。そしてここから、不動だった藤花の様子が変わりはじめた。太股が強張り、足指が折り曲げられる。まるで空気を噛むように。
『うおっ、すげぇ締まってきた。脚に力入れて、ケツ穴引き締めてんのか? 相変わらずクソみてーな根性だな。ならせいぜい、頑張ってみろや!!』
 男はそう言って、激しく抜き差しを繰り返した。パンパンと肉のぶつかる音がし、結合部の異音もいよいよ粘ついたものに変わっていく。
『うぁ、ううあ…っ!!』
 藤花の口からも、堪らずという感じで声が漏れている。
 そして。
『あ!! ぁぁ゛あ゛っ!!!!』
 藤花からまた悲鳴が上がり、その直後、床に数個の玉蒟蒻が垂れ落ちた。ぬらりとした粘液に塗れたまま。
『おーおー、また出やがった。見てみろよ、腸液まみれだぜ? こんだけイジめられて腸液出すとか、誤魔化しきかねぇマゾッぷりだなぁ、剣術小町ちゃんよお!!』
『ふざけるな、ただの防衛本能だ! 無茶をさせられているせいでな!!』
 下卑た口調で茶化されれば、藤花も黙っていない。即座に反論を浴びせる。本当にプライドの高い娘だ。
 だがそんな彼女にも、忍耐の限界はある。この映像では、その『底』が垣間見えるようだった。
『おらっ、ケツに出すぞ変態女!!!』
 数十回のピストンの末、男が射精に至る。腰を密着させたままたっぷり数秒かけて精を送り込み、身体を離す。その解放をもって、ようやく藤花の肛門は排泄を許された。びゅぶっ、ぶちいっ、と凄まじい音を立てながら、次々と灰褐色の珠が飛び出ていく。その最中、藤花は下唇を噛みしめていた。普通なら、声など漏れないはずだ。それでも、映像にはしっかりと記録されている。
『んんーー~~~っ!!!!!』
 鼻を甘い声が通り抜ける。快便の心地良さに呑まれているのは明らかだ。
『ぎゃっはっはっはっは!!』
 男は腹を抱えて大笑いしていた。映像が暗転する瞬間まで。

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 俺は暗転したモニターから視線を外し、改めてショーケースを見やった。
 表面に粉状のものが付着した、玉蒟蒻。映像を観た今ならわかる。あの粉は、腸液が乾燥したものだ。つまりあれは、間違いなく映像にあった実物。そう思うと、静かにケースに収められている無機物から、宿主の嘆きが聴こえてくるようだ。
 俺はその嘆きから逃れるように、次のエリアへと歩を進める。
 
 『浣腸した上でアナルを責める』。
 6日目は、それだけがひたすら繰り返されたらしい。モニター7には、その様子がダイジェストで纏められているようだ。


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 一つ目の映像では、藤花はバスルームで拘束されたままで嬲られていた。両肘の少し上と、折り曲げた脚の半ばを縄で巻かれた達磨状態。その藤花に対し、調教師数人が好き勝手をやっている。
 藤花の顔側に座り込む男は、整った顔を弄くりまわしていた。鼻の穴に指を引っ掛けて、縦に引き伸ばしたり。同じく口に指を引っ掛けて、横にへし曲げたり。そうして、相手の不快そうな表情を楽しんでいる。
 肛門側にも一人が片膝をつき、延々と浣腸を施していた。浴槽に溜めた液体を浣腸器で吸い上げては、藤花の腸へと注ぎ込んでいく。一体どれだけ入れたのか、すでに藤花の腹部は膨れ上がっている。
『やえろっ、おうむいだ……!!』
 口と鼻をへし曲げられながら、無理を訴える藤花。だが男共は聞き入れない。
『まだまだ。お前より細ぇ女でも、3リットルは入るもんだ』
 そう言いながら注入を続け、臨月かというレベルにまで腹を膨れさせる。終わるタイミングにしても、容赦した訳じゃない。浣腸液を注ぎ込もうとしてもすぐに噴き出す、限界の限界を迎えたからだ。
 それだけの浣腸を施すだけでも、充分に外道の仕打ちといえる。だが男2人の悪意が発露するのは、むしろここからだった。
 何しろ連中は、妊婦のように腹が膨れた藤花をひっくり返し、這う格好にして肛門を犯しはじめたんだ。
 けして細くない、むしろ平均以上の逸物が、限界まで詰まった腸内を蹂躙する。抜き差しのたびに、肛門からブビブビとみっともない音が発され、後方に水が噴き出していく。場所が浴室だけに、音がいちいち反響するのがまた悪趣味だ。
『いいねぇ、生あったけぇのがどんどん溢れてくんぜ。女と温泉でハメた時みてぇだ。ケツの締まりも悪くねぇしよ。つっても、こんだけビシャビシャ出しまくっといて、締めるイミあんのかって話だがな』
 後ろの男は上機嫌で、ますます膝に力を込める。
 さらに彼女の前方では、床タイルに寝そべった男が逸物を咥えさせてもいた。
『おい、歯ァ当たってんだよヘタクソが! ったく、上達しねぇ奴だな。オマエ次歯当ててみろ、また漏斗でションベン飲ませんぞ。髪とアゴ掴まれて、泣きながら白目剥きたかねぇだろ?』
 男は奉仕を強いながら、不機嫌そうに愚痴りつづけている。
 藤花は、その地獄のような状況にじっと耐えていた。手足を曲げて拘束された彼女に、抵抗の術はない。肘と膝のみを支えとして這い、悪意を受け止めるしかない。
 この状況でも取り乱さないのは流石だ。しかし、苦しいのは間違いない。腹を下したような音が酷いし、尻穴からは下痢便を噴き出す音が続いている。逸物を深々と咥えこまされる喉元からも、ゴエエッとえずきが上がっている。
 そして何より、彼女の引き締まった尻が、激しく暴れていた。黒人にターキーのような逸物を挿入されていた時ぐらいに。
『はっ。さすがのお前でも、ハメられながらひり出し続けんのはキツイらしいな。だが、だいぶ楽になってきたろ? カエル腹がようやっと凹んできたぜ』
 後ろの男は激しく腰を打ちつけつつ、藤花の下腹を鷲掴みにする。
『むぐう゛っ!!』
 藤花から呻きが上がり、下半身の暴れ方が酷くなる。その反応が後ろの男を焚きつけ、さらに激しく下腹を揉みしだく。その果てに、藤花の口の方から妙な音がした。呻きとも攪拌音とも判別のつかない音。
『うぅわ! お前きったねぇな、ゲロを吐くなよゲロを。オレはテメェと違って、汚物にまみれる趣味はねンだよ』
 どうやら異音の瞬間、藤花は嘔吐したらしい。散々喉奥まで咥えさせておきながら、前の男が顔を顰める。
『何だよ、前からも噴いてんのか? ほどほどにしとけよ。今日は一日中浣腸責めだ、いちいちゲロってっと体力もたねーぞ』
 そう嘲りながらも、後ろの男は下腹から手を離さない。前の男も、舌打ちしながらまた逸物を咥えさせる。その悪意に挟まれて、藤花の手足はひどく強張っていた。

 一日中浣腸ファックされる。この男の言葉は、脅しでも何でもない。これ以降の映像でも、藤花はバスルームで浣腸を施されたまま、直腸を蹂躙され続ける。

 浴槽内の湯をポンプで直に汲み上げて注入し、藤花を悶絶させている映像もあった。この注入の後には、一人が肛門が上を向くように抱えたまま、もう一人が極太のバイブでアナル責めを施す。藤花は、自分の肛門から噴き出す液をすべて身に浴び、顔を左右に振って苦しむしかない。
 さらに別の映像でも、床にへたり込むように緊縛され、イチジク浣腸の散乱する中で延々とバイブ責めを受け。
 また別の映像では、血のように赤い液体を吹き散らしながら騎乗位を強いられ。
 緑色をした液を右脚に伝わせながら、Y字バランスで犯し抜かれ。
 そしてこれら全ての映像には、ギャラリーの姿があった。いつか見たように、ガラス張りのバスルームをぐるりと囲み、好色そうな眼で中を覗いている。何らかの罵声を浴びせていることもしょっちゅうだ。

 そんな苦境でもなお、藤花は調教師と客を睨みつけていた。汚液やシャワーが顔に掛かる時はさすがに目を閉じるが、すぐに顔を振って鋭い眼を取り戻す。
 そういう態度がますます相手を増長させると、気付いてはいる筈だ。それでも武芸家としてのプライドが、舐められ放しでいることを許さないんだろう。常に和を尊ぶ千代里とは、見事に真逆の性質。藤花と千代里がエレベーターで談笑していたのが、もう遥か昔のことのようだ。


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 映像が終わる。
 6日目エリアのショーケースには、動画内で浣腸に用いたものが展示されていた。
 『グリセリン』とカナ表記のされたボトル。『酢酸』と書かれたビン。イチジクの形をした容器。ペットボトル入りのトマトジュース。青汁の粉……。
 俺はSMに詳しいわけではないから、そういう物を腸に入れた際のメリット・デメリットは判らない。ただ1つ確実に言えるのは、それらが悪意をもって選ばれているということだけだ。
 そして、その悪意はエスカレートし続けている。『7日目』エリアへ進めば、それが肌で感じ取れた。何しろ、7日目と8日目はとにかくギャラリーが多い。そして黒山の人だかりが出来ているモニターからは、時々悲鳴のような叫びが漏れ聴こえている。

 7日目エリアのモニターには、画面上側の縁にテプラが貼ってあった。
『絶叫が続く動画につき、他のモニターよりも音量を下げております』
 テプラにはそう印字されている。音量を下げてなお、離れた場所で悲鳴が聴こえるのか。その事実を前に、嫌な予感が膨らんでいく。


*********************************


 モニターでは、藤花が4人の男から嬲られていた。かなり徹底的な責めだ。
 大股を開いたまま、左右の手首と足首を一纏めにベルトで拘束された藤花。そのアナルにはかなり太さのあるディルドウが押し込まれ、肛門から飛び出た部分には大型のマッサージ器が宛がわれている。
 秘裂の上側……尿道からはチューブのようなものが延びていて、空のパックに繋がっている。導尿用の処置かと思いきや、どうやら逆だ。チューブは尿道に近い部分がクリップで挟み潰されていて、尿道側からあふれ出す黄色い液を押し止めている。
 そして、そのすぐ上に位置するクリトリスには、やはりマッサージ器が宛がわれて唸りを上げていた。
 挙句、両の乳房には搾乳機のようなものが取り付けられ、先端が円錐形に変形するほど吸引しているし、恥骨の辺りや内腿には電極パッドが取り付けられ、ボックスからの電気供給を受けている。

 それだけの事をやられて、肉体が反応しないはずがない。
 搾乳機の中の乳首はしこり勃ち、マッサージ器が離された時に覗くクリトリスは小豆のように膨らんでいる。三角形に溝の刻まれた内腿や、一纏めにされた手足の指の強張り具合は、相当な快感を受けていることを物語っている。
 そもそも藤花が拘束されている辺りには水色の吸水マットが敷かれているが、そのマットはかなり広い範囲が変色していた。1メートル以上も離れた場所が飛沫状に青くなっているのを見るに、何度も潮を噴き散らしているようだ。
 それでも、藤花の顔は崩れていない。はぁはぁと荒い呼吸を繰り返し、口の端からは涎を垂らしてもいるが、瞳はくっきりとした輪郭を保っている。
『すげぇなお前、まだ睨めんのか。結腸までディルドー突っ込まれて、膀胱パンパンにされて、さんざっぱらクリ逝きまでさせられてんのによ』
 藤花を囲む調教師の一人が、呆れた様子で呟いた。
『はあっ、はぁ……こんなもので、どうにか出来る気でいたのか? こっちは三つの頃から、激しい稽古に耐え抜いてきたんだ。お前らがクズ同士馴れ合って、人生を浪費している間にな!』
 藤花は息を荒げつつも、背筋を伸ばして反論する。自分は今なお清廉潔白だ、お前達とは違う──そう全身で訴えるように。
 そういう態度は、さぞ調教師の逆鱗に触れることだろう。次の場面では、藤花の横っ面が叩かれるかもしれない。俺はそう覚悟したが、モニター内の男達は、怒るどころかむしろ嬉しげだ。
『よく言った。わざわざBコースでもてなしてんだ。こんなヌルい責めで泣き入れられたら、肩透かしってもんだぜ』
 一人がそう言って肛門のディルドを握りしめ、ズルズルと引き抜いた。抜け出ても抜け出ても、なかなか先端が覗かない。恐ろしく長いバイブだ。3号と呼ばれていたバイブが20センチ弱だとすれば、こっちは悠に30センチはありそうだ。これだけの長さがあれば、直腸の突き当たりのさらに奥、S字結腸まで入り込むのも容易だろう。
 デュポッという音を立てながら、ディルドーが完全に抜ける。男はそのディルドーを見つめ、ほくそ笑んだ。
『見ろよ。“お釣り”つきだ』
 そう言って隣の調教師にディルドーを見せる。大蛇のようなディルドーは、先端部分がかすかに汚れているようだ。
『ははっ。昨日の晩からさせてねぇからな。食物繊維たっぷりの餌が消化されて、ようやっと結腸まで下りてきたってことか。いい頃合いだ』
 男はそう言い、一旦画面の外に消えた。他の連中もそれぞれに動き出す。藤花の乳房から吸引機を外し、尿道からチューブを抜き、下腹や内腿のパッドを外し。
『んっ! ふうっ!!」
 藤花はその一つ一つに性的な反応を示しつつ、訝しそうに眉を顰める。
『なんだ、今日はもう終わりか? それとも、飽きたから他の遊びにするのか?』
 不安だからこそ、あえて憎まれ口を叩く。それが藤花のスタンスらしい。今までは調教師がそれに呼応し、ある意味で上手く噛み合っていた。だが、今は何かが妙だ。調教師が余所余所しい。死刑執行前の刑務官のように、黙々と作業をこなしている。

 藤花は一旦縄を解かれ、手首足首を軽くマッサージでほぐされた。そこへ、さっき画面外に出た男が戻ってくる。手にしているのは洗面器。中には透明な液体が張られ、針のない巨大な注射器が立てかけてある。
『またそれか。つくづく芸がないな』
 見飽きたとばかりに目を細め、嫌味を刺す藤花。だが、男は余裕の態度だ。
『いいや。コイツばっかりは、これまでのとは別モンだぜ』
『……なんだと?』
 自信に満ちた男の言葉に、藤花が眉を顰めた。
『“ドナン浣腸”っつってな。昔は病院で便秘患者に使われてたんだが、あんまりにも効果が強すぎるってんで使用禁止になったシロモノだ。浣腸慣れしてねぇ奴に使った日にゃ、アワ噴いてもおかしくねぇキツさなんだが……お前なら、この程度の“お遊び”は余裕だよな?』
 男の一人が浣腸器を拾い上げ、藤花の顎を叩きながら挑発する。
『く……ッ!』
 藤花の目元が引き攣った。明らかな危機を感じ取りながらも、直前に啖呵を切っている以上は拒めない。さぞ歯痒いことだろう。
 調教師達はそんな藤花の表情を楽しみながら、浣腸器を薬液に浸した。一度シリンダー内の空気が追い出され、慣れた手つきで薬液が吸い上げられる。
『ケツ向けろ。それともブルッちまったか、オトコ女?』
『……ふん。相手を見て物を言え』
 浣腸器片手に挑発されると、藤花は不本意ながらも従うしかない。鍛えこまれた背筋がカメラに晒され、引き締まった尻肉が突き出される。
『よーし、いくぜ』
 浣腸器の先端が、つるりと藤花の肛門を通り抜けた。初めの頃は指一本の挿入も厳しい蕾だったのに、拡がりやすくなったものだ。
 男の手がシリンダーを押し込む。キュウウッと音がして、薬液が肛門内へと入り込んでいく。きつい浣腸だそうだが、我慢強い藤花のことだ、しばらくはじっと耐えるだろう。俺は無意識にそう思っていた。ところが、その予想は外れる。
『ぐあっ!?』
 浣腸液を送り込まれた、まさにその瞬間。藤花は悲鳴を上げ、目を見開いて振り返った。
『おいっ、ちょっと待て! これは、アルコールじゃないのか!?』
 新鮮なその反応に、男共が笑う。
『いいや、間違いなくドナン液だ。粘膜に触れた瞬間、ウォッカをストレートで煽ったようになんのが、こいつの特徴よ。しかも、即効性があるだけじゃねぇ。意思とは無関係にケツがめくれて、ダラダラ糞が漏れちまうんだ。しかもお前は今、結腸までクソが降りてきてっからよ、格別にキツイはずだぜ』
 男はそう言いながら、また浣腸器に薬液を吸い上げた。同時に他の調教師は、暴れる藤花の腰を押さえにかかる。
『なっ!? 貴様、そんなものをまだ……ッ!!』
『ああ入れるぜ。普通なら一本で勘弁してやるが、俺はお前が嫌いなんでよ』
 2本目の薬液が注入される。その後の反応は、グリセリンとは全く違った。
『ぐああぁっ、はぐっ!!うあ、か、勝手に、ぃ……っ!!?』
『へっ、効いてきたな。もうぐっぱり開いてやがる』
 悶え苦しむ藤花の肛門に、男の指が挿入される。拳ダコのある男の4本指が、抵抗なくぬるりと入り込んでいく。ウソのような光景だ。
『おーおー、ユルッユルだぜ。何もひっかかんねぇ。おいオトコ女、当ててみな。指は何本入ってる?』
『し、知るか……それどころじゃない事ぐらい、見て判れ……!!』
 藤花は歯を食いしばりながら言葉を搾り出す。そのすらりとした脚は、早くもガクガクと膝が笑っている。だが、当然だ。彼女の菊の輪は、ゴムを抜いたズボンのように、歪な形に開いているんだから。その惨めな様は、陰湿なサディストにとってさぞ面白いものだろう。

『あんま早く出させても、面白くねぇからな』
 そう言って、調教師の一人が肛門近くの人間にある物を渡す。ラグビーボールに近い形をしたアナルプラグ。ただし、サイズが普通じゃない。男の掌でようやく底を掴めるかという大きさだ。
『……ッ!!?』
 それを視界に収め、藤花が眼を見開いた。
『うお、7号プラグはやっぱ重てーな。ダンベルみてぇ』
 肛門傍の男は、両手でプラグを抱え直すと、藤花の肛門へと捻じ込んでいく。
『かはっ!!』
『おーすげ、やっぱ直径10センチとなると絵面がやべーな。大砲の弾でも詰め込んでんかよ!』
『ああ。こんなのが余裕で入る……っつか、こんなんでなきゃ栓にならねーとか、ヤベーよなドナンって』
『サツの女ん時ゃ、テニスボール嵌めこんでもダダ漏れだったもんな。ヤメテーヤメテーとか喚きながら、ボールごとブリブリひり出しやがってよ』
『いたなー、あの説教大好き女! ドナン漬けにしたら、説教どころか「んおお」とかしか言わなくなったけどよ』
『終いにゃ馬とやってアヘッてたらしいぜ、あの女。そういや、あれも剣道やってたよな。4段だっけか。おう嬢ちゃん、お前は何段だ? ……って、答える余裕ねぇか』
 武勇伝で賑わう調教師達の足元では、藤花が苦しそうに呻いていた。
『ふ……ふぐっ、う……あ、あく……!!』
 眼を見開き、顔中に汗を噴き出させ、歯を食いしばり。浣腸を我慢する顔は嫌というほど記録されていたが、ここまで苦しそうな顔はなかった。
 だが、無理もない。彼女の腹部からはすでに、グリセリン浣腸を10分耐えた時よりも酷い音がしはじめているんだから。
『苦しそうだなぁ、オトコ女。楽になりてぇだろ?』
 調教師の一人がしゃがみ込み、藤花の顎を持ち上げる。その背後では、別の一人がアナルプラグを膝で押さえ込んでいる。
『……はぁ、はあ、はあ…………』
 藤花は、酷い風邪でも引いたような顔のまま、荒い呼吸を繰り返す。この状況で悪態を吐かないのは意外だが、その余裕すらないんだろう。
『なら、こう言え。「ウンチを出すところを見てください」ってな。それが言えりゃあ、オマルでさせてやるよ』
『な…ッ!!』
 男の要求に、藤花が表情を強張らせた。人一倍プライドの高い彼女が、そんな要求を呑む筈がない。普通なら。
 だが今は、痛烈な排泄欲に身を焦がされている最中だ。人間は生理的欲求には抗えない。大半の人間は、プライドと生理的欲求を秤にかけた時、欲求の方に流れるだろう。
 だが、藤花は違った。
『……はぁ、はあ…っく! あは……ぅ、くうううっ!!』
 腹部から凄まじい音がするたび、藤花の目が見開かれる。だが彼女はすぐにその眼を細め、調教師を睨み据えた。驚異的な精神力だ。
『まだまだ折れねぇってか。こりゃ時間かかんな』
『ああ。待ってんのも面倒だ、素直になるまで放っとこうぜ』
 調教師達は薄ら笑みを浮かべ、床の縄を拾い上げる。動画の最初で、藤花の手足を縛っていたものだ。
 普段の言動こそ軽薄だが、腐っても調教師だ。連中は鮮やかな手つきで、藤花を高手後手に縛り上げてしまう。さらには足首と膝にも縄を通し、縄頭を天井のフックに引っ掛ける。
 結果として藤花は、尻を床に密着させたまま、伸ばした両脚を吊られた格好となる。
『う……!!!』
 股の方に視線を落とし、顔を青ざめさせる藤花。そんな藤花を見下ろしながら、調教師達が口元を吊り上げる。
『いいカッコになったなあ、俺女。俺らはレストランで、うんめぇメシ食ってくっからよ。しばらくそのまま過ごしとけや。ま、つってもドナンはキツイだろうからな。どうしても俺らに何か伝えたいって気になったら、コレ押せや』
 一人が嫌味たらしく言いながら、細長いスイッチを取り出した。
『ナースコールみてぇなもんでよ。この端っこにあるボタンを押し込みゃ、俺らんとこに合図が来んだ。命綱だと思って、しっかり握っとけよ?』
 男はそう言って、縛られた藤花の右手にスイッチを握らせる。
『おーい、行くぞー』
『待てって! じゃあな、せいぜい頑張れや』
 調教師達が扉を開けて去り、薄暗い部屋には藤花だけが取り残された。

 カメラは床に置かれているらしく、孤独な藤花の様子を定点で撮影しつづけている。

『……く、ううっ!! はぁっ、ああ、あ゛……ぐっ!!』

 藤花から呻きが漏れた。
 実際、地獄だろう。
 足を吊られていると、下半身に力を込めるのが難しい。つまり、中途半端にしか排泄を我慢できない。では出して楽になれるかといえば、それも無理だ。何しろ彼女は、尻餅をついた状態。常に全体重でアナルプラグに圧し掛かっている形だから、排泄どころか、もがくほどにグリグリと深く栓をされてしまう。
『……ぐ、む……んん、んぐううっ!! お、おい、誰か、見ているんだろう!? こ、こんな事をして、タダで済むと、思う、なよ…………!!』
 薄暗い部屋の中、藤花の声が空しく響く。
 返事はない。ただ藤花自身の荒い呼吸と、遠雷のような腹の音だけが繰り返される。
『い、いい加減にしろ……このままでは、腸が、爛れるぞ……!』
 数十秒後、藤花はまた訴えかける。だが結果は同じだ。
 無駄と悟ったのか、それとも言葉を話す余裕すらなくなったのか。これを最後に、藤花が何かを話すことはなくなった。

 そして、強い便意に襲われた人間の、生々しい反応が始まる。

 荒い呼吸と腹の音にまず割って入ったのは、縄の軋む音だった。ぎしぎしという、根源的な恐怖を煽るような響きが、暗闇の中で繰り返される。
 その次は、アナルプラグが床に擦れる音。かなり硬い材質なんだろう。藤花の尻肉が左右に揺れるたびに、ゴリッゴリッと硬い音がしている。
『……う、う…ふんぐゥう゛う゛っ!!』
 藤花が、ここで悲痛な呻きを上げる。今までも相当な便意に苛まれていたはずだが、ここで特大の波が襲ってきたんだろう。
『ああ……あぐ、ぐうう゛っ、ふむうううう゛っ!!!』
 藤花は、脚の親指だけを立て、他の4本指を曲げて、なんとか大波を凌ぐ。だが、かろうじてだ。第一波を過ぎた後、彼女の引き締まった肉体は震えはじめた。縄の軋む音、アナルプラグの擦れる音が激しくなる。呼吸や腹の音の酷いものになっていく。
『あああっア゛っ……ぐ!!!』
 また悲鳴が上がり、下腹からグロロロゥという不気味な音が響く。これが、第二波だろう。

 生々しい映像ほど、心に訴えてくるものはない。ほんの数分が数時間にも思えるような彼女の気持ちが、俺にまで伝わってくるようだ。
『滝行を思い出せ……腑抜けるな、廣上 藤花ッ!!』
 孤独な部屋の中、藤花は便意に抗いつづける。全身に汗を垂らし、歯を食いしばりながら。
 だがそんな努力を嘲笑うように、便意の波は何度となく彼女の足を攫う。死に物狂いでいくら凌いでも、回を追うごとに波は大きくなり、間隔も短くなっていく。
『……ぁああ゛あ゛ッ!!!』
 俯き気味に耐えていた藤花が、ついに顎を跳ね上げた。その直後、肛門付近から破裂音が響く。ぶぢいっという音。下痢に耐え切れなかった時のみ耳にするその音は、彼女の我慢の限界を示していた。
 そして、彼女は右手に握ったボタンを押し込む。彼女の鋼のプライドが、終わりのない地獄についに屈した瞬間だ。
 
 だが、映像内に変化はなかった。
 調教師達がレストランで食事をしているとすれば、フロア移動に多少の時間が掛かってもおかしくないが、それもせいぜい数分のことだろう。
 ところが、藤花が両脚をもじつかせていくら待っても、扉が開くことはない。足音さえしない。
『まだ、か……?』
 藤花は歯を食いしばりながら、またボタンを押し込んだ。だが、やはり何の変化もない。助けを求めると決めて何かの糸が切れたのか、藤花の腹の音はいよいよ悲惨なことになっていた。ぐぉるるる、きゅるるる、ごおうう……そんな、何匹もの動物が唸っているような音色だ。
『一体何をしてる!? 早く……早く、はやくっ!!』
 カチカチカチカチと耳障りな音が繰り返される。剣道で握力を鍛えた藤花の指が、何度もスイッチを押し込んでいる音だ。それでも、変化はない。
『どういうことだ……これは命綱だと、そう言っただろう!! 命綱なんだろう、これは、俺のッ!!!』
 藤花はスイッチを連打する。入口の方を見ながら、何度も、何度も。

 人間の心が一番脆くなるのは、闇の中にいる時じゃない。闇の中で、なお拠り所としていた光が、幻だったと気付いた瞬間だ。

『なんで ……なんで、だれ、も゛…………』
 藤花はそう呟き、目尻から涙を流す。
 ここから彼女は、緩やかに壊れはじめた。
『……ぅあっ、あがああ゛っ!!ひいぎぃああ゛うう゛ああっ!!!』
 見えない壁を蹴るように、膝を曲げて両足を暴れさせ。見えない敵に齧りつくように、頭を前後に振りながら歯を噛み合わせ。その果てに、とうとう全身が病的な痙攣をはじめる。脚の縄が断続的に軋み、煩いほどだ。
『も゛う無理だ!!出したい出したい出したいっ、出したくてたまらない! 誰でもいいから来てくれえ゛っ!!!』
 かろうじて言葉の体は為しているものの、短い単語を何度も繰り返すばかり。もはや言葉を選ぶ余裕すらないらしい。
 ぶびっ、ぶぶぶっ、という破裂音がまた響く。
『あああ゛、ああ゛……く、っうはあア゛ああ゛!!!』
 藤花は絶叫し、天を仰ぎ──そのまま、しばらく動きを止めた。カメラの角度的に見えづらいが、よくよく見れば、白目を剥いていることがわかる。防衛本能が働き、苦痛で脳が壊れないように失神させたんだろう。だがその休息すら、極限の便意によって妨げられる。
『ごぼっ!はっはあっ……うう゛っ、んぐうう゛う゛あっ!!!』
 噎せながら意識を取り戻し、悶え苦しむ藤花。その顔は、苦痛でか恐怖でか、壮絶に引き攣っている。
 ここで彼女は、武芸家としての最後の意地を見せた。
『ぃあアッ、せぇああっ!!イぃヤァアア゛ア゛ッ!!!!』
 剣道の試合さながらの掛け声を発しながら、両足を振り下ろす。日々の鍛錬で育まれた脚力は、足首の縄を激しく軋ませ、細く引き伸ばす。だが、膝の縄がどうにもならない。
 藤花は目的を達せないままに力を使い果たし、原始的な欲求に呑まれていく。
『はっ、はっ、は……っ!! だ、誰か助けてくれっ!! 出したいんだ、頼むから!!頼むからッ!!!』
 心も身体も消耗しきった藤花に出来るのは、恥も外聞も捨てて助けを求めることだけだ。その姿は、もはや一般の少女と変わりない。
 誇り高い少女が、その誇りをかなぐり捨てて希う。そこまでしてもなお、救いは与えられない。

『はあっ、はあーっ…ぐっ、んむうッ、ひぐっ!! んああ゛あ゛っ!!』
 藤花は、喘いだ。呻いたし、叫んだ。激しい痙攣の果てに白目を剥いて失神しては、苦痛で意識を取り戻す。
『ひいっ、ひっ……も、もう゛、ほんろ゛に゛、らめら゛……い、いしきが……たもて……ない…………』
 最後の方では口の端から泡まで噴き、ほぼ常に白目を剥いている状態になっていた。そんな中で藤花は、ついに限界を迎える。

『 うわぁぁあ゛あ゛ああ゛あ゛あ゛あ゛ア゛ーーーーっ!!!! 』

 モニターの音量が下げられているとは、到底信じがたいボリュームの絶叫。それが天を仰いだ藤花の喉から迸ると同時に、細い身体が跳ねるように浮いた。肛門が床から離れ、アナル栓が吹き飛んで、横に回転しながら壁にぶつかる。
 栓さえ抜ければ、もはや排泄を阻むものはない。
 ぶばっ、ぶばばっ。びちゃびちゃ、ぶばばっ、ぶびいいいっ。
 思わず耳を塞ぎたくなる音が、長々と響き渡る。その品のなさと長さこそ、藤花がよく耐えていた証だと思うと、やるせない気分になる。人間の死に物狂いの努力は、こんな形で虚仮にされるべきじゃない。
 だが、俺がいくらそう思おうと、映像内の価値観は変わらない。

『おーっす、どうだ調子は……って、くっせぇ!』
『うーわ、こいつ漏らしやがったな!!』
 決壊からさらに十数分遅れて、調教師達が戻ってくる。悪意に満ちた表情で。
 連中はわざとらしく鼻をつまみながら藤花に近づき、右手に握りしめられたスイッチを取り上げる。
『ったく。こうなる前に押せっつったろ、バカが』
 そう言って、半笑いのままスイッチの裏をスライドさせる。電池を入れる場所……そこには、あるべきはずのものがない。
『あ、悪い。コレ、電池入ってねぇわ!』
 男はそう言いながら笑みを浮かべた。項垂れたままの藤花が、ぴくりと動く。
『ははははっ、ひっでぇなお前!!』
 他の調教師達が笑い、スイッチを手にした男が頭を掻く。白々しい。わざと電池を入れなかったに決まっている。藤花を極限まで苦しめ、絶望させるために。
『まあ許せって、な?』
 男がそう言って、藤花の髪を掴み上げた。
『ぎゃはははっ、ひっでぇ顔!!』
 藤花の正面にいる男達が笑い転げる。
 確かに、彼女の顔は崩れていた。鼻水と涎が垂れ、口の端からは泡を噴いている。そして虚ろな二つの瞳からは、涙が零れつづけていた。
『あーあー、泣いちまいやがったか。ま、こんな状況なら泣けるわな』
 調教師達は嘲笑しながら、藤花の縄を解きにかかる。
『うおっ。おい見ろよ、この足首の縄。ほとんど千切れかかってんぜ?』
『マジだ……どんな力だよ』
『良かったなー、念のために膝も吊っといて』
 そんな会話の中、藤花の身体が床に下ろされる。
『さて、ケツはどんな具合かね』
 男達は藤花の片足を掴むと、大股を開かせて肛門を覗きこんだ。
 ここでカメラが拾い上げられ、藤花へと近づいていく。
 映像の中央に収められた藤花の肛門は、ダリアの花のように開ききっていた。
『うへへ、すげぇ……』
『ドナン浣腸の後のアナルってなぁ、何度見ても面白ぇよな』
『おう。このガバガバの穴が、つい一週間前までは桜色の蕾だったんだぜ? 信じらんねーよな』
『まったくだ。まぁそりゃともかく、色々と綺麗にしねえとな。おら、立てよ“クソッたれ”』
 同情の欠片もない言葉と共に、藤花は腕を掴まれ、強引に立ち上がらされる。
 縄痕の残る手首に、改めて手枷が嵌められた。手枷はさらに、天井の滑車の一つと鎖で結ばれる。つまり藤花は、両の手を頭上に掲げた格好を強制されたわけだ。

『さてと。こっちはこっちで、バキバキに硬くしとかねーとな』
 一人がそう言って、小さな箱を開いた。箱の中身は注射器だ。男はそれを手に取ると、ズボンを下ろし、躊躇なく逸物に針を突き刺した。奴の顔面には、瞼にも鼻にも唇にも、やたらとピアスが取り付けられている。あるいは刺す感覚の中毒なのかもしれない。
『うあー……キクわぁ』
 薬液を打ち込むほどに、ピアス男の表情は緩んでいく。そしてそれとは逆に、逸物は硬く屹立していた。奴の逸物は元々でかいが、それが一回り以上も膨れたようだ。
『コイツの出番も久々だな。ここんとこ、ドナンまで使う事なかったしよ』
 別の調教師が、役目を終えた注射器と交換で筒状のものを手渡す。筒の材質はシリコンらしく、表面には複雑な凹凸が見て取れる。
 ピアス男は、受け取ったそれを勃起した逸物へと嵌め込んだ。幹の部分がすっぽりと筒で覆われるように。なるほど、あれは逸物のサイズを補強するぺニスサックらしい。
『あいよ、もう一丁』
 また別の男が、もう一つのサックを手渡す。さっきよりも一回り大きいサイズだ。それもまた、そそり立つ逸物の外側へと嵌め込まれる。
 結果として造り上げられたのは、空き缶サイズの直径を誇る極太だ。最大径こそロドニーという黒人に劣るものの、こっちは根元から先端までが満遍なく太い。長さも以前の動画に出てきた3号バイブを上回っていて、直腸奥まで届くのは確実だ。しかもその表面は、二つのカバーの突起が合わさって、ゴーヤのような複雑な凹凸を形成している。
『う……っ!!!』
 禍々しい巨根を目の当たりにし、藤花の顔が凍りつく。
『スゲェだろ。ドナンで緩みきったケツに、普通のもん突っ込んでも話になんねーがよ、この特製チンポブラシなら大丈夫だ。穴の奥の奥まで、キッチリ掃除してやるぜ』
 ピアス男は、規格外の逸物を揺らしながら、ゆっくりと藤花の後ろに回る。
『や、やめろ……』
 藤花は背後を取られまいと身を捩るが、周りの調教師がそれを良しとするはずもない。
『おら、じっとしてろ』
 そう言って腕を掴まれるだけで、藤花の自由は奪われる。
『そう怖がんなって。天国へ逝かせてやっからよ』
 ピアス男がついに藤花の背後につき、腰を掴む。空き缶サイズの極太が尻肉に宛がわれ、押し込まれていく。普通なら絶対に入らないだろう。だがドナンで開ききった藤花の肛門は、その無茶なサイズをも受け入れてしまう。
『んん……くっ!!』
 藤花は眉根を寄せるが、痛みというより屈辱の表情という感じだ。
『いつ見てもすげぇな。あんなサイズが入っちまうなんてよ』
『全くだ。AVでもそうは拝めねぇぜ』
 他の調教師達は、腕を組んでハードな挿入を見届けている。
 そして、二重のサックに覆われた極太はすっかり腸内に入り込んだ。
『よーし、入ったな。じゃ、動くぜ?』
 ピアス男が笑みを浮かべ、ゆっくりと動きはじめる。ドナン浣腸でドロドロに蕩けた、直腸の中を。

 たしか、立ちバックと言ったか。互いに直立したままの後背位で、肉がぶつかりあっている。カメラは、それを真横からのアングルで撮影していた。正直、この撮影者はよくわかっていると思う。藤花のように無駄なく引き締まった身体は、横からの見栄えが抜群にいいんだ。
 ほぼ垂直に床を踏みしめる美脚。結合部である腰と手首の鎖を支えに、弓なりになった上半身。その柔軟に反った鋭利な姿は、日本刀そのものを思わせる。
 ただし、いやらしさがないわけじゃない。刀身のような上半身の中ほどでは、豊かな乳房が派手に揺れている。その揺れ具合こそ、突き込みの激しさの指標だ。
 ピアス男に遠慮というものはなかった。後ろから両手を回して、藤花の恥骨辺りをがっしりと掴んだまま、ゴーヤのような怒張を抜いては突き込む。どぱんっ、どぱんっ、という肉のぶつかる音といい、無駄肉のない藤花の尻が波打っている事といい、相当な強さで腰をぶつけているのは明らかだ。
 藤花は、両足を肩幅に開いて踏みとどまり、じっとそれに耐えているようだった。ただ、最初の頃の、触れれば切れるような覇気は感じられない。
『はぁっ、はぁっ……。はぁっ……はぁーっ…………』
 息は荒く、顔は項垂れたまま。だいぶ参っている様子だ。
 ピアス男は、そんな藤花の肛門を激しく犯しながら、恥骨に宛がった手を上に滑らせる。つまり、下腹を押さえる形だ。
『なんだよ、全部出てねぇのか? 腹ァ膨れてんじゃねぇか』
 奴はそう言った。映像で見る限り、藤花の腰回りはダンサーと見紛うほどにくびれていて、腹が膨れている様子など微塵もない。だが、真相がわかるのは藤花本人と、肌で触れ合っているピアス男のみ。そして藤花は、今もグルグルと不穏な音をさせている下腹を見ながら、思うところがあるようだった。
『しっかりケツ締めとけよ。アナルファック中にダラダラ漏らしやがったら、タダじゃおかねぇぞ』
 ピアス男はそう言って藤花の尻を叩き、腰を振りたくる。その勢いで前後に揺られながら、藤花も体勢を変えた。肩幅に開いていた脚をさらに広げ、膝を曲げて腰を落とす。さらには両の足親指で床を噛む。いかにも古武術的な、『耐える』構え。
 綺麗だ。筋肉のカットに思わず見惚れてしまう。日々鍛錬を積み重ねてきたゆえの筋肉美と、彫刻のような機能美、そして女体としての純粋な魅力。それらが渾然一体となって、究極とも思える美を形作っている。そう感じるのは俺だけじゃないらしく、隣でモニターに見入っている連中も、腰を落とした藤花の脚を凝視している。
 だが、価値観は千差万別。少なくとも映像の中のピアス男は、藤花の美に目もくれない。奴の狙いはただ、アナルレイプの中で藤花に恥を掻かせることだけだ。
『おい。クソ漏らすなっつってんだろうが』
 ピアス男は、ドスを利かせた声で藤花に囁きかける。藤花の頭がピクリと反応した。
『も、漏らしてなど、いない……』
『嘘つけよ。さっきから俺の太股に、ヌルヌル流れてきてんじゃねぇか。これがクソじゃなきゃなんだ? 腸液か? もし腸液ならお前、それこそケツで感じてるって証拠じゃねぇか』
『ち、違う! 不浄の穴でなど感じるかっ!!』
『ほう、そうかい。じゃ、もう一度チャンスをやるよ。ケツの穴グウッと引き締めて、この生ぬりぃクソ汁を止めてみろや』
 パンパンという小気味いい音を背景に、そんな会話が交わされる。

『……はっ。ピアス君もいい性格してんぜ。一度ドナン浣腸でぐっぱり開いちまったケツを、そうすぐに締められっかよ』
『どんだけ筋肉ある女でも、垂れ流しになっちまうからな。だが、ケツを締めようとさせんのはいい作戦だぜ。実際にゃ締まらねぇにしても、ケツに意識向けて、まだ痺れてねぇ子宮周りの筋肉緊張させりゃあ、アナル性感がグングン高まっちまう』
『そういや、アナル狂いになった女共も言ってたな。ドナンで直腸やら結腸溶かされる感覚はヤベエって。そのアクメの味知ったら最後、普通のセックスなんぞじゃ刺激が足んねぇんだと』
『ああ、そりゃ俺も聞いたな。特にああいう、クソ真面目で融通の利かねぇ女ほど、アブノーマルから抜け出せなくなるんだ』

 かろうじてマイクに拾われる声量で、調教師達が囁き合っている。アナルセックスの音に邪魔され、藤花には届かない会話。生真面目な藤花は、乗せられたレールの行方も知らぬままに走り続ける。
 腰を落としても肛門を閉じられないからか、藤花の脚はまた閉じあわされた。ただし、今度は両脚を伸ばしているわけじゃない。左足が爪先立ちになり、かすかに膝を曲げている。クリトリスで絶頂する時も、藤花はああして爪先立ちになっていた。絶頂を堪えようとして、床を噛んでいるのか。それとも絶頂に耐え切れないから足裏が浮くのか。その因果関係は定かでないが、行きつく先は同じだ。
『はぁっはぁーっ、はぁっ……あ、あ…ああ! はあ、あっ…あっ……!!』
 最初は、途切れがちな呼吸なのかと思った。だが時が経つごとにはっきりしていく。
 藤花は、喘いでいた。あっ、あっ、と。激しく肛門を犯されながら、艶かしく爪先立ちの脚を蠢かしながら。
『だいぶ、良くなってきたらしいな』
『ッ!?』
 ピアス男の囁きに、藤花がはっとした様子で顔を上げる。遅まきながら、自分が浸っていた事実に気がついたんだろう。
『ふざ、けるな……!』
『何もふざけちゃいねぇよ。俺がどんだけ女のケツ犯してきたと思う。わかんだよ。こうやって腸の奥まで、グリグリやってりゃ。それによぉ』
 ピアス男はそう言って、藤花の足の合間に指を差し入れる。
『んっ!?』
 ぐちゅりと音がした瞬間、藤花が発したのは、女の声だった。いつものハスキーボイスと同じ喉から出た声とは思えない。
『ほら見ろ、マンコがグチョグチョじゃねぇか』
 ピアス男の指が割れ目から抜かれ、藤花の目の前で開く。指の合間には、ねっとりとした糸が引いた。
『この状況で、どう屁理屈を捏ねるんだ? こんなネバネバの本気汁出しといて、まさか防衛本能とか抜かすつもりじゃねぇよな。なにせ、テメェのマンコにゃ何も入ったことがねぇ。昨日も今日も、後ろしか使われてねぇんだからよ!!』
 耳元で叫ばれる理論に、藤花の目が泳ぐ。初めて見る反応だ。相手を睨めない時はあっても、藤花の視線は常にどこか一点を見つめていた。まっすぐ前だけを見ている感じだった。それが今は、揺れている。自分を見失っているかのように。
 そして、そんな弱った気配を、サディストが見逃す筈もない。
『乳首も、コリコリに固くしやがって。よくこれで誤魔化せると思ったもんだぜ』
 愛液を塗りつけるように、ピアス男の手が乳房を包む。
『ふんん……っ!!』
 二つの指の腹で先端部分を扱かれれば、藤花からは本当に気持ちの良さそうな声が漏れた。ピアス男の口元が吊り上がる。
『チンポに響くいい声だ。好きだぜそういうの』
『くっ!黙れ……黙れえっ!!!』
『いいや、まだまだ言い足りねぇな。ここまで来て感じてねぇとか、白々しいウソ抜かすバカにゃよ。だいたいテメェ、もうドナン浣腸の効果なんざとうに切れてんのに、ケツがぐっぱり開きっぱなしじゃねえか』
『そ、それは……お前が後ろでしてるからだろうっ!』
『にしてもだ。普通はいい加減狭まってくるもんだぜ。お前みたいに武道やってる奴は、8の字筋が鍛えられてっから、余計に戻りは早ぇもんだ。実はケツでされんのがきんもちよくてよぉ、テメェの意思で括約筋トロかしてんだろ?』
 ここが決め時だとばかりに、畳み掛ける。言葉の真偽は判らない。ドナンの効果がどれだけ持続するかなど、普通に生活を送っていれば知る機会はない。だからこそ、その言葉を否定しきるのは難しかった。特に心が揺らいでいる人間は、自分を疑いがちだ。ありえない理論でも、自信満々に言い切られれば、それが真実だと思えてしまう。

『違うっ!! 俺は、俺はおかしくなんか、ないっ!!!』

 藤花は目を泳がせながら、不安定な声色で叫ぶ。そして曲げた左足で右足の甲を踏みつけはじめた。まるで幻惑の中、ナイフで身を傷つけて正気を保とうとするように。
『くひひっ。どうした、刺激が足んねぇか変態女? なら協力すんぜ!!』
 ピアス男はそう言って、弄くりまわしていた乳首を捻り上げる。乳房全体が変形するほどの強さで。
『んぐうううっ!!!』
 藤花は天を仰いで呻いた。彼女の過去映像を見た人間なら誰でも、それが彼女の限界を示す仕草なんだとわかる。クリトリスとアナルの同時責めで深く絶頂した時も、ドナン浣腸で決壊した時も、そうだった。
 右足への踏み付けが止まる。左足の裏が床につき、身体全体が芯を失ったように傾ぐ。その結果、彼女の震える脚が選択したのは、内股だった。いつもどっしりと地を踏みしめる彼女らしくもない、女の子の立ち方。
 『大和男児』の首が、切り落とされた瞬間だ。
「ひひひっ、可愛くなっちまって。ケツん中も締まってきたなあ。俺のチンポブラシに、粘膜が甘えてきてんぜ?』
 ピアス男は上機嫌で藤花の恥骨を抱え直し、腰の振りを再開する。しかも今度は、自分が腰を打ちつけるだけじゃない。地に根ざすことのなくなった下半身を、自分の方へ引き寄せもしつつの双方向ピストンだ。となれば当然、腸奥を貫く衝撃も倍になる。今の藤花に、それを撥ね退ける気力はない。
『ああっ、あはぁああ……あっ、あっ、あっ……!!』
 はっきりとした喘ぎを漏らしながら、されるがままに腰を揺らす藤花。
 もはや日本刀どころか、風にそよぐ柳も同然だ。その変わり果てた姿をしばらく捉えてから、モニター画面は黒に染まった。


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 暗転したモニター画面を前に、立ち尽くす。
『絶叫が続く動画につき、他のモニターよりも音量を下げております』
 そのテプラが目に入った。
 なるほど、調整は必要だ。クリトリスで絶頂していた動画でも叫びは凄かったが、この動画には及ばない。声の大きさも、その悲惨さも。出来ることなら、いっそ音声などなくして欲しかった。憧れすら抱いた『男児』の崩壊を、生々しく知ってしまうぐらいなら。

 だが果たして、本当に彼女はもう駄目なんだろうか。
 3つの頃から稽古に明け暮れてきたという彼女は、芯が強いに違いない。雨が降ろうが風が吹こうが、そう易々と心が折れたりはしないはずだ。
 俺はそう願いながら、最後のエリア……『8日目』へと足を踏み入れる。黒山の人だかりと、その連中の顔に浮かぶ薄笑いに、嫌な感じを受けながら。


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 映像は、女の肛門のアップから始まった。
 慎ましかった桜色の蕾は、もうその面影もない。プレイ前らしき今も、指の2本ぐらいなら難なく入りそうな隙間が空いている。菊の輪のひとつひとつも紅色に膨らみ、若干とはいえ外にめくれている。
『すげぇな。もうアナルマニアの貫禄だぜ』
 前の動画で散々耳にした声が茶化す。
 カメラが少し引かれ、撮影場所の背景が映り込んだ。もはや半ば藤花の専用室と化している、ガラス張りのバスルームだ。周囲にはいつも通り、客の姿もある。
 ただ、いつもと違う事がひとつ。藤花が、拘束されていない。
 これまでは藤花がどれだけフラフラになっていても、しつこいぐらいに縄や手枷足枷が取り付けられていた。前の動画では2回も縛り直された。
 とはいえ、それ自体は仕方のないことだ。怒りに任せて暴れ、フロア中を混乱の渦に巻き込んだ前科がある以上、行動を制限するのは当然。だからこそ、そんな猛獣にも等しい藤花が拘束されていないのは異常だ。映像を見る限り、バスルームの中には彼女とピアス男の2人しかいないのに。
 ではなぜ、拘束されないのか。決まっている。その必要がないと判断されたからだ。もはや藤花は脅威ではない。大立ち回りを演じる気概はない。その烙印を押されたということだ。
 俺には、それがまたショックだった。

『んじゃ、始めっか。テメェの大好きなドナンをよ』
 ピアス男がそう宣言し、洗面器を引き寄せる。ガラスの外で客が沸き立った。
『大好きな訳……ないだろう』
 ぼそりと、そう呟く声がする。俺は最初、それが藤花のものだと思えなかった。ギャラリーの誰かの声が入っているんだと思った。いつも堂々と己の信念を訴えていた彼女のイメージとは、あまりに違いすぎたから。
『ほう。テメェ昨夜の問答を、また蒸し返す気かよ? かーっ、恩を仇で返された気分だぜ。二回目のドナンファックでガチ泣きしてっから、特別にアナル舐めで勘弁してやったってのによぉ!』
『…………ッ!!!』
 冷ややかな声で発された一言に、藤花の体が強張る。
 どうやら昨日の映像には、非公開の続きがあったようだ。これまでの映像でカットされていた場面を考えると、ピアス男の言うように“アナル舐め”だけで済んだのかは疑わしい。男の肛門に舌を這わせ、その先があったんじゃないか。そしてその結果、藤花に『もはや脅威足りえない』という烙印が押されたんじゃないか。つい、そんな風に考えてしまう。
『まあいい。なら、今日で中毒にしてやるよ。改めてな』
 ピアス男は、ガラスの浣腸器でドナン液を吸い上げ、無遠慮に藤花の腸内へと注ぎ込む。今回もそれが2回繰り返された。さすがに3回目はない。昨日の映像を見る限り、そんな事をしたら多分、藤花の肛門は使い物にならなくなるだろう。今彼女に注がれたのは、それほどの劇薬だ。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ……』
 藤花は這う格好のまま、深めの呼吸を繰り返していた。緊張した感じではあるが、まだまだ規則正しい息遣い。だが、それも今だけだ。
『さ、栓するぞ』
 ピアス男は浣腸器を戻し、また別の道具を手に取った。小さな風船にチューブと握りのついたもの。
『こいつはアナルバルーンっつってな、腸の中で膨らむんだ。シンプルだが使い勝手のいいストッパーだぜ。これから何度も使われるだろうから、よく慣れとけ』
 ピアス男の手が、風船部分を肛門の中へ押し込んだ。そしてポンプ部分を何度も握り込む。
『うあ……っ!?』
『すげぇだろ。身体の内側から粘膜を圧迫されると、脳が全力で危険信号を鳴らすんだよな。ま、気にすんな。ひり出せないレベルまでは膨らませるがよ』
 ピアス男は笑いながら、何度も何度もポンプを握り込む。シュッ、シュッ、と音がし、藤花の尻が震える。あるいはその震えは、すでにドナンの効果が出ているせいかもしれない。なにしろ彼女の肛門からは、バルーンによる栓が間に合わなかった汚液が、早くもあふれ出しているんだから。
 
 この日も藤花は、たっぷりとドナンを我慢させられた。
 昨日とは趣向が違うが、陰湿さでは大差がない。
『はーっ、はーっ、はーーっ、はぁーーっ……!!』
 重苦しい呼吸を繰り返す藤花に対し、ピアス男は嫌がらせを繰り返す。例えば、バルーンをさらに膨らませたり。あるいは逆に少しだけ空気を抜き、中途半端に汚液を噴き出させたり。
 さらには極細かつ凹凸のあるステンレス棒を、尿道に出し入れさえする。客が興奮気味に尿道ブジーと呼んでいたこの責め具は、かなり刺激が強いらしい。
『や、やめろ……垂れ流しに、なる…………』
 尿道にブジーが挿入されはじめたとき、藤花はぜぇぜぇと肩で息をしながら、初めて後ろを振り返った。だがピアス男の指は止まらない。
『ああそうかよ。これも昨日の問答の繰り返しになるが、ションベンの穴拡げられんのとクリにピアス嵌められんの、どっちがいいんだ? 俺は横に貫通させるピアスがオススメなんだがよ』
 そう問われれば、藤花は悔しそうに尿道と答えるしかない。どっちも不可逆な責めには違いないが、ピアスという証を刻まれるのは流石に避けたいんだろう。

 ピアス男は、ゆっくりと尿道ブジーを前後させながら、そのうちクリトリスにも手を出しはじめた。奴によると、尿道の奥は薄皮一枚を隔ててクリトリスの根元と接している。だから尿道を開発する事で、自然とクリトリスの感度も上がっていく……らしい。
 事実、尿道にブジーを抜き差しされながら、オイルを塗されたクリを扱かれる中で、藤花は何度も絶頂していたようだ。
 最初こそ必死に耐えていたが、そのうち自分の左腕を噛んで声を殺しながら、いぐいぐいぐ、と呻くようになった。元々隠しごとが得意なタイプには見えない。それで意地さえ張り通せなくなれば、自然と解りやすい反応になるんだろう。

 問題は、これらの嫌がらせが、ドナン浣腸と平行で行われていることだ。
 あまりに強すぎる便意で、痙攣し、失神し、白目を剥き、泡を噴く、最強最悪の浣腸。それに悶絶しているところに、尿道やクリトリスからも無視できない苦しさや快楽が発せられる。苦痛と快感の板挟みになり、狂いそうになることだろう。
 実際、藤花も苦しみ抜いていた。
 犬の交尾と揶揄されるほど、下痢の音を響かせる腹部を上下させたり。
 歯を食いしばって天を仰いだかと思えば、俯いて何かの液体をタイルに垂らしたり。
 藤花の後方に位置するカメラには、その表情は映らない。だがガラス越しに見物している客の表情から、悲惨な状況らしいという推測はできる。
『昨日の映像よりひどい』
『若い女のする顔じゃない』
『目隠ししてやった福笑いのようだ』
 そんな言葉も聞き取れる。あの凛とした美貌が、どれだけ崩れれば福笑いなどと形容されるんだろう。初日の時点では、調教対象の6人の中で、最もそれから遠い存在だったはずなのに。

『もう……許してくれ。ほんとうに、意識が、保てない……』
 腹から異音を轟かせつつ、藤花がとうとう音を上げた。するとピアス男は、その言葉を待っていたとばかりにクリトリスから手を離す。腕にかかった黄色い液を振り落としながら。
『そうか。ま、俺ァいいけどよ。問題は、お客が許してくれるかだな』
 ピアス男は藤花の腕を取って立ち上がらせ、痙攣で足元のおぼつかない彼女を、バスルームの壁……つまりガラスの前に立たせる。
『お、何だ何だ?』
『おほほっ、そんな近くで見せてくれんのかよ!?』
 客達はそれを見て、一斉に藤花の対面へと集まりはじめた。
『……いや……普通にさせてくれれば、いいんだが……』
 藤花は凍えるように震えながら、手で胸とあそこを覆う。これも意外な反応だった。ほんの2日前までの彼女なら、手で隠すのではなく、「見ると殺す」という眼光で客の目を逸らさせていたはずだ。
 その彼女らしくない仕草を、ピアス男が荒々しく払いのける。
『したけりゃ、お客さんにお願いするんだ。「私の汚いウンチを見てください」ってよ』
 ピアス男がそう言うと、藤花の眉が動いた。怒りとも困惑ともつかない角度だ。逆に客の方からは拍手と歓声が起きる。
『そ、そんなこと……』
『言わねぇってんなら、栓は外さねぇ。昨日みてぇに栓をぶっ飛ばすまで我慢しろ。ただ、気ぃつけろよ? 昨日は滑りのいいアナルプラグだったから上手く抜けたが、今日は摩擦の強ぇゴム風船、しかも限界まで膨らませたやつだ。んなもん無理矢理ひり出したら、ケツが裂けてもおかしかねぇぜ』
 渋る藤花に対し、ピアス男は淡々と答える。威圧的でないだけに、その言葉には妙な真実味があった。だからこそ、藤花は迷う。何分も葛藤する。
 だが結局、生理的な欲求に抗いつづけるのは無理だ。下腹から凄まじい音がなり、肛門から破裂音がし、バルーン栓を越えた汚液が太股を伝いだした頃。
『…………しの……ない……を、……てくだ……ぃ…………』
 藤花は俯いたまま、何かを呟いた。宣誓の言葉らしいが、いかんせん声が小さすぎる。
『ああ? 聴こえねーよ。もっとデケェ声出せや、俺らに啖呵切ってた時みてぇによ!』
 ピアス男が苛立ちを見せ、客も口々に再宣誓を求める。
 藤花は、唇を噛み、手を握りしめた。そして腹の音に急かされたように、再び口を空ける。

『 わたしの汚いウンチを、見てくださいっ!!!! 』

 涙を零しながら、藤花は叫ぶ。剣道の気合の声より、もっと大きいかもしれない。それは映像内で音割れを起こすほどで、ピアス男も客達も、全員が耳を押さえている。
『うおっ……お前、バカか!? デケェ声っつったけど、限度ってモンがあんだろうが! どんだけ融通利かねぇんだよ』
 ピアス男は呆れた様子で、アナルバルーンの解放ボタンを押す。ブシュウッと空気の抜ける音がし、直後。
『あ……くあああああ゛ぁ゛ぁ゛!!!』
 藤花の悲痛な叫びと共に、決壊が始まった。ガラス盤に薬液を叩きつける形だから、外にいる客には開ききった肛門から太股の痙攣具合まで、すべてが見えていることだろう。


 そして、責めはこれで終わりじゃない。
 この日の藤花は、排泄の直後、客に肛門を晒すことを強いられた。
 まだ太股が痙攣したままの状態で、客の方へ尻を突き出し、自らの両手で尻肉を割りひらく。その屈辱は相当なものだろう。
 散々見世物になり、口汚い言葉を浴びせられても、まだ終わりじゃない。
『よし。今日ここに来てるダンナ方には、特別サービスだ。上のディープスロートフロア解禁って誘惑にも負けねぇ、生粋のアナルマニアだしな』
 ピアス男はそう言って、巨大なディルドーを取り出した。ただし、一般的のディルドーとは2つ違うことがある。
 一つは、そのディルドーがスケルトン……つまり透明な素材でできていること。
 そしてもう一つは、底に巨大な吸盤がついていることだ。
 奴はその吸盤を、バスルームのガラスに吸着させた。吸盤はかなり強いのか、ディルドーの自重にも負ける気配がない。吸盤も含めてすべての素材が透明だから、バイブ越しにも向こうの景色が見える。そしてその高さは、藤花の腰丈よりやや下だ。
『さて、準備完了だ。この後どうするか判るよな?』
 ピアス男に問われ、藤花は奥歯を軋ませた。

 こうして藤花は、より一層の恥辱を味わうことになった。
 中腰の姿勢のまま、ガラスに尻を押し付ける形でディルドーを迎え入れる。ガラス向こうの客に、腸の奥までを晒しながら。
 客はもう大騒ぎだった。ガラスに張り付けるポジションを醜く奪い合いながら、興奮気味に何かを叫んでいる。俺はそこに混じりたいとは思わないが、興奮の理由はよくわかった。
 まず何といっても藤花はスタイルがいい。ダンサーやスポーツインストラクター系の健康美人だが、同時に胸も大きいとなれば、男の視線を集めるのも当然だ。あるいは俺のように、凛とした雰囲気に魅力を感じる人間もいるだろう。猛獣が牙を抜かれていくのを面白がる人間もいるだろうし、その猛獣に逆鱗に触れて怪我を負い、逆恨みしている人間もいるようだ。
 ともかく、少なくない人間が、藤花に興味を抱いているのは事実だ。
『んっ、く……ふん、んん……ん゛っ!!』
 藤花はディルドーに腰を打ちつけながら、つらそうに呻いていた。

『気持ち良さそうな呻きだ。やはりドナン浣腸の後だと、腸が敏感になっているらしい』
『羞恥もあるでしょうね。何しろ、腸の奥まで覗かれてるんですから』
『しかも自分で腰を振る、公然アナニーだぜ。俺なら途中で、何やってるんだろうって情けなくなるわ』
『まだドナンの残り汁が噴き出してますしね。この大人数の前で下痢便を噴き出しながらディルドー遊びだなんて、私にはちょっと……』

 客は口々に感想を漏らし、悪意ある笑みを浮かべる。そしてその悪意が、藤花への恥辱責めをさらにエスカレートさせていった。
『ほら、新品だぜ』
 ピアス男が、藤花に竹刀を手渡す。藤花は、この時ばかりはさすがに眼光の鋭さを取り戻した。だがピアス男がじっと眼を覗き込むと、眼を見開いて視線をそらす。どうやら、調教師との上下関係は完全に刷り込まれてしまっているようだ。
 今までどおり中腰でディルドーを咥え込んだまま、竹刀でビーチボールを割ること。それが藤花の新しい課題だ。
 中腰でアナルを抉られる状態では、充分な力は発揮できない。結果、いかに藤花といえど、なかなかビーチボールを割ることはできなかった。
 ぱすっ、と情けない音で竹刀が振り下ろされるたび、客からは野次が飛ぶ。
 肛門でよがってるからそのザマなんだ。
 剣術道場の娘として恥ずかしくないのか。
 剣道の全国大会優勝など疑わしい、その歳で色仕掛けでもやったのか。
 そんな、プライドを踏みにじるような野次だ。
『く、く……っふ、くうう゛っ……うああァッ!きぃええエッ!!』
 藤花は、顔を真っ赤にし、悔し涙を流しながら竹刀を振るいつづける。だがそうして感情を乱せば、ドナンに荒らされた肛門にも余計な力が入ってしまう。結果、彼女は必死になればなるほどに恥を晒すことになった。
 ディルドーの出入りする肛門から、みっともない音で放屁を繰り返したり。凄まじいがに股を晒したり。
 そして、最悪なのは終盤だ。何度叩いてもビーチボールを割れない藤花は、腰を据えての一打を放とうと思ったんだろう。あえてディルドーを根元まで咥えこみ、尻肉をガラスに宛がった状態のまま、ぐっと重心を定めた。するとまさにその瞬間、ディルドーが結腸の入口を抉ったらしい。
 ──ドナンで直腸やら結腸溶かされる感覚はヤベエ
 前の動画で、調教師が言っていた言葉を思い出す。
 ほんの一瞬の偶然で、藤花は深い絶頂に呑まれてしまった。

『んあ゛お゛っ!?』

 虚を突かれたような声がし、藤花の背中が仰け反った。そして割れ目の辺りから飛沫が吹き、手から竹刀が滑り落ちていく。
『おお、なんだなんだ!?』
『潮噴いたのか!?』
『アナル……つか、結腸アクメ!?』
『うわ、すげぇ足ケイレンしてるよ。がに股で……』
 客がそう騒ぎ立てる中、藤花はなおも結腸の入口を串刺しにされたまま、絶頂の余韻に浸るしかなかった。背後のガラスに後頭部を預け、頬に沿って涙を零しながら。
 

 そうして散々に恥を晒した後は、公衆の面前でのアナルファックが始まる。昨日と同じくピアス男が2重にペニスサックを着け、ゴーヤのような怒張を作っての肛門凌辱だ。
 直前に結腸で達しているからか、それとも心が弱っているからか。雑にタオルを敷かれたタイル床に這う格好を取らされた時点で、すでに藤花は弱々しく見えた。体を支える手足に力は感じられず、切れ長な瞳は水平にまで下がっている。
 それでも、完全に矜持を無くした訳でもないらしい。カメラが顔をアップで撮れば、口元を引き締めてレンズを見据える。背後でピアス男が巨根で尻肉に『挨拶』すれば、肘を狭めて顎を引く。まるで竹刀を構えるように。
『……っ!!!』
 極太が狙いを定め、尻肉に割り入った時でさえ、一瞬口を開いただけで声は上がらなかった。

 ただ、気持ちがいいのは確からしい。カメラが藤花の頭側から結合部を映す中、ゴーヤのような逸物が出入りするたびに、映像下部で背中と尻肉が引き締まる。
『……んひぃっ……ぐ、ぐひぃっ……!! ……う、んっあ、あ……っ!!!』
 そんな小さな呻きも録音されている。
『バカみてーに我慢強いお前でも、さすがに声が抑えらんねぇか。ドナンは肛門から結腸まで、満遍なくトロかすからな。しかも刺激が強ぇだけに、やればやるほどハマっちまう。言ってみりゃケツでのキメセクよ』
 ピアス男はそう囁きつつ、藤花の脚の付け根をがっしり掴んで腰を打ち込んでいく。藤花の肛門は、ドナンのせいで開ききっているんだろう、極太が滑らかに出入りする。カメラはその結合部を中央に捉えたまま、男の胸板と藤花の肩甲骨までが入る程度の俯瞰で撮影を続けていた。
 派手さはない。でも、それだけに生々しい。
 パンパンという肉のぶつかる音よりも、呼吸音の方が大きく聴こえた。男はさすがプロという感じで、全く同じリズムでの呼気と吸気を繰り返す。逆に藤花の息は明らかに乱れていた。マラソンで息が上がった時のような息だ。
『体力自慢の剣道娘も、さすがに息が上がってきたな』
『ええ。泣いているようにも聴こえますな』
『無理もないでしょう。何しろ、あんなデカいものを出し入れされてるんですからね。苦しくてキモチよくて、堪らないはずですよ』
『単純に肺が潰されているというのもあるかもしれませんね。体格がいいとは言っても、まだ身体の出来上がっていない娘っ子ですから』
 バスルームを囲む観客のものだろう、色々な声色が映像に入り込んでいる。その中でピアス男は、淡々とした力強いアナルセックスを繰り返す。アナル性感を徹底的に目覚めさせようとでも言うように。
 ぐちゅぐちゅと音が鳴るたびに腰が浮き、荒い息が漏れる。それが何十度も続く。
『そら、また深ぁくいくぜ?』
 脚の付け根に掌をめり込ませながら、ピアス男がぐうっと腰を突き入れた。
『んぐうう゛っ……!!』
 藤花から呻きが上がり、画面端で太股が引き締まる。
『へっ、直腸の奥がにゅるにゅる動きやがる。それともこりゃ、ドナンで蕩けた子宮の動きか? サックを二枚も被せてっと幹の感覚はねーが、そのぶん先っちょは敏感になるんだよな。せっかくのドナンファックだ、お前もたっぷり粘膜の快感に浸れよ? つっても、言うまでもなく感じてるみてぇだがな』
 ピアス男はそう囁きながら、円を描くように腰を回す。たぶん直腸奥の粘膜ごしに子宮を押し上げているんだろう。
『んん、あ、あ゛!! や、やめッ……!!』
 藤花の肩甲骨が狭まり、背中の中心に深い溝が浮く。アナル舐めの時、無意識に示していた反応とそっくりだ。ただし、今の藤花には意識がある。にもかかわらず、反応を止められない。
 ピアス男の顔はカメラに収まっていないが、それでも笑っているのがわかった。奴は一番の奥まで挿入したまま、グリグリと腰を押しつけはじめた。妙な動きだ。それが何をしているのかは、すぐにわかる。
『くあ゛!? そこは……っ!!!』
 藤花が悲鳴を上げ、腰を左右に捩りはじめる。だが、男の腕力から逃げるのは不可能だ。
『ああ、結腸だよ。チンポじゃ入口くすぐる位が限界だが、ドナンで敏感になってる今は効くだろ? さっきもディルドーがここ入って、すげぇ声でイってやがったからな』
 ピアス男は駄目押しとばかりに腰を押し付けてから、またピストンを再開する。パンパンと肉のぶつかる音と、ぐちゅぐちゅという水気の多い攪拌音がバスルームに響き渡る。
『…………ふッ!!! …………んんん゛ッッ!!!!!』
 藤花は、声を押し殺してそれに耐えているようだった。
『頑張んなって。こっちは昨日、散々ケツでやってんだぜ。お前の弱ぇトコぐらい、全部わかってんだよ』
 その言葉通り、ピアス男の腰遣いに澱みはない。確実に何らかの狙いを持って、力強く腰を打ちつけていく。そして、その狙いは確実に成果を出していった。
『ああ……あっ、あ!! んん゛……うんん゛……っ!!!』
 艶かしい声が漏れては途切れ、また漏れる。カメラが少し引くと、這う格好で歯を食いしばる藤花の姿が映り込んだ。まさに必死だ。
 男が腰を打ち込むたび、よく鍛えられた肉体が縮こまる。首から肩にかけての筋肉の凹凸は凄まじいが、床のタオルを握りしめる腕は女の子そのものだ。皺の寄る眉根は、限界まで緊張する中で、ある瞬間ふっとリラックスする。だがすぐにそれを拒絶するように、また眉を顰める。その繰り返しだ。
 外から見える部分だけでも、藤花の限界が近いのは明らかだった。
 そして何度も映像で見た通り、セックスでの内的な変化は、外から見える部分よりもずっと激しい。ピアス男が一旦逸物を引き抜くと、それをまた実感させられた。
『つか、マン汁多すぎだろ。俺のシモの毛が全部濡れちまった』
 その言葉で、カメラが斜めに位置を変える。雫の滴る男の股間と、藤花の脚の間が映り込むように。
『マンコがどうなってるか、撮っといてやるよ。後で自分でも見られるようにな』
 ピアス男が背後のスマホを拾い上げ、動画モードの起動音が響く。

 一瞬の暗転を挟んで、映像が切り替わった。

 アングルは、結合部を真下から捉えたものになっている。スマホを藤花の腰の下に置いてるんだろう。
 アップで映し出されるのは、尻肉に出入りする空き缶並みの逸物。凄まじい大きさだ。それが難なく抜き差しされるなど、異常としか言いようがない。そしてその“異常”が何十分も繰り返されれば、何かが軋んで当たり前だ。
『……っと、位置が悪ぃな』
 ピアス男の声がし、カメラの位置が移動する。抜き差しされている部分の少し下、割れ目が大写しになるように。
 まさに、藤花が壊れつつあることを象徴するような光景だった。肛門に逸物が出入りするたび、割れ目から雫が滴り落ちてくるんだから。
『あ、あ……あぁぁ゛、ぁあぁ……ああ゛っ!!!』
 藤花は、もう喘ぎ声を抑えきれていない。歯を食いしばる余裕すら失くしたらしく、腰の揺れに合わせて艶かしい喘ぎを漏らしつづけている。
『イイ声が出てんなオイ、可愛いぜ“オトコ女”。……っと、この呼び方ももう違ぇか。お前はもう、オトコ女ですらねぇ。ケツだけで濡れちまう、ただのメスだ』
 ピアス男が、洗脳するように囁く。
 メス。極限下で耳にしたその言葉が、誇り高い藤花の支えをへし折ったのか。
『くかっ、あ、ああああぁ……!! ゆ、ゆるして、くれ……陸兄ぃ……篤志、勇、聡太、俊春…………父さん…………!!!』
 藤花は切ない呻きの後、家族らしき相手への謝罪を始めた。そうして懺悔を済ませた後、彼女はいよいよ深みに嵌まりはじめる。

『あっ、あっ、ひっ、あああぁっ……!! はぁっ、はぁっ……んああああっ、ひっあああっ、はああ、はあっ、ひっ、ああっ!!!』

 はっきりとした喘ぎ声が、絶え間なく発される。場所がバスルームだけに、その声はよく反響した。カメラに接写される割れ目からは、何かの栓が抜けたように愛液があふれ続けてもいた。
『はっはっは、スゲェ声だ! でもしゃーねぇよな、ケツでイッちまってんだもんな?マンコにゃまだ指すら突っ込まれた事がねぇってのに、何遍も子宮イキしやがって。剣道屋だけに一直線だなぁ、このド変態女が!!』
 ピアス男はそう言いながら、極太を力強く叩き込む。割れ目を接写するアングルで、伝わってくる情報は多くない。それでも、充分だ。
 逸物が深く叩き込まれる瞬間には、ひいっという声がし、肛門周りと割れ目が収縮する。ビラビラも閉じるから、雫の滴りは一旦途切れる。凍りついたように。
 だが逸物が引き抜かれれば、凍った時間が動き出す。ああああ、と本当に堪らなさそうな声が響き渡り、肛門と膣の筋肉が弛緩していく。ピンク色の縦筋が口を開き、ぽたぽたとカメラへ雫を垂らす。
『いい具合だ。こなれて、締まって。普通なら2ヶ月はかかるってのに、8日でここまで仕上がるとは恐れ入ったぜ。これならお客にも出せるな。ま、その前に……俺もそろそろ限界だ!!』
 ピアス男は荒々しい口調で叫ぶと、突き込みのペースを上げる。
『うあっ!! はっ、はぁっ、あっ!!!』
 藤花の喘ぎも早まり、そして数秒後。
『出るぞ! 結腸の中に流し込んでやっからよ、よく味わって消化しろや!!』
 ピアス男はそう叫ぶと、一番の奥まで挿入しきってからグリグリと腰を押し付け、そのまま射精体勢に入る。
『あ、やめろ、やめっ…………あ、あ……ああああっ!!』
 藤花は絶叫した。おそらく、腸奥に熱い精液を浴びると同時に。
『くくっ、見たまえよ。あれほどに仰け反って……』
『表情も凄まじいですな。下の奥歯まで丸見えだ』
『うんうん。気の強い女が“壊れる”瞬間は、何度見ても感動しますね』
 ギャラリーの言葉から、藤花の様子が嫌でも想像できてしまう。
 映像の中で、ピアス男の睾丸は激しく収縮していた。かなり大量に射精しているらしい。
『はああ、最ッ高だぜ。ケツ粘膜と子宮側からの圧迫で、たっぷりイジめられちまったからな。出る量がハンパねぇ』
『あああ……く、うっ……』
 愉悦に浸るピアス男と、悔しげな藤花。声色は対照的だ。

 やがて逸物が抜き出されると、ぽっかりと拡がった肛門から白濁があふれ出す。それは、藤花の決壊とあふれる涙を象徴しているかのようだった。
『ふーっ、出た出た。はっ、何だよお前、ライオンが吼える真似か?』
 ピアス男は満足げな息を吐きながら、藤花を嘲笑う。そして、さらに言葉を続けた。
『だが、これで終わりじゃねぇぞ。水分補給しつつシャワ浣して、再開だ。今はまだドナンのおかげでケツが緩んでっから、出し入れもスムーズだったが、こっからは時間が経つごとにドナンの効果が薄まっていく。このイミが解るか? つまり……このデカマラを、シラフに近ぇ状態で受け入れるってこった』
『な……っ!!!』
 ピアス男の言葉に、藤花の身が強張った。
『そうそう、イイ顔だ。睨みきれねぇって感じのその顔が、一番見てて楽しいぜ。腰が立たなくなるまでヤッてやるから、まぁ堪能しろや』
 悪意に満ちたその一言を最後に、カメラが拾い上げられ、悪魔じみたピアス男の顔を大写しにして暗転する。


*********************************


 ついに、見てしまった。あの藤花の心が、ポキリと折れる瞬間を。
 左を見ても、もう次のエリアはない。何もないスペースと、入口横に設置された自販機が見えるばかり。
 いや……違う。次はある。部屋の中央奥、厚い扉に隔てられた先に、現在の藤花の姿があるはずだ。
 正直、もう充分だ。あまりにハードなものを見させられつづけて、胸焼けを起こしている。
 だが同時に、俺の内にはこの先を見たいという気持ちもあった。水っ腹でなお、激しい喉の渇きを覚えるように。
 死にゆく愛犬の最期を、せめて看取りたいといった感情なのか。
 それともこの情動こそ、本来の俺の性質なのか。
 今朝の夢を思い出す。
 あの育ちの良さそうな女は、俺の手の届く場所で壊れていった。あれこそ、俺の願望なんじゃないのか。もしそうなら、俺は立派にこの施設にいる資格がある。紛うことなき外道なんだから。

 一度その疑念を抱いた以上、俺にはもう帰るという選択肢はなかった。
 確かめなければならない。俺がどういう人間なのか。この先に待つ光景を見て、どう感じるのかを。


              ※


 扉を開けて中に入ると、ホテルのフロントを思わせる場所に出た。フロントの左右にはやはり分厚いドアがあり、『A』と『B』の文字が刻まれている。さらに、順番待ちが発生した場合に備えてなのか、左右の壁際には長ソファと雑誌棚が備え付けられてもいた。
「いらっしゃいませ。プレイルームへようこそ」
 カウンターに立つ2人の女が、恭しく俺に頭を下げる。どちらもアナウンサーを思わせる極上の美人だが、ほぼ丸裸だ。乳房とあそこを囲むように細いボンデージベルトを装着しているが、藤花の着けていたものと同じく、かえって性的な印象を強めている。しかし、彼女達に恥じている様子はない。まるで精巧なロボットのように、ぴんと背筋を伸ばしている。
「AコースとBコース、どちらをご覧になりますか? 現在、Aコースの調教対象はこちらの4人、Bコースの調教対象はこちらの1人のみとなっております』
 右の受付嬢が、そう言って5人分の顔写真を並べる。さらりと流されたが、おかしい。初日の情報と食い違っている。
「4人? 初日の映像だと、Aコースには5人いたように思うが」
「確かに、当初は5人おりましたが……6日目に1人が調子を崩し、以降はお客様への公開を控えさせていただいております」
 左の受付嬢が、能面のような表情でそう告げた。日本語とは便利なものだ。婉曲的な表現をすれば、いくらでもショッキングな事実を伏せることができる。たとえその意図するところが、『精神崩壊』あるいは『肉体の欠損』などであっても。

 6人の顔写真の上には、AとBという記号が印字され、右側には今までに施された調教内容が列記されていた。
・アナル舐め
・アナル異物挿入(指、ガラス玉、スーパーボール、ミニトマト等)
・浣腸(湯/グリセリン/酢酸)
・アナル拡張:直径4cm迄(アナルプラグ2号を10分キープ)
・アナル挿入:深さ16cm迄(ディルドー2号クリア、3号挑戦中)
・バラ鞭、パドル
・ニップルピアス
・水責め
・公然排泄(大、小)
・ディープスロート
 Aコースの4人はそんな具合だ。何の変哲もない女学生が一週間で受けた調教としては、この内容でも充分に地獄だったことだろう。だがBコースとなれば、文面のハードさが違う。
・アナル舐め
・アナル異物挿入(フィスト、玉蒟蒻、ボーリングピン、ゼリー 他多数)
・浣腸(湯/グリセリン/酢酸/トマトジュース/青汁/塩化マグネシウム溶液 等)
・アナル拡張:直径12cm迄(アナルプラグ6号を8時間キープ)
・アナル挿入:深さ25cm迄(ディルドー8号クリア)
・バラ鞭、一本鞭、乗馬鞭
・水責め/汚水責め/汚物漬け
・飲尿
・食糞
・公然排泄(大、小)
・ディープスロート(嘔吐経験有)
 そんな内容が無機質に列挙されている。字面を追うだけでも眩暈がしそうだが、これも一種の婉曲表現だ。たとえば『水責め』というたった3文字の責めにしても、実際のプレイ映像は鳥肌が立つほどに壮絶だった。
「……Bコースは、凄いんだな」
 ぼそりと俺が呟くと、それを賛辞と受け取ったのか、左右の受付嬢が頭を下げる。
「はい。皆様からご好評を頂いております」
「連日、入場規制が掛かるほどの盛況ぶりでございます」
 機械音声のように抑揚のない口調、互いに言葉を被せ合う配慮の無さ、光を宿さない虹彩。態度こそ恭しいが、この受付嬢2人もマトモではなさそうだ。俺がそう思った時。

「くーっ、もう辛抱たまらんぜ!!」

 ガラの悪い声と共に、Bコースの扉が開いた。カジュアルな格好の中年男が姿を現し、受付に近づいてくる。ただし、カウンターの内側へ入り込む形で。
「お客様。現在は、別のお客様の対応中でございますので……」
「んないいんだよいいんだよ、2人居んだから。悪いな兄さん、コッチ借りるぜ」
 男はそう言って、右側のフロント嬢の腕を引き、カウンターの外へと連れ出した。そして長ソファに荒々しく押し倒すと、大股を開かせて肛門に逸物を押し付ける。
「お……おいおい。いきなり何やってんだ、あんた!?」
 俺は面食らいながらも叫ぶ。さすがに目の前でレイプ現場を目にしていて、スルーという訳にはいかない。すると男は俺の方を向き、怪訝な顔をする。
「何、って……ははあ、なるほど。アンタ新顔かい」
 そう言って1人頷くと、どこか見下したような眼で続けた。
「いいかい新顔さん、よく覚えときな。このクラブにいる女は全員、いつでも気が向いた時に『使って』いい奴隷なんだよ。エレベーターガールだろうが清掃係だろうが、受付嬢だろうがな。っつーか、こういう説明は会員登録ん時に聞かされるハズだがな。それとも何かい、アンタも裏ルートから抜け道通って来たクチかい。えらく若いモンなあ」
 男は1人で、気持ちよく論を展開していく。
「く……!」
 反論しようにも、言葉に詰まる。こういう状況は毎度きつい。ここがどこか、自分は何者か、どうやってここに来たか。それらが何一つ判らない状態では、答えようもなかった。
「フン、図星かよ。社会的なステイタスがなくても、カネとコネさえありゃ潜り込めるなんてな。アングラ中のアングラと呼ばれたココも、緩くなったもんだ」
 男は鼻で笑う。奴自身も下町の工場で働いていそうな風体であり、社会的なステイタスがあるようには見えない。だが案外、こうして一方的に主張を通す強引さで、辣腕経営者と呼ばれているのかもしれない。
 奴は俺に見せつけるように、フロント嬢の胸を揉みしだいていた。それを受けるフロント嬢は、一切抵抗する素振りを見せない。それどころか、
「お客様。私共を『お使いになる』場合には、避妊具の着用を推奨いたします」
 そう言って、雑誌棚の上からコンドームを取り出しさえする。
「おっと、いけねぇ。そうだよなぁ。公衆便所なんざ、どんなビョーキ貰ってっか分かったもんじゃねぇからな」
 奴は侮蔑的な言葉を吐きながら、コンドームの包みを摘む。その指は震えていた。
「ああクソ、焦っちまうな、あんなエロいもん見せられちゃあよぉ。珍しくギャラリー参加型だっつうから昨夜シコらずに来たが、辛抱堪んねぇや」
 コンドームの包みが荒々しく破られ、上向きに勃起した逸物へと被せられる。そして奴はフロント嬢に脚を広げさせると、まず割れ目に亀頭を宛がってから、思い直したようにその下へと挿入する。つまり、アナルセックスだ。
「あーあー、緩いなぁオメェ。ゴムの抜けたジャージ穿いてる気分だぜ。あの剣道女の代わりにと思ったが、これじゃ妄想のオカズにもなんねえよ」
「……申し訳ございません」
「ったくよぉ。謝るぐらいなら、部屋に人数制限でも掛けてくれや、5人までとかよぉ。どいつもこいつも、若ぇJKに蟻みてぇに群がりやがって。おかげでこの俺が、こんな賞味期限の切れたアバズレ相手に性欲処理かよ、クソッ!!」
 男は悪態を吐きながら、フロント嬢相手に腰を振りたくる。
 蟻とは、なかなか的確な自己紹介だ。砂糖という価値の高いものが、何の理由か数粒ばかり地面に零れ、そこに黒蟻が群がっている。ここで起きている悲劇は、まさにそういう印象だ。
 果たして俺の望みとは、その蟻に混じって甘美に酔うことなのか。あるいは、その宴を遠くから眺める人間でいることなのか。その答えは、扉の先でしか解らない。

「Bコースを見せてくれ」
 俺はソファの痴態から目を離し、左のフロント嬢に話しかける。
「承知いたしました。せ……」
 彼女はそう言いかけ、そこで口を噤む。感情の乏しい子だが、今はかすかな焦りの雰囲気があった。
 せ──それに続く言葉は何だ。
「おい、どうした」
「……いえ」
 俺が問いかけると、フロント嬢は顔を左右に振る。ロボットのようだった彼女の動きと、明らかに違う。急にどうした。何を隠している。俺の記憶に関する事なのか。
「どうしたと、聞いているだろう!!」
 焦りからか、不安からか。気付くと俺は、つい嬢の肩を掴んでいた。その瞬間、フロント嬢の全身がびくりと震える。
「ひいいっ!!!」
 光を宿さない瞳に、明らかな怯えの色が浮かぶ。
「な……!?」
 俺はその反応に驚き、手を離した。すると、フロント嬢も肩を竦める。
「はっ、はっ、はっ、はっ……!!」
 全力で走った後のような荒い息。なんだ、この異様な反応は。
「おいおい兄さん、乱暴はいかんぜ」
 ソファの男が茶化してくる。奴に押し倒された時、右のフロント嬢は怯えてなどいなかった。乱暴の程度なら、肩を掴んだ俺よりも、レイプ同然に『暴行』している奴の方が上のはずなのに。
 この左のフロント嬢が、特別に臆病なのか。それとも、俺があの下卑た蟻より恐ろしいとでも言うのか。
「……と、取り乱して、しまい、たんヘンな失礼をいたっし、ました。Bコースは、ああ、あちら、右手奥に、なります……」
 左のフロント嬢は、そう言ってBコースの扉を示す。ただし、身体は依然として震えていて、俺と目を合わせてくれることもない。まるで、羆にでも案内をするように。
「ありがとう。…………怖がらせてしまって、すまん」
 俺は感謝の言葉と共に頭を下げ、フロントを後にする。何か言いたげな視線を、扉が閉まるまで感じながら。


              ※


 Bと刻まれた扉を開けると、また通路が延びている。通路は薄暗く、まるでホラー映画に出てくる閉鎖病棟だ。
 通路の右側にはいくつもの扉があり、格子状の窓が取り付けられている。しかし部屋の中は薄暗く、中を覗いても闇が広がっているだけだ。Bコースは藤花1人しか調教対象がいないから、空き部屋ばかりなんだろう。
 ただ一つ、突き当たりの扉からは光が漏れていた。まるで、俺を呼んでいるように。

 扉を開けて中に入る。
 部屋に一歩を踏み入れた瞬間、俺は理解した。ここか、と。
 肛門に竹刀を挿された藤花が激昂し、暴れ狂った部屋も。
 前後から穴を使い回されていた時の部屋も。
 リンチのような水責めを受けていた部屋も。
 ドナン浣腸を施され、放置された時の部屋も。
 すべて、この部屋だったらしい。壁や床の汚れ、シミ。天井に取り付けられた滑車やフック。ガラス張りのバスルーム。どれもこれも、モニターの中で目にしたものばかりだ。
 そして、見慣れたものは他にもあった。
 刺青や迷彩ズボン、ドレッド頭に、ピアス男。動画内で目にした調教師達が首を揃え、縛られた少女を見下ろしている。

 ポニーテールが印象的な少女──藤花。ついに見えることができた。俺にしてみれば、テレビで見続けてきたアイドルを生で拝んでいる気分だ。
 彼女は部屋の壁際で、胡坐縛りを施されていた。上半身は後手縛り、下半身は胡坐を強制する形で足首を縛り上げ、胸元の縄と足首の縄を連結させる縛り方だ。
 彼女の緊縛姿はモニター越しに何度も目にしたが、今は大きく違う点が3つあった。
 1つ目は、彼女が上半身に制服を身につけ、ハイソックスを履かされたままであること。鍛え上げられた裸体も見応えがあったが、“お堅い”女学校の制服を着込んでいると、また印象が変わる。女子グループの中に1人はいる、頼りになる姉御肌……そういう感じだ。またブレザーやハイソックスを着用していることで、調教対象が現役の女子高生である事実を改めて実感させられる。ここの客は女子高生というブランドが好きだから、さぞや気分が盛り上がることだろう。
 2つ目は、目隠しがされていること。視界を奪われれば、人間の感覚は嫌でも研ぎ澄まされる。胡坐縛りの窮屈さも、周囲からの視線も、その他の刺激も、すべてを普通以上に感じてしまうことになる。
 そして3つ目は、彼女が尻を押し付けている場所に、極太の黒いバイブが設置されていることだ。尻餅をつく格好で極太の栓とくれば、例のドナン浣腸を思い出す。さすがにあの砲弾のようなアナルプラグには程遠いが、藤花の肛門から覗く部分は、ビール瓶ほどの太さは悠にあった。ドナンで緩んだわけでもない素面状態で咥え込むのは、相当にきついはずだ。
 しかも、太いだけじゃない。腸奥に届くぐらいの長さもある。なぜ藤花の腸に埋まっているバイブの長さが判るかといえば、そのバイブと同じ物が、藤花の左右で唸りを上げているからだ。たぶん3人を横並びで調教するためのスペースなんだろう。藤花の左右を見る限り、3つのバイブの動きは完全に連動しているようだ。
 そして左側のバイブには、ご丁寧に女の腰から太腿半ばまでを模した置物が嵌めこんであった。
 『特殊シリコン製 重さ20kg』
 バイブの根元には、そう記された紙が留めてある。
 置物には、女らしい肉付きのみならず、膣や子宮、膀胱、直腸に至るまでが空洞で再現されていた。つまり、その中に透けて見える黒バイブの動きを観察すれば、藤花の腸内の様子も判る。どういう角度で、どういう深さで、どこを責められているのか……そういう情報が筒抜けになるということだ。
 この悪趣味ぶりは尋常じゃない。

「んぐぅうっ!!!」
 目隠しされた藤花が白い歯を食いしばり、顎を浮かせる。その左側では、バイブが尾骨の辺りを舐めるように撫ぜていた。最初に見た時より丈が縮んでいる。どうやら、太い根元に収納する形で自在に長さを変え、ピストン運動まで再現しているらしい。
 そしてバイブは、のたうつ蛇のようにゆっくりと長さを伸ばしながら、シリコン内の直腸を臍方向に抉った。それはつまり、子宮頸部を直腸側から圧迫するということだ。
「ッかは…!?」
 閉じあわされた藤花の歯が開き、息が漏れる。太腿が強張って身体が少し浮き、縛られた足首が痙攣する。
「おや、これはイキましたかな?」
「どうでしょうな。しかし、ドナン責めで蕩けることを知った子宮を潰されるんだ。相当な快感には違いないでしょう」
 客達の囁きが聴こえた。奴らは調教師よりもさらに内側、特等席で藤花の痴態を見下ろしている。そしてその言葉は、確実に藤花に届いているようだ。
「…………っ!!」
 口惜しそうに藤花の唇が噛みしめられる。だが、重苦しい羽音を立ててバイブが腸を抉り回せば、どうしても反応せざるを得ない。
「う、くっ……くうぅっ、はぐっ…う、あ゛…………!!」
 藤花は、時に歯を食いしばり、時に喘ぎながら責めに耐えていた。
 彼女からすれば地獄だろう。ビール瓶に近い直径のバイブがみっしりと直腸に詰まり、のたうち回るんだ。その威力の程は、藤花の左側を見ればわかる。
 左のバイブに被さったスイカ大の物体は、メモによれば20kg。それだけの重量がありながら、置物はバイブの威力に振り回されていた。バイブが力強くうねるたび、置物も空中で渦を巻く。時々腰の部分が壁にぶつかっては、ドッ、ドッ、と鈍い音を立ててもいる。
 さすがに藤花の身体は、バイブに振り回されたりはしない。しかし動かないということは、バイブの運動エネルギーを固定された腸内で余さず受け止めるという意味でもある。その凄まじい感覚は、目隠しのせいで上増しして感じられることだろう。耐え切れずに足をバタつかせようにも、胡坐縛りをされた状態ではエネルギーの発散させようがない。結果、
「くぁぁああ゛っ!! いひっ、は……ぐッ、んいいいぃ゛っ!!!」
 こうした生々しい声を漏らして、嘲笑の的になるしかない。
「っはは、また凄い声だ」
「また『はぐっ』が出たな、これで何度目だ?」
「『はぐっ』は直腸を横向きに刺激されると出やすい呻きのようですな。一方で腸奥を背骨側に押し込まれると、『い』の音が出るようです。ほら、今も『んいい』と鳴いてるでしょう?」
「ははは、本当ですな。ではいっそ、バイブの刺激で喘ぎ声を調節して、歌でも歌わせてみては如何です?」
「ほう、面白いですなぁ! 調教師の皆さん、やって貰えますか?」
「……ったく、ダンナ方の発想にゃ参りますよ。さすが、変態としての年季が違う。オッケーっす、やれるだけやってみます!」
 客の要望に応え、ドレッドヘアがリモコンを握り直す。あれでバイブの動きを制御しているようだ。
「まずは、カエルの歌あたりでいきますか」
 その言葉と共に指が素早く動き、直後、藤花の背中が仰け反った。
「んがっ!!」
 連中の狙い通り、『か』と聴こえる悲鳴が響く。そして、それだけでは終わらない。
「かはっ、えあっ、う゛っ! ん…おっ、おお゛っ……ふグ……ぐうう゛っ!!!」
「おう、惜しい。“カエルの”までは聴こえてきましたな」
「流石に、上手く歌わせるにはノウハウの蓄積が足りませんか」
「ふむ。私には、歌を成立させまいとして強引に歯を食いしばったように見えたが」
「なるほど、この女ならやりかねませんな。では、どうするか」
「なーに。何度も歌わせれば、茶々を入れる余裕もなくなっていくでしょう」
「それもそうですな」
「おっし、また最初からいくぞ。お客の前で、何度もハジ掻かすんじゃねーぞ」
「があっ、あ! ぅあっ、んぐっ……ぇあ゛っ!!」
「おいおい、一回目より原曲から遠いじゃないかね」
「しかし、これはこれで面白いですよ。さっきより惨めな声だ」
「確かに。さながら、カエルというよりガマの歌ですな!!」
「ははははっ、上手いことを言う!」
 藤花は、10を超える人間から玩具にされ、嘲笑されていた。嘲笑されれば自尊心が傷つき、余裕がなくなっていく。余裕がなくなれば、ますますバイブの齎す快感に抗えなくなる。その悪循環だ。
 
「でもホント、凄い声出てるよね。アレ、そんなに凄いのかなぁ」
 祭りのような騒ぎの中、ぽつりとそう漏らしたのは若い女だ。茶色い髪を肩の辺りでふんわりとカールさせた、割と可愛い感じの女。
「ほう。興味があるのですか、奈緒子」
 女の横にいる着流しの老人が、興味深そうに目を開く。確かこの二人は、資料館で見かけた歳の差夫婦だ。あの時も女の方は、ターキーのような黒人ペニスに興味を示していた。どうやら、かなりのマゾらしい。
「なら、ちょっと遊んでみなさい。ちょうど右側が空いているんだ、構いませんね?」
 老人の方がそう言うと、迷彩ズボンの男が頷く。
「いっスよ別に。ただこのバイブ、8センチありますからね。いきなしはキツいんじゃないっスか?」
「いえ、ご心配なく。この奈緒子は、こう見えてアナル上級者でしてね。ダブルフィストまで出来るんです」
 控えめな口調ながら、自信に満ちた老人の言葉。それに周囲から感嘆のため息が漏れる。
「そ。あれ位のサイズなら、ちょっとほぐせば普通に入るよ」
 奈緒子と呼ばれた女も、余裕の表情で指にローションを塗し、露出させた肛門を指で開いていく。よく開くその穴は、確かによく使い込まれている様子だ。
「じゃ、ちょっと味見……」
 奈緒子は右側のバイブの上で腰を下ろす。一時的に動きの止まったバイブが、紅色の肛門へと呑み込まれていく。
「ん……。思ったより硬いんだ、このゴム……」
 そんな呟きを漏らしながら、奈緒子は順調に腰を沈めていく。
「おーっ、凄いな。簡単に」
「流石はマニアですな」
 客や調教師達も、その熟練振りに感心している様子だ。だが、それも最初の内だけ。
「じゃ、再開しますよ」
 ドレッドヘアがそう言って、バイブのスイッチを入れる。
「くっ……!!」
「うひゃっ!!」
 藤花と奈緒子は、同時に反応を示した。そして一旦口を噤み、耐える姿勢に入る。ウィンウィンという駆動音が響く中、彼女達はじっと耐えていた。その左側では、これまでと同じようにバイブが蛇のようにのたうっている。
 そのまま、3分ほど過ぎた頃。
「く、ぁっ……き、きひぃっ……うあああっ、むりっ、もう無理ぃっ!!!」
 それまでじっと耐えていた奈緒子が、絶叫しながら足を震わせはじめた。
「いや、いやっ!!これやだあ゛っ!!!」
 足をハの字に開いたまま立ち上がろうとし、バランスを崩して後頭部を壁に打ち付ける。
「奈緒子!!」
 着流しの老人と他数人が助けに入り、奈緒子はなんとかバイブから解放される。足取りのおぼつかない奈緒子が必死に押さえているのは、後頭部ではなく肛門だ。前屈みで内股の姿勢を作るその様は、いかにも辛さに耐えているという風だった。
「なんだよ、バージン失った直後みたいな格好して。そんなにキツいのか?」
 客の一人が不思議そうに問うと、奈緒子は涙目でそいつの方を向く。
「ッたり前だし。ヤバいって、これ! お腹の中ムリヤリこじ開けられるし、すっごいウンチしたい気分になるし、どうにかなっちゃいそう! 今もお尻の奥に、杭みたいなの刺さってる感じだよ。あーーもう、やめときゃ良かったよぉ!!」
 そう恨み事を吐き、最後に藤花を睨みつけた。負けた悔しさか、あるいは自分の失態を藤花のせいとでも思っているのか。
 いずれにしても、アナルマニアを自負する女がものの数分で音を上げる責めなのは確実だ。となれば当然、場の視線は今もそれを耐える藤花へと集中する。
「しかしそうなると、すげぇなコイツって。まだ歯ァ食いしばって頑張ってやがる」
「まったく。何度言ったかわからんが、見上げた根性だよ」
「しかも、さっきの子はM字開脚だったが、こっちは胡坐縛りだろう? 腹圧は掛かるわ、エネルギーは逃がせないわで、余計にキツかろうに」
「そういえばそうですなぁ。やあ、大したものだ」
 どこからともなく、藤花を誉めそやす声が上がりはじめた。だが、加虐趣味の連中に興味を持たれるのは、決して幸せなことじゃない。

「なあ、調教師君。もう少し激しくは出来んか? そろそろ、この女の泣くところも見たいのでな」
 藤花があくまで耐えるとなれば、当然そういう意見も出てくる。そして調教師連中は、その言葉を待っていたかのように笑みを浮かべた。
「モチロン、まだ先がありますよ。実はこのバイブ、こっからがスゲェんす」
 ドレッドヘアは陰湿な笑みを浮かべたまま、リモコンを両手の指で操作する。何かのボタンを長押ししつつ、ツマミを押し上げるような動きだ。その操作がなされた数秒後、藤花が呻きを漏らした。
「うあっ、な、なんだ!? ふ、深いっ……やめっ、どこに、入って、え……!!!」
 太腿を強張らせながら、明らかに動揺している。
 彼女の左へ目を向ければ、『深い』という言葉の意味がわかった。黒いバイブの先端が、シリコンで出来た直腸の最奥よりも、さらに奥……S字結腸の方に入り込んでいる。
「ほほお、結腸に……!」
「あれは流石にキツいでしょうなあ。あの太さでゴリゴリやられるんですから」
 藤花の傍に立つ客達が、口々に歓喜の声を上げた。確かに、ビール瓶大のディルドーが意思を持つように蠢き、シリコンを変形させていく様は壮絶の一言に尽きる。嗜虐的な人間にとっては最高の興奮材料だろう。だが、やられる方となれば堪ったものじゃない。
「やめろっ、やめろおぉっ!! 無理だっ、これは無理だっ!! 腸の形が、無理矢理変えられて……ッ!」
 藤花は悲鳴を上げながら、縛られた足首を上下させる。本当に余裕がなさそうだ。だが、その藤花を囲む連中に同情の気配はない。特にドレッドヘアの男は、スイッチのボタンを力強く押している。
 シリコンでできた結腸の入口で、バイブが激しく唸りを上げ、そしてある瞬間。バイブの亀頭部分そのものが、ぬるりと結腸の門をくぐり抜けた。劇的な一瞬。アクセルを踏み続けた車が、ついにスタックから抜け出したかのような。
 状況は一変する。
 細かに震えていた藤花の腰の動きが、ぴたりと止まった。
 藤花の口が開ききり、口の端に皺が寄った。

「 んわあああああ゛あ゛あ゛ぁ゛ーーーっっ!!!! 」

 まさに、絶叫。鼓膜を震わせるほどの叫びを上げながら、藤花の身体は弓なりに仰け反った。ハイソックスに包まれた足指がぎゅうっと握りこまれ、公然に晒された割れ目がヒクヒクと痙攣する。誰の目にも明らかな絶頂。
「お……」
「へへ…………」
 2人ほど、声を上げようとした人間がいた。絶頂を嘲ろうとしたんだろう。だがその2人共が、言葉を呑み込む。
 藤花の目隠しの下から、雫が零れていたからだ。気丈な人間の涙は、ありふれた嘲り以上の意味を持つ。
 はっ、はっ、はっ、と荒い呼吸音が繰り返される。後頭部を壁につけ、天を仰いだ藤花の呼吸だ。その頬にまた、はらはらと涙が零れた。
「…………俺は…………強くないと、いけないのに。男より強くないと、いけないのに……。なんで、尻の穴で、こんな……ッ……!!!」
 食いしばった歯の間から、悔恨の言葉が吐き出されていく。
 剣術道場に生まれ、周りは皆が男という状況で、彼女は女である事を呪ったに違いない。男と女の筋力差は絶対的だ。父や兄には追いつけず、年下の弟にすら基礎体力では敵わなくなっていく。そんな彼女が縋れるものといえば、精神力しかない。どんな苦難にも屈しない、鋼の精神。それを得るために、血の滲むような努力を重ねてきたことだろう。抜き身の刃のような彼女の雰囲気は、それを如実に物語っていた。そんな彼女にとって、結腸で果てるなど、あってはならない事に違いない。
「どうして? んなもん決まってんだろ。お前が、ド変態だからだよ」
 刺青男が、冷ややかに告げた。荒々しさのない静かな口調は、弱った心によく染みる。
「変態……この俺がか……!?」
「ああ。お前は、ケツマンコで逝きまくる正真正銘の変態だ」
 念を押すようなその言葉に、藤花の表情が引き攣った。
「ち、違う!!お、おれは、俺は……っぁ゛、あ゛……おぉお゛っ!!」
 相手の言葉を否定しきるより前に、また結腸逝きを余儀なくされる。
「はっ。んな野郎みてぇな声でケツイキしといて、違うわきゃねーだろ。サムライ気取ってんなら、潔く認めろや!」
 容赦のない罵声と共に、またリモコンが操作される。今度押し込まれたのは、今まで触れられていなかった小さなボタンだ。調教師達がにやける中、俺と客の視線が左のバイブに集まる。
 
 ピストン、うねり、結腸責めと来て、今度の仕掛けは擬似射精だ。半透明の
シリコンの中に何度か液体が噴射され、直腸を模した凹凸の底へと溜まっていく。
「あああっ!!」
 藤花からも悲鳴が漏れた。泣きそうな声だ。
「おや、凄い反応だ。一体、何を噴射してるんです?」
 客の一人が尋ねると、ピアス男が得意げに笑った。
「“ドナン”です」
 その一言で、客達が色めき立つ。俺の胸もざわつく。あのモニター映像を観た人間なら、誰だってそうなるだろう。
「ほんの2パーセントほどに薄めてますが、ああして時々噴き出させて、量を入れますからね。段々と腸の奥から入口までが、煮え滾ったようになってきますよ」
 ピアス男の言葉に、客の姿勢が前のめりになっていく。そして中には、別の事実に気付く奴もいた。
「おや……なにやら、いい匂いもしますな」
「おおー、さすが良い鼻っスねえ。実はあの噴出液には、石鹸水も混ぜてあるんです。何しろこの後、皆さんに使っていただく訳ですから、匂いも汚れもスッキリ洗い流そうってわけで」
「ははは、石鹸水か。そんなものを噴出されては、ますますあの極太が動きやすくなってしまいそうだ」
「ええ。ヌルヌルとした滑らかな動きで、子宮裏や結腸を抉り回されるとなると……さぞかし気持ちいいでしょうなぁ」
 外道が和やかに語らう足元で、藤花の顔が歪んでいく。

「お、おォっ、ほ…………んおぉおお゛お゛お゛っ!!!!!」

 まるで下卑た会話を掻き消すように、藤花の嬌声が響き渡る。剣道における気合の雄叫びさながらの、凄まじい声量。マイク越しに聞けば音割れを起こしているだろう。
「ほぅ、凄い声だ」
「アナルで逝く時は、やはりああいう声になるんですな。女子高生らしさはないが、妙に下半身に響きますよ」
 客達は満足げだ。その反応を見ながら、迷彩ズボンの男が歩み出る。
「今の声もまあアリっすけど……こうすると、もっと楽しいッスよ!」
 奴はそう言って藤花の横に屈み込むと、掌で左腿を押さえ込む。
「うあっ!? や、やめっ……はうっ、ぐ、ぐあ……」
 押さえ込まれた藤花の脚が暴れ、尻肉が収縮する。肛門から、びすっと何かの破裂音が響く。
「おおお゛お゛うん゛っ!!!」
 その果てに、藤花の喉からはますます惨めな声が漏れた。
「ははははっ、なんだ今の!」
「長いこと気張って、ようやく排便できた時の声だぞ。気持ち良さそうだ」
「なるほど。やりようによっては、あんな声も絞り出せるのか。面白い!!」
 調教師によって伝えられた新しい遊び方は、瞬く間に客を虜にする。奴らは欲望のままに、あるいは藤花の太腿を押し込み、あるいはブラウス越しに乳首を捻りつぶす。玩具の耐久性など省みもせずに。
「はぁっ、はぁっ……やめろっ、きさまら! ふざ、け……くう゛、ん……ん゛う゛っ!ふう゛、う゛……ん゛あああ゛あ゛っ!!!」
 藤花は眉根に皺を寄せ、身を捩って悪意ある掌から逃れようとする。だがそれも、四方を敵に囲まれた状態では虚しい足掻きだ。むしろ、もがけばもがくほど息は上がり、全身の脂汗もひどくなっていく。
 バイブの動きも、いよいよ激しさを増しているようだ。左側のバイブに被せられたシリコンが、幾度となく壁に叩きつけられて鈍い音をさせている。その威力で結腸に出入りしつつ抉り回されるんだから、藤花の脚が痙攣するのも無理はない。
「そらっ、イけよ!!」
 藤花の両脇に立つ客が、左右の太腿を強く押し下げる。同時にバイブの先もぐるりと結腸入口に円を描く。この3重の追い込みは、藤花の快感のキャパシティを軽々と上回った。
「あああ゛、ああ……うあ゛、あ……はぁあぁおお゛……っ!!!」
 藤花は眉を下げ、情けない声を漏らす。その直後、彼女の割れ目から透明な液体が噴き出した。
「おおっ、潮吹きか!?」
「小便を漏らしただけかもしれませんよ。あまりに快感が強いと、恐怖で失禁するといいますから」
 両腿を押さえる2人は焦る様子もなく、アーチを描く水流を眺めていた。

「たのむ、もうやめてくれ。ドナンが効いてきて、腹の奥が煮えたぎったようになってるんだ。このまま責めつづけられたら……ほ、本当に、気が狂ってしまう…………!!!」
 藤花は汗みずくになり、全身を痙攣させながら、何度もそう頼み込んでいた。同じ言葉を繰り返すのは、余裕のない証拠だろう。
 だが誰一人として、その懇願に耳を貸す人間はいなかった。むしろ嬉々として、あらゆる方法で藤花を追い詰める。ブラウスの上から乳房を揉みしだいたり。脇腹をくすぐったり。鼻の穴に指をかけて引っ張り上げたり。あるいは縛られた足首を持ち上げ、腹圧を極限まで高めたり。
 その悪意あるイジメの中で、藤花は何度も崩壊を迎えた。モニターで散々目にした通り、ドナン浣腸の圧倒的な便意の前には、抗う術などない。蕩けた結腸をかき回されれば、感じずにいられるはずがない。

「んああああ゛っ、はあァああ゛あ゛ーーーっ!! アクメが、まら゛っ……かはァっ、はっ……みひぎひい゛っ!! いぐいぐっ……あつい、ああああついっ、イイ゛っぐウウ゛うっ!!!!」

 汗、涙、鼻水、涎を顔中から垂れ流し、口の端から泡まで噴いて、藤花は絶頂し続ける。口から漏れる言葉は、極限の状況下で耳にした客からの罵倒が色濃く反映されていた。
「ほら、またイクんだろう変態女!? ケツだけで浅ましくなぁ!!」
「おーお、またブリブリひどい音を漏らして。もう腸液しか出るものがないっていうのに、何でこんなに酷い音がするんだ?」
「ひっでぇ顔だな、このケツアクメ女が! それでも女子高生かよ!?」
 客達は思いつく端から嫌がらせをし、思いつく端から罵倒を浴びせる。
 最初の頃の藤花になら、そんな嫌がらせや罵倒など何の効果もなかっただろう。蹲踞の姿勢で排便を晒しつつも、射殺すような眼光を浴びせていた彼女になら。
 だが、もうあの頃とは違う。
 何度も全身を暴れさせた末に、とうとう外れた目隠しの下からは、鋭い眼光など放たれてはいなかった。瞼に黒目が半ば隠れた、力のない眼が二つあるだけだ。

「はっ、気絶したか」
 ピアス男が藤花を見下ろして鼻で笑う。そして、他の調教師と協力しつつ緊縛を解きはじめた。
「おや。この責めはもう終わりかね?」
「ええ、そろそろ良い頃合いでしょ。こっからは、お客さん自身がコイツを可愛がってやってください」
 刺青男と迷彩ズボンの男が、藤花の両腋を抱えて立ち上がらせる。ジュポンッという音で粘液まみれのバイブが肛門から抜けると、藤花の身体はそのまま、部屋の隅に敷かれた煎餅布団へと投げ捨てられる。
 高く掲げられた尻肉。その肛門部分は、毒々しいほどの朱色に染まり、外側へ捲れ返っていた。
「ほぉう、見事なアナルローズだね」
「しかし、これから犯そうという肛門がここまで緩んでいてはな。私のモノでは、碌な刺激にならんのではないか?」
 腫れあがった藤花の肛門を見て、客の一人が感動を口にし、別の一人は疑問を呈する。ちょうどそこへ、ピアス男が銀色のワゴンを運んできた。ワゴンの中には、カラフルなペニスサックが山のように用意されている。
「ご心配なく。この状態の肛門でも楽しめるよう、サイズアップ用の道具を用意しました。太さ補強、長さ増強、真珠入りの名器変身セット。選り取り見取りです」
 いくつかのサックを手に取りながら、ピアス男は陰湿な笑みを浮かべる。その笑みは、瞬く間に客の間にも広がっていく。
「なるほど。ドナンで蕩けた腸内を、擬似巨根で蹂躙する……か。面白そうだ」
 客達がワゴンに群がり、自分好みのサックを選びはじめる。
「よし、私はこれだ」
 早くも一人がサックを装着し、早いもの勝ちとばかりに藤花の背後につく。
「たのむ、休ませてくれ……腸の中が、ヘンなんだ……」
 藤花は眉根を下げて男を振り返った。だが、男は聞き入れない。
「尻を上げろ」
 そう命じると、這う格好の藤花に背後から覆い被さる。サックで凶悪なほど太さを増強させたペニスが、メリメリと肛門に入り込んでいく。
「ふ、太い……っ!!」
 藤花は両手で布団を握りしめながら、苦しそうに顔を顰めた。
 パンパンと肉のぶつかる音が始まる。
 目の前で行われる、“なま”のアナルセックス。それはモニター越し見るものとは、まるで違うものだった。
 汗の匂いがする。内臓の匂いがする。腸液の匂いがする。
 ブレザーと布団の擦れる衣擦れの音も、尻肉の弾ける音も、結合部の水音も、すべてが細部まで聴こえる。
 そして何より、視界が自由だ。カメラの映像とは違い、自分で位置を移動して、見たい場所を見ることができる。
 とはいえ、俺は最初の場所をしばらく動けなかった。藤花と1人目の結合を、ほぼ真横から眺める位置。そこからは、サックのついた逸物が肛門に出入りするところがよく見えた。そして、その周辺も。
「どんどん溢れてきますな」
「ええ。本気で感じていると見える」
 俺のすぐ傍に立つ2人組が、興奮気味に囁き合っている。その感想は俺と同じ。この位置からは、藤花の内腿を流れていく愛液がよく見える。
「いいぞ……お前をひと目見た時から、この時を待ってたんだ」
 藤花を犯す男は、リズミカルに腰を打ち付ける。
「あっ……ああぁぁ……っあ、はぁぁ……あ、あっ!!」
 藤花は、その突き込みのたびに荒い息を吐いていた。本当に気持ちがよさそうに。

 藤花はアナルセックスで感じていた。
 1人目の男が精を放ち、2人目、3人目の相手に擬似巨根を打ち込まれる段階になれば、それはいよいよハッキリする。
「はっ、あ……あッ。ああ、あつい……溶け………」
 藤花の口からは、うわ言のようにそうした言葉が漏れていた。腕はやがてシーツを使う事すらやめ、力なく投げ出される。その一方で尻肉は高く持ち上げられ、相手の挿入をスムーズにする。その様は、まさしく布団に溶けるかのようだ。
 この3人目の相手は、奈緒子だった。彼女は嗜虐心に煽られるまま、極太のペニスバンドに凹凸の激しいサックを嵌めこんで藤花を犯している。
「ほら、どうしたの? 脳ミソまでトロかしてないでさぁ、しゃんと……しなよッ!!」
 奈緒子はそう言って、右手で藤花のポニーテールを鷲掴みにする。そしてそれを引き絞り、強引に藤花の背中を弓反りにさせながら、激しく腰を打ち込んでいく。
「う゛あっ!! い、いたい……」
「そう、痛いね。でも痛いのがキモチいいんだよね、お前マゾだもんね。あんだけアナルバイブで滅茶苦茶されて、平気な顔してんだからさぁ」
 妬み嫉みの感情を剥き出しにしながら、奈緒子は藤花の髪を引き絞り続けた。藤花の身体の反りが深まり、斜め下から突き上げられる格好となる。

 見た目には、多少風変わりな体位というだけだ。だが奈緒子は、同性でありアナルマニアでもあるという深い知見に基づいて、この体位を選んだらしい。
「あ、あ! ああ、ぁぁあ……はぐっ、んん゛っ!!く、いっぐ…………!!」
 膝立ちになった藤花の脚が震える。顎は浮き、口の端から涎を垂らす。そして、うわ言のような絶頂宣言。何かに陶酔しているという感じだ。
「なに、またイってんの? どうしてそんなに簡単にイッちゃうの?あたし同じ女だけど、ちょっとそれはわかんないかなー」
 奈緒子は軽蔑の色を込めてそう囁き、左手を藤花の割れ目へと潜らせた。
「は……っぁ!!」
「ほーら、ドロドロ。恥ずかしくないのかなぁ。同じ女におシリ犯されて、こーんなに濡らしちゃうなんて……まるでブタだよ?」
 これ以上ないほど意地の悪い囁きに、藤花が眼を見開いた。だがその目は、すぐにとろりと蕩けてしまう。
「んあ……あはっ、あ、ああぁっ…………」
 藤花は、しばし呆然とした様子でさらに突き込みを受け続け、ある瞬間に首を振って顔を歪める。

「もぉやめろおおおお゛お゛お゛っ!!!」

 藤花は大口を開けて叫ぶと、強引に上体を前に倒した。
「おっ…と」
 小さく呟く奈緒子。その瞬間。彼女の右手の中で、藤花のトレードマークが弾けた。常に後ろで纏められていた髪が解け、ウェーブした長い黒髪となって背中に垂れ落ちる。それはまるで、藤花の一本芯の通った部分が抜き取られたかのようだ。

 半狂乱になった藤花は、奈緒子の手中から逃れるように前へ走る。だが、足元が覚束ない。わずか数歩すら直進できず、そのまま右手の壁に手をついてしまう。
「へへ、なんだよ。今度は俺にハメてほしいってか?」
 ちょうど藤花の近くにいた男が、役得とばかりに藤花の腰を掴んだ。
「ち、ちが……っ!!」
「あー違くてもいいんだ。もう辛抱たまんねぇからよ!!」
 男はそう言って、サックで長さを増強したペニスを突き入れる。
「くああっ!! ふ、ふかいっ………!!」
 藤花は壁に寄りかかったまま、悲鳴のような声を漏らした。そして男に抜き差しを始められると、あっという間に腰砕けになってしまう。
「おーいいぜ。あの強気娘を犯してるってのがたまんねぇ。なあ覚えてっか? 俺よ、ちっと前に竹刀持ったお前にボコられたんだぜ。その復讐が出来てると思うと、胸がスカッとすんぜ! おら、どうだ。テメェの大好きな結腸ファックだぜ。ゴリゴリ届いてんのがわかんだろうが!!」
 男はそう言いながら、大きなストロークで藤花の肛門を犯す。ペニスサックで長さを増強していたのは、結腸を犯すためか。
 藤花の結腸は、すでに極太のバイブで開発されきっている。だが、だからといって一般的なペニスサイズでの刺激を感じなくなるわけでもないらしい。むしろ、効果は絶大だ。
「ぜっ、はっ、はっ、はっ、はあっ……や、やめろ……やめてくれ……。竹刀で叩いたことは、あ、あやまる、から………今そこは、か、堪忍してくれ……ッ!!!」
 弱々しい声色で音を上げながら、藤花は脱力していく。もはや壁に寄りかかる力さえなくし、壁に涎を擦りつけながらズルズルと崩れ落ちていく。
 そんな藤花の顎を、また別の男が掴み上げた。
「おい、シャンとしろよ。許してほしいんなら、まず奉仕。それが奴隷の鉄則だ」
 そう言って、鼻先に逸物を突きつける。
「ハア……ハア、ハア…………。」
 藤花は、男を見上げていた。以前なら鋭く睨みあげているところだろう。だが今は、困ったように眉を下げ、上目遣いになっている。
「早くしゃぶれ」
 再び命じられれば、彼女は疲れ切った顔のまま、男の物を口に含む。その背後で、不浄の穴を『使われ』ながら。


 俺は、ここで集団に背を向けた。
 これ以上を観る必要はない。いや、もう観たくない。


 閉鎖病棟を思わせる薄暗い通路を抜け、フロントに戻る。
「お帰りなさいませ」
 部屋に入るなり、2人のフロント嬢が頭を下げた。ただし左のフロント嬢は、相変わらず俺の方を見ようとしない。
 だがそんなこと、今はどうでもよかった。
 『大和男児』の死を目の当たりにした疲れがひどい。
 ただ1つの収穫といえば、この陰鬱な気分を通して、改めての確認ができたことだ。


 俺は、『蟻』じゃない。少なくとも、今はまだ。



 
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