大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

調教

純白の豚

※SSSS.GRIDMANの六花ちゃんを見てムラムラして妄想。
 ごく短い作品ですので、おやつ感覚でつまんでください。


「まっしー、今日帰りにららぽ行こうよ」
 クラスメイトの祐美が振り返りながら誘う。しかし真白は、申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめん、今日用事あってさ」
 その言葉に、真白を囲む二人が興味深そうな笑みを見せる。
「ほーう? 金曜の夜に用事とは……さてはオトコだな?」
「や、違うって」
 祐美のからかいを苦笑いで流す真白。するとそれを受けて、真白の横に立つ律子が口を開いた。
「そうそう、んな訳ないって。考えてもみなよ、真白だよ? 誰かと付き合ってるなんてなったら、大スクープじゃん!」
 そう言って律子は、真白を湛えるようなポーズを取る。
「神格化しすぎだし」
「いや、割とマジなんだけど。こないだセンセーには却下されたけどさ、うちでミスコンやったら、まず間違いなくまっしー優勝じゃん? 男子人気1位の恋模様なんて、話題性ないわけないっしょ!」
 男子人気1位。何度となく耳にした言葉だ。
「それさ、なんか納得できないんだよね。だいたい私、足太いし……」
「わかってないなぁ、まっしー。そ・れ・が良いんだよっ!」
「その通り。結局男が好きなのって、スカートから覗くフトモモなんだよ、フトモモ!」
 祐美と律子は笑いながら、制服から覗く真白の太腿を叩く。
「ちょっと、痛いんだけど!」
 真白はそう怒るフリをしてみせ、大仰に逃げ出す賑やかな2人に肩を竦める。

 視線を横に向ければ、窓ガラスには冷たい雰囲気の女子高生が映っていた。
 天然二重の吊り目に、控えめな鼻梁、薄い唇。胸あたりまで伸びた黒のストレートロング。確かに男好きのする要素は多い。そして校内校外問わず、男子人気が高いのも事実。ネット全盛の時代だ、自分の高校名と名前で検索すれば、自分がどう見られているのかがはっきりと視認できてしまう。
 1年前に彼女をターゲットにしたファンサイトが立ち上がって以来、様々な妄想が日々書きなぐられていた。
 冷たい視線で罵られたい、踏まれたい、足コキされたい……。
 願望の多くは、真白からサディスティックな責めを受けたいというものだ。
 確かに真白はツンとした雰囲気がある。言いたい事ははっきり言う方で、そういう意味ではキツい性格ともいえる。
 しかし、ファンサイトの妄想を実行する気にはなれなかった。
 ただしそれは、お高く留まっているからでもなければ、性的な事を嫌悪しているからでもない。

 彼女の本質がサディストではなく、むしろ救いがたいほどのマゾヒストであるからだ。


  ※


 高校の最寄駅から7駅離れた繁華街。真白は制服姿のまま、颯爽とその人混みに踏み入った。その途端に、異性の視線が突き刺さる。飲み会の途中らしきサラリーマン集団も、女連れの男も、部活帰りの男子生徒達も。
 不思議だった。
 スタイルが良い方だとは思わない。自分にとって理想の女性である読者モデルは、皆がすらりとした脚線を誇っている。であれば、その対極に位置する自分が魅力的であろうはずがない。
 にもかかわらず、彼女は人一倍異性の目を惹いた。誰と歩いていても、どこを歩いていても、自分に視線が集まっている事が自覚できた。
 自己評価と周りからの評価の食い違い。これが彼女を歪ませた。同級生に告白されても、街で遊びに誘われても、受け入れられない。醜い自分を付け上がらせ、後で笑い者にしようとしているのでは……そういう疑心暗鬼に陥ってしまう。
 その果てに彼女が辿り着いたのは、いっそ徹底的に穢れる道だ。ターミナル駅の西口で、自分の好みとはかけ離れた醜悪な男を誘い、自暴自棄のまま純潔を散らした。ここまでであれば、ただの自傷行為に等しかった。
 しかし、この男の趣向が、真白に新しい世界を垣間見せる。
 SM。
 フックで鼻を吊り上げられ、開口具で奥歯が見えるまで口を開かされて、『クールな美貌』と称されたものを徹底的に歪まされる。
 縄で動きを封じられたまま、鞭で打たれ、蝋を垂らされ。肛門から水を入れられ、親と変わらない齢の男が見守る前で排便し。挙句にはその排泄の穴に、指や舌、専用の道具まで捻じ込まれる。
 どれだけ罵っても、許しを乞うても、責めは止まない。その中で真白はただ、子供のように泣き叫び、汚辱に震えるしかない。
 そうしたプレイの果て、最後に姿見で見せつけられた自分の姿は、醜かった。議論の余地もないほどに。
 しかし真白は、そんな状態になぜか安心感を抱いた。
 灰色が一番つらい。白でも黒でも、どちらかに振り切れた状態でありたい。
 とはいえ、彼女はまだ高校生だ。集団生活を強いられる立場である以上、学校では灰色のままでいるしかない。
 その欲望を発散できる場所は、ただ1つ。無数のネオンが煌めく繁華街の外れ、高層マンションの一室で開かれる非合法な宴だけだ。

 ※

 マンションのドアは、一般の部屋と何ら変わりない。しかし、真白がチャイムを押すと、見慣れた経営者の男が顔を覗かせる。
「へへへ、いらっしゃい真白ちゃん。そろそろだと思ったぜ」
 彼はそう言って、制服姿の真白を部屋に上げた。
 リビングでは、すでに7人の男が集まって酒盛りを始めている。いずれも真白の顔馴染みであり、かつ年頃の少女が生理的に嫌うタイプの男達だ。
「いつ見ても、キモいのばっかり」
 真白はローファーを脱ぎ、学生鞄を放り捨てる。その一挙手一投足を、たっぷりと視姦されながら。

 ( すっごい目……今日は、何されるんだろ )

 ゾクゾクとした背徳感が背筋を上っていく。そう、これだ。この苦味のような物がなければ。同年代の男子との甘たるい恋愛では、もはや満足できない。
「遅いぜぇ、マシロちゃん。見ろよ、一升空けちまった」
 赤ら顔の一人が、酒瓶を振りながら笑う。その他の6人も、同じく緩んだ笑みで椅子から立ち上がる。
「ああ、この匂いだ。女子高生ってなぁ、何でこうイイ匂いがすんだろうなぁ」
「今日も可愛いぜぇ、真白ちゃんよう」
 下卑た笑いを浮かべながら、7人が真白を取り囲んだ。そして、無遠慮に手を伸ばす。女子高生の肌……その禁忌の領域に。
「んっ……ちょっと、制服シワになっちゃうじゃん。やめてよ!」
 カーディガン越しに胸を掴まれ、ミニスカートから覗く太腿を撫でさすられながら、真白は男達を睨み上げる。元より黙って耐える性質ではないため、自然とそういう反応が出てしまう。とはいえ、嬲る側としても多少反骨心のある獲物の方が好みらしい。
「そんなこと言って、興奮してるんだろ」
「ああ。痴漢プレイから始めたほうが、断然よく濡れるからなぁ」
 言葉責めを交えながら、7対の手が柔肌を揉みしだく。
 真白は身を捩りはするものの、本気で振りほどく気はない。『嬉々として受け入れている』と思われるのが癪で、嫌がってみせているだけだ。だから最終的には、男達のしたいようにさせる。
 やはりと言うべきか、この男達は今日も真白の脚に強い執着を見せた。
 一人が、ソファに腰掛けた真白の膝を肩に担ぎ上げ、むちりとした太腿の合間に顔を埋める。
「……よくやるよね鈴木さんも、自分の娘くらいの歳の子にさ。このヘンタイ」
 男の後頭部を見下ろしながら、冷ややかに告げる真白。しかし、その頬は緩みかけている。友人に見られれば悲鳴が上がるだろうこの状況が、面白くてたまらない。
 もっと穢せ。もっと辱めろ。そう瞳の奥で求めてしまう。
「もうクリトリスが勃ってるじゃないか。華の女子高生が、いやらしいものだな」
 ショーツから口を離した鈴木が笑う。その視線の先では、唾液で半ば透けたショーツが、小さな突起に押し上げられていた。
「……し、仕方ないじゃん」
 真白は視線を横に流しながら、やや憮然とした声を漏らす。被虐願望がある一方で、詰られるとやはり腹が立つ。
 鈴木はそうした真白の反応を面白がりながら、両手でショーツの端を掴む。
「さ、もうこんなものは脱いでしまえ」
 真白自身が腰を浮かせて協力したこともあり、ショーツはスムーズに脚を滑り降りる。ただし、足首から抜かれるのは左側の輪だけだ。右半分は改めて、肉感的な太腿まで戻される。
「いつもなんだけどさ。なんでちゃんと脱がさないの?」
「その方が興奮するからだ。特にお前みたいに、いい太腿してるとよ」
 真白の問いに対し、7人は笑みを深めるばかりだ。答えを聞いても、真白に理解はできない。ただ何となくそれは、世の男達が自分の脚を凝視する原因と似通ったものに思えた。あえて紺のソックスが脱がされないのも、同じような理由だろう。
 興奮するというならばそれでもいい。その興奮で、責めがよりねちっこく、より容赦なくなるというならば本望だ。真白はソファの背もたれに首を預けながら、そう思う。

 そして、真白の望み通り、“ねっとりとした”責めが始まる。
 大股にひらいた脚を、何本もの指先が撫でさする。触れるか触れないかというフェザータッチだ。
 真白はその刺激に、声を堪えることができなかった。
「ふ、んんんっ……んんっ、ん……っん!!」
 唇を引き結んでも、息を止めようと試みても、声が漏れる。特別に肌が敏感な方だとは思わないが、毎週毎週、丹念なフェザータッチを施された今は、ものの数分で肌が粟立つほどに感じてしまう。腰が浮いてしまう。
「かなり敏感になってきたな」
「ああ、さすが若ぇ娘の肌だ。感度がいいぜ」
 脚を撫でさする3人は、そう言って笑う。
 それと同じような笑いは、真白の顔のすぐ傍でも起きていた。
「敏感になったっていやぁ、胸も相当だぜ。もう勃ってやがる」
 真白の背後に立ち、ガーディガンとブラウスを開いて乳房責めを施す一人だ。
 この男の責めも生半可ではない。乱暴に揉みしだくのではなく、むしろその逆。乳房全体に触れるか触れないかというフェザータッチを繰り返し、じっくりと乳腺の快感を呼び起こす。乳腺が目覚めれば、その快感はやがて先端に集まり、乳凛に膨らみを与え、乳首を屹立させる。そこを、不意に刺激するのだ。
「んんんあああっ!!」
 しこり勃った乳首を捻りあげられれば、ますます声は抑えられない。胸の周辺の筋肉を痙攣させながら、あられもない声を上げるしかない。たとえそのせいで、嘲笑が沸き起こると知っていても。
 太腿と、乳房。神経の集まる二ヶ所に丹念なフェザータッチを受けつづければ、当然真白は『濡れる』。そしてその濡れる場所……秘所が放置されようはずもない。
 そこには鈴木が陣取り、呆れるほど丁寧にほぐしていた。舌と指、ローターを使い分けてクリトリスを刺激しつつ、膣内へ浅く差し入れた指でGスポットを擦り立てる。経験豊かな熟練の技でこれをやられれば、ますます愛液があふれ出す。秘裂が目覚めるほど、太腿と乳房の感度が増し、その逆もある。
 鶏が先か、卵が先か。いずれにせよ男達の責めは複雑に作用し合い、真白を昂ぶらせていく。
「もうドロドロだな」
 何分が経った頃か。鈴木が秘裂を両の親指で押し拡げながら笑う。
「……はぁっ、はぁ、はぁ…………っ」
 真白は両手をソファにつきながら、大きく呼吸を繰り返す。興奮のあまり、憎まれ口を叩く余裕もない。いや、あったとしても、そうはしなかっただろう。
 呼吸を繰り返す間にも、それ以上のペースで陰唇が開閉を繰り返している。休憩などいらない。早く責めて欲しい。それだけが今の真白の願いだ。
「どんどん蜜があふれてくるぞ。本当にこれが、女子高生のアソコなのか?」
 鈴木は言葉責めを加えながら、1本のバイブを受け取った。無数のイボが表面をびっしりと覆った独特の代物だ。全体が柔らかい素材でできており、押し込めばどんな形の膣にもフィットする。特に先端は4股に分かれるようになっており、子宮口をすっぽりと覆う形での刺激を可能にしている。真白はもう何十度、いや何百度、そのバイブによって絶頂させられたことだろう。
「今日はこの間の約束通り、1時間たっぷり虐めてやる。覚悟はいいな?」
 鈴木が囁きかけ、バイブのスイッチを入れる。
「…………っ!」
 真白は喉を鳴らしながら、じっと耐える他なかった。

 ※

「ひぃっ、だ、だめっ!! いくっ、いくぅうう゛っ!!!」
 真白が悲鳴を上げながら、腰を大きく跳ねさせる。それを見て鈴木がバイブを引き抜けば、堰を切ったように透明な飛沫が噴き出した。これが初めてのことではない。六度目か、七度目か……体液は床の至るところへ飛び散っている。
「ひひ、凄ぇなこれ。メスの匂い撒き散らしてよ。こんなエロい女子高生いねぇだろ」
 一人が真白の秘裂を指で割り開いて笑った。充血しきり、愛液に塗れた秘裂。最初の頃であればいざ知らず、もはや年頃の乙女らしい初々しさはない。
「もう何回ぐらいイッたんだ?」
 鈴木が、再びバイブを沈み込ませながら問う。
「知らない……数えて、ないし」
 真白はそう答えるのが精一杯だ。すでに余裕はない。そして同時に、更なる崩壊を待ち侘びてもいる。
「ま、そうだろうな」
 そして、再び羽音が唸りはじめる。
「はぐううっ!!」
 真白の肉感的な太腿がさらに盛り上がり、細かに痙攣する。
「すげー、イキまくりだ」
「ああ。この歳ですっかり中イキを覚えちまったらしい」
 男達は笑いながら、さらに真白を追い詰める。痛々しいほど屹立した乳首をつまみ上げ、太腿をさすって。
「だ、だめっ、今そんなことされたら……っは、あ、あああ゛っ!!」
 効果は覿面で、真白はそれらのあらゆる快感に翻弄され、天を仰ぎながら短い呼吸を繰り返す。バイブを抜かれるたびに、惨めたらしく潮を噴き散らしながら。

 ※

「ほら、離すな」
 俯いて咳き込む真白の髪を、男の一人が掴み上げる。
「う゛っ、ごほっ!! もう無理っ、ちょっとぐらい、休ませて……!!」
 真白の顔が歪んだ。彼女の身体はほぼ丸裸に近い。紺のソックスだけがかろうじて残され、あとは名の通りの白い肌を晒している。その肌は、すでにかなりの量の白濁で汚れていた。それは、幾度も口内に精を放たれ、飲み下しきれずに吐き溢したことを物語っている。
 そして、彼女にはもう一つ変わった点があった。視界を覆う目隠しだ。
「さて、そろそろ答えてもらおうか。今しゃぶってるのは、誰のだ?」
 真白の横に立つ一人が囁きかける。真白の肩が強張った。
 咥えた性器の形と匂いを元に、奉仕している相手を当てる遊び。並の女子高生であれば汚辱に震えるようなこのプレイを、真白はもう小一時間にも渡って強いられていた。
「……え、えっと…………林野、さん…………?」
 真白は震えるような声で告げる。明らかに自信がなさそうだ。真白の前で逸物を扱く男が笑う。
「残念だな、大外れだ!」
 男はそう叫びながら真白の顎を掴み、深々と咥え込ませる。
「んぶっ、ぐう……うお゛っ!!」
 怒張を喉奥まで押し込まれ、真白の喉からくぐもった呻きが漏れた。
「どうだ、苦しいか? ハヤッさんよりは俺の方が、カリが張ってんだろうが。現役の女子高生にしゃぶらせてるってぇ興奮で、俺まで若返ったみてぇにバキバキよ。一週間この瞬間を楽しみに生きてきたんだ、たっぷり楽しませてくれや!」
 奉仕を強いる側は上機嫌だ。しかし、容赦はしない。真白が鼻から精液を垂れ流し、涙を溢すようになってもなお、休まず咥えさせ続ける。
 それこそが、真白の内なる望みだと知るからだ。
 中年男の饐えた匂いを覚えこまされる地獄の中で、真白の呼吸は刻一刻と荒くなっていく。
「ん、おぐっ……ぶふっ、んも゛ごぉ……あ、あ゛っ!!」
 噎せ返り、えづき上げ、ついには白濁混じりの胃液を吐きこぼす。
 口内から粘度の高い糸を垂らして苦悶する少女の瞳は、しかし、涙とはまた違う濡れ方をしていた。

 ※

「うぅっ、う゛うむ゛ぅうう゛っ!!!」
 くぐもった呻きがプレイルームに響く。
 一面タイル張りの、特殊プレイ用に改造された洋部屋。
 真白はそこで、恥じらいの部分を突き出すようにして拘束されたまま、延々と肛門を指で弄くられつづけていた。
「ううう゛っ……!!」
 また、呻きが漏れる。
 彼女とてアナルプレイに不慣れなわけではない。むしろ、毎週の開発で相当肛門はこなれている。
 それでも少女が苦しむのは、床に置かれた洗面器と、その中に立てかけられた浣腸器が関係している。
 グリセリン溶液を、1リットル。量としては多くないものの、肛門を指で割り開かれながら易々と耐えられるものではない。
「どうした、我慢しろ。あとたったの3分だ。こんな所で漏らしたら、また『お仕置き』だぞ」
 7人の男は交代で、ある者は尻穴に指を捻じ込み、ある者は乳房を揉みしだき、ある者は太腿を擦りつづけている。そうした一見何でもない愛撫が、着実に真白から余裕を奪い去っていく。
「くくっ、ムチムチの太腿が痙攣してきたぞ。腹の中の浣腸液が相当効いてきたらしいな」
 太腿へ手の平を這わせる岩田が、愉快そうに笑う。
「うう゛、むうっ!!」
 真白は岩田を睨んで呻くが、ボールギャグに阻まれて言葉にはならない。そうした事が繰り返された果てに、ボールギャグからは幾筋もの唾液が垂れ、銀色に輝きながら鎖骨へと滴り落ちていた。 
「……ふう゛、う゛ーっ!! うう゛うむぅう゛う゛ーーーっ!!!!」
 やがて、真白は激しく首を振りながら呻きはじめる。腹部が膨らんでは凹み、両脚の痙攣もいよいよ激しくなり。便意が限界を迎えているのは誰の目にも明らかだ。
「まったく、仕方がないな」
 肛門を嬲っていた山ノ江が苦笑交じりに指を抜き、アヒル型の補助便座を真白の肛門へと近づける。その直後、激しい破裂音が響きわたった。
「うう゛、ふう゛ぅ……むううっ…………!!!」
 何人もの男の視線に晒され、嘲笑われながらの排便。その羞恥に、真白の頬が紅を差したように赤らむ。しかしその瞳は、いよいよ色めいたように潤んでいた。
「嬉しそうな目ェしやがって、この変態め!」
 男達は真白の反応を見逃さない。そして薄笑みを浮かべながら、彼ら自身の嗜好と真白の被虐欲求を共に満たすべく、本格的なSMプレイを繰り広げる。
 後ろ手に縛ったまま天井から吊るし、乳房や乳首、尻など至るところを洗濯バサミで挟んだ上で、鞭を振るってそれらを叩き落す。
 背中にくまなく蝋を垂らし、層ができれば剥がして、敏感になった肌へまた垂らす。
 乳首とクリトリスにタコ糸を結びつけ、四方八方から引き絞る。
 それらの責めは、真白から涙と悲鳴を搾り出した。全身から脂汗が噴き出し、息は持久走の最中であるかのように荒くなっていった。だがそれらはすべて、真白を更なる発情へと導く要因でしかない。

「あああ゛あ゛っ!! うぁ……あがああああーーーーっ!!!」
 這う格好で肛門に挿入され、真白は大口を開けて絶叫する。そこには普段のクールさなど微塵もない。
「くく、相変わらず“こっち”を犯すと声が凄いな。いいぞ、最高の締まりだ。もっと浸れ。もっと狂え!!」
 後孔を犯す緑山が、真白の腿を掌で打ち据えながら笑う。
「いや、た、叩かないで、痛いっ……!!」
 拒絶の言葉と同時に、むちりとした腿の合間を愛液が滴り落ちる。
「おーおー、ケツ掘られてるだけで、もうトロトロじゃねーか」
「全く信じられないな。こんな淫乱娘に、あれほど熱心なファンクラブがあるとは」
 まぐわいを見守る男達は、逸物を扱いて準備を整えつつも、言葉責めを欠かさない。
「っ!!」
 心に突き刺さる言葉の刃。真白の目が見開かれ、唇が引き結ばれる。
 しかし、それもほんの少しのこと。
「それ、奥に出すぞ!!」
 力強い宣言と共に腸奥で精を放たれれば、
「あ……あああぁっ!!!」
 真白もまた唾液の糸を引きながら大口を開き、羞恥の悦楽のない交ぜになった表情を晒す。
「よし、今度はこっちだぞ! 大好きなデカマラで可愛がってやる!」
 胴太の怒張を誇る山村が、自分の腰の上へと真白を抱え上げる。
「ふん、ん……んああぁあっ!!!」
 品のある表情で耐えられたのはほんの数秒。
「いいぞ、お前のアナルは最高だ……お前は、世界一のメス豚だ!」
 薄汚い言葉で詰られ、ぐじゅぐじゅと水音を立てながら不浄の穴を抉り回され。
「くぁあ、あ……お、ぉっ……おっほおおぉおぉお゛っっ!!!」
 真白の整った顔立ちは見る間に蕩けた。

 夜を明かしての被虐の宴。その中で、真白は解放されていく。
 ただ、一匹の『豚』として。



                               終

止まらないカメラの向こうで  第4話


第3話の続きです。
これにて終話となります。ご愛読ありがとうございました。




『人格崩会 マインドクラッシャーズ』
 このサイトは、AV出演経験のない100%の素人を被写体に、オリジナルの撮り下ろし映像を期間限定で公開する……そういうコンセプトのようだった。
 出演『女優』の数は多く、一覧には多種多様な職業とイニシャル、年齢、そして謎のコース名が並んでいる。とはいえ大半は『公開終了』と添え書きがあり、もう見ることはできない。

『 女子大生 F(20)…… <肉便器コース希望> 』
『 保育士 T(32)……  <ハードSMコース希望> 』
『 事務系OL M(27)…… <完全人格崩壊コース希望>』オススメ!

 今はその3列だけがクリックできるようだ。
 完全人格崩壊コース、という字面が嫌でも目を引く。このコースの女優が姉貴ではないことを願うが、正直望み薄だろう。事務系OLという職業も一致しているし、Mといえば『瑞希』のイニシャルだ。
 意を決してMの列をクリックすると、女優の個別ページに飛ぶ。
 まず目に入るのは、ヘッダー部分のバストアップ写真。俺は、それを見て直感してしまう。目線にモザイクこそ入っているが、十数年間ずっと一緒に暮らしていた相手を見間違えるわけがない。姉貴だ。

 ヘッダーのすぐ下には、女優Mの動画の新着コメントが表示されている。

『近所の綺麗なお姉さん、という印象。モデルみたいに洗練されたボディではないですが、いかにも素人っぽい感じが生々しくて興奮します!』
『☆1。足太すぎ。昭和の熟女AVじゃないんだからさ。。痩せようよ。。。』
『顔面偏差値60、体偏差値55ぐらいの女。可もなく不可もなく。ただしやらされてるプレイはこのサイト内でも屈指のハードさだから、見所は多い。』
『非常にレアな<人格完全破壊コース希望>の素人女性。うんこ・ゲロ・フィスト・輪姦なんでもアリ。しかもそこそこの美形。ただ、演技とかじゃなく本気で嫌がってそうなシーンが多い。このサイトのハードさを甘く見てた?』
『すごいねこの女、人格破壊コース希望とか頭おかしい。喋ってるの見る限りしっかりしてそうなんだが、ストレスで色々嫌になっちゃったのか……』

 コメントの大半はこういうもの。姉貴のルックスを品定めするか、自分から凄惨なコースを希望したと決め付けて貶めるものばかりだ。
 あの姉貴が、こんな調教を自分から希望する訳がない。むしろ周りでそういう事をしてる子がいたら、引っぱたいてでも止めさせるお節介焼きが姉貴なんだ。そうと知っているだけに、コメントを見ているだけで胸がムカムカしてくる。
 ただ、我慢して読み進めていくと、興味深いコメントも見つかった。

『一通り全部動画観ました。どうも、この調教グループが直前に誰か躾けてたけど、逃げられたか何かで完遂できなくて、その身代わりとして調教されてるっぽいです。全体的にこの女優さんが怯えてるのは、前任奴隷の調教記録をあらかじめ見せられて、今から自分がどうなるのかを知ってしまっているせいだと思われます……』
『↑のコメントに補足。前の奴隷はメチャクチャ美人かつ、ミミズ千匹の名器、しかも相当強い筋肉をお持ちだった模様。(なんと、フィストを12時間続けられても切れなかったとか……!) この奴隷の調教記録もぜひ観てみたいんですが、どこかにシリーズで無いでしょうか。ピー音の前後聞く限り、最初が“あ”始まりで、最後もア行で終わるみたい。アイカ? アスカ? アリサ? 性器の強さ的に外人さんの可能性もあるから、アイシャとかかも? 情報求む!!!』

 どうやら姉貴は、明日香の調教が未完に終わった腹いせで調教されているようだ。確かにファミレスで見た写真にも、明日香がされたのと同じ調教があった。

 ヘッダー、コメント欄と来てさらにその下へ視線を移せば、とうとう動画のサムネイル群が視界に入る。1ページは縦5×横4、計20の動画で構成されていた。一度に表示されるページ数は9ページまでで、そこから先どれだけあるかはわからない。
「くそっ!!」
 俺は頭を抱えながら、動画を古い順に並び替える。
 一番古い動画は、タイトルが『インタビュー』、再生時間はわずか10分弱。ごく短い動画だ。

『<完全人格崩壊コース>恒例の、冒頭インタビュー。今回は“町のワル共に絡まれる、気の強い女先輩”のシチュエーションでお送りします。全員、迫真の演技です!(笑)』

 動画説明欄にはそう書かれていた。これはあくまで芝居で、事件ではないと主張するわけか。白々しい。これに騙される奴がいるなら、そいつは救えない馬鹿だ。
 俺は深呼吸をし、気分を落ち着かせてから再生ボタンを押下する。

 一瞬の暗転の後、映像が映った。場所はどこかの部屋。決して広くない、ごく一般的なマンションのワンルームという風だ。
 その中央で、後ろ手に拘束された女が、男2人に両肩を掴まれている。黒いタンクトップにジーンズという、男勝りな格好。口にガムテープを張られてこそいるが、外跳ね気味のショートヘアと力強い瞳は、明らかに姉貴の特徴だ。そして何よりその耳からは、俺の贈った赤いイヤリングが垂れ下がってもいた。
 ご丁寧なことに、本編の姉貴には一切のモザイクがない一方で、それ以外の連中だけはしっかりと目元が隠されている。
 男の1人が、ゆっくりと姉貴に近づいた。体型といい髪形といい、関取を思わせる巨漢。現在も指名手配中であるはずの藪岡だ。奴が乱暴に姉貴の口のガムテープを剥がすと、一呼吸置いてすぐに姉貴が口を開く。
『**っ! あんたどういうつもり、こんな事して!?』
 開口一番にピーという規制音が被せられているが、藪岡を呼び捨てにしたのがわかった。あの藪岡を、呼び捨て。さすがは姉貴だ。いくら3つ年上だからといって、あの藪岡を前に俺が同じ真似をできるかどうか。
『相変わらず声でけーな、外に聴こえちまうだろ。ま、この近くに日本語わかるヤツなんかいねーけどよ』
『質問に答えなよッ!!』
『へいへい。……原因作ったのは、**なんスよ』
 藪岡が小指で耳を掻きながら答える。姉貴の顔が強張り具合から見て、ここで出たのは俺の名前なんだろう。
『これまで随分可愛がってやったのに、恩を仇で返しやがった。おかげで昔馴染みが何人もパクられて、自慢のチームが空中分解だ。もうちっとで本格的な族の軍団作れるとこだったのによ』
 藪岡は悪びれもせずに言う。もっとも、奴が悪びれることなんて、今までもこれからも一度だってないんだろうが。
『どうせ碌でもないことに**を巻き込んで、警察に暴露でもされたんでしょ? 自業自得よ、あの子に逆恨みしないで!!』
 姉貴はキッパリと言い切る。まだ、こんな俺を信じてくれるのか。
 その姉貴の態度に、藪岡がチッと舌打ちする。
『とにかく俺らの世界じゃ、こういう事されるとケジメつけなきゃならねぇんス。それをぜひ、お姉さんにご報告しとこうと思って』
 藪岡は、横柄に姉貴を見下ろしたまま淡々と告げる。今度は姉貴が顔色を変える番だった。
『何をする気!?』
『そりゃ、そん時の気分次第っスけどねー。今はかなりムカついてるから、楽には殺したかねぇなあ』
 藪岡の言葉に、姉貴の表情が凍りつく。そしてその表情は、次第に藪岡を睨み上げるものへと変わっていく。
『…………弟に手を出したら、あんたを殺す…………ッ!!』
 その気迫は、とても嘲笑ったりできるものじゃなかった。そこらのチンピラが凄むのとはわけが違う。姉貴の怒りは、俺への深い――それこそ母親のような愛情に裏付けられたものだ。
 姉貴……。
『おー怖ぇ怖ぇ。アンタなら、マジで刺すぐらいはしてきそうだ』
 藪岡は肩を竦めて言い、たっぷりと溜めてから次の言葉を吐き出した。
『アンタが身代わりになるってんなら、**には手ぇ出さねぇっスよ?』
 わかっていた。その言葉が来るだろうことは。動画の中の姉貴だって、きっとそうだろう。
 姉貴は藪岡を睨み上げたまま、顔を強張らせる。
『……この法治国家で、そんな無茶苦茶が通ると本気で思ってんの? いつかそのしっぺ返しを喰うよ、こんな事ばっかりしてたら!』
 姉貴の説教はもっともだ。悪い事をしていれば、いつか自分に返ってくる。藪岡だってそうだ……そうであった、はずなんだ。
『そ、無茶振りっス。流石にこれを、ハイそうですかとは呑めねぇっスよね』
 姉貴の必死の訴えを、藪岡は笑って聞き流すだろう。俺はそう思った。だが意外にも、奴は肯定してみせる。姉貴の顔が怪訝そうなものになる。
『だから、チャンスをあげますよ。俺らの責めを一晩我慢できたら、アンタの事は解放するし、**にも手は出さない。逆に我慢できなかったら、たっぷり楽しませてもらいます』
 藪岡の提案に、姉貴の顔がますます引き攣っていく。
『ふざけないでっ!!』
『イヤ、ふざけてはねぇっスよ。***センパイだから、特別に譲歩してるんス』
 藪岡の言葉は掴みづらい。確かに、奴が助かるような条件をつけるのは珍しいことだ。こうと決めたら有無を言わせない、ガキ大将タイプの人間だから。そんな奴が交渉の余地を残すというのは、姉貴に相応の敬意を払っているのか。
 ……いや、違う。奴に限って、そんな誠実さなんて欠片も持ち合わせちゃいない。あくまでこれは、姉貴に恥辱を味わわせるプレイの一環なんだ。どうせ責めに耐え切れるはずがないと踏んだ上での。
『………………わかった』
 姉貴は、長い沈黙の末にそう宣言する。藪岡とあまり接点がないから、奴の言葉を額面通り受け取ってしまったのか。あるいは全て承知の上で、あえて乗ったのか。いずれにしても、藪岡の狙い通りの展開だ。
『決まりっスね。じゃあ、我慢の条件は……』
 藪岡はそう言って、いきなり姉貴のイヤリングに触れる。
『っ!? や、いやっ!!』
 姉貴は慌てて首を振った。だが藪岡は、素早くイヤリングを耳たぶから抜き取ってしまう。
『このアンタにゃ似合わない、クソ安っぺぇイヤリングにすっか』
 藪岡の煽りに、姉貴が奥歯を鳴らした。
『おーおー、怖ぇ顔だ。一目見た瞬間解ったぜ、わざわざこんな安モン後生大事に身につけてるって事ァ、よっぽどの思い入れの強ぇ一品ってこった。誰かの形見か? それともイイ人からのプレゼントかよ?』
 藪岡はイヤリングを指で弄びながら笑う。
『返して!!』
 姉貴は大声で叫んだ。両肩を掴む男2人が、ビクッとなったほどの音圧だ。その叫びには、姉貴の真剣さが痛々しいほどに含まれていた。でも藪岡は、そういう相手の困った様子が何よりも好きなんだ。
『くくっ、言われなくても返しますよ。しっかり歯で挟んどいでください』
 藪岡はそう言って、姉貴の口に太い指を近づける。姉貴は不服そうにしながらも、前歯でイヤリングを噛むしかない。
『そのイヤリングが、センパイの“矜持”ッスよ。それを朝まで放さずにいられたら、俺らそんな気合入った人になんもできねーッス。でも、もし落としちまったら……』
 藪岡は、あえてその先を言わない。姉貴はそんな卑劣な藪岡に、それまでで一番の鋭い視線を浴びせた。
『あかにしあいで……っ!! あんあらガキの、おあおびなんか……っ!!』
 イヤリングを咥えたまま呻く姉貴。
『そりゃ結構だ。うっし、お前ら始めんぞ、“ガキのお遊び”をよ!!』
 藪岡は、そんな姉貴の言葉を茶化す形で、責めの開始を宣言した。
 そして直後、動画が終わる。これが1本目、『インタビュー』。たった10分弱の動画を観ただけで、全身がひどく疲れる。こんなものが、あと何本あるんだろう。あと何百時間分が収録されているんだろう。今から全部観るとどれだけ掛かるかわからないし、そもそも精神的に耐えられそうもない。
 でも、どうしても気になってしまう。せめて、今の動画の直後だけでも見届けなければ。なにしろ姉貴は、俺のイヤリングを盾にとって脅されたんだから。

『指マン潮吹き地獄①』
 それが2本目のタイトルだ。再生時間は、実に58分強。しかもタイトルに①とあるように、これ1本で完結するものでもない。サムネイルを眺めると、『指マン潮吹き地獄』のタイトルを冠する動画は、④まであった。もし全てが①と同じく1時間程度の尺なら、実に約4時間分の動画となる。そして、『指マン潮吹き地獄④』の後に別シリーズが続いているということは……。
 そうだ、この動画だけで終わるわけがない。もしそうなら、ファミレスで高根沢から見せられた写真は、そもそも存在していないはずなんだ。
 考えれば考えるほど、気分が重くなる。俺は頭を切り替えつつ、義務感に背中を押されて①の動画を再生した。


    ※           ※            ※


 姉貴は、後ろ手の拘束はそのままで薄い煎餅布団に座らされ、横の2人から乳房責めを受けていた。上乳だけを隠すようにたくし上げられたタンクトップの下では、2本の腕でまったく遠慮なく乳房が揉みしだかれている。
『さすがFカップ、揉みごたえ抜群だな。とても掴みきれねぇ』
『ああ。これで垂れてなきゃ最高なんだがな』
『そりゃ無理ってもんだろ、こんだけ張り出してりゃ。牛乳だぜ牛乳』
 男2人は勝手を言い、笑いながら乳房を揉みしだく。姉貴は真正面からその様子を撮影される状況の中、静かに目を閉じ、俺の紅いイヤリングの金具を歯で挟みつづけていた。
 胸への責めはかなり長く続いているのか、あくまで乳房の部分だけを刺激されているにもかかわらず、乳首が尖りはじめている。
『しかし、根性ありますねー***センパイ。こんだけやって声出さねーとか』
 1人がそう言って一旦乳房を離し、乳首を人差し指で圧迫する。するともう一人も、調子を合わせるように同じ真似をした。
『っ……!!』
 姉貴の閉じられた歯の間から、小さく息が漏れる。
『ほれほれ、どうっスか。気持ちいいでしょー、硬くなってきてますよ』
『我慢やめましょーセンパイ。女は可愛く喘いでナンボっすよ?』
 人差し指で上下に乳首を擦りながら、言葉責めもやめない。姉貴も折れない。その状態が続けば、段々と両乳首が勃起してくる。最初はやや陥没気味だったものが、厚みを増していく。
 そうなると、2人も責め方に変化をつけた。人差し指と親指で乳首を挟みこみ、扱くんだ。
『んんんっ……!!』
 見るからに気持ち良さそうな責めに、姉貴がまた呻く。薄目を開けて2人組を睨んでもいるようだ。2人組の方は目線モザイクのせいでどこを見ているか判らないが、口元の笑みが消えることはない。
 この責めもかなりしつこくて、さらに乳首の勃起具合が増していく。それに応じて姉貴の余裕もなくなっていく。顎が浮き気味になり、背が仰け反り。
『ひひ、気持ち良さそー。デカイと感度鈍いとかいうけど、相当敏感っすね』
『そろそろ乳首イキできるんじゃないっすか? それとも、もうしてたりします?』
『イクときは言ってくださいねー。手ェ緩めたりは一切しないっスけど!』
 男2人の言葉には悪意しかない。こいつらもケダモノだ。ホテルで明日香を嬲っていた連中と同じような。
『…………っ、………………っ!!』
 姉貴はじっと耐えていた。でも、鼻から漏れる息は着実に荒くなっている。男2人が一旦乳首の扱きをやめ、一指し指で下から上へと乳首を押し上げるような動きに変えると、姉貴の呼吸はますます荒くなっていく。
『鼻息まで牛みたいになってきましたね。陸上部のエースでも、興奮にゃ勝てないっスか? じゃ、そろそろ……』
 2人はそう言って、乳首から指を離す。そしてすかさず、口で吸い付いた。
『いうっ!!』
 姉貴からはっきりとした声が漏れる。
 ちゅうちゅう、と吸い付き、嘗め回されている。あの姉貴の乳房が、チンピラ共に。俺は乳首舐めを何分も見て、ようやくそう実感でき、ひどく嫌な気分になった。
 映像は淡々と続く。
『ん~~~……っっ!!』
 乳房を揉みしだきながら乳首を吸われれば、姉貴は顎を浮かせながら苦しそうに呻く。白い歯がとても綺麗だ。普段から俺にうるさく小言を言っているだけあって、歯のブラッシングにも相当きをつかっているんだろう。髪だって普通に綺麗だし、本当にしっかりした姉だ。俺はそんな取りとめのないことを考えながら、見るともなしに映像をただ眺め続けた。
 映像内ではそのうち乳責めのためにローターまで使われはじめ、耳障りな羽音と姉貴の呻きが絶え間なく続くようになる。
 コメント欄の連中は偉そうに“偏差値55”だのとのたまっていたが、俺から見れば『女優』のルックスは間違いなくいいし、乳もでかい。これが借りてきたAVなら、充分オカズになるはずの場面だ。でも俺は、微塵も勃起していなかった。俺はその事実に、少しホッとしていた。

 いつの間にか①の動画は終わり、俺はそのまま②のページを開く。このサイトを訪れた人間の中で、『見たいから』じゃなく『見なければならないから』選択しているのは俺ぐらいのものだろう。ふと、俺以外の世の人間すべてが気楽に思えてしまう。

『27歳の真面目な巨乳OLは、想像以上に男日照りみたいです(爆)』

 その軽薄な動画説明欄を眺めながら、再生ボタンをクリックする。
 2つ目の映像は、床へ乱雑に捨てられたジーンズの接写から始まった。そこからカメラが舐めるように上を向く。場面はちょうど、壁際に立たされた姉貴が下着を脱がされようとしているところだった。明日香がよく穿いているシルクのレースショーツとは違い、いかにも普段履きの綿製だ。
『うう、うううっ!!』
 姉貴は後ろ髪を揺らしながら、必死に呻いていた。何重にもガムテープを巻かれた不自由な手で、ショーツを掴む男の手を引っ掻いている。安産型の尻を振り、陸上部特有の太腿を強張らせて暴れてもいる。そうまでしても、結局ショーツが擦り下ろされるのは止められない。常識人の利口な行動が、馬鹿の力押しで潰された瞬間だ。
 馬鹿数人は、姉貴の膝を掴んで強引に肩幅以上に開かせ、一切遠慮なく股座を覗き込む。白い尻を正面から撮っていたカメラも、下からのアングルに変わった。
 姉貴のアソコが映り込む。風呂上がりにバスタオルで拭っている裸ぐらいなら何度か見た事があるが、さすがにアソコを拝むのは初めてだ。
 ごく普通に色素沈着の進んだ性器に見える。ネットで見る無修正性器の平均という感じだ。
『まぁ、なんつーか……普通だな。熟女好きのお前としちゃどうよ』
『誰が熟女好きだ。ま、アラサー女のマンコにしちゃ整ってる方じゃね? 多分そんなヤッてねーぜ』
『少なくとも、***のよりゃ綺麗だぜ。今ンとこ唯一の勝ち点か?』
『いや、お前は知らんだろうが、***のマンコって最初えらい綺麗だったぜ。ピンクの一本スジでよ。ま、藪っさんのデケェの突っ込まれて、一発でグチャグチャになったけどな!』
『あと、毛の手入れも***のがキッチリしてたよな。こいつ、ちっとボーボーじゃね?』
 胸糞の悪い会話が続く。姉の性器を品評されるのが、こうも吐きそうになるほど嫌なものとは思わなかった。姉貴の毛は確かに、きっちりと整えられている感じじゃない。でも、それが普通なんだ。日常生活からいきなり拉致されて、処理不足も何もない。
 会話途中に混じる規制音は、明日香の名前を隠すためのものだろう。コメントにあった通り、最後がア行終わりなのが聞き取れる。
 最初に見た明日香のアソコは、確かに綺麗だった。これがハーフのオマンコかと衝撃を受けるぐらい、くすみのない淡いピンクだった。よく知っている。なにしろそれを撮影したのは、俺だ。
 姉貴の映像を撮っている今のカメラマンは、どういう立ち位置なんだろう。俺のように巻き込まれたクチか、嬉々として撮影役を引き受けたクチか。映像は俺の映したもの以上に手ブレがひどいから、素人なのは間違いないが。

『さーて、そろそろやるか』
 1人がそう言って、姉貴のアソコに手を触れる。尻肉と腿の境目に親指を置き、手の平を上にして。カメラは手の甲を映すだけで、指の細かな動きはわからない。ただ、ぐちゅりと音がした直後、姉貴の太腿がかなり震えたから、挿入された指は少なくとも2本以上だ。
『ふんんっ……!!』
 姉貴の口からくぐもった声が漏れる。
『ははっ、オイオイ! ちょっと濡れてんじゃん、センパイよぉ!! チチいじられて感じてたんかよ!?』
 指を入れた一人は、これでもかという巻き舌で煽った。その煽りで場が沸く。後ろ手に縛られた姉貴の手指が、ぎゅっと握り締められる。
『で? *稜高の誇る、陸上部史上最強エース様の締まりはどーよ?』
 1人が嘲りながら会話を被せた。今度の規制音はかなり微妙で、母校の名前を知る人間ならギリギリ聞き取れてしまう。出身高校が特定されるぐらいならまだいいが、名前バレとなれば致命的だ。明日香の名前が割れていないのは、全動画を見たという人間のコメントで確認済みだが、姉貴はわからない。真っ当なAVなら製品チェックを信じるところだが、この映像が真っ当であろうはずがない。
『んー、結構締まっけど、ミミズ千匹とかじゃなさそうだな。2万円ソープの女って感じ』
 指を入れている一人は、半笑いでそう言った。キレそうになる。姉貴をソープ嬢と同列に語るのも腹立たしいが、その中でも格安と言いたいのか、このチンピラは。
『ひゃひゃっ、相変わらずヒデーなお前』
『あんだよ、これからなのにガッカリさせんなよ!』
『いや藪っさんなら、誰相手だろうと一緒じゃないんスか? 180ぐらいあるアメ女でも、相当慣らさないと無理でしょ』
『コーラのボトルみたいだしな。でも***は普通に呑み込んでたらしいぜ、ケツでも喉マンでもよ』
 藪岡を交えたそういう会話を聞いているだけで、また吐き気がこみ上げてくる。饐えた匂いの101号室に逆戻りした気分だ。
「おえ……っ」
 本気で気分が悪くなり、思わず口を押さえる。その際に肘でマウスを誤クリックしまったらしく、動画が一気に進んだ。
『うっ、くっ……くぅ、うっ…………!!』
 女の不自由な呻き声。それと混じる形で、ぐちゅっぐちゅっという水音をマイクが拾う。“指マン”はすでに佳境に入っているらしく、姉貴のむっちりとした太腿に愛液が垂れているのが見えた。
 よく見れば、指入れをしているのはさっきとは別の奴のようだ。
『ほら、どうしたんスか先輩。この程度で足ガクとか、元陸上部の恥っすよ』
 スプリンター体型のそいつは、言葉責めを交えながら姉貴の太腿を平手で打つ。
『ふっ、んんっ……!!』
 姉貴から悔しそうな呻きが漏れた。
『あいつ、えらい気合入ってんな。何か因縁あんの?』
『ああ。ヤツも元陸上部なんだが、***センパイが残した200mのタイムに負けたっつって部内で馬鹿にされたんだとよ。ならまずタバコやめろって話だけどな』
『へー……。あいつがダセェのか、男子のタイムに食い込むあの女が化け物なのか、微妙なとこっすね』
『お前らウッセーぞ、あん時ゃクツが滑ったんだよ!! マジでやって、こんなビッチに負けるわけねぇだろうが。おい、マトモに立てねぇんなら寝とけやオラッ!!』
 元陸上部という奴が、足の痙攣する姉貴を布団へ引き倒す。
『おいおい、アブねーよ!』
 その非難の声を残して、②のビデオは終わった。

 次の動画として表示されるのは、『指マン潮吹き地獄③』。

『この映像では、一切ローションの類は使ってません。垂れているのは、すべて女優の本気汁です。』

 説明欄は相変わらず悪意しか感じない、癇に障る内容だ。
 動画を再生すると、布団に四つん這いになった姉貴を横から撮る映像が始まる。とうとうタンクトップすら取り去られた丸裸だ。手の拘束も解かれ、ベッドの脇に丸めたガムテープの束が転がっている。
 姉貴はもう全身が濡れ光っていて、かなりの間昂ぶらされ続けているようだ。這う格好だが、右膝が前、左膝が後ろと膝の位置には開きがある。そしてその股の隙間へ、一人が指を差し込んでいた。手の甲を下にした、潮噴きでもさせようかという指遣い。指の動きは見えず、手の平が蠢くだけだが、ぎゅちゅぎゅちゅという音のハイペースぶりから察しはついた。 
『ふーっ、ふーっ、ふーっ……』
 前を向いたままの姉貴は、目を閉じ、鼻から荒い息を吐きつづけている。相当感じてるんだろう。よく見れば、垂れ下がったまま前後に揺れる乳房の先は、乳責めの時以上にしこり勃っていた。
『うおー、すっげぇ』
 指責めしている男が声をあげ、カメラに向けて手招きする。すると横から撮っていたカメラが近づき、横へ身を引いた男と入れ替わりに股座を接写しはじめた。
 中3本指の入り込んだ割れ目の周辺は、信じられないほどの愛液で濡れている。しかも愛液の多くはかすかに白く濁っていた。なるほど、ローションは使っていないと注釈がいるわけだ。
 ぐちゅぐちゅと水音を立てながら指が動けば、モザイクなしの割れ目からまた新しい愛液が溢れるのが見えた。姉貴が這う格好を取っている以上、愛液は腹の方へと流れ、繊毛に絡みながら滴り落ちていく。
『どういう事っスかこれ? “ガキのお遊び”で、本気汁ガンガン出てくるじゃないっスか、***センパァイ!』
 指責めをしている奴が馬鹿にしきった声に叫ぶが、姉貴に反応はない。というか、できないんだろう。
 カメラが少し引くと、さらに状況が判るようになる。強張る太腿と、円錐形に尖った乳首に囲まれたシーツは、かなり広い範囲が変色していた。鎖骨の真下あたりまで濡れてるんだから、愛液が垂れたなんてレベルじゃない。もう何度も潮を噴いてるんだ。たぶん、横から撮られていた間に。
 姉貴は、シーツへめり込む肘の間で項垂れていた。シーッ、シーッ、という声が漏れ聴こえる。
『ホラ、顔は上げとかないとダメっすよ。こっそり吐き出して休憩されると困るんで!』
 そう言って髪の毛が掴まれ、強引に頭が引き上げられた。すぐにカメラが前へと回り込む。
『ふーっ、シーッ、ふーっ、シーッ、ふーっ……』
 姉貴は激しく、妙な息を続けていた。理由は顔を見ればわかる。姉貴の顔は、鼻水と涎ですっかり汚れきっていた。鼻が詰まっているから、呼吸は歯の間からするしかない。そのおかげで涎が出てしまう。さっき項垂れていたのは、この顔を人目に晒さないためだ。

 ――いい、健史? 勉強ができなくたって、走るのが遅くたって、別にいいの。でも、だらしないって思われるのはダメ。それって、人間としての負けだよ!!

 俺のマナーを叱る時、姉貴がよく言っていた言葉だ。そして姉貴自身も、俺の前でさえきっちりしていた。俺の模範でいられるように、誰にも母子家庭だからなんて馬鹿にされないように。
 そんな事情を知ってか、知らずか。
『あーあ。鼻水とヨダレ。“だらしねぇ”な、センパイ。』
 そんな言葉が吐かれ、嘲笑が沸き起こった。
『…………っ!!!』
 姉貴はイヤリングを噛んだまま、目を見開く。この時俺は、姉貴が持つ鋼の心が、ほんの薄くだが剥がれ落ちたような気がした。誰よりも姉貴という人間を知っているだけに、伝わってくるものがあったんだ。

 そして動画はとうとう、『指マン潮吹き地獄④』になる。
 シリーズの最後。姉貴は布団の上に仰向けになり、大股開きで責められていた。
『いぁ、いぁあーーーっ!! いあーーーっ!』
 食いしばった歯の間にイヤリングの金具を覗かせたまま、拒絶の言葉が繰り返される。両脚の筋肉の張り具合から、本気で抵抗しているのも見て取れた。なのに、足が閉じない。姉貴の手足の力は強いし、怒ると怖い。そんな姉貴が、カメラの向こうでは何の抵抗もできていないんだ。姉貴の強さを見て思春期を過ごした俺は、それがただただショックだった。
『あーあーあーあー、まーた出ちゃったよぉお姉ちゃあん』
 姉貴どころか俺より下そうなガキが、子供をあやすような猫撫で声を出す。奴の顔が向いている先では、激しい『手マン』で潮が撒き散らされていた。
『こいつ、強情な女だな……!』
 姉貴を囲むうちの一人が、呆れた様子で言う。姉貴は、太腿を痙攣させ、心配になるほど荒い息を繰り返しながら、それでも噛んだイヤリングを離さない。だいぶ疲れてはいるが、瞳の力も健在で、そのまま朝まで耐え切りかねない雰囲気があった。
 だが、あの藪岡がそんな事を許す筈もない。
『どけ』
 明日香を囲む輪の一部を押しのけながら、低い声が唸った。布団の上の姉貴が顔を上げ、目を見開く。すぐにその全身は、巨大な影に覆い尽くされた。
 振り返ったカメラが映し出すのは、関取級の巨体と、そそり勃った怒張。臍につきそうなその角度は、明日香を犯した時より上だ。
『いいねぇ、***センパイ。俺、初めてシコったの小5なんスけど、そん時のオカズがアンタなんスよ。リレーん時、でけぇチチがブルンブルン揺れてんのが眼に焼きついちまって、猿みてぇに扱いたもんだ。いつかハメてぇと思ってたが、俺が少年院(ネンショー)から出てきた時にゃ、もう町からいなくなってたからよ。寂しかったぜぇ?』
 目つきこそモザイクでわからないが、藪岡の口調は穏やかだった。聞きなれない敬語も相まって、とにかく不気味だ。
『うおっ!!』
 いきなり、映像の後ろから叫び声がした。カメラが振り向けば、姉貴が脚を内股に閉じている。足の押さえつけが緩んだ隙をついたんだろう。その判断力と行動力はさすがだ。でも今は、無駄な足掻きでしかない。
『自慢の足で力比べってか? いいぜ、受けて立ってやる』
 藪岡はそう言って姉貴の両膝を掴み、強引に割りひらいていく。
『うーーっ、うう゛う゛ーーーっ!!!』
 姉貴の呻きがして、健康的な足がぶるぶると震える。相当な力が入っているらしい。足の力は手の3倍というし、俺だったらああまで本気で抵抗する姉貴の脚を開くのは、顔を真っ赤にして頑張っも無理だろう。でも藪岡は、薄ら笑みを浮かべた状態で簡単に開いてしまう。
『なんだよ、抵抗してもよかったんだぜ?』
 目一杯、180度近くまで足を開かせてから、藪岡は白々しく言う。姉貴は、信じられない、という風に目を見開いていた。ある意味この瞬間が、姉貴と藪岡のファーストコンタクトだ。有無を言わせぬ暴虐。それこそが藪岡の特徴であり、全てなんだから。
『うう、うう!!』
 姉貴はイヤリングを噛んだまま、左右に首を振る。でも、無駄だ。藪岡の怒張は濡れきった割れ目に宛がわれ、強引に捻じ込まれる。
『……う゛、うーう゛ッ!!』
 姉貴が息を詰まらせて仰け反る。下半身に比べて華奢な肩が、ガクガクと震えはじめる。たぶん、恐怖で。あの強くてしっかり者の姉貴が、ガキであるはずの藪岡に犯されて震えているんだ。
 藪岡は上からのしかかるようにして、極太をさらに奥へと押し込む。挿入が深まるほどに割れ目から愛液が押し出され、肛門の窄まりの横を流れ落ちていく。
『おーし』
 藪岡の漏らした一言が、心に響く。奴の満足とはつまり、被害者にとっての絶望だ。今でいうなら、規格外の怒張が姉貴の一番奥まで達したという事だろう。
 姉貴は藪岡の肩越しに天井を見つめながら、目を見開いたままでいた。
『動くぜ』
 藪岡が唸り、姉貴の太腿を抱え上げての抜き差しを始める。
『う、うう゛っ!!』
 腰を浮かせたまま、シーツへ爪先立ちになって呻く姉貴。されるがままの状況で、歯に挟んだイヤリングだけが、かろうじて意思を残している。

『どうっすか、初恋の相手とヤった感想は?』
 布団を取り巻く連中の一人が、藪岡に尋ねた。
『んー、なんか普通だな、***に比べっと。この脚ならかなり締まると思ったんだがよ。ま、現実なんてこんなもんか』
『そりゃ比べる相手が悪いっスよ、あれ千人に一人レベルの名器じゃないっすか!』
 溜め息をつく藪岡を、また別の1人がフォローする。なんて会話だ。他人の弁当を奪って食っておいて、レストランよりまずいと吐き捨てるような行為。畜生の所業だ。
『ンっ、ふ……ふ、ふっ…………』
 姉貴はついに抵抗を諦め、つらそうに横を向いて呼吸している。藪岡はそんな姉貴を見下ろしながら何度か腰を打ちつけていたが、やがて大きく体位を変えた。布団の上へ座り込み、膝の上に相手を乗せる。対面座位だ。オーソドックスな体位のひとつだが、圧倒的な肉の壁である藪岡がそれをやれば、拷問のようにすら見えてしまう。
 いや、実際拷問も同然だ。ペットボトル大の逸物が、藪岡の剛力と獲物自身の自重で、有無を言わせず入り込んでいくんだから。
『う、う゛……う゛っ…………!!』
 メリメリ、という音さえしそうな挿入に、姉貴の目が見開かれていく。イヤリングを噛みしめる歯茎に力が篭もり、篭もり、ぶるぶると震えだす。やがて見開いた両目から涙までこぼれ落ち、そこが姉貴の……あの強い姉貴の、限界だった。
『あ……あ』
 その声と共に、白い歯が開き、イヤリングが落ちていく。それは一瞬の出来事。でも。
『あああああ゛ーっ、いたい、いだい゛い゛っ!! やめ゛でっ、ぬいてえ゛え゛え゛え゛え゛ーーーっ!!!』
 大口を開けてのその絶叫は、もはや口にイヤリングを含む余地などない事を、つまり自分の完全な敗北を、部屋中の人間に示すかのようだった。
『あーあ、あんなに頑張ってたのに』
『しゃあねーべ。ヤブっさんに目ぇつけられた時点で、死ぬまで突っ張るか、オンナになるしかねぇんだよ。どんだけ気ィ強かろうがな』
 畳の軋みと甲高い悲鳴をBGMに、下卑た会話が交わされる。認めたくはないが、たぶんそれは間違いのない事実だ。少なくとも、俺の知る限りでは。

『しかし、でけえチチだな』
 藪岡は獣のように姉貴の中を貪りながら、上下に揺れる乳房を舐めしゃぶる。そうして散々楽しんだ後、低いうめきと共に一切の遠慮なく中出しし、姉貴の体を放り捨てた。
『後はお前らでマワせ。***と違って、オナホールとしちゃ二流だがな』
 藪岡はそう言って布団から立ち上がり、周りの連中が色めき立つ。
『へへ、待ってました! 俺じつは、こいつのムッチリ具合好きなんだよね。スレンダーなガキよりよっぽどソソるぜ』
『よし、ヤるか!! ヤブっさんが初めて惚れたオンナだ、可愛がってやんねーとな!』
 歯を剥き出しにして笑う顔は、まさに飢えた肉食獣そのものだ。

 俺は、実の姉が飢えた獣の餌になるのを、じっと観ているしかなかった。
 穴が空くほど観たって、泣いたって、叫んだって、目の前の光景が変わることはない。なら視聴するだけ時間の無駄だ。そう理解はしているが、停止ボタンが押せない。ひどい嘔吐寸前の無意味なフリーズ……たぶん、それと似たような状態だ。
 正常位でただただ快楽を貪る獣。
 健康的な足を肩に担ぎ上げ、開いた股の間へ欲望を打ち込む獣。
 抵抗する気力さえない姉貴の手首をわざわざ掴み、強姦をアピールする獣。
 人の形をした畜生が多いことだ。別に、そういう連中がいたっていい。遠いどこかで共食いでもしてるのなら、何の文句だって言いはしない。
 でも……頼むから、姉貴の肉を貪らないでくれ。
 何の罪もない姉貴を泣かさないでくれ。

 頼むから。


    ※           ※            ※


 トイレで中途半端に吐いた後、またパソコンの前に戻る。
 サムネイルを見る限り、姉貴は例の潮吹き動画の後も、同じワンルームで輪姦を続けられたらしい。
 すぐ後のシリーズが、『4Pハメ回し』①~⑦。その後が、『ディープスロート調教』。動画の長さは気分で決めているのか、4、5分程度のサンプルムービー同然のものもあれば、4時間以上の長尺もあった。
 姉貴にあったことは、順を追ってすべて知っておきたいという自分もいる。だが、今のコンディションで輪姦動画の連続を見るのはきつい。だからとりあえずで、ディープスロートの方を再生する。サムネイルを見る限り、これはあまり激しい動画ではなさそうだ。

 動画は、這う格好の姉貴を横から撮る形で始まった。姉貴の前後に一人ずつが立ち、一人は前から咥えさせ、一人は後ろからハメている。
 カメラは床にでも置いているんだろうか。手ブレもない完全な定点で、姉貴の身体を映していた。顔はギリギリ見切れているが、粘ついた水音と、男の脚の間を頻繁に滴り落ちる透明な液からして、かなり入念にしゃぶらされているようだ。
 一方で後ろの男は、姉貴の乳房を後ろから揉んだり、腰を掴んだり、クリトリス辺りを弄ったりと変化を咥えつつ、一定のペースで腰を振っていた。
 サムネイルの印象通り、まさに調教という感じのハメ撮りだ。
 動画が始まってから数分の間、姉貴は一見淡々と奉仕していた。でも、やはり苦しいのは苦しいんだろう。
『かはっ、あはっ……けへっ! ぶほっ、ぶほっ! おッほ……!!』
 ある瞬間をきっかけに、連続して咳き込みはじめ、男の太腿を掴む。そしてかなりの唾液をシーツに溢しながら逸物を吐き出すと、崩れるように項垂れた。
『う゛、お゛へっ……けふっ!!』
 下を向いたやや厚みのある唇から、さらに大量の唾液がこぼれていく。嘔吐かとも見紛う量だが、あくまで色は透明だ。
 そして、気のせいだろうか。カメラの死角にあたる、姉貴の顔の右側……そこが何だか赤いように見える。
『……なに勝手に休んでんスか?』
 ひどく冷たい声と共に、前の男が喘ぐ姉貴の髪を掴みあげた。
『あ゛っ!!』
『俺、朝まで舐ってろって言いましたよね?』
 痛がる姉貴を前にしても、声のトーンは変わらない。俺は直感する。こいつは、サディストだ。
 姉貴の両手が震えながらシーツへ下ろされ、喉奥への凌辱が再開される。カコカコカコカコ、と喉奥を掻き回す音が始まる。そして一度限界を迎えてしまった姉貴は、もう喉の攪拌に耐えられない。
『うむ゛っ、こォ゛!!……うむ゛ぉお゛コッ…ぶふっ、ぶほっ!!ごぽっ!!」
 えづきともうがいともつかない音を発しながら、それでも姉貴は必死に耐えていた。
『くくっ。あの***センパイが、ここまで従順になるなんてな』
 一定のペースで犯していた後ろの一人が、肩を揺らして笑う。
『男にガチでカマされりゃ、大人しくもなんだろ』
 前の男はそう答えた。抑揚のない口調も恐ろしいが、喋った内容はそれ以上に聞き逃せない。
 男にガチでカマされた。似た言葉を最近聞いた気がする。
 ……そうだ。ファミレスで見たアレだ。鼻血を出したまま怯える、姉貴の写真。そうなると、さっきチラリと見えた顔右側の赤だって、思い過ごしではすまなくなる。
 このシーンは、あの写真の直後なのか。
 動画で直前にあたるのは、『4Pハメ回し⑦』。これは『ディープスロート調教』。そして、男がつい全力で殴ってしまう状況となれば……
『しかしまさか、あの状況で噛むとは。本気で逃げられるとでも思ったのかね。勇敢なんだか、無謀なんだか』
 俺が辿り着きかけていた答えを、後ろの男が口にした。
 やっぱりそうだ。姉貴はどうやら、逃げ出す隙を作るために男の物を噛んだらしい。
 姉貴はケダモノに身を食われながらも、必死に抗っていたんだ。この動画の直前……殴られて、男の力をはっきりと刻み込まれるまでは。
『どっちにしろ同じだ。何も考えなくなるまで、塗りつぶす』
 前の男がそう言って、太腿を引き締める。ゴエエッという声にならない声が、虚しく動画内に響いた。


    ※           ※            ※


 姉貴は動画の何十パートにも渡って、延々と輪姦され続けていた。姉貴だって一人の女だ。刺青を入れた厳つい連中に入れ替わり立ち代わり犯されるうちに、震えながら泣いてしまうことが何度もあった。

『女優本人が一度やってみたいと提案した、失神上等のハードプレイ。心配になって何度かカメラを止めたんですが、その度に「やめないで」と哀願されるんで参りました(笑)』

 動画の説明欄にはそんなふざけた文が並んでいるが、これは完全にレイプだ。
 嫌と言うほど見覚えのある顔が、背中が、足が、恐怖に震えている。チンピラ共に犯される実の姉……その映像を見続けるのは拷問と同じだ。これ以上つらいことなんてないようにも思える。でも、永遠に続くかと思えた輪姦シーンがようやく終わり、次の『性感開発』シリーズが始まれば、俺の胸の苦しさはさらに増した。

『前のメスブタには中途半端なまま逃げられてしまったので、今度は早めにポルチオ中毒にしておきます』

 そう説明の書かれた動画『ポルチオ開発①』で姉貴は、まず徹底的に焦らされつづけた。
 布団に横たわったまま股を開かされた姉貴のアソコを、チンピラ連中が舌と指で刺激する。10分や20分なんて軽い前戯じゃない。何時間もだ。
『……はぁっ、はぁ……っ……はぁ、はあっ…………!!』
 男連中は見るからにヤり慣れてる奴らで、姉貴の呼吸はものの数分で荒くなる。アソコからも濡れた音がしてくる。濡れた音は段々とはっきりとした水音になり、姉貴の太腿が震えだす。そしてついには、片腕で目を覆ったまま、「いかせて」と恥ずかしそうに呟くようにさえなる。そこまでになっても、焦らしは終わらない。
『うぅ……ぅうぅぅ……っぅぅぅぅう…………!!』
 姉貴の太腿の震えがいよいよ洒落にならなくなり、泣くような声と共に腰が完全にシーツから浮く。そんな状態が珍しくもなくなった頃に、ようやく焦らし責めが中断される。でもそれは、あくまで性感開発の準備段階でしかない。

 その次の動画では、姉貴を胡坐縛りで転がしたままでの『指マン』が繰り返された。涙声で何度ねだってもイクことを許されなかった焦らしとは逆で、今度は泣こうが喚こうが潮吹きを強いられつづける。
『あ……っ、あーーっ!! ああぁっ、んあああーーーっ!!』
 いくら姉貴でもそんな環境では、恥じらう余裕すらない。大口を開け、涎まで垂らしながら叫びつづける。そして指マンを続けるチンピラは、そんな姉貴の“さらに下”を要求する。
『ホラどうしたんスか? もっと思いっきり声出しましょうよ先輩! まだ我慢してんでしょ、大声で喘いだ方がキモチいいっすから!!』
 そんな事を何度も何度も囁いて、姉貴に大声で喘ぐ癖をつけようとする。しっかり者の姉貴だ、普段ならガキのそんな言葉には耳も貸さないだろう。でも今は違う。余裕のない中、チンピラの言葉に洗脳されたように、段々と喘ぎが大きくなっていく。
『……あああっ、あおおおぉーーっ!! おうっ、あはぉオオーーっっ!!!』
 シーツの一面が愛液で変色するようになった頃には、姉貴はとうとうそんな声まで上げるようになっていた。
『はははっ、スゲェ声! これがあのキッチリしてる***先輩かよ!?』
『もうオンナかも怪しいな、こりゃ!!』
 当然、周りからは嘲笑が起きる。でも姉貴は、それに反応する余裕がない。何度も腰を跳ね上げ、グチュグチュとかき回される割れ目から愛液を飛ばしながら“吼える”しかない。
 そして、この動画に収められているのは潮噴きだけじゃなかった。何十回と潮を噴かされて下半身を痙攣させる姉貴に、時々男連中のブツが挿れられることもある。しかも、普通にハメるんじゃない。まずは太いカリ部分で、アソコのごく浅い場所だけを刺激するんだ。狙いは当然、姉貴自身に挿入をねだらせること。
 正直俺は、ここで姉貴がかなり渋ってくれる事を期待していた。明日香と同じく、本当の意味での誇りを持っている姉貴のことだ。こんな屈辱的な行為に、そうそう折れたりしないだろう……と。でもそれは所詮、傍から見ている人間の理想でしかない。動画内の姉貴には、すでに踏ん張れる気力もなかったようだ。
『い……いれて…じらさないで…………』
 割れ目を刺激されはじめてから、ほんの1、2分後。姉貴は、確かにそう言った。困りきったような顔で。
『ひゃひゃっ!! んだよ、テメェから欲しがんのかよ。随分カワイイ女になっちまったなぁ、ええセンパイよぉ!?』
 犯すチンピラは白々しく煽り、姉貴の顔をさらに歪ませながら、ようやく奥まで腰を進める。
『うううんんんっ……!!』
 その瞬間、姉貴の喉から漏れた音は、本当に気持ちが良さそうだった。

 続く『ポルチオ開発③』からは、姉貴がさらに徹底して快楽中毒にされていく様子が収められていた。
 たぶん風呂場なんだろう、タイルと風呂桶、洗面器なんかが見える空間で、マングリ返しにされた姉貴が延々とバイブ責めを受けている。グリグリと円を描くようにしたり、奥を押し込むようにしたり、バイブの底を人差し指でリズミカルに押し込むようにしたり。いつだったか明日香が受けていたような、じっくりとしたポルチオ責めだ。
 下の毛は前もって全部剃られたらしく、割れ目にバイブが入り込む様子がやけにはっきりと見えた。
 この動画では、姉貴はバイブ責めをしている奴を含め、3人の刺青男に囲まれている。にもかかわらず、野次の類は全くない。本当にただ淡々と、調教として責めが進んでいく。それは野次の飛び交う凌辱動画より、妙に俺の胸をざわつかせた。
 『ほら、イク時はそう言えよ』
 低い声で発されるのは、この一言だけ。後は水音と、バイブの攪拌音、そして……
『い、いくっ、いくうっ!! いくういくっ!はぁっ、はあイクっ!!』
 苦しそうな姉貴の絶頂宣言だけが、風呂場に反響している。
 ローションが割れ目の中を満たしているのか、バイブが抜き差しされる時の音は独特だった。水っぽくはあるが、粘った感じが普通じゃない。そして事実、ある瞬間にバイブが抜かれた時には、ローション特有の糸が何本も引いていた。
 でも、だからって、あふれる透明な液がすべてローションとは思えない。姉貴はもう、相当濡れているようだった。バイブの抜かれた直後の割れ目をカメラが接写すれば、その考えが裏付けられてしまう。ぽっかり空いた洞穴のような奥まりに、かなりの量の液体が溜まっていた。どう贔屓目に見たって、ローションじゃない。姉貴の膣の奥から湧き出た愛液だ。
 割れ目にまた深々とバイブが嵌められ、駄目押しとして二本指でバイブの尻が押し込まれる。その瞬間、割れ目から「ぴすっ」と音が漏れ、姉貴の腰が震え上がった。
『あうっ!! ぁあ、う……あっ……!!』
 姉貴から上がる声は本当に甘い。そんな声、弟である俺にすら向けられた事がなかったのに。
『イク時には言う約束だろ?』
 また低い声がし、バイブを前後に揺らしながらクリトリスまで刺激されはじめる。
『あっ、はあっ!! い、イク、いくっ……!!』
 姉貴はただ命じられた通りに、絶頂の宣言を繰り返した。動画の前半部分より、明らかに柔らかさを増した声で。

 そして『ポルチオ開発③』以降は、セックスをひたすら繰り返す動画になった。
 布団へ仰向けで寝転んだまま、乳房を押し潰す位置まで膝を上げた姉貴。その上に刺青野郎がのしかかり、姉貴の両足首を掴んだまま腰を振りたくる。それを右横の床付近から、定点カメラで捕らえた映像だ。映像の奥にあたる壁際では、定点カメラとは別のカメラマンが、上から俯瞰気味にセックスを捉えてもいた。
 いい加減感覚が麻痺してきたんだろうか。俺にはそれが、よくあるハメ撮り動画に見えてしまう。犯されているのは、間違いなく自分の姉貴なのに。その姉貴が、開発したポルチオをさらに刺激され、刻一刻とメスにされている洒落にならない状況なのに。
『ああ……あぁあっあ、う……ぅ……』
 姉貴は横に投げ出した手でシーツを掴みながら、熱い吐息を漏らしつづけている。かなり気持ちいいのが、雰囲気として伝わってきた。多分、男の方が掴んだ足首の位置を微調整して、常に絶妙な体位を作っているせいだ。
 そして、その男はさらに責め方を変える。掴んでいた両足首を離したかと思うと、すぐにその手で姉貴の腿の裏を押さえ込む。さらに自分自身も前傾姿勢になって、深い突き込みを始めたんだ。
『うあ!あっ……あ!!!』
 姉貴は悲鳴に近い声を上げ、シーツから手を放す。パンッパンッパンッ、と激しく肉のぶつかる音が響く中、姉貴の細い手は肩の横の辺りを彷徨いつづけ、最後には胸の前で指を絡ませるようにして止まる。女性らしいが、どこか幼さも感じる仕草。大人として俺を叱っていた頃の姉貴なら絶対にしなかっただろう動作。それは、あの姉貴が幼児退行を起こしたようで、見ていてたまらない気分になる。
『……い、いく…………!!』
 そして姉貴は、か細い声で絶頂を宣言した。意識を集中していないと聞き逃しそうな、弱々しい声。でも、だからこそ、演技らしさがなくて生々しい。
『いいぞ、イけ!』
 低い声がそう言って、突き込みを速めた。姉貴はそれで一気に追い込まれる。
『あ……ぁあっ!! い、いくぅん゛っ!!』
 鼻にかかったようなその言葉をきっかけに、常に口を開くようになる。
『あ、はっはっはっはっはっ……!い、いく、いくぅっ!!い、いっ!!イッてる、イッてるっっ!!」
 激しい喘ぎと、捲し立てるような絶頂の宣言。明らかに品のある普段の姉貴じゃない。
『くくっ。簡単にイクようになってきたぜ、こいつ』
 多分犯している男だろう、さっきと同じ低い声がそう言って、また姉貴の足首を掴み上げた。そして今度はその足首を、姉貴の顔の横にくるまで押し込んでいく。
『んうう゛う゛イグッ…!!』
 姉貴から、恐れていた通り、本当に気持ちの良さそうな声が漏れた。
 そこからはまた、ひたすらの『ハメ撮り』だ。男は姉貴の足を掴んで押し込んだり、足首の辺りで交差させてみたりして、延々と姉貴を嬲りつづける。
『おいおい、やらしーなセンパイ。フェラん時より動くじゃねーか』
 一旦腰を止めてクリ責めをしていた男が、嬉しそうに言う。腰を動かすまでもなく、敏感な部分を弄られただけでアソコが蠢くんだろう。まるでレイプ野郎を愛するみたいに。
『さーてと、そろそろ俺も逝くぜ……!!』
 男がそう言って、また姉貴の太腿を押し込んだ。
『ううー、うううっ……!!うっうっうっうっう、ふぅうっ……んんぐううっ!!』
 姉貴は太腿を掴む男の手のすぐ傍へ手を置き、激しく喘ぎつづける。映像の奥では、カメラを構えた1人が横へ回り込み、定点カメラとは別方向からのフィニッシュシーンを収めていた。
『お、お……ふーっ、スゲー出た』
 男が、姉貴の腿に手を置いたまま大きく胸板を上下させる。そしてゆっくりと腰を引いた。俺がまず注目してしまうのは、野郎の逸物だ。姉貴の足から、愛液まみれのままずるりと抜け出た逸物は、案の定でかい。すでに完全な勃起状態じゃないが、太さも長さも俺より二周りは上で、亀頭の張り具合も半端じゃない。あれに犯されたら、それは気持ちいいだろう。そう納得してしまうほどの剛直だった。
『はっ、はあっ、はあっ…………』
 姉貴は逸物を抜かれてからも、足を開いたまま激しく喘いでいた。そんな姉貴を鼻で笑いつつ、さっきの男が太腿を押し込む。姉貴の身体がピクリと反応する。かなり大きな反応。ポルチオの余韻はまだまだ残っているようだ。
『ふん、ぐったりしやがって。オメー、先週俺に切った啖呵憶えてっか? 弟クンと同学年(タメ)のくせに、救えないほど薄汚れたゴロツキ――だっけか。んでよぉ。そのゴロツキにガッツリハメられて、今日だけで何回イッたよ?』
『はぁ、はぁ…………し、知らない。数えられるわけ、ないでしょ…………』
 男の煽りに、心底悔しそうな様子で答える姉貴。その態度は、俺の知る姉貴のイメージと重なり、ほんの少しだけ胸の痛みを和らげてくれる。
 でも、その安心も一瞬でしかない。
『だろうな。よし、次お前ハメろや』
 男はデカブツを振りながら立ち上がり、カメラを構える一人と場所を替わる。カメラを構えた新しい一人は、並外れたサイズの逸物を斜め上に勃起させきっていた。
『えっ……?』
 逸物がアソコに宛がわれた瞬間、半身を起こした姉貴の顔が引きつる。
『ちょ、ちょっと休ませて! まだ、イッたばっかり……!!』
 明らかに必死さを滲ませた懇願も、畜生の耳には届かない。姉貴に大股を開かせたまま、深々と腰を割り入れる。
『いっ……いやあああああぁーーーーーっ!!!』
 映像は、姉貴のこの悲痛な叫びを最後に暗転した。


    ※           ※            ※


 動画を時系列順に追っていく限り、性感開発が着実に進められる一方、羞恥や苦痛責めも同時並行でされていたようだ。多少順番が前後したり細部が違ったりしながらも、おおよそ明日香が受けた責めをなぞる形で。
 明日香があまりにも我慢強く耐えるせいで、ラブホテルでの責めはどんどんエスカレートしていった。最後には、洋物AVの屈強な女優さえ泣き叫ぶようなハードプレイさえ再現された。そして姉貴は、その煽りをモロに食らう形となる。

 ある動画では、ポルチオ責めでも出てきた風呂場で姉貴が身動きを封じられていた。
『そろそろ限界近ぇな。ゲロとウンコ、どっちが先に出るかな?』
『***はゲロだったからよ、今度はウンコでいいぜ。俺ァ喉マンよりケツのが好きなんだ』
 そんな事をほざきながら、1人が姉貴の口に指を突っ込み、1人が尻の穴を指で弄繰り回している。床に転がったいくつかのイチジク浣腸が、おおよその状況を伝えてくる。
 これは明日香も受けた二択責めだ。明日香は男2人が呆れるほど耐えに耐えた末、結局はミキの“指イラマ”で敏感になっていた喉から吐瀉物を吐きこぼし、そこからディープスロート調教をされる羽目になった。
 そして、姉貴は……
『んもぉ゛っ、ふもぉ゛らぇえええ゛ーーーーっ!!!』
 喉をかき回されながら絶叫し、口から吐瀉物を吐きこぼす。でもその直後、風呂場のタイルにも汚液の叩きつけられる音が響いた。ほぼ同時の決壊だ。
『ハハハハッ、まさかの両方かよ。ったく欲しがりだなあセンパイはよ!!』
 男2人が嘲笑う。こうして姉貴は、喉とアナルの二箇所で罰を受けることになった。

 その次の動画名は、『プライド崩壊下痢便ファック』。その名の通り、浣腸器で何度も薬液を調教されたまま、アナルを犯され続けるプレイだ。
『うっ、うっ……うっ……!!』
 対面のまま、重ねた両足首を掴まれてアナルを犯される姉貴。動画が始まった時点で、すでにその目は泣き腫らしていた。
『だぁら泣くなって。んなにキモチいいのかよ、下痢便ぶち撒けながらクソの穴ァ犯されんのがよッ!?』
 カメラを背にした男が、嬉しそうに腰を振る。姉貴のビラビラが丸見えなんだから、勃起した逸物が出入りしているのは、アナルで間違いない。あの姉貴の、排泄の穴だ。
『けっ、まーたケツがヒクヒクしてきやがったな。いいぜ、出せやオラッ!!』
 男がそう言って腰を引くと、床の汚物が丸見えになる。
『やっ、ぁ……!!』
 か細い悲鳴が聴こえた後、姉貴は限界を迎えた。多少開いているとはいえ、まだまだ初々しいといえる肌色の肛門。そこから、黄色い汚液がどろりとあふれてくる。俺はパソコンに向かいながら、貧血を起こしたようにグラついた。肉親の排泄をノーモザイクで目にするのは、覚悟していた以上にきつい。明日香のそれを生で見た時よりも、だ。

 その次は、明日香も受けたディープスロート特訓。
『いちいち吐き出すんじゃねぇよ、***先輩よぉ! ったくこのドン臭さ、アイツにそっくりだな。さすが同じ血ィ引いてるだけあんぜ。愛嬌も愛想もイマイチな女が便器にもなれねぇとか、お前生きてる価値あんのかよ!?』
 姉貴に喉奥奉仕を強いながら、藪岡ががなり立てる。もう3つ上の先輩に対して敬語ですらない。
『ぶふっ、ぶほっ!!ぶはっ!!』
 姉貴はきつく閉じた両目から涙を流し、何度も藪岡の逸物を吐き出してしまう。動画が一分進むごとに、一層激しく手足をばたつかせながら。それが人間として自然な反応だ。吐瀉物を大量に吐きこぼすその瞬間まで、両手両足を床につけていた明日香が特別なんだ。でも、男連中はそうは捉えない。
『あーあーカッコ悪ぃなあセンパイ、いい年してギャーギャー喚きやがって。もう何遍言ったかわかんねーけどよ、ちったぁ***を見習ったらどうスか?』
『そうそう、ありゃアンタより6つも年下なんだぜ?』
 明日香を引き合いに出し、姉貴を無様と罵りつづける。
 こういう明日香との関連付けは、わざとなのか、単に面白いからか、これ以降の動画でも頻繁に見かけるようになった。
 例えば、次のファッキングマシンを使った責めでも。

 洋物ハードコアビデオ御用達の、直立式ファッキングマシン。それを見た瞬間、動画内の姉貴の顔は凍りついた。こればかりは仕方ない。あの明日香ですら、目を剥いて汗を垂らしたんだから。
 俺だって、ラブホテルの2階、209号室に設置されたそれを見てゾッとした。まさに拷問器具。明らかに日本人女性に使う事を想定していない、黒人サイズのディルドー。その上下のピストンを担うアームの頑丈さ。土台のデカさ。そういった視覚情報から、人体を破壊しかねないハードさが直感的に理解できてしまう。ネットでジョークグッズとして見かけただけでも、笑いが引くほどの禍々しさだ。それを今から『自分に』使われるとなれば、ショックで卒倒しかねない。
 姉貴の前に晒されたマシンは、色合いこそ209号室のものとは違うものの、形はそっくり同じだった。
『えげつねぇよなあコレ。アンタにゃ正直キツイと思うわ、ここまで見る限り。けどよ、可哀想だがコイツを味わってもらわなきゃなんねーんだ』
 マシンの覆いを手に持ったまま、目線の入った刺青野郎が笑う。同情……な訳はない。それらしい言葉を吐くことで、姉貴に自分の不幸を自覚させるのが目的だ。
『なにせ、***もやったんだからよ?』
 明日香がやったんだから、お前もやれ。またこの論調だ。連中は、そんな事を繰り返して何がしたいんだろう。
 明日香も耐えたんだからと、姉貴に発破をかけている?
 それとも明日香に対して、今さらヘイトでも溜めさせたいのか?
 わからない。というより、わかるはずもない。何の罪もない明日香を監禁レイプした挙句、今またこうして、無関係な姉貴を痛めつけている。その時点で、もう俺の理解なんて及ばない。気の狂った畜生だ、アイツらは。

『んぉおおおっ!おおっ、ほぉお゛お゛っ!!ほおっぐ、んっぉおお゛お゛オ゛オ゛っ!!!!』
 まさしく洋物AVで聴くような声が、映像から垂れ流される。声の主は姉貴だ。あのきちんとした姉貴らしくはないが、映像を見ると納得するしかない。
 がに股でのX字拘束、とでも言えばいいのか。両手首を天井からの鎖で繋がれたまま、大股開きでマシンを跨ぐ格好。割れ目には当然ながら極太のディルドウが叩き込まれ、肛門にはたっぷりと浣腸を施された上で極太のアナルプラグを嵌められる。さらには乳房にまで、搾乳用の器具が取り付けられる徹底振りだ。
 ディルドーを動かすアームは、女の状況なんて一切考慮せず、無機質に割れ目の中を蹂躙する。どれだけ浣腸が効き、腸内が荒れ狂い、獲物が泣き叫んでもだ。その状況を延々と続けた先には、アナルプラグを弾き飛ばして盛大な無様を晒すしかない。そしてその瞬間にもアソコの蹂躙は止まらず、乳房は人間の力では無理なレベルで引き絞られ続ける。さらには恥辱の排便を散々笑い者にされた挙句、空いた肛門は当たり前のようにギャラリーに『使われる』んだ。クソの感触がたまらないだとか、ケツで感じてるんだろうだとか、耳を塞ぎたくなるような言葉責めを浴びながら。
 そこまでの地獄を受けて、上品な顔と声を保っていられる道理はない。あの明日香でさえ、40分を過ぎた頃には顔をくしゃくしゃにして苦しみ、恥じ入り、最終的には洋物ビデオさながらの声を上げたんだ。
 となれば当然、姉貴に耐え切れる道理はなかった。姉貴が明日香より劣るとか、そういうことを言いたいんじゃない。でも、明日香の精神力は超人的で、姉貴はそこまでじゃない……俺の想像が及ばないレベルじゃない、それは事実なんだ。
 この調教での姉貴の狂いぶりは、直視が厳しいレベルだった。実際俺は、何度も動画を一時停止して、過呼吸を抑える必要があった。
 でも。動画内のケダモノ共は、それほどの姉貴を前にしても、まだ平然と笑っていた。それどころか、姉貴の一挙手一投足をあげつらっては笑い、姉貴から涙を搾り取った。
『しんどそうだなぁセンパイ。俺らもこんなモン、わざわざ取り寄せたかなかったんだぜ。高ぇし重ぇし。でもしょうがねぇよな。前の奴隷にも、コレと同じモン使っちまったんだからよぉ!』
 まただ。明日香の存在に、極限状態の姉貴の意識を向けている。

 この傾向は、さらに次の動画、『胡坐縛り連続ゲロマチオ①』でも変わらず続いた。
『んぼぉお゛ぇあ゛エ゛ッ!!ぶっ、ぶふっ……ごもぅえ゛お゛え゛っ!!』
 喉奥まで極太を咥え込まされ、姉貴が吐瀉物を吐きこぼす。事前に大量の尿を飲んでいた明日香の時とは違い、はっきりとした半固形の吐瀉物が、縛られた姉貴の太腿へと浴びせかかる。
『あああ゛っイヤアーーッ!! いやああ゛いやああ゛あ゛ーーーーっっ!!!』
 汚辱か、苦しさか、恐怖か。怒張を吐き出した姉貴は、目隠しからまた新たな涙を溢しながら、半狂乱で叫びつづけた。ただの人間なら、当然そうするように。
『辛いよなぁ、苦しいよなぁ。ここまでやられてまだ意地張り通すなんざ、***って女も大分イカれてると思わねぇか、なあ先輩』
 泣き喚く姉貴の頬を掴み、また喉奥までの奉仕を強いながら、モヒカン頭が囁きかける。

 さらに2つ後の次の動画、フィストファックでも同じくだ。
『あああ、ああぁああ゛ーーっ!!』
 四つん這いのまま、男の太い腕を割れ目へ捻じ込まれ、姉貴は恐怖に泣き叫ぶ。その様子がまたイカれた連中の嗜虐心を煽るのか、嬉々として強引なフィストが続いた。でもそんなある時、拳を捻じ込んでいた1人が眉を顰める。
『どうした?』
『いや、どうしたっつーかよ……ほれ』
 目を見開いたまま凍りつく姉貴の後ろで、男3人が歪んだ笑みを浮かべる。その視線の集まる下に、ぽたぽたと紅い雫が垂れていく……。
『ふん、マンコが切れたか』
 ごく普通の口調で発されたその呟きで、姉貴の目が恐怖一色に染まる。
『あ……ああぁ…………』
 もう姉貴は、震える息を吐くだけで精一杯だ。そんな姉貴の様子を見てもまだ、動画内の連中に憐れむ様子はない。
『ま、こんなザマになっちまったがよ、恨むんなら***にしてくれや。元々アイツが涼しい顔で突っ張りつづけるせいで、お前までこんな目に遭う羽目になってんだぜ?』
 メチャクチャな理論を振りかざして、3人は笑う。紅い筋の滴る足の付け根へ、さらに腕を突き込みながら。
『あ、あ……うああぁああーーーっ!!!』
 姉貴が悲痛な表情で叫ぶ。その直後に画面が暗転してからも、姉貴の叫びと下卑た笑い声だけは、数秒に渡って続いていた。

 その5つ後の動画は、『人間便器』。首と両手を固定され、開口マスクを着けられたままで便器として使いまわされる地獄だ。
 動画内の大半の時間、姉貴の両穴はバイブで塞がれていた。この責めを受けた時点でも二穴の締まりを保っていた明日香と違って、姉貴はフィストで壊された直後だから、“性欲処理の穴としてすら”人気がなかったんだ。
『どうした先輩。***はこのぐらい、涼しい顔で耐えてやがったぜ?』
 チンピラ2人が両側から開口マスクに向けて放尿しながら、明日香の話題を出す。それに姉貴が反応したのを見て、一人がイラマチオを仕掛ける。さらに別の一人も、アソコのバイブを抜いてハメはじめる。
 その地獄の中、着実に姉貴は壊れていった。
『ああ゛あ゛ーーーっ、あえあらぁえあ゛あ゛ーーーーっ!!!!』
 瞳孔は開き、開口具越しに何かを叫びつづけるようになる。
『何だ何だウッセーな、何喚いてやがんだよ』
 赤い髪のチンピラが、期待した表情で開口具を取り外す。その瞬間、姉貴の喚きが言葉になった。
『もう便器扱いはやめてっ!!あたしは……あたしは人間よおっ!!!!』
 目を瞑っていたら、俺はその声を姉貴のものだと認識することすらできなかっただろう。まったく聴いたことのない、性別や年齢すらわからない、裏返った声だった。
 これも、当たり前のことだ。男に囲まれ、視姦され、口を使われアソコを使われ尻を使われ、飽きれば蔑んだ目で小便を飲まされる。そんな状況が何時間も何十時間も続けば、おかしくならないわけがない。明日香のような、そもそも精神のステージが違う人間を別にすれば。
『そっかそっか、人間か。そりゃ良かったな。さ、続けるぞ、“便器”』
 チンピラはそう言って、姉貴にまた開口具を取り付ける。
『えあ゛っ!? あえっ、あえれおっ、えああぁぁ゛っ!!!』
 姉貴が目を剥き、普通じゃない激しさで拒絶しても、動画内の連中の誰一人として動揺しない。まさに汚い便器を見る目を、薄汚れた姉貴に落としている。
『悪ィなセンパイ。この人間便器はよ、丸一週間続くんだ』
 淡々とした声が響く。姉貴が目を見開いた。
『これもよぉ、全部***のせいだぜ。アイツがよ、責めても責めても、イジめてもイジめても、生意気な目で耐えやがるもんでよぉ、気付きゃ一週間嬲りっぱなしだった。お前にも、それと同じ目に遭ってもらわなきゃなんねぇ。特別に教えちまうが、まだ三日目の朝でよ、折り返しにすら来てねぇんだ』
 震えだす姉貴に薄い笑みすら浮かべて、金髪は続ける。
『俺らは眠ィからそろそろ帰るが、入れ替わりで元気な連中が来るからよ、たっぷり便器として使ってもらえ。ハメ回されて、ボテ腹ンなるまでションベン飲まされて……そんでどうしてもキツけりゃ、まあ適当なトコで狂ってくれや?』
 そこで金髪は、ひとつ大きな欠伸をした。そしてドアをノックする音が響き、動画は終わる。最後の最後に、姉貴の呆然とした表情をアップにして。


    ※           ※            ※


 人間便器の動画が終わった後、俺は呆然としていた。動画の最後に映った姉貴が、俺に乗り移ったようにだ。
 下を見ると、ズボンがかなり濡れていた。俺はそれを見て最初、射精でもしたのかと思った。でも、逸物は萎えきっている。とても射精できるコンディションじゃない。じゃあ失禁かと思うが、それにしては尻の方まで濡れている様子がない。
 そこまで思考を繋げて、ようやく気付く。目から大量の涙が出ている事に。目が痛い。ドライアイでヒリヒリしている。明日香の調教を見ている時もそうだった。俺には集中した時、こんな癖があるのか。
 俺はそんな取りとめもない事を、数分もの間ずっと考えていた。目的ははっきりしている。現実逃避だ。だって俺はさっきから、気付いてしまってるんだ。人間便器のさらに後にも、動画が続いていること。姉貴の地獄巡りの記録はまだ先があること。
 そしてそのタイトルが、『完全精神崩壊51P ① 』であること。

『某県某地域の不良の間で伝説になっている、<息子の目の前で母親が50人に輪姦されて狂った話>を再現してみました。なにぶん噂の再現なので、想像でしかないですが……ハードな映像になっている事は間違いありません!』

 これが動画の説明欄だ。
 白々しい。ここに書いてある母親の輪姦が、藪岡達主導で起こした事件だというのは周知の事実。やった張本人なんだから、再現は完璧に決まってる。でも、そんな事はどうでもいい。問題は、その伝説の責めの再現が、姉貴の動画シリーズに入っていることだ。
 喉が渇く。指が震える。
 再生ボタンを押すまさにその瞬間、動画の再生時間が見えた。
 119:58、約2時間。そしてそれだけの尺を取っても、複数パートの1番目でしかない。

 映像が始まった。
 映し出されたのは、殺風景な吹き抜けの空間。天井の高さからして、どこかの工場か倉庫の跡だろうか。そしてその風景の中心に、姉貴の姿があった。丸裸のまま、後ろ手に縄を打たれている。ペンキや油まみれの床に敷かれた、2メートル四方ほどのマットがベッド代わりだ。
 そしてその姉貴を、ガラの悪そうな連中が大挙して取り囲んでいた。あまりにも頭数が多すぎて、引いて撮っているカメラでも全体を映し込めていない。ただ、タイトル通りなら50人の竿役が揃ってるんだろう。
『ゆ……ゆるして』
 姉貴は周りの連中を見上げながら、怯えきった様子で哀願する。最初の頃の先輩然とした気丈な態度は、もう気配すらない。
『そんな寂しいこと言わねぇで、皆で楽しもうぜ。***先輩とヤれんのを楽しみに、わざわざ集まってくれた連中なんだ』
 どこかから藪岡の声がする。品のない笑い声がそれに続く。
『いや……あたし、もう帰りたい…………!!』
『いいじゃねぇか、ここが新しい家で。これだけ若くて元気な連中から、死ぬほど愛されるんだぜ。逆ハーレムって奴だ。どんだけの女が羨ましがることか。……ま、今さら泣いても喚いても帰れねぇんだ、せいぜい楽しめや』
 姉貴の切実な訴えも、藪岡には通じない。いつも通り、相手の苦しむ様子を面白がるだけだ。

 そして、輪姦が始まった。
『いや、いやああ……っっん、む、ぐうっ!!!』
 身を捩って嫌がる姉貴に這うような格好を取らせ、前後を2人の男が挟みこむ。まずはフェラと挿入だ。
『あ? ンだよ、緩ィなこいつ。陸上部のエースじゃねぇのかよ!?』
 後ろから挿れた一人が、眉間に皺を寄せて叫ぶ。
『悪いな。ちっと無茶しちまってよ、マンコもケツも伸びちまった。ま、端っからそんなよく締まるオンナでもなかったがよ』
『マジか。あの***先輩とハメられるっつーから、三日ぐらいシコんの我慢してきたのによ、蓋開けりゃタダの女かよ? ったく、もうちっと気合入れろや先輩よぉ。こんなんじゃいくら腰振ってもイケねぇだろうが!!』
 後ろの男は、散々に不満を漏らしながら、姉貴の尻を平手で打ち据える。そして前から咥えさせる男も、同じく姉貴を睨みつけていた。
『オイ、わかってんだろうな。今度は噛むんじゃねぇぞ!!』
 どうやらこいつは、前に逸物を噛まれた奴らしい。
『ひゃひゃっ、お前噛まれたのトラウマになりすぎだろ!』
『笑い事じゃねんだよボケが、こっちは2針縫ったんだぞ!? この女、完全に噛み切る気でいやがった!』
『ありゃ自業自得って気もするがな。ま、何にせよもう噛まねぇって。ツラぁ見てみな、ンな覇気があるように見えっか?』
『そういや、すっかり従順な犬ってツラだな。あの気ィ強えセンパイがよ』
『だろ。ハメられて、浣腸されて、ゲー吐かされて、挙句にゃションベンまで飲まされて……そういう扱いが、もう何週間も続いてんだ。プライドはもうボロボロよ』
『***はそれでも踏ん張りやがったがな。あれにゃ正直ビビッたぜ』
『カワイソーだよな、この女も。馬鹿な弟持ったばっかりに、そのバケモンと同じ扱いにされちまうんだからよ』
 吐きそうなぐらい悪趣味な会話が飛び交う。その中心で姉貴は、身を捩ることすら許されずに犯され続けていた。
『んふっ……ほぉもう…うっ、んォオっ……おぶっ、むほぉっ……!!』
 でかい逸物を喉奥深く咥えさせられた口からは、苦しそうなえづきが繰り返される。その一方で後ろからも、腰を鷲掴みにした荒々しい突き込みが続く。
『こいつ締まりはイマイチだが、濡れんのは早ぇーな。もうグチョグチョになってきやがった』
『ああ、だいぶ乱交には慣れてんぜ。最初はイヤイヤうるせぇが、いざ輪姦しはじめっとスグその気になりやがる』
『なんだそりゃ、面倒くせぇビッチだな』
 連中は言いたい放題だ。あの姉貴が、ビッチ? 俺の知る限り、誰よりも貞操観念がしっかりしていた、あの姉貴が?
 違う。そんな訳がない。たとえ感じやすくなっていたとしても、それはそういう風に開発した、外道共のせいだ。姉貴は悪くない。何も。何も。

 動画の中で、姉貴の責められ方がまた変わる。男の上へ乗る形で突き上げられたまま、頭上に跨る男からマウント気味にイラマチオを強いられる。別の2人がそれぞれ左右の足をまっすぐ伸ばす形で掴んでいるため、姉貴には一切抵抗する手段がない。
『おゴッ……も゛ぇええ゛っ、えごっ、ほも゛おォ゛うえ゛っ!!!』
『すっげ、マジで簡単に喉まで入んだな、キモチいいわーこれ。昔のオレにも聞かしてやりてぇよ。お前あと何年かしたら、あの***センパイの喉マンコ犯せるんだぜって』
 苦しそうに呻く姉貴に対して、喉を犯す奴は随分と楽しそうだ。
『あーやべ、出る出る……溢さずに飲めよ』
 最後にはそう言って、姉貴のすっきりとした顎に指を添えながら射精する。
『う゛っ、ぶほっ、お゛ほっ!!』
 精液の量はかなり多く、一部は呑みきれずに姉貴の口から零れてしまう。俺には経験がないぐらいの射精量だ。それが口へ注がれたことが、救いにすら思えてしまう。もしそれが膣へ注がれたなら、いつ妊娠してもおかしくない。
『おらっ、こっちも出すぞ!!』
 そして、動画を撮る鬼畜集団がそんな配慮をする筈もない。深々と突き上げた一人が、一切遠慮せずにアソコの中へ射精する。
『くくっ。微妙な具合だったが、その分焦らされて思いっきり出たな』
 その言葉と共に太い逸物が抜かれれば、拡がった割れ目から大量のザーメンがあふれ出した。

 シークバーを思い切って動かしても、輪姦が終わる気配はない。
 這う格好のまま、目の前に座り込んだ男の物を咥えさせられ、アナルをバイブで掻きまわされながらアソコを犯しぬかれたり。
 座ったまま四方八方を男に囲まれ、濃い唾液の線をあちこちに繋げながら、延々と口での奉仕を強いられたり。
 膝立ちのままイラマチオを強いられ続け、もう白目を剥きかけているにも関わらず、後ろから後頭部を押さえ込まれたり。
 背後から背面座位で犯され、乳首を弄繰り回されながら、別の一人の物をしゃぶらされたり。
『ああああぁいやあああ!!やめてっやめてえええぇぇぇえーーっ!!!』
 穴という穴を犯される姉貴の悲鳴が、音割れしながら響きわたる。何分飛ばしても、何分飛ばしても。
 50対1のセックスでは、本当に休む暇すら与えられない。
『ふうー、出た出た。これでケツに10発、マンコに20発か。そろそろ孕むかね、この女』
 物騒な言葉と共に、また逸物が引き抜かれた。すっかり陰唇の歪んだ姉貴のアソコから、ザーメンが絶え間なく零れ落ちていく。心を折る手段の一つとして、妊娠させることが一つの目標になっているんだろう。どいつもこいつも、とにかく生でハメて中出ししまくっている。
『もう、本当にやめて……』
 可哀想に、姉貴は怯えきっていた。自分の倍近い体格の人間に代わる代わる犯され、誰とも知らない奴の子供を孕みかねない状況なんだ。怖くて当然だ。
 でも、そんな姉貴に容赦する人間はいない。淡々と姉貴の腕を掴み、腰を上げさせ、輪姦を続けようとする。
『あああっ!? ご、ごめんなさい、ごめんなさいぃっ!!!』
 すでにパニック状態なんだろう。姉貴は男の腕に身体中を掴まれたまま、目を泳がせて謝罪を繰り返す。
『ん? なにセンパイ、何か悪い事したの?』
『し、してないっ!! してないけど、ご、ごめんなさいっ!!!』
『何それ、なんかおかしいなー、オイ何やった、言ってみろよ』
『な、何もしてないっ! あたし、な、何もしてませんっ!!』
『だからおかしいだろうが、何もしてない人間が謝るかよ。何かやったから謝ってんだろ、オラ白状しろよ!!』
『なにもやってませんっ!! あ、謝ったの謝りますっ、だからゆるして、おねがい許してっ!! どうすれば許してくれるの? なんでもやるから、ウチに帰してーーっ!!!』
『何でもやるなら、このまま犯され続けとけよ。ガキ孕むまでな!!』
 もはや、地獄絵図だ。涙ながらに許しを乞う姉貴と、そんな姉貴を輪姦するチンピラ共。そのひどい状況のまま、最初の動画が終わる。

 続く動画でも、状況は一切変わらない。泣き喚く姉貴と、それを面白半分に嬲る男共という構図のままだ。当然姉貴は、刻一刻とまともさを失くしていく。
 そして、動画時間にして都合3時間近くが経った頃。恐慌状態の姉貴に、外道共が追い討ちをかけはじめた。
『くくっ。にしてもよ、アンタも可哀想だよなぁセンパイ。なーんも悪い事してねぇのに、***のとばっちりでこんな地獄を味わうハメになっちまうんだからよ!』
 二穴責めの最中、背に覆い被さる一人が姉貴に囁きかける。
『い……いっ!?』
 歯を食いしばって耐える姉貴は、その言葉に後ろを振り返った。
『そういや***の奴は、今頃どうしてんだろうなぁ。俺らから逃げて、今頃は何食わぬ顔で幸せに暮らしてんのかね?』
 前から犯す一人もその会話に乗り、姉貴の注意を惹く。
『ああ、みたいだぜ。俺のツレが見たんだよ、***がその女の弟と、仲良さそうに歩いてるとこをよ。確か、最後にゃラブホに入ったっつってたっけ』
 周りで見守っていた人間からも、そんな声が上がった。規制音があっても、話題が明日香と俺の事だと理解できる。動悸が早まる。
『はははっ、そりゃいいや! んじゃ***の奴、キツイ役目は全部この女におっ被せて、自分は誘惑した弟クンとハメ捲ってるって訳か。ふてぇ女だなまったく!!』
 一人が笑いながら発した言葉に、とうとう姉貴が目を見開いた。男相手に逆らうことを諦めた姉貴が、怒りの矛先を向けるのは……
『あ……***…………***ぁァア…………ッ!!!!』
『そうだ、***を恨め! 全部アイツだ。可愛い弟誑かしてんのも、お前をこんな目に遭わせてんのも、全部! どう思う、どうしたい!!』
 外道共は、姉貴の意思を誘導する。
 俺よりずっとしっかりした姉貴のことだ。普段なら、明日香に非なんてなく、恨むべきはあくまで藪岡達の方だと理解できるだろう。でも、動画の中の姉貴はすでに正気じゃない。正常な判断なんて、とっくにできなくなっている。男連中相手に意味もわからず謝罪を繰り返していたことからも、それは明らかだ。
『***あああッ!! ***アアアァアアアッッ!!!!』
 姉貴の顔は、僅か数秒の間に、鬼のような形相に変わっていた。溜まりに溜まっていたストレスや恐怖、不安……そうしたものが方向性を与えられたことで、すべて怒りに昇華したように見えた。
 男達は、そんな姉貴を囲んで笑う。その笑い声には藪岡のものも含まれていた。そして賑やかな雰囲気をそのままに、動画は終わりを迎える。次の動画は表示されない。今の、『完全精神崩壊51P ② 』が、シリーズ最後の1本だ。

 俺は黒い画面を眺めながら、呆然としていた。
 姉貴が壊された。あの外道共に。
 しかも、それだけじゃない。明日香に対して、悪感情を植えつけられ

 …………そこまで考えて、ふと全身に悪寒が走る。

 気づいてしまった。
 と、いうより、もっと早く気がつくべきだった。


   ――――明日香は、無事なのか?


 ショックのあまり気絶しそうになりながらも、何とかスマホを探り当て、震えながら明日香の番号を選ぶ。姉貴に電話した時のトラウマが甦る。
 コール音。
 コール音。
 コール音。
 頼む、出てくれ。
 俺のその願いを汲んだかのように、電話は繋がった。
「明日香!!」
 俺は嬉しくなって、最愛の相手の名前を呼ぶ。
 
 でも。

『オウ』
 返ってきたのは、ガラの悪そうな男の声。
 俺は、思わず固まった。掛け間違えたかと思って画面を見るが、表示は確かに「明日香」と出ている。
 なら、なんで。どうして。
『今いいとこなんだよ、邪魔すんじゃねーよ』
 男の声はそう続けた。
「あ……あ…………」
 俺は呻く。呻くしかない。言葉が出ない。
『誰から?』
 電話の向こうで、また別の声がする。少し遠い。
『ああ、例の彼氏クン』
 最初の声が、誰かに向かってそう話しかける。そしてまた送話口に顔を向けたのが、息の感じでわかった。
『ノンビリ話してる状況じゃねーからよ、切るぜ。今からいいモン送ってやっから、それでも見とけ』
 その乱暴な口調の後、通話状態が切られてしまう。
 またしても呆然とするばかりの俺の手元で、スマホが震えた。明日香のスマホからメールが送られてきたらしい。メールの中身は、何かの映像。
「なんだ……これ」
 俺はぼうっとしていて、躊躇する判断すらできずに、再生ボタンをタップする。

 映っているのは、どこかのカラオケボックスの個室だ。
 床に高級そうなシルクのショーツが落ちている。ソファにも何人かが深く腰掛け、煙草をふかしている。
 全員、下半身には何も着けていない。そして、ソファ脇のガラステーブルには使用済みのコンドームが2つ、内容物を撒き散らした状態で置かれていた。
 これだけなら、ただの下品な映像だ。片田舎のヤンキーが、場所も弁えずサカっているだけ。見飽きるほどよくある光景。
 ……モニターに照らされた赤いソファで、激しく動く女さえ、無関係な誰かであったなら。

 女は前後から男に挟まれていた。
 膝立ちになった一人が前からフェラをさせ、別の1人が後ろからトップスをたくし上げて胸を揉みつつ、チェック柄のスカートを捲って挿入している。
 その女の格好に、見覚えがあった。
 肩を大胆に露出させたフリルつきの白カットソーに、チェック柄のミニスカート。
 色といい、柄といい。間違いなくデートの時に着ていた明日香の格好だ。彼女は普段、ああいう格好をしないと言っていた。じゃあ、あの日か。あの日俺と別れた後の映像なのか、これは。
 ああ、思い出した。あの日彼女は、デートの途中から急に口数が少なくなって、機嫌でも損ねたのかと心配したものだ。そしてそのタイミングは、トイレに行ってからだった。多分あそこで、脅しのメールか電話でも来たんだろう。その結果が、これなんだ。

『だいぶ気分が出てきたみたいじゃねぇか。彼氏とイチャついた後だから、興奮すんだろ?』
 前からモノを咥えさせる男が言う。俺の仮定を裏付けるような言葉だ。
『違いねぇ。そうだ明日香。おまえ今、どっからシャブ買ってんだ? 良いルートあんなら教えてくれよ』
 これは後ろの男の言葉らしい。あくまで明日香がシャブをやっている前提で話している。確かにあれだけ常用させられていたんだ、まだ依存していると思うのが自然だ。
『はぁっ、はぁっ…………そ、そんなもの、とっくに体から抜いたわ!』
 それまで荒い息を吐くばかりだった女が、ついに声を出した。凛とした、よく通る声。育ちの良さが窺える、丁寧な喋り口調。
 これで確定する。犯されているのは、明日香だ。
『おいおいマジかよ、じゃあシラフでこの濡れ方か!? はははっ、カラダ開発されすぎだろお前!!』
 後ろから犯す男が、腹を揺らしながら笑った。映像の中の明日香が、唇を噛みしめる。
『おら、彼氏のと俺の太ぇのと、どっちがいい? って、俺に決まってっけどな。前にアイツの見たことあっけど、ついてんのかわかんねーほど小っこかったっけなあ!』
 彼氏、というのは、まず間違いなく俺のことだろう。ついていないなどとはふざけた事を抜かす、一応日本人の平均サイズはあるんだ。
 でも、映像内で抜き差しされている物は確かにデカい。洋物AVに出てくるペニス並みだ。
『ふざけないで!!』
 と、ここで明日香が叫ぶ。毅然とした目を男2人に向けながら。
『覚醒剤を体から抜くのが、どれだけの地獄か解る? 彼が待っていてくれたから、私はその苦しみに耐えられたの。あなた達ケダモノとなんて、比べる気すら起きないわっ!!』
 明日香は、部屋に反響する声量で、はっきりとそう言い放った。俺は思わず胸が熱くなる。
『ケッ。よく言うぜ、そのケダモノの誘いにホイホイ乗って、こんなとこまで付いてきといてよ』
 フェラをさせていた男がそう言うと、明日香の表情が一気に険しさを増した。
『なっ……! ひ、人を脅しておいて、よくもそんなこと……っ!!』
 脅し。その言葉に、前後の男が肩を揺らして笑う。
『くくくっ。立派な肩書きってなぁ、厄介なもんだよな。それがあるとカネは儲かるし、偉そうにもできる。だが、身動きは取れなくなる。特に“式田証券のお嬢様”なんてブランドは大変だ。関係各所やらマスコミに、人間便器やってた頃の写真をバラまく……そんなベタな脅しでも、突っぱねられねぇんだからよ』
 男の言葉、そして明日香の反応。どうやら脅しがあったのは間違いない。
 確かに、雑な脅しだが効果は絶大だ。脅している連中のバックにどれだけいるのか判らない以上、安易に警察へも届け出られない。そんな事をして、たとえ何人かを有罪にしたところで、残った奴に報復で情報を流出させられることは確実だ。
 式田証券の顔である“式田 明日香”は、今や金融界の国民的アイドル。そしてアイドルには、週刊誌のゴシップレベルの疑惑さえあってはならない。弱みを握られてしまった時点で詰みだ。
『いいぜぇ明日香、やっぱお前のナカは最高だ。他のオンナ共は緩くてよぉ!』
 ギシッ、ギシッ、とソファが軋み、肉の弾ける音がし、抜き差しの水音がする。あらゆる情報を客観視して映像を眺めれば、完全にただのAVだ。
 でももう俺は、それをただのAVとは見られない。姉貴のレイプシーンと同じように。
 コンコン、と映像内でノックの音がする。
『あの、ご注文のお飲み物を…………』
『オウ、そこ置いとけ!!』
 ドスを利かせた声が横柄に応える。
 個室内が孤立無援であることを示すその情報を最後に、スマホの動画は終わりを迎えた。
 そして、直後。また俺のスマホに、メール通知が来る。今度は画像のようだ。
 動画のカラオケボックスと同じ部屋。8人の男が、目を閉じた明日香を挟んで座り、ピースサインを向けている。
 ブラウスはすでに取り去られ、形のいい乳房は両隣の人間の手で荒々しく揉まれていた。一方でスカートは履いたままだ。だがそのウエスト部分には、使用済みのコンドームが隙間なく挟まれ、悪趣味なフリルのように垂れ下がっていた。
『イキすぎてガチ失禁。延長33回、アヘ声メドレー50曲以上! ゴチでしたー♪』
 そんな人を馬鹿にしたようなメッセージも送られてくる。

 俺は、ただ呆然としていた。人間ってショックが大きすぎると、本当に頭が真っ白になるんだ。そんなどうでもいい事を、ぼうっと考えた。
 涙が頬を伝っていたが、どうやって拭くのかがわからない。
 姉貴に、明日香。俺にもっとも近い、最も大切な2人が、ゲスの手に落ちた。その事実を受け止めるだけでも、あと何十分かは掛かりそうだった。


    ※           ※            ※


 かろうじて落ち着きを取り戻した後、俺はすぐに警察に相談した。
 困った時は警察だ。警察なら、とりあえず何とかしてくれる。こっちには動画という動かぬ証拠もあるんだ。派出所の入口を潜る瞬間、俺はそう信じきっていた。
 ところが。
「……悪いけど、これだけじゃ動きようがないよ」
 歳のいった警官は、俺の話を一通り聞いてから、溜め息混じりにそう言った。
「えっ…!?」
 俺は絶句する。想像もしない答えだった。
 警官曰く、民事不介入で手は出せない。姉貴の動画が載っているサイトは、あくまで『合意の上での撮影』という体裁を取っているから、本当に姉貴自身が望んでの乱交なのかもしれない。スマホに送られてきた映像はやや怪しい部分もあるが、ただの悪戯動画という可能性を捨てきれない。どっちの場合でも、警察が動けるのは被害者本人が刑事事件として被害届を出した場合だけで、俺の訴えだけでは動けない。そういう事らしかった。
「本人の被害届って、監禁されてるかもしれないんですよ!? そんなの、無理じゃないですかっ!!」
 俺はそう食い下がったが、警官はあくまで渋い顔だ。唯一の譲歩は、姉貴の捜索願を受理することだけ。それにしたって、現状は『見つけたら保護する』程度の事しかできないらしい。
「そんな、そんなのってないですよ!! もっと真剣に探してくださいよっ!!」
 俺はたまらなくなって、思わずそう叫んだ。すると、警官の表情が険しくなる。
「しつこいなアンタも! できる事できない事、もう全部言ったでしょ!!」
 怒鳴るようにそう言われれば、もうそれ以上の言葉が出せない。
 俺はこの時、本当の意味での絶望というものを知った。困った時には誰かが何とかしてくれる……そこまで甘く考えていた訳じゃないが、ここまで他人事として突き放されるとは思ってもみなかった。

 家に帰る道すがら、何人もに振り返られた。喫茶店の窓に映った自分の顔は、確かに普通じゃなかった。でも、そんな事はどうでもいい。俺なんてどうなったっていい。姉貴と明日香さえ、戻ってくるなら。

 俺は無力だ。周りに流されて半端に生きてきたツケが、ここにきて降りかかってきた。同級生も、先輩も、バイト仲間も、誰一人頼れる相手が見当たらない。むしろ、藪岡側……つまり敵の手先に思えてくる。
 できる事を考えては、頭を抱えること数時間。またスマホが震える。俺は思わず息を呑んだ。
 明日香からのメッセージ。内容は…………また、動画。

 再生してわずか1秒足らずで、俺はまた絶望することになる。
 映っていたのは、後ろ手に拘束された明日香と、人相の悪い笑みを浮かべた藪岡。お互いに裸で、パンパンという肉のぶつかり合う音をさせながら前後に揺れている。
 姉貴よりもすらりとした明日香の股からは、すでにかなりの量の愛液があふれていた。顔に流れる汗の量も普通じゃない。多分、またシャブを打たれたんだろう。
『やっぱお前のマンコは最高だぜ、明日香』
 藪岡が笑みを深めながら呟いた。
『…………っ、………………っ!!!』
 一方の明日香は、目を見開き、口を開きながら声にならない声を上げている。まるで処女を失った時か、それ以上の反応。
 久しぶりの覚醒剤に、久しぶりの藪岡の剛直。それを受け入れきれていないようだ。
『へへ、熱いのが膝にまで滴ってきやがった。もうグチョグチョだなぁ明日香。俺のデカマラがそんなにいいのか? 良いんだよなぁ、こんなに濡れるんだから。なあ明日香、言ってみろ。気持ちいいって。俺とのセックスが、気持ちよくてたまりませんってよぉ!!』
 激しく突き込みながら、藪岡が叫ぶ。これが、“寝取り”ってやつか。藪岡の奴は、姉貴を壊しただけじゃ飽きたらず、明日香までシャブ漬けにして、自分の物にしようとしているのか。
「ふざけんな、この野郎ぉっ!!!」
 俺は思わず叫び、机に拳を叩きつける。拳の鋭い痛みでほんの少し理性が戻るが、そうすると今度は不安で足が震えてくる。
 その時、動画の中で明日香の口が動いた。
『……馬鹿にしないで。別にこのぐらい、何てことない。わ……私は、こんなことより、ずっと気持ちがいい事を……知ってるから…………』
 明日香は、激しく息を吐きながら、確かにそう言った。藪岡とのシャブセックスよりも、気持ちがいい事。それは、もしかして――いや、きっとそうだ。俺とのセックスの事を言ってくれている。彼女は、不安がる俺に何度も何度も囁いてくれたんだ。本当に気持ちいい、って。
『テメェまさか、アイツのが俺より良いってか!?』
 藪岡は、不動明王のような形相で明日香を睨みおろす。明日香は肩で息をしたまま答えない。でも、その沈黙こそが答えだ。藪岡の顔がさらに引きつる。
 俺は、ざまぁみろと思った。明日香が俺を選んでくれたことが、素直に嬉しかった。でも俺は、同時に理解してもいた。あの藪岡が、これで大人しく引き下がるわけがない。今度こそ明日香を壊しにかかるはずだ。どんな手を使ってでも。

 そして事実、それ以降たまに送られてくる動画にはすべて、徹底して明日香を追い込む様子が収められていた。
 ある動画では、ベッドへ手をついた明日香へ、逸物でのポルチオ刺激と指でのGスポ刺激が繰り返されていた。
『絶頂から戻れないようにしてやる』
 その不気味な宣言で動画が始まり、何人もの男が入れ替わり立ち替わり刺激を続ける。
 ここでも事前にシャブが打たれてるんだろう。
『ああ……ああぁぁっ、ふっ……ああ、うあああぁ……ああっ…………!!』
 明日香は全身を汗で光らせながら、本当に苦しそうに喘いでいた。
 潮噴きを強制される時の愛液の量は半端じゃないし、ポルチオを逸物で刺激されている時には、本当に気持ち良さそうに足が蠢いた。竿役の男が腰を手で掴むと、びくりと全身を震わせながら、その手をそっと押さえもする。明日香にしては珍しい、はっきりとした拒絶の反応だ。
『う、う、うう……うっ…………ううぅぅんっ…………!!』
 太腿が波打つほど、力強くポルチオを刺激されはじめた動画後半。明日香の声は泣いているようで、何度も絶頂させられているのが手に取るように解った。

 そうして直立が難しいほどイカされ続けた後、次の動画で明日香はベッドに転がされる。そしてその上に藪岡が圧し掛かり、真上からポルチオを刺激しはじめた。
 ギシッ、ギシッ、と壊れそうなほどベッドが軋み、肉の弾ける音と水音が立つ。
『あっ、あ、あああぁっはああっ!! はっ、はっ、はーっはーっ……んぁあぁああっ!!!』
 明日香はよほど苦しいのか、それとも気持ちが良いのか、激しく喘ぎながら震えるような叫びを上げつづけていた。
 たまに藪岡が休憩がてら剛直を引き抜けば、そのタイミングでぶしゅっと潮が飛び散る事が何度もあった。
『ほら、嫌がんなよ』
 藪岡は圧し掛かる格好で腰を振りながら、何度もそう呟いては首を下ろす。
『んっ、んんんっ!!!』
 そのたびに明日香から呻きが上がり、頭が左右に揺らされる。どうやら藪岡は、明日香にキスを強制しているらしい。
『う、う! ……は、はぁ…………っ』
 藪岡に激しく突かれる中で、明日香はふと悲鳴を途切れさせ、足指の動きを止めることがある。そういう時はどうやら、失神してしまっているようだ。
『おら、ヘバってんじゃねぇ。続けんぞ』
 その度に藪岡は、明日香の頬を叩いて覚醒させていた。
 失神しては、覚醒させるの繰り返し。それでも明日香はついに、キスを受け入れる事はしない。少なくとも、動画の範囲では。 
 ただこの調教で、明日香の性感はかなり開発されてしまったようだ。
『スゲーな、イキまくりじゃねーかお前』
 動画終盤、ふと腰を止めた藪岡が、奥深く挿入したままで漏らした一言が印象的だ。
『ぅーーー……っ、っーーー……っ!!』
 その時の明日香は、激しい刺激などなかったにも関わらず、何度も何度も尻肉を収縮させ、小動物のような声を上げていた。本当に、気持ち良さそうに。
『くくっ。いいぜお前。こんだけイキやすくなってんのに、まだ溺れねぇ。まだイクのを必死で堪えやがる。本当にプライドの高い女だ、お前は。だからこそ、壊してみてぇ。どんな手ぇ使ってでもな』
 藪岡は汗まみれの明日香を見下ろしながら、そう言って笑った。

 その後の動画……『完全精神崩壊51P』の再現ともなれば、明日香の感度の高まり具合はさらに解りやすい。
『ああ、あああ……い、いくっ!! んんんっ、イックうぅ……っっ!!』
 下から突き上げられつつの、ブリッジ気味のイラマチオ。
 膣に2本を捻じ込まれながらの、休む暇もない口での奉仕。
 そういう地獄を受けながら、明日香は何度も何度も絶頂し、潮を吹き散らしていた。
『こいつ、やっぱとんでもねーな。イキまくってるくせに全然ヘバんねぇ……!!』
『ヘバるどころか、こっちの兵隊のがバテてんじゃねぇか。あと何人だ、すぐハメられる奴ァ!?』
 精も根も尽き果てて座り込む連中の中、明日香を囲む数人が怒鳴りあう。戦場を思わせるその狂乱の中、明日香は何度となく絶頂へと押し上げられていく。あらゆる体液にまみれながら。
 そして。
 ついに50人の外道すべてが項垂れ、僅かに休憩できる隙が生まれたかと思えた、直後。仰向けで床に転がる明日香の下に、一人が近づく。
 無駄毛のない綺麗な脚。女の脚。
『いいザマね、明日香。』
 明日香を見下ろし、冷たい声でそう告げるのは…………姉貴、だった。


    ※           ※            ※


『会いたかったよ、明日香』
 丸裸の姉貴は、そう言って笑う。俺の知る笑い方とは全然違う、右頬だけがつり上がるような、見ていて不安になる笑みだ。明日香が怪訝な顔を浮かべた。
『んな顔すんなよ、明日香。逃げたお前の身代わりで、ぶっ壊されたメス豚なんだぜ?』
 藪岡がそう言いながら、ビール瓶片手に姿を見せる。
『私、の……?』
 明日香が表情を強張らせる一方で、藪岡の口元は緩む。
『ああ。27歳のOLでよ、ああ、そうだ』
 わざとらしく溜めてみせ、ビールを一口煽ってから、藪岡は続けた。
『……お前のイイ人の、姉ちゃんだっけか』
『!!!』
 醜悪な笑みで発された一言に、明日香が目を見開く。そしてその見開かれた目は、細かに震えながら姉貴を向いた。姉貴は藪岡にそっくりの、ひどく歪んだ笑みを浮かべる。
『そう。ぜーんぶ、アンタのせい』
 そう言うと、明日香の顔の上に屈み込んだ。自分の割れ目を、明日香の口に押し付けるようにして。
「姉貴!?」
 俺はスマホに向かって叫ぶ。信じられなかった。あの姉貴が、こんな事を。
『うっ、ぶ!? ぶっ、ふぐううぅーーーっ!!?』
 明日香は目を見開いたまま、激しく脚をばたつかせた。その口には姉貴の割れ目が押し当てられ、顎からかすかに透明な汁が垂れている。
『ほら、舐めて。アンタが犯されてるの見て、濡れちゃったぁ。男のをあんなに美味しそうにしゃぶるんだもん、女のアソコぐらい舐められるでしょ!』
 姉貴は歪な笑みで腰を揺らし、明日香の顔に愛液を塗りたくる。
『……う、ぶはっ!! お、お姉さん、こんな事……お願いします、止めてください!!』
 明日香は顔を左右に振りながら、必死に叫ぶ。すると、姉貴の顔から表情が消えた。
『……誰が、お姉さんよ?』
 思わず凍りつくような声でそう呟くと、一旦明日香の顔から腰を上げ、すぐ傍に転がっていたバイブを拾い上げる。そして明日香の足首を掴むと、信じられない力でマングリ返しの格好を取らせた。
『ヒューッ、怖ぇ怖ぇ!』
 藪岡達が上機嫌に口笛を吹く。その視線の先で、姉貴の手にしたバイブが深々と明日香の割れ目へと突き刺さった。
『あぐっう!?』
 明日香は、滅多に出したことのないような声を上げる。それを聞いても、姉貴の表情は変わらない。目の据わった無表情だ。
『ねぇ聞き間違えかなあ。アンタあたしを、“お姉さん”って呼んだ?』
 そう言ってバイブを掴み直し、マングリ返しの明日香の割れ目を激しく突きこみ始める。
『あ、ああっ!! い、いやっ……あ、あっ!!』
 角度的に明日香の表情は見えないが、震えるように顔を振る様子は、男相手ではまず見ない反応だ。相手が同性の姉貴だけに、どういう態度で接すればいいか困ってるんだろう。
『ねぇやめてよ。なんであたしが、アンタのお姉さんなの?健史のお姉ちゃんだから?だからアンタのお姉さんなの?もう健史と結婚でもしたつもりなの?やめてよ、やめてやめて』
 姉貴は無表情のまま、ボソボソと呟きながらバイブを抜き差しし続ける。言葉の端々に、間違いなく俺の名前が入っている。ゾッとした。そしてあの明日香すら、怯えきった息遣いで姉貴を見上げている。男相手に見せた、あの鋼の強さがない。
 姉貴のストロークが増していく。バイブの先が覗くほど抜き出し、持ち手の半分まで埋まるほどに叩き込み。ぐちゃあっ、ぐちゅあっ、と聞いた事もない水音をさせながら激しく抜き差しを繰り返す。
『あ、あ……ああっ!!』
 明日香から悲鳴が上がり、すらりとした脚が震えだす。姉貴は無表情のまま目玉だけを動かし、その明日香の細い脚と顔を神経質に捉えていた。
『そうやって耐えてるのがカッコいいと思ってるの?おまえのせいであたし、すごいひどい目に遭ったのよ。怖い目に遭ったの。ねぇ、さっきあたしのおまんこ見たでしょ。グチャグチャなのあたしのオマンコ、もう閉じないの。子供も産めないの。おまえのせいで壊されたの。お前のせいでなんどもゲロを吐かされたの。おまえのせいでうんち口に詰められたのおまえのせいで』
 姉貴はボソボソと呟きつづけ、愛液を掻きだすようにしてさらに激しくバイブを叩き込む。その状態がしばらく続いたあと、
『ぎゃうっ!!』
 ある瞬間、妙な叫びと共に明日香の全身が震え上がった。横顔しか見えないが、それでも明日香がこれ以上ないほど目を見開いていることと、必死に下腹を見ようとしているのが感じ取れた。それと同じ反応を、一度だけ見たことがある。それはホテルでのポルチオ責めの最終盤、バイブが繰り返し子宮口を叩いた末に……
『お、お姉さん、やめて、抜いてぇええーーっ!! し、子宮に入ってます、そこ子宮なんです!! お願いやめて、こわい、こわいですっ!!!』
 明日香は涙を流しながら、必死に姉貴に訴えた。相手が同性、そして同じ被害者だけに、心の壁がないからだろうか。それとも二度目の今度こそ、耐えられなかったんだろうか。ごく普通の女の子のように、顔を歪めて泣き叫んでいる。
 それでも、姉貴は止まらない。表情すら変わらない。
『このオマンコが健史を誘惑したのね、このオマンコのせいで全部……壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ壊れろ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』
 まるで藁人形を打ち付けるように、一心不乱にバイブを押し込む。根元まで、何度でも。そしてその執念の突き込みを受けつづけ、明日香さえ様子がおかしくなっていく。
『があああっ、かっ、かはっ!! はっはっはっはっはっ、くはぁあっ!!うーっ、う、うううっ……お、おおぉっイグ、いぐふうぅっ!! おおおっ、おほぉおおおっ! いく、いくいくいきそういっちゃう……っくいくいく……イっグウウウウーーーっ!!』
 聞いた事もない、男か女かすらもわからない声で、何度も絶頂を宣言する明日香。その中で、とうとう明日香の肛門からはぶすっという音を立てて屁まで漏れ、場の爆笑を誘った。
『ぎゃははははっ、屁ぇコキやがったぜあのお嬢様!!』
『ああ、バッチシ聞いたぜ。もう女として終わりだなこいつ!!』
 そう尊厳を切り刻まれながら、明日香は獣のような荒い息を吐き、全身を凍えるように痙攣させ、ついには盛大に潮を吹き散らしながら気を失ってしまう。
『ひゃはははっ、気ィ失いやがった!!』
『あーあ、完璧に白目剥いてやがんぜコイツ!!』
『おまけにベロまで出しちまって……これが令嬢のするツラかよ!!』
 明日香の覗きこむ連中が、祭りのように騒ぎ立てる。それでも、まだ姉貴の腕は止まっていない。何かを呟きながら、とっくに気を失っている明日香の割れ目を深々と責めつづける。
『おいおい、コエーよアイツ……マジでぶっ壊す気か?』
『ま、駄目押しはしといた方がいいだろ。相手もバケモンなんだ』
 姉貴の行動に引く人間、面白がる人間、笑う人間。そういう表情を一巡り映しながら、動画は終わる。
 でも、ひと息つく間すらない。すぐに次の動画が送られてくる。
 
 次の動画では、明日香が藪岡の膝の上に乗せられ、Mの字に脚を開かされたまま深々とアソコを貫かれていた。さすがに藪岡の剛直はでかく、抜き差しのたびに明日香の下腹がかすかに変形している。
 さっきの動画の続きなのか、明日香に一切の余裕はない。
『ひぎっ、ぃ、い……っ!! ーーーーっ、んんんーーーーっ!!!」
 目を見開き、恐怖に頬をヒクつかせながら、声にならない声を漏らしつづけている。
 何度か奥深くまで貫いたところで、明日香の太腿を掴む藪岡の手に力が篭もった。
『おらっ!!』
 獣が唸るような声と共に、藪岡が腰を跳ね上げた。同時に明日香の身体そのものも、自重と藪岡の腕力でおもいっきり下へ叩きつけられる。結果として明日香の下腹の膨らみは、臍の間近にまで進んでしまう。あまりにも深い。その位置はまるで、子宮口を越えて……
『あーーーっイクーーッ!!!!』
 俺の考えは、いきなり響きわたった明日香の叫びに寸断される。明日香は目を見開いたまま大口を開け、全身で気持ちよさを表していた。モデル級の身体を艶かしく斜めに傾げ、太腿の筋肉を盛り上げ、肩から足指の先までを、何度もブルブルと震わせて。
『へへっ、スゲー逝きっぷりだな。さすがに俺ので子宮口こじ開けられちゃ、たまんねぇらしいな』
 藪岡は歪んだ笑みを浮かべながら、さらに腰を突き上げる。ごく浅い腰の突き上げ。でももし本当に逸物の先が子宮口の先へ入っているなら、それはカリ首で直にポルチオの輪を扱いていることになる。
『おおっ、おーッ、あーーーーっ!! いぐう、いっぐうううっ!!!あーーーっ、あああーーーーっ!!!!』
 瞳孔ををぐるりと上向け、激しく痙攣しながら叫ぶ明日香。Mの字に開いた脚の先、メチャクチャな方向を向いた足指がビクンビクンと強張る様は、雷が身体の隅々までを走り抜けた直後のようだ。
 藪岡が満足げな様子で明日香の太腿を押し上げ、ずるりと逸物を抜き去る。愛液どころか、チーズのような滓さえ纏いつかせた、凶悪な亀頭が覗く。その亀頭が抜け出た瞬間、まるでその別れを惜しむように、割れ目から大量の潮があふれ出した。
 明日香本人は藪岡の鎖骨へ頭を預けるようにぐったりと項垂れ、天を仰いだまま熱い吐息を吐きつづける。スレンダーな全身は汗まみれで、風呂上りのようにピンクに上気し、湯気さえ立ち上らせている。その何もかもが、あまりの快感に耐え切れない、という情報を発散しつづけていた。
 いかにも温かそうなその光景とは裏腹に、俺の血は冷え切っていく。
 ひどく寒い。怖い。祭りのように盛り上がる動画を他所に、俺だけが、取り残されているような……。
 
 動画の中で、明日香と同じく息を荒げる藪岡が、ちらりとカメラを見た。レンズ越しに、俺と顔が向かい合う。奴はそこで笑みを浮かべ、明日香の身体を反転させた。乳房がカメラ側を剥く背面座位から、抱き合うような対面座位へ。
「や、やめろ……」
 俺は呟く。その格好はまるで、愛し合う恋人同士みたいじゃないか。
 やめろ。やめろ。明日香にそんな事をしていいのは、俺だけだ。俺だけが彼氏なんだ。
 藪岡のでかい手が、明日香の尻の肉を掴む。そしてそのまま、下へ押し込むようにすれば……
『あっ、あ、あっ……ま、また、イキそうっ…………!!』
 藪岡の肩を掴む明日香から、震えるような声が漏れた。藪岡はその声を耳元に聞きながら、笑みを深める。
 グチュッ、グチュッ、グチュッ……。
 押し潰された水音が繰り返され、明日香の太腿が強張る。藪岡は深々と明日香を貫きながら、細い身体を支える位置を、尻から腰、背中へと少しずつ上げていく。そして明日香の身体が快感で弓のように反った瞬間、ふっと背中の支えを離す。
『きゃあっ!!』
 明日香は高く叫んだ。澄んだ声だった。ものすごく可愛かった。そんなトーンは、俺にしか聞かせないはずだった。藪岡達にはいつだって、もっと警戒したハスキーな声ばかり聞かせていたはずだった。はずだったのに、今の声は、違う。
 そして動画の中では、明日香が藪岡の巨体にしがみついていた。太い首を抱きすくめるように腕を回し、すらりとした両足で胴を挟み込むようにし。
「明日香っ!?」
 俺の叫びは、俺の部屋だけに虚しく響く。そしてそんな音を他所に、抱き合う二つの裸はいよいよ激しく上下に揺れる。
 ギシッ、ギシッ、とベッドが軋み、濃い水音が繰り返される。美しさの極みと言える女の体と、力強さの極みと言える男の身体が、抱きあったまま快感に震えつづける。
『い、いくぅっ! また、いく、いく…ぅ……っ!!』
『いいぜ、死ぬほどイカせてやっても。……ただし、一つだけ条件がある』
 藪岡はそう言って、またカメラを見た。そしてカメラ目線のまま、明日香の耳元に口を寄せる。
『アイツと、別れろ』
『……ッ!!』
 藪岡の言葉に、明日香の目が見開かれる。
 動画はそこで切れた。でもそれと同時に、今度は電話が掛かってくる。
 相手は、明日香――いや、正確には明日香のスマホだ。

 恐る恐る電話に出る。何が聴こえてくるのかは、大体想像がついていた。
 そして案の定、覚悟していた通りの音がする。
 ベッドの軋み、水音。それがさっきよりずっと鮮明に聴こえ、挙句には荒い吐息までが耳に入ってくる。
「あくまで別れねぇってんなら、セックスはここで終いだ。もうこれ以上抱いてやらねぇ」
 その言葉の後、ベッドの軋みが止まる。
「あっ!!」
 明日香の声がした。名残惜しそうな、寂しそうな声。
「コイツで逝きたいんだろ。もっともっと奥を抉って、イカせてほしいんだろ?」
 ギッ、ギッ、とかすかに軋む音がする。その音に混じって、明日香の喘ぎが聴こえてきた。
「あっ、あァっ!! はぁぁ、で、でも、でも…………っ!!」
 泣くような、苦しむような声。藪岡に向ける甘い声とは正反対だ。
 俺にだけ、そんな声になるのか。俺が、重荷なのか?
「お前だってもう解ってんだろ。アイツじゃ、もう今のお前を満足させられねぇ。こんな芸当は、あの粗末なモノじゃ……絶対に真似できねぇ!!」
 藪岡のその言葉の直後、ベッドの軋みが増す。
「ああぁ……ああ、ふ、深いっ……!!や、やめて、待って! まだ、前のが治まってな………ふんんん、ぅはっ! ぐ……っく、ひうぅ……んんうぅううっ!!!」
 明日香は息を詰まらせた後、嬉し泣きのような声を出した。
「おーおー、すげぇ顔。相当深くイってやがるなこりゃ」
「なんつーか、女ってスゲーよな。こんなんなるんだからよ……」
 遠くからはそんな声もする。
「どうだ、たまらねぇだろ! こうやって、頭ァ白くなるまでイカせまくられてぇんだろ、ええっ!!」
 藪岡がそう言いながら、さらにベッドを軋ませる。
「おっ、おっおっ……おほぉおおっ!!」
 明日香の低い声がし、ベッドの軋みが細かくなる。さっきの動画で、明日香の全身が雷に打たれたようだった時の音だ。
 明日香はもう、藪岡にどうしようもなくイカされまくっている。それは疑問の余地もない。でも、諦めきれない。
「わ、私は……私は…………っ!!」
 明日香の声がする。苦しそうだけど、何かをいいたそうに。
 そうだ。あの超人的な明日香なら、きっと、どんなに辛くたって……
「それによ。さっさとアイツと別れねぇと、お姉ちゃんがコエーぞ?」
 藪岡が、ぼそりと呟く。それで明日香の言葉が止まった。
 そして、直後。電話の向こうでギシリと音がする。
「おーおー、言ってたら来やがった。脚のぶってぇ般若女がよ」
 藪岡の声がした、直後。明日香の悲鳴が響きわたる。
「ああーーっ!!お、お姉さん、いたいっ、いたいですっ!!いま、前にも入ってるんです、こんな状態で、そんな所に……あ、ああ、んああああーーーっ!!!」
 断末魔のような叫び声に、狂ったようなベッドの軋み。そして女の荒い鼻息。
「うーわ、マジかよ。肘まで一気に入れやがった……」
「今って多分、藪っさんのが子宮まで入ってんだろ? マジでイカれてんな」
 かすかに聞こえるその声で、状況がわかった。後ろから近づいた姉貴が、明日香の尻の穴に腕を捻じ込んだんだ。それも、肘まで。
「なにこれ、ねぇ何これ?お尻がヌルヌルしてるし子宮もグチャグチャ。こんなので健史の彼女面なんて許さない。アンタにそんな資格なんてない。アンタだけ幸せになるのも許さない!!」
「あああっ!!ううぁああああーーーーっっ!!!」
 呪いの言葉のようなボソボソとした喋りと、明日香の絶叫が聴こえる。そしてその中に、藪岡の笑いが混じった。
「ははっ、なんだよ明日香お前! ケツの方から子宮握りつぶされて、イキまくってんのか? 最高だぜ、最高にぶっ飛んだ女だお前は!! こうなっちゃ、もう立派なケダモノだぜ、散々見下してた俺らと、同じトコまで落ちてきてんじゃねぇか、なあミズキ先輩よ、アンタもそう思うよなあ!?」
 藪岡の有無を言わせぬ怒鳴り声。
「そう、アンタって豚なの。人間じゃないの。健史は人間だけど、アンタは豚。あたしと同じ。もう帰れないの、だって豚だから。ほら豚、ここってなに、腸のもっと奥。指が入っちゃった。ああこれウンチだ、ねぇウンチよ豚。こんなすぐウンチに触れるなんて、ホントに汚い。ねぇ豚、なんでさっきからこんなに腰が跳ねてるの?気持ちいの?小袋まで犯されて、お尻に腕入れられて、指先でウンチ掻き回されるのがそんなにいいの?アンタ頭がおかしいのね。なんでそれで人間のフリしてたの?やめて、ウチの弟は本当にいい子なんだから、クソ袋なんかが話しかけないで。謝って、今まで健史に絡んでたこと謝ってよ、ねぇッ!!!」
 姉貴の喜怒哀楽がグチャグチャの喚き声。
 その板ばさみで、明日香は泣いていた。声だけで、泣いているのがわかった。
「姉貴いいっ、明日香ああっ!! 俺だ、俺だあーーーっ!!!!」
 俺は、喉が裂けてもいいぐらいの声を送話口へ叩き込む。
「うおっ!!んだよ、電話かよ……」
「おい、あの声って、弟クンじゃん?」
「弟クンっつか、彼氏クンじゃね? この場合」
 そんな声がする。俺の叫びはどうやら届いたらしい。だったら、聞いてくれ。姉貴も、明日香も。それで、元に戻ってくれ。
「くくっ、聴こえたかよ明日香。“元カレ”が何か喚いてんぜ」
 藪岡の声だ。すでに俺を過去のものにしようとしてる。そうはさせるか。
「明日香、姉貴!! しっかりしてくれ、俺だよっ!! 帰ってきてくれ、俺の所に帰ってきてくれ、頼む……!!」
 涙ながらの精一杯。俺のありったけを吐き出す。

 でも。

「…………ごめん、なさい…………」

 明日香は、小さな声でそう呟く。
「……明日香?」
 俺はその意味がわからず、聞き返した。
「わ、わたしは……もう、あなたには、ふさわしく……ない」
「な、何言ってんだ!!そんな奴らのいう事に惑わされるな、明日香!!
 明日香は人間だ、誰より誇り高い人間なんだ、豚なんかじゃない!!
 頼むよ、帰ってきてくれ明日香!! シャブ抜いた時みたいに、ま……」
「……ちがうの」
 俺は必死に、必死で、明日香を説得する。でもその言葉は、藪岡にでもなく、姉貴にでもなく、明日香自身に遮られた。
「…………ご、ごめんね…………そういうことじゃ、ないの…………。
 わ、私……きっ、きもちいいの……死ぬほど嫌いなこの男のセックスから、離れられ……ないの…………」
「……え?」
 完全に、予想外の言葉。あの明日香からだけは、絶対に出ないと思っていた言葉。
「お姉さんの、言う通り……わ、私は、あなたに相応しくない。
 あなたは、本当にいい人。気弱で流されやすいけど、優しくて、勇気だってある。
 だから…………そんなあなたの横にいると、つらいの…………」
 明日香の一言一言が、心臓を叩く。胸が苦しくなる。そしてその苦しみの中、藪岡の笑い声が響きわたった。
「はははははっ!!いいぞ、それでいい。とっくのとうに解っちゃいたが、ようやく素直になったな、明日香!! ご褒美だ、死ぬほどイカせてやるっ!!」
 その声で、激しくベッドが軋みはじめる。
「あっ、あ! おお゛っ、おっ、お゛っ…ほおお゛お゛お゛ぉ゛………っ!!」
 快感だけに染まった明日香の喘ぎが、藪岡の腰遣いに応える。
 俺には聞かせない、本当に無理をしていない明日香の声。今の明日香の自然体。
「…………あ、あ…………」
 俺はスマホを取り落とし、呆然と遠くから聞こえる喘ぎを耳にしていた。
「よう、そこの薄ら馬鹿。お前にゃ一言だけ、言っとかねぇとな」
 その俺に、藪岡が語りかけてくる。


「  ざ  ま  あ  み  ろ  。 」


 その一言を最後に、通話状態は切れた。
 明日香との、姉貴との繋がりも。



 そして、半年後。
 俺の元に、懐かしいアドレスから一通のメールが届く。そこには動画が添付されていた。
 被写体は、明日香と姉貴。すっかり妊婦の見た目になった2人が、牢屋のような地下室で大勢に囲まれている映像だ。

 止まらないカメラの向こうで、穴という穴を犯されながら、母乳を撒き散らして笑う二人。
 その姿は、本当に……、……幸せそうだった。



                                (終)

止まらないカメラの向こうで  第3話

第2話の続きです。


 いつの頃からか、明日香への責めはシャブを打っての快感調教だけになっていた。場所もSM用の212号室から、キングサイズのベッドがある101号室に戻った。
 一日の流れのうち、輪姦は日の後半だ。日の前半では、明日香はシャブを打たれ、ひたすら道具で調教される。そして俺は、猿轡を噛まされたまま手錠を掛けられ、食事とトイレの時以外は常にそれを眺めさせられていた。
 道具調教に携わるのは、普段の輪姦には顔を出さない幹部4人。朱雀、青龍、白虎、玄武の彫り物をそれぞれ背負ったこの4人は、グループ内の他の連中とは雰囲気が違う。まさに調教師という風だ。実際、藪岡が関わりを持っている組で、いわゆる『コマシ』の仕事をする事もあるらしい。

 調教は、与えられた12時間をフルに使い、じっくりと進められる。
 縛り方はいつも同じ、乳房を搾り出す形での後ろ手拘束。縄を打つのは上半身だけで、下半身は丸裸のままだ。
 その状態で、割れ目と肛門の広範囲に少しずつシャブを打ち、薬が回るまでの間はソフトタッチを施す。乳房周りから、腋、下腹、そして太腿。見た目は撫でているだけだが、あの我慢強い明日香がつらそうに身悶えるんだから、この時点で相当上手い愛撫なんだろう。
 30分以上かけて全身の性感帯を目覚めさせれば、次はいよいよ割れ目に触れる。ビラビラを指で上下になぞり、割れ目の中へごく浅く指を入れ。明日香の腰が独りでにヒクヒク浮くようになれば、ようやく中へ指が入る。ただし、AVのように激しく指を動かしはしない。クリトリスにローターを宛がいつつ、割れ目のある一点に軽く曲げた指先を押し当て、そのまま指を動かさずにじっとしている。
 そうしてしばらくすると、なぜか割れ目が喘ぐようにヒクつきだすんだ。肛門周りの筋肉も、意思があるかのように収縮する。そこで軽く割れ目の中を掻くようにすれば、明日香はいつも必ず潮を噴いた。呼吸も荒く、マラソンを走りきった後のように息が切れていることが多かった。
 そこからは、しばらく指責めだ。朱雀の刺青の男が中心となって、Gスポットの辺りを丁寧に刺激していく。潮を噴いたばかりで恥じらいがあるのか、明日香はここでは声を漏らさない。代わりに太腿から尻にかけての筋肉が、すごく気持ち良さそうにうねるのが印象的だ。
 この指責めの時間も、およそ30分。最初こそ喘がず耐えていた明日香も、これだけじっくりとやられれば、そのうち荒い息に混じって喘ぎはじめる。15分もすれば泣くような声が聴こえるようになり、
『い、くっ……』
 ベッドから足の裏を浮かせて、そんな掠れ声を漏らしさえする。でも多分、この時明日香は逝ってない……というより、逝けないんだ。この辺りから少しずつ、ぱっと見優しそうな調教役のの指遣いに、悪意が混じってくる。逝けそうで逝けないギリギリの状態を15分もキープさせられるなんて、受ける側は地獄だ。
 実際、指責めのラスト3分なんて本当に悲惨で、明日香は何度も足を強張らせ、内股になり、いく、いく、いく、と一人虚しく訴えつづける事になる。そうしていくら反応しても、解放などされないのに。
 そうして欲求不満を溜めに溜め込んだ状態で、いよいよ本命のバイブ責めが始まる。まずは無数のイボのついた、やや細めのシリコンバイブで、舐めまわすように割れ目の隅々まで刺激する。ここの刺激の仕方は、本当に熟練の技を感じさせるものだ。ゆっくりと前後に出し入れしていたかと思えば、上下に揺らしながらの刺激を混ぜ、またある瞬間には一旦バイブを放して、電動のうねりのみに任せて割れ目の中を刺激させ。
 そうして、一通り割れ目への刺激が終われば、ここから狙いがポルチオに定められる。もちろんこれは俺の憶測なんだが、間違っているとは思わない。
 バイブを握りしめたまま、ゆっくりと円を描くように奥まりに押し付ける。少し引き抜いては、また奥まで押し込んで、円を描く。
 そしていつも、ここでバイブのモードが切り替えられるんだ。微弱な振動から、振動に加えて先端部が大きく円を描いてうねる動きへと。この状態でバイブを奥まで押し込まれ、スイッチを入れられると、明日香からどんどん余裕が失われていく。スレンダーな下腹が膨らんでは凹み、バイブの振動が伝播したのかと思うほど、全身が痙攣をはじめる。指責めの時に聞いた泣くような声も漏れる。その鳴き声を目安にしてるんだろうか。いつもちょうどその頃から、バイブの突き込み方が力強くなる。けして乱暴ではないが、ぐっぐっぐっぐっぐっ、と断続的に膣奥を押し込むような突き方だ。さらにはここでも、バイブを上下に揺らす技巧が混ぜ込まれる。
 この状況が5分も続けば、明日香の声は、もう『泣くような』ではなく『泣いている』ものになる。チンピラ風情に昂ぶらされるなどプライドが許さないが、それでも事実、どうしようもなく昂ぶってしまう。その板挟みでつらいんだろう。
 そこへ来て、とうとう朱雀の男はトドメを刺しにくる。バイブをしっかり奥まで届くように固定した後、その底を手の側面でリズミカルに叩き込むんだ。これで、明日香の下半身は本格的に震え上がる。
「……ぁ、や……ぃやあ、ぁ…あっ…………!!!」
 そういうか細い声も漏れはじめる。
「おら、イきたきゃイけ!!」
 バイブの底を叩きながら発される、有無を言わせぬ命令。明日香はこの時、『いく』とは言わない。言わないが、実際は逝っているのが足の震え具合ではっきりわかる。指入れの時とは真逆の状態だ。
 バイブの底を叩くこの責めは、いつも一体どのくらい続いているんだろう。少なくとも数百回単位なのは間違いない。その回数が増えるごとに、明日香の反応もわかりやすくなっていく。最初は10回叩かれて1回反応する程度だったものが、次第に5回に1回、3回に1回と頻度が増していき、最後にはバイブを打ち込まれるたびに腰が跳ねるようになる。何十回も連続でバイブを打ち込まれた後、わずかに間が空き、弛緩した明日香の脚がようやくベッドへ下りたその瞬間、また打ち込みが始まって跳ね上がる……そんなことが何回も何回も繰り返されるんだ。
 そしてこれだけ明日香を翻弄するバイブ責めには、さらにいくつものバリエーションが存在する。調教役は4人。つまり1人が徹底的にポルチオを目覚めさせている間、他の3人は好きに補助ができるということだ。
 この責め方はいつも違うが、傾向はある。
 一つは、ローターでクリトリスを併せて責めるやり方。
 一つは、下腹の子宮がある辺りを、3本指でリズミカルに刺激するやり方。
 一つは、同じく子宮のある辺りを、マッサージ器でほぐすやり方だ。
 そしてこのどれもが、劇的に効いた。あまりにも効くから、明日香はこの責めが始まってから間もなく、足を内股に閉じてしまうほどだ。当然、責め手の4人はそれを見逃さない。
「なんだこの足は。『抵抗』しちゃいけないんじゃなかったのか?」
 そう囁かれたら最後、もう内股にはなれず、相手が求めるままに大股を開いて刺激を受けるしかない。でも、そもそも刺激から逃れるために内股になったんだ。それを大股開きになんてしてしまったら、膨大な快感を余すところなく受け止めることになってしまう。だから、大股開きになった後の明日香は、鳴き声がいよいよ酷くなる。
「ぁイク、イクーっイク……あぁイクぅうう…………っ!!」
 ついにはどうしようもなくなって、熱にうかされるように絶頂の宣言まですることもある。
 何十分か後。バイブのスイッチが切られ、ゆっくりと割れ目から引き抜かれた時には、その表面はいつも異様なほど濡れ光っていた。喘ぐように開閉する割れ目も同じく濡れていて、一度や二度ではない絶頂を繰り返したことが見て取れる。
 でも、ここまでのポルチオ開発は、あくまで道具調教における『前戯』でしかない。この後に続く『本番』こそ、本格的に明日香から余裕を奪い去る拷問なんだ。

「…………はぁ、はぁ、はぁ…………はぁ…………」
 明日香はベッドに横たわったまま、荒い息を吐き続けていた。あの貞淑の塊のような彼女が、大股開きを正さない。何度もポルチオで逝かされて、思考力が麻痺してるんだ。
「へへ、見ろよ。昨日までと違って、脚を閉じもしやがらねえ」
「マジだ。とうとう指とバイブ2号だけで、軽くトぶようにまでなっちまったか」
「ああ、順調だ。こりゃ今日辺りでぶっ壊せるかもな」
 調教役の4人が、明日香を見下ろしてほくそ笑む。
『絶頂がより深く、より長く続くようにしてやる』
 調教初日から口癖のように連呼されるこの言葉が、いよいよ現実味を帯びてきていた。
「よし、呆けんのはそこまでだ。次いくぞ明日香!」
 玄武を背負った1人がベッドに横たわり、明日香の細身を腹の上へと抱え上げる。やたら図体のでかい奴だから、明日香の小さな背中ぐらいは簡単に抱きとめてしまう。その上でさらに、ゴツい手でもって両の膝裏を引き寄せれば、いよいよ明日香は男の胸板に背を預けたまま、足をぶらつかせる事しかできなくなってしまう。
 そしてこの格好は、女にとって……いや、人間にとって、耐え難いほど屈辱的なポーズだ。男の腰に突き上げられる形で、肛門を真正面に、性器を斜め上に向けるんだから。当然明日香も、耳まで赤らめてしまっていた。
「くくっ、まだオマンコがヒクついてやがる。ポルチオの余韻が残ってんのか?」
「ケツの穴もだ。プックリ膨れちまって、とても上流階級のお嬢様の蕾とは思えねぇや!!」
 当然、4人は追い討ちをかける。毎日毎日、飽きもせず。
 そうして一通り明日香を詰り終えた頃、明日香の前に屈み込んだ1人が問う。白虎を背負った一人だ。
「……さて、お嬢様よ。今日はどう可愛がってほしい?」
 これだって茶番だ。あらかじめ言い含めた言葉を、明日香自身の口に語らせ、嘲り笑うための。
「…っ」
 明日香は唇を噛む。人一倍プライドの高い彼女にとって、自ら恥辱の宣言をさせられるこの瞬間は、どんな強姦よりもつらいことだろう。だが、だからこそ、悪魔じみた4人は何が何でもその宣言をさせようとする。
「どうした、何黙ってる……“反抗”か?」
 今の明日香を追い詰めるなら、脳味噌はいらない。たったこの一言でいい。
「く…っ!!」
 それだけで明日香は薄目を開き、顔を歪め、血すら吐きそうな顔つきでプライドをかなぐり捨てる。足枷でしかない、クソみたいな俺のために。
「………私の…………お、お尻を……可愛がって、ください………ッ!!」
 重い息を吐き出すように、明日香が宣言する。あくまで睨む姿勢を崩さないその姿に、4人のニヤつきが増す。
「ほー。んで、その尻ってなぁどこのことだ?」
「もうちっと噛み砕いて教えてくれや。俺らは学がねぇんでよ、お上品な言い方じゃわからねぇんだ」
 どうやら今日は、さらに下劣な宣言をさせるつもりらしい。明日香は顔を強張らせ、ますます強く連中を睨みつける。
「う、うんちの、出ていく、穴です……!!」
 声を震わせながら、恥辱の言葉が吐かれる。どっ、と4人が笑う。
「ハハハッ、なるほどクソの穴か! テメェのあの、くっせぇクソをひり出す穴を、ほじくり回して感じさせてほしいってか、ええお嬢様よォ!?」
 悪意のこもった罵声が叩きつけられ、明日香の瞼が痙攣する。その兆候といい、顔つきといい、ストレスで憤死しそうに見える。
「ウウ……!!」
 俺は心配になって、思わず猿轡ごしに呻いた。すると明日香は、大きく息を吐いてから俺に視線を向け、何度か瞬きする。

  ――――私なら大丈夫だから、心配しないで。

 まるで、そうメッセージを送るように。俺は息を呑み、そこでようやく自分の有様に気がつく。彼女を凝視するあまり瞬きも忘れ、眼から涙を流していることに。
「……仰る通りです。私が毎日臭いものをひり出す穴を、ほじくり回して……感じさせてください。」
 耳にするのもおぞましい暴言を、あえてハッキリと復唱してみせる明日香。俺にはどこまでも気高く映る姿だが、4人の笑いは大きさを増すばかりだ。
「はははははっ!! ったく、そこまであさましくオネダリされちゃしょうがねぇ。今日も、クソの穴で狂うほど感じさせてやるよ」
 4人はそう言って着々と準備を進める。一人がバスルームから、湯気の立つ洗面器を運び込み、別の一人がそこへ白い粉を溶かす。指でかき混ぜて出来上がるのは、特製の挿入用ローションだ。そのローションが哺乳瓶のような容器に詰められ、明日香の正面に座る白虎の男へと手渡される。
「いい出来だ」
 白虎の男は頬を緩めながら、哺乳瓶の口を明日香のアナルに押し当て、遠慮なく中身を注ぎ込んだ。軽く300mlはあるだろう量をだ。
「うあっ!!」
「くく、熱いか? 今日も温泉と同じくらいの温度にしといてやったぜ。お前はそのぐらいが一番感じるらしいからな、変態マゾお嬢様よぉ!」
 洗面器を運んできた奴が、何もかも承知の上という顔をする。それがただのハッタリなら、どんなにいいだろう。でも、違う。こいつらは明日香の快感を知り尽くしている。今日で道具調教は17日目。明日香のあらゆる反応が、絶頂が、すでに膨大なデータとして蓄積してるんだ。
「さてと。今日もコイツで、結腸まで可愛がってやる」
 白虎の男が、空のローション瓶を隣の一人に渡し、代わりにバイブを受け取る。テニスボールを思わせるイボだらけの球が先についた、蛇腹のバイブ。太さもそれなりだが、何より目を見張るのはその長さだ。軽く50センチはある。
 これだけの長さがあれば、さっき奴が言ったように結腸責めも可能だ。肛門からS状結腸の入口までが大体30センチだから、50センチもあれば悠々と「S字越え」を果たし、そのさらに奥まで届く。もっとも、これは連中が明日香に言って聞かせていたことだから、嘘も混じっているかもしれないが。
「うっ……!」
 バイブを目にした瞬間、明日香の表情が強張る。
「いいツラしやがる。ま、そりゃそうか。もうコイツで何百回ケツアクメしたか、わかんねぇもんなぁ?」
 男は笑いながら、バイブの先を弾いてみせた。ゴムのようなバイブは激しく左右に揺れる。その柔らかさと弾力性は厄介だ。押し込めば腸の形に沿ってどこまでも奥へ入り込み、なまじ張りがあるから存在を無視もできない。腸内を責める道具としては極悪だ。
 そして、それだけじゃない。男がバイブの握り部分にあるスイッチを押し込めば、腹の底に響くような重低音が響きわたる。
「いい音だなオイ。もうコレ聞くだけでイッちまいそうなんだろ?」
 振動するバイブの先で肛門を撫でられる。そんな嫌がらせを受けても、明日香は尻を引くことを許されない。
「……はい」
「ひゃはははっ!! なーにが『はい』だよ、言ってて恥ずかしくねぇのかこのビッチが!」
「女子アナみてぇな澄まし顔が余計にウケるぜ、あーハラいてぇ!!」
 どんなに笑われようと、相手の言葉をすべて肯定しなければならない。
 “反抗”しないために。
「よし、ならブチ込んでやる。ケツに力入れとけよ、その方が入りやすいし感じやすいからな。ま、そりゃお前が一番よく知ってるだろうがよ!」
 白虎の男は一旦バイブのスイッチを切り、先端を明日香のアナルへと押し当てる。テニスボール大の珠は、ほんの少しの抵抗を破って簡単に中へ入り込んでいく。
「もう指で慣らす必要もねぇか。こなれたモンだな」
 朱雀の男が、指の愛液を舐め取りながら呟いた。
 先端の球がすっかり窄まりへと飲み込まれ、いよいよ蛇腹の部分が肛門を刺激するようになる。見ていて焦れるほどに、じっくりとした挿入。その挿入はいつも途中で止まる。バイブの形が特殊なせいか、それとも明日香が腸内への挿入を嫌がっているせいか。
「そら、また引っ掛かったぜ。ケツと腸を開け、クソひり出すみてぇにだ」
 男にそう命じられると、明日香は細い息を吐く。すると、またバイブ少しずつ挿入されていく。
 そうしてバイブが半分近く……20センチほど入り込んだ頃。明日香の口が開く。
「あ、ぁぁぁ……っ!!!」
 震えるような艶かしい声。その声は、予期していた4人組に即座に嘲笑われる。アソコならどれだけ犯されても黙って耐える明日香だが、アナルはつい声が出てしまうらしい。
「もう17日目なのに、まだこれかよ。ほんとアナル弱ぇな」
「カマトトぶってるだけだろ。お上品なワタクシが、不浄の穴を犯されるなんて!ってよ」
「んだそりゃ、気持ち悪ィ女だな。人前でさんざっぱらゲロやらクソやらぶち撒けてる、人間便器の分際でよ!!」
 明日香の反応のすべては悪意をもって曲解され、嘲笑のネタにされる。俺ならとっくに精神が不安定になって発狂しているが、明日香は唇を噛んでじっと耐えていた。いや、『耐えてくれていた』。
 そんな明日香の胸中をよそに、バイブはゆっくりと侵入を続ける。とうとう2/3ぐらいが入った。そろそろ臍の下、S状結腸の入口に届く頃だ。
「よーし、奥まで届いたな。結腸の入口も捕まえてんぜ?」
 案の定、白虎の男がそう呟いた。そしてその言葉を裏付けるように、明日香の鼻の横を汗が伝い落ちる。
「……う、……ふっ…………」
 重い呼吸が始まる。S状結腸の入口あたりを圧迫されるだけでも、相当気持ちいいようだ。無理もない。なにしろ結腸入口の近く、本当に薄皮一枚隔てたところに、ポルチオがあるというんだから。
「くくっ。今日はまた一段と、余裕のねぇツラしてやがんな」
「さっき軽くトぶまで中イキしたばっかなんだ。おキレイな顔してやがるが、マンコの奥はもうトロットロに蕩けきってんだろ。そこ刺激されりゃたまんねーって。なあ、そうだよなメスブタ? いつもみたく実況してみせろや!」
 下劣な物言いで、4人の男が囃し立てる。
「………………ッ!!!!」
 明日香は厳しい表情をさらに固くし、3度唾液を飲み込んでから口を開いた。
「…………か、感じて……います…………。こうして、お尻の奥を圧迫されていると、むず痒くなってきて…………!!」
「そうだよなぁ。こうしてっと腸の奥がムズムズしてきて、熱い痺れが沸いてくるんだよな。これまで調教してきたメス共も、みんな口揃えてそう言ってたぜ。お前もお高く止まってっけど、所詮そいつらと同レベルのオンナってわけだ。おら、じっくりとドライオーガズムに浸れ。気が済むまでよ」
 白虎の刺青をした男は、そう言ってバイブのスイッチを入れた。
「うっ!!」
 直に聞くよりも遥かに篭もった音が漏れはじめ、明日香の太腿が震える。
「こっちも気分出させてやるよ」
 横で見ていた朱雀、青龍の2人も、明日香の身体を刺激しはじめた。朱雀の方は快感で膨らんだ乳房をやわらかく揉みしだき、青龍の方は下腹の子宮のあたりを指で圧迫する。見た目にはソフトな責めだが、効果は露骨だ。明日香はここ最近毎日のように、この責めで追い詰められているんだから。
「…………はぁ、はぁ、はぁ…………! ぅぅう、っぅ……ぁ…………はっ、はぁっ、はぁっ…………!!」
 荒い呼吸の合間に、ポルチオ責めの時にも聞いた泣くような喘ぎが混じる。スレンダーな腹部が上下し、太腿が緊張と弛緩を繰り返す。男3人はニヤついた表情でその反応を眺めながら、あくまで淡々と責めを続けた。むず痒い快感を、限界まで溜め込ませるつもりだ。
 その状態が、何分続いた頃だろう。
「…………ぁぁうぅぅ…………ぅっ…………!!」
 明日香から、本気で泣くような声が漏れた。別に3人の責めが激しくなったわけでも、明日香の反応が大きくなったわけでもない。同じような光景が続く中での、突然の『泣き』。
 俺はいつも、この変化にこそゾッとする。いきなり激しくされて反応するなら正常だ。心配するようなことじゃない。でも、今は違う。水道から一滴ずつ垂らされ続けた水がついにコップを満たし、縁から一筋こぼれ落ちた瞬間だ。コップの中は間違いなく『満ちている』んだ。
「わかってんだろうな。黙ってイクんじゃねーぞ!」
 白虎の男が念を押すように凄み、バイブを揺らす。同時に朱雀、青龍の2人も、乳房と下腹を愛撫するペースを早める。
「……は、は、はっ、はっ……い、イキそうっ…………!!」
 明日香はついにそう漏らした。たまらなさそうに。囁くように。それを耳にして、4人の目が変わる。
「いいぜイっても。我慢すんなよ」
 明日香を抱え込む玄武がそう言って、膝裏を抱え直す。朱雀は乳房を鷲掴みにしたまま、親指で乳首を押し潰す。青龍の男は下腹を3本指で何度も押し込み、白虎はバイブで腸内にゆるい円を描く。その段階になれば、追い詰められた明日香はもう3分ともたなかった。
「…………は、は、は、はっ、はっ……! ぁイク、い…っく………!!!」
 眉を下げ、下唇を噛み、横を向きながらか細く宣言する明日香。その瞬間、4人が一斉に歯を覗かせた。
「ぎゃははははっ!! おいお前ら、聞いたかよ!?」
「あーあ、このお嬢サマ! 今日は、マンコどころかクリすら刺激してねぇってのに、とうとうケツだけであさましくイキ果てやがった!!」
「あの『美人すぎる社長令嬢』がなぁ。どんだけのファンが幻滅するんだよコレ!」
「クソ穴で濡らすようなアバズレを、『アスカちゃん』だのなんだのとアイドル扱いしてたわけだからな。俺なら自殺モンだぜ!」
 これでもかというほど、言葉の弾丸を叩きつける。明日香の泣くような表情がさらに歪む。
「ウウウウ…………!!」
 俺は思わず呻いた。ひどい、ひどすぎる。でも、俺と明日香がどれだけ悲痛に顔を歪めようと、外道共の鬼畜行為は終わらない。
「はははははっ、おいお嬢サマよぉ! そんなにケツが好きなら、もっともっとイカせまくってやらぁ。狂うまで楽しめや!!」
 白虎の男が大声で笑いながら、バイブを強く握り直し、さらに奥まで進めはじめた。挿入を「少し右寄り」にしながら、ゆっくりしたペースで。
「んんんぅっ…………!!」
 まだ絶頂の余韻が残っている明日香は、切なく喘ぐ。
「おら。先っちょがよ、ドンドン入ってくぜ。自分でもわかんだろうが、ヌルーッと奥まで来たのがよ。どうだ、耐えられねぇぐらい気持ちいいだろ。自分の口で言ってみろ?」
 また、実況が強いられる。
「…はぁ、はぁ、はぁ……し、痺れるっ……!」
「痺れるか。電気が走ってるみてぇで、鳥肌が立つぐらい幸せなんだろ?」
「…………あ、あああんんぁっ!!」
 明日香の喘ぎは言葉じゃない。でもどんな言葉より、雄弁に快感を訴える。角度をつけたバイブが結腸奥へ入り込むほど、横の2人が乳房と下腹を刺激するほど、明日香の腰のうねりが激しくなっていく。
 コップの水は次々と溢れはじめた。もう取り返しがつかないほどに。
「ああ、ああっ!! はぁぁ、んああああ…………っ!!」
 奥深くまで入り込んだバイブを緩やかに抜き差しされ、下腹が波打つほど指で子宮を押し込まれ、明日香の足が暴れる。
「力むんじゃねぇ、リラックスしろよ」
 さらに朱雀の男が、乳首をやさしく指で弾けば、
「ああっ…ぁぁ、はぁぁーあ……っ」
 明日香は息を吐き出し、強制的に力を抜かされた。そしてその結果、身を強張らせることでかろうじて堪えていた快感の波に呑まれてしまう。
「……ぁぁ、ぁあぁああ……ぁぁイク、いっく…………はああっ、はぁ…………っくイクイク、イク…ぅ…………っ!!!」
 明日香はブルブルと震え続け、ついには白目を剥いてしまう。その様子をじっと観察していた3人は、一旦責めの手を止めた。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…………」
 明日香の吐く荒い息だけが、部屋に木霊する。責められてもいないのに、彼女の身体の痙攣はまだ止まらない。滝のような汗も次々と噴き出しては流れつづける。
「おーおー。触ってもねぇマンコから、本気汁がどんどん溢れてくるぜ!」
「スゲーよなポルチオ中毒って。こんだけ深い快感が、何時間も続くんだろ?」
「バーカ、何時間かで済むかよ! シャブ打った上で、毎日散々覚えこませてんだ。半日か、事によっちゃ丸一日でも持続すらぁ!!」
「違いねぇ。んで、休憩は何分にする?」
「ここであんまイカせまくって、頻繁に気絶するようになっちゃダルいからなあ」
「かといって、クールダウンさせすぎも良くねぇだろ。再開すっぞ!」
 グッタリとした明日香を囲んでそんな会話が交わされ、また明日香の泣くような喘ぎが響きはじめた。
 途中何度も休憩を挟みながら、このアナル責めは何時間にも渡って続けられる。そして、これですらまだ終わりというわけじゃない。道具責めに割かれる時間は半日。執拗なアナル責めが終わっても、せいぜい数時間が経っただけ。じゃあ残った時間はというと、前の穴さえ解禁し、本当の本気で明日香を『壊す』責めに充てられるんだ。

「ヘッ、ちっとクソがついてんぜぇお嬢様。あんだけ腸内洗浄したってのによ」
 アナルから長すぎるバイブを抜き出して、白虎が笑う。だが明日香にはもう、その言葉に恥辱を覚える余裕もない。
 調教開始から、たっぷり5時間半。いつも以上に熱の入ったアナル責めを受け続け、明日香は一体何度『イク』という宣言をさせられたことだろう。明日香の顔は、汗と涙、涎で見る影もなく汚れきっていた。額へ海草のように張りつく前髪は、印象をより無惨なものにする。
 朱雀の刺青を背負う1人が、明日香の顔を布で拭う。ただしそれは、間違っても優しさからの行為じゃない。単なる次の責めの準備だ。
「うっしゃあ、お楽しみの始まりだっ!」
 明日香の後ろにつく玄武の男が、そう言って大きく体勢を変えた。掴んだ両の膝裏をさらに持ち上げ、縛られた腕の真横にまで持ってきた上で、腋の下にふくらはぎを挟みこむ。最終的な明日香の体勢は、アソコを真上に、アナルを斜め上に向けての『マングリ返し』。これ以上なく屈辱的な格好にして、明日香を辱めようとする外道連中が何よりも好む体位だ。
「くうっ……!!」
 明日香の顔が羞恥に歪む。この時点でもまだ、明日香は恥を忘れてはいない。ただ、この後はどうだろう。明日香は今日の夜も、まともさを保てるんだろうか。
「さて明日香、お前の大好きな二穴責めの時間だぜ。昨日は相当余裕を失くしてたみてぇだが、今日は大丈夫か?」
 バイブを手にしたまま、青龍の男が笑う。大丈夫な筈があるか。今日の明日香は、明らかに昨日よりも追い込まれている。すっかり絶頂の味を覚えこまされ、簡単に嵌まり込む体質にされてしまっている。勿論4人は、そうと知っていてわざと言ってるんだ。明日香への嫌がらせのために。
 余裕がない。それは明日香自身が一番よく理解しているだろう。だから明日香は、青龍の男の問いにすぐには答えなかった。でも、俯き、深く深呼吸を繰り返し、その末に震えながら顔を上げる。毅然とした表情で。
「上等だ」
 そんな明日香に、朱雀の男がアイマスクを近づける。視覚を遮ることで、それ以外の感覚は強制的に研ぎ澄まされる。音も、匂いも、触感も。
「う……!!」
 眼を覆われる瞬間、明日香は顎を震わせた。あの明日香が、準備段階で怯えを見せるなど初めてだ。本当に余裕がないんだろう。俺の中にある嫌な予感が、ますます膨らんでいく。
 そして、明日香の自由を奪うものはアイマスクだけじゃない。
「さ、口を大きく開けるんだ」
 その言葉と共に、ボールギャグが明日香の唇へ宛がわれた。そう、調教のこの段階になれば、言葉すら発することを許されない。どれほど悲惨な事になろうと、どれだけ耐え難かろうと、調教が終わるまでは何一つ外部に意思を伝えられない。これほど不安なことがあるだろうか。
 ボールギャグをが触れた、直後。明日香の唇が、何度か開閉する。喘ぐように、あるいは声もなく助けを求めるように。
「どうした明日香。許しでも乞うのか、坊主を見捨てて? いいぜそれでも、人として当然の判断だ」
 ベッド脇に腰掛ける朱雀の刺青が、そう言って俺の脇腹を蹴りつける。
「むごうっ!!」
 いきなりのダメージに、苦悶の声が漏れてしまう。視界の端で、明日香の肩が震えた。そして、彼女は唇を引き結ぶ。
「彼のことは見捨てない。だからといって、諦めもしないっ!
 私は………………耐えて、みせるわ………………!!!」
 嫌な予感を感じつつも、ありったけの勇気を振り絞っての宣言。
「ヒューッ、カッコいいねえ。ならいいぜ、ぶっ壊れるまで可愛がってやる」
 悪意に満ちた含み笑いと共に、ボールギャグが噛まされる。

 こうして明日香は、あらゆる意思表示の手段を失ったんだ。


        ※           ※            ※


 一体、何時間が経ったんだろう。

「ホレホレ、どうだ!?」
 品のない声がし、ぐちゅっぐちゅっという水音が速さを増した。
「んも゛ぉおう、んも゛っ!! おお゛ぉう、んぉおおおう゛う゛っ!!!!」
 ボールギャグに阻まれた不自由な悲鳴も、同じくトーンが上がる。
 明日香は、『マングリ返し』の格好で二穴を嬲られ続けていた。今前後の穴に入っているバイブは、どちらも男の5本指でかろうじて掴めるほどのサイズだ。その太さはどう見ても明日香自身の上腕を超えている。
 それに嬲られつづける前後の穴からは、信じられないほどの愛液があふれ続けていた。4人はそれをいやらしいと詰るが、濡れないわけがない。原因は、ガラステーブルに置かれた4本の注射器だ。調教の最初に打った1本だけでなく、さらに3本が追加で前後の穴に打たれたんだ。明日香を壊す……ただそれだけのために、大した覚悟もなく。

「ふーっ、くっそ手ェ疲れた。交替しろ!」
 朱雀の刺青を背負った1人が、青龍の刺青男に場所を譲る。青龍の男はバイブを何度か突きこんで笑みを深めた。
「ほー、また子宮が下りてきてんな。こりゃ面白ぇ!」
 そう言って、激しくバイブを叩き込み続ける。どうやら明日香のポルチオは、アソコの浅い部分から深い部分、手前や奥と位置が変わり続けているらしい。女が感じた時に自然となる反応なのか、バイブで責められつづけているからかは判らない。そして、どちらでも同じことだ。結局そのポルチオが狙い打たれ、明日香が身悶えるという状況には変わりないんだから。
「逝けっ!! 逝けやオラッ!!!」
 青龍を背負う男が、愛液を散らしながら激しくバイブを叩き込む。
「ううう゛ぅっ、うも゛ぉおっう゛お゛っ!! んんもおぉ……おっお、ほぉおおごオ゛オ゛ーーーーっ!!!!」
 明日香の目隠しの下からまた新たな涙が零れ、ボールギャグの穴からも涎が垂れる。その果てに、それまで浮き気味だった明日香の顎もガクリと下がった。
「ふん、また気絶しやがったか」
 青龍の男は鼻で笑いながら、正面……つまり、明日香を後ろから抱える白虎の刺青男に目配せする。
「お前も人使い荒ぇな。この女あんまり暴れるんでよ、いい加減腕が痛いぜ」
 白虎の男は溜め息をつきながら、それまで鷲掴みにしていた乳房を一旦離し、先端の蕾を摘む。シャブの効果と執拗な愛撫とで、乳輪から先がもう一つの小さな乳首のようになっている場所を、だ。
「…………ン、ふっ!? ……んもぉおオオおおお゛うう゛う゛っっ!!!」
 乳房そのものが三角に変形するまで両乳首を引き絞られ、ボールギャグから凄まじい悲鳴が迸った。真新しい涙と涎が、初雪のような肌を濡らす。さらには抉り回される割れ目の少し上、尿道からも飛沫が上がる。
「おーっ、イッてるイッてる。すげー、ションベンまで出てきやがった」
 明日香の腰がヒクヒクと上下するのを見て、青龍の男が目を細めた。そして、一度肩を鳴らすと、また極太のバイブで二穴を抉りはじめる。
「ん゛っごぉおおお゛っ、ふむごぉおお゛お゛お゛ッ!!! もごお、ほごぉおあ゛お゛おう゛う゛ぅ゛ぅーーーーーっっ!!!!!」
 明日香の口から漏れる声は、ボールギャグに阻まれている事を差し引いても濁りきっていた。俺は彼女がなまの喉で、何度もそういう声を上げているのを目にしていた。可愛らしい『ああ』という喘ぎではなく、ただただ腹の底からの快感が凝縮した、『おお』という逝き声。人一倍の気品に溢れる彼女が、恥も外聞もなくそんな声を乱発するんだから、いよいよ異常だ。崩壊の時は近い。
「ひゃははははっ!!! さっきまでちとヘバってたが、また調子が出てきたじゃねぇか! なあ、アスカお嬢様よぉッ!!!」
 叫ぶ男の背中で、青龍が踊り狂う。跳ねる明日香の腰を、極太のバイブでもって杭打ちするかのような動きだ。その無茶は当然、明日香をさらに深い闇へと貶める。
「むぐぅおおお゛お゛っ、むごぉお゛お゛お゛ぅお゛っ! ぇごぉおっ、ぇえごぉおお゛うお゛お゛お゛っ!!!!」
 激しくベッドを軋ませ、溢れる愛液を撒き散らし、明日香は狂いつづける。そしてその状態を数十秒続けたところで、また糸の切れた人形のように首の力を抜いた。また失神したようだ。
「あっ、またかよ! この女、すぐ気絶するようになっちまったな!!」
 青龍の男が舌打ちする。
「だな。そろそろコイツもいらねーか。どうせもう、何も見てねぇだろ」
 白虎の男が乳首から手を離し、アイマスクを取り去った。その下から現れた明日香の瞳は、ほぼ完全に上瞼に隠れてしまっていた。
「はははっ、こいつカンペキに白目剥いてやがる!!」
「すげぇな。あの超人的に我慢強ぇ女が、ここまで正体無くすなんてよ。オチんのも時間の問題だぜこりゃ」
「っつか、もうオチてんじゃねぇのか? このアヘ顔見る限りよぉ」
 嘲笑が起きる中、青龍の男だけが疲れ気味に肩を回し、割れ目からバイブを引き抜いた。コーラのペットボトルを思わせるサイズの責め具から、異様なほどの愛液が滴り落ちる。
「あー、肩いってぇ。でけぇバイブってのはブチ込み甲斐あるが、しんどくていけねぇや」
 そう言って奴は太いバイブを捨て、ベッドに並ぶ20本以上からまた1つを拾い上げた。選ばれたのは、ごく一般的なサイズのバイブだ。太さはせいぜい3センチ程度。割れ目を押し拡げて蹂躙するタイプの責めから、ピンポイントに奥だけを突く責めに変える気だろう。
「んむっ、お゛っ、おごっ!! ふぉお゛っ、おぐ、おぐっ、おお゛っぐふぅうう゛っ……!!!」
 バイブが割れ目の奥をリズミカルに叩き始めると、すぐに明日香が覚醒する。瞳孔の位置が元に戻り、うろたえた様子で左右を見回す。
「よう明日香ちゃん。そろそろ頭ブッ壊れてきたか? 今かなりヤバかったよなぁ」
 4人がそう言いながら、それぞれ明日香を責め立てる。
「おらおらどうだ、気持ちいだろ? やっぱなんだかんだいって、こういうリアルなチンポのサイズが一番だよな!」
 二穴を抉り、
「外からも子宮を潰してやるよ。たっぷりヨガり狂えや!」
 下腹を鷲掴みにして子宮を刺激し、
「そーらッ、またさっきのカワイイ声聞かせてくれや!!」
 病的にしこり勃った乳首をひねり上げ。
「むっぐうう゛う゛ーーーーっ!!! ふむうう゛っ、うごぅううお゛っ!!」
 今の明日香には、そのどれもが致命的な効果を持つらしく、あらゆる刺激に最大級の反応を示しながら暴れ狂う。ベッドの軋みは、巨漢の藪岡が腰を使う時とそっくりだ。
 そして。地獄とも思えるこの光景には、さらに下が存在した。
 きっかけは、明日香の狂いぶりを面白がった青龍の刺青男が、深々とバイブで最奥を突いていたことだ。少しでもポルチオ逝きを引き出そうというのか、一突きごとに、ぐうっ、ぐうっ、と奥を押し込む突き込みだった。
「おっ!?」
 ある瞬間、青龍の男は変な声を上げる。奴の手元を見ると、割れ目にバイブを掴む指が入り込んでいる。それまでは一番の奥まで突きこんでも、持ち手部分だけは外に残っていたというのに。明らかに、深く入りすぎている。
 明日香の顔を見ると、目をこれ以上ないほど見開いたまま固まっていた。
「お、おい、お前それどうなって……」
 1人がそう言いかけた、瞬間。
「んんん゛ぉおオ゛オあア゛っっ!!!!」
 明日香から、絶叫が迸った。凍りついていた時間が動きはじめたといわんばかりに。そしてその反応を見て、青龍の男も何かを察した顔になる。
「ま、まさかと思うけどよ、これ……子宮ン中に入っちまってんじゃねぇか!?」
 そう言ってバイブを引き抜いた。すぐに3人が割れ目の中を覗き込む。
「おい、ど、どうなってんだよ!?」
 唯一参加できずにいる白虎が、焦れた様子で尋ねた。
「ひ、拡がってやがる…………!!」
「あ、ああ、あれそうだよな。子宮口だよな、あの開いてんの……!!」
「お、、おいおい、んじゃ子宮へ直にぶち込めるってか!?」
 歪んだ笑みから零れたのは、信じがたい言葉。
 ポルチオよりもさらに奥、子宮内部へ達するウテルスセックスというものが存在するというのは聞いた事がある。でもそんなもの、都市伝説だ。人体構造上ありえない、そうとも聞いた。でも、それがどうやら本当にできている。
 何発もシャブを打って、それこそ日常的にはありえない回数の絶頂を繰り返しつづけた結果、決して起こり得ないはずのことが起こってしまったんだろうか。もしそうなら、明日香は…………
「こうしちゃいられねぇ! おい、そこらにCCDカメラのついたバイブあったろ……っと、これだ!!」
 1人がそう言って、先にカメラの内蔵されたバイブを拾い上げる。AVでたまに見る道具だ。3人はそのスイッチを入れ、ビデオ端子をテレビに繋いでから、明日香の中へ差し込んでいく。
 テレビ画面に映像が流れた。驚くほど水気の多い、ピンク色の粘膜を掻き分け、カメラが進んでいく。映像の奥にある子宮口は、確かに指でも入りそうなほどに開いていた。カメラがそこをアップに写し、膨らんだポルチオを突き抜けていく。最後に映るのは、ピンク色の壁。子宮頸部もなにもない、子宮の内部だ。
「おお゛お、……ぉお、おっ…………!!」
 残酷なことに、テレビの映像は明日香自身にも見えている。誰もが声を無くして入る中、当事者である彼女だけは、嘆くような細い声を上げていた。
 そして、4人の悪魔が笑う。
「ははははっ!! すげぇ、こりゃすげぇぜ! 流石に初めてだこんなん!!」
「ああ、マジに入るんだな。っしゃ、じゃあお嬢様に、たっぷりウテルスセックスを味わって貰おうぜ!!」
 悪魔じみたその言葉と共に、カメラ付きのバイブが激しく前後する。映像内で水気のある襞が、何度もカメラの側面を往復しはじめる。
「ん゛ん゛む゛ぉおお゛お゛っ、ふも゛ぉおうお゛あああ゛お゛う゛っ!! あ゛ぁ゛、ああ゛っ!! お゛お゛うっお……あおう゛ぉお゛お゛お゛おお゛お゛っ!!!」
 当然、明日香の喉からは滅茶苦茶な悲鳴が上がった。
「おうおう、何言いたいんだ? 聞かせてくれや。絶対に入っちゃいけねぇ場所を貫かれちまった、女として終わった人間の感想をよお!!!」
 ボールギャグの金具が取り外され、濃厚な唾液の線を引きながら引き抜かれる。
「ぷはあっ!! はぁっ、はあっ……あああぁあああっ!! うわあぁあああっ、ああああうあぁあぁっ!!!!!」
 短い息継ぎの後、明日香の喉から迸ったのは、裏返った絶叫。もはや理性があるのかもわからないほど、喉を開いて大声で叫び続けている。
 でも、その様子を見て俺は気付いた。理性は、ある。明日香の理性はある。だってこんな状況なら、普通は無意識にある言葉を叫ぶはずなんだ。
 『いやだ』『やめて』『抜いて』……この、どれかを。でも、明日香はそれをしなかった。変わりに、喉を開いて絶叫することで耐えているんだ。でもいくら叫んでも、子宮からバイブが抜かれることはない。4人の狙いを満たしていないから。
「さあ明日香、言ってみろ! やめてください、許してくださいってよ!!」
「言え! 言わねー限りこのバイブは抜かねぇ。そうしたらお前、二度とガキ産めなくなっちまうぜ!!」
「おらおらっ、どんどん子宮の入口が広がっていくぜ。もう何をどうやったって、二度と戻らねーようになっちまうぜぇ、お嬢様よおっ!!」
 耳を覆いたくなるような、ひどすぎる言葉責め。それを四方から受けながら、さすがの明日香も眼の力を失う。元々彼女は何時間も絶頂を継続させられて、精神的に極限状態なんだ。その上で未知の場所を抉り回され、脅しの言葉を投げかけられたら、いくら何でも心がもたない。
「あ……あ……ああぁあ……っ!! わ、わたし、わたしは……っ!!」
 明日香は唇を震わせ、歯を打ち鳴らしはじめた。超人的であった彼女が、とうとう年頃の女性の反応を始めた。
 いよいよ、終わりの時だ。
「さあ、言え!! 言ってみろ明日香アッ!!!」
 4人が恫喝し、ついに明日香が観念したように口を開いた、まさにその時。
 

「  警察だ!! 全員そこを動くなっ!!  」


 扉が開くと同時に叫び声がし、部屋に警官が踏み込んでくる。




 ・・・・・・・・・・・・・・


 助かったんだ。俺と、明日香は。



          ※           ※            ※



 警察がホテルへ突入するきっかけとなったのは、俺の通報だった。
 明日香の監禁が始まってから、2週間が過ぎた頃……つまりニュースで事件が報じられる見込みがなく、藪岡達が明日香を解放する気もないと確信した時点から、先輩達の目を盗んで何度か通報していたんだ。
 通報できるチャンスは毎回ほんの僅かしかなかったから、事件の内容もホテルの場所も、しっかりと伝えられたことはなかった。ひょっとすると、通報後しばらくは悪戯電話として処理されていたのかもしれない。あるいはパトカーの巡回路からも外されるような曰くつきの場所だけに、警察としてもそうそう踏み込めなかったのかもしれない。
 救出に時間が掛かった理由ははっきりしないが、ともかくホテルにたむろしていた連中は一網打尽となった。頭である藪岡はたまたまホテルに居なかったから、現行犯逮捕とはならなかったが、明日香の証言を元にしっかり指名手配されている。逮捕は時間の問題だ。前科持ちの上に、あれだけ悪質な行為を主導したんだから、捕まれば懲役20年は固い。
 藪岡の腹心である高根沢をはじめ、幹部連中はほとんどが捕まったから、事実上藪岡達のチームは崩壊だ。

 俺は警察の突入時に手錠を掛けられていて、明らかに被害者風だったし、なにより明日香が無実を主張してくれたおかげで、事情聴取だけで済んだ。
 その明日香は、保護されてから警察病院に移送され、しばらく入院する事になった。ホテルでは気丈に耐えていたが、無理が祟ってかなり身体にガタが来ていたようだ。そして、散々打ち込まれたシャブを体内から抜く必要もある。
 覚醒剤を抜くには、他の一般的な薬と同じく、肝臓の代謝を上げて尿として排泄するしかないらしい。シャブを止める時は普通、精神安定剤や催眠導入剤なんかで辛さを紛らわせながらじっくりと抜くらしいが、明日香はそういったものを使わない方針を選んだ。そうする事でシャブの抜け具合は一気に早まり、常用者でも2週間ほどで尿検査に引っ掛からなくなるんだそうだ。
 ただし、薬で紛らわす事ができない以上、後遺症が激しい間は想像を絶する地獄。髪は抜け、目は窪み、幻聴と幻覚に悩まされ、いつ発狂してもおかしくないほどの躁鬱を繰り返すことになる……ネットにはそんな体験談もあった。
 俺は、そんな彼女と連絡先を交換した。やましい心でじゃない。何か俺にできることがあれば言ってくれ、苦しかったら言ってくれ。その気持ちからだ。
 彼女ともなれば親しい人間は多いだろうし、普通の相談ならできる相手もいるだろう。でも、あの地獄での体験は、同じ場に居なかった人間と共有するのは難しい。変に心配されて根掘り葉掘り訊かれたら、それこそ大変なストレスだろう。その点、事情を知る俺なら何かの力になれるんじゃないかと思った。そして明日香も、その提案を快諾してくれた。

 そして、ある日。明日香から、深夜に電話が掛かってくる。あの明日香がそんな時間帯に電話を掛けてくるなんて、よっぽどのことだ。通話ボタンを押す瞬間、俺の指はかすかに震えていた。
 通話状態が始まる。でも、一向に声が聴こえてこない。
「明日香?」
 俺が声を掛けると、電話の向こうで呼吸を整える気配が伝わってきた。緊張しているのか、それとも動揺しているのか。
「…………ごめんなさい。自分から掛けておいて悪いけれど、私いま、変な事を口走るかもしれないわ」
 何拍か置いて、明日香はそう言った。それを聞いて、俺はようやく事情を飲み込む。彼女は今、薬の副作用に必死で耐えているんだ。おそらくは不安でたまらなくなり、衝動的に俺に電話をかけてきたんだろう。あの、明日香が。
「声だけでも聞けてよかった。切るわね」
 明日香は力のない声で呟く。
「ま、待って!!」
 俺は、思わずそう叫んでいた。
「…………え?」
 怪訝な声がする。俺は動揺したまま、さらに続けた。
「そ、その、無責任な言い方かもしれないけど……明日香なら、きっと大丈夫!」
 俺の迷いまくりの言葉に対して、返事はない。でも、電話口でじっと次の言葉を待っている気配がする。だから俺は、深呼吸して続けた。
「そ、尊敬してるんだ! あれだけ色々やられても耐えてるの見て、その、凄いって思った。すごい頑張ってる時に頑張ってって言われるのは、嫌かもしんないけどさ……でも、頑張ってくれ。俺、明日香が元気になるの、待ってるから!! そうだ。こないださ、美味しそうなケーキ屋見つけたんだ。いつか元気になった明日香と一緒に、行きたいんだ。だから…………だ、だから」
 俺は、そこで言葉を切った。というより、次の言葉が出なかった。男のくせに、情けなくボロボロ泣いてしまっていたから。
 明日香は、しばらく黙っていた。電話を挟んで重い沈黙があった。
「…………ありがとう」
 沈黙を破ったのは、明日香からの感謝の言葉だ。
「えっ……?」
 今度は、俺が聞き返す番になった。
「今夜を越えたら、きっと楽になると思う。そうとはわかっていたけれど、今度ばかりは耐えられるか不安だったの。ほんとうに、つらくて。……でも今は、心の奥に支えができた気がする。私は、きっとこの暗闇から抜け出して、あなたの元に帰ってみせるわ」
 明日香の声は、泣き腫らした後の笑顔のようだった。
「…………おやすみなさい」
 穏やかな明日香の言葉が、通話の切れた後にも俺の耳に残っていた。俺の目からはまだ涙が伝っていたが、なんとなくそれは、嬉しいからだと思えた。

 そして、しばらく後。
 俺と明日香は、何度か遠慮がちに顔を合わせながら、気付けば付き合うようになっていた。『吊り橋効果』というやつかもしれないし、純粋に相性がいいのかもしれない。でも、理由なんてどうでもいい。ただ一緒に居て、幸せでさえあれば。
 ただ、明日香はものすごく忙しい。ただでさえ会社役員とイメージガールという2つの大役を負う人間だし、監禁と入院の間の仕事も相当溜まっているはず。明日香自身は「どうにか時間を作る」と言ってくれるが、もう俺のために無理をしてほしくはない。だから俺達のデートは、毎回かなり間が空いた。
 そして人目につく場所では、明日香はグラサンや帽子で変装する必要もある。なにしろ、式田証券のCMのおかげで全国的に顔を知られている有名人だ。それが俺のようなチンピラと交際していると知れたら、スキャンダルになってしまう。
 そういう諸々の事情はあったが、逆にそういう障壁のおかげで、逆に恋が燃え上がった。中々会えないからこそ、お互いにデートの日を待ち焦がれる。よく似合うグラサンで変装した明日香と会うと、まるでハリウッドモデルとでもデートしている気がして興奮する。

 初めてセックスをしたのは、付き合い始めて2ヶ月目の終わりごろだ。
 俺と明日香にとって、セックスは特別だった。なにしろ、あんな体験を共にしたんだ。それなのにセックスするなんて、という考え方もあるし、だからこそ、トラウマを払拭すべく愛し合うべき、とも言える。
 そして明日香は、俺とトラウマを払拭することを望んだ。
 俺達は『ラブホテルのベッドの上』で抱き合って、何度となくキスを交わした。地獄の日々の恐怖が甦ったのか、震える彼女を抱きしめながら。
 2人で過ごした最初の夜に、一体どれだけの体位でしただろう。
 あの外道共に共感する気は微塵もないが、確かに明日香のアソコは信じられないほど気持ちがよかった。あれだけ拡張されたのが嘘のように、数ヶ月ですっかり締まりが戻っている。挿れると生暖かいミミズがみっしりと押し寄せてくるようで、ぼーっとしているとまさに『あっ』という間に射精してしまいかねない。
「もう、早すぎるわ!」
 最初に挿入した時、10秒ともたずに発車した俺に、明日香はそう拗ねてみせる。
「わ、悪い……」
 恥ずかしさのあまり俯きがちに見た明日香の顔は、ホテルでは見たこともないほど柔らかく、慈愛に満ちた表情をしていた。それが俺に向けられているという幸せで、呼吸が苦しくなりそうだった。
 俺は時には彼女に奉仕し、時には彼女に奉仕されながら、明日香という女性の魅力に惹かれていく。でも同時に、所々であの日々の傷跡にも向き合うことになった。例えば、彼女のアソコはもう綺麗な縦線には戻らないし、アナルは窄まりには戻らない。ある程度整ってきてはいるが、使い込まれた年季は残っている。
 そして、もう戻らないものといえば、彼女の感じやすさもそうだ。少し割れ目を刺激するだけで、あふれるほど愛液が出てくる。
「あなたにされてるからよ」
 明日香はそう言うが、本当のところはわからない。
 でも俺は、そういう全部をひっくるめて明日香を愛した。何もかもを肯定する。彼女の何もマイナスにはさせない。恥ずかしがる性器を、最大限の愛情を込めて舐め、後ろから優しく抱きしめながら、いつまででも繋がりあう。
「…………幸せ…………」
 明日香は俺に抱きすくめられながら、震える声でそう言った。そして首を回して俺にキスしながら、熱い目を向けてくる。
「本当は最初、あなたと付き合うべきか迷っていたの。でも、付き合ってみてよかった。あなたがいなかったら、私はずっとセックスを嫌っていただろうし、もう一度自分を好きにもなれなかった」
 明日香が俺にくれたこの言葉は、こっちこそ、と言う他はない。大げさでもなんでもなく、俺はこの瞬間の為に生まれてきたんだという気がした。

 会えないもどかしさと、会えた時の嬉しさ。それを噛みしめている間に、春が巡ってくる。
 桜の樹の下で待ち合わせた日、俺は先に来ていた明日香の姿に目を見張った。
 確かオフショルとかいう、肩を大胆に露出させたフリルつきの白カットソーに、チェック柄のミニスカート、黒いサンダル。いかにも街で遊ぶ女子という風だ。そのガーリーな出で立ちは、普段のクールなスタイルとはあまりにも印象が違った。今はグラサンも帽子も着けていないが、変装の必要もないだろう。俺ですら、一瞬誰かと思ってしまうほどなんだから。
「ごめん、待たせちゃったみたいだな」
俺が頭を掻きながら言うと、明日香は笑顔で首を振った。
「いいえ、時間ぴったりよ」
 その笑顔はあまりにも綺麗だったし、普段のイメージとはギャップのあるファッションもあって、俺はつい明日香に見惚れてしまう。
「…………変かしら、この格好…………?」
 俺があまりにも見るので不審に思ったのか、明日香が表情を曇らせる。
「い、いや、そういうんじゃ!!」
「そう? 普段あまりこういう服は着ないから、勝手がわからなくて……」
 明日香は指を組みながら、不安そうに言う。
 確かに明日香といえば、パンツスタイルという印象が強い。ハーフ顔の上にモデル並みのスタイルだから、とにかくシュッとしたパンツが似合うんだ。それなのにわざわざガーリーな格好を選んだのは、俺との街デートに合わせてのことか。
「いや、全然変じゃない。その、かっ……可愛いよ」
もっと気の利いた言葉もあるだろうに、俺は顔を赤くしてそれだけ言うのが精一杯だった。
「…………あ、ありがとう」
 明日香も色白な頬をわかりやすいぐらいに赤らめて、感謝の言葉を呟いた。
 21歳同士のデートにしては、少しウブすぎやしないか。俺は心の中でそう突っ込んだ。でも、仕方ない。パシリの不良と、仕事一筋の令嬢。どっちも恋愛の経験値なんて、ほとんどないんだから。

 普段は食べないようなとびきり豪華なケーキを堪能した後、話題の映画を見終わると、もう日が沈みかけていた。
 動悸が早まる。時間も時間だ、ここからは大人の時間……という流れになっても不自然じゃない。ないが、つい最近したばかりだから、いまいち言い出しづらい。それに、明日香の態度も気がかりだ。疲れたのか、それとも何か気に障ることをしてしまったのか。デートの途中から、急に口数が減っていた。
 だから俺は、自分でも嫌になるほど消極的にアピールする。駅へエスコートするふりをしながら、さりげなくラブホの多い通りへ向かうという。もし明日香の方から休憩を申し出てくれるようなら、諸々の悩みが一気に解消する。
 でも。怪しいネオンが見えはじめ、俺の意図を察したらしい明日香は、申し訳なさそうに頭を下げた。
「今日はこれから、用事があるから……ごめんなさい」
 そう言われては、引き止める事もできない。
 彼女が忙しいのは十も承知だ。たとえ夜でも……というより、夜こそ予定が立て込んでいるようだった。なんといっても、成長めざましい新興証券会社の役員兼イメージガール。当然、夜に開かれる何かのパーティーで、グラス片手に商談という機会も多いはずだ。
 実際明日香は、そういうパーティーの写真をよく俺に送ってくれていた。ご馳走の写真だとか、高層マンションのバルコニーに設けられたナイトプールの写真なんかを。金持ちの嫌味だ、と冗談で拗ねてみせたら、『ごめなさい、そんねつもりじゃなあったの!』と誤字だらけのメールが届いた後、すぐに謝罪の電話が掛かってきた。電話口で「冗談だ」と言うと、拗ねたような声が聴こえてきたっけ。
「い、いや、仕方ないって。俺こそ、その……ごめん」
 きっちりと謝ってくれる明日香に比べ、俺は何とも歯切れが悪い。明日香はそんな俺に近づき、少し周りを見回すと、
「んっ!?」
 壁へ押し付けるように、俺にキスをした。舌を触れ合わせる、長いキスだ。こんな事を彼女の側からしてもらえる幸運な男が、俺以外にいるか。いや、いない。俺はふわりとした香水の良い匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、至福に酔った。
 数十秒の後。ようやく、唇が離される。
 目を開くと、明日香の濡れたような瞳が間近にあった。
「…………好きよ」
 熱い吐息のようなその告白に、俺の動悸はいよいよ早まる。
「本当は、もう何もかも投げ出したい。全部忘れて、あなたとずっと抱き合って、一緒に過ごしたい」
 濡れたような瞳が、本当に涙を滲ませる。そこまで本気で想ってくれるのは嬉しい。でもここで、全部捨てろ、なんていうのは本当の愛じゃない。仕事や肩書き、プライド、恋心。そういうもの全部ひっくるめての明日香なんだ。彼氏なら、式田 明日香という女性を丸ごと尊重して、支えるべきだ。
「そういうわけには、いかないだろ」
 明日香の髪を撫でながら、囁く。
「…………わかってる。ちょっと、甘えてみただけよ」
 両手で強く俺を抱きしめた明日香は、吹っ切れたように笑顔を見せた。
 
 小さくなっていく明日香の背中を見送りながら、俺は呆然と立ち尽くす。
 今夜は、どんな豪華なパーティーに呼ばれてるんだろう。明日香は、ドレスに着替えてそこへ参加するんだろうか。
 煙草を取り出して一服しながら、明日香のドレス姿を思い描く。妄想の中の明日香の衣装は、いつの間にか白いウェディングドレスに変わっていた。
「気が早ぇよ、バカ」
 つい独り言を漏らし、通りかかったカップルに変な目で見られてしまう。
 ラブホテルでの一夜がフイになったというのに、俺はどうしようもなく舞い上がっていた。いつか本物の明日香の花嫁衣裳が見られる……その確信があったからだ。

 何もかもが上手くいく。そんな希望を胸に、俺は機嫌よく路地をぶらついていた。だがその俺のバラ色の心は、その数秒後に凍りつく。
「おい」
 ガラの悪い呼びかけに、俺は固まる。振り向くと、そこには…………高根沢がいた。
「え?」
 間抜けな声が出る。頭が状況を把握していない。
 どうしてここに、高根沢が。奴はホテルで現行犯逮捕されたと聞いている。あの事件からすでに半年近く経ってはいるが、あれだけの犯罪の主犯格がたったの半年で釈放になるわけがない。なら、何故。
「ちょっとツラ貸せよ。呑気にブラブラ歩いてたんだ、時間はあるよな?」
 有無を言わせぬ口調。八木達を殴り倒していた光景がフラッシュバックする。従うしかない。下手に逆らっても結末は同じで、より悪い状態になるだけだ。


    ※           ※            ※


「…………なんで、っスか」
 夜のファミレスで向かい合ったまま、俺は高根沢に尋ねた。緊張で言葉が出ない。
「ンだそりゃ? 雑な質問だな。俺がなんでシャバにいるんだ、ってか?」
 高根沢はそう言ってコーヒーカップを手にする。俺は力なく頷いた。
「逮捕された人間が、全員漏れなく実刑喰らうとでも思ってんのか?
 抜け道があんだよ、どんな事にでもな」
 馬鹿にしきった笑いに続いて、コーヒーを啜る音がする。俺は奴の視線を受け止めきれず、視線を下げた。
 抜け道。つまりコイツは、逮捕を免れたのか。どうやって?
 …………いや、そうじゃない。今この瞬間に考えるべきは、それじゃない。

 何 の 用 だ ?

 例の件を警察に通報したのがバレたのか? いや、それはないはずだ。そもそも俺は、警察が踏み込んでくる半月以上前から、藪岡に逆らった罰として手錠付きでホテルに監禁されていた。アリバイとしては充分で、通報した容疑者の可能性は低いはずなんだ。
 でもどうやら高根沢は、俺に敵意を持っているらしい。
 そうだ。そもそもコイツらは、道理や理屈ありきで動くほど律儀な連中じゃない。『そそる女だから』という理由で衝動的に明日香を攫ったように、『疑わしい』という理由だけで誰かを的にかけてもおかしくない。そして一度追い込むと決めれば、相手の弁明や命乞いなど一切聞かない。そういう奴らだ。
 なら、どうする。どうやってこの状況を切り抜ける。
「よお。ところで……瑞希センパイ、元気してっか?」
 色々と思考を巡らせている俺に、いきなりその質問が来た。心臓がまた凍りつく。

 瑞希センパイとは、俺の姉貴、福原 瑞希のことだ。俺より6つ上の27歳。つまり藪岡や高根沢よりも、さらに3学年上の大先輩にあたる。
 姉貴は学生のころ陸上をやっていて、何度か大会で入賞したりもして結構有名だった。いつも教師や優等生連中に囲まれている、まさに学校の人気者。そうして表の世界で賞賛される一方で、姉貴は不良連中にも注目されていた。
 ケダモノに人気の理由は単純明快、乳がでかいからだ。小5にしてすでにCカップあった姉貴は、同級の中で一番早くブラを買う必要ができ、『なんであたしだけ』とボヤいていたものだった。
 ウチの学区は小学校と高校がすぐ隣で、小学校側の一部の教室からは高校の校庭が見える。だから俺が小学校の頃は、高校のグラウンドに姉貴を見つけて興奮するクラスメイトが山ほどいた。マラソンなどで走っていると、体操服の胸の部分がぶるんぶるん揺れて、ガキ共のいいオカズになったようだ。
 それに姉貴は、胸がでかいだけじゃない。顔も割と整っているし、陸上をやっているせいで少し足は太いものの、スタイルだってそう悪くない。上半身に限れば、少年誌の表紙を飾るようなグラドルと肩を並べられるレベルだ。
 それだけのルックスと運動神経がありながら、成績だって悪くはない。うちは母子家庭で貧乏だったから、姉貴は高校を出てすぐに就職したが、高校の担任も母親も口を揃えて『大学へ行かないと勿体無い』と言っていた。
 今思えば、ごく身近なスケールでの明日香みたいだ。あいにく貧乏暮らしで、間違ってもお嬢様とは言えないが。

 そんな存在が実の姉なんだから、同級生からは随分と羨ましがられた。
「おい、見ろよ。お前の姉ちゃん走ってんぜ!」
「相変わらずスゲー乳だな……っとやべ、勃ってきちまった」
「なあ、いい加減姉ちゃんの着替えか、できれば風呂の写真撮ってきてくれよ。カネ払うからさ、頼むってマジ……!!」
 そんな会話は毎日のようにされた。俺は一貫して興味ないフリを続けていたが、内心では誇らしかったものだ。
 ただ、優秀な姉を持つってのも良い事ばかりじゃない。何をやっても平均以上の姉と比べられる弟っていうのは、中々に不幸だ。
『お姉ちゃんはあんなに……』
『それに比べてお前は……』
 お袋も教師連中も、果てにはクラスメイトすら、口を揃えてそんな事を言う。俺が不良の道に逸れた原因は、一番は俺が半端者のヘタレだからだが、こういう事情の影響が全くなかったわけじゃない。
 そして俺は個人的にも、姉貴が苦手……というより、頭が上がらなかった。ウチは母子家庭で、パートを掛け持ちしているお袋があまり家にいなかったから、実質姉貴が俺の母親代わりだった。「バカ!」が口癖で、箸の持ち方や爪を噛む癖なんかを、事あるごとにうるさく注意された。
『母子家庭の子だから品がないんだ、とか言われてもいいの!? そうなったら、母さんがどんだけ悲しむと思うの!!』
 窓が震えるような声量で、そんな説教を耳にタコができるほど聞かされた。
( 家でまで優等生ぶりやがって…… )
 俺は当時そう不満を持っていたが、今なら俺を心配するからこその小言だったんだとわかる。
 そう。姉貴はガキの俺を、間違いなく大事に思っていてくれた。
 姉貴の20歳の誕生日に、イヤリングをプレゼントしたことがある。先輩の彼女のお下がりとして安く買った物だが、宝石のような紅いガラスが揺れる、結構可愛いやつだ。ガキが買える中では上物だった。
「中学生がイヤリングなんて、生意気ね。ま、ありがたく貰っとくけど」
 プレゼントした瞬間は照れ隠しでそう茶化されたものの、その夜、風呂上りにリビングを覗くと、一人でイヤリングを眺める姉貴の姿があった。椅子に座ったまま足をぶらつかせ、上機嫌に鼻歌を口ずさみながら。不覚にも可愛いと思ってしまうほど、幸せそうな横顔だった。
 それが、俺の姉貴だ。

「……姉貴が、どうかしたんすか」
 俺は高根沢を見上げながら尋ねる。胸の中で嫌な予感が膨らんでいく。
「ほー。どうもしねぇと、訊いちゃいけねえのかよ?」
 高根沢が、眉を寄せて凄んでくる。どちらかといえば線の細い不良なのに、この威圧感は何だ。震えが来る。喉元へナイフを突きつけられたように。
「……い、いえ! す、すません!!」
 俺は反射的に謝ってしまう。こんなクズに、明日香を弄んだ外道に、頭を下げたくなんてないのに。そんな俺を、高根沢は鼻で笑う。
「ま、そりゃ冗談としてだ。ただ気になっただけよ。知ってんだろ? 俺もヤブも、中坊ン頃はお前の姉ちゃんが一番のズリネタだったんだ。っつーか、この辺りのゴロツキは皆そうだったがよ」
 改めてそう言われると、胸がムカムカする。姉貴が穢されるようだ。
 でも俺は、同時に安心してもいた。相変わらず奴の真意は見えないが、少なくとも今はまだ世間話の段階らしい。
 もっとも、落ち着いて考えれば当然の事だった。姉貴はもう何年も前にこの町を出て、都会で事務の仕事に就いている。たまたま車で拉致できた明日香と違って、片田舎のチンピラが遊び半分で手を出せるような場所にはいないんだ。
「あ、ハハハ……気にかけてくれて、どもっス」
 俺は上っ面で感謝しながら、高根沢の意図を探る方向へ頭をシフトさせていた。
 でも。
 姉貴の話題は、まだ切り替わってはいなかったんだ。
「そりゃ気にするぜ。なんせ、あんまりにもオメェの姉貴ソックリな女が出てる動画、見つけちまったもんでよ」
 高根沢はそう言って、服のポケットから何枚かの写真を取り出した。
 乱雑にテーブルへばら撒かれた写真に、視線を落とす。
 どの写真にも、裸の女が写りこんでいた。ある写真では、前後から男に犯され。ある写真では、ハードなSMプレイをさせられ。
 目にモザイクが入っているため、はっきりと顔はわからない。でも、女のルックスには見覚えがあった。

 スポーティな印象を受ける、首後ろまでのやや外跳ね気味の髪。
 グラドルを思わせる、ぽてっとした少し厚めの唇。
 無駄な肉のない、すっきりとした顎。
 一見引き締まってはいるが、本職のAV女優と違い、屈むと少しだけ肉の寄る腹。
 細い腕とやや不釣合いな、腰周りと同じぐらいある健康的な太腿。
 ゆうにFカップはあるだろうボリュームのある乳。
 右肩と右乳房外側のホクロ。

 何もかもが一致していく。
 ついさっき、高根沢の一言で脳裏に浮かべた姉貴の姿と。寸分違わず。
「な? ソックリだろ?」
 高根沢がそう言って笑った瞬間。
「あ……ああああぁっ!!!」
 俺は思わず叫んでいた。その俺の顎を、すぐに高根沢が掴む。
「……騒ぐんじゃねぇ。迷惑だろうが!」
 ヤの字さながらの凄みだ。迷惑? 誰の。俺以外の、誰の?
 自分の迷惑になるってことか、この犯罪者め!
「な。なんあんれすかこれっ!?」
 顎を掴まれながら、俺は問いかける。
「俺に訊くんじゃねぇよ。ツレから教えられたエロ動画サイトに、たまたま瑞希センパイとソックリのM嬢がいた。そんだけだ」
 高根沢は俺の顎を突き放すと、煙草を取り出して火を点ける。コイツが煙草をふかし始めるのは、多くは答えない、喋りかけるなという意思表示だ。
 俺は高根沢から視線を切り、震えながら写真を眺め回す。目が滑る。どれも見たくない。でも、見えてしまう。
 柱を背にした胡坐縛りのまま、前後の穴にバイブを嵌め込まれ、極太のイチモツを根元まで咥え込まされて、大量に嘔吐しながら涙を流している写真。
 這いつくばって泣き叫ぶ女の後ろに、刺青男が座り込み、女の脚の合間へと太い腕を伸ばしている写真。
 大口を開けた口いっぱいに、排泄物を詰め込まれている写真……。
 どれも覚えがある。あのラブホテルで、明日香が受けた責めそのままだ。
 ただし、中には明日香の記憶と一致しない写真もあった。右頬を赤く腫らし、少なくない量の鼻血を垂らしている一枚だ。
「……な、なんです、か、これ…………!?」
 俺は、思わず高根沢に問いかける。煙草を吸っている最中だが、もうそれどころじゃない。高根沢は、そんな俺の余裕のなさを薄笑みを浮かべながら観察していた。
「そりゃ、右に一発カマされたんだろ。鼻血の量から見て、野郎のマジ殴りを」
 やっぱり、そうだ。何が原因かまではわからないが、姉貴は殴られたんだ。多分、他の写真に映っている奴と同じような、ガタイのいいチンピラに。
 殴られた写真の女は、明らかに恐怖に震えていた。いや、その一枚だけじゃない。どの写真も、どの写真も、明日香が受けていた時よりも遥かに怯えた表情を浮かべている。精神力の違いか、あるいは明日香の時とそもそもの条件が違うのか。
 高根沢が大きく煙を吐き出し、灰皿で煙草を揉み消す。
「ま、世の中にゃ瓜二つの人間が3人いるっていうしな。よく似ちゃいるが、これが瑞希センパイなわきゃねーよな」
 そう言って席を立とうとする高根沢の手を、思わず掴む。
「何だ?」
 冷たい目。でも、ここで退く訳にはいかない。確実に、姉貴に何かが起きてるんだから。
 姉貴に何をした、とダイレクトに訊いてもしらばっくれるのは確実だ。だから俺は、あえて奴の白々しい作り話に乗っかる。
「お、俺にも、そのサイト教えてくださいよ……!!」
「あ? オイオイ、姉貴そっくりのオンナで抜く気か? 正気かよ」
「ま、マジっす!!」
 あくまで食い下がると、高根沢が笑みを深めた。端から奴は、俺がこう言うのを待っているんだ。だからこそこうして、直に餌を撒きに来た。俺は、それを承知で食いつくしかない。たとえ喉元に針が突き刺さるとわかっていても。
「その写真はやるから、裏見てみろ。じゃあな」
 高根沢はそう言い残し、ファミレスを後にする。
 言われた通りに写真を裏返せば、あるURLとパスワードが載っていた。俺はその文字列を眺めながら、しばらく呆然としていた。

 何となくはわかっている。
 連中が、俺こそ通報者だと的を絞り、グループを崩壊させた事の報復(カエシ)を仕掛けてきたこと。その悪意の矛先が、姉貴へと向いたこと。
 でも、とても信じられない。あくまで他人の空似だと信じたい自分がいる。
 大体、さっき自分でも考えたじゃないか。姉貴はとっくにこの町から出ているんだ。まさか他所の県に出てまで、10年来勤めているOLを攫うか? いや、ない。いくら何でも、そこまで無茶苦茶をするわけがない。
 縋るような想いを抱きながら、俺はスマホを取り出した。
 軽い気持ちで、姉にLINEを打つ。既読は……つかない。とはいえ、当然だ。こんな夜中にいきなりメールして、即答はありえない。なら、電話だ。

『おかけになった電話は、電波の届かない場所にある、または電源が……』

「くそおおおおおっ!!」
 無機質な機械音声が、俺の感情を波立たせる。
 手が震えてきた。その震えでスマホが机に当たり、耳障りな音を立てる。
 こうなれば最後だ。選ぶのは、もう随分と顔を合わせていない、お袋の番号。
 コール音。
 コール音。
 コール音。
 コール音。
「…………もしもし」
 4回目でやっと、声がした。お袋の声だ。気のせいか、ひどく疲れている。
「あ、あの、お袋…」
 震えすぎている声を整えるべく、大きく息を吸い、吐き出す。
「あ、ああ、あの、あねき、姉貴っ、さ、最近なんか、変わったこと……ない?」
 声の震えが余計にひどくなった。ファミレスのソファに座っているのに、膝がガクガク笑う。
 下手な切り出し方だ。世間話を装って母親の近況を聞いた後、ついでに質問する……というように、他のやり方はいくらでもあるはずだった。でも姉貴の事が心配すぎて、全然頭が回らない。ここで落ち着くには、母親から『何も変わったことなんてないよ』とお墨付きを貰うことだけだ。それさえ訊ければ、『いつまでもフリーターなんてしてないで』だの、いくらでも小言を聞いてやる。だから、頼む。
 でも、お袋の口から出た言葉は、俺の願いとは違っていた。
「お姉…ちゃ…ん?」
 ただの家族の話なのに、一語一語確かめるような復唱。嫌な予感が一気に強まる。
「あ、ああ」
 俺は、ツバを飲み込む思いで相槌を打った。すると、電話の向こうでお袋が息を吸い込む音がした。
「それが、それが変なのよっ! あのマメな子が、メールの返事も全然しないし、電話しても出ないの! もう、何日も!!!」
 聞きたくもない、母親の悲痛な叫び。心臓が凍りつく。
「ねぇ、あんた! なんでこの電話掛けてきたの? まさか、何か知っ…………!!」
 お袋の追求が始まった瞬間、俺は思わず電話を切っていた。折り返しが怖く、そのまま電源ボタンを長押しして完全に沈黙させる。
 頭を抱える。
 どうにかして楽観視しようとするが、何ひとつ安心するネタが見つからない。

「あの、お客様……大丈夫ですか?」

 とうとう、店員が確認にきた。俺はそれから逃げるように、精算を済ませて店を出る。
 もう春だというのに、ひどく寒い夜だ。それはまるで、厳しい現実から目をそらそうとする俺を叱っているようだった。
 そうだ。何をどうグチャグチャ考えたって、結論は同じ。まずは事実を確かめるしかない。
 俺は朦朧とした意識で家に帰りつき、パソコンを起動する。ネットへ繋いですぐに、写真裏のURLとパスワードを打ち込んでいく。

『 ようこそ ゲスト 様
  プラチナ会員 TNZ 様からの招待を確認しました。 』

 一瞬、そんな小画面が表示される。どうやら招待制のクローズドサイトらしい。
 小画面が閉じた後、黒背景の中に、血のような赤文字が浮かび上がる。

『人格崩会 マインドクラッシャーズ』

 それがサイト名らしい。
 たかが漢字とカナの文字列が、ここまでおぞましく思えたのは初めてだった。



                                (続く)

止まらないカメラの向こうで  第2話

第1話の続きです。


 監禁開始から、ついに2週間が過ぎた。
 不気味なことに、まだ明日香の失踪を報じるニュースはない。それどころか、テレビCMでは依然として明日香当人が笑顔で会社のPRをしているし、式田証券のホームページにリンクされている明日香の個人ブログ『明日へ繋がる今日のわたし』は、拉致の後2日ほど間が開いたものの、その翌日からは何事もなかったように更新が続いている。
 信じがたい事だが、式田証券は明日香の失踪を隠蔽しようとしているようだった。個人ブログを別の人間の手で更新させてまで。
 最初俺は、これが不思議でしかたなかった。社長の一人娘で、役員待遇でもあり、なおかつ社の顔である女性の失踪をなぜ隠すのかと。でもよくよく考えてみれば、だからこそ、なんだ。あの式田 明日香が行方不明になったと知れれば、間違いなく式田証券の印象は悪くなる。たとえ会社に非がなくても、明日香の笑顔で築いてきたブランドイメージが悪化するのは避けられない。だから、隠す。テレビやマスコミ、ひょっとすると警察にすら根回しをして、式田 明日香の失踪をひた隠しにする。もちろん、裏では捜索願を出してるだろうけど、それはあくまで一般人に悟られないよう、極秘での捜査に違いない。
 なんて皮肉だろう。皆に愛されるアイドルだからこそ、明日香の悲劇は世の中に届かない。大きなヒントになりうる草の根の目撃証言も集まらず、捜索は難航し、明日香はそれだけ長くホテルへ囚われることになる。何も積み上げてきていない、ゴミみたいな連中のザーメン便器として。

「んっ、んぐっ、ぐううっ……むぐ、ふっ、ぐ…んん゛っ」
 明日香は来る日も来る日も、不良連中に交替で犯され続けた。汚れてくればシャワーで洗われるから、今はそこまでの不潔さはない。でも、初めて見たとき黒髪にあったほどの艶はなくなっている。
 そもそも彼女はここへ監禁されて以来、ろくな睡眠が取れていないはずだ。限界が来て気を失うように眠っている間も、犯されるのは変わらないんだから。

 今も彼女は、ベッドの上で寝そべった一人にフェラチオをしつつ、バックスタイルで犯されている。
「うっは、キモチいいー! 久々にしゃぶらせたが、えれぇ上手くなってんなコイツ。もうプロの泡嬢並みだぜ? どんだけ仕込んだんだよお前ら」
 フェラを受ける刺青塗れの一人が、上機嫌に口笛を吹いた。
 確かに、明日香のフェラはかなり手馴れているように見える。唾液を絡めつつ、角度をつけた指でしっかりと扱き、頬を複雑に動かし……。しかも、ただ漫然とテクニックを使うわけじゃない。相手の微妙な反応を見て、効くとわかったやり方だけで責め立てる。その結果、今では大半の人間が数分ともたず果てるようになっていた。
 勿論これは、明日香が好き好んで奉仕してるってことじゃない。彼女なりの目論見があっての行動だ。
「イヤそれがよォ、別に仕込んだワケじゃねぇんだ。この女、一人で勝手に上手ぇやり方を覚えてくんでよ。たぶん、毎日マンコばっか使われてちゃもたねぇってんで、なるべくクチで処理しようって腹みてぇだな。ズルい女だぜまったく!!」
 後ろから犯すチンピラはそう言いながら、腕に血管を浮かせて激しく腰を打ちつけ、小さなうめきと共に射精する。抜かずの数発をできるような性欲の権化が、たっぷりと腰を遣い、溜めに溜めた上でのフィニッシュだ。当然、射精に掛かる時間は長く、出す量も多い。
「っし、やっとハメられるぜ!!」
 また別の一人が、逸物を扱いて挿入準備を整えていた。こいつのモノも相当でかい。というより、この部屋に呼ばれる奴は、どいつもこいつも冗談みたいにでかいんだ。俺は日本人の平均サイズだが、その俺より下のサイズというのが、本当に一つもない。
 明日香のすらっとした足の合間へ、完全勃起のデカブツがねじ込まれる。
「むぐうっ!!」
 明日香の喉から、くぐもった悲鳴が漏れた。
「くそ、待ちきれねぇ……!」
「ああ、俺も早くハメてぇぜ!!」
 ベッドの周りでは、さらに何人もが勃起した逸物を持て余している状態だ。盛りまくった男10人前後に対して女1という比率では、口とアソコ、両手まで使ったとしてもスムーズには回りきらない。
「ヘヘッ。ならよ、そろそろコッチ……行ってみねぇか?」
 現行で犯している一人が、そう言いながら明日香の尻を掴む。そして尻肉を割り、親指をその中に潜り込ませた。横からの撮影だからはっきりとはわからないが、親指の狙いはどうやらアソコじゃない。それよりもずっと背中側だ。だとすれば…………肛門か。
「あっ!? ど、どこを触ってるの!!」
 明日香は唾液塗れでペニスを吐き出し、後ろへキツい目を向ける。どうやら本当に肛門を触られたらしい。排泄物を出すためだけに存在する穴。明日香が令嬢である限り、チンピラに弄られるなんて、本来なら一生なかったはずの場所だ。
「決まってんだろ、ケツの穴だ。マンコも最初は絶品だったが、四六時中使いっぱでユルくなってきやがったからな。代わりにこっちでも咥え込めるようになれや! ね、イイっしょ藪っさん!」
 その言葉で部屋の入口を見れば、瓶ビールをラッパ飲みで煽る藪岡さんがいた。だいぶ酔いが回っているらしく、顔全体が赤い。デカすぎて逆光を受けている上に、人相の悪さも相まって、不動明王を思わせる表情だ。
「あんだ、ケツかぁ? ……ふーん。あんま興味ねぇけど、その女がどういう反応すんのかは気になんな」
 藪岡さんは、呂律の回っていない口調でそう言いつつ、また瓶ビールを煽る。
「うし、やれや。わかってんだろうが、使うのは俺が最初だ。裂けて血だらけになると萎えっからよ、しっかり拡げとけ」
「おおぉ、あざまーす!!」
「へへへ、天才お嬢様のアナル開発か。こいつは楽しみだ」
 大将の許しが出て、場は一気に沸く。鬼畜行為に引いている俺と、悪意の標的である明日香だけを取り残して。

 そして宣言通り、この日の夜から明日香のアナル開発が始まった。場所は2階の212号室。白を基本にしたビジネスホテル風の1階とは打って変わって、2階は特殊プレイを前提としたマニアックな部屋が多いようだ。212号室は、その中でも一番奥まった場所にあった。
 広さは10畳程度。壁も床も一面が黒いタイル張りで、どれだけ汚れても水で洗い流せる造りになっている。さすがに道具の揃えもいい。拘束具、縄、蝋燭、ディルドウにバイブ、電気マッサージ器。壁際にはX型の磔台と三角木馬まで見えた。
 明日香はその部屋の中で、『マングリ返し』の格好を取らされている。今となっては珍しい話じゃない。アソコと肛門が丸見えで屈辱的な上、道具責めもしやすいこの体勢は、がに股での指マンと並んでよく撮影してきたポーズの一つだ。
 明日香の顔の横にまで下げられた足首を、一人が両手で掴んでいる。さらにそれと向かい合う形で一人が膝立ちになり、アソコに入れたバイブを上下に揺らしながら、肛門を指で弄くりまわしていた。
 昨日まで黒く生い茂っていた明日香のアソコの毛は、いつの間にか綺麗に剃り上げられている。いわゆるパイパンという状態だ。だから、割れ目に入り込むバイブの動きも、愛液が腿を伝っていく様子も、はっきりと見えた。愛液の量からして、もう何度となくイっているらしい。たぶんシラフの状態じゃない。そう当たりをつけて周囲を見れば、やっぱりあった。膝立ちでアソコを責める男から少し離れた場所に、シャブ用の注射器。
 そして、さらにその向こうには、茶色い液体の入った洗面器も見えた。横にはピストンが半端に押し込まれた中身入りの浣腸器があり、濡れたアナルビーズとアナルストッパー、陰毛の絡みついたカミソリが転がってもいる。そういう物があるだけで、明日香が受けた恥辱の行為が目に浮かぶようだ。
 でも、明日香の目は死んでいない。屈辱的な格好を取らされたまま、目の前で肛門を嬲る男を力強く睨み据えている。
「相変わらず怖い目しやがって。ケツ穴ヒクつかせながらカッコつけんなよ」
「あなた達に馬鹿にされる謂れはないわ! 人を笑う前に、自分達の姿を客観的に見てみなさい。排泄の穴に群がるなんて、まるでハエよ!」
 男の詰りに、明日香が眉を吊り上げて叫んだ。薄暗い部屋の中に、そのハイトーンの声はよく反響する。くっくっ、という押し殺したような笑い声も。
「まったく、口の減らねぇお嬢様だな。また“こいつ”で、無理矢理メスにするしかねぇらしい」
 肛門に指を入れる一人が、傍の一人から注射器を受け取る。
「っ!!」
 明日香の表情が強張った。何度もシャブセックスを味わわせられ、その抗いきれない快感を知っているからこその反応だ。男はその反応を楽しみながら、肛門に針を刺し、肛門の四箇所に少しずつ内容物を注射していく。
「そんなものに頼って……情けないわね」
 憎まれ口を叩く明日香だが、段々と呼吸が荒くなり、汗が噴き出してくる。
「便利なもんはドンドン使うってのが、後から生まれた人間の特権だ。おかげでお前みたいな強情女も、楽に堕とせるぜ」
 明日香の正面に座る男が、割れ目のバイブを掴み直した。
「んじゃ、まずは軽くイッとくか。もっともお前にとっちゃ、軽くねぇかもな!」
 バイブが上下に動かされると、明日香が目を見開く。
「う、うあっ!! あっ、はっ、はっ、はっ、はっ……!!!」
 まるでジョギングでもするような、短く鋭い呼吸。シャブを打たれた直後に絶頂すると、明日香はいつもそんな反応になる。
「おーっ、イッてるイッてる。さすがゴルフやってただけあって、脚の力つえーな」
 明日香の両足首を押さえる一人が、身体ごと浮きかけながら笑った。それにつられ笑いしながら、正面の一人は肛門に指を入れる。
「あっ!?」
 当然、悲鳴が漏れた。責める側が期待する通りの反応だ。
「シャブを直に打ったんだ、指で嬲られるだけでもたまんねぇよな。マンコはマンコで、子宮口叩かれるたびにイクぐらい敏感になってっしよ。まぁ、しばらく浸っとけや。今はケツの違和感が強ぇだろうが、こうして前と同時に可愛がってやると、そのうちその違和感とポルチオの気持ちよさがごっちゃになるんだ。そうなったら最後、前でも後ろでもイキまくれるぜ?」
 肛門を指で嬲る一人は、一旦指を引き抜き、今度は口をつけた。
「あうっ!? くっ……き、気持ち悪い、やめなさい!!」
 明日香は否定の言葉を口にする。でもその表情は、肛門を舌がなぞるたび、内部に舌が侵入する度に、戸惑いの色を濃くしていく。膣の快感を覚えこまされた時も、彼女はその表情を見せていた。感じているんだ、間違いなく。
 結局この日明日香は、『マングリ返し』の格好のまま、自分の愛液で首元まで濡らすまでイかされつづけた。そして、この一回だけで終わるはずもない。前後の穴の同時調教は、何日もかけ、色々な体位で続けられた。

 特に印象深かったのは、ソファに腰掛けた一人へ口で奉仕しながら、突き出した尻を責められていた日だ。この時も割れ目にバイブが入り込み、肛門にはマニアックな道具が色々と使われていた。中でもアナルパールは、特に明日香の反応が大きい。
「どうした、ご自慢のテクが全然じゃねぇか。そんなにケツが気持ちいいのかよ?」
 フェラを受ける一人は、明日香の頭を押さえ込みながら笑う。
「ああ、だと思うぜ。この女、延々とウンコする感覚の虜になっちまいやがった。ほら、また行くぜ。いい声で啼けや!」
 背後の一人が、そう言いながらアナルへ埋め込まれたアナルパールを引き抜く。連なったパールの大きさは一つずつ違い、小さいものではビー玉程度、大きいものとなればゴルフボールほどの大きさがある。
「んもお゛ぉおっ…………おお゛ぉお゛お゛んお゛…………!!!」
 パールが抜けていくたび、くぐもった呻きが漏れた。もし口に何も咥えていなければ、甘い喘ぎになっていただろう。そう思えるような切ない呻きだ。
「へへ。チンコに来る声出しやがって、このメスブタが! いいぜ、今日はとことんやってやる!!」
 肛門を責めている一人は、そう言って馬鹿みたいに笑う。そして実際、この日は延々と責めが続いた。
 第二ラウンドは、ソファの男をなんとか射精させ、ぐったりした明日香の体をひっくり返しての指責めだ。
 ソファへ肩をつけさせたまま、無理矢理大股を開かせ、割れ目と肛門にそれぞれ2本指を入れて掻き回す。それと平行して、しこり勃った乳首もひねり潰す。それを、明日香が失神するまで続けたんだ。
「ひいっ……や、やめて、やめてえっ!! ああ熱い、熱いぃっ!!!」
 この時の明日香は、そんな事を何度も叫んでいた。
「あんだぁ、熱い? ケツとマンコのどっちが熱いんだ!?」
「おーおーすげぇすげぇ、潮噴きまくりだぜこの女。壁まで飛んでやがる」
「そりゃ、ケツが気持ちいいからだろ。さっきから俺の指、折れそうなぐらい締め付けてきやがんだよ」
「お、顎がガクガクしてきやがった。そろそろトぶぜ、この女!」
 心底楽しそうにいじめ抜く3人の間で、明日香はあえなく気を失う。それでも、終わりじゃない。
「ほら、呑気に寝てる暇ァねぇぞ。次だ次!!」
 その声で、明日香はソファから完全に降ろされ、タイルの上で這う格好を取らされる。
「今度は口にしとくか。かなり溜まってきたからよ、ザーメンで溺れさせてやる」
 そう言って一人がイラマチオを強い、
「俺は指マンの続きだ。この女のツボも解ってきたしな」
 一人が割れ目への指入れを続け、
「じゃ、俺がケツだな。こんだけほぐれてんだ、このサイズでもいけんだろ」
 最後の一人が、500ミリのペットボトルよりやや細い程度のバイブへローションをまぶす。
「むぶぉおあおう゛っ!! おぶっ、ふぉいい゛っ! はけ、はけぇあう゛っ!!」
 極太のバイブが肛門へ宛がわれ、無理矢理に挿入されていく間、明日香は何かを叫んでいた。でも喉までペニスで塞がれている以上、はっきりとした声にはならない。
「おー、すっげぇな。そのバイブのせいで、マンコが潰れてんぜ」
「口の方もいい具合に何か喋ってて、最高だわ。もっと虐めてやれや」
 割れ目を刺激する一人と、口で奉仕させる二人は機嫌がいい。勿論、アナルを嬲る一人も満面の笑みを浮かべている。苦しむのはただ1人、玩具にされる明日香だけだ。

 こうして肛門はほぐれ、ついに明日香のセカンドバージンが奪われる。
「いや、いやあっ!! お願いやめてっ、やめなさいっ!!」
 必死に拒もうとする明日香だが、床に這いつくばったまま尻だけを高く掲げ、なおかつ両手首を押さえ込まれるという状態では何の抵抗もできない。
「よく拡がってるじゃねぇか。ケツにゃ興味なかったが、いざハメるとなりゃ興奮するもんだな」
 藪岡さんは、明日香の腰をでかい左手で掴み、右手を逸物に添えながら笑みを浮かべる。そして、挿入がはじまった。
「い゛っ!! いやア、いやいや……やめてぇえええっ!!!!」
 明日香は唇を開ききり、大声を張り上げる。じっくりと拡張したとはいえ、藪岡さんの凶器を捻じ込まれる苦痛や恐怖は相当なものだろう。そして、もう一つ。肛門に挿入される――その事自体が、プライドの高い明日香には耐え難いことなんだ。
「おおっ、さすがによく締まるな。マンコよりいいかもしれねぇ」
 藪岡さんは、明日香の叫びに眉一つ動かさない。亀頭部分が菊輪を通り抜けた後は、両手で明日香の腰を掴み、さらに深く剛直をめり込ませていく。
「ああ゛あ゛あ゛……あああ゛!! 抜いで、抜いてッ!!!!」
 太腿をこれでもかというほど強張らせたまま、必死に叫びを繰り返す明日香。でも彼女の想いは、誰にも届かない。場にはただ、メリメリと音のしそうな挿入と、それに伴う非日常的な筋肉の蠢き、そして泣くような声だけが木霊する。
 その空気は、見ているだけの俺にとっても地獄だった。

 肛門が解禁になると、他の連中も膣そっちのけでアナルセックスに拘るようになった。
「おー、いいねぇ、このヌメっとしたのが吸いつく感じ。俺、こっちのが好きかも」
「悪くねぇよな。マンコの方はやり過ぎてだいぶ緩くなってっし、締まりが戻るまではケツ中心でいこうぜ!」
 チンピラ連中は、薄いマットレスの上で肛門を犯し続ける。時には正常位のまま、時には右脚を掴みあげ、大股を開かせた格好で。その時の明日香の表情は、アソコを犯されている時とは全く違っていた。顎を浮かせたまま目をぎゅうっと瞑り、本当につらそうに耐えている。いつもの『減らず口』もない。
 そして、背後からアナルを犯しつつ、前からもアソコへ挿入する二穴責めともなれば、いよいよ明日香の余裕はなくなってしまう。
「はぁっはぁっはぁっ……あああ、うううああぁぁ…………!!」
「コイツ、すげぇツラしてんな。これ泣いてんのか? 笑ってんのか?」
 アソコを犯す男が、明日香の表情に気付いて笑う。その時の明日香の表情は、俺から見ても捉え所のないものだった。眉を垂れ下げたまま、薄く目を開き、口を半開きにしている。普通に考えれば苦しんでるんだろうけど、未知の快感に笑っているんだと思って見れば、そっちもしっくり来る。
「しっかし、すげぇ締まりだなオイ。ミミズ千匹が完璧に復活してんじゃねぇか!」
 前から犯す一人は、いよいよ笑みを深めながら腰を打ち込んでいる。明日香はその男の両腕にふくらはぎを乗せたまま、足指の先まで使って快感を訴えている。そう、快感だ。信じたくないのに、そうとしか見えない。
「……はぁ、はぁ……いや、やめてっ……!! だめぇっ!!」
 二穴責めが始まってから数分経った頃、ようやく明日香が声らしい声を出す。弱々しい声。いつもの彼女が出す、魔を祓うような凛とした声とは似ても似つかない。そして悪党とは、相手の弱みにつけ込む生き物だ。
「何がダメだ、まだまだこっからだぜ!」
 1人は明日香の頭を掴み、横を向かせて怒張をしゃぶらせる。
「だいぶ参ってきたな、こりゃ頭がパアになんのも時間の問題かもな……おらっ!!」
 また別の1人は、両の乳首を引き絞りながら追い討ちをかける。
「んもぅううーーーっ!!!」
 逸物を咥えさせられたまま、明日香は呻き続けた。
 何時間も、何時間も。


        ※           ※            ※


 明日香に対するアブノーマルプレイは、当然アナルセックスだけじゃない。
 部屋の対角線上に張った縄を、割れ目に食い込ませながら何往復もさせたり。
 天井から縄で吊るしたまま、溶けた蝋を垂らしたり。
 乳首とクリトリスに結びつけた縄を引いて、何度となくイかせたり。
 そしてこういう責めは、厳ついチンピラ連中よりも、噂を聞いて遊びに来た女の方がえげつない。
 制服をだらしなく着崩したミキという女子高生は、明日香が膣もアナルも開発済みと聞くと、狙いをクリトリスと尿道に絞った。
 ミキの責めは、単に苦痛や快楽を与えるだけでなく、プライドをも傷つける。例えば、実際にリモコンを振ってスイングするタイプのTVゲームで、一定のスコアを出せなければ罰ゲーム、という風だ。
 明日香だって、大学時代にはプロから勧誘がきたほどの腕。普通にやれば、相当の好成績を残せるに違いない。でも、ミキは普通にプレイなどさせなかった。アソコと肛門へいくつも遠隔操作のローターを入れ、明日香がスイングしようとする瞬間にスイッチを入れるんだ。そんな事をされて、普通にショットを打てるわけがない。当然、スコアは悲惨なものになり、そのたびに罰ゲームが課せられる。
 罰ゲームは、尿道へ一本ずつ綿棒を差し込んでいくこと。
「あーあ、やっちゃった-。これでもう5本目だよ、ほんと欲しがりだよねぇお嬢様ぁ。ほら、自分で開いて」
「くっ……!!」
 明日香はミキに向かって股を開き、自分の指で尿道を開いてみせる。その表情は歪んでいた。年下の同性に嘲られる屈辱は、俺にもわかる。最悪な気分だ。
「アハ、すごい目。いいよぉそれ。ずっとそうやって睨んでなよ」
 ミキは笑いながら、尿道へすでに入っている4本の綿棒を指で端に寄せ、開いたスペースへ5本目を挿入していく。
「んぐっ……!!」
 明日香は眉を顰めながら、必死に恥辱に耐えていた。
「すごいすごい、入っちゃったぁ。でもキツそうだね、ちょっと慣らしてあげるよ。あ、だからって感じちゃダメだよー?」
 5本目の綿棒が中ほどまで入り込んだあと、ミキは綿棒の頭を指で掴む。そして、強引に前後へ揺すりはじめた。
「んっ!! くっ……ぐう、んんっ…………!!」
「ほら、声漏れてるよ。お姉さんってさぁ、超頭イイ大学出たエリートお嬢様なんでしょ? だったら、おしっこの穴なんかで感じちゃダメじゃん?」
 苦しむ明日香の様子を眺めながらも、ミキの指は止まらない。じゅくっ、じゅくっ、という音が部屋に響く。その尿道責めがよほど効くのか、開いた明日香の脚が次第にがに股になっていく。特に左足は、爪先立ちになって痙攣を始めているほどだ。
「なーにこの脚。キモいんだけど」
 ミキが笑いながらその左足を叩いた、次の瞬間。
「あううっ!!!」
 明日香が小さく呻いた。そしてミキが顔を上げる前で、尿道から何かが噴き出す。どうやら、尿道責めに耐え切れず失禁してしまったらしい。
「ううわっ! ちょっとぉ、こいつションベン漏らしてっし、サイアク! んもーキレた、徹底的に躾けてやる!」
 凶悪な面構えで明日香を睨み上げるミキ。明日香はその視線を受け、苦々しい表情で俯くしかなかった。

 そして、その夜。
 明日香は両足首を吊り上げられたまま、大股開きで恥じらいの場所を突き出すポーズを取らされていた。ちょうどマングリ返しになる途中、という感じだ。
 さらに、高く掲げられた足の親指には、左右2つずつ鈴が結わえ付けられてもいる。明日香が足を動かすたびに、鈴がうるさく鳴る仕組みだ。
 その上で、明日香は嬲られる。
「ほーら、気持ちいいでしょこれ。またお漏らししちゃいそう?」
 ミキが明日香に問いかける。左手で尿道バイブを抜き差しし、右手に持った筆でクリトリスの根元をくすぐりながら。
「あぁ……ぁ、あぁぁあっ!! ……はっ、はぁ……い、いい加減にして……」
 明日香は息を切らせ、疲れきった表情でミキを睨む。でも、ミキの責めは緩まない。
「いや、止めないよ? だって面白いもん、オマエ虐めんの」
 ミキはそう言って、筆を床に置いた。そして自由になった右手で、直に明日香のクリトリスを弄びはじめる。
「ん、あああっ!!」
「うは、すごい。石みたいにギンギンに固くなってる。そっかぁ、そんなに気持ちよかったんだぁー。あたしみたいなガキに嬲られてさぁ」
 ミキの言葉責めは、着実に明日香のプライドを傷つけていく。
「んん、んん゛ん゛っ!!!」
 明日香はミキを睨みながらも、反論ができずにいた。というより、できる状態じゃないんだ。尿道を刺激しながらのクリトリス責めは、クリトリスの根元から刺激されてものすごく効く……そんな話を、前にネットで見た覚えがある。
「あ……ッは、あう、うんんん゛っ!!」
 ミキの右手がクリトリスを転がすたび、明日香の太腿が強張り、鈴が鳴る。さらにクリトリスを包皮ごと揉み上げる責めになれば、鈴の鳴りは一気に騒々しくなった。
「んっぐうっうう゛う゛う゛っ!!?」
「あはっ、すっごい声。お尻の穴もヒクヒクしてるし。もう何百回クリでイってるの、お嬢様?」
 ミキはそこで一旦言葉を切り、明日香の鋭い視線を引き出す。そしてその視線を受け止めながら、尿道のバイブを笑顔で引き抜いた。
「でも、まだまだ。もっともっと逝かせてあげる。ね、お兄さん。さっき頼んどいた“アレ”ちょうだい」
「おお、そらよ。しかし、お前ェも容赦ねぇな」
 ミキがそうねだると、針の取り付けられていないシリンジが手渡される。中身は透明な液体。嫌な予感がする。明日香も同じらしく、ミキの手元を睨んでいる。
「その目、もう何するかわかってるみたいだね。そ、こうするの!!」
 ミキは、シリンジを明日香の尿道へと宛がうと、一気に中身を注ぎ込んだ。
「うんっ!!」
 明日香の身が強張り、足指の鈴が鳴る。顔にじわりと汗が浮き、何も触れていないはずの太腿がピクピクと痙攣を始める。もう嫌と言うほど見てきた、シャブ中毒の症状だ。ミキはその変化を楽しみながら、新しいバイブを拾い上げる。
「そろそろ、細いのにも慣れちゃったでしょ。今度はこの太いのにしてあげるね」
 そう言って明日香の目の前に差し出されたのは、ミキ自身の小指よりも太いバイブだった。しかもバイブの先端部分はかなり大きめのゴム級になっていて、本物のペニスさながらの雁首まで備えている有様だ。
「なっ!? そ、そんなもの……!!」
 さすがに明日香も、そのサイズを尿道に入れられる事実に恐怖する。でもミキは、あくまで薄ら笑みを浮かべながら、ゴム球部分を尿道に宛がった。そして小さな手に力が入り、尿道へミチミチとバイブが入り込んでいく。
「ああ……あ、お゛……っ!!」
 明日香は目を見開き、息の詰まった呻きを漏らす。
「あーいい声。じゃ、トドメね!」
 ミキはそう言って、右手でまた道具を拾い上げた。肩こり解消のために使われる、電気マッサージ器だ。ミキはそのスイッチを入れ、轟音を鳴らしながらクリトリスへと近づけていく。左手では、ようやく挿入しきった尿道バイブを握りしめながら。
 そして、天国のような地獄が始まる。
「あ、ああぁあ……っお、お゛っ! おお゛お゛、おほっ!! はぁっはあっ…おおお゛お゛っ、くふぁああああっんおぉお゛お゛お゛っ!!!」
 シャブで蕩けきった尿道を小指大のバイブで抉られ、同時にクリトリスを電気マッサージ器で責められる。こんな無茶をやられれば、いかに明日香でも品のよさなど保てるはずがなかった。息の詰まった声で叫び散らしながら、病気のように腰を跳ねさせ、鈴を鳴らしまくる。まるで電気責めを受ける囚人だ。
「アハハハハ、暴れる暴れる! 大丈夫お嬢様、こんなに暴れて腹筋攣らない? ま、攣ったら攣ったで、握り潰して思っきし追い込んでやるけど!!」
 一方のミキは上機嫌で、激しく尿道バイブを突き込みながら、マッサージ器をクリトリスに宛がいつづける。じゅぷじゅぷという尿道の攪拌音と、マッサージ器の駆動音、蛇口を塞いだように愛液が散らされる音、そして悲痛な明日香の叫び。部屋内にはそれらが絶え間なく反響しつづけた。聴いているこっちの頭が、おかしくなるほどに。


        ※           ※            ※


 ミキの責めは、女同士という新鮮さもあって藪岡さん達の受けがよく、何日にも渡って続いた。そしてそのどれもがえげつない。

「ほら、もう一回膨らませちゃうよー?」
 ミキがそう言って、両手にアナルバルーンのポンプを持つ。
「ほら、ほら! どう、堪んないでしょ?」
「はうううっ! うっ、ふうっ……ふうっ…………」
 遊ぶように両手のポンプが握りこまれれば、シュッ、シュッと空気の送られる音がし、そのたびに明日香は呻きを上げた。
 この時の明日香の格好は、手首足首を左右それぞれ一纏めに拘束され、かつその拘束部分を下にしてのうつ伏せだ。その無防備な彼女の肛門には、4つのアナルバルーンが詰め込まれている。それをミキが遊び半分に膨らましていくんだから、明日香の腸内はすでにかなり圧迫されていることだろう。事実、明日香の身体は、寒さに震えるような細かい痙攣を続けていた。
「さて。じゃ、そろそろコレ、いっちゃおっかなー」
 ミキはそう言って、床からバイブを拾い上げる。辺りに転がるバイブやディルドーの中で、唯一まだ愛液塗れではない1本だ。
「ほら。すっごいよねコレ?」
 ミキが俺の構えるカメラへと向き直り、手にしたバイブを見せつけてくる。確かにすごい。指5本使ってようやく底を鷲掴みにできる程度の太さ、ゴツゴツした無数の突起、そして凶悪な反り。あの藪岡さんのモノにすら負けていない、黒人サイズのジョークグッズだ。
「こーんなぶっといのが、ホントにお嬢様のオマンコに入るのかなぁ?」
 ミキはあくまでカメラを見て笑いつつ、バイブの先で明日香の割れ目をなぞり出す。
「……っ!!」
 明日香の口の方から、緊迫した吐息が漏れた。でも、それだけ。股座越しにバイブを覗き込むような真似はしない。普通、わざわざ『太い』アピールまでされた凶器がアソコに擦りつけられれば、多少下品な事をしてでも見ようとするものだ。それを、しない。どことも知れぬ場所に監禁され、羞恥心など知るかとばかりに丸裸で輪姦されまくり、日々ザーメンと体液に塗れる環境にありながら、なお最低限のプライドは捨てていない。俺はそんな明日香の事を、心の底から格好いい女性だと思う。助かってほしいと思う。でも、ミキやギャラリーはそうじゃない。
「ほら、入れるよー」
 あくまで軽い口調のまま、ミキはバイブのスイッチを入れ、明日香の割れ目へとめり込ませていく。
「んっ……!!」
 明日香から声が漏れ、震える腰が持ち上がった。わかりやすいその反応を、ミキが鼻で笑う。
「すごーい、どんどん入ってく、こんなペットボトルみたいなのが。あたし結構ヤリマンとか言われるけど、こんなの絶対入んないよ。って事はさぁ、お前のがあたしよりよっぽどヤリマンって事じゃん。だよね、お嬢様ぁ?」
 お嬢様。チンピラ連中も嫌味交じりによく使うフレーズだが、ミキのそれは特別に悪意がこもっていた。見るからに素行不良な女だ。そもそも毎日こんな場所に入り浸っているんだから、高校の卒業すら覚束ないだろう。もはや輝かしい人生へのレールなど望むべくもない。だからこそ、そのレールの先にいる明日香が妬ましくて仕方ないんだ。
「じ、自分で望んで、こうなった訳じゃないわ……!」
 ヤリマン呼ばわりには、さすがの明日香も唸るように反論する。
「あっそ、だから何? 好きで不良やってるあたしより上等って言いたいわけ?
 お前さぁ、ホントむかつくんだよね。ぶっ壊れちゃえば?」
 ミキは不愉快そうに眉を吊り上げ、手首に筋を浮かせて強引にバイブを捻じ込んでいく。
「んぐううっ!!」
 明日香の腰がまた跳ね上がり、色白な太腿の痙攣が激しくなった。
「ほーら、一番奥まで入っちゃった。凄いでしょ、どんな感じ? 奥までギッチリ詰まってんの?」
 ミキは性質の悪い笑みを浮かべながら明日香に尋ねる。
「はぁ、はぁ、はぁ……はぁ…………」
 明日香は俯きがちになり、肩で息をしていた。答えなくないのか、それとも答える余裕がないのか。どちらにせよその反応は、ミキの逆鱗に触れた。
「ねェ、返事ぐらいしようよ」
 ミキが左手でバイブを押さえながら、右手でアナルバルーンのポンプを拾い上げ、何度も素早く握りこんだ。シュシュシュシュッ、と空気の送り込まれる音が立て続けに響く。
「あぐうううっ!!!」
 明日香から悲鳴が上がった。床に額を擦りつけているため、顔はよく見えないが、強く握りこまれた両手が苦痛をよく表していた。
「……っつらい、つらいわ! 決まってるでしょう!?」
 息苦しそうな絶叫が続く。
「だよねー、良かった。じゃ、もっとつらくしてあげる。あたしの腕が乳酸でパンパンになんのが先か、お嬢様のマンコがぶっ壊れるのが先か……勝負しよ!」
 ミキは、奥まで入り込んだバイブの尻を掴み、ゲーム感覚で宣言する。相手に拒否権すら与えないその強引さは、まさにイジメそのものだ。

 バイブの羽音に混じり、ぐちゅっ、くちゅっ、という音が響く。もう何本かのバイブを使われた後だけに、明日香の中はかなり濡れているらしい。
「うわキモーい、マン汁どんどん出てくる。手首までドロドロだよー!!」
 ミキは手の平でバイブを打ち込みつつ、悪意を込めた実況で周りの笑いを誘う。俺には何が面白いのかひとつも理解できないが、どいつもこいつも手を叩き、膝を打っての大笑いだ。
「う゛っ、う゛っ、う゛、う゛っ…………!!」
 クズの標的にされた明日香は、小さく呻き続けていた。脚の合間、勃起した乳首の向こうに、食いしばられた白い歯が見える。それこそ、明日香が見せる凛とした意思だ。俺は、あえてミキの姿を映さず、その白い歯を映しつづける。
「ハハハッ! おいおい、カメラちょっと近すぎねー!?」
「こいつスゲーな。毎日生ハメ撮ってるくせに、まだマンコ接写できんのかよ。俺ならいい加減気持ち悪くなって無理だわ」
「ああアイツな、だいぶ性癖歪んでんぜ。俺らがバテてる時にハメていいっつっても、絶対やんねーんだ」
「え、じゃ盗撮オナニー専門っスか? ガキの癖にマニアックっすねー」
「いやいや。ガキっつってっけど、アイツ確かお前の一コ上だぜ?」
「え、マジっすか!? んー、でもあん人弱そうっつーか、凄み感じねぇっスもん。もしキレて突っかかってきても、絶対ワンパンですし」
「ひゃひゃっ、ひでーなお前!」
「や、でもホント人間って、何年生きてるかより生き様っすよ。俺、藪岡サンとか高根沢サンだったら、もし年下でもリスペクトしますもん。俺も先輩らみたいに、やりたい事やって太く短く生きてぇっすわ!」
 俺にまで悪口が飛んでくる。この部屋の連中に比べればガタイは貧相だし、そもそも藪岡さんの名前でカツアゲを乗り切っていた小物なんだから、舐められるのも当然だ。それに今では、こいつらに評価されたいとも思わない。蔑んでくれていい。爪弾きにされればされるほど、自分が人間の側にいるんだと実感できるから。

「ほーらぁ、キモいからマン汁垂らすなっつってんじゃん。そんな気持ちいいの? しょーがないなぁ、じゃあもっとやったげる!! ほらほら、どう? お前いま、あたしに犯されてんだよ? あたしみたいなクソガキにさぁ!!」
 このミキという女も、女子高生の皮を被った畜生だ。畜生だから、人の気持ちがわからない。畜生だから、平気で人の嫌がることばかりする。
「く、くっ……あああぁっ、あぁっ……あぁぁ、っはあああああ…っ!!!」
 食いしばられていた明日香の口が開き、喘ぎが漏れた。黒人並みに太いバイブ、人間では真似できない速さでのピストン。それが合わさって、とうとう堪えきれなくなったんだろう。
「あーあ、みっともない声。こんだけ言ってもマン汁垂らすし。あたしさぁ、センコーとか親によく言われるんだよ、マトモになれって。でもさぁ、超マトモに生きた結果がお前なわけじゃん? そのお前が、こうやってくっさいマン汁撒き散らしてんだからさぁ。マトモって何?って言いたくなるよねー」
 ミキの心無い煽りに、チンピラ連中が腹を抱えて笑う。俺はそれがムカついてムカついて、カメラが震えそうになる。そして、憤っているのは当然ながら俺だけじゃない。
「……あああぁ…………は、はあっ……な、情けないわね…………!!」
 明日香から漏れた一言に、ミキ達は笑ったままの表情で固まる。
「……は?」
「……情けない、と言ったの。努力をしていない人間が、努力した人間を笑うなんて、この世で一番……惨めなことよ。あなた達が、私を笑うように……んんっ、あなた達も、世の中から笑われてるのに、気付かないの……?」
 明日香は喘ぎながら、でもハッキリと言い切る。ぐうの音も出ないほどの正論。だからこそ、人の道から外れてくすぶっている連中には格別に効く。ミキも、周りの刺青連中も、額に青筋を立てんばかりに殺気立つ。
「……へえー、面白いねぇ。こんだけやられても、まだそんな綺麗事言えるんだ?」
 ミキはひどく冷たい口調でそう言うと、左手でバイブを押さえたまま、右手でバルーンのポンプを探り当て、4つすべてを滅茶苦茶に握り込む。
「あぐっ、ぐううううっ!!!」
 明日香から悲鳴が漏れた。それを聞いてミキは少し笑い、思いっきりバイブを押し込んでいく。直径こそあるがそこまで長くないバイブは、完全に割れ目の合間に収まってしまう。ミキはそれを確認すると、膝でバイブの底を押さえ込んだ。
「ガムテちょうだい、なるたけ強いのっ!」
 そう叫び、ガムテープを渡されると、バイブの底から膝を離してすぐにテープを貼り付ける。まず縦に1本。その上からX字に2本。これでバイブは、最奥まで貫いたまま固定されてしまう。膨らんだ4つのアナルバルーンと合わさって、圧迫感は洒落にならないレベルだろう。
「…………ぐ、くっ…………!!」
 明日香から苦しげな声が漏れ、拘束された手が握りこまれる。ミキは、そんな明日香の顔に歩み寄った。
「ねぇお嬢様、さっきは随分カッコいい事言ってたじゃん。あんなの、あたしには絶対言えないよ」
 ミキの細い手が、明日香の前髪を根元から掴み上げる。
「い゛っ!!」
 これにはさすがに明日香も、苦痛の声を漏らした。
「あんなセリフ吐ける人って、よっぽど汚いところのない人なんだろうね。それこそ口の中から、喉の中、胃の中までキレイなんでしょ? じゃあさ、あたしらにも見せてよ。お嬢様の中に、どんなキレイな水が入ってるか!!」
「えお゛ぅっ!!!」
 ミキの腕が動き、明日香の足が浮く。何か聞き慣れない声もする。
「あは、すっごい、死にかけのビーバーみたい。カメラさーん、これ撮って撮って!」
 ミキが俺に声を掛けた。呼ばれた以上は行くしかない。ひどく足取りが重い。きっと行った先には、また胸が痛くなるような光景が待ってるんだから。
 やっぱり、そうだ。
 髪を掴み上げられた明日香の口に、ミキの指が入り込んでいる。親指と小指以外……つまり、左手指の真ん中3本が。そんな事をされたら、いかにハーフといえども美貌は保てない。大口を開けていることで豊齢線が浮き出し、形のいい鼻は斜め上を向いて鼻の穴を晒す。ミキがビーバーと揶揄していたのは、白い前歯が覗いているせいか。
「ほらほらぁ、出して出して出してー。キレイ事大好きなお嬢様のゲロは、何色なんだろー。可愛いピンク? それともやっぱゴールドかなあ?」
 ミキはショーツが丸見えになる事も厭わず屈みこみ、明日香の喉奥へと指をねじ込んでいく。
「ぶふっ、ぶふっ、ぶほっ! ………っぉ゛!!」
 明日香は小さく噎せながら、何度も眉を顰め、顔を上下左右に振って指イラマから逃れようとする。でも、笑顔のミキがそれを許さない。明日香の動きに合わせて手首を動かし、あくまで喉奥で指をキープする。首と手とでは稼働域に差がありすぎて、明日香に逃げ切る術はない。
「どーしたの-? さっさと吐いちゃいなってば!」
 ミキはそう言って、一旦明日香の前髪を放した。そしてその右手指を明日香の歯の裏に引っ掛け、無理矢理上顎を開けさせる。狙いはもちろん、左手をさらに喉奥へ進めることだ。
「カァァァ……ッァ゛がっ!ぅうお゛、おぶっ!うぶ、う゛っ……ごっ、おぉォォウウウ゛ッ…………!!!」
 絵面も強烈なら、明日香の喉から発される音もやはりえぐい。痰を吐くような音、咳き込む音、えづき、うがいをするような音。それらがほんの数秒の間に、怒涛のごとくあふれ出る。音を聞いているだけで、喉奥がどれだけ強烈な刺激を受けているのかが解る。
「うわ、キモーい。マン汁の次はヨダレ? ちょっと品なさすぎだよー、お嬢様ぁ」
 嬉々として喉奥を弄っていたミキが、ここで一旦指を引く。
 俺は目を疑った。ミキの3本指に絡みつく、えづき汁の量に。
 指の1本1本と口内を、はっきりと視認できるレベルの糸が繋いでいる。ちょうど納豆を素手でかき混ぜた後、手を引き抜いたような状態だ。指が抜けた後、明日香は反射的にか口をパクつかせたが、その口の中にも4本ほどの太い縦糸が引いていた。
 ほんの数十秒喉を刺激しただけとは思えないほど、多すぎるえづき汁。今でこれなら、ここから一体どうなるんだ。明日香はどこまで無様を晒し、俺はどれだけそれをカメラに残せばいいんだ。そう思うと、膝立ちになった脚が震えそうになる。
「ま、こんだけヌメってたらローションは要らないか。さ、続けよお嬢様。今度はもーっと奥まで行くよ?」
 ミキはそう言って、また指を明日香の口へと潜り込ませる。ただし、今度は3本じゃない。小指も揃えた、4本指だ。
「んも゛っ!?」
 一度目以上の圧迫感に、明日香の目が見開かれる。シャブを使われていない時の、どこまでも澄み切った眼だ。でもその眼は、ミキの指が喉奥へ入っていくたびに細まり、ついには完全に閉じてしまう。同時に眉根がきつく寄り、頬が膨らみ、地獄の苦しみの表情が浮き出てくる。
「あ、これ喉チンコだ。ね、お嬢様。このプルンプルン触れるの、そうだよね?」
 ミキは指の付け根までを完全に口内へ潜り込ませ、そのまま手の甲をピクピクと動かした。
「も゛……ぶふぉあっ!! ァ、カハッ……けへっ、けっはぇかあはっ!!!」
 明日香は首を左右に振りながら、何度も眉を顰め、瞬き、咳き込み、鼻腔を目一杯に開いて酸素を求める。
「あははっ、何それブタの真似? ウケるー。でもそういうお茶目って、人にケンカ売る前にやった方がいーよ? コミュ症のお前じゃ、その辺わかんないかもだけど」
 ミキは言葉責めを加えながら、限界まで強張った明日香の顔へ、さらに深く指を突っ込む。明日香の桜色の下唇から次々に涎があふれ出し、形のいい顎を濡れ光らせる。
「カッ、カハァッ……うっむむぅうう゛…………!!」
 明日香の限界が近づいているのがわかった。少しでも呼吸をしたいからだろう、ついさっきまで清楚そうだった唇は、無我夢中で横へ開いている。噎せかえる動きは肩まで動くほど大きくなり、ついには豊齢線の溝に沿う形で、一筋の涙すら零れていく。
「あーあ、泣いちゃった。これだから温室育ちのお嬢様は……」
 ミキは反射的に茶化そうとし、途中で何かに気付いて言葉を切った。
 何か――その正体は、俺にも判る。明日香の様子を見ていれば、誰だって『その時』が来たんだと察しがつく。
「むがっぉ゛……!! ぶふっ、ぶほっ!んんんぶほ、お゛っ!!」
 明日香は最初に妙な声を発し、焦点を結ばない目を見開いた。続いて頬を膨らませ、何度も咳き込みながら、ミキの4本指へ吸いつくように唇を尖らせる。ミキの手首を凄まじい量の唾液が流れていく。
「さぁっ、見せなよ皆に!」
 ミキが叫びながら指を引き抜いた、直後。
「ぉおおお゛お゛ぉおろ゛ろ゛…………っ!!!」
 声にならない声と共に、とうとう茶色いものがあふれ出した。俺は咄嗟に目を瞑る。でも、無駄だ。びちゃびちゃとタイルに液体が叩きつけられる音と、酸っぱい匂い、手にしたカメラの重量感……視覚を遮断したところで、結局そういう情報が入ってくる。締めつけるような胸の痛みは避けられない。
「ほらカメラさん、なに目ぇ閉じてんの? ココ、映してよ!!」
 ミキの声で、俺はゆっくりと目を開ける。まず見えるのは、大量の涎を垂らしながら激しく喘ぐ明日香の表情。そしてその涎が滴る先を見れば……誤魔化しようもない、歴とした吐瀉物が広がっている。
「はい、録画完了ー。なーんだ、お嬢様っていっても、ゲロはそこらの酔っ払いのオッサンと変わんないじゃん。恥ずかしくないの、こんな汚いの吐いて?」
 ミキは勝ち誇ったような笑みで明日香を見下ろす。吐いたばかりの明日香は、為す術もなく俯……いては、いなかった。
「……はぁ、はぁ……喉をこれだけ掻き回されれば、吐きもするわ……。
 私は、何も間違った事なんてしてない……だから、恥じる必要なんてない!!」
 人前での嘔吐。普通の人間なら取り乱して当然の状況でも、明日香は我を通す。自分に非はない、だから恥じない。恥じるべきは相手だ。そんな信念をこの状況でなお持てる人間が、一体どれだけいるだろう。本当の意味でのプライド、本当の意味での自尊心。明日香には間違いなくそれがある。俺にはそれが輝かしく見えるが、ミキ達にとってはひたすらに眩しく、不愉快なものらしい。
「ほんと、カッコつけだよねお前。いいよ、じゃあどこまで恥ずかしくないって言ってられるか、試したげる」
 ミキが指についた汚れを、明日香の唇へ塗りつける。明日香は目で殺せそうなほどミキを睨みつけたまま、ゆっくりと口を開いた。

「うう゛……う゛っあ゛、う゛えぇ゛っ…………!!」
 一度吐いた後は、喉が敏感になるんだろうか。二度目の指入れが始まって以来、明日香は常に嘔吐寸前の状態にあった。おまけにミキの責め方も容赦がない。
「これ面白-い、Gスポ責めてるみたい! お前も気持ちいでしょーこれー、あははっ。何それ、潮噴いてんの?」
 手の平を上にしたまま、人差し指・中指の2本を挿し込んでの刺激。それは確かに、潮噴きさせる時の形にそっくりだ。ただし、アソコと喉奥とでは勝手が違う。やっている方は楽しいだろうが、受ける側となれば堪ったものじゃない。
「うグ、ぐぐぐうじゅっ……ぎぅいじっ、んんもお゛ろお゛……っ!!」
 明日香の発しているものは、もう声ですらなかった。クシャミをした時に出る鼻水の音と、不明瞭なえづきが混ざり合っているだけだ。
 当然、えづき汁の量も半端じゃない。ミキの手の甲と下顎の間、ちょうど舌の辺りから、泡まみれの唾液があふれては顎へと流れていく。
 ひどく惨めな有様だが、あくまでこれはミキのお遊びでしかない。
「さーて、じゃあそろそろ本番いこっか」
 ミキはそう言って、指の角度を変えた。その瞬間。
「ふうっ!?」
 明日香の喉から、それまでより明らかに余裕のない呻きが漏れる。ミキの手の向きは横……たぶん、喉奥を無理矢理横へ押し込んだんだ。
「あーわかった、ここだここだ。ほーら、いくよー!!」
 ミキは親指を明日香の頬に宛がい、それを支えに2本指で力強く喉奥を掻き回す。
「ぐ、むっ!? ふぅ……うう゛う゛っ!!!!」
 明日香はもう、ほんの一秒も耐えられなかった。低い呻きと共に俯き、ミキの細い指が誘導するままに吐瀉物を吐きこぼす。
「あー、出た出た。」
 ミキは可笑しそうに笑いながらも、指を止めない。今まさに嘔吐している明日香の喉を、さらに虐め抜く。今度は支えの親指を鼻頭に移動させ、縦に喉奥を吊り上げた。横向きの刺激に備えていた明日香は、それに対応しきれない。
「おぶ、う゛ぇ……っ!! がはっ、ごほっごほっ!!!」
 吐瀉物がミキの手の平に沿って、横へ拡がりながら流れていく。その流れが一旦止まった時点で、ミキがさらに指を曲げた。
「うお゛ぉええ゛っ……!!」
 おそらくミキの気まぐれだろう駄目押しは、決定的に効いたらしい。明日香はこれ以上ないほど眉間に皺を寄せ、目を見開いたまま、男そのもののえづきを漏らす。
「はははっ、すんげぇ声!」
「今の、完璧に野郎の声だろ!!」
 周りのギャラリーが大笑いする中で、明日香は吐瀉物を吐きこぼす。今度は口だけでなく、鼻からも黄色いものがあふれ出す。俺も経験があるが、吐いたものが鼻から出ると痛いんだ。明日香もその痛いケースに当たってしまったらしく、何度も咳き込みながら、大粒の涙を溢しはじめた。
 ミキはそんな明日香の前で、悠々と指を引き抜き、わざとらしく吐瀉物を切ってみせる。
「あーあ、タイルがゲロまみれ。今朝何食べたか、ぜーんぶわかっちゃうね」
 ミキの手が吐瀉物を掬い上げた。
「ねぇ。これでも、まだ恥ずかしくないの?」
 掬われた吐瀉物は、嘲るように明日香の顎へ塗りつけられる。明日香は涙を湛えた赤い目で、ミキを力強く睨み上げる。
「……はぁーっ、はぁーっ……何度も、言わせないで…………!!」
 呼吸こそ荒いものの、明日香の意志に翳りはない。ミキはその気丈さに一瞬凍りついたものの、すぐに不敵な笑みを浮かべてみせる。
「…………ああ、そう。じゃ、もっと遊ぼっか。次は指だけじゃなくて、いろーんな道具も使ったげる。あたしとお前、どっちの体力が先に尽きるかのデスレース! 勝ち目があるといいねぇ」
 そう言うミキの表情は、華の女子高生とはとても思えないほど、凄みのあるものだった。

 タイル張りの部屋に、明日香のえづき声が響きつづける。由々しき事態だ。でも俺はその中で、もっと気になる言葉を耳にした。
「イラマか……面白ぇな」
 ぼそりと呟かれた一言。それが藪岡さんの声だと気付いた瞬間、嫌な汗が背中を伝う。そしてそれは、杞憂じゃ済まなかったんだ。


        ※           ※            ※


 ミキは結局、明日香の心を折ることはできなかった。責め続ければ涙も流すし、気絶もする。でも最後には決まって冷ややかな視線を寄越す明日香に、完全に気迫負けした形だ。
『こいつ、キモイ!!』
 その捨て台詞を残して、ミキは212号室を後にした。ただし、ホテルそのものから出たわけじゃない。どうやら、今ではあまり使われなくなった101号室へ篭もり、明日香のハメ番からあぶれた連中とキメセクに興じているらしい。実際、飯を食いに出るついでに101号室を覗いてみれば、ガタイのいい男2人に前後から貫かれ、泣き笑いの表情を浮かべるミキがいた。

 そして、責め役はまた藪岡さんに戻る。
「そこへ横になれ。仰向けだ」
 藪岡さんは、いつも通りの横柄な態度で明日香に命じた。横になれとはいうものの、212号室にベッドや布団の類はない。タイル張りの床へ、申し訳程度の防水マットが敷いてあるだけだ。
「今度は、何なの?」
 明日香はマットへ仰向けになりながら、藪岡さんに警戒の視線を向ける。藪岡さんはマットの端へ屈み込むと、半勃起状態の逸物で明日香の頬を叩く。
 最近はミキの調教ばかりで藪岡さんのモノを見る機会がなかったが、久々に見るとやはりでかい。長さは明日香の小顔とほぼ同じ。太さは半勃起の今ですら、俺の手では掴みきれないほどだ。完全な勃起状態になれば、500ミリのペットボトルサイズにまでなるんだから、まさに凶器としか言いようがない。
「……っ」
 そんな凶器を顔に宛がわれれば、さすがの明日香も表情が強張る。
「なに、大した事じゃねぇ。そろそろイラマチオをやろうと思ってよ」
「イラマ……チオ?」
 藪岡さんの言葉に、明日香は怪訝な表情を浮かべた。すでに行為としては何度かやっているものの、名前までは知らないんだろう。
「ノドで扱けってこった」
 藪岡さんが人相の悪い笑みを浮かべながら言うと、明日香の目が見開かれる。そしてその目は、ゆっくりと頬に宛がわれた凶器を捉えた。怖いんだろう。怖いに決まってる。あんなものを喉まで咥えこめと言われれば、もう男も女もない、ただひたすらの恐怖だ。
「そう固くなんなよ、ミキの奴にだいぶ拡げられてたじゃねぇか。
 要は慣れだ。仕込むのは俺がやるから、お前はそこで大人しく寝てりゃいい」
 藪岡さんは事も無げに言う。藪岡さんサイズの物を喉に突っ込まれ、大人しく寝ていられる人間がこの世のどこにいるだろう。
「へへ。大人しく、だってよ」
「それが至難、ってな。想像しただけでゲー吐きそうだぜ」
 ギャラリーの何人かが、俺と同じ事を思っていた。とはいえ、その声色はひどく明るい。奴らにとっては、所詮他人事。明日香がどれだけ苦しもうと……いや、むしろ苦しめば苦しむほど、いい酒の肴になるとでも思ってるんだろう。
 気付けば俺は、カメラを構えていない左拳を握りしめていた。そして、はっと我に返る。マズい。今は藪岡さんの正面。もし握り拳なんて見られたら、それだけで因縁をつけられかねない。そう思って恐る恐る顔を上げれば、藪岡さんとは目が合わなかった。藪岡さんの目は、明日香の喉を向いているだけだ。
 でも。
 その明日香の顔が、俺の方を向いていた。睨んでいるわけじゃない。澄んだ湖のような瞳で、俺が作る握り拳を見ている。俺が慌てて拳を開くと、明日香も静かに目を逸らす。
 今のは、なんだろう。なんで俺を、俺の握り拳を見ていたんだ。たまたま視線が向いただけ? それとも、本心を見透かして?
 わからない。俺ごときに明日香のような天才の心理が読めるはずもない。でも理由はどうであれ、俺には今の一瞬が、何だかすごく嬉しかった。

「口開けろ」
 俺のささやかな幸福感は、藪岡さんのドスの利いた声で塗りつぶされた。
 現実が戻ってくる。薄暗い部屋、黒いタイル、青いマット。そして狼と、哀れな子羊。
 藪岡さんは、その大きな両手を明日香の顎に添えていた。マットの端から明日香の頭を垂らさせ、強制的に顎を上向かせながら。
「あも゛っ……」
 明日香の白い顎が蠢き、藪岡さんの亀頭が隠れていく。最初の内はいい。問題は、半ばほどまで入ってからだ。
「ん゛、ん゛…………んふぉうっふっ!!!」
 明日香が苦しそうに噎せる。どうやらデカブツが喉奥まで達したらしい。
「喉開け、入んねぇぞ!」
 藪岡さんが凄む。でも明日香は激しく首を振り、唾液を散らしながら逸物を吐き出す。
「ぁくあっはっ!はぁっ、はああ゛っ……!!」
 呼吸の荒さからして、相当に苦しかったらしい。可哀想なほどの反応だ。でも、藪岡さんは気にしない。他人の苦しみに配慮なんてしない。
「吐き出してんじゃねぇよ。オラ、もう一回だ。上手くできるまで、何時間でもしゃぶらせんぞ!!」
 太い指で明日香の喉を押さえ、強引に腰を進めていく。そしてさっきと同じ位置までくると、そのまま有無を言わせずめり込ませていく。
「んぶっ……うお゛、ごォっ!!」
 明日香の両手がマットを引っ掻く。苦しみぶりはさっき以上だ。
「よーし、ノドを通ったな。なんだ、いけるじゃねぇか!!」
 藪岡さんは逆に笑みを浮かべ、腰を前後に揺らしはじめた。
「お゛う゛っ、う゛ぇおおお゛あ゛っ! お゛ア゛っ……ぉ゛お゛うお゛ぁあ゛お゛っ!!!」
 明日香の喉から只事じゃないえづき声が漏れる。でも、藪岡さんの腰は止まらない。
「ははは、よく締まりやがる! なんだよ、喉マンコも意外と良いじゃねぇか!!」
 上機嫌で笑いながら、あくまで自分本位に腰を振る。アソコを使うセックスとほぼ変わらないピストン速度だ。当然、明日香からはえづきが漏れ、涎が溢れる。涎はとうとう顎を越え、首元を流れはじめていた。
「くく、すげぇヨダレ」
「いいねぇあのえづき声。チンポに来るぜ」
 周りのギャラリー共は、藪岡さんと同じく明日香の反応を楽しんでいるようだ。
「……ねぇ、藪さん。マンコって空いてますよね。使っていいスか?」
 ギャラリーの1人がそう切り出した。聞き覚えのある声。それもそのはず、発言者はユウトだ。
「ア? オウ、好きにしろや」
 藪岡さんは返事もそこそこに明日香を追い込む。喉を親指で圧迫し、カコカコと攪拌音をさせるのが今の目的らしい。
「よっしゃあ!! おら、久々の俺のチンコだ、嬉しいだろ明日香! またイカセまくってやんぜぇッ!!」
 ユウトは明日香の両足を持ち上げ、Mの字に開脚させてから一気に挿入を果たした。
「んん!!」
 明日香の喉から呻きが漏れる。
「うは、いつも以上にきついぜ! 藪さんの太いの咥えさせてるからっスかね!?」
「おっ、ノドも良い感じにうねりだしたぜ。マンコに挿れたのが効いたんだな。
 なら、こうすっともっと良くなんだろ!!」
 藪岡さんは笑みを深め、明日香の喉の真ん中を親指で押し潰す。
「ごぉおおあ゛っ!!!!」
 明日香から、本当に危険なえづきが上がった。
「はははっ、スゲー締まるぜ。おまけに今の、ホントに人間の声かよ!」
 ゲラゲラ笑う。部屋の誰もが。明日香があんなに、苦しんでるのに。
「ぐぉ、ごっ……ぅ゛っ、ぅお゛ぇあおお゛え゛っ!!!!」
 とうとう、明日香が限界を迎えたようだ。
「うおっ、こいつ吐きやがった!!」
 藪岡さんが顔を顰め、唾液まみれの逸物を引き抜きながら拳を振り上げる。

 それを見た瞬間、俺の中で何かがキレた。

「も、もうやめましょうよっ!!!」
 胸の中から湧き出た思いを、そのままに叫ぶ。
「ア?」
 藪岡さんの不機嫌そうな顔が俺を向いた。完全に人殺しの顔だ。怖い。でも、言いたいことがある。
「こ、こんな事、いつまで続けるんですか!? 監禁しだして、もう3週間ですよ、洒落になってませんよ!! だ、だいたい彼女、俺らになんにも悪い事なんてしてないじゃないすか!? それなのにこんな、毎日毎日リンチみたいな……か、可哀想って思わないんですかっ!!」
 恐怖と怒りで声が震える。肝心な所が強く言えていないかもしれない。それでも俺は、思いの丈をぶちまけた。
「……オイ」
 藪岡さんは、ゆっくりと立ち上がる。そしてタイルを鳴らしながら俺に近づき、何の躊躇もなく殴り飛ばした。
「ぶあっ!!」
 右目の辺りに、痺れるような感覚が走った。それはすぐに耐え難い痛みに変わり、脳全体を支配する。左目は何とか開く……でも、視界が霞がかったようにぼやけている。
「オイッ!!」
 藪岡さん……いや、『藪岡』が凄みながら、腹を蹴ってくる。
「うごぉあっ!!」
 内臓がせり上がり、堪える暇もなく熱い物が喉を通り抜ける。突き刺すような酸っぱさが鼻を満たす。ああ、そうだ。これが、吐くってことだった。つらくて、苦しくて、嫌なことだった。
「監禁してもう3週間? ああそうだな。だから何だ?」
「げほっ……なに、って……」
「関係ねぇんだよ、ンな事ァ!! 別に街中で掻っ攫ってきたわけでもねぇ。あの女がテメェの車で、このホテルに着いてきたんだ。事件性なんぞありゃしねぇ。この女さえパアにしちまやぁ、誰にもバレやしねぇんだよ!!」
 威圧的な語気で凄む藪岡。俺は今までずっとこれが怖くて、怖くて、こんな所まで堕ちてきてしまった。でも、それも今日で最後だ。
「に、日本の警察を甘く見すぎです!! そのうちきっと、この犯罪はバレます。逃げ切れっこない!!」
 息の限りに精一杯叫ぶ。藪岡1人に対してじゃない、この場にいるクソッたれ共全員への主張だ。
「テメェ、いつから俺に意見できるほど偉くなった!? ちっと甘ぇ顔すりゃ、のぼせ上がりやがって!! テメェ、さてはあれだな? 八木やらがコソコソ仕組んでやがったあの話、テメェも1枚噛んでやがったんだな、この野郎ッ!!」
 藪岡が俺の髪を掴み、顔面に膝蹴りを喰らわせる。前歯がぐらつき、鼻の中の酸味が一瞬にして鉄に変わる。鼻の下をぬるっとしたものが通り抜け、下唇に触れて血の味になる。
「古い付き合いだ、俺に上等かました時点で、こうなる事ァ解ってたよなあ!? いいぜ、望み通りぶっ殺してやるよオラッ!!」
 唸るような叫びと共に、鉤突きがこめかみに叩き込まれた。ミシッと頭の隅で音がする。
「あがああアアーーーッ!!!」
  いたい。 いたい。 いたい。
「あーあ、先輩ドンマイ。俺は嫌いじゃなかったっスよ、また縁あったら来世でー」
 近くにいるはずのユウトの声が、ひどく遠い。

  意識が薄れる。

   殺 …… される。



「――――――もうやめてっ!!!」


 音も光もぼやけた世界で、その声はよく通った。
「   」
 藪岡が何か低い声を出し、俺の胸倉を放す。

「 …………恥  …………  くも …… い人に …… 脅し……  理矢理 …… 撮影 ……んて!」

「・ メェ ・・ 立場 ・・ 女だ ・・・・ 殺 ・・・ か!!」

「 うせ ……  て帰す気 …… しょう!? …… 彼 ……  で  る必要 て …いわ!!」

 崩れ落ちた俺の遥か上空で、ドスの利いた声と澄んだ声とが言い合っているようだ。殴られたショックでよく聞こえないが、俺の処遇について話している事はわかる。
 藪岡は、俺を殺すつもりだ。だったら、それに反論している明日香は、俺を生かすべきだと言っている?
 何故だ。俺だって、クズの中の一匹なのに。最後の最後にボスへ吼えてみたものの、あえなく踏み潰されたゴミムシだっていうのに。
   
     
      明日香。

            明日香。


「ふー。ったく、口の減らねぇオンナだな」
 ようやく、その声が鼓膜に届いた。左の視界はまだ暗いが、右がぼんやりと戻ってきてもいる。
 藪岡が俺を睨み下ろしていた。殺人を何とも思っていないような、濁りきった目だ。その目は次に、明日香の方へ向けられる。明日香はマットの上で半身を起こしたまま、毅然とした態度で藪岡を睨みつけていた。俺にはそれが、守護の女神のように見えた。本当だったら、男である俺が守らなければならないのに。
「くくっ……」
 ふと、藪岡から笑いが漏れる。普通笑いというものは、空気を和ませるものだ。でもこの悪魔じみた男が笑うと、ろくな事が起こらない。
「ま、アレだ。結局んとこお前の主張は、このガキを殺すなって事でいいな?」
 藪岡がまた俺の腹を蹴りながら言う。
「ええ」
 明日香は目つきをさらに強めながら、はっきりと答えた。
「なるほどな、わかった。その提案呑んでやる」
 藪岡のこの言葉は、かなり意外だった。奴はとにかく、他人から意見されるのが嫌いだ。自分と方向性の近い考えならともかく、真逆の主張は絶対に聞き入れない。その奴があっさり引き下がったとなれば、『何か』ある。そして明日香は、すでにその『何か』に気が付いているようだった。
「ただし」
 案の定、藪岡が条件を付け加える。
「この俺が泣く泣く譲ってやったんだ。だったらお前にも、相応のペナルティを受けてもらわねぇとな」
 藪岡は静かに明日香へと近づいていく。
「……何をさせる気?」
 明日香の額に汗が伝う。藪岡は、明日香まであと一歩という所で止まり、ふてぶてしく腕を組む。
「今後一切、俺らのやる事に抵抗するな。拒むのも無しだ。
 テメェが『いや』だの『やめて』だのと抜かした時点で、あのガキは殺す」
 その言葉に、俺と明日香が凍りつく。
 無茶苦茶だ。ここまでだって、リンチ同然の事をやってきてるんだ。嫌で当然、やめて欲しくて当然だ。その主張が、できない? 俺のせいで?
「………………わかったわ………………」
 重い沈黙の中、静かに明日香の声が響く。
 俺よりもずっと頭のいい彼女のことだ。拒絶と抵抗の放棄――それが意味するところを、充分に理解した上での答えなんだろう。
 だから、俺はもう何も言えない。何も言う権利がない。
「よし。その言葉ァ忘れんなよ?」
 藪岡がほくそ笑みながら、ユウトの方を向く。藪岡が笑う時は、悲劇が生まれる時だ。
「おい、お前ションベン出るか? そこのゲロ女に飲ませてやれ」
「!!」
 藪岡がさらりと放った一言で、場が凍りつく。ユウトも一瞬呆気に取られた顔をしたが、すぐに緩さを取り戻す。
「え、スカトロっすか? まぁ、いいっすけど。ちょうど催してっし」
 あくまで軽くそう言うと、マットに座り込んだ明日香に近づいていく。
「っつーわけだ。こぼすなよ、汚ェから」
 ユウトは8分勃ちの逸物を明日香の唇に押し付ける。
「…………。」
 明日香は表情を引き締め、意を決した様子で口を開いた。

「おーおー、いきなし飲尿とはねぇ。こりゃ、ソッコーで死もあるぜ?」
 チンピラの一人が、俺の肩に手を回してきた。指の間ではバタフライナイフを弄んでいる。多分こいつも、本気で人を殺す奴だろう。藪岡と同じように。
 これでいよいよ本当に人質だ。女を助けたいなんて格好をつけた結果がこれとは、笑い話にもなりはしない。
 明日香の視線が、ちらりと俺を向く。でも、それはほんの一瞬。すぐにユウトの足が視線を遮る。
「お、出るぜ出るぜ!!」
 ユウトが足を開き、小便の体勢を整えた。足の間には、正座したまま両手を床につく明日香の姿が見えた。
「……おおお……」
 ユウトの息を吐く声がする。どうやら放尿を始めているらしいが、ペニスを咥えさせての飲尿だから水音はしない。
 ただ、よく見れば明日香の喉が動いていた。そして耳を澄ませば、んっ、んっ、と何かを飲み込む音も聴こえる。
「スゲー。この女、ホントに飲んでやがる。もう人間便器だなコイツ」
「ハハハッ、人間便器か。お前上手い事言うな」
 悪趣味な会話の最中、ユウトが尿を出しきる。逸物が口から抜かれた瞬間、明日香の身体がぶるりと震えた。
「んん゛!!」
 頬が膨らみ、吐き出す寸前にもなる。だが。
「吐くなよ。吐いたら、拒絶したとみなすぜ?」
 藪岡に釘を刺されれば、目を見開きながら強引に飲み下すしかない。
「ほー、耐えやがった」
 俺の肩を抱くチンピラが、バタフライナイフを遠ざける。
「……これで、良いんでしょう」
 明日香は胸を上下させながら、藪岡達を睨み据える。
「ああ。だが、今のはほんの余興だぜ。
 おーしテメェら、ションベン出る奴からドンドン飲ませてやれ!
 せっかく人間便器が出来たんだ、使ってやらなきゃよお!!」
 藪岡は、部屋の人間全てにそう号令をかける。およそ人の心があるなら、絶対にできない命令を。
「へへへ。MIT出のお嬢様に、俺らの小便飲ますってか。興奮するぜ」
「クソ、俺ァまだ出ねぇな。ビールでも補給してくっか!」
 そしてギャラリーもまた、人の心など持っていない。
 ここは、畜生の檻だ。


        ※           ※            ※


「おら、口開けとけよ。こっちも今から出すんだからよ」
 蛇の刺青のチンピラが、明日香の口で用を足しはじめる。
「あがっ、あががっ…………」
 明日香は上を向いたまま、これで連続6人の小便を飲み下したことになる。
「すぐ飲み込むなよ、そのままうがいしてみろ」
 遊び半分にそう言われても、拒否はできない。口一杯に溜まった汚液で、ガラガラガラガラと音を立てるしかない。罵声と嘲笑を一身に浴びながら。
 でも、そういうプレイならまだマシな方だ。鬼畜共は普通に飲尿させることに飽きると、さらに悪質な遊びをはじめた。
 明日香をマットに仰向けで寝かせ、木枷で首と両手首を横並びに拘束する。さらにその上で開口マスクを着けさせ、正真正銘の『人間便器』にしてしまうというものだ。
 端から見ているだけでも、この責めの恐ろしさは充分理解できた。
 ランプに照らされた薄暗い調教部屋の真ん中で、一人不自由に横たわる。丸裸の身体は、性欲の滾った10人ほどの異性に視姦されつづけ、気まぐれに蹂躙される。
 どんな責めがくるのかはわからない。女の反応を示すまで執拗に愛撫されるかもしれないし、筆や指先でくすぐられるかもしれない。無防備なアソコと肛門はいつでも犯され得るし、開口マスクのせいで閉じられない口に至っては、小便を流し込まれようがイラマチオを強いられようが、一切拒む術がない。
 前後の穴がザーメンで汚れてくれば、ホースを突っ込んで乱暴に水で流され、肌が汚れてくれば便所ブラシで擦られる。まさに便器そのものの扱い。
 これを、昼夜の別もない部屋で丸一週間続けられるんだ。
 並の人間なら、数日ともたず発狂してもおかしくない。でも明日香は、これを不安そうな顔すら見せずに耐え切った。二穴をハイペースで使い回されようが、乱暴にホースの水で洗われようが、まどろんでいる時にいきなりマスクの中へ放尿されようが。静かに目を閉じているか、どこでもない虚空を見つめながら、無機質な便器となってみせた。
「チッ、つまんねーな」
 俺の監視役は、ナイフを持て余しながら腐る。その横には、同じくつまらなさそうにカメラを回す男がいる。俺が降ろされてからは、部屋にいる人間が持ち回りで撮影役を担当しているらしい。
 一方の俺は、手錠を嵌められたまま、肝を冷やしつづけていた。自分の命が掛かっているということもある。でもそれと同じくらい、明日香が心配だった。無理をしているのは明らかだ。その無理が、どれだけ彼女の心を蝕むかと思うと、居たたまれない。

 明日香への責めは、日を追うごとに激しくなっていく。責めるアイディアが尽きれば、ホテルのロビーでSM系AVの上映会をやっていたようだ。ロビーから漏れ聞こえるAVの音声は、初めこそ日本人女優の可愛い喘ぎだったが、そのうち悲鳴の比率が増え、ついには外国語の絶叫ばかりになる。
 そして藪岡達は、それを躊躇なく明日香に行うんだ。日本人よりも遥かに強い筋肉や粘膜を持つ外人女優が、それでも泣き叫んでしまうようなハードプレイを。

 監禁開始から33日目の責めともなれば、いよいよ拷問じみていた。
 明日香のスレンダーな腹が変形しきるまで、3リットル近くも浣腸し、極太のアナル栓を捻じ込む。アソコにも同じく太いバイブを嵌め、胡坐縛りを施す。その上で柱を背にして座らせれば、もう自力での排便は叶わない。
 解放条件はただ1つ、俺を除いた部屋の全員を、イラマチオで射精させることだ。ただし、明日香にはあらかじめ目隠しがされているため、部屋に何人いるのかはわからない。そして、責め役も実に狡猾だ。
「んも゛ぉお゛お゛ろお゛ええ゛っ!!!!」
 右側の男から根元までのイラマチオを強いられ、明日香がまた限界を迎える。前日まで『人間便器』として腹が膨れるまで小便を飲まされ続けていたため、吐くペースはかなり早い。吐かれた小便と僅かな胃の内容物が、明日香自身の初雪のような肌を汚す。
「おら、誰が休んでいいって言った? “反抗的”だなオイ」
 右の男にそう囁かれれば、明日香は肩で息をしながらも、自ら口元の逸物を咥えるしかない。
「くくっ、夢中だな。そんなに欲しがんなよ」
 右の男はしてやったりという笑みを浮かべ、明日香の頭を掴んで腰を振る。
「んんごむうおおっ!!!」
 明日香から苦しそうな声が漏れた。今咥えさせられている逸物も、普通に黒人並みのサイズだ。充分な準備もなしに、そうそう根元まで咥えこめるものじゃない。
「んぼろえろ゛っ!!」
「はは、まーた吐いてやがら。吐いてばっかじゃなく、たまには喉でも扱けよ。俺ら全員をイラマ抜きするまで、クソできねーんだろ?」
 クソ。その言葉で、明日香の足首が揺れる。もうだいぶ時間も経っている。便意はかなり強まっているはずだ。でも、目標達成までは遠い。
「おっ、おっ……!?」
 右側の男は、明日香が好調な喉奉仕を受け、少しずつ射精へ近づいているようだった。でも、近づくだけでしかない。いよいよ射精間近となれば、奴は正面の一人に目配せする。するとその相手……つまり左の男が、明日香の髪を掴んで強引に自分への奉仕に切り替えさせるんだ。このやり方を守る限り、連中は射精しないまま延々と喉奥を責められる。
 哀れなのは明日香だ。部屋の全員どころか、ただの一人も射精へ導けないまま、いたずらに喉奥をかき回される。終わりのないイラマチオで何度となく嘔吐し、その吐瀉物を自分の身体で受けて嘲笑の的になる。
 いや……むしろ、吐くものがある時の方が楽かもしれない。吐くものもないのに嘔吐感だけがある、空嘔吐になってからが苦しみの本番だ。
「かっ、かアッ……かああっ、かはぁッ……!!」
「ははは、なんだこれ。カアカアカアカア、カラスかっつーの」
 そういう心ない揶揄も、もう明日香の耳には入っていないだろう。何しろ明日香の目隠しの下からは、とうとう太い涙の線が伝いはじめているんだから。
 あの気丈な明日香が本格的に泣いてしまうほど、空嘔吐というのは苦しいんだ。だが、責める方はそんな事に同情などしない。涙と鼻水、えづき汁に塗れた明日香を、ひたすら笑い者にするだけだ。

 ただし、この日の『底』は、空嘔吐の苦しみでもなければ、嘲笑でもない。本当の地獄は、ようやくにして排便の許可が出た後に始まった。
 「そら、出していいぞ! ひり出せ!!」
 明日香は胡坐縛りのまま男2人に抱え上げられ、ビニールシートの上で公開排便をさせられる。いくら恥ずかしくても、限界を超えた便意は止まらない。
「ふんんんんっ…………!!!」
 明日香が息む声に合わせて、ぶびゅぶびゅと汚物が噴き出していく。さすがの明日香もこの時ばかりは、耳まで真っ赤にして横を向いていた。
 恥辱の排泄が終わり、ようやくこれで一息つける……はずだった。今までなら。
 でも、この日は違った。竿役の中に、生粋のスカトロマニアがいたんだ。
 奴は肛門から汚物を垂らす明日香を、妙にギラついた目で凝視していた。そして、ゆっくりと明日香に近づいていく。
「なぁ、この調教ってよ。この女に『嫌』とか『やめて』とか言わせりゃ勝ちなんだよな?」
 そう呟きながら、足元の汚物を掬う。
「とっておきの方法があるぜ」
 奴はそう言ってボロボロの歯を覗かせ、明日香の前に立つ。何をしようとしているのかは、誰もが察していた。標的となる明日香自身も。
「…………っ!!」
 さすがの明日香も、表情が強張る。
「口を開けろ」
 男が命じても、すぐには動けない。
「開けろ!!」
 さらに男が怒鳴れば、緊張で震えながら命令に従う。その明日香の口へ、やはり汚物が塗りつけられた。
「う゛ぶっ!? うむ、ふおううぇ゛っ!!!!」
 汚物を口にした時の反射として、明日香は激しくえづく。
「吐くな、口を開けてろ。便器なんだろ!!」
「か、かぁっ……ふぅぁああ゛っ……!!」
 でも、男は反射行動すら許さない。明日香は涙を溜め、嘔吐寸前という様子で頬を膨らませたまま、大口を開けているしかなかった。
「おいおい、カンベンしろよ! 便器っつっても公共物だぞ!?」
「ンなもん食わして病気になったらどうすんだ。ハメる俺らまでアウトだぜ?」
 さすがに他の竿役連中も暴走を窘める。だが、スカトロマニアに悪びれる様子はない。
「なに、飲み込まなきゃ大丈夫よ。それに、見ろよこの女。あとちょっとで折れそうじゃねぇか」
 胡坐縛りのまま、汚物を掬っては口に入れられる明日香は、確かに極限状態だった。表情はミキに喉奥を弄られていた時よりひどく、全身の痙攣はシャブを打った直後のようだ。
 それでも、明日香は耐え切った。スカトロマニアが拾い上げた最後の固形物を口に押し込まれてもなお、涙ながらに憎い相手を睨み吸えて。
「チッ、生意気な……こうなりゃ」
「いや、もうやめろって気色悪ぃ! 誰かもう吐き出させろよ!」
「つっても、こんなウンコとションベンまみれの女、触りたくねぇよ……」
 何人かの視線が彷徨い、その結果俺に気付く。
「そうだ、今だけ手錠外してやっからお前やれ!」
「だな。掃除やらも全部頼むわ。俺らは外で待ってっからよ!」
 結局連中はすき放題やり、汚れ仕事を押し付けて部屋を出ていく。でも、そんな事はどうでもいい。
「明日香!!」
 俺は目の前で震える明日香に飛びつき、急いで口の中の物を掻き出していく。
「ぶはっ!! はっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ…………!!」
 ずっと息を止めていたのか、明日香は激しく喘ぐ。ここまで苦しそうな姿は初めてだ。
「明日香、ごめん!! お、俺のせいで、俺のせいでこんな目に……!!」
 俺は、思わず涙を流しながら明日香に謝る。ずっと、謝りたかった。謝りきれるようなことじゃないと知ってはいたが、それでもだ。
「…………はぁ、はぁ…………あ、あなたのせいじゃ、ないわ…………」
 明日香は疲れ切った様子で喘ぎながら、確かにそう言った。
「……え?」
「あの男達が、勝手にエスカレートしてるだけ。あなたは関係ないわ。
 それに……」
 明日香はそこで一旦言葉を切り、俺の方を向く。
「私を助けようとしてくれた時は、本当に、本当に嬉しかった。あなたは、あの男達とは違う。あなたは、絶対に死なせない。」
 汚れた顔。でも俺には、その顔が女神にも見えた。
 

        ※           ※            ※


 明日香の言葉通り、藪岡達の鬼畜行為は、俺の存在とは無関係にエスカレートしていった。『抱く時に萎える』という理由で体の欠損に繋がる責めはされないが、それ以外でなら相当な無茶をする。

 例えば監禁40日目は、延々とフィストファックが続けられた。
「しっかしこいつ、タフな女だなー。もう一時間だぜ?」
 這う格好の明日香に腕を捻じ込みつつ、白石がぼやく。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ…………」
 明日香は全身にひどい汗を掻き、顔を紅潮させながら、短い呼吸を繰り返して暴行に耐えていた。
「なら、ちょっとアレンジといくか」
 1人がそう言って、明日香の前に座り込む。そして明日香の肩を引き寄せ、強引に逸物を咥えこませる。
「えごぉお゛っ!?」
 明日香からえづき声が漏れた。
「なーるほど。確かに効くかもな、それ」
 白石は心得たとばかりに、腕ごと明日香の身体を持ち上げる。それまでの横の突き込みから、斜め下への突きに変えたんだ。そしてその真っ直ぐ先では、根元まで咥えこまされるイラマチオ。当然、きつい。
 浮き気味になった明日香の膝が、ガクガクと痙攣を始める。そして床についていた手は、多分無意識にだろう、イラマチオを強いる男の腿に置かれた。男は、その動きを見逃さない。
「お、なんだこの手? まさか、俺の足を押しのけようってんじゃねぇだろうな?」
 相手の身体を押しのけるのは、禁止されている『拒絶』にあたる。だから明日香は、急いでその手を下ろすしかない。つらくて堪らないから、救いを求めて置いた手だったろうに。その微かな救いすら、丁寧に潰されていく。
 すべては、明日香に音を上げさせるために。

 41日目は、とうとうフィストファックのみならず、アナルにまで手首が捻じ込まれはじめる。
「かはっ……あ゛……!!」 
 これには明日香も、全身に脂汗を垂らし、目を見開いて悶絶した。
「くくく、すげぇ。女の身体ぶっ壊してるって感じがたまんねぇな」
「ああ、病み付きになりそうだ」
 前後に拳を捻じ込むサディスト二人は、苦しむ明日香を見下ろして笑った。
「どうだ、こうされると堪らんだろう」
 肛門を責める一人が、埋め込んだ拳をグリグリと回転させる。
「うっ、くく、くっ……!!」
 明日香は目と口を固く閉じ、床へへばりつくようにして苦痛に耐える。
「では、こっちはこうだ」
 さらに割れ目側の一人も、激しく手首を前後させる。
「ぐはあっ!! くーっ、くぁ……あっ!!!」
 明日香は反射的に顎を上げ、固く歯をかみ合わせた。そうする意味は、俺にもわかる。歯が離れていると、つい言ってしまいそうなんだろう。『いたい』『やめて』と。だから、歯をかみ合わせているしかないんだ。当然、その間荒い呼吸は鼻が担当することになり、鼻腔が開閉を繰り返す。するとその反応を、ブタだのなんだのと詰る奴が必ず出てくる。明日香は物理的な苦しさだけでなく、そういう精神的な圧迫にも耐える必要があった。
「うっ、うぐううっ…………!!」
 耐えに、耐えに、耐えた果てに、とうとう明日香は内股になる。理由は、彼女の脚の間に飛び散る水飛沫が物語っていた。
「また漏らしたか。何回漏らすんだ、このお嬢様は」
「さて、今でもまだお嬢様を気取れるものかね。こんなガバガバのケツとマンコで」
 前後の穴をこれでもかと蹂躙する二人は、明日香の失禁を前に大声で笑った。

 監禁開始から、46日目。
 この日は竿役じゃなく、明日香自身に自分を追い込ませる責めだった。
「はっ、あっ、あっ、あ……ああっ!!!」
 明日香が天を仰ぎ、上ずった声で叫ぶ。
 がに股になった彼女の下には、悪い冗談としか思えないサイズのディルドーが直立している。身近なものでそのディルドーに近いサイズといえば、2リットルのペットボトルか。もっともそれは直径の話で、高さとなればペットボトルの1.5倍はあるが。
 明日香はその拷問器具のようなディルドウに跨ったまま、スクワットの要領で自らの膣を責めつづけることを強いられていた。
「ちっとでもへばってみろ、このガキの指が1本ずつ飛んでくぜ!!」
 チンピラの一人が、俺の指にナイフを宛がって野次を飛ばす。この場合のへばるとは、床に膝をつくということ。つまり明日香は、座り込んで休むことが許されない。

 もう何十回、明日香の割れ目がディルドーの形に膨らんだことだろう。
 延々と屈伸を続けていた明日香の足から、ある一瞬だけ力が抜ける。
「あっ!!」
 すぐに明日香は足に力を込め、かろうじて膝をつく事は免れた。だが、その代償として、深く腰を落とすことになってしまう。つまり、それまでにないほど、深く膣奥を突き上げられたということだ。
「いぎっ!? ……ふうああああああっ!!!!」
 明日香は、普段のクール振りが嘘のように絶叫した。そして臍の辺りまで歪に膨らんだ下腹から、盛大に失禁する。いや、もしかしたらそれは、潮噴きだったのかもしれない。
「はははっ、アイツまたイキやがったな!」
「おーおー、派手に撒き散らしやがって!!」
 周りで見ている連中も、明日香の快感を確信していた。

 何しろ明日香はこの責めの前に、シャブを打たれているんだ。普通なら痛みや苦しみと感じるものさえ、快感にすり替わる。
 明日香はあの歪な拷問器具に割れ目を貫かれながら、何十回、何百回と絶頂しているに違いない。すでに足はガクガクで、ともすれば今すぐ崩れ落ち、半日は快感の余韻で歩けなくなることだろう。明日香の強靭な意思力がなければ。

 精神的超人。
 いつかどこかで聞いたこの言葉は、明日香にこそ相応しい。彼女は、常人では考えられないほどの精神力を持っているから。
 でも、それも絶対じゃない。というより、この世に絶対なんてない。どんな大きな岩だって、雨風に削られて少しずつ小さくなり、いつかは消える。それは、人間の精神力も同じだ。
 明日香の精神を大きな岩とするなら、風雨はシャブだ。薬物で高揚感を得たり、神経が過敏になったりするのは、鋼の精神でも防げない。

「おらイクぞ、出すぞっ!!!」
 下から突き上げる男が叫ぶ。
「んあ、ああああーーーっ!!!」
 明日香は射精を受けながら、自分も盛大に潮を噴き散らす。
「はぁ、はぁ、はぁ…………」
 荒い息を吐く明日香の身体は、凍えるようにぶるぶると痙攣していた。目は眠たそうにぼうっとし、口は半開きのまま涎を垂らすままになっている。
 薬物中毒の顔。毎日のようにシャブを使われ、ハメられ、快楽を刷り込まれたんだ。もう逃れられない。明日香だって人の子、一人の女なんだから。
「はは、こいつイッたあともアソコが締め付けてくんぜ。物足りねぇってか? いいぜ、じっくり可愛がってやる!!」
 明日香に挿れている男が、下からの突き上げを再開する。
「ああ、うあっ! ま、また……ぁ……!!」
 明日香は背を弓なりに仰け反らせ、天を仰いで喘ぐ。どうしようもないほど気持ち良さそうに。
「こっちも寂しそうだぜ、嬢ちゃんよお!」
 缶ビールをテーブルへ叩き付けた一人が、明日香の背後に回りこむ。そして、弓なりの明日香の身体へ抱きつくように密着しながら、アナルへ剛直を捻じ込んだ。
「ああぁ……は……ァ…………!!」
 ここで、明日香の表情がまた決定的に変わる。焦点を結ばない目が上向き、半ば瞼へ隠れるようになる。
「へへ、今日もイイ顔になってきやがった」
 下から抱く男が笑みを深めた。
「いや、これからだ。この女は!」
 背後から抱きつく男が、すでに痛々しいほどしこり勃っている乳首を摘み上げる。
「ンあああああぁーーーっっ!!」
 明日香の喉から、絶叫が迸った。
「いひひ、出た出た、このボリューム馬鹿になった叫び声! こっからだよなー、この女」
「ハーフだからかね、こいつ色々と外人寄りだよな。マンコとケツの筋肉やたらつえーし、この絶叫してスイッチ入るとことかもよ」
「ああ。ルックスは日本人の好みドンピシャだがな」
「今のこの顔みてそれ言うか? もう完全にビッチの顔じゃねーか」
「つーか、俺らがそうしたんだろ。しかし皮肉だね。SMとかフィストとか色々やったが、結局このキメセクが一番効くんだからよ」
「案外そんなもんだろ。ヤクザの王道サマサマってもんだ」
「うーし、じゃあ今日も、その王道をガンガン叩き込んでやろうぜ!」
「ああ、夜通しハメてやる!」
 チンピラ連中は口々に好き勝手を言い、入れ替わり立ち代わり明日香を犯しぬく。
「あっ、あ……あっ…………くうう、う…………!!」
 明日香は正気を失った表情のまま、何度となく絶頂に追い込まれ、やがて白目を剥いて失神する。
 でも、俺は知っている。彼女はそこまでになりながら、まだ最後の矜持を残していることを。
 膨大な快感に煽られ、無意識に腰を振っている事はある。突かれて快感に悶えることもある。でも、彼女は決して自ら『欲しい』とは口にしない。それが明日香の最後の矜持だ。
 果たしていつまでもつものか。それは誰にもわからないが。



                                 (続く)

止まらないカメラの向こうで  第1話

※当初は読み切りの予定でしたが、あまりにも長くなったので分割します。
 全体で13~14万字程度になる予定です。
 飛び級でMITを卒業した21歳の秀才お嬢様が半グレ集団に拉致られて、
 プライド崩壊を前提にメタクソにやられまくる話。
 ダーク寄りの話で、過去作と比べてもかなりハードめ、かつ悲惨。
 輪姦・アナル・尿道・レズいじめ・イラマチオ・NTR要素あり。
 スカトロ(嘔吐・大・小)あり。
 特に一部、飲尿や口に便を詰められるハードコアプレイもあるため、ご注意ください。




 いわゆるワルの世界では、喧嘩の強い奴ほどデカイ顔ができる。本人は弱くても、バカみたいに強い奴を味方につけていれば、それだけで幅を利かせられる。そういう意味では、俺達も藪岡さんのおかげで随分と甘い汁が吸えた。
 藪岡さんは、俺の3つ上の先輩だ。197センチ140キロという関取級のガタイに加え、フルコンタクト空手の大会で二連覇するほどの実力もある。当然、喧嘩では敵なしだった。俺の地元は相当治安が悪いが、藪岡さんの後輩と名乗りさえすれば、カツアゲには遭わない。そういう意味じゃ、この上なく心強い先輩だ。
 ただしそれはあくまでも、適切な距離を保っていればの話。一旦身近になってしまえば、逆のこの上なく厄介な存在だ。暇つぶしに万引きを命じられ、変なものを食わされ、機嫌が悪いと殴られる。
 頼みの綱である喧嘩にしたって、噂を聞く分には爽快だが、実際の現場はえげつない。藪岡さんはとにかく容赦がないんだ。不良の喧嘩は普通、一方が立てなくなった時点で「二度と舐めた真似すんじゃねーぞ」ぐらいの捨て台詞が吐かれて終わる。でも藪岡さんの場合、相手が降参しても攻撃の手を止めない。馬乗りになったまま、相手の顔の形が変わるまで殴りまくる。それも、キレて歯止めが利かないからじゃない。「殴られて苦しむ相手が面白い」と言って、ゲラゲラ笑いながら殴り続けるんだ。
 高校以来、もう5年近く藪岡さんを見てきて、はっきり言えることがある。あの人は、他人の苦痛を面白がるタイプなんだ。何をしても罪悪感を感じないから、普通の人間なら躊躇う一線をあっさりと越えてしまう。噂では、藪岡さんはもう何人も殺していて、何度も少年院送りになっているらしい。その内の何件かは地元の新聞にも載ったから、少なくとも潔白という事はありえない。
 そういうヤバい部分が見えてくると、引っ越すなりして距離を取りたくなる。でも、できない。中途半端に不良へ染まったせいで、気がつけば付き合いのある人間は、みんな藪岡さんの息のかかった連中になっていた。同級生も、バイト仲間も、先輩も。妙なマネをすればすぐ藪岡さんの耳に入るし、そうなれば殺されてもおかしくない。親や警察に相談って手もあるにはあるが、どっちも不幸な前例がある。親に泣きついた奴は、最終的に50人に輪姦される母親の姿を、気が狂うまで見せられることになった。警察に駆け込んだ奴は、藪岡さんがシャバに出た翌日から姿を消した。
 そういう事情もあり、俺を含めた何人もが、不本意ながら藪岡さんのパシリを続けているのが現状だ。

 そして、運命のあの日。俺は町で偶然藪岡さんに出くわし、二度と後戻りできない道へと引きずりこまれることになる。


     ※               ※             ※


 紫のカラーに、龍を描いた金メッキ、トラックのような大径ホイール。その悪趣味なエルグランドを見た瞬間、すぐに藪岡さんの車だと判った。
「オウ、ちょうど良いトコ来たな。今暇だろ? 乗れや。」
 藪岡さんは車を俺の横につけ、問答無用で誘ってくる。断れば鉄拳が飛んでくるから、俺はその後の予定をすべて諦めて、悪趣味な車に乗り込むしかない。
 7人乗りの車内には、俺以外に5人が乗っていた。助手席で肘をついている細身の人は、藪岡さんの右腕である高根沢さん。他にも、よく藪岡さんと一緒にいる戸梶さんや白石先輩の姿も見えた。この辺りは全員が俺より年上だ。グループ内で『兵隊』とか呼ばれてる連中に比べれば見た目こそ普通だけど、なにしろあの藪岡さんと学生時代からつるんでるような人達だ。当然、生半可な不良じゃない。
「あー、健史センパイ。意外っスね、センパイがこーいう集まり来んの」
 車内で唯一年下なのは、今声を掛けてきたユウトだけだ。俺と同じ高校出身で、歳は一個下の20歳。もっともコイツはコイツで、逆立てた金髪に無数のピアスという可愛げのない見た目をしている上、明らかに俺のことを軽んじているが。
「あの、これからどこ行くんですか?」
 俺はユウトの横に掛けつつ、藪岡さん達に尋ねた。幹部と言ってもいいこの顔ぶれが揃っていて、単にカラオケやボウリングというのは考えにくい。大抵ろくでもない事をしに行くんだ。放火や窃盗、リンチ……そういう、洒落にならない事を。
「今日は、コレだ」
 俺のすぐ前に座る白石先輩が、人差し指と中指の間に親指を挟みこむ。女のアソコになぞらえたハンドサイン。女とヤる……いや、女を犯る。目ぼしい獲物をどこかに連れ込んで、無理矢理レイプでもするつもりか。なんて車に乗り込んでしまったんだ。
「っしゃ、一狩り行くぞ!!」
 俺の不安をよそに、藪岡さんがギアを操作する。そして毒々しいエルグランドは、鼓膜が痛むほどの騒音を撒き散らしながら走り出した。


     ※               ※             ※


 土曜の昼前だけあって、国道はかなり混んでいた。どの車にも着飾った家族連れや若い女の子の姿がある。
「おい、アレとか結構良くねーか?」
「まあまあかな。俺はアッチ派」
「んー。悪くねぇけど、最近ああいう系多くねぇ? 今日はもっと堕とし甲斐あるっつーか、ピシッとしたのがいいわ」
 藪岡さん達は、道を走る車に併走してはその車内を覗き込み、若い女を見つけると口々に値踏みする。今視姦されているのは、白ニットにホットパンツを合わせた女子大生風の娘。それなりに垢抜けてはいるものの、スレた感じのない純朴系。そんな子が立て続けに毒牙にかかっているなんて、何とも胸糞が悪い話だ。
「ピシッとしたのっつっても、土曜じゃ……ん? お、おい、アレどうよ!?」
 助手席の高根沢さんが、ふと対向車線のセダンを指差した。車を運転しているのは若い女だ。車内の全員が何とはなしにその女を眺め、そのまま視線を釘付けにされる。
 とんでもない美人だった。遠目にも整った顔立ちが判る。それも女子アナのような、世間一般とはレベルの違う垢抜け方だ。白いワイシャツに黒一色のジャケットという格好も、できる女という感じで実にいい。
「おいおいマジか、えれぇ上玉じゃねえか!? 決まりだ、アレにすんぞ!!」
 藪岡さんが叫び、強引にハンドルを切る。周りの迷惑なんて考えない、危険すぎるUターン。そしてそのまま、追い越し車線を爆走してさっきのセダンを追いかける。相手はきっちり法定速度を守っているらしく、追いつくのに時間はかからない。
「しかしスカイラインたぁ、いいクルマに乗ってやがんな」
「どこぞのお嬢様か、バリバリのキャリアウーマンってとこだろ。どっちにしてもそそるじゃねえか!」
 藪岡さん達は笑いながら、露骨にセダンを煽りはじめた。車間距離を詰め、狂ったようにクラクションを鳴らしまくる。周りの車が驚いたように距離を取り始めた。当然だ。こんな明らかにヤバイ族車が危険運転をしていたら、関わろうと思うわけがない。前のセダンも、車を左側に寄せ、どうぞ追い越してくれという素振りを見せる。でも、藪岡さんは煽りをやめない。
「逃がすかよ、馬鹿が!!」
 今にもぶつかりそうなほど車間距離を詰め、クラクションとハイビームを狂ったように連打する。この行為に腹を立てたのか、運転席の女が一瞬こっちを向いた。日本人離れした、思わず背筋が伸びるような眼光だ。ミラー越しではなく、あえて振り向いて拒絶の意思を示す辺りに、相当な気の強さが窺えた。俺なら無理だ。怖くてとても振り向けない。
「おっ、睨んできやがるぜあのアマ!」
「良いね良いね、あのキツい感じ……って、よく見りゃ外人か?」
「いや、ハーフかクォーターだ。俺ァ100パーの欧米女じゃ絶対に勃たねぇからよ、間違いねぇ」
「なんにしても最高だな。犯されながらでもあの澄まし顔が続けられるか、見てみてぇぜ!」
 車内は下品な会話で大盛り上がりだ。その最中、セダンの後部で何かが光った。
『ドライブレコーダー搭載車両 後方録画中』
 そう書かれたプレートのランプが赤く点滅している。俺はそれを見てギクッとした。こんな警告を受ければ、大抵の悪質ドライバーはすぐに煽り運転をやめるだろう。頭に血が上った相手に冷や水を浴びせるような、効果的な対策だ。
 ただ、今は相手が悪い。
「ンだありゃ。挑発してやがんのか? 上等だぜ……なら全部撮れや、テメェの最期の瞬間までよぉ!!」
 藪岡さんは逆にヒートアップし、煽りをやめるどころかアクセルを踏み込む。直後、ガンッ、という衝撃と共に、セダンが前へ飛び出た。ぶつけたんだ、バンパーか何かを。セダンの中の女が、驚いたように肩を竦めるのが見えた。
「はははっ、ビビってやがる!!」
「あの程度で脅しになるって、本気で思ってたみてぇだな。これだからぬるま湯で生きてるホワイトカラー様は!」
 逆に、こっちの車内はますます盛り上がっていく。
「ちょ、ちょっと! ぶつけるのはマズイですって!!」
 俺は藪岡さんに向けて叫ぶ。相手ははっきりと撮影の意思を示してるんだ。事故を起こして警察沙汰になれば、言い逃れができない。遊び半分で好き勝手やっている人間はともかく、俺まで巻き込まれるのはゴメンだ。
「センパイ、落ち着きましょーよ。こーなったら、後はヤるだけなんスから」
 隣でイヤホンの世界に浸っていたユウトが、いきなりそんな事を言いはじめる。
「ヤる、だけ……?」
 正直、その言葉の正確な意味はわからなかった。でも本能的に、嫌な感じはした。俺は藪岡さんの性格を知っている。相手が苦しんでいればいるほど、焦っていればいるほど、嬉しそうに笑いながら追い込む人だと。だからこそ、この後の展開にもうっすらと見当がついていたんだろう。
「聴こえるか? 獲物見つけたぜ。今位置送るからよ、球技場側から来て挟めや」
 助手席の高根沢さんが、そう言ってアプリで位置情報を送る。するとその数分後、脇道からさらに2台の車が突っ込んできた。このエルグランドに負けないほど悪趣味なアルファードとセルシオ。アルファードは前のセダンの前方を塞ぎ、セルシオは左側を塞ぐ。そんな事をされたらもう逃げ場がない。右左折で逃げることも、速度を上げて振り切ることも、一旦停車して警察を呼ぶことさえできず、族車の誘導するままに見知らぬ町まで運ばれていくしかない。

 悪夢のようなツーリングの目的地は、古いラブホテル跡だった。
 この場所は俺も見覚えがある。というより、地元のワルなら大抵の奴が知っているだろう。経営不振からとっくに廃業したにもかかわらず、なぜか未だに電気も水道も通っていて、昔から族の溜まり場になっている場所だ。県内でも特に治安が悪い駅南西部の真ん中にあるせいで、パトカーの巡回経路から外されているという噂もあり、実際この辺りでサイレンを聞くことはない。事実上の無法地帯だ。
 セダンがホテル前に停車すると、他の2台から次々に厳つい連中が降りてくる。全員がプロレスラーかラガーマンかという体格で、それぞれ武器まで手にしていた。金属バットに、バール、メリケンサック……。
「俺らもいくぞ」
 後ろにそう呼びかけながら、高根沢さんも車を降り、セダンに近づいてサイドガラスをノックする。
 セダンの中では、女がスマホを握りしめたまま固まっていた。そこへ、追い討ちをかけるように高根沢さんのノックが続く。さらに他の連中も、手にした凶器でガラスを軽く叩きはじめる。その状態がしばらく続いた後、女は諦めたようにシートベルトを外し、ドアを開けて車外に出た。
 この状況になったら、それしかないんだ。警察に通報したら最後、確実にこの場の人間を逆上させることになる。というより、通報すら無理だ。助けを呼ぶにしても、まずここの現在地を知らなきゃならない。悠長に場所なんて確認していれば、その間にサイドガラスを割って車外へ引きずり出され、最悪殺されるだろう。となれば、大人しく従うしかない。
「おーっ!!」
 女が車を降りた瞬間、歓声が上がった。
 遠目に見ても相当な美人だと思ったが、近くからだとさらに凄い。欧風少女と和風美人の長所だけを選りすぐったような、とんでもなく整った顔立ち。艶の輪が光る、肩甲骨辺りまでの長い黒髪。
 スタイルにしてもモデル級だ。小顔で、たぶん8頭身ほど。黒いジャケット越しにもウエストの細さが見て取れるし、薄いタイツに包まれたすらっと長い脚線に至っては、テレビで見たレースクイーンすら敵わない。
「悪ふざけが過ぎるわ。こんな所に連れてきて、何のつもり!?」
 女は、右手を腰に添えて言い放った。やっぱりハーフなんだろうか。何気ない仕草が、まるで映画のような格好良さだ。でもその凛とした態度も、氷のような冷ややかな視線も、常識のネジを外している連中には通じない。
「仮にもラブホの前で、何をするつもりもねぇだろ」
 エルグランドを大きく揺らしながら、藪岡さんが姿を見せる。その藪岡さんに鋭い視線を向けた直後、
「…ッ!?」
 女の表情が固まった。
 無理もない。ツッパリを自称していた俺達だって、初めて藪岡さんに遭った時には一発で心が折れた。とにかくでかいんだ。縦にも、横にも。普通に眼球を動かすだけじゃ全身を見ることもできない、視界を覆い尽くすほどの肉の壁。
「お前は、俺らの玩具になるんだよ」
 その巨漢から、有無を言わさぬ宣告が下される。この絶望感はよく知っている。俺だって、それに逆らえなかったから今ここにいるんだ。


     ※               ※             ※


 ラブホテルの一室、101号室。
 ロビーから入ってすぐのこの部屋は、思ったよりも広さがあった。俺の借りているアパートが6畳で、その2倍はありそうだから12畳ぐらいか。
 天井の照明がスタジオのように部屋を照らし、部屋の中央ではキングサイズのベッドが存在感を放っている。奥のシャワールームは全面ガラス張りで、何もかも丸見えになる仕様だ。
「……いかにも、あなた達が好きそうな場所ね」
 部屋へ連れ込まれた瞬間、女は冷たい声でそう呟いた。

「あ、あの、大丈夫なんですかね? こんな事して……」
 俺はホテルのロビーから部屋を覗き込み、近くにいた白石先輩に話しかける。
「あ?」
 白石先輩は女のバッグを大理石のテーブルに置き、中身を物色していた。
「心配すんな。県跨いで引っ張ってきてんだ。サツってなぁ自分の管轄でしか仕事しねーから、ここまで出張っちゃこねぇよ。それに、言ってもたかがオンナ拉致って犯るだけだぜ。仮に捕まっても、ちっと臭ぇメシ食って終いだ」
 これだ。こういう人らの厄介なところは、逮捕を恐れないこと。もちろん捕まらない工夫はするが、やりたい事をやった挙句に最悪捕まっても、『かえって箔がつく』と涼しい顔をする。そしてそういう人間に限って、なぜか裁かれない。たまに捕まってニュースになっているのは、あくまで氷山の一角でしかないんだ。
「これもだ。GPS入ってるかもしんねーから、どっか遠くで廃棄しろ」
 白石先輩は鞄を漁り、いくつかの物を周りの人間に手渡していく。そしてその手は、何かを取り出しながら止まった。顔写真のついた白いカード……免許証だ。
「ふーん。式田 明日香ってんだ、このオンナ。21っつーと、お前とタメじゃね?」
 白石先輩が、俺の方を向く。先輩のクズっぷりに引いていた最中の俺は、慌てて表情を柔らかくした。ガンを飛ばしてるなんて知れたら、根性焼きでは済まない。
「えっ? あ、はい……。」
 俺は返事をしながら、ちらりと女の方を見る。同い年にしては、随分大人びているものだ。スーツのせいだろうか、それとも人生経験の違いだろうか。
 名前は、式田 明日香。なんだろう、聞き覚えがある気がする。
「ん、待てよ、式田……?」
 先輩の中にも何か思い当たる人がいたようだ。彼はすぐにスマホを取り出し、何かを検索しはじめる。
「うお、やっぱそうだ! こいつ、コレでしょ!!」
 興奮気味の叫びと共に、ある動画が再生された。何かのCMだ。軽快な音楽に乗せて笑顔で社のPRをする女は、芸能界ですら滅多に見かけないほどルックスがいい。
 思い出した。これは、証券会社『式田証券』のテレビCMだ。社長の娘が直々に広告塔となり、「美人すぎる社長令嬢」として世間の注目を集めた。この事で式田証券は、一気に全国区の知名度を誇るようになったんだ。元々業界の注目株と言われていた会社だから、サービス自体にも特長はあったんだろうけど、このCMが社の発展に与えた影響はでかい。なにしろ式田証券をネットで検索すると、未だに『アスカちゃん証券』という関連キーワードがトップに出てくるんだから。
 俺も去年、たまたまCMを見て彼女に一目惚れし、ネットで個人情報を漁った覚えがある。その末にまとめサイトで見つけた経歴は、凄まじかった。
 青年実業家の父とスイス人女優の母の元に生まれ、高級住宅街の一等地で裕福な幼少期を過ごす。やがて渡米し、飛び級で入ったMITで金融工学を学んだ後、19で卒業して父親の会社へ役員待遇で迎えられる。その役員としての最初の仕事が、社の躍進に繋がるイメージガール戦略だ。
 しかも、飛び級できるだけの頭脳を持ちながら、運動神経も抜群。特に大学時代に遊びでやっていたゴルフの腕前はプロ顔負けで、何度も業界からスカウトが来たほどらしい。
 文武両道かつ才色兼備、そして優れた血統。まさに一流の女。
「スゲーな、お前」
 経歴を一通り読み上げた白石先輩が、両腕を捕まれた明日香に話しかける。すると明日香は、鋭い目線を返した。相当な気迫だ。
「そうよ、私の価値を理解した? だったら、今こうしている事のリスクを真剣に考えるべきね。私には今日、ミーティングの予定が入っていたの。それに連絡もなく顔を出さなかったとなれば、私の身に何かあったんだと関係者が気付くわ。今この瞬間にも、捜索願が出されているかもしれないのよ!」
 ホワイトカラー特有の、ピリッと張り詰めた茶化せない雰囲気。スイス人の血を感じさせる整いすぎた顔立ちが、余計にその凄みを増してもいる。お嬢様はお嬢様でも、屋敷で甘やかされて育った姫じゃない。10代の半ばで単身留学し、MITを卒業してみせ、帰国後間もなく日本の金融界にショックを与えた行動力の塊なんだ。
 ただ、それに気圧されているのは俺だけらしい。俺の背後や周りにいる先輩達からは、獣じみた空気が発されている。
「そう冷たくすんなって、お嬢様。これからこのホテルで、たっぷり愛し合う仲なんだからよ?」
 頭を剃り上げた一人が、ジャケットの上から明日香の乳房を揉みしだく。それと同時に、髭面の一人がスカートの裾をめくり上げた。薄い黒タイツ越しに、薔薇の刺繍が施されたショーツが覗き、どこかで口笛が吹かれる。
「は、放しなさいっ!!」
 明日香は内股になって抵抗するが、ベンチプレス百数十キロを上げるような男の腕力には敵わない。
「さすがお嬢様、趣味のいい香水つけてやがんなぁ。銀座にいる女みてぇだ」
 髭面が力づくで明日香を抑え込みつつ、指でショーツをなぞる。
「っ!!!」
 明日香は、肩幅に開いた足をかすかに強張らせた。こういう事に慣れている感じじゃない。まさか……
「くくっ、ウブな反応だな。まさか処女かよ」
 髭面が笑みを浮かべて囁くと、明日香の表情がいよいよ硬くなる。
「だから何? 猿のように貪りあった経験がない事が、そんなに可笑しい事? 
 あなた達ケダモノと違って、私は生まれてからずっと有意義に生きてきた。それだけよ!」
 相当な負けず嫌いらしく、明日香は気色ばむ。白人並みに綺麗な頬を、わかりやすいほど紅潮させながら。
「有意義、ねぇ……セックスだって有意義なんだぜ、他に何もいらねぇってぐらいによ。お前にも、それをたっぷり教えてやる」
 二人は笑いながら囁きかけ、黒いタイツを膝までずり下ろした。そして丸見えになったショーツの中へ、スキンヘッドが手を滑り込ませる。
「やめて! やめなさいっ!!」
 明日香の声がサイレンのように響くが、誰からも相手にはされない。
「うお、えれぇキツイぜ。こりゃ下手すっと指すら入れたことねぇんじゃねえか?」
 ショーツへ手を潜り込ませたスキンヘッドは、指を曲げた後に驚きの声を上げた。
「くくっ、バージンな上にオナニーの経験すら少ないときたか。こりゃ調教のしがいがあるぜ」
 悪意ある囁きに、明日香が表情を引き締める。ゲス共め――言葉にせずとも、表情がはっきりとそう宣言していた。
「おいおい、反抗的だなぁその目ェ?」
「まあいいじゃねぇか。ツンツンしてんのも悪くねぇ」
「だな。アイサツ代わりだ、このままたっぷりと愛撫してやろうぜ。自分から欲しがるようになるまでよ?」
 悪意が、明日香を取り巻いていく。そして、明日香にはそれを跳ね除ける術がない。この状況を打破できるのは腕力だけ。それがないなら逃げられない。どれほど頭が回ろうと。外の世界でどれだけ価値のある人間だろうと。
「オイ」
 穢されていく明日香を眺める俺に、いきなり藪岡さんが声を掛けた。
「は、はい!」
 俺は弾かれたように声を上げる。もう21なのに、藪岡さんを前にすると、中学生のガキと同じような反応しかできない。
「コレで、あの女のこと撮っとけ。充電器やら替えのメモリーやらは八木が管理してる」
 藪岡さんは、俺に黒いハンディカメラを渡して言った。
 なるほど、そういうことか。こんな幹部のパーティーに俺みたいな下っ端が呼ばれるなんて不自然だと思ったが、撮影役ということなら納得できる。そして藪岡さんの命令である以上、断るという選択肢はない。俺はカメラを起動し、明日香の方へ向けて録画モードに入る。内股気味のすらりとした太腿が液晶に映し出される。
「えっ!? な、何を映してるの、やめてっ!!」
 明日香はすぐにこっちに気付き、よく通る声で叫んだ。申し訳ない気分になる。こんな犯罪行為を見過ごしているだけでも心が痛むのに、撮影までなんて。
「よく言うぜ。お前だってドラレコで俺らのこと撮ってただろうが。同じ事をやってるだけだ。もっとも、こっちのはドライブじゃなくてファックレコードだがな!」
 藪岡さんは悪びれる様子もなく、大声で冗談を飛ばす。
「な、何を滅茶苦茶なこと……ん、んんっ!!」
 明日香は何か反論しかけるものの、ショーツ越しに割れ目を擦られて言葉を呑み込んだ。スポーツもこなす健康体だけに、血の巡りもよく、そのぶん敏感なんだろう。
 俺は明日香が哀れになり、カメラをそのままについ視線を落としてしまう。すると、いきなり藪岡さんに胸倉を掴まれた。
「テメェ、ちゃんと見て撮れや!! 俺らの一生のズリネタになるかもしれねぇ映像だぞ。いい瞬間撮り逃がしやがったら、テメェのリンチ動画で上書きすんぞコラッ!!」
 至近距離で凄まれると、本当に漏らしそうになる。襟を掴んでいる手にしても、とにかく拳頭のブ厚さが普通じゃない。怖い。
「す、すんません!! すんませんした!!」
 俺は息苦しさも忘れて、必死に謝り倒す。この人の熊みたいな力で殴られたら、頬骨ぐらいは軽く折れてしまう。実際、何度も折れたことがある。一発も殴られちゃいけない。一発も。
「…………っ!」
 必死に命乞いをする俺を、横から明日香が見ていた。頭のいい子だ、すぐに俺の惨めな立ち位置を理解したことだろう。彼女は俺と同じ歳で、人の上に立ち、証券会社のミーティングをこなしながらバリバリ働いているのに。俺はこんな、チンピラ集団の下っ端。情けない。本当に、情けない。
「チッ……次、腑抜けてたら殺すぞ」
 藪岡さんは乱暴に俺を投げ捨て、腕を組みなおす。そして、すぐに薄ら笑みを浮かべはじめた。すでに注意は明日香に向かっているようだ。極上の獲物を捕まえたおかげで機嫌がよく、だから殴られずに済んだのか。俺は、明日香という犠牲のために助かったのか。そう思うと、居たたまれない気持ちになる。でも俯いて撮影していると今度こそ殴られるから、恩人を見据えながら必死にカメラを構えるしかない。
「………。」
 明日香は、一瞬だけ俺の方に視線を向けてから、ふっと目を逸らした。もう見るのも嫌ってことか。俺だってそうだ。俺だって、俺が嫌いだ。


     ※               ※             ※


 明日香への愛撫は、ひどく念入りに続いていた。
 上半身のワイシャツやジャケットはあえて脱がさず、スカートだけを捲り上げて刺激を加えていく。ショーツ越しに割れ目を、クリトリスを。タイツ越しに太腿を……。
「んっ、く……はっ、はぁ、はぁ…はぁ……っ!」
 明日香は、腕を掴みあげられたまま、必死に足を踏み変えての抵抗を続ける。額に薄く汗を掻き、横を見つめる目が不定期に揺れる。男に触れられる場所すべてがピクピク動いてもいる。屈辱的だが、どうしようもなく気持ちいいんだろう。今彼女に触れている人間は、合意非合意は別にして、何十人もの女を喰ってきた人間ばかり。愛撫ひとつにしても、相当手馴れているはずだった。
「おーおー、とうとうパンティ越しに汁が垂れてきたぜぇ、お嬢様よ?」
 ショーツにぴたりと張り付くような陰唇をひたすら刺激していた一人が、嬉しそうに言う。
「だ、だから、何だっていうの……!?」
 明日香は目元を引き攣らせた。そんな彼女に、他の何人かも追い討ちをかける。
「太腿もヒクついてんぜ。おら、こうされると堪らねぇんだろ?」
 そう言いながら、一人が腿の内側を鷲掴みにした。
「ん゛っ!!」
 明日香から濁った呻きが漏れる。
「クリもでかくなってきたぜ。最初はどこにあんのかサッパリだったのによ」
 これは、ショーツ前面を擦りたてる人間の言葉だ。
「はっ、あう、う…んっ!!」
 クリトリスといえば、女の弱点の一つ。そこを集中的に弄られたら、いくら意志の強い人間でも腰を揺らすしかない。
「俺らだって童貞のガキじゃねぇんだ、感じてんのはバレバレなんだよ。いい加減素直になれって。オトコが欲しいんだろ?」
 勝利を確信しているような、にやけた口調。そんな言い方をされて、気の強い女が大人しく折れるはずがない。
「あ、あなた達が、したいだけなんでしょう? だったら、勝手にすればいい。私はただ、あなた達の、あさましい欲望の、捌け口になるだけ。助けが来たら、しかるべき報いを、ふっ…受けて……んんっ、もらうわ……っ!!」
 愛撫に敏感な反応をしつつ、はっきりと主張する明日香。自分は欲していない、ケダモノが群がっているだけ。効果的な煽りだ。
「ほぉー、まだ頑張るか。いいぜ……なら、とことんまで焦らしてやるよ!」
 5匹のケダモノが、明日香へ苛立ち混じりの視線を向けた。

 そこからは、ショーツを取り去り、ワイシャツのボタンを荒々しく引きちぎっての愛撫が続けられた。
「ひひ、いいチチしてやがるぜこいつ。プリップリだ」
 ブラジャーが押し上げられ、乳房が鷲掴みにされる。乳房も乳首も感動的なほどに綺麗だ。大きさはCカップぐらいだろうか。
「くっ……!!」
 明日香は痛みとも屈辱ともつかない、苦い表情で耐えていた。そんな明日香を、先輩達はさらに追い込んでいく。
「ん……はっ……」
 乳房の外周から乳首へと吸い付かれると、明日香の細い肩が震え、小さく声が漏れた。
「ひゃっ、あ!」
 うなじの辺りを舐められると、肩が竦まり、普段とは違う童女の顔が現れる。
「ふんん……あ、はああっ!?」
 下腹部への舐めを嫌がって腰を逃せば、待っていたとばかりに肛門へ口づけする人間が出て、かなりの声を漏らすことになってしまう。
 俺も女に舐められたことがあるが、舌の刺激というものは凄いんだ。指とは全然違う。生暖かくてヌルヌルしていて、何ともいえない。それを慣れた人間にやられるんだから、涼しい顔なんてできるわけがない。

 さらに20分ほど経った頃には、明日香は完全に逃げ道を失くしていた。両足を膝から抱え上げられたまま、執拗なキスと愛撫、アソコへの指入れを強いられる。
「はぁっ、はぁっ………あんっ、はああんっ、ああ……んっ!!!」
 明日香は、もう全く喘ぎを堪えられなくなっていた。緊張と快感で息が上がっているから、酸素を取り込むためにも喘ぐしかない。
「おおー、もうグッチョグチョだよ。完璧にGスポの急所捉えてるわこれ」
 指入れを繰り返す一人が言う。よほどGスポット責めが効くのか、指が動くたびに明日香の腰は上下左右に揺れ、モデル級の太腿が痙攣する。
「ひひ、すげぇや。ストリップでもこんなやらしい腰つきってないぜ」
「あの式田証券のお嬢様ともあろうお方が、みっともねぇもんだ!」
 少し離れて小休止していた先輩達も、明日香の惨めな格好に野次を飛ばす。確かに色っぽい腰つきだ。雪のように白い肌に加え、デルタゾーンの毛もよく手入れされているから一見清楚そうなのに、動きだけがいやらしい。
「ほらお嬢様、カメラ小僧が撮ってやがんぜ? その恥ずかしいカッコをよお!!」
 一人がそう続けた。俺の蚤の心臓が騒ぐ。
 そして明日香は、まっすぐに俺の方を見た。正確にはカメラをだが、顔が俺を向いていることには変わりない。目の覚めるような美人なのに、いや、だからこそ、ひどく怖い。
「そう睨むなって。メスブタのくせに、いっぱしに格好つけやがって!」
「ほぐれろほぐれろ、また潮吹き地獄いくぜ?」
 明日香を囲む数人が、焦れたように責めを再開した。
 乳房を揉みしだき。親指で開いたビラビラの表面を、指の腹で丁寧に刺激し。2本の人差し指を割れ目に沈め、好き勝手に内を刺激する。
「あふ、ぅんっ……はぁ、あああっ!! はあ、あう、うんんっ!!」
 明日香は目を細め、必死に快感に抗おうとしていた。でも、すぐに限界が来る。ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ、という異様に水っぽい音でアソコを掻き回された果てに、太腿を激しく強張らせる。そして。
「あ、あ、あ……あああああぁぁーーーっ!!!」
 天を仰いだまま大口を開け、明日香は”また”潮を噴いた。割れ目に入り込んだ指の動きに合わせ、ぴゅ、ぴゅ、ぴゅっと小刻みに噴出し、プレイルームのタイルに飛び散って行く。
「オイオイ、品がねぇなあお嬢様!」
「また潮吹きか。清楚なタイプだと思ったのに、指でちっと弄っただけで逝きまくりだな」
 容赦なく浴びせられる、罵詈雑言。明日香はなおもGスポットを激しく刺激され、潮吹きの第二波へと追い込まれながら、薄らと涙を流していた。

 結局明日香は、俺のカメラの中で7回潮を噴いた。
「よう。朝からぶっ通しでハラ減ったろ。何人かでメシ行くっつってっから、一緒に食って来い。しばらくは俺が代わってやるよ」
 カメラの充電器を借りに八木さんに声を掛けると、下卑た笑みと共に休憩を勧められた。どうやら、自分でも撮ってみたいらしい。俺もさすがに疲れてきたから、その言葉に甘えることにする。
 外に出ると、もう日が沈みかけていた。エルグランドで“狩り”をはじめたのは昼過ぎだったから、もう5時間位は経ってるのか。
 結局、連れと約束してた映画は観られなかった。バイトも無断欠勤になってしまった。でもそれより、明日香のことで胸が痛む。頼んだ牛丼の味さえわからないぐらいに。
 俺達がこうして休憩している間にも、明日香は嬲られ続けてるんだろう。もしかして、もう処女を奪われているかもしれない。そう思うと、早くあの場に戻りたくなる。俺が見ていたところで何が変わるわけでもないが、誘拐の片棒を担いだ人間として、せめて見届けなければという妙な使命感があった。
 ただその一方で、もう関わりたくないと思っている自分もいる。どうせあの場に居たって何もできない。俺が主導した犯罪でもない。なら、関係ないじゃないか。このままどこかへ逃げて、忘れ去っちまえよ。そう悪魔が囁く。
 どっちの心に従うべきだろう。俺は、先輩達の下らない武勇伝に相槌を打ちながら、しばらく悩んでいた。でも、本当はわかってるんだ。どうせ最後には、あの場所に戻る道を選ぶんだと。そしてその理由は、使命感からでも、罪悪感からでもない。
 藪岡さん達から、逃げる勇気がない。ただ、それだけだ。


     ※               ※             ※


 ホテルに戻ると、ロビーで何人かが気だるそうに休憩していた。煙草をふかしながらテレビを見ている人間もいれば、缶ビール片手に宅配ピザを齧っている人間もいる。全員が毒々しい刺青入りで、まるでスラムにでも来たようだ。
「はうっ、あ、あひっ……お、うぅ……ああ、あ、あっ…………」
 101号室からは、喘ぎ声が漏れていた。ぐちゅ、ぐちゅっ、という音もするし、汗の匂いもする。セックスの最中なんだろうか。そう思って部屋に踏み入ると、そこには意外な光景が広がっていた。
 服を取り去られ、生まれたままの姿を晒したまま、ベッドへ仰向けになった明日香。その明日香に、5人の男が群がっている。ただし、挿入している様子はない。乳房を舐め回し、持ち上げた足指を丹念にしゃぶり、両腿を抱え込むようにしながらアソコに顔を埋めて舌を遣い。そういう焦らしを、延々と続けているようだ。
「へへ、最高だ……っと、やっと帰ったかよ」
 ニヤけながらカメラを構える八木さんが、俺に気付く。
「待ち侘びたぜ。俺もあの女ァ嬲りたくなってたとこだ。特にあのチチをよ」
「はは……遅くなってすんません」
 俺は、それに愛想笑いを返すのが精一杯だった。俺の意識はすでに、明日香の方を向いているんだから。
 カメラを構える。液晶に明日香の美貌が映りこむ。
 彼女は嬲られながらも、必死で耐えているらしかった。両手が頭上で縛られているから、両腋は晒すがままだ。その腋に白いパウダーのようなものを擦りつけられ、吸い付かれれば、体は大きく反応を示した。でも、顔はそれほど崩れない。「あ」の形に小さく口を開いたまま、充分に綺麗と思える表情を保っている。
 とはいえ、『出来上がっている』のは明らかだ。
 まず汗の量が凄まじく、手も足も腹も、薄いオイルを塗りたくったかのように濡れ光っている。二人の男に持ち上げられた脚は痙攣を繰り返す。しつこいぐらい舐められる乳首に至っては、AVですら見たことがないほどの円錐形に尖りきっていた。なにしろ、男が口にくわえたまま、上下に扱けるぐらいなんだ。ベッドの上に乳首クリップが転がっているところから見て、相当激しく引き伸ばされたに違いない。

 明日香の白い肌の至るところに、舌と指が這い回る。
「はうっ、あうっ……! んあ、ああ、あ……っあ…………!!」
 よっぽど堪らないのか、明日香は喘ぎを殺せていなかった。俺のカメラは、気持ちよく喘ぐ明日香の姿を淡々と映す。
 と、左右から胸を舐めしゃぶる二人に変化があった。口を離し、歪んだ笑みを浮かべながら乳首を摘む。そして痛々しいほど勃起しきったそこを、思いっきり引っ張ったんだ。
「んあ゛あああぁぁぁっっ!?」
 これには、明日香もかなりの声量で悲鳴を上げた。見た目通り、異常なほど乳首が敏感になっているらしい。
「イイ声だ。もっと聴かせろ」
 二人は満足げな様子で、さらに乳首をいじめ抜く。それと同時に、アソコへ顔を埋める一人も責めを変えた。ぐちゅぐちゅと舌で中をかき回す動きから、ずずーっと露骨に汁を啜る動きへ。
「はあ、くっ!!!」
 明日香の忌々しげな視線が下腹の方へ下る。
 数分に渡って汁を啜り続けた男は、鼻と口の一面を濡らしながら顔を離す。ただし、休憩するためじゃない。それまで掴み続けてきた腿から手を離し、右手親指で膨らんだクリトリスを押さえつけ、左手人差し指を割れ目の中へと差し込んでいく。たかだか指1本での攪拌。でも円を描くようなその指の動きで、俺の想像を遥かに超えるいやらしい音が立ちはじめた。ぬちゃ、ともくちゃ、ともつかない粘ついた音。
「あああ、あぁ…………ぁぁああぁぁ………………っ!!」
 これに対する明日香の喘ぎもまた、予想外だ。我慢できず漏れ続ける声は、やたらに子供っぽい。目を閉じれば、小学生が発している声に聴こえる。その鼻にかかった甘い喘ぎは、たった指1本での攪拌がとんでもなく気持ちいいことを表していた。
「すっかり声が抑えられなくなっちまったな。男なんていらねぇってカッコつけてた割にゃ、随分と欲求不満そうじゃねえか」
 そう茶化して明日香の息を詰まらせてから、割れ目への責めは変化した。
 左手人差し指で膣の入口を無理矢理に拡げつつ、クリトリスに宛がっていた指を下ろし、左右の人差し指を割れ目に差し入れる。そして膣壁の左右を擦るようなやり方で、二本指を激しく動かしはじめた。音がまた凄い。ちゅぴちゅぴちゅぴちゅぴ、という絶え間ない水音が、指の動きと同じハイペースで漏れていく。
「あ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……………!!」
 明日香の喘ぎも同じく激しい。二人の男に足首を掴みあげられたまま、すらりとした太腿を何度も何度も筋張らせる。頭上で結ばれた手首にしても、持ち上げるでもなく下ろすでもなく、中途半端に浮かせた状態になっている。
「おお、すげぇすげぇ。また本気汁があふれてきたぜ」
 割れ目を責める男が嘲り笑った。見てみると、割れ目からは妙に泡立つ白い液が垂れ落ちている。あれが本気汁…………なんだろうか。
「ふう、ふうっ…………あ、はあっ!! あうんっ、あっ!!!」
 嘲笑を受けた明日香は、一瞬口を噤んで淑やかさを取り戻そうとする。でも、その努力も一瞬だけの事。また割れ目に口づけされ、本気汁を啜られはじめると、あえなく声が漏れる。

 悪夢のようなねちっこい責め。プライドにかけて感じまいとしても、火照った性感帯がそれを許さない。傍観者である俺にさえ、その事実がはっきりと見て取れた。
 それでも、明日香は音を上げない。抱いて欲しいとは絶対に口にしない。本当に、見上げるほどの意思の強さだと思う。
「さーて、そろそろ効き目が薄まってきた頃だろ。また『アレ』やるか」
 一人が発したその言葉に、5人全員が下卑た笑みのまま頷く。
 そして、明日香は仰向けの状態からひっくり返された。乳房を押し潰すようなうつ伏せで、尻だけを高く掲げる格好だ。さらにその明日香の背後で、何かが用意され始める。漆塗りの器に入った透明な液と、そこに浸された5本の筆。かすかにアルコールの匂いがする。器の中身は、多分酒だ。
「またそれなの? 工夫がないのね」
 液と筆を睨みながら、明日香が溜め息を漏らす。すでに何度も使われているらしい。
「ああ、お前も随分気に入ってるみてぇだからな。もっとも、勘弁してくれというなら止めるが?」
「………使えばいいでしょう。好きなだけ」
 当然、明日香は受け入れるしかない。後戻りのできない沼へ、さらに深く沈みこむ行為だと知っていても。
「ん……ふうんん、んっ……ふ」
 5本の筆が、器の中身をたっぷりと掬いながら塗り込められる。狙いはかすかに口を開いた割れ目と、菊の輪そのものの肛門だ。
「ほぉーら、ケツがヒクついてるぜ、お嬢様。カアッと熱くなってたまらねぇんだろ」
「マンコの方もヨダレたらしまくってよ、すっかり娼婦って風情だ。さっさと吐いちまえばいいのに、デカマラが欲しいですってよ」
 筆で前後の穴を嬲りつつ、言葉責めも欠かされることはない。
「はぁっ、はぁっ……はあっはっ、はあっ………!!」
 明日香は敷布団を握りしめて必死に声を殺す。大きく開いたその股座からは、酒か愛液か、絶え間なく透明な雫が垂れているのが見えた。
 飽きるほど長く筆責めが続いた後、ようやく筆が置かれる。でも、断じて休みが与えられるわけじゃない。アルコールの効果で火照った身体を、また5人の指と舌で刺激され続けるだけだ。
「はっ、はっ、はっ………あっ、あっ!! ふあああっ!!!」
 片足を肩に担ぎ上げられた状態で秘裂を舐められ、胴の下へ潜り込んだ一人から乳首を吸われ。この波状攻撃を前に、明日香は声を殺しきれなくなる。モデルのような細身を震えさせ、熱い息と声を吐き続ける。
 そして。そうした焦らしが続いた果てに、とうとう運命の瞬間が訪れた。

「うし、ヤるか!!」
 ソファに腰掛けてビールを煽っていた藪岡さんが、そう叫んで立ち上がる。その瞬間、部屋の空気が引き締まった。全員の背筋が伸びた気もする。
「よく拝めよ。テメェを女にする男根だ」
 そう言って藪岡さんは、着ている物すべてを脱ぎ捨てた。露わになるのは、俺達のボスの逸物。そのサイズを前に、同じ男である俺達さえ言葉を失った。
 いくら何でもデカすぎる。ぶらんと垂れ下がっているんだから、勃起すらしていないはずなのに、すでに平均的なサイズの1.5倍はある。生い茂った陰毛から伸びる幹は真ん中だけがやたらめったら太くて、3本ほど血管が浮いてもいる。挙句その幹には、真珠まで埋め込まれているようだった。一体いくつ入ってるんだろう。雁首から根元まで、不規則な位置と大きさでビッシリと埋め込まれていて、もはや恐怖でしかない。
 ベッドから身を起こしたまま、凍りつく明日香。
「お、親から貰った体をそんな風にして、負い目はないの!?」
 言葉を詰まらせながら何とか批難してみせるが、それで怯む藪岡さんじゃない。
「むしろ誇らしいぐらいだ。手間暇かかってっからな。その甲斐あって、今じゃヤクザの情婦も俺のチンポのが良いっつって涙流すんだぜ。おら、しゃぶってカタチ確かめてみな」
 そう言って藪岡さんは、凶器のような逸物を明日香に近づける。
「ん……!!」
 明日香が険しい表情を見せると、次は亀頭部分が鼻先に擦りつけられた。咄嗟に口を閉じ合わせる明日香。だがそんなものは、無意味な抵抗でしかない。
「男がしゃぶれっつってんだ、大人しくしゃぶれや!! 力づくでアゴ外されてぇかっ!!」
 確実に『やる』目をした藪岡さんに凄まれれば、悔しそうに睨み上げながら、ゆっくりと唇を開いた。
「…………ん…っ、ぐっ!!」
 薄桃色の唇へ、浅黒い怒張が入り込んでいく。小顔な明日香が自然に口を開けられるサイズと、逸物の太さはあまりにもアンバランスすぎた。横から撮っていると、今にも顎が外れるんじゃないかと心配になるほどに。
「ん゛っ、ぐふっ!! ごほっ!!」
 亀頭がすっかり口に収まり、とうとう幹を飲み込む段階になると、明日香の呻きが相当苦しそうなものになる。藪岡さんはそんな明日香の反応を知りながら、両手で頭頂部を押さえ込むようにしてさらに深く咥えさせていく。
「歯ァ立てんじゃねーぞ。もしやったら、前歯全部折ってフェラ専用の口にするからな」
 苦しむ明日香を見ながら、藪岡さんの笑みは深まっていく。
「ぐふっ、んン゛ーーっ!!! んんン……、ぐふっ!!」
 一方の明日香は何度も咳き込んだ。藪岡さんの太腿を掴む手がブルブル震えていることから、そこに普通じゃないほどの力が込められていることも想像できた。
 十数秒か、それとも数十秒か。ひどく長く感じられる鬩ぎ合いの果てに、藪岡さんが腰を引いた。
「あがああっ…………げほっ、ごほっ!! かはっ!!!」
 明日香は俯いたまま床に手をつき、はっきり見えるほど太い唾液の線を撒き散らしながら咳き込み続ける。いつものように品よく口を押さえる余裕はないようだ。怒張から滴る唾液の量を見れば、それも無理のないことだと思う。
「なんだよ、先っぽ舐めただけで限界アピールしやがって。まあいい、よく言うよな。上のクチで無理なら、下のクチで咥えさせるまでってよ!!」
 藪岡さんは明日香を突き飛ばすようにして、強引にベッドへ横たわらせた。
「くっ!!」
 明日香の凛とした瞳が、藪岡さんを貫く。藪岡さんはその気丈さに笑みを浮かべつつ、すらりとした両足の間へ腰を滑り込ませる。
「良かったなぁお前、ここいらで一番強ぇヤツ相手に処女喪失できるんだぜ!」
「藪岡さんのチンポはすげぇんだ。テメェみてえなガキ、あっという間に狂わされちまうぜ?」
 周りで見守る人間が、ゴマすりを兼ねた野次を飛ばした。
「はぁ、はぁっ……格好つけないで。結局、交尾がしたいだけなんでしょう?」
 明日香は四肢を掴まれた無様な格好で、それでも強がってみせる。いよいよこれから犯されるんだと察した上での、精一杯の虚勢。
「ああ、ハメてぇってだけだ。テメエにそれ以上は求めねぇ」
 藪岡さんの分厚い手が明日香の両腿を掴み、ついに『その時』が訪れた。

「そら、入ってくぜ」
 浅黒いペニスが、紅い肉を割り開きながら沈んでいく。俺はそれを間近で映す。この見せ場をアップで撮らないと、また後で殴られるからだ。
「お。あんだけ手マンされてた癖して、よく締まるじゃねえか」
 藪岡さんが漏らした感想を聞き、俺は無意識に明日香の顔を窺った。すると、明日香と目が合う。明日香も俺とカメラを見ていた。
「…………ッ」
 体にナイフを突き立てられるような、真剣そのものの表情。祭りのような空気のこの部屋で、彼女だけは心が冷えている。その温度差に心が痛む。
「うし、ぼちぼち膜いくぜ。舌ァ噛むんじゃあねえぞ……おら、よッ!」
 じわじわと腰を進めていた藪岡さんは、ある時点でそう宣言し、一気に腰を突き入れた。
「あっ!? ………っふ、ぐ、ううぅぅっっ!!!」
 破瓜の瞬間、貞淑な令嬢である明日香が出した声は大きかった。太い逸物が、よほど痛かったのかもしれない。あるいは、こんな状況で処女を失う事への悔しさからかもしれない。シーツを握りしめ、下唇を噛み、薄く開いた目から瞬きのたびに涙をこぼす姿は、ひどく弱弱しく見えた。
「なにベソ掻いてやがる。涙流すほどいいのか? なら、もっとしてやるぜ!」
 藪岡さんが、手の位置を変える。右手で明日香の太腿を抱え、左手は臀部の下へ。つまり、明日香の腰を自分の腰へと引きこみやすいように。ここからが本番だ。場の誰もがそう確信した。
 そして、腰が動きだす。ギシッ、ギシッ、とリズミカルにベッドが軋む。巨漢の藪岡さんだけに、軋みの音も普通じゃない。いつベッドが壊れるか、という音に聴こえる。それほどの衝撃、受け止める側はどんな気分なんだろう。そう思って明日香の顔を見ると、彼女は自分の腕で目を覆い隠していた。相変わらず歯を食いしばっていて、並大抵じゃない悔しさが伝わってくるようだ。
「ほおー、大したもんだ。こりゃ『ミミズ千匹』だな。顔にも頭にも恵まれて、マンコまで当たり引きやがったか。ちっと出来すぎだな。ま、だからこそ帳尻合わせでこんな目に遭ってんのかもしんねぇがよ!」
 藪岡さんが腰を打ち込みながら、上機嫌に笑う。
 ミミズ千匹の話は聞いた事がある。しっとりとしたヒダが、千匹のミミズがうねる様に絡み付いてきて、あっという間に射精させられてしまうんだそうだ。
「マジか! へへ、やったぜ。ミミズ千匹のマンコは気持ちいいんだよな!!」
「肉便器としちゃ上等だな。まあマンコが駄目でも、ケツ穴やら喉マンやらで楽しませてもらうつもりだったがよ」
 ケダモノの会話。一人の女を、喋る肉の袋ぐらいにしか思っていない鬼畜集団。そして俺は、そいつらにこき使われる撮影係ときた。なんだろうな、この人生は。

「おら、いつまでも顔隠してんなよ。藪岡クンに可愛がられて、感じまくってんだろ? イキ顔見せてみろや!!」
 ギャラリーの一人がベッドに近づき、明日香が目隠しがわりにしていた腕を掴み上げる。その下から現れたのは、薄目を開いたまま涙を溢す彼女の姿。色白な顔が、頬から耳まで赤に染まりきっている。まるで何度も頬を打たれたように。
「ははっ、こいつボロ泣きしてやがらぁ! こんなケダモノに逝かされるのはイヤーってか?」
「いい加減、現実認めろよお嬢様。アタマ良いんだろ?」
 すかさず悪意ある言葉が叩きつけられる。一番痛いところ、一番嫌なところを狙いすまして。
「くぅ、うっ……!!」
 嘲り笑われた明日香は、すぐに何度も瞬きし、顔を振って涙を散らす。そして凌辱者である藪岡さんを、改めて睨み据えてみせた。
「そのツラなら、もう一踏ん張りやれそうだな。スパートかけるぜ!」
 そして藪岡さんは、また手の位置を変えた。明日香の太腿を下から持ち上げ、腰を膝立ちになった自分の腰丈にまで上げさせる。
「おおーっ!」
 周りから歓声が上がった。理由は明日香のボディラインだ。腰を浮かし、肩と足の踏ん張りだけで体勢を保とうとすれば、自然と腹筋から太腿のラインがくっきりと浮かび上がる。スポーツ万能らしい明日香の腹筋は、想像以上に健康的でかっこよく、いよいよスーパーモデルじみていた。
「くそ、たまんねぇ……」
 明日香のボディラインを見て、衝動を抑えきれなくなったんだろう、逸物を扱いて準備する連中も出はじめる。その中心で、藪岡さんは激しく腰を遣い続けた。ぐちゅっぐちゅっ、という水音と肉の弾ける音が、ハイペースで混ざり合う。見るからに気持ち良さそうなセックスだ。
 そして事実、明日香がかろうじて辛抱できるのもここまでだった。
「う、ううっ……ふん、っくう……あ、あ、っうう………!!!」
 体勢が変わってからもしばらく藪岡さんを睨んでいた明日香は、やがて後頭部をシーツに押しつけ、顎を突き出すようにしながら歯を食いしばりはじめた。そして、駄目押しとばかりにさらに30回ばかり腰を打ち込まれた時。
「あああああぁっ!!!」
 明日香はとうとう口を開き、高らかな喘ぎを漏らしはじめた。
 そこからは、もう坂道を転がり落ちるよう。何度も潮を噴いていたときと同じく、太腿が凍えるような痙攣を見せ、更には愛液があふれ出す。愛液は結合部から直に垂れ落ちたり、あるいは尻肉に沿って滴り、すでに濡れているシーツへ、ボダッ、ボダッ、という鈍い音を立てる。
 感じてるんだ。誰が見ても、どう見ても、それ以外にない。
「ああ、あああ!! ああぁっ……っく、あああぁぁっ、ひ、ひいっ!! はぁっ、はあっはあっ……ああぁぁああーーーっ!!!」
 明日香は、後頭部を布団に押し付けたまま何度も頭を振り、髪を海草のように振り乱して叫び続けた。熟練の竿師を前に、まったく抵抗らしい抵抗ができていない。まるで、ライオンに首後ろを噛まれた小鹿のように。
「おおおお、いい締まりだっ!! いいぞ、逝くぞっ!!」
 そして、藪岡さんは絶頂した。一番の深くまで挿入したまま。
「あっ! な、中に出したの………!?」
 射精の熱を感じたんだろうか。されるがままだった明日香が首をもたげ、信じられないという表情で藪岡さんを見つめる。
「当たり前だ。避妊してもらえるとでも思ったか?」
 一方で藪岡さんは涼しい顔で、最後の一滴まで精を注ぎ込む。配慮なんてするわけがない。藪岡さんには、他人の苦痛がわからないんだから。
「とことん、下衆ね……」
 明日香は不愉快そうに呟いた。だが彼女を囲む人間は、笑みを浮かべるばかり。
「下衆で結構。どうせテメェら上流の人間にとっちゃ、俺らなんぞ下水道のネズミみてぇなもんだろうよ。だが、せっかくテメェもその下水道に落ちてきたんだ。仲良く泥まみれになろうぜ」
 先輩達が包囲の輪を狭めれば、明日香の細い身体は黒い影に覆われる。

 そして、輪姦が始まった。
 布団の上へ仰向けになり、大股を開かされた明日香へ、一人が挿入する。別の4人は、乳房やクリトリス、太腿など好きな場所を刺激するか、あるいは口に咥えさせる。
「んむ、むぐっ……むごっ…………」
「なんだコイツ、ヘタクソだな。カマトトぶってねーでクチ開けろや!」
「もっと舌ァ使えってんだよ舌をよお!!」
 口で奉仕させている人間は、全員が不満を漏らしていた。お嬢様だけに大口を開ける習慣がないのか、それとも嫌悪感のせいか。明日香は先輩達のでかいイチモツを、咥えこむことさえ満足にできない。
「クチ狙ってる奴は大騒ぎだな。こっちは絶品だぜ。マジでミミズ千匹だ、グニュグニュ纏わりついてきやがる。ぼーっと腰振ってっと、一瞬で暴発しちまいそうだ!」
『膣を使っている』一人は真逆で、大喜びだった。明日香のアソコは本当に名器らしい。女慣れした先輩達から絶賛されるなんて、どんな具合なんだろう。カメラの向こうでは、一人また一人とそのアソコを使い回していく。好き勝手に腰を使った挙句、最後は徹底して中出しだ。
「ん、んんんんっ……!!」
 明日香は中出しのたびに目元を吊り上げるが、口の処理が忙しなくて言葉を出す余裕もない。

 先輩達は、明日香だけは休ませず、自分達はたっぷりと休憩をとりながら責め続けた。一通り射精し終えて打ち止めになったなら、バイブやローターのような小道具を使いもする。
 実に5時間に渡って潮噴きや濃厚なセックスを続けられ、明日香は肩で息をしている状態に追い込まれていた。そのボロボロの状態で、マングリ返し……つまりアソコを天に向け、両足を肩につくぐらいまで上げる姿勢を取らせ、徹底的にバイブで責める。これがとにかく効いた。
「へへ、いいカッコだなお嬢様」
「マンコがまだヒクヒクしてやがる。見られて興奮してんのか?」
「安心しろよ変態。これからたっぷりと、長くて硬ぇのを咥え込ませてやる」
 責めが始まる直前。マングリ返しという屈辱的な格好を嘲笑われ、明日香は力強く先輩達を睨み上げていた。
「はぁ、はぁ……はぁっ…………」
 呼吸すらままならない状況だから涙目なものの、気迫は充分だ。だが。拘束ピストンが始まってからわずか数分で、その威勢のよさは崩れ去る。
 なにしろ小さな道具だから、バイブの尻の部分を掴んで激しく上下させるだけで、人間では到底真似できないような超高速ピストンが実現できてしまうんだ。そして受ける側の明日香にしてみれば、ほぐれきって急所中の急所になっているポルチオを、凄まじい速さでノックされていることになる。となれば、もう絶頂なんていう生易しい次元の話じゃない。もう、本当の逝き続け。手マンによる潮吹きの快感なんて目じゃない。

「はっはっはっ、はあっはっ……はあっ、はっはっはっ…………!!」

 顔中に汗をかき、瞳孔を開き、細く開いた口から犬のような呼吸を繰り返す。下腹が何か別の生き物のように激しく蠢く。俺はそんな明日香の様子を、ゾッとしながらビデオに撮っていた。女が逝き続けている時の反応なんだろうが、ひどく怖い。死体の一歩手前ぐらいに生気がないんだ。
 この時の明日香は多分、ほぼ一突きごとに逝っていたんだと思う。荒い呼吸だけで耐えているのは、本当に『かろうじて』だったんだろう。
「おらおら、どうだ!? イキっぱはきついだろ!?」
 先輩達はバイブを突きこむ手を緩めない。蹂躙を受ける割れ目には、不思議と動きがなかった。責めの直前まではあれほどいやらしく開閉していたというのに、蝋で作られた紅い華のように、ビラビラが常に同じ角度で開いている。
 一方、割れ目の中は常に変化し続けていた。沸騰しきったミルクが跳ねるように、バイブの蹂躙にあわせて真っ白い液が飛び散る。あれも本気汁、なんだろうか。その噴出し方は段々と大きくなり、そのうち必死に自我を保とうと喘ぐ明日香の顔まで汚しはじめた。明日香がとうとう喘ぎはじめたのは、ちょうどその頃だ。
「あ、あああ、ああああっ!!はあっ、はあっ……ああぁああんっ!!ああっ、はああっ……うぁああああっ!!!」
 なんとも切なそうな叫び声は、聴いているだけで胸がしめつけられるように痛む。だが、先輩達は手を止めない。
「いきが、でぎ……ハッハッハアッ……かはっ、あああ……ひっ、ひ…い、いぎ……が…ぁ………あ………!!!」
 結局、辿る道は一つ。絶頂続きでの呼吸困難による、失神。
「うっは。こいつ、イキすぎて気ィ失いやがった」
「なんかヤバそーだったしな、さっきから。っと、あーあーコイツ、漏らしやがって」
 失神に気付いた先輩がバイブを引き抜いた瞬間、大量の液体が割れ目の外へと流れ出し、明日香の身体全体を流れ落ちていく。
「アヘりまくった挙句にお漏らしとか、アホ丸出しだな。エリート中のエリートって話だったが、一皮剥きゃこんなもんか」
「大学なんて所詮、流されるだけのバカが行く所だしな。しっかし、この責め結構効いたな。これからもちょいちょい混ぜるか」
 自分の小便にまみれた明日香を囲み、勝ち誇ったように笑う先輩達。その刺青の入った後ろ姿は、まるで鬼のようだった。


     ※               ※             ※


 一夜明けても、俺が撮影役から解放されることはなかった。多分、俺が一番カメラマンとして都合がいいからだ。不良とつるむあまり、親と疎遠になっている21歳のフリーター。学生でない以上、夜遅くまで連れ回しても問題がなく、家族構成も割れているから、いざとなれば『姉ちゃんを輪姦す』という脅しが使える。
 実際俺はその可能性を恐れて、ずるずるとカメラマンを続ける選択をした。無断欠勤直後にまた不定期の休みがほしいとバイト先に言うと、当たり前だがクビにされてしまったから、今ではホテルでの撮影役が唯一の収入源だ。
 そういう経緯を高根沢さんに話すと、口止め料も兼ねてバイトと同格の金を貰える事になったが、犯罪の片棒を担ぎつづける事には違いない。気分は重い。でも、そんな俺の苦悩なんて、明日香に比べれば微々たるものだ。

 明日香は、101号室で延々と輪姦され続けていた。
 食事やトイレの時間さえ、充分には与えられない。
 水分補給が必要なら、誰かが口に含んだ水をディープキスで口移しするか、無理矢理顎を掴みあげ、真上からペットボトルの中身を流し込む。
 固形物を食べさせる時には、箸でアソコに突っ込んだザーメンまみれの宅配寿司を食わせたり、グチャグチャに握りつぶしたコンビニおにぎりを口へ詰め込み、ダブルフェラで喉まで押し込む。
 “大”をする時は、ガラス張りのバスルームでの公開排便。“小”に至ってはする機会さえない。なにしろ普段から、猛烈な指マンで潮と共に撒き散らしているんだから。
 正直、撮っているだけで気が滅入った。もはやクソったれたイジメだ。ホテルのロビーで仮眠を取ろうとしても、目を閉じれば瞼の裏に浮かんでしまう。けして声には出さないものの、明らかに『いや』『やめて』と訴えている、明日香のピンク色の唇が。気丈に周りを睨みながらも、時々泣きそうに垂れる眦が。
 さんざん不良(ワル)を気取っておきながら、こんな事をウジウジ悩む俺がおかしいのかもしれない。どうせ外道の世界に生きるなら、いっそ染まりきってしまった方が得なのかもしれない。後輩のユウトを見ていると、そんな風に思えてくる。奴は俺とは違って、この状況を心底楽しんでいるから。

 カメラ小僧の俺とは違い、ユウトは竿役として『活躍』していた。
 理由は3つ。女を食いまくって経験が豊富なこと。日に何度出しても、勃起を継続できる旺盛な精力。そして、日本人離れしたペニスのサイズ。
「要は、コレが認められたんスよ。でけぇっしょ? あんまデケェから、一回ソープでも断られたんスよ、痛いーっつって。ま、そん時ゃ顔ガツガツに殴ってムリヤリ犯したんスけど」
 ろくでもない武勇伝と共に、勃起したブツが俺に向けられる。
 確かに、薄々俺よりデカい気はしていた。ただ年下にサイズで負けてるなんて認めたくなくて、今まではあえて見ないようにしてきた。だが、改めて見ると確かにすごい。
 皮は完全に剥けていて、サイズは洋物ビデオでよく見るクラス、かつ血管が浮いていて滅茶苦茶固そうだ。全体的に厳ついが、特に亀頭が妙にゴツくて、俺の握り拳の2/3ぐらいはある。
「あーやべ。話してるうちに興奮して、なんか痛くなってきました」
 ユウトはそう言いながらブツを扱き、薄ら笑みを浮かべた先輩達の方へと歩き出す。
「オイオイ、おっ勃ててんなぁ。もうヘソにつきそうじゃねーか。楽しみにしすぎだろこの猿め!」
「うっへ。マジですげーな、そのカリ。おら嬢ちゃん、見てみろよ。今からあれブッコむってよ? あいつ若ぇから、チンコもカテェぞ?」
 ほぼ無視されている俺とは違い、ユウトは随分先輩から可愛がられているようだ。
「…………ッ!!」
 そしてフェラを中断してブツを見せ付けられた明日香は、これまででも指折り数えられるぐらいに険しい目つきでユウトを睨み上げる。負の感情とはいえ、俺よりもよっぽど意識されている。あの明日香に。
 なんだろう、この疎外感は。これが、のし上がっていくヤツと、いつまでも半端なヤツの違いか。こんなに人間力に差があるのか。俺とあのチンピラとでは。
「……っ最低ね、あんた! そんなんじゃ絶対に、ロクな大人にならないわ!」
 ユウトに何か耳打ちされた明日香が、頬を赤らめて叫ぶ。あの近さ。ユウトにはきっと、明日香の口の匂いすら届いているだろう。
「別にいいぜ。ロクな大人じゃ、ここでアンタみてーな上玉は犯せねーだろうからよ。
 …っし、センパァーイ、ちゃんと撮ってますー!? ハメますよー!!」
 ユウトがこっちを振り向き、大声で宣言した。その声をきっかけに、場の注目が俺に集まる。ユウトと楽しげに話していた時とは打って変わって、死んだような目を向ける先輩達。心の距離が遠い。俺はただ、『カメラを持つ台』としてここに立っているだけ。手足さえあれば誰でもこなせる、安価な代替パーツだ。
「…………ああ、撮ってるぞ…………」
 そう答えるのが精一杯だった。
「っし。んじゃいくぜ明日香ァ!!」
 俺の呻きを聞き届けると、すぐに場の注意は俺から離れていく。俺の生意気な後輩を中心にして。

「………っあ、ぐッ………!!!」

 ユウトの腰が沈み込む動きをした直後、明日香から呻きが漏れる。輪姦されまくって、並大抵のサイズじゃ声を上げなくなっていたのに。そんなに、ユウトの物がでかいのか。存在感があるのか。俺の心は乱れていた。カメラを構える手の震えで、それがはっきり自覚できた。
 心が痛い。まるで初恋の相手が、部室で後輩に犯されているのを見るような苦しさだ。つりあわないし、そもそも碌な接点もない。向こうは俺を『ケダモノの取り巻き』としか見ていないのに。

 スサッ、スサッ、とシーツの擦れる音がする。あっ、あっ、という女のややハスキーな喘ぎがそれに混じる。
 俺のカメラは、金髪のガキを背後から捉えていた。蛇みたいに細い、喧嘩すれば俺でも簡単に勝てそうなその背中と腰は、リズミカルに動き続けている。
「うひょー、こりゃスゲェ! 俺、ミミズ千匹の女とやったことあるんスけど、これそんなレベルじゃねーっすよ!? うわーこれたまんねえ!!」
 ユウトは嬉しそうに明日香の具合を語っていた。ヤツの背中が邪魔で、明日香の表情は見えない。カメラで捉えられるのは、ユウトの腰を挟むようにして開かれ、突き込みに応じて力なく空を蹴る両足だけ。でも、それで充分だ。もう何時間も、カメラと肉眼で眺めてきた美脚。それが揺れているだけで、あの明日香がユウトに犯されているんだという事実が理解できてしまう。
「あああやべっ、出るっ!! 出していいっすよね。俺、このまま抜かずの10発できるんで!!」
「へっ、好きにしろよ。この猿め」
「抜かずの10発かー。いいねぇ、俺もできっかな?」
 砕けた会話が交わされた直後、それまで正座に近かったユウトが膝を立てる。そして、尻肉が何度も引き締まる。射精してるんだ、明日香の中に。
「おら、どうだ嬢ちゃん。活きのいいザーメンだぜ。こりゃ孕んじまうかもなぁ!!」
 先輩の一人がそう言って体を揺らした時、ちらりと明日香の顔が覗く。
 明日香は、横で膝立ちになった先輩のモノを咥えさせられていた。黒髪を鷲掴みにされて、根元近くまで。
「んむ、んんっ……!! んんんんんっ…………!!!」
 その苦しみの中でも、明日香は横目でユウトを見上げる。今この瞬間、明日香の心に一番大きく存在しているのはあの無礼なガキだ。
「うっおー、スゲーでたぜ明日香ぁ。俺がイク瞬間にマンコひくつかせんのは反則だろ。どんだけザーメン欲しいんだよ」
 ユウトはそう言って息を吐く。さすがセックス慣れしていると豪語するだけあって、妙に余裕のある態度だ。明日香に睨まれても、その余裕は消えない。
「ま、そうねだるなって、まだまだガンガンやってやっから。お前も楽しみなんだろ? 腰がヒクヒク動いてんぜ」
言葉責めを交えつつ、ユウトは体位を変える。自分は本格的な膝立ちになり、明日香には脹脛に手を添えてまっすぐに伸ばさせる。その上で、再び腰を遣いはじめた。
「うああっ!?」
 直後、明日香から新鮮な悲鳴が漏れる。ユウトの耳障りな笑い声がそれに続いた。
「へへ、スゲーだろ。こうやって足ピーンと伸ばした状態でハメっと、どの女もビビんだよ。俺ってカリでけーからさ、圧迫感が半端ねーんだろうな。深すぎるぅー抜いてぇーっつってよぉ、腰振りまくんだ。ま、嫌がってんのは最初だけで、すぐに離れらんねーようになるんだけどな」
 ユウトの手は、明日香の足から離れてとうとう腰を鷲掴みにする。そして自分の方へ引きつけるようにして、ぐうっ、ぐうっ、と深くハメ続ける。
「う、う、ううっ!! ぅく、あう、ううう……あ…………うっ!!」
 明日香が歯を食いしばっているのが見えた。年下のガキにいいようにされるのは耐え難いんだろう。でも身体を開発されまくった彼女は、もう感じてしまっている。
 ピンと伸ばした足の先、足指が震えていた。時には布団へしがみ付くように爪先立ちになり、時には5指で虚しく宙を掻いて。それは、快感に翻弄される彼女そのものだ。
「う、ああっ……! あ、あっ……あっ!!」
「とうとう喘ぎはじめやがったな。こんなガキに良い様にされてアヘってやがんのか? 恥ずかしくねーのかよ、人生の先輩としてよ!」
 俺は、心が腐ったように痛むのを感じた。明日香が快感の反応を見せるたびに。誰かがそれを嘲笑うたびに。

 結局ユウトは、側位、後背位と体位を変えながら、本当に10発以上ハメ続けた。ただの一度も休まずに。
「ふいーっ、出た出た…………金玉カラッポだわもう」
 最後に正常位でたっぷり数秒かけて射精し、ようやくユウトはモノを引き抜く。すると真っ赤になった明日香の割れ目からは、驚くほどの量の白濁があふれ出した。恐ろしく濃い。先輩達の精も濃いが、一切膣の粘膜が透けて見えない白さはそれ以上だ。
「おいおい、スゲー量出したな!? これ、俺ら全員が中出しした分とタメ張んじゃねぇか?」
「ガキっつっても、ここまで出せんのは大したもんだわ」
 先輩達に絶賛され、ユウトは誇らしげに笑いながらこっちを向く。
「さーて先輩、アップ、アップ!」
 挙句には、先輩である俺に向けての手招きだ。腹立たしいが、調教師側になったヤツには従うしかない。その俺の前でユウトは、明日香に何かを耳打ちする。
「なっ……!!」
 明日香はすぐに怒りを露わにした。だが、今さら何言ってんだ、とユウトがさらに囁くと、静かに瞳を閉じる。
 そして、明日香は顔をこっちに向けた。そして正常位の名残として足を開いた格好のまま、指でゆっくりと割れ目を左右に拡げていく。当然、ザーメンがあふれ出た。牛乳のように白い男の精が、次々と。
「目ェ開けろよ、ザーメン袋の明日香オバサン♪」
 ユウトが耳元で囁きかけると、明日香は一瞬肩を強張らせ、一度大きく息を吐いてから、目を開いた。まるで親の仇へ向けるような鋭い目。でも、それさえ俺個人に向けられたものじゃない。この恥辱の撮影を強いるユウトへの怒り……そのお零れのようなものだ。
「くくっ、ホントすごい量だな、なあ明日香。お前最高だったぜ。お前もよかっただろ、腰カクカクしてイキまくってたもんなぁ!? ね、センパイも見ましたよね? 全部バッチシ撮ってましたもんね?」
「…え? あ、ああ……」
 いきなりのフリに、俺は短く呻くしかできない。どこかで嘲笑が聴こえた気がする。
「ほら、カメラマンもああ言ってんぜ」
 ユウトは至福の笑みを浮かべたまま、明日香の頬にキスをし、肩に手を回し、乳房を揉みしだく。
「………………。」
 明日香は俺の持つカメラに真っ直ぐな視線を向けたまま、難しい顔をしていた。怒りを必死で抑えているような。泣き出す寸前のような。あるいは、深い絶望に沈んでいるような。
 俺は、唯一の役割としてその顔にカメラを向けつづけた。


     ※               ※             ※


 その事件が起こったのは、監禁開始からちょうど1週間後のことだった。

 入れ替わり立ち替わり輪姦される明日香は、段々とセックスに慣れてきたらしい。犯されても喘がず、気丈な目でじっと耐えるばかり。いわゆるマグロだ。
 ただしそれは、あくまで俺が撮影している間の話。

『こんな事をしていて、あなたの人生に一体何が積み上がるというの?』

『あなたの目を見ればわかる。あなたはまだ、後戻りができる所にいるわ。目を覚まして!』

 俺が休憩している間……つまり八木さんが撮っている時、明日香はこういう問答を仕掛けていたようだ。
 普通なら頬でも張られて終わるところだが、そこは飛び級できるほどの頭を持ち、若くして人の上に立つ女。とにかく駆け引きが上手い。
 わざと貶して激昂させてから、優しく部分的に同意していく事で、自己肯定感が低い人間を虜にしたり。含みを持たせた物言いで興味を惹き、壊すには惜しい相手だと思わせたり。
 恐ろしいのは、僅かな触れ合いで相手の知能レベルを推し量り、絶妙な言葉選びで相手に会話そのものを楽しませることだ。この罠に掛かって、何人もが彼女に靡いた。違和感を覚えた高根沢さんが容疑者を締め上げた時には、すでに5人も明日香寄りの人間がいたようだ。
 その5人の中には、当然ながら八木さんも含まれる。八木さんは人間性にこそ問題があるものの、意外に頭がキレるという噂があった。どうも明日香が懐柔した5人は、全員この八木さんに近い人間らしい。つまり、智恵が回り、グループ内での影響力もあり、かつ善人とは言い難い人間だ。そういう中堅どころを誘惑してグループ内の結束を乱しつつ、隙を突いて脱出の手引きをさせる……という算段だったと思われる。

 俺は騒ぎを聞いて仮眠から覚め、事情を聞かされて驚いた。そんな計画は寝耳に水だったから。俺が撮影している時は、交渉している素振りはなかった……というより、明日香が誰かと話し込んでいる所すら見かけなかったんだ。
 その理由はわからないが、仮説なら立てられる。俺が撮影している間は、大抵藪岡さんを始めとする幹部の目があるんだ。でも八木さんは、グループでも古株。当然、俺よりずっと信頼されているわけで、八木さんが撮影している間は幹部連中の監視も緩かった可能性が高い。つまり、明日香にとっては狙い時というわけだ。
 そして俺の頭にはもう一つ、別の理由も浮かぶ。
 もしかして明日香は、わざと俺がいる時間を避けたんじゃないか?
 頭のいい明日香のことだ、俺がムリヤリ撮影役をさせられていることに気付いたかもしれない。だから俺を巻き込まないよう、八木さんのいる時間にだけ交渉を……
 そこまで考えて、俺は自己嫌悪に陥った。
 ムシの良すぎる考えだ。明日香の立場から見て、俺達に善も悪もあるか。どんな事情があれ、悪に加担している時点で悪なんだ。善を気取りたいなら、今この場で藪岡さんを殴るぐらいしてみろ。そんな意気地もないくせに、のぼせあがるな。俺は、甘い夢を見た自分をそう戒める。

 意を決して101号室の扉を開けると、ちょうど高根沢さんが八木さん達5人を殴りつけている所が見えた。
「テメェら……揃いも揃って絆されやがって!!」
「す、すんません!! 勘弁して下さい!!!」
 八木さん達は、ネックレスを千切られ、前歯を折られ、鼻から大量の血を流して怯えきっている。高根沢さんはそんな5人に向かって唾を吐き棄て、顎で出口を指し示した。すると何人かが八木さん達の腕を掴み、出口へと引き摺っていく。野太い悲鳴が虚しく響く。
「……お前は? 何か知ってたンか」
 次に高根沢さんが睨むのは、俺だ。俺はすばやく首を振った。
「フン、どうだかな」
 高根沢さんは溜め息をつき、最後に明日香の方を向く。うろたえる俺とは違い、明日香は覇気を失っていない。目の前で流血沙汰があり、自分も頬を張られた形跡があるというのに。
「しかし、これでハッキリしたぜ。コイツは、シラフのまま泳がせると厄介だ。
 本格的にパアにしなきゃならねぇ……どんな手ェ使ってでもな!!」

   ―――どんな手を使ってでも。

 高根沢さんの声が心に響く。嫌な予感がした。
「オイ、“冷たいの”持って来い」
 それまで腕を組んで様子を見ていた藪岡さんが、近くにいた先輩に命じる。
「えっ! “冷たいの”……っスか?」
 先輩は一瞬驚くが、藪岡さんが頷くと、意を決したように部屋の隅へ向かう。トランクケースが漁られ、数分後、小さなプラスチックの容器が藪岡さんに差し出された。藪岡さんはその中から1本の注射器を取り出す。状況からして間違いない、シャブだ。藪岡さんがヤクザと繋がっているという話は有名だが、まさかシャブにまで手を出していたなんて。
「こいつは雪ネタっつってな、ヤクザから仕入れた純度の高ぇヤツよ。せっかくシャブを覚えるんだ、本物を味わわせてやる」
 明日香の表情が凍りつく。頭がいいだけに、薬を使われた結果自分の身に起こる事を、リアルに感じ取っているんだろう。
「……私にそれを使ったら、もう本当に後戻りはできないわよ。自分が何をしようとしているのか、冷静に考えなさい!」
 明日香は、内心では震えているだろうに、あくまで毅然とした態度で諭してみせる。でも、そんな説得に意味はない。
「ああ、考えたぜ。テメェをシャブセックス漬けにして、そのよく回る頭をオシャカにする。それが俺らにとっての最優先だ」
 その言葉と共に、注射器が明日香の首筋に宛がわれる。
「首に打つと効くからよ。トぶ覚悟しとけ」
 針が首筋へと潜り込めば、さすがの明日香も震えはじめた。
「あ、あなたのお母様は、こんな事をさせる為にあなたを産んだわけじゃないはずよ……!」
「どうかな、オフクロもシャブは好きだったぜ。お前もすぐにそうなる」
 藪岡さんの太い指がピストンを押し込み、明日香が目を見開く。
「はっ ………く、ウっ…!?」
 瞳孔が開き、汗が滲み。毒でも飲んだような反応。
「どうだ、世界が変わってきたろ? 初っ端が雪ネタなんて幸せな女だ。
 ……おいお前ら、ちっと可愛がってやれ」
 藪岡さんが注射器を放り捨てながら、周りの先輩達に呼びかけた。
「ウス」
 先輩達は面白そうに笑いながら、明日香を囲む円を狭め、明日香の体に触れはじめる。
「ひゃっ!!」
 首筋と腕を軽くさすっただけで、明日香から悲鳴が漏れた。
「ひひ、カワイイ反応しやがって!」
「シャブ打たれっと、息吹きかけられるだけでもイッちまうぐらい敏感になるからな。こうしてくすぐられんのは堪んねぇだろ?」
 先輩達は明日香の反応を楽しみながら、ひたすらにソフトタッチを繰り返す。
「ひゃ、ひゃあ……あ、ひゃうっ!!くあ、あ、あひゃひゃ……や、あひっ、んく、くひいっ……あひひい、いひっ、や…い、いっ!!」
 無数の手で二の腕や太腿、腋を指でくすぐられる明日香は、激しく身を捩りながら笑い続けるしかない。笑い声には、何度も『や』という音が混じった。『やめて』と言いかけては、必死に飲み込んでいるんだろう。くすぐられて許しを求めるのは自然なことだ。でも、明日香はその言葉を口にしない。ここまで理不尽な事をされておきながら、惨めに許しを乞うのは我慢ならない。多分、そういうプライドだろう。
「ひひっ、あひゃひひっ!いぃっ、いひああぅ、はぁっぐ!!……はぁ、はぁ……あははははっ!!」
 荒い息で叫び続ける明日香。普段なら動作一つ一つに淑やかさがある優等生も、こうなっては品性もクソもない。涙と鼻水、涎で顔を汚し、手足をばたつかせて暴れ回る。
「ふんんん……ん、あ、やぁっ!? あひゃ、ひゃはははっ!! はぁっはぁっはっ、ひひあはははっ!! や……はっ、んあぁあああ゛ーーーっっ!!!」
 笑い声とも泣き声ともつかない叫び声が、部屋に反響していた。聴いているこっちの耳までおかしくなりそうなほどに。

 脱力しきるまでくすぐり責めを受けた後も、明日香は休む事を許されなかった。膝を開いて深く曲げた、相撲でいう蹲踞の姿勢でのフェラチオを命じられる。
「おら、次はこっちだ。ボーッとしてる暇ァねえぞ!」
「こっちもちゃんと扱けよ、ウスノロ!」
 明日香を取り囲んだ先輩達が、ドスの利いた声を上げる。明日香は腰を深く落としたまま、突き出された2本の剛直を左右交互にしゃぶりつつ、両の手の平でまた別の2本を刺激し続けなければならない。
「ほら出るぞ、こぼさず飲めよっ!!」
 一人が明日香の頭を掴んで激しく腰を振りつつ、スパートをかける。
「んぶっ、おっ………!!」
 明日香は眉を顰め、露骨に嫌がりながらも口内射精を受け入れるしかない。ここ数時間ばかりセックスをしていないせいで、だいぶ精液も溜まってきているんだろう、射精はたっぷり数秒続く。
「う゛、げほっ!!」
 ようやく射精が終わって逸物が引き抜かれた直後、明日香は手で口を覆って咳き込んだ。そのいかにもお嬢様っぽい動作にそそられるのは、当然俺だけじゃない。
「俺のもしゃぶれ、早くだ!」
 別の一人が、ギラついた目で怒張を突き出す。
「もう我慢できねぇ、こっちもだ! 2本咥えるんだよ、出来んだろォ!」
 令嬢特有の小さな口に、血管の浮いた太いブツが2本同時に入り込む。
「んぶうっ!! んむっ、ん、れあ、えろっ…………」
 明日香は困った表情で、口一杯の異物を嘗め回すしかない。何本もの逸物を、額や鼻先に突きつけられながら。
「ハァ、ハァ……ハッ、ハァー………」
 逸物を吐き出すたびに、息が荒くなっていく。何徹もしたような表情の中で、目だけが変にギラついている。全身の汗がひどい割には、凍えるようにガタガタと震えてもいる。
「だいぶシャブが効いてきたみてぇだぜ、この女」
「ずーっとクチで処理させてっからな。俺らのオスの匂いにあてられたんだろ」
「マンコもかなり濡れてるみてぇだしよ。おら、見せてみろ!」
 一人が明日香の膝を蹴り、足をさらに開かせる。すると、前に見たときよりかなり濃くなった茂みから、ポタポタと愛液が垂れているのが見えた。垂れた先には大きめの液溜まりが出来てもいる。発情していることは否定のしようもない。
「ヤブっさん、いい感じっスよ!」
 先輩の一人が叫ぶと、ソファに深く腰掛けた藪岡さんがようやくスマホから目を放した。藪岡さんの基本スタンスは、他人のために奉仕をせず、おいしい部分だけをぶんどるというもの。それはセックスの時も同じだ。自分で前戯はしない。他の人間にお膳立てをさせて、ハメる部分だけを最初にやる。その身勝手が許されるんだ。誰よりも腕っぷしが強いから。
「オウ」
 藪岡さんは短く返事をし、のっそりと立ち上がる。なぜか不機嫌そうな感じで、部屋の空気が冷え込む。藪岡さんの機嫌はよく解らない。本人は別に怒っていないと言っていても、明らかに殺気のようなオーラが漏れている時がある。
「へっ、もうマンコがグチョグチョじゃねーか。コレが欲しくてたまんねぇんだろ?」
 ベッドに押さえつけられた明日香を見下ろし、藪岡さんが逸物を見せつける。確かに明日香の内腿は、一面が濡れ光っていた。ただくすぐられて、フェラをさせられただけなのに。
「……別に。動物みたいに性欲を満たしたいなら、好きにするといいわ」
 明日香はあくまで冷たい態度のまま、顔を横向けて目を閉じる。こんな言い方をされれば、普通ならヤる気が削がれる。普通の人間の心を持っていれば。
「言うじゃねえか。ならその言葉通り、好きにするぜ」
 でも、藪岡さんの心には響かない。相手の心情なんてまるっきり無視して、真珠入りの太い逸物を割れ目に擦りつける。
「んっ……ふ、ふん……んんっ」
 明日香は頬をシーツに埋め、顎を浮かせながら小さく鼻を鳴らす。シャブのせいで、皮膚を撫でられるだけでも震えるぐらい敏感になってるんだ。性感帯であるラビアへの刺激ともなれば、余計に感じることだろう。
「マン汁がどんどん出てきやがる。ついこないだまでバージンだった癖に、すっかり変わっちまったなあ、お嬢様よう」
 藪岡さんは割れ目の表面を刺激しながら、明日香の自尊心をも傷つける。
「あなた達が、そうなるようにしただけでしょう!!」
 どこまでも生真面目な明日香は、藪岡さんの挑発に乗って睨みつけてしまう。だが藪岡さんは、それを待っていたらしい。
「おら、もう一度オンナにしてやる!!」
 そう怒鳴りながら、ついに亀頭を割れ目の中に押し込んでいく。
「あっ!」
 明日香が目を見開いた。
「あ゛あ゛ああっ!!!」
 普通サイズのペニスではもう喘ぎもしない明日香だが、さすがに藪岡さんサイズとなると悲鳴を堪えきれない。目を閉じ、眉を苦しそうに顰め、大口を開けて苦痛を訴える。
 挿入の速度は遅い。亀頭から幹にかけて、一秒ごとに数ミリという進みで少しずつ埋没していく。ミチミチ、ミリミリ、という音さえ聴こえてきそうなほど、筋肉を痙攣させて。改めて見れば、挿入時に明日香の内腿にできる筋の深さも、他の先輩達の時とはまったく違う。どれだけ無茶なサイズを迎え入れているのかという事が、その筋の深さからも見て取れる。
「おー、すげぇ声。やっぱあんだけデケェと痛いのかね?」
「いや、気持ちいいんだろ。膣の形変えられるぐらい太ぇ上に、粒々が擦れるんだぜ。おまけにシャブで敏感になってる粘膜だ。挿れられただけでイってもおかしくねえ」
 先輩達は、明日香の反応を淡々と解説する。一方で俺は、口の中の生唾を飲み込むことさえできずにカメラの液晶を眺めていた。
「おー、よく締まるな。バージンだった時より締まってんじゃねえか?」
 藪岡さんは、亀頭部分が露出するまで腰を引いてから、もう一度腰を沈めなおした。すると一度目とは違い、かなりスムーズに半ばほどまで一気に入っていく。
「ああ……あ、あ……!!」
 ここでまた、明日香の表情が変わった。布団に後頭部をつけ、目を見開いたままで天を仰ぐ。口も大きく開いていて、舌さえ覗いてしまっている。まるで首を絞められたよう。あまりに太い物を強引に挿入されて、呼吸が上手くできてないんだろう。
「いい顔だ。もっとよく馴染ませてやる」
 かなり深くまで入った時点で、藪岡さんは動きを止めた。のしかかる格好で密着したまま、外から見る限り動かなくなる。でも、繋がりあった割れ目の中では色々とやっているようだ。
「う、動かさないで、気持ち悪い……!」
 苦しそうな表情で耐えていた明日香が、藪岡さんの肩を掴むようにして囁く。
「気持ちいい、の間違いじゃねぇのか? 濡れたヒダでキュウキュウ締め付けてきやがって。このままイッちまいそうだぜ」
 藪岡さんは笑みを浮かべ、ごく浅く腰を動かした。それだけで明日香の足が、全力で走るように緊張と弛緩を繰り返す。
「いい具合になってきたな。じゃあ、本番といくか!」
 藪岡さんはそう言うと、一旦割れ目から逸物を抜き、明日香の足を掴んでうつ伏せの姿勢にさせた。そして細い腰を分厚い手の平で掴むと、改めて背後から挿入していく。
「ううう……うぅ…………ああああ゛あ゛…………!!」
 藪岡さんの腰が前に進むほど、明日香の呻きがはっきりとしたものになっていく。挿入はかなりスムーズなようだ。
「うし、動かすぜ」
 藪岡さんが念を押すように唸り、明日香の腰を掴み直してから、とうとう本格的に腰を遣いはじめた。ギィッ、ギィッ、ギィッ、と最初の3回ほどベッドが重々しく軋み、その後はギシッギシッと連続して軋むようになる。同時にパンパンと肉の打ち合わされる音もしはじめ、セックスが始まったんだという実感が沸いてくる。
「うおおおっ、気持ちいいぜ! なんだお前、シラフの時よりよっぽど具合がいいじゃねえか! オイ、カメラ。正面から映せ正面から!!」
 藪岡さんは上機嫌で腰を振りながら、横から撮影していた俺に叫ぶ。
「は、はいっ!」
 俺は背筋を伸ばし、二人のベッドの正面に移った。普通ラブホテルのベッドは壁際に枕が来るものだが、今は上下が逆だ。
「おら、カメラ来たぜ。ツラ見せろや!」
 藪岡さんは自分もカメラを見ながら、明日香の黒髪を掴み上げる。
「くうっ……!!」
 髪の痛みか、恥からか、明日香がカメラに向ける視線は鋭い。外人の血が入っているから、凄みが強い。でも、それも最初だけ。藪岡さんに突かれ続けるうちに、段々と目から強さがなくなり、視線が泳ぎ、ついには俯いてしまう。
「なんだよ。レイプされときながら、カメラ睨み続ける根性もねぇのか」
「ば、馬鹿にしないで…………!!」
 藪岡さんが勝ち誇ったように笑えば、明日香も負けじと顔を上げてカメラを睨む。でも、その顔は普通じゃない。凄まじい汗をかきながら、疲れきった表情をし、目だけが爛々と輝いている。口での奉仕を強要されている時にも目にした、シャブ中毒の顔だ。
「おーう、気持ちいい気持ちいい。最高だぜ」
 藪岡さんはさらに激しく腰を打ちつける。ベッドの軋み、肉の弾ける音、そして粘ついた水音……それが延々と続く。
「はぁ、はぁ、はあっ……はぁあ、ああ……あっ!!」
 明日香は必死にカメラを睨みながら、細く開いた口で荒い息を繰り返す。しばらくはそうして耐えていた。耐えられていた。でも、セックス開始から10分ほど経った頃。
「うんんっ……!!」
 たまらない、という感情をはっきりと表したうめきと共に、明日香は足を閉じた。それまでは両脚を肩幅以上に開いて、バックからの突き込みを受け止めていたのに。誰の目にも明らかなほど、明日香は弱っている。当然、その弱みを肌で繋がっている藪岡さんが見逃すはずもない。
「そら、ハメ方変えんぞ!!」
 藪岡さんが唸り、明日香の下腹部を丸太のような腕で抱え込んだ。そして細身ごと持ち上げるようにして、明日香を膝の上に乗せてしまう。
「はうっ!!」
 明日香は普段の落ち着いた声より、かなり高い声を出した。ひょっとして、この幼さを感じる声が地声なんだろうか。
「自分の体重で深く入ってくだろ。俺の太ぇのでコレやると、気持ちいいぜぇ?」
 藪岡さんの腕がまた明日香の腰を掴み、抜き差しのリズムを作っていく。
「はあっ、ああ、ああは……っぁ!!」
 さっきのバックスタイルより喉が自然に開くからか、明日香の喘ぎはかなりトーンが高い。
 藪岡さんの膝の上で犯される明日香は、初めのころ、品の良さを保っていた。膝を閉じ合わせた、いわゆる女の子座りで挿入に耐える様子も、シーツを見つめる憂いを帯びたような表情も、まさに深層の令嬢という感じだった。
 でもその品のよさは、唐突に崩れ去る。
 変な音がした。じゅぶっ、じゅぶっ、という水音が発していたアソコから、ある瞬間『ぎゅじゅっ』という、濡れた雑巾でも絞るような音が聴こえた。その直後だ。
「はあっ!?」
 明日香が目を見開いて叫んだ。致命的、という響きの声だった。同時にそれまでぴったりと閉じていた膝が開き、左足が跳ねる。
「おら!!」
 その瞬間、藪岡さんも大きく動く。体を後ろへ反らすようにして、明日香のバランスを崩したんだ。
「あ、あっ!!?」
 明日香は、大きく足を開いてバランスを取るしかない。その状態で藪岡さんの巨体が突き上げを再開すれば、体位は開脚のままで固定されてしまう。
「く、く……うっ!!」
 明日香は体勢が変わってから、しばらく歯を食いしばって耐えていた。でも、それもほんの1、2分のこと。苦しさで喘ぎはじめれば、そのまま口を閉じられなくなる。
「あっ、あっ、あっ……うあっ!!はあぁ、あっ……あ!!」
 明日香の声は、かなり大きかった。快感が大きいだけならいいが、ひょっとして声を抑える機能がバカになってきてるのでは、と思えてしまう。抑えきれなかった大声と、抑えずに漏らした大声は聴いた感じが違うんだ。もちろん、人一倍しっかりした明日香が、俺達の面前で恥じらいを捨てるなんて考えられない。でも、今この時に限って、自制するだけの余裕をなくしているように見えてならない。
「へへっ、また気持ち良さそうにうねらせやがって! 子宮口ゴツゴツ突かれんのが、そんなにたまんねぇかよ!?」
 藪岡さんは腹を波打たせながら、かなり大きく腰を突き上げていた。明日香が足を開いているから、結合部は丸見えだ。初日よりやや濃さを増した茂みの下、紅い割れ目の間に、黒人並みのデカブツが出入りしている。デカブツの幹には相変わらず無数の真珠が埋め込まれていて、逸物が抜けるたびに外へ露出した。その露出の仕方は、すでに目一杯開いている割れ目をさらに変形させながらつるりと生み出される感じで、ものすごく不自然だ。明らかに逸物のサイズと、華奢な明日香の身体の釣り合いが取れていない。
「はあっ、はあっ……ああっく、あああ……! ……っくあああ!!」
 明日香は、困惑するような表情でカメラの方を眺めたまま、声を上げ続ける。彼女は今、どれほどの息苦しさと、どれほどの快感に襲われてるんだろう。俺が知りうるヒントは、彼女の声と、表情、そして艶かしい肉体の蠢きしかない。一方で、明日香の身体の内部に触れている藪岡さんには、身体が発する本当の感情がすべて伝わっているはずだ。
「そら、次だ!!」
 藪岡さんは、明日香を膝の上に乗せたままゆっくりと立ち上がり、またバックから犯す体勢を取る。ただし、今度は二人してベッドの上に立ち上がり、明日香の腕をしっかりと掴んだ上での立ちバックスタイルだ。
「あっ!? い、いやあ、こんなっ…………!!」
 立ち上がったことで、改めてギャラリーの視線を感じたんだろうか。明日香は内股になり、必死にアソコを隠そうとする。でも、もう脚を閉じただけで隠しきれるような痴態じゃない。
「ひゃひゃっ! いまさら足閉じても遅ぇんだよ、マン汁ダラダラ垂らしやがって!」
「まったくだ、乳首もピン勃ちだしよ」
 この野次は的確だ。確かに明日香の両脚は、すっかり愛液で濡れているし、乳首の勃起具合も感じていることをよく物語っている。そして、偶然シーツを撮影して気付いたことだが、明日香はとうとう口から涎まで垂らしてしまっていた。
「またイキやがったな、明日香! さっきからイキまくりじゃねえか、オイ!?」
 藪岡さんは明日香の細腕を掴んだまま、激しく腰を打ちつける。
「あああぁっ、あああうあっ!! う、うでぇっ、うでを、はなひて…………!!」
 虚ろな顔の明日香は、涎まみれのまま、必死にそう訴えていた。
「なんだ、犬みてぇなカッコになりてぇってか!? いいぜ、そらよ!!」
 藪岡さんが深く突き込みながら腕を解放すれば、明日香はまさしく四つん這いのドッグスタイルになる。バランスを取るために大股を開く必要もあり、こうなると見た目の惨めさはさっきの比じゃない。
 後ろから突きこまれるたびに波打つ尻、病的な痙攣を続ける脚。前後に激しく揺れる大きな乳房に、必死にシーツを掴む細い腕。そして、首を絞められているような必死の形相。それら全てがレンズ一つに収まってしまう。そして当然この惨めな有様は、ギャラリーの笑いの種にもなった。
 でも、明日香にそれを気にする余裕はないようだった。
「あのアマ、しんどそうなツラしてやがんな。酸欠か?」
「いや、逝きっぱなんだろ。シャブ打たれたまま、こんだけ藪岡クンとヤッてんだ。多分もう頭ァドロドロで、一突きごとに逝ってるような状態だぜ」
 先輩の一人が、そう言って明日香の足元を指す。強張ったまま痙攣する、レースクイーンより綺麗な脚。その間には、抜き差しのたびに何かの液体が滴っていた。失禁にも思えるほどの量だが、あれは間違いなく愛液だ。
「最高だぜ明日香、このムッツリ女が! シャブセックスがキマるたびに具合が良くなってやがるじゃねぇか!!」
 背後から力強く極太を打ち込む藪岡さんが、満面の笑みを浮かべた。
「もう辛抱しきれねぇからここで一旦出すがよ、終わりじゃねぇぞ。今日はとことんまでヤる。嫌ってほどイカせまくってやるよ!」
 藪岡さんは、明日香の腰をしっかりと掴んだまま中に出す。
「あーー……あっあ…………あ」
 明日香は、大きく開いた口からなおも涎を垂らしつつ、静かに目を閉じていた。どんなに疲れていても、膣内射精の瞬間には気丈に相手を睨んできた彼女が、初めて、そしてとうとう、抗議をしなかった瞬間だ。
 代わりに彼女は、涙を流した。開いた目に湛えた涙の粒を、ぷつりと決壊させる形で。

 とことんまでヤる。この藪岡さんの言葉は本気だった。
 立ちバックでの射精の後、膝から崩れ落ちた明日香に覆い被さるようにしての後背位。最初との違いは、明日香が肘と膝をベッドについたまま、犬のように喘いでいることだ。
 この図は正面から撮っても見所がないため、俺はまた横からの撮影に戻る。
 凄まじかった。
 二つの体が揺れるたびに、体の陰になったシーツへ体液が撒き散らされていく。涙が。涎が。汗が。そして、結合部からの汁が。
 モデル級の脚の中に入り込む凶悪な怒張は、さらに太さを増していた。下手をすれば、明日香の引き締まったウエストと大差ないように見えるほどだ。
「うう……うゥんんウう゛……ッ!!!」
 挿入直後は、俯いた明日香の喉から必ず悲痛な呻きが漏れた。そして、足腰が強張る。必死にシーツへ膝をついて、無理な挿入に耐えている……最初はそう思った。でも液晶越しによくよく観察していると、そうじゃない事に気付く。
 浮いているんだ、膝が。つまり明日香は、細い身体の細い膣を馬鹿みたいな極太で杭打ちされたまま、爪先立ちでその衝撃に耐えていることになる。
 なぜそうしているのかは解らない。膝が擦れすぎて痛いのかもしれないし、140キロの藪岡さんの突き込みが、両膝だけでは止められなかった結果かもしれない。ただいずれにせよ、足指の先までをこれでもかと強張らせた爪先立ちで突き込みに耐える明日香は、本当につらそうだったし、本当に……気持ち良さそうだった。

 俺はこの直後に休憩を命じられ、先輩達と一緒に食事に出た。せめてこの状況を見届けたい、離れている場合じゃないという気持ちはあったが、他の奴のスケジュールもある手前、断れない。でも驚いた事に、ステーキを食って先輩の駄弁りに付き合い、たっぷり2時間ほど経ってから戻ってきた時も、まだ明日香は藪岡さんに犯されていたんだ。
 体位は、ひっくり返った蛙のような明日香へ、背後から挿入するというもの。ほとんど180度まで開いた脚へ極太が出入りする様がどこからでも丸見えで、淑やかさも何もありはしない。
 行くところまで行っている。そういう雰囲気だった。
「なんか、凄いですね……」
 ハンディカメラを起動しながら近くの一人に話しかけると、その人も状況を解説したくて疼いてたんだろう、かなりのテンションで会話に応じてくれた。
「オオ、すげぇよ。マジの逝きっぱになっちまってる。なんつっても、『ユキネタ』の深いエクスタシーだからよ、あの強情な嬢ちゃんも相当参ってるぜ。ほら、あれ。見えっか、あれ」
 指差す先は、ベッド脇の床。そこには、ジョッキ入りのビールでも溢したかのような、うっすらと黄色い液が拡がっていた。よく見れば、床の真上にあるベッドシーツも広範囲に濡れていて、今もなお雫が滴り落ちている。
「あれ、なんだか解るか? ションベンだよ。あのアマ、イカされすぎてとうとう漏らしやがったんだ。お前惜しかったなあ、ついさっきまで祭りだったんだぜ、この部屋ン中よ。ま、ちっと野次りすぎたせいで、あんなになっちまったがな」
 今度は、明日香の顔が指差される。明日香は、自分の手で目を覆い隠していた。そしてその指の間から、次々に涙が零れ落ちる。
 そして勿論、藪岡さんはそんな明日香に配慮なんてしない。乳房を揉みしだきながら、最高に悪い顔で割れ目へと腰を打ち込んでいく。
「また黙ってイキやがって、この馬鹿が! イク時にゃイクって言え!!」
 やたらと生々しい音で割れ目の中を掻きまわしながら、藪岡さんが怒鳴る。どうやら明日香は、最後の抵抗を見せているらしい。
「あああ、ぁああ……っは、は、はっ…………ぁああーーーああ、ああああーーーっ!!」
 苦しそうな声だった。腹に刺さったナイフを抉り回される声に聴こえた。でも多分それは、俺の経験が足りないせいだ。
「ははっ、気持ちよさそうな声出しやがる!!」
「そろそろまたションベン漏らすんじゃねーか、あのお嬢様!?」
 何人もの女をイカせまくってきた先輩達には、ちゃんと快感の声に聴こえているらしい。
「ほらイケ、イケっ!!」
 藪岡さんは左手で明日香の脹脛を持ち上げ、突き上げをさらに激しくする。ベッドの軋みは軋みとも思えないほど重さのあるものになり、結合部からの音もじゅぐるっ、じゅぐるっ、というような粘土を掻き回すようなものに変わる。これに、明日香が反応した。
「はあっ、はあっ、ああああーっ!! や、やめ、て……もう……!!」
 本当に苦しそうな声。でも、藪岡さんは動きを止めない。
「やめて欲しけりゃ、イクって言え!! ほら、どうしたオラっ!!」
 あくまで絶頂を自分の口で宣言させる気だ。そんな屈辱的なこと、普段の明日香なら絶対にしない。でも彼女は、すでに追い詰められている。どうしようもなく。
「あああ、ぁああ……はあぁあんんあっ……!!」
 激しく突き上げられるうちに、明日香は目を覆うのをやめ、代わりにシーツを掴みはじめた。ゴルフで鍛えた下腕の筋肉を盛り上げて、必死に。でも、それでも快感の波に抗いきれない。
「あああ、あはっ……はぁっ、あ、お……あはぁっ、はあお………お゛っ」
 とうとう、明日香の声に『お』という響きが混じりはじめた。まさについさっき、先輩から聞いた話だ。女は本当に快感が極まると、ああ、なんて可愛くは喘がない。おおお、という快感の凝縮された、女らしさの欠片もない呻きを出すものだと。
 でもまさかそれを、あの明日香が出すなんて。妖精のような見た目で、クールで、理知的で、生々しい人間感情とは程遠いあの明日香が。ショックではあるが、仕方ない。そう思えるほど、ベッドの上は乱れきっていた。
「うううーっ、うんんーーーっうんぁあああっ!!」
 皺だらけのシーツを掴み、頭を左右に振って必死の抵抗を続ける明日香。
「おら、言え!!言ってみろ!!!」
 藪岡さんは、極太のストロークを小刻みにして追い込む。それが効いた。
「あ、あ゛っ!? …………ぅ………」
 小さな悲鳴と共に、それまで耐えていた明日香の首がカクンと落ちる。
「ぶはっ!! あ゛っ、うあ、あううあ゛っ!!」
 すぐに首の位置は戻り、喘ぎが再開されるが、何が起きたのかは明らかだ。彼女は、失神しかけたんだ。あまりの快感に。その体験は、端から見ていてもゾッとしたが、本人にとってはそれ以上の恐怖だったんだろう。正面を見つめたまま、真っ青になっている。そしてその鼻からは、とうとう鼻水まで垂れてしまっていた。
「……う。ううう…ぅ………う……く、く………………っあ、はあああーーっ!!」
 涙、鼻水、涎、そして汗。あらゆる体液で顔を汚し、野次を受け。それでも明日香は、最後の意地を貫き通す。
「チッ、強情張りやがって! 終いにゃマジでぶっ壊すぞオラッ!!」
 藪岡さんは苛立ちを見せながら、太い足で明日香の体を持ち上げ、自分の腹に乗せる。その上で、真上へ突き上げるようにしてのスパートが始まった。
「あ、はぐっ!? あああ、うぁ……ああ、あお゛…………はおおおっ!!」
 極太の逸物が反りかえりながらGスポットとポルチオを刺激し、さらにクリトリスまで指で刺激する。その三所責めに、明日香は悲鳴を上げた。汗まみれの身体を藪岡さんの上に預け、天を仰ぐようにして快楽に震える。
「あー、いいぜ、変な角度で締まってて新鮮だ……お前もイイよな、明日香ァ! もうイッちまいそうなんだよなあッ!?」
「ああ、はおっ……はあおお、お…………はぐっ、ぁ……ぉ゛っ!!!」
 明日香は、完全にされるがままだった。乳房を頂点にした弓なりで、張りのあるボディラインをピクピクと痙攣させるだけ。見た目には地味だが、凄まじい快感が巡っているのは想像できる。強すぎる電流に打たれている人間は、一見動いていないように見えるものだ。
「いひひ、エロいなー。ホントいい身体したオンナだぜ!」
「ああ。また犯したくなっちまう!」
 ギャラリーが興奮気味に囁きあう中で、とうとう明日香が最後の瞬間を迎えた。
「おお゛……ぉ゛っ!!……はっ…………ぉ゛」
 小さな呻きが聴こえ、極太が少し抜けた直後。結合部辺りから、大量の失禁がはじまった。
「はははっ、またやりやがった!!」
「おいおいこのオンナ、エリート様じゃねーのかよ。まるで幼児だぜこりゃ!!」
 野次が飛ぶ。その中心で、藪岡さんが俺にサインを出していた。下にした親指で、明日香を指し示すハンドサイン。意味は、『ココを撮れ』だ。
 その指示通りにベッドへ上がり、藪岡さんへ近づく。すると、明日香の顔が見えた。完全に白目を剥いている。前髪は乱れてでたらめに顔を隠し、涙や鼻水、涎で美貌の跡形もない。こんな姿を撮るのが残酷だと思えてしまうほどに。
 俺が明日香の顔を撮り終えると、藪岡さんは満足げに息を吐いて体を起こした。藪沼さんの上に乗っていた明日香はその際に滑り落ち、シーツに突っ伏す。がに股のまま、ヒクつきの止まらない割れ目から大量のザーメンをこぼし、汗まみれの身体には湯気さえ立てて。
 その姿は惨めだが、妙にそそるものがあった。そして周りを囲む先輩たちも、その色気にあてられて目をギラつかせている。
「さすがに疲れた、寝る。後はテメェらで好きに犯れや。シラフん時より、だいぶイイぜ?」
 藪岡さんが缶ビールを煽りながら言うと、地鳴りのような歓声が上がる。その声でかろうじて意識を取り戻した明日香は、すぐに手足を掴み上げられて目を丸くする。
「あ、なにっ!? いや、やめ……っ!!」
「なんだぁ? 強情オンナのくせに、カワイイ反応するじゃねえか!」
「いいねぇ、もっと嫌がれ! 怖いです、やめてくださいーってよ!!」
 咄嗟の反応を茶化され、明日香は表情を引き締める。
「…………馬鹿みたい。こんな事で、女が参ると思わないで!!」
 プライドの高い彼女は、下劣な煽りに対してそう答えるしかない。直前に無様を晒しているからこそ、余計に。

 壊すと決めた以上、輪姦に加わるのは部屋に残った幹部連中だけじゃ済まない。藪岡さんは、子分に電話を掛けてはホテルに呼び出し、一万円ずつ徴収して輪姦させるようになった。この連中がまた、レイプの常習犯やらサディストやらのケダモノ揃いだ。最初に万札を払う時には渋い顔をするものの、いざ明日香を見れば目の色を変える。
「オイオイオイ、マジかよ!? このオンナが一万とか、安すぎっしょ!!」
「うわ、またスゲェ上玉っすね……女子アナとかっすか!?」
「こりゃすげぇ、写真で見せられたら加工疑うレベルだわ! 顔も体も100点の女とか、ヤバすぎんだろ!!」
 そんな風に鼻息を荒くしながら、喜んで輪姦に加わっていく。

 そして、明日香はハメられ続けた。
 正常位で。後背位で。騎乗位で。手足に力がなくなれば、ベッドに仰向けで寝転んだままでも犯される。Mの字に大股を開かされ、両手を引き絞られる、抵抗のしようもない格好だ。俺はその姿を、最前列で淡々と撮り続けた。
 改めて見れば、あれだけ綺麗だった明日香の黒髪は、すっかりくすんでしまっている。肌にしても精液まみれで、とても清潔そうには見えない。後光の差すような令嬢が、すっかり下水のネズミにされている。少なくとも、外見は。
 そんな明日香に、蛇の刺青を背負った先輩が腰を打ちつける。
「おら、子宮の入口に当たってんのがわかんだろ? 奥までヒクつかせやがって、いやらしい女だぜまったく」
「………ふっ、ふっ……ふう、ふうっ……」
 明日香は相手を見つめながら、細い息を吐き続けていた。昂ぶる呼吸を無理矢理鎮めようとしているようだ。
 前に喧嘩自慢の先輩から、呼吸の大事さについて聞いた事がある。セックスでも喧嘩でも、呼吸さえ乱れなければ、簡単に相手のペースに乗せられることはないと。どうやら明日香は、これまでのセックス経験でそれを悟ったらしい。口八丁で相手をコントロールする傍ら、少しでも色狂いにならずに済む方法を模索していたということか。
 本当に、寒気がするほど抜け目がない。そしてそれが、どこか頼もしくもある。
「うお、出るぜ……っ!!」
 蛇を背負った先輩が腕に血管を浮かせ、射精の準備に入った。そして足の筋肉を蠢かせ、深く繋がったままで、たっぷりと精を注ぎ込む。
「んう゛っ!!」
 明日香から小さな声が漏れた。
「よ、っ……と」
 たった今射精を終えた一人は、割れ目から逸物を抜きながら、近くに転がっていたペンを拾い上げる。そして明日香の右腿に書かれた正の字へ、新しい一画を加えた。これで正の字はちょうど9個。中出し一回が一画だから、もう45回もされていることになる。
「おい、コイツまた気ィ失いやがったぜ」
 一人の先輩が声を上げた。その視線の先では、明日香が瞼を閉じて静かな息を繰り返している。相変わらず全身が凍えるように震えているが、意識しての動きではなさそうだ。
「確かに気絶してやがんな」
「かーっ、面白くねぇアマ! せっかく可愛がってやってんのに、ヘバりやがって!」
「舐められたもんだ。もっともっと追い込む必要がありそうだな」
 先輩達は気絶した明日香の元を一旦離れ、それぞれ道具を手にして戻ってくる。バイブにローター、電気マッサージ器……。

「まーたガッツリ責めてますね。もうボロボロじゃないっスか、その子」
 俺からカメラを受け取ったユウトが、煙草を咥えたまま笑う。今の奴は竿役であり、かつ俺の交代要員……つまり、準幹部だった八木さんの代役だ。そこまで幹部連中の信頼を得てるのか、コイツは。俺はまた先を行かれたのか。そう思いはするものの、不思議と焦りはない。どうでもいい。
「オウ。シャブ打って輪姦してたらバテてきやがったからな、折檻してるとこだ。 ちょうど今からマンコに2本挿しするトコだからよ、バッチリ取れよ!」
「任せてくださいよ。俺、本物のAV撮ったことあるんスよ!」
「けっ、そりゃ聞いたよ。三流AV屋のカメアシだろ、偉そうに!」
 最後の最後。部屋のドアが閉まる間際に、悪趣味な言葉と笑い声が聞こえた気がした。でも、それに反応する気力がない。
 ひどく疲れていた。犯されているのも、犯しているのも、俺じゃないのに。


     ※               ※             ※


 監禁開始から10日目。
 101号室の扉を潜ると、相も変わらず水音と喘ぎ、汗と愛液の匂いが押し寄せてくる。
「あ、センパイ、見てくださいよ。スゲーっしょあれ。ビラビラに直でシャブ打たれてんすよ!?」
 俺の姿を見つけたユウトが指差す先では、巨漢の男に背を預けるようにしてM字に足を開く明日香がいた。アイマスクで目隠しされているため、快感に集中せざるを得ない状態で。
 肝心のアソコは、対面に座る男の手で激しく擦り立てられている。指の腹を激しく左右に動かし、割れ目の入口部分だけを集中的に責める、AVでもよく見るやり方だ。カメラ映えがいい上に、効果そのものも絶大らしい。
「ううぅ、あはっ!!うううぅーーぁああっ!!」
 明日香は心底恥ずかしそうに顔を横向けたまま、甘い喘ぎを漏らし続ける。そして肝心の割れ目は、辺りに潮を撒き散らしていた。
 よく見れば、キングサイズのベッドシーツはかなり広範囲に渡って変色しきっている。きっと何度も体位を変えながら、延々とこうして潮を噴かされているんだろう。
「お、一匹目のカメラ小僧が帰ってきてんぜ?」
「ふー。じゃ、そろそろ追加いっとくか」
 明日香の対面に座る刺青男が合図を出し、シャブ入りの注射器が入ったケースを引き寄せる。そして中身の1本を手に取ると、クリトリスを親指で押さえつけ、その根元へ針を突き刺した。
「うあっ! ま、また……っ!!」
 目隠しのせいで状況が掴めない明日香は、突然の刺激に足をバタつかせる。
「オウ、まだまだ行くぜ」
 刺青男は顔色ひとつ変えず、2本目の注射器を手に取った。そして充血しきった明日香のラビアを乱暴に掴み、
「オマケだ。堪能しろや」
 一切の躊躇なく針を打ち込んでいく。
「はぐうう゛っ!」
 明日香の呻きを楽しみながら、刺青男は脇に置いてあった缶ビールを拾い上げ、喉を鳴らして一気に飲み下した。
「あ、はぁっ、ハアッ、ハアッ……ハア…………!!」
 明日香の呼吸がますます乱れていく。ここまでに、一体どれだけのシャブが打たれたんだろう。
「おっ、もうヒクヒクしてやがる」
 親指と人差し指で押し開かれたアソコを注視しながら、先輩達は笑う。確かに明日香の割れ目は、喘ぐ唇そっくりに開閉を繰り返していた。
「こ、こんな事をされたら、誰だってそうなるわ……!」
 明日香は肺を震わせ、強い憎しみを吐き出した。完全に女の反応を示しているアソコを、何人もの男に観察される。それは常にエリートコースを歩んできた令嬢にとって、どれだけ耐え難いことだろう。もっとも、そういう恥じらいが余計に、先輩達の嗜虐心を煽るんだが。
「もっともだ。だが、あれだけ偉そうに説教カマしてた女が、そこらの人間程度とはねぇ」
「な……っ!」
 挑発的な言い分に、言葉を詰まらせる明日香。
「ま、いい。今はただ、快感だけに集中しろ。また天国に連れてってやる」
 その言葉をサインに、明日香が背を預ける男と、対面に座る刺青男が目配せしあう。

 そして、怒涛の追い込みが始まった。
 背後の男が左手で明日香の乳房を捏ね回しつつ、右手の指で陰核をつまみ、転がす。対面の刺青男は、人差し指と中指、そして薬指すら加えた3本指で、ひたすらにアソコの中をかき回す。
 音が凄かった。前に潮吹きした時も凄い音だったが、今度のはその比じゃない。ぶじゅぶじゅぶじゅぶじゅ、という水音の合間に、かすかな屁のような音が混じり続けている。アソコの中にたっぷりと空気が入り、それが愛液と混ざり合うように攪拌され続けているせいだろう。
「くくっ、マン屁がえれぇ事になってんぜぇお嬢様ァ!?」
「ああ。こんなきったねぇ音の潮吹きはそうそうお目にかかれねぇ!」
 当然、明日香に叩きつけられる言葉責めは音についても触れた。だが、果たしてそれは明日香の耳に届いているだろうか。
「あっ、あっあっあっあっあっ!! あっあ……あああああぁぁっっ!!!」
 クリトリスとGスポットという二大性感帯を、発情しきった状態で責め抜かれる。これを受けて、明日香からは余裕というものがまるで無くなっていた。明らかに息継ぎができていない様子で喘ぎ続け、目隠しの上で眉根を寄せて本当につらそうにしている。乳首をこね回す男の腕にしがみつくような左手、何度も何度も内股に閉じようとしては、血管の浮いた男の手で押さえ込まれる両膝。それらの情報すべてが、彼女の狂乱ぶりを物語っていた。
 性器へ何本もシャブを打たれ、一切容赦せず潮噴きを強いられていれば、乱れるのも当然だ。でも、初めて目にした時の凛とした彼女と、今目の前で喘いでいる女の印象はあまりにも違いすぎ、俺は改めて背筋が寒くなった。
「ほーら、全部カメラに撮られちまってんぞー、この恥ずかしい姿」
 一人が言葉責めの一環で、明日香に俺のカメラを意識させた。
「っ!!……はっウ、ぐふっ、う……ん…………!」
 明日香ははっとした様子で、最後の抵抗として歯を食いしばる。噛み合わされた歯の並びは素晴らしく綺麗だ。でもその必死すぎる表情は、到底美人とはいえない。そして、そうまでしても快感の大波には抗いきれない。
「ぁあ、ああああっ!!ああああーーーーっ!!!!」
 やがて明日香は、大口を開けた。舌まで見えるほどに口を開き、そしてとうとう、口の端から涎まで垂らしはじめる。
「おうおう、イイ表情になりやがって」
 無理をしたツケは、当然ながら先輩達の笑いの種になった。
 こうして明日香は、シャブを打った上での快感を順調に刷り込まれていったんだ。



                                 (続く)


アクセスカウンター

    ありがたいコメント
    さくさく検索
    Amazonライブリンク
    メッセージ

    名前
    メール
    本文
    プロフィール

    kunsecat

    • ライブドアブログ