大樹のほとり

自作小説を掲載しているブログです。

拷問

聖なる太陽

※健気なヒロインが理不尽な目に遭うお話。
そこそこダークな展開の上、機械姦やレズ、浣腸、嘔吐イラマチオなど結構ハードなのでご注意。



紫庭興国の宮殿が陥落したという報せは、全世界に衝撃を齎した。
紫庭興国は宗教国家だ。『聖巳(ひじりみ)』と呼ばれる巫女を太陽の化身として崇めつつ、国民同士が助け合いながら生活を送っている。
その特異な宗教観から生み出された様々な風俗は、諸外国を魅了して止まない。
さらには資源大国という側面もあり、東部貿易の要でもある。
ゆえに、各国が無言の内に紫庭興国への侵略を牽制しあっているのが実情だ。
もしもある一国がその禁を破ろうものなら、その行為こそが次の大戦の引き金となるだろう……そう熱弁する学者さえいた。
事実、機械による文化革命が起きて以来百年、表立って興国を侵略した国は一つとしてない。
しかし、その鉄の掟はこの度見事に破られる。
紫庭興国はその中枢を破壊しつくされ、その行為を各国は黙認した。侵略側であるトゥルグアが、紫庭興国の姉妹も同然の国だったからだ。

トゥルグアは元々、紫庭興国を追われた者が作った集落だった。よって住民の多くは『聖巳』に良い感情を持っていない。
ある者は宗教国家という構造を前時代的であるとし、ある者は太陽の化身たる『聖巳』そのものを嫌う。
彼らは興国の財産――物資や技術、そして人を諸外国に売り払い、その見返りに外資を得た。
そうした交流の中で近代的な文明を取り入れ、興国文化と組み合わせて独自の世界観をも獲得する。
とはいえ、その規模は1500年の歴史を持つ紫庭興国には及ばない。あくまで興国にほど近い自治区だ。誰もがそう思っていた。
蜂起したトゥルグア軍が、想定を遥かに上回る軍事力でもって紫庭興国を蹂躙し尽くすまでは。





部屋の中は薄暗かった。
紫庭興国特有の床材である『畳』が一面に敷き詰められ、その果てでは『障子』と呼ばれる遮蔽物が薄らと夕日を取り入れる。
それらの丁度中心部に仰臥する娘こそ、紫庭興国の象徴たる第三十二代目の聖巳(ひじりみ)――沙羅だ。
仰臥とはいえ、眠っているわけではない。
娘は胸まで引きつけた両脚を自ら抱え込む格好で、その裸体を衆目に晒していた。
腰まで伸ばされた、織物のごとく上質な黒髪。ツヤもハリも申し分ない桜色の肌。
全体の印象は華奢でありながら、出るべき所は出たメリハリのある体型。
見目だけでも育ちの良さの窺える娘だけに、あられもない格好がいよいよ異常に映る。
その沙羅を、数人の女達が見下ろしていた。
黄褐色の肌や腰の高さは沙羅に比較的近い。恐らくはトゥルグア人だろう。
彼女らは皆一様に婀娜な雰囲気を纏い、口元に冷笑を湛えている。紫庭興国の象徴たる沙羅を蔑むように。

「どうかしら、聖巳(ひじりみ)さま。丸々4時間、休むこともなく焦らされ続けた感想は?」
女の一人が、舐めるような口調で囁いた。
彼女の細い二本指は、先刻から沙羅の薄い茂みの奥で踊り続けている。
同性ゆえに弱みを知り尽くしているのだろう。指が蠢くたび、桜色の秘裂からはぐちゅりと水音が漏れ、優美な沙羅の両脚が強張った。
「…………此の程度、何ほどの事でもありません」
沙羅は普段通りの落ち着き払った口調で告げる。
しかしながら、無理をしているのは明らかだ。
彼女の全身は、その髪の生え際から鎖骨、腹部、太腿に至るまでが汗で濡れ光っている。
秘裂の下の畳もすっかり変色しており、相当量の愛液が染みこんだ事を物語っていた。
責め手の女――玉蓉は、あくまで矜持を保たんとする沙羅に笑みを深める。
「ふふ。世間知らずな小娘のくせに、相変わらず強情なこと。
 こっちはどう責めればお前が昂ぶって、どう緩めれば絶頂の芯を外せるか、もう全部わかってるのに。
 そうだ。またあれ、やってあげましょうか。クリトリスと裏Gスポットの同時責め…………お前、あれに弱いものねぇ。
 三日前に出たすごい声、今でも耳に残ってるわよ」
玉蓉は言葉責めを加えつつ、沙羅の膣内で指の向きを変えた。沙羅の白い太腿がみちりと強張る。
「今日だって、昼間から少なくとも60回はイきかけてるでしょう?
 イきそうになると膣内(なか)がヒクヒクしてくるし、呼吸も浅く速くなるから、すぐ判るのよね」
秘裂から指が抜かれた。細く揃えた二本指には、沙羅自身の愛液が纏いついている。
興国において太陽の化身として崇められる娘も、所詮は生身の人間に過ぎないという証が。
「ホラご覧になって聖巳さま、こーんなに真っ白」
玉蓉はその指先を、躊躇なく沙羅の鼻先へと近づけた。
沙羅の柳眉が顰められるも、玉蓉はさらに指を押し進め、唇に触れさせる。
「聖巳である貴女の子宮から出た本気汁よ。この一滴に、一体どれほどの価値があるのかしら。滴っちゃ、勿体ないわよねぇ?」
玉蓉の含みを持たせた物言いを受け、観念したように沙羅の唇が開かれた。
そして自らの愛液をたっぷりと纏いつかせた玉蓉の指を、丹念に舐めしゃぶりはじめる。
「あらあら、美味しそうにしゃぶっちゃって。よっぽど喉が渇いてたのね。だったら、もっとあまい“蜜”をあげるわ」
玉蓉がそう囁きかけた瞬間、沙羅の瞳に動揺の色が浮かんだ。
そしてその後方では、醜悪な笑みを浮かべた女達が、コップから注射器で透明な液を吸い上げている。
どれほど鈍感な人間であろうと、容易に感じ取れるほどの悪意をもって。

「さぁ、聖巳さま。御手を」
女が注射器を構えながら沙羅に命じる。
沙羅は静かにその瞳を見返しながら、右腕を差し出した。すらりとしたその腕は微かに震えている。
彼女は知っていた。針が肘の内側へ打ち込まれた後は、決まって異常なまでの多幸感が全身を支配するのだと。
外の風や衣擦れの音さえ聞き分けられるほどに神経が研ぎ澄まされ、目に映るすべてが蝋燭の灯のように輝いて見えはじめる。
「う゛っ、く、ぁっ!…………あぐぐっ…………いィぎっ、あぐぐぐふうぅぅうっっっ!!!」
投与から数秒後。沙羅はここ数日常にそうであったように、全身を激しく痙攣させはじめた。
椀を伏せたような円錐型の両乳房が波を打つ。
「始まったわ!」
無論、女達はそれを読んでおり、手際の良い連携で沙羅を押さえ込む。
「あ゛ーーっ、っああ゛あ゛ーーーっっ!!!」
それでも沙羅は止まらない。押さえ込む3人を浮かせるほどの力でのた打ち回る。
「うわっ、と! アハハッ、白目白目。元の造りが嫌味なくらい良いだけに、何度見てもインパクト凄いわ」
「効くのに時間はかかったけど、その分いい感じに中毒になってきてるね」
「ええ。濃いのを短期間でキめさせるより、薄いのを繰り返し打った方が効くみたい」
どこかから声が聴こえた。
そう、完全に中毒だ。この薬はここ一ヶ月あまり、何度となく沙羅に投与されている。
当初こそ発汗を促進する程度だったものの、摂取を繰り返した今は劇物にも等しい。
痙攣が治まる頃、沙羅の瞳は眠りに落ちる寸前のように蕩け、唇は半開きのまま涎を垂らす。
当然、その表情は女達のいい笑いものになった。しかし恥じて持ち直そうにも、頬より下の筋肉が弛緩して動かない。
「ああ良い表情。トローンとしてるけど、神経だけは極限まで研ぎ澄まされてるのよね」
玉蓉はそう言いながら沙羅の頬に触れた。
「ひっ……!!」
沙羅の肩が跳ねる。今の彼女は、人の掌の熱でさえ、沸騰した湯のように感じてしまうのだ。

「ふふっ。それじゃあ聖巳さま。先の愛撫でも“何程の事もなかった”そうですから、もっともっと続けましょうか。
 とはいえ、その状態でいきなり女の部分に触れては心臓がびっくりするでしょうから…………まずは外堀から参りますわ」
玉蓉がそう言うと同時に、女の一人がシルク製のショーツを沙羅の足首へと通していく。
「ふぅ………んっ………!」
ショーツの2つの輪が脛を、膝を、腿を撫で、娘の研ぎ澄まされた性感をくすぐった。
果てには股布が恥じらいの場所に触れただけで、蛍火のようなかすかな絶頂感が脳裏を過ぎる。
沙羅は異常すぎるその感度に喉を鳴らした。
「さぁ、では後半の儀と参りましょう。いつものように、汗まみれ汁まみれで可憐に舞ってくださいまし。
 太陽の巫女さまだけあって人ならぬ動きをなさると、私ども調教師の間で評判ですのよ」
玉蓉の声。数人の女の含み笑い。それを沙羅の脳裏が意識した直後には、彼女は繊毛地獄の中にいた。
極度の興奮により膨らんだ乳房を丹念に揉み上げられ、
脇腹を撫でられ、
万歳の格好を取らされた挙句に脇を舐められる。
全身が性感帯も同然の沙羅には、それら一つ一つが無数の羽毛で撫で回される責めに等しい。
「うぅう、っく………………!!!」
下から抱えあげるように太腿裏を撫でられた時、沙羅は強く奥歯を噛みしめた。そうしなければ、ひどく情けない声が漏れただろう。
叶うならば両脚も閉じ合わせたい。秘所には触れられぬままに、また新たな愛液が溢れたのが自覚できたから。
「あら、どうかしたのヒジリミさま? またオカシクなりそうなの?」
執拗に太腿をさする一人が、沙羅の耳元に息を吹きかける。無論、それによって沙羅が妖しい反応を見せると知ってのことだ。
「…………はっ……はぁっ………………わ、わたくしが自我を失う事など、有り得ません」
極限状態にありながらも、沙羅は毅然とした態度で告げた。
肌艶や面立ちは歳相応でありながら、その矜持は凡百の大人を遥か凌駕する。
生まれ落ちてより16年と半月、ただ一日の例外もなく、『国の象徴たるべし』として生きてきたが故だ。
しかしそうした誇り高さは、かえって玉蓉達の嗜虐心を煽るらしい。
「そう、流石ですわ。まだまだ夜の営みまでには時間がありますもの。それまで、どうぞたっぷりとお興じくださいまし。
 ああそうそう。いくらお興じとはいえ、昨日のようにお小水を撒き散らすのはお控えください。
 毎日なさっておいでなのですから御承知でしょうが……漏らしたものは、最後に這いつくばって一滴残らず啜って頂きますから」
嘲りを含んだ玉蓉の言葉に、沙羅の唇が引き結ばれる。



玉蓉を始めとするトゥルグアの逆賊達は、あくまで沙羅の――否、『聖巳』の権威失墜を目的としているらしい。
紫庭興国が長きに渡って大国足りえ、かつ他国から一目置かれるほどの結束を誇るのは、偏に『聖巳』信仰あっての事だ。
その拠り所である『聖巳』が所詮ただの人間に過ぎないと思われた時にこそ、興国は真の意味で崩壊する。
そうした思惑から、玉蓉達は沙羅という年若い小娘一人に格別な執着を見せるのだ。
事実、紫庭興国が完全に制圧された日より2週間の間、囚われた沙羅には徹底的な恥辱責めが加えられている。

首都陥落の翌日、沙羅は首輪と手枷を嵌めたまま広場に連れ出され、数万の興国民の見守る中で祈祷衣を引き裂かれた。
ちょうど熟れ始めたばかりの初々しい肉体が、民へと晒される。
紫庭興国において、『聖巳』はまさしく太陽だ。
過去1500年以上に渡り、興国では『聖巳』の姿をじかに見てはならないとされてきた。
年に一度か二度、祝事の際に遠くから宮中の尊顔を拝し、あわよくばその鷹揚とした喋りを聴く――そうした現実とは隔たりのある存在だった。
なればこそ、この時の興国民の衝撃は筆舌に尽くしがたい。
年若い興国民の中には、思わず下半身を膨らませる者もいたようだ。
一方で老齢の民ほど嘆きは深く、もはやこれまでと自決を試みる者さえ現れる始末だった。
しかし当の沙羅は落ち着き払ったまま、普段通りの口調で、絶望する必要はないこと、いつか再興の日が来るであろう事を説いたという。
その言葉に勇気付けられ、結果として何人もの国民が命を救われた。
一糸纏わぬ無垢な姿で堂々と語る様はむしろ神々しく、改めて信仰を深める者も多かった。
激昂したトゥルグア兵が沙羅を張り倒し、一堂を夢から引き戻すまでは。

『いつまでも下らん幻想に縋りおって。そんな貴様等に、現実というものを教えてやる!!』

野太いその叫びが全ての始まりだった。
沙羅は、数人の兵士の手で石畳に組み伏せられたまま、その場で純潔を散らされた。
太陽の加護も、巫女の祝福もそこには無く、当たり前のように男の剛直が突き入れられて鮮血を滴らせる。
破瓜の瞬間、沙羅の悲鳴は確認されていない。しかし意地の悪い兵士が俯く沙羅の髪を掴み上げると、そこにも“当然”があった。
額に汗を滲ませて歯を食い縛り、左の目頭から大粒の涙を溢す、生々しいヒトの表情が。
それから沙羅は、目を見開いて立ち尽くす興国民の前で、延々と輪姦され続けた。
新雪のような肌は石畳に擦れて無数の擦り傷を作り、かつて桜の花びらほどにしか開いた事のなかった口は、赤黒い男の性器にこじ開けられる。
特に決定的だったのは、輪姦の順番待ちをもどかしがった男が、強引に沙羅の腕を捻り上げた時だ。
『グッッあ゛!!!』
突然の事に加え、スジでも痛めたのだろうか。沙羅の口からは、間違いなくそうした呻きが漏れた。
およそ高貴な身分の娘が発するには似つかわしくない、低く濁った呻きが。
トゥルグアの兵は皆これを大仰に笑い物にし、逆に紫庭興国の民は一様に顔を顰める。
それは支配層と被支配層が逆転した様子として、あまりにも象徴的な光景だった。

広場中央へ設置された杭に手錠で繋がれ、手の空いたトゥルグア兵から慰み者とされる日々。
それがようやく落ち着いた頃、沙羅には新たな恥辱が与えられた。
強烈な浣腸を施したまま風船式のアヌス栓を嵌め込まれ、広場に放置されたのだ。
刻一刻と便意は高まっていくものの、腸内で膨らみきったアヌス栓が無慈悲にも排泄を妨げる。
食事・睡眠・排泄。これら根源的欲求を妨げられると、人間は脆い。
全てを投げ出してでも楽になりたい、そう考えてしまう。高貴な身分の人間とて例外なく。
『ツラそうだなぁオイ。楽になりたきゃ、惨めったらしくおねだりしてみろよ』
監視役の兵士達は、分刻みで脂汗に塗れていく沙羅を見下ろして嘲った。
しかし、沙羅は断固としてその要求を呑まない。排泄の許可を乞う自分の姿が、どれだけ民を落胆させるかと考えた末のことだろう。
沙羅は限界を超えた便意に苛まれながら悶え、顔から血の気を失せさせ、やがて口の端から泡を噴き溢しながら気を失った。
気絶のたびに桶の水を掛けられては意識を取り戻し、また数分後に失神する。
それを幾度も繰り返した末、ついにはトゥルグア側の上官が見かねて排泄の許可を出したほどだ。
最後の最後まで、沙羅が責めに屈することはなかった。
それでも最後は両の足首を掴み上げられ、この上ない恥を晒すこととなったのだから、何とも慈悲のない話だ。



このような恥辱は肛門に限った話ではない。
沙羅も所詮は人間である事を誇示するかの如く、執拗に粘膜という粘膜が責められた。
鍛えようのない粘膜を責められれば、どんな人間であれ素を晒すしかないからだ。
カテーテルを挿入して限界まで溜め込んだ尿を排出させたり。
可憐な容姿に嫉妬した女達を集め、鼻腔と口を指や道具で出鱈目に拡げさせたり。
ひどいものでは拘束衣と開口具を付けたまま、20人を超える浮浪者と共に地下室へ閉じ込めた事さえあった。
男達は皆が極限まで女に飢えていたが、南京錠付きの拘束衣のせいで二穴は使えない。よって沙羅の口を性欲処理に用いるしかない。
哀れなのは沙羅だ。フェラチオの経験も碌にないまま、強制的に喉奥を『用いられる』。それに平然としていられる筈もない。
『んも゛ぉぉ゛おお゛え゛っ、ごォおおえ゛ア゛ッッ!! ごえっ、おも゛っ……ほおお゛ぉえ゛っ! がはっ…げぇォっ、ごぼっ……!!』
それまで宮中で出したこともない――本来であれば一生縁がなかった筈の汚いえづき声を上げ。
喉奥から常にうがいをするような水音を立て。
固く瞑った目から大粒の涙を溢し。
恐怖と苦しさから拘束衣の中で失禁し。
挙句には耐え切れず大量に嘔吐する段階になっても、浮浪者達から下卑た笑みは消えなかった。
ただ己の欲望を満たさんがために、初々しい喉奥へ赤黒い陰茎を捻り込む。
相手が崩れ落ちれば長い黒髪を掴んで引き起こし、眠ろうとしていれば石壁や床に後頭部をつけさせての喉奥虐めで覚醒させる。
それが三日三晩繰り返されたのだ。

しかし。こうした恥辱責めをいくら繰り返そうと、紫庭興国の民は沙羅に同情的な反応を見せるばかりだった。
崇め方が『太陽の化身』から『受難の聖女』へと変わっただけで、依然信仰は揺るがない。
そのためトゥルグア側は、協議の末に方針を変えた。
公開処刑も同然の恥辱責めから、一介の新米娼婦としての調教へと。
古いあばら家で、龍の刺青の男2人から手取り足取り娼婦の技を仕込まれる日々。
オーソドックスなフェラチオから、玉舐め、アナル舐め。
コンドームの装着方法に、騎乗位での腰の遣い方、そして緊縛やアナルセックスに始まるアブノーマルプレイ。
気の遠くなるほどの実践を経て、それらが徹底的に沙羅に仕込まれていく。
これが功を奏し、紫庭興国はたちまち阿鼻叫喚に包まれた。
どこか非日常的である恥辱責めに比べ、セックスというものはあまりに身近で、生々しすぎる。
『聖巳』を人ならぬものとして代々信奉してきた興国民にしてみれば、そのような扱いは辛抱堪らないのだろう。

国の事情に翻弄される沙羅は、毎日のように、トゥルグア風の売春宿で敵国の客を取らされた。
独特の香が焚かれる中、信心の欠片もない男に身体中を舐め回され、欲望の赴くままに犯される。
屈辱的なその性交の最中、沙羅は次第に絶頂へ至るようになっていった。
無理もない。何しろ週40時間以上に渡り、同性による性感開発を受けているのだから。
時には乳頭と陰核を中心に、女の指と口で延々と絶頂の味を覚えこまされる。
時には数時間、膣のごく浅い部分だけを刺激して生殺しの状態にされる。
それらを経た上で男を迎え入れれば、たとえ青い果実といえど、絶頂を拒みきれるものではない。



今日も沙羅は客を取る。
引き戸を開けて姿を現したのは、どんな女でも生理的に嫌悪するであろう男だ。
伸び放題で脂ぎった髪、無精髭、たるんだ下腹。死んだ魚のような目に、強烈な異臭……。
まともな売春宿であれば、不衛生さを理由に門前払いされるだろう。
しかし、沙羅はこの最底辺の客を拒めない。もしも客相手に抵抗や拒絶をすれば、そのたび興国民が不幸な目に遭うと脅されているからだ。
「宜しく お願い致します……」
沙羅は極上の身に粗末なネグリジェを纏い、三つ指をついて男を迎える。
「へッ、近くで見るとマジで良い女じゃねえか。噂通り鳥肌モンだぜ。よっぽど良いモン食って、大事にされてきたんだろうなァ。
 こんな上玉で童貞捨てられるたぁ、人生解らねぇもんだぜ」
男は醜悪な笑みを浮かべながら服を脱ぎ捨てる。
露わになるのは、すでに七分ほど勃ち上がった男根だ。経験の乏しそうな男ながら、性器のサイズは人並みの域を外れている。
そしてその雁首近くには、べっとりと白い恥垢が纏わりついていた。
「おお、こりゃまたすげぇカスになってやがる。今日のこと考えると待ちきれなくてよォ、何日か前から一人でしまくってたのよ。
 お前ェが娼婦として躾けられてる頃の映像見返したりしてな。
 要は、こうなっちまったのもお前ェのせいって訳だ。だから、まずはコイツを綺麗にしろ。愛情込めてだぜ」
男はそう言いながら、怒張の先で沙羅の頬を叩いた。
「…………承知致しました」
たとえ噎せかえるような悪臭の持ち主であっても、傍若無人な客であっても、沙羅に一切の拒否権はない。

「失礼致します」
命ぜられるままに大きく唇を開く沙羅。この光景は室内のカメラ数台から撮られ、広場の巨大モニターに中継されている。
沙羅が男の物を咥え込む瞬間には、何人もの興国民から悲鳴が上がることだろう。
唾液を塗しながら白い横顔が前後すれば、その声はいよいよ悲壮さを増すだろう。
それでも、沙羅はやらねばならない。細く白い指で怒張を握り、仕込まれた技術を用いて男に奉仕する。
肉茎へ丹念に舌を這わせ、亀頭を舐め回し、鈴口を舌先でくすぐり、毛の生え茂った睾丸を口に含んで唾液を塗し。
「おお、ほっぉ……! ククッ、大人しそうな顔してるくせに上手ェもんだ。チンポがどろどろに熔けちまいそうだぜ。
 このまんまでも最高だが、せっかくの機会だからよ、もっと奥まで咥え込んでくれや!」
男は声を上ずらせつつ、絹のような沙羅の黒髪に指を絡めた。そして自分の腰へと、強引に後頭部を引きつける。
「ぐも…ぉ…う…………っ」
沙羅は慣れた様子で食道へと怒張を送り込みながら、姿勢をやや前傾に変えた。
よく見れば、その膝立ちになった素晴らしい太腿が震えているのが解る。
イラマチオの苦しさゆえ、ではない。玉蓉達による6時間あまりの焦らし責めで、直立すら困難なほどに腰が抜けているせいだ。
しかし性経験の乏しい男は、その反応を自分の都合よく解釈したらしい。
「何だ、モゾモゾしやがって。まさかお前、濡らしてんのか?」
男は腰を落とし、沙羅の秘裂へと手を伸ばす。そして、歓喜した。
「オイオイオイ何だよお前、もうグショグショじゃねぇか! 俺のを舐めてるだけでこんなにしやがって、噂以上の淫売だな!!」
そう喚きながら沙羅の脚を開かせ、しとどな愛液で濡れ光る粘膜をカメラに晒す。
沙羅の顔が強張った。広場のモニターでは今、彼女の性器の映像が大写しになっているだろう。
毎日セックスを晒しているとはいえ、女の部分を見られるのはやはりつらい。

男の手が尻肉を揉みしだくと、それだけで沙羅の腰が震えた。男の笑みが深まる。
「へへへっ。最高だぜお前、どんだけ男を惑わすカラダしてんだ。肌はキレーだし、プリップリだしよぉ。
 こう誘われちゃ我慢の限界だ。脱げよ、この宝石みてぇな割れ目に太いのをくれてやらぁ!」
「…………はい」
沙羅は命ぜられるがままにネグリジェをたくし上げた。
従う以外にないのだ。たとえ膣奥が病的に疼き、今挿入されては危険だと脳が警鐘を鳴らそうとも。
蜂蜜色の灯りの下、程よい膨らみのツンとした美乳と、白磁の肌が露わになる。
男の鼻息がいよいよ獣じみていく。
「ぶち込むぞ! どうせ避妊薬は飲んでるんだろ、ナマで構わねぇよな?」」
「勿論です」
沙羅は人形を思わせる表情で答えた。
男は醜悪な笑みを浮かべながら、濡れそぼった秘裂に屹立を宛がう。
そしてたどたどしい手つきで狙いを定めると、斜め上から打ち込むように挿入を果たす。
「っ!!」
沙羅は唇を結んだ。潤んだ膣内を確かな硬さが貫き、程なく蕩けきった子宮口を直撃する。
ただそれだけで、今の沙羅は足の先まで痺れてしまう。脳の神経がふーっと解れるような感覚があり、浅い絶頂に至ったとわかる。
「くあぁぁっ、すんげぇキツさだっ…………しかも、お、奥が動きやがるっ!!!!」
男が歓声を上げた。沙羅の絶頂にあわせて膣が収縮し、相当な快感を得たらしい。
一度その甘さを知ったが最後、いよいよ男に遠慮はなくなった。



すさっ、すさっ、という敷布団の擦れる音と、パン、パン、という肉の弾ける音が交錯する。
「ハァッ、ハァッ……最高だぜお前、最高だ。さすが若ぇだけあるな、散々やりまくってる癖にこの締まりとは恐れ入ったぜ。
 昨日出したばっかだってのに、もう、すぐにでも出ちまいそうだっ…………あああっチクショウ!
 こうなりゃあお前もイカせてやる、グチャグチャんなるまで奥を突きまくってやるよ!!」
男は仰臥した沙羅に大きく脚を広げさせ、目を血走らせながら夢中で腰を打ちつけていた。
一方その病的な視線を浴びる沙羅は、目と口を閉じたまま無表情を貫く。
しかし、身体は正直だ。奥へ突き込まれるたび、手足の指は爪が白むほどにシーツを掴む。掴み損ねた時には、震えながら虚しく空を掻く。
幾度となく絶頂に追い込まれる中、その苦しさを紛らわそうとしているのは明らかだ。
「んなに我慢すんなって。テメェが感じてるのなんざバレバレなんだよ」
男は歪んだ笑みを浮かべると、おもむろに沙羅の足首を掴んだ。そして左右の足首を纏め上げるように、片手でしっかりと掴む。
「ン゛っ…………!!」
沙羅からついに声が漏れた。
真上へ向けて両脚を揃え、緩やかなくの字に曲げた体位だ。自然と膣内は狭まり、剛直に密着してしまう。
「ああスゲェ、さっきより締まるぜ! あっちこっちから襞つきの肉に吸い付かれてるみてぇだ!」
男は歓喜し、さらに腰を振りたくった。片手で沙羅の両足首を掴み上げ、片手を後方へつきながら、強烈に。
「くぅうぅう、くふぅぅ、んんんっ…………!!」
沙羅は困ったように眉根を寄せる。
無理もない。体位が変わったことで、彼女は一番の弱点である膣の下側のスポットを、挿入のたびに剛直のエラで抉られる羽目に陥っていた。
玉蓉の悪意に満ちた指遣いで、日々開発され、目覚めさせられた弱点を。
「足が震えてきてんなあ、オイ。お前も苦しいのか。俺もよ、さっきから暴発しそうなのを必死に堪えてんのよ。
 ヌルヌルザラザラのお前ン中が、あんまりにも俺の倅を愛してくっからよォ!!」
男は荒々しく腰を振りながら吠える。
確かに沙羅の両脚は、瘧に掛かったように震えはじめていた。
足首を掴まれたまま、膝の裏を筋張らせ、うねうねと組み替えられ…………まるで小便を必死に我慢するかのようだ。
当然、その有様もすべてカメラに収められている。
沙羅はそれを恥じたが、もはや意思で抑え込めるレベルではない。むしろ刻一刻と快感の波は高さを増し、沙羅の意識を溺れさせていく。
『いく』
娼婦の手解きを受けていた頃に教えられたその表現が、沙羅の脳裏で火花のようにちらついた。

「あああクソッ、そろそろマジでヤベェかもしんねぇ!!」
やがて男が叫び、体位を変えた。沙羅の腰を両手でがっちりと掴み、揃えた二つの足首を右肩に乗せる。
より深く挿入を果たせるように。
「はぐっ!!」
歯を食いしばっても、沙羅のその声は止められなかった。それまでとは深さが違う。
腹の奥までずんと響き渡るような衝撃に、意思とは関係なく両脚が震えた。
左足の踵がうまく男の鎖骨部分に引っ掛かったため、沙羅は無意識にそれを利用して体位をずらそうと試みる。
しかしその直後、ぐじゅりと硬い亀頭が子宮口を叩き潰した。
「くく、きう…っ…!!!」
身を強張らせていた事が災いし、沙羅はその衝撃をまともに受けてしまう。そうなればあえなく絶頂し、ずるずると背中をシーツに密着させるしかなかった。
本格的な脱力。自分が柔肉でできた道具であるかような感覚の中、沙羅は男からの熱を受け止め続ける。
陰唇からGスポット、そして膣奥。トロッコが火花を散らしながら走りぬけ、炭鉱奥に衝突するイメージが繰り返し脳裏に浮かぶ。
甘い痺れだけが動脈のように身体を支配している。

数知れぬ突き込みの中、沙羅はとうとう脳髄が蕩ける音を聴いた。
脳が蕩けては抵抗のすべもなく、枕に深く頭を沈みこませたまま、ぐるりと上方へ白目を剥く。
視界の中央に、チカリとカメラのレンズが瞬いたのが見える。
 ――撮らないで。お願い、暴かないで。
沙羅が心の中でいくら願おうと、無機質なレンズが聞き届ける事はない。

「あああぁもう限界だっ、で、出るぞっ!!!!」
沙羅の絶頂に釣られたのだろうか。男が叫び声を上げ、沙羅の太腿へと身体を密着させる。
そしてその直後、ドクドクと生ぬるいものが膣奥へ注ぎ込まれていく。
とうに慣れたその経験を、沙羅は虚ろな瞳で迎えていた。
「あああヤベェ、すげぇ量出てやがるっ……へへッ、ケツがむず痒くなっちまうぜ」
男が体を震わせ、至福の溜め息を吐く。緩慢な動作で硬さを失った怒張を引き抜く。
それでようやく、今日も終わり――では、ない。

「ハァッ、ハァッ…………最高だったぜ。まさか、セックスがここまで良いモンだったとはよ。
 結構な量射精したのに、まだ興奮が収まらねぇ。半勃ちのチンポの中に、変な芯が残ってんだよ。
 ちっと休んだらまた始めっからな、汗拭いとけ!」
男はぐったりとした沙羅の顔を覗きこみながら告げ、強張る沙羅の表情を楽しんだ。
本来、雲の上の存在である娘を犯すのがよほど嬉しいのか。それとも実際に沙羅が名器の持ち主なのか。
沙羅を娼婦として買った男のほとんどが、一度の情交では済まさなかった。
むしろそこから倍以上の時間をかけて、沙羅の桜色の肢体を味わいつくすのが常だ。
「そう震えんなって。もっともっと善くしてやっからよ」
男から間近で顔を覗きこまれ、沙羅ははっとした様子で表情を引き締める。
「嬉しゅうございます。わたくしの粗末な女の穴で宜しければ、どうぞ心ゆくまでお使い下さいませ」
沙羅が頭を下げながら形作るのは、常世ならぬ、悟りを開いたような表情。
『聖巳』として在るべきその表情が、かえって彼女を追い詰める。
雄にしてみれば、その堅い表情を突き崩す事こそが最大の悦びなのだから。



肉同士のぶつかる音が、もう一時間以上にも渡って続いていた。
薄水色の敷布団はすっかり藍色に変色し、周りには丸められた薄紙が無数に転がっている。

沙羅は、布団の上に這ったまま、後背位で貫かれていた。
「あっ……あっ……あっ…………」
俯いているためにその表情は窺えない。しかし長いストロークで腰を打ちつけられるたび、かすかな声が漏れていた。
背中といい脚といい、全身が脂汗に塗れ、灯りを受けてぬらぬらと濡れ光っている。
突き込みで身体が揺れるたび、乳房と鼻の先から雫が滴り落ちる。
その異常なまでの発汗を見れば、喘ぐ程度は仕方のない事に思えてしまう。
何より、沙羅には今なお矜持が見受けられた。背中も脚も快感でうち震えるほどでありながら、布団に両手をついている。
『私の自我は崩れていない。自らの意思で姿勢を保っている』
そう訴えるかのように。
しかし、それもそろそろ限界だ。肉体に快楽が蓄積している事もある。そして責める男も、『女の弱み』を知りつつある。
「フゥッ、フゥッ…………おらっ、もっと締めてみせろ!!」
男はそう言いながら、沙羅の腰に手を回して陰核を摘んだ。
「はぐっ!!」
これにはさしもの沙羅も声を上げる。そしてその直後、がくんと背が傾いた。
不意を突かれてつい右肘をついてしまったらしい。
「はははっ、何だ、気持ちよくてチカラ抜けちまったか!?」
男の嘲笑が浴びせられる。
起きなければ。『聖巳』として無様は晒せない。沙羅はその一心で身を起こそうとする。
しかし力めば力むほど、セックスの快楽も色濃くなってしまう。
沙羅は何度も足掻き、もがき、その果てに脊髄へ決定的な痺れを感じた。
「はぁ……っ!!!」
息を呑む、という状態だった。目から涙が零れ、その涙を追うようにして、身体が布団へと沈み込む。
外気で冷えた乳房に、敷布団の温もりが触れる。
「おうおう、ぐでーっとなりやがって。ま、こっちはケツが上がったおかげで挿れ易くなったがよ」
男は沙羅の尻肉を鷲掴みにしながら、いよいよ軽快に腰を振りたくる。

「ぐっ、ぐううぅっ!!……う、んはぁっ…………っぃっ……ぃ、ぐ…………!!」
沙羅は歯を食いしばる。歯の合間を漂う、いく、という言葉を、かろうじて噛み殺す。
それでも、身体の痙攣はどうにもならない。
もはや子宮口をゴツゴツと責められる感覚すら消えうせていた。
男が腰を打ちつけるたび、自分の深い部分でスイッチが入り、身体中に高圧の電流が走る。
地震の中にいるように手足や腰が痙攣し、頭の中がじゅわりと白く染まり、秘裂から潮とも小水ともつかない何かがあふれ出す。
ここまでになったのは初めてだった。いよいよ身体が薬と快楽に染まり、絶望的な段階に来ているらしい。
「ふっ、く、ぐぐぐっ…………!!」
沙羅は怯えつつも、必死に目の前の布団へ顔を押し付けた。
事ここに至ってなお、彼女が案ずるのは自分の身ではない。間違いなく崩壊しているであろう表情を、カメラに映させない事だ。
その沙羅の思惑を読んだのだろうか。それとも、ただの偶然だろうか。
「おらっ、手ェ寄越せ! 手綱みてぇにして犯してやらぁ!!」
男は突っ伏す沙羅に覆いかぶさりながら手首を掴み、結合部の近くにまで引き寄せた。
沙羅は強制的に上体を起こされ、俯いていた顔からも陰が引く。
沙羅の視界で、三つのレンズが光を放った。
間違いなく撮られている。白目を剥きかけ、閉じない口から涎を溢し、獣のように喘ぐ必死の顔が。
「……………………っ!!」
その事実に気付き、沙羅は涙を溢す。
これで何かの枷が外れたのだろうか。その眉はだらしなく垂れ下がり、許しを乞うようにカメラを見続けるばかりだった。

そこからの映像に映っているのは、項垂れて為されるがままの娘と、それを淡々と犯し続ける男の姿だ。
娘の肌は白濁で薄汚れ、艶やかだった黒髪は萎びたまま千々に乱れている。
粗末な部屋を背景に続くそれは、まさしく最底辺の娼婦が調教されている光景のようで、興国民の涙を誘った。
その光景を前に、トゥルグア側は確信する。
いかに信心深い民とはいえ、こうも俗物と成り果てた象徴を見て、なお特別視できるはずがない。
口にこそ出さないが、本心では気付いているはずだ。沙羅も――聖巳も、所詮はただの女に過ぎないと。
頃合いや良し。
後は国民の抱く『不信』が『侮蔑』となるように、最後の仕上げを行うだけだ。





その空間に類するものは、紫庭興国の建築史にもなければ、トゥルグアの建築史にもなかった。
当然だ。それはトゥルグアが財産と引き換えに近年手に入れた、異文化の一つなのだから。
強いて似たものを挙げるならば、欧米におけるラボラトリーか。
壁も床も青白く艶やかな素材で統一され、様々な機材が密集する。そのちょうど中央部分に、裸の沙羅が拘束されていた。
物々しい機械に囲まれ、分娩台を思わせる大きな椅子に腰掛けた格好だ。
無論、快適に、ではない。
彼女の額部分には、黒いカチューシャ状の脳波測定器が見受けられた。
さらに肩口と腰周り、腿の付け根には太い拘束帯が巻きつけられ、椅子から身を浮かせないようにしている。
その上で両足首は上方からのアームに掴まれ、足裏同士を密着させられていた。
当然、恥じらいの部分を隠す術はない。
それどころか、恥毛すら剃り上げられた桜色の秘裂を、正面のカメラへ向かって突き出すような格好だ。

「いかかです聖巳さま、最新技術の粋を集めたマシンの座り心地は。
 ちなみにその拘束は『胡坐縛り』といって、女囚を辱めるために考案されたものです。
 そうして性器と肛門を丸出しにしたまま転がされれば、よほど気丈な女でも恥じて涙したと聞きますわ」
白衣に身を包んだ玉蓉が目を細める。
沙羅はあられもない姿のまま、あくまで鷹揚とした態度で玉蓉を見上げた。
「…………どこまで、わたくしを辱めれば気が済むのです」
その言葉を待っていたかのように、玉蓉の笑みが顔中に広がっていく。
「ご安心を。たぶん今日限りです。神を地に堕とすのは、決まって人間の英知ですもの。
 この文明の利器達が、貴女の苔むしたような化けの皮を、残らず剥がしてくれることでしょう」
玉蓉は部屋の機具を崇めるように手を広げつつ、指を鳴らした。
白衣を着た他のトゥルグア人もまた、同じく陰湿な笑みでキーボードを打ち込んでいく。

小さな機械音が聴こえた直後、沙羅に隣接する機械群から一本のアームが姿を現した。
アームに付属しているのは、重量感のある大型のバイブレーター。形状はハンディマッサージャーに近い。
当然、紫庭興国にはない器具だ。
訝しげな目線を送る沙羅を鼻で笑いつつ、研究者の指が決定キーを打ち鳴らす。
直後に響き始めたのは、グゥゥウウン、と心臓すら震わせるような重低音。バイブレーターの駆動音だ。
尋常ならざるその音の重さに、沙羅の目が見開かれる。
「凄い音でしょう。でも、威力はもっと凄いのよ?」
玉蓉の言葉の最中、アームは静かに降下し、先端部を沙羅に触れさせた。
円を描くような両脚の中央部…………そこへ息づく桜色の肉芽に。
「はぐっ!?」
コンタクトから僅か2秒後、沙羅は天を仰いだ。その目はくっきりと見開かれ、衝撃の度合いを物語っている。
過去に覚えのある快感であれば、彼女はその持ち前の精神力で堪えてみせただろう。
しかし機械による毎秒数千回という微細な振動など、自然界で経験できようはずもない。
不意を突かれて大きな反応を示すのも仕方のないことだ。
「いい反応ね。その敏感な部分で、たっぷりと機械の恐ろしさを味わうがいいわ!」
玉蓉は高らかに笑う。

バイブレーターは重低音を響かせながら、沙羅の陰核を踊り回った。
機械表面と皮膚の擦れる音が、ズズズ、ジジジジ、と変化する事からも解る通り、強弱は微細に変動している。
つまりは刺激に慣れることができない。
加えて沙羅はつい今朝方、普段の倍の量の薬を投与されていた。つまりは感度が研ぎ澄まされている。
その状態で特に敏感な肉芽を責められてはたまらない。

「………………っ」
沙羅は彼女が普段そうするように、薄い唇を閉じて被虐に耐えていた。
その品のある顔のまま、じりじりと追い詰められていく。
変化は着実に訪れていた。
規則正しく凹凸を繰り返す腹部のペースが早まり、陰唇がわななき始める。小鼻の脇を大粒の汗が伝い落ちる。
そのまま緩やかに絶頂に至るのだと、見る者誰もが思っただろう。
しかし、沙羅の膝裏に力が込められ、まさに達しようとするその瞬間。バイブレーターは唐突に後退した。
「えっ!?」
沙羅は驚愕の表情を見せる。
過去には玉蓉達から、何時間にも渡って寸止めを受けた事もあった。
しかしそれはあくまで人的なレベルだ。玉蓉が沙羅の絶頂の気配を見て取り、早めにブレーキを掛けていたに過ぎない。
今は違う。この機械はまさに沙羅が達しようとするその際まで、全力で責め続けていた。
そして沙羅が絶頂を確信し、すべてを投げ出そうとしたその最後の最後、コンマ秒のタイミングで一切の刺激を止めたのだ。
沙羅にしてみれば、空中へひとり投げ出されたような感覚だった。

「ふふふ。さすがに素が出たわねぇ聖巳さま?」
玉蓉が笑いながら沙羅を見下ろした。
「秘密は、貴女がおでこに着けてる脳波測定器よ。それが脳波……つまり貴女の脳が出す信号をキャッチしてるの。
 だから人間には真似できない精度の寸止めが可能なのよ。
 解るでしょう。今の貴女は、本当に逝く寸前。私がこの指でクリトリスを倒すだけで、腰をヒクつかせながら絶頂するわ」
沙羅の顔を指し示しつつ、玉蓉は愉快そうに告げる。
沙羅の顔にまた新たな汗が流れた。
「あなた方の考えは歪んでいます。わたくしが憎いのならば、一思いにこの首をお刎ねなさい。
 わたくしの苦しむ顔を見て、何が得られるというのですか」
「いえいえ、まさか。私共に貴女を殺す意思などございません。むしろ当面は、無理矢理にでも延命させて頂きます。
 絶頂にも遠慮はいりませんわ。なさりたいのなら、どうぞ『イカせてほしい』と仰って下さいまし。
 もっとも……国の象徴たる貴女がそのような発言をなされば、失意から身投げする民もいるでしょうが」
その言葉に、沙羅の表情が凍りつく。
婉曲的な脅しだ。『音を上げれば、自殺に見せかけて人質を殺す』という意味の。
玉蓉達は常にそうして、沙羅の抵抗を封じてきた。
「聖巳さまに問題はないようね。続けましょう」
玉蓉は薄く微笑んで指を鳴らす。すると再び重低音が響き始め、バイブレーターが陰核表面に固定された。
「ふっ、く………!!」
絶頂寸前の余韻が残っていたのか、それともこの地獄から逃げられない現実が胸を詰まらせるのか。
沙羅は眉根を寄せながら、機械の導くままに昂ぶっていく。

元々が薬によって性感を研ぎ澄まされている身だ。
陰核に振動を受け続ければ、愛液があふれ出すのに時間は掛からない。
いつしか、ズズズ、ジジジ、という接触の音に混ざり、機械の振動で愛液が飛び散るブシャブシャという音が立ち始めていた。
沙羅は頬を赤らめたまま、いの字に歯を閉じ合わせて快感に耐えている。
陰唇は生物のように開閉し、肛門付近も引き締まっては緩み、を早いペースで繰り返す。
左内腿がピクッと跳ねてから8秒後。
沙羅の口が大きく『あ』の字に開いたところで、バイブレーターは宙に浮いた。
バイブレーターの先と陰核をトロリとした糸が繋ぐ。最初に比べれば、陰核は明らかにサイズが増していた。
「はぁっ…………はーーっ……はぁっ…………」
沙羅は肩で息をしつつ、薄目を開いてバイブレーターを見下ろす。
もう少しで楽になれたのに。その心の声が聴こえるようだ。
「ハーイ残念。そろそろ素直になったらどう? もうイキたくてイキたくてたまらないんでしょう。
 クリトリスには私達が毎日毎日、徹底的にイキ癖をつけてきたんだもの。
 随分と頑張ってるようだけど、耐え切れる訳がないわ」
玉蓉が煽ると、沙羅は再び表情を引き締める。
「…………はっ……はあっ…………わ、わたくしは太陽の巫女。人の理には囚われません」
「アハハッ、散々愛液を撒き散らしておいてよく言うこと。いいわ、続けなさい!」
その一言をきっかけに、また無慈悲な機械が唸りを上げた。


沙羅が常に喘ぐようになったのは、それから何分が経った頃だろう。
彼女は明らかにひとつの限界を迎えていた。
床には大量の愛液が飛び散っている。
バイブレーターの唸りに合わせ、華奢な腰がヒクヒクと跳ねる。
全身にひどい汗を掻いてもおり、背中が上下するたび、ミチュリと水音を立てるほどだ。
水分は適宜与えられるものの、絶頂だけは許されない。
「ああ、あああっ…………はぁあっ、ああ、くうっ…………ぃぃい゛っ、んはぁっはぐ…………っ!!」
沙羅の口からは、涎と共に切ない呻きが漏れた。
唯一自由になる両手が、座部の側方へ突き出た『いきみ棒』を必死に握り締める。
「く、ぅっ!!」
その果てに、とうとう沙羅の歯が噛み合わされた瞬間――音が消え失せる。
「っ!!! っっっ!!!!」
沙羅は声を殺したまま、怒りを紛らわせるように首を振った。目尻からの涙が宙に舞う。

すでに刺激がないにも関わらず、優美な腰は大きく上下して拘束帯を軋ませていた。
華のように開いた陰唇が、物欲しげに開閉を繰り返す。その下に息づく排泄の孔さえ、喘ぐように収縮し続ける。
無論、もっとも劇的な変化が見られるのは陰核だ。
初めこそ視認が困難だったその慎ましい芽は、もはや痛々しいほどに勃起しきっていた。
「ふふっ、アハハハハッ! 素敵な踊りよ聖巳さま!」
「ホント。あの可愛かったクリトリスがギチギチに膨れちゃって。ドングリみたい」
「そんなにアソコをヒクつかせて、どういうつもり? 匂いでも嗅いでほしいのかしら?
 何十本も浮浪者のアレを咥え込んだ上に、あんなに汁まみれなんだもの。さぞかしくっさいマンコなんでしょうねぇ!」
玉蓉達の下劣な言葉に、沙羅の長い睫毛が揺れる。
日々の調教の中で同性からの罵倒にも多少慣れたが、惨めさを自覚している状況下では格別につらい。
「ふーっ、ふーっ……はあっ、は、はぁっ……
 わっ、わたっひ……わら、くしはっ…………屈しません」
沙羅は懸命に決意を語ろうとするも、口の中に溜まった唾液でうまく喋れない。
明瞭に喋ろうとするほど涎が滴り、かえって無様を晒してしまう。
それは、どう足掻こうが地獄にしか辿り着かない沙羅自身を象徴するようだった。
それでも、彼女には芯が通っている。どれほど惨めになろうが、敵に哀願はしていない。
誇りは失っていない。
「フン。そのしぶとさはある意味勲章ものだわ。まだ恥を掻き足りないようね!」
玉蓉は忌々しげに告げ、研究員達に責めの続行を命じた。

寸止めのたびに沙羅が絶頂へ至るまでの感覚は狭まり、今や10秒とかからずにアームが離れる。

「あぁっ……ヒッ……ぁああ…………ヒッ ……っく、くひっ…………あぁあぁ…………あ、くっ!!
 おおおぁあっく…………ヒッ……ぃぃぃあああっ…………!!!」

沙羅の声は、もはや喘ぎというより悲鳴に近かった。荒い息と余裕のない声に混じり、ヒッ、ヒッ、という音が続く。
オイルを塗りたくったような腰も艶かしく動き、堪えようのなさを訴えていた。
最も変わったのは表情だ。とろりとした瞳、半開きのまま涎を垂らす口。そこに理性は感じ取れない。
項垂れたまま身体の揺れに合わせて首が動き、口元が何事かを呟く。
そしてその最中、急に目を見開き、何かを払うように頭を振る。
それが繰り返されていた。
「いい加減に諦めたらどう? さっきから無意識に『いきたい、いきたい』って言ってるくせに。
 イキたくて、頭がおかしくなりそうなんでしょ」
玉蓉が呼びかけても、沙羅は必死に首を振るだけだ。
玉蓉は溜め息を吐く。
「ホント可愛げのないガキね、一言乞えば楽になれるのに。
 …………もういいわ。皆、フェイズ2に移るわよ!」
その言葉を聞き、研究員達が一斉に玉蓉を見やった。玉蓉はそれら一つ一つの視線を受け止め、頷いてみせる。
キーボードを叩く音が響き、複数の駆動音がそれに続いた。
ぐったりとした沙羅の秘裂に4本のアームが近づき、細い筒を嵌めこんでいく。
次に四方のアームがその筒を引けば、筒はリング状に拡がり、膣鏡のように沙羅の膣壁を曝け出す。
ヌラヌラと濡れ光る桃色の洞穴。『聖巳』の胎内へ続く道。
どこからか、ゴクリと息を呑む音がした。

「ふふ。とうとう『聖巳さま』の神聖な産道が、奥まで丸見えになっちゃったわね。
 いやらしいこと。出産の経験もないガキのくせに、すっかりポルチオが目覚めちゃってる。
 自分でも解るでしょう、膣の奥がヒクヒクしてるのが」
玉蓉に指摘されるも、沙羅はただ黙して前を見つめるのみだ。しかしその気丈な顔は、直後、驚愕に染まった。
太いアームに連なる極太の異物が、眼前に突きつけられたからだ。
形状は男性器に酷似している。ただし、数十人の男を迎えた沙羅でも経験がないほど、長く、太く、凶悪な反りだ。
加えて言えば、開ききったキノコのような雁首の張りも、幹に散らばる大小様々な突起も、異様と表す他はない。
何より、その異物に色はなく、極めて純度の高い水晶のように透き通っていた。
「驚いたでしょう。そのディルドーはね、私達なりに貴女の膣を分析したデータから作ったの。
 つまり貴女にとっては、世界で一番相性のいい……ある意味では最悪の男根という事になるわ。
 今からそれで、貴女を徹底的に犯してあげる」
「…………!!」
玉蓉の言葉に、沙羅の全身が強張った。
膣の奥がひどく疼いた状態で挿入を受ければ、やがて脳内が白く染まる事を知っている。
しかも今は、条件が最悪だ。普段の倍の投薬をされ、普段以上の焦らしをされ…………そして、相手はこの機械。
 ――耐え切れない。
沙羅の脳が警鐘を鳴らす。その沙羅の心中を知ってか知らずか、玉蓉は片手を挙げた。
透明な異物が沙羅の秘部を捉え、強引に挿入を開始する。尋常ではない圧迫感が、沙羅の表情を強張らせた。
「…………はっ、ぐ…………!!!」
男に慣れていた筈の膣は、メリメリと音もしそうに軋んだ。恥骨が外れそうだ。
それでもその凶悪なまでの圧迫感が、刺激を渇望している今は堪らなく心地いい。

十秒ほどかけてディルドーが奥まで達したところで、膣を開くリングに変化が起きた。
ディルドーの台座部分に各リングの破片が嵌まり込み、緑の光と共に電子ロックがなされる。
ロック後は、ディルドーを繋いでいたアームも、リングを掴んでいた四つのアームも元あった場所へ戻っていく。
結果、透明なディルドーを咥え込む沙羅は、自ら膣を開いているような有様となった。
「ドッキング完了、と。ふふっ、凄いわ。ぐっぱり拡げられた膣が丸見え。そのまま子宮口に触れてしまいそうよ」
玉蓉が口元を吊り上げ、白衣の研究員達からも含み笑いが起きた。
彼らが見守るモニターには、沙羅の開いた膣内がくっきりと映し出されているのだろう。
当然、紫庭興国の広場にも。
沙羅は恥じた。しかし脚を閉じようにも、胡坐縛りの格好ではどうしようもない。
それどころか力むほどに腹圧が増し、ディルドーの圧迫でじっとりと汗が浮いてしまう。

「さぁ聖巳さま、ここからが本番よ。今から貴女は、脳が快楽で焼ききれるかどうかの瀬戸際を彷徨うの」
玉蓉はそう言いながら、沙羅の太腿を撫で上げた。
「うっ!!」
絶頂寸前のもどかしさで、今も細かな震えの止まらない太腿だ。沙羅の腰がびくんと跳ねる。
「許容量を超えた快楽に溺れるのって、想像よりずっと苦しくて怖いみたいね。
 死んでも屈しないって言う人間は嫌というほど見てきたけど、実際やり遂げた人間なんて、一人もいなかったもの。
 だから……貴女には、あらかじめこれを渡しておくわ」
玉蓉は沙羅に歩み寄ると、ポケットから取り出した棒状の装置を右手に握らせる。
「……これは?」
「ディルドーを動かす小型ファッキングマシンの電源よ。
 握りの先に赤いプッシュボタンがあるでしょう。もう限界だと思ったらそれを押しなさい。
 そうすればディルドーは止まって、貴女は快楽の海から生還できるわ」
その言葉に、沙羅の喉が鳴る。
彼女とて快楽に溺れる辛さは知っている。その苦しみから逃れる術が、魅力的でなかろう筈もない。
それでも。
「…………こ、これを、押すと」
沙羅は小さく震える声で呟いた。玉蓉が興味深そうに目を細める。
「これを押すと、誰が不幸になるのです」
「さぁ、誰かしら。私は名前を知らない、貴女だってきっと知らない、無数の興国民の一人よ」
いつになく真に迫った玉蓉の物言いに、沙羅は複雑な表情で右手を握る。
「いずれにしろ、頭がシャンとしているうちに結論を出すことね。
 犠牲になった人間だって、何かの間違いでボタンが押された、じゃ納得できないでしょうから」
そう言い残して背を向ける玉蓉。
沙羅の膣内で只ならぬ鳴動が始まったのは、その直後だった。



何人から視られていることだろう。
室内の白衣姿は十数人。広場にいる警備や紫庭興国の人間を合わせれば、ゆうに百は超えるだろうか。
その視線をひしひしと感じながら、沙羅は局所に意識を集中する。
膣内のディルドーはゆっくりと後退していた。凹凸のある極太が膣壁を擦りあげていく。
「う…………!」
沙羅は思わず呻いた。
ディルドーの馬力は凄まじく、引き抜かれる動作で下半身ごと持っていかれそうになる。
両足首を掴むアームがかろうじて肉体を留めている状態だ。
羆のごとき巨躯を誇る男が、無理矢理にペニスを引き抜こうとしている様――沙羅の脳裏にそのイメージが浮かんだ。
何という力。こんな力で犯されれば、一体どうなってしまうのか。
沙羅は息を呑む。直後、大きく引き絞った状態で制止していたディルドーがついに動き始めた。
メリメリと凄まじい馬力で膣壁が掻き分けられ、瞬く間に奥までを貫かれる。
蕩けきってひくつく子宮口が、硬いゴムのような亀頭に潰される。
「……………………ッッッ!!!!!」
沙羅の脊髄を電流が走った。
腰がじぃんと熱くなる。心臓が早鐘を打ち始める。
焦らされ続けて快感を欲していたとはいえ、これほどとは。

『アハハハッ凄い、子宮口がガラスに押し潰されたみたい! 愛液が蜘蛛の巣みたいになってるし』
『ホント、お宝映像だこと。わざわざパーツをスケルトンで統一した甲斐があったわね』

女達の嘲りをよそに、沙羅は真正面を向いていた。今はかろうじて向けていた。
しかし、限界はひしひしと感じられる。今の痺れは尋常ではない。
 (果てるまで、あと…………)
そう考える内にも、視線の先では、両脚の間に円柱状の盛り上がりが出来ていく。
ディルドーが抜けていく速度と同じ。どうやらディルドーが引き抜かれた分だけ、ロック部分から末端がはみ出る仕組みらしい。
そして、電子音が聞こえた。
――――来る。
沙羅が覚悟を決めると同時に、陰唇が捲れた。
メリメリと膣壁を押し開きながら、暴力的な質量が奥までを貫く。さらに、今回はそれだけで終わらない。
最奥から素早く戻り、2度、3度4度……断続的に子宮口を叩き始める。
「はっ…ぐぅうううっ!!」
これには沙羅も堪らない。脊髄を幾度も幾度も電流が通り抜ける。
少し余裕が出来ていた絶頂までの許容量を、あっという間に食い潰される。
『あんなに腰がガクガクして。透明なモンスターに犯されてるみたい』
周りの声が遠い。沙羅の意識にはもう、一直線に絶頂へ向かう光の道しかない。

7度目に最奥が潰された瞬間――沙羅の下半身は跳ね上がった。
体中が痙攣する。拘束帯が腹部に食い込むが、それすら子宮を刺激して堪らない。
「あぁ、はあぁ…あぁ……ぁっ……あ…………!!」
1度目の今際の声は、恐怖に震えるかのようだった。
その声を聞きながら、沙羅はヘッドレストに頭を預ける。
見守る国民を勇気付けるため、なるべく前だけを向いているつもりだったが、早くも天を仰いでしまう。
「…………ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…………!!!」
肺が麻痺したのだろうか、息が上手くできない。過呼吸のように大口を開け、短く空気を求める。
この数ヶ月、嫌というほど絶頂を覚えこまされてきたが、ここまでのものは経験がない。

『どうやら、イッたみたいね』
『まるで釣り上げられた魚だわ。一回目でアレなんて、ゾッとするわね』
『なに、同情してるの? ここからが面白い所じゃない。楽しみましょうよ』

一度意識を向ければ、研究員達の声は一言一句聞き取れた。遠くの静電気の音やキーボードを打つ音さえ聴こえる。
そして研ぎ澄まされた沙羅の聴覚は、微かな電子音を捉える。
今日3回目に聞く音……ディルドーが起動する合図だ。
「えっ!? ま、まだ、達したばかり………………」
沙羅の戸惑いの声は、重厚なモーターの駆動音で掻き消された。
グググググ、と相変わらずの馬力で膣内をこじ開け、絶頂直後で敏感になっている膣奥を無慈悲に抉る。
「くぅっ…………あ゛!!!」
沙羅は目を見開きながら震えた。菱形になった脚がガクガクと痙攣している。
どうやらまた達したらしい。しかし――今度は余韻に浸る暇さえない。
笠の張った亀頭部分が膣壁を掻きながら退いていく。まだ続けて抽迭するつもりらしい。
いきみ棒を握る左手に汗が滲む。右手にはスイッチの重さを感じる。
「や、やめてくだっ…………た、達したばかりで、まだ、心の準備が……………………!!
 ……っく、ふあぁぁあぐっ! 駄目っ駄目ーッ、やめてぇっ、いけませんっ!! はぐっ……くあ、ぁああああ゛っっ!!!」
普段叫び慣れていない沙羅の絶叫は、声の所々が掠れ、裏返っていた。
そしてその叫びが区切れると同時に、彼女の恥じらいの場所からは大量の液が漏れ始める。
小水か、あるいは潮か。いずれにせよ、沙羅が余裕を失くした証には違いない。
それほどになってなお、ディルドーは容赦のない抽迭を繰り返していた。
マシンの動きは沙羅の脳波に基づいている。
起動直後は標的である沙羅を速やかに絶頂へ至らしめ、その後は脳波を極力ピーク近くに保ち続ける。
この悪魔じみたルーチンを組み込まれている以上、マシンが沙羅を楽にする事はない。



一連の暴虐的な突き込みは、回数にして60回あまり、時間にして悠に5分以上は続いていた。
その時点でようやく機械は音を止め、小休止に至る。とはいえ、無論それは沙羅を案じての事ではない。
『刺激を与えずとも高原状態が維持される』……そう分析した上で、合理的判断からエネルギー消費を抑えたにすぎない。
事実、沙羅の身体は、機械が稼動をやめてからもなお絶頂の反応を続けている。
「ああぁあ゛っ、ああああ゛……かはっ、あはっ、ハーッハーッ…………うああ゛っ…………!!!」
掠れた悲鳴と共に、奥歯まで覗く口から涎が伝い落ちた。
目頭からは次々に涙が零れ、先に伝っていた滴と合わさって顎から滴っていく。
脚の震えはやはり病的で、キッキッキッキッと忙しなく足首のアームを軋ませていた。
絶頂の余韻でまた絶頂の域に押し上げられるという異様な状況。
この5分強で、幾度の絶頂が沙羅を襲ったことだろう。
絶頂する沙羅は相当に無様であったらしく、特に潮を断続的に噴き散らしていた場面が見物だったらしい。
「あああ、あああ…………あああ………………」
沙羅はヘッドレストに重い頭を預け、閉じない口から意味のない声を発して何かを楽にする。
本能の訴えるままに行動しなければ、近い内に脳が蕩けてしまいそうだ。
しかし。そうした脳波の安定を、機械が見逃す筈もない。

電子音が鳴る。剛直が稼動しはじめる。
沙羅は竦む心を叱咤し、最奥への挿入に備えた。しかし……その備えは徒労に終わる。
ディルドーが駆動パターンを変え、膣の入口付近を重点的に刺激し始めたからだ。
亀頭の笠と大小様々な突起が、敏感な部分を擦りたてる。それは相当な刺激ではあったが、ややもどかしい。
落ち着かず、左のいきみ棒をより安定するよう逆手で握り直す。それでも不安が消えない。
沙羅が戸惑いながらも一息つこうかと考えた、まさにその時。駆動音が急に強まり、ディルドーが深くまで潜り込んだ。
「あああーーーっ!!」
沙羅は、想定以上の大声で達する。溜めていた息を吐き出したせいだろうか。
奥まで挿入された、という心理的な満足感があるために絶頂も深い。
「ひっ、ひっひっ、あはーっ、はーーっ…………」
沙羅が絶頂の余韻に浸っている最中、怒張が引き抜かれていく。
盛大に笠の張ったエラを引っ掛けつつ、ゆっくりと。
絶頂直後で敏感になっているGスポットを亀頭裏で擦り上げられ、それだけで断続的な軽い絶頂が襲ってくる。
亀頭が入り口付近まで戻った時には、息も荒く、しばしの休息が欲しかった。
しかし、機械に情はない。
再び膣の入り口付近を浅く四度ほど往復し、焦らした末に、ぐうっと奥まで突き上げる。
最奥への突き込みは先ほど以上に力強く、子宮口はおろか、それを支える子宮頚部までもがぐちゅりと潰されるようだった。
「くああああーーーっ!!」
当然、上がる声も先ほどより大きい。口の端からとろりと涎が垂れるのが解った。
拭いたい所ではあるが、右手にはスイッチを握っており、左手もまた座部側方のいきみ棒から離せない。
あまりに深い絶頂で身体中がガクガクと痙攣しており、何かに掴まらずにはいられないのだ。
膣内が熱い。マグマを閉じ込めたように。
機械によるストロークの気配をひしひしと感じながら、沙羅はそう考えていた。



そこからまた、断続的な絶頂の時間が始まる。
四浅一深式に切り替わったと考えて覚悟する沙羅。
それを嘲るように、最奥へ密着したままドッドッドッと三連続で子宮口を叩き、沙羅が腰砕けになった所へ大きく引いての突貫。
「ひいいいぃっ!!!」
沙羅の口からとうとう純粋な悲鳴が迸った。見守る玉蓉達に笑みが浮かぶ。
だが、無理もない事だ。ポルチオ絶頂の快感は底無しに深い。
一瞬にして手足の先にまで高圧電流が流れるような強烈さもさることながら、最も特筆すべきはその持続性だ。
充分に前戯を施して子宮口を目覚めさせた場合、ポルチオ絶頂の多幸感は数十分余韻を残すという。
薬漬けにされ、数ヶ月間性感を開発されてきた沙羅に至っては、その数倍の効果があると見ていい。
これほどの余韻を残す絶頂を極め、さらにその最中に新たな絶頂を迎えれば、相乗効果で快感はより深まっていく。
それは悦楽という海で溺れかけているところへ、さらに足を掴まれて水中へ引き込まれるに等しい。
「はーっはーっ…………やめてください! 少しだけでも止まってくださいっ!!
 先ほどから、はぁっ…………常に……はっ……達していて、息が…………くるしいのです………………!!」
沙羅は必死に膣内のディルドーへ呼びかけた。しかし、その言葉が聞き届けられる事はない。
むしろここへ来てその動きはいよいよ不規則かつ強烈になっている。
もはやぐちゅりと奥を潰すなどという物ではない。
これ以上は無理だと収縮する膣壁を煩がるかの如く、ゴリゴリと奥の奥への採掘を試み続けている。
今の沙羅にとっては最も絶望的なルーチン。
「――――――っっ、―――――ぃぎ―――っ……………………!!!!!」
沙羅は声を出すことを恐れるように、白い歯を食いしばって耐えていた。
優雅さから最も遠いその獣のような顔は、当然罵詈雑言のいい的となる。
けれどもやはり、そんな声に構う余裕はない。
目に見えない所で、何かが着実に溜まっていく。いや、削り取られているのか。
そして、数秒の後。沙羅の全力の抵抗は、彼女自身の体内に入り込んだ異物によって突き崩された。

「…………く、く、ぉっ………………ォおおお゛お゛お゛っっっ!!!!」

決壊。
まさにその表現が相応しい。
清楚な顔は泣きじゃくるように歪み、涙と呼吸困難からくる鼻水に塗れた。
脂汗に塗れたスレンダーな肢体は、それまで以上に痙攣し、腰をヒクヒクと上下させる。
絶頂などという言葉では表せないほど深く達した事が、その見目と叫び声だけで手に取るように解る。
室内の一角から歓声が沸いた。
「ふふふ、とうとうその声が出ちゃったわね」
玉蓉が満面の笑みを湛えて沙羅に歩み寄る。
「脳が快感で焼ききれる寸前になると、皆その声を出すの。いわゆる断末魔ね。
 『頭が真っ白』『自分が何を言おうとしてるのかも判らない』『苦しくなくなったのが怖い』
 最後には口を揃えてそんな事を呟いてたけど、太陽の巫女さまにも当てはまるかしら?」
玉蓉の言葉に、沙羅は返事をしない。否、できない。
何故ならば彼女は今この瞬間もまさに、凶悪なディルドーの突き上げで絶頂させられているからだ。

「あくぁあああっ、んはぁああああおぉおお゛お゛っ!!!!!
 た、達していますっ、ずっと達しているんですっ!! もぉやめて、つらいっ、つらいいぃっっ!!!」
「そりゃあ辛いでしょうねぇ。折角だから辛いついでに、いま貴女の中がどんな風なのか見させてあげるわ」
玉蓉がそう言って合図を送ると、白衣の一人が頷いた。
そして直後、沙羅の真正面に設置されていたスクリーンが起動する。
そこには正面のカメラで撮影された内容がそのまま、大々的に映し出されていた。
すなわち、胡坐縛りを施された沙羅の膣内へ透明な凶器の入り込む映像が。
生々しい映像だ。愛液だろうか、妙なヌメリを帯びたピンク色の粘膜が、明らかに限界と思えるサイズの円柱型に押し拡げられている。
そしてその最奥ではやはり、剛直の先端が無理矢理に子宮口を開こうとしていた。
流石に亀頭が通る気配はないが、剛直が打ち込まれるたび二本指が入る程度には開いており、どれほど解れているのかが見て取れる。

「ひ、ひぃっ…………!!」
その映像を前に、沙羅はこれ以上ないほど目を見開いた。
かすかに歯が鳴らされ始めたが、絶頂ゆえではない。
自分が達し続けていた理由……女体の最も秘匿すべき場所の現状を目の当たりにしたためだ。
特に彼女の場合、子宮とは次代の『太陽の依り代』を生み出すための国宝。
幼い頃から宮中の人間より、常に身を清めよ、何の間違いがあっても性の病などに掛かってはならぬ、と厳しく教え込まれてきた。
その彼女にとって眼前の光景は、空の太陽へぽっかりと穴が空いたに等しかろう。

「……ああ、いや、おねがい。壊さないで…………わたくしを……わたくしの、体を…………!!」
沙羅は哀願を口にし、その最中で絶頂に至った。
その表情は時おり素に戻るものの、すぐにまた理性を失くす。
次から次へと脳裏に白い花火が打ちあがり、正常な意識を陰へ追いやってしまうせいだ。
彼女の脳神経はすでに快楽という汁を吸って膨らみきっており、もはや意思で御せる段階にはない。

「救えるわよ。貴女の身体も、国の宝も。貴女が右手に握っている、そのスイッチを押しさえすればね」

快楽に打ち震える沙羅の耳へ、玉蓉のその言葉がするりと入り込む。
沙羅の右手がピクリと反応した。確かに、スイッチを押しさえすればこの地獄から抜け出せる約束だ。
だが、じりじりと親指が赤いボタンに近づき、縁にまで辿り着いて……そこで止まる。
玉蓉は片眉を吊り上げた。
「何をしているの。早く押しなさい」
ごく小声で沙羅に囁くが、沙羅の指は動かない。
「か、はっ…………あぐっ、くはっ…………かっ、は………………!!」
もはや悲鳴さえ上げられず、ガクガクと頭を揺らしながら泡を吐くような段階になっているというのに。
「楽にお成りなさい、沙羅。もういいじゃない。
 どうせそのスイッチを押して犠牲になるのは、今までろくな不幸も味わっていない人間なのよ」
不幸がない。
玉蓉のその言葉を聞き、沙羅の視線が眼前のスクリーンから外れる。
「あら、知らなかった? 興国の人間は捕虜ではあるけど、結構いい生活してるのよ。
 よっぽど反抗した人間は捕縛したけど、それ以外は強姦された例もなければ、不当な暴力の例もなし。
 それどころか子供なんか、外国のお菓子やオモチャにすっかり夢中みたい。
 貴女が頑張ってきたお陰でね。
 その一方で、貴女自身はどうだった? 国の象徴だからって理由で、ひとり犯されて、辱められて。
 その挙句に、今もこんな目に遭ってるんじゃない。
 いい加減、その重荷を紫庭の連中にも背負って貰いましょうよ。国の象徴を守るために」
玉蓉はそう言いながら、指でページをめくるサインを出した。
すると沙羅の眼前にあるスクリーンの映像が変わる。
木々の生い茂った見慣れた空間…………興国宮殿前の大広場だ。

『聖巳様、もうおやめ下さいっ!!』
『ひじぇりみしゃまー、もう痛い痛いのしちゃだめぇ!!』
『あたし達が代わりますっ! だから聖巳様、どうかこの国にお戻り下さい!』

トゥルグアの兵士に囲まれながら、興国の民は一様に天を仰いで叫んでいた。
その視線は遥かな距離を越え、沙羅と繋がる。
「と、いう事ですわ。国民自身も納得している以上、問題はありませんわよね」
玉蓉が仕上げの一言を言い終わるより前に、沙羅の右腕が持ち上がっていた。
「ふふ、そうそう……」
玉蓉は研究員達に目配せしてほくそ笑む。
国民が納得していようがいまいが、決断の際にどのような状況であろうが、そんな事は些事に過ぎない。
『聖巳が民を売った』、この事実が全てだ。
太陽から見放された民は、知らず知らずの内に鋼の信仰心を失うだろう。そうなれば正式にトゥルグアの属国となるのにも時間はかかるまい。
長らく『日陰の国』と蔑まれ続けてきたトゥルグアの悲願が果たされるのだ。
快楽で痙攣する沙羅の手が、とうとう真上へと持ち上がる。スクリーンの中の国民が悲しげに目を伏せる。
そして、沙羅が口を開いた。

「…………皆さん。わたくしは今ようやく、はっきりと悟りました。
 わたくしには、皆さんの中の誰一人とて犠牲にする事はできません。
 わたくしは太陽の依り代であると共に、国の象徴。そして“国”とは、あなた方国民一人一人の集まりなのです。
 もう間もなく、わたくしはわたくしでは無くなってしまうでしょう。
 けれど、嘆く必要はありません。わたくしの陽の魂はいつでも、皆さんの心の中にあるのですから」

紫庭興国の民は、言葉もなく上空を見上げていた。玉蓉も、研究者達も、何ら思考ができずにいた。
その静寂の中、沙羅の右手が開かれる。
棒の先にボタンを冠したスイッチは、水平に床へ落ちていく。
床から響く冷たい音。それをきっかけに、ようやくにして周囲の時も動き出した。
紫庭の民は、一人また一人と涙しながら太陽への祈りを奉げ。玉蓉達は青筋を立てて沙羅を睨み下ろす。
「あ、ああ、そう。それが答えなの…………。どうやら、本当の神様になりたいみたいねぇ。
 いいわ、だったら望み通りに壊してあげる!!」
その宣告と共に、研究員達の指が一斉にキーボードを打ち込み始めた。
沙羅を囲む機械群から次々と起動音が鳴り、緑色のランプが津波のように点灯していく。
巨大スクリーンの映像も、広場の光景から沙羅のあられもない姿に戻る。
それら全ての中心で、沙羅は諦観したような薄笑みを浮かべていた。
「…………さようなら、皆さん。そして有難う。わたくしを愛してくれて、わたくしを育ててくれて。
 加護のない太陽の巫女ではありましたが、わたくしは、最期まで皆さんが大好きです…………」
その別れの言葉が終わった瞬間、無数のスチールアームが沙羅に襲い掛かる。

まずは沙羅の拘束姿勢が大幅に変えられた。
両の足首を掴むアームが移動を始める。胡坐から一転、両脚を肩より外側へ持っていくような大開脚へ。
「くっ…………!!」
相当な柔軟性を要求されるこの姿勢に、沙羅から小さな呻きが漏れる。
続いて、秘裂を開いていたリングのロックが解除され、ずるりと透明なディルドーが抜き出される。
ディルドーがアームに接続されていなかったのは、あくまで興国民に膣内の様子を見せ付ける事が目的だった。
今となってはもうその必要はない。
そのためディルドーは元通り太いアームに接続され、加えて透明なディルドーの中央部に細い螺旋状の棒が装填される。
沙羅はそこに言い知れぬ不安を感じた。しかし今さら足掻きようもなく、ただ静かに呼吸を整える。
「さぁ、お馴染みの後半の儀よ、聖巳さま。おっと、貴女はもう人である事を捨てたんだから、メス豚で充分かしら。
 前半はかろうじて面目を保つけど、後半に差し掛かるとすっかりバテて乱れまくるのがお決まりだったわよね。
 今日は、果たしてどうかしら?」
玉蓉の視線には、明らかに先ほどまでを上回る悪意が宿っていた。
それは他の研究員達も同じだ。
その悪意ある指で、プログラムの遂行命令が発される。

僅かながら外気に触れて冷えつつあった膣内へ、再び剛直が嵌まり込んでいく。
出産を思わせる圧迫に、沙羅の額へ新たな脂汗が滲み、恥骨が悲鳴を上げ始める。
それでも一度は耐えた苦痛だ。沙羅はそう考えて気を落ち着かせた。
ディルドーは膣内を限界まで拡げつつ、ゆっくりと最奥へ到達する。
「はあぁっ…………」
再び訪れた息苦しさに、沙羅は大きく息を吐いた。
しかし、彼女は知らない。生まれ変わったこのディルドーの本領は、膣奥へ達してからだという事を。
「えっ!?」
沙羅の肩がぞくりと跳ねる。
膣の最奥まで達したディルドーの先端部から、さらに何かが盛り上がってきている。
スクリーンに目をやれば、何が起こっているのかが明らかとなった。
開かれた膣の奥、ディルドーの圧迫で二本指ほどの大きさに開いた子宮口へ、先ほど目にした螺旋状の棒が入り込もうとしているのだ。
沙羅の瞳が見守る中、それはついに子宮口を通り抜け、子宮頚部へとその身を捻り込んでいく。
「くあぁああ゛あ゛っ!!」
沙羅は思わず叫んだ。総身に鳥肌が立つ。しかしその一方で、膣の奥は熱く痺れていた。どうやら絶頂しているようだ。
そして、その痛痒は一度限りでは済まない。

妙に弾性のあるその螺旋状の棒は、子宮側へ通り抜ける頃にまた捻れながらディルドーへと戻り始めた。
沙羅の脊髄を、いよいよ耐え難いほどの痺れが走り抜ける。
「ひっ、ひぃいぃいいいっ!! な、何、いったい何なのですこれはっ!
 わたくしの奥の奥に、何度も、無理矢理…………う、くくっ……ふうぅンン゛ん゛っ!!!」
「アハハハッ、恐怖と快感がない交ぜになったって顔ねぇ。受け入れたくないけど、勝手にイッちゃうんでしょう。
 それはそうよ。さっきまで子宮を叩かれただけでイキまくってたのに、その根元部分をじかに扱かれちゃ堪らないわ。
 でもね。この地獄には、もっと“下”があるのよ?」
玉蓉がそう告げた直後、沙羅の膣奥に引き続いての変化が起きる。
子宮頚部に嵌まり込んだ部分が、強烈に振動を始めたのだ。
「はぅう゛っ!!!」
この責めは効いた。擦られるだけでも痺れが走るほど敏感な部分に、機械の振動を受けては耐え切れる筈もない。
今まで受けていた刺激すらぬるま湯に思える苛烈さで、まさしく『瞬く間に』絶頂の数が積み重なっていく。
そしてどうやら、状況はさらに悪くなるようだ。
見覚えのある重厚なバイブレーターが、絶頂に打ち震える沙羅の陰核へと狙いを定めた。
「振動といえばこれを思い出すでしょう。ついでにご馳走してあげるわ」
嫌というほど味わった強烈な振動。それがすでに勃起状態にある陰核へ浴びせられた。
「がああああああっ!!!」
品のない叫びも出ようというものだ。そして今度の振動に寸止めはない。容赦なく絶頂へ至らしめるべく技巧を凝らす。
丸まった頂点を押し付け、側面で擦り、触れるか触れないかという皮一枚の距離で嬲り……。
「ああぁあああいやぁああ゛っ! そんな、やめてええええ゛ぇ゛ーーーーっ!!
 達しているのにまた達して、本当におかしくなってしまいますっ!」
機材をも震わせるような沙羅の絶叫に、白衣の一堂は笑みを深めるばかりだ。
「そうよ、イきなさいメス豚! お前はこれから、イってイってイキまくるの!
 さっきまでの私達がどれだけ加減していたのかを、存分に思い知りながら狂うがいいわ!!」




それからの行為は、政治的交渉でもなければ実験でもなく、完全に憂さ晴らしの拷問だった。
極太のディルドーで膣を拡げ、螺旋状のアタッチメントで子宮頚部を刺激する。
強力なバイブレーターで陰核を虐め抜く。
それを『基本』としながら、他にも思いつく限りの責めが加えられた。

例えば、椀を伏せたような瑞々しい双乳。
ここには家畜に用いるような搾乳機が取り付けられ、屹立した乳首周りを吸い上げられた。
研究員には年配の女も多く、胸へのコンプレックスは殊更に強いようだ。
そのため何人かが乳房責めに熱意を示し、薬物注射で本格的に母乳が出るまで育てる、ピアスを通してチェーンを垂らさせるなど、
冗談とも本気ともつかない物騒な談義を繰り返していた。

ディルドーが唸る膣の少し上、尿道も勿論ターゲットだ。
「いやっ、何を!? そ、そこはお小水の出る穴です! ああ、そんな、いけませんっ!!」
沙羅の抗議など聞き入れられる道理もない。
むしろそうした嫌がりの声が上がるたび、研究員達の顔はいよいよ嬉々としはじめる。
「こうやって尿道の奥を何度もこすってやれば、クリトリスが怖いくらいに勃起してくるでしょ。その状態でクリ責めすれば…………」
女の一人が細い棒を沙羅の尿道に差し込みつつ、モニター席に合図を送った。
すると間髪入れずにバイブレーターのスイッチが入れられる。
「くぁああああっ、ああっ、はぁあっぐ!!! んんんンん、くぁあおおお゛お゛ーーーっっ!!!」
「くひひ、スゴイ声。やっぱ何だかんだいってもクリ逝きって手軽でいいよね」
「ふーん。男の身からすっと、いまいちピンとこねーんだよな。
 ま、ああして腰ビックンビックンしてんの見ると、マジで一番敏感な場所なんだろうなと思うが」
狂乱する沙羅と、それを面白そうに見守る研究員達。
その間にはおぞましいほどの温度差があった。

こうした研究者達にかかれば、当然、肛門も良い陵辱対象だ。
まずは下準備と称して、細いチューブを用いての大量浣腸が施される。
ただでさえディルドーに限界まで膣を拡げられている状態だ。そこへの浣腸はつらく、沙羅はすぐに排泄の許可を乞うた。
しかし、研究員達は誰一人として許可を出さない。
かつて広場で監視役を根負けさせるほどに耐え忍んだ事を引き合いに出し、我慢を強いる。
最後には青ざめた顔をした沙羅があまり叫ぶので、惨めたらしい排泄の宣言をさせた上でようやく吸引となった。
挙句、肛門に関してはそれだけでは終わらない。
「ほーらぁ、どうなのメス豚? トロットロになってる子宮を、直腸側から揉まれてる気分は」
女の一人は、桜色の肛門へ細い腕を丸ごと挿入したまま問うた。
連続絶頂の影響で自律神経が狂い、括約筋がかなり緩んでいるために可能なことだ。
本人はそう語っていたが、挿入からのサディスティックな言動を見る限り、狭かろうが無理矢理に捻り込んでいた可能性も否定できない。

「……はぁ、ハァ…………ほ、ほんとうに、ほんとうにもぉ……やめてください。狂いそうで、こわい。
 い、いまもずっと、達しています…………からだが震えて、とまらないのです」
枯れたような声で沙羅が告げた。
異常性癖者から多対一で一方的に嬲られ続ける沙羅は、着実に疲弊している。
慎ましい彼女がこの1時間で、実に百を超える絶頂宣言をしている事実。
それが何より責めの苛烈さを物語っていた。
今も彼女は、両の乳房、陰核、尿道、膣、子宮口、そして直腸という七つの性感帯を同時に責め苛まれている。
「なーにが達してます、よ。いつまで高貴なご身分のつもりなの?
 絶頂の時は『イク』って言うように教えたよね?」
肛門嗜好の女が、腸壁越しに子宮を握り潰しながら囁く。沙羅の両脚が汗を散らしながら跳ねた。
「はごぉぉおお゛お゛っ!! ぃひっ、は、はい、イキますっ、イっていますっ!! ですからっ、ですからもう…………」
「やめるワケないでしょ。聞いてなかったの? お前は、今日この場でぶっ壊れるんだってば」
「そうよ。頑張ってないで、もう理性もプライドも捨てちゃいなさい。今更マトモでいようとしても辛いだけよ?」
沙羅の哀願は聞かれる事もなく却下され、再び苛烈な責めが始まる。
痛いほどに屹立した乳首が吸われ、
尿道を弄くられながら強力なバイブレーターで陰核を震わされ、
膣内が極太のディルドーに犯され、
子宮口が螺旋状の器具でこじ開けられ、
蕩けきった子宮を直腸を満たす腕で鷲掴みにされる。

「んひぃぃっイグッ、イっぐぅううっーーー!! と、とまらないっ、ぁあああイグゥゥーーっっ!!
 かっ、あはっ……アぉほおお゛っ! んぐぁあああ゛っア゛がア゛ア゛っっっ…………!!」

沙羅は獣じみた声を上げながら、ついに天を仰ぐ。
白目を剥き、口からは大きな泡を吐き。とても理性があるとは思えない。
ただひとつ意思らしきものを示すのは、その右手――。
右手は震えながら、必死に何かを探していた。

「あはっ、見てあの手。コイツまさか、あのスイッチ探してんじゃないの?」
「わ、マジだ。今更誰か犠牲にする気かよ」
「もうそこまで頭回ってないんじゃない? ただディルドーだけでも止めたいってだけでしょ」
「アハハッ、馬鹿だねー。自分で格好つけて放り捨てたくせに。もう完全に理性飛んじゃってるっぽいね。
 でも一応ダメ押しはしとかないと」
「そうね。このまま1時間も放っておけば、完全にぶっ壊れるでしょ」
「で、その後はどうする。新しいマシンのテスターにでもするか? 結構金になりそうだもんな、こういう機械って」
「んー。機械にさせてもいいけど、ウチのスラムで売春(ウリ)させんのもありじゃない?
 政治的な利用価値はなくなったけど、まだ肉人形としての需要はあるでしょ」
「肉といやぁ、とりあえずメシでも食いながら決めようぜ。朝からぶっ通しでハラ減ったよ」
研究者達が沙羅の処遇を語りながら、一人また一人と背を向けて消えていく。
最後に玉蓉が沙羅へ一瞥をくれ、
「…………そうなってしまえば惨めなものね、『聖巳さま』。
 お前だけは、興国民としてもトゥルグア人としても扱わない。ただ穴が3つ空いてるだけのジャンクよ」
吐き捨てるようにそう告げて踵を返す。

「ふっ…………ふふ、あははははっ…………わたくひぃ、こわ……れ? きゃはっ、きゃははははっ!!…………あはっ」

それらを虚ろな瞳で追いながら、沙羅は笑っていた。笑いながら、涙を流していた。

いつまでも、いつまでも。





宗教国家、紫庭興国。その宮殿が陥落したという報せは、全世界に衝撃を齎した。
しかし、新生『トゥルグア共和国』は僅か4ヶ月で打倒される。
太陽の依り代たる『聖巳』の意思を受け継いだ者達が蜂起し、見事にクーデターを成功させたのだ。
共和国の施設を制圧しながら、旧興国兵は血眼になって『聖巳』を探し回った。
しかし、それが上手くいかない。
『聖巳(ひじりみ)』はトゥルグア共和国において最大の禁句とされ、ごく一部においてのみ『穢身(けがれみ)』の名で秘匿され続けていたからだ。
結局、事情を知る玉蓉を、ヒトとしての尊厳を保てるギリギリまで尋問し、ようやくその所在が明らかとなった。
旧興国の宮殿……その地下へ密かに増設された空間。沙羅はそこだという。
情報通り地下の一室に踏み入った兵士達は、そこで己の目を疑った。

そこには、機械相手に延々と犯され続ける娘がいたそうだ。
木馬型のファッキングマシンに跨ったまま、膣と肛門を極太の剛直に穿たれ続けている。
木馬の左右にはアームに繋がったディルドーが並び、娘の額と首に嵌められたリングを用いて喉奥奉仕を強いている。
ディルドーは極めて精巧であり、娘が喉奥でしばし扱くと、擬似精液とでもいうべき白い液を噴くという。
娘はその白濁を嚥下しながら、額と首のリングを引かれ、すぐにまた別のディルドーを喉奥深くまで咥え込まされる。
機械相手ではあったが、それは間違いなく輪姦だった。現場を見たものはそう口を揃える。
兵士達は苦心の末に機械をすべて停止させ、かろうじて娘を救い出した。
娘の華奢な身体を抱きかかえ、それが沙羅本人だろうと確認しあうと、皆して男泣きに泣いた。

沙羅は、4ヶ月の間に変わり果てていたらしい。
どれだけ眠っていなかったのか、目の下の隈がひどい。
枝毛だらけのくすんだ黒髪は、膝よりなお下にまで伸び、その他の体毛についても処理の形跡はない。
身体中至る所にトゥルグアの文字で落書きがなされ、何か数を記録している物も見受けられた。
しかし、その内容を鵜呑みにはできまい。
もしもそれらの記述がすべて正ならば、沙羅の膣と肛門、そして口は、この4ヶ月だけで計250回以上も使用されており、
また売春大国であるトゥルグアの最下層スラムにおいて、飲尿を初めとしたあらゆるハードコアプレイを許される“肉便器”、であった事になってしまう。
食料だけは与えられているのか、痩せてはいない。それどころか乳房に至っては、見違えるほどの豊乳化が見られた。
娘が沙羅であるという確信が中々得られなかった理由がこれだ。
上着を着るのにさえ不便がありそうな乳房。その乳頭には銀のリングピアスが着けられ、しとどな母乳を滴らせている。
そして、何より違うのはその雰囲気だった。かつての崇高な雰囲気は微塵もない。
「……ねぇ、したいの?」
子供のような無警戒さで、沙羅は売春の意思を尋ねる。そして誘うように秘裂を拡げてみせた。
兵士達はここでまた息を呑む。
その陰唇にも、肥大化したクリトリスにも、悪趣味なアートのように金のピアスがびっしりと入っていたからだ。
それらは、この4ヵ月間の彼女の不遇を窺い知るに、充分すぎるものだった。




 ――それから、一年。

沙羅はかつての通り……いや、事によるとそれ以上に美しく成長していた。
『聖巳様』という呼びかけに対しては依然として反応が鈍いものの、穏やかで心優しく、民の誰からも好かれている。
ただし、全てが元通りとはいかない。
たとえば、その胸だ。どのような服を着ても隠し切れないその豊乳は、男にとって目の毒だった。
また白磁の肌に煌めく金銀のピアスもそのままであり、開発されきった性器の見た目も戻る事はない。
そして、それらに関連する問題がひとつ。
彼女の色狂いもまた治らない。
奇跡的にかつての人格が戻りつつあるものの、それとはまた別の人格が彼女の中に存在する。
民の中にはいけない事と知りつつも、彼女の妖艶な誘いに乗せられて宮中へ忍び込む者が後を断たない。

『ようこそおいでくださいました。むずかしいことは抜きにして、始めましょう。
 どうかあなたの太陽で、わたくしを温めてくださいまし』

濡れた瞳でそう囁かれれば、誰一人その誘惑に勝てはしない。
雰囲気に往年の清純さを残しながらも、その唇が開いたり脚が組み変えられるだけで、スタイリッシュな女の魅力が香ってくる。
その妖しさは、太陽というより月を思わせた。
他者からの光を取り入れ、幻想的に輝く月――それが沙羅の新たな人格だ。
太陽の没している間は、彼女がこの国を支配する。
清濁のすべてを呑み込む、淫蕩な笑みを浮かべて……。


                       終
 
 

忍の素性

※スカトロや痛い拷問、蚊責めなど注意。


「まさか、屋敷内はおろか寝間の真上にまで入り込まれるとは……屈辱ですよ」
男は静かに告げた。
藍色の小袖の上に黒八丈を羽織り、本多髷を結った、さぞや金回りも良かろうという風貌だ。
顔に湛えた柔和な笑みなどは七福神の大黒天を思わせる。
しかしこの男の本性は、柔和などとは程遠い。
紀嶋屋相之丞。
奥末藩藩主の御用商人でありながら、敵方である士沼諸藩との密通が疑われている男。
否、正確には“疑われていた”男か。

 (不義者め…………)
くノ一・翠(すい)は、相之丞の侍衛達に取り押さえられたまま鋭い眼光を放っていた。
美しい女だ。
忍らしくキリリと鋭い面立ちに、後ろで一つに結われた艶やかな黒髪。
肌色は白く、身体はよく引き締まって健康的な美に溢れている。
胸と尻の膨らみは十分に女らしく、すらりと細長い脚線は異人の血でも入っているかのよう。
奥末藩の密命を受けたこの翠にとって、相之丞は怨敵だった。
屋敷に忍び込んだ彼女が天井裏から見たものは、士沼の姫と同衾する相之丞の姿。
密通はもはや確定となった所で報告に戻ろうとした矢先、翠は屋敷に仕掛けられた罠に捕らわれてしまう。
主に砦や城内戦を想定した城に用いられる、屋敷内ではまずあり得ない類の罠だ。
相之丞にはよほど痛い腹があるらしい。
事実、相之丞の黒い噂には枚挙に暇がなく、様々な商人が株を奪われて自殺に追い込まれたともいう。

「さて。この女には、何処の手の者かを白状して貰わねばなりません。
 そのための拷問は、私自らが行います。さもなくば腹の虫が収まりそうにないのでね」
相之丞が人懐こい糸目を細く開き、狡い瞳を覗かせながら告げる。
翠はその視線を受け止め、射殺すような眼光で睨み返す。
美しきくノ一は心に決めていた。
必ず機を見て脱出する。そして奥末藩の力を以って、この卑劣な古狸に天誅をくれてやる、と。





尋問部屋に笞打ちの音が響き渡る。
相之丞の持つ箒尻が唸り、今一度翠の背を打った。
両手首と腰の縄で万歳をするように縛られた翠には、それを防ぐ術などない。
「ッ……」
翠は奥歯を噛みしめて痛みに耐える。
忍装束は背の部分が大きく裂け、柔肌からも血が噴き出しているに違いない。
背の全体が焼け爛れたように痛む。しかし痛みそのものであれば、指先の方が上だ。
翠の視界に映る左右の十本指には、一つ一つに棒状のものが突き刺さっている。
およそ裁縫には使えぬような極太の針だ。
笞打ちで翠が気を失うたび、指の肉と爪の間にその極太針を突き刺して気付けが行われた。
最初に針を打たれた右手中指の血はすでに固まっているが、最後の左手小指からはなおも血が滴っている。
膝下の痛みも相当だ。
翠はこの笞打ちの前に石抱き責めを受け、伊豆石を三枚積まれて問責されていた。
足の骨が残らず砕けたように思え、今でも縄の支えがなければ、立つことすらままならない。

背、指先、脛。その全てがボロ屑のように成り果てた現状。
それでも、翠には余裕があった。
彼女はくノ一として拷問の訓練を積んでおり、痛みには慣れている。
さらに、痛みによる疲弊と、自白して楽になろうとする心を、頭の中で分かつ心得も身につけている。
痛みによって自白する事はまずあり得ない。

「中々に強情ですな。こうまでされて、ろくに声も上げんとは」
彫りの深い顔立ちをした男が、腕組みをしたまま言った。多少名の通った火付盗賊改だ。
拷問に不慣れな相之丞が相手を責め殺さぬよう、頃合いを測っているらしい。
彼のような番方すら懐柔している所が、豪商たる相之丞の恐ろしい所だ。

「なに、声を上げさせるぐらいは簡単ですよ。……寄越しなさい」
相之丞は少々の苛立ちを見せながら汗を拭い、近くの下男に声を掛ける。
下男はその言葉に応じて手にしたものを慎重に主へ渡した。
今まさに炭火から抜かれたばかりの火熨斗。
相之丞は片手で翠の足首を掴み上げ、その火熨斗をゆっくりと近づけていく。
「!」
足裏に迫る熱気に気付き、翠が足元を見やった。
真っ赤に熱された平らな鉄が視界に入り、ぞくりと悪寒を走らせる。
永遠にも思える数秒。
その後に、ジウと何かの焦げる音がし、悪臭が立ち込め、そして……熱さが翠を襲った。
「ふッ、ぬ゛ぅうううう゛う゛ッッ!!!!!」
如何なくノ一とて、これには声を堪える事が出来ない。
翠は反射的に涙を零し、下唇をきつくきつく噛みしめて苦痛に耐え忍ぶ。
すでに幾度も噛みしめていた下唇からはついに血が滴り、顎の下を流れ落ちていく。

相之丞は苦しむ翠を冷酷に観察しながら火熨斗を離した。
そして下男の差し出した壷に手を差し入れ、たっぷりの塩を掴み出すと、それを紅く焼けた翠の足裏に塗りこめる。
「いッ、っぎぁああぁあああッッッ!!!」
翠はたまらず叫んだ。
一気に背筋を寒気が駆け上り、脳に達して警鐘を打ち鳴らし始める。
身体が震え始め、内股をなま暖かい奔流が流れていく。
「ふん、失禁ですか。品のない」
相之丞は汚らしそうに告げながら足の裏から手を離した。
そして汗と涙に塗れた翠の顔を掴み、目元に血に塗れた塩を塗りつける。
「どうです、話す気になりましたか」
翠は数度瞬きして視界の涙を払いながら、きっ、と相之丞を睨みつけた。
「自分の胸にでも聞いてみろ、外道が」
乾いた喉を絞るようにして恨み節を吐き出す。
相之丞は細く開いた眼の中に苛立ちを浮かべながら、深く嘆息した。
「…………なるほど、残念です。では望みどおり拷問を続けましょう。
 あなたには素直になるまで、水責め、痒み責め、色責めと、あらゆる苦難を味わって頂きます。
 けして死なず、さりとて生を感じられないほどの過酷さでね」
冷たい表情のまま、淡々と紡がれる宣言。
そこには自らの地位を脅かす者に対する、病的なほどの敵愾心が見て取れた。





「まだ、白状する気はありませんか」
相之丞が大黒のような笑みを浮かべて尋ねた。
その視線の先で、翠は後ろ手に縛られている。
両手首を一つに縛った縄尻は太い木の枝に結わえつけられ、逃走を封じていた。
かろうじて膝立ちにはなれる高さであり、肩が抜けることはない。
格好は丸裸だ。
男好きのする身体を男達に晒すがままになっている。
場所は深い藪の中であり、周囲には不快な羽音が絶え間なく飛び交っていた。
何をされるのかは想像に難くない。
それでも、翠の瞳には微塵の恐怖もなかった。
「可愛気のない瞳だ。……やりなさい」
相之丞は大黒の笑みから下卑た瞳を覗かせ、下男に命じる。
すると、下男達が手に持った桶の中身をそれぞれ翠に浴びせかける。
酒だ。
「さて、では私達は一旦退散することにしましょう。蚊に噛まれでもしたら大変だ。
 この辺りの蚊は特別に痒みが強くてね、普通の倍は腫れる。
 たった一箇所脛を刺されただけでも、寝付けず夜中まで掻き毟ってしまう塩梅ですから」
相之丞は翠に聴こえるように告げると、踵を返して藪の中から去っていく。
藪には、酒の匂いを漂わせた翠だけが取り残された。

耳障りな羽音が翠を取り囲む。
「っ!」
顔に取り付こうとした数匹を、翠は頭を振って追い払った。
しかし同時に内腿へと別の蚊に付かれる。続いて首筋、肩口へと。
それらの蚊が離れてしばらくすると、猛烈な痒みが沸き起こった。
「ううっ!!」
相之丞の言葉は大袈裟ではない。普通の蚊よりも痒みが強く、寝付けないほどだ。
指で掻き毟りたくて仕方ないが、両手を木に括りつけられた翠はただ身を捩らせるしかない。
蚊の群れはそんな翠の周りを飛び交い、無慈悲に白い肌へと取り付いていく。


「……く、くっ……っ、あああぁあああ゛っ!!!くあ、あぐうっ!うああぁぁッアアああ゛ッッ!!!!」
やがて翠は忍耐の限界を迎え、叫び声を上げた。
近くで相之丞達が聞き耳を立てているであろう事は知っていたが、理性で抑えられる痒みではない。
汗が噴きだし、涙が滲む。
「か、痒いっ!!あア゛、痒い、痒いぃっ!!止めろッ、来るな、来るなぁッッ!あぐ、ああ゛あ゛っッ!!!」
必死に身を捩っての抵抗を試みる。後ろ手の縄が手首に食い込み、ついに血を滴らせ始めた。
縄尻が結わえられた太い枝は、軋みこそすれど折れる気配はない。
「ふ、っくぐうううぅうっ!!!!」
歯を食い縛る翠。
全身を痒みが覆い、寒気と刺すような痛みを覚えるまでになっている。

薄目を開けると、涙で滲んだ視界にはつねに蚊の姿がある。
蚊が自らの肌に取り付き、止まり、離れていく。その箇所に痛烈な痒みが生まれる。
すでに全身至る所に赤い跡があり、中には刺された部分をさらに刺されて赤黒く変色している部分さえあった。
「はーーっ、はっ、はっ、はぁっ……」
息が切れる。一日で十里を走るほどの翠の息が。
全身から汗が滴り、口元からは止め処ない涎が溢れている。
放置されてからどれだけの時間が経ったのだろう。そしてこれから、どれだけ続くのだろう。
一睡もできず、神経を磨り減らすこの地獄が。

「…………おやおや、酷い有様だ」
翌朝、相之丞が翠を一目見て告げた。
翠はそれを遠くに聞きながら、朦朧とした意識の中を漂う。
ようやく虫でないものに会えた、その安堵を噛みしめながら。





捕らわれて以来、翠に休息らしい休息はなかった。
著しく心身を消耗させる拷問の合間にも、絶えず何らかの緩やかな責めが加えられた。

今、翠は後ろ手胡坐縛りに縛られたまま、乳房を二つの木の板で挟み潰されている。
板の両端は麻縄で幾重にも縛りあわされるため、ちょうど女の豊かな乳房を搾り出すような形だ。
その上で乳房の敏感な部分へと針を刺されている。
針先はごく細い。
太い針よりも刺突自体の刺激は小さいが、それを延々と突き刺されると、それはそれで神経を侵される。
さらに相之丞は、針を刺す前に必ず唐辛子入りの壷に針の先を漬けていた。
それにより、針を刺されると同時に焼けるような痛みが翠を襲う。
「…………っ、…………っっ…………!!」
翠の鼻から吐息が漏れた。
乳房を鷲掴みにされたまま、柔な乳首や粟立つ乳輪へと針を打ち込まれる。
責め手は相之丞本人だ。翠は責めを受けながらも、相之丞の顔を真正面から睨みすえている。
一方の相之丞は、その視線を受けながらも涼しい顔だ。
「胸の先が尖ってきましたよ。あなたは、こんなもので気持ちが良くなるのですか」
相之丞が翠の乳首を摘みながら言う。
翠がちらりと視線を落とすと、確かに胸の尖りははじめよりも円錐型にしこり勃っている。
度重なる刺激を脳が快感と誤認識したのか。あるいは本当に心地良いのか。
いずれにせよ、怨敵に性的な反応を見られることは女忍の恥だ。
「くっ……!」
翠の視線が一層鋭さを増す。
相之丞はその顔を嘲笑うように眺めながら、針を置いてキセルに持ち替えた。
高価な品として知られる銀延べキセルだ。

相之丞はゆっくりと煙を吸い込むと、さも美味そうに煙を吐き出した。
煙は正面に座る翠の顔へと浴びせかかり、その美貌を歪ませる。
噎せる翠を眺めながら、相之丞はさらに一服した後、おもむろにキセルを翠の太腿へと近づける。
そして先を反転させ、剥きだしの白い腿の上で燃えさしを棄てた。
「ぬ゛っ!!!」
乳首と顔ばかりに意識が向いていたところへ、突然の腿の熱さ。
これには翠とて反応が遅れ、生々しい反応で胡坐縛りの太腿を震わせた。
「灰落としが動くな」
相之丞は本性を露わにしたような低い声で、翠に語りかけた。そしてまた唐辛子の壷と針を手に取る。
相之丞の憂さ晴らしとも言えるこの責めは、そこからまた何刻かに渡って続けられた。





「さぁ、もう一度です」
相之丞が命じる。
折檻役が翠の黒髪を掴み、水の湛えられた盥へと頭を沈める。
もう幾度目になるだろうか。
「ぶはっ!!げほっ、げほえほっ!!……っはぁ、はあ……はぁっ…………!!」
水から引き上げられた翠は、酷く苦しみながら咳き込み、酸素を求めた。
どれほど訓練を積んだとて、人が水中で息ができるようはならない。
長時間水に漬けられれば、忍といえど苦悶に満ちた生々しい表情を晒すしかない。
「……どうだ、水責めの味は」
相之丞は責められる翠の前へと回り込み、疲弊した翠の顎を持ち上げた。
濡れた前髪が額に貼りつき、何とも艶めかしいものだ。
しかしそこはくノ一。相手が相之丞だと知れるや否や、口を窄めて唾を吐きかける。
唾は相之丞の目の下を打つ。
相之丞は一瞬怯んだものの、すぐに薄笑いを浮かべながら目の下を拭った。
「威勢のいいことです。ですが、それもいつまで持つものか。
 こんなものは、水責めの中でのほんの小手調べ。ここからが地獄ですよ」
相も変わらず穏やかな口調で、冷酷な言葉を発する。
翠は屈強な男達に引き立てられながら、そんな相之丞を睨み続けていた。


次の水責めは水車を利用して行われた。
水車は相之丞の屋敷がある村の中ほどに備わっている。
村の人間達が何事かと集まる中で、丸裸の翠は逆さ吊りのようにして両手足の首を水車へと括りつけられていく。
この村人達は、相之丞を国主の如く慕ってはいるが、彼の不義に関わっている訳ではない。
奥末藩に縁のある善良な民であり、翠が憎しみを向けるべき相手ではない。
実際のところ翠にしてみれば、こうした無関係な村人の前で恥を晒す事がもっとも辛い。
相之丞へ対するように鋼の心で抗うことができない。
丸裸で水車に括り付けられながら、翠は恥じらいに胸を締め付けられていた。

やがて水車は、軋みを上げながら回り始める。
相之丞子飼いの男達が水車を引き、人力で回しているのだ。
村の人間に乳房と茂みを晒す格好から、翠は次第に円に沿って上へと運ばれていく。
水車の頂点を越えたあたりで、村の男達から歓声が上がった。
大股開きになった秘所が、彼らからは丸見えになっているのだろう。
足を閉じる事も叶わない翠は、恥辱にただ耐えるしかない。
そして、恥らってばかりもいられなかった。
目の前にはすでに、こんこんと水の流れる用水路がある。今からそこへ潜ることになるのだ。
足の先から順に冷たさが這い登り、ついに乳房までが水に隠れる。
「はぁっ」
翠は大きく胸を膨らませ、息を吸った。その数瞬後、ざぶりと顔までが水の中に浸かる。
ごぼごぼと鳴る水音。水車の軋みが煩いほど大きく響く。
視界に映るのは暗い水底と、揺れる濃緑色の藻、そして木製の水車の車輪。
息苦しさがわずかに肺へ溜まる。
水車の回転はわざと遅くされているようだ。より長く苦しめようというのだろう。
くノ一として潜水にはある程度自信があるが、これが幾度も繰り返されては流石に厳しい。

次第に視界が明るくなり、揺れる水面の向こうに村人達の姿が見えはじめる。
男達は水から出た翠の身体を指差して盛り上がっているようだ。
そして、ついに顔が水面から出る。
「ぶはっ!!」
翠は当然のこととして酸素を求めた。その翠の顔を、また男達が好色そうに眺める。
その視線に耐えながら、翠は再び水車の回転にそって引き上げられていく。

それが幾度か繰り返された時だ。
暗い水底を抜け、ようやくまた酸素が吸えると翠が肺を緩めた時。突然相之丞の声がした。
同時に水車の回りが止まり、翠は首から上が水中に没したままで留められる。
 (しまった…………!!)
そう考えた時にはもう遅く、酸素を吸う準備をしていた灰から空気が漏れ出す。
貴重な酸素が泡となって浮かび上がり、代わりに水が翠の喉へと入り込んだ。
その苦しさに、またガボガボと泡を吐いてしまう。そうして完全に酸素を失ってからが、苦しみの始まりだった。
水車に括りつけられた身体が暴れる。苦しみと恐怖で表情が引き攣る。
村人達は、そうした翠を嘲笑った。
中には気の毒そうにしている子供もいたが、彼らにとって翠は、いや相之丞に楯突く者は敵なのだ。

十分に翠が苦しんだところで、ようやく水車が再び回り始める。
溺れた人間特有の無残な顔をした翠が表れ、周囲の笑いを誘う。
こうした責めが、さらに幾度も続けられた。その度に翠は苦しみもがき、ついには失禁さえも晒して笑い者にされ続けた。


水責めはまだ終わらない。
二度の水責めで水への苦手意識を植えつけたところに、とどめの三度目が行われる。
それに気付いた瞬間、翠は内心で震えた。本当に容赦がない。

尿道と肛門にきつく栓が嵌め込まれ、水の逃げ場を失くす。
その上で、檜造りのの巨大な手桶と、なみなみと水で満たされた二抱えほどの酒樽が翠の前に置かれた。
手桶で勢いよく水が汲み出され、口に流し込まれる様が容易に思い描ける。
「……水責めというものはね、本当によくできた拷問なんですよ。
 気が狂うほどの苦痛だそうですが、実際に狂ったという話は聞かない。外傷は残らないし、後遺症もさほどない。
 ただ、確実に大人しくなる。どんな人間でも反抗する気概を失い、水を見せるだけで怯えて言う事を聞くようになる」
折檻役が翠の鼻を摘み、口広の漏斗を深く咥えさせるのを見ながら、相之丞は告げた。
翠は瞳を惑わせつつ、必死に彼を睨み上げた。
遥か上下に落差がついた、二つの視線がぶつかり合う。

折檻役が翠の鼻を摘んだまま、手桶の水を漏斗の中に流し込む。
一人が流し込めば、すぐに逆から別の一人が、その次にまた別の一人が。
その交替制により、翠の口には絶え間なく水が流れ込む。
鼻を摘まれて呼吸を封じられたた翠は、その水を飲むしかない。
白い喉が幾度も上下する。
「む、んん、んっ…………んんもぉエ゛ッ!!!!」
えずくような音がし、翠の腹部がにわかに蠢きはじめた。
同時に首を振り始め、なんとか水を呑む苦しさから逃れようとする。
しかしそれで許すような折檻役ではない。
むしろより強固に翠の頭と身体を押さえ込み、手桶で水を呑ませてゆく。
「え゛っ、あごぐっ……!!ゴバッ、ぃあんんんォっ…………!!!」
整った顔が口周りを中心に歪にゆがむ。
全身が細かに痙攣をはじめ、そしてついに、翠の眼球はぐるりと天を剥いた。
そこへ来て、ようやく折檻役達は一旦漏斗を抜き出す。
「ッげほっ、げほえっ!!えごほっ、ごぼっ、え゛げろ゛っっ!!!」
嘔吐を思わせる音で水が吐き出された。
盥の時よりも、水車の時よりも格段に苦しげな音だ。
「どうです、自分の素性でも思い出しましたか」
相之丞は手に扇子を遊ばせながら、憎らしいほどの余裕をもって問うた。
「…………地獄、に、堕ちろ」
翠は息も絶え絶えに答える。相之丞が手を振り上げた。

再び折檻役が翠の鼻を摘み、漏斗を咥えさせる。
翠の瞳に一瞬、明らかな恐怖の色が浮かぶ。
そしてまた水が注がれ始めた。
「ああああ゛っ!!!おえぇげぼっ、も゛ぅンぐっ!ぶっ、ッげぐぼァ゛ああ゛っ!!!」
艶かしい身体が暴れ回り、黒髪を鷲掴みにされたまま首を振りたくる。
呑ませては吐かせ、また呑ませては吐かせ。
すべてを吐ける訳でもない為、その繰り返しで翠の細い腹部はゆっくりと膨れてゆく。
肌の色が土気色に変わり、唇は紫色になり。
やがて本当の本当に限界と見られた所で、漏斗が引き抜かれた。
「いい加減に答えろ。貴様、どこの手の者だ!」
折檻役が、水風船のように膨れた腹部を強く鷲掴みにする。翠は激痛に顔を顰める。
「ごおお゛ぇっ、ぶぐふっ!!!」
翠の口から勢いよく水を吐き出された。
そしてようやく酸素を得られたとばかりに激しく喘いだあと、再び水を吐く。それを繰り返す。
最後の水には鮮血すら混じっていたが、完全に白目を剥き痙攣を繰り返すくノ一が、素性を明かす事はついになかった。
「痛みでは駄目、苦しみでも堕ちず…………ですか」
陥落する事のない忍を前に、相之丞は苛立ちを露わにする。
しかしその一方では、冷静に次の一手を案じている風でもあった。


 


翠は布団の上に寝かされ、大の字に手足を拘束されたまま色責めに掛けられていた。
翠の上に覆いかぶさっているのは、村の娘だ。
天上人たる相之丞から屋敷に招かれたのみならず、くノ一への責めすらも任された。
その大任に胸躍らせ、嬉々として責め立てている。
「………………」
娘から執拗に唇を貪られながらも、翠は毅然とした態度で天井を睨み上げていた。
口づけはなされるがまま。
しかし、内心では興奮が刻一刻と高まり続けている。
同性に口内を貪られる事もひとつ。
そして娘の片手は、傍らの壷から゛秘薬”を掬い取りながら、翠の淡いへと沈み込んでいく。
同じ女ゆえに、その責めは洗練されていた。昂ぶるように、膣の中の弱い部分を的確に責め立てた。
それを一方的に受け続ければ、いかなくノ一とてまったく感じないという訳にはいかない。

「ねぇくノ一、気持ちいいんでしょう。女陰の奥がどろどろになってきているわ。
 わたしの指をしっとりと咥え込んで、流石、いやらしいのねぇ」
村娘が指を蠢かしながら囁く。
彼女に指摘されるまでもなく、座敷にはもうかなり前から濡れた音が繰り返されている。
出所は翠自身の秘所だ。
翠が問いに答えないのを見て、娘が再び唇を奪う。
年を疑うほど妖艶な舌遣いで歯茎を舐め、上顎をなぞり、舌を絡ませて。
ぞくぞくとする無防備な昂ぶりが、翠の脳裏をくすぐった。
「…………お願いだ……こんな事、もうやめてくれ…………」
口が離された瞬間、翠は娘にだけ聴こえるように小声で囁きかけた。
部屋の隅で盃片手に見ている相之丞には気付かれないように。
しかし、娘は面白そうに目を見開いた。
「はっ、ねぇ相之丞さま!この女、今弱音を吐きましたよー!もうやめてくれ、ですって!あははっ」
鬼の首を取ったかのように、相之丞を振り仰いで叫ぶ。
それを聞き、翠はやはりこの村娘も敵方の人間なのだと心寂しくなる。
奥末の忍である自分が、同じ奥末の民に虐げられるとは。
「そうか、そうか。ならば続けよ、折れさせれば好きに褒美を出すぞ」
相之丞は機嫌よく娘に答える。
その言葉を聞き、娘はいよいよ目を輝かせて翠に覆い被さった。


「あははっ、お乳でてきた」
娘が翠の胸の尖りを摘んで叫ぶ。
針で散々に乳腺を刺激された胸の先は、再度の興奮によって確かに白い雫を零している。
とろりと、何とも心地よさげに。それは翠自身の心のようだった。

娘によって、翠はなお散々に嬲られていた。
豊かな胸を揉まれ、秘裂に秘薬を塗り込められ、さらにはその上の赤い蕾にすら秘薬をつけた筆でなぞられて。
「はぁ、はっ……はぁっ……はぁっ……あっ、はーっ…………」
全身に汗を掻きながら、翠は激しく胸を上下させていた。
性感の極みまで押し上げられ、しかしそのまま寸止めという生殺しの状態を続けられているのだ。
寸止めは相之丞の命令だった。
昂ぶりきっている。
毅然とした態度で天井を見つめていた翠の瞳は、いまや色に蕩けて濡れたようになっていた。
秘裂からは蜜が止め処なく流れ、娘の指に絡みながら敷布団に滴っていく。

「…………よし、そろそろ良いでしょう。存分に果てさせておやりなさい」
翠の状態を見守っていた相之丞が、扇を開きつつ言う。
すると娘は、待っていたとばかりに桐箱から責め具を取り出す。
凹凸のついた、極太の張り型。
「さぁ、いくわよくノ一」
猫のような瞳で翠の目を覗き込み、娘の手にした張り型が秘裂を割る。
「ぐっ!!」
思わず声が出た。張り型の太さもあるが、それ以上に快感が凄まじい。
膣内の膨らんだ襞を張り型が通り抜けた瞬間、翠は軽い絶頂を迎えた。
そして張り型の先が蕩けきった膣奥を突くと……脳内が白く染まる。
全身を巡る甘い電流。足指の先までがぴんと伸び、断続的な快感に腰から脊髄までが打ち震える。
この快感は、まずい。そうはっきりと感じられた。
しかし、拒めない。拒む術がない。

  
「んん、んあっ!!ああ、あはっ、あぐうううっ!!ひっ、あぁああっ!!!」
和室に女忍びの嬌声が響き渡る。
村娘の手で容赦なく張り型を叩き込まれながら。
幾度も幾度も腰が跳ねる。子宮を中心に身体中が痙攣を繰り返す。
「どう、ぶち込まれて堪らないでしょう!ほらっ、知ってる事全部吐きなさいよ、ほら!!」
村娘はいよいよ嬉々として翠を責め立てる。
「おごほぉぉおおお゛っっ!!」
翠は事実たまらなかった。
絶頂につぐ絶頂で呼吸すらままならず、口からは涎はおろか泡すらも噴いてしまっている。
頭の中が快感で煮崩れしていくようだ。
自我を保てなくなる恐怖と、底無しの快感に惹かれる危うさ。
今までの責めでも、もっとも強い警鐘を脳が鳴らしている。
生物が本能的に求めていることだからこそ、手に負えない。
「あはっ、あ、ああっ、ああっ。ひあぁああああふっ!!!」
翠は極限状態に置かれながら、後頭部を床に打ち付けてかろうじて正気を保つ。
頭の中でぷつりと糸の途切れる音がし、視界が黒く染まって気を失う瞬間まで。

何とか、耐え切った。
暗い意識の底に沈む瞬間、翠は安堵した。しかし同時に解ってもいた。
次はどうなるか解らない。次の責めで、『くノ一・翠』は壊れてしまうかもしれない、と。





「うわ、何あれ……双子孕んでるみたい」
「あれってあの、細くて、ちょいと綺麗だったくノ一だろ。腹が膨れあがると、醜くなるもんだねぇ」

村人達がどよめきながら畦道に群がっている。
その中心にいるのは翠だった。
手首足首をそれぞれ一纏めにし、大股を開く格好で二本の木に結わえ付けられている。
その腹部は醜く膨れ上がっていた。過食責めの影響だ。
囲炉裏鍋二つ分作られた下剤入りの粥を、手で掬って無理矢理に食べさせる責め。
液状のものに対して苦手意識を植え付けられた翠は、粥を口に近づけられるだけで怯えを見せた。
しかしそれに構わず、手で口を覆って塗りつけるように食べさせる。
翠は幾度も嘔吐した。
液状のものを口にする恐怖と、単純な食べ過ぎによる戻し。
しかしその吐瀉物すら掬い、恐ろしく長い時間を掛けて残さず平らげさせられた。
その結果の蛙腹だ。

ぐりゅるるる、ごぉうるるるるるぅ、と不穏な音が響く。
下剤の効果と腸の限界以上の圧迫による腹鳴り。翠の苦しさの象徴。
それでも、翠は村人の前で恥辱を晒したくはなかった。
「はっ、はっ……はぁっ、はっ……あああ……ううううっ、ああっ…………!!」
荒い息を繰り返しながら、翠は耐える。耐え忍ぶ。
しかし……本当の限界は覆らない。
吊られた手足が震え、尻肉が幾度も引き締まり、その末に、とうとう尻穴から飛沫が上がる。
「うわっ、出した!!」
「おいおい、汚ねぇなあ。しかもすげぇ匂いだ!」
「こら、見るんじゃありません!!」
村の人間から悲鳴に近い反応が沸き起こった。
ある男は下卑た視線を寄越し、
ある女は心の底から軽蔑したように冷笑し、
ある母親は子供の目を必死で覆って非難の目を向け。
それらの反応が、翠の心を切り刻む。しかし、排泄は止まらない。止められる訳がない。
飛沫は奔流に変わり、腹部の張りを解消しながら地面に叩きつけられていく。
臭気が身を包み込む。
「…………見るな…………見るな、…………見るな、見るな…………見ないで、くれ………………っ!!」
脂汗を流して排泄を続けながら、翠は小さく繰り返した。

「これが最後です。どうです、何か話しますか」
尻肉から汚物を垂らすままの翠に、相之丞が問う。いつになく柔らかな口調だ。
翠は一瞬心が靡きかけるのを必死に堪え、怨敵を睨みつける。
「そうですか。ならば…………もう、いい」
相之丞は首を振り、折檻役達に木の縄を解かせた。
両手足の縛りはそのままに、翠の身体は抱え上げられる。そしてそのまま村外れへと運ばれた。
明らかに妙な一画へと辿り着く。
周囲よりも数段低く掘り下げられ、家屋も無く、林に遮られて昼なお薄暗い土地。
「棄てろ」
相之丞の一言で、翠はその中に投げ込まれる。

「ぐっ!!」
肩を地面に打ちつけた翠は、ふと妙な匂いを嗅ぎ取った。
まるで何年にも渡って水浴をしていないような、濃厚な体臭。それが匂ってきている。
はっとして顔を上げれば、そこにはもはや人と呼んでよいのかも解らないものがいた。
全身が垢で覆われて浅黒く、腹だけがぽこりとでた餓鬼体型。
そして女に飢えているらしく、目をぎらつかせながら裸の翠ににじり寄る。
「よせっ、止めろ!来るな!!」
本能的な恐怖から翠は叫んだ。しかし、大股開きで手足を縛られていては逃げられない。
男達はたちまち翠に群がり、やおら女陰へと勃起した逸物を捻り込む。
ぬるりとした感触が翠の中を滑る。
しかし、翠はその小汚い性交にすら快感を得ていた。秘薬のせいだ。
「ーーーーーっ!!!」
つねに蕩けているような膣奥を乱暴に貫かれ、天を仰ぎながら声ならぬ声を上げる。
その翠にまた別の一人が貼りつき、挿入を試みた。
塞がっている膣以外のもうひとつ……後孔へ。
「なっ!?よ、よせっ、後ろはっ!今、そんな事をされたらっ…………!!」
翠の哀願も、飢えた男達には通じない。
男は迷うことなく翠の肛門へと怒張を宛がい、一息に貫いた。
「あうううっ!!!」
翠が顔を歪める。その歪みは、怒張が肛門を攪拌する中で、ますます歪になっていった。


「あっ、ああ、あっ!!や、やめろ、やめてくれ、聴こえてるんだろう!!
 私は大量に下剤を飲まされてるんだ、まだ半分も出し切れていない!!
 もう解るだろう、そんな状態で後ろを……あ、され…………たら、う、んうううっ!!!」
翠が必死の説得を続ける間にも、背後の男は動きを緩めない。
どれほどの女日照りだったのだろうか。
腰を鷲掴みにし、腰よ壊れよとばかりに力強く叩きつける。腸の奥の奥まで。
「やめ、やめろっ、ほんとうにもう……ぬ、ぬいてくれ、後生だ…………っ!!!!!」
その言葉の直後、ついに翠の肛門から第二の噴出が始まる。
腸の深くにあった下痢便が、怒張の抜き差しの刺激で下ってきたのだ。
「うわあああぁあああっ!!!」
これには翠も絶叫した。
本来性交に用いるべきでない肛門を犯されるのみならず、脱糞まで晒す。
くノ一である以前に、女としてこれ以上はない恥だ。

「うわぁー、すっごい。やってるやってる」
「ひぇえ、どっちも腰から下が糞塗れ……。もう人間じゃないね、ありゃ」
低地を見下ろす形で村人達が集まり、口々に翠をなじる。
尋問役や相之丞もそちら側にいる。
それを見上げるうち、まるで翠は、自分が人間でない下等生物になったように感じた。
垢まみれの人間に押し倒され、孔という孔を好き勝手に使われる畜生。
吐き気のする体臭と、自らの漏らした汚物の匂いに満ちた空間で這いずる蟲。
汚れていく。
垢にまみれ、地面にまき散らされる汚物の中を転がって。
人間としての尊厳が………………、折れる。

「たすけて……助けてください。私は、わたしは、お、堕ちたくない。人間で居たい!!」
翠は、ついに涙を流した。
それまでの凜とした声ではなく、弱弱しい声。
くノ一としての尊厳を砕かれ、無力なひとりの娘に成り下がった瞬間だった。
しかし。相之丞は反応しない。
大黒天のような慈愛に満ちた笑みの隙間から、蔑みきった瞳で見下ろしている。
まるで興味が失せたとでも言いたげに。
「……さて、帰りましょうか。アレは、あまり見るものではないですよ。目が腐ります」
黒八丈を翻しながら、相之丞の姿が遠ざかっていく。
村の人間達も、それぞれ翠に哀れみの一瞥をくれながら踵を返す。
翠の視界から、“人”が消える。

「ま、待って、待って下さいっ!!置いていかないで、出自を話しますっ!!
 私は、奥末藩藩主永長から直々に任を受けた忍びです!
 相之丞殿が士沼と関わりがあるとの噂を調べに参りました!
 すべて奥末の行く末を思えばこそ任務なのです、ですから、お慈悲をっ!!
 誰か、お願いです、誰か聞いて下さい、誰か、ねぇ、誰かぁあぁああああ゛っ!!!!」

空しい叫びが空に消え、翠の頭は垢まみれの手に押さえつけられた。
そして男達がそうするのと同様に、自らの排泄した養分を口元へと近づけられる。

気丈だったくノ一の切れ長な目尻は、泣くように垂れ下がった。



                      終
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満ちた月

※くノ一拷問物。姉寝取られ要素があります。



小郎太は空を見上げた。
月は海原のように広がる雲に覆われ、欠片ほどもその姿を見せない。
辺りはまさに漆黒の闇。
夜の散策には不向きながら、今から小郎太が為そうとしている事を考えれば、その闇は僥倖といえた。
この闇の中ならば、濃緑色の装束に身を包んだ小郎太の姿を目視する事は不可能に近い。

無論、それは小郎太が標的を見つける場合についても同じ事が言える。
しかし、小郎太はこの夜、標的がどこに居るのかを前もって知っていた。
彼が立つこの母屋から、緩やかな坂を上った先にある一本松。標的はその下に居る。
大まかな場所さえわかれば、住み慣れたこの地で光など必要ない。
小郎太は音もなく駆け出し、緩やかな丘陵を上る。
一本松まであと二駆けでたどり着くという場所まで着くと、小郎太は一旦足を止めた。
大きく息を吸う。
そのまま肺で留める。
呼吸を止めると同時に気配も絶つ忍びの技だ。
この状態に入れば、臆病な野兎に近づいて背後から掴み上げる事も容易い。

息を止めたまま、小郎太はじりと距離を詰める。
前方から気配が漂ってきていた。
こちらに全く気付いていないような、ごく平然と垂れ流された気だ。
小郎太はその気の流れに細心の注意を払いながら距離を詰める。
そして距離が一駆けで足るまでに詰まった瞬間、矢のように飛び出した。
事実、その疾さは不慣れな農民が放つ矢とさほど遜色が無いかもしれない。
草を擦るかすかな足音が、左右に分かれて複数個所で同時に鳴る。
音は一本松から少し手前で消失し、疾走していた主が跳躍した事を物語る。
瞬きにも満たぬ間。
走行の勢いそのままに飛び蹴りを放つ小郎太は、その足先に肉の感触を期待した。
しかしそれは、当初予想していた瞬間には得られない。
否、さらに一刻が過ぎても、足先に肉の感触はない。

「ッ!?」
小郎太はそこで、自らの飛び蹴りを避けられた事実に気付く。
相手の足が動いた気配はなかった。
棒立ちのまま避けたのならば、その方法は前屈みか反り返りかのどちらかだ。
どちらだ。小郎太がそう考えたとほぼ同時に、彼の後頭部へ固い物がぶつかる。
骨……否、脛だ。
相手は小郎太の蹴りを反り返ってかわし、そのまま片脚を振り上げて後頭部を蹴ったらしい。
小郎太は軽い眩暈を覚えながら着地し、よろめく。

全身にどっと汗が噴き出していた。息も吐き出してしまっていた。
それでも敵に背を見せていることはまずいと直感し、背後を振り向く。
しかし。そこにもう相手の気配はなかった。
「なっ……!!」
明らかな狼狽を示しながら相手を探す小郎太。
しかしどこにも気配がない。前、左前方、右前方、真横……。
そこで、小郎太は首筋に当たる何かを感じ取る。
冷たく、鋭い。しかし刃ではない。手刀だ。
その手刀は小郎太の首筋をトン、と軽く叩いた。
それは小郎太を傷つけることはなかったが、彼に完全な敗北を悟らせる。

さぁ、と風が吹き、雲の切れ間から月が覗いた。見事な満月だ。
視界は明るく澄み渡り、小郎太の装束と、その傍らに立つ相手の姿を浮かび上がらせる。
頭の後ろで結われた、長く艶やかな黒髪。
雪のように白い肌。
細い顎と、切れ長で水面のように静かな瞳。
女だ。
それも、類稀なほど美しい女。
格好こそ百姓のような袖の短い麻の着物だが、その身体つきが並ではない。
膨らんだ乳房に、締まった腰つき、細く鍛え上げられたすらりとした脚線。
花町を歩いていても違和感のない艶と、かすかな未熟さ、そして隙なく練られた鋭さが同居している。
その肉体は、およそ目にする者が男であれば、視線を吸いつかせて離さないだろう。


「……参ったよ、氷雨(ひさめ)姉ぇ」
小郎太は指で口当てを下げながら嘆息した。
14歳という年齢に相応の、あどけなさを残す面立ちが表れる。
その幼い顔は、先ほどまで完全に気配を消し、矢のように駆けていた人物とはとても思えない。
しかし彼が忍びの里で生まれた子供である以上、それは別段特異な事でもなかった。
事実、小郎太の横に立つ氷雨は、彼より二つ年上であるだけに、より忍びとして高度な域にいる。

気配を漏らすがままにしていたのも故意での事だろう。
手合わせを望む小郎太にあえて居場所を教え、奇襲させ、それを後の先で制するために。
それは容易な事ではない。
襲われるにしても、どう襲ってくるかまであらかじめ知る事は不可能だ。
小郎太は蹴りで足を狙いにいったかも知れないし、がら空きの腹部を殴るという選択肢も有り得た。
氷雨の凄みは、至近まで小郎太を引きつけ、彼が攻撃に移る際のかすかな殺気を読んで対処した事にある。

小郎太を迎え撃つ際、氷雨には一切の感情の動きがなかった。
顔面を狙われた焦りも、それをかわせた安堵も、反撃に移る際の殺気も、一切がなかった。
さらには反撃としての後頭部への蹴りも、小郎太が後遺症を患わない程度に加減している。
これは、普通に蹴り上げるよりも遥かに筋組織への負担が高く、かつ難しい。
それらを易々とこなす氷雨は、小郎太よりも遥かに高みにいると言えた。

「やっぱり凄いや、氷雨姉ぇは」
小郎太は疲弊したように草の上に座りこむ。
言葉は本心だった。あまりにも差があり、あと二年で今の彼女と同じ域に辿り着けるのか不安になる。
男であるのに、彼女に腕力や基礎体力を含めて何も勝てる所がない。
氷雨は十年に一人の逸材だ。誰もが言う。
同年代のくノ一として抜きん出た心技体を備え、男を惑わすに充分な器量をも備えている、と。

「あんたも、強くなってたよ。正直……驚いた。」
氷雨は小郎太と並ぶように座り、傍らの花を指先で器用に摘んだ。
二つ摘んだうちの一つを口に咥え、一つを小郎太に差し出す。
小郎太はそれを受け取り、花弁を裏返して蜜を啜る。
花に含まれる蜜の量は一本ずつ違うが、氷雨が選ぶものはいつも格別に甘かった。
小郎太が選ぶとそうはいかない。
「……気休めはやめてよ」
小郎太が花を咥えながら呟くと、氷雨は瞳を瞬かせる。
忍として本格的に修練を積んだ彼女は、今ではほとんど感情を表に出すことがない。
あえて演技している場合を除き、小郎太がその表情や気配から喜怒哀楽を読み取ることはできない。
しかし今の氷雨は、『笑った』ように見えた。

「本当の事よ、気配をよく殺してた。あんたが走り出すまで、近くに来てた事に気付けなかった。
 次か、その次か……そろそろ一発貰っちゃうかも」
氷雨はそう言って目を細める。明らかな笑みだ。
まるで小郎太に敗れるその日を、心待ちにしているかのような。

どくん。

その笑みを見て、小郎太は心臓が強く脈打つのを感じる。
「じゃあ、そろそろ戻るね……いつまでも抜け出してる訳には、いかないから」
氷雨はそう言って立ち上がった。
ふわりと匂いがする。
甘い花のような、懐かしい氷雨の体の匂い。
そしてそれよりも随分と弱く、しかし確かに臭う、男の精の匂い。
それは、立ち上がった氷雨の脚の合間から漂ってくる。

どくん。どくん。

小郎太の心臓が、さらに強く脈打ちはじめる。

微かな音を立てながら草原を駆ける氷雨。その後ろ姿を、小郎太は複雑な心境で見守っていた。



まだ幼い頃、小郎太たち里の少年と氷雨は、いつも同じ小屋で寝起きし、同じ修業に励んでいたものだ。
しかし氷雨は、その才を買われ、頭首の屋敷で一人特殊な修練を積むようになった。
屋敷へ入る前の約束通り、満月の夜だけ、氷雨は屋敷を抜け出して小郎太と手合わせをする。
氷雨の様子は会うたびに変わっていった。
よく笑い、誰よりも先に木に飛びついて登っていった少女は、次第に感情を表に出すことがなくなった。
か細かった肢体は、良い物を食べているのか程よく肉感的になっていった。
乳房は成長期という事を鑑みても尋常でないほど豊かになり、男の視線を誘う器官に変貌した。
そして何より彼女の纏う雰囲気が、小郎太と二つしか違わないとは思えないほどに大人びている。
それは、彼女がもう『乙女』でない事を端的に示していた。

考えてみれば当然のことだ。
氷雨は屋敷の中で、『くノ一としての』修練を積んでいる。
となれば座学や肉体鍛錬だけでなく、当然に臥所での振舞い方も仕込まれることだろう。
また最近では、万一敵に捕まった時のために、拷問の修業も課せられているようだ。
小郎太は噂に聞くよりも先に、拷問された後の氷雨を直接目にして知っていた。
屋敷の枯山水の庭を、ぐったりとした氷雨が男に両脇を抱えられて運ばれていく姿。
それは今でも、小郎太の目に焼きついている。
氷雨の美しい手足の指は、ひとつ残らず滴る血に塗れていた。

『クソ、あの餓鬼……初っ端から無茶やりやがって!手足の十本全部に刺してやがった』
『ああ、しかもあんな太いのを、可哀想によ。一体どこで拵えたんだ』
『ありゃあ、遊郭で折檻の時に使われる針さ。大方、お父上殿が廓遊びのついでに持って帰ったんだろう。
 今までのだって、“ぶりぶり”やら“酒をかけての蚊責め”やら、みんな遊女への折檻が元さ』
『け、とんでもねぇや。しかも明日からは、俺達を締め出して連中だけで修行を続けようってんだろ。
 本当の所は氷雨の才を恐れて、体よく責め殺そうってんじゃねぇのかい』

氷雨を抱える男二人は、そのように恨み言をぼやきながら母屋へ戻っていく。
拷問。
氷雨がそれを受けていると知った時、小郎太は胸が締め付けられるようだった。
動揺自体は、幼い頃から氷雨と遊んでいた他の二人の少年とて同じだっただろう。
しかし小郎太の思いは格別だ。
彼は知っている。氷雨が、自分と血を分けた実の姉なのだと。
いつ敵味方に分かれるとも知れないこの里では、住民同士での血縁関係はけして明らかにされない。
新たに生まれた子は一所に集められ、子供同士だけで生きるよう強いられる。
けれども小郎太は知っていた。
里の片隅でいつも野菜を作っていた女が、病で息を引き取る間際、看取る小郎太に堪りかねて明かしたのだ。
氷雨と小郎太という二人の姉弟こそ、自らの世に残す宝だ、と。





「おい、いい抜け道を見つけたぜ。大人達はまだ誰も知らねぇし、そもそも俺達じゃなきゃ入れねぇ場所だ」
少年の一人が、声を潜めて言った。
小郎太ともう一人は、どういう事だ、と耳を寄せる。
少年は片眉を上げて続けた。
「氷雨姉ぇが、近頃お館様の屋敷で拷問の修行受けてるのは知ってんだろ。
 その場所は母屋からちょっと裏に行った離れなのも解ってるよな。
 そのいい場所ってのは、ちょうどその離れの中が見えるようになってんだよ。
 俺が覗いたときも、氷雨姉ぇと大人何人かと、あとすげぇ嫌なヤツの姿がばっちり見えたぜ」
その言葉に、小郎太達は目を丸くした。
そして三人で連れ立ち、すぐにその場所へ向かう。

少年の言葉通り、そこは里の大人では入れない場所にあった。
屋敷を囲む木塀の一部に損傷があり、そこから子供であれば身を捩って侵入できる。
草の生い茂る塀の内側をしばらく進み、林立している欅の樹の一本に登れば、なるほど屋敷が一望できた。
離れの中の様子も、明り取りの窓から伺える。
多少の距離はあるが、見習いとはいえ忍びである小郎太にはその木目の一つ一つまで把握できた。
上からの見晴らしはいいが、逆に屋内から樹を見上げても、逆光である上に枝葉が生い茂っている。
熟練の忍びであろうと、あらかじめそれと解ってでもいない限り、小さな人影を見つけ出す事は困難だろう。
確かにそこは、絶好の場所と言えた。
「な、いい場所だろ。それより見ろよ、アイツ……。アイツが毎日、氷雨姉ぇを拷問してんだぜ」
少年が言い、離れの片隅を指す。
小郎太は改めて離れの中を覗き込んだ。

中央に氷雨がいる。
両腕を開き掲げたまま、その両手首を天井の梁から通されているらしい縄で縛り上げられている。
身体には麻の着物らしきものを纏っているが、それは所々が無残に破れていた。
背中には焼いた網を押し付けたかのような無数の笞跡があり、何とも痛々しい。
その左右では、濃紺の忍び装束を着込んだ男数人が、腕組みをしたまま睨みを利かせている。
頭巾と口当てではっきりとは解らないが、いずれも里では見かけない顔のようだ。
忍び装束の色もこの里のものとは違う。
そしてそれら余所者の間、氷雨の背後にあたる空間から、ふと一人の少年が姿を現した。
年の頃は小郎太達と同じ。
しかし細く締まった彼らの姿とは対照的に、その少年の姿は暴食を思わせるだらしのないものだ。
彼こそ、この離れを見つけた少年が言う『嫌なヤツ』だろう。
「あ、あいつ……!!」
そしてその姿は、小郎太の目にも苛立ちの色を浮かべさせた。


肥え太った少年は、名を伊輔という。
聡明さを感じさせる響きの名とは裏腹に、愚鈍を絵に描いたような子供だった。
生い立ちだけは恵まれている。今や小郎太達の里を実質的に抱えている、奥滋藩藩主の倅だ。
城暮らしが長く、本来はこのような山間の田舎里に居座る類の人間ではない。
そんな彼を里に引き留めている要因は、偏に氷雨の存在だ。

伊輔が初めてこの里を訪れたのは、藩主である父に連れられての事だった。
藩主自らが忍びの里という、藩にとって薬とも毒ともなりうる場所を検分する間、伊輔は里の子供と戯れるよう言いつけられた。
しかしそこは、物心つく前から蝶よ花よと育てられてきた若君だ。
共に戯れるどころか、すぐに小郎太達を下男とみなして身勝手な命を発した。
それを堂々と拒絶したのが、子供組の姉代わりであり、当時まだ勝気の盛りだった氷雨だ。

『何度も言わせないで、いやよ。大体、二言目には偉いんだ偉いんだって、そんなのあたし達には解んないわ。
 もしあんたがあたし達より上だっていうなら、何か勝ってるって所を見せてちょうだい!』

氷雨は毅然とした態度でそう迫った。
伊輔は余裕の表情でそれを受けたが、現実には何をやっても氷雨に敵わない。
駆けっこでも、木登りでも、木の棒を用いた剣術でも、挙句には慣れているはずの乗馬でさえ氷雨に遥か劣った。
庶民と見下していた相手、それも女に負ける。
その事実は、伊輔の矜持を深く傷つけたようだった。

考えてみれば、氷雨が将来有望として一人だけ屋敷に招かれたのは、この少し後の事だ。
感情を表に出す事がなくなり、極端に口数が減った時期も、妙に女らしくなった時期も、それほど間は空いていない。
誰にも話したことはないが、氷雨が屋敷に移ってからしばらく経った頃、小郎太はある夢を見たことがある。
氷雨が床に押さえつけられている夢。
激しく暴れる身体を数人の大人に押さえ込まれ、その腰から半分に折れた体の上に、
気色の悪い笑みを湛えた伊輔が覆い被さる。
でっぷりと肥えた腹を揺らしながら、幾度も幾度も腰を打ちつけていく。
氷雨は猿轡を噛まされた口元を忙しなく蠢かすものの、声としては聞こえてこない。
しかしその瞳や皺の寄った眉間からは、嫌悪と明確な恐怖が見て取れる。
氷雨が怯えた顔など見せるのは初めてだ。

『氷雨姉ぇっっっ!!!』
実姉の陵辱を見守るうち、小郎太は自分の中で何かが弾けるような思いを抱き、
目が覚めたとき、彼は自分が寝小便をしている事に気が付いた。
いい歳をして、と他の二人には散々に笑われ、その気まずさから無意識に記憶から消していた夢だ。
しかしよくよく思い起こせば、その次に会った時だった。
氷雨の瞳の表情ががらりと変わり、三人に言葉を失わせたのは。


「…………あれは……夢じゃ、なかった…………きっと」
小郎太は思わずうめく。
伊輔はすでに城に帰ったものと思っていた。
父親がとうに藩へ戻っており、元々田舎嫌いである上、氷雨にしてやられた伊輔が里へ残る筈もないと。
しかし、伊輔は現実として離れにいる。
屋敷から離れへの僅かな移動でも籠が使われる所を幾度か目にしたが、それが伊輔だったのだ。
恐らくは父親に無理を言ってこの里へ残ったのだろう。
そして父の権威を笠に、氷雨への拷問の修行をさせるよう頭領達に迫ったに違いない。

忍びを志す以上、そうした修行もいずれはするにせよ、当時まだ氷雨は15歳。
肉体的にも精神的にも成熟してはいない。
加えてそうした修行は、里の人間内でやるもので、伊輔のような分別のない余所者に任せるなどもっての外だ、
頭領達は難色を示したに違いないが、しかし互助関係を築こうとしている藩主の倅を無碍にもできない。
ゆえに伊輔の駄々で押し切られる形となったに違いない。

「小郎太、大丈夫か? なんか顔色悪いぞ」
隣の少年が小郎太の顔を覗き込んで問う。
彼は、伊輔の件で多少気を害したように見えるが、それでも平素と大差はない。もう一人も同じくだ。
当然だろう、彼らは小郎太とはやや事情が違う。
歳が近く、氷雨の幼馴染であるという共通点はある。
しかし、彼らは氷雨が伊輔に犯される夢を見たわけではないし、何より血を分けた実の弟ではない。
とはいえ、彼ら二人には何も責などないのだ。
「……大丈夫だ」
わざわざ全てを話して、沈む気分を伝播させることもないだろう。小郎太はそう考え、少し眉を下げてみせた。


離れでは、伊輔が手の中で笞を弄びながら氷雨に近づいていた。
そして肉のついた手を振り上げ、重そうに笞を振るう。
下手な笞打ちながら、先の平たい笞は氷雨の背中で激しい音を立てる。
「――――っ!!」
その瞬間、氷雨が背を逸らしながら顔を跳ね上げた。
声こそ漏らさないが、歯を食い縛っている事が肩の付け根の動きで解った。
まだ白い部分の残っていた左脇腹に、新たな赤い筋が浮かぶ。

「どうだ、痛いか。ええ、どうなんだ?」
伊輔は可笑しそうな声色で言いながら、ゆっくりと氷雨の背後で歩を巡らせる。
そして荒い息を吐く氷雨の不意をつき、やおら笞を浴びせかける。
流石というべきか、氷雨は笞が振るわれる瞬間に背中の筋肉を固め、衝撃に備えていた。
もしそうしていなければ、背の肉はとうに幾筋か裂けていることだろう。
いくら伊輔の動きが緩慢とはいえ、笞打ちには本来それだけの威力がある。
「……っ!!」
笞を受けた直後は、氷雨の背筋が痙攣するように蠢いているのが見えた。
縛られた手首の先は固く握り締められ、膝が笑い始めている。
恐らくは腹筋も攣りかけているだろう。
容赦のない笞打ちを浴び続け、いかな氷雨とて消耗しているようだ。
しかし、その様を見ても伊輔のだらけた笑みは消えない。

「まだ頑張るのか。……おい、あれを」
伊輔は傍らに立つ忍び装束の男に呼びかける。
男はすぐに応じ、足元の壷を拾い上げて伊輔の方へと口を向ける。
「ひひひ、今日こそ良い声をだせよ」
伊輔の肉の乗った手の平がその壷の中に差し込まれ、引き抜かれた時には白い粒を大量に掴んでいた。
それが何かを察し、小郎太は樹の上で目を剥く。
その視界の中で、伊輔の白い粒を纏った手の平は、無数の傷のある氷雨の背中へと叩きつけられた。
瞬間。
氷雨の背中がそれまでにないほどに深く反り、手首の縄が小郎太達にもはっきり聴こえるほどに軋む。
身を反らせる事で爪先立ちになった足の震えも尋常ではない。



「――――ッ!!あ、あ゛ッ……!!………………っっ!!!!」

氷雨は決死の覚悟で声を殺しているのだろうが、それでも抑えきれぬといった様子で声が漏れる。
ひとしきり身を暴れさせた後、氷雨は糸が切れたように力なく項垂れた。
吊るされた両腕が歯止めとなり、細い身体は肩を盛り上げるような歪な格好を取る。
ほんの一瞬髪の合間より覗いた左頬から、光る雫が滴り落ちるのが小郎太には見えた。

一方の伊輔は、どこか苛立たしげに笞を手の平に打ち付けている。
「なんだ、また失神したか。碌な悲鳴も上げずに……。おい、ぼさっとせず水を掛けろ」
父親に似た尊大な物言いをし、水を掛けられて意識を取り戻す氷雨を眺めている。
そしてまた笞を振り上げた。
びしっ、びしっと肉を打つ音が響く。縄の軋む音がそれに続く。
声は聴こえない。
その音を延々と耳にしながら、小郎太は自分の袖が引かれている事に気がついた。
横を向くと、隣で見ていた少年が小郎太に小声で呼びかけている。

「おい、おい小郎太!いい加減戻るぞ。すっかり暗くなっちまった」
彼の言葉を受けて周囲を見回すと、確かに夜も更けて空が闇に包まれている。
離れの中でも丸行灯が用意され始めているようだ。
行灯の灯りで黄色く浮かび上がった氷雨の背中は、汗で濡れ光っていた。
そこへ笞が襲い、美しい肌を朱で隠す。
小郎太はせめてその様をいつまでも見続けたかったが、夜通しここにいる訳にもいかない。
眠りこけて樹から落ち、見つかりでもすれば大事だ。
そうなれば少なくとも、再びこの場所で覗く事は叶わなくなる。
ゆえに、小郎太は少年たちに続き、細心の注意を払いながら樹から滑り降りた。

場を完全に後にする瞬間、後方より一際高い笞の音が響き渡る。
ううう、という悲痛な呻きが聴こえた気もする。
そしてその余韻を打ち消すかのように、伊輔の知性を感じさせない笑い方がした。
「はははは!こいつ鳴きこそせんが、ついに小便を漏らしおったぞ。
 ああ出すがいい、折檻が済んだら床に這い蹲らせて、一滴残さず舐め取らせてやる!」

耳を疑うようなその言葉を背に、小郎太は木塀の穴をくぐり抜ける。
もし眼前の闇に伊輔の気配があったなら、今の彼は後先を考えず殺人の技を用いるかも知れなかった。





拷問修業の様子を覗ける場所は確保できた。さりとて、連日気軽に通えるわけではない。
あくまで大人に見つからないようする事が前提だ。
もし大人の一人にでも知れれば、絶好の場所を失う羽目になる。
そのため三人で同時に張り付いたのは最初の一日だけで、それ以降は交代制にした。
三人のうちの二人は里に残り、修業に励んでいる所を里の大人に見せる。
そうしていわば二人を囮にする形で、残る一人が木塀の中に滑り込むのだ。
一人が居ない程度であれば、山に入っているとでも言い訳が立つ。
しかし三人纏めてとなれば不審を買う。
ゆえに、離れを見張れるのは最高でも三日に一度。
それ以外の間に起こった事は、見張っていた一人に聞くか、氷雨の様子や伊輔の言葉から推察するしかない。
これが小郎太にとって、かなりのもどかしさを感じさせた。

ひとつ確信を得た事がある。
伊輔はやはり、氷雨の操を奪っていた。
ひとしきり拷問を終えた後、伊輔は必ずと言っていいほど氷雨を抱く。
伊輔はけして体力があるほうではなく、拷問終わりは常に息を切らしているが、性欲は極めて強い。
あるいは相手が氷雨ゆえ、か。
かつて自分に恥辱を味わわせた相手を、抵抗もできないほど痛めつけた後に犯す。
そこに生き甲斐を感じているようだ。

水責めをしている際も、伊輔は露骨に性欲の炎を滾らせていた。

真裸のまま後ろ手に縄を打たれた氷雨が、髪を掴まれて水桶に顔を漬けられている。
「っぶはっ!!は、はぁっ、はぁあ、あっ、はあっ!!」
飛沫を上げながら、伊輔に髪を掴まれた氷雨が水面から顔を上げた。
水中で五分以上も息を止められる氷雨とはいえ、断続的に空気を奪われ続けては堪らない。
すらりとした体を捩り、顔を振りながら噎せ返る。
伊輔はその苦悶に満ちた表情を嬉しそうに覗き込み、氷雨が息を吸う瞬間に再び水の中へと頭を漬けた。
氷雨の肩がひどく暴れる。しかし後ろ手に縛られた彼女には、できる抵抗も限られている。

それにつけても、水へ沈めるまでの間の取り方が憎らしいまでに巧妙だ。
氷雨がもっとも多く水を飲む拍子を、伊輔は見極めている。
水責めはこれが初めてではないというから、幾度も繰り返すうち、氷雨が最も嫌がるやり方を会得したのだろう。
今日だけですでに三十数回。
いかに鍛えられたくノ一とはいえ、流石に忍耐ではどうにもならない頃だ。

伊輔は氷雨の後ろ髪を掴んだまま、別の手で頭を押さえ、氷雨の抵抗をその体重で抑え込む。
そして水面に気泡が浮かばなくなってからさらに数秒待ち、無理矢理に後ろ髪を引いて顔を上げさせる。
氷雨の顔を覗き込んだ伊輔は、満面の笑みを浮かべた。
すでに忍びの限界を迎えている頃だ、氷雨の顔は溺死寸前のごとき悲惨なものとなっているだろう。

「いい顔だな。どうだ、苦しいか? 許してくださいと一言言えば、楽にしてやるぞ」
伊輔は勝ち誇ったような顔でそう言いながら、氷雨の乳房に手を掛けた。
そのまま自らの所有物とでも言うべき無遠慮さで揉みしだく。
氷雨は黙ってその恥辱に耐えていた。
しかしその後も図に乗った伊輔が胸への刺激を続けると、間近に迫ったその耳元で何かを呟く。
それは小郎太の耳にも拾えないほど小さな声ではあったが、伊輔はそれを聞いて目を見開く。
そして愛撫の手を止め、怒りに満ちた表情で氷雨を睨みつけた。
「こ、この礼儀知らずが……っ!!」
そう呻くように言うと、荒々しく氷雨の髪を掴んで水桶へと叩き込んだ。
さしたる間もなく引き上げ、すぐにまた沈める事を繰り返して氷雨を消耗させる。
そうして氷雨が水桶の縁に頬を乗せてぐったりとした頃合いで、伊輔は袴をたくし上げて氷雨の背後についた。
「 ぐ 」
一瞬の後、小さな呻き声がし、横向きになった氷雨の奥歯が噛みしめられる。
小郎太にとって最も度し難い時間の始まりだ。

二人分の体重を受け、水を湛えた巨大な桶がぎしぎしと揺れる。
「いいぞ、相変わらずよく締まるな。水責めで昂ぶったのか? このふしだら女め」
伊輔は下卑た言葉責めを交えながら腰を打ちつけていく。
氷雨のすらりとした足に挟まれた、醜悪な伊輔の尻。
それが前後に揺れるたびに、氷雨の足の内側に筋が浮き、おぞましい肥満体の逸物をねじ込まれていると知れる。
何度見てもおぞましい光景だ。
特に今の伊輔は、避妊具である魚の浮き袋を用いていない。
下手に笞で打たれるよりも、直に伊輔の劣悪な精を刷りこまれる方が氷雨にとってはつらいだろう。
事実氷雨は、汚辱からか呻きながら、恨みの籠もった瞳を背後の伊輔に向けていた。
しかし一方の伊輔はそれで退く謙虚さなどなく、体位をずらして氷雨の顔を水に漬けながら突き続ける。

やがて、強く腰を掴んで大きく腰を前後させたかと思うと、伊輔は尻肉を震わせながら射精を始めた。
「むぅぅあっ…………!!」
どくり、どくりと音が聴こえるような、身体を小刻みに震わせる射精だ。
伊輔の射精時間は押しなべて長く、並の男と比べても精液の量はかなり多いものと思われた。
「ふぅ、よく出た。お前のごとき下忍には本来乞うても得られん子種だ。零さず呑み込め」
伊輔はそう言いながら腰を引く。
暗がりになった氷雨の秘所から、大量の白いぬめりが零れていくのが見える。
伊輔はそれが床へ落ちる前に指で掬い取り、改めて刷り込むように秘裂へと戻した。
かすかに見える唇のような秘裂の合間で、太い指がぐちゅぐちゅと音を鳴らす。
伊輔を睨む氷雨の瞳に、かすかに怯えの色が浮かぶ。
それを見た瞬間、小郎太は硬く拳を握り締めていた。
しかしだからとて、彼にはどうする事もできない。ただ忍ぶ事、それ以外には。





被虐が止む日はない。
氷雨は、離れにいる間はほぼ常に縄で縛られ、伊輔の征服欲を満たす的となる。

ある日には、駿河問いを受けたまま伊輔の逸物を咥えさせられていた。
天井から吊るされた縄がぎいぎいと鳴る。
伊輔はでっぷりとした腹と尻を揺らし、氷雨の頭を掴んで腰を打ちつけていた。
吊るされる氷雨の細い身体と対比になり、その肥えた身体は滑稽なばかりだ。
「お、おお゛っ……おご、ごおぉっ…………」
氷雨の喉から声が漏れていた。
伊輔は縮れた陰毛で氷雨の顔を覆うまでに深くねじ込んでいる。
となれば当然喉奥まで入り込んでいるはずで、声が漏れるのも仕方のない道理といえた。

声が出る一方で、氷雨自身の顔は無表情を貫いていた。
逸物の出入りの影響で頬や鼻筋に皺が寄ることはあるが、目から上は涼しげに閉じられている。
相手が苦しむ姿を好む伊輔にしてみれば、さぞや興の醒めることだろう。
しかし伊輔は、根比べだと言わんばかりに淡々と氷雨の喉を使い続ける。
「やすく喉が開くようになったな。初めのころは、涙を流して暴れたくっていた分際で」
過去にも同じ責めを繰り返していたと匂わせる言葉を漏らす。
そしてまた、口を噤んで腰を前後させ始める。

桜色の唇の内側で、しとどな唾液のかき混ぜられる音が続いた。
川の流れが堰き止められた箇所で鳴る音。あるいは、囲炉裏鍋の中で湯が煮えたぎる音。
それとよく似た音が続く。氷雨の口の中で。
その異常性は、やがて唇からあふれ出す唾液という形で表れていく。
喉奥を掻き回されているのだ。そして縛められた氷雨は、口を拭う事ができない。
ゆえに唾液も涎も垂れ流された。いかに元が整った顔立ちであろうと、惨めなものと化してしまう。

「どうだ、苦しいか」
伊輔は一旦逸物を引き抜き、唾液に塗れた氷雨に問いかける。
氷雨はしかし、目を静かに閉じ、唇は何事もないかのような一文字に引き結んで涼しい顔を作る。
伊輔は舌打ちし、再び逸物の先で氷雨の唇を割り開いた。
再び喉奥を蹂躙する音が始まる。

見た目には大きな変化のない責めではあったが、水面下では刻一刻と状況が進んでいたらしい。
喉奥を抉る伊輔は、氷雨を見下ろしたまま徐々に笑みを深めていった。
伊輔が氷雨の顎を持ち上げ気味にして喉を突く際、微かながら氷雨の眉間に皺が寄るようにもなる。
そうした事を幾度も繰り返した後に、伊輔は期を得たとばかりに一際腰を深く突き込んだ。
さらにはそのまま氷雨の頭を引きつけ、もっとも喉奥の深い部分で留めてしまう。
氷雨はしばし、静止したように耐えていた。
しかし眉間に強く皺を寄せた直後、その海老反りの身体が大きく震え上がる。
そして喉奥から破裂音がし、ついに、伊輔の陰茎や玉袋を伝って吐瀉物の線が伝い落ちていく。
伊輔は満面の笑みを湛えたまま、嘔吐している最中の喉奥を浅く前後に突き回した。
「ご、もおぉお゛……っっ!!!」
いつになく水気の多い攪拌の音が響き、うがいをするような氷雨の低い呻きが漏れる。
床には品のない音を立て、更なる吐瀉物が打ち付けられた。

嘔吐が終わった後、伊輔は逸物を唇から引き抜く。
それは異常な量の粘液に塗れ、夕暮れとなりはじめた離れの中で怪しく煌いている。
氷雨は疾走を繰り返したような荒い息を吐いていた。
薄く目を開き、床に広がる吐瀉物を暗い瞳で眺めている。
その鼻先に、伊輔が逸物を突き出した。

「どんな気分だ、自分の臓腑の匂いが辺りに漂っているというのは?
 ……まぁいい、続けるぞ。お前の胃が空になるまでだ。
 もっとも、しおらしく哀願すれば赦してやらん事もないがな」

氷雨は視線を汚物塗れの逸物に向ける。
しかしなお無感情を貫いたまま、伊輔の言葉を聞き流している。
伊輔は一際大きく舌を打つと、荒々しく氷雨の黒髪を掴み上げた。



伊輔は、どうにかして氷雨の心を折ろうと苦心しているらしい。
憎い相手から繰り返し恥辱や陵辱を受け、精神を磨り減らす。
それは拷問の修業としては、ある意味で非常に実践的ともいえる。
しかし伊輔にはまるで容赦が無い。
思いつく限りのやり口で、氷雨の心身を責め立てる。

ある時、小郎太が離れを覗くと、氷雨は伊輔に覆い被さられる形で犯されていた。
大股を開く屈曲位といった体勢だ。
性交時の氷雨の顔を好む伊輔は、その体位を多用する。屈曲位自体は何もおかしい訳ではない。
しかしながら、その時は氷雨が妙に声を出していた。
「あ、あ!あ、あ、あ、あっ……!!」
小刻みに怯えるような声を発する。
瞳も見開かれ、結合部の付近を見下ろしている。
普段であれば、犯されている間じゅう何事も無しといった顔を貫く彼女が、だ。
何故だ。
小郎太が訝しがりながらも見守っていると、程なく伊輔自身の口から真相が明かされる。

「本当によく締まるな、お前の糞の穴は。名残惜しげに根元から先まで吸い付いてくるわ。
 女陰よりも具合が良いかも知れんぞ。
 どうだ? お前にくっついていた腰巾着の小僧三人にも、これを味わわせてやっては」

伊輔のその言葉を聞いた瞬間、小郎太は衝撃を受けた。
糞の穴……すなわち後孔を性交の箇所として用いられているのだ。
なんとおぞましい。
しかしそうであるならば、氷雨が声を上げたり、表情を変えているのも得心がいく。
氷雨の不浄観念は、小郎太と大差ないはずだからだ。
その氷雨は、伊輔の言葉に対して鋭い視線で睨み上げていた。
射殺すような眼光。ところが伊輔は怯む様子もない。
すでに何度もその視線を受け、しかし自分に危害を加えられないと確信しているようだ。

「なんだその目は。あいつらの話をするとすぐにそれだ。
 怒気が漏れているぞ、くノ一は喜怒哀楽を表したりはしない……じゃ無かったのか」
伊輔は嘲笑いながら腹の肉を揺らし、氷雨の中に滾りを打ち込む。
そうと知れれば、確かに結合の位置は普通よりも低い。
伊輔の陰毛越しに、氷雨の桜色の秘所が半ばほど覗いている。
しかし。
小郎太は目を擦った。
光の加減だろうか。どうもその秘じらいの場所は、蜜に濡れているように見える。
「……まぁいい。どの道、もう間もなくお前は『喜』を隠せなくなるんだからな。
 いい加減、薬も回ってきた頃合いだろう。繋がっているおれも血の巡りが止まらんわ」
伊輔は笑みを湛えながら告げ、氷雨の茂みの中に指を差し入れた。
水音が立つ。

「これで薬も三日目、今宵が山だ。このまま突き続ければ、女はやがて自我を失くす。
 少なくとも遊女共は皆そうだった。忍びとて女は女、別ではない。
 せいぜい、夜明けまでそうして睨んでいるがいい。
 お前が尻の穴だけであさましく乱れ狂っていく様を、この奥滋藩次期藩主が自ら見届けてやる」

伊輔は氷雨の両腿を掴み、匂い立つ体臭を嗅ぎながら力強く尻穴を穿つ。
氷雨は足指に痛いほど力を込めていた。
すっかり豊かに膨らんだ乳房を上下に揺らし、艶やかな黒髪を川のように床へ広げて。

小郎太は屋敷を後にする事ができなかった。
欅の樹を滑り落ち、木塀をくぐり抜けたところで女の叫びが聞こえたからだ。
心を刺すほど悲痛な叫びと、暴れまわる何かを数人が押さえつける音。
そして、聞き慣れた伊輔の笑い声。
木塀にもたれ掛かってそれらを耳にしながら、小郎太はひとり俯く。

顔の影となった地面に、細かな水滴が滴り落ちる。
小さな影はそれから間もなく、宵闇に紛れて輪郭をなくす。
まさにその瞬間。
小郎太は、自分の中の冷静な何かがぶちりと千切れ落ちる音を聞いた。
決起を誓ったのは、この時だ。





氷雨は今、太い柱へ大の字になるように縛られ、伊輔の連れてきた婀娜な女に責め立てられている。
女は手にした壷から妙な薬を手に取り、それを氷雨の秘所に近づける。
責めるのは常に同じ箇所だ。
秘裂の最上部に息づく、小豆のような突起。
女はそこだけを指で嬲っている。

「ああ、ああああああっ!!!うあああ、ああ、あああああああっっ!!!!」

氷雨は身も世もなく身悶えていた。
小郎太に女体の知識はないが、その小豆ほどの器官が女の急所である事が、その乱れ様から推して知れる。
狙いが急所であることを念頭に入れれば、女の指遣いはいよいよ残酷に映った。
片手親指で包皮を剥き上げ、薬を絡めた別の指で挟むようにして嬲る。
強弱をつけ、捻りを加え、さすり、弾き、押し潰し。休み無く。
それらの刺激によって、氷雨の秘部の突起は刻一刻と充血していった。
数日前は普通には見えないほどの大きさしかなかったはずだ。
それが、嬲られはじめてしばし経つと小豆程度になり、今は大きさだけなら大豆にも等しい。
総身から立ち上る汗の匂いもいつになく濃厚で、欅の樹上にいる小郎太達にさえ届くほどだ。

「ああっ、あああああっっ!!!はぁ、もっ、やめっ……あ、あっああ!!!
 ああああぅううあああああおおおおおおおっっ!!!!!」

氷雨はもはや忍ぶどころではない。
固く閉じた目から大粒の涙を零し、鼻水や涎に塗れて歪む顔は美貌の影すらない。
必死に脚を閉じようともがいているが、その欲求はただ太い縄を軋ませるだけで叶わない。
「ふふ、どうしたんだいくノ一、そんなに喚き散らしてさ。
 最初はえらく強情だったけど……一度タガが外れてからは凄いもんだね。
 可愛い女の場所からも、ひっきりなしに蜜が零れてるよ。ほぉら、また」
婀娜な女が氷雨の女陰を開きながら告げた。
女の指での開きにあわせ、一筋の艶が氷雨の白い脚を伝い落ちる。
それは膝頭を回ったところで滴り落ち、下に広がる液溜まりに小さな飛沫を上げた。

「ははは、責め殺すんじゃないぞ。まだ愉しめるんだからな」
伊輔は大名さながらの豪奢な肘置きに身を預け、女のする事を見守っている。
傍には器を掲げた若い女が侍っており、伊輔はその器に手を伸ばしては、醍醐を掬い取って嘗めていた。
彼にとっては美食の肴に過ぎないのだ。氷雨がどれほど悶え苦しもうと。

「心得ております、若様。ただこの女芯責めは、女の地獄ですから。
 これを延々と続ければ、どれほど強情な娘でもしおらしく変わるものです。
 それにこの薬を用いている以上、この娘は身体の奥から快楽に蕩けていくはず。
 この薬で極まり続けた末に房事に至れば、男も女も桃源郷を彷徨うが如き心地と申します。
 もっとも……女の頭がその後も正気を保てるかは、分かりかねますが」
女は軽い口調でそう語る。
伊輔もそれは楽しみだと上機嫌に笑う。
氷雨が刻一刻と瓦解しようとしているその前で。

小郎太は音もなく欅の樹を降り、屋敷の傍へ戻る。
しかし、今度は泣く事はなかった。
涙を流す代わりに、全身を濃緑色の忍び装束で包んでいる。
今宵は満月。しかし……今日彼が戦うのは、氷雨ではない。
口当てを鼻の上まで上げ、小郎太は時を待つ。

ひゅーい、と遠くで口笛の音が響いた。
小郎太は懐刀の位置を確かめ直し、勢いをつけて屋敷の塀の上へと手を掛けた。
塀の内では騒ぎが起こっている。どこかで火の手が上がっているらしい。
どうやら、他の二人は上手くやったようだ。
小郎太は塀に刺した刀を足がかりに瓦を乗り越えながら、大きく息を吸った。

目的は、氷雨の奪還。
そして、どす黒い怒りの塊を伊輔の喉笛に叩き込む事だ。
三人共に覚悟は決めている。三者三様に、煮えたぎる思いを孕んでいる。
中でも最も憤りの深い小郎太が、最も危険な役割を担う事になった。
まだ子供の彼らは、『仕方がない』と割り切って氷雨を諦めることなどできない。
大人達がしないならば、自分達の手で彼らの姉を奪い返す。怨敵に誅を下す。
たとえ、誰かの命が欠けようとも……。


              
                           終
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アイスピックの震え

※ いつになくスカトロ注意!『強制食糞』があります!


「待ちかねたぜ、美人刑事さん。ようこそ俺達の巣へ」

閑散としたバーの中、人相の悪い男が入り口へ視線を向ける。
場には他に似た印象の男達が数名おり、口元に薄笑いを浮かべていた。
彼らの視線を集めるのは、ひどく鋭い印象を与える女だ。
嘉川冴月(かがわさつき)。
濃紺のトレンチコートを羽織り、薄手のセーターとジーンズを覗かせている。
やや固い格好ながら、極上の女であることは一目で見て取れた。

櫛の通りの良さそうな、肩甲骨までの黒髪。
変化の解りやすい、柳のように細い眉。
意思と責任感の強そうな瞳。
控えめな鼻梁に、物事を細かく追求しそうな薄い唇。
同僚からさえ『アイスピック』と揶揄される、その潔癖で緩みのない雰囲気は、誰が見ても警察の女だと気付くだろう。

「まずは、捜査協力に感謝するわ」

冴月は後ろ手にドアを閉めて歩を進め、脱いだトレンチコートをカウンターの椅子に置いた。
薄手のセーター越しに、豊かな乳房が露わになる。
腰のくびれ具合も、そこから下に広がる安産型のヒップも、思わず男の生唾を誘うものだ。

「…………約束通り、見返りに何でもする。今夜一晩、好きにしなさい」

屈辱的な瞳で告げる冴月。
本来、身体で情報を得る類の女ではないが、状況はそれほどに逼迫していた。
タイムリミットはあと二日。
それまでに、現時点で何の手がかりもない犯人像を特定できなければ、首都圏で途方もない数の人命が犠牲になる。
その中で特捜部として事件を追っていた冴月が、有力な情報源としてついに探り当てたのが、バーにいる男達だ。
圧倒的優位に立つ相手に、まともな交渉は成立しない。

『……どうしてもってんなら、アンタ一人で俺達の元へ来な。そして一晩、“何でも”俺達の言うことを聞くんだ。
 特捜の嘉川冴月がそれを呑むってんなら、特例の特例として、ネタを提供してやってもいい』

そのような条件にも、冴月は断るという選択肢を持ち得なかった。
警察と裏社会の情報を網羅しているような相手だ。下手に策を弄せば、すぐに悟られる。
『アイスピック』の冴月とて、嫌悪感を押し殺して要求を呑むしかない。

「……へへ、そうかい。こんな極上の女に、そうまで言われちゃあ悪い気はしねぇな」
「うひひひ、見れば見るほどに、イイ女だなァ。評判の美人刑事のカラダ、たっぷりと堪能させてもらうぜ」

男達は下卑た笑みを浮かべたまま、冴月の身体を取り囲む。
顎を掴まれて口づけを強いられ、背後から乳房を揉まれながら、気高い女刑事は静かに拳を握り締めていた。





床には男女の衣類が散乱していた。
冴月が来店時に着用していたものも混じっている。全てが脱がされているようだ。
薄暗いフロアとは対照的に、スタッフルームには灯りがともっており、奥からギシギシと木の軋む音がする。

中では、冴月が男の一人に抱かれていた。ベッドの上で太腿を掴まれ、正常位で貫かれている。
シーツへついた右肘を支点に、半身を起こす格好の冴月。
その唇にブランデー入りのグラスが近づけられた。やや強引に押し当てられる。
冴月は、その頬の紅潮からするとすでにかなりの量を飲まされているようではあったが、グラスが傾く動きに逆らわない。
グッ、グッと喉を鳴らして飲み干していく。
空になったグラスが離されると、鼻から深く息を吐いた。唇が僅かに震え、瞳がとろりと潤んでいる。

「酒は最高の媚薬ってなぁ、本当だな。この女、かなり感じてきてるようだぜ。
 膣ヒダは膨らんで締め付けやがるし、子宮口もすっかり固くなってよ。顔は澄ましてやがるがな」

冴月を抱く男が笑った。
冴月は酔いの回った状態で抱かれながらも、視線を虚空に泳がせ、無表情を保っている。喘ぎ声すら漏らさない。
男達は各々に酒を呷りながら、そうした女刑事の意地を面白がっている。
男は冴月の左脚を持ち上げて側位に移り、そこからさらに脚を下ろさせて後背位になった。
ゆったりと腰を使いながら、男の親指はふいに冴月の尻肉を割る。
指先が捉えるのは、その合間にある菊のような蕾だ。

「くっ……!」

冴月が、初めて小さく声を漏らした。
親指が前後に揺れながら浅い侵入を果たすと、屈辱に耐えかねたように振り向いて男を睨む。
男は優越感を感じさせる笑みを見せた。

「もう一つの条件の方も、守ってきてるんだろうな」
「……当然よ。今日から遡って一週間、排便をしていないわ。食事もしっかりと和食を摂った。文句ないでしょう」

冴月が答えると、性交を横で見守っていた男が彼女の腹部を撫でる。

「なるほど、確かに張ってやがるな。良いだろう」

そう言いながら、銀のトレイに入ったある物を冴月の視界に入れた。
ピンク色をしたイチジク型の容器。イチジク浣腸と呼ばれるものだ。それが10個入っている。
それを見た瞬間、冴月は表情を強張らせた。

「クソを溜めとけと言われた時点で、予想はついただろう?
 こいつを自分の手で注入して、腹の中のモンをひり出してもらうぜ」

男が容器の一つを取り上げ、冴月の顔の前に翳す。
冴月は額に一筋の汗を流し、形のいい唇を噛みながら、渦巻く悪意に晒されていた。



「へぇ、頑張るじゃねぇか。特捜の美人刑事さんよ」

壁に寄りかかって立つ冴月を肴にし、男達は美味そうにグラスを傾ける。
冴月は真裸のまま、壁に手を突いていた。
その足元には、すでに注入の役目を終えた浣腸の容器が転がっている。
一週間便を溜め込んだ上で、10個のイチジク浣腸。
それは冴月の腹部に狂おしいほどの便意を催させ、尋常でない腹鳴りを引き起こす。
しかし、冴月は耐え忍んでいた。

「はっ、はぁっ、くっ……あ、うっく、あ゛……っく…………!!」

荒い呼吸を繰り返し、苦しさに喘ぎながら。
美脚はひどく痙攣しており、肩幅に開いた状態から、ともすれば内股に崩れそうになる。
括約筋にも明らかな決壊の兆しが見えており、蕾から溢れた茶色の筋が、白い内股を汚している。
それでも冴月は、必死に噴出を堪えていた。
男達は二台のハンディカメラでその様子を撮影していた。
流通させる気はなく、あくまで仲間内で愉しむ為だと言うが、本当の所など解ったものではない。

どれほどの時間、冴月は耐え忍んだことだろう。
やがて冴月は、誰の目にも明らかなほどの限界を見せ始めた。
上半身が壁に貼りつくようになり、膝が落ちるのをかろうじて押し留める。
口から漏れる声はもはや意味を成しておらず、弱弱しい音でしかない。

「そろそろか……おい、受け止めてやれ」

カメラを回す一人が命じ、冴月の近くにいた男が巨大なガラスボウルを美脚の間に差し出した。
それを視界の端に捉えた瞬間、とうとう瓦解が始まる。
茶色い汚物が堰を切ったようにあふれ出し、ガラスボウルの丸い底を滑って跳ね上がる。
その液黙りの中へさらに本流が続き、飛沫を上げる。
液の噴き出しが止まれば、次に肛門を押し拡げるのは固形物だ。
浣腸液に溶かされて半ば液状となった黄色い便が、まずはあふれ出す。
続いて、なお固さを残したままの茶色い便、そして塊になったままの浅黒い便。

「おお、すげぇすげぇ!!どんどん出てきやがるぜ!!」
「ひひ、しかもえれぇ匂いだ!評判の美人刑事でも、一週間も溜め込めばこうなるんだな」
「すらっとした脚が、震えながらクソをひりだしてやがる。こいつぁ抜けるぜぇ」

様々に罵詈雑言が交わされる中、冴月は羞恥に耐えながら排便に意識を集中する。
恥を晒すのは一時でも短くしたかった。
やがて排出が一通り終わった後、男が冴月の肩を押し込んで身を沈めさせる。

「ちゃんと全部出し切ってるのか?一週間分のクソってなぁ、浣腸した所でそう一気に出せるもんじゃねぇぞ」

そう諭すように言い聞かせながら、がに股の格好で腰を落とす冴月の尻穴へ指を入れた。
今度は以前のように浅くではなく、第二関節のさらに先まで、深く潜り込ませる。

「お、お゛っ!!」

冴月の声が漏れ、それに続いて尻肉の合間からぐちゅぐちゅと水音が漏れ始めた。
ほら、まだ出るじゃねぇか。
男が小さく囁いた直後、ガラスボウルに水の跳ねる音がする。
そこから二度ほど途切れがちに水の流れる音がし、さらにまた固形物が水へ落ちる音。

「どんどん出てきてるようだな。はしたねぇこった」
「へへへ、特捜の美人刑事がガニ股でクソ掻きだされる姿なんざ、人生で二度見られるもんじゃねぇ。
 オイ、カメラしっかり回しとけよ!」

冴月は、しばし恥を忍び続けた。
屈辱は相当なものだったが、排便まで晒したのだ。これ以上は無いだろうと思っていた。
ようやくに汚物のこびりついた指を抜かれた後、冴月は床に腰を下ろして息を吐く。

「…………さぁ、言う事は聞いたわよ。後はそっちの番、情報を頂戴」

仕事用の鋭い瞳に戻って告げる冴月。
しかし、男達はそんな彼女を見下ろしながら口元を緩めていた。

「オイオイ、何を言ってやがる。夜はまだ長ぇんだ、本番はこれからだぜ?」

男達はそう言いながら、汚物の入ったガラスボウルを冴月の鼻先に突きつけた。
冴月は立ち上る臭気に美貌を歪める。
こいつを、喰ってもらう。
間近で囁かれた言葉に、冴月は一瞬表情を凍りつかせ、耳を疑うように男達の顔を見つめた。

「聴こえなかったのか? 喰うんだよ、一粒も残さずに。
 潔癖で知られる特捜の美人刑事が、自分のひり出したクソを喰わされる所が見てぇんだ。
 嫌なら別に、このまま帰ってもらってもいいんだぜ。アンタさえ良けりゃあな。
 ただ、警察の人間がわざわざ俺達に協力を請うんだ、事態はかなり差し迫ってると見えるが。
 お前の覚悟の弱さのせいで、一体何人が死ぬのかな」

男達は巧妙だった。痛いところを突き、冴月の逃げ道を塞いだ。
冴月は、彼女にしては珍しく狼狽を露わにする。
瞳孔が開き、視線が定まらないその様は、何とも嗜虐心を煽るものだ。

しかし、数秒の後。彼女は決意を固めた。

「…………わ、わかったわ…………」

正義感に燃える瞳で男達を睨み上げ、強い口調で自己犠牲の道を選び取る。
男達は、その気丈さに手を打って喜んだ。





男は、座ったままの冴月の首を左手で抱え込み、右手を別の男が支えるガラスボウルに浸す。
そして中身を手でかき混ぜ、一掬いして冴月の顔に近づけた。

「抵抗すんなよ」

そう釘を刺してから、汚物の付着した手で冴月の口を塞ぐようにする。
冴月は目を閉じたまま、されるがままになっている。
口を開けろ、と男がドスの利いた声を上げた。
冴月は薄っすらと目を開き、続いて閉じていた唇を開く。
男は間髪入れず、その口の中に糞便を塗り込んだ。

「む゛っ!!」

噎せるような声が漏れる。しかしそれを意に介さず、男は汚物を擦り付ける。
一旦手の平が離されると、冴月の冷ややかな美貌は、その唇から下が無残に茶色く汚れていた。

「はははは、美人刑事さんのキレーな顔が台無しだ!!」
「相変わらず澄ました顔しやがって。オイ構うこたねぇ、ドンドン喰わせてやれ!」

男達の野次が飛ぶ。
冴月を抱える男は、言われるまでもないとばかりに次の汚物を手に取った。
今度は、小さな塊ともいえる便だ。
それを開かせた冴月の口の中へ押し込む。
ピンクの舌の上に、茶色い塊を乗せたままの顔。
しかし冴月は、薄く開いた視線を横に投げ、健気に涼やかな表情を保っている。

男はそれに嗜虐心を煽られたのか、次々と汚物を手にとって冴月の口内に押し込んでいく。
泥のような半固形物と、その溶け出した汚水、碁石ほどの大きさの汚物塊。
それを口一杯になるまで押し込んでから、男は冴月の顎を掴んで咀嚼を強制する。

「よぉーく味わえよ、自分の腹にあったクソなんだからな」

嬉しそうに言いながら、咀嚼させる。その最中、ついに冴月が一線を超えたのか低く呻く。

「うむ゛ぐ゛っ!!!」

目を見開いて吐き出そうとするが、男の手が唇をしっかりと押さえつけてそれを阻む。
逃げ場所を失った汚物が口内へ戻り、冴月の呻きを一層哀れなものに変える。
男達は、それを可笑しそうに見下ろしていた。


「おら、我慢して呑み込め。お前のひり出した一週間分のクソは、まだまだ、まだまだあるんだ。
 全部喰わねぇと、いつまでも終わんねぇぞ?」

男はそう言いながら、眉を顰めて悶え苦しむ冴月を追い込んでいく。
それでも冴月は大したものだった。

「お、おえ゛っ!!おおえ゛っ、ご、ぐぉっ……!!!……あ、はっ、はあっ……ろ゛あ、あ゛っっ!!!!」

糞便を口に押し込まれ、生理的嫌悪から苦しみつつも、その腕はだらりと床に垂れたままだ。
本当に抵抗するならば、糞塊を押し付ける男の手を払いのける事もできるだろうに、それをしなかった。
あくまでもされるがままになっている。その心意気は、並ではない。

「最近はアダルトビデオでも食糞ってヤツをよく見かけるようになったがよ、ありゃあ殆どが紛いモンだ。
 こうして正真正銘ひり出したクソを喰うとなりゃ、到底ヘラヘラ笑ってなんぞいられねぇ。
 横にいる俺まで、気を緩めると吐いちまうほどだからな。
 お前ら、気合入れて撮っとけよ。モノホンの美人刑事が、ハードなスカトロで悶絶してる様をなぁ!!」

男の言葉を受け、二台のカメラは一つは上空から、もう一つは前方から、食糞の様子を余すところなく撮り続ける。

「う゛っ!!」

ある時冴月は目を見開き、身体を大きく前傾させて息を詰まらせた。

「オイオイ、今にも吐きそうだなぁ。つらいんならギブアップして帰るか、刑事さんよ?」
「……っ…………い、いいえ。続けるわ」

男が試すように問うと、冴月は無理矢理にこみ上げるものを飲み下して続行の意思を示す。
男達はその気高さに気を良くしながら、汚物をボウルの中で捏ね回した。

「へーぇ、『続けるわ』ねぇ。ご立派だけど、なんか偉そうな言い方じゃねぇか?
 こっちはテメェのひり出したクソを掴んで、喰わせてやってる身だぜ。せめておねだりしろよ。
 おら、何ていえば良いんだエリート刑事さんよ?」
「ぐ……っ!!…………お、お願いします……。わ、私の出した、べ、便を…………食べさせて下さい」
「だから気取るなって。便じゃなくて、ウンチって言え」
「う……うんちを、食べさせて……くだ、っさ……い…………」
「ふん、どうした、そんな人生の終わりみてぇな深刻そうな顔してよ。まぁいいや、喰えやおら」

男は満面の笑みを浮かべながら、大量の汚物を掬い上げて再び冴月の口へと押し込み始める。
冴月は決死の表情で大口を開き、それを受け止めた。
男達に容赦はない。
再度小さな嘔吐の予兆が起きても、両の手の平で完全に口を包み込むようにして無理矢理に飲み込ませてしまう。
冴月は脂汗にまみれながらそれに大人しく従うが、そこにはやはり無理があり、生足がびぐん、びぐんと苦しげに痙攣した。
床に垂れていた手が持ち上がり、つい男達の腕を掴もうとする寸前で、震えながら床へ戻される事もある。
それらのいじましい葛藤は、彼女を囲む男達にとって最高の肴となった。

男達の手で無理矢理に押し込まれる糞便は、幾度も冴月の薄い唇からあふれ、彼女の美しい顎や鼻筋、首に至るまでを少しずつ茶に染め上げていく。
それはまるで、彼女の体内が汚されていく様を象徴するかのようだった。

「しっかし量の多いクソだな、ボウルの三分の一ぐれぇ埋まってるじゃねぇか。本当に全部喰えんのかよ」
「バーカ、喰えるかどうかじゃなく、喰わせるんだよ。ああして無理矢理突っ込んでよ。
 はははは、またすんげぇ声が出てるな、低すぎだろ。…………っと、あーあーあバカだね、吐きやがった」

男達の見守る前で、何十度目かの咀嚼を繰り返していた冴月が、堪らずといった様子で嘔吐する。
素早くガラスボウルが差し出され、口内からあふれる夥しい量の汚物と、白い吐瀉物の流れを受け止めた。

「せっかく半分ばかり喰えてたってのに、全部戻しちまうとはお前も好きモンだな、しかも、量が増えちまった」

男はそう言いながら、再度汚物を手の平一杯に掬い上げて冴月の口内へ押し込む。

「ガッ、ああ、あ゛っ……!!!ふんむ゛ぅうう゛う゛うあ゛っっ!!!!!」

苦悶の極みといった表情で呻く冴月。
その左の目尻から一筋の雫が流れていくのを、カメラが小憎らしいほど的確に捉えていた。






「…………ふぅ、ようやく全部喰いきったか。何時間かかったんだ?」
「さぁ、いつ始めたのかも見てなかったからな。だが最後の方はすっかりグタっちまってたな」
「そりゃ、男に押さえつけられてあんな量のクソ喰わされたんだ。元がどんだけ気の強い女だろうが、従順にもならぁ」
「一時間ばかし前の狂乱振りは、中々に凄かったからなぁ。鬼気迫るっつうか、女の力じゃなかったぜ。
 刑事を組み伏せるにゃ並の覚悟じゃ無理だって、思い知らされたぜ。ッ、まーだ痛みやがる」

男達は、首を抱えられたまま気を失ったような冴月を見ながら語る。
彼女は、その顔はおろか上半身至る所が、糞便と吐瀉物の混合物に塗れていた。
口内には歯茎にまで隙間無く汚物が詰められ、口を開いているにもかかわらず歯が見えないほどだ。
瞳はうすく開いてこそいるが、何かを見ている様子はない。
彼女はまるで壊れた人形のように、男にもたれ掛かっているだけの状態にあった。

「さて、まだ朝までは時間があるな。ビデオも残ってる事だ、次はこいつのアナルでも犯してやるか。
 残ってる下痢便を掻きだしながらのアナルファックだ。
 こいつはスタイルがいいから、クソ塗れでも映像的に映えるぜ」
「ほう、そいつはいい。たっぷりと喰わせた糞が、身体ン中通ってケツから出てくるかもな!」

力なく倒れ付す冴月の遥か情報で、男達は楽しげに悪意の相談を交わす。
冴月は滲む視界でかろうじてその姿を捉えながらも、赦せない、という気持ちにならない自分に気付いていた。
恐ろしい。身体が動くならば這いずってでも逃げ出したい。そうとしか思えなくなっている。
そのような弱った心で、これからの責めに耐え切れるのか。

朝はまだ遠い。
冴月は、『アイスピック』とも喩えられた鋭利な女刑事は、身体が小さく震えだすのをどうしても止められずにいた。


         
                          END

隷属のシエナ

※殴り書き。スカトロ、拷問成分注意


「……やれやれ、やっと大人しくなりおったか。この暴れ馬め」

甲冑に身を包んだ男が、顎の汗を拭いながら呟いた。
その見下ろす先には、膝をついた一人の女性が苦しげに眉を顰めている。
シエナという名を持つ彼女は、全国を旅する経験豊かな女冒険者だ。
かつては傭兵として武勲を挙げた事もあり、浮浪の身として軽視されがちな冒険者の中でも、
特別にアニキリア王国国王への謁見さえ赦されている女傑だった。

彼女は数年前、このゴヴィシの街へも訪れた経験がある。
しかしそれは、まだこの一帯が長閑で平和な炭鉱の街だった頃の話。
隣国に征服され、男は死ぬまで鉱山送りに、女は残らず奴隷にされる属国と化す前の話だ。
シエナが街に入った瞬間、軽鎧と剣を帯びたその姿を占領軍兵士が見咎めた。
元より直情径行、人が人を隷属させる事を良しとしないシエナと兵士達は、当然の如くに刃を交えた。

所変われば国の英雄とすら称される女だ、そう易々と止められたものではない。
竜巻のように鋭く腰を切って振りぬかれる大剣は、鉄兜を根菜の如くに容易く裁断し、兵の腰を砕けさせる。
二人の兵が諸手でもって腰を抱え込んだが、それでも踏み込む勢いを殺しきれない。
炎の走る銅のような赤髪を靡かせて、シエナは暴れ狂った。
叩き割られた盾や兜が街道に転がり、耳を突くような剣戟の音が明けの空に響き渡った。
シエナに隙を作ったのは、けして兵士達の武の力ではなく、多勢に無勢という状況からくる疲労に他ならない。
全身に無数の切り傷を作って奮戦するシエナは、迫る刃を弾き返した姿勢そのままに崩れ落ちる。
弓兵の放った毒の矢が、その脇腹を掠めていたのは事実だ。
しかし居並ぶ兵士達の眼には、その姿が極限の疲労からようやくにして力尽きたようしか映らなかった。

「……くそっ……毒……か…………!!!」

立てた剣を支えに片膝を突き、忌々しげにシエナが呻く。
兵達はしばしその姿を恐ろしげに観察していたが、時が経ち、シエナがもう立つことも叶わぬ状況にあると知るや、
俄然その加虐心を剥き出しにして取り囲んだ。

「へっ、手こずらせやがって。こんな暴力女は、まず従順にする調教が必要だな」
「ああ。奴隷にして下さいって懇願するようになるまで、何日でもかけて嬲り抜いてやる」

兵達のその様子に、なお光を宿すシエナの瞳がぎらつく。

「何を……!!」
「おお、おっかねぇ。だがじきに解るさ、昼も夜もなくここの全員に嬲られ続けてりゃあな。
 奴隷の心構えって奴を、身体の芯にまで叩き込んでやる」





囚われたシエナは、傷を治すハーブエキスに身を浸されながら、兵士達に輪姦された。
ハーブエキスには麻酔効果があり、そこに何時間にも渡って浸かれば身体の自由は利かない。
意識だけがはっきりしている状態で、シエナは口を、女の穴を犯し抜かれた。
粘性のあるエキスの中、ガラスの壁に両手を付いたシエナの身体が揺れる。
キッキッキッキッと独特の音がし、押し殺すような喘ぎが響く。
何時間に渡ったのだろう。
最後にはさしものシエナも虚ろな瞳になり、食い縛った歯の間から荒い息を吐くばかりとなっていた。
しかしそれでも、奴隷となる事を承諾する様子は微塵もない。
そこで彼女の身は地下牢に移され、悪趣味な元尋問官へ貸し与えられる事になったのだった。



「……どうだ、様子は?」

尋問官の食事を届けにきた兵士が、カンテラを片手に告げる。
昼なお暗い地下牢には、申し訳程度の蝋燭が灯ってはいるものの、目が慣れない人間には見えづらい。
今日で使用三日目になる地下室には、前日よりもさらに酷い匂いが満ちていた。
拷問官の趣味で、ここにはトイレが設置されていない。
ゆえにシエナは、その美しい身体から排される糞尿を垂れ流しにするしかなかった。
またそうでなくとも、失禁や脱糞なしには耐えられない責めが繰り返されているようだ。

部屋の隅にある水を湛えた一角には、赤みを帯びた茶色い髪が幾本も浮いている。
一度や二度では済まない水責めを、シエナが受けた証だ。
後ろ手に枷を嵌められて床にへたり込むシエナの脚には、白い部分を探すのが困難なほどの笞痕が残っている。
肩には未だ落ちぬ白蝋の層がこびりついており、床には先の煤けた鉄の棒が五本ばかり転がってもいた。

今日になって新たに増えているのは、石床に座するシエナの両乳房を挟み潰す、金属製の責め具だ。
その責め具によって張り切った乳房の先へ、ごく細い棒状のものが刺さっている。
拷問官の過去の責めから考えれば、そうして女冒険者の乳腺を嬲っているのだろうと見当がついた。

 はーっ、はーーっ、はーっ、はーーっ……

暗闇の中から、シエナの荒い息が繰り返されている。
彼女は長い前髪を垂らし、乳房の枷に涎を垂らすようにして俯いているようだ。
前髪に隠れて表情は読み取れないが、体力を消耗しているのは明らかだった。
おそらくは糞尿が垂れ流しになっているのみならず、この三日の間に睡眠すら与えられていないのだろう。
乳房責めは昨夜はされていなかった筈だが、かなり執拗に課されているようだ。
乳房の先、細い棒を伝うようにして母乳の雫が零れ、下方の石床へと振り落とされてゆく。



「よう、随分と淑やかになったもんだな」

食事のトレイを置いた兵士が、靴を鳴らしながらシエナの前方に歩み出し、髪を掴んで顔を覗き込む。
案の定眼の下に隈を作ってやつれ果てたシエナは、それでも眼前の男に鋭い視線を向けた。

「………………。」

離せ。眼光でそう言い放つ姿に、尋問官が面白そうに笑った。

「ひょ、ひょ、まだ、まだそんな眼をを。じゃあお仕置きだでぇ、おー仕置き受けよぉうでぇ」

そう生き生きと喋りながら、シエナの乳首とその付近を紐で縛り上げる。
シエナの表情が強張った。
さらに尋問官が、縛り上げた乳房の先端で細い棒をくゆらした時……シエナの唇が開かれた。

「うああああああっあ、あああああうあああああっ!!!!」

高らかな叫びだ。
紐で縛ることによって狭められた乳腺を、恐らくは何かの薬を打たれた上で掻き回されているのだろう。
乳房の先から、闇に白く煌めく母乳が飛沫を上げる。
シエナは苦痛からか悦楽からか、凄絶に顔を顰めながら笞痕だらけの太腿を暴れさせる。
一方の尋問官は、自らの前後させる棒の下へと顔を潜り込ませ、さも旨そうに母乳を口に受けていた。
その狂った責めは、まだまだ終わりそうにない。

兵士は再びカンテラを手に取ると、女の叫びがこだまする地下牢を後にした。



地下牢を出てからも、シエナへの責めは続けられた。
ある時には、彼女は裸のまま街の中央にある広場に引き出される。
手足を伸ばしたまま前屈みになり、その手首足首を地面に拘束された。
挙句には、そのままで浣腸が施される。
兵士二人がかりでやっと持ち上がる家畜用の浣腸器でもって、腹が膨らむまで薬液を注ぎ込まれる。
そして肛門栓を嵌められ、裸のまま見世物となるのだ。
観衆は兵士達と、すでに奴隷と化している街の女達。

「う、う……くうぅ、うう……う…………!!」

シエナは兵士や街の女の前では恥辱を見せまいと、必死に耐えた。
手足を震えさせ、歯を食い縛って耐え忍んだ。
しかしながら、限界はやってくる。
やがてシエナは、幾度もかぶりを降りながらその時を迎えた。

「う、うあ……あああああああーーーっっ!!!」

太い肛門栓を弾き飛ばし、茶色く濁った汚液を広場にぶちまける。
視界を遮る物は何もなく、その排泄のすべてが場の者達に見届けられた。
その恥辱は如何ほどだっただろうか。
すべてを観衆の視線に晒した後、シエナは俯いて頬に涙の線を零していた。
気の強い女冒険者の心が今まさに引き裂かれていくのが、見守る人間には読み取れた。

そこからさらに三日……拘束されたまま広場で輪姦され続けた後、
彼女の口から赦しを乞う情けない声が上がる。

奴隷の身分となった彼女には、街で最も高い値がつけられたという。


                        終
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